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もう、疲れたよ。
- 1 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月22日(土)18時49分14秒
- 主役はちゃんとは決まっていません。銃器とか陰謀とか出ますが、
板違いだったらすぐに行って下さい。OK出たら書き始めます。
- 2 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月22日(土)18時49分53秒
- 「言って下さい」でした。ゴメソナサイ
- 3 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月22日(土)20時13分20秒
- ジャンルによる板違いとかは無いはずです。
基本的に娘。小説であれば何でもアリかと。
期待していますので、頑張って下さいね。
- 4 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月22日(土)20時28分38秒
- よかった。では、書きます。
- 5 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月22日(土)20時29分21秒
- =現実と違って、このモーニング娘。は国民的アイドルでもなく、
ミリオンヒットを飛ばす大人気グループでもない。メディアに
取り上げられたらそれこそ大宴会、といった具合の、
名度の低い、グループであった。=
- 6 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月22日(土)20時29分55秒
- 新メンバー応募のオーディションを行う事が、プロデューサー
である つんく(外に出るときはつんく♂とかいうらしい)が
メンバー達に発表した。もちろん、メンバーは困惑。
中でも、途中参加の石川、辻、加護、そして私、吉澤ひとみ
が一番分からなかったろう。モーニング娘。に加入してどれくらい
経ったか?まだまだ新人だというのに、いきなり後輩が出来る
なんて、信じられなかった。
- 7 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月22日(土)20時30分28秒
「いやぁ〜、ちょっとどうなんだろうねぇ〜?」
と、楽屋に戻りながら先輩の安倍さん。楽しみな感じの
表情で笑ってる。私ももちろん笑ってはいたが、引きつった、
苦笑いってやつだろう。加護もさっきはふざけて笑っていたけど、
今は俯いて真剣な表情をしていた。となりの辻は前こそ
向いていたが全くの無表情だ。そうだ、梨華ちゃんは・・・?
ちょっと前の方を歩いていた梨華ちゃんの元へ急ぎ足で
歩いていった。「梨華ちゃぁん」と顔を覗き込むと、
さっきの安倍さんみたいに、いや、それ以上に微笑んでいた。
ちょっとビックリした。
- 8 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月22日(土)20時31分21秒
「よっすぃ〜、楽しみだねぇ!」
「そ、そう?」
ちょっと声が震えちゃった。梨華ちゃんは不安じゃないのかな?
「梨華ちゃん、驚いたりとかしてないの?」
梨華ちゃんはしっかりと笑顔で、「ううん、楽しみだよ!」って
返した。「早く新メンバー、来ないかなぁ」とか、
今の私には考えられない言葉ばかりが出てくる。私も、時間が経てば
こんな事言えるのかな?そうだ、梨華ちゃんはピュアだから
ちょっと早いだけなんだ。
- 9 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月22日(土)20時32分04秒
でも、不安は不安だった。それで翌日、私はつんくさんの
所へ相談に行った。オーディションを決めた本人に相談するのは
ちょっと可笑しいけど、メンバーに自分の弱い所を見られるのが
ちょっと嫌だったから、いいかもしれない。
つんくさんは事務所の会議室に居た。休憩時間らしく、部屋には
つんくさんしか居なかった。丁度いい、すぐに相談しよう。
「おお、吉澤か。どうした?」
タバコを吸いながら関西弁で明るく相談を聞いてくれた。
でも、最後に、つんくさんは、自分の本音を言い出した。
「あのな、吉澤。今回新メン加入を決めたのは、深い理由が
有るんや」
- 10 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月22日(土)20時33分42秒
- 「深い理由ですか?」
「あのな、このままモーニング娘。を社会の隅に埋もれさてしまう
のは勿体ないと思たんや。でな、ここで天才的なヤツを一人二人
入れてやな、モーニング娘。を国民的アイドルに仕上げようと
思たんや」
それじゃ、今の私たちがダメみたいじゃないですか。
「でも、今、九人やろ?ちょっと・・・・多い気がするんや」
私はそんな意味深な言葉もちゃんと聞かず、そそくさと挨拶をして
会議室を出た。自分たちは無力なのか?少しだが腹が立っていた。
- 11 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月23日(日)20時56分06秒
- 第一回更新(?)です。急かしてくれたら早く書きます。
- 12 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月23日(日)22時03分40秒
- 急かすわけではありませんが、早い更新は歓迎です。
銃器と陰謀がどのように関わってくるのか期待してます。
頑張れ! 作者さん!
- 13 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2001年09月24日(月)00時00分11秒
- 名作集板デビュー、おめでとうございます。
吉澤視点ですか。銃器とか陰謀とか……どんな展開になるのか楽しみです。
- 14 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月24日(月)10時43分59秒
- >>12
応援ありがとうございます!書きながら成長して行きたいと想います!
>>13
嗚呼、チャミ銀さま!あなた様のように人の心を打つモノを書けたらと思い、
日々精進してまいります!
- 15 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月24日(月)10時45分16秒
- でも、つんくさんを恨んだり嫌ったりするつもりは全く無い。
つんくさんは、とても優しく私たちを見守ってくれた。歌い方を
アドバイスしてくれたり、些細なことでも相談にのってくれたり
して、とにかく、娘。が崩れたりしないように、優しく形を
整えてくれた。大丈夫、今回の新メンバー加入の事も、
キレイに娘。の形を整えてくれるはずだ。
- 16 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月24日(月)10時46分17秒
- そして11月、新メンバーが決まった。とうとう私の不安は
解けないままだった。結果的に入ったのは四人。紺野さん、高橋さん、
小川さん、新垣ちゃん。“さん”といっても、年下だけど。
その日から、13人のモーニング娘。の仕事が始まった。新メンバーと
一緒の仕事は多くなかったけど、決して少なくもなかった。まぁ、本当
は仕事自体少ないんだけども。
時間が経つにつれて、新メンバーともだんだんうち解けて、
私の中にあった不安は消えていった。みんなも、そう。
やっぱりつんくさんは、キレイにこの加入をこなしてくれた。
- 17 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月24日(月)10時46分50秒
- そんな矢先の事だった。
今日は、久々に雑誌のインタビュー。新メンバーの加入について。
記者の人は簡単な質問をメンバー一人一人に聞いて、新メンバーには
少し多く質問をした。自己紹介になるようなモノを。
「吉澤さんは、急に新メンバーが入る事、驚いたりしませんでした?」
「ええぇ〜、そうですねぇ。いや、でもぉ、驚きましたよぉ。
急に聞かされて、そんですぐですよね、決まったの」
梨華ちゃんにも同じ様なことを聞いていた。もちろん、梨華ちゃんは
「もー、うれしかったですよぉ!楽しみでしたね、早く来ないかなぁーって」
梨華ちゃんは明るく笑っていた。それを見てたら、私も明るくなれた。
- 18 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月24日(月)10時48分20秒
- インタビューが終わって、楽屋に戻る時だった。私の隣を歩いていた
梨華ちゃんが、突然視界から消えたのだ。立ち止まったらしい。
「梨華ちゃん?」と振り向くと、目を半分開けたまま、梨華ちゃんが
ふらふらしていた。そしてすぐに、冷たい廊下にバタッ、と倒れ込んだ。
「梨華ちゃん!!」
梨華ちゃんはすぐに病院へ運ばれた。インタビューを受けた建物の
玄関から、赤いパトライトが遠ざかっていった。それと同時に、
玄関の前に立ちつくしたメンバー達の目から、泪が零れ始めていった。
- 19 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月24日(月)10時49分56秒
- ○自分で読み返してみて、ああ、俺も書くの下手くそになったなぁ、と
想いました。でも、頑張っておもしろい作品にしあげたいです。
- 20 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月24日(月)21時54分26秒
- ○よく考えましたが、逆に急かして下さい!その方が活気づきます!(?)
- 21 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月26日(水)15時32分41秒
- すぐにメンバー全員で搬送先の病院に行った。意識が戻らないらしく、
私たちは診療室の前で待っていた。
病院にはすぐにつんくさんが駆けつけてくれた。
「石川が倒れたって本当か!?」
リーダーとなった飯田さんがつんくさんの前に出た。でも、泪が溢れて
いてうまく状況を伝えられなかった。
「う、ひぐっ、い、石川・・・」
すぐに保田さんが飯田さんの元へ寄った。ほとんど喋れない飯田さん
の変わりにつんくさんに伝えた。
「石川、仕事終わった途端に急に倒れて・・・・・・まだ、意識が
戻らないんです」
- 22 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月26日(水)15時33分20秒
- 「そうか・・・・。ちょっと待っとき」
つんくさんは携帯電話を内ポケットから出してトイレの方へ走っていった。
そうだ、つんくさんにお礼言わなきゃ。つんくさんだって忙しいのに
すぐに来てくれたんだから。
私がつんくさんのすぐ近くまで来た時には、つんくさんは既に電話をして
いた。男子トイレの中で。さすがに入るわけにもいかないので、入り口
の壁にもたれながら待っていた。中からつんくさんの声が聞こえてきた
- 23 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月26日(水)15時34分01秒
- 「はい、はい、そうです。ええ、石川です、石川梨華。はい。あの
声が甲高い、はい。そう、その子です。ふふ、はい、そうですね。
出来れば、ええっとですね、今月の末くらいに・・・・はい。じゃぁ
お願いいたします、はい、ではぁ」
ピッと通話終了ボタンを押した音が小さく響いた。
- 24 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月26日(水)15時34分38秒
- なんの話だろうか。あ、仕事で「石川は出られない」とかそうゆうヤツ
か。つんくさんも大変だ。
「つんくさぁん」
呼びながらトイレを覗き込んだ。ちょうどつんくさんが戻ろうとこちら
へ向いた時だった。
「お、吉澤ぁ!ビックリさせんなやぁ」
「今の、仕事の断りの電話ですか?」
「そうや。もし今日帰れたとしても、休ませてあげんといかんからな」
つんくさんはやっぱり優しい人だ、そう、改めて思った。
- 25 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月26日(水)15時36分18秒
- 「つんくさん、仕事忙しいのにすぐに来てくれてありがとうございます」
「なんや、そんな事かいな。当たり前やろ。モーニング娘。は俺が育てた、
いわば、子供か孫みたいなモンやからな」
つんくさんはそんなに私たちの事を想ってくれていたんだ。
「そんな事より、早よみんなの所行ってやり。石川、応援してやるんや」
「はい!」
力強く返事をして、みんなの所へ走っていった。つんくさんはやっぱり
優しい。ちょっとばかり、好意も覚えた。
- 26 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月26日(水)15時37分01秒
- みんなの元へ帰ると、梨華ちゃんの家族が来ていた。廊下のソファに
座って、メンバー達に詳しい話を聞いていた。
結局、その日梨華ちゃんが目覚めることは無かった。お医者さんは、
このまま検査入院になるだろう、と言っていた。もちろん、メンバーは
事務所に全員集まって、梨華ちゃんの事、少ないけれど仕事の話しもした。
とてもってほどじゃないけど、ほぼ毎日一緒にいる家族みたいな存在。
新メンバーにとっては、憧れていたアイドル。具体的な見方は違っていても、
みんな梨華ちゃんの事を心配していた。もちろん、私も。梨華ちゃんは同期
で娘。に入ってから一番仲が良かったんだ。
- 27 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月26日(水)15時37分41秒
- 会議室の空気は暖房が入っていたのに冷たくて、重くて、苦しかった。
「石川、多分疲れてたんだよ。芸能界って、普通に生活してるより少なか
らず生活のリズムが狂ってくるでしょ?石川も体力が有る方には見えなか
ったし・・・・」
飯田さんはメンバーを安心させるために病気とかの予想はしなかった。
見渡してみると、俯いて何とか話を考えようとしてる飯田さん、
暗い表情で机を見つめてる安倍さん。無表情だけど、ちょっと悲しそうな
ごっちん。放心状態みたいにぼーっとしてる矢口さん。真剣に考えてるよう
な顔の保田さん。目も顔も赤くなってる辻。加護の目尻には光る物も見え
る。新メンバーは、みんなほとんど同じ。俯いて、ちょっと息が荒い。
「仕事はどうにでもなるやつばっかりなんだからさ、今は、石川の体調を
最優先しようよ」
- 28 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月26日(水)15時38分23秒
- 大人な意見を発した保田さん。堅苦しい感じもするけど、優しさがこもっていた。
「そう、昨日の夜、明日香と彩から電話あったよ。今は別の道歩いてるけど、
娘。は自分の故郷みたいなモノだから心配してるよ、って」
安倍さんがちょっと明るめに言った。メンバー全員というよりは、飯田さん
とか保田さんとか、ごっちんとか、福田さんと石黒さんとリアルタイムで
いっしょに活動していたメンバー達メインにして話した。
「仕事忙しいから全員に電話出来ないけどゴメンね、て伝えておいって言ってた」
「そうなんだ・・・・」
「私の所に裕ちゃんから電話あったよ。お見舞い行けたら行くから
って・・・・」
中澤さんからは飯田さんに連絡があったらしい。
私たちだけじゃなくて、脱退したメンバーや周りのスタッフの人もみんな心配
してる。私たちもずっとくよくよしてられない。
- 29 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月26日(水)15時39分33秒
- 脱退したメンバー・・・・・・。あれ?市井さんは?
