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後藤と市井と吉澤と

1 名前:T2 投稿日:2001年10月10日(水)01時18分14秒
みなさんの小説をよんでて、書きたくなったので書きます。
初小説です。
題名どおり後藤、市井、吉澤メインでいきます。
稚拙な文章になると思いますがよろしくお願いします。
とりあえず明日から始めます。
2 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月10日(水)22時46分23秒
おおっ!この三角関係は・・・!!
期待してます、がんばって〜〜
3 名前:T2  投稿日:2001年10月10日(水)23時51分48秒
(パート1:後藤編)
夢を見た・・・
私と市井ちゃんとヨッスィーが手をつないで、木の周りをぐるぐる回ってる。
そのうち段々回転が速くなっていって、ある童話のトラみたいに三人がバターになっちゃう夢。
体が溶けて一体化していくってなんか体が軽くなっていく感じがした。
私の中の「溶ける」ってイメージってこんな感じなんだ〜
この時、私はこの夢が全ての始まりとは夢にも思わなかった。
4 名前:T2  投稿日:2001年10月11日(木)00時01分16秒
<一日目>
それは私にとっていつもの朝のはずだった・・・
(う、う〜ん・・・もう朝か〜 あれ?私こっちで寝てたっけ?
ま、いっか。市井ちゃんもまだ寝てるや。ヨッスィー布団を頭までかぶってる・・・まるで私みたい。ハハハ)
二人を起こさないように、そっと私は部屋をでて洗面所に向かった。
(昨日はしゃぎすぎたな〜今日オフだからもうちょっと寝てた方がよかったかな〜)
5 名前:T2  投稿日:2001年10月11日(木)23時29分01秒
洗面所にはユウキがいた。こんな時間に起きてるってめずらし〜
「おはよ!」
私が声をかけると、ユウキは少し驚いた様子で
「おはようございます。真希ちゃんはまだ寝てる?」
と返してきた。
(こいつ目腐ってんのか?前にいるだろ!)
6 名前:T2  投稿日:2001年10月11日(木)23時30分10秒
「はっ?あんた何言ってるの?」
「そうですね。あの真希ちゃんが起きてるわけないですよね」
勝手にユウキは納得して行ってしまった。
(なんだあいつ?まだ寝ぼけてんのか?まあいいや)
洗面所に入ると鏡にヨッスィーが映ってた。
(ヨッスィ−起きたんだ。・・・・えっ・・・・・)
7 名前:T2  投稿日:2001年10月11日(木)23時31分03秒
振り返ったが誰もいない・・・
再度、錯覚であることを期待し、鏡を覗いてみた。
儚い期待が打ち砕かれ、いやな予感が現実のものに変わろうとしている。
頭からすぅと何かが抜けていく感じがした。
血の気が引くっていうのはこういうことをいうのかな・・・
その場に倒れそうになったが、懸命に意識を保ち、
私は部屋に帰りながら昨日のことを必死に思い出していた。
8 名前:T2  投稿日:2001年10月11日(木)23時35分22秒
>少しづつ更新してますが、一度に更新するとネタが詰まったとき、
何日も更新できないっていう状態になるので。
1/3くらいはもう書いているんですけど。
てなわけでよろしく。
PS:メルアドは全く関係ありません。昔の私のアドレスです。
9 名前:T2  投稿日:2001年10月13日(土)07時46分53秒
(えっと、ハロモニの収録が終わった後、明日がオフだからヨッスィーと買い物したんだよね。
んでその後、家によったらユウキと市井ちゃんがいたんだよね。
んでユウキから市井ちゃんをとりあげて、三人で話してて、そのまま家に二人とも泊まったんだよね・・・。
んであの夢を見たんだ。
普段はちゃんと覚えてないのに今日ははっきりと覚えてた。
なんか関係あるのかな?)
10 名前:T2  投稿日:2001年10月13日(土)07時48分23秒
部屋に戻ると私が起きてて、私が入ると
「おはよ吉澤。後藤まだ寝てるよ。ってあんたどうしたの!真っ青じゃない!」
(市井ちゃんが私・・・てことは・・・)
「えっとね、市井ちゃん・・あのね、そこの鏡見てみて」
ヨッスィー(市井ちゃん)は不思議そうな顔で立ち上がり鏡をのぞいた。
それとほぼ同時に後ろから市井ちゃんの声が聞こえた。
「うっ、う〜ん・・・あーよく寝た。おはよごっちん・・・」
市井ちゃん(ヨッスィー)が固まるのがわかった。
振り返ると私(市井ちゃん)も固まってた・・・
かくいう私も固まりたかった。
11 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月13日(土)18時56分50秒
キタイダイ
12 名前:T2  投稿日:2001年10月15日(月)00時12分34秒
「夢だよね・・・」
私(市井ちゃん)がそうつぶやいた。
「だといいんだけどね」
私は自分の頬をつまんで言った。
ヨッスィーは何が何だかわからないといった顔でこっちをみてる。
三人とも泣きそうな顔で、必死に涙をこらえながら話し合った。
誰もが泣くことの無意味さを痛感していた。
13 名前:T2 投稿日:2001年10月15日(月)23時55分06秒
「一度整理しよう」
そういった市井ちゃんの声は震えていた。
「私が後藤で、後藤が吉澤で、吉澤が私なんだよね」
三人は顔を見合わせてうなずいた。
私たちは色々と元に戻る方法を考えたが、何も思いつかなかった。
三人寄れば文殊の知恵って嘘だねって私達が途方に暮れてた時、
ヨッスィーがつぶやいた。
14 名前:T2 投稿日:2001年10月15日(月)23時57分28秒
「夢・・・三人が溶ける夢・・・」
(夢・・・)
「そーだよ!夢だよ!あの夢!なんで忘れてたんだろ〜」
突然大声を出した私に二人は目を丸くした。
私はかまわず叫んだ。
「溶けてく夢だよ!私たち三人が!そーだよ!そのせいだよ!」
「えっ、吉澤もその夢みたの?」
と市井ちゃん。
「市井さん、私はこっちですよ。」
ちょっと不機嫌そうにヨッスィー(外見は私)。
15 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月16日(火)22時35分43秒
面白そうですね。頑張って!
16 名前:T2 投稿日:2001年10月16日(火)23時59分36秒
「市井ちゃんも見たの?ヨッスィーは?」
二人とも頷いた。
私たちがお互いに見た夢を言い合ってわかったこと、それは全員が同じ夢を見ていたってことだった。
「う〜ん・・・それが原因らしいってわかったけど、どーしたら元にもどるんだろね〜」
「もう一回寝てみるとかは?」
「そんな単純にいくのは後藤だけだよ!」
私の案はすぐさま市井ちゃんにつっこまれた。
(どーせ私は単純ですよ〜だ!市井ちゃんのバカ!)
17 名前:T2 投稿日:2001年10月17日(水)00時00分34秒
「もしすぐに戻らなかったらどうしましょう?明日から仕事ですよ〜ツアーも始まるし・・・」
心配顔なヨッスィーに
「大丈夫。あんたは私だから心配しなくていいよ。何もしなくいいから」
市井ちゃんが苦笑いしながら言った。
18 名前:T2 投稿日:2001年10月17日(水)00時05分44秒
>名無しさん、名無し読者さんありがとうございます。
誰かに期待してもらっているってすごい励みになります。
明日は多目の更新になると思います。
19 名前:T2 投稿日:2001年10月18日(木)00時08分25秒
「元に戻る方法がわかんない以上、吉澤の言う通りどうやって仕事をこなすかだな。
とりあえず今日の内に私は後藤の、後藤は吉澤のパートとフリをなんとか形にしとかなきゃな」
「私は大丈夫よん。だいたいヨッスィーのはわかるから。私が市井ちゃんに教えてあげるよ」
(ふふっ、今まで教えてもらう一方だったけど今日は逆だぞ!いっぱいみっちり教えるもんね)
20 名前:T2  投稿日:2001年10月18日(木)00時09分47秒
含み笑いしている私に向かって、市井ちゃんは
「んじゃあ新曲だけ教えてくれる?後はだいたいわかるから」
「えっ・・・新曲だけ?」
「だって昔のは私があんたにおしえたじゃん。それにT WISHやBABYとかはだいたいテレビで知ってるし」
「そんなテレビでみただけなんて無理だよ!ちゃんと教えてあげるって〜」
「大丈夫だよ。後藤ができるんだから。それよりあんたの方こそほんとに大丈夫なの?」
(失礼だな〜相変わらず) 
「そんならやってみてよ!みててあげるからさ」
「わーったよ。そんかわり後藤もあとでやれよ」
市井ちゃんはめんどくさそうに立ち上がり、CDをかけて踊りだした。
21 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月18日(木)04時39分50秒
面白いですね。
続きが楽しみです。
22 名前:T2 投稿日:2001年10月19日(金)00時22分14秒
多少のミスはあるものの、市井ちゃんは十分形になっていた。
私はいつの間にか市井ちゃんに見入っていた。
「すごいじゃないですか!市井さん!」
ヨッスィーはすごい興奮していた。
「いやね、TVでモーニングを見てると昔の血が騒ぐってのかな、
なんか覚えるんだよね。どう?後藤?」
「えっ・・・まあいいんじゃないいかな〜」
はっと我に帰って私は言った。
23 名前:T2  投稿日:2001年10月19日(金)00時23分11秒
「な〜にをえらそうに!まあいいや。次はあんたの番だよ。」
私は市井ちゃんと入れ違いに立ち上がった。
(えっと、ヨッスィーってこうしてこうしてからこうだよね)
頭の中を必死に整理してから私は始めた。
途中いくらか間違えたものの、なんとか乗り切った私に市井ちゃんが一言
「まだまだだね〜。吉澤、後藤に教えてあげてね」
「は・・・はい」
ヨッスィーは驚いた様子だった。
24 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月20日(土)21時19分50秒
イイネ!
25 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月21日(日)17時55分04秒
三人同時ってのは新鮮だね
26 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月22日(月)22時02分59秒
頑張れ!!
27 名前:T2 投稿日:2001年10月22日(月)23時36分58秒
「なんでなんで〜形になってるじゃん。市井ちゃんとあんまかわんないよ」
「あんたは一人じゃ練習しないでしょ!誰かがいないとすぐサボるんだから」
「ちゃんとやるよ〜そんじゃあ市井ちゃんはどーするのさ?」
「私は誰かさんと違って一人でできるからね〜」
意地悪く笑いながら市井ちゃんは言った。
(う〜信頼されてないなー。市井ちゃんがいた時はそうだったかもしれないけど、今は違うのに〜)
28 名前:T2  投稿日:2001年10月22日(月)23時37分53秒
「でもね、当面の問題はそれだけじゃないのよ。私たちは普通にそれぞれとして生活しなきゃいけないのよ。
私と後藤はモーニングで一緒だけど、吉澤は一人だから・・・」
市井ちゃんは何か考えた後、私に言った。
「後藤、ツアーって今度はどこだっけ?」
「えーと・・確か福岡だったけかな」
市井ちゃんは振り向いてヨッスィーに向かって言った。
「一緒にいこうか?」
29 名前:T2 投稿日:2001年10月22日(月)23時44分47秒
>昨日コンサートにいってきました。
だから実家に帰ってて更新ができなかったんですけど。
今週も大阪にいく予定です。大変だー。

遅れましたが、24-26の方ありがとうございます。

30 名前:T2 投稿日:2001年10月24日(水)23時16分49秒
ヨッスィーは驚いた顔で
「へっ・・・だって市井さんはもう娘。を脱退してるじゃないですか」
「違う違う、ホテルとかは別だけど、近くにいたほうがよくない?それともツアー終わるまで私になりきって私の家で生活する?」
ヨッスィーは少し考えて
「・・・・そうですね。そのほうがいいですね。ごっちんが変なことしないように見はれますしね」
(なんで私って信頼されてないの〜)
31 名前:T2  投稿日:2001年10月24日(水)23時17分53秒
私たちはとりあえず三人でそれぞれの家に向かい、用意をした後、もう一度私の家に戻ってきた。
もう夜はふけていた。私たちは元に戻ることを期待しながら眠りについた。
(もしこのまま戻んなかったらどうしよ〜明日から大丈夫かな・・・)
さまざまなことが頭の中をよぎったけど、朝早くに起きた私はすぐに眠ってしまった。
32 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月25日(木)03時32分35秒
作者さんから聞こえてくるのは泣き言ばかり(w
頑張って〜!!
33 名前:T2 投稿日:2001年10月26日(金)00時41分06秒
<二日目>
夢をみた・・・
私の前に寂しそうな目をした私が立っていた。
「あなたは本当に元にもどりたいの?」
声というよりは、頭に直接響くような感じだった。
(なっ何を・・・えっ声が出ない)
「本当は、市井ちゃんともう一度娘。が一緒にできるから喜んでるんじゃないの」
再び私の声が頭に響いた。
「本当に戻りたいと思わないと、元にもどることはできないのよ」
私の声が突き刺さる。
私はただ泣いていた。もう何も考えたくなかった。
34 名前:T2  投稿日:2001年10月26日(金)00時43分26秒
「・・・藤!後藤!」
目を覚ました私の目には、私が映っていた。
(夢か・・・元に戻ってないんだね・・・)
「どうしたんだよ?ずいぶんうなされたぞ。っておまえ泣いてるのか?」
私は涙をぬぐいながら言った。
「なんでもない。ちょっと変な夢見ただけ」
(こんな夢のことなんて言えるわけない)
「そうか。ならいいけど。早く準備しろよ、もうすぐ時間だぞ」
そう言った市井ちゃんの目は赤かったが、時間も押してたので深く考えずに用意をした。
35 名前:T2  投稿日:2001年10月26日(金)00時58分14秒
>2のとおり、この小説は後藤編です。
あくまで後藤自身の視点からの情報のみしか書いてません。
後に市井編、吉澤編で書いていくつもりですので、市井と吉澤の心理描写についてはそのとき書くつもりです。
多少わかりにくい部分がこれからでてくると思いますが、3つができた時点で理解できるようにしていますので。
よろしくおねがいします。

>32 ありがとうございます。細かいところまで見ていただいているとは。
明日でとりあえずレポートが一区切りつきますので、来週からは泣き言なしでいきたいと思います。



>32 
36 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月26日(金)02時57分25秒
面白いです!思わず引き込まれました。
がんばってください^^
37 名前:T2  投稿日:2001年10月27日(土)00時13分00秒
市井ちゃんによると、ヨッスィーは一足先に福岡へ向かったらしい。
(そりゃそうだよな〜ホテルもとらなきゃいけないんだし)
私たちは急いで用意をし、集合場所に向かった。
私たちが着いた時にはほとんど全員揃っていた。って来てないのは遅刻魔なっちだけだった。
38 名前:T2 投稿日:2001年10月27日(土)00時16分56秒
「吉澤が遅いってめずらしいなー」
圭織が言うと
「そうですよね〜いつもは1時間くらい前にきて、『遅いよ梨華ちゃん!』って言うのに」
横から梨華ちゃんがつっこむ
二人から一度に言われて混乱している私に見かねた市井ちゃんが
「よしざ・・・ヨッスィーは早かったんだけど、私が用意するの遅れてね」
半笑いしながら好フォロー。
「ふーん。そうなんだ〜」
梨華ちゃんは冷ややかな目で私を見た後、向こうに行ってしまった
39 名前:T2 投稿日:2001年10月28日(日)23時39分53秒
「ごめんごめん、用意に手まどっちゃって」
後ろからのん気ななっちの声が・・・
その声を聞くと、なぜか梨華ちゃんの態度について考え込む気が失せた。
(これが癒し系って言われる所以なのかな)

福岡までの移動は、決して楽なものではなかった。
自分の話し方になっちゃうから、全く気を抜けない。
そして一番の問題は梨華ちゃんだった。
やたらと私に話し掛けてくるし、どこにでもついてくる。
そのうえ市井ちゃんの方に行こうとすると、必ず邪魔をする。
(いつもこんなにヨッスィーと梨華ちゃんは一緒にいるのかな・・・さっきは怒ってたのに・・・そういや私ってあまり梨華ちゃんと話しないな・・・)
40 名前:T2  投稿日:2001年10月29日(月)23時27分13秒
「ヨッスィー?ヨッスィー?ヨッスィーってば!」
「えっ、あ、私か。どうしたの梨華ちゃん?」
(やべーやべー。考え事してたらヨッスィーってことすっかり忘れてたよ)
「なんか今日ヨッスィー変だよ。ボーっとしてること多いし、話し方もいつもと違うし」
「えっ、いやなんともないよ。気のせい気のせい」
そう言いながら、逃げるように私は席を立った。
どこいくの?と言いたげな梨華ちゃんだったが、私が市井ちゃんと反対の方向に言ったからかな?何も言わなかった。
41 名前:T2  投稿日:2001年11月01日(木)01時20分05秒
梨華ちゃんからやっと逃れた私は、圭ちゃんの所に行った。
今晩のホテルの部屋割りが、「後藤、保田」「吉澤、石川」となってたから、代わってもらうために。
「圭ちゃん〜今晩だけどさ〜ごっちんと話あるから、部屋代わってくんない?」
圭ちゃんは一瞬驚いた顔をした後、満面の笑みで
「オーケーオーケー。かまわないよ」
と言ってうれしそうになっちのほうにいった。
(変な圭ちゃん。なにがそんなにうれしいのかな)
あとでなっちから聞いた話だが、その夜、圭ちゃんは「吉澤が『圭ちゃん』と呼んでくれた記念」ってなっちの部屋に行って飲んでいたらしい。
42 名前:T2 投稿日:2001年11月02日(金)01時41分17秒
福岡に着いた私たちは、会場の下見、打ち合わせを行い、ホテルに行った。
私は梨華ちゃんから逃げるように部屋に入った。
「ふ〜疲れた〜」
とりあえず荷物を置き、ベットに座った。
(市井ちゃん遅いな〜。そういえばヨッスィーどうなったんだろ?)
ヨッスィーに電話しようと携帯をとったとき、市井ちゃんが部屋に飛び込んできた。
「どっどうしたの?そんなに慌てて」
「後藤〜辻加護につきまとわれてさ〜もう疲れたよ〜あいつらがトイレ行ってるすきに逃げてきた」
普段から長時間移動の時、辻加護はよく私んとこくるんだよね〜
「もうだめ!あいつらなんであんなに元気なんだ?私は寝不足だってのに!
後藤もよくあいつらの相手できるな」
市井ちゃんはぶつぶつ文句を言っていた。
(ハハハハ、そうだ、ヨッスィーに電話しなきゃ)
手に持っていた携帯のメモリからヨッスィーを探し、電話した。
43 名前:T2 投稿日:2001年11月08日(木)00時38分29秒
<ツーツーツーツー>
(あれ?話し中?)
「どーした後藤?」
冷蔵庫からジュースを取りながら市井ちゃんが尋ねた。
「電話にでんわ〜。なんでだろ?」
「ゴマキギャグかよ!そんなわけないだろ〜私の携帯で誰としゃべるんだよ」
市井ちゃんはジュ−スを置き、私から携帯をとった。
「後藤!あんたバカじゃないの!吉澤の携帯にかけてるじゃん。
自分の携帯に自分がかけてもつながんないよ」
市井ちゃんは手早く自分の電話番号を入れ、ヨッスィーに電話し始めた。
(うう・・・でもなんでヨッスィーは、自分の携帯に自分の番号入れてんだ?
梨華ちゃんのことも色々聞きたかったんだけどな〜)
私が色々考えてるうちに、市井ちゃんは電話が終わったみたい。
44 名前:T2  投稿日:2001年11月08日(木)00時40分29秒
「後藤〜私のジュース飲んだな〜」
考え事をしているうちに、市井ちゃんのジュースを飲んじゃってた。
「えっ・・ハハハハ〜市井ちゃんは私の体なんだから、私が太らないようにと・・・」
苦しい言い訳をしてる私に向かって
「全く、相変わらずよく食うな〜そんなんだから太るんだよ。吉澤が元に戻ったら『太ってる』って泣くぞ!」
と、きつい言葉が飛んできた。
(ひどいな〜 でも私が食べて、ヨッスィーが太るってのはまずいよな。よし、なんとか間食を我慢しよう)
ヨッスィーは近くのホテルにいて、夜にここにくるらしい。
(でもここに入れるのかな・・・まっ大丈夫か。その時に梨華ちゃんのことも話そう)
打ち合わせの予定が入ってるので、私たちは部屋を出た。
45 名前:T2 投稿日:2001年11月08日(木)23時59分04秒
「ヨッスィーどうして保田さんと部屋かわったの?」
部屋をでると、廊下に梨華ちゃんが怒った顔で立っていた。
「え・・・ちょっ、ちょっとごっちんと・・・話したいことがあるんだ」
梨華ちゃんの気迫に押され、怒られてる子どもみたいに答えた。
(梨華ちゃんが怒ったとこなんてはじめて見るかも・・・)
「今日のヨッスィー変だよ!ごっちん、ごっちんって!もう知らない!」
梨華ちゃんは怒って行ってしまった。
(なんなんだよ〜わっけわかんないよ〜)
「吉澤もやるね〜そーなんだ〜」
市井ちゃんは一人で納得して、ニヤニヤしていた。
私が尋ねても、「子どもは知らなくていいんだよ」って流された。
46 名前:T2  投稿日:2001年11月09日(金)00時00分46秒
打ち合わせの間、私は梨華ちゃんと隣同士だったが、梨華ちゃんと話すことはなかった。
(気マズー!!どーしよーヨッスィーに怒られるかな・・・・)
打ち合わせの内容なんて、頭に入るわけのなかった私は、市井ちゃんがとっていたメモを、部屋に帰って見ていた。
市井ちゃんに「あんたがボーっとしてるのが見えたから」とチクリと言われた。
(やっぱ市井ちゃんは頼りになるな〜)
47 名前:遊鬼 投稿日:2001年11月09日(金)03時43分05秒
わかりにくくないですよ^^
大変面白いと思います。
がんばってください。

