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くちづけのその後

1 名前:式神 投稿日:2001年09月21日(金)00時25分07秒
学園モノを書きたいと思います。
「いしよしごま」の三角関係にチャレンジです。
実際の年齢など一切無視してます。

隅の下のほうで、ひっそりと更新していきたいので
sageでお願いします。(ワガママですみませんm(__)m)

それでは宜しくお願いします。
2 名前:式神 投稿日:2001年09月21日(金)00時27分01秒
土曜日の夜に更新する予定です。
前の小説と違って、三角関係はムズカシイですね〜。
自分なりに頑張ってみます。
3 名前:空唄 投稿日:2001年09月21日(金)02時28分07秒
タイトルが好きな曲だったんで見てみたら、式神さんだったんですね。
期待してます。
4 名前:JAM 投稿日:2001年09月21日(金)16時33分52秒
うわぁ〜♪
早いですね。まだ前作終わったばっかなのに。
土曜の夜ですね!了解しました♪
楽しみにしてまぁ〜す。
5 名前:Charmy Blue 投稿日:2001年09月21日(金)20時28分01秒
お〜。期待期待〜!
明日の夜が楽しみぃ♪
6 名前:式神 投稿日:2001年09月22日(土)20時31分57秒
>>3 空唄さん
  自分も好きな曲です。
>>4 JAMさん
   早いのは今だけかも・・・。行き詰まったらやばいです。
   そうならないよう気をつけます。
>>5 Charmy Blueさん
   期待通りの作品になるでしょうか?
   今からもう、不安です(-_-;)

では、更新します。
7 名前: 投稿日:2001年09月22日(土)20時43分23秒
そっと触れるだけのキスが、少しずつ、深くなって・・・。
甘く噛んで開かせた唇へ、探るような舌を忍び込ませる。
ひとみの舌先が仕掛ける、些細なイタズラや、少しだけ意地悪なキスの仕種に
梨華は、感じるまま、カラダを震えさせて・・・。

梨華のその柔らかい舌の感触と、時折漏れる甘い声に引きずられるように、
ひとみは、薄いシャツ越しに触れる指先を大胆なものに変えていく。

「・・・あっ・・・っ」

喘ぐような微かな吐息にまで、煽られるみたいに・・・。
ひとみは、うっすらと染まって震えている梨華の首筋へ
噛み付くようなキスをする。
そのわずかな刺激にさえ零れる声の甘い響きに、昂ぶってしまう自分を、
ひとみは抑え切れない。
8 名前: 投稿日:2001年09月22日(土)20時54分15秒
強引な仕種で脱がせようとしたシャツは、なのに上手く脱がせられなくて・・・。
昂ぶる衝動の分だけ、ひとみは焦っていた。

「・・・梨華・・・っ」

自分でもわかる掠れがちな声で囁きながら、ボタンを外そうとする指先は、
なぜか上手くいかない。
しどけなく映る梨華の、愛撫の続きを待ってるような表情とは裏腹に、
二人を隔てるシャツのボタンは、ひとみを拒むように、なかなか外れてくれない。
梨華がされるまま、それでも感じているのが分かるから、
ひとみは余計に焦ってしまう。

「・・・待っててね。今・・・」

してあげるから・・・。
優しく囁くのは、自分が我慢できないからかも知れない。
なぜかどうしても脱がせられないシャツを諦めて、
ひとみは、一気に下のスカートを脱がせることに決めた。
9 名前:JAM 投稿日:2001年09月22日(土)21時09分25秒
リアルタイムで見れた〜!!
すっごいうれしいです。
しかし最初からエロい・・・(いきなり鼻血)
今、出血多量で死にかけてます。(笑)そろそろ命が危ぶまれますが
今回も最後までついていきます!!頑張って下さい!
10 名前: 投稿日:2001年09月22日(土)21時11分50秒
せきたてられるような感覚を抱えて、性急な仕種でファスナーを下げていく。
焦れったく響くファスナーの音が、今から自分がしようとしていることの
卑猥さを教える気がして、ひとみは意味もなく興奮した。

「や・・・っ、だぁ・・・っ」

そのままショーツごと脱がせて、おもいっきり大胆に脚を開かせる。
その態勢の恥ずかしさに梨華は、ひとみに見られたくないみたいに
顔をそらしてしまう。
そんな初々しい仕種に微笑みを深くして、ひとみは、羞恥に染まる
横顔へなだめるようなキスを与えた。

「ん・・・っ」

恥ずかしがるみたいに閉じようとする脚を、許さないと言うみたいに
内股へ口づける。
とたんに震える肌に気を良くして、ひとみは、もうじんわりと
秘液がしたたっている、梨華のカワイイ蕾に唇を這わせた。

「あ・・・んっ・・・や・・・っ」

真っ赤になって嫌々をするように梨華が身じろぐ。
けれどその仕種は、ひとみを誘ってるようにしか見えない。
11 名前: 投稿日:2001年09月22日(土)21時20分06秒
「そんなにココ、感じちゃう?」

からかうように囁くはずだった声は、欲情に濡れて掠れたものになってしまう。
軽いキスで触れていた部分を舌先でつついた後、
もっと奥の方へ、指を潜り込ませる。

「我慢してね・・・、痛くしないから・・・」

甘く囁いて・・・。
2本の指を梨華の中に入れようとした・・・・・・・・・瞬間。

「ひとみちゃん!!!」

いきなり頭上で響いた、一オクターブ高い怒鳴り声に、
ひとみは驚きすぎて、ベッドの中で固まってしまった。
12 名前: 投稿日:2001年09月22日(土)21時31分34秒
「いつまで寝てるつもりなの。遅刻しちゃうよっ」

うっすらと見たくないものを見るように目を開けるひとみ。
目の前にいる、怒り狂ったような梨華の表情に絶望した。
自分の下で色っぽく喘いでいた梨華は、やっぱり夢の中の
生き物だったのだ。

「夢だったのか・・・」

どうりでシャツのボタンなんかで焦っていたはずだと、ひとみは一人納得していた
そして、梨華も大人しくされるがままだったはずだと・・・。
夢の中で焦っていた自分がいっそ惨めな気分だ。

「早く起きて! 今すぐ起きて! 一秒で起きて〜!」

よく毎日これだけ同じことが言えるものだと梨華に感心してしまう。
そして、とても起き上がれるような状態ではない自分にため息をつく。
そのまま反動で落ちてきた前髪を、うっとうしげに掻き上げて、
ひとみは、朝から元気に騒いでいる梨華を見上げた。
13 名前: 投稿日:2001年09月22日(土)21時46分39秒
柔らかな髪が朝日のせいか薄茶色に透けて見えて、
どこかあどけなさの残る小作りな顔は、華奢に映る体型に
とてもよく似合っている。
きゅっと引き結ばれたカワイイ唇や、澄んだ瞳は、夢に出てきた梨華と
少しも変わらないように見える。
ただ、決定的に違っているのは・・・。

「何をボーッとしてるの?」

目の前の梨華に、色っぽいという言葉は、まるで当てはまらない、ということだ。

「もうちょっとだったのに・・・」

ひどく残念そうに呻いて、どうせ夢なら最後までしたかったナ、なんて
梨華には絶対言えないようなことを考えてしまうひとみだった。
もう一度シーツを頭まで被って寝直すことにする。
あんな夢を見た後で、現実の色気のない梨華を直視するのは
あまりにも惨い気がしたからだ。
目の前にいるこの梨華から、夢の中のあの淫らな梨華を想像できる
自分の想像力の凄さに、ひとみは眩暈がした。
14 名前: 投稿日:2001年09月22日(土)21時57分00秒
「こらっ!ひとみちゃん、また寝てどうするの!」

けれど、ここからが梨華のしつこい所なのだと知っているひとみは、
そのままじっとシーツの中にうずくまったまま頭を巡らせる。
つまり、手っ取り早く梨華を追い出す100の方法について・・・。

「・・・実は昨日の夜から、調子が悪いの」

思い切り芝居がかった声で、顔だけそっとシーツから出す。
なんとかして、この部屋から梨華を追い出して、ひとみは一人になりたいのだ。
そうしなければならない正当な理由が、ひとみにはあった。
先ほどの不埒な夢のせいで、不覚にも濡れてしまったショーツを
どうにかしたい。

「夜、熱があったから・・・今日は・・・学校休みた・・・い」

どこか力の入らないような演技で弱々しく言ってみる。
そんなひとみを疑わしそうに見ていた梨華は、ひとみが少し咳き込んで
見せた途端に、すっかり騙されてしまった。
15 名前: 投稿日:2001年09月22日(土)22時05分45秒
「ひとみちゃん!!」

急に心配そうな表情になって、ひとみの手を握りしめてくる。

「こんなに・・・こんなになるまで黙ってるなんて・・・ひとみちゃん・・・」

今にも泣き出しそうな梨華に、ひとみは、内心呆れてしまった。
こんなになるまでっていうのはオーバーなんじゃない?

「苦しい? オエってなる? それとも目がグルグルする?」

次々に質問を繰り返す梨華に、ひとみは笑いをかみ殺す。
人が好いって言うか、ちょっと抜けてるって言うか・・・。
とにかく梨華は、信じられないくらい素直なのだ。
過去どれくらいひとみに騙されているか、ということを騙される度に
すっかり忘れてしまうらしい。
誰か悪い奴に騙されるんじゃないかと心配になるくらい。
16 名前: 投稿日:2001年09月22日(土)22時18分39秒
「私のことはいいから、梨華ちゃんは学校に行って・・・」

気を抜くと病人だという設定を忘れて笑ってしまいそうになるから、
取りあえず語尾だけ怠そうに濁しておく。
それだけで、もう梨華は、ひとみを重病人のように心配してしまうのだ。

「中澤先生によろしく伝えてて・・・」

担任への伝言を残して、ひとみはシーツの中に隠れてしまう。
ひとみの計算では、梨華はもうすぐ涙ながらに学校へ向かうはず。
心配そうに何度もひとみの家を振り返りながら・・・。

「こんな・・・こんな大変な時に・・・」

絞り出すような梨華の声に、ひとみは嫌な予感がした。
まさかと思いながら、もう一度シーツから頭を出すと、

「ひとみちゃんをこのままにして、学校なんて行けないよ〜」

涙でいっぱいの瞳が、まるで計算違いなことを口走った。

「病気のひとみちゃんを一人になんてできないよ」

「梨華ちゃん、落ち着いて。よ〜く聞いて」

もうすっかり「病人ごっこ」を忘れてしまっているひとみは、
やけにはっきりした口調で、梨華に話し始める。
17 名前:10 投稿日:2001年09月22日(土)22時30分18秒
「いい?私に熱があったのは昨日の夜」

分かる?と確認をするように梨華に視線をやる。
梨華も真剣な表情で頷きながら、ひとみの話を聞いている。
もうすっかり騙されている時の表情だ。

「今は熱はないけど、カラダがだるいから学校には行けない」

分かるでしょ、と念を押すように言う。

「つまり、今の私は重病人じゃないけど、病人なの」

よく分からない説明をするひとみに、それでも梨華は納得したように頷いた。

「だから〜梨華ちゃんの任務は分かるかナ〜」

優しく尋ねると梨華は、懸命にひとみを見つめながらこう答えた。

「私の任務は、中澤先生にひとみちゃんは、お休みですって伝えること!」

自慢げに言う梨華の頭へ、手だけを伸ばして撫で撫でするひとみ。

「大正解!!エライな、梨華ちゃん」

ひとみに誉められて、丸め込まれたことも知らずに梨華は、
嬉しそうに笑っている。

「それじゃ、私がひとみちゃんのおばさんにも伝えてあげるから、
 安心して寝てていいよ」

はりきった声で言う梨華に、ひとみは苦笑した。
18 名前:11 投稿日:2001年09月22日(土)22時42分31秒
「・・・ひとみちゃん」

ふいに言いにくそうに言葉を落とした梨華に、ひとみは首を傾げながら
返事をする。

「ひとみちゃん・・・最近、私のこと避けてない?」

続けられた言葉に、ひとみは一瞬どう返事していいか分からなかった。
尋ねる梨華の表情が、ひどく真剣だったからだ。

「梨華ちゃんを避けてどうするの?おバカな梨華ちゃん」

私たち無敵の幼なじみでしょ、なんて冗談めいた仕種で言って
笑って見せながら、梨華の表情が安心したような笑みに変わるのを
ひとみは、痛いような気持ちで見つめていた。

「・・・今の、聞かなかったことにしてね」

ごめんなさい、なんて言う梨華が照れたような笑顔になっていることに
ひとみは安堵する。

「じゃあ、私、行ってくるから」

どこか照れた表情のまま、梨華はドアの向こうへ消えた。
そのまま一階まで駆け降りていく足音と、いつもより高い声で、
「ひとみちゃん急病」をひとみの母親に告げる声を聞きながら、
今度こそひとみは、夢の続きを最後まで追うことに決めた。
19 名前:式神 投稿日:2001年09月22日(土)22時51分43秒
>>7-18 更新終了です。

今度の小説は内容を濃くして書こう!と力みすぎて
文章がはちゃめちゃになってしまったような・・・
感想お待ちしてます。
20 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月22日(土)23時33分36秒
式神さん!あんた最高だよ!
そうきたかい!って感じだよ!期待してまっせ〜
21 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月23日(日)00時21分59秒
今回もエロそうですね。(笑)
更新楽しみにしてます。
22 名前:名無し者 投稿日:2001年09月23日(日)06時38分11秒
しょっぱなから夢オチかYO!(w
これからのヨシコの行動力に期待!
23 名前:式神 投稿日:2001年09月24日(月)18時08分40秒
>>20 期待通りの作品に出来るかどうか・・・頑張ります!

>>21 自分としては早くエロ書きたいのですが・・・(w
   焦らしますよ(^^)
>>22 今回のヨシコは、意気地なしです(w

24 名前:12 投稿日:2001年09月24日(月)18時18分16秒
素直で元気が取り柄の石川梨華と、ヒネくれ者の吉澤ひとみは同級生で
隣同士の家に住む、正真正銘の幼なじみだった。
同じような造りの家の窓を隔てて互いの部屋を行き来する二人は、
幼なじみというより姉妹のような感覚の所がある。
生まれた時から高校生になった今でも、二人は子供の頃から何をするのも一緒。
幼なじみで大親友で、ほとんど家族。
そして、誰よりも長く一緒にいる存在。

「それが、最近な〜んかヘンなのよね〜」

ひとみの家を出て、一人で学校に向かっていた梨華は、
少し面白くなさそうに呟く。
今朝ひとみは、あんな風に言ってたけれど、最近のひとみの様子が
おかしいのは多分事実なのだ。
25 名前:13 投稿日:2001年09月24日(月)18時29分30秒
尾を引くようなケンカをしたわけでもないし、ひとみが何か特別な
隠し事をしている風でもない。
梨華には、ひとみに避けられるような心当たりは、なかったし、
ひとみがあからさま梨華を避けているわけでもなかった。
ひとみは、ちゃんと話して、時にはひどく優しく笑ったりもしてくれる。
朝も迎えに行けば、梨華と一緒に学校へ行くのだ。
別に何がどう変わったかなんて梨華には上手く言えない。
ただなんとなく、いつの間にか気が付いたら、ひとみが傍にいない。
ただそれだけだ。

「・・・・・・なんかヘン」

だから避けられているのかと思ったのだけれど、ひとみはそうじゃないと言う。
言葉に出来ない距離のようなものが、はっきりとした自覚のないまま
二人の間に存在しているような気がして、梨華は面白くなかった。
面白くないというより、不安なのかもしれない。
26 名前:14 投稿日:2001年09月24日(月)18時42分28秒
「ホントにこんなのヘンだよ」

梨華は、らしくないため息を吐いて、たどり着いた教室のドアを開けた。
タイミングよく朝のホームルームが終わったばかりだったのか、
教室の空気は妙にざわついていた。
すぐに梨華の存在に気付いた、辻希美と加護亜依のコンビが
嬉しそうに寄ってくる。
高校で出来た、ひとみと梨華の共通の友達だ。

「一人で来たの?梨華ちゃん、エライ!」

「ちょっとまて、梨華ちゃん、ヨッスィーは?」

同時に訊いて来る二人に、

「ひとみちゃんは、ビョーキで休みだって」

答えた途端に、希美がガッツポーズを取る。

「よっしゃ〜!もらった!あいぼん、ののにジュース一本ね」

嬉しそうに手を出す希美に、亜依がガッカリしたような表情で頷いた。
どうやら二人は、サボリ魔のひとみが学校をサボるかどうかを賭けていたらしい。
27 名前:15 投稿日:2001年09月24日(月)18時57分24秒
「二人とも、勝手にひとみちゃんのこと、賭けちゃって〜」

呆れたように言いながら笑って、

「ダシにされちゃったんだから、ののちゃん私にも
 ジュース半分ちょーだいネ♪」

希美の肩を叩きながら友情の握手をしたら、
すぐに亜依が空手チョップを入れてくる。
そうやって、いつものように梨華は、辻・加護たちと騒いでいた。

「梨華ちゃん?」

ふいに後ろから掛けられた、聞き覚えのない声に振り返る梨華。

「やっぱり、梨華ちゃんだ」

その視線の先で、ひどく親しげに笑っている人物を見つけて梨華は、
不思議そうに首を傾げた。
梨華と同じくらいの身長に、キレイに整った容貌が少し甘く映るのは
柔らかい表情のせいだろうか。
整った顔立ちや、うらやましいほど恵まれた体型は、ひとみと競える
ぐらいのものだけれど印象がまるで違って見える。
同じ整った容姿でも、ひとみが少年っぽい印象をしているのに対して、
彼女は同じ年齢とは思えない、色っぽい仕種が似合うような女性、という感じだ
28 名前:16 投稿日:2001年09月24日(月)19時07分09秒
親しげな様子の彼女は、梨華には全く見覚えのない人物だった。
もしも、梨華がどこかで出会っていたとしたら絶対に覚えているだろうと
思うような容貌の持ち主なのに、記憶のどこを捜しても梨華には
思い出すことが出来なかった。

「梨華ちゃん、知り合い?」

そんな梨華の態度に、希美が怪訝そうな表情をして見せる。

「違うと思う・・・全然自信ないけど」

困ったように答えた梨華に、亜依が当然のような口調で付け加える。

「知らなくて当然じゃん、今日来たばっかの転校生だもん」

そう言われて初めて梨華は、自分の席の隣りに昨日までなかった筈の
席が作られていることに気付いた。
そして、そのなかった筈の席に座っている人物に、

「本当に覚えてない?私、後藤真希」

少し憮然とした表情で名乗られて、それでも思い出せない
梨華は考え込んでしまう。
29 名前:17 投稿日:2001年09月24日(月)19時23分32秒
「私は、石川・・・梨華だけど・・・」

とりあえず自分も名乗ってみる。

「え〜っと、え〜っ、ごとうごとう、ごとう・・・後藤?」

記憶の隅に引っかかっている何かを思い出しかけたような
感覚に梨華は顔をしかめた。

「だから・・・ごっちんだってば」

そんな梨華に、後藤と名乗った彼女は焦れったそうに言う。

「ごっちん?」

その瞬間、梨華の中で眠っていた記憶が一気によみがえる。
梨華の知っている後藤真希と言えば、梨華の幼なじみで子供の頃、
一番仲の良かった三人組のひとみの片割れしかいない。
けれど、その真希なら小学校の時に、父親の転勤で北海道へ
引越したきりだった筈だ。

「もしかして、あのごっちん?」

途端に明るくなった梨華の表情に、憮然としていた転校生の表情が
柔らかい笑みに変えられる。
梨華に思い出してもらえて嬉しかったのだろう。


30 名前:18 投稿日:2001年09月24日(月)19時36分46秒
「ごっちん?本当にあの生意気でひとみちゃんにいつも
 怒鳴られてたごっちんなの?」

疑問をそのまま口にする梨華に、真希は苦笑した。

「その、生意気でいっつもひとみに怒鳴られてたごっちん、だよ」

悪戯っぽく言ってみせる真希の仕種に、完全に記憶を取り戻した
梨華も一緒になって笑った。

「梨華ちゃん、あの転校生って、知り合い?」

まるで話の見えない様子の希美と亜依に、真希は自分とひとみの幼なじみだと
説明して、梨華はまた、キョトンとした表情になった。

「転校生?」

不思議そうな梨華に、真希は軽く頷いた。

「そう、芸のないことにまた父さんの転勤ってヤツ、あはっ」

改めてよろしく、なんて芝居がかった仕種で会釈して見せる。
そんな真希に、梨華は急に昔に戻ったような感覚になって
子供みたいに笑ってしまいながら、

「無敵の幼なじみ再結成だね」

と嬉しそうに真希の顔を見つめ直した。
31 名前:19 投稿日:2001年09月24日(月)19時43分32秒
少し大人びた感じはあるけれど、涼しげな瞳も、柔らかな微笑みも、
子供の頃と同じように映って、梨華は単純に嬉しかった。

「そういえば、ひとみは?」

今どうしているのかと真希に訊かれて、

「相変わらず私と一緒なの、おまけに同じクラス!」

ラッキーでしょ、なんて微笑みながら梨華は説明する。

「なんだ、やっぱりまだひとみと無敵の幼なじみやってるんだ」

同じように微笑む真希に、梨華は、もうひとみとは無敵の幼なじみではない
気がすることや、もしかしたらひとみに、避けられているのかも知れない
ということを言えないまま、小さい不安ごと梨華は笑顔に変えてしまった。
32 名前:式神 投稿日:2001年09月24日(月)19時45分53秒
>>24-31 更新終了です。

後藤さんの登場です。
これからこの三人はどうなるんでしょう??
33 名前:aki 投稿日:2001年09月24日(月)19時55分15秒
おお、後藤も登場し一体どういう三角関係になる
のでしょうか・・・・。
これからの三人の関係がどうなるのか気になりますね。
これからも頑張ってくださいっ。
34 名前:Charmy Blue 投稿日:2001年09月24日(月)20時44分15秒
面白そうな展開ですね。楽しみです〜
35 名前:式神 投稿日:2001年09月24日(月)21時04分29秒
>>33 akiさん
   三角関係は、小説でも、現実でも、難しいモノなんですね(w
   自分なりに頑張ります。
>>34 CharmyBlueさん
   師匠〜!!(早速)三角関係って辛いっす!!

暇なので少し更新します。
36 名前:20 投稿日:2001年09月24日(月)21時18分16秒
ベッドの上で梨華を見送ったひとみは、結局そのまま寝直すことも、
夢の続きを追う気にもなれないまま瞳を閉じて、カラダを投げ出していた。
閉じられた瞼の影が、やるせなく滲み、甘い胸の痛みにひそませた眉が、
切なさに柔らかく彩られていた。
こんな時に、ひとみが考えるのは、いつも梨華のことばかりだ。
いつからどうやって梨華を好きになったのかなんて、ひとみ自身にも
分からないけれど、気が付いた時には、もう梨華の事しか考えられなくなっていた

優しかった筈の想いは、いつも間にかひどく狂暴な、甘い衝動をはらんだ感情
に変わっていて、時折ふいに現れる、その衝動の強さにひとみは、
自分でも戸惑ってしまう。
自分が梨華に何をしたいのか、なんて嫌になるくらい分かっている。
最近のひとみは、ただの親友の顔をして、梨華の傍にいることさえ
辛くてたまらないような気になってしまっていた。
37 名前:21 投稿日:2001年09月24日(月)21時27分15秒
それでも、だからといって完全に梨華から離れてしまう勇気も、
気持ちを打ち明ける勇気も、今のひとみにはない。
この気持ちが純粋だからと言って、普通ではないことぐらいひとみ自身が
一番よく知っていた。
このまま、この気持ちを黙ってさえいれば、少なくとも梨華の「親友」で
いられる。
臆病だと分かっていても、告白して嫌われるのが怖かった。

「・・・・・・バカみたいっ」

だからといってこのままずっと自分を抑えていられる自信なんてまるでない。
それでも、梨華の傍にいたくて、
梨華の傍にいるのは、自分だけだと思っていたくて・・・。
卑怯で滑稽な自分に笑ってしまいそうだ。
泣き笑いみたいに歪む頬を、シーツの中へゆっくりと沈ませる。
38 名前:22 投稿日:2001年09月24日(月)21時34分32秒
バカみたいだと笑うことでしか、ひとみには自分の気持ちを
誤魔化せないような気がした。
考えても考えても答えの出ないようなことばかり考えて、
結局は何がどう変わる訳でもない、何も起こらない幸せな日常へ
続く答えばかりを無意識に選択している毎日。


好き、なんて言葉にすれば五秒で終わるような単語。
そんな単純で簡単な言葉が、ひどく難しくて、ひとみには、
とても言えない気がする。

「梨華・・・・・・」

好きだと、言う代わりに囁く言葉は・・・
いつも、甘く純粋な響きに揺れていた。
39 名前:式神 投稿日:2001年09月24日(月)21時40分13秒
>>36-38 ちょこっと更新です。

吉澤さんには、これからモンモンと悩んでもらいます(w


余談ですが、エロを書かないと欲求がたまります。
どこかで発散しなければ・・・ど・こ・か・で(w
40 名前:Charmy Blue 投稿日:2001年09月24日(月)22時01分57秒
微妙にリアルタイム♪
私も三角関係は書いてて、どうすんだ〜?って気分です。
吉澤くん、切ないっすね。
41 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月25日(火)02時20分32秒
うーん、ごまは誰と対立するんだろう・・
楽しみっす!
42 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月25日(火)17時57分47秒
後藤の心はどちらに傾くのか。 期待してます。
43 名前:JAM 投稿日:2001年09月25日(火)19時16分24秒
よっすぃ〜辛そうだ・・・切ない・・・
これはなんとしてでも梨華ちゃんをGETしてもらいたいです。
44 名前:式神 投稿日:2001年09月26日(水)01時40分20秒
>>40 CharmyBlueさん 
   自分もどうすんだ〜って気分です。

>>41 誰でしょうか??

