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ヒロインドリーム

1 名前:第1話 投稿日:2001年09月23日(日)15時35分27秒
『小さい頃からずっと、歌で頑張っていけたらいいなってそう思ってました。
――――夢が叶って、ほんとに嬉しいです』

眩しいくらいのスポットライトをあびて、ステージに立ちながら
私の歌がみんなに届きますようにって。みんなに勇気を愛を伝えられますようにって。



ずっと夢見てたの。

―――

―――

2 名前:第1話 投稿日:2001年09月23日(日)15時36分13秒
昨日今日に始まったことじゃないけど、その日は特にサイアクだった。
出かけようとしたら郵便物はあらされてるし、マンションを出てあくびを
した瞬間に物陰から盗撮されてたし、逃げようとしたら慌ててゴミ箱に突
っ込んじゃうし、その上を小犬が通過するし、それをあざ笑うかのように
すずめの大群も通過するし、着替えに戻ったら結局遅刻して怒られた上に
、今日発売の週刊誌にはコンサートの時の際どい写真が掲載されてるし、
その所為であちこちから俺にも見せてなんて野次が飛んでくるし、睡眠不
足でお肌も荒れてるし……

“トントン”

ほんの少しの時間に目を閉じて仮眠している私の肩を誰かが叩く。……無
視無視。
プライベートも仕事も、一時も、一瞬も気が休まるときがない。
アイドルだって欠伸もするし、ババシャツだって着ちゃうし、トイレだって
行くし笑いもすればおこりだってするんだよ。
3 名前:第1話 投稿日:2001年09月23日(日)15時37分19秒

“トントン”

……しつこいなあ

“トントン”

……もおっ!!

さっきから純情可憐な私がこの小さな胸を痛めて悩んでるって言うのになん
て無神経な人なのかしら!
と怒りつつもそこはアイドル。「小犬のような仕草でかわいらしく目覚めるお
姫様」
をイメージしてゆっくりと目を開ける。
「ん……」
フフ、この悩ましい声。我ながら罪作りな女。これでりかっちの虜ね。
「ん、じゃないわよ」
目覚めにはきつい派手な金色が飛びこんでくる。
「なんだ、矢口さん」
「ムッ、なんだとはなんだよっ!」
「きゃあっ」
ああん、痛いーっ。
すかさずとんでくるでこピン、ヒリヒリする額を押さえる。
4 名前:第1話 投稿日:2001年09月23日(日)15時38分52秒
くすん。
じわりと滲んだ涙でぼやけた視界の向こうから彼女がやってくる。
「すいませんっ、矢口さんお待たせしちゃって。トイレが混んでて……」
この声……「トイレ」なんて単語もなんだかステキに聞こえる。
「あっ、よっすぃ〜。オイラ探してたんだぞっ」
途端にコロリ、態度を豹変させる矢口さん。女って恐い。
そんなことは別としてあのちょっと照れくさそうにしてる仕草がまたたまらない。
ああ、愛しのよっすぃー(ハート付き)
とびきりの笑み、ファン向けのアイドルスーパースマイルを作って私も彼女に
微笑みかける。
「もしかして私待ちでした?ごめんなさい……」
「いいんだよう。でも……寂しかった。さ、いこ」
「はい。あ、でも……」
ちらっとよっすぃーが私の方を見る。
「ああ、石川は今日カントリーの仕事だから。ほらほら行こうよ」

なによ……
なによ、なによ、なんなのよ――――――
5 名前:第1話 投稿日:2001年09月23日(日)15時40分21秒
朝からほんとついてないし愛しいあの人は持ってかれちゃうし、追いかけたく
ても仕事があるからそうもいかないし。
おまけにやけに手がべっとりすると思ったら誰かが飲み掛けの缶コーヒーを私
の手元におかれて、それが毀れて着いちゃってるし。
その缶を鷲掴みにする。
ああ、どれもこれもそれもこれもっ、みーんなみんな芸能人なんかやってるせ
いなんだ。
もうっ、
ゴミ箱目掛けて振りかぶる。


―――――辞めちゃいたいよ!!―――――――

思いきり、缶を投げつけた。

ああ、でも私忘れてたんです。

「危ない!矢口さん!」

カコーンという音が鳴り響く。
6 名前:第1話 投稿日:2001年09月23日(日)15時41分50秒
「よっすぃー!!」
矢口さんに覆い被さるようにして倒れこんだよっすぃーの傍らに缶がカラカラ
と乾いた音を立てて転がった。
死んだようにピクリとも動かないよっすぃー


――――私、天才級のノーコンだった。


――
―――
――――
お願いです、神様。
お弁当のから揚げが一個少なくても、家でゴキブリの大群が発生しても、ヌード
写真集の仕事が来ても、(いやん)私なんでもします。だから、だから…
よっすぃーを助けてください。
7 名前:第1話 投稿日:2001年09月23日(日)15時43分28秒
「ふ、ふえ〜〜〜〜ん死なないでぇよっすぃー」
「泣くな石川!!不吉やろっ」
後頭部を押さえたままピクリともうごかないよっすぃーはそのまま病院へと
運ばれた。
「特に際立った外傷はないのですがただ意識が……」
初老手前のよくいえば博士風、悪く言えばマッドサイエンティスト風味の意
志が説明する。
「……大丈夫。きっと、きっと……」
矢口さんの言葉はまわりにというよりもむしろ自分自身に言い聞かせる風だった。
普段突っ込みの厳しい矢口さんが一言も私を責めなかったことが返って辛かった。
「私のせいで…」
「そんなんいうてもしゃーないやろ、うちらに今できるんは祈ることだけやろ」
娘の一大事とあって無理矢理仕事を抜けてきた中澤さんに軽く頭を小突かれる。
みんなに囲まれたよっすぃーは相変わらずとってもキレイだったけれど中でも
一番きれいなはずの瞳は瞼でしっかりと閉ざされたまんまだった。
8 名前:第1話 投稿日:2001年09月23日(日)15時44分34秒
「先生……」
ごっちんが深刻な眼差しで訴える。
「はっきり言ってください。よっすぃーは助かるんですか!?」
「いや……」
くぐもった声で答える医師。体中の血が下がっていく感覚がつき抜ける。
「そんなっ、まだ16歳なんですよ?このまま植物状態なんて」
しょ、植物状態っ?
「いや……だからですねえ。外傷はなくてですねえ」
「あっ、ねえ!よっすぃーが何か言おうとしてるよ」
一斉にみんながベッドに注目する。
「なんや?なんやよっすぃー、遺言やったらちゃんと聞くから」
なんてとんでもないこというのあいぼん。
「ふ……」
「ふ!?」
何、言って!よっすぃー。
まさか梨華ちゃん愛してたよ…とか?
今度生まれ変わったら結婚しようとか?きゃっ、そんなあうれしいけど…でも
「ふ…」
「ふ?」
9 名前:第1話 投稿日:2001年09月23日(日)15時45分18秒
ピンと張り詰めた空気が辺りを包み込む。

「ふわぁ―――っ」
……は?
そのままよっすぃーはむっくりと起き上がってもう一度小さくあくびをした。
「あー、良く寝た。ん、あれ?みんなどうしたの?中澤さんまで集まって」
「よっすぃー、……その、なんともないの……?」
あんぐりと口を開けて尋ねる矢口さん。傍らで医師が相変わらずくぐもった声
で呟く。
「だから、外傷も何も無くてただ眠ってるだけだと……」
「よっすぃー!!」
「わっ、矢口さんどうしたんですか?そんな、みんな見てるのに…」
そういうよっすぃーの声は無理してるようでもなんでも無く、むしろいつもよ
り元気なくらいだった。
一気に緩和する空気と、巻き起こる笑い声。
よかった、なんともなくて。
ほんとに、ほんとによかった。
なんともなくって……

そう、なんともなくてって。
そう思ってたんですよ。このときは。
10 名前:あるみかん 投稿日:2001年09月23日(日)15時50分05秒
今回は久しぶりに軽めのタッチで書きます。
一応長さは中篇くらいで。内容は追々と言う事で。
ヨロシクおねがいします。
11 名前:名無しさん 投稿日:2001年09月23日(日)17時42分50秒
う〜ん、1を見た瞬間からあるみかん氏と気づいた俺。
12 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月23日(日)20時54分24秒
今回は石川主役ですか。
久々の軽めタッチ、楽しみにしてます。
13 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月23日(日)21時08分07秒
いつもながら出だしがいいですね。
14 名前:あるみかん 投稿日:2001年09月23日(日)21時33分52秒
>11さん あら、やっぱワンパターンですかね。どうもこういう出だしになっちゃう
んですよね。。せめて内容は変えるよう努力します。

>12さん かなり「きてる」石川主役です。登場人物は今のところ、いし、よし、
そしてやぐといったところです。少しずつ他メンも登場する、かな?

