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出逢った頃のように
- 1 名前:ハレルヤ 投稿日:2001年10月01日(月)16時37分51秒
- いしよしごまの学園物をやってみたいと思います。
初めてなので更新に時間がかかると思いますが、大目に見てください。
- 2 名前:ハレルヤ 投稿日:2001年10月01日(月)17時16分22秒
- プロローグ
吉澤ひとみ20歳:今年の春、短大を卒業し4月から
は晴れて社会人になることが決まった。
「お母さーん、歯ブラシ持ってきてぇー」
「お母さん、タオルどこー?」
と、ひとみの声が響き渡る。
その声を聞いて、ひとみの母親はため息をつきながら
2階のひとみの部屋に入っていった。
「はい、歯ブラシ。何よ、タオルそこに置いてある
じゃないの。こんな事で一人暮らしなんてできるのかしら」
とさらに大きなため息をついた。
「大丈夫だよー、今回はただの研修なんだから」
「そんな事言ったってどこに配属されるか分かんないんでしょ」
「なるようになるって、一応希望も出してあるし」
そうこう言い合っていると、下からどやどやと階段を駆け上がって
くる音が聞こえてきた。
「姉ちゃん、手紙来てるよ」弟たち2人が息を切らせながら
やって来て手紙を渡してくれた。「ラブレターだろ?」
そう言ったのは上の弟だった。その手の口撃は慣れたものだったので
キッと睨んで差出人の所に目をやると、そこには見慣れた人の名前があった。
- 3 名前:ハレルヤ 投稿日:2001年10月01日(月)17時50分40秒
- 「ごっちん・・・」
確かにそこには“後藤真希”の名前が書いてあった。
封筒を開けてみるとすぐ一枚の写真が目に留まった。
そこにはロサンゼルスで出来た友達なのか、大きな口
を開けて笑っているごっちんの姿が写し出されていた。
ごっちん、元気そうだなぁーと思っていると、横から
「やっぱりラブレターだったんだろ?」
と弟達が今にも覗き込もうとしていた。
「コラ、邪魔だっての。お母さん2人連れてってよ」
しつこい家族を追い出した後、手紙を読み始めると
その内容に驚きつつもとっさに机の引出しから差出人
不明の手紙を取り出した。ひとみは、その手紙を眺め
ながらある1人の少女のことを思い出していた。
そう、3人が出逢った頃のとこを・・・。
- 4 名前:ハレルヤ 投稿日:2001年10月01日(月)18時08分40秒
- えー、今日の更新はここまでです。
初めてやってみたのでいきなり改行に失敗してしまい
ました(汗)。一応話の流れとしては4年前と現在と
いう風に分けて書いていくつもりです。
と言っても、メインは4年前の話なので現在の話はた
まにしか入りません。今度の更新は今週中にはできる
と思います。
感想でも要望でも批判でも何でもいいのでレスして下さると助かります。
- 5 名前:JAM 投稿日:2001年10月01日(月)18時13分41秒
- いきなり指摘して申し訳無いんですが
3の文末の「出会った頃のとこ」は
「出会った頃のこと」じゃないですか?多分。
更新遅くたって気にすることはないですよ。
期待してますよ。
- 6 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月01日(月)20時28分08秒
- ファイト・・・
- 7 名前:ハレルヤ 投稿日:2001年10月09日(火)14時02分25秒
- “あの頃の私は恋愛なんて馬鹿げていると思っていた”
2001年 10月
記録的な猛暑だった夏が過ぎ、次第に秋の気配が忍び
寄りつつあった。
私立天王州女学院高校
創立してから今年で十年目の比較的新しい学校である。
普通科の他にデザイン科というのがあり、11月下旬
に行われる文化祭には、デザイン科の生徒によるファ
ッションショーが開催される。
ひとみは普通科の1年で、この学校にはバレーボール
のスポーツ推薦で入学した。そのため、バレー部では
1年にして即レギュラー。ボーイッシュなルックス、
クールな雰囲気から学校中の人気者だった・・・。