>>42 どちらに傾くのでしょうか??

>>43 まだまだ吉澤さんには悩んでもらいます(w


眠いですが更新します。睡魔に襲われ、
誤字・脱字があるかも知れません。m(__)m
45 名前:23 投稿日:2001年09月26日(水)01時51分21秒
夜の暗い道路を自転車に乗ってひとみは、バイト先から家へ向かっていた。
梅雨が明けたばかりの夜は、生ぬるい濃密な空気で包まれていて、
もう夏が近いことを肌へ直に教える。
大通りの交差点を右折して、走り慣れた我が家へ続く道へ出る。
信号機の点滅を見ながら、ひとみは、ふいに梨華のことを考えて
唇に笑みを刻んだ。
結局、梨華を丸め込んで学校をサボったひとみは、母親に適当なこと
を言ってそのままバイトへ出掛けてしまったのだ。
ひとみの母親は、放任主義を地でいっているような人なので、
学校をサボったぐらいでどうということはなかったが、
ひとみが病気だと信じて登校した梨華は、病気の筈のひとみが
元気にバイトへ出掛けたと知ったら大騒ぎしているだろうと思う。
そんな怒っている梨華の表情を想像して、ひとみは笑ってしまう。
46 名前:24 投稿日:2001年09月26日(水)02時02分06秒
拗ねているような梨華を、甘やかすような仕種でなだめている自分を
想像して、ひとみは肩を竦めた。
きっと自分は、どんなに素っ気ない振りを装っていても結局は梨華を
甘やかしてしまうし、からかうような事ばかり口では言いながら、
梨華のワガママを聞かずにはいられないのだ。
そして、そんな時の梨華を見つめるすごく嬉しそうな、
幸せな自分を見なくても、ひとみはもう知っている自分に苦笑してしまう。

「梨華ちゃん・・・かぁ・・・」

ため息を吐いて、見慣れた自宅の脇へ自転車を止める。
流れ落ちる汗を無視して、誰もが寝静まったような家の玄関を
静かに開ける。両親を起こさないように出来るだけそっと靴を脱ぐと、
そのまま真っ直ぐバスルームへと向かった。
簡単に熱いシャワーを浴びて、冷蔵庫から父親の缶ビールを
盗み取ると、二階にある自分の部屋へ忍び足で向かう。
47 名前:25 投稿日:2001年09月26日(水)02時13分45秒
部屋の明かりを点けないまま、ひとみは、ゆったりと椅子へ腰を下ろした。
濡れたままの髪から伝い落ちる滴をタオルで拭うと、
伸びた前髪をうるさげに掻き上げる。

静まり返った部屋の中で、ビールのタブを引く音がやけに響く。
そのまま一気に飲み干して、良く冷えたそれが炭酸の感触のまま
胃に落ちて熱くなる感覚を追ってみたりする。
それは多分、ひとみにとって大切な時間の一つだ。

そうして習慣のように見つめた視線の先に、梨華の部屋の窓が映る。
その部屋の明かりは、もう落とされていて、そこの住人が眠ってしまった
ことを教えていた。
真夜中を軽く過ぎた今、きっと梨華は眠っているのだろう。
毎朝、子供の頃からの習慣で、学校へ行こうと誘いに来る梨華は、
学校へは遅刻しても、ひとみの家に遅刻して来たことなんてない。
ひとみを起こすため、生真面目に夜更かしせずに眠っている梨華を
想像して、ひとみは微笑みを深くする。
48 名前:26 投稿日:2001年09月26日(水)02時25分24秒
一体自分は一日に何回、梨華のために笑ったり、ため息を吐いたりしたら
気が済むのだろう。

「人の気も知らないで・・・バ〜カ」

軽く笑みを唇の端に刻んだまま、梨華を見習って寝ることに決めた。
ひとみは、ベッドに手を掛けた。
ふと、ベッドの上に見つけた不自然な膨らみに眉を寄せる。
そのまま、何かを確認するように慎重な手つきでヘッドライトを点けた。
一気に捲った、掛け布団の下に。

「!!!」

ひとみが見つけたのは、すやすやと幸せそうに眠っている梨華だった。

「ナニやってんの!!梨華ちゃん!」

驚いたひとみは眠っている梨華を怒鳴りつける。
けれどもまだ呑気に眠っているような梨華を、叩き起こすために、
ひとみはベッドを乱暴に揺さぶった。
別にひとみは、勝手に自分のベッドを使われたことに腹を立てて
いるわけではない。
梨華が、あんまり幸せそうに無防備な表情で眠っていたから焦ったのだ。
49 名前:27 投稿日:2001年09月26日(水)02時35分18秒
「ん・・・ひとみちゃん・・・?」

寝ぼけているような甘い声で梨華は、嬉しそうにひとみの名前を呼ぶ。
その表情が、絶対にひとみは自分に危害を与えないと信じ切って
いるように見えてたまらなくなる。

「ねぇ、梨華ちゃん。起きてよ」

このままでいたら、自分が何をしてしまうか知っているひとみは、
そんな自分の欲望ごと振り払うように梨華をベッドから追い出そうとする。

「ダメなの、私・・・今日家に帰れないの・・・」

なのに梨華は泊めてくれなんて言うのだ。
必死にひとみの腕と布団にしがみついて、まるで駄々をこねる
子供みたいに何度も。

「絶対ジャマしないから、おとなしくしてるから、ねっ」

大人しくしていられないのは、ひとみの方だということが分かっていない。
50 名前:28 投稿日:2001年09月26日(水)02時40分36秒
「・・・梨華ちゃん、もしかして家出してきたんじゃ・・・?」

一応、確認するようにひとみは訊いてみる。
途端に黙った梨華に、少し眉をしかめた。

「ごめんなさい・・・」

そんなひとみに、梨華がシュンとした仕種でうなだれてしまう。
その様子に大体のことを察したひとみは、大げさなぐらいのため息を
吐いてしまった。
51 名前:29 投稿日:2001年09月26日(水)02時52分29秒
梨華の本当の母親は五歳の夏に死んでしまっている。
それから、ずっと父親と二人で幸せに暮らしてきた梨華に家に、
ある日突然「新しいお母さん」が来たのだ。
二人が中学三年の夏のことだったから、もう二年になる。
父親の気持ちを想って笑顔で彼女を迎えた梨華は、なのになぜか以来ずっと、
新しいお母さんのことを「お母さん」と呼ぶことが出来ずにいた。
別に仲が悪いわけでも、彼女を嫌っているからというわけでもない。
ただ、なんとなく呼べないだけなのだ。
そのことで梨華がすごく悩んでいる事を知っているから、
ひとみは梨華を怒ることが出来ない。
父親の前では心配を掛けないように聞き分け良く、そして新しい
母親のために明るく振る舞っている梨華の、それは細やかな反抗だと
ひとみは思っていた。
多分、梨華自身でさえ気付いていない、無意識の反抗。
52 名前:30 投稿日:2001年09月26日(水)03時05分40秒
「もう・・・、今日は大失敗」

無理に笑おうとする梨華の、表情の方が失敗している。
見ているのが辛くて、ひとみは梨華の髪ごと乱暴に引き寄せてしまう。

「おかーさん、って呼ぼうと思ってるのに・・・言えないの・・・」

そのまま、素っ気ない振りを装って、掻き混ぜる仕種で優しく髪を
撫ぜたら、梨華の額が自然にひとみの脚へもたれ掛かってくる。

「あせらないで、大丈夫。いつか呼べるよ」

ありきたりの慰めしか言えない自分が少し悔しい。
けれど、少しは効果があったのかも知れない。
触れている膝の上の辺りで梨華が笑ったような気配がしたからだ。

「・・・・・・というわけなの・・・だから泊めて?」

お願いするように見上げられて、ひとみは困ってしまった。
この状況で梨華を邪険に追い払うなんて、ひとみには出来ない。
けれど、大人しく一緒に眠るだけなんて、もっと出来そうにないのだ。
53 名前:式神 投稿日:2001年09月26日(水)03時09分59秒
>>45-52 更新終了です。

文章がグダグダだ〜〜!!
すみませんm(__)m
この小説の季節は夏の初め頃の設定です。
54 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月26日(水)05時15分24秒
これからも発散の方よろしくお願いします(w
55 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月26日(水)07時02分45秒
hitomi・・・喰っちゃいなよ
56 名前:JAM 投稿日:2001年09月26日(水)13時03分33秒
おとなしくできないのはこのわたしもです。(笑)
理性が勝つか欲望が勝つか・・・どっちだろ。
とにかく楽しみにしてます。
57 名前:Charmy Blue 投稿日:2001年09月26日(水)17時58分28秒
えっちぃシーンがなくても式神さんの小説って
なんか、そそるもんがありますねぇ。うまいなぁ。
吉澤くんの心の葛藤もいい感じです。
58 名前:式神 投稿日:2001年09月27日(木)22時22分06秒
>>54  了解!!

>>55  hitomi・・・当分おあずけです(w

>>56  JAMさん
    こちらの吉澤さんには、とことん悩んでもらいます。
>>57  CharmyBlueさん
    そう言ってもらえるなんて嬉しいです。
    有難うございます。
    実は、Charmyさんの小説で、欲求が満たされて
    オナカいっぱいです(w

ラジオを聞きながら更新します。
59 名前:31 投稿日:2001年09月27日(木)22時34分41秒
「こんな狭いベッドに二人も寝られる訳ないでしょ」

言い訳がましいひとみの言葉に、

「ひとみちゃんのセミダブルだから、くっついて眠れば平気だよ」

大丈夫、なんて梨華は笑顔で流してしまう。
その「くっつく」が問題だと分かっていない。

「私って、寝相が悪いんだけど」

苦しい言い訳しか出てこないひとみに、こんな時だけ梨華は妙に強かった。

「そんなことないよ、ひとみちゃんって私より全然寝相いいもん」

子供の頃から一緒に居ると必要以上にいろんなことがバレているから
ひとみの方が分が悪い。

「・・・・・・最近、悪くなったの・・・」

ふてくされたように言いながらひとみは、もう殆ど自分の負けを確信していた。

「ひとみちゃんだったら踏まれても、蹴られても平気、
 絶対に怒ったりしないから・・・ねっ」

甘えたように言う梨華を見つめながらひとみは、本当は梨華は、ものすごく
頭が良いのではないかと思った。
その証拠に、ひとみが絶対に怒れなくなるような事を梨華は言うのだ。
60 名前:32 投稿日:2001年09月27日(木)22時47分05秒
「ひとみちゃ〜ん、今晩だけでいいから泊めてよォ〜」

一生のお願い、という梨華は本当にカワイイ。

「梨華ちゃんの一生のお願いは100万回ぐらい聞いてるってば」

思わず笑ってしまう自分はもう、ほとんど梨華の罠に嵌まっていると自覚して、
それでもまだひとみは、一緒に眠ることに迷っていた。

「わッ!!!」

いきなりギュッと抱きついてきた梨華にバランスを崩して、そのまま
一緒にベッドへ沈み込む。
とっさに梨華をかばったひとみは、ベッドの上で梨華を抱きしめる
形になっていた。

「離して、梨華ちゃん」

その甘い感覚に流されそうになる自分を叱りつけて、梨華から離れようとする。

「いや!私はここで一緒に寝るの〜」

離れたくない、と言うみたいに梨華は、ひとみの首へ回した腕に力を込める。

「・・・・・・そーゆーのは子供のワガママじゃん」

そんな甘える仕種に困って、ひとみはどうしたら良いか分からなくなる。
なのに手は、ひとみを裏切って仕方がないような仕種で、
梨華の髪を撫ぜてしまうのだ。
61 名前:33 投稿日:2001年09月27日(木)23時04分01秒
これではまるで帰れと言いながら引き止めているのと同じだと思いながら、
ひとみは梨華を突き放すことが出来ない。

「ひとみちゃん・・・」

呟くような小さな声に、ひとみは頷く代わりに頭を軽く小突いてやる。

「バカ梨華、ワガママ、ガキ、アニメ声・・・他になんか良い
 悪口あったら全部言ってやる〜」

甘い言葉をささやくみたいに言って、今度はそうっと梨華の腕をほどく。
ゆっくりとベッドの上へ沈んでいく瞳が、じっと自分を見つめている。
急に逃げ出したいような気持ちになって、ひとみは、そんな自分に舌打ちした。

「ほら、梨華ちゃん、そっち詰めて」

視線をそらすように言ってエアコンの設定温度を下げる。それから、
覚悟を決めたようにひとみは、梨華の待つベッドの中へ潜り込んだ。
すぐに子供の頃と同じ仕種でしがみついて来る梨華を、自然に抱き込む
ような形になって、ひとみはため息を吐いた。
きっと、どんなに広いベッドで寝ても自分たちは、こんな風に
寄り添って眠るのだ。
決して恋人としてではなくて、ただの幼なじみとして・・・。
62 名前:34 投稿日:2001年09月27日(木)23時17分48秒
吐息まで感じられるような距離には、もう長い間いないようにしていたのに、
ちょっと梨華にせがまれただけで、そんな努力はすぐにでも崩れてしまう。
こんな風に触れているだけの肌の感触が、やり切れないくらいひとみを
切なくさせることを、きっと梨華は一生知らないままだ。
そのことに安堵しながら、どこかで知らせたい自分をひとみは感じている。
教えることなんて、出来ないけれど・・・。

「・・・ひとみちゃん」

しばらくして、胸元で遠慮がちな声がした。
眠った振りなんて通じない距離に、ひとみは仕方なく返事する。

「怒ってるの・・・?」

伸び上がるようにして、柔らかい頬をひとみの腕にくっつけてくる。
そんな風に訊かれたら、怒ってるだなんてひとみに言える訳がない。

「べつに」

素っ気なく答えて、けれど本当は自分がドキドキしていることを
知られてしまわないかと、そんなことばかり考える。
理性と感情の間で、甘い拷問にあっているような気分だ。

63 名前:35 投稿日:2001年09月27日(木)23時33分10秒
「・・・・・・ごめんね」

小声で言って、ギュっとしがみついてくる。
そんな梨華に、あと1センチ自分が顔をずらしたらキス出来るのに、
なんてひとみは、馬鹿なことを考えてしまう。
もしも本当に自分がキスしたら、梨華はどうするだろうと思う。
梨華のことだからきっと驚いて、それから悪ふざけだと怒るだろう。
もしかしたら、変な冗談だと笑うかも知れない。
どちらだったとしても、梨華はその意味に気付いてはくれないのだ。
そしてそれは多分、どんなひどい罵りよりも、ひとみを一番傷つけることだった。

「・・・・・・」

眠れなくて、なのにこんな時に何を言えば良いのか分からなくて、
ひとみは逃げ出したくなる。
ひとみは、このまま永遠に『梨華の大好きなひとみちゃん』でいなければ
いけないのだろうかと思う。
どんなに口づけたくても、それをすることは自分には許されないのだろうか。
そんな自分がすごく滑稽で、笑ってしまいそうだと思う。
もしかしたら、泣きたいのかも知れない。
64 名前:36 投稿日:2001年09月27日(木)23時43分20秒
「もう寝た・・・?」

掠れそうな小さな声で、囁くように梨華が言う。
眠れる筈もないひとみは、答える代わりに、梨華の髪を優しく撫ぜてやる。

「梨華ちゃん、もう寝ようよ」

柔らかい髪の感触を指先に感じながら、こんな近くにいてどうしようも
ない自分に苦笑する。
そのまま、すべすべした梨華の頬を素っ気ない仕種で軽く弾いた。

「ひとみちゃん・・・私のこと、嫌いになった?」

不安げな、けれど真剣な梨華の声に、ひとみは一瞬だけ言葉に迷って、

「・・・だったら、とっくにベッドから落としてるって」

安心させる為に言った言葉は、自嘲めいてしまう。
けれど、梨華はそれに気付かないまま、安心したように笑った。

「うん・・・」

嬉しそうに、耳元で笑っているような吐息の感触。

「お父さんや、死んだお母さんよりも・・・ひとみちゃんが一番好きだよ」

深く胸に染みてくる言葉は、泣きたいくらいに切ない。
65 名前:37 投稿日:2001年09月27日(木)23時53分01秒
「ひとみちゃんは・・・?」

無邪気に訊かれた言葉は、期待であふれていて、信じきっているような
瞳は、まっすぐにひとみを見つめている。

「私は・・・」

言いかけてひとみは、その言葉の続きを胸の奥に飲み込んでしまう。
言葉にすれば同じはずのそれは、なのに梨華のものとは意味がまるで違うからだ

「・・・・・・」

告げられる言葉を待っている梨華を見つめながら、

「・・・・・・・・・それくらい、分かって」

囁いた言葉の意味は、いつになったら伝わるのだろう。
抱きしめた腕の中で、梨華は安心した子供みたいに瞳を閉じてしまう。
その意味を、知ろうとしないまま・・・。

泣きたいような夜は、ひどく長いような、気がした。
66 名前:式神 投稿日:2001年09月28日(金)00時00分40秒
>>59-65 更新終了です

う〜ん、せつない!
67 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月28日(金)00時08分58秒
リアルタイム〜!やった!!(笑)
しかしホントにせつないなぁ・・。
はやく告白できる日が来るといいのに。
作者さん、楽しみに待ってますので頑張ってください。
68 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月28日(金)06時52分05秒
空気はめちゃ甘なのに辛いっすね〜
69 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月28日(金)10時38分01秒
切なすぎます…。 ひとみの気持ちを考えるとジーンときちゃいました。
70 名前:名無し男 投稿日:2001年09月28日(金)13時28分51秒
(T〜T)
71 名前:JAM 投稿日:2001年09月28日(金)15時52分28秒
>>68さん
作者さんが「sageでお願いします。」って
いってるんだからageないでほしいです。
作者さんの意思を尊重しましょう。
72 名前:Charmy Blue 投稿日:2001年09月28日(金)20時54分01秒
切ないですT_T
式神さんの欲求がたまるように、暫く私の小説はえっちシーンなしで(爆)。
だって読みたいから(苦笑)。と言うか、暫くないですけど。
73 名前:式神 投稿日:2001年09月29日(土)21時07分33秒
>>67 告白は・・・いつのことやら・・・

>>68 甘いのに辛い・・・まさしくビターです(謎

>>69 自分、片想いの気持ち語らせると止まりません(w

>>70 自分も(T_T)

>>71 JAMさん 
   代弁していただき有難うございます
   うっかりageてしまうって事あるので、そんな気にしなくて
   いいですよ(^^)
   自分もたまに、うっかりageてしまうので・・・(^^ゞ
>>72 CharmyBlueさん
   そ・そんな〜・・・すみませんm(__)m
   二度と言わないので・・・Hシ〜ンを・・・あぁぁ!欲求が〜!(w


74 名前:38 投稿日:2001年09月29日(土)21時18分23秒
眠っている梨華を抱きしめながら、ひとみは眠れないままだった。
規則的に聞こえる寝息や、触れた部分の暖かさに、訳もなく興奮してしまう
自分を抑えるだけで精一杯なのだ。

「ん・・・、・・・」

子供がむずがる時の仕種で、梨華がカラダを擦り寄せてくる。
ひとみを捜すみたいに、ぎゅっとカラダをくっつけてくるのだ。
ひとみは、そんな梨華をなだめるように、頬を撫でてあげながら、

「・・・冗談じゃ、ないよォ〜」

もう何度目か分からないため息を吐いてしまう。
本当に冗談じゃないと、ひとみは思っていた。
だって自分は梨華を好きで、本当は触れたくてたまらないのだから。
けれど、そんなことをして嫌われることの方が怖くて、
ずっと・・・梨華を、避けていたのに・・・。

「・・・・・・ゴーモンだよ」

こんな風に、梨華と一緒に眠らなければいけないなんて、
あんまりだとひとみは思う。
75 名前:39 投稿日:2001年09月29日(土)21時29分34秒
「ひ・・とみちゃん・・・」

おまけに、どんなに離れようとしてもすぐに梨華は、くっついてくるのだ。
夢の中で二人は一緒にいるのか、時々ひとみの名前を呼んで幸せそうに笑っている

「梨華ちゃん・・・?」

試すように小声で呼んでみても、梨華は深く眠ったままだ。
そうっと伸ばした指先で頬に触れてみる。
怒っていたり、泣いていたりする梨華をなだめるために、もうひとみが
何度も触れて知っているはずの感触だった。
なのにこうしていると、同じ行為なのに今までとは、まるで違うことを
している気がして訳もなくひとみは興奮してしまう。
眠っている梨華は、自分にこんな風に触れられていることを知らないのだと
思うと、ひとみは、ひどく悪い事をしているような気になった。
76 名前:40 投稿日:2001年09月29日(土)21時42分41秒
「・・・・・・起きないでね」

けれど、触れるだけなら許されるような気もして。言い訳だと
知っていて、梨華のカラダに指を伸ばしてしまう。
パジャマ代わりに着ているTシャツ越しに、そっとカラダへ触れてみる。

「う・・・ん・・・」

シャツの上から確かめるように何度も肌に触れる。
梨華がもう深く眠っていて、自分がしていることに気付いてないと
知っていてもひとみは、すごく興奮した。

「・・・ぁ・・・っ」

そっとシャツの中へ潜り込ませたひとみの指が、淡い胸の突起を
掠めた時、微かな、本当に小さな声が梨華の唇から漏れた。

「ごめん・・・っ」

思わず声に出して謝って、同時に触れていた指も引っ込めてしまう。
梨華は眠っているのだと分かっていても、動揺で心臓がバクバク言い出しそうだ。
息を殺すようにして、梨華の寝顔を見つめる。
そうしてしばらく気配だけで梨華を窺っていたひとみは、
全く目覚める気配のない梨華に安堵の息を吐いた。
77 名前:41 投稿日:2001年09月29日(土)21時56分51秒
それでもバレたらどうしよう、なんて万引きした子供のようなことを思った。
ひとみは、やけに大きく響く自分の胸のドキドキを聞いているうちに、

「バカみたい・・・」

そんな自分が、なんだか急に可笑しくなってきた。
一気に肩の力が抜けてしまったからだろうか。
さっきまでの強い衝動が、治まっていることにひとみは、気を良くした。
まだ抑えられる自分を確認して安心したのかも知れない。
ぎゅっとひとみのシャツを掴んで、安心しきった子供のように
眠っている梨華に、しょうがないなと言うみたいに笑って、ひとみは、
そっと吐息だけで話しかけてみる。

「私は梨華ちゃんが好きなんだよ・・・?」

まるで大切な壊れ物を扱うように、梨華を柔らかく抱きしめながら・・・。

「分かってるの?」

柔らかい頬を指でくすぐったら、嫌がるみたいに梨華が頬をひとみの
肩へ擦り付けてくる。自分からまるで離れようとしないその仕種にひとみは
笑みを深くして、優しい視線で寝顔を見つめ続ける。
78 名前:42 投稿日:2001年09月29日(土)22時07分39秒
「このまま・・・エッチしちゃっても、知らないからね」

そうしてひとみは、そうっと触れるだけのキスを梨華の頬へ落として、

「文句なんか言えないんだから・・・?」

耳元に甘く囁きながら、髪に、額に口づけていく。

「私と一緒に寝るって言ったのは、梨華ちゃんなんだから・・・」

気持ちよさそうに、無意識のうちに睫をゆらす梨華が、
本当に、すごく大切な宝物のように思えるから、

「梨華ちゃん・・・・好きだよ」

押し当てるだけの、優しいキスをひとみは、そっと唇へ落とした。

「ん・・・・・・?」

その感触に目が覚めかけたのか、梨華が眠そうに眉をしかめる。

「おやすみ、梨華ちゃん」

目覚めないように甘い声で囁いたら、それだけで安心したように、
また眠ってしまう。
そんな梨華に微笑んでひとみは、宝物を抱きしめたまま、そっと瞳を閉じた。
79 名前:43 投稿日:2001年09月29日(土)22時10分08秒



自分のファーストキスが眠っている間に終わってしまったことや、
夢にように、優しく奪われたことを。

子供のような彼女の恋人は・・・

・・・まだ、知らない。
80 名前:式神 投稿日:2001年09月29日(土)22時12分36秒
>>74-79 更新です。

さぁ、やっと次、三人が一緒に出会います。
どうなることやら・・・
81 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月30日(日)00時03分30秒
後藤はどっち側とくっつくか。期待。
82 名前:JAM 投稿日:2001年09月30日(日)00時35分48秒
この状態はホントにゴーモンですね。
よっすぃ〜の辛さが痛いほどわかります。
しかしここまできてエロが無いと
わたしにとってもゴーモンです・・・
83 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月30日(日)10時41分05秒
宝物か…。 切なくて泣ける…。 3人での新展開に期待。
84 名前:式神 投稿日:2001年10月01日(月)14時07分04秒
>>81 今日の更新分で、なんとなく分かってきます。

>>82 JAMさん
   JAMさんにとってもゴーモンでしたか・・・(w
   それでは、そろそろ・・・フフフ

>>83 期待通りの展開になるかどうか不安ですね。

昼寝しようと思いましたが、更新することに決めました(^^)
85 名前:44 投稿日:2001年10月01日(月)14時16分26秒
久しぶりに仲良く登校した二人は、寝過ごしたせいで結局いつものように
遅刻するハメになった。
ひどく眠そうなひとみの隣で、その寝不足の原因である梨華が、
元気いっぱいに話しかけている。
最近あまりひとみと二人きりで話す機会がなかったからか、こうして二人で
他愛のないことを話すのが嬉しくてたまらないようだった。

