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ごちゃまぜ小説
- 1 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年09月30日(日)15時27分00秒
- 短編を幾つか書きたいと思ってます。
題名は、『ごちゃまぜLOVE』から取ってますので、後藤さんがよく出ると思ってください。
ペースに波があるかもしれませんが、よろしくお願いします。
- 2 名前:お天気雨 投稿日:2001年09月30日(日)15時28分22秒
- −お天気雨−
うちの名前は、加護 亜衣。14才や。
ピチピチの中学2年やで。
えっ!何で走ってるかって?
それは、もうすぐ解るわ。ほら、あそこの角や。
「キーーーーーーン!!」
来たぁ!
あいつは、うちと同じクラスの辻 希美ゆうてな。宿命のライバルやねん。
スポーツも勉強も‥‥。
ゆうても、どっちも平均点以下やけどな。
そやそや。何で走ってるかゆうたら、教室に着くまでの競争してんねん。毎日、どっちが
早く教室に入るか。競争やねん。
「今日は、うちの方がリードやな。先行くでぇ。」
「負けないのれす。今日もののが勝つのれす。」
「へっへっ、追いつけるもんなら、追いついてみぃ。」
ここんところ、負けが混んでたので、一気に加速や。
ドシン!!
「いってぇー。何してんねぇ。」
「そっちからぶつかっといいて、何言うのよ。」
「ああーっ!!」
「あっ、亜衣っ!!」
しもた。まずい人のぶつかってもうた。
今、ぶつかった相手は、真希ちゃんゆうて、うちの近所にすんでる2才上のお姉ちゃんや
ねん。うちら、中高一緒の学校行っとるから、学校も隣合わせなんや。
- 3 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年09月30日(日)15時29分28秒
- 「何で、こんな時間に、真希ちゃんがおるねん。」
真希ちゃんは遅刻の常習犯で有名やから、こんな時間に歩いとるはずがないねん。
「ああ、ナカザーに呼び出しくらってさ、遅れるとヤバイのよ。アイツ、平気でパチキか
ますからさぁ。」
こんな関東の真中で、パチキなんて、一般市民の言うことちゃうで。って、うちも関西弁
やけどな。
って、そんな事言うてる暇ないやん。はよ、ののを追いかけなぁ。
「ちょっと、待ちな。ぶつかっといて、謝りもなしかい。」
「真希ちゃん、チョーク、チョーク‥‥」
のの、うちを見捨てるんかぁ。そんなぁ、あかんべぇーなんかして‥‥。うち、その顔、
絶対忘れへんでぇ。
それよりも‥‥、こんなとこでチョークスリーパーかまされて‥‥、意識失いそうや。
- 4 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年09月30日(日)15時30分16秒
- 「真希ちゃん‥‥、呼び出されてるんちゃうの?」
「おお、そうだった。亜衣、行くぞ。」
「待って、真希ちゃん。」
あんな事されるけどなぁ。うち、真希ちゃんの事、大好きやねん。
一緒に小学校行っとった時に、悪さする男の子らがおったんやけど、真希ちゃんがまとめ
てやっつけてくれたし、うちが病気で寝込んだ時も、徹夜で看病してくれたねん。ほんま
はごっつう、優しいねん。だから、めっちゃ好きやねん。
「ジャンピング・ニーパット!」
「グエッ!!」
真希ちゃん、後ろから何さらすねん。
「べぇー、亜衣ぃ、早くしろよぉー」
うち、間違うとるやろか。
- 5 名前:お天気雨 投稿日:2001年09月30日(日)15時31分49秒
- 「あいちゃん、今日は5分の差れすよ。」
「今日は、真希ちゃんのせいで、遅れたんや。2分にしといて。」
「らめれすよー。ぶつかったのらって、あいちゃんが悪いんれすからねーっ!」
「くそーっ!!」
うちら、どっちが何分遅く着いたかってやってんねん。それで、1ヶ月のトータルで勝敗
決めんねん。今月は負けが混んでて、もう10分以上負けてんねぇ。5分は辛いわぁ。
「で、今日は何やねん。」
「ええーっとね。ええーっとね。」
負けた方は、勝った方から、一日一回だけ、何されてもええことになっとんねん。うちが
考えたんやけど‥‥、
「じゃあ、これっ!」
「ギョエッ!!」
あかん。こいつのヘッドロック、無っ茶痛いねん。
「のの!参った。ギブ!ギブ!」
こいつ、見かけによらんとバカ力やねん。こんな決まり、作らんかったら、良かったわぁ。
- 6 名前:お天気雨 投稿日:2001年09月30日(日)15時32分47秒
- 「はいっ、これ。あいちゃんに。」
「何や。それ。」
「プレゼントれす。」
何やら、リボンまでついた小さい箱を渡された。
「何で、うちに?」
「こないだ、シャーペンもらったお返しれす。」
そういやぁ、こないだうちが使うとるシャーペンをののに取られたんや。でも、ののがそ
れをすっごい気に入った言うたから、ののにあげたんや。うちも結構お気に入りやったん
やけど‥‥、ののがホンマに嬉しそうやったから、しゃあないなぁ思うて。
「まだ、開けちゃあ、らめれすよ。明日になったら、開けるのれす。」
「明日ゆうたら‥‥」
うちの15才の誕生日や。
何か解らんけど‥‥、とりあえず、ありがとうな。
- 7 名前:お天気雨 投稿日:2001年09月30日(日)15時34分04秒
- Pi Pi Pi Pu--n!
12時や。これでうちも15や。四捨五入したら、ハタチやで。大人やんかぁ。ののとは
違うでぇ。
でもよう考えたら、ののの方が先に15になっとったんや。
まあええ。のの、開けるでぇ。
うちは威勢よく、リボンを外し、蓋を開けた。
ビロローーーーーン
「ギャーーーーーー!!!」
何やこれ。びっくり箱やんか。不覚にも腰抜かしてもうたやんかぁ。のののアホ。明日、
ってもう今日やけど、学校行ったら、とっちめたんねぇ。
でも、よう見たら、箱の底から、カードと飴玉が2個出てきた。
カードには、
『あいちゃん、お誕生日、おめれとう∞。』
って書いてあった。
書くときまで、これかい。
飴も一個食べてやったけど、むっちゃ甘酸っぱかったわ。ほんま、涙が出てもうたわ。
- 8 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年09月30日(日)15時36分31秒
- 作者です。全部で3回を予定なので、あと2回。
3と4の名前が間違ってます。 お天気雨 です。
- 9 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)00時23分34秒
- ごま主役の話って好きです〜
がんばってください!!
- 10 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年10月01日(月)19時42分39秒
- 作者です。
訂正です。
『亜衣』→ 『亜依』
失礼しました。
- 11 名前:お天気雨 投稿日:2001年10月01日(月)19時43分48秒
- 「行ってきまーす!!」
今日こそ負けへんでぇー。いつもと同じ7時45分にスタートや。公平をきたすために、
家を出る時間も決めてんねぇ。早う出てもバレへんけど、そんな卑怯なまねはせえへんね
ん。ののも一緒や。うちら絶対に裏切らへんねぇ。そやかて、宿命のライバルやからな。
ほら、あそこの角から、
「キーーーーーーン」
って、‥‥聞こえへんがなぁ。
こりゃあチャンスや。できるだけ、差ぁ縮めとかんとあかんしな。よっしゃ、行くでぇ。
ドッシン!!
またかいな。
- 12 名前:お天気雨 投稿日:2001年10月01日(月)19時44分47秒
- 「いったーい。また亜依かい。」
「今日も真希ちゃん、早いやん。今日も中澤先生かぁ?」
「いや、今日はヤッスー。あの人、怒ったら変身するからねぇ。」
何もんや。その先生って。
「で、アンタぁ、二日も続けて何すんのよぉ。」
「痛い、痛い、真希ちゃん。」
ヘッドロックが的確に急所、押さえとるやん。意識薄れそうや。
「そういやぁ、今日は辻ちゃんは?」
「まだみたいやねん。そやから、今のうちに稼いどきたいねん。」
「よーし、じゃあアタシは、今日は辻ちゃんの味方だ!」
そんなこと言いながら、ヘッドロックしたままのデコピンは止めてくれぇ。オデコ真っ赤
になるやんかぁ。ただでさえ、オデコ広いって目立つのに。
それにしても、真希ちゃんの指って、白くて綺麗やなぁ。ほんま透き通りそうや。
そやけど、どんなに綺麗でも‥‥、デコピンは痛いやんかぁ!
- 13 名前:お天気雨 投稿日:2001年10月01日(月)19時45分57秒
- 「よーし、今度はこうしてやれ。」
真希ちゃん、うちの顔で遊ばんといてんかぁ。そんなほっぺた、引っ張ったり、こねくり
回したりしたら、うちの顔歪んでまうわぁ。
うちのほっぺたって、ごっつう気持ちええらしい。ののもうちのほっぺたで遊ぶの好きで
なぁ、うちが負けた時、同じことようやられたわ。
でも、うちの顔で遊びながら、うちの顔見て笑うてくれてるけど。ほんまに真希ちゃんっ
て、可愛いなぁ。うちが男やったら、絶対に放っておかへんな。すぐにでも、押し倒して
るやろうな。
「ダダーン」
「グウェ!」
押し倒されてもうたがな。
わっ!押し倒されたはずみで、うちの唇が、真希ちゃんの唇に‥‥。
キスしてもうた。
「ごめん。亜依。ちょっとふざけ過ぎたかなぁ。ほっぺた真っ赤になっちゃったね。」
ちょっと、結構、ほっぺた痛かったけど、‥‥赤うなったのは、それだけやないねん。
真希ちゃんからのバースデー・プレゼント、もろうたでぇ。ごめんなぁ、のの。こっちの
方が一番や。
- 14 名前:お天気雨 投稿日:2001年10月01日(月)19時46分42秒
- 「辻ちゃん、来ないねぇ。」
「そやね。でも、真希ちゃん、変身する先生、大丈夫かぁ?」
「おおー、そうだった。」
また今日も、二人で走るのであった。
(昨日の反省:真希ちゃんに、後ろは取らせてはいけない)
- 15 名前:お天気雨 投稿日:2001年10月01日(月)19時47分33秒
- 教室に着いても、ののはおらへんかった。
やったぁ。今日はうちの勝ちやでぇ。
そやけど‥‥、その後も、ののは来ぃへんかった。
最初は、これで差が縮まると思うて、喜んどったけど、もうすぐ授業が始まるのに、来ぃ
へんので、さすがに心配になった。
聞かされたのは、お昼休みやった。
「ののが、交通事故?」
「うん、学校に来る途中で、車に‥‥。」
「どこのどいつや。そんな事したんは‥‥。で、ののは?」
「今、病院らしんだけど‥‥、あんまり良くないって。」
「良くないって、どないやねん。」
「どんなのかは、聞いてないんだけど‥‥。」
頼んないなぁ。うちが聞いてきたるわ。
- 16 名前:お天気雨 投稿日:2001年10月01日(月)19時49分32秒
- 「先生、辻のことなんやけど‥‥。」
「おお、加護かぁ。手術の方はうまくいったらしいんだけどな。血がいっぱい出てて、そ
れがヤバイらしい。」
「ヤバイって、死ぬんかぁ。ののが死んでしまうんかぁ。」
「いや、そうと決まったわけじゃない。わけじゃないんだけど‥‥。」
「先生、頼んないなぁ。病院はどこなん?」
聞いたら、学校の近くやった。
ほんまは心配で心配で仕方なかったんやけど、学校途中で帰らしてはもらえんかったんで、
終わったら速攻で病院に向かった。誰にも負けへんわい。毎朝、鍛えとるからな。
- 17 名前:お天気雨 投稿日:2001年10月01日(月)19時50分57秒
- 病院に着いて、ののの病室聞いて、行ってみた。まだ病室やなくて、処置室みたいや。何
で、病室入れたらへんねぇ。何アンタらさぼってんねぇ。どついてやりたかったけど、そ
んな事しとる暇ないわぁ。
処置室に行ったら、のののお母さんとお医者さんが話ししとった。
「あいちゃん。」
お母さんがうちに気がついてくれた。でも、何でそんな目が赤いねん。のの、大丈夫なん
やろ。大丈夫や言うてや。絶対やでぇ。
「ののは?」
「うん、手術の方は大丈夫なんだけど、血が流れ過ぎて、血が足りないの。」
「そやったら、血ぃ入れたったら、ええやん。うちの血もあげるでぇ。」
「でも、ダメなのよ。希美の血は‥‥。」
そんなぁ‥‥。聞いてへんでぇ。ののがそんなんやて。
“RH−”なんて、テレビでは聞いたことあるけど、ののがそんなんやて‥‥。
- 18 名前:お天気雨 投稿日:2001年10月01日(月)19時53分25秒
- 「輸血用の血が、こっちに向かってはいるらしいんだけど‥‥、それまで持ってくれるか
どうか‥‥。」
お母さん、うずくまって泣いてもうた。うちやって‥‥、どうしたらええねん。
うちも泣いてしまいそうやったから、そこから逃げるようにして、病院の外まで来てしも
うた。あかん。涙が出てきてしもうた。泣いてもしょうないやん。うちのアホ。
そやけど‥‥、もう止まらへん。
うちは、涙を拭くために、カバンからハンカチを出そうとした。そして、その横にある携
帯に目が行った。
思わず、携帯に手が伸びた。そして、電話してもうた。
『なーにぃ?亜依ぃ。何か用なのぉ。』
「真希ちゃん‥‥」
やっぱ、うちが頼りにするんは、真希ちゃんしかおらへん。
真希ちゃんは、うちの様子が変なのにすぐ気付いてくれた。ののが交通事故にあって、
大変なことを、うちが伝えたら、すぐに行くって言うてくれた。
- 19 名前:お天気雨 投稿日:2001年10月01日(月)19時54分23秒
- 「亜依っ、辻ちゃんの様子は?」
「真希ちゃん‥‥、ええーん!」
真希ちゃんの顔見たら、もう我慢できへんかった。真希ちゃんの大きい胸に飛び込んで、
大声で泣いてもうた。
「ばかっ!今は泣いてる場合じゃないだろう。辻ちゃんはどうなのぉ。」
「はいっ。手術はうまくいったんやけどぉ‥‥、血がいっぱい出ててぇ‥‥、血が足りへ
んねんけどぉ‥‥、のの“RH−”やぁ言うてぇ、血が未だ来てへんねぇ。」
「落ち着いて。辻ちゃんの血液型は?」
「O型や。確か。‥‥、うん、間違いない。」
「よし。解った。」
そう言って、真希ちゃんは病院の中に入っていった。そして、うちと一緒に処置室まで行
ってくれた。
真希ちゃん、今までに見たことないような真剣な顔してて、無っ茶恐かったけど‥‥、で
も、何とかしてくれそうで‥‥、やっぱり真希ちゃん、大好きや。
「私の血を使ってください。私もO型のRH−です。」
- 20 名前:お天気雨 投稿日:2001年10月01日(月)19時55分14秒
- その後、真希ちゃんとお医者さん達は大急ぎで処置室に入っていった。
そん時に見えたんやけど、ののは、何かよう解らんビニールに包まれて、あっちこっちに
色んなもん繋げられて‥‥、包帯もあっちこっちに巻かれて‥‥、無っ茶可哀相やった。
その横のベッドに寝かされてる真希ちゃんの顔。見とったら、すごい優しそうな顔しとっ
たわ。真希ちゃんって、ほんまもんの天使ちゃうかぁ。うち、真剣に思うたわぁ。
それでも、血ぃ抜くの終わって、処置室から出てきた真希ちゃん。元々、色白かったんや
けど、今時は青白うなっとって、フラフラしとった。うち、慌てて肩貸したった。うちに
は、このくらいしかしてやられへんもん。
- 21 名前:お天気雨 投稿日:2001年10月01日(月)19時55分56秒
- 「大丈夫?ちょっと、休憩して行きなさい。」
「いえ、大丈夫です。この子がうちの近くなんで、一緒に帰ってもらいますから。」
ほんまは、ののの様子も見ときたかったから、残っときたかったんやけど‥‥。真希ちゃ
んがどうしても‥‥って言うから。うちも真希ちゃんのために、何かしたらんとあかん。
って、そう思うたし。
それで、タクシー拾って真希ちゃんを送ってったねん。
「着いたら起こして。」
真希ちゃんは車に乗るなり、すぐに寝てしもうた。ほんま隙があったら寝る人やからなぁ。
でも、今日は特別や。まかしとき、うちが責任持って、連れて帰ったるからな。
- 22 名前:お天気雨 投稿日:2001年10月01日(月)19時56分43秒
- 真希ちゃん送って、家に帰ったら、のののお母さんから電話が入っとった。真希ちゃんの
おかげで、大丈夫そうやって。まだ起きてへんけど、心配ないやろって。お母さん、ほん
まに泣いとったわ。うちまで、涙出そうやったやんか。
真希ちゃんのおかげやで。ほんま、ありがとう。うち、ほんまに、ほんまに嬉しいねん。
神様、真希ちゃんに会わせてくれて、ありがとうなぁ。
- 23 名前:お天気雨 投稿日:2001年10月01日(月)19時57分15秒
- ‥‥‥‥
その晩、夢見とった。
真希ちゃんがおんねぇ。でもなぁ、小さいねん。小学校3年生くらいかなぁ。
よう見たら、うちも小学校1年くらいや。
なんや、うちの前に土が盛ってあって、木の棒が突き刺さってる。
思い出したわ。前にもこんな事あったわ。
そうや。うちが小学校1年の時、大事にしとった金魚が死んでしもうて。泣いっとったら、
真希ちゃんが、一緒にお墓を作ろうって言うてくれたんや。
- 24 名前:お天気雨 投稿日:2001年10月01日(月)19時59分08秒
- 「亜依。」
「なんや。真希ちゃん。」
「亜依は、この金魚を大事にしてたけど‥‥、命ある物はすべて終わりがあるんだ。でも、
それで終わりじゃない。死んでも、また別の生き物になって、生まれ変わってくるんだ。
だからね、この金魚も、今度は猫かもしれない。馬かもしれない。人間の女の子かもしれ
ない。亜依もね。これから大人になって、オバアチャンになって、そしていつかは死んで
しまうけれど、また生まれ変わるんだ。その時は、犬かもしれないし、アザラシかもしれ
ない。こんな小さい虫かもしれないし‥‥、金魚かもしれない。でもね、優しくされた記
憶は、ずーっと命が覚えてるんだ。だからね、金魚だった時に優しくされた命は、今度女
の子になった時に、金魚になった亜依の事を覚えていて、『あの時はありがとう』って、
優しくしてくれるんだ。ひょっとしたら、この金魚が昔、女の子で、亜依が金魚だったか
もしれない。そして、優しくされた事を、亜依の命が覚えてたのかもしれない。だからね、
亜依はどんな小さな命でも大事にしないといけないよ。そして、死んでしまっても、悲し
まなくてもいいんだ。『また会おうね。』って。」
- 25 名前:お天気雨 投稿日:2001年10月01日(月)20時00分47秒
- 覚えてる。昔の真希ちゃん同じこと言うとった。この後、真希ちゃんに手繋いでもろうて、
家まで帰ったんや。
でも、今そんな事言われたら、ののが死ぬみたいやんか。ののは死なへんで。真希ちゃん
が助けてくれたんやんかぁ。そんなイジワル言うたら、真希ちゃんでも許さへんでぇ。一
発で嫌いになってまうでぇ。ええんかぁ。
なぁ、聞いとんかぁ。真希ちゃん。
えっ!何で?
真希ちゃんおらへんやんかぁ。
どこ行ったねん。あん時は一緒に帰ってくれたやろ。どこ行ったねぇ。
真希ちゃんは、そんなひどい事するんかぁ。寂しいやんかぁ。
やっぱ、真希ちゃん嫌いやぁ。
嫌いや。嫌いや。嫌いやぁ。‥‥
- 26 名前:お天気雨 投稿日:2001年10月01日(月)20時01分20秒
- 「嫌いやぁ‥‥、嫌いやぁ‥‥ 」
気がついたら、うなされとったみたいや。
もう朝になっとった。目覚ましが鳴っとる。ええーっ、5時やんかぁ。誰やこんな時間に
目覚ましかけとんわ。
いや、ちゃう。――― 電話や。電話が鳴っとんや。
こんな朝早うから、何やねん。もう。
誰も出ぇへんから、仕方なしにうちが出たった。
「はい、加護です。」
『もしもし、亜依ちゃん。――― 』
- 27 名前:お天気雨 投稿日:2001年10月01日(月)20時10分04秒
ウソや。ウソや、言うて。
何でや。何でやねん。
そやかて、一緒に走っとったやんかぁ。
うちにあかんべーしながら、走っとったやんかぁ。絶対に忘れへんでぇ。
ヘッドロックもかましたやろ。今でも頭ズキンズキンするでぇ。
プレゼントかて、もろうたでぇ。無っ茶、嬉しかったんやでぇ。お礼言うてへんがなぁ。
ほっぺたかて、プニュプニュしたり、ゴニョゴニョしたり、
ガァーとか、ベェーとか、ブォーとか、ギョエーとか、グォーとか‥‥、
いっぱい、いっぱい‥‥
いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、
いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、
いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、‥‥
したやんかぁ。
うちが真希ちゃん嫌いや言うたからかぁ。
それやったら、謝るわぁ。
ごめんなさい。ごめんなさい。‥‥
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。‥‥
100万回でも謝るわぁ。
そやから、許してぇなぁ。
頼むから、ウソや言うてぇ。
- 28 名前:お天気雨 投稿日:2001年10月01日(月)20時11分21秒
ウソやろ。ウソやろ。
ほんまに、ほんまに、ウソやろ。
頼むから、ウソや言うてぇ。
お願いや。
ウソやなぁ。
真希ちゃんが死んだやなんて。
- 29 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年10月01日(月)20時12分55秒
- 作者です。2回目終了です。
書いてて、泣いてもうた。
- 30 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月01日(月)23時39分37秒
- やばい泣く。
- 31 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月02日(火)01時26分33秒
- 悲しいヨー…。
- 32 名前:お天気雨 投稿日:2001年10月02日(火)18時43分46秒
- うちは、電話もろうて、すぐに病院に行った。あんまり急いで着替えたから、ボタン三つ
も掛け違えたけど、関係あるかい。
タクシーの運ちゃんに無茶苦茶飛ばしてもろうて、病院に駆け込んだ。
病室に行ったら、
真希ちゃんのお母さんやお姉さんが泣いてて、
その向こうに、‥‥
真希ちゃんがおった。
無っ茶、綺麗やった。
けどなぁ、目ぇ開けてくれへんねぇ。うちが泣いとったら、絶対に助けに来てくれた真希
ちゃんがなぁ‥‥、
うちがこんなに泣いてるのに、目ぇ開けてくれへんねぇ。
何でやねん。何でこんな、一番悲しい時に‥‥、来てくれへんねぇ。
- 33 名前:お天気雨 投稿日:2001年10月02日(火)18時44分50秒
- 誰や!真希ちゃん、こんなんにしたん、誰や!
お前かぁ!
うちは、お医者さんに掴みかかった。
思っくそ、殴ってやりたかったけど‥‥、先生逃げへんかった。
先生の悲しそうな顔見たら‥‥、何もできへんかった。きっと、この先生も一生懸命頑張
ってくれたんやなぁ。きっと。
‥‥ごめんなぁ。
- 34 名前:お天気雨 投稿日:2001年10月02日(火)18時46分09秒
- 「亜依ちゃん‥‥。」
真希ちゃんのお母さんや。ごめんなぁ。取り乱してもうて。
「ありがとう。亜依ちゃん。真希はね、心臓病だったの。もう永くはないかもって‥‥言
われてて。」
ええーっ!
