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娘中隊(第2部)
- 1 名前:ま〜 投稿日:2001年09月09日(日)23時45分29秒
- こんにちは。「ま〜」でございます。
金板で「娘中隊」を書いていました。
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=gold&thp=991500486
容量が大きくなってしまったので、こちらに移転して続編を書かせていただきます。
どこに新スレ立てようか悩みましたが、久々に青板にしました。
元ネタはガンダムです。宜しくお願い致します。
- 2 名前:ま〜 投稿日:2001年09月09日(日)23時46分19秒
- 「裕ちゃん!」
ミーティングを終えて、廊下を歩きながら
平家と打ち合わせをしている中澤の背中に何者かが抱きついた。
もちろん誰だかは、中澤も分かっているが。
「ごっちん。」
「いよいよ大きな戦いだね〜。」
後藤は相変わらず、あまり緊張しない性格なのか、ニコニコしている。
中澤はそんな後藤の性格がうらやましくもある。
彼女は後藤と違い、多くの部下を抱えてるみでもあり
自然と緊張してしまう。
「ごっちん。ごめんな〜。今はみっちゃんと打ち合わせ中やから
また後でな。」
「え〜・・。しょうがないな・・。」
「後で部屋に来な。夕飯一緒に食おうな。」
中澤はそう言うと、後藤の頭を無造作になでる。
「うん。じゃあね。」
- 3 名前:ま〜 投稿日:2001年09月09日(日)23時47分31秒
- 後藤が去った後、平家は中澤に話し掛ける。
「ええな〜。ごっちんはよくなついてて。」
「なついてるって・・、動物やないんやから・・。」
「うちなんてな〜・・。」
「ああ、石川の事かい?どうよ。あれから?」
一波乱あった後、一応の事ながら、石川とは上手くやっている。
後藤と中澤ほどではないが。
「あたしの事ですか〜?」
突然後ろから声をかけられて驚く二人。
その甲高いアニメ声は特徴がある。
「石川・・。」
「あたしだって平家さんに、なついてますよぉ〜。」
そう言うと、石川は平家に抱きついた。
「ちょっ!!こんなとこで・・。」
「平家さん、相変わらず照れ屋で可愛いですね♪」
そう言うと、石川はニコリと笑うと平家から離れ、
自分の部屋に戻っていった。
- 4 名前:ま〜 投稿日:2001年09月09日(日)23時48分24秒
- 「自分とこかて、ようなついとるやん。」
「うん・・。まあね。でも一緒にいると疲れて・・。」
「なんや!のろけかいな!!」
中澤が軽く平家のわき腹を、どつく。
「イタッ!!」
「ほらっ!!打ち合わせや!!行くで!!」
わき腹を押さえて蹲る平家をほったらかして、
中澤は自分の部屋に向かっていく。
「待ってや〜!!」
追いかける平家。
「おもしろいれすね・・。」
「ああ。他人の恋愛事は面白くてしゃあない。」
「中澤さんと平家さんも、いいコンビれすね。」
他人の恋愛事には必ず首を突っ込む二人。
「あんたら!!また下らない話してないの!!!あとでしごくわよ!!!」
「ひ〜〜!!!やすらさん!こわいれす!!」
- 5 名前:ま〜 投稿日:2001年09月09日(日)23時50分03秒
- この夜も、後藤は中澤の部屋に来ていた。
「裕ちゃん。いよいよだね。」
「ああ、そうやね・・。」
二人は夕食をともにすると、一緒にシャワーを浴びた。
個室にシャワーが付いていることがよほど気に入ったのか、
この日も後藤は中澤の部屋でシャワーを浴びた。
もっとも、後藤だけでなく、安倍や飯田も時々浴びに来る。
その後、後藤は結局いつも通り床を共にしていた。
「後藤はほんまに大物やな。」
「なんで〜?」
「あんまり緊張せんやろ?もうすぐ大きな作戦やのに・・。」
「そんなこと無いよ〜。今だって・・。」
そう言うと、後藤は中澤の手を取って、自分の胸の部分にもってくる。
中澤の手に、後藤の鼓動が伝わる。
「ドキドキしてるん?」
「うん・・。」
「それはうちと一緒にいるからかいな?それとも戦いの前の緊張かいな?」
「う〜ん・・。どっちかな〜?」
- 6 名前:ま〜 投稿日:2001年09月09日(日)23時51分06秒
- 「ほんま、ごっちんは面白いな。」
そう言うと、中澤は後藤の頭をなでる。
いつもながらの中澤の行為だが、後藤にとって至福の時間だ。
「あんな・・・。」
突然中澤が、昔を懐かしむような笑顔を見せると、
ゆっくりと語り始めた。
「うち・・。親がおらんねん・・。」
中澤は日本と呼ばれる土地の、福知山と言う地方都市で生を受けた。
兄弟や姉妹はおらず、両親と三人で暮らしていた。
しかしながら、幼い日に父親を無くし、
苦しい生計の中、母親の手一つで育てられた。
そんな母親を助けるためにも、
中澤は、無料で通え、しかも給料ももらえる士官学校に進んだ。
卒業後は一般職に就職するつもりだったが、
結局のところ肌が合ったのか、そのまま軍人になった。
在学中のときはもちろんの事、入隊してからも
親とは定期的に手紙のやり取りはしていた。
それが突然途切れたのは、ジオン軍がブリティッシュ作戦で
地上に降下した直後のことだった。
- 7 名前:ま〜 投稿日:2001年09月09日(日)23時52分23秒
- おそらく避難したのだろうと思っていた中澤の希望は
彼女が地球に下りて間もなく打ち砕かれた。
地上に降りてから、1週間の休暇をもらった中澤は久しぶりに故郷を訪ねた。
そこで彼女が見たものは、潰れた自分の生家と
その上にのしかかったザクの残骸だった。
激しいショックを受けた彼女だったが、
わずかな希望を元に、付近を調べた。彼女の母親を求めて。
そして絶望した。
隣人の話によれば、一度家から逃げ出した母親は、
大切に取っていた夫の位牌を忘れたことに気づき、家に戻った。
そこに損傷したザクが降って来て、彼女に家に墜落すると、
激しく炎上した。
そういうことだった。
中澤は泣き崩れた。
これまでに流した涙すべてに相当する量の涙を流したであろう。
手作りながら、一応の墓も作った。
そして彼女はその場を離れた。
ジオンに復讐するために。
- 8 名前:ま〜 投稿日:2001年09月09日(日)23時53分02秒
- 中澤がそこまで話した時、気づいた。
彼女の腕の中、後藤が寝息を立てていることに。
「なんや・・。人が真面目に話してるのに・・。」
一瞬、ムッとした中澤だったが、
その寝顔を見て、怒る気をなくしてしまった。
「ほんま・・。ごっちんはかわいいな・・。」
そう言うと、中澤は後藤の肩に布団をかけてやる。
そして、再び頭をなでる。
「おやすみ。ごっちん。」
中澤もゆっくりと目を閉じた。
これからのことを考えると、少しでも体力を温存しておいた方が良い。
疲れもあり、すぐに中澤の意識が遠のいていく。
彼女は気づかなかった。
後藤の目に光るものがあったことを。
- 9 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月10日(月)01時06分06秒
- 遂にソロモンですか〜
娘中隊の面々の活躍に期待します〜♪
ってことはソロモンの悪夢の登場も有りですか?(藁
- 10 名前:ま〜 投稿日:2001年09月10日(月)23時48分50秒
- 「3・2・1・0・・・作戦スタートです。」
モニターに表示されている数字が0を指し示すと同時に
ブリッジにオペレーターの前田の言葉が艦橋内に響き渡る。
「よっしゃ!戦闘配備や!」
待ってましたと言わんばかりと寺田が声をあげた。
その声に黙って頷いた戸田が、
艦内各所に寺田の命令を伝えるために連絡を取る。
ゼティマの角砲座が唸りを上げて、
いつでも主砲が発射できるように仰角を上げる。
一方の対空砲座は機銃の発射体勢に入り、
ミサイル発射管はミサイルを装填する。
すでに艦隊前方に位置する前衛部隊からは
戦闘艇のパブリグがビーム撹乱幕を装填したミサイルを抱いて
次々出撃していく。
それらを護衛するように、MSの戦線投入後は二線級機に下がったものの
未だもって充分な戦闘能力を保有するセイバーフィッシュ戦闘機も
発進していく。
「ミサイル発射!」
寺田の命令の元、ソロモンに向かって長距離ミサイルが次々放たれた。
- 11 名前:ま〜 投稿日:2001年09月10日(月)23時49分39秒
- 「始まった・・・。」
彼女達が乗っているゼティマがミサイル発射の衝撃で
大きく揺れると同時に、矢口が少しばかり緊張した面持ちで口を開いた。
先頭配備がかかる前から、すでに彼女達はパイロット待機室に居る。
「ああ。そうだね。」
いつもながら冷静な保田が頬杖を突きながら興味なさげに言った。
「相変わらす冷静だね〜。圭ちゃんは。緊張とかしないの?」
安倍が保田の隣の席に座ると、保田の顔を覗きこむ。
「なによ。あんた。そんな近づかれるとビックリするじゃない。」
「圭ちゃん冷たいべさ・・。」
「まあ、あたしよりも緊張してない人たちが居るんじゃない?」
保田が後ろの方で喋っている人たちを指差した。
「そんなことないれす!!」
「そや!!」
どうやらメンバーきっての小さい二人組みがレファ達に食って掛かっていた。
- 12 名前:ま〜 投稿日:2001年09月10日(月)23時50分24秒
- 「二人共そんなに怒らないで。」
怒り心頭な二人を飯田がなだめている。
「だって!ののたちが卑怯言うのれす!!」
「どうしたの?」
「うちらがこの間の戦いで、逃げてく敵を打ち落としたのが汚いって言うんや!」
辻や加護の怒りは収まらない。
逃げていく敵とは言え、5機を撃墜したのだ。
一般的に言うならば、彼女達はエースの称号を得るに充分な働きをしている。
しかしながら、逃げていく敵を打ち落とすのは卑怯ではないかと
レファとダニエルが文句をつけたらしい。
「逃ゲテイク敵ヲ撃ツノハ、少シ卑怯デス。」
「う〜ん。そうだね・・。でも油断してる方が悪いんだし・・。」
飯田は困ってしまった。
お互いの言い分が、間違ってはいないからだ。
油断してる方も悪ければ、逃げる敵を打つのも気が引ける。
後ろでは、困ったもんだといった顔をしたアヤカとミカが
呆れた顔つきで見ていた。
- 13 名前:ま〜 投稿日:2001年09月10日(月)23時51分17秒
- 「何しとんや〜?」
別室で打ち合わせをしていた中澤と平家は部屋に入るなり、
もめている彼女達を目ざとく見つけ、間に入ってきた。
「あのね・・。」
飯田がこれまでの経緯を二人に告げた。
「そやな・・。それは油断してる方が悪いで!!」
中澤が少しばかり怒気をはらんでいるような口調で言った。
一方の平家は反論する。
「そんな!逃げるのを撃つのは卑怯やで!!」
「そんなことあらへん!!!」
「い〜や!!違います!!!」
「なんや!うちに文句付けるんかい!!!」
「うちが正しいです!!」
先ほどまで言い争いをしていた当人達よりも
よほど二人の方が興奮している。
「卑怯やて!!」
「卑怯やあらへん!!!」
喧嘩していた加護やレファ達は、二人のあまりの剣幕に
自分達が当事者であることをすっかり忘れている。
「廊下に出や!!!」
「おう!!ええで!!!」
廊下に出て行く二人を見て、唖然としてしまった当人達は
怒気を削がれた形になり、すっかり冷静になってしまった。
- 14 名前:ま〜 投稿日:2001年09月10日(月)23時52分05秒
- 「うまくいったと思う?」
「たぶんね・・。」
廊下に出た中澤と平家は、先ほどまでの怒った顔ではなくなっていた。
「芝居、バレテへん?」
「大丈夫やろ。」
「まあ、喧嘩を収めるのは、当事者達を冷静にするしかあらへんからな。」
「そやね。」
「それにしても、みっちゃん、よくうちが芝居やて分かったね。」
「まあ、付き合いが長いからね。裕ちゃんのやろうとしてることは分かるよ。」
言い争いになっていた加護達が、少しばかり興奮しているのを見て取った中澤は
とっさに彼女達を冷静にする芝居を思いついたのだった。
自分達の言い争いにしてしまえば、彼女達は冷静になると踏んだ中澤は、
自分と平家の言い争いにすることによって、
彼女達を冷静にしようと考えた。
そして平家はうまくその芝居に乗ってくれた。
「みっちゃんよくやったで〜。えらいえらい。」
中澤は平家の頭をなでる。
「ご褒美にボールあげる。」
「いらんわ!!!!」
- 15 名前:ま〜 投稿日:2001年09月10日(月)23時53分23秒
- >>9 名無しさん
レスありがとうございます。
もちろんソロモンに悪夢は付き物ですから・・。
これからも宜しくお願い致します。
- 16 名前:名無しです 投稿日:2001年09月11日(火)18時21分54秒
- いつの間に…
最近青覗いてなかったから気づかなかったです(w
これからはしっかり覗かしてもらいます〜(w
頑張って下さい〜
- 17 名前:ゴマユウvv 投稿日:2001年09月12日(水)02時06分55秒
- こちらに移動していたんですね。
ボクも最近あんまり青板見てなかったんで、
発見できて、安心いたしました(笑)。
ごま・・・いい娘。だなぁ〜(しみじみ)。
やっぱり裕ちゃんの相手はごまに限りますっ!!
あと、相変わらず、あいぼん&ののちゃん&圭坊がいい味出してますね〜(笑)。
- 18 名前:ま〜 投稿日:2001年09月13日(木)00時10分09秒
- 「MS隊、発進準備。」
すでにそれぞれのMSに乗り込んだ彼女達のコックピットの中に
オペレーターの前田の声が聞こえてくる。
第一波の長距離ミサイル攻撃が終了すると、次はMS隊の出撃となる。
彼女達を含めたMS隊の任務はソロモン要塞に取り付き、
橋頭堡を確保すること。
まず第一次攻撃隊として、中澤率いる中隊が出撃することとなった。
平家の部隊は、直援部隊として艦に残る。
余裕があるならば、第二次攻撃隊として出撃する可能性もある。
「ミノフスキー粒子、戦闘濃度散布!」
「第二派ミサイル攻撃の後、MS隊を発進させる!ミサイル発射!!」
寺田がてきぱきと指示を出し、それを受けた戸田が指示を伝え
オペレーターの前田が各所と連絡を取る。
ゼティマに大きな振動を残して、第二派の長距離対要塞ミサイルが
次々と射出されていく。
「MS隊。発進。」
- 19 名前:ま〜 投稿日:2001年09月13日(木)00時11分10秒
- 『はぁ・・。』
カタパルトに自分の機体を載せると、中澤は軽くため息をついた。
周りを見渡すと、すでに僚艦からは次々とMS部隊が出撃していく。
その大半はGMであり、カタパルト等の射出能力を持たないサラミスから
飛び立っていく。
それに続いて、ボールの部隊も出撃していく。
これだけの大作戦は中澤にとって久しぶりだ。
かつて参加したルウム戦役では、彼女達は戦闘機に乗っての出撃だった。
それが今やこれだけのMS部隊を用いて、ジオンに反撃している。
それを思うと、緊張よりも、感慨深くなる。
「はぁ〜・・。」
もう一度、軽くため息をついた。
突然コクピットのメインスクリーンの上方右にある
サブスクリーンに寺田の顔が写った。
「中澤!頼んだで!」
「艦長・・。了解!!」
中澤は寺田に向かって軽く敬礼すると、叫んだ。
「中澤!行きます!!」
- 20 名前:ま〜 投稿日:2001年09月13日(木)00時12分31秒
- 中澤が後方監視用モニターのスイッチを押すと
彼女に続いて、安倍や飯田がカタパルトから射出されてくるのが見て取れる。
「矢口!出ます!!」
大きな声で叫ぶ矢口。
「保田、出るよ。」
素っ気無い保田。
「石川!行きます!」
緊張気味な甲高い声の石川。
「吉澤!行きま〜す!!」
張り切っている吉澤。
カタパルトが彼女達を打ち出すと、
分け隔てなく平等に彼女達をGが襲い掛かりシートベルトが
体を強烈に締め上げる。
磁力式の強力なカタパルトは、
彼女達のMSを一瞬にして戦闘速度で押し出す。
- 21 名前:ま〜 投稿日:2001年09月13日(木)00時13分21秒
- 次々と射出されていく彼女達。
「進路クリアーです!どうぞ!!」
後藤のコクピットに、前田の声が響く。
見渡すと、前方に彼女の出撃を阻む物は何も無い。
「分かりました!どうぞ!」
後藤が前田の言葉に、緊張した面持ちで答えた。
カタパルト脇にあるシグナルが、赤を示している。
上から、赤・赤・赤・緑となっている光の表示が順々に緑に近づく。
そして一番下の緑のランプが点くと同時に後藤は叫んだ。
「後藤真希!行きます!!」
直後、猛烈なGが彼女を襲い、一気に宇宙空間に打ち出された。
「はぁ〜・・・。なんだか・・。いい気持ち・・・。」
シートに押さえつけられた彼女の体は、明らかに悲鳴を上げている。
しかしながら、彼女にとってこの瞬間は、
理由は分からないが、快感に近い物があった。
- 22 名前:ま〜 投稿日:2001年09月13日(木)00時14分06秒
- 「加護ちゃん!辻ちゃん!進路クリアー!大丈夫?」
前田が報告をすると同時に、部隊最年少の二人を気遣う。
「いいれすよ〜!!」
「ええで!!」
元気のいい返事がブリッジのオペレーター席に返って来る。
二人の準備完了の報告が、カタパルト制御室に入ると同時に、
彼女達のMSの足元にあるシグナルが、カウントダウンを始めた。
「さぁ〜て!行くで!!」
「行くれす!!!」
気合だけは充分な二人。
「待ッテ下サイ・・。辻サン、加護サン・・。」
突然二人のコクピットに聞きなれた声が聞こえた。
「レファ・・さん・・?」
- 23 名前:ま〜 投稿日:2001年09月13日(木)00時15分06秒
- 「サッキハ、ゴメン・・・。」
その言葉を聞いた時、二人は意外そうな顔をした。
先ほどの言い争いは、中澤と平家によって自然消滅してしまった。
それでも、出撃に当たって、心の中にシコリを残すのは嫌だったのだろう。
それはレファなりの心遣いだったのかもしれない。
一度出撃すれば帰れない可能性もある。
そんな中、二人との関係がギクシャクしたままでは後悔するかもしれない。
その為、彼女は二人より先に謝ることを決めていた。
レファは彼女達より年上だった。
「アタシモデス・・。」
ダニエルの声も聞こえる。
「・・・・。気にしてないのれす。」
「うちも・・。すまへん・・。」
当初は意外そうな顔をしていた二人だが、
すぐにレファの気持ちを悟ったのかもしれなかった。
年少ではあるが、伊達に共に戦った仲ではない。
- 24 名前:ま〜 投稿日:2001年09月13日(木)00時16分00秒
- 「帰ッテ来テ下サイ。」
「モチロン二人共ネ!」
「もちろんやで!!!」
「レファさんや、ダニエルさんもれす!」
辻と加護が、レファやダニエルが写っている
モニターを見て、元気そうに返事をした瞬間、
カタパルトのシグナルが緑に変わった。
二人は心の準備も無いまま強制的に、一気に宇宙空間に打ち出された。
強烈なGと共に。
「ひょええええ〜〜!!!!」
「きゃぁぁぁ〜〜〜〜〜!!れす。」
- 25 名前:ま〜 投稿日:2001年09月13日(木)00時20分05秒
- 皆様、レスありがとうございます。
>>16 名無しですさん
ありがとうございます!頑張ります!
>>17 ゴマユウvvさん
やはりごまゆうっす。気に入って頂けてうれしいです。
@ノハ@
(=Lд`)( ´D`)<やすらさん・・・。こわいれす。
( `.∀´)<何よ!
- 26 名前:ま〜 投稿日:2001年09月16日(日)01時13分10秒
- 中澤は艦隊上方に上昇すると、不意にスピードを落とした。
後から出撃してきた仲間達と編隊を組むためである。
下方を見ると、次々と僚機も中澤に伴って上昇している。
艦隊前方に位置する、一際目立つ白色の艦艇。
ジオン軍から『木馬』の愛称で呼ばれている強襲揚陸艦の
カタパルトハッチが開放されるのが見て取れる。
「あれが・・。ホワイトベース?」
中澤が誰に聞くというわけではなく、口を開く。
その直後、白いMSと赤いMSが2機射出された。
「ガンダムだぁ〜!!」
突然中澤のコクピットに陽気な声が響いた。
「なっち・・。」
「あ〜!ガンキャノンもいるべさ〜!」
中澤の呼びかけに対して全く反応しない安倍。
- 27 名前:ま〜 投稿日:2001年09月16日(日)01時14分00秒
- 彼女達が、敵側から『白い悪魔』呼ばわりされているMSと
遭遇したのは、これが2回目だ。
1度目はジャブローで、恐ろしいほどのスピードを見せ付けられていた。
「かっけー・・。」
中澤たちに追いついてきた吉澤も、その白いMSを確認したのか、
大きな声を上げて喜んでいる。
「はいはい!みんな集合やで!」
中澤が全員に叫ぶと、次々と仲間が集まってくる。
いつも通り、2人一組のペアで編隊を組む。
今回の戦闘は、以前宇宙に上がったばかりに行われた遭遇戦と異なり
秩序だった戦闘になる。
付近の艦艇からも続々とMSが射出されているが、
それらは、しっかりと編隊を組んでおり、
MS隊の編成も、GMやGMコマンド、GMスナイパーやボールと
近距離戦闘用と中距離支援用と分かれていた。
「いくで〜!!」
「おっけ〜!」
中澤の号令の元、彼女達は綿密な編隊を組んで進撃する。
- 28 名前:ま〜 投稿日:2001年09月16日(日)01時14分46秒
- 「ミサイルが来るで・・。」
中澤が呟くと同時に、遠方から猛烈なスピードで光点が迫ってくる。
ソロモン要塞が対艦隊目的の長距離ミサイルを放ってきた。
前方に位置する先発隊のMSの中には、不運にも
ミサイルに当たって四散するGMやボールが居る。
「散開!」
彼女達が一斉に散開した。
対艦艇用のミサイルは大きく、炸薬量も多い。
MSに命中すれば、まず間違いなく木っ端微塵になる。
「迎撃しないで良いの?」
迫ってくるミサイルを避けながら、矢口が口を開いた。
「あんなん、直援隊にまかせらええんよ。何の為に、みっちゃん達がおんねん。」
「ああ、そうか・・。」
中澤と矢口がおよそ戦場とは思えないほどの
のんびりした口調で会話をしていた時、警報が鳴った。
- 29 名前:ま〜 投稿日:2001年09月16日(日)01時15分19秒
- 「来た!!MS隊!!上からや!!」
戦闘状態に入り、ミノフスキー粒子の濃度が濃くなっているため
コクピットのモニターが熱源で敵MSの接近を報告する。
敵の先発部隊なのか、数は少ない。
「行くで!!迎撃!!」
中澤の声がメンバーのコクピットに響くと、
一斉に彼女達は敵に向かって上昇に掛かる。
彼女達だけではなく、付近にいたMS部隊も上昇をしている。
味方艦隊の方向に向かっていた光点が
くるりと向きを変えて、こちらに迫ってきた。
「辻!!加護!!」
「はい。」
「はいれす。」
辻と加護は、中澤の言葉に反応して、
上昇しながらスナイパーライフルを構える。
「あたるのれす!!」
- 30 名前:ま〜 投稿日:2001年09月16日(日)01時16分10秒
- 強力なビームが彼女達のライフルの先からほとばしると、
その光は性格に敵編隊の中心に向かい、大きな光点が瞬いた。
これが実質の戦闘開始の合図となった。
「いつも通り、ペアを崩さんようにな!!
石川と吉澤は、辻加護の援護な!行くで!」
「はい!」
「おっけ〜!!」
「了解!」
メンバーがそれぞれ返答する。
「ごっちん。行くで!」
「うん!」
中澤が後藤と共に最大戦速で上昇を開始する。
一方、安倍も飯田と共に上昇する。
「なっち行くよ。」
「おっけーだべさ。」
安倍がペダルを踏み込むと、彼女のGMコマンドのバックパックが装備している
4基のバーニアが、明るい閃光を放出する。
一気に上昇に掛かった。
- 31 名前:ま〜 投稿日:2001年09月16日(日)01時16分43秒
- 「もらったべさ。」
安倍が操縦桿を押し込みつつ、先端についているトリガーを押す。
ライフルの先から閃光が放たれると、
ビームが一直線に、ザクの胴体を捕らえた。
強力な貫通力を持ったビームが、一気にバックパックの
背後まで貫通し、大爆発を起こす。
「一機撃墜だべさ。」
「圭織も負けらんないよ!」
上方から、覆い被さるようにザクが2機迫る。
1機はマシンガンを連射し、もう1機はバズーカを放つ。
飯田は、あっさりとマシンガンの弾をシールドで弾き返すと、
バズーカ弾を避ける。
バルカンで一方のザクを牽制すると、もう一方のザクを照準に捕らえた。
「悪いね。」
余裕の表情で、飯田は右手で握る操縦桿のトリガーを押すと、
ザクは明るい閃光と共に、消え去った。
動揺しつつ、逃げようとした残ったザクは、
飯田が再びトリガーを押すことによって、破壊された。
「2機目ね。」
「あ〜!なっちも負けてらんないべさ!」
安倍が照準にリックドムを捕らえると、
トリガーを押す。
- 32 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)23時36分05秒
- 待ってました〜MS戦!