「転校生?」

「そう、昨日来たばっかりなの♪」

あまりの眠さに意識が飛びそうになりながらも梨華の話を聞いていたひとみは、
嬉しそうに教える梨華に、興味のなさそうな表情をしている。

「どんな転校生か知りたいでしょ?」

言っている梨華の方がワクワクして見えるのは、ひとみが興味のカケラも
示さないからだ。

「べつに」

もう殆ど口癖になってしまっているひとみの『べつに』に、
梨華はムクれたような表情をした。
86 名前:45 投稿日:2001年10月01日(月)14時36分02秒
「もうちょっとぐらい、エエッ!とかどんな転校生!?とか
 驚いてもいいじゃない」

文句を言う梨華に、ひとみは器用に片眉を持ち上げて、

「エエーッ、どんな転校生ー、おどろいたぁー」

何の抑揚のない棒読みで答えて見せるのだ。

「だから〜私はもっとちゃんと驚いて欲しいのッ!」

そんなふざけた態度に、ぷくっと両頬を膨らます梨華。

「エエッ!!転校生ィィッ!おどろキィ〜!」

そうしたら今度はバカにしているのかと思うくらいに大げさに叫んでみせるのだ
からかわれていることが分かっていても怒ってしまう梨華に、
ひとみは楽しそうに笑っている。

「梨華ちゃんの言う通りにやってみただけだよ?」

「もういいっ!ひとみちゃんと喋ると疲れるっ」

そんな梨華にニコニコと笑いながら、ひとみが背中から羽交い絞めしてくる。
どうやらひとみは、梨華をからかうのが楽しくて仕方ないらしい。

「もう、ひとみちゃん!やめてよっ」

そのまま頬を指先でプヨプヨと突かれて梨華は、必死に怒鳴りながら
嫌がるように首を振っている。
それでも梨華がひとみの腕を振り解く素振りを見せないのは、
二人してこの状況を楽しんでいるのだ。
87 名前:46 投稿日:2001年10月01日(月)14時43分57秒
「そうやって私をイジめてると正義の味方が宇宙からやってくるんだから」

からかわれて拗ねたように言う梨華に、

「正義の味方でも何でも呼べるものなら呼んでみてよ」

茶化すようにひとみが答える。
そんなひとみに何か思い付いたように梨華が立ち止まって、

「よ〜し♪学校に着いてから驚かないでネ?」

自信たっぷりに言う梨華に、ひとみは怪訝そうな表情になった。

「その根拠のない自信は何?ウルトラマンとか呼ぶの?」

まだ茶化しているようなひとみに、梨華は悪戯っぽく笑って、

「それは、秘密

謎めいたことを言う梨華に、ひとみは今度こそ本当に怪訝な
表情になってしまった。
88 名前:47 投稿日:2001年10月01日(月)14時52分42秒
四時限目の授業が終わるのと同時に教室へたどり着いたひとみは、

「ひとみちゃん、これが噂のウルトラマンで〜す」

自分の席に座った途端に、梨華が連れて来た見慣れない女性の登場に眉をひそめた
見覚えがあるような、ないような・・・。
けれどどこかで絶対に見たことのあるような気のする顔立ちの女性だった。

「ウルトラマン?」

紹介された女性の方も、梨華の紹介の仕方に首を傾げている。

「分かんない?ひとみちゃん、ヒントは・・・
 帰って来たウルトラマン」

ますます怪訝な顔つきになってしまったひとみを、梨華は答えを
教えずに楽しげに見つめている。
そして、そんな梨華の台詞に意味を理解した女性が爆笑している。
笑いあう梨華とその女性に、なんとなく自分だけ仲間外れに
されたような気がして、ひとみは面白くなかった。
89 名前:48 投稿日:2001年10月01日(月)15時02分25秒
「ごっちんだよ、後藤真希」

覚えてるでしょ、なんて笑いながら言う梨華に、ようやく思い出したひとみは
途端に意地の悪い表情になる。

「えっ、真希?チビで生意気な?」

からかうように言うひとみに、今度は梨華が爆笑して真希が黙り込んでしまった

「ひとみ、その性格直ってなかったみたいね」

嫌味ったらしく言う真希に、ひとみは一瞬で面白くもなさそうな表情になる。

「なんだ、ウワサの転校生って、真希の事だったのか〜」

「お父さんの転勤で仕方なくね」

ムッとしたように真希が答える。
いつの間にか流れている空気のヨドミに気付いて、間に挟まれる形に
なった梨華は、焦った表情を浮かべていた。

「ちょ、ちょっと待って、ホラ、久々の幼なじみの再会でしょ?」

なんとか明るいムードに持っていこうと声を上げる梨華に、
二人は挑発し合うように険悪な視線を合わせたまま何も言おうとしない。
90 名前:49 投稿日:2001年10月01日(月)15時12分01秒
「ほら、ひとみちゃんもごっちんも、照れてないで握手でもしてっ、ね?」

その二人のあまりにも気まずい空気を唯一読めてない梨華だけが、
一生懸命にニコニコと笑っている姿は哀れだ。

「握手する気分じゃない」

しかし、そんな梨華の気配りも空しく、吐き捨てるようにひとみが答えれば、

「私も、ひとみと握手なんて」

不機嫌な真希の声が同意する。

「二人とも、どうしてもっと仲良く出来ないの?
 私たち幼なじみでしょう?」

間を取り持つように割って入った梨華に、遠巻きに見ていた
辻&加護コンビから勇気を讃える拍手が上がった。

「転校生の後藤さんに伝言で〜す。担任の中澤先生が
 職員室でお待ちで〜す」

そのまま助け船を出すように言った亜依の声に、

「じゃあね、梨華ちゃん」

梨華にだけ言葉を残して、真希が去っていく。
ひとみのことは完全に無視だ。
91 名前:50 投稿日:2001年10月01日(月)15時20分21秒
「今のは絶対に、ひとみちゃんが悪い!」

残された梨華は、不機嫌を絵に描いたようなひとみを前に説教を始めた。

「だから?」

まるで聞いていないようなひとみに、

「だから、またごっちんと一緒に仲良くしようって言ってるの」

それでも負けずに言い返す梨華は偉い。

「勝手にやっててよ」

けれどひとみは素っ気なく言って、そのまま教室を出て行ってしまう。

「ひとみちゃんのバカ!」

その背中を追いかけて怒鳴る梨華に、振り返りもしないままひとみは、
ひらひらと手を振って見せた。
一人残されて完全にムクれた表情の梨華の所に亜依と希美が寄ってきた。

「ねぇねぇ梨華ちゃん、どうしてあの二人って」
「あんなに仲悪いの?」

「ひとみちゃんとごっちんは、三歳の頃から、ああいう関係なの・・・」

歴史が深いの、と梨華は、ため息を吐いた。
92 名前:51 投稿日:2001年10月01日(月)15時26分12秒
思い出せる限りで一番古い記憶から、二人はすでに決定的に相性が
悪かったことを思い出して梨華は眩暈を覚える。
いや、もしかしたら梨華なんかよりよっぽど相性が良いのかも知れない。
逆説的だが、多分ひとみと真希は気が合いすぎて反発し合うのだ。

「たとえば、色違いでお揃いのオモチャを
 三人がもらったとするでしょ?」

最も二人の性格を表しているエピソードを話し始める梨華に、
亜依と希美が耳を傾ける。

つまり、簡単に言えば梨華の話はこうだ。
93 名前:52 投稿日:2001年10月01日(月)15時40分06秒
仲良しの三人に同じオモチャが与えられて、赤・青・黄の三色から
梨華が素早く赤を取ろうとする。するとなぜかひとみと真希は、
示し合わせたように必ず同時に青を選ぶのだ。
そのまま壮絶な奪い合いを始める二人に困った梨華が、
『黄色の方がカワイイよ』と言う。
すると今度は青を放り出して黄色を奪い合う、というのがひとみと真希の
最も典型的なケンカのパターンだった。
先ほどのやり取りに至る全ての因縁の始まりとも言えるエピソードだ。

「目に浮かぶような光景だ〜」

疲れたように呟く亜依に、希美も頷く。そして

「つまり、ヨッスィーと後藤さんは致命的に相性が悪いって事れすね」

勝手に結論をだした希美に、梨華はムッと膨れた表情になる。

「でもね、結局はいつも三人で遊んでたし、絶対にまた
 二人は仲良くなれると思う!!」

言い訳をするように力説する梨華の隣で、亜依と希美は、

「ハイハイ!私は〜一ヶ月以内に二人が大ゲンカするのにジュース一本!」

「ののは〜、ヨッスィーが相手にしなくて、このまま平行線に食券2枚!」

またしても賭けの対象にして遊びだす二人だった。
94 名前:式神 投稿日:2001年10月01日(月)15時43分33秒
>>85-93 更新終了

たまにはこんな三角関係もいいんじゃないかと思い
考えてみたのですが・・・
95 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月01日(月)23時46分20秒
いいっす。ごまいしシーンも楽しみにしてます。
96 名前:aki 投稿日:2001年10月02日(火)00時35分37秒
後藤と吉澤の関係がいい感じですね。
個人的には後藤を応援しますが・・・。
これからも頑張ってください。
97 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月02日(火)01時14分49秒
よしごまは恋敵になるのかな?
楽しみです。
98 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月02日(火)01時53分03秒
よっすぃ〜頑張れ!!
99 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月02日(火)02時06分01秒
今までのいしよしごまの△関係って
いしごまのよっすぃ〜の取り合いが多かったけど、
ここではよしごまの石川さん争奪戦になりそうですね(w

いしよしもいしごまも好きなんで期待してるっす!!
100 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月02日(火)13時04分19秒
このパターンのいしよしごまが一番好きなんで嬉しい。
101 名前:式神 投稿日:2001年10月02日(火)21時42分32秒
>>95 有難うございます!

>>96 akiさん 
   有難うございます!akiさんの作品の『いしごま』いい感じで好きです
>>97 火花バチバチです

>>98 どっちも頑張れ!

>>99 自分も、いしよし、いしごま好きです。

>>100 自分も好きなんです

更新します。

102 名前:53 投稿日:2001年10月02日(火)21時59分18秒
夏休みを目前にした期末テストまであと一週間という時期を迎えてようやく学校内
の造りや人間関係に慣れてきた真希は、ある奇妙な事に気付いてしまった。

「まさか、ねぇ〜」

ありえないと自分でも否定しながら、その考えを捨てることが出来ない。
そしてそれは、そう考えて観察すればそうとしか真希の目には映らないことだった
今も、校庭の木陰にあるベンチでくつろいでいた真希の目に、
彼女の首を傾げさせている原因が元気に動き回っていた。

「ほんとに、まさか・・・なんだよねぇ〜」

その見つめる先で動き回っているのは、中庭で遊んでいる梨華だった。
木漏れ日に白く輝く夏服のブラウスが梨華の頬で乱反射している。
柔らかな髪が薄く陽に透けて、本当にキレイだと真希は思う。
時折、何かあったのか拗ねたような表情をする仕種がすごくカワイイ。
同い年の女の子を見て、カワイイとかキレイだとか思うような自分は
どうかしていると思うけれど、それでも梨華をカワイイと思うのは
事実なのだから仕方がないと真希は思う。
他の生徒を見る目と、梨華を見る目が違っていて何が悪いと、
転校二週間目にして真希は、すでに開き直っていた。
103 名前:54 投稿日:2001年10月02日(火)22時09分01秒
「・・・問題だなぁ〜」

その開き直った真希の懸念している『問題』は、梨華を見る自分の目は変なの
ではないか、などという次元のものではない。
問題なのは、真希の目が梨華を捜す時に必ずと言っていいほど
同じ視界にいる彼女のことで・・・。
それは、梨華がどうしても真希と仲良くさせたいと願っている、けれど
どうしても真希には仲良くなることが出来ない彼女のことだった。
幼なじみで、致命的に気が合わない吉澤ひとみ。
なぜ、彼女がいつも梨華の半径3メートル以内にいるのか分からないけれど、
現に今もひとみは、真希の追う視界に収まっている。
どんなに邪魔だと思っても、梨華がその視線の先にいる限り、必然的に
ひとみの姿は真希の視界に割り込んでくるのだ。
104 名前:55 投稿日:2001年10月02日(火)22時18分36秒
さっきから梨華は、中庭にある大きめな池で石投げをしているらしかった。
亜依と希美の姿も見えるから、どうせまた賭けでもしているのだろう。
何をやらせても適当にソツなくこなしてしまうひとみが、無器用な梨華を
楽しそうにからかっているのが離れている真希にも分かる。
梨華は必死に何かを言い返したり、拗ねて見せたりするからだ。
けれど真希が問題だと思うのは、こんな時のひとみの表情なのだ。
いつもひとみが持つ、どこか皮肉っぽくて不機嫌などうでもいいような
態度とは、まるで違う楽しげな表情。
ふいに覗かせる柔らかなひとみの内面を真希が知るのは、梨華を見つめる
瞳がとても優しいものだと気付く瞬間だけで、そんなひとみに真希は
ドキリとしてしまう。
まるで、自分が梨華を見る時と同じ種類のものに思えて戸惑うからだ。
105 名前:56 投稿日:2001年10月02日(火)22時25分43秒
「まさか・・・ねぇ〜」

何度も否定する考えは、梨華を見つめる度に確信めいたものに塗り替えられていく
その隣で微笑んでいるひとみの表情が、何よりも明らかな証拠のように
真希には映るからだ。

ほんの子供の頃から、真希はひとみと同じものばかり取り合っていた。
いつも欲しいと思うものは、ひとみの選ぶものと同じだった。
けれど取り合いをしていた記憶だけが鮮明で、真希はその結果を
思い出すことが出来ないでいる。
自分は、ひとみから奪い取れたのだろうか。
それとも、ひとみに取られてばかりいたのか。
どんなに考えても思い出せないのだ。
106 名前:57 投稿日:2001年10月02日(火)22時35分47秒
「!!」

ふいに、真希のいたベンチを隠していた植え込みが取り払われる。

「ひとみ・・・」

真希が顔を上げた先には、問題の彼女が立っていた。
ひとみの方も真希に気付いて嫌そうな表情をしている。
けれどひとみは、そのまま真希の隣へ腰を下ろした。

「フツーさっ、隣に座る時、相手に断らない?」

「なんだ、ここって真希のベンチだったの?今度から
 名前でも書いててよ、分かりにくいから」

ひとみに嫌味を言われて真希はムッときた。
何か効果的なことを言い返してやろうと真希が頭を巡らせた瞬間、

「・・・みちゃん!」

ひとみを捜す梨華の声が微かに聞こえてくるのが分かった。
途端に仕方なさそうに肩を竦めて見せるひとみに、真希は思わず口を開いてしまう

「名前を書いてなかったら断らなくていいの?」

自分でも何を言っているのかを考える前に口が動いていて、怪訝そうな
ひとみの表情に、真希はもう引っ込みがつかない自分を感じていた。
107 名前:58 投稿日:2001年10月02日(火)22時44分02秒
「だったら、梨華ちゃんは・・・」

その名前を口にした瞬間、ひとみの横顔から表情が一瞬で消される。
それでも真希は、最後まで言わずにいられない。

「梨華ちゃんは、私が取ってもいいんだ?」

ひどく物騒に歪むひとみの横顔を見つめながら、真希は確信していた。

「まだ梨華ちゃんに名前・・・書いてないんでしょう?」

確かめるような口調に、ひとみの表情がどんどん鋭いものになっていくのが分かる

「・・・何が言いたいの?」

低く響くひとみの声に、真希は出来るだけ何でもないような表情を
していようと思った。
多分、今ここで引いたら自分の負けだと直感したからだ。
108 名前:59 投稿日:2001年10月02日(火)22時54分18秒
「ひとみちゃん?いるなら返事ぐらいしてよ〜」

何も知らずにやって来た梨華に、真希は余裕めいた笑みを向ける。
隣でひとみが、何か言いたいのを必死に堪えているのが分かった。
梨華の前で言い合うことじゃないからだ。

「あれ〜、ごっちんも一緒だったんだ〜♪」

途端に嬉しそうに微笑む梨華に、真希は大げさに肩を竦めて、

「ゴメン、梨華ちゃん。今やっぱりひとみとは、仲良く
 なれないって事、確認してた所なんだ」

芝居がかった仕種で言ってみる。
それは、ひとみに対する完全な挑発だった。

「ひとみと私は・・・同じものを取り合う運命みたい・・・あはっ」

意味が解からないような表情をする梨華に微笑んで、静かに自分を
睨んでいるひとみの視線をキレイに無視して、真希はその場から離れた。
109 名前:式神 投稿日:2001年10月02日(火)23時01分03秒
>>102-108 更新しました。

まだまだ先が長いなぁ・・・(w
文章変じゃないですかね?
110 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月02日(火)23時16分49秒
これからどなるんだろう・・・。
ワクワク。
文章、オッケーですよ。
毎回楽しみにしてます!!
111 名前:Charmy Blue 投稿日:2001年10月02日(火)23時19分10秒
面白くなって来ましたねぇ。
吉澤と後藤の対立いいかも(w。
112 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月03日(水)01時03分24秒
よしこ!ごっちんに梨華ちゃんをとられないように印を付けときなさい!!
113 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月03日(水)01時04分54秒
早速、火花バチバチですなぁ(w
文章も凄くうまいと思うし内容も良い感じですよ!
114 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月04日(木)13時26分26秒
この3人の関係たまらん。 萌えまくりです。
文章全然うまいですよ。 特に式神さんの切ないシーンの書き方が好きです。
115 名前:式神 投稿日:2001年10月04日(木)23時01分46秒
>>110 有難うございます!頑張ります!

>>111 CharmyBlueさん
   いいでしょ?

>>112 意気地なしヨシコにガンガン言ってやってください!

>>113 有難うございます!そう言っていただけると励みになります。   

>>114 有難うございます!次も切ないシーンなのです(T_T)


今日は、ちょっと少なめですが更新します。
116 名前:60 投稿日:2001年10月04日(木)23時12分49秒
いつものようにバイト先から帰って来たひとみは、見慣れた自宅を
目の前にして、なのにまるでそこから動けなくなったみたいに立ち尽くしてしまう
隣の家の前で、同じように立ち尽くしたままの背中をひとみは見つめていた。
どこか小さく見える背中は、梨華のもので・・・。
その瞳が、狭い私道から見える自宅の居間を見つめているのが
遠目にいるひとみにも分かった。
出窓越しに映る梨華の家の居間は、仲の良さそうな夫婦の暖かい
団欒で彩られている。
その幸せな光景を、どんな気持ちで小さな背中が見つめているのかが、
ひとみには痛いほど分かる気がした。
その空間に上手く入って行けない自分を、梨華がどう感じているのかも。

「・・・梨華ちゃん」

バカみたいに立ち尽くしたまま、懸命に感情と戦う梨華を
見つめているしかない自分に腹が立つ。
117 名前:61 投稿日:2001年10月04日(木)23時21分49秒
「ひとみちゃん・・・?」

驚いたように振り返る梨華の表情がひどくぎこちない。
笑おうとして見事に失敗している梨華の表情に、ひとみは舌打ちしてしまう。
そんな表情をさせることが耐えられない。

「・・・梨華ちゃんみたいなバカ見たことないよ」

本当は・・・梨華を抱きしめたいと思った。
大丈夫と、言ってあげたかった。けれどもう自分には、そんな資格は
ない気がしてひとみは、そんなことしか言えない。

「なによ、いきなり」

もう『親友』じゃないから、大切にしてきた『親友』の仮面は、
外れてしまったから。
これ以上もう自分は梨華の傍にいてはいけないのだと知ってしまったから・・・
ひとみは、その資格を手放すことに決めたのだから、
優しい言葉の一つも掛けることは出来ない。
118 名前:62 投稿日:2001年10月04日(木)23時36分09秒
ずっと上手く隠してきたつもりの感情を、知らない筈の真希に簡単に
見つけられてしまった。梨華に対する気持ちを、真希という他人に
指摘された瞬間、ひとみは『親友』という仮面が壊されたのが分かった。
本当は下心でいっぱいのくせに、親友面して当然のように梨華の傍に
いたなんて、バカみたいだとひとみは自分でも思う。

「梨華ちゃんがそこにいると、通行の邪魔なんだけど・・・」

同時に、他人に簡単にバレてしまうくらい、もう梨華に対する感情を
隠すことも出来ない自分が怖くなった。
コントロール出来ない自分の感情と、知ってるよ、という真希の態度に
ひとみは脅迫されているような気分になる。

「私なんかよけて通ればいいじゃない!イジワルなひとみちゃん」

他の誰かに知られても構わないと思う。けれど、この気持ちを
梨華にだけ知られる訳にはいかないとも思うのだ。
119 名前:63 投稿日:2001年10月04日(木)23時44分47秒
「どうしてわざわざ私がよけなくちゃいけないの、
 早く自分の家に入ればいいのに、バカリカ・・・」

これ以上、梨華の傍には行けないことくらい分かっていて、
もう友達の距離にいられないことも知っていた。

「ひとみちゃん・・・」

何気なく優しくすることは、例えば抱きしめることよりもひどく
難しいような気がする。

「梨華ちゃんの家でしょ、さっさと帰れば?」

素っ気なく突き放すように言うのは、その百倍も難しいといつも思う。

「・・・うん」

長い沈黙の後、小さく頷いてぎこちない笑顔で自分の家の扉を
開く梨華を見つめていた。
その背中から視線を外すきっかけをひとみは、いつまでも捜していた。
120 名前:式神 投稿日:2001年10月04日(木)23時51分22秒
>>116-119 更新しました。

最近、風邪をひきまして・・・辛いです。
更新少なめで本当にすみませんm(__)m
121 名前:JAM 投稿日:2001年10月04日(木)23時52分49秒
切ない・・・
ホントに泣けるッス・・・
嗚呼、よっすぃ〜・・・
122 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月04日(木)23時54分54秒
私も辛い。
123 名前:名無し男 投稿日:2001年10月05日(金)14時26分41秒
ワタチふらんす人アルカラトテモカナチイアルヨー
124 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月05日(金)14時57分05秒
吉澤、素直になれないのか…。 泣ける…。
式神さん、風邪早くよくなることを祈ってます。 どうかお大事に。
125 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月08日(月)15時36分29秒
式神さん頑張って。
126 名前:式神 投稿日:2001年10月11日(木)23時07分07秒
更新が遅くなり申し訳ございませんm(__)m
風邪がひどくなり、とどめに親知らずを抜いたのでかなり辛い!
仕事の原稿もまだ終わってないのに・・・締め切りが〜(*_*)

今回も少なめです。本当にすいません
127 名前:64 投稿日:2001年10月11日(木)23時18分07秒
ひとみの様子がおかしい。
そう初めに感じたのは、いつのことだったかナと梨華は考えた。
けれど考えれば考えるほど分からないからいつの間にか、という言葉が
とても良く似合う状況なのかも知れないと思う。
いつの間にか自分は、ひとみに避けられる存在になっていた。
それはつい最近までは、なんとなく感じるくらいのことだったはずなのに・・・。
この何日かの間に、急に強く感じるようになってしまっていた。
なぜなのか梨華にも分からないけれど。

「梨華ちゃん?」

何度も呼びかける声に形だけの返事をして、それから自分を見る心配そうな
瞳に気付いて梨華は、あいまいな笑みを浮かべる。

「さっきからボーッとしてるけど、何か悩みでもあるの?」

優しく聞いてくる声に、それでも梨華が上手く笑えないのは、

「んー、・・・なんでもない平気・・・」

自分を心配する声が、ひとみのものではないからだ。
128 名前:65 投稿日:2001年10月11日(木)23時31分20秒
そんな風に思うのは心配してくれる真希に悪いと思うけれど、
自分でもどうしようもないのだ。
今までずっと、誰よりもひとみの傍にいた。
二人でいるのが当たり前みたいに思っていた。
けれど、急に自分の傍からひとみはいなくなってしまって・・・。
ひとみがいない、ということを頭では分かっているのに、どうしても
実感することが梨華は出来ないでいた。
だからいつも視線で、耳で、梨華はひとみの存在を捜してしまうのかも知れない。

「さっきから考えごとばっかりしてる」

勉強が進まないよ、なんて冗談めいた声に言われて梨華は、ため息を吐く。

「もういい、私はアメリカ人になる気なんてないし、
 物理なんかもっと考えたくない」

開いていた教科書を閉じて、机の上に突っ伏した。やる気なんてないのだ。

「ほら、梨華ちゃん頑張ろう!明日の英語と物理さえ乗り切れば
 夏休みなんだからさっ」

一生懸命に教えようとしてくれる真希に、ひとみと全然違う、
なんて梨華は思ってしまう。
129 名前:66 投稿日:2001年10月11日(木)23時42分50秒
試験勉強の度にひとみは、梨華に付き合って教科書を開いてくれていた。
分からないを連発する梨華に、バカだのアニメ声だのと言いながら、
いつも根気よく教えてくれるのだ。
全部・・・・・・ 今までは、という言葉が付くけれど・・・。

「数式なんかね、見た瞬間に答えが分からない私の方が不思議だって言うのよ」

そんな風に文句を言う梨華の声は、真希の耳にどう響いたのだろう。

「・・・・・・ひとみがいなくて寂しいんだ?」

静かに尋ねられた時、梨華はどう答えていいか分からなかった。
それは事実だったけれど、素直に複雑すぎる気がした。

「でも、ひとみちゃん・・・あんまり私と一緒に
 いたくないみたいだから・・・」

泣きたいような気持ちを、そのまま笑顔に変えてしまう。
ぎこちないそれは、真希の目にどう映るかなんて自信がない。
それでも梨華は、こんな時にはいつも笑ってしまうのだ。
130 名前:67 投稿日:2001年10月11日(木)23時54分01秒
「ホントは、私がひとみちゃんとごっちんを仲直りさせる
 役だったんだけどなぁ」

そんな梨華の癖を、ひとみはいつも直してと言うのだけれど・・・。
こんな時は下手な笑顔なんかやめて思い切り泣いた方がいい、なんて
言うのだけれど今は、そのひとみがいないから・・・。
梨華は泣くことも出来ずにいる。下手だと言われる笑顔を作るよりも
泣くことの方が梨華にはもっと難しい気がするのだから仕方がなかった。

「ひとみなんかいなくてもいいじゃん・・・私がいるんだからさっ」

言いにくそうな真希の声に梨華は微笑む。
ちゃんと自分を気遣ってくれている声だと分かるものだったからだ。
それに考えるまでもなく、梨華の知らないうちになぜか決定的に
ひとみとの仲がこじれていた真希とする話題ではない事だけは確かだった。
131 名前:式神 投稿日:2001年10月11日(木)23時58分27秒
>>127-130  更新しました。

週末に更新する予定です。
132 名前:式神 投稿日:2001年10月12日(金)00時07分56秒
66章に間違いがありました。

(間違い)
静かに尋ねられた時、梨華はどう答えていいか分からなかった。
それは事実だったけれど、素直に複雑すぎる気がした。
          ↓
(訂正)
静かに尋ねられた時、梨華はどう答えていいか分からなかった。
それは事実だったけれど、素直に寂しい、と言ってしまうには
ひとみに対する感情は複雑すぎる気がした。

いつも何回か見直すのに・・・すみませんでしたm(__)m
133 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月12日(金)00時08分31秒
やった!!リアルタイム!
週末楽しみにしてます。
134 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月12日(金)00時16分00秒
体調が悪いなかの更新、お疲れさまです。
自分も週末楽しみにしてるっす!!