あ、レスしないほうが良かったですか?
48 名前:気付け!後藤(笑) 投稿日:2001年11月09日(金)06時25分21秒
う〜〜本当のよっしぃーが…どうなるんだ「いしよし」(笑)
49 名前:T2 投稿日:2001年11月10日(土)00時24分29秒
不意に部屋をノックする音が聞こえた。
市井ちゃんがシャワーを浴びていたので、私がカギを開けると、ヨッスィーが飛び込んできた。
「なんか飲むものちょうだい。しんどいしんどい」
そう言うとヨッスィーはベットの上に座り込んだ。
「何したらそんなに疲れるわけ?はい、ジュース」
冷蔵庫から取り出したジュースを渡しながら尋ねると、
「それは企業秘密だよ。ここに入るときにちょっとね」
ヨッスィーは笑いながら答えた。
私は深く考えず、ずっと気になっていたこと、つまり梨華ちゃんのことを聞こうとした。
50 名前:T2  投稿日:2001年11月10日(土)00時26分59秒
「あ、あのねヨッスィー、梨華ちゃんのことなんだけど・・・・」
急にヨッスィーの顔が真剣になった。
(やばっ、聞いちゃいけないのかな)
「えっと、えっとね、やたら私が市井ちゃんといると怒るんだー。
移動中とか、部屋代わったこととかもね。
そんで、そんでね、さっき『もう知らない!』とか言われちゃって・・・・」
ヨッスィーはしばらく真剣な顔のまま、黙りこくってから言った。
「ごっちん・・・悪いけど私の携帯貸してくれる?メールしとくよ。うん。
それで、明日は梨華ちゃんに、かまってあげて欲しいんだ。それで、明日は部屋を元に戻してほしいんだ」
ヨッスィーの思いつめたような表情に圧倒された私はうなずくことしかできなかった。
51 名前:T2  投稿日:2001年11月10日(土)00時30分31秒
>47.48 レスありがとうございます。
レスはいつでも大歓迎ですよ。励みになりますので。
52 名前:T2 投稿日:2001年11月12日(月)01時31分14秒
ヨッスィーは携帯をとるとメールを打ち始めた。
(梨華ちゃんか・・・・二人で話す機会が今までなかったからなー緊張するな)
ドアが開く音がした。市井ちゃんがシャワー終わったみたいだ。
「後藤ーシャワーあいたよ。あれ?ヨッスィーいつの間に?」
「さっききたの。んじゃあシャワー使うよ」
メールを打っているヨッスィーに代わって、私が答えた。
「ごっちん、携帯ここに置いとくね」
メールを打ち終わったヨッスィーは、いつもの表情に戻っていた。
適当に返事をした私は、準備をしてシャワーを浴びた。
(今日はいろいろあったな・・・朝からへんな夢見たり、梨華ちゃんのこともあったし。
夢か・・・・・)
頭の中で、再び今日の夢が再生されていた。
53 名前:T2  投稿日:2001年11月12日(月)01時32分08秒
(確かに市井ちゃんがいるとうれしい。安心できる。ずっといてくれるとうれしいな。うん。でも・・でも・・・)
自然と涙が溢れてきた。市井ちゃんとの最後のダイバー収録の時が頭をよぎった。
(でも・・・うん。そうだよ。あの時私は「モーニング娘。の市井紗耶香」とお別れしたんだ。だから、だから・・・・・)
流れ続ける涙がシャワーで流されていく。続きを考えなければいけないことを、頭でわかっていても体が拒絶する。苦しい、胸がしめつけられる。
しかし、結論を出さなければ前には進めない。私は心の中で叫んだ。
(だから・・・だから、私のワガママで市井ちゃんの夢を邪魔しちゃいけないんだ!)
すぅっと体が軽くなったような気がしたが、胸はしめつけられたままだった。
私は激しく溢れ出す涙を、必死にこらえながら「大丈夫、大丈夫」とつぶやき続けた。
54 名前:T2 投稿日:2001年11月13日(火)00時56分33秒
なんとか涙をとめ、心を整理してからシャワーから出た。
「ふー気持ちいい。さあ練習しよっか」
私はわざと明るい声で言った。
そう、ヨッスィーは私にダンスレッスンするためにわざわざ来てくれたのだ。
「う、うん。やろっか」
そうつぶやいて、ヨッスィーは立ち上がった。
(あれ?なんかヨッスィー元気がないぞ?)
しかしそんなことを気にしている暇もなかった。コンサートは明日なんだ。
とにかく必死に振りをつめこまなくちゃいけない。
市井ちゃんは、持ってきたビデオを見ながら一人でやってる。
(たしかに、市井ちゃんに私が教えてたら、私が練習できないよな・・・まさかそこまで考えて・・・・)
そんな考えが、頭によぎったせいで、また泣きそうになった。
(でも市井ちゃん大丈夫かな・・・・)
結局、練習が終わってヨッスィーが帰ったときには、朝方だった。
リハーサルのぎりぎりまで寝てなくちゃ。
55 名前:T2 投稿日:2001年11月14日(水)00時00分37秒
<三日目>
夢をみた・・・
木がある。見覚えのある木が。
そうだ、これは、一昨日見た夢にでてきた木だ。
直感でわかる。もう一度、三人で周りを回ると元に戻るということが。
二人を探して、あたりを見渡すと、市井ちゃんが立っている。
でもヨッスィーはどこにもいない。
ヨッスィーは・・・?なんでヨッスィーがいないの?
56 名前:T2 投稿日:2001年11月15日(木)00時54分40秒
電話が鳴り響き、私は目を覚ました。
(だれだよ〜こんな朝から)
受話器をとると、圭ちゃんの声が響き渡る。
「あんたたち!いつまで寝てるのよ!こっちは昨日飲んで・・・いやいや、寝るの遅かったのに、ちゃんと起きてるのに!早く来なさい!遅刻よ!」
ふと時計をみると、もう集合時間10分前だった。
急いで市井ちゃんを起こして、用意をして下に降りた。
「遅いよ。ごっちん、ヨッスィー!」
再び圭ちゃんの声が響く。
57 名前:T2 投稿日:2001年11月17日(土)00時19分48秒
「そうだよ、吉澤。昨日といい、変だよ。あんたが遅刻するなんてさ。
いつも言ってるっしょ〜ふくろうが朝飛んだらいけないって」
圭織がまたへんなことを言い出した。
その場を市井ちゃんにまかせ、梨華ちゃんのほうにいった。
「おはよう、梨華ちゃん」
「おはよ」
梨華ちゃんは、そう言ってすぐ後ろを向いてしまった。
(ちょっとまだ怒ってるよな・・・・)
どうしたらいいかわからないが、ヨッスィーと約束してる以上、引き下がるわけにもいかない。
58 名前:T2 投稿日:2001年11月19日(月)23時53分57秒
「梨華ちゃん昨日はごめん。どうしてもごっちんと、話しておきたいことがあってさ」
梨華ちゃんは振り返りながら、泣きそうな声で言った。
「わかってるよ。だからって、何にも言わないってひどいよ」
「ごめん。本当にごめん。もうごっちんとは話終わったからさ」
そう言って梨華ちゃんの肩をたたいて、リハーサルに向かった。
59 名前:T2  投稿日:2001年11月19日(月)23時56分39秒
「吉澤!あんたどうしたの?ミスしてばっかじゃん。体調でも悪いの?」
リハーサルの休憩中に、圭ちゃんが声をかけてきた。
そりゃそーだよ。1人でやるのと全員でやるのは全く違う。
自分のことでいっぱいいっぱいで、周りを見ている余裕がない。
実際、私は、今までのリハーサルでミスを連発していた。
「う、うん。なんでもないよ。大丈夫」
わざと笑顔を作って言った。
「ならいいけどさ。ごっちんもなんか変だしさ。気を抜いてるんじゃないよ!全く。さあ、プッチのリハ始まるよ」
そう言い残して、圭ちゃんは先にいってしまった。
(プッチならなんとかいけるかな。うん、もうミスばっかりできない。元に戻ったときにヨッスィーに迷惑かかっちゃうしね)
そう心に決めて、再度リハに望んだが、現実はそんなに甘くない。
なんとか及第点といったところだった。
(ヨッスィーごめんよ〜なんとかなりそうにないよ〜)
60 名前:T2  投稿日:2001年11月19日(月)23時59分59秒
「おーい。何寝てんだよー後藤。もうすぐ始まるぞー」
「えっ?」
ふと顔をあげると市井ちゃんがいた。
どうやら私はリハが終わった後、いつの間にか寝てしまっていたらしい。
(昨日、あんまり寝てないもんな〜)
「全く、悩みながら寝るのってお前くらいだよ。ホントに。そういうとこは変わってないな〜」
「へへー市井ちゃん、がんばろうね」
笑いながら、私は言った。市井ちゃんは笑ってうなずいた。
61 名前:T2  投稿日:2001年11月20日(火)00時02分54秒
「がんばっていきまっしょーい!」
とうとうコンサートが始まる。
こんなに緊張したのって、最初のコンサートのとき以来かもしれない。
隣の辻加護と「がんばろうね」と小声で言い合った。
(よし、がんばるぞ!)

ユニット、娘。とコンサートは続いていく。
モーニング娘。は1年を通して、コンサートをやってるわけだから、
どこか「慣れ」というものがあったのかもしれない。
それはこんな状況にならなければ、一生わからなかっただろう。
いつにも増して、集中しているのがわかる。
そのためか、練習でできなかった部分もできるようになっていた。
そんなことを感じつつ、コンサートの昼公演は無事終了した。
62 名前:T2 投稿日:2001年11月21日(水)00時05分24秒
「ごっちん!すごいじゃん!私よりうまいんじゃない?」
「やだ〜ヨッスィー、褒めすぎだよ。でも、なかなかいい感じだったっしょ?」
コンサート終了後、私はヨッスィーに電話していた。
ヨッスィーに、チケットを渡しておいたのだ。
(って私がスタッフに頼んで、なんとかしてもらったんだけどね)
「まあ夜もまかして。ヨッスィーに迷惑かけないようにがんばるから」
「うん。お願いね」
電話を切った私は、市井ちゃんを探した。
コンサート中に、ちょっとしたことを思いついたからだ。
市井ちゃんは控え室の窓際にいた。
「ねえ市井ちゃん。ちょっと相談があるんだけど・・・」
周りに聞こえないように小声でささやいた。
「おう。私も相談があったんだ。廊下でようか」
二人で廊下にでていった。
63 名前:T2 投稿日:2001年11月23日(金)23時10分16秒
「で、相談って何?」
周りに人がいないのを確認して、市井ちゃんが切り出した。
「んとね、ちょこラブなんだけど・・・・」
少々ためらいながら言いだした私に続いて、市井ちゃんが言った。
「パートを交代しようってことじゃないよね?私がセンターに行って、後藤が自分のパートをやる。そうすれば、いつも通りにやれるもんな」
市井ちゃんは私の考えを代弁していた。
「・・・・・どーしてわかったの?私の考えが?」
「いやね、私も相談ってそのことだったのよ。やっぱやりなれた所が一番だし、ちょっとしたファンサービスってことで、ごまかせるしね」
少し笑いながら市井ちゃんは言った。
つられて私も笑った。
その様子を控え室から出てきた梨華ちゃんが、じっと見ていたことに私は気づかなかった。
そんなささいなことが、後の事件を引き起こすことになるとは、全く思わなかった。
自分のことで精一杯で、ヨッスィーとの約束をいつのまにか忘れていた。
64 名前:T2  投稿日:2001年11月23日(金)23時11分34秒
私たちは圭ちゃんにパートの交代のことを伝えにいった。
「何をいきなり言い出すのかと思ったら・・・ふざけてんじゃないわよ、全く。自分のパートでさえ、今日は満足にできてないのに、パートを交換ですって?あんたたち、いい加減にしなさいよ!遊びじゃないんだよ!」
私たちの案を聞いた圭ちゃんは、そう怒鳴り散らした。
(ふざけてる・・・遊び・・・・)
涙が勝手にあふれだした。
(こんなに一生懸命やってるのに・・・何とかしようとしてるのに・・・どうしてわかってくれないの?)
「吉澤?」
そう言ったのが誰かも、もうわからなかった。
「圭ちゃんになんか、何もわかんないんだよ!」
そう叫んで、私は控え室を飛び出していた。
どこをどう走ったのか覚えていない。気がつくと、私はトイレに駆け込み、鍵をかけて泣いていた。
65 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月24日(土)01時36分26秒
事情の知らない保田かわいそう(w
それにしても石川は放置か
後藤も大変なんだろうけど。
66 名前:T2 投稿日:2001年11月25日(日)01時35分40秒
どれくらい時間がたっただろう・・・いや、実際はほんの1,2分しか経っていないのかもしれない。
しかし、私にはとても長く感じた。いつの間にか、涙も乾いていた。
(どうしよう・・・コンサート・・・どうすればいいの?)
「どうすればいいのよ!」
おもわず大声で叫んでいた。再び涙が溢れ出した。
「後藤?いるの?」
ささやくような声が、戸の向こう側から聞こえた。
私は黙っていた。
しばらく沈黙が続いた。
「圭ちゃんには、私が話しといたから。コンサートがもうすぐ始まるから、早く来なよ」
そう言い残して、市井ちゃんは出て行った。
私はしばらく考えたが、行くしかなかった。
私はヨッスィーなんだから、ヨッスィーに迷惑をかけるようなことはできないんだ。と自分に言い聞かせてトイレから出た。
67 名前:T2  投稿日:2001年11月25日(日)01時37分43秒
「ヨッスィー大丈夫?」
控え室に戻った私に、梨華ちゃんが声をかけた。
「うん。ごめんね、心配かけて。コンサートがんばろ」
私はわざと笑顔を作って答えた。
私達に気づいたのか、圭ちゃんがこっちにきた。
梨華ちゃんが、すっと私と圭ちゃんの間に入り、心配そうな顔で私の方を振り返った。
私は軽くうなずき、梨華ちゃんに目で合図を送った。
心配そうな顔で、梨華ちゃんは横によった。
68 名前:はじめてのチュウR&B 投稿日:2001年11月26日(月)23時09分42秒
おいらです。
この調子で頑張れ!
ふふふ。
69 名前:T2 投稿日:2001年11月27日(火)00時01分20秒
圭ちゃんは、前に立ち、じっと私を見た後、
「ばっちり決めようぜ!吉澤」
とだけ言って、振り返って向こうに行ってしまった。
(ありがとう市井ちゃん、圭ちゃん。最高の私をみせてやる)
梨華ちゃんの方を向き、深くうなずいた。
笑顔で梨華ちゃんは答えてくれた。
さあ、ついに夜の公演が始まった。

コンサート開始から、私は必死だった。必死に周りについていった。
もうみんなには迷惑をかけることはできない!
その思いで、頭はいっぱいだった。
そしてとうとうプッチモニの出番がやってきた。
70 名前:T2  投稿日:2001年11月27日(火)00時03分00秒
ステージに出る前、私達三人は、顔を見合わせ無言でうなずきあった。
BABYを歌い終わり、立ち位置がかわらないまま、イントロが流れだした。
武道館で閉じた「プッチモニ」の幕が開かれた。
1.2.1.2・・・市井ちゃんの掛け声が始まったとき、私は「14歳の後藤真希」に戻っていた。
隣の「後藤真希」が、「市井紗耶香」に見えた。
いや、もしかすると私も「後藤真希」に見えてるのかもしれない。
そんな不思議な感覚を覚えたまま、プッチモニは終わった。
「Thank you!プッチモニでした〜」
終わった・・・時を越えた「プッチモニ」の幕が再び下ろされた。
私の目には、うっすらと涙が浮かんでいた。
71 名前:T2  投稿日:2001年11月27日(火)00時03分46秒
「どうしたのプッチ?最高じゃん」
タンポポの衣装を着たやぐっつあんが、すれ違いざまに言った。
私たちは、にっこり笑って、ガッツポーズで返した。
しかし、いつまでもふけっている場合じゃない。
まだコンサートは終わってないのだ。
ただこの時、私の中には、なぜか余裕が生まれていた。
「余裕」と「慣れ」。この違いを実感した一日だった。
そう、プッチモニが終わってから、私の動きが見違えていた。