>13さん ありがとうございます。どうも冒頭にキーワードをもってくるクセが
あるみたいで。
15 名前:第2話 投稿日:2001年09月23日(日)21時36分02秒
次の日、私はいつものように家を出た。
階段の手すりを掴んだからそこにガムが張りつけられてたけれど今日の私はポジティブ。これくらいじゃびくともしないわ。だって昨日なんでもしますって誓った手前これくらいは、ね。
目覚めたよっすぃーと感動的な抱擁は位置どりを間違えて矢口さんにもって行かれてしまったけれど今日は失敗しないわ。楽屋に行ったら飛びついてこういうの
私『ごめんなさい、私のせいで』
よっすぃー(以下、吉)『いいんだよ、こんなの』
私『優しいんだね、よっすぃー……』
吉『そんなことないよ。それに、優しいのは梨華ちゃんにだけ』
私『えっ!?』
吉『もう一度梨華ちゃんに会いたいって、そう思ったら戻ってこれた』
私『うん……私もよっすぃーに会いたかった。もうどこにも行かないで』
吉『もちろん。……梨華ちゃん……』
私『あっ、よっすぃー駄目よ。みんないるのに……そんな、こんなとこで…』

……しかわ

もうやだ、苗字でなんてよそよそしい。り・かって呼んで。
ひとみちゃん……

「こら、石川!石川ってば!」
16 名前:第2話 投稿日:2001年09月23日(日)21時37分18秒
「へ?」
はっとして我に返ると矢口さんがこわーい顔をして睨んでた。
「あんた、よっすぃー知らない?」
「え?」
いつのまにか私は楽屋に到着しててみんな忙しなくメイクなんかしてた。
いつもギリギリの安倍さんも珍しく早めの到着だったようで一人を除いた全員が
すでに集合していた。
「よっすぃーまだ来てないんだよ。携帯かけてもつながんないし」
「まさか……」
「考えたくないけど」
平気そうに見えたけど昨日の今日だからもしかしたらどこかで倒れちゃってるの
では。恐らく矢口さんも私も同じようにそう考えている様子だった。
「私、探してきます」
「ちょ……待ってよ!矢口だってそうしたいけど仕事があるんだよ!?」
「仕事とよっすぃーだったら私、よっすぃーを取ります!」
「石川!!」
17 名前:第2話 投稿日:2001年09月23日(日)21時38分32秒
争っている私達に飯田さんが割り込んできた。
「もう本番だよ?探すのは圭織が責任を持って誰かに頼んでくる」
「嫌です!」
「いい加減にしなよ、石川。そもそもあんたのせいで……」
「矢口!そんな言いかたすること無いでしょお?」
「なんだよ、圭織。石川の肩持つわけ?」
「別に肩を持つとか……」
いつのまにか私をよそに矢口さんと飯田さんが口論を始めてしまう。
もう、ぐちゃぐちゃだ。
「あ〜、もしもし〜後藤だけどぉ」
そんな険悪なムードを打ち破る呑気な声。
ごっちん…電話なんかしてる場合じゃないでしょ…
「何してんの?へ?学校にいってる?」
こっちはよっすぃーがいなくて大変だって言うのに。
「さっきかけたのに圏外だしさ…え?授業中だから電源切ってた?よしこ今日ガ
ッコだったの?」
よしこさんなんかと電話してる場合なんかじゃ……
「当たり前でしょって、よしこ、うちら今からグラビア撮影だよぉ?へ?知らない?」
だからよしこはいいからよっすぃー……ってよしこ!?
18 名前:第2話 投稿日:2001年09月23日(日)21時39分22秒
「貸して!ごっちん!」
「うわっ、なにすんの梨華ちゃん」
無理矢理ごっちんから携帯を奪い取り叫ぶ。
「よっすぃー!?」
「は……れ?梨華ちゃん、どうしたの、慌てて」
そこから聞こえてきた声は紛れも無くよっすぃーの声だった。






19 名前:第2話 投稿日:2001年09月23日(日)21時40分46秒
なにやらあやしげな病院の地下室できょとんとした顔のよっすぃーをみんなが
取り囲んだ。
結局、よっすぃーは病欠ということにしてもらって仕事が終わるや否や有無を
言わさずよっすぃーを連れて病院へとやってきた。
「あなたの名前は」
「吉澤ひとみですけど」
「歳は?誕生日は?血液型は?」
「はあ……4月に16歳になりましたけど、血液型はO型です」
出される質問にどれひとつ間違えることなく答えていく。
自分のことなんだから当然といえば当然なんだけれど。
「今日はどうしてお仕事にこなかったんですか?」
「どうしてって、学生なんだから学校に行くのが当たり前じゃないですか」
「そりゃそうなんですけどね、あなたにはモーニング娘が……」
「学生は学業最優先じゃないんですか?」
みんなハッと互いに顔を見合わせた。
「大体、若いうちはいいですけど将来それでどうなるって言うんですか?そんな
アイドルなんて」
20 名前:第2話 投稿日:2001年09月23日(日)21時41分35秒
「えー、何言ってんのよしこ。ほら、楽しいじゃん。だーってだってベイベーな
んてさ」
「そうだよっ、ほら矢口のミニモニかわいいって言ってくれたじゃない」
微笑む矢口さんに向かい大きな溜息をつくよっすぃー。
「矢口さん……ほんとよくやりますよね。歳考えてくださいよ、んなアホなダン
スに歌」
「嘘……冗談、だよね?」
「矢口さんのことは好きですけどそういうとこついてけないですよ」
「よっすぃー……」
ふるふると肩を震わせる矢口さんの隣にいたあいぼんとののが同時にさけぶ。
「ひどいよ、よっすぃー!一生懸命やってるのに」
「一生懸命?それで?ちょっと売れてるからちやほやされてるだけってことに
気付かないの?永遠のスターなんて夢物語だよ。ねえ?」
言葉を失って立ち尽くす二人の肩を抱いた保田さんと視線を合わせる。
「吉澤……」
「保田さんも気付いてるんでしょ?だから会わせてるフリして影じゃこっそり作
曲の勉強なんてしちゃってるんですよね。吉澤もしばらく遊びすぎちゃったん
で…あーあなんで昨日まであんなアホらしいことやってたんだろ」
21 名前:第2話 投稿日:2001年09月23日(日)21時44分21秒
たまりかねたといったように中澤さんが手をあげようとした。
私は慌ててその腕を制止しようと立ちはだかった。
待って!ちょっと待ってよ?
「なんや、石川。一発なぐらな気がすまん。いくら頭うったからいうても言って
いいことと悪い事があんねん」
どう考えても、おかしいよ。
よっすぃーがこんなこというわけがないもん。
あいぼんもののも信じられないと言った具合に半ベソをかいてるし。
「どうやら……間違いないようですね」
傍らでずっと静観していた医師が重々しく語りかけた。
「吉澤さんは、どうやら昨日の衝撃で」
むしゃくしゃしてて、もう仕事なんてやってられなくて、思いきり私はその思い
をこめて缶を投げつけて、あろうことかそれがよっすぃーに直撃したんだ。

 ◇

「モーニング娘に対する、いやスター全てに対する『夢』を失ってしまったんで
しょうね」

ああ、神様……
こんなことってありえるんですか?

(※ありえるんです。なぜなら作者の都合だから。)
22 名前:第2話 投稿日:2001年09月23日(日)21時45分29秒
「先生!なんとかならないんですか?」
「そうですよ!これじゃ、よっすぃー脱退しなきゃいけなくなっちゃう!」
「私は別にいいけど……」
「本人さんはこのままでいいとおっしゃってるようですが」
「駄目!!」
呑気にお茶なんか飲んじゃってるよっすぃーを押しのけて全員で詰め寄る。
「お願いします!先生」
「いや、でもですね。脳に関する医学というのはまだ未知の領域でして…」
「そこをなんとか!」
今をときめくモーニング娘全員の熱い眼差しに囲まれているというのに医師は明後
日の方向を向いた。その口元が怪しくにやりと笑った。
「そうですか。。。ならば……いやっ、でもあまりにも、あまりにも危険過ぎる!
だが……ふむ、いい実験材料かも……ブツブツ」
なんだか実験とか聞こえたような気がしないでもないけど、それでも。
「よっすぃーが元に戻るならなんでもします!こ、この体差し出しても」
ごめんなさい、よっすぃー。私汚れちゃうかも……
「いや、悪いが私は加護ちゃんオタだ」
「ひえっ」
ささっと影に隠れるあいぼん。
23 名前:第2話 投稿日:2001年09月23日(日)21時46分36秒
「ふふ……まあいいでしょう?世の学会に私の名を知らしめる良い機会かもしれない」
奥の黒いカーテンを勢い良くばっと開ける。
「現代医学の集大成!ドリームクン38号だ!!」
「……」
そこにはSF映画で見るような、ううん。そんなものよりもっと怪しげなタイムカプセ
ルみたいなものが置かれていた。
「……やっぱ、いいです」
「ああっ、皆さん待って!話を最後まで聞いてくださーい」
虚しく医師の声が響き渡った。


