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<野球小説>〜スローカーブを、もう一球。〜
- 1 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月11日(火)00時22分20秒
( ‘д‘)<いってみよか〜
( ´ Д `)<めんどくさ〜い
- 2 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月11日(火)00時25分31秒
( ‘д‘)<ウチとごとさんが主人公かい
( ´ Д `)<それなりにやる気はある…
- 3 名前:名無しさん@はじめに 投稿日:2001年09月11日(火)00時32分46秒
2の通り、後藤と加護が中心になると思います。
最新の5期メンを除く、すべてのハロプロメンバーを出すつもりです。
完結しますように。。。
( ‘д‘)<ほな、いこか
第一部「Magic of Love」
- 4 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月11日(火)00時36分57秒
熱で乾ききった砂が舞い、投げ込まれた白球がミットに収まる。
「ボール、フォア」
瞬間遅れた判定と共に、主審が一塁方向を指差す。
真夏の甲子園、その決勝。
東東京代表、天王洲学園のエース後藤真希が、相手校の3番打者に
3者連続となるフォアボールをを出す。
スコア2−1。後藤率いる天王洲学園が1点リードで迎えた9回裏。
2死ながら満塁。一発逆転サヨナラという絶体絶命の場面。
都大会からこの決勝まで、連投に次ぐ連投。そしてこの試合も150球
以上投げてきたエース後藤が、この大会初めてのピンチを迎えた。
- 5 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月11日(火)00時49分54秒
- いいぞ、いい感じ!!
- 6 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月11日(火)01時11分30秒
- 5さん、早くも初レスありがとうございます。
書き溜めた部分もあったんですが、手を加えたいので続きはまた
明日ということですみません。。。
- 7 名前:影裏 投稿日:2001年09月11日(火)03時02分30秒
- 背筋がぞくぞくと来ますよ!
僕、野球小説大好きなんで
- 8 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月11日(火)06時23分42秒
- スローカーブをもう一球 といい 狂気の左サイドバック(都並) といい
みんなスポーツ小説好きね。
- 9 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年09月11日(火)07時50分29秒
- 野球小説好きなんで、期待してます〜。
相手どこだろう?
- 10 名前:4126 投稿日:2001年09月12日(水)16時01分32秒
- タイトルだけで泣きそうになる。いいタイトルだ。
- 11 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)23時17分35秒
- 捕手の有田がタイムを要求し、マウンドへ来る。
こういうときは、はたから見ているといかにも今後の攻め方
などを打ち合わせしているようではあるが、何ごとかを話して
いるようで、じつは野球のことはほとんどといっていいくらい
話しをしていないという。
緊迫したシーンで、後藤はキャッチャーの有田に言うのだ。
「あたしさー、昨日笑点見逃しちゃったよ」
また、ある時はこう言った。
「2組の青田が、有田のこと好きなんだってさ」
有田は真面目な顔をして答えた。「あのじゃじゃ馬がか?」
- 12 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)23時19分22秒
- 「ま、打たれた所で命まで取られるわけじゃねぇ。お前の
おかげでここまでこれたんだ。楽しんでやろうや」
有田は、後藤の肩をミットでぽん、と叩くとプロテクター
をガチャガチャ言わせながら正妻の定位置に戻っていく。
有田のやつ、いつのまにかもっともらしいこと言うように
なりやがって。
後藤は健気にも「しまってしこー!」などと声を張り上げて
いる有田を見てくすっと笑う。
- 13 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)23時23分14秒
- 間をとったせいか、落ち着いてきた後藤は思う。
そうだ。『あいつ』を使おう。
幼い頃、父に連れられてプロ野球を見に行った時、チーム名も
その投手の名前すらも忘れてしまったが、初めて見たカクテル
光線の美しさと並んで心に鮮烈に焼き付いたシーンがあった。
一打逆転サヨナラ。今の後藤と同じような大ピンチの場面で
その投手が投げた人を食ったようなスローカーブ。
打ち気満々のバッターがクルリとおおげさに回転し、尻餅を
ついた時にその勝負は決まった。
たった一球で試合の流れを変え、まるでピンチの場面すら
最初からなかったかのように試合は終わる。
幼かった後藤はそのボール――スローカーブだ、と父に教え
られた――に魅せられた。
- 14 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)23時25分25秒
- 後藤は試合の中で、ほんの何球か、スローカーブを投げる。
人を食ったようにゆらゆらと頼りなげに飛んで行くそのボールが、
呆然とする打者を尻目にスパン、とミットに入って行くのをみる
のが後藤は好きだ。
「スローカーブを投げた時の相手の表情を見ていると、相手が
どんな気分なのか手に取るようにわかるんだ」
いつか、電話で幼馴染みにそう話したことがある。
後藤は恋女房のプロテクター下に出されるサインを受取る。
それだよ、有田。
行こうぜ。
スローカーブを、もう一球。
- 15 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)23時39分47秒
- ( ‘д‘)<ウチでてへんやんけ
( ´ Д `)<眠いと動きがすろーかーぶ…
- 16 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)23時50分30秒
- >影裏さん
ご声援ありがとうです。
>8さん
好きです(w
>てうにちさん
相手は…どこでしょう?想像にお任せします(w
>4126さん
あなたの小説で泣きました。そしてこれを始めたきっかけになりました。
- 17 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月12日(水)23時54分16秒
- 今回の捕手有田のように、話の都合上、娘。やハロプロ以外の人間も
出てくることになります。
また、後にも先にも出てくる予定はありませんが、天王洲学園は
投 後藤
捕 有田
一 小川
二 石渡
三 羽田
遊 吹石
左 栗橋
中 平野
右 佐々木
です(w
- 18 名前:空唄 投稿日:2001年09月13日(木)02時57分56秒
- 僕も元ネタ好きっす。
なんか、雰囲気がしっかり出てますね。
- 19 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月13日(木)22時01分26秒
- 「真希ちゃん、アレ投げる気やな」
後藤の高校−−三塁側アルプススタンドから試合を観戦していた
加護亜依は、隣に座っている松浦亜弥にではなく、ほとんど独り言
のように言った。
「アレ? なんであいぼんわかるん?」
そのつぶやきを聞き逃さなかった松浦が食い付いてくる。
「あ、聞こえてたんか。へへ、あったりまえやがな。ウチが生ま
れたときから一緒やねんで。真希ちゃんの考えることくらい手に
取るようにわかるわ」
「まさか? じゃ何投げるの?」
加護が口を開いたとき、マウンドの後藤が投球モーションに入った。
「スローカーブ」
- 20 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月13日(木)22時02分27秒
- 「ねぇあいぼん」
「ん?」
「そういえば、さっき後藤さんと生まれた時からどうとか言うて
たよね?」
「ああ、そのことか。そうや。真希ちゃんはウチの幼馴染みやねん」
「そうなん? 後藤さんて、東京でしょ?」
「だってウチ、東京育ちやもの」
松浦の目が丸くなる。
「ウソー」
- 21 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月13日(木)22時03分24秒
- 嘘ではない。後藤と加護は幼馴染みである。とはいっても、
年にして3つの差がある。家が隣だった2人は、小さい頃
よく一緒に遅くなるまで遊んでいた。
小学校に上がった後藤が地元の野球チームに入ってからは、
一緒に遊ぶことも少なくなったが、今でも比較的マメに電話
で話をする仲だった。
- 22 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月13日(木)22時05分59秒
- 中学入学を機に、加護は実家のある関西へ戻ることになった。
加護が東京を去る日、たった1人見送りに来たのが後藤だった。
「真希ちゃん、今日って大事な試合の日じゃ…」
「むはは。休んじゃった」
多少、錆が目立つ自転車をキコキコ言わせながらやってきた
ユニフォーム姿の後藤はあっさりとそう言った。
その頃の後藤は、その莫大な量の野球の資質を、ほんの少し
開花させただけであったが、チームのエースにして4番という
欠かせない戦力になっていた。
「いいの? 今日って大会の決勝なんでしょ?」
笑顔で手を振る後藤。
「いいの。どうせたいした大会じゃないし。きっと今ユウキ
が投げてると思うよ」
後藤の弟、ユウキが監督に「真希はどうした!」とどやされ
ながら、泣きそうな顔で投げている顔が2人同時に思い浮かび、
後藤と加護は同時に爆笑した。
- 23 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月13日(木)22時12分52秒
- ( ‘д‘)<なんやウチとまち〜らは観客かいな
( ´ Д `)<ユウキ元気かな…
- 24 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月14日(金)01時15分48秒
- 「真希ちゃん、ありがと…」
後藤がニカっと笑って手を振る。
「何言ってんの。友達でしょ」
ずっとずっと、これからも、いつまでも。
「トモダチだよ」
黒塗りの、いわゆる外車の後部座席の窓から身を乗り出す
加護の視界は、次々にあふれてくる涙でぼやけていた。
「じゃあ、元気でね。たまには電話ちょうだいよね」
「うん」加護は涙をこらえて必死で笑顔を見せようとするが、
頷くことしかできない。
- 25 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月14日(金)01時16分18秒
- 運転手がキーを回し、エンジンが静かに始動する。
車はそろそろと動きだし、後藤の姿が後方に移っていく。
「あたし、大きくなったらプロになる! そして――」
そこから先は聞こえなかった。
だが加護は、後藤のメッセージをしっかり受け止めた。
- 26 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月14日(金)01時21分29秒
- 場面は再び甲子園に戻る。
グラウンドには、カメラマンからのフラッシュの渦を
浴びる後藤の姿があった。
「後藤さん、優勝したね」
「うん。ええとこまで行くとは思っとったけど、いっちゃん
上まで行きよるとはさすがに思わんかった」
天王洲学園の試合のたびに応援に来たため、すっかり小麦色に
なった肌をさすりながら加護は言う。
「はぁぁ、ねぇあいぼん、試合も終わったし、どっかで
冷たいものでも飲んでかん?」
「そやね。カチ割りにも飽きたし」
加護と松浦は、倒れそうなくらい暑い日ざしを避けるため、
歓喜の熱狂に震えるスタンドを後にした。
- 27 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月14日(金)01時23分22秒
- 加護亜依。
私立の、一般的にお嬢様学校と呼ばれる高校に通う15歳。
生まれは関西だが、仕事で忙しい父に変わり、母の実家が
ある東京で育てられた。
後藤と知り合ったのもこの東京だ。大企業の社長令嬢にしては
のびのび育てられ(のびのびし過ぎという意見もあった)ていた。
某大企業グループ社長の娘として生まれ、何一つ不自由しない
生活を送る加護だが、育ちが奔放すぎたせいか、それとも幼馴染み
の後藤真希のせいなのか、世間一般がイメージするような『お嬢
様』ではない。
彼女は、とあるプロ野球チームの熱狂的ファンだった。
- 28 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月14日(金)01時25分45秒
- その名は札幌モーニングス。
加護の祖父・栄治がオーナーのプロ球団である。
つまり、加護はオーナーの娘ということになる。
祖父・加護栄治は、たった一代で今日の大グループを作り
上げた。そして、
彼はついに念願の、悲願のというべきか――
「プロ野球のチームを持つ」という夢をかなえることとなる。
- 29 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月14日(金)01時30分23秒
- 昭和45年、栄治は関西のある球団を買収に成功する。
栄治は、自分が育って来た同じ関西地区に球団をおいて
おきたかったが、当時、関西には阪神、阪急、南海、
そして近鉄と4つもの球団がひしめきあい、パイの奪い
合いが激しかったことなどから、コミッショナー権限
による本拠地移転命令が出される。
――北へ――。
- 30 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月14日(金)01時35分51秒
- コミッショナーが指定した場所は、栄治の予想をはるかに
超えるものだった。
新球団ハ、北海道ニ移転ヲ命ズ――。
自身の夢のため、その条件を飲んだ栄治は自身も北海道へ飛び、
様々な交渉を一手に引き受ける。
そして同年11月、北海道は札幌に本拠地を置く初のプロ野球チーム
「札幌モーニングス」が誕生することとなる。
- 31 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月14日(金)01時41分13秒
- しかし、オーナー兼監督となった栄治の生来のワンマン気質が
災いしたのか、モーニングスは一向に強くなる気配すら見せず、
誕生以来25年間で最下位18度という、パ・リーグのお荷物と
陰口を叩かれて当然の弱小球団ぶりを、遺憾なく発揮する。
そして今年も大方の予想通り、チームはぶっちぎりの最下位
をばく進していた。
不人気ゆえ毎年多額の赤字をだすモーニングスは、グループ
全体の経営を圧迫することから、これまでにも幾度となく
売却論が唱えられてきた。
- 32 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月14日(金)01時42分01秒
- しかし、グループ全体の経営権は息子の博に譲り渡したものの、
こと札幌モーニングスのオーナーの座だけは、誰にも渡そう
とはしない栄治がこれを了承するはずはなかった。
年間を通すと莫大な金額になる赤字を、本社からの補填を受け
て、どうにかやりくりしているというのが現状であった。
- 33 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月14日(金)01時45分45秒
- その栄治が突然倒れた。
癌だった。
主治医の小鶴が、栄治の癌は既に全身に転移しており、手術が
不可能であることを亜依の父親・博に告げた。
「そうか」
話を聞き終わった博は顔色一つ変えずにそれだけ言ったという。
また、オーナーでありながら監督を兼務する栄治の入院は、
いくら弱小といえども、チームに影響を与えることとなる。
不在となった監督は、急遽ある人物に白羽の矢がたてられた。
その人物は、現役当時と同じ背番号20をつけグラウンドに立った。
- 34 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月14日(金)01時47分51秒
- ( ‘д‘)<栄治とか博とか小鶴って誰やねん
( ´ Д `)<別に興味ないし…
- 35 名前:名無し 投稿日:2001年09月14日(金)01時55分10秒
- で、けっきょく誰よ?
- 36 名前:名無し娘。 投稿日:2001年09月14日(金)02時23分42秒
- うーん・・・わからん。
ここはクイズスレか(w
後藤、加護、ユウキ、あやや・・・
他メンをもじったのか・・・?
- 37 名前:名無し娘。 投稿日:2001年09月14日(金)08時23分29秒
- オイラはわかった(w
- 38 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月15日(土)00時55分08秒
- 「おう信ちゃん、久しぶりやんかぁ!」
実に11年振りに、札幌スタジアムのダグアウトに姿を見せた
信田美帆は、その言葉で振り向いた。ちょっと鼻にかかった
その声の主は、チーム最年長のベテラン中澤裕子。
「なんやなんや20番なんかつけて。現役復帰でもするんかいな」
「あら、裕ちゃんこそまだやってたの?」
会えば交わす軽いジャブの応酬。
「キッツいわぁ、その返し。これでも2000本安打目前なんやで」
「んじゃ、明日からスターティングベンチで」
「かー、信ちゃんならホンマにやりそうで怖いわ」
- 39 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月15日(土)01時00分20秒
- 選手の中で、信田の現役を知るただ一人の人間になってしまっ
た中澤だが、今季も5番として24本の本塁打を放っている。
果たしてそんな物好きな人間がいるのかどうかは分からないが、
オールドファンならすぐ名前が出てくるであろう信田は、入団
一年目、最下位チーム札幌にあっていきなり17勝を稼ぎ出す。
直球勝負を信条とした信田の球は、それはほれぼれするような
見事なものだった。
「いつも真っ向勝負。どんな投手よりストレートが速かった(門田博光/南海)」
「まっすぐを打ったと喜んでたら実はスライダーだった(石毛宏道/西武)」
「ストレートだとわかってたのにかすりもしなかった(蓑田浩二/阪急)」
「全然当たらないのでヤケクソでバントしたら骨が折れた(島田誠/日本ハム)」
「初対決で球が見えなかった。これがプロかと戦慄した(落合博満/ロッテ)」
「投球練習を見て、味方で良かったと本気で思った(中澤裕子/札幌)」
各チームの主力のコメントが、全盛時の信田の球威を物語る。
- 40 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)01時39分30秒
- だが、パを代表する打者がこう評した黄金の右腕はわずか5年で
その輝きを失ってしまうこととなる。
余りにも実力が突出していた信田は、シーズンを通して中3日
もしくは中4日、その間に救援でも登板するという過酷な起用
をされ、その肩がついに悲鳴をあげたのである。
引退を決意し栄治に報告にいった信田は、投手コーチとして
そのまま札幌に残るはずだった。
しかし、その場においてちょっとした行き違いから口論に発展、
信田が栄治の元を飛び出すという、札幌にとって最悪のエンディ
ングを迎えた。
- 41 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)01時42分23秒
- 以来、信田は球界とは一切関係を持つことはなかった。
トンカツ屋でアルバイトをしたり福引きのお姉さんをしたりとアル
バイトを転々としながら食い繋いでいた信田は、数年前に会社を
起こす。
周囲の反応は冷ややかであったが、意外にもこの不況の中で、順調に
成長を遂げていく。今では、従業員も100人にせまろうかというほど
に成長したが、古巣札幌のピンチに、信田は惜しげもなく会社を放り
出して駆け付けた。
- 42 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)01時49分02秒
- ( ‘д‘)<いったいウチはどないなんねん
( ´ Д `)<借金のカタにソープに…
- 43 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)04時14分23秒
- 権藤? 稲尾?
