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Dear Friends 3

1 名前:すてっぷ 投稿日:2001年10月21日(日)11時45分53秒
いろんな話を書いていきたいと思います。
風板にて書かせて頂いていたスレと同名なのですが、
前スレからの続きではありません。

よろしければ、お付き合いください。
2 名前:すてっぷ 投稿日:2001年10月21日(日)11時47分01秒
<「後藤」vs「桜前線」>

設定は今年(2001年)の春ということで、今頃こんな話も何なんですが…
良かったら読んでやって下さい。
3 名前:「後藤」vs「桜前線」 投稿日:2001年10月21日(日)11時48分11秒

―――

あたしね、
誰かに手紙書こうとするとき、誰かに電話しようとするとき、誰かにメールしようとするとき…
誰かに何かを伝えようとするとき、いっつも思うんだ。
いっそのこと、自分がそのヒトになれたらいいのになぁー…って。

そうすれば、
相手がどんな言葉を望んでるのかってコトも、
相手がどんな言葉で喜んでくれるのかってコトも、カンタンにわかっちゃうから。

そうすれば、
どんな言葉を選べば相手が傷付かないのかってコトも、
どんな言葉を選べば自分が傷付かないのかってコトも、ぜんぶわかるのに。

桜、キレーだなー…誰かに見せたいなー…電話してみようかなー…でも忙しいかもしんないし…
最近ぜんぜんメール来ないし…あたしからもぜんぜんしてないし………とか、たくさん。
いろんなコト、ぐちゃぐちゃ考えずにすむのに。
4 名前:「後藤」vs「桜前線」 投稿日:2001年10月21日(日)11時49分22秒
顔が見えない分いろんなコト想像して、『今なにしてるんだろう』とか『あのコだったらこーゆーとき、なんて言うだろう』とか
いっぱい想像してみて、その人のコトたくさんわかった気になってるけど。
知らず知らずのうちに自分の中で勝手に作り上げてしまった彼女の姿と、実際の彼女ってホントはすごく
かけ離れているんじゃないだろうか…なんて考えて、ちょっと不安になったりして。

向こうには向こうの世界があって、あたしと話したり一緒にいたりするよりもきっと、そっちのがぜんぜん楽しくて。
向こうはきっと、あたしからの電話もメールもべつに、待ってやしないんじゃないか…とか、いろいろ考える。
なーんも考えてないように見えて、実は…いろんなコト考えてんだ、あたしだって。
ただし、それってぜんぶ勉強以外のコトだけど。


あーあ…なんか、考えすぎたら眠くなってきたよぉ?

あったかそうな木のベンチの上、寝そべって満開の桜を見上げた。
そよ風が木を揺らして、目の前で桜吹雪が舞ってる。
あたしが広げた手のひらにも、花びらが一枚降ってきた。
それをそっと手の中に閉じ込めると、あたしはゆっくりと目を閉じた。
5 名前:「後藤」vs「桜前線」 投稿日:2001年10月21日(日)11時50分38秒
『ごとーさーん、起きてくださーい』
ん……?
気持ちよく眠っていたあたしは、遠くの方から聞こえてきた声に起こされる。

「なに…?だれ…?」
『これから北の方行くんだけどさ、いっしょ行かない?』
「……はあ?」
相変わらずその声は遠くて、やっと聞き取れる程度。

「だれ…?どこにいんの?」
『行くの?行かないの?どっち?』
”声”はあたしの問いには答えず、あくまで自分の質問を優先させようとあたしに問い詰めてくる。

「行くって、どこ行くの?」
『だからー、北の方だって言ってんじゃん』
「北の方行ってなにすんの?」
『サクラ、咲かすの』
”声”はあたしの質問に、実にあっさりとした口調で答える。

「……誰?あんた」
『桜前線だけど』
”声”はあたしの質問に、またもあっさりとした口調で答える。

『寝てばっかいないでさ、たまには運動とかしてみたら?』
「運動ならしてるよ、いっぱい!いっつも寝てばっかじゃないよっ!!」
あたしが言い返すと、遠くからくすっと小さな笑い声。
6 名前:「後藤」vs「桜前線」 投稿日:2001年10月21日(日)11時52分21秒
『くやしかったら追っかけてきな、後藤』
え……?
聞き覚えのある声に、あたしはハッとする。

「いちー、ちゃん?」
どうしてココに、いちーちゃんが?
まだぼんやりしたアタマで一生懸命考えてみるけど…さっぱりわからない。

『早くしないと置いてくよ』
「待って!あたしも行く!」
いちーちゃん(桜前線?)の言葉に、あたしは慌てて飛び起きる。

「いちーちゃん、どこ?」
いちーちゃんの声を頼りに周りをキョロキョロ見回してみるものの、彼女の姿はどこにもない。
『だから北だって』
その声は空の上から聞こえたような気がして、あたしは思わず上を見上げた。
だけど、そこにいちーちゃんの姿はなくて…代わりにあたしが見たモノは、満開の桜の花たち。

「ちがうよ、行き先じゃなくて。いちーちゃんが、どこにいんの?」
『変なコト聞くヤツだねー…。後藤さ、桜前線って自分の目で見たコトある?』
「ないよ。見えるワケないじゃん、そんなの」
『そーゆーコト。おっけー?』
「……うん」
いちーちゃんの言葉に戸惑いつつも、とりあえず頷くあたし。
7 名前:「後藤」vs「桜前線」 投稿日:2001年10月21日(日)11時53分46秒
『じゃ、行こっか』
いちーちゃんは困惑するあたしをよそに、いともあっさりと言い放つ。

「ねぇ、北って言われてもわかんないよ。こっからじゃ、いちーちゃんの声しか聞こえないし」
『ったく、世話のかかるヤツだねー…相変わらず』
その口調から、少し不機嫌そうないちーちゃんの顔がすぐに思い浮かんだ。
だけど、いきなり現れて(姿は見えてないけど)『北へ行こう』って言われてもさ…どこに向かって歩けばいいんだよ?
いちーちゃんの言動はこの場合、クレームつけられて当然だと思うんだけどなぁ…。

『じゃ、目つぶって。いい、って言うまで開けちゃダメだよ?』
「え…?うん」
あたしは桜の木の下に立ったまま、言われた通りに目を瞑る。

『おっけー。いいよ』
いちーちゃんの声が、さっきよりも大きく聞こえる…きっと、あたしのすぐ近くにいるんだ。
「うそっ!?なにコレーっ!?」
目を開けるとあたしは…雲の上にいた。
さっきまであたしが居た公園の桜は、小さなピンクの点にしか見えない。

『じゃ、行こっか』
いちーちゃんの声は、あたしのすぐ側で聞こえているのに…やっぱり、姿は見えなかった。
8 名前:「後藤」vs「桜前線」 投稿日:2001年10月21日(日)11時55分04秒
「ねぇ、どこ行くの?」
雲の上に寝転がって眼下に広がる景色を見ながら、いちーちゃんに尋ねる。

『次はね、銚子』
「ちょーしぃ?ドコそれ?」
『うわっ、むかつく…千葉だよ、千葉!!』
「そうなんだぁ。世界地図なら得意なんだけどね」
『カンジ悪っ。もう連れてくのやめようかなー』
きっとホッペをふくらまして怒ってるだろう、いちーちゃんの顔を思い浮かべる。

なんだかこーゆーの、ひさしぶりですっごく楽しい。
いちーちゃんの声しか聞けないのはちょっと寂しいけど、話するのだってホントひさしぶりだし。


『着いたよ』
「えっ、もう着いたの?」
『ってゆーか、さっきからもう三日経ってんだけどね』
「え……?」
三日、って…さっき出発してからもう三日も経っちゃってるってコト?
時間の感覚がワケわかんない…あたし、雲の上でいつの間にか寝ちゃってたんだろうか。
もしそうだとしても、いくらあたしだって三日間も眠りつづけられるワケないよねぇー…。
9 名前:「後藤」vs「桜前線」 投稿日:2001年10月21日(日)11時56分19秒
『後藤、ちょっと目つぶってて。これから仕事するから』
寝そべったまま頬杖ついて考え込んでいたあたしは、すぐ側で聞こえた声に顔を上げる。
いちーちゃんの言う『仕事』ってのは、やっぱり…桜の木に花をつけるコトなのかな。
なんたっていちーちゃん、『桜前線』なワケだし。

「なんで?見たっていいじゃん」
桜前線が桜咲かせるトコなんてめったに見れないんだから、この機会にちゃんと見ておきたい。
そんで、明日よっすぃーに自慢するんだから。

『ダーメ。職人は自分の仕事ぶりを人にはぜったい見せないモンなのさっ』
「えーっ、けち」
ぶつくさ言いながらもあたしは…両手をアタマの後ろに組んで、雲の上に仰向けになって目を閉じる。


『おっけー。目、開けてみ?』
しばらくして、やっといちーちゃんのお許しが出た。
フテネしていたあたしは、体を起こして下の景色に目をやる。
10 名前:「後藤」vs「桜前線」 投稿日:2001年10月21日(日)11時57分47秒
「おおーっ!すっごいキレーだぁ…なんか、めっちゃ近くなってない?」
目を開けるとあたしが乗っかってる雲はいつの間にか高度を下げ、さっきよりずっと地上に近くなってる。
『よく見えるようにね、ちょっと近付いてみましたー』
茶化すような口調で、いちーちゃんが言った。

『3月26日、っと。よし、おっけー』
耳元で、いちーちゃんの独り言が聞こえる。

「なにやってんの?いちーちゃん」
『ああ、スタンプ押してんの』
「スタンプ?」
『そ。あのねー、なんつったらいいんだろーなぁ…表みたくなってて、地名の下に一コずつ四角い箱があってさ、
その中に日付書いてスタンプ押してくんだよ』
なるほどー、スタンプカードかぁ。
桜が咲いた(いちーちゃんが咲かせた)土地の欄に今日の日付を書いて、そんでスタンプ押してくんだね。

「何のスタンプ?」
『サクラの花』
「まんまじゃん」
『当たり前じゃん、そんなトコひねってどーすんだよ』
そりゃーそうだけど、ねぇ。
11 名前:「後藤」vs「桜前線」 投稿日:2001年10月21日(日)11時59分07秒
「お花のスタンプかぁ…なんか、幼稚園の出席カードみたいだね」
『あのさ、後藤。こっちは仕事でやってんだから、幼稚園児と一緒にしないでくれる?』
「あはっ、ゴメンゴメン」
シゴトに厳しいトコは、桜前線になっても相変わらずだねぇー…いちーちゃん。

『よし、こっからはホントに北上すっからね。行くよ?』
「うん!」
北上とか言われても、なんだかピンとこないんだけど…いっしょにいられるならそんなコト、どーだっていいや。

「わっ!?」
あたしを乗っけている雲が、いきなりスピードを上げて発進する。
あたしは振り落とされないように、しっかりとしがみつく…って言っても、ふわふわしてて一体ドコに
しがみつけばいいのかわかんないから、とりあえずしがみついたよーな気になっておくコトにした。

『だいじょーぶ。ぜったい落っこちないから』
「ホント?」
『うん。ぜったい落とさないから、大丈夫だよ』
「うん!」
これからどこへ行くんだろ。そして、どこまで行くんだろ。
なんだか、ワクワクしてきたなぁ…自然と、笑顔になってしまった。
12 名前:「後藤」vs「桜前線」 投稿日:2001年10月21日(日)12時00分52秒
『おっけー。4月12日、っと』
「あっ、よっすぃーの誕生日だぁ」
よっすぃー、16歳の誕生日おめでとう!ごっちんは今、秋田にいるよ?

『そっか。おめでとー、よっすぃー!』
「あはっ、いちーちゃん、『よっすぃー』とか言ってるし」
いちーちゃんの楽しそうな笑い声が、あたしのすぐそばで聞こえてる。


いちーちゃんといっしょに、北へ、北へ。
あたしたちが通った後は、そこらじゅうキレイな桜の花でいっぱいになるんだね。
そんでさ、いちーちゃんのスタンプも、いっぱいたまってくね。
あたしたちのサクラ、あしあと残すみたいに、いっぱい咲かそうね。
そんでさ、いちーちゃんのスタンプも、サクラの花でいっぱいにしようね。

あたしは、神様にお願いした。
こんな楽しい時が、このままずっと、ずっと続いていきますように。
ずっとずっと、二人いっしょにいられますように。
13 名前:「後藤」vs「桜前線」 投稿日:2001年10月21日(日)12時03分05秒
『5月21日、っと。おっけー、コレで終わり』
「え…?」
終わり、ってコトバが、いちーちゃんの口からするりと紡がれる。
それは『おはよう』とか『おやすみ』って言うみたいに普通に、あいさつみたく普通に。

『おつかれ、後藤。付き合ってくれてさんきゅー』
「終わり、って…終わり、ってなに?」
目の前が少しずつぼやけてきて…せっかくいちーちゃんが、あたしたちが、咲かせたサクラも霞んで見える。

『どした?後藤』
「…やだ。ぜったいやだよっ!!」
『んなコト言ったってさ…桜前線は北海道までたどり着いたら、そこで終わりなんだよ?』
声聞いただけで、いちーちゃんがすっごく困ったような顔してんのわかるけど…あたしだって譲れない。

「北海道越えたって、アメリカとかイギリスとかフランスとか世界中行けばいいじゃん!!」
『…バカ。世界一周する気?』
「一周じゃないよ!戻ってきたらもっかい行くもん、何周だってする!ずっとずっと…」
『ダメだよ。スタンプいっぱいになったもん。だからもう行けないよ』
「なんだよ!カンケーないじゃん、そんなの…っ」
あたし、完全に涙声になってる。
14 名前:「後藤」vs「桜前線」 投稿日:2001年10月21日(日)12時05分15秒
『後藤、なんで泣くの?ねぇ、後藤』
「ひどいよ!強引に連れ出したくせに、『終わり』なんて勝手に決めちゃって…いちーちゃん、ひどいよ!」
『いつ誰が強引に連れ出したよ?ちゃんと聞いたじゃん、『行く?』ってさ。ちゃんと聞いたよ?』
「そうだけど!!そうだけどさー!!」
いちーちゃんの冷静なツッコミに、用意してたいちーちゃんへのクレームの数々はぜんぶ吹っ飛んで
頭の中が真っ白になる。

『春になったら、また会えるよ』
「やだ、そんなの」
次の桜の季節まで待て、って言うの?無理だよ、そんなの。

『春になったら、今度は沖縄から北海道までぜんぶ行こ?二人でさ、日本中のサクラの木に花を咲かすんだ』
「やだってば」
『後藤、』
「だから嫌だって言ってんじゃん!それに春になったって、日本中旅したって、あたしにはいちーちゃんの声しか
聞こえないじゃん!!声だけじゃやだよ、会いたいよ!!いちーちゃんに、会いたい」

いちーちゃんは、何も言ってくれない。
顔が見えないからあたしは、また不安になる。
こんなワガママな後藤を、いちーちゃんはどう思っただろう?
15 名前:「後藤」vs「桜前線」 投稿日:2001年10月21日(日)12時06分54秒
『だったらさ、そう言えばいいじゃん』
「えっ?」
いちーちゃんの言葉は唐突過ぎて、はじめは意味がよくわかんなかったんだけど。

『そう言えばいいんだよ、後藤』
「………うん」
ちょっとだけ考えて、あたしなりに考えてみて、そしてわかった。

そっかぁ。
会いたいときは、『会いたい』って言えばいいんだ。
『おはよう』とか『おやすみ』って言うみたいに普通に、あいさつみたく普通に、言えばいいんだ。


『おっけー?』
「うん」
『はい、よくできました』
「あはっ、なにそれぇ?」
あたしが笑うと、透明人間のいちーちゃんも笑った。
16 名前:「後藤」vs「桜前線」 投稿日:2001年10月21日(日)12時08分42秒
『今度は、後藤の分も用意しとくね。スタンプカード』
「出席カードじゃなくて?」
『だからー、幼稚園児といっしょにするなってば!』

声しか聞こえなくても、いちーちゃんがどんなカオしてるか、ちゃんとわかるよ?
声しか聞こえなくても、もう不安じゃないよ?
だって、会いたいときは、ちゃんと言うって決めたからね。

「ところでさ、今ドコにいんの?あたしたち」
『聞いてなかったの?ったくもー、もっと桜前線のお仕事にキョーミ持とうよ。お願いだから』
いちーちゃんの姿は見えないけどきっと、アタマ抱えて唸ってるね…って、そんなの誰でもわかるか。

デキの悪い後輩だけど、次の桜の季節までにはもうちょっと成長する予定だから…よろしくね。
そして春になったら、二人で…日本中の桜、咲かそうね。


5月21日、釧路。
いちーちゃんとあたしの、サクラの旅は終わった。
17 名前:「後藤」vs「桜前線」 投稿日:2001年10月21日(日)12時09分46秒

―――

「ふぁ…」
目が覚めると、あたしはベンチに横になっていて…目の前を、サクラの花びらがひらひらと舞っていく。
ぼんやりとしたアタマで、さっきまで見ていた夢を何度も繰り返し思い出す。
忘れないように、何度も何度も。


東京が満開ってコトは、いちーちゃんは今頃どのへんにいるのかなー…なんて想像して、
一人で思い出し笑いなんかして。
あたしはベンチに寝そべったまま、ポケットから携帯を取り出した。
18 名前:「後藤」vs「桜前線」 投稿日:2001年10月21日(日)12時11分09秒
「もしもし?いちーちゃん?」
『久しぶりぃ。電話ないからさ、忘れられてんだと思ってたよ?』
「そっちこそ」
『こっちは気ぃ使ってたんだよ、そっちに。忙しいだろうと思ってさ』
「こっちだってそうだよ。そっちが忙しいかなぁって思ってかけなかったんだから」
『じゃあ、アレだね。悪いのはこっちでもそっちでもなくて、『あっち』ってコトで』
「あはっ、なにそれぇ?『あっち』って誰?」
『知んない。ははは』

もっとカンタンに考えていいんだ、って思った。
話したいときは電話すればいいし、会いたいときはそう言えばいい。
いっぱい悩んでやっと電話したって…話すコトは結局、あいさつみたく普通の、何でもない会話なんだもん。
19 名前:「後藤」vs「桜前線」 投稿日:2001年10月21日(日)12時13分54秒
「いちーちゃん、今からこっち来ない?桜がすっごいキレーだよ?めっちゃイイ場所見つけたんだぁ」
『今から?いいけど…待ってられる?』
「うん。寝てる」
『……わかった。すぐ行く』
そう言うといちーちゃんは、一方的に切ってしまった。
急いでくれるのはうれしいんだけど、あいさつもせずに切るのはどうかなぁ。
と思ってたらすぐに、今度はあたしの携帯が鳴った。

「もしもし?」
『どこだっけ?場所』
「聞いてなかったの?ったくもー、もっと人の話ちゃんと聞こうよ。お願いだから」
夢の中でいちーちゃんにさんざん呆れられたから、ここぞとばかりにお返ししてやる。

『ってゆーか、そもそも言ってないじゃん。後藤』
「え?そーだっけ?」
『そうだよ。もー、しっかりしてよ…』
結局、現実のいちーちゃんにも呆れられちゃったけど。
今度はちゃんと場所を告げて、あいさつもして、あたしたちは電話を切った。

さーて、もうひと眠りしよっかなぁ。
両手で携帯を抱いて、再び目を閉じる。


夢の中でもう一度、会えますように。
おやすみ…いちーちゃん。


<Zzzzz…>
20 名前:すてっぷ 投稿日:2001年10月21日(日)12時15分35秒
季節感のない話でしたが…。
感想などいただけると、うれしいです。
21 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月21日(日)16時34分57秒
季節感のあるものと娘、なんかほのぼのするぞ。
あとは何があるんだっけ?木枯らし一番か?
22 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月21日(日)16時54分20秒
いちごまって、その二人しか出てなくても話が進行できちゃうような世界観が
ありますねえ・・・
やっぱりこの二人は自分の中でベスト・オブ娘。カップリング!!
23 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月22日(月)02時12分42秒
なぜだか心が和む話ですね
24 名前:もんじゃ 投稿日:2001年10月22日(月)09時59分30秒
とっても良いお話で、とっても気に入りました。
12の後藤の気持ちとか、18でのやりとりとかほんと良い感じで好きです。
25 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月22日(月)21時53分41秒
5月21日に終了っていうのがリアルですね。
ほのぼのいちごま、ありがとうございました。
次も頑張って下さいね。
26 名前:すてっぷ 投稿日:2001年10月24日(水)21時35分20秒
感想、ありがとうございます!

>21 名無しさん
季節シリーズ、『木枯らし一番』は…何となく石川がハマり役って感じしますね。
決して深い意味はありませんが(笑)

>22 名無しさん
なるほど。確かに、独特な世界観がありますよね。それだけに、22さんのイメージを
壊すような話にならなかったか不安ですが…。

>23 名無し読者さん
こんな話で和んでいただけるとは。よろしかったら、また読んでやって下さい…。

>24 もんじゃさん
気に入ってもらえて良かった…たまにはこういう話も書いてみるもんですね(笑)
12は、今見たらひらがなだらけでちょっとびっくりしました。読みにくくなかったですか?(笑)

>25 名無し読者さん
今年の開花日を調べてみたんですが…釧路が最後でちょうどそのぐらいだったので
(5月18日だったらしいです)、使ってみました。
こちらこそ、こんなまったり話にお付き合いいただき、感謝です!
27 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月24日(水)23時54分22秒

―――

それは、ごっちんの無責任な一言から始まった。


「あはっ。なんかカワイイねぇー、コレ」
あたしは何気なく、ごっちんが指差した一枚の絵に目を遣る。

「ぶはっ!!ゴホッ、ゴホッ…」
「うわっ!よっすぃー、きったねーっ!」
隣に座っていた矢口さんが、椅子から飛びのく。
ノートの隅に描かれた『それ』は、飲みかけのジュースを吹き出させる程のインパクトをもって
あたしに襲い掛かってきた。

「相変わらずキッツイねー、圭ちゃんの絵は」
言いながら、矢口さんはあたしがテーブルにぶちまけてしまったジュースをティッシュで拭き取ってくれている。
口元をティッシュで拭い落ち着いたところで、あたしは改めて保田さん作の問題の絵を覗き込んだ。

「コレ、猫ですか?ウサギ?」
「犬だよ」
あたしの問いに、少しムッとした表情で答える保田さん。

あいぼんにせがまれて彼女のために渋々書いてあげたみたいだけど、保田さんの描く作品は
独特すぎてあたしたち凡人には理解できないところがあるからなぁ…。
28 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月24日(水)23時55分41秒
ノートの端で生息しているその生物(保田さん曰く『犬』)は頭の部分だけ見れば確かに犬だが(しかし『犬』と
言われなければ何の動物かわからない)、首から下の胴体部分は犬のそれとは遠くかけ離れている。
頭を描いた時点で飽きたのか、首から下は全て魚の骨のように細い線で乱暴に表現されていた。

頭部だけは(保田さんなりに)真面目に描いたと思われるが、それすらもハッキリ言わせてもらうと…
小学校低学年レベル、いや、もしかするとそれ以下かも知れない。
ヤスダ作品の特徴でもある針金のように細い胴体で、この重そうな頭を支えるのは至難のワザと思われるが
そんなコトはおくびにも出さず、ノートの上の『犬』はその顔に笑みすら浮かべている。


「どーでもいいけどブサイクすぎだよ、この犬……くくっ、なんか見れば見るほどオカシクなってきた!!
あっやばっ、ツボ入った…!ぷっ、くくくっ…あはっ、あははははははっっ!!!」
ヤスダ画伯の力作に、矢口さんもご満悦。

「「「「………」」」」
その様子を、楽屋の隅でひっそりと見守る四つの影…先週入ったばかりの新メンバーたちだ。
29 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月24日(水)23時56分54秒
「やべ、マジぶっさいく!!カンベンしてよ、けーちゃーん!!はははははっ!!」
それにしても矢口さん、さっきから笑いすぎなんじゃ……はっ、そうか!!
矢口さん、緊張して固まってる新メンバーたちを和ますためにこの場を盛り上げようと…さすがは矢口さん。

「ほんっと、地球上の生物じゃないですよね。コレは」
新メンバーが居るためか無関心を装ってあまり喋ろうとしないみんなの代わりに、あたしが矢口さんに助け舟を出す。

「アンタたち、いいかげんにしなさいよ…」
「地球上どころか宇宙人だって飼わないって、こんな犬!!」
保田さんの怒気の篭った言葉も、ムードメーカー矢口さんの耳には全く届いていないようだ。

「すっげー、ブサイク!!ねっ!紺野ちゃん?」
「えっ……」
突然目の前にノートを突きつけられて、戸惑う紺野ちゃん。
矢口さん…まだ入ったばっかの新メンバーと、もうコミュニケーション取ろうとしてる。さすが。
30 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月24日(水)23時58分06秒
「正直に言っていいって!ねっ?ぶっさいくだよねー、コレ」
「えっ、あ、あの……は、はい」
「ほらぁ」
紺野ちゃんにしてみれば半ば強制的に頷かされたようなモノだったが、同意を得られて矢口さんは満足そう。


「そっかなぁ…カワイイと思うんだけど。なーんか、憎めないっていうかさぁ。アタシは好きだけどなぁ」
諦めの悪いごっちんは、ただ一人保田さんの描いた『犬』を絶賛している。

「ごっちん。そんなに気に入ったんなら、明日アタシが良いモン作ってきてあげるよ」
ごっちんのお褒めの言葉に気を良くしたのか、とびっきりの笑顔で保田さんが言った。
その笑顔に、なぜか背筋が凍るような思いがした。
31 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月24日(水)23時59分05秒

―――

翌日。
楽屋に入るなり、あたしは石のように固まった。
そしてあたしの視線は、先に来ていたごっちんの胸元に釘付けになる。

「あっ、よっすぃーオハヨー」
「ごっちん…なに、それ」
ごっちんが着ている真っ白なTシャツには、昨日の悪夢が黒一色で見事に再現されていた。

「コレ?へへっ、いいだろー。圭ちゃんがね、作ってきてくれたの」
真四角の顔、だらりと垂れ下がった二枚の長い耳、だらしなく笑う口元、お約束のように左右三本ずつのヒゲ。
そして、哺乳類の体の構造を全く無視した針金のように細い胴体。思い出したように付け足された尻尾。

「アタシさー、最近凝ってんだよね。オリジナルTシャツ、ってやつ?」
保田さんがパソコンにハマってるのは知ってたけど、まさかココまでやるとは。
ココで普通なら、彼女に対して尊敬の眼差しを向けるところだけど…ごっちんの胸元で揺れるブサイクな犬を
見る限り、とてもそんな気分にはなれなかった。
32 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月25日(木)00時00分08秒
「後藤」
マネージャーに呼ばれて雑誌の取材へと向かうごっちんの後ろ姿を見送る。
ごっちん…一体、どこがカワイイの?その犬。
ねぇ。わかんないよ、教えてよ…ごっちん。


「よっすぃーにも作ってきてあげよっか?」
「いや、あたしは」
これ以上ゴミを増やすことは、地球にとって良くない。
あたしは涙をのんで、保田さんの申し出を丁重にお断りしたのだった。
33 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月25日(木)00時01分09秒
そして、後日。

「ぶーーーっ!!げほっ、げほごほっ!!」
「やっ、矢口さん!?」
休憩時間、椅子に座って雑誌を読んでいた矢口さんが突然、飲んでいたお茶を勢いよく吹き出した。

「ごほっ、ごほっ、ごっ、ごっちん…コレ着て写真撮ったの!?」
「うん。面白いからそのまんまでいいよぉー、って言われてさ」
あたしは、矢口さんの吹き出したお茶が転々と飛び散っているページを覗き込む。
そこには、二週間ほど前に見たきり記憶の奥底に追いやっていた悪夢の絵がプリントされたTシャツを着て
にっこりと微笑むごっちんの姿があった。

「いやー、なんか照れるよね。自分のイラストが雑誌に載っちゃうなんてさ」
「良いのかなー…発禁とかなんないよね、コレ」
「ごっちんよりTシャツの方が目立ってますよね」
ノンキに笑うヤスダ画伯の姿に、あたしたちの心配は尽きなかった。


そしてこの一枚のTシャツが、あたしと矢口さんの身に更なる不幸をもたらすコトになろうとは…
この時はまだ、知る由もなかった。
34 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月25日(木)00時02分17秒

―――

「世の中わかんないモンだよねー。こんな趣味悪いTシャツがバカ売れしちゃうなんてさ」
タメ息混じりにそう言った矢口さんの言葉に、あたしは大きく頷いた。
テーブルの上には、左胸に例の悪魔犬(作・ヤスダ画伯)が小さくプリントされたTシャツが広げられている。

今から一ヵ月半ほど前、保田さんのオリジナルTシャツ(ヤスダ画伯作の『犬』がプリントされている)を着た
ごっちんの姿がとある雑誌に掲載された。
後藤真希が着ていたというコトからなのか、ヤスダ画伯の斬新な作風がウケたのか、翌日から雑誌社には
『犬』Tシャツへの問い合わせが鬼のように殺到したという。

ヤスダ画伯作の『犬』…『ヤスダ犬』(やすだけん)と命名されたそのキャラクターがプリントされたTシャツは
即製品化され、市場に出回るや否や売れ行きは絶好調、品切れ続出で生産が追いつかないという事態を
招いていた。

一ヵ月半前、悪魔の犬と罵られたこの『ヤスダ犬』は…今や某『ア○ロ犬』をもしのぐ勢いで、業界にちょっとした
旋風を巻き起こしていたのだ。

矢口さんの言う通りだ。
ホント、世の中わかんないモンだなぁ…。
35 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月25日(木)00時03分50秒
「みんな、ちょっと集まって」
番組の収録を終えて帰り支度をしていたところでマネージャーに招集され、メンバー全員が部屋の中央に集合した。
娘に合流していよいよ本格的に活動を開始した新メンバーたちは、メモ片手に緊張した面持ちであたしの後ろに立っている。

「近いうちに、つんくさんから話あると思うけど…新ユニット、作ることになったから」
マネージャーの言葉に、「えっ…」という戸惑いの声があちこちから漏れる。

「ユニット名は、『ヤスモニ。』」
マネージャーの言葉に、「は…?」という戸惑いの声があちこちから漏れる。
ヤスモニ。……?

「メンバーだけど…まず、リーダーは保田」
『ヤスモニ。』の『ヤス』は保田さんの『ヤス』…?

