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WHY

1 名前:信長 投稿日:2001年10月26日(金)19時29分07秒
はじめまして。
保田×石川中心で書いていきたいと思います。
基本は甘々で。
2 名前: 投稿日:2001年10月26日(金)19時32分07秒
「お疲れさまー」
「お疲れさまでしたー」
 賑やかな楽屋に、元気な声が響く。―――――元気にもなろう、明日は、久々のオフなのだから。
「ねぇねぇ、圭ちゃん、明日、予定あり?」
 隣でメークを落としていた矢口真里が、保田圭に声をかける。それには、鏡越しにちらりと『誰か』に視線を送ってから、
「特には、ないよ」
 明日は、のんびりしてるつもり。
 そう答える圭に、真里は『ぎゃーす』と喚く。
「なんだよー、圭ちゃん、オバチャンみたいじゃんかー」
「失礼ね!」
 だけども、真里はへらりと笑って。
―――――同期だからこそ他のメンバーよりも、お互いに本音も冗談も言い合える仲。
3 名前: 投稿日:2001年10月26日(金)19時32分54秒
「まぁまぁ、怒らない怒らない」
「………そういう矢口は?」
 圭の問いに、真里は片眉をちょっと上げた。そして、後ろでのんびりとリーダーと話してる相手をちらりと見る。
「さいですか」
「そうなんです」
 嬉しそうにふわりと微笑うと、真里はメークを落とすために上げていた前髪を、落とす。
「じゃ………矢口、帰るね」
 また、明後日ねー。
 そう告げて『お疲れさまー』と出ていく真里の背に、圭は『おつかれ』と声をかけた。
 その目の端に、真里の相手があわてふためいてでていくのが映った。
4 名前: 投稿日:2001年10月26日(金)19時34分43秒
「さーてと」
 楽屋を出た圭は、大きく伸びをすると、エレベーターに乗り込む。扉を閉じようと指を伸ばした時、するりと『誰か』が入り込んできた。
「………おや」
 もう、とっくに帰ってるかと思ってた。
 ひょいと眉を上げる圭に、石川梨華は少しつまらなそうに唇を尖らせる。
「そんなこと、あるわけないじゃないですか」
 明日は、折角のオフですよ?
「だったら、さっきの矢口との話、聴いてたよね?」
 あたしは『のんびり』するって。
「一緒に、のんびりするっていうのは、どうですか?」
 梨華の言葉に、圭は軽く喉元で笑う。
5 名前: 投稿日:2001年10月26日(金)19時35分48秒
「ダメって言ったって」
 どうせ、石川の事だ、家に来るつもりなんでしょ?
「ダメ………ですか?」
 ダメ、だったら、いいです。
 しゅーんと俯いてしまう梨華に、圭は前髪をかきあげる。
「あ〜〜、も〜〜〜」
 どうして、あんたは人の言葉をバカ正直に受け止めちゃうんだろうね。
「―――――え?」
 俯いていた視線を上げると、圭はどこか困った様に瞳を細めて。少しだけ身を屈めて、梨華の耳元でこそりと囁く。
「部屋に、おいで」
 そのまま、静かに離れていく圭は耳元まで真っ赤になっていて。
 少しぶっきらぼうで、照れ屋で誤解されやすい圭だけども、こういうときは『可愛いなぁ』と正直に思える。
「―――――何よ?」
 その目は。
 むぅっと膨れた様にそっぽを向いた圭の首筋に、梨華はそっと腕を絡める。
「―――――大好きです」
 そういう不器用なところも。だけども、その奥に隠れている優しさも。
「ったく………」
 そう呟きながら、それでも柔らかいその唇に誘われた様に口付けたのだった。
 唇が離れた後、エレベーターが動いていない事に、やっと気付く2人がいた。
6 名前: 投稿日:2001年10月27日(土)06時23分32秒
「………ん」
 梨華が身を動かした事で、圭は少しだけ声を上げた。
 起こしてしまったかな?
 思わず身を止めて、息を詰める。しかし、耳に届くのは『すーすー』という安らかな寝息で。
「―――――ふぅ」
 小さく溜息をつくと、梨華は圭の裸の肩口へと頬を寄せた。腕枕をするように、頭の窪みに圭の腕はあって。抱きかかえられるように、梨華の裸の肩に腕が巻きついていた。
「………好き、なんですよ?」
 判ってますか、保田さん?
 告白したのは自分の方。抱いて欲しいと言ったのも自分の方。―――――圭の方から、動いてくれることなど、ほとんどなくって。
 時々、思う。この恋は、自分の一人相撲なのかもしれない、と。
「どうして………?」
 『あたし』なんですか?告白しなかったら………こんな風にはなってなかったんですか?それとも………。
 疑問なんて、簡単に幾らでも思いつく。だけどもそれは口にはしない。―――――口にしたら、きっと………。
 そこまでで、思考を止めると、梨華はゆっくりと首を振る。それから静かに身を起こすと、眠っている圭の唇に柔らかく唇を重ねる。
7 名前: 投稿日:2001年10月27日(土)06時26分18秒
「――――………石川?」
 それが圭の覚醒をもたらしたのか、寝ぼけたような声で、圭は声を出す。喉にひっかかるような声。
「もう………朝?」
「………まだ、2時過ぎです」
 梨華の声に、圭は表情をしかめながら目を開く。そこにいるのは、どこか挑発的な視線の彼女で。
「―――――喉、渇いた」
 梨華はテーブルの上にあったスポーツドリンクのボトルを手に取ると、自分の口に含んだ。そのまま、圭にすぃっと顔を近づける。
「………ん」
 含みきれない液体が、つぅっと口の端から流れて。こくりと、圭の喉が動いたのを確認して、梨華はそっと顔を離す。
「どうか、した?」
 あんたが、こういう風にするの、珍しい。
「そうですか?」
 そう答えながら、梨華は圭の胸元に唇を近づける。舌でぺろりと、浮き出た鎖骨を舐めた。
「………………石川?」
 どこか戸惑ったような声。それをあえて無視して、梨華は圭に馬乗りになると、両手を脇に置き、瞳を覗き込んだ。
 
8 名前: 投稿日:2001年10月27日(土)06時27分16秒
 圭は、深々と息をつく。それから、指を伸ばし、梨華のふくよかな胸元にそれを滑らせる。
「んっ!」
 思わず身を強張らせる梨華にかまわず、胸元の蕾をやんわりと扇情的に弄ぶ。
「………んん」
 肩を揺らし、懸命に堪えている梨華の背筋をもう片方の手で撫でさすって。時々、思い出したように、指先をその場所に掠めさせる。
「あっ………」
 露になった喉元に、圭は身を起こすと唇を当てる。崩れそうになる梨華の身体を両手で抱きかかえると、くすりと笑みを含んだ囁きを送る。
「誘ったのは、そっちだからね………」
 今までに、何度言われただろう、この言葉。
 だけども、それを口にすることは出来なかった。奪うような口付けが、梨華の唇を塞いだので。


9 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月27日(土)08時00分47秒
エレベーターの中での所が可愛らしかったのに、
石川の気持ちがほんの少し切ないですね。
自分の好きな雰囲気でかなり嬉しいです。
期待してます。
10 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月27日(土)15時15分22秒
この話、どこかで見た事あるんですが、御本人でしょうか?
11 名前:ムニュ@作者 投稿日:2001年10月27日(土)15時37分08秒
しかし、この板やすいしだらけだなぁ(w
萌えながら続き期待してます♪
12 名前:信長 投稿日:2001年10月27日(土)18時24分24秒
>9
ありがとうございます。程ほどに頑張ります(^_^)
>10
―――――本人です(苦笑)。それ以上の説明は避けます<オイ
>11
いや………そんな萌えるほどのものじゃありませんので(汗)
でも、ありがとうございます(^_^)
13 名前: 投稿日:2001年10月27日(土)20時41分56秒
「ふぅ………」
 愛し合った後、満足げな溜息とともに、梨華はゆるゆると瞳を閉じる。そのまま、眠ってしまうぐらい、心地よくって。
「こーら、石川」
 寝るんだったら、ちゃんと身に着けるモン身に着けてから寝なさい。
「んー」
 わかってるんですけど………このまま、腕の中で眠りたいです。
 それに、圭はがしがしと頭をかくと、
「そのままじゃ風邪ひくって」
 ほら、これだけでもいいから着て。
 バスローブを手に取ると、梨華の腕を引っ張り身を起こさせる。
「石川」
 ちょっときつめに声を出すと、梨華はそれに逆らえないかのように目をゆるゆると開く。
「………はい」
 ローブを受け取り、それを素肌に纏う。その間に、圭もTシャツとパジャマの下を身に着けた。
14 名前: 投稿日:2001年10月27日(土)20時42分54秒
「………眠い、です」
 ベッドに戻ってきた圭の肩に、梨華はこつんと額を当てる。そして、そのまま、きゅっと首筋に抱き付いた。
「………石川?」
 眠いんだったら、寝て良いよ。
 ふわりと香る彼女の薫りに、どぎまぎしながら圭は囁く。柔らかく茶色の髪を撫でながら。
「―――――大好き、です」
 ほんとに、好き、なんですよ?判ってます?
 身をそっと放すと、梨華は圭の額に自分の額をくっつける。それから、口を開いた。
 本当に眠いのだろう。どこか酔っ払ったような口調で、梨華は囁いた。それに、圭は微苦笑すると、
「知ってるよ」
 ちゃんと、判ってる。
 その囁きが耳に届いたのか、梨華はふわりと微笑んだ。そして、そのまま、崩れ落ちるようにベッドに横たわると、すやすやと寝息を立て始めてしまう。
15 名前:10 投稿日:2001年10月27日(土)20時43分53秒
「………ったく」
 乱れたバスローブを―――――不意に覗く胸元にどきりとするけれども―――――丁寧に直して、圭は隣にそっと横たわる。
「喉に悪いから、暖房もつけられないんだし」
 ただでさえ、彼女は喉が弱いのだ。だから、加湿器もちゃんと準備してあって。
「ちゃんと判ってるのかね、こいつは」
 そういいながらも圭の視線は柔らかい。そのまま、顔を近づけると、頬にそっと唇を当てる。
「………可愛いよなぁ」
 恋人とかの目を抜きにして、正直彼女は『可愛い』と思う。人気だって、かなりあるし。
「なのに………」
 どうして『あたし』なんだか。
 告白されて、嬉しかった。形だけの教育係だったけれども彼女の頑張りはとても『好感』が持てたから。………気付いてたら、いつのまにか好きになっていたし。
「あー、もう」
 がしがしと短くなった髪をかきあげると、梨華の隣に身を滑らせる。そうすると、無意識に肩口に擦り寄ってくる梨華が、とてもいとおしい。
「知ってる?石川」
 あたしだって、かなりあんたに惚れてるんだけども。
 さっきの問い掛けにちゃんと答えるように、圭は呟いた。―――――だけども、その想いには梨華は気付かない。
16 名前:11 投稿日:2001年10月28日(日)17時29分33秒

「保田さーん」
「ん〜〜〜?」
 もくもくとカメラの手入れをしていた圭は、情けない声に視線を上げた。そこには、むーっとした表情でこちらを睨んでいる梨華がいて。
「何?」
「何って………折角のお休みですよー」
 どこか行きましょうよー。
 むくれた表情に、カメラを向ける。そして、かしゃりとシャッターを切った。
「もぉ!」
 そーゆーんじゃなくって!
「あのねぇ………」
 あたしは、『今日の休みはのんびりする』って言ったんだけども?ちゃんと聴いてた?
「―――――知ってます、けど」
 だからといって、一日中部屋に閉じこもってるっていうのも、なんだと思う。
「いっつも、外、出回ってるからいいんだよ」
 バランス取れて。
「そーゆー問題ですか?」
 そう呟くと、ソファのクッションを抱えて、溜息をつく。それを確認してから、圭は視線をカメラに戻した。
17 名前:12 投稿日:2001年10月28日(日)17時30分24秒
 がしがしと髪をかきあげると、じっとテレビを見ている梨華にファインダーの焦点を合わせる。
 普段はアップにしている髪は、自然に下ろされていて。ぱっちりとした目は、何を見ているのか真剣に画面を見つめている。ベランダからの光に、髪が金色に見えて、柔らかく縁取られている。
 ―――――綺麗、だな。
 語彙力のない自分は、そう言う言い方しか出来ないけれども。ぼんやりと、そう思う。
 思わず、指に力が入った。
「………撮ったんですか?」
 『カシャリ』と言うシャッター音に、梨華は圭を振り扇いだ。それに、圭は軽く笑む。
「ごめん」
 つい、ね。
「………べつに、いいですけど」
「まぁ、あんたの写真集ほど、綺麗な写真は撮れないだろうけどもね」
「そんなこと、ないですよ」
 現像出来たら、見せてくれます?
 小首を傾げて、そんなことを言ってくれる梨華に、圭は小さく頷く。
「うん、判った」
「………約束ですよ?」
 梨華は立ち上がると、圭に近付き、その背にきゅっと抱きついた。
「はいはい」
 甘えてくる梨華の柔らかい髪をくしゃりと撫でると、圭はくすくす笑いながら、カメラを机の上に置く。
18 名前:13 投稿日:2001年10月28日(日)17時32分03秒
「石川?」
「………何ですか?」
「お昼でも、食べに行く?」
 圭の嬉しい申し出に、梨華はぱぁっと顔を明るくさせる。
「………もう一声!」
 ついでに、映画でも見に行きません?
 圭を抱きしめたまま、梨華は明るく告げる。
「ヤダ」
「………保田さーん」
 即答する圭に、梨華は情けない声を出す。
「―――――妥協して、レンタルビデオ」
 あんたが好きなヤツでいいから。
「一緒に見てくれますか?」
「………いいよ」
 ついでに、晩ご飯の材料でも買ってこよっか?
 圭の言葉に、梨華はますます抱く腕を強くした。『痛いよ、石川』と苦笑混じりに、圭が訴えるまで。
19 名前:信長 投稿日:2001年10月29日(月)05時39分21秒
ちょっと忙しいので、1週間ほど更新できません。
すみません
20 名前:ムニュ 投稿日:2001年10月30日(火)14時26分14秒
めっちゃ素で名前欄消すの忘れました(滝汗
クッキー許すまじ……スマソ。。。
21 名前:LINA 投稿日:2001年10月30日(火)21時54分53秒
やばいくらいイイ!!!
エレベーターのシーンに萌えまくりです(w

やすいしやすいし♪(w
22 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月02日(金)22時07分50秒
OKです。
ゆっくりでいいので頑張ってください。
楽しみにしてます。
23 名前:14 投稿日:2001年11月03日(土)20時46分17秒
 久々の休日から、3日程後、新曲発売が間近の為、13人で集まる機会も多くなってきて。
「しっかし、10人のときでも多かったのに………」
 こうしてみると、『壮観』という言葉が似合うと思わない?
 会議室みたいな場所が、最近は控え室として与えられるのが多くって。パイプ椅子にふんぞり返りながら、リーダーの飯田圭織が問い掛ける。
「そうだねぇ………」
 5人で始まったのにねぇ、と、問い掛けられたなつみは、うんうんと頷く。
 当の新メンバーの4人は借りてきた猫のように、きちんと腰掛けていて。時折、同期同士で言葉を交わしているが、緊張してるさまがありありと判る。
「ま、しばらくしたら慣れるっしょ」
「そうだね」
 リーダーらしい圭織の言葉に、なつみは微苦笑しながら頷いた。そんな時、不意に誰かの携帯が鳴った。―――――しかも、複数。
「あ、メールだ」
 黙々と雑誌を読んでいた真里が、携帯を手に取る。その向かいで、ひとみとお菓子を食べていた真希も。更にMDをヘッドフォンで聞いていた圭すらも。
24 名前:15 投稿日:2001年11月03日(土)20時48分52秒
「「「………ええええ!?」」」
 メールを読んでいた3人は、同じ様な声を同時に上げた。それから、慌てて口を手で押さえる。
「………ちょっと、後藤」
「圭ちゃん………これって………」
「矢口、もしかして」
 3人が、怪訝そうに視線を交わす。―――――周囲の視線が、集まってることも気付かず。
「ちょっと………、どうしたの、矢口、後藤、圭ちゃん」
 みんなの疑問を、圭織が口にした。その背に隠れるようにしていた、亜衣と希美もひょこんと顔を出す。
「何かあったん?」
「どうかしたんれすか?」
 その問い掛けに、目配せをしていた3人は深々と息をついた。それから、真里が代表するように口火を切る。

25 名前:16 投稿日:2001年11月03日(土)20時50分17秒
「メールが、来たんだけどさ」
「それが………」
 『どしたんだい?』と視線でなつみが訴えると、矢口は『ぎゃーす』と叫んだ。
「紗耶香から、なんだよ!今からレコーディングだって!」
 これって一体どういうこと?一体、何があったの?
 喚く真里を『どうどう』と落ち着かせて、なつみは圭と真希に視線だけで問うた。
「うん………あたしも、一緒」
「あたしも、だよ」
 真希と圭は頷きながら、ちらりと相手を盗み見た。―――――どんな表情をしているのか、知りたくて。
26 名前:17 投稿日:2001年11月03日(土)20時51分30秒
「紗耶香が………??」
 それは、一体どういうことなんだろ?
 なつみも腕組みして考え込んだその時、鞄の携帯がメールの着信を伝える。「………?」
 不思議に思ってみてみると、それは裕子からで。
「は?」
 先程の3人と同じ様な表情になってしまったのだった。
「―――――なっち?」
 今度は真里が不思議そうな表情になる。なつみの近くにとてててと歩み寄ると、ひょい、と表情を覗き込んだ。
「………裕ちゃんも、一緒にいるって」
「―――――誰と?」
 その問い掛けに、なつみは、携帯をしまいながら、答えた。妙に、不安げな声で。
「紗耶香と、だって」
「はぁ??」
 その場にいた人間が、同じ様な声を発してしまったのも、無理は無い。
27 名前:信長 投稿日:2001年11月03日(土)21時01分16秒
>20
………全然気付きませんでした(苦笑)。
自己申告ありがとうございました<おい(^^)
ムニュさんも頑張って下さい!