――――

「つまり、ですね」
マシーンをよっすぃーのベッドの近くまで持ってくるとどこからもってきたのか黒板とチョークで説明を始めた。
「今吉澤さんはいわゆる『ヒロインの夢』を失っている状態なわけです」
夢と大きく板書する。
24 名前:第2話 投稿日:2001年09月23日(日)21時48分48秒
「普通の記憶喪失の状態というのはあくまでも脳の中の引き出しにしまわれた
状態でそれを引き出すような措置、たとえば思い出深い場所に連れていったり
何気ない普段の会話から思い出させたりとするわけですが、今回の場合は
「夢」そのものが無くなってしまっているわけです。まあ原因はよくわかりま
せんが、なんらかの強い念がぶつけられて、アイドルとかスターに対する夢が
押し出されてしまったと考えるのが正しいと思われます」
ズキリと私の胸が痛んだ。
強い、念……私のことだ。
もうやめちゃいたいって強く、願ってしまった。
「能書きはいいから、で?どうすれば元にもどんねん!」
苛立ってせかす中澤さんをものともせず同じテンポで話を続ける。
「このマシーンはその人の心の思い出に入っていくことができるんです」
「はい?」
突然現実ばなれした話にぽかんとみんな口を開ける。
満足そうに眺めると医師はかまわず現在、過去とかく。

25 名前:第2話 投稿日:2001年09月23日(日)21時51分53秒
「過去なんらかの形で吉澤さんはまあこの場合歌手になりたいっていう憧れや夢
をいだくわけでこの延長上に今の吉澤さんがいます。つまり!」
バン!と過去の文字を叩く。
「つまり、まあ簡単に言えば吉澤さんの心の中に入って、そのなかでもう一度夢
をみさせてあげればいいってことですよ」
      ・
      ・
      ・

「そんな怪しげなの、いいです…」
立ちあがって帰ろうとするよっすぃーにあいぼんとののが飛びかかる。
「この際、怪しかろうがなんだろうがなんでもいい!」
「そうだよ、こんなよっすぃーやだもん!」
「うわっ、ちょっと……先生?何持ってるんですかあ、やめ……」
驚くほどの素早さでよっすぃーの腕に何かを注射するとくったりとなって崩れ落ちた。
「心配することはありません。ただの睡眠薬ですよ。ちょーっと強烈な」
その顔はまさにマッドサイエンティストだったけどこの際頼れるのは神様じゃなく
これしかないんだもの。
26 名前:第2話 投稿日:2001年09月23日(日)21時55分09秒
「ただし、吉澤さんの夢の中に入るのは一人だけなんですけど、どうします?まあ
こちらのモニターから中の様子はある程度観察できることになってますけども。
それに、まだ前例がないと言うことで危険と言うことは承知していただきたいの
ですが……」
20インチほどの液晶モニターを指差す。
かちんと矢口さんと私の視線がぶつかり合う。
「石川、ほら危険な役割なんだからここは矢口が行ってあげるわよ」
「なにいってんですか〜、先輩をそんな危ない目に合わせるなんて」
よっすぃーの心の中に入ってくなんて、そんな、そんな美味しいシチュエーション
ゆずれるもんですかー。
「え〜このチューブをこっちにつけてっと……」
互いに相手の様子を伺いながら牽制しあう。傍らで着々と準備が進められている。
「別に私はいいんですけどぉ、いいんですかあ?中澤さん」
「な、なんや?」
矢口さんから目を外してそっと中澤さんに耳打ちする。
27 名前:第2話 投稿日:2001年09月23日(日)21時55分50秒
「このままだと、よっすぃーに完全に矢口さんとられちゃいますよ?ここは石川に全
て任せて、中澤さんは残された矢口さんを慰めてあわよくば……ってこれどうですか?」
「たしかに……」
こそこそ話し合う私達を矢口さんが不審そうな目で見つめた。
「後は、こっちをもう一方につければいいだけなんですけど……」
ばっと私と矢口さんの手が同時に伸びる。
「させるか!」
「裕ちゃん!?」
中澤さんに両手を掴まれてじたばたする矢口さんの恨みがましい視線を浴びながら……



『スイッチオーン……』

少しずつ、意識が遠のいていった。
待っててね、よっすぃー……
必ずあなたの夢を取り戻して見せるから。

そして私は
〜夢の中へ……―――――
28 名前:第2話 投稿日:2001年09月23日(日)21時59分33秒
          ※※※※※※※※※※※※※※



「っていうか後藤、台詞が全然無いんですけど。寝ちゃおうかなあ」
「……圭織だってだよ」
「……そんなのまだいいよ。なっちなんかそこに居ることすら書かれてないんだから」
「む、ぐう裕ちゃん放してよ−」
「させるかっ」
「梨華ちゃん頑張るのれす」
「よっしゃうちらは応援に専念やで!」
「(ふふ……とりあえずは出番待ちね…)」


          ※※※※※※※※※※※※※※

29 名前:第3話 投稿日:2001年09月23日(日)23時23分07秒
乳白色の空間を抜けて布ごしに感じたような不確かな感触が徐々に現実味を
帯びてきて、そのすべてがはっきりとしてきたとき、

どこにでもあるような普通の街並みに私は佇んでいた。
ここが……よっすぃーの心の中の世界…?
どう考えても受け入れがたい非日常的なこの状況をあまり疑問を感じること
も無く受け入れている私に我ながら感心する。
なにをするにしてもまずは彼女と会わないことにははじまらない。
とりあえず歩き始めると小さな公園が左手に現れて中から楽しげな子供達
の笑い声が聞こえてきた。かわいいなあ、特に真ん中のあの子。将来はき
っと美人になるわ。よっすぃーみたいな。
……ってよっすぃー!?
間違い無い。
あの目鼻立ち、かなり幼く等身も低くなってミニチュア化しちゃってるけ
ど紛れもなくよっすぃーだ!いきなりの遭遇。まあよっすぃーの夢の中な
わけだから、本人が中心に存在すると考えれば当たり前なのかもしれない
けれど。
30 名前:第3話 投稿日:2001年09月23日(日)23時24分29秒
「よっすぃー!!」
大きな声で呼んでみるけれど反応が無い。そんな、いきなり放置だなんて。
何度か同じように繰り返すけれど子供達のうちの一人がいかにも「何、あの
変なお姉さん」テキな視線を投げてよこしただけで当のよっすぃーはどこ吹
く風と言った感じ。
ひどい……
と、私は考え直す。
よっすぃーはそもそも私達がそう呼んでるだけであってぇ、この頃の彼女は…
「ひとみちゃーん!」
すこっぷ片手に砂遊びをしているよっすぃー(推定年齢5〜6歳)はまんまるな
目をして私を見つめた。よし!
「ひとちゃんのお母さん?」
隣のあいぼん似の女の子がよっすぃーを見る。
もう一人の男の子が笑いながらいう。
「違うよ。ひとちゃんのお母さんがこんなに黒いわけないよ」
「そっかー」
けらけらと笑う幼児達に砂を掛けたい衝動をかろうじて押さえて私は微笑んだ
31 名前:第3話 投稿日:2001年09月23日(日)23時25分24秒
「ごめんねー君達、ちょっとあっちで二人で遊んでてくれるかな?」
「え〜」
「やだ!」
両手をしっかりと二人のお子様達に握られてよっすぃーは困ったような表情を浮
かべた。
……この頃からもててたのね、よっすぃー(涙)
「……お姉さんね、この辺のお砂を調べるのがお仕事なんだけど」
「え?」
三人の顔を順番にじっと見つめる。
「どうやらね、ここのお砂にはこわーいばい菌が居るらしいの。だから、早く帰
っておてて洗わないと手が腐って死んじゃうのよ!」
「う、うそ!」
みるみる涙を浮かべて駆け出す子供達。
そうよね、子供は素直が一番。
走っていく子供達の中のよっすぃーだけにねらいを定めて追いかける。
いくらよっすぃーだって大人とかけっこして勝てるわけが無い。
32 名前:第3話 投稿日:2001年09月23日(日)23時26分37秒
「きゃあっ」
先を行ってた子供達がふりかえる。
「ひとみちゃんが捕まっちゃったよ!」
「ひとちゃん!」
「私のことはほっといて逃げて!」
子供でもちゃんと友情ってモノがあるのね。と私の目頭が熱くなる。
子供ってかわいい……
「畜生、覚えてろよ、このブラックマスクめ!」
「ブラックマチュクめ!」
……子供って
かわい、くない。

