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Time of Blue
- 1 名前:4126 投稿日:2001年10月24日(水)19時14分07秒
- サッカー小説完結編「歓喜の145センチ」第三部
- 2 名前:4126 投稿日:2001年10月24日(水)19時20分48秒
- 第一部「The Cried Red Monster」(赤板)
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=red&thp=999253763
第二部「Zinc White」(白板)
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=white&thp=1001586065
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=white&thp=1003615254
- 3 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月26日(金)07時09分56秒
- 今度こそ、青だろうと見当つけたら、
見っけたゾ!でも、みんなには内緒…。
- 4 名前:4126 投稿日:2001年10月26日(金)21時02分00秒
- はやっ。
とりあえずスレ確保しました。どうぞしばしご内密に。
- 5 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月29日(月)02時52分12秒
- わ〜い2番のりっ
偶然見つけちゃった。
でも内緒だよね!!
- 6 名前:メンバー(1) 投稿日:2001年10月29日(月)22時23分58秒
- 【GK】
1 高橋 愛 京都パープルサンガ
18 小川 麻琴 順天堂大学
19 村田めぐみ ベガルタ仙台 バックアップメンバー
【DF】
2 大谷 雅恵 コンサドーレ札幌
3 ミカ・トッド 清水エスパルス
5 後藤 真希 レアルマドリード 副キャプテン
6 保田 圭 バイエルンミュンヘン オーバーエイジ
13 紺野あさ美 コンサドーレ札幌
20 斎藤 瞳 アルビレックス新潟 バックアップメンバー
- 7 名前:メンバー(2) 投稿日:2001年10月29日(月)22時33分56秒
- 【MF】
4 吉澤ひとみ 浦和レッドダイヤモンズ キャプテン
8 矢口 真里 ボカ・ジュニオルズ オーバーエイジ
10 柴田あゆみ 鹿島アントラーズ
14 石川 梨華 ボカ・ジュニオルズ 副キャプテン
15 戸田 鈴音 コンサドーレ札幌
16 木村 麻美 コンサドーレ札幌
21 新垣 里沙 横浜Fマリノス バックアップメンバー
- 8 名前:メンバー(3) 投稿日:2001年10月29日(月)22時48分25秒
- 【FW】
7 安倍なつみ ユベントス オーバーエイジ
9 松浦 亜弥 鹿島アントラーズ
11 加護 亜依 ガンバ大阪
12 福田明日香 パルメイラス
17 木村アヤカ ヴィッセル神戸
22 辻 希美 FC東京 バックアップメンバー
【スタッフ】
監督 平家みちよ
コーチ 信田 美帆
コーチ補佐 前田 有紀
強化委員 稲葉 貴子
ドクター 小湊 美和
- 9 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月29日(月)23時44分25秒
- 第二部の終了と同時にここにメンバー表を載せるとは!
新垣はアウトか。
- 10 名前:とまときっど 投稿日:2001年10月29日(月)23時58分28秒
- やはり青でしたね、最後は!
って、皆さん、早っ!
- 11 名前:タッカー 投稿日:2001年10月30日(火)06時00分55秒
- 第二部が終了して、しばらくお休みかな? と思うまもなく、第三部の開始!
どんどん進めてほしい反面、終りがコワイ!
- 12 名前:ねぇねぇ名無しさん 投稿日:2001年10月30日(火)18時00分20秒
- 新垣メンバーの運命や如何に・・・
- 13 名前:4126 投稿日:2001年10月30日(火)19時37分02秒
- 「芸術は、悲しみと苦悩から生まれる」(パブロ・ピカソ)
今から約百年前、友人を伴ってバルセロナからパリに移り住んだピカソはロートレックに衝撃を受け、大都会の享楽的な空気に溺れた。
だが友人が恋人との関係がこじれ、精神を病んでしまう。ピカソは彼を伴いスペインへと戻るが、友人はパリへ戻り自ら命を絶ってしまう。
自身もパリへ戻り、友人の借りていたアパートの一室で、来る日も来る日も描き続けた若き日のピカソ。
その絵には、それまでとは明らかな変化が起こっていた。
ウルトラメール・フォンセ。ブルー・アズール。ブルー・ド・プルス。ブルー・ド・コバルト。
青年ピカソは青という青を生み出し、これでもかとばかりにカンバスに叩きつけた。
ピカソにとって青は闇の色。深い青は、限りなく黒に近い。
そして、信じられない行為を。
友人が自ら生を絶った原因である恋人を、その手に抱いたのだ。
- 14 名前:4126 投稿日:2001年10月30日(火)19時52分41秒
- 罪悪と絶望の青にピカソが見たのは、自らの深淵。生と死。
その時期に描かれた自画像には青の背景に、こけた頬、鋭い眼差し、二十歳の青年とは思えない青白い顔の苦悩する一人の男の姿がある。
バルセロナに戻っても、ピカソはその青で最下層の人々を描き続ける。
友人の死、その恋人の聖と俗、そして自らの弱さと愚かさとを消化し、昇華させた『LA VIE』へとたどり着く。
闇に怯え、光に背を向け、ようやく青の呪縛から解放されるまでの三年間。
俗に言う、ピカソ、青の時代である。
- 15 名前:4126 投稿日:2001年10月30日(火)20時09分39秒
- 青春・朱夏・白秋・玄冬。
青春という言葉は人の一生を四分割させた中国古来の哲理、五行から来ている。
青は東の色、春の色。
洋の東西問わず、青とは若さの象徴である。
若さとは迷いと苦しみの時。
だがこの青を越えねば盛りの時、実りの時も訪れない。
サッカーが芸術であるのなら、幾多の悲しみ、苦しみとを踏み越えてこそ成熟の時を迎える。
さあ、うら若き青のイレブン、日本五輪代表。
戦え。開拓者の地にその名を刻め。
始めよ、黎明の空のごとき青の時代を。
- 16 名前:4126 投稿日:2001年10月31日(水)03時50分38秒
- 「お、出てきた」
スタンドの石川がラクダ色のコートのえりを立てる。9月の豪州は早春にあたり、漆黒の夜空の下はまだ肌寒い。
キャンベラ・ブルーススタジアム。
アンセムに乗って緑のピッチを進むフェアプレーフラッグの黄色、審判団のグレー、そして二列の帯、緑と青。
青の列、日本代表。先頭をゆく4番の左腕に真っ赤なキャプテンマーク。必勝を期して伸ばした髪は目指すメダルと同じ金色に輝く。
その背中に続く5、11、8、17、3、7、9、2、10。最後に山吹色の18。
最後の最後までもつれた正守護神争いを制したのは、小川麻琴だった。
- 17 名前:4126 投稿日:2001年10月31日(水)04時08分55秒
- 高橋はベンチに座って入場行進を見ていた。
眼鏡をかけた平家監督がいる。その隣に信田。ともに表情は堅い。
逆に後半のその時を待つ保田はリラックスしている。その隣に木村麻美、戸田、村田、斎藤の順。
そして平家が最後の最後まで待ち、ベンチ入りの七人に加えた12番のユニフォーム。
今日は9月14日、豪州の真上にある日本も当然9月14日。
高橋は自らの転機が誕生日に訪れるジンクスを知っていた。だからこの試合に出られるのは自分、そう信じて疑わなかった。
だが今回、バースデーマジックは届かなかった。呪われたゴールキーパーの前に。
- 18 名前:4126 投稿日:2001年10月31日(水)04時23分29秒
- 「石川さん」
新垣がホットコーヒーを買ってきた。さすがオージーサイズ、でかい。
それ以上にでかいのは新垣のショックではないだろうか。
アジア予選最終戦で退場処分、この試合に出られない石川。バレーボールチームに合流、シドニーにいる辻にはベンチ入りできない理由がある。
新垣里沙にはそれがない。サードキーパーの村田めぐみや、ここにいさえしない福田明日香がサブメンバーに名を連ねているというのに。
泣きたくなる自分に新垣は問いかける。今は人生で一番辛い時?
安っぽい涙など流してはいけない、そうやってしつけられてきた。
- 19 名前:4126 投稿日:2001年10月31日(水)04時45分37秒
- だがもっと大きなショックを受けているであろう紺野あさ美は、今この場にいない。
昨日の練習後、新垣と同室のホテル。紺野はナイフでスパイクの泥をこそげ落としていた。別段珍しい光景ではなく、新垣はベッドに座って英語のポケモンを見ていた。
「あっ」
そんな大事とは夢にも思わず、そちらを見た新垣は失神しかけた。
紺野が足元に広げた英字新聞がおびただしい朱に染まっていたのだ。
へばりついた泥を落とそうと知らずに力が入り過ぎ、滑ったナイフの先端が右足を通過したのだった。傷口がピンク色だったのを思い出すと今でも寒気が走る。
- 20 名前:4126 投稿日:2001年10月31日(水)05時01分34秒
- 病院へ直行、12針を縫う。十日間の安静。トップコンディションに戻るまでになお十日として、紺野のオリンピック出場は絶望となった。平家の評価は高まるばかりで、右サイドバックのポジションをつかみかけた矢先だったのに。
それでも皆、幸運だったねと口を揃えたものだ。
紺野が自らを傷つけたのは右膝上6センチ上。一歩間違えたら選手生命の危機なんてこともありえたのだから。
だが当の本人にそんな気休めが届くわけもない。紺野はベッドにこもり、食事にもまるで手をつけていない。
せめて紺野に勝利を――皮肉にもチームは一層団結した。
- 21 名前:4126 投稿日:2001年10月31日(水)06時03分42秒
- 緑を基調にしたユニフォーム、カメルーン。
ツートップは安倍のチームメート、パトリック・シャクボマと顔に張りついたような笑みが不敵なフランシス・カズキ・エナリ。
DFリーダーはアフリカのキャプテンと呼ばれるステファン・イカリヤ、GKはジョセフ・カトチャーン・ペッのオーバーエージ。さらに切り札とも言えるもう一人。
「あいつですよ」
加護があごで指したのは、編み込んだ髪にじゃらじゃらとビーズをつけたボランチ、アンドレアス・シノラ。
「ワールドユースでガーンと」
口の端を引っ張り、歯が一本欠けた個所を矢口に見せた。
- 22 名前:4126 投稿日:2001年10月31日(水)06時22分44秒
- 「円陣組むよー」
伸びた髪を無造作にひっつめた姿はどこかジゴロめいて、マスキュランなたたずまいを見せるキャプテン吉澤。
円陣が組まれる。吉澤から時計回りに大谷、柴田、矢口、松浦、安倍、ミカ、加護、小川、後藤。
「大会緒戦です。千里の道も一歩からと言います。手堅く勝って、幸先のよいスタートと参りましょう」
安倍と矢口がいるためつい敬語が出てしまう吉澤。オーバーエイジは今回正副主将就任の意思がないことをあらかじめ平家に伝えていた。キャプテンやりたがりの矢口を含め。
「それではがんばっていきまー…」
「しょい!!」
- 23 名前:4126 投稿日:2001年10月31日(水)09時04分21秒
- 勝て。勝てないならいっそ負けろ。
平家が刺激的な言葉で選手をたきつけたのには理由がある。
アフリカのチームは一度波に乗ると手がつけられない。逆に出鼻をくじけばライオンもハリコのトラだ。
GKを高橋ではなく小川にしたのも、よりマイペースに仕事ができる小川のほうが対応できると考えたためだ。
勝ってスッキリと次に臨むか、さもなくば負けて捨て身になったほうがよい。
ただし根性論ばかりではない、平家とスタッフたちはこの不屈のライオンたちを、それこそしゃぶり尽くすように研究してきた。あとは選手がそれをどこまで生かせるか。
- 24 名前:4126 投稿日:2001年10月31日(水)10時11分01秒
- カメルーンのアフリカ予選のデータを集計すると、いろんな特徴が浮かび上がってきた。
時間帯ごとの得失点データを見ると得点は時間が経つほど増え、後半30分過ぎにピークを迎える完全な右肩上がり。失点は前後半の開始と終了の10分間に集中している。
そこから浮かび上がったプランはこうだ。
後半10分までに三回は来るであろうチャンスを二つ決める。その後来るであろう総攻撃を1点以内で凌いで2ー1で逃げ切る。
ちなみにこれとまったく同じ作戦でカメルーン五輪代表を破ったチームがいる、寺田光男率いるナイジェリア五輪代表だ。
- 25 名前:4126 投稿日:2001年10月31日(水)11時13分31秒
- ジャンプ一番、シャクボマへのロングパスを吉澤が頭ではたき落とす。矢口がフォロー、すぐさま右のオープンスペースへ。
右ウイングの木村アヤカがいた。一度タメを作り、クロスボールを安倍へ。
安倍、ゴール前でイカリヤを背負いながら胸トラップ、グラウンダーをゴールと正反対の方向へ。
吉澤のカットと同時に、猛然とカメルーンゴールを目指したリベロ後藤がそのままの勢いで一撃を見舞う。GKペッの正面を突いたが、これがこの試合のオープニングシュート。
すぐさまパントキックを入れるGK。最終ラインに入った吉澤が冷静に対処した。
- 26 名前:4126 投稿日:2001年10月31日(水)12時47分18秒
- Wユースで日本から先制ゴールを奪ったエナリがワントップ、シャクボマはやや引いた位置からゲームを作ってくる。前でフラフラ泳ぐエナリはゾーン、あまり動かないシャクは吉澤と矢口が見る。
抜群のバネと年齢に似合わぬ老練なプレーが身上のエナリ、安倍曰く「なにもしないことがフェイントになる」ほど底の知れない思考を持つシャクボマ。
ボランチのシノラは加護の前歯を折ったハードマークで松浦にへばりつく。
もう30年以上も一緒にやってきたイカリヤとペッは親分格のイカリヤ、場を和ませるペッがチームのアメとムチの役目を果たしている。
- 27 名前:4126 投稿日:2001年10月31日(水)19時01分08秒
- 吉澤、シャクボマと1on1。右にフェイクを入れてから左へ抜けるシャク。
なめんな。吉澤は読んでいた。ショルダーチャージ、ぐらりと揺れるシャクの上体。
「なぬっ」
完全にバランスを崩したはずのシャクが起き上がりこぼしのように再浮上。あっけに取られた吉澤を抜き去った。
左足、ふんにゃかとしたロブに力強いベクトルを描いて飛びつくエナリ。フリーで放ったヘッドを小川、倒れながらつかむ。ボールをクッションにして腰への負担を弱める。
「後藤、ノーマークにすんな!」
だって圭ちゃん、あのエロ小坊主、チチ揉んできやがったんだよ。
- 28 名前:4126 投稿日:2001年10月31日(水)20時05分23秒
- ふーっ…小川がため息をつく。ヤマをかけて倒れたところにナイスパスが来た感じだ。
実は少し風邪気味なのを卵酒で治した。
寒い。風が強い。寒さは腰痛の大敵、しかしこの日の小川には強い味方があった。
大学の宿舎に届いたそれを見て笑い、そして涙した小川。
腹巻き、しかも千人針が縫いつけてある。
「麻琴ガンバレ! 絶対応援に行く 友人一同」
千人針は出征する兵隊に玉が当たらぬよう千人の女性が一針ずつ縫いつけてゆくもの、GKは自分に球を当てるのが仕事。裏返して、肌着の上から巻いた。あったかかった。
- 29 名前:4126 投稿日:2001年10月31日(水)20時20分07秒
- 「小川!」
吉澤が開きながらパスを要求する。
素早く立ち上がった小川、遠投を試みて、やめた。
焦るこたぁない、時間はまだたっぷりあるわけだからさ。自分勝手な早打ち男は女に嫌われるぜ、ジゴロのあんちゃん。
「後藤!」
吉澤に背中を向け、アンダースローで短く出した。
なんだよ、それ…袖にされた吉澤がぶんむくれた。
- 30 名前:4126 投稿日:2001年10月31日(水)21時13分47秒
- 互いに一発ずつパンチは見舞ったものの、ファーストマッチということもあり全体的に動きは固く、小さなミスも多い。
こんな時重宝するのはやはりベテラン。
カメルーンならイカリヤとペッ。歴戦の勇者、二人とも頭は薄くなったが中身までは衰えていない。後方から若手を叱咤激励する。
日本は当然安倍、そして矢口。明るく声をかけて回る。
かと思えば、時折矢口が安倍のそばに寄っては何事かささやき、見つめあっては笑顔を交わし…幼なじみの悪友二人が次にどんなイタズラをしでかしてやろうか相談しているかのようだ。
- 31 名前:4126 投稿日:2001年11月01日(木)10時17分26秒
- 左サイドで加護が持つ。逆サイドを見て、我に返る。
せやった、ののはおらんねや。
知らず知らず辻を頼っていた自らに愕然となる。自分でなんとかせな。
ドリブルで中に切れ込む。松浦にはたき、リターンをもらおうと斜め前へ。イカリヤに入られた。
退路を断たれた松浦、シノラと向き合う。この荒っぽいマーカーに手を焼いていた。
松浦、左を見る。下見て、右見て、ぐるーっと黒目を一回転。
視線でかけるフェイントに惑わされたシノラを抜き去る。右足ミドル。ペッがトスで逃れた。
「いいよ松浦!」
安倍の声に笑顔でこたえた。
- 32 名前:4126 投稿日:2001年11月01日(木)12時29分50秒
- 右のコーナーフラッグに柴田あゆみが向かう。石川のいないこの試合、セットプレーの全権を任されている。
左ハーフのレギュラー、そして堂々の10番。いずれも飯田の離脱によとてタナボタ式に得たものだが、ピッチに立てば関係ない。フリエ消滅、横浜FCでの苦闘、北京ユニバーシアードの金…質はともかく、くぐり抜けてきた修羅場の数なら誰にも負けはしない。
ゴール前に安倍、松浦、矢口、加護。ショートにアヤカ。自軍ゴール前から後藤、吉澤も上がってくる。カメルーンはツートップも下がり、全員でゴールを固める。
柴田、左足。曲げてきた。
- 33 名前:4126 投稿日:2001年11月01日(木)18時24分34秒
- 直接ゴールを狙うかのような強烈なカーブのかかったボールがニアへ。後藤が頭から飛びこむ。
カメルーンGKペッ、一瞬早くコンタクト。パンチでクリアされたボールはそのまま右タッチラインへと転がる。
「おらあっ」
ライン上、大谷魂のスライディング。アヤカが拾い、今度はファーの吉澤を一直線に狙う。イカリヤが読んでいた。禿げ上がった頭でかき出す。
エリア手前ゴール正面で加護が拾う。
それを背後から追い越す青い影。のの! 迷わずはたく加護。
だがそれが辻であるはずがない。
矢口真里、左サイドを深々とえぐる。
- 34 名前:4126 投稿日:2001年11月01日(木)18時42分41秒
- ナイジェリアとの壮行試合、あれは貴重なレッスンだった。
とにかく、バカ高い身体能力にキリキリ舞いさせられたがその身体能力ゆえ連携をおろそかにし、個人プレーに走るきらいがある。同じブラックアフリカンのカメルーンもしかり。
寺田は元教え子たちに無言のレッスンを施した。多くの人間で、しぶとく攻めろ。そうすれば必ずボロを出す。
- 35 名前:4126 投稿日:2001年11月01日(木)19時18分22秒
- 見るまでもなく、矢口にはゴール前の様子が手に取るように分かる。
後藤と吉澤が両ポストに敵を引きつけた上、左右へ揺さぶった。真正面に大穴が空いているはず。
自分と同じイマジネーションを持つ者がいるのを信じ、チップキック。
下がりながら背番号7が飛ぶ。最も自由を与えてはいけないはずの安倍をフリーにしては、情状酌量の余地はない。
ゴールラインと直角に突き刺すヘディングシュート。見事にカメルーンゴールのど真ん中に叩きこんだ。
前半26分、日本、先制。
「いもなっちー!」
その背に矢口が飛び乗った。
- 36 名前:4126 投稿日:2001年11月01日(木)20時05分35秒
- かたや、うなだれるカメルーン。
「オイッス」
くぐもるようなイカリヤの声。
「…オイッス」
小さな返事がいくつか聞かれる。
「声が小さい。もいっちょ」
イカリヤは呪術師でもある。アフリカの人々は他人に自分の本当の名前を知られ、呪術師に呪い殺されるのをいまだに本気で恐れているからだ。それだけ彼らは自然や神や悪魔と近い場所で生きているのだ。
イカリヤは繰り返し呪文を叫び、また叫ばせ、心から弱気の悪魔を追い出そうと試みる。
「オイッス」
「オイーッス!」
「オイッス」
「オイーッス!」
ようし、次いってみよう。
- 37 名前:傍観者 投稿日:2001年11月01日(木)21時59分25秒
- 石川10番じゃないんですね。なんか残念だな。
- 38 名前:4126 投稿日:2001年11月01日(木)23時13分40秒
- >>36
恐れているからだ、のからだいらんな。文章変。
>>37
今の石川なら10の仕事をそこそここなせてしまうでしょう。やはり10番は似合わない人間に背負わせてオタオタぶりを楽しむってもんで
- 39 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月02日(金)01時23分35秒
- ちょいと前線のポジションが分かりにくい。
11に加護、7にアヤカは書いてある。
で、9が安倍で10が矢口?そうなると8が松浦?
それとも9松浦10安倍8矢口かな?
う〜んわからん。
- 40 名前:4126 投稿日:2001年11月02日(金)03時06分50秒
- 流れで分かると思って書かなかったんすがスマソ。8矢口9安倍10松浦。
- 41 名前:4126 投稿日:2001年11月02日(金)07時43分38秒
- 後藤の敷くラインDFはさすが攻撃的だ。クリアするとサイドバックを伴い、ハーフライン付近まで一気に押し上げる。
大谷、ミカとの間隔はやや広め。ブラックアフリカンにもひけをとらない身体能力、そして前で吉澤が効いているからだ。
3バックの背後をカバーするのはキーパーの仕事。
エナリがラインの裏に飛び出した。オフサイドはない。
エナリがキープした瞬間小川が1メートルの距離に。腕を広げ、隙のない構えで詰めていく。本職のストッパーのような冷静さにエナリのほうが動揺する。
鋭い右足の振り、ボールごとエナリをなぎ倒した。
- 42 名前:4126 投稿日:2001年11月02日(金)07時59分19秒
- 「落ち着いてやんなあ」
日本ベンチもやんやの喝采。普通のキーパーならあわてて飛び込んでかわされそうなものだが。
「中学も高校も、紅白戦も組めない小さなサッカー部だったから、キーパーなしのフットサルばかりやってたんだって。インターセプトは得意中の得意だとさ」
うまくなるはずだよ――保田の言葉に高橋が関心する。
正面に回りこみ、なるべくダイビングしないのも冷えた地面の上になるべく飛ばずに済むにはどうするか考えて培ったものだろう。
小川のプレーには小川の、高橋のプレーには高橋のたどった道そのものが反映されている。
- 43 名前:4126 投稿日:2001年11月02日(金)10時17分26秒
- 松浦が胸から落ちる。息ができない。
「松浦!」
大丈夫、必死にジェスチャーする。
石川の代役でトップ下に入った松浦はこの日、カメルーンの中盤の底シノラに徹底マークされていた。Wユースでも加護に仕事をさせなかったエースキラー。
「亜弥ちゃん、矢口さん」
タッチライン際で平家の伝令を受けていたアヤカ。
「ポジションの変更です。矢口さんが10、亜弥ちゃんが7、私が8へ」
まるで逃げるみたいではないか。絶句する松浦に矢口
「点の取れる奴がつぶされたら後のち困るからだろ。任せな、おりゃあ頑丈だけが取り得だからよ」
- 44 名前:4126 投稿日:2001年11月02日(金)12時42分18秒
- さて、このフリーキック。やや左寄り。柴田が狙うには遠すぎる。ファーポストに後藤、安倍、松浦。
笛が鳴る。
「柴田!」
声のするほうへ短く出す。
受けた矢口、今度は左へ。
「おりゃっ」
走りこんだ加護、右足のロングシュート。抑えの効いた低い弾道がゴール左隅を襲う。逆を突かれたペッ、バランスを崩しながらもなんとか右手に当てた。
「くそっ」
詰めていった安倍の頭になにかが降ってくる。あわてて立ち上がり、安倍の手から奪ったそれを頭に乗せる。
(カツラだったのか…でもなんでわざわざハゲヅラを?)