そしてコンサートも無事に終了した。
72 名前:T2  投稿日:2001年11月27日(火)00時08分00秒
>一応こちらで一部は書き終わったので、更新スピードを上げていきます。
二部は、吉澤と市井のどちらを先に書くか、まだ決めていないので、
もし希望があれば一部が終わるまでにお願いします。
73 名前:ayama 投稿日:2001年11月27日(火)06時25分42秒
好きな物は後に食べる派なんで。
よっしー。 → 市井ちゃん。希望
74 名前:T2 投稿日:2001年11月27日(火)23時12分50秒
「あー疲れた。もうだめ」
ホテルに帰った私は、そう言いながらベットに倒れこんだ。
このまま朝まで寝てしまうような勢いだった。
「ヨッスィー、先にシャワー浴びる?」
梨華ちゃんの声が聞こえる。そう、部屋を戻したから梨華ちゃんと同室なのだ。
「ほえ・・・・うん、入る」
眠気と戦いながら、私はシャワーを浴びた。
(今日もいろいろあったな・・・いつになったら元に戻るんだろう・・・
だめだ、頭が働かない。とりあえず寝て、明日考えよう)
「梨華ちゃん、シャワーあいたよ」
梨華ちゃんの返事も聞かないまま、私はベットで横になり、眠っていた。
梨華ちゃんが、そんな私を寂しそうな目で見ていたことに気づいてなかった
75 名前:T2  投稿日:2001年11月27日(火)23時14分03秒
夢をみた・・・
木がある。見覚えのある木が。
そう、これは今朝見た夢の木だ。
元に戻ろうと、二人を探したが、誰もいない。
二人を探しに行こうとした時、夢から覚めた。

「ヨッスィー・・・・」
梨華ちゃんのささやくような声で、私は目を覚ました。
時計を見て、私が寝てから1時間ほどしか経っていないことに気づく。
体を起こそうとするが、体が動かない。
よく見て見ると、梨華ちゃんが私の上に乗っていた。
(えっ・・・えっ・・・)
必死に状況を理解しようとする私に向かって、梨華ちゃんは、再びささやくような声で言った。
「私のことキライになっちゃったの?」
「へっ・・・何言い出すの、急に。キライなわけないじゃん」
梨華ちゃんの行動の意味が全く理解できないまま、とりあえず私は答えた。
76 名前:T2  投稿日:2001年11月27日(火)23時15分26秒
「じゃあ、なんでごっちんとばかりいるの?昨日のメールはなんだったのよ!」
口調とは裏腹に、梨華ちゃんは、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「梨華ちゃん・・・・」
私はそれだけしか言うことはできなかった。私たちはお互いに、見詰め合っていた。
77 名前:ayana 73 投稿日:2001年11月28日(水)04時26分37秒
自分のHN間違った(泣)
お!いしよし(まきりか)はじまりました!ヤッター
ここは一度で2度3度美味しい所なのだ〜〜今後に期待 はあとはあと
そして余りレスすると、「お邪魔」だと思うので消えますね。では
78 名前:えのきだけ 投稿日:2001年11月28日(水)23時21分43秒
ドキドキ…
79 名前:T2 投稿日:2001年11月28日(水)23時46分48秒
しばらくの沈黙の後、梨華ちゃんが口を開いた。
「ごっちんと私のどっちが好きなの?」
ポツリと言われたその言葉に対する答えを、私は一つしか持ち合わせていなかった。
私は何も言わず、梨華ちゃんの手を握った。
80 名前:T2  投稿日:2001年11月28日(水)23時49分46秒
「じゃあ、証拠をみせてよ」
(へっ・・・)
そう言い終わらないうちに、梨華ちゃんは、自分の唇を私の唇に重ねた。
(・・・・・・・)
何が起こったのか全く理解できなかった。
だが、梨華ちゃんの手が私の服にかかり、梨華ちゃんの唇が首筋に下がっていった時、反射的に梨華ちゃんを跳ね除けていた。
頭では理解できていないが、体が勝手に反応していた。
それからのことはよく覚えていない。
覚えていることといったら、部屋を飛び出したことだけだった。
うしろで梨華ちゃんが、何か言うのが聞こえた気がしたが、何て言ってるのかわからなかった。
81 名前:T2 投稿日:2001年11月28日(水)23時57分26秒
>ayanaさん、えのきだけさん レスありがとうございます。
ご期待に添えるだけの内容になっているでしょうか?
遅くても来週中には後藤編を終わらせる予定ですので、よろしくお願いします。
82 名前:T2 投稿日:2001年11月30日(金)00時30分32秒
数十分後、私はヨッスィーとホテルの屋上にいた。
私がヨッスィーに電話したらしいが、取り乱していた私は、全く覚えていなかった。
ただ、ホテルのロビーでヨッスィーを見つけて、すごく安心して、泣き出したのは覚えている。
「で、何があったの?急に人を呼び出して、泣き出したりして」
言葉は優しいが、ヨッスィーの表情は険しかった。
「・・・・・・・」
私は言えなかった。
ヨッスィーを呼んだものの、正直、どうすればいいのかわからなかった。
「梨華ちゃんとなにかあったの?でなきゃごっちんは、私より先に、市井さんに相談するもんね」
なだめるような声でヨッスィーは言った。
その表情は、なにがあったかわかってるようにも見えた。
私は覚えていることを、ありのまま話し始めた。
83 名前:T2  投稿日:2001年11月30日(金)00時32分02秒
ガンッ!
突然響いた音に、私は驚いた。
屋上の壁を、ヨッスィーが殴ったのだ。
「くそっ!私のせいだ!私の・・・私のせいだよ!私が・・・私が・・・」
壁を何度も叩きながら、ヨッスィーはその場に泣き崩れた。
「ヨ・・・ヨッスィー。手・・・手、怪我するよ」
自分を責め続けるヨッスィーに、私はそれだけしか言えなかった。
しかし、ヨッスィーはいっそう激しく、壁を叩き続けた。
「なんでよ!なんでなの!なんで・・・なんでこんなことに!梨華ちゃん・・・ごめん、梨華ちゃん・・・」
そんなヨッスィーを見ている私も、泣きそうになった。

turururu...turururu...
雰囲気に合わない陽気な着メロが、急に流れた。
画面を見ると、そこには「後藤真希」という文字が・・・
そう、電話の相手は市井ちゃんだった。
84 名前:T2 投稿日:2001年12月03日(月)23時22分19秒
「もしもし、後藤?あんた今どこにいるの?」
市井ちゃんの声は真剣だった。
「屋上だよ」
「なんでそんなとこに?まあいいや。うん、わかった、今から行く」
そう言って、市井ちゃんは、すぐに電話を切った。
「市井ちゃんが来るって」
ようやく落ち着いたヨッスィーに向かって言った。
ヨッスィーは返事をしなかった。ただうなずくだけだった。
私は、ヨッスィーの横に座り、市井ちゃんを待った。
85 名前:T2 投稿日:2001年12月03日(月)23時23分55秒
ほどなく市井ちゃんがエレベータ−から出てきた。
電話の声とは正反対で、すっきりした顔をしていた。
「もう、何でこんなとこに?あんたの部屋行ったら、石川がボーっと座ってるだけ・・・」
「梨華ちゃんは?梨華ちゃんの様子はどうでした?」
市井ちゃんが言い終わる前に、ヨッスィーが詰め寄った。
「あ・・う、うん、とりあえず圭ちゃんに頼んでる。心配ないって」
一瞬ヨッスィーの様子に驚いた市井ちゃんだったが、すぐにそう答えた。
「そうですか・・・・保田さんが・・・」
ヨッスィーは寂しそうな顔をしているように見えた。
(ホントは自分で慰めに行きたいんだろうな・・・くそ〜どうしたら元に戻れるのよ!)
私の考えをよんだかのごとく、市井ちゃんは言った。
86 名前:T2 投稿日:2001年12月03日(月)23時24分52秒
「今から元にもどるよ」
(はっ・・・・・)
一瞬、私の中で時が止まった。
そしてもう一度、市井ちゃんの言った言葉を、頭の中で反復した。
(「元に戻るよ」・・・・)
「え〜!!!」
やっと、市井ちゃんの言った言葉を理解した私は、思わず叫んでいた。
「そうだよ。今の私たちならできるはずだよ」
市井ちゃんは自信満々にそういった。
私たちは顔を見合わせうなずいた。
87 名前:T2 投稿日:2001年12月03日(月)23時26分14秒
確かに、今ならできる気がする。三人が元に戻りたいと強く願っていれば・・・
そう、ヨッスィーは間違いないだろうし、市井ちゃんも自分で言い出すくらいだから、大丈夫だろう。
私は・・・・・私は本当に大丈夫だろうか・・・・
もし私のせいで戻れなかったら・・・
そんな考えが頭をよぎった。私は急に不安になってきた。
確かに昨日、市井ちゃんに対する気持ちの整理をしたはずだ。
「元に戻りたい」ずっとそう思っていた。
でも・・・私の本心は本当にそうなの?
心のどこかで、市井ちゃんに甘え続けたい自分がいるんじゃ・・・
市井ちゃんと圭ちゃんの部屋に行く途中、ずっとそんなことばかり考えていた。
途中、誰も口を開くことはなかった。
88 名前:T2 投稿日:2001年12月04日(火)23時44分27秒
とうとう部屋に着いた。圭ちゃんは、梨華ちゃんの所に行っているからもちろんいない。
部屋に入り、ベットに座ってから、市井ちゃんはやっと口を開いた。
「なんとなくわかってるかもしれないけど、三人が強く『元に戻りたい』って思ってなきゃいけない」
私たちの顔を一度見てから、市井ちゃんは続けた。
「そう思ってたら元に戻ると思うんだ。ついさっき、やっとそう確信がもてたの。やれるね、後藤、吉澤」
私は覚悟を決め、大きくうなずいた。ヨッスィーも同じだった。
私たちは手を合わせ、もう一度大きくうなずいた。
そして私たちは眠りについた・・・・・
89 名前:T2 投稿日:2001年12月04日(火)23時46分51秒
<エピローグ>
「ごっちん!お菓子ばっか食べてちゃだめだよ!」
ヨッスィーが私のお菓子をとりあげながら言った。
「返してよ〜私のだよ〜あのことはもう何度も謝ったじゃん」
お菓子を取り返そうと手を伸ばした。
ヨッスィーは、お菓子をさらに向こうにやって言った。
「ほんとに大変だったんだよ!第一、いつの間にあんなにたべてたの?まじでびっくりしたのよ!元に戻ったら体重が5キロも増えてたんだから」
「ハハハハ・・」
痛いところを突かれた私は、苦笑いするしかなかった。
そう、私たちはあの後、元に戻ったのだ。
そのとき見た夢はよく覚えてないけど、朝起きると元に戻っていた。
ただ、私が間食したツケは、全部ヨッスィーに残っていた。
90 名前:T2 投稿日:2001年12月04日(火)23時49分08秒
「ごっちん、またヨッスィーにお菓子没収されてるの?」
後ろからの声に振り返ると、梨華ちゃんが笑いながら立っていた。
あれからちょっとの間、梨華ちゃんと話しづらかったんだけど、うまくヨッスィーがフォローしてくれたおかげで、普段どおり話せるようになった。
実際ヨッスィーの方が、梨華ちゃんとは大変だったみたいだけど、(私のせいだけど・・・・)
2,3日でもう仲直りして、私と梨華ちゃんの仲を取り持ってくれた。
(確かにヨッスィーと梨華ちゃんってお似合いだよな・・・)
あれ以来そんなことを考えながら、梨華ちゃんとヨッスィーをみてる。
なんであの時、そんなことに気づかなかったんだろう?
気づいてたら梨華ちゃんを傷つけないで済んだのかな・・・・
前にそんな話したら、ヨッスィーは複雑な顔をして
「いくら私の体だっていっても、梨華ちゃんに手を出してたら、私が怒ってただろうね」って言ってた。
確かにそうだよねって私たちは、変に納得していた。
でも知ってたら、もっと別の方法もあっただろうなっていうのが心残りだった。
91 名前:T2 投稿日:2001年12月04日(火)23時50分07秒
「ごっちん、どうしたの?お菓子取られたから、すねてるの?」
ボーっと梨華ちゃんを見たままだった私に、梨華ちゃんはそう言った。
「そんなことないよ!辻じゃないんだから。ただ、やっぱ梨華ちゃんとヨッスィーはお似合いだなって思っただけ」
あわてて否定しながら、ポツリとそう言った。
「え・・・」
思いもよらない答えにびっくりしたのか、梨華ちゃんの顔は真っ赤だった。
「何を急に言い出すのよ。おせじなんか言ってもお菓子は返さないよ」
笑いながらヨッスィーは立ち上がって続けた。
「さあ、いこっか。また収録始まるし。ついに今日はあの日だもんね。楽しみだな〜」
「そうだね。ずっと待ってたんだ。この日を。じゃあ、お邪魔虫は先に行ってますので、お二人はごゆっくり」
そう言ってピースした後、私は走りだした。
92 名前:T2 投稿日:2001年12月06日(木)02時10分44秒
「後藤!そんなに走っちゃ危ないでしょ」
階段を上る途中に圭ちゃんがいた。
「おお、圭ちゃん。大丈夫だって。また収録始まるでしょ?早めにいかなきゃね。新メンバーもいることだし」
圭ちゃんは元に戻った次の日、私を初め「紗耶香」って呼んだんだよね・・・
いつから知ってたのかな?私たちが入れ替わってるってこと・・・
市井ちゃんにコンサートの後聞いたら、圭ちゃんを説得する時、入れ替わったってこと話してないって言ってたし・・・・
きっと教えてくれないだろな・・・圭ちゃんって、そういうことは言わない人だから。
93 名前:T2 投稿日:2001年12月06日(木)02時12分12秒
「ほ〜あんたの口からそんな言葉がでるなんて、成長したね〜」
意地悪く笑いながら圭ちゃんは言った。
「ひどーい、まだ私を子ども扱いする・・・そんなとこは市井ちゃんと一緒なんだから」
「しょうがないでしょープッチができたころのあんたは、子どもそのものだったんだから・・・紗耶香か・・・どうなってるんだろね・・・楽しみだな」
そう、今から収録は、初の市井ちゃんとの対面なんだ。今まで、何度も会っていたけど、市井ちゃんの歌を聞くのは初めてだった。
「楽しみだね。ほんと。ねえ、圭ちゃん、早く行こうよ」
そう言って私はまた走り出した。
「ちょっと待ちなさいよ〜。私はオバちゃんなんだから〜あんたみたいに早く走れないのよ」
文句を言いながら、圭ちゃんも走ってついてくる。
私たちは笑いながらスタジオに向かって走った。
94 名前:T2 投稿日:2001年12月06日(木)02時13分03秒
あの事件の後、私たち三人の間で、不思議な事が起こるようになった。
それは三人の気持ちが一致してる瞬間が、なんとなくわかるようになったことだ。
そうだよ、今も私たち三人の気持ちは一致してるんだよ・・・・
「早く会いたい」ってね。

(パート1:後藤編 完)
95 名前:T2 投稿日:2001年12月06日(木)02時14分48秒
>以上後藤編でした。
次は吉澤編を書いていく予定です。
最後までよろしくお願いします。
96 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月06日(木)03時14分57秒
気持ちが伝わってくる想いをしました。
ひとまず御疲れ様、吉澤編も楽しみしてます。
97 名前:T2 投稿日:2001年12月10日(月)00時54分22秒
(パート2:吉澤編)
夢を見た・・・
私とごっちんと市井さんが手をつないで、木の周りをぐるぐる回ってる。
そして段々回転が速くなっていって、ある童話のトラみたいに三人がバターになっちゃう夢だ。
体が溶けて一体化していくって、なんか水に浮いてるような感じがした。
私の中の「溶ける」ってイメージってこんな感じなんだな。
この時、私はこの夢が全ての始まりとは夢にも思わなかったんだ。
98 名前:T2 投稿日:2001年12月11日(火)23時55分36秒
<一日目>
それは私にとっていつもの朝のはずだった・・・
(あーよく寝た。あれっ、話し声がする。ごっちんも市井さんももう起きてるんだ)
「うっ、う〜ん・・・あーよく寝た。おはよごっちん・・・」
私は自分の目を疑った。ごっちんの前に立っているのは、私だった。
そう、市井さんではなく、吉澤ひとみがそこに立っていた。
99 名前:T2 投稿日:2001年12月11日(火)23時56分31秒
自分の頬をつねってみる。痛い、夢じゃない。
(・・・・・・)
私の思考は、そこで完全に止まっていた。
ごっちんと市井さんの会話も耳に入ってなかった。
(ごっちんと私がそこにいる・・・私は?私はなんなの?まさか・・・)
とりあえず立ち上がり、鏡を見てみる。
(やっぱりか・・・)
私の予想通り、鏡には市井さんが映っていた。
100 名前:T2  投稿日:2001年12月15日(土)01時35分47秒
「吉澤だよね?」
ごっちんが私に向かって言った。
首を縦に動かすこともできなかった。ただごっちんの方を見ていた。
「やっぱりか・・・んで、私が後藤なわけだ」
ごっちんがそう言った時、私はやっと、ごっちんが市井さんだと言うことに気づいた。
(ということは、私にはごっちんってことか)
急に涙が出そうになった。
(もし、三人の誰かが泣き始めると、きっとみんな泣き出しちゃうんだ。みんな泣きたいのを我慢してるんだ!)
自分にそう言い聞かせて、必死にこらえた。
101 名前:T2 投稿日:2001年12月15日(土)01時37分13秒
「一度整理しよう」
市井さんは震えた声で言った。
「私が後藤で、後藤が吉澤で、吉澤が私なんだよね」
私たちは顔を見合わせてうなずいた。
「元に戻る方法か・・・どうやったら元に戻るんだろうな」
市井さんが再び話し始めた。
ごっちんが色々な方法を言いだしたが、市井さんに却下され続けていた。
私は途中から、今朝見た夢のことを考えていた。
(今朝の夢はなんだったんだろう?三人が溶ける夢か・・・あれが原因?みんなは同じ夢見たのかな?)
「そーだよ!夢だよ!あの夢!なんで忘れてたんだろ〜」
ごっちんが突然大声で叫んだので、はっと気がついた。
どうやら私は考えを口にしていたらしい。
102 名前:T2 投稿日:2001年12月18日(火)00時32分12秒
「溶けてく夢だよ!私たち三人が!そーだよ!そのせいだよ!」
さらにごっちんは大声で話し続けた。
「えっ、吉澤もその夢みたの?」
市井さんがごっちんと私を間違えた。
「市井さん、私はこっちですよ。」
急に頭を切り替えて、話し出したので、怒っているような声になってしまった。
どうやら、市井さんもごっちんも同じ夢をみていたらしい。
「う〜ん・・・それが原因らしいってわかったけど、どーしたら元にもどるんだろね〜」
市井さんが言った。
103 名前:T2 投稿日:2001年12月18日(火)00時34分06秒
ごっちんがふざけて
「もう一回寝てみるとかは?」
「そんな単純にいくのは後藤だけだよ!」
すぐに市井さんに却下されていた。
「もしすぐに戻らなかったらどうしましょう?明日から仕事ですよ〜ツアーも始まるし(それに梨華ちゃんのこともあるのに・・・)」
そんな私の心配をよそに、市井さんは笑って
「大丈夫。あんたは私だから心配しなくていいよ。何もしなくいいから」
と言った。
(一番の心配は、私より梨華ちゃんなんだけど・・・・)
104 名前:T2 投稿日:2001年12月19日(水)01時04分41秒
とりあえず仕事に支障がでないように、私たちはお互いのパートを確認し始めた。