何で‥‥、うちに言うてくれへんかったねん。
それやったら‥‥、血ぃ抜いたからかぁ。うちが真希ちゃん、呼んだからかぁ。うちが真
希ちゃんに電話したんが悪いんかぁ‥‥。
うちが‥‥、真希ちゃん。
死なせたんかぁ。
何や。うちが悪いんやんかぁ。誰に怒ってもしゃぁないやん。うちやんかぁ‥‥
うちやんかぁ‥‥
うちが‥‥真希ちゃん、死なせたんやんかぁ。
- 35 名前:お天気雨 投稿日:2001年10月02日(火)18時48分08秒
- 「亜依ちゃん。これ。」
「ん?」
真希ちゃんのお姉さんが、うちにリボンのついた箱を渡してくれた。
「昨日は、亜依ちゃんの誕生日だったでしょ。昨日、渡せなかったからって‥‥。真希が
ね‥‥、亜依ちゃんにって‥‥。」
うちは、大慌てで、その箱を開けた。
小さなイヤリングと手紙が入っていた。
『亜依へ
亜依も15だね。もう、立派な大人だよ。だから、これをつけて、早く女を磨くように。
あんたの前には、こんないいお手本がいるんだから、絶対にいい女になるよ。ガンバレー。
それじゃ、亜依の未来に、かんぱーい。ってね。
from 真希』
汚い字や。ミミズが這ったみたいや。いつ書いたんやろ。
「真希はね。亜依ちゃんの事がとっても好きだったの。昨日もね、亜依ちゃんのお友達を
助けることができたって、とても嬉しそうだった。ほら、こんな綺麗な顔してるでしょう。」
お母さんに言われて、もう一度真希ちゃんの顔を見た。
ほんまに綺麗や。
解った。
うち、絶対に真希ちゃんと同じくらい、綺麗になったんねん。
- 36 名前:お天気雨 投稿日:2001年10月02日(火)18時50分54秒
- 『真希ちゃんへ
亜依は、今日もバリバリ元気な、いい女です。
あれから、ダンス始めたねん。真希ちゃんがダンス大好きで、あんなにカッコ良かった
から、うちも負けられへんもんね。でも、まだ先生に怒られてばっかりや。早く、真希ち
ゃんみたいに、カッコ良く踊りたーい。
あの後、お父さんがハムスターをもろうて来てくれたねん。まだ赤ちゃんでなぁ、無茶
苦茶可愛いねん。いっつも寝てるのになぁ、よう食べよんねん。それでなぁ、うちが指入
れたらなぁ、体当たりかましよんねん。でもなぁ、そいつがなぁ、うちの手からエサ食べ
てくれたねん。無っ茶嬉しかったでぇ。
聞いたらなぁ、真希ちゃんの死んだ次の日に生まれたらしいねん。そやからなぁ、うち、
この子が真希ちゃんが生まれ変わったことにしたねん。そやから、名前もマキちゃんにし
たねん。ええやろ。
それから、ののやけど、先週退院したで。まだ、松葉杖突いてるんで、朝の競争は休戦
中や。うちの貸しや。その代わり、毎朝ののを迎えに行ったってんねん。へん、偉いやろ。
何せ宿命のライバルやからなぁ。
- 37 名前:お天気雨 投稿日:2001年10月02日(火)18時52分22秒
- うち、ののの事、大好きやねん。今までも好きやったけど、今は真希ちゃんの血ぃ入っ
とるやろ。そやから、二人分好きやねん。でもなぁ、1足す1は2やろう。やのに、うち
はののの事、もっと好きやねん。うち算数苦手やから、よう解らんかったねん。でもなぁ、
解ったねん。うちは、ののの事も、真希ちゃんの事も1とちゃうねん。10も100も好
きやねん。それからなぁ、好きやって気持ちは足し算ちゃうねん。掛け算やねん。そやか
らな、うちは今、ののの事が、100も10000も好きやねん。どや。エライやろう。
真希ちゃん、誉めてなぁ。前みたいに、よしよしって、頭撫でてなぁ。
追伸
イヤリングありがとう。でもな、うちは、真希ちゃんにもろうたキスの方が嬉しかった
でぇ。それ以上にな、真希ちゃんにもろうた、ののの命が、一番嬉しかったでぇ。
こんなにいっぱいもろうて、最高の15才やったわぁ。
亜依』
- 38 名前:お天気雨 投稿日:2001年10月02日(火)18時53分25秒
- 「のの、これから真希ちゃんに手紙出すんやけど、一緒にどうや。」
『うん、解った。一緒に行くのれす。』
うちらは、川原に来た。ええお天気やったから、天国の真希ちゃんにお手紙送ろう、思う
てな。
「どうするんれすか?」
「今日は、天気もいいし、風もないし、こうしたら、手紙が天国まで届くんやないかって
な。」
うちは、昨日書いた真希ちゃんへの手紙に、マッチで火をつけた。白い煙がまっすぐに空
に昇っていった。
どや。真希ちゃん。ええ考えやろ。
でも、なんでやろ。涙出てきたわ。煙が目にしみたんやろか。
- 39 名前:お天気雨 投稿日:2001年10月02日(火)18時55分03秒
- 「後藤さん、手紙読んれ、泣くかもしれないれすよ。」
そやねん。真希ちゃんって、泣き虫やねん。ケンカ強いくせに、よう泣いとった。
「後藤さんらったら‥‥、夕立が来るかもしれないれすよ。」
アホ。真希ちゃんはなぁ。そんなアホみたいな泣き方せぇへんねぇ。ののは、真希ちゃん
の事は全然解っとらん。うちの前やとなぁ、泣く時でもなぁ、笑って泣いてくれるねん。
うちの大好きな笑顔、見せてくれるねん。
「あっ、雨!晴れたままなのに‥‥、お天気雨れす。」
お天気雨‥‥。
やっぱり‥‥、読んでくれたんやな。
そやねん。真希ちゃんには、これがぴったりやねん。
−fin−
- 40 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年10月02日(火)18時58分56秒
- 作者です。
第一話 『お天気雨』終了です。
最後の三行の状況が浮かんで、思わず書いてしまいました。ありがちと言えば、言えるかも。
第二話は執筆中です。現在3割程度。
来週中を目標ですが、来来週かも。
- 41 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月03日(水)02時38分37秒
- こんなに涙腺が弱かったとは……
次も期待しています!!
- 42 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月03日(水)07時41分54秒
- 文句無しの名作ですね。
感動しました。
もっとみんなに読んでもらいたいな〜。
次回作も期待してます!
- 43 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月04日(木)01時19分42秒
- 泣けました。
ホント、よかったです。
- 44 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月04日(木)09時21分00秒
- ありがとう。感動したよ。
でも、1つだけ言わせてくらさい。
関西弁がヘンすぎてちょいと萎え。
堪忍な。
- 45 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年10月04日(木)14時28分16秒
- 作者です。
書く方で忙しかったので、レスさぼってました。ごめんなさい。
>>9
私もごっちんの話、読むのも好きですし、個人的にも書きやすいです。
最初は、『ごま小説』ってしようかと思ったのですが、なんかベタなんで悩んだ結果、この
タイトルを採用しました。
>>30,31,41,43
自分で泣けるのを、みたいなので書きましたので、うれしいです。ハイ。
>>42
後で読んで、後悔がいっぱいです。
見直しの時になるべく客観的にと思うのですが、読むうちに感情移入しちゃってます。
もっと、冷静にならねば。
>>44
ごめんなさい。
普通に書くと、関西弁の微妙なイントネーションが伝わらないので、無理やり関西弁っぽく
してしまいました。ネイティブな関西弁の方には、不愉快だったかもしれません。
多分、今後も関西弁は多用すると思いますので、もっと勉強します。
次回作の執筆もヤマを超えたので、何とか来週には上げられそうです。
でも、ネタが尽きた。
と、言いながら、長編書いてたりして(マジ)。
- 46 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月09日(火)18時42分40秒
- −夢を翼に−
季節は8月。
町は夏の景色につつまれている。
渋谷の町もそうだった。
夏休みというのもあって、町には若者達が溢れ返っていた。
喫茶店には涼を求めて集まった若者でいっぱいである。
そこに、ギャル風の少女とその彼が…、
「なあ、梨華。もう一度やり直そうよ。」
「ごめん。まこと。私…」
「悪い所は、直すからさぁ。」
「うううん、まことには、罪はないの。悪いのは全部私なの。」
「何だって、言う事聞くからさぁ。俺を捨てないでくれよ。」
「ごめん。ほんとにごめん。」
ギィー!
一人の男が入ってきた。
ダークのスーツに、黒のサングラス。金髪をオールバックに固め、両手をポケットに入れ
たまま、二人のいる席へ。
- 47 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月09日(火)18時43分36秒
- 梨華が自分の横に立ったその男を、まことに紹介した。
「この人。吉澤さん。…私の新しい彼なの。」
「なにぃ!」
まことが勢いよく立ち上がった。
「お前が梨華をたぶらかしたのかぁ。お前に梨華は渡さん。力ずくでもな。」
まことがボクシングポーズを取る。吉澤は何事もないかのように姿勢も変えない。
「待って!」
梨華が二人の間に割って入った。そして、まことを庇うように、吉澤に向かって両手を広
げた。
「ダメよ。こんな彼でも、昔は愛していたの。怪我をするのを見たくはないの。お願い。
手は出さないで。」
それに応えるように、吉澤が後ろを向いた。と同時に梨華もまことの方を向き、泣きそう
な表情で、
「お願い。止めて。彼って空手五段なの。先週も、町で5人組に絡まれた時、一人で全員
病院送りにしちゃったの。もう、彼に喧嘩はさせたくないの。お願い…」
空手五段と聞いて、ちょっとブルったまことだが、梨華のお願いに仕方なしに従うように、
ファイティングポーズを解いた。
「ありがとう。まことの事は忘れないわ。」
梨華はそう言い残すと、吉澤の腕を取って、喫茶店を出ていった。
- 48 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月09日(火)18時44分46秒
- 吉澤と梨華は、喫茶店を出て、人ごみの多い渋谷の繁華街へと向かった。
「もういいかなぁ。梨華ちゃん。」
「まだまだ。あいつ、後をついてきてる。」
「ええーっ!」
「ダメ!ひとみちゃん。後ろを振り向いたら、気づかれるわよ。」
二人は、人ごみの中を急ぎ足でとある方向へと歩いた。
「もういいかなぁ。」
「まだまだ。」
人ごみを抜けて、
「もういいでしょう。」
「まだまだ駄目よ。」
繁華街を抜けてしばらくして、
「もういいんじゃない。」
「まだまだ。あっ、じゃあここに入れば、もう大丈夫だよ。」
「ここって…」
吉澤が見上げると、派手なネオンが。
いつのまにか、ラブホテル街に入っていたのだ。
- 49 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月09日(火)18時46分39秒
- 「梨華ちゃん!アタシをここに連れてくるのが、目的だったんでしょ。」
「いや、別にそういう訳じゃないけど…、まぁ、こういうのもありかなぁって。」
「帰る!」
「待ってよ。ひとみちゃん。」
怒って立ち去る吉澤を、梨華が追い掛ける。
「待ってよ。何にもしないからぁ。心配しないでよ。大丈夫だからぁ。ねぇ、入ってみよ
うよぉ。」
それを無視するように、スタスタと歩いていく。
「ひとみちゃんもさぁ、子供じゃないんだからぁ。こういうのも知っといた方が、今後の
役に立つよぉ。社会勉強だと思って。ね。」
道の真中で、吉澤が立ち止まった。
- 50 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月09日(火)18時47分13秒
- 「ねぇほら。いいでしょ。行こう。ひとみちゃん。」
「ア・タ・シは、梨華ちゃんが性質の悪い男と別れたいから、手伝ってって言うから、こ
んな男の格好してきたんだよ。それを何よぉ。」
「うん、カッコいいよ。いよーっ、よっすぃー、男前!」
「アタシは女なの。か弱い女の子なの。梨華ちゃんとは違うの。なのに、こんな格好させ
て、酷いと思わないの。」
「うううん、本当にカッコいい。いつものギャルファッションより、お似合いだよ。」
「そんな口のうまい事言っても、信用してま・せ・ん。」
「そんな怒らないでよぉ。アタシだって、こんな派手っぽい服は好きじゃないんだからさ
ぁ。」
「それは、梨華ちゃんの都合で着てるんでしょ。」
周囲を気にすることなく、大声で言い合いを始めた。しかも、一人の方は、高い声がやた
らと目立つ。
- 51 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月09日(火)18時48分08秒
- 「あのー、道の真中で騒がれると、皆さんご迷惑なんですけど…。」
「「はいぃっ?」」
見ると、二人を囲むような人だかりが。そして、一人の大きな黒い荷物を持った少女が二
人のそばに立っていた。
「あっ、ごめんなさい。こんな道の真中で、ご迷惑でした。」
吉澤が慌てて、石川の腕を無理やり引っ張って、道の端に寄る。それをきっかけに、人が
流れ始める。
「いえ、それでは失礼します。」
大きな黒い荷物を持った少女は、丁寧にお辞儀をして、平然と去っていった。
「さぁ、梨華ちゃん、帰ろ。さっ、梨華ちゃん。…梨華ちゃんってば。」
腕を引っ張る吉澤に気づく様子もなく、呆然と立ち尽くす梨華。視線は、立ち去っていっ
た少女の方に、一直線に向けられていた。
「可愛い…」
- 52 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月10日(水)04時33分28秒
- 新作スタートですね。
カワイイ少女は誰だろう?
- 53 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月10日(水)19時02分22秒
二人は、都立の女子高に通う高校1年生。石川梨華と吉澤ひとみ。
二人はクラスメートであり、しかも自宅が隣り同士。
ちなみに、石川は校内でも美少女で評判だが、1,2のタラシとしても評判。普段は男っ
ぽい格好を好んでいるため女の子に人気があるが、風貌が美少女なので男にも人気がある。
石川にとっても、恋愛の相手が男でも女でも気にしない性格であった。
一方、吉澤はというと、身長170cmでありながら、10cmの厚底サンダルにほぼ金髪と
いう、いわゆるギャルであるが、意外に古風で真面目な性格だったりする。さっぱりした
性格で、後輩の女の子に人気があるが、本人は女性に恋愛感情を持ったりすることはなか
った。
- 54 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月10日(水)19時04分03秒
- この日は、石川が男と別れるために、ギャル吉澤に男装して来てもらったのだが…。
「ああーん、あの娘、何て名前なんだろう。」
「何よぉ。さっき男と別れたばかりなのに、今度は女の子?」
「いいじゃん。好きになるのに、タイミングなんてないの。運命なんて、向こうから来る
のよ。絶対にアタシ達は出会うべくして、出会ったんだよ。」
「じゃあ、どうすんのよぉ。名前だって、どこに住んでるかだって、知らないのよ。」
「そうね。問題はそれだけね。」
(違うでしょ!)
「よーし、それじゃあ。アタシんちで作戦会議。」
「ええっ、ちょっと梨華ちゃん。アタシも付き合うのぉ?」
「ちょっと、待っててね。――― すいませーん、ベーグル5個くださーい。」
「アタシ!ついて行く。」
- 55 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月10日(水)19時05分36秒
「ただいまー。」
「お邪魔しまーす。」
「ああ、梨華に、ひとみちゃんも。ちょうど良かった。実はね、お隣の後藤さんちのお嬢
さんがね。留学から帰ってきたって、ご挨拶に来られてるの。二人もご挨拶しなさい。」
「「はーい」」
この辺りは新興住宅地で、石川達がここに来たのも、中学になってからだった。お隣にそ
んな娘がいるのも知らないのだから、石川達が来る前から、留学していたことになる。
石川と吉澤がリビングに入っていった。
「まぁ、何て格好なの。」
普段とは逆の服装をした二人を見て、お母さんがびっくりした顔をする。
それに応えるように、背中を見せていた少女が振り向いた。
「「ああーっ!!」」
「あらっ」
「後藤さんちの真希ちゃん。もう、知ってるの?」
「うううん、初めて。ねっ。」
「う、うん。知ってるはずないですよぉ。当然じゃないですかぁ。」
冷や汗モードの二人を見て、静かに微笑む後藤であった。
- 56 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月10日(水)19時07分07秒
- その後、三人は梨華の部屋へ。
「へーっ、後藤さんってオーストラリアに行ってたんだぁ。」
「オーストラリアじゃなくて、オーストリア。ヨーロッパだよ。」
「オーストリア?」
「うん、ザルツブルグの音大の付属の学校にね。」
「音大!じゃあ、音楽やってるんだぁ。」
「うん。チェロを弾いてるの。」
「チェロって、あのギターの大きなの?」
「うん。どっちかて言うと…、ヴァイオリンって言ってほしかったけど…。さっきも持っ
てたアレね。」
「あの、大きなの!すごーい。それで、何才から行ってたの?」
「8才から。もうすぐ16だから、人生の半分があっちかな。」
「16って言ったら、アタシ達と同い年なんだぁ。」
吉澤と後藤が二人で盛りあがっている。が、いつもはオシャベリの石川が何も話さない。
- 57 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月10日(水)19時07分58秒
- 「梨華ちゃん。どうしたの?元気ないよぉ。」
「う、うん…」
よく見ると、顔を真っ赤にして、モジモジしている。
(梨華ちゃん。後藤さんの前で照れてるんだぁ…)
吉澤にムラムラっと、イジワル心が出てきた。
「ねぇ、後藤さんって、彼氏なんていたの?」
「ええっ。うううん、そんなのいなかったよ。」
「だって、そんなに可愛いのに。」
「そんなぁ。吉澤さんや石川さんの方が可愛いよ。」
石川の背中がピクンと動いた。
「音楽の練習ばかりで、全然遊べなかったし。」
「へえーっ、大変なんだぁ。…じゃあ、どんな人が好きなの?」
また、石川の背中がピクンとした。
「そうだなぁ。私がマイペースだから、引っ張ってってくれる人がいいなぁ。」
「ふーん」
何気なく、吉澤は石川の方を見る。が、相変わらず、モジモジしたまま。目も合わせられ
ない。
- 58 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月10日(水)19時09分04秒
- 「じゃあ、私。未だ片付けが残ってるんで、これで。」
「うん、じゃあまたね。うちにも遊びに来てね。」
「ありがとう。じゃあね。」
後藤が部屋を出ようとする。
「あっ、ちょっと待って。アタシ達、友達になったんだからさぁ、何て呼んだらいいかな
ぁ。」
「向こうでは、Gocchinって呼ばれてた。」
「ごっちんかぁ。アタシはよっすぃー。こっちは梨華ちゃん。」
「よっすぃーに梨華ちゃんね。じゃあね。梨華ちゃん。」
自分の名前を呼ばれて、石川がパッと顔を上げる。後藤がニッコリと微笑む。
「またねぇ…」
石川が力なく手を振る。それに見送られて、後藤は帰っていった。
「どうしたのよ。梨華ちゃん。さっきの元気とベーグルは?」
「ベーグルは関係ないっしょ。でもさぁ、真希ちゃんって、可愛いよなぁ。」
「可愛いし、上品だし。とてもアタシ達とは世界が違うね。」
「チェロって、クラシックでしょ。16才でねぇ…」
- 59 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月10日(水)19時10分02秒
「16才で、留学してて、チェロだって?」
「ええ、そうなんです。市井先輩。」
今は夏休み中だが、今日は部活で体育館に来ていた。
吉澤はバレー部で、1年ながらもエースアタッカー。
隣にいるのは、2年先輩でバスケット部のエース。市井紗耶香。
ちなみに、市井は校内で人気ナンバー1。しかも、たらしでは石川と1,2を争うほどの
噂である。ただし、市井が相手するのは、もっぱら女の子みたいだが。
バレー部とバスケット部は、体育館を練習で共有しているため、部員同士の付合いも多か
った。中でも、市井と吉澤は妙に気が合う仲だった。といっても、どちらもそれを認めた
がらないが。
- 60 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月10日(水)19時10分56秒
- 「で、その子、後藤真希って言ったよなぁ。」
「ええ。そうですよ。知ってるんですかぁ。」
「ちょっと、待ってて。」
市井が自分のカバンから、雑誌を持ってきた。クラシックの専門雑誌だった。
「何で、市井先輩、そんなの持ってるんですかぁ。」
「気位の高い娘を口説くのには、クラシックも知っておかないといけないんだよ。覚えと
きな。」
(アタシは、そういう趣味はないです。)
市井は、雑誌をパラパラとめくった。
「ええーっと、あっ、これこれ。」
吉澤が覗きこむと、そこには、
『10代で注目されている世界的アーティスト』
とあった。
「これが何か?」
「ここを見ろよ。」
そこには、
『チェロ奏者 後藤真希(15)』
と書かれていた。
- 61 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月10日(水)19時11分34秒
- 「へぇーっ、幼い時からヨーロッパで学び、その力強い弓使いと、繊細な表現力は…って
かぁ。」
「でも…、15才って…」
「バカだねぇ。この雑誌に書かれた時は15だったんだよ。」
「そういえば…、もうすぐ16…って言ってた。」
「じゃあ、決まりじゃん。すっげー。」
市井が大騒ぎするのに気付かないように、吉澤は石川の事を考えていた。
(残念だけど、梨華ちゃん。やっぱり、ごっちんは違う世界の人みたい。)
- 62 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月10日(水)19時12分26秒
- 「おい、吉澤。吉澤!」
「は、はいっ!」
「何だよ。さっきから呼んでるのに。」
「市井先輩。いたんですか。」
「さっきから、喋ってただろ。」
吉澤は何分くらい呆然としていたのだろう。
「でさぁ。その子って可愛いんでしょ。アタシに紹介してよ。ねぇ。」
「ダメですよ。そんな事したら、市井さん、何するか…。」
「何よぉ。それじゃあ、アタシが悪モンみたいじゃん。アタシは、可愛い女の子に、愛と
夢を贈る、幸せのメッセンジャーなんだよ。解ってないなぁ。」
「そうだったんですかぁ。でも、市井さんは罵声と嫉妬を贈られてるのにですねぇ。」
「くぅーっ。言うかぁ。それって、石川じゃん。」
「どっちも似たようなもんです。」
- 63 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月10日(水)19時13分13秒
- 何気なく体育館の外を見ると、テニスラケットを胸に抱えた石川の姿が見えた。普段は、
男っぽい格好が多いが、見た目が典型的な女の子(スタイルも含めて)なので、テニスウ
ェアが眩しいくらいに似合ってる。…はずなのに、今日はその輝きを感じない。どんより
した曇り空。
(あっ、梨華ちゃん。ネガティブモードに入っている。)
「おおーぃ、石川ちゃーん。元気ないねぇ。」
雑誌を片手に、市井が石川に向かって歩いていく。
(ダメ!今の梨華ちゃんに、そんなの見せちゃあ、ダメ!)
吉澤の願いも届かず、後藤のページを見せられたのだろう。その場に泣き崩れる石川であ
った。
- 64 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年10月10日(水)19時15分24秒
- 作者です。
これで出演者は全員、登場させることができました。
どんなカップリングになるかは、今後のお楽しみ。
- 65 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月11日(木)19時17分45秒
「ごめんねぇ。ひとみちゃん。」
「私は大丈夫だよ。どうせ、隣なんだしぃ。」
「そうだよ。吉澤はついでだからいいんだよ。」
「市井先輩が何で、ついて来てるんですかぁ?」
泣いてる石川を吉澤が送って来たのだが、なぜか市井も一緒に来たのだった。目的は、別
にありそうだが…。
石川の家の前まで来た時、
「へぇーっ、やっぱし、普段からクラシック音楽聴いてるんだ。」
耳をすますと、…確かに音楽が聞こえてきた。
「クラシックじゃなくて、タンゴじゃないですか。」
「どっちでもいいじゃん。でも、いい音楽だねぇ。力がみなぎるって感じ。」
「そうですねぇ。ん?あれっ?あれっ?」
どうも音楽が切れ切れである。しかも同じ所を繰り返していたり。
「何で、同じ所を繰り返してんだぁ。CD壊れてんじゃないの?」
「ひょっとして…、ごっちんが練習してるんじゃあ。」
「ごっちんって?」
「後藤さんですよ。」
「おおーっ」
- 66 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月11日(木)19時18分36秒
- 三人はしばらく、その音に聞き入っていた。気がつくと、泣いていた石川まで真剣に聞き
入っていた。
「すっげぇーっ」
「かっけぇー」
そして、音が止んだ。
「さぁさぁ。」
「何ですかぁ。」
「後藤さん、呼び出しなよ。」
「何でですかぁ。」
「だって、ほら。石川がこんなんじゃん。後藤さん出てきたら、元気になるって。」
市井に言われて、石川を見る。二人の会話は聞いてなかったようだ。
「ほら。お友達になったんでしょ。」
「んー、もう。解りましたよ。」
- 67 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月11日(木)19時19分38秒
- 入り口の前で、一旦姿勢を検めて、
ピンポーン
「ひとみちゃん。何するのよぉ。」
石川が焦った顔で吉澤の腕を引っ張って入り口から離す。
「だってぇ…。」
吉澤の返事が終わらないうちに、
「はーい」
後藤が出てきた。
想像以上に早く出てきた後藤に、慌てた石川が、吉澤の後ろに隠れる。
「あら、よっすぃーに、梨華ちゃん。それと…、こちらは?」
「アタシ達の先輩の市井さん。ごっちんの話ししたら、どうしても会いたいって…。ほら、
市井先輩…、先輩?…どうしちゃったんですかぁ。」
市井の方を振り向くと、直立不動で固まった市井が。そう、まるで昨日の石川の様に。
「あ、ああ。い、市井です。こぉ、こいつらの先輩です。どぉ、どうぞよろしく。」
どんな時でも冷静なので有名な市井の、珍しく落ち着きのない姿に、思わず微笑む吉澤で
あった。
- 68 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月11日(木)19時21分16秒
- 「さ、さっきの曲は、ご、後藤さんですか?す、すごい感動しました。よ、良かったら、
また聞かせてください。」
市井は、固まったまま右手を差し出した。その動作は、まるで油の切れたロボットの様。
後藤は、握手に応えて、
「ごめんなさい。聞こえちゃいました。まだ、練習室が無いから小さい音で鳴らしたんだ
けど、近所迷惑でした。」
「いいえ、迷惑だなんて。とても、良かったです。さすが、世界で注目される音楽家だけ
ありますねぇ。」
「そんな事ないです。まだまだですので。」
後藤と会話している市井の姿を睨むように見詰める石川。それに気付いて、石川に微笑み
かける吉澤。
「ごめんなさい。これから出かけないといけないので、これで失礼します。」
どおりで、出てくるのが早かったわけだ。ちょうど、出かける所だったのだろう。
「あっ、お忙しい所をごめんなさい。」
市井が道を譲った。
その市井の前を通って、後藤が吉澤の前に来た。
- 69 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月11日(木)19時21分55秒
- 「ねぇ、お願い。今晩、電話して欲しいんだけど…」
そういって、紙切れが差し出された。
思わず、吉澤が自分を指さした。が、
後藤は首を横に振って、指を差す。その先には、
「えっ!アタシ?」
石川が驚く。妙に高い声が辺りに響いた。それに気付いて、また小さくなる。
「今晩、待ってるから。お願い。ねっ!」
後藤は石川に紙切れを渡すと、駅の方に向かって歩き出した。
「あぁ、送っていきますよぉ。」
市井が慌てて、後藤の後を追い掛けた。石川を気にしながらも。
- 70 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月11日(木)19時23分13秒
- 石川は今起きた事が信じられないように、紙切れを握り締めたまま、呆然としていた。
「良かったじゃない。ごっちん、梨華ちゃんの事、嫌いじゃないみたいだしぃ。」
吉澤が紙切れを覗き込もうとしたのに気付いて、慌ててそれを隠す。
正直、石川はどうしてこんなにも後藤を意識してしまうのか、自分でも解らなかった。最
初に渋谷で会った時にも固まってしまったが、別れた直後は他の女の子に抱く感情と同じ
だった。しかし、自分の家で再会した時、突然何も喋れなくなってしまったのだ。こんな
事は初めてだった。そして、後藤が自分達とは違う世界の人間だと知らされて、とても落
ち込んでしまった。
どうしてなんですかぁー。
「あ〜あ。梨華ちゃん。本当の愛を見つけちゃったのね。」
突然覗き込んだ吉澤の顔に、ワァッ!と我に返った。
ふと、見まわすと自分の部屋だった。
「あれっ、アタシ…、何してた?」
「ん?だって、梨華ちゃんがアタシの腕を掴んで、ここに連れてきたんじゃないのぉ。」
「アタシがぁ?そうなの?…何で?」
「知らないわよ。」
- 71 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月11日(木)19時23分48秒
- 考えるように腕組した時に、後藤に渡された紙切れに気がついた。中には、携帯の番号が
書かれていた。
「ねぇ、ひとみちゃん、真希ちゃんって、何でアタシに電話してって言ったんだろう?」
「そうねぇ…。梨華ちゃんが気に入ったのかも。」
「だけど、真希ちゃんだよ。世界的な真希ちゃんだよ。」
「だって、梨華ちゃんだって、市井さんと1,2を争うくらいモテモテじゃない。」
ハッと気付いて、
「市井さんは?」
「えっ、ごっちん送っていくって、追い掛けてったじゃない。」
「えーっ、何で止めてくれなかったのよぉ。」
「梨華ちゃんもそこにいたじゃないのぉ。」
「ええーっ、うっそぉー」
また、ネガティブになりかけた所を、
「大丈夫だよ、梨華ちゃん。今晩、電話するんでしょ。ゆっくり、お話しなさい。」
- 72 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月11日(木)23時59分56秒
- いしごまになって欲しい!