「で、紺野」
「えっ……はっ、はい」
突然名前を呼ばれた紺野ちゃんは戸惑いつつも頷くと、メモ帳に何やら記入し始めた。
『ヤスモニ。のメンバーに選ばれた。』とでも書き留めているのだろうか?
36 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月25日(木)00時05分22秒
「矢口」
「はあっ!?」
ヤスモニ。の三人目は、矢口真里(18)に大決定。

「で、最後が…吉澤」
「えっ」
ヤスモニ。の四人目は、吉澤ひとみ(16)に大決定、って…うっそぉー。
っていうか、ヤスモニ。ってなに!?なにするヒト!?何の集団!?
災難は、自分の身に降りかかって初めて実感するモノなのだと知った瞬間だった。


「デビューは来年1月1日。で、まだサンプルなんだけど…一応、衣装もできてるから」
そう言ってマネージャーが紙袋から取り出したモノは、一枚のTシャツ。
爽やかな白地の、そのど真ん中では…見覚えのある、忘れたくても忘れられない、あの『犬』が、にんまりと
悪魔の笑みをたたえていた。

今や子供たちに大人気のヤスダ犬を引っ提げて、2002年1月1日に華々しくデビューを飾る、
四人組新ユニット『ヤスモニ。』。
『ヤスモニ。』の『ヤス』は、ヤスダ犬の『ヤス』だったんだ。

お母さん、ゴメン…ひとみは、純白のウェディングドレス着る前に、純白のヤスダ犬Tシャツを着る羽目になりそうです。
37 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月25日(木)00時06分22秒
「あーっ!なっち、すごいコトに気付いちゃった!」
テーブルに広げられたヤスダ犬Tシャツ(『ヤスモニ。』仕様)を指差して、安倍さんが言った。

「ヤスモニ。のね、最後の『 i 』を『 o 』に変えてみて?」
ヤスダ犬のイラストの下にプリントされた、『yasumoni 。』の文字に目を遣る。

「ヤスモノ。になった!あーら不思議!!」
「テメーっ!ケンカ売ってんのかよ!!」
「やっ、矢口さん、落ち着いて!」
あたしは、安倍さんに掴みかかろうとする矢口さんを羽交い絞めにする。

「どうせなら、『ヤッスモニ。』の方がゴロが良くていいのにね」
飯田さんまで…。
みんな、自分に関係ないからって言いたい放題…。
38 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月25日(木)00時07分43秒
「さむっ…」
小さなカラダをちぢこませて、矢口さんがぽつりと呟く。
傷心のあたしたちにとってお台場の潮風は、あまりにも冷たすぎた。

「もうすぐ10月も終わっちゃうんですよね…早いなぁ」
安倍さんに『安物』呼ばわりされた『ヤスモニ。』の面々(保田さん、矢口さん、紺野ちゃん、あたし)は、
仲良く四人並んで夜道をとぼとぼと歩いていた。

「あーあ…なーんで、あたしたちなんだろ」
「ですよね、あたしもずっとそれが気になってて…」
矢口さんの言葉に大きく頷くあたし。
一体どういう基準で選出されたメンバーなのかさっぱり見当がつかなかったんだけど…
どうやら矢口さんも、あたしと同じ疑問を抱いていたらしい。

「ああ、『保田選んでいいよ』って言われたから…アタシが決めちゃったんだけどね」
「「ええっっ!?」」
保田さんの衝撃告白に、あたしと矢口さんの驚きの声がハモる。
そして並んでいたはずの紺野ちゃんは、いつの間にかあたしたちの少し後ろを歩いていた。
39 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月25日(木)00時09分01秒
「圭ちゃん、よくも、よくも…なんてコトしてくれたんだよっ!!」
「あーっ、もう矢口さん、落ち着いて!」
保田さんに殴りかかろうと暴れる矢口さんを羽交い絞めにして、何とか押さえる。

「だけど、何であたしたちなんですか?」
保田さんが選んだってコトは、彼女は事前に新ユニット結成計画について知ってたってことになるけど…
一体どういう基準であたしたちを選んだのだろうか。


「けなされて悔しかったから」
あたしの問いに、保田さんはきっぱりと言い放つ。

「「はあ?」」
一瞬、何のコトやらよくわからなかったのだが…思い当たるフシがあるコトに気付いた瞬間、血の気が引いた。
そう、あれは約二ヶ月前…入ったばかりの新メンバーが挨拶に訪れた時の和やかな楽屋風景。
40 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月25日(木)00時10分38秒
(『ほんっと、地球上の生物じゃないですよね。コレは』)
(『すっげー、ブサイク!!ねっ!紺野ちゃん?』)
(『えっ、あ、あの……は、はい』)
あまりのショックに思わず立ち尽くす、あたしと矢口さん。
そして、突然足を止めたあたしの後ろを歩いていた紺野ちゃんは…勢い余ってあたしの背中に顔面から激突した。

「あっ、すみませんっ…」
「あっ、こっちこそゴメン。だいじょうぶ?」
ぶつけた鼻をさすっている紺野ちゃんに声をかけつつも、あたしは心ココにあらずといった感じだった。


確かにあのとき、ヤスダ犬についてコメントしたのはあたしたち三人だけだったけど…
みんな口に出さなかっただけで、思いは同じだったはず。
それなのに、それなのに……。


『口は災いのもと』
そんな言葉が、痛いほど身に沁みた夜だった。


―――ヤスモニ。デビューまであと2ヶ月とちょっと。―――
41 名前:すてっぷ 投稿日:2001年10月25日(木)00時11分52秒
少し長い話になりそうですが…気長にお付き合いただけると、うれしいです。
42 名前:キャメル 投稿日:2001年10月25日(木)00時20分37秒
なんか出だしから面白いです。
保田、根に持つな〜(ワラ
頑張ってください!
43 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月25日(木)00時32分35秒
いいっすねヤスモニ。ものすげー笑いました。ヤス、おもしろすぎ。
おなじみ毒舌師弟と新キャラ紺野に期待っす。
新作がんばってくださいね〜
44 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月25日(木)01時22分20秒
画伯の絵がバカ売れ…
そんなバカな、と思いつつ、本当だったらちょっと欲しい…
あの絵にはよく分からんが妙にあと引く味わいがある…
45 名前:名無し 投稿日:2001年10月25日(木)03時27分26秒
これ・・・面白過ぎます・・・
46 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月25日(木)04時46分47秒
保田の、復讐? 出だしから波乱含みのユニットの今後に期待です。
それにしても矢口はまた、初っ端から切れまくりですなあ。(笑)
47 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月25日(木)04時56分01秒
いや〜、やっぱステップさん最高。
初っ端からおもろ過ぎ。
48 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月26日(金)02時40分13秒
すてっぷさんが紺野をどう書くか…かなーり楽しみ。
桜前線もよかったけど、こうゆうくっだらねーのがやっぱ好き。
49 名前:すてっぷ 投稿日:2001年10月27日(土)02時52分28秒
感想、ありがとうございます!

>42 キャメルさん
保田、初回は何だか嫌なキャラでしたが(笑)。
出だしから、どうなることやら…お付き合いいただけるとうれしいです!

>43 名無し読者さん
ヤスモニ。字面からして既に可愛くないですよね(笑)。
毒舌師弟、今回は弟子が主人公ですが…相変わらず毒吐きまくると思います。

>44 名無しさん
何かの番組で見た、画伯の『犬』が忘れられず…ネタにしてしまいました。
確かによく分からんですが、妙に気になる絵ですよね(笑)
50 名前:すてっぷ 投稿日:2001年10月27日(土)02時53分50秒
>45 名無しさん
それ…言い過ぎです…(笑)ありがとうございます!

>46 名無し読者さん
保田の怨念が篭った復讐ユニット(笑)、よろしくお付き合いください。
矢口、いつの間にかブチ切れキャラになってましたね…どこで間違ったんだろう(笑)。

>47 名無し読者さん
イキオイだけで始めてしまいましたが…最後までそう感じてもらえるよう頑張ります。

>48 名無し読者さん
紺野については…どういう人なのかほとんど分かってないので、これから
勉強しようかと。で、これからもくっだらねー路線を貫こうかと思います(笑)
51 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月27日(土)02時55分02秒

―――

新ユニット結成から数日後、それは突然やってきた。

「失礼しまぁす」
少しだけ緊張しながらドアを開け、中へ入る。

「おう、吉澤。久しぶりやな」
「おはようございます」
事務所の一室。
つんくさんはあたしが部屋に入ると、吸っていたタバコを揉み消しながらこちらへにこりと微笑みかけてきた。
入口に突っ立っていたあたしは、つんくさんに促されてソファーに腰掛ける。

「どや、調子は」
「調子ですか?いいですよー、もぅバリバリです!」
あたしはつんくさんに暗い気分を悟られないよう、ワザと明るく振舞う。
「そうかそうか。ははっ、そうか」
目の前に座るつんくさんは、終始ニコニコ顔。

「まあ、今度の曲はお前メインやからな。しっかり頼むで」
「はい!チャンスなんで、がんばります!」
新ユニットのコトで少々落ち込んでいたあたしだったが…つんくさんの言葉に救われ、ようやく元気を
取り戻せたような気がした。

しっかり頼むで、かぁ…どんなに自信を失った時でも、誰かに期待されてるって思うと途端に
勇気が湧いてくるから不思議だ。
52 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月27日(土)02時56分12秒
「ははは、そんな気負わんでええって。十分頑張ってるやん、お前。頑張ってる、ホンマ頑張ってるよなー。うん」
「まだまだ!がんばりますよぉー、吉澤は!!吉澤はですね、これからももっともっといろんなコトに
挑戦したいと思ってるんですよー!歌だけじゃなくて、ドラマとか…あとはボクシングとか空手とか
テコンドーとかですねっ、もっともっといろんな…」
つんくさんの言葉にうれしくなったあたしは、自分のこれからの夢をアピール。

「うん、わかった。お前が頑張ってんのは、ようわかった」
「はあ…」
ああ、これからが良いトコだったのに…残念。

「まあ、そんな事はどうでもええねん。今日呼んだんはなぁ、アレや。聞いたと思うけど…新ユニットの事でちょっとな」
「ああ…はい」
未来への夢が膨らみかけたところで、いきなりイヤな現実に引き戻されて暗い気分になる。

「あのな、アレや…えーっと、『ヤスダ娘。』やったっけ」
「えっ…。『ヤスモニ。』って聞きましたけど」
「ああ、そうそう。それそれ」
ずいぶんいい加減だなぁ…もしかして、つんくさんが考えたユニットじゃないのだろうか?
53 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月27日(土)02時57分15秒
「衣装も見たと思うけど」
「はい」
『衣装』とは…言わずと知れた例の悪魔犬、もといヤスダ犬Tシャツのコト。
まだ試作の段階らしいから、少しは良い方に改良されて出来上がってくるといいけど…。

「あれな…実はお前だけ、ちゃうヤツやねん。何て言うたらええかなー…特別、っていうかな。
まあ…今回のユニット、ある意味お前メインやから」
「と、とくべつ!?」
メイン!?
あたしの口から、思わずうれしい悲鳴が漏れる。
『ある意味』というフレーズが少し気にかかったものの、あたしはつんくさんの言葉を素直に受け止めた。

モーニング娘の秋の新曲、そして今回の新ユニット…ダブルでメインだなんて、信じられない。
ついに『よっすぃー』の時代が来たね…長かったなぁ、ココまで。
ホント、がんばってきて…よかった。
54 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月27日(土)02時58分37秒
「いやー、ホンマ頑張ってるよな。吉澤は。何度も言うけど、ホンマ頑張ってる」
「そう、ですかね」
そこまでしつこく言われると、なんだか空々しく聞こえるのは気のせいだろうか。

「ホンマやて。今度の新曲かてめちゃめちゃ頑張ってるやん。めっちゃ目立ってるやん?せやろ?」
「はい!目立ってます!」
つんくさん、本当にあたしのコト認めてくれてるんだ…あたしは、そんなつんくさんの言葉を空々しいだなんて
思ってしまったコトを深く反省した。

「モーニングではお前が一番目立ってる。これ以上ないほど目立ってる。せやな?それは間違いないよな?な?な?」
「はあ…」
つんくさん、一体なにが言いたいんだろう…?

「そういうワケでな…」
そう言ってソファーにもたれていた上半身を起こすと、つんくさんは目の前のテーブルに両手をついた。

「すまん、吉澤!泣いてくれ!この通りや!!」
「えっ、ちょっと、つんくさん!?」
テーブルに額を擦りつけるようにして、深々と頭を下げるつんくさん…なんなの、一体!?

「お前の衣装な…アレなんや!」
つんくさんが、顔を伏せたまま部屋の隅を指差して言った。
55 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月27日(土)03時00分03秒
「……!」
つんくさんが指し示した先にあったモノを見た瞬間、あたしの体を電流のような衝撃が駆け抜けた。

「アレ、ですか…あたしの衣装。着ぐるみですか、あたし」
今まで平面上でしか見たコトの無かったそれが、ぬいぐるみとなってあたしの目の前に転がっている。
三次元の世界へようこそ…ヤスダ犬。
とりあえず、部屋の隅に置いてあるのは頭の部分だけのようだ…胴体部はどこか別の場所に保管してあるのだろうか?

「正確には、『かぶりモン』や。首から下は…コレを着てもらう」
ようやく顔を上げたつんくさんが、テーブルの下に隠してあったらしい『何か』をガサゴソと取り出すと…
それを、あたしの目の前で広げて見せる。


パサッ。
両手を上げたつんくさんが、目の前で垂れ幕のようにそれを広げた瞬間のこの音を、
あたしは生涯忘れないだろう。


「ぜっ……!」
全身タイツ!?しかも白っ!?

「あ、あわわわわわ」
驚きは、言葉にならなかった。
56 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月27日(土)03時02分03秒
「オレらも考えたんやで?せやけどな、ヤスダ犬の胴体部分…細すぎて、ぬいぐるみではどうしても
表現できひんかったんや。頼む、全身タイツ着てくれ。吉澤」
「………」
憎かった…ごっちんが『憎めない』と言ったヤスダ犬が、憎くて憎くてたまらなかった。

「あたし…コレ着て、ステージに立つんですか?」
「立ったり座ったり。時には四つん這いで。犬やから。な?」
「嫌です」
全身タイツで四つん這い…嫌だ、死んでも嫌だ。

「どうしてこんなこと…わかりません。あたしには理解できません」
今まで、つんくさんが言うコトには逆らわず従ってきたし、これからだってつんくさんのコト、
信じて付いていくつもりでいたけど…今回ばかりは、首を縦に振るワケにはいかない。
あたしのプライドにかけても、ヤスダ犬のぬいぐるみ被って首から下は全身タイツ(白)だなんて…絶対にできない。

「これまでのユニットを越える最高のユニットを作りたい、そんなオレの夢…一緒に叶えてくれへんか?吉澤」
「えっ…」
つんくさんの、夢?
あたしの固い決心が、少しだけ揺らいだ。
57 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月27日(土)03時03分37秒
「ミニモニ作った時な…あれは、ホンマしんどかったなぁ。子供向けのユニットやなんて、どう作っていったらええのか
始めは見当もつかへんかったしな。せやけど、オレの不安な気持ちとは正反対にミニモニは大成功…。
そんとき思ったね、こんなんもアリやな、と。ええか、吉澤。オレら、子供相手でも十分イケんねんで?」
「はあ…」
つんくさんの話は、一瞬小難しそうに聞こえるが実はそうでもない。

「21世紀を託す子供たちに夢を与えるようなユニットを、そんな素敵なユニットを…作りたいんや、オレは」
「つんくさん…」
あたしの固い決心は、ぐらぐらと揺れ始めた。

「ミニモニのスタイルを踏襲しつつ、ヤスモニ。のええトコも取り入れる…完璧や、まさに完璧なユニットや」
はて、ヤスモニ。の良い所ってどこだろう…目の前で力説するつんくさんを、複雑な思いで見つめる。

「そういうワケで、曲はミニモニのカバーで行こうと思う」
カバー…パクリってコトですか、もしかして。
まぁ、デビューまであまり時間も無いし、仕方ないって言えば仕方ないんだろうけど。
58 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月27日(土)03時05分15秒
「あっ、詞はちゃんと変えてあるで」
「ああ、そうなんですか」
『子供たちに夢を』なんて壮大なコト語ってた割に、曲はミニモニのパクリだし…
つんくさんの言葉にかなりの胡散臭さを感じたあたしは、自然と冷めた口調になる。
そしてそんなあたしの疑念を感じ取ったのか、つんくさんはあたしから視線を外すと
諦めたようにタメ息を一つついた。

「所詮はオレも、人の子や」
自嘲的に笑う。

「グッズ、売りたいねん…吉澤」
「そんなコトぶっちゃけられても」
ヤスモニ。結成の理由、それは…ヤスダ犬グッズで一儲け、だったんだ。

『子供たちに夢を』なんて言っといて…夢をあげるどころか、お金ふんだくってるだけじゃんか。
なんて、思いつつも。
「しっかり頼むで。吉澤」
誰かに期待されてるって思うと途端に勇気が湧いてきて、その気になってすぐ騙されて。

「はい」
気がつくと、あたしは…つんくさんと固い握手を交わしていたのだった。

お母さん、ゴメン…ひとみは、純白のウェディングドレス着る前に、純白の全身タイツを着る羽目になりそうです。
59 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月27日(土)03時06分43秒
「おかえり。つんくさん、何だったの?」
つんくさんとの面談を終えヤスモニ。のみんなが待つ部屋へ戻るなり、リーダーである保田さんに迎えられる。
「ちょっと…。後で話します」
とてもじゃないけど、今は…全身タイツのコト、みんなに話す気にはなれない。
まあ、放っといてもいずれわかっちゃうコトなんだけど。

「おかえり、よっすぃー!」
矢口さんの笑顔が眩しすぎて、あたしは思わず目を伏せた。
夜を彷徨うドラキュラのような心境のあたしにとって、朝日のように爽やかな矢口さんの笑顔は…
あまりにも眩しすぎた。

「あのっ…おはよう、ございます」
「えっ?ああ、おはようございます」
矢口さんが朝日なら、紺野ちゃんは沈みゆく夕日ってトコかなぁ(←とりあえず良い意味で)。
どことなく、寂しげなところが。

「ほら、もうこんなの出来てきてるよ?」
残る保田さんは、真夏の真昼間の太陽ってトコかなぁ。
どことなく、ギラギラしてるところが。
ヤスモニ。メンバー全員を例え終えたところで、あたしは保田さんが手にしている一枚の紙を覗き込む。
60 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月27日(土)03時08分43秒
「『ヤスモニ。2002年1月1日デビュー決定!!』。何ですか?コレ」
「マスコミ用のチラシだって」
保田さんの手から、それを受け取る。

――

ヤスモニ。2002年1月1日デビュー決定!!
デビュー曲は、なんとあのミニモニ。大ヒット曲のカバー、『ヤスモニ。ジャンケンぴょい!』

――

(『あっ、詞はちゃんと変えてあるで』)
『ミニモニ。』を『ヤスモニ。』に変えただけじゃん…。
勘の鈍いあたしでも容易に想像できた…タイトルだけでなく、歌詞も『ミニモニ。』→『ヤスモニ。』に
置換してあるだけだ。そうに違いない。

「ジャンケン『ぴょい』、だってさ…びみょーに変えてあるね。一瞬わかんなかったよ」
矢口さんの言葉に、再度チラシを確認する。
そして、恐らく『ぴょん』も『ぴょい』に置換してあるだろうコトが判明した。

「ジャンケンぴょい、って…歌いにくそう」
そしてミニモニ・ヤスモニの2バージョンを歌いこなさなければならない矢口さんは、深いタメ息をついた。
61 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月27日(土)03時10分31秒
「紺野ちゃん、なにやってんの?」
下を向いて一生懸命メモを取っている紺野ちゃんの手元を、矢口さんが覗き込む。

「メモ…してるんです」
「いや、見りゃわかるけどさー…えっ、もしかしてコレ丸写ししてる?」
「…はい」
矢口さんの問いに、消え入りそうな声で答える紺野ちゃん。

何をメモしていたのか気になったあたしは、横からそっと彼女の手元を覗き込む。
するとポケットサイズのメモ帳には…矢口さんの言葉通りチラシの内容が、一字一句違わず写し取られていた。
『デビュー決定!!』って、ご丁寧にびっくりマークまで付けちゃって…そこまで忠実にメモらんでも。
なんだか、変わったコだなぁ…。


「じゃあ、コレあげるから持って帰りなよ」
「……良いんですか?」
「うん。10枚でも100枚でも好きなだけ」
言いながら、矢口さんはあたしの手からチラシを抜き取る。

「あれっ?待って、コレ…よっすぃーの名前がないよ?」
そして矢口さんはチラシを紺野ちゃんに手渡そうとしたところで、その手を止めた。
あたしたちは、輪になって問題のチラシを覗き込む。
62 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月27日(土)03時12分24秒
チラシの下半分には、ヤスモニ。メンバーの名前が大きくプリントしてあった。

『保田圭』
『矢口真里』
『紺野あさ美』

確かに、この中に『吉澤ひとみ』の名前はない。
あーあ…ミスプリントか、こりゃスタートから不吉だなぁ。

やれやれ…なんて思っていた次の瞬間、あたしは見つけてしまった。
『保田圭』の真上に燦然と輝く、『ヤスダ犬』の文字を。

頭から、すっぽりヤスダ犬のぬいぐるみ被って。
そして首から下は、純白の全身タイツ。

あたしは、全てを理解した。
そうか、ココでは…このユニットにおいて、あたしはあたしであってあたしではない。
このユニットでは…あたしは、『吉澤ひとみ』ではなく『ヤスダ犬』なのだと。
このユニットでは…あたしは、自分の名を語ることすら許されないのだと。
63 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月27日(土)03時13分58秒
「……っ」
「よっすぃー?」
チラシを見つめたまま動かないあたしの顔を、矢口さんが覗き込んでくる。
あたしは零れ落ちそうになる涙を必死にこらえて、矢口さんから視線を逸らした。

「よっすぃー!?泣くなよぉ…こんなの、ただのミスプリじゃん。作り直してもらお?
ねっ、泣かないで?よっすぃーってば」
「……っ」
涙が止まらないのはミスプリのせいなんかじゃなく。
これが、明らかに『ミスプリではない』からなんですよ……矢口さん。
64 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月27日(土)03時16分20秒
「よっすぃー」
俯いて泣いていたあたしは、後ろから肩を叩かれて恐る恐る顔を上げる。
するとそこには、にっこりと微笑んでハンカチを差し出す保田さんの姿があった。
そして彼女の悟りきったような表情を見て、あたしは直感した…この人は知っている、と。
この人は、あたしが『ヤスダ犬』であるコトを、知ってるんだ。

「その涙、うれし涙に変えるよ。ウチらみんなで、ね」
「保田さん…」
その優しい言葉に打たれて、あたしの瞳から大粒の涙が零れ落ちた。

「…!」
そして差し出されたハンカチを受け取りながら、ハッとする。
いけない!忘れるな、ひとみ。


元はと言えば、すべて……この人のせいだ。



―――ヤスモニ。デビューまであと2ヶ月。―――
65 名前:すてっぷ 投稿日:2001年10月27日(土)03時18分44秒
不定期な更新になると思いますが…
よろしかったら読んでやってください。
66 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月27日(土)03時56分59秒
かわいそうなヨッスィ。。。
でも、腹筋が痛くなるほど面白い(w
作者さん、がんばって。
67 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月27日(土)16時44分01秒
吉澤ぁ…苦労をかけてすまないねぇ。
68 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月27日(土)19時50分19秒
すげぇ面白い…やっぱ天才だよ。
69 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月28日(日)03時53分15秒
つんく、面白すぎ(笑)
投げやりな態度に白々しい言葉の後、「グッズ売りたいねん」て。
ガンバレ「ヤスダ犬」(笑)
70 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月28日(日)15時20分17秒
すみません、読んでて泣いてしまいました。
・・・腹筋がよじれて(笑)

これから、新曲のカッコイイよっすぃーを見るたびに
「2ヶ月後はヤスダ犬なんだなぁ、この人」
と思ってしまいそうでコワイです。
71 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月29日(月)01時25分40秒
ほんと、笑いの耐えない小説だ!!
72 名前:もんじゃ 投稿日:2001年10月29日(月)22時12分45秒
明らかにミスプリじゃないなんて…そりゃ泣けますわ(笑)
70さんのおっしゃる通り、新曲のよっすぃカッケーのに…。
ギャップが激しすぎます(笑)
73 名前:ARENA 投稿日:2001年10月30日(火)07時37分28秒
ここの保田は、まさにダーヤスと呼ぶにふさわしいキャラですね(w
74 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月30日(火)19時31分18秒
仕事中に読むもんじゃない。

もう少しでコーヒーぶちまけるとこだった。
75 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月30日(火)21時17分07秒

―――

「吉澤!全然ダメ!!もっと犬っぽく!!!」
夏先生の怒声が、スタジオ中に響き渡る。

娘。に入って約一年半、ダンスに関しては数え切れないほど怒られてきたあたしだけど…
『もっと犬っぽく』って注意されたのは初めてだ。
もちろん、それは夏先生にしても同じコトだろうけど。

デビュー曲も決定し(『ヤスモニ。ジャンケンぴょい!』。2002.1.1 On Sale)、
早速デビューへ向けてのダンスレッスンを開始した、あたしたち…ヤスモニ。
曲はミニモニのパクリ(つんくさん曰く『カバー』)なんだけど、ダンスに関しては
ミニモニとは全く違ったヤスモニ。ならではのモノを、というつんくさんの勝手な注文に
夏先生も少々キレぎみの様子。
だって、自分は詞・曲ともにミニモニ。パクっといてダンスだけ新しいモノ作れって…
夏先生がキレるのも、わかるような気がする。


「もう!何度言ったらわかんの!?」
「…すいません」
何度言われても…『犬っぽく』なんて一生無理です、先生。
76 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月30日(火)21時17分57秒
メンバー全員が主役といったカンジで臨むミニモニ(←ミカちゃんに関してはちょっと違う気もするけど)と異なり、
ヤスモニのフォーメーションはあくまでヤスダ犬(あたし)がメイン。
一人前列で踊るあたしのバックに、左から保田さん、紺野ちゃん、矢口さんという並び。

ココで素人なら…あたしの真後ろに立つ紺野ちゃんは死角になって全く見えないじゃん、可哀相に。
なんてうっかり勘違いしがちだけど、心配ご無用。
なぜなら曲の間中、あたしはほとんど中腰や四つん這いの状態で踊ってるから紺野ちゃんは
見えないどころか見方によっては彼女がセンターのようにも見えるのさっ…。
なんたって、ヤスダ犬は『犬』だからね…ははは。

四つん這いの状態で右へ左へ、前へ後ろへ、時に激しく跳ね回ったり、時に切なく空を仰いだり…。
両膝を床に付けてのハードな振り付けに、ジャージの膝は摩擦熱で溶け始めていた。
『顔は見えなくても気持ちは振りに表れる』という先生の言葉を信じて…野を駆け回る時の楽しい表情や
月を仰ぎ見る時の哀しい表情など、あたしは全てにおいて犬になりきろうと努力した。

そう…たとえ、顔は見えなくても。
77 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月30日(火)21時18分47秒
「ほぉら、よっすぃー。欲しい?ねぇ、欲しいんでしょ?」
床に座って休憩しているあたしの鼻先にホネ(小道具)をチラつかせながら、矢口さんが言った。
「やめてください」
あたしは冷ややかに言い放つと、突きつけられたホネ(プラスチック製)を右手で払いのける。

「ダメだよ、よっすぃー。欲しいときはちゃんと『おすわり』しなきゃ、あげないよ?」
「だから、いらないっつってんでしょー」
「あっ!なにすんだよー!」
尚もしつこく迫ってくる矢口さんの手を少し強めに払うと、ホネ(『ヤスダ犬』の大好物、という設定)は
矢口さんの手を離れて床に落ちてしまった。

「もーっ!お行儀よくしなさい!」
けっ。飼い主ぶってんじゃねーよ…。
あたしはまだ衣装(ぬいぐるみ&全身タイツ)も着けていないあたしを犬に見立てて遊ぶ矢口さんを完全無視、
コロコロコロ…と転がっていく白骨をただぼんやりと眺めていた。

と、突然あたしの目の前を人影が横切る。
ゆっくりとした足取りでホネに近付いた彼女はそれを拾い上げると、くるりと向きを変えて
あたしの方へ歩み寄ってきた。
78 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月30日(火)21時19分48秒
「あの、コレ……」
見上げたあたしの鼻先にホネを突きつける紺野ちゃん。
さっき矢口さんにからかわれた時と、シチュエーションは全く同じなんだけど…あたしにはどうしても、
その手を払いのけるコトができなかった。

「ありがとう」
ホネを受け取ってお礼を言うと、紺野ちゃんは黙って首を横に振り、あたしたちから少し離れた場所に腰をおろした。
「ダメだよ、よっすぃー。うれしいときは、ひっくり返っておなか見せなきゃ」
間違っても…この人にだけは、飼われたくない。


「だいぶ振りも入ってきたみたいだから、そろそろ衣装着けてやってみよっか。吉澤」
頭上から、夏先生の悪魔のような一言が降って来た。
「えっ…もう?」
ついに、来るべき時が来てしまったようだ。
79 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月30日(火)21時20分50秒
「うそぉー、見たい見たい!!」
あたしは、はしゃぐ矢口さんの顔面に硬い白骨を思いっきり投げつけた…ところを想像した。
着替えのためスタジオを出ようとしたあたしの肩を、すれ違いざま保田さんがポンポンと叩く。

「よっすぃー、期待してる」
『しっかり頼むで』。『期待してる』。『ねぇ、欲しいんでしょ?』。
ふざけないでよ、みんなして勝手なコトばっかり言っちゃって…。

それでも、期待されればきっちり仕事してしまうあたしって。
期待されれば、ホネだってジャーキーだって何だって欲しがってしまうだろうあたしって。
コレが『プロのお仕事』ってゆーやつだよ、紺野ちゃん…よく見てな。
ドアを開けスタジオを去る前に、何やら熱心にメモを取る紺野ちゃんの方へ振り返る。

すると先輩の勇姿を前にして、紺野ちゃんは…シャーペン持ったまま、爆睡してた。
おやすみ。
きっと、ハードなレッスンで疲れちゃったんだね。
だけど、吉澤センパイは…もっと疲れてるんだよ?(精神的に)
80 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月30日(火)21時22分01秒
「ぷーーーっ!!あははは!!あーっははははははは!!!わーっはははっ!!!ははははははっ!!
もーっ!やめて、よっすぃー!!コワれる!!矢口のおなか壊れちゃうよぉーっ!!はははははは!!!」
床に転がってのた打ち回る矢口さんを見ながら、この人ホントに壊れちゃうんじゃないだろうか…
と、本気で心配になった。

「へぇ、なかなか忠実に作ってあるね」
保田さんは腕組みして、あたし(ヤスダ犬)のカラダを上から下まで舐めるように見ている。
それにしても、紺野ちゃんは一体何をメモっているのだろうか。
まさか、あたしの恥ずかしい姿をスケッチしてるんじゃないだろうなぁ……。


「そっ、それじゃあ…はっ、はじめるよ…くくっ」
先生、笑いたければ笑ってもいいんですよ?
夏先生の号令によりみんなスタジオの中央に集まって、レッスンが再開した。
あたしは重いアタマを両手で支えながら配置につくと、床に両手両膝をついて四つん這いになる。

重い…頭が重くて、首が据わらない。
ぬいぐるみの重みが、床についたあたしの両膝に負担をかける。
あたしのバレー人生、コレで終わっちゃうかもしれない。
81 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月30日(火)21時23分09秒
全身タイツ(白)に身を包み、ヤスダ犬の白いぬいぐるみ(耳は黒)をすっぽりと被ったあたしは…
四つん這いの状態で右へ左へ、前へ後ろへ、時に激しく跳ね回ったり、時に切なく空を仰いだり。
(ヤスモニ。のレコーディングはまだなので)ミニモニの曲に合わせてジャージの膝を溶かしながら、
時おり後ろから漏れ聞こえてくる矢口さんの笑い声にもめげず、精一杯踊り続けた。
犬らしく躍動感あふれる振り付けに、いつしかあたしも夢中でのめり込んでいたのだ…途中までは。

(『間奏部分は…衣装着てからにしよう』)
レッスンの前半、そう言っていた夏先生は…決して、あたしと目を合わせようとはしなかった。
そんな先生の態度にあたしは、間奏部分に『何か』があるコトを確信していた。


「間奏部分のテーマは、『犬と人間の戯れ』。まぁ要するに、ヤスダ犬と子供たちが仲良く
遊んでる場面を表現しようと思うんだけど」
ハードなレッスンの合間、夏先生の説明に耳を傾ける。
ヤスダ犬と子供たちが仲良く遊んでる場面、か…なるほど、ヤスダ犬の可愛いイメージを
チビッコたちに植え付ける必要があるもんね(→グッズ売るため)。
82 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月30日(火)21時24分48秒
ヤスダ犬と子供たちが仲良く遊ぶ…ボール遊びとかかなぁ。
まさか、フリスビーじゃないよね…。
などと、犬とチビッコ(=あたしとヤスモニ。のみんな)が楽しく遊んでいる場面をいろいろと想像してみる。

「とりあえず、『犬と人間』で真っ先に連想するのは…『主従関係』だと思うのね」
「えっ」
『仲良く遊ぶ』というほのぼのした情景とは余りにかけ離れた先生の言葉に一瞬、自分の耳を疑った。

「犬と子供たちが、ケガなく楽しく遊ぶためには何が必要だと思う?保田」
「しつけ、ですかね」
「そう。正しく躾られた犬だからこそ、子供たちは楽しくかつ安全に遊べるってワケ。
そこで吉澤には、正しく躾られた従順で可愛い犬を演じてもらいたいのね。オッケー?」
オッケー?じゃねーよ…何だかすごく嫌な予感がする。

「じゃ、最初の振りは…矢口に『お手』ね。で次が、紺野に駆け寄って『おすわり』」
やっぱし。

「さっ、戯れよっか。よっすぃー」
矢口さんは早くも、白骨(『ヤスダ犬ボーン』。12月12日、全国ペットショップにて一斉発売)片手にスタンバイ。
こんな楽しそうな矢口さん…見たコトない。
83 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月30日(火)21時26分27秒
『お手』に始まり、『待て』、『伏せ』、『おすわり』、そして『チ○チ○』(←サイアク。埼玉に帰りたい)に至るまで…
間奏部分の振り付けは人間『吉澤ひとみ』にとって、屈辱に満ちたモノだった。
もしココに電信柱があったなら、間違いなく片足上げさせられていただろう(ヤスダ犬=オスと仮定した場合)。

矢口さん→紺野ちゃん→保田さんと次々に投げ渡されるホネ(『ヤスダ犬ボーン』)を求めて、
三人の間をたらい回しにされるヤスダ犬(あたし)。
夏先生…あたしに、なにか恨みでもあるのだろうか。


そして、ホネ(『ヤスダ犬ボーン』。12月12日発売予定)をねだるあたし(ヤスダ犬)に対して、
これ以上ないほど目をキラキラと輝かせる矢口さん、
申し訳なさそうに『おすわり』を命じる紺野ちゃん、
哀れむような視線を浴びせてくる保田さん、
みなさん、そんな目であたしを見ないでください…あたしだって、好きでこんなコトやってるワケじゃない。

ホンモノの犬だってもしかしたら…好きでこんなコト、やってるワケじゃないんじゃないかな。
っていうのは、考えすぎかなぁ…。
84 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月30日(火)21時27分50秒

―――

「吉澤!ホラ、また遅れてる!曲終わっちゃうよ!!」
「はあ、はあ、はあ…」
四つん這いのまま、あがった息を整える。
間奏部分に入ってから、もうすぐ一時間が経過しようとしていた。

普段ならこの位の練習量、何でもないんだけど…今のあたしは頭に大きなぬいぐるみを被っている。
重さと、何よりも暑さで体力は既に限界を超えていた。

「よっすぃー、大丈夫?」
心配してくれる保田さんに、あたしは黙って首を縦に振る。
娘。本体の新曲が出たばかりで大忙しのあたしたちに、スケジュール的な余裕はない。
限られた時間の中で、与えられた課題を確実にマスターしなくちゃ。
紺野ちゃんだって見てるんだ、先輩の情けない姿(衣装だけで十分情けないって話もあるけど)を
見せるワケにはいかないもんね。

それにしても…暑い。
首から上だけサウナに入ってるみたいに暑くて…頭が、ぼーっとしてくる。

「じゃあ、次は通しで行くよ」
夏先生の声が、すごく遠いところから聞こえてくるような気がする。

あ……やば、意識が……だんだん……遠く、なって……
85 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年10月30日(火)21時29分22秒
ドサッという音がして…気が付くとあたしは、床に倒れていた。

「「よっすぃー!?」」 「吉澤!?」 「……吉澤さん?」
みんなの声は、すごくすごく遠くの方から聞こえていて…あたしは何だか、サウナの国にひとりぼっちでいるみたい。
っていうか、『サウナの国』って何だよー……えへへ。

「やだっ…よっすぃー!しっかりして!ねぇ、起きてよっすぃー!!」
矢口さん……。
心配してくれるのはうれしいんだけど、誰か早くこの忌まわしいかぶりモンを外してくれぇぇぇ……。

「してくれぇぇ…」
心の叫びは、声にならない。
暑い、あっづいよぉぉぉぉぉぉぉー……………。

着ぐるみがこんなに過酷なモノだったなんて…ミッキーやミニーの偉大さが、よくわかった。
今度からショーの最後には、割れんばかりの拍手を送ろうと思う(inディ○ニーランド)。
あ……もう、ダメみたい。

「よっすぃー!?よっすぃー!!よっ、すぃぃぃぃぃーーーーーっ…………」



―――ヤスモニ。デビューまであと2ヶ月弱。―――
86 名前:すてっぷ 投稿日:2001年10月30日(火)21時30分32秒
感想、ありがとうございます!

