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いただきます
- 1 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月20日(木)21時53分44秒
- リクエスト?にこたえていしよしです。
やぐよしもあります。さらには4Pもあります。
でも短いです。
- 2 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月20日(木)21時56分02秒
- 主人公は吉澤です。
- 3 名前:いただきます 投稿日:2001年09月20日(木)21時56分53秒
- 『いただきます』
〜がまんと誘惑〜
- 4 名前:いただきます 投稿日:2001年09月20日(木)21時57分30秒
- 両親からまずしつけられたことは、がまんすることだった。
「やだやだ、もっと食べたい、もっと欲しい」
「がまんしなさい。じゃないと大きくなってから困るわよ」
どんなに駄々をこねて欲しがっても、両親は頑として受けつけなかった。
少しずつ成長するにつれて、親の言うことがよくわかってきた。人間社会でつつがなく暮らしていくには必要なことだ。
- 5 名前:いただきます 投稿日:2001年09月20日(木)21時58分03秒
- ところが今、その言いつけを守れるかどうかの瀬戸際にいる。
矢口さんが目の前で、目をつむって唇をわたしのほうにつきつけているのだ。
ここは矢口さんの部屋で、まわりには当然誰もいない。
困った。矢口さんにはいつもお世話になっているし、大好きだが、こんなシチュエーションが待っているとは思わなかった。
- 6 名前:いただきます 投稿日:2001年09月20日(木)21時58分35秒
- 矢口さんは小さいし、かわいらしい。
どうしようか。
喉元がそそる。
がまんは体に毒だ。
というわけで、矢口さんをいただくことにした。
お父さん、お母さん、ごめんなさい。
- 7 名前:いただきます 投稿日:2001年09月20日(木)21時59分05秒
- ことが終った後、矢口さんにこのことは誰にも秘密にしておくよう頼んだ。
「わかってるよ、よっすぃ〜」
矢口さんはにっこりと微笑んだ。わたしはその笑顔を見て、少し気分が重くなった。
- 8 名前:いただきます 投稿日:2001年09月20日(木)22時09分08秒
- 矢口さんとは結局それっきりだった。
わたしは両親の言いつけを守らなかったことを少し後悔し、またがまん一筋の生活を送ることを心に誓った。
ところが、すぐさまピンチが訪れた。
- 9 名前:いただきます 投稿日:2001年09月20日(木)22時09分38秒
- 今度は梨華ちゃんだ。
梨華ちゃんも矢口さんと同じように目を閉じて口をとがらせている。
梨華ちゃんもこれまたかわいらしい。白ならぬ黒い喉が食欲をそそる。
据え膳食わぬはなんとかとも言うらしい。
というわけで梨華ちゃんをいただいた。
お父さん、お母さん、ごめんなさい。
- 10 名前:いただきます 投稿日:2001年09月20日(木)22時10分50秒
- ことが終ったあと、やはり同じように梨華ちゃんに口止めした。当然のことだ。
梨華ちゃんは首をさすりながら無言でいなずいた。
頬が上気している。
この二人で打ち止めにしよう。
- 11 名前:いただきます 投稿日:2001年09月20日(木)22時11分32秒
- 今度こそ、がまんの時だ、と思いながら楽屋に入った。
わたしはただならぬ光景を目にした。
- 12 名前:いただきます 投稿日:2001年09月20日(木)22時12分17秒
- 矢口さんが安倍さんにあらぬことをしている。
飯田さんが保田さんを襲っているが、保田さんはそれを厭う様子がない。
ごっちんと、梨華ちゃん、辻加護のほうは四つ巴だ。
わたしはあまりのことに言葉を失い、立ちつくした。
- 13 名前:いただきます 投稿日:2001年09月20日(木)22時13分07秒
- ごっちんがわたしに気づき、手を振った。口の端から液体がしたたり落ちている。
矢口さんは安倍さんから離れず私に声を投げた。
「ごめんよ、がまんできなかったんだ」
- 14 名前:いただきます 投稿日:2001年09月20日(木)22時13分46秒
- どうやら、矢口さん、梨華ちゃんからみんなに感染していったらしい。
「よっすぃ〜もいっしょに楽しもうよ」
梨華ちゃんがわたしに誘いの声をかけた。
- 15 名前:いただきます 投稿日:2001年09月20日(木)22時14分34秒
- 「じゃあ、吉澤はこっちに来なさい」
飯田さんが命令した。
保田さんの喉元から抜かれた乱杭歯は、血で真っ赤に映えていた。
- 16 名前:いただきます 投稿日:2001年09月20日(木)22時15分05秒
- 吸血鬼の一族が人間社会で正体を隠しながら生きるには、やはりがまんが第一だったのだ。
モーニング娘。のメンバー全員が吸血鬼になってしまった。矢口さんと梨華ちゃんぐらいはいいだろうと思ったのが誤りだった。
- 17 名前:いただきます 投稿日:2001年09月20日(木)22時15分37秒
- 責任を取らなければならない。ピラミッドの頂点であるわたしが死ねば、みんな元に戻るはずだ。
「早くしなさい」
それまで束の間の宴を楽しむことにしよう。
お父さん、お母さん、親不孝なわたしでごめんなさい。
- 18 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月20日(木)22時16分12秒
- おしまい
- 19 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月20日(木)22時16分50秒
- どーも
- 20 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月20日(木)22時17分30秒
- すみません
- 21 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月21日(金)09時34分04秒
- 最初ちょっと期待しちゃったよ(w
でもおもしろかった。
- 22 名前:アイリス 投稿日:2001年09月21日(金)15時17分31秒
- こういうオチとは、思いませんでした。
ショートショートみたいで、とてもおもしろかったです。
次回作期待☆☆
- 23 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月24日(月)18時36分51秒
- おもしれ〜っ!
粋な短編っていいね。
他にも読みたいよ〜。
- 24 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月25日(火)00時20分42秒
- はっはっはっ、
オチは見え見えだったけど、書き方がうまい!
