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小説『青天の霹靂』
- 1 名前:foo? 投稿日:2001年10月15日(月)16時18分22秒
- 初小説です。相当ヘナチョコですが読んでみてください。登場人物は保田、石川、吉澤です。ではさっそく。
- 2 名前:foo? 投稿日:2001年10月15日(月)16時19分25秒
- あ、あの〜保田さん。今日ってこの後暇ですか?」
仕事がすべて終わり、控室で帰り支度をしていると、石川が声を掛けてきた。
「うん、別に何も無いけど。どうかしたの?」
「相談したいことがあるんですけど…いいですか?」
石川は少し恥ずかしそうな様子で他のメンバーに聞こえないように耳打ちをした。何なのよ?気になるわ。少し怖い気もしたが、あたしはすでに好奇心の誘惑に負けてしまっていた。
「じゃあ、この後喫茶店にでも行く?」
「はい!」
そういって、あたしに礼をすると急いで帰り支度を始めた。そんなに大事な相談なのだろうか。まあ、たまには石川とじっくり話すのもいいかな。最近絡んでないし。そんな事を考えていると、石川の声が聞こえた。
「保田さ〜ん、早く行きましょうよ〜。」
「ああ、はいはい。じゃーね皆、お疲れ〜。」
そしてあたしは石川と控え室を出た。
- 3 名前:foo? 投稿日:2001年10月15日(月)16時24分45秒
- 外に出て、あたし達は5分ほど歩いた所にあった喫茶店に入った。あたし達は席について、コーヒーを注文した。一体何を相談したいというのか。あたしとマンツーマンで、話したいことって…。何?想像もつかない。
程なくしてコーヒーが運ばれてくると、石川は話を切り出した。
「実は、相談っていうのは…」
神妙な顔つきで話しだした石川を見て、私にも少し緊張が走る。
「私、あの…好きな人が…出来たんです…。」
石川の顔は見る見るうちに桜色になっていった。好きな人出来ちゃったのかよ!心の中で三村ツッコミをかましていたが、あたしは少し嬉しくもあった。恋する乙女になったんだねぇ。
「ほーほー、いいんじゃないの?好きな人がいると、少しでもいい所を見せようと頑張るでしょ?仕事 にもプラスになるし。」
「でも…。」
それだけ言うと石川はうつむいてしまった。でも?何なの、一体。
- 4 名前:foo? 投稿日:2001年10月15日(月)16時26分59秒
- 「まあ、相手が誰でも好きだったら、とにかくアプローチしないと。何にもしなきゃ恋なんて成就しないよ。大丈夫、石川だったらどんな人でも受け入れてくれるって。」
あたしの無責任な発言を黙って聞いていた石川が小さい声で言った。
「…の子でもですか…。」
「えっ?何だって?」
「女の子でもですか?」
あたしはあやうく、かわいい後輩の前でコーヒーを吹き出す所だった。危機一髪。だが、そんなあたしに追い討ちをかけるように、石川は2つ目の爆弾を投下した。
「私、ヨッスィーが好きなんです。」
吹き出すのを我慢したせいで、気管にコーヒーが入ってあたしはむせてしまった。な、何つった!?ヨッスィーが好き!?あ、あたしの聞き間違いかな?一応確認してみよう。
「あ、あのー、ヨッスィーって言うのはあたしがプッチモニでも一緒にいるあのヨッスィー?」
「はい。」
「今日一緒にお弁当食べた?」
「そうです。」
そうなのね…。やっかいな相談を受けたものだわ。あたしはかなり後悔した。
- 5 名前:foo? 投稿日:2001年10月15日(月)16時30分14秒
- 「ねえ、どうして好きになっちゃったの?」
悩みをあたしに打ち明けたことで、気が楽になったのだろうか、石川は嬉しそうに話し出した。
「ヨッスィーって格好いいし、優しいし、いつも一生懸命だし…でも、でも気付いたらもう好きになっ てたんですよぉ!それからぁ…」