>21
お褒めの言葉、ありがとうございます。
LINAさんの小説、こっそり読ませて頂いてます。
頑張って下さい<ここで書くなよ

>22
いつもいつもありがとうございます(^^)。
のんびりとやっていきます。
28 名前:18 投稿日:2001年11月05日(月)22時39分16秒
「なーんかさー」
 楽屋で見るともなしに雑誌を見ていた梨華の隣に、ひとみはどっかりと腰掛けると、長机に頬杖をついた。
「ん?」
 梨華が視線をちらりと上げると、どこか不貞腐れたような表情のひとみがぼんやりと宙を眺めていて。
「………こう、落ち着かないんだよねぇ」
「何が?」
 ひとみは、机にぺたりと頬をつけると、梨華をじぃっと仰ぎ見た。その視線は、新曲の時のように自信満々じゃなくって、どこか情けない。
「矢口さんと、ごっちん」
 ひとみの言葉に、梨華は『ああ』と頷く。そして、雑誌をぱたんと閉じると、頬杖をついた。
「言われてみればさ………保田さんも、そうなんだよねぇ」
 梨華と圭が付き合ってることを、ひとみは解っていた。逆に、ひとみと真里が付き合っていることも。
「もしかして………」
「もしかしなくても」
 あのメールが、原因だよねぇ。
 そう結論付けると、梨華とひとみは深々と息をついた。
29 名前:19 投稿日:2001年11月05日(月)22時42分10秒
 あの後、数日経ってから、事務所で『彼女』と再会した。4期生である自分達とは、1ヶ月近くしか一緒にいられなかった彼女。だけども、真里や圭、そして真希にとっては、かけがえのない、大切な『彼女』に。
 そのときから、圭達は、どこか落ち着かなくなった。―――――ほんの少しだけれども。
「やっぱり、あれからだよねぇ」
「うーーん」
 ひとみの言葉に、梨華は腕組みをした。
 まだ、きっと自分達には解らない。―――――大切な同期が辞めていってしまった時に覚える気持ちなんて。
「矢口さんはさぁ、こう複雑な気持ちっていうのは判るんだけども」
 ごっちん、なんかぴりぴりしちゃってさ。見てて怖いぐらいに。
「………ごっちんが?」
 あのマイペースを絵に描いた?
「うーーん」
 ああ、もう、なんだか、こう落ち着かない!
 まるで、彼女達の『熱に浮かされてるような気持ち』が伝染したみたいな感じで。
 ひとみは『がーーー!』と吼えると、周囲にいたメンバーが驚いたように視線を向ける。
30 名前:20 投稿日:2001年11月05日(月)22時42分54秒
「どしたの、よっすぃー?」
「なんか、あったん?」
 希美と亜衣の声に、ひとみは曖昧に首を横に振ると、
「ごめんね、梨華ちゃん」
 ちょっと、誰かに言いたかったんだ、あたしの気持ち。
 そう呟きながら、着替えをするためにひとみは立ち上がったのだった。


「言われてみれば………」
 確かに、圭の様子はちょっとおかしかった。ぼんやりとしてるかと思えば、急にわたわたしだしたりなんかして。それは、モーニング娘。自体の新曲と彼女の所属してるユニットの新曲が重なってるからだと思っていたのだが。
「やっぱり………保田さん」
 イヤな考えが胸に浮かんで、思わず梨華は形のいい爪を、無意識に噛んでいたのだった。
31 名前:21 投稿日:2001年11月06日(火)19時16分40秒
 何にも、知らないんだなぁ、と思うときが、ある。
 メイク待ちの空き時間、ぼんやりとMDを聞きながら―――――そうすれば、余程の用が無い限り、話しかけられないから―――――梨華はつらつらと物思いに耽った。
 元々、弱みを見せない人だし、それに、自分達は『教える者と教わる者』として出会ったから、ますますそういうのは無かった。
 例えば、今まで圭がどれだけ苦労してきたか、とか、一番嬉しかったのはどういうときか、とか………そして………。
 今まで、どんな人を好きになってきたのか、とか。
「あーあ」
 自分の事は、結構、話してきてるつもりだったけれども、相手のことは全く知らない。………こんなんで『付き合ってる』と言えるのだろうか?
 思わず口をついて出てきた溜息に、隣にいた真里が梨華の顔を覗き込んでくる。
32 名前:22 投稿日:2001年11月06日(火)19時21分43秒
「どーしたの?」
 梨華は、ヘッドホンを外すと曖昧に微笑んだ。その笑顔は、今まで真里が見た梨華の笑顔の中で、一番綺麗だったけども、一番、切なくさせる微笑だった。
「………あー」
 こりゃ、圭ちゃんのことだな。
 そう悟った真里は、それ以上何も言わなかった。その代わりに、梨華の背中をぽんぽんと叩く。
 結局、似たもの同士、なんだよね、石川と圭ちゃんって。―――――自分の問題を、自分だけで解決しちゃおうとするところが。
 そんな事を思いながら。
「?」
 その視線の意味に気付かず、梨華は小首を傾げた。だけども、それには真里は曖昧に微笑みながら、首を振るだけだった。
「??」
 不思議に思いながら、梨華はぐるりと楽屋を見回す。
―――――そういえば、保田さん、何処に行ったんだろう?
33 名前:23 投稿日:2001年11月06日(火)19時23分34秒
 その頃、圭は非常階段の踊り場で、外を見ていた。―――――ここだったら、あまり誰にも邪魔されないし、逆に、廊下で探されてる時には、声が聞こえるから。
「………紗耶香、か」
 久しぶりに会った彼女は、あんまり変わってなくて。少し、視線が強くなって、ほっそりとした面持ちが更にきりっとしていて。
「う〜〜」
 手すりに肘をつくと、圭はくしゃくしゃと前髪をかきあげた。どこか困ったような表情をしながら。
「圭、ちゃん」
 いきなり声をかけられて、圭はびくっと身を固めた。慌てて振り返ると、そこには後藤真希がいて。
34 名前:24 投稿日:2001年11月06日(火)19時24分08秒
「………後藤か」
 びっくりしたじゃんかよ、いきなり声かけるなんて。
「そう?」
 どこか冷たく答えると、真希は圭の隣へと歩み寄ってきた。同じ様に、手すりに肘をつく。
 なんだか、昔に戻った感じだな。
 ちらりと、真希の横顔に視線を走らせると、圭はぼんやりと思った。―――――であった頃の、ちょっと打ち解けない雰囲気の真希に。
「圭ちゃんはさぁ………許せるの?」
「―――――許せるって?」
 いきなりの質問に、圭は真希に向き直った。きょとんとしたその瞳を睨みつけながら、真希は感情を押し殺した声で、告げた。
「いちーちゃんの、事」
 彼女の、名前を。
35 名前:25 投稿日:2001年11月09日(金)19時47分38秒
「はぁ?」

 何、言ってんの、アンタ?
 間抜けた声を出す圭に、真希は両手を握り締めながら叫んだ。

「だって………だってさ!ああやって、あたし達のこと置いていったくせに、なのに………」

 なのに、こうやって、不意打ちで帰ってきてさぁ。
 圭はしばし『うーん』と考えると、頬をかりかりと掻いた。

「後藤はさ」

「………なんだよぉ」

 ほっぺを膨らませて、真希は圭を見た。そんな真希に『にー』っと微笑うと、

「拗ねてるんでしょ」

「………べ、別に!」

 自分より幾分背の高い相手を見上げながら、圭は微笑う。

「はい、照れない照れない」

「照れてなんかない!―――――だったら訊くけどさ!」

 今まで、悪いかなって思って訊いた事無かったけどさ。

「うん?」

 何を言い出すのか解らなくて、圭は腕組みをすると、片眉をちょっとだけあげた。
―――――そういうポーズが、なんだか悔しいぐらい似合う。
36 名前:26 投稿日:2001年11月09日(金)19時49分03秒
 そんな事を思いながら、真希は唇を舌で湿らせた。そして、ぼそぼそと呟く。

「………だったんでしょ?」

「はぁ?」

 ちょっと、もっとはっきりいいなよ、後藤。
 そう告げる相手に、真希は半ばヤケクソになって、叫ぶ。

「だって、圭ちゃん、いちーちゃんのこと、好きだったんでしょ!?」

 その台詞に、圭は目をまん丸にさせるしか、術はなかった。
37 名前:27 投稿日:2001年11月09日(金)19時50分38秒
 たっぷり30秒は沈黙していただろう。その沈黙は、圭の情けない発声練習のような音で破られて。

「そう………来ますか?」

 前髪をかきあげながら、圭は言葉を選ぶように告げた。真希は、唇を尖らせながら、圭を睨みつける。
 あたしは悪くないもん!言わせた圭ちゃんが悪いんだもん!と、はっきり、くっきり表情に書いてある。

「好き………だったのかなぁ。うん………そう訊かれたら、やっぱり」

 自分の感情を整理するように、圭は慎重に答えた。―――――間違ったことは、言ってはいけないのだ、今回の問いには。

「なんだよー、そのあやふやな答え方」

 真希はますます不貞腐れた表情をした。それに軽く笑みながら、圭は手すりに背を預ける。
38 名前:28 投稿日:2001年11月09日(金)19時51分34秒
「だってさ………あたし、あんた達が『実は付き合ってるんだ』って言ってくれなきゃ気付かなかったような、鈍い人間だよ?」

「………一応、自覚はあるんだ」

 ぽかり!

「痛い………」

 間髪いれずに叩かれた頭を抑えながら、それでも真希は、目で続きを促す。

「だからさ………それ言われてから気付いたもん。ああ、紗耶香のこと、好きなんだぁって」

 もう、遅かったけどさ。
 そう呟いて、圭は微笑う。―――――どこか、昔を懐かしむ瞳をしながら。
 だから、気付かなかった。非常ドアの入り口に、動く影がちらりと掠めたことに。
39 名前:29 投稿日:2001年11月10日(土)22時20分26秒
「圭………ちゃん………」

 判っていたけども、いざ言葉を返されると、何もいえなくなる。
 真希は、困ったように俯いてしまった。そんな相手に、圭はふっと笑む。

「あー、でも、さ………ただ、それだけ」

「―――――それ、だけ?」

 どういうこと?
 視線だけの問いに、圭は微苦笑する。

「好きって気持ち、自覚したけどさ。それ以上、どうこうしようなんて、思わなかったな」

 それよりなにより………君達が、一緒にいるのを見てるのが、なんか嬉しかったし。

「………………?」

 不思議そうに小首を傾げる真希に、圭は続けた。

「だって、あんた達、本当に好き合ってたって、見てるだけで判ったから」

 だからこそ、余計に、許せないんだよね、後藤は。
 置いていった、紗耶香を。
 話を元に蒸し返されて、真希はへにゃっと眉を下げた。そして、そのまま、しゃがみ込む。
40 名前:30 投稿日:2001年11月10日(土)22時22分31秒
「なーんで………連絡なんて、してきたんだろ」

 いちーちゃん。
 ぽつりと呟く真希の隣に、同じ様にしゃがみ込むと、その頭をぽんぽんと叩いた。

「紗耶香も、ちゃんと考えてるんだよ」

 だからさ、そう怒ってないで、一度、逢ってみたら?

「………………わかんない」

 逢ってしまったら、この気持ちがどうなってしまうのかが。
 真希は、きゅっと手を握り締め、膝に顔を埋めた。

「どうするかは、後藤の自由だよ?」

 逢うのも、逢わないのも。全部、後藤で決めること。

「う………ん」

 真希は、情けない表情で渋々と頷いた。それに、圭は『よろしい』と頷いて立ち上がる。

「ねぇ………圭ちゃん?」

 その姿勢のまま、圭を見上げる。

「ん?」

 大きく伸びをすると、圭は視線を返した。

「あの、さ………」

「なによ?」

「あたしと、市井ちゃんが付き合ってなかったら、圭ちゃん、告白してた?」

 その問いに、圭はしばらく考え込む。だけども、小さく首を横に振った。
41 名前:31 投稿日:2001年11月10日(土)22時23分51秒
「………してない、だろうね」

 ずっと、同期で一番の友達で、ライバルで………『好き』という気持ちに気付かずままに。

「でも、それでいいって思うだろうし、思ってるよ」

 そう答えると、圭は柔らかく目を細めた。
 だって、そうしなければ、彼女に出逢えてなかっただろうし。
 ―――――そんな圭の顔、滅多に見られないから、真希は不思議そうにそれを見つめた。

「ねぇ………圭ちゃん」

「なに?」

 そろそろ時間だね。行くよ。

「あのさ………」

「だから、何?」

 扉に手をかけた圭の手を掴むと、真希は耳元でこそっと囁く。

「もしかして、今、好きな人、いるの?」

 目の前の圭の頬が、瞬く間に真っ赤になっていった。
42 名前:32 投稿日:2001年11月11日(日)12時25分47秒
 まさか、梨華ちゃんだったとはねぇ………。
 メイクをしてもらいながら、真希は鏡越しに梨華に視線を向けた。何をしているのか、真剣な表情で考え込んでいる彼女を不思議に思うけれども。

「どうしたの、真希ちゃん?」

 メイクさんが声をかけてくる。それには曖昧に微笑んで、『なんでもないですよー』と答えると、真希は視線を前に向けた。
 あれから、渋る圭にしがみついて―――――ほんと、文字通りに―――――無理やり話させたのだけれども。
 ありゃ、どうみても圭ちゃんの方が惚れてるね。
 うんうんと、心で頷く。
 その証拠に、むっとはしていたけれども目は凄く優しかった。―――――彼女のことを話している時の圭は。

『絶対に、石川には言わないでよ!』

 照れたように告げる圭に、素直に『はーい』と答えたけども。
―――――ちょっかい、だしたいなぁ………でも、絶対怒られるしなぁ。

「何か悩み事?」

 メイクさんに、そう問われるまで、真希はひたすら考えていたのだった。
43 名前:33 投稿日:2001年11月11日(日)12時27分20秒
 どうしよう………。
 梨華は、ちらりと圭織やなつみと談笑している圭に視線を向けると、溜息をつく。

 まさか、市井さんのこと、好きだったなんて。

 なんだかいてもたってもいられなくなって、圭を探しに行ったら、真希と話をしていて。聴くつもりではなかったのだけども、結果的には盗み聞きになってしまった。
 でも、聴きたくなかった………。
 梨華はがくりと肩を落とす。そんな梨華の周りを『きゃーきゃー』といいながら、亜依と希美が走り回っていて。その脳天気さに、なんだか腹立たしくなる。

「もう!」

 亜依ぼん、のの、静かにしなさい!
 叫んだ梨華に、一瞬二人は動きを止めるが、すぐに『やーい、梨華ちゃんおこりんぼーーー!』と同時に叫んで逃げていく。

「………もう」

 そう呟きながら、梨華は椅子に腰掛けなおす。そして、小さく小さく溜息をついた。
44 名前:34 投稿日:2001年11月11日(日)12時29分02秒
 もしかすると、なんては思っていた。自分は『誰か』の代わりなんじゃないかって。だけども、実際にそれが現実になると、無性に辛い。

 こんなにこんなに好きなのに………当の本人は、知らん顔。いつもの笑顔で、普通にしていて。

 好きだって、言ってもらったこともない。

 その事実は、いつだって梨華の胸の内にあって。それを、今はっきりと自覚してしまう。

 そう思ったら、物凄く切なくなった。だけども、今、それを問いただすことなんてできやしない。

「どうしたの、石川?」

 隣に腰掛けていた真里が、心配そうに声をかけてくれたけれども、それには何も答えることが出来なかった。

 たっていられないほど、胸が痛い。

 つきつきと痛む胸を押さえながら、梨華はぼんやりと思った。
45 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月11日(日)14時25分07秒
この2人の勘違いっぷりが切ないです。かなりやきもきしちゃいます(w
続きが楽しみです。作者さんガムバッテください♪
46 名前:35 投稿日:2001年11月11日(日)20時47分01秒
 あれから色々と考えたけれども、やっぱり答えは出なくって。―――――だから、賭けをすることに決めた。きっと、勝ち目のない賭けを。


 雑誌の撮影時、全員のショットを取り終えたら、後は自分の番が来るまで、ある意味自由時間である。だけども、梨華は知っていた。こういうとき、圭は必ず現場にいるのだ。

 それは彼女が、だいぶ前からカメラに興味を持っているという理由もあるし、何より、撮影現場の雰囲気が好きなのであろう。

 時間がかかる新メンバーは、インタビューに答えていて。他のみんなは、寝てたりお喋りをしていたり………その場には、やっぱり圭の姿はなかった。
 スタジオの扉をそっと開くと、撮影現場の隅っこで、圭が腕組みをしながらその光景を見守っていた。

「………保田、さん」

 梨華の声に、圭はちらりと視線を動かした。そして、声を出さずに『こっちにおいで』と告げる。

 梨華は素直に頷くと、隣にそっと移動した。その横顔に、視線を預けたまま。

 憎らしいほど、冷静な表情。でも………視線は柔らかくて、優しい。
47 名前:36 投稿日:2001年11月11日(日)20時49分30秒
「………石川は何番目?」


「―――――たぶん、最後の方だと思います」

「そっか………」

 それだけで会話は終わる。―――――恋人同士だというのに、甘い会話なんて数えるほどしかしたことがない。
 いや………恋人だと思ってるのは、自分だけなんだ。
 梨華はくっと唇を噛んだ。それを見咎めて、圭はやんわりと呟く。

「ダメじゃん」

 口紅、落ちるよ。折角メークしたのに。

「すみま、せん」

「メークさんとこいって、直しといで」

「………はい」

 何も告げることが出来ない自分が、心底情けない。
 しゅーんとした表情で、梨華はその場を去ろうとした。だけども、不意に振り返る。

「………い………石川?」

 いきなり背中から抱きつかれて、圭はうろたえた声をあげた。それに構わず、梨華はそのまま抱きつき続ける。

「どうしたの?」

 前に回される手は、外されない。―――――少なくとも、嫌がってはいないことを知って、梨華はちょっとだけホッとする。

「保田、さん」

「ん?」

 梨華の手に、そっと自分の手のひらを重ねながら、圭は問い返した。
 小さな手だなぁ、と思う。綺麗な指先に、すっと触れながら。
48 名前:37 投稿日:2001年11月11日(日)20時50分50秒
「―――――今日、お部屋に行ってもいいですか?」


「今日?」

 そりゃまたいきなりだね、と呟くと、頭の中で、本日のスケジュールを思い返した。

「遅くなるよ?」

 ユニットの録りもあるし。まぁ、23時前には帰れるけど。

「いいです………」

 部屋で、待ってます。

「………ふーん」
 じゃ、あとで鍵渡しとく。

「ありがとう、ございます」
 お礼なんていいからさ。
 圭は視線を逸らしながら、ぼそぼそと呟く。背中で感じる梨華の温もりが、どうにもくすぐったくてしかたがない。―――――イヤだっていうわけじゃなくて、むしろ逆。

「ほら、早く、メーク直しといで」
 一番手のなっちが終わっちゃう前に、さ。

「はい………」
 小さく頷くと、梨華はそっと圭から離れた。―――――それを互いに『残念だ』と思っているということは、梨華も圭もお互いに知らない。
49 名前:38 投稿日:2001年11月11日(日)20時55分44秒
「う〜〜〜」
 大きく伸びをしながら、圭はマンションに辿り着く。仕事は思ったより、早く終わった。
 自室に入ると、テレビの音が微かに漏れ聞こえていた。そして、人のいる気配。それに、なんだか頬が緩む。

「石川ー?」
 声をかけながらリビングに行くと………そこには、ソファでくぅくぅ眠っている梨華が目に入った。

「………ったく」
 疲れてるんだったら、自分の家に戻ればいいのに。
 そう思いながらも、圭の口元には微笑が浮かんでいて。

「風邪………ひかせるのも、なんだし」
 ベッドから上掛けを持ってくると、ふわりとその細い体にかける。―――――しかし、それが刺激となって、逆に梨華は目を覚ました。

「………あ………っと」
 いけない!眠っちゃったんだ!
 がばっと身を起こすと、びっくりした表情の圭と視線が合って。

「あ………えと」
 起こしちゃった、かな?
「いえ………そんな!」
 うたた寝していた、あたしが悪いんですし。
 ぺたんと座り、自分を見上げている梨華に、ちょっと………いや………かなりときめきを覚えてしまう自分が、悲しかった。
50 名前:39 投稿日:2001年11月11日(日)20時57分41秒
 圭は慌てて視線を逸らすと、ぶっきら棒に告げる。

「ちゃんと寝ないと、風邪ひくから」
 お風呂は入ったの?

「はい、お先に頂きました」
 こくりと頷く梨華に、圭は『あっそ』と答えると、

「じゃ、あたしも入ってくるわ。ちょっと待ってて」
 着替えを持って、バスルームへと消えていったのだった。

 風呂から上がった圭は、冷蔵庫から350缶のビールを一本取り出し、プルトップを開けながらパソコンのスイッチをオンにする。

 仕事場にいるときとは違った、くつろいだ姿。それが見れるのは、自分だけの特権?

 一瞬だけ、圭に視線を向けると、梨華は直ぐにテレビの画面に向き直った。ソファの上で膝を抱えたまま、問い掛ける。

「―――――思ったより、早かったんですね」

「あーー、うん」
 なんかね、一発でオッケーもらっちゃったから。

 カチカチっとマウスをクリックする音が耳に届く。梨華はそんな圭の気配を背中で感じていた。


51 名前:40 投稿日:2001年11月11日(日)20時58分43秒
「………なんか、あったの?」

 微かな声が梨華の耳に届いた。それに、梨華はゆっくりと振り返る。圭は、視線をディスプレイに向けたままだったけれども。

「何でですか?」

「………珍しいじゃん。休みでもないのに、あたしの部屋に来たがったから」
 その答えに、梨華はゆっくりと立ち上がった。そっと圭に近寄ると、きゅっとその背中に抱きつく。

「用がなかったら、ダメですか?」

「………そんなんじゃ、ないけどさ」
 縁なしの眼鏡をくぃっと人差し指であげると、圭はこともなげに答えた。

―――――相変わらずなクールな態度。こんなに自分が悩んでいるっていうのに。
 思わず八つ当たりをしそうになる。だけども、それを懸命に堪えて。

 視線をディスプレイに向けると、メールの取り込み中なのが判った。それが終わり、圭が受信簿を開く。

「………あ」
 抱きしめた体が、一瞬、びくりとなる。それを不思議に思って、注意して画面を見ようとすると、圭は慌てて、マウスを動かした。

 梨華の目から隠されるように閉じられたメールボックスの一番最後の欄に『市井紗耶香』という名があった。
52 名前:41 投稿日:2001年11月11日(日)21時02分49秒
「あ………あのさ」

 やっぱ、あたしにもプライベートっつーものがあるんだし。メールって言うのは、その最たるモノだから………。
 言い訳をするように言葉を紡ぐ圭の唇を、梨華はそっと塞いだ。

「いし………かわ………?」
 圭はくるりと椅子を回転させると、こちらをじっと見つめてる梨華を見上げた。どこか戸惑ったような瞳で。

「保田、さん………」
 梨華は、そっと身を屈めると圭の耳元に唇を近づけた。そして、甘く囁く。

「………しましょう?」

「―――――え?」
 いや………でも、あんた。明日、仕事でしょ?