―――
――

33 名前:第3話 投稿日:2001年09月23日(日)23時27分55秒
「じゃあ、お姉さんは悪い人じゃないの?」
公園の水道でじゃぶじゃぶと手を洗いながらよっすぃー、ことひとみち
ゃん(幼稚園年長さん)は聞いてきた。
「そうよ」
「ほんとに……?」
訝しそうに見上げるその上目遣い名眼差しが……くーっかわいいっ。
これがいわゆる「萌え」ってやつね。
「うわっ、おねえさん苦しいってばあ!」
「そんなお姉さんなんてぇ、り・かって呼んで」
ああ、大人って便利。
ぱたぱたと暴れるひとみちゃんをきゅーっと抱きしめる。
「く……るし」
「あ、ごめんごめん」
ついつい夢中になってしまって目的をすっかり忘れてしまう所だった。
でもせっかくだもの。小さいよっすぃーの感触もしっかり掴んでおきた
いし。
34 名前:第3話 投稿日:2001年09月23日(日)23時29分35秒
「だって、こんな大きいお姉さんに梨華ちゃんなんて変だよ」
「違うの、私はひとみちゃんのお友達なの!(今のところ)」
「でも……」
気分を落ち着かせたところで私は一体どうやってひとみちゃんに説明し
ていいものやらと考えた。
夢をもう一度見させる、っていったってね……
それってどういうことなのかしら。
「私はね、未来からやってきたの。未来のひとみちゃんに頼まれて」
「……へ?」
本当はちょっと違うけど面倒なのでそういうことにしよう。
「ほら、ドラえもんと一緒でね。未来からひとみちゃんを助けにやって
きたの」
「……そう…なの?」
ああ、やっぱりドラえもんて偉大。
途端にひとみちゃんの瞳が子供らしくキラキラと輝いた。
「すごいや!じゃあ道具とか出してくれるんだね!」
「あ、いやそれはちょっと……」
35 名前:第3話 投稿日:2001年09月23日(日)23時30分27秒
「なんだ駄目なんだ……」
まさしくしょんぼりという表現がぴったりな姿に少なからず胸がズキンとする。
やっぱり嘘はよくないなあ。
「とにかくっ、道具は出せないけど、梨華にできることならなんだってしてあ
げるからね。ほらおててこれで拭こうねー」
ポケットからハンカチを取り出して渡す。
「……ありがと。……梨華ちゃん」
小さく呟いてひとみちゃんはそう言った。
「よーし、じゃあ少しお散歩しようか」
「うん!」
はい、良く出来ました。
よしよしと頭を撫でてあげてハンカチを返してもらう。
そして私達は手を繋いで歩き出した。

それにしても。

こんなに堂々とひとみちゃんと手を繋いで歩けるなんて。

……役得役得。きゃっ
36 名前:第3話 投稿日:2001年09月23日(日)23時31分31秒
          ※※※※※※※※※※※※※※



「いしかわ……アイツ何しに行ってんだよ」
「や、やぐちさ〜ん顔がっ顔が恐いですぅ」
「ふわぁ〜、ねえもう終わった。後藤一眠りしていいかなあ?」



          ※※※※※※※※※※※※※※
37 名前:あるみかん 投稿日:2001年09月23日(日)23時34分36秒
今日はここまで。
前置きが長いですがようやく本編(?)突入です。
かーなーり設定に無理はありますが、お付き合いくだされば幸いです。
ちなみに元ネタというかちょこっと参考にさせて頂いたものはあるんですが書くと
歳がばれちゃいそうなんで(笑)昔の少年漫画の中の短いエピソードとだけこと
わっておきます。わかる人いるかな・・・?
38 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月24日(月)04時09分36秒
お、おもしろい。
39 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月25日(火)04時09分07秒
今回はずいぶん楽しい作品ですね。
楽しみ楽しみ。。。
40 名前:LVR 投稿日:2001年09月25日(火)12時36分32秒
今回も、気付かないうちに新作が始まってた……。
今回はリトルビットの乗りですね。面白いです。
それにしても、石川さんが主役だと、やっぱりこういう感じになるんですね(w
41 名前:うでたまご 投稿日:2001年09月25日(火)18時33分44秒
いかん。また出遅れてしまった…。

今までとベクトルが…、思いっきりはじけまくっていますね(笑)
このブリブリな石川は三人祭のイメージなんでしょうか?
これからどうなるのか、楽しみにしてます。
42 名前:あるみかん 投稿日:2001年09月30日(日)16時26分44秒
>38さん どうもありがとうございます。終始ハイテンションでいきたいですね。

>39さん い、いやそこまで古くは・・・ジャンプで連載してた学園ヒーローもの
・・・になるのかなあ?一応。原作では夢を食べられちゃったって設定なのですが。

>LVRさん 確かに・・スリーの石川のノリかも。リトルビットっぽいスレにこっち
はしようと思ってます。

>うでたまごさん 書いているうちにどんどん石川のキャラがおかしくなっていきま
す。ついて・・・きてくれますか?
43 名前:第4話 投稿日:2001年09月30日(日)16時27分38秒
ひとみちゃんの柔らかい手の感触を堪能したところで私は試しに聞いて
みることにした。
「ねえ、ひとみちゃんて将来は何になりたいのかな?」
半ば予想通り、というべきか。
「およめさん!!」
と即答するひとみちゃん。
「……」
そうよね、甘いわよね、梨華。ここで歌手!って素直にいうのならばそ
もそもここに来る必要なんて無いんだモノ。このお話終わっちゃうもの。
私の目的はなんとかひとみちゃんにその夢をもってもらうっていうこと
なんだから。
「歌手なんかどうかなあ?おねえさん大好きなんだけど」
「かしゅ〜?」
うーんと考え込む。悩める幼児吉澤ひとみ、の図。
44 名前:第4話 投稿日:2001年09月30日(日)16時28分27秒
しばらくした後、元気一杯に宣言する。
「やっぱりおよめさんがいい!まーくんの」
「え!?」
「わっ」
なになになによっ、まーくんて。
そんなの聞いてないよお!
「ひとみちゃ〜ん、まーくんて誰かなあ?」
ぷるぷる震えるこめかみを押さえつつ尋ねる。
心持ち頬を赤らめるひとみちゃん。
「……あのね、桃組さんのまさしくん。大きくなったら結婚するって約
束したの」



「だ・め」
ひとみちゃんの前に立ちはだかってしゃがみこむと両肩を押さえて視
線を合わす。
45 名前:第4話 投稿日:2001年09月30日(日)16時29分11秒
「り、梨華ちゃん?お顔が恐いよお……」
諭すように人指し指を一本立てる。
「お姉さんは未来から来たって言ったでしょう?だからね、未来のこと
はなんでもわかるの」
「う、うん……」
「それによるとね、まーくんは将来酷い男になるわ」
「ええっ!?」
ガーンとショックを受けて立ち竦む。
「女房子供のことを顧みず、パチンコ競馬に明け暮れ酒浸りの毎日。給
料は1円足りとも家にいれず、水商売の女に貢いでしまう始末。生活を
苦にやむなく働きにでる妻。けれど、そのパート先で上司に迫られ、涙
ながらもやっとのことで手にしたお金もまた旦那(まーくん)に持って
いかれる。ついには子供を連れての無理心中を考える。けれども泣いて
いる子供の顔を見ているとそれさえもできず、ふっと顔を上げた拍子に
鏡に映ったつかれきった自分の姿を見て……そしてそのとき妻は思うの」
「……あの…」
「ああ、こんなはずじゃなかった!!」


