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ガンダムW
- 1 名前:背番号11 投稿日:2001年10月27日(土)10時17分44秒
- 今日から始めます。
神代 創氏の小説版新機動戦記ガンダムWの98%パクリです(汗
- 2 名前:プロローグ 投稿日:2001年10月27日(土)10時18分36秒
地球から巣立った人類は、
宇宙コロニーでの生活に新たな希望を求めていた。
しかし、地球圏統一連合は宇宙での権益を確保するため
非武装を説く指導者を暗殺。
混乱するコロニーを正義と平和の名の元に
圧倒的な軍事力をもって制圧していった。
AC(アフターコロニー)195年
作戦名 オペレーションメテオ
連合に反目する一部のコロニー居住者達は
流星に偽装した新兵器を地球に送りこむ作戦に出た。
だがこの作戦は連合本部に察知されていた…
- 3 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月27日(土)10時20分03秒
第一章 闘いへの序曲
―――― 1 オペレーション・メテオ ――――
地球を取り巻く衛星機動条に設置された監視衛星において
監視すべきものは古くなった衛星や小惑星が大気圏に突入するのを
ただ見ているだけだった。
この日も大気圏突入のウェーブコースに向かう物体をレーダーが感知しても
問題なしと判断したのはしょうがない事だったのかもしれない。
「ラグランジュポイントAXからGYにかけて
質量の移動を確認。地球大気圏到達まであと600秒」
レーダー監視官が声をあげる。それを聞いて彼の上官が漂うようにやって来た。
「ひとつではないな。」士官がレーダーをのぞき込み言う。
グリーンのレーダーには異なったコースから地球に接近する物体が映っている
「はい。レーダーには5個の金属反応があります。」
報告を耳にした上官は元の席に戻り指示を出した。
「一応、大気圏のイイダに知らせておけ。
どうせ大昔の人工衛星の破片だろうがな」
「了解」
監視官のとなりに座っていた通信士はヘッドセットを取り
大気圏内を飛行中の輸送機と更新をはじめた
- 4 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月27日(土)10時22分06秒
そのMS輸送機は青い機体を太陽に照らされながら飛行していた。
「カオリ特尉、衛星落下との報告がありますが。」
副操縦席に就いていたZTMの兵士が後ろに座った人物に声をかけた。
「監視衛星の目は節穴だな。アサミ特士、複数の衛星が
大気圏突入のウエーブコースを同時に通ると思うか?」
書類に目を当していた人物は報告を一蹴すると副操縦席に問い掛けた
「まぁ、奇跡でも起こらない限り無理でしょうね。」
アサミと呼ばれた兵士が振り向きながら答えた。
彼女の上官――ZTMの上級特尉カオリ・イイダは
銀色のマスクで顔のほとんどを隠している。
見えるのは品のよさげな唇と腰まで伸びたきれいな髪だけである。
醜い傷があるとか目が見えないとか赤い彗星に憧れてるだとか
いろいろな憶測を呼んだが事実はわからない。
ZTMの総帥が着用を認めているため問いただす者はいない。
それに彼女の戦士としての腕には疑問の余地がなく
加えて上官としても文句の付け所がない。
「では、やはりZTM本部の情報通り?」
アサミがカオリに聞く。
- 5 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月27日(土)10時22分50秒
- 「コロニーのM作戦に間違いないだろう。
この輸送機で補足できるのはいくつだ?」
カオリの問いに応えアサミが計器を操作する。
すぐに落下する物体の予想コースが表示された。
「ユーラシア東部に落下すると思われるひとつだけです」
「一つでも充分とするか。前線の雇われ軍人は功を焦るものではない。」
「ずいぶんと表向きの発言をなさいますね。」
アサミはカオリの言葉に眉をひそめる。
ZTM総帥から前面の信頼を置かれている人物のセリフとは思えない。
「言っただろ。私はあくまでも軍人なのだよ。」
カオリは口元に笑いを浮かべ操縦席に向かって告げた。
「リンネ特尉、機のコースを変更だ」
「了解。カオリ特尉」
操縦席のリンネは操縦桿を操作し進路を変更した。
- 6 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月27日(土)10時25分16秒
同じころ、地球に再突入しようとしていたシャトルがあった。
と言っても乗客は二人だけだ。
ポーンとチャイムが鳴りアナウンスが流れる。
「ツジ様、これより当シャトルは大気圏に突入します。
安全のため座席ベルトを締めそのままお席を離れませんようお願いします。」
「どうしたノゾミ。地球に帰るのがそんなに不満かい?」
「ええ、とっても」
ノゾミと呼ばれたその少女は自分の不満を隠そうともせずに応えた。
「すまなかったな、仕事ばかりで。ろくに相手が出来なかった」
「お父様、今度宇宙に出る時はもっと余裕を持つことにしてください」
普段から、仕事に終われ娘の相手をしてやることが
出来ない償いにと今回コロニーに連れてきたのだが、
予想以上にスケジュールが詰まってしまったのだ。
- 7 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月27日(土)10時26分22秒
- ノゾミはチラッと父のほうに目を向けてまた窓の方に戻した。
その窓を下からせり上がった分厚い壁が覆う。
大気圏突入時に大気との摩擦によって生じる高温を
遮断するためのシールドである。
程なく機内にいるノゾミにも機外の轟音が聞こえてきた。
それもしばらくの辛抱だ。ものの数分でシールドが下がり窓の外には
弓のような青い地平線が広がりその先に太陽が顔を出した。
と、上のほうで太陽の光を反射して何かがきらめいた。
ノゾミは目をこらしてそれを見上げた。
真っ赤に燃え上がっているが白いシャトルのように見える。
しかし、シャトルにしては小さすぎる。
この大きさでは二人もしくは三人乗れるかどうかといったところだ。
「お父様。あれは?」
ノゾミは父に尋ねた。
外交官である自分の父がコロニーのことだけでなく
軍事関係の知識も豊富なのを知っているからだ。
娘の声につられるように窓の外を見た彼は、一瞬眉をひそめ呟いた。
「オペレーション・メテオか…」
- 8 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月27日(土)10時27分18秒
「補足しました。モニターに写します。」
副操縦席のアサミがカオリの前にあるモニターに拡大した映像を映し出した
「やはりそうか。あれが新たな戦乱を産み落とす戦争の卵と言うわけだな」
モニターに写された白いシャトルを見るやカオリは呟く。
「目標の進路上に民間シャトルがいます」レーダーを見たアサミが報告した。
「減速するしかあるまい」とカオリ。
「シャトルを撃墜して加速する可能性はありませんか?」
「我々の前でそんな派手なまねはできんさ。
あちらさんはあれでも隠密行動なんだ。」
すでに作戦の情報が漏れているという皮肉を込めてカオリは言う。
「目標、大気圏突入」
アサミが報告する。
モニターには真っ赤に燃え始めたシャトルの腹部が映し出されていた。
「目標がコースを変更しました!民間機との距離が開いています」
急にアサミが驚いた声を上げる。
「自殺願望でもあるのか?」
カオリは思わず呟いた。