- 44 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月16日(日)11時32分42秒
- わかんない方が多いようなのでこれについてネタバレしますと、
沢村栄治、スタルヒン(須田博)、小鶴誠など、往年の名選手の名前を
拝借してます。
後藤のチームメイトは、1980年の近鉄Vメンバーっす(w
- 45 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月17日(月)21時55分45秒
- 信田が指揮をとるようになっても事態はそう変わることはなく、
相変わらず負け続けたが、一つだけ変わった部分があった。
若手の積極的な登用である。
どうせ負けるんなら、若いやつに経験を積ませよう。
そう考えた信田はどんどん若手を起用していった。
それは、中澤とて例外ではなかった。
数字は残しているから先発を外れることはなかったが、フル出場
をすることがなくなった。
中澤は一抹の寂しさを感じたが、仕方のないことだとも思った。
- 46 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月17日(月)21時57分06秒
- 次世代のチームへ土台づくり。
こう割り切っていた信田は周囲の批判などものともせず、ベテラン
を簡単に二軍に落とした。しかし、急すぎる改革はそれまで主力
と言われていた選手の反発を招く。
競争して負けたのならともかく、いきなりポジションを二軍選手に
奪われたのだ。ベテランとしてはたまったものではない。
二軍に落とされた彼らの不満は爆発した。
練習のサボタージュから始まり、公然の場所での首脳陣批判。週刊誌
への裏ネタ暴露などを平気な顔をして行った。
- 47 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月17日(月)21時58分09秒
- しかし、チームがそんな状況下であっても、思い切って起用された
若手からは早くもチャンスを掴んだ者もいた。
その一番手は矢口真里。球界最小145センチの投手である。二軍では
先発一本だったが、スタミナに難があり一軍では抑えに転向する。
それまで先発しか経験がなかった矢口だったが、一軍の試合に出られ
る喜びの方が大きく、嬉々として投げた。もともと札幌では勝ち試合
が少ないため、信田は負け試合でも積極的に矢口を投げさせた。
小さい体を目一杯使って小気味良く投げ込むその姿は、信田の信頼を
得てかなりの割合で使われるようになる。
- 48 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月17日(月)22時00分03秒
- 続いて村田めぐみ。
線が細く全体的に非力な印象を受けるが、フィールディングには見るべき
ものがあった。肩はそこそこ、しかし俊足を生かした広い守備範囲に加え、
何よりケガを恐れないガッツが信田の心を掴む。村田はそれまで不動の
ショートだった吉澤ひとみをベンチに追いやってポジションをつかむ。
- 49 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月17日(月)22時03分26秒
- そして戸田鈴音。選手から親しみを込めて「りんね」と呼ばれる彼女は
アンダー気味の変則左腕である。戸田はかつての札幌のドラフト1位
選手だったが、全く芽が出ずに打者へ転向、その後阪神タイガースへ
移籍、なんとそこも1年で解雇になり、再び札幌へテスト入団という
変わり種であった。
戸田は古巣札幌へ戻った際に再び投手へ転向し、同時にサイドスローに
フォームを変えた。
ストレートはハッキリ言って遅く、一軍レベルとは言い難いが、抜群の
制球力と鋭く食い込むシュートが彼女の武器だった。そしてなによりも
勝負所でインコースを平気でつける度胸が信田の目に止まった。
「ウチの選手は精神的に強いのがあまりいませんから。あの若さで投手
失格や解雇を経験して、地獄を見てきたからこそだと思います」
インタビューに答えた信田はりんねをこう評した。
- 50 名前:はいめんて 投稿日:2001年09月17日(月)23時13分58秒
- 青板で野球小説書いてるものです。
面白いっす。今後の展開が気になります。
ところで、りんねは明らかに遠山奨志ですね。
阪神ファンとしてうれしい限りです。
- 51 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月18日(火)00時43分41秒
- 10月15日、東京ドームでの札幌×日本ハム、パ・リーグ今季最終戦。
日曜日だというのに、観衆はわずか4,000人足らず。もっと少ないかも
知れない。消化試合、それもダントツ最下位の札幌戦とくれば仕方の
ないといったところか。
世間の話題は一週間後に開幕する『ON対決』日本シリーズ一色だった。
- 52 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月18日(火)01時00分01秒
- ガラガラ、という他になんとも表現のしようがないドームの内野スタンド
に加護は座っていた。都内の病院に入院している祖父の見舞いのため、
上京して来たのである。
- 53 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月18日(火)01時01分04秒
- 両チームの先発はファイターズが金村暁、モーニングスは柴田あゆみ。
遊 村田
中 前田
三 アヤカ
左 ダニエル
D 稲葉
右 石川
一 斉藤
ニ 大谷
捕 大木
投 柴田
札幌のスタメンでレギュラーは3番アヤカ、4番ダニエルのみ。5番の
稲葉はベテランだが、この試合で来シーズンの契約が決まるいわば
テスト起用。その他は全てこないだまで二軍にいた選手たちであった。
- 54 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月20日(木)23時06分21秒
- 「おーすっ」
加護の背後から突然声がした。
振り向くと後藤が立っていた。
「遅い。1時間遅刻やで〜」
加護が口を尖らせた。
「ごめんごめん。まだ時間あるなってつい二度寝したら思いっきり
寝過ごしちゃってさぁ」
後藤が加護の隣の椅子に腰を掛けた。
「じいちゃんの様子、どう?」
「うん。眠ってた。…ただ、あんまり長くはないだろうって
医者が言ってた」
「そっか…」
「あのさ、そっちはどない? やっぱ優勝とかしたら、マスコミ
とかすごいんちゃうの?」
「あはは、まあね。まわりはね」
実際に会ったのが久しぶりなせいか、会話が途切れた。
グラウンドでは、大谷が派手にエラーをしていた。
- 55 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月20日(木)23時07分50秒
- 再び口を開いたのは、加護。
「やっぱり……希望は、巨人?」
「ん? あ、うん。そう…なるのかな。ま、一応地元だしね」
二人とも、顔はグラウンドに向いたままだ。
「ウチに来てくれっちゅうのは、やっぱ無理な相談だよなぁ」
「え? それって札幌にってこと?」
「…うん」
「札幌かぁ。遠いんだよねぇ。寒いし」
「はは、そうやなぁ。遠いねんなぁ。真希ちゃん、気にせんといて。
ウチのチームじゃ、まず契約金も満足に払えへんから」
加護はへへへ、と笑った。
「あいぼんが監督になったら、いったげるよ。札幌」
後藤もへへへ、と笑った。
グラウンドでは、石川がバンザイ後逸をしていた。
- 56 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月20日(木)23時12分08秒
- ( ‘д‘)<もうポロポロと…なにしてんねん…
( ´ Д `)<寒いのはいや…
- 57 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月22日(土)00時29分50秒
- スポーツジムに行くという後藤が席を立った後、加護の携帯が鳴った。
マナー違反だが、不人気カードが幸いしたのか近くには誰もいない。
「もしもし? ママ?……………………すぐ行く!」
加護は駆け出した。
- 58 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月22日(土)00時30分37秒
- 携帯で祖父の容態の急変を知らされた加護が病院についたのは、
それから約30分後のことだった。
「最後だと思います。近くにいてあげてください」
主治医の苅田が告げる。
その数分後、亜依の号泣が病室内から聞こえた。
- 59 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月22日(土)00時34分30秒
- 栄治の病室の前の廊下に、加護の両親と亜依、弁護士の水原、
そして試合を終えて駆け付けたモーニングスの監督代行・信田が
栄治の遺言を聞くために集められていた。
「それで、モーニングスの件ですが」
永年、栄治の秘書を担当していた三佳千夏が淡々と告げる。
「親父が売るなといってるんだろ? でも、あんな赤字ばっかりの
チーム、持ってたってしょうがない」
婿養子である博は生粋のビジネスマンである。割に合わない球団
経営はしたくなかった。ましてバブルがはじけ、本業でもリストラ
を進めなければ生き残れない御時世である。
「モーニングスは、亜依さんが継ぐようにと」
- 60 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月22日(土)00時35分08秒
つづけ
- 61 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月22日(土)14時21分06秒
- 「バカな!!」
博が叫んだ。
「亜依はまだ15だぞ!そんなものは認められない!」
「だが博、法律的にはこの遺言は有効だぞ。15歳でオーナーに
なっちゃいけないという法律は日本にはない」
水原が冷静に言う。博がジロリと睨む。
「おいおい、俺は仮にも弁護士だぜ。そういった類いのウソは
つけんよ」
水原は首を振った。
「なぁ、亜依、お前にプロ野球のオーナーなんて無理だ。
そう思うだろ? ここは父さんに任せてくれないか?」
博が話の鉾先を亜依に向ける。
「いやや」
即答だった。
- 62 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月22日(土)14時23分41秒
- 「いやや。パパ、おじいちゃんのモーニングス売る気やろ?
そんなんアカン。水原のおじさん、ウチ、やったるわ。
モーニングスのオーナー、なったる!」
この瞬間、亜依が事実上モーニングスのオーナーに就任した。
「亜依!」
「パパはウチに何してくれた? 仕事仕事でなーんもして
くれてへん。せやけどじいちゃんは違う。ちゃんと亜依の話を
聞いてくれたし、遊んでくれた。
おじいちゃんの夢はウチが絶対につぶさせへん!」
博は、亜依の気迫に圧された。
「そこまで言うならやるがいい。ただし条件付きだ。来年モーニン
グスが優勝できなかった場合、ウチは球団から一切の手を引く。
本当なら、ウチには野球ごときに使っていい金はないんだ」
それだけ言うと、博は踵を返した。
「バッカヤロー!! だったら優勝したるわい!!」
反射的に亜依は絶叫した。
「病院内は静かに!」
ナースステーションから怒られた。
- 63 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月22日(土)14時25分35秒
- 「そうはいったものの…」
亜依は途方にくれた。
この時点で、頼れるのは信田のみ。秘書の三佳はできるだけ協力
すると言ってくれたが、秘書としては有能でも野球に関しては
それほど頼りになるとは言いがたい。
「前途は多難ですよ、オーナー」
勢いで言ったものの、その言葉の大きさに気付いて落ち込む加護
に信田が声をかけた。
「信田さ〜ん、ウチどないしよう!」
「まず、監督探しからですね」
「そっか……え? えぇっ!?」
- 64 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月22日(土)14時29分10秒
- 「私はあくまで『代行』ですから。それにこのニュースを聞いたら
今のコーチ陣は全員チームを去ると思いますよ。やる気ないですし」
「お先真っ暗やな…」
頭を抱えた加護に、見かねた三佳が助け舟を出した。
「話を整理しましょう。第一に、マスコミへの対応。かなり面白
おかしく書かれるでしょうから、そのあたりは私ができる限り
フォローします。次に、信田さんにかわる後任監督探しです。
それと、秋のキャンプの候補地探し――これは早急に行わなければ
なりませんね。…それと、選手の契約交渉の準備――といった
ところでしょうね」
三佳は栄治の秘書をしていただけあり、すべきことは把握している。
「信田さん」
「なんでしょう?」
「監督…ウチがやります」
- 65 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月22日(土)14時29分43秒
つづけ
- 66 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月22日(土)14時35分21秒
- ( ‘д‘)<異端過ぎて、誰も見てへん気がする
( ´ Д `)<ど〜でもいいよ
- 67 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月24日(月)14時36分29秒
- 見てる人間はいます。
がんばれ!
- 68 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)22時54分51秒
- 信田は耳を疑った。
「は? 冗談…ですよね?」
「本気です。このチームの監督を引き受けてくれそうな人、信田さん
しかおらへんですもん。信田さんに断られたら、探してるだけで年を
越えちゃいます。せやから…」
「だからって、何も自分でならなくても…」
「だ・か・ら・です。但し、信田さんにはコーチになってもらいます
一抜けた、は無しでっせ」
加護がニヤリ、と笑った。
- 69 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)22時57分44秒
- 翌朝。
「やられました!」
そう叫びながらホテルに飛び込んで来たのは、モーニングスの東京
事務所で広報を担当している中西百重だった。
中西が手に持っているのは信ぴょう性の薄い記事…いわゆるガセネタ
では定評のある、ハロー!スポーツ。略してハロスポ。
昨夜、遅くまで信田、三佳らと共にミーティングをして、そのまま
三佳の部屋に泊めてもらった加護が眠い目をこすりながら起きて来る。
この部屋の主である三佳千夏はいつ起きたのだろうか、既にスーツ
姿である。
「おはようございます。監督」
「んぁ、おはよございます。一体なんですか、朝っぱらから」
眠そうな目で言いながら、ふぁ〜ぁ、と一つ大きなあくびをする。
「亜依さん、昨日の病院での新オーナーと新監督の件、ハロスポに
スッパ抜かれました」
- 70 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)23時00分15秒
- 「えっ、ホンマ!?」
その一言で、眠気が吹き飛んだ。
「球界激震! 札幌に少女監督誕生!」
「選手は戸惑い!? 監督は女子高生! 早くも空中分解の危機か」
どこから情報がもれたのか、センセーショナルな見出しがスポーツ紙の
一面を賑わしている。
「迂闊でした。昨日、ハロスポの記者を病院内で見かけたんですが、
てっきりモーニングマス……いや、覚せい剤疑惑のあったアイドルの
ネタを追ってるもんだとばかり……」
申し訳なさそうに頭をかく中西。
- 71 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)23時03分32秒
- 「出てしまったことは仕方ありませんね。遅かれ早かれ明らかになる
ことですから、今日の午後にでも記者会見を開きましょう。情報ソース
がハロスポですし、ウチみたいな弱小球団が会見を開いても、マスコミ
が来るかはわかりませんけどね」
しかし、そう自嘲気味に言った三佳が手配したホテルの一室は、FAX
で流した記者会見の時間――午後2時の1時間前には、既に多くのマス
コミ関係者でごった返していた。
- 72 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)23時04分52秒
- 基本的にプロレスネタ以外はガセネタの宝庫と言われるハロスポだが、
反面、時折場外ホームラン級のスクープを飛ばすことがある。
プロ野球に女子高生の監督など、まさにその類いで、普段なら一笑に
付して終わるところだが、「ネタ」にされた札幌モーニングス本体が
記者会見を当日に行うという、その行動の迅速性がマスコミに身を置く
人間の嗅覚にひっかかった。
「もしかしたら…………」
- 73 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)23時18分59秒
- 午後2時。広報の中西とアシスタントの納見佳容がセットされた舞台に
現れ、いよいよ記者会見がスタートする。
「本日は急な催しにもかかわらず、お集まりいただき誠にありがとう
ございます。早速ですが、本日の記者会見の趣旨を説明させて頂きます。
皆様もご承知の通り、今朝のハロー!スポーツ紙上に載った、札幌
モーニングスの次期監督問題についてでございます。
結論から申し上げますと、載っていた記事について、おおよその部分で
事実である、と申し上げます」
中西が一気に言い終わると、にわかに会場がざわめいた。
- 74 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)23時46分46秒
- ペナントレースが昨日で終わり、夜の便で札幌へ帰ってきた選手達は、
寮のリビングにあるワイドテレビの前に集まっていた。
「あらら、こりゃまたえらい事ですな」
テレビで流れる記者会見の模様を見ながら、しかし全然えらい事だと
思ってないような口ぶりでそう言ったのは、市井紗耶香(背番号9)。
市井は札幌が誇るヒットメーカー。クセのない広角打法と、芸術的な
バントで最下位に沈む札幌から今季唯一人オールスター出場を果たした
スター選手である。
「え〜、じーさんがいなくなったと思ったら今度は女子高生かよ〜」
市井の横にちょこんと座りながらも、独特のカン高い声で不満を意を表明
する新ストッパー矢口真里(背番号48)。
「ま、ええがなええがな」
シーズンが終わったからか、昼間から酒をかっくらって意味不明の事を
言っているのが、昨日のシーズン最終戦で2ランホームランを打って、
来季への希望が首の皮一枚つながったベテラン稲葉貴子(背番号2)。
- 75 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月26日(水)01時21分01秒
つづけ
- 76 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月27日(木)01時31分09秒
- ミラクル近鉄マンセー北川のため今日はお休みれす。
- 77 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月27日(木)13時37分19秒
- >>76
あれはまさしくミラクルでしたな(w
- 78 名前:ま〜 投稿日:2001年09月30日(日)00時12分22秒
- 前から気になっていたんだが、今日はじめて読んだよ。
すごい面白いっす!プロ野球ヲタにはたまらん・・。
随所にマニアックなネタがあるし。
作者は近鉄ファン?俺巨人ファンなんだよ・・。
- 79 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月30日(日)15時31分20秒
- 俺はヤクルトファン。
ごめんよ、ま〜さん。今季はもらいました。
近鉄ファンらしい作者氏とは日本シリーズで燃えそうだね。
応援してます、続き頑張ってちょ。
- 80 名前:はいめんて 投稿日:2001年09月30日(日)18時43分29秒
- 昨年最下位からの優勝、すごいですね。
そして勇気づけられた。
そんな俺は阪神ファン。
- 81 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月30日(日)22時33分44秒
- 大阪人はどっちが優勝しても飛びこむからカコイイな
- 82 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月30日(日)22時46分58秒
- 「梨華ちゃんいません?」
ひょいっと顔を出したのは吉澤ひとみ(背番号5)。札幌期待の和製大砲だが、
「未完の大器」という表現から脱することができないでいる。
16本塁打を放ちながら、打率はジャスト2割。その上30近いエラーと三振の
多さで他球団からは安全パイ呼ばわりされている。
「石川? さっき外に出てったけど」
市井がテレビを見ながら言った。
「ありがとうございまーす。あれぇ? 一緒に買い物行こうって言ってたのになぁ」
吉澤がぼやきながら姿を消した。
- 83 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月30日(日)22時48分17秒
- 「では、札幌モーニングスの新監督をご紹介いたします」
どうぞ、と納見が合図を送る。
信田と三佳に挟まれ、舞台に加護が登場する。
緊張のせいか、顔面は蒼白気味。
「えっと、このたび札幌モーニングスの監督になりました加護亜依です。
年齢は15歳で、好きなタイプは…」
信田がヒジで加護を突く(そんなことは言わないでもいいです)
「え、あ、よ、よろしくお願いします」
ちょこん、と頭を下げた。
- 84 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月30日(日)22時50分16秒
- 会見を終え控え室に戻って来ると、加護の携帯電話がメロディを奏でだした。
加護があわてて取り出す。
「加護ちゃんです♪」
「真希ちゃんです♪」
聞き慣れた声が帰ってきた。
「なんだ真希ちゃんか」
「なんだとは、なんだー」
「なんだとは、なんだとは、なんなんだー」
「なんだとはー、じゃなくって、テレビ! 本当なの!?」
「えーと、まぁ、うん。そうなっちった」
受話器の向こうにいる後藤に見えるはずもないが、加護はペロッと舌を出した。
ほどなくして、受話器から後藤のため息が聞こえた。
- 85 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月30日(日)22時51分15秒
つづけ
- 86 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月30日(日)23時01分37秒
- >77さん
代打逆転満塁サヨナラ優勝決定ホームランなんて二度と出ない気が(w
>ま〜さん、はいめんてさん、名無しさん
レスありがとうございます。ネタを汲み取っていただけると嬉しいです。
俺の基本ラインは阪急→オリです。藤井康雄がいるうちはオリファソ…
ただし、1988.10.19および1989.10.12で近鉄もマンセーに…(w
野球小説と銘打ってる割にさっぱり野球をしてないのが気になりますが、
早く開幕させたいものです。
藤井代打逆転満塁サヨナラホームランマンセー
- 87 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)20時45分42秒
- 翌朝、始発の新幹線で帰阪し、着替えて登校した加護を待っていたのは、校長室
への呼び出しだった。
好奇の目で見られる友人の為に、松浦亜弥がそばにいてくれた。
松浦の何も聞かないその気づかいが嬉しかった。
わが校の品位を傷つけてくれた。
高校生がプロ野球の監督なんて。
一体何を考えているのか。
全く、バカげている。
- 88 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)20時49分02秒
- そのバカげていることをやろうと決めた時から、加護は腹を決めていた。
そして、迷うことなく一通の封筒を差し出した。
『退学届』と書かれた封筒を。
その日、加護亜依は女子高生から名実共に札幌の監督として動き出すこととなる。
史上初の女性、しかも15歳の新監督加護はスポーツバッグを一つもって札幌へ
向かう機上の人となった。
- 89 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)20時51分21秒
- 『今年のドラフトの目玉、後藤真希(天王洲学園)が意中の球団をついに宣言!