46 名前:第4話 投稿日:2001年09月30日(日)16時30分10秒
「と、いうわけでまーくんとは結婚しない方がいいわ。ね、ひとみちゃん
っ」
「……よくわからないけど、まーくんは悪い子になっちゃうんだね」
「そうそう」
許してね、まーくん。
これもそれもあれもぜーんぶ、ひとみちゃんの夢を取り戻すためなんだか
ら。私情なんてはさんでないよっ。
にっこりと微笑みかける。ひとみちゃんは大きな瞳に涙を溜めてコクリと
頷く。
「でもぉ……」
私が貸したハンカチでぐしぐしで涙を拭きながら心配そうに尋ねる。
「そしたら、ひとみは誰とも結婚できなくなっちゃうの?」
「大丈夫」
まかせなさいといわんばかりにドンと胸を叩く。
「ひとみちゃんはね」
「うん」
「お姉さんと結婚するの」
47 名前:第4話 投稿日:2001年09月30日(日)16時31分26秒
「ええ―――――――――っ!?」
心底驚いたような声が響き渡る。
んもう、ひとみちゃんたら照れちゃってぇ。
「幸せになろうね、ひとみちゃん。梨華は賭け事もしないし、お給料もぜ
ーんぶひとみちゃんのために使うから。子供はちょっと生めないかもしれ
ないけど、きっと科学は進歩するわ!」
「え……あの…」
ひとみちゃんと私の子供。どっちに似てもかわいいだろうけど女の子だっ
たらやっぱりひとみちゃんみたいな色白な子のほうが……
「なあに?ひとみちゃん」
何か聞こうとしてるひとみちゃんの頭をなでなでして問い掛ける。
「梨華ちゃんもひとみも女の子だよね。女の子同士は結婚できないんじゃ
……」
「大丈夫よ、ひとみちゃん」
再びまかせなさいとドンと胸を叩く。
48 名前:第4話 投稿日:2001年09月30日(日)16時32分27秒
「ひとみちゃんが大きくなる頃には法律が変わってるのよ」
「ホウリツ?」
「そう。女の子同士も結婚していいことになってるの」
ほんとは違うけど。
「え…そうなの?」
「そう」
力強く言いきる。
なのに、ひとみちゃんはまだどこか疑い深い眼差しで私を見ている。
「それとも……ひとみちゃん、お姉さん……嘘ついてるみたいかな」
えーん、とひとみちゃんの前で大げさに泣いてみる。
「あっ、ち、違うよぉ。ねえ、梨華ちゃん、泣かないでよ」
「えーん、えーん」
「梨華ちゃ〜ん……わかった、信じる、信じるよう!」
「ホント!?じゃあ、結婚してくれる!?」
「あ、う、……ん…」
「うれし―――――――!!」
「きゃあ」
49 名前:第4話 投稿日:2001年09月30日(日)16時33分14秒
両手でひとみちゃんを思いきり抱きしめる。
私の胸に顔をうずめるひとみちゃん……
あ、駄目だよ、こんなとこで口動かしちゃあ。ちゃんとおうちに帰ってか
ら二人っきりのときに…
「む……ぐ…」
ひとみちゃんがプロポーズしてくれた今日のこの日。
梨華、死んでも忘れません。
私、本当に本当に幸せです。

それにしても


私、何しに来てたんだっけ?



50 名前:第4話 投稿日:2001年09月30日(日)16時33分52秒
          ※※※※※※※※※※※※※※



「矢口さん!押さえてっ、気持ちはわかりますけどっ」
「え〜い、放せ加護!!アイツだけはっアイツだけはあああああ」
「うーん、石川なかなかやるわねえ」
「他人事だね……」
「ZZZZZzzzzzzzz……」



          ※※※※※※※※※※※※※※
51 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月30日(日)16時56分48秒
面白すぎます
52 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月30日(日)17時23分26秒
なに!矢口を止めてるの加護なのか?!
っと驚いたところで、おもしろ〜い。さいこ〜
53 名前:うでたまご 投稿日:2001年10月01日(月)00時06分51秒
石川さんの強引な語り…、すっごいポジティブっす!!
もう石川さんを止めること出来ません。
私は黙ってついていくのみです…(笑)
54 名前:名無し男 投稿日:2001年10月01日(月)00時56分07秒
おい目的忘れんなコラ!!(笑)
55 名前:あるみかん 投稿日:2001年10月02日(火)01時00分59秒
>51さん ありがとうございます。このあとほんの少ししんみりした展開になる
かもしれませんが

>52さん 現実世界に残ってる面々にもなんとか登場チャンスを与えたいんですが。

>うでたまごさん 心強いです。ついてきてください(感涙)一体どこまで暴走するのやら

>名無し男さん 多分この後もしばしば忘れることでしょう(笑)
56 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月03日(水)04時40分05秒
暴走石川…イイ!

でも、犯罪行為だけはダメだぞ…夢の中だからいいかな?(w
57 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月04日(木)13時58分10秒
おもろいっす!
またまたコミカルな梨華ちゃん登場で
大期待です。
58 名前:あるみかん 投稿日:2001年10月06日(土)23時19分13秒
>56さん 夢の中だからいいのです!(笑)

>57さん コミカルっていうにはいささか暴走過ぎるような気もしますが
フィクションてことでお許しくださいっ。
59 名前:第6話 投稿日:2001年10月07日(日)23時07分01秒
「じーんせーいってすっばらっしーい」
よっすぃ〜と出会ったり恋をしてみたりー。
「梨華ちゃん……さっきからその歌ばっかり。ひとみ他ちがうお歌がいい
よ」
「なに言ってるの、幸せなときはこの歌だよ!」
公園を出てひとみちゃんちまでの道のりを鼻歌交じりにスキップする。
公園にいたらまたあの子供達が邪魔しに帰ってこないとはいいかねないか
らね。
「幼稚園でならったお歌の方がいいな……」
「笑顔はー大切にしたぁーい」
「……」
愛する人と心身ともに(あ、身はまだね)結ばれたこんなとき、ああ、
なんていい歌なんだろ。
60 名前:あるみかん 投稿日:2001年10月07日(日)23時08分34秒
ごめんなさい、第5話の間違いです。
それじゃ続きを・・・
61 名前:第5話 投稿日:2001年10月07日(日)23時09分11秒
「おじゃましまーす」
吉澤家の門を潜り玄関の呼び鈴を鳴らすとひとみちゃんのお母さんが姿を
表した。
「あら、ひとみ公園で遊んでたんじゃなかったの?こちらは?」
「あ、どうもこんにちは。私ひとみちゃんとけっこ……」
「と、友達だよう!送ってもらったの」
お母様にきちんとご挨拶しようと思っていたのに、ひとみちゃんの言葉に
遮られてしまった。こういうのは最初が肝心なのに。
もう、ほんとに照れ屋さんなんだから。
「あらあら随分大きいお友達ねえ」
未来のお母様への挨拶もそこそこに2階にあるひとみちゃんの部屋に行く。
最初は照れているのか家に連れてくるのをちょっと嫌がってたみたいだけ
ど、最近覚えたらしいトランプで一杯遊んであげるっていったら喜んで引
っ張ってきてくれた。
早速部屋に入ると真新しいトランプを得意げに取り出して並べる。
いくらひとみちゃんでもトランプ覚えたてのお子様だもの。ばば抜きでも
神経衰弱でもスーパー梨華っちには叶わないわ。ん〜、でも少しは手加減
して勝たせて上げないとすねちゃうかもしれないし。
62 名前:第5話 投稿日:2001年10月07日(日)23時10分05秒
「やったあ!!」
「またひとみちゃんの勝ちだね……」
……そう、そうよ決して負け惜しみなんかじゃなくて、花を持たせてる
だけなんだから!くすん、でもこれで五連敗。
でもどうやらひとみちゃんも上機嫌なようなので私はそろそろ本題を切り
出した。
「ところでひとみちゃん」
「なあに?」
すっかり気を許した様子のひとみちゃんは無邪気に尋ねてきた。
「やっぱり、歌手にはなりたくないのかなあ、ほらテレビに出てる人みた
いな」
「え〜……」
さっき教えてあげたトランプタワーを一生懸命組み立ててまるで興味がな
いように答える。
「……歌手になったら梨華ちゃんと結婚しなくてもいいの?」
「それは駄目よ!」
まるで私と結婚するのが嫌で歌手になるみたいじゃない!
「ひとみちゃんはあ、私と同じアイドルグループに入って、それで恋愛結
婚をして、その後も共稼ぎするの」
63 名前:第5話 投稿日:2001年10月07日(日)23時12分07秒
将来私のこと支えてもらわなくちゃいけないんだから今からしっかり教育
しとかないと。
そんな私の思いをよそにひとみちゃんは顔をしかめる。
「二つもなるの大変そうでやだよ。まーくんもともちゃんもパイロットと
看護婦さんで一つずつだもん」
またしてもまーくん……心の中で呪詛を唱えつつ(読者さんジョークです
からねっ、梨華はそんな怖い事しません)思い悩む。
ああ…どうしよ。

ふいに何気なく手に取ったお母さんのものらしき雑誌に掲載されていた文
字。瞬間ピピッときた。
これだ!!
64 名前:第5話 投稿日:2001年10月07日(日)23時12分56秒
「ひとみちゃん、明日東京にお出かけしよう!」
「とうきょう……?」
雑誌に出てた文字。
それは、『輝け!第15回新人アイドルオーディション』。
きっとひとみちゃんもスターを目指して頑張ってる人達の姿や歌ってる
ところをみたら、自分もなりたいって思ってくれるはず。
私だって、みんなの、そう中澤さんや飯田さん、安倍さんたちが頑張って
きた姿を見て夢を夢で終わらせたくないって、そう思ったんだもの。
ね、よっすぃー…あなたもそうやって瞳を輝かせていたよね。
歌が、すきだって。そう、言ってたよね?