- 45 名前:4126 投稿日:2001年11月02日(金)18時12分02秒
- ロスタイムの表示が出た。
「3分!」
平家がわざと長めに残り時間を叫ぶ。1-0で前半を折り返したかった。
アヤカが右サイドで持つ。深いところにいる松浦に渡し、コーナー付近でキープさせる。
その考えが、松浦にまでは伝わっていなかった。センタリングをシノラが左足でクリアに。
矢口が、詰めた。
シノラ、その顔面を狙う。
矢口は目を反らさず、あごをくっと引く。
額に当てた。
完全に勢いを殺し、イカリヤが押し上げたDFの裏に落とす。
やや引いていた安倍が飛び込んだ。
ペッの出足を完全に見切り、得意の右足でネットを揺らした。
- 46 名前:4126 投稿日:2001年11月02日(金)18時29分16秒
- 「いもなっちー!」
「いもいも言うな」
矢口と安倍がじゃれあう。
「どうして分かったんですか?」
「えー、なっちなら飛び込んでくれると思ったし」
「だって矢口のやりそうなことじゃん」
笛が鳴った。
前半終了、2-0。
「オイッス!」
「オイーッス!」
ようし、後半戦いってみよう。
ショックの色濃いカメルーンもイカリヤが早めに手を打ってきた。
- 47 名前:4126 投稿日:2001年11月02日(金)19時23分28秒
- 「松浦、なんであそこでセンタリングを上げた」
開口一番、セオリーを無視したストライカーを責める平家。
「いいじゃん、結果オーライで」
安倍がかばうが平家は聞き入れない。
「なっち…安倍が決めてくれたからよかったけど、あれでカウンターを食うこともあるんだからな」
「まあ、見てよ」
矢口が松浦の袖をまくり、続いて自分の背中を見せる。どちらも赤や青に彩られていた。
「蹴るどつくつねる、これだけやられたら仕返しの一つもしたくなるわさ」
保田が眉をひそめる。彼女が一番嫌うのは目的と手段とを取り違えたストッパーなのだ。
- 48 名前:4126 投稿日:2001年11月02日(金)19時42分54秒
- 僥倖ともいえる二点差での折り返しでも気を抜く者はいない。カメルーンは後半、尻上がりに調子を上げるチームなのだから。
そして、カメルーンにはまだ切り札が残されている。点差が開いたことでその投入が早まることもありうる。
「まずは初めの10分、大切にいこう。後藤は攻撃参加を控えて。DFだけで楽しめるはずだから。吉澤、シャクのマークを外さない。保田、すぐアップ。いつでもいけるようにして」
再びピッチに姿を表した日本五輪代表、カメルーンベンチを見る。
やはり、な。
入念なアップを行い出番を待つ9番は老雄ロジェ・シムラ。
- 49 名前:傍観者 投稿日:2001年11月02日(金)22時47分19秒
- >>38
なるほど。深いですね。おれはサッカーは詳しくないんですけど
この小説は楽しく読ませてもらってます。これからもがんばってください。
- 50 名前:4126 投稿日:2001年11月03日(土)02時29分30秒
- 「出てきたな」
「来ましたね」
石川と新垣もそれに気づいた。
なぜかこのチームには彼のファンが多い。いや、全員がそうだと言ってもいいかも。
それだけ彼は偉大である。カメルーンの名物ストライカー、ロジェ・シムラ。
歳こそイカリヤやペッより下だが、瞬発力やダッシュを繰り返すスタミナを要求されるFWのポジションを考えれば、代表にいることはおろか現役であるのすら脅威的である。
なのにこの男はいまだバリバリ。後半出場してはやる気のないプレーに終始すると思いきや、たった一瞬で勝負を決めてしまう怖さを秘めている。
- 51 名前:4126 投稿日:2001年11月03日(土)10時15分44秒
- 開始30秒。後藤、矢口、安倍、加護と渡って最後は吉澤。35メートル砲がカメルーンゴールのクロスバーを派手にぶち鳴らす。
かと思えばハーフラインを越えたミカのクロスパスにアヤカが反応、右足でジャンピングボレー。ペッの足に当てる。
柴田の左CKを大谷が落とし松浦がシュート。ネットを揺さぶるもオフサイド。
日本、平家の言葉など忘れたかのように激しく攻め立てる。
カメルーンの反撃、シャクボマが左から上げたセンタリングをエナリが狙う。
「どけオラッ」
ボールごとエナリの横っ面を張り倒す小川のパンチング。
- 52 名前:4126 投稿日:2001年11月03日(土)12時33分55秒
- シムラが仕上げに入る。保田もいつでもいける状態に。
志村が緑のシャツをパンツに入れたところで保田もシンガードを装備する。交代の申請も二人同時だった。
ボールデッド。
「いやーっ出たくないーっ」
嫌がる加護を無理やり矢口が引きずり出した。
遅いよ。ごめんごめん。三人目の悪ガキを安倍が出迎えた。
保田が3番、ミカが11番。
同時に松浦も木村麻美に代え、守備の強化を計る。平家の考案した「シムラシフト」である。
- 53 名前:4126 投稿日:2001年11月03日(土)18時50分31秒
- 「すみません、シムラさん」
いんぎんに頭を下げるエナリ。
「だっふんだ」
「は?」
「間違えた。だいじょぶだぁ」
この年になっても自分の娘みたいな女と浮名を流すだけあり若い娘っ子は大好物であるロジェ・シムラ。幾度も自らの老いに立ち向かい、そして勝ってきた。
若い時分から自由気まま、やりまくり。イカリヤあたりにはだいぶお灸を据えられてきた。
それでも、継続は力なり。大事なのはやってやって、やりまくり続けること。
シムラはいつしか怪人と呼ばれ、気がつけば周りは彼に憧れてサッカーを始めた若者だらけになっていた。
- 54 名前:4126 投稿日:2001年11月03日(土)19時08分51秒
- 「姉ちゃん」
GK小川が最終ラインの一角に入った従姉とタッチを交わす。
保田、仕切り直すカメルーンの布陣を見ながら伝令を的確に伝える。カメルーン、向かって右からシャクボマ、エナリ、シムラ。
「吉澤、少し右に開いて。左の麻美が引いて吉澤と並ぶ感じ。アヤカはFWに戻って」
中盤が少しいびつになる。後ろが木村と吉澤、前が柴田と矢口。ウイングも下がって安倍の1トップに。
「圭ちゃん、ラインはどんな感じ?」
「引き気味で。3トップの中盤省略でくるからプレスもかかないしね」
ここまでは予定通り。ここから始まる。
- 55 名前:4126 投稿日:2001年11月03日(土)21時49分01秒
- エナリのヘッド。木村麻美が競って小川が正面でキャッチする。
「上がれー!」
カメルーンの攻めがぐっと厳しくなったのをGKは肌で感じている。
これまではシャクからエナリというワンパターンな攻撃が、右サイドにキープできるシムラが入ったことで的が絞りにくくなった。
それでも、まだ決定的な仕事をさせるには至っていない。
シムラのトイメン、日本の左DFが効いているからだ。小川もその背を頼もしく感じている。
「シムラ、後ろ!」
シムラの背後から迫った保田のスライディングタックル。ボールだけを正確に狩った。
- 56 名前:4126 投稿日:2001年11月03日(土)22時03分01秒
- 「ぐあっ」
145センチが宙を舞う。矢口への削りはいよいよ熾烈を極めた。
シノラはファウルすれすれのタックルをカードすれすれに変えてきた。それでも矢口はひるまず、言葉と行動とで中盤をリードする。
見てるか、石川、吉澤。ほんまならあんたらがああやってチーム引っ張らなあかんのやで。平家が心の中で叫ぶ。
「安倍戻れ!」
「なっちそのまんま!」
CK、GKと左DFが違う指示をFWに与える。
「勝手に口出すなよ」
「見な」
センターサークルに立つ安倍。イカリヤが上がれず、カメルーンは三人を残す。2得点の安倍への警戒が強い証拠だ。
- 57 名前:4126 投稿日:2001年11月04日(日)09時06分00秒
- カメルーンのCK、シャクの蹴るボールに小川が手を伸ばす。競りにいくシノラ。つかんだボール、小川がこぼした。シムラが詰めるが後藤がクリアして事なきを得る。
シノラに伸びた右手をつかみ上げる左手。
「なんだよこの手」
保田の手を振り払う小川。
「あいつの髪が目に入ったんだ」
細い三つ編みをいくつも作り、それをビーズで飾ったシノラは頭を振るだけで危険ではある。
「それが向こうの手だろうよ。チョンとつつけば派手に倒れて一発レッド。あんたみたいな単細胞ハメるなんてわけない。矢口見なよ、我慢強いこと。少しは見習いなさい」
- 58 名前:4126 投稿日:2001年11月04日(日)09時23分29秒
- 蹴られまくる矢口にしても当然フラストレーションは高まっている。自分に仕事をさせないのが向こうの役目なのだが、何のためらいもなく足を狙い、それを喜々としてこなすさまには怒りを覚える。
「ケケケ…」
耳障りな笑い声がむかつく。
だが今の自分は若手の見本にならねばならないのでもある。冷静に、冷静に…
「いい加減にしろよ、てめえ」
耳元で囁いても効果はない。ボールのないところでも遠慮なしに蹴ってくる。
柴田のサイドチェンジが頭上を通過する。受けたアヤカが折り返したボール。
シノラが飛んだ。矢口の下顎を狙って。
- 59 名前:4126 投稿日:2001年11月04日(日)09時53分19秒
- 矢口が腰から落ちた。痛みに声も出ない。
「矢口さん!」
日本イレブンが駆け寄る。その額にはぞろりと半月状の歯形が刻まれていた。
「ギャギャーッ!」
口元を押さえ、羽をもがれた蛾のようにもがくシノラ。指のすきまから滝のように赤いものがあふれた。
「うわあ…」
むごたらしい光景に新垣が目を伏せる。
「おーお、我慢強いこって」
「自業自得だ。先に狙ったのは向こうなんだから」
嫌味たっぷりの小川、冷静に受け流す保田。
「バカヤロー!」
前歯がそっくりなくなった口で泣き叫ぶシノラ。矢口はチーム初のイエローをもらった。
- 60 名前:4126 投稿日:2001年11月04日(日)10時16分06秒
- 左DFがディフェンシブな保田に替わったことで、日本の攻撃は右に重点が置かれた。
大谷が持ち上がる。木村とのワンツーで狭いところをくぐり抜ける。
中央の後藤がそのスペースをふさぎに右へ流れ、吉澤が後藤の位置へ。
小川の前に右から後藤、吉澤、保田が並ぶ。
深い位置まで上がった大谷、柴田を狙ったセンタリング。ペッが飛び出してキャッチ。イカリヤから引いていたシムラへ。
「アイーン!」
シムラ百面相、ひるんだ木村をあっさり抜きさった。
右にエナリ、左にシャク。カメルーンのカウンターアタック、手薄な日本ゴールを急襲。
- 61 名前:4126 投稿日:2001年11月04日(日)13時38分41秒
- 「吉澤9(シムラ)! 後藤10(シャク)! 7(エナリ)OK!」
DFリーダーを差し置いて保田が手早く指示を下す。
ここがヤマだ。ここを防げば勝てる。
吉澤が出る。琉球舞踊をベースにしたというシムラのステップに惑わされず、冷静に時を稼ぐ。
シムラ、左にパス。シャクがサイドに流れ、後藤が追う。
打って変わった真剣な表情で後藤と向き合う。一発で上げたボールが後藤の肩をかすめた。
うそっ。
エナリ、どフリー。握り拳を固めて小川が出た。エナリ、早い。飛び上がった小川の足元を抜いた。
「はっ!」
カバーに保田が上空高く蹴り上げた。主審を見て、小川を指し、次いで自分の腕を示す。
主審が、短くうなずいた。
「マコト、キャッチ!」
小川、シムラと競りながら、キャッチング。
- 62 名前:4126 投稿日:2001年11月04日(日)13時42分16秒
- 「どーいう守り方だよ」
「うるさいわね。コンビプレーとお呼び」
「てめえが目立ちたいだけじゃんか」
「小川! 圭ちゃん!」
保田がラインを上げる。
心臓病のくせに、心臓に毛が生えた背番号6を、小川が目で追う。
遠くからずっと目標にしてきたその背を。
姉ちゃん、楽しいよ。
サッカーがこんなに楽しいの、久しぶりだよ。
「うおおおおっ」
久々の大遠投。
- 63 名前:4126 投稿日:2001年11月04日(日)14時21分37秒
- 右タッチをボールが切れる。シュートを防がれた矢口がシノラをにらむ。その目を見れないシノラ。
故意か、事故か。それを知るのは矢口以外にはない。退場にならずに済んだのは不確定な要素の多い空中戦だからで、それを考えるとなにかが見えてくる気がしないでもないのだが…真相は闇の中。
「マサオ!」
タッチに立つ大谷にボールを要求する矢口。トラックで弾ませて首を横に振る。
「チェンジ!」
片やゴール前、ここにいてはいけない山吹色のユニフォームが。
「もう1点入れりゃ終わりだろうが」
小川の侵入に戸惑うカメルーン。
- 64 名前:4126 投稿日:2001年11月04日(日)14時59分30秒
- おあつらえ向きの空気圧のボールを手に矢口、助走開始。ラインのはるか手前でボールを地に沈ませる。一回転、二回転。
「せやっ」
前転スロー、ゆったりと弧を描いてファーへ。
小川が飛ぶ。つられてGKも飛び出す。両者タイミングが合わない。
抜けてきたボール。フリーの保田、頭で中央に戻す。
三たび安倍。イカリヤの目前、倒れながら左足で抜いた。
小川保田のハイタッチ。幼き日、近所の駄菓子屋を荒らしまくったコンビそのまま。
「いもー、いもなっち」
「ああいもですよ。悪いか」
ハットトリックを矢口が祝福した。
- 65 名前:4126 投稿日:2001年11月04日(日)15時08分04秒
- 後半33分、ダメ押しとも言える3点目に声も出ないエナリ、シャク、シノラ…魂を抜かれた若きライオンたち。文明社会に、自分たちより数段上手のエコノミックアニマルたちを見た。
「オイッス」
返事はない。
「オイッス!」
もはや声も出ない。イカリヤは若いチームの限界を思い知り、短く吐き捨てる。それは事実上の降伏宣言。
「ダメだこりゃ」
- 66 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2001年11月04日(日)15時59分07秒
- 保田すげーな。一気に流れを引き寄せてるじゃないの。
保田のリーダーシップが効きまくってるね。
この一戦は完全にオーバーエイジがゲームを引っ張ってた。
矢口は相変わらず人と違うことをするし、安倍もゴール前に強くなった。
次戦はいよいよアルゼンチン。
日本はゲームメーカー石川の復帰。10番で使ってくるんじゃないか。
しかし矢口がイエローカードを一枚もらっているため守備的には使いにくいか。矢口には関係ないかな。
チャムがいよいよ登場するけど、どういった守備シフトを敷くかね。
絶好調の保田もどこから使うか気になるところ。
- 67 名前:4126 投稿日:2001年11月04日(日)17時52分25秒
- 「集中しろよ集中ッ」
コーチャーズボックスで声を張り上げる平家。柴田を下げ戸田を入れて逃げきり態勢に。
シムラがタバコを吸いたいのを我慢して突破を計る。後藤がカバーに入り、小川が飛び出す機会を伺う。
保田がかわされた。小川が前のめりに。
「出るなっ」
後藤のタックルをやり過ごした、シムラのループシュート。ゴールラインで粘った小川、平行移動。頭の上でつかんだ。
タイムアップの笛が鳴る。勝利の喜びを、地面にボールを大きくバウンドさせて表現した。
- 68 名前:4126 投稿日:2001年11月05日(月)03時36分27秒
- 3-0。内容のみならず大差をつけての勝利は、リーグ戦であることを考えればこの上ない滑り出しであった。
チームメイトのシャクボマに安倍が寄っていく。明暗を分けた二人だが試合が終わればまた元の友人である。
ピッチの上だというに早くも一服つけだしたシムラのもとへ加護が寄っていき
「マネできるんですよ」
と彼のゴール後のキメのポーズをそっくり再現してみせた。
本当は勝って実物を見せたかったが仕方ない。そしてまたこれで一線を退くつもりもない。
「アイーン!」
オリジナルは、迫力が違った。
- 69 名前:4126 投稿日:2001年11月05日(月)03時48分03秒
- 「矢口」
平家の顔に笑顔はなかった。
「あれ、わざとだろ」
確かめるまでもない、相手の前歯を根こそぎ叩き折った一件だ。
「あの場面で赤は出ないよ」
ワールドカップやオリンピックでは審判もまた見られている。予選リーグの働きで決勝トーナメントの笛を吹けるかが決まってくる。
レッドカードを出すのは審判にとっても勇気のいる行動で、間違えた提示をすれば試合をぶち壊してしまう。その決断を一瞬で求められる、しかもあの場面では矢口も傷んだ――一発退場はまずない。矢口はそれを知っていた。
- 70 名前:4126 投稿日:2001年11月05日(月)04時01分07秒
- 「なんで故意にラフプレーを仕掛けたか聞いてるんだ」
フェアであれ、平家は常々そう説いてきた。自らも現役時代はさんざ削られ、悪質なタックルで選手生命を脅かされるのがどれほど愚かしいか身を持って知っている。
「みっちゃん」
矢口はズレを感じずにはいられない。
アルゼンチンに渡って鮮明に感じたのは選手がサッカーではなく、喧嘩をするためにグラウンドにいること。一度後頭部に頭突きを食らった時などなぜ仕返さないと矢口が叩かれた。
「次やったらメンバーから外す」
矢口がベテランでなければ、予告なしにメンバーを外したろう。
- 71 名前:4126 投稿日:2001年11月05日(月)04時14分59秒
- もっとすごいことになっているのが小川と信田。
「調子にのんなよ」
信田が口の端を切った小川の前髪をつかみあげる。
「あんたなんか、次の試合でお払い箱だ」
体育会系嫌い、小川の本質がここにある。
上級生も下級生も友達みたいな環境で育ってきた小川には、ただ自分より年を取っているだけでいばっている連中が理解できない。
それが爆発したのが大学に入ってすぐ。推薦ではなく一般入試で入った小川はコーチもいないBチームに入れられた。Aチームには、どう見ても自分よりヘタクソなキーパーがゴロゴロしていた。上級生というだけで。
- 72 名前:4126 投稿日:2001年11月05日(月)04時36分22秒
- 試合に出せと直訴した。生意気な一年、しかもBチームのくせに――たちまち目をつけられた。
因縁をつけてきた先輩を殴った。今度は部室に呼び出された。
格技室に忍び込み、木刀を手頃な短さに切り落とした。
真夜中、五人の先輩が待つ部室。まず石を投げて蛍光灯を割った。暗がりに慣らした目で、狭い部室の壁にぶつからない長さにした木刀をぶん回した。
相手の手の甲を、腕を、肩を砂のように砕いた。
不名誉な暴力沙汰は1対5の正当防衛として表面化せず。附属病院に運ばれた五人のGKは二度と部に戻らず、居座った小川が正位置を奪った。
- 73 名前:4126 投稿日:2001年11月05日(月)04時54分09秒
- そして今、体育会の権化のような信田が目の前にいる。自分のような存在を許容できない相手。
身に降る火の粉は払う、たとえ手を焼かれようとも。
再度襲う張り手をつかみ取り。もう片方の腕も封じ、床にねじ伏せる。もがく腕にひざを乗せた。
「形勢逆転てか」
小川が信田の首に手をかける。
「大学で習ったんだ。頸動脈って10秒絞め上げるだけで頭がパーになるんだって。パーってどんなかな、楽しみぃ」
実験、実験♪ 指にゆっくり力を込める小川。声も出ない信田。
「小川、取材だぞ」
高橋の声に、首にかけた手を離す。
「命拾いしたな」
- 74 名前:Result 投稿日:2001年11月05日(月)05時22分26秒
- 日本3-0カメルーン
前半 2-0
後半 1-0
SH 8-12
GK 小川
DF 大谷
ミカ
後藤
MF 吉澤
矢口
松浦(後12木村麻)
柴田(後35戸田)
FW 安倍
加護(後12保田)
木村ア
得点
前26 安倍(矢口)
前44 安倍(矢口)
後33 安倍(保田)
警告・退場
矢口(警・ラフプレー)
Woman of the match
安倍なつみ(日本)
- 75 名前:4126 投稿日:2001年11月05日(月)20時59分37秒
- 「Nacci,Nacci,Nacci!」
「Old is beautiful」
地元誌も日本の活躍を大々的に取り上げていた。
最も高い評価を得ていたのはやはりオーバーエイジの三人。中盤を完全に掌握し全得点をお膳立てした矢口、敵エースを完封した上DF全体を引き締めた保田、そしてゴール前で抜群の勝負強さを発揮した安倍。経験の差を見せつけ、主役のはずのU23選手の存在はすっかりかすむ結果となった。
だが日本の名が一面のトップを飾ることはなかった。
さらにでかいことをやってのけたチームがあったのだ。
- 76 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2001年11月05日(月)21時01分40秒
- ちゃむ!!!!!
- 77 名前:4126 投稿日:2001年11月05日(月)21時19分23秒
- 「ほんまは2-0でも勝ててんけど、点が多く入ったほうがおもろいやんか」
ブラジルを3-2で下したナイジェリア監督の談話である。
さらに日本以外のアジア勢の健闘も光った。
韓国はモロッコを4-2で撃破。リ・アキナ、3アシストを記録。
クウェート、スペインの猛攻を凌いで0-0に持ち込む。
苦戦したのがアルゼンチン。10人のユーゴスラビアに手こずり、終了間際のPKをガブリエル・ヒロミストゥータが決めて1-0。優勝候補としては不安なゲームに。
その他の結果は以下。豪州1-0ルーマニア、米国0-0イタリア、フランス2-0コロンビア。
- 78 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2001年11月05日(月)21時29分53秒
- あら?
ちゃむはいいとこなしやったんか?
- 79 名前:4126 投稿日:2001年11月05日(月)21時51分45秒
- ま、これから×2。
- 80 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月05日(月)23時45分05秒
- アルゼンチンの緒戦って、いつもそんなもんだよね。
- 81 名前:4126 投稿日:2001年11月06日(火)10時18分28秒
- さて、紺野あさ美である。
試合の前日、用具の手入れの際の不注意で右ひざ上を12針縫う大怪我を負い、今大会の出場が絶望となった紺野。
診断の結果を小湊から言い渡されると、淡々とそれを受け止めた。
強い子だなと安心していたらそのまま自室にこもり、食事にも手をつけない陰遁生活に入ってしまったのだから女の子は分からない。
「せめて食事ぐらいは摂らせないと…」
「メシ食ったら試合に出られるようになるんか。違うだろ」
小川だった。
「なんもしてやれないんだったら、したいようにさせてやれよ」
- 82 名前:4126 投稿日:2001年11月06日(火)12時20分52秒
- 紺野が怪我をした当夜にもこんなことがあった。
矢口が突き放すように、紺野本人を前にしてではないが、プロ意識の欠如を説いた時こう反論した。
「控えが一人いなくなっても関係ねえよ」
「紺野一人の問題じゃない、どれだけの人間がこの事で迷惑こうむるか分かって言ってる?」
「サッカーチームじゃん、勝てばトントンだろうが」
相変わらず口は悪いが、小川はこの時も紺野をかばっていた。それが分かったから保田も口をはさまなかった。
暴君に、変化の兆しが見える。
- 83 名前:4126 投稿日:2001年11月06日(火)19時11分33秒
- 午前二時。むっくりと体を起こす紺野。
寝入る新垣を起こさぬように忍び足でトイレに入る。
出てくるとテーブルに並べたペットボトルの封を切る。現地の硬水でお腹を壊しては元も子もないので、譲ってもらった日本製のそれを無理にでも飲み干す。空腹を紛らすのと、老廃物を少しでも排泄するために。
それが済むとまた尿意を感じるまでベッドでじっとしている、右手は患部に当てて。
人の右手からは治癒のオーラが出ていて痛い場所に右手が伸びるのはそれを無意識に利用しているから、手当てという言葉もそこから来たと聞いたことがある。
- 84 名前:4126 投稿日:2001年11月06日(火)19時25分39秒
- 怪我をした猫が何も食べず動かないでいることがある。
食事をすると食べたものを消化するために血液は胃の周辺に集中する。腹の皮が張ると目の皮がたるむと言われるのも脳が一時的な血液不足に陥るためだ。
猫は断食で消化を促す分の血を全て患部に送り込み、通常よりも早く傷を治してみせるのだ。
紺野もそんなやり方で傷が治ると頭から信じているわけではない。しかしまともな方法では間に合わないことだけははっきりしている以上、思い切って「大自然の知恵」に頼ることにした。ワラにすがる思いで。
泣いてる暇も、迷っている暇もなかった。
- 85 名前:4126 投稿日:2001年11月06日(火)19時40分05秒
- ベッドでも眠れるわけではない。すでに昼も夜もない状態でさまざまなことを考える。
小川には悪い事を言ってしまった。怪我で試合に出られなくのを恐れる彼女に次があるなどと軽々しく言ってしまい、反発を偏屈で変わり者な性格のせいにした。
試合に出られないのがどれだけ辛いか、自分の身に厄災が降りかかってみて初めて思い知る。
罰が当たったのだろう。自分の無神経さを戒めるために、あの子が私の足を傷つけたのだ。
証拠がある。紺野が怪我をしたのは右足のひざ上なのだ。
- 86 名前:4126 投稿日:2001年11月06日(火)20時34分59秒
- 伏龍。
水中深く潜り、天へ昇る時を伺う龍の姿は、伏して傷の癒えるのを静かに待つ紺野と重なる。
それは気の遠くなるような時間。にもかかわらずそれをやり遂げるつもりでいる。
知っているからだ、最後まで生きるのをあきらめなかった命があったことを。
小さな生命をその手にかき抱き、それでもなにもしてやれなかった三日間。その記憶と現在の紺野あさ美とを切り離して考えることはできない。
獣医学部生としての紺野も、サッカー選手としての紺野も、すべてここから始まっているのだから。
- 87 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2001年11月06日(火)21時31分21秒
- 都並がんばれ!!
- 88 名前:4126 投稿日:2001年11月06日(火)22時12分53秒
- 高校受験を控えた中三の晩秋。金曜日だった。
塾の帰り、CDショップを回った後、いつもと違う道を選んで帰ったのは単なる気まぐれ。
いつもと違う曲がり角を折れた時、運命の出会いがあった。
この子をもらってください。
仔猫一匹のためにしては大きすぎる段ボール箱。恐らく鮨詰めだった他の兄弟と、弱々しく鳴く斑猫との運命を分けたものは右前脚。膝から先がないのだ。生まれつきか、考えたくもないがいたずらによるものか。
冬の忍び寄る札幌の夜を耐え切れるわけがない。紺野は仔猫を抱き上げる。助けたいのではなく、見殺せなかった。
- 89 名前:4126 投稿日:2001年11月06日(火)22時46分29秒
- 幸い、急患を引き受けてくれる獣医が見つかった。伊東四朗似のお爺ちゃん先生で、口の中を見たり、注射を打ったりしてくれた。
「肺炎だ。今晩が峠だね」
本当はこの段階ですでに処置なしだったのだと後で聞かされた。多産の犬や猫には必ず一匹はこんな弱い子がいる。生存競争を勝ち残れないみそっかすが。
あえて嘘をついたのは、今にも落涙しそうな紺野に事実を告げられなかったのと同時に、わずかな可能性を信じたい気持ちもあった。
無数の患畜の中には理屈に合わないような生還劇を見せたものが少なくない。この三本足もその一つだと。
- 90 名前:4126 投稿日:2001年11月06日(火)23時00分56秒
- 紺野家はパニックに陥った。成績優秀、スポーツ万能、反抗期すらなかった自慢の娘が夜遅く帰宅した途端部屋に閉じこもったのだから。受験ノイローゼ? 勉強しろと口やかましく言った覚えはないのだけれど。
とにかくあったかくすること。紺野は頭から毛布をかぶり、三本足を包んだ。
ミルクも飲ませたがすぐに吐いた。下痢もした。紺野の体臭と入り交じり、部屋は異様な匂いに満たされた。
もうダメかもしれない。鳴き声が小さくなるたび、指に骨が当たるたびにそう思った。
いや、紺野は首を横に振る。
私がおまえを絶対に守ってあげるからね。
- 91 名前:4126 投稿日:2001年11月06日(火)23時11分58秒
- 昼と夜も分からなくなった頃、信じられないことが起こった。
紺野は三本足と話せるようになっていた。向こうの意志表示を読み取るだけではない、もっと込み入った話が可能になっていたのだ。
足は初めから一本足りなかったこと。目が開き、生まれて初めて見えたのが眼鏡をかけた男の人の大きな手であること。兄弟は他に六匹で、自分以外の最後の兄弟が拾われた時毛布まで持って行かれて寒い思いをしたこと。
異様な経験だったが、寝呆けていたわけでもない。だって彼はこう言っていた。
僕、早く元気になりたい。いろんな場所を歩いてみたいんだ。
- 92 名前:4126 投稿日:2001年11月06日(火)23時30分43秒
- 紺野は筋ばったこの猫が元気に飛び回る姿を想像もできなかったのだ。
もはや息をするのさえ苦しげ。もういいよ、楽になりな、そう言ってあげたかった。
少女は悟った、絶望の真意を。全ての命が幸せになれるわけではないのを。
「もしかしたらおまえは、生まれて来ないほうがよかったのかもね」
残酷な問いかけに仔猫は最後の力を振り絞って答えた。お母さん、と。
抜け殻になったそれを抱きしめながら泣き始めた時、永遠とも思えた三日間が終わった。
バイバイ、みそっかすの三本足。
せめて名前くらいつけてあげればよかったね。
- 93 名前:4126 投稿日:2001年11月06日(火)23時42分45秒
- それ以来だ、少し異常な能力が紺野に備わったのは。
三日後の昼食のメニューが突如思い浮かんだり、携帯電話の画面を見る前に誰からか分かったり、ここだと直感した場所にボールが転がり出たり。
あの濃密な三日間が、紺野の第六感を異様に鋭くしてしまったとしか説明のしようがない。
そして尿意ではなく、便意を感じて目覚めたのは午前五時。うっすらと明るくなった空がカーテン越しに分かった。
便器に転がり落ちたのは、宿便と呼ばれる白い個体。
できること、やるべきことはすべて終わった。
- 94 名前:4126 投稿日:2001年11月06日(火)23時57分59秒
- 「別人だねあんた」
天の岩戸を押し開いてようやく姿を見せた天照大神の頬はこけ落ち、顔は青白い。それこそピカソ青の時代の自画像のような紺野の姿に誰もが声を上げた。
「今おかゆ煮てもらってるから、その間に包帯取り換えるわよ」
小湊が薄汚れた包帯を紺野の右足から取り除く。
「こんなことって」
診断ミスだろうか。いや、小湊も三日前の状態を見ていた。一週間で治るかも怪しいほどの深さだったはず。それが、なぜ。
確実に言えるのは一つ。紺野の右ひざ上を走った傷は完全に塞がっている。今すぐ抜糸が可能な状態にあった。
- 95 名前:4126 投稿日:2001年11月07日(水)03時51分50秒
- 「お、病人がフラフラしとるわ」
そうからかわれながらノロノロとボールを運ぶ紺野は見るからにあぶなっかしい。体力が戻りきっておらず、まだ休んでろと言われてるにもかかわらずよく動き、かえって周囲の不安をかき立てる。
かつて石黒にきつく言われていた。あんたはにぶいんだから人の三倍ぐらい気を回しなさい、試合に出られない時にしかできないことだってあるんだから。
「前田さん、これ、ここでよかったですか?」
自分の怪我があと三十分早かったら選手として追加登録されていたはずの前田有紀の指示に従って、こまごまと動いた。
- 96 名前:4126 投稿日:2001年11月07日(水)04時17分49秒
- 「あの、保田さん」
「はい?」
人の話を聞くのも、試合に出られない時にやっとけと教わったことの一つ。自分が動いている時はよく見えないことも、止まっている状態でならはっきりする場合がある。
石黒彩は、このドイツ帰りのフルバックをあまり好きではないようだった。人間的にではなくDFに於ける価値観の相違が原因らしい。
ただ保田のマンマークの力だけは認めていた。
話を聞く前に、相手の尊敬できるところを一つ探しなさい。バカにしてる相手の言葉を取り込める人なんていないんだから。
石黒は保田を嫌いながら尊敬もしてたのだろう。
- 97 名前:4126 投稿日:2001年11月07日(水)05時54分27秒
- 聞き上手だな、それが保田の紺野への率直な感想。聞く態度が真剣だし、変なタイミングで腰を折らない。こちらのことをよく理解している証拠である。
頭がいいと聞いていたが、むしろ素直な性格で言われたことを吸収する素地を持っているだけなのだ。
相手が経験や苦労を重ねて培ったものを一度話しただけで自分のものにしてしまう。こういう選手は当然上達も早い。
せめてこの半分でもあいつにこういう美点があったらねえ…小川の顔を思い浮かべ、ため息をつきたくなる保田。
- 98 名前:4126 投稿日:2001年11月07日(水)12時26分59秒
- 「どうしたらいいDFになれますか?」
さすがにこの質問には戸惑った。いいDFとは何?