声を弾ませて吉澤の事を話す石川の目は正に恋する乙女のものだった。以前から男前だとは思っていたが本当に女の子に惚れられるとは。恐るべし、吉澤。でもほっとくと、石川の吉澤トークがいつ終わるか分かんないから1回止めなくちゃ。
「それで、あたしにどうして欲しい訳?」
あたしが言うと、石川はすがるような目であたしをみた。うっ、そんな目で見ないでよ。
「私がヨッスィーに告白できるように協力して欲しいんです。あとどうすればヨッスィーが振り向いて くれるかも教えて欲しいんです。お願いします!」
石川は深く頭を下げてあたしに頼み込んできた。おいおい、あたしはあんたの教育係で、恋のキュー ピッドじゃないんだよ。
- 6 名前:foo? 投稿日:2001年10月15日(月)16時33分00秒
- でもまあ面白そうだし。ま、いっか。
「分かった、分かった、協力するわよ。でも駄目でも恨まないでよ。」
「本当ですか?!ありがとうございます!」
石川は目を輝かせてあたしに頭を下げた。あーあ、どうしよ。その場の雰囲気に負けてOKはしたものの、あたしは冷めたコーヒーを飲みながら、すでに頭を抱えたい気持ちになっていた。
- 7 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月16日(火)01時05分23秒
- 保田視点のいしよし。面白そう
- 8 名前:名無し男 投稿日:2001年10月16日(火)14時38分47秒
- 俺やったら噴き出すどころか鼻から出してたな
これは楽しみ
- 9 名前:foo? 投稿日:2001年10月16日(火)15時38分09秒
- 翌日はプッチモニでの収録のためにあたしは某テレビ局に来た。中に入って控室のドアを開けると、そこにはもう吉澤の姿があった。
「あっ、保田さん。おはようございます。」
おはよう、と軽く挨拶をしてあたしは椅子に座った。よりによって、いきなり二人きりとは。いつもなら何の気なしに話の一つや二つもするのだが、昨日石川の話を聞いたせいでどうも意識してしまう。気付けばあたしは吉澤を観察していた。
なるほど、確かにそこらへんの男よりはずっとかっこいい。パッチリした瞳が美少年的なオーラを醸し出している。きっと女子校にいたら、靴箱の中にラブレターが大量に入っていそうなタイプだ。背も高いし、石川でなくても惚れてしまう女の子もいるだろうな。と、そこまで考えた時に吉澤と目が合った。
「保田さん、何ジロジロ見てるんですか?何かついてます?」
「いや、吉澤ってさあ、男前だなーと思って。」
しまった。あたしは何を言ってるんだ。
- 10 名前:foo? 投稿日:2001年10月16日(火)15時41分53秒
- 更新です。
実はこの作品自体はもう仕上がっているのですが、一気に上げたほうがいいのでしょうか?
読者の皆さんの反応を見て決めたいと思っています。ご意見よろしくお願いいたします。
- 11 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月16日(火)16時34分19秒
- 出来てるなら、サクサクいってほしいです(w
でも作者さんのペースで。
ヤッスー視点のいしよしは珍しい。
( `.∀´)<期待してるわよ!
- 12 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月16日(火)16時47分21秒
- 私も出来るならイッキに読みたい。
どんな結末になるか楽しみ。
- 13 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月16日(火)19時44分26秒
- 私もできればサクサクっと読みたいです。
- 14 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月17日(水)02時16分40秒
- イッキに更新してまとまった感想か
小出しで
レスを貰うか作者さんの望むほうで良いのでは…
何はともあれオモシロそう!?