 ぼそぼそと問い掛ける圭の耳たぶを、梨華はぺろりと舐める。
53 名前:42 投稿日:2001年11月11日(日)21時04分01秒
「んっ!」
 思わず、身を強張らせる圭に、梨華は続けた。

「構いません」
 大丈夫、です。

「いや………でも………」
 なかなかその気になってくれない圭の手を、梨華はそっと取った。その指先に、ちろりと舌を這わせる。

―――――ぞくり、と身体を貫く感情。これは、もう『誘惑』としか言いようがなくって。

「石川………」
 梨華は構わず指を一本一本丁寧に舐め上げると、付け根を舌先で刺激したまま、上目遣いで圭を見上げる。その扇情的な視線の威力は、圭の理性を飛ばすぐらい簡単で。

「もぉ………」

 明日、辛くたって、責任持たないからね………。

 苦しげにそう囁くと、圭は梨華の細い身体を、力いっぱい抱きしめたのだった。
54 名前:信長 投稿日:2001年11月11日(日)21時07分15秒
>45
甘甘と宣言しているのに、全く甘くならない二人です(苦笑)。
やきもきしてるのは作者も一緒だったりします。
応援ありがとうございます。
のんびりと頑張ります!
55 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月12日(月)04時04分15秒
んー、やすいしはやっぱりこの空気感がたまらないっすね。
甘いけど、どこかせつないような。
信長氏、がんがれ!
56 名前:43 投稿日:2001年11月12日(月)06時44分55秒
「………ん」

 ヘッドレストに背を預けた状態のまま、梨華は圭の口付けを受ける。最初は触れるだけのキス。だけど、徐々に激しさを増していった。
 舌先が歯列をなぞり、前歯が柔らかく唇を甘く噛む。それに応えるように、梨華の舌先が圭のそれに絡み合った。
 指先を繋ぎ、キスを交わす。―――――甘く吸いあげられ、上顎をなぞられ。それだけで、ぞくぞくするぐらい高ぶっていく身体。

 石川をこんな風にしたのは………保田さん、なんですからね?

 そう告げたいけれども、唇を塞がれては叶わない。だから、その身体を精一杯、抱き寄せた。

「―――――石川」
 圭の指先が、ゆっくりと梨華のパジャマのボタンを外す。火照った肌に、触れる冷気が冷たくて思わず、ふるっと身を震わせた。
57 名前:44 投稿日:2001年11月12日(月)06時56分11秒
「………寒い?」
 圭の問いに、梨華は小さく首を振った。だけども、圭は続ける。

「でも………震えてる」

「寒く………ないです」
 甘く囁きを返しながら、梨華は圭の手を自らの胸元に導く。柔らかいそれに触れただけで、圭はどうしようもないほどの欲望を覚える。

「もっと………熱く、して?」
 どきりとするほど色っぽいその声に、圭は小さく深く息をついた。

「ね………?」

「―――――いいよ」
 もっともっと、熱くしてあげる。

 梨華の言葉に答えるように、はやる気持ちとは裏腹に、ゆっくりと梨華の胸の膨らみに触れた。
58 名前:信長 投稿日:2001年11月12日(月)06時58分57秒
>55
ありがとうございます!
もっと甘々を目指してるんですけども………(苦笑)。
がんばりまーす(^^)
59 名前:45 投稿日:2001年11月12日(月)22時00分36秒
「………んんっ」
 胸元の先端を口に含まれて、思わず梨華は身を仰け反らす。立て膝の姿勢のままの梨華を、圭は崩れ落ちないように支えた。

「石川………」
 軽く甘噛みしたり、舌先で突付いたりすると過敏に反応を返す梨華が、無茶苦茶いとおしくて、圭は右手で梨華の腰を支え、左の指の腹で背筋をそっと撫でさする。

「あっ………保田………さぁん」
 甘ったるいとろけそうな声で、梨華は圭を呼ぶ。両肩に手を置き、自らも身体を支えながら。

「いし、かわ………」

「や………すださん」
 もっともっと乱れる表情が見たくって、圭は愛撫の手を休めない。胸の下―――――ちょうど下着で隠れる辺り―――――に唇を寄せると、少しきつめに吸い上げる。

「あっ………」
 ちりっとした痛みと共に残された痕。―――――圭がこんなことをしたのは、初めてで。

「ちゃんと、見えないとこだから」
 梨華の首の後ろに手を当てると、軽く力を込めてその顔を引き寄せた。ベルベットのような甘い囁きが、耳に届いて。

 たまらなくなって、梨華は自分から圭の唇を求める。甘く舌先を絡め、吐息まで奪ってしまうように。
60 名前:46 投稿日:2001年11月12日(月)22時02分31秒
 唇が離れると、圭は乱れた梨華の髪を整えて、その端正な表情を見上げた。跨るように自分に覆いかぶさっているその姿勢だけでも、かなりいやらしさを感じるのに。

 なのに………。

「綺麗………だね」

 石川は、綺麗だ。
 だから、汚したくなるんだろうな。

「………え?」
 あまりにも、小さすぎる圭の囁きに、梨華は小首を傾げた。だけども、それには答えず、圭はするりと梨華の後ろへと指を滑らせる。

「………んんっ」
 眉を顰め、梨華はびくりと身を強張らせた。くちゅり、と音がして、そこに指先が触れるのを感じる。

「すっごい、濡れてるね」
 気持ちいい?

 圭の含み笑いと共に問われる言葉に、梨華は困った表情をしながらも、小さく頷いた。何度も何度も。―――――それが、圭の気持ちを余計煽る。
61 名前:47 投稿日:2001年11月12日(月)22時04分06秒
「―――――もっと、気持ちよくなってよ」

  入り口付近で、指を前後に動かし、焦らすように、紅い蕾を刺激するように震わせると、

「ん………んんっ………」
 呼応して梨華の腰も淫らに動く。圭は悪戯っぽく指先だけを挿しいれるが、それ以上のことはしない。

「あ………ぅん………」
 圭は上体を起こすと、細い首筋に噛み付いた。それから、ぺろりと舌で舐める。

「んぁっ………」
 梨華は圭の頭をがむしゃらにかき抱いた。そのまま、切なく告げる。

「やす………だ、さん………」
 お願い、だからぁ。

 せがむようなその声に、圭は深く息をついた。―――――弱いのだ、自分はこの声に。

 細いその腰を左手で抱きかかえると、圭はゆっくりと蕩け切ったそこに指を挿しいれる。
62 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月12日(月)22時11分45秒
ヤッスー格好良すぎ!!
お風呂上り、ビール片手にめがねでメールチェック・・・。
シャープな大人って感じっすね。
(でも真っ赤になったり・・・萌。)
63 名前:48 投稿日:2001年11月13日(火)21時23分51秒
「あっ………あっ………」

 内壁を指の腹でこするように蠢かすと、梨華は苦しげに声を漏らす。だけど、それは『苦しい』という訳ではなくって。

「保田………さん………」
 好き………好きなんです。

 身体を仰け反らせ、梨華は切なげに囁く。それには、圭は答えず、手首を捻るように回転させ、今度は反対側を刺激する。

「んん………あっ………!」
 圭の肩に置いた手に力が込められる。少し伸ばした爪が、肌に食い込む感覚を覚えたが、それすら興奮剤になって。

「好き………大好き」
 圭の指のリズムに合わせながら、梨華の腰も蠢く。
64 名前:49 投稿日:2001年11月13日(火)21時24分55秒
 その仕草を見つめながら、圭は思う。
 なんて、淫らで綺麗なんだろう………。もっともっと、感じさせてあげたい。

「―――――石川」
 優しくその名を呼ぶと、潤んだ瞳で見つめ返されて。どこか苦しげに眉を顰めながら。

「………気持ち、いい?」
 その問いに、梨華は困った表情のまま、何度も頷く。切なげに。

「もっと、もっと気持ちよくなって?」
 もっともっと、その姿、見せて?

 圭は律動的に指を動かす。それが更に、梨華の快感を呼び起こして。

「あっ………あっ………んんっ!」
 ふるり、と身を震わせると、梨華はあっけなく圭の腕の中に堕ちていったのだった。
65 名前:49 投稿日:2001年11月13日(火)21時27分23秒
「―――――石川」

 その愛しい身体をゆっくりとベッドに横たえると、圭はその髪に柔らかく口付けた。

 荒い呼吸を繰り返す梨華は、ぼんやりと目を開く。

「大丈夫?」

「………はい」
 小さく頷くと、圭は目元を和らげた。そのまま、梨華の身体に覆いかぶさる。

―――――素肌と素肌が触れ合う感触が、もうたまらないほど心地よくて。

 梨華はうっとりと目を閉じた。

「あの………さ」

「………はい?」

「石川、達ったばかりで、辛いって思うんだけども………」

 圭は真っ赤になりながら、梨華の腰を抱いた。そのまま、梨華の太腿に自らの潤ったそこを当てる。

「………ごめん」
 あたしも、気持ちよくなりたい。

 甘く耳たぶを噛まれながら、そんな事を言うのだ、彼女は。
66 名前:51 投稿日:2001年11月13日(火)21時29分12秒
 梨華は一瞬、目を丸くしたがすぐに柔らかく笑んだ。求められるように、膝を立て、圭のそこに密着させる。

「………んっ」
 自らのリズムで、圭は動き始める。―――――なのに。

「や………保田、さん」

 後ろから、圭の指先が梨華の潤ったそこに挿しいれられて。思わず、梨華は戸惑った声を上げる。

「あたしばっかりじゃ、悪いから、さ」

「でも………んっ………」
 抗議の声は、圭の唇で塞がれて。一回、達した身体は過敏なぐらい感じやすくなっていて。圭の刺激で、再び欲望が高まっていってしまう。

「石川………石川………」
 リズミカルに動く圭の背に腕を回しながら、梨華は切なく喘ぐ。

「保田さん………やすだ………さん」

 好き………好き………大好き。

 何度も何度も、梨華は圭の耳元で囁く。だけども、その言葉に『好き』は返ってこなかった。
67 名前:信長 投稿日:2001年11月13日(火)21時31分29秒
>62
へたれさんなんですけどねぇ………(苦笑)<ヤッスー
大人な圭ちゃんもいいんですが、やはりヘタレな保田さんで<おい


65の『49』は『50』の間違いです。
お詫びして訂正します。
68 名前:LINA 投稿日:2001年11月14日(水)01時34分46秒
かなり(・∀・)イイ!んだけど〜〜〜〜!!!(激萌

でも、梨華っちが少し切ないかも・・・?
好きと言ってやるんだ、圭ちゃ〜〜〜ん!!!(w
69 名前:52 投稿日:2001年11月14日(水)07時09分33秒
 真っ暗な部屋の中、すーすーと安らかな寝息が耳に届く。

 梨華は隣に眠る相手を起こさないように身を起こすと、じっとその寝顔を見つめた。

―――――安心しきって眠っている寝顔は、まるで子供の様で。
 胸がなんだか痛んで痛んで、梨華はそこを押さえた。泣きそうになるのを、懸命に堪える。

 好きで好きで、大切で大好きなのに………。自分は、何をしようとしているのだろう?

 梨華はそっと指を伸ばした。柔らかい頬に、指先で触れる。

「………んん」
 そんな事をすれば、起きてしまうのに。判っていても、止められなかった。

「………んーー?」
 どうしたの?

 眠たげな目をこじ開けて、圭は梨華を横たわったまま見上げた。それに、梨華は小さく首を横に振る。

「何でも、ないですよ?」
 なんでも、ないんです。大丈夫です。

 なのに、なんだか泣けて泣けて仕方なかった。ぼろぼろとただ静かに泣いてしまった梨華を、圭は困惑した瞳で見つめる。
70 名前:53 投稿日:2001年11月14日(水)07時11分12秒
「ごめんなさい………」

 なんでしょうね、おかしいですね、あたし。
 懸命に涙を拭いて、あえて明るく告げた。そうしても、圭はどこか困った表情を崩さない。

「もう………寝ましょう?」
 明日、仕事ですし。

 そんな事を言う梨華の腕を、圭はぐいっと引いた。不意打ちに、梨華は圭の胸元に転がり込む。

「………保田、さん」

 圭は梨華の肩に腕を回すと、あやすようにぽんぽんと叩く。そして、柔らかく額に口付けた。

「………こうしてて、あげるからさ」
 だから、安心しな。―――――ずっと、ぎゅっとしたげるからさ。

 その言葉通り、圭は梨華の肩を引き寄せ、腕枕の体勢を取る。―――――それが、ますます梨華の涙を誘うことも気付かずに。

「………ばぁか」
 泣いちゃダメだよ。喉に悪いんだから。

 涙の原因を知ってか知らずか、圭は本当に優しかった。その優しさが、梨華を更に切なくさせるのだった。


 
71 名前:54 投稿日:2001年11月14日(水)07時13分31秒
 朝、目覚めたのは、妙に早かった。まだ、こぞって民放が朝の番組をやっている時間帯。

「………ん?」
 何で、こんな時間に目が覚めるんだ?

 圭はぼんやりした思考で、考える。そして、気付いた。梨華の温もりがない、ということに。

「石川!」

 がばっと起き上がり、思わず叫んだ圭の目に、キッチンからひょこんと梨華が顔を覗かせる。どうやら、朝食を作っていたらしい。

「なんですか?」

「………なんだ」
 いたんじゃん………。

 がりがりと頭をかくと、圭は不貞腐れたように唇を尖らせた。そんな圭に、梨華は微笑みながら近付いて来る。―――――そのまま、柔らかく、額にキス。

 くすぐったい感じで、圭は目を閉じてそれを受ける。

「保田さん」
 屈んだ姿勢のまま、梨華は小さく囁いた。

「何?」
 顔のあちこちに与えられるキスに、どこか満足げな笑みを浮かべていた圭は、小さく答えた。

「お願いが、あるんです」

「………?」
 目を開くと、そこには華の様に微笑んでいる梨華がいて。つられて微笑をかえそうとした圭は、

「………別れましょう?」

 その言葉に、驚いたように目を見開いた。
72 名前:信長 投稿日:2001年11月14日(水)07時17分52秒
>68
いや、LINAさんにそう言って頂いて恐縮です………(苦笑)。
しかし、更に石川さん大暴走。
圭ちゃん………………
73 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月14日(水)19時43分44秒
うーん、なかなか甘くならないですねー
じれったいですー
74 名前:LINA 投稿日:2001年11月14日(水)21時39分25秒
わ、わ、別れるなんて、あんた〜〜〜〜!!!!(動揺w

止めるんだ〜ヤッスーーー!!!(感情移入しまくり)
75 名前:55 投稿日:2001年11月14日(水)22時07分29秒
「………冗談」
 思わず呟いた圭に、梨華はくすりと微笑う。―――――綺麗な綺麗な笑み。

「嬉しい」
 あたしのこと、少しは気に入っててくれたって事ですよね、そんな風に言ってくれるなんて。
 
 しかし、直ぐに真剣な表情に戻ると、

「でも………もう、いいんです」
 あたしなんかに、気を遣わなくても。

「気なんて………」
 遣ったことない。

 真剣な口調で答えた圭に、梨華はベッドの端に腰掛けると、俯いたまま告げた。

「あたし………賭けをしてたんです」

「賭け?」
 この場にそぐわないセリフに、圭は訝しげに眉を顰めた。
76 名前:56 投稿日:2001年11月14日(水)22時11分50秒
「好きって言って………それで、保田さんに『好きだ』って答えて貰ったら………」
 何があっても、絶対に別れないって。

「………………」
 そんなこと、言われても。

 圭は、きゅっと上掛けを握り締めた。何か言いたいのに、その『何か』が判らなくて、口をぱくぱくさせるしか術がない。

「………でも、保田さん、言ってくれませんでした」
 だから………もう、いいんです。

 視線を落としたまま、淡々と言葉を発する梨華に、圭は怒りを覚える。

「勝手に………」
 決めないでよ!―――――あたしの気持ちはどうなるのよ?

 圭の問い掛けに、梨華はどこか自虐的に笑んだ。

「保田さんの気持ち?」
 そんなの判ってますよ。―――――あたしには、関心がないって事ぐらい。

「だから!」
 どうして、勝手に結論付けるの!

 圭は、だしぃっとベッドを叩いた。しかし、梨華はそれに動じる気配すらない。真っ直ぐに圭の視線を受け止めると、囁く。
77 名前:57 投稿日:2001年11月14日(水)22時14分08秒
「………市井さんが、好きなんですよね?」
 不意に出された名前。不覚にも、反応してしまう。その反応が、決定的な証拠になると判っていても。

「いや………違くって………」
 しどろもどろになる圭に、梨華は立ち上がることで、会話を終わらせようとする。

「いいんですよ」
 あたしのことなら、気にしないで。

「………石川」

 情けない目に、表情になってると判っていても、それをどうしようもできなかった。
78 名前:58 投稿日:2001年11月14日(水)22時15分15秒
「あたしが勝手に好きになって、勝手に付き合ってもらって………勝手に別れるんです」
 勝手に傷付いて、落ち込んで。

 梨華は、きゅっと手を握り締める。そうしないと、うまく笑えそうになかった。

「だから………保田さんは、全然気にしなくていいんですよ?」
 むしろ、感謝している。―――――ただのメンバーだったら見られない姿、いっぱい見せてもらえて。
 ますます好きになってしまって、逆に切なくなってしまったけども。

「………石川!」

「朝御飯、作ってありますから」
 だから、お仕事、頑張ってくださいね?

「石川!」

「―――――大好きでした」
 一言、そう告げると、梨華は足早にその場を去った。追いかけることすら出来ずに、圭はベッドの上で、玄関の扉が閉まる音を聴いていた。

 情けない気持ちで一杯になりながら。
79 名前:信長 投稿日:2001年11月14日(水)22時18分03秒
>73
―――――全く、甘くなりません。
ああ、どうしましょう………<お前が言うな

>74
止められませんでした………<おい
いや………どうしましょう………ほんとに
<自分で言うな!
80 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月14日(水)22時39分35秒
OH−NO!
止めるんだーやっすー!
81 名前:59 投稿日:2001年11月15日(木)20時40分25秒
「………あれ、よっすぃー」
 ピンクの衣装でうろうろしている見覚えのある姿に、梨華は思わず声をかける。それに、ひとみはくるりと振り返ると、嬉しそうに微笑んだ。

「アー、梨華ちゃーん」
 良かったー、探してたんだよー。

 その言葉に、梨華は思わずどきりとする。―――――今朝の出来事を知られてしまったのだろうか?

 しかし、ひとみは脳天気に続ける。

「タンポポここにいるってことは、矢口さんもいるってことだよね」
 うきうきと嬉しそうに。

 そういう落ちかい………。
 思わず、がくっとうなだれてしまった梨華に、ひとみは不思議そうに首を傾げた。

「いや………いいんだけどね」
 楽屋そこだから、呼んできてあげる。

 親切に申し出る梨華に、ひとみはぶんぶんと両手を振る。

「えー、悪いよ」

「………別に悪くないよ」
 待ってて。

 そう答えながら、踵を返しかけた梨華は、不意に足を止めた。ゆっくりと、振り返る。
82 名前:60 投稿日:2001年11月15日(木)20時42分14秒
 別に、言わなくてもいい事なのに………。

 時々、人は自虐的になってしまう。塞ぎかけたかさぶたを無理やりに剥がすように。

「………ん?」
 ニコニコ笑顔で小首を傾げたひとみに、梨華はぽつっと告げた。

「別れたの」

「………は?」
 いきなりの言葉に、ひとみは鳩が豆鉄砲を食らった表情になる。しかし、直ぐに意味を悟って、わたわたと慌てた。

「ちょ………ちょっと、梨華ちゃん!」
 一体、どういうこと?