「安倍さん、市井さんからは何か無かったんですか?」
私は思わず口を開いてしまった。市井さんは私たちが加入してすぐに
脱退してしまって、そのいっしょに居た時間が短かったおかげで本当の
お姉さんみたいな感じもしてたんだ。
「あ、紗耶香・・・・。私は無かったけど・・・・誰か連絡あった?」
誰も「あったよ」とは言わなかった。それはまだいいんだけど、
一つ、気になることが有った。私が“市井さん”って名前を言った時、
保田さんが驚いたみたいに一瞬だけどこちらを見たんだ。ちょっと怯えた
表情で。ただ単に、忘れてた、ってだけなのかな?
- 30 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月26日(水)15時40分09秒
- 話はずっと夜まで続いた。心配してマネージャーさんが入ってきた。
「ねえ、いつまでもここに固まってる訳にもいかないから、みんな家に
帰ろう。ほら、時間も時間だしさ」
結局、その一言でみんな自宅に帰った。もちろん寄り道せずに私も
帰ったけど、梨華ちゃんの事で頭がいっぱいだった。大丈夫かな、梨華ちゃん。
まだ、眠っちゃてるのかな?
大丈夫、大丈夫。飯田さんが言ったとおり、きっと疲れてただけだよ、
きっと。大丈夫。梨華ちゃん、早く良くなってね!
- 31 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月26日(水)15時41分35秒
- ○だんだん感覚を取り戻してきました。がんばります。
- 32 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2001年09月26日(水)17時05分30秒
- つんくPの謎、市井の謎……
こうなると、石川が倒れたのも謎か?とか、いろいろ考えさせられますねぇ。
……この後、どうなるんだあ!(絶叫)
- 33 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月27日(木)20時29分03秒
- 自分の部屋のベッドに座り込むと、ふいに保田さんのあの表情が頭に浮かんだ。
あの怯えたような、まるでタブーにでも触れたかのようなあの目。
市井さんに何かあったのかな?いや、まさか、保田さんて市井さんと
仲が悪かったのかもしれない。だから、聞きたくない名前を聞いて
少し気を悪くしたんだ。・・・・そうなんですか?保田さん。
なんか、悲しいな。メンバー内でそういうのがあるの。そんなわだかまり
を解かすためにも、市井さんからの連絡も欲しい。
色々なことを考えているうちに、いつのまにか眠ってしまっていた。
- 34 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月27日(木)20時30分28秒
- 翌日も、もちろんみんな事務所に集まる。私が事務所の前まで行くと、
そこで矢口さんが待っていた。しかも満面の笑みで。
「よっすぃ〜、石川が意識取り戻したって病院から電話あったよ!」
「え、本当ですか!?」
すぐにみんなで病院へ向かった。
梨華のドアが開いていた病室へ入ると、梨華ちゃんの両親、先に来て
いた飯田さん、つんくさんもいた。そして、ベッドで微笑んでる
梨華ちゃん。
「・・・梨華ちゃぁん・・・・」
安堵の声が漏れた。それに気付いて、梨華ちゃんがこちらに気付いた。
「よっすぃ〜!みんなも!」
- 35 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月27日(木)20時31分09秒
- 梨華ちゃんは見たところすっかり元気になっていた。つんくさんか
らのお花が花瓶にいれてあって・・・・。あ、お花買うの忘れた!
「石川、もう、大丈夫なの?」
矢口さんが聞くと、梨華ちゃんは身体を半分起こしかけて、お母さ
んに「まだ寝てなきゃダメだよ!」って止められて、残念そうな顔
してまた横になった。
「うん、大丈夫だよ。お医者さんはね、ちょっとストレスが貯まって
ただけだって言ってた」
良かったぁ、病気とかじゃなくて。
「梨華ちゃん、お花持ってくるの忘れちゃった。今度、持ってくるね?」
「心配かけてごめんね、よっすぃ〜」
- 36 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月27日(木)20時31分52秒
- 飯田さんが、脱退したメンバーから心配の電話があったことを伝えた。
名前は言わずに、“元モー娘。メンバーからも〜”って言った。
市井さんからだけ連絡がないなんて、今度は梨華ちゃんを心配させ
ちゃんからね。
一時間くらい病室にみんなでいて、梨華ちゃんを休ませてあげよう
って事で、梨華ちゃんのお母さんを残して、みんな自宅に戻った。
- 37 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月27日(木)20時33分02秒
- 時計を見ると夕方の五時。病院から戻って三時間くらい経ったかな。
本当に、梨華ちゃんが病気じゃなくて良かった。ただのストレスって
お医者さんも言ってたみたいだし、今週中には退院できるんじゃないか
な?私には全くわからないけど。
なんか、落ち着かなくなってきた。そわそわして、なんか、よくわ
かんないけど、とにかく落ち着かなかった。
・・・・梨華ちゃんの所行こう。
思い立ったら吉日ってくらいな早さで、急いで家を出た。途中の
お花屋さんで黄色い素敵なお花買って、タクシーで梨華ちゃんが
入院してる大学病院に向かった。
- 38 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月27日(木)20時33分52秒
- 病院の中は暖房がかかってて、夕日が窓から射し込んで全体的に
オレンジ色に染まってる。雑音や人に行き来も静かに見えて、
なんだか、ふわふわした空気だった。何だか落ち着けて、眠たくなった。
うとうとしながら梨華ちゃんの病室の前まで来た。コンコン、てドアを
ノックして、銀色の手すりに手をかけて、横に力を入れてドアをすべら
せた。あまり病室なんて来ないから、ドアの重さに少し驚いた。前はドア
開いてたし。病室の中は廊下以上にオレンジ色に染まっていて、オレンジ
ジュースのプールに入ったような、不思議な気持ちになった。
- 39 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月27日(木)20時34分29秒
- お母さんは帰ったみたいで、梨華ちゃんひとりきりだった。
「よっすぃ〜!」
「だいじょぶ?」
「よかったぁー。お母さんも帰っちゃって、一人で淋しかったんだよぉ」
梨華ちゃんやっぱり一人だったんだ。来て良かった。
「あ、梨華ちゃん、これ、お花」
「ありがとーよっすぃ〜、きれーい」
お花をベッド横のテーブルに置いて、椅子に座った。ああ、これなんか
本当に“お見舞い”って感じだなぁ。
「ね、お医者さん、いつ退院出来るとか言ってなかった?」
「えっとね、ストレスのせいだって言ってたけど、念のため色々検査
するらしいから、えーっと、今日水曜日でしょ?うんと、多分今週末か
来週の始めには退院出来ると思う」
・・・・けっこう長い。
- 40 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月27日(木)20時36分08秒
- >>32
チャミ銀さま、レス本当にありがとうございます!ゆっくりですが、
固まりかけた脳味噌をゆっくり解凍させていきますです!
- 41 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月28日(金)22時41分03秒
- そんなこんなで色々と話ししてたら、日が暮れ始めた頃に保田さんが来た。
「お!吉澤ぁ、お前も来たのかぁ」
「保田さん!」
突然だったからちょっとびっくりしちゃった。
「保田さんも来てくれたの?」って梨華ちゃん。
「うん、近くまで来たから寄ってみた。明日来ようと思ったんだけどね」
保田さんは私の隣に椅子を置いて座った。
「なんだ石川元気そうじゃん、昼間より」
「えぇーそうですかぁ?」
保田さんは膝に自分のカバン(緑のかわいいトートバック)を乗せて、中をゴソ
ゴソ探り始めた。「そうだ、石川にお見舞いの・・・・・」って言いながら。
「え、なんですかぁ〜?」
梨華ちゃんは身体を半分起こしてニコニコして覗き込んだ。“まだ寝てなきゃ”
って言おうと思ったんだけど、梨華ちゃん、楽しそうだったから言わなかった。
入院とはいえ、こんなにゆっくりしたのはひさしぶりだからね。
- 42 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月28日(金)22時41分39秒
- 「これ、横のテーブルにでも飾って?」
カバンから小さなオブジェみたいなのを出した。透明な箱に入った、なんか、切り株
と小人が三人くらいる、けっこうカワイイもの。なんか箱に国旗みたいのも貼ってある。
「えぇ、これなんですかぁ?」
梨華ちゃんはそれを受け取ると目をきらきら輝かせながら見てた。
「私も初めて見たぁ、保田さん、これ何ですか?」
保田さんはちょっと自慢げに、腕を組んだ。
「家の近くの骨董品屋さんに有ったんだ。フィンランドの、幸運を招く妖精トントゥだって。
ちょっとシュールだったから石川に似合うと思って買っちゃった」
「どういう意味ですか。でも、カワイイ!ありがとうございます!」
「良かったね、梨華ちゃん」
「うん!」
梨華ちゃん、本当に嬉しそう。
「あ〜あぁ、早く退院して新メンバーとお仕事いっぱいしたいなぁ〜」
布団をポンポン叩いてだだこねるみたいに言う。
「そうだよね、石川新メン来るの一番楽しみにしてたもんね」
まだ13人全員で仕事したのは一回だけだ。しかもその仕事が終わってすぐに
梨華ちゃんは倒れちゃった。全然新メンバーと一緒にいれてないよね。
- 43 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月28日(金)22時42分18秒
- 色々三人でお話ししてたら、看護婦さんが病室に入ってきた。
「すいません、面会時間終わりなんですけど・・・・」
あんまり私たちが楽しそうに話してたから、看護婦さんちょっと申し訳なさそう。
腕の時計を見ると夜七時三分。本当、もう終わりだ。
「あ、すいませーん。今、帰りますぅ」
すぐに立ち上がって、椅子を部屋の隅に戻した。
「じゃ、梨華ちゃん、また来るね!」
保田さんと二人で小さく手を振ると、梨華ちゃんも「うん!」って手を振り替えしてくれた。
廊下は電気はついていたけど薄暗くて、非常口のランプの緑が薄く全体にかかっていた。
二人きりで歩く廊下はちょっと肌寒くて、腕をさすっちゃった。
保田さんはちょっとニコニコしながら私のほんのちょっと前を歩いてる。保田さんの
横顔見ていて、あの事を想いだした。私が“市井さん”って言ったときのあの表情。
聞くなら今がチャンスだね!