決戦用リックドム、ザク相手に頑張って欲しいですね。
セイバーフィッシュVSガトル戦闘隊も見物ですね・・・(藁
- 33 名前:ま〜 投稿日:2001年09月17日(月)00時03分30秒
- 10分と経たないうちに、敵の先発隊のMSは全滅していた。
もちろん彼女達の腕前がいいとは言え、
なにしろ、味方の数は尋常ではないほど多い。
しかも、敵の大半はザクである。
連邦軍のGMも性能的には、特徴が無いのが特徴と言える程、
性能的には突出した物は無い。
それでも、ビーム兵器を所持したGMはザクよりも性能的に勝っている。
「あっけなかったね。」
序盤の戦いとは言え、1機しか撃墜できなかた矢口が
不満そうな口調で言う。
「何言ってんの。まだまだこれからだよ。」
矢口とペアを組んでいる保田が冷静な口調で言った。
「集合〜!」
中澤の命令の元、全員が一旦集結する。
「誰も怪我とかしとらへんな?」
「大丈夫だよ〜。」
「はい。」
気の抜けた返事。
「あんたら・・。一応戦場なんやで・・。」
「一応じゃなくて、戦場なんだって・・。」
- 34 名前:ま〜 投稿日:2001年09月17日(月)00時04分27秒
- 「それにして・・。相変わらず味方の腕前はだめやね・・。」
「そうだね。」
味方のGMは数で勝負をしているといった感がある。
作戦を急いだ為なのか、明らかに訓練不足だ。
それでもGMの持っている汎用性の高さと、操縦性の良さに救われていた。
「すいません・・。」
吉澤が口を挟んだ。
「いや、吉澤達のことを言ってるんや無いで。」
彼女も2度実戦を経験している。
その中で、彼女は戦死しそうになったが、
持ち前の度胸と、経験による慎重が上手く重なれば
いいパイロットになるだろうと中澤は思う。
それは石川にも言える事だ。
辻と加護は、勢いで戦争をしているようだが。
- 35 名前:ま〜 投稿日:2001年09月17日(月)00時05分30秒
- 「裕ちゃん!また来るよ!!」
矢口が大声をあげる。
「どうする?迎え撃つ?」
「いや・・。止めとこうや。あれはみっちゃん達に任せよう。」
安倍の言葉に中澤が答えた。
進撃すべき彼女達が、敵の攻撃隊を迎え撃っていては、
いつまで経ってもソロモンにたどり着くことは出来ない。
よしんばたどり着いても、エネルギーが切れる恐れもある。
そのためにも、平家達が艦隊に待機してるのだ。
「なっち。艦隊に連絡しといてや。敵が向かってるって。」
「分かった。」
そう言うと、安倍はゼティマに向かって連絡を取る。
敵の攻撃隊も、彼女達の意思を悟っているのか、
彼女達に向かおうとはせず、連邦軍のMS部隊を迂回するように
艦隊の方向へ向かっていった。
- 36 名前:ま〜 投稿日:2001年09月17日(月)00時06分24秒
- 味方のGM部隊は、先ほどの戦闘に置ける中澤たちの戦い振りを見て
彼女達に付いて行けば良いと思ったのか、
侵攻する彼女達に追従してくる。
すでにガンダムを中心とした部隊は、先行してしまっている。
「なんや?うちがこれだけのMS部隊率いてるみたいやな?」
「気がするだけだよ。」
中澤のボケに、後藤が突っ込みを入れる。
「なんや・・。ごっちん。うち偉くなったような気がして気分良かったのに。」
「あはは。ごめんごめん。」
「ちょっと〜。戦場なんだからもうちょっと真面目にやろうよ。」
そんな二人に飯田がちょっかいを入れる。
艦隊を飛び立って、すでにかなりの時間が経過しているが、
少数の攻撃部隊に遭遇しただけで、
未だもって、敵の迎撃ラインに到達していない。
もちろんのこと、ミサイルやビームは数多く飛んでくるが。
「そろそろ来てもいいべさ・・。」
安倍が呟いた時、再びコクピットに警報が響く。
- 37 名前:ま〜 投稿日:2001年09月17日(月)00時07分27秒
- 「いるいる・・。いっぱい。」
矢口が思わずうめいた。
そこでは混戦が繰り広げられていた。
先攻した味方MS部隊が、敵の第1線の防御ラインを
突破しようとしている。
両軍合わせて、数十機に達しようかと思われるMSが
マシンガンを放ち、スプレーガンを撃ち、サーベルを振り回す。
ザクが放ったマシンガンをシールドで跳ね返したGMが
スプレーガンで、そのザクを破壊する。
その一瞬の隙を突いたリックドムがGMを
ヒートサーベルで斬り付ける。
「どうする?援護する?」
「いや、うちらはこのままソロモンに向かおう。」
保田の問いかけに、中澤が答えた。
しかしながら、その直後に中澤は自分の考えを否定した。
敵のMSの一群が驚異的なスピードで、味方のMS部隊に襲い掛かったからだ。
このままでは、一気に敵が優勢になりそうだ。
「やっぱり・・・、行くで!!」
- 38 名前:ま〜 投稿日:2001年09月17日(月)00時09分41秒
- >>32 名無しさん
レスありがとうございます。
やっと戦闘です。なかなか話がすすまなくて・・。
>>セイバーフィッシュVSガトル戦闘隊も見物ですね・・・(藁
えらいマニアックですな。藁
- 39 名前:ま〜 投稿日:2001年09月18日(火)22時29分52秒
- 「何や?あれ?」
突入し始めたところで中澤は気づいた。敵の増援部隊の先頭にある青いMS。
これまでに見たことの無い新型である。
犬のような頭部。アフリカの原住民が持つようなシールド。
そして、その動きは、とてつもなく素早かった。
そのMSが持つ、細長いビームライフルから閃光がほとばしると、
あっさりとGMが破壊される。
そのままの勢いでそのMSは突入すると、背中に装備している
薙刀状のビームサーベルを掴み、GMをことごとく粉砕する。
「新型!?」
安倍も敵のMSを確認したのか、大声をあげる。
「早い!!」
彼女達は、一瞬にして、その敵が尋常な敵ではないことを感じ取っていた。
「あれを・・、叩くで!!吉澤!石川!辻!加護!あんたらは援護や!行くで!」
「おっけー!」
「了解!」
中澤と後藤を先頭に、飯田と安倍、保田と矢口が続く。
その後ろから援護するために、吉澤達が続いた。
- 40 名前:ま〜 投稿日:2001年09月18日(火)22時30分30秒
- 彼女達の突入を察知した敵部隊の一部が、
方向を変えて、彼女達に襲い掛かるべく向かってくる。
その編成は、主にリックドムを主体としていた。
「じゃまや!」
中澤が一言声を上げて、トリガーを押すと、
ライフルから放たれたビームが命中する。リックドムは四散した。
一方、保田も得意の射撃で、あっさりとザクを破壊する。
彼女達の腕前を前にして、中澤達を並みのパイロットではないと
把握した敵のMS部隊は一旦後退すると、編隊を組みなおす。
「この敵・・。やるべさ・・。」
指揮官の統率力がいいのか、パイロット達がベテランなのか
それともその両者なのか、敵の冷静な行動に安倍が舌を巻く。
編隊を組みなおした敵のMS部隊に、突如下方から閃光が走る。
一旦中澤達と離れた辻と加護が
スナイパーライフルを斉射したのだ。
敵の編隊に光が二つ輝く。
「うまいで!辻!加護!行くよ!」
- 41 名前:ま〜 投稿日:2001年09月18日(火)22時31分17秒
- 思わぬ長距離から狙われた敵MS部隊は、動揺したのか、一旦編隊を解いた。
その瞬間を中澤は見逃さない。
各々ペアごとに散開して、1機づつ敵を葬る。
矢口の背後に1機のリックドムが迫る。
そのリックドムのパイロットは、矢口の機体を照準に捕らえて
ニヤリと笑っていたであろう。
そしてバズーカを放った。命中を確信して。
しかしながら、彼にとって信じられない出来事が起きた。
矢口のGMコマンドは、全く背後を見る事無く、弾丸を回避したのだ。
「あまいね〜。」
コクピットで矢口が笑う。
その直後、横合いから放たれたビームによって、リックドムは四散した。
「ナイス!圭ちゃん!」
「ま、楽勝だね。」
思い通りのコンビネーションで敵を打ち落とし、ハイテンションな矢口に対して
相も変わらず冷静な口調な保田。
- 42 名前:ま〜 投稿日:2001年09月18日(火)22時32分06秒
- 中澤達が援軍として突入したために、一旦は混乱が収まりそうになったが
彼女達に追従してきた多数のGMが、この戦線に加わってしまったために
混戦が、さらなる混戦を招いてしまった。
彼女達が奮闘しても、なかなか形勢が両軍共に有利にならない。
そのなかで、ジオンの青い新型MSは、混戦を利用するかのように
ビームナギナタを用いて、次々とGMを破壊している。
「あれを落さんと話にならんな・・。」
敵の隊長機を睨んだ中澤が呟く。
彼女達も、やっと襲い掛かってきた敵MSを駆逐したばかりだ。
向かう先には、混戦中のMS隊。そして青い新型MS。
「なっち。あの新型知っとる?」
中澤が情報に関して素早い安倍に訪ねた。
「う〜ん。なっちも知らない。ちょっと待って。」
安倍はコクピットの中でパネルを操ると、
情報端末から、敵MSの情報を引き出そうとする。
「MS-14ゲルググ・・?だって・・。新型の試作型らしいよ。」
彼女のモニターに、諜報部から寄せられた情報が表示される。
「強そうだべ・・。性能良いらしべさ・・。」
「そっか。とにかくあれを落す!行くで!」
- 43 名前:はいめんて 投稿日:2001年09月18日(火)23時22分54秒
- ゲルググ登場ですか。
ちょっと手強そう……。
隊長機だけ青で、ビームサーベルを使用してたりして。
- 44 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月20日(木)01時05分06秒
- うわ!青のゲルググ、ガトーだ。
- 45 名前:ま〜 投稿日:2001年09月21日(金)23時52分35秒
- モニターに表示される照準が、敵の新型MSを捕らえると
操縦桿のトリガーを引く。
まず真っ先に射撃をしたのは保田だった。
この中隊のメンバーの中では、おそらく彼女が
一番射撃の腕前が良かったからだ。
この時、保田はコクピットの中でニヤけていた。
自分でも射撃には自信がある。
その保田が、十分に自身を持ってトリガーを押し込んだ。
「えっ!?」
彼女が放ったビームは、あっさりとかわされた。
以前彼女は中澤に言われたことがある。
『正確すぎる射撃は、かえって避け易いで。』
「ちっ!!」
保田は舌打ちする。
「圭坊!この距離じゃ当たらへんよ!!あんたの腕前でもね!」
「圭ちゃん・・。突っ込もうよ。」
矢口が唸る。
- 46 名前:ま〜 投稿日:2001年09月21日(金)23時53分58秒
- 「あたしの射撃が、こうもあっさり避けられるとはね・・。」
保田は自分自身を嘲笑していた。
すこしばかり自信過剰に陥っていたのかもしれない。
「まあ・・、いいか。行くよ!矢口!」
「おう!」
「なっちと圭織は右から!矢口と圭坊は左から!
うちらは上から!行くで!!!」
中澤は、怒鳴り声を上げると、
後藤を率いて、一気に機体を上昇させる。
それに伴って、安倍たちは右に、
矢口たちは左に回りこむために、それぞれ操縦桿と
両足を使ってペダルを踏み込む。
彼女達の接近に気づいた、青いゲルググが、
彼女達の方を振り向き、シールドを身構える。
「まずは、なっちが行くべさ!!」
強烈なGが彼女の体を襲う。
それでも、彼女は思い切ってMSを突っ込ませると、
トリガーを押し込み、ライフルを3発連射させる。
しかし、あっさりと避けられた。
「な・・!!」
一瞬の隙を突いたつもりで、飯田がゲルググに向かって
ライフルを放つが、これもいとも簡単にかわされる。
「えっ!?」
- 47 名前:ま〜 投稿日:2001年09月21日(金)23時55分02秒
- 「だめだね・・。あたしがいくよ!」
保田は、一旦敵に向かって突っ込んませた自分の機体を
途中で横にずらして敵の目を欺くと、再びライフルを放つ。
「あたしの射撃が、二度も避けられた?!」
保田の射撃を避けた一瞬を矢口は見逃さなかった。
「もらい〜!」
彼女のすばしっこさが機体に乗り移ったかのように、
素早い動きでゲルググに接近すると、
操縦桿のトリガーの横にあるサーベル用のボタンを押す。
すると彼女の機体は、腰の部分からサーベルを抜き取り、
ゲルググに切りかかった。この間、わずか1秒に満たない。
並みのパイロットならば、確実に切られていたであろう。
しかし、奴は違った。
「えっ!?!」
矢口のサーベルは、ゲルググの薙刀にあっさりと跳ね返されていた。
しかも、ゲルググは矢口のサーベルを受けた刃とは反対側の刃で、
下側から切りつける。
「きゃぁ!!」
悲鳴を上げた矢口だが、一瞬の判断で、シールドで受ける。
シールドが真っ二つに切断される。
- 48 名前:ま〜 投稿日:2001年09月21日(金)23時55分48秒
- 「うわああ!!」
正直、矢口にとってこれほど『ヤバイ』と思ったのは初めてだった。
初めての実戦でもこれほど危険な状態に陥ったことは無い。
MSに乗り始めてから、彼女のセンスなのか、得意の格闘戦で
数多くの敵機を落してきた。
しかしこの時は違った。
「やばい!!」
シールドが無くなった彼女は無防備に近い。
その彼女をゲルググのビームナギナタが襲い掛かる。
一瞬、彼女は目をつぶった。
おそらくやられるだろうと思いつつ。
しかしながら、ゲルググのナギナタは、襲ってこなかった。
「圭ちゃん!!」
保田のビームサーベルがゲルググのナギナタを防いでいた。
「何の為のペアだと思ってるの?」
「・・・。ありがと・・。」
さすがに彼女達ベテランパイロット多数を一度に相手をするのは
分が悪いと踏んだのだろうか、一旦後退するゲルググ。
「ふ〜・・・。」
彼女のため息は心の底から出た物だったであろう。
- 49 名前:ま〜 投稿日:2001年09月21日(金)23時56分42秒
- 「やる・・。この間の赤い奴以上かもしれん・・。」
中澤は呟きつつも、体も心も戦闘状態に入る。
一旦後退した隙を突いて、中澤がライフルを連射しながら突っ込む。
彼女も、保田ほどではないが、一般的に見て
射撃の腕前は他の通常のパイロットとは比較にならない。
それでも一発も当たらない。
「くそっ!!」
舌打ちをしながらゲルググの脇をすり抜ける形で
一撃離脱をかける。
もちろんのこと、中澤に敵の注意が集中すれば
後から続く後藤が敵をしとめる。
彼女達の抜群のコンビネーション。
の、はずだった。
しかし、ゲルググは彼女達の動きを読んでいたかのように
中澤の後に続いてきた後藤に襲い掛かる。
「ごっちん!!」
「きゃあ!!」
後藤は襲ってきたビームナギナタを寸でのところで回避した。
しかしながら敵の攻撃は続く。
必死に操縦桿を操り、敵の攻撃を避けつつ
相手の隙を狙って、攻撃を繰り出す。
- 50 名前:ま〜 投稿日:2001年09月21日(金)23時57分48秒
- 一瞬の隙が現れたのは、後藤のほうだった。
「あっ!!!」
後藤が気づいた時には遅かった。
彼女のコクピットの目の前に、細長いゲルググのビームライフルが迫る。
「ごっちん!!!」
中澤が悲鳴を上げた。
『やばいよ!!』
後藤がそう思った瞬間だった。
後藤の体に電流のような衝撃が走る。
頭の中で、何かが弾けたような音。
頭脳が反応するよりも早く、体の方が反応した。
自然と彼女の左腕は操縦桿を引き、そして
足がペダルを踏んでいる。彼女の意思に関係なく。
0.5秒と経たずに、ビームが後藤の機体の横を通過する。
『避けれた・・?なんで・・?』
「ごっちん!うまい!!」
中澤の声と共に、彼女が放ったビームが
正確に後藤のGMコマンドとゲルググの間を通過する。
命中すると信じていた攻撃を避けられたためか、
明らかにゲルググは動揺している。
この場の不利を悟ったのか、ゲルググは後退した。
「あっ!!待てや!!」
- 51 名前:ま〜 投稿日:2001年09月21日(金)23時59分58秒
- >>43 はいめんてさん
ゲルググ登場です。
ちょっと調べたら、ソロモン戦の時にはゲルググの初期型が
あったらしいので、出しました。
>>44 名無しさん
>>うわ!青のゲルググ、ガトーだ。
これだけで分かってしまうとは・・。できる!!
- 52 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月22日(土)19時08分33秒
- 302哨戒中隊ですかね。
ってことは、カリウスもいるんでしょうか?(藁
- 53 名前:ま〜 投稿日:2001年09月23日(日)00時40分57秒
- 青いゲルググが率いていた部隊は撤退した。
それも見事な引き方で。
「くそっ・・・。」
コクピットの中で、中澤は悪態をつく。
正直、彼女達が寄って集って倒せなかった敵は存在しなかった。
唯一、赤い彗星を除いて。
しかしながら、彼女達の集中的な波状攻撃を
いとも簡単にかわし、それだけではなく
味方のGM部隊を散々打ちのめした。
この戦域で撃墜されたGM部隊の半数は
あの青いゲルググの手によるものであったろう。
「ショックやわ・・。まるで悪夢やな・・。ソロモンの・・悪夢・・。」
しかし、彼女達にのんびりとショックを受けている暇は無い。
ゲルググ率いる強力な部隊を撤退に追い込んだとは言え
まだまだ敵は多い。
しかも味方のGM部隊は劣勢だ。
「・・・。行くで!」
中澤は、第一線を突破するためにも、一時部隊の集結を図るべく、
別行動を取っている石川達に連絡を入れた。
- 54 名前:ま〜 投稿日:2001年09月23日(日)00時41分58秒
- そのころ、別行動中だったメンバーも苦戦を強いられていた。
加護と辻の搭乗するGMスナイパーは、ビームサーベルを持っているとは言え、
巨大なスナイパーライフルを所持しているため、
格闘戦は不向きである。もちろんスナイパーライフルを
破棄してしまえば、通常のGMより高い機動性と装甲を持って
高い格闘戦性能を発揮できる。
しかし、それではスナイパーの意味がなくなってしまう。
それを敵は悟っているのか、集中的に辻と加護に格闘戦を挑んでくる。
「こ、こっちくるなぁ〜!!」
加護が必死にスナイパーライフルを振り回す。
シートの頭部右側にある狙撃用のスコープを出し、
狙いを定めようとするが、敵が機動力を生かし狙いをつけさせない。
「くそぉ!!」
加護は右手で狙撃用スコープを払いのける。
「ライフルが・・。」
その隙を突いて一機のザクが高速で迫ると、
ヒートホークを振り上げる。
「あかん!!!」
必死にシールドを用いて防御しようとした。
加護の機体に衝撃が走る。
- 55 名前:ま〜 投稿日:2001年09月23日(日)00時42分58秒
- 『やられた!?』
そう思った加護だったが、正面のモニターを見て驚いた。
正面のザクの頭部に折れ曲がったスナイパーライフルが激突している。
そのライフルの手元を視線で追うと、
辻のGMスナイパーが、剣道の『面』のように、ライフルを叩きつけていた。
「あいちゃん。だいじょうぶれすか?てへてへ。」
加護のコクピットのサブスクリーンに、
照れ笑いしている辻が写っている。
「あんがと・・。のの・・、って!ライフル壊しとるやん!!」
「ライフルより、あいちゃんのほうがだいじれす。」
「・・・。あんがと・・。」
辻の咄嗟の機転により、頭部を破壊されたザクが
火花を散らしながら彼女達から遠ざかっていく。
- 56 名前:ま〜 投稿日:2001年09月23日(日)00時43分41秒
- 動きの止まった二人を見て、一機のリックドムが
ヒートサーベルを振りかざし迫る。
辻は、そのリックドムのヒートサーベルを持った右腕ごと、
シールドで跳ね返すと、サーベルを抜き取り、
リックドムの胴体を切断する。巨大な閃光が走り、爆発する。
この時の辻の動きは、寸分の無駄も無い動きだった。
「のの・・。あんたいつの間にそんなに上手く・・。」
「ののは、にゅーたいぷれすから。てへてへ。」
「はぁ?!」
「もう武器が、サーベルしかなくなってしまったのれす。」
「それは困ったな・・。あれ使うのは、どうや?」
加護が指差したのは、破壊されたGMの右手に残っているビームスプレーガン。
「あれれすか?いいれすね。」
辻はそう言うと、自分の機体を破壊されたGMに近づけ、
その右手からビームスプレーガンを取った。
「ごめんなさいれすね・・。もらうのれす。」
- 57 名前:ま〜 投稿日:2001年09月23日(日)00時44分23秒
- 本来中距離支援用のMSであるGMスナイパーを援護するために、
石川と吉澤は、辻と加護の護衛を任されていた。
しかしながら、彼女達も自分達を守るのに精一杯だった。
「よっすぃ〜!!そっち行ったよ!!」
「分かってるって!!」
石川の甲高い声に、少しばかり苛ついたように返事をする吉澤。
彼女は、マシンガンを連射しつつ突っ込んでくるザクを
シールドで防御しつつかわすと、すれ違いざまにロックオンし、
ライフルを放つ。
「落ちろって!!」
ビームが命中したザクが、大爆発を起こす。
「ふぅ〜・・。」
一方の石川は、リックドムに襲われている。
半ば逃げ回っている状態の石川に、業を煮やしたのか
一機のリックドムが、ジャイアントバズーカを放り出し
ヒートサーベルを抜き放つと、石川に迫る。
「きゃぁぁ〜〜!!」
その音自体が、超音波の兵器になるのではないかと思われるほどに
甲高い悲鳴を上げつつ、シールドでサーベルを弾き返す。
「このっ!このっ!!」
石川が左の操縦桿の親指部分にあるトリガーを押すと
頭部にある60mmバルカンが唸りを上げて、リックドムの頭部を破壊する。
- 58 名前:ま〜 投稿日:2001年09月23日(日)00時45分03秒
- 「はぁはぁ・・。」
肩で息をする石川。
数度の実戦で、確実に彼女達の実力は上がっていた。
「よっすぃ〜。あいぼんたちは?」
少しばかり加護と辻と離れてしまった石川は
二人を心配して吉澤に話し掛ける。
「ちょっとまって・・。いたいた!!」
本来なら彼女達は二人を護衛しなければならないのだが、
いくら彼女達の腕前が確実に上昇しつつあっても、
編隊戦闘には未だなれていない。
「のの!あいぼん!!」
二人を見つけることが出来た吉澤が
石川を引き連れて合流する。
「大丈夫?二人共?」
心配した石川が二人に声をかける。
「大丈夫屋で〜。」
「だいじょうぶれす。」
気丈にも、二人は笑顔で返事をする。
護衛をないがしろにされたにもかかわらず、二人は笑顔だ。
「お〜い!!集結や!!」
中澤からの合流命令が掛かったのは丁度その時だった。
- 59 名前:ま〜 投稿日:2001年09月23日(日)00時46分12秒
- >>52 名無しさん
レスありがとうございます。
カリウスは・・。どうでしょう?
多分一緒でしょう。藁
- 60 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月23日(日)01時38分54秒
- ケリィもいるんですよね〜?
- 61 名前:ま〜 投稿日:2001年09月25日(火)22時32分10秒
- 「よっしゃ。みんな揃ったな?怪我とかしてる奴はおらんね?」
「は〜い。」
「おっけーです。」
中澤達は敵の第一線からやや後退して、
戦力の再編を図るつもりもあり、一旦全員に集合をかけた。
「あれ?辻?どうしたの?それ。」
辻の教育係でもあった飯田が、
辻の機体を見て、彼女がスナイパーライフルではなく、
ビームスプレーガンを持っていることに気づいた。
「なくしてしまったのれす。てへてへ。」
「だめだよ!辻!武器無くしちゃ!」
ニコニコしている辻に、事情も知らずに飯田が叱っている。
「のの・・!それは!」
加護が、辻がライフルを無くした事情を話そうと
二人の会話に入り込もうとした。
「あいちゃん。いいのれす。」
辻が加護の言葉を遮る。
「のの・・・。」
「そのかわり、あとで、やきそばおごってもらうれす。」
「・・・。」
- 62 名前:ま〜 投稿日:2001年09月25日(火)22時32分49秒
- 「さて。みんなOKやな。そんならもう一度突っ込むで!」
中澤がそう言った時だった。
上方から、数機のGMコマンドが高速で戦場に突っ込んで来た。
肩やシールドに存在する、数多くの撃墜マークが
そのパイロット達の歴戦を物語っている。
彼らのうち、4機編隊の一部隊が正確な射撃でライフルの一斉射撃をすると、
一気に散開して、敵のMS集団を包囲する。
隊長機と思われるGMコマンドが、1機で敵の注意を引き付けると
列機が回り込んで上方からライフルを放つ。
正確無比な射撃が、敵機を破壊した。
さらに襲ってくる敵機を横旋回に引き込んでから後ろを取ると
再びライフルが閃光を放ち、敵機が炎に包まれる。
この小隊の後方からやってきたGMコマンドの小隊も
最初にやってきた小隊程では無いが、
練度が高く、次々と敵機を破壊する。
「なんや・・。あいつら・・。味方にもあんな上手い奴おったんか・・。」
彼らの戦闘を見ながら、思わず中澤がうめき声をあげた。
「よっしゃ!うちらも行くで!!」
- 63 名前:ま〜 投稿日:2001年09月25日(火)22時33分40秒
- 保田のライフルが一閃する度に、敵機が破片を振りまいて爆発する。
矢口のサーベルが敵機を切断する。
安倍と飯田のペアも、上手く連携を取って、敵機を追い詰め
1機づつ、確実に破壊していく。
中澤と後藤も、主に中澤が敵を引き付け、後藤がそれらを狙い打つ。
つい先日まで、ひよっこパイロットだった石川、吉澤、辻、加護も
今ではベテランパイロットのごとく、敵と渡り合っている。
いつしか、彼女達は、味方のベテランパイロット達と連携を取りつつ、
敵機を確実に仕留めて行った。
約10分後、敵の第一線の防御ラインに存在していた敵MS部隊は
その大半が撃破されていた。
おそらく半数以上が彼女達、及び、
あのベテランパイロット軍団の手によって撃墜されたであろう。
流石の中澤たちでも、これだけ多くの敵MSを相手にするのは厳しかった。
しかしながら、あの味方ベテランパイロット達のお陰で
彼女達の負担は、かなり軽減することが出来た。
- 64 名前:ま〜 投稿日:2001年09月25日(火)22時35分19秒
- 結局彼女達は、味方部隊と別れて、単独行動を取ることにした。
大量のGM集団と行動を共にするのも良いのだが、
それでは彼女達の腕前を発揮できない。
どちらかと言えば、混戦よりも、一撃離脱や
遊撃戦を展開した方が、彼女達も戦い易く、
なによりも、経験の少ない吉澤達をサポートできる。
「裕ちゃん。まだ怒ってるの?」
「ん?」
「さっきの事・・。」
中澤は不機嫌だった。
先ほどの味方ベテランパイロット達と、通信を開いた。
彼らは『自称:不死身の第4小隊』と名乗っており、
確かに腕前は良いのだが、一人だけ女ったらしのパイロットがいたのだ。
後藤や安倍達に「デートしましょう」と執拗に誘ってきた。
それだけだったら良しとしよう。
しかしながら、よりにもよって中澤に「年増には興味ない」と言い切ったのだ。
後藤が止めなかったらば、おそらく中澤のライフルで
彼は蜂の巣になっていたであろう。
- 65 名前:ま〜 投稿日:2001年09月25日(火)22時36分48秒
- それでも彼らの隊長である『バニング中尉』なる人物は
非常に紳士的であったため、中澤は仕方なく彼を許すことにした。
もちろん『女ったらし』の彼は、中澤の階級を知らなかったため、
後ほど知って、平身低頭であったが。
しかし、後から来た味方パイロットの『カレント中尉』と名乗った人は
紳士的な彼を『すけべジジイ』と言っていたが。
「何に怒ってるの?」
再び後藤が問いただす。
「別に怒っとらんよ。」
「年増って言われたから?」
「ちゃうわ!」
未だもって不機嫌な中澤。
彼女達から、さほど離れていない宙域でビームやミサイルが飛び交っているのだが、
中澤はそんなこと気にも止めていないらしい。
「わかった〜!あたしがデートに誘われたから妬いてるんだぁ!」
「・・・。」
「図星だぁ〜!」
「うっさい・・。」
「あのさぁ〜・・。二人の仲が良いのは認めるけど、ここ、戦場なんだけど・・。」
安倍の指摘は的確だった。
- 66 名前:ま〜 投稿日:2001年09月25日(火)22時37分55秒
- 敵は幾重もの防御陣をMS部隊で作り上げている。
中澤達は、そのすべてと戦うことはせず、
味方の戦況が不利な時は参戦し、
味方が優勢ならば、あえて突入せずに進むこととした。
敵の作戦としては、防御陣で連邦軍のMS部隊を消耗させ、
ソロモン要塞まで引きずり込み、味方の増援等により
一気に殲滅するつもりなのであろう。
それにしてもと、中澤は思う。
攻者3倍の法則と言う物がある。
敵の陣地や基地を攻める時、攻める側は
防御側の3倍の兵力を用意しなければならないと言う法則だ。
にもかかわらず、味方の兵力は敵の3倍あるとは言い難い。
ルナツー基地を出航する時の艦艇数は、
現在ソロモンを攻略している兵力の倍ほどあった筈なのだが。
中澤が以前に保田が感じたものと同様の疑問を感じた時だった。
「あ!あれ!なんだべさぁ〜!!」
安倍の絶叫が中澤の鼓膜を刺激した。
- 67 名前:ま〜 投稿日:2001年09月25日(火)22時38分59秒
- モニターが焼付きそうな程の強烈な閃光。
それは太陽がソロモンに投げつけられたような光と熱。
「ソロモンが・・・、焼けてる・・。」
矢口が呆然として唸る。
「これが・・。連邦の作戦だったの・・?」
保田が納得いったように頷く。
「こ、こんなの見たことある・・?」
「無いわ・・。」
後藤が驚いて中澤に話し掛ける。
「どうやって焼いてるの・・・?」
「しらん・・。うちは魚しか焼けん・・。」
付近ではすべてのMSが動揺しているのか、
明らかに動きが鈍っている。
どうやらこの作戦を知らなかったのは中澤達だけではなかったらしい。
それは敵と同等か、むしろ敵以上に味方のMS部隊が動揺していることからも伺える。
「と、とにかく、ソロモンに行くで・・。」
『敵を騙すには、まず味方からってことかい・・。』
命令を出しながら、中澤は胸がムカムカするような感覚を覚えていた。
- 68 名前:ま〜 投稿日:2001年09月25日(火)22時40分19秒
- >>60 名無し読者さん
レスありがとうございます。
>>ケリィもいるんですよね〜?
ごめんなさい。すっかり忘れてました。藁
- 69 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月25日(火)23時14分57秒
- バニング隊長だ!部下はモンシアと…だれだっけ(w?
- 70 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)23時52分10秒
- カレントまで出てきた・・・
な、なんてマニアックな・・・(藁
- 71 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)23時52分11秒
- ベイトとアデルだよ
- 72 名前:トーリス狩り 投稿日:2001年09月26日(水)00時15分16秒
- 楽しみに読ませてもらってます。
全員のキャラを引き立てようとしている姿勢に、尊敬です。
ぶしつけながら・・・
>「しらん・・。うちは魚しか焼けん・・。」
に、意味はあるんですか?
