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圭ちゃんさいど

1 名前:ど素人 投稿日:2001年10月19日(金)19時44分15秒

圭ちゃん主役の小説です。

まだまだつたない文章ですが、ご意見ご感想等、よろしくお願いします。

http://choco.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1000956932/
↑ザッピング。
2 名前:ど素人 投稿日:2001年10月19日(金)19時46分01秒
「よしっ……と」
私は全ての荷物を梱包を終えた。別にそれほど多い荷物ではなかったけれども。
「圭、もう行くの?」
後ろからお母さんが声をかけてきた。
「あ、お母さん。起きて大丈夫なの?」
「大丈夫よ、今日は調子がいいの。それに娘の旅立ちを見送らない母親なんている?」
お母さんは長い間病気で床に伏せっている。病状のひどい時は一週間も立ち上がれない程に。
「荷物の準備はいいの?」
「うん。あとは宅配便で送るだけ」
「そう……」
お母さんが寂しそうに言った。一人娘と離れて暮らすのが辛いのだろう。
お母さんは急に私を抱きしめた。
「圭…辛くなったらいつでも戻ってくるのよ?」
「…うん」
「私はいつまでもあなたのお母さんだからね?」
「…うん」
お母さんは抱擁をといた。
「…いってらっしゃい」
「…いってきます!お父さんには昨日のうちに挨拶しといたから!」
そう言って私は17年間暮らした家を後にした。
3 名前:ど素人 投稿日:2001年10月19日(金)19時49分12秒
バスに乗りJRの駅まで向かう。
私の向かう先はここから鈍行を乗り継いで三時間位の中心街だ。(私ん家はド田舎)
(色んな事あったな…)
私はしみじみ感慨にふけってちょっと寂しくなり、涙ぐんだ。
(いかんいかん!こんな事でこれからどうするの!?)
バシバシと両手で頬を打ち自らに気合を入れる。

私、保田圭17歳は今日から他人の家に下宿させてもらうのだ。
その家は母の古くからの親友の葉子さんという方のお家だ。とても良い方で、私が受験のために
市内の住家を探しているという事を聞いて、是非家に来て、とおっしゃってくださったのだ。
家のお母さんも一人暮らしには反対してたのだが、葉子さんのお世話になるのなら…
という事で許可を出してくれたのだった。
4 名前:ど素人 投稿日:2001年10月19日(金)19時50分19秒
(でも心配事もあるんだよなぁ…)

それはその家にも同じ高校二年生の男の子がいるらしいのだ。
(変な奴だったらどうしよう…)
とりあえずそれが今回の件での一番の心配事だった。

そしてもう一つ。最近そのお家に連絡がつかないのだ。一応全ての取り決め(日時等)
は三ヶ月前に電話で葉子さんと相談済みなので問題のない事なんだけど。

(でも、電話にも出ないのよね…昨日に内に挨拶しておきたかったのに…)

多少、迷いもしたが朝早く家を出たお蔭で昼過ぎには目的のお家に着いた。
5 名前:ど素人 投稿日:2001年10月19日(金)19時51分26秒
「二村…うん。間違いないね」
あたしは表札を見て確認した。
「よ〜し…」
私は深呼吸をしてからチャイムを押した。

『ピィィ〜〜ンポォォ〜〜〜ン』

ちょっと間延びしたチャイムの音が聞こえた。
(今日は平日だし、その男の子もまだ帰ってないだろう)
と、私はちょっと余裕だった……が。
出てきたのはパジャマ姿の男の子だった。

「・・・・・誰ですか?」

その男の子は聞いてきた。多分、葉子さんのお子さんの和也君だろう。
(…なんで平日に家にいるんだろう。まさか流行りの引きこもりってやつ?)
などと失礼な事を考えてしまった。
6 名前:ど素人 投稿日:2001年10月19日(金)19時53分45秒
「あ、あの!始めまして!二村さんのお宅ですよね?」
「・・・そうだけど」
「始めまして!あの・・・保田圭です!今日からお世話になります!」
私はとりあえず無難な挨拶をした。だがその男の子は、
「・・・家を間違ってるんじゃない?」
と言った。そんなはずはない。住所も名前も一致してる。
「…え?でも…二村和也さんじゃないんですか?」
私はそう質問してみた。
「そうだけど…あれ?なんか話がつかめないな」
その男の子はちょっと考えるような仕草を見せる。
「葉子さんから聞いてないんですか?」
「・・・・・・・・・・」
黙ってしまった。…はっきりいって気まずい。話題を変えてみよう。
7 名前:ど素人 投稿日:2001年10月19日(金)19時55分44秒
「あの〜?今日は学校は…?あ!お休みしてたんですか?す、すいません
 起こしてしまって!」
「……母さんが何だって?」
その男の子は話題の移行には付いてきてくれなかった。
「え?…いやその…私が今日から居候させてもらうっていう…
 お話になってたんですけど…」
私はそのまんま言った。すると
「……ふ〜ん」
と何か納得のいったようないかないような顔をした後、いきなり……泣き始めた。
「な…なんで泣くんですか…?」
私は聞いた。ひょっとしてこの人、頭が…
「あはは…いや、ゴメン。別に頭がおかしいわけじゃないよ」
私の心を読んだかのようにその男の子(和也君…だよね)は言った。
そしてちょっと考えた後ハンカチを渡してあげた。
するとますます激しく泣きだした。

嗚咽をもらしながら泣いていた。
8 名前:ど素人 投稿日:2001年10月19日(金)19時56分28秒
…10分程経っただろうか。玄関の前で号泣していたその子に最初こそ
引いていたもの、ずっとそばに居てあげた。
「…大丈夫?」
やっと泣き止んだその子に声をかけた。
「…うん」
その子は素直にそう言った。
「…何か…あったの?」
私は聞いてみた。男の子がこんな泣き方するなんて普通じゃない。
「……あのね。」
その子が何かを語りだそうとした時、私はある事に気付いた。
「…なんか焦げ臭くない?」
その子も鼻をくんくんさせてこう言った。
「鍋、火にかけっぱなしだった!!」
「な、なぁ〜にやってんのよぉ〜〜〜〜!!」

その後はもうメチャクチャ。部屋中に広がった煙を追い出したり、
キッチンにすこしだけ燃え広がった火を消したり。二人でワーワー言いながら消した。
9 名前:ど素人 投稿日:2001年10月19日(金)19時57分49秒
消化し終わった後、二人でキッチンのテーブルにすわった。

「……ハァハァ…」
「………ふぅ〜…」
肩で息をするお互いをしばし見詰め合った。
「……っぷ」
「……フフフ」
和也君が吹き出したのをきっかけにお互いを見たまま笑い出した。
「アハハハ!フフ…アハハハハハ!!」
「ちょっとぉ〜!フフフ…やめてよね〜!アハハハ!」
そのまま少しの間二人で笑いあった。

「…はぁ〜…おかしい…ふふ…」
私は涙が出るくらい笑ってしまった。
10 名前:ど素人 投稿日:2001年10月19日(金)19時58分57秒
「……ところで、なんでいきなり泣いたりしたのよ?」
私は聞いてみた。そういう事は人に話してしまうとスッキリするかもしれないと思ったから。
「・・・・・・・・・・・・」
だが和也君は答えてくれなかった。
「私に似た女の子にでも振られたの?な〜んて」
私は普段言いもしない冗談をいってみた。
「・・・・・・・・・・・・」

(効果なし、ね。慣れない事はするもんじゃないわね)