梨華ちゃんガンバレ。
- 73 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年10月12日(金)14時42分04秒
- >>72
(^▽^)<ハイッ!頑張ります。ね!ごっちん!
( ´ Д `)<ん あぁ 頑張ってねぇ。
ヽ^∀^ノ< お前も頑張るんだよ。
( ´ Д `)<あっ!市井ちゃん。帰ってくるんだよね。
ヽ^∀^ノ<おうよ。待たせたね。
(作者) < 9/9で書いちゃったけど、10/10とは…。 ちょこっと凄いかも。
参照:海板『永遠に』
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=sea&thp=996974737&st=277&to=278
- 74 名前:aki 投稿日:2001年10月12日(金)19時03分12秒
- 読みましたっ。
おもしろいですね!
私も梨華ちゃん応援派です^^;
頑張って欲しいです。
作者さんもこれからも頑張ってください。
- 75 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月12日(金)19時07分18秒
その夜。部屋で石川は、携帯と格闘していた。
「どうしよう。電話しないとね。…でも、迷惑じゃないかなぁ。真希ちゃんが電話してっ
て言ったんだよね。今、かけて大丈夫かなぁ。ご飯食べてる途中とか。いや、もう9時だ
から、食べてるって事はないよね。でもぉ…、今帰ってきた所だとか。こんな時間まで外
出してたら、食べて帰ってきてるよね。市井さんが一緒だったのかなぁ。でも、真希ちゃ
んの用事で出かけたんだしぃ…、大丈夫だよね。うーん、大丈夫かなぁ。ひょっとしてお
風呂とか。…えっ、お風呂ぉ――― キャッ!」
色々想像して、一人で恥ずかしがったりして、電話がかけられないでいた。
「でも、真希ちゃんからのお願いなんだ。うん、大丈夫。ポジティブ、ポジティブ。」
そしてゆっくり、携帯の番号を押した。
- 76 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月12日(金)19時09分15秒
プルルルル、ガチャ
『もしもし』
「あっ、真希ちゃん。」
『梨華ちゃん。ごめんね。』
「うううん。アタシこそ、真希ちゃんとあんまりお話できなかったし。」
『そうね。梨華ちゃんって大人しいもんねぇ。』
決してそんな事はなかった。
「でも、真希ちゃんって、ほんとに凄いんだねぇ。今日、聞いたよ。あれがチェロ?すご
く綺麗な音だった。何て言うか、迫力があるというか、落ち着くというか。」
『へへっ、ありがとう。チェロって、楽器の中でも一番、男性の声に近いんだぁ。梨華ち
ゃんにそう言ってもらえると、嬉しいなぁ。』
「ねぇ、ほんとにまた聞かせてね。真希ちゃんが有名に…って、もう既に有名かな。」
『そんな事ないよ。まだまだ、勉強しないといけないし、練習も足りないし…、それに…
まだ恋愛経験がないから。…やっぱり、そういう経験がないと、感動を与えるような音楽
ができないかなぁって。』
ゴクン!石川は息を飲んだ。
- 77 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月12日(金)19時10分14秒
- 「そうだよ。真希ちゃんって、真面目そうだからさぁ。練習ばっかりじゃなくて、恋愛も
しなくちゃぁ。」
『うん、市井ちゃんにも言われた。』
(市井ちゃん?もう、そんな風に呼ぶまでになったのかぁ。)
「市井さんは、経験し過ぎだけどね。」
『ええーっ、そうなんだ。梨華ちゃんは?』
ブウォッ!
「アタシ?アタシはそれなりに…。でも、未だ真剣には愛した事、ないかなぁ…。」
(真希ちゃんが初めてなんだよ。)
『よっすぃーは?』
「えっ、ひとみちゃん?」
(真希ちゃんって、ひとみちゃんの方が好きなのかぁ?)
『梨華ちゃんと仲いいじゃない。お似合いよ。』
(アタシの方は、そのつもりもあるんだけどね。)
「ははっ、ひとみちゃん。そうだねぇ。ひとみちゃんもよく見たら…可愛いもんねぇ。」
『よく見たらって…、ひどいなぁ。言っちゃお。』
「ダメダメ。許して。何でも言う事、聞くから。ねっ。」
(キャッ!言っちゃった。)
『本当?じゃあね。…今度お休みの日に、一緒にお買い物に行ってもらえないかなぁ。』
「お買い物?別に…いいよぉ。」
(本当に…、本当にアタシを誘ってくれてるの?)
『本当?わぁ、うれしい!』
- 78 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月12日(金)19時12分04秒
「へえーっ、じゃあ明日、ごっちんと買い物に行くんだぁ。」
次の日、石川は共に部活で出てきた吉澤に夕べの報告をした。
「うん、渋谷に連れてってぇって。」
「梨華ちゃん。こないだみたいな所、連れてっちゃあダメよ。」
「こないだ?」
「ほら、あいつとの後、…。」
「ん?ああ!バカ。真希ちゃんにはそんな事しないよ。」
「へえー、アタシにはするのに。」
「もう、ひとみちゃんのイジワルぅ。」
(おいおい、そんなキャラじゃないでしょう。)
- 79 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月12日(金)19時13分35秒
二人が話している所に、市井が来た。
「おっす!」
「おっ、市井ちゃん!」
「バカっ!石川。何でお前がそれを知ってんだよぉ。」
「さぁ〜。」
「まぁいいよ。それでなぁ、後藤の事なんだけど、…アタシ、本気みたいなんだぁ。」
「えっ?市井さんがぁ?」
「うん、そうなんだ。昨日、彼女を見てからさぁ。もう忘れられないんだよね。彼女の事
を考える度にさぁ、こう…胸が痛むってのかなぁ。せつないってのかなぁ。もう、たまら
ないんだよね。」
「へぇーっ、相当な重症ですね。」
「相手に惚れさせても、自分は惚れない。ってのが自慢だったのにさ。」
「お前が言うな!だけどさぁ、初めてなんだよね。こんな気持ち。」
「確かに、彼女可愛いですからね。」
「可愛いだけじゃないんだよね。何て言うのかな。オーラがさぁ、すっごい出てるんだよ
ね。オ〜ラ〜ってね。」
「何だぁ、それ?」
「怪獣王子。知らない?」
- 80 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月12日(金)19時15分24秒
「でも、ごっちんは市井さんじゃなくて、梨華ちゃんを選んだんでしょ。自信持ってさぁ、
告白しちゃいなさいよ。」
吉澤に励まされて、帰ってきた石川だが、後藤の事を考えると、とても不安な気持ちにな
る。
(ひとみちゃんは、本気で好きになった証拠だって言ってくれたけど…、告って断られた
ら、辛いもんなぁ。二度と立ち直れないかも。)
自分のネガティブモードを知っているだけに、不安はつのるばかり。
その時、後藤の家から、チェロの音が聞こえてきた。まだ夕刻で喧騒は激しかったが、そ
れでもしっかりとメロディーが聞き取れる程の力強い響きであった。また、力強さだけで
ない、包容力も感じた。
気がつくと、それをうっとりと聞きながら、明日はガンバろうと心に決める石川だった。
- 81 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月12日(金)19時17分07秒
ピンポーン
「はーい、お待たせ。」
普段は休みの日は昼過ぎまで起きない石川だったが、この日は朝早くから、衣装にメーク
にと、時間をかけたのだ。
(真希ちゃんって、お上品な雰囲気の洋服が多いから、合わせた方がいいかなぁ。それと
も、男っぽくスーツで、デートって感じの方がいいかなぁ。)
普段から、相手が男だろうと、女だろうと、相手に衣装を合わせるようにしていたため、
バリエーションはいっぱいある。でも、後藤は何を望んでいるだろう。
結局普段通り、少し男っぽく、パンツにシルクのシャツにした。
で、後藤を迎えたが、
(今日の真希ちゃんのメーク、ちょっときつめね。まぁ、可愛いのには、変わんないけど。)
「真希ちゃん、今日のメーク、…渋いよ。渋ぃやぁ…なんてね。」
「…うん。だって、このくらいの方がいいし。梨華ちゃんもカッコいいよぉ。」
そして、渋谷を目指して、出かけていったのだった。
- 82 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月12日(金)19時18分32秒
「とりあえず、着いたけど…、どこ行きたい?」
渋谷の町に出て、石川は聞いてみた。
「うーんとね。」
後藤は石川に耳打ちした。
「ええーっ!」
石川は驚いた顔をして、後藤を見る。後藤は両手を合わせて石川にお願いする。
そして…、
「ねぇ、本当にいいのぉ。本当に、本当にいいのぉ。」
石川が何度も聞く先には、後藤が…、
自分のスカートを脱いだ所だった。そして、次にブラウスも。下着の上も外した。
「今なら、間に合うよぉ。そんなの、真希ちゃんには似合わないよぉ。」
パッ!
石川が後藤を見た。
「真希ちゃん…、素敵だよぉ。」
- 83 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月12日(金)19時35分57秒
- >>74
(^▽^)<ハイッ!頑張ります。ね!ごっちん!
( ´ Д `)<それ >>73 で使ったよ。
(作者) < 作者も頑張ります。
- 84 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年10月12日(金)20時43分56秒
- ↑名前にタイトル残したままだ。ショック!
- 85 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月13日(土)00時41分01秒
- え!何たる急展開!!
つ、つづきをお願いします…。
- 86 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月13日(土)02時09分47秒
- やっぱ帰国子女だしね。
- 87 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月15日(月)18時40分29秒
- 「本当?梨華ちゃんに言ってもらうと嬉しいな。」
「真希ちゃんって…、こんなのも似合うだぁ。」
石川の視線の先には、原色のタンクトップにジーンズのミニスカート姿の後藤が。
「やっぱり、こんなに短いスカートだと、恥ずかしいな。」
「うううん、脚も綺麗だし。注目間違いなし。」
真っ赤になる後藤を、改めて可愛いと思う石川であった。
ここは、渋谷のブティック。後藤が一度ギャルファッションを着てみたかったので、石川
がそれに付き合ったのだ。石川としては、普段が上品な後藤に、そんな格好をさせるのに
は抵抗があったが、実際に着てみると、肉感的なボディラインが強調されて、健康的であ
りながら、何ともセクシーな雰囲気であった。
(アタシ、クラクラしちゃいそう。)
- 88 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月15日(月)18時41分40秒
- 「次は、梨華ちゃんね。」
「うん、でもぉ…、真希ちゃんの前だと自信ないなぁ。」
石川が後藤に替わって、試着室に入っていった。
出てきた石川は、チビTにスリムジーンズ。ヘソ出しがポイント。
「梨華ちゃんって、細いのにスタイルいいよねぇ。うらやましいなぁ。」
「そんなことないよぉ。真希ちゃんの方が綺麗だよ。」
二人はそのまま着ていた服を袋に入れ、会計をすませて、街に繰り出した。
「うわぁー、何だか、気持ちいいーっ。太陽がまぶしいーっ!って感じ。」
後藤が、立ったまま大の字の格好で、手足を伸ばして太陽の光を全身で浴びているかのよ
うだった。
石川はその姿に、女神のような神々しさを感じた。
- 89 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月15日(月)18時42分50秒
「今日は楽しかった。ありがとう。」
夕暮れ間近の公園のベンチに二人は座った。
ゲーセン、カラオケ、ショッピングと、1日中二人は遊んだ。
後藤の楽しそうな顔を見るのが、石川には何よりの幸せに感じた。
「梨華ちゃんのおかげで、本当に楽しかった。」
「ねぇ、真希ちゃん。今日はどうして私を誘ったの?」
「うん、こんな服を一回、着てみたいって思ったから。」
「でも…、アタシじゃなくても。ひとみちゃんでも、…市井さんでも…」
「だって、初めて梨華ちゃん見た時、こんなの着てたじゃない。それを見て、あー私も着
てみたいなぁって思ったから。だから、梨華ちゃんに付き合ってもらえたら、いいかなぁ
って。」
「えっ?」
(初めて会った時から、アタシを見てたんだ。)
「梨華ちゃんみたいに、なれたらいいかなぁって。ふふーん。」
「そんなアタシみたいだなんて。」
石川は、辛そうに顔をしかめた。
- 90 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月15日(月)18時43分48秒
- 「アタシって、真希ちゃんが思ってるような女の子なんかじゃないんだよ。誰とでも簡単
に好きになって、男の子でも女の子でも適当に遊んでさぁ、簡単に別れて…。別れる時も
さぁ、結構酷い事やってるんだよね。…初めて会った時もさぁ、男と別れるのに、ひとみ
ちゃんに彼氏みたいになってもらってさぁ、相手の子を騙して別れたんだよね。アタシっ
て酷い女なんだよ。」
「でもね。梨華ちゃんは、優しい女の子だと思うの。相手を騙すのだって、相手を傷つけ
るのが嫌だからでしょ。」
「自分が傷つきたくないだけだよ。」
「それでもいい。梨華ちゃんは、自分の事も相手の事も考えてるんだ。それは、やり方は
間違っているかもしれないけど…、心にある物は正しいんじゃないかって。私はそう思う
んだ。」
「真希ちゃん…」
気がついたら、石川は泣いていた。自分でも気付かないうちに、涙が流れていた。
それに気付いて、涙を拭った。
(真希ちゃん。アタシ、真希ちゃんの事を真剣に好きになっている。絶対に失いたくない。
市井さんなんかにも、負けたくない。)
- 91 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月15日(月)18時44分33秒
- 「真希ちゃん…」
石川が思いを告げようとした時、
「私ね。来月にはまたイギリスに行くの。将来プロでやっていきたいんだけど、今みたい
にクラシックだけでは、無理なの。だから、ビートルズを生んだ町、リバプールに行くの。
そこの学校に通いながら、色んな音楽を学んで、そしていつかは…。」
突然の告白に、石川の頭の中はパニックに陥った。
(どうして!出会ったばかりなのに。真剣に愛することができる人に、…やっと会えたの
に。…もう、会えなくなるのぉ。)
「一昨日もその手続きでね。…梨華ちゃんや、よっすぃーには感謝してる。市井ちゃんに
も…ちょっとね。とても大切な友達ができたから、日本という故郷を大事に思える気持ち
になれた。」
「友達なのぉ…」
「ん?」
「アタシ達、友達でしかないのぉ。アタシ、こんなに真希ちゃんの事好きだよぉ。とって
も大好きだよぉ。絶対に離れたくないって…思ってるんだよぉ。」
「梨華ちゃん…ありがとう。でも…」
「うん、解ってる。真希ちゃんの夢、とっても素晴らしい。それに、真希ちゃんなら、絶
対に叶えられる。アタシも応援したい。でもね、今の気持ち、どうしようもないのぉ!」
- 92 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月15日(月)18時45分10秒
- 後藤のヒザに泣き崩れる石川を、後藤はゆっくりと撫でていた。
「私も梨華ちゃんと別れるのって、とっても辛いの。泣いちゃいそう。でもね…、」
「アタシも行くっ!」
突然、石川が起きあがった。後藤も驚いた表情を見せる。
「アタシも真希ちゃんについて行く。今すぐは行けないかもしれないけど、もっともっと
勉強して…、イギリスに真希ちゃんを追い掛けていく。止めてもダメだよ。絶対に行くん
だから。誰が何て言っても、絶対に行く。いいよね。」
「梨華ちゃん。…ありがとう。」
後藤の頬にも涙が流れ落ちた。
- 93 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月15日(月)18時52分40秒
- >>85,86
(^▽^)<エッ!何想像したんですかぁ。石川はそんなことしないよぉ。
( ´ Д `)<で、梨華ちゃんは、何想像したの?
(*^▽^*)< ポッ!
- 94 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月16日(火)18時49分37秒
二人は将来を語り合いながら、家路を急いでいた。
石川はもっと後藤と一緒にいたかったが、後藤の練習時間を邪魔するわけにはいかなかっ
た。
プルルルー
石川の携帯が鳴った。石川がディスプレイを確認すると、
『まこと』
とあった。
「電話?」
「いいよ。昔の男。」
無視して歩こうとすると、留守電に切り換った。
「ダダイマデンワニデルコトガデキマセン。ハッシンオンノアト、… Piー!」
『あっ、オレっ。梨華の事、絶対に諦めないからなぁ。それから、あの吉澤って奴、アイ
ツ大した事ないなぁ。』
メッセージに入れる声が聞こえて、石川の足が止まった。
- 95 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月16日(火)18時50分12秒
- 『空手五段っていうからさぁ、どんなのかと思ったら、弱っちぃでやんの。』
「アンタ、ひとみちゃんに何したのよぉ。」
石川が携帯に出た。
『何だ、出れるんだったら、出ろよなぁ。へぇーあいつの事、ひとみちゃんって呼んでん
だぁ。』
「ひとみちゃんに何かあったら、許さないからね。」
『へえーっ、許さないって、どうすんのかなぁ。オレもベッドの中じゃあ、許さないから
ねって、へへへ。』
「ふざけないで、ちゃんと答えなさいよ。」
『ちょっと、ぼこぼこにしただけさ。後ろから殴ってやったら、それっきり。全然、相手
にならなかったぜ。』
「何だってぇ…、ひとみちゃん、女の子なのに…、そんな卑怯な…」
『関係ねぇよ。』
「ひとみちゃんは、どこなのよぉ。!」
『ああ、恐い恐い。勝手に探せばぁ。』
ガチャ!
- 96 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月16日(火)18時51分01秒
「どうしたの。梨華ちゃん…」
石川が携帯を握ったまま、震えていた。
「ひとみちゃんが…、ひとみちゃんが…」
「よっすぃーがどうしたの!」
「アタシの昔の男に襲われて、どうなってるんだか…」
「梨華ちゃん、落ち着いて。今日、よっすぃーの行きそうな所は?」
「今日は、バレー部の練習に行ってたはず…」
「その帰りに襲われた可能性が高いのね。」
「だったら…、その途中のどこかにいるかも…。」
「待って。まずはよっすぃーの家に電話して、帰ってないか確認して。」
「そ、そうね。」
石川が吉澤の家に電話してみた。まだ帰ってはいなかった。
「じゃあ、学校に行こう。」
「うん。」
もう家の近くだ。学校までの道を探して行った方が早い。
- 97 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月16日(火)18時51分39秒
「梨華ちゃん、よっすぃーに電話してみて。」
「だって、気を失っていたら…」
「でも、近くにいたら、音で解るでしょ。」
「そっかぁ。うん、解った。」
石川が携帯を鳴らしながら、走った。
「ちょっと待って!」
途中で、後藤が呼びとめた。
「聞こえる。」
「えっ、うそー」
「間違いない。――― こっちよ。」
後藤は、団地の方に入っていった。
「ちょっと待ってよ。全然聞こえないよ。」
「大丈夫。こっち。」
後藤は、団地のゴミ捨て場の前に立った。
「ここよ。」
石川も耳をすませた。確かに聞こえる。この中だ。
二人は急いで、ゴミ袋を掻き分けた。
その中から、…ジャージ姿で血だらけの吉澤が横たわっていた。
「ひとみちゃん…」
後藤が急いで、胸に耳を当てた。
「大丈夫。生きてる。早く救急車を!」
- 98 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月16日(火)18時52分39秒
病院の手術室。その扉の前には4人が静かに座っていた。
石川と後藤と、吉澤の両親。
「ごめん…な…さぃ。」
石川が泣きながら呟いた。
「アタシが、ひとみちゃんに…、あんな事、頼んだから、――― アタシ、どうしたら。」
「梨華ちゃんは、悪くないよ。梨華ちゃんは悪くない。」
「だって、アタシがひとみちゃんに、男の格好させなかったら…、こんな事には…」
「大丈夫だよ。よっすぃー、バレー部で鍛えてたからさぁ、そんなくだらない男にやられ
たりしないよ。ねっ、よっすぃーを信じてあげよう。」
「ありがとう…、真希ちゃん。」
吉澤の両親も何か言おうとしたが、答えがみつからないまま、ただ石川のすすり泣く声だ
けが響いていた。
- 99 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月16日(火)18時53分17秒
『手術中』のランプが消えた。
4人が扉に駆け寄る。
中から、吉澤が台車に乗せられて出てきた。
4人が一言もなく、それを見送り、後から出てきた医者に駆け寄った。
「先生、ひとみちゃんは?」
「大丈夫です。命には別状はありません。発見が早かったのが何よりです。」
「「はぁー、良かったぁ。」」
4人に安堵が流れた。
「命には別状はないんですが…」
*****
- 100 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月16日(火)18時54分12秒
次の日の朝。
いったん、家に帰らされた石川と後藤は、改めて吉澤の病室を訪ねた。
吉澤の両親は、病室の前にいた。
石川は、自分の責任でこうなった事をどうしても詫びたいと、朝早くから来たのだった。
後藤は石川が心配だったので、ついて来た。
「ひとみちゃんは、いかがですか。」
「まだ、ぐっすりと寝ています。」
「ごめんさい。アタシのせいで、こんな事になって…。ごめんさい!ごめんなさい!」
石川は病院の廊下に土下座して、詫びた。
「梨華ちゃん。」
後藤が石川に駆け寄るが、石川は止めようとしない。
「ごめんさない。許してもらいたいなんて、言いません。アタシが…、アタシが…」
そこまで言った時、
「キャーッ!!!!!」
病室から大声が聞こえた。
「ひとみっ」「ひとみちゃん」
「足が…、足が…、――― 足が動かない!どうしてぇ。アタシの足、どうして動かない
のぉ。」
石川が吉澤のベッドに泣きついた。
「ひとみちゃん…、アタシのせいで…」
「アタシ、足が動かないのぉ。跳べないよ。もう、跳べないよぉ。あああああああ!」
吉澤が天井に向かって吠えるのを、4人はただ黙って見守るしか出来なかった。
- 101 名前:86 投稿日:2001年10月17日(水)01時44分28秒
- あー、伝わらなかったか。日本語って難しいね。
一応ネタバレにならないように気をつけつつ、作者さんのやろうと
してることもわかってるよっていうつもりのレスだったんだけどね。
- 102 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年10月17日(水)20時31分06秒
- >>101
こちらもその辺を意識したつもりのレスでしたが、難しいっすね。
まぁ、勘違いしてもらってるつもりで書いてた要素は強いですが。
- 103 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月17日(水)20時32分21秒
「恐らく、金属バットか何かで後ろから殴られたのでしょう。その時に頚椎を損傷して…、
下半身が…。」
手術の後に先生から、そう告げられていた。
吉澤は鎮静剤を打ってもらって、静かに眠った。
石川が、思い詰めた顔で病室を後にした。それに気付いた後藤がそれを追いかける。
「どこに行くのよ。梨華ちゃん。」
「あいつの所。ひとみちゃんを襲ったあいつの所。」
「行ってどうするのよ。」
「殴ってやる。それで、ひとみちゃんの足が治るわけじゃないけど、アタシの気が収まら
ない。止めたってダメだよ。」
「止めないよ。私も行くから。」
石川が立ち止まって、後藤を振りかえった。
「私ってガンコだからね。止めたってダメだよ。」
後藤がニッコリと微笑んだ。
石川も微笑んだ。今日初めて。
- 104 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月17日(水)20時33分37秒
「ここがあいつんち。」
「いるかなぁ。」
「いるよ。絶対寝てる。」
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン
石川が呼び鈴を何度も鳴らした。
「うるさいなぁ…おっ、梨華かぁ。やっぱり返ってきたんだなぁ。そっちの子は?三人で
楽しもうってか。」
イヤらしい笑いを浮かべた男が出てきた。
「アンタのせいで、ひとみちゃん。下半身不随だよ。どうしてくれるんだよ。」
「知らねぇよ。お前がアイツの事、空手五段なんて言うからさ。オレだってああしなけり
ゃならなかったんだ。ウソだって言うのなら、騙したお前が悪いんだよ。」
「けっ、後ろからなんて汚ねぇ真似してよく言うよ。それに、金属バット使ったろ。」
「知らないなぁ。オレの鉄拳が金属バット並だったのかなぁ。オレのあそこも金属バット
並だぜ。試してみるかぁ。」
最後の方は、後藤に向かって言い放った。
後藤の方を向いたまことの襟首を掴んで、自分の方を向かせる。
「このフニャチンの腐れチンが、よく言うよ。」
石川がまことの股間をギュッと握りつぶした。
ギャッ!と叫んで、まことが1歩下がった。
- 105 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月17日(水)20時34分41秒
- 「バカ野郎!いてえじゃないか。」
石川が右手を壁に擦り付けながら、
「大丈夫だよ。しばらく使わなくていいからさ。警察に突き出してやるからよ。」
「へへっ、証拠なんてないぜ。誰か見たのかよぉ。そのひとみちゃんとかよぉ。」
壁に擦り付けていた右手が止まった。
「くっそー」
石川が歯軋りをする。
「お前はオレから逃げられないって事。諦めてオレの所に返ってきな。」
まことが石川を抱きしめよと手を伸ばしたのを払って、石川がまことの胸倉を掴んだ。
「なめるんじゃないよ。アンタみたいなクソ野郎…、こうしてやる。」
「へへっ、殴るのかい。いいぜ。お前に殴られて、ビビるオレじゃないぜ。」
まことが余裕で目を閉じた時、後藤が石川を突き飛ばして入れ替わった。
- 106 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月17日(水)20時35分14秒
- 「ほほう、アンタが相手してくれるのかい?」
まことが顔を突き出した所に、
ボカーン!
