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とある旅館の物語
- 1 名前:aki 投稿日:2001年09月16日(日)17時34分40秒
- 銀板と風板で書かせてもらっていたものです。
今までのものとは全く関係ない舞台も新たに全く新しい話を
書こうと思います。
今まで書いてきた物は書きながらちょっと小説の文の部分に力を入れすぎて
重いかなと思っていたのでこれはもうちょっと軽い感じの
コメディチックな感じにしたいつもりです。
それでは始めます。
- 2 名前:aki 投稿日:2001年09月16日(日)17時41分00秒
- ここは全国でも有数の結構有名な温泉町。
毎年全国からたくさんの観光客が訪れる。
そしてここはその温泉町のとある旅館。
歴史は結構古いがそんなに大きくない。
これはそこで繰り広げられる出来事の物語。
「とある旅館の物語」
始まりです。
- 3 名前:aki 投稿日:2001年09月16日(日)17時50分47秒
- 「梨華ちゃ〜〜んっ!!」
腰まであるさらさらな髪を空に棚引かせた少女がそうでかい声を旅館中に
響かせながら走っていた。
「ちょっと!ごっちん抜け駆けはずるいよ!」
「ごっちん」と呼ばれた少女の隣には同じ速度で走るショートカットの同い年
ぐらいの少女。
「よっすぃーはまだ掃除が残ってるんでしょ!」
「ごっちんだって!!」
話しながら走る二人、ものすごい足音がひどくうるさい。
「あっ!梨華ちゃんー」
ごっちんこと後藤は自分の探し求める少女の後姿を見つけまた
そう叫んだ。
- 4 名前:aki 投稿日:2001年09月16日(日)18時01分48秒
- 「その声は・・・」
石川は聞き覚えのあるいつもの自分を呼ぶ声が後ろからするので
振り向いた。
「受け止めてー!」
「へ?」
「梨華ちゃんっ!」
「ごっちんっ・・・ってキャァ!」
ガバッ!・・・そしてバタン、つまり墜落。
後藤はそのまま速度を落とさず石川に抱きつき突然のことに
石川は対処できずそのまま地面に墜落してしまった。
「イタタ・・・・。」
「幸せ」
石川はぶつけたところをさすっているが後藤は構わず
首に手を回して満足そうに抱きついている。
「ちょっとーっ!!ごっちん離れなさいよー!!」
吉澤が言いながら後藤の服の裾を引っ張る。
「ま〜た、あんたらはぁ!!!」
そんな中旅館の玄関前、フロントから大きな声が三人の元に届いた。
- 5 名前:aki 投稿日:2001年09月16日(日)18時04分29秒
- これに関してはかーなり作風が変わったかと思います。
コメディーというよりアホっぽい感じにならないか
ちょっと心配。(−−;)
- 6 名前:aki 投稿日:2001年09月16日(日)18時45分05秒
- のれんを潜り抜け姿を現したのはここの女将の中澤裕子。
「「な、中澤さん!」」
石川と吉澤の声が重なった。
石川は呆れと怒りが入り混じった表情の中澤にびびり声が上ずる。
吉澤は中澤に姿に気付くとすぐにぴしっと姿勢を正し立った。
「ん〜〜」
後藤だけが中澤の姿に物怖じせず未だ石川に抱きついて体を摺り寄せている。
「ちょ、ちょっとごっちん〜。」
石川も立とうとするが後藤がいるため立ち上がれず困ったような声を出す。
「・・・・・・・・。」
そんな中、中澤の怒りのボンテージが上がっていく。
「ごっちん〜!!とにかく離れてぇ!」
吉澤が後藤の服の裾を強く引っ張るが離れない。
「やだぁ〜」
「よ、よっすぃ〜・・・もう遅いかも・・・。」
石川がそう言ったと同時に、
「あんたらその辺でいい加減しときぃ!!!」
後藤に続き旅館にまたとてつもないでかい声が隅から隅まで響いた。
- 7 名前:名無し男 投稿日:2001年09月16日(日)23時20分33秒
- がんばれ〜
- 8 名前:aki 投稿日:2001年09月16日(日)23時20分38秒
- 「「「ひっ!!」」」
とうとう怒り爆発の中澤に後藤も含め三人は声を揃え縮み上がる。
「裕ちゃん、また〜?」
矢口が言いながら保田と向こうからやってきた。
「あたしだって好きで怒ってるわけじゃないわー!」
「あたしらに八つ当たらんでも!」
保田が中澤に言う。
「ん〜、梨華ちゃん好き〜」
「だから梨華ちゃんはごっちんのものじゃないでしょ!」
「ちょっと二人とも〜・・・」
後藤が石川の腕にしがみ付きそれを吉澤が離し石川がそれしか言えず。
怒られてもすぐに騒ぎ出す三人。
「・・・・・・。」
その光景を矢口はなにやら少し複雑な表情で黙って見つめる。
- 9 名前:aki 投稿日:2001年09月16日(日)23時21分53秒
- 「えぇ加減にせんか〜い!!」
中澤がまた大きな声で怒鳴った。
「ついこの間も言うたと思ったけど今は秋!食事もおいしい、紅葉もする
しなにより季節がいい。そしてこれから冬!冬といえば温泉!旅行!
これからかきいれ時なんやからほんっと真面目にやりー!!」
「ちょっとー!梨華ちゃんは後藤のもんじゃん、よっすぃー何いってんの!」
「誰が決めたんだそんなことー!大体ごっちんはいっつも梨華ちゃんとべたべた
してー!!」
「・・・・・・・。」
後藤と吉澤は中澤の言葉に耳を傾けることなく完全に無視し二人、向かい合い
対決をしている。
「2人ともー!中澤さんが話してるのに・・・・」
石川が注意するがほとんど効果なし。
- 10 名前:aki 投稿日:2001年09月16日(日)23時22分38秒
- 7:名無し男さん
>レスありがとうございます〜。
頑張ります。
- 11 名前:aki 投稿日:2001年09月16日(日)23時23分08秒
- 「裕ちゃん、めげないで・・・・。」
「同情はいらんからなんとかして・・・」
保田が慰めるように中澤に言うがもはや中澤は怒鳴る元気もなくす。
「・・・・あたし掃除戻るー。」
矢口はさっさと違う場所へ行ってしまった。
「あ、ちょっと矢口ー?」
歩いていってしまう矢口の後ろ姿に向かって保田も追いかけた。
ちょうどその頃、後藤と吉澤の対決もいよいよ険悪に鳴り始めていた・・・
「あたしたちも掃除戻らなきゃ!」
石川が矢口達の姿を見て持ち場に戻ろうとした。
「梨華ちゃんが行くなら後藤も掃除戻る」
「ごっちんは梨華ちゃんとは別でしょー!」
そして三人はフロント前から消えていった。
「・・・・・・。」
その後姿を見えなくなるまで見つめる中澤。
しばらくの間ただ呆然と立ちすくんでしまい何も言う事ができなくなってしまった。
- 12 名前:aki 投稿日:2001年09月16日(日)23時32分03秒
- 「・・・矢口なんかあったのー?」
2人は露天風呂に戻りモップを手に掃除にしていた。
そんな中ふと保田が矢口に声をかける。
「え?」
「なんか元気ないじゃん。」
「・・・そう?そう見える?」
「うん。」
「そっか・・・」
「何かあったんだ?」
「ううん、なんにもない。平気・・・。」
そう言うと矢口は掃除に戻ってしまった。
「?」
保田も明らかに元気のない矢口の様子に疑問を感じたが深く考えず
保田も掃除も戻った。
- 13 名前:@名無し 投稿日:2001年09月17日(月)01時50分00秒
- 早速新しいのですね(^^)
甘そうでいいですね♪
ただ…主人公は…やぐちですか?
やぐちの心境がきになりますね…
頑張って下さい〜
- 14 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月17日(月)02時10分56秒
- akiさんの新作ですね。
楽しみです。
石川を取り合うよしごまがいい感じ!
- 15 名前:aki 投稿日:2001年09月17日(月)12時40分29秒
- 13:@名無しさん
>レスありがとうございます(T_T)
主人公は・・・中心的になるのは石川かなと思ってたんですが
今見るとなんか矢口がなりそうですね・・・・。
頑張ります〜!
14:名無し読者さん
>レスありがとうございます〜(T_T)
とても嬉しいです。
頑張ります!
- 16 名前:aki 投稿日:2001年09月17日(月)13時10分54秒
- 「ごめん、遅れたぁ〜。」
「もう梨華ちゃん遅いで〜」
石川はあの後二人となんとか別れた後、加護と辻の居る日の当たる
縁側の廊下に戻った。
「ちょっといろいろあって。」
「今さっき中澤さんの声が響いてたけど・・・・・」
辻が雑巾がけを一旦ストップし聞いた。
「また怒られちゃった。」
「後藤さんの声も聞こえたけど・・・」
「うん、フロント前でごっちんとよっすぃーに会ってね。」
加護が意味深な顔で聞いてくるが石川は至って普段どおりに答える。
「なにかあった!?」
「え?えっとね、いきなりごっちんに抱きつかれたけど・・・」
「なんやと〜!!!」
そこまで聞いた時、とうとう加護はしぼっていた雑巾を持ちながら
怒った様子で立ち上がった。
でも怒っているにしてもあまり怖くない。むしろ可愛い。
- 17 名前:aki 投稿日:2001年09月17日(月)13時12分30秒
- 「もうっ!いっつも後藤さんは抜け駆けしよるっ!」
「は?」
「うちだってしたいの我慢して掃除がんばってるのに〜!」
「亜依ちゃん、落ち着いて。」
「???」
辻が加護をなだめるが石川は鈍感なため何が何なのか状況がつかめない。
「あーもう掃除なんかやってられへん。シンデレラとちゃうんやで!?」
「あーあー、ただいま館内放送テスト中。みんなさぼってないやろな〜!?」
「わっ!」
いきなり旅館にけたたましく響いた中澤の声に加護は縮み上がる。
「そろそろ休憩時間やけども、今から全員フロント前集まって〜。」
中澤は二回同じ事を繰り返し言うと放送を止めた。
「なんだろう。」
「全員集合だって。」
「それにもう休憩時間やん。」
石川、辻、加護はさっさと掃除道具を横に片付けるとフロント前に
さっそく行く事にした。
- 18 名前:aki 投稿日:2001年09月17日(月)13時45分07秒
- フロント前に向かってみるとそこにはもう自分達以外の全員が
集まっていた。
「遅いよ、三人!」
飯田が最初に石川たちの姿を見つけ声をかけた。
すると全員の視線がこちらに注がれる。
「梨華ちゃん〜」
「だからさっそく行くなっちゃううの。」
中澤が駆け出そうとする後藤の服を掴みとめる。
「飯田さ〜ん!」
辻が飯田の姿を見つけると嬉しそうに側に寄った。
「梨華ちゃん、あたしたちも行こう。」
「うん。」
すると加護は石川の手を握り向かってきた。
「あ〜加護〜!手握るなぁ!」
「後藤さんやって今さっき抜け駆けしたんでしょ!」
そんな加護と後藤がやり取りをしていると吉澤がその間を潜り抜け
石川の元に来た。
「梨華ちゃん、二人はほっといてあっち行こ」
「う、うん?」
石川はそのまま吉澤にその場から連れて行ってしまう。
- 19 名前:aki 投稿日:2001年09月17日(月)13時47分43秒
- 「「ちょっと待て〜!!」」
しかし吉澤の作戦もむなしくすぐに加護と後藤が見つけ
やって来た。
「な、何よ!二人は二人だけで決着つけてなさいよ!」
「梨華ちゃんはあたしのもんです〜!」
「うちのや〜っ!!」
「あ、あの・・・・」
当の石川を気にすることなく三人は輪を作りいつものように
喧嘩が始まろうとする。
「ちょっと!あんたたちいっつも同じ事ばかりして!」
「「保田さん!」」「圭ちゃん!」
三人は同時に保田の方に向き直ると言った。
「「「これは重要なことなんです〜!」」」
三人は口をそろえて止めにかかった保田を跳ね除ける。
そしてすぐにまた元の体勢に戻った。
「な、なんだ〜?」
目を丸くして呆れてしまう保田。
「ご、ごめんなさい!」
石川はどうしていいか分からずとりあえず保田に謝った。
- 20 名前:aki 投稿日:2001年09月17日(月)13時48分25秒
- 「あたしは別にいいけど、祐ちゃんが来たらまた怒鳴られるよ?」
「・・・そうですよね。」
石川は保田の言葉に三人に向き直った。
「中澤さん来ちゃうからちゃんとしよ〜。」
「ちゃんとしたら梨華ちゃんなんかしてくれる?」
三人の輪からぱっと抜け出し後藤は上目遣いの可愛い声で石川に
言った。
「なにかって?」
「例えば・・・そう、ご褒美くれる?」
「ご褒美かぁ・・・うんっあげる。」
「本当〜?」
「後藤さ〜ん!」「ごっちん!」
「油断も隙もないわ・・・・」
「梨華ちゃん、それあたしにも?」
吉澤が後藤と同じく可愛く言った。
「うんっ、真面目にがんばれば!」
「吉澤さん!!」
「あいぼんもね。」
「うっ・・・・」
にこっと笑いながら言われてしまうと加護は紅くなり何も言えなくなってしまう。
そしてあっという間に三人は静かになった。
「保田さん!三人とも静かになってくれましたよ!」
石川が嬉しそうにそう保田に報告する。
「・・・・凄いんだか何なんだか・・・一体なんて言ったらいいんだろう。」
保田は人知れずそんな疑問を小さく呟いた。
- 21 名前:aki 投稿日:2001年09月17日(月)13時50分13秒
- 痛恨のミス。
18のところ中澤じゃなくて保田にしてくださいな。
- 22 名前:aki 投稿日:2001年09月17日(月)15時08分40秒
- 「・・・・・・・。」
矢口は今さっきと同じように複雑な表情でその四人の方向を見ていた。
石川がおろおろして加護と後藤と吉澤がいつものように言い合っている。
「ねぇ、矢口今日さ・・・・・矢口さ〜ん?」
隣にいた安倍は矢口に話し掛けていたがぼーっとしていて
応答のない矢口に首を捻る。
「あ、ごめん。ぼーっとしちゃって・・・。」
「・・・・どうかしたの?」
「ううん、なんでもない。」
「?」
「ふぅ・・・。」
いつからだろう。
今まではいつものこの光景を見ていてもなんとも思わなかったのに
いつからかぼーっとしちゃって・・・。
複雑な気持ちになる。
そして少し胸が詰まる。
あの人を見ていると。
- 23 名前:aki 投稿日:2001年09月17日(月)15時10分08秒
- 「みんな揃ってる?」
しばらく経つと外から玄関を抜け中澤がやってきた。
そしてフロント前、全員の視線が集まる中、やってきた中澤は口を開いた。
「ん?珍しくいつもの三人静かやな。」
中澤が珍しそうにそちらを見るが後藤と吉澤と加護はぴしっと
整列したまま騒ぎださない。
「なんかあったんか?まぁ、いつもそうしてくれると嬉しいやけど・・・。」
(ギクッ!)
三人の心の中で同時に中澤の言葉に反応する音がなった。
「えーと、後藤と吉澤と石川にも今さっき言ったんだけど、これからの秋、冬、
年末年始にかけて忙しくなるから気を引き締めて仕事励んでな。
たまには適度に休み体調崩さずがんばってぇな。」
「はいっ。」
中澤以外の全員がそう声を揃え答えた。
「そんでな、今日はなんと珍しく一人もお客さんがいないのよ。
ちゅうことで今日は急きょ休み。それぞれ各自自由に時間使っていいから。」
突然の休みに少しだけみんな騒がしくなる。
「だけど!明日からまた忙しくなるから今日の休みを明日に引きづらないように
以上!」
ざわつき始めた中で中澤は言うがあまりみんなに聞こえていないようだった。
- 24 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月17日(月)19時57分35秒
- 梨華ちゃんがモテモテですね〜。梨華ちゃんの争奪戦が
行われるのかな?先が楽しみです。
あと、矢口には何が起こったのかな?
- 25 名前:aki 投稿日:2001年09月17日(月)20時04分24秒
- 「梨華ちゃ〜んっ!後藤真面目に話し聞いたよ〜」
「うん、そうだね。」
「あたしだって!」
「うちも!」
「・・・・何なの一体!?」
いきなりうるさくなり始めた四人に中澤は目を丸くする。
「圭ちゃん〜。今日ちょっと隣の町に買い物に行かない?」
「うん、いいよ。」
安倍が伸びをしながら保田に言った。
「飯田さん、これから何しますかぁ?」
「別に決まってないよ。」
辻が下から飯田を仰ぎ見ながら尋ねる。
「そういえば梨華ちゃんご褒美何くれるん?」
「後藤はねぇ・・・・」
「なんでごっちんなのさ。あたし静かにしてたもん。」
「うちが一番真面目にしてたっ!」
「あの・・・・。」
また懲りず始まる三人とどうしていいか分からない石川。
「矢口も行かない?」
「うん、行くー。」
「・・・・ま、仕事中とちゃうからええけど。」
そう言うと中澤はさっさとどっかに行ってしまった。
- 26 名前:aki 投稿日:2001年09月17日(月)20時06分16秒
- 24:名無し読者さん
>レスありがとうございます!
矢口の身に起こっている事はこれから明らかになると思います。
これからもがんばります〜。
- 27 名前:aki 投稿日:2001年09月17日(月)20時20分15秒
- 結局、矢口と保田と安倍は隣町へお買い物。
飯田と辻はどこかへ一緒に行く事にし、
石川、後藤、吉澤、加護も一緒にどこかへ行ってしまった。
旅館にはただ中澤一人。
「ふぅ〜。」
中澤は軽く息を吐き旅館内のフロント前、海を眺められる
ふかふかのいつもお客さんが座る椅子にどさっと座った。
自分以外いない旅館はさすがに静かでしんっとしている。
「はぁ、静かやわ〜。落ち着く。」
少しだけ目を瞑った。
「眠りそ・・・・」
言った後間もなく眠気が催し中澤は眠りについた。
- 28 名前:aki 投稿日:2001年09月17日(月)20時50分08秒
- その頃、安倍と矢口と保田は電車に乗っていた。
お昼だが今日はほとんど人は乗っていない。
有名な温泉町なため旅館からの最寄の駅も結構大きく
本数は少なくなく車両もそんなに短くない。
「なっち何買い物すんのー?」
「えっとねぇ、冬に備えていろいろと。」
「まだ秋だよ。」
「だってもう寒くなり始めてるよ。油断禁物。」
「それじゃあたしもなんか買おうかなー・・・・・。」
保田は話している途中で安倍を肘でつんつんと突いた。
「どしたの?」
「あれ・・・」
保田は顎である方向を指した。
「ん?」
そこには手すりにつかまる矢口の姿があった。
しかしいつもの矢口の元気がない。
「どう思う?」
保田は小さな声で手を添え安倍の耳元で言った。
「う〜ん。そういえば今さっきもこんな感じだった。ついこの間まで
なんともなかったのに。」
「そうなのそうなの。あたしと掃除してる時もこんなんだった。」
「そして、」
「様子を聞いてもいつも、」
「「なんでもない。」」
保田と安倍は絶妙なタイミングで同時に言った。
- 29 名前:aki 投稿日:2001年09月17日(月)21時08分27秒
- 「おお〜同時だ。」
安倍が声を少し普段どおりの大きさで言うが矢口は気付いていない。
「何かあったんだとあたしは踏んだ。」
「それは一体・・・なに?」
「さぁ。」
保田はそこで首を傾げてしまった。
「う〜ん。」
安倍も考えてみるが首を傾げたまんま。
「なんか変な物でも食べたのかな?」
「いやっ!なっちはそう思わないべ!」
「じゃなになに?」
「昨日の夕食のときは食欲めちゃめちゃあった。最後のエビフライ
取られた。」
「あそ。」
「あ、違う違う。夕食の事はともかく。食欲はある、体調も悪くない。
なのに元気だけがない。ため息ばっか。」
安倍が言ったと同時に矢口がため息を吐いた。
「ほんとだ。」
「つまりこれは・・・」
- 30 名前:aki 投稿日:2001年09月18日(火)00時09分22秒
- 「・・・・・・」
保田が次の言葉を言うのを安倍はぐぐぐと近づきながら
聞こうとするが保田はその安倍の様子が面白く黙ってしまった。
「圭ちゃん、まだ?」
「あ、つまりね。これはあたしが思うには、」
「うん。」
「恋わずらいよ。」
はっきととそう一言そう言いのけた保田に安倍はしばらく唖然とした顔で
何も言えなくなってしまった。
「恋!?」
やっと出た言葉は自然とでかくなってしまう。
「しーっ!」
「あっ、ごめん・・・。」
「とにかくそうとしか思えない。」
「って一体誰に恋してるのさ!?」
「それはあたしにも分からない・・・」
保田がそう言うと同時に電車がある駅に着いた。
そこは三人の目的の場所の一つ前の駅。
「降りなきゃ〜。」
矢口は気持ちの入っていない口調で開いたドアに向かおうとする。
「ちょ、ちょい待ち!まだだっちゅうの。」
保田がそんな矢口の手を掴み引き止めた。
「あ、間違えちゃったー。」
「・・・・・・。」
安倍がそんな矢口の様子に呆然とする。
「ね?」
「これが恋わずらい・・・・。」
安倍は感心したように何度か頷いた。
- 31 名前:aki 投稿日:2001年09月18日(火)00時14分40秒
- またミス!
かなりのミスです。
しかも訂正しずらいっ!
というわけで30のところ安倍と保田の名前の部分を全て反対にしてください・・・。
台詞が全部反対になるということで・・・。
たびたびすいません・・。
- 32 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月18日(火)07時54分58秒
- >>31
出来れば再アップしていただけると嬉しいです
- 33 名前:aki 投稿日:2001年09月18日(火)12時27分06秒
- 32>名無し読者さん
ですね。します。
気が利かなくてすいません(++)
- 34 名前:aki 投稿日:2001年09月18日(火)12時40分28秒
- 「・・・・・・。」
安倍が次の言葉を言うのを保田はぐぐぐと近づきながら
聞こうとするが安倍はその保田の様子が面白く黙ってしまった。
「・・・なっち、まだ?」
「お、ごめんごめん。つい面白くて。」
「何が?」
「いや別に。」
「?それよりつまりこれはの続きは?」
「そういえばそうだった。つまりこれは・・・」
「うん。」
「恋わずらいだべさ。」
はっきととそう一言そう言いのけた安倍に保田はしばらく唖然とした顔で
何も言えなくなってしまった。
「恋!?」
やっと出た言葉は自然とでかくなってしまう。
「しーっ!!」
「あっとっと。」
保田は急いで自分の口に両手でふたした。
- 35 名前:aki 投稿日:2001年09月18日(火)12時41分59秒
- 「これは結構なっち自信あるべ。」
「で、でもそれじゃ矢口一体誰に恋してるのさ。」
「それはなっちにも分からないべ・・・」
安倍がそう言うと同時に電車がある駅に着いた。
そこは三人の目的の場所の一つ前の駅。
「2人とも、降りよ〜。」
矢口は気持ちの入っていない口調でふらふらと開いたドアに向かおうとする。
「ちょ、ちょい待ちっ!」
保田がそんな矢口の手を急いで掴み引き止めた。
「矢口、まだだよ。次の駅で降りるの。」
「あ、そっか。間違えちったー。」
「「・・・・・。」」
安倍と保田は矢口の様子にしばし呆然とする。
「これが恋わずらい・・・・・。」
保田は感心したように言った。
「さすがなっちだべ。」
矢口の症状に確信を抱き安倍もそんなことを言いながら自分に頷いた。
- 36 名前:aki 投稿日:2001年09月18日(火)16時18分19秒
- 安倍と保田と矢口がそんなことをしている頃、石川と加護と吉澤と後藤は
近くの海岸に来ていた。
砂浜いはゴミ一つなく水はとても澄んで魚も釣れる。
「いつきても綺麗だねー。」
石川が三人の前に出て歩きながら振り向き楽しそうに笑顔で
声をかけた。
髪がさらさら風に流れる。
「「「・・・・・・・。」」」
(ドキドキ)
ちょうど三人は黙ったまま同じ風にときめいていた。
(うわっ、梨華ちゃん超可愛い・・・。)
(めっちゃ可愛いわ・・。)
(可愛い・・・)
後藤、加護、吉澤の心の中は似たような事で占められていた。
そして最後に
(((・・・・これで2人っきりだったらな・・・。)))
とほぼ同時に同じことを心の中で呟いた。
「みんなどうしたのー?」
石川はもう三人より大分前にもう行ってしまいこっちに向かって手を振っていた。
- 37 名前:aki 投稿日:2001年09月18日(火)16時19分24秒
- 「あーあ、梨華ちゃんと二人だけで来たかった。」
「あたしだって。」
「うちも。」
そして三人の目が交差する。
「ちょっと!後藤を差し置いて梨華ちゃんとなにするつもりよ!」
「後藤さんだって同じこと考えてたんでしょ。」
「あたしは二人っきりだったら・・・・」
吉澤が思いをめぐらす。
「ちょっとー!後藤の梨華ちゃんを想像でも使わないでよー。」
「そやっ!うちのや!」
「ぬわに言ってんのよー!」
歩きながら言い合い、三人は石川の元に来た。
そんなとき後藤の目にある人物が映った。
「あ、かおりに辻だ。」
後藤の見る先には先に来ていたらしい飯田と辻の姿があった。
見るからに楽しそうにしている。
とても微笑ましい。
- 38 名前:aki 投稿日:2001年09月18日(火)16時44分32秒
- 「でもどうして二人で来てるんだろう?」
石川が不思議そうに首を傾げて言った。
「あれ?梨華ちゃん知らないの?」
「何を?」
「よっすぃーと加護は知ってるよね?」
「「うん。」」
「え?え?」
何が何なのか分からない石川は混乱する。
「何か教えて欲しい?」
後藤が少し意味深な微笑みを浮かべ石川ににこっと言った。
「うん。」
「じゃねぇ、あっちの人が居ない方に行って・・・・・」
「こらっ、ごっちん何考えてるのよ。」
後藤が?が頭の上に浮かぶ石川の手を引いていくので吉澤が後藤の
首根っこのところを掴んだ。
「ちょっとー、邪魔しないでよー。」
「あの二人付き合ってるんよ。」
加護が石川の前ににょきっと出てそう言った。
- 39 名前:aki 投稿日:2001年09月18日(火)16時45分17秒
- 「え!?そうなの!?」
「そうだよ。確かつい最近から。」
吉澤が説明を付け足した。
「知らなかった!」
「うちはののから直接聞いたけど、見てても分かるよね。」
「あぁ、言っちゃった・・・。」
後藤が残念そうにそう呟いた。
「そうなんだぁ・・・・。」
石川は改めて飯田と辻の姿を見た。
二人の周りはとても暖かい空気が流れているのが石川にも感じられた。
「素敵だねー、いいな。」
小さな声で言った最後の部分を三人は聞き逃さなかった。
- 40 名前:aki 投稿日:2001年09月18日(火)16時46分30秒
- 「いいなって!?」
「素敵じゃない?」
加護が身を乗り出して聞くが石川は至って普通に答える。
「つまり梨華ちゃんも誰かと付き合いたい、とか!?」
「いいよね。」
吉澤に対しても普段どおり。
「そういえばさ・・・梨華ちゃんって好きな人、いるの?」
後藤が珍しく恐る恐る聞いた。
「え?」
石川がその質問に対してだけ頬を紅らめた。
「「「!?」」」
(((いるんだ!!!?)))
また石川を覗く三人が同時に心の中で叫んだ。
「だ、だれ!?それ。」
「あー!みーんなー!!?」
後藤のその言葉と遠くからのある声が重なった。
四人は同時にそっちに振り向いた。
するとそこには辻がにこにこしながら手を振っていた。
その隣には飯田もいた。
「あ、気付かれちゃったみたいだよ。」
石川はそちらに気を取られ後藤の質問は全く耳に入ってなかった。
石川も飯田と辻に向かって手を振る。
「「「・・・・・・・。」」」
三人はしばらく呆然として立ちすくんでしまった。
- 41 名前:てうにち新聞新入社員 投稿日:2001年09月18日(火)18時59分50秒
- 矢口の相手って、誰なんでしょうか?(w
石川にも好きな人要るんですね〜。
お邪魔っぷり最高です
- 42 名前:aki 投稿日:2001年09月18日(火)19時04分29秒
- 41:てうにち新聞新入社員さん
>レスありがとうございます〜。
矢口の相手は一応決まってるはずなんですがちょっと
いろいろ今更考えてます^^;
邪魔っぷりがいいですか、ありがとうございます^^
これからもがんばります。
- 43 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月18日(火)19時11分38秒
- 梨華ちゃんの好きな人…誰だろう?
気になる〜
- 44 名前:aki 投稿日:2001年09月18日(火)23時11分55秒
- 43:名無し読者さん
>レスありがとうございます〜。
一体石川は誰を好きなのでしょう・・・。
お楽しみあれ^^
- 45 名前:aki 投稿日:2001年09月19日(水)12時53分03秒
- しばらくして海岸で落ち合った六人は合流し少し遊んでから
旅館に戻った。
「ただいま〜。」
旅館の中はとても静かでいつも自分達がにぎやかにしている
旅館の面影はほとんどなかった。
「あれ?裕ちゃんもどっか行ったのかな?」
飯田が旅館の中をきょろきょろ見渡しながら言う。
「あ、あそこにいるの中澤さんじゃないですかぁ?」
辻が海岸を一望できるガラスの前のソファのところに少しだけ出ている
中澤の頭を見つけ言った。
「寝てるんかな?」
加護の言葉と共にみんなは一緒に中澤の元まで行った。
「ZZZzzz」
そこには安らかな寝息を立てて寝ている中澤の姿があった。
「中澤さん疲れてるのかな?」
「起こす?」
石川と後藤が中澤の顔を覗き込みながら言った。
「疲れてるのかもしれないから別にいいんじゃない?」
飯田が二人に言葉を返した、時
- 46 名前:aki 投稿日:2001年09月19日(水)13時08分30秒
- 「ただいま〜〜!!!!」
旅館内にとてつもないでかい声が木霊した。
「!?」
6人全員が一斉にそちらを振り向いた。
「いろいろ買い込んできちゃったぁ!なんか知らないけど安くてさぁ!」
そこには買い物袋を両手に大量に持つ安倍の姿があった。
「「疲れたぁ〜。」」
後ろにはへとへとな保田と矢口の姿もある。
「みんなびっくりした顔して一体どうしたのさ?」
安倍が首を傾げながらこちらに近づいてくる。
「・・・・・・・。」
テンションのやたらに高い安倍にみんな一言も発っせないでいた。
「そういえば裕ちゃんどこ〜?」
「ここ。」
飯田が指を下に向け椅子を指さした。
「ん?なんやいつのまにかみんな帰ってたんか〜。」
周りが騒々しくなってきたため中澤も気持ちいい眠りから起こされた。
- 47 名前:aki 投稿日:2001年09月19日(水)13時09分01秒
- 「おみやげ買ってきたんだよ〜。秋といえばそう、芋!そしてすいか!」
「「重い〜んだけどっ。」」
後ろから保田が芋の入った紙袋を抱え矢口はまるまるひとつのスイカを
持っていた。
「芋は分かるとして・・・・」
「なんで今の季節にすいかなんですか?」
後藤と石川が?を顔に浮かべ揃って尋ねた。
「帰りに駅前の八百屋さんで芋買ったらサービスしてくれたの。」
「あそこのおじちゃんサービスええからな・・・。」
「女の子だと特に。」
加護と辻がなるほどと頷いた。
「売れ残りとちゃうの?」
「なっ!そんなわけないじゃ〜ん〜!?」
中澤が伸びをして欠伸をしながら言った言葉に安倍は否定した。
少し語尾の発音が上がりそれを確認するようになったが。
- 48 名前:aki 投稿日:2001年09月19日(水)13時11分48秒
- そんな安倍達の輪から抜け吉澤が重たそうにする矢口と保田の元に駆け寄った。
「大丈夫ですか?」
「あたしは大丈夫だけど矢口の方が重そう。」
「矢口さん、持ちましょうか?」
「悪いよ。」
「いいえ、今まで持ってきたんだから矢口さん疲れてるでしょ。」
そういうと吉澤は矢口からすいかをひょいと取り上げた。
「ごめんね・・・。」
(ん?)