- 8 名前:ハレルヤ 投稿日:2001年10月09日(火)14時55分46秒
- 「吉澤さぁーーん、こっち向いてぇーー」
「ひとみちゃん、笑ってー」
放課後の体育館は連日、ひとみ目当ての女生徒達でご
った返していた。ひとみが練習でスパイクを決める度
に周囲から黄色い歓声が飛び交っていた。確かに彼女
のスパイクを打つ姿は美しく、体育館で練習している
他の部の人まで練習を中断して見入るほどであった。
「センパイ。・・・いつもすみません、ご迷惑おかけし
て」
ひとみは練習終了後、部室に入るなり突然頭を下げた。
「急にどうしたんだよ、吉澤」「いつか言わなくちゃ
いけないと思っていたんで・・・本当にすみません」
「いいよ別に。吉澤が悪いわけじゃないんだから。そ
れに人に見られながらっていうのも緊張感があって練
習には最適だし。ねぇ、みんな?」
キャプテンが周りに同意を求めると、
「そうそう、何かそのうち自分が人気者になった気す
るしね」「そんなわけねぇーだろ」
ハハハと部室の中が笑いに包まれる。
「それより吉澤。今日はどうする?表は人たくさん
いるよ。裏道にしとく?それとも周りガードして強行
突破する?」
先輩の1人が、部室の窓から外の様子を眺めながらひ
とみに聞いてきた。
外には、ひとみを間近で見ようと部室を取り囲んでい
る人々がいつものように多数詰め掛けていた。
「いつも先輩達に気使わせるのもなんなんで・・・」
ひとみはそう答えると部室の入り口とは別の非常用の
ドアのノブに手をかけた。
「それじゃあ、お疲れ様でしたー」
- 9 名前:ハレルヤ 投稿日:2001年10月09日(火)15時27分08秒
- ひとみは非常口から出ると、そこから懸命に走った。
(いつ、異変に気づいた連中に追いかけられるか分か
ったもんじゃない。あっ・・・)
ひとみは急に立ち止まり、かばんの中身を探った。
「いけね・・・(ケータイ、教室に忘れてきたんだ
った)」
ひとみは周りを見渡してから、チッと舌打ちをして
校舎の方へ駆け出して行った。
そのとき、1人の少女が大きな銀杏の木の陰から駆け
出して行ったひとみの後ろ姿を見つめていた。
「はあっ」
その少女、石川梨華は眠い目をこすりながら今日何度
目かのため息をついた。そして、駆け出して行った彼
女へ渡すはずの手紙に目を落とした。
(今日渡すって決めたはずなのに・・・)
梨華がひとみのことを知ったのは、入学式から一週間
過ぎたあたりの頃だった。友達が、バレー部にすごい
かっこいい子が入ったから見に行こうと言われたのが
始まりだった。私ははじめあまり乗り気ではなかった
が、友達があまりにもしつこいので、部活見学のつい
でに少し覗いてみようという軽い気持ちでついて行っ
た。
- 10 名前:ハレルヤ 投稿日:2001年10月09日(火)16時17分06秒
- 入学式の時からすでに噂になっていたから存在は知っ
ていたが、特に気に留めることもなかった。
こういったモノは女子高特有のノリのようなもので、
自分には到底理解できるようなモノではないと思って
いた、彼女に出会うまでは・・・。
体育館は梨華の予想以上に凄い人だかりで、大勢の人
の熱気によって館内の温度が異様に高く感じられた。
梨華は人ごみの中から噂の人であろう彼女を見つけた。
すらっとして長い手足、スマートな体つき、清潔感を
感じさせる黒髪のショートカットそして白く透き通っ
た肌、整った顔つき・・・
「キレイ・・・」
思わずもらした梨華の言葉に、隣にいた友達は
「彼女、1−Cの吉澤さんっていうの。吉澤ひとみ。」
「ひとみ・・さ・・ん」
梨華はそうつぶやくと、彼女の大きくて優しそうな瞳
を見つめていた。
(おっきい瞳。見てると吸い込まれていきそう・・・)
梨華はそれからというもの、部活にも入らずひとみの
練習を見学するのが放課後の習慣となっていた。
見学しているうちに、彼女の時折見せる笑顔がとても
素敵だということが分かり、ますます彼女のことが好
きになっていった。といっても、その他多数の女の子
のように声を出して応援するわけではなく、ただ見つ
めるだけであった。
