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Distance

1 名前:アイリス 投稿日:2001年09月28日(金)23時23分05秒



あれは、桜が咲き乱れる季節。
窓のすぐ側に桜の木がある、あたし愛用の練習室で、彼女と出逢った。
忘れもしない、あの春の日――――


2 名前:Distance 投稿日:2001年09月28日(金)23時24分22秒

第1楽章
    
      Playing Love


3 名前:Distance 投稿日:2001年09月28日(金)23時25分24秒
あたしが通うM学園は、幼等部・小等部・中等部・高等部・短期大学からなる、巨大な学校だ。
外部からの受験者等もいるが、ほとんどは幼等部からの顔見知り。言うなれば、全員が幼馴染みみたいなもんだ。
小等部までは共学だけど、中等部からは女子のみとなる。
芸術全般に力を入れているこの学校は、無駄な施設がたくさんある。
例えば、あたししか使ってないような、ピアノ練習室がそうだろう。
4 名前:Distance 投稿日:2001年09月28日(金)23時26分02秒


小等部の頃から、嫌なことがあると、すぐにここへ来て、ピアノを弾いた。
好きだから弾くのではなく、嫌なことを忘れるために、文字通り一心不乱に弾いた。
誰に聞かせるでもなく、ただ、自分のためだけに・・・。

5 名前:Distance 投稿日:2001年09月28日(金)23時26分46秒
あの日も、ちょっと嫌なことがあり、あたしはここへやって来た。

こんな気分の時にぴったりな曲は、ベートーベンの『悲愴・ソナタ』だろう。

第1楽章を、ただ忘れるために、激しく、激しく鍵盤を叩いた。
6 名前:Distance 投稿日:2001年09月28日(金)23時28分43秒

「・・・っしょ?!」
「でも・・・や・・・。」

どこからか、風に乗って、言い争っているような声が聞こえてくる。
あたしは、窓の外に視線を送った。

窓の側、桜の木を通した向こうの教室―――
7 名前:Distance 投稿日:2001年09月28日(金)23時29分15秒


   桜の妖精が佇んでいた。

8 名前:Distance 投稿日:2001年09月28日(金)23時30分05秒

「・・・!」

思わず演奏する手を止めて、見入ってしまう。
よく目をこらして見てると、
それはもちろん妖精などではなく、れっきとした人間だった。
9 名前:Distance 投稿日:2001年09月28日(金)23時30分45秒

ちょっとふっくらした体つき。
桜とともに、風になびく髪の毛。
きっと、笑ったら愛くるしいであろう顔。

そしてその桜の精は、声を押し殺して泣いていた。
10 名前:Distance 投稿日:2001年09月28日(金)23時31分50秒

「・・・。」

見惚れていると、その人はこちらに気が付いた。
桜を通した向こう、妖精の目はあたしを捉えている。

目が離せない。
なんだろう、これ。
ドキドキする。
11 名前:Distance 投稿日:2001年09月28日(金)23時32分36秒


桜の木を挟んで、あたし達は見つめあった。

それが、彼女――安倍なつみとの出逢いだった。

12 名前:アイリス 投稿日:2001年09月28日(金)23時35分27秒
みなさまどぅも。
黄板で書かせてもらってる者ですが
また新たにネタが浮かんだので
構想が、消えないうちに
こちらにスレを立ててしまいました(^^ゞ

ごまなちで、長編になる予定です。
どうぞ、最後までお付き合い宜しくお願いします_(._.)_

13 名前:名無し読者 投稿日:2001年09月29日(土)01時19分51秒
ご、ごまなち…。
超期待です!
14 名前:アイリス 投稿日:2001年09月29日(土)15時39分04秒
これ、間違いです。。
>>2
いきなりすいません(>_<)

第1楽章は、今夜更新します。
あと、黄板の方も。。(笑

>>13
 レス有難う御座います(^o^)丿
 かなりシリアスになりそうです。
 イタめのごまなち。。
15 名前:第1楽章 投稿日:2001年09月29日(土)23時28分06秒

   
    Playing  Love  


16 名前:Playing Love 投稿日:2001年09月29日(土)23時28分52秒
「相変わらず上手いねぇ〜。
 なんで人前で弾かないわけ?」
「・・・『あたしピアノ弾けます〜』って感じで
 嫌じゃん。女の子女の子強調しててさ。」
「あははっ、ごっちん、あんた面白いね〜!」
17 名前:Playing Love 投稿日:2001年09月29日(土)23時30分59秒
桜舞い散る季節から、早や半年――
うだるような暑さだった夏が過ぎ
すっかり秋の空になってきた頃
彼女は、この隠れ家に入り浸るようになった。