一定以上のスピードと的確なフィード、ヘッドと当たりの強さは不可欠だろう。精神的には統率力と戦術眼、読みの深さにずる賢さ。機を見て中盤に上がってパスを回すセンス、時にはゴールを脅かすシュート力と大胆さがあれば完璧だろう。
ただしそんなパーフェクトプレーヤーばかりのサッカーは果たして魅力的に映るだろうか。
だから保田は紺野に問い返す。それはどんな生き方をしたいのかという問いにも似ている。
「あなたはどんなDFが目標なの?」
- 99 名前:4126 投稿日:2001年11月07日(水)12時38分05秒
- 「後藤さんなんてすごいですよね」
「あれと自分とを比べたら不幸よ」
確かに後藤はほぼ完璧な選手だ。若いのに経験も豊富で、しかもまだ隠された才能を秘めていてどこまで伸びるか想像もつかない。
ただし後藤が11人いるチームが常勝軍団になれるかというとそうではない。総合力で後藤に劣ってもなにが一芸に秀でた他の10人がいるチームのほうがバランスが取れているし魅力的に思える。
紺野もやはり、その他10人のほうだろう。
「DFがいいんだね。FWとかMFじゃなくて」
「…はい。性格的にも、自分向きだと思いますし」
- 100 名前:4126 投稿日:2001年11月07日(水)12時54分42秒
- ディフェンダーと一口で言ってもセンターバックにサイドバック、ボランチやアウトサイドMFもその一形態と言えるだろう。
センターはストッパーにスイーパーにリベロ、フラット4におけるゾーンもマンツーもやるタイプ。サイドバック/アウトMFにも攻撃型と守備型。ボランチにもつぶし役つなぎ役中盤のリベロ役とさらに細分化できる。
保田は今や本職となったストッパーの他左アウトもできる。紺野の師匠格石黒は典型的なフラット4のDFコンダクター。今の後藤は攻め上がりで個性を発揮するリベロ。明確な色分けは今日かなり難しくはなっているのだが。
- 101 名前:4126 投稿日:2001年11月07日(水)15時18分05秒
- 紺野はどうだろうか。
激しい当たりを柔軟に受け流す体、ボールの出所を事前に知っているかのような勘の鋭さは確かにセンターバック向きではある。
しかし紺野には足という武器がある。辻のように初めの一歩の突発的な速さではなく、ある程度走ってからスピードに乗る走りはサイドバックのオーバーラップに最適だ。中盤で敵の攻撃の芽を摘ませてもなかなかの働きをする。
あとは紺野がどこをやりたいのか、またどのポジションが手薄なのか。
確かに大きく出遅れてしまったがこの長い戦いはまだ始まったばかり、チャンスはまだいくらでもある。
- 102 名前:4126 投稿日:2001年11月07日(水)18時06分21秒
- まあ、一度に多くを言えば混乱するばかりだ。だからヒントを一つあげるに留めておいた。
「DFの一番大事な仕事はなに?」
「敵に点を取らせないことだと思います」
「つまりいいDFとは敵のFWにとってどんな奴?」
「一番嫌な選手ですね」
「だからいいDFがどんなかをよく知っているのは」
「FWの選手」
よくできました。
「ではこのチームで一番強いFWは誰でしょう」
- 103 名前:4126 投稿日:2001年11月07日(水)20時44分49秒
- 「えー? 嫌なDF? どんなだろー? うーん」
安倍なつみは悩んでいる時も笑顔を絶やさない。
「紺野はどう思う?」
それが分からないから尋ねているのだが…
「なっち小さいから背の高い選手は嫌かな。蹴ってくる人も嫌いだし、足が速いやつに先回りされてもイライラするよ」
「あの、申し訳ないのですが、どれか一つに絞っていただけませんか?」
困り果てる紺野に安倍が微笑みかける。
「紺野はどう? どんなFWが苦手?」
「え…あきらめないタイプが苦手ですけど」
「なっちも同じだよ。これでもかって食らいついてくるDFが一番苦手」
- 104 名前:4126 投稿日:2001年11月07日(水)21時11分34秒
- 「あ、すみませんでした。こんなボケた質問してしまって」
「いいよう」
聞きたいことがあればいくらでも尋ねてほしい、それくらいの心積もりはしてきた。
むしろ同じポジションである松浦の、自分と一線を引こうとする態度のほうが気になる。
目標とする選手はいません、若い選手がよく口にする言葉だ。
だがそんな選手に限って似たり寄ったりで没個性のプレーしかできない。自己流の限界がそこに見える。
ライバルはいない? あなた何様?
真似するのは悪いことではない。誰かのコピーをしたとしても、その人の個性は必ずどこかに出る。
- 105 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2001年11月07日(水)21時33分34秒
- 最後らへんのフリーキックを戸田に蹴らせたけど、あの位置ならセクシーボール蹴れたよな。
- 106 名前:4126 投稿日:2001年11月07日(水)21時46分10秒
- 奇偶にも新垣に対し似たようなことを説いていたのが矢口だ。
カメルーン戦ではベンチにも入れず、さぞ不平不満がたまっていると思いきや案外サバサバとした顔でいる。
「マリノスで出られなかったらチクショーって思うけど、代表はいられるだけで光栄な場所だし、やっぱり勝ってくれれば嬉しいですよ」
こいつは見どころがある、矢口は新垣をすっかり気に入った。今時珍しいくらいのフォアザチームの精神である。
ただし矢口は気づいていない、今時の若いモンはなどと言い始めたら、すでにオバちゃん化がかなり進行していることになど。
- 107 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月07日(水)21時47分27秒
- >>105
「奇跡〜」で蹴り方忘れたって書いてあったじゃん。
- 108 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2001年11月07日(水)21時51分50秒
- >>107
すまん、戸田鈴音ではなくエスパルスの戸田。
中田ヒデはセクシーボールを覚えたはず。
- 109 名前:4126 投稿日:2001年11月07日(水)21時59分58秒
- 「最近よく言うじゃん、自分のために戦いますって。なに考えてんだって思うよ。負けても自分のために戦ったから満足だって言うつもりか、はなから言い訳してんじゃねえって。自分が晴れ舞台に立つためにどれだけの人間が犠牲になったか考えたら、自分のためなんて言えるはずないんだけどな」
カメルーン戦の後ガチガチだったと告白した矢口。ベテランでも緊張するのかと尋ねたら、お婆さんも生まれた時は赤ん坊だよと笑われた。
新垣は矢口という人を少し理解できた気がした。今まで幾多のプレッシャーと戦い、負けても逃げ出さなかった人なのだと。
- 110 名前:4126@とりあえずレス 投稿日:2001年11月07日(水)22時04分31秒
- なんか現実と虚構が交錯してるような…ナカータが元気なかったね。ストレスたまってんだろうな。俺も一発FK決めて欲しかった。
- 111 名前:4126 投稿日:2001年11月07日(水)22時18分20秒
- 新垣と同じように前の試合で出番のなかった高橋に吉澤が
「腐るなよ」
どちらかと言えば高橋のようなGKが吉澤の好みである。タイプが違うだけで実力は遜色ない。
エリート高橋にとって、これが初めての挫折に違いなかった。立ち直るのに時間がかかるかもしれない。
吉澤も最初の挫折を代表で知った。吉澤に与えられた役目は、すれ違うようにしてチームを去ったある選手のコピー役だったのだ。無理な注文に立ち向かった自分の無鉄砲さに気づくのはずっと後のこと。
今の吉澤から高橋に言えるのは一つ、この苦しみは後で必ず成長のための糧になる。
- 112 名前:4126 投稿日:2001年11月07日(水)22時32分05秒
- そしてその高橋から定位置を奪った小川は風を切って左右に飛ぶシュートになぎ倒される。
「そんなんじゃアルゼンチンのシュートには反応もできないよ!」
石川のゲキが飛ぶ。
強シューター揃いのアルゼンチン、それを肌で知る石川は先発濃厚なGKを特訓した。
正面にきたシュートを前に弾く。
「こぼさないの! ゴール前で拾われたら一巻の終わりなんだから!」
悔しいが、全力で蹴ってるとも思えないシュートに触るのが精一杯の小川。言い返したくても格好がつかないので黙ってシュートを受け続ける。
見てろアルゼンチン、吠え面かかしたる。
- 113 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2001年11月07日(水)23時05分11秒
- アルゼンチンには高橋だろうが、何はりきってんだよ石川。
- 114 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月07日(水)23時42分34秒
- 吉澤も石川もちょっとずつ成長してってますね。
下のフォローするあたり。
あとは辻がもどってきて福田がみつかれば。
- 115 名前:4126 投稿日:2001年11月08日(木)12時48分34秒
- 黄色が飛び上がり、青が崩れ落ちるさまを、高橋と小川は我が事のように見ていた。
豪州1、ブラジル0。
セカンドジャージをまとったカナリヤは、唄うことなく大会を後にすることになった。
かたや優勝したかのように踊り狂うオーストラリアオリンピックチーム、地元の声援に答える。
テクニックに勝るのは徹底的なフィジカル強化、全員がヘラクレスのように鍛え抜かれたオージーたちの輪の中に、金色に輝く背番号14をつけたゴールキーパーがいた。王者ブラジルを玉座から引きずり下ろした彼こそが新しい王だった。
- 116 名前:4126 投稿日:2001年11月08日(木)13時00分18秒
- オージーの14番はバイエルンミュンヘンの守護神でもある。従姉への義理もあってオーストラリアを応援していた小川もしばし言葉を失った。
高橋もしかり。確かに史上最弱などと揶揄された今回のブラジルチームではあったが、まさか予選リーグ敗退一番乗りを決めてしまうなんて、にわかには信じ難い。
ワールドカップとオリンピックとは別物なのだとつくづく思う。だからこそ日本のような新興勢力にもチャンスがあると言えるのだが。
いずれにせよ勝者にふさわしい戦いをしたのはオーストラリアで、この試合はGKで勝ったゲームだった。
- 117 名前:4126 投稿日:2001年11月08日(木)15時14分23秒
- コンコン。
「はぁい」
「新垣です」
オートロック、解除。高橋がドアを開ける。
「どったの?」
「紺野さんがケーキ買ってきたんです。四つしかないから高橋さんと小川さんと一緒に食べようって」
「怪我人がなにやってんだか」
だが自由時間の街の散策も断食で筋力の落ちた紺野にはリハビリの一環である。
「よっしゃ、行くべ」
そう言ってバッグからとっておきの酒を取り出す小川。
「酒のみが甘いものも食うのかよ」
「あたしゃ甘党だよ。雪見だいふくにビールなんて最高だね」
- 118 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月08日(木)16時18分59秒
- 今気付いたけど、103-112って新メンと教育係をうまく組み合わせていたのね。
- 119 名前:4126 投稿日:2001年11月08日(木)17時28分38秒
- 今気づいたのかよ! と三村ツッコミするのれす。
- 120 名前:4126 投稿日:2001年11月08日(木)18時56分52秒
- うわ、ホントに一緒に食ってるよ。
右手に冷酒、左手にモンブラン、唇に満面の笑みの小川。
呆れる高橋はフルーツケーキに水。本来は夕食後なにも食べないが、さすがに角が立つのでカロリーの低そうなものを選んだ。
新垣はチョコムースにレモンティー、紺野はショートケーキに砂糖入りコーヒー。
「脂肪もだいぶ落ち込んだから食べないといけないんだよね」
「絶食でケガを治す奴なんて初めて見たよ」
「小湊先生が科学的根拠のないことをするなって怒ってましたよ」
「あたしにゃ無理だな。飲まず食わずなら死んだほうがいい」
- 121 名前:4126 投稿日:2001年11月08日(木)22時11分21秒
- ふわっ、と紫煙が立ち昇る。小川の口からゆらめくそれに驚く新垣。
「ノドが弱いとか言ってるやつがなにやってんだか」
ルームメートの高橋だけは小川の喫煙の習慣を知っていた。
「だからこれでノドを鍛えてんだよーん」
息を吹きつけ、文字通りけむに巻いた。むせかえる高橋。
ニヤニヤする小川の手からタバコを奪い、同じように小川に煙を吐きつけた。
「人の吸った煙のほうが人体には害なんだからね」
きょとんとする小川、高橋、新垣。
「常習じゃないよ。けど旧帝大の学生だからね、先輩の飲め、吸え、歌えには逆らえないだけ」
- 122 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2001年11月08日(木)22時23分38秒
- 酒とタバコをのんでサッカーかよ・・・うらやましすぎる
- 123 名前:4126 投稿日:2001年11月08日(木)22時27分56秒
- 新しいマイルドセブンの封を切り、全員が一本ずつ手にする。
「6ドル25セント(約500円、1オーストラリアドルは約80円)もしやがんの。これ、全部税金」
くわえタバコの小川が16本残った箱をちらつかせる。
「嗜好品は課税しやすいですからね」
新垣がまずそうに吸い込み、苦い顔で吐き出す。
「よかった、大学に行ってこんなもん吸うようにならんで」
口にはしない白い線香から立ち昇る煙を揺らして遊ぶ高橋。
「高卒がなんか言ってるわ」
学歴が無意味な世界だからこそ、紺野のようなブラックユーモアがギリギリ通用する。
- 124 名前:4126 投稿日:2001年11月08日(木)22時42分45秒
- 「小川は大学で覚えたわけ?」
「んにゃ、高校。こんなもんいずれやめられると思ったんだけどな」
「プロでやる気なら今のうちに手を切りなよ」
「プロにゃなんねえ。これが終わったら引退だ」
他の三人はプロだ。二年後を嫌でも意識する。小川はそこにいる自分が想像できない。
「ユニバは?」
「一度登りきった山にゃ興味ない」
「もったいないじゃないですか。他にやりたいことでもあるんですか?」
「特に。こっから先は滝だ、別に死んじまったって構わねえ」
「簡単に死ぬなんて言うなっ!」
それまで黙って話を聞いていた紺野だった。
- 125 名前:4126 投稿日:2001年11月08日(木)22時56分14秒
- 「なにマジギレてんだよ。例えばの話じゃん」
口先では突っ張る小川だが、明らかに紺野の剣幕に気圧されている。
「冗談でも言っていいことと悪いことがある。酒やヤニならピッチで結果出せば文句言わない。けど、命って、一度失われたら二度と戻って来ないんだから」
高橋新垣が二人を分ける。おっとりした紺野が見せた、初めての激情。
「なんでもっと、今ここにいられることを感謝しないのよ」
「まま、これ飲んで落ち着いて」
「あたしの酒じゃねえか。九千円もすんだぞ」
コップになみなみ注がれたそれを、紺野がきゅーっとあおった。
- 126 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月08日(木)23時04分00秒
- 新メンのキャラが急展開しているな…
- 127 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月08日(木)23時09分21秒
- なんか「狂気」ん時の矢口たちみたい。
- 128 名前:4126 投稿日:2001年11月08日(木)23時12分45秒
- 「紺野、おまえ空手やってたんだって。三角飛び教えろ。キェーッてやりたいんだよ」
「ゴールマウスがひっくり返るべさ」
「高橋さん、この二人どうしましょうか?」
「冷めた視線で観察してあげようね」
アルゼンチンとの決戦前夜、同期の親睦を深めるために開かれたお茶会は、なぜか収拾不能な酒盛りになり果てていた。
同時刻、緊急ミーティングが開かれていたのをこの時の四人は知る由もない。
どういうわけか連絡がいかなかったのだが、それでかえって良かったのかもしれない。
日本五輪代表、分裂の危機を迎えていた。
- 129 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2001年11月09日(金)00時10分16秒
- 何が分裂したんよ
ちょっと続きが楽しみじゃねーか
- 130 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月09日(金)01時37分36秒
- 「うたばん」でバシタカがサッカーネタで娘。 のキャラ分析やってるのが、なんか笑える。
- 131 名前:4126 投稿日:2001年11月09日(金)02時02分10秒
- >>130
相変わらずイランは日本を研究し尽くしてたね。バシタカとかクワターとか、もう一度書きたいのはなぜかおっさんばかり。
ちなみに飲酒喫煙なんですが俺の高校の同期はどっちもやらない人間ばっかで、俺もいまだにタバコはやんないす。でも2chの掲示板で見たら現役の代表でも吸うやつがいるらしくてショックでしたね。
ちなみにこの物語はフィクションです、実在する新メンとは一切関係ありません藁
- 132 名前:4126 投稿日:2001年11月09日(金)10時41分41秒
- ミーティングの議題は、言うまでもなくアルゼンチンとどう戦うかだった。
今回のアルゼンチン、登録は21人。オーバーエイジも二人だけ。
欠番になっているのはもちろん10。
「今の我々は10番を必要としない。天才一人のためのチームなど笑止」
監督はそう息巻いたが、ユーゴ戦を見るかぎりでは「10番」ではなく「中盤」のないサッカーをしていた。
ちなみにこの国のサッカー界で最も幅をきかせているのが86年W杯関係者、ついで78年関係者。
五輪チームの監督は78年の優勝メンバーだった。どの国でも似たようなことが起きる。
- 133 名前:4126 投稿日:2001年11月09日(金)12時30分34秒
- 前半最大のヤマである優勝候補との対決。カメルーンに勝っておきたかったのもこの試合に余裕を持って臨みたかったがため。怒濤の攻めを展開するであろう相手に引いて守りカウンターを狙うしかないだろうと考えていた。
それが揺らぎ始めたのは、あまりにも悪すぎたアルゼンチンの戦いぶりを見て。日本が上にさえ思える中盤でのアイデアの乏しさ、放り込みなら後藤と吉澤で十分対応できる。
なにより適材適所という大前提すら守られていない――日本が最も恐れる若きエース、チャム・サヤカ・イチイ、日本名市井紗耶香が右FWで使われていた。
- 134 名前:4126 投稿日:2001年11月09日(金)12時50分37秒
- 「前半は相手の出方を見よう。それでもあんな調子なら後半点を取りにいく」
監督が大まかなプランを提示するといの一番に異を唱えたのは出場停止の解けた14番。
「弱気すぎます。あんな相手になに慎重になってるんですか。そういうの、あつものに懲りてなますを吹くって言うんです」
「まあ待て」
145センチのハーフバックが後輩をたしなめる。
「アルゼンチンはスロースターターだ。まず様子を見るほうが賢いだろ」
「二人ともおかしい」
立ち上がったのは3得点のストライカー。
「首位なんだからリスクを犯す必要ない。引き分けで十分だよ」
- 135 名前:4126 投稿日:2001年11月09日(金)13時04分33秒
- 意見は真っ二つどころか三つに分かれた。
絶対勝ち点3を取りに行こうと強く主張する石川、加護、松浦。前試合不完全燃焼だった若きアタッカーたち。
臨機応変にいこうとする平家監督以下矢口、後藤、柴田、両木村。中盤の、ラテン気質の選手が多い。
点を取られないようにと訴えるのは当然守りの選手。吉澤、保田、戸田、大谷、斎藤、村田らにFW安倍が含まれるのは勝ち点1の重み知っているから。
大国との対戦で手柄を立てるべく野心を燃やす者、長い戦いの一つと受け止める者、特別な思い入れを持って挑む者…温度差があった。
- 136 名前:4126 投稿日:2001年11月09日(金)17時35分58秒
- 「ゴトーこの試合のためにシドニーに来たんだから負けたくないし、つまんない試合もしたくない」
「ごっちん、うちらのことも考えてくんないかな」
「守備側の人って単にアルゼンチンて名前に負けてるだけじゃないんですか?」
「松浦…そうじゃないよ」
「だいたいあんたらスケベ根性出し過ぎ」
「ちゃいますよ矢口さん。そんなん言われたら悲しいですわ」
「折衷案なんて言えば聞こえはいいけどさ、結局はどっちつかずですよね。それで通用するほどアルゼンチンは甘くないですよ」
「石川…監督に向かってなんて口の聞き方だ」
- 137 名前:4126 投稿日:2001年11月09日(金)17時55分08秒
- まずいぞ、こりゃあ。
守備側に加担していた保田が気づいた。
議論を戦わせていたはずが、いつの間にかいがみ合いのような事になっていた。場を束ねるべき平家まで口から泡を飛ばす有り様。
個と個が集まって集団が出来る。集団が一つになるためには様々な努力の積み重ねと長い期間を要する。だがぶち壊すにはたった一つの出来事、数分間あればいい。
もはや冷静な者を探すほうが困難な状況、目を合わせた信田はお手上げとでも言いたげに首を横に振る。
刹那、備え付けの電話が鳴る。近くにいた保田が受話器を取った。
「ハロウ」
- 138 名前:4126 投稿日:2001年11月09日(金)19時25分43秒
- 「勝ったよーーーーーーーーーーー!」
「…辻?」
シドニーの辻希美だった。
バレーボール全日本女子は女王キューバに高さに圧倒されストレート負けする苦難の船出を迎えたが、今日は拾いまくる粘りのバレーでセットカウント0-2からの大逆転勝利を収めた。しかも、相手はアルゼンチン。
「のの、おめでとなー」
さっきまで目を三角にして吠えていた加護がニコニコと対応する。ピンと張りつめていた空気が緩み、保田がとりあえず胸を撫で下す。。
辻の最大の才能が、崩壊しかけたチームを救った。
- 139 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2001年11月09日(金)20時51分10秒
- ののたんだせやゴルァ!!
- 140 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月09日(金)22時13分16秒
- さすが辻ちゃん
ナイス!
やっぱ必要だね。
はやくもどってきてくださーい
- 141 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月10日(土)01時17分02秒
- >辻の最大の才能
辻がオーディションで選ばれた理由のひとつだよね。
うまい。
- 142 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月10日(土)01時38分18秒
- L・O・V・E ラブリープッチモニ
曲はひどいけど3人ともかわいかった。
この3人の活躍で市井とアルゼンチンに一泡吹かして欲しい。
- 143 名前:4126 投稿日:2001年11月10日(土)12時49分11秒
- 17日、早朝――
「あの、後藤真希さんですか?」
「ちげぇよ」
後藤には違いないが下が違う。
うらぶれた生活が、姉譲りの美貌に一種の凄味すら与えていた。
後藤ユウキは南米を中心に雄躍していたエージェントだった。
ケチのつき始めはパートナーとの決別。ケンカ別れだった。若い二人にはありがちなこと。
欧州で成功を収めたパートナーとは対照的に仕事運が目減りし、契約金の二重取りなどの暴挙に出た。
信頼第一の世界であるまじき行為――開店休業状態が続いて一年近い。
姉ちゃん、俺もう疲れた…胸ポケットからは空っぽのタバコ箱。
- 144 名前:4126 投稿日:2001年11月10日(土)13時02分43秒
- 「あんた、タバコ持ってない?」
「吸いません」
舌を鳴らしたユウキは、隣に居合わせた女性がかつて姉と戦った相手であることに気づかない。
韓国五輪代表GKソン・ソニンは約三年ぶりに舞い戻った日本で祖母と無言の対面を済ませてきたばかりだった。
モロッコとの試合の後、スタッフがあえて隠していた悲報を知らされ、涙の乾かぬうちにシドニーから関空へ。駆け足で対面を済ませ、イタリアとの試合がある今日、赤道を再び越えた。
試合があってよかった。立ち止まったら歩けなくなりそうだった。
- 145 名前:4126 投稿日:2001年11月10日(土)15時38分43秒
- 「よろしければどうぞ」
ソニンと逆隣に座っていた小柄な背広の男が差し出したマルボロにおずおずと手を伸ばすユウキ。
背広の男、和田薫はテンガロン帽の青年が自国エースに瓜二つであることに気づかないほどある事に気を取られていた。
どこか、いらだっているように見える。
オリンピックは日本でビール片手に見るはずだった。
だが浮世の義理、そしてなにかが起こりそうな予感が彼からお気楽なTV観戦の場を奪った。
また、眠れない日々が始まりそうだった。
- 146 名前:4126 投稿日:2001年11月10日(土)17時44分50秒
- ナイトゲームを控えた日本チームが会場入りすると、他会場の結果が続々と入ってきていた。
グループA、米国対モロッコは2-1。韓国にも敗れたモロッコは脱落。
グループBはクウェートがコロンビアを2-1と破る金星。コロンビア脱落。フランスもスペインを3-0と大破、余裕の勝ち抜け。
グループC、ナイジェリア対ルーマニアは3-1でナイジェリア。二勝を上げたナイジェリアはグループ2位以内が確定、豪州とともに決勝トーナメント行きを決めた。
グループDは首位が日本。次いでこれから戦う相手、アルゼンチンが追う。残るイスは、あと五つ。
- 147 名前:4126 投稿日:2001年11月10日(土)18時16分33秒
- 「ホホホホホ…」
赤い口紅、ラメ入りアイシャドー、毒々しいマニキュア、ミンクの毛皮、ハイヒール…まるでクレタ・ガルボ。そんな女が矢口、石川と親しげに話しているのを紺野と小川が見つけた。紺野、寄っていくなり
「矢口さんのパトロンさんですか?」
「ま、愉快なお嬢さん」
女、小川のグローブをはめた手を見て
「あなたゴールキーパー? 指の骨が砕かれないようお気をつけ遊ばせ。オホホホホ…」
そう言って扇子を広げて立ち去った。
「誰? あのお色気過剰なババア」
- 148 名前:4126 投稿日:2001年11月10日(土)18時39分38秒
- ノリカ・アルベルト・マンクーソ。アルゼンチン史上最高とまで言われるレフトバック。
長らく欧州で活躍してきたが現在は古巣ボカに戻っている。今回マットーヤ監督の要請に従い、オーバーエイジの一人として参加した。
最大の武器は左足から放たれる弾丸シュート。左サイドから切り込んでよし、フリーキックを直接狙ってよし、センタリングやサイドチェンジに使ってもよしとオールマイティ。
攻撃力だけではない。アルゼンチンのディフェンダーらしい激しい削りは「ノリカチェック」と呼ばれ、世界各国のFWを震え上がらせてきた。
- 149 名前:4126 投稿日:2001年11月10日(土)18時53分19秒
- 「気をつけてね」
紺野が挑戦状を叩きつけられた小川を気遣う。紺野は今日もベンチ入りできない。
小川の動きはいい。昨夜のご乱行の残滓は早朝ランニングで汗にして流した。
酔ってはいたが、小川は紺野の怒った顔をはっきりと覚えている。
龍は喉もとの逆さに生えた鱗に触られると怒り狂うという。小川は紺野の逆鱗に触れてしまったのだろう。
エリートの奴らなんて、その思いが今まで小川を支えてきたが、そこには雑草ゆえのひがみもあった。
だがエリートもまた、複雑な思いを抱えながらその場にいるのが昨晩の酒で少し理解できた気がする。
- 150 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月10日(土)19時03分24秒
- なるほろ。 ノリカと言えばアルゼンチンタンゴかぁ。 やっぱ控えに妹分のワカナ某がいるわけ? それとも写メールサイドチェンジ?
- 151 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月10日(土)22時44分41秒
- お、ワカナちゃんでるの?
弁護士とか?w)
- 152 名前:4126 投稿日:2001年11月10日(土)23時15分59秒
- 「チャム、日本の人達と会わなくていいんですか?」
FWマサミ・ハピネル・ナガサワは控室に籠ったきりの同胞を気遣う。
昨年のワールドユースMVP。FCバルセロナでも活躍。
若い彼女の経歴で特筆すべきはその出生――静岡県生まれ――元アルゼンチン代表MFの父がヤマハ発動機に所属していた時日本人の母との間に授かった一粒種である。
父の引退とともにアルゼンチンへ。14歳でU17チームに選ばれて以来各年代で主力をつとめ、五輪南米予選でも得点王になったのに肝心の本大会でベテラン、ガブリエル・ヒロミストゥータに控えに追いやられていた。
- 153 名前:4126 投稿日:2001年11月10日(土)23時33分40秒
- 「マネージャー!」
その脇でゴールキーパーのワカナ・ゴンザレスは携帯電話片手にプロモーションに忙しい。リバープレートきっての人気選手で、ボカ石川とのFK勝負は因縁の対決に花を添えていた。
こと一対一に抜群の強さを発揮、最終ラインへの指示も迅速かつ的確で、難ありとされるこのチームの守りを引き締めるDFのエース。またアルゼンチンのGKらしくPK戦では無敵。
イタリア移籍を熱望する彼女にとってもこの大会は絶好の機会。ユーゴ戦でも再三の危機を防いだように、日本もゼロで抑えるつもりでいる。
- 154 名前:4126 投稿日:2001年11月10日(土)23時51分46秒
- 「いいんだよ」
チャム・サヤカ・イチイは頬杖をついていた顔をゆっくりもたげた。
不評だった赤毛をやめ、黒髪を肩まで伸ばしたチャム。日亜ハーフの自分とは違い、両親ともに日本人ながらA代表のエースをもつとめる彼女をマサミは心から尊敬している。南米予選でコンビを組めた時は心底喜んだものだ。
しかし目の前のチャムは少しふっくらしていた。調整に失敗したのか。
焦悴しているようにも見受けられる。神経質すぎるくらい繊細なところがある人なのだが…背番号はドリブラーの11。ドリブルは得意でも、チャムは決してドリブラーではない。
- 155 名前:4126 投稿日:2001年11月11日(日)00時09分38秒
- 日本のスタメンはカメルーン戦に同じ。勝った試合のオーダーをいじらないのはサッカー界の常識。
唯一の例外は矢口とアヤカのポジションを入れ替えたこと。矢口を右FWに出して敵の左DFノリカの上がりを最低限に抑えようとした。
GK小川。DF大谷、後藤、ミカ。MF吉澤、柴田、アヤカ、松浦。FW矢口、安倍、加護。サブは高橋、保田、石川、戸田、木村、斎藤、そして依然戻らない福田。
アルゼンチンは4-3-3、3トップの真ん中にキャプテンのヒロミストゥータ、右にチャム。なぜ左にマサミを置かないかは国内でも議論されるところではある。
- 156 名前:4126 投稿日:2001年11月11日(日)00時23分38秒
- 絞り込めていないチャムの体に保田が熱い視線を送る。
シャイなチャム、ドイツになかなかなじめず、バイエルンで結果が出せなかった。
顔見知りのプレーヤーを入れれば力を出せるようになるのでは。白羽の矢が立ったのは当時二部だったケルンでプレーしていた元日本代表DF。
自分がチャンピオンチームで戦えたのは市井のお陰、保田はそう言ってはばからない。
だがそのマークにつくのはためらった。互いを知り尽くした仲、足でかき回されたら90分抑え切る自信はない。
ミカちゃん、できるところまでやってみて。保田は祈る気持ちでいた。
- 157 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2001年11月11日(日)00時39分30秒
- 市井と保田はヨーロッパで会ってたのか
じゃあ市井は優勝したバイエルンのエースやったんか
そんなもんミカで止められるんかよ
- 158 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)09時50分52秒
- ミカちゃんを侮ってはいけない・・・
- 159 名前:4126 投稿日:2001年11月11日(日)10時07分10秒
- 12/11チケット昼夜GET! ついでに爆音も行くぜ。
- 160 名前:4126 投稿日:2001年11月11日(日)10時49分09秒
- ユニフォーム。アルゼンチンが紺色、日本が白のともにセカンドジャージ。
アルゼンチンがあまりに有名なセレスティブランコ(水色と白)の縦縞、日本がスカイブルーのファーストはともに青系統だというので変更を義務づけられた。ちゃんと見比べれば、まず間違えるはずなどないのに。
色も文化だ。虹の七色も青と紫の間の藍色を省き、六色にする地域も少なくない。かと思えばアフリカの試合で黄色とオレンジのチームが戦った例もある。
この試合に関していえば最初からどこか落ち着きがなく、それをいつもと違うユニフォームの色が端的に表していた。
- 161 名前:4126 投稿日:2001年11月11日(日)15時19分38秒
- 左DFミカ・トッドは元もと左攻撃的MFであり、ワールドユースではウインガーとして出場、得点もマークした。
DFにコンバートされたのは小柄ながら速さと強さ、攻め勝つチームらしい攻撃力を買われてのこと。
このチームの弱点が両サイドの守りにあると言われて久しい。それでも平家は右の大谷とともにミカを使い続けた。攻められた分だけ攻めてくれることを期待して。
平家がミカに対して与えたチャム対策は一つ、外へ追い込むこと。ユーゴ戦のアルゼンチン唯一のゴールは中へ切り込んだチャムが倒されてのPKによるものだった。
- 162 名前:4126 投稿日:2001年11月11日(日)15時35分52秒
- 左足アウトフロント、アルゼンチンの11番が中へ。白の3番が振り切られる。
後藤が流れる。一対一。パスを出せば中は薄い。それでも挑みかかるチャム。もつれた。日本ボール。
まるで意固地になっているかのように中へ、中へと突破を計るチャム。まるで目の前の5番が誰かも分かっていないようだ。
サヤカ持ち過ぎ。心の中で保田が僚友をたしなめる。悪い癖がもろに出てしまっているチャム。
左サイドの均衡はある程度保たれていた。抜かれるたびにミカが傷つき、ボールを奪うたびに後藤が失望するのと引き換えに。
- 163 名前:4126 投稿日:2001年11月11日(日)15時51分11秒
- 片や右サイド。ハーフライン近辺、ボールを持ち上がる12番ノリカを矢口、アヤカが囲む。
アヤカが縦を切り、矢口が横を固める。このゾーンで持たれる分にはさして怖くない。怖いのはここから展開された時。
「ハイッ」
サイドチェンジも鮮やかな今日のノリカ。コンパクトなスイングで矢口の頭上を抜けたクロスパスが逆サイドへ。
「柴田!」
背番号10、利き足ではない右のアウトでボールをはたき落とした。
同じレフティーの柴田あゆみ、一気にタテへ。ある程度呼吸は読める。キープレーヤー、ノリカのマークは事実上三人であいつとめる。
- 164 名前:4126 投稿日:2001年11月11日(日)16時09分09秒
- 加護が抜け出す。中が揃わない。GKの出足を見、左足で浮かす。
ひょい、と柿の実でももぐように空中にあるボールを奪い取った。
上はとおんないよおチビさん。アルゼンチンGKワカナ、余裕の笑み。
ムチのようにしなう長い足で蹴り出すと強い風に乗り直接日本ゴール前に。
「OK!」
小川が両手を振り上げる。アルゼンチンFWも殺到。
骨と骨のきしむ音。小川、背中から叩きつけられるもボールは離さない。
そういうことかよ。
信田の言葉を思い出す。次の試合でお払い箱だと。
腰を狙われた。群がったFW全員がヒザを立ててきた。
- 165 名前:4126 投稿日:2001年11月11日(日)16時51分44秒
- 結局平家は折衷案を採用。自分の考えを押し通した。
前半はなんとしてもゼロに。出方を見極め、付け入るスキあらば勝負を賭けてみる。ただしリスクは控えて。カメルーンとユーゴスラビアはこの試合と同時進行だが、引き分けさえすれば最終戦にアドバンテージを残せる。もちろん勝てば二位以内を大きく引き寄せるわけで、少なからぬ色気もある。
だが戦術と起用法が矛盾しているのに若い指揮官は気づかない。
前半守りきるつもりならなぜ守備的な保田を先に使わないのか。
誰もが首をかしげる事象がまかり通る、一般社会にもままあることではある。
- 166 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月11日(日)18時10分22秒
- ずっと昔に話題になってた高学歴チームって、どこで出てきたの?