- 73 名前:パク@紹介人 投稿日:2001年09月26日(水)15時29分22秒
- こちらの小説を「小説紹介スレ@青板」に紹介します。
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=blue&thp=1001477095&ls=25
- 74 名前:ま〜 投稿日:2001年09月27日(木)22時57分34秒
- 「平家さん!!そっち行きました!!お願いします!!」
平家のコクピットに松浦の、やや高い声がこだまする。
「わ、わかってる・・って・・!!」
平家が操縦桿を押し込み、ペダルを踏み込む。
シートベルトが、強烈なGにより彼女の体に食い込む。
彼女が発射したビームは、正確にザクを捉え破壊する。
「やっと・・3機目・・。次!!」
ソロモンが猛烈な熱で焼かれつつある頃、平家たちは、
側面から艦隊を襲ってきた敵艦隊を迎え撃っていた。
敵の数は、さほど多くないが、何しろ味方の練度が低い。
第1派として出撃していったMS部隊は、
『比較的』練度が高いだけであって、
ジオンの一般的なパイロットに比べれば
圧倒的に練度が低い。
「しばっちゃん!そっち!!」
平家が怒鳴り声を上げる。
「平家さん・・こっちも・・、手一杯で・・す!!!」
- 75 名前:ま〜 投稿日:2001年09月27日(木)22時58分31秒
- 「左舷!弾幕薄いで!!なにやっとんや!!」
一方ゼティマで指揮を取る寺田も苛立ちを隠せない。
敵の数が少ないのにもかかわらず苦戦をしているからだ。
「主砲!!左舷のムサイ!」
「発射準備完了!」
寺田の命令に、前田が主砲制御室と連絡を取り
主砲の発射準備完了を告げる。
「てっ〜〜!!!」
ゼティマの放った主砲が、さして厚くも無いムサイの装甲板を撃ち抜くと
ムサイの連装主砲が、あらぬ方向に飛んでいく。
次いでゼティマが放ったミサイルが後方両舷にあるエンジンに命中し
大爆発を起こし、消滅する。
「ムサイ、撃沈!」
「よっしゃ!」
寺田が大声をあげた時、艦が大きく振動した。
- 76 名前:ま〜 投稿日:2001年09月27日(木)22時59分31秒
- 「一番砲塔被弾!一番砲塔損傷!」
「第三艦橋大破!!」
次々と寺田の元に被害状況が報告される。
それに対して、てきぱきと工作隊の派遣や、救助隊へ指示を出す。
「くそっ!!」
寺田が悪態をつく。
味方の方が数が多いにもかかわらず、戦況は決して有利ではない。
味方のMS部隊が有機的に連携を取らないために、
平家たちの負担は、すさまじい物になっているだろう。
味方艦艇にも被害が続出し始めている。
特に一隻だけ塗装が異なる旗艦である緑のマゼランが著しく被弾していた。
『ワッケイン・・・。』
「旗艦を守るで!両舷全速!!」
ゼティマとて、決して無傷と言うわけではない。
しかし、寺田としては、ワッケインを助けたかった。
もちろんゼティマの艦橋内の全員が、
寺田とワッケインの関係を知っているために、
あえて反対はしなかった。
- 77 名前:ま〜 投稿日:2001年09月27日(木)23時00分31秒
- 「この・・、混戦・・じゃあ・・!!」
アヤカは長砲身のスナイパーライフルを振り回しながら苛ついていた。
いくら照準をつけても、距離が近すぎたり、味方が照準内に入るため
満足に射撃ができない。
「もお!!!」
近接戦闘が苦手と見たリックドムが迫ってくる。
アヤカは照準を付けたいのだが、彼女の思考を悟っているのか
そのリックドムは、左右上下に微妙には照準をずらす。
「アヤカ!!」
アヤカの危機を悟ったミカが、スナイパーライフルを撃つ。
しかし、大出力のスナイパーライフルは連射が効かない。
迫り来るリックドムが背中に装備しているヒートサーベルを抜き去る。
「このっ!!」
思い切ってアヤカは、ペダルを踏んでバーニアを吹かすと
一気にリックドムに接近し、敵機がヒートサーベルを振り上げた瞬間に
スナイパーライフルを敵の胴体を刺す形で突きたてた。
そしてトリガーを引く。
高出力ビームが一気にリックドムの胴体を溶かして貫通する。
「はぁ・・はぁ・・。」
- 78 名前:ま〜 投稿日:2001年09月27日(木)23時01分13秒
- 「きゃあああああ〜〜!!!」
「松浦!!!!」
一瞬の隙を突いて突っ込んできたリックドムの放ったバズーカが
松浦のシールドを機体の左腕と共に吹き飛ばす。
咄嗟に振り返った平家が、松浦の無事を確認しつつ
ビームライフルを放ち、リックドムを破壊する。
「はぁ・・はぁ・・・。」
肩で息をする平家。
正直、数の有利を生かせていない味方部隊に苛つきつつも
しっかりと自分の役割を果たしている。
「松浦!その損傷なら大丈夫や!とりあえず帰還しな。」
「はい・・・。ごめんなさい・・。」
「平家さん!後ろ!!」
「くっ!!」
振り返りつつ、ビームサーベルを抜き、
すれ違いざまザクに斬り付ける。
「さんくす!村田!!」
ビームライフルを掲げ、村田に合図を送る。
『それにしても・・、裕ちゃんや石川は無事やろうか・・・?』
- 79 名前:ま〜 投稿日:2001年09月27日(木)23時10分13秒
- 皆様、レスありがとうございます。
>>69 名無し読者さん
ベルナルド・モンシア
アルファ・A・ベイト
チャップ・アデル の3人です。
>>70 名無しさん
分かるあなたもマニアック。藁
>>71 名無しさん
>>ベイトとアデルだよ
そうです。ありがとうございます。
>>72 トーリス狩りさん
>>全員のキャラを引き立てようとしている姿勢に、尊敬です。
ありがとうございます。キャラ立てに苦労してます・・。
>「しらん・・。うちは魚しか焼けん・・。」
これはうたばん( ´ Д `)初登場の時の中澤の名セリフ「さかな」を
パクッただけです・・。
http://plaza20.mbn.or.jp/~mamorin101/nakazawa006.jpg
>>73 パク@紹介人さん
いつもお疲れ様です。
ガンダム面白いですよ。暇な時にでも見てください。
- 80 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月30日(日)01時54分40秒
- 更新楽しみに首を長く待ってます。
ゆうごまは・・・らまりません。
- 81 名前:ま〜 投稿日:2001年10月01日(月)00時35分30秒
- 「はくしょん!!」
通信を開いているメンバー全員の鼓膜が強烈に響くような
甲高い音のくしゃみが響く。
「どうしたの?梨華ちゃん?」
風邪でも引いたのかと、心配して吉澤は自分の機体を微妙に動かして
石川の機体に接近する。
こういった細かな機動も、ほんの数週間前の彼女では出来なかった行動だ。
しかし、戦闘や訓練で徐々に体に染み付いてくる腕前。
「ん〜・・。誰かが噂してるのかな〜。」
「こんな戦闘中に?」
「きっと平家さんだぁ〜。」
石川はヘルメットのバイザーを開くと、
ティッシュを取り出して鼻をかむ。
「はぁ・・。」
やれやれと言わんばかりに両手を上げる吉澤。
『まったくのろけちゃって・・。』
無意識のうちに、吉澤は矢口の方を見てしまう。
幸か不幸か、矢口はそんなことに気づかずにいる。
『あはは・・。何やってんのかな・・あたし・・。』
思わず右手のコブシでヘルメットをコツコツ叩く。
- 82 名前:ま〜 投稿日:2001年10月01日(月)00時36分35秒
- 強烈な光と熱にソロモンが焼かれてから、
膠着していた戦況が一気に連邦軍に有利になった。
もちろん連邦軍も少なからず動揺していたが、
ジオン軍の指揮官の中には動揺の余り、
ソロモンに引き返そうとする者が続出した。
そして、その開いた穴に続々と連邦軍が雪崩れ込む。
すでに数個の防御陣を突破してきた彼女だったが、
ソロモンに近付くに連れて、明らかに敵の抵抗が減っていく。
「なんか・・。手応えが無くなって来たべ・・。」
通常ならば、敵の本陣に近付くのに比例して
敵の抵抗が強くなるのが当然だ。
抵抗が全く無いわけではないが、微弱な抵抗。
安倍が疑問の声をあげる。
「なっち。安心しな。あそこにお相手がおるで・・。」
敵の抵抗が減ってきたことに不満げな安倍に
中澤がMSの指を使って指を刺す。
彼女が指差した方向には、味方のGMを破壊しつづける青いMSがいた。
「あ!あいつだべさ!!」
- 83 名前:ま〜 投稿日:2001年10月01日(月)00時37分19秒
- 逃げ散ったMSや、連邦軍の新兵器に驚いてあっさりと後退した
味方MSに見せ付けるかのように、奮闘している青いゲルググと
そのMSを指揮官と仰ぐ、配下のザクやドムが、これでもかと言わんばかりに
連邦軍のGMやボールを破壊する。
「相変わらずすごい腕前だね・・。」
呆れたように保田が呟く。
先ほどの対戦では、自慢の射撃術をことごとくかわされた借りがある。
「裕ちゃん。まさか逃げないよね?」
「なんや。戦いたいんかい?もう連邦軍の勝ちは決まっとるようなもんやで。」
「さっきの借りを返したいからね。」
「よっしゃ!」
中澤がやる気満々で返事をした時、口を挟んだ人物がいた。
「あれと戦うんですか・・?」
「吉澤・・。どうしたん?」
- 84 名前:ま〜 投稿日:2001年10月01日(月)00時38分13秒
- 「だって・・。戦う必要無いじゃないですか・・。もう勝ちなんですし・・。」
吉澤の言うことはもっともだった。
すでにあの光がソロモンを焦がした時、味方の勝ちは決まったような物だ。
戦う必要の無い相手、しかも残敵掃討レベルにもかかわらず、
強敵と戦うのは、無駄に命の危険に晒す事と同じだ。
現に、先ほどあの強敵と戦った時、矢口は命を落しそうになっている。
「よっすぃ〜の言う通りですよ・・。」
甲高い声で、石川が吉澤に追従する。
「あんたらの言うことはもっともや。うちもそう思う・・。」
「じゃあ・・。」
「裕ちゃん!!」
吉澤と保田が、中澤の言葉に全く逆の反応を見せる。
「でもな・・。うちも奴と戦いたい。」
「・・・!!」
「今、あいつを倒して置かないといけないような気がするんや・・。」
「・・・・。」
何も言い返せない吉澤と石川。
「せやから・・。あんたらは下がっとき。辻と加護もや。あんたらには危険すぎる。」
「わかりました・・。」
「決まったら・・、行くで!!」
「おっけ〜!!」
- 85 名前:ま〜 投稿日:2001年10月01日(月)00時39分49秒
- 激戦の宙域に突入する6機のGMコマンド。
彼女達が戦場に突入して来たのを知った敵の一部隊が
突入を阻止しようと、彼女達に向かってくる。
最初に仕掛けたのは、最も張り切っている保田だった。
「もらうよ。」
ただ一言。
正確無比な照準で、彼女のビームライフルから閃光が迸ると、
一直線にリックドムを捕らえる。
「流石だね。圭ちゃん。」
格闘戦には自信があるものの、射撃では保田に一歩譲る矢口が口を開く。
しかしながら、保田も射撃に自信があるだけに、
あっさりと避けた敵MSに対して、並々ならぬ敵愾心を持っている。
もちろんペアを組んでいる矢口も、そのことは重々承知しているため、
今回の戦闘では保田のバックアップをするつもりにしていた。
- 86 名前:ま〜 投稿日:2001年10月01日(月)00時41分19秒
- 「なっちもやるべさ!」
こちらに向かってくるザクの改良型に照準を付けると
操縦桿のトリガーを絞る。
メンバーの中では、保田と並んで射撃が正確だ。
もちろん他のメンバーも、充分に優秀なのだが、
その中でも保田と安倍は、射撃に秀でている。
安倍の放ったビームが正確にザクの頭部を捕らえた。
モノアイのガラスや、パイプ等の部品を撒き散らして
ザクの頭部が吹き飛ぶ。
おそらくモニターが死んだのであろう、そのザクは満足な回避運動が出来なくなる。
そこを他のGMがサーベルを突き立てる。
「あ〜!!なっちが打ち落としたのに〜!!」
戦果を横取りされたのが、よほど気に障ったのか、
コクピットの中で一人大声を張り上げる。
しかしながら、そのGMの幸運もここまでだった。
ザクを斬って油断したのか、
側面から襲い掛かったリックドムのバズーカが直撃して吹き飛んだ。
「あ〜あ・・、言わんこっちゃないべさ・・。」
- 87 名前:ま〜 投稿日:2001年10月01日(月)00時43分04秒
- >>80 名無しさん
レスありがとうございます。
ごまゆうは・・、もうちょっとお待ちください。
今回のごまゆうは少し違った物にする予定です・・。
- 88 名前:ま〜 投稿日:2001年10月02日(火)22時37分17秒
- 「さて・・・。行くよ・・。」
保田は呟きつつ、足元のペダルを一気に踏み込んだ。
バーニアが一旦収縮すると、青白い炎を噴出す。
シートベルトが彼女の肩に食い込んだ。
後方視界用のモニターを見ると、
うしろから援護するために矢口がついてくる。
さらにその上、やや離れた所にに中澤と後藤のペアもいる。
安倍と飯田は間接的に援護するつもりなのか、
彼女から、やや離れた位置で接近する敵MSを威嚇している。
「悪いね。みんな。」
迫り来るザクのマシンガンを、あっさりと避けると
操縦桿のトリガーを絞る。
「あんたはあたしの敵じゃないのよ。」
ザクが大きな閃光を放って爆発する。
さらに返す刀で、ヒートホークを振り上げて迫り来るザクの頭部めがけて
シールドを突き立てる。
火花を散らして頭部が切断されたザクは
宇宙の深遠に落ちていく。
- 89 名前:ま〜 投稿日:2001年10月02日(火)22時38分10秒
- 「圭坊・・、張り切っとるな・・。」
「裕ちゃん!人事じゃないよ!来たよ!ドム!」
のんびりと保田の独断場を観戦していたつもりの中澤のコクピットに
後藤の緊迫した声が響き渡る。
「おう。行くで!ごっちん。」
「うん。」
彼女達に襲い掛かって来たMSはリックドムは、わずかに1機。
中澤は照準を定めると、トリガーを引く。
普通ならば、その1秒後にはそのドムは閃光と共に大爆発をするはずだった。
しかし、そのリックドムは機体を横滑りさせると
彼女が放ったビームを避けつつ、バズーカを放った。
しかも、中澤にではなく、後藤に。
「ごっちん!危ない!」
「えっ!?」
まず戦闘態勢に入ったのは中澤だった。
もちろん中澤が攻撃したリックドムは、中澤に反撃するであろう、
そう勝手に思い込んだ後藤は、完璧に油断していた。
- 90 名前:ま〜 投稿日:2001年10月02日(火)22時40分58秒
- 後藤の目の前に迫るバズーカの弾丸。
その弾丸が確実に大きさを増していく。
外れるのであれば、さほど大きさは変わらず視界から逸れていく。
しかし、大きさを増しているということは、
確実に彼女に真っ直ぐ迫っているということ。
「いやぁ〜〜!!」
後藤は無意識のうちにトリガーを押していた。
それは頭部にあるバルカン砲。
彼女のコクピットに軽い振動が走り、60mm口径の弾丸が連射される。
後藤のGMコマンドから10メートルと離れていなかった距離で弾丸が爆発した。
普通に回避運動に入っていたならば、直撃は避けられなかったであろう。
しかし、後藤は咄嗟の判断で、しかも体が反応したかのように、
『弾丸』を撃ち落としたのだ。
「はぁ・・はぁ・・・。あたし・・・?」
常識では考えられない行動と、その結果に
後藤自身が激しく動揺する。
「ごっちん!!!大丈夫か!?」
「?!」
後藤は中澤の声で我に返った。
- 91 名前:ま〜 投稿日:2001年10月02日(火)22時42分25秒
- 「あんた・・、よくもうちのごっちんに・・!!」
中澤はペダルを踏み込み、バーニアをフルブーストさせる。
左腕に装備しているシールドを、怒りのままに投げ捨てると
腰部背後にあるサーベルを抜き取ってリックドムに切りかかる。
一方のリックドムも激しく動揺している。
間違いなく直撃するであろうと思われた弾丸が
回避されるのでは無く、撃ち落されたのだ。
それでも、その隙は一瞬であり、中澤の攻撃に対応する。
「この〜!!」
中澤が振り下ろしたサーベルに手応えは感じられなかった。
「避けた!?」
そのリックドムは中澤のサーベルを避けただけでなく
サーベルを振り下ろした一瞬の隙を突いて、至近距離でバズーカを放つ。
「くっ!!」
左のペダルを踏み込みつつ、右の操縦桿を限界まで引く。
中澤のGMコマンドは、右半身を軸にして半回転しつつ、弾丸を避ける。
おそらく並みのパイロットであれば、
確実に被弾していたであろう。
彼女はそのまま至近距離でビームライフルを発射する。
しかし、彼女の行動を予期していたかのように
あっさりとビームは真空の空間を抉るだけ。
「こいつ・・・、並のパイロットやあらへん・・。」
- 92 名前:ま〜 投稿日:2001年10月02日(火)22時43分47秒
- 「裕ちゃ〜ん!!」
後藤が中澤を心配して接近する。
しかし、この時の後藤の行動は、明らかに不用意な行動であった。
リックドムは瞬時に方向を変え、ヒートサーベルを抜きつつ後藤に迫った。
「!?」
驚いたのは後藤だった。
彼女も、このリックドムのパイロットが
並みのパイロットでないことは認識していた。
否、していたつもりだった。
リックドムは、槍のように後藤の機体に向かって
ヒートサーベルを突き立ててくる。
「きゃぁ〜!!」
後藤は悲鳴を上げるが、頭脳が反応するよりも早く
彼女の体が、敵に対する対処をしていた。
突き刺すように接近したヒートサーベルを、
彼女のシールドが下方向から弾き飛ばす。
「あれ?」
無意識のうちにした自分の行動に、またもや自分自身驚く。
- 93 名前:ま〜 投稿日:2001年10月02日(火)22時45分25秒
- その直後、リックドムと後藤の機体の間を、ビームが一閃した。
「ごっちん!!」
「裕ちゃん!!」
自分が自信を持って行った攻撃が、あっさりと後藤に、しかも2度も回避された。
それゆえなのか、それとも2対1では、さすがに厳しいと感じたのか、
リックドムはすべてのバーニアを最大出力で噴射すると、
一瞬の後に、彼女達の元から去る。
「あっ!待てや!!」
中澤が退避するリックドムに向かってライフルを連射する。
しかし、そのリックドムは後ろ向きであるにもかかわらず
背後に目が付いているかのように、右に左に回避する。
いつしか、リックドムは射程圏外に去っていた。
「あいつ・・・・。何もんや・・。」
中澤は一人コクピットの中で呟いた。
彼女自身意識していなかったが、
おそらく敵のパイロットも期せずして同様の考えをしていたであろう。
- 94 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月02日(火)23時39分17秒
- 新手のパイロットですね?
ソロモンだとすると、ロバート・ギリアム大佐かな?
- 95 名前:ま〜 投稿日:2001年10月04日(木)00時09分16秒
- その頃、安倍と飯田も、たった1機のリックドムに苦戦していた。
「こいつ・・・!何だべさ!?」
「なっち!そっち行ったよ!!」
彼女達の射撃がことごとく避けられる。
2対1であるにもかかわらず、そのリックドムは
機体の機動性を生かして、一撃離脱を彼女達に繰り返す。
もちろん安直な直線運動ではなく、微妙に機体を左右に横滑りさせることによって、
着実に照準を彼女達に合わせさせない。
「あ・・、当たらないべさ!!」
射撃の腕には自信がある安倍が自分の射撃をことごとく避けらる。
プライドを傷つけられたのか、
安倍は、やや感情的になりつつ、照準も満足に合わせず連射していた。
リックドムは、そんな安倍をあざ笑うかのように、
いとも簡単に回避する。
しかも、照準が完全に合っていない場合は、
それを見透かしたかのように回避運動もとらない。
その行動が、さらに安倍の怒りに火をつける。
「むかつくべさ・・!!」
- 96 名前:ま〜 投稿日:2001年10月04日(木)00時10分37秒
- 「なっち!感情的にならないで!!」
この時、飯田は安倍が感情的なっている分、冷静になっている。
そのため、安倍の動きが普段のようにキレが無いのが良く分かった。
「だって!当たんないべさ!!!!」
飯田との会話に気を取られた一瞬の隙を突いてリックドムが迫る。
飯田は必死にリックドムを追うが、
そのリックドムは外見は普通のリックドムと同様だが、
カスタムタイプなのか、出力が大きく、飯田も容易に接近できないでいた。
「なっち!危ない!!」
「こっち来ないで〜〜!!!」
迫り来るリックドムに対して、必死になってライフルを連射するが
敵は横滑りで回避しながら、確実に安倍に迫る。
「いやぁぁ〜〜!!!」
安倍の悲鳴が響いた瞬間、安倍の機体とリックドムの間を
ビームが一閃した。
「安倍さぁ〜ん!大丈夫ですか!?」
「よっすぃ〜・・。梨華ちゃん達も・・。」
- 97 名前:ま〜 投稿日:2001年10月04日(木)00時11分43秒
- 当初、吉澤達は中澤の言われた通りにこの戦域の主戦場に入らなかった。
それでも、仲間を心配した石川や辻に従って戦域に突入し
メンバーの皆を探していたのだ。
そして彼女達の目に映ったものは、敵に追いつけない飯田と
追い詰められている安倍だった。
瞬時に判断して吉澤はライフルを発射した。
もし、これが数秒遅れていたら、安倍は宇宙の藻屑となっていたであろう。
「安倍さん!大丈夫ですか!!」
接近した吉澤が安倍に声をかける。
「・・・・。」
返事が無い。
「安倍さん!!!」
「・・・・べさ・・・。」
「大丈夫ですか!?」
「悔しい・・・・べさ・・・・・。」
「安倍さん・・・。」
彼女達の横では、思わぬ援軍に一旦後退したリックドムに向かって
辻と加護が、大型のスナイパーライフルを振りかざし、
可能な限りの連射速度で射撃を繰り返していた。
- 98 名前:ま〜 投稿日:2001年10月04日(木)00時13分02秒
- 正直、腕前には自信があった。
それは実力を伴った自信であった。
連邦軍の一般のパイロットが相手であれば、
おそらく10対1でも勝てるであろう、そう思っていた。
事実、彼女はメンバー以外が相手の対戦訓練では無敗であった。
調子に乗っていたのかもしれなかった。
たった1機のリックドム相手に、しかも飯田も一緒にいるにもかかわらず
まったく歯が立たなかったのだ。
しかもそれだけでは無く、危うく死にそうになった。
吉澤達がこの場に駆けつけなければ・・・。
彼女のプライドは大きく傷つけられた。
「悔しいべさ・・・。」
声にならない呟き。
ヘルメットの中を透明な液体が球となって飛ぶ。
安倍の目から、とめどなく液体がゆっくりと飛んでは
バイザーに当たって四散する。
操縦桿を握る手に力が入る。
彼女の耳に吉澤達の声は入らなかった。
安倍にとって、初めての屈辱だった。
- 99 名前:ま〜 投稿日:2001年10月04日(木)00時15分56秒
- >>94 名無しさん
レスありがとうございます。
>>ソロモンだとすると、ロバート・ギリアム大佐かな?
すいません・・。
一応、カリウスとケリーのつもりです・・。
それにしても戦闘描写が長すぎるのかな・・?
なかなか話が進まん。
- 100 名前:ななし 投稿日:2001年10月04日(木)00時20分39秒
- ども、いつもおもしろく読ませてもらっています。
戦闘描写は別にながくないですよ。
ちと気がはやいですが、これが終わって、まだ、余裕があったら、
ぜひルウム戦役編をも書いてほしいですね。
- 101 名前:ま〜 投稿日:2001年10月06日(土)00時03分18秒
- 保田は張り切っていた。
「今度は簡単には避けさせないよ!!」
宿敵である、青いMSに向かって保田は叫ぶ。
「圭ちゃん!!あんまり一人で突っ込むと危ないよ!」
「分かってるって。」
久しぶりに骨のある敵と出会ったためか、
矢口の忠告にも、満足に聞こうとはしない。
保田の照準が1機のザクを捕らえる。
しかし、保田はすぐには射撃しなかった。
ロックオンされたことを悟った敵が回避行動に入ってから射撃する。
その方が効率がいい。
「いただき・・。」
また1機ザクが破壊される。
「まったくもう・・。」
矢口は半ば呆れている。
普段は冷静な保田だが、この時は明らかに調子に乗りすぎていた。
確かに保田の腕前は確かであるが、この時はさすがに危険に感じている。
- 102 名前:ま〜 投稿日:2001年10月06日(土)00時04分15秒
- 「邪魔よ!!」
保田がトリガーを押すと、ライフルからビームが迸る。
その度にザクが、リックドムが破壊される。
保田には青いゲルググしか見えていない。
付近でそのMSを護衛しているMSなど、
彼女にとって、路肩の石以下の存在でしかなかった。
「今度は、さっきのようには行かないよ!」
射程距離に青いゲルググを捕らえた彼女は、
それだけ言い放つと、照準内にゲルググを入れた。
ロックオン。
おそらくゲルググのコクピットでは、敵にロックオンされた警報が
けたたましい音で鳴り響いていたことであろう。
瞬時にゲルググが射線を外そうと、その高機動力を持って回避運動に入る。
「待ってたんだよ!」
保田は確実にゲルググの動きを読んでいた。
理由はわからないが、彼女の直感であった。
わずか1秒にも満たない時間で操縦桿を操ると、
わざと照準をずらしてライフルを放つ。
- 103 名前:ま〜 投稿日:2001年10月06日(土)00時05分15秒
- ゲルググのパイロットは意外な出来事に驚愕していた。
確実に射線を外したはずであるにもかかわらず、
保田の放ったビームが至近距離を通過したからだ。
それでも回避できたのは、このパイロットの腕前が尋常ではなかったからだ。
「やるじゃないの・・。」
コクピット内で彼女は不適な笑みを浮かべる。
保田は完全にこの戦いを楽しんでいた。
本来なら殺し合いである戦闘。
しかし、この時彼女はまるでスポーツでも楽しむかのように
強敵との戦いを楽しんでいる。
その時、保田のレシーバーに悲鳴が響いた。
「圭ちゃん!!!後ろ!!!」
矢口の声だった。
油断していた。
確かに矢口が自分の後ろに控えている。
しかし、彼女達の周囲に存在しているのは、ほとんどが敵。
矢口が敵と戦っている間に、保田が背後から襲われるのは
当然予測できる出来事だった。
- 104 名前:ま〜 投稿日:2001年10月06日(土)00時05分59秒
- 保田は咄嗟に振り向くよりも回避運動に入った方が有効と判断し、
機体を上昇させる。
1秒前まで彼女の機体が存在した空間を
バズーカーの弾丸が通過していった。
「矢口・・ありがと!」
「うん!!」
だてに矢口も保田を援護していたわけではない。
確かに周囲の敵と交戦していたが、
決して保田から注意を逸らすことは無かった。
健気に返事をした矢口ではあったが、
彼女とて楽な戦闘をしているわけではない。
確かに練度は矢口より下のパイロットばかりではあったが
さすがに数が多く、全部を相手するのは一人では辛かった。
『裕ちゃん達・・、何してんだよ・・。』
矢口がそう思った丁度その時だった。
「お〜い!!矢口!圭坊!生きとるか〜!!」
- 105 名前:ま〜 投稿日:2001年10月06日(土)00時06分55秒
- 「裕ちゃん!!みんな!!」
接近する8機の機体。
数こそ多くは無いが、戦力としては味方の数十機に相当する
信頼すべき仲間が接近する。
中澤と後藤は安倍や吉澤達と合流し、保田と矢口と合流することとした。
先ほど彼女達が交戦したようなパイロットが他にもいるならば、
保田と矢口が窮地に立たされる。
ただでさえ、あの青いMSは強敵であるにもかかわらず、
その部下まで精強とあっては、いくら彼女達が練達であっても
少々荷が重いと思われた。
中澤たちの接近を察知した敵MSが
一旦後退して、青いMSを中心に迎撃体制をとる。
「こいつら・・。並みの指揮官やない・・。」
一糸乱れぬ敵部隊の行動に、中澤の勘が警報を鳴らす。
青いMSに執着していた保田であったが、
彼女も周囲が見渡せないパイロットではない。
しぶしぶではあったが、中澤たちに合流する。
対峙する彼女達と、青いMSを中心とした敵MS部隊。
そこに、直径30メートルはあろうかと思われるビームが至近距離を通過した。
- 106 名前:ま〜 投稿日:2001年10月06日(土)00時08分33秒
- >>100 ななしさん
レスありがとうございます。
そう言ってもらえると安心します。
ルウム戦役ですか・・。余裕があったら、ですね。藁
- 107 名前:コリン 投稿日:2001年10月07日(日)01時29分58秒
- もしかして ビグザムですか?
- 108 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月09日(火)01時18分13秒
- ドズル「残ったモビルスーツを戻させろ!ソロモンの水際で敵を殲滅する!
MS隊の編成を急げ! 決戦用リックドム、ザク出撃用意!
ガトル戦闘隊、ミサイルの補給の済んだものから発進させい!
ビグザムの用意はどうか!? 決戦はこれからである!!」
こんな、感じでしたっけ?
さて、中隊はどう戦うんでしょ?
- 109 名前:ま〜 投稿日:2001年10月10日(水)00時07分30秒
- 「な!何やっ!!!」
「何!?」
戦艦のメガ粒子砲をはるかに上回る閃光。
それが彼女達から、さほど離れていない宙域を通過していく。
その閃光に巻き込まれた味方のGM部隊が、強烈な熱に溶かされていった。
ビームが迸った方向。そちらに敵味方問わず、全員の視線が集中する。
そこに存在した物は、彼女達が今までに見たことが無いような物体が存在した。
濃緑色に統一された塗料。
大きなボールを潰したような本体。
何よりも、その巨大な二本足が一種異様な雰囲気をかもし出す。
そしてその先端には、凶暴な生物のような爪が存在していた。
「で・・、でかっ!!!」
「何ですか・・。あれ・・・?」
矢口や石川が次々に悲鳴をあげる。
- 110 名前:ま〜 投稿日:2001年10月10日(水)00時08分35秒
- もはや彼女達も青いMSに構っている場合ではなかった。
圧倒的な火力。
迫り来るビームの嵐を次々と跳ね返す。
「ありゃ、一筋縄では行かんな・・・。」
あっけに取られているのは彼女達だけではない。
青いゲルググが指揮しているMS部隊にも動揺が走る。
おそらく重要機密兵器であったのだろう。
ジオン軍の一般のパイロットも、その巨大な物体の登場に
明らかに動揺している。
「あれと・・、戦うんですか・・?」
石川が、うめき声をあげる。
ビームをも跳ね返す装甲を持っている巨大な物体を
数機のGMで相手をするのは分が悪い。
「接近戦で、何とかならんかな・・・。」
中澤が思考を巡らし、戦う方法を考える。
その時、緑の巨大な機動兵器から、明るい白光信号が打ち上げられた。
- 111 名前:ま〜 投稿日:2001年10月10日(水)00時09分18秒
- 「裕ちゃん!!あれ、ジオンの撤退信号だよ!」
巨大な機動兵器から打ち上げられた、
一際大きな花火のような信号弾を見詰めながら、
飯田が怒鳴り声を上げる。
「ってことは、連邦軍の勝ちやな!!」
「勝った・・。」
中澤の歓声に、吉澤達が安堵の声をあげる。
しかしその声は矢口の怒声にかき消された。
「裕ちゃん!!青いの!来るよ!!!」
撤退の信号弾に、我に返ったのか、
敵MSの集団が、青いゲルググを先頭にして
猛スピードで中澤たちに襲い掛かる。
「みんな!!散開!!ペアごとに離れるんや無いで!お互い支援するように!」
迫り来る敵MSの集団の前に立ちはだかるように中澤が先頭に立つと
敵の集中砲火を避けるべく、全員が距離を取る。
- 112 名前:ま〜 投稿日:2001年10月10日(水)00時10分08秒
- 残弾をすべて撃ち尽くすつもりなのか、
猛烈な射撃を遠距離から加えてくる。
さすがの彼女達も、これだけの強烈な射撃を体験したことは無かった。
ザクのマシンガンの弾丸が、リックドムのバズーカの弾丸が、
ゲルググのライフルから発射されたビームが
彼女達に襲い掛かる。
バズーカの弾丸が吉澤の機体のシールドを弾き飛ばす。
ゲルググのビームが加護のスナイパーライフルを叩き落す。
ザクのマシンガンが容赦なく石川のシールドを焦がす。
先ほどのゲルググとの戦闘でシールドを失っている矢口は
持ち前のすばしっこさでひたすら回避する。
「やばいで・・・。このままじゃ・・。」
しかしながら中澤の心配は杞憂に終わった。
彼らがこれだけの射撃を彼女達に浴びせれば、
弾丸を撃ち尽くすまで、さほどの時間は掛からない。
敵のMSは、撃てるだけの弾丸を消費すると、
一気に身を翻し、撤退していった。
おそらく彼女達に追撃する間を与えないためだったのだろう。
「ええ引き際やな・・・。」
- 113 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月10日(水)00時11分11秒
- 一瞬ではあったが、敵のMS部隊は彼女達を圧倒した。
にもかかわらず、撤退していった。
並みの、ただ強いだけの司令官であったならば、
おそらくそのまま勝ちに乗じて彼女達を殲滅できたであろうが、
残った連邦軍に全滅されられていたであろう。
自分が敵を圧倒している時に撤退する判断が出来るのは、
正確な判断を出来る司令官だからだ。
「ただの上手いパイロットやなさそうやな・・・。」
中澤は敵のMSパイロットが、優秀なパイロットであるだけではなく、
指揮官としても優秀であることを認識していた。
「今度あった時が、楽しみやな・・。」
「そうだね・・。」
中澤が思わず発した独り言に、保田も思わず答えてしまった。
「それより裕ちゃん。あの緑色の大きいのどうするの?」
「そ!そやった!」
後藤ののんびりした声は、戦場に似合わないものであった。
- 114 名前:ま〜 投稿日:2001年10月10日(水)00時14分12秒
- 皆様、レスありがとうございます
>>107 コリンさん
そうです!ソロモンといえばビグザムです。
>>108 名無しさん
マニアックなレスありがとうございます。藁
娘達は戦いません。
戦ったら史実に反してしまいます・・。
- 115 名前:ま〜 投稿日:2001年10月11日(木)00時07分00秒
- 「でも、中澤さん。ソロモンに行かなくていいんですか?」
石川の甲高い声が、彼女達の間に割って入る。
「あれだけおるんやから、大丈夫やろ?」
中澤が指差した方向には、
すでに残敵掃討のレベルになっている戦闘を繰り返す
味方のGMやボールの部隊が、数え切れないほど
ソロモンに辿り着きつつあった。
「そうですね・・。」
「でも、だいぶ緑のでかい奴と離れちゃったよ。」
緑色の機動兵器は、その図体に似合わないほどの機動力で
味方艦隊に接近しつつある。
「追わない訳にはいかんやろ。」
「行きますか。あんまり乗る気はないけど。」
保田の一言が、彼女達の意見を統一した。
- 116 名前:ま〜 投稿日:2001年10月11日(木)00時07分45秒
- 「なんや・・・。やられっぱなしやな・・。」
緑色の機動兵器に接近するのに、
彼女達は並々ならぬ努力をする羽目になった。
距離がだいぶ離れていたために、バーニア全開で追った。
しかしながら、繰り返し行われた戦闘のため、
メンバーの中には、バーニアが故障する者もいたために、
全速での追撃が不可能だった。
それでも追いついた彼女達が見たものは、
緑色の機動兵器が放つ巨大なビームに打ちのめされる
味方艦隊であった。
「艦隊の艦砲射撃が効かないなんて・・。」
吉澤が絶句する。
戦艦のメガ粒子砲が通用しない敵に対して、
彼女達が太刀打ちできるわけは無い。
その時、彼女達の横を猛スピードで通過する物体があった。
「ガ、ガンダム・・・?」
- 117 名前:ま〜 投稿日:2001年10月11日(木)00時08分58秒
- それは味方の白いMSと、それに随行する白い戦闘爆撃機だった。
「たった2機で・・。いくらガンダムでも・・。」
彼女達を追い越して行った2機の物体を見て、飯田がうめいた。
彼女が危惧した通り、対空砲火が白い戦闘爆撃機を捕らえる。
しかしながら、その後に彼女達が見た光景は、壮絶な物だった。
機首側面に被弾した戦闘爆撃機は、
白煙をたなびかせつつ、緑の物体の両足付け根に激突する。
「あっ!!!」
その瞬間を見た石川は、思わず両手で目を覆ってしまった。
それは、自分の命と引き換えに、
味方に攻撃の隙を与える自爆行為に等しかった。
白いMSは、怒り狂ったように、
ビームサーベルで緑色の機動兵器を切りつける。
何度も何度も。
しかしながら、突然白いMSの動きが止まる。
「な?なんや?」
- 118 名前:ま〜 投稿日:2001年10月11日(木)00時09分47秒
- 中澤が疑問の声をあげた時だった。
「頭が・・・。痛い・・・・。」
「ごっちん!?どうしたんや!?」
突如、頭の痛みを訴え始めた後藤に驚いた中澤は、
自分の機体を後藤の機体に寄せる。
「あたまが・・・。痛いの・・。何か・・。」
「どうしたんや!?」
「あの・・。緑色の・・。」
中澤が緑色の機動兵器を見詰めるが、何ら変化は見られない。
相変わらず、呆然としたように、白いMSの動きは止まっているが。
「ごっちん・・。」
中澤がそう言った瞬間だった。
緑色の機動兵器が、巨大な閃光を伴って大爆発をした。
ここが真空の宇宙空間でなければ、
おそらく大音響と、強烈な衝撃波があったであろう。
「ごっちん?!」
「・・・。あれ・・?治った・・・!?」
「どうしたん!?痛くないんか!?」
「うん。もう痛くない・・。なんだったんだろう?」
「ごっちんが分からんのに、うちが分かるわけないやろ。」
「あはは・・。そうだね・・。」
- 119 名前:ま〜 投稿日:2001年10月11日(木)00時10分41秒
- 「結構あっけなかったね・・。」
「まあ、一旦流れが決まれば戦争なんてそんなもんや。」
「そうだね・・。」
中澤は宇宙での大きな戦闘を経験していなかった後藤に
諭すように話す。
もちろん吉澤達も大きな戦闘を経験していなかった為、
彼女達には大きな経験になったであろう。
ソロモン要塞には、次々と連邦軍のMS部隊が到着している。
次第に艦艇も続々とソロモンに辿り着き、
その内部から多くの陸戦隊が上陸し、要塞の制圧に掛かる。
「落したね・・。」
ソロモンは陥落した。
しかし、彼女達にとって辛い戦いは始まったばかりだった。
- 120 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月12日(金)01時17分34秒
- 次はア・バオ・アクーですね?