「あの、保田さん」
エレベーターの前で立ち止まって、保田さんはすぐにボタンを押した。
「なに?」
「あの、一昨日に会議室に集まった時の事なんですけど、私が市井さんの名前
言ったときに保田さんがすごく怖い顔してこっちを一瞬見たとおもうんですけどぉ」
光る数字が少しずつ私たちの居る階に近づいてきた。
- 44 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月28日(金)22時44分43秒
- 「ああぁ〜」
「保田さん、市井さんと前に何かあったんですか?」
エレベーターが降りてきて、ガーッとドアが開いた。中には誰もいない。そろそろと
二人で乗り込んで、保田さんが一階ボタンを押して、扉閉ボタンもすぐに押した。今は六階。
「吉澤な」
「はい」
個室で真剣話しで、ちょっと緊張。
「吉澤口堅いし、信用できるから言うけど、誰にも言わないでよ」
「・・・・・はい」
秘密厳守ですか?そ、そんなにヤバイ話しですか!?
ランプが五階へ。
「紗耶香、娘。やめてから頭金髪にして・・・」
「市井さんがですか!?」
うそ・・・信じられない・・・・・・。
「うん。でね、驚かないでね?あの、後藤の弟のユウキ君、いるでしょ?」
「は、はい」
「付き合ってる・・・・・っぽいんだ。・・・」
・!?
なにいってるんですかやすださん?うそですよね?じょうだんですよね?
「じょ、冗談はやめてくださいよ保田さん」
ランプが四階へ。
「ウソじゃないよ。でも、恋愛は自由だからいいじゃない。でね、問題はそれじゃないのよ」
それだけでも十分ショックです・・・・・・。
「問題って、なんですか?」
- 45 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月28日(金)22時47分23秒
- 「紗耶香だいぶ前から、ちょっとヤバイ感じになってんだよ」
「ヤバイ、ってどういうことですか?」
「私、仕事の帰りとか、七時半くらいにちょくちょく見かけたんだけど、紗耶香が、ギャングって
いうか・・・・そういう、日本のマフィアっていうの・・・?そんな人たちがいるお店に、
行ってる・・・みたいなんだよね・・・・」
「嘘・・・・・・・・・・・・」
保田さんの言ってる事が本当に分からなくなってきた。なに、ギャング?マフィア?
ドラマとか映画の話しじゃないんですか?市井さんがですか?保田さん、嘘ですよね?
ランプが三階へ。
「本当なんだよ。多分、だから連絡無いんだと思う」
「そう、なんですか・・・・・・」
保田さん、本当に真剣な目をしてる。私、こんなとんでもない話、信じちゃったんだ。
エレベーター内の空気が一段と重くなった。
市井さんが危ない事してるなら、そんな事いますぐやめてほしい。言ってみれば
私たちのお姉さん。若いお母さん。市井さんが悪者になるなんて絶対に嫌だ。
ランプが二階へ。
- 46 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月28日(金)22時47分55秒
- 沈黙の時間が流れて、エレベーターは一階へ。ドアが開いて、茶色いソファがいっぱい
のホールが目の前に広がった。エレベーターから下りて出口へ歩いていった。
手動ドアとガラスの自動ドアに二重扉を抜けて、外に出るともう真っ暗。
めちゃくちゃ寒い。
大きい病院は常に玄関にタクシーが止まってるから便利だ。
「私、タクシーで帰りますね」
「そう。私は電車の方が近いから電車で帰るね」
ここで保田さんとお別れ。運転手さんにドアを開けてもらって、タクシーの後部座席
に乗り込んだ。まだドアは開いてる。そう、まだ話は終わってない。
「保田さん、市井さんが通ってるお店って、どこのなんてゆうお店ですか?」
「吉澤まさか、あんた行く気じゃ・・・」
「大丈夫、行きません。ただ知っておきたいだけです」
「本当に?絶対に行かないでよ。危ないんだから」
「大丈夫です。絶対に行きませんから。言って下さい」
「・・・・池袋の、西口の・・・・・」
「西口の?」
「・・・駅のすぐ近くにある、Line Heavenってゆう、地下のバー。看板小さいから目立たないの」
「ラインヘヴンですか・・・・・。わかりました。じゃ、明日また事務所で」
「うん、じゃぁな!」
運転手さんにドア閉めてもらって、発進した。保田さんには“絶対に行かない”
なんて言っちゃったけど、明日の夕方あたりに行ってみようと思う。市井さん
を説得して、危ないことやめてもらおうと思う。
いろんな事が起こりながら、11月末の寒い夜が更けていった。
- 47 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月29日(土)01時11分00秒
- 内容に全く関係ない質問で悪いけど、「扉閉ボタン」ってなんて詠むの?
「ひへいボタン」?
- 48 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月29日(土)20時10分20秒
- 病院の帰りには簡単に“説得して、危ないことやめてもらおう”とか勇敢に
思っていたけど、家で夕飯食べて、見たいテレビも終わって電気を消した瞬間、
不安になってきた。ベッドに入るとその不安は明らかに増した。一度は信じた。
でも、簡単に信じられる話じゃないよね。市井さんが金髪に染めて、ごっちんの
弟と付き合ってるかもしれんくて、危ない人が集まるバーによく出入りしてる。
保田さん、明日会ったら「あんなの冗談だよぉ!」って、笑って言ってくれませんか?
でもとにかく、明日行ってみる・・・・・・。保田さんの見間違いだって事を
この目で見て、証明したい。きっと人違いだよ!市井さんそんな、悪い人じゃなかった。
優しくて、私たちの面倒みてくれて、すぐ脱退しちゃったけど、市井さんの事よく
知ってるつもり。でも・・・・・・市井さんの全てを知ってるのかって聞かれたら、
多分、私たちの見えないところとか、プライベートの話なんかしなかったし、あまり
時間もなかったし・・・・・。
その日は珍しく寝付けなかった。梨華ちゃんのことも心配だし、市井さんの事も心配。
市井さんが梨華ちゃんのお見舞い来てくれるようにお願いしようかな。梨華ちゃんも
喜ぶだろうし。・・・・・・・でも、本当に怖い。だって、暴力だんとか・・・・・
マ、マフィアとか・・・? まさか私、殺されちゃったりしないよね・・・?
気がついたら朝だった。少し前の記憶が無いから、きっと寝てたんだろう。少しでも
寝れて良かった。すぐに着替えと朝食を済ませて、朝の切りつめた空気の中へ飛び出していった。
- 49 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月29日(土)20時12分27秒
- 毎日大人数でお見舞いに行くのも逆に迷惑になるので、ふだんは事務所で待機(文書系
の仕事とかやったり)、時々少人数ずつでお見舞いに行くことにした。もちろん、みんな
お見舞いに行きたいのは一緒。多分。
でも私は、今日は梨華ちゃんの元へはいかず、早々に仕事を切り上げて池袋に向かった。
時刻は午後6時半。早々に切り上げたっていっても、けっこう時間かかってたみたい。
駅に着くと、私はまっすぐに西口へ向かった。この辺はよくベーグル買うときに通る
からよく知ってる。ああ、そういえば、“いけふくろう”は東口のほうかぁ。久しぶりに
見たかったなぁ・・・・。なんて、くだらないことばかり考えて気を紛れさせよとしてる私。
外はもう真っ暗で、とっても怖い。
保田さんは駅のすぐ近くにあるっていってたから、とりあえず西口公園の方へ行ってみた。
若者とサラリーマンがいっぱいいる。どっちのほうに有るか分からないけど、とりあえず
適当に探してみることにした。
時刻は夜七時二十分。ラインヘヴンてゆう店をやっと見つけた。確かに駅には近かった
けど、裏道の裏道。保田さんが言っていた通り、小さい看板が地下へ向かう階段の横に
ぶらがってるだけだった。“BAR -Line Heaven-”って。
保田さんが市井さんを見かける時間は確か七時半。もうすぐだ。
店の前には黒塗りのベンツとかでっかいジャガーとかが止まってる。全部左ハンドル。
“ギャングっていうか・・・・”
ふいに保田さんの声が蘇った。急に怖くなって、向かいのマンションに逃げ込んだ。
- 50 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月29日(土)20時14分25秒
- すぐ目の前に階段があったから、四段ほど上ってそこに座り込んだ。ここからなら、
店の入り口も見えるし、あっちからは気付かれにくいし、大丈夫だよね?
“そういう、日本のマフィアっていうの・・・?”
保田さんの言葉がまた耳に蘇って、より恐怖をかき立てた。それと同時に寒気も感じて、
厚手のパーカーのフードをすっぽりと被った。けっこう重ね着してるんだけどな・・・。
腕の時計を見るともう八時半を回っていた。店の入り口を見てみると、中から十人くらいの
人数で若い男の人達が出てきた。どうゆう訳か、みんな金色のウォレットチェーンを腰にしている。
あれって、ストリートギャングとかいう不良のあつまりじゃないの?そうだ、あのウォレットチェーン
はチームのトレードマークなんだ・・・・。でも、なんかみんな不機嫌そうな顔してる。
店の中からそのストリートギャングを押し出すようにして一人の男の人が出てきた。
黒いスーツ来て、サングラスしたいかにも“怖い”人が何か怒鳴りながら。
「ここはお前らみたいなガキ共が来る見せじゃねぇんだ!早く失せろ!!」
ストリートギャングはちょっと文句を言いながら店を離れていった。スーツの男の人は
そのまま店の前に立っていた。見張りみたいな感じに。店はもう開いていたのに
今から見張りするの?