- 9 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月27日(土)10時28分14秒
- 大気圏突入の最中にコース変更など機体に無理がかかり、
耐熱パネルが剥がれ落ちる危険が大きい。そうなれば終わりだ。
「燃え尽きてしまえば秘密も守りきれる。ま、そんなところでは?」
「いえ、カプセルはさらに加速していきます。このまま逃げ切るつもりなのでは?」
アサミがリンネの言葉にかぶせるように言う。
「まさか?この高熱に耐えられるわけがない。」
リンネはアサミにもう一度確認しろとばかりに声をあげた。
「いや、そうでもない。どうやら、我々の敵はかなりの技術を持っているようだ。」
カオリの言葉を肯定するようにモニター上の目標は
灼熱状態で大気中を移動している。
そして、数秒後再突入に成功。
速度が落ちた機体は小さな翼で大気をつかんで滑空し始めた。
このままどこかに着陸するつもりだろう。しかし、そうではなかった。
シャトルはいきなり姿を変えたのである。
「カオリ特尉、これは?」
アサミの叫びにモニターに身を乗り出したカオリはそこに白い翼を広げた
戦闘機を見た。偽装していたシャトルの外壁をすて本体をさらけ出したのだ。
「敵の新兵器とは戦闘機のことだったのか…」
呟いたカオリはマスクの下で目を険しくした。
- 10 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月27日(土)10時29分11秒
- 「まるで鳥のような戦闘機ですね。」
リンネの言葉どおりその戦闘機はまるで猛禽のような姿をしていた。
下から見れば鍵爪のような部分も見える。
カオリが注目したのはその鳥のような姿ではなくこくぴっとが見えない所だった。
それに、大気圏内で使用するには重装備すぎる。
「目標を機銃射程内に捕らえました。攻撃可能です」
アサミの叫びにリンネがうなずいた。
「よし、威嚇してみろ」
「いや、威嚇が通用するような相手ではない。撃墜しろ」
カオリがリンネの命令を制する。
「カオリ特尉?」
「新兵器の輸送が目的だと思っていたが乗っているのは
それを操縦するパイロットだったのだ。障害は排除しておくべきだ」
兵器が連合の敵勢力にわたるのは確かにまずいが、
それ以上に熟練した戦士が渡るのは避けるべきだ。
戦争をし、平気を使うのは人間なのだから。
「敵戦闘機、反転!こちらに向かってきます」
リンネの緊張した声にカオリはすぐに反応した。
「リーオーは使えるか?」
「はい、しかし、モビルスーツであの戦闘機を?」
怪訝そうに問い返すリンネ。空戦ではモビルスーツの
機動性能では不利になるはずだ。
「そうだ」
「でしたら、陸戦用のリーオーよりも、空戦用のエアリーズの方がよろしいのでは?」
「私のリーオーは充分速いさ。それに私に挑んでくる相手を無下にできんだろう?」
ライトニング・バロンの異名を持つカオリのパイロットとしての
技量を知らぬものはいない。
リンネは思わず手を額に当て敬礼をした。
「やはり、三倍速いのですか?」と心の中で呟きながら…
- 11 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月27日(土)10時30分53秒
「では、エアリーズの準備が出来しだい応援に向かわせます」
輸送機には積込んであるエアリーズのパイロットも同乗している。
戦闘状態で待機していなかった彼らの準備に少し時間が必要だった。
頼むぞという風にうなずくとカオリは輸送機後部にある格納庫に向かった。
モビルスーツとは本来、宇宙空間の作業用に開発された巨大な人型の機械である。
それを兵器として戦闘用に変換する技術を開発したのが
当時コロニーへの資材運搬会社だったZTMと呼ばれる組織だった。
ZTMは連合内部の特権階級と手を結び巨大な軍事組織となっている。
今では戦車は戦闘ヘリにとって変わる汎用兵器としてモビルスーツは
連合の主力武器となっている。
そして、ZTMは連合内部に独自の軍隊を持つに至っていた。
『P・ハロー』と呼ばれる精鋭モビルスーツ部隊がそれである。
『P・ハロー』は、連合軍とは階級も別であり、最低階級の特士でさえ、
連合の中尉クラスの身分になり、さらに貴族としての爵位が与えられる。
カオリ・イイダ上級特尉の場合、連合でいえば少佐クラスであり男爵の身分である。
- 12 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月27日(土)10時31分32秒
カオリの向かった格納庫には一機のリーオーと二機のエアリーズが
巨大な姿を固定されていた。
ZTMの量産型モビルスーツ・リーオーは無骨な一つ目の巨人と言う風貌である。
モスグリーンの機体がいかにも軍用と言うイメージだ。
陸戦用とはいえ腰部に二機のバーニアを装備し、ある程度の空中での機動性もある。
対して、エアリーズは空戦用だけあって、上半身に六機の大出力バーニアを装備し、
機動性はリーオーの比ではない。ただし軽量化のために装甲はリーオーよりは劣り、
収納可能な脚部は体に比べて貧弱な印象がある。
カオリは自機リーオーの胸部にあるハッチをあけると、コクピットに滑りこんだ。
すでに待機状態なっていた動力はスイッチひとつで生き返る。
いつ戦いが始まってもかまわないという、カオリの戦士としての心構えである。
ハッチがしまるとブンッと音を発してゼクスの周りを囲んだモニターに
周囲の光景が映し出される。
モビルスーツのコクピットに窓はない。
モビルスーツ頭部にあるカメラアイからの映像をモニターに
写して周囲を確認するシステムだ。補助的に左右と後方のモニターがついている。
操縦はシートの前にある操縦桿、シート下にあるペダル、
そして脇にあるスロットルレバーをメインに、
コントロールパネルに並んだスイッチを必要に応じて操るようになっている。
姿勢制御や歩行、走行といった基本動作はプログラムしてあるが
操縦に要する技術は、20世紀の戦闘機などと比較して遥かに複雑だ。
- 13 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月27日(土)10時32分17秒
- カオリは後部モニターに目をやり輸送機の後部ハッチが上下に開かれたのを確認すると
操縦桿を傾けリーオーの腕を伸ばした。
右腕が隔壁に固定されていたビームライフルをつかんで肩に担ぐ。
敵の能力は不明だが通常の105ミリライフルでは、
対応できないかもしれないと判断したためだ。
「行くか。」
かおりは心の中で呟くと、リーオーを後退させ、
まるでダイビングするように半回転して宙に踊り出た。
モニターの光景が輸送機のハッチから空、そして、眼下の太平洋を写す。
カオリはバーニアを噴射させ機体の姿勢を固定するとレーダーに視線を向けた。
「なに?上か!?」
光点の位置を読み取るが速いかバーニアを噴射し機体を反転させる。
正面のモニターが青空に変わる。
その中心に白い戦闘機が映った。カオリは操縦桿をひき、モニター上に標準が現れる。
標的を照準に捕らえ、間髪いれずトリガーをひく。急旋回して逃れる標的にもう一撃。
かわしきれず、ビームを機体腹部に食らった標的は機体バランスを
崩して墜落していった。
「お見事です、カオリ特尉。」
遅れてきた二機のエアリーズパイロットから通信が入る。
しかし、カオリは納得がいかず、呟いた。
「あっけなさずぎる… これでよいのか?」
危険を冒して地球にやってきた相手がこれぐらいで倒されるようなことで
いいのかという思いが大きかったのだ。
それともパイロットが大気圏内での操縦になれてないせいだろうか?