なんと弱小札幌モーニングスを逆指名!!
『札幌以外は断固拒否!』どうするどうなる今年のドラフト!』
「真希ちゃん、あの時の約束ちゃんと覚えてたんやな……」
朝、球団事務所で派手にブチ上げられたスポーツ紙の一面を見ながら加護が
つぶやいた。
奥から、熱いモーニングコーヒーを持って来た信田が聞く。
「どうすんですか? 確かに後藤はノドから手が出るほど欲しい逸材ですが、
ウチじゃ契約金払えませんよ」
- 90 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)20時56分46秒
- 「そう、そこが問題ですねん。ドラフト1位に契約金なしっちゅうんはさすがに
アカンやろうし…」
「対外的にもまずいですよね。それが後藤真希であればなおさら」
と三佳。
「それに、この話題で球界中大騒ぎです。本命と見られていた巨人は、後藤獲得
に向けて裏金も相当積んでたみたいですから」
「巨人かぁ」
「今年の巨人は優勝こそしましたけど、上原が故障であまり戦力になりません
でしたからね。ベテランの斉藤や桑田も今イチでしたし。後藤のような右の
パワーピッチャーは、是が非でも欲しいところでしょう」
独自のネットワークを持つ信田が加護に最新情報を教える。
- 91 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)20時58分54秒
- 「ねぇ信田さん、裏金積んでところで、すんなり真希ちゃん獲得できるとは
限らないと思うんですが。高校生ってクジちゃいましたっけ?」
「その通りです。だけど、巨人以外行かないって言い続ければ、競争相手は
減るし、万一外れても大学や社会人に進ませて、何年か後に逆指名させると
いう手もありますから」
次から次に問題点が出て来るので、加護の悩みはつきない。
監督になって何日もたってないが、最近髪が薄くなってきた気もする。
…うっさい。
- 92 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)21時22分28秒
- 東京で行われた札幌新監督の記者会見が終了したころ、札幌市内にある若手選手が
暮らす『朝娘荘』の電話が鳴った。
いまどき裸電球がぶら下がる、古い木造建築の薄暗い廊下の隅に置かれた電話番
として、いつのものかわからない週刊誌を読んでいた木村麻美が受話器をとる。
「はいはーい、こちら札幌モーニングス朝娘荘でーす」
受話器の向こうから聞こえてきたのは、しゃがれたおっさんの声。
『あのー、こちら稚内港湾事務所っすけど、おたくんとこにヤスダケちゅう人
おりますかね?』
「ヤスダケ…ですか?」
- 93 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)21時25分15秒
- 「ん? あさみちゃんどったの?」
相手の言葉の意味がくみとれず困ってるあさみに、たまたま通りかかった市井が
尋ねる。
「あ、市井さん。なんか稚内からなんですけど、ヤスダケって人いるかって聞いて
くるんですよ。これって、新手の勧誘ですかね?」
ヤスダケ、という言葉を聞いた瞬間に市井の顔色が変わった。
「バカ、貸せ!」
市井は乱暴に受話器をひったくった。
「もしもし? 電話変わりました! ヤスダケイですよね!? はい、います!
それで、彼女がどうしたんですか!?」
- 94 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)21時28分10秒
- 『あんのう、今日着いた貨物船に、そのヤスダケが隠れて乗ってたんだ。
ほったらここへ電話してくれっちゅう以外はなんも話さねーんだもん。
ったく困っちゃてよぉオラ』
「そちらの場所は? え、稚内? すぐ行きますんでそこから動かさないで!!」
乱暴に受話器を叩き付けると、いつもヘロヘロしている市井とは思えない程の
形相で、あさみを呼びつけた。
「あさみ、矢口呼べ! それと夏コーチに連絡して圭ちゃんが見つかったって
伝えろ! 市井は今から稚内へ行ってくる!」
「はっ、はい…」
あさみはその迫力にわけもわからぬまま、返事せざるを得なかった。
- 95 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)21時28分44秒
- 駐車場に停めてある市井ご自慢のアストンマーチンのエンジンを回し始めると、
弾かれたように走って来るちびっこい矢口真里の姿が確認できた。
バタン! とドアを開けて滑り込んでくる矢口が乗ったか乗らないかのうちに、
市井は車をスタートさせた。
「圭ちゃんが見つかっ…うひゃぁぁぁぁぁ!!」
矢口の悲鳴が残り、あっという間に車は見えなくなった。
- 96 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)21時34分44秒
- 打ち合わせのため球団事務所に赴いていた札幌のニ軍守備コーチ、夏まゆみの
携帯電話がなった。
「はい夏です。あ、あさみ? うん…うん、え? ヤスダケ? …うん、はい、
ちょっと待ってね」
ヤスダケ? ヤスダケイ? そんなやついたかな? …………あ、いた。
そういえばそんな名前の奴がいたっけな。
記憶の引き出しを引っぱりだしていた夏は、再び携帯を握り直した。
「もしもし、ごめん、そいつね、いたわ。…うん。保田圭っつーんだけど。
…え? みつかった?
……は? 稚内? 市井と矢口が向かったって?
ったくアイツら、勝手な行動を……わかった。信田と監督にはこっちから伝える。
うん、はいはい、じゃ」
- 97 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)21時36分10秒
つづけ
- 98 名前:はいめんて 投稿日:2001年10月01日(月)22時21分26秒
- 稚内と保田、なんかイメージ合う。
- 99 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月03日(水)00時58分49秒
- やばいよやばいよ。
- 100 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月05日(金)22時56分57秒
- それからほどなくして、信田美帆の元に夏から電話が入った。
「わかりました。ありがとうございます夏コーチ」
電話を切ると、信田はため息をついた。加護が心配そうに見る。
「どうしはったんですか? また悪い話ですか?」
「いや、悪いような嬉しいような……見つかったんですよ」
「見つかった? 何が見つかったんです?」
「狂犬です」
- 101 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月05日(金)23時00分05秒
- 市井と矢口を乗せたアストンマーチンが稚内についたのは、朝娘荘を出てから
約5時間がたった頃だった。
コンクリートづくりの港湾事務所の前に車を停めた2人は、体を刺すような潮風
に吹かれながら建物の前に立つ。さほど大きくない建物は、長い間人々を雪と
寒さから守りぬいてきた重みを感じさせるようだった。
「紗耶香、朝娘荘よりいい建物だね」
「そうね。さ、行こう」
市井は引き戸に手をかけた。
- 102 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月05日(金)23時02分58秒
- 中に入ると、さすが北の果て。早くもストーブに火が入っていた。
「あの、どちらさまでしょう?」
突然声をかけられた2人はドキッとした。奥から出て来たのは、若い…二十歳
くらいの女性。髪は茶色。これは普通だが、こういうものが好きなのか目の下
に銀色の★をつけている。
「あ、私は市井と言います。こっちのちっこいのは矢口。えーと、貨物船に
乗ってた人のことで連絡受けてやってきたんですけど…」
おずおずと尋ねる。
「あー、あなたがたが例の。私はここでアルバイトしてる北上って言います。
話は伺ってます。連れてきますんでちょっと待っててくださいね」
北上はどうぞ、といって2人に椅子を勧めた。
- 103 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月05日(金)23時05分25秒
- 「う〜ん…」
矢口が腕組みをして難しい顔をしている。
「なに? 急に考え込んだりして。また知恵熱出るよ」
市井がからかうが、矢口は考え込んだまま動かない。
「大丈夫? お腹痛いの? ここでちゅかー? 診察してあげまちゅよー」
「ちげーよ。……どっかで見たことあんだよね、あの北上ってコ」
「どこでよ?」
それが思い出せないんだよ、と矢口がつぶやいた。
それっきり会話はなく、沈黙が支配する時がしばらく続いた。姿を消した
北上はなかなか戻ってこない。
2人は、ストーブの火を静かに見つめるしかなかった。
- 104 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月05日(金)23時09分57秒
- 「あ! 思い出したぁぁ!!」
身じろぎもしなかった矢口の突然の行動に市井がビクっとする。
「なにさ、びっくりするでしょ」
「あのコだよ。思い出したんだよ。彼女をどこで見たのか」
「で、どこさ?」
「名前が違うから思い出すのに時間がかかったよ。去年の都市対抗に出てたんだ」
「都市対抗? ってことは野球選手なわけ?」
「うん。今はクラブチームになったけどNTT北海道のピッチャーだったはずだよ。
チームは1回戦負けだったんだけど、6回から8回まで投げてパーフェクト。
矢口がヒマだったときに、スカウトの和田さんにビデオを見せてもらったんだ。
あのときは確か……領家って名前だったはずだけど」
「で、そのリョウケさんは、思わず立ち上がって力説するほどすごい人なワケ?」
ふーん、と聞いている市井は、あまり興味がなさそうだ。
「すごいんだって! 金属の社会人野球で9連続奪三振だよ!! ドラフトの
目玉になるかもとか話題になって。けど、企業チームからクラブチームになった
ときにいきなり会社やめて行方不明になったって、和田さんが悔しがってた」
- 105 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月06日(土)01時03分57秒
- 「それは過大評価というものです。……大変お待たせしました。保田さんを
連れて来ました」
いつの間にか北上=領家が立っていた。
そしてその横に市井と矢口にとって懐かしい顔、同期の保田圭の姿があった。
「(=゚ω゚)ノぃょぅ 」
よっ、と手を挙げる保田。
行方不明になって実に3年。ようやくなされた再会に、市井と矢口はかすむ
視界で「バカ」と言うのが精一杯だった。
- 106 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月06日(土)01時04分29秒
つづけ
- 107 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月08日(月)01時07分01秒
- メロソの新曲(・∀・)イイ!
- 108 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月11日(木)00時43分00秒
- チャム復帰!
- 109 名前:傍観者 投稿日:2001年10月13日(土)18時49分30秒
- 日米問わず野球ヲタだけに野球小説は嬉しい限りです。
加護が監督っていうのがイイ!そういうおれは石川ヲタ・・・
- 110 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月17日(水)14時26分00秒
- 題名がイイ!!内容もでたらめなところがイイよ保田とか
野球はみないけど、タッチとかH2とかマンガ好きだから期待
最初の試合の会話もセンスがでてていい
更新ガンバレ
- 111 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)01時26分58秒
- レスついてた。
嬉しい。
忙しいのと一部人物の役割を決めかねているので遅くなりました。
では最下位――違った。再開。
- 112 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)01時27分55秒
- 一通り落ち着いた後、3人と北上はストーブを囲んでお茶を飲んでいた。
「でさ、ぶっちゃけた話、圭ちゃん今までどこで何してたのさ?」
市井が口火を切った。
「ん? ロシアにいた」
矢口がブバーっと茶を吹き出す。
「きったねーな、矢口」顔をしかめる保田。
「ろしあぁ?? 圭ちゃん、市井の記憶だとあなたは確かメキシカン・
リーグへ野球留学に行ったはずでは?」
「うん。そう。あたしもメキシカン・リーグに行ったつもりだった」
- 113 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)01時29分59秒
- 「あら、意外と軽く言うのね」
「本当に最初はちゃんとメキシコに行ってたわよ。で、ある日のことよ。
試合を終えて家に帰ろうとしたら、全員ブラックに捕まっちゃってそのまま
ジェットでGO!!」
矢口と市井が同時に顔を見合わせ、領毛(北上)も?といった表情を浮かべた。
「全員ブラック? もしかして、それってメン・イン・ブラックのこと?」
そうとも言う、と保田は頷いた。
「メキシコでメン・イン・ブラックねぇ。それにしてもジェットでGO!!って
アンタ…」
「そんで、連れてかれたとこがロシア。ついたら吹雪よ、吹雪! ったく
メキシコからいきなりロシアは死ぬわよ! 地平線が見えるグランドなんて
初めて見たし。で、何されんのかと思ったらアタシに野球教えろって言って
みたいなのよ」
「はぁ!? ロシアで野球教えるぅ?」
市井、矢口、ついでに北上が同時に声をあげた。
- 114 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)01時31分23秒
- 「真面目な話すると、あっちにも野球のロシア代表チームっつーのがあるん
だよね。サッカー王国のヨーロッパにだってマイナーながらも野球チームとか
あって、国単位だとオランダとか強いし。まぁ日本で言えば高校野球レベル
だけどね。それで、ロシアはお金がないからそれまでチームはあってもコーチ
がいなかったわけさ。だから、コーチを探しに……なぜかメキシコに来た
らしいのよ。で、アタシが狙われて連れてかれたみたい」
「それって誘拐って言わないかい? フツー」
「まぁね。でも、言葉もわかんないしお金もないから日本に帰れないし、
電話もないしで結局なんだかんだで3年かな」
- 115 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)01時35分44秒
- 「よく帰って来れたわね」
感心したように市井が言った。
「言葉もある程度しゃべれるようになったのもあるけど、ヨーロッパ選手権で
オランダに勝ったっていうのが一番大きかったわね。何しろ打倒オランダが
目標だったから」
「それでオランダに勝ったことで、まぁ帰れそうな雰囲気だったから、アタシ
も3年間居たことだし、ウォッカも飽きたし、そろそろ帰ろうかってことで、
シベリア鉄道に一週間くらい揺られて、あとは貨物船に隠れて…どんぶらこと
ここまでやっと帰って来たわけさ」
よく殺されなかったもんだ、自分だったら…そう考えて市井、矢口、そして
北上は身震いした。
- 116 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)01時42分11秒
- 「コーチとか言っても、なんだかんだ言ってアタシも選手として出てたんだ
けどさ。今となってはいい想い出よ。経験値たまったし、いやー、来年が
楽しみだわ。エイプリルをベンチに追いやってアタシの開幕一軍は固いわね」
嬉しそうに話す保田を見て、市井が言いにくそうに切り出す。
「あのさ、圭ちゃん。すごく言いにくいことなんだけど…」
あっはっはーと顔をクシャクシャにして笑う保田。
「年俸が下がったの? 行方不明だったし、まぁしょうがないなぁ」
「あのね、落ち着いて聞いてね。…………
圭ちゃん、去年でクビになってるんだよね…」
- 117 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)01時44分02秒
- ( ‘д‘)<ウチは出ないんか
( ´ Д `)<ロシア…寒そうだね…
- 118 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月20日(土)02時13分46秒
- 記者会見を終え、札幌に戻った途端、怒り心頭の保田の襲撃を受けた加護。
事情を聞いた加護は即座に現役復帰を決定した。
決して保田に
「復帰させないとただじゃおかないからね」
と凄まれたからではない。
なぜなら加護が監督になってからというもの、当初の半分近くまで選手が
減っていたからだ。FA権のあった選手のうち、中澤、稲葉以外は全て宣言、
事実上来季の戦力外となっていた。
今は一人でも選手が欲しい。
そんな状況でなければ保田の復帰はありえなかった。
- 119 名前:ハロー!スポーツ 投稿日:2001年10月20日(土)11時38分58秒
- 【支配下選手登録公示】△札幌 保田圭(現役復帰)、小湊美和(トレード移籍)
- 120 名前:名無し 投稿日:2001年10月25日(木)09時33分33秒
- 催促sage
- 121 名前:傍観者 投稿日:2001年10月27日(土)09時23分47秒
- 更新がんばってください
- 122 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月30日(火)00時07分39秒
- 日常が忙しいのもあったんですが、書いててわけわかんなくなってきたので
登場(予定含む)人物を整理中です。
もう少しお待ちください。
なんだかえらい若いチーム構成になってしまった……。
- 123 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
- ( `.∀´)ダメよ
- 124 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月30日(火)20時39分30秒
- プロ野球選手を目指す時には避けては通れない道、ドラフト。
戦力の均等化を旗印に始まったこのドラフト制度も、数々のルール改悪を経て
現在の逆指名枠のついた不格好な制度として、依然存在する。
2001年からは自由競争枠という、ドラフトの意義をぶち壊すようなさらなる改悪
が加えられ、資金力のある球団がますます強くなっていくような仕組みに変ぼう
を遂げることが決まっている。
- 125 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月30日(火)20時41分38秒
- 弱小球団札幌の1位指名は当然ながら、高校ナンバー1右腕・後藤真希。
メジャーと同じウェーバー制度なら、イの一番に後藤を獲得できるのだが日本の
制度では高校生に逆指名制度は認められていないし、ウェーバー制でもない。
まさに日本式、クジ引きである。
- 126 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月30日(火)20時43分19秒
- クジで引き当てられる確率がある以上、逸材・後藤真希を他球団が見逃すわけは
ないのだ。
相思相愛の後藤の1位指名は早い段階で決まっていたが、この球団の問題は2位
以下の指名選手である。ほとんどのアマのスタープレーヤーが札幌拒否を意思表示
する中、札幌が発表した2位(逆指名枠)は、他の11球団のスカウト、フロントが
アっと驚いた北上アミ(稚内漁業組合)。
「やられた。今年と去年の目玉をまんまと持ってかれたとしたら、来年の札幌は
ちょっとやっかいかもしれん」
あるスカウトはこう漏らした。
- 127 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月30日(火)20時44分51秒
- 「矢口さん、もうちょっと詳しくお願いします」
保田を迎えにいったはずなのになぜか稚内に残った矢口から、新戦力発見の報告
を受けた加護が聞き返す。横にいる信田も領毛のことは知っていたが、名前と
ドラフト前に失踪したという程度の知識しかなかった。
「えーと、名前は…今は北上アミと名乗ってるけど、本名は領毛あゆみ。元NTT
北海道のサウスポー。140キロ台のストレートと縦のカーブ、シンカーが武器で、
制球力もなかなか。
去年のドラフトの目玉の1人と言われていた選手で、中日や西武、そして巨人
などが狙ってると噂されてたけど、都市対抗直後に失踪して行方がわからなく
なっていました」
- 128 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月30日(火)20時45分40秒
- 「そんなに大物なんですか? なんでウチに?」
「なぜかわかりませんけど、ウチでとる気があれば逆指名してくれるそうです」
「うーん」
「もし獲得できれば間違いなく即戦力っすよ、お買得でしょ?」
矢口は乗り気だ。
「ブランクがあるわけじゃないですか。その辺はどうなんです?」
「さっき球受けたんすけど、全然大丈夫っす。たぶん140は出てると思いますね」
「それはいいとして、契約金とか…どうなんですかね? 矢口さんも知ってると
思いますが、ウチは今、親会社とのパイプがほぼストップしている状態ですから
金銭的な余裕は全くないです」
- 129 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月30日(火)20時50分33秒
- 「あの、彼女、契約金いらないそうですけど」
加護が驚いた。契約金がいらないなんて、奇特な人もいるもんだ。
「ただし彼女からは条件が一つあって、今働いている漁業組合の同僚の大木衣吹
という選手を一緒に指名することが唯一の条件だそうです」
受話器を話した加護が信田に相談する。
「…だそうです。信田さんはどう思います?」
「ウチは後藤以外のめぼしい選手には入団拒否をつきつけられてますから、
獲れるのなら獲りましょう。なんせバッティングピッチャーも足りませんからね」
その言葉で3人目の新人獲得が決まった。
「わかりました。2位で北上アミを指名します。そして3位で大木って選手も」
- 130 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月30日(火)21時01分03秒
- ああっ
53レス目で既に大木の名前が……
気にしないように。
- 131 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月01日(木)00時27分13秒
- 先日のスポーツ紙の載った衝撃の札幌逆指名以来、札幌以外は頑として拒否の
姿勢を示す後藤に獲得をあきらめる球団がぽつぽつ出始めた。
しかし、巨人、阪神、福岡ダイエーの3球団はどうしても降りない。
特に柱のいない福岡ダイエーは早くから強行指名を公言していた。
「くそっ、これじゃ何のために逆指名したんだかわかんないよ…」
ドラフト当日がせまるにつれ、後藤の憂鬱加減は大きくなっていった。
- 132 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月01日(木)00時27分53秒
- 迎えたドラフト当日。
結局、後藤を指名したのは4球団にのぼった。
読売ジャイアンツ。
阪神タイガース。
福岡ダイエーホークス。
札幌モーニングス。
やはり、という感じである。
それだけこの後藤の右腕は、入団拒否の態度を示されたとしても魅力があると
いうことだ。
- 133 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月01日(木)00時30分05秒
- 「後藤ですか? やはりですね、ぜひとも欲しい人材ですね。札幌以外拒否ですか?