おもしろかったよ〜
- 25 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月25日(火)22時40分22秒
- test
- 26 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月25日(火)22時41分23秒
- リク?にこたえて書きます。
よしごまです。
主人公は積極的なごまです。
- 27 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)22時41分57秒
- 『一心同体』
- 28 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)22時42分33秒
- よっすぃ〜。大好きだよ。骨まで愛してる。
- 29 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)22時43分11秒
- よっすぃ〜がモーニング娘。に入ったときの第一印象は、正直言って最悪だった。だってよっすぃ〜きれいな顔だちしてて、センター取られる気がしたんだもん。
でも、よっすぃ〜を知れば知るほど惹かれていった。よっし〜は他のメンバーと違ってギラギラしたところがなかった。こんな子芸能界入って初めて見た。センター取られるって少しでも思った自分が恥ずかしかった。よっすぃ〜はそんな思惑からはるかに縁遠い位置にいた。
- 30 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)22時43分46秒
- だからすぐに好きになった。ハワイで一緒に買い物したのがきっかけになった。いちいちゃんが止めたあと、よっすぃ〜がプッチモニに入ったとき、あたしは狂喜乱舞した。赤組に入ったときも。
- 31 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)22時44分26秒
- よっすぃ〜はきれい。つんくさんが誉めるのも納得。
よっすぃ〜はかっこいい。梨華ちゃんが惚れるのもわかる。
よっすぃ〜はかわいい。写真集は宝物。
- 32 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)22時45分05秒
- 春先、よっすぃ〜は梨華ちゃんと仲良かったけど、あたしは焼いたりはしなかった。だってよっすぃ〜を一番好きなのはあたしだから。
それによっすぃ〜はちゃんと応えてくれた。いっしょにサウナいったり。夏休みにパーティーやったり。よっすぃ〜はいつもそばにいてくれた。
- 33 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)22時45分51秒
- どうしてあたしはよっすぃ〜にこんなにも惹かれるのだろう。
圭ちゃんは長年寄りそった夫婦みたいと言っていた。前世というのがあるのなら、きっとそうだったに違いない。
- 34 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)22時46分36秒
- 真ん中で輝くあたし。その周りを回っているよっすぃ〜。
よっすぃ〜が前に出ないのはあたしと馴れ合ってるからだという人がいる。
それは違う。思い違いをしている。
あたしとよっすぃ〜は光と影。でもあたしが光なんじゃない。よっすぃ〜が光であたしが影なのだ。よっすぃ〜があたしを照らしてくれる太陽なのだ。
あたしとよっすぃ〜は一心同体。誰にもあたしたちを離れ離れにさせはしない。
- 35 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)22時47分12秒
- ダイバーの収録が一番楽しかった。素の自分を出すことができたのはよっすぃ〜のおかげだ。
でもダイバーはもう終わってしまう。よっすぃ〜との、短いながらも濃密な時間。それももうなくなってしまう。
あたしの娘。脱退話も進んでいるらしい。よっすぃ〜と離れるのは嫌だ。
- 36 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)22時47分43秒
- よっすぃ〜とずっと一緒にいたい。
ずっと、ずっと。
永遠に。
- 37 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)22時48分17秒
- ……
- 38 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)22時48分57秒
- 「それで、被害者は」
「跡形も残っていません」
写真班が現場の様子をフィルムに収めている。
「きれーなもんだな。信じられん」
「私もですよ」
- 39 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)22時49分35秒
- ダンボールに日記やら手紙やら何か証拠になりそうなものを詰め終わった。
「で、医者はどう解釈してるんだ」
「まだ推測に過ぎませんが、一心同体になりたかったのではないかと」
「へえ。それでこんなことに、か?」
- 40 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)22時50分20秒
- パトカーのドアを閉めた。
「確かに、半日くらいは一心同体だろうよ。腹ん中におさめちまったんだからな。よく骨まできれいに片づけられたもんだ」
「……石川梨華だったら、ずっと一心同体でいられるのに」
「なんだ、そりゃ?」
「……『しないよ』」
- 41 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月25日(火)22時50分51秒
- おしまい
- 42 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月25日(火)22時51分29秒
- よっすぃ〜の写真集
- 43 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月25日(火)22時52分02秒
- 楽しみ
- 44 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月25日(火)23時09分47秒
- 最後の一レスが最高!
- 45 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月25日(火)23時42分14秒
- 食ったのか?!?!?!恐るべし
- 46 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月26日(水)20時25分30秒
- >>45 イエローカード!
- 47 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月01日(月)22時34分00秒
- えと、なかよしっていうの?
レアです。
- 48 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)22時34分32秒
- 『なべ料理』
- 49 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)22時35分02秒
- まだ中澤裕子がモーニング娘。を卒業する前のことである。
吉澤ひとみは裕子の部屋に招待された。こたつの上にガスコンロが用意されていた。ひとみはこたつで所在なく丸まっていた。
- 50 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)22時35分37秒
- 「もう少し待ち。すぐにできるから」
裕子が台所で包丁片手に格闘しているらしく、派手な音がひとみの耳にまで届いた。
ひとみは、自分がなぜ招待されたのか不審に思っている。裕子はモーニング娘。のリーダーだが、ひとみとそりがあっているとはお世辞にも言えない。
- 51 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)22時36分12秒
- 「あ、あのう」
「なんや」
「どうしてわたしが呼ばれたんですか?」
裕子の笑い声がした。
「どうしてとはご挨拶やな。大事なメンバーとの親交を深めようと思ってのこと」
「はあ」
- 52 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)22時36分47秒
- 親交を深める、との言葉にひとみは動揺した。ひとみは、先輩の矢口真里から裕子の親交の深め方について言い聞かされていた。ひとみは自分の貞操に危機感を覚えた。
「気のない返事やな。なにも取って食おうなんてせえへんから」
玄関まで数メートル。走って逃げるなら今のうちだ。だが、ひとみの体は何かに縛りつけられたかのように動かなかった。喉もからからに渇き、声を出すのも難儀になってきた。
- 53 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)22時37分19秒
- 「まあ、確かに吉澤とはあまり仲が良いとはよう言わん。だけどな」
裕子が言葉を切ったとき、ひとみの体は痙攣したかのように震えた。ひとみはおびえた表情で裕子のほうに顔を向けた。裕子は背中を向けたままだった。
「あたしが娘。止めるの聞いてるやろ」
「は、はい」
「いい加減体も言うこときかんようになったし、もう潮時や」
「そんなことは、ないです」
- 54 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)22時38分02秒
- 裕子の力ない笑い声が響いた。
「吉澤は優しいな。でも事実や。それでな、娘。止める前にどうしてもやっておきたいことがあるんや」
裕子の一言一言がひとみに突き刺さる。
「吉澤と打ち解けることができなかったんが、心残りやった。だから今日あたしの部屋に呼んだ」
- 55 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)22時38分43秒
- 魚を骨ごとぶつ切りにしているらしく、ごとんという重くにぶい音がした。
「あのう、矢口さんは」
ひとみが裕子の招待に応じたのは、真里が誘ったからでもあった。しかし真里は、約束の時間になっても来る様子がなかった。
「矢口? 矢口なんか呼んでない」
- 56 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)22時39分14秒
- その口調にとげがあったことにひとみは気づいた。
「え、でも、矢口さんが来るってわたしは」
「矢口はもう二度と来ん」
ひとみや石川梨華にならともかく、真里に対してまでこのような厳しい口をきくのをひとみは初めて聞いた。
- 57 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)22時40分03秒
- 「あいつめ、あたしを捨てて石川にちょっかい出してるんや」
ひとみは自分の知らない世界を知ったような気がした。裕子の矢口に対する攻撃はますます激しくなっていった。
「今まであんなにかわいがってやったのに、あたしが止める言うたらポイや」
ごん、という大きな音がした。ひとみの体が硬直した。
- 58 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)22時40分46秒
- 「あちゃー、変なとこ切ってもうた。内臓も全部取るの忘れてたわ。吉澤、すまんがもう少し辛抱してや」
いったい何を料理しているのか、ひとみは聞き出したいのだが声が出ない。
「ほんと、がっかりやわ。あらら、小振りやけど結構身はつまってるわ」
ひとみは、貞操の危機もさることながら、得体の知れないものを食べさせられるのではないかという思いに捕われていた。
- 59 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)22時41分27秒
- あの、もしかして、その、内臓とか、小振りとかって、もしかして。
「お待ちどう様。できたで、裕ちゃん特製のなべや」
裕子はガスコンロの上になべを乗せ、その熱さに耳たぶをつかんだ。
「ほら、たくさん食べや。娘。は体が資本やからな」
裕子はなべのふたを持ち上げた。湯気が勢い激しく飛び出した。中には……。
ひとみは気絶した。
- 60 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)22時41分59秒
- ……
- 61 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)22時42分47秒
- 「なんや、ひどい仕打ちやな」
裕子はひとみを隣室のベッドに寝かせた。
「普通のなべ料理のつもりやったのにな。鱈や鮭もあるし。烏賊はやり過ぎかな思うたけど」
- 62 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)22時43分21秒
- 裕子はひとみの寝顔をじろじろと眺めた。
「なんか変なこと想像してたんやろか……。まあ、ええわ。なべ料理はともかくとして、こっちを先にいただきますか」
裕子はひとみのブラウスのボタンに指をかけた。
- 63 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)22時43分51秒
- おしまい
- 64 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)22時44分34秒
- よっすぃ〜と
- 65 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月01日(月)22時45分13秒
- 相性がいいんですよ
- 66 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月03日(水)23時28分12秒
- 面白いです。
ここのスレはこのネタで通すのかな?