コロニーからやってきたのであれば充分ありえる話である。
- 14 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月27日(土)10時33分03秒
- 「特尉、リーオーは回収します。未確認機のほうはエアリーズに負わせますか?」
輸送機からリンネが通信をいれてきた。
「頼む。M作戦の真意を調査するにはまたとない獲物だ。」
「自爆の可能性は?」
「せっかく来た地球だ。一歩も大地を踏まずして死ねるものなどいないさ」
きりもみしながら太平洋に落下していく戦闘機を見ながらカオリはこたえていた。
コロニーの反連合組織は例外なくコロニー生まれだ。
一度も地球の土を踏んだことない者達である。
当然この戦闘機パイロットもそうだろう。
- 15 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月27日(土)10時33分57秒
- 突然モニター上の戦闘機は機体を建て直し、そして、奇妙な動きをした。
機体がねじれ、翼が閉ざされて行く。まるで、眠っていた巨人が起き上がるように。
「モビルスーツに変形しただと?!」
カオリは一瞬にして状況を理解した。
戦闘機と思っていた機体は標的はモビルスーツだったのだ。
「カオリ特尉、あれは何という機種ですか?」
白い機体は明らかにカオリの知識にないタイプだった。
「わからん。連合とZTMのほかにもビルスーツを造る技術があったとは…」
カオリは呟き、そして、頭を振った。
それ以上に問題がある。ビームライフルの直撃を食らったのに、
機体は損傷してないのだ。あの強度はまさか―――
カオリの思考は両脇にやってきたエアリーズからの通信にさえぎられた。
「特尉、後はお任せください」
「頼んだぞ」
リーオーの背中にもビルスーツ用パラシュートモジュールをとりつけると、
エアリーズは標的にめがけて突っ込んでいった。
カオリはパラシュートを開きモニターで戦いを見守ることにした。
海面が近いため、リーオーでの戦闘が不利である上に
『P・ハロー』の兵士二人が一機のモビルスーツにやられるとは思えなかったのだ。
- 16 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月27日(土)10時34分34秒
- しかし、カオリの予想は見事に裏切られた。
エアリーズの銃撃をいいように食らっていた標的がいきなり向き直り、
ビームライフルをエアリーズに向けたのだ。
次の瞬間、射線上に合った二機のエアリーズは破壊されていた。
たった一撃で二機のエアリーズが消滅した。
残った残骸が真っ赤に燃えて煙を上げながら海面に落下していく。
カオリはモニターで目にした光景にうなりをあげていた。
リーオーの持つビームライフルではここまでの威力はない。
せいぜいもビルスーツを貫通する程度である。
しかしこの新型のそれは二機のエアリーズをほとんど蒸発させてしまったのだ。
その時カオリの胸の内にわきあがったのは戦士としての意地だったのか、
あるいはエースとしての誇りだったかもしれない。
「おもしろい!」
叫ぶや、カオリはパラシュートモジュールをリーオーから切り離し
ビームライフルを投げ捨てる。
さらに左肩にある盾の裏側からビームサーベルを引き抜き振りかぶった。
- 17 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月27日(土)10時35分08秒
正体不明のモビルスーツのコクピットでは、宇宙服を着込んだパイロットが
シート脇に突き出した二本の操縦桿を操っていた。
フェイスマスク越しに見える顔は少女である。
整った顔立ちに冷たい目がモニターを見つめている。
「チッ!」
少女は舌打ちをすると
「やはり宇宙空間とは違うな」
思うように動かせなかった機体に呟きながら、操縦桿を引き戻す。
モビルスーツの左腕に構えていたビームライフルがおろされる。
と、モニター上には爆発したエアリーズの煙を割って、
急速に接近してくるリーオーが映し出された。撃ってくるかともう一度ライフルを
構えようとした少女は、ビームサーベルを構えて突っ込んでくるリーオーに
目を細めた。右の操縦桿のトリガーボタンを押そうとしたところでふと思いとどまる。
こいつ?!