- 51 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月29日(土)20時15分28秒
- フードを被ってたせいか、なんだかウトウトしてきた。瞼がどんどん重くなる。
「ううん、うはぁ〜・・・」
本当に眠いんだな、っていう声が出ちゃった。時計を見ると夜八時五分。
「おお、今日も来たかぁ!」
「あんまり大声出さないでよ!」
突然聞こえた声にびっくりして、ビクッと震えちゃった。すぐに店を見ると、さっきの
スーツの男の人と誰かが会話してた。金髪のショートで、紫のコート着た女の人。
・・・・・ん、金髪? まさか・・・・・・・。
女の人がふいに道の方を向いて、顔が見えた。
「・・・・・・あっ」
- 52 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月29日(土)20時17分00秒
- 離ればなれになってじゃらどれくらい経ったのだろう。
ダンスを教えてくれて、脱退した直後のテープレターには泪した。今10mほど前に
いる金髪の女性の顔。忘れられない、あの市井紗耶香さんだった。
- 53 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月29日(土)20時18分35秒
- ショックで一気に体中の力が抜けた。保田さんの言ってた事は本当だったんだ・・・・。
市井さんはスーツの男の人と一緒にお店の中に入っていった。でもまだココが本当に
危ないお店だって決まった訳じゃない。大人しか入れないだけかもしれない。
外には誰もいなかった。中を覗くなら今のうちだ。
ゆっくりと階段を下りて外に出た。本当に真っ暗。左右を見渡して誰もいないことを
確認。お店の地下の入り口へ続く階段を覗き込んでまた確認。よし、誰もいない。
音を立てないようにゆっくりと暗い階段を下りていった。地下一階くらいだ。
外国のホテルみたいな茶色い木目調のドアの中央より少し上に、金色の板に“Line Heaben”
って彫ってある。ドアノブも金色。静かにノブを回してゆっくりドアを押すと、中で
かかってる音楽が少しずつ聞こえてきた。静かなジャズみたいな洋楽。
5cmくらいだけドアを開けて、中を覗いてみた。暗い店内の右側でバーテンの白髪混じりの
おじさんがシェイカー振ってる。テーブルには6人くらい男の人が座ってお酒飲んでる。
他に大きめの丸いテーブルがいっぱい置いてあって、半分以上のテーブルで色々な人が
話をしていた。さっきみたいなすごく怖い人や、お金持ちそうな女の人。でっかいスーツケース
をテーブルに置いている人も少なくない。なんだ、普通のバーじゃん。
- 54 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月29日(土)20時19分13秒
- ちょっと奥のテーブルで、市井さんと髪の短い男の人が話をしていた。市井さんが
茶封筒を出して、男の人に渡した。男の人は中身をちょっと見て、すぐに胸ポケット
にしまった。今度は内ポケットからけっこう厚い白い封筒を出して、市井さんに渡した。
市井さん、笑ってる。楽しそうに。なんだろ、プレゼント交換かな?
なんて事思ってたらいきなり視界が遮られた。ちょっと市井さんが見えない・・・・
ドアの隙間からさっき外にいたスーツの男が私のことを睨んでいた。
「・・・・おまえ何してる」
やばい!私はすぐに階段をかけ上ったけど、頭から脱げたフードを追ってきた男の人に
引っ張られて、捕まってしまった。
「やめて、離して!」
「おとなしくしろ!」
スーツの男は私の首に後ろから手を回して店内に引きずり込んだ。不思議なことに中の
人たちは驚いた素振りは見せない。
「奥に行くぞ」
スーツの男はそのまま私を掴んだまま歩いていった。とんでもない力で全く抵抗
出来ない。ちょっと奥まで引きずられたところで、市井さんに発見されちゃった。
「ちょ、あんた吉澤じゃないのぉ!?」
「何だ知り合いか?」
- 55 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月29日(土)20時20分28秒
- 「知り合いだよ、離してあげて!」
スーツの男はやっと私の首に回した手を離した。ふん、て息をついてどっかに歩いて
いった。どうしよう・・・・。
「吉澤こんな所でなにやってんの!?」
「あ、あの・・・・・」
緊張と恐怖で何も言えなかった。市井さんは話してた男の人に挨拶して、話を終わらせた。
「吉澤、ちょっとこっちで話そう」
市井さんはそう言うと、私の方を軽く押して置くの部屋に促した。入り口よりは
軽い感じの木製ドア。市井さんが開けると、中には応接室みたいにソファとテーブル
が置いてあった。
「座って」
言われるがままに、ソファに座り込んだ。ドアを閉めて、市井さんも向かいに座る。本当に金髪です。
「久しぶりだねぇ。で?なんでこんな所にアンタがいんの?」
懐かしい市井さんの声。
「あ、あの・・・・実は、この前梨華ちゃんが倒れて・・・・知ってますか?」
「うそ?知らなかった!」
「それで、市井さんからだけ連絡がなかったんで、保田さんに聞いてみたんですけど、
市井さん、よくこのお店に来てるの見たことあるって聞いたんで、来てみたんです」
市井さんはボンって背もたれに身体を預けた。
「それで?私に石川の見舞いに行ってくれって?」
「いや、あの、もしよかったらそうしてもらえたら梨華ちゃんも喜ぶと・・・」
「吉澤さぁ、お店の雰囲気とか見て分かるよねぇ?ここは、アンタが来るような
所じゃないんだ。早く帰ったほうがいい」
やっぱり、危ないお店なんだ。
- 56 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月29日(土)20時22分08秒
- >>47 レス本当にありがとうございます!
扉閉ですか・・・・・。俺はそれとなく作った造語ですので、
僕も読めません(w ゴメソナサイ
- 57 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年09月29日(土)23時16分43秒
- >>56
意味わかんない文ですね。
訂正:それとなく作った造語ですので、
- 58 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月01日(月)18時51分15秒
- 「じゃあ、市井さんはここで何をしてるんですか?」
市井さんの顔が見るからに曇った。
「吉澤、誰にも言うなよ。メンバーにも、もちろん家族や他の人みんなには」
「・・・・・はい」
「実は私、娘。脱退して二ヶ月くらい経って、運び屋の仕事始めたんだ」
「はこびやですか?」
なんですかそれ?きいたことないです。
「うん。最初は、書類とかビデオとかテープとかそんなんを依頼者から受取人の
所へ秘密に届けてたんだけどさ」
ふ〜ん、運び屋って個人的な宅配便みたいなモノかな。メッセンジャーみたいのモノでしょ?
市井さん、何かカッコイイです。そんな仕事。
「でも、だいぶ前から、なんか薬みたいのとか、なんか気持ち悪い植物みたいのとか・・・・・・
・・・・拳銃と銃弾とか・・・・・・・」
けんじゅうとじゅうだん?
市井さん、何ですか?なんで市井さんが銃?なんでですか?嘘ですよね?
「市井さん、冗談やめてくださいよ」
「冗談じゃないよ。本当、本当なんだ。私も、こうなる事はわかってて運び屋
の仕事始めたんだ。後悔はしてない」
嘘・・・・嘘だよ、絶対に、そんなの。わかってて初めたなんて・・・・。
「なんで・・・そんな危ない事を?」
「うん、最初は、留学するための資金集めだったんだけど、予想以上に高収入
でさ。なんか、留学なんかしないで、いっそこのままこの仕事してた方が楽に暮らせる
んじゃないのかな、って思い始めてきて・・・・・」
- 59 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月01日(月)18時51分45秒
- 「もう慣れたよ。全然大丈夫。吉澤は心配しなくて良いよ」
「・・・・・わかりました」
本当は全然解ってない。信じられなくて、信じたくなくて、市井さんにずっと
憧れてて、やっと近づけて、でもすぐ離れていって、今度は絶対に手の届かない場所にいる。
市井さん・・・・あの頃と、すっごく変わってしまいました・・・・。
「そうだ、吉澤体力あるし、アンタもやってみない?」
笑いながら言う市井さん。私にピストルを運べと?
「そんな!いいですよぉ」
「ふふふ、冗談だよ。でも、気が変わったり、何かあったらココに来な。私から
お店の人に言って置くから、自由に出入り出来るから」
「え、でもさっき市井さん私が来るような所じゃないって」
「いいんだよ。なんか私も懐かしくなっちゃてさ」
「・・・・わかりました。じゃ、今日は帰ります」
「うん。私もお見舞い行けたら行くからさ」
- 60 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月01日(月)18時52分31秒
- 帰り道では冬の寒さが暗闇をつれて私を包んでいた。やっぱり重ね着していても
パーカーじゃ寒い。次からはコート着て外に出るようにしよう。
時計は夜八時五十分。さっきは市井さん“お見舞い行けたら行く”なんて言ってた
けど、多分来ないだろう。てゆーか、来れないだろう。あんな危ない仕事してて、暢気に
人のお見舞いなんか来れないよね。命狙われてる危険性だってあるわけだし。
・・・あれ?なんか私、冷静になってない?保田さんの話を聞いた後も、自分でそれを
真実だと確認しちゃった今も、普通だったらパニックになってるはずなのに。
どうしてだろ?そういえば、頭の中に何かが引っかかってる。別におかしな事は
ないんだけど、なんか“勘”っていうのかなぁ?それがあるせいで、ストレート
に真実が心にぶつかってない。どっかでその真実に完全納得して、受け入れちゃってる。
悪いことじゃないんだけど、気持ち悪かった。
ああ、本当寒い。早く家帰ってお風呂入ろ。
- 61 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月03日(水)16時33分11秒
- 翌日、私は新メンバー四人を連れて梨華ちゃんのお見舞いに行った。新メンバー
加入を一番楽しみにしていたのは梨華ちゃんだっかからね。つんくさんから
オーディション決定の事を聞いた日からずっとその話ばかり。音楽雑誌の
とても小さな枠に載るインタビューの時も、「新メンバー加入、私すっごく
楽しみなんです!ほんと早く来て欲しいです!」なんて、みんながちょっと引いちゃう
くらいの勢いで答えていた。控え室に戻ってもそのテンションは全く変わらない。
私の隣で「ねぇねぇよっすぃ〜、どんな娘だと思う?すっごく歌うまくて、私と
比べモノにならないくらいだったらどうしようかぁ〜!?」って。もちろんそんな
話も楽しかった。「梨華ちゃんよりカワイイ娘なんかいないよぉ〜」なんて
お世辞っぽく言ってみたり。実際梨華ちゃんはカワイイけどね。
新メンバー四人は私のすぐ後ろを歩いてる。梨華ちゃんを心配する声が小さく
聞こえる。このちょっと大人びた声は小川ちゃんかな?そういえば、辻加護と
同い年なのに全然雰囲気違うなぁ、この娘。下手したら私より大人っぱいよ。
「石川さん、早く退院出来るといいね」
「うん。“だいぶ体調良いみたいだから退院早めますね”みたいな」
「早くまた一緒にお仕事したいよね」
おお、新メンバー以外と良い事話してるじゃん。そこで私も会話に参加。
「大丈夫、すぐ退院出来るから、それまでに少しでもこの世界に慣れておこうね」
四人ともちょっとぎこちない笑顔だったけど、「はい!」って力強く返事してくれた。
そうこうしてる内に梨華ちゃんの病室に着いた。ノックして明けて、中を覗き込む。
- 62 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月03日(水)16時34分00秒
- 「梨華ちゃあーん、来たよー」
真っ白な病室の中でポツンと梨華ちゃん一人。・・・・・・・・寝てる。
「せっかく来たのにぃ」
とりあえず四人をベッドの横に軽く並ばせて、私はこっそりとベッドの中へ。
なんか私、市井さんのヘビーな話を気にしないようにムリに明るくはしゃいでるかな?
まぁ、いいや。気にしない!市井さんは市井さんで頑張ってるんだもん。
新メンバー四人は口に手を添えてクスクスと笑ってる。紺野ちゃん、もう顔真っ赤。
梨華ちゃんを起こさないように添い寝する。よれた掛け布団を静かに戻して、完璧。
梨華ちゃん起きてない。スースー寝息をたててもうグッスリ。梨華ちゃんの寝顔こんなに
近くでしかもまじまじと見るの初めてかも。・・・・・かわいい。
添い寝初めて三分くらい経ったかな。梨華ちゃんまだ起きない。四人の笑い声も途絶え途絶えに。
ちょっとイタズラしちゃうか。
梨華ちゃんの顔へ向けてフーッと息をかける。四人の笑い声が少し大きくなって、私も少し笑っちゃった。
「ぅん・・・んふぅ・・」
甘えた声で梨華ちゃんちょっとだけ寝返る。ふふふ、おもしろい。調子乗っちゃう。
もう一回息を吹きかける。
「んぅ・・・・」
あららら、起きませんよ梨華ちゃん。もう、こうなったら最終兵器だ!