それにしても切ない・・・
135 名前:名無し読者@市井さん復活おめでとう! 投稿日:2001年10月12日(金)02時57分06秒
一言…。。
非常におもしろいです^^。気に入りました♪
コレからの展開に超期待ですっ!(AS○Y○N風)
136 名前:式神 投稿日:2001年10月14日(日)00時31分30秒
>>133 リアルタイムとは・・・自分キー打つの遅いのでイライラしませんか?
    すみませんm(__)m
>>134 風邪もやっと治りそうです。歯の方が痛いです(*_*)
   
>>135 有難うございます。

最近、話が進まずダラダラとした文章を書いているので
飽きられてしまうのでは?と不安です。
137 名前:68 投稿日:2001年10月14日(日)00時42分37秒
図書室でやっていた期末テスト用の勉強を諦めた梨華は、
真希と二人で街中をブラブラしていた。
勉強を諦めた梨華には、真っ直ぐ家へ帰ってもやることがなかったのと、
家で父親が帰るまでの時間、新しい母親と二人きりでいるのが
ひどく気が重いからだ。
そんな梨華の避難場所になっていたひとみの部屋に行く勇気が、今はない。
だからなんとなくこうして本屋を覗いたり、CDショップで時間を潰している。
家に帰りたくない、なんて真希に言う気はない。
そう言ったことを他人に話すのが梨華は苦手だった。

「ごっちん、もう帰っていいよ」

そんな梨華に付き合っているだけの真希に、

「べつにいいじゃん、付き合うよ!私ってヒマだから」

先に帰って勉強したらと言うのだけれど、彼女は何が楽しいのか
帰る気配を見せない。
138 名前:69 投稿日:2001年10月14日(日)00時51分03秒
「ほら、前に通ってた学校の方が授業進んでたから、
 特にやることがないんだ」

そんな風に言われると、帰れ帰れと言っている梨華の方が家に帰って
少しでも勉強した方がいいのではないかという気になってくる。
そういう意味で言えば梨華には、やることがあり過ぎるくらいあるのだ。
けれど、そんな真希の気持ちが嬉しくて、

「・・・ごっちん、ありがとう」

小さく呟いた梨華に、

「梨華ちゃんにアリガトウなんて言ってもらえるなら、
 朝まででも付き合うよ!ハハッ」

真希が大ゲサなくらいの反応を見せる。
照れたように軽く肩を竦めて、梨華は歩き出した。
139 名前:70 投稿日:2001年10月14日(日)01時03分13秒
夕暮れ時の空気が街に落ちていて、女の子の好きそうなカワイイ店の
立ち並ぶ通りには、忙しなく人が行き交っている。
誰かとはぐれてしまったのか、小さな女の子が不安そうに泣いている。
そんな子供をなだめているのか、同じように道端に屈み込んでいる
女性の後ろ姿が、梨華の目に映った。
見慣れた自分より広い肩が、困ったように縮こまっているのが少しだけ可笑しい。

「梨華ちゃん?どうかした?」

急に立ち止まった梨華に、真希が怪訝そうな声を掛けた瞬間、
梨華は一点を見つめたまま、泣き笑いみたいに表情を崩してしまう。
そんな梨華に、不思議そうな表情をする真希。
けれど梨華は真希の声に答える前に、泣いている女の子の方へ歩き出していた。
向けられたままの背中が、ひどく困っているのが分かるからだ。
140 名前:71 投稿日:2001年10月14日(日)01時11分44秒
「・・・・・・ひとみちゃん」

背中から、そうっと掛けた声に、

「梨華ちゃん!」

驚いたようにその背中が振り返る。
穏やかだったひとみの表情が、すぐに不機嫌なものに変えられるのが
梨華にも分かる。

「迷子なの?」

持っていた鞄からチョコレートを取り出して女の子に渡すとにっこり笑って見せる
素直に受け取った女の子は、見るからに男っぽいひとみとは反対に
人懐っこい笑顔を浮かべた梨華の登場に安心したのか少しずつ泣き止んでいった
そんな女の子の様子に困っていたひとみも、安心したように笑った。
久しぶりにひとみの笑顔が見れて、梨華も嬉しくて一緒になって笑っていた。
141 名前:72 投稿日:2001年10月14日(日)01時22分25秒
「梨華ちゃん、あの人がお母さんみたいだよ〜」

そんな梨華とひとみに、真希の声が割って入る。

「・・・真希もいたんだ」

途端に表情を引き締めたひとみに、

「まぁね〜」

真希は当然、といったように肩を竦めた。
一瞬にして、いつもの険悪なムードが流れる。

「私・・・その子のお母さんかどうか訊いてくるね」

会話の流れを変えようと梨華は女の子の母親らしき人へ声を掛けに行く。
真希の言った通り、すぐにやってきた彼女は、何度も梨華にお礼を言って
女の子を連れて行ってしまった。
迷子を見つけて相手をしていた当事者だった筈のひとみは、迷子の親子を
まるで他人事のように興味のなさそうな表情をして見送っている。

「お礼は私じゃなくて、ひとみちゃんに言うべきなのに・・・」

理不尽だという梨華に、ひとみはどうでもいいような仕種で肩を竦めるだけだ。
142 名前:73 投稿日:2001年10月14日(日)01時29分10秒
「じゃあね」

そうしてそのままひとみは、用は済んだとばかりに梨華たちに背中を向けてしまう
梨華が隣の家に帰ることを知っているくせに、ひとみは一緒に
帰ろうとは言ってくれなかった。

「いいの?」

ひとみを追いかけない梨華に、真希が控えめな口調で訊いて来る。

「・・・う、うん、いいよ・・・」

苦笑する仕種で唇を噛んで、梨華は少しだけ寂しげに首を傾げた。


そして、見えなくなった背中を梨華はいつまでも見つめていた・・・。
143 名前:式神 投稿日:2001年10月14日(日)01時35分57秒
>>137-142 更新しました。


まだまだ終わりそうにないなぁ・・・。

144 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月14日(日)01時41分27秒
よっすぃ〜素直じゃないなぁ(苦笑
このままだとごっちんに取られちゃうぞ(w)

>136作者サンのコメント
自分は飽きるどころかハマっておりますぞー!!
145 名前:133 投稿日:2001年10月14日(日)01時44分04秒
やった!!2回連続リアルタイム!
また次も楽しみにしてます。
146 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月14日(日)01時44分35秒
例によって桃板で速報されていたのできました
まだ欲求不満にはなりませんか(w
147 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月14日(日)01時57分33秒
>146さん

>143の名前式神に触れれば分かるぞ
148 名前:R 投稿日:2001年10月14日(日)02時08分49秒
面白いです。
引き込まれますね〜

>147さん
ヒントをありがとう。
149 名前:名無しれす 投稿日:2001年10月14日(日)03時35分35秒
>143 終わってたまるかーーッ
……という訳でどしどし書いちゃってください。
150 名前:式神 投稿日:2001年10月15日(月)15時49分34秒
>>144 今後の後藤さん、石川さんに急接近です

>>145 2回もリアルタイム!すばらしいお方だ!
    いつも有難うございます。
>>146 桃板の更新情報の早さには、とても驚かされます。

>>147 最近、この隠れメッセージの存在知ったのです。(遅すぎ(^^ゞ

>>148 Rさん  有難うございます!!

>>149 文章に行き詰まると、他の小説のネタを考えてしまって
    早く終わらせたくなるのです。
    でも、大丈夫ですよ。まだまだこの作品は終わりません!

暇な時間が出来たので更新します。
151 名前:74 投稿日:2001年10月15日(月)16時00分27秒
終業式が終わってすぐに、職員室に呼び出されたひとみが、悪びれた様子
もなく面倒そうに戻ったばかりの教室から出て行くのを見送って、

「辻ちゃん、ひとみちゃんって何かしたの?」

心配そうに希美に訊いている梨華を、真希は面白くなさそうに眺めていた。

「あのヒネくれヨッスィーはですねぇ梨華ちゃん、
 なんと進路志望票の第一志望にアンパンマンって書いたらしいの〜」

ナニ考えてんだか、なんて希美はバカにしきったような表情をして、
それでも心配をしているのが分かる口調で言う。

「ヨッスィーの場合さぁ、似合いそうで笑えるよねぇ〜」

亜依も同じような表情をして

”ヨッスィー、最近荒れてるから”

なんて呟くように付け加えた。
すぐに梨華の表情が強張るのが分かって、真希は本当に面白くないと思う。
152 名前:75 投稿日:2001年10月15日(月)16時07分22秒
「・・・バカなひとみちゃん、本当に何考えてるんだろう?」

自分と一緒にいても梨華は、ひとみの事ばかり考えていて、
嫉妬してないなんて言ったら嘘になるから、真希は自分の口から
ひとみを悪く言うようなことは出来ない。

「梨華ちゃんは進路志望、なんて書いたの?」

だからせめて会話を変えたくて真希は言ったのだけど、

「私?・・・ひとみちゃんと同じ」

その答えを聞いて苦笑いをしてしまう真希。

「ごっちん、職員室に行ってみよう」

ひとみの事で心配そうな梨華の表情に、真希はもう何も言う事が出来なかった。
153 名前:76 投稿日:2001年10月15日(月)16時18分22秒
夏休みに入ってからもう何日が過ぎたのか、なんてひとみは考えたくも
ない気分だった。
終業式の日に、職員室で会ったのが梨華を見た最後で・・・。
その時に自分が言った台詞を何度も頭の中で反芻してひとみは、ため息を吐いた。

『なんで梨華ちゃんがここにいるの?』

不機嫌な表情で訊いたひとみは、

『ひとみちゃんだけ怒られるなんて変でしょ。私だって進路志望
 ”ひとみちゃんと同じ”って書いたんだもん。
 怒られるのなら私も一緒がいい!』

一歩も退かない、わがままを言う子供のような瞳に見つめられている事に気付き

『梨華ちゃんと一緒にいるぐらいなら、中澤先生に
 頭下げた方がマシだよ』

その視線が痛いからひとみは、そんな風に言ったのに、
梨華は今にも泣きそうな表情をして、ひとみを強く睨んでいるだけだった。
154 名前:77 投稿日:2001年10月15日(月)16時25分08秒
『・・・・・・進路志望、私・・・本気で書いたの』

震えるような声の続きを聞きたくなくて、

『私には関係ないよ』

バカにするように言う筈の声が、ぎこちなく響くことぐらい自分でも分かっていた

『ひとみちゃんと・・・・・・ずっとひとみちゃんと一緒にいたいからそう書いたの」

なのに・・・・・・聞きたくない、と思う言葉は、ひどく甘くて・・・
その声に触れた耳から溶けてしまいそうなくらい、切なくひとみの胸へ
染み込んでいく。
精一杯の笑顔で、ひとみを庇うように笑って見せる表情を見ているのが
辛かったから・・・なんて都合の良い言い訳だろうか・・・。
155 名前:78 投稿日:2001年10月15日(月)16時35分00秒
『出ていってよ!梨華ちゃんの顔見てると気分が悪くなるから』

視線も合わせずに言った自分の声が、いつまでも耳に残っている。

『もう親友ごっこはやめようよ?悪いけど私・・・
 梨華ちゃんのこと・・・嫌いだから』

驚いたような表情をして、梨華が信じられないように自分を見ていた気がする。
隣にいた亜依と希美が何か言ったけれど、二人の声はひとみの耳には届かなかった
それから先をひとみは、あまり覚えていない。
何かに耐えられなくなったように職員室を飛び出して行く梨華を背中で感じていた
その後を追いかけて行く亜依と希美の足音を聞きながら・・・。
本当は一番に追いかけてしまいたい自分を堪えるだけで精一杯だった。
156 名前:79 投稿日:2001年10月15日(月)16時43分44秒
「・・・・・・最悪」

それっきりひとみは、梨華と顔を合わせていない。
夏休みに入ったせいで学校で顔を見ることも出来ない。
たまに家の近所で梨華の姿を見かけても、その隣りに真希がいるだけで
ひとみには声が掛けられなかった。
本当なら梨華の隣りにいるのは自分のはずなのに、なんて思ってしまう
自分を抑えることに少しずつ慣れていく。
梨華が傍にいない、ということに慣らされていく感覚が確かに自分の中に
ある。けれど、それはうまくいかない。
耐え切れなくなったように梨華の部屋の窓を見つめてしまう自分がいるからだ。
157 名前:80 投稿日:2001年10月15日(月)16時49分42秒
「梨華ちゃん・・・・早く帰って来てよ」

窓を隔てたすぐ隣りに住んでいて、その距離がこんなに遠いなんて
思いもしなかった。
会いたいと思う口実がなければ会う機会もない距離だったのだと、
初めてひとみは知った。

「・・・もう、八日も会ってない・・・」



例えば見つめているだけで『好き』という気持ちが、このまま梨華に
伝染ればいいのに・・・なんてバカなことを考えながらひとみは、
そっと痛むように瞳を閉じた。
158 名前:式神 投稿日:2001年10月15日(月)16時56分50秒
>>151-157 更新しました。

素直になれないヨッスィー・・・、まだまだ続くの巻
159 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月15日(月)18時09分21秒
(0^〜^0)速く素直になってくれ・・・
じゃないと切なすぎるよぅ・・

160 名前:133 投稿日:2001年10月15日(月)20時50分18秒
リアルタイム逃しちゃいました…
次こそは!!
161 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月15日(月)21時45分52秒
ほんとに切なすぎる…
よしこー素直になれーー
162 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月15日(月)21時56分02秒
切ない、切なすぎるですよよし子さん、泣ける。
でも梨華ちゃんに対してひどいこと言っちゃうよすぃ子の気持ち
がすっげ〜わかる、余計泣けてくる・・・ガンバレ!!
163 名前:式神 投稿日:2001年10月16日(火)00時18分44秒
>>159 当分、先です・・・多分。

>>160 今回はどうですか?

>>161 自分も書いてて切ないです。

>>162 ヨシコにはまだまだ試練があるのです
    ガンバレ!

眠れないので更新します。

164 名前:81 投稿日:2001年10月16日(火)00時26分19秒
ひとみに嫌いだと言われて、ひどく落ち込んでいる梨華を慰める為に、
真希は夏休みに入ってから毎日のように、梨華の家のインターフォンを
押していた。
沈んでいる梨華を外へ連れ出して、少しでも励まそうという気持ちは本物
だったけれど、どうしても真希は梨華を一番喜ばせる言葉を言う事が出来ずにいた
つまり、ひとみが梨華を嫌いになるはずがない、もっと言ってしまえば
梨華を好きで仕方がないから、ひとみはあんなことを言ったのだと・・・。
それが分かっていても真希には言えない。

だって真希は、梨華を好きなのだから・・・。
165 名前:82 投稿日:2001年10月16日(火)00時33分33秒
玄関から顔を覗かせた梨華が、

「ごめんね、今からお留守番しなきゃいけないの」

だからよかったら上がって、と言った瞬間、

「い、いいの?」

すごく間の抜けた顔をしていると自分でも分かるくらい真希は狼狽えてしまった。

「いいに決まってるでしょ」

微笑む梨華に、もうすぐ親がいなくなるからと言われて、別に深い意味は
ないのだと分かっていても真希はバカみたいに緊張してしまう。

「お、お邪魔しま〜す」

子供の頃に来たきりの玄関で靴を脱ぐ真希に、梨華の家を懐かしんで
感慨にひたる余裕はない。
まさに親の留守を狙って娘の部屋へ上がり込む男の心境である。
166 名前:83 投稿日:2001年10月16日(火)00時42分53秒
「梨華ちゃんのお友達?」

初めて見る若い女性の登場に、誰?という表情をしてしまう。
真希の記憶では、梨華は一人っ子で姉なんかいなかった筈だ。
きっと親戚か何かなのだろう。

「初めまして、娘がいつもお世話になっております」

だから一瞬、真希は彼女が言ったことを理解できなかった。

「私とひとみちゃんの幼なじみのごっちんこと後藤真希ちゃん」

笑って紹介してくる梨華に、曖昧に頷きながら真希は、確かに梨華の母親の
葬式に出た気がする記憶と、目の前にいる若すぎる女性の姿に混乱してしまう。

「じゃあ後藤さん、ゆっくりして行ってね」

にっこり笑って出て行く横顔に慌てて会釈する。
母親だなんて思えない、とても可愛い笑顔だと素直に思う。
けれど、梨華にまるで似ていないとも思ってしまうのだ。
167 名前:84 投稿日:2001年10月16日(火)00時54分02秒
「梨華ちゃんの・・・お母さん?」

無意識のうちに怪訝な表情をしてしまったのだろう。
そう訊いた真希に、梨華は困ったような視線を向ける。それでも笑って、
二年前に再婚したのだと答えてくれた梨華に、真希は何も言えなかった。
自分の無神経さを後悔する。

「綺麗で可愛い人でしょ?お父さんにはもったいない人なの」

そんな風に言う梨華が、少しだけ辛い。
死んだ母親を梨華は、とても好きだと言っていた。
もういない母親を、それでも梨華は無邪気に自慢していたのを覚えている。

「・・・知らなくてごめんね」

そんな子供の頃の梨華を知っているから、目の前にいる梨華が無理に
笑っていることが、真希には分かってしまう。
同時に、そんな梨華が愛しくてたまらないような気になった。
それから、今日はもう襲う気になれないナ、なんて考えている自分に苦笑する。
梨華に手を出せないままでいるひとみの事を笑えないと思ってしまった。
168 名前:85 投稿日:2001年10月16日(火)01時02分45秒
「どうしてごっちんが謝るの?私が言わなかっただけだよ」

それきり、本当の母親の事も、新しい母親の事も梨華は口にしようと
しなかったから、真希はそれ以上その話に触れることが出来なかった。

「思い出したんだけど、ごっちんって意外に薄情だよね〜」

唐突に言い出した梨華の言葉に、真希は怪訝な仕種で眉を寄せた。
心外だと思ったからだ。

「薄情?私が?」

自分を薄情だと言うのなら、毎日健気に北海道で梨華とひとみからの
手紙を待っていたのに、結局一度も手紙をくれなかった二人の方だと思った。
そのお陰で真希は、しばらく人間不信になったのだ。
いくら親友でも離れればこんなものだと思った記憶が、苦く蘇える。
169 名前:86 投稿日:2001年10月16日(火)01時13分04秒
「出したけど戻ってきたんだよ、引っ越す時に私とひとみちゃんに
 嘘の住所教えたでしょ?」

けれど梨華は思い出したように憤慨していて、とても嘘を言っているようには
見えない。

「ちょっと待って、嘘の住所って・・・北海道のどこ?」

キツネに摘まれた気分で、梨華の言う住所を聞いた真希は、確かに
自分は嘘を教えていた、という事実を思い出して目眩を覚えた。

「ひとみちゃんが絶対おかしいって言うから一緒に調べたら」

そんな住所はどこにもなかった、と怒る梨華の証言は正しい。
ない筈である。それは真希が、ひとみ用に作った嘘の住所なのだから・・・。

「梨華ちゃんにだけ渡した紙きれのことなんて覚えて・・・ないかナ」

言いかけて、険しくなる梨華の表情に言葉が途切れる。
真希は焦っていた。
170 名前:87 投稿日:2001年10月16日(火)01時23分41秒
「それは・・・それには子供心に深いワケが・・・」

言い訳しようとする真希に、もういいよ、なんてまるでよくない表情で梨華が言う
真希は、子供の頃にした悪事が今頃になって自分の首を締めている状況に
かなり焦っていた。

幼い真希は、仲良しの梨華にだけ本物の住所を渡し、憎いひとみには
嘘の住所を渡すという荒技を残して北海道へ旅立った。
まさかその本物の方の住所を梨華が失くしてしまうなどという
アクシデントは、11歳の真希には予想出来なかったのだ。

「そっか・・・私は来る筈のない手紙を毎日待ってたんだ・・・」

自分のまいた種とも知らず、人間不信になった北海道での寒かった日々を
思い出して、思わず遠い目をしてしまう真希だった。
171 名前:式神 投稿日:2001年10月16日(火)01時29分41秒
>>164-170 更新しました。

後藤さんもガンバレ(w
172 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月16日(火)02時09分53秒
後藤さん・・・
子供ながらにちゃっかりしてますなぁ(w
173 名前:nanasisan 投稿日:2001年10月16日(火)02時34分57秒
さくーしゃが不眠症だったら良かっ・・・

いえいえ、じっくり寝て、書き上げてください。
174 名前:aki  投稿日:2001年10月16日(火)13時01分12秒
昨日(今日?)リアルタイムで読ませてもらってました。
なんか私的には後藤の気持ちを考えちゃいます。
石川の気持ちもはっきりしているようでちょっと可哀想だなぁと(^^;
後藤さんガンバレ〜
175 名前:133 投稿日:2001年10月16日(火)20時13分37秒
うぅ〜
今回もリアルタイム逃しちゃいました…
でも思いがけず更新されてるのもこれまた嬉しいんですけどね(w
176 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月16日(火)20時53分21秒
くぁ〜よし子切ないな〜と思ってたらゴマも切ない!
でもごめんよゴマ、自分いしごまも好きなんだけど
いしよしのほうがもっと好きなんよ、
だから自然によし子の方を応援してしまう僕を許して・・・
177 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月16日(火)21時40分26秒
後藤切ないなぁ…
でもだからこそいしよしにははっきりしてあげて欲しいなんて思う僕は、
一体どっちの味方なんだろう?(w
178 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月17日(水)02時44分33秒
後藤切ない!!
でもそんな処に萌えてしまう自分は歪んでるな(w
179 名前:式神 投稿日:2001年10月19日(金)21時22分57秒
>>172 住所の話は実話です(w
>>173 ある意味、不眠症かもしれません。
>>174 akiさん
    いつもakiさんの小説読んでます。今度『いしごま』を書く
    ということで許してください(w

>>175 残念。なんとなくリアルタイムは恥ずかしいですナ。
>>176 許します。
>>177 両方ガンバレ!
>>178 書いてる自分も歪んでる(w

遅くなりすみませんm(__)m更新します。
180 名前:88 投稿日:2001年10月19日(金)21時38分06秒
「今年の夏は短かったね〜あいぼん。もう終わっちゃうヨォ〜」

どこか遠い目で呟いた希美の声を、さらに遠い目をして聞こえない振りを
していた亜依は、メニューに隠れてこっそりと何度目かのため息を吐いた。
真昼の昼下がりという一年の内で最も暑い季節の最も暑い時間帯に、
不幸にも亜依はファミレスのメニューを広げたまま暗い呟きを聞いているのだ。

「今年の夏の思い出と言ったら、あいぼんとファミレス通いだけだよ!
 こんなの・・・・おもしろくない!!」

希美はテーブルを両手でバンバン叩きながら不機嫌な顔で亜依を見る。

「・・・・のの、こーゆー時は、アレだね」

面白くない時に面白いことを求める二人がやることは一つである。

「そうだね、やっぱアレしかないよね〜あいぼん♪」

深く頷き合う亜依と希美は『アレ』だけで意思の疎通が図れるらしい。

「夏休み緊急特別企画!梨華ちゃんとヨッスィーを
 親友にもどしちゃうのよスペシャルッ!!」

見事にハモりながら、スパゲティの取り合いを始める二人だった。
181 名前:89 投稿日:2001年10月19日(金)21時51分07秒
それは、たった一本の友情電話で始まった。

『梨華ちゃん?のの&あいぼんのもしもしコールだぴょ〜ん』

受話器から聞こえてくるのは、いつもと同じ希美のふざけた声。

『かしてよ、のの!あのね〜梨華ちゃん聞いて〜、ののったらね〜
 一ヶ月で体重が・・・・・・・』

『ワーワーワー!あいぼん!それは内緒って言ったじゃん!
 ちょっとどいてよ!ののがしゃべる〜』

電話の向こうで受話器を取り合うようにして喋っている二人に梨華は笑ってしまう

『あっごめんね梨華ちゃん、聞いてる?本題に入りま〜す。
 よ〜く聞いてくらさい!明日、ヨッスィーとキャンプに行くので
 梨華ちゃんも来てくらさい』

言われた言葉に少しだけ考えたあと、行けないと小さな声で答えた。

『ダメ!!来なかったら百叩きプラスおしりペンペンだよ!』

無理を言う声が、とても優しくて心配しているのが分かるから嬉しかった。
182 名前:90 投稿日:2001年10月19日(金)21時58分46秒
『ごっちんも連れて来てね』