「…なんで家に居候する予定だったの?」
急に和也君が質問してきた。
「え…?あの、こっちの大学行きたくて…それで地元には良い学習塾
 無かったし、それについでに部屋探しもしようと思ってて…」
急に質問されたせいか私は少し戸惑っていたが、ごく普通に答えた。
11 名前:ど素人 投稿日:2001年10月19日(金)19時59分50秒
「…ふ〜ん。高三なの?一個上なんだ」
和也君はそう言った。多分、受験から連想して言ったんだろう。
「え?いや私も二年だよ。こういう事は早い方が良いってお父さんが言ったから」
「…え?じゃあ学校は?」
「こっちに編入する予定」
私は受け答えしながらある事に気がついた。テーブルに随分ホコリがたまっている。
「…ねえ。この部屋ホコリたまってない?…あ、失礼だったかな」
さっきから光に大量…って程でもないが結構な量のホコリが映し出されている。
「…掃除してないからね」
「なんで?葉子さん綺麗好きって聞いたけど」
「・・・・・・・・・・・」
彼はまた沈黙してしまう。
「…ねえ?さっきからなんか変だよ。いきなり泣いたり黙ったり。なんなの?」
私は少し怒り気味に言う。
すると彼が黙ったままで隣の部屋を指差した。そこは畳のある和室でフスマは開いたままだった。
12 名前:ど素人 投稿日:2001年10月19日(金)20時00分35秒
「和室…?それがどうしたの?」
「タナの上」
和也君はただそれだけ言った。私はそちらに視線を向ける。
「…位牌?あと写真が二つ…あるわね……え?」
やっと写真の中の人物に目がいった。その写真は母に見せられた葉子さんの写真と同じ人物だった。
「…葉子さん?旦那さんも…え?なにこれ?」
全く理解不可能な私に向かって和也君が無感情な口調で言った。

「死んだんだ。三ヶ月前。事故で」
13 名前:ど素人 投稿日:2001年10月19日(金)20時02分44秒
私はその瞬間全てを理解できた。何故平日に学校に行ってないのか。何故掃除がされてないのか。
何故、彼は泣いたのか。

…そして自分がどんなに残酷な質問をしたか、も。

私はたまらず和室に駆け込んだ。ポツンと存在する位牌と写真。
ポタッと涙が落ちた。それから次々と涙が流れ落ちてきた。

「ごめ…ごめんなさい!あたし…あたし、何も知らなくて……!」

私は泣き崩れた。私が泣いたところで何の罪ほろぼしにもなりはしないというのに。
「いいんだ」
彼はそう言ってくれた。
「でも…!凄くひどい事いっぱい言っちゃって…!!」
「いいんだ。本当に」
「…でも!」
「いいから。もう終った事なんだ」
そう言った彼はまるで自分に言い聞かせているように見えた。
「・・・・・・・・・・・・・・」
それ以上、私は何も言えなかった。言えるはずも無かった。
14 名前:ど素人 投稿日:2001年10月19日(金)20時04分36秒
「…でもそういう事だから居候の件は無かった事に出来ないかな?」
と、彼が申し訳なさそうに言った。
「…うん」
「ごめんね」
「・・・・・・・・・・・・・」
私を玄関まで送り出し、最後に彼はこう言った。
「ありがとう。こんなに楽しかったのは久し振りだったよ」
「・・・・・・・・・・・・」
「…じゃあね」
私は黙ったままゆっくりとした足取りでその場を去った。

あの後、私は近くの公園のブランコに座っていた。
15 名前:ど素人 投稿日:2001年10月19日(金)20時05分51秒
(私…なんてひどい事しちゃったんだろう…)
そっか…それで三ヶ月前から連絡が途絶えちゃってたんだ…
なんでその事をもっと考えなかったんだろう?何故、不自然だと思えなかったんだろう?
…そうしたら彼を傷つけなくてすんだかもしれないのに。
彼はこれからどうするのだろう?見た感じ学校も行ってなかったようだったし。
…冗談抜きに自殺しかねないような雰囲気だった。

「・」

私はふと葉子さんとの電話を思い出した。
(家の子、一人っ子っていう事もあってちょっと寂しがりやなのよ。
 だから圭ちゃん仲良くしてあげてくださいね…)
…とちょっと困ったように言ってたっけ……

それから私はある事を考えついた。まるで誰かに耳元で囁かれたかのように。
16 名前:ど素人 投稿日:2001年10月19日(金)20時07分22秒
……私に出来る事。多分これだけが私に出来る事。私の中にある決意が固まった。

『一緒に暮らそう。和也君と』

エゴかもしれない。でもそれだけが私の出来る事だと思った。

(葉子さん、私が和也君の家族になります。いいですよね?)

私は再び彼に家に向かい走り始めた。
17 名前:ど素人 投稿日:2001年10月19日(金)20時08分43秒
チャイムを押すと今度はすぐに和也君がドアを開いた。
「保田さん?どうしたの?」
と聞いてくる。
「あの…さ」
私はちょっと躊躇した。押し付けがましいかも、と思ったからだ。でも思い切って言った。
「あのさ!やっぱり居候させてよ!私の生活費はちゃんと出すし、掃除も料理
 するし!」
私は凄い勢いでまくし立てた。
「あ、あの、でも」
彼は私の勢いにたじろいでいる。
「それに学校休んでるみたいじゃない?そういうのってクセになるんだよね〜!
 ちゃんと管理してくれる人がいないと!!」
「・・・・・・・・・・・」
「それにさ?何も連絡とかとらなくて当日にいきなり『居候させれません』って
 ひどくない?ひどいよ!」
私はディアボロスのキアヌ・リーブス並の熱弁を見せた。
……すると彼はちょっと笑って
「…いいよ」
と言ってくれた。
「本当!?」
私は何故かすごく嬉くて、でもちょっと信じられなくて聞いた。
「うん。喜んで」

…見ててください葉子さん。私、絶対和也君の新しい家族になってみせますから!!

『保田圭がそばにいる生活・圭ちゃんさいど』
プロローグ 終
18 名前:ど素人 投稿日:2001年10月19日(金)20時15分36秒
>>15
あら?
「・・・・・・・・」が「・」になっちゃった。
どうしてでしょうか?
19 名前:名無しさん @ 投稿日:2001年10月19日(金)22時11分37秒
本編見させていただいてますが両方いい
保田側の心がみれるなんてうまいな〜
素人じゃないっすよ
20 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月20日(土)00時10分37秒
凄く良いです。
本編の方もいっきに読んできました。
更新楽しみにしてます。
21 名前:あっちの182 投稿日:2001年10月20日(土)00時48分17秒
こっち見たらほんの少し保田に萌えてきたかも・・・
でもやっぱ矢口萌え!萌え!!
どっちのスレでもがんがれ!!
22 名前:背番号88 投稿日:2001年10月20日(土)01時31分59秒
あのシリーズでは今までに無い試みですな……期待してます。
23 名前:名無し娘。 投稿日:2001年10月20日(土)02時36分47秒
下手な小説書いてる奴よりずっといいよ
この小説はとりあえず完結して欲しいね。
24 名前:ど素人 投稿日:2001年10月20日(土)12時10分52秒
『チリリリリ…』
目覚まし時計が鳴っている。
「…う…うう〜〜!!」
私はバシッと叩いて目覚まし時計を止めた。
「…………………?」
どこだろここ?まだ六時じゃん。なんでこんな時間にアラームセットしてんだあたしゃ?
「……ハッ!」
ガバッと体を起こした。そうだった。もう自分の家じゃないんだった。
洗面所に行って顔を洗い、歯を磨きながら昨日の事を思い出していた。
(…な〜んか妙な事になってきちゃったかな〜……)
自分の決めた事なのにまだ少しとまどいがあった。
あの後届いた荷物を運ぶのを手伝ってもらったりしてる内にいくらかは会話した。
(ちょっとは仲良くなれたと思うんだけど……どうかな…)