- 63 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月03日(水)16時34分43秒
- 「新メン四人、イタズラして!」
小声で命令。「えぇ〜?」なんて困っちゃってる。でも率先して愛ちゃんが仕掛けた。
ゆっくり掛け布団の下の方をあげて、梨華ちゃんの足の裏を軽くコチョコチョッ、て。
「んんふぅ・・・ふふふふふ。う、うぅ〜ん?」
それでやっと梨華ちゃん起きた。目の前の私に驚く。
「おはよ、梨華ちゃん」
「よ、よっすぃ〜!?」
本当にビックリしてる。もしかして私、ヘビーな出来事で傷ついた心癒して
もらおうとしてるのかな?ああ、そうかもしれない。梨華ちゃん、癒して!
「な、なんで一緒に寝てるの!?」
「だってぇ、梨華ちゃん全然起きないんだもん。ほら、新メン四人も来てるよ」
四人が梨華ちゃんに会釈。まだちょっと堅いかな。
「あああ!来てくれたんだぁ!」
こらこら四人、緊張してんのか?新垣ちゃんなんてもうガチガチじゃん。
紺野ちゃんまだ顔赤いし。愛ちゃんはさっきのイタズラの時と違って被ってた
キャスケットちょっと深くしちゃうし。小川ちゃんは冷静だね。
- 64 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月03日(水)23時12分47秒
- 少しずつでも良いモノに仕上げて読者を増やしたいです。
まだ始まって間もないので、ほら、アナタ、どうですか?見るだけ見てみませんか?
おもしろくないとおもいますが・・・・・・・・
- 65 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月05日(金)17時59分59秒
- 「嬉しいなぁ〜。ね、仕事慣れてきた?」
「あ、はい、まぁまぁ」
「頑張ってね!」
梨華ちゃん嬉しそう。と、いきなり私を見つめる。
「なに?」
「・・・・・・・・よっすぃ〜、いつまで寝てるの?」
あ。私ずっと梨華ちゃんに添い寝してた。かれこれ20分くらい。忘れてたよ。
「ははは、ゴメンね」
ゆっくりベッドから降りる。何かベッドの中暖かいからほんわかして眠くなってきちゃった。
これはヤバイ、ほんっとうに眠い。ああああああ〜。
「梨華ちゃん私、隅でウトウトしてるから四人とお話しな」
「ウトウト〜?」
「うん、眠くなっちゃった。梨華ちゃん退院したらお仕事あるんだから、
今の内に色々お話しといたほうがいいでしょ。ほら、みんな座って」
四つ丸イスをベッド横に並べて、五つめのイスを病室の隅に置いた。ペタン、と座り
込むと、窓からの淡い光と薄い影がぼやけて混ざって眠気をより誘った。
ああ、気持ち良いぃ〜。
- 66 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月05日(金)18時00分56秒
- もう、今にも寝ちゃいそうだよ。私本当にこんなんで良いのかな?自分の知らない
世界を知ってる人にみせつけられて、ショックだよ。ショックだけど、なんだか、
“あんな事あってもへらへらしてるなんて、どんな神経してんのアンタ?”
って言われても納得しちゃう。自分でも怖い。これは、強いって事とは違うよね?
市井さんが自分の知らない間に裏道に入っちゃって、今は銃や薬汚い金に囲まれて
生活してる。でも、市井さんそれで満足してるんだ。無理矢理あの世界から引きず
り出す気なんか無くなった。ちょっと尊敬しちゃうくらい。自分で自分の人生(それが
危ない道だとしても)を見つけて、必死に歩いていってるんだから。私なんかより
ずっと“生きてる”よね。
「オーディションで辛い事とか有った?」
梨華ちゃんの話し声がうっすら聞こえてくる。それが子守歌みたいで、また眠気が
ひどくなった。病室の外からは、看護婦さん、患者さんの足音。何かを運ぶ
カラカラ・・・っていう柔らかい金属の音。器械の電子音。それら全てが病室の厚い
ドアによって薄く聞こえてくる。病院って落ち着くな、なんだか。外来とかはガヤガヤ
して逆にうるさいくらいだけど、病室、特に個室だね。ここみたいな。すっごく
落ち着く。公共の施設な感じの中に自分達だけの空間が出来て、ある意味別荘に
ちかいようで、自分の家みたいに安心出来る。置いてあるベッドや、高テーブルや、
小さい冷蔵庫や何か全て自分のモノのようにも見える。
ああああぁ、眠いよぉ・・・・・・。
- 67 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月05日(金)18時01分34秒
- 「吉澤さん」
身体が揺すられて少しずつ目が覚めた。ん、もう朝?
「起きて下さい、吉澤さん」
もう少し寝かせてよぉ。今日はお休みでしょ?お願いだから寝かせて・・・・・。
「吉澤さん!面会時間終わりです!」
・・・面会時間?
渋々目を開けると、紺野ちゃんが私の顔を覗き込んでた。その後ろには、小川ちゃん、
座ってこっち見てる愛ちゃん、ベッドの梨華ちゃんとお話してる新垣ちゃん。
真っ白な部屋に差し込む外からの青黒い帯。あ、ここ病室なの?嘘、私本当に寝てたの?
「ん、ふあぁぁぁぁぁ」
両手を思いっきり上げて伸びをした。固まった背筋がふわって広がった。
お昼寝なんて久しぶりにしたよ。頭も身体もスッキリした。
「おはよ、よっすぃ〜」
ベッドの上から梨華ちゃんの笑顔。いやぁ、何か恥ずかしいなぁ、寝顔見られてたなんて。
「お、おはよう。面会時間終わりだっけ?」
「はい、もう七時です。帰りましょう」
時計見ながら新垣ちゃん。いつの間にか帰る用意万全のみんな。私も早く用意しなきゃ。
「石川さん、また来ます。早く元気になって下さい!」
元気に愛ちゃん。カバンを肩にかけて、忘れ物がないか周りを確認。うん、大丈夫。
「じゃ、行こっか」
「はい」
ドアを開けて、梨華ちゃんに「また来るね」って微笑みながら手を振る。みんなも。
梨華ちゃんはもちろん帰してくれる。私、ずっと寝てたね。今日お見舞いに来た意味
有ったのかな?
- 68 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月08日(月)17時28分47秒
- お昼寝したって、夜になったら眠い。家に帰ったら晩ご飯も中途半端にしてすぐ
ベッドに倒れ込んじゃった。明日の予定を考えるヒマの無いほどすぐに寝てしまった。
- 69 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月08日(月)17時29分36秒
- ・・・・私の後ろを歩く市井さんは妙に物静かだった。せっかく二人で
映画でも見に行こうって誘ったのに、なんだか盛り上がりません。
周りを気にしてるような感じはしないけど・・・・どうしてだろ?
「市井さん、なに見ましょうか?」
歩きながら後ろ向いて聞いたけど、「う〜ん・・・」って素っ気ない返事。
市井さんなにか考え事でもあるんでしょうか?もー、おもしろくない。
とりあえず映画館の前に着いた。やってる映画は五個くらい。洋画が多い
かな?アクション物、恋愛物、戦争物。どれもおもしろそう・・・。
「どれにしましょうか?」
映画の看板見ながら言ったんだけど、市井さんからの返答が無い。
まわりは川のように大勢の人が流れ、ガヤガヤと騒がしいのに、私の周り
だけ異様に静かな感じだった。
- 70 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月08日(月)17時30分11秒
- 「吉澤」
「はい?」
市井さんの方を見ると、市井さんが何かを私に向けている。
・・・・信じられなかったけど、それは紛れもなく拳銃だった。
「い、市井さん?」
周りは全く変わらず人が流れて行く。誰も気付かないの!?
「吉澤さ、こんな所いない方がいいよ」
突然聞いたことあるような言葉が発せられて、次の瞬間には私は
市井さんの拳銃から激発音を伴って発射された重苦しい銃弾を胸に受けて、
大通りの真ん中に倒れていた。激しい痛みと熱、そして息が少しも出来
なかった。アスファルトの上に血が広がってゆくのが見える。
どうして?どうして市井さん?なんで私を殺すの!?
私の周りを人が留まることなく流れていった。銃声に気付かなかったかの
ように。そんなハズない。あんな今までに聞いたことの無いような大きい音、
気付かない訳ないよ。耳がジンジンしてるくらいだもん。
「吉澤、あんた頭おかしいよ」
確かにそう聞こえたのに、私の前に市井さんはもういなかった。
意識が遠のき、確かに“死”と“恐怖”を私は感じていた。
- 71 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月08日(月)17時30分46秒
- 気付くと2mほど上に白い天井があった。アスファルトの固い質感では
なく、柔らかい物の上に私は横たわっていた。一瞬の状況の劇的な変化に
驚き、私はすぐに上体を起こした。周りを見ると、ここは私の部屋で、
ベッドの上にいる。すごい汗。
「・・・・そっか、夢だったんだ・・・・・」
“人生初悪夢、おめでとうございます。怖かったでしょ?”
頭の中に変な言葉が響く。うん、本当に怖かったよ。市井さんに、わ、私が
こ・・・・殺される・・・なんて・・・・・。
机に置いた時計を見ると、朝五時半。本当だったらまた寝たいけど、完全に
目、覚めちゃってる。どうしよう・・・?
とりあえず、自分の部屋の窓を開けてみた。あと少しで十二月。しかも早朝。
恐ろしいくらいの冷たい風が部屋の中に入って来た。毛布を身体にまっとて
窓から顔を出してみた。私の家はマンションの三階で、マンションの前の道
を上からよく見下ろしていた。今もいつものようにリラックスして見ている。
とんでもなく寒いけどね。人通りはほとんど無い。新聞配達のお兄さんがちらほら
通るのと、早く出勤するスーツ着た男の人や、時々女の人。まだ街は完全に
目を覚ましていない。空から淡い青が降り注いでるみたいに、建物が、道が、
人が青く濡れているように見える。この雰囲気が私は大好きだった。
映画とかでもよく見るけど、実際にその青い空間に自分がいるほうが断然
気持ちよかった。
- 72 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月08日(月)17時31分32秒
- やっぱり寒い。明るさを増してきた空から目を離し、窓を閉めてカーテンも
閉めた。冷え切った身体を暖めるためにベッドに潜り込む。
やっぱり朝早いからか、少しばかり眠気が頭に蘇った。また眠れるなら
すぐにでも寝たいが、またさっきみたいな恐ろしい夢を見たら、と思うと
怖くて目を閉じられない。なんか、客観的に有った事を割り切って受けとめ
てた、と自分では思っていたみたいだけど、やっぱり心の奥ではそうとうダメージ
くらってたみたいだ。そうじゃなきゃ、あんな恐ろしい夢に魘されたりする
はずがない。どうすれば良いんだろう。時間が経てば、慣れるのかなぁ。
そうだ、慣れるためにも、ちょくちょくあのお店に行ってみようかな?