果たして中澤はNTになれるのでしょうか・・・(藁
- 121 名前:ななし 投稿日:2001年10月13日(土)15時11分09秒
- >>120
えーまだソロモンの亡霊があるべさ
- 122 名前:ま〜 投稿日:2001年10月17日(水)23時47分50秒
- 「ダニエルが帰らない!?」
全員が無事に帰還できたため、自信を少々喪失気味の安倍以外、
意気揚揚とゼティマに帰ってきた彼女達とって、衝撃的な言葉だった。
彼女達が帰還したMSデッキで、先に帰還していた平家たちが項垂れている。
「うちが・・。うちがもっとしっかりしてれば・・・。」
平家の大きな瞳から、涙が球状になって空中を彷徨う。
「平家さんの責任じゃありません・・。あたし達が・・。」
アヤカも瞳からも塩分を多量に含んだ液体が舞う。
ココナッツ隊は、その名が示す通り、ハワイ出身者で編成された部隊だった。
元々は5人で編成されていたのだが、戦死者が出たり、新たに隊員が入ったりで
現在は4人の小隊であった。
その中でも、ダニエルは小隊結成当初からのメンバー。
レファは途中追加されたパイロットだが、アヤカとミカは
開戦当初から共に死線をくぐり抜けて来た仲である。
そのダニエルが帰らなかった。
「ダニエル・・。」
- 123 名前:ま〜 投稿日:2001年10月17日(水)23時49分19秒
- 「みっちゃん・・。みっちゃんが自分を責めること無いで。」
「裕ちゃん・・?」
落ち込む平家の肩に、中澤の手が乗る。
「ありきたりの言い方やけど、悪いのは戦争や。」
「そんな簡単や無い・・。」
この部隊が編成されるまで、平家は一小隊長であった。
そのため、これまで彼女が率いてきたパイロットは、さほど多くない。
中隊レベルの部隊を率いたのは初めてだった。
確かに宇宙に出てすぐの遭遇戦で、彼女は初めて中隊の指揮を取った。
しかしながら、あくまでもその戦闘は局地レベルの戦いであり、
戦局に大きな影響を及ぼす物ではない。
だが、今回の戦いは連邦軍とジオン軍の運命を決めるべき一戦であり
そういった大きな戦いの中で、彼女の指揮能力は試される。
にもかかわらず、彼女は部下を失った。
「みっちゃん。部下を失ったことがあるのは、みっちゃんだけやないで。」
そう言いつつ立ち去る中澤の背中を見詰める平家。
「裕ちゃん・・。」
『ダニエル・・。短い間やったけど楽しかったで。
うちもいつの日かそっちに行くからな・・。』
MSデッキの窓から見える漆黒の闇に向かって、一人佇む中澤だった。
- 124 名前:ま〜 投稿日:2001年10月17日(水)23時49分59秒
- 「ほんまに・・。ダニエルさん帰ってこーへんの・・?」
「ダニエルさん・・。」
平家達と同様にショックを受けていたのは辻と加護だった。
まださほど実戦を経験していない彼女達にとって、
共に戦った仲間を失ったのは初めてだったからだ。
確かに彼女達の目の前で多くの味方が散っていった。
しかしながら、宇宙でMSごと散っていくパイロットは、
彼女達から見れば、実感が湧かない。
MSと言う装甲は、人の命を守るだけではなく、
人の死の実感を隠す格好の防御壁だったのかもしれない。
「ダニエルさん・・。」
彼女達は、出撃する前にダニエルと喧嘩していたことを思い出していた。
例え出撃直前に仲直りが出来たかもしれないが、
それでも喧嘩していた仲間が帰ってこないという出来事は
彼女達に多大な不快感を与えていた。
彼女達にとって、初めての実感できる人の死だった。
- 125 名前:ま〜 投稿日:2001年10月17日(水)23時50分43秒
- 「なっち・・?」
飯田は一人MSデッキの端にある窓の部分で、
俯いた雰囲気で外を見ている安倍を見つけた。
「どうしたの?なっち・・?」
「ん・・・。何でもない・・。」
安倍は気丈にも飯田のほうに振り向くと、笑顔を見せた。
「ダニエルのこと?それともさっきの事?」
「ダニエルのこともそうなんだけどね・・。」
「そうか・・。」
飯田は窓から外を見ている安倍の隣に行くと、窓の外を見た。
彼女の長い髪が、無重力の中、慣性の法則に従って大きく揺れる。
その髪をうっとおしそうに掻き揚げながら、誰に言うと無く口を開いた。
「ダニエルもそうなんだけど、戦争なんだよね・・。」
「・・?」
安倍が怪訝そうな表情で、彼女より背の高い飯田を見上げる。
「カオリね・・、あんまり気にしないことにしたの。
もちろんダニエルの事は悲しいよ。でもね・・。」
飯田はそこで一旦口を閉じた。
「圭織・・。」
- 126 名前:ま〜 投稿日:2001年10月17日(水)23時51分31秒
- 「人はいつか死ぬよね?」
飯田は教師が自分の生徒に尋ねるように安倍に問いただす。
安倍は無言で首を縦に振る。
「カオリやなっちがしてきた様に、いつかあたし達も落されるかもしれない。
上手いパイロットは他にもいっぱいいると思うの。
だから、いつかはカオリも戦死するかもしれない。
だからカオリ、もう悩むのは止めたの。カオリもいつか・・・・。」
「そんな事言わないでよ!!!」
突然の安倍の怒声に、一瞬MSデッキが静かになり、全員の注目を浴びてしまった。
「ごめん・・。」
「だから・・、あんまり悩まないで。」
「うん・・。でも・・・、死なないでね。」
「あははは!カオリは簡単に死なないよ!」
「そうだね・・!死ぬ時は一緒ね。」
「腐れ縁だからね!」
安倍と飯田は、向かい合うとニコリと笑った。
- 127 名前:ま〜 投稿日:2001年10月17日(水)23時52分28秒
- 安倍と飯田は誕生日が二日違いで、しかも同じ病院で産まれた。
かつて日本と呼ばれた国の、北海道・室蘭市で彼女達は生を受けた。
もちろんの事、彼女達がお互いのことを認識できるはずは無く、
出身が同じであった事を双方が知ったのは、
共に戦い始めてからしばらくたってからの事。
同い年であり、しかも同じ女性。
未だもって男性が上位に位置する軍隊の中にあって、
同年齢で同性でパイロットとあれば、ライバル心が湧かない理由は無い。
同じ部隊に配属されたこともあり、当時はよくぶつかり合った。
どちらが多くの敵を倒したか競い合った。
しばしば行き過ぎた競争心は中澤や石黒に諌められてはいたが。
それでも多くの戦いを経験することにより、彼女達は成長した。
体だけでなく、心も。
いまは掛け替えの無い仲間として、お互いを信頼しあっている。
「圭織・・。ありがとね・・。もう誰も失いたくないよ・・・。」
「あはは。いいって・・・。」
安倍は飯田にもたれかかった。
離れた位置から中澤が二人を頼もしそうに見ていた。
- 128 名前:ま〜 投稿日:2001年10月17日(水)23時54分05秒
- 皆様、レスありがとうございます。
>>120 名無しさん
中澤はどうでしょうね・・・。ふっふっふっ・・・。藁
>>121 ななしさん
そうですね。
まだソロモンの悪夢は登場の予定です。
- 129 名前:ななしの一読 投稿日:2001年10月21日(日)01時51分25秒
- >>128
いやいや、悪夢はガトーでんがな、亡霊とはララァのことだす
連邦では、ラ、ラ、の声とともにおそってくる不思議な攻撃の
ことをソロモンの亡霊といっていたのですよ
- 130 名前:ま〜 投稿日:2001年10月21日(日)20時46分04秒
- 「敵機来襲!敵機来襲!迎撃用意!!」
ソロモン要塞を攻略してから3日が経つが、連日敵襲があった。
多い日は一日に4〜5回にも上る。
その度に要塞全体に警報が鳴り響き、彼女達の鼓膜を刺激する。
ゼティマは次なる戦いに備えて、艦体の整備と燃料補給及び、
修理の為にソロモンのドックに入港していた。
しかしながら、まだ占領して間もなく、駐留すべきMS部隊が不足しているために
中澤たちの部隊も、艦載機であるにもかかわらず、
基地の部隊と共に迎撃に駆り出される。
彼女達の腕前を他のパイロットと比べると、練度が抜きん出ているため
効率よく迎撃するために、彼女達は連日出撃の命令が下っていた。
「また迎撃だよ・・・。」
ゼティマの入港しているデッキの近くにあるMSデッキで
彼女達のMSが出撃準備に掛かる。
自分のMSに向かって走りながら矢口がぼやいた。
「文句言わないの。それだけあたしたちの腕前が認められてるってことでしょ。」
矢口と平行して自分のMSに向かって駆ける保田が
矢口のぼやきに対して口を開く。
- 131 名前:ま〜 投稿日:2001年10月21日(日)20時46分56秒
- 巨大質量を有するソロモン要塞であるために、
微弱ではあるが重力が存在する。
しかしながら、それは月や地球とは比べ物にならない。
そのために彼女達は磁力を用いた靴を使っている。
その磁力を払って保田が大きくジャンプすると、
彼女の体は無重力の中を突き進み、コクピットまで辿り着く。
彼女が横を見ると、中澤たちも自分の機体のコクピットまでジャンプしている。
保田がコクピットまで辿り着くと、すでに整備員が
機体に火を入れて彼女を待ち受けていた。
「どうぞ、整備は完璧ですよ。」
「ありがとね。」
保田はその整備員に向かって親指を立てて、礼の代わりに微笑む。
「頼みますよ!」
「分かってるって!」
「Good luck!」
彼も親指を立てて保田に向かってニヤリと笑と、
コクピットのハッチから離れた。
「アストナージさん、いつも悪いね・・。行くよ!」
保田は彼に礼を言うと、コクピットのハッチを閉じた。
- 132 名前:ま〜 投稿日:2001年10月21日(日)20時47分53秒
- すでに中澤と後藤のペアが発進しており、保田の前方では
飯田と安倍の機体がカタパルトに載って射出されるところだった。
「矢口!おーけー?」
「うん!いつでもオッケーだよ!」
保田のコクピットのモニターに写る矢口が
ノーマルスーツのバイザー越しに微笑む。
「保田!行きます!」
「矢口!行くよ!」
彼女達に猛烈なGがかかり、宇宙空間に彼女達の機体を打ち出した。
「こんな戦い・・、いつまで続くのかな・・。」
「もうすぐ終わるよ。だから頑張ろうよ。」
「矢口はいつも前向きだね。」
「それが取り柄だって!きゃはははは!」
矢口の幾分か甲高い笑い声が保田の鼓膜を刺激する。
後ろでは吉澤や加護たちがカタパルトから打ち出されていた。
- 133 名前:ま〜 投稿日:2001年10月21日(日)20時48分41秒
- 「なあごっちん。」
「なぁに?裕ちゃん?」
中澤がサブモニターに写る後藤に向かって語りかける。
「最近噂になっとるんやけど、ララって声、聞いたことある?」
「うん。昨日も聞いたよ。一昨日も聞いたけど・・。」
「何なんやろうね?」
「う〜ん・・。分かんないけど、頭に響く感じ。」
「ふ〜ん。」
「でもあれ聞くと、頭が痛くなるんだよね〜。」
後藤が自分のヘルメットを右手でコンコンと叩いた。
「あの音を聞くと、どっからとも無くビームが飛んでくるらしいで。」
「そうみたいだね。」
「味方はあれでだいぶやられてるみたいやで。」
中澤は後藤と会話をしながら、徐々にスピードを落した。
背後から来る飯田達と編隊を組むためだ。
周囲を見渡すと、次々と味方のMS部隊がソロモンから出撃してくる。
もちろんのこと、付近に停泊中の味方艦船からも
出撃してくるMS部隊のバーニアの閃光が流星群のように飛び立っていた。
- 134 名前:ま〜 投稿日:2001年10月21日(日)20時49分38秒
- 「みんな!異常は無いな!?」
「おっけー!」
「大丈夫ですよ〜!」
中澤の言葉に敏感にメンバーが反応する。
すでに大きな戦いを経験した吉澤達にも、すでにパイロットとしての
貫禄や度胸がついてきている。
一方、先日の戦闘で、すっかり落ち込んでしまった安倍であったが、
帰還後に飯田の言葉により、今は自信を取り戻している。
それどころか、より一層落ち着き、ベテランの貫禄が増した。
『圭織も成長したな。うちにもしもの事があったら、次のリーダーは圭織かな・・。』
中澤がぼんやり考えていた時、前方の宙域で閃光が走った。
「来た!」
- 135 名前:ま〜 投稿日:2001年10月21日(日)20時50分26秒
- 先行していた味方MS部隊は、すでに戦闘に入っていた。
味方は大半が通常量産型のGMであり、相変わらず新型は少ない。
混戦になっているようだが、落されるのは圧倒的にGMが多い。
ただでさえ、お世辞にも優秀とは言い難い味方パイロットであるが、
比較的優秀なパイロット達は、新型に搭乗している者が多く、
通常型GMパイロットは練度が低く、
性能とパイロットに勝るジオン側のMSが戦闘を有利に展開している。
「相変わらずやな・・。味方は・・。」
味方の不甲斐なさに中澤がぼやく。
「観戦する訳にも行かないでしょ。あれじゃぁ。」
「そやな・・。よっしゃ!突っ込むで!
辻加護は援護!吉澤と石川は二人の護衛や!」
「はい!」
「行くで!」
若い四人を抜かした六人は、ほぼ同時にペダルを踏み込み
バーニアをフルブーストさせて、敵味方が入り乱れている戦場に突入した。
- 136 名前:ま〜 投稿日:2001年10月21日(日)20時51分32秒
- 「あっ!!!あいつ!!!!!」
敵を補足した瞬間、突然保田が大声をあげる。
彼女の目に映ったのは、先日の戦闘で苦戦した『青いゲルググ』であった。
「裕ちゃん!!あいつがいるよ!!」
保田が興奮した声をあげた時には、中澤達もすでに
青いゲルググを補足していた。
「やりたいんか?圭坊?」
「もちろん!!!」
「矢口は?」
「しょうがないよ・・。圭ちゃんだけ行かせる訳にはいかないじゃん。」
保田とペアを組んでいる矢口が、しぶしぶ答える。
「悪いね。いいかな?」
「しょうがないな・・。」
「決まりや。圭坊と矢口は青いのを狙ってや!ごっちん!圭織!なっち!
この間のドムがおるかも知れへん。援護するんや!行くで!」
「おっけ〜!」
彼女達は一斉にバーニアを吹かして敵に突っ込んでいった。
- 137 名前:ま〜 投稿日:2001年10月21日(日)20時53分12秒
- >>129 ななしの一読さん
レスありがとうございます。
ああ、ララァの事でしたか。
もちろんソロモンと言えば「ラ・ラ」ですから。
- 138 名前:名無し読者。 投稿日:2001年10月22日(月)03時18分52秒
- 『圭織も成長したな。うちにもしもの事があったら、次のリーダーは圭織かな・・。』
って部分がちょっと鬱・・・
もしかして・・・
いや・・・作者さーん
- 139 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月22日(月)20時52分01秒
- アストナージって連邦のエンジニアだったの?
てっきりジオン出身かと思ってたよ。
- 140 名前:ま〜 投稿日:2001年10月24日(水)23時52分43秒
- 単なる一撃離脱の攻撃なのか、敵の数は決して多くは無い。
しかしながら敵の指揮官と思しきMSは、あの青いゲルググ。
その統率力と高い練度のパイロットに率いられた、敵MS部隊は
簡単には倒せない連中だと中澤達も充分に理解している。
それでも、先日の戦いで苦渋を舐めさせられたのは忘れることは出来ない。
「もらったよ・・。」
混戦に陥っている戦場での外延部に到達した彼女達だが、
まず口火を切ったのは、保田の射撃だった。
彼女は操縦桿を押し込み、一機のリックドムに狙いを定める。
スクリーンに写された照準が緑色に変わって、
ロックオンを完了したことをパイロットの保田に無言で伝えた。
そして彼女がトリガーを引くと、
黄色く明るい閃光が彼女のビームライフルの先端から迸り
一直線にリックドムを貫通する。
「まず一機・・・。」
- 141 名前:ま〜 投稿日:2001年10月24日(水)23時53分38秒
- ジオン側のMS部隊の大半は、連邦軍のGM部隊に気を取られていたため、
彼女達が戦場に突入してきたことに、まだあまり注意を払ってはいない。
それでも新たな新型の援軍に気づいた一部のMS部隊が、
反撃の為に編隊を組んで、彼女達に向かってくる。
「面白いじゃないの。」
保田が不敵な微笑を見せると、トリガーを引く。
また一機敵機が爆発する。
一方、保田を援護している矢口も負けてはいない。
保田が前方に注意を引き付けられている間に、側面から撃たれたら
保田が窮地に立たされてしまう。
矢口はこの時、完全に自分を捨てて保田をバックアップすることに決めている。
彼女は保田の上方から迫り来る一機のザクに狙いを定めると、トリガーを引いた。
「圭ちゃんばっかり活躍したんじゃ、面白くないからね。」
ザクが閃光を伴って爆発する。
「サンクス!矢口!」
「おう!」
- 142 名前:ま〜 投稿日:2001年10月24日(水)23時54分20秒
- 「ごっちん!右のリックドムを追い込むんや!!」
混戦状態の戦場で、系統だった戦闘が出来るわけはない。
敵も味方も、それに関しては同様であった。
一方の中澤達は、少数であることを利用し、
敵の隊長機に向かって突撃する。
敵の部隊の中で、中澤達の突撃に気づく者は少数であり、
例え気づいたとしても、全速で突入する彼女達を追撃するのは
事実上不可能であった。
彼女達はそれほどの勢いで突っ込んでいく。
先頭は、もちろん保田。
敵の青いゲルググを護衛しているMSは少ない。
しかしながら、おそらくそれを護衛しているMSは、
先日彼女達が苦戦した2機であることは明白であった。
「おっけー!!裕ちゃん!!」
護衛が少ない状態を突かれた2機のリックドムは、やや動揺していた。
そのうちの1機のリックドムを中澤達が追い込む。
戦闘の数を重ねるたびに、中澤と後藤のコミュニケーションは
ほとんど言葉一言で通じるようになっていた。
もちろん、二人の相性にもあったが。
- 143 名前:ま〜 投稿日:2001年10月24日(水)23時55分09秒
- 「今度ばかりは逃がさないからね・・・!!!」
保田がコクピットで不敵な笑みを浮かべる。
彼女は、矢口の事を完璧に信用していた。
開戦以来、彼女は矢口とコンビを組んで絶大な戦果を上げてきた。
そんな矢口に対して、ある意味保田にとって肉親以上の信頼感を持っている。
『後ろは頼んだよ・・。矢口!』
「圭ちゃん、張り切ってるな〜。」
矢口は冷静だ。
ある意味、彼女が保田の運命を握っていると言っても過言ではない。
「おっと・・。」
矢口の正面からザクがマシンガンを連射しながら突っ込んでくる。
彼女はシールドで弾丸を跳ね飛ばし、
ザクに照準を合わせると、ライフルを発射した。
ビームが正確にザクの頭部に命中し、
ガラスと金属片を撒き散らし爆発する。
- 144 名前:ま〜 投稿日:2001年10月24日(水)23時55分57秒
- 一方保田は青いゲルググに狙いを定めるとライフルを連射する。
しかし、当たらない。
「流石に簡単には行かないわね!」
ゲルググは、その高機動性を生かして次々と保田の射撃を回避している。
敵のMSは明らかに彼女達の期待の性能を上回っていた。
「もぉ〜〜!!!!!」
ゲルググも撃たれっぱなしではない。
細長いライフルを保田に向かって構えて、射撃をする。
「くっ!!!やるっ・・!!」
敵の射撃は正確で、一歩油断すれば保田も宇宙の塵となってしまう。
保田は射撃をはぐらかすために、両足でペダルを踏み込むと、
バーニアを全開にさせて一気に上昇した。
その間にもゲルググに照準を合わせ、ライフルを連射する。
壮絶なライフルの撃ちあい。
ある意味、彼女と敵のパイロットは
無駄なエネルギーを消費していると言えなくも無い。
均衡を破ったのは、ゲルググが放ったビームだった。
- 145 名前:ま〜 投稿日:2001年10月24日(水)23時56分39秒
- 「くっ!しまった!!」
貫通力が高い細い高出力ビームが保田に迫る。
もやは、回避は不可能であった。
咄嗟にシールドでカバーした。
そのシールドが粉々に吹き飛び、宇宙に破片を撒き散らした。
「圭ちゃん!!!」
バックアップにまわっていた矢口が大声を張り上げる。
矢口もペダルを踏み込み、スロットルを全開にすると
バーニアを全開にして保田とゲルググの間に割って入ることを試みた。
「矢口!」
突っ込んでくる矢口に気を取られた保田の一瞬の隙を突いたゲルググが
再び保田に向かってライフルを放った。
「きゃぁぁぁ〜!!」
ビームが保田の機体のビームライフルごと右腕を吹き飛ばした。
彼女の機体の目の前でライフルが閃光を伴って爆発する。
「圭ちゃん!!」
- 146 名前:ま〜 投稿日:2001年10月24日(水)23時57分24秒
- 「圭坊!!」
「圭ちゃん!」
一機のリックドムとサーベルを交わらせていた中澤と後藤が
保田の危機を悟って大声を上げる。
「圭ちゃん!!」
リックドムとビームと弾丸の応酬をしていた安倍と飯田も叫び声を上げる。
「圭ちゃんをやらせるわけには行かない!!!!」
矢口が突撃する。
ライフルを連射しつつ突進する矢口。
青いゲルググも矢口に向かってライフルを放つが、
矢口は持ち前の素早さで、次々回避する。
このときの矢口は、保田の危機を悟ったためか、
普段以上に動きにキレがあった。
ビームライフルを投げ出すと、機体の腰の部分にあるサーベルを抜き取り、
青いゲルググに切りかかる。
一方のゲルググも、薙刀状のサービルを抜き取り、
矢口と凄まじい応酬を開始した。
サーベルでの打ち合いは十合以上に上った。
- 147 名前:ま〜 投稿日:2001年10月24日(水)23時58分45秒
- 中澤が、後藤が、飯田が、安倍が、それぞれ相手をしていた敵を振り切って
出しうる限りの最大戦速で保田と矢口に迫る。
「圭織!なっち!!圭坊を助けるんや!ごっちん!うちらは矢口を援護や!」
「おっけ〜!!」
彼女達4機は、それぞれのペアに分かれて、保田と矢口に向かう。
保田は、使用できる機体の左手を用いて、
被弾して損傷している彼女を撃墜しようとする敵機に対して
ビームサーベルを振り回して反撃していた。
しかしながら、遠距離からバズーカやマシンガンを放ってくる敵を
相手するのは、おのずと限界がある。
「やばいよ・・。あたしも・・。」
またも1機のザクがマシンガンを連射しながら迫って来る。
しかし、そのザクは突然横合いから放たれたビームにより爆発した。
「・・・??」
保田がビームが発せられた方向を見る。
「圭ちゃん!!!」
「なっち・・・、圭織・・・。」
- 148 名前:ま〜 投稿日:2001年10月25日(木)00時01分36秒
- 皆様、レスありがとうございます。
>>138 名無し読者さん
その言葉に意味があるか無いかはお楽しみってことで・・。
>>139 名無し読者さん
アストナージさんは、正直思いつきで入れたんで、
本当はどうなのか知りません。藁
- 149 名前:ま〜 投稿日:2001年10月26日(金)00時56分13秒
- 「このっ!!!このっ!!!」
接近戦が得意な矢口が、これほど苦戦した相手は初めてだった。
射撃が得意な保田と互角以上の戦いを演じ、
格闘戦が得意な矢口と互角の戦いを演じる敵。
『こいつ・・・。強すぎる・・・・!!』
矢口はゲルググのサーベルを必死にシールドで防いで、
サーベルで切り返す。
「くそっ!!!!」
次第に状況が不利になっていく矢口。
『まずいよ・・!!』
そこへ、ビームが一閃した。
「矢口!!!」
「やぐっつぁん!!!」
「裕ちゃん・・、ごっちん・・!」
青いゲルググに動揺が走った。
「行くで!!ごっちん!!!」
「うん!」
彼女達の戦局が挽回できたと思った時、突然ソロモン要塞の方向で爆発が起きた。
- 150 名前:ま〜 投稿日:2001年10月26日(金)00時57分00秒
- 「な!なんや!!!」
全員の目がソロモンの方向に集中する。
彼女達が見たものは、付近に敵が見当たらないにもかかわらず、
突如爆沈するサラミス級巡洋艦だった。
「裕ちゃん!!聞こえる!!!あの『ラ・ラ』って声!!!!」
「どうしたんや!?ごっちん!!」
「頭が・・、痛い・・!!!!」
「ごっちん!?」
一瞬、後藤の動きが止まった。
それをゲルググは見逃さなかった。
薙刀状のビームサーベルを振りかざし、後藤の機体に迫る。
「ごっちん!!!!!!」
「頭が・・、痛いよ・・。」
依然として後藤の動きは止まったままだ。
「しまった・・!ごっちん!!!」
ゲルググの、あまりの急激な機動に、中澤や矢口も追いつけなかった。
彼女達の後方では、再び何処からとも無く攻撃を受けたマゼラン級戦艦が
多数の破片を撒き散らし大爆発を起こして消え去っていた。
- 151 名前:ま〜 投稿日:2001年10月26日(金)00時58分35秒
- 後藤の目前まで迫るゲルググ。
一方、原因不明の頭痛に襲われ、全く動きの止まった後藤。
「ごっちん・・・!!」
最早、後藤の戦士は確実と思われたその時、
高出力のビームが、正確に彼女とゲルググの間を通過した。
「ごっち〜〜〜〜ん!!!」
「後藤はん!!」
彼女達の下方から突き上げるように迫り来る4機のMS。
辻と加護がスナイパーライフルを連射する。
吉澤と石川が邪魔な敵機を蹴散らして、2人を援護する。
「助けに来ましたよ〜!!」
中澤達の鼓膜に、戦場に似つかわしくない甲高い声が響き渡った。
- 152 名前:ま〜 投稿日:2001年10月26日(金)00時59分26秒
- 新たな増援の来訪に、ここが引き際と判断したのか、
ゲルググはバーニアを全開にして後方へと下がっていく。
「あっ!!待てや!!」
中澤が叫んだ時は、すでに遅かった。
元々性能がゲルググとGMコマンドでは違いすぎる。
すでに追いつくことは不可能だった。
「またしてもやられた・・。ええ引き際や・・。」
損傷した保田を護衛しつつ、安倍と飯田も中澤の近辺に集まってきた。
吉澤達も集合する。
何時の間にか、敵のMSは付近から消え去っていた。
そんな中、後藤はあまりの頭痛にコクピットの中で喘いでいる。
「頭が・・痛いよ・・。『ラ・ラ』って声が・・・。」
再び閃光が放たれ、今度は輸送艦が白煙を上げていた。
- 153 名前:ま〜 投稿日:2001年10月26日(金)01時00分24秒
- 「またしても・・・、手玉に取られた・・。」
彼女達はソロモンに帰還した。
青いゲルググの部隊と交戦し、全員が無事に帰還できたのは
彼女達の部隊だけであった。
他の部隊は、多かれ少なかれ未帰還のパイロットが出ている。
しかしながら、彼女達は全員が帰還できた。
にもかかわらず、彼女達の雰囲気は通夜の様に暗い。
MSデッキは、待機中であった平家達が哨戒に出ており、閑散としていた。
「ごっちん。頭大丈夫かい?」
「あ・・、裕ちゃん・・。うん。だいぶ良くなったよ。」
中澤が後藤に近寄ると、後藤の頭をワシャワシャなでる。
一方の後藤も、頭をなでられながら、こめかみのあたりに指を当てて
頭痛の余韻を払うために、やや強めに押していた。
「それにしても危なかったで。ごっちん。」
「うん・・。ごめん・・。でも『ララ』って声が聞こえると、
突然ものすごく頭が痛くなるんだよ・・。どうしてだろ・・。」
「そうか?うちには聞こえへんよ。」
「裕ちゃんには聞こえないの?」
「ああ。なんでやろね?」
- 154 名前:ま〜 投稿日:2001年10月26日(金)01時01分35秒
- 「あいちゃ〜ん!!」
「のの!!」
コクピットから辻が飛び降りて、すでに降りていた加護のところに向かってくる。
辻の小さい体を、同様に小さい体の加護が受け止めた。
「のの・・。また太ったんちゃうん?」
「デブっていわないでくらさい!」
「言ってへんよ・・。」
「ところで、『ララ』って声をきいたことはないれすか?」
「ああ、なんか聞こえたような聞こえないような・・。」
「ののはきいたのれす。」
「あれ聞いたら死ぬって噂やで!!」
「ののはしんでないれす。」
「そう言えば、後藤はんも聞いたって言ってたな・・。」
「じゃあ、だいじょうぶれすね。」
「分からんで〜!!呪いや!」
「な!なんれすか!」
加護が辻をからかう様に、笑いながら辻の体をどつく。
一方の辻も加護に対抗してどつく。
しばらくして彼女達は取っ組み合いを始めていた。
- 155 名前:ま〜 投稿日:2001年10月26日(金)01時02分14秒
- 騒がしいメンバー、そうでないメンバー。
喧騒に包まれるMSデッキの中で、保田は自分の機体の目の前に立っていた。
「はぁ〜・・。」
思わずため息をつく。
爆発により吹き飛ばされた彼女の機体の肘から下の部分。
純白の機体表面塗装が、その焦げた部分を嫌でも目立たせる。
一方、左肩に誇らしげに記された、30を超える撃墜マークが、
シールドが吹き飛ばされた衝撃により、ずたずたにされていた。
「このあたしが、遅れをとるなんて・・・・。」
先日の戦闘で安倍が戦闘後に落ち込んでいたのを見て、
正直、保田はそんな彼女を冷ややかに見ていた。
しかしながら、まさか自分がそんな状態に陥るとは思ってもいなかった。
生き残れただけでも奇跡だったのかもしれない。
矢口の援護が無ければ、おそらくあの場所で撃墜されていたであろう。
「戦死ねぇ・・。」
ダニエルが帰ってこなかった時、彼女は確かに悲しかった。
自分が戦死した時、悲しんでくれる人がいるのだろうか?