後藤の渾身の右ストレートがまことの顔面にめり込んだ。まことはそのまま後ろの壁まで
吹っ飛び、鼻血を流したまま、白目を剥いて気を失った。鼻が変な方向に曲がっていた。
それを石川が覗き込む。ついでに、股間を蹴り上げる。そして、後藤の方を振り返った。
後藤は右手を振りながら、
「私って、いつも重たいチェロを持ってるじゃない。力あるんだよね。その辺の男の子に
も力なら負けないよ。」
「真希ちゃん。ありがとう。でもね、こんな奴のために大事な右手、ケガしたらどうする
のよ。」
「へへっ、知らなかった?弦を押さえるのは左手。右手は弓を引く方だから、心配ご無用。
なんてね。」
- 107 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月17日(水)20時36分08秒
その後、石川の携帯に入っていたまこととの会話が証拠となって、まことは傷害で逮捕さ
れた。その時、鼻の骨折の事も聞かれたが…、
「警察にも、熱心なクラシックファンはいるんです。」
署長の一言で、無かった事になった。
その報告に、石川と後藤が吉澤を見舞った。
「ごめんね。梨華ちゃんも真希ちゃんも、アタシのせいで。」
「だって、元はと言うと、アタシが悪いんだから。」
「私は、あんな嫌な奴、殴ってやれてスッとしたし。」
三人は笑い合った。
- 108 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月17日(水)20時36分40秒
「あのさぁ、ひとみちゃん。真希ちゃんがね、…イギリスに行っちゃうんだって。」
「ええっ、そうなのぉ。」
「うん。もっとね、音楽を勉強して、立派な音楽家になりたいの。」
「そっかぁ。ごっちんだったら、絶対だよ。アタシ…が保証しても仕方ないけど、とても
良かったもんね。」
「それで…、来月から学校なんだって。」
「じゃあ、もうほとんどないじゃん。あーん、寂しいなぁ。折角仲良しになれたのに。」
「ごめんね。それまでに行っておかないといけないから…。」
「うん、そうなんだぁ。…で、いつ行っちゃうの。」
「来週の火曜日。」
「もう、一週間もないんだぁ。」
「毎日、お見舞いに来るからね。」
「アタシも一緒に来るよ。」
「ありがとう。二人が来てくれたら、とっても嬉しい。」
- 109 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月17日(水)20時37分15秒
吉澤が治療に出ている間、石川と後藤は屋上に上がった。いい天気だった。
「真希ちゃん。あのね。アタシ、真希ちゃんを追い掛けて、イギリスに行きたかったんだ
けど…、やっぱりダメ。ひとみちゃんを置いては行けない。アタシのせいだし、ちゃんと
責任取らないといけないって、そう思うんだ。」
後藤は黙って、頷いた。
「本当は行きたい…、何て言ったら、泣いちゃうかもしれないし、真希ちゃんも困ってく
れるかもしれないから、言わない。でもね、真希ちゃんの事は絶対に忘れない。」
後藤は黙ったまま、石川の反対方向に歩いた。そして振り向いて、
「ねぇ、お願いがあるの。私の音楽を聞いて。」
- 110 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月18日(木)18時52分52秒
二日後、吉澤の病室に大きなチェロが運び込まれた。部屋には、入院患者以外では、吉澤
の家族。石川とその家族。なぜか…市井まで来ていた。
後藤が入ってきた。純白のドレス姿に、驚嘆の声が上がった。最高の演奏を聞いてもらう
ために、演奏会さながらの雰囲気に自分を置きたい。そういう意図からだった。
「今日は、吉澤ひとみさんのために、演奏させていただきます。」
改めてフルネームで呼ばれて、吉澤が照れている。
「普段、私は激しい曲を好んで演奏しています。私自身、強い音を出すのが得意でしたし、
男性的な力強さを表現したい。そんな気持ちでいました。」
市井と石川が、初めて後藤の練習していたのを思い出して、頷いた。
- 111 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月18日(木)18時53分22秒
- 「今日は、病院でというのもありますが、静かな曲をお贈りします。恐らく、最も有名と
思われます、サンサースの『白鳥』です。この曲をお贈りするのは、…」
後藤が吉澤を見詰めた。吉澤の身体がビクンと波打つ。
「吉澤さんに、夢を持ってもらいたい。そんな気持ちからです。夢は、明日に向かう力で
す。夢があれば、明日は開きます。白鳥が空を飛ぶように…、吉澤さんにも翼を広げてほ
しい。そんな気持ちからです。聞いてください。」
後藤が、静かにチェロに弓を当てた。しばしの沈黙の後、チェロが音を奏ではじめた。
- 112 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月18日(木)18時53分53秒
その音は…、静かで、しかも力強く、永遠の響きを感じさせる音だった。
僅かな濁りもない、全くの純粋さ。
そんな清水に包まれた湖が静かに…、静かに…。静かに、波打つ風景。
そして…、一瞬波が荒れたと思ったら、空にはばたく白鳥の群れ。
群れの中を、見事に澄み渡った大空の一番高い所を、大きな翼を広げて舞う白鳥の姿。
その白鳥が…ゆっくりと舞い降りてきて…、――― 自分の身体に吸い込まれていく…。
石川が目を開いたのと、後藤が弓を置くのとが、同じタイミングであった。
一瞬の間隔を置いて、病室は拍手に包まれた。病室の外からも。
- 113 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月18日(木)18時54分23秒
- 拍手が静まるのを待って、後藤が話し始めた。
「人間には、翼がありません。ですから、飛ぶことはできません。しかし、夢を翼に代え
れば…、人は空だって飛べるのです。人間には、足があります。そして、歩けます。ひと
みさんは今、歩くことができないかもしれませんが、夢を足に代えれば…、きっと歩けま
す。そして…、いつの日か…、飛ぶことだって、できるはずです。夢さえあれば…、夢さ
え…。」
「ごっちーーん!」
吉澤がその場に顔を伏せて泣き出した。お母さんがそれをなだめている。お父さんが後藤
に向かって、感謝の意をこめて頭を下げた。
「真希ちゃん…、ありがとう…」
石川も涙を浮かべていた。石川の両親も、何度も何度もお辞儀をした。
「ごっちん。アタシ、頑張る。もう一度、跳べるように。頑張る。」
後藤も微笑んで、吉澤に応えた。
- 114 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月18日(木)18時55分04秒
後藤は、イギリスに旅立っていった。
石川も吉澤も見送りには行かなかった。
「さようならは言わない。絶対に会いに行くから。」
三人は前日に、誓い合ったのだった。
その日の夕方。市井が見舞いに来た。
「石川んちに聞いたら、こっちって聞いたから。」
吉澤を車椅子に乗せて、三人で屋上に上がった。
「市井さん、空港まで行ったんですか?」
「うん。当然じゃん。」
市井がしばらく、空を見上げていた。
「アタシ…、後藤を追い掛けていく。決めた。」
二人は黙って、市井を見た。
「アタシ、後藤の事が好き。本気なの。アイツと一緒にいてやりたい。今までも外国で一
人きりだったし、これからもまた新しい土地で一人きりだ。寂しいはずだよ。」
石川はドキッとした。
(アタシは、真希ちゃんの…、そんな所まで考えてなかった。そうだよね。アタシ達と同
じ…、女の子だもんね。)
「すぐには、無理だけど…、卒業したら…、必ず行く!」
- 115 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月18日(木)18時55分37秒
- 「市井さん。」
石川が市井に歩み寄った。
「真希ちゃんをお願いします。ずっと傍にいてあげてください。」
「うん。アンタらの分も、後藤のために、力になってあげるよ。」
市井が帰った後、
「梨華ちゃん、良かったの?」
「うん。アタシにはひとみちゃんがいてくれるし、市井さんの方が真希ちゃんの頼りにな
りそうだし、…それに…」
「それに…」
「また会えるって、約束したし!」
- 116 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月22日(月)18時43分08秒
- *****
−5年後−
ロンドンの空港に降り立つ、二人の女性。
向かう先にも…、一人の女性が。
「オッス!」
「あっ、市井さん!」
二人は市井の元に駆け寄った。
「久し振りだねぇ。元気にしてた?」
「えぇ。市井さんも元気そうで。」
「おおよ。毎日、世界を飛び回っている身だからね。」
「大変そうですねぇ。」
「そりゃぁ、人気者のマネージャーとしてはね。光栄ってことよ。」
市井は二人に胸を張ってみせた。
「今回はどうもありがとうございます。」
「いいって。でも、後藤には言ってないから。後でびっくりさせようって思ってね。」
「相変わらず、イジワルだよねぇ。」
「コラッ!石川ぁ。お前も相当の悪だったじゃないのぉ。」
「「ぐうぇへっへっへっ…」」
空港のロビーでふざけ合う二人を吉澤が呆れた顔で見ている。
- 117 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月22日(月)18時43分42秒
- 「でさぁ。申し訳ないんだけど、1階は取れなかったんだ。2階席の一番前なんだけど…、
一番端しか取れなくて…。ごめん。」
「ええーっ、そんなぁ。」
駄々をこねる石川を吉澤が制して、
「いいです。こんな所まで、ごっちんのコンサート聞きに来れただけでも凄いのに、それ
だけで充分です。」
「ほんと、吉澤は優しいねぇ。ほんとにさぁ、後藤のコンサートはチケット取りにくいの
よ。それに、今回は初のヨーロッパツアーの最終日じゃない。ほんとに大変だったんだか
らぁ。」
市井が腕組みして、うんうんとうなる。
石川と吉澤は、二人で顔を見合わせ、
「市井さん、全然変わってないよねぇ。」
「ほんと、見た目はカッコいいけど、中身が子供っぽいのもそのまんま。」
「何か言ったぁ。」
「いえいえ。」
市井が石川と交替して、吉澤の車椅子を押しながら、
「それでは、ご案内しまーす。こちらへどうぞーっ」
- 118 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月22日(月)18時44分57秒
- 市井に連れて来られたのは、洒落た雰囲気のホテルの一室だった。
「高いんでしょ。ここ。」
「気にすんなって。経費で落としとくからさぁ。」
さすがは抜け目のない市井である。
「コンサートは、夕方の5時からだから、それまではゆっくりしてていいよ。1時間前に
迎えに来るよ。後藤に会いたいだろうと思うけど、アイツ、コンサート前はリハーサルや
コンセントレーションで忙しいし、それに終わってから行ってあげた方が喜ぶと思うしさ。」
「市井さんは、もう行っちゃうんですか?」
「ん?何で?」
吉澤が沈んだ表情になった。
- 119 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月22日(月)18時45分28秒
- 「ごっちん、こんなアタシ、何て思うかなぁって。」
「喜ぶに決まってるじゃん。」
「だって、ごっちんに頑張る。跳べるように頑張るって、約束したのに…、まだ歩くこと
も、立つこともできない。…ごっちんは、約束通り有名な音楽家になったのに、…アタシ
はまだ約束が果たせていない。――― ごっちんに会わせる顔がない。」
「ひとみちゃんも頑張ったんだよ。ちゃんとリハビリもやってるしさぁ。つかまり歩きだ
って、できるようになったんだよ。…もう少しなんだよ。もう少しで、立てるんだよ。」
それがウソでないのは、市井も知っていた。後藤は、音楽に関してはとても几帳面であっ
たが、対照的にかなりの筆不精であった。そんな後藤の代わりに、市井が石川達と手紙の
やり取りをしてくれていた。そこで、後藤の近況も報告していたし、吉澤の苦労も聞いて
いた。市井も我が身のように、心配していた。
市井はしばらく黙っていたが、
「後藤の音楽を聞きなさい。それから、…会うかどうか、決めたらいいよ。」
- 120 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月22日(月)18時46分11秒
開園15分前、緊張の面持ちで、石川と吉澤は席についた。
「梨華ちゃ〜ん、何か、アタシ達まで緊張するねぇ。」
「ひ、ひとみちゃん。て、手が震えてるじゃない。」
「り、梨華ちゃんだって、あ、足が、ほら。」
「違うよ。これは――― 今何時?」
「だから、15分前だって。さっき聞いたばかりでしょ。」
「だってさぁ、――― 真希ちゃん、大丈夫かなぁ。」
「大丈夫だって、市井さんは言ってたけど…」
「大丈夫だよね。絶対絶対大丈夫だよね。」
「ごっちん、マイペースだって、言ってたしね。」
二人はお互いの手を握り合いながら、開演を待った。
- 121 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月22日(月)18時48分06秒
ビィーー!
予定通りにコンサートは始まった。
幕が上がると同時に、演奏は開始された。
その日の後藤は、真紅のドレスだった。肩から腕にかけて以外は露出の少ないデザインだ
ったが、その分肉感的なボディラインが強調され、幕が上がると同時に感嘆の声が漏れる
ほどであった。
(真希ちゃん、綺麗!あの日よりも、もっと綺麗になってる。)
相変わらず、力強い音と抜群のリズム感は、あらゆるジャンルの音楽を十分に表現するも
のだった。
(凄いよ。凄いよぉ。)
(わぁー、興奮する。わぁー、すげぇー。)
二人は握り合った手を通して、お互いの興奮を感じ合った。
- 122 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月22日(月)18時48分53秒
- 時に悲しく、時に軽やかに、時に激しく、時に大らかに、…
まさに、弓が、弦が、…命を吹き込まれたかのように、音を奏でていった。
(すごーい。かっけー。すごーい。)
吉澤が小声で呟くのを横に感じながら、…石川は、後藤と出かけたあの日を思い出してい
た。
眩しい太陽の下…、後藤と過ごしたあの日を…。
日の光を浴びて、女神のように見えた…、あの日の後藤を。
自分の思いを告白し、後藤からイギリスに旅立つことを告げられた日。そして、吉澤が…。
石川は涙を我慢することができなかった。涙でステージがぼやけて見えない。しかし、…
石川の目には、あの日と同じ後藤の姿が、しっかりと映っていた。
あの日と変わらない…、後藤の姿が…。
(真希ちゃん…、アタシ、今でもやっぱり…)
思わず、ぎゅっと握り締めた手に、驚いた吉澤が石川を見る。石川の涙に気付いて、優し
く握り返す。それに気付いた石川が…、吉澤と目と目で、
(真希ちゃん、あの日の真希ちゃんのままだね。)
(今でも、友達だよね。)
- 123 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月23日(火)12時38分12秒
1時間半のコンサートも終わりとなった。
いったん袖に下がった後藤に、観客が拍手で訴える。アンコール。もう一度と。
数分間鳴り止まない拍手の中、後藤は衣装を純白のドレスに着替えて出てきた。
「あれは、後藤が一番心を込めて演奏したい時の…、後藤にとっては特別の衣装だよ。」
石川達の横に市井が来ていた。
「あの衣装って…、市井さん。」
「そう。あの日のさ。」
後藤が英語で挨拶をしていた。観客はクスリと笑っていたが、石川達には解らなかった。
- 124 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月23日(火)12時38分44秒
- 後藤がもう一度、チェロを構えた。弓を当て、…しばしの沈黙。
流れ始めたメロディーは…、
「市井さん…」
「そうだよ。」
『白鳥』だった。衣装も曲も…、後藤も…、聞いている石川も吉澤も、市井も…、あの日
と同じだった。何も違っていなかった。
年を重ね、経験を積み、少しずつ大人になっていたが…、心の中はみんな同じだった。
あの日のまま…。
「本当にアンタ達のことは教えてないんだけど、後藤がどうしてもこれがやりたいって。」
市井が石川の耳元に告げた。石川はそれに頷いて応えただけだった。
(真希ちゃん。アタシ達は、まだ夢を追い掛けてるんだよね。アタシも、真希ちゃんも、
ひとみちゃんも…。そして…、いつか…、あの白鳥の様に、――― 飛べるよね。)
- 125 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月23日(火)12時39分14秒
後藤の奏でる音以外、コトリとも音がしない。全ての人が、全神経を集中させて、全ての
音を聞き逃すまい。緊張感みなぎる中、――― 後藤が最後の音を奏で終えた。
コトリ
弓を置いた瞬間、
ワァーーーー!!!
会場が割れんばかりの拍手に包まれた。
観客全員が立ちあがって、スタンディングオベーションで感動を表した。
石川も立ち上がった。
吉澤も立ち上がった。
吉澤も… 立ち上がった。
- 126 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月23日(火)12時39分47秒
石川も吉澤も夢中で拍手をしているため、立ち上がっていることに気付いていない。
最初に気付いたのは、市井だった。
市井は拍手をしていた手を顔に当て、その場に伏せて泣き出した。
市井の様子を不審に思った後ろの席の紳士が市井に声をかけた。
市井が吉澤のことをその紳士に説明した。
「ブラーボー」
感動したその紳士が隣の席へと説明し、吉澤に向かって拍手を贈った。
隣へ、後ろへと、それは伝えいかれ…、2階席の半分が、吉澤に対して拍手を贈っていた。
当の吉澤も、その隣の石川も、それが自分達に贈られている拍手だと気付かず、ただ、無
心に後藤へと拍手を贈り続けた。
- 127 名前:夢を翼に 投稿日:2001年10月23日(火)12時40分19秒
後藤は、…幸せの面持ちで、万来の拍手を身体全身で受け止めていた。
そんな後藤の頬を…、涙が一筋、流れたのに気付いた人は少なかっただろう。
まして…、その涙の意味を知る人は…。
−fin−
- 128 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年10月23日(火)12時42分09秒
- 作者です。
第二話終了です。
最後まで読んでいただけた方、ありがとうございました。
次回は未定。海板の方が佳境に入っているので、それ次第です。
- 129 名前:M.ANZAI 投稿日:2001年10月23日(火)18時51分42秒
- 最初から読ませていただいてました。
とても素晴らしい作品です。
イギリスへ旅立ったところで区切りなのかと思っていましたが、
5年後の物語がさらに未来への希望を繋ぐものになっています。
5年という歳月は、夢が叶ったというにはまだまだな月日で、
それでいて以前の場所からは大きく前進している事を暗示している
ように感じます。
待っておりますので、また書いて下さい。
それと「海板」の方、がんばって下さい。
- 130 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年10月24日(水)21時13分01秒
- >>129
お褒めいただき、恐縮です。
当初の目論見は、あまり見かけないキャラ設定でということで、
後藤 − 上品できっちりした性格
石川 − 柄が悪くて、適当なタイプ
吉澤 − 女の子っぽくて、内気
でしたが、難しかったです。特に、吉澤はスポーツマンキャラでないと、ケガのシーンが
弱くなるので、書ききれませんでした。
市井も構想の段階ではなかったのですが、石川と後藤を取り合う悪人キャラで予定しまし
た。悪人にはしきれませんでしたが、登場させたのは正解だったかなと思っています。
三作目も半分くらい書いています。ちょっと自信がないので、すぐに上げられるとは限ら
ないですが、それより海板の残りレス数の方が心配なので、足りない時にはここに上げる
つもりですので、そのために開けてあるというのもあります。
早ければ、来週…かな。
四作目は未定。構想すらまだ。
- 131 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月27日(土)15時42分06秒
- おもしろかったよ
次回作に期待sage
- 132 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年10月28日(日)13時35分02秒
- 作者です。
第三話です。題名は、−潮騒に誘われて−です。
- 133 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年10月28日(日)13時35分33秒
- −潮騒に誘われて−
何で、ワタシはここに来たのだろう?
目の前の国道には、車がひっきりなしに通り過ぎている。
ワタシは、ここならのんびりできるだろうと…、静かに都会を忘れて過ごせるのでは…、
と思っていたのだが…、
もうこの国には、都会しかなくなってしまったのかもしれない。
静かに暮らすことなんて、できないのかも。
- 134 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年10月28日(日)13時36分47秒
だが…、国道を渡って、ガードレールを超えると、…聞こえてくる。別のざわめきが。
ワタシは、松の雑木林を抜けていった。その向こうには…、
青く広がる、大海原が見えた。
ザザーン ザザーン
そう。聞こえていたのは、波の音。海が、この国を打ち鳴らす音だ。
昨日も聞いたんだ。ここで…
この音なら、悪くない。
だけど…、なぜ?
ワタシはここまで来たのだろう?
- 135 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年10月28日(日)13時37分50秒
ワタシは砂浜に座ってみた。
真夏には、海水浴客でここもいっぱいだったろう。さすがに10月ともなると、人影は全
く見られなかった。
しかし、砂に手を入れると、熱さが手を通じて伝わってくる。
この熱さは、夏の残り物なのだろうか。
向こうの方に、岩場が見えた。
アソコだ。
ワタシは岩場を目指して歩いた。
距離はたっぷりあったが、機嫌の良い時なら、それも気にならない。
岩場についた。そこからの果てしない水平線は、
…ちょっと感動したかも。
でも…、昨日ここにいた人は…、今日は来ないのかなぁ。
- 136 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年10月28日(日)13時39分14秒
- 散歩を終えて、宅に戻った。
宅といっても、自分の家ではない。
ワタシは胸の病気を患っている。最近は医学が進んでいるので、もはや直らない病気では
ないのだが、治療には休養が最重要らしい。
それで、療養として、ここに来させてもらっている。
「なっち、帰ってきたんかいな。」
「うん、裕ちゃん。ただいま。」
- 137 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年10月28日(日)13時39分50秒
裕ちゃんは、ワタシの叔母にあたる。しかし、血の繋がりはない。だけど、ワタシはこの
叔母さんが好きだった。裕ちゃんも、親戚の中で一番年が近かったワタシをよくしてくれ
た。それで、叔父さんはすぐに亡くなって、親戚関係がなくなったのだけど、裕ちゃんは
ワタシとだけは、今もずーっと、付き合いが続いていた。
ワタシが病気で療養しなければいけないって解った時も、裕ちゃんがワタシのお世話をし
てくれるといって、ここに呼んでくれたんだ。
「なっち、お昼ご飯は何食べたい?」
「うーーーん、そうだなぁ。裕ちゃんのソバメシが食べたい。」
「おっ、裕ちゃんの十八番や。まかしとき。」
- 138 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年10月30日(火)12時46分05秒
何で、ワタシはここに来たのだろう?
今日も、国道を渡ってきた。
波の音が聞きたかったから?
ワタシは泳ぎが得意でなかった。
…スポーツ全般に得意ではなかったけど…、
だから、…海に執着はない。
だったら…なぜ?ここに来たのだろう?
- 139 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年10月30日(火)12時46分38秒
今日は不機嫌だ。
朝から裕ちゃんと喧嘩してしまった。
理由は、…忘れた。
そのくらい、つまらないことだったんだ。きっと…
だけど、たまらなく、裕ちゃんを許せないでいる。
…でも、本心は…、
そんな自分が許せないのだ。
今日の天気は、ワタシの心と同じような、曇り空。
雨が降るかなぁ。
降ったら、濡れちゃうなぁ。
濡れたら…、裕ちゃん、心配してくれるかなぁ。
- 140 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年10月30日(火)12時47分10秒
昨日の岩場を見た。
こんな天気に、水平線を見たら、どんな気持ちだろう。
行ってみよう。
昨日は、あんなに早くついたのに、今日はなかなかつかない。
気分が重いと、足も重いんだ。
岩場に上がった。
「あれぇ!」
海に突き出した所の、一番高い所に、誰かがいた。
さっきからいたのかなぁ?
- 141 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年10月30日(火)12時47分41秒
「あのぉー」
ワタシは声をかけていた。
何を聞くのだろう?
いつのまにここにいたのですか?
どこから来たんですか?
そもそも、何でワタシは声をかけたの?
ワタシって、どっちかと言うと、人見知りの方だから、知らない人に声かけたり、できな
いのに…。
「一昨日も、来てませんでした?」
- 142 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年10月30日(火)12時48分14秒
人影が振り向いた。
女性だった。
いや、むしろ、少女といった方が正しい。
セミロングの黒髪を片手ではらって、ワタシの方に見せたその表情は…、無表情としか言
えない。
感情すら持っていないんでは…、
しかし、ワタシは、彼女から目を離すことができず、見つめてしまった。
解った。
ワタシは彼女に会いたくて、
昨日も…、今日も…、
ここに来たんだ。
- 143 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年10月30日(火)12時48分47秒
ワタシはもう一度、話かけた。
「一昨日も、ここにいたよね。」
少女の身体が宙に舞った。
「あっ、危ない!」
ここは岩場である。ごつごつした足元に飛び降りるのは、かなり危険である。
ワタシは駆け寄ろうとしたが、…ワタシの不安をあざ笑うかのように、
彼女は岩場を飛び降りて、
ワタシの方に、歩いてきた。
- 144 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年10月30日(火)12時49分35秒
「危ないよ。」
ワタシの目の前まできた少女に、もう一度声をかけた。
「大丈夫。――― 慣れてるから。」
表情をかえないまま、少女は応えた。
「一昨日も、…来てたよね。」
もう一度、聞いた。
「うん。」
そうか。一昨日見たのは、やっぱりこの少女だったんだ。
「どうして、…ここへ?」
変なことを聞くワタシだ。
「――― 好きだから。ここから見える海が好きだから。」
同じ感想を持ってくれてるって解って、ちょっとうれしかった。
「ワタシもね。ここから見える海…、好きだよ。」
ワタシは水平線を見つめた。
昨日と同じで、綺麗だなと思った。
- 145 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年10月30日(火)12時50分08秒
しばらく見惚れていたが、…気がついたら、少女がワタシの顔を見つめていた。
「ん?」
ワタシも少女の方を向き直った。
「ここね。お父さんもお母さんも好きなの。」
「へぇーっ、じゃあお父さんに連れてきてもらったんだ。」
「うん、そう。家族で見に来てたんだ。」
「へぇーっ、いいなぁ。」
ワタシには家族はいない。といっても、一緒に住んでいないだけ。
なぜなら、―――― 家族が嫌いだから。
父も母も … 嫌いだから。
一緒にいると胸が詰まりそう。
それで、家を飛び出したんだ。病気を理由にして…。
- 146 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年10月30日(火)12時50分43秒
家を飛び出した時、正直不安でいっぱいだった。
そして、訪ねた先が、…裕ちゃんだった。
今は…、裕ちゃんが家族みたいなもんだ。
「ワタシんちって、家族で出かけたり、したことないからさぁ。」
「でも、いいよ。――― 生きていてくれたらね。」
この時、ワタシの身体を衝撃が走った。
この無表情の裏には、…大きな悲しみを隠しているのか。
「…」
何か言葉をかけてあげたかったけど、…ワタシには適当な言葉が見つからなかった。
- 147 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年10月30日(火)12時51分13秒
「事故でね。――― 二人とも…」
「そっかぁ。…でもね。頑張って…」
ワタシが言いかけた時だった。
「人はね。…独りじゃあ、生きていけないんだ。誰かのために、生きてる。そんな気持ち
が持てなければ、…生きてはいけない。」
独り…でかぁ。
「アナタには、…誰かいる?」
裕ちゃんの顔が浮かんだ。
「その人のこと、悲しませちゃあ、いけないよ。」
そう言い残して、
少女は岩場を降りていこうとした。
「待って!ワタシの名前は、安倍なつみ。」
「アタシの名前は、後藤真希。」
真希ちゃんかぁ。
「また、…会えるかなぁ。」
「うん。――― 多分。」
初めて、笑ってくれた。
こんな風に笑うんだ。
もっと、こんな顔を見せてくれたら、…うれしいな。
- 148 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月31日(水)00時31分53秒
- おおっと、後藤だった。
羊のなちごまスレに紹介したいんですけど、構いませんか?
- 149 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年10月31日(水)19時24分01秒
- >>148
レス感謝です。
紹介いただけるのは、全然OKです。
でも、期待しないでくださいね。まだ、執筆し終わっていないもので。
ストーリー的には決まってるのですが、今までとスタイル変えてるので、詰り気味。
- 150 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年10月31日(水)19時34分24秒
- 宅につくと、裕ちゃんが飛んで出てきてくれた。
「なっち。大丈夫か。雨には降られなんだか。」
「大丈夫だよ。なっちだって子供じゃないんだからさぁ。」
「なっち。――― 朝の事、ごめんなぁ。」
そっかぁ。ワタシ達、ケンカしてたんだっけ。
「なっちの方こそ。…裕ちゃんが心配してくれてるの、知っててさ。」
そう。裕ちゃんの優しさには、いつも感謝している。
なのに、強がって…、
それって、裕ちゃんの優しさに甘えてるだけなんだ。
「今日は、なっちがご飯作るよ。」
にっこりと…、笑えたよね。
裕ちゃんが大好きって言ってくれた笑顔。見せてあげられたよね。
- 151 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年10月31日(水)19時35分28秒
- ―――――
今日は雨だった。
昨日の夕方から振り出した雨が、今も続いている。
今日は…、来ないよなぁ。真希ちゃん。
ワタシは未だ迷っている。
行こうか…、行くまいか…
もし…、来てたら…
一緒に雨の水平線が見られるかな?