一瞬、任務とこの相手に対する興味が天秤にかけられる。
未確認の敵勢モビルスーツに接近戦を挑んでくるとは、
よほど腕に自信があるのかそれともただのバカだ。
「相手になってやる」
少女は小さく呟くと右の操縦桿のセレクターを回し
左腕の盾からビームサーベルを抜き放った。
- 18 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月27日(土)10時36分41秒
- しかし、カオリには闘うつもりなどなかった。
通常装備のリーオーのバーニアでは落下速度を遅くする以上の出力はない。
このままでは海面にたたきつけられるのは分かっている。
「一度闘ってみたいものだが…」
パイロットとしての欲が頭をもたげる。しかし、今は無理だ。
カオリは振り下ろされたビームサーベルをかいくぐり、
標的の右腕をつかみリーオーの脚部を標的の脚にからみつけ動きを封じる。
そしてリーオーの機体を固定すると、
シートの下に格納されていたバックパックをつかんだ。
ハッチをあけ、たたきつけてくる風に逆らってみを乗り出した。
そしてためらいもせず身を投げ出す。高度は300メートル余り。
その直後、標的とリーオーはひとつになって太平洋の海面に叩きつけられ、
盛大な水柱を上げて海中に沈んでいった。
- 19 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月27日(土)10時37分36秒
- 「カオリ特尉、ご無事ですか?」
パラシュートを展開したカオリの耳元から輸送機のリンネの声が聞こえてきた。
心底心配しているのがわかるような声音だ。
「ああ。心配かけてすまない。わたしなりに何とかしたつもりだ。」
「戦闘でのデータ分析が終了しました。敵モビルスーツの強度から、
ガンダニウム合金製としか考えられません。」
「やはり…… あれがガンダム――――」
カオリは標的の激突で荒れる海を見下ろしながら呟いた。
あの高度から海面にたたきつけられたら、機体は無事でもパイロットは
死んだはずである。だが、あれがガンダムであるならあるいは――――
カオリが口元を険しく結んだ時、もう一度通信が入った。
「特尉、海軍の空母が未登録モビルスーツの海中探索をまかせろと言っています」
「仕方あるまい。探し物はアジアエリアのJAPポイントに沈んだと伝えておけ」
リンネの返答を聞き流し、カオリは苦笑を浮かべた。
「探索は任せろ、か。手柄をあせる軍隊によい未来はないな。」
カオリはパラシュートのブレークコードを操りながら吐き捨てるように呟いた。
- 20 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月27日(土)10時38分08秒
同じ頃、地球各地に隕石に偽装されたカプセルが落下していた。
それぞれがまったく違う形で、しかし、同じ目的のために動き出していた。
- 21 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月27日(土)10時38分58秒
- カオリが新型モビルスーツを落とした地点から2000キロ離れた太平洋上
すぐ近くにはグアム島があり、連合の宇宙港がある。
主としてコロニーに駐留している宇宙軍に物資を運び上げるための軍用宇宙港だ。
カプセルが落下したのはシャトルが打ち上げられる1時間前だった。
円錐台形をしたカプセルは大気圏に突入して真っ赤に燃えながら落ちてきた。
空気抵抗で速度が落ちてくると、カプセルは傘のようなエアブレーキを広げた。
下から見ればまるで傘を広げたように見えた。さらに焼けた底面がはじけ飛び、
噴射ノズルが顔を出す。点火された途端、巨大なジェット炎が吹き上がった。
噴射は数秒だけ。しかしガクンという感じでカプセルの落下速度が落ちる。
その瞬間傘の裏側から黒い影のようなものが飛び出した。
カプセルはそのまま海に突っ込み衝撃で木っ端に微塵に砕かれた。
爆発音と共に水柱がたちあがる。数瞬遅れて黒い影が水中に飛びこんだ。
モビルスーツである。
頭部から胴体までが黒で固められた不気味な姿だが、
全体の形はカオリが落としたモビルスーツに似ている。
- 22 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月27日(土)10時40分30秒
- 「気持ちいいなぁ。これが本物の1Gってやつ?」
コクピットで快哉をあげたのは愛らしい少女である。
栗色の髪をかきあげ、大きな目がいたずらっぽく輝いている。
陽気な外見とは対照的に身にまとっているのは機体と同じく真っ黒である。
「さてと、最初の任務は―――」
少女の指はコクピットに並んだ複雑なコントロールパネルを駆け回って
スイッチをはじき最後にキーボードをポンッとたたいた。
「このおじさんにコンタクトを取らなきゃ。」
右側のモニターに移ったのは短髪の怪しげな男性である。
「あー、その前に。」
少女はサブモニターに呼び出したデータに目を走らせた。
グアム島にある宇宙港が表示され装備や武装といった様々なデータが
スクロールしていく。と、兵員の項目で四戦を止めた少女は目を細めて呟いた。
「ZTMか。行きがけの駄賃にちょっと壊してこっと。」
物騒なことを明るく言うと少女は左の操縦桿をつかみ右手を
スロットレバーに掛けると押しやった。
- 23 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月27日(土)10時41分23秒
- グンと加速がかかり、シートに背中が押し付けられる。
「さぁ、ナツミ・アベの初仕事♪」
叫ぶと同時に機体は海中から空に踊り出す。
背面のバーニアをフルパワーで噴射させ、島の宇宙港に舞い降りる。
頭部のバルカン砲を所構わずまきちらし、
さらに腰部に取り付けてあった槍のようなものを取り出す。
先端からエネルギーフィールドが飛び出し、まるで鎌のようになった。
迎撃に出たリーオーをビームサイズの一撃で切り捨てるとナツミは叫びを上げた。
「死んじゃうよ。私の姿を見た人はみんな死んじゃうよ」
黒いモビルスーツは炎上する宇宙港をバックに
まるで鎌を持った死神のようにそびえたっていた
- 24 名前:名無しさん 投稿日:2001年10月27日(土)19時42分09秒
- ヒイロは誰だ〜!?冷たい目っていうと・・・彼女しか思い浮かばないけど・・・
続き期待。。。
- 25 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月28日(日)12時49分48秒
- イベリア半島の西沖合約50キロの大西洋上。
ここに落下してきたカプセルはいくつものパラシュートを開いて
速度を落としたあと、着水した。
カプセルの巨大なハッチを蹴破り、中から一機のモビルスーツが姿をあらわした。
頭部のバイザーにあたる部分のほか、肩、腕、腰が鮮やかな赤色。
胸部はオレンジ色に塗られているが全体の形状は
カオリの沈めたモビルスーツにかなり似ている。
そのモビルスーツが海中にダイブするとカプセルは爆発音と共に四散した。
水中を進みリスボン港に隣接すの工場地帯に上陸したモビルスーツは、