ん〜、引き当てたらわが巨人軍に入団させる自信はもちろんありますね、ハイ」
ミスターがにこやかに言い、
「工藤の抜けた穴を十二分に埋めてくれる逸材ですからね、やはりここはリスク
をしょってでも指名をお願いしました」
世界のホームラン王がそう語り、
「150キロがコンスタントに出るんやから、そりゃ指名するわ。ケガさえなければ
ウチの打線でも最低でも2ケタは計算できるからな」
月見草がつぶやく。
- 134 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月01日(木)00時41分20秒
- 「これじゃ逆指名した意味が全然ないよ。こりゃ浪人かも…」
報道陣がつめかけた、天王洲学園の記者会見場で後藤がテレビを見ながら不満
そうに漏らした。
いよいよ運命が決まってしまうクジである。
長嶋、野村、王というビッグ3に囲まれて、札幌モーニングスオーナー兼監督
である加護亜依が壇上に立った。
加護が最初に箱の中に手を入れる。
前夜、ベッドに入りながら、クジをとる時は一番上と決めていた。
その通り一番上のクジをスッと掴み、後に譲る。
そして4人がそれぞれにクジをつかんだ。
- 135 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月01日(木)00時46分45秒
- 最初に『お手上げ』ポーズをしたのは阪神野村監督だった。
ついで長嶋監督が笑顔で首を横に振った。
王か、加護か。
九州か、北海道か。
リーグ1位か、ダントツ最下位か。
指名拒否球団か、意中の球団か。
だめや……ドキドキして見れへん…
- 136 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月01日(木)00時47分35秒
- 「加護君、おめでとう」
ぎゅっと目をつぶっていた加護は、隣にいた王監督に声をかけられた。
恐る恐る目を開けると、赤い文字が飛び込んできた。
『交渉権確定』
加護の持つクジに、確かにそう記してあった。
「よっしゃぁ!」
自宅では、後藤が珍しく派手なガッツポーズを見せていた。
「今の気持ちは?」
「最高!!」
「では入団決定ということでいいんですね?」
「来るなって言われたって行きますよ!!」
無数のフラッシュを浴びる後藤の横のブラウン管には、涙を流しながら笑顔を
見せる少女監督の姿を映していた。
- 137 名前:傍観者 投稿日:2001年11月01日(木)21時15分53秒
- 更新したんですね。がんばってください
- 138 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月02日(金)03時31分00秒
- 更新されてる!!
がんばってください。
- 139 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)10時03分42秒
- ドラフト終了後、その足で天王洲学園を加護と信田が訪れ、札幌モーニングス・後藤真希が
誕生した。当然ながら、即決であった。
札幌唯一のエースナンバー20を信田から受け継ぐことも決まった。
2000ドラフト・札幌入団新人選手
後藤真希 投手 背番号20(天王洲学園)
北上アミ 投手 背番号33(稚内漁業組合)
大木衣吹 捕手 背番号39(稚内漁業組合)
藤本美貴 投手 背番号58(浅草橋高校)
- 140 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)10時19分59秒
- 「ダニエル!」
「オー、アイボーン、元気デシタカー?」
成田空港のゲートから出て来た大柄な外国人に加護は飛びついた。
ダニエル・デラウニー。札幌の4番打者として、長きに渡り活躍
してきた功労者だ。
在籍7年で30本塁打4回、通算212本塁打は、中澤に次いで札幌史上
歴代2位の記録を持つ。根っからの明るい性格で、加護は小さい頃、
球場に遊びに行ってはよく遊んでもらった覚えがある。
「アイボーン、大キクナリマシタネー」
「なってへん」
- 141 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)10時22分13秒
- その不動の4番も、昨年永年の働きで腰に蓄積された疲労……
抱えてしまった爆弾がついに破裂。
惜しまれながら引退したばかりであった。
ダニエルは引退した後、自分のもう一つの夢だった大学進学を目
指そうと決めていた。
しかし、日本で自分のチームがかつてない苦境に立たされている
事を伝え聞いた。
古巣が捨てられた猫のように誰かに救いを求めている。
それを聞いたとき、彼女はいてもたってもいられなかった。
大学はいつでもいける。またチャンスがある。
ダニエルは買ったばかりのノートを閉じた。
- 142 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)10時26分51秒
- 加護の監督就任が決まってから、水面下であらゆる方面にコーチ就任を
要請してきた信田だったが、15歳の監督の元に来てくれるコーチなど
日本の中には存在しなかった。
「せめて信ちゃんが監督なら受けるんだけどね…」
誰もがそう言った。
そんな中での打撃コーチ・ダニエルの就任決定は、札幌では天の助け
とも言えた。
- 143 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)10時34分55秒
- 現役時代、その飛距離から単なる粗いパワーヒッターに見られがちだが、
ダニエルは意外に起用なバットコントロールを時折見せる。
公式な場では英語で通しているが、7年の日本生活で日本語もかなり
上達し、ベンチなどではオール日本語ということもあった。
ホンマ助かったわ。
まさに加護の本音であった。
とにもかくにも、投手コーチと守備コーチと打撃コーチは揃った。
信田さん、ダニエル連れてきてくれておおきに。
優しい笑みを浮かべていた信田と目が会った加護は、お礼の意味を
こめて会釈をした。
- 144 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)10時51分17秒
- ドラフトが終わっても、加護の仕事はつきない。
投手については後藤と北上の入団でどうにかなりそうだ。コーチの
信田もいるし来年に向けてなんとか期待が持てる。
今度やらなくてはいけないのは野手だ。
ダニエルにかわる4番を探さなくてはならない。
しかも、1年を通して固定できる4番が欲しい。実績から言えば、
中澤が適任であるが、年齢の関係上フル出場は不可能に近い。
- 145 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)10時52分11秒
- 次に候補に上がるのは、3番を打つアヤカ。3割にほんの少し届か
なかったが安定感のあるバッティングは確実に計算できる。だが、
本塁打は12本しか打っておらず、ダニエルに比べるとやはりパワー
の面で見劣りする。
チェルシーは大麻で捕まって強制送還されてしまったし、保田が
ライバル視していたエイプリルは、粗すぎてとても日本じゃ通用
しなかった。
- 146 名前:某スレの22 投稿日:2001年11月02日(金)15時04分22秒
- 初めてレスを致します。
シブいネタが出てきて楽しいです。
それにしても、大麻って…。
チェルシーは元近鉄のデービスですか。
どんな風にチームを作っていくのか楽しみです。
がんばれ、モーニングス。
期待してます、作者さん。
- 147 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)15時06分40秒
- 加護は頭を抱えた。
「やはりダニエルの穴は大きいですね。ただでさえ左が少ないウチに
とって貴重な左でしたし、何よりもずっと4番でしたから」
4番はやはり長打力のある打者がいい。
一発の怖さのない打線はどうしても投手になめられる。
大砲揃いのパ・リーグならなおさらだ。
畑違いではあるが、信田も考え込んでいた。
- 148 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)15時17分07秒
- レスthxです。
チェルシー=デービス
すぐわかっちゃいますね(w
やっぱりデービスとかブライアントがいたころのパに夢中
になってたんで、キャラのモデルはその頃の選手が多いです。
なんで加護を監督にしたのか、なんで加護&信田のコンビ
なんだと、自分でもよくわかりませんが、始めたからには
なんとかしたいと思ってますね。
今の最大の悩みは、辻をどうやって出そうかということ(w
- 149 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)15時19分52秒
- 「どうしたらええんやろか。どっかにええ外国人落ちてへんかなぁ」
「現実的に考えましょう。監督」
「ほら、ディアーとか、インカビリアとか、ミッチェルとか、グリーン
ウェルとか…」
「監督、この深刻な時にふざけないでください」
「信田さん、ロッテにいたフランコはどうかなあ? 今確か韓国にいて
ますやろ? フランコ獲れへんかなぁ」
「監督、彼は40歳を越えてますよ。42歳という噂もあります。それに
彼は千葉ロッテの象徴でしたから、ウチが獲得なんかしたら、それこそ
マリーンズのファンが黙ってませんよ」
しばしの沈黙の後、唐突に加護が口を開いた。
「あ! 巨人の石黒……石黒彩はどうですか?」
- 150 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)17時16分19秒
つづけ
- 151 名前:傍観者 投稿日:2001年11月02日(金)22時40分35秒
- また更新されてる!がんばってください。
- 152 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)22時46分00秒
- ついでに、マントとルイスもつけてくれ。
- 153 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月03日(土)00時34分33秒
- 最近更新早いですね。
メンバーを出すのに大変だと思いますけど頑張ってください。
- 154 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)01時31分37秒
- 原稿ファイル会社に忘れたので、次回は月曜以降ですです。。。
- 155 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月05日(月)20時36分58秒
- 「石黒、ですか?」
石黒彩。読売ジャイアンツの外野手。主に2番、7番を打つ。左右に
打ちわけるテクニックは天下一品だが、彼女の強烈すぎる個性は「球界
の紳士たれ」を標榜するジャイアンツの中ではひときわ異彩を放つ。
「そうです。確かに今年の成績はひどいもんでしたけど、左やし打撃
センスは文句無しですし、守備は…ケガしてからちょっともろいけど、
レフトかDHなら十分いける思いませんか?」
「私の知る限り、石黒彩は来年の戦力構想からは外れていますから、
トレードでウチが獲るのは可能でしょう。田口と大櫛、片桐との交換
であれば応じてくれるんではないでしょうか」
- 156 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月05日(月)20時37分40秒
- 名をあげられたこの3人は、トレード先が巨人であれば喜んで行くだろう。
たとえそこでレギュラーになれなかったとしても。
セカンド田口、サード大櫛、ライト片桐。いずれも不動のレギュラーだが、
信田の若手への切り替えと加護の就任で嫌気がさし、各々トレードを希望
していた。
「…しかし…」
信田の口調が重くなる。
「しかし?」
「あれ程の選手がFAではなく獲れるのに、この時期になっても他球団が
動かないのはなぜだと思いますか?」
- 157 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月05日(月)20時39分40秒
- 「…わかりません」
加護は素直に答えた。
「我が強すぎるんですよ、彼女は。確かに戦力でいえば、ウチに足りない
部分を全て補ってくれるでしょう。クリーンアップ…うまくいけば4番も
任せられると思いますが、その前にきっと選手と一悶着起こしますよ。
保証します」
「そんなこと保証されてもね…」
信田が念を押すように言う。
「どうしますか? それでも獲りにいきますか?」
「それでも、獲りにいきます。ウチには彼女が必要ですから」
加護は力強くうなずいた。
- 158 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月06日(火)19時42分57秒
- 石黒が巨人に入団してもうかなりの月日がたつ。この年、ケガでわずか
60試合の出場に留まった石黒は、チームが押し進める世代交代の波に飲み
込まれようとしていた。
金に任せた補強につぐ補強のおかげでチームは日本一になったが、ケガを
きっかけに石黒の野球人生は暗転する。
異端児だった石黒がレギュラーでいられたのは、なんだかんだ言っても
毎年キッチリと恥ずかしくない数字を残していた事が大きい。
しかし、足のケガで戦列を離れると首脳陣は待ってましたとばかりに若手
をスタメンに起用する。その若手も必死で結果を出し、新たにレギュラー
として定着した。
一ヵ月後、ようやく傷の癒えた石黒が戦線復帰を果たした時、既に巨人
に石黒の居場所はなかった。
- 159 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月06日(火)19時45分37秒
- 二軍から必死で這い上がり、売り出し中だった若手の時、その打球の速さ
からコンコルド打法と呼ばれた石黒。
80年代後半から90年代前半にかけては常にクリーンアップを担った。
球にさからわない広角打法で打撃ベストテンの常連。
オールスター出場も3回を数える。
打撃タイトルこそ縁がなかったが、オールスターに3度も選ばれた事が
石黒のプロとしての誇りだった。
- 160 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月06日(火)19時47分27秒
- 石黒にとって屈辱のシーズンが終わり、来年の年俸交渉の時期に入る。
12月某日、球団に呼ばれた石黒は年俸交渉のつもりだった。
今シーズン、彼女が残した数字は、打率.219 4本塁打 16打点。
ダウンはしょうがねぇ。でも、せめて10%くらいにおさえておきてぇな。
そんなことを考えながら、石黒は指定された部屋のドアをノックした。
- 161 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月06日(火)19時49分49秒
- 「札幌に行ってくれないか?」
いきなり編成部長にそう言われたとき、石黒は戸惑った。
「札幌? 観光スか?」
「違う。単刀直入に言う。トレードだ。
我々巨人軍では、来年の戦力に君は入っていない。でも札幌は君の能力を
買ってくれている。
まぁ弱いチームではあるが、君の地元だし悪い話じゃないと思うが」
そうか、ダニエルが引退だって言ってたもんな札幌は。
- 162 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月06日(火)19時51分19秒
- 「トレード…断ったら…どうなるんスか?」
「う〜ん、その場合は任意引退か自由契約か…どちらかだね。札幌が提示
してきたトレード要員はウチとしてはそれほど必要としていないし、こちら
としては、まぁどっちでもいいんだがね。石黒君次第だよ」
編成部長はあっさりと言った。
自分は必要とされてない。
ジャイアンツの石黒彩はたった今死んだ。
それがわかった瞬間、石黒は即決した。
- 163 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月06日(火)19時53分28秒
つづけ
- 164 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月06日(火)19時58分14秒
- ( ‘д‘)<Dバックス優勝したね
( ´ Д `)<MVPって同時に2人でもいいんだ……
- 165 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月06日(火)20時01分26秒
- ( ‘д‘)<やっぱシリング様、憧れるわぁ
( ´ Д `)<あたしはM.ウィリアムスだね…
- 166 名前:某スレの22 投稿日:2001年11月09日(金)20時43分01秒
- ジャイアンツ、左の巧打者、コンコルド。
ひょっとしてあやっぺは、バッターボックスでお尻ふるんですか?
よっすぃーのキャラは、今年西武をクビに成ったメガネの某外野手とか
180以上あるのにコユキさんの出たての頃が思い浮かびます。
僕も西武・近鉄時代のパ・リーグ、はまってましたねぇ。
マニアックでゴメンナサイです(w
- 167 名前:傍観者 投稿日:2001年11月09日(金)21時43分53秒
- 更新がんばってくださいね〜
マリナーズにJ.ゴンザレスきてくれないかなホントに
- 168 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月10日(土)10時56分10秒
- >>166
プルプル)))
大元のモデルはメガネの外野手ですが、多少虎の八木もはいったりなんかして…
>>
フォリーズにシリング戻んないかなホントに(w
今日は西武Dでマスターズリーグですね。たぶん寒いから行かないけど。
- 169 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月10日(土)10時57分54秒
- 「札幌……行きますよ」
トレード……アタシはよ、10年以上巨人で働いてきたんだぜ。ベンチ
ウォーマーじゃねぇ。れっきとしたレギュラーでだ。たしかにこの一年は
働いてねぇよ。
それは認めるさ。でもよ、一年ダメだっただけで札幌へ捨てるのかよ。
巨人の主力として、自分でも気付かないうちにぬるま湯につかっていた
石黒の、生来の反骨魂に火がついた。
くそったれ、来年はてめぇらにほえ面かかせてやっからな。
- 170 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月10日(土)10時58分32秒
- 「ふぅ。これでいいんですかね」
石黒が出ていった後、フロントの1人が大きく息を吐いた。
「いいと思いますよ。これで石黒も生き返るでしょう。彼女のような人材を
くさらせるのは球界にとって損失ですから」
編成部長が静かに笑みをたたえながら言った。
「ま、移籍先がパ・リーグで良かったですよ。これがセのどこかだったら
第二の小林繁になるでしょうからね」
- 171 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月10日(土)11時03分45秒
球春
- 172 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月10日(土)11時05分04秒
- ドラフトの後はのプロ野球はしばしのオフを挟み、新しいシーズンに入る。
そして年があけた2月1日、いよいよキャンプイン。
札幌モーニングス、新しいシーズンの幕開けである。
★春季キャンプ参加主要メンバー★
加護亜依 1 監督
信田美帆 71 ヘッドコーチ(投手コーチ兼任)
ダニエル 99 打撃コーチ
夏まゆみ 72 守備走塁コーチ
江成和己 73 バッテリーコーチ
- 173 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月10日(土)11時06分39秒
- ●投手●
本多ルル 18
後藤真希 20(天王洲学園)
荒井紗紀 26
柴田あゆみ 29
北上アミ 33(稚内漁業組合)
小湊美和 38(千葉ロッテ)
レフア 40
斉藤 瞳 43
矢口真里 48
戸田鈴音 52
●捕手●
中澤裕子 3
福田明日香 31
大木衣吹 39(稚内漁業組合)
藤本美貴 58(浅草橋高校)
- 174 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月10日(土)11時08分52秒
- ●内野手●
石井リカ 0
稲葉貴子 2
吉澤ひとみ 5
大谷雅恵 6
アヤカ・K 10
ミカ・T 25(レッドソックス)
菊池亜衣 30
村田めぐみ 46
木村麻美 51
保田 圭 61(ロシア代表コーチ兼選手)
●外野手●
石黒 彩 7(巨人)
市井紗耶香 9
前田有紀 37
C・石川 41
S・ソニン 53
末永真巳 56
()内は前所属チーム
- 175 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月10日(土)11時09分44秒
- ( ‘д‘)<ずれまくっとる…
( ´ Д `)<カッコ悪いよね……
- 176 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月10日(土)11時10分20秒
- ( ‘д‘)<続きは?