 しかし、そんなひとみをさりげなくかわしながら、梨華は小さく問い掛けた。

「………保田さん、ちゃんとお昼食べてた?」

「―――――うん」
 見る限り、普通だったけども。でも………。

 その答えに、梨華は安心したように微笑んだ。―――――食欲があるんだったら、大丈夫。

 だけども、逆に寂しくもなる。自分との別れに、彼女がダメージを受けていないということを知って。
83 名前:61 投稿日:2001年11月15日(木)20時43分24秒
―――――バカだな、あたしって。

 梨華は自嘲気味に微笑んだ。そして、くっと手を握り締める。―――――悟られてはいけない、これ以上。優しい優しい、この同期には。

「なら、良かった」
 じゃ、待ってて。矢口さん、呼んで来るから。

 梨華は、ふわりと微笑むと、直ぐにその場を去って行った。見るともなしに視線で彼女を追うと、数十メートル先の楽屋まで、足早に進み、扉の内側に消えていく。

 ひとみは、その場の壁に寄りかかる。そして、動揺を隠すかのように、右手で口元を覆った。

「………なんだよ」
 無理して、笑わなくたっていいんだよ、梨華ちゃん………。

 唇を尖らせながら、ひとみはぽつり、と呟いたのだった。
84 名前:信長 投稿日:2001年11月15日(木)20時47分13秒
>80
………へたれな圭ちゃんは止められませんでしたとさ(^_^)
ダメな人………。


とりあえず、この話のメインは師弟コンビです。
2期メンバーの。

説明が足りないみたいなので、ここで補足させて頂きます。
85 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月17日(土)07時16分27秒
いつになったら甘くなるのやら・・・
作者さんがむばって〜
86 名前:62 投稿日:2001年11月17日(土)15時31分51秒
「よっすぃー」
 ぼんやりとしていると、真里が急ぎ足でひとみの前に現れた。それに、ひとみは微かに笑む。

「………どうかした?」

「衣装、可愛いですね」
 新曲にあわせた黄色い衣装。―――――そんな事を言いたいわけではないのだけれども。

 ひとみの言葉に、真里はちょっとだけ嬉しそうに微笑んだが、直ぐに真剣な表情に戻った。

「何か、あった?」

「………いえ」

 梨華達のことを言うのは、簡単かもしれない。だけども、自分の口から伝えていいものだろうか、という疑念が胸に浮かんで。

「何でも、ないです」

「………よっすぃー」
 真里は、背伸びをしてひとみの頬をむぎゅっと挟んだ。そして、むっとした表情で、睨みつける。

「なんでもないって、表情してないよ?」
 言いたくなかったら、無理にとは言わないけどさ。

「でも、心配、してるよ?」
 真里の言葉に、ひとみは小さく溜息をついた。一瞬、下を向いてから、すぐに顔を上げる。

「ちょっと………いいですか?」
 気になることが、あるんです。

 ひとみの真剣な口調に、真里も神妙に頷いたのだった。
87 名前:63 投稿日:2001年11月17日(土)15時33分50秒
「別れたぁ?」
 素っ頓狂な声で叫ぶ真里に、ひとみは唇に人差し指を当てると『しー、静かに』と囁く。

 誰も使ってない楽屋に忍び込むと、ひとみは先程の梨華とのやりとりを説明した。それを聞いた真里の感想は、上記である。

「ご………ごめん」
 でもさ、梨華ちゃん、普通だったよ?

 その言葉に、ひとみはうんうんと頷く。

「保田さんも、そうだったんですよねー」
 全然、そんな素振り見せなくって………。だから、梨華ちゃんの話聞いて、びっくりしたんですけど。

「だから、余計に心配なんです」

 ひとみの言葉に、今度は真里が頷いた。

「似てるもんなー、あの二人」
 何気に。

「とりあえず………圭ちゃんのこと、お願いしてもいいかなぁ」
 ほら、ハロプロのリハとかあるけど、プッチで行動すること多いじゃん、新曲でたし。

「じゃ、梨華ちゃんのこと、お願いしますね」
 タンポポも新曲出しましたから、一緒にいること多いですし。

 それには互いに頷いて。………少しの沈黙の後、ひとみは微苦笑した。

「ほんとは、矢口さんのこと、ぎゅっとしたいって思ってきたんですけどね」
 でも、なんだか、そんな気無くなっちゃいました。
88 名前:64 投稿日:2001年11月17日(土)15時35分30秒
「………うん」
 矢口も、そうだよ。

 頷く真里に、ひとみは『すみません』と囁く。きゅっと、真里の手を握り締めると、軽く指先にキスをした。

 そうしていても、あんまり気分は甘くならない。胸を占めるのは、圭と梨華のことで。

 やっぱり、大切な同期のことは、心配だし。

「………じゃ、行きますね」

「うん、わざわざありがと」

 そんな会話を交わすと、お互いの場所に向かって歩き出した。その道々、二人はぼんやりと思う。

「なんか、保田さんが、うらやましいな」
 真里に心配してもらって。ちょっと悔しいぐらい。

「梨華ちゃんは、いいなぁ」
 よっすぃーに心配してもらえて。



―――――互いが互いの同期に、嫉妬しているなんて、口に出しては言わないけれども。
89 名前:信長 投稿日:2001年11月17日(土)15時37分44秒
>85
………作者が訊きたい位です(T_T)<いつ甘くなるのか
応援ありがとうございます(^_^)
90 名前:65 投稿日:2001年11月17日(土)23時21分48秒
「………よっすぃー、どこに行ったんだろうねー」
 携帯をいじくりながら、真希は誰とも無しに呟く。それに圭は、文庫本から視線を上げずに答えた。

「タンポポ、別録りだから、矢口に逢いにいったんじゃない?」

「………………ふぅーん」
 圭ちゃん、知ってるんだ。よっすぃーたちの事。

 真希の言葉に圭は軽く頷いた。

「まぁね」

 そんな時、真希の携帯が鳴りだした。携帯を手慣れた様子で扱い、ディスプレイを見つめる。………柔らかい表情で。

「………にやけちゃって」
 なんとなく突っ込みたくなって、圭はぽそっと告げた。

「え〜〜〜」
 そんなこと、ないよぉ、とか言いながら、緩む頬は押さえきれないらしい。上体を倒し、顎をテーブルに乗せて上目遣いに、圭を見上げる。

「仲直りしたの?」

「へへ〜〜」
 その笑顔が答えになる。圭はどこか苦々しげに微笑うと、視線を本に落とした。
91 名前:66 投稿日:2001年11月17日(土)23時25分41秒
「………ん?」
 何か、雰囲気違うぞ。不機嫌って訳じゃないけど………うーん、元気がないって感じ。

 そう思った真希は、その姿勢のまま、小さく問うた。

「圭ちゃん………なんかした?」

「べつに」

 即答するのが、妙に怪しい。真希は、がばっと身を起こすと、圭の元へとがーっと椅子を走らせた。

「喧嘩でも、したの?」

「………喧嘩って言うか、なんていうか」

 圭はちょっと視線を逸らし気味にしながら、考える。だけども、うまくごまかせそうにない。

 真希は、そういうとこには妙に敏感だから。

「なんていうか?」

「………振られた」

………………………………。

「って、なんで黙るのよ!」

「なんで、逆ギレされなきゃならないのよーーー」

 間を置いただけなのに、叫ばれた真希は思わず叫び返した。それに、圭は深々と息をつく。

 そんな圭に、真希は頬杖をつきながら、問うた。

「それって、マジ?冗談じゃなく?」

「………石川がそう言うんだったら、そうなんじゃない?」
 別にあたしから『別れよう』って言った訳じゃないし。

 ぱたんと本を閉じると、真希に真っ直ぐに視線を向けた。
92 名前:67 投稿日:2001年11月17日(土)23時27分28秒
「なんだよぉー」
 それでいいのかよ?

 真希の言葉に、圭はがしがしと髪をかきあげた。それから、腕組みをする。

「………いいっていうか、悪いって言うか」
 あたしが悪いみたいですし?

「圭ちゃん、冷たい」
 それじゃ、梨華ちゃん、可哀相だ。

 どきっぱりと言う真希に、圭は視線を落とした。

「冷たいって言われても」
 これがあたしなんだもん、仕方ないじゃん!

 ふてくされる圭に、真希も同じように溜息をついた。

「まさか、圭ちゃん」
 もしかして、もしかするとだよ………。

「ん?」

「気持ち、伝えたこと、ない、とか?」
 だから、振られちゃったとかー。んなわけないよねーー、あはははー。

 と、微笑う真希に、圭は唇を尖らせた。

「………『好き』って言ったこと、なかった」
 よく考えてみれば。

「………………………」

「黙らないでくれーー」
 懇願するように、圭は呟いた。真希は、クールに見える表情で、あっさりと告げる。

「振られて、当然」
 一刀両断とは、こういうことを言うのだろう。
93 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月18日(日)08時09分36秒
市井ちゃんは登場するのかな?
94 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月20日(火)21時28分12秒
作者さーん、二人を幸せにしてあげてくださーい!
95 名前:68 投稿日:2001年11月23日(金)22時47分01秒
「だいたいねぇ、黙ってても気持ち伝わるって思ってない?」

 どん!とテーブルを叩くと、真希はじろりと圭を見上げた。それに、圭は微妙に視線を逸らす。

「いや………まぁ………そう、とは思ってない、けど」
 でも、言わなかったのは事実だし。―――――なんで、言わなかったのか、自分でも判らないんだし。

「ほんとにー?」
 うろんげな真希の視線に、圭は不貞腐れながら腕を組んだ。

「言わなくたってさ………判るもんじゃない?」
 その………ほら、夜、一緒に過ごしてたり、してたんだし。

 耳まで真っ赤になりながら、圭はぼそぼそと答える。

 ―――――なんだかんだいって………これって惚気?

 そう思うけれども、真希はあえて口に出さない。

「そう言ってもさ………」
 言葉にして欲しいって思うこと、ない?

「う〜〜ん」
 考え込む圭を見て『こりゃダメだ………』と真希は思う。

「あのさ、圭ちゃん」

「何よ?」

「圭ちゃん自身は、梨華ちゃんと別れたい訳?」
 そう、ここが肝心。最重要ポイント。
96 名前:69 投稿日:2001年11月23日(金)22時51分13秒
 なんだか期待に満ちている真希の視線にたじろぎながら、圭は考えた。

「う〜〜ん」
 どっちでも、生活変わらない気がするし………。あ、休みの日はのんびり休めるから、逆にいいかも。

 なんて、馬鹿なことを言う圭の言葉に、真希はとうとう叫んだ。

「圭ちゃんって………馬鹿?」
 もー、しんじらんない、考えらんないぐらい、馬鹿!

「後藤に言われる筋合いないわよ!」

「後藤は、ちゃんと言うもん!」
 好きな相手には、ちゃんと伝えるもん!『大好きだよ』って。

「そもそも、圭ちゃんは、梨華ちゃんの勢いに押されてただけなわけ?そんなんで、Hしたわけ?」

「………ちょっ………ちょっと!」

 一応、誰もいないとはいえ、いつ何時人が入って来るんだか判らないんだから!

 慌てて口を押さえる圭の手を、振り解きながら、真希は更に続けた。

「圭ちゃん、そういう人じゃないって、後藤、知ってる!だから、さ」

 もうちょっと、自分の気持ち、見つめようよ。大事にしようよ。

 だって、うまく隠しているけども、圭ちゃん、元気ないって判るぐらいだし。少しはダメージ受けてるって事でしょ?
97 名前:70 投稿日:2001年11月23日(金)22時52分23秒
「………………うーん」

 がりがりと頭をかきながら、圭は真希の言葉を待った。じぃっとこちらを見つめてくる視線を、真希はちゃんと受け止める。

 そういえば、昔は………。この視線が怖かった。威圧的に感じていた。
 だけど、今は。

「後藤、知ってるから」
 圭ちゃんが、どんな人か。だから、梨華ちゃん、見る目あるなぁって思ってたんだよ?

「………何よ?」
 照れるじゃないの、いきなりそんなこと、言うなんて。

 真っ赤になりながら、それでも圭は少しだけ上体を倒した。ぽすっと真希の肩に、額をつける。

「なーんか、疲れた」

 朝から色々あって、さ。―――――彼女に別れを告げられたり、真希にお説教されたり。それでも、仕事はちゃんとこなさなきゃならないし。

「………全く」
 損な性格してるねぇ、圭ちゃんは。

 どこか子供を諭すように呟きながら、真希は圭が離れるまで、ずっと。肩を貸していたのだった。
98 名前:信長 投稿日:2001年11月23日(金)22時55分36秒
>93
市井ちゃんはですね………うーん(苦笑)。
頑張って出したいとは思ってますが、いかんせん、
主役二人がまったく動かないので、どうしようもないです

>94
してあげたいでーす<強く希望
でも、保田さんが動かないのでどうしようもないでーす

………いや、頑張ります。作者が(^_^)
99 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月24日(土)01時17分41秒
やすいしもかなり切なめで良いんですが・・・。
ヤッスーとごっちんの関係がとても気に入りました。
なんかお互いが理解者って感じで。
100 名前:71 投稿日:2001年11月24日(土)23時35分36秒
 梨華に別れを告げられて、1週間。―――――何も変わらない毎日が続いた。

 そこで、やっと圭は気付くのだ。いかに、彼女に無関心だったのか、ということに。

 なのに、別れてしまった、今。こうして、彼女に目を奪われている自分にも。
101 名前:72 投稿日:2001年11月24日(土)23時37分29秒
「なーに、見てるんだよーー」

 正月の恒例のコンサートのリハーサルの為、スタジオでの練習が続く。その休憩時間、ぼんやりと梨華を見ていた圭に、真里が近づいてきた。

「何って………別に」
 視線をふぃっと対象から外すと、圭は真里に視線を向けた。

「別にって………」
 圭ちゃん、ほんと、口下手だよねぇ。

「何よ!」

 思わず吼えた圭の頭を、真里は『よしよし』と撫でる。

「いーからいーから」
 ほら、独り言でもいいから、言ってごらん。聞いててあげるから。

 正面に視線を向けたまま、真里はペットボトルの水を一口、飲み込んだ。その行動に、圭は膝を抱え、そこに顎を乗せ、ぼそぼそとつぶやく。

「わっかんないよ」
 自分でも、ほんと、自分の気持ちが。

 好き嫌いで言えば『好き』なんだと思う。だけども、自分の気持ちに決定打がない。―――――だから、何も言えない。

「………ほんと、不器用だねぇ」
 傍から見てれば、お互いにバリバリ気にしてるのが判るっていうのに。

 真里は微苦笑しながら、圭の少し伸びた髪をぽんぽんと叩いたのだった。


102 名前:73 投稿日:2001年11月24日(土)23時54分31秒
「………気になる?」

 正面ではなく、鏡ごしに真里と圭が話してるのを見ていた梨華は、いきなりの声に、びくっと身を強張らせた。

「ここ、ここだよ」
 梨華の真横にしゃがみこんでいたひとみは、梨華を見上げると『にっ』と微笑った。そして、鏡に背をつけると、自分の隣をぽんぽんと叩く。

「あ………うん」

 梨華もおとなしく、その場所に座る。丁度、斜め前に、同じ感じに語らってるの圭と真里が見える所。
103 名前:74 投稿日:2001年11月24日(土)23時55分21秒
「なんか、頑張りすぎじゃない?」

 リハーサルのことだろうか、と小首を傾げた梨華に、ひとみは『ちちちち』と指を左右に振る。

「保田さんとのこと」
―――――気にさせないようにって、してるでしょ、梨華ちゃん。

 ひとみの言葉に、梨華は一瞬、何かを言いかけたが、唇を尖らせたままうつむく。………どうせ、バレてるのだ、この同期には。

「だって………」
 あたしが頑張ってないと、保田さん、気にするだろうし。

 そこまで思いながら、梨華は不意に泣きたくなる。だけども、ここではそうできないから、声を出して微笑うしかなかった。

「………へへ」
 おかしいよね、自分から別れようっていったくせに。こんな事、言うなんて。

 俯きながら、ぽそぽそと呟く梨華を、ひとみは柔らかい視線で見つめた。

 やっぱり、見てるだっけってのは、辛いよなぁ。

 そんな風に思いながら、長い腕を、そっと伸ばすと、真里が圭にしたように、やさしくやさしく撫でたのだった。
104 名前:信長 投稿日:2001年11月24日(土)23時58分29秒
>99
この2人は、作者のお気に入りなもので(^^)。
恋愛には発達しないのですが、
強いて言えば、こう背中合わせで立っている感じが
判っていただければ………<わかんねーよ
105 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月26日(月)20時01分18秒
よっすぃーとやぐっつあんに期待!
106 名前:75 投稿日:2001年11月26日(月)22時27分33秒
 ふー、やれやれお疲れさま、自分。

 レッスン場で、一人、自主練をしていた圭が、がしがしと髪をかきあげながら、控え室のドアを開く。

 しかし、思わず、びくっと身を引いてしまった。

 誰もいないと思っていたのに―――――実際、その場には1人しかいなかった―――――人がいる、ということに。

 そして、それが『彼女』だ、ということに。

「………お疲れ」

「お疲れ、様です」
 また、1人で居残りレッスンしていたんですか?

 何事もなく話しかけてくる梨華に、圭はぶっきらぼうに頷いた。―――――それ以外、何ができる?

「………石川、こそ」
 なにしてるの、1人で?

 それに、梨華は少し肩を竦めて照れくさそうに微笑んだ。

「忘れ物、しちゃって」
 取りに来たんです。

 そう告げて、鞄からピンクの手帳を取り出した。見覚えのあるそれ。

「そっか………」

 そこで、会話が途切れてしまう。だって、他になんて言えばいいのか、判らない。

 圭は、手早くレッスン着から私服に着替えると―――――微妙にそれから、梨華は目を逸らした―――――乱暴に、バッグにそれを詰め込む。
107 名前:76 投稿日:2001年11月26日(月)22時31分27秒
 なんだか、イライラして仕方なかった。こうして何事もなく話しかけてくる梨華に。そして、同じように受け答えてる自分に。

「保田、さん?」

 俯いてしまった圭に、梨華は不安になってその顔を覗き込んだ。そこにあるのは、射抜かれる様な、怖い視線。

「………なんで」

「え?」

「なんで、そんな何でもないように話しかけてくるのよ!」

 理不尽な事を言っている。彼女は自分に心配をかけまいとして、普段通りに振る舞っているのだというのに。

 圭は梨華の両手首を掴んだ。そして、そのまま壁に押しつける。

 整然と並べられた椅子がガタガタとなり、乱される。だけど、そんなのは構わなかった。

「ばっかじゃないの!無理しちゃって!」
 違う、無理してるのは自分だ。判ってる。判ってるのに………。

「見え見えなんだよ!そんなに、あたし、見てるの辛いんだったら………」
 だったら………。

 それ以上は自分のプライドにかけて、言えなかったし、言わなかった。言いたく、なかった。
108 名前:77 投稿日:2001年11月26日(月)22時33分45秒
 梨華は驚いた猫のように、目をまんまるにさせて、ただただ圭を見上げている事しかできなくて。

 どうして………いきなりこんな事を?

 そんなことを思う梨華の両腕を解放すると、どんと壁に拳を当てる。圭の腕の間に、梨華が閉じ込められる形になり。

 何を、しようとしてるのだろう?