けれど真希が一緒なら、なおさら自分は行けない、と梨華は思うのだ。

『ごっちんとヨッスィーを仲良しにするのは梨華ちゃんの役目なんでしょう?
 ガンバレ!梨華ちゃん!』

二人の励ましの声に、梨華は泣きたくなる。
なんて良い友達なのだろう。

『ただし、これでダメならもう絶望的にダメだと思うけどね〜』

だから期待しない事、なんて揶揄かうような声に笑ってしまいながら、

『でも、梨華ちゃんだけでもヨッスィーと仲直りしよう!
 じゃないと・・・・寂しいもん。ねっ、梨華ちゃん?』

思いやり、という言葉がやけに身に染みて、梨華は何度も頷いていた。
183 名前:91 投稿日:2001年10月19日(金)22時08分25秒
その日は朝からよく晴れていて絶好のキャンプ日和だと希美は、
能天気に浮かれていた。

「どう?ヨッスィー様の今日のご機嫌は?」

最高かしら?それとも最悪?なんて明るく訊いた希美は、

「・・・のの、あれが良く見える?」

暗く答えた亜依の視線の先に目をやって、思い切り顔をしかめた。

「よ、よどんでる」

見たくないものを見たように顔をそらす希美に、朝からひとみを迎えに行く
という最大の難題を押し付けられていた亜依は、すでに疲れ切った表情を
浮かべていた。
お世辞にも機嫌が良いとは言えないひとみの周りには、爽やかなキャンプ場
の空気とは思えない、よどんだ空気が渦巻いている。
せっせとテントを張っている亜依と希美を手伝おうともせず、
ひとみはさっきから苛々と一人、ベーグルをかじりながら眺めているだけだ。
184 名前:92 投稿日:2001年10月19日(金)22時17分38秒
「どうする、のの?」

近場のキャンプ場に三人で落ち合った所まではいいが、この不機嫌なひとみに
今から梨華と真希が来るとは、さすがの亜依と希美にも言い出せないムードだった

「言い出しっぺあいぼんの勇気に任せるのれす」

サラリと責任転嫁しようとする希美に、亜依が悲壮な表情をして、

「やっぱここは・・・・梨華ちゃんの勇気に・・・」

任せましょう、と二人で頷き合う。
そのまま目だけで意思の疎通を図った亜依と希美は、

「私たちはここでグーゼン奇遇にも梨華ちゃんに会ったということで」

「それはもう奇跡に近いグーゼンだったということで」

うんうんと分かったように頷いて裏切りっこナシねっ、という約束の握手をする
どこまでも結束の固い二人である。
185 名前:93 投稿日:2001年10月19日(金)22時27分51秒
そこへ。

「あいぼん!ののちゃん!」

満面の笑みで現れた梨華のタイミングの悪さに、亜依と希美は顔を引きつらせた。
その後ろに真希の姿を見つけて二人は同時に声を上げる。

「グ、グーゼンだねっ、梨華ちゃん!」
「あれっ?ごっちんまで一緒なんてホントにグーゼンッ!」

ビックリ〜なんて大声で言う二人に、梨華はキョトンとした表情をして、

「なにが偶然なの?」

不思議そうな梨華の言葉が、今度はひとみの不機嫌な声とハモる。
その声に、亜依と希美が何か言い訳をする前に、

「ひとみちゃん!」

すごく嬉しそうな表情になった梨華が、ひとみの元へ駆け出していた。

「・・・っ・・・!」

そのままひとみが避けようとする前に梨華は、ひとみに抱きついてしまう。
186 名前:94 投稿日:2001年10月19日(金)22時35分48秒
柔らかな髪が肩に触れた途端、ひとみの手が梨華を押し退けようとしたけれど。

「・・・・・・梨華ちゃん・・・」

その手を嫌がるように強くしがみついてきた梨華を、やっぱりひとみは
押し退けることが出来なかった。

「・・・、ひとみちゃん・・・っ・・・」

泣き出してしまったような梨華に、ひとみはひどく困った表情をして、
それから、その後ろに見つけた真希の複雑な表情に目を止めて、軽く肩を竦めた。
これは私のせいじゃないとでも言いたいらしい。
それから、しばらく迷うような仕種を見せていたひとみは、思い切ったように、
梨華の背中へ手を伸ばした。

「梨華ちゃん、あとでね」

そうして、ひとみは梨華の顔をみんなに見せないようにしたまま、
足早にその場を離れて行く。
187 名前:95 投稿日:2001年10月19日(金)22時48分20秒
「び、びっくりしたぁ〜っ」

その場に無傷で残された幸運に、亜依と希美が安堵したような声をもらしている。

「・・・ひとみもいたんだ」

面白くないような、どこかつまらなさそうな声で呟いた真希に、

「当然じゃん?」

希美が珍しく怒った声を出した。
その態度に驚いたような表情を見せた真希は、

「今日だけでいいから、ヨッスィーと仲良くしてヨ、じゃないと梨華ちゃんが」

可哀相だから、と頼むように言う希美に考える仕種で俯いて見せたけれど、

「お節介かもしれないけど・・・私もののも、梨華ちゃんが泣くこと、
 初めて見ちゃったから・・・」

ちょっと参った、なんて責めるように言われたら、まるで自分だけが悪者
じゃないかと真希は苦笑してしまう。
梨華が泣くところを見たくないのは、真希も同じなのだから・・・。

「うん、了解!・・・ただし、ひとみがどう言うか分からないけどね〜」

冗談っぽく言って首を傾けた真希に、亜依と希美はとても嬉しそうに
笑ってくれた。
188 名前:式神 投稿日:2001年10月19日(金)22時59分49秒
>>180-187 更新しました。

やっと話の半分って感じっすね〜。
本当に、読み直すと駄文すぎて恥ずかしい〜
189 名前:133 投稿日:2001年10月19日(金)23時03分57秒
やったぁ〜今回はリアルタイムGET!!
2人が仲直りできそうで良かった…
がんばってくださいきほし
190 名前:aki 投稿日:2001年10月19日(金)23時42分06秒
今回リアルタイム逃しちゃったみたいです^^;
後藤応援派の私にはほんっとうに後藤の心情が
勝手に頭の中に浮かんでしまい苦しいです(w

次回作、「いしごま」!!
嬉しい限りです。
私のは駄作中の駄作なんで、式神さんの書かれるいしごま期待に胸を膨らませ
待っています。

これからも頑張ってください^^

191 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月20日(土)12時56分01秒
あいののコンビの必死の作戦がかわ (・∀・)イイ!(w
速くちゃんと仲直りして欲しいっすね>(#´▽`)´〜`0 )
192 名前:式神 投稿日:2001年10月20日(土)21時57分50秒
>>189 おめでとうございます。そして、本当に有難うございます!

>>190 akiさん
   akiさんの作品が駄作なら、僕の作品はゴミみたいなモノです(w
   『いしごま』期待されると、ププププレッシャーが・・・(^^)

>>191 辻&加護コンビの可愛さがもっとうまく書きたかったのですが
    自分の力量ではダメでした。

更新する前に、いろんな長編をまた初めから読み直して、みなさんホントに
うまいなぁと驚くばかり・・・自分も頑張ろう!
193 名前:96 投稿日:2001年10月20日(土)22時08分29秒
みんなのいる場所から離れた森の中へ梨華を連れて入ったひとみは、
泣き止まない梨華の背中を宥めるように撫でて、大きな木の下へ腰を下ろした。
相変わらずひとみに、しがみついたままの梨華。

「梨華ちゃん、いつまで泣いてるつもり?」

ひとみは揶揄かうみたいに言ってみる。
そうすると梨華は、ますます強くしがみついてくるのだ。
ひとみは困ったような、照れたような、そんなとても甘くて優しい
表情になってしまう。きっと梨華よりも自分の方が、ずっと会いたいと
思っていた筈だとひとみは思う。
梨華の顔が見たくて、声が聞きたくて仕方がなかったから・・・。
だから本当は、梨華を見つけた時、ひとみは自分の方が梨華を
抱きしめてしまいそうだった。
目の前に本物の梨華がいるのが信じられなくて夢みたいだと
思うくらい嬉しかった。
194 名前:97 投稿日:2001年10月20日(土)22時18分37秒
たくさんひどいことを言ったことぐらい自分でも分かっていた。
だからもうこんな風に梨華が自分の前で泣いてくれるなんて思いもしなかった。
声を上げずに、何かを我慢するみたいに泣く梨華を、自分の腕で抱きしめられる
ことが嬉しくて、けれどどうしていいか分からない。

「・・・ぅ・・・っ・・・」

懸命に泣き止もうとする梨華の背中を宥めるように軽くさすって、

「・・・泣かないで」

と言いながら、手はもっと泣いていいと言うみたいに優しく動き続けている。
そんな仕種に安心したように、ギュっとひとみの首へ腕を回して、そのまま
子供みたいに梨華は泣き出してしまう。
そんな梨華にひとみは笑みを深くして、頬へ触れる梨華の髪へ
柔らかく口付ける。もちろん、梨華には分からないようにだけれど。
華奢な首筋へ顔を埋めるようにしてひとみは、何度も細い髪の先にキスを落とした
195 名前:98 投稿日:2001年10月20日(土)22時30分26秒
「ほら、梨華ちゃん、もう泣き虫は卒業するんじゃなかったの?」

揶揄かうように言うひとみに、

「・・・・・・ひとみちゃん」

涙でいっぱいの顔を、そっと上げてひとみを見つめてくる。
その、確かめるような仕種にどこか甘く胸が痛むのは、なぜなのか
自分でも分からないけれど、いつもこんな時にひとみは思うのだ。
どうしてもっと素直に優しく出来ないのだろう、と。
そうしたらきっと、こんな風に梨華を泣かせたりしなくて済んだ筈なのに・・・。

「ごめんね、ひとみちゃん・・・」

こんな時の後悔は、ひとみをいつも甘くて、そして苦い気にさせる。
泣かせた自分に腹が立つのは本当なのに、優しく慰める心地好さに酔う
自分も本当なのだ。

「梨華ちゃんがどうして謝るの?」

そっと、出来るだけ柔らかい仕種で涙を拭って、揶揄かうような言葉を
溶け出しそうな声で囁いている自分がいる。
とても甘い後悔に包まれながら、好きと囁くのと変わらない仕種で
髪を撫ぜる指が止められない。
196 名前:99 投稿日:2001年10月20日(土)22時42分35秒
いつだって悪いのはひとみの方なのに、謝るのは梨華の方で、ひとみは本当に
こんなのは変だ、と思うのだ。こんなに自分勝手で、素直になれずに謝ることも
出来ない自分を、梨華はいつも簡単に許してくれるのだ。
本当にこんなに素直な梨華が、どうして自分なんかに誰にも見せない筈の
泣き顔を見せてくれるのかひとみには理解出来ない。

「ひとみちゃん・・・あの時のこと、覚えてる?」

掠れた声が胸元に落ちてきて、そのままそっと梨華の頬が肩の辺りに
押し付けられる。ゆっくりと感じるカラダの重みに瞳を閉じながらひとみは、
その感覚に流されそうな自分を押し留めようと意識する。

「私とひとみちゃんと・・・ごっちんの三人で探検ごっことかしたよね」

思い出しながら話しているような梨華が何の話をしようとしているのかが分かって

「忘れちゃった」

不機嫌にひとみは言う。
197 名前:100 投稿日:2001年10月20日(土)22時50分24秒
「偶然に見つけた防空壕の中へ、三人で探検に行った時・・・」

それでも話をやめない梨華に、ひとみは顔をしかめた。

「ひとみちゃんは、ちゃんと危ないって・・・危ないからやめようって言ったのに」

私とごっちんは聞かなかった、なんて言う梨華が、今どんな表情をしているのか
見えなくてもひとみには分かってしまう気がした。

「急に野犬が出てきて・・・襲われたのは私だった、筈なのに・・・」

だから、もうやめさせようと思うのに、

「なのに・・・本当に噛まれちゃったの、ひとみちゃんだけだった・・・」

梨華は、言わずにはいられないみたいに最後まで話をやめようとしない。
198 名前:101 投稿日:2001年10月20日(土)23時00分04秒
「私がグズグズしてたからね」

素っ気なく言い切ったひとみは、その話を終わらせようとして失敗してしまう。

「違うよ!ひとみちゃんは私を庇って犬に噛まれたの」

梨華が強く言い直したからだ。ギュっとしがみつく腕に力が込められて
ひとみはどうしていいか分からなくなる。
そんな話をして、梨華はどうしようと言うのだろう。

「私のせいで大怪我したのに、ひとみちゃんは一度も文句を言ったり、
 怒ったりしなかった」

その時のことを思い出したように涙声になってしまう梨華を、ひとみは
困ったような仕種であやしながら、

「梨華ちゃんのせいじゃないよ」

自分が勝手に調子に乗ってやっただけの事だと言ってやる。だから梨華が
気にする必要はないし、負い目に感じるようなことは何もないと付け足す。
199 名前:102 投稿日:2001年10月20日(土)23時10分14秒
「梨華ちゃんが・・・ずっと私の傍にいたから・・・別に何でもなかったよ」

全然役に立たなかったけどね、なんて照れ隠しの言葉だけは忘れなかったけれど

「ひとみちゃん・・・・・っ」

それでも梨華は、ひどく泣き出してしまって、ひとみは余計なことを
言ったなんて苦笑する。

「全然、会えない時とかね・・・ひとみちゃんが怒ってるって分かってる時でもね」

途切れがちに聞こえる梨華の高い声が、耳へ触れる優しい感覚に
笑みが深くなっていく。

「時々、すごくひとみちゃんと喋りたくなるの・・・
 ひとみちゃんに会いたくて、すごく胸が痛くなるの・・・」

子供っぽく響く言葉。
けれどそれは、本当はひとみが欲しくてたまらない言葉だったのかも知れない。
聞いてるだけで泣きたくなるような声が、友達とか親友や家族、そんな誰かに
言う時と同じ響きで語られることをひとみは、とてもよく知っていたけれど・・・。
200 名前:103 投稿日:2001年10月20日(土)23時20分09秒
「・・・・・・どれくらい痛いか・・・分からないよ」

それでもひとみは、そんな風に言ってしまうのだ。

「教えてよ、私に・・・」

そう言えば、梨華がどうするのか知っているから、そうして欲しくて言ってしまう

「ねぇ、梨華ちゃん?」

早く、と急かすように囁く声に、梨華が痛いくらいに強く抱きしめてくる。
ひとみにどれくらい自分の胸が痛むのかを教える為に・・・。
そうすることを、梨華に教えたのはひとみだったから、梨華は教えられた
通りにそうしているだけなのだと思うのに・・・。
その瞬間がすごく甘く感じる。
それ以上、もう隙間がないくらい強く梨華を抱きしめてからひとみは腕を解いて

「・・・そろそろ戻ろう、ののとあいぼんが心配してるよ」

沸き上がる切なさと照れ臭さを苦笑に変えることでやり過ごすことに成功する。
201 名前:104 投稿日:2001年10月20日(土)23時25分37秒
「あっ、そうだった」

他の人間の存在をやっと思い出したような声に、
ひとみは、わざとらしくため息を吐いた。

「ひとみちゃん・・・・その・・・ごっちんのことなんだけどね・・・」

ひどく言い難そうな梨華の声に笑ってしまう。
『仲直りして』と顔に書いてあるからだ。

「とりあえず・・・・・・・ののとあいぼんに感謝してよ、梨華ちゃん!」

揶揄かうように言いながらひとみは、人の好い二人の友人と、
憎らしい幼なじみを思って苦笑するような仕種で微笑みを深くした。
202 名前:式神 投稿日:2001年10月20日(土)23時32分27秒
>>193-201 更新しました。

とりあえず仲直りして良かったと・・・辻&加護の作戦成功(w
203 名前:Charmy Blue 投稿日:2001年10月20日(土)23時36分43秒
久しぶりに、リアルで読ませていただきました。
切なすぎるっす。早く二人の気持ちが通じるといいのに。
もどかしいですねぇ。がんばって!よしこ・・・。
204 名前:hiro 投稿日:2001年10月20日(土)23時40分47秒
最強の幼なじみは、胸の痛みを抱きつくことで伝えさせるという
「刷り込み」に成功した模様・・・。
もしかしてちっちゃい頃から あまあま だったのかな??
仲直りおめでとう!!
205 名前:133 投稿日:2001年10月21日(日)14時22分41秒
仲直りバンザイ!!
甘々最高(0^〜^0)
次こそリアルタイムねらいつつ続き楽しみにしてます。
206 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月21日(日)16時31分46秒
仲直りできて良かった良かった(w
てか萌えた、萌えすぎて胸が痛いっす
でもそれを伝える人が自分にはいない
そしてそれを伝えても意味が無い
207 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月21日(日)17時29分09秒
仲直りしてよかった…、ホントよかった。
萌えたのと感動で胸がいっぱいです。
208 名前:式神 投稿日:2001年10月22日(月)20時44分25秒
>>203 CharmyBlueさん
   お久しぶりです。まだまだもどかしい二人です。

>>204 hiroさん
   大・大・大・大成功です!!
>>205 133さん
   自分もかなり甘党です。

>>206 有難うございます!!
  『萌えた』と言っていただけるとかなり嬉しいです。(一番の誉め言葉!)

>>207 有難うございます!!
   自分もこんなにレス(感想)を頂き胸がいっぱいです。

本当にこのような駄文をここまで読んでいただき有難うございます!!
これからも頑張りますので宜しくお願いします!
209 名前:105 投稿日:2001年10月22日(月)20時53分54秒
「な〜んか〜訳のわかんないうちに、アノ人たち勝手に仲良しでない?」

呆れたように呟く亜依の声はすっかり疲れていた。

「仲良しれすねぇ〜」

と相槌を打つ相棒の声が微笑ましく響く。
川べりの日陰に腰を下ろした二人の視線の先で、ひとみと真希が元気に
言い争いながら釣りをしていた。けれど、その言い合う姿はどこか微笑ましくて
いつもの険悪な空気が今はまるでない。

「あれ?梨華ちゃんは?」

見かけない姿を捜して亜依がキョロキョロしている。

「キンチョーして昨日眠れなかったとか言って、あっちでお昼寝中」

希美があれ以上の呑気者はいないというように、木陰で丸まっている
物体を指差した。

「梨華ちゃん・・・・平和すぎる・・・」
210 名前:106 投稿日:2001年10月22日(月)21時03分30秒
ひとみの上着をすっぽり被って頭だけ出して眠っている梨華の姿は、
あまりにも呑気で平和なものだった。
丸まる格好が子供みたいで、なんとなく可愛く映る。

「ねぇ、あいぼん。さっきから知りたくないから黙ってたんだけどね〜」

似合わない暗い声の希美に、何を?と軽く答えた亜依は、

「もしかして・・・この状況から言ってれすねぇ〜
 夕食の用意って・・・ののたちの任務??」

言われて、釣りに熱中している二人と、すやすや眠っている物体に視線を向ける。

「・・・のの、料理ってしたことある?」

控えめに可愛く訊いた亜依に、ない!とキッパリ答える希美。

「私もないよ、食べるの専門だもん♪エヘヘ」

答えるなり、先を争って逃げるようにキャンプ場を
飛び出していく二人だった。
211 名前:107 投稿日:2001年10月22日(月)21時11分23秒
「あれ?あの二人何かあったのかな?」

釣りをしていた真希が、猛スピードでアスレチックの方へ走り去って行く
亜依と希美に気付いて不思議そうな表情をする。

「さぁねぇ〜どうせ夕食作るのが嫌で逃げたんじゃないの〜」

鋭い答えを返して、ひとみは傾きかけた西日に目をやると釣り道具を
手早く片付け始めた。キャンプに来ているのに、陽が落ちてからでは
食事の用意が出来ないからだ。

「ひとみ、もうやめちゃうの?」

しつこく釣りを続けていた真希の声に軽く肩を竦めるだけで答えない。
そのままひとみは、眠ったままの梨華を起こすために、大きな木の下へと
移動していく。
212 名前:108 投稿日:2001年10月22日(月)21時23分24秒
「・・・カワイイ」

丸くなって、すやすやと眠っている梨華に苦笑してひとみは、どうしようかと
困ったようにその肩をそっと揺する。
幸せそうに眠っている梨華の表情は、本当にあどけなくてカワイイ。
起こしてしまうのが可哀相な気がするくらいだ。

「梨華ちゃん、起きて」

仕方なく、眠っている梨華の傍に膝をついて屈み込むようにして声を掛ける。
なのに梨華は、そのままひとみの方へ転がってくるだけだ。

「もう、起きてってば!」

思わず微笑んでしまうような仕種で、ひとみのシャツを掴む梨華にため息を吐く。
家でなら構わないが、外でしかも真希の視線の届く場所で自分に甘えられるのは
困るのだ。

「梨華ちゃん!早く起きないと蹴っちゃうゾ!」

物騒なことを言いながら、それでもひとみの声や、梨華の肩を揺する仕種は
すごく優しい。だから余計に起きないのかも知れないと内心困っていたひとみは、

「あは、梨華ちゃんってまだ起きてなかったの?」

すぐ背後で聞こえた真希の声に肩を竦めた。
一番登場して欲しくない人間に限って、一番やってきて欲しくない場面で
登場するらしい。
213 名前:109 投稿日:2001年10月22日(月)21時31分11秒
「ほら、梨華ちゃん!!」

少しだけ機嫌の悪い声で強く言ってみる。

「ん・・・、ひとみちゃん?」

ぼんやりと寝ぼけたような声で言って、梨華がゆっくりと瞳を開く。
まだひどく眠そうだったが、取り合えず梨華が起きたことにひとみは肩を下ろした

「ひとみってさぁ、もうちょっと優しく起こしてあげればいいのに〜」

なんて真希が余計なことを言うのが気にさわる。
ひとみを揶揄かっているのが分かるからだ。

「それなら真希が起こせば?」

素っ気なく言って、ひとみが立ち上がろうとした瞬間、

「わッ!!」

急に梨華が首元へしがみついてきて、ひとみはバランスを崩してしまう。
そのまま梨華を胸に抱きこむ形になってひとみは、機嫌の悪い表情になった。
対真希用の表情である。
214 名前:110 投稿日:2001年10月22日(月)21時39分12秒
「梨華ちゃん!離れて」

腰砕けに座り込んだ格好のひとみに、胸元へ潜り込む仕種で梨華が抱きついてくる
痛いくらいに真希が自分を睨んでいるのが見えなくても分かるひとみは、
そのまま私のせいじゃない、というアピールを込めて万歳して見せる。
そんな努力も空しく、完全に寝ぼけている梨華は甘えるようにひとみに
しがみついて眠ってしまおうとしていた。

「・・・どうでもいいけどさぁ、梨華ちゃんってひとみに甘えすぎ!」

冷たい声に振り返ってひとみは、私のせい?という視線を真希に向ける。

「それだけひとみは梨華ちゃんに好かれてるってこと」

憎たらしいけどねぇ、なんて言って真希は肩を竦めた。
そんな真希の台詞にひとみは苦笑するしかない。嫉妬されるような
楽しいことが、自分たちの間には何もないのだから・・・。
215 名前:111 投稿日:2001年10月22日(月)21時46分21秒
「いい加減起きろ〜!!」

だからひとみは、肩へ摺り寄せられた梨華の頭に大声で怒鳴って
ビクッとして一瞬で目が覚めたような梨華の頬をきゅっと引っ張ってやる。
完全に目が覚めた梨華は、慌ててしがみついていた手を離した。
それからひとみの上着をグシャグシャにしてしまったことに気付いて
泣きそうな表情をする。

「ご、ごめんなさい、ひとみちゃん・・・」

上着を受け取って、焦ったように謝る声にひとみは悪戯っぽい視線を送って、

「梨華ちゃんは野菜係に決定!了解?」

意味も分からないまま、コクコクと頷く梨華に、真希と顔を見合わせた
ひとみは笑っていた。
216 名前:式神 投稿日:2001年10月22日(月)21時54分03秒
>>209-215 更新しました。

217 名前:133 投稿日:2001年10月22日(月)21時56分20秒
リアルタイムGETしました〜!!
なんだか3人いい感じですね(w
続き期待してますあおほし
218 名前:206 投稿日:2001年10月23日(火)00時01分56秒
おおぅ、更新してる(w
自分式神さんの書かれるいしよし
そぅとぅ好きっす!
「無敵なライバル」も大好きな作品です。
今日も萌えましたよ、どこってそりゃ
梨華ちゃんがよし子に寝ぼけて抱きついたところが・・・
219 名前:nishi 投稿日:2001年10月23日(火)00時12分32秒
はじめまして。なんだかイッキで読んでしまいました。

想いを伝えられない大好きな人との距離のとり方に悩むよしこ、
切ないなぁ。でもかわいいなぁ。ちくしょう…頑張れこのやろぅぅぅ!
根性無しなオイラにはムリだけどさ、でもよしこならやれるよ!行け―――!!!

そんな気持ちで読ませてもらいました。応援してます。頑張ってください。^^
220 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月23日(火)12時48分31秒
シリアスな場面から突然ほのぼのに。
巧い、巧すぎる! すっかりこの作品に魅了されてます。
221 名前:あさみ 投稿日:2001年10月23日(火)19時29分12秒
すごいうまいです
もはやプロ…
222 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月23日(火)20時18分02秒
>>221あげんなや!!
223 名前:名無し 投稿日:2001年10月23日(火)20時20分23秒
>>221 黄身は初心者だね
224 名前:式神 投稿日:2001年10月26日(金)20時55分53秒
>>217  133さん
    おめでとうございます!
>>218 有難うございます!これからも頑張ります!