すごい・・・まさにその一言だった。

ごっちんはまだしも、市井さんまで、教えてもらってないのに出来ている。
もう一年以上も娘。としてやってきて、それなりに自信を持っていた。
しかし、二人を見てると、その自信が崩れていく。
いつの間にか、私は二人のダンスに見とれていた。
だから市井さんが、ごっちんに振りを教えてあげてって言った時、とても驚いた。
105 名前:T2 投稿日:2001年12月19日(水)01時06分41秒
しかし、私を本当に驚かせたのは、次の市井さんの行動だった。
市井さんはごっちんに、コンサートの日程を聞いた後、こんなことを言い出したからだ。
「一緒にいこうか?」
その言葉を聞いた時は、自分の耳を疑った。
「へっ・・・だって市井さんはもう娘。を脱退してるじゃないですか」
私は、市井さんの言葉を、そのままの意味で受け取っていた。
「違う違う、ホテルとかは別だけど、近くにいたほうがよくない?それともツアー終わるまで私になりきって私の家で生活する?」
市井さんがそう言ったとき、私は自分の勘違いに気づいた。
106 名前:T2 投稿日:2001年12月20日(木)01時12分10秒
(よく考えてみると、悪くない案だな・・・
こっちで一人でいるのは心細いし、元に戻る方法がわかった時のために、一緒にいた方がいいだろうし・・・
それに梨華ちゃんとごっちんが心配だし)
「・・・・そうですね。そのほうがいいですね。ごっちんが変なことしないように見はれますしね」
そう言った後、私たちは準備に取り掛かった。
それぞれの家に荷物を取りに行ったが、お母さんにいつも通り話しかけてしまった時はちょっとあせった。
107 名前:T2 投稿日:2001年12月20日(木)01時13分13秒
(よく考えてみると、悪くない案だな・・・
こっちで一人でいるのは心細いし、元に戻る方法がわかった時のために、一緒にいた方がいいだろうし・・・
それに梨華ちゃんとごっちんが心配だし)
「・・・・そうですね。そのほうがいいですね。ごっちんが変なことしないように見はれますしね」
そう言った後、私たちは準備に取り掛かった。
それぞれの家に荷物を取りに行ったが、お母さんにいつも通り話しかけてしまった時はちょっとあせった。
108 名前:T2  投稿日:2001年12月20日(木)01時14分07秒
ごっちんの家に戻ったときはもう夜だった。
(明日の朝起きたら元に戻ってたらいいのにな・・・)
そんな淡い期待を抱きながら、私たちは眠りについた。
109 名前:Hruso 投稿日:2001年12月24日(月)15時41分59秒
すっごい面白い話じゃないですか。
続き待ってます〜。
110 名前:T2 投稿日:2001年12月26日(水)16時11分12秒
<二日目>
夢をみた・・・
向こうの方に市井さんが立っていた。
私が近づこうとしたとき、市井さんの後ろに木があることに気づいた。
見たことのある木だった。
いや、遠くにあるので、ちゃんと見えていないはずだ。
しかし、私は確信していた。あの木が今朝見た木であることを。
そして、どうやったら元に戻れるかも・・・・
私は、ごっちんを探してあたりを見回した。
でもごっちんはいなかった。
なんで?三人いれば元に戻れるのに・・・・
111 名前:T2 投稿日:2001年12月26日(水)16時11分54秒
目覚し時計が鳴り響き、私は目を覚ました。
二人を起こさないように、すぐに目覚ましを止め、鏡に目をやった。
そこには、やっぱり市井さんが映っていた。
(ま、期待はしていなかったけどね)

今日は忙しい一日だった。
私は一人で、先に福岡に向かわなければならなかった。
ごっちんが昨日のうちに、スタッフからもらったチケットをしまい、私は家をでた。
112 名前:T2 投稿日:2001年12月30日(日)14時48分46秒
タクシーで駅まで行き、そこから福岡への新幹線に乗り込んだ。
人目を気にせずに電車に乗るなんて久しぶりだった。
14年間当たり前だったことが、こんなにうれしいとは思わなかった。
私は、初めて遠足にいく時のようにうかれていた。
しかし、梨華ちゃんのことが、心の奥に引っかかっていたことも事実だ。
かといって、ごっちんに言っても仕方ないことである。
(何事もないといいんだけどね・・・・)
結局私には、今はどうすることもできないのだ。
今はごっちんを信じて、私は自分のことを考えなきゃいけない。
(向こうに着いたらホテル探さなきゃいけないし、ごっちんたちのホテルも探さなきゃいけないし・・・)
私は、昨日なかなか寝付けなかったので、とりあえず寝ることにした。
113 名前:T2 投稿日:2002年01月06日(日)21時43分11秒
福岡・・・・
仕事では来たことがあるが、一人で来るのは初めてだ。
とりあえず、駅で買った地図を広げてみる。
「えっと、ごっちんたちのホテルは・・・・あった、ここか。
そこに近いホテルから順にあたっていこうか」
(ほんと、電車もそうだけど、人目をそれほど気にしないでいいって楽だな。)
地図を広げながら、私はホテルを探していた。
114 名前:T2 投稿日:2002年01月06日(日)21時44分45秒
ドンッ!
「痛っ」
前を向いていなかった私は、誰かとぶつかった。
落とした地図を拾い、相手に声を掛ける。
「大丈夫?ごめんね。前見てなくて」
「は、はい。私のほうこそすいませんでした」
女の子だった。年は私より少し下くらいかな・・・
少し長めの黒髪で、小さな体に大きなカバンをしょっている。
女の子はじっと私を見た後、申し訳なさそうに言った。
「あ、あのーもしかして市井紗耶香さんですか?」
(ドキッ・・・ヤバイ・・・どうしよう・・・・)
「え、ななななんで?私が?市井紗耶香じゃないよ。絶対!じゃ、私急ぐから」
私は振り返らずに、逃げるようにその場を去った。
115 名前:T2 投稿日:2002年01月08日(火)21時17分11秒
ハァハァハァ
どれくらい走っただろう、ふと気づくと自分がどこにいるのかわからなくなっていた。
(どうしよう・・・迷子?まじで?)
とりあえず地図を広げて現在地を探してみる。
えっと・・・あそこにコンビニがあって、あっちにホテルが・・・
(え、あのホテルがごっちん達が泊まるホテルじゃん!私って天才?)
そこから一番近いホテルに向かったら、空きがあったのでさっそくチェックインした。
(なんか全てが上手くいってるな・・・いいのかな?)
考えていてもしかたがないので、私は外をブラブラすることにした。
116 名前:T2 投稿日:2002年01月09日(水)23時02分44秒
部屋をでて、エレベーターに乗ろうとすると、後ろから声が聞こえた。
「あれ?偶然ですね。ここのホテルなんですか?」
振り返ると、さっきぶつかった女の子が立っていた。
(当たり前だろ!ホテルの中にいるんだから)
「そうだけど。今度は何?私は市井紗耶香じゃないのよ」
不機嫌そうに答えると、女の子は続けた。
「そうですよね。こんなところにいるわけないですよね。
あ、名前まだでしたね。私は高橋っていいます」
「ふーん。私は・・・・吉澤」
「これから何か用あるんですか?ないなら私と買い物いきません?
友達におみあげ頼まれてて。あ、えっと、私、一人で来てるんですよ」
(特に断る理由もないし、一人よりも二人のがいいか)
私は了解し、もう一度、高橋という子を観察してみた。
明らかに私より年下みたいだから、おそらく中学生だろう。
さっき持ってた大きなカバンは置いてきたのだろう、何も持っていなかった。
でもなんでこんなところに一人で来てるんだろう?
117 名前:T2 投稿日:2002年01月09日(水)23時05分19秒
「高橋さんは何でこんなところに一人で来てるの?」
買い物が終わり、夕食をとりながら、私は尋ねた。
「高橋でいいですよ。私まだ14ですし」
そう言って、ジュースを一口飲んでから話を続けた。
「私、モ−ニング娘。に入りたいんです」
(へっ・・・・モーニング娘。?)
思いもよらぬ答えに驚いている私に向かって
「あ、変な子と思ったでしょ?でもこれが私の夢なんですよ」
その真剣な眼差しに、私はなぜかうれしくなった。
118 名前:T2 投稿日:2002年01月09日(水)23時07分05秒
「モーニング娘。ってこの前から新メンバーのオーディションしてなかったっけ?もしかして、応募してたりする?」
半分冗談のつもりだった私は、さらに驚くことになった。
なんと高橋は応募しており、もうすぐ最終審査を受けるらしいのだ。
「次の最終審査って、お寺で合宿するらしいんですよ。だから両親が心配しちゃって。
だから一度訓練として、一人で旅行することになったんです。それに、モーニング娘。のコンサートも見たかったし」
(ほんとにモーニングになりたいんだな・・・私も一年前はこんな気持ちだったんだよな・・・)
つい一年半くらい前のことだけど、すごく昔に思えた。
119 名前:T2 投稿日:2002年01月09日(水)23時08分18秒
あの頃は、モーニング娘。に自分がなるなんて夢にも思わなかったな・・・・
でも今では、モーニング娘。じゃない自分なんて考えてもみなかった・・・・
そう、入れ替わって市井さんになるまでは。
だから、こうして普通の女の子としてすごすのが、私には大変うれしかった。
14年間当たり前だったのに・・・・
空気と一緒で、なくなってはじめてありがたみを痛感するんだね・・・・
あれ?なんで涙が出てくるんだろ?なんで・・・・?
120 名前:T2 投稿日:2002年01月09日(水)23時10分11秒
「吉澤さん?どうしたんですか?」
心配そうに高橋が言った。
「いや、なんでもないよ。目にごみが入っただけ」
慌てて涙をぬぐいながら私は答えた。
「そうですか?ほんとに大丈夫ですか?」
「大丈夫だって。さて、夕食も終わったし、ホテルに帰ろうか」
わざとらしいくらいの笑顔で答えた。
121 名前:T2 投稿日:2002年01月11日(金)22時45分18秒
あーしんどい、しんどい。
絶対市井さんの体だから、体力も落ちてるよ・・・なんであれだけ歩き回っただけでこんなに疲れるの・・・・・
あれから散々歩き回った私は、ホテルに戻ったと同時にベットに倒れこんだ。

「8時か・・・・」
ポツリとつぶやいた。もう夕食も食べてきているので、ごっちんから連絡があるまで、寝ることにした。
122 名前:T2 投稿日:2002年01月11日(金)22時45分59秒
tururururururu・・・tururururururu・・・tururururururu・・・・
聞き覚えのない着メロが、眠りの邪魔をした。
(ったく、誰だよ?電話なってるぞ!早くとれよ〜)
(・・・・・)
(私って今一人だよね・・・・そうか!私は今、市井さんの携帯持ってんだ)
慌てて飛び起きて、携帯をとる。
「もしもし、吉澤ですけど・・・」
(あ、やばっ・・・吉澤っていっちゃった・・・)
「もしもし?市井だけど。もしかして寝てた?」
(ギクッ・・・なんて鋭いんだ・・・・)
「え、なんのことですか?寝てなんていませんよ。なにを言うんですか」
「へ〜、じゃあ頭の寝癖はなんなの?」
(え、うそ?寝癖?)
驚いて鏡を見てみる。
寝癖なんてついていなかった。
123 名前:T2 投稿日:2002年01月11日(金)22時46分32秒
「寝癖なんかついてないじゃないですか〜びっくりさせないでくださいよ」
笑いをこらえたように、市井さんは
「・・・・あんた、寝てたね。電話なのに、寝癖なんて見えるわけ無いじゃん」
(は、はめられた・・・・)
「後藤も昔、これに引っかかったんだよ。あんた達、頭のレベルは一緒みたいね・・・ってそんなことのために電話したんじゃないのよ。今から来れる?」
「はい。今から行きます。30分くらいかかると思います」
「オッケー。じゃ、待ってるからね。部屋は510号室だから」
電話を切った私は、ホテルに向かった。
124 名前:T2 投稿日:2002年01月11日(金)22時48分05秒
「寝癖なんかついてないじゃないですか〜びっくりさせないでくださいよ」
笑いをこらえたように、市井さんは
「・・・・あんた、寝てたね。電話なのに、寝癖なんて見えるわけ無いじゃん」
(は、はめられた・・・・)
「後藤も昔、これに引っかかったんだよ。あんた達、頭のレベルは一緒みたいね・・・ってそんなことのために電話したんじゃないのよ。今から来れる?」
「はい。今から行きます。30分くらいかかると思います」
「オッケー。じゃ、待ってるからね。部屋は510号室だから」
電話を切った私は、ホテルに向かった。
125 名前:T2 投稿日:2002年01月11日(金)22時49分39秒
>>すいません。重複してしまいました。
124は飛ばしてください。
ホントにすいません
126 名前:T2 投稿日:2002年01月12日(土)22時41分25秒
(えっと、510号室だからエレベーター使った方がいいよね)
ホテルのロビーについた私は、エレベーターの方に向かった。
しかし、私には、エレベーターから出てくる安倍さんと矢口さんの姿が目に入った。
(やばっ!!!)
慌てて私は反転し、階段を駆け上がった。
127 名前:T2  投稿日:2002年01月12日(土)22時41分55秒
(はぁ、はぁ、もう!しんどいよ!510号室って、一番奥だし!)
5階まで駆け上がった上、廊下を端から端まで走ったため、もう限界だった。
部屋を勢いよくノックすると、ごっちんがおどろいた顔で出てきた。
私はジュースをもらい、一息ついていると、ごっちんが話し始めた。
「あ、あのねヨッスィー、梨華ちゃんのことなんだけどね。
えっと、えっとね、やたら私が市井ちゃんといると怒るんだー。
移動中とか、部屋代わったこととかもね。
そんで、そんでね、さっき『もう知らない!』とか言われちゃって・・・・」
私が聞こうとしていたことの答えが、ごっちんの口からでていた。
しかも、一番聞きたくなかった答えが・・・・・
128 名前:T2  投稿日:2002年01月12日(土)22時43分02秒
「ごっちん・・・悪いけど私の携帯貸してくれる?メールしとくよ。うん。
それで、明日は梨華ちゃんに、かまってあげて欲しいんだ。それで、明日は部屋を元に戻してほしいんだ」
私にできることはそれだけだった。他にできることは、祈ることだけだった。
ごっちんから携帯を受け取ると、メールを打ち始めた。
[梨華ちゃん、今日はホントごめん。ごっちんといろいろ大事な話があって・・・何も言わなくてごめん。なんか今日は睡眠不足でナーバスになってたみたい。明日は大丈夫だから、心配しないで。じゃあおやすみ。コンサートがんばろうね]
(ほんとにごめんね。梨華ちゃん)
気がつくと市井さんがシャワーから出てきていた。
代わってごっちんがシャワーを浴び始めた。
129 名前:T2  投稿日:2002年01月12日(土)22時43分47秒
私は市井さんと二人きりになってからずっと考えていた。
(どうしよう・・・・聞いていいのかな、こんなことを・・・)
市井さんは無言で窓の外を見続けていた。
長い沈黙が部屋を覆っていた。ごっちんのシャワーの音だけが部屋に響いていた。

「市井さん、一つ聞いていいですか?」
私は思い切って切り出した。
「なんだい?急に?」
私の真剣な目を見た市井さんは、こっちを向いて座りなおした。
「市井さんが娘。をやめた後って、どんな気持ちでした?」
そのときの市井さんの表情を見た私は、言った後で、聞いたことを後悔した。
市井さんは、今までに見たことのないような寂しそうな表情で
「怖かったよ・・・・いろんな意味でね・・・・」
ポツリとそれだけ言って、再び後ろを向いた
「そうですか・・・すいません。変なことを急に聞いたりして」
市井さんは返事をせず、後ろを向いたままうなずいた。
(怖いか・・・・何がこわかったんだろう?私は怖いことないのに・・・)
私はしばらく考え込んでいた。
130 名前:T2  投稿日:2002年01月12日(土)22時44分25秒
「ふー気持ちいい。さあ練習しよっか」
変に元気のいいごっちんの声が部屋に響いた。
私は考えるのをやめ立ち上がった。
(今は明日のコンサートのことだけ考えなきゃ)
真夜中に始まった私たちの特訓は、朝方まで続いた。
ホテルに帰った私は崩れるようにベットに倒れ、眠りについた
131 名前:T2 投稿日:2002年01月13日(日)23時56分42秒
<三日目>
夢をみた・・・
私の目の前に梨華ちゃんが立っていた。
「ヨッスィーは本当に元にもどりたいの?」
梨華ちゃんのこんな声は聞いたことがなかった。
ひどく無機質な、機械のような声だった。
「何をいいだすの?戻りたいに決まってるじゃん」
「本当は、モーニング娘。を辞めたいんじゃないの?普通の女の子みたいにすごしたいんじゃないの?」
私の返事を遮るように梨華ちゃんは続けた。
132 名前:T2  投稿日:2002年01月13日(日)23時57分39秒
「な、なんでそんなこと言い出すのさ!」
私はおもわず叫んでいた。
しかし、私の叫び声の上から、声が響いてくる。
「本当に戻りたいと思わないと、元にもどることはできないのよ」