- 15 名前:foo? 投稿日:2001年10月17日(水)14時54分13秒
- 皆さんレスありがとうございます。自分で色々考えましたが、少し多めに出しつつ、何回かに分けて更新していこうと思います。
話の筋は変わりませんが、後で読み直して、先の方の表現とかを考証していきたいので。それでは今日の分です。
- 16 名前:foo? 投稿日:2001年10月17日(水)14時56分02秒
- 「どうしたんですか?急に。」
「いやいや!なんかふとそう思ったから。気にしないで!」
変な保田さん、と言わんばかりに吉澤は訝しげな表情であたしを見た。あ〜もう!何か調子が狂うわ。早くごっちん来ないかな。そんな事を思っていると、局の人が入って来た。
「お時間です。準備の方、よろしくお願いしまーす。」
「あのー、まだ後藤がきてないんですけど。」
「今日は風邪ひいて、お休みっていうことですけど。聞いてませんでした?」
ナヌ?じゃあ、二人でやるって事?ま、まあいつも通りやればいいのよね。あたしは、平静を装うことにした。ああ、変なこと口走ったりしなきゃいいけど。
「保田さん、早く行きましょうよ。」
吉澤の呼びかけに、あたしは重い腰を上げた。ああ、変な事口走ったりしなけりゃいいけど。不安を抱えながら、あたしは控室を出た。
- 17 名前:foo? 投稿日:2001年10月17日(水)14時57分18秒
- いつもの様にさんざんイジられて、収録も無事に終わり、今日はこれで解散ということになった。丁度ご飯時だし、吉澤を誘って色々話をしてみようとあたしは思った。もう、さっさと石川に告白させて肩の荷を下ろしたい、というのが本音ではあるのだが。
「よ、吉澤、よかったら一緒にご飯食べない?」
普通のことのはずなのに、今のあたしにとってはやたら恥ずかしい事のような気がした。
「珍しいですねぇ。保田さんがあたしを誘うなんて。いいですよ。」
「この近くにおいしいお店知ってるから、そこでいい?」
「いいですよ。じゃあ早く行きましょうよ。私お腹すきましたよぉ。」
吉澤はお腹を抑えながらいった。あたしの気持ちなんかわかってないだろうな。
「じゃ、行こっか。」
あたし達はテレビ局を後にした。
- 18 名前:foo? 投稿日:2001年10月17日(水)14時58分11秒
- いつもの様にさんざんイジられて、収録も無事に終わり、今日はこれで解散ということになった。丁度ご飯時だし、吉澤を誘って色々話をしてみようとあたしは思った。もう、さっさと石川に告白させて肩の荷を下ろしたい、というのが本音ではあるのだが。
「よ、吉澤、よかったら一緒にご飯食べない?」
普通のことのはずなのに、今のあたしにとってはやたら恥ずかしい事のような気がした。
「珍しいですねぇ。保田さんがあたしを誘うなんて。いいですよ。」
「この近くにおいしいお店知ってるから、そこでいい?」
「いいですよ。じゃあ早く行きましょうよ。私お腹すきましたよぉ。」
吉澤はお腹を抑えながらいった。あたしの気持ちなんかわかってないだろうな。
「じゃ、行こっか。」
あたし達はテレビ局を後にした。
- 19 名前:foo? 投稿日:2001年10月17日(水)14時59分44秒
- 局から五分も歩くと、あたし達はお目当ての店に着いた。そのお店はちょっと洒落たイタリアンレストランで、そういう話をするにはもってこいだった。あたしもいつかは素敵な人と、なんて思っていたのに目の前にはかわいい女の子。今度は絶対彼氏と来てやるーっ!そんなあたしの心の叫びなど知るはずも無く、吉澤は料理に舌鼓を打っているようだった。
食事も一段落したところで、あたしは話を切り出そうとした…が、その前に吉澤の方から急にあたしに話しかけてきた。
「そういえば、保田さんって好きな人とかいるんですか?」
はっ?自分がしようと思っていた質問をされて、あたしは動揺した。なんのつもりでこんなことを聞くんだろう?まさか石川との密談の事がどっかから吉澤の耳に入ったとか?脳をフル回転させてあたしは色々な思いを巡らした。
「保田さん、聞いてるんですか?答えて下さいよぉ。」
吉澤の目は真剣だ。何があったんだろ?まあ、いいか。とりあえず答えとこう。
「今はね、仕事が楽しいし、やりたいことが色々あるから恋は二の次って感じかな。だから特別に好きな人とか、っていうのはいない。じゃあ吉澤はどうなの?」
よしよし、自然な流れだわ。
- 20 名前:foo? 投稿日:2001年10月17日(水)15時01分18秒
- 「私は、その…。」
吉澤が言葉を濁していたので、あたしはほんのちょこっとつついてみた。
「こらこら、あたしにだけ言わせるなんてずるいぞぉ。教えてくれてもいいじゃん。娘。でもプッチでも一緒なんだからさ。」
すると吉澤はうつむき加減で話し始めた。
「好きな人はいるんですけど、その人はなかなか気付いてくれないんです。」
あちゃー。そうなんだって、石川。
「吉澤に好かれてるのに気付かないなんて。もったいないねぇ。」
「その人は厳しい所もあるんですけど、いつもはすごく優しくて、私をいたわってくれて…。もう憧れてるんです。」
吉澤の顔が見る見るうちに真っ赤になった。可愛らしいなあ。誰なの?その鈍感なやつは?