何の警告もなく左腕に取り付けられたガトリング砲を乱射し始めた。
工場の壁が紙でできているかのように破かれ、
中で製造中のモビルスーツが破壊されていく。
- 26 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月28日(日)12時50分22秒
- ようやく警報がなり、迎撃のリーオー部隊が
現れた時には工場ひとつが残骸となりはてていた。
奇襲をしかけたモビルスーツは胸の装甲版を観音開きに左右に開いた。
中からガトリング砲二門が顔を出す。猛スピードで回転し始めた砲身が唸り、
白煙を噴出しながら砲弾を撒き散らす。
リーオーはライフルを構えるまもなく砲弾のスコールを食らい爆発した。
混乱する工場からはた目にも慌てているとわかるエアリーズが二機飛び立つ。
間髪入れず肩口が開き一斉にホーミングミサイルが飛び出した。
エアリーズは回避運動にはいる暇もなく撃墜される。
ほとんど抵抗といえる抵抗もなく、工場は完膚なきまでに破壊され尽くした。
「ZTM MS工場の破壊任務完了。敵リーオー五機、エアリーズ二機破壊。
こちらの損害軽微。残弾25%。自己評価75ポイント」
コクピットには透き通るような白い肌の少女が座っていた。
「敵の奇襲に対する備えはまったくなし。
記録者名ヒトミ・ヨシザワとでも名乗っておこう」
まるで戦闘などなかったかのように落ち着いた声で、
少女はマイクに向かって呟いた。
- 27 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月28日(日)12時51分54秒
- アラビア半島に広がる砂漠地帯を15機のリーオーが進んでいた。
監視レーダーが捕らえたカプセルの落下地点に向かう調査団である。
明るい茶色の砂に埋もれるように、カプセルが一機パラシュートを
風になびかせ着地している。
1キロ先にカプセルを発見したリーオー部隊はライフルを構え接近し始めた。
周囲はなにも見えない。ただ、砂だけが波打つ海面のように延々と広がっている。
後300メートルという地点に達したとき辺りの光景が一変した。
ビームライフルを構えた数十機のモビルスーツに囲まれていたのである。
リーオー舞台は隊長機と思われる肩に『1』と書かれたモビルスーツに
ライフルを向ける。
そのとき、凛とした声が響いた。
- 28 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月28日(日)12時53分08秒
- 「武器を捨てて投降して下さい。命まで奪おうとは思いません」
まだ、少女の響きを残した涼しげな声だ。
声を発したのはカプセルから歩み寄ってきたモビルスーツだった。
頭部の馬のたてがみのような飾りや肩口の貴族的なデザインが特徴的だが、
総じて太平洋に沈んだモビルスーツに似ている。
未知のモビルスーツを前にしてリーオー部隊はいっせいに攻撃を仕掛けた。
白いもビルスーツが背面のバーニアを噴射してリーオーに突っ込んでいった。
銃弾を浴びながらも全く効いていない。
背中に回した両腕が三日月刀のような武器を引き抜き、振り下ろす。
高熱を発する刃が2機のリーオーをバターのように両断した。
そのすさまじい威力の前に総崩れになったリーオー部隊はなすすべもなく、
攻撃にてんじた敵部隊に破壊されていった。
「いったよ、私は投降しろって…」
コクピットで少女が寂しげにつぶやいた。
- 29 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月28日(日)12時53分45秒
- 戦闘が終わり、煙を上げる鉄の残骸が散らばる砂漠にモビルスーツ部隊が集まってきた。中心に白いモビルスーツがいる。
部隊の隊長機の胸部ハッチが開き、中から1人の少女が現れる。
「マリ様!お久しぶりです」
少女が声を張り上げる。
声に応えてモビルスーツのコクピットが開きパイロットが姿をあらわした。
少女である。やわらかな金髪が砂漠の風になびいている。
「アユミ! ありがとうみんな」
少女は声を上げてハッチから顔を出した全員に手を振る。
「サンドロック、とうとうやってきたよ。これが地球なんだ。」
ゴーグルを額に上げて、少女はまばゆい陽光を浴びる自分のモビルスーツを見上げた
- 30 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月28日(日)12時54分33秒
- 東シナ海の揚子江河口付近。
カプセルのひとつがここの海中に落下していた。
中から一機のモビルスーツが姿をあらわす。
これもカオリが沈めたものと同じような形状をしている。
右腕に爪のようなものが伸びてるのと、
頭部や胸部が中国の甲冑を模したデザインになってるのが特徴だ。
このとき上海港沖合には連合軍の第九太平洋艦隊が寄港していた。
- 31 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月28日(日)12時55分46秒
- モビルスーツはその中心とも呼べる巨大な空母に向かって
海中をまっすぐ進んでいた。
船底に取りつくと右腕のつめで穴をうがち、はい上がる。
喫水線まであがったところでバーニアを噴射して甲板に飛び出した。
同時に右腕を持ち上げ、炎を吐き出した。
まるで伝説の龍のように業火が甲板にあった戦闘機やモビルスーツを焼き尽くす。
あまりにもすばやい襲撃に甲板に出ていた戦闘機もモビルスーツも対応ができない。
せいぜいが機銃で応戦するぐらいだ。
「このナタクにそんなものが通用するか」
コクピットでいらただしそうに叫んだのは、東洋系の顔立ちをした少女であった。
純白の服はかつての中国人民服のようだ。
- 32 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年10月28日(日)12時56分40秒
- 操縦桿を荒っぽく回しながら親指でボタンをクリックする。
モビルスーツの右腕が倍以上に伸びブリッジに爪のような先端を食込ませた。
さらに炎を吐き出し破壊し尽くす。
腕を戻すと、今度は背中に背負った槍のような棒をつかみ、一振りする。
先端から伸び出したビームが甲板にあった機銃を一掃し、
出撃前のリーオーを真っ二つに切る。
ビームの形状からすれば長刀といったところだ。
「私の名前は保田圭!」
少女は怒鳴りつけるように名乗りをあげたが、
誰も応じてこないのにいらだちを隠そうともせずビームクレイブで甲板を叩き切った。
そしてペダルを踏みこむと次の目標に向かってジャンプする。
「くだらん任務だ…」
少女の呟きには誰に向けられたわけでもないのに怒りが満ちていた
- 33 名前:背番号11 投稿日:2001年10月28日(日)13時04分18秒
- >>24
レスありがとございます。
さて誰でしょうか?(笑)
次回の更新はおそらく11/2 もしくは11/3になる予定れす。
- 34 名前:naansi 投稿日:2001年10月28日(日)20時34分25秒
- もったいぶられている・・・もったいぶられておりますコードネーム ヒイ○ ユイ(w
五飛がヤッス―とはちょっと意外。ののがリリーナ嬢ってのも意外でいいね!!