>66 名無し読者さん
これからもっと可哀相な展開になっていくかも…。
66さんの腹筋が壊れる(?)ような話になればと思っております(笑)

>67 名無しさん
たぶんここから先、苦労に次ぐ苦労の連続です(笑)

>68 名無し読者さん
こんなバカ話でそんな…光栄です(笑)

>69 名無し読者さん
つんく、かなりいい加減なキャラになってしまいました。
吉澤、69さんの中では既に『ヤスダ犬』呼ばわりですか…(笑)

>70 名無しさん
かなりムダな涙を流させてしまったようで、心苦しいです(笑)
2ヶ月後はヤスダ犬(笑)…新曲のよっすぃーを見るたび、
ヤスダ犬バージョンを想像していただけるとうれしいです。
87 名前:すてっぷ 投稿日:2001年10月30日(火)21時31分33秒
>71 名無し読者さん
ありがとうございます。最後までこのテンションでいけると良いのですが…。

>72 もんじゃさん
これからますます、涙を誘う展開になっていくかと(笑)
70さんのように、かっけー吉澤さんを見るたび思い出してください。
カッケくはないですが、可愛い…くもないか(笑)

>73 ARENAさん
考案者(ダーヤス)に合わせて、『ダーヤス犬』の方が良かったですかね(笑)

>74 名無しさん
お仕事、ごくろーさまです。
いつの日か、ブチまけていただけることを願っております…(笑)
88 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月30日(火)22時58分20秒
矢口の吉澤へのふるまいは、愛情ゆえだろうか?
それとも自分が楽しいだけだろうか?
どとらにしても、吉澤はけなげだ…ぷぷっ。
89 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月31日(水)01時04分50秒
ひでー!ひでーよ!読んでて悔しくなってきた(w
吉澤大爆発に期待。
90 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月31日(水)03時59分15秒
解ってる、解ってるけど
ほんの少しアリなんじゃと思っている自分がいる…

よっすぃ〜ゴメン、悪いのは作者さんなんだー(w
91 名前:ARENA 投稿日:2001年10月31日(水)05時10分51秒
いつもながらDearFriendsの世界観はいいですね。
正直、保田の絵がプリントされたTシャツは売れそうですが・・・(w
少なくとも俺は買います( ̄∇ ̄;
92 名前:70 投稿日:2001年10月31日(水)08時46分00秒
ミニモニ。のビデオを見ながらヤスダ犬ダンスを想像してみました(笑)
なんだか・・・本当にこのユニット売れそうな気がします。
よっすぃー、年が明けたらヤスダ犬ですね。頑張れ!(笑)
93 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月02日(金)21時41分42秒
今日のMステ見た後、ヤスダ犬よっすぃ〜想像して
再び爆笑してしまった
94 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月03日(土)19時23分56秒

―――

「こーんのちゃん!こんちゃーん?」
控え室にて。
紺野ちゃんのアダ名にちなんで(『コン』ちゃん→キツネを連想)、右手で影絵のキツネさんを作ってみました。

「コンっ…」
「はい」
「いや、『はい』って…」
普通に返されてしまった…宙に舞ったまま放ったらかしのキツネさんの立場は?


レコーディングも無事終了し(…というか、いつの間にかあたし(ヤスダ犬)抜きで終了していた。
吉澤=ヤスダ犬であるコトがバレないよう、ヤスダ犬は公衆の面前では決して声を発してはいけないとのこと。
だったら、別にあたしじゃなくても全然イイんじゃん…なんて考え出すとますますブルーになるのでやめとこう)、
今日はデビュー曲『ヤスモニ。ジャンケンぴょい!』(2002.1.1発売予定)のPV撮影の日。

「二人とも遅いねー…」
「…はい」
「ってゆーか、あたしたちが早すぎたのかなっ?ははっ」
「…はい」
うぉぁ…気っマズいよぉぉ。
向かい合わせに座るあたしたちの間には、見えない緊張の糸がピンと張りつめていた。
95 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月03日(土)19時24分50秒
控え室にて。
センパイと二人っきりでいるせいなのか、ガチガチに緊張してる紺野ちゃん。
そして当のセンパイはいつ誰が来てもすぐヤスダ犬になれるよう傍らにかぶりモノを置き、
既に全身タイツ装着済み。

「あのさ、もう慣れた?」
彼女にとってはいろんな人に何度となく聞かれた質問だと思うけど、他に話題も見つからないし…
矢口さんたちが来るまで間を持たせるため、とりあえず話しかけてみる。
同時に、コレで少しでも仲良くなれれば…という思いもあった。

「はい。でも、まだあんまり…」
「どっちなんだよ、おい!」
あたしは目の前に座る紺野ちゃんに、右手で『ツッコむ』動作。

「えっ……最初のときよりは…だいぶん慣れました。でも…まだそんなに慣れてないから。完全じゃないから…」
消え入りそうな声でゆっくりと語り始めた紺野ちゃんは、あたしと全く目を合わせようとしない。
「あっ、ゴメンゴメン。そういうつもりじゃなくてさ!あの、わかりにくかった?あたしのツッコミ」
「えっ……」
矢口さん…助けてくださいよぉ。
目の前で固まる紺野ちゃんを見ながら、どうやって彼女と仲良くなろうか考えた。
96 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月03日(土)19時25分48秒
「ねぇ、ぶっちゃけさぁ…センパイとか恐いっしょ」
「えっ……」
そう。コレは、部活と同じだ。

「とくに保田さんとかさー、めっちゃ恐くない?」
二年生が入ったばっかの一年生と打ち解ける方法、それは…三年生の悪口で盛り上がるコト。

「えっ……えーっと」
「イイって、言っちゃいなよ!誰にも言わないからさ!」
「……はい」
「あっ、やっぱしぃ!だよねー、あたしも今でこそ『圭ちゃん』なんて呼べるようになったけど…最初はホント恐くてさぁ」
ようやく会話の糸口を見つけたあたしは、戸惑う紺野ちゃんに自らの武勇伝を語り始めた。

「えっ……呼んでますか?」
「あっ、いや、そっかそっか。ホラ!保田さんが体調イイ時とか機嫌イイ時とか、たまにね。
『けーちゃーん』なんて呼んだりしてね、あははっ!」
しまった…そういえば紺野ちゃんの前で保田さんのコト、『圭ちゃん』呼ばわりしたコトなんてなかったっけ。
あたしってば、まるでいつもそう呼んでるみたく得意げに…。
恥ずかしくなって目を伏せると…今の自分が全身タイツ(純白)に包まれているコトを再確認してしまい、
さらに恥ずかしさがこみあげる。
97 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月03日(土)19時26分49秒
「あっ、じゃあ…矢口さんは?やっぱ恐い?」
気マズくなったあたしはさっさと話題を転換、両手を膝の上に置いたまま固まっている紺野ちゃんに質問する。

「…矢口さんは…優しいと思います」
矢口さん『は』ってどういうコトだろ…『保田さんと違って』、という意味だろうか。
「……いろいろ、話しかけてくれるし、いろんなこと教えてもらったりしてるから…優しい人なんだなって」
非常にゆっくりとしたペースで語ってくれる紺野ちゃん。
確かに矢口さんって、第一印象はいいモンなぁ…なんとなく話しやすいカンジするし。

「あー、ダマされてるね。完全にダマされてるよ、紺野ちゃん」
「え……?」
「矢口さん、いっつも楽しそうに笑ってるけど、たまに目が笑ってないときがあるからね。
そういう時は決まって後で呼び出されたりするから、気をつけた方が良いよ」
「…そう、なんですか?」
怯えた表情であたしを見つめる紺野ちゃんに、あたしは黙って頷いた。

「何かあるとすぐキレるし暴れるし、声はでかいしワガママだし、ほんっと手ぇつけらんないんだから」
恐怖で固まる紺野ちゃんをよそに、あたしは一人盛り上がり始めていた。
98 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月03日(土)19時27分53秒
「だからダメだよ?紺野ちゃん、騙されチャ!」
「あの……吉澤さん」
頬杖をつくあたしの腕を掴んで揺すりながら、震えた声で紺野ちゃんが言った。

「ああ、気にしない気にしない。こんなのウチら、いっつも言ってるコトだからさ」
カワイイ後輩と打ち解けるためだ…これぐらいの暴言、矢口さんだってきっと許してくれるはず。
なんたって、あたしと矢口さんの仲だもんね(信頼度300%)。


「全身タイツ脱がすぞ、オマエ」
「…!」
確実に聞き覚えのある声に、恐る恐る後ろを振り返る。

「やっ!?やややややっ」
矢口さん、いつの間に……!
最上級生の登場に、座ったまま硬直する一年生と二年生。

「へぇー、いっつも言ってるんだー。そっかそっか」
矢口さんが、頭まですっぽりと全身タイツに覆われたあたしの脳天を叩きながら言う。
そのたびに、ピタ、ピタ、という小気味良い音が…静かな部屋に響き渡った。

「で?ウチら、ってあと誰よ?あん?誰がいっつも言ってるって?」
「あの…おもに、石川さんが」
「ほぉー。そっかそっか」
ゴメン、梨華ちゃん…今度、ジュースおごる。
99 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月03日(土)19時28分56秒

―――

「紺野、まだ表情硬いよ!!あのさー、ここはヤスダ犬とヤスモニ。が楽しく遊んでる場面なんだから、
もっと楽しそうにしなきゃダメでしょ!?」
間奏部分の撮影中、獰猛な犬よりもさらに獰猛な夏先生の怒号が飛ぶ。
先生のおでこに『猛犬注意!』ってシール、貼っといた方がいいかも…あっ、いかんいかん。集中しなくては。

「……はい」
あたしは四つん這いの状態で、萎縮して固まる紺野ちゃんの姿を見上げた。
「もうちょっとだからさ、がんばろ?」
「……はい」
あたしの励ましに、紺野ちゃんはほんの少しだけ笑ってくれたものの…その表情は、やっぱり硬い。

朝早くから始まった撮影もいよいよ大詰め、後は例の間奏部分(テーマ『犬と人間の戯れ』)を
残すのみとなっていた。

「すいませーん、矢口さんのシーン先いきまーす」
夏先生がスタッフに掛け合ってくれたらしく、紺野ちゃんとあたし(ヤスダ犬)の戯れシーンは
後回し、代わりに矢口さんとあたし(犬)のシーンを先に撮影するコトになった。
それにしても、あたしってば出ずっぱり…いやー、やっぱメインはつらいわ。ははは。
100 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月03日(土)19時30分07秒
「あんまし固くなんないでさ、ウチらがやってんの良く見てて?いい?」
「…はい」
すれ違いざま、紺野ちゃんにアドバイスする矢口さん。
こういうマメな所が、新メンバーに誤解(矢口さん=やさしい)を与える要因となっているのかも知れない。

「いっぱい欲しがってみせてね?よっすぃー。紺野ちゃんも見てるんだから。ほぉーら」
「くっ…!」
ホネ(『ヤスダ犬ボーン』。12月12日、全国ペットショップにて一斉発売)をあたしの頭上に掲げて
不敵な笑みを浮かべる矢口さんを、屈辱に満ちた思いで見上げる。


「はあ、はあ、はあ…」
背中に跨る矢口さんを乗せて這い回っていると5分も経たないうちに息は乱れ、膝はボロボロ。
テレビやライブ用の振り付けとはまた違い、PV用のそれはかなり自由度の高いモノで
特に間奏部分の戯れシーンは、大まかな流れ以外ほとんど出演者のアドリブに任されていた。

「矢口さん…もうダメです。おりてください」
「はあ?もう終わり?早いよ、よっすぃー。ねぇ、もっとしよ?」
「やだ」
矢口さんはチッ、と舌打ちして渋々あたしの背中から下りてくれる。
101 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月03日(土)19時31分29秒
「ん?…うぐぅっ!」
あたしの口から、低いうめき声が漏れる。
軽くなったと思っていた背中が、さっきよりもさらに強い力を受けて軋む。

既にカメラが回っているため、その姿を確認するコトはできなかったものの…腰に感じるズシリとした重みと、
その硬い感触であたしは全てを悟った。
どこまで鬼なんだ、あんたは…あたしの腰に土足(子供向けシューズ『ヤスモニ。モデル』。12月10日関東地区限定発売)
で立ち上がった矢口さんの重みで、両腕がぷるぷると震える。

やだっ!しかも、真後ろから撮ってる…やめてぇぇーーっ!!
もしかして、DVD(『ビデオ・ヤスモニ。ジャンケンぴょい!』。2002.2.2 On Sale)だと
いろんな角度から観れちゃったりするの!?
いやっ…いやあああああーーーーーっっっ!!!


「一時間休憩とりまーす」
「あー、良かったぁ…おつかれ、よっすぃー」
悪夢のような戯れが終わり、満足げな表情を浮かべる矢口さんを…四つん這いのまま、
放心状態で見上げる。
忘れよう、今は何もかも忘れて…せめてディナー(おべんとう)を楽しむんだ、ひとみ。
102 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月03日(土)19時32分42秒
「ん?なに?」
気を取り直してやっと立ち上がると、いつの間にか目の前に立っていた紺野ちゃんに腕を引っ張られる。
すると質問には答えず、紺野ちゃんはあたしの腕を引っ張ってずんずんとスタジオの隅の方へ歩いていく。

「どうしたの?」
「あの、あの……」
紺野ちゃんに引っ張られてスタジオの隅っこまで連れてこられたあたしは…周りにあまり人が
居ないコトを確認して、まだ中に熱気の篭るかぶりモノを外して傍らに置く。
吉澤=ヤスダ犬であるコト、スタッフには既にバレバレとは言え…万が一ココに部外者が
入り込んでいたらマズイ。
マネージャーからは、くれぐれも人前でかぶりモノを外さないように、と厳しく言われていた。

「どした?何か、困ったコトでもあった?」
俯いて手をもじもじさせている紺野ちゃんに、やさしく問いかける。
「あのぅ……」
何か言いたそうに口をもごもごさせている彼女を見ながら、あたしは…一年半前の、自分の姿を思い出していた。
103 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月03日(土)19時33分51秒
入ったばっかの頃は見るモノすべてが初めてのコトで、毎日が緊張の連続で、何もかも上手くいかなくて。
先輩たちみたいに上手く笑えなくて、そんな自分がくやしくてまた暗くなって。
だけど目の前で落ち込んでる紺野ちゃんだって、それから他の新メンバーだって、誰だって…
暗いカオしてるより、笑ってるときの方がぜったいカワイイに決まってる。

矢口さんや保田さんや、みんながあたしたちにそうしてくれたように、
今度はあたしが…紺野ちゃんに笑顔をあげる番なんだよね?


「こーんのちゃん!おいっ!こんちゃーん?」
あたしは、『すべっても、くじけちゃダメ!ウケるまでやらなきゃっ!』という飯田さんの教えを忠実に守り、
今朝無視されたばかりのキツネさん(右手)で迫ってみる。

「吉澤さん……おしり」
「はあ?」
おしり?いきなりなに言ってんだ、このコは…?

「おしり……やぶけてます」
「え?うっそぉぉぉーーーーーーーっっ!?」
見ると紺野ちゃんの言葉通り、どこかで引っかけたのかあたしの全身タイツは腰からおしりにかけて
パックリと破れ、破れた部分の布がピラピラと哀しげに揺れていた。
104 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月03日(土)19時35分00秒
「二人ともなにしてんの?こんなトコで」
「げっ、矢口さん!?」
よりによって、こんな状況下で一番会いたくなかったヒトに…!

「なっ、なんでもないっすよ。ねっ、紺野ちゃん?」
あたしは破れた部分をさりげなく左手で隠しつつ、後ずさり。
「あの…吉澤さんの、タイツの…おしりのところが破けちゃってて」
「ちょっ!?言うなよ、お前!!」
あたしは、正直すぎる紺野ちゃんに思わず掴みかかって猛抗議。

「あーっ!ホントだ!!はははははは!!パックリいっちゃったねー、よっすぃー!!さいっこー!!」
「矢口さん、声でかい!!」
大声で『よっすぃー!』って…バレないようにと人前でヤスダ犬かぶり続けてるあたしの苦労が台無しじゃんか。

「パンツは白なんだ、やっぱし。透けちゃうモンねー、あっはははは!!」
「やっ!?見ないでくださいよーっ!!」
あたしは破れたおしりを隠しながら、紺野ちゃんの後ろへ逃げ込む。
105 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月03日(土)19時36分09秒
「矢口さんが土足であたしの上に乗っかるからでしょー!絶対あん時ですよ!
それしか考えらんないもん!!」
「なにそれ!?パンツ見えてんの、矢口のせいだって言うの!?」
「矢口さん以外いないでしょー!ってゆーか、さっきからパンツ、パンツって…!」
矢口さんに対する怒りで、いつしか傷(破れ)を隠すコトすら忘れていた。


「はいはい。ホラ、パンツ犬。ちょっと後ろ向いてみな?」
「なっ!?」
前方からゆっくりと歩み寄ってきた保田さんが、あたしの怒りをさらに煽るような一言を浴びせてきた。

「嫌ですよ!何で見せなきゃいけないんですか!!」
「別にあんたのパンツなんて見たかないよ。ビニールテープ貼ったげるから、後ろ向きなっつってんの」
「えっ?」
保田さん、あたしのタイツが破れてるの知っててビニールテープ借りてきてくれたんだ。
このまま控え室に戻るワケにいかないもんね…さすがはヤスモニ。リーダー。矢口さんとは大違い。

「はははっ、くっ…くくくくっ」
保田さんによる補修作業が行われている間、矢口さん(犯人)はずっと笑いっぱなしだった。
そしてあたしは、ちょっとだけ泣いた。
106 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月03日(土)19時37分23秒
「よし!これでオッケーっと」
言うなり保田さんが、塞いだばかりのその部分を平手でピシャリと叩く。
「痛っ!もー、痛いなぁ……って、なにコレ!?なんで黒!?」
あたしの真っ白な傷跡には、黒のビニールテープが『×』の形にでっかく貼られていた。

「だって、それしか無かったんだもん。何も貼らないよりマシでしょ?」
「こんなの、よけー目立つじゃないですか!!やだよっ、やだよぉぉ…」
もー、サイアク…どうしてこうなっちゃうんだろ。

センパイとしてしっかりしたトコ、紺野ちゃんに見せたいって思ってたのに……あたしってば
ぬいぐるみ被ったままぶっ倒れるわ(ダンスレッスンにて)、おしり破けてパンツ見えてるわ、
ヤスモニ。結成以来、彼女に情けない姿ばっかり見せてる。


「…くすっ」
矢口さんと保田さんの笑い声に混じって、あたしの隣で小さく笑う声が聞こえた。
あっ……紺野ちゃんが笑ってる!
その大っきな目を小さく細めて楽しそうに笑う彼女を見ていたら、あたしまでつられて笑顔になってしまった。
紺野ちゃんが、笑ってくれたんだ。
107 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月03日(土)19時38分54秒
「やっと笑った。いっつもそーゆーカオしてなよ。その方が…カワイイって思うし」
あたしがそう言うと紺野ちゃんは少し恥ずかしそうに笑って、それから大きく頷いた。

「……はい。あのー…私がんばります。だから…この後も、よろしくおねがいします」
相変わらず、彼女の喋り方はすごーくゆっくりしたモノだったけど。
ちょっとだけボーっとしてるトコは、なんとなく自分に似てる気がした。

紺野ちゃんのペースで、そしてあたしのペースで、
これからすこしずつ、ゆっくり仲良くなっていければいいよね?

「うん!遠慮しなくていいからね!あたし、紺野ちゃんのために最高の『おすわり』するから!」
少しずつ緊張が解けてきたのか、紺野ちゃんはさっきよりもずっと自然に笑ってる。
うん。やっぱし、笑ってるほうが…ぜんぜんカワイイや。
108 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月03日(土)19時40分36秒
「さて、戻りますか。ゴハン食べて、またがんばりまっしょい」
そう言った保田さんに続いてスタジオを出ようとしたところで、矢口さんに左腕を掴まれる。

「ねぇ、それ脱ぐ前にさ…落書きしてもいい?」
「ダメ」
あたしは、耳元で囁いてくる矢口さんを一刀両断。
脱ぐ前のタイツに落書きなんて、そんなコト許そうモンなら…矢口さんのコトだ、ぜったい変なトコに変なコト書くに決まってる。

「えーっ、いいじゃん。書かせてよー、ねぇ!!ヤらせろよ、よっすぃー」
あたしの腕を掴んで駄々をこねる矢口さんの様子を、紺野ちゃんはただただ呆然と眺めている。
「ヤです、ヤですって…」
悪魔の子め……!!

「どうせ捨てんだからいいじゃんよー。ねぇ、紺野ちゃんもやりたいよね?ねっ?」
「もーっ、なんで紺野ちゃんに振るんですかぁ」
そうやってすぐ彼女を巻き込もうとするんだから…。


「あの……やってみたい、です」
「「えっ」」

コンちゃん……マジ!?



―――ヤスモニ。デビューまであと1ヶ月とはんぶん。―――
109 名前:すてっぷ 投稿日:2001年11月03日(土)19時41分37秒
感想、どうもありがとうございます!!

>88 名無しさん
矢口の態度については…良い方に解釈するか悪い方かは、読者の方に
おまかせします(笑)。けなげな吉澤、笑わずに見守ってやってください(笑)

>89 名無し読者さん
良いこと一つも無いですもんね、確かにひどすぎるかも(笑)。
吉澤大爆発(笑)、不発に終わらなければ良いのですが…。

>90 名無し読者さん
その通りですね、申し訳ないです(笑)。
ですが、アリだと思ってる 90さんも同罪ですよね?(笑)

>91 ARENAさん
なにぶん技量不足で、どうしても突飛な設定に頼ってしまうのですが…
そう言って頂けると本当にうれしいですね。
保田Tシャツ…ホントに売れますかねぇ(笑)
110 名前:すてっぷ 投稿日:2001年11月03日(土)19時43分09秒
>92 70さん
そこまで想像(→妄想)膨らまして読んで頂けるとは、感激です(笑)。
ミニモニ。のビデオ…今回更新分は、まさにぴったりの内容だと思いますので、
また妄想よろしくお願いします(笑)

>93 名無し読者さん
現実とリンクさせて考えると、えらいコトになりますね。危険だ…(笑)

それから、この場を借りまして。
「小説投票」に投票してくださった皆様、本当にどうもありがとうございました!!
こんなバカ話ばかり書いていますが、これからもよろしくお付き合いください…。
111 名前:キャメル 投稿日:2001年11月03日(土)20時04分04秒
矢口、ヤらせろって・・・。
おもろひ。頑張ってください!
112 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月04日(日)01時42分16秒
……ヤ、ヤスダ犬(涙) こうなるともう、逆に顔が出てないのが救いか。
それにして矢口も保田も容赦ない(笑)
そもそも保田の怒りをかったのは、矢口のせいだったはずなのに…
113 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月04日(日)02時26分57秒
>>あたし、紺野ちゃんのために最高の『おすわり』するから!」
よっすぃ〜目を覚ませ!?
場の雰囲気に流され……なくても痛いメに会うな(期待
114 名前:ARENA 投稿日:2001年11月04日(日)05時04分22秒
子悪魔矢口に心の中でツッコむ吉澤がおもしろい!(w
あと実際もそうですが、紺野の言動って読めないですよねー。
115 名前:LVR 投稿日:2001年11月04日(日)11時23分38秒
>あの…おもに、石川さんが
って、おい!
こうやって、石川さんが矢口さんにいじられるわけですね(w
116 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月06日(火)22時42分26秒
すてっぷさんって、初期の作品からけっこう吉澤中心の作品書いてますよね?
それはやはり彼女が動かしやすいからですか?
117 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月06日(火)22時50分34秒
先日のハロモニのコントで、よっすぃーがハロウィンのかぼちゃお化けの被りものしてた。
ちょっとヤスダ犬の事を考えてしまった。
118 名前:すてっぷ 投稿日:2001年11月07日(水)22時19分49秒
感想、ありがとうございます!

>111 キャメルさん
今回の矢口、台詞だけ見ると意味深なモノがたくさんあったと思います(笑)

>112 名無し読者さん
ヤスダ犬、まだまだ苦難が続きそうです…。
保田の怒り…吉澤だけでなく紺野の加入も、全て矢口のせいだったりしますね(笑)

>113 名無し読者さん
ツッコミ、ありがとうございます!
ご期待に添えるかどうかわかりませんが、これからも痛い目にあうことは確実ですね(笑)

>114 ARENAさん
今回の矢口は悪魔すぎる気もしますが、その分吉澤の心の声もキツめになっているかと(笑)。
紺野については手探り状態ですが…ARENAさんのイメージとかけ離れていなければ良いのですが。
119 名前:すてっぷ 投稿日:2001年11月07日(水)22時21分29秒
>115 LVRさん
ツッコミ、どうもです(笑)。
まだ名前しか登場していない石川さん、やっぱり不幸です…これから登場するかも未定ですが(笑)

>116 名無し読者さん
吉澤中心…ホントに作者の勝手なイメージなのですが、「いい人なんだけど何となく報われない」
みたいなイメージがあって、厄介事に巻き込まれる主人公として書きやすいからでしょうか。
それにしても使いすぎですよね…(笑)

>117 名無し読者さん
そんな瞬間にも思い出していただけるとは光栄です(笑)
実際のよっすぃーにとっては、かなり迷惑な話かもしれないけど(笑)
120 名前:迷子 投稿日:2001年11月07日(水)22時55分21秒
いつも楽しく読んでます。
ところで、ボチボチ「冬将軍」の季節ですが・・・
サイドストーリーで、ぜひ。
121 名前:70 投稿日:2001年11月09日(金)20時51分41秒
先日のモーたいで、紺野さんがいろいろとメモっているのを見て、思わず笑ってしまいました。
お尻に×・・・妄想するだけで恥ずかしくなってきますね(笑)
つんくは何もしてないように見えますが・・・骨とか靴とか、グッズのことばかり考えてるのでしょうか?(爆)
122 名前:すてっぷ 投稿日:2001年11月10日(土)05時40分08秒
>120 迷子さん
「冬将軍」も読んでいただけたのですね、ありがとうございます。
サイドストーリーですか…『再会編』とか。アイデアが浮かべばまた書いてみたいですね。

>121 70さん
モーたい、見ました。そして同じく、紺野さんがメモってるとこで笑いました。
この先も、70さんの妄想が広がるような話になるよう頑張ります(笑)。
プロデューサーいち押しのヤスモニ。グッズ…また、ちょくちょく登場するかと思います。
123 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月10日(土)05時42分00秒

―――

「あっ、今のトコ!巻き戻して、圭ちゃん……ほらーっ、やっぱ言ってるよ!!
『よっすぃー!』って、聞こえたでしょ?ねっ?」
矢口さんの言葉に頷く保田さん、紺野ちゃん、そしてあたし。
テレビ画面には、ヤスモニ。が出演したモーニング娘のコンサートの模様(反省会用ビデオ)が
映し出されている。

「ネットでもかなり噂になってるし…このままだと時間の問題だよ」
タメ息まじりに保田さんが言う。


デビューを約一ヵ月後に控えたあたしたちヤスモニ。は、連日テレビやラジオ(ヤスダ犬は喋らないので抜き)での
プロモーション活動に加え、コンサートや各ユニットの活動も重なって超多忙な日々を送っていた。

あくまで子供向けのユニットというコトと、容赦ない司会者のツッコミでヤスダ犬の正体(=吉澤)が視聴者に
バレないようにとの配慮から、あたしたちが出演する番組は朝の子供番組や娘のレギュラー番組に
限られていたのだが…どうやら最近、ヤスダ犬=吉澤説がファンの間で実しやかに囁かれているらしいのだ。
124 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月10日(土)05時43分17秒
「あのー…ひとつ、聞いてもいいですか?
どうして、吉澤さんがヤスダ犬になってること……内緒にしてるんですか?」
紺野ちゃん…自分で『聞いてもいいですか?』って確認しといて、誰も許可しないうちに
勝手に質問してるし。

「子供たちの夢を壊さないように、ってコトらしいよ。子供たちにとってヤスダ犬はあくまで
『ヤスダ犬』であって、中に人間が入ってるなんて思ってないだろうからね」
リーダー保田さんによる事情説明に、半信半疑といったカンジで頷く紺野ちゃん。

「子供たちの夢を壊す、イコール、グッズが売れなくなると。やだねー、オトナの世界ってやつはさ」
矢口さんによるクールな事情説明に、大納得した様子の紺野ちゃん、今度は大きく頷いた。
夢見がちっぽい外見とは裏腹に、意外と現実派なんだね…。

「でも、何でわかっちゃうんですかね?あたし、テレビとかで一言も喋ってないじゃないですかぁ」
「やっぱさー、見る人が見ればわかるんじゃない?カラダの線とかで」
「げ…マジっすか」
矢口さんの鋭い指摘に、恐くて鳥肌が立ってしまった。
やだなぁ、そういうの…全身タイツ、二枚重ねに着た方がいいかな。
125 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月10日(土)05時44分29秒
「実際そうみたいよ。昨日もネット徘徊してみたんだけど、ヤスダ犬の身長とか…
後はやっぱり、カラダの線ってやつ?よっすぃーにそっくりだって、話題になってたね。
とりあえず、見つけた分だけは一通り否定しといたけどね」
「うそっ、書き込んだの?圭ちゃん」
「うん」
矢口さんの問いに即答する保田さん…掲示板に片っ端から書き込むとは、ずいぶん地味なコトやってるなぁ。

「なんて書いたんですか?」
「『顔も声も出さないヤスダ犬が、よっすぃーのワケない』って、まぁそんなカンジの内容かな。
『そんなことしたって、彼女には何のメリットもないよ』とかね。適当に書いといた」
テキトーっていうか…めちゃめちゃ的を射た発言だと思うんですけど。
ホント、今回のユニットってあたしには何のメリットもないよね…やば、ちょっと涙出そうになった。


「でもホント、何とかしないとヤバイかもね」
「昨日つんくさんからメール入ってたから…たぶん、大丈夫だと思うんだけどね。『手は打っておいた』ってさ」
とりあえずあたしたちは…保田さんの元に届いた、つんくさんからのメールを信じてみるコトにしたのだった。
126 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月10日(土)05時45分53秒

―――

「良い子のみんな、元気かなぁ?今日は緊急特別企画!ヤスモニ。スペシャルーっ!!」
安倍さんの陽気な(→でも疲れてるので空元気)タイトルコールから始まった、レギュラー番組の1コーナー。

娘。のメンバー全員が横2列にわかれて座っており、1列目には向かって右から司会の安倍さん、ごっちん、
そして保田さん、矢口さん、あたし(ヤスダ犬の扮装)、紺野ちゃん、という具合に本日の主役である
ヤスモニ。のメンバーがずらりと並んでいる。
前列の一番左(紺野ちゃんの隣)にリーダー飯田さんが座り、残りのみなさんは後列、という並び。
前列に7人、そして後列には6人という並びなのだが…後列の左端には、誰も座っていないイスがぽつんと置かれている。

つんくさん指示による、この緊急特別企画『ヤスモニ。スペシャル』は…今日収録して数日後にはオンエアするらしい。
まさに撮って出し状態のこの企画、台本には…ヤスモニ。の軌跡をVTRで振り返る、とある。
まだデビューもしてないのに、振り返るってのもどうなんだろ…って気もするけど、あたしが心配してるのはもっと別のコト。
127 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月10日(土)05時47分17秒
タダでさえ巷ではヤスダ犬=吉澤説が囁かれてるってのに、モーニング娘とヤスモニ。を同じフレームの中に
収めるなんてどうかしてる…一体、つんくさんはどういう意図でこんなコーナーを企画したのだろうか?
巷であれこれ騒いでる、ヤスモニ。が狙う年齢層よりちょっと(かなり?)上の人たちはこの際どーでもいいとして、
何も知らない子供たちがこの番組を見てしまったとしたら…。