「わかってるよ!」
叫びながら、私はベットから飛び起きた。
「夢か・・・・」
私は、自分の目は涙が溢れていることに気づいた。
「わかってるよ・・・そんなこと」
ポツリと私は呟いた。
(なんでこんなに苦しいの・・・・なんで、なんであんな夢をみたの・・・
もう何が何だかわからないよ!助けて・・・誰か助けてよ)
流れ続ける涙を止めようとせず、私はしばらく泣いていた。
133 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月14日(月)17時14分37秒
よっすぃーバージョンもいいっすけど
市井バージョンが待ちどうしいっす
134 名前:T2 投稿日:2002年01月15日(火)00時08分58秒
>133 もうすこしお待ちください。こっちで吉澤編が書き終わり、あとはアップしていくだけなので。
今週中には市井編を始める予定です。なんとかがんばりますので。
135 名前:T2 投稿日:2002年01月15日(火)00時09分32秒
コンコン、コンコン
ドアをノックする音が部屋に響き渡った。
顔を上げ、時計を見てみると12時を過ぎていた。
(え、もうこんな時間?やばいよ、高橋とコンサートに一緒に行く約束してたのに)
慌てて涙を拭いてドアを開けた。
「おはようございます」
高橋が笑顔であいさつをした。
「おはよ。ゴメン、ちょっと待ってね。用意するから」
それだけ言ってドアを閉め、さっそく用意に取り掛かった。
「さて、着替え着替え」
「チケットは持ったよね・・・うん、ここに入ってる」
独り言を言いながら私は用意をしていった。
独り言をいう癖は、入れ替わっても直ってなかった。
(当たり前だよね、今さら。そういえば、安倍さんもこの癖あるよな。
いつも一人で「さあ、準備しよう」とか「よし、片付けるぞ」とか言ってるもんな)
そんなことを考えながら用意を終え、部屋を出た。
136 名前:T2 投稿日:2002年01月15日(火)00時10分04秒
高橋はロビーの椅子に座っていた。
「ゴメンゴメン。完璧に寝過ごしちゃって」
そう言いながら、高橋の所まで走っていった。
「それじゃいきましょうか」
笑いながら彼女は歩き出した。
137 名前:T2 投稿日:2002年01月15日(火)00時10分39秒
高橋はロビーの椅子に座っていた。
「ゴメンゴメン。完璧に寝過ごしちゃって」
そう言いながら、高橋の所まで走っていった。
「それじゃいきましょうか」
笑いながら彼女は歩き出した。
138 名前:T2 投稿日:2002年01月15日(火)00時11分10秒
高橋はロビーの椅子に座っていた。
「ゴメンゴメン。完璧に寝過ごしちゃって」
そう言いながら、高橋の所まで走っていった。
「それじゃいきましょうか」
笑いながら彼女は歩き出した。
139 名前:T2 投稿日:2002年01月15日(火)00時12分13秒
― コンサート会場 ―
「ホントにすごい人ですね」
会場に着いた高橋の第一声はそれだった。
本当にすごい人だった。
1万人とかいう数字はいつも聞いてるので、響きには慣れていたが、その中に実際入ってみると、そのすごさが改めてわかった。
しかし、本当に色々な人がいる。大人も子供も、男の人も女の人も。
私たちはしばらく人間観察を楽しんだ後、会場に入った。
「それじゃ、また終わった後にね」
入り口でそう言って、私たちはそれぞれの席に向かった。

開演時刻が近づくにつれ、段々緊張していくのがわかった。
(自分を見るって変な感じだな。
コンサートのビデオチェックをしてる時に近いけど・・・・
マジでごっちん、頼むよ)
とうとうコンサートが始まった。
140 名前:T2 投稿日:2002年01月15日(火)00時13分13秒
コンサート開始と同時に、そこは信じられない空間となっていた。
やってる方からではわからない、また違った魅力に満ち溢れていた。
私はただただ見入っていた。もう、ごっちんのことが気になっていなかった。
そしてコンサートも無事に終わった。

「ヨッスィー、どうだった?」
「ごっちん!すごいじゃん!私よりうまいんじゃない?」
「やだ〜ヨッスィー、褒めすぎだよ。でも、なかなかいい感じだったっしょ?」
コンサート後、私はごっちんと電話をしていた。
「その調子で頼むよ。それじゃね」
電話を切り、私は高橋との約束の場所に向かった。
(ごっちんってホントすごいよな。全然違和感なかったもんな。完璧にごっちんってことを忘れてたよ)
141 名前:T2 投稿日:2002年01月15日(火)00時13分47秒
コンサート開始と同時に、そこは信じられない空間となっていた。
やってる方からではわからない、また違った魅力に満ち溢れていた。
私はただただ見入っていた。もう、ごっちんのことが気になっていなかった。
そしてコンサートも無事に終わった。

「ヨッスィー、どうだった?」
「ごっちん!すごいじゃん!私よりうまいんじゃない?」
「やだ〜ヨッスィー、褒めすぎだよ。でも、なかなかいい感じだったっしょ?」
コンサート後、私はごっちんと電話をしていた。
「その調子で頼むよ。それじゃね」
電話を切り、私は高橋との約束の場所に向かった。
(ごっちんってホントすごいよな。全然違和感なかったもんな。完璧にごっちんってことを忘れてたよ)
142 名前:T2 投稿日:2002年01月15日(火)00時14分20秒
コンサート開始と同時に、そこは信じられない空間となっていた。
やってる方からではわからない、また違った魅力に満ち溢れていた。
私はただただ見入っていた。もう、ごっちんのことが気になっていなかった。
そしてコンサートも無事に終わった。

「ヨッスィー、どうだった?」
「ごっちん!すごいじゃん!私よりうまいんじゃない?」
「やだ〜ヨッスィー、褒めすぎだよ。でも、なかなかいい感じだったっしょ?」
コンサート後、私はごっちんと電話をしていた。
「その調子で頼むよ。それじゃね」
電話を切り、私は高橋との約束の場所に向かった。
(ごっちんってホントすごいよな。全然違和感なかったもんな。完璧にごっちんってことを忘れてたよ)
143 名前:T2 投稿日:2002年01月15日(火)00時15分58秒
>すんませんマジで。さいきんマウスの調子が悪くて、クリックが上手くいかない。
141と142飛ばしでお願いします。
ほんとにすいません
144 名前:T2  投稿日:2002年01月15日(火)00時16分30秒
「ごめーん。人が多くて出るのに時間かかっちゃって」
ようやく高橋を見つけ、私は駆け寄った。
「私もさっき来たところですよ。じゃ、ホテルにかえりましょうか」
そう言って、歩き始める彼女を止めて、私は言った。
「実は私、夜公演のチケットも持ってるんだよね・・・・でもね、これあんたがいきなよ」
私はチケットを差し出した。
「そ、そんな、悪いですよ。何千円もするのに。そんな簡単に」
彼女は私の顔と、チケットを見てから言った。
145 名前:T2  投稿日:2002年01月15日(火)00時17分03秒
「いいの。もしモーニング娘。に入ったら、コンサートを見に行く時間もないくらい、忙しくなるんだよ」
高橋の肩を持ちながら、私は更に続けた。
「いい、これはね、がんばってるあんたへのプレゼントなの。その代わり、絶対モーニング娘。に入って来るんだよ」
私は高橋の手にチケットを握らせた。
「・・・・やっぱり市井さんなんですね」
握ったチケットを見ながらボソッと言った。
「私は、市井さんだけど、『吉澤ひとみ』なんだ。変なこと言うでしょ?
じゃ、ここでお別れだ。がんばりなよ。待ってるからね。モーニング娘。で」
そう言って、私は背を向けて歩き出した。
(変だな・・・悲しいな・・・高橋と別れるの・・・)
いつの間にか、涙が溢れてきているのに気づいた。
146 名前:T2  投稿日:2002年01月15日(火)00時17分39秒
「吉澤さ〜ん、私、よく事情はわかんないけど、絶対モーニング娘。になります。絶対です!モーニング娘。の高橋愛として会いましょう」
振り返ると、高橋が手を大きく振りながら叫んでいた。
(大丈夫だよ、彼女とはきっとまた会える。『モーニング娘。新メンバー』としての高橋と。きっと・・・私が信じてあげなきゃ)
そう自分に言い聞かせる。
私は何も言わずに、ピースサインを返し、また歩き出した。
(絶対、元に戻って高橋と再会するんだ。絶対)
そんな思いでいっぱいだった。
147 名前:T2 投稿日:2002年01月16日(水)20時26分27秒
辺りをぶらぶらして、ホテルに帰った私は、ボーっと窓の外を見ていた。もう外は真っ暗だった。
(この三日間、大変だったな・・・元に戻る方法か・・・・わかってるんだけど・・・昨日はごっちんがいなかった。おそらく今日は私がいなかったんだろう。みんな迷ってるんだな。市井さんはどうなんだろう?私は今は、心から元に戻りたいと思ってる・・・二人はそう思ってるのかな・・・ごっちんは市井さんと一緒にいたいんじゃないのかな・・・梨華ちゃんもコンサートでは何も変わってなかったけど・・・大丈夫かな・・・)
考えれば考えるほど、不安になってくる。
「くそー!なんで何も出来ないんだよ!」
思わず私は叫んでいた。何も出来ない自分にイラついていた。
148 名前:T2  投稿日:2002年01月16日(水)20時27分16秒
・・・ヨッスィー・・・ヨッスィー・・・
不意に梨華ちゃんの声が聞こえた気がした。
(そんなわけないよな、梨華ちゃんがいるわけないし・・・・)

(・・・・・・・)

(・・・・・・・やっぱり気になるよな)
いてもたってもいられなくなり、私はごっちんたちのホテルに向かった。
149 名前:T2  投稿日:2002年01月16日(水)20時28分20秒
ホテルに向かってどうするのかなんて、全く考えてなかった。
でもホテルに向かわずにはいられなかった。
私はただただ走っていた。
しかし、ごっちんから電話があった時、私はその理由がわかった。
私は電話の内容をはっきり覚えていない・・・・・
ただ、ごっちんの泣き声が、最悪の事態を示していた・・・・
(梨華ちゃん、梨華ちゃん、梨華ちゃん)
もうそのこと以外、何も考えられなかった。
150 名前:T2  投稿日:2002年01月16日(水)20時29分54秒
「ごっちん!!」
ホテルに駆け込み、ロビーでごっちんの姿を見た瞬間、私は叫んでいた。
ごっちんは泣きながらこっちを見た。
私はごっちんを連れ、エレベーターに乗った
市井さんの部屋に行こうとしたが、部屋が元に戻っていることを思い出し、
最上階のボタンを押した
そう、今は市井さんの部屋には保田さんがいるのだ。
エレベーターの中には、ごっちんの泣き声だけがしていた。
私はごっちんを黙って抱きしめた。
151 名前:T2  投稿日:2002年01月16日(水)20時32分13秒
最上階に着いた私は、ごっちんを座らせ、話を聞こうとした。
「で、何があったの?急に人を呼び出して、泣き出したりして」
勤めて冷静に私は尋ねた。
「・・・・・・・」
ごっちんは答えなかった。
しかし、その表情が全てを物語っていた。
「梨華ちゃんとなにかあったの?でなきゃごっちんは、私より先に、市井さんに相談するもんね」
なだめるように再度、私は尋ねた。
このときまで私は、心のどこかで何も起きていないということを、期待していたかもしれない。
しかし、ごっちんの涙ながらの告白はそれを打ち砕いた。
ごっちんの口からでる一言一言が、私の胸に突き刺さった。
152 名前:T2  投稿日:2002年01月16日(水)20時33分52秒
「くそっ!私のせいだ!私の・・・私のせいだよ!私が・・・私が・・・」
(私が普通の女の子としての生活に、憧れたばっかりに・・・もし、そんなことを考えなかったら、今日には元に戻れてたかも知れない・・・
そしたらこんなことには・・・私は自分のことしか考えてなかった!そのせいで梨華ちゃんをこんなに追い詰めて・・・ごっちんまで傷つけて・・・・
なんで、なんでなの!なんで私のせいなのに・・・なんで私だけ無事で、みんなが犠牲に・・・・なんでこんなことに!梨華ちゃん、ごっちんごめん・・・ごめん・・・・)
私は自分の手から血が、そして目から涙が流れ続けていることにも気づかなかった。
もう自責の念で頭がいっぱいだった。
153 名前:T2 投稿日:2002年01月17日(木)15時13分38秒
「市井ちゃんが来るって」
ごっちんのその言葉で私は我に帰った。
私はただうなずいた。ごっちんになんて言えばいいか、わからなかった。
市井さんがくるまで、私たちは黙っていた。
しばらくして、エレベーターのドアの開く音がして、市井さんが出てきた。
「もう、何でこんなとこに?あんたの部屋行ったら、石川がボーっと座ってるだけ・・・」
「石川」という言葉が私の心に響いた。そして、市井さんの言葉が終わらないうちに私は尋ねた。
「梨華ちゃんは?梨華ちゃんの様子はどうでした?」
「あ・・う、うん、とりあえず圭ちゃんに頼んでる。心配ないって」
一瞬驚いた様子だったが、市井さんはすぐに答えた。
「そうですか・・保田さんが・・・」
かるい嫉妬心が心をよぎった。
しかし、元に戻らなければ、私は何もできないのだ。
私は市井さんに、夢のこと、そして元に戻る方法を言おうとした。
154 名前:T2  投稿日:2002年01月17日(木)15時16分16秒
しかし、私の考えをよんだかのごとく、市井さんは言った。
「今から元にもどるよ」
その真剣な目は全てわかっている目だった。
「そうだよ。今の私たちならできるはずだよ」
市井さんは続けた。
私たちは顔を見合わせうなずいた。
155 名前:T2  投稿日:2002年01月17日(木)15時17分22秒
梨華ちゃん、待っててね。すぐ行くから。
ごっちん、本当にごめんね。
元に戻ったら必ずお返しするから。
そして・・・高橋、絶対にまた会おうね。今度は吉澤ひとみとして
市井さんと保田さんの部屋に行く途中、そんなことを考えていた。
途中、誰も口を開くことはなかった。
156 名前:T2  投稿日:2002年01月17日(木)15時18分03秒
とうとう部屋に着いた。保田さんは、梨華ちゃんの所に行っているからいない。
部屋に入り、ベットに座ってから、市井さんはやっと口を開いた。
「なんとなくわかってるかもしれないけど、三人が強く『元に戻りたい』って思ってなきゃいけない」
私たちの顔を一度見てから、市井さんは続けた。
「そう思ってたら元に戻ると思うんだ。ついさっき、やっとそう確信がもてたの。やれるね、後藤、吉澤」
私は一度、深呼吸した後、大きくうなずいた。ごっちんも大きくうなずいた。
私たちは手を合わせ、もう一度大きくうなずいた。
そして私たちは眠りについた・・・・・
157 名前:T2  投稿日:2002年01月17日(木)15時19分07秒
<エピローグ>
「このたび、モーニング娘。に新しく入ることになった、高橋愛です。14歳、福井県出身です」
大きな声で挨拶をして、高橋たち新メンバーが入ってから一週間が過ぎた。
私と高橋は見事に再開することが出来た。ただ以前と違うのは、「吉澤ひとみ」として再会したことだった。
例のことは、高橋から言ってくる気配はない。遠慮してるのかもしれないが・・・・
私からは特に言い出すつもりはない。
入れ替わったなんて、誰も信じないだろうし、彼女なりにあの出来事を納得させてるんだったら、それでいい。
158 名前:T2  投稿日:2002年01月17日(木)15時20分40秒
「どうしたのヨッスィー?高橋さんみてニヤニヤして」
横から梨華ちゃんが言う。
「別に、なにもないよ。どうしたの?もしかしてやきもち?」
私が意地悪く聞き返すと
「なんでよ!そんなことないわよ」
そう言って向こうを向いてしまった。
(そんなとこがかわいいんだよ、梨華ちゃん)
「ごめん、ごめん。そうだ、明日のオフに買い物にいこうか?」
笑いをこらえながら言った。
「ほんと?私、この前おいしい店みつけたんだ。いこっか」
梨華ちゃんはすぐに振り返り、笑顔で答えた。
159 名前:T2  投稿日:2002年01月17日(木)15時21分32秒
「あ〜ごめん、食べ物はダメなの。今ダイエット中なの」
今度は苦笑いしながら言った。
(ごっちんのせいでね・・・・ほんとに、また夢かと思ったよ。三日間でなんであんなに太るのよ・・・)
「え〜いいじゃん。明日くらい、決定ね。楽しみだな〜」
勝手に決めて、梨華ちゃんは喜んで走っていった。
(ま、いっか。梨華ちゃんがうれしそうだし)
160 名前:T2 投稿日:2002年01月17日(木)15時27分45秒
結局、あの出来事はなんだったんだろう・・・・
私と高橋を出会わせるため?それとも、高橋がモーニング娘。に入るため?
それとも・・・・

「おーい、ヨッスィー、早くしないと次の収録におくれるよ」
向こうから梨華ちゃんの声がきこえる。
「待ってよ、梨華ちゃん」
私は慌てて走り出した。
走りながら、ふと思いついた。
(それとも、これが「運命」ってやつなのかもね)
その答えに妙に納得した。
(人と人の出会いは偶然という名の必然なんだね・・・意味のない出会いなんてない。そして意味のない別れも・・・・)

明日は晴れるといいな・・・・

(パート2:吉澤編 完)
161 名前:T2 投稿日:2002年01月17日(木)15時36分55秒
>以上吉澤編でした。
途中全く話が書けなくなり、かなりやばかったですけど、無事に終えることが出来ました。
さて、最後は市井編です。
どうか最後までお付き合い下さい。
162 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月17日(木)22時25分58秒
作者さん吉澤編もおつかれっした〜。おもしろかったっすよ
高橋がでてきたのが以外だったなぁ。

次は市井編ですね!楽しみ☆
163 名前:T2 投稿日:2002年01月20日(日)00時27分40秒
(パート3:市井編)

<プロローグ1>
ある日、私に一通の手紙がきた。
差出人の書いてない手紙・・・・
私は何かに魅せられたように、それを手にとって開封した。
[あなたの心の奥にある、気づかない願いを叶えます。方法は・・・・]
そんな内容の文が書いてた。
(また新しい宗教か何かか?)
それを破って捨てようとしたが、何か引っかかるものがあった。
そこで私は冗談半分にその通りやってみた。
(私の気づかない願い?なんだろな)
その時、私はこれが全ての始まりになるとは、夢にも思わなかった。

それから何ヶ月か経ち、私はそのことを忘れていた。
164 名前:T2 投稿日:2002年01月20日(日)00時29分42秒
<プロローグ2>
夢を見た・・・
私と後藤と吉澤が手をつないで、木の周りをぐるぐる回ってる。
そのうち段々回転が速くなっていって、ある童話のトラみたいに三人がバターになってしまう夢。
体が溶けて一体化していくのは不思議な感じがした。
これが私の中の「溶ける」ってイメージなんだな。

そして朝がやってきた・・・・
165 名前:T2 投稿日:2002年01月23日(水)00時11分15秒
<一日目>
(ん?なんで私は布団かぶって寝てるんだ?後藤じゃあるまいし)
私は髪を掻き上げながら布団から出た。
(あれ?なんでこんなに髪が長いんだ?まだ夢みてるのか?)
ボーっとした頭で考えようとするが、頭が働かない。