あと出てきてないメンバーというと・・・誰になるのか・・・
- 35 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月29日(月)03時59分06秒
- ヒイロとトレーズがすごく気になる
- 36 名前:名無し読者 投稿日:2001年10月29日(月)13時46分36秒
- カトル坊ちゃまは石川かな〜なんて思ってたんで意外
- 37 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
- ( `.∀´)ダメよ
- 38 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年11月01日(木)21時25分11秒
- 19世紀末に建造された古いオペラハウスの舞台にはソプラノとバリトンの歌手が立ち、
きらびやかな装置の前でイタリア歌曲を披露している。
オーケストラボックスでは指揮者が蝶のように指揮棒を震わせている。
客席には着飾ったドレスやスーツ姿の年配の男女が座り、
金のない民間人には近寄りがたい雰囲気が充満している。
それもそのはず。観客のほとんどが貴族で占められていた。
中でも二階にあるボックス席は一般席の数倍の価格がするだけでなく、
貴族としての格がなければ買うことが出来ない。
ある種のステイタスとして存在している。
そのボックス席の一階から舞台を見下ろしているZTMの制服の女性がいた。
輝く黄金の髪を短くまとめ、額に数本の前髪がたれている。
鋭い目、鼻筋の通った整った顔立ち。
高貴な育ちを全身で表現するかのような物憂げな身のこなし。
ユウコ・ナカザワ
ZTM総帥にして、ZTMの母体であるアップフロント財団の若き幹部である。
と、ユウコの柳のような眉がかすかに動いた。背後に人が現れたのを察したのだ。
「閣下、カオリ特尉から通信が入っております。」
静かな声が告げる。
- 39 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年11月01日(木)21時26分07秒
- 「こちらに回してくれたまえ」
ユウコは観劇の邪魔をされたにもかかわらず落ち着いた声で応えた。
というより連絡がくるのをわかっていたようだ。
脇のテーブルの端末を開き、モニターを出す。
オペラハウスの造りは古くても設備は最新の物が導入されている。
すぐに、カオリの銀のマスクがモニターに映し出された。
「モビルスーツを三機も失ったらしいが?」
ユウコはカオリが口を開く前に言う。
数分前に連合からの情報が部下を通じてユウコに伝えられていた。
カオリはパラシュートで海面に落下し、救助されるまで時間がかかった分、
報告が遅れたのだ。
「君ともあろうものがとんだ不始末だな。連合のうるさ方を黙らせるのが一苦労だ」
ユウコの憂いを帯びた声にカオリは短く答える。
「相手はガンダニウム製のモビルスーツでした。」
「なるほど」
ユウコはそれですべてを納得した。
ガンダニウムとは宇宙でしか精製できない合金である。
ZTMのモビルスーツに使われているチタニウム合金の数倍の強度と耐熱性を持ち、
しかも、金属反応を示さないためもビルスーツ用の理想的な金属とされる。
「もし、あれがコロニーで造られたものだとしたら……」
裕子はカオリの言葉にふっと笑みを漏らした。
「15年前、このZTMに私と君がいたら、こんな不手際にならなかっただろうがな」
そう呟いたユウコは過去の記録を思い起こしていた。
- 40 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年11月01日(木)21時27分00秒
- 15年前、ZTMで戦闘用のMSを研究設計させていた科学者チームがあった。
各分野の専門家達からなるチームはやがて一機のMSを製作する。
しかし、そのあまりの高性能さ、それに付随する巨大さは不必要とされ
試作段階で放棄されることになる。
その後、さらに性能を極限まで高めた新型が設計される。
しかし、科学者達がZTMを出奔したためこちらは設計図すら残ってなく、
ことの真偽さえ確認されていない。
この二種(正確には一種)のMSは宇宙でしか生成できない特殊なガンダニウム号機の
使用を前提として設計されたため、あるコードネームで呼ばれてた。
ガンダムと――――
- 41 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年11月01日(木)21時28分00秒
- 「やはり、あれは、ガンダム?」と、カオリが問う
「他に考えられない。連合の宇宙に対するチェックが甘すぎたという事だ」
ユウコの口元にかすかに苦笑が浮かぶ。
「連合の海軍があの機体を回収しようとしてますが、いかがいたしますか?」
「それはこちらに任せてもらっていい。君には海中探査の特別隊を起きるから、後は頼む。
わかってると思うが、今は大事の前だ。連合を刺激するような真似はしたくない。」
「了解しております。」
「それと、こちらから面白いものを送ろう。見てくれたまえ」
「わかりました」
モニター上のカオリはさっと敬礼し、通信を終えた。
ユウコは胸の前で組んでいた指を解くと。
モニターを閉じ、華麗に装飾された舞台上の歌手に視線を戻した。
大事の前の小事か………。
ユウコはこの後に控える連合将軍達との会議を思いだし、ふっと口元に笑みを浮かべた。
連中との会議はこの舞台よりこっけいだ。楽しめると良いのだがな。
そんな思いが頭をよぎったのだ。
- 42 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年11月01日(木)21時28分45秒
- ユウコとの通信を終えたカオリは通信システムから吐き出されてきた
プリントアウトを待ちながら操縦席の二人の会話に耳をかたむけた。
「海中捜索隊はまだなのか?」
リンネ特尉が隣のアサミ特士に尋ねる。
「あと二時間で到着すると言ってます。」
「なにをのんびりやっているんだ!」
リンネのいらただしげな声に苦笑いを浮かべながら、カオリはなだめるようにいった。
「そう慌てるな。あれはどこにも逃げはせんさ。それにここの海溝は深い。
海軍の空母も捜索にはかなりの時間がかかるはずだ」
「しかし……」
その時、プリントアウト終了を告げる電子音がピッと鳴った。
カオリはユウコから送られた写真を取り、マスクの下の目を険しくした。
そこに映っていたのは巡洋艦の甲板に立つ白いモビルスーツの姿だった。
どうやらブリッジを攻撃しているらしい。炎と爆煙があたりを取り巻いている。
それだけではない。
そのMSはカオリ本人がつい1時間前に戦ったものにかなり似ていたのである。
「面白いものを見せてやろう」
カオリは写真を二人に渡す。
「これは……」