(見つめているだけでいい・・・)
- 11 名前:名無しくんつ 投稿日:2001年10月09日(火)16時36分20秒
- おもしろいっス。頑張って。
- 12 名前:ハレルヤ 投稿日:2001年10月09日(火)16時55分59秒
- しかし、夏休みを過ぎたあたりからそれだけでは満足
できない自分自身がいることに気づいた。
(思いを伝えたい・・・でも、怖い。けど、伝えない
と何も始まらない)
ついに梨華は、一大決心をしてひとみに手紙を書いて
渡すことにした。梨華がラブレターを書くのはこれで
2回目だった。
1度目は中学生の時、3年間想い続けていた同級生の
男の子に、卒業式の日に渡そうと思って徹夜して書い
たのに、結局勇気がなくて渡せなかったのだった。
(今度こそ・・・)
どうせダメなことは分かっていた。彼女にはすでに相
手がいるらしいという噂がずいぶん前から囁かれてい
るらしかった。
(でも渡せるだけでいい、気持ちを伝えられるだけで
いい・・・)
結局朝までかかったが、その分自分の思いは全部手紙
に書き込むことが出来たと目を擦りながら思った。
(後は、渡すだけ・・・)
ハッとすると梨華はひとみの下駄箱の前まで来てしま
っていた。
(どうしよう・・・)
梨華は心の中で葛藤していた。
(このまま下駄箱に入れた方が・・・もう帰っちゃっ
たかもしれないし)
ついさっきまで本人に直接渡そうと意気込んでいたの
に、梨華はすっかり弱気になってしまっていた。
「どうかしました?」
突然呼びかけられた事にびっくりした梨華は、振り向
いてさらにびっくりしてしまった。右手に携帯を持っ
たひとみがそこに立っていたからだ。
- 13 名前:ハレルヤ 投稿日:2001年10月09日(火)17時21分41秒
- 「吉澤さん・・・」
梨華はとっさに手に持っていた手紙を後ろに隠した。
「何か用?」
ひとみは、後ろに隠された物がだいたい何であるかは
察しがついたが、あえてその事には触れずに見たこと
もない相手に対して好奇の目を向けた。
その視線は梨華にも痛いほど感じられた。しかし、あ
まりの恥ずかしさにひとみの顔を見る事も、声を出す
事も出来ず、ただうつむくばかりだった。
「ちょっといいかな?」
ひとみは、下駄箱から自分の靴を取り出すと梨華の事
を気にする様子もなく、彼女の前から立ち去ろうとし
ていた。
(どうしよう・・・)
梨華はこの期に及んで何も出来ないでいる情けない自
分に腹が立っていた。
「あ、あのぅ!」
- 14 名前:ハレルヤ 投稿日:2001年10月09日(火)17時48分16秒
- 梨華は自分の声のあまりの大きさに自分でも驚いてし
まったが、ひとみの方が驚いたらしく立ち止まって梨
華の方に振り向いた。
「吉澤さん・・・あの・・・」「何?」
梨華は自分の手紙を持つ手に力が入っているのが分か
っていた。
「こ、これ、受け取ってください!」
「えっ・・ああ」
ひとみはぶっきらぼうにそう言うと、自分の前に差し
出された手紙を受け取っただけで何も言わずに帰って
いってしまった。
どれくらいいただろう。梨華はしばらくの間放心状態
だった。(良かった・・・)
梨華は、達成感と極度の緊張から解放された安堵感で
胸が一杯になってしまい、その場に座り込んでしまっ
た。
梨華は嬉しかった、ただ単純に嬉しかった、一瞬でも
ひとみの側にいられたことが。あんなに近くでひとみ
を見たのも初めてだし、声を聞けたのも初めてだった。
手紙を渡す云々よりもただそのことがとても嬉しくて
たまらない感じがした。
「本当に・・・良かった」
梨華は、すっかり日が暮れかかった夕焼けの空を眺め
ながら、力強くそう呟いた。
- 15 名前:ハレルヤ 投稿日:2001年10月09日(火)18時00分29秒
- 今回の更新はこれで終了です
>>5 そういえばそうですね、ご指摘感謝。
>>6 励みになります
>>11 そう言ってもらえるとやる気が出ます
- 16 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月09日(火)19時42分26秒
- 面白いよ〜!