ガチャ
ドアが開き、吉澤が入ってきた。
「おはよ吉澤。後藤まだ寝てるよ」
私はすぐに彼女の異変に気づき、慌てて駆け寄って言った。
「ってあんたどうしたの!真っ青じゃない!」
「えっとね、市井ちゃん・・あのね、そこの鏡見てみて」
吉澤は泣きそうな声でそう言った。
166 名前:T2  投稿日:2002年01月23日(水)00時12分01秒
「市井ちゃん」という言葉に引っかかったが、そんなこと言ってる状況じゃないようだ。
私は立ち上がり、机の上の鏡を見た。
そこには見慣れた自分の顔が映っていなかった。
代わりに後藤真希が映っていた・・・・
眠気が一気に吹き飛び、代わりに不安がこみ上げてきた。
私は必死に現実を理解しようとした。
(私は後藤?じゃあなんで吉澤は、さっき私を「市井ちゃん」って呼んだんだ?)
導かれる答えは一つだけだった。
そう、彼女は後藤なんだ。ということは・・・・
「うっ、う〜ん・・・あーよく寝た。おはよごっちん・・・」
「私」が後ろで混乱しているのがわかる。
そういうことなんだね・・・・
167 名前:T2 投稿日:2002年01月23日(水)23時05分58秒
「夢だよね・・・・」
私は現実を確認するかのように呟いた。
答えはわかっているが、聞かずにはいられなかった。
ただ、誰かに否定して欲しかったって言うのが本音だったかもしれない。
「だといいんだけどね」
吉澤(後藤)が答える。
(やっぱりね・・・夢のわけないよね)
現実とわかっていても、あらためて現実を受け入れる余裕はなかった。
涙が溢れてきた。
振り返り吉澤(後藤)をみると、必死に涙をこらえているのがわかる。
入れ替わっても、後藤の泣きそうな顔はすぐわかる。
その懸命な姿を見て、泣き出すわけにはいかなかった。
168 名前:T2  投稿日:2002年01月23日(水)23時06分32秒
「一度整理しよう」
自分に言い聞かせるかのように、私は話し始めた。
「私が後藤で、後藤が吉澤で、吉澤が私なんだよね」
私たちは顔を見合わせてうなずいた。
後藤が色々と元に戻る方法を言い出した。どれも変な方法ばっかだったけど、後藤の変わらない姿を見ていると、とても安心した。
「夢・・・三人が溶ける夢・・・」
不意に誰かの呟きが聞こえた。
(夢か・・・)
私が今朝見た夢を思い出していると
「そーだよ!夢だよ!あの夢!なんで忘れてたんだろ〜溶けてく夢だよ!私たち三人が!そーだよ!そのせいだよ!」
突然吉澤が大声で叫んだ。
「えっ、吉澤もその夢みたの?」
あっけにとられながら私は言った。
「市井さん、私はこっちですよ。」
ちょっと不機嫌そうに吉澤(外見は私)につっこまれた。
(もう、ややこしいなーほんとに)
「市井ちゃんも見たの?ヨッスィーは?」
後藤の問いに私は頷いた。
私たちは全員同じ夢を見ていた。
169 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月24日(木)03時26分13秒
後藤とよっすぃーの時にはなかった部分が!?
市井ちゃんの所為だったのかぁ〜。

170 名前:T2 投稿日:2002年01月25日(金)22時01分53秒
「う〜ん・・・それが原因らしいってわかったけど、どーしたら元にもどるんだろね〜」
私がそう言うと
「もう一回寝てみるとかは?」
すぐさま後藤が言い出した。
「そんな単純にいくのは後藤だけだよ!」
半分あきれながら言った。
(ほんとに・・・マイペースというか、子どもというか・・・・なんでこいつはこんな状況で、いつもと変わんないんだ?)
「もしすぐに戻らなかったらどうしましょう?明日から仕事ですよ〜ツアーも始まるし・・・」
吉澤が心配そうな顔をしている。
「大丈夫。あんたは私だから心配しなくていいよ。何もしなくいいから」
元気付けるように笑いながら私は答えた。
きっとこの笑いは自嘲だったに違いない。
171 名前: 投稿日:2002年01月25日(金)22時02分27秒
(そうだよな・・・明日からの仕事どうするかだな・・・元に戻ることを期待して、元に戻らなかったらまずいし・・・)
考えをまとめ、私は話し始めた。
「元に戻る方法がわかんない以上、吉澤の言う通りどうやって仕事をこなすかだな。とりあえず今日の内に私は後藤の、後藤は吉澤のパートとフリをなんとか形にしとかなきゃな」
二人を顔を見回した。
「私は大丈夫よん。だいたいヨッスィーのはわかるから。私が市井ちゃんに教えてあげるよ」
後藤が含み笑いをしながら言い出した。
こいつがこんな笑い方してるときは、絶対何か企んでるんだよな・・・
172 名前:T2 投稿日:2002年01月28日(月)20時43分15秒
「んじゃあ新曲だけ教えてくれる?後はだいたいわかるから」
警戒しつつ、そう答えた。
「えっ・・・新曲だけ?」
後藤は拍子抜けした顔をした。
(ほらみろ、なんか企んでたじゃねーかよ)
「だって昔のは私があんたにおしえたじゃん。それにT WISHやBABYとかはだいたいテレビで知ってるし」
もっともな理由をつけて、丁重に断った。
まだ何かブツブツ文句を言ってくるから、私は適当に返事していた。
173 名前:T2 投稿日:2002年01月28日(月)20時43分50秒
「そんならやってみてよ!みててあげるからさ」
(おい、いつの間にそんな話になってるんだよ・・・)
「わーったよ。そんかわり後藤もあとでやれよ」
売り言葉に買い言葉で言ってしまった。もうやけくそだった。
(ほんとに無茶言うよな・・・・ブランクを考えろよ・・・でも、ひそかに研究しといてよかったよ・・・まさかこんな時に役に立つとは・・・)
私はCDをかけて踊りだした。
かなりいっぱいいっぱいだったが、表情には余裕を見せ、なんとかその場はこなした。
「すごいじゃないですか!市井さん!」
吉澤がは大声で言った。
(そんなに?私もまだまだいけてるね)
「いやね、TVでモーニングを見てると昔の血が騒ぐってのかな、なんか覚えるんだよね。どう?後藤?」
上機嫌で後藤に尋ねた。
「えっ・・・まあいいんじゃないいかな〜」
(ふう、よかったよかった、しかし本番はつらいな・・・明日はビデオ持っていくか)
174 名前:T2 投稿日:2002年01月29日(火)18時15分30秒
ひと息つきながら、後藤のダンスを見ていたが、後藤のダンスに正直びっくりした。
私よりも十分形になっていた。
(これがあのダンスが苦手だった後藤かよ・・・・)
しかし、私はこう言った。
「まだまだだね〜。吉澤、後藤に教えてあげてね」
なぜなら褒めるとすぐ調子に乗るし、なにより後藤が私に教えてたら、後藤の練習時間が減ってしまうからだ。
「は・・・はい」
吉澤は驚いてそう答えた。
「なんでなんで〜形になってるじゃん。市井ちゃんとあんまかわんないよ」
後藤がすぐさま文句を言ってくる。
(そのとおりだけど・・・・「あんたが私に教えてたら、あんたが練習できなくなるでしょ」って言っても素直に聞かないだろ)
175 名前:T2 投稿日:2002年01月29日(火)18時16分15秒
「あんたは一人じゃ練習しないでしょ!誰かがいないとすぐサボるんだから」
「ちゃんとやるよ〜そんじゃあ市井ちゃんはどーするのさ?」
「私は誰かさんと違って一人でできるからね〜」
(わかってるよ、今の後藤のダンスを見てると。どれだけがんばってるかが。
でもね、私があんたに迷惑をかけるわけにはいかないんだよ)
とりあえずこの問題は解決した。後は普段の生活だよな・・・・私は後藤と一緒だけど、吉澤は一人じゃかわいそうだよな・・・・
私の家にいるわけにもいかないし・・・・
私は後藤にツアーのある場所を確認し、吉澤に言った。
「一緒にいこうか?」
「へっ・・・だって市井さんはもう娘。を脱退してるじゃないですか」
吉澤はおどろいた顔でそう答えた。
「違う違う、ホテルとかは別だけど、近くにいたほうがよくない?それともツアー終わるまで私になりきって私の家で生活する?」
あわてて私は説明した。
吉澤はしばらく考えてから言った。
「・・・・そうですね。そのほうがいいですね。ごっちんが変なことしないように見はれますしね」
(ふう、これで問題は一通り解決したかな。あとは元に戻る方法だけか・・・)
176 名前:T2 投稿日:2002年02月10日(日)22時37分55秒
私たちはとりあえず三人でそれぞれの家に向かい、用意をしてきた。
親には適当な理由をつけてごまかした。(吉澤が言ったんだけど・・・)
そして、後藤の家に戻って時、もう夜はふけていた。
私たちは元に戻ることを期待しながら眠りについた。
177 名前:T2 投稿日:2002年02月10日(日)22時38分39秒
<ニ日目>
夢をみた・・・
私の前に木が立っていた。
そう、これは今朝見た木に違いない。
(どうしたら元に戻れるんだろう)

コレガ、アナタノノゾミナンデショウ・・・・

不意に声が聞こえた。どこかで聞いたことがある声だったが、思い出せない。
辺りを見回すが、誰もいない。

コレガ、アナタノノゾミナンデショウ・・・・

再び声が聞こえる。私は気がついた。木が語りかけてきていることを。
「私の望みってどういうこと?いつ私がこんなことを望んだのよ!」
尋ねるが返事がない。
「なんなのよ、一体!」
私は大声で叫んでいた。
178 名前:T2 投稿日:2002年02月10日(日)22時39分10秒
目覚し時計が鳴り、私は目を覚ました。
なぜか涙が浮かんでいることに気がついた。
(なんなんだよ!もう!)
時間がないので、考えるのをやめ、後藤を起こし始めた。
「朝ですよー後藤!朝ですよー。後藤ちゃんもう時間だよ!遅刻、マジ遅刻!やばいよ、まじ起きて!」
返事がない・・・・後藤はうなされたままだった。
(ん、こいつ何か悪い夢でも見てるのか?)
「後藤!後藤!」
私はゆすりながら再度起こした。
やっと後藤は起きたが、その目には涙が浮かんでいた。
「どうしたんだよ?ずいぶんうなされたぞ。っておまえ泣いてるのか?」
私の問いに後藤は
「なんでもない。ちょっと変な夢見ただけ」
と笑って答えた。
「そうか。ならいいけど。早く準備しろよ、もうすぐ時間だぞ」
時間もないので私たちはすぐ用意をし、出発した。
179 名前:T2 投稿日:2002年02月11日(月)23時49分07秒
私たちが着いた時にはほとんど全員揃っていた。
(どうやら、吉澤は遅刻とかしないみたいだな)
着いて早々に、後藤は圭織と石川に捕まっている。
後藤は二人に言われて混乱しているみたいだ。必死に助けを求めてこっちを見ている。
(しゃーない、助けてやるか)
「よしざ・・・ヨッスィーは早かったんだけど、私が用意するの遅れてね」
危うく間違えそうになりながら、私が横から会話に加わった。
「ふーん。そうなんだ〜」
そう言って石川は拗ねたように向こうに行ってしまった。
(もしかして・・・)
私にはある考えが浮かんだ。後藤は不思議そうな顔で石川の後ろ姿を見ている。
(なんでこいつは気づかないんだ?お前が私に対してよくやってたことなのに・・・)
私たちが話しているうちになっちが来た。遅刻癖はあいかわらず直ってないんだな・・・・
しかし、ここからが私の地獄の始まりだった・・・・・
180 名前:T2 投稿日:2002年02月11日(月)23時51分03秒
「後藤さーん、新しいモノマネ見てくださいよ〜」
「あいぼんの新しいモノマネすごいんれすよ。後藤さん?きいてるのれすか?」
「う、うん、聞いてるよ」
(もうそっとしといてくれよ・・・・・)
こんなことがもう1時間以上続いてる・・・
こいつらなんでこんなに私に寄って来るんだよ・・・・
「それじゃあいきますね、Gacktさんの真似です」
「・・・そうだね、加護ちゃんは・・・・かわいいよね・・・うん・・・以上です」
「おおーあいぼんすごーい!後藤さん、どうれすか?」
「ああ、いいんじゃない」
適当にやりすごして寝ようとする。
しかし、これは無駄な努力だった。
「それじゃあ、次のいきますね」
(もう勝手にやっといてくれよ・・・・)
181 名前:T2 投稿日:2002年02月11日(月)23時52分06秒
このやり取りは福岡に着くまで続き、着いたときにはもう精魂尽き果てていた・・・・
しかし、まだ二匹の悪魔は元気いっぱいだった。そう、まだ地獄は終わっていなかった・・・・
会場の下見、打ち合わせ、そしてホテルに行くバスの中も、私に付きまわった。
(もう勘弁して・・・お願い・・・まさか部屋まで付いてくるなんてことないよな・・・・)
182 名前:T2 投稿日:2002年02月11日(月)23時52分54秒
だが、ホテルに着いた私に、やっと神様が微笑んでくれた。
「ちょっとトイレにいってくるのれす」
そういって辻がトイレに行こうとすると
「あ、待って。私も行く」
二匹の悪魔は連れ添ってトイレに行ってしまった。
私は急いで荷物を持ち、自分の部屋に駆けこんだ。
「どっどうしたの?そんなに慌てて」
部屋に駆け込んだ私に驚いた後藤が尋ねた。
「後藤〜辻加護につきまとわれてさ〜もう疲れたよ〜あいつらがトイレ行ってるすきに逃げてきた」
喉が乾いたので、そう答えながら私は冷蔵庫に向かった。
183 名前:T2 投稿日:2002年02月11日(月)23時54分25秒
冷蔵庫を物色していると、後藤が何度も電話をかけなおしているのに気づいた。
「どーした後藤?」
冷蔵庫からジュースを取りながら私は尋ねた。
「電話にでんわ〜。なんでだろ?」
しょーもないギャグを言いながら後藤は答えた。
「ゴマキギャグかよ!そんなわけないだろ〜私の携帯で誰としゃべるんだよ」
(ほんとに、何を言い出すんだよ)
私はジュ−スを冷蔵庫の上に置き、後藤から携帯を受けとった。
(えっと、リダイヤルリダイヤル)
リダイヤルもボタンを探し、かけようとするとあることに気づいた。
ディスプレイには「吉澤ひとみ」という文字が映っていた。
(あ・・・・あのバカ・・・)
「後藤!あんたバカじゃないの!吉澤の携帯にかけてるじゃん。
自分の携帯に自分がかけてもつながんないよ」
私がそう言うと、後藤は苦笑いをした。
(ほんっとに世話のかかる奴だな)
自分の番号を入れ、吉澤に電話をした。
184 名前:T2 投稿日:2002年02月11日(月)23時55分05秒
tururururu  tururururu  tururururu  tururururu
(なんだ?でないぞ。寝てるのか・・・)  
「もしもし、吉澤ですけど・・・」
慌てた声で吉澤が出て来た。
「もしもし?市井だけど。もしかして寝てた?」
呆れたように私は言った
「え、なんのことですか?寝てなんていませんよ。なにを言うんですか」
バレバレの反応を吉澤はした。私は昔、後藤にやったことを思い出した。
「へ〜、じゃあ頭の寝癖はなんなの?」
(まさかこんなのに引っかからないよね)
そんな軽い考えで私は言った。
しかし私の考えは甘かった。まさか後藤以外に引っかかる奴がいるとは・・・
「寝癖なんかついてないじゃないですか〜びっくりさせないでくださいよ」
吉澤必死に抗議してきたのだ。
185 名前:T2 投稿日:2002年02月11日(月)23時55分46秒
笑いを必死にこらえながら私は言った。
「・・・・あんた、寝てたね。電話なのに、寝癖なんて見えるわけ無いじゃん。
後藤も昔、これに引っかかったんだよ。あんた達、頭のレベルは一緒みたいね・・・ってそんなことのために電話したんじゃないのよ。今から来れる?」
うっかり本来の目的を忘れる所だった。
「はい。今から行きます。30分くらいかかると思います」
「オッケー。じゃ、待ってるからね。部屋は510号室だから」
電話を切り、ジュースを飲もうと冷蔵庫の上を見たが、そこにはジュースがなかった。
(ま、まさか・・・・)
後藤の手元に目をやると、ジュースが握られていた。
もちろん中身が入っているわけがなかった。
「後藤〜私のジュース飲んだな〜」
私の問いに目をそらせながら後藤は答えた。
「えっ・・ハハハハ〜市井ちゃんは私の体なんだから、私が太らないようにと・・・」
(全く・・・ほんとに変わんないな・・・)
「全く、相変わらずよく食うな〜そんなんだから太るんだよ。吉澤が元に戻ったら『太ってる』って泣くぞ!」
半分呆れ顔で私は言った。
(無駄だよな・・・・こいつに言っても)
ため息をつき、私はシャワーを浴びはじめた。
186 名前:T2 投稿日:2002年02月11日(月)23時59分05秒
>>今週から大学のテスト三昧なので、来週の火曜日まで一時中断します。
ホントに申し訳ないです。その分多めに更新しましたので m(_ _)m
187 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年02月12日(火)15時31分41秒
静かにお待ちしてますよ。
188 名前:takatomo 投稿日:2002年02月19日(火)15時58分27秒
(ほんとにどうやったら戻れるんだろな。それにあの声・・・・絶対聞いたことあるんだよ。絶対。なんで思い出せないんだ)
私は今朝の夢をずっと思い出していた。
「これがあなたの望みなんでしょう・・・か」
無意識に口に出していた。
(何か引っかかってるんだ。何かが・・・・それがわかれば・・・・)
重要な何かを忘れていることを理解しているが、それが何かわからない。
頭にポッカリ穴があいてるみたいだ。
思い出そうとするほど、考えれば考えるほどわからなくなっていく。
(くそーなんなんだよ!もう、何でわかんないんだよ!)
自分に腹が立つ。私は考えるのをやめた。
(今は明日のコンサートのことが先なんだよな・・・・いけるかな・・・私に・・・)
また考えれば考えるほど不安になっていく。
もうホントに嫌になってくる。早くもとに戻んないかな・・・・
189 名前:takatomo 投稿日:2002年02月19日(火)16時11分33秒
>>HNが身近でかぶっていることが判明・・・こんな簡単なHNじゃしょうがないか・・・
というわけでHN変更っす。
テストも終わり、気分一新がんばりたいと思います。
よろしく。
190 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月20日(水)18時30分03秒
期待してます☆
191 名前:takatomo 投稿日:2002年02月20日(水)20時57分12秒
「後藤ーシャワーあいたよ。あれ?吉澤いつの間に?」
シャワーからでた私は、吉澤に気づき声をかけた。
「さっききたの。んじゃあシャワー使うよ」
後藤がそう答えた。吉澤はメールを打っていた。
吉澤がなんか元気がなかった。何か思いつめていたようだった。
192 名前:takatomo 投稿日:2002年02月20日(水)20時57分52秒
後藤がシャワーを浴び始めてから、私と吉澤は一言も話さなかった。
気まずい沈黙が流れていた。

「市井さん、一つ聞いていいですか?」
沈黙を破り、申し訳なさそうに吉澤が言った。
「なんだい?急に?」
振り返った私の目に、吉澤の真剣な顔が映った。
私は吉澤の前に座った。
「市井さんが娘。をやめた後って、どんな気持ちでした?」
今まで答えたことはなかった。聞かれたこともなかった。
吉澤が言ったのはそんな質問だった。
「怖かったよ・・・・いろんな意味でね・・・・」
それだけしか言えなかった。それ以上言いたくなかった。
あの時期の、世間の私に対する目を思い出したくなかった。
涙が溢れそうになったので、私は慌てて後ろを向いた。
193 名前:takatomo 投稿日:2002年02月20日(水)20時58分38秒
「そうですか・・・すいません。変なことを急に聞いたりして」
吉澤の声を聞いた時、今の彼女の気持ちがわかったような気がした。
吉澤は迷っているんだ。普通の生活というものに戻ってみて・・・・
私もそう思ってた。でも、実際モーニング娘。を辞めた私に対する世間の反応は冷たかった。
モーニング娘。を辞めたからといって、すぐに周りは「私」を「私」としては、見てくれなかった。
「辞めた」、「逃げた」、私の頭には常にそんな類の言葉がついてまわった。
吉澤は、今の私になっているわけだから、そんな思いをすることなく、普通の生活がおくれている。
そんな彼女が迷うのはしかたがないことだ。
でもそれは間違いなんだよ、吉澤・・・・
194 名前:takatomo 投稿日:2002年02月20日(水)20時59分48秒
「ふー気持ちいい。さあ練習しよっか」
後藤の声で私は我に帰った。今一番重要なのは、明日のコンサートだった。
後藤は吉澤と、私はビデオを見ながら練習を始めた。
しかし、ホントのところ、私が持ってるビデオを見て、振りを覚えるのは不可能に近い。
後藤ばっかり追ってくれるテレビ局があればいいのに・・・・
195 名前:takatomo 投稿日:2002年02月21日(木)22時59分27秒
ここで私が取れる選択肢は二つだった。
一つは、今後藤に教えてもらい、後藤の練習時間を減らして、明日のコンサートを無事乗り切る。
もう一つは、なんとかこのまま一人でやり、明日のコンサートを向かえ、後藤が元に戻ったときに迷惑をかけるか・・・・
今迷惑をかけるか、後に迷惑をかけるか・・・・