 梨華の黒目がちな瞳を見つめながら、圭は思う。だけども、止まらなかった。

 顔をほんの少し傾け、梨華の唇に唇を重ねる。―――――甘く唇を噛み、舌を誘い出す。誘うように舌を動かすと、おずおずとそれに応えようとする動きを見せた。

 しばらく、甘い唇を味わってから、ゆっくりと顔を放す。―――――梨華も圭も、ただ互いに見つめ合うことしかできなくて。

 最初に口を開いたのは、圭の方だった。

「………こんな事するヤツ、嫌いになったでしょ?」
 ああ、そういや、もう振られてたんだっけ。あたし。

 どこか自嘲気味に微笑うと、圭は鞄を手に、控え室を出ていった。
109 名前:78 投稿日:2001年11月26日(月)22時36分30秒
 1人取り残された梨華は、唇に指をそっと当てると、ぽそりと呟いた。

「嫌いになんて、なれませんよ」
 大好きだから、別れたのだ。彼女を苦しめない為に。

 いや………違う。自分を庇う為に、別れを告げたのかも、しれない。

 今更ながら、梨華は思う。

 でも、それでも………嫌いになんて………。

「なれるわけ、ないじゃないですか………」

 だけども、その呟きは圭には届かない。
110 名前:信長 投稿日:2001年11月26日(月)22時39分11秒
>105
よっすぃーはともかく(^_^)
矢口はこれからが本領発揮です!
頑張れ、2期メン!(^_^)
期待してあげてください
111 名前:79 投稿日:2001年11月27日(火)20時22分52秒
 あれから1週間、彼女は話しかけては来なくなった。そして、自分からも。

 本日は雑誌の取材。リリース時期が重なっているから、彼女のユニットと自分のユニットが同時に取材を受けることが多い。

 だから、インタビューも自然と順番を待つことになって。圭が取材を受けたのは、一番最後だった。………時刻は、既に22時。

「お疲れさまでしたー」

「お疲れさまー」

 スタッフの方々に一礼して、着替えに戻ろうとした圭は、不意に後ろから肩を叩かれた。

「わっ!」

 振り返ると、普段から懇意にしてる女性のカメラマンがいて。彼女も大きな目を、丸くしている。

「どうしたの、圭ちゃん?」

「びっくりしただけですよ!………声もかけずに肩なんて叩くから」

 言い訳がましく告げる圭に、カメラマンはくすっと微笑った。そして、肩からかけているバッグから、何やら封筒を取り出す。
112 名前:80 投稿日:2001年11月27日(火)20時24分49秒
「これ、現像出来たから」

「あ………」

 自分が撮った写真はこの人に現像をまかしているのだった。外で頼んでもいいのだが、そうするとどこかに流通しそうで。

 本当は自分で出来ればいいのだけれども、そうすると今まで撮った写真は、日の目を見ることはない、と断言できる。それぐらい、忙しいのだ。

「ありがとう、ございます」

 両手でそれを受け取ると、圭は確かめるように中身を出した。

「で、これ、フィルムとネガ。24枚撮り、3本ね」
 確かにお返ししました。

「あ、お金、払います」
 今、財布ないんで、控え室に。

「いいのいいの」
 どうせ仕事のついでだし。渡すの、遅くなるときは遅くなるからさ。

 からからと笑いながらやんわりと断る彼女に、圭は頬を緩める。

 こういうところが、彼女が信頼できるひとつなのかもしれない。

 圭は再び『ありがとう』と呟くと、写真に視線を落とした。
113 名前:81 投稿日:2001年11月27日(火)20時26分01秒
 時期的には、ここ2ヶ月ぐらいのヤツばっかりだ。圭は、写真を撮るときには、日付をあえて入れていない。

「個人的にはさ」
 一番、最後にある写真。すごくいいって思うよ。―――――圭ちゃんの気持ち、素直に現れてて。

「………え?」

 いきなりの言葉に、『なんのこっちゃ?』という表情をする圭に、意味深な笑みを彼女は浮かべると、ばーんと、手のひらで圭の背中を叩いた。

「幸せに、なりなさいよ!」

「いた………いたたた」

 叩かれた背中を押さえながら、圭は、その背中が現場へと去っていくのを見届けるしか術がなかったのだった。

「なんのこと?」
 気になるなぁ。

 誰も通らない廊下の長椅子に、圭はすとんと腰掛けると、言われたとおり、最後の写真を手早く探した。そして、それはたやすく見つかる。

「………これって」

 思わず、圭は言葉を失う。それぐらい―――――綺麗な、綺麗な写真だった。
114 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月27日(火)22時11分34秒
どんな写真なんですかー!
気になるー
115 名前:82 投稿日:2001年11月28日(水)21時57分53秒
 『彼女』の写真だった。圭の部屋のソファでうたた寝をしている。窓から光が差し込んで、光と影のコントラストが絶妙な一枚だった。

 いつ頃撮った写真なのだろうか、正直自分でも覚えていない。―――――だけど、それぐらい自然な写真。

 自分で撮ったくせに、見てるこっちが照れるぐらい、被写体への気持ちが溢れている写真だった。

「………なんだよ」
 今頃、気付く。

 圭は写真を指先でそっとなぞりながら、ぼそりと呟く。

「バカだ………あたし」
 こんなに、こんなにも、好きなんじゃないか、石川の事。

 自分に、彼女に、周囲に嘘はつけたけれども、写真では、嘘をつけなかった。
116 名前:83 投稿日:2001年11月28日(水)21時59分13秒
 見ているこっちがくすぐったくなるぐらい、優しい優しい愛情が溢れている写真。彼女への、本当の『想い』。

 こうして、目に見える形になってからじゃないと、気付かない自分。

「ほんと………バカ………」

 目の奥が、じんわりと熱くなった。鼻もツンとしてきて。

 いつの間にか、圭はぼろぼろと泣いていた。人目も構わずに。

 何人か、人が通り過ぎるのも判った。だけども、どうでも良かった。自分のバカさ加減に、ほとほと呆れた。

 通り過ぎる人の誰かが、ふっと足を止めた。その相手が、がさがさと何かを漁っている音が耳に届く。

「………?」

 それを不思議に思って、圭は視線を上げると、

「………ほら」

 口をへの字にひん曲げた、真里がティッシュを差し出していた。
117 名前:84 投稿日:2001年11月28日(水)22時00分26秒
「なかなか帰って来ないからさ」
 心配して探しに行ったら………。

「ごめん………」

 あれから、真里に控え室に連れて来られたが、真里は慰めるでもなく、ただ、どうやっても涙を止められない圭の隣で、じっと待っていただけだった。

―――――ただ、それだけが、嬉しい。

「ありがとね、矢口」

 鼻を貰ったティッシュで噛みながら、圭は答えた。

 真里はそれには、首を横に振る。

「いいけどね、別に」
 どうせ、今日の仕事これで終わりだったし。

 そして、控え室のテーブルへと置かれた写真を一枚一枚手に取る。その指が、あの写真で、ぴたっと止まった。

「………へぇ」
 いい、写真だね。

「―――――そう?」

 圭の言葉に、真里は小さく頷く。

「うん。………見てるだけで、判る」
 これ撮った人が、被写体の人のこと、どう思ってるのか。

 静かに告げると、圭の目をじっと覗き込んだ。

「これでも、判らないって言う気?」
 自分の気持ちが。

 どこか責められている気がして、圭は微妙に視線を外した。―――――情けない。そう思いながら。

118 名前:信長 投稿日:2001年11月28日(水)22時03分43秒
>114
こんな写真でした(^^)<82
言葉ではうまく表現できないのが悔しいです(^^)。

取りあえず、自分の気持ちに気付いた圭ちゃん………。
どうなるんでしょうか<自分で言うな
119 名前:85 投稿日:2001年11月29日(木)20時17分34秒
「………だって」
 だって、今更だよ。

 俯きながら、圭はぼそぼそと答える。それに、真里は『がぅ!』と吠えた。

「何言ってるんだよ、圭ちゃん!」
 そんなの梨華ちゃんだって、ちゃんと判ってるよ、圭ちゃんが『こんな性格だ』っていうこと。

「―――――矢口、それって」
 何気にさらっと酷いこと言ってるの、気付いてる?

 じろりと睨む圭に、真里はひょいっと肩を竦めた。

「………これも今更。いいじゃん、『今更』だって」

 そう答える真里に、圭は何とも言えない表情で微笑った。

「石川、気付いてた」
 あたしが、紗耶香に惹かれてたって事に。

「あ〜〜〜〜」

 その言葉に、真里はがしがしと前髪をかきあげた。そして、溜息をつく。

「でも、今は違うんでしょ?」
 まさか、まだ引きずってるなんて、言わないよね?―――――それとも。

「それとも………?」

 圭は、真里に視線を向けて、続きを促した。真里は、舌で唇を湿らせると、囁き声で告げる。

「忘れたいから梨華ちゃんと付き合ったの?」

「違う!」

 そんなんじゃない!違う。

 圭は、大きく首を横に振った。
120 名前:86 投稿日:2001年11月29日(木)20時19分05秒
「そりゃあ、最初は、石川から告られたけど、あたしだって石川のこと気に入ってたんだ」

 だから、付き合う事にしたんだ。―――――紗耶香に対する気持ちなんて、そんなの思い出しもしなかった。一回だって、付き合ってる時は。

 一気にそう告げる圭に、真里は目をぱちぱちとさせた。だけども、直ぐに微笑む。

「なーんだ」
 ちゃんと判ってるんじゃん、圭ちゃん。

「じゃ、最後のダメ押しね」

 と、意味深に呟くと、携帯を取り出して、一回だけ鳴らして切る。

「ちょ………ちょっと矢口」
 一体、どういうこと?

 不思議そうに真里の行動を見守っていた圭は、思わず口を出す。しかし、今度は自分の携帯が鳴りだしたのに気付いて、慌ててそれを取った。

「―――――誰だよ、こんな時に」

 ぶつぶつ文句を言いながら、着信者を見た圭は、思わず目を見開いてしまったのだった。
121 名前:87 投稿日:2001年11月29日(木)20時20分09秒
『もしもし、圭ちゃん?』
 おーい、聴いてるー?なんて、脳天気な声が耳に届いて。

「………………聴いてるよ」
 なんだよ、何で今頃かけてくるんだよ………。

 圭は、無茶苦茶情けない表情をしながら溜息をつく。しかし、ハッと我に返った。

「矢口………あんた………」

 その声に、真里はにやっと笑う。そして、圭の肩をぽん、と叩いた。

「―――――いいじゃん、気にしない気にしない」
 ほら、待たせちゃなんだから、矢口に気にせず、お話してよ。

 圭はぎろりと真里を睨んだが、真里は全く気にしない。

『圭ちゃん、ちょっと、ほんとに聴いてんの?』

「ああ………うん、聴いてるよ。―――――紗耶香」

 携帯の向こうに、そう、囁いたのだった。
122 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月29日(木)22時32分29秒
甘々だと思ってずっと読んでいます。
でもなかなか甘くならないー。
かなりじれったいよー。
作者さん頑張って早く甘くして!!
123 名前:88 投稿日:2001年12月01日(土)23時27分53秒
『なーに、圭ちゃん、振られたんだってー?』

「げふっ!」

 思いも寄らない紗耶香の言葉に、圭は思わず情けない声を発した。それを聴いて、紗耶香はくすくす微笑う。

『なーに、情けない声だしてるの?』

「………っつーか、あんた、それ誰から………」

 しかし、その人物が思い当たったので、圭はそこで言葉を止めた。その代わり、深い溜息をつく。

『なーに、溜息ついてるんだか』
 どうせ、圭ちゃんのことだ、ぐるぐる考えてるんでしょ?

「………紗耶香、あんたねぇ」
 一体、何を言いたい訳?

 思わず、喧嘩腰になる口調に、紗耶香はひとつ息をついた。それから、言葉を発する。

『あたし達でさえ、そう判ってるんだからさ』
 圭ちゃんの相手も、ちゃんと判ってるんじゃない?

「………え?」
 何が言いたいのか判らなくて、圭は思わず聞き返す。

 それに、紗耶香は優しく続けた。
124 名前:89 投稿日:2001年12月01日(土)23時31分05秒
『圭ちゃんが不器用で、言葉にするのが苦手で。でも、優しいって事、あたし達、知ってるから』
 だから、その人は、待ってると思うよ?圭ちゃんの本当に気持ち。

「………………」

 圭は、何も、言えなくなる。鼻の奥が、つん、となって、それを堪えるのに、困った。

『好きでも、嫌いでも、ちゃんと言葉にしてくれるのを』
 だって、君はそういう人だから。ちゃんと、正直な言葉をくれる。

「……………紗耶香」

『だから、ちゃんと言葉にしといで?』
 きっと、相手も待ってるはずだから。

「―――――うん」
 圭は、くしゃくしゃになった顔を片手で覆いながら、何度も頷く。

 ああ、全く!こいつら、同期には敵わない。

「………ありがとね、紗耶香」

 迷ってる自分に与えてくれた言葉。本当にある意味『駄目押し』で。

『どういたしまして』

 頑張れよー!という言葉を残して、電話は切れた。
125 名前:90 投稿日:2001年12月01日(土)23時32分44秒
 圭は黙って、自分を見守ってくれた真里に視線を向ける。

「矢口………」
 ほんと、あんたってば………。

「なんだよぉ」

 唇を尖らせて反論をしかける真里の首筋に、圭は抱きついた。

「け………圭ちゃん!」
 な………何するんだよぉ!

 じたじたと暴れる真里にも構わず、圭はその小さな身体を思いっきり抱きしめる。

「………ありがとね」
 本当に、感謝している。ここまで、自分を理解してくれている同期に。

「あたし、あんた達と一緒に入ることが出来て、ほんと良かったよ」

「―――――なんだよ」
 照れるじゃんか。

 唇を尖らせる真里に、圭は目を細める。

「うっさいなー」

「いいから、とっとといきなよ」
 『彼女』とこへ。

 真里の言葉に小さく頷くと、圭は小さなその身体を解放する。それから、自分の荷物を手に取り、控え室を飛び出していったのだった。

 ―――――早く、早く、伝えなくっっちゃ。自分の気持ちを。

 はやる気持ちを抑えきれずに、圭は、タクシーを止めるために、通りに飛び出した。
126 名前:信長 投稿日:2001年12月01日(土)23時38分03秒
>122
最初に書いた『甘々』という文字がぷかぷか浮いております(苦笑)。
甘くしたいのは、作者もなんですが
如何せん、圭ちゃんが………<言い訳

ラストは甘くなるはずなので、気長に待っていて下さい

127 名前:122 投稿日:2001年12月02日(日)07時23分15秒
>ラストは甘くなるはずなので、気長に待っていて下さい

りょーかいー
128 名前:蘭丸 投稿日:2001年12月02日(日)19時54分08秒
信長殿  
とてもおもしろいでござりまする。
このような作品に出会えて、拙者感極まって涙が・・・
この蘭丸、一生信長殿についてゆきまするぞ!

 (大河ドラマ風)
129 名前:うっぱ 投稿日:2001年12月03日(月)02時15分52秒
思わず読みいってしまいまひた。
感動の(?)ラスト、期待してます。
では。

130 名前:91 投稿日:2001年12月04日(火)19時44分13秒
 タクシーをマンションの近くで降りてから、圭は、はた、と気付いた。

「どうやって入れてもらおう………」

 彼女のマンションは御多分に漏れず、オートロックで。エントランスも暗証番号を押すか、部屋の鍵を差し込むかしなければ入れないときてる。

「ん〜〜〜」
 ここで電話してもいいのだが、それだと拒まれそうな気がして。

 しかし、いい案が思い浮かばない。入り口の前で入居者が出てくるか入るかするときに、便乗するしかない。

 圭は小さく頷くと、目立たぬ場所に移動しようとした。その時、『ウィーン』と音がして、エントランスが開かれた。

 出てくる人影に、何気なく目をやった。背の高いシルエット。ふわっと下ろされた髪、金色に光って。―――――見覚えのある、彼女。

 その相手も、人の気配に気付いたのか、ふっと視線を上げた。驚くように、大きな眼を見開く。

「保田………さん」

「吉澤………」

 呆然として、互いに見つめあう。しかし、自動ドアがひとみを挟もうとしたその瞬間、圭はひとみの肩を押して、エントランスの内側に、入り込んでいた。
131 名前:92 投稿日:2001年12月04日(火)19時47分05秒
「何をしに、来たんですか?」

 ロビーは人影が全くと言っていいほど無かった。影になる位置のソファに隣り合わせに座りながら、ひとみはぽそっと問いかける。

「………石川に、逢いに」

「逢って………何をする気なんですか?」

 どこか怒ったような口調。―――――こんな吉澤は、初めて見る。

 だけども、圭も負ける訳にはいかない。

「吉澤には関係ない」
 あたしと、石川の問題だから。

 その言葉に、ひとみはふっと微笑んだ。どこか、バカにしたような視線。

「………吉澤?」

「判ってますよ、それぐらい」
 あたしが、関係ないなんてことは。でも。

「でも?」

「梨華ちゃんは、あたしの大切な同期なんだ!あんなに彼女を泣かせるような保田さんに、梨華ちゃんの傍にいる資格なんてない!」
 だから、行かせません、梨華ちゃんの所には。

 切り付ける様に告げると、挑むような視線を圭に向けた。圭は、その視線をきちんと受け止める。
132 名前:93 投稿日:2001年12月04日(火)19時49分24秒
暫らくの沈黙の後、口を開いたのは圭の方だった。

「あのさ、吉澤」
 そこまで、心配掛けて………ごめん。

 圭は、ぺこりとひとみに頭を下げた。てっきり、むっとされるだろうと思っていたひとみは、圭の思わぬ態度に、目をきょとんとさせる。

「―――――保田、さん?」

「あたし、確かに迷ってた。石川への気持ち………自分でも、判らなかった」
 それが無意識に出てたから、石川も、きっと信じられなくなってしまったのだろう、あたしの事を。

 がしがしと髪をかきあげながら、圭はぼそっと続ける。

「でも、もう、大丈夫だから」
 迷わないよ、もう。

 いつにない、静かな口調に、ひとみはただ戸惑う。
133 名前:94 投稿日:2001年12月04日(火)19時50分17秒
 圭は、すっと立ち上がり、座ったままのひとみの肩に手をそっと置いた。

「ちゃんと、言うから」
 もう、あんたの同期、泣かせたりしないから。安心して。

 その言葉に、はっとして顔を上げると、圭は、もうエレベーターの方に歩み出していた。その背は、近づけない雰囲気を醸し出していて。

 だから、その場から叫んだ。近所迷惑になるかもしれないけど。

「絶対ですからね!」
 泣かせたりしたら、承知しませんから!

 その声に、圭はくるっと振り返った。そして、指を拳銃のようにして、ひとみに向ける。

「そっちこそ」
 あたしの同期泣かせたら、承知しないから。

 『ばーん』と指でひとみに向かって、撃つふりをする。それに、ひとみは不敵に微笑った。

「………泣かせませんよ」

 エレベーターが、ホールに着く音を聞きながら。
134 名前:信長 投稿日:2001年12月04日(火)19時54分24秒
>128 蘭丸殿(^^)
ありがたきお言葉、かたじけない。
これからも、引き続き、頑張るので
宜しくお願い申し上げる
(絶対おかしい、この言葉)

>129 うっぱさん
ありがとうございます(^^)
感動………感動するんでしょうか(苦笑)<おい

ご期待に添える様、頑張ります(^^)
135 名前:95 投稿日:2001年12月06日(木)23時30分15秒
「さて、と」

 何度か訪れた事のある部屋の扉を、圭はじっと見上げた。

 彼女が部屋にいることは、判っている。それを知ってて、来ているのに。

 指を躊躇いながら、ボタンに伸ばす。だけども、その手は途中できゅっと握りしめられて。

「―――――ダメだ」

 その手を、近くの壁にどん、と当てた。情けなく眉を寄せながら、深々と息をつく。

「なっさけない」

 自分でも良く判っている。だけども、何だか怖くって、動けない。

 怖いと思うのは、何かを期待してるからだ。今更、何を期待してるのだ?