お酒以外も置いてあるはずだし、市井さんも私となら下らない話で盛り上がれる
はず。私だって危ない道にはちょっとだって居たくないけど、もう中を見ちゃった
んだから、責任持たなきゃ。そうだよ、自分で行ったんだから。
気付いたら時計が七時を回っていた。
- 73 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月08日(月)17時32分48秒
- この所、二日に一回の更新ペースですが、
焦らせレスがあれば一日一回にする事も考えます。
- 74 名前:hukukaityo 投稿日:2001年10月09日(火)20時40分17秒
- 相変わらず文章うまいですね。早く続き書いて頂きたいと思います。
いつも楽しみにしてます。頑張って下さい。
- 75 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月10日(水)02時59分04秒
- 焦らせレスなんて恐れ多いことは……
でも、一日一更新がマイペースなら読みたいですね(w
- 76 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月10日(水)13時41分09秒
- その日の夕方六時。私はLine Heavenに向かった。怖いけど、市井さん、お店の
人に話しておくって言ってたし、お店の中にちゃんと入れてくれるはず。
月末で人の流れは多く、走る車も異様な量。
池袋駅近くの裏道に入ると、急に空気が変わる。なんて言うか、急に空が
暗くなるっていうか、表通りに戻りたくなる。でも戻るわけにはいかない。
Line Heaveの小さい看板が見えた。お店の前にはこの前私を捕まえたスーツ
の男の人が立っていた。これが見張りなのかよくわかんないんだよね。
開店して時間経ってから店の前に立つし、ちょくちょくいなくなる。
私のこと覚えてるかな?ああ、怖いな。
そろそろ見せに近づいて行くと、スーツの男が私に気付いた。怖!
「あ、えーっとなんだっけ、吉澤、吉澤だ。よく来たな」
顔を和ませてそう私を指さして言った。良かった、やっぱり市井さん話して
おいてくれたんだ。笑顔が優しい感じで、こっちからも話しやすかった。
見た目はけっこう怖いけど。
「こんばんわ。名前覚えてくれたんですか?」
「おお、紗耶香に言われてな。覚えとけって」
「そうですか、ハハ・・」
- 77 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月10日(水)13時42分02秒
- なんか私、けっこうお店になじんでる?
「そうだ、俺の名前は高峰。このバーの副店長やってんだ」
「タカミネさん。よろしく。店長さんは?」
「店長はな、この前見たろ、中でカウンターん中でシェイカー振ってた人だ」
カウンター・・・。あ、思い出した。あの白髪混じりのおじさん。
「そうなんですか?」
「そう。普通店長ってモンはあんな事しないんだけどな。カクテル作るのが
好きなんだよ」
「へぇ・・・」
ちょっと仲良くなってきてる?私。いいのか、それで!?
「市井さん、来てますか?」
「おお、いるよ。多分奥の部屋でカクテル飲んでると思う。行ってきな」
「どうも」
タカミネさんに頭下げて、階段を下りていった。市井さん、この前話した
部屋にいるんだ。カクテル飲んでる。・・・ん、カクテル?お酒じゃん!
まだ未成年じゃないの市井さん!?
でも、こんなお店じゃそんなの関係ないか。
重厚な感じの木製ドア。金色のノブを回すと、中の空気はこの前と全く
変わらず冷たく重かった。そういえば、バーは店の空気を大事にするって
聞いたことあるな。
- 78 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月10日(水)13時44分48秒
- あ、店長さんだ。やっぱりカクテル作ってカウンターに座った人に振る舞ってる。
店長さんて感じしないなぁ。
今日はこの前より人は少ない。テーブルにも空きがいくつもある。座ってる
人たちはもちろん真剣な表情で色々話してる。取引みたいな物も見える。
出来るだけ見ないようにして、奥の部屋に向かった。コンコンってノック
して、ドアを開ける。中のソファに市井さんが座っていた。テーブルには
綺麗な青いカクテル。
「吉澤ぁ!」
「こんばんわ」
「座りなよ」
促されて向かい合ったソファに座る。市井さんの笑顔が見れてちょっお落ちついた。
お店の雰囲気、重すぎるもん。
「用なんかないんでしょ?」
「は、はい」
ないですけど・・・・・・。
「良かった。ここに用があって来るようになったらお前も裏の人間って事だからな」
そういう事か。怒ってるのかと思っちゃった。
「石川元気にしてる?」
「はい。もうかなり元気ですよ。退院が早まりそうなくらい」
「はは、そうかぁ。私も顔見ときたいんだけどねぇ」
- 79 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月10日(水)13時46分20秒
- 「そうだ、新メンバー入ったんだっけ?」
「はい、四人入りました」
カクテルを一口飲んで、市井さん背もたれにもたれる。
「なんか飲む?」
そういえばノド乾いてきたなぁ。でも・・・・・。
「・・・お酒以外ありますか?」
「あ、そっか。お酒ダメか」
「・・・・・市井さん、カクテル飲んでる」
“あ”って感じで目を大きくして微笑む。
「わ、私は良いの!」
「・・・・・未成年・・・・」
市井さん、ちょっとドギマギする。でもすぐ誤魔化される。
「飲み物とってくるね!」
あせるようにして部屋を出られちゃった。誤魔化し方とかあの頃と全然
変わってないなぁ、市井さん。懐かしくなっちゃった。
ちょっとして市井さんが戻って来た。手にはグラスにつがれた・・・・・
これはシャンパン!?
「これ、お酒ですか?」
コトン、とテーブルにそのシャンパンらしき飲み物を置く。市井さんすぐ座る。
「え、違うよ。ジンジャーエール」
「ジンジャーエールですか?」
聞いた事あるけど・・・・・・何だっけ?
「知らない?お酒じゃないよ。炭酸。サイダーみたいなモンかな」
「・・・・どうも」
グラスを手にとって、少しだけ口に含んでみる。言ったとおりサイダーみたい
な感じで、でもちょっと固いかな?とにかくお酒じゃないみたい。
・・・・おいしいかも。
- 80 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月10日(水)13時49分11秒
- 「そうだ、新メンバーの話してたんだよね。名前は?」
「えっと、高橋、紺野、小川、新垣。みんな中学生です」
「みんな中学生なの?娘。も低年齢化してるなぁ」
「ふふ、そうですね」
時間が経つのも忘れて市井さんと色々な話をした。昔の娘。の事、今の娘。
の事、市井さんの今の仕事のおもしろ話とか・・・。
ふと腕の時計を見るともう八時半。そろそろ帰らなきゃ。
「市井さん、遅くなっちゃったんで、私帰ります」
市井さんも時計を見る。
「おお、もうこんな時間かぁ。わかった、気を付けて帰れよ!」
「はい。またお話しに来ますね」
「うん。じゃな!」
部屋を出ると、来た時より店の中に人が増えていた。市井さんと話してる
時はいいけど、やっぱりこのお店怖い。ちらほら札束とか変な紙袋とか
見えるもん。
- 81 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月10日(水)13時54分16秒
- >>74
>>75
レス本当にありがとうございます!最低でも二日に一回ペースを守りたいと思います!
- 82 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2001年10月10日(水)16時02分22秒
- 流石っすね。
自分が新メンを書けないので、無条件に尊敬してしまいます。
ガンバってくださいっ!
- 83 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月10日(水)18時02分36秒
- >>82
チャミ銀さま!レスありがとうございます!だんだん調子が出てきました。
「あすりか」読んで市井との未成年お酒ネタがかぶってたので驚きました!
パクリではないので・・・・・ご了承下さいませませ・・・・・・。これ書く
のに手一杯でそちらにレスつけられてませんでした。ゴメソナサイ
- 84 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月11日(木)21時57分14秒
- 「お、帰るのか?」
入り口のドアの近くにいたタカミネさんが声をかけた。やっぱり見張り
じゃないのかな?
「はい。また来ますね」
「気を付けて帰れよ!池袋は危ない人いるから」
「はーい」
ドアを開けて長い階段を上っていった。池袋でここが一番危ないでしょ、
なんて冗談ぽく思いながら。
七時すぎちゃったから、今日はお見舞い行けないな。
駅に近くなって、携帯が鳴った。画面を見ると、公衆電話から。なんだろ?
イタ電じゃないよね?出るの怖いな。
おそるおそる通話ボタンを押して電話に出る。
「・・・はい」
『よっすぃ〜!?た、大変なのぉ・・」
聞き覚えの有る声。でも、震えてる。てゆーか、完璧に泣いてる声。
『なっちだよぅ、石川が、石川がぁ・・・・』
「梨華ちゃんが!?」
- 85 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月11日(木)21時58分13秒
- 安倍さんの発言はとてもすぐに受け入れられる物では無かった。信じられない
話で、有り得ない話で、恐ろしい話で、聞きたくなかった。嘘以外考えられない
話。でも、そんな不謹慎な嘘安倍さんが泣いてまでつく訳ない。でも、違う、
違う、真実じゃない。でも、それはまぎれもない真実で、私の心をグチャグチャ
にかき回して泪を溢れさせた。信じたくなくて、これ昨日みたいな悪夢で
ある事を強く、強く願った。嘘だ、嘘だ、嘘だ!
梨華ちゃんが・・・・死んじゃったなんて・・・・・・
だって、昨日まですごい元気にしてたじゃない!お医者さんだって予想以上
の回復力だとか言ってたじゃない!そりゃ、容態急変とかなら解るけど、
なんで!?なんで急に死んじゃうの!?
- 86 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月11日(木)21時59分15秒
- 病院には全員集まっていた。モーニング娘。と、梨華ちゃんの家族、
つんくさんとスタッフの人たち。ほぼ全員泣いてる。訳が分からずぼーっと
してる人もいた。
「よっすぃ〜・・・・」
落ち着かずにキョロキョロしてた加護が一番先に私に気付いた。
つんくさんはみんなの固まりの一番奥で目を押さえていた。
「梨華ちゃんは!?」
みんな下向いて黙ってる。病室のドアを開けると、中に飯田さんが一人で
ベッドの横に座っていた。泣いてる。
「飯田さん・・・・・」
ベッドに寝た梨華ちゃんの顔、白い布がかけられていた。もちろん、それは
“死”を表すの物に他ならなかった。
「梨華ちゃん!!」
すぐにその忌々しい布を取って、梨華ちゃんの顔を見る。寝てるようにしか
見えない。私がイタズラした時と全く同じ顔。でも、撫でてみると、
すごく冷たい。揺らしても、梨華ちゃん、起きない。名前を呼んでも、
大きい声だしても、梨華ちゃん、起きない。嘘だよ。ほら、急に起きあがって、
“なに泣いてるの?”とか、優しい声をかけてくれるんでしょ?ほら、
梨華ちゃん、起きてよ、ほら!早く起きてよ!!