- 167 名前:4126 投稿日:2001年11月11日(日)19時23分51秒
- 白板の最初のほうにちらりと出てくる。
- 168 名前:4126 投稿日:2001年11月11日(日)19時44分42秒
- 「トッド! コース切れ!」
ミカを引きずり、またも中に切り込むチャム・イチイ。斜めから入るドリブルに後藤がスライディングをかける。
飛んでかわすチャム。が、高さが足りない。わずかに後藤のスパイクが足をとらえ、着地でバランスを崩した。
小川が飛び出した。体に当てやがれ。
スライド。横倒しになる小川、立ち上がり、角度のない場所へ追い詰めた。後藤、戻った吉澤もゴール前を固める。
至近距離、右足で狙う。ごうん、という風の音が小川の耳を鳴らす。
サイドネットが揺れた――外側から。
へっ、枠に飛ばねえシュートが入るかよ。立ち上がり、ボールを拾い上げる。
手のひらから、落ちた。
小川の手が、小刻みに震えていた。
- 169 名前:4126 投稿日:2001年11月11日(日)20時03分53秒
- いちーちゃん、なにやってんのさ。
期待していたユーフォリアがチャムから伝わってこないことに後藤のフラストレーションが蓄積される。
確かに目の前にいるのは優秀なアタッカー。それは認める。
でもそれだけじゃん。
いちーちゃんのほんとの力、そんなもんじゃないだろ。
もっと、マジになってよ。
全然たんない。
あたしの背中、ずわーって、泡がいっぱい立つくらいすごいの見せつけてよ。できるだろ?
- 170 名前:4126 投稿日:2001年11月11日(日)20時26分49秒
- 後藤と同じことを保田も感じている。他の選手はその技だけで翻弄されている感があるが、フィニッシュのキレの無さは隠し切れない。今のシュートも小川の手を弾き飛ばすぐらいはできたはず。
バイオリズム? いや、気分屋の後藤とは違う。浮き沈みのなさも彼女の魅力のはず。
戻る足並みも思い11番の背中に問いかける。
なにがあったんだ、サヤカ。ドイツで別れた時のあんたは、まるで悪魔みたいだったのに。
- 171 名前:4126 投稿日:2001年11月11日(日)22時15分36秒
- 吉澤は少し違う。
市井紗耶香と比較されることで鍛えられた彼女は、本家を越えるためには勝利を上げることしかないと考える。この場合の勝利とは、ゼロ。
チャムには何の恨みもないが市井は殺してやりたいくらい憎い。泣きが入るまで削り倒してやりたい。
だが自分がサイドに寄ればチームのバランスが崩れる。
だから、まずは無失点。
あたしはあんたのコピーじゃない、吉澤ひとみだ。その言葉を突きつけてやるために。
- 172 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
- ( `.∀´)ダメよ
- 173 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
- ( `.∀´)ダメよ
- 174 名前:4126 投稿日:2001年11月11日(日)22時29分38秒
- 矢口はそれどころではない。ショルダーチャージに転がされた。
「ごめんあさぁせ」
チームメートに対してもえげつないぜ、今日のノリカ。
12番のノリカ、13番のヒロミストゥータ。オーバーエイジ二人が補欠の背番号を付けているのは、このチームが23歳以下の選手中心のチームだからと、恐妻家で知られるマサタカ・マットーヤ監督は説いた。
だがふたを開けてみれば、チームはペロンとエビータのようなこの二人を中心に回っていた。ノリカの腰巾着のようなGKワカナはともかく、チャムやマサミのような実力者が冷や飯を食わされていた。
- 175 名前:4126 投稿日:2001年11月11日(日)22時43分12秒
- そこには、日系人への差別がある。
アルゼンチンは白色人種がマジョリティ、ついでインディオ、わずかな黒人、そしてパーセンテージにも表れない移民たち。
マサミはハーフ、チャムに至っては血族的には生粋の日本人だ。肌の色、そしてサッカーのヘタクソなハポネ――二重の差別があった。
マラドーナとラモン・ディアスのようにブラジルをズタズタに切り刻んだ――しかも仲はすごぶるよい――片羽を失ったチャムは、ノリカに向けて怒りを爆発させた。年寄りはいらないと。
ノリカも応戦した、女は25過ぎてから。
- 176 名前:4126 投稿日:2001年11月11日(日)22時48分43秒
- >>173
ドンマイ。
ついでにオイラもザンゲ。
市井チケGET嬉しさに思わず叫んでしまったのですが(しかもここだけではない)このスレを見てる人でチケ取れなかった人もいるかもしれないのに、配慮のなかったのをお詫します。ごめんなさい。
- 177 名前:名無し 投稿日:2001年11月12日(月)00時40分28秒
- アルゼンチンでエビータの悪口は御法度だからな。ボカの選手ならなおさら。奥が深いな。
しかし、コレ、誰かツッコミ入れなきゃそのまま無視して突っ走ったのか?
ヒロミストゥータ:モデルがモデルだからボカ経由で欧州へ。
ボカ:ベロンを支持した(してる)チーム。
- 178 名前:4126 投稿日:2001年11月12日(月)03時59分31秒
- あくまで本筋と関係ないところだから>ペロンとエビータ マドンナの映画の時も大変だったらしいね>エビータ
質問出ないんで自己レス。マサミ・ナガサワは加護辻とおない年の長澤まさみっつーアイドルがモデル。クロスファイアとか出てた(らしい)。実はあんまよく知らん。娘。以外のアイドルには無知な俺。
なんでそんなもん引っ張ってきたかっつーと、この子のお父さんが元サッカー選手で日本代表にもなった人なの。それだけで使っちゃいました。
- 179 名前:とまときっど 投稿日:2001年11月12日(月)04時34分15秒
- 長沢というと、メキシコW杯予選時に宮内の控えだった方でしょうか?
スポーツ選手の娘がアイドルになるっていうの、よく聞くけど、
やっぱり一流選手はきれいな奥さんがもらえるって事なのでしょうかね?
- 180 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月12日(月)05時02分58秒
- そういえば石川はどうしたの?
今ふっと思い出したよ。
でもやっぱり市井といえばプッチの3人の出番だから、
使われなかったりして・・・
- 181 名前:4126 投稿日:2001年11月12日(月)07時46分31秒
- >>169
イエス。サビオラ的なキャラクターが欲しかったのでワールドユースに出た辻加護と同世代の選手を出したかった。ぱっと見はパパ似かも。
>>170
平家は手元にいつでも切れるカードをおいときたかったんですね、保田と石川。
- 182 名前:4126 投稿日:2001年11月12日(月)19時48分26秒
- アルゼンチンのセンターフォワード、ヒロミストゥータにはりつく吉澤。ゴールに背を向ける相手に厳しく寄せる。振り向かせたらおしまいだ。
腕が伸びた。負けずに食らいつく。倒した。奪った。笛鳴った。
「どーして?!」
「完全ファウルじゃん」
後藤にたしなめられる。
「全員戻れ! 八枚! 後藤、松浦と代われ! 吉澤その左!」
小川が二つのポストの間を行き来しながら壁を修正してゆく。
いつになく丁寧に指示を出す虎の視線の先には、猛獣遣いがいる。その左足に二匹のけだものを宿したノリカが。
- 183 名前:4126 投稿日:2001年11月12日(月)20時26分05秒
- 「コンドルとサイドワインダー(ガラガラヘビ)?」
矢口に呼び出された高橋と小川の横顔に照明とゴールネットの影が揺れる。
「ノリカのFKは柴田より鋭く落ちるドライブと石川より速いストレートの2タイプがある」
その二人を前に言い切る矢口に石川も同調する。
「しかもそれが、まったく同じフォームで襲ってくる。違うのは蹴るポイントだけでね」
「獲物を求めて空から急降下するコンドル、砂漠をうねるサイドワインダーとを飼い慣らす左足、アルゼンチンの人はノリカの左足をそう呼ぶんだ」
- 184 名前:4126 投稿日:2001年11月12日(月)20時45分51秒
- 人工壁をはさみ、ゴールマウスに高橋、ボールの前に石川と柴田。
「ノリカは絶対自信のあるコースしか狙わない。曲げるなら右上、真っすぐなら左下」
二人同時に走り出す。柴田が先。高橋が右足に体重を乗せる。空振り。石川の右足がネットを揺する。
「見極めてから飛べ!」
とはいえ反応が一瞬でも遅れたら間に合わない。
「次、小川!」
すっかり打ちのめされた高橋と入れ違いに構える。
石川が先。左に飛ぶ。柴田のキックが壁を越えた。
「PKじゃねえんだ、ヤマをかけて飛ぶな!」
両GKはさんざしごかれた、日本で、オーストラリアで。
- 185 名前:4126 投稿日:2001年11月12日(月)21時02分08秒
- ノリカが小刻みなステップでボールとの距離を縮めていく。矢口はその真後ろに立ち、インパクトの瞬間を待つ。左足インサイド。
「右!」
小川の足に力がこもる。コースは体が覚えている。声を信じ、思い切り良く飛んだ。
イメージ通りの軌跡に、想像以上の速度で走り込むボール。ぴんと伸ばした指先をかすめる。鋭いスピンがかかっているだけあり、少し触れるだけでも大きく動きが変わる。クロスバーのはるか上に消えた。
「うおおっし!」
虎の爪がコンドルの羽をへし折った。
小首をかしげる姿もセクシーさ、今日のノリカ。
- 186 名前:テレビ観戦の日本サポーター 投稿日:2001年11月12日(月)21時09分17秒
- 「攻められっぱなしじゃねえかよ」
「前線でボールキープできる選手がいねえんだよ、松浦は何やってんだよ」
「矢口も引きすぎなんじゃねえのか?なんかプレーが縮こまってんな」
「つーか石川出せよ、攻撃ができねえじゃねえかよ」
「アルゼンチンの11番がすげーな、抜きまくってくるな」
「小川が絶好調じゃねえか、好セーブ連発だよ」
「吉澤がいるのかいねえのかわかんねえな、いつもみたいに上がってこねえのか?」
「おい、吉澤のファウルだ、嫌な位置だな」
「相手はアルゼンチンだぜ?先制されたら終わりだって」
「止めろよ小川・・・」
- 187 名前:4126 投稿日:2001年11月12日(月)21時58分43秒
- よし。よくやった小川、矢口。平家が立ち上がってガッツポーズ。その脇で石川と高橋も笑顔を向け合う。
「加護!」
この日初めてコーチャーズボックスに立ち、守備の修正点など細かい指示を与える。特に前線からのチェックを徹底的に、と。
再びベンチに座る。ふと、古傷の左膝をさすっている自分に気づく。うずくのだ。
こんなことが以前にもあった。アジア最終予選のマレーシア、雨の日の練習前のこと。その練習で負傷した松浦は残り試合に出られなくなった。
飯田の時も、紺野の時も。
そんなアホな。否定する前に、背中が小さく震えた。
- 188 名前:4126 投稿日:2001年11月12日(月)22時29分42秒
- ガスンッ。鈍い音はゴール裏の集音マイクが拾うほどでかかった。
体の真芯を貫くかのごとき衝撃が小川を襲った。苦痛に声も出ず、ひれ伏してもがくばかり。息もできない。
コーナーに飛び出したキーパーにヒロミストゥータが膝蹴りをお見舞いしたのだ。
GKも横から襲われたのならももを上げてガードすることもできる。だが背後から骨盤の辺りを狙われたのならまず防ぎようがない。
ヒロミ、涼しい顔をしている。そっちは手を使える、これくらいはハンデキャップくれないとね。それが世界標準のFWが持つ思考だ。彼が悪いのではない。
- 189 名前:名無し 投稿日:2001年11月13日(火)02時02分32秒
- 市井はバイエルンのエースで、不調だったんだよね? なんかピサーロを彷彿させるんだけど・・・。
そのピサーロ、シーズン開幕当初の不調っぷりが嘘のように、一端きっかけを得たら大爆発!!
現在リーグの得点王なんですけど。
この試合で、きっかけってヤツを得ちゃうのか? それだとかなり日本不味いんですけど。
(オレはこの小説では時間軸ってヤツを無視して良いと思ってる。話を盛り上げるためなら、
チョットばかりの矛盾は許容範囲)
平気でハット決めちゃったり、毎試合得点したりしてるんだよ。かなりマズイ。
エースキラーの保田がいるっていうのが救いなんだけど、でも、保田は90分もたない体なんだろ?
ココではどうにかなっても、決勝Tではマズイじゃん!!
市井の復活はもうちょっと後にしないと日本は厳しいよ。
でも、復活しないとファンは納得しないだろうし、オレ自身も納得しない(w
あ〜あ、日本がアルゼンチンと同じグループじゃなけりゃ良かったのに。
- 190 名前:名無し 投稿日:2001年11月13日(火)02時05分11秒
- あと、市井はインディペンディンタ所属っていうパターンもあり得たよね。
それだと矢口、石川コンビニより格が下になるから不味いけど・・・。
- 191 名前:4126 投稿日:2001年11月13日(火)06時50分48秒
- 「高橋、アップ!」
弾かれるようにベンチを立つ高橋。第二キーパーが出番を得るには正キーパーが不調に陥るかアクシデントに遭うしかない。
体を、心を温めていく。
「マコト、立て! 立つんだ!」
保田が叫ぶ。
苦痛に顔を歪めながら小川がゆっくり立ち上がった。
ほー…高橋が安堵しながらも無念そうにベンチに引き返す。
それ以上に不安から解き放たれたのが平家だ。悪い予感はとりあえず外れた。
しかしすぐ顔を引き締め、叫ぶ。
「保田、石川、軽くアップ」
前半も残りわずか。しかしミカの顔はうつろ、攻めは形にならない。
- 192 名前:4126 投稿日:2001年11月13日(火)07時11分28秒
- 「引いてー」
後藤がDFラインに指示を出す。中盤にプレスがかかっていない。
後藤自身もうこの試合に抱いていた期待が裏切られつつあるのに気づきつつあった。
技術は高いが、緩急もアイデアもない。凡百のFWになり果てたチャムに失望すら覚えた。
足がワラのようになったミカを振り切り、もう何度目になるか分からない中央突破を計ったチャム。
どこ見てんのさ、いちーちゃん。
上の空でサッカーをしているようにさえ見える親友にもはや後藤は遠慮しない。
身体能力の差に任せ、足を伸ばしてボールを奪い去るとそのまま上がる。チャムが追う。
- 193 名前:4126 投稿日:2001年11月13日(火)07時32分30秒
- アルゼンチンの選手を蔑む時に、アニマルという表現を使う。とにかく、すぐに手が出る印象が強い。
相手の退場を誘うずるさと同時に、同じような誘いに乗って自滅する脆さ――それがアルゼンチンのもう一つの顔、熱くなりすぎるラテンの血。
チャム・サヤカ・イチイこと市井紗耶香の体にはラテンの血は一滴も流れてはいない。その代わり彼女には繊細すぎるくらい繊細なところがある。
繊細の裏返しだったのか、その暴挙は。
後藤を追った、そこまではよい。
ただそのタックルが狙いを定めたのは、ボールとは程遠いところにある後藤の右膝だった。
- 194 名前:4126 投稿日:2001年11月13日(火)07時47分24秒
- 「わあーっ!」
この世のものとは思えない絶叫に、ずり下げたソックスにすね当てを入れていた保田が振り向いた。11番のマークという仕事を与えられ、あとはGOサインを待つばかりだった。
なにが起きたの? 隣の石川をつかまえ、事実を聞き出すと目の前が真っ暗になった。
サヤカ、なんで、どうして?
にじんだ視線に映るもの――右膝を押さえ苦悶する後藤、その足元で大きなバツを出す小湊ドクター、チャムの頭上にかざされるレッドカード、そのチャムを胸で突き飛ばし罵声を浴びせた矢口にもイエローカード。
終わった。前半39分だった。
- 195 名前:4126 投稿日:2001年11月13日(火)12時23分01秒
- 「あ…交代です」
スタンドの新垣が小さくつぶやく。タンカに乗せられた後藤が外に運び出され、代わりにろくに体もあたためていない15番の戸田が入る。
本来はボランチの選手。それがそのまま最終ラインの中央に入ってゆく。
隣の紺野はチームメートの戸田がDFで使われるジレンマを口にしていたのを聞いたことがある。私さえケガしなければ――右足を悲しそうに見やる。
やってもうた――その真下で平家も紺野とは反対のヒザを恨めしげに見つめた。
後半保田を投入、守りを固め後藤の攻め上がりに全てを託すゲームプランが崩れ去ってしまった。
- 196 名前:4126 投稿日:2001年11月13日(火)13時02分49秒
- 自身への警告に対しなおも主審に食い下がる矢口を周りが止める。これ以上無用な行為を続ければ日本まで10人で戦うことになる。怒りのはけ口が見つけられない矢口。
一方チャムは静かにピッチの外へ出た。手は腰に、下を向き、残る誰とも言葉を交さずに。ベンチのマットーヤ監督も傷心のエースを黙殺した。
「チャム」
ただ一人、マサミだけが気遣って出迎えた。
疲れ切った顔を上げたチャム、首を横に振った。一人にしてくれとでも言いたげに。
- 197 名前:4126 投稿日:2001年11月13日(火)15時18分07秒
- ともに中軸となる選手を失った両チーム、そこはかとなく緩んだ空気が流れる。
そこにつけ込むのがベテランの、そして強者のしたたかさだ。
松浦へのパスを遮ったノリカ、そのまま持ち上がる。電車道、木村アヤカが後退するしかない。
アヤカの背後を大谷がカバー、後ろからは矢口、ノリカをはさみ打ち。
ノリカ中央へ。矢口が背後から追う。
「矢口さん!」
遅かった。呼応するようにサイドへ流れたヒロミストゥータについていた吉澤の腹に、矢口の頭がめりこむ。
最も危険な二人が、ゴール前でフリーになってしまった。
- 198 名前:4126 投稿日:2001年11月13日(火)18時16分34秒
- コースは分かりきっている。それでも小川はギリギリまで待つ。先に動いて逆を突かれぬよう。
ノリカ、思う存分左足を振るう。インステップ、サイドワインダー。
ガラガラヘビがやってくる、お腹を空かせてやってくる。
拳を握り固める小川。まともに受けて腕ごと持っていかれたGKが大勢いる。
強く、できれば外へ。
低く飛ぶ。軌跡と直角に伸びた左ストレートがボールを捕らえる。虎の牙がガラガラヘビの頭と胴を絶った。
だがヘビは頭を切り離されてなお動く生命力を持つ。
勢いの死にきらないシュートがポストにはね返り、高く舞い上がった。
- 199 名前:4126 投稿日:2001年11月13日(火)19時05分56秒
- 青が飛んだ。
守備はほとんどしない。スピードも確実に衰えている。
それでも彼が祖国の英雄と呼ばれるのは、ゴール前での抜群の強さあってのこと。ガブリエル・ヒロミストゥータ。
明らかに動きの固い戸田を押しのけ、確実に頭で落とし込む。
アルゼンチン先制。日本初失点。
「く…!」
何もできなかった小川が倒れたまま芝をむしる。あと数センチ外へ出せてればコーナーになったのに。
「立って、みんな!」
安倍が仲間を促す。
が、笛が吹かれた。
前半終了。日本、ビハインドを背負ってのハーフタイム。
- 200 名前:4126 投稿日:2001年11月14日(水)00時53分10秒
- 守りきるはずだった前半、それもロスタイムに失点。成熟したチームのやることではない。
「ゴーデース!」
ゴールの女神(Godess)に感謝するヒロミの叫びを聞きながらうなだれて引き上げる若き日本イレブン。
が、最も青さを露呈してしまったのは皮肉にもベテランの矢口。失点の原因を作ってしまったのみならず、累積警告で次の試合には出られない。
「矢口」
その背中を捕まえたのは保田。マークすべきチャムの退場で、自身の出場の可能性はほぼなくなっていた。
「なにやってんだ、あんた」
「しょうがないじゃん、全部あたしのせいかよ」
- 201 名前:4126 投稿日:2001年11月14日(水)01時02分40秒
- 「そうだよ」
保田は容赦ない。
「どうしてあの後、サヤカに飛びかかっていったのさ。あれでサヤカ、後藤に謝るチャンスをなくしたんだよ。後藤だけじゃない、サヤカがどれだけ、うちらとやれるかを楽しみにしてたか、分からないあんたじゃないだろうに」
悔しげに下唇を噛みしめる矢口を見やりながら、実のところ保田が一番責めたいのは自分自身だった。
後藤、チャム、ミカ、戸田、矢口に紺野も…もし自分が最初から出ていれば、誰も傷つくことはなかった。
- 202 名前:4126 投稿日:2001年11月14日(水)01時14分34秒
- 「姉貴!」
男がなかば違法侵入して医務室を訪れた時、後藤はベッドに仰向けになっていた。顔にはタオルをかぶせ、立てた膝にはとりあえずのアイシングが。
「…ユウキ?」
姉が弟の名を呼ぶ。ずいぶんさまにならない再会の姿だ。
ユウキには針のムシロ。実姉をこんなにしたのは自分の元パートナーなのだから。
すべてを察して、後藤がつぶやく。
「あれは、わざとじゃないよ。あたしには分かる」
「姉ちゃん」
「それよかあんた、日本に帰んな。お父さんに線香も手向けてないだろ。お母さんも心配してっから」
- 203 名前:名無し娘。 投稿日:2001年11月14日(水)02時19分15秒
- 4126タン、紗耶香握手会決定らしいよ。オフィシャルHPチェックしてね。
- 204 名前:4126 投稿日:2001年11月14日(水)04時06分44秒
- オソロ聴けんかた。握手会ヲタが血で血を洗う整理券争奪戦になりかねんかも。とりあえず情報ありがとう。
- 205 名前:4126 投稿日:2001年11月14日(水)20時11分37秒
- 後半10分過ぎ、一人少ないアルゼンチンが動く。
左のウイングを下げ、守備的MFを投入。
もう守り固めかよ。首を傾げる吉澤、ベンチに指示を仰ぐ。
当然、攻めろ! の声。
だがとっかかりが見つからない。矢口や柴田が遠目から狙うもGKワカナのセーブに遭う。
アルゼンチンは中央が弱そうだ。安倍や松浦がドリブルで突っかけるが人の波に押し流される。
くっそう。ゴールに背を向けるヒロミがいまいましい。5分しか仕事をしないストライカーに90分つかなきゃなんないなんて。
- 206 名前:4126 投稿日:2001年11月14日(水)20時23分57秒
- 平家も闇雲にけしかけるだけではない、ちゃんと撃つべき手は考えている。スーパーサブの投入だ。
14番が、エースの石川梨華がパンツにシャツの裾をしまう。
この大会、予選ではコマ不足のFWで使うと言われていた。手詰まりしたらサイド、がサッカーの常套手段。試合に出られりゃポジションはどこだっていい。
「石川!」
平家に呼ばれる。そして、指示を受ける。
「え?!」
「なんだ?」
「い、いえ」
マジかよ…絶句する石川。ほとんど上の空で説明を聞く。
交代を申請、タッチライン沿いに立つ。
第四審の持つカードに表示された数字は、8。
- 207 名前:4126 投稿日:2001年11月14日(水)20時27分32秒
- あたし? 信じられない、という顔をしたのは矢口本人だけではない、ピッチもスタッフもだ。
攻撃にはなかなか絡めないでいたが、ノリカへのフォアチェックという意味合いではまずまずの成果をあげていたし、まだまだ持ち前のスタミナにかげりは見られなかった。
むしるその背後の木村アヤカが、時折立ち止まり、苦しそうにうめいていた。
アヤカを下げ石川投入、矢口を右ハーフに下げて石川のケツをひっぱたかせる。それが当然だろうと。
- 208 名前:4126 投稿日:2001年11月14日(水)20時31分41秒
- 無論平家もそれを真っ先に考えた。
だが前半終了間際、矢口はカメルーン戦に続いての警告を受けた。ユーゴスラビア戦には出られない。
恐らくアヤカと石川で組むであろう右サイド、その予行演習をと考えた。
まだアルゼンチンとのゲームが終わってないというのに、眼の端で次の試合を追ってしまった。
まぎれもない采配ミス、平家もまた監督としては青かった。
とにかく、矢口は石川とすれ違いにピッチを出た。
明らかに不満の残る目で平家を見、白のユニフォームを投げ捨てた。
- 209 名前:4126 投稿日:2001年11月14日(水)20時36分04秒
- そして、平家が自分のミスに気づくのは間もなくのこと。
ついにアヤカが動けなくなった。ノリカにいいようにスペースを与え、攻撃のために入れたはずの石川がそのフォローに走り回る始末。
たまらず、木村麻美を呼びつける。
後半半ば過ぎ、平家は最後のカードを切らざるを得なくなった。
後藤を戸田に、矢口を石川に、木村アヤカを木村麻美に。
ベンチワークは、もう、しっちゃかめっちゃかだった。
残り20分をゆうに残し、ピッチに立つ11人には一人の脱落者も許されなくなった日本。
たとえそれが、ゴールキーパーであっても。
- 210 名前:4126 投稿日:2001年11月15日(木)00時08分35秒
- アルゼンチンの「リンチ」が始まった。標的はもちろん、日本の最後尾。
MFが浅い位置からのクロスをヒロミに合わせる。小川が腕を伸ばしきったところへ、膝が入る。
「げえっ」
うずくまり、それでもボールはこぼさない。熱く酸いものが喉にまでせり上がる。
九千円、九千円。昨日の酒の値段を必死に唱えると不思議とそれが収まった。恐るべし、貧乏症。
「もっとちゃんとファウルをとってもらえませんか?」
キャプテンとして抗議する吉澤を小川が止める。
「見えねえようなやってるに決まってんだろ。それより、早く点、取ってくれよ」
- 211 名前:4126 投稿日:2001年11月15日(木)00時16分10秒
- 攻撃をもって攻撃を制す、それまで力をためていたかのような石川の激しさにノリカが防戦一方に。
「松浦!」
センタリング。ワカナと松浦が競る。こぼれは加護。左ポストに嫌われる。
松浦は戻らない。点を取ろうとする意識が高いあまり安倍とポジションが重なり、存在を消し合ってしまっていた。
いいよ松浦。そんなに攻めたいなら思う存分攻めたらいい。
安倍が自分の判断で、ポジションを松浦の位置にまで引き下げた。
- 212 名前:4126 投稿日:2001年11月15日(木)00時26分49秒
- 試合も終盤になってようやくエンジンのかかった選手もいる。吉澤だ。
カメルーン戦ではオーバーエイジに遠慮し、この試合も相手エースとの因縁に縛られ試合をコントロールするには至らない。
だがチャムも後藤も保田も矢口もいなくなって、ようやく自分がなんとかしなければという気持ちが芽生え始めた。
アジア予選の、圧倒的な存在感を見せつけた吉澤に戻りつつあった。
ヒロミストゥータの背中に膝蹴りをいきなり一発。フニフニとその場に崩れるヒロミ。小川への仕打ちの仕返しのような行為に、主審がイエローカードを手にした。
- 213 名前:4126 投稿日:2001年11月15日(木)00時40分20秒
- 「吉澤、熱くなるな」
ようやくフィットしてきた戸田が吉澤の行為をたしなめる。
吉澤は冷静だった。あわてたのは敵のベンチ。エースを予選で使いものにならなくされたらたまらない、すぐに控えのFWを準備させる。壊されてもいい選手を。
逃げ腰のアルゼンチンに腹が立っていた吉澤。勝負にこだわる姿勢は正しい。けど、それって世界の強豪の戦い方? その臆病さが命取りだ。
アルゼンチン、ガブリエル・ヒロミストゥータが下がり、7番、マサミ・ハピネル・ナガサワが入った。
- 214 名前:4126 投稿日:2001年11月15日(木)05時36分37秒
- 「戸田、7見ろ!」
言われなくともマサミにつく。
制服のように着こなしたユニフォームからもまじめそうな雰囲気が伝わってきて、DFとしては考えが読みやすい。少なくとも百戦練磨のヒロミストゥータほど怖くはない。
利き足の左でシュート、戸田の足に当ててコーナーを取りにいく。
「OK牧場!」
親指を立てる小川。なんと鼻歌混じり。あれだけ蹴られまくったというに…その頑丈さに恐れ入る。
コーナーにも上がって来ないアルゼンチン。ノリカもハーフラインに。
マサミのキックを両手でつかむ小川。
「石川!」
右サイドへ投げ放つ。
- 215 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月15日(木)07時00分45秒
- 石川が押す、押す、押し切る。
木村麻美がサポートする。その木村との壁パス、センターDFを置き去りにしてGKと一対一に。
そんなに重たそうな毬二つも下げてんだ、これはやんねえ。
右足、至近距離からの一撃はワカナの大きな乳房へ。不完全なパンチを弾き、右ポストを打ち鳴らした。
逆サイドへのルーズボールを加護が中央へ。松浦がジャンピングハイボレーでミート。これまたクロスバーに嫌われた。
アルゼンチン、クリア。日本ベンチからため息が漏れ聞こえた。
センターサークル付近、吉澤が拾った。まだ、終わっていない。
- 216 名前:4126 投稿日:2001年11月15日(木)07時15分21秒
- 吉澤に併走するマサミ。このFWは守備もする。
吉澤、長い腕でブロック。チャージにいったマサミがすっ転ぶ。
ファウルだ。一斉に足を止めてしまうアルゼンチン。
が、笛は鳴らない。つっかけたマサミが勝手に転んだという判定。
吉澤は足を止めなかった。ルックアップ、前方に一人、集中を途切らせてないFWを発見。
右足が梓弓のようにしなう。
運命のロングパス、50メートル先の安倍なつみへ。
- 217 名前:4126 投稿日:2001年11月15日(木)09時09分40秒
- ノリカと安倍の陣取り合戦。ノリカが胸を張り、安倍が肱を曲げる。
同時に飛んだ。腕を広げた安倍が空中で粘る。
崩れるノリカ、持ちこたえる安倍。だが三人のフォワードが一人としてフリーにはなれていない。
自らの足元に落とした。派手に尻餅をつくノリカを尻目に安倍、ペナルティエリアに侵入。
かわしにかかる安倍の足をGKワカナの手が引き倒した。
けたたましいホイッスル。スポットを指す主審の指。
「なっち?!」
平家の背筋に冷たいものが走る。
仰向けに倒れた安倍の右手が、真っすぐにVサインをかざした。
- 218 名前:4126 投稿日:2001年11月15日(木)09時21分29秒
- 「大丈夫ですか?」
石川が自らペナルティキックを蹴ると言い出した安倍を気遣う。
無言の笑顔で答える安倍。
スネ当ての裏に小さく記した二つの名前、飯田圭織と福田明日香。口にはせずとも胸に期するところはある。
カオリの分まで、福ちゃんが帰ってくるまで。
二人の魂が乗り移ったようなヘッドとドリブルでゲットしたPK、誰にも任せられない。
イエローを食らったワカナにも動揺したところは見受けられない。
止めたらヒーローの座は自分のものだし、PKストップは得意中の得意だ。
- 219 名前:4126 投稿日:2001年11月15日(木)09時33分44秒
- 腰に手を当てた安倍、ニュートラルに構えたワカナ。その距離11メーター。
安倍が猛ダッシュ、右足インステップ。
キーパーは軸足の向いた方向に左手を伸ばし、触れた。
勝利を確信したはずのワカナの顔が苦痛に歪む。
痛んだ指から、力が急速に抜けていった。
ネットを揺さぶる音で、安倍は自らの存在を証明してみせた。
This is ストライカー。得点王を独走する安倍なつみの4点目は、日本をガケッ淵からすくい上げる同点ゴールだった。
- 220 名前:4126 投稿日:2001年11月15日(木)10時52分05秒
- まさかの同点にマットーヤ監督、怒り心頭。
ウイングに出たノリカが大谷をぶっちぎって中に。シュートの構えに小川が身を固める。鳥? ヘビ?