「でもね、好きだと思ったら自分から何かアプローチするのも大事じゃないのかな。待ってるだけじゃ何も始まらないんだよ。そして、勇気がいることかもしれないけど、告白して思いを伝えること。そうすればきっと気持ちはその人に届くよ。大丈夫。なんたって吉澤だもん」
何か昨日石川にもこんな事言ったような。デ・ジャブ?
- 21 名前:foo? 投稿日:2001年10月17日(水)15時04分45秒
- すいません。17と18に同じ物を書いてしまいました。メモ帳から写す時にしくじりました。
読みづらくしてしまいすいませんでした。とりあえず、今日はここまでです。
- 22 名前:名無し男 投稿日:2001年10月17日(水)21時01分54秒
- 鼬ごっこ開始!!
- 23 名前:foo? 投稿日:2001年10月18日(木)09時58分30秒
「私、頑張ってみます。告白して気持ちを伝えます!」
吉澤はあたしの言葉で何か吹っ切れた感じになった。よしよし。頑張るんだよ、吉澤!応援してるからね。と、思っていたら、吉澤はあたしを見つめて言った。
「保田さん、好きです。」
あたしの周りで時間が凍りついた。何?今なんて言った?保田さんが好きって言った?
「え、えっと、どこの保田さん?」
あたしは気が動転して変な事を口走った。吉澤の前には保田さんってあたししかいないじゃないのよ。
「ずっと前から、憧れてました…」
吉澤は頬を紅潮させながらそれだけ言った。その目は真剣そのものだった。どうやら、ドッキリとかでは無いらしい。こ、困った。どうしよう。あたしにはその気は無いわよ。あたしは動揺を隠せないまま、次の言葉を発した。
「あ、あのねえ吉澤、あたしは女…」
「分かってます!でも、でも、好きでしょうがないんです!」
吉澤の目に涙が浮かんできた。ああ、お願いだから泣かないで。あたしがあんたをいじめてるみたいじゃない!
- 24 名前:foo? 投稿日:2001年10月18日(木)10時00分36秒
- 「私だって、自分がおかしいことぐらい分かってるんです。だけど、どんなかっこいい男の子と比べても、やっぱり保田さんが私にとって一番素敵な人なんです…。」
吉澤はその純粋で、宝石の様に綺麗な目に涙を溜めてあたしを見た。か、かわいい…。いやいや、あたしにはその気は無いってーの!とにかく、この場を収めないと。あたしは一瞬頭をよぎった邪念を振り払い、平静を保っ、吉澤をなだめる事にした。
「ねえ吉澤、あんたの気持ちは良く分かった。すごくうれしいよ。だけど、あたしはあんたの気持ちをそのままは受け止めて上げられない。『恋人』にはなってあげられないよ。でもさ、あたし達はかけがえの無い仲間じゃない。」
「…」
「家族みたいに皆で泣いたり、笑ったり、馬鹿やったり。あたしはその中であんたをすごくかわいいと思ってるよ。嫌いなんかじゃない。大好きだよ。だから、もう泣いたりしないで。ねっ、吉澤に泣き顔なんて似合わない。笑ってる吉澤があたしは素敵だと思うよ。ほら。」
ボロボロ大粒の涙を流している吉澤にあたしはハンカチを渡した。
- 25 名前:foo? 投稿日:2001年10月18日(木)10時01分36秒
- ごめんなさい、保田さん。迷惑ですよね、こんな事…。」
吉澤はようやく泣き止んだ。
「いいんだよ、別に。」
「やっぱり…保田さん、優しいです。その香水の香りもとっても安心出来て…大好きです。」
吉澤はやっと落ち着いたようだ。よかった。
「じゃ、帰ろっか。」
あたしは吉澤と店をでた。もう夜も遅かったから駅まで吉澤を送っていった。
駅につくとすぐに電車がホームに入ってきた。
「じゃあね吉澤。今日はゴメンね。」
「いいえ、わたしこそ。泣いたりしちゃって。」
「そんなこと無いよ。じゃ、気をつけて帰るんだよ。」
吉澤が乗った電車を見送ると、あたしは家路についた。これで…よかったんだよね。あたしの胸がチクリと痛んだ。吉澤のあの泣き顔が、いつまでも心の中であたしの気持ちを揺さぶり続けていた。夏の夜に光る星が今日はいつもより暗く、あたしの目に映っていた。
- 26 名前:foo? 投稿日:2001年10月18日(木)10時06分18秒
- 更新です。今日は区切りの良い所まであげてみました。
- 27 名前:名無し男 投稿日:2001年10月18日(木)10時08分08秒
- よっしゃ!!リアルタイム!!