チビッコ:「あれっ?よっすぃーがいないよ?おかあさん!よっすぃーがいなくなっちゃったよぉぉー!!」
うっかりおかあさん:「それはね、このワンちゃんがよっすぃーだからじゃないかなぁ?」
チビッコ:「ええっ!?ヤスダけんは…よっすぃーだったの!?いやだっ!いやだよぉーっ!!
      もうなにもしんじない!サンタさんなんかいないんだーーーーっ!!べんきょうなんてきらいだいっ!!」
後の祭おかあさん:「ああっ!?違うの!違うのよ!ああ、どーしましょ!○○ちゃんの夢が壊れてしまったわ!!」



結果、ヤスダ犬グッズの売上はダウン…ってなコトになりかねないと思うんだけど。
128 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月10日(土)05時48分52秒
「今日はなんと、この『ヤスダ犬ハウス』を…三名様にプレゼント!
あて先は番組の最後に言うから、ちゃんとママにメモしてもらうんだよ?
それから、残念ながらハズれちゃった子もだいじょうぶ!!
『ヤスダ犬ハウス』は12月15日、全国のおもちゃ屋さんで一斉発売されるから…
クリスマスプレゼントはこれで決まり、だねっ!!」

「「「みんな、買ってねー!」」」

安倍さんのプレゼント告知(という名の宣伝)に続いて、ヤスダ犬を除いたヤスモニ。メンバーによる
『買ってね』コール。
声を発してはいけないあたし(ヤスダ犬)は、みんなの『買ってねー!』に合わせて両手を振って
可愛さをアピール。


「おつかれ、よっすぃー」
収録を終え、楽屋へ戻ろうとするあたしの肩を叩いて安倍さんが言った。
「吉澤…がんばってるね。おつかれさま」
続いて背後から飯田さんの、どこか哀しげな声。

「おつかれさまでした!」
二人とも、あたしの現状に同情してる…ちょっぴり傷付きながらも、あたしは明るい声でVサイン。
そして仮面(ヤスダ犬かぶりモノ)の下で、こっそり泣いた。

ぐすん。
129 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月10日(土)05時50分09秒

―――

「はじまるよ」
矢口さんの声に、テーブルの上のペットボトルに伸ばしかけた手を止める。

収録から数日後。
あたしたちヤスモニ。の面々は楽屋にてノンキにお菓子をつまみながら、『ヤスモニ。スペシャル』の
オンエアを観ていた。

「つんくさんも一体どーゆーつもりなんだろね。おんなじ画面の中に全員集合させちゃってさー、
よっすぃーだけ居なかったら確実にバレんじゃん。ねぇ?」
「ま、何か考えがあってのことなんだろうけどね」
保田さんはさすがリーダーだけあって、矢口さんよりも少々余裕の表情でクッキーを頬張っている。
例によって紺野ちゃんは、メモ&シャーペン持ってスタンバイ。


『良い子のみんな、元気かなぁ?今日は緊急特別企画!ヤスモニ。スペシャルーっ!!』
安倍さんの浮かれたタイトルコールは、テレビ越しでもやっぱり空元気に見えた。

「「「あれっ!?」」」  「……あっ」
画面が引きの映像になった瞬間、三人と一人の驚きの声が重なった。

「吉澤さんが…います」
紺野ちゃんの言う通り、後列の一番左には…居るはずのない、あたしが座っていた。
130 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月10日(土)05時51分41秒
「…合成、だよね?コレ」
矢口さんの問いかけに、保田さんはただ黙って頷くだけ。
あたしも保田さん同様、あまりの驚きに声も出なかった。
そしてしばらく考えた後、あたしはあるコトに気が付いた。

「先週だ。先週のあたしですよ、コレ!!」
VTRを観ながら手を叩いて爆笑しているテレビの向こうのあたしは、紛れもなく…同じ番組の、
先週放送分の自分の姿だった。

「みんなの衣装も、先週と一緒だよね」
「あっ、そうだそうだ。そう言えば一緒だったね」
保田さんの言葉に、矢口さんが大きく頷く。

改めてみんなの姿を確認してみると…先週放送分ではモーニング娘として出演していた
ヤスモニ。以外のメンバーの衣装は、確かにみんな先週分と同じモノだった。
モーニング娘。+ヤスモニ。の映像に先週のあたしを重ね合わせても決して違和感が無いように、
みんなの衣装も先週とまったく同じにする必要があったのだろう。

「はー、それにしてもすごいね。全然違和感ないよ」
腕組みした保田さんが、感心したように言った。

テレビの中では確かに、あたしとヤスダ犬が共演している。
なんか…不思議なカンジ。
131 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月10日(土)05時53分08秒
「紺野ちゃん…まさか応募すんの?」
番組の最後、プレゼントのあて先を必死にメモる紺野ちゃんは、矢口さんの質問も全く耳に入っていない様子。

最新技術(?)を駆使しまくった、よっすぃー&ヤスダ犬のニセ共演番組も無事終了。
静かな部屋に、紺野ちゃんがペンを走らせる音だけが聞こえている。

「でも、まぁ…とりあえず一安心ってカンジじゃない?」
「だね。帰ったらサイト巡回しとくわ。例の噂もコレで消えちゃうんじゃないかな」
矢口さんも保田さんもすっかり安心した様子で、目の前のお菓子に手を付け始めている。

「そんなカンタンにいくワケないですよっ!!」
あたしはテーブルを叩いて、ノンキにくつろぐ二人に抗議。

「確かに違和感なかったですけど、アレは先週のあたしなんですよ!?
喋ってる内容とかでぜったいバレるに決まってるじゃないですか!!」
「ははっ…やっぱしぃ?」
「まー、そりゃそーだわな」
あたしの抗議を笑ってごまかす矢口さんに続いて、保田さんも苦笑い。
二人とも、他人事だと思って…。

再び静かになった部屋に、紺野ちゃんが何やら慌しくメモをめくる音だけが響く。
132 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月10日(土)05時54分58秒
「…あのー、吉澤さん………一言も、喋ってませんでした」
そして、あたしの耳に飛び込んできたのは…とても残酷かつ正確な、紺野ちゃんレポ。
突然何かに憑りつかれたようにメモをめくり始めたのは、それを確認するためだったんだね。サンキュー、コンちゃん。

「良かったじゃん。ナイス、よっすぃー!」
「一言も喋ってないんじゃ、証拠も何もあったモンじゃないよね」
「…そうですね」
15分間のコーナー中、一言も発言してない(もしくは、したけどカットされた?)先週のあたしへ…サンキュー、よっすぃー。
もー、何週分でも使いまわしてくださいっ!あははっ!


「さて、と。お菓子片付けよっかな…」
気まずい雰囲気に耐えかねたのか、矢口さんが立ち上がった。
「大丈夫。よっすぃーは、間違ってない」
保田さんはあたしの肩をポンポンと叩きながら、意味不明な言葉で慰めてくれる。
「…あのー、来週は……きっと……」
ついには、紺野ちゃんにまで慰められてしまった。

ぐすん。
133 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月10日(土)05時56分23秒
その夜。
あたしは、自宅のパソコンでファンサイトを巡っていた。

確かにあの番組、とても合成とは思えないほど見事な映像だったけど…
あんな子供だましみたいなコトが、果たしてファンの人たちに通用するだろうか。
相手はあたしのカラダの線(全身タイツ姿)を見ただけで、ヤスダ犬=あたしであるコトを
ぴたりと言い当てるような人たちだもん…そうカンタンに騙されるとは思えない。

彼らなら、先週に続いて今週も一言も喋っていないあたしに対して疑問を抱くハズ。
というか…そうであって欲しい。
そうであって、欲しかったのにね…。



(ある掲示板で見つけた書き込み)

『吉澤とヤスダ犬、いっしょに出てたね。別人だったのか、つまんねー』
『絶対そうだと思ったんだけどな。圭chanLOVEの言う通りだったか』
『圭chanLOVE、今日は来ないのかな?』



先週に続いて今週もただ爆笑してただけのあたしの姿に、誰一人として疑問を抱く者はいなかったようだ。
そしてどうでもいいけど、HN『圭chanLOVE』ってもしかして…保田さん?
134 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月10日(土)05時57分59秒



(心ないファンの方々の書き込み)
『みんな、ヤスダ犬ヤスダ犬って騒ぎすぎ。今回のユニット、俺はむしろ保田の短パンに注目してる』
『わかるわかる。実は俺もそう。がんばってんのはわかるんだけどね……』

(それに対する『圭chanLOVE』さんのレス)
『ちょっと!それどーゆー意味よ!!言いたい事あるならハッキリ言いなさいよね!!!
 気分悪いからもう寝る』

(それきり、『圭chanLOVE』さんからの書き込みは途絶えた。)



保田さん、ヤスモニ。の衣装のコト…気にしてたんだ。
135 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月10日(土)05時59分19秒
ヤスモニ。メンバーの衣装は、白地に黒でヤスダ犬のイラストが入ったトレーナー&黒のハーフパンツ。
結成当初、サンプルというコトで見せられたTシャツは…長袖に変わっただけで、デザインについては一切変更なし。

白いキャンパスに書き殴られたヤスダ犬のイラストの下に『yasumoni 。』の文字が寂しく躍る
地味なトレーナーはまだ良いとして…保田さんにとってハーフパンツで『ジャンケンぴょい!』は、
もしかするとあたしの『ヤスダ犬』に匹敵するぐらい辛いコトなのかも知れない。


そっかぁ…。
恥ずかしいのは、あたしだけじゃなかったんですね!!

今夜は、よく眠れそうだ。
136 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月10日(土)06時00分57秒

―――

『ある意味、メイン』
『ある意味、センター』
『ある意味オイシイって、よっすぃー!』(しかし、やってみて実際オイシかった試しはない)。

ある意味、か…。
どんな角度から見たって、真実は一つのはずなのに……ふふっ、笑っちゃうね。

「フッ…」
テーブルに置かれたかぶりモノを見つめる。
昨夜は何となくイイ気分で久しぶりに熟睡できたものの、朝が来れば悪夢よりも恐ろしい現実が待っていた。
今日も明日も明後日も…子供たちの心に夢がある限り、あたしはヤスダ犬であり続けなければならないのだろうか。

「どしたの?よっすぃー。んなアホみたいなカオして」
「くっ…!」
ホントに、このヒトは…人をイラつかせるコトに関しては天才的なんだから。


「ほーら、いいモン持ってきたよ」
ドアを開け、『圭chanLOVE』さん…もとい、保田さんが大きな箱を抱えて入ってきた。
「ジャーン!ヤスモニ。特製クリスマスケーキでーっす!」
それは、ごく普通のクリスマスケーキだった。
ただし上に乗っかってる変なイラストの入った板チョコと、変な生物をかたどった砂糖菓子を除けば。
137 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月10日(土)06時03分13秒
「こんなモンまで出すんだ…ってゆーか、こんなモン買うヤツの気が知れない」
心底呆れたような口調で、矢口さんが言う。

「もう予約で一杯だって。店頭じゃ買えないらしいよ」
「「ええーーっっ!?」」
驚くあたしたちの傍で、紺野ちゃんも口をあんぐりと開けて悪魔のケーキを見つめている。

「それにしても、今回のは一段と酷いね。同じ絵描くのにムラがありすぎだよ、圭ちゃん」
矢口さんの言う通り、ケーキの真中にちょこんと乗っかった板チョコに描かれているヤスダ犬は…
いつもに比べて、ブサイクさ三割増ってカンジ。
口が顔からはみ出しちゃったりして、とうとう妖怪の域に足を踏み入れたか…と思うほどブサイクだった。
でもコレは保田さんの絵がどうこうってよりも、このケーキを作った人の責任なんじゃないだろうか。

「んなコト言ったって、アタシだって忙しいんだからさー。いろんなグッズの原画描かされて、まったく…。
コレなんてCM中に描いたヤツだもん。90秒だよ、90秒。最短記録」
やっぱ保田さんの責任だったか…ケーキ職人さん、ゴメンなさい。
138 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月10日(土)06時05分00秒
「ってゆーか、90秒もかけたような作品とは思えないんだけど。矢口だったら3秒で描けるね」
「えーっ、3秒は言い過ぎじゃないっすかぁ?」
「マジだって!紺野ちゃん、数えてて?」
「……はい」
ムキになった矢口さんは、テーブルに置いてあった紺野ちゃんのメモ帳とシャーペンを本人の許可なく
勝手に借用すると前屈みになって作画の準備。

「いい?行くよ…スタート!」
「……いーーーーち…………にぃぃぃーーー………さ……ぁぁ…ーーん」
紺野ちゃんの『3秒』って、あたしたちの時間に直すと一体何秒になるんだろう。

「ホラ!できた!!」
「10秒ぐらいでしたよ、今の」
まぁ、それにしても十分早いと思うけど…あたしは、矢口さん作の『ヤスダ犬』を覗き込む。

「あんま変わんないですね。ってゆーか、保田さんのよりカワイイかも」
「でしょ?でしょ?」
少なくとも矢口さんのヤスダ犬は、目も鼻も口もきちんと顔の中に収まっている。
139 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月10日(土)06時07分04秒
「矢口、コレもらっていい?ちょうどさー、マグカップに載っける画、頼まれてたんだよね」
「…いいんですか?そんなコトして」
「圭ちゃん、いくら何でもそれはさ…」
「大丈夫っしょ。オッケー、オッケー」
来年1月中旬発売予定のヤスダ犬マグカップ、デザイン担当は矢口真里(18)に大決定。
製作時間は推定10秒(=紺野ちゃん時間:3秒)…良い子のみなさん、ゴメンなさい。


「さ、食べよっか。ちょっと早いけど、クリスマス気分ってことでさ」
「いいねー!クリスマスだってどうせ仕事だもんね…。よし!食べよ、食べよ」
保田さんの言葉に矢口さんが乗っかって、四人で紙コップと紙のお皿を準備して…
ちょっとだけ早い、クリスマスパーティってトコかな?

「…あのー、吉澤さんは、このチョコレートと犬のお菓子…どっちがいいですか…?」
「どっちもいらない」
「ちょっと!失礼だねー!アンタ主役なんだから、どっちも食べなさいよ!!」
「良かったね、よっすぃー。どっちも食べていいってさ」
ここんとこ、ずーっと落ち込みっぱなしで暗い気分だったけど…なんか、こーゆーのも、ちょっと楽しかったりして。
140 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月10日(土)06時09分34秒
「画はヤバイけど、味はオイシイね」
「うん」
矢口さんの言葉に頷きつつ、ケーキを口に運ぶ。

「紺野、ちゃんと食べてる?」
「…はい。おいしい、です……」
保田さんの問いかけに笑顔で答える紺野ちゃん…コレは、ちょっと貴重な映像かも知れない。


「クリスマスに年末にお正月、か…いやー、稼ぎ時ですなぁ」
「ははっ、ウチらはとくにそうですよねぇ。グッズ、売らなきゃ」
クリスマス商戦に年末商戦にお正月商戦か…忙しくなりそうだなぁ。

「がんばれよ、よっすぃー」
「えっ?」
隣に座る矢口さんはまるで何もなかったようなカオして、ケーキをつついている。
ごまかすみたく少し乱暴な手つきでケーキを口に運ぶ矢口さんの様子に、ちょっとだけ笑ってしまった。
ちょっとだけ早い、クリスマスプレゼントをもらったような気がして…うれしかった。

こんなの早くやめたい、って思ってたけど…矢口さんと、保田さんと、そして紺野ちゃんと。
ヤスモニ。のみんなと、もうちょっとだけ…がんばってみよっかなぁ。



―――ヤスモニ。デビューまであと1ヶ月。―――
141 名前:すてっぷ 投稿日:2001年11月10日(土)06時12分23秒
今回、少し駆け足で進めてしまいましたが…
あと2・3回で終わるかと思います。
142 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月10日(土)14時08分51秒
吉澤、なんだかんだ言いつつヤスダ犬に愛着湧いてきたな
143 名前:116です。 投稿日:2001年11月10日(土)18時29分18秒
いや、彼女が狂言まわしみたいな役割にすると、話面白いですよ。
個人的には、他メンバーのキャラもひきたってると思います。
144 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月11日(日)02時31分10秒
なっちの(疲れているので空元気)とハンドルネーム(圭chanLOVE)はツボだった。
細かい小ネタが効いてるなー
145 名前:ARENA 投稿日:2001年11月11日(日)04時51分22秒
吉澤の心の中の親子の会話と圭chanLOVEには爆笑しました。
ヤッスーが書き込んでる姿も一緒に想像しちゃって(w

吉澤もだんだんヤスモニの面々とマターリできるようになってきましたね。
146 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月12日(月)00時08分38秒
保田、掲示板、で当然のように2chを思い浮かべてしまった(w

一番普通な人のようですごく変なすてっぷさんの吉澤、大好きです。
147 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月12日(月)04時29分15秒
こんな時間に笑い声を上げている…ゴメンナサイご近所さん
覚悟は出来てます
変人と思われようともラストまで笑わせて、作者さん!?
148 名前:すてっぷ 投稿日:2001年11月14日(水)19時53分17秒
感想、ありがとうございます!

>142 名無しさん
吉澤、身も心もヤスダ犬に染まりつつありますね(笑)。

>143 116さん
他メンバーのキャラ…登場人物が多くなってくると特に、各キャラの動かし方で
悩みますので…そう言っていただけるとうれしいですね。

>144 名無し読者さん
できるだけ飽きずに読んでいただけるように、くだらない小ネタを
散りばめていますので…喜んでいただけてなによりです(笑)。

>145 ARENAさん
『圭chanLOVE』、笑っていただけて良かった…ハズしてたらかなり
恥ずかしいネタだと思っていましたので(笑)。
マターリしてきたのに…次はやや熱い(?)展開になるかと思います。

>146 名無し読者さん
保田、掲示板、で当然のように2chを…同じく(笑)。
普通に見えて実は変な(笑)吉澤含め、個性派ぞろいのユニット、最後までよろしくです!

>147 名無し読者さん
午前4時半ですか…ありがとうございます!
ご近所さん、ニワトリか何かの鳴き声だと思ってくれてれば良いのですが…(笑)
149 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月14日(水)23時42分00秒

―――

「Tシャツにトレーナー、ペット用品におもちゃに…なーんかすごいコトになってるね」
テーブルに広げたポテトチップ(『ヤスモニ。チップス』。ヤスモニ。カード一枚入り)を
つまみながら、矢口さんが言った。

「あ、またハズレだ」
自分でも何回か買って食べたコトあるけど、まだ一度も『ヤスダ犬』のカードを引き当てたコトがない。
なんでも、超貴重なレアカードとして高額で取引されてるらしいんだけど…。

「アンタ、ハズレってどういう事!?コレ、アタシのカードじゃないのよ!!」
「あー、そういう意味じゃなくて…ヤスダ犬のやつが当たったコトないなぁって」
あたしは猛犬のごとく噛み付いてくる保田さんに、『ハズレ』の定義について説明する。

「ああ…なんだ、そういう意味か。ヤスダ犬のカードだったら一生当たんないんじゃないの?
5万個に1個の割合らしいから」
「ごっ、5万!?げほっ、げほっ」
ポテトチップをノドに詰まらせ、矢口さんが咳き込む。

5万分の1の確率か…。
お菓子業界のコトはよくわからないけど、ポテトチップって日本中で何個ぐらい売られているモノなんだろう…?
150 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月14日(水)23時43分15秒
「じゃあ、みんなで呼んでみよっか。行くよ?せーの、」
「「「「「やーすだけーんっ!!」」」」」
矢口さんの呼びかけに続いて、子供たちの元気な声がスタジオ内にこだまする。
その声に応えて、セット裏に隠れていたあたしはイキオイ良くみんなの前に飛び出した。


「「「ぱっぱっぱっぱ、ぱぱぱだぴょーい!」」」
『かっかっ』と四つん這いの状態で左足を斜め上に2回蹴り上げるヤスダ犬こと、吉澤ひとみ16歳。

「やすだけん、かわいいーっ!」
昨日までのあたしなら、『どうしてあたしだけがこんな目に…』なんて暗く落ち込んでいたところだけど、
今日からのあたしは一味違う。
「やすだけーん!こっちむいてーっ!」
驚愕の全身タイツ、屈辱のPV撮影、失意の合成特番。
ユニット結成から一ヵ月半、あたしがこんな惨めな思いをしてきたのは全て…自分に向けられる、
周囲の人々の哀れむような視線のせいだったんだ。

「やすだけん!やすだけん!」
たった今、気がついた。
あたしの周りには、夢見る子供たちがいるじゃないか!
ヤスダ犬こと、吉澤ひとみ16歳は…カワイイちびっこたちに愛されているんだーっ!!
150 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月14日(水)23時53分17秒
2002年1月1日のCDデビューを2週間後に控えたあたしたち、本日のお仕事は子供番組の公開収録。
あたしの周りを取り囲んでいるのは、番組に出演するため厳しいオーディションを勝ち抜いてきたらしく
大変聞き分けのよろしいチビッコたち。

『あのコたち、みんな子役のコなんでしょ?ヤスダ犬なんて信じてるワケないじゃん。
中にヒトが入ってるって、ちゃんとわかってるよ』
本番前、矢口さんが言ってた。
矢口さんの言葉に紺野ちゃんは大きく頷き、その隣で保田さんは本番直前までPV(2002年2月2日発売)
初回特典用ステッカーの下書き作業に追われていた。


(『中にヒトが入ってるって、ちゃんとわかってるよ』)
だけど、あたしはそうは思わない。
矢口さんや紺野ちゃんや保田さんや、そしてあたしが小さい頃、サンタクロースを信じていたように。
ココにいる子供たちだってきっと、ヤスダ犬が『ヤスダ犬』だってコト…ちゃんと信じてくれているはず。

「「「「やすだけーんっ!!」」」」
そうだよね…みんな。
151 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月14日(水)23時55分30秒

―――

「ふーっ…おつかれぇー」
矢口さんは楽屋に戻ってイスに座るなり、机の上に突っ伏してしまった。

「あっぢぃぃー…」
足下をふらつかせながら部屋の奥まで進むと、両手を頭に当てる。
ガマンしてガマンしてやっとかぶりモノを外すときの、この解放感がたまらん…。

「ぬおおぅ!?」
突然腰のあたりにタックルをかまされて、あたしはヤスダ犬を被ったまま勢い良く床に倒れこんだ。
そして隣に倒れている犯人を確認しようと顔を上げると…そこにはなんと、紺野ちゃんの姿。

「てめっ…!」
いきなり何しやがんだコイツはっ…!!
紺野ちゃんに掴みかかろうとしてあたしは、少しだけ開いたドアの向こう側に立つ人影に気付いて動きを止める。
「やすだけん…」
ドアの向こうに立っていた小学校低学年ぐらいの男の子は恐る恐るドアを開け、中へ入ってきた。

「ボクぅ?ダメでしょ?勝手に入ってきちゃ」
「やすだけんに、あいにきたんだ」
保田さんが止めるのも構わず、彼はずんずんとあたしの方へ近付いてくる。
紺野ちゃんはこの子の存在に気付いて、あたしがぬいぐるみを脱ぐのを止めようとしたんだ。
152 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月14日(水)23時56分52秒
「さっきは、あんまりあそべなかったから…どうしても、あいたかったんだ。ぼく」
紺野ちゃんに激突されて床に倒れたままのあたしに、彼はそっと手を差し伸べてくれた。
「ああ、もしかしてさっきの番組で一緒だったコ?ボク」
矢口さんの言葉に、『うん!』と元気良く返事をして頷く男の子。カワイイなぁ…。

「あはっ、やすだけんだ…ほんものだぁ」
差し出された手を取って起き上がるあたしを見て、彼が言う。
ありがとう。そう口に出して言いたいのを、ぐっとガマンする。
だってヤスダ犬は、決して声を発してはいけないのだから。

「ねぇボク、もういいでしょ?早く帰らないと、お母さん心配してるよ?」
「うん…」
保田さんに言い聞かせられ、男の子は名残惜しそうに繋いだ手を離した。


「さいごに、ひとつだけきいてもいい?」
少し背伸びしながらあたしのコトを見上げている彼に、あたしは小さく頷く。

「どうしてやすだけんは、なかないの?」
楽屋の空気が、一瞬にして凍りついた。
153 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月14日(水)23時58分26秒
「ねぇ、どうして?やすだけんは、いぬなんでしょ?ぼくんちのジョンソンはなくよ?」
え?ジョンソンって、犬?飯田さんじゃないよね?
って、そんなコトはどうでもいいワケで…どうしよう、コレはかなりマズい展開だよぉ。

まいったなぁ…まさかココで鳴くワケにもいかないし。
あたしは、すぐ傍に立つ保田さんに目で合図を送る…『たすけてください』。
しかし保田さんは、困ったような表情を浮かべて肩をすくめるばかり。

「ゴメンねー、ボク。ヤスダ犬、ちょっとノドの調子が悪いみたいでさ。
また今度鳴いてあげるから、だから今日は帰ろ?ねっ?」
ノドの調子って、矢口さん…そんな言い訳が子供に通用するとは思えないんだけど。
「ねぇ、ないてよ!ないてよ、やすだけん!!」
矢口さんの説得も虚しく、男の子は引き下がってくれない。

「だからー、ダメなんだってば。ヤスダ犬は、昨日吠えすぎちゃったから今日は声出ないの。
ドクターストップかかっちゃったの。わかる?」
矢口さん…ますます解りづらくしてどーすんですか。
154 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月14日(水)23時59分58秒
「おいしゃさんがとめたって、そんなのいぬにわかるわけないもん!なけるよ、なけるよねっ!?」
「ドクターストップって意味わかってるよ、このコ。無邪気なんだかマセてんだか…」
「ないてよ、やすだけん!ねぇ、ないてよぉ……」
保田さんの呟きを完全に無視して、すがるような目であたしを見上げている彼。

「ねぇ、ねぇ……」
疑うコトを知らない、キレイな瞳でじっと見つめられて…胸が締め付けられる思いがした。
男の子はその目に涙をいっぱい溜めて、あたしの腕を強く引っ張る。
目の前で泣きそうになっている彼に、あたしは鳴いてあげるコトすらできない。

視界が、涙で霞んでゆく。
溢れ出した涙と一緒にあたしの中に湧き上がってくる、疑問。

ヤスモニ。は、誰のためのユニットなんだっけ?
あたしたちは、誰のために歌ったり踊ったりしてるの?


そうだ。
あたしたちは、はじめっから『誰か』のために歌ってるワケじゃなかった。
155 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月15日(木)00時01分18秒
「……っ」
「やすだけん…?」
ぬいぐるみから漏れる泣き声に気付いた彼が、心配そうな顔であたしを見上げる。


こんなイタイケな子供たちにグッズ売ったお金で、サウナ行きまくりの保田さんって。
こんなイタイケな子供たちにグッズ売ったお金で、焼肉食べ放題の矢口さんって。
こんなイタイケな子供たちにグッズ売ったお金で、おいもパラダイスの紺野ちゃんって。
こんなイタイケな子供たちにグッズ売ったお金で、もっともっとイイ思いしてるだろう…つんくさんや、オトナの人たちって。
あたしたちがやろうとしてるコトって、なんなんだろう。

『子供たちに夢を』なんて言って…あたしたち、もらってばっかだ。なんにもあげてない。
なんにも…あげてないじゃんか。
156 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月15日(木)00時03分13秒
あたしは祈るような気持ちで、男の子の後ろに立つ保田さんを見つめる。
するとあたしの気持ちを汲み取ってくれたのか保田さんは静かに微笑むと、ゆっくり頷いた。

リーダーの許可を得てあたしは、大きく深呼吸する。
言われたコトを言われたようにやるだけの、今のあたしにできるコトといったら、コレぐらいしかないけれど。
だけどあたしがこれからやろうとしているコトはきっと、ヤスモニ。にとっては歴史を変えちゃうぐらい大変なコト。

あたしは…いや、ヤスダ犬は。
世界中でたったひとり、愛しいキミのためだけに…吠えるよ。

「わっ…わんっ!!」
緊張のせいで少し上ずった声になったものの…記念すべきヤスダ犬の第一声は、
愛しい彼のために捧げられた。


「なんだそれ。超フツーじゃん」
もーっ、矢口さんってばせっかくの感動シーンなのに……ってコレ、矢口さんの声じゃない!?
超ローテンションな声で超カワイくない台詞を吐いたのは、紛れもなく…目の前の愛しい彼、その人だった。
157 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月15日(木)00時05分14秒
「ママが言ってた通りだ。この犬、中身は三流芸人か」
なーにぉぉーっ!?みんなのアイドルよっすぃーをつかまえて、さんりゅーげーにんだとぉーっっ!!

「ちょっとは面白いコト言えよ。つっまんねーんだよっっ!!」
「キャンっっ!?」
彼が思いっきり蹴り上げた右足は、ドムッ!という鈍い音を響かせてあたしのおしりを見事
真芯でとらえていた。
バランスを崩し、あたしはドサリとその場に倒れ込む…いっ、痛い、冗談のようにイタすぎる。

「こらーっ!まて、このガキっ…!!」
「やめな、あのテのガキに何言ったってムダだよ。紺野、カギ閉めて」
無防備なあたしに対し、ノー手加減キックをブチかまして走り去った『愛する彼』改め
クソガキを追って楽屋を飛び出そうとした矢口さんを、保田さんが引き留める。


「よっすぃー、ケガしなかった?」
床に手を付いたまま横座り状態で固まるあたしのかぶりモノを、保田さんが脱がせてくれる。
「よっすぃー!だいじょうぶ!?」
ぬいぐるみを取り去って涼しくなった頭を上げると、入り口から駆け寄ってくる矢口さんの姿が見えた。

再びあたしの目に、涙が溢れる。
158 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月15日(木)00時07分00秒
「矢口さん…あたし、くやしいです」
「うん、うん。わかるよ。ウチらだって同じ気持ちだよ、よっすぃー」
「奴らのクリスマスプレゼントも、お年玉も、毎月のおこづかいも…全部、ふんだくってやりたい気分です」
「うん、うん。そうだね。あいつら…ぜったい、食いモノにしてやろーねっ」
あたしの頭にそっと置かれた矢口さんの手の温もりが、全身タイツの布越しに伝わってくる。

「…吉澤さん……泣かないで、ください」
「ありがとう、紺野ちゃん」
目の前に差し出されたハンカチを受け取る…そうだね、泣いてる場合じゃないや。

あたし、もう泣かない。
復讐の鬼と化したあたしには、もはや1ミクロンの迷いもなかった。

さぁガキどもめ、買いたいだけ買うがいい。思う存分貢ぐがよい。
あたしなしでは生きていけないようなカラダにしてやる。


「よっすぃー、立てる?」
保田さんの手を借りて、あたしはユラリと立ち上がった。
いや、『蘇った』と言った方が正しいかもしれない。
159 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月15日(木)00時09分08秒
「アタシ、何だか吹っ切れたような気がするよ。みんなも、そうだよね?」
保田さんの言葉に、全員が頷く。
あたしたちは、誰からともなく部屋の中央で円陣を組んでいた。

「いくよ、みんな!」
子供たちにグッズを売るためだけに結成されたユニット、それが『ヤスモニ。』ならば。
子供たちにグッズを売る、それがあたしたち『ヤスモニ。』に課せられた使命ならば。

「売って売って売りまくりまっ…」
ならば、お望み通りに。

「「「「しょーいっ!!」」」」
デビューを目前に控え、ようやくあたしたちは…同じ目的に向かって、ひとつになろうとしていた。



―――ヤスモニ。デビューまであと2週間。―――
160 名前:すてっぷ 投稿日:2001年11月15日(木)00時10分51秒

何だかアホっぽく盛り上がって参りましたが…。
たぶん次回で終わると思いますので、もう少しだけお付き合いください。
161 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月15日(木)00時49分29秒
なんか間違ってる……ような気がする。
162 名前:闇の住人 投稿日:2001年11月15日(木)00時58分04秒
何か間違ってるような気はするけどなぜか終わってほしくないような気がする・・・。
163 名前:70 投稿日:2001年11月15日(木)01時36分02秒
「愛する彼」改めクソガキ(笑)許せん。
しかし、さすがは保田さんの怨念ユニット。団結の仕方も凄いです。
最終回、遂にヤスモニ。デビューですね。なんかドキドキしてきました(笑)
164 名前:名なし読者 投稿日:2001年11月15日(木)13時28分04秒
やる気になったヤスモニ、ガンバレ!!!
...なんか明るい未来が見えない(藁。
165 名前:キャメル 投稿日:2001年11月15日(木)17時59分44秒
笑える!間違った方向に進んでるよ!
最高です。頑張ってください!
166 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月15日(木)20時47分38秒
間違ってはいるが、ヤスモニの結束は固くむすばれたな。
167 名前:ARENA 投稿日:2001年11月16日(金)01時05分02秒
クソガキむかつくー!ヤスモニがんばれ!!

団結したヤスモニならやれるぞ!(w
168 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月16日(金)03時49分40秒
強い絆で結ばれた彼女たち
進むべき先に未来は希望があるのでしょう。
169 名前:すてっぷ 投稿日:2001年11月17日(土)21時10分25秒
感想、どうもありがとうございます!

>161 名無し読者さん
ありがとうございます。明らかに…間違ってますね(笑)

>162 闇の住人さん
こんなアホな話でもそう言っていただけると、うれしいですね。ありがとうございます!

>163 70さん
『怨念ユニット』…恐すぎます(笑)。「愛する彼」のおかげで嫌な団結力を見せてますが、
ヤスモニ。デビューの瞬間、見届けていただけるとうれしいです!