どのくらいバリエーションが出てくるか楽しみにしてます。
- 67 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月04日(木)21時49分04秒
- >>66
ありがとう。
考えなしにスレタイトルを決めてしまったからです。
- 68 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月04日(木)21時50分44秒
- 『降霊術』
- 69 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月04日(木)21時51分20秒
- 都内にあるマンションの一室に3人がテーブルの周りに腰かけていた。黒いカーテンが窓を覆い、明りはテーブルの上のろうそく2本だけだった。
「で、何が始まるんだ?」
「さあ。わたしは聞いてないです」
「わたしも辻ちゃんと加護ちゃんに連れられてきただけです」
ドアがきしみ音をたてながらゆっくり開き、外の光がわずかながら部屋に侵入してきた。辻と加護はまとった衣装をひきずりながら歩いてきた。「ハッピーサマーウェディグ」の衣装を思い出してほしい。その上顔の下半分を黒い絹のベールで隠している。加護は小さな箱をお腹にかかえていた。
- 70 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月04日(木)21時51分50秒
- 「今宵はみなさんお集まりいただき、ありがとうございます」
「ございます」
矢口が立ち上がった。
「何やるつもりだ?」
「これから説明します。お座りください」
「ください」
矢口はふてくされた顔をして椅子に座った。加護はテーブルに持っていた小箱をおいた。中学生2人も席についた。加護が口を開いた。
「何事かと不審に思われる方もいらっしゃるようですが、一から話を始めたほうがご理解いただけると思いますので、少々ご辛抱をお願いします」
「お願いします」
- 71 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月04日(木)21時52分21秒
- 矢口は頬づえした。石川は不安げな顔を隠さないし、吉澤はにっこりと2人に微笑んでいる。
「先日のことです。わたしはとある古本屋にいました。字の読み書きが不得手なわたしですが、その日は虫の知らせとでもいいましょうか、その古本屋にただならぬ気配を感じ取ったのです。本どころか店の造りまで古そうなその店に入ると、外国の美術書や宗教書が並べられている一角が目につきました」
「加護ちゃんって外国の言葉わかるの?」
石川が驚嘆の声をあげた。加護は微笑して首を左右に振った。
- 72 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月04日(木)21時52分55秒
- 「いえ。横文字を見るのは生理的に受けつけません。しかし、そのときはどういうわけか気になってしようがなかったのです。そして本棚から何気なく一冊の古ぼけた冊子を取り出しました」
加護はかつて純白だったらしい、黄ばんだ薄い本を右手でかざした。
「わたしは中を開くこともなく、店の主人から買いとっていました。値段は105円でした。家に帰ると早速読みとおしました。みなさん不思議がるでしょうが、横文字の上に平仮名で日本語訳が鉛筆で記してあったので読みとおすことができました」
「で、どんな本だったの?」
吉澤が急かす。
「内容は降霊術に関するものでした。つまり、誰かに霊を乗り移させて何かをしゃべらせるというあれです」
- 73 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月04日(木)21時53分43秒
- 矢口が吹き出し、石川は眉をひそめた。吉澤は、おじいさんがどうかしたのだろうと首をひねっていた。辻が横から口を出した。
「信じらんないと思うけど、ほんとなんだよ」
「わたしも初めは半信半疑でしたが、ものは試しと、ののに降霊術を本に書いてある通りに施してみました。実験は大成功でした」
「大成功って、誰の霊を?」
「福田さんです」
矢口が目をむいて叫んだ。
「福田さんって、明日香? まだ本人生きてんじゃん」
- 74 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月04日(木)21時54分20秒
- 「ええ。生霊とでもいうのでしょうか、生きている人の霊を憑かせることも可能なのです」
「どんなこと言ってた?」
「それは……言わないほうがいいでしょう」
加護が含み笑いしたので、矢口は少々不安に感じた。
「大成功とは申しましたものの、良い被験者と悪い被験者があるようです。ののは後者のタイプで、完全には成功しませんでした。そこで、わたしはこの本を熟読した結果、お集まりいただいたあなたがたが良い被験者であると判断するにいたりました」
3人はそれぞれ文句を言ったが、それ以上に興味のほうが勝り、被験者となることに同意した。
- 75 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月04日(木)21時54分55秒
- 「体に障害が残るとか、危険なことはありません。それでは、梨華ちゃん、椅子を持ってこちらにきてください」
石川は加護の前に座った。加護は小箱から大きな水晶玉を取り出した。赤い綿布に水晶を乗せ、石川の目の前に突きだし、聞き取れないほどの小声で呪文を唱えた。
石川は突然前のめりになり、すぐに今度は後ろにのけぞった。
「梨華ちゃん、大丈夫?」
吉澤が近寄ろうとするのを加護が片手で制した。石川はゆっくりと正面を向いた。
「あら、珍しい人たちがいるのね」
声質は石川特有のヘリウム声だが、口調が違った。矢口が暗い顔をした。
- 76 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月04日(木)21時55分32秒
- 「もしかして、彩?」
「そうです。石黒さんの霊を梨華ちゃんに乗り移させました。ただし、それはいわば石黒さんの無意識です。本人はぴんぴんしてるはずです」
石川は眉間にしわを寄せ、品定めするかのように見まわした。吉澤はぽかんと口を広げたままだった。矢口は椅子にへたりこんだ。
- 77 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月04日(木)21時56分03秒
- やがて始まったのは石川による説教だった。矢口、吉澤に対するのは言うに及ばず、矛先は辻と加護にも向かい、2人は少々とまどった。正味30分、罵倒まじりの説教が終わると、石川は首をうなだれて前に倒れた。
吉澤と矢口が石川を引き起こして、椅子に座らせた。元に戻った石川は、石黒の霊が降りている間の記憶がないという。忌まわしい過去がよみがえった矢口は頭を振った。
- 78 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月04日(木)21時56分41秒
- 「それでは、次は矢口さん、お願いします」
矢口に乗り移ったのは市井の霊だった。4人は市井に関するかすかな思い出を話しかけた。しかし矢口の反応は鈍かった。
「夢ってなんだろうね。夢をかなえる、って簡単に言うけど、かなえられなかった夢はどうなるんだろうね」
4人はこれに答えるすべを持っていなかった。市井の霊は速やかに矢口から離れていった。
「そうか、市井の霊が降りてきたんだ」
矢口は感慨深げだった。
- 79 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月04日(木)21時57分13秒
- 「ここまで大成功です。のののときはこんなに話してくれませんでしたから」
最後は吉澤である。ところが今度はそう簡単に霊が降りてくれなかった。加護は汗をかきながら呪文を唱え続けた。吉澤は加護の様子をじっと眺めていた。
その苦労が報われたのか、一度目をつむった吉澤は、再び目を開けたとき、口を開いた。
「久しぶりやな、みんな」
「中澤さんだ」
- 80 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月04日(木)21時57分45秒
- 吉澤は幼い2人に話しかけた。お説教である。しかし、リーダーを困らせてはいけない、楽屋で暴れてはいけないということを淡々と話す様子に2人は感じいったようだった。
今度は石川のほうを向いた。
「チャーミー! あいかわらず調子に乗ってるそうやな。お前はヘタレなんやから、もっとがんばらなあかんやろ」
石川は神妙な面持ちでうなずいた。少し震えている。
- 81 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月04日(木)21時58分34秒
- 「矢口」
ここで今までと違う反応が起こった。吉澤は立ち上がると、矢口のところまでゆっくり歩いていった。突然のことに矢口は驚いた。
「裕ちゃん」
中澤の霊が乗り移った吉澤は、矢口の顔をじろじろ眺めると、体を投げ出した。2人は椅子ごと床に倒れた。
- 82 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月04日(木)21時59分04秒
- 「やめろよ、バカ裕子!」
「やぐちぃ」
吉澤は矢口の頬にキスしていた。左手は矢口の心臓のあたりを這い回り、右手は臀部に伸びていた。3人が慌てて2人を引き離そうとするが、吉澤の腕力に抗うことができなかった。
ひとしきりことが済むと、汗だくになった吉澤はふらふらと椅子にもどり、やがてぐったりと前かがみになった。矢口は呆けた表情で衣服の乱れを直した。石川は半べそをかいていた。
- 83 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月04日(木)21時59分35秒
- やがて立ち上がった吉澤は、自分が霊に取り憑かれている間どのようなことが起こったのか、しきりに聞きまわったが、誰もが首を振るばかりで答えようとしなかった。
- 84 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月04日(木)22時00分11秒
- 辻と加護はほぼ満足できる結果に喜びながら帰路についた。
「最後はほんと凄かったねえ。話をするだけじゃなく、動き回ることもできるんだね」
辻の興奮した声に、加護が返事をした。
「びっくりしたわあ。本には動くことができるなんて書いてなかったんやけどなあ」
- 85 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月04日(木)22時00分46秒
- おしまい
- 86 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月04日(木)22時01分23秒
- よっすぃ〜写真集
- 87 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月04日(木)22時01分56秒
- 買っちゃった
- 88 名前:!? 投稿日:2001年10月04日(木)22時02分51秒
- もう写真集発売してるんですか!?