なるようにしかならないよね…じゃ、さっさと朝食作っちゃおっと。
当然和也君の分も、だ。

私は素早く部屋着に着替えてエプロンをつけた。
25 名前:ど素人 投稿日:2001年10月20日(土)12時12分46秒
「〜♪〜〜♪♪〜」
私は鼻歌なんて歌いながら冷蔵庫を開けて卵を取り出した。
「やっぱオーソドックスに目玉焼きだよね♪」
一人呟いてから卵を勢いよく割ろうとして……ピタリ。と動きを止めた。
「……待てよ?」
そういえば台所は最近料理した形跡はカケラもない。…って事は。
私は卵の賞味期限を確認した。

「………アブね〜!!」

初日からいきなりカタストロフィを起こすところだった。賞味期限は三ヶ月前に切れていたのだ。
「仕方ないなあ…」
私は近所のコンビニに行く事に決めた。昨日、偶然見つけたのだ。

…15分後。

「おーいしょっと、ただいま〜」
私は一人芝居をした後部屋に上がった。
コンビニで私は卵3パックを買ってきた。コンビニに着いてから気付いた事だが、
私は料理をあまりした事がなかったのだ。…つまりレパートリーがめっちゃ少ない。
「…初日だしいいよね?」
私は大量の卵を割り始めた。
26 名前:ど素人 投稿日:2001年10月20日(土)12時14分23秒
「あ、おはよう」
私が大体を作り終えたところで和也君がやって来た。
「…おはよう」
だが彼は少し目をそらしてしまう、やっぱまだ慣れてはくれてないか…
「〜〜♪♪〜〜♪」
和也君は食卓に座った。。
普通の西洋テーブルだが昨日ちゃんと拭いたのでほこりはたまって無い。
「出来た〜」
全ての料理が完成した。

「…まあ、料理は見た目じゃないからね」
私は和也君が何もコメントする前に先制パンチをかました。
「…そうだね」
なんだかちょっと不満そう。それもそのはず今日の朝の献立はスクランブルエッグに
ハムエッグにゆで卵……いわゆる「卵尽くし」だ。
「いや〜…実は料理なんてした事なくってさ…」
照れ隠しに私は頭をかきながら言った。
「いや、いいよおいしそう。ちょっと栄養は偏りそうだけど」
「い、いいじゃない。最初はこんなモンの方があとあと楽しみでしょ?いただきま〜す!」
「いただきま〜す」

食べている途中も私はずっと言い訳していた。…なんだかそういう気分だったのよ。
27 名前:ど素人 投稿日:2001年10月20日(土)12時15分39秒
食事も終えて、和也君は学校の準備をしている。私も元の学校の制服に着替えた。
「じゃあ、いってきます」
和也君はそう言って玄関から出て行こうとしている。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
私は慌てて和也君を追い、玄関で靴を履いた。
「準備オーケイ」
しかし和也君は怪訝そうな顔をして
「…え?この家からもとの学校に通うの?」
と言った。
「んな訳ないじゃない。あなたの学校へ行くのよ」

「・・・・・・・・・・・ハイ?」

彼はあっけにとられたような顔をした。
「何がハイ?よ。言ったでしょこっちの学校通うって」
「いや、確かに聞いてたけど…うちの学校に通うの?」
「そうよ。いちいち別の学校見つけるの面倒じゃない」
「…確かに。…いや、ちょっと待って!」
彼は頭を抱えた。
「なによ?」
「いや、まずい!まずいよ!!」
「なにが?」
私は聞いた。
28 名前:ど素人 投稿日:2001年10月20日(土)12時16分49秒
「何考え込んでんの?」
私は彼を下から覗き込んだ。
「…圭ちゃん。今すぐ荷物をまとめて出て行った方がいいんじゃないかな?」
いきなり和也君はとんでもない事を言ってきた。
「はあ!?なんでよ!?」
「だってさ…これって同棲…じゃないの?」
彼は恐る恐る聞いてきた。

「そうね」

な〜にを今さら。そんなの昨日に内に気付くでしょうに。
「だから何なのよ。でも同棲…まあ一緒に住むわけだけど別にやましい事はないじゃない?
 これはただの共同生活よ。もし誰かに聞かれても普通にそう答えてやりゃいいのよ。
 …それとも何かやましい事でも考えてた?」
と、私はまくし立てるように言った。
「いや、決してそんな事は!」
彼は慌てて即、否定した。
「じゃあいいじゃん。それより何で行くの?徒歩?バス?電車?」
私はまだ何やら考えている和也君をおいて駅の方に向かって歩き出した。
それにしても…即、否定する事ないじゃない!私は俄然、憤慨した。

「お〜い!そっちじゃないって〜!学校行きのバスが近くから出てんだよ〜」
「それを早く言いなさいよ!」

…私は強い口調になってしまっていた。
29 名前:ど素人 投稿日:2001年10月20日(土)12時17分45秒
和也君に付いてのった通学バスは当然、一つの学校の生徒しか乗っていない。
だから他校の制服を着ている私は…目立つ。
ちょっと恥ずかしかったが別に何てこともなく、学校の最寄の停留所に着いた。

「…………………」

私達は黙ったまま学校に向けて歩き出す。
和也君はさっきから緊張しているみたい。久し振りに友達と会うのが怖いのかな?
そんな事を考えている間に後ろからだれかが声をかけてきた。当然、和也君にだけど。

「おおぉぉ〜〜い!二村ぁ〜〜!!」

周りと比較しても小さな女の子が叫びながらパタパタと走りこんでくる。
何故か和也君は『あっちゃ〜…』という顔をしていた。
30 名前:ど素人 投稿日:2001年10月20日(土)12時18分54秒
「お前…ハァハァ…何やってたんだよぉ〜!!」
息を切らせたまま和也君に問う女の子。
「…いや、心の整理がなかなかつかなくてさ…」
答える和也君を女の子が見上げて、言う。
「だからって引きこもんなくてもいいじゃん!何回も家にも行ったし、電話だって
 したのにさ!」
「…ごめん」
「もう…でもいいよ。学校来たって事はもう大丈夫なんだね?」
「うん」
「はぁ〜…なんか心のつかえがとれたよ」
女の子安心した表情を浮かべた後ニカッと笑った。
他の人まで笑顔にしてしまうような笑顔だった。
「…ところでその子誰よ?」
傍らでじっとそのやりとりを見ていた私に女の子の興味が向く。
「ああ、この子は…」
「初めまして。保田圭っていいます」
私は和也君の言葉をさえぎって言った。
「あ、ども。矢口真里です」
女の子もチョコンと頭を下げた。
31 名前:ど素人 投稿日:2001年10月20日(土)12時20分29秒
「いや、そうではなく!」
矢口さんの手が宙を飛ぶ。なんだろう、クセなのかな?
その仕草女の私から見てもちょっと可愛いかった。
「なんで一緒になって登校してんのさ?」
と和也君に聞いているが、代わりに私が答えた。
「私、今日からこの学校に編入しようと思って。それで道案内してもらってるの」
圭ちゃんは素早く答える。
「…ふ〜ん」