保田は、右手の指で、機体の脚部をなぞる。
指を見ると、うっすらと塵が付いていた。
- 156 名前:ま〜 投稿日:2001年10月26日(金)01時03分13秒
- 「圭ちゃん!」
「矢口・・。」
突然名前を呼ばれた保田は、驚いて振り向いた。
そこには、命の恩人でもある矢口が微笑んで立っている。
「おいら達、死にそうになっちゃったね!きゃはは!」
何故そんなに明るく振舞えるのか、保田には不思議だった。
仮にも戦死しそうになったのだ。にもかかわらず、矢口は相変わらず明るい。
「なんで・・、そんなに明るいの?」
保田は思わず口に出してしまった。
「ん〜・・?別に。あたし達、いつ死ぬか分からないじゃん。
だからせめて生きてる時は、明るく行こうよ!」
保田も矢口に言われなくても分かっている。
しかし、彼女は明るく出来なかった。
別に理由は無い。決して彼女は暗いわけではない。
それでも保田は少し立ち直ったような気がした。
矢口の言葉を生で聞いて、笑顔を見れた。
生きてる。そんな実感が湧いてきた。
「矢口・・。今は礼を言う気にならないよ・・。」
それだけ言うと、保田は踵を返してデッキから去っていく。
矢口の方を見ずに、背中越しに手を振りながら。
そんな保田を、矢口は笑顔で見送った。
- 157 名前:ま〜 投稿日:2001年10月26日(金)01時04分14秒
- 「矢口さ〜ん!」
突如矢口は背後から抱きつかれた。
「おお!よっすぃ〜〜!!」
矢口より、20cm近く背が高い吉澤を見上げる。
彼女は軽く背伸びをしてからジャンプすると、吉澤の頭をなでる。
「よっすぃ〜。さっきは良くやった!!ごっちんを助けたじゃん!!」
「あはは。ありがとうございます。」
吉澤は少しばかり頬を赤らめて微笑んだ。
「ところで・・。保田さんって、性格悪いんですかね?」
「はぁ?」
突然吉澤が神妙な顔になって話した内容に、
矢口は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
人の悪口など言いそうに無い吉澤が、よりにもよって
保田を批判するようなことを言ったからだ。
「よっすぃ〜。おいらは性格悪い人間とペアを長く組めるほど
人間が出来てないよ。」
少しばかり考えてから、矢口が微笑みながら言った。
「はぁ・・。」
納得いかない表情の吉澤。
- 158 名前:ま〜 投稿日:2001年10月26日(金)01時05分03秒
- 「圭ちゃんはね、不器用なの。」
突如二人の後ろから声がかけられた。
「飯田さん。」
「圭織・・。」
「圭ちゃんは不器用なの。素直じゃないだけなの。」
飯田が身長の高低が激しい二人組みの肩に、それぞれ手を置いて言った。
「良く分かってるじゃないの・・。」
矢口が飯田の顔を見上げながら不敵な笑みを浮かべる。
「カオリはニュータイプだからね!」
飯田はそれだけ言うと、二人の元から去っていった。
「みんな・・。面白いですね・・。」
「でしょ?」
やっと矢口の言いたい事が理解できたらしい吉澤が楽しそうに笑った。
吉澤は次第にこのメンバーが好きになってきた。
たしかに入隊した時は、この部隊に配属されたことを誇りに思った。
しかし、今はこのメンバー達と共に戦えることを誇りに思っている。
素晴らしいメンバー達と生死を共にする。
貴重な体験は、彼女を人間として身も心も成長させていた。
- 159 名前:ま〜 投稿日:2001年10月26日(金)01時06分03秒
- 「よっすぃ〜!あっ!矢口さんも!ここで解散だそうですから、
一緒にお食事行きましょうよぉ〜!!」
デッキに甲高い声が響き渡る。
吉澤は石川の声を聞くたびに、彼女はパイロットよりも、
声優の方が適しているのではないかと思う。
それはおそらく矢口も同じ考えであろう。
しかも『食事』と言う言葉の前に、『お』という言葉を入れるのも、
連邦軍広しと言えども、おそらく彼女だけであろう。
「矢口さん、行きますか?」
「おう!」
「本当、面白いですね。みんな。」
「でしょ?」
「な?何なんですかぁ〜!二人共ニヤニヤして〜!」
石川を見ながら笑う矢口と吉澤を怪訝に思い、
自分の変な噂話でもしていたのかと、思わずネガティブになってしまう石川だった。
「何なんですか〜!!」
「何でもないって!」
- 160 名前:ま〜 投稿日:2001年10月26日(金)01時07分21秒
- そんなメンバーを見て微笑む中澤。
先ほどの飯田を見て、ふと思い出したように彼女は歩き出した。
寺田艦長と会うために。
「裕ちゃん。何処行くの?」
「ああ、何でもない。ちょっと艦長に用があってな。」
「ふぅ〜ん・・。あとで部屋に行っていい?」
「ああ。ええで。」
「うん!じゃあ、また後でね。」
中澤の返答に、にっこり笑う後藤。
そして、彼女の元を去って、ゼティマに向かって歩いていく中澤。
この時後藤には、中澤の背中が普段より小さく見えた。
『あれ?裕ちゃん?何でだろ・・?』
- 161 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月26日(金)23時01分00秒
なんか中澤が・…
寂しい感じっすね。
ごまゆうこの後あるのかな?
- 162 名前:nanasi 投稿日:2001年10月27日(土)00時39分58秒
- 中澤〜!!
何でだ???
ガンダムよく知らないんで・・・
作者さんを待つばかり。(涙
- 163 名前:ま〜 投稿日:2001年10月28日(日)01時03分26秒
- 彼女達がいたMSデッキから、要塞の艦艇用ドックまで
歩いて数分の場所に位置していた。
重力がほとんど無いため、マグネットを用いたブーツで
やや苦労しながら、中澤は整備中のゼティマまで辿り着く。
燃料補給、装甲の補修等、整備員達が大声をあげながら、
ゼティマを整備していく。
そんな整備員が歩いている中澤を見て敬礼する。
中澤も、自分に敬礼する整備員に微笑みながら答礼した。
「艦長。」
「中澤か・・。」
エレベーターや移動用のハンドグリップを用いて、
彼女がゼティマの艦橋に辿り着くまで数分を要した。
艦橋はそれぞれ要員が出航準備に向けて慌しく動き回っている。
そんな中、艦長席に座っている寺田を見つけて、中澤は声をかけた。
「何の用や?」
「ちょっと部隊の編成について相談したいと思いまして・・。」
中澤は寺田に敬礼しながら神妙な面持ちで自分の考えを話し始める。
- 164 名前:ま〜 投稿日:2001年10月28日(日)01時04分41秒
- 「次のリーダーを飯田に?」
寺田が素っ頓狂な声をあげた。
それはそうであろう。依然中澤は健在であり、
その統率力により、よくメンバーも付いて来ている。
彼女のお陰で、ゼティマのMS部隊は多大なる戦果を上げてきた。
その中澤が、まるで指揮官の座を飯田に譲るような事を言い出したのだ。
寺田でなくても、驚いたであろう。
「圭織は、この一年間で、ものすごく成長しました。」
「ああ、それは分かる。俺も伊達に彼女の上官として見て来た訳やない。」
寺田の言葉を聞いて、中澤は安心したように話し始めた。
「うちかて、不死身やありません。もしものために、
次の司令官を圭織に・・、飯田にしたいんです。」
「その考えには異存は無いが・・・。」
寺田が珍しく真面目な表情と声で答えた。
「あくまでも念の為ですよ。」
「じゃあ、もしもおまえと飯田が揃って戦死したらどうする?」
「その時は・・、圭坊をリーダーにしたってください。
あの娘は不器用ですけど、結構しっかりしてますからね。」
「中澤よりか?」
「まあそんなとこです。」
にやりと笑う中澤。
- 165 名前:ま〜 投稿日:2001年10月28日(日)01時05分21秒
- その後、中澤は寺田と今後の打ち合わせを一言二言交わして艦橋を去った。
その会話の中で、次の攻撃目標はア・バオア・クーであること、
しかも数日中に出撃するであろう事など、言葉は少なかったが、
重要な内容を寺田から聞かされた。
「また・・、大きな戦いか・・。」
中澤はゆっくりため息をついた。
これまでも大きな戦いは数多く経験してきた。
開戦当初の戦いに始まり、ルウム戦役やソロモンの戦い。
それらの戦いを初め、小規模の戦いを含めれば数え切れないほどの戦闘。
それもいよいよ終わりに近付いたような気がする。
「裕ちゃん!」
突然中澤は背後から声をかけられて振り向いた。
そこにいたのは出会ってから僅か数週間しか経っていないにもかかわらず、
中澤にとって、ずっと以前から共にいた気がする人物、後藤。
「ごっちん・・。」
「待機が解けたから一緒にご飯にしようよ!」
彼女達は搭乗員待機が解けたために、
後藤は中澤を追ってゼティマまで戻ってきていた。
「待機解けたんか?」
「うん。今、平家さんたちが待機してるから大丈夫だよ〜。
あたしたちはとりあえず自由らしいよ。」
「そっか・・。ほんなら食事行くか?」
「うん!」
- 166 名前:ま〜 投稿日:2001年10月28日(日)01時06分31秒
- 「あ〜、お腹いっぱい!」
後藤が自分の腹部を掌でぽんぽんと叩きながら言った。
本来このソロモン要塞には数多くの軍隊が長期間駐留するために、
多くの娯楽施設が整っている。
しかしながら、連邦軍が占領してからまだ日が浅いために
それらの施設はまだ再開していない。
そのために、彼女達は要塞の中をしばらく探索した挙句の果てに
艦艇用ドックの付近にある士官食堂で夕食を取る羽目になった。
普段の仕官用の食事と大差は無いのだが、
久しぶりにゼティマの食堂以外で食事をしたために、
後藤はいつもより多くの量を食べたのだった。
「ごっちん食べ過ぎやで。」
「ふぅ〜・・。いいのいいの。後藤はまだまだ成長期だから♪」
「ええな〜・・。若いもんは。」
「あはは。裕ちゃんだってまだまだ若いよ。」
「あんがとな〜。」
中澤はそう言いながら後藤の頭をなでる。
後藤は満面の笑みでそれに応じた。
- 167 名前:ま〜 投稿日:2001年10月28日(日)01時07分19秒
- しばらく二人で喋りながら歩いた。
二人きりでデートのように食事して、喋りながら歩くのは
ジャブロー以来であったろう。
限られた空間の艦内では、食事をしても歩いていても、味気ない。
しかし、久しぶりに地に足をつけて歩いた。
後藤は中澤と腕を組みたかったようであったが、
さすがに占領直後の要塞内でそんなことをするわけにも行かず、
中澤が拒んだため、後藤はやや膨れっ面をしていたが・・。
「おじゃましま〜す。」
しばらく歩いてゼティマに戻ってくると、二人は中澤の部屋へ向かった。
部屋の前に着くと、中澤がキーロックナンバーを押す。
扉が静かに開くと、まず後藤が中澤の横を抜けて部屋に入った。
「相変わらず裕ちゃんの部屋はそっけないね〜。」
「うっさい!」
「も〜。ちょっとくらいお洒落すればいいのに・・。そうだ!ちょっと待ってて。」
後藤が思いついたように声をあげると、中澤の部屋から出て行った。
「なんや・・?」
- 168 名前:ま〜 投稿日:2001年10月28日(日)01時08分14秒
- 数分後、後藤が大きなボードとカメラを手に持って入ってきた。
「じゃぁ〜ん!!」
「何それ?」
「コルクボードだよ〜。」
後藤が手に持っていた大きなボードはコクル製のボードであった。
主に写真やメモを画鋲で貼り付けるためのものだが、
現在そういった物を使用する人は少ない。
「どぉ〜?前にジャブローで売ってるの買ってきたんだよ。」
「へ〜・・。」
「なんだよ〜。ちょっとは感動してよ〜。」
「で、それをどうするんや?」
「えへへへ・・。」
後藤はボードを床に置くと、突然中澤の横に立ち、肩を組むと、
カメラを持っている右手を前に差し出し、自分達二人を写した。
「なんや・・。びっくりするな〜。」
中澤が突然炊かれたフラッシュの残像を取り払いたいのか、
しかめっ面をしながら目をこする。
「びっくりした〜?」
そう言いつつも後藤は先ほど写したカメラから
写真がプリントアウトされるのを待っている。
わずか数秒で写真がプリントされてきた。
- 169 名前:ま〜 投稿日:2001年10月28日(日)01時09分18秒
- 「ほら!」
後藤は誇らしげに画鋲を取り出すと、コルクボードに
たった今撮った写真を貼り付ける。
「ん〜・・。」
中澤はその写真が気に入らなかったようだ。
なにしろ目が半分閉じられている。
いかにもありがちな間抜けなショットの写真。
「あはははは!裕ちゃん変だよ〜!!!」
後藤はボードを掛けられるフックを探したのだが、
生憎見つからない。そのために、枕もとの棚に立てかけた。
そして改めて写真を見て、腹を抱えて笑い転げている。
「失礼なやっちゃな・・。ごっちん!!」
「あははは!!ごめんごめん!」
「もおええわ!ほら!ごっちんは先に風呂入ってこいや!」
そう言うと、中澤はベットに座り込みながら後藤の尻を叩いた。
「痛ぁ〜い!酷いな〜、裕ちゃんは〜。」
ぶつくさ言いながら後藤はシャワールームに向かう。
「裕ちゃん一緒に入らないの?」
「狭いからええわ。」
「けち〜!べぇ〜だ!」
後藤は中澤に向かって、あっかんべーをすると、服を脱いで
シャワールームに入った。
- 170 名前:ま〜 投稿日:2001年10月28日(日)01時13分35秒
- 皆様、レスありがとうございます。
>>161 名無し読者さん
一応、今後もごまゆうはあります。
さて、どうなるかは作者のみが知っています。藁
>>162 nanasiさん
ガンダムを知らない人でも楽しめるようにしてるつもりなんですが、
やっぱりマニアックに走ってしまうもんで申し訳ありません・・。
一応元ネタはガンダムですけど、バックグラウンドがガンダムで
ストーリーはオリジナルなんでこれからもお付き合いいただければ幸いです。
さて、中澤は・・・?
- 171 名前:nanasi 投稿日:2001年10月28日(日)03時29分57秒
- なんで急に中澤は、カオリを・・・
何があったのかな?不治の病とか?
- 172 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月28日(日)05時27分14秒
- おもろ!
- 173 名前:ま〜 投稿日:2001年10月28日(日)23時17分10秒
- 中澤は改めてボードに貼り付けられた写真を見る。
「間抜けな顔やな〜・・。」
もう一度写真を見る。
自分の横には満面の笑みの後藤が写っていた。
普段、ぼーっとしている後藤の珍しい満面の笑顔。
自分に対して完全に心を許している証拠なのかもしれない。
そう考えると中澤は少し面白い気持ちになってきた。
初めて出会ってから、僅か数週間。
たったそれだけの間に、これだけの関係になれるとは。
中澤はベットから立ち上がり、冷蔵庫の前に行くと、
缶ビールを一本取り出した。
最後の一本。
今回の出港の前に補充しなければと、中澤は思う。
プシュっと心地よい音と共に、泡があふれてくきた
その泡を中澤は口を近づけて半分ほど一気に飲み干す。
いつもならば、風呂を出た後にビールを飲むのだが、
後藤がシャワーから出てくる時間を持て余して、
思わずビールを口にしてしまった。
「かぁ〜・・。うま。」
もう一度写真に目が行った。
- 174 名前:ま〜 投稿日:2001年10月28日(日)23時17分52秒
- こんな風に誰かと写真を撮るなんて、いつ以来であろうか。
戦争が始まる前ならば、色々遊びで写真を撮ったりした。
しかしこの戦争が始まってからは、そんな余裕はほとんど存在しなかった。
「ふぅ〜・・。」
中澤はベットの横にある机の引出しから、何枚かの写真を取り出す。
そこに写っているのは、平家との2ショットや、
安倍や、今は亡き福田達と撮った写真。
その中でも、平家との写真に最も目が行った。
ボードに写っている後藤のように、満面の笑みの平家。
ほんの1〜2年前なのだが、改めて見ると、もう何十年も前のような気がしてしまう。
「なんか・・・、ものすごく懐かしいな・・。」
平家と肩を組んだ写真。
自分も満面の笑み。
一瞬、この写真もボードに貼ろうかと考えたが、しばらく考えて止めた。
「ごっちんが妬きそうやからな・・。」
そう言うと中澤は出した写真をすべて引き出しの中に戻した。
中澤が引出しを閉めてベットに腰掛けるのと、
後藤がシャワールームから出てくるのは、ほぼ同時だった。
- 175 名前:ま〜 投稿日:2001年10月28日(日)23時18分38秒
- 「ふぅ〜・・。気持ちよかった♪」
後藤はバスタオルで頭を無造作に拭いているのだが、
その分、濡れた体があらわになっている。
「こら!ごっちん!若い女の子がそんな格好するんやない!」
「いいじゃぁ〜ん。裕ちゃんしかいないんだから。」
「そう言う問題やないやろ。」
「え〜・・。本当は見たいくせに〜!」
後藤は頭からバスタオルを離すと体に巻きつけたのだが、
中澤を誘惑するかのように、チラリチラリと
胸のあたりだけバスタオルをめくって中澤に見せる。
「何やってんや・・。そんなもんで誘惑されへんよ。」
「ちぇっ!」
中澤は素っ気無く言いつつ立ち上がると、突然服を脱ぎ始めた。
「・・?」
「何考えとんねん・・。風呂入るんや。」
中澤は笑いながら言うと、後藤の頭を軽くなでてやる。
少々赤らんだ顔でニコニコ笑う後藤。
中澤は後藤のお尻をポンポンと叩くとシャワールームに向かって行った。
- 176 名前:ま〜 投稿日:2001年10月28日(日)23時20分46秒
- 中澤がシャワーを浴びている間、暇を持て余した後藤は
バスタオルを体に巻きつけたまま、ベットに腰掛けた。
ふとテーブルの上を見ると、中澤の飲みかけのビールがある。
「貰っちゃおうかなぁ〜・・。」
半分程度の重みのビール缶を持ち上げ、缶の口の部分に目が行く。
うっすらと付いた中澤の口紅の跡。
後藤はその口紅の跡に、自分の唇を合わせると一気に中身を飲み干した。
「ぷはぁ〜!やっぱりこれだね〜。」
体に巻いていたバスタオルをゆっくりと解くと、軽く体を拭く。
「ふぁ〜・・。アルコール弱いんだよね〜・・。」
幾分か赤みを増した顔でニコニコ笑うと、
裸のままベットに入り込んだ。
「えへへ・・。あたしが裸だったら、裕ちゃんビックリするかな〜・・。」
5分・・・。10分・・。ベットの中で中澤を驚かそうと待っていた後藤であったが、
次第に待ちきれずに、瞼が重くなってくる。
「ふぁ〜・・。裕ちゃん、お風呂遅いな・・・。眠い・・。」
後藤の意識が薄らいでいった。
- 177 名前:ま〜 投稿日:2001年10月28日(日)23時21分24秒
- 「はぁ〜!ええ湯やった!」
中澤も後藤と同様に頭をバスタオルで拭きながらシャワールームから出てくる。
「ごっちん、お待た・・・。」
そこで気づいた。
自分のベットの中で、すーすーと寝息を立てている後藤に。
中澤はバスタオルを体に巻きつけると、
物音を立てないようにベットに近付く。
後藤の幸せそうな寝顔を見て思わず呟いた。
「ごっちんは・・、かわいいな・・。」
到底戦場にいるパイロット、
しかもエース級のパイロットには見えないその寝顔。
ゆっくりと気づかれないように注意しながら後藤の髪をなでる。
「ん〜・・・。」
「ん?ごっちん起きたんか?」
一瞬後藤が動いたが、むにゃむにゃと何かを喋ると
再び寝息を立て始めた。
「ほんま・・。かわいいな・・。」
中澤は後藤の寝顔に心を癒されながら、デスクの上のビール缶を持ち上げた。
そして気づいた。空である事に。
『ごっちん・・、うちのビール飲みやがったな・・。前言撤回!』
- 178 名前:ま〜 投稿日:2001年10月28日(日)23時22分08秒
- 体を拭き終わると、中澤は後藤を起こさないように注意しながら、
ゆっくりと静かにベットに入る。
『なんや?ごっちん、裸やん・・。まあうちもそうやけど。』
そこで中澤は思いついた。
デスクの上に乗っているカメラを取り、
すやすや寝ている後藤の顔の横に、自分の顔を近づけると
二人の顔が入るように、上手く狙いを定めながらシャッターを切った。
後藤の寝息以外は聞こえない静かな部屋の中で
シャッターを切る音と、フラッシュの音が響き渡る。
「ん〜・・・。裕ちゃん・・?」
「あ、ごっちん。起きてもうたか?」
「ん〜・・。」
「ごっちんの寝顔、撮らせてもらったで。」
「ん〜・・。裕ちゃん〜・・。」
寝ぼけて未だ状況が理解できてない後藤。
それでも中澤が隣にいることは理解しているらしく、
名前を呼びながら、抱きついてくる。
- 179 名前:ま〜 投稿日:2001年10月28日(日)23時22分52秒
- 中澤も、そんな後藤の頭を腕枕すると、小さな声で言った。
「ごっちん。可愛いな・・。」
「ん〜・・。ありがとぉ〜。裕ちゃんもね〜・・。」
「ごっちん・・。うちが守ってやるで。」
中澤は後藤を抱きながら微笑みつつ言う。
「ん〜・・。裕ちゃんは、あたしが守ってあげるぅ〜・・。」
一方の後藤は、寝ぼけ眼でありながら、ニコニコしつつ言った。
そんな後藤の言葉を聞いて、思わず強く抱きしめてしまう。
「ん〜・・。裕ちゃん・・・。」
後藤がゆっくりと瞼を閉じると、再び寝息を立て始めた。
後藤を腕枕している方とは逆の手で、先ほどの後藤の寝顔の写真を見詰める。
そして今、自分の腕の中で寝息を立てている顔と見比べた。
完全に心を許しきっている寝顔。そしてその笑顔。
『この子だけは、守ってやりたい・・。命に代えても・・。』
そう思う中澤も、次第に瞼が重くなってくる。
『ごっちん・・。おやすみ・・・。』
- 180 名前:ま〜 投稿日:2001年10月28日(日)23時25分32秒
- レスを下さった皆様、ありがとうございます。
>>171 nanasiさん
さて、中澤の考えは・・・。作者のみが知っています。藁
>>172 名無し読者さん
ありがとうございます。
今後もよろしく・・。
- 181 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
- ( `.∀´)ダメよ
- 182 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
- ( `.∀´)ダメよ
- 183 名前:名無し君 投稿日:2001年10月29日(月)02時28分54秒
- ま〜さん
中澤を助けるのは・・・ムリ・・・(涙
どうなろうと最後まで応援してますよ
- 184 名前:ま〜 投稿日:2001年11月01日(木)00時40分26秒
- 翌朝、中澤をはじめ、ゼティマ所属のパイロット達が集められた。
実際に宇宙空間に朝昼晩など無いのだが、
人間が地球という場所に生息している以上、体内時計が存在する。
そして、地球時間と言う標準時間がある。
それにあわせて宇宙であろうが、コロニーであろうが
地球の時間に合わせて人間は行動している。
もっとも辻が持つ体内時計『腹時計』は常に食事時間を指しているようだが。
がやがやと喋るメンバー達。
特に辻と加護がうるさい。
そんな中、中澤だけは神妙な面持ちをして一番前の座席に座っている。
「裕ちゃん。」
後藤が中澤の隣の椅子に滑り込むように座った。
「なんでみんな集まってんの?」
「ああ、これから艦長が来るんや。」
「艦長が?何しに?」
後藤が怪訝そうな顔で中澤の顔を覗きこむ。
後藤はあまり寺田と会話をしたことは無い。
それどころか、満足に話を聞いたこともなかった。
「何の話だろうね?」
寺田が全員を集めた理由はおおよそ中澤には見当が付いたが、
あえて後藤の質問に答えなかった。
- 185 名前:ま〜 投稿日:2001年11月01日(木)00時41分07秒
- ブリーフィングルームのドアが静かな音を伴って開いた。
まず入室してきたのは艦長の寺田。
彼に続いて副官の戸田少尉も入室してくる。
その場にいたパイロット全員がザッと音を立てて立ち上がった。
「敬礼!」
中澤の号令の下、全員がそろって寺田に向かって敬礼をする。
普段、メンバー達の中では階級の差があっても敬礼することは稀だ。
華々しく戦闘に出撃していくパイロット達ではあるが、
実質はいつ命を落してもおかしくは無い立場にある。
そのため、彼女達だけではなく、一般的にさほど階級に差が無い場合、
もしくは仲間意識が強い場合、特に敬礼をしない。
もっとも彼女達の仲間意識は、他のパイロットに比べて
特別高いようではあるが。
「なおれ。着席。」
寺田が全員に向かって答礼をし、数秒のうちに直ると、
中澤がメンバー達に着席を指示する。
「え〜、皆に集まってもらったのは他でもないんや。」
相変わらず、ざっくばらんな話し方を寺田は好む。
「出港が決まった。出撃や。今日の夜にな。」
寺田の単刀直入な物言いに、驚いているのか、
それともその内容に驚いているのか、全員があっけに取られた表情をしている。
中澤一人を除いて。
- 186 名前:ま〜 投稿日:2001年11月01日(木)00時41分59秒
- 「ど、どこに出撃ですか!?」
素っ頓狂な声で矢口が寺田に問う。
「ア・バオア・クーや。」
「え!?」
全員がさらに驚いた表情を見せる。
なにしろジオンの残された最終防衛拠点とも言える要塞が目標だ。
おそらくその防衛力は尋常ではないだろう。
にもかかわらず、これほどまでに作戦を急いで成功するのか?