- 89 名前:>88 投稿日:2001年10月04日(木)23時51分44秒
- 水曜から売ってるところあるよ
- 90 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月04日(木)23時56分36秒
- よっすぃ〜のほうが一枚上手だったのね……
- 91 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月05日(金)20時19分39秒
- 『儀式』
- 92 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月05日(金)20時20分10秒
- その日、石川梨華は目覚めた。今日は石川家に代々伝わる儀式を行わなければならない。
- 93 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月05日(金)20時20分53秒
- 顔を冷水で洗い、歯を丹念に磨く。風呂場に入り、ぬるめのお湯に30分ほどひたる。体をすみずみまで軽石でこする。
体を拭いた後、ものものしい礼服をまとう。赤い袴に白足袋。髪は後ろをしばり、見苦しくないようにする。
- 94 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月05日(金)20時21分25秒
- キッチンの天井に近い棚の扉を開くと、そこは神棚である。一礼後二回拍手を打ち、もごもごと祝詞を呪文のように唱える。初め「南無阿弥陀仏」と唱えそうになり、あわてて取り消す。それはまだ早い。
蛇口をひねり、水道水をひしゃくに汲む。それを少し飲んで残りを捨てる。カルキ臭い。幣帛(棒に白いひらひらした細長い紙を数枚つけた梨華特製のもの)を振って自分で自分をお祓いする。
- 95 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月05日(金)20時21分56秒
- 神棚にお神酒を供える。お酒も徳利もないので、みりんを花びんに入れたもの。そして白い皿にみりんを注いで三回に分けて、なんとか飲み干した。
巫女の代わりに自分で舞を踊る。雅楽など知らないので「恋愛レボリューション21」を「ほいっ」つきで踊った。
- 96 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月05日(金)20時22分27秒
- カーテンを閉め、電灯も消す。二つの燭台のろうそくに火をともした。再び神棚に向かい、二礼、二拍手、一礼をする。もう一度お祓いし、自分に塩を一つまみ分、頭からふりかけた。
神棚の扉を閉じ、ろうそくの火を消し、カーテンを開けた。太鼓も鐘もないので、ミニコンポにCDを入れ、「理解して!女の子」をかけた。
- 97 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月05日(金)20時22分57秒
- 洋服ダンスを開くと仏壇がある。数珠を片手に巻き、お経を唱える。最初念仏だったのに途中で法華経に変わってしまったことに梨華は気がつかなかった。
唱え終わると香をつかんで香炉にくべた。量が多すぎてぜんぜん火がつかなった。もういちどお神酒(みりん)を三杯飲み干す。気持ち悪くて水で口をすすいだ。
- 98 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月05日(金)20時23分28秒
- ベッドに向かい、北まくらになるよう位置を変えた。ここで再び読経し、タンスの上に飾ってある写真(吉澤ひとみとのツーショット)に黒リボンをかけ、その前に水の入ったコップと、白飯に箸が突き刺さった茶碗をならべた。
- 99 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月05日(金)20時24分11秒
- 梨華はふだんはほどんど使っていない一室に入った。窓はステンドガラスになっており、壁際には聖壇がある。十字架に磔となったキリストの像が乗せられている。
賛美歌の代わりに「恋をしちゃいました」を歌い、聖書マタイ伝を朗読する。「蒼ざめた馬」を「くらざめたうま」と読んだ。
- 100 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月05日(金)20時24分47秒
- 誰もいない部屋の中で、夫婦の愛や努めについて説教した後、右手の薬指にはめていた指輪を抜き、左手の薬指にはめ直す。聖壇の聖体拝飲台に苺のショートケーキとファンタグレープの缶を飾った。
近所の教会から無断でもらってきた油を額と両手に塗りつけ、指をタオルでぬぐった。先ほどのショートケーキとファンタグレープをほんの少しだけ飲み込み、水道水をあたりに撒き散らす。最後に「乙女パスタに感動」を歌った。
- 101 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月05日(金)20時25分25秒
- 自室に戻ると、ベランダに出て、西の方角を探した。見当をつけると両膝をつき、両手を真上にあげ、前に上半身ごと倒した。五日間ほとんど何も食べていないのでくらくらしたが、これを数回繰り返した。
- 102 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月05日(金)20時26分13秒
- ベランダから戻り、窓とカーテンの両方を閉ざした。電灯も消し、ろうそくに火をつける。暗闇とわずかな光の中、黒塗りの小さなテーブルの前に正座した。
「神様、仏様、アラーの神様。今日という日が訪れたことを深く感謝いたします」
- 103 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月05日(金)20時26分46秒
- 梨華は深々と深呼吸すると、今日発売の写真集「よっすぃー」の表紙をめくった。
- 104 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月05日(金)20時27分18秒
- おしまい
- 105 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月05日(金)20時27分49秒
- ブレザーよっすぃ〜
- 106 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月05日(金)20時28分20秒
- お姫様よっすぃ〜
- 107 名前:一番は・・・・。 投稿日:2001年10月05日(金)20時54分35秒
- パンクロッカー よっすぃ〜。
- 108 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月05日(金)22時11分32秒
- リカッちにとって吉写集はそれほどまでに(略
- 109 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月05日(金)22時41分18秒
- わ、わらた。最高。
- 110 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月07日(日)09時33分06秒
- 『宝物』
- 111 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月07日(日)09時33分40秒
- どういう気まぐれか、後藤が加護と辻を自宅に招待した。加護と辻はけげんに思いながらも、断ると後が恐いのでお呼ばれされることにした。
その日の午後、2人は後藤宅に向かった。後藤の部屋は吉澤に聞いた通りの惨状だった。2人はとりあえずベッドの端に腰かけた。
- 112 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月07日(日)09時34分58秒
- 「ちょっと散らかってるけど、気にしないでね」
ちょっとどころではなかったのだが、後藤がそう言うのなら、加護と辻は気にしてはいけないのだ。