その時保田はあることに気がついた。
買い物をして大分いつもの元気一杯で笑顔の矢口に戻りつつあったのだが
今はさっぱりまた行きの時と同じようになっていることに。
そして少しだけ頬を紅くなって微かに俯いている。
- 49 名前:aki 投稿日:2001年09月19日(水)13時14分52秒
- 「あらら?」
そして目を向けてみるとその矢口の目の前には吉澤。
二人はそのまますいかをいつも冷やすために使う井戸のところに
行くため一緒に向かっていってしまった。
「まさか、矢口の好きな人って・・・」
未だ矢口はもじもじしている。
吉澤はその性格からか全くそのことに気付いていないみたいだが。
「あらららら〜〜??」
たぶん自分の予想に間違いはない。
「なっ・・・・」
安倍を呼ぼうとしたが保田はそこでとめた。
安倍は中澤といろいろ話しているため保田の言いかけた言葉は
聞こえなかったらしい。
気が付いてしまったが安倍に言うと事がめんどくさくなりそうな気がした。
(なっちは結構お節介だから・・・・。)
上手くいく事も上手く行かなくなってしまうかもしれない。
そしてそれに自分も付き合わされそうだから。
噂が広まっても良くないし。
保田はこの事は今は自分の中で止めておく事にした。
(ま、あの分じゃあたしが何もしなくても誰かしら気が付きそうだけど。)
そう心の中で呟きながら保田も安倍達の輪に加わった。
- 50 名前:aki 投稿日:2001年09月19日(水)17時58分42秒
- しばらくして一行は庭で焼き芋をすることにした。
ほうきで落ちている葉っぱを大量に集め火を付け芋を入れた。
「「焼き芋だ〜。」」
加護と辻が目をきらきらさせて中を見つめている。
「あまり近づくと煙吸うで。」
庭先に通じる旅館の縁側に腰をかけた中澤が二人に言った。
ぱちぱちと葉っぱが音をたて芋が焼ける。
「もういいかな?」
ちょうと良い具合に焦げ目がついているのを確認し保田が棒を使って
中から取り出した。
「下さい〜。」
「はいはい、言われなくても分かってるって。」
保田は新聞紙に焼き芋を包み加護と辻に手渡した。
「「おお〜。」」
二人は焼き芋を二つに割った。
中からはなんともいえない香ばしい焼き芋の匂いが辺りに広がる。
「上手いわ〜。」
「飯田さんも食べましょ〜。」
「あいよ。」
飯田も加護と辻と一緒に焼き芋を食べる。
- 51 名前:aki 投稿日:2001年09月19日(水)17時59分22秒
- 「圭ちゃん、後藤にも頂戴な。」
「はいはい。」
保田は同じように焼き芋を取り出し後藤に新聞紙に包み手渡した。
受け取るとそのまま後藤はある人の元へタタタッと駆け足で向かった。
そこにはほうきを手にもちまだ葉っぱを整理する石川の姿が合った。
「はい梨華ちゃん、一緒に食べよ?」
「うんっ。」
その後藤の様子に矢口と食べていた吉澤がふと気付く。
「む?」
(まぁ、今日はいっか。)
いつもならここで抜け駆けがどうとかで口喧嘩になるところだが
加護は食べるのに夢中のため気づいていなかった。
吉澤も今のこのなごやかな雰囲気を壊したくなかった。
今日のところは多めに見る事にしてそのまま矢口と一緒に仲良く
食べる事にした。
「おいしいですね。」
「う、うん。」
突然吉澤に話し掛けられやっぱりどこかぎこちなく矢口。
「芋を買ってきたなっちによーく感謝するようにっ!」
安倍が焼き芋を高々に上げそう叫ぶ。
「あいあい。」
保田と食べていた中澤がそんな安倍に適当に言葉を返した。
辺りには少し冷え始めた風が吹き、木がゆらゆらと揺れ葉を落とす。
本格的な秋の訪れを告げていた。
- 52 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月19日(水)18時03分18秒
- ほー、よっすぃーだったんですか。矢口の好きな人って。
ごっちんかなって思ってました。それにしても前作に引き続きまた面白いですね。
これからも期待してます。
- 53 名前:aki 投稿日:2001年09月19日(水)18時29分28秒
- 「寒い〜。」
肌に少し寒い風が吹く中、後藤は言いながら石川にぴとっとくっついた。
「ごっちん、大丈夫?」
「うん、梨華ちゃんとこうしてれば大丈夫〜」
そんな二人の様子に吉澤と加護がピクッと反応する。
「梨華ちゃん寒いの好き?」
「う〜ん、嫌いじゃないけど苦手かな。」
「後藤はねぇ、寒いの好きだよ〜。冬って暖めあう時期じゃない?」
「そうだねぇ。」
「こんな風にさ暖めあえるじゃん。好きな人と。」
「え?」
ずっと普通に話していた石川だったが後藤の言葉にぼっと紅くなった。
「梨華ちゃん、可愛い〜」
そんな石川に後藤は前から抱きついた。
「ちょっと待て〜!!」「後藤さ〜んっ!」
吉澤と芋をほお張る加護がそこで口を挟んだ。
「チェッ、また邪魔が・・・。」
抱きついたまま後藤が小さくぼやく。
- 54 名前:aki 投稿日:2001年09月19日(水)18時30分05秒
- 「うちが食べるのに夢中になってる間にぬわにやってるんですかぁ!!」
「そうよ!今日ぐらいは大目に見てやるかと思ってる隙に!!」
どかどかと吉澤と加護が後藤の元にやって来る。
「もうっ!いっつもいい時に二人は邪魔するんだからぁ!」
「「抜け駆けはなしですっ!!」」
静かだった庭も秋の訪れとは裏腹ににぎやかなものになる。
「あの・・・・・」
おろおろしてやっぱりどうしていいか分からない石川。
いつもならこの状態が平行線を辿り続くのだが今日はある意外なところ
からいつもにはない言葉が発せられた。
- 55 名前:aki 投稿日:2001年09月19日(水)18時32分15秒
- 52:名無し読者さん
>レスありがとうございます〜(T_T)
私も最初吉澤と決めていたんですが後藤とか迷いました。
でも最初決めた感じにしました^^;
嬉しいお言葉ありがとうございます〜。
これからもがんばります。
- 56 名前:aki 投稿日:2001年09月19日(水)18時41分30秒
- 「そういえば石川って好きな人いるんかー?」
傍観していた中澤がふとそう口を挟んだ。
「え?あ、あたしですか?」
「そうだよ、三人はともかく石川はどうなの?」
「好きな人いるのー?」
中澤に続いて飯田と保田も口を挟み出した。
後藤と吉澤と加護も一旦口喧嘩を止め石川に向き見る。
「えと・・・その・・・・」
また紅くなりながら突然の自分に向けられた質問にうろたえる。
三人も真剣な面持ちで石川を見つめる。
「あ、あたしのことなんていいじゃないですか。どうでも。」
石川はたくさんの視線を浴びながらやっとそれだけ答えた。
「「「よくないっ!!」」」
「へ?」
三人に同時に間髪を入れず否定され思わず間抜を声を出してしまう。
- 57 名前:aki 投稿日:2001年09月19日(水)18時45分02秒
- 「その様子はいるんだぁ、好きな人。」
にやにやしながら中澤が鋭いところを突く。
「い、いませんよ〜。」
「今更否定しても遅いで。他の人は騙せてもうちは騙せへん。」
「あたしも騙されないけど。」
保田が小さく口をはさむ。
「うん、あたしも。」
飯田も言う。
「保田さん〜。お芋取ってくださいよ〜。」
そんな中、辻が棒で中をつつきながら保田を呼んだ。
「まだ食うんかい。」
「はいっ。」
「まぁ、誰かって言うのは聞かんとくわ。」
「はぁ。」
紅くなり視線を下に泳がす石川に中澤はにかっと笑い言った。
「「「一体誰なの〜!?」」」
後藤と吉澤と加護は一緒にそう叫んだ。
「秋やな〜。」
なんとなく寂しく吹く風を浴びながら中澤は呟いた。
静かな秋もいいがこの旅館にはにぎやかな光景が似合っているかもしれない。
そう心の中で感じながら。
- 58 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月19日(水)19時03分51秒
- 石川の好きな人、後藤じゃないほうが面白いとか思ってしまったり・・・
- 59 名前:aki 投稿日:2001年09月19日(水)19時20分56秒
- 58:名無し読者さん
>やっぱりそう思いますか!?( ̄□ ̄;;
あぁ、私もそう思ったりしました。
面白さ優先か自分の好きなカップリング優先にするか・・・・。
どうしましょ。。。
- 60 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月19日(水)22時06分53秒
- いしよしやぐのトライアングルも見てみたい。
- 61 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月19日(水)22時40分46秒
- やすいし希望(w
まあ気にせず頑張ってください。
保田にも幸せを…
- 62 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月19日(水)23時03分02秒
- 意外にゆうりか!?どうっすか!
- 63 名前:aki 投稿日:2001年09月19日(水)23時05分36秒
- 60:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
う〜ん、この小説では矢口があまり恋愛に積極的ではないキャラなので
火花を争うのは難しいかもしれません・・・。
そして自分に三角関係が書けるかどうか・・・。
61:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
保田にも幸せを与えないといけませんね^^;
とにかくがんばります。
- 64 名前:aki 投稿日:2001年09月19日(水)23時07分07秒
- 62:名無しさん
>レスありがとうございます〜。
中澤とですかぁ。どうなるでしょう・・・。
面白いと思うんですけど私に果たして書けるかどうか^^;
- 65 名前:aki 投稿日:2001年09月19日(水)23時16分33秒
- リクエストいろいろありがとうございます。
初志貫徹というか(ちょっと違うかも)この小説は一応書き始める前の
時点で考えていた形にしようかと思います。
それを面白く書いていこうかと思います。
いろいろ考えていくとこうしたほうが面白いかもとかいろいろストーリーも
浮かぶんですがやっぱり自分が一番書きたいものを書きたいので・・・・。
リクエストに答えられるほどの力もまだ私には残念ながらないと思います・・・。
思わせぶりなこと書いてしまってすいませんでした。
- 66 名前:aki 投稿日:2001年09月20日(木)12時28分24秒
- のんびりした突然の休日も過ぎ去り翌日からはまた忙しい日々となった。
チャックインの2時半から人は来始めそれと同時に部屋までの案内、
夕食の確認などいつものことながら忙しかった。
今やっと夕方になり夕食の準備、片付けなどすべて今日の仕事が終わった。
今からは各自自由時間になっている。
- 67 名前:aki 投稿日:2001年09月20日(木)12時29分51秒
- 「あ〜疲れた。」
誰もいない湯船につかりタオルを頭の上に乗せ後藤はそうぼやいた。
手を前に伸ばし肩にお湯をかける。
「・・・・・・。」
少し考え事をしてすぐに湯船から出て体や髪を洗い外の露天風呂に向かった。
露天風呂は岩風呂になっており周りはすぐ自然が満ち溢れている。
これからは木が紅葉をし始め中々綺麗なものになる。
「ふぅ・・・・・。」
どこを見つめるまでもなく後藤はぼーっとしていた。
その頭の中を占める物はある人。
- 68 名前:aki 投稿日:2001年09月20日(木)12時31分00秒
- 「好きな人・・・・・」
後藤の頭を昨日の好きな人について触れられた時の紅くなった石川の
姿が過ぎった。
(梨華ちゃんの好きな人って、一体誰なの・・・?)
後藤は軽く推理してみた。
飯田と辻が付き合ってるって分かった時、石川はただうらやましがってた。
イコールこの二人は白。
残り7人。
そこで後藤はあることに気が付いた。
中澤に聞かれたとき、自分が聞いた時、どちらも石川は紅くなり
慌ててうろたえてた。
でも自分がべたべたしたりする時別に至って石川はそういうリアクションを
示さない。
(ってことは・・・・あたしも外れちゃうのかな・・・・。)
心の中で後藤は元気なく呟いた。
(そうだよね、結構がんばってるけど梨華ちゃんなんとも思ってないみたいだし・・・
これってあたしの完璧な片思い・・・?)
そこまで考えると同時に後藤の目に熱い物がじわっと滲む。
「あーもうっ、こんなのあたしらしくないじゃん・・・。」
目からこぼれる寸前の涙を後藤は指で拭った。
後藤は両手でお湯をすくい顔を洗い、しばらくして温泉を出て
お風呂を後にした。
- 69 名前:aki 投稿日:2001年09月20日(木)12時49分03秒
- その頃石川はお風呂に向かおうと廊下を歩いていた。
すると昨日中澤が座っていた庭先の縁側のところに外に足を出して
座っている見覚えのある後姿を見つけた。
しかしその後姿はいつものような元気さはなくなんとなく
寂しい雰囲気を漂わせていた。
石川は気になったのでその後姿に静かに近づいていった。
「ふぅ・・・。」
「矢口さんっ!」
彼女がため息をついたと同時に石川が後ろから声をかけた。
「その声は・・?」
石川が後ろの上から覗くようになったので矢口には影が覆う、矢口は
そのまま首だけ上にした。
「石川。」
「どうかしたんですか?矢口さん。」
石川はそのまま矢口の横に行き同じような体勢で座った。
「ちょっとね・・・。」
「元気ないですね、近頃。」
「うん。」
そこで二人の会話が止まった。
元気もないのにあまりたくさん話し掛けられても迷惑になるかと思い
石川は黙って矢口の隣で一緒にぼーっとしていた。
- 70 名前:aki 投稿日:2001年09月20日(木)13時18分11秒
- 「石川はさぁ、好きな人いるの?」
「え?」
ゆっくりと矢口は石川に突然質問した。
「い、いませんよ〜。」
近頃続くこの質問に未だ石川は慣れないでいた。
「本当のこと言って。誰にも言わないから。」
前を向いていた矢口が石川に向き直り真正面から真面目な表情で尋ねた。
「え、えーと・・・・」
真剣な矢口になんとも言えなくなってしまう。
「あたしはさ、いるよ。好きな人。」
「そうなんですか!?」
「うん。でもね、その人他に好きな人がいるんだよね。」
「そうなんですか・・・・・。」
(・・その人の他に好きな人って石川のことなんだけどね・・・・。)
矢口は心の中で一人小さく呟いた。
「石川はどうなの?」
「あたし、ですか?」
「いるの?いないの?」
矢口がせっかく心の中を打ち明けてくれたのに自分は言わないのは
嫌で石川も矢口にだけ言う事を決めた。
- 71 名前:aki 投稿日:2001年09月20日(木)13時18分55秒
- 「います。一応・・・・・。」
「そう、なんだ。」
石川は紅くなりながら初めて人に自分の気持ちを言った。
石川の言葉に少しだけ矢口は不安になる。
「でも・・・その人が私のことどう思ってるかわからないし・・・・。」
「へ?」
そこで矢口は思わず間抜な声を出してしまった。
(自分のことどう思ってるか分からないって事は・・・)
「ってことは石川の好きな人ってあの三人以外の誰かなの?」
「あの三人って、ごっちんによっすぃーにあいぼんのことですか?」
「う、うん。」
「どうしてですか?」
「あのね、それはこっちのセリフだってぇの。だってあの三人石川にぞっこんじゃない。」
矢口は今自分の言った「ぞっこん」という言葉に少し複雑になる。
(自分で言ってしまうとは・・・。やっぱり分かってても悲しい・・・。)
- 72 名前:aki 投稿日:2001年09月20日(木)13時20分16秒
- 矢口の言葉に石川もぼっと頬を紅くさせた。
「ぞっこんだなんてそんなことないですよ〜。」
手を頬に当て冷やしながら石川は言う。
「だ、だっていっつもあの三人石川取り合って口喧嘩してるじゃん。」
「それは友達としてでしょ?」
また紅くなりだした頬を石川は両手で冷やしながら言った。
「・・・・・・・。」
そこまで聞き矢口は唖然としてしまい言葉が出なくなった。
(これは・・・・鈍感っていうより天然?)
当の本人は手を仰ぎ風を作って顔を冷ましている。
「それじゃ私そろそろお風呂入ってきますね〜。」
そう言うと石川は矢口を残し鼻歌を歌いながらお風呂場へ向かって
歩いていってしまった。
「・・・・・・・・。」
その後姿を呆然として見つめる矢口。
(ちょっと待って、ってことはあの三人も入るわけか・・・・。)
矢口はさっぱり石川の好きな人の見当がつかなかった。
いつのまにかセンチメンタルな気持ちは矢口の中からは取り除かれていた。
- 73 名前:aki 投稿日:2001年09月20日(木)20時57分45秒
- 石川がお風呂に向かい、しばらくして矢口も腰を上げそこから離れた。
そこには誰もいなくなった、たった一人を除いて。
「・・・・・・・・。」
いろんな感情、気持ちが心の中を入り組み何も言えなくなってしまっている
少女がいた。
その少女の名前は加護亜依。
なんと加護は矢口達のいた場所からすぐそこの壁に隠れて会話を聞いていた
のだ。
「ちょ、ちょっと待って。頭の中をいろんなことが駆け巡って
整理がつかへん・・・。」
実は加護もちょうどお風呂に行こうとしていたところだったのだ。
そこでたまたま一緒に座る矢口と石川の姿を見つけた。
すぐに何をしているのか駆け寄ろうとしたが矢口のある言葉で
その足はすぐに止まった。
「石川はさぁ、好きな人いるの?」
「え?」
なんとなく今の雰囲気は加護から見ても少しいつものおちゃらけ
ているものではなかった。
加護はそのまま矢口達がいる場所からすぐそこの曲がり角の
ところに姿を潜めた。
聞いてはいけないのかもしれないが今ではもう手遅れ。
加護の知りたい気持ちが理性を上まっていた。
- 74 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月21日(金)08時00分02秒
- 実はなっちだったりして
- 75 名前:aki 投稿日:2001年09月21日(金)13時56分45秒
- 「い、いませんよ〜。」
どう考えてもごまかしているようにしか聞こえない石川の返事が
返ってくる。
「本当のこと言って。誰にも言わないから。」
それに比べ矢口は石川とは反対に真面目な口調だった。
「え、えーと・・・・」
「あたしはさ、いるよ。好きな人。」
石川が戸惑っていると矢口がそう言った。
(なぬっ!?)
突然の予想もしなかった矢口の言葉に加護は心の中でそう叫んだ。
「そうなんですか!?」
石川も加護と同じだったらしくびっくりしている様子。
「うん。でもね、その人他に好きな人がいるんだよね。」
(なんとっ!?!)
続く矢口の言葉に加護はますます驚く。
「そうなんですか・・・・・。」
今度は石川は驚かず矢口と同じように落ち気味で答えた。
(矢口さんって好きな人がいたんや!!それでその人は他に好きな人がいて
近頃元気がなかったんかっ!!)
加護は今まで聞いたことをそのままだが頭の中で整理してみた。
(あれ?ってことは・・・・)
加護が何かひらめいた時、それは矢口の言葉で遮られた。
- 76 名前:aki 投稿日:2001年09月21日(金)13時57分38秒
- 「石川はどうなの?」
(むっ!?)
加護は聞き逃すまいと壁から少し二人のほうへ体を寄せる。
「あたし、ですか?」
「いるの?いないの?」
矢口の言葉に少ししてから石川は意を決したように口を開いた。
「います。一応・・・・・。」
(!!!)
黙ってはいるが思いっきり加護が反応する。
「そう、なんだ。」
それを聞いたときの矢口の言葉は少し元気がないように聞こえた。
「でも・・・その人が私のことどう思ってるかわからないし・・・・。」
「へ?」(は?)
矢口の言葉と加護の心の中の言葉が重なった。
(ど、どういうこと・・・・?)
「ってことは石川の好きな人ってあの三人以外の誰かなの?」
矢口が加護が疑問に思ったことを口にする。
- 77 名前:aki 投稿日:2001年09月21日(金)13時58分25秒
- 74:名無し読者さん
>全ては石川のみぞ知るということで・・・^^;
- 78 名前:aki 投稿日:2001年09月21日(金)13時59分00秒
- 「あの三人って、ごっちんによっすぃーにあいぼんのことですか?」
「う、うん。」
「どうしてですか?」
「あのね、それはこっちのセリフだってぇの。だってあの三人石川にぞっこん
じゃない。」
矢口の言葉にしばし石川が目を丸くして止まる。
そして次に言った言葉は加護を驚愕させた。
「ぞっこんだなんてそんなことないですよ〜。」
(ちょ、ちょっとちょっとっ!ぞっこんだっちゅうの。)
思わず石川に突っ込みを入れてしまう。
「だ、だっていっつもあの三人石川取り合って口喧嘩してるじゃん。」
矢口の言葉に加護もうんうんと頷く。
「それは友達としてでしょ?」
紅くなった頬を両手で冷やしながら石川が相も変わらずそう答える。
- 79 名前:aki 投稿日:2001年09月21日(金)14時00分42秒
- 「それは友達としてでしょ?」
紅くなった頬を両手で冷やしながら石川が相も変わらずそう答える。
「「・・・・・・。」」
加護は矢口と共にその後何も言えなくなってしまった。
(梨華ちゃん、それは本気で言ってるの・・・?)
思わず疑問に思ってしまう。
普通の人間ならあんなに積極的にされればどんなに鈍感でも少しは気付くはず。
しかし真面目で嘘も上手につけない石川が今、嘘をついているような
様子は微塵も感じられない。
(ま、それが梨華ちゃんの良い所の一つなんだけどね・・・。)
「それじゃ私そろそろお風呂入ってきますね〜。」
そう言うと石川は矢口を残し鼻歌を歌いながらお風呂場へ向かって
歩いていってしまった。
- 80 名前:aki 投稿日:2001年09月21日(金)14時01分34秒
- (そういえばうちさっきなんか頭に浮かんだ事がなかったっけ?)
石川がいなくなり会話が終わったので今さっきの事をう〜んと腕を組み
加護は考えてみた。
そしてふと!が加護の頭の上に現れた。
(そうそう、矢口さんの好きな人は好きな人がいるってことだ。)
加護は考えてみた。
この旅館で両思いなのは飯田と辻。
そして人物相関図がはっきりしているのは自分と後藤と吉澤と石川。
(中澤さんと保田さんと安部さんのことは分からんし・・・。)
すると他に好きな人がいる人ってことは自分と後藤と吉澤の三人になる。
(マジかいっ!?)
(だから矢口さん、梨華ちゃんに聞くときあんなに真剣やったんか・・・。)
そしてまた一つ頭の中に考え事が浮かぶ。
(そういえば梨華ちゃんは好きな人いるって言うてたな・・・。)
誰なんだろう。
加護は石川が言った「相手がどう思ってるか分からない」という言葉を
聞いたとき、その時一瞬とてもショックだった。
それは自分を含めて三人は外れているのか、それとも自分達の事をなんとも
思っていないのかと思ったから。
その後の石川の言葉ですぐにその心配は取り除かれたけど。
- 81 名前:aki 投稿日:2001年09月21日(金)14時06分09秒
- 78と79の最後と最初ダブっちゃいましたね。
ミスっちゃいました。(++)
- 82 名前:aki 投稿日:2001年09月21日(金)14時18分27秒
- (でも、相手が自分の事どう思ってるかわからないって事は梨華ちゃん
意外な人を好きやったりするんやろか・・・・。)
今まで結構、的を得ていた推理はだんだん加護の中で暴走していく。
(中澤さん・・・・保田さん・・・・安倍さん・・・・・・)
意外な人物の名前を頭の中に思い浮かべ言いながら石川の気持ちを自分の
中で勝手にシュミレーションしてみる。
「はっ!!」
そして加護の中にある人物の名前が思い浮かんだ。
(矢口さん・・・!?)
もしかして梨華ちゃんは矢口さんの事が好きでそれで矢口さんが他に
好きな人がいるっての聞いてショックだったりしてそれで本人の前で曖昧に
自分の気持ち言って本当は気付いてほしい、みたいな・・・・。
「あ、あわわわわ。」
信憑性が全くないのに加護の推理は頭の中でどんどんいけない方向に膨らんでいく。
「ってことは三角関係!?」
暴走推理は最後にはそこに到達した。
「・・・・・・・・。」
頭の中をぐるぐるいろんな考えが駆け巡りしばらく加護は黙りそこに佇んでしまった。
そして今に至る。
- 83 名前:名無しです 投稿日:2001年09月21日(金)16時45分15秒
- う〜ん…梨華ちゃん…誰だ…
すっごい気になる…
やぐちと梨華ちゃんの会話の間にヒントとか入れてます?
更新頑張って下さい〜
- 84 名前:aki 投稿日:2001年09月21日(金)18時57分32秒
- 83:名無しさん
>レスありがとうございます。
う〜ん、今私もやぐちと石川の会話見ましたが・・・・
これといったヒントは特別入れたりとかしなかったんですけど、
少しにじみ出てるかな?でもほとんどないかもしれないですね^^;
これからもがんばりますっ。ありがとうございます!
- 85 名前:aki 投稿日:2001年09月22日(土)23時09分30秒
- 今日は出かけて帰りが遅くなってしまったため更新が遅くなっちゃいました。
今から更新します。
- 86 名前:aki 投稿日:2001年09月22日(土)23時10分20秒
- 「・・・・・・・。」
加護はとりあえずその場を離れる事にした。
お風呂に行く事など加護の頭の中からはとっくに忘れ去られ
加護は廊下をふらふらと力なく歩いた。
すると目の前にお濡れた髪をタオルで拭いながら歩いてくる
お風呂上りらしい後藤の姿が映った。
加護は後藤の姿を捉えただけでぼーっと俯きながら至って後藤に
興味を示さなかった。
「あれ?」
後藤もこちらに気付き近づいてくる。
「おーい、加護っ。どうしたの?」
「後藤さん・・・・。」
いつもの元気は今の加護からは感じられなかった。
「どうしたのさ、ふらふらしちゃって。お化けみたいだよ。」
「・・・・後藤さん、実は私すごいこと知っちゃったんです・・・。」
相変わらず力なく小さくそう呟く。
- 87 名前:aki 投稿日:2001年09月22日(土)23時10分56秒
- 「なになに?」
「梨華ちゃん、本当は・・・・」
「なに?梨華ちゃんがどうかしたの?」
たんなる加護の思い込みの暴走なのだが後藤はそんなこと知らず
そのまま気になるので加護の言葉に耳を傾ける。
「後藤さんっ!!」
そう叫ぶと加護はいきなり前から後藤の両肩を掴み必死になって言った。
「矢口さんは好きな人がいるんですっ!」
「はっ?」
突然違う事を言われ何が何なのかさっぱり後藤には分からない。
「でもその矢口さんの好きな人には別に好きな人がいるんです・・・・。」
「はぁ。そうなんだ。」
加護は気付かないまま立ち聞きしてしまった二人の会話を話し出す。
後藤はいつもと様子の違う加護に?を頭の上に浮かべる。
「一体どしたの加護。なんか変だよ。」
「それで、それで梨華ちゃんは・・・・・」
「ん!梨華ちゃんが一体どうしたのさ。」
また石川の話に戻り後藤は加護に向き直った。
- 88 名前:aki 投稿日:2001年09月22日(土)23時12分11秒
- 「梨華ちゃんは、その矢口さんの事を・・・・・」
「なになに!?やぐっつあんがなに!?はっきりしてーっ!!!」
後藤は逆に力ない加護を前から掴みゆさゆさと揺する。
「つ、つまり三角関係なんですー。梨華ちゃんは矢口さんのことが好きでー」
「!!」
「あたしたちのことは友達だと思ってて・・・・」
そこまで加護が言った時、後藤の頭の中は一瞬にして真っ白になった。
後藤の体からはすっと力が抜け加護を掴む手は自然と加護から離れ、そのまま重力
に従い腕は下にぶらんと落ちる。
「嘘・・・・梨華ちゃんがやぐっつあんを・・・・?」
本当はどうしようもない信憑性0の加護の暴走した思い込みなのだが後藤がそれを
知る由もない。
この上ないショックを後藤は今感じていた。
今さっき気を取り直してばかりなのに温泉で思い浮かべてしまった嫌な考えが
こんなに早く現実になるとは後藤は思ってもいなかった。
- 89 名前:aki 投稿日:2001年09月22日(土)23時12分46秒
- 加護はそのまま後藤を残したままその場をふらふらと離れてしまった。
未だ後藤の頭の中は真っ白で何も考えられずにいた。
(梨華ちゃんがやぐっつあんのこと好きでやぐっつあんは他に好きな人がいる・・・)
加護から聞いたことを真っ白で何も考えられないはず頭の中で必死に整理してみる。
後藤は俯きながらこの世の終わりのような雰囲気を漂わせ佇んでいたが
くわっと目を見開き顔を上げると後藤は駆け出した。
「やぐっつあ〜〜〜〜〜んっっ!!どこだぁ〜〜!!!」
とてつもない声を旅館内隅から隅まで思いっきり響かせ後藤は矢口を
探した。
「いたぁ!!」
旅館を走り後藤は矢口の姿をフロント前の休憩するため、椅子に安倍と
座っていた矢口の姿を見つけた。
「な、なんなの一体!?」
後藤の尋常ではない様子に矢口は何事かと少し狼狽する。
- 90 名前:aki 投稿日:2001年09月22日(土)23時14分18秒
- 「一体どうしただべさ、ごっちん。」
こちらに近づいてくる後藤に安倍は言う。
「やぐっつあんっ!ひどいよー!後藤の気持ち知ってるくせにー!!」
「はぁ!?」
今さっき加護にしたように矢口の両腕を前から掴んで言う後藤。
突然訳の分からない事を話し出す後藤に矢口はそれだけしか言えない。
「何言ってるんだか、さっぱり理解不可能なんだけど・・・・。」
矢口は言いながら安倍の顔を見るが安倍にも分かるわけがなく首を傾げてしまう。
「梨華ちゃんのこと取っといてしかも挙句の果て他に好きな人が
いるだなんてーーっ!!そんなのひどすぎるっ!!」
「????」
突然の後藤の行動に矢口は混乱する事しかできない。
「あくまで誤魔化す気ならもうやぐっつあんなんて知らな〜〜いっ!!!」
そう言うと矢口から離れまた後藤はどこかへと全力疾走して行ってしまった。
「・・・・何だったの今の・・・。」
「さぁ・・・・。」
消えていく後藤の後姿を呆然と見つめながら矢口はそう安倍に聞いた。
- 91 名前:aki 投稿日:2001年09月22日(土)23時15分17秒
- 安倍にも当然何が何なのか分かるはずもない。
取り残された二人はしばらく台風が突然上陸し去った後のような感覚に駆られた。
「あれ?加護?」
そんな中安倍が未だふらふらと歩いていた加護の姿を見つける。
「あの様子は・・・・まさか今の後藤の原因は・・・・。」
「?」
未だ首を傾げる矢口の隣で安倍は加護の様子に何かを察していた。
- 92 名前:aki 投稿日:2001年09月22日(土)23時18分47秒
- 今日はここまで・・・。
- 93 名前:83です 投稿日:2001年09月23日(日)13時55分01秒
- あっ、入れてなかったのですか…
じゃぁ言っても大丈夫か…
75スレの下から6行目がちょっとヒントかなぁとか思っていたんです(w
今回のごとーはホントカワイイキャラですね♪
楽しみにしてますんで、更新頑張って下さいね〜
- 94 名前:aki 投稿日:2001年09月23日(日)18時34分13秒
- 93:83さん
>レスありがとうございますっ。
75スレの下から6行目、ここは石川が矢口と同じ気持ち、立場になって
悲しんでいるようなシーンかな・・・?
気になって考えてくれて嬉しいです^^
後藤のキャラは前作とは比べ物にならないほどの別人ですね^^;
これからもがんばりますっ!
- 95 名前:aki 投稿日:2001年09月23日(日)19時28分29秒
- 「梨華ちゃんっ!」
後藤は息を切らせながら石川の部屋のドアを勢いよく開けた。
「ごっちん?どうしたの?」
部屋の向こうで体を半分仰け反り後藤の姿を確認し石川が普段どおりに
言う。
後藤はそのまま無言で石川の部屋に入り部屋の真ん中に座る石川のちょうど前に
座った。
「?」
いつもと様子の違う後藤に石川は疑問を抱く。
ちょうど今石川はお風呂から上がって部屋に戻り部屋の整理をいろいろしている
ところだった。
「梨華ちゃん・・・・。」
静かにおもむろに後藤が口を開いた。
「どう、したの?」
後藤の様子のおかしいのは分かるが石川からは後藤は俯いているため表情が知る
ことができなかった。
- 96 名前:aki 投稿日:2001年09月23日(日)19時29分19秒
- 石川が下から後藤の顔を覗こうとした時、
「本気、だったんだよ・・・後藤は、ずっと。」
後藤は言いながら石川の手を前から包むように握った。
「え?」
「ずっと、ずっとふざけてるように見えたかもしれないけど後藤は・・・・・」
その時石川は後藤から零れ落ちるものに気付いた。
二つ、三つと後藤の涙がこぼれ畳に吸い込まれていく。
その一つ一つが石川の目にはゆっくりと落ちる透明な結晶のように見えた。
「ごっちん、泣いてるの?どうしたの?一体何があったの!?」
突然の後藤の涙に石川の頭の中は何も考えられなくなり混乱しまくる。
「どうせ後藤の完璧な片思いだったのなら、・・・最後に・・・・・。」
石川の問いかけには答えず後藤はそう小さく呟くと前から石川を
前から抱きしめた。
- 97 名前:aki 投稿日:2001年09月23日(日)19時33分53秒
- 「ご、ごっちんっ!?」
「最後、だから・・・・・」
後藤は優しく強く石川を抱きしめた。
後藤は黙ったままただ石川を抱きしめた。
しかし何かを抱きしめる事に自分の気持ちを込めながら、訴えながら。
「一体、どうしたの・・・・?」
突然の後藤の行動に石川の頬、顔は紅く染まる。
「・・・・・・・。」
後藤は石川の言葉には答えず止め処なく溢れ零れ落ちそうになる涙に必死に
堪えながらきつく抱きしめる。
「あっ・・・・」
後藤が微かに上になる形で石川に抱きついていたが石川の自分の体を支える
腕が崩れ二人はそのまま地面に倒れた。
はたから見ると石川が下、後藤が上のため後藤が押し倒しているように見える。
「・・・・・・・。」
少し時間が経ち、しばらくして後藤は石川からゆっくりと身を起こした。
地面に手をつき、身を起こす時後藤は石川の唇に一瞬軽く触れるキスをした。
「っ!」
突然の後藤のキスに石川は驚き自分の口に覆うように両手を添えた。
一瞬何が起きたのか分からず何も言えなくなり戸惑う。
- 98 名前:aki 投稿日:2001年09月23日(日)19時34分34秒
- 「本気で好きだった・・・・梨華ちゃんのこと、でも・・・・。」
「えっ・・・!?」
キスに戸惑っていた石川は後藤の言葉に後藤に向き直り顔を戻す。
「さよなら・・・・っ!」
そう言うと後藤は石川から離れ部屋を飛び出してしまった。
「ごっちん!?」
石川もすぐに身を起こし名前を呼んだが後藤は部屋を出て行ったしまった。
突然の涙、突然の告白、そしてキス。
石川の頭の中は混乱に混乱を重ねてしまい上手く整理がつかず
後藤がいなくなり残された部屋でただ佇んでしまった。
今の石川には追いかけるという行動がすぐに頭の中に出てこないでいた。
「最後・・・・それにさよならって・・・・」
石川はその二つの後藤の言葉を思い起こした。
そして気付いた時には石川は後藤を追いかけていた。
頭の中では全然整理はつかないでいたが考えるより先に体が動いていた。
- 99 名前:aki 投稿日:2001年09月23日(日)19時38分33秒
- これで今日の更新は終わりです。
後藤が暴走したままストーリーが進行していってますね^^;
いろいろ話の形は出てきましたが結局最初から描いていたこの形に
なりました。
どうでしょうか・・・・・?
何かレスいただけると嬉しいです。
なんかこの頃更新がちまちまするようになってきました。
今まではその日その日更新しまくっていたので
前の自分では考えられないぐらいです・・・。
続きは書いていってるのですが楽しみはゆっくりということで・・・。
- 100 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月24日(月)00時20分46秒
- ごっちんにはどんどん暴走してほしいっす。
いしごま万歳〜!!
- 101 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月24日(月)02時17分53秒
- よっすぃ〜も暴走しないと 梨華ちゃん ごっつぁんにとられるべー
- 102 名前:aki 投稿日:2001年09月24日(月)15時42分14秒
- 100:名無しさん
>レスありがとうございますっ!
いしごま好きな方がいて嬉しいです。
がんばりますっ。
101:名無しさん
>レスありがとうございますっ
今ごろよっすぃーは一体何をしてるのでしょう・・(^^;
- 103 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月24日(月)18時42分15秒
- この展開で良かった〜〜
いしごま好きなので!
面白いですよ〜凄く。楽しい感じで。
- 104 名前:aki 投稿日:2001年09月24日(月)18時46分54秒
- 103:名無し読者さん
>レスありがとうございますっ!!
