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小説『小さな自由』
- 1 名前:foo? 投稿日:2001年10月26日(金)11時03分24秒
- 月板で『青天の霹靂』という小説を書いていた者です。
まだまだ拙い文章ですが、頑張って書こうと思います。
- 2 名前:foo? 投稿日:2001年10月26日(金)11時04分35秒
- 今でも思い出す事がある。16歳のあの時、あの子と出会った事を。たったひとつの自由を求めて、小さな身体で戦った、あの少女の事を…。
「あーあ、ついてないなあ…。」
あたしこと飯田圭織は16歳の春に、始めて入院というものを経験する事になった。
ああ、あの時もっと気をつけていたらなぁ…。
終業式の日、翌日からの春休みに胸躍らせていたあたしは、ウォークマンを聞きながら自転車に乗っていた。道も空いていたから、結構スピードも出していた。
高校に入って始めての春休み。何しようかなぁ…と妄想にふけっていると、突然世界が回った。気が付けば、あたしは道路に放り出されていた。どうやら車にはねられたらしかった。
やがて救急車がやってきて、あたしを病院へ運んでいった。
診察の結果、足の骨が折れて、頭にも怪我があると言われ、そのまま入院することになってしまった。幸いな事に頭の方は軽症だったので手術も必要無いし、足の骨も折れ方が良かった(?)ためほとんど元通りにくっつく、ということだったので少し安心したが、母には叱られるわ、春休みがいきなり潰れるわで、あたしはかなりブルーな気分だった。
- 3 名前:foo? 投稿日:2001年10月26日(金)11時05分29秒
- 「宿題しかやることないし、つまんなーい!」
病室には他の患者さんもいるので叫びはしなかったが、そんな事を毎日の様に思っていた。ラジカセにヘッドホンをつないで、好きな音楽を聴くこと位しか楽しみは無く、本当に退屈だった。ああ、旅行に行ったり、買い物したりしたいなあ、そんな事ばかりが、頭の中を回っていた。
入院して3日も経った頃、あたしは松葉杖を突いて外に出た。春の陽気があたしを優しく迎えてくれた。ちょっと歩いてみようかな。あたしは慣れない松葉杖を何とか使って、病院の裏庭に行ってみる事にした。
「うわぁ、綺麗だなぁー。」
裏庭にはたくさんの花が芽吹いていた。桜の花、たんぽぽ、ネコヤナギ…春の訪れを喜ぶ色とりどりの花が咲き乱れていた。
「気持ちいいな。こんなところがあったなんて。」
- 4 名前:foo? 投稿日:2001年10月26日(金)11時06分44秒
- あたしは気分が良くなり、歌を口ずさんでいた。
「どこにだって ある〜花〜だけど〜♪」
と、そんなあたしの耳にパチパチと拍手の音がした。
「お姉ちゃん、歌うま〜い。」
振り向くと、そこには車椅子の少女がひとり、あたしの方を見ていた。
「あ、ああどうも…」
「お姉ちゃん、今の何て言う歌なの?」
「え…『たんぽぽ』っていう歌だけど…」
「いい歌だね。あたし気にいっちゃった!ねえ、教えてよ!」
少女は、ニコニコしてあたしに話し掛けてきた。
「い、いいけど…」
「やったー!」
あたしは困惑したまま、少女の言うがままになっていた。
- 5 名前:foo? 投稿日:2001年10月26日(金)11時07分26秒
- 「亜依〜!どこいったの〜?」
その声が聞こえると、少女ははっとした表情になって、あたしに言った。
「ゴメンね。もう行かなきゃ。また明日ここで会おうね!」
少女は車椅子を押して、あたしの横を通り過ぎて行った。
あたしから少し離れた所で、少女は振り返ってあたしに言った。
「あ、あたし加護亜依っていうの。じゃあね!」
少女は今度こそ、病院の方へ戻っていった。そしてあたしはその小さな背中を見送っていた。
一体何だったのだろうか。病院という、決して明るい場所では無い所には似つかわしくないほどの笑顔。加護亜依という名の少女は、確実にあたしのブルーな気分を吹き飛ばしてくれたようだった。
「明日この場所で、か。」
あたしは久しぶりにウキウキした気分で病室へ戻っていった。明日が来るのがやけに楽しみだった。
- 6 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月04日(日)10時01分08秒
- 続き期待(w
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