「ま、居候させてもらってるよしみでさ」

私は出来るだけ、なんでもないような口調で言った。ほんとはドキドキもんだったんだけど。

昨日の内に私は勝手に決めつけた事がある。それはなるだけ和也君に事故の事を思い出させない事。
和也君は、やっと歩き始めたのだ。そこを他人の興味本位などで邪魔してほしくない。
和也君も今はまだ触れて欲しくないはずだと思う。男の子って人前では泣きたくはないもんでしょ?
学校に行く気がしなかったのもその事に無遠慮で立ち入られるから、じゃないのかな。

…だから決めたんだ。それなら高校生辺りがもっと好きな話題を提供してやりゃいい。と。
32 名前:ど素人 投稿日:2001年10月20日(土)12時21分39秒
「ハア!?」
矢口さんは驚愕の表情を浮かべた。三秒ほどそのまま固まっていたがすぐに
気分を持ち直したようだ。
「…はぁ〜ん…そういうこと。三ヶ月間もねえ…そりゃ応対どころじゃないよね」
と明らかな疑いの目つきで言った。作戦は成功と言ったところかな?
「ち、違う!」
和也君が否定する。
「何が!!」
矢口さんは明らかに怒っている。
「…なんだよオイラ…こんな奴の事心配してたなんて…馬鹿みたいじゃん!」
と凄く悲しそうな顔をした。…チクリ、と心が痛む。ひょっとしてこの子は本当に心から
和也君の事を心配していたのかもしれない。だとしたら後できちんと話しておかないと。

「朝のホームルーム楽しみにしてろよ!馬鹿二村!!」

と矢口さんは走り去っていってしまった。
33 名前:ど素人 投稿日:2001年10月20日(土)12時23分38秒
その後で和也君に文句をいわれた。(当然よね)
でも私が何でもないように話したので和也君も『そう大した事でもないのかも』と思ったようだ。

その後、和也君は職員室に私を案内してから教室に向かって去っていった。
(さて…と)
私はガラガラっと職員室のドアを開けた。すると当然、他校の制服を着た私には視線が集る。

「あの!二年の二村和也君の担任の方いらっしゃいませんか?」

私は職員室全体に聞こえる位の声量で言った。
すると奥の方からヌ〜っと一人の女性が現れて言った。
「なんやあんた、二村の関係者かいな?」
「え、まあ、はい」
「…ふ〜ん。うちが二村の担任の中澤裕子や」
とその女性は言った。
34 名前:ど素人 投稿日:2001年10月20日(土)12時24分44秒
「初めまして、保田圭です」
「…ん?聞いたことある名前や。…ひょっとして二村さんとこの奥さんの紹介かいな?」
どうやら葉子さんは三ヶ月前には話をつけて置いてくれていたらしい。
「そうです。話が通っているのは今、初めて知りました」
「…律儀な人やったからな……」
呟くように言った。
「…で、成績証明書は?」
「あ、はい。これです」
私はあたふたとカバンから成績証明書を出して渡した。
「…お〜…えらい優秀やん。向こうの校長さんの推薦状までついとる。これなら編入試験免除やな」
と目を通しながら中澤先生は言った。

「…ところで二村とは…会ったんか?」

目を伏せたまま中澤先生は聞いてくる。
「あいつ、うちが家に行っても、友達が行っても、電話しても全く連絡がつかへん。変なこと
 考えてなかったらええけど……」
と不安そうに呟いた。

「あ、二村君なら今日学校来てますよ」
私は事も無げに言った。
35 名前:ど素人 投稿日:2001年10月20日(土)12時25分49秒
「ほんまか!?」
中澤先生は私の両肩をつかんで言った。
「ととっ、本当ですよ。今日案内してもらってきたんですから」
私は少しバランスを崩した。
「そうか…よかったわぁ〜〜!!」
ハァ〜とため息をつきながら中澤先生はイスに座った。
「ほんまに心配しとったんやで…そうか…来てくれたか」
その中澤先生の様子は教師としてではなく、人として人を心配していたというのがよくわかる。

私は俄然この先生に好感を持った。そして全てを打ち明ける事にした。

「あの…中澤先生」
「ん?」
「和也君…まだ全然吹っ切れてないと思うんです」
「…なんでや?なんでそう思うんや?」
「和也君…泣いたんです昨日」
私は昨日を思い出して言った。
「私、何も知らなくて…ちょっと葉子さんの事聞いてしまったんです。そしたら急に…」
「…………………」

中澤先生は黙って私の話を聞いていた。
36 名前:ど素人 投稿日:2001年10月20日(土)12時27分14秒
私は昨日の出来事を全て話した。

「なるほど…それで一緒に住もうって決意したわけか…」
「はい」
「…ありがとうな。うちからも礼を言うわ」
「…それで私、考えたんです。どうせならもっと周りを騒がせてやろうって。事故の事で和也君が
 話題にならないくらいに」
「…それで自ら同棲してる、なんて言うた訳やな」
中澤先生が頭を掻く。
「はい。うまく言えないんですけど、そういうのってなんか生きる活力みたいになるんじゃ
 ないかって思って」
「…そこまで言うたら何が言いたいのかも解ったで。同じクラスにしてほしい、言うんやろ?」
「…そうです。駄目でしょうか?」
「いや、あんたの決意よくわかった。校長にはうちから話、通しとくわ。校長も浪花節の
 好きなお人や、絶対賛成してくれる思うわ」

「ありがとうございます!!」

私はこれ以上ないほど頭を下げた。
37 名前:ど素人 投稿日:2001年10月20日(土)12時28分43秒
中澤先生と一緒に教室へ向かう。
「なあ圭坊?ところで誰に同棲しとるって話したんや?そいつ二村の友達なんやろ?」
途中でふいに中澤先生が聞いてくる。(圭坊ってなに?)
「え、はい。…確か矢口さん、っていう人のはずです」
私が答えると中澤先生はドサッと出席簿を落とした。
「や、矢口ぃ!?」
「ど、どうしたんですか?」
中澤先生は頭を抱え込んでしまった。
「…多分、今頃教室とんでもない事になっとるで」
「とんでもない事?」
「そうや。例えばすでにあんたが身ごもってるとか、いや、すでに子供が二人居る、とか」
「……………はあ?」
私はあまりの話の飛躍にボケた声を出してしまった。
「あんたの話した矢口っちゅう奴がそういう奴なんよ…」

目的の教室に近づくにつれてドタンバタンという音が聞こえてきた。

「ほら…な?」
38 名前:ど素人 投稿日:2001年10月20日(土)12時29分55秒
中澤先生が教室に入っていくと途端に教室は静まり返った。(私はドアの外で待っている)

「………!……はぐっ……!!…………!……はぐっ!!」

という意味不明の絶叫だけが聞こえてきた。
「おい、入りや〜」
と言う声がかかったので私はドアを開けて中に入った。
トコトコ歩いて教壇の横に立つ。
「じゃ、自己紹介してもらえるか?」
「はい」
と答えて教壇の真中に立った。
「初めまして、保田圭といいます。こっちには受験のために来ました。これから
 よろしくお願いします」
と無難にまとめてみた。
「こちらこそ〜!」
「結構可愛いじゃん!」
「じゃあ、質問タイムでいい?」

などとクラスの数人が騒ぎ立て始めた。
39 名前:ど素人 投稿日:2001年10月20日(土)12時31分04秒
「こらこら〜!質問は休み時間にでもせえ〜!もう一時間目始まるやろ〜!」
中澤先生が叫んだ。
「は〜い」
「テンション低っ!!」
「いいじゃん、今日くらい…」
などという不平が上がっていたが。中澤先生は全て無視して、
「は〜いホームルーム終わり〜!」
と言うと後手に手を振りながら教室を出て行った。