そう言って頂けるととても嬉しいです(T_T)<この展開で良かった>
いしごま好きですか!私もかなり好きです。てか一番^^;
この小説はコメディ風に書くのが目的だったのでそれも
嬉しいです。
これからも頑張りますっ。
- 105 名前:aki 投稿日:2001年09月24日(月)18時48分38秒
- 「うっ・・・・」
後藤は石川の部屋から飛び出した後、行く当てなどどこもなかったが
走った。
必死に我慢していたものが後藤の目から溢れ出す。
(こんなに・・・・・)
こんなに自分が彼女の事を好きだったとは。
彼女への想いは気付けば自分でも驚くほどに膨らんでいた。
- 106 名前:aki 投稿日:2001年09月24日(月)18時49分52秒
- 今更のように後藤は自分の気持ちを思い知らされる。
普段は気付かなかった。
吉澤や加護と口げんかをして、石川は誰かと特別くっついたりせずいつも
みんなと同じ距離のところにいて。
そんな毎日が楽しくてすごく居心地が良かった。
石川の相手が矢口だろうと誰だろうと関係ない。
その毎日が消えてなくなってしまって、二度と戻れなくなりあの日々が
味わえなくなると思うとすごい喪失感に襲われる。
別にいなくなるわけじゃないのに、永遠に会えなくなるわけじゃないのに
とてつもない寂しくて悲しくて切ない気持ちにかられる。
- 107 名前:aki 投稿日:2001年09月24日(月)18時50分40秒
- もう大分暗くなった外を全力でただ走り、いつのまにか後藤は
昨日みんなで来た海岸に来ていた。
「はぁっ・・・・はぁ・・・。」
頭の中でいろんな気持ちが駆け巡り今まで気付かないでいたたくさんの
自分の気持ちに気付き自分が何処に向かっていたのかなんて意識していなかった。
気付けば後藤の目の前には海が広がっていた。
夜の海は昼間とは違く全く別のものだった。
まるで全てを飲み込みそうなぐらいの深い闇を秘めたような深い色、
しかし波はほとんどなくおだやかで静かだった。
秋のためか今日の三日月はとても綺麗に夜空に映える。
おだやかな水面にはその美しい三日月が映し出されとても幻想的だった。
- 108 名前:aki 投稿日:2001年09月24日(月)18時52分17秒
- 「・・・・・・・。」
切れていた息も整い後藤は改めて目の前の光景を目にした。
夜のため自動車も走っていなく空気もおいしい。
いつのまにか後藤は心から落ち着いていた。
突然思ってもいなかった事実を知り困惑し、混乱していろいろな感情が目まぐるしく
駆け巡っていた今さっきまでの感情はもう後藤の中から消え去り今はただおだやかな
気持ちが後藤の中に残っていた。
それはこの後藤の目の前に広がる景色のせいもあるだろう。
しかしもう一つ後藤には思い当たることがあった。
「・・・・・・・。」
後藤は黙ったまま海岸のある場所へ歩いていった。
そこは海岸に広がる砂浜に浮かぶ横たわった一つの大木。
台風か何かで流れてきたのか、それとも元からここに立っていたものなのか
分からないが結構な大きさの樹。
当然根っこは地上に姿を晒し葉もつけていない。
とっくに枯れてはいるがとても丈夫だ。
他にも二、三本の樹が砂浜には存在していたがその樹は砂浜の中で一番大きく
その存在を主張していた。
「あれ、いつだったっけ・・・・?」
後藤は誰に言うまでもない言葉をそう小さく呟きながらその大木に腰をかけた。
- 109 名前:aki 投稿日:2001年09月24日(月)18時52分59秒
- 後藤が石川のことを好きになったのは一目ぼれとか石川の容姿とかではなかった。
そもそも出会ったのはこの旅館。
石川は後藤がここに来てからしばらくして加護や辻、吉澤と共にやって来て
働き始めた。
一目ぼれや容姿ではないと言ったが後から来た彼女の事を始めて見た時、
後藤は正直可愛いと思った。
でも自分より一つ年上のお姉さんで、それなのに自分より後から来たため
自分は年下なのに先輩。
しかも自分と違いすごく真面目で。
石川はあまり気にしてないようだったがそれが後藤には気がかりに
なってしまいあまり最初は石川と接する事が気まずくぎこちないもの
になっていた。
できれば仲良くなりたかったが石川と後藤の関係は後藤の気持ちとは裏腹に
後藤には複雑で気まずいものだった。
しかしそれもある出来事で拭い去られる事になる。
- 110 名前:aki 投稿日:2001年09月24日(月)18時54分00秒
- 石川が旅館に来てしばらく経った夏のある日。
昨日のように仕事が全くなく完全な休日の夕方。
その日、旅館で働く10人は全員で花火をしに海岸へ出向いていた。
日ごろの仕事の疲れを癒すため、そして突然の休日を、そして夏休みを思いっきり
楽しむためみんなで花火をすることになった。
しかし夏のため陽は長くなり夕方の今では太陽はまだ沈み始めてもいないため
花火をするにはまだ辺りは明るかった。
そのため一旦、陽が沈み辺りが暗くなるまで自由行動になった。
中澤や保田達はすぐそこの町に行くことにし、吉澤や加護、辻、石川は
来たばかりの為まだ行った事のない近くの林の方を探検しに行く事になった。
どちらとも誘われたが後藤はどちらも断り一人海岸に残る事にした。
その頃はまだ来たばかりの石川達とは今のように距離が縮まっていなく
まだよそよそしかった。
そして中澤達との仲もすごく深いわけではなかった。
後藤は一人でこの旅館に訪れたため同期のメンバーがいず自然と分かれる
グループのどちらにも付かず離れずだった。
- 111 名前:aki 投稿日:2001年09月24日(月)18時57分29秒
- 今日の更新終わりです。
この小説はあまり重くしないでどちらかとういうとセリフ重視の
軽い感じにしたかったのですが、この辺は後藤の昔を思い出す回想シーン
なのでちょっと文章が多いかもです。
しかもちょっと現実のメンバーの関係みたいなのも入っていますね。
- 112 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月24日(月)22時52分55秒
- おお!更新されてる。
この展開は・・・楽しみだぞう!作者さん、期待してまっせ〜
- 113 名前:aki 投稿日:2001年09月24日(月)23時19分00秒
- 112:名無しさん
>レスありがとうございます〜。
本当に励みになります。
期待に答えられるようにがんばっていきます!
- 114 名前:103です 投稿日:2001年09月24日(月)23時28分36秒
- いいですね〜私は女ですが
ハマリます。
ってかakiさんが可愛い・・って
ダメか・・ごめんなさい。頑張ってくださいね!!
続き、楽しみです!思う様に書いて下さいね〜
- 115 名前:aki 投稿日:2001年09月25日(火)00時14分27秒
- 114:103さん
>おおっ!?ちょっと寄ってみたら意味深なレスがっ!(爆
それはともかくレスありがとうございます^^;
びっくり&照れますね。
これからも頑張りますっ!
嬉しいお言葉たくさんどうもです(T_T)
- 116 名前:103です 投稿日:2001年09月25日(火)01時13分01秒
- っく〜可愛いな〜っ
ごめんなさい。寝ます。
ってか酒飲んじゃって。
・・続きが楽しみだなっと。
スレ汚し確定なワケで・・ごめんなさいね
- 117 名前:aki 投稿日:2001年09月25日(火)11時23分38秒
- みんな気をかけてくれるので後藤は適当に頭が少しだるいから休憩してる
と言って断っていた。
そしてそれぞれみんなが目的の場所に向かい海岸には後藤一人になる。
「ふぅっ・・・・!」
両手を上にあげ思いっきりのびをする。
近頃では珍しい休みのため後藤はゆっくり羽をのばしたかった。
そのため断った理由もあながちまるっきり嘘ではない。
後藤は自分以外誰もいない一人の海岸で改めて目の前の海を見た。
東の方向に山、西の方向に海があり太陽は海にだんだん沈み飲み込まれていく。
太陽の光は海に、そして空に綺麗に輝く。
海岸からは目の前の景色が一望できた。
紅い夕日がこちらに向かって差し込み太陽は自分とは反対の後藤を含める町や
道路などこの辺一体、全ての場所を紅く綺麗に染めていた。
- 118 名前:aki 投稿日:2001年09月25日(火)11時24分21秒
- 「・・・・・・・・。」
後藤は眩しい太陽の光に微かに目を細め右手を目の上の辺りの場所にかざした。
するとふと右手のある物が後藤の視界に入った。
それはここに来る前に後藤がお母さんから貰ったシルバーの指輪。
とてもシンプルなデザインだけどそれは後藤のお気に入りだった。
いつも後藤はそれを右手の薬指にはめている。
この指輪の存在は後藤を安心させ癒すとても大事な大切なかけがえのない物。
少しだけ指に緩いそれを後藤は回すようにいじった。
- 119 名前:aki 投稿日:2001年09月25日(火)11時25分52秒
- しばらくして後藤は海岸を少し気ままに歩いた。
そして歩く先にある一つの大木の存在に気付いた。
「こんなのあったっけ・・・・・?」
後藤が来てから今の今まで見たことのない大きな樹が海岸に横たわっていた。
つい最近流れ着いたものなのか樹にはまだ青い葉っぱがついていた。
「・・・・・・・・。」
その樹の他にも同じような樹は海岸に存在していたが何故か、どうしてか分から
ないが後藤はその樹の元まで引かれるように寄っていった。
そしてその樹の幹に後藤は黙ったまま手を置いた。
(なんだろう・・・・・。)
手から感じられるのはとても太くて丈夫だということ、しかしそれ以外にも
後藤は何かを感じていた。
何故かとても安心する。
どうしてかは分からないけどその樹の側にいると、そして触れるとほっとする。
後藤はそのまま今出会ったばかりのその樹に腰をかけた。
- 120 名前:aki 投稿日:2001年09月25日(火)11時26分30秒
- 太陽はまだ沈みかける途中でまだ大分空は明るい。
後藤はスッと静かに目を閉じた。
辺りに流れる優しい潮風、波が砂浜に寄せそして戻される時の繰り返す音、
目を閉じると自分の身のまわりのものが今更のように耳に気持ちよく
聞こえてきた。
後藤は静かにゆっくりと瞼を開いた。
そこには障害物はなくただ目の前全てに今、体で感じた光景が広がる。
「ふあ〜・・・・・。」
後藤は樹に座りながら大きく欠伸をした。
欠伸のせいで少しだけ目が潤う。
「あれっ!?」
そこで後藤はあることに気が付いた。
欠伸をして開いた口を隠した右手にはいつものそこにあるべきものがなかった。
後藤はすぐに樹から立ち上がり今自分が腰掛けていた時の足元や樹の近くを
見渡した。
しかしそれは見当たらない。
- 121 名前:aki 投稿日:2001年09月25日(火)11時27分14秒
- 「どこで落としちゃったんだろう・・・・・。」
後藤はこの樹までの今来た道をそこから見渡してみた。
しかし広い砂浜ではその存在は確認できなかった。
「まただよ・・・・。」
後藤は何もつけられていない自分の右手の甲を見ながらそう小さく呟いた。
後藤にとって指輪を落とすのは初めてのことではなかった。
お気に入りの指輪は自分の指には少しだけ緩く、知らないうちに指から
外れてしまう事は今までも何度かあった。
しかしいつもその度に指輪は見つかったけど・・・・
「砂浜じゃなぁ・・・・・」
辺りを見渡すがやっぱりそれは見つからない。
後藤は諦めにも似た言葉をため息を同時に小さく呟いた。
その時、
- 122 名前:aki 投稿日:2001年09月25日(火)11時29分36秒
- (そうあの時・・・・・・・。)
昔の事を思い出しながら同時に後藤は月の綺麗な空を仰ぎ見ながら
そう心の中で呟いた。
- 123 名前:aki 投稿日:2001年09月25日(火)11時41分02秒
- 116:103さん
>レス何度もありがとうございますっ。
読んでくれている事が分かるので嬉しいですよ。
期待に答えられるように続きも頑張ります!
- 124 名前:aki 投稿日:2001年09月25日(火)19時34分54秒
- 「どうかしたんですか?」
突然の、後ろからした声に後藤はすぐに後ろに振り向いた。
「あっ・・・・・・」
つい今さっきまで自分以外誰もいなかった砂浜にいつのまにか人が来ていた
ことに驚いきとっさに振り向いたがそこにいたのは後藤が思ってもいなかった
意外な人物だった。
後藤がすぐに振り向いたので彼女も少しびっくりする。
「?」
小さく一言言葉を漏らしただけでそれ以上何も言わない後藤に石川は
黙ったまま?と首を傾げた。
「・・・どう、して?」
後藤は彼女の質問には答えず今、彼女を見て疑問に感じた事を考えたり整理する
ことなどする余裕なく無意識に言葉を発していた。
- 125 名前:aki 投稿日:2001年09月25日(火)19時35分35秒
- どうして今ここにあなたがいるの?
疑問に思ったことはそれだった。
だって彼女は今さっき自分と分かれて他のメンバーと一緒に林に向かっていって
いったはずだから。
帰ってくるにもまだ早く、当分太陽も沈みそうにないのに。
「私だけ戻ってきたんです。林の近くまで行ったんですけど夏のせいか虫
とか多くてそういうの苦手だから・・・・。」
彼女は今の少し言葉が足りない後藤の言葉で何が聞きたいのか察しそして答えた。
「そっか。」
確かに目の前の彼女は旅館で働くメンバーの中では珍しくとても女の子らしい。
そして今の洋服も林とは相性の悪そうな可愛い女の子らしい白いワンピースだった。
夏の海岸に、そして彼女にそれはよく似合っていた。
「それに、後藤さんが海岸に一人だけ残っていたのも気になってたから・・・・・」
彼女、そう石川は忘れた頃にそう小さく付け加えた。
- 126 名前:aki 投稿日:2001年09月25日(火)19時36分13秒
- 「・・・・・・・・。」
二人だけの海岸では小さな石川の声もちゃんと後藤の耳に入っていた。
しかし答え終えたと思った自分の質問に突然遅れて付け加えられたその石川の
言葉は後藤を戸惑わせどうしていいか分からなくさせる。
後藤は何も彼女に言葉を返す事ができずただ視線を泳がせていた。
「後藤さんは今何してたんですか?」
「あたしは・・・・・・」
自分の言った事に対してあまり気のとめていないらしい石川は
後藤が心の中で動揺していることなど知らず普通に質問する。
彼女の姿に驚いていたため一瞬後藤は今まで自分が一体何をしていたのか忘れていた。
そしてすぐに後藤の目に自分の右手が映る。
- 127 名前:aki 投稿日:2001年09月25日(火)19時36分48秒
- 「そう、指輪を落としちゃったらしくて・・・・・」
「後藤さんがいつも右手にしてるのですか?」
「うん・・・。」
(ってあれ?なんで知ってるのいつもあたしが指輪を右手にしてるって・・・・)
「それなら私も一緒に探しますっ!」
「でも・・・・いつ落としたか分からないし、それに砂浜だし見つかるかどうか・・・。」
「でもあの指輪は後藤さんの大切な物なんでしょう?」
「そうだけど・・・・」
(あれ?なんで大切だってことも知ってるの・・・?)
「それじゃ探さないとっ。」
後藤がまた疑問を感じている間に石川はそれだけ言うと樹から近くの海岸の砂浜を
見ながら落ちていないか探すため歩き始めた。
「・・・・・・・・・。」
しばし呆然と彼女の姿を見ていた後藤だったがすぐに指輪を見つけるため
後藤も砂浜を一緒に歩きながら辺りを探し始めた。
- 128 名前:aki 投稿日:2001年09月25日(火)19時38分17秒
- 今日の更新はここまでです。
- 129 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月26日(水)01時26分37秒
- 相変わらず描写力がスゴイな〜。
作者さんは重いって言うけど私はこのスタイル大好きですよ。
頑張って下さい。
- 130 名前:名無しです 投稿日:2001年09月26日(水)02時02分21秒
- こ・これは…
これでごっちんが惹かれたのか…気になる…
それ以上に気になるのが梨華ちゃんの…観察力?
これだと…気になる…
ついつい一言一言考えてしまう…
う〜ん…更新楽しみにしてます。
- 131 名前:読んでます 投稿日:2001年09月26日(水)03時05分12秒
- 静かにドキドキする雰囲気に
いつも引き込まれます。
akiさんの文章中の
凄く綺麗な情景が好きです。
・・>116では本当に失礼しました・・
続き頑張って下さいね!
- 132 名前:aki 投稿日:2001年09月26日(水)10時43分19秒
- おおっ!たくさんのレスびっくりです!
129:名無し読者さん
>嬉しいお言葉本当にありがとうございます(T_T)
どうしても読者さん達側に情景を思い描けるように書こうとすると
文章が多くなってしまうんで、ぱっと見たとき文章だらけてどうしても
それを敬遠してしまう方もいるかなっと思ってたんです。
でもこれからはこのスタイルを護っていこうと思いました。
ありがとうございます(T_T)
130:名無しさん
>レスありがとうございますっ!
これからたぶん明らかになっていくかと思います。
毎日更新がんばりますっ。
131:116さん
>レスありがとうございますっ!
とっても嬉しいです!なんか自分の書く「小説」を読んでくれて
いると感じました。
レスはとても励みになりますので気にしないで下さい^^
続き頑張りますっ!
- 133 名前:aki 投稿日:2001年09月26日(水)19時12分32秒
- それから少し経って・・・・
「やっぱり砂浜じゃ見つからないよ・・・・」
後藤はあの後しばらく探してみたがやっぱり指輪は見つからず
休憩を取るため木の上にまた腰をかけていた。
「風も吹いてるし・・・・」
指輪はもう風に運ばれた砂で埋まっているかもしれない。
その可能性はとても高く逆に見つかる可能性なんてほとんど0に等しいだろう。
そう小さく呟きながら後藤は心の中でほとんど諦めていた。
いや、本当ならもう探してもいないだろう。
彼女がいなければ。
「・・・・・・・。」
後藤は木に座ったまま何も話さずただ目の前の彼女の姿を見た。
なくした本人が休んでいるにも関わらず石川は休みもせず波が打ち寄せる
近くの辺りでまだ一生懸命探していた。
たぶん、いや絶対に彼女が海岸に戻ってきていなければ指輪のことは
後藤は諦めていただろう。
今さえもう見つかる事などほとんど信じてはいなく彼女が探そうとしてくれるので
自分も探しているといったほうが正しい。
- 134 名前:aki 投稿日:2001年09月26日(水)19時13分15秒
- (本当に・・・・・)
本当に真面目で何事にも一生懸命で全力投球で、手を抜くなどという行為を全く
受け付けない頑張り屋。
まるで自分とは絵に描いたような正反対な性格。
それを改めて後藤は感じていた。
「もういいよーっ!見つからないよ。」
後藤は大きな声で波打ち際にいる石川にも聞こえるぐらいに叫んだ。
「でも、あれは後藤さんにとって一つしかないんでしょう?
諦めちゃダメだよーっ!」
石川も探しながら後藤に聞こえるぐらいの大きさの声で返してくる。
「・・・・・・・・。」
(どうして・・・?)
言葉には出さず後藤は疑問を心の中で呟く。
(自分のことでもないのに・・・・大して仲も良いわけでもないのにどうして
あたしのためなんかにこんなに一生懸命にしてくれるの?)
後藤は少しだけ呆れるように、そして微かに何かにあたるように心の中で
そう疑問を心から呟いた。
- 135 名前:aki 投稿日:2001年09月26日(水)19時14分03秒
- 「もう陽も沈み始めてるし・・・・・」
後藤は目の前の空を仰ぎみながらそう呟いた。
海の上の夕日はもうだんだん水平線に飲み込まれようとしている。
みんなもそろそろ帰ってくるだろう。
辺りも暗くなって花火をすることになるだろうし・・・。
「石川さ・・・・・」
「あったーーっ!!!」
滅多に呼ばない(というかほとんど呼んだ事のない)彼女の名前を後藤が呼ぼうと
した時、同時に大きな声が海岸に響いた。
「え?」
「あったよーっ!!」
波が微かにかかるところの砂浜近くで石川はしゃがみそして嬉しそうに
樹に座る後藤の元へ駆け寄ってくる。
「これでしょ?後藤さんがいつもしてる指輪。」
そう言って石川は海水で少し濡れている指輪を後藤に差し出した。
「・・・・!」
それはまぎれもないお母さんから貰った後藤のいつもしている銀の指輪だった。
- 136 名前:aki 投稿日:2001年09月26日(水)19時15分19秒
- まさか見つかるなんて思わなかった。
自分が声をかけようとしたとき石川が見つけたのだがすぐには何の事なのか
後藤には理解できなかった。
「うん・・・これ・・・・・・」
後藤はやっとそれだけ言葉を発した。
「良かった・・・。」
「・・・・うん。」
見つかって再び目にする事ができたそれは目の前にあるにも関わらず未だ
後藤は呆然としてしまう。
「・・・・そうだっ!はめてあげるよ。」
「い、いいよ別に。悪いし・・・・」
「いいからいいから。」
後藤にとって指輪を自分以外の誰かにつけてもらうなんて今の今までして
もらったことなどなく初めてのことだった。
どうしてか恥ずかしくてとっさに断ったが石川はそんな後藤の様子など気付きもせず
そう言うと後藤の右手を取りいつもしている薬指のところにゆっくりと入れた。
「・・・・ありがとう・・・・。」
後藤は心から石川にお礼を言った。
- 137 名前:aki 投稿日:2001年09月26日(水)19時15分52秒
- 「ううん、良かった見つかって。」
「違うの・・・見つけてくれたことだけじゃなくてっ・・・・」
後藤は石川の言葉を否定し、そして言った。
「その・・・最後まで一生懸命探してくれて・・すごい嬉しかった・・・・。」
上手く言葉が出てこなかったが後藤は必死になんとか自分の気持ちを
彼女に伝えようとした。伝えたかった。
「あたし、本当は諦めてた。なくした時からもう見つからないだろうって。
なのに・・・・・」
「その気持ちだけで充分ですよ。」
上手く言葉が出てこないでたどたどしく言っていた後藤にそう石川は
にこっと笑い優しく言った。
「後藤さんが喜んでくれるためにがんばって探してたんです。後藤さんの気持ち
ちゃんと伝わってますよ。」
「・・・・・・・。」
石川の言葉、そして微笑むその表情に後藤はこの時初めて彼女に見とれた。
そして後藤はあることに気が付いた。
- 138 名前:aki 投稿日:2001年09月26日(水)19時16分50秒
- (そうか・・・・・)
分かった。
それは今さっき自分がいつまでも諦めないで探そうとする彼女の姿に
大して感じた事。
なぜ自分が今さっき彼女にあたるように疑問を感じたのか。
もしかしたらずっと自分とはまったく正反対の彼女のことが羨ましかった
のかもしれない。
自分が持っていないものをたくさん手にしている彼女に知らない間にずっと
惹かれていたのかもしれない。
後藤は今さっきの自分の質問に対して自分なりに答えを出していた。
(ドキドキ・・・)
そしてそれと同時に後藤の胸の中で高鳴り始める鼓動。
今まで感じた事のない胸のときめき。
それは後藤の胸を優しく、そして暖かい気持ちにする。
(なんだろう、この気持ち・・・・初めてだ、こんな気持ちになるの・・・・。)
後藤は高鳴る胸を今指輪のつけられたいつもの右手で静かに胸に添え押さえた。
胸の中で響く鼓動は押さえる後藤の右手にも確かに伝わってくる。
- 139 名前:aki 投稿日:2001年09月26日(水)19時19分32秒
- 「もう陽が沈みかけてますね。」
石川は後藤が今そんな気持ちに陥っているとは知らずそう言いながら後藤の
座っている横に腰をかけた。
「暗くなる前に探せてよかった・・・。」
「・・・うん。」
石川の言葉になんとか答えながら後藤は前を見る石川の横顔をちらっと
盗み見た。
さらさらな髪、整った横顔、洋服の上からでも分かるスタイルのいい華奢な体。
(ドキドキ・・・・)
そして、後藤の中でまた高鳴り出す胸の鼓動。
それは明らかに他の誰でもない、横にいる彼女に対して感じているものだった。
(この気持ちって・・・・もしかして・・・・)
自分の気持ちが何か微かに察したがそこまで考えただけで後藤は軽く深呼吸をした。
彼女にこの気持ちを気付かれないように、そして落ち着くために。
- 140 名前:aki 投稿日:2001年09月26日(水)19時20分31秒
- 「あっ、そういえばさ・・・・。」
後藤は今さっき疑問に感じた事を思い出し石川に尋ねてみた。
「どうしてあたしがいつもこの指輪を右手の薬指にしてるって知ってたの?
それにどうして大事な物だってことも・・・・・」
「いつも見てたから。」
後藤が語尾を小さく曖昧になりながら言ったが全く反対に石川は前を向いたまま
はっきりとそう言った。
後藤の言い方のせいか石川の言葉はとても綺麗に響き後藤の耳によく通った。
「え・・・・・・?」
聞こえはしたが予想もしていなかった答えが返ってきて後藤は一瞬どういう
意味なのか分からず小さく言葉を漏らす。
「いつも見てたんですよ。後藤さんの事。」
石川は後藤に向き直り今度は目を合わせながらまたはっきりと言った。
「どうして大事な物かってこと私が知っていたのかって言うのは、後藤さんが
前一度旅館で指輪を落としちゃった時すごく必死になって探していたから・・・。」
石川達が旅館に来た後も確か指輪を落としてしまったことがあった。
自分では気が付かなかったが必死になって探していたらしい。
- 141 名前:aki 投稿日:2001年09月26日(水)19時21分14秒
- 「・・・そうだった?」
「うん、とても。」
はっきりとそう言われ、しかも必死になっていたなど言われた事がなかったので
後藤は少し頬を紅くする。
「それにそれだけじゃなくて・・・。後藤さんどんな時でもその指輪大切そうに
してたから・・・・。」
「そっか・・・・・」
あまり自分では意識していなかったが石川の目にはそう映っていたらしい。
まだ来てから少ししか経っていないのにもしかしたら石川は自分のことを
自分よりも知っているのかもしれない。
まだ知らない自分の意外な部分を。
そしてそのぐらいに自分のことを今の今までずっと石川が見つめていたことを知り
少し恥ずかしくなる。
「あ、みんな来ましたよ。」
石川の言葉に顔を上げると中澤達と吉澤達のそれぞれのグループが今二人のいる
海岸に向かって右から左から向かい合わせになってやってくるところだった。
中澤達は談笑しながら手にはなにやらスーパーの袋がいろいろ持たれていた。
「本当だ・・・・・」
後藤は石川とのこの時間がもう終わってしまう事が少し残念だった。
しかしいつものメンバーが揃うことが何か後藤の心の中を安心させる。
- 142 名前:aki 投稿日:2001年09月26日(水)19時26分41秒
- 今日の更新はここまでです。
書いていっているほうとこっちの更新の差がちょっと
開きすぎてきちゃったため少しいつもより多く更新しました。
83:名無しさん
>今更なんですけど見ていたらと思い書きます。
石川が誰が好きなのか会話の中のヒントみたいなものは
72の一行目や同じく72の下から7行目辺りでした。
本当に素朴なんでヒントと呼べるか分かりませんが・・・。
- 143 名前:名無しです@83 投稿日:2001年09月27日(木)00時11分16秒
- ずっと読んでますよ(^^)
わざわざありがとうございます。
72ですか…これと今回の(過去の)梨華ちゃんのセリフ…からいくと…
140の梨華ちゃんのセリフは天然ですか?(w
それとも…
これからも頑張って下さい〜
- 144 名前:aki 投稿日:2001年09月27日(木)00時34分14秒
- 143:名無しさん
>レスありがとうございます!
読んでくれてましたか!嬉しいです(T_T)
140のこの石川のセリフはある意味天然です。(爆)
しかし恥ずかしい事も自分の気持ちなら石川はさらっと言いのけて
しまいそうですね・・・。
- 145 名前:aki 投稿日:2001年09月27日(木)18時29分30秒
- 「指輪、もう落とさないようにしなきゃな・・・・・」
後藤は自分の右手にはめられている指輪を見ながらそう小さく呟いた。
「ネックレスとかに通したらどうですか?」
「あぁ・・・いいかもね。」
「私、いいの持ってますよ。あ、でも・・・・」
「なに?」
「いつも右手の薬指にしてたのに、いいんですか?」
「・・・・・いいの。」
後藤は小さくそれだけ言葉を返した。
(今日の事の記念として・・・・それにあなたが考えてくれたんだし。)
その言葉に自分の心の中だけで言葉を続けた。
- 146 名前:aki 投稿日:2001年09月27日(木)18時31分06秒
- そして辺りは暗くなりみんなで大量の花火を海岸でした。
突然訪れた夏休みを旅館の全員は思う存分楽しんだ。
夕食も中澤達のたくさん買い占めてきた料理を食べ、あっという間に
楽しい時間は過ぎた。
そしてまたみんなで花火をすること、どこか遊びに行く事を約束し、名残惜しみながら
旅館に戻った。
日頃滅多に休日など訪れないせいかとても楽しく、旅館に戻る頃は
少しだけ寂しいような切ない気持ちになった。
旅館に戻り、各自お風呂に入りそれぞれのしばし自由な時間。
後藤はお風呂から上がって廊下を歩いていた。
そして歩く自分の目の前から彼女がやってきた。
「後藤さんっ!ネックレス、これですよ。」
「・・・・・・・。」
後藤はもちろん石川の言葉を覚えていた。
でも後藤は石川が花火が終わった今、その前に言っていた事は忘れてしまったのでは
ないのかと思っていた。
- 147 名前:aki 投稿日:2001年09月27日(木)18時31分42秒
- 石川はこちらに駆け寄りそして手に持つ銀もネックレスを後藤に見せた。
それには何か装飾品などが付いてはいず、ただの鎖のネックレスだった。
しかし後藤の指輪に合いそうなシンプルでなんとなく可愛い物だった。
「でも・・・・いいの?貰っちゃって・・・」
「プレゼントですよ。」
悪いのではないかと心配する後藤に石川はにこっと笑いそう言う。
石川の笑顔は躊躇いをなくし後藤を素直に嬉しくさせた。
「ありがとう・・・・。」
後藤は石川からのプレゼントを受け取り自分の右手におさまる指輪を外し
ネックレスに通して石川の前でネックレスをつけた。
この日、指輪はいつもの場所から新たな場所へ存在を移した。
後藤はそれをいつも洋服の中に入れ、外からでは見えずらくした。
彼女から貰った大切な物、それをあまり人の目には晒したくなかった。
彼女と自分だけの大切な思い出にしておきたかった。
- 148 名前:aki 投稿日:2001年09月27日(木)18時32分21秒
- それからしばらくして後藤は急激に入ってきたメンバーと仲が良くなった。
吉澤とも同い年のためすぐに気兼ねなく話せるぐらいに仲が良くなった。
加護と辻も持ち前の明るさですぐに自分やその前のメンバーになつき
旅館にすぐになじんでいった。
- 149 名前:aki 投稿日:2001年09月27日(木)18時32分55秒
- 後藤は昔のことを鮮明に細かくつい最近のことのように思い出していた。
自分の首にかけられているそれを洋服の中から後藤は取り出した。
あの時彼女に貰ったネックレス。それはあれからずっとこの指輪を
護っていてくれる。
(今思えばこの指輪が梨華ちゃんとめぐり合わせてくれたのかな・・・。)
あの時と同じ場所で後藤はそう感じた。
(そして、たぶんこの樹も・・・・梨華ちゃんとめぐり合わせてくれた・・・。
どうしてなのか分からないけど後藤にとってただの樹じゃないんだよね・・・。)
後藤はネックレスの指輪をいじりながら心の中で呟いた。
「ここで出会って好きになって・・・・・」
この場所は後藤にとってかけがえのない石川との思い出の場所だった。
- 150 名前:aki 投稿日:2001年09月27日(木)18時34分08秒
- それからあっという間に二人は仲良くなった。
「あのさっ!『梨華ちゃん』って呼んでもいい?」
「うん、もちろんっ。」
「それじゃさ後藤のこともさん付けしないでみんなが呼ぶように
『ごっちん』って名前で呼んでよ。」
「え・・・今までのままじゃダメなの?」
「だってよそよそしいじゃんっ。後藤は梨華ちゃんにそう呼んでもらいた
いし・・・・。」
「そっか・・・・分かった。呼ぶようにする。」
「今呼んで。」
「い、今?」
「うん、お願い」
戸惑う梨華ちゃんが可愛くてわざと可愛くお願いする。
「えっと・・・・・ご、ごっちん。」
「んっ!な〜に梨華ちゃん!」
二人は笑う。
そしてそう呼び合いのも当たり前のことになっていく。
後藤は石川に「ごっちん」と呼んでもらうのは誰よりも一番嬉しかった。
- 151 名前:aki 投稿日:2001年09月27日(木)18時34分42秒
- そしていつのまにかよっすぃーと加護も梨華ちゃんのことが好きになったようで・・・
「梨華ちゃん〜」
自分が石川に抱きつくといつも二人がやって来た。
「ちょっとごっちんっ!」「後藤さんっ!!」
加護とよっすいーが間に入ってきて・・・
「ごっちんは目を離すといっつもいっつも一番に梨華ちゃんに抱きついて・・・・。」
「あの・・・・」
「梨華ちゃん〜二人はほっといてあっち行こう〜」
おろおろしてどうしていいか分からなくなってる梨華ちゃんを加護が連れて
行こうとしたりして・・・
「「加護っ!!」」
「わっ!なんですか〜?」
いつも平行線を辿ってる口げんか。
- 152 名前:aki 投稿日:2001年09月27日(木)18時35分21秒
- 後藤はつい昨日までの日々のことを懐かしむように思い出した。
つい昨日までのことなのにそれさえも全て大分昔の事に思えてくる。
後藤は空高く夜を照らす綺麗な月を仰ぎ見た。
「眩しい・・・・・」
空気が澄む秋の月明りが目にしみ涙が溢れる。
そして涙は必死に押しとどめる気持ちさえも引き出し溢れさせる。
(会いたい・・・・会いたいよ・・・。)
頬につたう涙を拭わずそのまま後藤は想いをめぐらす。
(最後なんてやだよ・・・・やっぱりあなたのこと忘れられないよ・・・・!)
後藤は手を顔に押し当てた。
「梨華ちゃん・・・・・!」
彼女への思いは止め処なく涙として形を持って溢れてくる。
後藤は彼女の名前を呼んだ。
痛いほどの切ない胸の中から気持ちを込め、心から彼女の名前を呼んだ。
- 153 名前:aki 投稿日:2001年09月27日(木)18時38分06秒
- 今日の更新はここまでです。
後藤の回想シーンを今日で終わらした方がテンポがいいかと
思ったので結構今日も更新しました。
そういえば気付けば150も来てますね・・・書き始めた頃は
まさかこういうシーンが入るなんて思ってませんでした・・・・。
- 154 名前:名無しです@83 投稿日:2001年09月28日(金)00時50分45秒
- 天然ですか(w
これでますますわからなく…(w
現実に戻ってからどうなっていくのか楽しみです。
次の更新楽しみにしてますね〜
- 155 名前:aki 投稿日:2001年09月28日(金)16時45分10秒
- 154:名無しさん
>レスありがとうございますっ!
これからその辺も含めて明らかになっていくと思います。
本当の所を焦らしてしまってすいません(^^;
- 156 名前:aki 投稿日:2001年09月28日(金)16時46分25秒
- 「はぁっ!・・・はぁっ・・・・」
石川は旅館を飛び出し後藤を探すため当てもなく走っていた。
(一体ごっちんに何があったの・・・・・?)