>164 名なし読者さん
めずらしく、やる気を見せているヤスモニですが…。
未来は明るいはず、です…たぶん(笑)。

>165 キャメルさん
間違った方向へ進んでこれからどこへ行ってしまうのか、
最終回もお読みいただけるとうれしいです。

>166 名無し読者さん
間違っている上に、嫌な結束ですね(笑)

>167 ARENAさん
愛する彼、かなり不評ですね(笑)。
団結したヤスモニの姿、最後までよろしくです!

>168 名無し読者さん
あまり美しい絆ではありませんが…希望ある未来かどうか、
最終回でお確かめいただけるとうれしいです。
170 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月17日(土)21時12分18秒

―――

2002年1月1日、ついにその日はやってきた。


「はい!そこで紺野ちゃんのセリフ!」
「……あー、あんなところに…袋がおちているわ…なにかしら………これ、これはー、えっと、これはー」
「もーっ、ダメじゃん!ちゃんと覚えとかなきゃー。
『コレはっ!?コレは、『ヤスモニ。おたのしみ袋』(←強調)だわっ!!』でしょ?紺野ちゃん」
控え室にて、これから始まるデビューイベントで披露する寸劇の最終チェックに追われるあたしたち。
本番直前にも関わらずまだセリフを覚えていない紺野ちゃんにあたしは、センパイらしくダメ出しの真っ最中。

それにしても、デビューイベントがいきなり東京ドームとは…ヤスモニ。も、大きくなったモンだなぁ。

「よっすぃー、惜しい!正確には、
『コレはっ!?コレは、『ヤスモニ。おたのしみ袋』(←大音量)だわっ!?
ブルーのおとこのこ用、ピンクのおんなのこ用、どちらも定価2500円で好評発売中のアレねっ!!』
でしたー!!」
左手にブルーのおとこのこ用、右手にピンクのおんなのこ用を掲げて矢口さんが叫ぶ。
171 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月17日(土)21時13分32秒
「…ぶっ、ブルーなおとこのこ用、ぴ…ピンクはおんなのこの色……どちらも定価2000円でー…」
「紺野ちゃあああん。ムチャクチャだよぉー。『ブルーな』おとこのこって何だよ、もー…」
左手にブルーなおとこのこ用、右手にピンクなおんなのこ用をぶらさげて矢口さんが唸る。

「…だいじょうぶ、です。本番には…強いんで……」
そう言って、紺野ちゃんは不敵な笑みを浮かべた。
小声ながらも自信(どこから湧いたのか知らないけど)に満ちたその口調に、あたしたちは
ホッと胸をなでおろしたのだった。


「いやー、売れてる売れてる。ミリオンいっちゃったわよ」
大それた言葉をあっさりと吐きながら、ドアを開け保田さんが中に入ってきた。
「「え…?」」  「………え?」
今日発売なのに、いきなり『ミリオン』って…?
その意味を理解できないあたしたちは、ポカンと口を開けて保田さんの次の言葉を待った。

「初回限定版、昨日で全部売り切れたって。全国、どこもかしこも」
「マジ!?ってゆーか、初回から100万枚出荷してたの!?」
矢口さんの言葉に、当然でしょ?といった表情で頷く保田さん。
172 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月17日(土)21時14分50秒
「すごい…。バカ人口100万人ってコトじゃん…どーなっちゃうんだよ、日本の未来は」
左手にブルーなおとこのこ用おたのしみ袋を提げた矢口さんの表情が曇る。
って言ってもまだ初回なんだから、これからもっと増えるんだろうなぁ(バカ人口)。
こんなに順調で良いのだろうか…うれしいような、恐いような、なんとも複雑な気持ちになる。

「100万人ってことはないっしょ。たぶん1人で何枚も買ったんだろうからね」
「どういうコトですか?」
「トレカ効果ってやつよ」
そっ、それは!?禁断のワザをっ……!!
『1人で何枚も』ってコトは、初回CDには数種類のトレカが封入されていたというコトになる。

「あー、やっちゃったか。でもぜんぜん知らなかったね」
「ったく、イイ気なモンだよ…アンタたちは。アタシが10種類分描くのにどれだけ苦労したことか」
「「10種類!?」」  「……10枚…」
このユニットに入って約2ヶ月、毎日が驚きの連続です。
173 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月17日(土)21時16分31秒
「これは…これは、『ヤスモニ。おたのしみ袋』(←紺野ちゃんなりの大音量)だわっ……。
ブルーのおとこのこ用……。ピンクのおんなのこ用……。どちらも、定価2500円で好評発売中のアレね…。
オリジナルのトレカも、入っていて……なんてお得なの……すごいわ」
本番には強い、その言葉通りアドリブまで飛び出して絶好調の紺野ちゃん。やったね!
一番前に座ってるチビッコは退屈して寝ちゃってるみたいだけど。気にしない!

「きゃああーっっ!!圭ちゃん!?」  「……きゃああああーー……」
「フフフフ、私は『圭ちゃん』ではない。たった今から私は、『モンスターK』として世界に君臨するのだああーっ!!」
突然の落雷に打たれて床に倒れていた保田さんは、悪の化身『モンスターK』(下っ端っぽい名前だけど、
どうやら世界に君臨したいらしい)となってむくりと起き上がった。

「やばい!圭ちゃんのカラダが、悪の大魔王に乗っ取られてしまった!!どうしよう!?」
「…ヤスダ犬に…お願いしてみましょう……」
「おおっ!そうだね、紺野ちゃん!!」
『ヤスダ犬』の名前が出た瞬間、会場のちびっこたちがざわつき始めた。
174 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月17日(土)21時17分53秒
「みんな、矢口といっしょに大っきな声で呼んでね?せーの、」
「「「「「やーすだけーんっ!!!」」」」」
子供たちの呼ぶ声を合図にあたしはダッグアウトを飛び出し、中央に設置されたステージまで全力疾走。

「「「「「やすだけん!やすだけん!!」」」」」
正義のヒーロー『ヤスダ犬』の登場にちびっこたちはヒートアップ、『やすだけん!』コールと手拍子は
あたしがステージに上がってからも鳴り止まない。

「ん?どうしたの、ヤスダ犬?……こっ、コレは!!!」
あたしが跪いて差し出したスーツケースを見て、矢口さんが大げさに驚いてみせる。

「『ヤスモニ。バトルセット』じゃない!?でかした!よくやったよ、ヤスダ犬!!」
「……ヤスモニ。バトルスーツ、ヤスダ犬ソード、ヤスダ犬リストバンド、ヤスダ犬ステッカー、ヤスダ犬消しゴム。
セットで…おとくです。イベント終了後の、即売会で…買えるそうですよ…すごいですよね」
「くらえっ、愛のヤスダ犬斬り!!」
「ぎゃあああーーっ!!」
矢口さんが振り下ろした『ヤスダ犬ソード』に一刀両断され崩れ落ちる、悪の大魔王『モンスターK』。
175 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月17日(土)21時19分46秒
「ああ〜ん、欲しいよぉ。ねぇねぇ、圭ちゃん。矢口、ヤスダ犬グッズがもっと欲しいんだよーっ!!」
「しょうがないなー、矢口は。おねだり上手なんだから。でも、これからおもちゃ屋さん行くのは
ちょっと…メンドくさいなー」
「……安心してください、保田さん。さっきも、ちょっと言いましたけど…このイベントが終わったら、
ここでヤスダ犬グッズの即売会が…ありますので、矢口さんも、会場のみんなも、好きなだけ買えますよ?」
「ホントにっ!?やったー!!」
紺野ちゃんの説明に、ステージ上を跳ね回って喜びを表現する矢口さん。


「「「みんな、またね!!グッズ、いっぱい買って帰ってねー!!」」」
あたしは、子供たちにストレートな要求を突きつけるメンバーの周りを四つん這いでぐるぐると走り回って
コレでもかと可愛さをアピール。

「「「「「やすだけん!!やすだけん!!」」」」」
会場を埋め尽くす大観衆に手を振りながら、あたしたちはステージを後にした。
176 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月17日(土)21時21分48秒

―――

「うおおーっ、すごいすごい!いっぱい買ってるよぉー…入れ食いだね、こりゃ」
両手におたのしみ袋や『ヤスモニ。バトルセット』を抱えてヨタヨタと歩く男の子を見ながら、矢口さんが言った。
控え室に戻ってきたあたしたちは、備え付けのモニターに映し出された即売会場の様子を見守っていた。

Tシャツにトレーナー、生活用品にペットグッズ、おもちゃ、無造作に積み上げられたCDの山。
そしてそれに群がる子供たちと、その後ろで彼らにお札を手渡すおとうさんやおかあさんたち。


「ねぇ…勝ったんだよね、あたしたち」
矢口さんが、ぽつりと呟く。
あたしたちが見ているのは、あたしたち全員が望んでいた光景だったはずなのにどうしてだろう…うれしくない。
「あっ、見て。あのコ」
保田さんが指差した女の子に、全員が注目する。

モニターの中の彼女は、グッズを抱えてレジに並ぶ子供たちの列を羨ましそうに眺めている。
頑なに首を横に振るおかあさんの顔を見上げて、女の子はあきらめたように…がっくりと肩を落とした。

そっか…こーゆーコだって、いるんだよなぁ。
177 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月17日(土)21時24分13秒
「ちょっ…よっすぃー!?」
「みんなも、いっしょに来て!!」
居ても立ってもいられず、あたしは矢口さんの手を引いて部屋を飛び出した。
ダッグアウトへと続く通路を疾走するあたしたちの後ろに、保田さんと紺野ちゃんが続く。

「矢口さん。あたし、うれしいんです」
「うん。ウチらだって同じ気持ちだよ、よっすぃー」
「クリスマスプレゼントとかお年玉とか、そんなの関係なくて…あたしたちを好きでいてくれるコトが、すっごいうれしい」
「うん…そうだね」
後ろを走っていた二人もいつの間にか追いついて、あたしたちは四人ならんで会場へと続く通路を突っ走った。
寂しそうに俯いていたあのコの横顔を想いながら、あたしたちは走る。

子供たちにグッズを売るためだけに結成されたユニット。
欲しがる子供たちがいて、与える大人たちがいて、そして、あたしたちがいて。
そーゆーしくみで、ウマく地球は回っているのかも知れない。そうだとしても。

あたしたちのやってるコト、正しいか間違ってるかなんて…そんなの、わかんないさ。だけど。
178 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月17日(土)21時26分38秒
ヤスダ犬が大好きで、グッズいっぱい買ってくれるコも。
ヤスダ犬が大好きで、おこづかい少しずつ貯めて買ってくれるコも。
ヤスダ犬が大好きで、それでもおこづかい足りなくて買えないコも。
いろんなコがいるけど…みんな同じくらいヤスモニ。のコトを大好きでいてくれて、応援してくれてる。

だからこそ。
あたしたちはどんなコにだって同じように、笑顔をあげなくちゃいけないんだ。
あたしたちはきっと…そのために、ココにいるんだから。


「やすだけん…!?」
「しーっ!」
突然目の前に現れたヤスモニ。を見て驚く女の子を、周囲に気付かれないよう矢口さんが誘導する。
他の子供たちはみんなグッズを漁るのに夢中で、あたしたちの存在にまるで気付いていない。
あたしたちは、おもちゃが売られているブースの裏に女の子と彼女のおかあさんを連れ出した。

「……おすわり」
「やすだけんだぁー、やすだけんだっ!すごいね、おかあさん!!」
紺野ちゃんに命じられて(←いつからそんなに偉くなったんだ、おマエは)おすわりをする
あたしのアタマをなでながら、女の子がうれしそうに笑う。
179 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月17日(土)21時28分30秒
「あーっ、かわいい!かわいいねー、やすだけん!ねっ、おかあさん!!」
「そっ…そうね、可愛いわね。とっても」
女の子のママは笑顔をひきつらせながら、仰向けになって手足をバタつかせるあたしを見下ろしている。

「よっすぃー…とうとうプライド捨てたか」
矢口さん、ひどい…。
(『ダメだよ、よっすぃー。うれしいときは、ひっくり返っておなか見せなきゃ』)
って言ったのは、矢口さんじゃないですかぁ…。(ダンスレッスンにて)

「よっすぃー。アンタ、犬っつーかゴキブリみたいだよ」
「……私、東京に来て…はじめて、ゴキブリ見ました……」
おいおい、お前ら。
おもっきし、『よっすぃー』って言ってんじゃねーよ…。


「かわいいー!かわいいねっ、やすだけん!」
彼女の笑顔を見ながら、思った。
あたしたちがあげなくちゃいけないのは、ぬいぐるみやオモチャなんかじゃなくて…もっと、大切なモノなんじゃないかって。
180 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月17日(土)21時30分33秒
「今度こそホントにウチらの勝ち、ってカンジかな」
おかあさんに手を引かれて帰っていく女の子の後ろ姿を見ながら、矢口さんが言った。

「……あの子、本当に楽しそうでした……私も、見習いたいと…思います」
「なにを見習うんだよ。楽しそうなトコ?」
「……はい」
矢口さんの質問に、素直に頷く紺野ちゃん。彼女は一体、どこへ向かって進んでいこうとしているのだろう。


「でも、まぁ…あのコのうれしそうな顔も見れたし、なんか上手くやってけそーじゃない?ウチら。ねっ、圭ちゃん」
「まっ、結論からいくと…金のあるヤツにはグッズを、金のないヤツには愛を。どう?」
「「「………」」」
とりあえずヤスダ犬こと吉澤ひとみとしては、お金のある子にも無い子にも…愛だけは平等にあげたいと思うのだけど。

なにはともあれ。
こうして記念すべきヤスモニ。のデビューイベントは、大成功のうちに終了したのだった。
181 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月17日(土)21時32分01秒

―――

デビューから一週間後、それは突然やってきた。

「失礼しまぁす」
少しだけ緊張しながらドアを開け、中へ入る。

「おう、吉澤。久しぶりやな」
「おはようございます」
事務所の一室。
つんくさんはあたしが部屋に入ると、吸っていたタバコを揉み消しながらこちらへにこりと微笑みかけてきた。
入口に突っ立っていたあたしは、つんくさんに促されてソファーに腰掛ける。

「どや、調子は」
「調子ですか?いいですよー、もぅバリバリです!」
「そうかそうか。ははっ、そうか」
目の前に座るつんくさんは、終始ニコニコ顔。

「今日呼んだんはなぁ、アレや。ヤスモニ。の事でちょっとな」
「ああ…はい」
つんくさんはあたしから視線を逸らすと、少し照れたような表情でこめかみをポリポリと掻いている。
何か様子がおかしいけど…もしかして、また変な衣装とか着せられるんじゃないよね。

「吉澤…」
つんくさんはソファーにもたれていた上半身を起こすと、目の前のテーブルに両手をついた。
こっ、コレは…『全身タイツ着てくれ!』って頼まれたときと同じシチュエーションじゃないかー!?
182 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月17日(土)21時34分38秒
「ごくろーさんやった!ホンマようやってくれた!この通りや!!」
「えっ、ちょっと、つんくさん!?」
テーブルに額を擦りつけるようにして、深々と頭を下げるつんくさん…えっ、泣いてる!?うっそぉぉー!?

「ぐすっ、絶対途中で投げ出すと思ってたんや。普通の女のコやったら、恥ずかしくて絶対できひん事やし。
それをお前は、最後まで…デビューまで、ようやってくれた。うれしい、オレはうれしいんや…吉澤ぁぁ」
「つんくさん…」
新ユニット結成以来ずっとつんくさんのコトを恨んできたあたしは、そんな自分が恥ずかしくなって俯いた。
つんくさん、ゴメンなさい。
つんくさん愛用のサングラスのレンズ片方ずつに『ア』『ホ』ってマジックで書いたのは、あたしです。
そして真っ先に疑われて死ぬほど怒られていた、あいぼん…ゴメンね。

「今までのユニットを超える、最高のユニット…もう、十分や」
片手でサングラスをずらして涙を拭いながら、つんくさんが言った。
もう十分、か…終わっちゃうのかな、ヤスモニ。
一日も早く終わるコトを願っていたはずなのに、いざ解散となると何だか寂しい気もするなぁ…。
183 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月17日(土)21時37分03秒
「オレらがやり残したコトは、もう何もない。この日本では、何ひとつないんや」
口の端にニヤリと笑みを浮かべて、つんくさんが言う。
『この日本では』、つんくさんが強調したフレーズがちょっとだけ気になってしまったあたし。

「吉澤、ヤスモニ。の全米デビューが決まったぞ」
あっ、やっぱしー!!

「ぜっ…!」
全身タイツ!?じゃない、全米デビュー!?
いやむしろ、全身タイツで全米デビュー!?

「いやー。アメリカではな、ヤスダ犬人気がポケモン超えたらしいで。たまらんなー、オイ!!」
ヘイ!どうかしてるぜ、ボーイズあんどガールズ。
どっからどう見たって、ヤスダ犬よりピカ○ュウのがカワイイじゃんよ…。
184 名前:ユニットをつくろう! 投稿日:2001年11月17日(土)21時39分48秒
「いやー。春にはデビューやからな、忙しくなるでぇ。たまらんわ!くくっ…あかん、笑いが止まらん!!」
涙もすっかり乾いた様子で笑い転げるつんくさんの、お気に入りのグラサンをブチ割ってやりたい気分だった。

「くくくくっ、くくくくっ…止めて!なぁ止めて、吉澤!!ぷっ、くくくく…」
「あはははははは!!」
笑うしかなかった。

「「はははははははははは!!!」」
いったいぜんたい、なにがどうしてどうやってこうなってしまったんだろう…?
ごっちんのせい?保田さんのせい?矢口さんのせい?それともつんくさん?
少なくとも、あたしには1ミリの責任もないコトだけは確かだ。


お母さん、ゴメン…。
ひとみは、純白のウェディングドレス着る前に…たぶんもう、お嫁にはいけないと思います。



―――ヤスモニ。全米デビューまであと2ヶ月とちょっと。―――


<END>
 
185 名前:すてっぷ 投稿日:2001年11月17日(土)21時41分29秒
『ユニットをつくろう』、これにて終了です。
お付き合いいただき、ありがとうございました!!
186 名前:キャメル 投稿日:2001年11月17日(土)21時41分52秒
いや〜、リアルタイムで読ませて頂きました!
面白かったですよ!グラサンに「アホ」って!
これからも頑張ってください!
187 名前:ARENA 投稿日:2001年11月17日(土)21時56分29秒
同じくリアルタイムで読みました。

なるほど。クソガキのせいで俺も本当のヤスモニの「勝ち」を忘れてました。
それに気づいた吉澤も吹っ切れたようで・・・(w
あれで全米デビューなんて笑うしかないでしょうね。
すてっぷさんの作品らしいコミカルなラストも良かったです。

これだからすてっぷ作品はやめられません(´ー`)y ─┛~~
188 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月17日(土)23時32分33秒
全米デビュー…
吉澤の悲哀はともかく、矢口の野望はある意味達成された…のか?
189 名前:70 投稿日:2001年11月18日(日)02時45分38秒
ヤスモニ。が素晴らしいデビューを迎えることが出来て、本当に嬉しいです!
よっすぃーとヤスモニ。メンバーがたどりついた結論に感動しちゃいました。
そして、話が進むにつれて、どんどん大物キャラになっていく紺野ちゃんが、
現実の紺野ちゃんとシンクロしてて、すごくリアルでした(笑)
190 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月18日(日)04時55分58秒
グッズを売るためならヤスモニは
悪にもヒーローにもなるんですね。
衝撃の展開の連続!!

大変たのしませて貰いました。御疲れさま!?
191 名前:もんじゃ 投稿日:2001年11月19日(月)01時13分26秒
く、くだらない…(笑)
そんなとこがステキだぁ――――!!!
いろいろ笑かせてもらいましたが、真っ先に疑われたあいぼんのとこ
けっこうツボでした。
私もきっとバカ人口に入ると思います。

ほんとに御疲れサマでした♪
192 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月19日(月)05時03分29秒
お疲れ様でしたー!!
赤板の頃からずっとファンです!!(w
俺も191さん同様まっ先に疑われたあいぼん、ツボでした。
と、ところで…
ヤスダ犬終わったばかりでなんですけど、次回作の御予定なんかは…?(w
もし、特に何もなくて、なおかつ書く気は溢れてるなんて事ありましたら(w
ぜひぜひ前に緑で書かれていた『もうすぐ逢えるはずの、キミ達へ。 』の続き
をお願いできませんでしょうか?

ずっと気になってたんです。
ほんと、気が向いたらでいいんで…。
193 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月19日(月)05時04分10秒
>>192
赤板の頃からって変ですね…。
緑の頃からです。すいません…。
194 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月19日(月)10時38分38秒
11/18のハロモニコントで帰国子女の吉澤さんが、けーちゃん作のやすだ猫(何故か足六本の化け猫)のことを
「わたしふぁんです」って言っててビックリしましたよ!
・・・よっすぃ
195 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月19日(月)13時47分37秒
>>192
あれはあの終わり方だから良いと思うのだが。
ていうかないでしょ、続き。
196 名前:名無し梨華 投稿日:2001年11月19日(月)21時12分25秒
お疲れ様でした。
いつもいつも楽しく読んでます。

今回もよしこだけでなく、全員がどこかしら馬鹿っぷりを発揮していて笑えました(w

次回も期待してます、とプレッシャーを与えてみたり(w
197 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月19日(月)21時15分31秒
私も18日のハロモニコント観ました。
あれ、脚本の人この作品読んでるんじゃないか?…先週の被り物といい、今回のこれといい…
198 名前:192 投稿日:2001年11月19日(月)21時56分46秒
>>195
あくまで希望として耳に入れておいてほしかっただけだから。
あー…書き方が悪かったかな?
俺もあの終わり方だからーってのは、ほんとそう思うんだけど、
ただ、あの後矢口がどうやって吉澤との関係をいい方にもっていくのかとか
見てみたかったし、番外なんかで吉澤視点なんてのも見てみたいかなって。
なんか倉庫に行っちゃってあのままってのはもったいないなって思っただけっす。

気分害されたらほんとすいませんでした。
199 名前:すてっぷ 投稿日:2001年11月19日(月)23時49分25秒
感想、本当にありがとうございます!

>186 キャメルさん
>リアルタイム  
バカな時間を共有して頂けたんですね、ありがとうございます!(笑)
グラサンのネタは後から付け足したのですが…入れといて良かった(笑)。

>187 ARENAさん
ARENAさんもリアルタイムとは…お疲れ様でした(笑)。ありがとうございます。
当然ながらかなり不評だった『クソガキ』くんですが、あの出来事もヤスモニにとって
プラスになったと思えば思えなくもないと思います(笑)。
しょーもない話ばかり書いておりますが、またお付き合い頂けるとうれしいです。

>188 名無し読者さん
矢口の野望…ヤスダ犬がひっくり返っておなか見せたことでしょうか?(笑)

>189 70さん
デビューまでお付き合いいただき、ありがとうございました。そして数々の妄想も(笑)。
シリアスな場面では、『ヤスモニ。』なんてフザけたユニット名にしたことを
かなり後悔したのですが(笑)…感動していただけるとは!
それと現実の紺野ちゃん、かなり良いキャラですよね(笑)。
200 名前:すてっぷ 投稿日:2001年11月19日(月)23時51分45秒
>190 名無し読者さん
グッズを売るためには手段を選ばないヤスモニ(笑)、楽しんでいただけて良かったです。
悪にもヒーローにも…保田さん、リーダーなのに悪者にしてしまいました(笑)。

>191 もんじゃさん
くだらない…最高の誉め言葉と(勝手に)解釈させていただきます(笑)。
真っ先に疑われたあいぼん…くだらない小ネタに気付いていただけてうれしいです。
あと、こんな話を最後まで読んでる時点で確実にバカ人口の仲間入りだと思うのですが、どうでしょう?(笑)

>192 193 名無し読者さん
あいぼん、名前しか登場していないのですが…人気ですね(笑)。ありがとうございます!
次回作…考えてはいるのですが、今までで最高級にくだらない話になりそうです。
何とか最後まで行けそうだったら、またここで書かせていただきたいと思います。
『もうすぐ〜』の続き…195さんのおっしゃる通りちゃんとした続きは無理そうですが
短編でよろしければ、頑張ってみます(笑)。
201 名前:すてっぷ 投稿日:2001年11月19日(月)23時54分23秒
>194 名無し読者さん
あれの頭を犬にしたもの=ヤスダ犬ということで(笑)。
ヤスダ画伯の絵って、なぜか必ず手足が棒ですよね。

>195 名無し読者さん
お気遣いいただき、ありがとうございます。番外編的な短編が書けたらいいなと思っております…。

>196 名無し梨華さん
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
今回ある意味、メンバー一丸となってましたもんね。バカな方向に(笑)
期待していただいても、多分くだらない話しか出てこないと思いますが(笑)…また、よろしくお願いします。

>197 名無し読者さん
あのコントは、妄想が広がりますよね(笑)。
それだけ、ヤスダ画伯が偉大だということでしょうか…(笑)。

>198 192さん
どうかお気になさらず…。少し前の作品ですが、気にかけていただき光栄です。
確かにあの話は、続きが気になるような終わり方でしたので…その後の話を書いてみたくはありますね。
上にも書きましたが、番外編的な短編を書かせていただけたらと思います。
202 名前:すてっぷ 投稿日:2001年11月23日(金)22時45分39秒

この話は以前書かせて頂いた『もうすぐ逢えるはずの、キミ達へ。』
という作品の、続編として作りました。
設定等、お暇な方はこちらをお読みいただけると大変ありがたいです…。

http://mseek.obi.ne.jp/kako/green/983622686.html
203 名前:ふたりのクリスマス。 投稿日:2001年11月23日(金)22時47分26秒
肌寒い朝。澄んだ空気。カーテンの隙間から差し込む朝日。
ベッドの中、目が覚めて寝返りを打つと…愛しいヒトの寝顔、のはずが。

「ちょーちょーちょー、イイカンジ!ちょーちょーちょーちょー、イイカンジぃっっ!!」
ベッドの中、目が覚めて寝返りを打つと…愛しいヒトのバカでかい声。

「ウォウウォ、ウォウウォ!ウォウウォ!フゥ!フゥ!」
「…なにしてんの?」
あたしは、隣のベッドに立ち上がって踊り狂っている愛しい運命のヒトに冷ややかな視線を送る。
「あっ!?起こしちゃいました!?」
あんなバカでっかい声で騒いどいて…起きない方がおかしいだろー。
不機嫌そうなあたしの声に気付いた彼女はダンスを中断し、慌ててベッドから飛び降りた。


「よっすぃーさぁ、朝からテンション高すぎだよ」
「だって気持ちイイじゃないですかぁ、冬の朝って。今日ライブあるし、ちゃんと振り入れとこうかなって思って」
「へぇー、それはそれは。エライエライ」
「矢口さん…なんか、怒ってます?」
よっすぃーはしゃがみ込んで、ベッドの上で上半身だけ起こしているあたしの顔を下から覗き込んでくる。
204 名前:ふたりのクリスマス。 投稿日:2001年11月23日(金)22時48分40秒
「べつに。朝っぱらから元気だなって思っただけ」
「なんか、体力有り余っちゃってて。すぐ動きたくなっちゃうんですよねー」
そう言って立ち上がると、よっすぃーは腰を左右に捻ってストレッチを始めた。

「だったら、そのへん走ってくれば?」
「あっ、そうしよう!矢口さんは?」
「…行くワケないっしょ」
隣のベッドの枕元にぽつんと置かれた、よっすぃー持参の目覚し時計に目をやる。
朝食の時間までは、まだ2時間近くもあった。

(『こうやっとけば、余裕持って起きられるじゃないですかぁ』)
昨日の夜、得意げに言いながら時計の針を10分進めていたよっすぃー。
朝ゴハンの2時間前よりもさらに10分の余裕を持って元気良く起床、隣のベッドに眠るあたしを
叩き起こすほどのボリュームで新曲を熱唱(振り付き)…恐るべし、早起き魔人。

よっすぃーといっしょに目覚める、何度目かの朝。
正確には『いっしょに』じゃなくて…決まって彼女の方が先に起きてて、後からあたしのコト起こして
くれるってのがいつものパターンなんだけど。
彼女の、異常なまでの寝起きの良さ。真冬の澄んだ空気のせいだろうか。
205 名前:ふたりのクリスマス。 投稿日:2001年11月23日(金)22時50分04秒
あの時のよっすぃーは、あきれるぐらい寝起き悪かったっけ…。
てきぱきとした動作でパジャマからジャージに着替えるよっすぃーの後ろ姿を見ながら、
あたしは…一年前に出会った『未来の』よっすぃーと、初めて迎えた朝のコトを思い返していた。

あの時は、前の晩がアレだったし…そりゃーもー、人には言えないくらい超超超超すっごいカンジだったし。
翌朝よっすぃーがなかなか起きれなかったのも、まぁ頷けるのだけど。
二人いっしょの夜を何度か重ねていても、ステキなあの夜のような出来事を一度も経験していない
今のあたしたちなら…翌朝のよっすぃーがそりゃーまー寝起きがよろしすぎるのも、まぁ頷けるか。ははっ…。

「じゃ、ちょっといってきます」
着替え終えたよっすぃーこと、吉澤 ”体力有り余っちゃってて” ひとみは、あたしを残して
部屋を出て行ってしまった。
あたしは勢い良く開け放たれたドアがゆっくりと閉まっていくのを見届ると、再びベッドに潜り込む。

ねぇ、よっすぃー。
隣同士で別々に目覚めたいんじゃない。
目が覚めたらひとつのベッドで、隣に眠ってるよっすぃーの寝顔が見たいんだよ…矢口は。
206 名前:ふたりのクリスマス。 投稿日:2001年11月23日(金)22時51分29秒
勘違っちゃって暴走しっぱなしだったあたしと、あたしの態度に戸惑いながらもずっとあたしのコトを
想い続けてくれていたよっすぃー。
そんな二人のわだかまりが解けたあの夜から二ヶ月、あたしたちの関係は…ツアー中、お互いが
一人部屋のときはよっすぃーが目覚し時計片手にあたしの部屋に泊まりに来てくれるまでになっていた。

と言うと聞こえは良い(?)が、二人の関係はあくまでよっすぃーがあたしの部屋に『泊まり』に
来るだけでその先に何があるワケでもナニがあるワケでもなく、ただ隣のベッドで眠って朝が来たら
帰っていく…という、何とも不思議なカンケイ。
これまで何度、よっすぃーのベッドに潜り込もうと思ったことか…それでも。
同じ失敗を繰り返してはいけない、よっすぃーをひかせるような行動だけは避けよう、
その決意だけがあたしのセクハラ行為にブレーキをかけていた。
だけど、そろそろよっすぃーの自主性にまかせるのも、限界かも知れない。
207 名前:ふたりのクリスマス。 投稿日:2001年11月23日(金)22時53分28秒
同じ部屋で夜遅くまでいろんな話したり、そーゆーのもすっごく楽しいけど…やっぱりなんか、
違う気がして。
それ以前に彼女はあたしのコト、どう思ってるのかな…なんて、信じていたはずのよっすぃーの
あたしへ対する気持ちまで疑いたくなってくる。

よっすぃーの顔が好き。声が好き。背の高いトコも好き。ぜんぶ好き。
そして彼女のコト少しずつ知っていくたびに、『好き』なトコもどんどんふえてってる。
よっすぃーの優しいトコ。明るいトコ。元気なトコ。そして、のんびり屋さんな性格。
数え上げたらきりが無いくらい彼女の全てに夢中になっているあたしと、一体なにを考えているのか
今ひとつ掴み所の無いよっすぃーとの温度差は、彼女のコトを知れば知るほど開いていくような気がしていた。

もしかしてよっすぃーにとって、あたしは単なる『教育係』でしかないのかなぁ…。
そんな不安を抱えながら、ズルズルとここまでやってきてしまった。


ねぇ、よっすぃー。
こんなカンジで特別な一日が終わってくなんて、そーゆーのってすごく嫌だよ。

12月24日。
今日は…二人で過ごす、はじめてのクリスマスなのに。
208 名前:ふたりのクリスマス。 投稿日:2001年11月23日(金)22時54分49秒

―――

「ねぇ、よっすぃー。やっぱ起きんの早すぎじゃない?」
あたしはさっきから目覚し時計を持ったままベッドに寝転んでなにやら落ち着かない様子の
よっすぃーに、同じく隣のベッドでゴロゴロしながら話しかける。
夕食も終えて、時刻は夜10時を回っていた。

「ん?ああ、そうですねぇー…ののはアロエヨーグルトが主食だから。あたしと違って」
「あ?何のハナシよ?」
「ん?ああ、吉澤はぁ…ベーグルですよ?」
こんな調子でさっきからよっすぃーは、あたしが話しかけてもまるで上の空。
ときどき時計を見たり、あたしの話に適当に相槌打ったりしながら、ベッドの上でゴロゴロ寝返りを打ってる。

「ねぇ…もしかしてさ、矢口と話しててもあんま面白くない?」
「ん?何か言いました?」
あたしに背中を向けて寝転んでいたよっすぃーが、顔だけこちらへ振り返って言う。

「…もういいよ」
いつにも増してぼんやりしているよっすぃーに少々苛立ちを感じたあたしは彼女と会話するのを諦め、
ベッドからおりると窓際へ歩み寄る。
暖房で温まった部屋の中でも窓の傍へ近付くと少し、ひんやりとした。
209 名前:ふたりのクリスマス。 投稿日:2001年11月23日(金)22時56分56秒
「あっ!見て、よっすぃー!雪降ってる!!」
あたしは思わず、後ろのよっすぃーに向かって叫ぶ。
カーテンを開けると、たぶんまだ降り始めたばかりの雪が部屋の明りに照らされてきらきらと舞っていた。
「うそっ!?」
窓に背を向けて寝転んでいたよっすぃーも、慌ててベッドからおりるとあたしの方へ駆け寄ってきた。