 自嘲気味に微笑むと、圭はそっと呟く。

「………このまま、帰ろっかな」

 後押しをしてくれた仲間達が聴いたら『何考えてやがる!』と怒鳴られそうな選択肢を心に浮かべ、圭は通路の手摺りに身を預けると、盛大な溜息をついた。 
136 名前:96 投稿日:2001年12月06日(木)23時31分23秒
 一方、タクシーに乗り込んだひとみは、窓の外の流れる景色を眺めながら、ぼんやりと思う。

「あーんな事、言ってたけど」
 結構、保田さんって、臆病なんだよねー。

 一緒のユニットで活動しているひとみは、そこらへんはちゃんと良く判っていた。

 だから、『すちゃ!』と携帯を右手に取る。

「余計な迷惑かもしれないけど………」
 ここで、失敗して貰ったら、絶対に困るんだ。

 軽やかにキィを打ちながら、ひとみはぼそっと呟いた。

「―――――矢口さん、頑張ってるの知ってるから」
 だから、保田さんにも頑張ってもらいますよ?

 そんな想いを込めて、ひとみは『送信』のボタンを親指で押した。
137 名前:97 投稿日:2001年12月06日(木)23時32分23秒
「………あれ?」

 バスルームから濡れた髪を拭いながら出てきた梨華は、携帯のディスプレイを見る。

 そこには、ひとみからメールが届いていて。

「忘れ物でもしたのかな?」

 慌てて、受信簿を開くと、そこにはたった一行だけ。

『ドアを開けてごらん?』

「………………………?」
 一体、何が言いたいんだろう?

 眉を段違いにしかめると、梨華は小さく息をついた。だけども、それはなんだか『呪文』の様に感じて。

 梨華は玄関の扉を振り返った。もちろん、そこには、何も感じられない。

 携帯を片手に、濡れた頭をがしがしと拭く。しばらく何かを考える様に、天井を見つめていたけれども、

 軽く微笑むと、小さく頷いた。

「………ま、騙されてみよっと」

 ドアを開いて、意味が判らなかったら、明日、ひとみに訊いてみればいい。

 ゆっくりと玄関へと足を向けると、梨華は静かに扉を開いた。―――――ほんの軽い気持ちで。 
138 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月07日(金)20時12分36秒
無事に仲直り出来ますように!
作者さん頑張ってください
139 名前:98 投稿日:2001年12月07日(金)22時12分35秒
「………へ?」

「え………?」

 驚いたのは、圭も梨華も一緒である。互いに目を丸くしたまま、見つめ合うこと、数秒。―――――先に動いたのは、梨華の方だった。

「保田………さん」
 なんで、ここに………。

「えと………あの」

 逃げ出したくなる気持ちを懸命に堪えて、圭は視線をうろうろとそよがせた。しかし、決心をしたように顔を上げると、睨み付ける様に、梨華を見上げる。

「………これ」

 鞄から、先程の写真の束を梨華に突き出す。

「―――――え?」

 差し出されたそれを、咄嗟に受け取りながら、梨華は小首を傾げる。だが、不意に、『それ』に思い当たった。

「覚えていて、くれたんですね」

 以前、約束していた事。

『写真が出来たら見せてくださいね』

『判ったよ』

 些細な会話。―――――それを圭は覚えていてくれた。

 情けないぐらい、嬉しい。

 眉を情けなさそうにしかめながら、梨華は圭をじっと見つめた。それに、圭は口をへの字に曲げながら、そっぽを向く。

「見てる間、中に入って待っててくれませんか?」

 梨華のその言葉に、圭は、小さく息を吐くと、そっと足を踏み入れたのだった。
140 名前:99 投稿日:2001年12月07日(金)22時13分36秒
 リビングで、という梨華の言葉を、首を振ることで断って、玄関の上がり口で圭は待つ。

 その視線を感じながら、梨華は写真を一枚一枚、丁寧に見た。

 主に楽屋や撮影場所で撮った写真が多い。ふざけてたり、妙に真面目な表情だったり。普段の『自分達』をうまく切り取っていると、素直に思った。

 しかし、不意に写真内の光景が変わる。―――――見覚えのある、圭の部屋。

 笑ったり、おどけたり、むっとしたり、真面目な表情だったり………色んな表情の『石川梨華』がいた。

 こんな表情、するんだ、あたし。

 素直に、思う。

 そして、最後の写真を見たとき、やっと、気付いた事があった。本当に、『今更』に。

 その間ずっと、圭は下を向いたままだった。
141 名前:100 投稿日:2001年12月07日(金)22時14分45秒
「ありがとう………ございました」

 その言葉に、圭は視線をやっと上げる。どこか情けなさそうな目で。

「………どういたしまして」

 差し出された写真を受け取り、圭は丁寧に鞄にしまう。それから、深く、息をついた。

 これ以上、ここにいる理由は、ない。

 想いを振り切る様に、圭は手を握りしめた。そして、微苦笑気味に告げる。

「じゃあ、あたし、帰るね」

「………はい」

 梨華も、引き留めない。

 当たり前だ、当たり前の事なんだ。もう、別れたのだから。

 圭は一抹の寂しさを抱えながら、視線を断ち切るように梨華に背を向けた。玄関の扉に手をかける。

「保田さん」

 そんな時、声がかかった。震える様な、小さな声。

「………?」

 不思議に思った圭が、導かれる様に振り返ると、

「この写真、下さい」

 あの、写真だった。―――――梨華がうたた寝をしている、圭の気持ちが一杯に、詰まっている、あの写真。

 それを手にしながら、梨華はそう告げたのだった。
142 名前:信長 投稿日:2001年12月07日(金)22時17分02秒
>138
レスありがとうございます。
仲直り出来るように祈ってて下さい(^^)。
―――――がんばります!
143 名前:LINA 投稿日:2001年12月08日(土)04時59分18秒
( `.∀´)が早く「スキ」って言えるように祈ってます(w

信長さんがんがって〜!
144 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月09日(日)02時41分15秒
おもしろいです。
作者さん、がんばってください!
145 名前:101 投稿日:2001年12月09日(日)16時28分56秒
「い………いつの間に?」

 慌てた口調で、圭は梨華を見上げた。

 こんな圭、初めて見る。

 梨華は、瞳を和らげながら、圭を見つめ返した。そのまま、小さく訴える。

「お願いします」
 この写真、あたしに下さい。

 梨華は、肩を震わせながら、告げる。そして、写真に視線を落とした。

 あなたの気持ちが、一杯に詰まったこの写真。
――――― 一目見ただけで、解った。
 
どれだけ、自分が愛されていたのか。これが、彼女の言葉、抱きしめる腕。不器用な圭の、精一杯の想い。
 
どうして、疑ったのだろう?どうして、彼女を信じられなかったのだろう?

梨華は、泣き出したいのを懸命に堪えながら、笑顔を作った。寂しい、笑顔を。
146 名前:102 投稿日:2001年12月09日(日)16時30分38秒
「………石川」

 圭は、困惑した表情で、ぽそりとその名を呟く。そんな圭に、梨華は懇願する。

「お願い、します」
 言っちゃダメ。絶対に。『側にいて欲しい』なんて。これ以上のワガママを。

「下さい」
 自分から別れを告げたくせに。『まだ、側にいたい』だなんて、言うな。言っちゃ、ダメなんだ。

「お願いします」
 もう、戻れないのだ。自分からは、言えないのだ。『好きだ』なんて。―――――『愛してる』だなんて。

 胸が締め付けられて困った。死にそうなぐらい、息が苦しい。

 自分でも気付かないうちに、頬に涙が伝っていた。それを拭おうともせず、梨華は圭に訴える。

「最後の、お願いですから………」

 愛された証。―――――ちゃんとした、形として、この手に残しておきたい。最後の、ワガママ。

 梨華のその言葉に、圭は弾かれたように視線を上げた。そして、情けなさそうな表情になる。

「石川………」

「もう………ワガママ、言いませんから」
 だから、この写真、下さい。

 梨華の言葉に、圭はがしがしと前髪をかきあげた。迷った様に視線を彷徨わせる。 
147 名前:103 投稿日:2001年12月09日(日)16時31分47秒
 何度も、泣かせてきた。だけども、今回の涙ほど、圭の胸を切なくさせるのは無かった。

 ………抱きしめ、たい。慰めて、あげたい。

 『愛しい』という想いは、きっとこんな気持ちの事をいうのだろう。

 圭は、きゅっと手を握りしめた。そして、深々と息をつく。

 自分には、その資格があるのだろうか?もし、ないとしても………。

 圭は、そっと瞳を閉じる。

 ここまで、辿り着くのに、真里や、真希、ひとみ達の、色んな人の力を借りてきた。それに報いたいとか、そういう想いもあるけれども。

 でも、やっぱり、目の前で泣いてる梨華を、抱きしめたいという、単純な気持ちに帰結して。

 圭は、そっと目を開いた。そこには、まだ静かに泣いている梨華がいて。

 すぅっと息を吸うと、圭はそっと言葉を紡いだ。

「ごめん、石川」
 その写真は、あげられない。

 圭の言葉を待っていた梨華は、とてもとても悲しそうな表情をした。しかし、次の瞬間、見てるこっちが辛いほどの、笑顔を浮かべた。

 悲しい、笑顔を。
148 名前:信長 投稿日:2001年12月09日(日)16時35分34秒
>LINAさん
言える………言えるのか?ヤッスー(苦笑)。
っつーか、お願い言って………(涙)<作者から

>144
ありがとうございます!
次回更新で、ひとまず終わる予定ですので
この2人を見守っていてください。
149 名前:104 投稿日:2001年12月09日(日)22時06分41秒
「だって………こういう写真、これからも撮る予定なんだからさ」

 圭の言葉に、梨華はきょとん、とした表情になる。どこか子供の様な表情に、圭は微苦笑して。

「―――――それとも、もう撮らせてくれない?」

 言っている意味が、やっと理解出来たのか、梨華は大きく目を見開いた。だけども言葉が出なくって。

 何も言えないでいる梨華の頬に残る涙を跡を、圭は指を伸ばし、そっと拭った。

「あたし、これからも石川のこと、撮りたいって思ってる」
 だから、きちんと言うよ?

 圭は、こくり、と唾を飲み込むと、がしがしと髪をかき上げた。からからの喉に、声が引っかかる感じがするけども。

 それから、キっと視線を、玄関の上がり口にいる梨華に向けて。

 強い視線が、梨華を射抜き、小さな声が、耳に届いた。

「石川が、好きだよ」

 『言ってくれ』と言われたから言うんじゃない。梨華が離れていってしまって、初めて気付いた。やっとやっと気付いた。

 ―――――自分の本当の、気持ち。
150 名前:105 投稿日:2001年12月09日(日)22時08分09秒
「保………だ、さん」

 梨華は、信じられないという表情で、無意識に首を横に振る。そんな梨華の腰をきゅっと抱きしめると、圭は自分の目線へと梨華を抱き下ろした。

 こっちをじっと見上げてくる大きな瞳の縁には、ぎりぎりまで涙が溜まっていて。

 黒い濡れた瞳が、とても、綺麗で。

 圭は、口元だけで小さく微笑んだ。そのまま、ゆっくりと目蓋に唇を当て、離す。

「好き、なんだ………ちゃんと、好きなんだよ?」

 首筋にしがみつく梨華のまだしっとりと濡れた髪に、軽く口付けながら、圭は何度も何度も囁いた。それに、梨華はただ『うんうん』と頷くだけで。

 どうして、自ら手放したんだろう?どうして、あんな賭なんてしたんだろう?―――――ずっとずっと後悔していて。

 だけども、圭がこうやって自分を手元に引き寄せてくれた。迷い、戸惑い、躊躇いながらも、その腕の中に。

 胸が、ぎゅっと痛くなった。不快な痛みなんかじゃなくって、甘く切ない痛み。

 この痛みは、彼女だけが、与えてくれる。 
151 名前:106 投稿日:2001年12月09日(日)22時10分45秒
 梨華は、ますます強く、圭に抱きついた。それを抱きしめ返しながら、圭は切なそうに呟く。

「ちゃんと、言わなくて………ごめん」

 不安にさせて、ごめん。待たせて、ごめん。

「………いいんです」

 梨華の涙が、圭の服を濡らす。だけども、そんなの構わなかった。

 ―――――泣きたいだけ、泣いてくれればいい。これまで、我慢させてきた分。
152 名前:107 投稿日:2001年12月09日(日)22時11分40秒
「石川………」
 ちゃんと、言うから。だから、ちゃんと応えてね。

「―――――はい?」

 真剣味を帯びた声音に、梨華は、圭から静かに離れると、小首を傾げた。

 ………う、可愛い。

 あまりの愛らしさに、圭はがしがしと前髪をかきあげる。

「保田さん?」

「あーーー、うん………えっと………」

 圭は、梨華の耳元に唇を近付けると、耳元でこそっと囁いた。

「あたしと………付き合ってくれませんか?」

 最初は、君から始まった恋愛だけども。そして、それは君自身が終わらせてしまったけれども。

 もう一度、始めたい。今度は、自分から。

 圭の真っ直ぐな言葉と、視線に、梨華は目を丸くさせていたが、直ぐに満面の笑みで頷くと、

「もちろん!」

 余りにもくさい台詞に、耳まで真っ赤になっている圭の首筋に、嬉しそうにキュッと抱きついたのだった。
153 名前:ラストモノローグ 投稿日:2001年12月09日(日)22時16分25秒
「どうして、石川なんですか?」

 石川なんかで、いいんですか?

「石川じゃなきゃ、イヤだ」

 他の誰でもない―――――あなたじゃなければ。

 WHY 終
154 名前:信長 投稿日:2001年12月09日(日)22時19分37秒
これで、完結です。
初めて小説板で書いた話ですが、
こうやって書き終えて感無量です。

レスをつけてくださったみなさん、
本当にありがとうございましたm(_ _)m
155 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月10日(月)01時25分41秒
おもしろかったです。
こちらこそありがとう。
156 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月10日(月)03時42分03秒
今日見つけて今読破しましたが、すごくよかったですよ。
これからにも期待しています。
157 名前:うっぱ 投稿日:2001年12月11日(火)03時04分55秒
良い文章に出会った気がします。
お疲れ様でした。
158 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月11日(火)03時25分21秒
読み応えのある作品を有り難う!!
そして、御疲れ様でした。
159 名前:LINA 投稿日:2001年12月11日(火)06時19分15秒
お疲れ様でした!
( `.∀´)がちゃんと言えてヨカッタ・・・(涙
次回作にも期待です♪
160 名前:信長 投稿日:2001年12月12日(水)16時28分51秒
>155
そう言っていただけると、本当に嬉しいです。
頑張ったかいがあります。ありがとうございました。

>156
一気読み、大変だったんじゃないでしょうか(^^)?
でも、読んでいただいてありがとうございます。

>うっぱさん
そう言われると照れてしまいますので………(苦笑)
でも、嬉しいです、どうもありがとう。
うっぱさんのも、読んでますよー。
楽しみにしてます(^^)。

>158
こちらこそ、だらだらと長い話に付き合っていただいて
ありがとうございます!
やー、まだまだ頑張りますよー………多分<おい


>LINAさん
いや、言えなかったらヤバイっしょ(^^)。
でも、ようやく言ってくれて、作者もホッとしてます。
―――――次回、次回は………どうなることやら。

LINAさんのも楽しみにしてますね(^^)
161 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月12日(水)19時49分51秒
さっき見つけて一気に読んじゃいました。
文章うますぎです。
入り込み過ぎて最後の方、石川と一緒に泣きそうになりました。
これからも期待していいッスか?
162 名前:信長 投稿日:2001年12月12日(水)21時38分36秒
>161
一気読み、ありがとうございます(^^)
期待………期待は、程々にお願いします(苦笑)

163 名前:信長 投稿日:2001年12月12日(水)21時47分28秒
新たにスレを作るのもなんなので、再びやすいし話を
書きたいと思ってます。

目標は『前作より甘く!』です(苦笑)。
宜しくお願いします(^^)
164 名前:I'm in love 01 投稿日:2001年12月12日(水)21時51分24秒
 聞き慣れた着信音が耳に届いた。それに、枕に顔を埋めて、うつらうつらしていた梨華は、視線を少しだけ上げる。

 隣にいた彼女は、白のバスローブを身に纏い、ゆっくりと起きあがった。そのまま、気怠そうに、ベッドサイドに置いた携帯を手に取る。

「………はい?」

 聴くとも無しにその声を聴いていた梨華は、視線だけを彼女に向けた。それに気付いたのか、彼女はくすりと微笑う。

「ああ、はい………判りました。その時間まで入ればいいんですね?」

 確認するような言葉。それで、『仕事』の電話だという予感は確信に変わる。

「はい、はい………じゃ、また、後で」

 『ピッ』とボタンを押して、会話を終了させる。そんな彼女に、梨華は小さく問いかけた。

 うつぶせの姿勢のまま、顔を枕に埋め、視線だけをちらりと上げて。
165 名前:I'm in love 02 投稿日:2001年12月12日(水)21時53分44秒
「お仕事ですか?保田さん」
 入りの時間、変わったんですか?

 そう問いかけると、圭は何も答えず、梨華の携帯をぽんと手元に投げてよこした。答えない圭に、梨華は少しだけ不機嫌そうな目をする。

「あんたにも掛かってくるよ」
 時間的にね。

 そう言った途端、梨華の携帯が鳴りだしたのには、正直驚いたけれども。

 しかし、それを表に出さずに、梨華はそれを手に取り、耳に当てた。

「もしもし?」

『ああ、石川?マネージャーだけども』

 聞き慣れた声。それに「やっぱり」と思って、圭をちらりと睨め付ける。

 しかし、圭は知らん顔しながら、リモコンでテレビをつけて。その画面には『8:20』と時刻が表示されていた。

「はい………どうかしたんですか?」

『ほら、今日、10時からロケだったじゃない。でも、雨降ってるからそれ中止になってね』

「ああ………そうでしたね」

 上体を起こし、頬杖をついた梨華の背を、圭はちらりと見やった。次の瞬間、圭の目が悪戯っぽく光る。
166 名前:I'm in love 03 投稿日:2001年12月12日(水)21時57分22秒
『だから、15時の録りまで時間空いた訳。めずらしく』

「ほんとに………って………」

 相槌を打った梨華の声が、いきなりひっくり返る。それに、電話の相手は怪訝な声をした。

『もしもし、石川?』
 どうした、何かあったの?

「いえ………なんでも、ないです」

 圭の手が、梨華の裸の背をするりと撫でた。―――――まるで、猫か何かを撫でるかのように。

 上半身を捻り、圭を『もう!』という感じで睨め付ける。だけども、圭はしれっとした表情で梨華を見返すばかりで。
167 名前:I'm in love 04 投稿日:2001年12月12日(水)21時58分45秒
『そう、ならいいけど?』

「はい………」

 電話に集中しようとしたけれども、圭の手のひらが、肩胛骨から背骨に沿って段々と下に降りてくる。

 まるで、愛撫をするかのように。

『だからさ、ゆっくり休むもいいし、買い物するもいいし………この忙しい年末年始にこんな空き時間ないからさ』

「………は、い」

 首筋に吐息が近付いて来て、そっと熱が当てられた。思わず、びくりと反応してしまう身体に、圭は満足げな笑みを漏らす。

『まぁ、15時には遅れないように。学生組には学校行かせるし』

「そう………なんです、か」

『うん、そういうこと。じゃ、遅れない様にね』

「は、い………」

 思わず漏れそうになった吐息は、圭の唇に奪われてしまい、悟られる事は無かった。
168 名前:05 投稿日:2001年12月15日(土)22時01分16秒
 ツーツーと音が聞こえる携帯を、梨華の手から取り上げると、圭は背中から覆い被さる態勢で、更に深く口付けた。

 梨華は、目を少しだけ見開いたけれども、そっとそれを閉じた。首を少し後ろに捻るようにして、圭の唇を味わう。

 下唇を甘く噛まれ、歯列を舌でなぞられる。誘うように開かれたそこに、するりと舌が差し入れられた。

「―――――ん」

 舌先が上顎をくすぐる。咥内を存分に暴れ回ってから、梨華の舌先にそれが触れた瞬間、強引に絡め取られて。

「んんっ」

 首の後ろを手で引き付けられ、逃れることすらかなわくって。

「………もぉ」
 一体、どうしちゃったんですか?保田さん。

 梨華の咎める様な視線に、圭は薄く微笑んだ。その笑顔に、どうしようもなく弱い自分がいて。

「時間………空いちゃいましたね?」

 ごろりと仰向けになると、梨華はじっと圭を見上げた。両腕で身体を支えながら、圭はその視線を受け止める。

「………どうしましょうか?」

「さぁてね」

 曖昧に答えながらも、圭は静かに梨華に顔を寄せた。
169 名前:06 投稿日:2001年12月15日(土)22時03分15秒
 額に。閉じられた目蓋に。頬に、鼻筋に。慈しむように唇を落とす。

 満足げな笑みを浮かべる梨華の髪に、圭は指を絡めた。それから、そこに唇を寄せる。

「………保田、さん」

 その身体に腕を回そうとした瞬間、圭の身体がいきなり離れた。

「………?」

 きょん、とした表情で見上げる梨華に、圭ははぐらかすように笑んだ。

「コーヒーでも、入れよっか?」

「………………」

 ここまでいい雰囲気になったくせに、一体、なんでこんな事を言うのだろう?