全員の頭の中に同様の疑問が湧いてくる。
「早すぎるって言いたそうな顔やな。」
寺田が、全員の顔を見渡し、『やっぱり』と言わんばかりの顔をした。
「そんなに急ぐ必要があるとは思えません。」
手を上げて質問したのは保田だった。
彼女の質問は当然の内容であろう。
しかし、こちらが時間を掛ければ掛けるほど、敵の防御力が増すのは当然だ。
そのため、戦力に余裕があるならば、早く攻撃する方が良い。
そんなことは分かっている。
しかし、先日のソロモン攻略戦でも、ダニエルが戦死している。
そんな中、満足な準備もせずに打って出れば、また誰かが帰ってこないかもしれない。
それだけに保田は慎重だ。
「急ぐ必要があるんや・・。」
- 187 名前:ま〜 投稿日:2001年11月01日(木)00時42分54秒
- 現在、ジオン軍は技術力で勝っているものの、
生産力を初め、国力の大半の面で連邦に劣っている。
それだけではなく、先日はソロモンを失った。士気も落ちている。
ならば今のうちに余勢をかって、一気に攻めたほうが良い。
それが連邦軍首脳部の判断である。
寺田の話の内容は、大まかに言うとそのような物だった。
「それだけやないんや・・。ここからは内密やで。」
寺田が珍しく真剣な顔で話し出す。
それに伴って、メンバー達の表情もこわばってくる。
「ジオンの偉い人・・・何て言ったか・・・。」
寺田がジオンの首脳の名前を忘れたらしく、
横にいた副官の戸田が、その名前を耳打ちする。
「そや!デギン公王や。そのおっさんが密かに連邦に接触を図ってるらしいんや。」
つまり、ジオン側が和平の交渉に乗り出しているという可能性を示唆してた。
「だったら、なおさら攻撃は待ったほうが・・。」
平家がしかめっ面で進言する。
もし和平が成立するならば、それまで待ったほうが、
無駄な命を散らすことは無い。
「だから攻撃に打って出るんや。」
「?」
- 188 名前:ま〜 投稿日:2001年11月01日(木)00時43分54秒
- 「こっちが攻撃せんと分かってしまったら、足元見られるやろ?」
「・・・。」
全員が納得しないような表情で寺田を見詰めている。
この時、説得している寺田自体納得していない事を読み取れたのは
副官の戸田少尉や中澤をはじめ、ほんの数人だったかもしれない。
「とにかく、今夜出港や。うちらだけやない。艦隊まるごとや。」
出発の準備をするようにと、最後にそれだけを言うと、
戸田を伴ってブリーフィングルームから寺田は出て行った。
しばらくの間、全員が呆然とした表情で動けなかった。
それは近々ア・バオア・クーに出撃するであろう事を知っていた中澤も
例外ではなかった。
「裕ちゃん・・・。」
彼女の隣に座っていた後藤が、少しばかり不安そうな顔で中澤の顔を覗きこむ。
最近、あの『ラ・ラ』の声に悩まされているためか、
あまり元気の無い顔をしている。
「・・。大丈夫やって・・。うちがおるやろ。」
そう言うと、中澤は後藤の肩に手を回した。
「えへへ・・。」
後藤の顔に元気な表情が戻ってくる。
- 189 名前:ま〜 投稿日:2001年11月01日(木)00時45分01秒
- 「お〜お〜!熱いべさ!昼真っから!」
「なっち!」
「あ〜あ〜・・。なっちも不安だべさぁ〜!」
そう言うと、安倍は中澤の顔に自分の顔を近づけて、
目をウルウルさせる。
いかにも演技。しかもB級の演技。わざとらしい。
以前、自信を喪失した安倍であったが
今は自信を取り戻し、今は以前の状態に戻っている。
「あ〜、そうですか!」
中澤はそれだけ言うと、安倍の座ったまま安倍の頭を
軽くポンポンと叩くと、『あっち行ってなさい』と言わんばかりに
安倍に向かって手を振る。
「な〜んだ!裕ちゃんのイジワル!」
安倍が頬を膨らましながら飯田達が雑談している方に歩いていく。
もちろん本気で怒ってるわけではないが。
「お昼食べに行こうか?」
「うん。」
思わぬ安倍の乱入で、すこしばかり気まずい雰囲気であったが、
中澤が後藤を昼食に誘うと、笑顔で快諾する。
半日後、
間もなく史上最大の戦いが始まる気配は微塵も無く、
全員がリラックスした雰囲気と少しばかりの不安を伴って艦隊は出港した。
悲劇に向かって。
- 190 名前:ま〜 投稿日:2001年11月01日(木)00時48分33秒
- >>181 >>182
ヽ(`Д´)ノ
( )
/ ヽ
コピペアラシサレタヨ!!
ウワァァァン!!!
>>183 名無し君
レスありがとうございます。
まだもうちょっと続きそうですけど、よろしくおねがいすます。
- 191 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月01日(木)03時04分58秒
おもしろいね
今から少しごまゆうかな?
中澤助からない?
ガンダムしらないからわからないけど楽しみにしてます。
- 192 名前:ななしの一読 投稿日:2001年11月01日(木)13時23分09秒
- あらしがはいった時はどうなることかと思ったが、安心しました。
続きサンクスです。
でも、
>>悲劇に向かって。
これはいやーっ(泣)
- 193 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月01日(木)22時01分10秒
- ガンダム編が終わったら次は0083やZなども
書いてくれるんですか?
結構期待してたりするんですけど…
- 194 名前:コリン 投稿日:2001年11月02日(金)01時18分36秒
- 悲劇に向かって。か・・・
作者さんの作品は、ちょい痛めなのが多いような?
今後の展開期待してます。
- 195 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月03日(土)01時38分53秒
- 死んじゃうの? ゆゆたん、死んじゃうの?? そんなんいやや〜〜〜!
ハアハア すいません、取り乱しました。
- 196 名前:ま〜 投稿日:2001年11月03日(土)01時39分17秒
- 「どうや?最近。またあの『ラ・ラ』って声は聞こえるんかい?」
ソロモンを出港して2日が経過しようとしていた。
ここまで全く敵の抵抗は無い。
しかしながら、そろそろ敵の遊撃部隊や、偵察部隊と遭遇しても
全くおかしくない状況である。
そんな夜、後藤はまたしても中澤の部屋に来ていた。
「う〜ん。最近は聞こえないね。特にソロモンを出てから。」
「そうか・・。そんならええんや。」
中澤はベットの中で自分の腕枕の中にいる後藤に答える。
正直戦闘中に、後藤がまたあの頭痛に悩まされることがあるならば、
戦闘に出すのは危険だと思っている。
つい先日のソロモンでの戦いでも、事実後藤はあわや撃墜されそうになった。
中澤や吉澤達の援護が無ければ、後藤は戦死していたかもしれない。
しかし、後藤の表情からはそんな雰囲気は全く感じられなかった。
『ごっちん・・。ほんま大丈夫やろうな・・。』
中澤は後藤の頭をなでながら不安に思う。
『戦闘に出さん方がええんやろうか・・?』
再びあの頭痛が戦闘中に後藤を襲えば、今度こそ命は無いかもしれない。
- 197 名前:ま〜 投稿日:2001年11月03日(土)01時41分40秒
- 「大丈夫だよ。裕ちゃん♪」
後藤は、中澤の考えが読めるかのように、中澤の瞳を見ながら笑う。
中澤にとって、戦時中の一服の清涼剤とも言える
彼女の微笑み。それだけに中澤はそれを失いたくない。
「ごっちんに死なれると困るからな・・・。」
率直な中澤の言葉だった。
これまで、福田やダニエルをはじめ、多くの仲間を失ってきた。
関係が深い浅いなどは関係ない。
共に死線をくぐり抜けて来た仲間達を一人として失いたくない。
ましてや、現在中澤にとって特別な関係ともいえる後藤はもっての他だ。
おそらく後藤がこの戦争中に戦死するならば、
ほぼ確実に中澤の目の前で戦死することになるだろう。
そんな事は彼女にとって絶えられる事ではない。
「なんで〜?」
そんな中澤の考えを知ってか知らずか、微笑みながら中澤の顔を覗く。
「いや・・。ごっちんは優秀なパイロットやから、
これからも連邦軍の中核として活躍してもらわなあかんやん。」
中澤は後藤のやや長めの髪の毛をいじりながら言った。
- 198 名前:ま〜 投稿日:2001年11月03日(土)01時42分59秒
- 中澤にとって、その言葉は照れ隠し以外の何物でもない。
正直に、後藤が自分にとって必要不可欠な人物と言えばよかったのかもしれない。
しかし、この時中澤は正直に自分の気持ちを言えなかった。
「何それ〜。」
返ってきた後藤の返事は、幾分か不満がかった物だった。
それはそうであろう。
中澤が後藤を気に入っているのは明らかであり、
また、後藤も中澤のことを気に入っている。
そんな事は後藤も重々承知していた。
正直に『後藤が大事』と言ってくればいいのに。後藤はそう思った。
「裕ちゃんにとって後藤が大事だからじゃないの〜?」
「・・・。」
中澤は、この時、後藤がもし戦死したらと言うことを考えてしまっていたためか、
後藤のこの質問に対して、正直に答えられなかった。
「も〜!!」
後藤が頬を膨らまして不満げな表情を見せる。
- 199 名前:ま〜 投稿日:2001年11月03日(土)01時43分57秒
- 「も〜!裕ちゃんなんて知らない!」
はっきりしない中澤の答えに、後藤は機嫌を崩されていた。
今までベットの中で中澤のほうを向いていた後藤の顔が
中澤と反対方向を向いた。
「あ・・。ごめんごっち〜ん!!」
中澤が必死に後藤の機嫌を直すために、後藤をなだめる。
自分に背を向けている後藤の頭をなでたり、
彼女の髪の毛を指でなぞったり。
「機嫌直してや〜。ごっち〜ん。」
中澤にしては珍しく甘い声をもちいて、後藤の耳元で囁く。
「こっち向いてや〜。ごっちん・・。」
しばらくの間、後藤をなだめるべく、中澤の甘い声が続いていた。
そして、やっと後藤が中澤のほうに振り向いた。
相変わらず、頬を膨らましていたが。
しかし、中澤にとって、そんな後藤も微笑ましい。
「ごめんな〜。ごっちん・・。」
- 200 名前:ま〜 投稿日:2001年11月03日(土)01時44分41秒
- 「べ〜〜だ!!」
やっと後藤が振り向いてくれて、安堵していた中澤であったが、
そんな中澤に対して、後藤があっかんべーをする。
「許してや。ごっちん。ほんまはごっちんが大事なんやから・・。」
後藤の目の前で、両手を合わせて謝る中澤。
「どうしようかな〜・・。許してあげようかな〜。」
後藤は悪戯っぽい表情で中澤の顔を覗きこむ。
中澤は十分反省しているのか、必死に許しをこいていた。
「ごめんな〜。」
「う〜ん・・・。よし!」
後藤は一言言うと、ベットから起き上がった。
「な、何すんねん?ごっちん。」
「帰る〜。」
「!?」
後藤の行動が何を意味するか、飲み込めない中澤。
「今日は帰る〜。今夜は一緒に寝てあげない。反省しなさい。」
もちろん後藤の言葉は本心から言った物では無い。
ただ単に中澤を少し困らせてやろうという悪戯心だけであった。
「え〜〜!!」
抗議の声を上げる中澤。
しかし、後藤はそんな中澤に、全く取り合わなかった。
もちろんわざと。
- 201 名前:ま〜 投稿日:2001年11月03日(土)01時46分28秒
- 「じゃあね〜。裕ちゃん。」
部屋から出ても恥ずかしくないような格好に着替えた後藤は、
ドアのロックを外して部屋から出て行く。
そして半開きの状態のドアから、半分中澤に向かって身を乗り出すと、
イジワルっぽい笑顔と共に、手を振った。
「お休み〜。裕ちゃん。反省するように。」
ドアがゆっくりとスライドして、廊下と部屋を遮断する。
こうして中澤は一人部屋に取り残された。
「なんや・・。ごっちん・・。ごっちんから泊まりに来ておきながら
一緒に寝てあげないって、何か変やないか?」
一人呟く。
ベットには、ついさっきまで後藤がいた温もりが残っている。
「ちょっとの事で、拗ねて・・。」
中澤にとって、後藤のそんな子供っぽいところも気に入っている。
「まあええか・・。そや!」
中澤は独り言を言うと、思いついたようにベットから起き上がり、
自分の机に腰掛け、何か手紙を書き始めた。
- 202 名前:ま〜 投稿日:2001年11月03日(土)01時47分48秒
- 「ぷぷぷ・・。裕ちゃんにイジワルしちゃった。」
廊下を歩きながら、後藤は思わずにやけてしまう。
年齢が上な中澤に対して、終始自分が主導権を握っているような気がする。
後藤と共にいると、中澤はまるで知りに敷かれた亭主のようだ。
しかし、後藤にとって、そんな中澤が微笑ましい。
他人の前では中澤がリードしているように見えるが、
その実、実験を握っているのは後藤。
想像しながら、後藤は再びにやけてしまう。
「あれ?ごっちん。どうしたの?」
「あ。やぐっつぁん!!聞いて聞いて!さっきね・・・。」
背後からの声に、後藤が振り向くと、
怪訝そうな表情で彼女を見詰める矢口の姿があった。
確かに一人で廊下でにやけていれば、大抵の人間は奇妙に思うであろう。
そんな矢口の考えなどお構いなく、
後藤は先ほどの中澤の部屋での出来事を矢口に話し始めた。
「なんだよ・・。ノロケかよ〜!」
そう言いながら、矢口も後藤の話を聞いてやった。
得意満面な後藤であったが、この夜中澤に悪戯したことを
彼女は後悔することとなる。
- 203 名前:ま〜 投稿日:2001年11月03日(土)01時49分37秒
- 皆様、レスありがとうございます。
>>191 名無し読者さん
さて、中澤はどうなるんでしょうか?
ガンダムは知らないと分からないところもあるでしょうね・・。
まあ、これを機会に見てください。藁
>>192 ななしの一読さん
さて、どんな悲劇になるのか?
作者の拙い文章にかかっています・・!
>>193 名無し読者さん
いわいる続編ですか・・。
ちょっと難しいですね。考えてはみます。
ただ、そこまで行くと、マニアックすぎるかな?
>>194 コリンさん
>>作者さんの作品は、ちょい痛めなのが多いような?
そうですか?
以前はコメディーみたいのをここで書いてましたが、
まあ、戦争モノは痛いのが付き物だと思ってください。
>>195 名無し読者さん
まだゆゆたんが・・・・決まったわけではありませんよ・・。
さて、これからどうなるか・・・!!!!
- 204 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月03日(土)15時41分17秒
『後悔する』ってやはり裕ちゃん・…
気になりますねぇ、続きがぁ。
決まったわけではないってゆうのが救いです。
- 205 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月03日(土)17時54分12秒
- >この夜中澤に悪戯したことを彼女は後悔することとなる。
後悔してもいいけど・・・後悔を撤回するチャンスを・・・
後悔のまま・・・姐さんが○○のはイヤだ〜!!
- 206 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月05日(月)02時08分55秒
- 話と関係なくなるんですけど、この話読んでるときに娘って
シュラク隊みたいだな〜って思いました。
わかんない人ごめんなさい
- 207 名前:ゴマユウvv 投稿日:2001年11月05日(月)02時32分37秒
- ま〜さんヒサブリです〜。
覚えてらっしゃるでしょうか、ボクのこと(笑)?
でも毎日ちゃんとROMってますです、はいっ(笑)。
しかーしっ!!!あまりに2人のことが心配になり思わずレスしちゃいました。
なんか・・・裕ちゃんと、ごまがぁぁぁ〜〜〜っ(泣)!!!
どうなっちゃうんですか〜〜〜っ(激泣)!!!
ああ・・・もう毎日心配で心配で・・・。
最後は2人は幸せに・・・・なれないんでしょうか・・・?!
- 208 名前:ま〜 投稿日:2001年11月06日(火)23時37分30秒
- 「敵艦隊発見!!」
翌朝、ゼティマの艦内での静寂は、
オペレーターの前田の声により、打ち破られた。
「戦闘配備!!」
艦橋の艦長用シートで、完全にくつろぎきっていた寺田であったが、
さすがに敵接近となると、艦長の役割を放棄するわけにもいかず
主砲の発射準備や、ミサイルの装填等、次々と命令を下していく。
そしてその命令を各部署に効率よく伝達していく戸田。
「敵は、グワジン級戦艦、ザンジバル級重巡、ムサイ級軽巡他、多数!」
すでに多量のミノフスキー粒子が撒かれ、レーダーが無力化されているため、
熱源で対応するスクリーンを見ながら前田が報告する。
「まったく・・。こんな時に・・。」
現在ゼティマが所属している艦隊は、ホワイトベースをはじめ、
数多くの艦艇が所属している。
しかし、大半の艦が散開している状態にあり、
このポイントで最集結を図っている状態であった。
その油断している隙を狙われた感がある。
「MS隊!発進用意や!!」
- 209 名前:ま〜 投稿日:2001年11月06日(火)23時38分01秒
- 「MS隊!発進用意!MS隊!発進用意!!」
のんびりとした雰囲気だったパイロット待機室が突然喧騒に満ちた場所と化す。
「おい!行くで!!」
中澤が飲みかけのチューブ状のジュースをテーブルの上に放り投げると、
バイザーの開いているヘルメットを乱暴に取り上げ、部屋を飛び出した。
その後を追うように、安倍や飯田達も同様に廊下へと出る。
ココナッツ小隊と松浦は予備兵力としてゼティマに残ることになったが、
それ以外のメンバーは、例外なく移動用のハンドグリップを使用して
MSデッキに向かって行った。
彼女達が去った待機室では、
投げ出されたチューブより飛び出たジュースが球状となって部屋を彷徨っていた。
- 210 名前:ま〜 投稿日:2001年11月06日(火)23時39分05秒
- まず最初に自分の機体に取り付いたのは中澤であった。
廊下からデッキに飛び出すと、一気に自分の機体に向かってジャンプする。
重力が無いため、勢い良く飛び上がった。
1〜2秒のうちに開いているコクピットに辿り着き、ハッチに両手を掛けると
滑り込むようにシートに座り込んだ。
それと同時に整備員がハッチの向こう側から親指を立てて
機体が万全であることを合図する。
中澤はスイッチをいれて、自分の機体に灯を入れる。
次々とモニターが青白く輝きだし、スイッチ類が点灯した。
整備員がハッチから遠ざかった事を確認すると、ハッチを閉める。
周りを見渡すと、吉澤や石川達もベテランの様に無難にコクピットに辿り着いている。
『みんな成長しよったな・・。』
以前は無重力中でコクピットに入ることすら難儀していたメンバーを思い出すと、
思わず微笑んでしまう。
彼女達が成長したのは確かに嬉しいことではあるが、
それが戦場であったことは少しばかり悲しい出来事であるのかもしれない。
- 211 名前:ま〜 投稿日:2001年11月06日(火)23時39分55秒
- 保田は自分の機体を見上げる。
迎撃準備に入り、喧騒に包まれるMSデッキの中で、
彼女の周りだけが、しばしの静寂に包まれる。
先の戦いで、大破した彼女の機体は完璧に修理と整備がされていた。
整備員の苦労が思いやられる。
肩に付いていた誇らしげな撃墜マークも、完全に塗りなおされていた。
「ふぅ〜・・。」
ため息をつく。
前の戦いでは、危うく戦死しそうになった。
矢口達に助けられた。
自嘲の為なのか、ふと微笑む。
そして再び自分の機体を見上げた。
「圭ちゃん!!何やってんの!!行くよ!!」
そんな保田に、怒鳴り声が浴びせられる。
「矢口・・。」
保田は、再び一人静かに笑うと、首を左右に振って呟いた。
「保田・・。行きます・・。」
そんな保田を、おろおろした表情で見詰める辻と加護。
「何やってんの!!行くよ!!」
「ひ〜!!!やすらさん!こわいれす!!」
- 212 名前:ま〜 投稿日:2001年11月06日(火)23時40分51秒
- 中澤は自分の機体を操って、カタパルトにGMコマンドの両足を接続する。
「進路クリアーです!!いつでもどうぞ!」
彼女の鼓膜を、オペレーターの前田の声が刺激する。
背後を確認するモニターを見ると、後藤の機体が待機しているのが伺えた。
前方に虚無の空間が広がる。何度も出撃したことがあるこの空間。
何度も何度も経験したはずの出撃。いくら出撃しても慣れる事は無い。
しかし、この時中澤は、何故か普段より落ち着いていた。
何かの予感かと思ったが、頭の中をよぎった幾分かの不安を首を振って振り払う。
「裕ちゃ〜ん!まだぁ〜?」
そんな中澤の気持ちを、後藤の甘い声が忘れさせてくれた。
中澤は自嘲気味に笑うと、呟いた。
「ごっちん・・。あんがとな。」
「中澤!行きます!!」
強烈なGが中澤を襲い、彼女を機体ごと宇宙空間に打ち出した。
- 213 名前:ま〜 投稿日:2001年11月06日(火)23時41分44秒
- 後方からは後藤や安倍・飯田、そして平家たちが次々と打ち出される。
同様に、付近のサラミス級巡洋艦の甲板やハッチ、
そしてマゼラン級戦艦からも、GMが飛び立ってくるのが伺われる。
大半が通常量産型のGM。そしてその後方に動く砲台と言えるボールが続く。
艦隊からの命令により、彼女達をはじめ、MS部隊は上昇に掛かる。
艦隊戦が始まった。
艦隊の前方より、猛烈な艦砲射撃が襲い掛かる。
それに反応するかのように、味方の艦隊も射撃を始めた。
ビームとミサイルの応酬。
戦場に変化が訪れたのは、左舷に小艦隊が現れた時だった。
「9時方向!ザンジバル級重巡を先頭に突っ込んできます!」
前田が驚愕した表情で寺田に報告する。
「目標左舷!主砲発射!」
左舷方向に指向可能な全砲塔が唸りを上げて旋回すると
立て続けに大口径の砲を連射した。
その射撃は、あたかも無照準の様に砲塔より迸る。
まずミサイルがマゼラン級戦艦に命中すると、
大きな閃光を伴って、爆発する。轟沈。
さらに一隻のサラミス級巡洋艦にビームが命中すると、
同様に大爆発を起こす。
双方の艦隊が二隻ずつを撃沈したところで、MS戦に入った。
- 214 名前:ま〜 投稿日:2001年11月06日(火)23時42分28秒
- 「裕ちゃん!来た!MS隊!!」
安倍の指摘は正確だった。
上方よりジオン側のMS隊が急降下で襲い掛かってきた。
「みんな!やられるんやないで!!!」
中澤は、大声で全員に告げつつ、回避運動に入る。
一方の辻と加護は、スナイパーライフルを振りかざすと、
突っ込んでくる敵に対して、その大出力ビームを放った。
敵のMS隊に、二つの大きな閃光が走る。
それが事実上の戦闘開始の合図となった。
リックドムが放ったバズーカがGMに命中し、大爆発を起こす。
後方支援のはずのボールが前方に出すぎた為か、ザクに蹴られる。
そのボールが一機のGMに命中して爆発する。
負けじとサーベルでリックドムを切断するGMもいる。
「柴っちゃん!そっち!!」
「はい!!」
柴田の放ったビームがザクに命中して爆発した。
一方の平家もサーベルでザクを切断する。
- 215 名前:ま〜 投稿日:2001年11月06日(火)23時43分39秒
- 「今回の敵は大したこと無いで・・。」
一機のザクを撃墜したばかりの中澤が一人呟く。
敵の練度が下がってきているのか、先日出会った青いゲルググの部隊とは
比較にならないほど、現在相手にしている敵は未熟と言えた。
もちろん『中澤達から見れば』の話であって、
一般的な練度の低い連邦軍パイロットから見れば、充分強敵ではあるが。
付近を見渡すと、安倍や飯田をはじめ、辻や加護も格闘戦で敵機を撃墜している。
「楽勝やな・・。」
後ろからは、後藤も付いて来ている。
今回の戦いでは、あの頭痛はどうやら起きなそうな気配だ。
やはりソロモンが原因なのであろうか?
あの要塞近辺で『ラ・ラ』の声が聞こえ始めると、後藤の頭痛が起きる。
しかし、ソロモンを出撃して以来、ほんの2日程度しか経っていないが、
幸いにも、あの頭痛が後藤を襲うことは無い。
「良かった・・。」
中澤が安心していた時だった。
後藤を激しい頭痛が見舞った。
「頭が・・・、痛い!!!!!」
モニターに写る後藤の表情は、今までの頭痛よりも数倍苦痛が感じられた。
- 216 名前:ま〜 投稿日:2001年11月06日(火)23時44分26秒
- 「裕ちゃん・・!頭が・・・・痛いよ・・・。」
「ごっちん!大丈夫か!?」
中澤のコクピットにあるモニターに、頭を両手で抱えた後藤が映されている。
それは、後藤が操縦桿より手を離している状態を意味する。
後藤の動きは止まっていた。
「ごっちん!!止まると危ないで!!」
中澤は急いで後藤に近寄ろうとするが、敵の射撃が邪魔をして
なかなか近付くことが出来ない。
そんな中澤の眼に写ったのは、動きが止まっている後藤を照準に収めたのか、
明らかに後藤を狙っているリックドム。
「あかん!!!!ごっちん!!!!」
このまま中澤がそのリックドムに対して射撃をすれば、
おそらくそのリックドムは撃墜できるであろう。
しかし、命中までの短い時間の間に、後藤が被弾するのは明らかだった。
後藤を救うために、中澤が取りうる手段は一つしかなかった。
- 217 名前:ま〜 投稿日:2001年11月06日(火)23時45分14秒
- 皆様。レスありがとうございます。
>>204 名無し読者さん
さて・・・。どうなるでしょう・・?
>>205 名無し読者さん
>>姐さんが○○のはイヤだ〜!!
○○に入る言葉は・・・?
>>206 名無し読者さん
シュラク隊って何ですか・・?
まじで知らない・・。
>>207 ゴマユウvvさん
おヒサブリでございます。
二人は幸せになれるのでしょうか・・・?
さて・・。どうしようかな・・。
- 218 名前:204 投稿日:2001年11月07日(水)00時27分13秒
-
あわわわ!!
裕ちゃん〜!!!!ま、まさか…・
こんなこと恐くて口に出せないけど…
よんでもなく続きが気になります。
がんばってくださ〜い!!
- 219 名前:206 投稿日:2001年11月07日(水)01時59分25秒
- シュラク隊とは、Vガンダムって作品に出てくる
隊長ってゆうか指揮官?以外のパイロットが全員女性の部隊。皆、結構凄腕。
メンバーの人数多数。補給メンバーとかも作中にある。(まちがってるかも)
おおまかな説明はこんなもの、これ以上するとかなりマニアックな
話がしたくなるので自粛。Vガンダムを見てください・・・
- 220 名前:ま〜 投稿日:2001年11月07日(水)23時54分23秒
- 後藤の頭脳に直接響くような『ラ・ラ』の声。
何かが後藤の頭に入ってくる。
しかし、後藤にはそれが何であるかは理解できなかった。
ただ頭が痛い。それだけであった。
それでも、彼女の目には映っていた。
自分を狙ったリックドムの存在が。
『だめだ・・・。やられる・・・。裕ちゃん。ごめん・・。』
激しい頭痛に襲われて、ともすれば消えそうになる意識の中で、
彼女は自分の戦死を意識していた。
楽しくも、辛かった士官学校時代。
訓練に明け暮れ、まともに恋愛も出来なかった。
そんな中、訓練時代に出会った市井紗耶香。憧れた。
そして彼女の話の中に出てくる中澤。
女でありながら前線で活躍して、勇名をはせつつある中澤。
後藤が憧れるのに時間は掛からなかった。彼女と一緒に戦ってみたい。
そんな願望は、地球に配属された事によって打ち砕かれた。
失望しつつもアジア地域で戦った。
そんなある日、中澤の部隊に配属されることを知って狂喜した彼女。
嬉しかった。
- 221 名前:ま〜 投稿日:2001年11月07日(水)23時55分00秒
- 宇宙に出て、共に戦った。
特別な関係にもなった。
そこまで後藤は望んでいなかったのかもしれないが、
とにかく嬉しかった。
中澤が後藤を受け入れてくれた。
自分の憧れの人が、愛する人が自分と一緒に戦ってくれた。
『もう・・・。いいや・・。』
激しい頭痛の中、後藤の脳内に自分の人生が走馬灯のようによみがえる。
『これが・・。死ぬ事・・。』
頭痛の原因もわからず、そして名も無い敵のパイロットに撃墜される。
それは確かに悔しかった。
それでも自分の人生に満足している。
『楽しかった・・・かな?』
ゆっくり彼女は目を閉じた。
そして、彼女を激しい衝撃が襲った。
『死ぬ・・・・!!』
- 222 名前:ま〜 投稿日:2001年11月07日(水)23時55分59秒
- わずか1秒足らずの時間であっただろう。
しかし、彼女にとっては、数時間にも感じられた時間。
『ああ・・・。あたし、死んだのかな・・?』
ゆっくりと後藤は目を開いた。
しかしながら、彼女の予想に反して、自分が五体満足であることに気づいた。
「あれ!?」
彼女は、自分の体をポンポンと叩いてみる。
「あれれれ???」
死んでない。
何が起きたか分からなかった。
先ほどの強烈な衝撃は何であったのだろうか?
そう思った後藤は、モニターを見て愕然とした。
自分の機体の目の前には、黒煙をたなびかせつつ、
今にも爆発しそうな機体。火花が散っている。
明らかに後藤の盾となって敵弾を受けた機体。
それが誰の機体であるかは、彼女にとって容易に想像がついた。
『ごっちん・・。うちが守ってやるで。』
彼女の頭の中で、あの夜の言葉がこだまする。
「ゆ・・・、裕ちゃん?!?!」
- 223 名前:ま〜 投稿日:2001年11月07日(水)23時57分07秒
- 「ごっちん・・。大・・丈・夫か・・・。」
途切れ途切れ聞こえる声。
その声から、コクピットに居る人物が
爆発により重傷を負っていることは明らかであった。
「ゆ!裕ちゃん!!」
「無事・・な・・ようやな・・・。よか・・・った・・。」
「裕ちゃん!!!」
激しく火花を散らす中澤の機体が、ゆっくりとビームライフルを振り上げると、
彼女に弾丸を命中させたリックドムを撃ち落した。
「げほっ!ごほっ・・!!」
後藤の耳に、中澤が咳き込む音声が響き渡る。
「裕ちゃん!!!」
「だめ・・・やな・・・。」
「裕ちゃん!しっかりして!!」
「ご・・っち・・・ん・・・・・・。」
次第にその声が消えそうな程に小さくなりつつある。
瞬間、小さな爆発が起こった。
そしてその爆発が反動となって、中澤の機体が次第に遠ざかっていく。
- 224 名前:ま〜 投稿日:2001年11月07日(水)23時57分45秒
- 「ゆ!裕ちゃん!!」
後藤が必死に中澤を、中澤の機体を追いかける。
「ど、どうしたの?!ごっちん!?」
「裕ちゃん!?」
次第に彼女達の異変に気づいた面々が寄って来た。
そして気づいた。
宇宙の深遠に墜落するかのように、黒煙をたなびかせつつ
彼女達から遠ざかっていく中澤の機体に。
「え!?裕ちゃん!?」
「裕ちゃん!?」
やっと事態を認識した安倍が呆然とする。
飯田の顔面が蒼白になる。
平家が言葉にならない言葉を発しながら、中澤と後藤の後を追う。
メロン小隊もそれに続く。
保田が、矢口が付近の敵を排除しつつ追いかける。
吉澤と石川、辻と加護は、何をしていいか分からず戸惑っている。
- 225 名前:ま〜 投稿日:2001年11月07日(水)23時58分33秒
- 『静かやな・・。』
遠ざかりつつある意識の中で、
死を意識すると言うよりも、ふるさとに帰る、そんな気がする。
楽しかった日々が、辛かった日々が思い出された。
『はぁ〜・・・。』
母親との永久の別れ。
平家との出会い。開戦と福田の戦死。仲間との出会い。
そして、後藤との出会い。
後悔は無い。
ただ一つ心残りは、昨晩の後藤とのやり取り。
照れ隠しで後藤を傷つけたかもしれないこと。
「ごほっ!」
むせ返る中澤。
赤い液体が球状となってコクピットを舞う。
口の中が鉄のような味がする。
コクピットから空気が漏れているのか、
その赤い球状の物体が、ゆっくりと一定方向に向かって彷徨っていく。
口からだけではなく、破れたノーマルスーツの間からも
ゆっくりと、ゆっくりと球状になって真紅の液体が飛び立っていく。
- 226 名前:ま〜 投稿日:2001年11月07日(水)23時59分16秒
- モニターは、奇跡的にも生きていた。
彼女は不自由な体を操ると、後方や上方を確認する。
そして気づく。
彼女を気遣って、混戦の中、追いかけてくる仲間達。
中澤は自分がおそらく助からないであろうを理解していた。
もちろん、平家をはじめ、飯田や安倍たちベテラン組も、
この状態では助からない事を理解している。
それでも、戦闘中にもかかわらず、自分を気遣ってくれている。
「みんな・・・。あん・・がと・な・・。」
次第に意識が薄れていく。
「ごっちん・・・・好・・き・・や・・。」
最後まで言葉を言い切れなかった。
中澤が最後に見たものは、
モニターの中で中澤に向かって必死に泣き叫ぶ後藤の顔。
直後、一際大きな爆発が起こり、中澤の人生が永久に終わりを告げた。
- 227 名前:ま〜 投稿日:2001年11月08日(木)00時00分12秒
- レスありがとうございます。
>>218 204さん
ありがとうございます。
しかし、せっかくの場面が作者の拙い文章でいまいちかも・・。
>>219 206さん
なるほど。どっかで聞いたような気がしたと思ったら
スパロボに出てましたよね?(忘れた・・藁)
- 228 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月08日(木)00時08分41秒
- やっぱり・・・ゆゆたんが・・・(号泣
- 229 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月08日(木)00時10分13秒
- ま〜さん、お疲れ様です。
いつも楽しみに読ませていただいてます。
でも、悲しすぎる・・・
裕ちゃん・・・
- 230 名前:ゴマユウvv 投稿日:2001年11月08日(木)01時53分24秒
- ・・・っうぅ・・・裕ちゃん・・・(号泣)!!!