…当然私にクラスメート大半が駆け寄る。転校生お約束の質問タイムだ。

「彼氏いるの?」
「誕生日いつ?」
「誰か目に付いた男子は居た?」

等の質問に無難に答えていると、女の子の一人が声をかけてきた。
「はいは〜い!一時間目は化学でしょ〜!早く向かいなさ〜い!」
と手をパンパンと叩きながら全員に向かって言う。
すると全員が、『そうだっけ?』『やべ!』『遅刻したら夏先生怖いのよ!』
などと言い散り散りに去っていった。
40 名前:ど素人 投稿日:2001年10月20日(土)12時32分25秒
「…初めまして。クラス委員長の吉澤です」
ショートカットで少し低い声。可愛いというよりは綺麗、綺麗というよりはかっこいい。
という表現が似合いそうな女の子だった。
「初めまして。保田圭です」
私は笑顔で言ったが吉澤さんは少しも笑わなかった。
「…化学室どこかわからないでしょ?案内してあげるわ」
そう言って背を向けて歩き出したので、あたしはトコトコと付ける。

階段をいくつか昇り、目の前のドアを開ける。そこは…

「…ここ屋上じゃないの?」

聞くまでもない事だったが一応聞いた。
「そうですよ保田さん」
彼女はやっと振り返った。
「……とりあえずその保田さんってのやめてくれない?圭でいいからさ」
「…今は保田さんと呼ばせてもらいます」

なにやら普通じゃない空気は私でも感じ取れた。
41 名前:ど素人 投稿日:2001年10月20日(土)12時37分21秒
「………………………」
彼女は何も喋らない。
「ねえ、遅れちゃ…」
「単刀直入に聞きます」
私の言葉をさえぎって彼女は言った。
「…保田さん…あなた二村君の何なんですか?」
そう問い掛ける彼女の表情は真剣そのものだった。
「何って……居候よ」
「そんな事が聞きたいんじゃないんです!!」
彼女は叫んだ。
「二村君もあなたが昨日来たっていう事は言ってました!知り合ったのも昨日だって事も!
 でもおかしいじゃないですか、なんで昨日会った人と一緒に二人っきりで暮らそうなんて
 思うんですか!!」
吉澤さんは自分を抑えきれないようだった。
「あなたもあなたです!なんであんな事があった後で一緒に、それも初めて会った男の子と
 暮らそうなんて思えるんです!おかしいですよ!!」
「……………………」
なにも答えられない私に向かって彼女はさらにこう言った。



「私…私は二村君の事が好きなんです」
42 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月20日(土)14時11分45秒
おおっ、急展開・・・。

それにしてもこの話しに出てくるヤスは
かなり自分のつぼです!
気遣いヤッスー萌え・・・。
43 名前:さんに 投稿日:2001年10月20日(土)17時33分55秒
面白いなあ
マジ完結してや〜
44 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月20日(土)23時50分50秒
あっちも見てますけど読んでて楽しいです。
おかげで最近( `.∀´)が気になる・・・

これからもがんばってください。
45 名前:ど素人 投稿日:2001年10月21日(日)13時33分04秒
吉澤さんはそう言ったきり黙ってしまった。
私は呆然としてしまった。まさかこんな10年前のドラマのような展開になるなどとは思っても
いなかったから。でも同時に吉澤さんの問いに対して自問自答する。

私…私は……どうしてなんだろう。どうして一緒に暮らそうなんて思ったんだろう。
彼女の言っている事は正論だ。知り合った当日に同居し始めるなんて聞いたことがない。
何故なんだろう。彼を見た時、両親の事をただ無感情に語る彼を見た時、私の心が強烈に奔流した。
『彼を一人にしておけない』という心の奔流が。でも…

…私は自分勝手なわがままで和也君も吉澤さんも傷つけようとしているんじゃないだろうか?

こんな大きな事に今すぐ答えは出せないだろうと判断した私は自分の本音を
彼女にぶつけようと思った。
「私は…和也君を一人にしておけなかっただけ」
「…………………」
吉澤さんは答えない。
「エゴかも知れない。和也君はそんな事なんて求めてないかも知れない。でも私は和也君の
 両親の思い出がつまったあの家に彼を一人っきりにしたくなかったの」
「…………………」
「…それだけ」
私は言葉にできる限りの思いを言った。
46 名前:ど素人 投稿日:2001年10月21日(日)13時35分14秒
「…………………」
「…………………」

しばらくお互いが黙ったままになったが、ふいに吉澤さんの肩の力がぬけた。
「…よかったぁ〜」
「…へ?」
「保田さんがいい人で」
突然そんな事を言い出す吉澤さん。
「……はい?」
「私さあ、変な人に狙われてるんじゃないかと思っちゃって…」
「え、ど、どういう意味?」
「だって…いるじゃないですか。人に不幸につけいる連中が。そういう人かと…」
「ちょっと!そんなんじゃないわよ決して!!」
私は否定する。
「わかってます。さっき和也君の事を喋ってた保田さん、凄く優しい目をしてました」
凄く恥ずかしい事を平然と口にする彼女。
「…ええ!?そ、そうだったかしら…」
「そうですよ〜」
シリアスな空気はもうどこかにスッカリ消え去っていた。
47 名前:ど素人 投稿日:2001年10月21日(日)13時37分33秒
「でも…いいなあ〜…和也君と同居…」
「…やっぱり好きっていうのは本当だったんだ」
「うん…中学校の時から。全然態度に出せてないんだけど…」
彼女はちょっと照れた表情を見せた。
「…う〜ん」
どうすれば良いのだろう。そりゃ好きな人の家に他人が住んでるってのはキツイわよね…
「…フェアに行きましょう」
と吉澤さんの突然の宣誓。
「…はい?」
私は再びまぬけな声を出した。
「一緒に暮らすのは認めます。一緒に登校するのも認めます。でも、お家でそういう空気に
 なるのは禁止。お互いフライング無し。これでどうですか?」
吉澤さんの突拍子もない提案。
「え!なにそれ!」
「これからはライバルですね!!」
彼女に瞳はすでに燃えていた。
「ちょ、ちょっと!私は…」
と言いかけた時に授業開始にベルが鳴った。
48 名前:ど素人 投稿日:2001年10月21日(日)13時40分00秒
「や、やばいっす!」
吉澤さんは慌てて自分の腕時計に目をやる。
「ちょっと吉澤さん!?私は…」
「よっすぃ〜でいいよ保田さん!それより!化学の夏先生はそりゃあ怖い先生なんですよ!」
私の言葉を遮って吉澤さんが私をせかす。
「…私の事も圭、でいいよ。じゃあ急ぎましょ」
「じゃあ圭ちゃん、はやくはやく!」
と私達は言って化学室に向けて走り出した。

…で、結局遅刻した私達はこっぴどくしぼられたのでありました……
49 名前:ど素人 投稿日:2001年10月21日(日)13時41分10秒
お昼休み。当然弁当など持ってきてない私はどうしようかと考えていた。
(普通なら和也君に食堂に連れて行ってもらうところなんだけど)
さっきフライング無し宣言をされたところだしどうしよう?
それに和也君もあまり私に構いたくないみたいだし。(からかわれるから?)