( ´ Д `)<ストック尽きたんだってさ……
- 177 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月10日(土)11時13分46秒
つづけ
- 178 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)00時56分01秒
- 背番号51が木村麻美とは・・・
- 179 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月13日(火)01時11分12秒
- ヤベーオモシレーヨー
サクシャサンハヤクー
コノママジャシンジャウヨー
- 180 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月13日(火)10時14分47秒
- 札幌がキャンプ地として選んだのは、伊豆。
真冬の2月に、伊豆。
実際問題、資金源を断たれた札幌が満足なキャンプ地を使えるわけもなく、
三佳のツテで、廃校になった中学校をタダに近い金額で使わせてもらうこと
にしたのだ。
当然、ナインの不満は溜まる。
年俸交渉も未解決な選手がいる中で、不安満載のキャンプイン。
しかし、この時参加したメンバーの誰もが「このキャンプだけは生涯忘れる
事のできない思い出」と語るほどのキャンプとなる。
- 181 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月13日(火)10時16分04秒
- 事件は、いきなり起きた。
「てめー今なんつった!」
「うるせーよ!」
「ちょっと紗耶香、やめなって」
「圭ちゃんは黙っててよ!」
掴み合っているのは、後藤と市井。仲裁に入っているのが保田。
「吉澤、夏コーチ呼んできて」
保田があきれ顔で近くにいた吉澤を見、顎をしゃくる。教室の一つを改造
した首脳陣のミーティングルームにあわてた吉澤が飛び込んできたのは、
すぐ後のことだった。
- 182 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月13日(火)10時20分13秒
- 「一体なんなの?」
札幌に残った鬼軍曹・夏まゆみ。既に現役を引退してかなりの年数が
たつが、今でも選手時代と変わらないトレーニングを欠かさないおかげ
で現役時代と全く変わらない体型を維持している。
他の選手におさえつけられていても、未だにガンを飛ばし続ける市井
と後藤をチラリと見ながら、呼びにきた吉澤に説明を求める夏。
「最初は肩があたったあたってないって事から始まったんですけど、
お互いに機嫌が悪かったせいか、市井さんの事を金の権化とか、
ごっちんのストレートは小学生でも打てるとか、2人ともどんどん
エスカレートしてって…」
今イチ要領を得ない説明をする吉澤に、もういい、と手で合図をし、
「わかったわかった。後藤、マウンド行け。市井、打席たて」
と命令する。
「こういう類いのいざこざは、プロなんだから野球で解決しなきゃな」
- 183 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月13日(火)10時28分03秒
- 言われるままにマウンドへ上がる後藤。
キャンプ初日。当然肩はできていない。打席に入る市井とて、自主トレで
バットこそ振ってはいたものの、この時期に投手と対戦するなんて事は
今までにない。
「勝負は1打席、フォアボールはなし。ヒットが出たら市井の勝ち。抑え
込んだら後藤の勝ちな。おーい誰か、キャッチャーやってやれ」
てきぱきと仕切る夏の呼び掛けに
「あたしが受けます」
ミットを持ってそう言ったのは、福田明日香。
- 184 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月13日(火)11時21分49秒
- 「福田さーん、いくよー」
ワインドアップから、ピンと伸ばした足を高くあげる独特のフォームで、
福田のミットへ投げ込む。
投球練習は時期が時期だけに多めの20球。
比較的肩の仕上がりが早い後藤は、15球を超えるとだんだん球に力が入っ
てくるのを感じる。
「これで20球と。後藤、練習終わりな」
審判を買って出た稲葉が伝える。
- 185 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月13日(火)11時24分40秒
- 投球練習をじっと見ていた市井が打席へ入るのと同時に、福田がとことこと
マウンドへやって来る。
「なんスか?」
「リードはどうする?」
「あー、いらないっす」
「別にあなたに勝って欲しいわけじゃないけど、直球だけじゃ紗耶香に
打たれるのがオチよ。とりあえず聞いておくわ。投げられる変化球は?」
「フォークとスライダー」
「わかった。あたしはノーサインで結構よ。じゃ、がんばんなよ」
ポンと後藤の背中を叩いてマウンドから去る福田に、後藤が声をかける。
「もう一つ、スローカーブも入れといてください」
- 186 名前:チヨノフG 投稿日:2001年11月13日(火)11時55分58秒
- おお、福田が・・・。
- 187 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月13日(火)12時07分24秒
- 「始めるで、バッターラップ。プレーボールや」
審判・稲葉が宣言する。
左打席に市井が入る。
クセのない構え。
それでいてスキもない。
ふ〜ん、伊達に3割打ってるわけじゃないんだ。
けど後藤の球だって簡単には打てないんだからね。
福田さん、いくよ。
あ、せーのぉ!
- 188 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月13日(火)12時08分53秒
- ドスン!
重い音が響き、グラウンドが一瞬無音に包まれる。
「す、すとらいく」
その速さにびっくりしたのか、稲葉のコールも声がうわずる。
後藤自慢のストレート。
まずは外角低め。
しかし、市井は微動だにしない。
ふん、余裕見せちゃって。
今度はこいつだ。
あ、せーのぉ!
- 189 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月13日(火)12時10分08秒
- クイッという表現が適格かどうかは定かではないが、後藤の投げた
2球目も、福田のミットに収まった。いや、福田がなんとか収めた
という方が正しい。
「ストライーク!」
高々と手をあげる稲葉を尻目に福田が慌ててマウンドへやって来る。
「今度はなんスか?」
「あなたが言ったスライダーって、今のスライダーのこと?」
「そうですけど」
言った途端にミットで頭をはたかれた。
「なんスか!」
「いい? 覚えといて。あれはね、スライダーじゃないの。違う球。
高速スライダーって言うの」
- 190 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月13日(火)19時26分32秒
- 追い込まれたものの、市井の表情に変化はない。
遊び球なしの三球勝負。
そう決めた後藤が再び振りかぶる。
これ以上ないくらい足を上げ、腰に十分なタメを作りそこから回転に
よって生み出されるパワーを全て右腕に集約させて放つ。
あ、せーのぉ!
- 191 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月13日(火)19時28分16秒
- 初めて市井の体が反応した。ムダな動きの一切ない、左打者のお手本の
ようなフォームで後藤渾身のスピードボールを捕らえにかかる。
市井の狙いはバットのただ一点、真芯にピンポイントでボールをぶつける
こと。
はは。やっぱりストレートだ。
明日香がリードするならヤバイかもって思ったけど、若いね。
いただきだよっ!
カコーン。
木製バット特有の音を立て、ボールは誰もいない三遊間を綺麗に抜ける。
「ヒット…やな」
稲葉がぽそりと言い、勝負はあっけなくついた。
- 192 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月13日(火)19時31分12秒
- 「決着ついたね。じゃ、後藤は負けたから罰ゲーム。今日の練習後、
グランド整備を一人でやんな」
成りゆきを見守っていた夏まゆみがゲームセットを宣言する。
自信を持って投げたストレートをものの見事に弾き返され、見た目にも
哀れな程がっくりと肩を落とす後藤。
「それから市井。最初に対決したのも何かの縁だ。今日からあんたが
後藤の面倒みること。いいね」
後ろの方で仲の良い保田や矢口に「この市井さんが一年坊に負けるわけ
ないじゃん」と高笑いをしていた市井が凍り付く。
「え?」
「市井が後藤の教育係をしろ、って言ったんだ。何回も言わせるな!」
夏のカミナリが落ちた。
「勝ったのに罰ゲームかよ…」
崩れ落ちる市井。
「あははは、紗耶香頑張んなよ〜教育係」
保田がからかうが、市井は反論する元気もなかった。
- 193 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月13日(火)19時32分33秒
つづけ
- 194 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月13日(火)19時41分19秒
- 教育係なんてホント「今さら」なネタだな…
新メンに教育係ってついたんでしたっけ?
最新情報にうとい。。。
- 195 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月14日(水)01時39分12秒
- コウシンサレテルヨー
コウシンオツカレダヨー
- 196 名前:傍観者 投稿日:2001年11月17日(土)15時50分34秒
- 更新されてる!最近これなかったけど遠くで見守っていますのでがんばってください
ちなみに新メンの教育係ですが
小川→石川 高橋→吉澤 新垣→矢口 紺野→保田 だと思います。参考にしてください
- 197 名前:名無し 投稿日:2001年11月18日(日)10時34分19秒
- 紺野→安倍でなかったか?
違ってたらスマン
- 198 名前:傍観者 投稿日:2001年11月26日(月)18時32分01秒
- 更新ガンバってください
- 199 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月29日(木)12時06分27秒
- キャンプも中盤に差し掛かり、広島も真っ青の猛練習でだんだん元気を
なくしていく札幌ナインに久方ぶりに朗報が届いた。
肩の故障で戦列を離れていたエース安倍がようやくチームに復帰すると
いうのである。
投手陣の中で唯一といってもいい実績を残している安倍の戦列復帰は、
選手にも、首脳陣にも安堵感を与えた。
「開幕には間に合わないでしょうが、5月頃には出て来てくれれば
いいですね」
「まぁね。後藤に頼りっきりというのもなんだしな」
信田と夏がそんな会話をしていた。
- 200 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月29日(木)12時09分16秒
- いよいよ明日からチームに合流するという日、安倍は一足早くキャンプ地
にやってきた。
「噂には聞いていたけど、思ったよりましなんだね」
チームリーダー、中澤にこのキャンプの感想を聞かれて。
「何言うてるの。むっちゃ寒いし、泊まる所は廃校やから怖いし、風呂
なんか地元の人と同じ銭湯に通うんやで」
「んー、でもさ、こんなキャンプをするチームがいっこくらいあっても
いいっしょ?」
「はぁ。どうしてそうなっちはなんでも楽観的なんや……」
「だって楽しそうじゃない? なんかさ、学生みたいで」
チームに充満しつつあったこの厳寒のキャンプ地に対する不満の空気も、
安倍の脳天気なこの一言で丸く収まったという。
- 201 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月15日(土)01時05分12秒
- ごめんなさい。
力不足でどうしても続きが書けません。
あまり考えず主人公にすえてしまった加護がどうしても動かせませんでした。
いきなり白板の一番下に落っこちて、正直ホっとしたのも事実でした。
どうもすいませんでした。
- 202 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月15日(土)02時56分12秒
- 放棄、ということでしょうか?
- 203 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月16日(日)01時58分10秒
- えっ!?放棄ですか?
せっかく面白い設定で、楽しみだったのに・・・
- 204 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月17日(月)18時26分23秒
- 面白いのに・・
残念です。
- 205 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月23日(日)02時06分28秒
- あたたかいお言葉ありがとうございました。
もういちどがんばってみます。
- 206 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月23日(日)02時09分35秒
- 3月になった。
厳寒の伊豆キャンプは、幸いにも故障者も出さず無事に終了した。
月も半ばになるとオープン戦も終盤に入り、各チームの主力たちが一気に
調整のピッチをあげてくる。
そして開幕メンバーが決定する悲喜こもごもな季節でもある。
それは、選手不足に悩む札幌とて例外ではない。
新米監督の加護は、選手一人一人を監督室へ呼んで、直接一軍か二軍かを
告げることにした。気の重い仕事であったが、最終的には自分が選んだのだ。
チームをたばねる立場として責任がある。
- 207 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月23日(日)02時14分08秒
- 「どうだった?」
監督室から出てきた女性に、仲間が3人駆け寄って来た。
それまで下を向いていた彼女は
「ブイ!」
そう言うと、満面の笑顔でVサインをしてみせた。
とたんに他の3人の相好が崩れる。
「わーっ、まこっちゃんやったじゃん!!」
「ウチらの中で一番最初に上に行くのはまこっちゃんかぁ」
「がんばってください」
一昨年のドラフト1位選手、小川麻琴。開幕一軍決定。
- 208 名前:はいめんて 投稿日:2001年12月23日(日)21時12分39秒
- 再開したんですか。
よかった、よかった。
私のほうもどうにか、続けているので、一緒にがんばりましょう。
- 209 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月24日(月)01時47分58秒
- 小川麻琴の子供の頃のヒーローは、ジャイアンツの原辰徳。
原に憧れた小川、当然ながらポジションはホットコーナー。
大型三塁手として意気揚揚とプロ入りしたルーキーイヤー、本来なら去年の
うちにレギュラーポジションをつかんでいるはずだった。
しかし、左足に集中した故障で一軍にあがることすらできず、失意の日々を
過ごすこととなる。
故障も癒えた今年、キャンプ、オープン戦で積極的にアピールしたのが
効いたのであろうか。
紅白戦やオープン戦でスタメンに名を連ねることも多くなっていった。
- 210 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月24日(月)02時37分42秒
- 二軍での一年間は無駄ではなかったと思う。
新垣、高橋、紺野という同期の選手達と出会えたからだ。
体は小さいが負けん気は人一倍の新垣。
投手としてのトータルバランスに優れているサウスポーの高橋。
大人しい性格ではあるが長距離砲の素質を秘める紺野。
そしてそれまで二軍でくすぶっていた矢口や村田、戸田といった先輩たちが
次々に一軍への門をくぐっていった。
あたしたちも必ず上へ。
一軍の惨状とは裏腹に、二軍の選手の士気は高かった。
- 211 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月30日(日)18時37分26秒
- 初めてレスします。自分は野球は詳しくないのですが、
違和感なく面白く読めます!
この先、後藤と加護の幼馴染としてのほのぼのとした
やり取りも見たいですね・・・。もちろん、野球の話も
気になりますが。
作者さん、がんがってください!
- 212 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月02日(水)22時57分42秒
- 仕事の年末進行と、年末に引越しをしたのでしばらくネットが出来ず
これもほったらかしになってました。
細々と続けますので、今年もよろしくお願いします。
- 213 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月02日(水)23時01分06秒
- 「真希ちゃん、開幕戦、行ってくれへんかな?」
後藤を監督室へ呼び出した加護は、いきなりそう言った。
普段あまり入る機会のない監督室の内部をしげしげと興味深そうに眺めていた
後藤はあっさりと「いいよ」と答える。
「最初からそのつもりだったし」
「真希ちゃんさすがやね。ルルさんかもしれんとか思わんかった?」
「あー、ないない」
後藤が手を振る。
「だってあの人、肩を故障してるもん」
衝撃の発言だった。投手コーチの信田からは、そんな報告は受けていない。
「え? ウチそんなん知らんけど…」
「あたしもハッキリ確かめたわけじゃないけどぉ、コーチのいないとこでは肩を
かばうような投げ方してたし。開幕は無理じゃないかな」
いつものようにひょうひょうと後藤が言った。
あかん…先発ローテ組み直しやわ……
- 214 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月02日(水)23時22分46秒
- 後藤の言った通り、翌日ルルが肩の異常を訴え病院で診察を受ける事に
なった。
診察の結果は、全治3ヶ月。
「すいませんでした。自分が気づいてさえいれば…」
信田が加護に謝る。
「しゃあないです。ウチも真希ちゃん、いや、後藤さんに言われるまで
全く気づかなかったんですから」
加護はがっくりと頭を垂れながらルルの登録を抹消した。
安倍をケガで欠く札幌投手陣の中で、昨年8勝の実績を残した唯一の
柱が消えてしまった。
- 215 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月03日(木)00時42分50秒
- しかし捨てる神あれば拾う神あり。
これで目の色が変わったのが、一軍当落線上にいながら一軍に入れなかった投手。
まさに敗者復活戦である。
特に、2年目の高橋愛と新垣里沙が、お互いライバル意識剥き出しで最後の
一軍への切符をつかむ争いの主役になった。
「里沙ちゃん、あたし負けんからね」
「あたしも…あたしも、負けるつもりはないから」
オープン戦も日程が終了しているため、決着は札幌レギュラー陣を相手にしての
シートバッティングでつけることになった。
- 216 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月03日(木)00時46分08秒
- これ以上ないほどさわやかに晴れ渡った空をバックにして、戦いが始まる。
投げる順番は、新垣とのジャンケンで勝った高橋が先発を希望した。
入念にブルペンでウォーミングアップをすませた高橋。
同期の紺野を相手にキャッチボールに余念がない新垣。
この勝負の審判を買って出た加護が2人を呼び寄せる。
「そろそろ始めてもええ? 里沙ちゃんも愛ちゃんも、投げるのは1イニング。
打順は公平にするために、両方とも1番からやから」
「「わかりました」」
2人の声が揃った。
- 217 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月03日(木)00時48分03秒
- 背番号19をつけた高橋がマウンドに登る。
この十数分後に、今シーズンの自分の立場を決めてしまう大勝負を前にして、
やはり緊張の色は隠せない。
高橋は襲い掛かってくる不安な気持ちをなんとか静めようとロージンを
ポン、ポン、と弄ぶと、左手に掴んだボールを見つめた。
(やれる、あたしはやれる…)
打席に背を向け、かなり長い間ボールに向かって集中していた高橋は、
ようやくバッターボックスに向き直った。
「あ…」
思わず声が漏れた。
これから高橋が相手にする打席には、同期の桜、小川麻琴がいたからであった。
- 218 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月03日(木)00時59分10秒
つづけ
- 219 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月03日(木)01時06分55秒
- >>211さん
レスありがとうございます。
くじけそうになりながらもなんとか頑張ってます。
後藤と加護はこの先どうなるんでしょうか?