『一生懸命?それで?ちょっと売れてるからちやほやされてるだけってこ
とに気付かないの?永遠のスターなんて夢物語だよ。ねえ?』

淡淡と語るよっすぃーの声がリフレインする。
…やだ、聞きたくないよ。
65 名前:第5話 投稿日:2001年10月07日(日)23時15分51秒
私は知ってるから。
本当のあなたがどんなにモーニング娘を大事にしてたか。
ファンのみんなの声援をどんなに励みにしてたか。
あなたの笑顔がどんなにステキかって。



「梨華ちゃん……?」
私、絶対に……あなたの夢を取り戻す。

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

66 名前:第5話 投稿日:2001年10月07日(日)23時17分16秒
「ねね、梨華ちゃん!切符買えたよ!」
本人曰く、東京へのお出かけは久しぶりだそうで興奮気味にひとみちゃん
は言った。
「良く出来ました〜」
きっと光源氏ってこんな気分だったのね。
早くすくすく大きくなってそして……そこからは言えません!
雑誌のきりぬきと地図を片手に会場に向かう。
終わったら動物園に連れていくと指きりげんまんしたので素直にひとみち
ゃんはついて来る。
思ったよりもこじんまりとした会場は(今のモームスのオーディション
に比べたらそう思ってしまった)出演者と一般客で入り口がわかれている
ようだった。
67 名前:第5話 投稿日:2001年10月07日(日)23時20分34秒
……ん?
くいくいと私の袖を引っ張るひとみちゃん。
「おトイレ行きたい」
「じゃ、一緒にいこっか」
「一人で大丈夫。待ってて!」
一緒についていきたかったけどここは幼稚園年長さんともなればトイレく
らい一人で行かなくては弟に示しがつかないというひとみちゃんのプライ
ドをたてたあげることにする。
そのとき、どこか聞きなれた声が耳に入ってきた。
「おねえさん、すみません」
低い位置から聞こえる声。
真っ黒でくりんとした頭。
「オーディションを受けるんですけどお母さんとはぐれちゃって……」
涙目でうったえる小学生くらいの女の子。
……まさか。
68 名前:第5話 投稿日:2001年10月07日(日)23時22分02秒
「お名前はなんていうのかなあ?」
警戒されないように、ありったけの猫なで声で聞いてみる。
んとね、上目遣いに訴える。
「やぐちまり」
……
……

(石川的ポ・ジ・ティ・ブな思考)
矢口さんが出るオーディションを、ひとみちゃんが見る。

ひとみちゃん、矢口さんの歌を聞いて感動する。

ヒロインの夢を取り戻す

現実世界に戻る。

二人で運命的な出会いと再会を喜び合う。

69 名前:第5話 投稿日:2001年10月07日(日)23時23分13秒

「ああ!!」
私は駅の方を指差して叫んだ。
「お母さんがあんなところにっ!」
「えっ!?」
指差した方を慌ててみる素直な矢口さん。
「ほらっあっちよ!早く行かないと置いて行かれちゃうよ!」
「おかあさーん!」
涙ながらに全速力で会場とは正反対の方向に走っていく矢口さん。
おそらくこの分だと到底オーディションが終わるまで矢口さんが戻ること
は無いだろうと思われた。

ちゃお〜と手を振ってみる。


なんだかほんの少し罪悪感みたいなものが無くは無いけど。

ひとみちゃんの夢の中なんだもん。これぐらいのおちゃめさんは許されるわよね!
70 名前:第5話 投稿日:2001年10月07日(日)23時25分14秒
          ※※※※※※※※※※※※※※



「…途中までいい話やったのになあ」
「うががががががあああああ!!」
「矢口さん!そんなにしたらあいちゃんが、あいちゃんが死んじゃいます!」
「うーん、石川なかなかやるわねえ」
「圭織……さっきもその台詞だよ」
「ZZZZZzzzzzzzz……んぁ?」



          ※※※※※※※※※※※※※※
71 名前:あるみかん 投稿日:2001年10月07日(日)23時30分52秒
週末定期更新のようになっておりますね。
ちょっと次回は終始ハイテンションからややしんみりした(というほどでもないが)
展開になるのであらかじめご容赦ください。
72 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月08日(月)01時03分56秒
石川さん、アナタったらなんてコトを…(w
現実界で待ってる方たちの反応、何気に楽しみにしてます
73 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月08日(月)13時53分01秒
矢口頑張れ・・(w

石川さんの行動はもうおちゃめさんの
範囲を超えているような・・・・(w
74 名前:うでたまご 投稿日:2001年10月09日(火)16時09分17秒
はっきり言ってもよろしいかしら?
石川…アンタ鬼やと…(笑)
ひとみちゃん、キミの将来大変だよ。
75 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月11日(木)10時19分38秒
いいよ、チャ―ミー!
そのポジティブ思考。
フルに始動させて頑張れ! 矢口、あきらめろ・・・
76 名前:あるみかん 投稿日:2001年10月13日(土)01時40分25秒
すみません、PCの機嫌が鬼のように悪く言う事を聞いてくれません。
更新できない。。。
>72さん 現実界、大体だれがしゃべってるかわかりますかね?

>73さん それでもチャーミーゆえにおちゃめさんなのかも。。。って苦しいなあ(笑)

>うでたまごさん これまで書いた石川の中でもある意味最高級の悪女っぷりを
発揮してます(笑)さらにグレードアップ?

>75さん 作者も思考をフルに始動させてがんばらないと(汗)
77 名前:第6話 投稿日:2001年10月13日(土)22時31分18秒
「みんな上手だねえー」
順順に現れる子供達の歌を聴いて、感嘆の声をあげる。
さすが、素人といえでも歌に自信のある子供達とあってすごい。
それにみんな本当に生き生きとして楽しそうで。
なかにはかわいそうなくらい緊張しちゃってる子も居るんだけど、ひたむ
きさが伝わってきてむしろ微笑ましいくらいだった。
そう思ってるのはひとみちゃんも一緒みたいで口を半開きにして見てい
る。
そうかと思うと、途中で歌詞を間違えちゃった子なんかにもがんばれって
声援を送ったり。
くるくると色んな表情を見せてくれる。
もちろん、どんな、ちょっと間抜けな表情なんかももかわいいんだけどっ。
78 名前:第6話 投稿日:2001年10月13日(土)22時32分04秒
「エントリーナンバー20番矢口真里ちゃん」
やぐちまりちゃーんどこですかぁ?と司会の人が何度か繰り返す。
「どうしちゃったのかなあ?」
「きっと急におなかが痛くなったのよ」
「そぉなの?心配だね」
「ついでに言うと得てして矢口真里って言う名前には気をつけたほうが
いいわ」
「え?」
「きっとひとみちゃんの人生を台無しにしてしまうわ。だから将来そうい
う名前の人にあっても仲良くしちゃダメよ。手とか繋いだり、ましてやち
ゅーなんかしたりしたら……ちゅーしていいのは…」
「り、梨華ちゃん!ほら次の子のお歌始まるよっ」
あと数センチまでせまっていた唇を慌ててひとみちゃんはさえぎる。
……んもうしょうがないなあ。
「……梨華ちゃん、なに…今のチッていうのは…」
「ううん。いいの、帰ってからゆっくり……それよりほら!次の子優勝候
補らしいよ」
79 名前:第6話 投稿日:2001年10月13日(土)22時33分02秒
前回の準優勝者だという司会者のコメントの後メロディーが流れ始める。
場馴れもしているのか堂々と歌い上げる様は完全に他の子から頭ひとつ
分抜け出ているように感じる。
「すごいね……梨華ちゃん」
ぽーっとしてひとみちゃんが言う。
「うん」
ここにくればきっと、きっと伝わると思ったから。
同じ夢を持ったたくさんの子供達。
そんな姿を見て心の奥で誰にも負けないほど強い夢を眠らせているあ
なたが気付いてくれないわけが無いって。
「ねえ、今どんな気持ち?」
緊張しながら私は尋ねた。
噛み締めるようにひとみちゃんはいった。
「すごく、みんなかっこよかった。ステキだった」
「うん」
恥ずかしそうに俯いたひとみちゃんは、本当に小さな声で。
「ねえ、梨華ちゃん……」
「なあに?」
「私も……そのぉ…いっぱい、いっぱい練習したら……」
それはきっと私の一番聞きたかった台詞。
80 名前:第6話 投稿日:2001年10月13日(土)22時34分00秒
「はーい!!それじゃ、結果発表までの間、この秋にデビューする、星野
ありすちゃんに唄ってもらいましょお!ありすちゃん、よろしくぅ!!」