すぐに二人は言葉を失った。これがなにを意味するのか悟ったのだ。
- 43 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年11月01日(木)21時29分25秒
- カオリはユウコから一緒に送られてきた文書に目を通し、言葉をたした。
「ZTMの偵察機が揚子江河口付近で撮影したものらしい」
「では、あの機種が二機も?」
「いや、それだけではないらしい。ZTMが掌握していたMS工場や宇宙港、
それに我々と同 じくカプセル調査に向かった部隊がが壊滅したと報告にある。」
「M作戦で落下した五つすべてがガンダムだと?」
リンネの言葉にカオリはうなずき、腕を組んだ。
「どうやら、敵の標的は連合ではなくZTMらしい。
我々は運がいい。ガンダムを目撃して生き残っているのだからな。」
ゼクスはコクピットの外に広がる雲海を見ながら、一人呟いた。
- 44 名前:背番号11 投稿日:2001年11月01日(木)21時48分46秒
- >>34-36 レスありがとうございます。
>>34
まだ、ひっぱてます(笑)
もうすぐ名乗るはずです。
五飛=( `.∀´) っていうの以外ですか。実は一番にきまってたり。
リリーナ=( ´D`) は、ぶっちゃけあまりもの(笑)
>>35
一人は今回登場しました。もう1人は・・・
>>36
カトル=\(^▽^)/っすか。彼女はトロワ=(○^〜^○)が先にきまっちゃったので自動的に…
いちおう、リーダーシップがありそうなのは矢口かと
- 45 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月02日(金)02時20分46秒
- トレーズ=ユウコは赤色を想いだせば
解ったはずなのに……最後まで頑張って貰いますか。
と、いう理由で期待してますです。
- 46 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年11月02日(金)23時44分35秒
- シャトルが宇宙港に着陸し、ツジ外務次官が、空港ロビーに姿を見せると、
待ち構えていた、記者の一群がどっと押し寄せてきた。
カメラのフラッシュがひっきりなしに閃光を放ち、矢継ぎ早に質問が浴びせられる。
「今回のコロニーサミットではどのような話し合いをなされたんですか?」
「連合に対するコロニー自治体の要求は?」
「いつ、コロニーは攻めてくるのか。地球はその問題で持ちきりなんです」
「ツジ外務次官、なにかコメントを。」
しかし、ツジは一言もしゃべらず後に続くノゾミは
記者にもみくちゃにされながらついていく。
と、不意に記者たちが離れていった。
ツジの行く手に現れたモスグリーンの軍服のためなのは明らかだ。
「お待ちしておりました。ミスター・ツジ」
その軍人が宇宙港の外を示す。
「軍の車を用意しております。すぐにお乗りください。」
「今すぐかね?それは困る。これから娘の誕生日の準備をしなくてはならんのだ。」
心底そう思ってるのか、気の進まない仕事を先延ばしするための口実なのか。
ツジの表情にはそのどちらもあるようだった。
「お嬢様をお送りする車も用意しております。」
この軍人はどうあっても、ツジを連れて行くつもりらしい。
そう悟ったノゾミは自分から先に口を挟むことにした。
「いいえ、ご心配いりませんわ。私は一人で帰れますから」
無骨な軍人にあてつけるように、スカートを少し持ち上げて優雅に礼をする。
父が娘にすまなさそうに頭を下げた。
- 47 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年11月02日(金)23時45分31秒
- 「では、参りましょう。イナバ将軍がお待ちです」
ツジを乗せた軍の黒塗りのリムジンはノゾミを残して走り去った。
父親を見送ったノゾミは記者に気付かれる前に
その場から離れようとタクシーを呼ぼうとしたが、
途中で思い直したのか、そのまま宇宙港を出ると、自分の海岸沿いの道路を歩きだした。
軍用機の発着が比重を占める空港だけに、道路を行き交う車はほとんどいない。
恐らく今日はリリーナが乗っていたシャトルが最後なのだろう。
軍の車と報道陣の車が去ってしまうと、当分なにも通らないはずだ。
一人きりで夕暮れの海岸道路を歩くノゾミの白いドレスが夕日に
照らされてオレンジ色に染まっている。
潮風が海の香りを届けるついでに、彼女の髪をなびかせる。
しかし、心地よさは不意にこみ上げてきた怒りにかき消された。
「お父様!私の誕生日は明後日ですのよ!!」
誰もいない海に向かって大声で叫ぶ。外務次官、
そして貴族の娘として人前ではあらわにできない激しい感情が噴出したようだ。
「普通の娘ならここでグレてしまう所ですわね」
ため息のようなつぶやきは、頭上を通りぬける轟音にかき消される。
「軍用機…。あんなものがなければここも、もっと早く宇宙港に慣れたのに。」
嫌悪感を隠そうともせずに空を見上げると、
叫んだことで気が済んだというように元来た道をひき返そうとした。
宇宙港で車を呼ぼうと思ったのだ。
- 48 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年11月02日(金)23時47分16秒
- と、その時、何気なく見過ごした視界の隅に何かが映ったのに気付き、
思わず振りかえって海岸を見る。
「人?」
波打ち際に人が倒れていた。見れば宇宙用の戦闘服のようだ。
「兵隊なの?人を呼ばなきゃ。」
リリーナは持ち歩いていたポシェットの中から携帯電話を取りだし、救急車を呼んだ。
行動のすばやさはとても育ちのよいお嬢様とは思えない。
ためらうことなく、海岸に駆け下りて行くと倒れていた人影に駆け寄る。
うつぶせになっていたのを苦労して仰向けに起こすと、
首の両脇にあるロックをはずしてヘルメットを脱がした。
「きれいな人…」
現れた顔を見てノゾミは驚いた。
恐らく自分とそう歳の変わらない15・6の少女だった。
ハンサムと言ってもいいほど整った顔立ちをしていた。
ノゾミの同級生たちにはいないタイプの強烈な意思の強さを感じる。
外気に触れて意識を取り戻したのか、少女のまぶたが震え、すぐに目を開いた。
- 49 名前:オペレーション・メテオ 投稿日:2001年11月02日(金)23時48分21秒
- 「じっとしていなさい」
リリーナの言葉をはねのけるように、少女はすばやく立ち上がると左手で顔を隠した。
「みたのか?」
「え?何を?」
少女の問いかけの意味がわからずノゾミは周囲を見渡した。
何か見られて困るようなものが回りにあったとは思えなかったのだ。
まさか少女の顔だとは思いつかない。
その時、道路の方から、救急車のサイレンが近づいてきた。
その音に反応したように、少女は宇宙服の左胸にあったパネルを開き、
赤いボタンを押した。
パンッ!