そして秘められた2人の過去とはいったい…(w
さて、始めてから3ヶ月、200レス(遅)もすぎていながら、
チャーミー石川大先生をどうしようか全く決まっておりません。
どうしようかな……
ところでみんなはパワプロ派なんでしょうか?
自分はダグアウトWINというマイナーゲームで遊んでます。
- 220 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月04日(金)21時06分42秒
- /
- 221 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月05日(土)20時50分37秒
- をを! 久しぶりに覗いてみたら更新されてる。
応援してるから気長に頑張ってちょ。
あ、野球ゲームといえばやっぱりDX野球盤でしょ(W
消える魔球マンセー!
- 222 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月10日(木)17時35分36秒
- 高橋が振りかぶり、ややスリークォーター気味の高さからボールが放たれる。
しかしボールは福田の要求とは反対の方向、いわゆる逆球と言うコースへ。
(しまった!)と高橋の表情が曇ったが、小川のバットが空を切り、思わず
ホっとする。
と同時に、止まっていた汗が思い出したかのように流れてきた。
- 223 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月10日(木)17時36分24秒
- 「高橋、落ち着け」
サードに入っている稲葉が声をかける。福田もジェスチャーで『ちぢこまるな』と
メッセージを送って来る。
それが功を奏したのか、はたまた一球投げて落ち着きを取り戻したのか、2球目
からは高橋本来のテンポの良い投球が戻ってきた。
同期対決は、小川が内角球に詰まらされサードフライ。高橋に軍配が上がった。
- 224 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月10日(木)17時50分23秒
- そして打席には新外国人のミカ。
軽快な守備が売り物のスイッチヒッター。
アメリカではどちらかというと守備の人という印象が強い。
メジャーでは名門ヤンキースに所属し、ワールドシリーズではサヨナラ
ヒットも放つなど意外性も秘めている。
パワーヒッターだったダニエルの後釜としては物足りないが、バットコン
トロールも上手く、日本の投手への対応は充分できるだろうとの評価。
本人も、少しでも早く日本の投手の特徴を掴もうと自ら立候補しての打席。
- 225 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月10日(木)17時51分27秒
- 「ヘイ、カマン」
尻を突き出す独特の打法、かつての巨人の助っ人クロマティを彷佛させる
構えを見せる。
このいかにも外国人らしい打法の真似が、寒く厳しい伊豆のキャンプで
一服の清涼剤として大流行した。
矢口、市井らが火付け役となり、最後には監督の加護までもがミカの真似を
して選手や数少ない観客から笑いをとっていた。
「仕方ナイジャン!ガイジンナンダカラ!」
母が日本人のため、最初から妙に日本語がしゃべれるミカが嘆いた。
- 226 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月10日(木)17時55分09秒
- ミカは小柄とはいえ、ツボにはまればスタンドまで放り込むパワーはある。
高橋−福田バッテリーは外角オンリーで組み立て。じっくりと球筋を見るミカ。
ファールを挟んで都合6球、2−2と平行カウントからの勝負球、初めて高橋
が内角攻め−ヒザもとへのフォークボールを投じる。
「愛ちゃんのフォークはすごく落ちる」そう定評のある高橋の決め球、フォーク
をミカのバットがすくう。
あわててジャンプするサード稲葉のグラブのやや上をかすめ、レフト前に。
ミカはメジャー屈指のローボールヒッター、そしてメジャーではかなり珍しく
フォークにとりわけ強い打者だったのである。
- 227 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月10日(木)17時59分18秒
- 続く3番のアヤカにはライト前に痛烈な当たりを運ばれるが、三塁を狙った
ミカをライトの前田が好返球で刺してニ死一塁。
そして高橋は4番を迎える。
まさに息をつくヒマさえない。これが一軍なのか。毎年最下位のチームでさえ、
バリバリの一軍選手というものはこんなに凄いのか。
- 228 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月10日(木)18時01分56秒
- 満を持しての登場、その名は市井紗耶香。ここ4年間で3度3割をマークして
いるリーグトップクラスのバッター。
右にも左にも打ち分けられる卓越した技術でヒットを次々と量産、いまや中澤、
安倍と共にチームの顔。
「ヘイ、カマ〜ン」
左打席でミカの真似をする市井。おどけて構えるその姿はまさにクロマティの再来。
どっと笑いに包まれるベンチで、中でも矢口が一番笑い転げていた。
「紗耶香やめてー!笑い死ぬ〜!!」
- 229 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月10日(木)18時05分05秒
- 笑いをとっていた市井も、高橋がいざ投球モーションに入れば途端に勝負師の
顔になる。
外角に外した球がやや甘いと見るやあっさりレフトへ弾き返す。
「あっ」
思わず高橋が声をあげるが、ぽとりと落ちた場所はラインのわずかに外。
「ファール!」
思わず胸をなで下ろした。
- 230 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月10日(木)18時13分08秒
- なんか話があちこちに飛んでますね。。。
小説というか、小説っぽいネタスレに近いかも。。。
とりあえずつづけ
- 231 名前:傍観者 投稿日:2002年01月10日(木)21時07分52秒
- 受験勉強で全く見れなかったんですがもう少ししたら必ずレスつけるので
これからもがんばってください
- 232 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月10日(木)21時08分09秒
- 「ん〜、惜しい!ラインの上を狙ったんだけどなぁ」
「紗耶香、今年は3割打てないかもね」
福田がマスク越しに市井に言う。
「なんでさ?」
「去年はこの時期きっちりライン上に狙って落としたじゃない」
「そうだったっけ?」
「そうよ。それで去年が.302でしょ。ライン外してるようじゃ今年はダメね。
石川あたりにレギュラーとられるかもよ」
「へぇ、明日香もジョークなんか言うんだ。しかも結構面白いよ」
- 233 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月10日(木)21時10分12秒
- なんかしゃべってる…
何話してるんだろう…
気になるなぁ…
でも…
今は集中しなきゃ…
次のサインは……
え?
ええ?
えええっっ?
それで本当にいいんですかっ?
福田さんっ!?
- 234 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月11日(金)13時42分15秒
- はぁ、福田さんはもうレギュラー決まってるから気楽でいいですよね…
でもでも、高橋は開幕一軍がかかってるっていうのに…
全くもう、そんなの投げていいんですか……?
そう思いながらも先輩には逆らえないのは体育会系の悲しい性。
高橋は福田のサイン通り、要求通りのコース、球種を投げ込んだ。
ド真ん中のストレートを。
- 235 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月11日(金)13時46分32秒
- 「おわっ」
高橋の腕から、とんでもない絶好球がやってくる。
まさにカモがネギしょってやってきた状態に心で舌舐めずりする市井。
こりゃ狙っちゃいますか。
いや、狙うしかないでしょ。
よーしかーさん一発狙っちゃうぞー。
- 236 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月11日(金)13時47分46秒
- 「はい、いっちょ上がり〜」
セカンドに入っている保田がフラフラ〜っと上がったフライを軽くさばく。
バットを持ったまま呆然と打球の行方を見つめる市井。
「あれ〜、市井の予想ではスタンドに飛び込んでるはずなんだけどなぁ。
なんで圭ちゃんのグラブに飛び込んでんだろ?」
市井は目に『?』マークが浮かび上がるような表情を見せる。
「紗耶香、絶好球だと力み過ぎて打ち損じるその弱点、早く直した方がいいよ」
福田が言った。
高橋愛
1イニング 打者4 被安打2 奪三振0 与四球0
- 237 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月15日(火)23時33分15秒
- ちょこちょこ覗きに来てます。野球好きっす、がんばってくらさい!
- 238 名前:傍観者 投稿日:2002年01月19日(土)21時27分16秒
- 更新期待あげ
- 239 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月25日(金)13時37分47秒
- 新垣が唇を真一文字に結んで、生き残りをかけたマウンドへ向かう。
厳しい顔をしているが、頭の中は不安だらけで真っ白だった。
愛ちゃんは、抑えた。
アタシは、勝つことができるんだろうか…。
思えば一番には縁のない人生だった。
中学の時は地区大会決勝で破れ、高校では甲子園まであと一歩というところで
サヨナラ負け。
ドラフト1位候補との前評判もフタをあけてみればドラフト2位。
2位でも入っちゃえば同じだから…と気持ちを切り替えて臨んだファームでも、
投げても投げても先発2番手の評価しかつかなかった。
勝ちたい……。
- 240 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月25日(金)13時38分56秒
- 新垣の持ち球は直球とカーブのみ。
その球種の少なさが自身の評価を下げていることは新垣自身も知っていた。
だが、今から新しい球を覚えるつもりはない。
たった一つの変化球、カーブのキレをひたすら磨き続けた。
「っトライ〜ク!」
加護の手が大きく上に上がる。
なかなかキレのあるストレートに小川は手が出ない。
(里沙ちゃん、意外と速いな… だけど私だって一軍メンバーなんだ…)
小さな体に似合わないダイナミックなフォームで新垣が次の球を投げ込む。
小川のバットがそれを捕らえた。
無死一塁。センター前に綺麗に弾き返した小川が大きくリードをとる。
- 241 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月25日(金)13時44分35秒
- 打席にはミカ。左が続く。
いきなり小川に打たれて動揺が隠せない新垣。
先ほども高橋からヒットを放ってノッているミカ。
新垣は力の限りストレートを投げ込んでいく。
生き残りをかけて、メジャーリーガー相手に真っ向勝負を挑む。
だが、動揺が続くのか、プレッシャーからか思いのほか制球が定まらず、
ミカに粘りに粘られ根負けして勝負球がわずかに外れた。
四球で無死一、二塁となる。
- 242 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月25日(金)13時46分14秒
- (!! ぶつかるっ!)
新垣の右腕から投じられたボールがアヤカの体目掛けて突っ込んでくる。
反射的に、思いきり体を引くアヤカ。
しかし、ボールがアヤカをあざわらうかのようにアヤカの手前でグイッ!と曲がる。
一気にブレーキを利かせ、通常では考えられぬ程の曲がり方でストライクゾーンを
かすめるように通過する。
そして、福田が構えた場所から寸分違わぬ位置へ吸い込まれた。
- 243 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月25日(金)13時55分06秒
- 「紗耶香、今の見たか?」
「うん、見た…」
「あのチビ、なんてカーブ投げるんや……」
バットを持った中澤と市井がネクストサークルで驚愕する。
2人は横から見ていたのだが、それでもその曲がり具合は確認できた。
「右には効くでぇ、あのカーブは」
「曲がるまではストレートと速さが殆ど変わらないしね。最初に当たるバッター
は驚くだろうね」
「ああ。ずっと通じるかはわからへんけど、少なくとも初っ端は、右へのびっくり
飛び道具としては使えるやろな」
「裕ちゃん、打てるの?」
市井がニヤニヤしながら聞いてくる。
「アホ言うな、この中澤裕子をハンパな真っすぐとびっくりカーブだけで打ち取れる
思うたら大間違いや」
- 244 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月25日(金)14時20分58秒
- ( `.∀´)<アタシは結局レギュラーじゃないワケ!?
( ´ Д `)<けーちゃんは・・・
( `.∀´)<けーちゃんは?
( ´ Д `)<レギュラーに・・・な・・・
( `.∀´)<レギュラーにな?
( ´ Д `)<・・・ZZZzzz・・・
( `.∀´)<寝るなよ・・・
( ´ Д `).。oO(・・・つづけ・・・)
- 245 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月26日(土)04時33分23秒
- レギュラーガヨウワカラン
- 246 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月27日(日)23時19分54秒
- 今日はじめて読みました。元ネタも結構良いです。石川のキャラに期待。
- 247 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月28日(月)10時59分13秒
- 「でもさ裕ちゃん、実は密かに「どーしよーっ!!」て焦ってるでしょ」
市井がズバッと切り込むと、中澤は途端に「へたれ中澤」になった。
「そうなんや紗耶香〜、あんなカーブ、ホンマ怖いねん。 頼む、ゲッツー
打ってくれ!!」
手を合わせて拝む中澤。ちょっと思案顔をして、おもむろに手を出す市井。
「なんや? この手は? お手でもして欲しいんか?」
「中澤センパイのたっての頼み、このスーパースター市井紗耶香が10万で
手を打ちましょう」
その言葉に顔面がヒクつく中澤の耳もとで、市井がニヤけてささやく。
「だって裕ちゃんさぁ、市井に「八百長しろ」って言ってるんだよ〜。
いくら市井がセンパイ思いだからってタダで引き受けちゃ「あのション
ベンカーブが怖いばっかりに、センパイの特権を乱用して可愛い可愛い
後輩に八百長させてしまった」って裕ちゃんの良心が痛むでしょうが。
その良心の痛みを市井がお金で解決してあげましょうってことで」
ケケケと笑う悪魔の微笑み。
- 248 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月28日(月)11時10分36秒
- 「さ〜や〜か〜!」
中澤が市井を恨みがましい目で見る。
調子にのってからかったものの、あのぺーぺー投手に怯える少し中澤のことが
可哀想に思えて来た市井。
「裕ちゃん、ごめ−−」
「成功報酬でええ?」
思わず謝ろうとした市井の言葉が、中澤の言葉にかき消された。
「え?」
「せやから、ホンマに紗耶香がゲッツー打ったら払うわ」
ねーさん、あんたにはプロ20年生のプライドはないのか。
打席ではアヤカが新垣のカーブに豪快な空振り三振を喫していた。
- 249 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月28日(月)11時14分37秒
- (じゅうまんえっん! じゅうまんえっん!)
市井の頭の中には十万円しかなかった。高給取りとは言っても、臨時収入は
やはり嬉しいものだ。
十万円が頭の中を支配するあまり、市井はその条件をすっかり忘れていた。
ぽこーん。
見事すぎるセンター前ヒット。一死満塁。
一塁ベース上でガッツポーズの市井。
うん、我ながらバッティングは天才的。イチローもヨシノブも敵じゃないね。
「裕ちゃ〜ん、十万円よろしく〜!」
「このドアホ〜!!!!」
怒号が帰ってきた。
あ。いけね。ゲッツー打たなきゃダメだったんだ。
あは、あは、あははははは。
- 250 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月28日(月)11時21分08秒
- >>245
レギュラーはもう少しで発表というか確定します。
>>246
石川はですね、えーと、もう少しお待ちください(w
( `.∀´)<アタシの写真集買いなさいよ!
- 251 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月30日(水)02時18分27秒
- 外の直球。ボール。
内角カーブ。バットとボールが30センチは離れてるほど豪快な空振り。
外に直球。惜しくも外れてボール。
内高めカーブ。見逃しストライク。
外直球。腰がひけてるも、ファールで逃げる。
真ん中から外へカーブ。かろうじて当ててファール。
内角えぐるカーブ。反射的に避けるが、その手前で曲がりに曲がってストライク。
中澤裕子、チーム最年長とは思えない、マンガのような三振を喫する。
- 252 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月30日(水)02時22分24秒
- 「裕ちゃん、いくらなんでも怖がりすぎだよ。内と外を交互に投げてただけよ?」
「アホ、この時期はケガが一番怖いちゅーねん。用心に用心を重ねるにこしたこと
はないんや」
福田の問いかけに、中澤が空威張りでまぜっかえす。
そして中澤の足元には、さっき自分が打ったファールボールが…。
「わっ!?」
つるっ!
ごちーん!