無我夢中になりながら石川は走った。
旅館からすぐ近くの旅館の立ち並ぶ通り、そしてそれから続く商店街。
石川は必死になって後藤をいないか探したが気持ちとは裏腹に
後藤の姿は石川の目には映らなかった。
「どこに行っちゃったの・・・?」
息を切らせ石川は走る速度を落とす。そして徐々に足はゆっくりになり
そのまま力なく石川はとぼとぼと歩いた。
(どうして泣いてたの?・・・・それにどうしていきなり・・・・・)
石川は手で自分の唇に触れた。
後藤が触れた感触、今もしっかりと残ってる。
(今ごっちんはどこにいるの?教えて、誰か・・・っ!)
石川はそう強く願いを込め目を瞑った。
会いたい。
会いたいよ、今すぐ。
そしてあなたをこの腕で抱きしめたい。
だって、私はずっと・・・・
石川は目を瞑りながら胸の中で密かに想っていた自分の気持ちを
今、思い起こしていた。
- 157 名前:aki 投稿日:2001年09月28日(金)16時47分01秒
- 私が旅館に来たのは今から約半年ぐらい前。
私を入れた同期のメンバー四人が加入した。
自己紹介するために旅館のフロント前に旅館で働く全員が集まって
挨拶したのが始めて私が彼女を見たときだった。
私と同じか一つ下か、だけどどこか堂々としていて物腰が落ち着いていて。
整った顔、さらさらな髪、身長も高くてスタイルもいい。
自然と私は彼女の容姿、雰囲気に目を奪われていた。
自己紹介をしていって自分より一つ下だってことを知った。
自分より年下なのにしっかりしていて大人っぽくて、何事も器用にこなす
彼女とは自分の性格は全く正反対の物だった。
言われた事などをすぐにこなせるような器用さは自分にはなく、その分
人一倍頑張らないといけない。
最初の頃は全然話せなかった。
どこか人を寄せ付けないような雰囲気を持っていて。
今思えばそれはただの思い込みだったのかもしれないがあの時の自分は
彼女にどう接したらいいのか分からなかった。
だから私はただ彼女を見つめていることしかできなかった。
- 158 名前:aki 投稿日:2001年09月28日(金)16時47分44秒
- そして時に覗かせる15歳の彼女。
普段のふとした仕草、動作。
まだあどけない笑顔。
そしてそれは彼女が時折大切そうに指輪をいじる時も、指輪を彼女が
落とした時も感じた。
気付けば私にとって彼女はただのメンバーの一人じゃなかった。
それがどういう気持ちかなんてあの時は考えなかった。
むしろ彼女のことを目を追っていることも私は気付いていなかったかもしれない。
彼女の事を知りたくて、知っていって。
もっと彼女の知らない部分を知りたくなっていって。
そして気付けば惹かれていた。
自分でも気付かないほどのほのかな気持ち。
無意識に近いほどのあなたへの気持ち。
もしかしたら初めてあなたを見た時からこの気持ちは芽生えていたのかもしれない。
- 159 名前:aki 投稿日:2001年09月28日(金)16時48分21秒
- 「梨華ちゃんっ!」
部屋で洋服やらいろいろ整理をしていると突然思ってもいなかった彼女が
私の部屋に訪れた。
「ごっちん?どうしたの?」
私は部屋の中にいたため部屋に訪れた彼女の姿は見えず声しか聞こえなかったが
すぐに彼女だと分かった。
身を仰け反らせ部屋の戸の隙間から顔を出してみるとそこには
ドアを勢いよく開き、走ってきたのか荒く息を切らせ立つ彼女の
姿があった。
自分の問いかけには答えず後藤は無言のまま部屋の中に入ってくる。
髪は濡れ、タオルを首に巻いている姿からお風呂上りだという事が分かった。
「?」
なにやらいつもと様子の違う後藤に石川は疑問を抱く。
「梨華ちゃん・・・・。」
後藤が静かにおもむろに口を開いた。
いつもの後藤とは明らかに違う様子。
「どう、したの?」
目の前の後藤に自然と自分も緊張し言葉が上手く出てこなかった。
石川の部屋は一変してなにやら張り詰めた空気が流れる。
- 160 名前:aki 投稿日:2001年09月28日(金)16時49分12秒
- 「・・・・・・・・。」
自分の名前を呼び何か言おうとしているが後藤はなかなか口を開かなかった。
後藤の様子がおかしいのは分かるが自分の位置からでは後藤は俯いてしまって
いるため表情を知ることができなかった。
表情を窺い知るため石川が下から後藤の顔を覗こうとした時、
「本気、だったんだよ・・・後藤は、ずっと。」
目の前の彼女はそう言うと自分の手を包み込むように優しく握った。
優しく自分の手を握る後藤の手は暖かかった。
「え?」
しかし後藤が何を言っているのか分からず石川は聞き返す。
「ずっと、ずっとふざけてるように見えたかもしれないけど後藤は・・・・・」
その時石川は後藤から零れ落ちるものに気付いた。
俯きながら後藤は二つ、三つと涙を零していく。
その一つ一つが石川の目にはとても綺麗に映り透明な結晶のように見えた。
「ごっちん、泣いてるの?どうしたの?一体何があったの!?」
突然の後藤の涙に石川の頭の中は真っ白になり何も考えられなくなる。
訳がわからなくなるほど混乱し疑問に感じた事を後藤に全て尋ねる。
- 161 名前:aki 投稿日:2001年09月28日(金)16時50分23秒
- 「どうせ後藤の完璧な片思いだったのなら、・・・最後に・・・・・。」
しかし後藤はまた自分の言葉には答えずそう小さく呟くと前から
私を抱きしめた。
「ご、ごっちんっ!?」
突然のことに石川はとても驚き声は上ずってしまう。
だからその時は気付かなかった。次の言葉がどういう意味で何を示すのか。
「最後、だから・・・・・」
しかし後藤は疑問だらけの石川に答えず訳の分からないで混乱する石川を
優しく強く抱きしめた。
石川は後藤の行動、言葉、そして後藤の目から流れる涙、全てがどういう
ことなのか分からなかった。
全く状況を掴む事ができない。
しかし後藤がふざけたり冗談を言っているのではないという事だけは
感じ取っていた。
今も自分を抱きしめる後藤の腕は何か気持ちが込められている。自分に何かを
訴えている。
「一体、どうしたの・・・・?」
一度も答えてはくれていなかったが石川は後藤に聞かずにはいられなかった。
しかし石川は後藤の身に何か起こったと分かっていても突然の後藤の行動に
頬を紅くさせないではいられなかった。
後藤はやはり石川の言葉には答えずただ石川をきつく抱きしめる。
- 162 名前:aki 投稿日:2001年09月28日(金)16時51分04秒
- 「あっ・・・・」
石川が微かに上になる後藤を受け止めて床に手で置き支えていたのだが
体を支える腕がふいに崩れ地面に倒れてしまった。
後藤は抱きつく事を止めないでいたので石川はそのまま後藤に押し倒されるように
床に倒れる。
「・・・・・・・・。」
(ドキドキ)
しばらくの間後藤が抱きついたまま何も言わずそのままの体勢でいたので
石川は黙ってはいたが胸の中では高鳴り鼓動が早く響いていた。
お風呂から上がったばかりのため後藤のシャンプーのいい匂いがする髪が
石川の鼻をくすぐる。
体もまだ冷めてなく洋服の上から後藤の温もりが石川に伝わっていた。
(ドキドキするような場合じゃないのに・・・・分かってるんだけど・・・・・)
理性とは裏腹に石川の頬は紅く染まり胸の高鳴りはおさまらない。
- 163 名前:aki 投稿日:2001年09月28日(金)16時51分45秒
- (心臓の音、ごっちんに伝わってなければいいけど・・・・)
後藤が必死に涙を堪えている間石川はそんなことを心配していた。
微かに後藤が鼻をすする音を聞きまだ泣いている事を石川は知る。
明らかにこの後藤の様子は自分に向けられているものだと石川は感じていた。
しかし後藤に何が起きたのか、どうして泣いているのか気になったが聞いても
後藤は答えてはくれない。
そんな後藤を石川は抱き返したいという想いにかられる。
いつも元気一杯の後藤の背中が今日はとても小さく見えた。
胸の高鳴らせながら空いている両手を石川が後藤の背中に回そうとした時、
「・・・・・・・。」
後藤は静かにゆっくりと石川から体を起こした。
地面に手をつき、身を起こそうとしたので石川は空に浮いていた両手をすぐに戻した。
- 164 名前:aki 投稿日:2001年09月28日(金)16時55分08秒
- 今日の更新はここまでにします。
- 165 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月29日(土)02時11分36秒
- ついに明らかになった梨華ちゃんの気持ち。
いよいよクライマックスですね。
追いかけろ、梨華ちゃん!
- 166 名前:aki 投稿日:2001年09月29日(土)12時53分06秒
- 165:名無し読者さん
>レスありがとうございますv
これからもどんどん石川の気持ちが明らかになっていきかと思います。
がんばりまっす。
- 167 名前:aki 投稿日:2001年09月29日(土)18時41分00秒
- そしてそれと同時に、
「っ!」
後藤が自分の唇に一瞬軽く触れるキスをした。
突然の後藤のキスに石川は驚き自分の口に覆うように両手を添えた。
一瞬何が起きたのか分からず戸惑い何も言えなくなってしまった。
「本気で好きだった・・・・梨華ちゃんのこと、でも・・・・。」
「えっ・・・!?」
キスに戸惑っていた石川は後藤に顔を戻す。
そして後藤は戸惑う石川に構わず自分の想いを告白した。
あまりに一度にいろんなことが起きすぎて石川は混乱する。
そのためまたこの時の後藤の言葉の意味を考える事はできなかった。
「さよなら・・・・っ!」
そう言うと後藤は石川から離れ部屋を飛び出してしまった。
「ごっちん!?」
石川もすぐに身を起こし名前を呼んだが後藤は部屋を出て行ったしまった。
- 168 名前:aki 投稿日:2001年09月29日(土)18時41分43秒
- 突然の涙、突然の告白、そしてキス。
後藤の行動全てに石川は混乱し頭の中が真っ白になり整理がつかず
すぐに何か行動を起こせなかった。
今の石川には追いかけるという行動がすぐに頭の中に出てこないでいた。
そんな中で必死に石川はどういうことなのか考えた。
『最後、だから』
『本気で好きだった』
『さよなら・・・』
後藤の言葉を思い起こし石川はハッとする。
「最後・・・・それにさよならって・・・・」
そして気付いた時には自分は彼女を追いかけていた。
全く頭の中では整理がつかないでいたが考えるより先に体が動いていた。
(さよならって・・・・私は・・・私もずっとごっちんのこと・・・・)
そして私は旅館を飛び出し夜の町へと繰り出した。
- 169 名前:aki 投稿日:2001年09月29日(土)18時43分00秒
- 石川は歩きながら今さっきの事を思い起こしていた。
「うっ・・・・・・・」
自然と溢れ出す涙。
会いたいのに会えない。
あなたの姿を見たい、だけど見つける事ができない。
気持ちとは裏腹に自分の目の前にはあなたの姿は現れない。
そして石川の胸の中で生まれる不安という闇。
「・・・・・・。」
石川は黙ってゆっくりと今さっきのように自分の唇に触れた。
初めてのキス。
でもそれは想いの通じ合ったキスじゃない。
(やだよ・・・・・)
これを最後のキスなんかにしたくない。
- 170 名前:aki 投稿日:2001年09月29日(土)18時43分36秒
- 最初で最後のキスになんか絶対にしない。
石川は落ち込み元気がなくなっていたがそう胸に言葉を刻んだ。
石川はまたギュッと目を瞑った。
(私が必ず・・・・・)
私が必ずあなたを見つけてみせる。
そして言うんだ。
胸の中に秘めるあなたへの気持ち。
石川は考えた。
不安を必死にかき消して。
「あっ・・・・・!」
石川ははっと目を開いた。
電気が走るように石川の頭の中にある場所が閃いたのだ。
そして石川はまた駆け出した。
(あそこに・・・・・・)
確信に近いほどにその場所を信じ石川は走り出した。
必ずあの場所にあなたはいるはず。
だって、あそこは私とあなたの―――――――。
今、石川の頭に閃いた物、それはあの時夕日が目の前に広がった海岸で大きな
大木に座る後藤の後姿だった。
- 171 名前:aki 投稿日:2001年09月29日(土)18時44分07秒
- 海岸沿いの道路を走り目の前一杯に夜の海、そして海岸が広がる。
「あっ!」
海岸に目を向けると一瞬何かが光った。
石川は海岸へ向いその光が見えた場所へと急いだ。
- 172 名前:aki 投稿日:2001年09月29日(土)18時44分51秒
- 月の周りにたくさんの星が空には浮かんでいた。
ネックレスをつけたままの指輪を後藤は右手の薬指に付け両手を握り締め
星に願いを託す。
しかし願いは虚しく何も変化は訪れなかった。
「自分でさよなら言っといて今更何言ってるんだろう・・・・。」
瞑っていた目を開き後藤は力なくそう呟いた。
しかしどんな事が起きても明日はこの地球に生きる全てのものにやってくる。
そして明日も彼女と顔を合わせ仕事の忙しい日々に戻る。
(当分つらいだろうな・・・・・。)
嫌でも明日からのことを考えてしまう。
「梨華ちゃん・・・・・・。」
後藤は力なくそう切なく石川の名前を呼んだ。
返事は戻ってこないと分かっている。
いくら求めたってもう無駄だって事も、しかし彼女への想いはすぐ簡単に
切れるものではなく分かっていても呼ばずにはいられなかった。
しかし、その時――――――
- 173 名前:aki 投稿日:2001年09月29日(土)18時46分39秒
- 「ごっちんっ!!!」
突然自分を呼ぶ声に後藤はする方へ振り向いた。
(その声は、まさかっ・・・・!?)
聞き覚えのある声、そして今一番聞きたかった声。
後藤はすぐに振り向いた。
そしてそこにいたのは息を切らせふらふらとこちらに向かってくる
他でもない彼女の姿だった。
「はぁっ、はぁ・・・・やっと・・・見つけた・・。」
石川はゆっくりと後藤の元へ近づいていった。
「梨華、ちゃん・・・・・・」
後藤は樹から立ち上がり近づいてくる石川に向かい合うように立った。
「・・・・・・・・。」
石川は黙ったまま後藤に近づき、そして前から後藤を強く抱きしめた。
「梨華ちゃん・・!?」
「ごっちん探してる間ずっとこうしたいって思ってた・・・・。」
抱きしめる相手の存在を確かめるように石川は優しく強く抱きしめる。
心の中の不安は全て取り除かれ心から石川はほっと安堵する。
しばらくすると荒くなった息は自然と落ち着き、その後もずっと後藤を石川は
抱きしめていた。
- 174 名前:aki 投稿日:2001年09月29日(土)18時47分33秒
- 「・・・・・・・。」
本当は心のどこかで信じてた。
彼女が追いかけてきてくれてこうやって抱きしめてくれる事。
このぬくもりを感じられる事。
言葉とは裏腹に求めてた。
不安が心の中を占めどこかで期待する自分を闇が飲み込もうとする時も
微かに信じてた。
こうなることを本当は信じて疑わなかった。
「どうして・・・・どうして追いかけてきたの・・・?」
「どうしてって、それは・・」
石川が言おうとしたその時後藤の頭の中にある考えが過ぎった。
過ぎると同時に後藤は心の中は乱れた。
そして石川を両手で押し出すようにして体を離し冷たい口調で言い放った。
「ごっちん?」
「・・・優しいよね、梨華ちゃんってさ。友達のためにここまでするなんて。」
「っ!」
彼女は自分のことを友達としてしか見ていないはず。
それなのに追いかけてきてくれたのは友達として心配したから?
どうしてそんなに優しいの?
それは自分の心を傷つけるだけなのに。
- 175 名前:aki 投稿日:2001年09月29日(土)18時48分09秒
- 「どうしてそんなに優しくするの!?そんな気持ちあたしは欲しくないっ!」
追いかけてくれたのが嬉しかった。
だからその分悲しくてつらくて、心が痛くて。
悲しみは怒り、切なさに姿を変え後藤の心を乱す。
黙って後藤の言葉を聞いていた石川の体は微かに震えていた。
そして顔を上げると同時に石川も目の前の彼女に向かって気持ちをぶつけた。
「バカッ!!」
「・・・・・!」
その勢いに後藤は少しだけ驚く。
そして予想もしていなかった言葉が次に石川の口から発せられた。
「ごっちんの事が好きだからじゃないっ!!」
「え・・・!?」
「どれだけあたしが必死になって探したと思ってるの・・・!?ずっと、ずっと
心配してたんだから・・・・・」
「好きって・・・・」
「あたしの好きな人は・・・あたしが好きなのはごっちんなのっ!今までも今も!」
「梨華ちゃ・・・・!」
石川の方に手をかけようとした時後藤は石川の涙に気付いた。
- 176 名前:aki 投稿日:2001年09月29日(土)18時49分16秒
- 今日の更新はこの辺で終わりにします。
- 177 名前:aki 投稿日:2001年09月29日(土)19時54分59秒
- 「あたしだって誰にでも優しいわけじゃないよ・・・・今だって本当に
ごっちんのこと心配して・・・それなのにどうしてそんなこと言うの・・・?」
「だって、加護が梨華ちゃんはあたし達のこと・・・・・・・・」
そこまで言って後藤は言葉を止めた。
そして目の前で涙を流す石川を黙って優しく抱きしめた。
「ごめん・・・・・ごめんね・・・・。」
石川は後藤の胸の中で涙を流していたがすぐに後藤の背中に腕を回した。
「後藤はずっと梨華ちゃんのこと好きだったんだよ・・・。ふざけてるように
見えたかもしれないけどずっと・・・・」
「ごっちん・・・・」
「こんなに・・・・こんなに好きで好きでどうしようもないくらい本当に
梨華ちゃんのこと好きでずっと気持ち伝えてたのに・・・どうして今まで
気付いてくれなかったの・・・・?」
後藤は言いながら強く石川を抱きしめた。
気持ちを込めながら。強く、優しく。
- 178 名前:aki 投稿日:2001年09月29日(土)19時55分35秒
- 「だって・・・・ごっちんあたしのこと友達としてしか見てないと思ってて・・。」
「んなわけないじゃんー・・・・梨華ちゃんのバカァ・・・!」
そして二人は強く抱きしめあった。
やっと結ばれた想いを確かめるようにそして相手の存在を離さないように。
「梨華ちゃん・・・・・」
後藤は石川の背に回す腕を少し緩め体を離しそして唇をあわした。
「んっ・・・・・」
それは二人にとって始めてのキス。
気持ちが繋がったことを確認するように二人はいつまでも深く長く口付けを交わした。
海岸に寄せては返す波の音が海岸に響く。
夜空を照らす二人の上の月や星の光は暖かくただ静かにまるで二人を見守り
祝福しているようだった。
- 179 名前:aki 投稿日:2001年09月29日(土)19時56分18秒
- 今度こそここまでです。m(__)m
- 180 名前:名無しです 投稿日:2001年09月30日(日)00時45分50秒
- とうとう結ばれましたね(^^)
よかった(^^)
次の展開が楽しみです〜
頑張って下さいね〜
- 181 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月30日(日)02時58分44秒
- まとめて読ませてもらいました。
一言だけ
恥ずかしながら、すごくセツナクなりました!!
- 182 名前:読んでます 投稿日:2001年09月30日(日)06時09分39秒
- 甘く切ない、最高。
- 183 名前:aki 投稿日:2001年09月30日(日)11時15分20秒
- うわ〜レスたくさんありがとうございます〜(T〜T)<嬉
凄く嬉しいです!
180:名無しさん
>レスありがとうございます!
結ばれましたっ!めでたしめでたしです。
これからも頑張りますっ!
181:名無し読者さん
>レスありがとうございますっ!
眠気がなくなりますか!か〜なり嬉しいですよ(T_T)
書いてるこっちは恥ずかしくはあまりならないんですよね・・^^;
切なく書けたみたいで良かったですvv
182:名無し読者さん
>レスありがとうございます〜vv
最初は甘く書こうと思ってたんですけどだんだん切なくなって
いきました。
なのでとても嬉しいです。
それに「最高」の一言がとても励みになり嬉しいです。
ありがとうございます!
- 184 名前:aki 投稿日:2001年09月30日(日)19時22分47秒
- そして翌日―――――。
「梨華ちゃん〜はい、あ〜んして?」
「い、いいよ。恥ずかしいもん・・・。」
「もうっ恥ずかしがりやなんだからっ!」
断られてもにこにこと満面の笑顔を浮かべ後藤は指で石川の頬をつく。
「「「・・・・・・・・・。」」」
尋常ではない二人のこのラブラブさに二人以外の全員が口をぽかんと開け
唖然として二人を見る。
「ごっちん、みんな見てるよー・・・・。」
石川が痛いほどの視線を浴びている事に顔を紅くして戸惑いながら言う。
「照れてる梨華ちゃんもかわいい」
「ちょ、ちょっと・・・」
そんな石川の様子も気にせず後藤は隣の石川に抱きつき首に腕を回しからみ付く。
「あんたら・・・・朝っぱらから何やってんの・・・・?」
やっと中澤がいぶかしながら口を開いた。
「なんかこの辺一帯の気温、異常に上がってるべ・・・・・。」
安倍が手を仰ぎ風を作りながら言う。
- 185 名前:aki 投稿日:2001年09月30日(日)19時23分32秒
- 「ご、ごめんなさい・・・・・」
「もう、梨華ちゃんって日頃後藤に照れるような恥ずかしい事平気で言うくせに
こういうのダメなんだからぁ」
「ちょっと・・・・ちょっとちょっと〜!!!」
「・・・・・・・。」
吉澤が立ち上がり声を上げるが加護は隣で黙々と食事を取っていた。
「ついこの間まで何もなかったのに一体昨日何があったのさ!」
「こうなった原因は加護にあるべ。」
「加護!?一体何したの!!」
吉澤が加護に向き直る。
「べ、別に・・・・・・」
あの後加護は安倍と矢口に何の根拠もない暴走する推理の誤解を解いてもらっていた。
加護も本当は自分も悲しいしくやしいのだがくっつけたそもそもの原因が自分に
あるため何とも言えない。
「加護の勘違い暴走が発病して勝手に梨華ちゃんの好きな人は矢口だと
思い込んだんだべさ。それでその次にごっつあんが暴走して・・・・。」
安倍がやれやれと両手を上げ首をすくめ答える。
「なんじゃそりゃー!」
「うぅ・・・・・・」
何とも言えない加護は複雑な表情で小さく声を漏らす。
- 186 名前:aki 投稿日:2001年09月30日(日)19時24分08秒
- 「梨華ちゃんキスしよう〜」
「だ、ダメだってば〜。」
後藤は三人の会話、突き刺さる視線など気にせず石川に顔を近づける。
顔を紅く染め後藤の行動に困っているような石川もどこか本当には嫌がっては
いなかった。
「・・・・・・・・。」
吉澤は二人をちらっと見るとしばらくしてから黙ってどかっと席についた。
(こんなにラブラブじゃ何も言えないじゃない・・・・・。)
吉澤はさっさと朝食を取ると足音を荒げて誰が見ても不機嫌な様子で食堂を後にした。
「よっすぃー・・・・・・」
その吉澤の後姿を矢口は複雑な表情で見つめていた。
- 187 名前:aki 投稿日:2001年09月30日(日)19時27分03秒
- 今日はここまで。
- 188 名前:名無しです 投稿日:2001年10月01日(月)01時22分21秒
- やぐちガンバレッ!!
akiさんもガンバレッ!!
加護の方はそれほどショックを受けてないかんじですね
ちょっと安心した(w
これからも頑張って下さい。
- 189 名前:aki 投稿日:2001年10月01日(月)13時53分14秒
- 188:名無しさん
>あ、ありがとうございます〜(T_T)
矢口にも伝えておきますvv
これからも頑張ります!
- 190 名前:aki 投稿日:2001年10月01日(月)13時54分11秒
- 「はぁ・・・・・。」
旅館のちょうどお風呂のある場所の上に位置する広いベランダの手すりに
手をかけ吉澤はそう小さくため息をついた。
ここからは旅館の目の前の海が一望できる。
吉澤のため息の原因は他でもない石川と後藤のことだった。
(原因が加護であれなんであれ・・・・・)
たぶん二人は遅かれ早かれくっついたのだろう。
それは二人の醸し出す雰囲気、表情からすぐに分かる。
「あー・・・・・・」
そう納得しようとしてもやっぱりすぐに石川への気持ちは簡単に経つ事はできない。
(あたしだって結構マジだったのにな・・・・。)
吉澤は俯きながらそう心の中で呟いた。
顔にかかってくる邪魔な髪を面倒くさそうにすくい上げる。
自然と潤い出す瞳。
もう少しで涙が溢れそうになる。
悲しいけれど石川のあの表情を見ては吉澤にはどうすることもできなかった。
- 191 名前:aki 投稿日:2001年10月01日(月)13時54分44秒
- 「よっすぃーっ!!」
ふいに後ろから自分を呼ぶ声が耳に届いた。
吉澤はすぐに声のしたほうに振り向いた。
「矢口さん・・・・・。」
そこには金髪の髪を風に棚引かす矢口がいた。
「隣、いい?」
「もちろん。」
矢口の言葉に吉澤は戸惑うことなく間髪入れずすぐに答えた。
矢口は吉澤の言葉を聞くと吉澤の隣に行き、手すりに肘をかけた。
「・・・・・・。」
「・・・・・?」
その後矢口が何も話さないので吉澤はどうしたのか疑問に思ったが
そのまま自分も話さず黙ってまた今さっきのように前を向いた。
吉澤は矢口が来てくれたことに感謝した。
それはこれ以上一人で入るとどんどん落ち込んでいってしまいそうだから。
ぐだぐだ考えるのは自分の性分ではない。
だけど自分の気持ちはあまりにも正直で必死に押しとどめようとしても
涙は溢れそうになっていた。
- 192 名前:aki 投稿日:2001年10月01日(月)13時56分43秒
- 「あのさ・・・・・・」
「何ですか?」
矢口は少し気まずそうに口を開いた。
「梨華ちゃんのこと・・・・平気・・・?」
「・・・・・・・。」
矢口の言葉に吉澤はしばらく何とも言い返すことができず口を閉ざしてしまい
黙ってしまった。
(あたしのバカ・・・。なんでこんな聞き方しかできないんだよ・・・・。)
矢口は今の自分の質問に後悔した。
なんでこんなにストレートに聞いてしまったのか。
もう少し気を利かした言い方ならあったはず。
しかしいくら考えても気持ちが先走ってしまい今の矢口には上手い言葉など
出てこなかった。
「正直ちょっとつらいです・・・・・。」
吉澤は矢口の言葉にしばらくしてから言葉を返した。
いつもの自分ならたとえ違くても否定するのだが今日のことだけは
自分の気持ちに無理をすることはできなかった。
- 193 名前:aki 投稿日:2001年10月01日(月)13時57分22秒
- 「そっか・・・・・。」
いつもなら疲れていても相手を気遣い元気に振舞う吉澤がこんなに落ち込む
姿は矢口は今日初めて見た。
そしてそのぐらい吉澤が石川の事を好きだったということも知る。
「結構本気だったから・・・・・」
吉澤は遠くを見つめながらそう呟いた。
「・・・・・・・。」
矢口はその横顔を黙って見つめた。
「でも、ごっちんとあんなに仲良さそうにしてると何も言えなくて・・・・。」
言いながらだんだん切なさや悲しさがまた胸の中を占めてくる。
「好きな人が幸せならいいなんて大人みたいなこと言えないし・・・・」
吉澤は力なくそう言うと今にも溢れ出しそうになる涙を指で軽く拭った。
「私も好きな人とあんな風になりたい・・・・」
初めて吉澤は自分以外の誰かに涙を見せ弱音を吐いた。
矢口は吉澤の言葉、涙に胸が締め付けられるような感覚を覚えた。
胸がつまるような感覚にも似ている。
- 194 名前:aki 投稿日:2001年10月01日(月)18時54分30秒
- 「・・・・あ、あたしがいるじゃん。」
そして気付いた時はそんな言葉が口から飛び出していた。
「え・・・・・?」
ずっと前を向いていたが突然のふとした言葉に吉澤は矢口に向き直った。
「あたしはずっと・・・よっすぃーのこと見てた。」
矢口も吉澤に向かい立つがどうしても顔が見れなくて視線を外して言葉を続ける。
「矢口さん・・・・・」
「よっすぃーが梨華ちゃんのこと好きな時もずっと、ずっとあたしは・・・・」
上手く言葉が出てこなかったが矢口は必死に吉澤への想いを言葉にして続けた。
「こんな時に言うの、ずるいかもしれないけど・・・・あたしは・・・
ずっとよっすぃーのことが好きだったっ!」
「矢口さん・・・・。」
吉澤は突然の矢口の告白に驚いた表情をする。
「梨華ちゃんのこと、当分忘れられないかもしれないけど・・・・・でも
あたしはずっとよっすぃーのこと待って・・」
矢口がそこまで言いかけた時言葉が止まった。
ふいに矢口の唇を何かが触れ言葉を発する口を塞いだ。
- 195 名前:aki 投稿日:2001年10月01日(月)18時55分18秒
- 「あっ・・・・・」
気付くとすぐ目の前に吉澤の顔があった。
今の柔らかい感触、それは吉澤の唇だと矢口は気付く。
そしてやっと気が付いた時には矢口は吉澤に前から抱きしめられた。
「よ、よっすぃー!?」
「ありがとうございます・・・・・凄い、嬉しいです・・・」
吉澤は目を瞑りただ矢口を抱きしめた。
矢口への気持ちを伝えるように。
言葉の代わりに吉澤は矢口を抱きしめた。
「よっすぃー・・・」
矢口は吉澤の背にそっと腕を回した。
ずっと欲しかったあなたのぬくもり。
やっと感じることができた。
見つめる事しかできなかったあなたへの想い、やっと伝わった――――。
二人は抱きしめあった。
そして体を離し見つめあい口付けを交わした。
唇を離した後も二人は抱きしめあった。いつまでも。
- 196 名前:aki 投稿日:2001年10月02日(火)12時53分16秒
- そして日が沈み――――
「梨華ちゃん〜」
未だ石川の腕に絡み付いてべたべたしている後藤。
「もうごっちんは甘えん坊なんだから・・・・・。」
少し困ったような表情をして石川はため息と共にそう言った。
「もしかして梨華ちゃん嫌?迷惑?」
返ってくる答えはほとんど予想をしているのだが後藤はわざと可愛く聞く。
後藤がそんなこと思ってるとは気付かず、石川は上目遣いに少し潤った瞳、完璧すぎる後藤に少しだけくらっとする。
「嫌なわけないじゃない・・・・。」
頬を少し紅く染め視線を外し答える。
「それじゃ後藤のこと好き?」
にこにこしながら相変わらず腕にからみ付き後藤は同じようにして聞く。
「もう、聞かなくても分かってるでしょ?」
「言って」
「・・・・・・。」
しばらくしてから石川はありのまま後藤に答えた。
- 197 名前:aki 投稿日:2001年10月02日(火)12時54分18秒
- 「好きだよ、誰よりも一番。」
「好き」という言葉だけ返ってくるとばかり思っていた後藤は石川のストレートな
言葉にぼっと頬を紅くする。
「後藤も梨華ちゃんのこと好き・・・・。好きで好きでどうしょうもないくらい・・・
大好きだよ・・・。」
そう言うと後藤は石川に抱きついた。
石川も優しく後藤の背に腕を回した。
「後藤ね・・・・」
「うん?」
小さい声で後藤は石川の肩に顔を埋めながら話し出した。
- 198 名前:aki 投稿日:2001年10月02日(火)12時54分51秒
- 「まだあまり信じられないの・・・。梨華ちゃんと両思いになれたこと・・・。」
「ごっちん・・・・。」
「ずっと梨華ちゃんとこうしたかった、こうなりたかった・・・・。だからすごい
嬉しくて・・・・嬉しすぎて夢なんじゃないかって思っちゃう。」
後藤は今までとはうって変わり少し落ち込んだような声でそう言葉を続ける。
「嬉しいすぎて不安なの・・・・。いつか夢から覚めちゃうんじゃないかって
思っちゃって・・・。」
石川は後藤がそこまで言うと抱きしめる腕の力を少しだけ強くした。
「大丈夫・・・大丈夫だよ・・・。」
「梨華ちゃん・・・・」
「夢なんかじゃないから・・・。あたしはいつでもごっちんの側にいるから・・・。」
「うん・・・。」
「不安になったら言って。すぐに不安なんて消えるぐらいごっちんのこと
抱きしめるから・・・。」
石川がそう言い終わった後、二人は顔を近づけそっと唇をあわした。
優しいキス。
二人にとっての二度目のキスはとても優しく暖かいものだった。
石川がゆっくりと唇を離す。
- 199 名前:aki 投稿日:2001年10月02日(火)12時57分08秒
- 「もっとしようよ」
「もう・・・・・。」
後藤は今さっきの元気な後藤に戻っていた。
今さっきと同じようにまた可愛くおねだりするのに石川はやれやれと
いう感じで笑う。
「あっ!そうだ。言おうと思ってたんだけどさ。」
「何?」
「二人の時は『ごっちん』じゃなくて下の名前で呼んで?」
「どうして?」
「それといい雰囲気の時は。」
「なんで?」
「だって・・・・もうこんなこと聞かないでよーー」
「?」
後藤がなぜか頬を紅くし両手で隠しているのでよく分からなかったが」石川はとりあえず
納得した。
「それじゃさっそく呼・・・ってあれ?」
後藤は呼んでもらうように言おうとした時ある人物の姿を見つけた。
「よっすぃーにやぐっつあん?」
それは手をつないで歩く吉澤と矢口の姿だった。
- 200 名前:aki 投稿日:2001年10月02日(火)12時58分42秒
- 二人は楽しそうに笑い話しながら歩いていた。
「どうしたの?ごっちん。」
「もう二人のときは下の名前で呼んでよ・・・ってそれはとりあえず置いといて
よっすぃーがやぐっつあんと・・・・」
「どこどこ?あっ本当だ。」
石川も後藤と同じ方向を見て少し向こうにいる二人を見つける。
「二人がどうしたの?」
「・・・・・・・・。」
吉澤と矢口の周りには何かこう上手く言えないが暖かい雰囲気が流れてる。
そうちょうど飯田と辻のような・・・・。
「あぁ!もしかしてやぐっつあんの好きな人ってよっすぃーだったの!?」
「あれ?でも前矢口さんの好きな人は他に好きな人いるって言ってたけど。」
「・・・・・・・・・。」
隣で?を頭の上に浮かべ言う石川の顔を思わず後藤は呆然と見てしまう。
「?」
後藤に気付き石川はますます首を傾げる。
「・・・・ともかく、上手くいったのかな?」
後藤は二人の方向に向き直り言った。
「矢口さん嬉しそう。」
二人の目に映る矢口と吉澤はとても微笑ましく暖かいものだった。
「それじゃあたし達も行こっか」
「うん。」
後藤は石川の手を取り二人もその場を後にした。
- 201 名前:aki 投稿日:2001年10月02日(火)15時57分19秒
- その頃、フロント中ののれんの向こうの従業員専用の部屋では・・・
「ひ、ひえーーーーーーーーー!!!」
いつもの関西弁のあの人の声が今日はけたたましい悲鳴として
旅館に木霊していた。
- 202 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月03日(水)07時35分10秒
- 梨華ちゃんに甘えるごっちんが新鮮でいいですね。
現実でもたまにはこういう2人が見てみたいです。
- 203 名前:aki 投稿日:2001年10月03日(水)12時01分47秒
- 202:名無し読者さん
>レス有難うございますっ!