- 17 名前:Charmy Blue 投稿日:2001年10月09日(火)23時17分15秒
- 梨華ちゃんが、いい感じですね。
- 18 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月29日(月)02時54分45秒
- そろそろ続きが読みたいです…
- 19 名前:ハレルヤ 投稿日:2001年11月05日(月)17時04分25秒
- ごめんなさい。今週中には続き書きます。
- 20 名前:ハレルヤ 投稿日:2001年11月09日(金)09時37分39秒
- ひとみが家に帰ってきた頃には、あたりはすでに日が沈み真っ暗になっていた。
「ただいま」
玄関を開けリビングの方へ向かうと、母は台所で夕食の支度を始めていた。
弟達2人はというと、いつものようにテレビの前でチャンネル権の奪い合い
をしていた。
「あ、おかえんなさい」「うん、ただいま」
ひとみは弟達に近づいていき、後ろから2人の頭を小突いた。バシッ!
「痛っ、何だよ姉ちゃん」
「何だよじゃないでしょ、何だよじゃあ。ほら、くだらない事してないで
宿題やってろ、宿題」
「ちぇっ」
2人はふてくされると姉の尻を叩いて自分達の部屋へ逃げていった。
「ったくもう、母さん、あの子達にビシッと言ってやってよ」
「はいはい。ご飯までまだ時間あるから服着替えてらっしゃい」
「あ、うん」
ひとみは頷くと2階の自分の部屋へ上がっていった。
- 21 名前:ハレルヤ 投稿日:2001年11月09日(金)10時36分29秒
- ひとみは部屋に入ると、電気もつけずにそのままベッドに倒れこんで目を
閉じた。
(疲れた・・)
しばらく目を閉じていると、下駄箱で手紙をくれた彼女の表情がふと思い
浮かんできた。
ハッと目を開けると、かばんの中身を全部出して手紙を探し出した。
全部で5枚。4枚は朝、登校時に下駄箱に入れてあったものである。
入学当初は他人が自分のことをどう思っているのか興味もあったし、
実際の自分自身とのギャップを比較して楽しんでいたが、一週間も
すると飽きてきて今では読まずに机の引き出しに入れてある。
いつもだったら、全てお蔵入りになるはずだったのに、今日は少し
違っていた。1枚だけを残して机の上に放り投げると、きれいな水色
の封をした手紙を手にとった。
封には、“吉澤ひとみさんへ”というかわいらしい文字が書かれて
あった。その字を見ていると、顔を赤らめて恥じらいながら手紙を
渡してきた彼女の姿とダブって、強い印象を与えた。
つい一時間ほど前のことなのに随分と時が経っているような気がした。
- 22 名前:ハレルヤ 投稿日:2001年11月09日(金)10時59分28秒
- ひとみはベッドの上で仰向けになって封を開けてみると、同じ色をした
便箋が2枚入っていた。視線をその便箋に落とす。
“拝啓 吉澤ひとみ様・・・”
手紙の内容はごく普通の内容で新鮮味はなかったが、なぜか心に
引っかかるものを感じていた。
“何だろう・・・”
ひとみは体を起こしてもう一度注意深く読み返してみた。
「あっ・・・名前」
何度読み返しても手紙の中には一人称「私」しか出てこなくて、肝心の
名前の名の字も書かれていなかった。
「何なのよ、この手紙・・・」
手紙に名前を書くのを忘れるなんてことがあるのだろうか。
ひとみは何か騙されたような釈然としないそんな気持ちがしていた。
少しでも気持ちの中で彼女のことを考えた自分がいることに、無性に
腹立たしい気分だった。
しかし、もしかすると本当に忘れたのかもと彼女の雰囲気を思い返し
てみると、確かにおっちょこちょいそうな気もする。
“あーわかんなくなってきたー”
結局ひとみは夕食の間も、その後もそのことについてあーだこーだと
考えているうちに、彼女のことが頭から離れなくなってきてしまっていた。
- 23 名前:ハレルヤ 投稿日:2001年11月09日(金)11時43分08秒
- 翌日の昼休み、ひとみは学校の屋上でベンチに腰を下ろして昼食を
とっていた。ここから見る外の景色は爽快で遠くには山の連なりも
見えている。天気のいい日はここから富士山も見えることがある
らしいが、今まで見たことはない。何でも、夜が明ける頃に富士山を