「来たばっかりで悪いんだけど、後藤はクリーニング屋さんまでいかないといけないんだ。冬物出し忘れたのがあって」
後藤が帰ってくるまでの間、留守番をしてろということだった。
「ただ、2人ともそれじゃあ退屈だろうし、部屋を荒らされると困るからさ、ちょっと遊んでいてよ」
これ以上この部屋を荒らすのは、空き巣でも頭を悩ますのではないだろうかと加護は思ったが、賢い子なので口には出さなかった。
- 113 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月07日(日)09時35分46秒
- 「で、どうやって遊ぶんですか」
「じゃじゃん」
後藤は2人に1枚のメモ用紙を手渡した。
「なんですか、これは?」
「読んでごらん」
辻は後藤から手渡されたメモ用紙を読み上げた。
「『食事に行く気をつけること、赤色の花どこ、急かすこと、うまいもの理非を超える、立て世のいじめられっこよ』」
「違う違う、裏」
裏には『かゆてひかすうろはにき』と、平仮名で書いてあった。
- 114 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月07日(日)09時36分34秒
- 「それはね、後藤家代々に伝わる暗号文なんだ」
「暗号文?」
「そう、きっと宝の隠し場所なんだよ、それ」
後藤が必死に考えた暗号文なんだろう。2人は宝捜しをして遊ぶ年齢ではもうないのだが、相手が後藤なので承知せざるをえなかった。
- 115 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月07日(日)09時37分07秒
- 「ちっともわからないです」
「見当もつかんわ」
ここが石川の部屋だったら、2人は遠慮することなくタンスから机まですべてをひっくり返して家捜ししていただろう。しかし後藤の部屋ではそうすることは自らの首をしめることになる。
「せめてヒントないかなあ」
加護は、メモ用紙をつかんでひらひらとさせた。メモはその手から離れ、床の上に落ちた。
「この裏の言葉が気になるよね」
- 116 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月07日(日)09時37分55秒
- 2人は後藤の机から最初の2、3ページだけ使われた形跡のあるノートを拝借した。インクがちっとも減っていないボールペンでさらさらと書いた。
「やっぱり暗号が平仮名だから、これも平仮名に直してみよ」
『しょくじにゆくきをつけること、あかいろのはなどこ、せかすこと、うまいものりひをこえる、たてよのいじめられっこよ』
- 117 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月07日(日)09時38分36秒
- 「わけがわからないのです」
「いや、きっとヒントがこれに隠されてるはずや。のの、ちょっと貸して」
加護は文字数を数え始めた。
「やっぱりや。51文字ある」
「俳句は17文字だよ」
「違う違う、平仮名ゆうたら『ん』を入れて51字あるやろ。きっとそうや」
加護は『あいうえお……』と、メモの文字を並列に並べて書き記した。
- 118 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月07日(日)09時39分17秒
- あ=し か=ゆ さ=け た=か な=な は=す
い=よ き=く し=る ち=い に=ど ひ=こ
う=く く=き す=こ つ=ろ ぬ=こ ふ=と
え=じ け=を せ=と て=の ね=せ へ=う
お=に こ=つ そ=あ と=は の=か ほ=ま
ま=い や=を ら=て わ=め ん=よ
み=も い=こ り=よ い=ら
む=の ゆ=え る=の う=れ
め=り え=る れ=い え=つ
も=ひ よ=た ろ=じ を=こ
- 119 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月07日(日)09時40分31秒
- 「思ったとおりや。文字を読みかえるんや。『し』って書いてあったら、それは『あ』に代えなあかんのや」
「『じ』はどうなの」
「そやな。濁ってる文字は点を取ろ。『じ』も『し』にせなあかんな」
2人は文字を読みかえていった。
『かゆてひかすうろはにき』が暗号である。最初の『か』を探すと、『た』『の』が該当する。『ゆ』は『か』、『て』は『ら』、というように文字を拾っていった。
- 120 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月07日(日)09時41分19秒
- 「『か』は『た』と『の』2つあるけどどっちだろう」
「まあ、文字つなげればわかるやろ」
つなげると、次のような文ができた。
『○からも○はへつとおく』
○には『た』か『の』が入る。2人は当然ながら『たからものはへつとおく』と読んだ。
- 121 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月07日(日)09時41分55秒
- 「『へつとおく』って何やろ……『ベッド奥』か! のの、『宝物はベッド奥』や!」
辻は後藤のベッドの下にもぐりこんだ。
「あったよ!」
辻はダンボール箱をひきずって這い出てきた。
「宝物って何だろうね」
「どきどきするね」
- 122 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月07日(日)09時42分35秒
- 加護がゆっくりと箱を開けた。中からは、後藤と吉澤のツーショット写真、発売されたばかりの吉澤ひとみ写真集、ファンクラブの会報、吉澤のソロCD、「ザ☆プチモビクス!」DVD、「よっすぃ〜」とラベルに書いてあるビデオテープが数巻、さらには使用した痕跡のある下着が数着出てきた。
「後藤さん……」
「そういえば、よっすぃ〜、下着盗まれたって言ってた……」
2人は急いで箱の中にモノをしまい、元通りベッドの下に押しこんだ。暗号解読に使ったノートはその部分を破いて加護のバッグに放りこんだ。
- 123 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月07日(日)09時43分16秒
- 後藤が紙袋をかかえて帰ってきた。
「ただいまー」
「お、お帰りなさい」
「どう、宝物は見つかった?」
2人はあわてて首を振った。
「暗号解けなかったんだー。2人にはちょっと難しかったかな?」
- 124 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月07日(日)09時43分46秒
- 後藤はメモ用紙を受け取り、横に文字を書いた。
「あいおうえ順にね、文字を一つ前に戻すんだよ。『か』の前は『お』、『ゆ』の前は『い』だけど一つ飛ばして『や』と……」
『おやつはおしいれのなか』
後藤は押し入れにもぐりこみ、ビニール袋を2人に渡した。
- 125 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月07日(日)09時44分20秒
- 「ほら、宝物。全部食べてね」
加護と辻は冷や汗をかきながらお辞儀をした。
「い、いただきます」
「ご、ごちそうさまでした……」
辻の、お礼の言葉の語尾がおかしいことに、後藤は気がつかなかった。
- 126 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月07日(日)09時44分52秒
- おしまい
- 127 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月07日(日)09時46分12秒
- 新曲よっすぃ〜センター(?)
- 128 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月07日(日)09時46分42秒
- うれしいな
- 129 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月07日(日)13時34分49秒
- お見事!