二人の声をかき消す大音量で司会者の声が響き渡った。
んもう、タイミング悪いんだから。
ま、いっか。
決定的な瞬間はもうすこしあとにとっておいて。
結果発表で優勝した子の姿見たらもう、ひとみちゃんの夢が戻ること間違
い無し!だよね。

「誰だあ?あれ」
「さあ、なんとかありすとか言ってたけど」
「ほら、売れてないから前座とか繋ぎで歌わしてもらってんだよ」
「おおっ、でも見ろよ。あの脚!もうちょい前行って下から見ようぜ」
ざわざわとざわめく会場。
あちこちでばらばらと立ち上がったり歩き回ったりとしている。
最前列のところだけ、このオーディションにはあまりにもにつかわしくな
い『大きいお友達』のお兄さんが5、6人ほどなめるようにステージを
みている。
81 名前:第6話 投稿日:2001年10月13日(土)22時34分38秒
「ありすちゃ〜んこっちむいてぇ」
「その表情いいねえ、……カシャカシャッ」
やっぱりああいうのはひとみちゃんの精神衛生上もよくないわ。
案の定ひとみちゃんも複雑な表情を浮かべている。
ダメダメ、このままじゃ最後の盛りあがりがかけちゃうじゃない。
「ね、ひとみちゃん。ちょっとアイスでも買って来ようか」
「梨華ちゃん……」
俯いて私の服の端っこをきゅっと握る。
「あのひと……」
「ほら、ね!アイス食べよ〜」
ひとみちゃんの手を握って歩き出そうとする。
けれど、ひとみちゃんはそこを動こうとしなかった。
「……お歌うたってる、よ?」
「うん?」
しゃがんで下から覗きこんでみる。
「あのひと、『かしゅ』なんでしょう?」
「そうだね」
ああ、と私は理解する。やっぱりああいう一部の熱狂的なファンの姿を
見て腰が引けちゃったのね。
82 名前:第6話 投稿日:2001年10月13日(土)22時35分27秒
「ほら、でもお兄さん達なりに一生懸命応援してくれてるんだよ」
「……がうよぉ」
ふるふると小さな体が震えるのがわかった。
「ひとみちゃん?」
「違うよ!だって……!」
見上げた拍子に大きな瞳からぽとりと涙の粒が落ちていた。
「みんなおうた聞いてないよぉ!?」
ひとみちゃんのいったん流れ出した涙は次々ととめどなく溢れていた。
「あれが『歌手』なの?梨華ちゃんがいうステキなお仕事なの?誰も聞い
てくれてないよ?」
「そんなことないってば。そういうときもあるかもしれないけど…でもね、
ちゃんと……それにほらいろんな人が居るしぃ、その……でも」
ひとみちゃんは、よっすぃーは……モーニング娘は
「だって!!」
数え切れないたくさんの人達に笑顔を与えているんだよ?
だからみんな頑張ってるんだ。
中澤さんも、安倍さんも、飯田さんも、保田さんも……
よっすぃーも……私も……
83 名前:第6話 投稿日:2001年10月13日(土)22時36分17秒
「梨華ちゃんだって、聞いてないじゃんか!!アイス買いに行こうなんて
言って!」
そう伝えたいのに。
「やっぱり…自信無いよ。歌手になんかなれっこないよ。あのおねえちゃ
んみたいに……私の歌なんか誰も聞いてくれないよ」
私の言葉は空回りして、それどころか


「……歌手になんかなりたくない」


決定的にひとみちゃんの心を傷つけてしまった。
84 名前:第6話 投稿日:2001年10月13日(土)22時37分01秒
          ※※※※※※※※※※※※※※



「…矢口さん、泣いてるんですか?」
「う、うるさいっ!!」
「なんか…考えさせられるね」
「……うん」
「せつないなぁ」
「z……(悩)」



          ※※※※※※※※※※※※※※
85 名前:名無し男 投稿日:2001年10月14日(日)14時01分54秒
これで正気に戻ったか(w
86 名前:LVR 投稿日:2001年10月15日(月)09時47分33秒
いままで明るく進行してきましたが。
……こっから、なんですかね。
87 名前:あるみかん 投稿日:2001年10月17日(水)00時20分02秒
>85さん ここの石川壊れてますからね〜(笑)ようやくまともに?

>LVRさん こっから・・・・・・です。次回なにげに最終回っぽかったりも
するのですが、ちゃんとまとまるのか不安。
88 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月25日(木)07時47分13秒
むちゃくちゃリカちゃん超ウケ!!よっすぃを助けるのだ!!
最終回かぁ。。。
がっつり待ってます。
89 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月28日(日)15時17分24秒
なんかちょっと切ないね・・・
石川さん頑張れ!  よすぃに笑顔を!!
最終回ですか・・・ちょっと残念ですね。
期待して待ってます。

90 名前:あるみかん 投稿日:2001年10月28日(日)23時05分52秒
更新できなくてゴメンナサイ。次週こそ必ず。。。

>88さん 新曲のよっすぃーのかっこよさにすっかりやられてます。イメージを
壊さぬように話しを持っていきたいです。

>89さん コメディタッチで長く書ける人って凄いと思う。自分にはこの長さが
テンションを保つ限界で。。。自作はどシリアスの予定です。
91 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月01日(木)00時07分00秒
新曲のよっすぃ〜最高ですよね。
ってなわけで続きまってます。
92 名前:あるみかん 投稿日:2001年11月04日(日)16時35分34秒
>91さん
鬼のようにお待たせしてゴメンナサイ。。
最終回やっと、完成しました。よかったら読んでくださいませ・・・
93 名前:第7話 投稿日:2001年11月04日(日)16時37分39秒
イベント後の会場はさっきまでの活気とはうってかわって、広い野原に取
り残されたような寂しさを覚える。
「……ねえ、もう泣かないで」
「ヒック、ヒック」
「もう……帰ろうよ、ね?」
「うぇええん」
「ほら、そうだっ!アイスクリーム一緒に食べよ」
「ぐすん、グスン…ヒック」
「ああ〜〜〜もぉ、困ったなぁ」
「えええええん、ぐしぐしっ、だってぇ」
「だからあ、もう泣かないでよお」
だって、だって
「泣かないでってば、梨華ちゃん!」
……哀しすぎるんだもん。
94 名前:第7話 投稿日:2001年11月04日(日)16時38分39秒
周りを気にする余裕も無くみっともなく泣きつづける私の頭をぽふぽふと
小さな手が撫でる。けれど、それは一層私を情けない気分にさせる。
ひとみちゃんの夢を取り戻すなんて偉そうに言っておいて、私自身わかっ
てなかったんだ。
日常の忙しさの中でいつしか私も、私自身もわからなくなってたんだ。
――――自分の夢と、歌うことの素晴らしさを。
そんな自分自信を見失っている私がどうしてひとみちゃんを救うことが出
きるって言うのだろう。
「……めん、ごめんね」
ごめんね、ひとみちゃん。ごめんね、よっすぃー。
格好が悪くたっていい。私じゃ役不足。
すぐに、本当にあなたを救えるであろう人達に伝えてもらうから。
「……梨華ちゃん」
少しの間だけだったけど小さなひとみちゃんに会えた時間、私は楽しかっ
たよ。
結局私は役立つどころかあなたの気持ちを傷つけてしまっただけだけれど
……
95 名前:第7話 投稿日:2001年11月04日(日)16時39分37秒
いつしかそこには私とひとみちゃん二人だけが取り残されていて、シンと
した会場に私の泣き声だけがみっともなく響いていた。


「……とりぃぼーっちで少し…」

……え?