雨の水平線かぁ…。
行ってみようかなぁ。
- 152 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年10月31日(水)19時36分11秒
「なっち、こんな雨の中、どこに行くんや。」
裕ちゃんに見つかっちゃった。
「うん、ちょっと…、コンビニに買い物に…」
「何言うてんねん。昨日、ウチが買ってきてあげたやろ。何か足りへんもんでもあったん
かぁ。」
「うーーん、別に――― ない。」
裕ちゃんが腰に手を当てて、…睨んでる。
こういう時の裕ちゃんは恐いんだ。
「あんたなぁ。何でこんなとこ来とんか、解っとんかぁ。」
「うん。――― 療養で…。」
「その病人が、何でこんな雨の中を出かけるっちゅうてんねぇ。」
「…ごめん。許して。」
ワタシは頭の上で両手を合わせて謝った。裕ちゃんが怒った時は、謝るに限る。
特に、ワタシが悪い時はね。
- 153 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年10月31日(水)19時36分42秒
「なっち、――― ウチはあんたの事が好きやで。家族同様やって思うてる。そやけどな、
あんたには、ほんまの家族がおるんやで。なぁ、そろそろ帰たったらどうや。帰らんでも、
連絡だけでもしたったら、…安心するんやないか。」
「いいの。なっちに家族はいないの。…今の家族は、裕ちゃんだけ。」
「なっち…」
「もう言わないで。出かけるって言ったのは謝るから…。家族のことは言わないで。お願
い。」
「なっち…、じゃあ、これだけは言わせて。あんたの身体の事、病気の事、一番心配して
るのは、あんたの両親やで。信じたくないかもしれへんけど…、それが親というもんや。」
多分、裕ちゃんの言ってる事は正しい。ワタシは何にも反論できない。
だけど…、
だけど…、
ダメ!
ワタシは急いで、自分の部屋に戻った。
- 154 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年10月31日(水)19時37分31秒
- 夜、目が覚めた。
窓から月明かりが入ってきていた。
ワタシはそれに誘われるように、窓を開けた。
満天の星空だった。
星空なんて見たの…、どれくらい振りだろう。
こんなにも、星って…綺麗だったんだぁ。
真希ちゃんも…、この星空を見ているのかなぁ。
明日は晴れるよね。
明日は…、会えるかなぁ。
明日、会えたら…、何て言おう。
- 155 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年10月31日(水)19時38分37秒
どこから来たの?
何してるの?学生なの?
好きな人はいるの?
好きな人…
胸が痛い。でも、…病気のせいじゃない。
これって、…恋なのかなぁ。
- 156 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月01日(木)01時54分29秒
- 後藤と安倍ってなんか珍しいね。
面白いからがんばれ。
- 157 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年11月02日(金)20時05分16秒
- 今日も来た。
へへっ、お弁当持参だよ。
裕ちゃんのお弁当作ってあげたから、そのついでに…。
別に、裕ちゃんの方がついで…ってわけじゃないけど。
もし…、もし…、
真希ちゃんが来てくれたら…、一緒に食べたいなぁ…。
でも…、喜んでくれるかなぁ。
ワタシ、料理は好きだったから、自分で作ったりもしてたけど、あんまり人に食べてもら
ったことがない。
裕ちゃんはおいしいって、言ってくれるけど…、おいしくない。なんて言ったら、ワタシ
が泣いちゃうかもって…、それで言ってるのかもしれないし。
はぁーっ、来て欲しいような。来て欲しくないような。
でも…、来てくれたら…、やっぱり嬉しい。
- 158 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年11月02日(金)20時05分49秒
しばらく待ったけど…、真希ちゃんは来ない。
もうしばらく…、待とうって…、思ったけど…、
やっぱり、お弁当は自分で食べよう。
うーん、何だかしょっぱいなぁ。このオニギリ、塩が効き過ぎたかなぁ。
だって、海じゃん。それでなんだぁ。
でも、鼻の奥が…、ツーンとして…
胸も締め付けられるようで…
ご飯が食べられない。
また会おうって、約束したわけでもないのに…。
会えないと…、寂しい。
こんな気持ち。――― 初めてかも。
- 159 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年11月02日(金)20時06分26秒
- 結局、その日は、真希ちゃんには会えなかった。
ワタシは。ほとんど手付かずのお弁当を持って、宅に帰った。
こんなの見たら、裕ちゃんに心配させるよなぁ。
気付かれないように、生ゴミで処分した。
何やってんだろう。ワタシ。
お弁当作って、食べられなくて、捨てちゃって。
変なの。
それでも、また、次の日も、お弁当を作っていた。
裕ちゃんは喜んでくれた。
お弁当を作ってあげたことも。
ワタシの機嫌が良いと思われたことも。
ごめんね。本当は…、ちょっと元気ないんだぁ。
- 160 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年11月02日(金)20時07分16秒
もう会えないかも。
もう会えないかも。
不安は消えない。
ワタシはただ、潮騒に誘われて…、ここに来るだけ。
会えないかもしれないけど…、
会えるかもしれないから…
『うん。――― 多分。』
真希ちゃんはそう言ってくれたよね。
だから…、会えるかも…
- 161 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年11月02日(金)20時09分17秒
- >>156
レス感謝です。
うーーん、書けないです。かなり遅筆かも。
応援ありがとうございます。
- 162 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年11月06日(火)19時52分19秒
- *****
四日目。
ワタシは今日も来ている。
そうだ!
ワタシは思い立って、岩場を目指した。
岩場に人影はなかった。
ワタシはあの日、彼女がいた一番高い所に立ってみた。
相変わらず、ここから見る水平線は美しい。
あれっ?
水平線がジグザグになった。
どうして?
向こうの風景もぼやけて見える。
何でだろう。
そうかぁ。
ワタシは…涙を拭った。
やっぱり…、もう会えないのかなぁ。
- 163 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年11月06日(火)19時52分50秒
「安倍さん…、泣いてるの?」
ワタシは、身体が固まった。
「安倍さん…」
振り向くと、ワタシのいる所のすぐ下に…、
彼女がいた。
良かったぁ。また会えて。
「安倍さん…」
ワタシが応えないのを不審に思ってか、真希ちゃんは何度も声をかけてくれた。
- 164 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年11月06日(火)19時54分23秒
「んあぁ、ごめん。最近、安倍さんなんて呼ばれてないからぁ、自分だって思わなかっ
た。」
「ふーん、変なの。」
「みんな、なっちって呼ぶからさぁ。名前で呼ばれるの…、変な感じ。」
「なっちかぁ。…可愛いね。」
真希ちゃんに可愛いって言ってもらって、ちょっと恥ずかしかった。
「真希ちゃんは、何て…」
ワタシが呼びかけようとしたら、もうそこに真希ちゃんの姿はなかった。
慌てて見まわすと…、
ワタシのいる岩場に上がってきたところだった。
- 165 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年11月06日(火)19時55分39秒
ふにぃ
そう。この笑顔が見たかったの。この笑顔が見たいから…、ワタシは四日も待ってたんだ
よ。
ワタシも負けないように、笑顔で返す。
「なっちの笑顔。アタシ好きだよ。」
「ええっ、本当!いやぁ、照れるなぁ。」
「ずーっと…、笑顔でいて欲しいなぁ。」
真希ちゃんは水平線を見詰めていた。
綺麗な横顔。ここで初めて会った時の、無表情な顔でない。そう。彼女がここに存在して
いることを、実感できるような…
そういえば…、まだ、彼女に触れていない。
本当に、真希ちゃん、あなたは存在しているの?
- 166 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年11月06日(火)19時56分37秒
幻じゃないよね。
目を離したら…、消えたり…、しないよねぇ。
触っても…、いいよねぇ。
ちょっとだけ…、触っても…
ワタシが手を出そうとした時、
急に真希ちゃんが振り向いた。
ワタシは慌てて、その手を引っ込めた。
不思議そうにワタシを見る真希ちゃんの視線が辛くて、
ワタシは下を向いてしまった。
こんなことしてる間に、消えたりしたら。
ワタシは慌てて、顔を上げた。
真希ちゃんはいなかった。
- 167 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月06日(火)21時38分55秒
- 後藤はいったいどうしたんだあ〜!?
気になるっす、、、交信もとい更新期待
- 168 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月08日(木)05時51分12秒
- 面白いです。
頑張ってください。
更新期待です。
- 169 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年11月08日(木)18時52分58秒
慌てて見まわすと…、
あの時と同じように、飛び降りていた。
上から見下ろすワタシ。
下から見上げる真希ちゃん。
しばらく、見詰め合った。
- 170 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年11月08日(木)18時53分49秒
「アタシもね。家族って嫌いだった。」
唐突に、何を言い出すんだろう。
「うちの両親もさぁ、あれやっちゃぁダメとかさぁ、これをやらなきゃダメでしょ、とか
ね。うるさかった。ホント、放っといてよ。って感じ。」
そう。うちの両親もうるさいんだ。
「でもね。やっぱり家族って、一緒にいることが大事なんだよね。言ってることはうるさ
いかもしれないけど、やっぱり、色々と心配してくれてるしさぁ。困ったことがあると助
けてくれるしさぁ。」
心配してくれてるのかなぁ。自分の思い通りにしたいだけでしょ。
「親ってのもさぁ。結局はアタシと同じ人間じゃない。間違うことだってあるよ。きっと。
…でもね、間違っている姿を見せてくれるのも大事なんだと思う。」
ワタシの所は…、絶対に間違ってない…って、言い張るんだ。
- 171 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年11月08日(木)18時54分54秒
「家族って…、絶対に大事だと思うよ。失って、初めて解ったけどね。」
「違う…」
「えっ?」
「家族なんていらない。」
「なっち…」
「家族なんていらないの。家族なんて、ワタシを苦しめるだけ。」
家族なんていらない。家族なんて、いい子なワタシが好きなだけ。自分達の思い通りにな
らない子供なんて、必要ないんだ。
家族はワタシに過度な期待をかけ、ワタシを苦しめるだけ。
ワタシの言葉なんか、聞いてくれない。
ワタシの姿も見てくれない。
自分達の思い通りになっている、ワタシの姿を見ているだけ。
本当のワタシじゃない。
本当の安倍なつみは…、どこにいるの?
- 172 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年11月08日(木)18時57分03秒
- 「みんなワタシに期待するけど、ワタシはそんなにいい子じゃない。失敗だってするし、
悪いことだってする。だけど…、いい子のなっちしか好きになってくれない。」
「違うよ。なっち。本当の姿を見せていないのは、なっちの方だよ。自分の言葉で喋って
いないのは、なっちの方だよ。」
えっ、本当のワタシの姿?本当のワタシの言葉?
「なっちはいい子だったんだよ。だからね、みんないい子のなっちを見てるんだよ。今ま
でいい子じゃないなっちを見せていなかったんでしょ。だったら、いい子じゃないなっち
を見せられたら…、それは、なっちじゃない…って、そう思うかも。」
なっちは、いい子のなっちしか見せていなかった。
だから、なっちはいい子で、悪い子じゃない…
- 173 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年11月08日(木)18時58分07秒
「いい子のなっちは、本当のなっちだったんだよ。でもね。見せていない物がある。本気
のなっちだよ。」
「本気の…なっち…?」
「そう。自分自身に、自分の将来に、自分の周囲の人々に…、自分の家族に…、本気にな
っているなっち。」
本気のなっち…、本気のなっち…
「なっちが本気になっていなければ、誰かに言われた通りのいい子をやってるだけ。どん
な自分になりたいか、本気で考えたなっちだったら…、みんなが本気で愛してくれるよ。」
そうか。
本当のワタシを見てくれないのは、本当のワタシを見せていなかったから。
本当のワタシを見せていないのは、本気でワタシ自身を見ていなかったから。
だったら…、本気のワタシって、本気のワタシって…
- 174 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年11月08日(木)18時59分04秒
「本気の…ワタシ…」
「本気の自分を知りたいなら…、本気で愛した人のことを考えるんだ。本気で愛した人の
前で…、自分はそうありたいか。」
ワタシは…、ワタシは…
料理と歌が好き。だから、料理をしてあげたい。歌も歌ってあげたい。
裕ちゃんが大好きだって言ってくれた笑顔。そう、笑顔を見せてあげたい。
そうなんだ。
愛する人に優しくしてあげたいんだ。
なっちがいい子でいたのも、それで喜んでくれる人がいたから。
優しさだったんだ。
だったら、もっと本気で優しくしてあげる事を考えれば、…それは本気のワタシだって…
言ってくれるよね。
- 175 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年11月08日(木)19時00分06秒
ねぇ、真希ちゃん。
ワタシが顔を上げようとした時、
急に強い風が吹き抜けた。
ワタシは思わず、ギュッと目を閉じた。
そして…、目を開けた時…、
真希ちゃんの姿は、もうそこには無かった。
- 176 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年11月08日(木)19時04分10秒
- 作者です。
弱音ばっかりですが、本当に苦労しています。
一応、今回が一番のヤマ場でしたが、内容に説得力ないんで自己嫌悪。
最後までは必ず書きますので、暖かい目で見てやってください。
- 177 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年11月09日(金)19時30分06秒
- 「裕ちゃん…、ワタシ…家に帰ろうかな…」
ワタシは、宅に帰って裕ちゃんに相談してみた。
真希ちゃんに説得されたみたいになっちゃったけど、帰りたいというのが、心の奥底のど
こかにあったんだと思う。それに抵抗するように、裕ちゃんに逆らってたんだと思う。
でも、真希ちゃんのことを話すと、説得されたみたいで嫌だったから、それは言わなかった。
裕ちゃんはとても嬉しい顔をしてくれた。
ワタシとしては、ちょっと寂しかった。
- 178 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年11月09日(金)19時30分36秒
裕ちゃんはそれに気付いたみたいで、慌てて
「ウチは、なっちと一緒にいるのが嫌なんて思ってないで。なっちと一緒にいるのは楽し
いし、おらへんようになるって言われたら、寂しい。これはホンマやで。」
焦ってる裕ちゃんが可愛いかったので、笑っちゃった。
ワタシは、自分の頭をボリボリ掻きながら、言い訳っぽく説明する裕ちゃんを見ていた。
ホント、こういうなっちは悪いなっちだよね。だけどね、悪いなっちもなっちなんだよ。
裕ちゃんだから、見せることができる。だって、裕ちゃんにだったら、どんなにでも優し
くしてあげられるもんね。
そう、裕ちゃんになら甘えてもいいんだ。本気で裕ちゃんのことが好きだから。
それで、いいんだよね。真希ちゃん。
- 179 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年11月09日(金)19時31分08秒
- 昨日の夜は、裕ちゃんといっぱい話しをした。なっちの夢とか、考えている事とか…。
裕ちゃんには、認めてくれる部分も、批判される部分もあったけど、本気でワタシのこと
を考えてくれてるって気がしたから、とっても楽しかった。
本気で、誰かと接するのって、こんなにも楽しかったんだ。
ありがとう。
この一言だけでも伝えたくて、
ワタシはまた来た。
多分、今日で最後。
明日、家に帰るんだ。
だから、もう一度会いたくて、
でも…、本当に会えるかなぁ。
- 180 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年11月09日(金)19時31分55秒
ワタシは、岩場の上で座り込んだ。
もし、会えるなら、…何時間でも待つよ。
不意に後ろに誰かの気配を感じた。
「真希ちゃん!」
ワタシは振り向いた。
そこにいたのは、
「圭ちゃん?」
「なっち!」
- 181 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年11月09日(金)19時32分52秒
圭ちゃんは、ワタシが通っているコーラス団の団員だ。特に仲がいいわけではなかったけ
れど、年が近いのもあって、お互いに愛称で呼んでいた。
おかげで、フルネームはすぐに思い出せなかったくらい。
「真希を…、妹を知ってるの?」
へぇーっ、真希ちゃんって、圭ちゃんの妹だったんだ。確かに、圭ちゃんも後藤さんだっ
た。偶然だね。
じゃあ、真希ちゃんにも会わせてくれるよね。
ワタシは、圭ちゃんに駆け寄った。そして…、圭ちゃんが胸に抱いている箱に気がついた。
白い布に包まれた桐の箱。
圭ちゃんの手には、真新しい位牌が…。
「それって…」
圭ちゃんは声を詰まらせながら、
「そう。――― アタシの…、真希の… 骨よ。」
- 182 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年11月09日(金)19時35分18秒
- 作者です。
次で終わりです。
これが終わったら、しばらく休憩します。本当にネタが浮かばないもので。
もし、リクエストもらえたら、何か浮かぶかも…
でも、期待しないでください。
- 183 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月10日(土)18時16分17秒
- 悪後藤とか見てみたいっす。
作者さんの描く後藤像なら、なんでも萌えるんで…
- 184 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年11月13日(火)19時11分51秒
- 予定通り、ワタシは家に戻った。
胸の病気が直ったわけではないので、検査のために入院しなければならなかった。
検査の結果が良ければ、1週間くらいなんだけど…、
まぁ、家族とうまくいってなかったワタシとしては、ちょっと距離が置けたという意味で
は、都合が良かったりする。
一応、毎日見舞いには来てくれるしね。
こういう所で話しができた方が、今はいいと思う。
いきなり、本気のワタシを見せるには、…ちょっと臆病みたい。お互いにね。
- 185 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年11月13日(火)19時12分24秒
「なっち、元気そうだね。」
「あっ、圭ちゃん。」
圭ちゃんが、病室のドアから頭だけ出して、声をかけてくれた。
あの岩場で話しをして以来、圭ちゃんとは仲良くなっていた。家に戻る話も、入院の話し
もしてたから、見舞いに来てくれた。
そして…、
圭ちゃんとドアの間から、もう一つの頭が、
「なっち、元気そうじゃん。」
「あぁっ、真希ちゃんも来てくれたんだ。」
- 186 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年11月13日(火)19時13分12秒
あの日、圭ちゃんは亡くなったご両親の遺骨を持って、大好きだった水平線の景色を見せ
に来たのだった。
あそこは、真希ちゃんと圭ちゃんの故郷。圭ちゃんは既に学校を卒業して、こっちで一人
暮しをしていたのだけど、御両親が亡くなって独りになった真希ちゃんも、お姉さんの圭
ちゃんの所に引っ越してきたのだった。
ワタシが待ってて、真希ちゃんが来なかった三日間は、葬儀とかで大変な時で、出て来れ
なかったって、後から聞かされた。
ずっと、待ってたって言ったら、「えへっ」って笑ってた。
その笑顔が可愛かったから、
何かとても大事な物が、手に入った。
そんな気がした。
- 187 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年11月13日(火)19時13分45秒
あれから、圭ちゃんとも真希ちゃんとも、いっぱい話しをした。
真希ちゃんも歌と料理が好きな所は、ワタシと一緒。
優しいんだよね。って言ったら、違うよって否定されちゃった。
だけど、解るんだ。
真希ちゃんはとっても優しい。
ワタシと一緒で、優しくしてあげたい気持ちは同じ。
ワタシは相手に合わせようとするけど、真希ちゃんはただ真っ直ぐ。だから、勘違いされ
ることもあるんだろうけど…、でも気持ちという意味では同じ。
- 188 名前:潮騒に誘われて 投稿日:2001年11月13日(火)19時14分22秒
「あんた達って、正反対だけど、似てるよ。って、変だね。」
圭ちゃんにはからかわれるけど、ワタシ的には嬉しかった。
真希ちゃんとワタシは背中合わせ。だけどそれって、お互いが振り向いたら、見詰め合う
ことができるんだもん。
裕ちゃん、本気で好きになれる人が増えたよ。
今度会った時には、最高の笑顔を見せてあげられるからね。
−fin−
- 189 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年11月13日(火)19時24分04秒
- 作者です。潮騒に誘われて 終了です。
本当に思いつかないまま、何とか終わらせたので、読んでいただいた方には申し訳ないです。
精神的に余裕が無いというのもあるので、ちょっと休憩します。
>183
レス感謝です。
私も五期生の4人を弄ぶ、黒ゴマを書いてみたいです。
期待に応えられるよう、頑張ってみます。
- 190 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月14日(水)02時18分23秒
- いやー、骨が出てきたときはユーレイだったかと思ったんですが、
ああいう終わらせ方もあったんですね。
よかったです。
ところでもうお天気雨みたいな加護主観の小説は書かないんですか?
あの関西弁カナーリ気に入っております。
黒ゴマ後にでも考えてくれませんか?
長文失礼しました、それではお疲れ様です。
- 191 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年11月15日(木)19時27分17秒
- >>190
レス感謝です。
最初は、言われるようなBAD ENDで考えてましたが、最近ごっちんが死んだり、傷ついたり
が多い(そういうのが好きだったりするけど)ので、HAPPY ENDにしちゃいました。
BAD END編も余裕があると、書くかも。
加護視点も気に入っていただきありがたいです。
個人的にも気に入ってるので、書いてもいいんですが、アイデアが浮かばないので、
今は書けません。加護視点だけだと、どうしてもお天気雨以上にはならないんで。
あれを越えるようなアイデアが浮かべば、頑張ってみます。
- 192 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月02日(日)08時29分54秒
- 更新まだですかage
- 193 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年12月06日(木)20時40分38秒
- >>192
@ノハ@
( ‘ д‘) >作者さんも書いてる途中やそうやから、も少し待ったってな。
川’ー’川 >新人達のキャラがつかめなので、苦労しているそうダス。
- 194 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月07日(金)02時30分50秒
- 新メン使うんですか?
確かにキャラつかむの難しそうですね。
- 195 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年12月07日(金)18時35分32秒
- 作者です。
第四話 −私は天使なんかじゃない− です。
新メンを出演させますが、キャラがつかめていないし、お互いの呼び方とかを知らないので、
その辺は大目にということで、お願いします。
- 196 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月07日(金)18時36分26秒
- −私は天使なんかじゃない−
今日は、『モーたい』のスタジオ収録です。
藤井:「もー、小川ちゃんも何か言ってあげなさいよぉ!」
小川:「いえ、保田さんは、おばさん臭いだけですから…」
保田:「それって、フォーローになってねぇよぉ!」
AD:「ハイ!OKでーす。」
娘。:「お疲れさまでしたー。」
ふー、今日のお仕事も新人達はこれで終わりです。でも先輩達は、これからプッチモニや
タンポポのお仕事があるので、大変です。お仕事が終わってホッとする反面、先輩達が羨
ましく思える。…ちょっと複雑な心境です。
- 197 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月07日(金)18時37分17秒
- あっ!マコちゃんが保田さんに頻りに頭を下げています。
「ごめんなさい。ごめんなさい。失礼なこと言いまして。」
「いいのよ。あんなくらいじゃ、気にしてないし。まだ足りないくらいよ。」
「いいなぁ、保田さん。いじってもらえて…」
「なんだあ、吉澤ぁ。何だったら、Mr Moonlightのセンターと交換してやろうか?」
後ろを通り過ぎる吉澤さんとも笑顔で冗談を交わしてるくらいだから、本当に気にしてい
ないみたいです。
保田さんって、確かに歌にも踊りにも厳しい人ですが、普段はとっても気さくですし、私
達新人達にも親切にしてくれます。最初の頃は緊張して話もできなかったのですが、今は
色々と相談できる、とても頼りになる先輩の一人です。
娘。に入るまでは、とっても恐い人だと思っていましたから、本当に意外でした。
意外といえば、もう一人…
- 198 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月07日(金)18時38分06秒
- 「小川っ、また今日も自分からは何も喋らなかったでしょ。」
「はい。すいません。後藤さん。」
「同じことを先週も先々週も言ったよね。アンタ、何回同じことをアタシ言わせるつもり
なの。」
「はい…、喋ろうって思ったんですが…」
「思っただけじゃぁ、テレビ見てる人には解らないんだよ。ちゃんと喋らなけりゃぁ、誰
も気付いてくれないんだよ。」
「はい…、解ります。」
楽屋で、腕組みした後藤さんがマコちゃんにダメ出ししているのです。マコちゃんはさっ
きの保田さんの時以上に、緊張した面持ちで、後藤さんの話しを聞いています。
- 199 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月07日(金)18時39分14秒
- 「もう、後藤もそのくらいにしときなさいよ。あと15分で行くよ。」
後藤さん達はプッチモニの撮りで次の局に向かう事になってるんです。
「解った。もうちょっといいでしょ。紺野ぉ、アタシはカフェラテ。それから、新垣は?
ココアでいい?じゃあ、その二つ。急いでよね。」
「はーい」
アサミちゃんは、後藤さんからお金を受け取って、楽屋を飛び出していきました。だって、
局の中にカフェラテなんて置いてませんし、それで遅くなったらまた怒られますし。
後藤さんはその後、リサちゃんと楽しそうに喋ってましたが、
「後藤さん、遅くなりました。」
「遅いよ。何これ?カフェオレじゃん。アタシはカフェラテ頼んだんだよ。」
「すいません。探したんですが、見つからなくて…。これ以上遅くなると、間に合わない
かもしれないって思ったので…」
「こんなの飲めないよ。ほら、小川。アンタにあげるよ。」
後藤さんは缶をマコちゃんに投げて渡しました。マコちゃんは一応頭を下げてたけど、そ
れを無視するように、後藤さんは楽屋を出ていったのです。
- 200 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月07日(金)18時40分11秒
- バタン!
扉が閉まるのと同時に、
フーッ!