感心&おもろいっす。
- 130 名前:名無し読者 。 投稿日:2001年10月07日(日)18時01分49秒
- うまいね。感心しちゃったよ。
- 131 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月09日(火)20時43分53秒
- 『古文書』
- 132 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月09日(火)20時44分38秒
- 東京三菱三井住友銀行赤坂支店の貸し金庫から、アルミ製の箱が発見された。中には赤や黒の日記帳など、今はなきモーニング娘。に関する貴重な文書がいくつか納められていた。
この箱は上野のハロプロ記念館に送られ、そこに所属するハロプロ研究会が中味を吟味することとなった。わたしはこの研究会に在野ながら特別研究員として参加しており、世の研究家たちの垂涎の的となったこれらの文書(通称赤坂文書)を拝する栄誉に恵まれたのだった。
- 133 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月09日(火)20時45分15秒
- わたしがおっとり刀で記念館の研究所に駆けつけると、他の研究員たちはすでに集まっていて、それぞれおしゃべりに興じていた。その主題は当然ながら赤坂文書のことである。各自の研究の成果を裏づけるか、あるいはそれを覆す発見があるかもしれないのだ。
研究所の所長が箱を持って入ってきた。研究員はおしゃべりをやめ、席についた。所長は壇上に登り、ゴホンとせきをひとつ大袈裟に鳴らすと、演説を始めた。
- 134 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月09日(火)20時46分04秒
- 「お集まりいただいた皆さんはもうご存知のことでしょう。先日、東京三菱三井住友銀行の貸し金庫から発見された赤坂文書のことです。この国宝級の重要な文書を当研究所が調査研究を行うという、たいへんな重責を担うこととなりました。皆さんはこのことを肝に命じて、日本史上最大の謎であるモーニング娘。の研究を行ってもらいたい」
事務員から、数枚の紙が配られた。発見された文書の目録である。
- 135 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月09日(火)20時46分45秒
- ・赤い日記帳……ダニエルの筆によるものと推察(英文)。
・黒い日記帳……石川梨華の筆によるものと推察されるも偽書の疑いあり。
・バイブル……保管当時の研究書と推察。
・カセットテープ(1)……「マイ○ロカセッ○」○は判別できず。
・カセットテープ(2)……石川梨華盗聴テープの可能性あり。
・「5+3-1+1-1+4-1-1+4-2……」……保管当時の研究書と推察。……以降も数字が円周率のように続くが省略。
・髪の毛の束……細さより加護亜依のものと推察も要研究。
・会議議事録……4期メンバーの秘密会議の議事録。
・雑誌5冊……「アサヒ芸能」2冊、「裏ブブカ」2冊、「噂の真相」1冊。
・写真集……後藤真希、石川梨華、中澤裕子。(注)
- 136 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月09日(火)20時47分19秒
- 所員の間から感嘆の声がいくつもあがった。
「謎の出奔を遂げたダニエルの手記が存在するとは。後世の作り話という説も根強いココナッツ娘。の全容が明らかになるかもしれないな」
「黒い日記帳も存在が疑われていたが、これで一部のへそ曲がりも納得せざるをえないでしょう」
「そうかな? 竹内文書と同じくらいうさんくさいぜ」
「なんだとゴルァ。石川梨華の秘密が隠されてるに決まっている」
- 137 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月09日(火)20時47分55秒
- 「これがカセットテープですか。これは博物館から当時の機械を借りてこないといけませんな」
「テープが台無しになるかもしれないから、国の機関に機械の調整をお願いすべきです」
「石川梨華の世紀の自作自演と言われていましたが、テープが存在するとなると認識を改めなければなりませんぞ」
「それは声紋を調べてからでも遅くはないな」
「『5+3-1+1-1+4-1-1+4-2……』は当時の民衆の声を再現してるんでしょうな」
「この数字からいつ頃のものか判断できるぞ。実際はこのあと73回増員と脱退を繰り返したからな」
「オールドファンから『魁!女塾』と揶揄されたのは、教科書にも出ています」
- 138 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月09日(火)20時48分26秒
- 「この髪の毛は、本物だとしたら相当の価値がありそうだ」
「佐渡のトキか、それ以上に希少価値がある。遺伝子を取り出してクローンを作ることも検討しなければいかん」
「最初期メンバー転覆を図ったと噂される4期メンバーの秘密会議議事録か」
「中をみなきゃ真贋はわからないが、2人の脱退が痛かった」
「突然だった2人の脱退の謎も解明できるかもしれん」
- 139 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月09日(火)20時49分25秒
- 「二次文書でしかその記事がわからなかった『アサヒ芸能』を拝むことができるとは、モー娘。研究者冥利につきる」
「後の2誌も、後期モーニング娘。に関する部分しか現存していないから、世の中ひっくり返るぞ」
「初期モーニング娘。の貴重な写真集だ」
「なんだこの(注)って」
「どうも一部、ページとページがのりのようなものでくっついているらしい」
- 140 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月09日(火)20時50分11秒
- 所長がまた大きなせきをして、所員の注目を集めた。
「えー、目録をご覧になられましたでしょうか。どれもこれも初期モーニング娘。に関する一次資料と目されます。時間の都合上、私もこれらの文書を全て読みとおしておりません。諸君には丹念に資料を研究していただきたい。捏造や改竄などは、そのようなことを諸君が行うとは思えないが、厳に慎むように」
「質問があります。この赤坂文書を保管していた人物は誰なんでしょうか」
- 141 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月09日(火)20時50分43秒
- 所長はそっくり返って答えた。
「おほん。まだまだ推測の域を出ていないが、初期モーニング娘。の覇権を奪った紺野あさみであると私はにらんでいます。これらの資料は、市井紗耶香脱退から4期メンバー2人脱退の間のものと思われる。この直後に本能寺の変を凌ぐといわれる『紺野の変』が起こっており、おそらく紺野が雌伏の時代に集めた、敵情分析のための資料でありましょう」
- 142 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月09日(火)20時51分17秒
- 説明が終わると、所長は各文書の担当を所員に割り振った。わたしには黒い日記帳がうやうやしく手渡された。
「ありがたく頂戴します」
「はっはっは。あげるわけではないですぞ。帰りには事務員に返すように。もちろん、研究所に来れば自由に閲覧することはできるので、研究にいそしんでほしい」
- 143 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月09日(火)20時51分53秒
- さて、まずこの文書を複写しなければならないが、電子式の複写機には他の所員が殺到したため、わたしは自分の机に向かった。ついたてのおかげで、所員はお互いが何をしているかわからないようになっている。
日記帳は背表紙がぼろぼろで取れかけていた。わたしは後ろの表紙をめくり、細心の注意を払って終わりの2ページを丁寧に剥がした。
- 144 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月09日(火)20時52分33秒
- 日記帳とかばんを手にして、別の所員に声をかけた。
「この日記帳とその議事録は、何らかの関係がありそうだとわたしはにらんでいるのですが」
「どれどれ、ちょっと私にも拝見させてくれよ」
わたしはその所員に日記帳を渡し、代わりに議事録を受け取った。議事録は穴あけ式のバインダーに閉じられており、ページ番号等はふっていなかった。
- 145 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月09日(火)20時53分04秒
- その所員は日記帳に顔をうずめ、なめるように読みふけっていた。わたしは音を立てないようにバインダーの金属の輪を開き、最後の1枚を抜き取った。そのまますぐにかばんに滑りこませた。
「どうです?」
「いや、一瞥しただけだが興味深い。いずれ時を見て意見を交換しよう」
わたしたちは握手すると別れた。今日はコピーをあきらめ、事務員に黒い日記帳を預けると、研究所を後にした。
- 146 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月09日(火)20時53分49秒
- 「ただいま」
わたしは自分のマンションに帰ると、書斎の机にかばんを置いた。ガラス製の灰皿を、机の棚から取り出した。
「おかえり。今日は何してたの、ひとみちゃん」
「趣味の古文書集めだよ、梨華ちゃん」
梨華はドアを開けて、わたしの部屋をのぞいてきた。
- 147 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月09日(火)20時54分24秒
- 「ふーん。何か面白いもの見つかった?」
「いや。つまらないものばかりだったよ」
わたしは、灰皿に紙を乗せると、ライターで火をつけた。黄ばんだ古紙に炎がゆっくりと燃え上がり、つんとした嫌なにおいがわたしの鼻についた。
- 148 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月09日(火)20時54分56秒
- おしまい
- 149 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月09日(火)20時57分18秒
- 汚れっちまった悲しみに
- 150 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月09日(火)20時57分50秒
- 今日も小雪の降りかかる
- 151 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月11日(木)22時49分15秒
- 『60's』
- 152 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月11日(木)22時50分52秒
- わたくし吉澤ひとみは梨華ちゃんとお付き合いをしている、ということをメンバーに隠さなくなってから久しくなる。