「すごいよね!ホワイトクリスマスじゃん」
「明日まで降っててくれるといいなぁ…」
あたしは少しだけ顔を上げて、隣で微笑むよっすぃーの笑顔をこっそり盗み見る。
ぜんぜんクリスマスらしくないあたしたちのクリスマスに、神様がくれたプレゼントだと思った。

「矢口さんは、来年のクリスマスってなにしてると思います?」
つい、よっすぃーの顔に見惚れてしまっていたあたしは、突然こっちを向いた彼女から慌てて目を逸らす。
「来年?なにしてるかなー、やっぱ仕」
「吉澤はぁ…」
人のハナシ最後まで聞けよ…。
自分から質問したくせによっすぃーは、あたしの答えを待たずに勝手に喋り始めてしまった。

「矢口さんと、すごしてるって思います」
不覚にもちょっとだけ、ジンときてしまった。
210 名前:ふたりのクリスマス。 投稿日:2001年11月23日(金)22時59分28秒
「仕事で」
「あ?」
なんだそりゃ、単なる予言かよ…少しでも感動したあたしがバカだった。
イブの夜。二人きりの部屋。窓の外には白い雪。
これ以上ないくらいロマンチックな状況で全てをブチ壊すようなセリフを堂々と吐ける彼女の無神経さに、
惚れた弱みとはいえさすがのあたしもそろそろキレてもいいんじゃないだろうか…そう思い始めていた。

「そんなのわかんないじゃん。よっすぃーがプッチの仕事してるかも知んないし、
矢口がタンポポの仕事してたらどーすんの?」
「ああ…そっか」
意地悪なあたしの切り返しに、よっすぃーは少しがっかりした様子で俯いた。

「あっ!じゃあ、矢口さんがプッチに入ればいいじゃないですかぁ」
「はあ?」
なにワケのわかんないコトを…冗談だろうと思いつつ彼女の顔を見上げると、その表情は真剣そのもの。

「で、代わりにごっちんがタンポポ入るの」
「いや…なに言ってんの?」
「そっか。ミニモニもあるんですよね、矢口さん」
そう言うと、よっすぃーは腕組みして何やら考え始めた。
ああ、もぅ…何が始まるのかしら、ちょーちょーちょーちょー楽しみ楽しみ。はははははは。
211 名前:ふたりのクリスマス。 投稿日:2001年11月23日(金)23時01分43秒
「そっか。矢口さんと保田さんを、とっかえっこする」
「プッチ二人になっちゃうよ?」
「えっ、三人ですよぉ。ごっちんと矢口さんを換えて、保田さんと矢口さんを換えたから」
「しっかりしてよー、矢口は一人しかいないんだよ?」
「え?………あっ!」
神様……。

「じゃあ、保田さんがプッチとミニモニ。かけもちでやればいいんだ。ねっ?」
嫌なミニモニ。だなー…。
「よっすぃー。お楽しみのところ申し訳ないんだけどさ、そんなのできるワケないんだから
いい加減バカなコト言うのやめてよ」
あたし、なんか酷いコト言ってるかも…言いながら少し胸が痛んだけど、あたしのガマンにも限界ってモノがある。

「わかんないですよ?つんくさん、こういうの好きそうだし…言ってみる価値はあると思うんだけどなぁ」
「絶対ないって」
「だって、同じ仕事してればずっといっしょにいられるし」
そう言ってくれるのはうれしいけど、矢口が大切にしたいのは来年のクリスマスじゃなくてさ。

こうしてる間にも、時間はどんどん流れていって。
もうすぐ終わっちゃうよ…あたしたちの、クリスマス。
212 名前:ふたりのクリスマス。 投稿日:2001年11月23日(金)23時03分33秒

―――

「ねぇ、よっすぃー…タンポポがカオリ一人になっちゃってるけど、いいの?」
「あれっ?今プッチ何人だっけ」
「カオ以外みんなプッチ入った。そのうち四人はミニモニと掛け持ちだけど、全員150cm超えてる」
「あれぇ?おっかしーなぁ」
あれから一時間とちょっと、二人して窓際に突っ立ったまま…あたしはどんどん膨らんでゆく
よっすぃーの、夢のユニットシャッフル計画に付き合わされていた。

「ちゃんと紙に書きながらやんないと、わかんなくなるよ?」
隣で両手の指を折って真剣に何かを数えている『運命の人』を見ながら、ふと言い知れぬ空しさに襲われる。
聖なる夜に…なにやってんだろ、ウチら。


「あーっっ!!」
「なに!?」
突然大きな声で叫んだかと思うと、よっすぃーはくるりと後ろへ振り返ってベッドの方へ走り寄る。
そして枕元に転がっていた目覚し時計を手にとると小さく頷いて、それを再び元の場所へ戻した。
枕元によっすぃーが置いたそれにふと目をやると、時計の針はちょうど12時をさしていた。
本当に終わっちゃったんだ…ふたりのクリスマス。
213 名前:ふたりのクリスマス。 投稿日:2001年11月23日(金)23時06分24秒
「矢口さん」
「っ!?」
こっちへ戻ってきたよっすぃーに突然両肩を掴まれて、あたしは思わず身を固くした。
そして恐る恐る見上げると、彼女の潤んだ瞳は真っ直ぐにあたしだけを捉えていた。

コレはひょっとしてもしかしていや、もしかしなくても、きっと。いや、ぜったい。間違いない。ついに!!
それにしても、どうして突然?なんか何の脈絡もないんだけど…まいっか。せっかくだしねっ!!
あたしは彼女の呼びかけに応える代わりに唇を結ぶと、ゆっくりと目を閉じた。


「メリークリスマス」
耳元で、とてもやさしい声が聞こえて…そしてあたしの唇は、とてもやさしい感覚に包まれた。

「12時になったら、しようって決めてたから」
唇が離れると、照れたように視線を逸らして言った。
彼女の後ろに見えている目覚し時計は、12時2分くらいのあたりをさしてる。

「あのさ、よっすぃーのクリスマスって…25日なの?」
胸のドキドキが少しだけ落ち着いたところであたしは、目の前に立つよっすぃーに疑問をぶつける。
質問された当のご本人は、きょとんとした顔で再びあたしの方へ向き直った。
214 名前:ふたりのクリスマス。 投稿日:2001年11月23日(金)23時08分14秒
「クリスマスは25日じゃないですか。全国どこでも」
「全国ってゆーか、世界中どこでもそうなんだけどね」
好きな人同士の『クリスマス』って言ったら普通は、イブのコトを言うんでないかい?
そのへんをツッコもうとしてあたしは、ある重要なコトに気が付いてしまった。

(『こうやっとけば、余裕持って起きられるじゃないですかぁ』)
もしかしてこの人…自分で時計10分進めてたコト、忘れてる?
「早く気付いてよかったぁ。ちょっとだけ遅れちゃったけど、マジ焦った」
よっすぃー、とりあえず言わないでおいてあげるけど…キミのクリスマスは、あと5分くらい先だよ?
そのおかげで矢口はクリスマスに最高のプレゼントもらえちゃったワケだから、全然オッケーなんだけど。

「あのぉ…矢口さん」
「ん?」
よっすぃーはなにやら手をもじもじさせて、上目遣いであたしのコトを見ている。
上目遣いで上から見下ろされるってのも、何か変なカンジだけど…それでも、よっすぃーはやっぱりカワイイのであった。
215 名前:ふたりのクリスマス。 投稿日:2001年11月23日(金)23時10分17秒
「続き…しても、いい?」
「えっっ!?」
つっ、つつつつつ、つづきぃぃぃーーーーっ!?
一瞬、アタマの中が真っ白になった。
そして白紙に戻った脳は、恐るべき速さでそのページを埋めてゆく。

アレの続きってコトは、やっぱし…アレよね?そーゆーコトだよね!!ねっ?ねっ?
って誰に聞いてんだ、あたしは。いや誰に聞くまでもなく、コレはそーゆーコトだ!!
裕ちゃん、聞いて!!今なにしてる?隣の部屋でみっちゃんと寂しく飲んでる?
みっちゃんがゲストで来てて良かったね!!
ヤグチはねー、これからねー、『続き』をしますっ!!!ジャマすんなよ!!そんじゃ!!


「…うん。しよっか」
あたしは今にも顔がニヤケそうになるのを必死で堪えつつ、俯き加減で呟いた。

「ちょっと待っててくださいね」
「えっ」
ニヤつくあたしを置き去りに、よっすぃーは床に座り込んで自分のバッグをガサゴソと漁り始めた。
「あれぇ?確かココに…ああ、あったあった。やっぱ書いとかないと、わかんなくなる」
そしてバッグの中から登場したモノは、ノートとシャーペンだった。
裕ちゃん…今から、そっち行ってもいいかな?
216 名前:ふたりのクリスマス。 投稿日:2001年11月23日(金)23時12分16秒
「やっぱミニモニ、一人足んないや…」
「そんなのさー、来年考えればいいじゃん。今を大切にしたいのね、矢口としては」
ムダなコトとは知りつつも、ベッドに寝転んでシャッフル作業を再開したよっすぃーに提案する。

「そういう考え方って…良くないって思います。吉澤はぁ、今より矢口さんとの未来の方が大切だし。
あはっ、ちょっとキザでした?」
「それはキザじゃなくて、バカってゆーんだよ」
「うわっ、ひっどーい!!」
シャーペン走らせる手を止めてムクれるよっすぃーを無視して、窓の外へ目を向ける。


「そうだ!矢口さんの妹って、150cm以下ですか?」
「ねぇ、よっすぃー。もうどーでもいいかも知んないけどさー…雪、止みそうだよ?」
通り雨みたいなモノだったのだろうか…降り始めてから数時間でもう止みかけている雪を見ながら、
ベッドに寝転んですっかりプロデューサー気取りの問題児に話しかけてみる。

「ええーっ!?マジで!?」
予想以上のオーバーリアクションをとってくれた彼女は、ベッドを飛び降りると窓の傍まで駆け寄ってくる。
そして両手を合わせて目を閉じると、何やら神に祈りを捧げ始めた。
217 名前:ふたりのクリスマス。 投稿日:2001年11月23日(金)23時14分48秒
「来年も、矢口さんといっしょにすごせますように」
「………」
来年、来年、ってコイツはそれしか言えないのかよ…。
あきれつつもあたしは、胸の奥がだんだんあったかくなってゆくのを感じていた。

来年もいっしょにすごせますように。
よっすぃーはきっと、本当に心からそう思ってくれてるんだよね?
彼女の言葉はたぶん、イコール、心。
あたしみたく言葉の裏にホントの気持ち隠したり、ウソついて相手の気持ち探ってみたり、
そーゆー駆け引きみたいなコトができない人なんだろうなぁ…って、思うコトにするね。

来年もいっしょに。
今よりあたしたちの未来の方が大切。
かなりずれてるけどよっすぃーが言ってくれたコト、ホントはすごく大切なコトのような気がした。


「じゃあ…再来年も、よっすぃーといっしょにすごせますように」
あたしもよっすぃーの隣に並んで、両手を合わせる。
「あはっ、再来年?」
目を開けると、あたしを見てうれしそうに笑った。
218 名前:ふたりのクリスマス。 投稿日:2001年11月23日(金)23時19分20秒
「なにー?なんで笑ってんの?」
「ううん。なんかわかんないけど…再来年かぁ。なんか、すっごい先みたいな気がするから」
「そんなコトないよ。すぐ来ちゃうよ、再来年なんか」
一向に進展しない二人の関係に苛立っていた自分が、なんだかバカみたく思えてきた。
進んでない、ってゆーのは単なるあたしの思い込みだったんだ。

「そっかぁー、すぐ来ちゃうかぁ」
だって、あの頃よりよっすぃーは…あたしの前で、こんなにも自然に笑ってくれるようになったんだもんね。

「来年もし、吉澤がプッチやってて矢口さんがタンポポやってても…仕事終わってから会えばいいんですよね?」
「そうだよ。やっとわかったの?」
「うん。わかった」
二人ならんで、雪を降らせるのを止めてしまった空を見上げる。
するとさっきまでずっと雲に隠れていた、まんまるの月が顔を出していた。

あたしは目を閉じて、心の中で手を合わせる。
ウサギさんでもいいし、神様でもどっちでもいいから…矢口のお願い、聞いてください。

来年も再来年も、ずっとずっと…よっすぃーと、いっしょにいられますように。



<Merry X’mas>
 
219 名前:すてっぷ 投稿日:2001年11月23日(金)23時21分04秒

前作の流れを壊さないようにと気を使ったつもりですが、
もし違和感がありましたら…クリスマスということで(?)、
大目に見ていただけると大変うれしいです(笑)。

お付き合いいただき、どうもありがとうございました!!
220 名前:192 投稿日:2001年11月23日(金)23時30分41秒
ああっ!!更新が!!
自分の無茶なお願い聞き入れていただいてほんとありがとうございました!!
相変わらずの天然吉澤と振り回される矢口、最高によかったです。
ちょっとリアルタイムだったし(w
今年はいいクリスマスがすごせそうな気がします。
本当にありがとうございました。
221 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月23日(金)23時33分33秒
あの話の番外編ですか。
毒舌な二人もいいけど、こうしてまったりする二人も良いですよね。
このコンビの話、個人的にはすごく好きです。
222 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月23日(金)23時42分30秒
ばか吉にあきれつつ付き合っちゃう矢口…。
可愛いです。
……でも、バカすぎ…。
223 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月24日(土)02時39分04秒
『もうすぐ逢えるはずの、キミ達へ。』がきっかけで
色々な方の作品を読みはじめた私としては
今回の作品は感涙ものでした。
やっぱりすてっぷさんが最高です(w

224 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月25日(日)03時42分07秒
やっぱりこの2人は最高です!
225 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月25日(日)08時03分35秒
前作よりもよすぃの天然おバカぷりに磨きが…
実際の吉澤のアフォっぷりにすてっぷさんトコのよすぃもだいぶ影響が…(w
でもそんなよっすぃーをちゃんと受け止めてくれる矢口さんが居て。
なんかホッとしますね。ほのぼのでいーです。
こういう続編またあったらお願いしたいなぁ…
226 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月25日(日)08時34分35秒
この阿呆っぷりがまさに吉澤って感じですね。
ここのよしやぐほんと好きです。
俺もまたこういう続編あれば読んでみたいなぁ…(希望
227 名前:70 投稿日:2001年11月25日(日)11時27分28秒
よっすぃー、「あの夜」のように教育されるどころか、更に「アホ」になってしまったみたいで(笑)
でも、考え方がいくらアホでも、全て矢口さんのことを思っているよっすぃーが可愛いです。
・・その隣では、裕ちゃんとみっちゃんが二人で寂しく飲んでるわけですね(笑)
228 名前:すてっぷ 投稿日:2001年11月25日(日)21時00分49秒
感想、ありがとうございます!!

>220 192さん
宣言通り(?)、やっぱり短編になりました。
吉澤がちょっと天然すぎな感じになってしまって、前作と比べて違和感がないか
心配だったのですが…とりあえず気に入っていただけたようで良かったです(笑)
こちらこそ、こういう機会を与えていただき、楽しんで書かせてもらいました。
ありがとうございました!!

>221 名無し読者さん
今回は毒舌もオチもなく、最後までまったりしてましたね。
いつか、思いっきり毒を吐き合う二人を書いてみたいと思ったりしてます(笑)

>222 名無し読者さん
バカすぎ…確かに。
前作に比べ、かなりバカ度がアップしてしまいました。(笑)

>223 名無し読者さん
そんな風に言っていただいて…こちらこそ大感激ですよー。ありがとうございます!
バカな話ばかり書いてるので、223さんの目が毒されていないか心配です(笑)

>224 名無し読者さん
ありがとうございます!書いた甲斐がありました…。
229 名前:すてっぷ 投稿日:2001年11月25日(日)21時03分52秒
>225 名無し読者さん
バカっぷりに磨きが…バレましたか(笑)
前作の時は、彼女が天然であることには薄々気付いていたのですが…
まさかここまでとは思ってなかったので、今回の話は今の姿にかなり影響されてますね。
今回の続編は、吉澤の成長した姿ということで(笑)。

>226 名無し読者さん
それにしても、ちょっとアホすぎましたかね?(笑)
続編ですか…これ以上続けると、もはや別の話になっていきそうなのでやめておこうかと(笑)
でも、そう思っていただけるのは本当にうれしいです。ありがとうございます!

>227 70さん
そんな…アホ、アホって何回も(笑)
矢口さんに対するひたむきさを出したかったんですが…かなりアホになってましたね。
裕ちゃんとみっちゃん。小ネタに注目していただき、光栄です(笑)
230 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月02日(日)06時56分36秒

<ROUND−1> FIGHT!!


「やった!また梨華ちゃんの負けー!!」
「もーっ!さっきからよっすぃーばっかり!!ぜったい何かズルしてるでしょ!?」
梨華ちゃんが怒りにまかせて乱暴に放り投げたコントローラーが、床に当たって硬い音を立てる。

「ズルって…やりようがないじゃん。梨華ちゃんがヨワすぎんだよ」
「もーっ!」
「わかった!梨華ちゃんが弱いんじゃなくて、あたしが強すぎるんだよね。
うん、そーゆーコトにしといてあ・げ・る」
「もぉーーっ!!」
拳を握り締めて悔しがる梨華ちゃん。
ああ、なんて気持ちイイんだぁー……すっごくいいストレス解消になったなぁ。うん。


「よっすぃーもちょっとは手加減してやんなよ…っていうかよく覚えられるね、こんなの。
技1コ出すだけで指つりそーだわ」
ベッドに寝転んでくつろいでいる保田さんはヒマなのか、さっきからゲームの説明書を
読みながら独り言を繰り返している。

「手加減なんかされて勝ったって、うれしくないですっ!!」
保田さんの何気ない一言が、梨華ちゃんの怒りをさらに煽ってしまった。
231 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月02日(日)06時58分18秒
コンサートツアーの宿泊先であるホテルの一室。
夕食を済ませたあたしたちは、各自自分の部屋に戻ってくつろいでいたんだけど…
結局みんなヒマを持て余して誰かの部屋に身を寄せるっていつものパターン。
あたしの部屋にはいつものように梨華ちゃんと、こちらはめずらしく保田さんが遊びに来ていた。

『アタシは見てるだけでいい』という保田さんのお言葉に甘えて備え付けゲーム機の数種類のソフトから
格闘ゲームをチョイス、激ヨワなくせに負けず嫌いの梨華ちゃんをてきとーにカモるコト2時間。
弟たち相手に鍛え上げられた技を遺憾なく発揮するご近所イチの格闘家よっすぃーに対して
やる気だけは宇宙イチの梨華ちゃんは未だ、一勝もあげられずにいた。


「ずるいよ、よっすぃー!だってそのおじいちゃん、強すぎるんだもん!!」
ベッドに腰掛けていた梨華ちゃんは立ち上がると、あろうことかあたしのキャラ選択にまで
クレームをつけ始めた。
「はあっ!?何だよそれ!キャラ換えて欲しいんだったら、そう言えばいいじゃん!!」
梨華ちゃんに続き、あたしも立ち上がって猛抗議。
目の前に立つ彼女を上から睨み付ける。
232 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月02日(日)06時59分31秒
「だってよっすぃー、すぐボタン押しちゃうんだもん!言うヒマなんかないよっ!!」
「なにそれ…バカじゃないの?」
自分だってチャイナドレスの女の子ばっか使ってたくせに…別におじいちゃんに
こだわらなくても、他のキャラでやってみればよかったのに。

「でも石川、ずっと同じのばっかり選んでなかった?」
「そうだけど、でも!このコはこのコで良いんです、身軽だし!
だけどよっすぃーのおじいちゃんは身軽なのに強いの!!強すぎるの!!」
「なんだよ、それー」
べつに、『あたしの』おじいちゃんじゃないんだけど…。

「あー、確かに石川のは身軽だけど攻撃力低いもんね」
「でしょ!?そうですよね!ほら!!」
保田さんに同意を得たコトで勢いづいた梨華ちゃんは、鼻息も荒くあたしに迫ってくる。

「だからー、そんなの言わなきゃわかんないでしょ?言ってくれれば換えてあげたのにさ」
「言わなくたって普通は換えてくれるよ!よっすぃー、やさしくない!!」
「なにそれ!?ワケわかんないよ!!」
梨華ちゃんの勝手な言い分に、自然と語気も荒くなる。
233 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月02日(日)07時00分41秒
「……もういい」
あたしから視線を逸らして呟いた梨華ちゃんの横顔は氷のように冷たくて、背筋が凍りついた。びっくりした。
「あっ、ちょっと!」
そして彼女はスタスタとあたしの前を横切ると、そのまま部屋を出て行ってしまった。
乱暴に開け放たれたドアがゆっくりと戻ってくる様子を、あたしと保田さんはただ呆然と眺めていた。

「アンタたちさー、くだんないことでケンカしてんじゃないよ」
「なんで!?だって悪いの梨華ちゃんじゃないですかー!」
「まぁ、確かに言ってることムチャクチャだったけど…よっぽど悔しかったんじゃないの?あの子、負けず嫌いだし」
保田さんはまるで他人事のように(他人事だけど)素っ気無い口調でそう言うと、ベッドに寝転んだまま
再びゲームの説明書を読み始めた。
「だって…」
でも、やっぱ調子に乗りすぎたかなぁ…弱すぎる梨華ちゃんをからかったコト、ちょっとだけ反省したりして。

「なに、コレ……いや、まさかね」
静かな部屋で、説明書を読みふけっていた保田さんがぽつりと呟く。
「どうしたんですか?」
独り言のようだったが、その意味深な口調が妙に気にかかった。
234 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月02日(日)07時02分19秒
「ううん、何でもない。さてと、アタシもそろそろ戻るわ」
「えーっ、もう帰っちゃうんですかぁ?」
「明日早いしね。じゃ、おやすみ」
梨華ちゃんも保田さんも出て行ってしまって、広い部屋にはあたし一人だけ。

ベッドに腰掛けて、ふと梨華ちゃんが投げ出したコントローラーに目を遣る。
やっぱり、ちょっとやりすぎたかなぁ…梨華ちゃん、すっごいくやしそうだったし。
一人になって考えれば考えるほど、彼女をからかったコトへの罪悪感が重くのしかかってくる。


『今度は、梨華ちゃんがおじいちゃん使っていいよ』
勇気を出して、隣の部屋にいるはずの梨華ちゃんへ送信する。

「あっ、来た来た」
それから数分後、あたしの元へ梨華ちゃんからのメールが届いた。
それにしても、そっこーで返してきたなぁ…やっぱり向こうも、仲直りのきっかけを探してたんだねっ!

『もう、よっすぃーとは遊ばない』
梨華ちゃん………。


小学生じゃ、ないんだからさ…。
235 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月02日(日)07時03分29秒

―――

「あ、おはよーございまーす」
「ああ、オハヨ」
翌朝、ドアを開けると向かいの部屋から出てきた保田さんとバッタリ。

「どうなったの?あれから。石川と仲直りした?」
「ああ…。えっとぉ…」
あまり心配している風でもない口調の保田さんに、あたしは歯切れの悪い返事。
大人気ない梨華ちゃんの態度(『もう、よっすぃーとは遊ばない』)に仲直りする気力もすっかり
失せてしまったあたしは、あれから彼女への返事を返すコトなくすぐに寝てしまったのだった。


「あっ!よっすぃー…」
ドアの前でまごついていると、間の悪いコトに隣の部屋から問題のケンカ相手が登場してしまった。
「梨華ちゃん…あの、おはよう」
まだ怒っているのか梨華ちゃんはあたしのあいさつには応えず、その場に突っ立ったまま下を向いてしまった。

あたしは気まずくなって、すがるような目で保田さんに救いを求める。
すると保田さんは親ライオンのような厳しい視線を送り返してきた後、素早く首を横に振って『GO!』のサイン。
えーっ、『謝れ』ってコトですか?あたしがー?
236 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月02日(日)07時05分06秒
「あのさ、梨華ちゃん。昨日は……ゴメン、ね?」
なんとなく納得はいかなかったが、あたしは保田さんの指示通り梨華ちゃんに謝罪。
すると下を向いていた梨華ちゃんはしばらく考え込んだ後、ゆっくりと顔を上げた。

「よっす……うっっ!?うううっ!!」
「梨華ちゃん!?」
「石川っ!?」
梨華ちゃんは顔を上げた途端、突然左胸を押さえてうずくまってしまった!!どうしたってんだ、一体!?

「ちょっ…どうしたの!?梨華ちゃん!!だいじょうぶ!?」
あたしはしゃがみ込んで、胸を押さえながら苦しんでいる梨華ちゃんに声をかける。
「石川!?どこが痛いの!?ねぇ!!」
同じく保田さんも梨華ちゃんの傍にしゃがみ込んで、彼女の背中をさすっている。

「…っ、わかっ、わかんない…なんか、胸が、いたっ、痛いの…っ」
その言葉通り梨華ちゃんの右手は、さっきからずっと左胸を押さえたまま。
「どうしよう…梨華ちゃん!ねぇ梨華ちゃん!」
肩に手を置いて彼女の顔を覗き込むと、その表情は苦痛に歪んでいる。
こんな時に、かなりフキンシンだと思うんだけど…ちょっとだけ、『カワイイなぁ…』って思ってしまった。
237 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月02日(日)07時06分44秒
「はうっ!?うおあああっっ!!」
うがあああああーーーーーっっ!!なっ、なんだこりゃあああああーーーー!?
突然左胸に激痛を感じて、あたしは梨華ちゃんの隣で激しく転がった。

「よっすぃー!?アンタまで、どうしたのよ!?どういうこと!?ねぇ!!どういうことよ!!」
知りませんよ!痛いんですよ、こっちは!!
あまりの痛さに声も出ないあたしは、保田さんの質問に心の中で回答。
梨華ちゃんに続いてあたしまで突然苦しみだしたことに混乱しているのか保田さんは、
廊下でのた打ち回るあたしに対して少々キレ気味の様子。

「よっすぃー…だい、じょうぶ?」
「…うん。あたしも、何か急に胸が」
廊下に転がるあたしの頭上から聞こえたか細い声に答えて起き上がった瞬間、痛みにカラダが凍りつく。

「「…っ!!」」
あたしも、何か急に胸が痛くなって。最後まで言い終える前に、あたしは俯いて左胸を押さえていた。
そしてそれは、目の前にいる梨華ちゃんも同じ。
あたしたちは互いに目が合った瞬間、同時に同じ痛みを感じていた。
238 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月02日(日)07時08分04秒
「ねぇ、病院行く?二人とも」
「はい……あれっ?痛くない」
あたしたちの傍で仁王立ちしている保田さんを見上げると、不思議なコトにさっきまでの激痛が
ウソのように消えてしまった。
「私も、大丈夫みたい」
隣で同じく保田さんの顔を見上げながら、梨華ちゃんが言った。

「梨華ちゃんも?」
「うん。……うっ!!」
「えっ?ああっ!?痛ってー!!」
まただ、また…梨華ちゃんと目が合った瞬間、あの痛みがあたしの胸に襲い掛かってきた。

「やっぱ、病院行こっか」
「なんだろう…保田さんの顔見ると、すっごい落ち着く」
「私も」
お医者さんより保田さん。そんな気がした。


「おーい、なにやってんの?コントの練習?」
「おっはよー」
廊下の角を曲がって、矢口さんと安倍さんが揃ってやってきた。

「んなワケないでしょーが。なんでコントなのよ」
「んじゃ、お説教とか?」
廊下に座り込む後輩二人を前に、腕組みして仁王立ちする保田さん。
矢口さんの言う通りこの状況は、あたしたちが保田さんにお説教されてるように見えても仕方がないだろう。
239 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月02日(日)07時09分25秒
「やぐ…うっ!」
こちらへ近付いてきた矢口さんの顔を見るなり、またもやあたしの左胸が疼く。
しかしそれはさっきまでの激しい痛みとは違って、軽めのモノ。ジャブってカンジ?

「痛いの!?」
「ちょっとだけ」
あたしは頭上から心配してくれる保田さんの顔を見上げて、痛みを和らげる。

「よっすぃー、なっちはどう?」
「あっ」
保田さんに促されて、矢口さんの隣に立つ安倍さんの顔を見上げると…あたしの左胸が、ぴくりと反応した。
「痛い?」
「チク、ってカンジ」
梨華ちゃん>矢口さん>安倍さん … >(痛くないので圏外)保田さん。
目が合った瞬間に感じる痛みの度合いを図式で表すならば、こんなカンジ。


「アタシにだけ反応なし、か…。何だかよくわかんないけど、おもしろくないわね。直感的に」
腕組みした保田さんに上からギロリと睨みつけられても…あたしの左胸は、ぴくりとも反応しなかった。
240 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月02日(日)07時12分11秒
「あのぉ…私、全然痛くならないんですけど」
「石川は、よっすぃーにだけ反応、か…。何なのよ、一体………ん?ちょっと待って、まさかっ!!」
あたしたち二人を襲った原因不明の病について何か思い当たるコトがあったのか、保田さんは
突然後ろへ振り返ると自分の部屋のカギを開け中へ入っていった。

「みんなも入って」
一旦閉まりかけたドアが再び開いて中から現れた保田さんが、呆気にとられるあたしたちに手招きする。
あたしは梨華ちゃんと目を合わせないように下を向いたまま立ち上がると、安倍さん、矢口さんの後ろに
続いて部屋の中へ入る。

「きゃっ!」
「梨華ちゃん!?」
「見ないで!!」
すぐ後ろから聞こえた小さな悲鳴に思わず振り返りそうになったあたしは、悲鳴を上げた張本人に
厳しく制されてその場に固まった。

「大丈夫、ちょっと転んだだけだから」
「…そっか」
また、何も無いところでつまづいたんだろうか…相変わらずだなぁ。
でも、そーゆートコは、嫌いじゃない。
241 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月02日(日)07時13分51秒
「うっっ!!」
「よっすぃー?」
「また…もーっ、なにコレ!!」
痛みは、やり場のない怒りに変わる。

しかも今のは目が合うどころか、あたしは梨華ちゃんの横顔すら見ていないのに…なぜだろう?
この痛みは、誰かと視線を交わすコトが原因ではなかったのか…いや、そもそもそんな病気自体
この世に存在するハズはないのだけど。


「もしもし?あの、ちょっとお尋ねしたいんですけど…」
部屋の隅で深呼吸を繰り返し、何とか痛みから解放されたあたしは…ベッドに腰掛けて誰かと
電話で話している保田さんの姿に気付いた。
「説明書読んで……そうです。はい、たぶん…2時間以上」
保田さん、誰と話してるんだろう…?

「そうなんですよぉ。すっごい脈が速くなるみたいなカンジでぇ、ドキドキしてきて、すっごい痛くなるんです」
「うっそぉー、恐いねぇ。なんだろね、それ。ねぇ?矢口」
「うーん、ってゆーか圭ちゃんは一体ドコに電話してんだろうね」
あたしが痛みから解放されるまでの間、梨華ちゃんが事態を全く把握していない矢口さんと安倍さんの
二人に事情を説明してくれていたみたい。
242 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月02日(日)07時15分26秒
「ん?なに?コレ、読めってコト?」
保田さんが頷きながら矢口さんに手渡したモノは、あたしにも見覚えがあった。
それは昨日の夜、保田さんがあたしの部屋で読んでいた…格闘ゲームの説明書。

「えーっと、なになに…」
矢口さんは、保田さんが手渡した時に開いていたページを指で辿っている。
「なに?何て書いてあんの?矢口」
すぐ傍に立っていた安倍さんと梨華ちゃんが、矢口さんの手元を覗き込む。
あたしはみんなから少し離れた場所で、その様子を見守っていた。

「注意!このゲームは、対戦モードで同じ人と2時間以上プレイしないで下さい。
万が一、プレイ時間が2時間を超えてしまった場合は、サポートセンターまでお問い合わせ下さい」
「「「は?」」」
あたしには、矢口さんが読み上げた注意書きの意味が理解できなかった。
どうやら安倍さんと梨華ちゃんも同じく理解不能だったらしい。

確かにゲームのやりすぎはカラダに良くないし、1時間以上やっちゃダメってのはよく聞くけど…
『同じ人と』2時間以上プレイしないで下さい、ってのはどういうコトだ???
243 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月02日(日)07時16分52秒
「で。ヤったの?2時間以上」
矢口さんに尋ねられて、昨夜の梨華ちゃんとのプレイ時間について考えてみる。

「…やっちゃったかも」
梨華ちゃんをカモり始めてから彼女が怒って部屋を出て行くまでの間、それは確実に2時間を超えていた。
というコトは保田さんの電話の相手は、説明書にあるサポートセンターの人に違いない。
ふと、梨華ちゃんの方へ目をやると…昨夜の屈辱のバトルを思い出しているのか、その表情は険しい。
『左胸の激痛騒ぎ』でうやむやになっちゃってたけどやっぱり昨日のコト、まだ怒ってるみたい。


「わかったよ、原因」
電話を終えて受話器を置くとすぐに、保田さんが言った。
それにしても、『原因』って一体…何の?
「だから、アンタたちのその痛みの原因だよ」
あたしが尋ねると、保田さんの口からは予想もしなかった答えが返ってきた。

「えっ?えっ?それとコレと、何の関係があるんですか?えっ?なに?なんで?」
コレって病気じゃないの?
病気のコトについて聞くならお医者さんじゃないの?