ちょっと違和感があるかとも思ったんですけど
良かったです。
現実でも>ですね。私も現実で見てみたいです。
レスが近頃少し寂しくへこんでいたので励みになります。
- 204 名前:aki 投稿日:2001年10月03日(水)18時20分57秒
- そして翌日の朝早く。
「ん?」
矢口はいつもの従業員の服に着替えフロント前をなんとなく歩いていると
目の前にいつもの彼女の姿を見つける。
「おーいっ!裕ちゃん〜!」
矢口はその人の名前を呼び手を振った。
すると向こうもこちらに気付き手を振っている。
・・・・しかし明らかにいつもの中澤裕子ではなかった。
こちらに近づいてくるが足取りはかなりふらふらしており顔も紅い。
「矢口〜〜♪」
しかもかなりのご機嫌で、
「ん!?酒くさい・・・もしかして昨日飲んだの?」
「あは〜ばれちゃった?」
そう言うと中澤は矢口に絡み付いてくる。
「ちょっとっ!『ばれちゃった?』じゃないよっ!仕事どうすんのよ!」
「あ〜、仕事・・・そうだそうだ。どうしよう〜〜♪」
矢口の言葉に真面目には耳を傾けず中澤はかなりのハイテンションで浮かれている。
「お、重いーっ。」
そのまま中澤はもたれかかるように矢口の体を預ける。
中澤がこんなにハイテンションになるのを矢口は今日始めて見た。
- 205 名前:aki 投稿日:2001年10月03日(水)18時22分57秒
- 「あーっよく寝た。」
その頃吉澤は両手を上に伸ばしながら階段を下りている途中。
「今日も仕事がんばるぞぉ!」
こちらも昨日の落ち込みはどこか吹き飛んでしまったかのような元気よう。
首を左右に倒しフロント前に差し掛かったとき・・
「あーーーーっ!!」
目の前の光景を目にし吉澤は悲鳴を上げる。
「!よっすいーっ!」
「んあ?よっすぃー??」
矢口は吉澤の姿にあたふたと慌てる。
中澤は一人ではもはや立ってはいられないのか矢口に抱きついたまま。
「・・・・・・・・。」
吉澤は開いた口が開かないでいた。
- 206 名前:aki 投稿日:2001年10月03日(水)18時24分08秒
- 「ち、違うのっ!!これは・・・・」
「矢口さん、中澤さんとそういう関係だったんですか・・・?」
「ご、誤解だってば!」
「昨日のは嘘だったんですかー!?・・・・吉澤、悲しい・・・・。」
どーんと吉澤の辺りを暗雲が立ち込める。
「違うんだってばーーっ!!」
もはや吉澤の耳には矢口の声は届いていなかった。
「ちょっとっ!裕ちゃんもなんとか言ってよ!」
「よっすぃー・・・?」
中澤は矢口から離れるとふらふらと吉澤の元に行った。
- 207 名前:aki 投稿日:2001年10月03日(水)18時24分44秒
- 「よっすぃー・・・・。」
「・・・中澤さ・・・んっ!」
中澤は吉澤の元に静かに近づくといきなり吉澤の両肩を前から掴むと
そのまま吉澤のほっぺにキスをした。
「あーーーーっ!!!!」
今度は矢口がそれに反応する。
「ふふ・・・・お幸せに二人とも・・・・あたしも幸せ絶好調・・・・。」
そう言うと中澤はその場を離れふらふらと歩いていった。
「な、中澤さん・・・・・?」
ほっぺを押さえ吉澤は様子のおかしい中澤に少し不安がる。
「・・・・なんかおかしい・・・・。」
矢口も怒ることを忘れ中澤の後姿を奇妙な物でも見るように見ていた。
- 208 名前:aki 投稿日:2001年10月03日(水)18時26分32秒
- そして階段付近。
「ふあー・・・・まだ眠いよ・・・。」
「昨日ちゃんと寝たの?」
「寝たけどまだ眠い・・・・。」
階段を下りながら石川と後藤はそんなことを話していた。
「平気?」
「ううん、もう限界・・・・」
そう言うと後藤はいつものように石川に抱きついてきた。
「寝ちゃ駄目だよー。」
「それじゃおはようのキスして?」
「もういつもごっちんは・・・・・ってちょ、ちょっと・・・?」
「もうは後藤のセリフだよ。梨華ちゃんこそちゃんと二人の時は下の名前で
呼んでよ・・・・」
そう言いながら後藤は石川を階段の壁に押し当て覆うように抱きつく。
「人が来たらどうす・・・・」
石川の言葉を無視し後藤は顔を近づけそこまで言いかけた時後藤が石川の
唇を塞いだ。
「んっ・・・。」
甘いキスに石川は目を瞑り微かに声を漏らす。
- 209 名前:aki 投稿日:2001年10月03日(水)18時27分31秒
- 最初のキスは唇だけが絡み合う深いキス、二回目は触れるだけの優しいキス。
後藤は密かに石川との三回目のキスはどういうものにするか心に決めていた。
それを実行しようとした時・・・
「・・・・むぅっ・・!」
口付けを交わしながら微かに目を開いた時石川はある人の姿を見つけた。
石川は後藤が心の中でそんなことを思っているとは知らず両手を前に
出し離れようとする。
「んっ・・!?ちょっと梨華ちゃんっ!せっかく今から後藤が深くてあま〜い
キスを梨華ちゃんとしようと思ってたところを・・・・・・」
自然と唇も離れ頭に描いていた計画が崩れた事に後藤はぷんすかと怒り
石川に愚痴をこぼす。
「な、何言ってるのごっちん。」
後藤の言葉に石川は頬をぼっと紅く染める。
「だから下の名前で呼んでってばー。」
「ちょ、ちょっと・・・・」
悔しがりながら後藤は腹いせに石川にきつく抱きつく。
「な、中澤さんがそこに・・・・」
「せっかくいい感じだったのに・・・。」
後藤は全く石川の言葉に聞く耳を持たないでいた。
その時、
「あれ〜?ごっつあんに石川やないか〜?」
階段にその人の伸びた声が響いた。
- 210 名前:aki 投稿日:2001年10月03日(水)18時36分57秒
- 今日の更新はここまでです。
何気に石川と後藤のこういうシーンを書くのは好きだったりしますv
プラス小説の投票のお礼を・・・。
この小説、そして前作も含めを投票して下った方、ありがとうございますっ。
読んでもらっているんだなと改めて感じます。
それが嬉しかったのでここに書いちゃいました・・・・。
- 211 名前:aki 投稿日:2001年10月04日(木)23時59分25秒
- 「その声は・・・」
後藤がやっとその声に反応した。
しかし石川に抱きついたまま首だけ動かし後ろを振り向く。
「ご、ごっちんっ!怒られちゃうよっ。」
石川が慌てて言うが全く後藤は気にしていない。
「ん〜?ん〜?相変わらずラブラブやなー。」
中澤がふらふらしながら逆に階段を登ってくる。
「あはっいいでしょ。」
しかもとっさな中澤の言葉にうかれてしまい敬語を使うのも後藤は忘れる。
「ちょ、ちょっとちょっと!」
「どうしたん石川。」
それを石川は注意しようとするが逆にいつもしかる中澤は気付いていない。
そして中澤の顔が紅い事に気付く。
「なんかお酒くさいよ。」
後藤も中澤の異変に気付く。
- 212 名前:aki 投稿日:2001年10月05日(金)00時00分50秒
- 「中澤さん、まさかお酒入ってるんですか!?」
「そのまさかよ。」
「ど、どうして・・・・」
いつもなら逆に自分達を注意するリーダーの存在の中澤が今日は全くいつもの
彼女とは違うことに石川は混乱する。
しかし中澤は顎に手を添えまじまじと石川の顔を眺めていた。
「ん〜?・・・・それにしても石川可愛いな・・。」
「へ?」
そう言うと中澤は今さっきと同じように石川のほっぺにキスをした。
「あーーーっ!!ちょっとちょっとぉーー!!!」
後藤がそれに騒ぎ出し石川を中澤から離れさす。
「な、な・・・・。」
突然のことに石川は顔を紅くし戸惑う。
「あんまり可愛いと舌入れるで?」
「こらーーーーっ!!!後藤がしようとしてたこと取らないでー!」
「な、なんか中澤さん変ですよ?」
「変って失礼やな。あ、それじゃそろそろ行くから〜・・・。」
「もうさっさと行ってよ・・・・。」
後藤はぶつぶつ文句をこぼしながら中澤の唇が触れた石川のほっぺを
拭う。
- 213 名前:aki 投稿日:2001年10月05日(金)00時01分36秒
- 「これからって、いつもの仕事確認は誰がするんですか!?」
「それじゃね〜。温泉入ってくるからー。」
石川の言葉ももはや中澤の耳に届く事はなくさっさと階段を登り
その場から姿を消してしまった。
「今の、中澤さん・・・だよね・・・・?」
石川は呆然としてしまう。
「まったく突然後藤の梨華ちゃんにいきなり何するのよ・・・そうだ、消毒
しよ。」
後藤はというと石川の首に両手を回すと今中澤の触れた場所を何度もキスする。
「ん、ごっちんくすぐったいよぉ・・・・・」
時刻はもういつもなら遅刻する時間を軽く過ぎていた。
- 214 名前:ファンです 投稿日:2001年10月05日(金)01時08分41秒
- 前作からずーっと読ませてもらってます。
後藤萌えの私としては今回のごっちんのキャラ可愛くって大好きです〜!!
石川に甘えつつ強引なごまと迷惑そうにしつつ嬉しそうな石川がぁ…
毎日更新楽しみにしてます。
裕ちゃんに一体何が〜?
これからも頑張ってください!
- 215 名前:aki 投稿日:2001年10月05日(金)12時10分36秒
- 214さん
>うわ〜ん!?なんとも嬉しいレスありがとうございますっ!!
この頃レスも寂しかったのでただの自己満足の小説になってるのかなと
へこみ昨日も更新するかしないか迷ったんで、すごく励みになりますっ。
後藤のキャラOKですか、良かった。
私も今回の後藤は好きですね。
中澤の身に起きたのは一体何か・・・・あと少しで明らかになると思います。
何なのか引っぱっときながら内容は大した事なのかそうじゃないのか^^;
これからも頑張りますっ!
- 216 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月05日(金)17時09分21秒
中澤の身に何がおこったのかマジで気になる!!
がんばってください!!
面白い!!
- 217 名前:aki 投稿日:2001年10月05日(金)19時35分02秒
- 216:名無し読者さん
>レスありがとうございますっ!
中澤の身に起きた事、期待はずれにならなければ
いいです^^;
嬉しいですっ、これからも頑張ります!
- 218 名前:aki 投稿日:2001年10月05日(金)19時39分04秒
- それから一週間の月日が経つ。
仕事も終わり午後9時。
中澤以外の旅館で働く全員が宴会場の広い畳の部屋に集まっていた。
「なんかさ、この頃裕ちゃん変じゃない?」
輪を描くように座り、飯田が一番に口を開いた。
「変も何も後藤の梨華ちゃんのほっぺにキスした。」
未だ後藤は少し怒りながら報告する。
「よっすぃーにもしたよ。」
矢口が後藤の言葉に続き吉澤も頷く。
「辻がゴミ箱倒しちゃった時中澤さんいつも怒るのに笑顔だった・・・。」
「うちも料理つまみ食いしたのに怒られなかった。」
辻に続き加護も言う。
「「「・・・・・・・・・。」」」
普段の中澤では考えられない事実の報告に全員はしばし黙ってしまう。
- 219 名前:aki 投稿日:2001年10月05日(金)19時39分37秒
- 「なんかあったんでしょうか・・・・?」
石川が静かになった部屋で口を開く。
「確か今からちょうど一週間前辺りからああいう風になったべ。」
「一週間前って何かあったっけ?」
安倍の言葉に保田が首を傾げ考える。
「「「う〜ん・・・・。」」」
全員は唸って考えてみるが思い当たる事は出てこない。
その時、
バンッ
宴会場のふすまを荒々しく開ける音がした。
「何やみんなここに居たのかっ!!」
中澤は入ってくるなりそう言いながら近づいてきた。
「「「!?」」」
中澤以外の全員が突然の中澤の登場に驚きあたふたする。
今は仕事中ではないが話題の対象が他の誰でもない中澤のことだったから。
- 220 名前:aki 投稿日:2001年10月05日(金)19時43分17秒
- 「何してたん?」
「え、あ、し、仕事の打ち合わせを・・・・・」
「そうそう。」
矢口が咄嗟にそう中澤に答え、安倍も必死に頷く。
すると突然中澤が矢口と安倍の間に入って来ると肩を抱く。
「「!?」」
当然矢口と安倍は何事かと驚く。
(お、怒られる!?)
(ば、ばれたべ?)
同時に二人はそんなことを考えていた。
矢口と安倍を覗くみんなもそちらに注目する。
「ふふふ・・・・・・・・。」
しかし中澤は俯きながらなにやら怪しい笑みを浮かべる。
((こ、殺される!?))
矢口と安倍が同じ事を同時に考えそこから逃げようとした時、
スパーンッ!
宴会場にパーティの時にやるクラッカーの音だけの物の乾いた音が響いた。
- 221 名前:aki 投稿日:2001年10月05日(金)19時45分31秒
- 今日の更新はここまで。
すいません、変なところで止めちゃって・・・。
- 222 名前:aki 投稿日:2001年10月05日(金)22時09分37秒
- あと、感想なんでもいいので下さい^^;
age、sageは全く気にしないいいので・・・。
- 223 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月06日(土)02時04分02秒
- 梨華ちゃんにメロメロなごっちんカワイイ!
でもたまには攻める梨華ちゃんもみてみたいかも…。
クラッカー?何のお祝いだろう…。
- 224 名前:同じくファンです 投稿日:2001年10月06日(土)15時21分58秒
- クラッカーはお祝いか!?いいところで止めますね
早く続きが読みたいです。いつも楽しみに待ってます。作者さん、ネタを小出し小出しに用意して有るところが、にくい(w
ところで、ここのねえさんはエロ親父ではなくリーダーキャラなのでしょうか?旅館女将としてのねえさんと、誰かのカップリングも見てみたい気もしますが・・・
- 225 名前:aki 投稿日:2001年10月06日(土)17時50分18秒
- 223:名無し読者さん
>レスありがとうございますっ!
このレスを見てちょっと思案してみたのですが
結構いい感じなのが浮かんだので実行してみます。
お楽しみあれ^^
224さん
>レスありがとうございます〜(T_T)
私の書く小説なんかにファン!と言ってくれる方がいるなんて
感動物です。本当になんか小出し小出しになってきましたね、近頃^^;
ここの中澤はたぶんリーダー・・・かな?
中澤が誰かとくっつく事になると安倍か加護か保田になりますが・・・
結構難しくなりそうですね。この中に良さそうな人いますか?
- 226 名前:aki 投稿日:2001年10月06日(土)17時54分01秒
- 「「うわ〜!!」」
矢口と安倍は咄嗟に腰を抜かすようにそこに倒れる。
二人以外のみんなは呆然と何事かと理解できないといった表情で
それを眺めていた。
「聞いて驚きっ!みなの衆っ!」
中澤はクラッカーを手に持ったままそんなみんなの胸中など気にせず突然
立ち上がると言った。
「な〜〜〜んとわたくし中澤裕子は・・・・・・」
そこまで言いかけて言葉を止める。
そして中澤以外の全員がぐぐぐっと中澤に近寄る。
みんなの反応に満足すると中澤は再び息を大きく吸うと叫ぶように高々に言った。
「宝くじに当たってしまいました〜〜〜!!!!!」
中澤の声は広い宴会場に綺麗に響き木霊した。
- 227 名前:aki 投稿日:2001年10月06日(土)17時55分12秒
- 「・・・・・へ?」
思ってもいなかった突然の中澤の言葉に矢口は思わず間抜けな声を出してしまう。
「しかも〜〜!!!いくらだと思う!?500万っ!!」
「「「えぇ〜〜〜〜!?」」」
これには全員が声を揃え驚いた。
「「ご、ごびゃくまん!?」」
加護と辻が目を丸くして言う。
「そしてっ!!!今日は当選発表日から一週間後の支払い日!」
「もらって来たんですか!?」
「ふふ・・・既に金庫のなかよ・・・。」
石川の言葉に中澤は不敵に笑いながら答える。
「本当なの!?それ。」
「今日は4月1日じゃないべ?」
「だから変だったのか・・・・。」
保田、安倍、後藤も続けて話す。
「本当よ、信じなさい。」
中澤は平然と鼻を高くして答える。
「うっそーまじで!?」
「すっげー・・・。」
矢口や吉澤の言葉を合図に嬉しさにみんなざわつき始める。
「でも一体何に使うの?500万。」
そして飯田の言葉に中澤はまた大きく息を吸い込み叫んだ。
「ずばり社員旅行よっ!!」
中澤の気迫に全員はしばらくぼーっとその姿を見つめてしまった。
- 228 名前:aki 投稿日:2001年10月06日(土)17時56分26秒
- 中澤の考えた社員旅行とはなんと海外旅行だった。
それも行く先は青い空、澄み切った海、白い雲の美しい海外旅行
といえば定番のグアム。
なぜグアムになったかというとそれはただの思い付きではなくしっかりと
した理由があった。
理由1、近頃休みが少なく去年のボーナスが少なかったから。
2、なぜ海外なのかは初めての社員旅行だから。
そして3は中澤の中学生の時の同級生が今現在グアムの某有名なホテルで
働いているため通常より少しだけ安くしてもらえるから。
中澤はお金を受け取ったその日すぐに旅行会社に手続きを取っていた。
グアム一週間の旅。
それは今から約二週間後の予定となった。
- 229 名前:aki 投稿日:2001年10月06日(土)17時58分53秒
- 「きゃっほ〜い♪」
後藤は露天風呂の掃除のためモップ片手にそんな悲鳴をあげながら
駆け回っていた。
「ふふふ・・・・。」
ちょうどつい最近までの中澤のような笑みを一人浮かべる後藤。
その頭の中はただ一つの事が占めていた。
青い海、白い雲、まぶしい太陽。
後藤は目を瞑りその光景を今そこにあるように思う浮かべる。
そこはもはや日本という狭い列島を抜け出した異国の地。
言葉だって日本語じゃなくて英語だい。
な〜んてことを思い浮かべなんとも幸せそうな笑みを浮かべる。
「そう、しかも裕ちゃんの話しによるとホテルはグアムの中でも一番有名な
名高いホテルらしい・・・・。」
日頃の仕事の疲れを拭い去れる時。
そして日頃の仕事の日々から完全に解き放たれる時。
それは例えると狭い鳥かごから解き放たれ大空へ羽ばたいた鳥のようであって・・・・。
つまり何が言いたいのかというと身も心も開放的になるということである。
- 230 名前:aki 投稿日:2001年10月06日(土)17時59分39秒
- 「当然後藤は梨華ちゃんと同じ部屋で一夜を過ごす・・・・あはっ!
もう恥ずかしい事言わせないでよーっ!」
「あたっ!!」
露天風呂掃除をしていたのは後藤だけではなかった。
吉澤もモップ片手にごしごしと掃除に励んでいた。
昨日の中澤の言葉から後藤の様子がずっとこうなので吉澤はもはや
放って置いたのだがいきなり後藤がとてつもなく強い突込みを入れてて
きたため少し前によろけた。
「もうごっちん昨日からずっとその調子じゃないっ!」
後藤は鼻歌を歌いながらもいつもでは考えられないほど掃除に励んでいるため
吉澤は何とも言えなかったがついにしびれを切らした。
「ふふふ、初めての海外旅行が梨華ちゃんとで良かった」
「ごっちん・・・・話、聞いてる?」
「ん〜聞いてる聞いてる。そうそう、よっすぃーだって・・・・・ねぇ?」
意味深な言い方で後藤は吉澤に笑いかける。
「?なにさ。」
突然の後藤の言葉の意味がわからず?を浮かべ首を傾げて吉澤は聞き返した。
- 231 名前:aki 投稿日:2001年10月06日(土)18時00分33秒
- 「もうとぼけちゃって!よっすぃーだってやぐっつあんといい感じなんでしょ?」
「!な、なんでごっちんが知ってるのさっ!」
「あはっ!後藤はな〜んでもお見通しよ。」
誰かに知られているとは思っていなかった吉澤は後藤の言葉に驚く。
「で、もうキスしたの?」
「か、関係ないでしょ。ごっちんには。」
吉澤はぷいと顔を後藤から背けると掃除に再び取り掛かる。
「関係なくないでしょ。よっすぃーは後藤の大切な友達だもん。」
「・・・・・・・。」
後藤の言葉に吉澤は照れてしまい何も言えなくなってしまう。
「それに、梨華ちゃんのこと・・・・結果的に取っちゃったし・・・。だから
よしこにも幸せになってもらいたいもん。」
「ごっちん・・・・。」
「それとも、本当は怒ってる?」
後藤が恐る恐る吉澤に石川の事を聞いた。
- 232 名前:aki 投稿日:2001年10月06日(土)18時01分26秒
- 「ん〜ん、怒ってない。梨華ちゃんごっちんと居て楽しそうだし。
悲しかったけどあたしにもあたしのこと想ってくれてる大切な人見つけたし。」
「よっすぃー・・・・。」
そこで二人の会話が少しだけ止まった。
吉澤は少しだけ自分の言ったことに照れ、後藤は何気に感動していた。
「それじゃよっすぃーもやぐっつあんと同じ部屋に泊まるんだ?」
「矢口さんがどう思ってるか分かんないけど・・・・・・。」
「OKに決まってるじゃ〜ん。」
「そ、そうかな。」
後藤の言葉に吉澤は素直に嬉しがる。
「一歩前進するチャンスじゃん?同じホテルの一室で夜を共にする・・・。
ふふふ、あたしは梨華ちゃんと・・・・・」
そこまで言い後藤は吉澤を置いて完全にいけない妄想に走っていってしまった。
「一歩前進・・・・夜を共に・・・・。」
吉澤は後藤の言いたいことがやっとそこで分かりぼっと頬を紅くさせた。
「や、矢口さんと・・・?で、でもそんなこと・・・・いや、でも・・・・」
微かに期待しては否定してみたり肯定してみたり。
吉澤はすっかり後藤の言葉にとらわれ後藤と同じようにさまざまな
想像を巡らせた。
- 233 名前:aki 投稿日:2001年10月06日(土)18時03分03秒
- 今日の更新はここまでです。
区切るいい場所がなかったので結構更新しました。
いよいよ明らかになっちゃいました。
この展開どうでしょう・・・。ちょっと心配・・。
- 234 名前:214 投稿日:2001年10月06日(土)23時32分58秒
- わーい、更新だ!
さすが裕ちゃんですね〜、500万で社員旅行なんて。
グアム編、めちゃくちゃ楽しみにしてますよ。
ごまと梨華っちのいちゃいちゃも密かに楽しみにしつつ…(笑
よっすぃーも頑張れー!!!
これからも頑張ってください!!
- 235 名前:aki 投稿日:2001年10月07日(日)00時26分54秒
- 234:214さん
>レスありがとうございますっ!
良かった、期待はずれとかにならないか不安だったんですけど
一安心です。
後藤と石川、吉澤のこともがんばります(?)
密かに、楽しみにしてて下さい^^;
これからもがんばりますっ!
- 236 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月07日(日)03時43分24秒
- 意外なところから、次の展開へ
予想とは違ったから
こそ、続きが気になるってモノでしょう。
- 237 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月07日(日)12時52分33秒
- 一気に読みました。
最高です。
保田も頑張れ(w
- 238 名前:aki 投稿日:2001年10月07日(日)13時37分22秒
- 236:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
予想と違いましたか?
でももうちょっと自分の考えた展開に自信を持ってみます。
続きもがんばりますっ。
237:名無し読者さん
>レスありがとうございますっ。
もう200を超えているなか一気に読んでくれて新たに
読者さんが増えたことが嬉しいですっ。
保田も頑張らなければいけませんね^^;
これからもがんばります。
- 239 名前:aki 投稿日:2001年10月07日(日)19時07分33秒
- そして二週間。
旅館にいるメンバー全員はこの上ないほど仕事に励んだ。
いつもの様子からでは想像できないほどに真面目に取り組んだ。
全ては突然訪れた一週間の旅行のため。
それぞれがそれぞれの期待を胸に膨らませていた。
そして瞬く間に二週間の月日が流れた。
- 240 名前:aki 投稿日:2001年10月07日(日)19時08分07秒
- 「「空港だ〜っ!!」」
加護と辻は高い天井を仰ぎ見ながら揃ってそう叫んだ。
誰かが寝坊することなく予定通り早朝に全員は出発することが出来た。
電車を乗り継ぎ、成田空港までの急行に乗り、やっとこさついた成田空港。
結構な時間がかかったが今の10人には疲れなど微塵も感じられなかった。
今は中澤が空港の玄関で手続きをしている所。
「加護と辻、迷子にならないでよ?」
「「は〜い。」」
飯田が少しふらふらしている二人に声をかける。
「みんなパスポート持ってるでしょうね?」
「持ってるべっ!」
「持ってるよー。」
「持ってます。」
保田の言葉に安倍、矢口、吉澤は並んでいる順番通りに答える。
「・・・・・・・。」
そのまま行くと後藤、石川なのだが・・・。
- 241 名前:aki 投稿日:2001年10月07日(日)19時08分44秒
- 「梨華ちゃん、飛行機乗った事ある?」
「ううん、ないの。」
「そうなんだぁ後藤もだよ。」
「どういう感じで飛ぶんだろうね。」
そんな会話を二人は周りの目を気にせず話していた。
保田がしばし呆れたように二人を見る。
吉澤と矢口もそんな保田の様子に気付かないいつもの二人に
やれやれと微笑み息をつく。
今までなら後藤はともかく石川は返事をし多少後藤を注意していたのだが、
近頃は石川も後藤と同じようになりつつある。
「あのお二人さん。話ししてるところ悪いんだけどパスポート持ってる?」
保田がしばらく経ち再び声をかけた。
「あ、持ってますっ。」
「持ってるよ〜。」
二度目の呼びかけには二人は今気付いたように答えた。
「ならいいんだけどね。」
保田がそう言葉を返した時、
「よしっ!ほな行くよ〜!!」
ちょうど手続きの終わった中澤がこちらにやって来ると同時に言った言葉と
重なった。
- 242 名前:aki 投稿日:2001年10月07日(日)19時09分28秒
- 大きいバッグは預け手持ちのバッグを片手に全員は中澤先頭に
さっそく出国審査の場へと向かった。
出国手続きの用紙を各自記入しパスポートと共に提出する。
アクシデントもなく全員は今から約40分後出発の便のやって来る
連絡口の休憩所に来た。
「それじゃこれからは少しの間だけど自由時間にするから。
遅れないように気をつけてよ。」
「「「は〜い。」」」
中澤の言葉に全員は返事しそのまま各自空港内へ散った。
加護と辻は空港内の探検、のため飯田と保田が迷子にならないように
連れ添う。
吉澤と矢口も空港内の最後の売店などの巡り。
安倍と中澤は休憩所でしばしの昼寝。
そして後藤と石川は同じく休憩所で窓から見える飛行機を椅子に座りながら
眺めおしゃべり。
- 243 名前:aki 投稿日:2001年10月07日(日)19時10分04秒
- 「うわ〜ごっちん飛んだよ、飛行機っ!」
「本当だ〜。」
加速しゆっくり離陸していく飛行機を二人は眺める。
石川はふと時計を見た。
「あと30分ぐらいだけどなんか買いに行く?」
「ううん、こうしてる」
そう言うと後藤はいつものように隣にいる石川の腕にからみ付く。
「楽しみだね〜グアム。」
「そうだね。」
「本当に楽しみだよねぇ」
「?う、うん。」
後藤はやけににこにこしながら石川に話し掛ける。
石川は微かにそんな後藤の様子に?を頭の上に浮かべる。
少し何か違和感を感じるが石川は後藤の言葉をそのまま解釈することにする。
- 244 名前:aki 投稿日:2001年10月07日(日)19時11分02秒
- 「ほんっとうに楽しみだよね」
「そうだね。」
もちろん石川の中ではショッピングに始めての外国。
しかし後藤の中ではもちろんそれらも入っているが一つだけ石川とは
食い違うことを思い浮かべていた。
「楽しみ〜」
「??」
石川の感じる違和感は案外確実に的を得ていた。
- 245 名前:aki 投稿日:2001年10月07日(日)19時15分58秒
- 今日の更新はここまで。
なんか今までの中で一番長い話になりそうです。
最初はこんなに続くとは思っていませんでしたが近頃では
それが目標になりつつありますvv
- 246 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月08日(月)11時11分27秒
- ごっちんの望みは叶えられるのかな〜?
続きが楽しみ〜
- 247 名前:aki 投稿日:2001年10月08日(月)18時24分14秒
- 246:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
叶えられるといいですね^^;
しかしちょっとこの後あります。
続きも頑張ります。
- 248 名前:aki 投稿日:2001年10月08日(月)18時25分25秒
- その頃、
「なんかお菓子買っとこうかなぁ。」
矢口は休憩所近くの売店で時間を潰していた。
空港内のお店はどれも洒落ていて見ていても楽しい。
「それとも雑誌とかにしようかな・・・・。」
歩きながら見る矢口の目の先はお菓子類から雑誌類へと変わっていた。
「・・・・・・・・。」
吉澤も矢口と来て一緒にいろいろ眺めていたのだがその視線はふと
矢口に向かった。
「やっぱりお菓子は一つは買っとこうかな・・。」
矢口は吉澤の視線には気付かず未だお店のものを物色していた。
そんな真剣な横顔が何気に可愛くて吉澤はぽわ〜んとしながら目を
奪われてしまう。
- 249 名前:aki 投稿日:2001年10月08日(月)18時26分01秒
- そして再び頭の中に蘇る後藤の言葉。
『一歩前進』
今日、この時まで何度蘇ったであろうこの言葉。
(矢口さんと・・・・・。)
今でももう吉澤は後藤のようになりつつあった。
少し考えて思い浮かべてみる。
「はっ!何考えてるの私・・・・。」
しかし辛うじて頭の中の想像をばばばと手で拭い去る。
「でももしかしたら・・・・・」
「お〜い、よっすぃ〜?」
悶々と考えまた戻りそうになった時、矢口の声が重なった。
俯いていたので顔を上げるとそこにはすぐ目の前に矢口の顔があった。
「や、矢口さん。」
「どうしたの?もうあたしは買っちゃったけどよっすぃーはまだなんか買う?」
既に矢口は会計を済ませ手には袋が持たれていた。
- 250 名前:aki 投稿日:2001年10月08日(月)18時26分36秒
- 「い、いえ。いいです、私は・・・。」
「?」
慌てて吉澤はそう返事した。
矢口はそんな吉澤の様子に首を傾げるが当の自分が思われているとは
思わず深く考えなかった。
「そろそろ行きましょ?」
「うん。あ、そろそろ時間だね。」
吉澤は空港の時計を確認すると動揺する心がばれないようにして
そう矢口を催した。
- 251 名前:aki 投稿日:2001年10月08日(月)18時27分29秒
- そして10分前には加護、辻、飯田、保田も戻り全員がチケットを
手に待機していた。
スチュワーデスが何人か集まりチケットを通していよいよ飛行機へ。
平日だが人は思っていたよりも少なくなかった。
チケットを確認し自分の席に座る。
「あ〜っ!あたし梨華ちゃんの隣がいいよぉ。」
後藤が自分の席の場所に座らず立ったままでぶうぶうと愚痴をこぼす。
「もうまだ出入りしてるし迷惑かかるから我慢しなさい。」
まるで子供を叱る親のような口調で中澤が注意する。
席は飛行機の右側に当たる場所の三列だった。
たまたま中澤の配ったチケットで座ると三列の中の一番前の列の窓側から
吉澤、後藤、保田。
その後ろの二列目は加護、辻、飯田。
そして最後の三列目に矢口、石川、安倍。
10人のため中澤は飛行機の真ん中の保田の隣の席に座っていた。
- 252 名前:aki 投稿日:2001年10月08日(月)18時28分20秒
- 「う〜・・・・。」
後藤はまだ納得できず小さくぼやいていた。
「ごっちん、帰りに隣になろう?中澤さんのおかげで行けるんだし。
言う通りにしなくちゃ。ね?」
「・・・・うん、分かったっ!」
後藤は石川の言葉にしばし黙ってから頷いた。
「石川、良いこと言うなぁ。ごっちんも偉くなった。」
中澤は泣いてもいないのだが指を目の下に当て感動したようにそう言った。
「中澤さん、なんかお母さんみたい。」
「なんだって?」
加護の言葉に中澤は今の余韻もなくさっと振り向き眉毛を引きつらせる。
「あはは。」
にこにこしながら加護は返事した。
しばらくすると人の出入りもなくなり出発までの時間を後は待機する
だけとなった。
人は少なくないが多くもなく中澤の横には人がいなく飛行機の後ろの方は
もはやがらがらだった。
- 253 名前:aki 投稿日:2001年10月08日(月)18時33分07秒
- 今日はここまで。
この次にちょっとしたことがあります。
今更ですが飛行機の席順は
進行方向
中澤 保田 後藤 吉澤
飯田 辻 加護 窓
安倍 石川 矢口
って感じです。
一応文字だけだと分かりづらいかと思い
載せてみました。
必要ないかもしれませんが・・・。
- 254 名前:aki 投稿日:2001年10月08日(月)18時37分28秒
- 今日はここまで。
この次にちょっとしたことがあります。
今更ですが飛行機の席順は
進行方向
中澤 保田 後藤 吉澤
飯田 辻 加護 窓
安倍 石川 矢口
って感じです。
一応文字だけだと分かりづらいかと思い
載せてみました。
必要ないかもしれませんが・・・。
- 255 名前:aki 投稿日:2001年10月08日(月)18時39分20秒
- うわっ!すいません、二度も。
ちょっとパソコンの調子悪くてダブっちゃいました・・・。
- 256 名前:223の名無し読者 投稿日:2001年10月09日(火)02時51分58秒
- グアムを舞台にどんなドラマが繰り広げられるのかな?続き期待。
あとリクに答えてくれてありがとうございます!
楽しみに待ってますよ!
- 257 名前:aki 投稿日:2001年10月09日(火)13時58分07秒
- 256さん
>レスありがとうございますっ。
仕事休みの旅行ということであまり大々的なドラマは今は考えて
ませんねぇ。おぼろげなストーリーだけなのでもうちょっと
思案してみます。
リクエスト期待通りになれるようにがんばります!