私達4人の緊張がやっと解れました。
後藤さんは、娘。に入るまでは、4人とも憧れの存在で、保田さん達とは別の意味で緊張
していました。でも見た目はちょっと恐いけれど、実際は明るい性格だって聞いていたの
で、早く仲良くなりたいって思ってたのですが…
実際に、一緒に仕事をするようになってからは、もう大変です。
マコちゃんは、お仕事の度に毎回ダメ出しされるし、アサミちゃんはほとんどパシリ状態。
しかも今日みたいな無理な注文して困らせて、イジメじゃないかって思えるくらいです。
リサちゃんは可愛がってもらってるみたいだけど、他の新人の様子を知ってるから、後藤
さんの気に障らないようにって、とても緊張してるし。
私の場合は…、ある意味、一番ひどいかもしれません。だって…、後藤さん、口も聞いて
くれませんし、目も合わせてくれないんです。マコちゃん達は、その方が気が楽だって言
うんですけれど…
私なんて、メンバーって認めてくれてないんでしょうか。
- 201 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月07日(金)18時42分28秒
- 「みんな行っちゃいましたぁ?」
辻さんが楽屋に戻ってきました。今日はミニモニのお仕事はないんですね。
「はい。プッチモニさんもタンポポさんも行っちゃいました。」
「安倍さんも雑誌の取材だし…、じゃあ5人でゴハンに行きましょう。」
「「「「ハーイ」」」」
こうして仕事が終わった5人で、近くにファミレスに行くことになりました。
みんなが食べ終わった後、マコちゃんが、
「あのー、辻さん。いいですかぁ。」
「はい。なんれすか?」
「あのぉ…、後藤さんの事なんですけど。」
私も思わず、辻さんの方に向き直していました。
「後藤さんなんですが、前からあんなに恐い人だったのですか?」
「そんなことないれすよ。とっても優しい人れすよ。」
- 202 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月07日(金)18時43分28秒
- マコちゃんが言いにくそうにしていたので、
「私達って、嫌われてるんでしょうか?」
今度は、私の方から聞いてみました。
「うーん、それは何とも言えないけれど…、後藤さんってガンコな人らから、こだわりっ
ていうのは、人一倍強いれすからね。」
「それって…、私達はまだメンバーだって認めてもらえていないってことですか?」
「それは無いんじゃないれすか。オーデションに合格した時点で、既にメンバーれすから
ね。――― でもぉ…、仲間って言ってもらうにはどうかなぁ…」
私達4人の表情が暗くなったのを見て慌てた様子で、
「ああ、それって好きとか嫌いって意味じゃなくて、やっぱり仲間って共に助け合える存
在じゃないれすか。助け合うには、お互いに信頼し合うことが必要なわけで、それは一緒
に苦労したりとか、何かを成し遂げて喜び合ったりしないと、難しいと思うんれすよ。だ
けど、みんなはまだそういう経験を一緒にできていないから、まだ…って思ってるかもし
れないれす。だけど、それはこれから経験していけばいいことだし…、のの達4人の時だ
ってそうだったんだから、心配しなくていいれすよ。」
- 203 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月07日(金)18時44分12秒
- 「はい。ありがとうございます。」
マコちゃんの声は相変わらず元気が無かった。
「後藤さんも、ソロやプッチで忙しいし、なのにどっちも1位取れなかったって騒がれて
るから、イライラしてるかもしれないれすね。」
辻さんは心配して言ってくれたのだろうけれど、私達には気休めにもなりませんでした。
- 204 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月08日(土)00時20分59秒
- なんかあいごまっぽい!!!
とっても期待しちゃいます!!!
- 205 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月10日(月)12時54分36秒
- 今日は『ハロモニ』の収録でした。
収録が終わって楽屋へ戻ると、いつものように、
「小川っ、今日もアンタ自分から喋っていないでしょ。」
「すいません。何とか頑張ろうとしたんですけど…」
「だから、思っただけじゃダメだって何回も言ってるでしょ。私の言う事聞いてるの?ア
ンタの耳、それってふし穴?飾りでつけてるの?」
「いえ……、すいませんでした。」
「もう、いいかげんにしてよね。あぁ!紺野ぉ、クリスマスケーキ買ってきてっ!」
「でもぉ…、まだクリスマスにはちょっと早いんじゃ…」
「何言ってるのぉ。アタシ達はプッチでクリスマスの歌を歌ってるんだよ。ケーキくらい
なくっちゃぁ、気分が出ないんだよ。つべこべ言わないで、早く買っておいでっ」
「はぃ…」
- 206 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月10日(月)12時55分12秒
- 「後藤、ちょっと」
アサミちゃんが出ていってすぐに、保田さんが後藤さんを連れて出ていきました。
私とマコちゃんは顔を見合わせて、
「後藤さん、保田さんに叱られるのかなぁ。」
「保田さん、怒ったら本当に恐そうだしねぇ。」
「そしたら、後藤さん、少しは大人しくなってくれるかなぁ。」
「でも、お仕事に影響出たりしたら…」
「今日はまだ、お仕事残ってるしねぇ。」
最初に戻ってきたのは、大きなケーキを持ったアサミちゃんでした。
「ごめんさい。やっぱりクリスマスケーキって置いてなくて。この大きさならメリークリ
スマスって書いてくれるって言うので、それでお願いして書いてもらったんですけどぉ…」
しかし、頼んだ本人は楽屋にはいません。保田さんと出ていったままです。アサミちゃん
はオロオロしながら、後藤さんが帰ってくるのを待ってました。
- 207 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月10日(月)12時55分46秒
- 数分後に保田さんが戻ってきました。
「ほぉー、ケーキかい。大きいねぇ。じゃあ、折角だからみんなで食べようか。」
「…後藤さんは?」
「あぁ、後藤ならしばらく帰ってこないだろうから、全部食べちゃっていいよ。」
「でもぉ…、後藤さんが」
「いいって、いいって。心配しなくていいよ。アタシが言うんだから大丈夫だって。」
結局、後藤さん以外の12人で分けて食べました。先輩達は楽しそうに、「おいしい
ね。」って食べてましたが、私達は楽屋に帰ってこない後藤さんのことが気になって、味
なんか解りませんでした。
その後、バスで次の局に移動だったのですが、後藤さんは先にバスに乗っていて、寝てい
ました。やっぱり、保田さんに叱られて、反省させられてたのでしょうか。
- 208 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月10日(月)12時56分16秒
- 次の日はお仕事が午後からでしたので、4人で待ち合わせてお昼ご飯を一緒に食べること
にしました。
「アイちゃん、昨日の後藤さんだけど…」
「やっぱり、保田さんが叱ってくれたのかなぁ。」
「うん、でも、あの後の歌もいつもと変わらなかったよね。」
「やっぱり、その辺はさすがって所だね。」
「でもぉ、あれかなぁ。後藤さんって、人気が凄いじゃない。そうなると…ワガママにな
るっていうか…、天狗になるっていうか…」
「そうだね。そういう話しも良く聞くもんねぇ。」
「私達は、もし人気が出ても、そうならないようにしようね。」
「そうだねぇ。でも、その前に人気が出なくっちゃね。」
「はは。そりゃそうだ。」
今日の収録は『MUSIX』で、ゲストが先日CDを出した中澤さんと市井さんでした。
元娘。の二人の出演だったので、先輩達も興奮と緊張の入り乱れた雰囲気で、何とも異様
でしたが、それでも和やかに収録は進んでいきました。後藤さんも教育係だった市井さん
と一緒で、嬉しそうでしたし…、だからあんな事になるなんて…
- 209 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月10日(月)21時47分47秒
- あんな事!?
続き気になる〜!!
- 210 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月11日(火)18時57分17秒
- 収録も終わり、楽屋に戻ってからでした。
私達は、昨日の件もあったし、市井さんが来られていて後藤さんの機嫌が良さそうなので、
安心していたのですが、
「小川っ、今日もだよね。アンタやる気あんの?」
楽屋に戻るとすぐ、やはり後藤さんのダメ出しが始まったのです。
「やる気があるの?ないの?それとも、アタシの言う事なんか聞きたくないわけ?」
「いいえ、そんな事無いです。」
「できない事を言ってるわけじゃないでしょ。自分から喋りなさいって言ってるだけでしょ。」
「はい…」
今日の後藤さんの叱責はいつもより激しいものでした。
「アタシの話しを聞いてないわけ?アタシを無視してるの!アタシをバカにしてるの!!」
「違います!私は後藤さんのことを…」
マコちゃんの声が震えはじめました。
- 211 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月11日(火)18時58分02秒
- 「私だって、一生懸命にやってるんです。だけど…」
「だけど…、何なのよぉ。」
「だって、…後藤さんだって喋ってないじゃないですか!!」
「アタシはいいのよ。アタシは…」
「どうしていいんですか!後藤さんが、人気があるからですか!人気があるから、許され
るんですか!」
マコちゃんは泣きながら、後藤さんに訴えていました。
「そうよ。アタシは有名だから、いいのよ。」
「そんなの…、だって、同じメンバーじゃないんですか!後藤さんも私も、アイちゃんも
アサミちゃんもリサちゃんも…、同じ娘。のメンバーじゃないんですか!」
「違うのよ。――― アタシとアンタ達じゃぁ…」
「そんなぁ…」
マコちゃんはその場にしゃがみ込んで泣き出しました。
先輩達も、余りの騒ぎに遠巻きにして見ているしかできないようです。
- 212 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月11日(火)18時58分48秒
- 私は、後藤さんのことが好きでした。どんなに無視されようとも、イジメられようとも、
憧れの気持ちは無くなりませんでした。だけど…、今の言葉は許せない。だって、私達だ
って娘。のメンバーのはずです。確かに、まだ数ヶ月しか経験していないけれど、ちゃん
と一緒にお仕事をして、一緒に歌も歌ったし、ダンスもしました。一緒にステージに立っ
て、モーニング娘。として、歓声を浴びたはず。
なのに…、
仲間と呼べるためには、お互いに信頼し合うことが必要だけど、こんな事言われて、信頼
なんてできるはずない。
『違うのよ。アタシとアンタ達じゃぁ…』
「後藤さん、今のは酷いと思います。マコちゃんに謝ってください!」
私は後藤さんの前に立って、やっとの思いで訴えました。
だけど、後藤さんは…
私を無視するように立ちあがり、私の横を通り過ぎていきました。
「待ってください!私達はメンバーじゃないんですか!モーニング娘。じゃないんですか!」
私が必死に呼びかけると、後藤さんはゆっくり振り向いて、
「アンタがアタシに話しかけるなんて、100年早いよ。」
- 213 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月11日(火)18時59分31秒
- その後、私は目の前が真っ暗になって、何も覚えていません。石川さんに肩を叩かれて気
がついた時には、もう後藤さんの姿はありませんでした。
「よっ!どうした?」
「なんや、雰囲気、暗いなぁ。」
中澤さんと市井さんが入ってきたのは、そのすぐ後でした。矢口さんが状況を話してくだ
さいました。それを聞いて、二人して肩をすくめた仕草をしていました。
「本当に、後藤は相変わらず困った奴だねぇ。」
「まぁ、教育係からして、こんなんやったからなぁ。」
「そうそう。って、アタシかよ。」
「まぁまぁ。」
「確かに、リーダーもあんなのだったしねぇ。」
「うんうん。って、ウチかいな。」
中澤さんと市井さんの掛け合いのおかげで、少し場が和んだようでした。
「まぁ、後藤のことはアタシ達に任せときな。」
「とりあえず、カオリになっち。この子らの事頼むな。」
「うん。任せといて。」
お二人は後藤さんを探しに出ていかれました。
- 214 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月12日(水)19時04分12秒
- 私とまだ泣いているマコちゃんの前には、安倍さんが座っています。
別の部屋では、飯田さんがアサミちゃんとリサちゃんに話をしています。
「どう。落ち着いた?」
目の前のココアを飲みながら、安倍さんが話しを始めました。
「ごっちんのこと、とっても酷いって思ってるっしょ。でもね、違うのよ。ごっちんは早
くあなた達に、仲間になってもらいたくて言ってるのよ。」
「だけど…、さっき後藤さんは私達とは違うって…」
「じゃあ、あなた達はごっちんと一緒だって思ってる?なっちとも一緒だって、思ってる?」
「いいえ、そんな…恐れおおくて」
「でしょ。そう思ってるでしょ。じゃあ、一緒じゃん。」
「はぁ…」
「あなた達がそう思っている以上は、ずっと変わんないよ。」
私達が思っている以上は…、
確かに、後藤さんや安倍さんを特別だって見ていたのは、私達の方…。
娘。である以上は新人の私達も芸能人です。テレビに出る人です。先輩と何ら違うはずも
ないのです。――― なのに、自分達も娘。だって言いながら、できないって思っていた
のは自分達の方…。
- 215 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月12日(水)19時06分04秒
- 安倍さんは、にこやかに私達に微笑んでくれました。
「石川だけどね。あなた達から見てどう?」
「石川先輩ですか。とても可愛いし、それでいてしっかりしていて、とても信頼できる先
輩です。」
「うん。でも去年の今頃のあの子ってさぁ。」
「はい。中澤さんにイジメられてました。アンタだけは嫌いだとか、かなり酷い事を言わ
れていたのを覚えています。」
「それでもね。あの子は自分から積極的に絡んでいってたよ。イジメられるのが解ってい
ながら、それでもね。――― 最初の頃は大人しいって思ってたけど、なかなかどうして
…。でもね、そうやってあの子もチャンスを物にしていったんだよ。石川だけじゃないよ。
加護や辻もだし、矢口や圭ちゃんだってそう。」
「じゃあ、後藤さんは、私にも同じように…、しろって…」
「まぁ、そういうこっちゃね。」
- 216 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月12日(水)19時08分31秒
- 「でもぉ…」
「よく、覚えてなさい。モーニング娘。が有名だからって、あなた達が有名になったとは
限らないのよ。モーニング娘。は知っていても、石川や圭ちゃんを知らない人もいるし、
なっちだって、ごっちんだって、知らない人もいるんだよ。ましてや、あなた達なんか知
らない人の方が多いんだよ。だからね、早く顔と名前を覚えてもらわないといけないの。
もっともっと、自分をアピールしなければいけないのよ。新人だからって、大人しくして
いても、誰も誉めてくれないよ。嫌われても、嫌がられても、先ずは目立つこと。だから
ね、ごっちんも自分が目立つより、あなた達が…ってね。」
「じゃあ、後藤さんがリサちゃんを可愛がっているのは…」
「そうだね。悪い意味でも目立っちゃったからね。逆に、悪い噂から守ってあげたいって
思ったんじゃないかな。」
- 217 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月12日(水)19時09分04秒
- 「じゃあ、アサミちゃんをイジメるのは?」
「紺野は、頭のいい子だよ。でもこの業界で大事なのは、機転が利くことさ。だから、無
理を言って、それにどう応えるかを試してるんだよ。それが、普段からちゃんとできるよ
うに、鍛えてるのさ。」
「だけど…」
「思い出してごらん。ごっちんが紺野に無理言って、色んな物を買ってこさせて、それに
文句をつけてるけれど、紺野が買って来た物を一度だって捨てたことがあったかい?」
私は思い出してみました。昨日のケーキだって、その前のカフェオレだって、それだけじ
ゃない。焼きソバって言ってソバパン買ってきた時も、お汁粉って言われて大福を買って
来た時も、「こんなもの食べられない」って言いながら、私達に譲ってくれてました。お
金だって、絶対にアサミちゃんに出させたりしていない。全部ちゃんと後藤さんが出して
いました。
- 218 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月12日(水)19時09分41秒
- 「そんなぁ…。後藤さんは私達のことを考えて、今まであんなことを…」
マコちゃんは、あらためて泣き始めました。
「今までは、裕ちゃんがそういう役目だったから、本当はなっち達がそれをやらないとい
けないんだけどね。まぁ、圭ちゃんじゃ、シャレにならないし、カオリじゃ何言い出すか
解んないしねぇ。」
「安倍さんだって、悪人になれないですものね。だって、安倍さんは天使ですし。」
安倍さんはニッコリ笑って、
「なっちもごっちんも、天使なんかじゃないよ。私達は…モーニング娘。だよ。あなた達
もね。」
- 219 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年12月12日(水)19時27分41秒
- 作者です。
案内板の方で、駄作が多くなったとの発言があって、ちと意気消沈。
本人は面白いって思ってるけれど、一般的にはどうなのかなぁって思ったりしてます。
本人は、背景や裏の心理とかも想定して書いてるから、結構感じたりするんだけど、それが文章で
伝えきれなかったり、伝えたつもりだけになってて、読む側には全然感じる物がないとかあるので
はないかってね。
所詮は、書く側に自己満足なんだからと、開き直ってみたり。
それでも、ここは続けるつもりです。今の話も今週には終わりますが、年内にもう1つくらい…。
以上、書く人の独り言でした。
- 220 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月12日(水)20時10分50秒
- やっぱりごっちんは良いヤツだったんだ〜
良かった
- 221 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月12日(水)20時43分20秒
- 「解りました。だけど…、どうして私の事は無視するんですか?さっきだって…」
「ふふっ、それは自分で考えなさい。教えるのは簡単だけど、自分で気がついた方がいい
っしょ。」
やっぱり、私が無視されていることにも意味があるんだ。でもぉ、どうして?
安倍さんは、イタズラっぽく笑うだけで、教えてくれる様子はないですし…
「じゃあ、今ごろ後藤さんは?」
「昨日だって、保田さんに叱られてたみたいですし。」
「大丈夫。あの二人がごっちんの考えてる事が解ってないはずないからね。」
安倍さんはもう一度、天使のような笑顔を見せてくれたのでした。
- 222 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月12日(水)20時44分30秒
- その後、安倍さんに言われたように、自分で考えるために、私は一人で廊下に出ました。
マコちゃんは、オーデションの頃から優等生で目立っていました。私達4人を、そしてい
ずれは、娘。を引っ張っていく存在になるかもしれません。
アサミちゃんは安倍さんも言っていたように、雑学に詳しいです。スポーツだって、4人
の中では飛び抜けています。オーデションでの赤点からのスタートというのも、いい意味
で話題になっています。
リサちゃんは、悪い噂でマスコミにも取り上げられました。ファンの反応も決して良いも
のではありません。だけど、悪いイメージがある分、頑張ればそれだけ目立つはずです。
それに対して、私は…
誉められる部分なんて何もない。マコちゃんのように、しっかりしていないし、アサミち
ゃんのように、素質もない。リサちゃんのような話題性もない。
私は、本当に使い物にならない落ちこぼれなんでしょうか…
- 223 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年12月12日(水)20時49分08秒
- >>220
途中にレス入ったからって、気になさらないでくださいね。
- 224 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月13日(木)12時31分19秒
- 救いようのない私は、見捨てられてるのでは…
落ち込んだ気持ちで歩いていると、ふと泣いている声が聞こえてくるのに気付きました。
「後藤、大丈夫?」
「ふぇん。うん、もう大丈夫ぅ。――― 昨日も圭ちゃんに、聞いてもらったし…」
「そんな泣くぐらいな、言うたことを後悔するんやったらなぁ。」
「ふぃん。だってぇ、今言っておかないと、苦労するのはあの子達だしさぁ。そのうち、
誰も言ってくれなくなるしさぁ。アタシん時は市井ちゃんや裕ちゃんが言ってくれてたか
ら良かったけど、なっちやカオリにそんなことさせられないもん。」
「だからって、あんたがそこまで悪モンにならんでもなぁ。ホンマに不器用な子やで。」
「だってぇ、ちゃんとした所は教育係がいるから…」
「うんうん。後藤の気持ちは解るよ。アタシは嬉しい。後藤がこんなにもメンバー達のこ
とを考えてくれるようになったって。」
「だって、市井ちゃんにも負けたくないもん。ライバルだって言って欲しいもん。」
- 225 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月13日(木)12時32分09秒
…………
そんな…、後藤さんがまさか…、でも…どうして…。
でも、それしか考えられない。
安倍さんに確かめてみようか。
いや!これは…、これだけは、本人に確認しなければいけない。
そう思うんです。
- 226 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月14日(金)13時34分38秒
- 次の日
今日も『モーたい』の収録です。
藤井:『今日は巣鴨でアンケートを取りました。』
小川:『保田さんばっかりですねぇ。』
保田:『なぁにぃ!!』
AD:『ハイ、OKでーす』
「保田さん、すいませんでした。いつも失礼なことばっかりで。」
「うーん、今日のはちょっときつかったね。でもアタシのことは気にしないで、頑張りな
さい。」
「はいっ!ありがとうございます。」
楽屋に戻ると、後藤さんが腕組みして待っていました。
「小川っ、いつも圭ちゃんにばっかり頼ってるでしょ。」
「はいっ。すいません。もっと勉強します。」
「娘。は大勢いるんだから、もっと他のメンバーも利用しないともったいないよ。」
「はいっ。でしたら、後藤さん。」
「何っ!」
「もっと後藤さんのことも教えて欲しいので、この後、お願いしたいんですが。」
「アタシは…ダメ。今日は時間がないから。加護にお願いしな。」
「はい。では、明日は一日一緒なので、お願いします。」
「…うん、解った。」
- 227 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月14日(金)13時35分10秒
- 後藤さんは、マコちゃんの勢いに押されるように、部屋を出ていこうとしています。私は
急いで、後藤さんの前に立ちました。昨日、私が思った事を確かめるために。
あんなに泣いていた後藤さんが…、私を無視した理由はこれしかない。
いったん息を整えてから、――― 大きな声で言いました。
「後藤さん。私、負けませんから。一日でも早く、後藤さんに認めてもらえるように頑張
ります。後藤さんに、高橋がライバルだって言わせるように頑張ります。見ててください!」
後藤さんは、一瞬目を合わせただけで、何も言わず部屋を出ていきました。
だけど、その一瞬に、後藤さんの目から、『ガンバレ』っていう気持ちが伝わってきたよ
うな気がして…。
私、頑張るけんねぇ!!!
- 228 名前:私は天使なんかじゃない 投稿日:2001年12月14日(金)13時35分40秒
- その後すぐでした。
トイレの方から、石川さんの高い声が響き渡っていました。
「どうしたのぉ、ごっちん!どうしてこんな所で泣いてるのぉ?」
‐fin‐
- 229 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年12月14日(金)13時43分21秒
- 作者です。第四話完了です。
お昼休みに上げときたかったけれど、色々あって…
本当は、高橋の訛を使いたかったのですが、喋りが聞けてないので無理でした。
年内に、もう一つ書きたいのですが、調べものがうまくいかなくて難航です。
直接キーではない部分なのですが、関連上外せない所なので、どうなることやら。
時節ものなので、この1週間で書けなかった場合はボツとなって、あとは来年に備える
ことになるでしょう。
- 230 名前:M.ANZAI 投稿日:2001年12月17日(月)03時47分11秒
- 第四話、読ませていただきました。
ここの小説はどれも構成がしっかりしているので、
ひとつの話が完結するのを楽しみにさせてもらってます。
短編という事もあって、とても読み易いです。
新メンバーと先輩達との関わりを浮かび上がらせた今回の作品でも、
他所では見られないような角度から各メンバーのキャラクターが伺えて、
また中心にいる高橋と後藤以外のメンバーも顔を覗かせるタイミングが絶妙で、
なんだか実際の彼女たちをそこに見るようで、ますます好きになりそうです。
時節ものを書かれているとか。
読ませてもらいたい気持ちは山々なれど、
作者さんの納得いく形での執筆をお待ちしております。
- 231 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年12月17日(月)18時51分06秒
- >>230
いつも暖かいレスをありがとうございます。とても励みになります。
今回のは、準備期間が長かったので、構想的にはまとまっていたのですが、色々と書くうちに
色気が出たり、迷いが出たりで、思った以上にポイントがボケてしまったかなと思ってます。
書きたかったことは、新人それぞれに良さがあるので、頑張って欲しいという所ですね。でも、
ちょっと、高橋びいきしてるって部分が出てしまったかも。
新しいのは、執筆中です。頑張ってますので、よろしくお願いします。
- 232 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年12月20日(木)18時47分07秒
- 作者です。第五話いきます。題名は、『箱一つ』
一応、クリスマスネタです。
- 233 名前:箱一つ 投稿日:2001年12月20日(木)18時47分53秒
- −箱一つ−
アタシの手の中にある小さな箱一つ。
―――――
「もぉ、うるさいなぁ」
捨てゼリフを残して、ごっちんは部屋を出ていってしまった。
あーぁ、またやっちゃった。
ごっちんとアタシは、付き合っている。今のところは、まだ…
ごっちんが娘。に入ってきた時は、お互い特別な印象はなかったのだけれど、サヤカを通
じて、いつしか仲良くなっていた。サヤカが卒業してからは、お互いの寂しさを埋めるた
めに、付き合うようになり、いつしかお互いに愛情を持つようになっていた。
アタシは、ごっちんの大人びた雰囲気にもかかわらず、アタシにだけ見せてくれる子供っ
ぽさが嬉しかったし、ごっちんもアタシにだけ甘えてくる所からも、何か信頼してくれて
るのだろうと思っていた。
そう、ちょっと前までは…
だけど、最近愛されているという実感が持てないんだ。
- 234 名前:箱一つ 投稿日:2001年12月20日(木)18時48分31秒
- 喧嘩は前もよくやってた。
タンポポよりプッチが売れてるって、ごっちんが自慢したり、
ハワイのポカポカドボンで、本気で殴っただろうとか、
ミニモニって恥ずかしいよねって言われて怒ったり…。
それだけじゃない。
アタシとよっすぃーが仲良いとか、ごっちんと梨華ちゃんが楽しそうに喋っていたとか…、
いっぱい、いっぱい、喧嘩した。
だけど、それは、
アタシがごっちんが嫌いになったんじゃなくて、ごっちんが大切な存在だったから…
- 235 名前:箱一つ 投稿日:2001年12月20日(木)18時49分13秒
- アタシはごっちんに怒って言ったんじゃない。満足できていない自分が腹立たしくて、し
かもそれに気付いているかのごとく、痛い所をついてくるのが、本当はアタシの事を解っ
てくれてるって思ってたから…。
だから、あんなにも言い合えたんだ。
でも、今はもうあんな風に言い合える事ができない。
だって、ごっちんはもう、アタシが何を悩んでいるか、何を欲しがっているか、何をした
いか、どこへ行きたいか…、全然解ってくれていない。
アタシの方さえ、…向いてくれていない。
- 236 名前:箱一つ 投稿日:2001年12月20日(木)18時49分50秒
- 最近、ソロで忙しいのは解っている。昔は、可哀相にって思っていた。だけど、あんなに
楽しそうに活動して、――― アタシと会える時間がこんなに少なくなったのに、平気な
のかって…、寂しい。
だけど、寂しいって言うのが辛いから、
アタシはごっちんに文句ばっかり言ってしまう。
起きるのが遅いとか、片付けをしないとか、
本当はどうでもいい事なのに、怒っていた。
「そんなに、イジメなくてもいいじゃん。」
ごっちんに言われた。
イジメてるのはどっちだよー。アタシをこんな寂しい思いにさせて、ごっちんは平気なの
かよぉ。
そう思いながら、また文句言ってるアタシ。
本当は、アタシもごっちんのことなんか好きでないのかも。
ただ、――― サヤカがいなくなった寂しさから…
- 237 名前:箱一つ 投稿日:2001年12月20日(木)18時50分39秒
- 「ごっちんもさ、5期生が入って今まで以上に先輩の意識が出てきたんじゃない。それに、
ソロも2枚目だしさぁ。それから、サヤカが復帰したのも、かなり刺激になってるんだよ。
負けられないってね。アタシだって、裕ちゃんに負けないようにって思ってるもんね。」
カオリに相談した時には、そういう風に励まされた。
確かに、頑張ろうって意識が強くなってるのは解るよ。周りもごっちんにそうさせるよう
にしてるって見えるしさぁ。
だけど、アタシだって頑張ってるよ。ミニモニだって忙しいし、タンポポだってある。深
夜ラジオもあるしさぁ。新垣の教育係だってあるんだし。
アタシだって、頑張ってるんだよ。ごっちんみたいに目立たないかもしれないけれど、頑
張ってるんだよ。なのに、一人で大変みたいな顔されちゃあさ、こっちだってムカつくっ
ちゅうの。
- 238 名前:箱一つ 投稿日:2001年12月20日(木)18時51分31秒
- あぁ、思い出しただけで、また段々と腹が立ってきた。
さっきもさぁ、こっちが思っている事をバァーッて言っちゃったら、ごっちんは怒って出
て行っちゃった。まぁ、出ていったのは、これから仕事があるからだから仕方ないんだけ
ど、せっかくのクリスマスイブにさぁ、事務所が珍しくオフをくれたのに、自分だけソロ
の仕事入れちゃったりしてさ。
去年だったら、イブなんて言ったら、仕事だったにも関わらず、終わって二人だけでパー
ティーしたりしたのにさぁ。アタシん家で、部屋を薄暗くして、小っちゃかったけどケー
キなんか買ってきてさ…
ごっちんがアタシの背中から抱きしめてくれてさぁ、すっごい暖かかったんだよ。
なのに、今年は…
なんで、仕事なんか入れちゃうんだよ。アタシに見せつけるためかよ。
アタシの側に…、いたくないからかよぉ。
ごっちんのバカぁ!嫌いだぁ!