- 153 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月11日(木)22時52分02秒
- 2人でこのことを告白すると、他のメンバーは初めはびっくりしていたが、そのうち応援してくれるようになった、と思う。矢口さんが「ゆうこー」と叫んで楽屋を飛び出したり、ごっちんがいつものようにぼけっとした感じで「いちいちゃん」とつぶやいていたりしたが、最近は落ち着いてきたようだ。
- 154 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月11日(木)22時53分11秒
- 仕事が終わると、2人で住んでいるマンションに帰る。マスコミにさとられないよう、一緒には帰らず、時間をずらし、遠回りして帰る。残念だが、仕方がないことだ。
その代わり、オフの日はずっと一緒にいる。明日は渋谷でデートの予定だ。わたしは商品を見るのが好きなだけであまりお金を使ったりしないが、梨華ちゃんは放っておけば際限がなくなるので監視しなければならない。でも、目を輝かせる梨華ちゃんを見てるのも楽しい。
- 155 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月11日(木)22時54分04秒
- 梨華ちゃんは明日に備えてもう寝てしまった。わたしはリビングで音楽鑑賞中。梨華ちゃんを起こさないよう、ヘッドホンをつけた。
聞いているのはビートルズ。「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」というアルバムだ。英語は得意なほう、だと自分では思うのだが、早口でよく聞き取れないところもある。それでも、この音楽には素直に感動した。特に「ラブリー・リカ」は最高。
- 156 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月11日(木)22時54分49秒
- 「シーズ・リーヴィング・ホーム」を聞くと少し落ち込む。どちらの両親にも、まだ話をしていない。わたしは車のセールスマンじゃないけれど。
でも、「ホエン・アイム・シックスティフォー」を聞くと決意がかたまる。梨華ちゃんを絶対に幸せにするのだ。
- 157 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月11日(木)22時55分25秒
- 明日は何を着ていこうか。実は飯田さんのようなファッションに興味がある。先日パンタロンを買ってしまったのだが、あれで道を歩くのは度胸がいると思う。
梨華ちゃんは、わたしにいつも男っぽい服を着させようとする。嫌いではないが。わたしは紙袋から白のパンタロンとタートルネックのサイケなセーター、ロンドンブーツを取り出した。梨華ちゃんの喜ぶ顔が見たいから、ちょっと恥ずかしいけど明日はこれにしよう。
- 158 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月11日(木)22時55分59秒
- 「ウイズイン・ユー・ウイズアウト・ユー」の奇妙なメロディが、頭の中をぐるぐると駆け巡る……。
- 159 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月11日(木)22時56分30秒
- カーテンの隙間から部屋にこぼれた日差しで、目が覚めた。壁の時計を見るともう9時を過ぎている。
わたしは慌てて飛び起き、歯を磨き、顔を洗い、髪をとかし、服を着替えた。梨華ちゃんをひったくるように抱えると、玄関を飛び出した。
- 160 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月11日(木)22時57分05秒
- ……
- 161 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月11日(木)22時57分39秒
- 雑踏の中、髪の白いサラリーマンが部下をつついた。
「どうしたんですか、部長」
「見ろよ、あの少年。君は知らないだろうが、あれが60年代に流行ったファッションだ。懐かしいなあ」
「ほお。初めて見ました」
「ははは、右腕には黒いだっこちゃんまでくっついてるよ」
- 162 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月11日(木)22時58分16秒
- おしまい
- 163 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月11日(木)22時59分50秒
- (0^〜^)<ラブリー・リカ♪
- 164 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月11日(木)23時00分25秒
- ( ^▽^)<ヨッスィ〜・イン・ザ・スカイ・ウイズ・ダイアモンド♪
- 165 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)21時06分27秒
- 『予告状』
- 166 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)21時06分59秒
- モーニング娘。がまた増えて、13人となってから初のシングルが発表された頃の話である。吉澤ひとみが、石川梨華に続いて初のメインとなり、しかもまるで宝塚歌劇団のような衣装と振り付けが話題となったのは記憶に新しい。
- 167 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)21時07分31秒
- ひとみが帰ろうとすると、梨華に呼びとめられた。
「どうしたの、梨華ちゃん」
「相談があるんだけど、ちょっといいかな」
ひとみは梨華に引っ張られるように喫茶店に入った。梨華はバッグから一通の封筒を取り出し、ひとみの目の前におずおずと置いた。封筒には、便せんが1枚入っていた。
- 168 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)21時08分04秒
- 「予」「こく」「じ」「よ」「う」
「今」「ヤ」「いた」「だ」「き」「に」「行」「く」
- 169 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)21時08分41秒
- 新聞から切り取られた、大きさのばらばらな活字がのりで貼られていた。
「これ、梨華ちゃん」
梨華は無言でうなずいた。ひとみは梨華に優しく微笑んだ。
「梨華ちゃん、心配性だなあ。本気にしてるの?」
芸能人の家には、どこで調べてきたのか、いたずら目的の手紙や電話がよくやってくる。それをいちいちまともに対応していたら、神経をすり減らすだけだ。
- 170 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)21時09分18秒
- 「いたずらだよ、きっと」
「でも」
ここでひとみは、梨華がかつて盗聴騒ぎに巻き込まれたことを思い出した。事務所の話題作りであるとの噂も耳にしたが、真偽のほどは確かではない。
「よっすぃ〜、今夜うちに泊まってよー」
梨華がこの手紙を不安に思うのも無理もないと思ったひとみは、梨華の部屋に泊まることにした。
- 171 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)21時10分25秒
- 「よっすぃ〜、今おいしい紅茶いれるから待ってて」
梨華は戸棚の扉を開け、ティーバッグ2つと砂糖入れをテーブルに並べた。そしてポットのふたを開けて、湯の量を確認した。
ひとみはテーブルの前に座り、この予告状を眺めていた。これは予告状である。しかしなんら具体性のある内容ではない。日時は漠然だが指定してある。しかし何を盗みにくるのか書いていない。
- 172 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)21時11分04秒
- 「梨華ちゃん、何か盗まれそうな大事なもの持ってるの?」
梨華は振り向いて、しばらく考えた後首を振った。
「ううん。今のところは……ないよ」
「そうかー」
- 173 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)21時11分53秒
- 予告状を出せば、当事者はまず間違いなく警戒する。下手をしたら警察沙汰になるだろう。こんなものを出すメリットは何だろうか。
これを出した人間がたいへんな自信家であり、この予告状は自己顕示欲の表れであるとも考えられる。しかしそれならば、盗む対象を指定するのが筋だ。時刻も12時ぴったりなどと指定するだろう。何もかもが中途半端だ。
- 174 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)21時12分44秒
- そこまで考えて、ひとみは大きく伸びをした。ただのいたずらの手紙に考え過ぎだ。ただ、梨華を安心させるに超したことはないだろうと、ひとみは思った。
「梨華ちゃん、大丈夫だよ。何も起きないから」
梨華はポットのお湯をティーカップに注いでいた。うつむいたまま返事をした。
「うん……」
「元気出しなって」
- 175 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)21時13分40秒
- 梨華は砂糖を軽く2杯入れ、スプーンでかきまぜた。白い小皿にベーグルを乗せ、ひとみの前に置いた。
「わっ、ベーグルだ。いただきまーす」
ひとみはベーグルをむしゃぶるように食いついた。喉につまり、胸を右手で叩いた。
「よっすぃ〜、紅茶で流し込んで」
- 176 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)21時14分21秒
- ひとみは慌てて紅茶を喉に流し込んだ。少し熱かったが、そんなことは言ってられなかった。
「よっすぃ〜、慌てんぼうだね」
梨華がくすくすと小さく笑った。
ひとみは頭が重くなるのを感じ取った。
ひとみは予告状が、いたずらでもなく、自尊心の表れでもない、もう一つの可能性を思いついた。
- 177 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)21時14分54秒
- 罠。
- 178 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)21時17分25秒
- 予告状には何を盗むか書いてなかった。
誰に宛てたものか書いてなかった。
「梨華ちゃん……わたし宛て……の……」
ティーカップが床に落ち、じゅうたんにしみを作った。ひとみの体が左右に揺れた後、床にくずれ落ちた。ひとみの目に、くずかごに放りこまれた、はさみであちこちが切り取られた新聞紙の束が映った。
- 179 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)21時17分56秒