- 258 名前:aki 投稿日:2001年10月09日(火)19時01分47秒
- 飛行機は気付くと動き始めていてあっという間に加速、そして離陸してしまった。
今は雲の上を安定して飛んでいた。
中澤や保田、飯田は飛行機備え付けのヘッドフォンを使用し音楽を聴き、
加護と辻、安倍と石川と矢口はトランプをしていた。
後藤は音楽を聴きながら雑誌のクロスワード、吉澤は持ってきた本を
読んでいた。
「・・・・・・・・。」
後藤はふと雑誌から顔を外し吉澤の横顔を盗み見た。
吉澤は後藤の視線には気付かず本をただ熱中して読んでいる。
後藤はおもむろにヘッドフォンを外すと静かに吉澤に近づきその耳に
ふっと息をかけた。
「ひっ!!」
突然のことに吉澤はびっくりし飛び上がる。
「あはっ、ごめんごめん。」
隣に顔を向けるとおもしろそうに後藤は笑っていた。
「びっくりした・・・・。」
「ねねね、やぐっつあんの様子どうよ?」
後藤は吉澤の耳に近づき小さい声で聞く。
- 259 名前:aki 投稿日:2001年10月09日(火)19時02分23秒
- 「なっ、なによ突然。」
それだけで紅くなってしまう吉澤。
「あれ?あんまり考えてないとか?」
「か、考えてないわけじゃないけど・・・・。」
むしろその事は吉澤の頭から離れずにある。
「それじゃどうなのよ一体。」
「どうなのよって言われても・・・・そりゃそういう事になったら嬉しいけど
そういう経験ないし・・・・・。」
「後藤だってないよ。初めては梨華ちゃんとって決めてたんだから。」
吉澤は恥ずかしそうに言うが後藤は至って普通に言ってのける。
「じゃあなんでそんなに張り切れるのさ。」
「だってぇ、こんなチャンス滅多にあることじゃないじゃん。」
「そりゃ・・・・そうだけどね。」
「よっすぃーだってやぐっつあんのこと好きなんでしょ?」
「まあ、ね。」
こそこそ周りに聞こえない風に二人は密かに盛り上がりながら話していた。
とそこに、
- 260 名前:aki 投稿日:2001年10月09日(火)19時04分20秒
- 「盛り上がってますね〜。」
「そりゃもちろん・・・・・って加護ぉ!!!」
突然後ろから声がし、後藤は咄嗟に答えてしまったが聞き覚えのある声に
後藤と吉澤は振り返った。
するとそこには席を立ち上がりちょうど吉澤の席の上から顔を出す
加護の姿があった。
「な、ちょ、あ・・・・・」
びっくりして後藤から上手く言葉が出てこない。
「い、いつから・・・?」
吉澤が頭上の加護に恐る恐る尋ねた。
「よっすぃーの『考えてないわけじゃないけど』ってところから。」
平然と答える加護に二人は何も言えなくなり困ってしまう。
そしてそんな時、
「あいぼーん。」
「加護〜、みんな終わったけど次やんないの〜?」
石川と矢口の声が後ろから伝わってくる。
後藤と吉澤は微かにびくっと反応した。
当然一番後ろの二人には聞こえてはいないのだが。
- 261 名前:aki 投稿日:2001年10月09日(火)19時05分29秒
- 「うん、ちょっと抜ける〜。」
加護は二人にそう答えそしてこちらの二人に向き直った。
「後藤さんによっすぃーそんなこと考えてたんだ。」
「ちょっと加護・・・・言わないでよ?」
後藤が声を潜め加護に言った。
「言いませんよ〜。言うわけないじゃないですかぁ。」
「本当に?」
吉澤も確認するように再度尋ねる。
「そんなことしませんよ。加護はそんなことするような性格悪い子じゃありません。」
胸を張って言うので二人はとりあえずほっと安心する。
「ただ・・・・・。」
「「ただ!?」」
加護の続く言葉に二人はぐっと近づいた。
- 262 名前:aki 投稿日:2001年10月09日(火)19時06分09秒
- 「普通の社員旅行で来てるのにそんなことしようとしたら嫌われませんかぁ?」
「「っ!?」」
「二人ともその辺真面目みたいだし。それにやっぱりみんなと来てるんだしぃ。」
「「・・・・・・・。」」
加護の言葉にショックのあまり二人は言葉をなくしどーんっと一気に
二人の周りが暗い雰囲気に落ち込んだ。
「それじゃ加護はお菓子でも食べよーっと。」
加護はぺろっといたずらをした子供のように舌を出し二人から退散した。
持ってきたポッキ―の袋を開けそれを口にする。
「♪」
見るからに機嫌を良くしポッキ―をほお張り大貧民の経過を見始める。
- 263 名前:aki 投稿日:2001年10月09日(火)19時06分59秒
- 「?どうしたのあいぼん、なんか機嫌いいみたいだけど。」
「ちょっとね」
石川も加護のご機嫌ぶりに気付き尋ねるが加護はにこっと笑いそう答えるだけ。
自分の暴走推理のせいで結果的に後藤と石川をくっつけてしまいそして吉澤も
矢口とくっついた。
もとはといえば自分のせいなのだが自分だけ残し二人とも幸せになっちゃっ
たのはやっぱり少し納得がいかなくてちょっとこの場を借りて密かに
心に秘めていた仕返しを完了させてしまった加護であった。
- 264 名前:aki 投稿日:2001年10月09日(火)19時08分44秒
- そしてこちらの二人といえば、
「よしこ・・・・あたし梨華ちゃんに嫌われるなんて考えれないよ・・・・」
「あたしだって・・・・」
「決めたっ!この旅行で絶対にそういうことしないっ!後藤は!」
「あたしもっ。ただの社員旅行にする。」
二人はお互い向き直り手を握った。
「よしこ〜・・・。」
「ごっちん〜・・・・。」
やるせない声を上げながら二人は同じ想いをかみ締めていた。
「ふふ♪」
その後ろにはにこにこ顔の加護が仕返し成功をかみ締め満足し切っていた。
- 265 名前:aki 投稿日:2001年10月09日(火)19時10分26秒
- 今日はここまでです。
加護ちゃんの小さな仕返しということで^^;
- 266 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月09日(火)22時33分42秒
- あいぼーん…なんて余計なことを(w
- 267 名前:214 投稿日:2001年10月09日(火)23時35分40秒
- 加護ちゃんの仕返しがこの後の展開に影響してくるんでしょうね…(笑
でもヘコんでるよしごまも可愛いです(笑
くーっ、続き楽しみにしてます!
- 268 名前:aki 投稿日:2001年10月10日(水)00時16分50秒
- 266:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
やっちゃいました、加護ちゃんの逆襲^^;
大目に見てあげてください。
267:214さん
>レスありがとうございますっ。
これから少なからず影響はしてきそうですね。
そっちばかり考えてた二人だけあってショックも大かと思われます^^;
続きも頑張りますよ〜。
- 269 名前:aki 投稿日:2001年10月10日(水)18時41分56秒
- そして飛行機は彼女達を乗せ問題もなくいつもの通りに空を走っていた。
日本からグアムまでたったの三時間。
あっという間に時間は過ぎ去り一行は無事グアムにたどり着くことが出来た。
一行は飛行機から降りると荷物を受け取り入国手続きも外人の手で審査され
出口に出た。
するととそこには泊まるホテルの旗を持つ女性が待ち構えていた。
「裕子〜〜〜♪」
「わ〜〜っ!久しぶりやんかぁっ!」
久しぶりの再開に中澤は彼女の姿を見つけるとすぐに駆け寄った。
しばし話すとすぐに彼女は隣の外人の男性を紹介した。
「こちらはホテルまでの送迎をしてくれる運転手さんです。それでは行きましょうか。」
旗をひらひらと持つ彼女を先頭に一向は歩き出した。
全員の荷物を車に積むと車はさっさと動き出す。
- 270 名前:aki 投稿日:2001年10月10日(水)18時42分41秒
- 「「うわ〜〜っ。」」
加護と辻がまるで子供のように車の窓から外を眺めていた。
当然車は左ハンドルに右側通行。
日本の車より少し横幅が広くてその分道路も広い。
信号や町に植えられる高いヤシの樹。
空は高くて青く澄み切り、立体的な雲が漂う。
そして少しがさつな運転とラジオから響く洋楽のメロディ。
たった三時間とはいえグアムもアメリカの一部なのだとそれぞれが今更感じていた。
- 271 名前:aki 投稿日:2001年10月10日(水)18時43分17秒
- そして送迎バスにのりこんで約20分ほどで目的のホテルにたどり着いた。
「「「おお〜〜〜〜っ!」」」
全員がたか〜〜いホテルを仰ぎ見ながらそう揃え声を上げた。
グアムの中で食事、サービスはもちろんのこと高級ということも含めて
全てにおいて評判の名高いホテルである。
「あんたすごいところで働いてるなぁ。」
「あはは、ではこちらですよー。」
中澤の言葉にホテルで勤める彼女は照れながら一行をホテルの中へと通した。
中に入ってもやっぱりすごい。
高級感溢れるフロント、ロビー。
目の前はオープンになっていてそこからはホテルのプールが見える。
そしてその向こうには青い海に白い砂浜。
「すご〜〜い!」
加護と辻はもちろんのこと飯田や矢口、全員がホテルを声を上げ
見渡していた。
- 272 名前:aki 投稿日:2001年10月10日(水)18時43分50秒
- 「お〜いっ、そろそろ行くよ〜。」
中澤がチェックインの手続きを済ますと5部屋分の鍵を手にみんなを
呼んだ。
結局部屋の組み合わせは後藤と石川、吉澤と矢口、加護と辻、飯田と安倍、
保田と中澤ということになった。
中澤の知り合いの彼女によって部屋まで案内される。
エスカレーターに乗ってみればどんどん上に上がっていきなんとたどり着いた先は
ホテルの最上階の一つ下の階だった。
- 273 名前:aki 投稿日:2001年10月10日(水)18時44分44秒
- 「わ〜お〜〜〜っ!!!」
部屋に入るなり後藤は目の前の窓に駆け寄りそう声を上げた。
このホテルはどの部屋も綺麗なグアムの海を一望できる間取りになっている。
部屋の中も結構広くやっぱりここでも高級感が微かにかもし出されていた。
「すごいねぇ〜。」
石川も鞄を置くと後藤の隣に並んだ。
日本では見られないような立体的で白い雲。
海もただ青くなくてなんとなく緑が入っているような綺麗な色。
「こんな高い部屋なんて後藤初めてだよ。」
「うん、あたしも。」
なぜこんなにいい部屋になれたかというと今日はどちらかとう言うと
いつもよりお客の人数が少なかったらしい。
そしてもう一つはなんといってもここのホテルで働く彼女の知り合いというため。
しかも目の前には優雅なバルコニー。
- 274 名前:aki 投稿日:2001年10月10日(水)18時46分18秒
- 「カーテンしなくても高いから外からは見えないらしいよ。」
「へぇ〜・・・・。」
石川は今さっき部屋に来るまでにホテルマンの彼女が言った言葉を言った。
なんとなく後藤も返事したがその後になにやら違う事を考えてしまう。
(それじゃ夜も開け放ってて良いってことだよね・・・・?)
するとだんだんロマンティックな展開が頭の中を過ぎっていく。
しかしぼーっとしながらどんどん違う方向へ考えていってしまう後藤の頭の中に
今さっきの加護の言葉が思い出された。
「はっ!」
「?どうしたの?」
「う、ううん。なんでもない・・・・。」
自分の様子に首を傾げる石川に後藤は焦りながら少し落ちたトーンで答えた。
「あう〜・・・・・。」
必死に自分の中で自分の気持ちと戦うがやっぱりすぐには拭い去れない。
後藤は情けない声を小さく上げながら石川の腕にいつものようにしがみ付いた。
「?」
当然石川は後藤が心の中で密かに葛藤しているとは知らず?を頭の上に浮かべていた。
- 275 名前:aki 投稿日:2001年10月10日(水)18時49分02秒
- 今日の更新ここまでです。
- 276 名前:aki 投稿日:2001年10月11日(木)18時37分19秒
- グアムに着いたその日はホテル内の申し込み場所でオプショナルツアーの
手続きを行った。
ツアーの量は豊富で全員の相談のもといくつかのツアーに申し込んだ。
その後は各自広いホテルの散策、ホテルからすぐ近くを散歩したりと
来たばかりのためやっと着いたグアムでそれぞれ疲れを取っていた。
「うわ〜。風が気持ち良いね〜。」
後藤と石川はホテルからつながるすぐそこのビーチに来ていた。
風に髪を棚引かせ石川は少し後ろの後藤の方へ振り返りながらそう言った。
「すごい雲・・・・。」
後藤も肌に気持ちいい風を受けながら空に浮かぶ白い入道雲のような雲を
仰ぎ見ながらそう呟いた。
「なんかグアムって感じだね。」
「うん。」
日本では沖縄ぐらいでしかお目にかかれないような白い砂浜、澄み切った海。
二人は砂浜を散歩し透明な水を触ったりと何気ないこの時間を満喫していた。
ヤシの木々が立ち並び所々にハンモッグが吊るされる木陰の場所で
休憩する事にする。
- 277 名前:aki 投稿日:2001年10月11日(木)18時37分54秒
- 「中澤さんに感謝しなきゃね、こんな良い場所に社員旅行で連れてきてく
れるなんて・・・・・」
隣で石川がいろいろと話しているが後藤にはあまりそれは耳に届いていなかった。
「・・・・・・・。」
日本では秋に突入し始めてきたため近頃見なくなり始めた夏の服。
後藤は隣の石川の白いワンピースに目を奪われていた。
体のラインがよく現れるようにデザインされている。
その上石川のスタイルは知ってのごとくかなり良いのでよく似合う。
「・・・・ってごっちん聞いてる?」
「え?あ、ごめん。聞いてなかった。」
全く耳に入っていなかったため聞いてるとも言えず後藤はただ素直に答えた。
「もう・・・・」
「ごめんね。」
少し膨れる石川に後藤は心の中で可愛いと思いつつ笑いながら謝った。
- 278 名前:aki 投稿日:2001年10月11日(木)18時39分27秒
- 「そういえばさっきからごっちんぼーっとしてるけどどうかしたの?」
「・・・・・・」
石川の言葉に後藤はしばらく石川を見たまま表情を変えず少し黙ってしまった。
「?」
後藤の様子に石川は首を傾げる。
髪が横にさらさらと流れて覗き込むようにこちらを見る。
そんな彼女の様子がまたすごく愛しくて。
「梨華ちゃんが可愛いから見とれてたの。」
気付いたらありのまま自分の気持ち伝えてた。
「えっ?」
石川は突然の後藤の言葉に頬を紅くする。
目の前の彼女が取る一つ一つの動作が可愛くて愛しくてついそんな彼女の
様子ににこにこしてしまう。
「からかわないでよ・・・・。」
石川は頬を紅く染め恥ずかしさのため後藤から顔を外し体を背けてしまう。
- 279 名前:aki 投稿日:2001年10月11日(木)18時40分02秒
- 「からかってなんかないよ。本当にそう思ったんだもん。」
「ごっちん・・・・。」
石川は静かに後ろに振り向いた。
そこにはいつもの後藤の姿がある。
優しくて甘えん坊で少しだけ強引な彼女の姿が。
そして嘘なんかついてないってすぐに分かる彼女の真っ直ぐな瞳。
「好きだよ・・・・」
「あたしも・・・・・」
二人は静かにゆっくりと顔を近づけグアムに来て始めての甘い口付けを交わした。
(まだキスだけの関係でもいいかな・・・・)
やっぱり彼女と交わすキスはすごく幸せで暖かい気持ちで胸が一杯になる。
今さっきまでの自分に後藤は唇を合わしながらこの時そうほのかに感じていた。
- 280 名前:aki 投稿日:2001年10月11日(木)18時40分39秒
- 陽も暮れ大きな紅い太陽が海へと沈んでいく。
その光が綺麗に海に線を描いていた。
グアム到着1日目の夕食はホテル内のレストランで取る事になった。
朝食は全てこのホテルで取る事になっているが夕食は自由にしてあった。
まだグアムの地理も把握しないためということもあるがホテル内のレストランは
どれも評判は良いので有名だった。
ホテル中央の目の前がプールに開いているレストランで夕食を取る事に決まった。
雰囲気は重苦しくなくカジュアルな趣き。
ディナーにはさまざまなコースが用意されていて全員はまばらにそれを頼むことに
した。
運ばれてくる料理は魚料理にボリューム満点の肉料理、全てが本場のアメリカの
雰囲気を醸し出していた。
太陽も完全に暮れ辺りが暗くなり始めると同時に目の前のステージで
ハワイアンの衣装を来たこっちの人達が音楽と歌のショーを始める。
こうしてグアム到着の一日は何事もなく明日からのことに胸を膨らませながら
楽しく過ぎていった。
- 281 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月12日(金)00時04分57秒
- 描写から南国ムードが伝わってきますね〜。
グアム行ったことあるんですか?
- 282 名前:aki 投稿日:2001年10月12日(金)19時23分08秒
- 281:名無し読者さん
>レスありがとうございますっ。
伝わってますか、良かったですv
ちなみにグアムには一度だけ行った事があったりします(^^;
描写はその実体験も少し入ってます(w
- 283 名前:aki 投稿日:2001年10月12日(金)19時24分18秒
- 2日目。
1日目の夜は何事もなく後藤は密かに一人、ドキドキと緊張しながら石川と
同じホテルの部屋で夜を過ごした。
昨日申し込んだオプショナルツアーによって二日目は潜水艦に船で
アドベンチャーツアー、イルカウォッチングと船尽くし。
朝早く集合し初めての潜水艦でグアムの透明度の高い海に潜り色鮮やかな
熱帯魚や珊瑚など神秘的な世界な世界を心ゆくまで楽しむ。
「「すご〜〜いっっ!!」」
「圭ちゃん写真取って〜〜!」
「また!?」
はしゃぐ加護と辻に普段では考えられないようなはしゃぎ具合の中澤。
そしてカメラ片手の保田。
「なっち、あたし達も写真取っとこうよ。」
「そうだべな。」
矢口と安倍は肩を並べ矢口が手を前に出しそこに持たれているカメラで取る。
途中ダイバーの水中パフォーマンスもあり全員は声を上げ潜水艦からの
窓にくぎつげだった。
- 284 名前:aki 投稿日:2001年10月12日(金)19時24分49秒
- お昼を軽く取り休憩したら次はクルーズに乗ってアドベンチャーツアー。
ここまでくるともはやディズニーランドのような気分になる。
グアムのある川を下るツアーだが、熱帯のジャングルの中を航行していくのは
本物ならではのスリルがある。
自然の景観だけでなく古代の遺跡を探訪し古代文化の歴史に触れる事が出来た。
- 285 名前:aki 投稿日:2001年10月12日(金)19時25分28秒
- 時間は瞬く間に過ぎ去り太陽もゆっくりと傾き始める。
そして最後はイルカウォッチング。
クルーザーに乗ってイルカの見物をするツアー。
90%の確率でイルカに出会えることができる。
船をとばししばらくするとイルカの群れが船へと近づいてきた。
優雅に流れにならって泳ぐ姿はとても素敵なものだった。
「イルカだ〜〜っ!!!」
一番楽しみにしていた辻が船のすぐそこまで寄って来たイルカに手を振る。
「すごいねっ!ごっちん。」
「うんっ。こんな間近で見れるなんて思ってもいなかった。」
風に髪を押さえ船の手すりの部分で石川と後藤は仲良く並び海を見ていた。
「「イルカ〜〜〜っ!!!」」
「可愛い〜〜!!!」
「すっげー・・・。」
はしゃぐ辻と加護に高い声を上げる矢口と吉澤。
全員イルカの姿に目を奪われ感動していた。
- 286 名前:aki 投稿日:2001年10月12日(金)19時26分26秒
- 今日のツアーは全て終わりグアムの地理も分かり始めて来たのでハイテンション
のまま今日の夕食は外で取る事になった。
あらかじめホテルで働く彼女のお勧めのレストランへと向かった。
味はもちろん雰囲気、サービスが一番で隠れた有名どころという話だったが
その通りレストランで働くスタッフは全員感じが良くて女性、男性問わず皆
綺麗だった。
女性なら金髪のアメリカンな陽気の美人、男性も同じく金髪で渋い人から
ジョークの好きそうな人まで幅広くそして誰もが美形。
「そこのおにいさ〜んワインぷり〜ず」
アルコールの入った中澤はめちゃくちゃな英語で空っぽのボトル片手に
見境なく声をかける。
「裕ちゃんっ!お酒飲みすぎだよ〜。」
「ん?圭ちゃんももっと飲まな」
「ん、んぐっ!」
そう言い中澤は運ばれてきたワインを無理やり保田の口へと運ぶ。
「「エクスキューズミ〜?アイアムフロ〜ムジャパンッ!!」」
加護と辻も辺りを漂うアルコールに酔ったか二人して手を上げ
よく分からない英単語を笑いながら楽しそうに叫ぶ。
- 287 名前:aki 投稿日:2001年10月12日(金)19時27分39秒
- 「きゃは〜っ!あ、あの人綺麗〜!あの人もかっこいい〜」
なっちもお酒は入っていないのだがハイテンションでレストランを見渡す。
「なっちぃ、お酒入ってんの〜〜???」
「この料理うめーなー。」
矢口に飯田も一際大きな声で話す。
「梨華ちゃん〜〜〜後藤間違えてお酒飲んじゃった〜〜」
「大丈夫!?」
「ごっちんっ!だめれしょ〜未成年なのにお酒飲んじゃ〜っ!!」
微かに顔の紅くなった後藤をたしなめる顔の紅い吉澤。
石川はそんな二人に微笑み楽しそうに呆れてしまう。
ここだけでかなりうるさいのだがレストラン全体が同じくハイテンション
になっているのとレストランにかかる陽気な洋楽のため全く周りと同化し
迷惑はかかっていなかった。
こうして楽しい時間はゆっくりと過ぎていった。
- 288 名前:aki 投稿日:2001年10月12日(金)20時27分18秒
- <ホテルの部屋にて>
タクシーを呼んでもらい全員がなんとかホテルに戻って来れたのは
午後9時過ぎだった。
「梨華ちゃん〜〜部屋のカギ、持ってますか〜〜??」
頬を紅くし後藤が舌足らずな口調と語尾の上がる発音で石川に
絡みつきながら尋ねる。
「はいはい、持ってますよ〜。」
なだめるように答えるのは石川。
後藤がレストランを出てからずっとこの調子のためここまでたどり着くまで
二人はずっと今のようなやり取りを何度もしていた。
「英語で言うとルームキー・・・・だよ〜ん」
「そうだね〜。」
完全に酔ってしまっている後藤に石川は適当に答えながらカギをドアに通し
後藤に抱きつかれながらもなんとか部屋のドアを開けた。
- 289 名前:aki 投稿日:2001年10月12日(金)20時27分55秒
- 「よしっそれじゃ部屋に入ってー。」
「は〜いっ!」
手をぴしっと斜めにおでこの部分に当てまるで兵隊さんのような体制をする。
そしてそのまま部屋の中へすたすたと入っていった。
「ふぅ、疲れた。」
石川も続いて部屋に入る。
部屋のドアはオートロックのためそのまま静かに閉まりカギは掛かる。
「ふかふかベッドーっ」
後藤はベッドに仰向けの体勢で大の字を描き寝転がった。
「酔いが覚めたらお風呂入らないと駄目だよー?」
石川が言いながらベッドで寝る後藤の側へと近づいた。
「ぐぅー。」
わざとなのか違うのか後藤はそう声を出しごろんと横になり小さくなって
寝だす。
「ごっちん〜?」
後藤の寝るベッドに腰掛け石川は後藤の体を揺すった。
「んん〜?梨華ちゃん〜?」
ごしごしと目を擦り後藤は寝たまま石川の方へ体を向け閉じた瞳を開いた。
- 290 名前:aki 投稿日:2001年10月12日(金)20時28分54秒
- 「先にあたし入っちゃうよ?」
「・・・・・・・・」
石川の言葉には答えず後藤はそのままの体勢でぼーっとした表情で黙ったまま
石川を見つめていた。
「?どしたの?」
そんな後藤の様子に何度目になるだろうか石川が首を傾げる。
「・・・・・・・・」
後藤は黙ったまま身を起こしベッドに座った大勢で突然そのまま石川の
首に両腕を回した。
「ご、ごっちん!?」
「梨華ちゃん・・・・・」
戸惑う石川を余所に後藤は顔を近づけていく。
「ど、どうしたの?いきなり・・・」
「・・・・・・」
二人の距離が縮まり唇まですぐそこまで来た時後藤の動きがぴたっと止まった。
- 291 名前:aki 投稿日:2001年10月12日(金)20時29分39秒
- 「ご、ごっちん・・・?」
「舌、入れていい?」
「へ?」
後藤の頬は未だ赤く染まり酔いが覚めていないことがそこから分かるが
突然の言葉の意味がわからずとっさに聞き返したその時同時に後藤が
石川の唇を奪った。
「・・・・んんぅっ!!」
しばらくすると唇を合わしたまま後藤は石川の頬に手をやりそのまま顎を押さえ
口を開かせると言葉どおり舌を中へと侵入させる。
この時今さっきの後藤の言葉がどういう意味なのか知ったが突然の後藤の行動に
石川は成す術がなかった。
しかし気付けばこれが二人にとって始めてのディープキスだったりする。
- 292 名前:aki 投稿日:2001年10月12日(金)20時30分16秒
- 「・・・・ん・・」
お酒のアルコールの味がするキス。
一方的な後藤のキスは初めてとは思えないほど巧みで石川はそのままぼーっと
濃厚な口付けを受けてしまっていた。
ホテルの部屋に二人のキスの音が小さく響く。
「・・・・・・・」
お酒のせいかいつもでは考えられないほど今日の後藤は思ったまま思ったことを
そのまま行動していた。
夢中になって唇を貪っていた後藤だがだんだん酔いも冷めふとある言葉が過ぎった。
- 293 名前:aki 投稿日:2001年10月12日(金)20時33分01秒
- 『普通の社員旅行で来てるのにそんなことしようとしたら嫌われませんかぁ?』
(・・・むぅっ!)
唇を合わしながら後藤の頭の中ににこにこ顔の加護の顔が映った。
そして可愛い声の飛行機での加護のあの言葉が思い出される。
後藤は慌てて石川から唇を離し首に絡めていた腕もほどき距離を置いた。
「・・・・ん・・・?」
唇が突然離され石川は余韻に浸るように未だぼーっとしながら後藤の行動に
?を浮かべる。
「・・・・・ご、ごめん。あたしいきなりこんな・・・・」
完全に酔いも冷め後藤は必死に弁解する。
まだぼーっと焦点の定まらずぼーっとしていた石川も後藤の言葉にはっと
我に返る。
「あ、あたしお風呂入ってくるっ!!」
そう言うと石川は逃げるようにベッドから降りそのままお風呂場へと
向かっていってしまった。
- 294 名前:aki 投稿日:2001年10月12日(金)20時33分37秒
- 「あっ・・・・・・」
まだ言い終わっていないうちに石川が行ってしまい後藤はそう一言小さく言葉を
漏らした。
一人残された後藤はその後しばらく何も考える事が出来ず石川の逃げるように
立ち去った事実だけが目の前の現実と一致し働かない頭の中ではただそのこと
だけが残り今の後藤にはただぼーっと呆然とすることしか出来なかった。
- 295 名前:aki 投稿日:2001年10月12日(金)20時34分17秒
- 今日はここまで。
大量更新ですv
- 296 名前:名無しです 投稿日:2001年10月12日(金)23時15分04秒
- 大量更新嬉しい限りです(^^)
ごっちんと梨華ちゃん…の初夜になるのでしょうか…(w
それとも…
密かに、やぐちよっすぃーの方も気になる…
頑張って下さいね〜
- 297 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月13日(土)02時54分36秒
大量更新おつかれさまです。
中澤の宝くじできてるから中澤もっと活躍したらいいな…とか。
後藤石川の続き・・・気になります…
吉澤矢口もどうなってるのやら…
がんばって下さい!!
- 298 名前:aki 投稿日:2001年10月13日(土)18時25分45秒
そして3日目。
結局昨夜も何事もなく普通に長い夜は過ぎた。
あの後石川はバスルームから出ると戸惑った風に俯いたまま隣のベッドに
無言のまま座った。。
戻ってきた石川に後藤は何も言うことが出来ず部屋にはぎくしゃくした
気まずい雰囲気が漂う。
二人はしばらくその空気の中で口を開かず黙ったままでいたが少し経って
後藤も石川に一言だけ告げてバスルームへと向かった。
部屋の空気が何か変わっているかと微かに期待し部屋に戻って来たが期待とは
裏腹に未だ気まずい雰囲気は部屋の中に漂っていた。
結局昨日は一言二言話しただけで二人は寝に付いた。
寝に付いたものの明らかに石川も起きているのが気配から分かり後藤は
ベッドに入ったまま寝れず頭の中ではいろんなことがぐるぐると忙しく
駆け巡っていた。
そのため今日は少しだけ寝不足。
眠たい目を擦りまだ眠っていたい自分をなんとか起こした。
- 299 名前:aki 投稿日:2001年10月13日(土)18時26分27秒
- そして今日は待ちに待っていたグアムのビーチ。
観光客の多いビーチは避け比較的人の少ない地元の人間が知る穴場スポットに
来ていた。
これもホテルで働く彼女のおかげなのだが人は自分達以外に地元の人間が
ちらほらといるだけでまるでプライベートビーチのような感覚に陥る。
「すご〜〜いっ!!」
「超透明―!」
「「海〜!ビーチ〜〜!!」」
石川と矢口に加護、辻の四人はそう声を上げながら波が打ち寄せる辺りで
楽しそうに悲鳴を上げていた。
「着替えてからしなさ〜いっ!!」
中澤が四人に向かって大きな声で叫ぶ。
昨日のお酒はどこへやらまるで感じさせない様子。
「「「「は〜いっ!!」」」」
四人はまだ水着はおろか荷物も片手にはしゃいでいた。
期待に胸を膨らませ全員は水着に着替えた。
- 300 名前:aki 投稿日:2001年10月13日(土)18時26分58秒
- 「あまり沖に行かないように気をつけるんだよ〜〜?」
中澤が砂浜に立てられているパラソルの影にあるチェアに横になり足を組ませ
今さっきのようにまたそう叫んだ。
その姿は豹柄のワンピースの水着に真っ黒のサングラス。
金髪の髪にそれが良く似合っている。
はたから見るとすごい格好だが中澤が着ると何故か嫌味がなくごく自然に
似合っているから不思議。
そしてチェアの横にはグアムならではのトロピカルドリンク。
「♪」
もう全てが揃いご機嫌の中澤だった。
- 301 名前:aki 投稿日:2001年10月13日(土)18時27分38秒
- 「「「「は〜〜いっ!!」」」」
元気よく波打ち際の四人は手を上げ返事した。
ちなみに石川はビキニ、矢口はウェットスーツ風のセパレート、加護も
可愛いオレンジのセパレートで辻はセパレートだが加護や矢口のように
完全に離れているのではなく上と下がほとんど繋がっているように見える水着。
下がデニムの生地で出来ているスカートのような物で上はオレンジやピンク
黄色などカラフルな色のしましま模様のため洋服のような感じの物。
四人は少し大きめのビーチボールで透明なグアムの海の中で水しぶきをあげ
楽しそうにキャアキャアと高い悲鳴を上げて遊びはじめた。
- 302 名前:aki 投稿日:2001年10月13日(土)18時28分08秒
- 「「・・・・・・・・・・」」
それをぼーっと見つめるのは今日を特に待ち望んでいた他でもないあの人方。
「うわー・・・・・」
「眩しい・・・・・」
後藤と吉澤がそう小さく声を上げる。
吉澤のセリフは地上を照らす空高い太陽だけではなく目の前の光景。
まさか後藤は石川がビキニを着てくるとは思ってもいなかった。
今年の夏は可愛い今の矢口のような水着を着ていたから。
「ビキニなんて反則だよ・・・・・」
とか言いつつ自分も白いTシャツの下はビキニなのだが後藤は言葉とは裏腹に
明らかにそう思っていない口調でため息混じりに呟く。
- 303 名前:aki 投稿日:2001年10月13日(土)18時28分53秒
- 「ごっちんによっすぃー泳ぎに行かないだべ?」
安倍が浮き輪を専用の足ふみの空気入れでパカパカと音を立て入れながら
二人に聞いた。
「後藤はもうちょっとしたら行くー。」
「んじゃあたしも。」
「なんか変だべ、二人とも。」
心ここにあらずのような二人に安倍は首を傾げる。
「なっちー!空気入れ終わった〜?」
「んー!今終わった!」
「それじゃ行こー!」
安倍と保田と飯田は海の上で寝転がれる浮き輪を片手に海へと砂浜を
駆け出していった。
「ちょっとよっすぃー聞いてよ。」
「なにさ?」
周りに人がいなくなって後藤は静かに口を開いた。
- 304 名前:aki 投稿日:2001年10月13日(土)18時29分32秒
- 「後藤昨日さぁ、ホテル帰ってきた後、お酒のせいもあって勢いで梨華ちゃんに
かなり濃厚なキスしちゃったんだよね・・・・加護の言葉を思い出してそれだけで
終わったけど・・・・・。」
「マジっすか!?」
「マジっすよ・・・・」
「それでどうなったの?」
「その後気まずくなっちゃってさー・・・・今もなんだけどね。」
「あらら、だからごっちん朝から元気なかったのね。」
「うん・・・・」
「まー、元気出して。」
吉澤は後藤の背中を軽く叩いて軽いノリではげます。
「人事だと思ってー。」
「あはは、ばれた?」
そんな会話をしている中、
「「よっすぃーっ!後藤さ〜んっ!遊びましょ〜!」」
加護と辻の大きな揃った声がこちらに届いてきた。
- 305 名前:aki 投稿日:2001年10月13日(土)18時30分12秒
- 「考えてもしょうがないか・・・・」
「そうそう。」
「それじゃあたし達も行こっか!」
「んっ!」
吉澤の返事を合図に後藤と吉澤も白い砂浜を駆け出し海へと向かっていった。
- 306 名前:aki 投稿日:2001年10月13日(土)18時37分27秒
- 296:名無しさん
>レスありがとうございますっ。
結局二日目は記念すべき日にはなりませんでした。
申し訳ないです(T_T)
やぐちによっすぃーのことももう少し待ってください^^;
どうするかはちゃんと考えてあるので・・・。
ありがとうございます!これからも頑張ります〜。
297:名無し読者さん
>レスありがとうございますっ。
どうしてもグアム編は確かに後藤と石川、吉澤と矢口寄りに
なってますね・・・。
中澤や保田達ももう少し動かしたいんですがどうしてか
この小説ではあまり動かしにくいというのが本音です。
まだまだ力量不足ですね。
後藤と石川のことも続き焦らしてしまってごめんなさい、
後もう少しではっきりしますので^^;
もちろん矢口と吉澤のことも忘れてませんのでご安心下さい。
これからも頑張りますよー。
- 307 名前:aki 投稿日:2001年10月13日(土)18時49分57秒
- @83さん
何度も続けて会話のようにレスするのはまずいと思ったので
見てくださっていることもあったのでこちらでレスさせてもらいます。
あっちのレスたった今見てかなりっびっくりしちゃいました。
PCの前で思わず声を上げるほど・・・(w
しかももったいないお言葉ばかりありがとうございます(T_T)
私より先に書かれていていろいろ作品も読ませてもらっていたので
びっくりです。
他に同じような物のない雰囲気の独特の文章がとても私的に
引き付けられて好きです。
どの作品にも言えるんですがどれも設定がおもしろくて。
今書かれている作品も本当に実際にあるような感じでとても私には
考えられないようなストーリーと書き方で・・・。
そしていつも読んでもらっているようでありがとうございますm(__)m
私もこれからもがんばります。
これからも読ませて頂きます!頑張ってくださいっ!