あたしは普段、他人に干渉されたくないのだが
この人といると、何故か心地よさを感じた。
18 名前:Playing Love 投稿日:2001年09月29日(土)23時31分30秒
『人前では弾かない』がポリシーのあたしは
ピアノを習っていた頃から、発表会の類は全部欠席していた。
なんともかわいくない子供だ。
理由は、彼女に話した通り。
ただし、その頃のあたしに、それを説明する術はなかったのだが。
ありがたいことに周りの大人は
それを、子供特有のわがままと見てくれていた。

人前では絶対弾かない、まして誰かのために弾くなんて
考えようがなかった。
誰かに、この音を聞かせる時が来るなんて
思ってもみなかった。
19 名前:Playing Love 投稿日:2001年09月29日(土)23時32分47秒
これも全部、彼女だからだ。

彼女だけに許された特権。
それを、わかっているのだろうか?
自分が今、とても素晴らしい空間に立っていることに。

チラッと彼女の方を見ると
どこか別の空間を見ているようだった。

・・・わかってないだろうなぁ。
20 名前:Playing Love 投稿日:2001年09月29日(土)23時33分19秒


「ねぇ、あれ弾いてよ。なんだっけ?
 映画のねぇ、『海の上のピアニスト』の曲。」
「ありすぎてわかんない。」
「え―っと、なんだっけ・・・。」

彼女は、1日1回、必ずリクエストをする。
クラシックの時もあり、流行りの曲の時もあった。
あたしは、弾ける範囲でそれに応えた。
そして、彼女は時々ピアノに合わせて歌った。
彼女にピッタリな、透き通った歌声だと思った。

「あ、わかった!『愛を奏でて』だべ!」
「『Playing Love』でしょ。
 邦題ってなんかおかしいんだよね。」
「どっちでも同じっしょ!弾いてよ。
 今日のリクエスト、『Playing Love』。お願いします。」
「はい、かしこまりました。」
21 名前:Playing Love 投稿日:2001年09月29日(土)23時33分50秒

「う〜、やっぱ難しい〜・・・。」

家に帰ったあと、あたしは部屋にこもりっきりで
ずっとピアノを練習していた。

天才でもなんでもないあたしは
ずっと前に聞いただけの曲を、弾けるはずもなかった。
22 名前:Playing Love 投稿日:2001年09月29日(土)23時34分26秒
『・・・ごめんね、弾けなくて。練習してくるよ・・・。』
『ごっちんが謝らなくてもいいよ。ってゆうかそんな顔しないで―。
 なっちは、ごっちんがピアノ弾いてる時の顔が見たくて
 ここに来てるんだから。別に、曲は後でもいいよ。
 ピアノを弾いてる時のごっちん、本当に大好きだから。』

笑顔でそんなことを言われると、心臓のあたりがきゅっと縮む。
今思い出すだけでも、指が震えるのがわかる。
心臓が、とてもとても苦しかった。
本当に苦しいんじゃなくて、嬉しさのあまり、苦しかった。
23 名前:Playing Love 投稿日:2001年09月29日(土)23時35分01秒
学校を出たあと、すぐに楽器屋さんに向かい
『海の上のピアニスト』楽譜を買った。
昔、映画を見た直後に買ったサントラを
繰り返し10回くらい聞きピアノに向かう。


  『ピアノを弾いてる時のごっちん、本当に大好きだから。』


彼女の笑顔を見たい、それだけのために鍵盤に指を滑らせる。
24 名前:Playing Love 投稿日:2001年09月29日(土)23時36分31秒

ねぇ、あたしが弾いてる時、いつも考えてる事知ってる?
あなたの為、それだけを想って弾いてる。
たとえ、あなたが誰を想っていようが、関係ない。
あたしの、精一杯の愛情表現に、気付いて下さい。


  『今日のリクエスト『Playing Love』。』


あなたの為だけに、奏でるから
あなたもあたしの為だけに
25 名前:Playing Love 投稿日:2001年09月29日(土)23時37分06秒


    『愛を奏でて』

           ― Playing Love ―


26 名前:アイリス 投稿日:2001年09月29日(土)23時40分24秒

第1楽章終了みたいな雰囲気に
なってしまいましたが、まだ終わりません(笑
紛らわしくてすいません(^_^;
27 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)00時05分54秒
ごまなちって・・・新鮮!!
いちごまにしろ、よしごまにしろ、後藤は気まぐれで相手を振り回す役が多いけど、
この話の後藤は逆に安倍に振り回されそうな予感・・・期待♪
28 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月01日(月)01時40分59秒
いい雰囲気ですね。
頑張って下さい。
29 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月20日(土)03時21分57秒
ごまなちハケーン
期待してます。
30 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月08日(木)23時22分58秒
続きはないんですかね・・・?
31 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月26日(月)01時03分03秒
なちごま物ってそうないから続きが見たい・・・
32 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月15日(土)04時02分13秒
ダメっすか?
33 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月05日(土)15時19分55秒
待ちたいんだよね〜

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