しかし意外にも和也君の方から声をかけてきてくれた。
「けい…保田さん、一緒に学食行こう。案内するよ」
教室中が騒ぎ出す。私も少し驚いていた。
「…いいの?」
「もちろん。行こう」
そう言って学食に向かおうとした時、
「ちょお〜〜〜っと待ってくださいよ〜〜」
遠くの席で矢口さんと一緒に弁当を広げていた吉澤さんが声をかけてくる。
「どぉ〜して、そんな二人見詰め合って〜〜!!」
つかつかと近寄ってきた。
50 名前:ど素人 投稿日:2001年10月21日(日)13時42分13秒
「いや、別に見詰め合ってはいないけど…なに?」
和也君が言い返す。
「吉澤が案内します」
「…なんで?吉澤弁当なのに」
「いいから!これはクラス委員長の私の仕事なの!」
…よくわからない理由を述べる吉澤さん。
「じゃあ、オイラも行くぅ〜〜!!」
遠くで手を上げて言う矢口さん。
和也君は一人、訳のわからない顔をしていた。
「いいじゃない。ご飯は大勢の方が楽しいわよ」
私はフォローを入れる。矢口さんと吉澤さんは弁当を包んで持ち運べるようにしていた。

食堂では吉澤さんと和也君はいたため気まずかった私は矢口さんとばかり話しをしてしまった。
凄く感じの良い子だったのですぐに打ち解ける事ができた。
51 名前:ど素人 投稿日:2001年10月21日(日)13時43分34秒
帰りに和也君に制服を作ってくれるところに案内してもらう事になった。
「服屋さんどこにあるかわかる?」
「うん。地元の駅前にあるよ」
和也君と会話をしながら校門をくぐる。
「真里ちゃんていい子だよね」
「うん。たまにちょっとうっとおしいけどね」
そんな事を話していると少し向こうに吉澤さんの姿が見えた。
私達の姿を確認するとタタタッと逃げていった…かと思うといきなり振り返り
ビシッ!とポーズを決めたタップのような変なポーズだった。
「…なんだ?」
和也君は訳がわからなかったようだが私はすごくおかしくて笑いをこらえた。
多分宣戦布告兼、ルールわかってるよね?という事なんだろう。

近所の駅に着いた。
私達は『ピュア』というちょっとオシャレな店の前。
「ここだよ」
「…なんかいいとこっぽいね。制服なんて扱ってるの?」
「うん。理由は知らないけど」
といいながらドアを開ける。
「…いらっしゃ〜い。…あら和也君…久し振りね」
お店の人が和也君に話し掛けてきた。知り合いなんだな。
「ご無沙汰してます。式の時はお世話になりました」
「…いいのよ。そんな事気を使わなくて。元気そうでなによりだわ」
彼女はただそう言った。
52 名前:ど素人 投稿日:2001年10月21日(日)13時45分12秒
和也君と世間話をしていたその女性は今日の本題に入る。
「じゃあ丈合わせるからちょっと来て」
「はい」
私は彼女に連れられて店の奥に入っていった。

「私、石黒彩。あなたは?」
「保田圭と言います」
サイズを測りながら会話する。
「ふむ。圭ちゃんは全くもってスタンダードな体型ね。ちょっとバストは平均より上かな?」
とメジャーで測る石黒さん。
「これならすぐに直せるわ。待ってて」
そう言ってミシンの前に座る。
「ハイ。お願いします」
私も近くにあったパイプ椅子に座った。

タタタタタ…

ミシンの音だけが響く。
「…圭ちゃん、和也君のお友達なの?」
唐突に石黒さんが聞いてきた。
53 名前:ど素人 投稿日:2001年10月21日(日)13時46分04秒
「ハイ。知り合ったのは最近ですけど」
正確には昨日だけど。
「そう…じゃあ三ヶ月前の事は?」
「…知ってます」
「そっか…あの事のあとで出来た友達なんだね…」
「…はい」
「…仲良くしてあげてね」
彼女はそれ以上なにも語らなかった。語らなかったからこそ本当に和也君の事を心配
していたのが感じ取れた。

「はいっ!できあがり!」

石黒さんは完成した制服をパンッと伸ばした。
54 名前:ど素人 投稿日:2001年10月21日(日)13時47分59秒
「なに初めてウェディングドレス見た新郎みたいになってんのよ」
石黒さんにつっこまれている和也君。
私の制服姿を見た和也君はちょっとポカーンと私に見とれていた(ざまあみろ!)
私はクルッと回って見せてみようかと思ったキャラが違いすぎるのでやめた。
「いや、別にそんな事は」
和也君はあたふたと言った。
「ふ〜ん…ま、いいけど」

私は支払いを済ませ、店を出る。…私はちょっと小腹が空いていた。
「お腹空かない?」
私は聞いてみる。
「空いた。そうだ、この近くにおいしい店あるんだよ」

私はちょっと期待してしまう。
(さっきの店は凄くオシャレな店だったもんね。ひょっとしてオシャレなイタリアンレストラン
 かなんかだったりして…!)
55 名前:ど素人 投稿日:2001年10月21日(日)13時49分09秒
「…ここだよ」

『安倍精肉店』と書いた看板がその店先には下がっている。

「………………」
「…どしたの?」
「いや…うん。そうよね」
私はなにやらよくわからない返事をした。でもその店のメンチコロッケは最高においしかった!

その後、近所を案内してもらいながら帰路についた。

その日の夕食はさっきの肉屋で買ったメンチカツと卵料理。
いいじゃないの!おいしいって言ってくれてるんだから!!
56 名前:ど素人 投稿日:2001年10月21日(日)13時50分16秒
…夜。

私は夕食の後片付けをした後ずっと考えこんでいた。

(…お母さんになんて言おう)

本来なら昨日の内に電話をする予定だったのだが色んな事がありすぎてスッカリ忘れていた。
正直に今の状況を話してしまうとどうなってしまうだろう?
連れ帰される?私の考えに賛成してもらえる?

…でもそんなことよりも私にとってもっと辛い事。それはお母さんに葉子さんの死を伝えないと
いけない事。お母さんの無二の親友だった葉子さんの死。それを伝える事は病気のお母さんの
体にまで影響してしまうかもしれない。…お母さんはそんなに強い人ではないから。

でも電話をしないわけにはいかない。私は受話器を取って番号を押した。

トゥルルルル、という音が死刑宣告の声のように聞こえる。
電話はあっさりとつながった。
57 名前:ど素人 投稿日:2001年10月21日(日)13時51分52秒
「はい。保田です」
お母さんの声。
「お母さん?私。圭。」
「圭?なんで昨日の内に電話しないのよ。心配したでしょう」
「ごめんごめん。忙しくってさ」
「…それで、そっちのお家はどう?もう慣れた?」
「まさか。二日目だよ」
「ふふ。そうよね。葉子さんは元気?」
「あ、うん。」

…私はとっさに嘘をついてしまった。

「ちょっとお話できそう?」
当然の展開になる。
「い、いやそれがさあ!凄く忙しいんだって!明日も朝から出張だってもう寝ちゃったんだ!」
葉子さん達は共働きだという事は知ってたので充分にありえる嘘だった。
「そうなの?残念。でも葉子も相変わらずいいかげんねえ。普通なら昨日の内に
 お話できるものだと思ってたのに。そういえば高校の時もね……」

ポタリ、と熱いものが私の膝に落ちた。…私は泣きはじめてしまっていた。
58 名前:ど素人 投稿日:2001年10月21日(日)13時53分02秒
楽しそうに昔の思い出を語り始めるお母さん。

(言えない…言えないよ…)

「…それでね…圭、聞いてる?」
「…聞いてるよ」
私の目からは涙が溢れつづける。だからそれを気付かせないように気を使いながら喋る。
「…そう?ところで和也君とは仲良くなった?」
「うん、すごく、いい子だよ。よく、してもらってる」
駄目だ。どうしても途切れ途切れになってしまう。
「…圭?」
お母さんも不審に思い始めたようだ。
「ごめん。今日疲れちゃってさ。また電話するから」
「あ…圭?」
ガチャン、と電話を切った。

「う、あああぁぁぁ……」

私は号泣してしまう。抑えきれない感情が涙となって声となって溢れる。
(いけない、和也君に気付かれる…)
私は枕に顔を押し付けて泣いた。ずっとずっと泣いた。
泣き疲れてそのまま眠りに落ちるまで。

「保田圭がそばにいる生活・圭ちゃんさいど」第一話 終
59 名前:ど素人 投稿日:2001年10月21日(日)14時02分41秒
>>42 >>44
ご愛読どうもです!
>>43
例のネタスレ楽しく読ませてもらってますよ!