やっぱり裕ちゃんは・・・・っ!!!
ってか、ごまがあまりにも可哀想だぁ・・・(涙)。
ま〜さん・・・ごまはこの先・・・っ(泣)。
マジで涙が溢れてきました・・・(黙)。
- 231 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月08日(木)04時30分47秒
- 楽しみに読ませて頂いてます。
ですが今日は泣きました・・・(号泣
これからも楽しみにしてます。
最後に中澤隊長の魂よ、永遠なれ!(敬礼
- 232 名前:204 投稿日:2001年11月08日(木)16時40分23秒
!!!!!!!裕ちゃん・…悲しすぎて…
放心状態です…。
やっぱりどうしても裕ちゃんは…生きててほしかった…。
悲しいっす!!さびしいっす!!!
裕ちゃん〜!!(涙)
- 233 名前:ま〜 投稿日:2001年11月10日(土)00時12分12秒
- わずか一瞬の出来事であった。
後藤を守るべく、彼女の盾となって散った中澤。
「裕ちゃん・・・・。」
中澤の機体が爆発した付近を呆然と見詰める。
自分が不甲斐ない為に、中澤を死なせてしまった。
確かに、以前中澤は自分を守るといってくれた。
しかし後藤はその言葉を、自分を大事にしてくれている言葉だと思った。
確かに中澤にとって後藤は特別な存在。
それだけに中澤は自分の身を犠牲にしてまで、彼女を守ってくれたのだ。
自責の念が彼女を襲う。
「裕ちゃん・・・・・・・・。」
後藤の機体の付近に仲間のメンバーが集まってくる。
「ごっちん・・。裕ちゃんは・・・?」
一番最初にその場に辿り着いた安倍が、後藤に問い掛ける。
しかし後藤は何も答えない。
ただ呆然としているだけ。
そこに敵の集団が襲い掛かってきた。
- 234 名前:ま〜 投稿日:2001年11月10日(土)00時13分16秒
- 敵弾が後藤のすぐ近くを通過すると、
それまで死んだ魚の目のようになっていた後藤の目つきが変わる。
怒りに満ちた目。
ものすごい形相で敵機の集団を睨みつけると、
バーニアをフルブーストさせて突っ込んでいく。
「ご、後藤!!!一人じゃ危険だよ!!」
飯田の警告は、彼女の耳に届かなかった。
「よくも・・・!裕ちゃんを!!!」
自分に対する怒り。
そして敵に対する怒り。
それらは、現在目の前に居る敵にぶつけられた。
正確な射撃で、まず襲ってきた先頭の敵機を撃ち落す。
さらに後ろに回り込もうとする3機編隊を狙う。
後藤がトリガーを3回押すと、その編隊は瞬時に消滅した。
上方からジャイアントバズーカを構えて襲い掛かる1機のリックドム。
立て続けに後藤に向かって弾丸が飛んでくる。
彼女は全く無駄の無い動きで、それらを回避する。
おそらく弾丸と彼女の機体の距離は5メートルと離れていなかったであろう。
それほどに彼女の動作には無駄が無い。
- 235 名前:ま〜 投稿日:2001年11月10日(土)00時14分05秒
- 現在の彼女には必要ないと思われるシールドを、後藤は投げ捨てると、
サーベルを抜き取る。
リックドムも同様にサーベルを抜き取る。
一瞬の後にリックドムと擦れ違った。
彼女の突き出したサーベルは、誤る事無くコクピットを捕らえた。
爆発するリックドム。
爆発の閃光を、無表情に見詰める後藤。
彼女の機体に迫る高出力ビーム。
後藤の頭脳に、稲妻のような閃光が走る。
頭が反応するよりも早く、体が反応し、機体を上昇させた。
直後、彼女がいた位置をビームが空を切る。
「無駄だね・・・。」
ビームが来襲した方向を冷たい目でみる。
彼女の目に映ったのは、1隻のムサイ級巡洋艦。
バーニアを全開にすると、それに迫る。
- 236 名前:ま〜 投稿日:2001年11月10日(土)00時15分09秒
- 激しい対空砲火をものともせず、突っ込む後藤。
まるでビーム自体が後藤を避けるかのように、彼女には命中しない。
後藤は一気にムサイの艦橋部分に機体を寄せた。
艦橋に居るジオン兵たちが恐怖の表情で後藤の機体を見詰める。
しかし後藤の目には、そんな人々の表情など映らなかった。
「死ね・・。」
ただ一言、無表情で呟くと、艦橋に向かってライフルを放つ。
一瞬で、艦橋は炭化した化合物と、溶けた金属の破片と化した。
機体を上昇させ退避しながら、彼女はさらに両舷のエンジンにも
ビームを容赦なく撃ちこむ。
脱出しようとするカプセルにも、
無表情のまま、操縦席に60mmバルカンを撃ち込んだ。
巨大な閃光が、爆発しつつある脱出カプセルを巻き込みながら広がった。
- 237 名前:ま〜 投稿日:2001年11月10日(土)00時15分51秒
- 「ごっちん・・・!ごっちん!!」
必死に呼びかける声で、彼女は正気に戻った。
「なっち・・・?」
軽い衝撃で、彼女は安倍や平家の機体に取り押さえられていることに気づいた。
「もう敵はいないよ・・・。」
沈んだ声で後藤に話し掛ける平家。
その声で、後藤は思い出した。
中澤がいないことに。
「裕ちゃんは・・!?裕ちゃんは!!?」
「・・・・・。」
後藤の激しく動揺する言葉に返答できない。
ただ一つ分かっているのは、もう中澤は帰ってこないということ。
「ねえ!!答えて!!裕ちゃんは!?」
「・・・死んだ・・・・。」
操縦桿を強く握り締めながら平家が言った。
冷静な口調の平家の言葉が、後藤の神経を逆撫でする。
「うそ!!絶対うそ!!!」
後藤は安倍達を振り払うと、
中澤の機体が爆発したと思われる宙域に全速で迫った。
- 238 名前:ま〜 投稿日:2001年11月10日(土)00時17分20秒
- 後藤の目に映った物は、数多くの破片。
かつて中澤が搭乗していたと思われる機体の破片。
「Nakazawa」と紫色でペイントされた破片。
呆然とする後藤。
「裕ちゃん・・・・。」
やっと追いついた平家たちが静かに言った。
「帰るで・・。ごっちん・・。」
「裕ちゃんをここに置いていくの!?!」
後藤が激しい口調で言う。
同時に、やっと中澤の死を認識したのか、目から液体が溢れ出す。
液体が球状になり宙を舞う。
「裕ちゃんが・・・、裕ちゃんが・・・!!!」
「人は・・、いつか死ぬんや・・。それが早いか遅いかの違いや・・。」
「平家さん・・・・、冷たい・・。」
平家の言葉に、後藤がモニターに写る平家を睨みつける。
「うちが・・、うちが悲しいと思わない訳無いやろ!!!」
- 239 名前:ま〜 投稿日:2001年11月10日(土)00時18分42秒
- 「みんな悲しいんや!!あんただけや無い!!なっちも圭織も・・。
みんな悲しいんや!だけど・・、そやけど事実なんや!!」
平家の強い口調の言葉に、少しばかり冷静になる後藤。
「ごめんなさい・・・。」
「帰るよ・・。ごっちん・・。」
安倍の優しそうな、それでいて沈んだ言葉に
だまって後藤は頷いた。
「じゃあね・・・。裕ちゃん・・・。ごめん・・。」
後藤は頭を抱えて項垂れた。
そして彼女達はその場を離れた。
帰るべき場所に帰るために。
『裕ちゃん・・。先に地球に帰っててね・・。なっちも後から帰るから・・。』
漆黒の闇に向かって、安倍は一人呟いた。
- 240 名前:ま〜 投稿日:2001年11月10日(土)00時20分10秒
- 皆様、レスありがとうございます。
>>228 名無し読者さん
すいません・・。中澤は最初から戦死の予定でしたから・・。
>>229 名無し読者さん
悲しんでいただけると、作者も本望です。
>>230 ゴマユウvvさん
さて・・。この後、後藤はどうなるか?
どうしようかな・・。一応考えてはあるんですけどね。
後藤の写真集は・・・、(;´Д`)ハァハァ
>>231 名無し読者さん
魂は永遠の予定です。藁
>>232 204さん
いえいえ・・。稚拙な文章で申し訳ございません・・。
- 241 名前:ゴマユウvv 投稿日:2001年11月10日(土)01時53分12秒
- ごまの今後が非常に気になります、ホントに。
幸せになってほしいのは、やまやまなんですけど、できれば裕ちゃんとが良かったですね・・・。
- 242 名前:204 投稿日:2001年11月10日(土)02時11分49秒
-
ううう…読むたびに涙が…
裕ちゃん・…後藤・…
はぁ、悲しい・・。後藤どうなるんだろ?
きになります。…裕ちゃん…(←しつこい)
- 243 名前:ま〜 投稿日:2001年11月10日(土)14時17分30秒
- 無事に全機がゼティマに帰還した。
ただ一人、中澤を除いて。
誰もが中澤はきっと最後まで生き残るであろうと信じていた。
彼女に好意的な人も、またそうでない人も、
中澤の腕前と、運の良さを信じていた。
しかし、彼女は帰らない。
誰一人として、二度と彼女が動いて、そして喋っていることを見る事は出来ない。
「裕ちゃん・・・。」
ゼティマに帰還してから、今頃になって中澤の戦死が実感してくる。
安倍が、飯田が、平家が項垂れていた。
保田と矢口も一言も話そうとはしない。
もちろん石川と吉澤も。
辻と加護に至っては、大泣きしている。
しかし、誰も彼女達をなだめる余裕など無い。
自分の精神をコントロールするのに必死だった。
落ち込む全員をMSデッキに残して、後藤はただ一人、静かにその場を立ち去った。
- 244 名前:ま〜 投稿日:2001年11月10日(土)14時18分19秒
- 通い慣れた部屋のドアを開ける。
空調設備が効き過ぎている為なのか、それとも異なる要因なのか、
その部屋は、一段と冷気が漂っているように後藤には感じられた。
ゆっくりと部屋に入る。
「裕ちゃん・・。」
ベットの脇にあるコルクボードが目に入る。
つい先日、一緒に撮ったほんの数枚の写真。
半分閉じられた間抜けな表情の中澤。
自分の寝顔。
後藤は思わず笑ってしまった。
「ぷっ!裕ちゃん変な顔!・・・裕ちゃん・・・。裕・・?」
そして現実に引き戻される。
中澤はもういないという現実に。
一緒の時を過ごしたシャワールーム、夜を過ごしたベット。
すべてがただ存在するだけ。
それらの場所では、二度と何も起こる事は無い。
中澤の温もりを感じることは出来ない。
ふと、後藤はデスクの上にある一枚の紙に目が行った。
- 245 名前:ま〜 投稿日:2001年11月10日(土)14時19分06秒
- 「・・・・?」
手にとって読んでみる。
それは中澤が後藤に当てた一種の手紙であった。
「ごっちんへ・・?」
小さな声を出して読み始める後藤。
「ごめんな〜。ごっちん。うちの照れ隠しやねん。本当はごっちんが大事なんや。
連邦軍に必要なんや無く、うちに必要なんや。ごっちんが・・。」
そこから先は後藤には読む事が出来なかった。
何故、中澤が謝る必要があるのか。
本当に謝らなければいけないのは自分ではないのか?
写真を撮ったあの夜、自分は薄れ行く意識の中で、確かに言った筈だ。
『裕ちゃんは、あたしが守ってあげるぅ〜・・。』
しかし実行は出来なかった。むしろ中澤の足を引っ張った。
そして中澤は帰らなかった。
昨日の夜、自分は中澤に悪戯をした。
故意に。
「裕ちゃん・・・。ごめんよ・・。ごめんよぉ〜!!」
- 246 名前:ま〜 投稿日:2001年11月10日(土)14時19分54秒
- 普段大きな声など出すことの無い後藤。
むしろ、『ぼけっとしてる』『やる気が無い』と言われる。
そんな後藤が、大声で泣き叫んでいた。
彼女のやや離れ気味の両目からは、止め処なくあふれる涙。
それが球状になって、部屋の中を彷徨う。
「裕ちゃん・・・。」
後藤は膝から崩れ落ちた。
突然、彼女一人だった部屋にドアが開く音が響くと、何者かが入ってきた。
「誰・・・?」
「ごっちん・・。ここにおったんか・・。」
「平家さん・・。」
静かに部屋の中を一通り見渡す平家。
「裕ちゃん。」
呟いた。
- 247 名前:ま〜 投稿日:2001年11月10日(土)14時20分56秒
- 「ごっちん。落ち込むんや無いで。」
「・・・・。」
平家がせっかく掛けてくれた言葉に、反応できない。
故意に無視したわけではない。
ただ、何も言えなかった。
自分の失態で中澤を失った。
中澤の無二の親友であるはずの平家が、
後藤に対して含むところが無いわけは無い。
それでも後藤に優しく声を掛けてくれた。
「じゃあな。」
それだけ言うと、平家は視線を後藤から外すと、部屋を見回して敬礼した。
誰も非難出来ないような、見事な姿勢の敬礼だった。
平家が去った部屋の中で、後藤はただ泣き続けるだけだった。
- 248 名前:ま〜 投稿日:2001年11月10日(土)14時21分58秒
- レスありがとうございます。
>>241 ゴマユウvvさん
後藤が幸せになれるかどうかは最終回にでも分かるでしょう。藁
Mステ見逃したよ・・。
ダーヤスは・・(;´Д`)ハァハァ
>>242 204さん
さて・・。どうなるでしょう?
- 249 名前:ゴマユウvv 投稿日:2001年11月11日(日)04時27分22秒
- またまた涙が・・・(号泣)。
ま〜さん・・・泣かせすぎですよ〜っホント。
最終回・・・う〜ん・・早くきてほしい・・・かなっ?!
ごまが心配なんで・・・。
でも、ま〜さんのごまゆうが読みたーーーいっ!!>禁断症状(笑)
- 250 名前:ま〜 投稿日:2001年11月12日(月)00時22分22秒
- 「カオリが!?隊長ですか!?!」
中澤の戦死を報告しに寺田の元へ来ていた飯田が素っ頓狂な声をあげる。
「そや。中澤の遺言みたいなもんや。」
寺田の投げやりな口調に、少しばかりムッとする。
この人は何を考えているのだろうか?
開戦当初から共に戦っていた中澤の戦死が悲しくないのか。
「飯田。おまえは確かに成長した。メンバーに気を使う事が出来るようになった。」
「でも・・。カオリに裕ちゃんと同じ事は出来ません・・。」
「誰が同じ事をしろと言った?」
寺田が突然真面目な表情と口調になった。
彼女は理由を理解することが出来ず、呆然としている。
「飯田。おまえは中澤の代わりやないんや。おまえのやり方でやってもらいたい。」
「・・・。」
「俺も中澤の意見に賛成や。おまえしかおらん。」
「・・・。分かりました・・。」
数秒考えた後、彼女は諦めて寺田の命令を受け入れる事を決めた。
- 251 名前:ま〜 投稿日:2001年11月12日(月)00時23分32秒
- 「一つ聞いてもいいですか・・?」
飯田の表情は明るくなかった。
「裕ちゃんが・・、中澤少佐が戦死した事は・・・?」
しかし、彼女の質問に対する寺田の返答は、
いともあっさりした物だった。
「何も無い。」
「・・・。」
みるみる飯田の表情が赤くなっていく。
怒りの為に。
「分かりました。では、失礼します。」
怒気に満ちた言葉を残して彼女は艦橋を後にした。
「ふぅ〜・・・。」
ため息をついて艦長用のシートに腰を降ろす。
無表情に見える寺田ではあったが、
シートの肘掛を強く握り締める寺田に気づいたのは、
副官の戸田少尉だけであった。
- 252 名前:ま〜 投稿日:2001年11月12日(月)00時24分35秒
- 中澤は生前の功績が認められ、二階級特進の後、大佐に任命された。
しかしながら、そんなことを喜ぶ人間はいなかった。
生きていたなら、彼女は時を経ずしてその階級を得られたであろう事は
誰もが思うことであったであろう。
おそらく彼女は連邦でも数少ない女性の将軍になることも非現実的ではなかった。
しかし、それは適わない現実。
「裕ちゃんのお葬式がしたい・・。」
そう言い出したのは安倍が最初であった。
新しくリーダーとなった飯田も同意した。
もちろんのこと、保田や矢口や平家、そして吉澤達も文句は無かった。
ただ、後藤だけは一人部屋に引きこもり、返事を聞けなかったが・・。
この提案を、飯田が代表して寺田に相談した。
先ほどの件もあり、彼女は寺田と話をしたくは無かったが。
おそらく却下されるであろうと思われたが、
いともあっさりと寺田は容認した。
- 253 名前:ま〜 投稿日:2001年11月12日(月)00時25分55秒
- ゼティマの甲板に多くの人間が出てくる。
飯田を始め、彼女の下で戦ったパイロット達。
それだけではない。
整備員をはじめ、手の空いている乗組員達がノーマルスーツをまとって、
艦首甲板の方に集まってくる。
例外なく、全員の表情は暗い。
「ごっちんは・・?」
「だめ・・。完全に引きこもってるよ・・。」
後藤にも参加して欲しかった飯田は、後藤を呼ぶ為に部屋へと向かったのだが、
いくら彼女を呼んでも、ドアを叩いても、返事は無かった。
安倍達も、もちろんの事心配していた。
しかし、全員が後藤の部屋を訪れると、
意固地になるのではないかと考えた飯田が代表して訪れた。
そして彼女は出てこなかった。
「そっか・・。ショックだもんね・・。」
そう呟く安倍の瞳も暗かった。
- 254 名前:ま〜 投稿日:2001年11月12日(月)00時26分57秒
- 自然と飯田を先頭に、全員が列に並び始めた。
艦が軽く旋回すると、左舷側を中澤が散った宙域に向ける。
そして、誰が号令を掛けると無く、一人、一人と敬礼を始めた。
ゼティマの上部にある2基の主砲搭が静かに旋回し始める。
そして高く仰角を取ると、次々に弔砲を放った。
真空の空間で、彼女達に主砲発射の衝撃が、
甲板から足を伝わって感じられる。
ここが大気の存在している空間であれば、
おそらく耳を劈くような轟音が聞こえたであろう。
しかし、その静寂が、より一層悲壮感を感じさせた。
「裕ちゃん・・。」
平家が中澤の呼び名を呟く。
年上であるにもかかわらず、そして階級が上にもかかわらず
彼女はその呼び方を許してくれた。
もちろん平家にだけではなく、全員に許していた。
- 255 名前:ま〜 投稿日:2001年11月12日(月)00時28分42秒
- 「裕ちゃん・・・。」
平家が敬礼を続ける。
共に過ごした日々が思い出された。
士官学校時代を始め、一緒に戦った日々。
「裕ちゃん・・。裕ちゃん・・・・。」
涙が止め処なく溢れてくる。
戦死するなら自分が先だと思っていた。
何故か平家には運が無い。
一方中澤は実力と運が見事に作用して、多くの戦果を上げた。
それでも中澤が好きだった。
今は石川がいるが、それでも中澤を忘れることは出来ない。
「裕ちゃん・・。裕ちゃん・・。」
平家の横にいた石川は、
敬礼をする平家の手が小刻みに震えるのを生涯忘れることが出来なかったと言う。
弔砲が虚無の空間に吸い込まれ続けていた。
- 256 名前:ま〜 投稿日:2001年11月12日(月)00時30分56秒
- >>249 ゴマユウvvさん
レスありがとうございます。
ちょっと引っ張りすぎですかね。藁
ハロモニの中澤先生が(・∀・)イイっす!
中澤が出なくなったらハロモニ見ないかも。
- 257 名前:ゴマユウvv 投稿日:2001年11月13日(火)02時51分16秒
- いえいえ、引っ張りすぎだなんて、とんでもないっ!!!
あれぐらいは必要かと・・・(笑)。
だって・・・裕ちゃんが・・・また(涙)。
このあいだのハロモニで、裕子先生が文麿にちょこっとときめいてたのに激萌っ!!
ボクも裕ちゃんが出なくなったら見ないと思われ・・・・(笑)。
- 258 名前:ま〜 投稿日:2001年11月15日(木)21時03分48秒
- 「3・・、2・・・、1・・、0!!作戦スタートです!!」
いよいよ最後の戦いになるかもしれない大作戦が始まった。
宇宙での連邦軍の大反撃、星一号作戦も最終段階に入りつつある。
ジオン軍最大の要所とも言えるア・バオア・クー。
その要塞の攻略に連邦軍は入った。
味方の艦隊は決して多くない。
中澤が戦死した先の遭遇戦の後、巨大な閃光が数多くの連邦軍艦艇を飲み込んだ。
連邦軍宇宙艦隊のレビル将軍をはじめ、数多くの将兵がその中で散った。
あの時、ゼティマがこの閃光に飲み込まれなかったのは、
『中澤の葬式』をしていた為、艦隊集結に遅れたからだ。
「中澤に・・。助けられたな・・。」
その言葉は、戦後に寺田が副官の戸田に言ったセリフである。
- 259 名前:ま〜 投稿日:2001年11月15日(木)21時04分29秒
- 「ごっちん!ごっちん!!」
廊下に後藤を呼ぶ声が響き渡る。
扉をドンドン叩く音も聞こえるが、依然として部屋の中からの反応は無い。
「ごっちん!!入るよ!!」
怒鳴り声と共に、ドアのキーロックナンバーが押される電子音が
聞こえてくる。
どうやらロックが解除されたらしく、ドアが静かに開くと、
真っ暗な部屋に、廊下の光が差し込んでくる。
ベットの中にいた後藤は扉の方を見たが、余りの眩しさに目を細めつつ、
右手を使って顔を隠すように部屋に入ってきた人物を見た。
背が高く、綺麗な髪の毛が長い女性。
彼女は両脇に2人の人を伴っていた。
一人は細い女性、そしてもう一人は背はさほど高くないが
ややぽっちゃりした女性。
「何・・・・?」
不機嫌そうに後藤が言った。
- 260 名前:ま〜 投稿日:2001年11月15日(木)21時05分31秒
- 「出撃だよ・・。」
背の高い女性が後藤に話し掛ける。
後藤はゆっくり首を振った。
「あんた・・・。出ないつもりか・・?」
特徴ある方言に、思わず中澤かと思って彼女の方向を見てしまうが、
その顔を見て期待は裏切られた。
「今、裕ちゃんやと思ったろ?」
「・・・。」
図星を突かれた彼女は、ふて腐れて布団を被ってしまった。
「ごっちん・・。悲しいのは分かるけど・・。行くべさ・・。」
一転して後藤の耳に届いたのは、優しい言葉。
「分かるわけ・・、無いじゃん・・。」
耳を澄まさないと聞こえないほどの小さい声が
静寂に満ちた部屋に響く。
「あんた・・。今何て言った・・?!」
- 261 名前:ま〜 投稿日:2001年11月15日(木)21時06分17秒
- 「いいってば・・。圭織・・!」
後藤に食って掛かる飯田と平家の前に安倍が立ちはだかった。
「ごっちん・・。悲しいのはごっちんだけじゃないんだよ・・。」
安倍は後藤に諭すように話し始めた。
「なっち達だってね、悲しいんだよ。でも悲しんでばかりじゃ何も出来ない。
何も生まれない。あたし達が今しなきゃいけないことは悲しむことじゃない・・。
そんなことじゃ、裕ちゃんに笑われちゃうよ。」
「裕ちゃん・・・。」
安倍の言葉が耳に入っているのか、それとも入っていないのか、
裕ちゃんと言う言葉には敏感に反応する。
それでも、それ以外の言葉に関しては全く反応が無い。
相変わらず後藤はベットに潜り込んで嗚咽を繰り返すだけだった。
- 262 名前:ま〜 投稿日:2001年11月15日(木)21時07分01秒
- 「失望したよ・・。」
平家が冷たい言葉と、それ以上に冷たい目で、
ベットの中でうごめく後藤を見詰めている。
「あんたなら、裕ちゃんを超えると思っとったのに・・。」
再び裕ちゃんと言う言葉に反応したのか、
ベットの中で後藤と思われる体が蠢いた。
「なっち・・、みっちゃん・・。行こう。相手にしてらんないよ。
今までこんな奴と一緒に戦っていたのかと思うと、恥ずかしいよ。」
飯田が吐き捨てるように言うと、
踵を返して部屋から出て行く。
平家もそれに追従するかのように、共に出て行く。
安倍だけは、冷たい表情ではなく、
同情するような、それでいて哀れむような視線を後藤に送ると
二人に付いて部屋から出て行った。
後藤は、ただ一人ベットの中で泣き続けるだけだった。
- 263 名前:ま〜 投稿日:2001年11月15日(木)21時08分22秒
- >>257 ゴマユウvvさん
>>このあいだのハロモニで、裕子先生が文麿にちょこっとときめいてたのに激萌っ!!
禿同!
- 264 名前:ゴマユウvv 投稿日:2001年11月16日(金)02時51分24秒
- ごま〜っ!!!がんばれ〜〜っ!!!
裕ちゃんがいないのは・・・・辛すぎるよねぇ(泣)。
本日のうたばん、足をあっけらかんと開いて子供のように座っているごまに萌えvv!!
こんなイラでマンガを個人で描いてます(笑)♪
メルアドをクリックするヨロシ(笑)。
- 265 名前:名無し君 投稿日:2001年11月17日(土)00時32分22秒
- 姐さ〜ん!!ごまー!!
せつねー。
姐さん1月7日からまたドラマはじまるね。
後1月19日から毎週日曜日スタート 14:00〜14:54 リポーター役に挑戦
って事は・・・(日曜日)ハロモニ・いいとも・リポータ・ANNss・M黙
1日に5番組???
1月が待ちきれないよー。(w
と明るい話題を書いてみた。
- 266 名前:ま〜 投稿日:2001年11月18日(日)03時40分24秒
- 「飯田さん。ごっちんは?」
ノーマルスーツに着替える為の更衣室。
吉澤は、下腹部から喉のあたりまで一気にジッパーを上げながら、飯田に問い掛けた。
「だめ・・。」
飯田が静かに首を振る。
中澤が戦死してから数日が経ったが、
後藤が復活する気配は全く無い。
むしろ、段々と廃人となっている感がある。
あの日以来、彼女は完全に部屋に引きこもり続けていた。
食事も満足に取らずに。
「ごっちん・・。」
吉澤は考える。
もし、自分にとって最愛の人物が死んだなら、
しかも自分の目の前で、自分をかばって戦死したなら。
おそらく正気ではいられないであろう。
後藤と同じように引きこもってしまうのであろうか?
吉澤はそう思いつつ、つい矢口の顔を見てしまった。
- 267 名前:ま〜 投稿日:2001年11月18日(日)03時41分05秒
- 「なぁ〜に?よっすぃ〜?おいらの顔に何か付いてる?」
自分の目の前までやってきた矢口が、
見上げるように自分を見る。
『やだ・・。あたし・・。何考えてんだろ・・?』
ついつい、吉澤は顔が赤くなってしまう。
別に矢口をそういった対象で見ているわけではないが、
下から見上げられるように上目遣いで見られると
顔が紅潮してしまう。
「・・?」
そんな吉澤を見て、首を傾けつつ吉澤の顔を覗きこむ矢口を見ると、
耳まで赤くなってしまった吉澤だった。
後藤の気持ちはわからないでもない。
ほんの数週間とは言え、自分を鍛えてもらった恩がある。
それだけではない、あえて憎まれ役に徹してでも、
自分達を鍛えてくれた中澤に対して、
今は尊敬の念すら持っている。
そんな彼女にとって、中澤を失ったことにショックを受けないことは無い。
そのうえ、中澤でさえ戦死してしまう戦場に、戦慄の念を覚えた。
自分は終戦まで生きていられるだろうか?