>>219 有難うございます!よしこガンバレ!

>>220 そ、そんな上手くないですよ!
    本当に有難うございます!
>>221 有難うございます!!

もうちょっとほのぼの〜が続きます。
225 名前:112 投稿日:2001年10月26日(金)21時09分22秒
「どうして私が野菜係なの〜」

お昼寝から覚めた10分後。梨華は、せっせと野菜を洗っていた。
ひとみに言い付けられたのは、夕食のバーベキュー用の野菜をひたすら洗って
切るという地味すぎる係だったのだ。

「私ももっとサバイバルなこと、したいのに〜」

せっかくキャンプに来て、この係はないだろうと梨華は唇を尖らせる。
おまけにひとみは自分たちで釣った魚を格好よくサバイバルナイフで
捌いて、真希はその隣りで火起こしなどという派手なことを始めている。
並んで立つ二人の後ろ姿が自慢げに見えて、地面に屈み込んで野菜を
洗っている地味な自分との落差が梨華は不満だった。

「私も、お魚が捌いてみたいなぁ〜」

聞こえるようにいつもより高い声で言っても、ひとみはキレイに無視して
作業を続けているだけだ。
その態度にムッとして、梨華は盛大に拗ねた表情になってしまう。
226 名前:113 投稿日:2001年10月26日(金)21時20分52秒
「・・・・・・梨華ちゃん、梨華ちゃん」

ふと、どこからかする小さな声に梨華はキョロキョロして、

「こっちこっち」

という声に視線を落とすと、テントの隅から顔を覗かせている亜依と視線が合った

「あいぼん?」

驚いた声を上げる梨華に、シッと亜依が素早く唇に指を当てる仕種をする。

「・・・何をしてるの?」

慌てて声を落とした梨華は、隠れるように地面に伏せている亜依と
その後ろで同じ格好をしている希美に首を傾げた。

「ホフクゼンシン、それが地上戦で敵に見つからない
 最良の移動なのだよ、石川クン♪」

訳の分からないことを言う亜依に、ますます首を傾げてしまう。

「そんなことしてないで、早く一緒に食事の支度しよう」

なぜ、亜依たちがそんな格好で地面に這いつくばっているのかは、
分からないが、取り合えず野菜係にしてしまおうと梨華は声を掛けた。
一人で地味な作業をするのが嫌だったのだ。
227 名前:114 投稿日:2001年10月26日(金)21時29分09秒
「敵は?私たちのこと捜索してなかった?」

敵、と言われて怪訝な表情をした梨華に、亜依がひとみの方を指して
怒ってるかと訊く。

「ひとみちゃん?全然なんにも怒ってないと思うけど・・・」

不思議そうに答えた途端、バッと立ち上がって亜依と希美が傍に寄ってくる。

「な〜んだ、そっか。ヨッスィーは怒ってないのか〜テヘテヘ」

全く要領の得ない希美の言葉に梨華は首を傾げるばかりだ。
何が言いたいのか分からない。

「梨華ちゃんは何してるの?」

洗っていたキャベツを握りしめたままだった梨華に、今度は亜依が訊いてくる。

「私は、ず〜っと野菜係をしてるの」

面白くなさそうに言って、梨華はキャベツをまな板の上に乗せる。
228 名前:115 投稿日:2001年10月26日(金)21時35分38秒
「梨華ちゃんに包丁なんて使えるの〜?」

不安そうな目で見る亜依に、梨華はニヤリと笑って、

ストトトトトトッーーーーーーーーッ

と素晴らしいスピードでキャベツの千切りを披露する。

「お、おぉぉっ!!」
「すごいれす!梨華ちゃん!すごいれすねぇ〜」

感動したように包丁を握る手を見ている亜依と希美にどうだ、という表情をして

「こう見えても私には料理歴10年のキャリアがあるのよ!」

自慢げに胸を張る梨華に、尊敬の眼差しと拍手が集まる。
229 名前:116 投稿日:2001年10月26日(金)21時44分03秒
「こんな私に野菜係だなんて・・・メインの魚が切りた〜いッ!」

叫ぶ梨華に、亜依と希美が理解できないような表情をしている。
その反応に、なぜ?という視線を向けた梨華は、

「だって、スーパーで売ってる魚じゃないんだよ?キショッ!!」

と言う亜依と、

「ナイゾー取るとこからやっちゃうんだよ〜〜グエ〜!」

なんて言う希美の言葉に黙り込んでしまう。
言われてみれば確かにそうで・・・。
梨華は生きた魚を捌いたことなんてなかったし、どちらかと言えば魚に
触るのは苦手な方だ。

それから、梨華は、手に付いた血を涼しい表情で洗い流しているひとみを
見てしまう。
230 名前:117 投稿日:2001年10月26日(金)21時54分49秒
「もしかして・・・ひとみちゃん・・・」

ひとみがどうして自分に野菜係を任命したのかが分かる気がして
少しだけ切なくなった。
いつもひとみは、一番嫌なことを自分がしようとするから・・・。
憎まれ口を叩いて、自分の嫌なことを他人に押し付ける振りをして
誰もやりたがらないことは、ひとみがやってしまうのだ。

「よ〜〜しッ!!野菜は私が頑張っちゃうゾ〜!!」

だから梨華は、自分も一生懸命頑張ろう!なんて思えるのかも知れない。
単純だけれど。


しかし・・・・



「ねぇ、梨華ちゃん。バーベキューするのにどうして
 キャベツが千切りなの〜?」
「網に引っかからないのれす〜」

と亜依と希美に言われて・・・。
包丁捌きなんて自慢するんじゃなかったと、梨華は激しく後悔した。
231 名前:式神 投稿日:2001年10月26日(金)21時59分09秒
>>225-230 更新しました。

このままほのぼのが続けばいいのですが・・・
232 名前:133 投稿日:2001年10月26日(金)22時39分38秒
おっと微妙にリアルタイム逃してしまいました…
ちょこっといしよしでうれすぃ〜(w
続かないのだろうかほのぼの…
233 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月27日(土)18時29分56秒
よっすぃ〜、ますます惚れる(w
イヤなことは自分でするよし子に梨華ちゃんに対する
愛を感じますね。
234 名前:式神 投稿日:2001年10月28日(日)01時29分23秒
>>232 惜しいですね〜。ほのぼのな感じは、もうすぐ・・・

>>233 よっすぃ〜カッケ〜!!
   それが書きたかったので読者の方に伝わって嬉しいです。

眠れないので更新することにしました。不眠症か?(w
235 名前:118 投稿日:2001年10月28日(日)01時45分42秒
テントの外に用意したバーベキューセットは、すっかり準備万端という感じで
梨華たちを待っていた。
熱した網の上には、すでに手際よく捌かれた魚がいくつも乗せられている。
ちゃんと網から身が落ちないように魚はアルミホイルに包んで乗せられていて、
蒸し焼きにするようになっているのだ。

「さすが、ヨッスィーはあとはあと惚れなおしたヨ」
「ワイルドなヨッスィーはあとはあとスキれす」

夕食の準備をサボってアスレチックに逃避していた亜依と希美がここぞと
ばかりにひとみにゴマを擦っているのが情けない。

「野菜係さん、このキャベツの細さはすごいねぇ〜」

「だから間違えたって言ってるでしょ。何度も野菜係って呼ばないでよッ!」

野菜係と呼ばれる度に怒る梨華の表情をみているだけで、ひとみは楽しめるらしい

「いや〜野菜係さん、これだけの技を持ってるなんて・・・知らなかった」

揶揄かうように言うひとみは、器用にアルミホイルの上でキャベツの炒め物を
作りながら可笑しそうに笑っている。
朝とは別人みたいに、ひとみは上機嫌だ。
236 名前:119 投稿日:2001年10月28日(日)01時55分28秒
「ひとみちゃん!何度も言わないでよー!」

そんな風に言う梨華は、ひとみの嫌味にいちいち怒鳴ったり、拗ねたりする
くせに、ひとみの傍から離れようとしない。
文句を言うならさっさとひとみの傍から離れて、一人平和そうにジャガイモ
なんかを焼いてる希美の所へでも避難すればいいのだが、梨華にはそんな
気はまるでないらしい。

「あっ、私そっちの魚も食べたい」

わざわざ、そのひとみに紙皿の上へ食べ物を乗せて貰って食べている梨華は、
自分で網から食べ物を取る気がないのか、ひとみに自分の食べたいものを
リクエストしているだけだ。

「ったく、いちいち手の掛かるヤツだねぇ〜」

おまけに、文句を言っているひとみ自身にも、梨華に自分で網から取って
食べさせようとういう考えはないらしい。
237 名前:120 投稿日:2001年10月28日(日)02時06分14秒
「野菜係さん、自分で切った見事な千切りキャベツ、たくさん召し上がれ〜」

憎たらしい口調で言ってひとみは、梨華の皿の上に、炒めたキャベツを
大量に乗せてしまう。

「やめてよ、ひとみちゃん!!」

せっかく魚を食べようと皿の上を整理していた梨華は、唐突なひとみの
キャベツ乗せ攻撃にぷくーっと頬を膨らます。

「ホイっ!梨華ちゃん、魚だよ〜」

けれどその次の瞬間、梨華の皿へ魚を上げる真希に、梨華は怒りを飲み込んだ。

「ありがとう、ごっちん!誰かさんと違って優しい〜!」

わざとらしくひとみに嫌味を言って念願の魚を食べようとした梨華は、

「梨華ちゃん!空見て、空!」

と言うひとみの声に従ってしまい、口へ運ぶ途中の魚を奪い取られてしまった。

「も〜〜っ、ひとみちゃん!!」

カッとなったように怒鳴る梨華をキレイに無視してひとみは、
涼しい表情をして魚を食べていた。
238 名前:121 投稿日:2001年10月28日(日)02時17分21秒
その後も、野菜の切り方を間違えた『野菜係』をさんざん揶揄かいながら
みんなでバーベキューを楽しんで、花火でメチャクチャに遊んだあと、
ひとみたちは、亜依と希美が苦労して張った三人用と五人用のテントの
大きな方のテントに集まって飲んでいた。
ここには、うるさい親も先生もいないということで、いつもは飲めない
お酒をたくさん買い込んで、たくさん飲んでしまおうという計画らしい。

「もうっ、どうしてひとみちゃんはいつも花火で私を追っかけるのっ!」

テントの中に入るなり、先ほどまで手持ち花火を持ったひとみに
追いかけ回されてた梨華が文句を言う。
缶ビールを一本飲むか飲まないかで、もう梨華は少し酔っているようだ。

「梨華ちゃんが一番アニメ声で騒ぐから」

だから面白いのだとキッパリ答えたら、梨華が悔しそうな表情になる。
239 名前:122 投稿日:2001年10月28日(日)02時32分11秒
「ひとみちゃんなんて大っキライ!ひとみちゃんの・・・」

けれど、ひとみにダメージを与える台詞は、梨華にはどうしても思いつかない。

「真希、見てよ。あのふくれ顔」

ひとみは笑いながら真希に話しかけると、

「梨華ちゃんって、怒っててもカワイイよねぇ〜あはっ」

水を向けられた真希が、まるで的外れなことを答えるのだ。
今日仲直りしたばかりとは思えないコンビネーションだと、外野の
亜依と希美が感心したように頷いている。

「あっ、思い出した!ごっちんってやっぱり嘘吐いてたのよ〜ひとみちゃん」

絡み酒なのか、梨華が今度は真希の文句を言い出した。
新しい缶ビールのタブがなかなか開けられなくて、子供みたいにムキに
なって開けようとしている。

「気付くの遅いよ梨華ちゃん、そのことは真希が転校した小五の
 時点で分かってたって」

その缶をひとみが何でもない仕種で横取りして簡単に開けてから梨華に渡す。
当然のようにそれを受け取った梨華が、嬉しそうな表情でニコニコと
笑い掛けている。ありがとう、という意味なのだろうか、可愛すぎて
抱きしめたくなるような表情にひとみは、不機嫌そうに視線を逸らしてしまう。
照れているのだ。
240 名前:123 投稿日:2001年10月28日(日)02時42分48秒
「そ、そのことについては・・・私にも色々と深い事情がさぁー」

焦ったように言う真希に、なんだなんだと首を突っ込む亜依と希美。
ひとみは親切にも、幼い別れの日に真希がわざわざ嘘の住所を二人に
残して去って行った、というエピソードを二人に説明する。

「それはごっちんが悪いのれす!」

ビールを片手に希美が頷けば、

「でしょ?おかげで私なんか手紙が届かないって、
 梨華に毎日泣かれてたんだから」

ひとみが調子よく嘆いて見せる。

「ごっちんって、意外に悪者だなぁ」

冷静な亜依のツッコミに、

「そ、それはさぁー」

真希は冷や汗を浮かべた。子供の頃にたった一度しただけの悪戯(しかも失敗)
で、どうして今頃こんなに責められるのかという表情をしている。
241 名前:124 投稿日:2001年10月28日(日)02時56分06秒
「どうでもいいけど梨華ちゃんってよく泣くの?」

何気なく訊いた亜依の言葉に、

「子供の頃から、ホント泣き虫」

と素っ気なくひとみが答える。ひとみから見れば梨華は感心するぐらい
よく泣いているからだ。

「私は泣き虫じゃないも〜ん」

反論する梨華は、もう完全に語尾が伸びていた。まだ飲み始めてから一時間も
経っていないのに、梨華と希美はもうレロレロに近い。

「梨華ちゃんってビールしか飲んでないよね?」

梨華がかなり酔っているのではないかと心配になってくる。
お世辞にも酒に強いとは言えない梨華が、知らないうちに飲み過ぎていた
としたら自分の責任だなんて思ってしまうひとみは、梨華に対してだけ
心配症になってしまう。

「うん、ビールしか飲んでないよ〜」

そのまま、甘えるようにひとみの肩にもたれ掛かってくる。
無意識にする梨華のクセだ。そんな梨華にどうしようかと考えていたひとみは、

「う・・・ッ!!」

突然吐きそうに苦しみ出した希美に呆れたような表情になった。
どうやら希美も梨華と同じく飲みすぎたらしい。
242 名前:125 投稿日:2001年10月28日(日)03時06分01秒
「ヨッスィー、ののが吐きそう」

焦ったようにひとみに助けを求める亜依に、

「あいぼん、ガンバレ!親友でしょ?」

無責任に言って、ひとみは自分の腕の中で今にも眠りそうな梨華を指した。
もう自分の手は塞がっているという意味で。
亜依は、しばらく嫌そうな素振りをしていたが、

「・・・・・・今度、何かおごってもらおうっと」

勇気を持って紙のように白くなった希美を抱きかかえるようにして立ち上がった。

「悪いけど、のの吐かせて、先に寝ちゃうね」

じゃあ、と手を上げてテントを出て行く亜依の足がよろけていることに
残されたひとみと真希は顔をしかめた。

「大丈夫かな、あの二人」

心配そうに言う真希に、大丈夫じゃない?とひとみは簡単に片付けてしまう。

問題なのは・・・・・・
243 名前:126 投稿日:2001年10月28日(日)03時20分05秒
「ひとみちゃん?誰としゃべってるのぉ〜〜?」

そう、本当に問題なのは、もうすでに目の焦点が合っていない梨華である。
酔いに頬を上気させて、とろんとした目付きでひとみを見つめてくるのだ。

「べつに」

素っ気なく言って、ひとみがウーロン茶を飲ませようとするのだが、
梨華は嫌がってまるで飲まない。

「私、ひとみちゃんが飲んでるライムチューハイがいい」

にこにこと可愛くお願いされても、ひとみは聞いてやる訳にはいかない。

「生意気なこと言わないの」

頬をキュっと引っ張って、紙コップに入れたウーロン茶を飲ませようとするのに
梨華は、ひとみにしがみついて、顔ごと肩に埋めてしまう。

「ねぇ〜私、ひとみちゃんのが欲しいの〜」

一生のお願い、なんていう梨華はビール2本で完全に酔っ払っていたらしい。
これ以上飲ませたら、明日の朝どんな状態になっているか容易に想像が
つく酔い方だ。

「梨華ちゃんのお願いは百万回ぐらい聞いてるよ」

ダメと言うみたいにひとみが怖い表情をして見せる。けれど酔っている
梨華には怖い表情は通じない。甘えるように頬を擦り付けて、
何度もひとみにお願いしてくる。
244 名前:127 投稿日:2001年10月28日(日)03時26分15秒
「ひとみって・・・」

そんな二人のやりとりに、どうして手を出さないのかと真希は不思議そうだ。

「こういう我慢は、年期入ってるからね〜」

なんて冗談めいたことを言って、ひとみは諦めたように笑って見せた。

「真希、二日酔いの薬持ってる?」

まるで期待していないひとみの声に、

「持ってたらとっくに渡してるって」

真希も肩を竦める。
このままでいけば明日の朝、起き上がれない人間が最低二人は登場する
ことになりそうだ。亜依も入れれば三人になる可能性大である。
245 名前:128 投稿日:2001年10月28日(日)03時31分04秒
「しょうがない!」

すっかりひとみの肩にもたれ掛かっている梨華に、ひとみは盛大な
ため息を吐いた。

「国道降りた所のドラッグストア、24時間だったよね?」

だったら何?という表情をした真希をよそに、ひとみは梨華を毛布の
上へ寝かせて、

「梨華ちゃんのこと、頼むね・・・
 分かってると思うけど、飲ませないでよ?」

一時間で戻るから。
そう言い残してひとみは、テントを後にした。
246 名前:133 投稿日:2001年10月28日(日)03時37分43秒
リアルタイムで読んじゃいました!!
よしこかっこいい…
247 名前:式神 投稿日:2001年10月28日(日)03時41分24秒
>>235-245 更新しました。
    
 さすがに眠くなってきました(w
 テントに残された二人・・・どうなるんでしょう??
248 名前:名無し男 投稿日:2001年10月28日(日)03時45分40秒
ビミョーにリアルタイム
2chのバスケスレ行ってたからカキコ遅れチマタヨ
249 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月28日(日)03時49分09秒
リアルタイムで読んでました。
よし子かっけ〜んですが、
テントの2人がちょい心配・・・
250 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月28日(日)04時01分05秒
ごっちん!!分かってるだろうね!
梨華ちゃんに変な事したら・・・・・・ヨシコの鉄拳が飛んでくるぞ!!!!!!
251 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月28日(日)09時39分16秒
むむ、据え膳食わぬは男の恥と申しますが・・・果たして
252 名前:ちび 投稿日:2001年10月29日(月)17時07分20秒
よっすぃーかっけー!!
こりゃー梨華ちゃん惚れるのも無理はない!!
テントの二人があまりに心配…
253 名前:式神 投稿日:2001年10月30日(火)23時21分47秒
>>246 遅い時間なのにリアルタイムとは、ありがとうございます!

>>248 いつも有難うございます!

>>249 テントの二人・・・すみません(w

>>250 ウゥ〜すみません(w

>>251 今からの更新で後藤さんは据え膳を・・・

>>252 テントの二人・・・あぁ〜本当にすみませんm(__)m

もう先に謝ってしまいます。すみませんm(__)mごめんなさい
254 名前:129 投稿日:2001年10月30日(火)23時33分51秒
「飲ませないで、って言われてもねぇ?」

ひとみがいなくなってすぐに、梨華を自分の膝の上に乗せてビールを
飲ませ始めた真希は、

「・・・私が本気で梨華ちゃんを好きだって、分かってないひとみが悪い!」

楽しそうに梨華の顔を覗き込んで、カワイイ表情に微笑んでしまう。

「ひ・とみちゃん?」

梨華は真希とひとみの区別も付かないのか、コクコクとビールを飲みながら
真希に向かってニッコリと笑っている。

「マ・キ、梨華ちゃん、真希って言ってみて?」

自分の名前を呼ばせようと、胸元に頬を擦り付けてくる梨華に言って、

「うん・・・・・・ひとみちゃん?」

すっかり平仮名と片仮名しか喋れない状態に突入している梨華に
さらにライムチューハイの缶を持たせてしまう真希だった。

「さっき梨華ちゃんが欲しいって言ってたライムチューハイだよ〜
 すごい美味しいから、たくさん飲んでね〜あはっ♪」

そそのかすように言うだけで素直に飲んでしまう梨華に真希は、ほんの
少しの罪悪感と、それを遥かに上回る欲望を感じる。
255 名前:130 投稿日:2001年10月30日(火)23時42分11秒
「ひとみ・・・ちゃん」

もう眠いと目を擦り始めた仕種に、真希は毛布の上へそっとカラダを
寝かせてあげる。それから、すぐにしがみついてくるような腕に逆らいも
しないで抱きしめた。

「ん・・・・・・・」

それだけで安心してしまったみたいに瞳を閉じる梨華。

「私は、ひとみみたいに我慢なんか出来ないから・・・」

と真希は囁いて梨華のシャツへと手を伸ばしてしまう。
悪いことをしているとか、ひとみに見付かったらマズイとか・・・。
いろんな事を考えるけれど、手は止まらない。
簡単に胸の上まで薄いシャツをたくし上げ、慎重にブラのホックを外すと、
華奢なカラダからは想像もつかないほどのふくよかな胸が現れ、真希は
目眩がしそうだと思う。
256 名前:131 投稿日:2001年10月30日(火)23時51分39秒
梨華の健康的な小麦色の肌に、淡い色をした乳首がひどく扇情的に映る。
小さなそれを悪戯するように指先で摘まんでみる。
飲みすぎたせいか、酔って反応のない肌が焦れったくて唇を寄せてしまう。

「ん・・・・・・っ」

舌で舐めて強く吸い上げたら小さな突起がツンと立って、梨華が鼻に掛かった
ような甘い吐息を漏らし始める。

「・・・あ・・・・ん・・・・・・」

その微かな声に、我慢できなくなったように真希は夢中になった。
胸から柔らかなお腹の辺りまで熱心な仕種で口付けていく。
声を漏らす箇所を、しつこいくらいに舌先で弄っていると、昂ぶって
溢れ出てきた自分の欲望の滴が、ショーツをじわりと濡らしているのが分かった。
257 名前:132 投稿日:2001年10月30日(火)23時59分55秒
「梨華ちゃんも・・・だよね」

言い訳めいた言葉を呟いて、確かめるように梨華のその部分をショーツの上
から擦ってみる。柔らかな布越しに、梨華も濡れていることを確認すると、

「梨華ちゃん、いいよね・・・」

分かっていないと思いながら、それでも真希は訊いてしまう。
意味も何も分かっていない筈なのに梨華はコクリと頷いてくれた。

「大好きだよ、梨華ちゃん・・・」

囁いて胸元へキスを落としながら真希は、梨華のショーツの中へ手を潜らせる。
淡い茂みの下に隠れているカワイイ蕾に、ためらいもせず指先で触れてみる。
他人のものに触るのは初めてだったが、少しも嫌悪感を感じなかった。
梨華のだから、かも知れないけれど・・・。
258 名前:133 投稿日:2001年10月31日(水)00時10分45秒
「ぁ・・・あ・・・・・・ん・・・っ」

指先で梨華の蕾を何度も擦り回すうちに、甘皮に守られていた梨華の大事な
ピンク色の蕾は、徐々に硬く尖ってくる。
そして真希は、そのままわざと音を立てるように乳首を吸い上げる。

「い・・・や・・・ぁ・・・っ」

舌先に感じる甘い感触と、どんどん熱くなる指先の感覚が、真希を淫らな気分に
させるのかも知れない。

「・・・や・・・・ぁ・・・」

焦れったい感覚に、梨華は嫌がるように首を振っていて、真希の肩に
しがみついていた手が、押し退けるような仕種に変えられる。

「や、だ・・・・ァ・・・」

声が我慢できないように、梨華が高く甘えた声を上げて、少し掠れた声が
絡み付くように耳に触れて、真希の方が我慢できなくなりそうだ。
259 名前:ちび 投稿日:2001年10月31日(水)00時16分01秒
リアルタイムだ!!
やっぱりごっちんは…
はやくよっすぃー帰って来い!!!
260 名前:134 投稿日:2001年10月31日(水)00時20分17秒
「梨華ちゃん・・・・」

欲情に絡んだ声で囁いて、真希は手の動きを早めていく。
ビクリと震えて梨華が昂ぶっていくのが指先から伝わってくる。

「あ・・・ァ・・・、・・・ん・・・っ」

漏れる声が高く掠れて、真希を押し退けようとしながら梨華は感じていた。

「や・・・・・・ぁ・・・っ」

泣き出してしまう梨華の表情が可愛くて、真希は宥めるように胸へキスをする。
それだけで震える梨華は、もう我慢が出来ない所まできていた。

「梨華ちゃん・・・・イッていいよ、いっぱい私を感じて・・・」

甘い声で梨華の耳元に囁き掛け、梨華の蕾のもっと奥の秘液が溢れ出ている
源に、指先を潜り込ませようとした瞬間、真希の手が止まる。

「!!!」

荒々しくテントを開けて、ひどく怖い表情をしたひとみが現れたからだ。
261 名前:JAM 投稿日:2001年10月31日(水)00時22分10秒
同じくリアルタイムです!!
もう萌えまくりですなぁ〜♪
たまりまへんなぁ〜〜〜!!(最近オヤジ化が進んでるもので。)
262 名前:135 投稿日:2001年10月31日(水)00時28分51秒
「離れて」

静かに全ての感情を押さえた声で言われて、真希はショーツの中から
手を引き抜く。どう考えても自分の方が分が悪かった。

「ん・・・ゃ・・・っ」

けれど急に愛撫がなくなったことに、状況の分からない梨華が溶け出しそうな
声で抗議する。その声にひとみの表情が強張るのが分かった。
だからこそ真希は言わずにはいられないと思うのだ。

「梨華ちゃんはやめて欲しくないみたい・・・」

多分、ひとみが一番知りたくないことを。

「・・・・・梨華から離れて!!」

何かに耐えるように唇を噛んで、ひとみは見たくないように視線を
逸らしてしまう。真希は肩を竦めて、それでもひとみの言う通りにした。

263 名前:136 投稿日:2001年10月31日(水)00時42分45秒
「どうして・・・こんな・・・」

すぐにひとみが梨華のシャツを元に戻して、露にされた肌を隠してしまう。
ブラのホックを直す時、その胸元に幾つも真希が付けた跡が残っていることに、
ひとみは呟きを漏らした。
それは怒っているよりも、どこか悲しげな声だった。
すぐに毛布で梨華の身体を隠してしまう手を見つめながら、真希は意識の
どこかでひとみがすごく梨華を大切にしていることを知っていた自分を感じる。
慌てて否定しても、その感覚は消えてくれない。
多分、それが事実だからだ。

「ひとみもしたいと思ってることでしょ?」

けれどそんなひとみが、なぜか無性に腹立たしいと思う。
綺麗ごとを言っても結局ひとみも自分と同じことを考えているくせに、
と思うからだ。
264 名前:137 投稿日:2001年10月31日(水)00時54分58秒
「真希と一緒にしないで!」

ひどく馬鹿にしたように言って、見ているのも腹立たしいような仕種で、
ひとみは真希から視線を逸らしてしまう。
自分の存在を拒絶されたようで真希は、カッとなった。

「・・・そんなに梨華ちゃんに嫌われるのが怖い?」

開き直ったように言った真希は、ひとみに思い切り殴られていた。

「!!」

そのままひとみに首を強く掴まれて、強引にテントの外へ引き摺り出される。
少し離れた場所まで来た途端に真希は地面へ投げ付けられた。
カッとなった勢いで真希は、近くに落ちている石や空き缶をひとみめがけて
投げた。その中の石が当たったのか、ひとみの右目の上に痣が出来ていて、
少し血が滲んでいる。その傷を見て、ハッとなった真希は投げる気力も失せ、
そのまま顔を俯けた。
265 名前:138 投稿日:2001年10月31日(水)01時06分29秒
「女の子相手に、グーで殴るなんて・・・信じらんない!」

最初に殴られた頬がひどく痛む。血の味がして、真希は口の中が
切れたのだと知った。

「意識のない人間を襲う女の子よりはマシだと思うけど」

軽蔑したような声と視線が自分に向けられるのが真希にはたまらない。

「ひとみなんかに、私の気持ち分からないでしょ?」

吐き捨てるように言う真希に、

「分かりたくもない!真希の気持ちなんか・・・・・・最悪」

冷たい表情をして、ひとみが憎々しげに答える。
憮然とした声に何か言い返そうとして真希は唇をつぐんでしまう。

「なんで・・・どうして、あんなことしたのよ・・・」

ふいに、悲しげなひとみの声がしたからだ。冷たい表情を浮かべていた筈の
横顔は切なさに歪められていて、ひとみは昂ぶる感情のやり場がないみたいに、
空を睨み付けている。
なぜか真希は、自分がひとみをひどく傷付けてしまったような気になった。
266 名前:133 投稿日:2001年10月31日(水)01時08分16秒
リアルタイムだぁ!
とうとうよっすぃ〜とごっちんが…
続き期待してます。
267 名前:式神 投稿日:2001年10月31日(水)01時10分58秒
>>254-265 更新しました。

リアルタイムの方々、遅くてすみませんm(__)m
文章を入力しながら、書き直す所とかあって遅くなるんですよ。
この場面が一番難しかったです。ふ〜(-_-;)
268 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月31日(水)01時13分14秒
よしこカッケー!