ここから一緒に見たカップルは永遠に結ばれるという伝説がこの学校
にはあるらしい。
(バカらしい・・・)
だいたい女子高にそんな伝説があること自体がおかしい。自分には
全く縁のない話だと思う。
購買で買った卵サンドをほおばりながら、ポケットから水色の手紙
を取り出し、ぼーっと眺めていた。昨日はこの手紙のお陰で熟睡
できなかった。
「何、それ?」
いきなり素っ頓狂な声で話し掛けられたためか、手紙を隠すことも
できず、顔を上げ後ろを振り返ると真希が立っていた。
後藤真希 16歳
ひとみとは小中と同じ学校で、高校も学科は違うが(真希はデザイン科)
同じである。家も隣同士で真希が小学校3年生の時にシカゴから
引っ越してきて以来、家族ぐるみの付き合いである。
真希は父親の仕事の都合で、小6から中2の間の3年間もロンドンに
行っていたりと、まさに帰国子女であった。
そして、去年帰ってきた真希を見たときには軽い衝撃を受けたのを
覚えている。
「ねえ、ねえ、ねえ」
ひとみは真希の顔を見つめた。あれ以来、真希の顔を見る度に思うことが
あった。
- 24 名前:ハレルヤ 投稿日:2001年11月09日(金)13時43分31秒
- “大人っぽいなあー”
真希は同年代の女の子達と比べても明らかにオンナっぽくて色気があった。
化粧をしているのもあるが、それにしてもである。ロンドンでの三年間に
何かあったんだろうかと邪推してみたが、深くは聞いたことがない。
「ねえってばー」
真希が甘えたような声でひとみの体を揺らす。
ひとみは真希が帰ってきて以来、ずっとコンプレックスを持っていた。
(真希と比べて、自分はどうしてこんなにも女っぽさがないんだろう。
最近は女っぽくなるどころか男らしくなってきているじゃない。
だから、女にしかもてないんだ・・・)
「もう、見ちゃおぅっと」
そう言って、真希はボーっとしているひとみをよそに、ひとみから
手紙を取り上げると、声を出して読み上げ始めた。
「えー何々、私は吉澤さんを体育館で初めて見た時から」
ひとみはやっと我に返ると、大声でそれ以上読ませないよう阻止しよう
とした。
「ちょっと、やめてよ。わあーーー」
ひとみは力ずくで真希から手紙を取り返すとポケットの中にしまい込んだ。
「いいじゃーん、別にぃー。よっすいーが書いた訳じゃないんだからー」
「ヤダよ、恥ずかしいんだから。ごっちんだって嫌でしょ、自分宛ての
手紙勝手に読まれたら」
「なことないよー、逆に見せびらかしちゃうかなぁ」
真希のノーテンキぶりにひとみはあきれてしまった。
- 25 名前:ハレルヤ 投稿日:2001年11月09日(金)14時10分06秒
- 「ごっちんにはさあ、わかんないよ私の苦労なんて」
ひとみはふと真希の方を見ると、彼女は興味津々の様子で私を見ていた。
「何よ」
「ん?いやあ、それにしてもアレだよねえ」
「アレって?」
「ラブレター持ち歩くなんて珍しくない?」
「え・・・い、いやあ、それがさあ、いろいろと事情があって・・・」
「何?事情って。聞きたい聞きたいー」
ひとみは渋々手紙を取り出して真希に渡した。
「え、いいの?」
「いいよ。その代わり声に出さないでよ」
「了解」
梨華はその頃教室でお弁当を食べていた。
しかし、その中身は一向に減る気配はなく、梨華の持っている箸だけが
行くあてもなく宙をさまよっていた。
“「何か用?」「え、ああ・・・」”
梨華は昨日からひとみにかけられた言葉を何度も頭の中でリフレイン
していた。
「何かいいことあったの?」
梨華の友達の柴田あゆみが、目の前にいる梨華の様子が普段と違うのを
不思議に感じ、声をかけた。
「えっ・・・どうして?」
「だって、なんか顔赤いし、ボーっとしてるし」
とっさに頬に手をやると確かに頬の辺りが熱を帯びていた。
「なんにもないよー」
「ホントにー。怪しい、絶対怪しい。昨日だって1人で勝手にどっか
行っちゃうし。ねえ、昨日どこ行ってたのー?」
- 26 名前:ハレルヤ 投稿日:2001年11月09日(金)14時45分57秒
- 梨華は、こうなってくるとあゆみがとてもしつこい事を知っていた。
梨華は仕方なくあゆみの耳元で囁いた。
「みんなには言わないでよ」
「言わないってば」
「絶対だよー」「大丈夫、大丈夫」