何でぇ、涙出てきたじゃんかぁ。もぉ!!
- 239 名前:箱一つ 投稿日:2001年12月20日(木)18時52分21秒
- ピン・ポーン!
誰だろう?ごっちんかなぁ。まさか、裕ちゃんが酔っ払って来たんじゃないよねぇ。
「ハーイ」
「宅急便でーす。お届に参りました。」
何だろ?ファンの子達はこの住所知ってるはずないから、事務所かなぁ?
まさか、クリスマス・プレゼント…だなんて、そんな気のつく人なんていないし。
ひょっとして…、
アタシって、やっぱり人気者だからさぁ。密かにアタシの事を思ってる人がいて…
「すいませーん。ご苦労さまです。」
ほら、プレゼントだぜ。ちょっと小さいけど…。だけど、やっぱり、アタシってもてるん
じゃん。へん!ごっちんなんかに負けないもんね。
でも…、誰からだろう。
送り元を見ると、
『後藤 真希』
ん?何で、ごっちんがこんな物を送ってきたんだぁ。
- 240 名前:箱一つ 投稿日:2001年12月20日(木)18時53分09秒
- 箱を開けると、もう一回り小さい箱とカードが出てきた。
『メリー・クリスマス やぐっちゃん
今年はアタシのせいで一緒に過ごせなくてごめんね。
このプレゼントを渡したくて、頑張ったよ。何とか間に合って良かった。
ごっちん』
ごっちん…
アタシは、箱を開けた。中には、ダイヤのイヤリングが入っていた。
これを…、こんな高価な物を、買うために…、仕事もいっぱい入れてたの?
ひょっとして、今日の仕事も…?
何で、こんな物くれるんだよぉ。
何で、こんな物のために、仕事ばっかりやってんだよぉ。
アタシは、こんな物なんかより、ごっちんの方が何倍も何倍も大事なんだよぉ。ごっちん
が側にいてくれて、アタシに甘えてくれて、アタシの話しを聞いてくれて、アタシと一緒
に御飯食べたり、ゲームやったりするのが楽しいんじゃんかぁ。
なんだよぉ!何にも解ってないじゃんかよぉ。
ごっちんのばかぁ。また、泣いちゃうだろ。
- 241 名前:箱一つ 投稿日:2001年12月20日(木)18時53分58秒
- 付けっぱなしのラジオから聞こえてきた歌…
『前略、君は元気ですか。 僕はやっと 今日着いたよ。
先ずは君に手紙を書こう 町で拾った六枚の枯葉
僕が来たこのサンフランシスコ 枯葉の季節あちらこちらで
街を歩き、いない君を 思い出しては、独り言
船の中では、君が ただ懐かしくて苦しかったよ
旅の途中で見た素敵な物を みんな君に贈ろう
イルカを二頭、ついでにクジラ 甲板に落ちた星のかけらも
君にあげようメキシコの月 キリマンジャロの雪も風も
蒼い風も凍るダイヤ 波の真珠も台風の目も
君がいなくて悲しい 君がいなくて、また二日酔い
君にあげよう世界中を 今はこれが全てだけれど
たった六枚枯葉だけれど 僕の思い 全部こめた 』
(『サンフランシスコの六枚の枯葉 訳詞:高野圭吾』より)
- 242 名前:箱一つ 投稿日:2001年12月20日(木)18時55分10秒
- そうだよ。こんな物じゃないんだよ。ごっちんの気持ちだったら、何でもいいんだよ。
枯葉だって、石ころだって…
ごっちんが思いを込めてくれたら…、アタシは世界中の何よりも大事にするのに…
『ごっちんはね、矢口への思いを何かに込めたかったんだよ。ごっちんの苦労とか、悲し
みとか、楽しさとか、感動とかをね。ごっちんは、仕事をしながら、毎日そういう物を感
じていたのさ。そして、その仕事の結果が、そこにあるイヤリングに形を代えて、矢口の
前にあるんだ。ごっちんはごっちんなりの気持ちを、矢口にぶつけてるんだよ。それを受
け止めるかどうかは、矢口次第だよ。』
けっ!カオリの声が聞こえてきやがった。あの電波野郎が。どこかで、アタシ達の事を見
てやがったなぁ。それで、話しかけてきたんだぜ。きっと。
んな訳ないかぁ。解っていながら、やっぱり意地を張ってるアタシ。カオリの声で聞こえ
たような気がしたおかげで、何となく自分に納得させられたかな。
- 243 名前:箱一つ 投稿日:2001年12月20日(木)18時56分09秒
- 一応、お礼言っておこうかな。
アタシが携帯を取り出した時だった。
クリスマスには不似合いな、ミニモニジャンケンぴょん!の着メロ。
なんでぃ、こんなタイミングで。本当に電波使って、見てたんじゃないのか。
「もしもし、何だよ。カオリかぁ。」
『矢口ぃ、大変なんだよぉ。』
「カオリの大変は、あてにならないからねぇ。」
『冗談言ってる場合じゃないよ。ごっちんがさぁ。ごっちんが…』
「ごっつぁんがどうしたってんだよ。アタシにゃぁ、関係ないよぉ。」
『ごっちんが、テレビに収録中に、セットから落ちちゃって…』
「!!!」
『それで、……………』
カオリが電話の向こうで何か言ってるんだけど、アタシの耳には何も入らなかった。
- 244 名前:箱一つ 投稿日:2001年12月20日(木)18時56分59秒
- 何で、ごっちんが落ちちゃったの。だって、運動神経だって、娘。の中じゃ一番じゃん。
今日だって元気だった………じゃん。
…元気じゃなかったじゃん。
疲れてたよ。あんまり寝てないし。つんくさんとこの映画が大変だったし、正月のドラマ
だって、すっごい緊張してて、寝れないって言ってたじゃん。
今日も、眠いっていってたのに無理に起こしたのはアタシじゃん。
ごっちんは、本当に疲れてたんだよ。本当に頑張ってたんだよ。
アタシに負けないようになんて考えてなかった。ただ、自分の仕事を一生懸命にやってた
んだよ。
負けたくないって思ってたのは、アタシの方…
ごっちんに置いてかれるのが恐くて…
ごっちんにバカにされるのが恐くて…
意地を張ってたのは、アタシの方…
なのに、ごっちんはアタシにこれを贈るために、こんなに頑張ってくれたんだ。
- 245 名前:箱一つ 投稿日:2001年12月20日(木)18時57分50秒
- 『……なんだけどぉ。矢口、聞いてるの。矢口ぃ!』
「ねぇ、ごっつぁんは大丈夫なの。ねぇ。どうなんだよぉ!!!」
気がついたら、アタシは電話に向かって叫んでいた。
『だからぁ、今は病院で寝ているって言ってるでしょ。大きなケガはなさそうだけど、頭
を打ってると重大事かもしれないから、とりあえず、明日まで様子を見ようって。』
「今、どこなのぉ。これから行くよぉ。」
『今晩は来ても、どうしようもないし。明日は他のメンバーも仕事があるから、寝ておき
なさいって。いい。解った。もし何かあったら困るから、絶対に家にいてよ。絶対だよ。』
そんなぁ、心配じゃん。寝れるわけないじゃん。
- 246 名前:プッチ 投稿日:2001年12月20日(木)19時05分37秒
- 作者です。今日はここまで。
矢口と飯田に出てもらって、やっとこのスレも現メンバー全員出たことになりました。
となると、福田と石黒も出さないとマズイっすかね。
引用した詩は、10年前によく聞いていたシャンソンです。記憶が曖昧なので、細かい所は誤まって
いるかもしれません。もし、ご存知の方がおられたら、ご指摘いただけるとありがたいです。
実際には、引用した部分の後ろにセリフともうワンフレーズが入るのですが、セリフが思い出せな
かったので、あそこまでにしました。
- 247 名前:しーちゃん 投稿日:2001年12月21日(金)16時31分39秒
- はじめてレスさせて頂きます。
プッチさん、すごいです!!引き込まれて読んでいます。
がんばって下さい。更新楽しみに待っています。
- 248 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年12月23日(日)16時23分22秒
- >>247
レス感謝です。
暖かいレスの支えられながら、続けられている次第です。
これからも、よろしくお願いします。
- 249 名前:箱一つ 投稿日:2001年12月23日(日)16時24分42秒
- ―――――
アタシはもう一度、手の中の箱を見た。
たった一個の小さな箱。こんなアタシの手にも収まるくらいの箱。
こんな物のために…、
アタシはその箱を壁に投げつけ、
――― ようとした。
でも、できなかった。だって、ごっちんの思いが込められているとしたら、そんな事でき
ないもん。
もし、投げてしまったら、
…ごっちんを失ってしまうんじゃないかって、
永遠にごっちんが帰ってこないんじゃないかって…
嫌だよ。そんなの嫌だよ。
だから、――― もう一度、その箱を両手で包み、胸の前で抱きしめた。
ごっちんがアタシにとって、大事な人であることを確認するように。
- 250 名前:箱一つ 投稿日:2001年12月23日(日)16時26分31秒
プーン!
付けっぱなしだったラジオから、午前0時の時報が聞こえた。
今日は、クリスマス
だったら、…………
アタシは、ミニモニで頑張りました。18歳で恥ずかしいって言われながらも、踊ったり
歌ったり、チビッコ二人の面倒を見たりしました。ミュージカルだって、頑張りました。
裕ちゃんがいなくなって、寂しくなってけど、みんなを元気つけるように頑張りました。
よっすぃーや梨華ちゃんの悩みも聞いてあげたし、圭ちゃんやかおりの手助けもしました。
深夜ラジオだって、頑張ってます。
矢口は、とっても、とっても頑張りました。
矢口は、とっても、とってーーも、いい子でした。
だから、サンタさん。プレゼントをお願いしていいですよね。
絶対に、絶対に――― プレゼントしてくれますよね。
- 251 名前:箱一つ 投稿日:2001年12月23日(日)16時27分14秒
- そうだ。小さい時、ってまだ小さいけど…、そういう意味じゃなくて、あぁ、何でこんな
時まで独りで突っ込んでだろ。子供だった頃、お父さんやお母さんに言われた。サンタさ
んが来るのは、寝ている時でないと来てくれないって。だから、早く寝なくちゃ。
アタシは大急ぎで用意して、ベッドに入った。そして、もう一度、…… サンタさんにお
願いした。心を込めて… ―――――
- 252 名前:箱一つ 投稿日:2001年12月25日(火)12時30分25秒
- *****
翌朝…
アタシは飛び起きた。そして、枕元の靴下の中を見た。そして…
靴下の中から、アタシは自分の携帯を取り出した。
良かった!入っている!
携帯のディスプレィには、『後藤真希』と書かれた着信履歴。
アタシはゆっくりとメッセージを再生した。
『やぐっちゃん。おはよー。まだ寝ていると思うので、メッセージ入れとくね。心配かけ
たかもしれないけど、アタシは大丈夫だから。ちょっと、オシリが青アザできてて痛いく
らいかな。――― 寂しいクリスマスにして、ごめんね。一応…、贈り物しといたんだけ
ど…、何て言うか――― 今のアタシにとっては、精一杯の気持ちなんだ。うまく言えな
いけど、――― いつも、やぐっちゃんが側にいてくれてうれしい。感謝の気持ちにはな
らないかもしれないけれど、…受け取ってね。――― じゃあ、もう少し寝ます。仕事に
は行くつもりだけど、ちょっと遅れるかも。ごめんね。じゃあ、仕事場で。』
- 253 名前:箱一つ 投稿日:2001年12月25日(火)12時31分08秒
- へん、好き勝手言いやがって。心配なんかしてねぇよーだ。ぐっすり寝てたよ。心配なん
かしてやんねぇよーだ。
だから…
だから…
もう、心配させるような事、すんじゃねえぞぉっ!
サンタさん、お願い聞いてくれてありがとう。これからも、矢口は、きっといい子でいる
からね。
ごっちんの前でも…、ちゃんといい子でいるからね。
アタシは、携帯を置いて、出かける用意をした。今日もお仕事を頑張るために。だって、
サンタさんと約束したもんね。約束守らなかったら、来年プレゼントもらえないもん。
来年は…、来年は…、ごっちんと…
- 254 名前:箱一つ 投稿日:2001年12月25日(火)12時31分51秒
- アタシは、玄関を出ようとして、ふと…
ごっちん、青アザができてるって言ってたなぁ。だとしたら、何かいいだろう。
シップかなぁ。でも、これで青アザに効くのかなぁ。
そうだ!
- 255 名前:箱一つ 投稿日:2001年12月25日(火)12時33分01秒
- アタシは、シップを胸に抱きしめた。そして、アタシの思いを、一生懸命に込めた。
今、アタシはごっちんの青アザを直すためにだったら、世界中にあるすべての物をごっち
んに贈ってあげたい。
だけど…、今アタシが思いつくのは、このシップ薬だけだ。
だから、このシップ薬にアタシの思いの全てを込めるんだ。
……よしっ!
ごっちんに早く会いたい。
アタシは、玄関を飛び出していった。
‐fin‐
- 256 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年12月25日(火)12時40分11秒
- 作者です。第五話完了です。
今回は、世の男性達は自分のためだけでなく、誰かに何かを贈るために頑張ってるんだと。
だけど、その贈った物が本当に相手(恋人とか奥さんとか)の欲しい物とは限らない。
そういう男(贈る側が男とは限らないでしょうが)の悲しさをテーマにしてみました。
贈られた方も、その贈られた物だけでなく、その物に込められた思いを感じてもらえたら…
そんな願いというか、言い訳というか…
- 257 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年12月25日(火)12時47分28秒
- 年内の更新はこれで終了です。これまでの作品の索引を作りました。
>>2
第一話 『お天気雨』
>>46
第二話 『夢を翼に』
>>133
第三話 『潮騒に誘われて』
>>196
第四話 『私は天使なんかじゃない』
>>233
第五話 『箱一つ』
来年も続けられますように。
- 258 名前:M.ANZAI 投稿日:2001年12月25日(火)14時59分56秒
- 第5話、読ませていただきました。
贈り物を贈る側の思い入れと、受け取る側の贈り主への思いの
すれ違いのようなことがテーマなのかと思いましたが、
本当はどれだけ相手の事を思っているか自分の気持ちが大事なんだと
そんなことを感じ取りました。(見当違いだったらごめんなさい。)
クリスマスのこの日、素晴らしいものを読ませていただき感謝です。
- 259 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年12月25日(火)20時33分29秒
- >>258
レス感謝です。
そういう面もあるのですが、一番伝えたいのは、贈られた側の方に、それが望んだ物であっても、
望んでなかった物であっても、贈った側の気持ちを汲んであげて、ただ喜んであげてね。
という、願いですね。
そういう意味では、これを読んで喜んでいただけたという反応がいただけて、嬉しいです。
こういう気持ちを他の人達にも感じさせてあげて欲しいな。
- 260 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2001年12月26日(水)18時46分19秒
- 作者です。
ごめんなさい。索引がミスってましたので、再掲載です。
>>2-39
第一話 『お天気雨』
>>46-127
第二話 『夢を翼に』
>>133-188
第三話 『潮騒に誘われて』
>>196-228
第四話 『私は天使なんかじゃない』
>>233-255
第五話 『箱一つ』
誰か見てくれるかなぁ。
- 261 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2002年01月15日(火)19時58分44秒
- 作者です。
ここも、当初スレを上げた時、短編”集”と言う以上は、最低五作は必須かなと思って
おりました。そのラインも何とかクリアできましたし、書く方も元気がなくなってきま
したので、そろそろ潮時かなと思ったりしてます。
あと一つ、何とか書きたいとは思ってますが、なかなか納得できるのが書けないので、
もう少し時間がかかりそうです。どうしても書かないといけない理由があるので、最後
は無理矢理書いてしまうかもしれません。もし、読んでいただいてる方がおられても、
期待しないでくださいね。
目標としては、来週かな。来来週かな。
- 262 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2002年01月18日(金)19時31分29秒
- 作者です。
第六話が書けたので、今日から開始です。
題名は、−晴れ 後 曇り 時々雨−です。
- 263 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月18日(金)19時32分27秒
- −晴れ 後 曇り 時々雨−
「…ちゃん、…んちゃん、のんちゃん」
うーーーん、あぁぁぁぁ。
あれぇ?ここは…どこれすかぁ?
今まで何してたんらろ。なんにもおぼえていないのれす。
えーーっと、たしかに頭はかしこい方じゃないれすし、どっちかって言うと、ペケの方な
のれすが、今が何月かくらいは言えます。いつもらったら…
なのに…、今日は…?????
ぜんぜんわかんないのれーーす!!!
- 264 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月18日(金)19時33分00秒
- 名前は、うーーーんと、辻 希美。うん、らいじょうぶれす。
13歳で、もうすぐ中学2年 ――― れす。まちがいないれすね。
好きなのは、キティちゃんと ――― たべること。
特技は、たべることと…、――― モノマネ!
そうら。モノマネれす!
「め〜〜〜ぇ」
よしっ、上出来!つじがつじであることに、まちがいありません。
「ふふふっ」
あれっ!誰かいるのれすか?
よこを見ると…、かわいい女の人がつじのそばにしゃがんれいました。
- 265 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月18日(金)19時33分43秒
- 「大丈夫?よく寝てたみたいだけど…」
つじは、ねてたのれすか?――― こんなところでれすか?
「あのぉー、ここはどこれすか?」
お姉さんは、それにこたえてくれませんれしたが、つじの手をとって起こしてくれました。
「あっ、ありがとうごらいました。つじは…、あっ、なまえは辻希美って言うんれすけど、
ろうして、こんなところにいるのかわからないのれす。」
「そうなの?変なのぉ。」
「そうれすね。へんれすよね。」
- 266 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月18日(金)19時35分58秒
- あらためて、お姉さんを見てみましたが、せも年もつじと変わらないくらいなのに、とっ
ても落ち着いたふんいきで、おとなっぽい女性でした。
「私は、アスカ。」
アスカさんって言うのれすかぁ。うーーん、ろこかで会ったことがあるような気がするの
らけろ…、あぁ、思い出せません。つじはあたまが悪いのれ、ぜんぜんおぼえられないの
れす。
とりあえず、こんな所にいてはダメですね!家にかえらなくては。
「あのぉ…、お家へ…」
「のんちゃん、お腹すいてない?」
おなか?そういえば、すいてるような気がしてきました。
- 267 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月18日(金)19時36分35秒
- 「すいてます。」
「何が食べたい?」
「うーーーんとね。――― ラーメン!」
「ラーメン?」
「うん、おいしいラーメン。」
「ふふふっ、じゃあラーメン食べようか。」
アスカさんがゆび差した方を見ると、きれいなお家がありました。
知らない人についていっちゃあダメだって、言われてたんらけど………
ラーメンのとーーーってもいいにおいがしてきたら、もうがまんれきません。
ゴクリ!
「ふふふっ」
アスカさんを見たら、とってもやさしそうれすし…、きっと、いい人ですよ。
ぜったい、いい人にきまってます。らからぁ…、
「のんちゃん、行こうか。」
「へい!!」
つじは、アスカさんにくっついて、そのきれいなお家に入っていきました。
- 268 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月18日(金)19時37分09秒
- 「どうぞ」
「おじゃましまーす」
なかは、つじの好きなピンク色のカーテンに、花がらじゅうたんがしかれていました。真
中に大きなテーブルがあって、そこには…
とーーーーっても、おいしそうなラーメンがおいてありました。
そのにおいに、――― 気がついたら、そのラーメンの前のいすにすわって、おはしを持
っていました。
あっ、とわれに返って、うしろを振り返ってみると、
「どうぞ。食べていいわよ。」
アスカさんが、にっこりとほほえんれくれました。
- 269 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月18日(金)19時38分00秒
- いつから、このラーメンがここにあったのらろう。とか、気にはなったのれすが…、そん
なことを考えるより先に、つじはラーメンのめんをおはしれすくっていました。そうなっ
たら、もう止まることなんてれきません。
「いたらきまーす。」
言うとろうじに、ラーメンを口いっぱいにしていました。
食べたしゅんかん…
「!!!おいしーーーーぃ」
ほんとうにおいしいんれす。なんて言うんらろう。――― つじが、こんなラーメンを食
べたいって思ってた。…まさにそのあじなのれす。
「あふぅふぁふぁん、ふぉんふぉうひ、んぐっ…おいしいのれす。」
「ふふっ。まぁまぁ。ゆっくり食べなさい。」
気がついたら、アスカさんはつじのとなりにすわっていました。
- 270 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月18日(金)19時38分53秒
- じぃっと見られるのは、はずかしい気もしたのれ、
「アスカさんは、食べないのれすか?」
「うん、のんちゃんの食べてるのを見てたら、私もお腹いっぱいになっちゃった。」
見ると、目のまえのラーメンはもうからっぽになってました。
「どう?おいしかった?」
「へい!」
「もっと食べたいものは?」
「うーーーんとね…」
あんまり食べてばかりらだと、太っちゃうかなぁ。れも、ラーメン食べたばかりなのに、
まだぜんぜん食べれそうなのれす。
「おかしが食べたいれす。」
「あら、そう。じゃぁ、これは?」
アスカさんは、テーブルの下から、おさらいっぱいのドーナツを出してくれました。
うそぉ。何でわかったのれしょう。
「わぁーー、おいしそうれす。ドーナツがいいなぁって思ってたのれす。」
「そう。良かったぁ。じゃあ、一緒に食べようか。」
「へい!いっしょに食べましょう。」
- 271 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2002年01月18日(金)19時43分12秒
- 作者なのれす。
見たとおり、つじ視点なのれす。
とりあえず、書き始めましたが、週末でもう少し修正したいので、次の更新は、月曜日の
予定なのれす。
- 272 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月21日(月)19時07分45秒
- ドーナツもとってもおいしかったのれす。何て言うんれしょう。つじが食べたかった。そ
んな味なのれす。もう、とーーーーっても、まんぞくなのれす。
それに、いくら食べてもぜんぜん平気なのれす。
まるれ、ゆめみたい…。
――――― そうか!つじはゆめを見てるのれすね。つじはねてて、それれつじが大好き
な食べもののゆめを見てるのれすね。らったら、いくら食べても平気じゃないれすか。
あ〜ぁ、心配して損しちゃったのれす。
- 273 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月21日(月)19時08分54秒
- 「アスカさん、ここはゆめなんれすよね。」
ドーナツもいくつ食べたろう。もう食べあきたかなと思うころに、聞いてみました。
「夢?」
「はいっ!つじは今、ねてて、ゆめを見てるのれすよね。」
「夢かぁ…、ふふふっ、まぁそんなものかなぁ。」
やっぱりね。アスカさんはやさしいから、ちゃぁんと教えてくれるのれす。
れもぉ…、ゆめの中で『夢を見てるんだよ』なんて、何らかへんれすねぇ。
まぁ、つじにはむずかしいことはわかりませんから、ゆめの中くらい、いっぱい食べて、
いっぱい遊んじゃうのれす。ろうせ、朝になったら、お母さんに起こされちゃうのれすし。
- 274 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月21日(月)19時10分01秒
- 「ゆめの中れすから、もっといっぱい食べてもいいれすよねぇ。もっといっぱーーーい遊
んれも、いいれすよね。アスカさんもいっしょに遊びましょう。」
「うん、いいよ。でもね、これだけは約束して。ほら、窓から見えるでしょ。」
アスカさんのゆび差す方には、窓が開いていたのれ、外のけしきが見えていたのれす。
窓の外には、小さな川がながれていました。とってもきれいな川れした。川の向こうには、
お花ばたけが見えていました。
「とっても、きれいな川れすね。行ってみたいれす。」
「ダメよ!」
急にアスカさんは、こわい顔になりました。つじは、とってもおろろいてしまいました。
つじがおろろいたのに気がついたみたいれ、アスカさんはまたやさしい顔になりました。
- 275 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月21日(月)19時10分47秒
- 「いい、のんちゃん。あの川に行ってはダメよ。絶対に。ここは、とても楽しい所だから、
のんちゃんがやりたい事は、全部ここでやっていいのよ。だから、川の向こうには、絶対
に行ってはダメ!いい?お約束できる?」
「ろうしてれすか?ろうして、川に行っちゃぁ、いけないのれすか?」
「行くと、帰って来れなくなるの。だから、絶対に行っちゃあダメよ。」
「はーい」
へんなの。向こうに行っても、かえってこれなくなったって、朝になって起きてしまえば
いっしょじゃないれすか。
れも、アスカさんがやさしそうれしたし、あっちに行って目がさめてしまったら、もった
いないのれ、つじはアスカさんの言われる通り、ここにいることにしたのれす。
- 276 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月21日(月)19時11分41秒
「のんちゃん、こんなのはどう?」
アスカさんは、何かをつじの手にわたしました。
「これって…、」
つじはぁ…、グズなのれ…、
そりゃぁ、つじもやってみたいとは思ってます。ともだちが上手にやってるのを見ると、
とっても楽しそうれしたし…
つじもあんなに上手にれきたら、いいなぁって思ってましたから…
「大丈夫だよ。のんちゃん。」
「らけどぉ…、やったことないれすしぃ…」
そんな、アスカさん。つじにプレステ2なんてれきるわけないじゃないれすかぁ。
- 277 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月21日(月)19時12分16秒
- 「ふふふっ、いいから、いいから、ちょっとやってみてよ。」
「そうれすかぁ…」
つじがアスカさんから、受け取ってテレビの前にすわったのとろうじに、ゲームがはじま
りました。
「うわぁ、うわぁ」
「のんちゃん、上手、上手」
ゲームはロケットみたいなのを操縦して、相手を撃ち落とすゲームれした。すっごーーい
スピードなのれ、びっくりしたのれすが、ぜんぜん相手の攻撃がつじに当らないし、つじ
の攻撃はおもしろいように当るし、段々とおもしろくなってきたのれす。
- 278 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月21日(月)19時13分03秒
- そうか。つじのゆめの中れすから、つじが思った通りになるんれすね。らったら…
つじは、わざと無茶苦茶な操縦をして、空中回転をしたりしながら、ガンガン相手を撃ち
落としていきました。
「すごいじゃない。のんちゃん。」
「てへてへ」
巨大宇宙船も惑星艦隊も、つじの敵れはありません。らって、つじは世界最強のゲームの
達人なのれすから。
最後に敵本部を破壊して、花火みたいな光の中を自由にとびまわるのは、とーーっても気
持ちのいいものれした。
- 279 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月22日(火)19時24分31秒
- 「ほら、のんちゃん。できたでしょう。」
「ホントれすね。」
れも…、これはつじのゆめの中らから…
こんな楽しいことも、あしたになって目がさめたら、おしまいなんれすね。
世界最強のゲームの達人も…、ゆめの中らけれすよね。
「どうしたの?のんちゃん。まだあるわよ。」
「はい…」
さっきまでよろこんでいたつじが、急に元気なくなったのを心配してくれたみたいれ、ア
スカさんは、つじの顔をのぞこきこんれくれました。
- 280 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月22日(火)19時25分18秒
- 「ん?どうしたの?面白くなかった?」
つじはあたまをフルフルと振って、
「ちがうんれす。とっても楽しかったのれす。らけろぉ…、上手らったのは、ゆめの中ら
から、できたのれす。本当のつじは下手っぴなのれす。明日になったら、またみんなにバ
カにされちゃうのれす。」
アスカさんもかなしい顔をしてくれると思ったら、アスカさんはにっこり笑ったままれした。
「誰ものんちゃんの事をバカにしたりしないよ。だって、のんちゃんはとっても優しい子
だもの。本当に優しい子をバカにしたりする人はいないよ。」
アスカさんはやさしいからそう言ってくれるのれすけろ、つじは知ってるのれす。
つじはあたまも悪いし、グズれすから、みんなバカにするんれす。れも、みんなの事は大
好きれす。つじのことをバカにしても、それはつじがバカなのれすから、しかたないのれ
す。つじが悪いのれあって、だれも悪くないのれす。
- 281 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月22日(火)19時26分13秒
- 「そんな事ないよ。のんちゃんは、バカなんかじゃない。」
えっ!つじが考えていたことが、アスカさんにはわかるのれすか?