>リアルタイムレスのみなさん
 気持ちはわかりますが、式神さんの「更新しました」があるまではレス控えませんか?
269 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月31日(水)01時13分52秒
何回もリロードしつつ、読みました!!
感情が高まっちゃって、
次がどうなるのかワクワクしながら読みましたよ〜。
ペースを気にせず、作者さんのペースで頑張ってくださいね。
270 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月31日(水)01時20分46秒
よっすぃ〜最高かっけー!!
梨華ちゃん朝目覚めたとき大丈夫かな…

ごっちん・・・なんか殺意が沸いてきたよ。

更新待ってる間ハロモニコント見てたんですが
梨華ちゃんの肩に手を回すごっちんを見てワナワナと・・・
本物のごっちんゴメンね。
271 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月31日(水)01時32分23秒
>>268
同意。更新中のレスは控えるのが当然かと....
272 名前:式神 投稿日:2001年10月31日(水)01時48分51秒
<更新中のレスの件>
自分の更新の遅いせいです。きっと・・・
このスレで更新終わった?と思い感想を書き込んでしまうのではないかと。
早くしようと思うのですが、焦るとミスしてしまうし・・・
本当にすみませんm(__)m

自分としては、小心者なもんで更新中レスがあると焦ります。
早くしなければ〜っという感じで(w
ワガママを言いますが、気長に『更新しました』を待ってください。
宜しくお願いしますm(__)m
273 名前:じゃない 投稿日:2001年10月31日(水)02時31分48秒
こちらにも。

もし桃板での「更新速報」が原因で、書くのに支障が生じるようなら
遠慮無く言ってください。
とくに式神たんのは、いつも「速攻でダッシュ♪」な速報をされるので(w

どちらも毎回楽しみにしています。これからもよろしく。
274 名前:名無し男 投稿日:2001年10月31日(水)05時24分42秒
何てことすんじゃボケェ!!
275 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月31日(水)06時11分53秒
いしごま(;´Д`)ハァハァ・・ ←こんな自分は邪道なのか?(w

いよいよ、よしとごまの戦いがヒートアップしてきましたなぁ・・
石川さんの目覚めた後が気になるっす!
276 名前:ちび 投稿日:2001年10月31日(水)08時15分30秒
興奮して考えなしなことをしてしまいました
すみません。次からはちゃんと待ちます!
作者さん、みなさんすみません…
277 名前:ちび 投稿日:2001年10月31日(水)08時16分41秒
スミマセン…ageてしまいました
何度も本当にごめんなさい
278 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月31日(水)09時28分50秒
あぁ…せっかく信用してまかせたのに…後藤…
279 名前:133 投稿日:2001年10月31日(水)16時04分15秒
自分で勝手に判断して書きこんでしまいました…
読みにくくしてしまい本当にすみません。
280 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月31日(水)16時47分20秒
ごまが・・・
よし子が・・・
あぁイシカーさん起きたらどうなってるんだろ
やはり式神さんの小説はおもしろい
281 名前:JAM 投稿日:2001年10月31日(水)19時59分31秒
>>268さん
更新中にレスしたことを
指摘していただきありがとうございます。
これからはなるべくレスを控えますので・・・
ホントにスミマセン・・・
282 名前:Charmy Blue 投稿日:2001年10月31日(水)22時22分57秒
泣けました。切なすぎる・・・・。
後藤ぉぉぉ〜〜〜〜!!!!!!!(怒)
283 名前:式神 投稿日:2001年11月01日(木)00時46分37秒
更新中にレスしてくれた方へ

本当にすみませんでした。
自分の更新が遅いせいで・・・
ちょっとネガテブ(T_T)
そして、少し更新します。

今回のレスの返事は次回にします。すみませんm(__)m
284 名前:139 投稿日:2001年11月01日(木)00時55分48秒
「梨華ちゃんが好きじゃ、なかったの?」

と呟く声に、もしかしたらひとみは泣いているのかも知れないと思う。
その瞳に涙が浮かんでいなくても、真希には同じことだった。
ひとみのその声が、泣いているのと同じ響きで真希の耳に届くからだ。

「梨華ちゃんは、ぬいぐるみでも、人形でもないんだよ」

ひとみの掠れた声に、真希の中でずっと引っ掛かっていた記憶が
少しずつ蘇えっていく。

「私たちが勝手に取り合いをしていいものじゃないのに・・・」

ずっと、その結末が思い出せなかった。
いつも思い出すのは、お菓子やオモチャを取り合いしていたひとみと自分。
数え切れないほど、同じ物を取り合ってばかりいた毎日。
けれどそれは、いつも最後はどうなったのだろう。
真希は、いつもひとみに自分の欲しい物を取られてばかりいた気がしたけど・・・。
285 名前:140 投稿日:2001年11月01日(木)01時07分26秒
「ぬいぐるみでも、人形でも・・・・・・真希にあげるから」

本当はそうじゃなかった。全然そうじゃなかったのだ。

「だけど・・・梨華ちゃんだけは、真希にあげる訳にいかない」

いつもひとみは、さんざん二人で大喧嘩をした後で言うのだ。

『それ、もういらない』

もう全然欲しくなくなった、なんて嘘を吐いて、だから真希にあげるよ、
なんてまるで子供らしくない不機嫌な顔で、真希にオモチャを押し付けたひとみ。

「梨華ちゃんは、もういらないって言ってくれないんだ」

真希は泣き笑いみたいに視界が歪むのが分かった。
ひとみの前で泣くなんて、絶対一生ないと思っていたのに我慢できない。

「・・・ひとみ・・・梨華ちゃんが、そんなに好き?」

いつも三人の中で一番に欲しい物を選ぶのは梨華だった。真希の選ぶものは、
いつもひとみと取り合いになってたけど、最後には自分の欲しい物を真希が
持って帰った。本当に欲しい物を、自分の物に出来なかったのは、ひとみだけ。
286 名前:141 投稿日:2001年11月01日(木)01時16分24秒
「自分でも、バカみたいって思うぐらい・・・・・好き」

自嘲めいた笑みを浮かべるひとみの、けれど真摯な気持ちが伝わってきて。

「ひとみ・・・・・」

真希は、唐突にひとみが出かける時に言った言葉を思い出していた。

『梨華ちゃんのこと、頼むね・・・
 分かってると思うけど、飲ませないでよ?』

あの時、ひとみはそう言ったのだ。真希に・・・・梨華を頼む、と。

「私・・・バカなこと、しちゃった・・・」

どんな気持ちで、ひとみはそう言ってくれたのだろう。
ひとみが誰よりも大切にしている梨華を預けられた意味を、自分は
少しも分かっていなかったと真希は思う。
ひとみは、ちゃんと真希を信頼してくれていたのに・・・。
287 名前:142 投稿日:2001年11月01日(木)01時26分14秒
「ごめんなさい・・・・」

簡単にその信頼を裏切った自分。
ひとみは自分の気持ちを分かってないなんて、ひどい間違いだった。
分かっていなかったのは真希の方で、分かろうともしなかった自分に後悔する。

「謝るんだったら、梨華ちゃんに謝ってよね」

素っ気なく言ってひとみは反対側を向いてしまって、その背中が
憎らしいくらい格好良いと思う。ひとみは真希のした事を許せない筈なのに
もうそれ以上何も言わなかった。
自分には真希を責める資格はない、とでも思っているのだ。

「でも・・・・」

こんなひとみだから梨華は、変わらない子供の頃の梨華のままでいられた
のかも知れない。
後悔が目に染みて、泣きたいなんてバカみたいだと思いながら、

「私だって、本気で梨華ちゃんが好きなんだよぉ〜」

隠れるように、ひとみに背を向けた真希は、声を殺して泣くことの
難しさを、初めて知った。
288 名前:式神 投稿日:2001年11月01日(木)01時33分04秒
>>284-287 更新しました。

本当はここまでを昨日更新しようと思っていたのですが、
焦って途中で終わらせてしまいました。
中途半端に終わらせてすみません。

こんな調子ですが最後までお付き合いください。
まだまだ終わりそうにないですけど・・・。
289 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月01日(木)01時42分20秒
つきあいましょう。いつまでもどこまでも
290 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月01日(木)01時43分59秒
>作者さん
更新お疲れさまです!
自分は最後まで付いていきますとも!!
ていうかつかせて下さい(w

そしていつものごとく切ない・・・
291 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月01日(木)07時09分34秒
いや、この小説だけは最後まで拝んでやると
心に硬く決めているので。
よし子もごまも本気でイシカーさんが好きだと
見てるこっちもなんかどっち応援すりゃイイのか

イヤ自分は完璧よし子派だけど(爆)
292 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月01日(木)13時46分34秒
式神さん、あんたホント神だよ(w
オモロすぎ。
293 名前:名無し読者@市井さん復活おめでとう! 投稿日:2001年11月01日(木)23時15分07秒
う〜んアツイすねぇ〜♪
特に
“そのままひとみに首を強く掴まれて、強引にテントの外へ引き摺り出される。
少し離れた場所まで来た途端に真希は地面へ投げ付けられた。”
吉澤さん強えぇ^^。。
しかもその後に、ホロッとなってしまうという演出。おもしろいです。
今後に期待♪
294 名前:hiro 投稿日:2001年11月02日(金)07時57分09秒
>三人の中で一番に欲しい物を選ぶのは梨華だった。
・・・りかっち、女王様・・・。
ここは 昔からのとおり、りかっちに選ばせる事になるのかなぁ・・・。
295 名前:式神 投稿日:2001年11月02日(金)22時41分07秒
今日はレスの返事をずらずら〜っと・・・・

>>268 どうしても吉澤さんは格好良くなります(w
>>269 有難うございます。ゆっくりですが頑張ります。
>>270 殺意(w 本物の後藤さん、すみません。
>>272 おっと、自分だった。
>>273 じゃない様
   いつも桃板にはお世話になってます(w
   「速攻にダッシュ♪」ですか・・・お恥ずかしい限り・・・
   自分に自信がついた時、桃板にて小説が書けたらなぁ・・・と、
   いや、今のは独り言ッス、すみません(w
>>274 いいツッコミ有難う!
>>275 いしごま・・・今度は別でちゃんとしたものを書きたいです。
>>276 ちびさん ageは自分でもうっかりしてしまうことです
    気にしなくていいですよ。
>>278 後藤さんは『自然体』ですから・・・
>>280  有難うございます!起きたら当然二日酔いだナ。
296 名前:式神 投稿日:2001年11月02日(金)22時56分19秒
>>281 JAMさん いつも有難うございます!更新中以外だったら
    ばんばん感想下さい!励みになりますので。
>>282 CharmyBlueさん
   自分もCharmyさんの小説で
   後藤ぉぉぉ〜〜〜〜!!!!(怒)と何度思ったことか・・・(w
>>289 嬉しいお言葉!有難うございます!
>>290 おぉ〜こちらも嬉しい!有難うございます!
>>291 自分は、どちら派なんだろう?石川さんが幸せならどちらでも・・・(w
>>292 神は神でもただの式神です。本名は敷き紙です(w
>>293 かっこいい吉澤さん・・・自分の願望か?
>>294 hiroさん おっ!するどい。梨華姫は、どちらの王子様の方へ・・・

いつも皆様に感想頂いて本当に有難いことだなぁとしみじみ思いました。
感謝の気持ちは、このつたない小説でしかお返しできませんが宜しくお願いします

更新は、明日の夜と予定してます。
297 名前:143 投稿日:2001年11月03日(土)21時32分07秒
次の日の朝、想像を絶する頭痛と吐き気に梨華は目を覚ました。
血管の血の流れる音まで頭に響くようで、頭ごと取ってしまいたいと
曖昧な思考で考える。
気持ち悪くて寝返りを打とうとするのに、一ミリでも動いたらカラダの
中身が全部逆流しそうで動けない。
自分を取り囲む空気がどこまでもアルコールの匂いで充満しているような
嫌な感じに、梨華はもう半泣きになっていた。
でも、泣くと絶対吐くから泣けない。
二日酔いの朝は、どこまでも矛盾しているのだ。

「起きたの?」

そっと、いたわるような声が何処かでする。
それが、遠い所から聞こえるのか、それともすぐ傍でするか分からない。
けれど、それがひとみの声だということだけは分かるから梨華は安心してしまう。
298 名前:144 投稿日:2001年11月03日(土)21時38分48秒
「う、うぅ・・・・・」

唸るような声を出しただけで猛烈な吐き気が襲ってくる。

「梨華ちゃん、吐いた方がいいよ」

ひとみの声に、嫌だと言いたいけど言えない。
首を振ったら頭ごと取れそうな気がして、梨華は首を横にすることも出来なかった

「吐いた後、薬飲ましてあげるからさ」

だから吐いて、と言うひとみに、梨華は恐る恐る目を開けて
嫌だ、と視線だけで訴える。
けれどすぐにひどい目眩を起こして目を閉じてしまう。
もう泣きたい気分だった。

「しょうがないなぁ」

ひとみがとても慎重な仕種で梨華の頭を抱き起こしてくれる。
不思議と気持ち悪くない。
299 名前:145 投稿日:2001年11月03日(土)21時46分44秒
「吐いてもいいからね?」

冷たいミネラルウォーターを唇に押し付けられて、ひどく喉が渇いていた
ことに気付いた梨華は、ゴクゴクと飲んでから後悔した。
水が胃の辺りで、干からびて眠っていたアルコールの素を溶かして
全身に広げたような気がしたからだ。
アルコールの素というのは、もちろん梨華の想像で、最悪の二日酔いを
経験した人間だけが分かる謎の物体である。

「はい、薬飲んで」

そのまま唇を指で開けられて、苦い粉を大量に入れられる。
漢方薬の奇妙な味と匂いだ。

「う、うううぅ〜〜ッ・・・」

あまりの苦さにとっさに逃げようとした梨華は、目眩に動けなくなった隙に、
大量の水を流し込まれて飲み干してしまった。
300 名前:146 投稿日:2001年11月03日(土)21時56分36秒
「ちゃんとあとで、この苦いのが効いてくるからね」

胃の辺りから全身へ、どこまでも増えるワカメのように増殖していく
アルコールの素に、絶望的な気分になった梨華は心に誓う。

「も、もぉ二度とお酒なんて飲まない・・・・」

勇気を振り絞るようにして重い瞼を持ち上げてすがるように
ひとみを見たら、ひとみは呆れたような表情をして肩を竦めた。

「その台詞がいつまで持つかが疑問なんだけどね〜」

それでも優しい、慰める仕種で額を撫でてくれるのだ。
ひとみの冷たい指が、とても心地良くて梨華は瞳を閉じた。
二日酔いが治っていく気がするから不思議だ。
ずっとひとみがこうしていてくれるなら、二日酔いも悪くないかも、
なんて思ってしまう。

「少しは楽になった?梨華ちゃん」

しばらくそうやって、ひとみに優しく頭を撫ぜられているうちに、
最初の気持ち悪さと、頭痛が消えていく気がした。
確かに薬が効いているのかも知れない。
301 名前:147 投稿日:2001年11月03日(土)22時05分41秒
「・・・・・ひとみちゃん?」

ふいに、ひとみの顔に昨夜は確かになかった痣を見つけて梨華が声を上げる。
なのにひとみは、何でもないと言うだけで答えないのだ。
何でもない筈がない。

「何でもないことないよ〜、ココすごい痣になってる」

心配になった梨華がどんなに訊いても、ひとみは曖昧に言葉を濁すだけで、
右目の上を青く変色させている理由を言おうとしない。

「・・・・・・・・覚えてないの?」

おまけに確かめるような口調で訊いてきたひとみに、梨華はキョトンとしてしまう

「昨夜、みんなでお酒飲んだ後のことだけど・・・・」

そう言われて、必死に昨夜のことを思い出そうとしても梨華には
思い出すことが出来ない。
みんなで花火をして、テントでビールを飲んだ所までは分かる。
けれど、ビールを1本か2本飲んだ後からの記憶が曖昧なのだ。
302 名前:148 投稿日:2001年11月03日(土)22時12分26秒
「じゃあ、私が・・・薬を買いに言ったのは覚えてる?」

ひどく真剣に訊くひとみに、悪いと思いながら梨華は素直に
覚えていないと言った。

「そっか・・・・・」

ひとみは複雑な表情になって、考えるように眉をしかめてしまう。

「もしかして私・・・何かしたの?」

そのまま黙り込んだひとみに、自分が何かとんでもないことを
しでかしたのではないかと梨華は不安になった。
記憶が途中でスッパリ切れていて、その先を思い出せないのが怖い。

「違うよ、梨華ちゃんは何も悪くないから・・・」

何もしていないと言うひとみが、とても怖い表情をしていることに気付く。
梨華は余計に不安になって、泣きそうになった。
ひとみが怒っているのが分かるからだ。
303 名前:149 投稿日:2001年11月03日(土)22時20分20秒
「・・・・本当に、梨華ちゃんは何も悪くないよ」

困ったようにひとみが頬を撫でてくれる。その仕種に少しだけ安心して、
けれど思い出せない記憶の中に、ひとみが痣を作った理由があるような
気がして、梨華は困り果てていた。

「いいよ、わざわざ思い出す必要ないから」

忘れて、なんて言うひとみに、曖昧に頷きながら、

「痛い・・・・?」

右目の上の痣へ、そっと触れる。痛そうに顔をしかめたひとみに、
慌てて手を引っ込める。

「痛くないよ」

苦笑するように笑う表情に、痛みを治したくてもう一度そっと、
指先で触れてみる。

「真希の顔見て、驚かないでね?」

囁くようなひとみの声に何の疑問もなく頷いた梨華だったが・・・・・
304 名前:150 投稿日:2001年11月03日(土)22時31分36秒
「・・・・・・ご、ごっちん!?」

その10分後に見た、真希の顔に心の底から驚いてしまった。
見るからにひとみよりも痛そうな頬の痣。
痣を作ったどころではなく、見事に腫れ上がっている。

「多分、犯人はヨッスィーだよね」

背後から教えるような亜依の声に、さらに梨華は驚いてしまう。

「だってヨッスィーも痣作ってたもん、ボクシングみたいに
 殴り合いのケンカしたんじゃないかナ〜」

解説する亜依に、だったら昨夜の仲良しだった二人は一体何だったの、と訊いて、

「それは・・・・永遠に謎ですね〜梨華ちゃん〜」

少しも知りたいことを教えない亜依に、梨華は肩を竦める。
梨華にはどうしても納得出来なかった。昨夜は完全に仲直りしたように
見えたからだ。

「梨華ちゃん〜!」

何も言わずに視線を逸らしている真希に気掛かりな視線を残して、
梨華は重いため息を吐いてから、自分を呼んでいるひとみの元へ駆け出していた。
305 名前:式神 投稿日:2001年11月03日(土)22時35分39秒
>>297-304 更新しました。

やっと後半突入って感じです。頑張ろう!
306 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)23時48分36秒
更新おつかれさまです
長編っていいですねぇ… 
長編のつもりで書いても短編になる自分が情けない(笑

応援してますので頑張ってください
307 名前:名無し男 投稿日:2001年11月04日(日)01時58分20秒
大腸変は安心して見れるからいいよね
308 名前:アナタに届け 投稿日:2001年11月04日(日)06時43分46秒
ハァ〜、そんなでけぇ痣作っちゃったのかひとむ
ごまに対する怒りとイシカーさんに対する
愛が伝わってきますね
やはり式神さんの小説はおもしろいっす。
309 名前:308 投稿日:2001年11月04日(日)06時46分33秒
ギャァーー〜!!!
名前の所失敗しちまったーーー〜〜!!!!
ごめんなさい、本当に気にしないで下さい。
310 名前:式神 投稿日:2001年11月05日(月)01時57分25秒
>>306 自分は長編よりも短編の方が苦手です。気がつけばダラダラと書いてる。

>>307 ここは安心でしょうか?

>>308 名前の所、かなり気になりますが、気にならないようにします(w

本当に少しだけですが更新します。
311 名前:151 投稿日:2001年11月05日(月)02時07分03秒
「どうして?・・・どうしてごっちんと遊んじゃいけないの?」

素直にそう訊かれて、ひとみは上手く答えることが出来なかった。
理由は、ちゃんとある。けれど梨華には言えない。
梨華が襲われるから、なんて言える筈もないからだ。

「そんな怖い顔しても、私は絶対に納得しないんだから!」

意地悪だと言われてひとみは、ますます機嫌が悪くなってしまう。
卑怯にも梨華を酔わせて手を出したのは真希なのに、まるでひとみが
悪いように責められているからだ。

「ひとみちゃん!聞いてるの!」

おまけにその事実を梨華は知らない。あれから四日経っても梨華の記憶が
戻る気配は、まるでなかった。
この調子では一生思い出せないだろうと思うと、ひとみは少しだけ気が軽くなる。
出来ればこのまま一生、梨華には思い出して欲しくないからだ。
あんな目に遭ったなんて梨華が知ったら、傷付く気がする。
それに真希がしたことを梨華に教えることが、梨華を汚しそうな気がして、
ひとみ自身が我慢出来ないのだ。
312 名前:152 投稿日:2001年11月05日(月)02時16分39秒
「聞いてるよ、梨華ちゃん。でも駄目なものは、駄目!」

ずっと、とても大切にしてきた。
誰にも傷付けさせないように、いつも自然に、そっと梨華を守る為に傍にいた。
自分自身でさえ手が出せないくらい、バカみたいだと思うくらい、
ひとみは梨華を大切に守ってきたつもりだったのだ。

「だからどうしてなの?って聞いてるでしょ、ひとみちゃん!」

なのに真希は、ある日突然自分たちの前に現れて、ほんの少し目を
離しただけで、簡単に梨華を汚すような真似をした。
それが、本当は自分がしたいと思っていたことだと、ひとみは
自分でも分かっている。
想像の中でなら、もう数え切れないほどしている行為だということも
分かっているけれど・・・。
313 名前:153 投稿日:2001年11月05日(月)02時25分39秒
「真希が・・・・・・嫌いだから・・・」

許せない、と思う。
真希も。
真希に卑猥なことをされて喘いでいた梨華に興奮していた自分も。
何もかもが腹立たしくて、許せない。
悪くないのは梨華だけだ。けれど、何も知らずに真希の為に
怒っているような梨華を見るのが、少しだけ辛いのは、バカみたいな
嫉妬のせいなのだ。

「こんなこと・・・・一生に一度しか言わないから・・・」

それでもひとみは、こんなのはらしくないと自分でも思いながら、

「・・・・真希に、会わないで・・・」

囁くように言って・・・。
ひとみは、まるで目が痛むみたいにゆっくりと、瞳を閉じた。
314 名前:式神 投稿日:2001年11月05日(月)02時30分08秒
>>311-313 少し更新しました。

どのくらいで新しいスレを立てた方がいいのでしょうか?
315 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月05日(月)02時39分50秒
リ、リアルタイムだ〜!ヤター。
これほどまでによっすぃ〜が梨華ちゃんのことを大事な人と思っているとは。
えらいぞ!よっすぃ〜!君こそ男だ(w
316 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月05日(月)06時10分19秒
ageるなっつの!!
317 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月05日(月)17時33分16秒
sage
318 名前:ちび 投稿日:2001年11月05日(月)18時06分40秒
更新されてる!よっすぃーかっけー!
男らしいよっすぃー最高!パソ起こしたら一番にチェックしてます!
もう馬鹿なマネはしませんので…
319 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月05日(月)21時07分35秒
ハァ〜、よし子かっけ〜
表現の仕方がすごくうまくて
式神さんの小説にはいつも心奪われます
320 名前:名無し男 投稿日:2001年11月06日(火)08時40分23秒
これはもどかしい・・・
321 名前:式神 投稿日:2001年11月06日(火)23時54分51秒
>>315 男・・・(w  男らしく書きすぎたか・・・

>>318 ちびさん 
   一番ですか、本当に有難うございます!