「起きてよ梨華ちゃん!!」
飯田さんが私の手を握った。
「よっすぃ〜、もう、起きないよ、石川」
「嘘!嘘だよ!寝てるだけだよ、梨華ちゃん寝てるだけだよ!ほら、もう
こんな時間だよ!起きなきゃダメだよ梨華ちゃん!」
「よっすぃ〜!」
飯田さんが私の方を掴んだ。しっかりと私の目を見る。でも、泪でぼやけて
よく解らない。
「辛いのも、信じられないのも、解るけど・・・石川、死んじゃったの」
- 87 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月11日(木)22時00分14秒
- ・・・・・もう、信じるしかなかった。
私は梨華ちゃんの胸に顔を埋めて、思いっきり声を上げて泣いた。
梨華ちゃんの元気な笑顔が頭に浮かんできて、梨華ちゃんを失った恐怖が
改めて私の心をグチャグチャにした。いままでの楽しかったこと、
いっしょに仕事した事、全部想い出して、私の中の梨華ちゃんを消えないように
した。でも、そのおかげでより悲しくなった。
「原因が、よくわかんないんだって・・・」
梨華ちゃん・・・・・・。
「さっき、看護婦さんに聞いたの。もう、石川は完全に回復してて、本当
なら、明日退院させてあげるハズだったって・・・。それをね?一昨日、石川
に話したんだって。そしたらね?石川、すごい喜んで、急に事務所に顔出して
みんなを驚かせるんだって、楽しみにしてたんだって・・・・・」
泪が止まらなかった。梨華ちゃんも、寂しいでしょ?
「なのに、なのに・・・・どうしてこんな事に・・・・・」
飯田さんも声を上げて泣き始めた。病室の外からも、みんなのすすり泣く
声が聞こえていた。
- 88 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月12日(金)19時16分36秒
- 梨華ちゃんの遺体は地下の霊安室に運ばれ、みんなは長い事梨華ちゃんのそばで
泣いていた。梨華ちゃんのそばを離れたくないのはみんな一緒。近くに居て
あげたいのはみんな一緒。でももう深夜なので、梨華ちゃんの家族を残して
娘。とスタッフ、そしてつんくさんは帰ることになった。私はメンバー達と
いっしょには帰らず、つんくさんと少しお話ししてから帰ることにした。
いつも優しく娘。を見守っててくれた大きな存在。こうゆう時は一番頼り
になる。つんくさんだって悲しんでる所なのにちょっと申し訳ないけど・・・。
病院の入り口、タクシー乗り場の近くにあったベンチに二人で座った。
「私、どうしたらいいでしょうか?」
つんくさんはちょっと赤くなった目をこすって真剣に答えてくれた。
「悲しいかもしれへんけど、頑張るんや。石川の事忘れずに頑張って仕事す
るんや。いつまでも泣いてたって石川が悲しむで。あと、モーニング娘。は
絶対に解散させへん。お前らバラバラんなったら身も心もズタズタになるやろう
し、解散したら、“私のせいだ”って石川責任感じてまうやろ」
「・・・・はい」
梨華ちゃんの事も娘。の事も全て考えて出した最良のアドバイスに聞こえた。
ちょっと“よくある話だ”って感じもするけど、そんなの問題じゃなかった。
さっき枯れるほど流した泪が再び溢れてきた。やっぱり寂しいよ、梨華ちゃん。
「俺この後寄る所あるから、吉澤、家帰れ。タクシー止まってるからな。
コレ、使い。ほなな」
つんくさんはベンチに二千円置いてそそくさと歩いていってしまった。
- 89 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月12日(金)19時17分19秒
- 悲しくて泣きそうな顔を私に見せたくなかったのかな?つんくさんちょっと
急いでる感じだった。お金貰ったのに御礼も言えなかった。また会った
時で良いか。とにかく、早く家に帰ろう。梨華ちゃんの近くにいたいけど、
それは出来ない。悲しい気持ちを抑えて、家に帰るんだ。自分の部屋
なら、どんなに泣いても周りを気にしなくて良い。今まで梨華ちゃんと
一緒に仕事した事や遊んだ事をしっかりと想い出して、頭にもう一度
焼き付けて、梨華ちゃんが居た事、同じ空間で笑ってた事を忘れないよ
うにするんだ。梨華ちゃんがこの世に生きていた“証拠”を私の頭の
中に築き上げるんだ。
・・・・なんて強気な事思ってみたけど、私はやっぱりそんなに強く
なかった。タクシーの窓の外を通り過ぎて行く街の灯りを見ていたら、
何故か泪が私の心を突き上げるように溢れてきた。悲しみに胸が圧迫
され、呼吸困難にも似たような事が私を苦しませた。悲哀に満ちた声と
泪は一向に止まろうとしない。
嫌だ、嫌だよ梨華ちゃん、行かないでよ、私から離れないでよ!
タクシーが自宅の前に止まった後でも、私はずっと泣き続けていた。
家に帰ってからも両親には詳しくは話せないまま、私はベッドに倒れ込んだ。
- 90 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月12日(金)19時18分10秒
- シーツが泪でビショビショになった。信じなきゃいけない事実とそれを
認めたくない私の心が葛藤して、もう何もわからなくなった。今でも
梨華ちゃんがあの病室で退院を心待ちに微笑んでるように思えて、
ただひたすら現実から私は逃げていた。その現実は、“石川梨華の死”
だけではなく、世の中全ての物、学校、仕事、仲間、私自身。全てから
目を背けて何も考えたくなかった。泣き疲れて寝る、なんて少しは期待
してみたけれど、実際そうもいかなかった。泪は止まらず、私の中の物
を何もかも洗い流し、梨華ちゃんとの思いでだけをくっきりと残して
いくような気さえした。梨華ちゃんがもういないなんて、もうお話したり
一緒に歩いたりも出来ないなんて絶対に嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ!
- 91 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月13日(土)03時57分13秒
- この問題については、つんくを抹殺すれば全て解決するものと思われます。
- 92 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月14日(日)14時59分10秒
- 少しだけ寝れたのだろうか?気付くと窓からカーテン越しに
淡い光が漏れてきていた。朝だ。私は一晩中ずっと泣いていたの?
わからなかった。混乱しすぎていて夜の記憶がほとんどない。
ただ覚えてるのは、今までの梨華ちゃんとの思い出だけ。
もう泪も今度こそ完全に枯れてしまい、ただただ放心していた。
「・・梨華・・・・ちゃん?」
名前を呼んでみた。返事は有るはずもない。そんな事はわかって
いたけど、何か落ち着かなくて、何にもわかんなくて、ただ名前を
呼んでいた。
「梨華ちゃん、梨華ちゃん、梨華ちゃん・・・」
窓からの光が強くなるのに比例するようにして意識がだんだんと
ハッキリしてきた。“悲しいけど、いつまでもクヨクヨしてられない”
そんな言葉が、やっと私の中で実現しそうな気が少しだがしてきた。
- 93 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月14日(日)14時59分55秒
- 大きいお寺で、梨華ちゃんの告別式が厳かに行われた。黒いスーツ
着るのなんて久しぶりだよ。
参列者は多かった。今のモーニング娘。はもちろん、脱退した
メンバーも駆けつけてくれていた。
「吉澤」
気付くと隣に中澤さんが立っていた。中澤さん、泣いてる・・・・。
「私な、石川すぐ元気になると思っててん。ただのストレスで
入院するなんて、ちょっと弱すぎや、とか思っててん」
中澤さんはやっぱりちょっとキツイ。でも、中澤さんのこんな
悲しい表情見るの初めてだよ。
「なのに、なのに、何で死ぬんや石川!?おかしい、絶対おかしい。
こんなん、有り得へん話や・・・・」
中澤さんのすごく寂しい表情。枯れたはずの泪がまた私の心臓
を高ぶらせた。
- 94 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月14日(日)15時00分37秒
- いまにも座り込んで泣きそうな中澤さんを労るために、福田さん
が私たちの元へやって来た。
「裕ちゃん、大丈夫?」
そうだ、福田さんはいっしょに仕事した事なかった。
「うん、うん。ありがとな明日香」
「吉澤さんも元気出して!」
「あ、はい・・・・」
ちょっと緊張・・・。福田さんとお話した事なんてほとんど無い。
福田さん、元気に振る舞っていたけど表情はぎこちなかった。
いくら面識があんまり無いって言っても、同じ“モーニング娘。”
っていうものに居たんだから、悲しくない訳がない。
周りを見渡すと、祭壇の前でお坊さんがお経唱えて、その横に
梨華ちゃんの家族と親戚の方々が座ってる。そしてお焼香の列
にならぶスタッフやメンバー、知り合いの列。石黒さんはご主人
といっしょに来ていた。
ちょうどごっちんがお焼香を終えて祭壇の前を離れていった。
祭壇には色とりどりに花が飾られ、中央には明るく笑う梨華ちゃんの
遺影が飾ってある。遺影は嬉しい時や楽しい時の写真を使った方が
良いって聞いたことあるけど、あの写真は本当に楽しそうに笑って
いて、“私、人生楽しんでます!”って感じだった。でも、それも
終わっちゃったんだよね・・・・。
- 95 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月14日(日)15時01分14秒
- そうだ、市井さんにも伝えなきゃ・・・・・。
「私、ちょっと失礼します」
中澤さんと福田さんに挨拶して、LineHeavenへ向かう。お手伝い
とかでかなり長い事ここにいたから、気付くと時計は午後七時を
指していた。この時間ならお店開いてるよね。
急いでいると、梨華ちゃんの家の前につんくさんが居た。見た事
無い男の人と。つんくさんの知り合いかな?それとも会ったことの
ないスタッフ?