- 梨華の笑い声と、つぶやき声がひとみの耳にかすかに聞こえた。
「……いただきます」
- 180 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月15日(月)21時18分55秒
- おしまい
- 181 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月15日(月)21時19分29秒
- よっすぃ〜のかっこよさに
- 182 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月15日(月)21時20分02秒
- くらくらする
- 183 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)21時35分50秒
- 『無惨』
- 184 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)21時36分20秒
- 中澤裕子がモーニング娘。を脱退した後の話である。
仕事を終えた石川梨華はコンビニで買い物を済ませた後、自分のマンションへと急ぎ足で歩いていた。人通りはなく、梨華の足音だけが響いていた。やがてその足音がぶれはじめた。
- 185 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)21時36分52秒
- 梨華はT字路の交差点で振り向いた。見回すが誰もいない。首をかしげ、また歩き始めた。しかし、やはり梨華の足音に合わせるかのように、別の足音がするのを梨華は聞いた。
「誰!?」
返事はない。急ぎ足で歩みを進めるが、今度は明らかに梨華のものと異なる足音が続いてきた。
- 186 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)21時37分26秒
- マンションに飛び込み、エレベーターのボタンを押した。7、6、5とゆっくり数字が点滅することに梨華はもどかしく思った。静かに扉が開くと梨華は周囲を見回し、誰もいないのを確かめてから中に入った。
もうここまでくれば安心だ。さっきのはきっと変質者に違いない。明日マネージャーに相談しようと梨華は思った。
エレベーターの扉はガラスがはめ込まれている。途中の階で、そのガラスの向こうにいるあやしげな人物が目に映った。梨華は悲鳴をあげそうになった。すぐにエレベーターは上昇し、それは視覚から消えた。
- 187 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)21時37分58秒
- 梨華の部屋の階につき、扉が開いた。梨華は無言で玄関に向かった。バッグから鍵を出し、ドアに差し込もうとするが、なかなかささらない。
「さかさまだよ」
梨華はその声のとおりに鍵を指し直した。カチャンという音がした。
「え」
梨華が後ろを振り向いたとたん、白い布が梨華の顔面を覆い、やがて梨華は気を失った。
- 188 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)21時38分30秒
- 梨華の姿が突然消えてしまい、事務所は蜂の巣をつついたような大騒ぎになった。マスコミ向けには体調不良によりしばらく入院するとの発表があった。
失踪してからちょうど一ヶ月後、夜の街をふらふらとさまよっている梨華が発見され、保護された。その姿は無惨というよりなかった。
- 189 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)21時39分01秒
- まだ石川梨華が失踪中のことである。
日本テレビの番組のロケに矢口真里が参加していた。例の矢口工務店である。真里はつなぎの服を着て、狭い店舗を走り回っていた。北海道から来た小川さんもそばで手伝いをしている。
- 190 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)21時39分32秒
- 汗だくになり、化粧の具合が心配になったので、カメラが止まると真里は手洗いに急いだ。店の一番奥の扉を開けると、まっさきに鏡をのぞき込んだ。
目の周りや頬の様子を細かくチェックする。やがて真里は鏡の上のほうに黒いものが写っていることに気がついた。
「あれ、どうして」
- 191 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)21時40分03秒
- なかなか真里が戻ってこないことに業を煮やした小川が手洗いの扉をたたいた。何回くりかえしても返事はない。
扉を開けると、そこには誰もいなかった。
やがて真里も一ヶ月後に別人のように変わり果てた姿で発見されることになる。
- 192 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)21時40分41秒
- 失踪者はこれで二人目である。プロデューサーや事務所社長、マネージャー、そしてリーダーである飯田圭織を交えて秘密会議が開かれた。
今後の対応についての確認である。警察には極秘に捜索願いを出してある。問題はモーニング娘。のこれからである。プロデューサーは何かの理由を立てて、二人が発見されるまで休養宣言することを主張し、社長も渋々ながら賛同を示した。
「一人ならともかく、二人となると取り繕うことも難しいだろうからな」
- 193 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)21時41分14秒
- 「それにしても、石川が消えたのは痛いわ。あいつには今度のシングルのセンターやってもらおう思ってたのに」
この言葉に圭織は過剰反応を起こした。
「矢口や石川がいなくても、モーニング娘。はちゃんとやっていけます。娘。がなくなったら、裕ちゃんに顔を向けられません」
中澤裕子のことでなにか後ろめたいことがあるのか、二人は圭織の意見に気おされ、モーニング娘。の活動を続けることが決定された。
- 194 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)21時41分47秒
- 他のメンバーにはマネージャーの他にも護衛がつけられた。しかし厳しい監視の目をかいくぐるかのように、メンバーの失踪は止まなかった。順に述べると、圭織(例の秘密会議の晩に失踪)、加護亜依(テレビ東京エレベーター内から忽然と姿を消す)、保田圭(サウナ帰りに失踪)、後藤真希(ユウキ朝帰りの日に失踪)。
残ったのは安倍なつみ、吉澤ひとみ、辻希美の三人のみである。梨華は真希の失踪直後に発見されたが、前述の通り見るに耐えないボロボロの状態であり、当分の間復帰は見込めなかった。
- 195 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)21時42分23秒
- それでもモーニング娘。は残った三人で活動を続けた。他のメンバーについては事務所が苦しい言い訳を流したが、不思議なことに疑問の声はほとんど上がらなかった。レギュラー番組はこの三人に加え、急きょ中澤裕子や平家みちよを呼び出してお茶を濁した。新曲やコンサートの類は無理な話だが、それでもモーニング娘。自体の露出度に変化はなかった。
- 196 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)21時42分56秒
- 安倍なつみが「よっすぃ〜お茶の間ショッピング」収録後に失踪したと聞かされ、吉澤ひとみは辻希美の携帯に電話した。
「のの、安倍さんが失踪したってどういうこと?」
「……よっすぃ〜、例の場所に来て下さい」
- 197 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)21時43分38秒
- ひとみが都内の某倉庫の扉を開けると、希美となつみがいた。なつみは長テーブルの上に皿をいくつも並べ、一心不乱に食していた。
「ちょっと、安倍さん!」
「無駄です。誰にも止められないのです」
「どういうこと、のの」
希美は首を振ると、ひとみにささやくように小声で話しかけた。
- 198 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)21時44分12秒
- 「わたしたちがこの計画を実行に移した理由を覚えてるでしょう、よっすぃ〜」
「覚えてるよ。他のメンバーを二目と見られない姿にするため。一時的でも」
「そう。わたしたちはそれぞれの理由で体や顔が横に広がってしまいました。それにつれてテレビでの出番が少なくなり、放置されるようになったのです」
「あたしはもともと放置されてたけれど」
希美は大きくうなずいた。
- 199 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)21時44分47秒
- 「自覚があるのはいいことなのです。それに比べて他のみんなは優遇され始めた。例のシャッフルユニット見れば一目瞭然なのです。それでわたしたちは、それを引きずり下ろすために、拉致して、食欲増進剤を投与して、食べ物を大量に食べさせた。一ヶ月もすればぶくぶくなのです」
「でも、どうして安倍さんまで。仲間でしょ!」
「……かつては。しかし安倍さんは最近顔もほっそりとして、体もやせ始めた。これはある意味裏切りなのです」
「だからって」
- 200 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)21時45分21秒
- 「……よっすぃ〜。よっすぃ〜も最近またやせてきたのです」
「の、のの」
「ほっそいほっそいなあ」
ひとみは首筋にちくりと痛みを感じ、やがて横に倒れた。希美は肩を落とし、大きくため息をついた。
- 201 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月18日(木)21時45分59秒
- おしまい
- 202 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月18日(木)21時46分38秒
- これでちょうど10編となりました。
- 203 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月18日(木)21時47分56秒
- 切りのいいところでお開きといたします。
読んでくださったみなさん、ありがとう。
(0^〜^)<ばいばーい
- 204 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月18日(木)23時10分40秒
- おわっちゃった。残念。
復活を楽しみにしてます。
- 205 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月22日(月)03時12分27秒
- 毎回なかなか切れ味の鋭い小品が楽しみでした。
また他のスレなんかでは続けるのかな? とりあえずは御疲れ様でした。
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