ここはどこだろう？頭が…ズキズキする
視界がだんだんはっきりしてきて辺りを見まわす。
…誰かの……部屋？
薄暗い部屋は恐ろしいぐらいに静かで…
「あ！…ひ、とみちゃん？」
少し離れたところであたしと同じように寝ている彼女を見つける。
「ねぇ！ひとみちゃん！起き…！！」
ひとみちゃんを起こそうと立ち上がろうとしたけどそれは遮られた。
「何これぇ！？」
あたしはベットに両手、両足を鎖で繋がれていた。
どうやらひとみちゃんも同じみたい…
どう足掻いても鎖は外れてはくれない。
とりあえず鎖は諦めて、ひとみちゃんを起こすことにする。
「ひとみちゃん！ねぇ、起きて〜！！」
「…ぅん……頭、イタ･･････」
何度目かの呼びかけでやっと目を覚ます。
「ひとみちゃん！大丈夫！？」
「ん？梨華ちゃん…？」
状況が掴めてないらしく、キョロキョロしてる。
「ほぇ？ここ、どこ？…ぅへ！？何これ〜！！」
そして鎖の存在に気付く。
「ちょっと梨華ちゃん！どういうつもり！？」
「ち、違うよ！あたしじゃないよ！！あたしも起きたらこうなってたの！！！」
「ねぇ、どこだろここ…」
「分からないよぉ……」
とりあえず今日のことを思い返してみる。
「今日…朝はあたしはカントリーの仕事で、午後から娘に合流…」
「うん。で、テレビの収録して……帰ったよね？」
「ご飯食べに行って、買い物して…あ〜！！」
「なんか思い出した！？」
「う〜…今日あたしの家に泊まるんだったのにぃ〜……」
そう、今日はあたしとひとみちゃんの記念日
付き合ってちょうど丸一年！！
「今日キスもしてないよぉ…」
「キスぐらいいつでもしたげるから〜。でね、買い物してー」
…いぢわるなんだから……
でも、そんなあなたがスキ
「もぉ…あ〜！！」
「今度は何？エッチしてないとか？」
普通に言っちゃうからこっちが恥ずかしくなるよ。
「違うよ！思い出したの！ほら、買い物してる時メールあったじゃん！」
「…あ〜！ったねぇ！！」
おそろのピアス買おうってことになってふたりで選んでた時にメールがきたんだ。
ピアス……口を尖らせてひとみちゃんを見る。
「ピアスはまた今度、ね？」
「はぁい……」
…で、メールの内容はダンスレッスンをしていて残っていたごっちんが
倒れたということだった。あたし達は走って事務所に向かった。
事務所は人目につきにくい場所にあって、しかも夜だったので真っ暗で
辺りには誰もいなかった。
入り口が開いてなかったら誰でも裏から入ろうとする。
「で、裏に行こうとした時…後ろからハンカチ鼻に押し付けられて、クラって
して……現在に至る？」
あたしはうん、うんと頷く。
「ほぇ？これって拉致じゃん！？うちら拉致られてんの〜！？」
ひとみちゃん、気付くの遅過ぎ…
これからの展開が楽しみです。
頑張ってください。
と同時に今まで不思議と生まれなかった恐怖心が沸いてくる。
「ひとみちゃぁ〜ん…」
あたしとひとみちゃんはお互い情けない顔で見詰め合う。
「だ、大丈夫だよ！あたしがついてるじゃん！！」
やっぱひとみちゃんも不安みたい。
足音があたしのベットの上で止まる。
そして、ひとみちゃんのベットの方にも歩いていく。
そりゃぁ今まで仕事中眠いなぁとか、飯田さんの説教長くてヤダなぁとか
思ったことがありました。撮影待ちしてる時にひとみちゃんとイチャイチャして
他のメンバーの反感を買ったこともありました。
だからって……大事な記念日にこんなのって酷過ぎますよ！
何が嫌で、知らない人に変なことされなきゃいけないんですか！！
あたしの身体ははとみちゃんだけのモノなんですよ！！！
失敗……
花板での名前を使ってしまいました。
『ななし』でお願いします。
あたしはひとみちゃんの声で現実にされました。
どうやらさっきの人はまた部屋の外に出て行ったみたいです。
「ねぇ、さっきの人さ…」
「え？」
あたしはひとみちゃんの言葉に呆然とした。
「今、なんて…？」
「だから〜さっきの人、『ごっちん』だったんだって！」
…どういうこと？ごっちんは倒れたんでしょ？
もう元気になったってこと？
…なんで鎖に縛られたあたし達を見てそのまま出て行くの？
あたしは苦笑して答える。
ひとみちゃんはちょっとムッとするとあたしを見る。
「冗談じゃないよ！だって……」
ひとみちゃんが言いかけた時、またドアが開く音が鳴る。
「いや〜、まいったなぁ〜」
そして、場違いな声を出してあたし達に近づいてくるその人物。