- 28 名前:LINA 投稿日:2001年10月18日(木)13時16分31秒
- チョ〜〜〜〜おもしろい!!!
ヤス好きにはたまりません(w
foo?さん頑張ってください!
- 29 名前:foo? 投稿日:2001年10月19日(金)11時56分11秒
- >27,28さん
レスありがとうございます。この作品は何度も練り直しただけにうれしいです。
こちらの都合により土,日は更新できませんがその分今日は大目にあげます。
では続きです。
- 30 名前:foo? 投稿日:2001年10月19日(金)11時57分58秒
- 「おはよーございます!」
次の日の朝、テレビ局の廊下を歩いていると、あたしの耳に高い声が聞こえて来た。石川だ。
「保田さん、ちょっといいですか?」
石川はあたしの方に真っ直ぐ歩いてきてそう言った。
「ああ、はいはい。あっ、皆おはよー。」
控室のドアを開けて、中に入るなり、石川はあたしに耳打ちした。
「昨日、ヨッスィーとご飯食べたんですよね?」
何っ!一体誰がそんな事を…他に誰もいなかった筈なのに。部屋の中をグルッと見回すと、後藤がニヤニヤしてこっちを見ていた。あんたか!昨日風邪で休んだんじゃなかったのかい!きっと吉澤からメールか何かが来たに違いない。
「どうだったんですか?私の事、何か言ってくれました?」
つっこまれて、あたしは困った。あたしが吉澤に告白された、なんて言える筈が無い。そんな事を言ったら、目の前の石川はもちろんの事、まだ来ていない吉澤もどうにかなってしまうに違いない。
- 31 名前:foo? 投稿日:2001年10月19日(金)11時59分23秒
- 「あ、あのね、つまり…。」
あたしがしどろもどろになっていると、控室のドアが開き吉澤が入ってきた。
「おはようございます、保田さん。」
「あ、ああおはよう…」
まるで何も無かったかのように、吉澤は笑顔で挨拶をしてきた。そのあっけらかんとした様子に、あたしは気の抜けたような挨拶しか出来なかった。
「あっヨッスィー、おはよ〜♪」
吉澤を見つけるなり、石川はそこへ飛んで行ってしまった。その背中を見送ると、あたしは逃げ場所を求めて椅子に座ると、テーブルの上にあった雑誌のページをパラパラめくった。しかし、頭の中では別の事を考えていた。
『保田さん、好きです。』
吉澤の精一杯の告白、目に浮かんでいた涙が、あれからずっとあたしの頭の中に住み着いていた。どうして?