- 308 名前:aki 投稿日:2001年10月14日(日)19時28分39秒
- 「えいっ!」
「お、お、っとー!!」
ビーチボールで遊んでボールを返し損ねてそのままつまづいて海の中へ
墜落してははしゃいで。
「保田さ〜ん」「なっち〜」
「「ん〜?」」
「それっ!」
「う、うわ〜〜っ!!」
浮き輪で海の上で昼寝をする安倍や保田に
加護や辻がいたずらして海へひっくり返して怒られてまた騒いで。
シュノーケルをつけて綺麗な海中を眺めながら泳いだりと全員は思い思いに
今、この時間を過ごしていた。
しばらくして海から上がってシートの上で横になって太陽を浴びたり
砂をかけ辻が砂浜の中へ埋められたりと遊びお昼は近くのレストランから
出まいを頼んでシーフード料理を食べた。
- 309 名前:aki 投稿日:2001年10月14日(日)19時30分19秒
- そして今、午前中のテンションもとりあえず普段どおりになりお昼も取り
それぞれ休憩を取ったりまだ遊んだりと各自が自由に時間を過ごしている中、
後藤は石川をあまり人のいない海岸沿いのヤシの木がたくさん植えられている
場所へと連れてきていた。
ここからはグアムの有名なあの恋人岬が望めた。
- 310 名前:aki 投稿日:2001年10月14日(日)19時31分08秒
- 「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
ここに来てから少し経つが会話はない。
何もケンカをしたりトラブルがあった訳ではないのだが気まずい雰囲気は
まだ拭い去れていなかった。
そして何故か微かに後藤には石川が怒っているように感じていた。
(梨華ちゃん・・・なんか怒ってるのかな・・・やっぱり昨日の事・・・?)
しばらく黙って考えていた後藤だが顔を上げ意を決して口を開いた。
「あ、あのさ・・・・・・」
「な、なに?」
後藤が決心して口を開くが答える石川と共に声に気持ちが現れてしまう。
そして目の前には水着の上にヨットパーカーを着た石川。
その姿がよく似合っていて後藤は思わずくらくらと目眩がするのを覚える。
気を取り直して後藤は再び顔を上げ言った。
- 311 名前:aki 投稿日:2001年10月14日(日)19時31分57秒
- 「き、昨日はその・・・・・・ごめん・・・。」
後藤が俯きながら手をもじもじさせながらそう話を切り出した。
「・・・・え?」
「だから・・・その・・いきなりお酒の勢いとはいえ・・・あんなこと
しちゃって・・・・・」
「・・・・・・」
後藤の言葉に石川はぴくっと反応した。
「ごめん・・・ね。」
目を合わせないでいたが後藤はその言葉と共にちらっと石川を見た。
しかし石川も俯いたままで表情が窺い知る事が出来ない。
「なんで・・・・・謝るの?」
「え?」
「昨日、あたしはてっきり・・・・・それに今だってそれのこと言ってる
のかと思ったのに・・・・・」
「え?え?」
どこか話の通じ合っていない石川との会話に後藤は訳がわからなくなる。
- 312 名前:aki 投稿日:2001年10月14日(日)19時32分36秒
- 「もういいっ!ごっちんなんて知らないっ!」
「り、梨華ちゃん・・・?」
石川はそう言うと後藤が状況が分からないで?を頭の上にたくさん浮かべて
いるがそんなの関係なしにぷんすかと怒り後藤を置いてその場から離れて
帰って行ってしまう。
「あ、あたし・・・なんかした・・・・?」
微かに拗ねるように怒っている石川に後藤は知る限り昨日のことを謝ったが
返ってきた言葉はよく分からずしかも石川は怒りを増幅させ帰って行ってしまった。
そして何かかみ合っていない会話。
後藤にはもはや何がなんだか訳が分からなかった。
- 313 名前:aki 投稿日:2001年10月14日(日)19時33分17秒
- 「お〜いっ!ごっつあんに石川〜〜!!!」
ふとこちらの名前を呼ぶ聞き覚えのある声に後藤と石川は離れながらそちらへ
振り向いた。
「「きゃはは〜〜っ!!!」」
するとそこにいるのは中澤と加護、辻、矢口を乗せたバナナボート一つ。
船に引っ張られながらこちらに向かって手を振っている。
「なんや、ケンカでもしたんか〜〜???」
状況考えず中澤は少しいつもと違う雰囲気の二人に大きな声でそう叫んでくる。
「!!」
後藤はその通りの言葉に何も言えなかった。
「・・・・・・・」
少し離れた石川も何も返事をせずただ黙っていた。
「それじゃ行ってくるわ〜〜っ♪」
中澤は二人の反応に気付きはしたが別段何か特別な返事をするわけでもなく
少し沖に向かって走り出したバナナボートを合図にそう二人に言い残していった。
- 314 名前:aki 投稿日:2001年10月14日(日)19時35分12秒
- 「「・・・・・・・・」」
石川の歩みは止まっており離れた状態で沈黙が流れる。
「梨華ちゃん、あの・・・・・」
後藤の気まずそうな言葉に石川はふっと髪を空に流れさせ振り向いた。
「・・・・・・・」
少しだけ見つめあったまま再び沈黙が流れしばらく経つと石川は何もしないまま
後藤からまたふっと顔を外すと振り向いて歩いていってしまった。
その様子はまだ怒っているような感じで。
「そんなに・・・・昨日の事嫌だったの・・・・?」
後藤には石川の本心が全く分からず落ち込み情けない声を漏らしながら
呆然とそこで立ちすくむしかできなかった。
未だ二人の間に大きな誤解が生じているとは気が付くこともなく。
- 315 名前:aki 投稿日:2001年10月14日(日)19時37分14秒
- 書き溜めてた分全部今日の更新に使っちゃいました。
- 316 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月14日(日)20時01分46秒
- やすかご…珍しい
- 317 名前:マッチ 投稿日:2001年10月15日(月)04時24分30秒
- 長いと汚しちゃうので、サクサクっと(w
こっちもレス頂いた時声があがりました(w
自分の文章や設定を褒められ、かなり励まされやる気がすごいわいてきましたし^^
なんかすっごい頑張れるような気が(w
頑張りますっ!!
本編…
このままごっちんと梨華ちゃんはすれ違っていくのか…
気になります…
ごっちんっ!!ポジテブポジテブ(w
ストックがなくなった時の辛さはわかります…
気休めですけど、頑張って下さい!
- 318 名前:aki 投稿日:2001年10月15日(月)23時45分16秒
- 316:名無し読者さん
>スレ違い・・・かな?
317:マッチさん
>レスありがとうございますっ。
私も一読者として読ませてもらいます^^
応援してますっ!
これは二人にとって幸せなすれ違いかもしれません。
今の状況だからできるすれ違いなので贅沢かも・・・(w
気休めなんかじゃないですよ^^
不思議とかなり頑張れる気になります。
これからも頑張りまっす!
- 319 名前:aki 投稿日:2001年10月16日(火)14時59分51秒
- それから二人の間には気まずい雰囲気が流れていた。
後藤は落ち込み石川は怒り。
どちらもそれぞれの一方的な誤解から生じたことだが二人はそんなこと
気付いていなかった。
- 320 名前:aki 投稿日:2001年10月16日(火)15時01分58秒
- 夕食。
全員はホテルに戻り野外で食べるバーべQを夕食にしていた。
ボリュームのある肉にさまざまな種類のシーフード。
それを野外で自分達が焼いて食べる。
ちょうど夕日が海に沈み始め辺りはどこか切なく真っ赤に染まっていた。
海の帰りのせいかみんな特に今日はラフな格好で夕食を望んだ。
間隔が空くことなくこの場には全員の笑い声となごんだ雰囲気が流れる。
しかし和やかな楽しい雰囲気が流れている中、その二人だけは異なった雰囲気を
出していた。
その二人、後藤と石川は未だ今さっきのままこの場まで延長されていた。
たまに話し掛けられているが反応は二人どちらとも心ここにあらず状態。
そんな二人に矢口が気付く。
- 321 名前:aki 投稿日:2001年10月16日(火)15時02分37秒
- 「ごっつあんに石川、本当にケンカでもしたの?」
隣の吉澤の洋服の裾をチョンチョンッと引っ張ると矢口が小さな声で
吉澤に尋ねた。
「さぁ・・・。ごっちんの言ってたことが原因で梨華ちゃんが怒るとも
思えないし・・・・。」
「なになに?ごっつあんの言ってた事って。」
「あ・・・・、何でもないです。」
「なにそれーっ言ってよーっ!」
矢口が顔を背けてはぐらかす吉澤を問い詰める。
後藤の言ってた事を矢口に話したらこっちまで気まずい雰囲気になるかと
吉澤は思い堅く口を閉ざし矢口から逃げる。
そんな吉澤を矢口が追っかける。
- 322 名前:aki 投稿日:2001年10月16日(火)15時04分02秒
- 「・・・・・・・・・。」
今の後藤には目に映る吉澤と矢口のそんな姿がとても羨ましく思えた。
楽しそうにじゃれあっている二人は後藤の落ち込みをさらに増幅させる。
「はぁ・・・・。」
後藤はちらっと石川を盗み見た。
石川は保田や加護たちと話しながら夕食を取っている。
(なんで・・・怒ってるんだろう・・・・。そんなに嫌だったのかな・・・キス・・・。)
石川の洋服は可愛いタンクトップに膝上のスカート。
よく似合っていて可愛い。
しかし今の後藤にはそんな石川の姿に見とれている余裕がなかった。
(なんで怒ってるんだろう・・・・。)
その理由が未だにわからないでいた。
今までなんどもキスを交わしてきた。
初めてのディープキスがいきおいでああいう風になってしまったとはいえ
石川がそれでそんなに怒るとも思えなかった。
- 323 名前:aki 投稿日:2001年10月16日(火)15時04分42秒
- 「あぁ、あたし他に何かしちゃったのかな・・・・。」
誰にも聞こえないほどの小さい声で後藤は小さく呟いた。
そしてそんな時ばちっと石川と視線が交差した。
「あっ・・・・・」
「・・・・・・・」
目が合ってしまったことに、自分がずっと石川を見ていたことに気付かれたかと
後藤は戸惑ったが自分を見つめる石川の瞳はどこか切なそうで、はっきりとした
感情が分かるような物でなかった。
「・・・・・・・」
それはどこか色っぽく魅力的で艶めかしい雰囲気さえも微かに後藤は感じた。
(ドキドキ・・・・)
それに後藤は目を奪われ胸の中では初めの頃感じたような高鳴りが響く。
- 324 名前:aki 投稿日:2001年10月16日(火)15時05分17秒
- そんな時石川がスッと後藤から視線を外した。
そのまま石川は後藤に背を向けてしまう。
だけどその時の動作が後藤にはまるでスローモーションにしたように
映っていた。
流れる髪、横顔、そして後姿。
その後もしばらくずっと後藤の中の胸の高鳴りは治まる事はなかった。
- 325 名前:aki 投稿日:2001年10月16日(火)22時13分04秒
- 夕食も食べ終えお腹も満たしちょうと太陽も暮れ辺りが暗くなり始めた頃
それぞれ各自部屋に戻った。
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
二人は無言で気まずい雰囲気の同じホテルの部屋に戻ってきた。
「お風呂、入るね。」
後藤がばふっと自分のベッドに腰掛けると同時に石川がそう言った。
「あ、うん。」
後藤は一言それだけ石川の言葉に答えた。
するとすぐに石川は用意しバスルームへと向かっていってしまった。
- 326 名前:aki 投稿日:2001年10月16日(火)22時14分24秒
パタン
ドアの閉まる音が静かに部屋に響いた。
「ふぅ。」
後藤はベッドに横になりそうため息をついた。
あれからずっと考えてみたけど答えは見つからない。
もし昨日の事で怒っていないのなら理由は石川本人に聞くしかないと後藤は思った。
だからもう面倒くさいこと考えないと後藤は開き直っていた。
落ち込んだり考えたりしても疲れるだけだし。
後藤のマイペースな性格がここで発揮されていた。
- 327 名前:aki 投稿日:2001年10月16日(火)22時15分51秒
- 「う〜ん・・・・。」
そんな唸り声を上げながら後藤は寝返りを打った。
今さっきの夕食の時の石川の姿がふと頭の中を過ぎった。
(ドキドキ)
思い出せばすぐに胸の高鳴りが蘇る。
今までもグアムについてから意識していた事もあって部屋では少なからず
後藤は緊張していた。
でも明らかにこの胸の高鳴りは今までのものとは違う。
シャー
「っ!」
バスルームから響いてくるシャワーの音に後藤はびくっと反応した。
- 328 名前:aki 投稿日:2001年10月16日(火)22時16分31秒
- 今までも同じようにドキドキしていたが今日は特に酷い。
それも今さっきの石川の姿を見てからだろう。
「うぅ〜・・・・。」
後藤は目を瞑って見た。
だけど頭の中はぐちゃぐちゃになっていて落ち着くどころではない。
「体に悪いっ!」
後藤はそう叫びながらベッドから起き上がるとそのままベランダへ向かった。
窓を開けて外に出てみる。
手すりにつかまりグアムの市外を眺めた。
風が気持ちよくてやっと落ち着き始めてきたのを後藤は感じていた。
「・・・・・・・」
手すりに頬杖をついて後藤はただ黙って外を眺めていた。
- 329 名前:aki 投稿日:2001年10月16日(火)22時17分02秒
- 他のグアムのホテルや夜のグアムに綺麗に輝く街のネオン。
そして空に浮かぶ月はとても綺麗でたくさんの星も空を照らしていた。
夜の濃い緑のような黒い海に月が綺麗に映って夜の砂浜に向かって
寄せては返す波の音が微かだが小さくこちらに届く。
「・・・・・・・」
夜の海、砂浜、そして綺麗な月に星。
この光景を見るとどうしても彼女と初めて出会った時のこと、
そしてつい最近のことだが勘違いした自分を石川が追いかけて来てくれた時の
ことを思い出してしまう。
そしてその日自分達が結ばれた事も。
自然と後藤の心は落ち着きを取り戻していた。
- 330 名前:aki 投稿日:2001年10月16日(火)22時17分43秒
- 「ごっちん。」
ふとした声に後藤は振り向いた。
「お風呂どうぞ。」
「うん・・・。」
ベランダにいる自分を石川が呼びにきたのだ。
濡れた髪をタオルで拭きながら。
その姿がまたどこか色っぽく目に映ってしまいまたときめき始める
胸の鼓動に後藤は戸惑ったが用意をすると自分もバスルームへと向かっていった。
- 331 名前:aki 投稿日:2001年10月17日(水)00時59分07秒
- 新作、雪板で始めました。
もしよろしければ見に行ってやってください。
- 332 名前:aki 投稿日:2001年10月19日(金)19時38分46秒
- 突然なことばっかりですがちょこっと短編書かせてもらいます。
「とある旅館の物語」はちょっと中途半端ですが少しストップします。
果たしてこの小説読まれている方がいるのか分からないので(w
思いつき小説です。
かけ持ちしすぎと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが
どうか大目に見てやってくださいm(__)m
それじゃ始めます。
- 333 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月19日(金)19時44分38秒
- モーニング娘。
それは日本を代表する歌手グループである。
多くの新聞、雑誌には国民的アイドルなど書かれることもある。
そして中には一人の女優としてドラマに出演したり新たにグループを組み
モーニング娘。とは別に活動したりとその活動は計り知れないほど幅が広い。
これはそんな彼女達によるお話。
「もてる彼女を持つと苦労する。」
そのままだがこれでも題名。
- 334 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月19日(金)19時54分30秒
番組収録前の少し空いた時間。
「・・・・・・・・」
石川はむすっとした表情で雑誌を読んでいた。
その理由はただ一つ。
目の前の不愉快な光景のため。
「後藤さ〜んっ!疲れてませんか〜?」
「え?なんで?」
「だってつい最近ソロで歌出したり、写真集出したり大変そうだからぁ。」
楽屋で後藤がのんびりしていると突然ドアを乱暴に開け放ちお馴染みの
二人、加護と辻が姿を現した。
「大丈夫だよ。」
「本当ですかぁ?」
「うん。」
「肩揉みますよ〜。」
さっきからこんな感じで加護、辻、加護、辻の順番で後藤に話し掛けている。
「いいよ。悪いし。」
「遠慮しないで下さいって。」
そう言い辻が肩をとんとんと叩き始める。
「だめだめそんなんじゃ加護がやる〜。」
「あ、いいの!ののがやるのぉ!」
「ちょっと二人とも・・・・」
後藤を余所に加護と辻はどちらが後藤の肩を揉むかで言い争ってしまう。
- 335 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月19日(金)20時17分13秒
「ねね、ごっちん。今度オフになったらさ買い物でも行かない?」
「え?いいけど・・・。」
もめる加護と辻に気付かれないように吉澤は静かに後藤に近づくと
そんなことを耳打ちした。
自分の事でケンカしている加護と辻に気を取られながら後藤は
そう吉澤に返事した。
「あぁっ!よっすぃー抜け駆けはずるいよ!」
「抜け駆けなんてしてないよ〜。」
「してるじゃんっ!なら辻も後藤さんと今度買い物行きたいです!」
「加護もっ!」
「えぇと・・・・そんなに一杯休みできるかな・・・・」
「だから最初に約束したあたしだけってことで。」
「だめ!よっすぃーが止めて加護と行くの!」
「辻とっ!!」
「ちょ、ちょっと三人とも・・・・・・・」
バンッ!!
後藤がケンカし始めた三人を止めようとしたとき、楽屋にそんな大きな音が
響いた。
- 336 名前:aki 投稿日:2001年10月19日(金)20時18分22秒
「「「「!?」」」」
四人が一斉に音の方へ顔を向けた。
するとそこには、雑誌を荒々しく机の上に置いた石川の姿があった。
「トイレ、行って来るね・・・・」
「「「う、うん・・・?」」」
静かにそう言う石川からは怒りのオーラが半径1mは余裕にかもし出されている。
なぜ石川が怒っているのか分からない三人は首を傾げながらそう返事した。
「あっ、梨華ちゃん・・・・・・」
後藤だけが石川の怒りの意味を知っていた。
出て行こうとする石川に後藤は声を掛けようとした。
- 337 名前:aki 投稿日:2001年10月19日(金)20時19分45秒
「・・・・・三人、それぞれとデートしてあげたら?」
石川は静かに振り向きにこっと笑うと後藤にそう告げた。
だれが見てもお嬢様的な素敵な笑顔。
だけど後藤にだけは分かる。
目が、笑っていない・・・・。
「あ、あの・・・・・・」
「じゃあね」
そう言うと後藤の言葉を無視し石川は楽屋から出て行ってしまった。
- 338 名前:aki 投稿日:2001年10月19日(金)20時20分36秒
- 「梨華ちゃん良い事言うねぇ!」
「でも辻は後藤さんに辻以外の人とデートして欲しくありません。」
「加護も。」
「それ言ったらあたしだってっ!」
三人のケンカは一旦治まったがまた再び始まった。
「・・・・・・・・」
後藤だけがただ呆然と佇んでいた。
また怒らせてしまった・・・・・。
何度目になるだろう。
どれも全部、結局は自分が悪いんだけどね・・・・・。
- 339 名前:ファンクラブNo.221 投稿日:2001年10月20日(土)01時58分43秒
- 初めてレスします。
akiさんの作品は全て読ませて頂いています。
『いしごま』への強い思い入れが感じられます。
自分は、なちまり推しなんですが、akiさんの小説のおかげで、後藤もかわいく見えてきました。
雪版のほうも読んでいます。
どれも先が楽しみです。それぞれのいしごま(&まり)を幸せにしてあげてください。
- 340 名前:aki 投稿日:2001年10月20日(土)10時59分18秒
- 339:ファンクラブNo.221さん
>レスありがとうございます!
いくらでもレスは大歓迎ですっ。
私の書く小説ってなんか他を見てるとレスが少ないかなって
思ったりもしますがたった一つでこんなにもやる気が沸いてきますね。
作品全て読んでくれているなんてとっても嬉しいです(T_T)
それに強い思い入れを感じてくれるなんてもう感激のあまりです。
確かに私の中でいしごまはダントツ一位ですね。
なちまりもその次に大好きです。
後藤もかわいく<そうですか!私も嬉しいです!
雪も頑張っていきます。
期待に答えられるように頑張ります!
そしてHAPPYにっ!
P.s 昨日これを携帯から見たときかなり嬉しかったですvv
- 341 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月20日(土)11時03分32秒
- 石川は楽屋のドアを荒々しく閉めるとそのままトイレには行かず
ジュースを買うために休憩所近くの自販機の前にやってきた。
紅茶を買って、それを一口。
「ふぅ・・・・・・」
怒りで一杯の胸の中が少しだけ軽くなった。
「まったく・・・いっつもいっつもごっちんは・・・・・・」
「お〜いっ!石川ぁ?」
自販機の前でそうぼつぼつ呟いていると疑問の入ったような後ろが
上がり調子の聞き覚えのある声が耳に届いた。
「・・・・・矢口さん・・・・。」
後ろへ振り向くとそこには手を上げる矢口の姿があった。
- 342 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月20日(土)11時05分44秒
「どうしたの?・・・・・まさかまた・・・・・?」
「そのまさかです・・・・。」
「あらら・・・。矢口としては外れて欲しかったよ。」
「矢口さん・・・・・」
近づいて来ながら言った矢口の言葉に石川は力なく頷いた。
しかしその次の素朴な矢口の優しさにに石川は少しだけ嬉しそうに微笑んだ。
「まぁ、ごっつあんはね・・・・しょうがないって言ったらどうしょもない
けど・・・・。」
「・・・・もう何度もそう納得しようとしました・・・。」
「・・・・そうなんだ。もう笑うしかないよね。あはは・・・・・」
矢口の笑いは途中で切れてしまう。
- 343 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月20日(土)11時06分58秒
「はぁ・・・・」
石川はそうため息をこぼし紅茶の入った缶を握り締めた。
実は後藤と石川はメンバーの中でも一部を除いて極秘に付き合っているのだ。
当然矢口は知っている方に入る。
だからこの話はもう数えられないほどしてきた。
その話の内容は、
そしてこの気持ちの原因はただ一人。
他でもない後藤真希、彼女だった。
そう後藤はとっっってももてるのだ。
それも男女関係なくメンバー内含めて半端な数じゃない。
- 344 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月20日(土)11時07分34秒
- もう何度目だろう、こういう気持ちになるの。
付き合い初めてからドキドキよりもこっちの方が多い気がする。
そりゃ、後藤がもてるのは分かる。
だって石川の目から見てもすっごくかっこいいから。
雑誌の撮影の時だって一番ごっちんが光ってる。
もうプロのモデルさん顔負けのさまざまなポーズ、目線の使い方やもはや
完璧な被写体といっても過言ではない。
ソロで歌手活動したりドラマ出て女優デビューを飾ったりと
その活動はモーニング娘。の中でも一際目立っている。
知名度も、たぶん彼女が一番高いだろう。
それに比べ自分は・・・・・なんてネガティブな思考に陥ってしまいそうになる。
- 345 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月20日(土)11時08分35秒
今はもう慣れて来たが前はそれはもう酷かった。
かなり落ち込んだ。
言ってしまえばこんな事に慣れたくもなかった。
「ごっちんの方から告白してきたくせに・・・・・」
そう、そもそも二人が付き合い始めたのは後藤の告白から。
『あのさ・・・・その、初めて見たときから・・・梨華ちゃんのこと気に
なってて・・・・つまり、その・・後藤、梨華ちゃんのこと本気で好き
なん、だよね・・・・』
突然の告白にそりゃあもう石川はびっくりした。
- 346 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月20日(土)11時09分36秒
『本気で、付き合いたいって後藤は思ってる・・・・。』
今までの人生で二番目くらいにびっくりした出来事だったと思う。
(一番目はモーニング娘。に入れた事で・・・・。)
それは新メンバーとしてモーニング娘。に加入してからしばらく経って
やっとこの仕事にも慣れ始めてきた時の出来事だった。
石川は後藤と初めて対面した時は今でもよく覚えている。
すごく、緊張していた。
テレビで第一線に活躍する彼女に生で会った時は。
そして突然の告白にもちろんとても戸惑った。
仕事と両立できるか、メンバー内でいいの?とかいろいろ考えた。
だけどその場で自分も自分の気持ちを告白したんだ。
自分もずっと気になってたって。
- 347 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月20日(土)11時11分22秒
初めて会ってそれから実際に話をして、その間ずっと石川も後藤のことを
少なからず意識していた。
後藤の側に寄るとドキドキした。
こんな気持ちは、今までで初めてだった。
そして付き合うことに対して返事をした。
だけど、だんだん後藤の中身が分かり始めた。
付き合う以前のそれまででは分からなかった事。
自分が知らない恋人の一面を知れることはとても嬉しい。
だけど、それは嬉しい方じゃなくて・・・・・。
- 348 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月20日(土)11時11分59秒
- 「まぁ、何かあったら矢口にすぐ言いな。いつでも話聞くからさ。」
「すいません・・・いつも・・・・・。」
「いいのいいの。逆にそういうこと言われると困っちゃうじゃん。」
矢口の言葉に一旦回想モードが止められる。
矢口は後に「元気出せよ」と付け加え石川の背中を軽く叩いた。
そんな小さな行動が、とても暖かく嬉しかった。
話は戻り、知らなかった後藤の一面。
それに決定的なものが一つ。
- 349 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月20日(土)11時12分39秒
- 鈍感、ということ。
それもかなりひどい。
そして女の子なのに女心が分からない。
言葉に出して並べて行くときりがない。
優柔不断。
そして、優しい。
とても優しい。
それは私だけにではない。
メンバー全員に優しい。
いつも周りのこと考えてて見えないところで気を配ってる。
- 350 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月20日(土)11時15分14秒
そんなあなたを見ていると、とても辛い時がある。
だけど私は何も言えない。
それは私から生まれるただの醜い「嫉妬」という感情だから。
仕事と、プライベートを区別できないわがままだって自分でも
分かるから。
だけど、頭で理解しようとしても、自分の気持ちは誤魔化せなくて。
怒ってる半面、いつも私の中には切なさがあった。
だけど、言えない。
言っちゃいけない。
時に流れる涙。
私の瞳から自然と零れ落ちる涙は、とても自分の気持ちに素直だった。
一人でとてつもなく不安な夜も過ごした事もある。
お願いだから、分かってよ。私の気持ち。
こんなにも苦しいんだよ?
あなたのことが好きすぎて、この胸は張り裂けそう―――――――
どうして、あなたは気づいてくれないの?
- 351 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月20日(土)13時56分01秒
- 旅館の方の続きも気になるけど、この話の続きも気になります。
たくさん書いていて大変でしょうが、がんばって下さい。
更新されるのを首をなが〜くして待ってます。
- 352 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月20日(土)15時03分17秒
- こちらも新作ですね。
モテモテのごっちん、ジェラシーの梨華ちゃん…最高です。
雪板ともども、毎日チェックさせていただきます!
- 353 名前:aki 投稿日:2001年10月20日(土)19時26分07秒
- 351:名無し読者さん
>レスありがとうございますっ。
「とある〜」の方は長編にするつもりで書いていって
今に至るのですが、長ったらしくなってしまったのと
反応もだんだん薄くなり始めていたので心配していましたが
少し安心しました。
一度「かけ持ち」というのをしてみたく結局三つも
持ってしまいましたがどれも気を抜かず書くことを約束します。
首が長くなりすぎないように更新頑張ります!!^^;
352:名無し読者さん
>レスありがとうございますっ。
「とある〜」の中での小さな短編にしようと思っていたのですが
どうやら新作という形になりそうです^^;
最高です>嬉しいお言葉ありがとうございますm(__)m
毎日チェック>とっても嬉しいです!できるだけ答えられるように
私も頑張りますっ!
- 354 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月20日(土)20時50分34秒
- 仕事は予定通りさっさと終わり、雑誌の撮影、それぞれのグループの
PV撮影で午後はメンバー全員それぞればらばらな仕事だった。
結局、自宅に帰ってきたのは午後8時半。
石川は荷物を無造作に部屋の中に投げるとソファに寝転がった。
そんな時、自宅の電話機の留守番電話が入っている事を示すランプが
付いていた。
「誰だろう・・・・」
石川は気だるそうにソファから立ち上がると再生のボタンを押した。
- 355 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月20日(土)20時51分29秒
- 「もしもし?母さんだけどまだお仕事から帰ってないみたいだから留守電に
入れておくわね。近頃忙しいみたいで姿はもちろんのこと声も聞いてないから
お父さんも心配しちゃって・・・・。食事ちゃんと取ってる?どんなに
忙しくても体にだけは気をつけてよ?・・・それじゃ、そろそろ切るね。
これからもお仕事頑張ってね・・・・・」
ガチャ。
電話を静かに丁寧に切る音が最後に響いた。
「お母さん・・・・」
『午後7時20分38秒・・・・・・消去しますか?』
電話機から機械的な声が響く。
「・・・・・・・」
石川は静かに保存のボタンを押した。
- 356 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月20日(土)20時52分42秒
「ありがとう・・・・・」
とても嬉しくて、単純な私は今日の一日の疲れなんてそれだけで
忘れてしまう。
側にいる時はそれが当たり前で気付かなくて、
離れて分かるその大切さ。
小説で定番のくさいセリフのようだけどそれは今、実際に感じてみて
痛いほどに理解できる。
両親の不安をすぐにでも取り除いてあげたかったけど残念ながら今の
石川にはそれは無理に近かった。
「眠い・・・・・」
とてつもない睡魔が石川を襲ってきたのだ。
まだお風呂にも入っていないのに。
- 357 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月20日(土)20時53分48秒
- この眠気は前にも味わった事がある。
それは確か自分が中学生の時。
そう、大事な試験が終わった後のその次の日だ。
一週間前から夜遅くまで勉強して時には徹夜して、そして全てが終わった
日だ。
もうモーニング娘。に入ってからこれはどれだけ体験しただろう。
それまでは滅多にこんなことなかったのに・・・・。
「もう限界・・・・・」
石川の思考はそこで限界を迎え考える事もできなくなりただベッドに石川は
突っ伏した。
- 358 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月20日(土)20時55分38秒
「ごっちん・・・・・・」
付き合って間もないけど、想いが通じ合ってからキスしたことは
まだ数えるほどしかしてない。
本当はもっと感じたいあなたのぬくもりも、ずっとお預けだ。
「くぅ・・・・・・・」
石川はついに眠りについた。
深い、深い眠りの中へ。
- 359 名前:aki 投稿日:2001年10月20日(土)20時57分49秒
- 今日はここまでです。
少し書き溜めたんですがこの次を出してしまうとその後では
区切りがいい場所がなくなってしまい今日書き溜めた全部を
のせなくてはいけないことになってしまうので(w
これはもう短編どころじゃなくなりつつありますね(ーー;)
- 360 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月21日(日)01時19分18秒
- akiさんの描くいしごまは、私の中ではベスト!です。
テレビでも、ちょっとしたいしごまシーンを見るとうれしいんですけど、akiさんの
小説を読むと、それに似た気分になれるんです。
旅館も短編も、続きをめちゃめちゃ楽しみにしてます!頑張ってください!!
- 361 名前:いたこ 投稿日:2001年10月21日(日)03時24分22秒
- 旅館ではごっちんが、短編では梨華ちゃんが切ないっすねえ・・・。
どちらも続き楽しみっす!
がんばってください!
- 362 名前:aki 投稿日:2001年10月21日(日)10時49分23秒
- 360:名無し読者さん
>レスありがとうございます!
ベスト!>本当ですか!すごい嬉しいです。書いてて良かったv
テレビでのちょっとしたいしごまシーン>分かります。私もです^^;
ほんのちょっとですごいおっ!って敏感に反応して私も嬉しい
気持ちになりますね。
似た気分>おぉっ!本当ですか!嬉しいです!自分の書いた小説に
よって読者さんがそういう気分になってくれるなんてかなり私も嬉しいです!
旅館も短編も楽しみに答えられるように気を抜かず最後まで頑張りますよーっ!
- 363 名前:aki 投稿日:2001年10月21日(日)11時03分00秒
- 361:いたこさん
>レスありがとうございますっ。
旅館ではごっちんが・・>ですね。でもこっちはあと少しでHAPPYな
方向へ突入していくと思われるのでまだいいんですが・・・
短編では梨華ちゃんが・・>こっちはかなり切ないものになると思います。
いたたたと声に出るぐらいに・・・。
どちらとも楽しみにしてくれて嬉しいですっ!
続きも頑張りますよ〜。
- 364 名前:aki 投稿日:2001年10月21日(日)11時04分15秒
- ※これから※
レスにも書きましたが短編はこれからもっと切なくなってくると思います。
この短編の密かな目標が「自分でも書いてて胸が切なくなるように」って
ほんっとうに密かにあるので・・・。
小説に限らず一つの作品はそのストーリーで人の気分が多様に変化する
とても影響のあるものだと思うのですが読んでて気持ちが悲しくなったり
暗くなったりしてしまったらごめんなさい。
思わせぶりなこと書いててもそうならないかもしれませんが^^;
旅館の方も、本当にごく少数のしか読まれていないただの自己満足小説に
なっているのかとも思ったりもしましたがたくさんのレスはそんな不安も
消してくれました。
小説を楽しくかけてしかもたくさんの読者さんから嬉しい返事がもらえて
本当に幸せです。(なんかスピーチみたい・・・(−−;)
これからもがんばりますよーっ!