インフロントでもインステップでもない、アウトフロント。ゴールから逃げるボールがマサミの左足に合う。逆サイドめがけて、渾身の力で振り抜いた。
やられた、うつむく日本。
これ以上ないほど強く芝を蹴り、腕を伸ばし、つかんで地に叩きつけた。伸び切った体は受け身も取れない。
マサミが下唇をかむ。足元にではなく手前にもらい、滑り込んでニアを抜きたかった。チャムならそうしてくれたはず。
- 221 名前:4126 投稿日:2001年11月15日(木)11時39分31秒
- 1-1。青と白が幾重にも交錯した緑のカンバスの上には、泥のように疲れ果てた21人が取り残された。引き分け、いや、どちらも勝てなかった。
「さ、あいさつに行こ」
キャプテン吉澤が動けないでいる仲間を促す。チームの今後を考えればこのドローは大きい。
しかしその吉澤にしても、この次を考えると気が重い。
矢口は出られないし後藤の負傷は相当ダメージがでかそうだ。攻守の要として彼女にかかる負担は一層増大するだろう。
それでも今日はこの結果を素直に受け止めよう。
「せーの…ありがとうございました!」
- 222 名前:4126 投稿日:2001年11月15日(木)12時40分41秒
- 日本1−1アルゼンチン
SH 10−19
GK 小川
DF 大谷
ミカ
後藤(前40戸田)
MF 吉澤
松浦
柴田
木村ア(後29木村麻)
FW 安倍
矢口(後22石川)
加護
得点
前44 ア ヒロミストゥータ
後38 日 安倍(PK)
警告・退場
チャム(退・前39・ラフプレー)矢口(警・前39・相手選手への暴行)吉澤(警・後34・ラフプレー)
Woman of the match
吉澤ひとみ(日本)
- 223 名前:4126 投稿日:2001年11月15日(木)18時18分16秒
- 試合終了後、アルゼンチン控室。
逆立ちをしくじった角兵衛獅子をぶつようにマサミを怒鳴り倒すマットーヤ監督。勝ち試合を落としたチームは戦犯を必要としていた。
鬼嫁として知られる彼の細君は、もし日本に勝てないようなことがあれば彼の秘めた性癖――自慰行為を好む、つまりオナニスト――を公表すると彼に釘を刺していた。
もうおしまいだ、自暴自棄になり、ついに手を上げた。乾いた音が何度も響く。
さらしものになるマサミ、完全に壊れ崩れ去ったチームの末期の姿だった。
- 224 名前:4126 投稿日:2001年11月15日(木)19時04分48秒
- 打たれるがままのマサミをかばった者がある。チャムだった。
ああ、もうどうだっていいや。半ばヤケだった。
恐らく自分も代表を半永久的に追われることになるだろう。もっと上に掛け合えばなんとかなるだろうが、そこまでして続けたいものでもない、サッカーそのものを奪われるわけではないのだから。
あたしって、本当、代表に縁がない。
日本人、日本人、日本人! ついに本性を表したマットーヤ、チャムにも手を上げようとする。
その手を押し止めたのはノリカ。
「あれは、アベに競り負けた私の責任だ」
- 225 名前:4126 投稿日:2001年11月15日(木)20時04分16秒
- 「ほんと、あんたは頑丈だね」
「あたしを壊したいんならミサイルにマシンガンでも持って来いってんだ」
力こぶを作ってみせる小川。さんざ蹴られまくったのが嘘のようにピンピンしている。
横目で信田をにらむ。どうだよ、と。
他に話題が移ってから小声で保田に
「トイレってどこ?」
「出て左に曲がって突き当たり」
「連れてって。オバケが怖いの」
「なに言ってんだよそのツラで」
「あんたに言われたくないよ。頼む」
言い回しにただならぬものを感じ、やむなく連れて行く保田。
角を折れたところで異変は起きた。
「いてぇーっ!」
- 226 名前:4126 投稿日:2001年11月15日(木)20時33分36秒
- ユニフォーム、腹巻き、肌着をたくしあげるとすさまじい事態になっていた。
スパイクの形についたアザは無数に走り、ミミズ腫れが縦横に走る。熱を持った腰をさする保田。
「いてえ、いてえよお、姉ちゃん、助けて」
緊張の糸が切れ、汗が滝のように顔を伝う。ここまで傷めつけられて、それでも仕返さなった。
「なんだってそこまで我慢したの」
「だって、終わる、終わっちまう」
うなされながらそれを繰り返す。
苦痛に気を失ってしまえればどんなに幸せだったろう。だがそれすら許されなかった。
試合の終わりは、地獄の始まりだった。
- 227 名前:4126 投稿日:2001年11月15日(木)20時48分11秒
- 「後藤は?」
病院から帰った付き添いの稲葉が
「膝の皿にヒビが入ってる。精密検査はこれから。精神的には安定してる」
まさか、こんな結末が待ち受けているだなんて。
「小川は?」
「小湊先生に麻酔打ってもらって、やっと寝た」
己の体を楯にするプレースタイルを貫いた。それが選手生命を自ら削る行いと知りながら。
「うなされてるって。終わる、終わるって」
「キーパーがケツ向けたらおしまいさ」
信田だった。
「ハーフが抜かれてもバックがいる。バックが抜かれてもキーパーがいる。でもキーパーの後ろにゃ誰もいないからね」
- 228 名前:4126 投稿日:2001年11月15日(木)21時04分10秒
- 違った。
終わりとは、彼女の高校最後の試合。
みんな足がつってPKを蹴れない。だから小川は自ら歩み出て、思い切り蹴った。ボールは空に消えた。
泣きじゃくる小川をみんなが慰めた。負けた悔しさより、もうこいつらと一緒にいられない悲しさに涙が止まらなかった。
敗者には何も残らないことをこの時肌で感じたのだった。
小さい頃から、まるで本当の兄弟のようにつるんできた友達との関係が終わってしまった、しかもその引き金を引いてしまったのは自分だったのが情けなくてしかたなかった。
- 229 名前:4126 投稿日:2001年11月15日(木)21時19分29秒
- 昨晩のバカ騒ぎが本当に楽しかった。あそこまで自分を解放できたのは久しぶりだった。
無慈非な削りをこらえることができたのは、ケガの紺野やベンチに控える高橋やベンチにも入れない新垣の顔が頭をかすめたから。
自分が短気を起こせばすべてパーになっちまう。
彼女達は仲間。たまたまサッカーの才能に恵まれ、日の丸という旗のもとに集った。
だから試合中に体が痛むとブルース・スプリングティーンのBoan in the USAを文字った歌を口ずさみ、自らを鼓舞した。
日本に生まれた、日本で生まれちまったよ、と。
- 230 名前:テレビ観戦の日本サポーター 投稿日:2001年11月15日(木)21時25分01秒
- 「予選突破は間違いねーよな」
「アルゼンチン相手に引き分けとはよ、日本つえーよ」
「カメルーンとユーゴの結果はでたのか?」
「後藤大丈夫かなあ、次の試合は後藤なしかな」
「矢口もいねーって、それにしてもアルゼンチンの11番なめてんな」
「市井だろ?あいつ元日本代表だぜ、確か」
「マジかよ!めっちゃ巧かったじゃねーか!!なんでアルゼンチンでやってんだよ!!」
「石川はやっぱうめーよ、あいつのプレーは何かを期待させる」
「つーかメダル獲れるって、日本は確実に強くなってるよ」
- 231 名前:4126 投稿日:2001年11月15日(木)21時32分44秒
- 「いちーちゃん、来ないかなあ」
キャンベラ市内の病院では、まるでサンタクロースを待つかのような無邪気さで後藤が市井を待っていた。
「来るわけねえじゃん」
ユウキが悪態をつく。その頭にティッシュの箱を投げつけた。
「あんたに決められたくないね」
「自分の足ケガさせたようなやつになに期待してんだよ」
「あれは事故だもん」
「だからその根拠はどこにあんだって」
「あたしがそう信じてるから」
つきあってらんねえ。ユウキがため息をついた。
後藤が一晩待ってもチャムは来なかった。
- 232 名前:4126 投稿日:2001年11月15日(木)21時35分42秒
- サポーターさんくす。今日は疲れたんでANNS聞かずに寝ます。
- 233 名前:ななし 投稿日:2001年11月15日(木)22時58分16秒
- お疲れっす。続きも楽しみにしてます。
- 234 名前:4126 投稿日:2001年11月16日(金)06時27分48秒
- 祖母へのレクイエム――韓国の決勝トーナメント行き決定をメディアはこう報じた。
すごい試合だったらしい。雨あられと降り注ぐイタリアのシュートをGKソニンがことごとく封じ、間隙を縫って韓国が先行。カテナチオからのカウンターというお家芸を奪われたイタリアは完全にリズムを崩し、焦りからカウンター、の悪循環…3-0という信じられないスコアを残し、腐ったトマトの雨の降る母国への強制帰還が現実味を帯びてきた。
なぜならモロッコに2-1で勝った米国は最終戦で韓国に引き分ければ、二位での勝ち抜けが確実になったからだ。
- 235 名前:4126 投稿日:2001年11月16日(金)06時48分21秒
- 勝ち抜けを決めたのは豪州、韓国、ナイジェリア、フランス。フランスはともかくW杯予選敗退の常連やらW杯にすら出られない国やら…ナイジェリアにしてもここ10年で力をつけたチーム。
ブラジル、イタリア、アルゼンチン…敗退決定、もしくは瀕死のチームのほうがよほど豪華だ。
矢口が英字新聞を読むのを横から覗きこむ加護。英語はさっぱりだがサッカーの記事ぐらいは分かる。
「ワールドカップとオリンピックはやっぱ別物なんだな」
「ほんまにそうなんですかね」
口をはさむ加護。
「サッカーは死んだんちゃいますか?」
- 236 名前:4126 投稿日:2001年11月16日(金)07時04分43秒
- ニーチェは言った、神は死んだ。
レニー・クラヴィッツは歌った、ロックンロールは死んだ。
そして加護亜依も言ってしまった。サッカーは死んだのだと。
「あんた、怖いこと言うね」
「ちゃいますよ。もう大国が当たり前に勝つ時代やないいうことですよ」
ニーチェやレニーが否定したのは神やロックそのものではなく、それにまつわる幻想のほうだ。
強い国が勝つんじゃない、勝った国が強いんだ。そんな当然の世界に、サッカーもようやくなったのだと。
そしてそれを象徴するのが、10年足らずで爆発的な進歩を遂げた日本サッカーかもしれない。
- 237 名前:4126 投稿日:2001年11月16日(金)07時25分06秒
- そしてその日本の予選最後の相手がカメルーンを4-1で破ったユーゴスラビア。唯一勝ち抜けチームの出ていないグループDは勝ち点4の得失点差+3の日本、同じく勝ち点4で+1のアルゼンチン、勝ち点3の+2ユーゴに可能性がある。日本はユーゴに分ければ勝ち抜けが決まる。
だが不気味なのがユーゴの大ベテラン、長年名古屋グランパスでプレーするFWドラガン・オカムラビッチのコメント。
「後藤が出ぇへん? なら安倍しかおらん。あとはカスばかりや」
そして、これも当然の摂理か。マットーヤ・アルゼンチン監督が解任さるた。後任は未定。
- 238 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月16日(金)12時58分31秒
- 中澤監督就任だったらおもしろいね。
- 239 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月16日(金)13時32分24秒
- たいせーかも?
- 240 名前:4126 投稿日:2001年11月16日(金)21時46分56秒
- 今パセラにいます。なぜか手伝いに駆り出されてます。狛犬さんに初めてお会いしました。ジギーの森重樹一さんに似ててびっくり。
- 241 名前:4126 投稿日:2001年11月17日(土)18時56分03秒
- 昨日の更新分、某スレの加護ちゃんの言葉を参考にさせてもらいました
- 242 名前:4126 投稿日:2001年11月17日(土)19時07分23秒
- 「部屋。変えてもらいたいんですけど」
予選最終戦の会場であるメルボルンに移動した夕方のこと、赤い目でそう訴えた高橋。ここ二晩ろくに寝てない、小川が夜中に頻繁にトイレに起きるのが気になるのだとか。
下痢が止まらないのだ。腰へのダメージが内臓をも蝕んでいた。ベッドに戻ってもうわごとが一晩中続く。
それでも平家はユーゴ戦のGKを誰でいくか明言を避けていた。理由は簡単で、前の試合に引き分けてしまったからだ。なるたけオーダーはいじるたくない。
小川の回復を祈りつつも高橋のコンディションも上げたい、相部屋は限界だった。
- 243 名前:4126 投稿日:2001年11月17日(土)19時22分54秒
- 「あんたなんだ」
意外そうに顔を上げる小川はやつれ、目だけが以前にも増して鋭い眼光を放つ。
ケガをした者同士、紺野なら小川の気持ちを分かってやれると踏んだのだ。
「そんなに痛いの?」
「いっそ殺してくれって言いたい」
「じゃ、死ねば? 生きようとする望みを捨てた動物は名医にも治せない」
「誰が望み捨てたって」
「出てえけど」
「監督が高橋を選んでくれれば幸いだ、チームのために身を引くなんてバレバレの嘘はつけない、でしょ」
ぐうの音も出ない小川。
「本当に出たいんならどうして味方もだます、くらい考えないの?」
- 244 名前:4126 投稿日:2001年11月17日(土)21時25分24秒
- 天国と地獄を分ける大一番の前日。午前行われた紅白戦に小川、そしてケガ以来初めて紺野が出場した。
そんなには良くない。小川は腰の状態をそう告げた。
紺野の筋肉はほぼ元通り。あとは鈍った勝負勘をどの程度まで取り戻せるか。
ともにBチームに入った二人、まずまずのプレーを見せる。
小川はキャンベラから移動する時歩く事すらできず、保田におぶさっていたのが嘘のように軽快な動きを見せる。
紺野は積極的にボールを奪う姿が目を引いた。攻め上がりは一切見せず、できることからコツコツ積み上げる彼女の性格がよく表れていた。
- 245 名前:4126 投稿日:2001年11月17日(土)21時39分43秒
- 「聞いたことないよ、そんなの」
気でも狂ったのか。練習試合のために麻酔を打ってくれだなんて。
「どうしても必要なんだ。紅白戦でいいとこ見せらんないと明日使ってもらえねえ」
「断る」
「…でしょうね」
予想通り、と言わんばかりに首を振る紺野。
「しょうがないね。あれをやるしかないか」
「マジかよ。頭おかしくなんねえか?」
不穏な会話に小湊は耳がダンボに。
「なにをやらかす気なの」
「実は獣医学部の先輩に頼んで馬用の麻酔を航空便で送ってもらったんです。それを希釈して腰に打ってみようかなと」
- 246 名前:4126 投稿日:2001年11月17日(土)21時54分22秒
- もちろん紺野の仕組んだハッタリだ。
小湊はそれを分かった上で、小川の腰に4ccの麻酔注射を施した。
「麻酔ってのは痛みを消すものじゃない。傷めた個所を酷使すれば、麻酔が切れた時ダムが決壊するように痛みが押し寄せるものだってことは覚えときなさい」
それだけは言い置いて。
結局この大会絶好調の安倍に2ゴール許したものの二人のプレーは及第点といえた。
なぜだ。信じられないといった顔をする信田の横で密かにほくそえむ小湊。自分の進言をもみ消した友人への、ささやかな復讐でもあった。
- 247 名前:4126 投稿日:2001年11月18日(日)12時06分58秒
- 当然、リーグ戦の最終試合はグループごと同時刻に始まる。
この日の昼、グループA韓国対米国、イタリア対モロッコ。
すでに勝ち抜けを決めた韓国はどこか締まらない試合運び。引き分けでOK、負けても得失点差次第で二位の米国が面倒な点数計算などごめんだと言わんばかりの力強さで韓国を圧倒。3-1で逆転のグループ首位。イタリアもモロッコを5-0と大破したが時既に遅し。
1位の米国、グループDの2位チームと決勝トーナメントで対戦する。
2位の韓国、この夜最終戦の行われるグループBの1位と当たる。
- 248 名前:4126 投稿日:2001年11月18日(日)12時29分10秒
- フランス最後のシュート。リベロのA.I.マエダが顔面でブロック。朦朧とする意識のキャプテンを祝福するイレブン。
価値あるドロー。押されっぱなしだった90分をゼロで凌いだクウェート、フランスとともに決勝トーナメント行きが確定。ブックメーカーも驚く高倍率をひっくり返しての快挙。可能性の残されていたスペインはコロンビアに逆転負けを喫して涙を飲んだ。
グループB首位、フランス。決勝トーナメント一回戦で韓国と対戦。
2位クウェート、グループCの首位と戦う。
- 249 名前:4126 投稿日:2001年11月18日(日)12時47分22秒
- 「1、小川」
試合当日、朝食後のミーティングでスタメンが告げられる。
「2大谷、3保田、5戸田」
保田のスタメンは自ら志願したもの。ミカが自信を失っていることもあり、首脳陣との思惑と一致した。
「4吉澤、6柴田、8あさみ、10石川」
松浦を外し汗かき役の木村を入れた。石川も本来のポジションで起用。
「7アヤカ、9安倍、11加護」
数少ないチャンスを確実に決める、まさに安倍さまさま。
「ベンチ高橋、村田、斎藤、松浦、紺野、ミカ、福田」
いつ来るか分からない福田は平家にとって宗教のようなものかもしれない。
- 250 名前:4126 投稿日:2001年11月18日(日)13時01分39秒
- 「え…そうなんですか。はい、どうも」
移動中のバス。グループC最終戦の結果が稲葉の携帯電話に入ってきた。
「ナイジェリアが負けたと」
すでにこのグループの勝ち抜けはナイジェリアと豪州に決まっているが、日本が1位になった場合このグループの2位と当たるのだ。その2位にナイジェリアがなってしまった。
予選三試合をすべて1-0で勝った豪州は16チーム唯一の全勝でトーナメントへ。やはり堅い守りのクウェートと当たる。
だが稲葉が驚かされたのは、もう一つの情報のほうだった。
そんな、まさか、でもなぜ。稲葉はそれらの言葉を飲んだ。
- 251 名前:4126 投稿日:2001年11月18日(日)14時16分48秒
- 「あの試合がぶち壊しになったの、別に姉ちゃんのせいじゃねえからな」
すでにGKジャージ姿の小川が肩を回しながら近づいてくる。
贖罪。生まれながら人は原罪を持つというキリスト教の考え方をクリスチャンでもない従姉が抱いていたのを、さらりと見抜いた。
大勢の人を傷つけた償いをする気持ちが確かにあった保田。腰に麻酔を打ってここにいる従妹も含めて。
お互い、あまり丈夫でない体を持って生まれてしまった二人だから。これが最後かもしれないといつも思っている二人だから。
「いこうぜ」
それ以上はなにも言わず、笑顔で肩を組んだ。
- 252 名前:4126 投稿日:2001年11月18日(日)14時31分50秒
- 「じぶんが監督とはどういうことやねん」
ユーゴスラビア五輪代表の監督兼選手ドラガン・オカムラビッチが平家と談笑する。
90年代初頭、約束されていたはずの将来を狂わせたのは戦争だった。国際舞台での活躍の場を失った彼は流れつくようにして極東へ。その彼を慕い、今では多くのユーゴ人がJに参入した。日本選手も彼と対戦し、まねることでレベルアップしてきた。
こんな弱いチーム見た事ない。元同僚率いる日本五輪代表をけなしてきたオカムラビッチ。ただしその後に、こんな弱いねんから協会は金かけて強化したらなあかんと必ずつけ加えて。
- 253 名前:4126 投稿日:2001年11月18日(日)14時40分57秒
- 試合前の平家をいらだたせるのは、こびりつくような左膝の痛み。
まさか、今度は誰が。
「みっちゃん」
その視線の先に安倍がいた。ここまでチームの全得点を叩き出してきた彼女にどれだけ救われてきたことか。
「頑張ろうね」
ともに代表のエースの座を争っていた頃と変わらぬ笑顔で語りかけてくる。もう少しで平家は涙をこぼしそうになった。
なっち。点取れんでもええ、負けてもええ、どうか無事に帰ってきてくれ。頼むから。
- 254 名前:テレビ観戦の日本サポーター 投稿日:2001年11月18日(日)15時19分15秒
- 「そろそろやぞ、テレビつけろ、ビール用意せえ」
「スタメンの発表はあったか?やはり後藤は抜けとるんか?」
「今日の解説は誰や?セルジオ?それってどうなんよ?」
「ユーゴもつえーな、カメルーンと4対1か、オカムラビッチ健在だな」
「引き分け狙いで上等だろ、アルゼンチンが負けるわけねーし一位通過でナイジェリアとぶつかるほうがやべーよ」
「アホか、ユーゴは本気でくるぜ、後藤がいねーならマジでやべーよ」
「司令塔は石川か?あいつは性格的にはやく試合にでたくてたまんねーだろ」
「平家もアホやな、いいかげんサブから福田をはずせよ」
「辻ヲタは黙ってろ、バレー会場逝ってこい」
「高橋はもう出番ねーだろ、小川が絶好調だもんなあ」
「お!ピッチでアップが始まったぞ!・・・後藤は・・・・・やっぱいねーか・・・」
- 255 名前:4126 投稿日:2001年11月18日(日)17時22分02秒
- 試合開始。オカムラビッチに保田、長身FWのヤベッチにフィジカルの強い大谷がつく。マンツーマンではないがこの二人の責任は重い。
「オカムラにつきたかったんじゃないですか?」
「やなこった」
スタンドで新垣が矢口に軽口を叩く。
矢口がJデビューした試合で与えられた仕事がオカムラビッチの密着マークだった。来日間もないオカムラは本場とのレベルの違いに対するいらだちからか、とにかくキレやすかった。同じく小柄な矢口にしぶとくつきまとわれたら即自滅するだろうとの読みで。
期待通りの働きを見せた矢口にオカムラはキレた。
- 256 名前:4126 投稿日:2001年11月18日(日)17時33分13秒
- オカムラビッチが矢口を平手打ちした瞬間、横浜F首脳陣は快哉を叫んだ――次の瞬間、矢口がそれ以上の力で殴り返すまで。
両者ともに退場になった初対決以来、オカムラビッチ対矢口といえばJきっての名物カードとなった。矢口が海外に移籍するまでは。
「それより新垣」
矢口がその顔をにらみ返す。後藤の戦線離脱により紺野がDFの控えに回ったことで、辻を除けばベンチ入りもないのは新垣一人になってしまった。
「あんたオーストラリアにコアラやカンガルーでも見に来たわけ? もうちょっと欲かいたらどう?」
- 257 名前:4126 投稿日:2001年11月18日(日)20時31分25秒
- 最初のチャンスはユーゴスラビア。10分、オカムラビッチが右足で蹴る右CKに小川が飛び出そうとするのを見て保田が
「出るな!」
だがすでに体は前に出ていて、逃げるボールに手が伸びる。
さらに曲がり、小川の手をかわす。かぶった。ヤベッチのヘッドがバーを越える。
「出るなっつったろ!」
思わず安堵のため息を漏らす小川に保田のカミナリが落ちた。
オカムラビッチのボールはよく曲がる。それこそ悪魔の蹴ったような曲がり方で。チームでただ一人Jリーグで戦った経験のない小川が軽いカルチャーショックを受けるほどに。
- 258 名前:4126 投稿日:2001年11月18日(日)20時43分09秒
- ユーゴはコテコテのマンツーマンDFを敷いてきた。
安倍にDFのエース、カトッチをつけてくるのは当然として、石川にはアリノッチ、加護にはハマグッチ、吉澤にもサリナッチをつけた。アルゼンチン戦のような吉澤のロングフィードを警戒したのだろう。
アヤカのミドルはGKヤマモトッチがほぼ正面でキャッチ。ふくよかな体型のわりにそのステップは軽やかだ。
石川が冷静にGKを観察する。うまいったってデブだ、サイドの厳しいコースを突けばどうしようもないはず。
だが石川についたアリノッチは粘着マークでまとわりつき、彼女を手こずらせていた。
- 259 名前:4126 投稿日:2001年11月18日(日)20時55分18秒
- 技巧派オカムラ、老練な保田の対決は見応えがあった。
まずボールを受けるところから戦いは始まる。ツートップを組むヤベッチはポスト役、というよりそれ以外に仕事を与えられておらず、とにかく体を張ってエースにボールを供給しようとする。
保田はまず大谷の動きを見る。どこに落とされそうかを予測、そこに走り込む。だが決して無理はしない。
オカムラに取られたらまずスペースを消しサイドに追い込んで時間を稼ぐ。自分のところで取れなくても背後の戸田、小川が止めればよし。
最善策、次善策、次々策。すべてその頭に叩きこまれていた。
- 260 名前:4126 投稿日:2001年11月18日(日)21時09分53秒
- 20分が過ぎても両チームともに決定的チャンスを生み出すには至らない。
こうなれば引き分けでも2位以内が確定する日本が有利。平家の指示もマークの確認やら前線からのボールの追い回しやら守りに関することばかりに。
余裕がないのがユーゴスラビア。この試合引き分けたらアルゼンチンが負けない限り予選敗退が決まってしまう。しかも同時進行するアルゼンチンとカメルーンの試合、アルゼンチンが2点を先行したと連絡が入ったのだ。
始まったばかりのワールドカップ欧州予選でも早くも本大会が絶望視されるほど負けが込んでいるというのに。
- 261 名前:4126 投稿日:2001年11月18日(日)22時11分57秒
- すごいなあ。うまいなあ。ベンチの紺野の目がキラキラと輝く。
後藤という大黒柱を失ったDFを保田が完全に掌握している。戸田と大谷の動きもアルゼンチン戦とは見違えるようだし、小川や吉澤も精神的に安定するのかぐっと落ち着きを増している。
いつか紺野は後藤みたいなDFになりたいと言った。なれるかはともかくとして。
だが保田のようなDFにはなれなくもないなと思う。後藤のような圧倒的な華はないものの、そこにいるだけで安心感を与えられる存在。サッカーをよく知ろうと努力し、日々を無駄にするけことさえしなければ。
- 262 名前:4126 投稿日:2001年11月18日(日)22時24分18秒
- だが当の本人、目の前の小さな巨人の一挙手一投足に集中しきって、そんな視線に気を払うどころでなはない。
「腕上げたやないか、おばちゃん」
オカムラビッチが関西弁でそう言ってくる。この男にとって最も脂の乗った時期を極東の島国で送ったのは損失だったかもしれない。だが日本にとって東欧のブラジルから来たサッカー界の至宝と過ごせた年月はとてつもない財産になった。特に保田のようなストッパーにとっては。
感謝の言葉は述べない。態度で、最高のプレーで恩返しする。
「まだまだいくよ、小さいおっさん」
30分が経過。両者無得点。
- 263 名前:4126 投稿日:2001年11月19日(月)00時52分02秒
- オカムラビッチのシュート。力無く転がるそれを小川がネスティング。鳥の巣(ネスト)をすくいあげるようにボールを拾うとすぐ「広がれー!」と声を出す。
ここまでまだ一度も腰に負担のくるようなシュートは浴びていない。従姉の存在の大きさを改めて感じる。
「そらっ」
その保田にボールを投げて寄越す。遠投は使っていないしその必要もなかった。
ペナルティエリアすぐ外で受けた保田、長く持つ。
普段あまり守備をしないオカムラビッチがスライディングをかける。さっとかわし、吉澤に渡すと倒れたオカムラビッチにウインクまでしてみせた。
- 264 名前:4126 投稿日:2001年11月19日(月)07時11分41秒
- 右サイドの深いところ、大谷がヤベッチを追い込む。逆サイドでは柴田がそこからのパスを首を長くして待つ。
この二人に斎藤、村田を加えた四人、つるむことが多い。
共通項はJ2にいる、またはいたことがある。そしてこのチームで地味なポジションを担っていることか。斎藤、村田は補欠。大谷はチームの弱点なんて書かれるし、10番の柴田にしても得点につながる仕事をまだしていない。