「のんちゃんは、バカなんかじゃないよ。そりゃぁ、誰だって苦手なこともあるし、得意
なことだってある。」
「れもぉ…、つじには得意なことはあんまり…」
「大丈夫。本人は気付いてないけれど、みんながうらやましいって思うくらいに、素敵な
所をのんちゃんは持っているよ。」
「そうれすかぁ。」
「うん、そうだよ。のんちゃんはいつだって、元気で明るいし、」
アスカさん…、それって…、やっぱり…
- 282 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月22日(火)19時27分00秒
- 「それに、とっても可愛い。それから、いつだって相手の事を真剣に考えてあげている。
不器用かもしれないけれど、それはとっても大事なことだと思うの。」
そうなんれすか?そんなの誰れもできるじゃないのれすかぁ。
「うううん、違うの。相手の事を真剣に考えてあげるのって、とっても難しいことなのよ。
それは、本当に優しい気持ちを持った子でなければできないの。それをのんちゃんは持っ
ているのよ。それは自信を持っていいことなのよ。」
そうなんれすかぁ。つじはいい子なんれすかぁ。
「そうよ、のんちゃん。優しいお父さんとお母さんにもらった大切な身体と心よ。もっと
自信を持って、大事にしないさいね。自分の事をバカにしちゃ、ダメよ。」
「はいっ!わかりましたっ!」
- 283 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月22日(火)19時27分34秒
- アスカさんは、とってもやさしいから、大好きれす。れもぉ…
なんれ、つじの考えていることが、ぜんぶアスカさんにはわかってしまうのれしょう。そ
ういえば、ラーメンらって、ドーナツらって…、つじがほしいって思ってたものが出てき
ましたし…
そうかぁ。つじのゆめらかられすね。
らけろぉ…、
つじのゆめの中でつじをはげましてくれているアスカさんて、いったい何なのれしょう??
- 284 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月22日(火)19時29分27秒
- それからも、つじはアスカさんと遊んらり、おいしい物を食べたりしました。
いくら食べてもぜんぜん平気れすし、よるも来ないからぜんぜんねむくならないのれす。
時間がろれくらいすぎてるのかも、ぜんぜんわからないのれす。今はゆめの中れすから、
時間なんてないのれ、つじはおいしい物を食べたり、ゲームを楽しんらりしていればいい
のれす。らって、そんな楽しいきもちも、朝になって目がさめたらぜんぶが終わってしま
うのれすから。
らけど…、ちょっとさびしい気持ちにもなるのれす。
- 285 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月22日(火)19時31分03秒
- 外は、アスカさんが行っちゃあダメ!って言った川以外は、広ーい草原でした。ろこまで
行ってもずーーーっと草原が続いていて、つじがどれらけ走り回ったり、暴れ回っても、
全然平気れした。しかも、ろこまれ行っても、お家はすぐ近くれしたし。
アスカさんはいつもつじの側にいてくれて、一緒に遊んれくれたり、おいしい食べ物を出
してくれたりしてくれるのれす。
らけろ、一緒にいてくれるのは、アスカさんばかり…
たしかに、アスカさんは優しいれす。つじがろんな困ったことを言っても、笑ってくれま
すし、イタズラした時らって、おこったりしないのれす。
やっぱりお母さんや、大好きなお友達がいないのは、寂しい気持ちになってしまうのれす。
- 286 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月22日(火)19時31分37秒
- そんな時れした。
「のんちゃんのお母さんって、どんな人なの?」
「お母さんれすか。とってもこわいれす。」
つじのお母さんは、とってもこわいのれす。つじが悪さすると、じっとにらむのれす。と
ってもこわいのれ、つじは一生懸命バレないようにするのれすけど、お母さんには、ぜっ
たいに見つけられてしまうのれす。お母さんは全部おみとおしなのれす。
らけろ、お母さんはつじが悪いことをして時もおみとおしれすが、つじがよいことした時
も、つじがかなしい時も、ぜんぶおみとおしなのれです。つじがよいことをした時は、あ
たまをなれてくれますし、かなしい時はぎゅぅって抱きしめてくれるのれす。
らから、つじはお母さんのことが大好きなのれす!
「そうなの。いいお母さんね。」
「へい!」
- 287 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月22日(火)19時32分12秒
- お母さん…
会いたいれす。やっぱり帰りたいのれす…
ここはとっても楽しいれすし、いつまれもこうしていたいのれすけれろ…
やっぱり、お母さん…
お母さんらけじゃない。とっても大好きな友達の亜依ちゃんにも会いたい。亜依ちゃんと
はけんかもよくするのれすが、やっぱり大好きなのれす。
いつもいっしょに遊んらり、モノマネしたり…、イタズラしたり…
あっ!思いらした!
そういえば、つじは亜依ちゃんと競争してて、それで学校の階段から落ちちゃったのれす。
その時のまま…
- 288 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月22日(火)19時32分50秒
- つじといっしょに落ちた亜依ちゃんはろうしたのらろう。つじは大丈夫…なのかなぁ。ひ
ょっとして…、つじが目をさまさないのもそのせいなのれしょうか?
つじはもう死んれしまっていて…、もう……
そんなのいやなのれす!
ひょっとしたら…、あの川をわたったら…、帰れるのかも…
アスカさんはダメだって言うけろ…、れも――― あの川をわたれば…
よしっ!
- 289 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月22日(火)20時55分36秒
- 気がついたら、つじの目のまえには、川がありました。
「のんちゃん!そっちにいっちゃぁダメって言ってるでしょ。」
アスカさんの声が聞こえたのれすが、つじはお家に帰りたいのれす。
足をそっと、川に入れようとした時、
「ぐぉっ!」
急につじの身体がうしろに引っぱられました。
- 290 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月22日(火)20時56分11秒
- 「のんちゃん、川に行っちゃあダメってあれほど言ってるのに」
アスカさんが…、アスカさんが…
泣いていました。
「ダメ!絶対にダメ!川の向こうに行ったら、もう帰ってこれないの。お願いだから、私
の言うことを聞いて!」
「らけろ、つじはお家に帰りたいんれす。んぐっ、アスカさんの事もらい好きれすけろ…、
ひっく…、お母さんや亜依ちゃんに会いたいんれす。ひっく…、お家に帰してくらさい。」
つじも泣いてしまいました。ここも楽しいれすし、アスカさんが大好きな気持ちもまちが
いないのれす…、らけろ、やっぱりお家に帰りたいのれす。
- 291 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月22日(火)20時56分45秒
- 「そうよ。のんちゃんはお家に帰らないといけないの。だから…、ここにいないといけな
いの。川を渡ったら…、もう…」
アスカさんはつじの両方のかたをつかんれいました。とっても強かったのれ、いたいって
思ったくらいれす。れも、そのおかげれちょっと落ちつくことがれきました。
「つじは…、ん…、お家へ、ん…帰れるんれすか?」
アスカさんの顔がいつものやさしい顔にもろっていました。
「大丈夫よ。絶対に帰れる。彩のためにも、のんちゃんは帰らないといけないの。」
えっ!お母さんを知ってるのれすか?
らって、アスカさんはつじと同じくらいなのに、つじのお母さんのことを”あや”ってよ
ぶなんて…
- 292 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月22日(火)20時57分19秒
- その時れした。
「ののー、ののー」
あれは…、亜依ちゃんの声れす。
「希美、希美」
お母さんの声れす。
「辻ちゃん、辻ちゃん」
後藤さんの声も聞こえてきました。
みんなに会いたいのれす…ほんとうに、ほんとうに会いたいのれす。
- 293 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月22日(火)20時57分51秒
- 「のんちゃん、ほら。みんながのんちゃんに会いたがってるよ。」
「へい。つじもみんなに会いたいれす。」
「じゃあね。私がこうして手を握っててあげるから…、目を閉じて。そして、みんなに会
いたいって願うの。心をこめて願うの。」
「はいれす。」
アスカさんの言う通りに、つじは目をとじました。そして、みんなに会いたいって願いま
した。アスカさんのにぎってくれている手のあたたかさを感じながら…
一生懸命にお願いしました。お母さんに会いたい。みんなに会いたいって。
ほんとうにお家に帰れるのか、とっても不安でしたが、アスカさんの手のあたたかさがつ
じに勇気をくれました。
絶対に帰れるって…
- 294 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月22日(火)20時58分24秒
- 「ののー」
「希美」
「辻ちゃん」
つじを呼ぶ声が段々と大きくなってきました。
「ううーっ」
「希美!大丈夫?…希美!」
「お母……さん?」
「希美……ああーっ」
「やったぁ、ののが目を覚ましたでぇ。ののも帰ってきたでぇ。」
目を開けると、そこには泣き顔のお母さんと、パジャマ姿の亜依ちゃん。それにつじも大
好きな後藤さんも、やっぱり泣き顔でつじのことを見ていました。
あれぇ…、れも手にはアスカさんのあたたかさが残っているのれす。
見ると、つじの手は、つじのお母さんがしっかりにぎってくれていたのれした。
れも…、ろうしてなのらろう?お母さんとアスカさんの手のあたたかさが同じらったのは…
- 295 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月22日(火)20時59分10秒
- そのあと、お母さんから聞いたのれすが、つじと亜依ちゃんは、学校のろうかれ競争して
て、二人で階段から落ちたのれした。その時に二人とも頭をうってねたままらったそうな
のれす。長い間、ねてたらしいのれすが、容態が急変して、お母さん達が心配して見てく
れていると、つじの目がさめたそうなのれす。
亜依ちゃんは、つじよりちょっと先に目をさましたみたいれしたが、
「あかんねん。いっしょにおった人がきっつい関西弁でなぁ。うちも関西弁が抜けへんよ
うになってもうたわ。」
やっぱり、川を渡らないように、一緒にいてくれた人がいたそうれした。
- 296 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月22日(火)20時59分41秒
- 今は12月。お母さんは何よりのクリスマスプレゼントになったって言ってくれたけろ、
つじがおぼえているのが3月らったから…、うわぁ、いっぱい寝てたことになる。
おなかすいたなぁ。ラーメン食べたいって言ったら、お母さんにおこられちゃいました。
てへてへ。
病院には、2月まで入院してました。亜依ちゃんも一緒れしたので、ぜんぜんたいくつし
ませんれした。れも、看護婦さんには何回もおこられちゃいました。
かなしいこともありました。つじは14歳になってたのれ、ほんとうは中学3年生になる
はずなのれすけど、1年間学校に行ってなかったのれ、2年生をもう一回やらないといけ
ないって…。れも、亜依ちゃんと一緒なのれ、つじはぜんぜん平気なのれす。
- 297 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月22日(火)21時00分13秒
- 「お母さん。アスカさんって知ってる?」
「アスカさん?……どうして?」
「うん、アタシがねてた時、ずっとアスカさんって人が一緒にいてくれてたのれす。川の
向こうに行ったら、帰ってこれなくなるって、ずっと言ってくれてたのれす。それれね、
お母さんの事を”あや”ってよんれたのれす。」
「そのアスカさんって…、ひょっとしたら、お母さんのおばあちゃん。希美にとってはひ
いおばあちゃんね。お母さんのことをとっても可愛がってくれてた。ドーナツが好きでね。
優しいおばあちゃんだったわ。おばあちゃんが希美のことを守ってくれたのね。」
そうらったのれすね。お母さんのおばあちゃんれしたアスカさんが、つじが死んでしまわ
ないように。川の向こうに行ってしまわないように、守ってくれてたのれすね。
アスカおばあちゃん。ありがとう。今度、大好きだったドーナツ持って、おはかまいりに
行くから、待っててね。
−fin−
- 298 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2002年01月22日(火)21時04分11秒
- 作者れす。一気に終了れす。
最後に、福田さんと石黒さんを登場させたくて、こんなのになりました。ちょっと、「カテキョ」
をイメージしています。
個人的になんですが、福田さんの見た目は子供だけど、中身はおばあちゃんっぽい(落ち着いてる
という意味で)印象を持ってたので、うまく使えたかなと思っています。石黒さんは、ちょっと無
理矢理でしたが。
- 299 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2002年01月24日(木)19時01分08秒
- 作者です。
もう、読んでる人がいないかもしれないけれど、最後まで書かないわけにはいかないので、
>>263-297 は、晴れの部でした。
曇りの部は明日UPの予定。
- 300 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年01月24日(木)22時33分33秒
- 読ませてもらってます。
まだ続きがあるみたいですね、ゆっくりとお待ちしてます。
- 301 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月25日(金)12時44分07秒
- −曇りの部−
キーーーン
今日もつじは、元気に学校に通っているのれす。
今日は、親友の亜依ちゃんの15歳の誕生日なのれす。きのうのうちに、プレゼントをわ
たしておいたのれすが…、じつは、なかみはびっくり箱なのれす。
亜依ちゃん、びっくりしてくれたかなぁ。
本当の誕生日のプレゼントは背中のカバンの中に、入れてあるのれす。
亜依ちゃんは絶対に怒ってると思うのれ、その時にこのプレゼントを渡すのれす。そうす
れば…、てへてへ、よろこびも倍増なのれす。
てへっ、てへっ、てへっ
- 302 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月25日(金)12時44分47秒
- おっ、そんな事を言っているひまはないのれす。いそがなければ。
亜依ちゃんとはろっちが早く教室に入るか、毎朝競争しているのれす。今月はつじの方が
勝ってるのれすが、きのうはあのプレゼントの用意をしてて夜がおそかった分、朝もおく
れてヤバかったのれす。それれも、亜依ちゃんがあんな時間に歩いているはずのない後藤
さんにぶつかってくれたおかげで、つじの勝ちれした。
今日も勝つのれす。
あっ!信号が変わりそうれす。…ろうしよう。――― ええい、行っちゃうのれす。
あっ ――――
- 303 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月25日(金)12時45分51秒
- あれぇ…、ここは?
「のんちゃん!!」
あっ!アスカさんれす。ろうしてアスカさんがこんな所に…
「のんちゃん。しっかり。頑張って!!」
気がついたら、つじは川の中にいました。もう腰まれ川の中なのれす。
ながされそうになっているつじの手を、アスカさんがにぎってくれているのれす。
「ダメよ。そっちに行ったら、帰ってこれないよ。」
うん。わかってるのれす。らけろ…、らけろぉ…
身体が動かないのれす。それろころか、ろんろん川のむこうに引っぱられていくのれす。
アスカさん、たすけてくらさーい。
つじは、まだ死にたくないのれす。
- 304 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月25日(金)12時46分39秒
- 「のんちゃん。頑張って!」
「アスカさーーん」
つじもアスカさんの手をしっかりとにぎりしめて、がんばりました。らけろ…
アスカさんの手が段々とよわくなっていくのれす。
ダメぇ!つじを、つじを連れていかないれぇ!
「のんちゃん!!」
「アスカさん!!!」
もうダメ…。アスカさんの手のぬくもりが消えたと思ったその時れした。
- 305 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月25日(金)12時47分30秒
- 「うわぁ!!」
急に誰かがつじの腕をつかんれ、そのままアスカさんのいる岸まで引き上げてくれました。
たすかったぁ!
と思った瞬間、
ドボン!
今度は、誰かがつじと入れ替わるように、川に入ってしまったようれす。
誰れすか?
アスカさんは?
アスカさんは、つじのことを抱きしめてくれています。らとしたら…、誰らったのれしょう?
「あの人が、のんちゃんを助けてくれたのよ。」
アスカさんがゆび指した川の向こうがわに現れたその後ろ姿は…!!!
まさか…。ろうして………?
−fin−(曇りの部)
- 306 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2002年01月25日(金)12時49分51秒
- 作者です。曇りの部終了です。タイトル通り、最後に雨の部があります。
- 307 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年01月25日(金)13時18分12秒
- そうですか、この話が曇りですか、そうすると・・・。
雨の話もお待ちしてます。
- 308 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月28日(月)01時33分53秒
- いよいよ完結ですか
雨の部はちょっと・・・ツラい話になりそうですが
待ってます。
- 309 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月28日(月)19時19分49秒
- −時々雨の部−
『のの、これから真希ちゃんに手紙出すんやけど、一緒にどうや。』
「うん、解った。一緒に行くのれす。」
亜依ちゃんとつじは、かわらに行ったのれす。
「どうするんれすか?」
「今日は、天気もいいし、風もないし、こうしたら、手紙が天国まで届くんやないかって
な。」
亜依ちゃんは、後藤さんへの手紙にマッチで火をつけたのれす。そしたら、白いけむりが
まっすぐに空にのぼっていったのれす。
つじもお手紙を書いていたのれ、一緒に火をつけてもらったのれす。
- 310 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月28日(月)19時20分43秒
- 『後藤さんへ
後藤さん、つじをたすけてくれて、ありがとうございました。
つじは、本当に後藤さんが大好きです。とっても、とっても大好きです。
後藤さんは、強くて、優しくて、とってもきれいでしたから、つじは後藤さんみたいにな
りたいって思ってました。
後藤さんがいなくなって、とっても悲しいのですが、後藤さんの血がつじの中に入ってい
るので、つじも後藤さんみたいに、強くて、優しくて、きれいな人になれると思ってます。
つじはがんばります。だから、ずっとつじのことも応援していてください。
それから、あいちゃんのことも、後藤さんの分まで大好きでいます。心配しないでください。
つじ のぞみ 』
- 311 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月28日(月)19時25分48秒
- それから、
『アスカさんへ
アスカさんは、つじのひいおばあちゃんだって、お母さんから聞きました。でも、おばあ
ちゃんってよぶより、アスカさんってよぶ方がいいと思うので、アスカさんってよびます。
アスカさん、つじを守ってくれてありがとうございます。アスカさんはとってもやさしか
ったです。つじのお母さんもとってもやさしいです。だから、つじもアスカさんやお母さ
んの血が入っているので、やさしいんだと思います。そして、やっぱりやさしい後藤さん
の血ももらったので、もっとやさしくなりました。
本当は、アスカさんに会いに行きたいのですが、それはまたつじが死にそうになることな
ので、みんなに心配かけますから、できません。なので、アスカさん。つじのゆめの中に
会いにきてください。そして、また一緒に、大好きなドーナツをたべましょう。
- 312 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月28日(月)19時26分40秒
- それから、おねがいがあります。
つじの代わりに行ってしまった後藤さんは、とってもさびしがりやですので、仲良くして
あげてください。そして、つじのゆめの中にくる時には、後藤さんといっしょにきてくだ
さい。後藤さんもドーナツが大好きです。ですから、アスカさんも後藤さんのことをきっ
と大好きになります。おねがいします。
つじ のぞみ 』
届くかなぁ。
- 313 名前:晴れ 後 曇り 時々雨 投稿日:2002年01月28日(月)19時27分24秒
- 「あ〜ぁ、うちもみっちゃんに書いとくんやったわ。」
亜依ちゃんがちょっと悔しそうに、つじのことを見ているのれす。
「後藤さん、手紙読んれ、泣くかもしれないれすよ。」
亜依ちゃんは、ちょっと泣いてるみたいれした。つじも鼻の奥がツーンとなってました。
「後藤さんらったら‥‥、夕立が来るかもしれないれすよ。」
夕立が来てくれたら、後藤さんが読んれくれたってわかるのれ、亜依ちゃんもちょっとは
よろこんれくれるかもしれないのれす。らけろ…こんなにいい天気らと無理れすね。
と思ってたら、
「あっ、雨!晴れたままなのに‥‥、お天気雨れす。」
−fin−(時々雨の部)
- 314 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2002年01月28日(月)19時33分08秒
- 作者です。
−晴れ 後 曇り 時々雨− 全編完了です。
「お天気雨」のつじ視点を書いておきたいという狙いと、福田さんを使いたいというのが
一致できたので、書きました。ついでに、なぜ加護が関西弁を喋るのかの謎解きにもなり
ましたし。
でも、本当の目的はもう一つあるのですが、それは秘密にしておきましょう。第一話と第
六話を読めば、解るかもしれません。
- 315 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2002年01月28日(月)19時39分30秒
- このスレもこれにて終了とさせていただきます。
別に一環したテーマがあるわけではないので、どこで終わっても同じなんでしょうが、書く上での
体力と精神力が余裕なくなったので、しばらく休憩して、もっと本を読むなどの勉強しようかと思
っています。
今まで応援しただきました方々、ありがとうございました。何度も勇気付けられてここまで続ける
事ができました。今後また書くような事があれば、またよろしくお願いします。
- 316 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2002年01月28日(月)19時47分11秒
- 作者の他に書いた作品も掲載しておきます。
http://fire7.s2.xrea.com/white/964823347.html
『御三家!』
http://www.mradio.f2s.com/sea/996974737.html
『永遠に』(301まで)
『君のそばで』(309から)
もし良かったら、読んであげてください。
できるだけレスには返事書きたいと思ってますので、よろしくお願いします。
- 317 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年01月28日(月)20時57分18秒
- つじちゃん視点のお話を読ませていただいてから、再度「お天気雨」も読み直させていただきました。
あらためてぐっときてしまいました。
すばらしい作品をありがとうございました。
(過去の作品も読ませていただきます。)
- 318 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2002年01月29日(火)13時03分24秒
- >>308
レス感謝です。
第六話では、そんなにツラくはしませんでした。というか、元作品(って自分のだけど)の
雰囲気を消したくなかったので、あんな感じです。
ツラいのがご希望でしたら、元の第一話をお薦めします。
>>307,317
応援ありがとうございました。
元々、このスレも別のを書いている途中に、『お天気雨』が浮かんでどうしてもあげたく
なったためにたてましたので、最後もこれ関連になったのは、自分的には良かったと思っ
ています。
どうしても、読み直すうちに感情移入してしまって、まとまりのないうちにあげてしまっ
て、後で後悔することも度々でした。読みにくかった部分も多かったと思います。申し訳
ありませんでした。他の作品も本当に、読んであげてください。作者としては、純粋に喜
びますので。
また書くようなことがあれば、よろしくお願いします。
- 319 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月29日(火)23時48分18秒
- 『お天気雨』凄く好きでした。
最後の話が進むにつれ、あぁ繋がっていくんだなぁ
と、わかって来て、どうなるのか楽しみでした。
『永遠に』の作者さんだったんですね。
最初は、とっつきにくかったですが読み進むうちに
引き込まれていったのを覚えています。
次回作を書かれる事を楽しみにしています。
- 320 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2002年01月30日(水)12時55分51秒
- >>319
レス感謝です。
第六話は、いわば『お天気雨』で書ききれなかったりした部分を補うところから始まりました。
最初は、別の話しのように始めて、実は…というのが狙いでした。3部構成にしたのも、実は
という部分を強調したかっただけなんですが、ネタバラシするとタイトルは既に決めて、書き
始めてから、3部構成にしようと思った時に、「おっ!このタイトル使えるじゃん」って気付
いたのでした。
『永遠に』も正確には2作目ですが、完全オリジナルとしては初作でしたので、最初の方は思考
錯誤しながらでした。書いてるうちに段々とスタイルが定まってきましたので、そういう感想
も当然かと思います。
次の機会にもよろしくお願いします。
- 321 名前:うまい棒メンタイ味 投稿日:2002年03月10日(日)13時33分38秒
- 全部読みました 感動しましたよ
お天気雨は自分の好きな小説の5番目ぐらいには入ります
また書いてください
- 322 名前:プッチ・モニスト 投稿日:2002年03月11日(月)21時37分12秒
- >321
レス感謝です。
私の作品を5本の指に入れてもらえるとは、光栄です。
しばらくは事情があって、新作は書けませんが、また書けるようになったら、よろしくお願いします。
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