長くなってすいませんm(__)m
- 365 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月21日(日)11時06分46秒
―――――――――――
「ごっちん〜今度のオフうちで遊ぼうよ〜」
「うん、いいよ〜。」
『え?ちょっと待ってよ・・・・。』
よっすぃーの誘いに簡単にのってしまうごっちん。
それに戸惑うあたし。
だけど皮肉にもあたしの声は、目の前のごっちんには届かない。
- 366 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月21日(日)11時07分39秒
「後藤さん!辻、後藤さんに憧れてるんですっ!」
「本当に?照れるなぁ。」
「後藤さ〜んっ!!加護と今度デートしましょー。」
「休みが取れたらね。」
いつもの二人に、ごっちんは優しい笑顔を浮かべて答える。
『・・・・・・・・』
みんな、あたしの存在には気付いていない。
白い霧に包まれて、ごっちんとみんなが接するところがガラスの壁を通して
あたしの目に映る。
みんなにはあたしの姿は映っていない―――――
- 367 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月21日(日)11時08分48秒
あたしは・・・あたしだけの別の世界に押しやられ、そこから必死に届かない
声を漏らし壁を必死に叩いてその光景を見ていた。
そんなあたしの気持ちなんて知らずに優しい笑顔を浮かべて
他の子と接するごっちん。
「やだよ・・・・・・・・」
石川は何もない真っ暗な世界の中で立ち上がれず力なく座り俯き涙を零し
ながらそう小さく呟いた。
- 368 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月21日(日)11時09分46秒
「こんなのやだよっ!!!」
自分と、向こうの世界を隔てる薄いガラスの壁をあたしは体当たりして突き破った。
まるで、スローモーションのようにガラスが飛び散る。
「・・・・梨華ちゃん?」
すると、今見つめていたごっちんがあたしを驚いた表情で見ながら
あたしの名前を呼んだ。
「ごっちん・・・・・」
そんなごっちんをあたしは真っ直ぐ正面から見つめ返した。
「・・・梨華ちゃん泣いてるの?」
「・・・・・・・」
そんなごっちんにあたしはただ黙って見つめ、止め処なく流れつづける
涙を拭わず流していた。
- 369 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月21日(日)11時11分36秒
「どうして泣いてるの?何かあったの?」
そんなあたしにごっちんは心配そうにしてあたしの肩に手を掛けようとする。
そんなごっちんの手をあたしは冷たく払った。
「梨華ちゃん・・・・?」
「どうして・・・・・」
「怒ってるの?・・・また後藤何かしちゃった?」
「・・・・どうしてよ・・・・」
誰にでも浮かべるような心配そうなごっちんの顔、そして聞き飽きた言葉に
あたしは問いかけるようにやるせない気持ちでいっぱいの胸を必死に
なだめてそう呟いた。
「え・・・・・?」
そんなあたしの声が聞き取れなくて首を傾げるごっちん。
- 370 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月21日(日)11時13分02秒
「どうしてよっ!!!」
あたしは強い口調でそうごっちんに叫んだ。
「梨華ちゃん?」
「なんで分かってくれないの!?」
あたしの中で必死に気持ちを押しとどめていた留め金が弾け飛んだ。
「嫌なの!ごっちんが他の子に優しくしてるのを見るのはっ!!」
せきを切ったように胸一杯に閉められていた想いをごっちんにぶつける。
「いつも泣いてた・・・!誰にも気付かれない場所であたしはずっと
ごっちんを想って涙を流してたっ!」
「・・・・・・・」
だけど、そんなあたしの言葉をただ黙って叫ぶあたしを見つめるごっちん。
- 371 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月21日(日)11時14分12秒
「お願いだからあたし以外の人を見ないで・・・・。あたしだけを
見つめていて・・・・・」
流れる涙を俯くようにしてやっと拭いながらあたしは懇願するように
ごっちんに告げた。
「・・・・・・・・・」
だけど、ごっちんからは返事はこない。
ただ今さっきと変わらず黙っている。
「ごっちん・・・・?」
そんなごっちんの様子にあたしは俯いていた顔を上げた。
だけど、そこにはあたしの望むごっちんの笑顔や優しい表情はなかった。
ないに、等しかった。
ただ黙って感情の全くない表情であたしを見つめてた――――――
- 372 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月21日(日)11時15分05秒
「ごめんね・・・・。」
ふとそんなごっちんの口からそう言葉が漏れた。
「ごっちん・・・・」
分かってくれた、やっとあたしの気持ちに。
そう思った。
だけど、そんな嬉しさで込みあがるあたしの胸は次の一言で凍りついた。
- 373 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月21日(日)11時16分40秒
「もう、あたし達の関係終わりにしたほうがいいかもね。」
「え・・・・・?」
「別れよう。」
まるでなんでもないような表情でごっちんはただ普段どおりの口調で
あたしにそう言った。
そして、ごっちんはあたしに背を向け暗い向こうへ歩いていこうとする。
「ま、待ってっ!どうしてそんなこと言うの!?」
「後藤とは一緒にいないほうがいいんだよ。そうすれば梨華ちゃんも
涙流さないで済むでしょ?」
後藤はすっと石川の方へ振り向きそう静かに告げた。
そして、そんな後藤から少し離れた場所に吉澤や加護、辻の姿が現れる。
- 374 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月21日(日)11時17分42秒
「後藤さん、早く行きましょう!」
「ごっちんっ!」
「後藤さん!」
後藤を向こうから呼ぶ三人。
「だから後藤はもう梨華ちゃんの前から消えるよ。」
「ま、待ってっ!お願い!」
そんな石川の言葉は空しく後藤は吉澤達と共に下からゆっくりと体が消えていく。
「・・・・・ばいばい。」
「ごっち・・・・・!!」
石川が後藤の名前を呼び終わる前に、後藤はそんな言葉と共に吉澤達と
消えてしまった。
- 375 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月21日(日)11時19分00秒
「あっ・・・・・・・」
力なく石川はそう呟き、絶望的な表情を浮かべ地面に崩れる。
「違う・・・・・あたしは・・あたしはこんな返事を望んでたんじゃない・・・。」
震えながら独り言を零すように石川は訴える。
「どうして・・・・・・」
やっと止まった涙はまた止め処なく瞳から溢れ出し始める。
「どうして分かってくれないのーーーーっ!!」
自分だけが存在する世界で石川はうずくまりながらこれ以上大きい声は
出ないだろうと思うほどの声で吠えるように叫んだ―――――――
- 376 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月21日(日)11時20分26秒
- ――――――――
「い、いやぁ!!!」
石川は叫ぶように声を上げながらベッドから体を起こした。
「はぁ・・・・・はぁ・・・」
上半身を起こしベッドに座るようにして石川は息を切らせながら
呆然としていた。
(ゆ、夢・・・・・?)
確認するように石川は自分の見慣れた部屋を見渡した。
そこには今見ていた恐ろしいほどの悪夢の面影は幸いにも全く残っていなかった。
- 377 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月21日(日)11時21分55秒
微かに自分の胸を撫で下ろしある方向へ目を向けた。
「・・・・時間は・・・・?」
深夜2時。
どうやらあの後ずっと深い眠りについていたらしい。
「・・・・・寝ちゃったのか・・・」
やっと息も整い石川は少しづつ平静を取り戻し始めた。
「・・・・・・・」
石川は自分の頭を掴むようにして手を当てた。
「・・・なんて・・・悪趣味な夢なの・・・・」
石川は思わずそのままの姿勢でため息混じりに苦笑する。
もうこれで何回目だろう。
数えてなんかいないがかなりの数はこなしていると思う。
だけど、今日のはその中でも一番最悪で恐ろしいものだった。
- 378 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月21日(日)11時23分19秒
「・・・・・涙・・?」
そんな時、ふと顔近くに触れた自分の手が濡れた事に気付いた。
手には自分の涙らしき液体がついていた。
確認するように頬を触ってみるとそこには広い範囲で濡れた後のある
感触が残っていた。
「・・・・・・夢で良かった・・・」
どんなに恐ろしくてもそれは現実とは異なる夢の世界の事であって。
どんなに怖かったとしても目を覚ましてしまえば全てそれは夢だって
思えることに感謝していた。
今の石川には、恐ろしい夢に対して怒ることなんてことはできなかった――――――
- 379 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月24日(水)18時32分27秒
- それから石川はシャワーを浴び手身近にお風呂を済ませた。
その後しばらく目が覚めてしまい眠れないでいたがもう今さっきのような
悪夢を見ないですむように願いそのまま再び眠りの中へついた。
- 380 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月24日(水)18時33分58秒
朝。
午前7時半。
今日もモーニング娘。として仕事がたくさん入っていた。
少し仕事場へ向かう足取りは重かったが石川はなんとか時間どおり集合場所へ
着く事が出来た。
「おはようございまーす。」
一番最後にごっちんが仕事場に現れた。
それは本当に遅刻寸前の時間だった。
「梨華ちゃんおはよー。」
「お、おはよう。」
あたしはいたって普通を装いごっちんに答えた。
結局あの後は何も夢を見ないでそのまま熟睡できた。
朝、体を起こした時少しだけ体がだるかったけど・・・。
- 381 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月24日(水)18時34分34秒
- テレビの撮影、雑誌のインタビューに写真撮影、いつものように目まぐるしく
一日が過ぎていった。
「お疲れ様でした〜。」
やっと終わったのは午後6時。
あまり休みが間に入らなかったけど今日はいい方かもしれない。
明日は久しぶりのオフだった。
あたしは明日は思う存分に休む事にしようと思った。
近頃少し精神的にも体力的にも限界が近づいていたから。
そして今もスタッフの人たちに声をかけさっさと帰ろうとしていたところだった。
- 382 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月24日(水)18時35分39秒
- 「あ、梨華ちゃんっ!」
突然後ろからかけられた声にあたしはすぐに振り向いた。
それは自分の名前を呼ぶ声の中で一番好きな声だから。
すると思った通りそれはごっちんの姿だった。
「お〜いっ!」
手を上に上げ大きく振りながらこちらに走ってくる。
「ごっちん・・・」
あたしは気が付いたように自分の髪を手で少し整えた。
髪を整え終わったと同時にごっちんが目の前にやって来た。
「はぁ・・・良かった、間に合って・・・」
「どうしたの?」
膝に手を置き肩で息をしているのであたしはごっちんの顔を覗き込むようにして
尋ねた。
- 383 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月24日(水)18時36分23秒
- 「明日オフだからさ・・・・その・・・これから梨華ちゃんの家行ってもいいかな?」
「え・・・?」
突然の言葉にあたしはどういう意味か分からなかった。
「今から?」
「うん。あっ・・・迷惑だったら別にいいんだけど・・・・。」
「迷惑だなんて・・!そんなことあるはずないよ。」
「ほんと?それじゃ早く行こっ!」
そう言うとごっちんはあたしの手を取り言葉通り走って行こうとする。
「う、うんっ!」
昨日の悪夢は微塵も今の梨華の心の中には存在していなかった。
あなたの手から伝わるぬくもり。
そんな些細なことだけで疲れなんて吹き飛んでしまう。
落ち込んでいた気持ちも全て取り除かれてしまう。
まるで魔法のように、あたしの気持ちをさまざまな感情で埋め尽くす。
一歩前であたしの手を引くごっちんの後姿が今日はとても近くに感じられた。
- 384 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月24日(水)18時37分17秒
- 午後6時50分。
二人は梨華の家に到着し、今は夕食を真希が作っているところだった。
フライパンをちゃっちゃか手際良く振り料理を作っていく。
「うわぁ、上手だね。」
梨華は空腹で仕方ない自分のお腹を手で押さえながら真希の横から
顔を出した。
「へへ、いっつも手伝わされてたからね。」
照れたように笑い梨華に答えるがその状態でも料理に味付けをすることも
おこたらない。
ほんのちょっとの時間で食卓はにぎやかな物になった。
「ずっとコンビニのお弁当だったから手作り料理なんて久しぶりだよ。」
「あはっ、そうなんだ。ちゃんと食べないと駄目だよ?」
二人はテレビをつけ真希の作った料理を頬張った。
どれもおいしくてお腹も心も一杯になった。
- 385 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月24日(水)18時38分19秒
- (そういえば、気付けばお母さんの料理もずっと食べてないなぁ・・・・。)
食べ残しなく全て食べ尽くされた皿を梨華はまとめ、運びながらそんなことを
思い起こしていた。
「・・・・・・・・」
そんな梨華の様子を真希は気付き黙って見ていた。
「・・・どうかした?」
「え?」
「いや、なんか落ち込んだみたいな顔してたから。」
洗い場で真希がお皿を洗い梨華がそれを拭いているとふいに真希がそう
梨華に話し掛けた。
「顔に出てた?」
「うん。」
「そっか・・・・」
そんな時梨華の頭の中にふと過ぎる。
(見ててくれたんだ・・・・)
真希がそんな自分の様子に気付いてくれたのが梨華は嬉しかった。
- 386 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月24日(水)18時39分04秒
- 「近頃家に帰ってないからお母さんの料理も食べてないなぁ・・・って。」
「・・・・・そっか。」
梨華は懐かしむようにして真希の言葉に答えた。
どことなく元気を装っているように真希には聞こえ少しだけやるせない
気持ちになった。
少しの間二人の会話が止まりただ作業をこなしていた。
全ての片づけが終わり、二人は一緒のソファに座りテレビをただぼーっと
見ていた。
しかしどれもつまらなく真希はリモコンで何度もいろんな局に回す。
「あー、つまんないのばっかり。」
結局そう言うと真希はテレビの電源を消した。
スッと小さな音を立てテレビから映像が消え真っ黒になる。
それと同時に部屋の中に再び沈黙が訪れた。
真希の様子が少し洗い物が終わった辺りから微かにだが変わったのを梨華は
気付いていた。
いつもの真希のようにいろんな話をしたりすることもせずどことなく
ぎくしゃくしている。
- 387 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月24日(水)18時39分47秒
- (あたしなんかしちゃったかな・・・・)
そんな疑問が梨華の中に生まれたがまた顔に出たりして真希を心配させてしまう
のも悪いと思ったので梨華はそれに気付かないふりをして普通を装っていた。
沈黙は相変わらず流れるが変に会話をしようとするのも変かと思い梨華も
そんな真希の様子を見ながら黙っていた。
「・・・・・あのさ。」
ふと真希が静かな部屋の中でそう口を開いた。
「うん?」
「今日さ、泊まっていっても・・いいかな?」
真希の少し言いづらそうにして言った突然の言葉に梨華は一瞬動作が止まり
びっくりしてしまった。
- 388 名前:aki 投稿日:2001年10月24日(水)18時41分19秒
- 久しぶりにこっち更新しました。
結構書き溜めたので(w
感想なんでも下さい^^
- 389 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月24日(水)21時44分51秒
- いいところで切りますね〜(w
このままうまくいくんでしょうか?
- 390 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月24日(水)23時35分12秒
- ガンガン読んでますー。
akiさんの読んでると
ああ、いしごまはしみじみええなあー
って、思っちゃうっス。
- 391 名前:ちび 投稿日:2001年10月25日(木)00時07分26秒
- 今日始めて最初っから読みました
かなり面白くてノンストップで読み終えました
自分はよっすぃー一押しのいしよし好きなんですが、
ここの話は大好きです♪
短編もとある〜の方も楽しみにしてます
頑張ってくださいね
- 392 名前:aki 投稿日:2001年10月25日(木)12時20分03秒
- 389:名無し読者さん
>レスありがとうございます!
この小説は特に区切るのどこにしようか迷うんですけど
いい所で良かったです(w
このまま>どうなるでしょう・・・。なるかもしれないしもしかしたら・・・
って感じですね^^;
390:名無し読者さん
>レスありがとうございますっ。
ガンガン読んでくれてますか!嬉しい限りです(T_T)
いしごまは・・・>嬉しいお言葉本当にありがとうございます。
やる気がばんばん出てきます!
391:ちびさん
>レスありがとうございます!
最初から、しかもノンストップ!こんなに長くなっちゃってから
読んでもらえるのはすごく嬉しいです。
ここの話は・・・>ありがとうございます(T_T)そういってもらえると
この上なく嬉しいです。
短編もとある〜も期待に答えられるように頑張ります!
- 393 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月25日(木)18時11分21秒
- 「え?え?それって・・・・・」
「う、うん。そのつまり・・・・・」
真希の言葉はそこで止まってしまい後が続かないでいた。
「いや、あのさ明日オフだしさ。それに今から家に帰るのも面倒くさいし・・・
その・・・・」
必死に違う事で弁護するが真希の顔は紅くなっておりそれに梨華の顔も
自然と紅くなってしまう。
「だ、駄目ならいいんだけど・・・・」
今日の真希はやけに遠慮がちだった。
いつものテレビで活躍している様は全く感じられない。
そんな真希の様子に梨華は少しだけ嬉しくなる。
仕事をしていたりソロで活躍する彼女を見るとたまに近くにいるのに
遠くにいるような感じに陥った事もあった。
- 394 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月25日(木)18時12分07秒
- だけど、彼女は街にいるその辺の女の子と同じく一人の後藤真希として
自分の目の前に存在していた。
手の届かない遠く向こうにいるように思っていたのに今自分の目の前に
彼女はとても可愛らしく愛らしかった。
普段では考えられないそんな彼女の姿に梨華は嬉しくなり微かに微笑んだ。
「ダメなわけないでしょ。ごっちんだもん、もちろんいいよ。」
梨華はにこっと笑い俯き加減だった目の前の真希にそう答えた。
「ほんと!?」
その言葉と共に途端に真希の顔が明るいものになる。
「うん。あたし、ごっちんとなら・・・・いいもん。」
そんな梨華の言葉に真希がぼんっと一気に顔を赤らめた。
自分の思い描いていた後のことまで含めて返事されてしまったから。
「あ、あの・・・・あたしは別にそれが目的で今日梨華ちゃんを
誘ったわけじゃ・・・・」
少しの嘘を交えて真希は頬を紅くしながら弁護した。
本当は少なからず頭の中でこうなることを期待し思い描いていた。
- 395 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月25日(木)18時12分42秒
- 「いいよ、別に。誘った理由がそれ目的でも違くても。」
必死な言い訳も虚しく梨華はさらっと真希の言葉をかわしてしまった。
しかし紅くなりながら言ったその言葉は真希を嬉しくさせる反面
何も言えなくなってしまった。
嬉し恥ずかしの気まずさが部屋の中に漂っていた。
- 396 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月25日(木)18時13分15秒
- 「梨華ちゃん・・・・」
真希が優しく梨華の名前を囁いた時、
プルルルルー
どこからか携帯の音が部屋に響いた。
「「!!」」
二人は同時にびくっと反応した。
突然介入してきたその音にまるで一部始終を見られているような気になった。
「け、携帯・・・・」
「ごめん、あたしだ。」
二人は同時に鞄から携帯を取り出し、それは真希の携帯から発せられていると
気付く。
- 397 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月25日(木)18時13分52秒
- 「あ、よっすぃーからだ。」
「え・・・?」
「なんだろう?」
真希が首を傾げながら電話に応じる為、ボタンを押そうとした。
「ま、待って・・・!」
「え?」
梨華の中にそれが「よっすぃー」からだと分かった時、今日見た悪夢の
存在を思い出した。
そして胸の中に途端に広がってくる不安。
今の今までずっと真希という事でそれは全く拭い去れていたのだが
またそれが胸の中に生まれてくる。
梨華はとっさに電話に出ることを止めようとした。
久しぶりの二人だけの時間、ずっと味わえなかった真希との時間。
それがかき消されるのは嫌だった。
しかし、後に「出ないで」と続ける前に真希は梨華の言葉に首を傾げると
共に時は既に遅く携帯のボタンを押してしまっていた。
- 398 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月25日(木)18時14分43秒
- 「あっ・・・・・」
それを見て不意に梨華の口から小さくそんな声が漏れる。
「ごめん、ちょっと向こうで話してくるから。」
真希は申し訳なさそうに手を顔の前に出し謝る仕草をしながら
小さくそう言うとその場を後にした。
「ごっちん・・・・」
真希の取った理由はわざわざ梨華の前で電話をしてしまうのは悪いと
思い取った行動なのだが、それは梨華の心を深いところまで暗くしていく。
まるで、二人の世界がそこで繋がり自分は介入してはいけないような
感覚に陥った。
部屋の向こう、玄関近くの廊下で真希はひとみと電話をしていた。
そこから漏れてくる時に楽しそうに笑う真希の声に余計に不安はかきたてられる。
そして無意識に今日の夢と重ねてしまう。
真希のことを連れて行ってしまう三人。
自分だけ取り残されて地面に泣き崩れる様を石川は思い出していた。
- 399 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月25日(木)18時15分23秒
- 「・・・・・・・」
とてつもない不安。
それに梨華は微動だに動けなくなり言葉も口から発せられなくなっていた。
(どうして・・・・どうして二人でいる時もあたしだけを見つめてくれ
ないの・・・・・?)
「うん・・・・分かった。それじゃね。うん、ばいばい。」
向こうで真希の声と共に携帯が切られる音がこちらに響いてくる。
- 400 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月25日(木)18時16分10秒
- 「いやぁ、ごめん。よっすぃーが明日のことどうするのとか言っててさぁ。
後藤その事ぜんっぜん覚えてなくてさぁ・・・・」
真希は言いながらソファの梨華の所へ戻って来たがどこか様子の違う梨華に
首を傾げた。
「梨華ちゃん?」
「・・・・・・・・」
ソファの横に、今さっきの場所に真希は戻って来てそう梨華を呼びかけてみるが
返事は返ってこない。
「あ、でも大丈夫。明日のことは断っといたから。もちろん梨華ちゃんの
家にいることは言ってないし・・・」
「・・・・・・・」
そんな慌てて弁護する真希の言葉に微かに胸の中でズキンと響く音が
自分の耳に届いてくるのを梨華は感じた。
(どうして二人の時もあたし以外の人をを見るの・・・?)
梨華の中で膨らんでいくやるせない気持ち。
- 401 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月25日(木)18時17分02秒
- 「・・・・梨華ちゃん?」
「どうして・・・電話出たの・・・?」
梨華は顔を覗き込もうとした真希にそう言葉を投げかけた。
「え?」
「どうして?」
俯きがちだった顔を上げ真希に向き直り目を見ながら尋ねた。
「どうしてって・・・だって何かと思ったから・・・・」
「・・・・・・・・」
首を傾げて梨華の質問に答える真希に梨華は胸が締め付けられるような
気持ちにかられる。
「二人でいる時も電話にごっちんは出るの?」
「梨華ちゃん・・・・・怒ってるの?」
「答えて。」
いつもでは考えられないほど今の梨華の口調はきつめだった。
それは梨華本人でも感じていることだった。
しかし、そうしないと目から熱いものが込み上げてきそうになる。
- 402 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月25日(木)18時17分55秒
- 「だって、何かと思うじゃん。」
真希はため息混じりに少し困ったように梨華に同じ答えを返した。
(なんで?・・・・なんでごっちんそんな顔するの・・・?)
梨華は心の中で切実な口調で真希に問い掛けた。
真希は困ったように梨華を見ていた。
「もうさぁ、やめようよこういうの。せっかく久しぶりのオフなのに・・・」
「せっかくのオフの二人の時間を壊したのはごっちんじゃない!」
梨華は何も分かっていない真希に梨華にしては珍しく口調を荒げて怒鳴った。
「・・・・・・・・」
そんな梨華の様子に少し戸惑う真希。
しかし梨華の言い方に真希はムカッとし、そして言い返す。
- 403 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月25日(木)18時19分04秒
- 「梨華ちゃん、何怒ってんの?なんか変だよ。」
「変なのはごっちんでしょ!!なんで分かってくれないの!?」
「たかが電話に出たくらいでなんでそんなに怒るのさ!!」
一変して部屋の中の空気は今さっきの雰囲気を全く漂わせないとげとげした
ケンカムードが流れる。
「だって滅多にない二人だけの時間なんだよ!?それなのにどうして
電話に出るの?」
「だからぁ、もういいじゃん。終わった事なんだし。」
「終わった事じゃダメなの!!ごっちんは、必ず同じことをまた
繰り返す・・・・」
「分かったよ。次からは出なければいいんでしょ?これでいいじゃん。」
心持ち沈んだ梨華の口調に真希はため息交じりにそう言い終わりにしようとする。
- 404 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月25日(木)18時19分51秒
- 「だから・・・そうじゃないんだってばぁ・・・」
「じゃ一体何なの!?今日の梨華ちゃんしつこすぎるよ。いつもはこんなん
じゃないのに・・・・」
自分は終わりにしようとしているのにまだ続けようとする梨華の言葉に真希は
いらいらしながら振り向いた。
だから振り向くまで気付かなかった。
どこか梨華の口調が舌足らずで訴えかけるような言い方だったことに。
「・・・・・・!」
振り向いた先には梨華が涙を流してこちらを見つめる姿があった。
「梨華ちゃん・・・・」
梨華は涙を拭わないまま真希から視線を外さずただ涙を流していた。
その瞳は強い意思が感じられただ真希を見つめていた。
- 405 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月25日(木)18時20分51秒
- 「ごめん・・・・ごめんね・・言い過ぎた・・・」
「・・・・・・」
真希はそう言いながら梨華を前からそっと優しく抱きしめた。
しかし、真希の胸の中でも梨華は涙を拭わずただ抱きしめらている形で
胸の中に収まっていた。
「もう、電話でないから・・・・約束するから・・・・・」
真希は自分のした事に後悔し梨華に謝るように、気持ちを伝えるように
抱きしめながら言った。
「ごっちん・・・・・」
梨華は真希の言葉に顔を起こした。
「梨華ちゃん・・・」
すると二人の視線が交差した。
見詰め合うようにして二人は少しの間そのままでいた。
「・・・・・・・」
真希はしばらくして梨華に優しくキスをした。
唇が重なるだけだが梨華は目を閉じ真希とのそれを全てで感じていた。
少しだけ、心の中が暖かくなる。
- 406 名前:aki 投稿日:2001年10月25日(木)18時23分19秒
- 今日の更新ここまでです。
全くごっちんは・・・・(w
- 407 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月26日(金)04時30分25秒
- ごっちんは優しいなあ。
私だったらこんなに束縛されたら怒っちゃうかも(w
今月の東京ブロスのグラビアはいしごま好きにはたまりませんね。
- 408 名前:aki 投稿日:2001年10月26日(金)15時35分20秒
- 407:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
ごっちんが優しく感じられるように書けれたみたいで良かったです。
梨華ちゃんは、いつもはこんな感じじゃないと思うんですけど
この日はそのまえの夢もあり限界だったんだと思います。
大目に見てあげてください(^^;
東京ブロス<これを見て本屋に行ってみました。
いい感じですね。もうちょっとページ数があると
良かったかも(w
- 409 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月26日(金)21時06分20秒
- そのまま真希は梨華をソファの上に押し倒しもう一度キスをすると
静かに梨華の洋服のボタンを外し始めた。
「・・・・・・・・・」
流れで二人は今のようになったが梨華の中に微かに一つだけ引っかかる
物が確かに存在していた。
しばらくして全てボタンを外し服の前を脱がした時真希はもう一度梨華に
口付けを交わした。
「・・・ん・・・・」
今さっきとは違う深くてお互いの舌が絡み合うキスに梨華は小さく声を漏らす。
真希のリードでされていたキスはしばらくして離された。
「梨華ちゃん・・・好きだよ・・・・」
「・・・・・・・」
まだ完璧に取り除かれないその胸のつかえ。
梨華は真希を目の前にしてはいたがその存在に心の中で戸惑っていた。
そんな梨華の胸に秘められる気持ちなど知る由もなく真希は行為を
続けようとする。
- 410 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月26日(金)21時07分09秒
- ブラが外され真希が梨華の胸に触れようとした時、
「・・・・ちょっと待って・・・」
「梨華ちゃん?」
梨華は気付くと真希のその手をほとんど力の入っていない手で掴んでいた。
梨華の様子に真希は首を傾げる。
「どうしたの?・・・・もしかして怖い?」
「・・・違うの・・・・そうじゃない・・・けど・・・・」
「けど?」
「一つだけ・・・・聞かせて・・・・」
梨華も自分の口からとって出た自分の言葉に戸惑っていた。
無意識と、言葉が口から零れ出していた。
- 411 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月26日(金)21時07分43秒
- 「なに?」
「どうして・・・今さっきあたしが怒ってたのか分かった・・・・?」
「え?」
「なんで、あの時・・・ごっちんが電話に出た時どうしてあたしがあんなに怒っ
てたのか・・・分かった・・・?」
「それは・・・・二人の時間を邪魔されたからでしょ?」
「・・・・・・・・」
確かにそうだ。
二人でいるのに突然の電話に出た。
だけど・・・・それだけじゃない。
- 412 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月26日(金)21時08分20秒
- 「他に何か思わなかったの・・・?」
「え?」
突然の梨華の言葉に真希は戸惑った。
その様子は真希の表情から簡単に窺い知れた。
(分かってない・・・・)
梨華は小さく心の中で真希の表情を見ると共に呟いた。
梨華はその言葉を合図に真希から体を起こしはだけた洋服を直し始めた。
「ちょっと・・・梨華ちゃん?」
「・・・・・あたし出かけてくる。」
「今!?ってどこにいくつもりなの?それに今から・・・・・」
「そんな気分じゃないの。たぶん友達の家に泊めて貰うからごっちん
いいよこの部屋使って。」
「ちょ、ちょっと・・・・」
戸惑う真希を尻目に梨華はそう言うと上着を着てそのまま玄関へと
向かっていってしまう。
- 413 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月26日(金)21時08分55秒
「使っていいって言われても・・・・梨華ちゃ・・・」
バタン
真希の呼び止めようとする言葉も空しく梨華は部屋を出て行ってしまった。
- 414 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月26日(金)21時09分38秒
- 梨華はマンションを後にするとただもくもくと歩いていた。
(追いかけてこない・・・・)
別に期待してたわけじゃない。
(だけど追いかけてくるのが筋ってもんじゃない!?)
そんな愚痴を梨華は心の中でぼやいていた。
午後8時50分。
行く当てなどどこもなかった。
ただこれ以上真希と一緒にいるのも耐えられなかった。
(今のごっちんにこれ以上何を聞いても無駄だ・・・・)
梨華は諦めに近い言葉を胸の中で呟いた。
全く分かっていない。
それは見事なまでに。
涙を流したから謝ったの?
その場が一旦落ち着いたが真希は全然梨華の言葉の真意が測れていない。
それよりも違う方に頭が行ってしまっている。
(全くっ!もうごっちんのことなんて知らないんだから!)
梨華はどしどしと歩く足を荒げて歩いていた。
- 415 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月26日(金)21時10分18秒
- (あたしが怒ってたのは・・・・二人の時間を邪魔されたからだけじゃない・・・)
少し落ち込んだような沈んだトーンで梨華は呟いた。
「二人でいるときも他の人に気が行くなんて・・・・」
(邪魔されて怒ったりとか・・・しかも平気でよっすぃーのこと話すし。)
別に梨華はひとみのことが嫌いなわけじゃない。
同じ同期のメンバ同士だし悩みも聞いてもらったりもした。
むしろ友達として好きだ。
でもそれは友達としてであって。
真希の前にいる時はどうしてもやきもちの対象に入ってしまう。
- 416 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月26日(金)21時11分03秒
- もしかしたらこれは贅沢な愚痴なのかもしれない。
事実真希は自分のことが好きだろうからキス以上の一線も超えようとして
いたのに。
だけど、やっぱり分かって欲しい。
好きな人に自分の気持ちを分かって欲しい。
だから怒るんだ。
だから切なくもなる。
涙も出る。
こんな自分を梨華は真希に理解して欲しかった。
こんなにもやきもち焼きな自分を、好きな人に知って欲しかった―――――――
- 417 名前:aki 投稿日:2001年10月26日(金)21時13分16秒
- ここまでです。
こっちと雪と同時進行なのでお互いの呼び合う名前とか
は絶対に間違えないように気を付けてます。
ちょっとした独り言でした(^^;
- 418 名前:ファンクラブNo.221改めRussian 投稿日:2001年10月27日(土)23時21分57秒
- 『とある〜』ではごまちゃんが苦労して、
『もてる〜』では梨華ちゃんが苦労。
どちらも、相手がほんの少しだけ鈍いんですよねぇ。
読んでいるこちらがもどかしくなってしまいます(笑)。
最終的にはどうなるのかなぁ。
幸せな結末、が一番ですが、たまには、切ないのもありです。
365〜376の夢の部分が、かなり切なくてよかったです。
雪版のほうも読んでいます。整理するのが大変でしょうが、頑張って下さい。
- 419 名前:aki 投稿日:2001年10月28日(日)19時32分07秒
- 418:Russianさん
>レスありがとうございます^^
本当ですね。鈍感な正確なキャラクターは結構書いてますね、私。(^^;
ちょっとしたことですれ違っていく二人に対して書いてる方は
あまり特別感じませんが読んでると助言したくなりますね。
まだ書かずに一読者の時は本当そうでした(^^;
最終的な結末は特にこの突発的な「もてる〜」に関しては
あまり考えてません。
頭で大体考えてても書いていくうちに登場人物が思ってもいないほうに
進んでいったりする事もあるんですよね。
これからどうなっていくか私も楽しみです(w
雪板共々お読みになっていてくれているようで本当に嬉しいです。
頑張りますよっ!
- 420 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月28日(日)19時54分29秒
- 「それでですねぇ!まったくごっちんってやつはぁ・・・!!」
「・・・・・・・」
梨華はあの後矢口の家に来ていた。
ちょうど外を行く当てもなくぶらぶらしていると不意に矢口からの
携帯の音が鳴ったのだ。
矢口は暇なのでどうでもいい世間話しをするために電話をしたのだが、
梨華は理由も話さず一気に自分の気持ちを電話口からまくし立てると
呆気に取られる矢口を余所に今から矢口の家に行くことを告げたのであった。
矢口が??を頭の上に浮かべているのもつかの間、電話を切られてから
約20分弱で梨華が自分のマンションにやって来た。
そして今に至る。
- 421 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月28日(日)19時55分39秒
- 中澤から家に来た時置いていったまだ開けていない缶ビールがまだ部屋に
残ってありそれをちびちびと矢口が飲んでいる最中だったのだが
梨華が家にどしどし入ってくるなり強くもないのにぐびっと一気にそれを
飲み干してしまった。
そして愚痴を聞かされ早30分。
「ぜんっぜんあたしの気持ちなんて分かってないんですよぉ!」
梨華が舌足らずな口調で愚痴を言いまくる。
「・・・・・・・・」
矢口は少しそんな梨華の様子に驚きながら愚痴を聞いていた。
いつも梨華が自分に相談する時はそれはもうネガティブ思考全開で
落ち込みながら打ち明けていたのだが、今日は違う。
それほどよっぽどのことが起きたのだろうか?
そうも思ったが意外と元気のあるらしい梨華に矢口は何も聞けないでいた。
- 422 名前:もてる彼女を持つと苦労する。 投稿日:2001年10月28日(日)19時56分23秒
- 「今日だって・・・・・よっすぃーから電話掛かってなければあのままごっちん
と・・・・」
「なになに?」
呆れてあまり愚痴を聞いていなかった矢口だが意味深な梨華の言葉に
急に興味を示した。
やっぱり、その手の話は年頃の女の子だけあって気にならないといったら
嘘になる。
「今日、石川はぁ!ごっちんと、久しぶりのオフを過ごすことになってたんですよぉ」
梨華の中で何かが切れていた。
それは緊張の糸や堪忍袋・・・・などなど。
もはやうじうじ悩むことは面倒くさくなっていた。
「うんうん。」
「それでぇ!今日は・・・・初めて・・・ごっちんと同じ夜を過ごすことになってたん
ですよぉ!」
「・・・・・ってそれ・・・」
矢口は梨華の言葉を察すととたんに顔を紅くした。
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