中澤裕子、この日は医務室で終えた。
- 253 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月30日(水)02時23分30秒
- ⊂⌒ノハハノ
⊂川o″-゛)⊃ つづくにゃ〜
Tare Konno
- 254 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月11日(月)02時59分16秒
- オープン戦始まってますね。星野阪神はどこまでやれるだろうか
- 255 名前:名無し真里 投稿日:2002年03月22日(金)23時49分42秒
- ぜひがんばって下さい。
応援してますよ。
- 256 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月02日(火)09時51分31秒
- すいません、どうも設定に無理がありました。
形を変えてリスタートします。
- 257 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月03日(水)15時28分24秒
- 知らぬ間に第4のモ板(ウソ)、なっち板ができてた。
http://ex.2ch.net/maru/index.html
- 258 名前:カルロス 投稿日:2002年04月29日(月)07時20分34秒
- 早く、再開して下さい。とても楽しみです。
- 259 名前:カルロス 投稿日:2002年04月29日(月)07時21分01秒
- 早く、再開して下さい。とても楽しみです。
- 260 名前:威 投稿日:2002年05月06日(月)23時50分37秒
- こりゃあ、おもろいですね〜。
続き大期待です。
作者さんファイトでやんす。
- 261 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月11日(火)13時09分06秒
- 保全
- 262 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月23日(火)02時29分34秒
- 保全します
- 263 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月16日(月)03時29分39秒
- 保全
- 264 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月06日(日)07時20分18秒
- ほぜん
- 265 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月18日(金)02時16分55秒
- そのうち。
- 266 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月18日(金)18時28分14秒
- 中澤に続くのは左の菊池亜衣。
昨年の左の代打の一番手だ。落差の大きなカーブにてこずったものの、なんとか
センター前に落とす。
そして、パワーヒッター大谷が打席へ。
初球、直球一本。
カーブが来たらごめんなさいだ。
- 267 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月18日(金)18時29分42秒
- 狙い球を決めて、思いきりよく振ったバットから放たれたボールは、軽くネットを超えていく。
「おっしゃー!!」
グランドスラムに大喜びの大谷。
へなへなとマウンドに崩れ落ちる新垣。
見かねて福田が新垣の元へ来る。
「どうするお豆、やめるか?続けるか?」
まだこの時期は寒いというのに、汗にまみれた腕でごしごしと目のあたりを拭く新垣。
真っ赤な目をしながらも、福田に訴える。
「まだ、まだやります。行きます!」
結局新垣は打者11人に対し
被安打6 奪三振2 四球1 失点4
という結果に終わった。
- 268 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月18日(金)18時30分54秒
「新垣、もう少しでしたね」
「ホンマはあの負けん気を買って、上にあげたいんやけどなぁ」
「ウチの左不足は深刻ですから」
「わかりました。2人のどちらを残すかは、信田さんのいいようにしてください」
- 269 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月18日(金)18時34分17秒
開幕
- 270 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月18日(金)18時54分29秒
- 開幕。
春の訪れをつげるその響きが、今年もやってきた。
プロ野球ファンが待ち望んでいた季節だ。
戦いに身を置く者たちの短くて長いシーズンがスタートする。
今年のペナントを占うパ・リーグの下馬評はどうか。
まずは2年連続リーグ優勝の福岡ダイエーホークス。
続いて西武ライオンズ、オリックスブルーウェーブ、日本ハムファイターズあたり
が優勝争いに絡むとの見方が殆どだ。
やや離れたところに千葉ロッテマリーンズが位置する。
- 271 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月18日(金)18時55分04秒
- そして。
札幌モーニングス。
ある意味、オフの話題を独占した感もあるこのチームだが、大量の流出者による選手層の薄さは
いかんともしがたく、後藤の加入だけでは前途は厳しいとの見方がほとんど。
開幕前の評論家による順位予想でも、最下位の予想が大半だった。
ただ、開幕カードの日本ハム戦のチケットは早々に売り切れと営業的(日本ハムのだが)
にはいいスタートではある。
それぞれの思いを乗せて、開幕の朝を迎える。
- 272 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月18日(金)23時35分53秒
- あ・・・更新されてる・・・
9ヶ月ぶりか・・・
内容忘れちゃったから、1から読み直してこよう
とりあえず、お帰りなさい
- 273 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月19日(土)00時48分33秒
- いつもより少し早い朝7時に目が覚めた加護は、ホテルの食堂でトーストを
かじりながらスポーツ新聞をチェックしていた。
(いよいよ開幕なんやなぁ)
いつもとは違う緊張感に思わず身が引き締まる。実際は食欲も殆どなかったが、
これからの激務を考えて無理矢理胃にトーストを収める。
「監督、おはようございます。はやいですね」
声の主は信田だった。加護の向正面に座り、眠気覚ましのコーヒーをすする。
「あまり眠れなくて…」
加護は正直に言った。なにせ今日からの戦い、その成績如何ではチームが
消滅してしまう。
監督というポストに加え、金はないが加護はモーニングスのオーナーでも
あるのだ。今さらながら選手・スタッフの身を預かる者の責任の大きさを
じわじわ感じていた。
- 274 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月19日(土)00時49分08秒
- 「睡眠と食事はしっかりとらないと倒れちゃいますよ。指揮官のリタイヤは
チームの士気に関わりますから、充分に注意してくださいね。
ま、若いから体力面では大丈夫だと思いますけど…」
「はぁい」
「それより監督、今日のスタメンのことですが、決まりましたか?」
信田の顔がヘッドコーチの顔になる。
「大体は決めたんやけど…」
加護の顔が少し曇る。
「まだ決まってへんところがあんねん…」
そういって、加護は書き込みだらけのノートを開いた。
- 275 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月19日(土)00時50分55秒
できるだけ長く気力が続きますように。
- 276 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月21日(月)17時02分24秒
- 開幕一軍メンバー
(氏名 投打 背番号 位置)
●投手●
後藤真希 右右 20 先発
柴田あゆみ 右右 29 先発
小湊美和 右右 38 先発
斉藤 瞳 右右 43 先発&中継
北上アミ 左左 33 先発&中継
高橋 愛 左左 19 先発
矢口真里 右右 48 中継
荒井紗紀 右左 26 中継
レフア・S 右右 40 中継
戸田鈴音 左左 52 中継
平家みちよ 左左 24 抑え
●捕手●
中澤裕子 右右 3 捕手/一塁
福田明日香 右右 31 捕手/三塁
大木衣吹 右左 39 捕手
●内野手●
稲葉貴子 右右 2 一塁/二塁/三塁
大谷雅恵 右右 6 二塁
小川麻琴 右左 8 三塁/二塁
アヤカ・K 右右 10 一塁
ミカ・T 右両 25 二塁/外野
菊池亜衣 左左 30 一塁/外野
村田めぐみ 右左 46 遊撃
木村麻美 右右 51 二塁/遊撃
保田圭 右右 61 三塁/遊撃
●外野手●
吉澤ひとみ 右右 5 外野/遊撃 ※外野手登録に変更
石黒 彩 左左 7 外野
市井紗耶香 左左 9 外野
前田有紀 右右 37 外野
末永真巳 右左 56 外野
- 277 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月21日(月)17時03分52秒
- ハロー!スポーツによるスタメン予想
1 8 市井紗耶香
2 5 小川 麻琴
3 3 アヤカ・K
4 D 中澤 裕子
5 7 石黒 彩
6 9 吉澤ひとみ
7 2 福田明日香
8 4 大谷 雅恵
9 6 村田めぐみ
投 後藤 真希
- 278 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月21日(月)17時05分27秒
- 〜小川麻琴の朝〜
朝の目覚めはすこぶる良かった。
緊張であまり眠れなかった割には、体が軽い。
顔を洗い、心身ともにすっきりしたところで、トレーニングウェアに着替え部屋を出る。
習慣となっている朝のジョギングだ。
この時間はまだ肌寒い。一生懸命大地を暖める朝日を背にしながらアスファルトを小川は
軽快に進む。
コースも残り僅かとなったところで、小川が立ち止まり、息を整える。
- 279 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月21日(月)17時06分31秒
- チームの雰囲気は巷で言われる程悪くはない。
思いきった世代交代が進んだおかげで、小川たち若手のモチベーションが落ちていないためだ。
自身もオープン戦では3割を打ち、一軍でやっていくかすかな手ごたえは感じた。
不安や不満と言えば、キャンプの途中から夏コーチにセカンドに回されたことぐらいか。
選手層の薄さを補うための2ポジション制とはいえ、小川はサード一本で勝負したいと考えている。
加護とかいう監督の就任はちょっと驚いたが、それによって自分がサッカー選手になったわけ
でもない。野球をやることには変わりない。
「そろそろ、か」
腕時計を見て小川はつぶやいた。東京に来てから、ずっと負けっぱなしだ。
今日こそは、勝つ。
大きく深呼吸する。
- 280 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月21日(月)17時07分05秒
- 来た。
後方から猛烈なダッシュ。
ぐんぐん姿が近付いてくる。
タイミングを合わせ、小川もロケットスタートを切る。
「今日こそは負けませんよ!保田さん!」
「ぬかせ!」
小川のジョギングコース最後の1キロ。
ここを、毎日保田と短距離走のような勝負をしているのだ。
札幌では、ジョギング中に誰にも合わないので、東京だけコースが保田とかぶってしまった
のだろう。
- 281 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月21日(月)17時08分37秒
- 小川が勝手に師と決めた、同じサードのライバル。
初めて保田を見た時、衝撃を受けた。
顔怖い。
そして初めて保田の守備を見て、かつてない衝撃を受けた。
すごい。
この言葉しか出てこなかった。
遠投145mを誇る強肩と強靱なリスト。球際への半端じゃない強さ。
こと守備に関しては、投手陣の保田への信頼は揺るぎないものとなっていた。
小川も守備は下手ではなかったが、完全に霞んだ。
打ち続けなければ、あたしは間違いなく外される。
この強烈なライバルの存在がなければ、今年も二軍スタートだったかもしれない。
- 282 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月21日(月)17時10分56秒
- 「うおりゃぁぁぁぁぁ!!!」
残り400メートル。
野獣のような雄叫びを上げながら、保田が引き離しにかかる。
いつもここからちぎられる。
一体この人はなにを食べてるんだろうか。
「むゎけぇるかぁぁぁっ!!!」
- 283 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月21日(月)17時11分30秒
- 小川も必死の形相で追走する。
開幕の日に、無駄な体力使うなんてとんでもないと誰もが言うだろうが、負けっぱなしと
いうやつが小川はとにかく気に食わない。
全力を注ぎ込み、ゴール寸前で保田を捕らえ、そのままゴール地点に決めている街灯を
くぐり抜ける。
そのままアスファルトに倒れこんだ。通行人からしたら迷惑このうえないが、もう動けない。
「ぶはぁっ、ぶはぁっ、ぶはぁっ なんとか…、負けな…かった…ぞ……」
薄れゆく意識の中、小川は思った。
あたしはアホだ、と。
- 284 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月21日(月)17時12分24秒
ぐぉぅ、ageてしまった…
俺もアホだ…
- 285 名前:名無し 投稿日:2002年10月22日(火)02時09分07秒
- 更新キテタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
作者さんがんがって
- 286 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月22日(火)20時37分01秒
- 太陽が頂点から西側にうつり、午後に入った東京ドーム。
日本ハム、札幌両軍ナインが球場入り。
ファイターズナインは地元ということで、各々クルマでドーム入り。
対するモーニングスは、普通の路線バスをチャーターし、ドーム入り。
選手の大半が座席数の関係から『立って』乗っていると言う光景に、
ファンやマスコミも流石に言葉をなくした。
「予定していたバスが故障したための緊急措置です。そこまでお金がないわけや
ありませんから」
降りるや否や一斉に差し出されたマイクに、加護が慌てて答えた。
- 287 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月22日(火)20時37分46秒
- 先に練習を行うモーニングスナインはロッカーで真新しいユニフォームに
着替える。
白地に赤が印象的なユニフォーム。
色自体は昔から変わらない札幌カラーであるが、デザインを多少変更した。
どうやらメジャーの某チームを意識したらしい。
これは、なけなしの予算から加護が無理を言って変更させたものだ。
このユニフォームで戦うんは、今年が最初で最後かもしれないけどな。
そういって、加護は笑った。
- 288 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月22日(火)22時50分14秒
- 信田は通路を歩きながら、ある考えを検討していた。
モーニングスの将来が、今年の優勝にかかっていることをナインは誰も
知らない。
このことを話してみようかと思い始めていた。
選手達の余計なプレッシャーになると困る、そういう思いから話すつもり
は全くなかった。
ただのプレッシャーになるか、一丸となってシーズンへ突き進むか。
大きな賭けだった。
不安は数え上げればキリがない。しかし、それでもなぜか、きっとやって
いけるという思いで胸がふくれ上がっていた。
今年こそはいける。
そんな予感を秘めながら、運命のゲーム開始まであと数時間。
- 289 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月22日(火)22時56分55秒
- 日本初の屋内式野球場・東京ドームのダグアウトから札幌モーニングス
新監督・加護亜依が姿を見せた。
背番号1がどことなく誇らしげだ。
詰め掛ける報道陣から、洪水のようなフラッシュの渦を浴びる。
加護は冷静を装って、スタンドを眺めてみる。
昨年、後藤と2人で観戦したのもこのカードだった。
あの時とは比べ物にならないほど、見渡す限りの人、人、人。
自分達が、好奇の目とはいえ、いかに注目されているか改めて実感する。
そして思った。
大丈夫や、じいちゃん。このチーム、ウチが決して潰したりせえへん。
- 290 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月22日(火)22時59分54秒
- ( ‘д‘)<やっと開幕戦や
( ´ Д `)<しかも2001年なんだよね
( `.∀´)<この後は、感動巨編「保田圭物語」よ!
- 291 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月23日(水)00時21分32秒
- ( `.∀´)<こんどの新曲では少し目立ってるわよ!!
- 292 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月23日(水)11時37分25秒
- 両チームの試合前練習が終了し、戦いの前の静けさがスタジアムを包んだ。
『大変長らくお待たせいたしました。試合に先立ちまして、両チームの
スターティングラインアップをお知らせいたします』
待ちに待ったウグイス嬢のこのアナウンスに、場内がドッと沸く。
- 293 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月23日(水)11時38分20秒
『先攻の札幌モーニングス
1番 サード 小川 背番号8』
加護が最後まで迷ったのは、このサードだった。
打撃の小川か、守備の保田か。
結局、信田との協議によりチームの攻撃力を優先させることにした。
小川に期待したのは、ある意味チームの命運を握る、切り込み隊長役。
アマ時代はエリートコースを歩いて来た彼女の大舞台での強さにかけた。
そのバットに、期待をのせて。
- 294 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月23日(水)11時38分59秒
『2番 センター 市井 背番号9』
市井は昨年と変わらない2番。1番を打診されたのだが、市井が固辞した。
「あたし以上に2番ができる人間がいるとは思えない」
大技、小技なんでもこなす卓越したバッティングセンス。
打線の連結器として、そのポジションは非常に重要だ。
市井は密かに期している。
首位打者をとって、来年はメジャーへ。
- 295 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月23日(水)11時39分39秒
『3番 ファースト アヤカ 背番号10』
アヤカも去年と変わらない3番に入る。
ダニエルの引退がなければ、解雇は避けられなかったはずだ。
しかし、ワタシはココにいる。
自分にパワーが不足しているのは承知の上。それならどうする?
チャンスに強い、打点を稼ぐバッターになる。
アヤカのチャレンジが始まる。
- 296 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月23日(水)12時15分20秒
『4番 指名打者 中澤 背番号3』
常に年齢を話題にされながら昨年も24本塁打と実績は文句無し。
あとはせまりくる衰えをどこまで技術でカバーできるか。
ここ数年目標にしてきた2000本安打まで、あと100本を切った。
体は満身創痍。満足に動くのは左足しかない。
それでも中澤は進み続ける。
一度も味わったことのない、勝利の味を知るために。
- 297 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月23日(水)12時16分35秒
『5番 レフト 石黒 背番号7』
投の後藤、打の石黒。
オフに札幌が行った最大の補強。
自分を切り捨てた巨人。
自分を必要とした札幌。
奴らを見返す。
その一念だけで突き進んできた。
石黒彩の存在をかけたシーズン。
最後に笑うのはどっちか思い知らせてやるよ。
- 298 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月07日(木)01時29分36秒
- いよいよ開幕ですね。ドキドキ…
- 299 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月18日(月)14時02分55秒
- 『6番 ライト 吉澤 背番号5』
今季から外野手として再スタートの吉澤。
慣れぬ守備に戸惑い、打撃までおかしくなってしまった。
オープン戦の打率が1割を切り、ホームランもゼロ。
しかし、加護は吉澤を開幕スタメンに選んだ。
なんで、自分が開幕スタメン…?
疑問に思う吉澤を、ヘッドコーチの信田が呼んだ。
「監督はお前を全試合スタメンで使う気だ。たとえ全打席三振でもな」
この言葉で、吉澤の腹は決まった。
全打席、フルスイングで三振してやる。
- 300 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月18日(月)14時15分50秒
- 『7番 キャッチャー 福田 背番号31』
いつでも冷静沈着。
それが福田についてまわるイメージ。
いいキャッチャーなんだけどな。
それも福田についてまわるイメージ。
冗談じゃないと福田は思う。
あたしは冷静沈着なんかじゃない。無理に感情を抑え込んでいるだけ。
あたしはいいキャッチャーじゃない。なんで優勝できないの?
福田明日香に足りないものって、なんですか。
- 301 名前:マルサ 投稿日:2002年11月19日(火)23時25分44秒
- 初投稿です。
ここまで大変楽しませていただきました。
これからの展開を楽しみにさせていただきます。
あと、是非ともモーニングス対ダイエーの試合(球場はどちらでもいいす。)
を書いてください!!(f^^;)
お願いします。
- 302 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月20日(水)15時16分44秒
- 『8番 セカンド 大谷 背番号6』
でかい声、でかい尻、安定した下半身から生み出されるパワー。
パワーヒッターの資質は充分と誰もが言う。
反面、極度のあがり症が災いし、チャンスを逃がし続けてきた。
苦節6年、万年二軍の自分に初めて巡ってきたチャンス。
ミカ、あさみといったライバルに勝って掴んだスタメンの座。
絶対に渡さない。死んでも離さない。
- 303 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月20日(水)15時18分38秒
- 『9番 ショート 村田 背番号46』
吉澤を外野にコンバートする事になったのは、打撃に専念させる事と
二軍でしごかれていた村田が、やっと使えるレベルに達したことだ。
6年かけてプロの球にようやくついていけるようになった。
「このチームで一軍上がるのに5年もかかるくらいどんくさいんだから、
期待なんてするか」
夏コーチはこういっていたが、村田は知っていた。
村田と大谷をスタメンで使うように加護に進言したのは夏だった事を。
夏コーチ、見ててください。
- 304 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月20日(水)15時20分12秒
- 『ピッチャー 後藤 背番号20』
後藤の名前がコールされ、一際大きな歓声が沸く。
ルーキーながら、既にエースの風格がただよう後藤は新生札幌の象徴だ。
オープン戦でも負けなしの3勝。
エースナンバーを背負ったその右腕がチームの命運を握る。
「んぁ、あたしがエース? 当然でしょ」
- 305 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月20日(水)15時25分36秒
- ( ‘д‘)<ようやく開幕やな
( ´ Д `)<1年以上たっちゃったよ
( `.∀´)<結局スタメン落ちかよ!
|ノハヽヽ
|σ_σ|| デバンハマダデスカ?
⊂
|
- 306 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月20日(水)15時30分38秒
- ( ‘д‘)<あんな
( ´ Д `)<なに〜?
( ‘д‘)<知らない間にポジションが変わってる人がいたりすんねんけど
( ´ Д `)<ど〜でもい〜よ
∋oノハヽo∈
( `.∀´)<アタシはサード一本よ!
( ‘д‘)<おばちゃんにサードは似合わへんぞ
- 307 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月20日(水)15時38分55秒
- 三 小 川 右投左打 背番号8
中 市 井 左投左打 背番号9
一 アヤカ 右投右打 背番号10
指 中 澤 右投右打 背番号3
左 石 黒 左投左打 背番号7
右 吉 澤 右投右打 背番号5
捕 福 田 右投右打 背番号31
二 大 谷 右投右打 背番号6
遊 村 田 右投両打 背番号46
投 後 藤 右投右打 背番号20
|ノハヽヽ
|σ_σ|| ワカリヤスク カクト コンナカンジ
⊂
|
|ノハヽヽ
|σ_σ|| ソレカラ レス アリガトウ
⊂
|
- 308 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月20日(水)20時27分34秒
- おおっ!更新されてる!!