そう思うと、発狂しそうな程の心境になる。
- 268 名前:ま〜 投稿日:2001年11月18日(日)03時41分55秒
- 「落ち込まないでよ。よっすぃ〜。オイラはよっすぃの笑顔が好きだよ。」
そう言うと、矢口は軽くジャンプすると、
吉澤の頬に飛びついて、軽く頬にキスをした。
吉澤の顔は、耳だけでなく、顔じゅうが赤くなる。
「ほら!矢口!行くよ!!」
突然矢口を呼ぶ保田の声。
「お〜!!待ってよ!圭ちゃん!」
保田に付いて行く矢口を見て、
少しばかり嫉妬してしまう。
『あはは・・。あたし何考えてんだろ?』
それにしても、中澤の戦死以来、著しくメンバーの士気は低い。
せめて後藤が先頭に立って『弔い合戦』とでも割り切れば、
メンバーのやる気も出るのではないかと吉澤は思う。
しかし、現在の後藤の状況を見る限り、無理な話であろう。
「よっすぃ〜。行くよ〜。」
吉澤を呼ぶ甲高い声。その声にも元気が無い。
こんな状況で全員が生きて帰れるのか不安だった。
- 269 名前:ま〜 投稿日:2001年11月18日(日)03時42分56秒
- 今回の戦いも、飯田達の中隊が先方を務め、
平家は艦隊直援任務。余裕があるならば後詰として出撃することになっている。
「みんな〜。行くよ〜。」
この戦いからリーダーを任された飯田が全員に確認を取る。
正直不安でもあるが、中澤からの遺言とも言うべき言葉を無駄には出来ない。
そして彼女が築き上げてきたこの中隊の名誉も損なえない。
「大丈夫だね〜?」
口に出した言葉が、緊張の為か、思わず裏返ってしまう。
「圭織〜!変だよ〜!」
安倍がすかさず突っ込みを入れるが、
この何気ないやり取りが、緊張の極みにあったメンバーを
リラックスすることが出来た。
「あはは・・。」
苦笑いしながら、飯田は自分の機体のコクピットに向かってジャンプする。
片手でハッチを掴みながら、滑り込むようにコクピットに入った。
計器を確認し、正常にMSが稼動していることをチェックする。
「はぁ〜・・。」
ため息をついた。
自分に本当にリーダーが勤まるのであろうか?
不安ではある。
しかし寺田に、そして中澤に任された任務だ。
「裕ちゃん・・。カオリを守ってね・・。カオリ、行きます!」
そう呟くと、機体をカタパルトデッキに進めた。
- 270 名前:ま〜 投稿日:2001年11月18日(日)03時43分36秒
- 明らかに不安に満ちた飯田の機体が
カタパルトから射出されるのを見た安倍も、ゆっくりとため息をつく。
『裕ちゃん・・。』
開戦以来、常に一緒に戦って、苦楽を共にした中澤が今はいない。
自分は中澤に頼りすぎてきたのではないだろうか?
戦いの場だけではなく、精神面でも。
今、自分の頼れるべき人間がいなくなって、
本当の自分の実力が試されようとしている。
後藤に同情しようとは思わない。安倍とて辛い。
それでも戦う時には、戦わなければならない。
「はぁ・・。」
再びため息をついた。
「なっち頑張るべさ!」
自分自身に言い聞かせるように、コクピットの中で大声を上げた。
「どうしたの?なっち?」
後ろで控えていた矢口が不安げに言う。
「い、いや、なんでもないべさぁ〜!」
「そう?」
「うん!」
そうこうやり取りしている間にも、カタパルトのシグナルがグリーンになった。
「なっち・・。行くべさ!!」
- 271 名前:ま〜 投稿日:2001年11月18日(日)03時44分31秒
- 「保田出ます!」
「矢口!行きます!」
「辻、行くれす!」
「加護、行きまぁ〜す!」
「吉澤!出ます!」
「チャーミー石川!出まぁ〜すぅ〜!」
残ったメンバーも全員が出撃した。
ただ一人後藤を除いて。
石川はメンバーを元気付けようとしているのか、
相変わらずの甲高い声で、訳の分からない事を言っているが、
その気遣いは空回りしているようだ。
「よぉ〜し。全員揃ったね!行くよ!」
ゼティマから少しばかり前進した宙域で、
飯田は全員が無事出撃した事を確認すると、
ア・バオア・クーに向かってバーニアを前回にした。
こうして彼女達の一年戦争における最後の戦いが始まった。
- 272 名前:ま〜 投稿日:2001年11月18日(日)03時45分14秒
- レスありがとうございます。
>>264 ゴマユウvvさん
絵、見せて頂きました。ついでにHPも。
なかなかいいですね〜。すっかりごまゆう派ですね。藁
>>265 名無し君さん
ほ〜!これは中々いい情報をありがとうございます!
それにしても中澤は超ハードスケジュールだね。
ドラマは楽しみです。
- 273 名前:ゴマユウvv 投稿日:2001年11月19日(月)02時53分51秒
- HPにまでお越し頂き、大変恐縮です(笑)。
そろそろ着々と終わりに向かって行ってるんですよね・・・。
ラストはどうなるんだろう・・・(ドキドキ)。
- 274 名前:ま〜 投稿日:2001年11月24日(土)21時59分03秒
- 要塞から次々と艦隊に向かって撃ち込まれて来る対艦ミサイルの嵐。
それに呼応するかのように、味方の艦艇から射出される迎撃ミサイル。
次第に距離が近付いてくると、お互いにビームの応酬となる。
要塞と艦隊とを結ぶ直線上にいると、流れ弾が当たる恐れがある。
そのため彼女達は出撃してから、その射線上をさけるように
上昇すると、他のMS部隊と合流して要塞に向かって直進した。
「相変わらず、すごいミサイルの数ですね〜・・。」
自分達の下方を、味方艦隊に向かって突進していくミサイルを見ながら
吉澤があっけに取られたように言う。
彼女もソロモンでの戦いを経験している為、
壮絶なミサイル等の応酬を見ているが、何度見ても慣れる物ではない。
艦隊に大きな閃光が光るたびに、その光の中で
大勢の人間が散っていることを考えると、のんきに見物してもいられない
- 275 名前:ま〜 投稿日:2001年11月24日(土)21時59分41秒
- 「艦隊の防衛は、艦隊自体や直援部隊に任せておけばいいの。」
飯田が冷静な口調で言った。
彼女の言うことは正しい。
侵攻する部隊に、敵を迎撃する暇は無い。
事実、彼女達の前方に第一陣の防御陣が現れた。
「いるいる・・。」
保田が不敵な笑みを浮かべながら呟いた。
その顔はやや緊張気味である。
それほどに敵のMS部隊は数が多かった。
迫り来る数多くの光点。
正確には彼女達が迫っているのだが、
その数の多さは、まるで星がこちらに迫ってくるかのような圧迫感を与えた。
「みんな・・。行くよ!!」
飯田の号令の下、一気に戦闘に入った。
- 276 名前:ま〜 投稿日:2001年11月24日(土)22時00分25秒
- まず先陣を切ったのは、辻と加護のスナイパーライフルから放たれた
高出力のビームであった。
彼女達以外にも、GMスナイパーを装備している部隊も
次々と同様にライフルを発射する。
迫り来る光点が回避体勢に入る。
それでも彼女達が放ったビームが誤る事無く数発が命中し、
漆黒の闇の中に大きな閃光が走りMSが爆発した。
いつも通りの作戦。
吉澤と石川を援護につけて、辻と加護を遠距離から攻撃させる。
そして、飯田は安倍と、保田と矢口のチームが遊撃を掛ける。
今回の戦いでは、敵の数も多いが、味方の数も同様に多い。
そのうえ、味方のパイロット達は経験を重ねてきた為なのか、
ソロモンの戦いに比べて、やや練度が上がっていると思われた。
相対的に、国力の差がここにきて出てきたらしく
敵の練度が下がってきている。
彼女達は、あっさりと第一陣を突破した。
- 277 名前:ま〜 投稿日:2001年11月24日(土)22時01分20秒
- 「なんだか・・。敵が弱くない?」
「矢口もそう思った?」
矢口の口から、自然と疑問の声が上がった。
ただ、そう思っていたのは矢口だけではなく、保田も思っていた。
「飯田さんの指揮がいいからですよ。」
何も考えていないような口調で吉澤が言う。
確かに彼女達の士気は低いが、着実に敵を撃破している。
しかしながら、飯田は中澤がいままで取ってきた戦法を踏襲しているだけで
何もしていないに等しい。
「それは・・・。無いべさ・・。」
安倍がすかさず突っ込みを入れるが、
そんなことは飯田も分かっている。
ただ、飯田にとってリーダーとしての初めての戦いで
メンバーが自分の指示通りに動いてくれ、
しかも戦果を上げていることは嬉しかった。
「ほら・・。暢気に喋っている場合じゃないよ。前!」
彼女達の前方に、第二陣の防御陣が待ち構えていた。
そして、それは第一陣に比べると、格段に強かった。
- 278 名前:ま〜 投稿日:2001年11月24日(土)22時02分04秒
- 味方が放ったライフルの一斉射撃は、その大半がことごとく回避された。
「やる・・。みんな!気をつけて!」
これまで指揮を取っていた中澤の個性的な口調とは異なり、
あまり命令調ではない飯田の指示に少々違和感を感じながら、
メンバーの全員が再び戦闘体制にはいった。
両軍のMSが入り乱れての乱戦。
リックドムのバズーカの弾丸がGMを木っ端微塵に破壊する。
GMのサーベルがザクを切り刻む。
ボールのキャノンがザクの頭を吹き飛ばす。
蹴られたボールが味方を巻き込んで爆発する。
戦場は混戦に陥っていた。
- 279 名前:ま〜 投稿日:2001年11月24日(土)22時03分11秒
- 「よっすぃ〜!後ろ!」
吉澤のコクピットに、甲高い声が響く。
「おっけー!!!」
彼女の体が考えるよりも早く反応すると、
操縦桿を押し込みつつトリガーを引き、機体を反転させる。
それまで彼女の機体が存在した空間を弾丸が通過した。
「さんきゅー!梨華ちゃん!」
簡単にと言うわけではないが、つい数ヶ月前に比べれば
彼女達も格段に成長していた。
以前は戦うことに必死だった。
ただひたすら目の前の敵を破壊することしか考えてなかった。
わずか数ヶ月でここまで成長できたのは
偏にこのメンバーで戦ってきたからであろう。
もし、他の部隊に配属されていたらと、ふと考えてみた。
何処かで、名も無きパイロットとして戦死してたかもしれない。
少なくとも、今以上の戦果を上げてはいないであろうことは確かだ。
いろいろ考えながらも、体は反応する。
擦れ違いざまの機体に振り返りつつ、照準を合わせると
トリガーを引く。
爆発する。
- 280 名前:ま〜 投稿日:2001年11月24日(土)22時04分53秒
- >>273 ゴマユウvvさん
レスありがとうございます。
最後は考えてあるんですけど、
そこまで辿り着くのが難しくて・・・。
それにこのスレで足りるかどうか不安・・。
中途半端なところで容量が無くなったらどうしよう?
- 281 名前:ま〜 投稿日:2001年11月27日(火)00時26分15秒
- その頃、ゼティマを含む連邦軍の艦艇は、別働隊の攻撃を受けていた。
「平家さん!敵はザンジバル級1、ムサイ級3、進路クリアー!OKです!!」
『どこがOKやねん・・。』
前田の言葉に平家は心の中で呟いた。
無理も無い。
敵の急襲を受けて、諸艦艇は対空砲や主砲を可能な限りのスピードで連射している。
あちこちに弾丸が飛び交っている中で出撃するのは
ともすれば、流れ弾に命中する場合もあるからだ。
「まあ・・、しゃあないか・・。」
平家は自分の機体をカタパルトに誘導して、機体の両足をカタパルトに乗せた。
松浦をはじめ、メロンの部隊も出撃する。
スナイパー部隊のココナッツ隊は迎撃任務に合わない為、
とりあえず待機していることとなった。
中澤が戦死してから、
どこか彼女の心の中にポカンと穴が開いているような気がしてならなかった。
それでも彼女は戦わなければならない。
- 282 名前:ま〜 投稿日:2001年11月27日(火)00時26分58秒
- 今何故彼女が戦わなければならないか、彼女自身も分からなかった。
ただ、中澤達と楽しく一緒にいられればいいと思っていた。
飯田や安倍達と一緒にいるのは、もちろん楽しい。
石川と一緒にいるときの自分も嫌いではない。
しかし、なにか物足りない。
「はぁ〜・・。」
「平家さん?大丈夫ですか?」
「あ、ああ!」
平家が普段と違うのに気づいた松浦が気を使って声を掛けてくれる。
「松浦。最後まで生き残ろうな。」
「はぁ〜い!!」
平家の真面目な表情に対して、対照的に松浦の表情は明るかった。
もしかしたら自分を励まそうとしているのかと、平家は思う。
「まあ・・、ええか・・。」
「?」
「平家!行きます!!」
強烈なGが掛かって彼女は宇宙空間に打ち出された。
- 283 名前:ま〜 投稿日:2001年11月27日(火)00時27分44秒
- 背後からは松浦をはじめ、メロンのメンバーも次々と射出されてくる。
一旦最大戦速で艦艇から遠ざかる。
下手に出撃したばかりの状態で反撃に入ると、
スピードも満足に乗ってない為、敵に狙い撃ちを食らう恐れがあるからだ。
もちろんのこと、遠ざかる時にも敵に注意するのは当然であるが。
機速をあげて、メンバーと合流してから気づいた。
敵の尋常ではないスピードに。
「な!なんやあれ!」
彼女が見たものは、ザンジバル級より発進したと思われる
数機のゲルググだった。
彼らは弄ぶかのように1隻の巡洋艦に狙いを定めると、
順番に砲塔を破壊して抵抗力を奪ってから、艦橋にライフルを撃ち込んだ。
それはあたかも遊んでいるかのようで、そして、その腕前は尋常ではなかった。
「あ、あいつら・・やる!松浦!村田!行くで!!」
- 284 名前:ま〜 投稿日:2001年11月27日(火)00時28分49秒
- 「あれが・・、前に裕ちゃん達が言っとった新型やな・・。」
灰色のボディーに、胸の部分が濃緑色のカラーリング。
そのスピードや火力から、明らかに彼女達の機体より性能が良く思えた。
それでも彼女は1機の敵機に狙いを定めると、松浦を引き連れて突っ込んでいく。
「もらったで・・。」
照準の中に1機を捕らえると、トリガーを絞る。
「平家さん!危ない!!」
突如松浦のやや甲高い声が、平家のコクピットの中に響き渡る。
「・・!!」
頭脳が反応するより早く、彼女は体が反応した。
瞬時に期待を横滑りさせると、彼女がそれまで存在した空間を
黄色いビームが一閃する。
「・・。松浦・・・。サンクス!」
「ふぁ〜い!」
声は緊張感が無かったが、松浦は平家を狙った機体にライフルを放った。
あさっりとかわされる。
「・・!」
周りを見渡すと、メロン隊も初めて対する新型に明らかに戸惑っており
思うように戦えていない。
他の味方は、言うまでもなく新型に翻弄されていた。
- 285 名前:ま〜 投稿日:2001年11月27日(火)00時29分44秒
- 「艦長・・。ココナッツ隊も出しますか?」
副官の戸田が寺田に進言した。
明らかに味方は劣勢であり、平家たちですら苦戦している。
「まだ・・ええ・・。」
彼も迷っていた。
今増援を出せば、混戦を助長するかもしれない。
それならば、後詰として彼女達は待機させておいたほうが得策かもしれない。
もっとも戦力の逐次投入という愚も犯したくなかった。
しかし、彼はすぐにその考えを頭から追い払った。
今はそれどころでは無い。
敵の艦砲射撃に対する対応、回避と射撃の指示。
被弾した個所への応急処置の対応。
「第二砲塔被弾!」
「第三艦橋大破!」
次々と被弾する。
それでもゼティマはまだ幸運だったのかもしれない。
付近の艦艇は敵の新型の攻撃に翻弄され、艦砲射撃でとどめを刺されている。
それに比べればまだ被弾個所も少ない。
- 286 名前:ま〜 投稿日:2001年11月27日(火)00時31分10秒
- 「あ〜・・。被弾したな・・。」
後藤の部屋の外部は戦闘状態の為に喧騒に包まれている。
しかし、彼女の部屋だけは空気が違った。
一人部屋に引きこもり、ただベットの中で蠢いている。
「最初に出てったのは圭織達だから・・、さっき出たのは平家さん達か・・。」
彼女にもカタパルトからMSが出撃する振動や、
被弾した時の衝撃、ミサイルを発射した振動がベットを通して伝わっている。
「あっ・・、ミサイル撃った・・。」
「あたし・・、何やってんのかな・・?」
一人考え込む。
彼女を抜かした全員が命を掛けて戦っている。
それにもかかわらず、彼女は引きこもっていた。
「裕ちゃん・・。」
目が潤んでくる。
このまま死んでしまっても良いと彼女は思っていた。
中澤が自分をかばって壮絶な戦死を遂げた後、
彼女は何もする気が起きなかった。
何もしたくない。生きることすら放棄していた。
「もう・・、どうでもいいや・・。」
再び彼女は眠りに落ちた。
- 287 名前:ま〜 投稿日:2001年11月27日(火)23時58分26秒
- 『ごっちん・・・・、ごっちん・・・。』
彼女は突如自分が呼ばれる声で目が覚めた。
忘れるはずも無い声。
特徴的な訛のある声。
「裕ちゃん!!!」
そう彼女は口に出したつもりだった。
「あれ・・?体が動かない・・。」
どんなに努力をして声がする方向に頭を向けようとするが、
彼女の意思とは異なり、体が言うことを聞かない。
『ごっちん・・・。』
確実にその声は近付いていた。
「裕ちゃん・・・・・・・!!」
『ごっちん・・・・。何しとんや・・?』
「裕ちゃん!!」
必死に口を動かし、声がする方向を向こうとするが、
まったく体が動かない。
- 288 名前:ま〜 投稿日:2001年11月27日(火)23時59分02秒
- 『ごっちん・・。どうしたんや・・?』
横向きで壁の方向を向いて寝ていた彼女の背後から
確実に人の気配がする。紛れも無く彼女が慕っていた人物の気配。
「裕ちゃん・・・。寂しいよ・・。」
実際に声は出ていないのかもしれないが、
後藤はそう言ったつもりだった。
『何言っとるんや・・。大事な仲間がおるやんか。』
「でも・・。裕ちゃんがいない・・。」
必死に後藤は声の主に語りかけようとしていた。
『あはは。照れるやんか。』
声と共に、彼女の枕もとに何者かが腰掛けた気配がする。
それと共に、ゆっくりと彼女の頭が撫でられた感覚。
「裕ちゃん・・。」
『ごっちん。あんたはそんな弱い娘やないで・・。』
「そんなことないよ・・。」
再び頭が撫でられた。
- 289 名前:ま〜 投稿日:2001年11月27日(火)23時59分33秒
- 『なんか・・。すまんかったな・・。最後の夜があんなんで・・。』
「ううん!あたしこそ・・、あたしが不甲斐ないから・・。」
『そんな事無いで。うちはごっちんが大事やから、思ったままに行動したんや。』
もう一度彼女の頭が撫でられる。
「くすん・・。裕ちゃん。そっちに行きたいよ・・。」
『ごっちん。あんたはうちが命を掛けて守ったんや・・。
そう簡単に来られたら、うちが困るやん。』
彼女の頭が軽くポンポンと叩かれる感覚。
「でも・・。」
『ごっちん・・見えるか?』
「ん?」
突如後藤の頭脳の中に、直接画像が入ってくるような感覚と共に、
他のメンバー達が必死に戦っている映像が入ってきた。
必死に例の青い機体と戦う飯田と安倍。
すでに矢口は被弾して、保田はそれを守るのに必死だ。
辻加護や吉澤石川も被弾しながらも必死に戦っている。
平家が必死に指揮を取って戦うが、形勢が悪い。
そんな映像が彼女の頭に入ってきた。
「みんな・・。」
- 290 名前:ま〜 投稿日:2001年11月28日(水)00時00分14秒
- 『みんな必死に戦っとるんやろ?ごっちん。』
「・・・・・。」
『うちは・・。他のメンバー達にこっちにまだ来てもらいたくない。
もちろんごっちんを含めてや。』
「・・・・・・・・・。」
『その為には、ごっちんの力が必要なんや。』
「でも・・。」
再び頭が撫でられる。
『ごっちんがそんなに悩んどったら、裕ちゃん心配で天国行けへんよ・・。』
「・・・・。」
『せやから、ごっちん。うちの為にも戦ってや。』
「・・・・。」
『頼むで・・・。ごっちん・・・・。』
後藤の枕元から立ち上がる気配。
「裕ちゃん!!何処行くの!!!?!」
『・・・・。頼んだで・・。』
必死に声の主の方向に向かって体の向きを変えようと試みるが
何度やっても体が言うことを聞かない。
「裕ちゃん!!!何処行くの!!」
声にならない叫び。
『ごっちん・・・。大好きやで・・。』
「裕ちゃん!!!」
- 291 名前:ま〜 投稿日:2001年11月28日(水)00時00分54秒
- 自分が叫ぶ声で目が覚めた。
枕と顔は、涙でびしょびしょになっている。
「・・。あたし・・。夢か・・・・。」
ゆっくりとベットから上半身を起こした。
「裕ちゃんが来る訳ないもんね・・・・・・。」
そう呟いて、気づいた。
彼女の枕元で明らかに人がいたと思われる温もりに。
「!!?!?」
何度も何度も先ほどの夢の中で『彼女』が座っていたあたりを
手で叩いて温もりを確認する。
「・・・・?」
そしてその手に何か当たった。
軽い、本当に軽い何か。
それは彼女の手にまとわりついた数本の髪の毛だった。
明らかに彼女の物とは異なる髪の毛。
やや金髪がかった髪の毛。
長さといい、色といい、彼女が知る限りその髪の毛の持ち主は一人であった。
「裕ちゃん・・・。来たの・・・?」
- 292 名前:ま〜 投稿日:2001年11月28日(水)00時01分33秒
- 後藤の目からは塩分を含んだ液体が止め処なく溢れ出て来た。
彼女はその数本の髪の毛を、大事に胸のあたりで抱きしめる。
「ごめんよ・・、裕ちゃん・・。後藤が不甲斐ないから・・。
心配して来てくれたんだね・・・。ごめんよ・・・。」
そう言いつつ、彼女はゆっくりとベットから立ち上がった。
そして乱暴に涙を拭う。
「裕ちゃん・・。ごめんね・・。もう大丈夫・・・。」
涙を拭った彼女の目は、先ほど平家たちに見せた死んだ魚のような目ではなかった。
はっきりと精気が溢れている目つき。
その目には彼女の決心が滲み出ていた。
「裕ちゃん・・・。後藤真希、行きます・・。」
静かに、そして強い口調で呟くと、
しっかりとした足取りで部屋から出て行った。
- 293 名前:ま〜 投稿日:2001年11月28日(水)00時02分13秒
- デッキで待機していたアヤカ達が彼女を見て驚いた。
平家達の話によれば、彼女は再起不能に陥っているはずだ。
しかしながら、彼女は今、しっかりとノーマルスーツをまとって
しっかりとした足取りで自分の機体に向かっている。
「ごっちん!」
「アヤカさん・・。」
心配したアヤカ達が後藤に駆け寄って声を掛ける。
「迷惑掛けてごめんなさい・・。でももう大丈夫です。」
「そう?大丈夫?」
「はい。」
明るい笑顔で後藤は答えた。
その目には決意が読みとれる。
「大丈夫そう・・だね!」
「うん!!」
「行ってらっしゃい!みんな待ってるよ!!!」
「ゴトウサン!!キヲツケテイッテクダサイ!!」
ココナッツの面々にはっきりと笑顔で答えると、
彼女は自分の機体のコクピットに向かってジャンプした。
- 294 名前:ま〜 投稿日:2001年11月28日(水)00時02分47秒
- 機体をカタパルトに誘導する。
その時、コクピットの通信用モニターに前田の顔が写った。
「大丈夫?」
「はい!ご心配掛けてすいません・・。」
「艦長も心配してるよ。」
「すいませんと伝えてください・・。」
後藤の返答に、前田は笑顔で頷いた。
全員後藤の気持ちは理解している。
半ば同情している面もあった。
その後藤がここまで復活したのは誰も理由を知らない。
しかし、何かを悟ったような笑顔に、やや心配ではあったが。
「進路クリアー!どうぞ!!」
「後藤真希!行きます!!!」
磁力を利用したカタパルトが高速で彼女の機体を宇宙空間に打ち出した。
- 295 名前:ま〜 投稿日:2001年11月29日(木)23時51分55秒
- 「くそっ!!なんやねん!!こいつら!!」
平家は弄ばれているような不快感に見舞われていた。
付近にいた練度の低そうな機体から順番に狙われる。
味方を撃墜した敵機の隙を見て攻撃しようとするが、
その度に他の敵機が平家に攻撃を掛けてくる。
松浦のアシストが無ければ彼女とて宇宙の塵になっていたかもしれない。
平家が再び1機のゲルググに狙いを定めると、トリガーを絞る。
その瞬間、彼女が再び狙われる。
「平家さん!!」
松浦が平家を狙っている機体に牽制をするべくライフルを連射するが、
いともあっさり彼女の射撃をかわすと、薙刀状のサーベルを抜き取り
一気に平家の機体に迫った。
平家も瞬時に迫り来る敵機の方向に向かって旋回すると、
迎え撃つ体勢に入った。しかし、敵機は目前まで迫っている。
「あかん!!」
ゲルググのサーベルが一閃する。
一瞬の判断で彼女はシールドで防御しようとした。
「くっ!!!」
- 296 名前:ま〜 投稿日:2001年11月29日(木)23時53分14秒
- 凄まじい衝撃と火花が散り、彼女のシールドを吹き飛ばした。
その瞬間、彼女は無防備になる。
「・・!!」
「平家さん!!」
平家の危機に、松浦やメロン隊も彼女を助けたいのは山々であったが、
自分自身が危機的状況におかれている為、助けに向かうことが出来なかった。
余勢を買って、そのゲルググは一気にサーベルを振り下ろした。
激しい衝撃が彼女を襲う。
彼女の機体の左腕が、火花を散らして切断された。
「あんっ!!!!」
そしてさらに目の前のゲルググはサーベルを振り上げた。
「あかん!!死ぬ!!」
平家は死を覚悟した。
自分も中澤の元に行くのだと。
迫り来る恐怖に身がすくんだ。
そしてその瞬間、横合いから放たれたビームが、
目前のゲルググを吹き飛ばしていた。
「・・・・だ、誰や・・?」
- 297 名前:ま〜 投稿日:2001年11月29日(木)23時53分47秒
- 「平家さん!!!」
「ごっちん・・・。」
そこに現れたのは、この戦場に決して現れることは無いと
平家が思い込んでいた人物、後藤。
「大丈夫ですか!?」
「ああ・・・、すまん・・。」
先ほど出撃する前に後藤を罵倒した事が後ろめたいのか、
素直に礼が言えない平家だった。
「あんがと・・・って!ごっちん!!後ろ!!!」
後藤の機体の背後に1機のゲルググが迫っている。
しかし後藤は冷静だった。
まるで後ろに目がついているかのように正確に敵に向かって反転すると、
ライフルを一発放つ。
放たれたビームは誤る事無くゲルググを捕らえた。
強烈な閃光と火花を散らしてそのゲルググは宇宙の深遠に落ちていく。
「ごっちん・・。あんた・・。」
後藤の隙を突いたつもりなのか、上方からさらに1機のゲルググが迫る。
彼女はそれが見えているかのように機体を横滑りさせると
いともあっさりとシールドを捨て、サーベルを抜き取り
上方に向かって突き上げた。
そしてそれは正確に迫り来るゲルググのコクピットを捉えていた。
- 298 名前:ま〜 投稿日:2001年11月29日(木)23時54分21秒
- 「す・・、すごい・・。」
平家はあっけに取られていた。
自分達が苦労して渡り合えなかった敵機の集団を
いともあっさりと撃墜する。
しかも連続で。
後藤がさらにトリガーを2回絞ると、再び2つの閃光が宇宙に舞う。
無駄が無い。
それは数多くの戦場を経験してきた平家が見ても
これほど無駄の無い動きは見たことが無かった。
敵機の集団に動揺が走る。
たった1機のMSの参加が戦局を逆転させてしまった。
「松浦・・・。うちらもやるで!!」
「ふぁ〜い!!」
平家は松浦に纏わり付いている敵機に向かって
残った右腕が装備しているライフルを連射すると、一気に突っ込んでいった。
- 299 名前:ま〜 投稿日:2001年11月29日(木)23時54分54秒
- 動揺した敵部隊は一斉に秩序を乱した。
秩序だった連携プレーがあったからこそ、彼女達は苦戦していた。
しかし、それはもろくも崩れ去った。
ただ一人、後藤の参戦によって。
そんな敵部隊を掃討するのは、ベテランの平家たちにとって
さほど苦痛な作業ではなかった。
もっとも、敵の引き際は見事であったが。
「ごっちん。ありがと・・。」
やや照れながら平家が言う。
素直に後藤の眼を見ながら言うことが出来なかったのは
単に後ろめたいからだけではなかった。
「ゴトウこそ・・。ごめんなさい・・。皆の事考えないで・・。」
「・・ええって、ええって!!うちも助けてもらったことやし。」
「そうですよ。結果オーライです。」
松浦が口を挟む。
- 300 名前:ま〜 投稿日:2001年11月29日(木)23時55分33秒
- 「それよりも、みんなのとこに行ってやり。」
「でも・・。」
「ええから、ええから。うちらなら平気やから。」
そう言うと平家は損傷している機体の左腕を掲げた。
「平家さん。壊れてますよ。」
「あっ、そやった。忘れとったわ・・。あはは。」
「相変わらずですね。」
後藤の顔に笑みがこぼれる。
「やっと笑いよった。」
「・・平家さんには適わないです・・。分かりました。」
しばらく考え込んでいた後藤だったが、
意を決したように最終的にははっきりとした口調で頷いた。
「平家さん。後はお願いします。」
「ああ、行ってこいや。みんなきっと待ってるで。」
「はい・・・。じゃあ、行きます。」
「必ず戻って来な。」
平家の言葉にはっきりとした返答はせずに、
ただ微笑むと、彼女はバーニアをフルブーストさせて去っていった。
「ごっちん・・。必ず戻って来いよ・・。」
平家は去っていく光点を見えなくなるまで見詰めていた。
- 301 名前:ま〜 投稿日:2001年11月29日(木)23時59分50秒
- ( ^▽^)<スレのサイズが大きくなってしまいました・・・。
新スレ立てます・・。
( `.∀´)<スレの乱立は止めなさいよ!
( ;´D`)<らって・・・、こんな長くなるなんて思ってなかったんらもん・・。
そんな訳で、後ほど新スレ立てることとします。
すまそ。予定では同じ青板で・・。
- 302 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月07日(金)03時17分04秒
- 新スレもう立ってます?
- 303 名前:ま〜 投稿日:2001年12月07日(金)23時00分26秒
- >>302
新スレ立てました。
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=blue&thp=1007733281
同じ青板で。
最近仕事が忙しくて更新できませんでした・・・。
やっと一段落したら、PS2のガンダムのゲーム(ネット対戦)が面白くて!!
そんなわけで、新スレも宜しくおねがいたします。
Converted by dat2html.pl 1.0