>>319 有難うございます!あなたのすべてを奪います(w

>>320 もっともどかしくなる予定・・・

自分のsageというワガママのせいで、また読者の方に迷惑をかけて
しまいました。すみませんm(__)m
自分は、sageの方が落ち着くんです。本当にすみません(T_T)
322 名前:154 投稿日:2001年11月07日(水)00時05分52秒
梨華は考えていた。ひとみが自分に言った言葉の意味を。
もう、真希に会わないで、なんて理由も言わずに無理なことを言って
ひとみは生まれて初めて、梨華に懇願するようなことを言ったのだ。
もう、真希に会わないで、と・・・。

「ひとみちゃんの・・・バカ・・・」

らしくないそれは、もしかしたらひとみが初めて口にする言葉だったのかも
知れない。
梨華は今までに、ひとみが誰かに何か頼む所なんて、一度も見た事がなかった。
ひとみは自分の好き嫌いで誰かのことを悪く言ったり、一方的に会うなと
言うような人間ではない。それが分かっているから梨華には、ひとみの言う事が
理解できなかった。

「・・・・どうして、あんな事言ったんだろう・・・?」

だからだろうか、梨華は、あれ以来まだ一度も真希と顔を合わせていない。
なんとなく、ひとみに悪いような気がして真希に連絡を取る気になれないのだ。
323 名前:155 投稿日:2001年11月07日(水)00時12分47秒
それに、あんなに毎日通って来ていた真希の方も、忙しいのか梨華の所へは
顔を出さない。だから都合がいいのだと言うのは勝手だろうか。
真希の顔を見ても、気まずくならないと言えば嘘になる。
本当のことを言えばひとみの手前、今は真希に会いたくない気分だった。

「・・・・・・」

長いため息を吐いて、部屋の窓へそっと額を押し当てる。
エアコンが効いてるせいで、窓へ付けた額に水滴が付く。
冷たい感触のそれは、なぜか梨華にひとみの指を思い出させた。そうすると
不思議なくらい、ひとみに会いたい、なんて思ってしまうのだ。
あの意地悪で、いつも自分を悩ませているヒネくれ者の幼なじみに・・・。
324 名前:156 投稿日:2001年11月07日(水)00時23分16秒
「?」

コツン、と窓に何かがぶつかる音に怪訝そうに顔を上げた梨華は、

「ひとみちゃん!!」

その窓の向こうに、見慣れた不機嫌な顔を見つけてタイミングが良すぎる、
なんて思いながら慌てたように窓を開ける。

「エイッ!梨華ちゃん!」

窓を開けた瞬間、待っていたように顔に、小さく切った消しゴムをぶつけられて
喜んだ分だけ梨華はムッとする。
そのまま何個か続けてぶつけられる感触に怒りを懸命に堪えた。

「・・・・ホントに、ひとみちゃんって子供みたいなんだから〜!」

怒りを抑えて嫌味っぽく言おうとした梨華は語尾で失敗している。
嫌味というものは、笑顔で何でもないことを言うようにサラリと自然に
口にするのが鉄則なのだ。

「だから?」

と言うひとみの言い方は正しい。このあくまで興味がないように
言う姿勢が大切である。
325 名前:157 投稿日:2001年11月07日(水)00時32分27秒
「なんでもないもん!」

それだけで怒鳴ってしまう梨華は、根本的な部分で嫌味とか皮肉といった、
ひとみの得意分野に向いていない。すぐに気分に流されて、人の口車に
乗せられるタイプなのだ。

「それより梨華ちゃん、今日テレビ見た?」

楽しそうな声と悪戯っぽい表情に、もう梨華は笑ってしまう。

「何か面白い番組でもあったの?」

首を傾げた梨華に、

「しし座流星群の特集だよ!」

思い出して、なんてひとみは楽しそうに言って、

「なんだ〜ちゃんと見ててよ!今年こそは、たくさんの流れ星を見る!
 って意気込んでんの梨華ちゃんだったじゃん!」

見逃したと言う梨華に、途端に面白くなさそうな表情をする。
ひとみが見た?と訊いてるのは本当なら梨華が楽しみにしているような
番組だった。
326 名前:158 投稿日:2001年11月07日(水)00時45分39秒
「今年はどうなの?バッチリ見えそう?」

ワクワクして訊く梨華に、ひとみは勿体ぶるような短い間を開ける。


「驚かないでよ〜?今年は33年ぶりにやって来る彗星の影響でね、
 1時間に100個以上の流れ星が発生するんだって〜!!」

「すご〜い!!11月が楽しみだね、ひとみちゃん!」

梨華は嬉しくなって笑ったら、ひとみがとても綺麗に笑ってくれた。
そのまま何となく二人で窓越しに他愛のないことを話して、
何でもないような、けれどとても大切な時間。
それだけで梨華は、やっぱりひとみと一緒にいる時が一番楽しいと
実感するのだ。
327 名前:159 投稿日:2001年11月07日(水)00時54分38秒
「・・・・・・・・家の方は、大丈夫そう?」

ふいにひとみが、言いにくそうに気遣うような言葉をくれる。

「うん、あとは私が『お母さん』って呼んだら万々歳って感じ、かな?」

けれど自分と10歳しか違わない同じ女性を簡単に『お母さん』と
呼べないと思うのだ。

「だからね、今度の流れ星が見えたら呼べるようにお願いするの」

冗談っぽく言って、梨華は笑って見せる。

「ひとみちゃんは?流れ星に何をお願いするの?」

自分だけ照れることを言わされた気がして、照れ隠しのように訊いた梨華に、

「流れ星が見えたらその時に教えて上げる」

なんて、ひとみは最高に面白くない答えを返した。

「ひとみちゃんだけズルイ!!」

だから教えて、と言うのは少しワガママな理屈かも知れない。
それでも梨華は、ひとみがなんて願い事をするのかが知りたくて、
しつこく訊いてしまう。
328 名前:160 投稿日:2001年11月07日(水)01時05分32秒
「私なんか他に100個ぐらい願い事あるんだよぉ〜!」

なぜ威張ってしまうのか自分でも分からないが、自慢げに胸を張って、

「例えば〜お肌をひとみちゃんみたいに白〜くして下さいとか〜
 歌をもっと上手に歌えるように〜でしょ、あと・・・・・・」

ムキになって自分の願い事を言い始めた梨華は、

「・・・・・絶対、笑わないでよ?」

ふいに掛けられた声に、慌てて口をを塞ぐ。
それから、永遠に続くような静寂の後。




「私は・・・・・・・素直になりたい」

耳に触れたのは囁くような声。
小さく、けれどはっきりと届いた囁きに、梨華が意識を奪われている間に、
声だけを残してひとみは、窓の向こうへ消えてしまった。
329 名前:式神 投稿日:2001年11月07日(水)01時07分23秒
>>322-328 更新しました。

自分もしし座流星群楽しみです。
330 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月07日(水)02時27分46秒
初めてレスします。
武神さんは読み手をドキドキさせ引きつける文章をかくのが
本当に上手だなぁと思います。
普段どんな小説などを読まれているのですか?
もしよければで結構ですので、教えていただけませんか。
331 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月07日(水)02時39分26秒
よっすぃ〜の願いが速く叶うと良いっすねぇ・・
332 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月07日(水)17時09分50秒
よし子の最後の台詞がすごい深い感じで
なんか、もう、切ない・・・
あぁマジで僕の全て式神さんに奪われそうで怖い(w
333 名前:ちび 投稿日:2001年11月08日(木)00時09分59秒
よっすぃーの願いがかなえばいいな…
すっげぇ心臓が痛いっす!切ない…
僕の心もがっちり式神さんに奪われてます(w
334 名前:闇の住人 投稿日:2001年11月08日(木)00時19分18秒
はぁー、どうなるんだろ・・・?ここのよっすぃーは何から何までかっこええーっすなあー!ごまはどうしてるんだろう?とても心配・・・。この小説大好きなんで式神さん最後まで頑張ってください!!!
335 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月08日(木)00時51分13秒
しし座流星群て、ホントの話??みれんの?
336 名前:名無し男 投稿日:2001年11月08日(木)02時09分04秒
天体観測でも聞いて寝るかな
337 名前:式神 投稿日:2001年11月09日(金)00時57分12秒
>>330 自分は仕事柄、かなりの量の書物を読まなくてはいけないもので・・・
    好きな作家は、村上春樹氏、宮本輝氏。言いだすと朝までになりそう
    なのでここまで。今は、昔読んだ太宰治全集を再読中。
>>331 星に願いをって感じですね。

>>332 奪います。何もかも・・・(w

>>333 ちびさん
   奪われてしまいましたか?もう離しませんよ(w

>>334 後藤さんは元気です!

>>335 本当です!今年がラストチャンス!

>>336 自分も聞くことにします。その曲(w

寒くなりましたね。自分は、この季節が好きです。夜の散歩は寒いけど
気持ちいいものです。
338 名前:161 投稿日:2001年11月09日(金)01時07分20秒
真希はものすごく困っていた。今朝、梨華からの電話で相談があるから
家へ来て欲しいと言われた時から何となく嫌な予感がしていたのだ。

「でね、ひとみちゃんとしては、ごっちんと仲直りしたくても
 素直にそう出来ないんだと思うの」

そして、その嫌な予感は見事に的中した。梨華は、よりによって自分に
ひとみと仲直りして、なんて言うのだ。
ひとみに殴られた時のことが脳裏によぎって、何も知らない梨華に罪悪感と
後ろめたさを感じる。
電話でも何度も断ろうと思いながら、梨華に頼まれただけで結局すぐに飛んできた
自分の自制心のなさと、果てしない梨華の勘違いに真希は目眩を覚えた。

「ほら、ひとみちゃんって、あんな性格でしょ?
 私はすぐにごっちんのことだってピンと来たの」

自慢げに言う梨華に、真希は百万回ぐらい『そのピンは誤解と錯覚だ』と
言いたくなったが、その無邪気な表情を見ているとなぜか言う気になれないのだ
339 名前:162 投稿日:2001年11月09日(金)01時16分51秒
「素直になりたい、ねぇ・・・・・・・・」

どういう過程を経て、ひとみがそんなことを梨華に言ったのか、真希は
知りたくもなかったが、ひとみがどういう意味で言ったのかは、
それこそ真希には『ピン』と来た。
少なくともひとみは自分と仲直りしたいなんて可愛いことを考える性格では
なかったし、多分、真希は死んでもしてはいけない類のことを、ひとみと梨華に
したと自覚している。

「だからね、ここはごっちんから仲直りしようってひとみちゃんに
 言って欲しいんだ」

素晴らしくいいことを思い付いたように話す梨華の表情を見つめながら、
真希は考え込むように顔をしかめてしまう。

「・・・・・でも、本当にひとみが私と仲直りしたいと思ってるとは思えないな」

控えめに断ろうとした真希は、

「ごっちんはまだまだひとみちゃんのことが分かってないよ〜
 ああ見えてひとみちゃんって、照れ屋さんなんだよ〜」

秘密を教えるように言う梨華に、もうどうしていいか分からない。
340 名前:163 投稿日:2001年11月09日(金)01時22分49秒
「ケンカするのやめよう、って言うだけでもいいの・・・・
 ごっちん・・・、だめ?」

お願いするような梨華の表情に、ドキドキしながら真希は曖昧に笑って見せた。
こんな梨華の部屋で二人きりでいるような所をひとみに見られたら、
それこそ仲直りどころかまた殴られるのがオチだ。
そのまま全面戦争にでもなりかねないけれど。

「いや、私もひとみと仲直りしたいと思ってたとこなんだよね〜」

安心させるような言葉に、梨華がとても嬉しそうな表情になるから、
それだけで真希は、ひとみに謝ろうかなぁという気になってしまう。
あのヒネくれ者がなんて言うか知らないけれど・・・。
341 名前:164 投稿日:2001年11月09日(金)01時32分24秒
「私、ジュースでも持ってくるね」

待ってて、なんて梨華は元気に階段を駆け降りていく。
その後ろ姿を見送って、これじゃひとみも苦労するな、と真希は肩を竦めた。
だって真希の目から見れば、どう考えても梨華はひとみのことが好きだとしか
思えないのだ。おまけに、そのことを肝心の当人が二人して気付いていない。
真希はお手上げだった。

「ホント・・・・人迷惑なカップルだよ・・・」

悔しくないと言えば嘘になる。だけど好きな人の好きな相手は、なぜかその相手
が自分ではない時に限って分かってしまうものなのだ。
だから、梨華がひとみを好きだなんて気付いてしまっても仕方がないのだと
真希は思う。
他の誰かといる時の方が、自分といる時よりずっと楽しそうに見えたり、
一番知りたくないことに、一番先に気付いてしまったりする。
恋は、そう簡単に上手くいかないのだ。
342 名前:165 投稿日:2001年11月09日(金)01時38分39秒
「でもなぜか・・・・上手くいかない恋って燃えるんだよねぇ〜〜」

窓辺に置かれた椅子に座って外を眺めていた真希は、唐突に浮かんだ
ある思い付きに、人の悪い笑みを浮かべる。
それは考えれば考えるほど、楽しい事件になりそうに思えた。

「タイミングが問題だね〜〜、あはっ♪」

その考えに気をよくして、微笑みを深くしていた真希に、

「どうしたの?何かいい事でもあった?」

嬉しそうに笑いながらジュースを持った梨華が部屋へ帰ってきた。
同時に、すぐ近くでカタン、と自転車を止める音がしたのを確認する。


チャンスだ!!
343 名前:166 投稿日:2001年11月09日(金)01時46分31秒
「梨華ちゃん、座って座って〜♪」

変に警戒心を持たれないように細心の注意を払って、真希は梨華を
隣りの窓からよく見える位置へ座らせる。
何の屈託もなく言われた通りに座る梨華に、ゆったりと真希は微笑む。

「・・・・・この曲名、知ってる?」

けっこう有名な曲なんだけど、なんて秘密めかして声を潜めて、そのまま
ゆっくり瞳を閉じるように言ったら、不思議そうな仕種で、
けれど梨華は言われるままに瞳を閉じていく。

「『くちづけのその後』・・・・・、恋が始まる、ってね♪」

そっと、微笑みを刻んだままの唇を寄せて、
『くちづけのその後』に始まる事件に、真希は瞳を閉じた。
344 名前:式神 投稿日:2001年11月09日(金)01時49分00秒
>>338-343 更新しました。

事件と言っても殺人事件ではありません(w
345 名前:七誌 投稿日:2001年11月09日(金)01時55分44秒
やばい。
後藤のことが愛しくてたまらなくなってきた…。
式神さん、最高です!!!!
346 名前:330 投稿日:2001年11月09日(金)02時56分04秒
武神さん、今日も登場人物の心理描写にドキドキです。

お答えどうもありがとうございました。
自分も村上氏の小説は大好きで、彼の作品は何回も繰り返し読んでいます。
宮本氏はまだ手がのびない状態。
問題は太宰治・・・。彼の作品は読んでいると鬱になってしまって、
精神が不安定に・・・。でも再挑戦してみます。

たびたび申し訳ないのですが、武神さんのおすすめの一冊を
教えて頂けませんか?本当にもしよかったらで結構ですので。
ちなみに、自分は文系の大学生です。
347 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2001年11月09日(金)12時47分06秒
武神さんて誰だよ。あやまりなさい!
348 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月09日(金)20時44分53秒
グハッ!ごっちんが黒い〜(w
あ〜先がよめない!式神さんの作品は先が
さっぱりよめませんよ!
ハァ〜よし子早く素直になんなって(w

いや、自分これでも1押し娘ごまなんですがね(w
349 名前:ちび 投稿日:2001年11月09日(金)21時55分39秒
よっすぃー早く言っちゃいなさい!
でも、ごっちんの気持ちもわかる…
この先どうなるんでしょう?よめません。
やっぱり奪われてます。離れられません(爆
350 名前:式神 投稿日:2001年11月10日(土)01時17分43秒
>>345 自分も愛しくなりましたよ(w

>>346 おすすめの一冊!う〜ん、難しいですね〜
   例えば、太宰治の『女生徒』という短編はどうですか?鬱な印象が
   消えてなくなる作品です(w
   こんな風に本のことでマジレスしてる自分ですが、ただのモーヲタの
   エロ書き野郎ですので・・・・お恥ずかしい(w  
   非常に漢字が似ていますが武神ではなく、式神です。
   
>>348 先が読めないですか?自分もです(w

>>349 ちびさん
   当分、離しません!夢の中までも・・・(w

今日の更新分までここで書きます。次から新スレに移る予定です。
351 名前:167 投稿日:2001年11月10日(土)01時26分03秒
昼すぎにバイト先から家へ帰って、ひとみは自分の部屋へ入るとすぐに
もう習慣のようになっている仕種で、梨華の部屋の窓を見た。
無意識のうちに梨華がいるかどうかを、確認してしまうのは、なんとなく
そこに梨華がいると思うと、くすぐったい気分になれるからだ。
けれど、その視線の先に、

「・・・・・真希?」

いない筈の人物を見つけて、ひとみは視線が険しくなっていくのを感じた。
もう、真希には会わないでと、ひとみは言ったはずだった。
なのにその梨華の部屋に、真希がいる。その事実にひとみは耐えられない
何かを感じて、ひどく怒鳴り付けてしまいたい衝動に駆られた。



・・・・・・・・・・・その瞬間。

「!!!」
352 名前:168 投稿日:2001年11月10日(土)01時31分55秒
ひとみは、窓の向こうで何が起こったのか分からなかった。それともひとみは、
ただ分かりたくなかっただけなのかも知れない。
梨華が、真希にキスされているなんて・・・。

「・・・・・・・」

それが、ほんの数秒の出来事だったのか、それともとても長い時間だったのか、
ひとみには分からなかった。まるで悪い夢を見ているみたいだと意識のどこかで
考えながらひとみは、なぜかその場から動くことも出来ないまま、
二人を見つめていた。
声が聞こえないせいか、現実感がなくて、ひとみはぼんやりとその光景を
見つめてしまう。
353 名前:169 投稿日:2001年11月10日(土)01時39分57秒
本当は、真希の顔が梨華の唇へ寄せられた瞬間、今にも飛び出してしまい
そうだった。
真希が梨華に口付けようとするのが、ひとみには分かったからだ。

「梨華・・・・・・ちゃん・・・・」

けれど、梨華は真希を避けなかった。嫌がるような気配さえもせずに、
自分から瞳を閉じて、ひとみの視線の先で、梨華は真希のキスを待っていた。
だから、ひとみは、もう梨華を助ける為にその場を動くことなんて出来ない
気がした。
梨華を助けるなんて、そんなことを考える自分をバカみたいだと思ってしまう。
なのにまだ、信じたくない気がして、

「・・・・・嘘、でしょ?」

梨華が、真希とキスをしている。
はっきりと、そう意識した瞬間、
ひとみは、逃げるようにして部屋から飛び出していた。
354 名前:170 投稿日:2001年11月10日(土)01時48分01秒
「痛いよぉ〜〜、梨華ちゃん〜」

優しい、触れるだけのキスをした数秒後、真希を襲ったのは
痛烈な平手打ちだった。

「痛くて当たり前でしょ!!」

「ごめん、ごめん、ゴトーが悪かったからさ〜」

殴られた頬を押さえながら謝っていた真希は、触れるだけのキスで
真っ赤になって怒っている梨華が、あんまり可愛くて笑ってしまう。
キスだけでこれなら、キャンプの時したことがバレたら殺されるよ、なんて
思いながら、ひとみが手を出せない筈だと苦笑する。
本当に梨華は子供なのだ。キスだけで驚くくらい・・・。
355 名前:171 投稿日:2001年11月10日(土)02時00分11秒
「なにが可笑しいの!!」

途端にキッと睨まれて、

「ご、ごめん、もうしませんっ!」

また振り上げられた手に、真希は素早く謝る。殴られた頬が意外なくらい
痛いことにも驚いたが、ひとみ以上に手の早い梨華には、本気で驚いた。
予想外の展開である。
人迷惑な上に乱暴なカップルだと呆れながら、真希は少し安心する。
これくらい強く梨華が殴れるのなら、ひとみに無理やり何かされることも
ないだろうと自分勝手な親切心で考えたからだ。

「ファっ、ファーストキスだったのに・・・・」

どうしてくれるの、という表情が可愛すぎてもう一度キスしたいくらいだった
けれど、

「な〜んだ、あはっ、初めてだったんだ♪」

意外なラッキーに真希は笑ってしまう。
すぐにキッと睨まれて口を塞いでも遅い、

「『な〜んだ』って、初めてだったら悪いの!!」

バカにされたと思ったのか、梨華はぷーっと頬をふくらませ怒っている。
そんな表情さえどこか可愛く見えるから、本当に恋は不思議だ。
356 名前:172 投稿日:2001年11月10日(土)02時08分36秒
「・・・・・本当にごめんね、梨華ちゃん」

だから、余計に言わなければならないと真希は思う。
きっと今、自分が言わなければ、この恋を終わらせることは出来ない気がした。
そして、この鈍感で不器用な幼なじみたちは、永遠にこのままでいる
気がするから・・・。

「好きな人とちゃんとキスすれば、私とのキスなんて帳消しになるよ」

まるで、秘密のアドバイスをするように言って、

「どうせ私は・・・好きな人なんていないもん」

拗ねてしまうような梨華に、少しだけ真剣な表情をする。

「本当に?本当に梨華ちゃんは好きな人なんていない?」

確かめるように言う声に、梨華は考えるような表情になった。
けれど、自分の好きな人の名前なんて思い付かないように
梨華は首を横にして見せる。
357 名前:173 投稿日:2001年11月10日(土)02時15分28秒
「なんだ、だったら、べつに見られてもよかったんだ」

試すみたいに真希は言ってみる。
まるで賭けをする時と同じ気分だと思いながら。

「キスするところ、見られたのマズイかと思ったんだけどさ」

ふいに、梨華は怪訝な表情になって、何が言いたいのか分からない表情をした。


「ひとみ」


単語だけを落とす真希の声に、梨華は急に強張ったように顔を青ざめさせて、

「ひとみが見てたよ。・・・・・・・・梨華が、私にキスされてるところ」

そう、突き放すように言った瞬間、
梨華は部屋を飛び出して行った。
358 名前:式神 投稿日:2001年11月10日(土)02時18分40秒
>>351-357 更新しました。

次は、新しいスレにてお会いしましょう!
予定では、『月板』ではなく、『雪板』に移動したい思います。
359 名前:名無し梨華 投稿日:2001年11月10日(土)02時21分37秒
やた!リアルタイム!

新スレでもがんがってくださいね!
いつも読んでます。

私もエロを書き始めたのですが、難しいですね。
式神さん、尊敬です(マジ
360 名前:Charmy Blue 投稿日:2001年11月10日(土)02時22分29秒
はぁ、後藤やりますねぇ。なんか吉澤が可哀相になってきた。
式神さんお疲れさまです!
続きが、凄い気になる・・・。
361 名前:式神 投稿日:2001年11月10日(土)02時33分49秒
>>359 エロは調子に乗らないと書けないですね(w
    はっ!最近エロ書いてない!?

>>360 CharmyBlueさん
   こんな時間に・・・・風邪は大丈夫なのですか?
   今回、可哀相な誤解をさせてしまいました。


すみませんm(__)m
やっぱり『月板』に新スレ作ります。
   
362 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月10日(土)02時37分54秒
黒ごまがなかなか悪どくて良いかんじです(w

新スレに移動してもじゃんじゃん読みに行きますよ〜
363 名前:ちび 投稿日:2001年11月10日(土)23時25分45秒
ごっちんがちょっといいやつに思えてきた…
このままいしよしがうまくいけばの話ですが。
ほんとに夢にも見るんですよ…
新スレに移動しても絶対読みます!!頑張ってください!
364 名前:式神 投稿日:2001年11月12日(月)04時23分45秒
>>362 自分は白ごまより黒ごまが好きなんだろうか?(w

>>363 ちびさん
   夢と言えば、娘。のマネージャーになる夢をよく見ます。
   見た後、妙にリアルで得した気分になります。
   二度寝したらまたその続きが見れたらいいのにといつも思います。

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