「つんくさん」
「おお、吉澤。もう帰るんか?」
「ちょっと用事があって・・・」
隣の男の人は喋らずずっと下を向いていた。
「気を付けてな」
「はい」
駅に急ぐ。なにか気になって途中振り向く。つんくさんと男の人
が何かを話してる。顔が真剣。やっぱり梨華ちゃんの事そうとう
つんくさんにもダメージあったんだろうな。
- 96 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月14日(日)15時02分11秒
- >>91
嗚呼!でもよっすぃは気付いてませんね
- 97 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月21日(日)18時41分03秒
- まだ人の多い電車に乗って池袋へ。駅に着いたらまっすぐに
お店へ向かう。北風が駆け抜ける裏道を通ると、店が見えた。タカミネ
さんは店の前に立っていなかった。あっぱりあれって見張りじゃない
みたい。あ、そんな事より早く市井さんとこ行かなきゃ。
店の階段を駆け下りて、ドアを開ける。中はいつもと同じ雰囲気。
カウンターを見ると、店長さんとタカミネさんも一緒にいた。
駆け寄って市井さんがいるか聞く。
「タカミネさん、市井さん来てますか?」
「吉澤か。今日はまだ来てないな。多分八時までには来ると思う。
来たら言って置くから、奥で待ってな」
「はい」
まだ来てなかったみたい。とにかく奥の部屋で待つことに
- 98 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月21日(日)18時42分01秒
- 一人きりの部屋は心細くて、店の雰囲気もあって怖かった。
静かな空間にいると、梨華ちゃんの事を想い出す。笑い声や話した
事。全て失われたんだよね・・・・・。
俯いてそんな事考えてたら、ポタッてテーブルに泪が一滴落ちた。
それとほぼ同時に、部屋のドアが勢い良く開けられ、市井さんが
入ってきた。私の泣いてる顔を見て驚いてる。
「ど、どうしたの吉澤!?」
「市井さん・・・・」
カバンを放り投げるように置いて、市井さんは向かいに座る。
「あの、実は・・・・」
「なに?」
言いにくくて、何秒か沈黙が流れた。でも、勇気を出して伝える。
「梨華ちゃんが・・・・昨日の夜、亡くなりました」
市井さん無表情。
「・・・・・・・・・・・は!? 何言ってんのアンタ?」
「本当です。梨華ちゃん、昨日の夜病院で・・・・」
市井さんの表情がだんだん強く、しかし目には涙は溢れ初めて
いた。
「嘘・・・嘘でしょ?吉澤!んなわけないでしょ!?」
「市井さん・・・・・・・」
しっかりと市井さんの目を見つめた。じっと見てると、市井さん
私の言って事信じたらしく、泪を流してソファに身体をまかせた。
- 99 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月21日(日)18時45分08秒
- ここで長々とお話してるような空気じゃなかった。私はその事を
伝え、十分ほど市井さんを労ったり話したりして、私は早々に
店を去った。
- 100 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月21日(日)18時47分18秒
- 色々あって更新が遅れまくってしまいました。ゴメソナサイ
また腕が鈍りそうで怖いです。
- 101 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月23日(火)16時30分09秒
- ・・・・梨華ちゃんのお通夜が終わってから三日ほど経った。
梨華ちゃんが死んでから少し仕事が多くなった。もちろん前と
変わらない、音楽雑誌の小さい記事だけど、内容はみんな同じ。
“新メンバー加入直後の旧メンバーの急死。そんな悲しみを乗り
越えて頑張る娘。たち”
そんな事で多く取り上げられても全然嬉しくない。
また周りがバタバタし始めた頃、市井さんから連絡があった。この前
お話した時に携帯の番号を交換していたのだ。
“今夜店に来て欲しい。大事な話がある”
市井さんはそれだけいうとすぐに電話を切ってしまった。私は
何がなんだかわからないまま、七時ぐらいに店に向かった。
- 102 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月23日(火)16時30分41秒
- お店の雰囲気は変わらない。でも、少しだけいつもより静かに
見えた。多分、私が緊張してるせいでそう見えるだけだろう。
奥の部屋をノックしてあけると、市井さんが私を待っていた。
「座って」
なんかテンション低い。なんかあったのかな?私、相談受けたこと
なんてないですよ、市井さん。
「何かあったんですか?」
「ん・・・・・うん」
市井さんは背もたれから体を起こして私の目をじっと見つめた。
「驚かないでね・・・?」
「・・・・はい」
「梨華ちゃん、死んじゃったよね?元気だったのに急に。それで、
私、何かおかしいと思って、ちょっと調べてみたんだ」
- 103 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月23日(火)16時31分26秒
- お店の雰囲気は変わらない。でも、少しだけいつもより静かに
見えた。多分、私が緊張してるせいでそう見えるだけだろう。
奥の部屋をノックしてあけると、市井さんが私を待っていた。
「座って」
なんかテンション低い。なんかあったのかな?私、相談受けたこと
なんてないですよ、市井さん。
「何かあったんですか?」
「ん・・・・・うん」
市井さんは背もたれから体を起こして私の目をじっと見つめた。
「驚かないでね・・・?」
「・・・・はい」
「梨華ちゃん、死んじゃったよね?元気だったのに急に。それで、
私、何かおかしいと思って、ちょっと調べてみたんだ」
- 104 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月23日(火)16時32分06秒
- ・・・・・・え!?
「そ、それって、え?まさか・・・・・」
「うん。石川死んだの、つんくが仕組ませたんだよ・・」
わけがわからなくなって、本当に気が狂いそうになった。意味わかんない。
「市井さん、それ何のドラマですか?」
「ドラマなんかじゃない。真実だよ。でも、今すぐこの場で信じろ
とは言わない。時間かかってもいいから、とりあえずこの事実を
受けとめて」
わけわかんなくなって、涙なんか出るはずもなかった。
「・・・なんでつんくさんが?」
「“今のモーニング娘。は失敗作だ”って、言ったの」
失敗作?・・・・そんな、モノじゃないのに・・・・・
「やばいよ、つんくさん、まだ誰か殺すつもりだよ」
- 105 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2001年10月23日(火)17時06分31秒
- 何だかダークな展開を予想してしまいますが、ハードボイルドで
カッケェよっすぃが見られるのか?
それとも……期待しつつ、自作の方も頑張るとするっす!
>>83
未成年お酒ネタ、奇遇ですねぇ。
何だか嬉しいっす!
これからもヨロシク〜。
- 106 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月27日(土)17時16分44秒
- こういうの好き
ガソバレ作者
- 107 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月31日(水)22時48分15秒
- 市井さんのその異常な言葉が頭の中をぐるぐる回ったまま、
私は自分の部屋で寝ていた。天井をじっと見つめ、出来る限りの
力を使って市井さんの言った事を考えた。
もちろん、信じられる話じゃない。あんなに優しくて娘。の
お父さんのような人が、そんな恐ろしい事するわけがない。
・・・でも、市井さんが嘘をつくなんて考えられない。
いつの間にか、私の心の中に“怒り”という感覚が現れ始めていた。
自分でも不思議なくらいに鼓動が高鳴り、梨華ちゃんを失った悲しみ
がつんくへの怒りへと形を変えていった。
こんな話は信じないと自分で思っていても、心の奥底でその話が
事実だと認識してしまったらしい。
- 108 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月31日(水)22時49分06秒
- 眠れない夜が明け始めた。
突然、机に置いていた携帯がけたたましく着信音を奏で始めた。
ベッドから体を起こして携帯に駆け寄る。
・・・・・・・!
発信相手を表示している液晶パネルは今の私にとって身震いするほど
恐ろしい文字を表示していた。もちろんそれは私が設定したモノだったが。
“つんくさん携帯”
携帯を手にとってはみたものの、通話ボタンを押す事に抵抗があった。
だがしかし、ここで電話に出ないのは逆に不自然だと思った。
通話ボタンを押して、耳につけた。
- 109 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月31日(水)22時50分12秒
- 「・・・・はい」
いやに陽気な関西弁がすぐに聞こえてきた。
「おお、吉澤、こんな時間にすまんなぁ」
人を死に追いやった人間がこんなにも明るく話せるものなのか?
「ちょっと今すぐ事務所来て欲しいんや」
「い、今すぐ・・・・ですか?」
「おお、今すぐや」
悪い予感がした。メンバーみんなが集まる訳でも無さそうで、多分私
一人呼ばれたんだ。・・・・まさか、私、殺されるの?
「大事な話があるんや、来てくれ」
ここは・・・行った方がいいんだろうか・・・・・?
「・・・解りました。いまから行きます」
「ほな、待ってるからな」
返事をしてしまった。でも、どんな事があっても私は逃げ切れる
自信があった。どこからそんな自信が湧いてくるのかは解らないが、
少なくとも“殺されない”自信は強くあった。
- 110 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月31日(水)22時54分24秒
- 色々重なって更新が大幅に遅れてしまいました!本当にゴメソナサイ!!
ええ、僕の身に降りかかった出来事は以下の通りです。
<学校・趣味・中間・睡眠・失恋・鬱>
全部身勝手ですね(反省)。
- 111 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年10月31日(水)22時56分38秒
- >>195
レスありがとうございます!かっけーよっすぃ〜作りたいと思います!
>>106
レスありがとうございます!そういっていただけるととても嬉しいです!
- 112 名前:キャメル 投稿日:2001年11月11日(日)23時08分56秒
- 今日、全部読みました。
すごくドキドキさせる展開ですねー。
続きがとても気になる!更新頑張ってください!
- 113 名前:平家派 投稿日:2001年11月30日(金)00時24分44秒
- 待ってるよー。頑張ってー。
- 114 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年12月12日(水)16時09分17秒
- 会議室は暖房がかかっていて、とても暖かい。でも、私だけ冷た
い感じがして、場違いな気さえした。冷たいって言っても、優しさ
が無いとか、そういう訳じゃなくて、恐怖に震えているんだ。
つんくさんの態度はいつもと何一つ変わらなかった。話し方も
明るくて、優しくて、私たちの保護者みたいな感じ。
市井さんが言った事なんて忘れちゃいそうなくらい。
「石川が死んでな、ショックでみんな仕事にちゃんと身が入らへん
ねんな。得に、お前は石川と仲良かったしなぁ」
「・・・・はい」
緊張して口数が少なくなってしまう。
「でな、ここらでお前にいつも以上に仕事頑張ってもらって、
モーニング娘。の空気を盛り上げてもらいたい。いつまでも暗い
まんまじゃ、石川も浮かばれんやろ」
「・・・なんで私なんですか?」
「そ、そりゃお前なぁ、俺は吉澤の事信頼して言ってるんやで。イヤか?」
「・・・・・イヤじゃないですけど・・・・」
- 115 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月12日(水)16時10分35秒
- 話の流れからすると、今ここで私が殺される事はまず無いようだ。
「じゃぁ、頼むな」
つんくさんは最後にそ言うと、そそくさと部屋を出ていった。
私の頭は少し混乱してきていた。
その日は久しぶりにテレビの仕事だった。テレビは雑誌のインタビュー
やラジオのゲストより緊張する。そのせいもあるのか、楽屋は
静かだった。つんくさんの言った通りにしたい訳じゃないけど、
この場の雰囲気は盛り上げたかった。
「みんな、元気出して下さいよ。こんなんじゃ梨華ちゃん悲しみ
ますよ!明るく元気に、お仕事しましょぉ!!」
みんなに少し笑顔が戻った。
「うん、そうだね。頑張らなきゃね」
笑って安倍さん。新メンバーの笑顔はまだぎこちないけど。
- 116 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年12月12日(水)16時11分47秒
- 仕事は順調に進んで、みんなの笑顔で終わった。これからも
もっと頑張らなきゃいけない。
それから、モーニング娘。は前の勢いを取り戻した。仕事も少し
増え、「忙しい」と言えるような日もあったくらいだ。
しかし突然、また道をそれ始めた。保田さんがぱったり仕事に
来なくなったのだ。
「圭ちゃん、今日もお休みなんだ」
「最近ずっと来ないよね。スタッフに聞いても知らないって言うし」
「どうしたんだろ?」
無断欠勤なんか絶対にしない保田さんが、連絡なしに仕事を休んでる。
どう考えてもおかしかった。
私は思いきってつんくさんに聞いてみる事にした。
- 117 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年12月12日(水)16時12分32秒
- 「保田はなぁ、今田舎に帰ってんねん」
「田舎?でも、私たちなにも聞いてないですよ」
「本当か?・・・なんか、言いたく無い事やったんちゃうか?
でも、ちゃんと俺には連絡入ってるから心配せんでええよ」
「・・・わかりました」
簡単に信じられなかった。メンバーの誰にも伝えず、保田さんは
田舎に帰ったなんて。
でも、それだけじゃ済まなかった。私は見つけてしまったんだ。
新聞の片隅に小さく載っていた記事を。その有り得ない文字を。
でも確かに書いてある。新聞が嘘をつく訳ない。書いてあるんだ。
“モーニング娘。保田圭脱退”と。
- 118 名前:Nanashi&Co. 投稿日:2001年12月12日(水)16時15分31秒
- >>112
レスありがとうございます!暖かい応援ありがたいです!!
>>113
レスありがとうございます!帰ってきましたよぉ。また頑張ります!
115は名無しになってしまいましたが僕です。
- 119 名前:ヤグヤグ 投稿日:2002年03月21日(木)00時50分39秒
- 作者さん、お願いだ、続きを・・・
- 120 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月30日(土)11時59分52秒
- 放置かい?
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