 不満げに唇を尖らせた梨華の心を読みとったのか、圭は、その鼻先を『ちょん』とつついた。

「ん?」
 どうしたの、石川?何か言いたそうだけども。

 知ってて言ってるんだ、この人は。

 梨華はそっと息を吐いた。それから、上目遣いで圭を見つめる。

「………石川?」

 濡れて艶っぽくなった瞳が、無茶苦茶色っぽくて。誘われてるのは解っていたけれども、それをあえてはぐらかして。

 鼓動なんて、さっきから高まりっぱなしで。こうして近付いているだけで、どうしようもなくなってしまうのに。
170 名前:07 投稿日:2001年12月15日(土)22時04分44秒
「ズルイです、よね………」

 咎めるような呟き。それには、ちょっとだけ片方の眉を上げて。冷静な表情を装って。

―――――だって、知られたくないじゃない?こんなにメロメロだなんてさ。

 早まる鼓動を何とか押さえながら、圭はこつんと梨華の額に自分のそれを押し当てた。

「ズルイ、かな?」

「ズルイですよ………」
 解ってるでしょう?何が言いたいのか、だなんて。

 吐息がかかるぐらい近くで見つめ合って。お互いの目の色に、『それ』を読みとって。

「うん………」
 ごめん。

 小さな謝罪の言葉と同時に、優しい口付けが唇に降ってきた。

「しよっか………」
 石川に、触れたい。

「………はい」
 あなたに、抱きしめられたい。

 小さな囁きと共に、圭の背中にそっと腕が回された。
171 名前:LINA 投稿日:2001年12月16日(日)01時18分46秒
しちゃってください(w

新作もイイ〜〜感じで♪
信長さんの書くクールな圭ちゃん好きですよ!
続きもがんがってくださいね。
172 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月16日(日)23時00分12秒

待ってるよぉ
173 名前:08 投稿日:2001年12月18日(火)22時48分18秒
 前髪越しに額に口付けると、梨華は小さく息を吐いた。それが、なんだか色っぽくて、どきりと鼓動が跳ねる。

「………石川ってさ」

「はい?」

 こめかみに、目蓋に、頬に、顎に唇を落としながら、圭は囁く。

「………結構、罪作りだよね」

「なんでですかぁ?」

 いきなりの台詞に、梨華は驚いた様に上半身を起こした。その勢いの良さに、梨華の頭と圭の顎が、思い切りぶつかる。

 がつん!

 いい音がして、次の瞬間、圭は顎を押さえてひっくり返る。

「………や………保田さん!」
 大丈夫ですか?

 梨華は圭の腕を引っ張って起きあがらせた。次の瞬間に、『石川〜〜〜〜〜!』と雷が落ちる。

「す、すみません!」

 条件反射で思わず謝ったけれども、それは理不尽だと思い直したらしい。頬をむっと膨らませて、ぺたんとベッドの上に座り込んだ。
174 名前:09 投稿日:2001年12月18日(火)22時50分05秒
「だって、保田さんが悪いんですよ?」
 いきなり、あんな事言うなんて。

 梨華はブランケットを素肌に巻き付けると、拗ねたように視線を落とした。それに、困った様に、圭はがしがしと頭を掻く。

「あ〜〜〜、だって………さぁ」

 圭は梨華の肩をそっと押した。ベッドは少し軋みをたてて、二人分の体重を受け止める。

 肘で体重を支えながら、圭は梨華の瞳を覗き込む。その瞳の優しさに、梨華は何だか嬉しくなった。

「あのさ、石川」

「………はい?」

 きょとんと問い返した梨華に、圭はふっと笑んだ。

「………これでも、さ」
 あたし、すっごくドキドキしてるんだけど。

 圭は、胸元を指しながら、囁く。どこか照れた様な笑みに、梨華の胸の方がドキドキと高鳴ってしまって。

「だから、さ」
 こんなにさせる石川って、罪作りだなって。そう、思ったんだよ。

 圭の言葉に、梨華はすぅっと目を細めた。何とも言えない、艶っぽい表情で。

「だったら………」

 梨華は、圭の頬に指を添えながら、ちょっとだけ上半身を起こして唇を塞いだ。

「―――――ん」

 ゆっくりと唇を放し、潤んだ瞳で圭を見上げる。
175 名前:10 投稿日:2001年12月18日(火)22時51分27秒
「石………川」
 ああ、そんな目で見つめないで欲しい。

 苦笑しながら、それでも圭は梨華の瞳を見つめ返した。

「だったら………」

「ん?」

「保田さんも、同罪ですよ?」
 こんなにも、石川をドキドキさせるんですから。

 その言葉に、圭は思わず笑みを浮かべる。そのまま、額をくっつけると、小さく呟いた。

「そっか………」
 同じか、あたし達。

「そう、ですよ」

 梨華は、圭の右手をそっと胸元に導いた。そのまま、少しだけ小首を傾げる。

「ね?」

「………うん」

 だったら、さ。

 唇をそっと寄せると、触れる直前、甘く囁いた。

「もっと………ドキドキして?」

 返事は、唇に飲み込まれてしまったのだけれども。
176 名前:信長 投稿日:2001年12月18日(火)22時54分47秒
>171
LINAさん
>信長さんの書くクールな圭ちゃん好きですよ!
ありがとうございます!
っていうか………クール………クール………
ヘタレ?<おい(苦笑)
がんがりまっす!

>172

待ってて下さってありがとうございます!
その言葉だけでも、励みになります。

のんびり、まったりと交信していきますので
177 名前:瑞希 投稿日:2001年12月19日(水)00時05分42秒
この歌、実は大好きなんです(w

いや! お話のほうも大好きです!
頑張ってください!
178 名前:11 投稿日:2001年12月19日(水)23時00分46秒
何度も、何度も角度を変えて、唇を味わう。舌を絡めて、吸い上げて。

「………んぁ」

 唇が離れると、酸素を求める様に、梨華は深く呼吸を繰り返した。

「石川………」

 耳朶に唇を移動させ、吐息と共に囁く。それに、びくりと身体が動いて。

「―――――好き、だよ」

 甘噛みしながら、舌でつーっとそこをなぞった。

「ん………」

 梨華は、きゅっと圭のバスローブの襟元を掴む。その無意識の行動に、圭は口元だけで微笑んだ。

 そう言う些細な行動が、嬉しいし、愛おしい。

「石川も………」
 好き、です。保田さんが………保田さん、だけが。

 そう囁かれて、圭の背筋にぞくっと何かが走り抜けた。―――――簡単に言えば『欲望』と言う名の、それ。

 やっばいなぁ………。

 これから、仕事なのに。無茶をさせてしまいそうになる自分が、存在して。

 ねぇ、判ってる?石川。―――――あたし、こんなにめちゃくちゃやらしいヤツ、なんだよ?

 心でそう囁きながら、圭は、それでも行為を止めることは出来なかった。 
179 名前:12 投稿日:2001年12月19日(水)23時02分47秒
 首筋に舌を這わせ、喉元に軽く歯をたてる。それがちょっとした刺激になるのか、梨華は切なげな息を漏らした。

「ふぁ………」

 顎を舌先でちろちろと舐め上げてから、もう一度、唇で唇を塞ぐ。その首筋に、梨華は、そっと腕を回した。

 そんな梨華の胸元に、肘で自らの体重を支えると、右手の指で触れる。

「んんっ?」

 うっとりと目を閉じて、キスに酔いしれていた梨華は、思わず目を見開いた。だけども、圭はキスを止めない。

 胸元の蕾の周囲を人差し指で、そぉっとなぞると、梨華の細い腰が震えた。それを、自分の体重でおしつけて。

「や………保田、さん」

 唇が解放されても、圭の指先はそこから外れることはなくって。それどころか、円を書く様に段々と範囲を狭めて来た。

「石川………」

 焦れたように動く腰の動きを感じたのか、圭は微苦笑しながら、梨華の耳元に唇を寄せた。

「気持ち、いいの?」

「………やぁだ」

 そんなこと、言えるわけない。

 思わず、唇を噛んで、ぷいっと視線を横に逸らした。その耳に、圭のくすくす笑いが届いて。
180 名前:13 投稿日:2001年12月19日(水)23時03分40秒
「……………石川?」

 その刺激で固くなってきた先端を、圭は柔らかく指先で挟み、小刻みに震わせた。それがもたらすじんわりとした快感に、梨華は思わず溜息を漏らす。

「意地悪で言ってるんじゃなくってさ」

 今度は親指で先端を回転させながら、柔らかく囁きを落とす。

「もっと、感じて欲しいんだ」
 だから、ちゃんと声を聴かせて?言葉で言って?

 そんな言葉を、そんな甘い口調で言われたら………。

「逆らえる訳………ないじゃないですか」

 石川、保田さんのその声に弱いんですよ?

 梨華は、小さな小さな声で答えると、赤くなった顔を隠すように、圭の首筋をぎゅっと引き寄せて、その髪に顔を埋めた。
181 名前:信長 投稿日:2001年12月19日(水)23時05分50秒
>瑞希さん
元歌判るんですか(^^)?
あの色っぽい雰囲気を出せるようにとは思ってるんですが………
なかなか。
頑張りますね!
182 名前:14 投稿日:2001年12月25日(火)22時56分07秒
「………んっ」

 細い首筋に舌を這わせ、指先で鎖骨をすぅっと撫でると、梨華は思わず顔を仰け反らせた。露わになった喉元に、軽く歯を立てる。

「保田………さん」
 痕は………。

「大丈夫………」
 気をつけるよ。

 そう呟きながら、圭は舌先で浮き出た鎖骨をそぉっと舐めた。

「あっ………」

 ぞくり、と梨華の背中に何かが駆け抜けていく感覚。何度も味わっているんだけれども、その度にドキドキして。

 深い息をついた梨華の反応に、圭の心に更に火がつく。

「好き………だよ」

 胸元をゆっくりと揉みしだきながら、軽く鎖骨に歯を立てる。

「んぁっ」

 過敏になった先端を、手のひらをくるくると回転させて刺激すると、甘い声が圭の耳に届く。その反応に力を得たかのように、圭は反対側の胸元を、舌でぺろりと舐めあげた。

「ひゃん!」

 情けない声を上げる梨華の瞳を、圭は覗き込んだ。
183 名前:15 投稿日:2001年12月25日(火)22時58分50秒
―――――可愛いなぁ。コイツ。

 唇を噛み締めながら、懸命に声を堪える梨華の表情に、かなりときめきを覚えてしまう自分がいて。

 圭は、愛撫する手を休めずに、こつんとその額に、自らの額を当てると、

「………石川、かわいい」
 すっごく、可愛い。

 滅多に見せない柔らかい微笑みで囁く。

「そんな………こと………んんっ」

 何かを言いかける唇を、唇で塞いで。舌を絡めあい、柔らかく吸い上げる。

「甘い、ね」
 いっつも、そう。石川とするキスは、甘いよ。

「なんでだろうね?」

 問いかける圭に、梨華は照れた様にそっぽを向く。
184 名前:16 投稿日:2001年12月25日(火)23時00分16秒
「知りません」

「―――――他の、誰も知らないよね?」
 石川の唇が、こんなにも甘いだなんて。

 圭のその言葉に、梨華はゆっくりと視線を戻した。冗談めかした口調だけれども、目は、どこか真剣な『彼女』が梨華の瞳に入る。

 だから、梨華は、柔らかく微笑んだ。―――――こうやって、自分を腕の中に抱きしめていても、不安がっている愛しい相手に。

「保田さんしか、知りませんよ?」
 他の誰とも、こんなキスしてないですよ?

「………ほんとに?」

 再び問いかける圭の頬に、梨華はそっと指を伸ばした。

「ほんと、です」
 石川が好きなのは、保田さん、だけです。

「だから………続き………」
 して?

 そう呟いて、小首を傾げる梨華を見て、冷静でなんかいられなかった。『もっともっと触れたい』という衝動が、圭の心を支配する。
185 名前:17 投稿日:2001年12月25日(火)23時01分10秒
「ああ………もぉ」
 あたし、石川が思ってる程、クールなんかじゃないんだからね。

 呻くように呟くと、梨華の細い身体を力いっぱい抱きしめた。梨華は、そんな抱擁に、満足げな吐息を漏らすと、その白いバスローブの背に、きゅっと腕を回した。

「保田さんだけ、ずるいですよ?」
 こんなの、着ちゃって。

 耳元で、甘く囁かれて、圭は、ああ、と頷く。右手で紐をもどかしげに外すと、はらりと前がはだけた。

 覗く胸元の白さに、梨華はちょっとだけくらっとしながら、両手をそっと襟元に伸ばした。そのまま、するりと肩の方へとバスローブを滑らせる。

「腕………」

「ん」

 片方ずつ、腕を動かしてバスローブを脱がせると、梨華はそれをそっとベッドの下に落とした。
186 名前:うっぱ 投稿日:2001年12月26日(水)01時37分50秒
保田さんと石川さん、甘いなぁ。
思わず読み入ってしまいそうになるなぁ。

187 名前:LINA 投稿日:2001年12月26日(水)05時46分05秒
ナイスでーーーっす!(萌

ウチの圭ちゃんとは、やっぱ一味違います(w
見習わなくては・・・。
188 名前:18 投稿日:2001年12月26日(水)21時01分09秒
素肌と素肌が触れ合う感触に、圭は思わず溜息を漏らした。―――――何度、経験しても、この感触はうっとりするほど心地いい。

きゅっと梨華を抱きしめると、梨華は肩口に唇を当て、ちろりとそこを舐めた。

「………こら」

「いいじゃないですか」

 咎めるような口調の圭に、梨華は甘えたように答えた。それに、圭は微苦笑を返すだけで。

「ここだったら、誰も見ないよね」

 不意に身体を移動させると、梨華のふくよかな胸元に唇を移動させる。そのまま、下着で隠れるだろう乳房の下側に、そっと唇で触れた。

「や………だ」

「大丈夫だって」
 それとも、なに?誰かに見せる気?

 ちらりと垣間見える、圭の独占欲。それは、自分だけに与えられる特権で。

「見せませんよ」
 見せるわけ、ないじゃないですか。

 囁きを返す梨華に、満足げに頷くと、圭はその場所に舌を這わせた。ぴくりと反応する身体に、ぞくぞくとしてくる。

「んっ」

 ちりっとした痛みが、胸元に走った。圭は、身を起こすと、ぴったりと上半身を合わせてくる。
189 名前:19 投稿日:2001年12月26日(水)21時02分49秒
「誰にも、見せちゃダメだよ?」

 胸元を、両手で揉みしだきながら、そんな事を言ってくださるのだ。この愛しい相手は。

 くすぐったいような感覚に身を捩じらせながら、梨華はこくこくと頷いた。それに、『よろしい』と言葉を返すと、再び唇を塞ぐ。

 それだけで、じんじんと腰辺りが疼きだしてしまって。

「保田………さぁん」

 肩口から、胸元へ細かなキスを繰り貸す圭に、梨華は小さく訴えた。その声音を意味を読み取って、圭は、梨華の瞳を覗き込む。

「ん?」
 何、石川?どうかした?

 言いたいことなんか、判っているくせに、あえてそう問う。肘をついて、梨華の表情を覗き込んでくる目なんて、ほんと、悪戯っぽく輝いていて。

「………もぅ」
 意地悪ですよね、保田さんって。

 そう囁きながら、頭をそっと持ち上げて、圭の口元の黒子にちゅっと唇を当てる。そのまま、舌先で唇をぺろりと舐めた。
190 名前:20 投稿日:2001年12月26日(水)21時03分45秒
「ったく………」

 不意打ちの行動に驚きながらも、圭はどこか嬉しそうで。口元に、柔らかい笑みを浮かべながら、梨華の瞼に唇を落とす。

「―――――石川」

 梨華の名前を小さく呟く。その表情が、あまりにも可愛くって。愛してあげたいな、と自然に思う。

 梨華は、そっと指を圭の足の間に滑らせた。そこは、既に、しっとりと潤っていて。

「えっ?」

 いきなりの梨華の行動に、圭はびっくりしたように上半身を起こした。だけども、梨華の指は動きを止めない。

「ちょ………ちょっと、石川」
 あんた、一体、何する気?

 そんな圭に、梨華は柔らかく微笑むと、耳元に唇を寄せて。

「大好きです」

 甘く、甘く囁いたのだった。
191 名前:信長 投稿日:2001年12月26日(水)21時10分01秒
>うっぱさん
甘い………甘いですか?
そう言っていただけると嬉しいです
<目指せ、甘々なんで

がんばるぞー、おー<おい

>LINAさん

いや、LINAさんとこの圭ちゃんもいいじゃないですか!
ウチのは、ただの………へたれさんなので。

ちゃんと考えてるって印象受けますよ、LINAさんとこの
圭ちゃんって(^_^)
192 名前:LINA 投稿日:2001年12月27日(木)00時00分42秒
なんだか、いしやすちっくになってきましたねぇ・・(ニヤソ

ウチの圭ちゃんにも、お褒めの言葉ありがとーございます♪
なんだか嬉しくって、筆が進みそうです(w
お互い頑張りましょぉね〜!
193 名前:21 投稿日:2001年12月28日(金)17時47分59秒
「ちょ………ちょっと!」

 意味ありげに蠢く指を、圭は慌てて止めようとする。しかし、梨華はその声をあえて無視して。濡れそぼったそこをかき分けて、入り口を指で擦る。

「んんっ」

 びくりと、腰が動いた。その事に、圭は耳まで赤くなる。

「石川!」
 あたしは、いいから。

 そう言いかける唇を、梨華は空いた片方の手で引き寄せると、自らの唇で塞ぐ。

「………良く、ないですよ」
 いつも、石川ばっかりじゃないですか。

 ゆっくりと離れていく圭の瞳を見つめながら、梨華は囁く。その答えに、圭は、目をきょときょととさせて。

「いや………そんなこと………別に………」
 でも、ほら、あたしだって、気持ちよくなってるんだし………。

「って、あんた!」
 何、言わせんのよ!

 我に返った圭は、その体勢のまま、思わず怒鳴る。それには、むっとした表情のまま、睨みつけるだけであって。

「………………」

「………………」

 暫くの沈黙の後、根負けしたのは圭のほうだった。何だかんだいって、こういう時の梨華は強い。

 いや、圭がべた惚れなため、弱いだけなのであるが。
194 名前:22 投稿日:2001年12月28日(金)17時50分05秒
「あーー、もーーーー」

 大きく溜息をつくと、圭は梨華の首筋に顔を埋めた。―――――そのまま、きゅっと抱きしめる。

「………保田、さん」

 思わぬ抱擁に、梨華はどこか不思議そうな声を出す。

「もぉ………、好きにしな」

 それを打ち消すように切なげに呟くと、再び、ゆっくりと唇を塞いだのだった。



「――――ん」

 圭に組み伏せられたまま、それでも主導権は自分にあって。

 梨華は目の前にある、その白い肩に軽く噛み付き、舌を這わす。

「あっ………」

 仰け反る喉元に、吸い付くように唇を当てる。ちろちろと焦らす様に舌先を動かすと、びくびくと肩が震えた。
195 名前:23 投稿日:2001年12月28日(金)17時51分25秒
「好き………です」
 本当に、大好き、なんです。

 梨華の囁きに、圭は深い溜息を漏らした。さらりと、圭の髪が梨華の頬を掠める。

「―――――あたしだって」
 好き、だよ。

 その答えに、満足げに頷くと、梨華はするりと足の付け根に指を滑らせた。既に、そこは十分に潤っていて。

「………感じて、くれてるんですか?」

 その反応が、素直に嬉しいと思える。

「―――――ばぁか」

 そうに、決まってるじゃん。好きな相手と、こうやって抱き合ってるんだよ?