それはきっと後悔と罪悪感。真っ直ぐすぎる吉澤の気持ちにどうしたら良かったのだろう。あんな態度でよかったの?もっと傷つけずに断る方法もあったんじゃないの?頭を巡るいくつもの自問自答にあたしは懊悩していた。
- 32 名前:foo? 投稿日:2001年10月19日(金)12時00分23秒
- 「…保田さん、そういう物に興味があるんですかぁ?ちょっと意外です。」
「えっ?…あっ!ち、違うのよ!」
いつのまにかあたしの所へ戻ってきていた石川の声で我に返り、あたしは驚いた。さっきまでめくっていた雑誌のページには大きく、『こげぱん特集』と書いてあった。
「隠さなくてもいいですよぉ。あっ、ヨッスィー、保田さんねー、」
よ、よりによって吉澤を呼ぶなんて!気まずいわ。
「いいんじゃないですか。こげぱん可愛いですよね。」
吉澤はいつもの口調で答えをよこした。もう、吉澤の中では気持ちの整理がついたのだろうか。それならば良いのだが。でも、ねぇ…
「あっそーだ。」
あたしが考えていると、石川が思い立ったように話し掛けてきた。
「保田さん、ヨッスィー、今日お仕事終わったらこの3人で帰りません?」
もう仕掛けるの?この子はなんてアグレッシブなのかしら。でも、良い機会だし。
- 33 名前:foo? 投稿日:2001年10月19日(金)12時03分04秒
- 「あたしはいいよ。で、吉澤は?」
吉澤はしばらく考えている様子だったが、
「いいよ、梨華ちゃん。」
と言った。
「じゃあ、それで。」
石川はそういうと鼻歌交じりで衣装に着替え始めた。今日、全部決着がつくのね。
平静を装いながらも、あたしはドキドキしていた。
「OKです!おつかれさまでした!」
スタッフの人の大きな声がスタジオに響く。これで今日の仕事は終わった。しかし、あたしにとっては、これからが今日の山場と言っても過言ではない。石川は、吉澤は、どんな気持ちなのだろう。明日からもこんな気の置けない関係でいられるのか。そしてあたしは…。
「保田さぁん、早く行きましょうよぉ。」
すでに帰り支度を終えていた石川があたしを呼んだ。吉澤もすでに支度が出来ていた。
「ああ、ゴメンね。今行くから。」
あたしは他のメンバーへの挨拶もそこそこに、二人の元へ向かった。
- 34 名前:foo? 投稿日:2001年10月19日(金)12時04分22秒
- 「私が好きなお店があるんですけど、今日はそこでいいですか?」
石川がそういうので、あたしと吉澤はいいよ、と言った。石川なりの雰囲気作りなのだろうか。まあ、いいわ。あたしの役目は石川の援護射撃なのだから、と頭の中では割り切っていたがやはりどこかすっきりしない。
「ここです。どうですか?保田さん。」
「いいんじゃない。素敵だよ。あたしこんな感じ好きだし。」
あたしは答えた。しかし、この時のあたしにはそんなさえ普通の返事でさえ、まるで演技をしているような気分だった。
「よかったー。じゃ、入りましょうよ。」
足取りも軽く、石川は店に入っていった。あたしは少し緊張しながら、店のドアを開け、吉澤と一緒に中に入っていった。
それから小1時間ほどたわいもない、しかしどこかぎこちない会話を重ねながら、食事をした。でもあたしには料理を味わう余裕などなく、石川がいつあの話を切り出すのか、そればかりが頭にあった。
「ねぇ、ヨッスィーって好きな人とかいるのかな?」
- 35 名前:foo? 投稿日:2001年10月19日(金)12時05分40秒
- ついに石川が切り出した。あたしのスプーンを動かす手が思わず止まる。何気なく吉澤の方を見てみると少し困ったような表情をしていた。
「うーん、いると言えばいるんだけど…。告白してフラれちゃったの。でも梨華ちゃんどうしたの?急に。」
「私ね、好きな人ができちゃったんだ。」
石川は照れたように頬を赤く染めて吉澤に言った。
「へぇー、梨華ちゃんに好きな人がねぇ。どんな人なの?」
「あたしもこの前相談受けたんだけどさ」
あたしは石川のサポートをすべく、会話に入り込んだ。
「石川がいうには格好良くて、一生懸命で、優しい人なんだって。でも気付いたら好きになってて、っていうんだ。でもさ、石川だったらいけると思わない?すごく魅力的だよね。女の子らしくて、さ。」
「そうだよ梨華ちゃん、当たってみなよ。大丈夫だって。」