この四人、昨日の昼食を一緒にとりながら大いに盛り上がった。
なんか、やってやろうぜ。
うちら、別に脇役になりにここへ来たわけじゃないんだから。
- 265 名前:4126 投稿日:2001年11月19日(月)07時28分49秒
- 大谷の激しいチェックにたまらずボールを下げるヤベッチ。
だがサリナッチへのボールは吉澤がインターセプトする。
吉澤、左へのクロスパス。柴田が懸命に走る。だが長い。追いつけない柴田。
その裏に走った保田が受けた。この日初めてハーフウェーラインを越え、スピードに乗った攻め上がり。加護がハマグッチをサイドに引きつけスペースを作る。
もともとFWだった。プロに入ってアウトサイドに転向、そしてストッパーに。
なぜ保田が3バックの申し子と呼ばれるか。サイド攻撃を重視した3バックの左サイドプレーヤーとしても一流だからだ。
- 266 名前:4126 投稿日:2001年11月19日(月)07時46分46秒
- 左から入る柔らかなセンタリング。GKが飛び出せない場所へ。
安倍が落下地点に。カトッチ、厳しく寄せてゴールを向かせない。
腕を押さえ込まれながら飛び上がる安倍。カトッチも飛ぶ。
額に当て、背後に流した。
石川が走り込んだ。試合に出られなかった悔しさを右足に乗せて。
安倍とカトッチがブラインドになって、ヤマモトッチの反応に鋭さがなかった。
ネットが揺れる音が耳をつんざく。
石川を中心に輪ができる。安倍や保田、保田もそれぞれ囲まれる。
その影で柴田と大谷、苦笑いする。やっぱり、主役にはなれない運命なのかね。
- 267 名前:4126 投稿日:2001年11月19日(月)12時22分04秒
- 「あたしゃなっちに決めさせるつもりだったんだがな」
ハーフタイム。控室に戻る石川を保田が小突く。
実際大きな1点だった。アルゼンチンが3点目を奪ったという知らせが。もはやユーゴはまな板の鯉。
「これで勝てばまた矢口さんが戻って来られますもんね。負けらんないっすよ」
何のてらいもなく言ってのける。
「あのね、石川」
「はい?」
いや、黙っておこう。
「姉ちゃん」
「マコト」
腰は? 指でOKマークを作る小川。麻酔はひと試合分打ってあるし、準備は万端。
楽しもうな。あんたとサッカーできるの、たぶんこれで最後だし。
- 268 名前:4126 投稿日:2001年11月19日(月)17時41分44秒
- 「安倍さん」
「ん?」
「…なんでもないです」
松浦の育った兵庫、こと阪神間は女子テニスのメッカ。園田女子、夙川学園等の名門から伊達や沢松を輩出した。
サッカー部が廃部になると同時に会社を辞めた父は郷里の姫路に戻った。そこから松浦は私鉄を乗り継いで朝練に通った。強烈なサーブ&ボレーを武器に県でも屈指の名手と呼ばれた。
だが壁にぶち当たる――テニスには一番が一人しかいない。日本一は、世界一は二人もいらない。
だがサッカーは違う。日本一が、世界一が11人いる。
- 269 名前:4126 投稿日:2001年11月19日(月)17時51分06秒
- だが今、サッカーもテニスと同じかもしれないかもと思い始めている。
自分より優れたセンターフォワードがいる。だから自分は試合に出られない。
ゴールの数でその価値が決まる、ストライカーとはなんともシビアな稼業。
でも安倍は石川にゴールを譲った。なぜか聞きたかった。でも、プライドが許さない。
全てを見透かしたように安倍が口を開く。今の松浦が聞く耳を持たない事を知りつつ。
「私があなたたちに残せるものって少ないから。それに、私はこの試合限りだからね」
- 270 名前:4126 投稿日:2001年11月19日(月)18時50分14秒
- 飯田を含めた四人で話しあって決めた事だった。
「リーグ戦は経験が重要になる。けどトーナメントは勢いが大事だと思うんだ」
「八強入りはノルマだからそれには手を貸す。あとは若い奴らに任すよ」
「あいつらだってオバちゃん連中に連れてってもらったなんて思われたくなかろうしね」
「その代わり、私たちが得た経験は、あの子たちに全部伝えていくから。吸収してくれるといいんだけどな」
だからこの試合が安倍と保田、出ていないが矢口にとってはラストゲーム。持てるもの全てを惜しみなくチームに落としていこうと思っている。
- 271 名前:テレビ観戦の日本サポーター 投稿日:2001年11月19日(月)22時21分37秒
- 「おい、勝ってるぞ」
「ユーゴ相手に互角以上の展開じゃねーか」
「吉澤が効いてんだよ、ユーゴの中盤に仕事をさせてねえ」
「石川も何度か惜しい場面があったけど、あそこで安倍の落としをよくブチ込んだよ」
「オカムラビッチがらしくねーんじゃねーか?もう歳か?」
「後半は誰を使ってくるかね、石川をさげるのは下策だと思うがね」
「セオリー重視なら、守備固めだろーが」
「アルゼンチンが3点目だってよ、予選通過は決まったな」
「あと45分・・・・・頼む・・・」
- 272 名前:4126 投稿日:2001年11月20日(火)07時03分27秒
- 後半開始4分、ヤベッチのヘッド。カバーに入った保田の肩に当たる。
直後、オカムラビッチのハーフボレー。小川が逆を突かれるが右ポストに救われた。
後のないユーゴスラビア、予想通り攻めてきた。しかしまだまだツキは日本に。
ケイにマコト、男みたいな名前の分、幸運の女神が多少二人には色目を使ってくれるのかもしれない。
だけど運は運でしかないのもまた事実。そんな不確かなものに頼りきる者に未来はない。
勝利の女神は甘くない。
- 273 名前:4126 投稿日:2001年11月20日(火)07時14分38秒
- 大谷がヤベッチをタッチに追い込む。先ほどは吉澤に手柄を取られた形になってしまい、今度は一人での気持ちが強い。
相手とボールの間に体を入れる。今度はヤベッチがそれを妨害にきた。後ろから蹴ってくるヤベッチ、この後起こる悲劇を思いもしないで。
絡みつく腕を振りほどこうとしただけだ。確かに力は入り過ぎていたかもしれない。
大谷の曲げたひじは、ヤベッチの鼻っ柱を折った。
崩れ落ちるヤベッチ、逆サイドの柴田の汗が凍った。
救護班のバツ印。その中で大谷一人が状況を把握できない。
その頭上に、レッドカードがかざされるまで。
- 274 名前:4126 投稿日:2001年11月20日(火)07時31分48秒
- 泣くことすらできず、呆然と立ち尽くす大谷。
「大谷さん」
柴田が寄ってきた。その仔犬みたいな顔を見て、ようやく痛みに気づく。
「わざとじゃないのに…」
それだけ言って顔を覆う。皮肉にも、あれだけ欲しがっていた注目を一心に浴びていることに気づきもしない。
タッチで柴田と別れ、斎藤と村田に出迎えられると痛みが新たに蘇ってきた。
気の緩みを見せた日本、見逃さなかったオカムラビッチ。
事件のあった地点から蹴ったFK。曲げず、一直線に伸びるボールに小川がまったく反応できない。
フリーのカトッチが頭でねじ込んだ。1-1。
- 275 名前:4126 投稿日:2001年11月20日(火)07時48分59秒
- 流れを変えてしまうワンプレーというものがある。まさにこの大谷がそれを体現させてしまった。
オカムラビッチがベンチに指示を出す。ヤベッチに替えて、アルゼンチン戦でヒロミストゥータに水平チョップを見舞って退場になったDFエガッチを投入、安倍のマークにつけた。カトッチを2トップの右、左にオカムラビッチ。
一人少ない日本は石川を大谷の位置に下げてオカムラビッチのマークにつけるがあくまでこれは応急処置。平家も動く。
「紺野、アップ! 5分でいくぞ!」
- 276 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月20日(火)07時54分14秒
- 矢口と岡村のどつき合い・・・修学旅行かよ!
- 277 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月20日(火)09時31分48秒
- 出た!エガッチだ!待ってました!
- 278 名前:名無し娘。 投稿日:2001年11月20日(火)11時43分21秒
- メロソの『主役になれない運命』ってとこ、
This is 運命にかかってるのね。うまい!
- 279 名前:4126 投稿日:2001年11月20日(火)12時30分09秒
- 安倍がはね飛ばされる。ファウル。腰に手を当て、主審を指さして抗議するエガッチ。
「いったー…」
苦痛に童顔を歪める安倍。FW人生長いが尻で倒されるなんて初めてだった。
ハードゲイ、もとい、ハードマークで知られるユーゴDFエガッチ。エースキラーとしては欧州屈指だろう。
スタメンで使われない理由は、無論、その性格。異常にキレやすいため90分ピッチにいた試しがない。
それでもオカムラビッチ、彼を呼んだ。日本の7番はそれくらい危険な人物だった。
- 280 名前:4126 投稿日:2001年11月20日(火)12時40分32秒
- 流れが向こうに傾きつつある分、セットプレーが重要になる日本。正面やや左寄り、25〜30メートルのフリーキック。
「柴ちゃん」
石川の言葉に耳を貸そうとしない柴田。柴田が狙うにはやや遠いのだが、すでにゴールを決めている石川は譲った。
へそを下に向け、笛と同時に助走開始。七枚の壁を越えたバナナシュートが角度を下げてゆく。ゴールを確信し拳を握る柴田。どうだ!
GKヤマモトッチ、壁の裏に回り込んだ。芝の上を滑りながらも胸でキャッチ。
どうして。柴田はショックを隠せない。狙い通りのボール、最高のコースだったのに。
- 281 名前:4126 投稿日:2001年11月20日(火)12時51分53秒
- 「やっと気づいたか」
「なにがですか、矢口さん」
矢口は柴田に言い続けてきた、いつまでJ2にいる気だと。柴田はそれを無視した。
曲がるボールは時代遅れ。トレンドは速く、真っすぐをピンポイントで。数年前まで曲げるボール主体だった石川も世界を見てストレート一本に絞った。
ましてユーゴにはオカムラビッチがいる。柴田の曲球など止まって見えることだろう。
「もっと上のランクでやってればとっくに気づいてたはずなんだ。それをあいつ、いつまでもフリエに義理立てするもんだから…J2に甘えてきたツケを今こうして払わされてんだよ」
- 282 名前:4126 投稿日:2001年11月20日(火)13時02分52秒
- 「そういえば柴田さん、サイドチェンジも」
新垣も気づく。左ハーフの右ウイングへのロングパスはこのチームの攻撃に彩りを添える。それが一度も決まっていない。右サイドバックに入った石川が加護へのクロスをビシバシ決めているのに。
こういう言い方は卑劣だ。だがあえて矢口は口にする。
「カオリなら小さいモーションで、ウイングの足元にズバッと決めるぜ」
やがて、柴田へのパスが激減した。
背中の10が、泣いていた。
- 283 名前:4126 投稿日:2001年11月20日(火)19時31分11秒
- サイドMFヒナッチ、ミツウラッチの飛び出しをつかまえるのに忙しくなる吉澤。
石川はなんとかオカムラビッチにしがみついている、が、旗色は悪い。戸田が幾度と無く引きずり出される。
保田はトイメンがカトッチになってからやりにくそうだ。体力に任せ、ガツガツ当たってこられると疲労の度合いがけた違いだから。
くっそ、なかなか針が進まねえ。恨めしげに電光掲示板の数字をにらみつける。
13:23。
- 284 名前:4126 投稿日:2001年11月20日(火)19時40分23秒
- 「姉ちゃん!」
後ろからの声にハッとなる。カトッチがドリブルで侵入。DFだけあり、保田の死角に入ってくる。一度抜かれた保田、それでもすがりつく。が、差が詰まらない。
ランニングシュートがGKほぼ正面へ。小川、十字に組んだ腕でブロック。左に転がるボールを体を倒しながら押さえつける。受け身を取る余裕はなかった。稲妻が天から地へ抜ける。
やばい…息が切れた。保田が下を向く。
まずい…麻酔が切れた。小川の背を冷たいものが走る。
- 285 名前:4126 投稿日:2001年11月20日(火)19時53分14秒
- あと30分以上ある。相手はまだ体力が有り余ってる。気取られてはいけない。呼吸を整える青の6番。
酒飲みは麻酔が切れるのも早いって聞いたことはあるけどさ。わざと大声を出し、空元気を見せつける黄色の18番。
まずは、時間を稼ごう。わざとタッチラインの外にパントキックを蹴り上げた小川。
ピピッ。試合が止まる。
タッチライン沿いに、その名と同じ青をまとった13番の姿を認める。その膝は、真っ白なテーピングで固められていた。
お役御免か…保田がうつむく。走れなくなったディフェンダーには用がない、と。
「どこ行くんだよ」
従妹の声に我に返る。
紺野の横のカードにある数字は、17。
- 286 名前:4126 投稿日:2001年11月20日(火)20時10分13秒
- 「ジャパン、ナンバー17、アヤカ・キムラ、アウト。ナンバー13、アサミ・コンノ、イン」
緊張のためか青白い顔の紺野あさ美が平家の指示を伝える。
「石川さん、7番へ。吉澤さんはサイドハーフと並ぶようにポジション取り。安倍さんは引き気味で」
次いで、DF陣へ。
「戸田さん、左へ回ってカトッチのマーク。私が右」
「じゃ、私は?」
「真ん中(5番)へ」
リベロ? 自慢じゃないが、保田はラインコントロールなんてやったことない。思わずベンチを見た。
静かな表情で、うなずく平家を確認する。
あ、そうか。
安倍にとってはこれが大会最後の試合。保田にとってはこれが現役最後の試合。
花持たせようってか。甘いよ。
「保田さん」
「ああ。紺野、落ち着けなんて言っても無理だと思うから、ファーストタッチ、思い切りよくね」
「はい!」
紺野の顔は、どこまでも青かった。
- 287 名前:4126 投稿日:2001年11月20日(火)20時57分15秒
- めちゃイケイレブン好評みたいでうれしい。この章もそろそろ終わりが見えてきたかな…
- 288 名前:4126 投稿日:2001年11月20日(火)22時26分04秒
- そのスローイン、ミツウラッチがタッチ沿いに長く出した。
思い切り、思い切り。そう念じながら右足を振るった紺野あさ美のファーストタッチ。ふくらはぎをかすめて、あろうことかオカムラビッチへのエンジェルパスに。
カクッとなりかけた膝を立て直しカバーにいく保田、身構える小川。
「ドーーーン!」
スイーパーの左足、キーパーの右手、そのボール一つ分のスキマを戦慄が駆け抜けた。ネットの揺れる音が二人の耳に痛い。
ジャンプするオカムラビッチ。若い世代に何かを伝えようとするのは、なにも日本人に限られたことではない。
- 289 名前:4126 投稿日:2001年11月20日(火)22時38分08秒
- なんでだよ、なんであんな単純なシュートが止めらんなかったんだ。小川がへたりこむ。
「あれがただのシュートに見えるならあんたもまだまだだね」
酸いも甘いも知り尽くした男の執念が乗り移ったボールだ、やすやすと止められるわけがない。
「ごめんなさい」
紺野がそれだけを二人に告げる。
「…別に、あんたなんか最初からあてにしてないから」
口とは別に、小川の心から流れる声が紺野に届く。今にも泣きだしそうな声が。
勘弁してよ。あたしは点を取りに行くことができないのに。
後半16分、日本は攻めなくてはならなくなってしまった。
- 290 名前:4126 投稿日:2001年11月21日(水)03時18分10秒
- 石川が右サイドを切り裂く。センタリング。安倍が合わせるが枠をそれる。
相変わらず危険な匂いをプンプンさせる安倍、エガッチのマークをかいくぐって狙う。
こちらもやはり性格的にはFW向きなのだろう、石川の高速ドリブルはユーゴの左サイドを火の車にした。
が、肝心の得点が入らない。
かたやその背後、日本の右サイドもオカムラビッチにいいように使われていた。中盤右サイドの木村麻美、リベロの保田が再三引きずり出され、全体のバランスが崩れている。逆サイドではチームメートのカトッチをまずまず抑えているのに。
- 291 名前:4126 投稿日:2001年11月21日(水)03時39分05秒
- 「姉ちゃん、代わったほうがよくねえ?」
小川が持ちかける。紺野はスイーパーの選手、マンマークは辛そうに見える。鼻の頭なんて赤いではないか。
保田は聞かない。
鯉は滝を昇って龍になるという。
オカムラビッチという流れは速く冷たい、それでもこの厳しさを泳ぎきればきっと大きくなれる。私たちも、そうやって大きくなってきた。
半泣きになりながらも、オカムラビッチに必死に食らいついていく紺野の目に熱いものが見える。
光る涙ははがれた鱗。身をよじり、震えながら泳ぐんだ。
誰にも、あんたを笑わせたりしないから。
- 292 名前:4126 投稿日:2001年11月21日(水)03時52分43秒
- しぶとい紺野を腕でブロックするオカムラビッチの足元に保田のスライディングが決まる。
「おーお、おばはんが無理するよ」
「マコト逆サイ見てんのか! 戸田カトッチ放すなよ! 吉澤、あんた下がり過ぎ! 負けてんだから! 紺野、今のでいい!」
リードされている時こそディフェンス。追加点を奪われたらそれこそ決勝トーナメントが消えてしまう。
平家が保田を真ん中に据えたのは、そのよく通る声があるから。動けない分コーチングで役立ってもらう。
その声が、味方を勇気づける。敵をおびえさせる。
- 293 名前:4126 投稿日:2001年11月21日(水)04時05分59秒
- 守りの芯が保田なら、攻めの軸は安倍だ。エガッチのぬめりつくようなマークにも慣れ、シュートも次第に精度が上がってくる。
決してあきらめない、かつて紺野に話して聞かせた「嫌なFW」そのままのプレー。
エガッチもそれが分かっていて、あざといタックルを仕掛けてくる。
安倍の中央突破。エガッチが併走。急ストップに前のめりにバランスを崩すエガッチ。
再度切り込みにかかる安倍。
ストッパーには、それを阻止する義務があった。
安倍の顔面を、エガッチの後ろかかと蹴りが襲った。
- 294 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月21日(水)05時59分37秒
- なんちゅうことしやがる!
- 295 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月21日(水)12時20分14秒
- かつてエガッチと準レギュラー争いしたあの方もいればいいなー・・・と思いながら見てます。
でもオカムラビッチと仲間割れしそーですけど。
- 296 名前:4126 投稿日:2001年11月21日(水)12時25分48秒
- 「ぐわっ!」
安倍が右目を覆って倒れた。ピッチに殺気がみなぎる。両チームのキャプテンが事態を収拾しようと体を張る。
アラブ人の主審の判断は迅速だった。著しく危険な行為、当然のレッド。
が、唯一納得してないのが当のエガッチ。俺様の天才的なヒールタックルが。ガッぺむかつく。
「とうっ!」
主審の首筋へフライングクロスチョップ。クリティカルヒット。止めたアリノッチ、ハマグッチも飛び蹴りの犠牲に。
「あのアホ…また長期の出場停止かいな…」
オカムラビッチが頭を抱えた。
- 297 名前:4126 投稿日:2001年11月21日(水)12時31分37秒
- ともかく、フリーキック。自信を失ったのか柴田は名乗り出ない。
「石川!」
平家が胸に手を当ててなにかサインを送る。うなずく石川。
壁の左を通過するスルーパス。コーナーめがけて放たれたブリザードパスに加護が走る。
「わっわっわ」
オカムラビッチが右から寄せる。並んだまま走る二人。センタリングは直接ゴールラインを割った。
おまえの考えなんかお見通しや。オカムラ、元同僚に歯を見せて笑いかけた。
- 298 名前:4126 投稿日:2001年11月21日(水)12時35分30秒
- 「安倍、これ何本だ?」
小湊がピースサインを突き出す。
「ニッポン、チャチャチャ」
おどけて、その手を払いのける。
「ちょっと」
「小湊さん!」
平家が首を横に振った。安倍はベテランだ、その意思を尊重しよう。
フォア・ザ・チームの精神を大切にする安倍、もしもう働けないと判断すれば自ら出て行く事だろう。
またも当たってしまった。左膝が予言したのはこのことだったのだ。
「…松浦。いつでもいけるようにしとけ」
- 299 名前:4126 投稿日:2001年11月21日(水)12時44分17秒
- 「安倍さん」
左のタッチから入ってきた安倍に柴田が寄っていく。
「すみません」
自分が、もっと気のきいたパスを出せていたら。
血が出ているわけではない。が、そのまぶたが青黒く腫れ上がってきた。視界をふさぐのも時間の問題だろう。
「なんて顔してんの」
痛むだろうに、それでも安倍は笑顔だ。
その笑顔が、ふっと消えた。
「…でも、そろそろ頼むよ」
後半、38分が経過。
残された時間は、7分間とロスタイムのみ。
- 300 名前:4126 投稿日:2001年11月21日(水)12時49分11秒
- もう日本は安倍にすべてを託すしかない。
石川が右からこれでもかとクロスを上げる。が、お岩さんのようになった右目では視界が十分ではなく、どうしてもタイミングが合わない。
そして、左サイドは死んでいる。ハマグッチの密着マークに苦しむ加護、完全にパターンを読まれている柴田、カトッチマークで手一杯の戸田、上がる余力のない保田。
時間だけがいたずらに過ぎる。
吉澤が木村麻美とのワンツーから抜け出し、右足を振りぬく。GKヤマモトッチの正面。
平家の顔に焦りが、オカムラの顔に余裕が見える。
後半、40分経過。
- 301 名前:4126 投稿日:2001年11月21日(水)12時51分29秒
- >>295
誰だ? すまん、わからん。
- 302 名前:名無し娘。 投稿日:2001年11月21日(水)12時58分30秒
- >>301
ミヤサコッチかエスパーイトッチかと思われ(w
- 303 名前:4126 投稿日:2001年11月21日(水)15時17分53秒
- なる。くず兄弟どっかで出してーな。関係ないがこないだ渋谷でより子。のテープ買いました。娘。ファン層とはまるっきらかぶんないみたいです。
- 304 名前:4126 投稿日:2001年11月21日(水)18時52分35秒
- 柴田がヒナッチを背負い投げるようにして倒した。イエローカード。
「あーあ、焦っちゃって」
「いいんだよ、あれで」
いぶかしげに矢口の顔を覗き込む新垣。
「今まで柴田は運命に流されるだけ流されてきた。戦う、疑う、逆らう。一度だってしなかった。じゃなきゃあんだけの才能を持ったやつがあんなとこにいるわけがねえ。それが今やっと、ああやって自分の運命に立ち向かおうとするようになったんだ。…少し遅かったかもしれないけどな」
- 305 名前:4126 投稿日:2001年11月21日(水)19時04分02秒
- 「上がれ!」
リベロの背中をどやしつける小川。保田が自分を気遣って上がらないのが分かる、それが歯がゆい。
「おまえが行かないならあたしが行く!」
本気でオーバーラップを試みそうなキーパー――実際ロスタイムに入ったら上がる気でいる――の気迫に半ば気圧され、前にゆっくり出始める保田。ったく、偉そうな口叩きやがって…
「吉澤、一緒に来い!」
長身のボランチも引き連れ、勝負にいく。
「急げ!」
時間が無い。本当に無い。
- 306 名前:4126 投稿日:2001年11月21日(水)20時10分30秒
- 足が吊りそうになるのをこらえ、石川がタッチ際を駆け上がる。中が揃っているからといえ浅い場所から放り込んだんでは何の意味もない。なるたけ深くえぐり、ピンポイントで合わせねば。
ターゲット、吉澤の頭。ライナーのセンタリング。サリナッチに競り勝ち、正確に落とす。
元FWの意地、倒れこみながらの左足ハーフボレー。右ポストにはね返された。
まだある。まだあきらめない。加護が滑り込む。
ミツウラッチのクリアが一瞬早い。落下地点にフリーのオカムラビッチ。平家の唇からため息が漏れた。
- 307 名前:4126 投稿日:2001年11月21日(水)20時25分13秒
- オカムラビッチ、日本陣内の深い位置でキープ。あとはこうして時間を稼げばよい。
目の端に、日本の交代選手の姿。胸には9、傍らのカードには7。
安倍か…まだあどけなさが残っていた頃からよく知っている。もうほとんど動けていない。これ以上さらし者にしておくのも忍び無い。
5メートル先のタッチラインにボールを蹴り出す。
それを押し止めた青の13番、紺野あさ美。
なんやねんそれ。武士の情けと思ってしたこと、それを踏みにじられて怒り狂ったユーゴ人、紺野に踊りかかった。包帯のきつく巻かれた、その右膝めがけて。
紺野が、笑った。
- 308 名前:4126 投稿日:2001年11月21日(水)20時35分51秒
- ぷりりーん。
勢いよく転がるオカムラビッチを置き去りに、紺野が右サイドを疾走。まるで警戒していなかった攻撃パターンにユーゴスラビアが戸惑いを見せた。あわててそのサイドに詰める。
だが紺野の足元にボールはもうない。天翔ける龍のごとく、ピッチを横断するボール。
落ちたサイドには柴田がいた。まったくのどフリーで。そしてそのことが彼女のプライドを痛く傷つけてしまった。
ふざけんじゃねえ。このあたしを自由にしたこと、死ぬほど後悔させてやる。
左足で大きく押し出す。ドリブルが始まった。
- 309 名前:4126 投稿日:2001年11月21日(水)20時51分56秒
- 薄くなった中盤を一気に駆け抜ける。だがユーゴDFにはどこか油断がある。10なら止められる。
ゴール前が厚い。そこに差しかかる前、柴田得意の左。人の群れを越え、GKヤマモトッチの伸ばした手をも越えた。
クロスバーが激しく鳴り、内側へこぼれる。
ゴールの女神に祝福されたのは吉澤でも保田でもなかった。
エースの前には、GKもDFもいなかった。
ただ、ゴールネットだけが見えた。
痛む、頭で。
ネットが揺れた瞬間、そこここで日本選手が抱き合った。
だが本人、安倍なつみだけは静かだった。
- 310 名前:4126 投稿日:2001年11月21日(水)21時01分41秒
- どうだ、どうだ、どうだ! 細身を震わせ、何度もガッツポーズを作る柴田。あたしを見ろ、あたしの名前を呼んでみろ。まさに尊厳の一発。
かたや、安倍なつみには笑顔一つない。仲間の祝福を淡々と受け止める。
「まだ…同点だから…」
だがこれで日本は再び優位に立った。天国から地獄に落ちたはずのチームはまたも7番に救われた。
頭痛がすさまじい。吐き気すら覚える。それでも仕事を果たした。
主審が安倍を呼ぶ。タッチには松浦が待っている。
「じゃ、行くね」
安倍にようやく笑顔が戻った。
- 311 名前:4126 投稿日:2001年11月21日(水)21時18分07秒
- 出番を待つ松浦とすれ違う。松浦の目はうっすらと赤い。
凡百の言葉より、たった一つのゴールがなにかを雄弁に物語ることだって、ある。
松浦、私を越えていけ。
「あと、頼むな」
「はい」
醜くまぶたを腫らした7番の手が肩に触れると、弾かれたようにして9番がピッチへと飛び出した。
3試合5得点1アシスト。それ以上にすさまじい最後のゴールを残して、安倍なつみのシドニーは終わった。
ベンチに戻る。
安倍は笑顔を絶やさず、こう尋ねた。
「みっちゃん、かっこよかったかなあ?」
腕組みしたままの赤鬼の目から、大粒の涙が伝った。
- 312 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月21日(水)21時40分26秒
- なっちさんおつかれっす!!