さて、これで同時進行出来る…しかしプロットはない、と。
60 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月21日(日)18時55分02秒
一話終了お疲れ様です。
ザッピングいいですねぇ。こっち読んでたらヤッスー
萌えになってきた。
61 名前:さんに 投稿日:2001年10月22日(月)03時05分10秒
>>59
現在創作意欲がそがれています(ワラ
くそう、面白いなあ…
62 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月22日(月)23時54分26秒
>>59
優良スレです!星三つです!!
がむばれよ〜
63 名前:ど素人 投稿日:2001年10月23日(火)23時35分00秒
私が和也君の家に来てからもう一週間が経とうとしていた。

私は少しずつクラスになじんいく事もでき、今では少しだが仲のいい子もできた。
それでもいまだにお昼は矢口さんと吉澤さんと食べているのだけれど。
(吉澤さんがそれを激しく希望した)
家の暮らしの方も随分慣れて来た。最初の方は和也君は夕食が終るとすぐに部屋に
こもりっきりになっていたが(勉強が忙しいせいもあるが)
今ではお互い冗談を言ったりできるようになった。

「和也く〜ん!早くしなさ〜い」
私は玄関から彼を呼ぶ。和也君は朝は少しエンジンがかかりにくいようだ。
「はいは〜い」
和也君はすぐにカバンを持って玄関に走ってきた。
「まだ、大丈夫だってば」
「いいから!一本早いバスにしたらそれだけで随分空いてるでしょ!」
わめき散らしながら私達は停留所に向かった。

「じゃあ教室でね」
私は学校の校門まで着いた後、教室とは別の方向に歩き出した。
「あれ?どこいくの?」
「花壇にお水あげてくるの」
「ああ…今日、花係なんだ。ついていこうか?」
「大丈夫よ。じゃあまた後でね」

和也君と別れて私は裏庭の花壇に向かった。
64 名前:ど素人 投稿日:2001年10月23日(火)23時37分27秒
少し大きめのジョウロに水を貯め、花に水をやる。
「〜〜私は暗いですっか〜♪〜〜〜」
歌など歌いながら水を振りまく。私は土作業が大好きなのだ。

(…………………?)

何か聞こえる。私の歌に合わせてギターの音が聞こえてきた。
そこに注意を向けると一人の男子が笑いながらギターで伴奏してくれていた。
「ちょ、ちょっと見てたのならなんか言ってよ!」
私の顔はみるみる真っ赤になった。

「あははは…ごめんごめん。なんかあんまり楽しそうだったからつい、ね」
その男子はギターの伴奏を止め立ち上がった。見覚えがある男の子だった。
「えっと…たしか同じクラスの……」
名前をど忘れしてしまった私にその男の子が助け舟を出してくれた。

「俺か?そういやこっちは自己紹介してもらったけどこっちからはしてないな」
パンパンと腰についたほこりを払い、手を差し伸べてきた。

「俺はアキヒト。岡野アキヒトです。よろしく」

彼はさわやかに笑って言った。
65 名前:さんに 投稿日:2001年10月23日(火)23時45分21秒
だ、誰?(w
66 名前:どら 投稿日:2001年10月24日(水)00時13分06秒
ってポルノかよ!!
67 名前:ど素人 投稿日:2001年10月24日(水)08時06分00秒
いや、男キャラおもいつかなくて(w

続きま〜す。
68 名前:ど素人 投稿日:2001年10月24日(水)08時26分35秒
握手を求めてきた彼の手を握り返す。
「朝からギターの練習?」
アキヒト君はギターをジャーン、と鳴らして
「そ。軽音部の朝練。自主的だけど」
「ふぅん。ギター上手いの?」
私は多少、ギターに興味を持った。
「じゃあ、ここで一曲」
そう言うと彼はギターをゆっくりと弾き始めた。「レットイットビー」だった。

「〜〜♪〜♪♪〜〜〜……」
彼は弾き終わった後の余韻に少し浸っている。
「…うま〜い」
私は驚きと同時に感動して少し涙ぐんでいた。
「…サンキュー」
アキヒト君は少し目をそらしながらミュージシャンっぽく言った。
「……………………」
何故か沈黙する私達。

「じゃ、教室でね。またなにか聴かせてよ」
私のほうが先に口を開いた。
「あ、うん」
何故かアキヒト君は寂しそうだった。
69 名前:ど素人 投稿日:2001年10月24日(水)23時23分47秒
今日も退屈であり、充実した時間が過ぎていく。
でも今日の和也君は少し変だった。お昼ご飯の時もうわのそらで何を話し掛けても
へえ、とか、うん、とかしか言わない。矢口さんが「恋でもしたかね?」なんて
つっこんでも全然焦る様子もなく「かもね」なんて言っただけだった。

(まあ、そういう日もあるだろう。別に何か辛い事で悩んでるんじゃなければ…)

そう考えた私はあえて何も彼に聞かない事にした。
あっというまに午後になり、授業もホームルームも終了した。

「あ、帰りも水あげないといけないから待っててね」
教室を出ようとしている和也君に声をかける。
「あ、うん…」
何か申し訳なさそうにしている。
「なによ?待つの嫌?」
「いや、そういうわけじゃ…」
彼は目を合わせない。
「…じゃあ校門でね」
私は荷物をまとめ教室を出ようとした。
「圭ちゃん、あの!」
和也君から再び声がかかった。
「…ん?」
「…また後でね」
彼はそう言ったきり目をそらした。
70 名前:ど素人 投稿日:2001年10月24日(水)23時25分09秒
(な〜んなんだろ今日の和也君…)

私は朝とは打って変わって暗いムードで水をまいている。

(…う〜ん!もっと私の方から踏み込まなきゃ駄目なのかなあ…)

色々考えながら花に水をやる。
「あれ?今回はあんまり楽しそうじゃないね」
後ろから誰かが私に話し掛けてきた。
「…アキヒト君…おどかさないでよ」
「ごめんごめん」
彼は相変わらずの笑顔だった。
「どうしたの?放課後も練習?」
「ん…まあ本番っつうかなんつうか…」
彼は言いよどむ。
「…?…どしたの?」
「ねえ。朝、俺にまたギター聞かせて、って言ったよね。今、聞いてくれないかな?」
彼はギターケースからギターを出し始める。
「…いいけど待ち合わせあるから…」
「…じゃあ行くよ。これ、俺が作った曲なんだよ。まだ未完成なんだけど」

アキヒト君は静かに演奏を始めた。
71 名前:ど素人 投稿日:2001年10月24日(水)23時26分13秒
…アキヒト君の弾いた曲は朝の「レットイットビー」などと比べると明らかに不完全で、
荒削りな感じがする。だがその曲からは彼のギターにかける情熱のようなものがヒシヒシ
と伝わってきて、とても良い曲だった。さっきまでのモヤモヤしていた感情を残らず
吹っ飛ばしてくれたような気がした。