吉澤は笑顔で石川を励ました。
- 36 名前:foo? 投稿日:2001年10月19日(金)12時06分30秒
- 「ありがとう、ヨッスィー。でも、ヨッスィーがフラれたって…」
「かなわぬ恋だったんだけどね。でもその人は私に今でも変わらないで接してくれる。そういう所が、その人のそういう優しさが私は大好きだったの。でもまだあきらめられないんだ。本当はね。」
吉澤は紅茶にミルクをいれて、その上に広がった不思議な模様を見つめていた。その目には憂いの色が浮かんでいた。あたしの胸がまた少しチクリと痛んだ。
「ねぇ、ヨッスィー、」
石川が吉澤の目をしっかりと見つめて言った。
「私じゃ…私じゃその人の代わりにはなれないかな?」
「えっ?」
「私、ヨッスィーの事が好きなの!」
ついに運命の一言が石川から発せられた。
吉澤の目は驚きの余りなのか、見開かれたままだった。それは、昨日のあたしの顔そのものだったに違いない。しかし、吉澤はその目を伏せると石川に申し訳なさそうに言った。
- 37 名前:foo? 投稿日:2001年10月19日(金)12時08分20秒
- 「…ごめんね。私は梨華ちゃんの気持ちには、答えて…あげられないよ。」
「…」
石川は何も言えずにいた。
「でもね、梨華ちゃんはずっと大事な友達だよ。私と違って女の子らしくて、憧れてるんだよ。だからさ…」
吉澤が言い終わる前に、石川は席を立って外へ走っていってしまった。そして、その場にはあたしと吉澤が取り残された。
「…すいません、保田さん。」
「何で謝るの?あんたは石川の気持ちに正直に答えてあげた。ちゃんと石川と向き合ってあげた。それでいいじゃない。あんたは何も悪くないよ。」
「でも、私はまだ保田さんの事を…」
あたしは吉澤の唇に人差し指を当てて、言葉をさえぎった。
「もう言わなくても分かってるから、ね。」
「保田さん…」
私の前で吉澤はまた瞳に涙を浮かべた。やはり気持ちの整理はついていなかったのか。
- 38 名前:foo? 投稿日:2001年10月19日(金)12時09分41秒
- それではまた来週。
- 39 名前:名無し男 投稿日:2001年10月19日(金)15時13分56秒
- イエッサー ボス
アメリカンボス
- 40 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月20日(土)03時30分48秒
- どうする、どうなる、続きに期待!!
- 41 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月20日(土)22時12分42秒
- 個人的には、吉!がんばれ!
- 42 名前:foo? 投稿日:2001年10月22日(月)14時42分24秒
- >39,40,41さん
レスありがとうございます。今日でもう最後まで行っちゃいます。
- 43 名前:foo? 投稿日:2001年10月22日(月)14時46分49秒
- やるせない気持ちがあたしの中に浮かんできた。何をどうすれば良いのか、あたしには全く分からなかった。吉澤のことも気がかりだったが、今は石川の事が気になった。
「あたし、石川の様子見てくるから。」
涙をこぼしている吉澤にそう言って、あたしは席を立った。こんな気持ちになったのは初めてだった。
店を出たところにある公園のベンチに座って、石川は泣いていた。あたしは、石川の方へゆっくりと歩いて行き、声をかけた。
「石川…」
石川はあたしの顔を見ると、あたしの胸にすがりついて声をあげて泣き出した。かわいい顔は涙で濡れて、グチャグチャになっていた。
「…うっ、うっ、保田…さぁん…。」
「ゴメンね、石川。あたし、何にもしてやれなかったね。」
「そ・・・そんな事・・・ない・・・です。」
- 44 名前:foo? 投稿日:2001年10月22日(月)14時48分09秒
- あたしの胸は石川の涙とあたしの心の涙でいっぱいになった。どうして、こんな事になったのか。傷つく必要のない二人を傷つけてしまった。石川には中途半端な励ましをしてやるだけで、他には何もしてやれなかった。吉澤には毅然とした態度を取ったものの、結果的に傷つけることになってしまった。あたしも泣きたい気分だったが、石川の手前、涙を必死でこらえた。