「うるさいなー、黙って聞きなさいよ」
あたしの疑問は、保田さんの一言で切り捨てられた。
244 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月02日(日)07時18分26秒
「二人とも安心して。コレは病気じゃなくて、呪いだから」
「あのさ、圭ちゃん…それは、安心していいコトなのかな」
安倍さんに言われなければ、うっかり安心してしまうところだった。

「サポートセンターの人によるとね、出荷した後に発覚したらしいんだけど…アンタたちが
昨夜やってたゲーム、製作時に誤って呪いが混入しちゃったんだって」
「圭ちゃん…。何かそれ、日本語オカシくない?呪いが『混入』って…虫とか菌とかだったら
わかるんだけどさ」
矢口さんに言われなければ、うっかり納得してしまうところだった。

「二人とも、茶々入れないで。こっちはマジメに説明してんだから」
「いや、茶々ってゆーかさ…」
何か言いかけた矢口さんだったが、保田さんに鋭く睨まれて口をつぐんでしまった。

「何度も言うけど、コレは『呪い』なの。ある、恋人同士だった二人の怨念が生んだ呪い」
「うわぁ…なんか恐そうだね」
恐そうな話に身震いする安倍さんは、保田さんに睨まれてますます怯えてしまった。

「二人は、このゲームの開発チームに所属してたのね」
保田さんは、問題の『呪い』について真剣な表情で語り始めた。
245 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月02日(日)07時20分21秒
「迫る発売日。地獄のスケジュール。昼も夜もなく閉ざされた部屋。徹夜作業。夜食の買出し。真夜中のコンビニ。
そんな殺伐とした開発ルームで彼が見つけた一筋の光、それが彼女。そして彼女も彼を。そんな二人が恋に落ちた。
これってすごく自然な流れよね…ねぇ、そう思わない?みんな」
映画のCMのような語りに続いて、うっとりとした表情であたしたち一人一人の顔を順番に確認していく保田さん。
もしかしたらあたしたちではなくこの人こそ、何かに呪われてしまったんじゃないだろうか。

「それからというもの、開発ルームでの二人は人もうらやむほどのラブラブっぷりだったんだって。
実際、お互いが気になって全く仕事が手につかなくなってしまった二人を他のスタッフたちもうらやんでたらしいよ」
「圭ちゃん、しっかりして。それは『羨んでた』んじゃなくて、恨んでたんじゃないの?似てるけどエライ違いだよ?」
矢口さんの指摘も、夢見る保田さんの耳には全く届いていない様子。

「ねぇ。恋人同士『だった』二人の呪い、って言ったよね?」
安倍さんの問いに、保田さんは黙って頷いた。
246 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月02日(日)07時22分03秒
「恋人『だった』ってコトはさ、今は違うってコトだよね?まさか、どっちかが事故で…とか?」
安倍さんは緊張した面持ちで、『呪い』の核心に迫るような質問を切り出した。
「うそ…やだ!めっちゃコワイって、それ!!」
そして怪談話が苦手な矢口さんは、保田さんの答えを待たず必要以上に騒ぎ始めた。

「二人はとっても幸せだよ?今でもね」
「じゃあ、どうして呪いなんかかけちゃったんですか?幸せなら、必要ないですよね?」
あたしも矢口さんも安倍さんも、梨華ちゃんの言葉に同意して大きく頷いた。

「最初はアタシも、そう思ったんだよね。サポートセンターの人の話だと、開発も大詰めに入って
みんなが徹夜でデバッグ作業に追われてた時、海外で式挙げちゃったぐらい幸せだったらしいし。
しかもその後、仕事放ったらかして二週間かけて世界中を回ったって」
恋人同士『だった』二人は、晴れて夫婦になったってワケか…。

「圭ちゃん、それはさ…恋人同士だった二人の呪いじゃないよ。
二人に仕事押し付けられた同僚たちの呪いだと思うんだけど、矢口間違ってるかな?」
少なくともあたしは、矢口さんの言う通りだと思った。
247 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月02日(日)07時24分00秒
「だからね。最初はそうだと思ったのよ、アタシも。でも、そうじゃなかったんだよね」
「まだ続くのかよ…」
ウンザリした表情で、矢口さんが呟く。

「開発中、目に余る二人の行動にキレたチームリーダーが二人に言ったんだって。
『お前たち、2時間でいい。1日に2時間だけでいいから…イチャつくのを止めろ』って」
「「「「え…」」」」

――このゲームは、対戦モードで同じ人と2時間以上プレイしないで下さい。

「ここには『同じ人と』って書いてあるけど、厳密に言うとちょっと違うみたい。
互いに強く惹かれ合う者同士が続けて2時間以上プレイした場合、運悪く呪われることがあるんだって。
だから親子とか兄弟で呪われたって事例は、まだ1件もないらしいよ?」

――このゲームは、対戦モードで互いに強く惹かれ合っている人と2時間以上プレイしないで下さい。

心の中で注意書きを訂正して、そして、反芻する。

『互いに強く惹かれ合っている人と』
あたしと、梨華ちゃんは。

『2時間以上プレイしないで下さい』
2時間以上、してしまった。
そして、運悪く呪われてしまった。

と、いうコトは。
248 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月02日(日)07時25分38秒
「呪いにかかった人はね。ときめきが、つまりドキドキするカンジっつーやつ?
ホラ、『胸が痛い』ってよく言うでしょ?アレが現実の痛みとなって、襲い掛かってくるらしいんだよね」
あたしと梨華ちゃんは、互いに強く惹かれ合っている。
呪いにかかったってコトは、つまりはそーゆーコト?

「……っ!」
二人していっしょに呪われた梨華ちゃんのコトを意識した瞬間、あたしの左胸に激痛が走った。
痛みに耐えつつ顔を上げると、梨華ちゃんも右手であたしと同じ場所を押さえている。


「さんざん周りに迷惑かけといて、2時間ガマンさせられたからって呪いまで…サイテーなカップルだよね」
心底呆れたような口調で、矢口さんが言う。
「ねぇ、圭ちゃん。何か方法ないの?このままじゃ、二人が可哀相だよ」
「大丈夫。ちゃんと聞いてあるから」
安倍さんの問いに、胸を張って答える保田さん。

「「…うっ!!」」
保田さんの言葉にホッとしたあたしたちはうっかり目を合わせてしまい、激しい痛みに襲われる。
249 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月02日(日)07時27分48秒
「それにしても、アンタたち…常にお互いトキメキまくってたんだね。苦しみすぎだよ」
そんなコトはどーでもいいんで、早く呪いを解く方法を教えてください。
痛さで声も出ないあたしは、心の声で懇願する。

「呪いを解く方法は、このゲームと同じ。3ラウンド戦って先に2回勝った方の勝ちなんだけど…
どっちが勝ってもとにかく1ゲーム戦っちゃえば呪いも消えてなくなるらしいから」
「勝ち、って…何が『勝ち』なの?まさか、ホントに戦うんじゃ…」
安倍さんの言葉に、背筋が凍りつく。
呪いを解くためとは言え、梨華ちゃんとマジファイトなんてそんなコト…勝てる自信は大いにあるけど。

「まさか。勝ち、っていうのは相手が気を失うことだよ。呪いにかかった人の『ときめき』が頂点に達した場合、
そのショックで気絶しちゃうんだって。相手をドキドキさせて気絶させた方が、そのラウンドの勝者ってワケ」
「そんなコトして…大丈夫なの?」
恐る恐る、安倍さんが尋ねる。

「身体には、一切害はないから…ってセンターの人も言ってたから、たぶん大丈夫なんじゃない?」
それに対する保田さんの返答は、かなり危なっかしいモノ。
250 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月02日(日)07時29分28秒
「だったら、ハナシ早いじゃん。とっととヤっちゃいなよ、3回。ね?」
実にあっさりとした口調で、矢口さんが言う。

「そんな、カンタンに言わないでくださいよ!!
梨華ちゃんを気絶させるなんて、そんな危ないコト…あたし、絶対できない!!」
「よっすぃー…うっ!?うううっっ!!!」
あたしが矢口さんに反撃したその直後、突然梨華ちゃんがうずくまって苦しみ始めた。

「アンタ、言ってるそばから石川ときめかせてどーすんのよ」
「えっ!?うそっ…ゴメン、梨華ちゃん!!」
あたしは、ベッドの傍でうずくまっている梨華ちゃんの元へ駆け寄る。

「梨華ちゃん、だいじょうぶ?」
左胸に手を当ててうずくまる梨華ちゃんの顔を、恐る恐る覗き込む。

「心配、しないで…よっすぃー。でもね、梨華…とっても、痛かったの」
「……っっ!!!」
顔を上げた梨華ちゃんの、その潤んだ瞳を見た瞬間…さっきよりもさらに強い衝撃が、あたしの胸に襲い掛かる。

上目遣い。濡れた瞳。苦痛に耐える表情。甘えたような喋り方。掠れた声。
全てが『狙った』ような表情と仕草………まさかコイツ、やる気か!!!
251 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月02日(日)07時31分27秒
「よっすぃー。私ね、もう負けるのは嫌なの。だから…梨華に、ドキドキして?お・ね・が・い」
「うあっ!?うああああーーっっ!!痛い!痛いって梨華ちゃん、マジで!!お願いだからやめてーっ!!」
「嫌。やめない」
梨華ちゃんは、泣きながら懇願するあたしに容赦ない一言を浴びせてくる。


「痛い。痛い…けど梨華ちゃんになら、踏まれたって蹴られたって何ともないよ?
ってゆーかむしろ、うれしい、ぐらい、かな…ははっ」
そっちがその気なら…戦闘態勢に入った梨華ちゃんに、あたしは途切れ途切れながらも応戦する。

「えっ!?あっ、あっ、ああっ、痛い!!」
あたしの苦し紛れの切り返しは、梨華ちゃんに予想外のダメージを与えたようだ。
形勢逆転、の予感がした。

「クリスマスは、一緒にすごそう。梨華ちゃん家で一緒に…ハンバーグ作ろう」
「やだ、やだっ…痛い!!よっすぃー…っ!!」
「梨華ちゃんと、」
「やめてよっすぃー!それ以上っ…!!」
目の前で苦しむ梨華ちゃんの姿に一瞬迷ったが、ココで攻撃の手を緩めれば…あたしに、勝ちは無い。
252 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月02日(日)07時33分24秒
「ぴったりしたい、クリスマス」
「いやっ…!よっ、すぃー…………」
「石川っ!?」
その場にパタリと倒れてしまった梨華ちゃんを保田さんが揺り起こすも、起きる気配は無い。

「梨華ちゃん…。早すぎ」
矢口さんのツッコミを聞くコトもなく…試合開始早々、彼女はマットに沈んだ。


へぇー。
梨華ちゃんって意外と、カンタンだな。



―――――――― K.O. ――――――――

<ROUND−1>  Winner!吉澤ひとみ!!
 
253 名前:すてっぷ 投稿日:2001年12月02日(日)07時34分58秒
初回、少し長くなってしまいましたが…
よろしかったら、読んでやって下さい。
254 名前:おさる 投稿日:2001年12月02日(日)13時33分06秒
はじめまして。すてっぷさんの作品は読んでてすごくほのぼのします。以前偶然このスレを見つけてから、すっかりファンになりました。今回は”いしよし”ファンにはたまらない構成ですね。今からワクワクです。がんばって下さい。楽しみにしています。−追伸−すてっぷさんの作品のなかでは、よくよっすぃーがレギュラー的な役回りで登場しますが何か特別な思い入れでもあるのですか?
255 名前:70 投稿日:2001年12月02日(日)13時51分12秒
久しぶりのいしよしですね! 今回も・・・超バカップルだ(笑)
負けず嫌いの梨華ちゃんに、戦いに燃えるよっすぃー・・・激しい戦いになりそう!
自分の世界に浸る保田さん、早くもバトルにツッコミ入れてる矢口さんの活躍にも期待です。
256 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月02日(日)15時29分04秒
当方いしよしオタなんでかなり萌え萌えです(w
さりげに甘々な感じがツボにはまりましたよー
更新頑張って下さい!!
257 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月02日(日)15時32分54秒
石川、早すぎるよ!
ラウンド2の逆襲に期待するぞ!
それにしても、アホな戦いだ(笑)
258 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月02日(日)19時42分10秒
ただいまのキマリ手は〜
「ぴったりしたい、クリスマス〜」、「ぴったりしたい、クリスマス」で
吉澤ひとみの勝ち〜
259 名前:もんじゃ 投稿日:2001年12月03日(月)00時47分45秒
やた!いしよし。
すてっぷさん。最高ですっ!!!!
忙しさのあまり、ふたりのクリスマス。の感想も書けぬまま、乗り遅れ
悔し涙にくれていましたが、今回は速攻で感想を書いてしまいました。
第二戦…。負けず嫌いの梨華ちゃんの反撃が楽しみです♪
260 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月03日(月)01時53分00秒
やべー。最高。
なにげに圭ちゃんいいキャラですね。冷静なんだけど言ってることはなんか変っていう(w
これからも激しいバトル期待してます。
261 名前:223 投稿日:2001年12月03日(月)01時57分58秒
負けず嫌いの梨華ちゃんに激しく萌えました。
それにしても一切ドキドキされない保田さんって可哀想(w
次回更新を楽しみに待ってます。
262 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月03日(月)02時05分54秒
桃板で紹介されてたのできました。面白い!
263 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月03日(月)08時07分18秒
親ライオン(w
まさにですね。
>>262
桃板って??
264 名前:ARENA 投稿日:2001年12月03日(月)18時17分26秒
とりあえず一言・・・
「すてっぷさんマンセー!!!」
本当にこんなに笑ったのも久しぶりだし萌えたのも久しぶりです。
いつもながら設定が最高ですね。ここまで萌えさせる設定があったとは!(w
これからどんな攻撃をお互いに放っていくのかと思うと鼻血が出そうです(w
265 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月03日(月)18時52分47秒
>263
http://green.jbbs.net/music/bbs/read.cgi?BBS=866&KEY=998945758
266 名前:りか美 投稿日:2001年12月04日(火)00時48分31秒
よっすぃーにしかときめかない梨華ちゃんと
矢口さんや安倍さんにもドキドキしてしまう浮気性よっすぃー…
267 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月04日(火)03時33分41秒
毎回の素晴らしい設定!!
それぞれのキャラのずれた発想!?

あぁ〜、素晴らしき笑いの世界に落ちて逝く……
268 名前:読書の秋 投稿日:2001年12月04日(火)16時44分43秒
すてっぷさんの作品はヲタとか関係なしにおもろいです。
すごいレスの量だし、見てる人多いですね。
石川の逆襲に期待!!!
上目遣い以上の技があるのか・・・がんばれ石川!!!

石川が保田に少しでも反応しないでよかった・・・(w




269 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月04日(火)20時49分56秒
ところで、他メンバーはこの戦いでどちらを応援するのだろう?
とりあえず、矢口と後藤は吉澤応援だな。
石川は…保田と飯田辺りか?
270 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月05日(水)14時30分14秒
新作待ってました!!
すてっぷさんのいしよし!大好きだぁ〜!!

よっすぃーにしか反応しない梨華ちゃん・・・
同じ男前キャラの市井にはどんな反応を示すのか見てみたかったり。
271 名前:すてっぷ 投稿日:2001年12月05日(水)23時35分48秒
感想、ありがとうございます!!
ROUND2は、もうしばらくお待ちください…。

>254 おさるさん
はじめまして。感想ありがとうございます。 ほとんどの作品に登場しているよっすぃー。やはり一番
思い入れがあるというのも理由ですが…毒を入れつつも(笑)、ほのぼのした話を書きたいと思っていますので、
そういう話の主人公として彼女が一番ぴったりくる気がするんですよね。

>255 70さん
久しぶりのいしよし…今回も設定がバカすぎて、書こうかどうしようか本当に迷いました(笑)
保田&矢口。初回ほど目立った活躍はないかもしれませんが、少しは登場させられたらと思います。

>256 名無し読者さん
とにかく歯の浮くセリフを言い合わせられるような設定を考えた末、「呪い」に落ち着きましたが…
とりあえず、萌えていただけたようで安心しました(笑)。

>257 名無し読者さん
ラウンド1ではあっけなく終わった石川ですが、ラウンド2の逆襲にご期待ください!!
…ってコレ、本当にアホですよね(笑)
272 名前:すてっぷ 投稿日:2001年12月05日(水)23時39分37秒
>258 名無しさん
ちなみにその前の「梨華ちゃんと」から繋げると、五・七・五になっております。
本当にどうでもいいことですが(笑)

>259 もんじゃさん
お忙しい中こんなモノにお付き合いいただき、感謝です!!
今回は速攻で…それはやっぱり、いしよし効果なのでしょうか?(笑)
第二戦…石川の反撃があるかあっさり負けてしまうか、見届けていただけるとうれしいです。

>260 名無し読者さん
保田、冒頭ではまともな性格だったのですが、呪いについて説明し始めてから途端に壊れました(笑)。
激しいバトル、どうぞ最後までお付き合いください…。

>261 223さん
弱いのに負けず嫌いというかなり手に負えない性格の石川さんですが、萌えていただけましたか。
保田さんは…申し訳ないと思いつつ、どうしてもオチ的なキャラになっちゃうんですよね(笑)

>262 名無し読者さん
桃板、初めて知りました…。はるばる、ありがとうございます(笑)。紹介して下さった方、どうもです。
273 名前:すてっぷ 投稿日:2001年12月05日(水)23時43分01秒
>263 名無し読者さん
親ライオン。散々悩んだ所だったので、かなりうれしいです(笑)。毎回、くだらないことで悩んでおります。

>264 ARENAさん
いつもありがとうございます。今回とくに設定が強引すぎて、説明的なセリフが多くなってしまったので
読み飛ばされてしまうかも…と思ってたのですが、気に入っていただけたようで安心しました。
でもまさか、そこまで萌えていただけるとは(笑)。

>266 りか美さん
鋭いご指摘、どうもです(笑)。
次回、その辺りの話も出てくるかも知れません…お付き合いいただければと思います。

>267 名無し読者さん
毎回同じような設定にも関わらず、読んで下さる方々には本当に感謝しております。ホントに。
こんなんで笑いの世界へ落ちてっていただけるなら、どこまででも(笑)
274 名前:すてっぷ 投稿日:2001年12月05日(水)23時46分24秒
>268 読書の秋さん
そう言っていただけると、本当にうれしいです。でもやはり、いしよし人気のスゴさを思い知りました(笑)
さすがにこのままやられっ放しでは悲惨すぎるので、逆襲はあるはず(予定)なのですが…
ROUND2、もうしばらくお待ちください。保田ですが、今さら少し可哀相に思えてきたり(笑)。

>269 名無し読者さん
ROUND2は現在まだ書き始めてもいないので、269さんの妄想の方が先を行っているかと(笑)。
とりあえず、ここからは2人のバトルがメインになるかもです(予定)…。

>270 名無し読者さん
ありがとうございます! いしよし、と言っても相変わらずマトモな話ではありませんが…。
市井ですか…とりあえず登場予定はないのですが、同じキャラであることを考慮しても
「チクっ」ぐらいは反応するのではと(笑)。
275 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2001年12月07日(金)10時11分07秒
はっきり言って梨華ちゃんが勝てるとは思えない(w
276 名前:すてっぷ 投稿日:2001年12月09日(日)21時18分37秒
>275 梨華っちさいこ〜 さん
ROUND1の戦いっぷりを見る限り、そうですよね(笑)
277 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月09日(日)21時20分07秒

<ROUND−2> FIGHT!!


「石川!石川!!」
「あれ?私……」
床に倒れてから15分後、保田さんに揺り起こされてようやく梨華ちゃんが目を覚ました。

「梨華ちゃん、だいじょうぶ!?」
「よっすぃー……うっ!!」  「うあっ!!」
しまった!!
起き上がった梨華ちゃんの顔をうっかり覗き込んでしまい、さっそく例の激痛に見舞われる。


「ねぇ。どーでもいいけど、早いトコ終わらせちゃおうよ。朝ゴハン食べ損ねちゃうよ?」
胸を押さえて苦しむあたしたちを見下ろしながら、矢口さんが言った。

「梨華ちゃん、立てる?」
床に座り込んでいた梨華ちゃんは安倍さんの手を借りてなんとか立ち上がったものの、
まだ足下はふらついている。
さっきまでの激しいバトルは、彼女のカラダに相当なダメージを与えてしまったらしい。

「今日もライブあるし、それまで決着つけるってのはやめといた方がいいかもね」
ベッドに腰掛けて肩で息をしている梨華ちゃんを横目で見ながら、保田さんが言った。
278 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月09日(日)21時21分39秒
今日は、これからまた別の場所へ移動しなくてはならない。
放心状態で壁を見つめている梨華ちゃんは、さっきの戦いでかなり体力を消耗してしまったみたいだし…
保田さんの言う通り今夜のステージが無事終わるまで、一時休戦した方が良さそうだ。


「二人とも、どぉーしてもダメそうな時は…圭ちゃんのコト考えるんだよ。わかった?」
「「はい」」
朝食に向かうエレベーターの中、矢口さんの言葉に頷く。

「ちょっと矢口!!それどーゆー意味よ!?」
「しょうがないじゃん。圭ちゃんは二人の特効薬なんだから」
狭いエレベーターの中で暴れる保田さんを、安倍さんがなだめる。
梨華ちゃん以外の人にもときめいてしまうあたしにとって、(現在のところ)ただ一人ドキドキしない
保田さんは貴重な存在だった。

よし。
イザという時には、保田さんの顔を思い浮かべよう。うん、そうしよう。
279 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月09日(日)21時23分03秒

―――

「はい」
ドアをノックすると、中から聞こえてきたのはカワイイあのコの声。
聞き慣れているはずなのになぜか新鮮に感じてしまうその甘い響きは、あたしの左胸をチクリと刺した。

「君に、会いに来たよ」
「うっ!!」
よっしゃ。まずは先制パンチ、見事成功。
ドアの向こう側から聞こえてきた梨華ちゃんの小さな呻きに、あたしは勝利を確信した。

あれからなるべく梨華ちゃんのコトを考えないように移動中もひたすら寝て過ごした
あたしだったが…夢の中にいきなり彼女が登場して飛び起きると、心配そうにあたしの顔を
覗き込んでいた飯田さんと目が合ってうっかりときめいてしまい、気絶しそうになったところで
みかんの皮を剥いていた保田さんに『アンタ、節操なさすぎだよ』と突っ込まれて我に返ったという、
そんな危うい瞬間に何度も見舞われながらも何とかライブ会場に到着。

ステージ上でも彼女のコトを考えまいとすればするほど意識してしまい、ドキドキを鎮めようと
保田さんの方に目をやった瞬間、同じく保田さんに注目していた梨華ちゃんと目が合って
ブッ倒れそうになったり…もう、サイアク。
280 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月09日(日)21時24分35秒
「会いに来たなんて言って…私のこと、倒しに来たんでしょ」
「どうしてそんなコト言うの?ひどいよ。あたしはただ、梨華ちゃんに一目逢いたくて来ただけなのにさ」
「ああっ!?やっ、やめて!!いいかげんにして、よっすぃー…!」
早くこの呪いを解かなければ、あたしたち二人のカラダがもたない。
明日には東京に戻らなくてはならないあたしたちにとって、今夜は決着をつける最後のチャンスだった。

梨華ちゃん、悪いけど容赦はしないよ。
コレは二人にかけられた呪いを解くために、仕方がないコトなんだから。

「入れてよ、梨華ちゃん。寂しいよ」
「やだっ…待ってよ!私まだ、心の準備が」
「入れろよ、さもないと愛の力でブチ破るぜ」
時にやさしく、そして時にワイルドに。
『だからねっ、そういう風にグラグラ揺さぶられちゃったらねっ、カオリだったらもうドキドキしちゃって
夜も眠れなくなっちゃうと思うの。カオリはそういう恋愛がしたい。グラグラ揺れたいのね、カオリは』
あたしはなかなか部屋に入れてくれない梨華ちゃんに、飯田さんの教えを実践してみる。
281 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月09日(日)21時26分12秒
「いやっ、やめて!わかったから、ドア壊さないで!!」
カギを外す音がして、ゆっくりとドアが開けられる。

「ふっ、最初っからそうしてればいいのに。まったく素直じゃないんだから……って、うおあああっ!!」
「あはっ、びっくりした?梨華ちゃん出てくると思ったでしょ」
「やだな、やめてよ…なんで、ごっちんが…ううっ!!」
ドアが開いて中から出てきたのは、梨華ちゃんではなくごっちんだった。
思わぬ不意打ちに、あたしの左胸が大きく反応する。

「じゃね、おやすみー」
「はあ、はあ、はあ…」
あたしと入れ替わりに部屋を出て行くごっちんと目を合わせないように下を向いて、あがった息を整える。
このドキドキは不意打ちでびっくりしたせいだけじゃないみたい…ごっちん、要注意人物。

「…ひどっ、ひどいよ。あたし以外の人を、部屋に入れるなんて…梨華ちゃんの、バカ」
「きゃあっ!?いたっ、痛い…っ、ゴメン、ね?ヒマだからゲームやろうって、ごっちんが…」
「げっ!!ゲームまで!?うっ!!うおあああっ!!」
梨華ちゃんをときめかそうとしたのに、返り討ちに遭ってしまった。
282 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月09日(日)21時28分34秒
「心配しないで。ごっちんとは別のソフトで遊んだから。アレはよっすぃーと、だ・け」
「うわーっ!?うううっ、うれっ、うれしーなぁーっ!!ははははっ!!うううっっ!!」
あたしはドキドキを悟られまいと両手の拳を握り締めながら、何とか笑ってごまかす。

「それはそうと、よっすぃー。まさか、ごっちんにもドキドキしたんじゃないよね?」
「うっ…!!」
さっきまでの甘い響きとは打って変わった冷酷な声にギクッとしたあたしは、思わず
胸を押さえてその場に立ち竦んだ。
目の前に立つ梨華ちゃんは、腕組みをしてあたしのコトを睨みつけている。
恐くて気絶しそうになったあたしは、昔保田さんに怒鳴られた時のコトを思い出しながら
大きく深呼吸して反撃の準備。

「あれぇ?もしかして梨華ちゃん、妬いてくれてるの?うれしーなぁ」
一瞬、梨華ちゃんの顔が苦痛に歪む。
苦しむ彼女の姿に胸が痛んだが、あたしは今度こそ本当に勝利を確信した。

「そう、だよ。えへっ、バレちゃった?」
「………!!」
なっ、なにぃぃぃぃぃーーーっっ!?
予想外の反撃に声も出ず、あたしは床に片膝をついてしまった。
283 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月09日(日)21時30分32秒
「はあ、はあ…」
梨華ちゃんが、左胸を押さえて苦しがるあたしの前にしゃがみ込む。
すぐ目の前まで迫った彼女の顔を見ていられなくて、あたしは目を閉じて俯いた。

「私って子供だから、大切なよっすぃーが他の人にときめいてるの見ただけで口惜しくなっちゃったの。
ゴメンね、痛かったでしょ?」
「…っ!!あっ、ああっ、うっ!うああっ!!」
あたしの胸は今までに経験したコトがないほどの速さで鼓動していた。
苦しくて、息ができない。

「でも他の人にドキドキするなんて…今度そんなコトしたら、梨華が鮮やかな手つきで
よっすぃーのコト、闇に葬ってあ・げ・る」
「うっ!?うあああああっ!!やめっ、やめて梨華ちゃ…んっ!!」
時にやさしく、そして時にワイルドに。
まさか飯田さん、梨華ちゃんにも同じアドバイスをっ!?

「そうやって痛がってるよっすぃーの顔って、すごく素敵」
うそだ…ずっと下を向いているあたしの表情を、梨華ちゃんが見ることなんてできるはずもないのに。
「やだっ、やめてよ…梨華ちゃん!!」
彼女の言葉が嘘だと判っているのに、加速していく胸の鼓動を抑えるコトができない。
284 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月09日(日)21時32分46秒
「見て、よっすぃー。夜景がすごく綺麗だよ?」
梨華ちゃんはあたしの肩に手を置いて立ち上がると、窓の外を見ながら言った。
あたしは床に座り込んで目を閉じたまま、梨華ちゃんの容赦ない攻撃にただひたすら耐えていた。
なにか、なにか策があるはず…落ち着いて考えるんだ。

「二人の素敵な夜のために、神様がプレゼントしてくれたのかなー。そうだとしたら梨華、とってもうれしいわ」
「……っ!」
くっそぉー、黙って聞いてりゃさっきから白々しいセリフばっか吐きやがってぇー!!
そしてあたしは彼女の言葉を聞くまいと耳を塞ごうとして、ハッとする。

「あなたと二人っきりで過ごす、こんな夜が来ること…私、ずっと待ってた」
あたしはゆっくり立ち上がると、梨華ちゃんに気付かれないよう彼女の背後からそっと忍び寄る。
ワザとらしいセリフをまくしたてるのに夢中な梨華ちゃんは、後ろから近付くあたしに全く気付かない。

「この素敵な夜を越えて朝が来ても、ずっと私のこと離さないでね。よっ…すぃー!?」
あたしはセリフの途中に割り込んで梨華ちゃんの左肩を強引に掴むと、彼女をこちらへ振り向かせた。
285 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月09日(日)21時34分48秒
「よっすぃー…痛かったんじゃ、なかったの?どうして、」
苦しむどころかその顔に余裕の笑みすら浮かべているあたしに、ひどく驚いた様子で梨華ちゃんが言った。
「しーっ」
あたしは、人差し指を梨華ちゃんの唇に当てて言葉を塞ぐ。

「もうさぁ、喋んなくていーよ。梨華ちゃんは、そのままで十分カワイイんだから…ってゆーか、
喋るだけ損してるカンジかな?」
「うっ!!なに!?なんでっ…!!」
再び不利な状況に追い込まれた梨華ちゃんは、胸を押さえて苦しみながら後ずさりする。
あたしはトドメをさすべく近付くと、ゆっくりと彼女を壁際へ追い込んでゆく。

「ねぇ、1コ聞いていい?梨華ちゃんってさぁ、なんでそんなにカワイイ顔してんの?」
「…っ!!」
「どうしてそんなにカワイイ声してるの?ねぇ」
「やっ、やだ…やだってば、よっすぃー!!もう、やめて…っ」
とうとう壁際まで追い込まれた梨華ちゃんは目を伏せると、涙声で懇願する。もう少しだ、あと、もうちょっとで。
286 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月09日(日)21時37分10秒
「じゃあさ、梨華ちゃんはどうして生まれてきたの?どうして、今ココにいるの?」
「そんなの、わかんないよ…もう、やだ」
「今言ったコト、答えはたったひとつだよ」
「……なに、よ」
膝を震わせながら何とか立っている梨華ちゃんの髪を優しく撫でながら、あたしは大きく息を吸い込む。

「梨華ちゃんが、カワイイ顔とカワイイ声でこの世に生まれてきて今ココに立ってるのはね。
それはぜんぶ、『よっすぃーにめぐり逢うため』。だよね?梨華ちゃん」
「……っ」
あたしが言い終えたのと同時に脱力して崩れ落ちた梨華ちゃんを、素早く抱きとめる。
終わった、苦しい戦いだったけど…コレでようやく、忌まわしい呪いから解放されるんだ。


「…よっすぃー」
「えっっ」
梨華ちゃん、まだ息が!?
ゾンビのごとく蘇った梨華ちゃんは最後の力を振り絞ってあたしの腕から逃れると、壁にもたれる。

「どう、して?どうして…私の言葉に、反応してくれないの?」
壁際に立つ梨華ちゃんは虚ろな目で、途中から自分の攻撃が全く効かなくなったコトについて問いただしてくる。
287 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月09日(日)21時39分06秒
「どうしよっかなぁ」
梨華ちゃんは答えを焦らすあたしを恨めしそうな目で見ている。

「まいっか。梨華ちゃん、もうダメっぽいから…最後に教えてあげる。
梨華ちゃんさぁ、あたしに勝ちたければ長ゼリフは止めといた方が良いよ?」
「なに、それ…どういう意味?」
自分の弱点にまるで気付いていない梨華ちゃんを見て、あたしの顔に思わず勝利の笑みがこぼれた。

「梨華ちゃん、棒読みだから」
「ええっ!?うそっっ!?そっ、そんな…私って、未だに棒読みなんだ。そうなんだ…」
梨華ちゃんは、あたしに『長ゼリフ棒読み』を指摘されて相当落ち込んでしまった様子。

「でも、そんな梨華ちゃんの棒みたいなトコ、すっごくカワイイよ」
「あっ、あっ、やだ、言わないで…いやっ!」
「どうしてさ。すっごくカワイイのに…ホント、棒みたい。
その棒で白い砂浜に『梨華ちゃんLOVE』って刻みたいくらい、素敵な棒っぷりだったよ?」
「…っ、やだってば…よっすぃー」
「そして、その文字を波がさらっていくのを…二人でずっと見ていたい。梨華ちゃん…LOVE」
次々と繰り出される攻撃に、梨華ちゃんは立っているのも辛そう。
288 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月09日(日)21時42分02秒
「ねぇ、こんなの早く終わりにしようよ。梨華ちゃんだって、痛いのはもう嫌でしょ?」
「っ、っく、っ…」
両手で顔を覆って泣きながら、梨華ちゃんが小さく頷く。

「だったら大人しくしてなよ、すぐ終わるからさ」
「……っ、っく」
「っ!」
泣きじゃくる梨華ちゃんの姿に、あたしの左胸が疼き始めた。
目の前で梨華ちゃんに泣かれるのは、やっぱ、あんまりイイ気分じゃない。
早いトコ決めないと、逆にこっちがやられちゃいそうだ…あたしは、彼女へ贈る最後の言葉を考え始めた。

「…私、本当に嫌だったんだから」
「えっ、なに?」
往生際の悪い梨華ちゃんは、小さな声でさらに反撃を試みてくる。

「よっすぃーが、私以外のいろんな人にドキドキしてるの…私、すごく嫌だった」
「梨華、ちゃん…」
そのセリフは棒読みでも何でもなくて、あたしの胸にストレートに突き刺さった。


「私、知ってるんだから…下で荷物運んでくれたお兄さんにも、ときめいてたこと」
「えっ」
突然梨華ちゃんに胸倉を掴まれて、あたしはその場で固まった。
289 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月09日(日)21時44分18秒
「それから、フロントのお姉さんにもドキドキしてたでしょ!!」
「ああ、あれは」
やばい、コレは…なんか、ときめきとかじゃなく別のイミでドキドキしてきた。痛い、逃げたい、どうしよう…!!