私はしばらく考え、一人で練習を続けた。後藤に弱みをみせることはできない。でも、後藤に迷惑をかけるわけにもいかなかった。
そこで私は、こっそり彼女にメールをしておいた。
196 名前:takatomo 投稿日:2002年02月21日(木)23時00分37秒
結局練習がおわり、吉澤が帰った頃には4時前だった。
「市井ちゃん、まだやるの?教えようか?」
後藤が心配そうに言った。しかしその表情は疲れきっていた。
「いいよ、大丈夫。後藤はまだお子様なんだから、早く寝ろよ。明日しんどいぞ。私はもうちょっとやって寝るよ」
実際私はかなり疲れていたが、後藤に悟られないように言った。
「もう、また子ども扱いする〜」
後藤は拗ねて布団をかぶった。
(そうやって拗ねるところが子どもなんだよ)
197 名前:takatomo 投稿日:2002年02月21日(木)23時01分28秒
「後藤」
しばらくたって、小声で私は呼びかけたが、返事はなかった。
(あいかわらず寝つきがいいよな)
私は携帯を取り出し、彼女に電話をかけた。
「もしもし、私だけど・・・うん・・・・うん、今から行くよ。ほんとにゴメンね」
電話をきり、私はそっと部屋を出た。
198 名前:takatomo 投稿日:2002年02月23日(土)01時20分39秒
「急にどうしたの?振りをド忘れしたって。ごっつあんらしくないよ。オイラほんとにびっくりしたよ」
そう言って金髪の小さな彼女は部屋に私を入れた。
「ほんとにごめんね。やぐっつあんしか頼れる人いないのよ。申し訳ない」
申し訳なさそうに私は言った。
圭ちゃんは石川と一緒だし、なっちは圭織と一緒だし・・・一人部屋なのは矢口だけだった。
どうやらジャンケンで勝ち取ったらしい。
「いいよ、電話あるまで寝てたしね。でもオイラもあんまりごっつあんの振り知らないよ」
「うん、それでもいい。覚えてるとこだけでもいいから」
そうして始まった私と矢口の練習は、朝まで続いた。
199 名前:takatomo 投稿日:2002年02月23日(土)01時21分44秒
<三日目>
夢をみた・・・
またあの木がある。
(またか・・・)
「今度は何の用なの?」
木に向かってそう言った。
しかし返事はなかった。
(なんだよー!この夢は!)
そう言ってその場に座り込んだ。

・トウ・・・・ヨ・・・イ・・・

不意に声が聞こえたが、聞き取れなかった。
200 名前:takatomo 投稿日:2002年02月23日(土)01時22分17秒
「なんだよ、もう一回言ってよ」
立ち上がり、木の方を向いた。

ゴトウハモウマヨッテナインダヨ

再度響き渡ったその言葉を聞き、私は夢から覚めた。
201 名前:takatomo 投稿日:2002年02月23日(土)01時23分06秒
「市井ちゃん、急がないと遅れるよ」
目覚めた私に後藤が声をかけた。
「う、うん。わかった」
そう答えながら私はさっきの言葉を思い出していた。
(後藤はもう迷ってない・・・か)
「市井ちゃん?どうしたの?遅れちゃうよ」
後藤がボーっとしてる私の顔を覗き込んだ。
私は慌てて用意をし、急いで下に下りた。
202 名前:takatomo 投稿日:2002年02月23日(土)01時24分08秒
コンサートなんて、1年ぶりだ。
初ステージの時と同じような感じだった。
周りに迷惑をかけないように、そんな思いでいっぱいだった。
しかし、すでにリハーサルでもミスを連発していた。
モーニング娘。は9人いるわけだから、自分のことばかり集中していてはダメなのだ。
だから自分のことが満足にできないのに、周りとあわせるなんて不可能だった。
(本当にこんなんでコンサート大丈夫かな・・・)

なんとかリハーサルを終え、控え室に戻ると、後藤が寝息をたてていた。
(こいつに緊張感はないのか・・・)
後藤の隣に座って、私は今朝の夢を思い出していた。
「おまえは何を迷ってたんだよ」
寝ている後藤の髪をいじりながら呟いた。
203 名前:takatomo 投稿日:2002年02月23日(土)01時24分52秒
「後藤、もうすぐ本番始まるよ。吉澤起こして早く来なよ」
圭織の声が聞こえた。
「おーい。何寝てんだよー後藤。もうすぐ始まるぞー」
私は後藤をゆすって起こした。
寝ぼけた目をして後藤は私を見上げた。
「全く、悩みながら寝るのってお前くらいだよ。ホントに。そういうとこは変わってないな〜」
私は笑って立ち上がった。
「へへー市井ちゃん、がんばろうね」
後藤も笑って返してきた。
204 名前:takatomo 投稿日:2002年02月23日(土)01時25分32秒
(ダメだ・・・・マジでやばいよ。このままじゃ・・・・せめて何か一つまともにできたら)
コンサート1回目、それはもう全く駄目だった。
いや、正確に言うと、駄目だったに違いない。
ステージに上がった瞬間、頭の中が真っ白になった私は、コンサートのことを少しも覚えていなかった。
(ほんとどうしよう・・・・後藤に迷惑かけちゃってるよ。こんなことなら昨日教えてもらっとくべきだったな・・・)
私は控え室の隅で座っていた。なるべく人目につかないように・・・
(昔の曲も人数変わったからフォーメーション変わってるし・・・・
変わってないものか、プッチモニくらいだよね。
・・・・プッチモニか・・・・)
その時、私にある考えがうかんだ。それと同時に後藤がこっちに来た。
「ねえ市井ちゃん。ちょっと相談があるんだけど・・・」
後藤が周りに聞こえないように小声でささやいた。
「おう。私も相談があったんだ。廊下でようか」
私たちは二人で廊下にでていった。
205 名前:takatomo 投稿日:2002年02月23日(土)01時26分27秒
(もしかして後藤も同じこと考えてるのか)
私の考えは当たっていた。後藤が「ちょこラブ」という単語を発したとき、
私は思わず話し出していた。
「パートを交代しようってことじゃないよね?私がセンターに行って、後藤が自分のパートをやる。そうすれば、いつも通りにやれるもんな」
急に話し出した私に、後藤は目を丸くしている。
「・・・・・どーしてわかったの?私の考えが?」
「いやね、私も相談ってそのことだったのよ。やっぱやりなれた所が一番だし、ちょっとしたファンサービスってことで、ごまかせるしね」
私たちは顔を見合わせ笑いあった。
206 名前:takatomo 投稿日:2002年02月23日(土)01時26分57秒
私たちは圭ちゃんにパートの交代のことを話した。
「何をいきなり言い出すのかと思ったら・・・ふざけてんじゃないわよ、全く。自分のパートでさえ、今日は満足にできてないのに、パートを交換ですって?あんたたち、いい加減にしなさいよ!遊びじゃないんだよ!」
私たちの案を聞いた圭ちゃんは、そう怒鳴り散らした。
(くそっ、圭ちゃんに事情話すわけにいかないし・・・・かといっていきなりこんなこと言って納得するわけないよな)
私がなんとか説明しようとした時、圭ちゃんが言った。
「吉澤?」
私は思わず振り返ると、後藤が泣いていた。いや、涙を流したまま、呆然と立っていた。
そして後藤は
「圭ちゃんになんか、何もわかんないんだよ!」
そう言って控え室を飛び出した。
207 名前:takatomo 投稿日:2002年02月23日(土)01時27分29秒
控え室から出て行く後藤に
「後・・・」
思わず口から出そうになったが
「吉澤!」
という圭ちゃんの声でふみとどまった。
「ったく、なんだよいきなり・・・もう」
圭ちゃんが追い掛けようとした。
「待って 圭ちゃん、私にまかせて」
圭ちゃんの手をつかんで私は言った。
圭ちゃんは無言でこっちを見た。
何かを言いたそうだったが、私は続けた。
「圭ちゃんの言ってることはもっともだよ・・・でもね、私たちは真剣なんだ。
理由は言えないけど・・・圭ちゃんも知ってるでしょ、吉澤が何の考えもなしにこんなことを冗談で言う子じゃないってことを」
「さ・・・」
圭ちゃんが何かつぶやいたが、聞き取れなかった。
私はかまわず後藤を追った。
208 名前:takatomo 投稿日:2002年02月23日(土)21時53分51秒
はぁはぁはぁ
(こうして後藤を追うのは二度目だよ・・・・
ほんとにどこにいるんだよ)

私は去年のことを思い出していた。
そう、メンバーに脱退を打ち明けたあの日のことを・・・
209 名前:takatomo 投稿日:2002年02月23日(土)21時54分39秒
――――「うそ・・・うそだよね?ねえ、ねえ」
すがるような目で後藤は私の手を握った。
「うそだよ」そう言って後藤を安心させたかった。
しかし、私は踏み出してしまったのだ。もう後戻りは出来ない。
「ごめん・・・本当にごめん、お願い、わかって」
私はそれだけしか言えなかった。
「市井ちゃんなんか大嫌いだ!」
そう叫んで、後藤は走り出した。
「後藤!」
私の声に一瞬立ち止った後藤だったが、すぐにまた走り出した。

私は動けなかった。いや、動かなかったのかもしれない・・・・
こんなことになるのは覚悟していた。
自分のワガママを通す自分への天罰だ。
私は耐えることしかできない。
必死に涙をこらえていた。
210 名前:takatomo 投稿日:2002年02月23日(土)21時55分20秒
「紗耶香!なんで追わへんの!ごっちん、かわいそうやろ」
「裕ちゃん・・・・私・・・・」
それ以上何も言えなかった。ただ裕ちゃんの顔を見ていた。
「あんた・・・もしかして、ごっちんに嫌われたから、これでよかったって思ってるんちゃうやろな」
裕ちゃんの言葉にハッとした。私は心のどこかでそう思っていたのかもしれない。後藤が私のことを嫌いになれば、私が脱退しても後藤は悲しまないと・・・・
私が動けなかったのもそのせいかもしれない・・・・
「紗耶香・・・あんたは私に似てるから、あんたの考えはよくわかんねん・・・でもな、それは間違いやで。このままやったらごっちんとすれ違ったまま終わってしまうねんで」
立ちすくんでいる私の肩に手をかけ、裕ちゃんは言った。
「そうだよ紗耶香。ごっちんもきっと待ってるはずだよ、行ってやりなよ」
涙をこらえながらなっちが言ってくれた。
(みんな・・・・ありがと・・・)
私は走って後藤を追いかけた・・・・――――
211 名前:takatomo 投稿日:2002年02月23日(土)21時55分57秒
そう、あの時も後藤はここにいたんだよな・・・・
私はトイレに入っていった。
「後藤」
入ってすぐに私は呼びかけた。
いるかどうか確認していないが、絶対にいる予感がしていた。
だが、返事はなかった・・・・
そのことが余計に私に確信を抱かせた。
「後藤?いるの?」
私は閉まっている戸の前に立ち、再び尋ねた。しかし返事はなかった。
私は再びあの時を思い出していた。
212 名前:takatomo 投稿日:2002年02月25日(月)13時59分03秒
――――「後藤」
だが、返事はなかった・・・・
私は閉まっている戸の前に立ち、再び尋ねた。
「後藤、いるんだろ?」
しかし返事はなかった。
私は深呼吸をしてから話し出した。
「後藤・・・・ごめんな、急に言い出して。でもね、これは私の夢なんだ・・・・だから・・・・だから・・・・」
言葉が続かない。言いたいことが喉につっかかってでてこない。
不意にドアが開き、後藤が出て来た。
「わかってたよ。市井ちゃんの・・・・市井ちゃんの気持ちは・・・ずっと」
(後藤・・・・)
「でも・・・・でも・・・・」
泣き出す後藤を私は抱きしめた。
「ごめんな、ほんとにごめんな、後藤」
私も涙でいっぱいだった。
「市井ちゃん・・・あとすこしだけど、がんばろうね」
後藤は痛々しいくらいの笑顔でそう言ってくれた。
私は何度も頷き、もっと強く後藤を抱きしめた。――――
213 名前:takatomo 投稿日:2002年02月25日(月)13時59分54秒
私は一つ、大きく深呼吸をした。
「圭ちゃんには、私が話しといたから。コンサートがもうすぐ始まるから、早く来なよ」
それだけ言い残して私は控え室に戻った。
きっと後藤は来てくれる、そんな確信を私はもっていた。

とうとうコンサートが始まった。
後藤はちゃんと戻ってきた。
控え室に後藤が戻ってきたとき、正直ホッとした。
しかし、後藤に何か声をかけてやることは出来なかった。
214 名前:takatomo 投稿日:2002年02月25日(月)14時00分26秒
二回目のコンサート。前回とは全く違っている。
さっきのは初ステージみたいだったが、今回はラストステージ、そう、まるで武道館だった。
時の流れがすごくゆっくりだった。何もかもがスロー再生しているように映った。
そしてとうとうプッチモニの出番がやってきた。
まさかこんな形でもう一度ちょこっとLOVEが歌えるとは思っても見なかった。
私の本当に最後のプッチモニが始まった。

1.2.1.2・・・私が歌い始めると、そこはさっきまでのステージじゃ無かった。
私と圭ちゃんと後藤。ステージにはその三人が立っていた。
「吉澤ひとみ」ではなく、確かに「後藤真希」が隣にいた。
私は思わず泣きそうになった。
ステージで歌うことの楽しさを、やっと思い出すことが出来た。
215 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月25日(月)21時49分35秒
いち〜〜ちゃん(泣
216 名前:takatomo 投稿日:2002年02月26日(火)23時12分21秒
「Thank you!プッチモニでした〜」
私の最後のプッチモニが終わった。
それはほんの数分の出来事だった。
しかし、『ステージは楽しむもの』この言葉を思い出すのには十分だった。
そうだ、私はずっとこんな大切なことを忘れていた。
ステージはちょっとくらいミスしてもかまわない。
それが『生』なんだ。だから、ミスを恐れて中途半端にごまかすことが一番ダメなんだ。
プッチモニが終わった後の私はコンサートを楽しんでいた。

そしてコンサートが終わったとき、私はある思いでいっぱいだった。
早く次のコンサートがやりたい。ただそれだけだった。
217 名前:takatomo 投稿日:2002年02月26日(火)23時13分00秒
コンサートがおわり、部屋に戻った私は、すぐにシャワーを浴びた。
圭ちゃんはまだ戻ってなかった。
いつの間にか私は眠ってしまっていた。

夢をみた・・・
そこにはあの木は無かった。
何も無い、暗闇の中に私は立っていた。

アナタノセイヨ

またあの声だ。暗闇からあの声が響いてくる。
私のせいか・・・
それが何を指しているのかは、すぐにわかった。
(だから、どうやったら元に戻れるのよ・・・・)

ソレハ、アナタジシンガイチバンワカッテルンジャナイノ?
218 名前:takatomo 投稿日:2002年02月26日(火)23時13分44秒
「紗耶香、紗耶香」
目を開けると圭ちゃんが映っていた。
「圭ちゃん・・・」
私はすぐに重要なことに気づいた。
(さっき紗耶香ってよんだよね)
私はすぐに起き上がって圭ちゃんと向き合った。
「やっぱり紗耶香だったんだね」
圭ちゃんがあきれたように言った。
私は黙っていた。どうしたらいいかわからなかった。
「隠してもダメだよ。今日のプッチやって全てわかったよ。
なんで吉澤と後藤が変だったか。吉澤が後藤なんだね」
(やっぱり圭ちゃんにはかなわないや・・・)
私は全てを打ち明けた。
219 名前:takatomo 投稿日:2002年02月26日(火)23時14分26秒
「それで、どうして戻らないの?」
素っ気無く言った圭ちゃんの態度に、私はカチンときた。
『それはあなたが一番よくわかってるんじゃないの?』
さっきの夢の言葉が頭をよぎる。
「戻れるならとっくに戻ってるわよ!何よ、何もわかんないくせに!」
思わず叫んでいた。
「そうよ、私はあんたじゃないんだから。でもね、紗耶香も私の気持ちなんて全くわかってないでしょ」
淡々と話す圭ちゃんの目は涙が浮かんでいた。
「圭ちゃん・・・」
私は今はっきりわかった。
私が脱退を打ち明けたとき、誰よりも傷ついていたのは圭ちゃんだったってことを・・・
そして、誰よりも私の意思を尊重し、自分の気持ちを押し殺していたことを・・・・
私はあの時、後藤ではなく圭ちゃんを追いかけるべきだったのだ・・・・