「私…だけが寂しいの…ああ」

……これ…って

「だーれよりぃもわーたしがぁ?」

たどたどしく流れる幼い歌声。
音程も微妙に違うし歌詞もなんだかちょっととんでるような気もするけれ

96 名前:第7話 投稿日:2001年11月04日(日)16時40分24秒
「信じてあげ−なくちゃあああ」

小さな体から……精一杯の声を出して、
彼女は唄っていた。

「人生って素晴らしい〜、ホラ誰かと
出会ったり恋をしてみたりぃ、…………」

私はただその姿と声から目を離すことが出来なくて、
きっと誰かが見たら一番に突っ込まれそうなほどぽかんと口を開けたしま
りの無い表情をしていたと思う。
一頻り唄い終え、
ひゅうと、大きく息を吐いて、ひとみちゃんは様子を伺うように私を見た。
「……梨華ちゃんが、言ってたから」
「……」
「この歌は…幸せなときに、唄うんだって」
「……」
一度は止まっていたのに。
またしても私の目から雫が流れ落ちた。
97 名前:第7話 投稿日:2001年11月04日(日)16時41分09秒
「り、梨華ちゃあん?」
「……っ」
涙を堪えようとしたけれど、小さくのどの奥で呻いたような音が漏れて
次々と流れ落ちる。
「や、やっぱり……その歌詞とか変だったし、ごめん梨華ちゃん。ひとみ
下手クソだし」
「そうじゃないよ……っ」
おろおろと戸惑うひとみちゃんの体をきゅっと抱き寄せた。
「梨華ちゃん?」
「違うよ、ひとみちゃん。これはね、哀しいから泣いてるんじゃないの」
「……え?」
「ひとみちゃんの歌がね……すごく素敵だったから。だから……」
「私の、歌……」
「すごく今幸せな気分になれたから」
「幸せ……?私の、歌……で?」
「だから、ね。嬉しくて泣いてるんだよ。ほら、だからっ」
98 名前:第7話 投稿日:2001年11月04日(日)16時41分46秒
ひとみちゃんの頬に手を当てて顔を近づける。
額がコツンとぶつかる。
「私、笑ってるでしょう?」
「あ……」
確かめるように私の顔をじっと見る。
「ね?」
「うん……」
「ひとみちゃんが歌ってくれたから」
「そっか……あ」
嬉しさと気恥ずかしさの入り混じった表情を浮かべて、彼女は何度も何度
も「そっかあ」と繰り返していた。
何度目かのその台詞の後
99 名前:第7話 投稿日:2001年11月04日(日)16時42分42秒


「……っていいね」


うん。

「歌って、いいね」


うん。
唄うっていいよね。
誰かの為に歌ったり、誰かの歌を聞いたり。
それは、時に人を悲しくさせたりもするのだけれど。
けど、きっと。
人を幸せにしたり、元気にしたり、たくさんのパワーをくれたりする。
無限大の力があるんだ。
だから私達、一緒に笑っていられるんだよ……そうだよね?
100 名前:第7話 投稿日:2001年11月04日(日)16時43分35秒
「ねえ、梨華ちゃん」
「うん?」
「もっと色んな歌うたえるといいね」
「うん……」
「一緒に、歌おう」
「うん。……約束だよ」

そうだね、ひとみちゃん……よっすぃー。
一緒に唄おう。
たくさんの歌をたくさんの人の為に、
自分の為に、大切な誰かの為に。
「……梨…華ちゃ…?」
間近に迫った彼女の瞳を見つめる。
どちらともなく静かに瞼が下りて……



101 名前:第7話 投稿日:2001年11月04日(日)16時44分21秒
下りて……
て…
……あ、ら?
んもう、ここで焦らすなんてひとみちゃんてば、もお〜〜〜〜
しょうがないなっ、ここは私から。んーーー
「くおおおおおおおらああああ!!いぃしかわ――――!!」
「きゃああっ!?」
驚いて目を見開いた先には、本来そこにあるはずの愛しのひとみちゃんの
顔ではなく、
「貴様あああっ」
「ひとみちゃんっ?いつからそんな厚化粧に……」
そう口走った瞬間、凄まじい衝撃が私の頭部に走った。
痛いーっ!!(涙)
「ひ、ひどいですぅ、何するんですかあ矢口さん」
こめかみに一目でわかるほどの太い青筋を立てた矢口さんが仁王立ちで私
を睨みつけていた。
102 名前:第7話 投稿日:2001年11月04日(日)16時45分07秒
「ったくアンタって奴は!よっすぃーを助けに行ってんだか自分の欲望を
満たしに行ってんだか」
もちろん両方です、てへ。
……ってそんなことより!!
「よっすぃーはっ!?」
メンバーが集まっているその中心に視線を移す。
隙間からちらりとのぞく彼女の姿を確認すると一目散に駆け寄る。
「あ、ちょ……」
「ええから…。もうちょっとだけ石川の好きにさせてやり。」
何か言いたげな矢口さんを中澤さんがやんわりと制するのが見えた。
彼女は……みんなに見守られる中、ゆっくりと瞼を上げた。
「……みんな、どうして?」
自分の置かれている状況を掴みきれず戸惑いの表情を浮かべながら体を起
こす。
「よっすぃ……」
恐る恐る、私は声をかけた。
103 名前:第7話 投稿日:2001年11月04日(日)16時46分06秒
「大丈夫だよ」
彼女は、私の一番好きな声で、私の一番好きな笑顔で言った。
「ちゃんと約束したもんね」
「よっすぃー…」
「一緒に歌おう。梨華ちゃんと……そしてみんなと……私と…そしてみん
なの為に」
「よっすぃー!!」
ワッと歓声があがる。
「よかったあ、よかった!!」
ののもあいぼんも二人して大喜びして、
先輩達はほっとしたように胸を撫で下ろしているのが解る。
「……ったく、まあ今回は華を持たしてやるよ」
「矢口さん」
不満げな口ぶりだけれど苦笑しながら矢口さんが私を小突いた。
そっか。
私にも解ったよ、どうして歌いつづけているのか。
歌が好き、そして。
この仲間達と歌うことがもっと好きだから。
104 名前:第7話 投稿日:2001年11月04日(日)16時47分03秒
「よっすぃー」
「うん?」
「約束……」
「あ、うん。覚えてるよ、ちゃんと。一緒に歌おうねっ」
「そうじゃなくてぇ」
「へ?」
「もう一つの、や・く・そ・く」
それまで和やかだった空気が一瞬止まる。


「……結婚して!!今すぐ!!よっすぃ――――――!さあ、誓いのキス
をっ」
「りりりり梨華ちゃあん!?」
「い――――しかわああ!!黙っていれば調子に乗りやがってえ」
「何言ってるんですかあっ私とひとみちゃんは運命の恋人なんですから
っ」
「くっそお、言わせておけばあ!!」
「ひえええ」



今度は梨華の花嫁さんの夢も叶えてね。
ひとみちゃんっ。
105 名前:第7話 投稿日:2001年11月04日(日)16時47分49秒

おしまい

106 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月04日(日)17時09分08秒
なんかホッとさせられるいい作品でした。
心のまん中あたりが、ふぁ〜っとする感じ…。
107 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月04日(日)18時47分32秒
終わりかぁ〜〜〜寂しいな。
108 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月05日(月)00時03分11秒
更新お疲れさまでした!!
なんかほのぼのとした空間の中でも
いろいろと考えさせられたものが沢山あったです。
感動をありがとうございました!!
109 名前:名無し男 投稿日:2001年11月05日(月)01時01分44秒
ほぁ〜おもろかった〜

笑いあり涙ありで素晴らしい作品ですな
110 名前:LVR 投稿日:2001年11月05日(月)09時39分48秒
感動の再会の直後にあれですか(w
でも、この作品の石川さんなら、
ラスとのテンションもやっぱりあれですかね(w
なんにしろ面白かったです。
また、次回作が読めるのを楽しみにしています。
111 名前:うでたまご 投稿日:2001年11月05日(月)19時01分05秒
あるみかんさん、御疲れさまでした!!

すっごいポジティブな石川さんサイコーでした。
戻ってきても、なお強引な攻めの姿勢がステキです(笑)
また楽しい(今度はシリアス?)作品を読ませてくださいね^^
112 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月06日(火)00時28分40秒
いや〜よかったっす!
最後の最後まで石川さん、あのキャラで笑かしてもらいました。
また、新たな作品待ってます。
113 名前:あるみかん 投稿日:2001年11月07日(水)00時25分46秒
久しぶりのコメディ、リハビリ的な意味をこめていつもよりもテンションを上げて
書くことを意識してました。終わってみればいつものパターンな気もしますが(笑)

>106さん ここのとこ鬱になるような感じのものが続いてたんでほわ〜っと自分も
出来て幸せでした、なんて。

>107さん 作者冥利に尽きます。。。次回もガンバリマス!

>108さん こちらこそありがとうございました。過去に飛ぶという意味では以前
書いた、「君がいた夏」と被る点があったので、差別化を図る意味でもほのぼの
感を増したつもりなのでそう行っていただけると嬉しいです。

114 名前:あるみかん 投稿日:2001年11月07日(水)00時32分36秒
>109さん ありがとうございます。途中かな〜り展開が強引なとこもありましたが
ご容赦くださいませ

>LVRさん ラストはコメディならこのオチかな〜なんて考えて書きました。もう
一ひねりあったほうがよかったかも。また一息ついたら新作やりたいと思います。

>うでたまごさん ああっ、あんまりいしよしになってませんね。。次回にきっと
また・・・次回はどシリアスの予定です。暗いです。重いです。そして、多分・・
長いです。

>112さん 小奇麗にまとめちゃった感が漂ってますが中篇のボリュームとしては
こんな感じかなあと。またよかったら読んでやってください。

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