「よっすぃーって、誰にでも見境ないんだね。動物みたい」
「なにそれ…どーぶつ、って」
梨華ちゃんが呟いた一言が、あたしの怒りに火を点けた。

「変なコト言わないでよね!あたしにだって見境ぐらいあるもん!!
加護辻には反応しなかったし、新メンバーだって全員セーフだったんだから」
「だから、16歳以上なら誰だっていいんでしょ!!そういうコトでしょ!?」
「…あ、ホントだ。よく気付いたね、梨華ちゃん。すごい、大発見!!」
何て言うんだっけ、こーゆーの…そうそう、『敵ながらアッパレ』。

「保田さん以外の16歳以上なら誰でもいいなんて、そんなの動物と同じじゃない!」
さりげなく訂正されていた梨華ちゃんの言葉(『保田さん以外の』16歳以上)に、ふと保田さんの顔を思い出す。


「だったら、なに?」
「えっ」
冷ややかに見下ろすあたしの視線に気付いて、梨華ちゃんは一瞬びくっと肩を震わせた。
290 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月09日(日)21時46分47秒
「おにいさんもおねえさんも、カッコ良かったしカワイかったんだもん。ドキドキして当たり前じゃん。
なんで梨華ちゃんにいろいろ言われなきゃいけないワケ?」
「よっすぃー…」
動物呼ばわりされてアタマにきていたあたしが発した声は、自分でも驚くぐらい、冷たい声だった。

「そりゃあ、梨華ちゃんがドキドキするのはあたしにだけかも知んないけどさー。
そんなのそっちの勝手でしょ?あたしには関係ない」
「なにそれ…ひどいよ、どうしてそんなひどいコトが言えるの?信じらんない」
言い終えて唇を噛みしめる梨華ちゃんの目には、あふれそうなぐらい涙が溜まってる。
彼女の泣き顔を見ると相変わらず胸が痛んだけど、今のあたしに彼女をいたわる余裕なんてない。

ゴメン、梨華ちゃん。
もうすぐ、楽にしてあげるからね。


「梨華ちゃんってさぁ、怒っててもカワイイんだね。もっと怒らせちゃおっかなぁ」
「よっすぃー、やさしくない…大っ嫌い」
攻撃に耐え切れず床に座り込んでしまった梨華ちゃんは俯いて、小さく呟いた。
291 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月09日(日)21時49分18秒
「大っ嫌い?うそだね。じゃあ、どうしてそんなにドキドキしちゃってんの?」
「…ちがうよ。こんな人にドキドキしてる自分が、キライなだけ」
そう言うと梨華ちゃんは突然立ち上がって、猛ダッシュでバスルームへと駆け込んでしまった。
「梨華ちゃん!?」
あたしは慌てて彼女の後を追う。


「梨華ちゃん!梨華ちゃん!!出てきてよ!ゴメン、謝るから!!ねぇ、梨華ちゃん!!」
バスルームに篭ったまま出てこない梨華ちゃんは、あたしの呼びかけにも応答してくれない。
どうしよう、今度こそ完全に怒らせてしまったみたい…あたしは調子に乗りすぎたコト、今さらながらに後悔した。

「ねぇ、どうすればいいの?教えてよ!あたしが梨華ちゃんに負ければ、許してくれる?」
「…もうわかったから。私、もう諦めるから…よっすぃーの、好きにして」
ドアの向こうから、カギの開く音が聞こえた。
諦めの良すぎる梨華ちゃんの態度に疑問を抱きつつ、あたしは後ろに下がって彼女が出てくるのを待つ。

「その代わり一回だけ、チャンスくれる?」
そしてあたしが見たモノは…バスタオルをカラダに巻いただけの、梨華ちゃんの姿だった。
292 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月09日(日)21時51分57秒
「ひっ…!!りか、梨華、ちゃん…なに、する気っ!?」
「わかってるくせに」
くすっ、と小さく笑った後で梨華ちゃんは、胸元に手をかけた。

右手を、バスタオルの結び目にかけて微笑む梨華ちゃん。
次に起こる事態は、カンタンに予測できたはずなのに…彼女から目を逸らすコトができなかったのは、
それは、つまり、やっぱし……うん。

「………っっっ!!!」
人間は、どこかがホントにホントにすっっごく痛いときって、声が出なくなるモノなんだなぁ。知らなかった。
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛いよぉぉー、たすけてぇ……保田さん!!

保田さん、保田さん。
コレってやっぱし反則ですよねぇ、だって、何にも着てないんですよ?

保田さん、保田さん、保田さん。
圭ちゃん、圭ちゃん、圭ちゃん。おばちゃん、おばちゃん、おばちゃん。
あたしは特効薬『保田さん』をいろんなパターンで使用してみるも、まったく効果がない。


ああ、もうダメかも知れない…ごっちん、飯田さん、矢口さん、安倍さん、おにいさん、おねえさん。それからそれから。
みんな、ありがとう。よっすぃーは、とっても幸せでした。
293 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月09日(日)21時55分05秒
「サイ、テー。大っっ嫌い」
「ドキドキしてるくせに…うそつき」
「ちがっ…!」
ちがうよ、そうじゃなくて。
嫌いなのは、梨華ちゃんじゃない。
負けるとわかってるのに梨華ちゃんから目を逸らすコトができない自分が、大っ嫌いだって言ってるんだよ。


「私ね、はじめから気付いてたんだ」
梨華ちゃんの足下で転がるあたしの頭上から聞こえた声は、今まで聞いたコトがないくらいに、冷たい声だった。

「よっすぃーを倒すのに、言葉はいらないって」
床の上に投げ出された白いタオルが、リングに放られた『降参のしるし』みたいで笑えた。


意識が、だんだん遠くなって。

見上げると梨華ちゃんは、あたしに勝ってうれしいはずなのになぜか…とても、哀しそうな顔をしていた。



―――――――― K.O. ――――――――

<ROUND−2>  Winner!石川梨華!!
 
294 名前:すてっぷ 投稿日:2001年12月09日(日)21時56分23秒
次回、最終ラウンドです。よろしければお付き合いください…。
295 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月09日(日)22時00分36秒
今回も楽しませていただきました。
展開は・・・予想通りでした。(w
石川が勝つには脱ぐしかないなと。
つづきを首を長くして待っています。
296 名前:popi 投稿日:2001年12月09日(日)22時39分18秒
私的には予想外だわ・・・。
りかちゃん、やるわねぇ・・・。
297 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月09日(日)22時52分22秒
これはまた、究極の奥義を…
しかし2ラウンド目で最終兵器を出した石川、最終ラウンドの勝算は?
298 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月09日(日)23時40分03秒
よっすぃ〜になら何度でも通用しそうな技だ。
さすがエロ少年吉澤。
299 名前:石川サポーター1号 投稿日:2001年12月10日(月)00時07分41秒
祝!石川勝利!!!
これで1勝1敗、最終ラウンドで逆転だ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
石川はまだ脱いだだけ。まだそこからのコンボ技が残ってる(はず・・・)
最終ラウンドも勝てるぞ〜〜〜!がんばれ〜〜〜〜〜〜

最後の哀しそうな顔に私もKO・・負・・け・・・(気絶
300 名前:70 投稿日:2001年12月10日(月)00時16分16秒
第2ラウンド、梨華ちゃんの反則勝ちですね(笑)
「本当に痛いときには声が出ない」自分も経験あるのでリアルでした。
勝ったのに哀しそうな梨華ちゃん・・・第3ラウンドの行方が気がかりです。
301 名前:おさる 投稿日:2001年12月10日(月)01時15分31秒
いしよしの絡む妖しい世界。いしよしファンの私にはたまらない設定です。第2ラウンドはからくも梨華ちゃんの勝利に終わったようですが、はてさて問題の第3ラウンドは…。楽しみは尽きません。更新お待ち申し上げております。
302 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月10日(月)01時35分45秒
こんな攻撃されたら私も倒れますよ(w

最後の石川さんの反応が意味深ですな・・・
次回更新も頑張って下さい!!
303 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月10日(月)04時06分56秒
節操なしの吉澤、ストライクゾーンは広いが
剛速球は対応できずか…

最終ラウンド如何なる展開が!?
304 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2001年12月10日(月)11時50分25秒
そんな卑怯な梨華ちゃんも大好きだぁぁぁ!!!
305 名前:223 投稿日:2001年12月10日(月)15時11分23秒
甘々な台詞の数々に激しく萌え(w
どこからあんな台詞を思いつくんでしょうかねぇ?(…実体験?)

移動中にみかんを食べるオバチャンな保田さんにも萌え(ww
更新楽しみに待ってまーす(悶
306 名前:もんじゃ 投稿日:2001年12月10日(月)17時29分23秒
素敵な棒っぷりって笑えました(笑)
梨華ちゃんも必死だし。
フラフラしてるよっすぃに対しての梨華ちゃんの哀しみが僕にはわかる…。
次回で最終ラウンドとは残念なり。
でも楽しみに待ってまーす。
307 名前:Charmy Blue 投稿日:2001年12月10日(月)18時23分59秒
>「梨華ちゃん、棒読みだから」
思いっきり笑いました。すてっぷさんの作風は面白いですね。
最終ラウンドも楽しみに待ってます。
308 名前:ARENA 投稿日:2001年12月11日(火)03時23分13秒
今回も禿げしく萌えました・・・
やっぱり最高ですね、甘い言葉の攻撃は。浮気性の吉澤も(・∀・)イイ!
「冥土の土産」を言う敵役は大体負けますよね(w
まぁ、反則とも思える最終奥義でしたが・・・(w
ファイナルラウンド、期待してます。
309 名前:和希 投稿日:2001年12月11日(火)18時19分37秒
梨華ちゃん〜!(T-T)
なぜ、ギャグテイストなのに…最後の、彼女の表情の所で心臓が…!!!(ヤバ)
共に、1勝1負かぁ……。
最終ラウンド…もし、以下略(汗)だったら…どなるんだろう…。
とか、思いつつも…今日は…逃げ。
(話の展開に支障をきたすとまずいので(↑伏せて))
今後の展開に、期待しつつフェードアウト(←意味、履き違えてるなぁ…俺)
310 名前:すてっぷ 投稿日:2001年12月14日(金)22時17分04秒
感想、ありがとうございます!!

>295 名無し読者さん
ベタな展開、読まれてましたか(笑)
勝つには脱ぐしかない…ってのも、何だか哀しい気がしますが(笑)

>296 popi さん
石川の大作戦、ベタすぎて予想外でしたか?(笑)

>297 名無し読者さん
究極の反則技でした(笑)。最終ラウンドも、よろしくお付き合いください…。

>298 名無し読者さん
エロ少年て(笑)。確かに、また使われたら速攻で勝負決まっちゃいますよね(笑)

>299 石川サポーター1号さん
お祝いコメント、ありがとうございます(笑)
まだ脱いだだけの石川さん、コンボ技が飛び出すかどうかはわかりませんが…
最後まで応援してやってください(笑)

>300 70さん
本当に痛いときって一瞬、息止まりますよね(笑)
第2ラウンドは何だか意味深な終わり方でしたが…見届けていただけるとうれしいです。
311 名前:すてっぷ 投稿日:2001年12月14日(金)22時19分13秒
>301 おさるさん
相変わらずアホな設定ですが、楽しんでいただけましたでしょうか。「怪しい」じゃなくて良かった(笑)
第3ラウンド、勝負の行方はもう少しお待ちいただければと思います…。

>302 名無し読者さん
倒れていただけましたか(笑)
ラウンド1と違って少しシリアスな(?)最後でしたが…次回もお読みいただけるとうれしいです。

>303 名無し読者さん
ストライクゾーンおよび剛速球。良い例えです(笑)
最終回の攻撃も、お見逃しなく。(って程のモンじゃないですが)

>304 梨華っちさいこ〜 さん
にしても、最高に卑怯な攻撃でしたね(笑)

>305 223さん
サクっと終わらせるつもりが甘い(?)台詞の応酬になってしまいました。そしてもちろん実体験なワケはなく(笑)
保田さん改めオバチャン。ほとんど喋ってないのに、最後まで(名前だけ)出ずっぱりでしたね(笑)
312 名前:すてっぷ 投稿日:2001年12月14日(金)22時22分17秒
>306 もんじゃさん
ラウンド2は「素敵な棒っぷり」の辺りとラストの決めワザだけ入れられればと思っていたのですが、
予定外に長くなってしまいました。
綾小路さん(でしたっけ?)にも理解してもらえたみたいなので、このまま突っ走りたいと思います(笑)

>307 Charmy Blue さん
ありがとうございます!くだらない話ばかり書いておりますが、そう言っていただき光栄です。
今回は石川が「棒読み」を指摘される辺りをメインに書きたかったのですが…詰め込みすぎて他のネタに
埋もれてしまった感じがしますね(笑)

>308 ARENAさん
今回は、萌えてもらえるか激しくひかれるかのどっちかだと思っていましたが…
良い方に転んだようで良かったです(笑)
「冥土の土産」を言う敵役…確かに。妙に納得してしまいました(笑)

>309 和希さん
最終ラウンド。なんだか、スゴイことを期待されてるように思えるのは考えすぎでしょうか?(笑)
和希さんの妄想(?)が、えらい所まで行ってしまう前に早く更新したいと思いますので…
最終回も、お読みいただけるとうれしいです。
313 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2001年12月15日(土)11時22分39秒
色仕掛け VS 言葉責め
どうなる? 最終戦!
314 名前:LVR 投稿日:2001年12月16日(日)01時20分58秒
なんか、終わり方が凄く寂しい。
ただのオチャラケで終わらなさそうな感じですね。
三ラウンドで全てが解決するかはわかりませんが、楽しみにしています。
遅い感想、すみませんでした。
315 名前:すてっぷ 投稿日:2001年12月16日(日)04時11分57秒
>313 梨華っちさいこ〜 さん
言葉責めって(笑)最終戦も、よろしくです。

>314 LVRさん
いつもありがとうございます。感謝です!!
オチャラケで終わらなさそうな感じ…鋭いですね。
今回のラスト、どう感じていただけるか実はかなり不安だったりするのですが…
お付き合いいただけるとうれしいです。
316 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月16日(日)04時14分11秒

<ROUND−3> FIGHT!!


目が覚めると、朝だった。
カーテンの隙間から差し込む光であたしは、いつの間にか夜が明けていたコトを知る。

冷たい床に手をついてゆっくりと上半身を起こすと、一瞬めまいがした。
左胸に残る鈍い痛みとは別に、身体の節々がズキズキと痛む…なんだろう、この気だるい感じは。
まだ半分眠っている頭をぶんぶんと横に振り、ようやく視界が開けてきたあたしの目に
飛び込んできたのは…無人のベッド。
上に掛かっているはずの布団は全て剥ぎ取られ、枕だけがぽつんと寂しく置かれている。

そしてベッドの上に掛かっているはずの布団は今、あたしの上に掛けられていた。
しかし分厚い布団の重みを吸収してくれるはずのマットレスは今、あたしの下には無い。
背中が腰がアタマが、胸が…痛い。

「…サイアク」
最高級の気だるさに襲われながらようやくあたしは、自分が床の上で眠っていたコトを知る。
317 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月16日(日)04時15分54秒
「おはよう」
突然の物音と声に驚いて顔を上げると、バスルームから出てきた梨華ちゃんが立っていた。
昨日の服のまま床の上で寝てしまい激しい寝違えと気だるさで最悪な気分のあたしとは対照的に
ご自慢のピンクのパジャマを身にまとった梨華ちゃんは昨夜もぐっすり眠れたのか、
とても清々しい表情をしている。

「梨華ちゃん…いたんだ」
「だってここ、私の部屋だもん」
「ああ、そっか」
彼女の言葉に頷きながら頭の中に昨夜のうれしい、いや忌まわしい記憶がはっきりと蘇ってくる。

(『私ね、はじめから気付いてたんだ』)
(『よっすぃーを倒すのに、言葉はいらないって』)
そうだ。昨夜、あたしは梨華ちゃんに…負けたんだ。


「まだ早いから、ベッドで寝直したら?」
梨華ちゃんは床の上に放置されているあたしに背を向けて、自分のベッドの上で荷物の整理に勤しんでいる。
「ひどいなー、せめて枕ぐらい敷いてくれたっていいのに。
でも梨華ちゃんのそーゆー冷たいトコ、刺激的で良いけどね」
昨日の戦いが嘘のようにいつもと変わらない彼女の様子に少々面食らいつつも、あたしは早速攻撃を開始した。
318 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月16日(日)04時17分53秒
「寝違えてクビが回らないぐらいの方がいいんじゃない?他の人に目が行かなくて済むでしょ?」
「えっ…」
予想もしなかった梨華ちゃんの反応に、あたしは言葉を失った。
梨華ちゃんはベッドの上に座ってこちらに背を向けたまま、あたしの攻撃に反応するどころか
嫌味を返す余裕すら見せている。
梨華ちゃん、一体どうしちゃったの…?

「ねぇ、後ろ向いてないでこっち見てよ。梨華ちゃんのカワイイ顔さぁ、もっと見たい」
「嫌。後ろ向いたら私なんかよりもっともっとカワイイよっすぃーの顔、見なきゃいけないじゃない」
長ゼリフ(棒読み)は通用しないって教えてあげたのに…学習能力のない梨華ちゃんに、
あたしは思わず苦笑い。

「目、閉じなよ」
気だるい身体を引きずって、あたしは梨華ちゃんへ近付く。
「そしたら、あたしの顔見なくていいじゃん」
そして、後ろから梨華ちゃんの肩にそっと手を置いた。
319 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月16日(日)04時20分02秒
「ダメだよ。見なくたって声聞いてるだけで、よっすぃーのこと考えちゃうもん。
梨華はいつでも、よっすぃーのことで頭いっぱいなの」
「へぇー、そうなんだ。でもアタマだけ?」
効かないとわかっているはずなのにさっきから棒ゼリフを繰り返す梨華ちゃんの意味不明な行動に、
あたしは次第に苛立ち始めていた。

「なんなら、カラダもいっぱいにしてあげよっか」
掴んだ肩を軽く突き飛ばすと、梨華ちゃんはカンタンにベッドの上に倒れた。
傍に立つあたしの方へ身体を向けて横たわっている梨華ちゃんは特に抵抗する様子も無く、
ふてくされたように目を伏せた。

「うれしい。もっと早くこうしてくれれば良かったのに」
「それ、ワザとやってんの?」
相変わらず白々しい彼女の言葉に、あたしのイライラは募るばかり。
昨日の梨華ちゃんは自分の棒読みにまったく気付いてなかったけど、今日のは意図してそうしてるように見える。

「もう、私の言葉じゃドキドキしてくれないんでしょ?」
目の前に横たわる梨華ちゃんを見ながら、自分の左胸を押さえる。
彼女の言葉通りあたしの胸は、いつも通りの規則正しいリズムを刻んでいた。
320 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月16日(日)04時22分31秒
「私も同じ。もう、何言われても平気になっちゃったみたい」
寂しそうに睫を伏せてそう言った梨華ちゃんの表情に一瞬、あたしの胸が反応する。
「どう、して?」
だけどそれは、昨日みたくドキドキするカンジじゃなくて…もっと鈍くて、嫌な痛みだった。

「よっすぃーの言葉には、ココロがないから」
「そんなの、梨華ちゃんだって一緒じゃん。梨華ちゃんだって、」
うそばっかの棒読みだったくせに。言いかけて、あたしは言葉を飲み込んだ。
「だけど、そんなの全部にドキドキしてた私…バカみたい」
小さな声で呟いた梨華ちゃんの細い肩が、小刻みに震えている。
左胸が締めつけられるように、痛い。

「どう、しよっか。これじゃ勝負になんないね」
目の前で泣いてる梨華ちゃんに、こんなコトしか言えない自分が情けなかったけど…
それでもあたしは、とにかく早く終わらせたかったんだ。一秒でも早く。

「とっくに終わってるよ」
完全に戦意を失ってしまったらしい梨華ちゃんが、冷たく言い放つ。
「だって私たち、もうドキドキしなくなっちゃったじゃない」
彼女が何か言うたびに、あたしの胸は鈍い痛みに襲われた。
321 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月16日(日)04時26分15秒
「あたしのコト、もう嫌い?どうすればまた、」
どうすればまた、『嫌い』じゃなくなってくれる?

「よっすぃー、やさしくないもん…もう嫌い」
やさしくない。
最初にケンカしたときも、それから昨夜泣き出したときも、同じコト言ってた。
やさしくする、ってどーゆーコトだろう?

「おじいちゃん、譲ってあげなかったから?」
ベッドに横たわったままの梨華ちゃんは、あたしの問いには答えない。
「ごっちんとか飯田さんとか、いろんな人にドキドキした」
完全無視の姿勢を貫く梨華ちゃんに構わず、あたしは言葉を続ける。

「梨華ちゃんがあたしにだけドキドキするの、そっちの勝手だって言った。あたしには関係ない、って言った」
細い肩が一瞬びくっと反応して、梨華ちゃんは小さく頷いた。

「……っ、っく」
堰を切ったように泣き出してしまった梨華ちゃんを見て、そして、わかったような気がしたんだ。
昨夜、あたしたちはいろんな言葉で攻撃し合ったけど…梨華ちゃんは決して、あたしを傷つけるようなコトを言わなかった。
それなのにあたしは梨華ちゃんに酷いコトばっか言ってぜんぜん、やさしく出来なかったね。
322 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月16日(日)04時29分33秒
「ゴメンなさい」
あたしは昨日から、もしかするとそれよりもずっと前から、彼女を傷つけるコトいっぱい言ってきたのかも知れない。
自分ではそうと気付かずに梨華ちゃんのコト、たくさん傷つけてしまったかも知れない。

「今日から、ちゃんとするから」
梨華ちゃんのコト、もっとちゃんと考えるから。
「梨華ちゃんにもっと、やさしくする」
あたしが言うと梨華ちゃんは顔を覆っていた両手をずらして、涙に濡れた瞳をのぞかせた。
あたしを見上げてまっすぐな視線を向けてくる梨華ちゃんと目が合って、胸の鼓動は少しずつ速さを増してく。

「だから、ちゃんと終わらせよう。でなきゃ始めらんない」
「終わらせる、って…どうやって?」
「起きれる?」
あたしが右手を差し出すとほんの少しだけど梨華ちゃんが、笑ってくれたような気がした。

「ねぇ、梨華ちゃん。ウチらさ、昨日からあれだけいろんなコト言い合ったのに
まだ一回も使ってないコトバがあるの、気づいてた?」
梨華ちゃんはあたしの手を取って起き上がるとベッドからおりて、あたしと向かい合う。
323 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月16日(日)04時34分40秒
「ホントに短い言葉だけど、でもきっと…すごくドキドキするって思うんだ」
あたしは下を向いて考え込んでしまった梨華ちゃんに、ヒントを出してみる。
「あっ」
今のヒントでわかってくれたのか、顔を上げた梨華ちゃんはうれしそうに笑った。

「…そっか。ホント、あんなにたくさん言い合いしたのに…まだ一度も、言ってなかったんだね」
思い出し笑いするみたいに、くすっと小さく笑って。

「どきどきしてきた?」
「うん。してきたみたい」
手を上げかけた梨華ちゃんよりも一瞬早く、あたしは彼女の左胸に自分の右手をあてる。

「…ホントだ」
深く息を吸い込んだ梨華ちゃんの胸がふくらむと、あたしの右手もそれに合わせて押し戻される。
深く息を吐いた梨華ちゃんの胸がへっこむと、あたしの右手も向こう側へ吸い込まれる。

「よっすぃーだって」
あたしの左胸に自分の右手をあてて、梨華ちゃんが言った。
324 名前:ときめけ、梨華ちゃん!ドキドキして、よっすぃー!! 投稿日:2001年12月16日(日)04時39分41秒
右手に感じるこの音は、自分の鼓動なのかそれとも梨華ちゃんのモノなのかはわからなかったけど…
そんなコトは、どっちでもいいような気がしていた。
だってあたしたちの胸は今、きっと同じ速さで鼓動しているはずだから。
そうだよね?梨華ちゃん。

あたしたちはまっすぐ見つめ合って、大きく深呼吸する。
ずっと言いたくて、ずっと言えなかった、魔法の呪文を唱えるために。

「梨華ちゃん」  「よっすぃー」
二人で終わらせよう。
そして、二人で始めるんだ。


「 「 好き 」 」






<Game Over>
 
325 名前:すてっぷ 投稿日:2001年12月16日(日)04時41分29秒

ROUND3、終了です。
お付き合い頂き、ありがとうございました!
326 名前:石川サポーター1号 投稿日:2001年12月16日(日)05時10分27秒
早起きって素晴らしい!
ROUND3はちょっと切ない感じでしたね。
相変わらず綺麗に〆ますね(w
ラストでラピュタを思い出したのは私だけでしょうか?

お疲れ様でした!
次回作も楽しみに待ってます。
次はDear Friend4で会えることを期待しています。
矢口は出るのかな???
327 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月16日(日)05時27分54秒
>>315の作者さんの言葉にビクビクしつつ読みました(w
でも自分、こういう終わり方好きなんで良かったっすよ〜
とりあえず完結お疲れさまでした!!
328 名前:223 投稿日:2001年12月16日(日)06時07分56秒
ラウンド3はハラハラドキドキでした。
梨華ちゃんみたいな怒り方って
実は一番怖かったりしますよね(w

今回もイイ小説をありがとうございました。
329 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月16日(日)06時28分22秒
徹夜って素晴らしい!
最後には二人とも素直になれたようで。言葉の端々にドキドキするんじゃなくて、
まっすぐに気持ちを伝えられるようになったんですね。

しかしこれって両者ノックアウトの引き分けで、勝負はついてないんじゃあ…(笑)
でもそれだったらもう、何回やっても勝負は終わらなそうな二人になっちゃったみたいだけれども。
330 名前:ARENA 投稿日:2001年12月16日(日)07時08分05秒
終わった直後なのにここまで感想乗り遅れるとは・・・(w

うーん。いつもながら、さすがですね。綺麗な終わらせ方が。
いしよしらしいダブルKOでした。
互いの胸に手をあてて鼓動を確かめ合う所がまたよかった(´ー`)y ─┛~~

すてっぷさんの短編はやっぱ(・∀・)イイ!
331 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2001年12月16日(日)07時56分13秒
二人とも安らかに気絶したんでしょうね。
次の作品も期待するっス。
332 名前:70 投稿日:2001年12月16日(日)11時29分15秒
ROUND2を改めて読み返してみると・・・梨華ちゃん思いっきり傷ついてますね。
あぁ、最初に読んだときに笑い転げていた自分って・・・
よっすぃーが、梨華ちゃんの傷ついた心に気付くことが出来て良かった。
これで、ゲームに呪われた甲斐もあったというものですね(笑)

今回も、思いっきり笑って泣いて、感動させていただきました。
333 名前:おさる 投稿日:2001年12月16日(日)19時56分03秒
ゲームの呪いというのは、お互いトキメいているのにそれを素直に言い表せなかった2人への、神様の粋なはからいだったんでしょうね。第3ラウンドで一緒に「好き」と言ったあと2人はどうなったんでしょう。まぁそのあたりは、後は読者に想像させるというすてっぷさん一流の手法なのでしょうが…。今回も”思春期萌え萌え路線”でありながらけしてハードエロには走らないというその抑制の効き方が良くて…。ほのぼのさせていただきました。次回作も期待しております。
334 名前:もんじゃ 投稿日:2001年12月17日(月)22時53分00秒
終わっちゃいましたね…。
でも、にじゅうまるなGAME OVERでした。
この後の続きが読みたくなっちゃいますね。
本当に楽しかったです。
お疲れさまでした、すてっぷさん。
次回作も楽しみにしています。
335 名前:value 投稿日:2001年12月18日(火)03時05分50秒
お疲れ様でした。なんだよ結局ラブラブじゃん!(w
GAME OVER後ににやけながら突っ込んでしまいました。
おいらも続編、というよりすてぷさんのいしよしがもっと読みたいっす!
336 名前:すてっぷ 投稿日:2001年12月20日(木)23時44分25秒
感想、どうもありがとうございます!!
遅レスですみません…。

>326 石川サポーター1号さん
朝イチで読んでくださったんですね。徹夜で書いた甲斐がありました(笑)
ラピュタ、二人が一緒に呪文唱えるとこですよね?あんな名作を連想していただけるとは…。
次回は、年内に何か始められたらと思っておりますので…よろしければ読んでやってください。
矢口主役の話も、また書いてみたいですね。

>327 名無し読者さん
嫌なネタバレ、すいませんでした(笑)
今回特にオチもなく終わってしまったので…更新前にちょっと弱気になってたのですが、
そう言っていただけて安心しました。

>328 223さん
ラウンド3は1・2と全く違う雰囲気で、明るすぎるタイトルが妙に浮いてしまいましたが…。
今回の石川さん、タメ込んで一気に爆発するタイプでしたね(笑)
こちらこそ。最後までお付き合いいただき、感謝です!!
337 名前:すてっぷ 投稿日:2001年12月20日(木)23時46分44秒
>329 名無し読者さん
徹夜って素晴らしい!右に同じ(笑)
あれだけ喋っても結局伝えたかったのはごくごくシンプルな言葉だった、ということで…。
>勝負はついてないんじゃあ…
あっ。(笑)
勝ち負けじゃなく、とりあえず1ゲーム終わらせれば呪いは解けるって事でどうでしょう?(強引)

>330 ARENAさん
鼓動を確かめ合う所…今回の話は、このラストが書きたくて始めたようなものだったので、
感想いただけてうれしいです。
話数を決めずに始めると書きたいことが次々と増えてきて収拾がつかなくなるので、
今回のような短編の方がやっぱり書きやすいですね。

>331 梨華っちさいこ〜 さん
二人そろって安らかに気絶、誰が起こすんだろう…(笑)
お付き合い、どうもでした。
338 名前:すてっぷ 投稿日:2001年12月20日(木)23時48分59秒
>332 70さん
読み返していただけるとは、うれしい限りです。ROUND2はとにかく暴走しまくっており、
笑ってもらえる方がありがたかったりするので全然オッケーです(笑)
ROUND3に繋げるため、最後だけは少し意味深な感じになりましたが…。
あと、何とも笑える保田さん情報をどうもです!ホントなら、ぜひぜひ見てみたいです(笑)

>333 おさるさん
感想、どうもありがとうございます。その後は読者さんのご想像にお任せという、相変わらずの『逃げ』の手法です(笑)
ハードエロ(笑)。走らないと言うよりは技量不足ゆえに走れないと言う方が正しいのかも知れませんが…
こんな路線でよろしければ、またお付き合いいただけるとうれしいです!
339 名前:すてっぷ 投稿日:2001年12月20日(木)23時51分14秒
>334 もんじゃさん
エンディング。お墨付き(?)をいただき、ひと安心です。
続きは…もちろん、ご想像におまかせします(笑)
次回も楽しんでもらえるようなモノが書けたらと思いますので、
またまた懲りずにお付き合いください(笑)

>335 valueさん
ありがとうございます!物語の背景がバカなので見落としがちですが、実は最初から最後までラブラブな
二人だったんですよね(笑)。
次回も、いしよしになりそうな気配なのですが…構想がまとまれば、また書かせていただきたいと思います。
340 名前:70 投稿日:2001年12月21日(金)01時51分28秒
>334 もんじゃさん >338 すてっぷさん
保田さんの記事、ソースは東スポなので、信頼性はちょっと疑わしいです(笑)
東スポの記者さん、もしかして「ユニットを作ろう!」読んでたのかも?

次回作もいしよしなんですね。今度はどのような世界が吉澤さんを悩ますのでしょうか?(笑)
楽しみに待ってます。
341 名前:すてっぷ 投稿日:2001年12月22日(土)12時26分02秒
>340 70さん
続報、ありがとうございます(笑)。確かに疑わしいですが、真実だと信じてみることにします。
保田さん、どうせなら自作の画で作ってくれれば良かったのに(笑)
次回作、何とかまとまりそうなので多分お見せできると思います…でも、どうなることやら。
342 名前:すてっぷ 投稿日:2001年12月24日(月)20時23分25秒
黄板に、新スレ「Dear Friends4」を立てさせて頂きました。

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