そして・・・そして今、私の迷いを断ち切るために、圭ちゃんはきつくあたっているということを・・・・
圭ちゃんはさらに続けた。
220 名前:takatomo 投稿日:2002年02月26日(火)23時14分56秒
「あんたはシンガーソングライターを目指してるんでしょ。
大丈夫、きっとあんたの夢は叶うよ。
私だってあんたぐらいの時に、自分の夢を叶えてモーニング娘。になれたんだから。自分を信じろ!紗耶香!」
その言葉で、私は体がスゥッと軽くなった。
戻る方法、それはこんなに単純な、しかし一番難しいことだった。
戻りたいと三人が強く願うこと。それが答えだった。
私はただ圭ちゃんに抱きついて泣き出した。
「おいおい、泣くなよ。私まで泣いちゃうじゃない」
そう言った圭ちゃんはもう涙が溢れていた。
私たちはしばらく抱き合って泣いていた。
221 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年02月27日(水)00時40分05秒
そうか・・・圭ちゃんも気づいてたんですね、あの時に。
市井ちゃんをいつも姉のように見守る圭ちゃんの眼差しが優しくてちょっぴり寂しそうです。
222 名前:takatomo 投稿日:2002年02月27日(水)19時21分23秒
「ありがとね、ほんとに・・・・じゃね」
私は精一杯の笑顔で言った。
「うん。今のあんた、ホントにいい顔してるよ・・・・じゃね」
圭ちゃんも笑顔で答えてくれたが、寂しそうな目が痛々しかった。
(ホントにありがとう・・・圭ちゃん)
私は後藤の部屋に向かった。
223 名前:takatomo 投稿日:2002年02月27日(水)19時22分10秒
後藤の部屋をノックするが、返事がない。しかし、鍵はかかっていなかった。
「ヨッスィー?入るよ」
私は部屋に入った。そこで私が見たものは、呆然とベットの上に座っている石川の姿だった。
「石川?どうした?」
声を掛けるが返事がない。
(石川が吉澤が好きなのはわかっていた。でも、後藤がもしそのことに気づかなかったら・・・・あいつ・・・)
とりあえず後藤を探し、吉澤を呼んで元に戻ることが一番の解決法だ。
でも、石川をこのままにしているわけにはいかない。
(最後までごめん、圭ちゃん)
私は圭ちゃんに電話をし、状況を説明した。
圭ちゃんが部屋に来るのと入れ違いに私は部屋をでた。
そして、後藤の携帯に電話をした。
224 名前:takatomo 投稿日:2002年02月27日(水)19時22分45秒
「もしもし、後藤?あんた今どこにいるの?」
「屋上だよ」
「なんでそんなとこに?まあいいや。うん、わかった、今から行く」
電話を切り、私はエレベーターに向かった。
エレベーターに乗っている間、私は最後の謎を解いていた。
あの木、そしてあの声はなんなのか。
そう、あれは私だ。モーニング娘。にいた頃の私だ。
私はやっぱり、心のどこかでモーニング娘。を辞めた事を後悔していたに違いない。
でも、そのことを認めたくなかったから、「モーニング娘。の市井紗耶香」を無理に押し殺していたんだろう。
そうすることで、モーニング娘。に戻りたいという気持ちを押し込めていたんだ。
だけど、私は本当は心の奥に押し込めなければいけないくらい、モーニング娘。に戻りたかったのかもしれない。
いや、後藤と一緒にいたかったのかもしれない。
自分の決めた道を後悔していたのかもしれない。
そのことが今回の事件を起こしたに違いない。
後藤、吉澤・・・・圭ちゃん、石川・・・・みんな・・・・本当にゴメン。
私の勝手なワガママでこんなにみんなに迷惑かけて・・・・
225 名前:takatomo 投稿日:2002年02月27日(水)19時23分24秒
でも、今なら堂々と言える。私の夢はシンガーソングライターだと。
その時、エレベーターが屋上に着いた。
まるで私が気持ちの整理をつけるのを待っていた様に。

「もう、何でこんなとこに?あんたの部屋行ったら、石川がボーっと座ってるだけ・・・」
私は勤めて普段どおりにそう言ったが、
「梨華ちゃんは?梨華ちゃんの様子はどうでした?」
私が言い終わらないうちに吉澤が詰め寄ってきた。
「あ・・う、うん、とりあえず圭ちゃんに頼んでる。心配ないって」
吉澤を元気付けようと明るくそう言った。
(やっぱりか・・・・ごめんね、石川、後藤。そして吉澤)
「そうですか・・・・保田さんが・・・」
吉澤はそう言って私に背を向けて座った。
そんな吉澤の姿を見ると胸が痛む。
(はやく元にもどらないと)
私は大きくひと息ついてから言った
226 名前:takatomo 投稿日:2002年02月27日(水)19時24分02秒
「今から元にもどるよ」

それは、まるで他人が言っているようだった。
私たちは顔を見合わせ頷いた。

やっと元に戻れる。もう大丈夫だ。もう今度は決して後悔なんかしない。
モーニング娘。の市井紗耶香があるから今の私があるんだ。
自分を否定しちゃダメだ。
自分の選択を後悔しちゃダメだ。
もっと自分を信じてあげなくちゃ。
夢は叶う。私はもう一度あのステージに立つんだ。
市井紗耶香として・・・・

屋上から私の部屋着くまで、誰も口を開かなかった。
部屋に入り、ベットに座り、私は口を開いた。
「なんとなくわかってるかもしれないけど、三人が強く『元に戻りたい』って思ってなきゃいけない」
二人の顔見まわしてから、私は続けた。
「そう思ってたら元に戻ると思うんだ。ついさっき、やっとそう確信がもてたの。やれるね、後藤、吉澤」
後藤も吉澤も大きく頷いた。
私たちは手を合わせ、もう一度大きくうなずいた。
そして私たちは眠りについた・・・・・
227 名前:takatomo 投稿日:2002年02月27日(水)19時27分16秒
>明日で終わらせます。ちょうど区切りがいいんで。
本当に長い間ありがとうございました。

>M.ANZAIさん
いつもレスありがとうございます。
228 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年02月27日(水)23時55分30秒
市井ちゃんの心の奥底に押し込めていたもの・・・
そこに気づくことが、これからの一歩に必要だったんですね。

全編をとおしてのいよいよラストですね。
楽しみにしております。
229 名前:takatomo 投稿日:2002年02月28日(木)14時53分38秒
<エピローグ>
2001年12月9日

私はやっと帰ってきた。
「モーニング娘。の市井紗耶香」としてではなく、「市井紗耶香」として。
あれから半年、私はずっとコンサートがやりたい、と思い続けていた。
その願いがやっとかなう。
しかし、同時に不安でいっぱいだった。
私は一人なんだ、もうフォローしてくれる人はいない。ミスはできないんだ。
そのことが大きなプレッシャーとなっていた。
230 名前:takatomo 投稿日:2002年02月28日(木)14時54分34秒
控え室で一人震えている私に、裕ちゃんが声をかけてくれた。
「どうしたん、紗耶香?緊張してんのか」
顔を上げて裕ちゃんを見ると、裕ちゃんも緊張しているのがよくわかる。
でも、それを隠して私の緊張をほぐそうとしてくれている。
裕ちゃんは更に続けた。
「ミスしてもいいんや。私らがおんねんから。あんたは思い切ってやり。
これはあんたのコンサートや。お客さんはあんたを見に来てるんやで。
あんたがちぢこまってってどうするの!あんたは将来一人で歌いたいんやろ?」
(それじゃ逆にプレッシャーかけてるって・・・)
でもそんな裕ちゃんの心遣いはとてもうれしかった。
「ありがとね。裕ちゃん」
私は立ち上がった。
231 名前:takatomo 投稿日:2002年02月28日(木)14時55分17秒
『ステージを楽しむ』
こんな大切なことを私に思い出させてくれたのがあの事件だった。
もし思い出していなかったら、私はここにはいなかったかもしれない。
過去を引きずったまま、迷ったままだったかもしれない。
あの時、みんなに多くの迷惑をかけた。
その埋め合わせはこんなことでしかできない。
そう、市井紗耶香が最高のステージをすることでしか。

「ねえ、二人だけどあれやらない?」
「あれか?なんか恥ずかしいな。二人やと」
私の考えを察した裕ちゃんは、そっと手を差し出した。
私はその上に手を差し出す。
232 名前:takatomo 投稿日:2002年02月28日(木)14時56分04秒
「それじゃ、今日は紗耶香の初のコンサートです。精一杯やりましょう。それじゃ・・」

「がんばっていきましょーい」

私たちはステージに向かった。
私の新たな一歩はここから始まる。
そうだ、市井紗耶香の人生のステージはまだまだ始まったばかりなんだ。
233 名前:あとがき 投稿日:2002年02月28日(木)15時03分01秒
やっと終わった。約5ヶ月間・・・・
よく続いたもんです。途中全くかけなかったこともあったけど、無事終えることができました。
まあ最後はベタですけど、やっぱり紗耶香のコンサートシーンがいいかと・・・・
234 名前:あとがき 投稿日:2002年02月28日(木)15時03分39秒
<後藤編>
テーマは「成長」かな。
市井からの本当の意味での独立。今さらながら、書いてみたかった。
当初の予定ではこんなに長くなる予定じゃなかった(w
石川をからめると、勝手に動き出して・・・・
気がつけばいしよし気味になっていき、ずるずると・・・・・
石川恐るべし!!(w
235 名前:あとがき 投稿日:2002年02月28日(木)15時04分17秒
<吉澤編>
テーマは「運命」かな。
はっきりいって全く考えてませんでした。
だから逆に自由に書けたかな。
最近推しの高橋をからめてみたり・・・
ある意味、一番書いてて面白かったかも・・・・
236 名前:あとがき 投稿日:2002年02月28日(木)15時04分56秒
<市井編>
テーマは「後悔」かな。
普段から後悔ってよくしますよね。
こっちを買ったけど、やっぱりあっちの方がよかったっていう日常的なことから、自分の人生に関わることまで。
でも、やっぱり過去には戻れないわけだから、それを選択した自分を信じるしかないんですよ。
それで、その状況を如何にいいものにするか、与えられた状況で如何に頑張るか、結局そうするしかないんですよ。
後悔しても過去には戻れないんだから。
237 名前:あとがき 投稿日:2002年02月28日(木)15時05分56秒
ちょうど今、受験等で選択しなければならない事が多い時期です。
でも、自分が迷って、十分考えて選んだ道があるなら、それを貫き通すことが大事だと思う。
自分が悩んで決めた道を後悔したら、その時決断した自分、そして今の自分を否定することになってしまうんですから。
って勝手な自論を語っちゃいましたけど。
まあ、そんなことをこの作品で言いたかったんですけど・・・・
まだまだ未熟で、全然表現できてませんね(w
238 名前:あとがき 投稿日:2002年02月28日(木)15時08分07秒
最後に、三部作って形は難しかったです。最後になればなるほど書かなければいけないことが決まってきて、後から思いついたことを入れるのが難しい。
まあなんとか新メン(高橋除く)以外の全員出せたからよかった(w

まだ書いてないこといっぱいありますけど、三人の視点からなので、書けないんです。
また機会があれば、別に書くかもしれませんが・・・・
239 名前:あとがき 投稿日:2002年02月28日(木)15時11分50秒
またまた最後に、読んでいただいたみなさま、本当に最後までお付合いありがとうございました。
レスを頂いたみなさまには本当に感謝しております。
一応次回作も考えていますので、またその時はよろしくお願いします。


2002/2/28 takatomo
240 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年03月01日(金)20時14分56秒
作者さん、連載お疲れ様でした。
三人三様の思いが伝わってきて時にドキドキしながら、
時にワクワクしながらとても楽しく読ませていただきました。
途中、三人以外のメンバーの動向や言葉などから、
もしかするとサイドストーリー的な番外編も有りなのかなと
少しばかり期待しております。(勝手な思いでスミマセン。)

では、次回作も期待をいたしておりますので、またの機会に。
241 名前:takatomo 投稿日:2002年03月07日(木)22時33分24秒
次回作をここで始めました。
http://members.tripod.co.jp/pmtakatomo/index.html
よろしくおねがいします。
242 名前:takatomo 投稿日:2002年03月07日(木)22時35分59秒
ミスです。さっきのはこの小説を補完したHP。
次回作は
http://m-seek.net/moon/index.html#1015000232
です。
すいません
243 名前:takatomo 投稿日:2002年05月10日(金)13時11分31秒
この続きに短編書いていきます。
とりあえず、今日か明日に一個。
ここまで下がってるけど、あえて上げずにいきます。
244 名前:短編「ANGEL HEART」 投稿日:2002年05月12日(日)01時58分18秒
もうすぐ夏がやってくる。
この時期に、私は毎年思い出す。
たった数時間の出来事だったけど、一番の思い出に残っている出会い。
私は思い立ったように、公園に向かった。

5年前、私は16歳だった。
特にやりたいこともなく、ただバイトしていた。
朝起きて、バイトに行き、終わったらそのまま帰って寝る。
そんな生活を毎日送っていた。
何の変化もない毎日。
そんな或る日、私はあの子に出会ったのだ。
バイト帰りに通る海辺の公園・・・あの子はそこにいた。
245 名前:短編「ANGEL HEART」 投稿日:2002年05月12日(日)01時59分51秒
正直、私は人に関わるのが好きではない方だったので、気にかけていなかった。
しかし、毎日その子はそこにいた。たとえ雨が降っていても・・・
そのうち、私はその子のことが気になり始めた。

1週間たった或る日、いつも通り公園を通り過ぎようとすると、その子は泣いていた。
私は思わず駆け寄り、「どうしたの?」と声を掛けた。
女の子は驚いたような顔で、振り返った。
その眼はやはり、涙にぬれていた。
「あなた、ここんとこ、いつもここにいるでしょ?」
女の子は黙って頷いた。
「私もいつもここを通るんだ」
「知ってます。保田さんですね」
消えそうな声で女の子は言った。
なぜ私の名前を知っているか不思議に思ったが、そのことは聞かなかった。
「で、どうしてあなたは泣いてたの?」
私の問いに、女の子はポツリと呟いた。
「人間って・・・・悲しいね」
私は思わず耳を疑った。
しかし、彼女は再び呟いた。
「人間って・・・・悲しいね」
「ちょっと、どういうことよ。何がいいたいわけ?」
混乱する私に、彼女は語りだした。
246 名前:短編「ANGEL HEART」 投稿日:2002年05月12日(日)02時01分48秒
彼女は天使らしい。
私はそんなものの存在を信じないが、本人がそういうなら、そうなんだろう。
別に背中に羽があるわけでもなく、頭の上に輪があるわけでもなかった。
ごくごく普通の女の子の姿をしていた。
しかし、彼女の言葉には、信じ込ませる不思議な力があった。

それで、彼女は一人前の天使になるため、試験を受けているらしい。
その試験というのが、誰かの願いをかなえるといったことだ。

247 名前:短編「ANGEL HEART」 投稿日:2002年05月12日(日)02時02分26秒
「そんなの、誰でもいいんなら、適当な願いをかなえてあげたらいいじゃない?」
私はあきれたようにいった。誰でも、願いの一つや二つはあるに決まってる。
逆にない人間のほうが珍しい。
「ダメなんです!本当に心の底から願っているものでないと」
急に大声をだし、彼女は反論してきた。
「でないと、私は力を使えないんです。必死に願って、努力している誰かの思いでないと、力の源にすることは出来ないんです」
天使はそこまで言うと、うつむきながら言った。
「でも・・・いないんです。そこまで強い願いを持っている人が。ずっと探しているんですけど・・・・
みんな、口では『〜したい』『〜になりたい』って言ってるだけで・・・・努力をしようとしてない。
明日までに、願いをかなえないと、不合格になるんです」
248 名前:短編「ANGEL HEART」 投稿日:2002年05月12日(日)02時03分05秒
彼女の言葉を聞きながら、私は自問自答していた。
私のやりたいことって何だろう?
私の目標って何なんだろう?
私は何のために毎日を送ってるんだろう?

・・・・・・・その答えは見つからなかった。
変化のない日常を繰り返しているだけの私に、そんなものがあるはずもなかった。
そりゃあ、「お金が欲しい」とか「芸能人になりたい」とか思うことはいくらでもある。
でも、だからといって、何とかしようという気は起こらない。
結局みんなそうなんだろな・・・・
そう考えると、少し悲しくなった。
249 名前:短編「ANGEL HEART」 投稿日:2002年05月12日(日)02時03分40秒
「で、もし不合格になったらどうするの?」
「もう、二度と天使にはなれません。天使になれない天使は、存在を消されます。」
天使の目は、再び潤んでいた。
私は隣に座りながら言った。
「よし、私が手伝ってあげる!何かに一生懸命な人を探せばいいんでしょ?」
「でも・・・・一週間ずっと探してて、誰もいなかったんですよ・・・
もう無理ですよ」
天使はひざをかかえ、うずくまった。
私はかわいそうに思い、ちょっと待っててと言い残し、その場を後にした。
250 名前:短編「ANGEL HEART」 投稿日:2002年05月12日(日)02時04分13秒
「もしもし?あんたって、なんかやりたいことや、なりたいものある?」
私は友達一人一人に電話をかけてみた。
「え〜なんだろ?彼氏とか?」
「そんなんじゃなくて、心の底から欲しいって思っていることよ。これが叶えば死んでもいいってもの」
「・・・・・無いよ〜そんなの急に言われても、思いつかないよ。
あれ?もしかして、私の誕生日近いから?プレゼントくれるんだ、うれし〜」
しかし、全員こんな調子で、口だけの願いしか持ってなかった。

どうしよう・・・・もう時間が無い。
再び公園に戻ったとき、時計の針は12時を刺そうとしていた。
あれから約5時間、知っているだけの人間に聞いて回ったが、全員ダメだった。
「ゴメンね・・・・ホントに・・・・」
ポツリといった。
天使は何も言わなかった。
251 名前:短編「ANGEL HEART」 投稿日:2002年05月12日(日)02時04分52秒
人間って・・・・悲しいね
ふと、天使のいったことが頭をよぎった。
せめて、私が努力してたら・・・・あの子は試験を通ることが出来たのに。
本当の望みをもたない人間のために、本当に叶えたいことが叶わない人(?)がいる。
私の16年間は何だったの?
私は初めて、自分の人生を心底後悔した。
でも、もうどうすることもできない。あの子はもう、天使になることはできないのだ・・・
神様・・・もしいるなら、あの子を天使にさせてあげて・・・・お願いします!!
252 名前:短編「ANGEL HEART」 投稿日:2002年05月12日(日)02時05分27秒
急に昼のようにあたりが明るくなった。
顔をあげると、さっきの天使がいた。
「ありがとうございます」
その声は直接頭に響いていた。
「あなたの願い、確かにかなえました」

え・・・・私の願い・・・・
私はよく考えてみた。
(神様・・・もしいるなら、あの子を天使にさせてあげて・・・・お願いします!!)
あ・・・・これって、私の心からの願いだったんだ・・・

「その通りです。本当にありがとうございました」
にっこり微笑み、天使は言った。
「そんなのありかよ!もっといいこと願えばよかったよ。あー損したな」
涙を浮かべながら、私はわざと大声で言った。
「すみません。もういかなくてはなりません。本当にありがとうございました。私は決して忘れません」
天使は手を差し出し言った。
「私もだよ。これからは、もうちょっとまともに生きてみるよ。あんたがびっくりするくらいね」
私たちは握手を交わした。
そのまま、光が弱くなっていき、天使の姿は消えていった。
一人、公園で、私は手を見つめ続けていた。
253 名前:短編「ANGEL HEART」 投稿日:2002年05月12日(日)02時06分36秒
そして今、私は再び、その公園にきている。
そこは、5年前と全く変わっていなかった。
あの日から、私は自分の夢をかなえるために必死でやってきた。
そして、モーニング娘。に入ることができた。
(見てるか、天使?私はがんばったぞ!あんたもがんばりなよ)
ふと、天使の声が聞こえたような気がした。
周りを見回すが、誰もいなかった。
(でもね、よく考えると、あんたって石川に似てたんだよね・・・)
私は一人、笑みを浮かべながら、公園を後にした。
254 名前:短編「ANGEL HEART」 投稿日:2002年05月12日(日)02時07分27秒
               
                終

255 名前:takatomo 投稿日:2002年05月12日(日)02時10分37秒
http://members.tripod.co.jp/pmtakatomo/index.html
ここが私のHPです。
他の作品もありますので、もしよければ見てください。

この作品は実験的に書いたので、かなり内容がしょぼくなり、申し訳ありません。
今後の糧にはしていきたいとおもいますので、感想などをいただけるとうれしいです。

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