感動したっす!!!
- 313 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月22日(木)00時15分13秒
- なっちありがとう(●´ー`●)
- 314 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月22日(木)00時26分19秒
- そして、実は24時間テレビの「眼帯なっち」にもかかってるわけだな。 毎度ながら、すばらしい手腕だ。
- 315 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月22日(木)00時30分47秒
- なぁ〜みだ〜、とまらないのは〜・・・。
あなたのせいです。あべしゃん。
お疲れ様でした。
- 316 名前:4126 投稿日:2001年11月22日(木)01時52分48秒
- 「まだやでー!」
小さいおっさんはあきらめが悪い。恐らくこれが最後の国際舞台。
「集中し直しよ!」
おばちゃんもぬかりない。現役生活があと数分で終わる。
その二人が競り合う。オカムラのつむじが保田の目に入り、まぶたが切れた。止血のため一旦外へ。
こんなの、なっちに比べたら。
「すぐ戻る! 点取られたら承知しないからね!」
ああ、うるっせえ。
「吉澤真ん中入れ! 木村、柴田引け!」
カトッチが切り込んでシュート体勢に。その足元に小川が飛び込む。
顔面で、止めた。
「よし、そのまんまキープ…」
やなこった。
- 317 名前:4126 投稿日:2001年11月22日(木)02時07分04秒
- 強肩がうなる。
柴田が頭で石川につなぎ、石川が浮き球で左へ。
加護がいた。まだ何も仕事をしていない。ハマグッチと向き合う。中に切り込むとみせ外に、さらに切り返して右足でセンタリング。
体ごと飛びついたのは松浦。ヤマモトッチと競り合いながら頭でコンタクト。無人のゴールに叩き込んだ。
力一杯加護と抱擁する松浦。かつてない球際の強さに安倍の遺したものを見た。
「おっしゃ」
起点となるスローを見せた小川が仲間に寄って行く。が、なぜかみんなが逃げる。
紺野が鼻を指さすのでそでで拭う。
「うおっ」
手首が赤く染まった。
- 318 名前:4126 投稿日:2001年11月22日(木)02時19分20秒
- ワセリンで傷口をふさいだ保田、右の鼻の穴に詰めものをした小川。流血姉妹が必死の形相でゴールにふたをする。
ロスタイムがそろそろ尽きる。オカムラビッチがラストシュートの構えに。保田が詰め、コースを限定する。狭まったほうに小川が飛び、まったく同じところに紺野も回り込んだ。
両者、激突。
ボールが夜空に消え、ようやく笛が鳴った。
「いてえじゃねえか」
紺野にヘッドロックをかます小川。
日本、予選突破。
ユーゴスラビアが負けたことで、グループDのもうひと枠は自動的にアルゼンチンに決まる。八強がすべて出揃った。
- 319 名前:4126 投稿日:2001年11月22日(木)02時34分26秒
- 「飼い犬に手かまれるてこういうことやな。日本になんか行かなんだらよかったわ」
平家にこうつぶやいたオカムラビッチ。
保田がともにゴールを守った従妹に寄って行く。なんとか90分持った。
「姉ちゃん」
痛む腰でゴールを守った小川がその胸ですすり泣く。
控室にいた大谷が戻ってきた。村田、斎藤が柴田を呼ぶ。号泣の合唱が始まった。
一人空を見上げた紺野、胸の番号の3を握りしめる。名無しの三本足に見守られ、ドラガン・オカムラビッチと戦い抜いた紺野は、青い鱗のドラゴンになった。
石川が矢口を出迎える。が、一人足りない。
- 320 名前:4126 投稿日:2001年11月22日(木)02時45分51秒
- 「のの、勝ったで! 八強入りや!」
シドニーの親友にいの一番に勝利を伝えたかった加護。だが電話の向こうの辻希美は元気がない。
「な、どないしたん…あ、亜弥ちゃん、梨華ちゃん。今ののに電話しとんねん。な、どないしたんや。勝ったんやでうちら」
やがて、電話の向こうから泣き声が聞こえてきた。
「だってみんな自慢すんだもん!」
バレーボール全日本女子、昼の試合でクロアチアに敗れ、決勝リーグ行きの可能性がなくなってしまっていた。
- 321 名前:Result 投稿日:2001年11月22日(木)03時00分05秒
- 日本3−2ユーゴスラビア
GK 小川
DF 大谷
保田
戸田
MF 吉澤
柴田
石川
木村麻
FW 安倍(87分松浦)
加護
木村ア(58分紺野)
得点
日 43分 石川(安倍)
ユ 52分 カトッチ(オカムラビッチ)
ユ 59分 オカムラビッチ
日 87分 安倍(柴田)
日 89分 松浦(加護)
警告・退場
大谷(退場・ラフプレー) エガッチ(退場・ラフプレー) 柴田(警告・ラフプレー)
Woman of the match
保田圭(日本)
- 322 名前:4126 投稿日:2001年11月22日(木)07時39分50秒
- 「なっち、おめでとう」
翌日、メルボルン市内の病院を矢口と保田が見舞った。安倍が記者の選ぶ予選のMVPに選ばれたのだ。他にも吉澤と保田がベストイレブン、次点に小川と加護、最優秀監督に平家、ベストチームに日本。無論予選に出場した全チームが対象、世界各国の記者が選んでの話。
保田も安倍と同じように右目に眼帯をしている。ただし保田はただの裂傷。安倍は頭がいこつ陥没という重傷、年内のプレーは絶望。幸い手術は良好だがしばらく飛行機での移動ができないという。
- 323 名前:4126 投稿日:2001年11月22日(木)08時05分59秒
- だが栄誉より、ゴールより、チームに貢献できたことが安倍にはうれしかった。
それは矢口、保田も同じで、やはり日の丸を背負い、戦う歓びは格別のものがある。そして勝てたのだから嬉しさは限りない。
たとえ大怪我しても、現役最後の試合だとしても、どこか不完全燃焼だったとしても、楽しかった? と尋ねられたら迷わずこう答えられる。
楽しかったよ、とっても、と。
だから三人は今静かな、大きな歓喜の中にいた。南半球の早春のこもれ陽に包まれて。 (完)
- 324 名前:295 投稿日:2001年11月22日(木)08時13分52秒
- >>301
スターアキラッチです。もう終わってしまいましたが。
- 325 名前:4126 投稿日:2001年11月22日(木)09時25分43秒
- スキラッチみたい。スターにしきのというと生ダラのイメージが強いす。
なにはともあれ「歓喜の145センチ」無事完結いたしました。ありがとうございました。
- 326 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月22日(木)10時09分31秒
- え、マジで?終わりっすか?
決勝トーナメントはやらないんですか?
- 327 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月22日(木)11時45分14秒
- なんか、読んでて勝手に伏線だと思ってたものが、けっこう残ってる感じするんだよね。明日香とかちゃむとか。 つーか、この名作の続きがもっと読みたい。
- 328 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月22日(木)12時13分03秒
- マジにおしまいなん?何かむずがゆい終わり方ですな。
知らず知らずのうちに妙な期待を持たされてるところが、これまた4126さんぽくて良いです。
オーラスのなっちはかなり良かった。マジで( *´ ー `*)なっちありがとう。
突然ですが小ネタ提供。
今週の「Number」536号(11/29号・オーウェンの咆哮がカッケー表紙)より。
こないだポーツマスに移籍した川口、皆から「ヨッシー」と呼ばれているそうな。
・・・・・・こんだけですが、何か?(w
五輪代表キャプテン・吉澤選手のプレミア挑戦編とかどうスか?、とリクエストなんてしてみたり。
- 329 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月22日(木)12時40分45秒
- おわりましたか。最後まで大変面白く読ませていただきました。
またそのうち、続編を書かれるときまで楽しみにしてます。
…期待しててよろしいですかね?
- 330 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月22日(木)15時48分53秒
- こんな終わり方あり??
お疲れ様でした。
何か続きを創造してしまうな。
- 331 名前:4126 投稿日:2001年11月22日(木)17時36分23秒
- とりあえず期間限定スレッド。ほいっ。
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=wood&thp=1006417825
たぶんスレ100前後の短いものになる。ネタもやんないし、内容も実験的。
ま、すぐ終わるよ。
- 332 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月22日(木)18時35分15秒
- お疲れ様でした。
なっちのところ涙で画面が見えなかったです。
感動をありがとうございました。
辻加護が仲直りしてよかった!
小川のイメージがこことダブってしまいました。
でも、あの度胸のよさはさすが的をえているなと感じました。
面白い作品を本当にありがとうございました。m(__)m
- 333 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月23日(金)01時09分19秒
- これから新しく2chに来た人が、この小説を見つけてまずハマるとする
狂気から歓喜まで一日かけて読み倒してついに最後まで読んだ
え?これで終わり?決勝トーナメントは?ワールドカップは?
もしかして放棄?
慌てふためく読者が目に見える
- 334 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月23日(金)01時24分36秒
- 終わりか・・・。
っておい!
2CHからずっとリアルタイムで追いかけててココまで
たどりついたのにそりゃないっしょ。
チャムVS日本代表の
決勝戦みたいー・・・。
- 335 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月23日(金)01時48分53秒
- まずはお疲れさまでした。
ピカソは新しい恋人フェルナンド・オリビエに出会い、その作風を変えていきます。
『青の時代』から『バラ色の時代』、そしてキュビズム。
作風をどんどん変えていったピカソが生涯持ち続けたもの、
それはあくなき美と造形の追求のハートだった気がします。
それぞれのメンバーの「変わり続けていく勇気」がこの章では色濃く見えました。
日本代表がどんな甘美な物をオリンピックで手に入れ、ひとときの幸せに浸り、
そしてさらに高みを追求していく孤独な戦いを続けていくか、読みたいなあ。
- 336 名前:とまときっど 投稿日:2001年11月23日(金)02時20分35秒
- とりあえず、お疲れ様でした。
んで、本当に終わりなんですか? 残念です。
ウチのサイトでも宣伝しまくっちゃったのになぁ…
あ。320はハロモニのやきそばですよね? 当然。
まぁ、伏線、期待しております。
明日香とか、明日香とか、あと明日香とか、他にも明日香とか…
んじゃぁ、シバラクは短編の方を応援しておきます。
でも。
次回作、期待しまくっておきます。
- 337 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月23日(金)13時29分50秒
- 今後、娘。小説で「サッカー」を題材にしたものは書かれなくなる気がします。
それだけ素晴らしく、影響力のある小説&作者です。
娘。&サッカーファンの希望の火を消さないで欲しい...。
次回作を切に願います。
- 338 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月23日(金)13時35分45秒
- お疲れ様でした。
これで終わりかとあらためて考えてみると、
オーバーエイジが主役だから
ここで終わって正解なのかなと。
- 339 名前:ねぇねぇ名無しさん 投稿日:2001年11月23日(金)15時54分59秒
- お疲れ様でした。
次回作、期待してます。
- 340 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月23日(金)22時23分38秒
- 長い間、お疲れ様でした。
4126さんのおかげで、サッカーがもっと好きになりました。
THX!!!
- 341 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月23日(金)22時49分08秒
- もしかして森以外でも始めてる?
- 342 名前:4126 投稿日:2001年11月24日(土)04時15分02秒
- 「矢口さん、保田さん」
病棟の外の廊下で、石川はずっと待っていた。
「なんだよ、入ってくればよかったのに」
「安倍さんには知られたくなかったんです」
「は?」
黙ってラベルのないビデオテープを取り出す石川。
「洋ピン?」
OKマークに指を通すひわいな矢口のジェスチャーにさすがに保田も眉をひそめる。
珍しく矢口をにらみつける石川。下ネタ嫌いで有名な石川だが、今怒っているのはそこどはない。
「とにかく、見て下さい」
- 343 名前:4126 投稿日:2001年11月24日(土)04時36分13秒
- 「だからなんなのさ」
訳も分からず病院の一室に通された二人。
「よくあんたの英語力で部屋が借りられたね」
「プリーズレンドミールームビデオティービーで十分す。あとはキアイで」
「だからなんなのよ、それ」
「カメルーン−アルゼンチン戦です」
なんだ。アルゼンチンが4-0で勝ったのだけは知っている。得失点差で日本を上回り、ナイジェリアと決勝T一回戦を戦う。日本の相手は米国。
市井も出ていないし、興味はない。
「いえ、どうしても見てください」
- 344 名前:4126 投稿日:2001年11月24日(土)04時45分36秒
- ヒロミストゥータの頭にロングボールを合わせ、そのポストプレーからゴールを狙う。贅沢といえば贅沢、退屈といえばこの上なくど退屈なサッカーたが死に体のカメルーンにはこれで十分なのだろう。
ポストの落とし処には必ず、背の低い、ずんぐりした10番。素晴らしい得点感覚の持ち主だ。顔を怪我しているのか、仮面舞踏会で用いるようなフェイスガードを着用している。
「あれ? アルゼンチンて10番入れてなかったんじゃないの?」
10番に頼らないサッカーとかで、今回欠番にしていたはずなのだが。
「追加登録したんです。新監督が」
- 345 名前:4126 投稿日:2001年11月24日(土)04時54分11秒
- ベンチで腕組みする男の顔に保田は見覚えがある。いや、そんな生易しいもんじゃない。保田は彼に見いだされたのだから。
「なんであの人があんなところにいるのよ。ナイジェリアは?」
「昨日の朝解任されたそうです。人種差別発言が原因とかで」
ありえない。彼がヒューマニストだからではなく、そんな理由で職を追われるなんてことが抜け目ないこの男に限って。
そしてこの試合が行われたのが昨夜。朝職を失い夜には新しいチームを率いる。あまりにできすぎている。
- 346 名前:4126 投稿日:2001年11月24日(土)05時05分04秒
- シャクボマからエナリへのパス。オフサイド。左端にいるノリカを含めた最終ラインが7番の指示で押し上げていた。日本戦でアルゼンチンのとったオフサイドは0だったはず。
男の横には、やはり保田のよく知る女がいる。最終ラインを操る巧みさにかけては右に出る者はなかった彼女が、左腕にキャプテンマークを巻いたマサミ・ハピネル・ナガサワに日本語で指示を与える。だがこの腕章は借りもの、次の試合に帰ってくる真のキャプテンのために預かっている。
だが矢口は考えているのは、ただ関根勤のことばかりだった。
- 347 名前:4126 投稿日:2001年11月24日(土)05時16分58秒
- 男のサングラスが悪趣味だろうが、女の小鼻にピアスが光ろうが、そんなことはありえない話ではない。諸行無常。
だが一人だけ、絶対そこにいてはいけない人がいる。
似顔絵をうまく描くコツは、うまく本人の特徴をとらえ、そこを誇張することだという。そうすることで本物以上に本物らしい顔に仕上がる。
ものまねもまたしかり。これでもかとばかりにデフォルメすることで本物にさえないような特徴を引きずり出し、笑いを誘う。
その逆がそうした誇張を一切せず、過不足なく写実的に演じてみせる模写。
関根勤こそは、この模写の達人といえる。
- 348 名前:4126 投稿日:2001年11月24日(土)05時27分01秒
- 関根が老優大滝秀治をまねる秀治(ひでじ)を初めて見た時の事。最初大笑いした。大仰なメイクも含め、よくできているなあと。
だが徐々に薄気味悪い感覚に捕らわれる。あまりに似過ぎていて、次第に本物ではないかという錯覚に陥ったのだ。
本物が乗り移ったのではと思うほどの芸ではあったが、やはりパーフェクトというわけにはいかない。やはり関根勤なのだと確信し、ひどくホッとした覚えがある。
今の矢口が、アルゼンチンの10番に感じている不気味さはあの時と酷似している。いや、まったく同じものだ。
- 349 名前:4126 投稿日:2001年11月24日(土)05時38分07秒
- 曲線的なドリブルは明らかに他のアルゼンチン選手とは一線を画している。ボールタッチが少なく、密集地帯をすり抜けていく動き。あまりに似ている。時々小首をかしげるしぐさまでそっくりだ。
なんとか差異を見つけようとする。大滝秀治と関根勤の違いを見つけようとするように。
だが10番はどこまでも大滝秀治のまま、関根勤にも田島貴男にも見えてこない。
救いを求めるかのように石川を見る矢口。横に振るばかりの石川。保田はまだ気づかない。畜生、おまえは関根なんだろ、10番。
『アルヘンティナ、ナンバー10、ギンナン、ハットトリック!』
- 350 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月24日(土)06時02分14秒
- あれで終わるわきゃーねえと思ってたけど、まさかこう来るとは・・・
- 351 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月24日(土)10時37分15秒
- ……うひゃー。
- 352 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月24日(土)12時01分55秒
- あそこで終わるのかとマジでびびっちゃいましたよ。
4126さんも人が悪いな〜。
- 353 名前:ねぇねぇ名無しさん 投稿日:2001年11月24日(土)14時23分17秒
- ギンナンって...
どういうことだよ?
おいっ!中澤!!
- 354 名前:とまときっど 投稿日:2001年11月24日(土)15時59分36秒
- 「おーーーいっ!」
ってい思わずヤグチ風のツッコみが。
「ど、どぉなるんですかー?」
…と、とにかく、続いててよかった。大期待です。
- 355 名前:特報! 投稿日:2001年11月24日(土)19時32分15秒
- 「いろいろあったんだよ、いろいろとね」
ドーハに散った狂気のイレブン。
「すげえなあ。本当に起きるんだな、奇跡って」
国立に舞った奇跡のイレブン。
そしてシドニーを目指す、歓喜のイレブン。
サッカー小説、完結編。
- 356 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
- ( `.∀´)ダメよ
- 357 名前:特報! 投稿日:2001年11月24日(土)19時36分06秒
- 「うちはもう腹くくりましたよ。鬼にでも悪魔にでもなる」
「あたしは情とかでは動かないから。でも、この話は確かに魅力的だね」
「よう考えたら、俺、天国なんて退屈なところ嫌いやったんや」
「サヤカ…ユーチャン…アヤッペ…カントク」
水色と白に墜ちた四つの巨星
- 358 名前:特報! 投稿日:2001年11月24日(土)19時42分25秒
- 「もっと任せろよ。あたしがあんたらの仲間でいられるの、これが最後なんだからさ」
「何度も頼ってごめん。でも、どうしてもあなたの力が必要なの、三本足」
「やっと分かった、自分に何が欠けていたのか。ここは、ここだけは絶対に守るんだ」
「たぶん、今夜、この試合が終わったら泣くと思います。勝っても負けても」
赤と白を彩る四つの新星
- 359 名前:特報! 投稿日:2001年11月24日(土)19時44分04秒
- 「もうすぐだね。今度こそ決着をつけような、市井ちゃん」
「後藤、あたしはあんたなんか大っ嫌いなんだよ」
交錯する陽光(サンシャイン)と月光(ムーンライト)
- 360 名前:特報! 投稿日:2001年11月24日(土)19時45分31秒
- 「リメンバー、パールハーバーでゴワス!」
「の一人、はいらない。俺が世界最高の守護神だ」
迫り来る、新たな刺客たち
- 361 名前:特報! 投稿日:2001年11月24日(土)19時48分18秒
- やがて訪れる決戦の時、世界一を決める宴
「下りて来いよ。日の丸、八つ裂きにしてやる」
「上等。セレスティブランコ、血祭りだ」
待ち受けるものは、希望か、絶望か
- 362 名前:特報! 投稿日:2001年11月24日(土)19時53分41秒
- すべては、月が見ている
145センチシリーズ ファイナル
Ms.Moonlight 〜世界一の夜〜
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=moon&thp=1006168152
Mr.Moonlightと読み間違えたやつ、塀内夏子をホリウチナツコと間違えるのと同じぐらい厨房
- 363 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月24日(土)20時04分51秒
- すごい企画ですね・・・
ついに完結・・・
どうなるか、ドキドキしながら待っています。
- 364 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月24日(土)20時55分42秒
- やっぱ、あんたはサイコーだーーー!!!
- 365 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月24日(土)21時24分55秒
- すげーことになってんじゃねーすか!
なにをじらしてたんすか!!
やっぱ市井との最期の決戦があるんじゃねーですか!!!
しかもファイナルの冒頭がこれまでよりも一段と熱く面白くなってるし!!!!
4126のキラーパスが止められないよ!!!!!
- 366 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月25日(日)01時51分29秒
- いよいよ完結編ですか。
「狂気の145cm」が始まった頃から読ませていただいている身としては
やっとここまで来たという期待と
これで終わりかという寂寥感が入混じっています。
今、「狂気の145cm」を読み返してみると、
あの頃の、決して強くはなかったけど
悔し涙を流しながらも懸命に戦い続けた代表メンバーたち。
点の取れないエースだった安倍。
ラインコントロールもできなかった保田。
ゲームメイクのできなかった矢口。
こんな3人がここまで引っ張り上げてくれた事に深い感慨を感じます。
最終編楽しみにしています。がんばってください。
- 367 名前:4126 投稿日:2001年11月25日(日)05時10分31秒
- さすがこれだけじゃ終われませんよ。
ただだましたつもりもなくて、ちょっと書き方を間違えたかなと。
全部のストーリーの最後という意味で、一応「歓喜」の第4部とは違うのだぞ、と。
ま、これど本当に最後の最後だ。これはマジで。
- 368 名前:4126 投稿日:2001年11月25日(日)05時13分56秒
- それから、この小説ってほとんどがサッカー好きが読んでるんだと思うんですが、時々あまりサッカーを知らないのに読んでくれてるって人がいて、これがとてもうれしい。
と同時に、そういう人にはかなりわかりにくいんだろうなと申し訳ない気持ちにもなったり。
ただあまりくどくどと説明をつけてしまうと疾走感が薄くなってしまうのでね。
少しわかりにくい箇所は、想像しながら読んでいただけるとありがたいかなと。じゃ、ラスト、いくよー。
- 369 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月25日(日)07時56分02秒
- 俺もコレ読んでサッカーが好きになった口です
狂気の左サイドバックも読んでるし
見方も結構変わりました。
毎日の楽しみですしね。
これからもがんばってくださいね。
- 370 名前:4126 投稿日:2001年11月25日(日)09時07分20秒
- やっぱりいましたか。うんうん
- 371 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月25日(日)09時37分39秒
- サッカーは詳しくないですが、これは一流のネタ小説として読ませて頂いてます。
的外れな感想かもしれませんが……。
- 372 名前:4126 投稿日:2001年11月25日(日)14時53分40秒
- 全然OKす。一流かどうかはともかく。
- 373 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月25日(日)15時21分12秒
- しかし、今度のは究極のテーマだよね。 娘。の敵は娘。か。
- 374 名前:4126 投稿日:2001年11月25日(日)18時09分39秒
- 厳密に言うと娘。対元娘。な。オーラスですもん、これくらいやったってバチはあたんねーって。これで初めて中沢と高橋、石黒と紺野の師弟関係が生きてくるし。もっとも最初の発想では中澤を狂言回しに使いたかったのと、福田が日本五輪チームにいる違和感をなんとかしたかった。したらつんく石黒も一緒にしちまえと。
- 375 名前:4126 投稿日:2001年11月25日(日)18時14分30秒
- で、飯田をオーバーエイジから外したのもこれが理由。対立の構図は中立を一人置くことでぐっと生きてくるし、四人のなかでその役がつとまるのは飯田しかいなかった。
にしても記憶喪失…我ながらやっちまったなあ。
- 376 名前:名もなき読者 投稿日:2001年11月25日(日)21時15分00秒
- 予想外の展開ですね!読者をいい意味で裏切っているところは、さすがとしか
いいようがないですよ(w)「狂気の145cm」から読んでいる者としては、こ
れで最後というのは感慨深いものです・・・でも娘。VS旧娘。というのは
これ以上になく最後にふさわしいと思います!飯田をオーバーエイジから外した
ことや中澤達の師弟関係もこのラストのための伏線だったとは・・・驚くばかり
です(w)ラストまであと少しなので、本当に頑張ってください!
- 377 名前:373 投稿日:2001年11月25日(日)23時11分10秒
- そう。ラストなんだよね。 俺も狂気から読んでるクチで、そのわりにはサッカーはほとんどわからんのだが。 変わりと言っちゃ何だが、俺プロレス好きでさ、たとえば三沢光晴がジャンボ鶴田の幻影にさいなまれながら、エースとしての自分を築いて行った姿と、この物語の何人かの登場人物の姿がだぶるんだよね。 実際にジャンボと三沢は再びあいまみえることはなくて、それは現実における娘。対旧娘。の姿と似ているんだが、ここでは対決する。 というか、できるんだな、と。 すごく贅沢だなー、と思って見てます。
- 378 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月26日(月)00時16分46秒
- 作者さん!予想を裏切りつづけてくれるあなたは本当に凄い!
最後の、そして最高の娘。サッカー小説として走ってください。
あ〜もう何書いてイイかわからないです。
とにかく頑張って!
- 379 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月26日(月)04時42分36秒
- ここ3日家を空けてたら、
えらいことになってるじゃないですか!!!!
いろいろ言いたいけど、
とにかくすべての娘。が幸せになるようにお願いします。
- 380 名前:4126@どうでもよいアトガキ 投稿日:2001年11月27日(火)01時43分09秒
- 四神伝説って知ってます? 東西南北を守る動物の姿をした神様。(関西の方には、餃子の王将のマスコットといえば分かりやすいかなと)
書き始めた頃何も分かってなかった新メンを書く取っ掛かりにしたのがこの四神なんです。
赤板「Cried red monster」が朱雀=トリ=カラス高橋
白板「Zinc white」が白虎=越後の虎小川
青板「Time of Blue」が青龍=伏龍、逆鱗、登竜門と並べた紺野
月板「Ms.Moonlight」が玄武(亀と蛇の合成獣)=月とスッポンでスッポン新垣
で、その板ごとに新メンをフィーチャーした(する)わけっす。さすがにこれは誰もわかんなかったろー。
だからどうしたと言われればそれまでなんだけどね。
- 381 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月27日(火)10時21分37秒
- 高橋と新垣が強引過ぎる。そりゃ分かりませんて(w
次のメイン新垣をどう料理するのかとても楽しみ。
- 382 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月27日(火)21時59分57秒
- 4126さん、質問です。
ほかの娘。小説って読まれてます?
お気に入りがあったら教えてほしいです。
- 383 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月27日(火)23時40分15秒
- 四神伝説は?だが朱雀やら青龍やらと言われると分かる
今回の新メンがそれにちなんでいることは全く気づきもしなかったが
「狂気」以降4126がものすごく勉強しているのが分かる
伝わってくる
- 384 名前:4126@そろそろ得点者=MVPはやめれトヨタカップ 投稿日:2001年11月28日(水)00時35分02秒
- >>382
最近は人のものを読む余裕はないのですが、黄色い狛犬さんの「市井TV!」だけは読みました。
書き慣れてる人の文章ってやっぱすごい。あれを本当に構成考えずに書き殴ってるんだったらもっとすごい。
いろんな意味で、まず自分にああいうのは書けん。
>>383
あくまでとっかかりだから、勉強っちゅーほどのモンではないっす。
- 385 名前:名無し娘。 投稿日:2001年11月28日(水)01時35分04秒
- ずいぶん昔に、4126さんのお名前を間違えて覚えてて、やっぱり合ってたものです。
覚えてくださっているかな?サッカーファンではない私ですが、本当に
楽しくこの作品を読んでおりました。
四神伝説、『われめでポン』のセットに書かれている文字ですね。麻雀嫌いのかた、
すみません・・・。4126さんの作品、回を追うごとに読みやすく、楽しい作品に
なっていると思いました。最初は誤字も多かったし・・・(すみません)。
ちなみに私の好きな作品は『娘。十夜』です。古いですけどね。
良作ですので、是非一度ご覧下さい。
- 386 名前:4126 投稿日:2001年11月28日(水)01時50分33秒
- はいはい、覚えてますよ。われめでポンときたか。
「十夜」は読んだよ。俺も好き。
- 387 名前:4126 投稿日:2001年11月28日(水)02時53分35秒
- たまにこのスレの名前で検索エンジンにかけたりするんですが、案外ここに移ったこと知らない人が多い。
大して宣伝も打たなかったのにこうしてきてくれた人には本当に感謝。
- 388 名前:名無し娘。 投稿日:2001年11月30日(金)21時54分27秒
- 雑談スマソ。
4126さんは市井ちゃんと握手した?
- 389 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月30日(金)23時29分57秒
- このシリーズ年内には完結してしまうのかな?
来年は市井本格復活の絡みでW杯ネタをぜひ書いてほしい。
- 390 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月30日(金)23時36分23秒
矢口、戻ってきて…
- 391 名前:4126 投稿日:2001年12月01日(土)07時14分46秒
- 388
まだ。横浜に行った知り合いが電話越しに悶絶していた。
389
もうネタないっす。そういえばいよいよ今日組み合わせ抽選だあね
390
とりあえずベンチには戻ったが出番は?