 照れながらも、ちゃんと答えてくれる圭が、本当に、好き。

「感じないわけ、ないじゃん」

 こつん、と額をあわせると、圭は甘い声で囁きを返した。ぴったりとこれ以上、隙間がないぐらい身体を密着させながら。

「もっと………気持ちよくさせてくれるんでしょ?」
 これだけで、終わりな訳ないよね?

 どこか誘うようなセリフに、梨華はぎこちなく、ゆっくりと指を蠢かせ始める。
196 名前:信長 投稿日:2001年12月28日(金)17時53分26秒
>LINAさん
たまには、石川さんに主導権を………(苦笑)

筆、どんどんすすめちゃってください!
もー、ついてきますよ(^_^)?
頑張ってください、ほんとに
197 名前:24 投稿日:2002年01月02日(水)00時08分56秒
「んっ………」

 梨華が愛撫しやすいように、圭は上体を起こし、跨る様な格好になる。普段だったら、まずお目にかかれないその体勢に、梨華はくらくらと眩暈を感じる。

「保田………さん」

 じわじわと溢れてくる液体を、指で掬い取り、敏感な核芯に擦り込む様に触れて。

「んっ」

 苦しげに顔を歪めながら、圭は思わず嬌声を上げる。少し掠れたそれに、ぞくぞくと背中に何かが駆け上がっていく気がして。

「感じて、くれてますか?」

 何度も何度も指はそこを往復して、圭の快感を呼び起こしているのに、そんなことを訊いてくるのだ。この相手は。

「ばっ………か」

 圭は身を屈めると、梨華の目を覗き込んだ。その、どこか情けなさそうな瞳を。

「わかんないの?」

 そのまま、唇は頬を掠めて。耳朶に、吐息を感じる。

「―――――気持ち、いいよ」
 ちゃんと、感じてる。

 圭のその囁きに、梨華は深々と息をついた。―――――それだけで、自分も感じてしまう。
198 名前:25 投稿日:2002年01月02日(水)00時10分29秒
「だから、さ………」
 続けて、よ。

 その言葉に、梨華の気持ちは止まらなくなった。更に激しく、指を動かして。

 爪で傷付けてしまうとか、その体勢で辛い想いをさせてるのかもしれない、とか色々と考えてしまったけれども、それでも、自分が感じさせて貰っている様に、圭を感じさせてあげたい、と心から思う。

「あっ………んんっ………」

 梨華の指が敏感な所を擦る度に、圭は唇を噛みしめて声を堪える。だけども、漏れ聞こえるそれは、梨華の気持ちを更に煽って。

「保田………さん」
 好き………好きです………大好き、です。

 睦言のように囁くと、圭はきゅっと梨華に抱きついてきて。

「あたしも………好き………だよ」
 ちゃんと、好き。
199 名前:26 投稿日:2002年01月02日(水)00時11分35秒
 その返事に、梨華は空いた方の手できゅっと圭の首筋を引き寄せた。緩くウェーブが掛かった髪に、指を埋める。

「石川………もぉ………」

 梨華の指の動きに合わせて、自然に動いてしまう自分が、正直『らしく』ないとは思っているけれども。

 だけども、それでも、彼女はちゃんと『好き』と言ってくれる。それだけで、どうしようもなくなった。

「―――――保田さん」

 梨華は、切なげに息を漏らすと、少し力を込めて指の腹で、核芯を撫で上げた。そのまま、小刻みに震わせる。

「あっ………ああ………んぁっ!」

 圭は、びくっと身を震わせ、瞬間、硬直する。そのまま、深い深い溜息と共に、圭の身体から力が抜けた。

「………大好き、です」

 その身体の重みを受け止めながら、梨華はうっとりと圭の耳元で囁いた。
200 名前:LINA 投稿日:2002年01月02日(水)20時44分05秒
あけおめっ!
新年から交信ごくろーさまです♪

今回も萌えましたよ・・・ほんとに(w
前も出てたけど、元歌って、某4人組のですか?
ナニゲに気になってたんですよね〜〜(w
201 名前:27 投稿日:2002年01月05日(土)21時34分51秒
 梨華の首筋に顔を埋めて、荒く呼吸を繰り返す圭の髪を、優しく優しく撫でる。それに導かれたように、圭はゆるゆると面を上げた。

「………感じて、くれましたか?」

 ストレートに問うてくる梨華の言葉に、圭は『かぁ』っと耳まで赤くなる。

「な………何、言ってるんだよ………」

 『全く』とかぶつぶつ言いながらも、圭は、抱き寄せられるまま、梨華の胸元へと顔を乗せた。

「いいじゃないですか」
 それに、いっつも保田さん、訊いてきますよ?こんな風に。

 続けて梨華は、さらっとそんな事を告げる。

「そ………そう?」

 梨華の心臓の音を聞きながら、圭は動揺したように答えた。それから、しみじみと溜息をつく。

 ああ………落ち着くなぁ。
 心臓の音は、この世で一番安心出来るリズムだって、良く言われるけれども、それを実感してしまう。

 柔らかく髪を撫でられ、暖かい温もりが圭を包み込む。―――――このまま、寝ちゃいたいぐらいだ。
202 名前:28 投稿日:2002年01月05日(土)21時36分07秒
 しかし、圭は『いいや!』と心で、その考えを即座に否定する。

 折角の空き時間、このまま、眠ってしまうのは、なんだかもったいない。こうして、いちゃいちゃ出来る時間は、滅多にないのだから。

 珍しく、圭はそんな事を思うのだった。

「保田さん?」

 黙りこんでしまった圭を不思議に思ったのか、梨華が小さく問いかけてくる。

「石川………」

 小さく呟きながら、圭は梨華の胸元に軽く唇を当てた。

「ちょ………ちょっと?」
 どうしちゃったんですか!保田さん!

 素っ頓狂な声を上げて、梨華は思わず身を起こそうとする。だけども、それは圭に許されなくって。

「保田………さん」

 身体をずらし、瞳を覗き込んできた圭の名を、梨華は小さく小さく呟いた。

その唇の脇に、ちゅっと唇を当てると、圭はおどけた口調で囁く。
203 名前:29 投稿日:2002年01月05日(土)21時37分06秒
「あたしばっかじゃ、フェアじゃないと思いませんか?石川さん」

「や………あの、その………」
 あたしはいいんです、ほんとに!

「何で?」

 かたくなに拒む梨華に、圭は不思議そうな表情で問う。

「あの、その………」

 圭の肩に両手をかけながら、梨華は慌てた感じで呟く。

「どーしてかなー?」

 普段とは違うふざけた口調。滅多に見れないその表情と共に。

 そんな表情が見れるのは、正直、嬉しいんだけども………状況が状況で。

「石川は………昨夜………」
 散々、可愛がってもらったから、結構です!なんて、言える訳ないでしょーーー!

 梨華は心で、絶叫する。だけども、それは絶対に言える訳がない。

 耳まで真っ赤になりながら口篭る梨華の耳元に、圭は顔を寄せる。

「――――石川」

 そのまま、耳朶を軽く噛んだ。

「っ!」

 びくりと身を反らせる梨華に、圭は吐息と共に言葉を吹き込む。

「好き、だよ」

 するりと、足の付け根に指が入り込むのを感じた。
204 名前:信長 投稿日:2002年01月05日(土)21時38分51秒
>LINAさん
あけました!
元歌!判るんですか(苦笑)。

そうです、あの4人組の歌です。
―――――結構、皆さん知ってらっしゃるんですねぇー<感嘆

LINAさんのも続き楽しみにしてまーす
205 名前:瑞希 投稿日:2002年01月06日(日)00時09分00秒
>言える訳ないでしょーーー!
と、心で叫ぶ石川さんに萌え(w

元歌の色っぽさ、じゅーぶんっ、滲み出ております。
クラクラしちょります。<卒倒寸前

次の更新も楽しみにしてます!
206 名前:30 投稿日:2002年01月17日(木)19時53分36秒
 湿った感覚が圭の指先に伝わって。そぉっと襞を撫で上げると、深い溜息が梨華の口から漏れた。

「こんなになってるじゃん」
 石川だってさ。

「………そんなこと」
 言わないで、下さい。

 耳朶から頬のラインを舌先でなぞり、顎に軽く口付ける。そのまま、しっとりと唇を合わせて。

「………ん」

 圭の身体が脚の間に割り込んで来て、内股を撫で上げられる。

「きゃっ!」

 強引に脚を開かされて梨華は、思わず声を出す。しかし、それにも構わず圭は唇で梨華の身体を辿りながら、下に降りてきた。
207 名前:31 投稿日:2002年01月17日(木)19時55分24秒
「や………保田、さん」
 恥ずかしい、ですよぉ。

 今にも、泣き出しそうな声音が耳に届いたけれども、圭はあえてそれを無視する。

―――――だって、もっともっと感じて、欲しい。愛してあげたい。

 圭の顔を挟むように閉じられようとする脚を、両手で押さえつけて。ゆっくりと舌先を、潤ったそこに差し入れる。

「んんっ!」

 びくり!と一瞬、腰が跳ね上がり、直ぐに沈み込んだ。

「………すっごい濡れてるよ?」
 石川の、ここ。

 くすくすと笑いながら、圭は丹念に舌で舐め上げる。

「だっ………って………んぁっ!」

 紅くなっている核心を、舌先でぐりぐりと押し上げると、梨華の嬌声が一段と高まる。それが、更に圭を燃え立たせて。

 集中的に核心を転がし、吸い上げ、舐め回す。その度に腰を捩って梨華は切なげな声を出して。

「やす………だ、さぁん」
 も………大丈夫、ですからぁ。

 甘ったるい声と共に、圭の髪に指が差し入れられて、くん、と引っ張られる。それに、圭はようやっと顔を上げた。身体をずらして、梨華に覆い被さる。

潤んだ黒目がちの瞳を、覗き込みながら。
208 名前:32 投稿日:2002年01月17日(木)19時56分45秒
「………大丈夫って?」
 何が?

 本当は判ってるくせに、意地悪く問う。

 それに梨華は怒るでもなく、両手でそっと圭の頬を挟んだ。じぃっと瞳を覗き込み、切なげに訴える。

「―――――来て」

 保田さんが、欲しいんです。

 圭は『ぐぅ』っと喉を鳴らす。―――――こういうときの梨華の言葉は、無茶苦茶強力で。こればっかりは、圭は敵わない。

「もぉ………」
 そんな色っぽい表情で、色っぽい事言われたら………。叶えたくなるに決まってるじゃない。

 圭はゆっくりと梨華の唇を塞いだ。そのまま、戯れに動いていた指が、一つの目的に向かって動かす。

 花弁の中心にゆっくりと指を移動させると、上下に何度か擦り上げた。

「あっ………あっあっ」

 指の動きと共に、梨華の唇から声が漏れる。

「―――――んんっ!」

 充分に潤ったそこに、軽い圧迫感を感じて。梨華は無意識に圭の身体を抱きしめた。
209 名前:信長 投稿日:2002年01月17日(木)20時01分46秒
久々の更新です。
忘れられない様に、程々に頑張ります(苦笑)

>瑞希さん
元歌の色っぽさといったら……
まだまだっす、あれに比べれば(苦笑)

がんばりまっす。
210 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月22日(火)00時37分08秒
……いい!!!
ヤスオタの自分にとってたまらなくツボっす!
そして最近信長さんのHPも発見して気分爽快!!
続き期待っす!!
211 名前:スティンガー 投稿日:2002年01月23日(水)02時05分52秒
初めまして。信長さんの小説一気に読ませていただきました。
最高です!!やばいです!!萌えます!!(本気)
僕も紫板でやすいし小説かいてます。けどヘタレ…。(汗)
期待してます!
212 名前:33 投稿日:2002年01月24日(木)20時52分36秒
 圭の背を抱き寄せて、首筋に唇を当てる。そのまま、待ちわびているモノが訪れるのを、目を閉じて待った。しかし、指先が入ってきた感覚はあるが、それ以上の感覚がない。

「………保田、さん?」

 怪訝そうに問うてくる梨華の目を覗き込むと、圭は甘く囁いた。

「………何?」

「―――――何って………」

 ほんの少しだけ、指先が動いた。それだけで、梨華の身体がぴくっと反応する。

「んーー、どうしたのかな?」

 悪戯っぽい口調で、圭は問いかける。それを梨華は、少しむっとした視線で睨みつけた。だけども、当の相手は涼しい表情で。

「保田さん………」
 楽しんでませんか?

「やー、別に」
 わかんないかな、石川?そういう目で見上げられても、逆にそそられてしまうって事。

「嘘ばっかり………んっ!」

 指先で、くいっと内壁を押し上げられて。梨華の腰もびくりと浮く。

「知ってる?石川………」

 浮き出た鎖骨を痕をつけないよう、甘噛みしながら圭は囁く。小刻みに指を振動させながら。

「―――――あっ………んっ」

 微妙な振動に、梨華は思わず声を上げる。
213 名前:34 投稿日:2002年01月24日(木)20時54分35秒
「こっちの方も、結構、気持ちよくなれるんだよ?」

 入り口付近からなかなか奥に入り込んでこない指先にじれったさを感じながら、それでも、確かに普段とは違った感覚が梨華の身を襲ってるのは確かで。

 陰湿な音が梨華の耳に届く。その音が更に梨華の感情を煽って。

「はぁ………っ、んんっ!」

「―――――石川」

 うっすらと汗をかいている額に軽く口付けると、圭はこらえ切れなくなったように、梨華の太股を自らの脚で挟み込んだ。

「………保田、さん」

 圭の髪に指先を差し入れながら、梨華は小さくその名を呼んだ。圭は小さく小さく溜息をつくと、梨華の額にこつんと額を当てる。

「―――――ごめん」
 気持ちよさそうな石川見てたら………あたしも、ちょっと、ヤバイかも。

「バカ………」

 梨華はふわぁっと微笑むと、圭の背をきゅっと引き寄せた。その拍子に、浅く挿れていた指先が、外れる。

「んっ!」

「………ごめん」

 圭は梨華をしっかりと抱きしめると、後ろから指を這わせる。そのまま、焦らすことさえせずに梨華の潤った場所に指を再度差し入れた。
214 名前:35 投稿日:2002年01月24日(木)20時55分51秒
「あっ………!」

 押し入ってくる感覚に梨華は、思わず声を上げる。しかし、それは圭の唇で塞がれて。

「いし………かわ」

 先程の穏やかさはどこへやら、圭は激しく指を動かす。指先で内壁をなぞり、擦り上げ、徐々に梨華の理性を追い詰めていって。

「あっ………あっあっ………保田さん………保田さん!」
 好きです………大好きです。だから………もっともっと。

「気持ちよく、して」

 圭の耳朶を噛みながら、梨華はうわ言のように囁く。それに答えるように、圭は休むことなく指を蠢かして。

「あたしだって………好きだよ」
 知ってるよね、ちゃんと。好きでもない相手と、こんなこと、しないからね。

「好き………すきぃ!」

 自分の中で蠢く指と、圭が自ら快感を追い求める腰の動きが梨華の身体をがくがくと揺さぶって。

「もっ………ダメ………」

 腰から背骨を伝わって脳髄に電流が走りぬける。爪先がぴん、と伸び、ぐっと力が入る。

「―――――くっ!」

 梨華の腰がぐっと上がり、沈み込んだと同時に、ぴたりと動きを止めた圭の身体が梨華の上へと落ちてきた。
215 名前:信長 投稿日:2002年01月24日(木)21時00分39秒
>210
あー、みつけちゃいましたか(苦笑)<HP
とりあえず、のんびりまったり進んでいきます
レス、ありがとうございました。

が、もう少しで終るんですけどね………(苦笑)<この話

>スティンガーさん
読ませていただいてます(^_^)<紫
私ももうちょっと萌えるような話を………書きたいなーとは思ってますが
いまいち、こう『何か』を捨てきれない自分がいます(^_^)。

頑張ってくださいねー。今度お邪魔させていただきます
216 名前:36 投稿日:2002年01月25日(金)21時47分51秒
 脱力した圭の髪を、梨華は柔らかく撫でる。しばらく肩で息をしていた圭は、ゆるゆると顔を上げた。

「ごめん………」
 直ぐ、どけるね。

 そんなことを告げる圭の身体を、梨華はきゅっと抱きしめた。それに、圭は慌てた声を出す。

「………い、石川?」

「重くなんか、ないです」
 だから、もうちょっとこうしてて下さい。

 梨華の言葉に、圭は小さく息をついた。だけども、そのまま首筋へと顔を埋める。

「―――――あ゛ーーー、もーーー」
 あんたって、ほんと、可愛い。

「え………え?」
 いきなり、何を言うんですか?

 目を丸くしている梨華に、圭はゆっくりと顔を上げると、柔らかく微笑む。
217 名前:37 投稿日:2002年01月25日(金)21時50分09秒
「―――――ったく」

 汗で濡れた前髪をかきあげると、圭はちゅっと唇でそこに触れる。

「………保田、さん」

 あんまりにも圭が優しい表情をしているので、梨華は何だか嬉しくなる。首を少しだけ上げて、圭の口元にそっとそっと触れた。

「あたし、さ」

 圭はごそごそと上掛けを身体にかけながら、甘く囁く。

「石川の事………ほんと、好きだから」

「―――――い………いきなり、何を言うんです、か?」

 更に目をきょとんとしている梨華に、圭は困ったように微苦笑した。

「たまには、さ」
 言葉にしないと、あんた、どっかぐるぐる考えそうだからさ。

 確かにその通りなので、梨華はなんとも言えなくなる。

「………だから、ちゃんと、言っとかないとね」
 次、いつ言えるか、自分でも判らないから。

「え〜〜〜!」
 いいんですよ、いつでも言ってくれても。

「さーて、どうだか」
 判んないよー、いつになるかは。

 梨華はその言葉に、がばっと起きあがる。そのまま、圭に、きゅっと抱きついた。
218 名前:38 投稿日:2002年01月25日(金)21時51分20秒
「………言って欲しいです」

「―――――………」

「いつでも、石川の事、好きだって」

 そのまま、こつんと額を肩に当てる。その細い肩に、圭はそぉっとブランケットをかけた。そして、それごと腕に抱き込む。

「えーと………さ」
 それは、確約出来ないけれども。

「いつでも、好きだって思うことは、してるから」
 どこにいても、誰といても。―――――いつでも、想ってるよ?

 その言葉に、梨華はうっとりと圭を見上げた。そのシャープな線を描く顎のラインを、両手でそぉっとなぞる。

「保田さん………」

「―――――なんだよ」

 耳まで真っ赤になっている圭の頬に、梨華はちゅっと唇を当てて。

「大好きです」

 少し照れ屋で言葉がぶっきらぼうだけども、誰よりも自分を想ってくれてるあなたが。

「ばーか」

 圭は梨華の身体を包み込んでいる毛布の中に、自分の身体を滑らせると、きゅっと細身の裸身を抱きしめた。

「………ほんと、可愛いよ、あんたって」

 その囁きの後には、もちろん………。

「大好きだよ」

 求めていた言葉が、梨華の耳に届いた。
219 名前:39 投稿日:2002年01月25日(金)21時52分54秒
 きっと、こんなに幸せなのは。自分達が恋の真っ最中だから。だから、きっと、ずっと幸せ。

 I'm in Love 終
220 名前:信長 投稿日:2002年01月25日(金)21時54分26秒
これで、終わりです。
レスをつけてくださったみなさん。
そうでなくても、読んで下さったみなさん。

ありがとうございました。

また、どこかでお会いできたらと思ってます。
221 名前:瑞希 投稿日:2002年01月26日(土)00時38分48秒
ぐはあっ。
甘いっ、甘いですよっ。
とってもよかったです!

前作が少しイタイ展開だったせいか、その反動のようなこの甘さ、たまりませんですっ。

お疲れ様でした!!
222 名前:LINA 投稿日:2002年01月29日(火)01時29分05秒
信長さん、サイコーーーっした!!!
萌えて萌えすぎましたよ〜、マジ(w
次回もやってくださいね・・楽しみにしてます♪

最後に、やすいしマンセー!(*`.∀´(´▽`*)

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