「ふぅ、実はね・・・」
「ふーーん」
真希は手紙を読み終えると素っ気無くひとみに手紙を返した。
「で?」「え?」
「その名前の分からない子のことを探して欲しいの?」
「ち、ち、違うってば。誰もそんなこと」
「でもさあ、そのつもりなんでしょ」
真希は少しイジワルな口調でひとみをからかった。
(イジワルだなぁ、ごっちんは)
ひとみはからかわれて不愉快になったが、逆に真希に対して言い返す
言葉が見つからずに焦っていた。
「しょうがないなあ。探してきて」
「や、やきもち妬いてるんでしょ」
真希はそう言われると、一瞬表情が固まったかのように見えたが、すぐに
笑顔を見せてひとみの体に抱きついてきた。
「そうだよ」「え?ちょ、ちょ、ちょっとー(ごっちん、ム、ムネが)」
「ねえ知ってる?」「え、何を?」
「私達噂になってるんだよぉ」「噂って何の?」
「だからぁ、付き合ってるって」
「・・・そうなんだ。ごめんね迷惑かけて」
「いいよ別に。よっすいーだって、アレでしょ。知らない人と噂になるより
私との方が安心じゃない?特別何かあるわけじゃないし」
「うん・・・。あのさあ」「ん?」
「もういいかなあ、体」
「あ、ごめんごめん。こんなトコ見られたら、余計変な噂が立っちゃうね」
そう言うと真希は、体を離してひとみの隣に座った。
- 27 名前:ハレルヤ 投稿日:2001年11月09日(金)15時26分58秒
- 「それよりさあ、その名前の分からないって子はさあ、どんな感じの子?」
「えっ、うーん・・・。なんか私と正反対っていうか・・・。雰囲気も
女の子女の子した感じだし・・・」
「ふんふん」
「あと・・・」「あと何?」
「色黒だったかなあ」「イログロ?」「そう、色黒」
「プハッ。何よそれー」
真希は自分の笑いのつぼにはまったのかゲラゲラと笑い転げている。
「だから、見た目なんだからしょうがないじゃない」
「そう、そうなんだけどさあ・・・ハハハ」
ひとみも真希の笑いが伝染したのか一緒になって笑ってしまった。
「あー面白かったー」
真希は自分を落ち着かせるために、立ち上がって伸びをした。
「いつもらったの?」「え、昨日の夕方」
「どこで?」「下駄箱だけど・・・あっ、ちょっといつの間に」
ひとみはそう言って真希を見上げると、彼女の手には水色の手紙が
握られていた。
「一日だけ借りるね、コレ。明日には返すから」「ちょ、ちょっと」
「大丈夫。すぐ見つけてきてあげるから」
そう言うと真希は全速力で行ってしまった。ふいをつかれたひとみは
追いかけることすらできず、ただぼう然と立ちすくむしかなかった。
“キーンコーンカーンコーン・・・”
昼休みの終わりを告げるチャイムの音でふと振り返って空を見上げると、
いつの間にか雲ひとつなくなっていた。遠くの方を眺めてみると、なにか
見覚えのある山の形が・・・
「あぁっ!富士山だぁ」
- 28 名前:ハレルヤ 投稿日:2001年11月09日(金)15時37分49秒
- 今回の更新はこれで終了です。
>>名無し読者さん 遅れてごめんなさい。今度からはもう少しペースを
上げたいと思います。
>>Charmy Blueさん そう言っていただけると嬉しいです。
- 29 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月09日(金)19時03分27秒
- いしよしっぽいですね…
- 30 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月09日(金)21時32分18秒
- おもすぃろ〜い!
- 31 名前:愛読者 投稿日:2001年12月01日(土)16時57分28秒
- 放置しないで〜(悲)
- 32 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月04日(金)17時22分15秒
- 書いてくださーい。
- 33 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月11日(金)01時29分17秒
- 待ってますよ〜
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