- 392 名前:test 投稿日:2001年12月01日(土)19時36分41秒
- てすと
- 393 名前:4126 投稿日:2001年12月01日(土)20時49分15秒
- 決まったね。で、正直どうよ? 俺はブラックアフリカンが来なくてホッとしたが。
- 394 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月01日(土)20時51分54秒
- F組おもしれえ。
っていうか、すごすぎ。
ナイジェリアって、前もこんな悲惨な組入ってなかったっけ。
日本は、ずるくない?
これで、予選突破できんかったら、永久に無理か?
出来れば、1位になって、トルコあたりと決勝トーナメント初戦をやれば、ベスト8のチャンスもあり?
- 395 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月01日(土)21時24分01秒
- どのチームにも予選突破あり得るね。
ホームの利があるから日本いけるんじゃない?
個人的にはスペインがいけそうでヨカタヨ
- 396 名前:4126 投稿日:2001年12月02日(日)00時21分12秒
- 一番の強敵はロシアだろうか。でかいし強いし。しかしすぐ名前が出てくる選手がいるチームがないのはいいんだか悪いんだか?
戦い方も難しい。韓国みたく二位狙いでいこう! とビジョンがはっきりしてるほうがいいと思われ。
- 397 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月02日(日)01時12分16秒
- 正直、組み合わせが云々よりも、
4126さんがどんな風にこれを書いてくれるのかが気になる。
- 398 名前:4126 投稿日:2001年12月02日(日)11時12分50秒
- だからもうネタ涸れだべさ。書きたい気持ちがないわけではないけど。まずは今回に集中したいなと
- 399 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月02日(日)23時39分11秒
- あっちのスレには、コロッケどんの彼が登場したね。 あのエピソード、好きなんだよな〜。
- 400 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月03日(月)00時08分19秒
- >>399
激しく同意!!
微妙に石川ヲタの感情をくすぐる彼は名脇役だった
- 401 名前:4126 投稿日:2001年12月03日(月)01時18分30秒
- 「青春の1ページ」の彼、もう一回使いました。お気に入りだったので。
彼の嫁さんは向こうの237にあった通り、平田裕香です。
肥えてた頃のなっちが入った石川、って感じで似てると思うす。
- 402 名前:399=373 投稿日:2001年12月03日(月)15時54分17秒
- どっちかっつーと、俺は彼の人生に救いがあったことの方が嬉しかったな。 石川の涙も理解できるが。 ところで、やっぱ「三本足」って、ヤタガラスのアレゴリーだよね。 こんこんには日本代表の守り神が宿ってるのか。
- 403 名前:4126 投稿日:2001年12月03日(月)20時18分45秒
- 難しいんね…彼は石川という自分の果せなかった夢を託せる存在がいることだけで幸せともいえる。
(この話の)石川は実はちょっとずるくて、彼という存在に「普通の生活をしていたら」という願望を重ねてしまってる。
けど石川は「奇跡」の時「あたしにはサッカーしかないんだ」と言い切ってしまってるんだな。
つまりサッカーのない自分は考えられないことを十分分かってしまってるわけで。
小川と違うのは、小川はいずれあの友達の中に自分が戻っていくことを決めてる。
石川は覚悟を決めながら未練を残す「弱さ」がある。実は書きたかったのはその弱さのほうなんだな。
ケインというつわものをさらなる強大な力でねじ伏せた石川の弱さ。
- 404 名前:4126 投稿日:2001年12月03日(月)20時20分23秒
- 三本足についてはビンゴ。
ラストに書くつもりだったんだけど、高橋がカラスの「翼」紺野が「足」。
小川は捨て石というわけ。
- 405 名前:4126 投稿日:2001年12月03日(月)21時44分35秒
- さて問題。
月板本日の更新で、さりげなーい? 小ネタをやっております。何スレでしょう?
答えをまんま書かず、スレ数でお答えください。もちろんこっちにね。
ヒント サッカー知らない人でも、よく見れば分かるよ。
- 406 名前:名無し娘。 投稿日:2001年12月03日(月)23時21分38秒
- >>405
259かな?でも、そのまんまだけど・・・。
- 407 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月03日(月)23時28分01秒
- 267,268だと思う…
267のほうはわかるんだけど268はネタがわかんない
267オンリーなのかな
- 408 名前:399 投稿日:2001年12月03日(月)23時42分57秒
- うう、ネタバラシしてごめん。ヤタガラスの件。 律義に答えてくれてありがとう。 で、彼と石川の件だけど。 お互いがお互いの中に、違う自分を見たんだと思うのね。 でも、もう一人の自分が、自分のなりたいものになれたからって、それが自分じゃないっていう喪失感は消えないわけじゃん。 俺は、このエピソードで、彼の人生が帰ってきたな、って感じがしたんだよね。 一方、石川は、その喪失感を、これまでで一番強く自覚したんだと思うんだ。 って、創造主様に意見するなよ俺。
- 409 名前:406 投稿日:2001年12月04日(火)00時38分12秒
- >>407
あぁ、そうか!259は撤回で(恥)・・・。
- 410 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月04日(火)00時41分13秒
- ケインを倒すことが石川の弱さなのか・・・
矢口は日本代表のために命を賭けている
石川は自分自身のためにサッカーをやっているのか
石川はサッカーマシーンになることで自分の存在を確かめているのか
石川はそのことに苦しみがあるのか
矢口は気付いているのか
石川の未練?何に未練を残している?男に?
いや、嬉しかったのは解るんだけど
難しい・・・・・っつーか俺頭悪い?
- 411 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月04日(火)01時08分09秒
- 267だと思うけど辻のがよくわからん。
- 412 名前:4126 投稿日:2001年12月04日(火)01時32分31秒
- まず405の正解。
267。松浦→「アヤ」ックス、加護→「アイ」ントホーフェン、辻→フェイエ「ノノ(ノー)」ルト。
簡単だったね。辻がやや苦しいが。皆様お見事。でもこれ本当に偶然なんだよ、今まで気づかなかった。
408がだいたい俺の言いたかったことでもある。
410、プロのサッカー選手ってのはやっぱ「普通じゃない」わけで。でもほとんどの人間は「普通」の心を持ってるわけでしょ?
普通である人間でいたい気持ちが石川のどこかにある。
でもあんなフリーキックはやはり普通の人間には蹴れない。
普通でありたいけど、やっぱり自分は普通じゃないんだって石川は分かってる。
矢口なんてのは能力としては普通なんだけど日の丸への愛という一点において異常、そしてその分迷いもない。
- 413 名前:4126 投稿日:2001年12月04日(火)01時40分53秒
- 「彼」は平凡でありたいとどこかで願ってる石川にとって、まさに平凡の象徴でもある。
普通の仕事に就いて、結婚して、子どもを産んで…そんなささやかな幸せ不幸せの象徴。
でも石川にはそれが「できない」んだな。普通の人間でいられる「才能」が、石川にはない。
(矢口ははなっからそんな願望がない。だからサッカー選手にしかなりたくないと言って学校の先生と衝突する。石川と矢口はまったく逆で、だからウマが合うのかもしれない)
彼にとって石川が果せなかった夢であると同時に、彼もまた石川にとって置き忘れたものの象徴なんだ。
これはある意味すごく理想的な関係。近くにいればいやなところがいっぱい見えるし。
以上、これは俺の分に対する俺の妄想。
- 414 名前:4126 投稿日:2001年12月04日(火)22時30分29秒
- 旅に出ます。探さないでください。出先から更新できたらしますです。
- 415 名前:399 投稿日:2001年12月05日(水)00時11分07秒
- あーん。じらすなんてずるぅーい(馬鹿)。 っていうか、突然のプロレスネタは読者サービス? 復帰お待ちしてます。
- 416 名前:あっちの237 投稿日:2001年12月05日(水)13時27分45秒
- 言われてみて、似てるなあと(^_^;)
ひらっつあんが好きな理由がわかったっす。
きまじめなところも似てますね。
そういえば、最近サポーターさん見かけませんね。
ビール用意しとかないと。
- 417 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月05日(水)14時10分59秒
- やっぱり狂気の145cmシリーズの集大成として
矢口が出てこなきゃね始まらないよね。
ガンバレ
- 418 名前:4126 投稿日:2001年12月05日(水)23時59分48秒
- 結局更新できたわ。
今後レスはこっちにつけていただくとありがたいす。
そろそろ向こうが微妙なもんで。
- 419 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月06日(木)18時18分08秒
- おーけー(辻加護風)(^_^;)
辻加護ナイス!
「あいーん」最高!
チャムとギンナンにまけないようがんばれ!
なっちとあややのためにも!
- 420 名前:4126 投稿日:2001年12月07日(金)01時01分44秒
- ただいま戻りました。疲れた。
- 421 名前:とまときっど 投稿日:2001年12月07日(金)01時02分16秒
- ARGのボランチ。
コマイヌ?
圭ちゃんしか思い浮かばないのですが…誰がモデルなのでしょ?
- 422 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月07日(金)03時06分29秒
田畑智子か内山理名?
- 423 名前:399 投稿日:2001年12月07日(金)10時54分26秒
- 最近、フジの春日由美アナウンサーが保田に似てると思うんだが。
- 424 名前:4126 投稿日:2001年12月07日(金)22時05分46秒
- コマイヌは向こうに記した通り。今さっきご本人にメールしました。
最初はシメオキテにして石川と柴田にはさまれてハァハァしてもらうつもりだったんだが、狛犬さんに元気になってもらいたかったんで。ま、内輪受けの範囲です。
ていうか、オイラが今へこんでるかも。だいぶ落ち着いたが。
>>423は「とくダネ!」に出てる人か? 言われればそんな気も。
- 425 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月07日(金)22時46分29秒
- 圭ちゃんはかわいい
まじで
- 426 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月08日(土)11時15分03秒
- 春日アナの方が、田畑や内山よりもはるかに( `.∀´)似だと思うのだが・・・
まさにこんなんだし→ ( ` ∀´)
- 427 名前:4126 投稿日:2001年12月08日(土)17時24分40秒
- 禿しく脱線したんでこのへんにしておこう。
で、昨日はとうとう更新できませんでした。スマソ。
そうです、あの噂です。
オイラは気に病むことがあると体が冷たくなるのですが、とうとう一日凍えそうなままでした。
なんで、どうして。そればっか。
確定事項ではない、ただの噂にもかかわらず、出所が顔見知りってだけでこの有様。
しかももしこれが現実になったらどうやって話に組み入れようかと考える自分に心底鬱になったり。
結論、オイラにできることは書くことだけ。再開。
- 428 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月09日(日)00時15分53秒
- 噂ってあれですか
かなりきついですね〜。
画面上でも表情が冴えない時があって
つかれてるのかな〜って心配してたんですが・・・
本人の幸せを考えると
ファンとしては何もいえなくなってしまうけど
精一杯応援するしかないですね。
- 429 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月09日(日)00時36分28秒
- >>427
>>428
小説に関係無くて申し訳ないんですが、
噂って何なんですか?
気になって寝れません。
- 430 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月09日(日)01時39分56秒
- >>429
「娘。連邦(娘。ニュース!)」を見るとわかる。
- 431 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月10日(月)00時16分01秒
- 加護がサッカー(仕事)をやめるわけないやん
どうしてみんなそうネガティブなん?
- 432 名前:399 投稿日:2001年12月10日(月)00時44分15秒
- ピッチの上では何でも起こりうるんだよな。 それがこの物語のキモだと個人的に思う。
- 433 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月10日(月)02時24分41秒
- かなりのリアルタイム更新だ…
セクシービームの出番かな?
- 434 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月10日(月)04時04分40秒
- これで日本が勝ったらMVPは後藤になりそう。
ってことはやっぱり娘。のNo.1は後藤っていうことになりそうかな?
飯田や安倍のけがとか、いろいろあったけどね〜。
まあこれも日本が勝ったらの話だけど…。
- 435 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月11日(火)21時03分25秒
- ところで、小説からはずれるけど、ちゃむのライブはどうだった?
- 436 名前:4126 投稿日:2001年12月11日(火)22時23分50秒
- ステージと観客が一体になって作り上げるのがいいLiveとすれば、最高のLiveだった。雰囲気が素晴らしかったし、会場全体が幸福感に包まれてた感じ。脇役に徹する中澤もかっこよかった。欲目抜きに賛辞の言葉しかない。
市井自身もカンを取り戻すのが大変と言ってるくらいだからまだ本調子ではないんだろうが、あの熱狂を見ればソロの成功は難しくはないはず。あとはたいせー次第か。そのたいせー含め多くの人に支えられた市井はつくづく幸せ者です。
俺はと言えばヲタの皆様に正月のようにおめでとうばかり言ってた気がする。素直に喜べよ。
- 437 名前:4126 投稿日:2001年12月11日(火)22時39分05秒
- あと例の件。来春卒業者が出るらしいというのは複数の関係者が証言しているのは本当らしい。いくつか出る名前で最も多いのが加護、もし事実なら二月の横アリのハロプロ追加公演がXデーになるとか。あくまで信ぴょう性が高い高い噂にすぎないとのこと。
もし加護として、理由はソロ活動からホームシックまでさまざまな憶測が飛んでる。もちろん全て白紙になる可能性もある。噂された某週刊誌のスッパ抜きはなくなったらしい。ここまでは聞けた。
ただ毎年春は卒業シーズンだし、13人はいくらなんでも多いしなと。一応オイラ覚悟だけはしときました。
- 438 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月11日(火)22時58分21秒
- やっぱ卒業するひとがいるのかあ(´ヘ`;)ハァ
卒業じゃなく長期休業とかにしてほしい。
あいぼんのやめる理由ならね。
とにかく学業をやって、それから復帰するというパターンも
作って欲しい。
あの笑顔を見れなくなるのはやっぱ嫌!
今年中に覚悟は決めるけど。
- 439 名前:4126 投稿日:2001年12月12日(水)07時42分20秒
- 結局ガセでした、になるといいね。あとあAXには明日香も来たらしい。
- 440 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月14日(金)00時10分42秒
- ツインシュートに笑った。
立花兄弟。
- 441 名前:399 投稿日:2001年12月14日(金)18時26分10秒
- 俺は、むこうの385の最後に一行に何かじーんときたよ。
いつか夢は醒める。
この物語も、もうすぐフィナーレ。
娘。という夢の45分計は、今どこを指してるのだろうか?
- 442 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月14日(金)19時16分52秒
- めっちゃいまさらだけど、小川の新潟時代の友達ってシグナル5?
- 443 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月14日(金)22時34分48秒
- あと3分何だよな・・・。あと3分・・・。
駄目だ・・・血がたぎる。
- 444 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月14日(金)23時07分34秒
- やばいよ、やばいよ〜(by辻)
- 445 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月14日(金)23時21分24秒
- 頑張れ市井!
市井に勝って欲しいのは自分だけか?
- 446 名前:4126 投稿日:2001年12月15日(土)00時24分49秒
- というわけで、もーちょっとだけ、夢は続きます。
加護の脱退話もいよいよ現実味を帯びてきて、なにやら風雲急を告げるといった感じです。
>>442
ビンゴ。
- 447 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月15日(土)00時25分30秒
- 市井にも矢口にも勝たせてやりたいってのが本音
- 448 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月15日(土)00時51分17秒
- 新垣のクリヤーのとき体に悪寒が走った
でも新垣は悪くない
絶対に悪くない
同情でもないし理由はわからんが悪くない
クリヤーミスは仕方がないんだ
みんな新垣を許してやってくれ
- 449 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月15日(土)09時30分06秒
- >448
もちろん!
矢口が言ったとおり、今すぐに取り返されるんだから・・・
明日香の記憶が戻って涙・・・。
さあ、心置きなく世界一のチームをみせてくれ!
- 450 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月15日(土)10時27分16秒
- 400までいっちゃったけど、また新スレ移行あり?
- 451 名前:4126 投稿日:2001年12月15日(土)12時26分03秒
- こっちも450だしね。短編の森がまだ空いてたからそこを使おうかと思ってる。
- 452 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月15日(土)12時39分09秒
- MVPは後藤・・・嬉しいのだけどなんだかしっくりこない・・・
外部の評価はやたら高い後藤だけども、
「この1点」「この1プレイ」に絡まない事が多い気がするんです
正直MVPは安倍だと思う、でなきゃ保田が取るべきじゃないでしょうか
- 453 名前:4126 投稿日:2001年12月16日(日)14時12分00秒
- >>452
こういうラストですが、何か?w
- 454 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月16日(日)17時19分53秒
- と、鳥肌が・・・
- 455 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月16日(日)18時58分18秒
- さいこーです。
本当にありがとーー!!
- 456 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月16日(日)22時32分23秒
- もはや感動という言葉さえ
陳腐に感じます。
この作品に出会えて本当によかった。
目頭が熱くなりました。
おめでとう!
ほんとにおめでとう!
そして、ありがとう!
森板も楽しみにしております。
あ、加護ちゃん、やめんといてな
- 457 名前:とまときっど 投稿日:2001年12月16日(日)23時22分37秒
- ユニバ? ユニバの話ですか?
あぁ…フィナーレが近づいてる…
寂しいような、嬉しいような。
でも、最後まで大期待です!!(ちょこっと涙目のとまときっど)
あ、加護ちゃん、まだまだ必要な存在なんだよ、加護ちゃんは。
- 458 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月17日(月)00時32分26秒
- 今日は、13日から続いているチケット争奪戦に敗れて
心がすさんでいたところだったからマジで泣いてしまった。
- 459 名前:399 投稿日:2001年12月17日(月)01時30分37秒
- 4126さんの筆致って、ときどきあの番組っぽいな、と思うことがあったんだけど、こう真正面だと無茶苦茶気持ちいいな。
- 460 名前:4126 投稿日:2001年12月17日(月)01時45分15秒
- 実は十年来のみゆきヲタでさ(この板の紺野の記述でも「エレーン」や「ファイト!」をパクッている)。
毎週じゃないけど見てるし、文章もかなり感化されてる。
この話、自分じゃ字にできないくらい望外の評価を受けてるんですが(ほんま、もったいない)ひとつだけ、やられた! と思ったのが
「娘。小説史上稀に見る男臭い作品」
そういえば俺、娘。を男としてみてるのかもしれない。
だれそれのファンてのがなくて、そこに発生するドラマが好きっていう。
名も無き男たちの物語といえば、プロXしかないじゃないっすか。いわばセルフパロディ(違うか?)
しかしメロンとコ娘。と新メンが主役って話も他にないな。
柴田とアヤカは、キャプ翼でいうところの井沢と反町(脇役だけど顔がよくて人気がある)みたいな存在だと思う。
- 461 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月17日(月)14時38分02秒
- http://www.hotexpress.co.jp/hotandhot/index.html
例の噂、ガセ濃厚のようです。
4126タン含め、鬱な数日間を過ごした皆さん、ひとまず安心して良い様ですよ。
まだまだ彼女にはやってもらわなあきまへんて。
あと、今日は明日香の17歳の誕生日。おめでとう。
- 462 名前:4126 投稿日:2001年12月17日(月)20時23分23秒
- 噂が噂を呼ぶ、とはこういうことを言うんだろうね。
ずいぶん振り回されてしまいました。ストーリーのいい味付けにはなったけど。
>まだまだ彼女にはやってもらわなあきまへんて。
禿同。
>明日香17歳
いくつになっても明日香は明日香のような気が。
- 463 名前:4126 投稿日:2001年12月18日(火)00時48分58秒
- ちゃんとプロXぽく書けてるでしょうか?
ビデオのプロX見てからパソの前に座る奴←バカ
言い回しを学ぶよりはイメージトレーニングで。
昨日は黒四ダム、今日は青函トンネル。昔の男ってすげーよな。
- 464 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月18日(火)01時04分51秒
- いい感じ。
プロXっぽいけどZONE(だっけか?TBSのヤツ)ぽい
感じもいれてほしかったり。
- 465 名前:4126 投稿日:2001年12月18日(火)01時08分25秒
- 難しいなあ。
ZONEはギバちゃんの語り口調のほうがよかった。ヒガシは癖がなさすぎて表現しにくい。
でも日光アイスバックスのガンのGMの話はメチャ泣ける。「奇跡が、起こった」ってやつ。
- 466 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月18日(火)06時09分38秒
- いいですよね
これらの番組
情熱大陸とかそういうの大好きでごじゃいます
- 467 名前:名無し娘。 投稿日:2001年12月18日(火)09時36分44秒
- 4126タンって酒井美紀に対する思い入れが結構あるのね。
- 468 名前:4126 投稿日:2001年12月18日(火)12時59分26秒
- 小倉の回は泣いたね、情熱大陸
酒井美紀、売れてない頃に近所のデパートに来たのをたまたま見たの。全然人いなくって、なんか可愛そうになってCD買って握手してきたの。握手が力強かったんで売れるかもなと思ったら、その次の年に白線流しですよ。すげーうれしかった。
特別ファンてわけじゃないけど、やっぱりテレビに出てるとうれしい。ちなみにCDは聞く前になくした。
- 469 名前:399 投稿日:2001年12月18日(火)15時45分52秒
- ウォーリーとヒロスエの対比が、非常にソレっぽくて笑った。 両方したたかさが透けて見えちゃってるタイプなんだが、見え方は違うんだよね。
- 470 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月18日(火)18時26分38秒
- >>465
>ZONEはギバちゃんの語り口調のほうがよかった。
はげどー。ギバちゃんZONEは好きだったなあ。
ZONEは巨人マンセーになってから観なくなった。枠移動してからは全然観てない。
ギバちゃん時代のマグワイアVSソーサのやつは泣いたっす。
あとラグビー千種高校フィフティーンのやつは印象深い。
あぁ、かつてのZONEのテーマ曲が脳内でリフレイン中・・・・・・・・・。
- 471 名前:キャプテンのリタイア 投稿日:2001年12月19日(水)00時10分53秒
- 399はわりとアイドルに詳しい? そういう人をうならせたのは素直にうれしい。
ドキュメンタリー好きって結構多いな。といかそういう人間が集まったんだろうか。
いよいよ、ラストが見えてきたな…
- 472 名前:452 投稿日:2001年12月19日(水)00時27分15秒
- 何か?と問われたので今更ながら(w
後藤が決めましたか、でも切ないなぁ・・・「ごめんね」なんて言うなよぉ
これで終わりなんて残念です、市井と後藤の物語は笑顔で終わって欲しかったなぁ(贅沢)
でもこの話が外伝的な物なら、中心選手としてはむしろ描かれた方かもしれない(w
そうだ、市井よMVPおめでとう、ご苦労さん。で、最後にオイラの好きな小説から一言・・・
「あの頃でわたしたちが終わったわけじゃない」(『ともだちのうた』より)
と、何となくオイラだけ毛色が違うな・・・レスの(w
- 473 名前:399 投稿日:2001年12月19日(水)01時17分09秒
- うぐ。 まあ、由緒正しいショートカットフェチではあるけど。 単純に万事モノの見方がこうなんだよね。 それも、創作的な方向には全然向いてないという。 困ったもんだ。
- 474 名前:4126 投稿日:2001年12月19日(水)01時29分13秒
- >>472
向こうの424をもう一回読んでみてくれ。
これは始まりの終わりなんだ。
まだ道のりは長い。
>>473
俺エンクミが好きだった。
- 475 名前:472 投稿日:2001年12月19日(水)01時36分45秒
- 実はそう言ってくれるのを待ってました♪
しかし、アイさがでサッカーに興じるメロン達を見ると不思議な感覚が(w
中澤監督も悪くない♪
- 476 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月19日(水)15時38分41秒
- ふと白線流しで思い出したが馬渕えりか(漢字忘れた)が俺の後輩だったりするわけだが、
最近あまり見なくなってしまった。
あと、テレトでもスポーツドキュメンタリーやってたような気がするけど、
あれってなんだったっけ?
- 477 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月19日(水)22時59分04秒
- 乙葉ちゃんはでないんだろうか?
- 478 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)00時26分54秒
- オトハって大学生なんだ。一応同郷だが。
テレトのドキュってなんだろ? わからん。
- 479 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月20日(木)00時32分15秒
- ドキュメントいい感じでした。
これから大団円へと向かうわけですね。
ちょとさみしかったり。
- 480 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月20日(木)01時20分58秒
- 結構、ZINKとの矛盾点とかあるね。
できれば狂気から順に改訂版とか出して欲しいな。マジで。
こんないい作品だもん、ミスは少ないほうがもっといいっしょ。
- 481 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)01時48分52秒
- いずれ、としか答えようがないなあ。
直すとなると「狂気」の頃の最初のほうとか、時間軸の矛盾とか、年齢の関係とか、いじりだしたらキリがないんだわ。
万一、この続編を書くことになったら、その時にでも改訂できたら、いいなあ・・・
- 482 名前:480 投稿日:2001年12月20日(木)02時36分13秒
- いずれ、でもいいですよ。
改訂版できるなら、すげ〜うれしい。
この小説はどんなサッカーコラムよりも好きだから。
- 483 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月20日(木)22時45分28秒
- リアルタイム更新中。楽しみ。
高橋がでてこないー。
- 484 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月20日(木)22時55分27秒
- 歴史上最高のモー娘。サッカー小説に敬意を表して、
謹んでリアルタイムで待たせていただきます。
- 485 名前:とまときっど 投稿日:2001年12月20日(木)23時14分37秒
- フル代表に焦点が戻ったのは嬉しい反面、ちょこっと寂しかったり。
でも、平家監督の最後の決断にはしびれた。
最後の最後、ピ〜ス!→忘れらんないというBGM構成で楽もうと思います。
改訂版にも期待しながら。
- 486 名前:4126 投稿日:2001年12月21日(金)00時03分58秒
- おわりました。
- 487 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月21日(金)00時09分06秒
- おつかれさまでした。
なんか書きたいけどなんも書けねえや。
どうもありがとう。
- 488 名前:はいめんて 投稿日:2001年12月21日(金)00時18分24秒
- お疲れ様でした。
そして、ありがとうございました。
この作品のおかげで、娘。とサッカーがもっと好きになれました。
- 489 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月21日(金)00時21分58秒
- ご苦労さまです。
とりあえず、この作品には何も言えません。
ただ、一言だけ言わせてください。
これからも読みたい。
それだけです。(一読者の非常にわがままな勝手な願い・・・。)
- 490 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月21日(金)00時27分00秒
- 只今読了。よかった。ユウキ最高(w
それはさておきレス数にも気を使ってたんだな、ラストを145にするたぁイカスぜ。
また機会があったら、是非読ましてくれ。本当にありがとう4126.
- 491 名前:399 投稿日:2001年12月21日(金)00時30分43秒
- 終わったね。 心地良い余韻にひたってます。 連載期間も、娘。小説の最長不倒なんじゃない? なにより、ありがとう。 この名作に触れ合えた事を、本当に誇りに思うよ。 また会おうぜ。 本チャンのワールドカップまで、勝手に待ってる。
- 492 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月21日(金)00時38分38秒
- 長かった。そして、楽しかった。
ふとしたきっかけで、この小説をはじめられたあたりから今日まで、ずっと
読んでました。出てくるメンバーと画面の中の娘。達を重ね合わせながら、けど
この物語の中で強い個性を出していく選手たちの物語に、実際と物語の境界線を
彷徨いつつのめりこんで行くのがとても心地よかった。
Ms.moonの最後、ウイニングランをする矢口の横顔が何故かエンディングロール
と共に頭に浮かんできました。BGMがこれまた何故か中島美嘉だったけど(^^;)
本当に映画のような小説だった、ということでしょうか。
今とてもいい気分です。本当にありがとう。こんな小説をまた読めることを期待
する気持ちを、私なりの賞賛としてお送りします。
長かった。そして本当に楽しかった。
- 493 名前:とまときっど 投稿日:2001年12月21日(金)01時04分38秒
- 約半年間。
この小説と出会ってサッカーの持つドラマ性やナショナリズムにたびたび涙。
4126さんのあとがきがただ「おわりました」だけってのがまた渋い。
でも。
まだ読みたい。また読みたい。
残念だけど、ありがとう。
……次回作 or 改訂版に大期待して、「サンキュ」(EDテーマ)
- 494 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月21日(金)01時05分17秒
- 半年以上にわたる連載、お疲れ様でした。
今は感想が言葉になりません。
とりあえず、ありがとうございました。
続編も(勝手に)待っています。
- 495 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月21日(金)01時25分30秒
- これだけ気持ちの良い幕切れに出会ったのはいつ以来でしょうか。
夢を見て、起きて、部屋いっぱいに差し込む日差しに暖まるように。
娘。とサッカー、そこから生まれる物語。
そのフィクションがさらに現実と溶け合っていく。
この小説を読んでいる時間は、ただ純粋に愉快でした。
長い間、お疲れ様でした。
そして、本当にどうもありがとうございました。
- 496 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月21日(金)01時44分05秒
- ありがとう。もうそれだけ。
- 497 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月21日(金)02時16分59秒
- こんなにも長い間ほぼ毎日の更新お疲れ様でした。
この小説を読んでもっとサッカーが好きになりました。
私以外にもそういう人は多いと思います。
本当にありがとうございました。
- 498 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月21日(金)02時33分25秒
- おもしろかった。
感動をありがとう。
そしてお疲れさん。
- 499 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月21日(金)02時56分32秒
- こんなに心地よい感動ははじめてかもしれません。
娘。達一人一人の個性が誰一人として色あせておらず、サッカーの描写がかっこよすぎました。
サッカーがもっともっと好きになりました。
ほんとうにありがとう。お疲れ様。
- 500 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月21日(金)03時39分08秒
- ごちゃごちゃ書こうと思ったが、やっぱやめた。
4126タン、ありがとう。
ちょっと早いけど Merry X'mas. そして、良いお年を。
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