彼が演奏を終える。

「……どうかな?」

私は朝もちょっと涙ぐんでしまったが今回の曲では少しだけだが涙が流れてしまった。
…もともと私は涙腺が弱いのだ。

「良い。凄く良かった…」

私は素直な気持ちだけを伝えた。言葉にすると安っぽくなってしまいそうだったから。

「…良かった。気に入ってもらえて」
「…なんで私なんかに、それもこんな所で演奏してくれたの?」
私は疑問に思っていた事を聞いた。
72 名前:ど素人 投稿日:2001年10月24日(水)23時27分12秒
「…この曲さ、ずいぶん前から煮詰まっちゃててさ」
彼は語り始める。
「……………………」
「それで今日の朝とかも、もうスランプ状態。ぜ〜んぜん音が浮かんでこないんだよ」
アキヒト君はオーノウ!というジェスチャーをする。
「……………………」
「でもさ。今日の朝、保田さんが凄え楽しそうに鼻歌うたいながら水やってんの見たらさ、
 いきなり音が浮かんできたんだよ。これだ〜〜!!って感じで」
「……………………」
黙っている私に彼は続ける。
「俺、保田さんといたらこの曲を完成させれる、って思ったんだ」
「……………………」

「保田さん、君が好きだ。付き合って欲しい」

彼はハッキリとそう言った。
遠くでキーンコーンカーンコーンというベルの音が響いていた。
73 名前:さんに 投稿日:2001年10月25日(木)22時04分38秒
ぐはあ
ハァハァ
74 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月27日(土)22時52分07秒
本編の続きはどこでやってるんですか?
75 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月27日(土)23時58分45秒
ど素人さんはいずこへ・・・?
76 名前:ど素人 投稿日:2001年10月28日(日)01時01分22秒
>>74
同じとこで続けるつもりです。すいません更新遅れて…
>>75
同じく更新遅れてすいません。
77 名前:ど素人 投稿日:2001年11月01日(木)02時39分45秒
何故か今日は和也君は元気がないように見える。
いつもなら夕食の時はお互いもっとリラックスしているはずなのに。

『ピッ』

私はテレビが耳障りに感じ、リモコンでスイッチを切った。

「あ、ごめん見てた?」
「いや…構わないよ」
なんかしっくりとこない会話。
「そういえば今日矢口がさぁ〜〜!」
私は声を張り上げてこの空気を変えようと試みる。だが和也君はまったくの上の空だった。
「和也君…聞いてる?」
熱でもあるのだろうか?私は彼の顔を覗き込んだ。

「…圭ちゃん」

すると彼は急に真剣な目つきになってこちらを見た。

「な、なによ…急に真剣な顔しちゃって…」
「僕らってなんなんだ?」

…和也君は唐突に聞いてきた。
78 名前:ど素人 投稿日:2001年11月01日(木)02時50分45秒
「初めて会っていきなり同居。でも知り合いでもなかったし、友達でもなかった。
 今も一緒に暮らしてるからっていって恋人同士でもない。…僕らってなんだ?」
彼は一気に言った。
「……………………」
私は何も言えない。
「…もし圭ちゃんが同情だけで僕と暮らしてるっていうのなら、僕になにができる?」
「……………………」
「圭ちゃんが好きな人が出来た時に僕はなんて言えばいい?」
「……………………」

…この時私は純粋な彼の問いに対してとんでもない勘違いをしてしまった。
彼が私に対してヤキモチをやいているのかな、と思ってしまった。
「なんか可愛いなあ」「ちょっとからかってやろう…」などと考えてしまった。


…それが彼をどんなに傷付けるとも知らずに。

……人が傷つく事の方がどんなに自分を傷付けるかを知ってたはずなのに。
79 名前:ど素人 投稿日:2001年11月01日(木)02時52分02秒
「…もし私が好きな人…っていうかちょっと素敵だな、って思う人が出来たって
 言ったら…どうする?」
私はちょっと真剣な面持ちで尋ねた。

ふと私の頭の中に今日告白してきた人の顔が浮かんだ。
彼はいい人だと感じたし、凄く感動的な音楽も聞かせてくれた。
でも、いきなり「付き合う」つもりなんてなかった。これでも私はちょっと古風なのだ。
彼は返事は明日でいい、と言ってくれたけど。

まあ、どのみち和也君は知るよしもない事だけどさ。

「…アキヒト、だろ」

「…!!知ってたの!?」
私は思わず大声を上げた。
「…今日、僕先に帰ったろ。アキヒトに頼まれたんだよ。二人きりにしてくれって」
「…ちょ!ひどいよそういうのは!!」

私は声を荒げた。フェアじゃないよそんなの!
80 名前:ど素人 投稿日:2001年11月01日(木)02時54分54秒
「でも、アキヒトはいい奴だったろ?」
「そうだったけど!…和也君勘違いしてるよ。あたしはそんな…」
私は必死に弁解しようとした。

「圭ちゃん」

だが和也君は私の言葉を遮って言った。

「僕、今日1年の子に告白された。多分、付き合う」

私の表情が強張るのが自分でもわかる。

「だから圭ちゃんも自分の事だけ大切に考えてほしい」

その言葉は私の心を深く切りつけた。

「…そ、そうだよね…私達別に付き合ってるとかそういうんじゃないもんね…」

私はガシャガシャと食卓の食器の後片付けを始める。

「うん。和也君、ありがとう。和也君も頑張ってね」
精一杯の笑顔を作ったつもりだった。
「……………………」
「さあ〜、忙しい忙しい!」
私はキッチンの方へ引っ込み、蛇口を勢いよくひねった。

「…おやすみ」

私の背中に和也君の声だけが聞こえた。

「…バカ!」
私の声は誰にも届くことなく流しに飲み込まれていった。
81 名前:sanni 投稿日:2001年11月01日(木)22時55分08秒
ワーイ更新だ
82 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月12日(月)20時07分57秒
続きキボンヌ
83 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月15日(木)01時13分57秒
madadekka?
84 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月19日(月)22時59分56秒
hozen
85 名前:七資産 投稿日:2001年11月20日(火)01時35分26秒
本スレには戻ってきたからそろそろこっちも更新かな?
86 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月26日(月)00時00分53秒
ま〜だ〜?
87 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月03日(月)02時00分06秒
12月だよ
88 名前:  投稿日:2001年12月04日(火)17時30分39秒
脂肪?
89 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月12日(水)23時13分38秒
ピターリしたいクリスマス
90 名前:  投稿日:2001年12月19日(水)23時16分04秒
まさか今年は終了じゃ・・・
91 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月20日(木)13時14分00秒
>>90
そうでないことを祈ろう。
92 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月25日(火)16時44分35秒
ザッピング移転

http://tv.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1000956932/l50
93 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月27日(木)00時35分25秒
??
94 名前: 投稿日:2002年01月07日(月)19時08分48秒
??
95 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2002年01月17日(木)18時16分11秒
ザッピングは新スレに♪

http://tv.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1011178986/
96 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2002年01月21日(月)18時27分08秒
年明けちゃった…
97 名前:sage 投稿日:2002年02月22日(金)03時45分31秒
続けてほしー…。
98 名前:  投稿日:2002年03月15日(金)22時42分21秒
ど素人あぼーん?
99 名前:  投稿日:2002年03月27日(水)20時01分15秒
いよいよ本格的にやばいのか
100 名前:nanashi 投稿日:2002年03月29日(金)22時00分46秒
100Get&復活キボンヌ
101 名前:なな 投稿日:2002年04月20日(土)03時19分30秒
待っとるよ----。

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