待ってましたよ〜無理せずにがんばってくださいね。
- 309 名前:マルサ 投稿日:2002年11月25日(月)21時53分58秒
- 早く試合はじまんないかなぁ・・・
かっとばせ〜よーしざわ!!よーしざわ!!!(U^。^¥)
- 310 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月27日(水)17時27分47秒
- 国民的女性アイドルグループによる始球式。
投手、内野手、外野手すべてそのグループのメンバーが守っている。
これはこれで壮観な眺めだ。
さすがに捕手だけは日本ハムの選手だったけど。
そして打席にたつのも、そのグループのメンバー。
マウンドにいるピッチャーの子が、俗に女の子投げと言われる投げ方で
ボールを投じ、バッター役の子が、なよなよっとした、バットに振り回される
スイングでそのへろへろ球を空振りをする。
場内大拍手、大歓声。
- 311 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月27日(水)17時28分18秒
- そんな光景を、あたしはウェーティングサークルでじっと見ていた。
こんなくだらないセレモニーは早く終わらせてくれないかな。
と、そこへ市井さんが声をかけてきた。
「どうよ小川、緊張してる?」
実際、今はあまり緊張はしていない。
これからプロ初打席を迎えるというのに、こんなに平常心なのは我ながら
どうかと思うけど。
ちったぁ緊張しろっての。
「いや、あまり緊張してないっすね」
「それもそうか。小川のバッティングとクソ度胸を買っての1番なんだから、
これくらいでガクガクになるようじゃね」
「ただ、自分はいちーさんみたいにレギュラー安泰というわけじゃありません
からね。最初からトップギアで回していかないと…」
そう言って、小川はベンチを見る。
視線の先には、同ポジションのライバルの姿。
- 312 名前:マルサ 投稿日:2002年11月28日(木)21時14分38秒
- 2000年の日本シリーズた第2戦(だったかな〜?)
の始球式を思い出します。
先発工藤から城島が打った超低めの片手ホームラン・・・
カッコヨカッタな〜・・・
- 313 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月28日(木)22時14分36秒
- やっぱり面白いっつーか、激しく続きが気になる展開です。
マイナーなメンバーも、選手として上手く使われてるのがイイっすね。
期待してます、頑張って〜
- 314 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月29日(金)13時27分29秒
- ダグアウト内。
加護は津波のようにおしよせる緊張感と必死で戦っていた。
「加護ちゃん、大丈夫かいな? 真っ青やで?」
主将・中澤が声をかける。
その言葉に、ちょっとだけ不満を見せる加護。
「…ダグアウトでは、監督と呼んでください。中澤さん」
「せやったせやった。すまんな監督。せやけど今からそんなガチガチやったら
シーズンもたんで。ほんでな、監督にはもっとどっしり座っといて欲しいねん。
特に今年は若い子らが多いから、なるべく不安にさせんようにして欲しいねん」
中澤の言うことも最もだ、と加護は思った。
「そうですね」
と言うと、加護はベンチにどっかりと腰を降ろした。
(とうとう、始まるんやな…)
- 315 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月29日(金)13時28分52秒
- 始球式などのセレモニーが全て終わり、先発投手の投球練習が始まった。
打席の近くで球筋を見ながら、小川はつい先程のことを思い出す。
試合直前、選手全員がロッカールームに集められ今シーズンの優勝に球団譲渡が
かかっていることを信田から告げられた。
かなり驚いたが、ここになってなぜそのような事を告げたのか、小川にはおぼろげ
ながらわかるような気がした。
自分達はまだ1つになりきれていない。
若すぎる監督に対して不満・不安を持つ者もいる。
それを、チームの存続に関わる条件を突き付けることで、自分達が一丸となれるか
それを試したのだろう。
- 316 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月29日(金)13時32分27秒
- 「行くぞっ」
自分に言い聞かせる。
通い慣れた左打席に歩を進め、丁寧に足場を慣らす。
誰も入っていないまっさらな打席を自分の色に染めあげる大事な作業。
先発投手もそうだが、これも1番打者だけの特権だ。
ポジションを固め、改めて投手を見る。
よっしゃ麻琴、戦争開始だ。気合い負けすんじゃねぇぞ。
「プレーボール!」
- 317 名前:名無しさん 投稿日:2002年11月29日(金)13時52分22秒
- ( ‘д‘)<城島はんのあのホームランはすごかったな
( ´ Д `)<ンアンア れっつごーぼーりっく
( `.∀´)<ちょっと、最強ストッパー保田大明神様の出番はまだなの!?
( ‘д‘)<おばちゃんストッパーちゃうやろ
|ノハヽヽ
|σ_σ|| レスツイテルト ヨロコビマス
⊂
|
- 318 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月01日(日)15時17分17秒
- >>312
始球式は第3戦だとオモワレ
小川初球をセンター前だ(w
- 319 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月05日(木)18時10分05秒
- 小川は決めていた。
初球、狙いはストレート一本。
ただし、どんな球であろうとフルスイング。
ファイターズの開幕投手・金村暁がモーションに入る。
その右腕から、ペナントを巡る長い長い戦いの始まりを告げる白球が投じられた。
緊張からか、やや甘く入った外角ストレート。
今までにバットを何千、何万と振り込んで来たその体が、自然に反応する。
渾身のフルスイング。
振り抜いたバットに、手応えをほとんど感じなかった。
- 320 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月05日(木)20時13分22秒
「うおおおっ!!」
ベンチ全員が身を乗り出して打球の行方を追う。
思いきりよくスイングした打球は、歓声と悲鳴を切り裂いて低い弾道のまま
右中間フェンスを直撃した。
打球は強かったが、小川は一塁キャンパスを勢いよく蹴った。
クッションボールを処理したライトからいいボールが戻って来る。
頭からベースに飛び込む。
世界の盗塁王(今は1位ではないが)福本氏によれば、ヘッドスライディングは
危険きわまりないと言う。
だが小川はあえて頭から滑り込んだ。目に見えない、勢いというムードを作るのには
足からより頭から突っ込んだ方が断然盛り上がるのを知っているから。
- 321 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月05日(木)20時15分09秒
- 続いて2番市井紗耶香が打席に向かう。
プレーボール直後、いきなりのピンチ。
ファイターズバッテリーに動揺が走ったのを市井は見逃さない。
クセの全くない、自然体の構えからくり出されるしなやかなスイングが、
バッテリーの間隙を捕らえる。
昨年は引っ張りを意識していた感のあった市井が、本来のセンター中心の
バッティングに戻してきた。
これから、シーズン中に何度同じような光景を見るのだろう。
軽やかに、そして鮮やかなるセンター前ヒット。
要したのはわずか2球。
そして無死1、3塁。
- 322 名前:マルサ 投稿日:2002年12月09日(月)23時09分55秒
- こんな試合みたことなか・・・
訳)こんな試合みたことない・・・
かっ飛ばせーさーくーしゃ!
- 323 名前:マルサ 投稿日:2002年12月10日(火)22時03分23秒
- 開幕戦の組み合わせは
前のシーズンの
1位 対 6位
2位 対 5位
3位 対 4位
だと思われ・・・
まちがってたらすいません¥。¥
- 324 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月10日(火)22時23分43秒
- 今は開幕カードに前年の順位はあまり関係なかったような・・・
- 325 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月11日(水)01時53分48秒
- ( ‘д‘)<>>323はん、2001年の開幕戦はハム×牛やで。せやから合ってるねん
( ´ Д `)<もーすぐおととしになるよね…
- 326 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月11日(水)01時58分01秒
- このピンチに開き直ったのか、ノビのあるストレートを中心に組み立ててきファイターズ
バッテリー。勢いに押されたか、3番アヤカは追い込まれてセカンドへのポップフライ。
そして迎える4番・中澤。
中澤裕子。
現役17年目を迎えたベテランながら、衰えを知らない長打力は未だ健在。
本塁打王のタイトルに輝くこと3回を誇る。
現在9年連続で20本塁打以上をマークしているパ・リーグ屈指の強打者だ。
「おっしゃー!こいやぁっ」
マウンドの金村を睨み付け、いつものように打席で吠える。
気合いは十分。
レフトスタンドからは「燃えろ!ゆゆたん!」の大合唱。
- 327 名前:マルサ 投稿日:2002年12月28日(土)23時51分40秒
- 今年終わっちゃうよ〜・・・
- 328 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月29日(日)13時31分44秒
- 更新お願いします。
- 329 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月31日(火)00時52分09秒
- とりあえず、待とう
- 330 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月01日(水)00時15分05秒
- あけましておめでとうございます。
休みっぱなしですが、続ける気はあります。
3年にまたがってしまいましたが、よろしくおねがいします。
- 331 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月01日(水)00時46分34秒
- 期待してます
- 332 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月01日(水)19時23分28秒
- 外角に逃げるスライダー。
中澤はそれだけを狙っていた。
難しい球はカット、カットで逃げる。
日本ハムバッテリーは、中澤のスライダー狙いを知っているのか、
スライダーをなかなか投げてこない。
しかし、待っていたかいがあり、ついにスライダーが来た。
「おっりゃぁぁぁ!!」
気合とともに、中澤のバットがうなりを上げる。
鋭い打球が一、二塁間を襲う。
「よっしゃ、先制点もろた!」
- 333 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月01日(水)19時29分51秒
- 歓喜の雄たけびをあげながら一塁へダッシュする中澤の視界に、
飛び込んでくるものがあった。
セカンド・金子が横っ飛びで好捕、そのまま4−6−3のダブルプレー。
一瞬にして札幌のチャンスがついえた。
残ったのは中澤のあわれなぼやき。
「しょ、しょんなぁ〜」
- 334 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月01日(水)19時34分37秒
- 初回は先制できなかったが、気を落としてばかりでもいられない。
マウンドには、スーパールーキー・後藤真希が登る。
規定の投球回数を終え、ロージンを手の上で弄んでいると、福田が
マウンドに来た。
「なんすか?」
正直言って、後藤はこの福田が少し苦手だ。
何を考えているのかよくわからないし、いつも落ち着き払っている。
自分とたいして年も違わないのに、あの中澤でさえも福田には一目
置いているのだ。
- 335 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月01日(水)19時44分26秒
- 「サインは覚えてるわね」
「とーぜん。それだけ言いにきたんすか?」
「まさか。先制点が取れなかったから、ちょっと落ち込んでるかと
思って」
冗談めかして言っているが、マスク越しにのぞく目は冷静そのものだ。
「そんなことで落ち込みゃしませんよ。それより福田さん、あんまり
ここにいると遅延行為取られちゃいますよ」
「このくらい大丈夫よ。それよりも、今日は…三振、奪りにいくよ」
それだけ言って、福田は定位置へ戻っていった。
- 336 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月01日(水)19時48分32秒
- 敵味方関係のない歓声の中、後藤がワインドアップモーションに入る。
ズバン!
バックスクリーンの球速表示に観衆の視線が集まる。
『151キロ』
地鳴りのようなどよめきがドームを包み込む。
どよめき、歓声が大きくなるたびに、後藤のテンションもあがっていく。
続けざまにストレートを投げ込む。今度は152キロ。
ボルテージはいきなりレッドゾーンに突入する。
- 337 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月01日(水)19時51分55秒
- 18.44メートル離れた福田からサインが発信される。
いいね、福田さん。後藤もそういうの結構好きよ。
んじゃ、いっちょいきますか。
3球目。
後藤が投じたのは、蚊が止まりそうなくらいのスローカーブだった。
ファイターズのトップバッター・中村豊がつんのめるようにして空振り。
プロ初奪三振となった。
- 338 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月01日(水)19時55分11秒
- 続いて迎えるのは、2番小笠原道大。
後藤も認める強打者、ハッキリいって強敵だ。
これといって穴もなく、足も速く、長打力もある。
なんだってこんな強打者を2番になんか置くんだと、愚痴の一つも
言いたくなるような好選手だ。
後藤は密かに小笠原との対戦を楽しみにしていた。
あのフルスイングと真っ向勝負を楽しみたい。
しかし、自分の置かれている状況も、その頭でよく理解している。
自分は開幕投手だ。つまりエース。
そして、チームを見渡しても、安倍、ルルといった実績のある
先発陣がいきなり総崩れの中、エースたる自分が絶対に負ける
わけにはいかない。
- 339 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月01日(水)20時12分03秒
- 勝負は始まっている。相手と対等以上の関係にならなければ、勝ちは
見えない。
だったら最初はこいつだ。
初球、先ほど見せたスローカーブを放る。
小憎らしい程に相手をナメ切った感のあるボールだ。
小笠原は突っ込みかけるが、瞬時に体勢を立て直し、フルスイングで
ボールをひっぱたく。
ものすごい勢いの打球が一塁側観客席に飛び込んでいった。
「ふぇ〜、さすが」
思わず軽口がついて出る。
冷や汗がでた。
- 340 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月01日(水)20時20分23秒
- 「おいおい、あのルーキー大丈夫か?」
ベンチで中澤が心配そうに言うと、信田が返す。
「明日香がいるんだから、暴走はしないでしょ」
「それもそうやな」
中澤はうなずいた。
- 341 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月01日(水)20時23分29秒
- 「それより監督、そんなところで立ってないで、座っててください。
今からそんな感じじゃ、試合終了まで持ちませんよ」
ベンチから今にも飛び出していきそうな様子の加護に、信田が言った。
加護は後藤から目を離すことができなかった。後藤から目を離すと
たちまち言い知れぬ不安が襲ってきそうでできない。
小さい頃から見慣れたあの躍動感溢れるフォームを見ているだけで
理由はわからないが安心感に包まれる。
「あい…すみません」
「後藤は大丈夫ですよ。あいつは大舞台になればなるほど力を発揮する
タイプです。やってくれますよ」
そう言って、小さな監督の肩にやさしく手をおいた。
- 342 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月01日(水)20時27分42秒
- ( ‘д‘)<おいおい、3年目に突入してもまだ序盤やで。
( ´ Д `)<そりゃあいぼんもハゲるよね
( ‘д‘)<ハゲてへんわ!
∋oノハヽo∈
( `.∀´)<早くアタシを使いなさいよこのハゲ
( ‘д‘)<おまえは絶対に使わん
|ノハヽヽ
|σ_σ|| アケマシテ オメデトウ ゴザイマス
⊂
|
- 343 名前:マルサ 投稿日:2003年01月03日(金)17時32分03秒
- あけおめっ!
ことよろっ!
- 344 名前:モゲラン 投稿日:2003年01月05日(日)21時42分28秒
- もひもひもひもひもひもひもひもひもひもひもひもひもひもひもひもひもひもひもひもひもひもひもひもひ
- 345 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月14日(火)02時36分07秒
- サカヲタなんだけど一気に読んだ!
オモロイ!
続き、期待してます。
- 346 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月16日(木)00時50分33秒
- 後藤の立ち上がりは上々だった。
小笠原にヒヤリとする大ファールを喰らったが、その後はストレートで
押しまくり根負けした小笠原が三振、3番片岡もセカンドゴロに切って
とっていた。
マウンドを降りてくる後藤の顔が笑っている。
加護の胸に急速に安心感が広がる。
大丈夫だ。ああやって笑っているときは調子のいいときのものだ。
「ごとさん、おつかれさま」
「んぁ? ああ、任しときなって。えへへ」
笑顔のまま、ベンチ裏に後藤が下がる。
- 347 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月16日(木)00時58分39秒
- 一方、初回のピンチを切り抜けたファイターズの金村はしり上がりに
調子を上げ、モーニングスナインの前に仁王立ちである。
石黒、吉澤、福田を三者凡退に切って取り、エースの貫禄を見せ付けた。
試合は、4万5千の観客をバックに快調に飛ばす両エースの息詰るような
投手戦になった。
打ち合いを予想した観客には思いもかけない展開である。
高卒ルーキーながら、その豪腕で三振を次々に奪う後藤と、プロらしい
繊細なコントロールで内野ゴロの山を築く金村。
- 348 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月16日(木)01時02分40秒
- 8回、疲れの見えた金村をモーニングス打線がようやく捕らえ出した。
先頭打者の中澤が四球を選び出塁すると、5番石黒がバントの構えを見せた。
投球と同時に前進してくる内野陣を目前にして、強烈なバスターヒッティング。
石黒のバットから放たれた打球は、目の覚めるようなライナーで左中間を破った。
ホームに帰れそうな感もあったが、ヒザに爆弾を抱える中澤は無理をせず
三塁でストップする。
モーニングスのベテラン2人がキッチリとチャンスをお膳立てした。
レフト側の一角が久しぶりの盛り上がりを見せる。
そしてノーアウトでランナー二、三塁という絶好のチャンスに、打席へ
入るのは今日2三振といいところなしの吉澤ひとみ。
- 349 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月16日(木)01時09分16秒
- 調子は最悪だった。
昨年後半のレギュラー落ちの反省から新フォームに挑戦したが、吉澤はそれを
未だ自分のものにしていなかった。大不振だったオープン戦からずっと違和感
を拭いきれないままだ。
「期待してます」
それだけ言って送り出してくれたちっちゃいカントクは、クソボールを振って
無様な空振り三振を2度もした自分を代えようともしない。
それどころか、今でもベンチから信じきった目で自分を見ているのだ。
元来、考えるのという行為が苦手な吉澤は、頭の中のもやもやを振り払うように
叫んだ。
「うあーっ!!!!!」
上等じゃねえか。
そんなにアタシが三振するところが見てえのか。
だったら、望みどおりにしてやるよ。
まずは金村、お前をぶっ飛ばすつもりで三振してやる。
- 350 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月16日(木)01時18分06秒
- どかーん!!
ばこーん!!
ベンチから戦況を見ていた加護は、一瞬何の音がしたのかわからなかった。
ただ、自分の見ている光景が一瞬のうちに、映画のスクリーンの中で起こって
いるような錯覚に囚われた。
一斉にベンチから選手達が身を乗り出し、そして飛び出す。
レフト側からは歓声が、ライト側からは悲鳴とため息がドームを包み込んだ。
「何してんの、せっかく打ったんだから出迎えてやんなきゃ」
ワンテンポ遅れてベンチ裏から来た後藤に言われて、初めて現実を認識した。
あの衝撃音は、吉澤の打球音と看板にぶち当たった音だったということに。
- 351 名前:マルサ 投稿日:2003年01月16日(木)22時48分00秒
- これって何年のシーズンのはなしだったっけ?
- 352 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月22日(水)02時32分46秒
- 200X年です。
つーか01年か。
- 353 名前:マルサ 投稿日:2003年02月12日(水)22時21分52秒
- 更新まだですか?
- 354 名前:名無し 投稿日:2003年02月17日(月)20時09分01秒
- オープン戦が始まるまでには続きを
- 355 名前:マルサ 投稿日:2003年02月24日(月)22時07分07秒
- オープン戦はじまったよ〜〜(^。^)
巨人まけろ〜〜(^。^)
更新まだかな〜(^。^)
- 356 名前:UWF 投稿日:2003年03月24日(月)00時01分20秒
- 開幕までには更新して〜
- 357 名前:マルサ 投稿日:2003年03月26日(水)22時56分27秒
- こーしんまだっすか?
早く続きが読みたいよ〜!
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