泣くだけ泣いて落ち着いたのか、石川はあたしにポツリとつぶやいた。
「どうして、人は人を好きになるんでしょう?」
哲学的にも思える質問にあたしは悩んだ。
「うーん、何でだろうね。あたしにも分かんない。けどさ、恋するってさ、楽しいよね。その人のこと考えるだけで毎日楽しくなったりさ。そりゃあ、喧嘩したり、フラレちゃったりしたら悲しいけど、そうやって人って大きくなるんじゃない?」
「保田さん…」
「あたし達も歌ってたよね?まだ長い長い人生を少し駆け出したばかり。青春は上り坂もあるさって。だからさ、前向きに、人生を自分色に染めていこうよ。きっと石川にもいい人が現れてくれる。ねっ?」
石川はあたしを見つめて、少し笑顔を見せた。もう大丈夫だ。
- 45 名前:foo? 投稿日:2001年10月22日(月)14時49分40秒
- 「じゃ、いこっか。吉澤ひとりにしてきちゃったから。」
「はい。」
あたし達は歩き出した。きっとこれでよかったのだ。きっとこれで…。
店の前では吉澤が待っていた。さっきまで泣いていたはずだが、その目に悲しさは無かった。そして泣きつかれた石川の顔を見て、吉澤はすまなそうに言った。
「本当にゴメンね、梨華ちゃん。」
「ううん、もういいの。ずっと、友達だよね?」
「当たり前じゃない。可愛らしくて、ポジティブな梨華ちゃんがあたしは好きだよ。」
2人の会話を聞いて、ついさっきまで一緒にいたモヤモヤはどこかへ行ってしまった。今日の星空はそんなあたしの心を映したように、澄み渡っていた。
- 46 名前:foo? 投稿日:2001年10月22日(月)14時50分55秒
- あれから一週間が過ぎたが、あたし達三人の関係は少し変わった。石川は吉澤と前よりももっと仲良くなり、お互い、何も包み隠さず話せるようになったみたいだ。石川はあたしに前よりも話し掛けてくるようになったし、色々聞いてくるようになった。吉澤は吉澤で、あたしの事を『圭ちゃん』と呼ぶようになった。そして、たまに
「まだあきらめてませんからね。」
と、冗談まじりに言ってくる。こんな風にして、あたしの日常は少し賑やかになったのだった。
石川のあの言葉はあたしにとって青天の霹靂だったのだが、それはいい意味であたしに舞い降りた。あたしが人の気持ちに向き合う機会を、神様がくれたのかもしれない。
「保田さぁん、もう時間ですよぉ。」
「早くしないと本番は始まっちゃいますよ。」
石川と吉澤があたしを呼んだ。
- 47 名前:foo? 投稿日:2001年10月22日(月)14時52分30秒
- 「はいはい、今行くよ。」
少しだけ変わった今の日常が、あたしの宝物なのだ。この時間にいる幸せに自然と笑みがこぼれた。
「何笑ってるんですかぁ?」
「何かいいことでもあったんですか?まさか恋とか?!」
はしゃぐ石川と吉澤にあたしは答える。
「何でもないよ。からかうんじゃないの!」
照れ隠しの一言。でもね、ありがとう。あたしは今日も元気に歩いていく。
〜Fin〜
- 48 名前:foo? 投稿日:2001年10月22日(月)15時01分12秒
- 完結です。読み返してみて思うに、オチを急ぎすぎた感があります。最後の方なんてかなり強引にまとめた事が分かるでしょう。
今回はやっすーに焦点をあてたい、というのと誰もくっつかない恋愛物があってもたまにはいいかなという感じで書いたものです。
こんなに拙い文章にレスくれた皆さんありがとうございました。
- 49 名前:名無し読者。 投稿日:2001年10月22日(月)23時31分34秒
- とても良かったですよ。おもしろかった、幸せな日常が宝物、
やっすーの笑顔が目に浮かぶ。
ありがとうございました。
- 50 名前:名無し男 投稿日:2001年10月23日(火)00時46分14秒
- なんか爽やかでよかったよ
- 51 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月24日(水)03時23分00秒
- 読み終わった時、澄み切った空が見えた気がした。
どうやら
重度の電波の様です(w
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