鋭い音がはじけ、一条の煙と共に少女の上半身がのけぞる。
「くそっ。不発か!」
少女はそう吐き捨てると、ノゾミを一瞥し、道路に向かって走り出した。
すでに、救急車が到着し救急隊員たちが車を降りようとしている。
少女はそこに突っ込むと、あっという間に隊員たちを殴り倒し、
救急車を奪って走り去っていった。
ノゾミはその様子をただ呆然とながめているだけしかできなかった。
しかし、少女の中の何かがノゾミの心を揺さぶった。
「私は… 私はノゾミ・ツジ。あなたは?」
答えてくれるはずもない問いを風に向かって投げ掛け、
ノゾミは夕暮れの海岸に立ち尽くしていた。
- 50 名前:サヤカとノゾミ 投稿日:2001年11月02日(金)23時50分20秒
- 宇宙から帰った翌日ノゾミは自らの通う学園の前に専用のリムジンで登校した。
貴族の子女が多いこの学園では、当たり前の光景である。
しかも、ツジ家の名は学園随一の富豪として、生徒たちの間にも知れ渡っていた。
ノゾミが教室に向かう間にも、幾人ものクラスメイト達が集まって
丁寧な挨拶を掛けてくる。
ノゾミが席につくと、昨日まで父と共に宇宙にいっていたことを知っているせいか、
クラスメイト達はその話をせがんでくる。
貴族の娘といえど宇宙に行くことができるのは一握りだけなのだ。
ましてコロニーとの緊張が取り沙汰されている時期のため、
よほどの理由がなければ宇宙には行けないのである。
しかし、ノゾミにとってコロニーは珍しいのもではない。
そこに暮らしている人は地上と何ら変わりがない。
違うのは空気と水を自らの手で造っている事ぐらいだ。
しかし、そんなことに誰も興味はない。だから、特別なことなど何もないのだ。
ノゾミがため息を漏らすと、うまい具合にそれを勘違いしたクラスメイトの一人が
みなをとがめるように口を開いた。
「ノゾミ様はお疲れなんですから」
自然と話題は違う方向へ移った。しかし、それでもノゾミから話が離れない。
「それよりも、明日はノゾミ様のお誕生日ですわね」
「楽しみですわ」
彼女たちの話は尽きることがないようだ。
と、ようやく担任の教師が現れ、自然におしゃべりは収まった。
だが、その後ろに一人の少女がついてきているのに気付いた生徒達は
またおしゃべりをはじめる。
「あの子……」
ノゾミは驚いた。昨日海岸で助けた少女だったのだ。
- 51 名前:サヤカとノゾミ 投稿日:2001年11月02日(金)23時51分01秒
- 「お静かに。皆さんに新しいお友達を紹介します。」
教師の言葉に続いて、少女は感情ない淡々とした口調で名乗った。
「サヤカ・イチイです。よろしく」
空いている席に座るように言われた少女は真っ直ぐにノゾミの隣にやってくると、
周りの誰にも挨拶することもなく席に就いた。
「よろしく、サヤカさん」
ノゾミは通路を隔てた隣席に座った少女に声を掛けるが、
サヤカと名乗った少女は視線すら向けずに教壇を見てるだけだった。
この子、一体何なのかしら?
ノゾミは好奇心が頭をもたげてくるのを感じた。
これまでまったくといっていいほど他人に興味を持たなかったノゾミにとって
珍しいことである。
休み時間に話しかけてみよう。昨日のことも聞かないと。
ノゾミはそう決めていた。
- 52 名前:サヤカとノゾミ 投稿日:2001年11月02日(金)23時51分50秒
- 午前の授業が終わり昼休みになると生徒達はカフェテラスで
思い思いのランチを楽しみ、休息を取る。
早々に食事をとったノゾミはサヤカの姿を探していた。
サヤカは庭園に突き出したテラスで一人立っていた。
視線を庭園の彼方に向け、じっと動かない。
周りには何の興味もないというような態度だ。
それとも目立たないようにしているのかもしれない。
それを証明するかのように周囲のみんなは誰もサヤカの方を見ようとしない。
ノゾミはサヤカを見つけると、ためらうことなく歩み寄っていった。
それを見てようやくクラスメイト達が何事かと二人の周りにやってくる。
「サヤカさん」
ノゾミは少女を真っ直ぐ見て声を掛けた。
しかし、サヤカは顔を向けようとせずに外の光景をながめている。
「明日、私の誕生日ですの。もちろんいらしてくださいますわね?」
受け取るのが当然と言うようにノゾミは招待状を差し出した。
わぁっとクラスメイト達が歓声を上げる。
会ったばかりの転校生も招待するノゾミの寛大さをたたえる歓声だ。
- 53 名前:サヤカとノゾミ 投稿日:2001年11月02日(金)23時53分05秒
- ようやく視線を動かしたサヤカは招待状を一瞥するとものも言わず受け取った。
さらに歓声がわき上がる。
だが、それが収まらぬうちに、ヒイロは招待状を両手でつかむと
何の感情も浮かべずに真っ二つに破り捨てた。
ゴミのように破かれた招待状が風に舞い落ちる。
「ひどい……」
自分でも気づかぬうちに、ノゾミの目に涙が浮かんできた。
破かれたことが悲しいのか、サヤカに拒絶されたことが悲しいのか、
ノゾミには自分がわからなかった。こんなことは初めてだった。
と、流れ落ちる涙を差し出された指がそっとぬぐいとる。
サヤカの人差し指だった。
驚いて顔を上げたノゾミの傍らをサヤカが通りすぎる。
その一瞬ノゾミはサヤカの小さなささやきを耳にした。
「おまえを、殺す」
聞き違えようもないほどはっきりとそう言ったのである。
ノゾミの全身に衝撃が走った。
声音からもそれが本気であるのは充分に理解できた。
な、何なの、この人?!
大勢の友人に囲まれながらも、望みは混乱して世界が
自分一人になったような思いでテラスに立ち尽くすしかなかった。
- 54 名前:サヤカとノゾミ 投稿日:2001年11月02日(金)23時54分31秒
- 太陽光の届かぬ深海は闇の世界である。
そこでは光など至近距離でしか役に立たない。頼れるものはおとだけである。
JAPポイントの海溝に住む奇妙な形の生き物たちは
接近するエンジン音を全身で聞き、姿を隠した。
程なくサーチライトがマリンスノーの舞う闇の中を
手探りするように動き回りながら近づいてくる。
重い闇に覆われた深海では光源の姿はまったくといっていいほど見えない。
もっと深度の浅い所で見たならば二つの円筒形を並べたような形に見えたはずだ。
上部にはヘリポートを備え海上での物資が補給できるようになっている。
九時間ほどまえカオリはここからこの空母に乗りこんできた。
海中に沈んだ未確認MSの探索のためである。
連合海軍がすでに探索を開始しているが、いまだに見つかったと言う報告はない。
位置を正確に把握しているのはカオリだからそう簡単に発見できるはずがない。
その上、海流で流された可能性を考えれば捜索範囲はかなり広範囲になるはずだ。
カオリもそのあたりは覚悟していた。潜行して3時間。
そろそろ何か反応があってもおかしくないとカオリが思い始めた頃、
レーダー管制官が声をあげた。
「右舷距離550の位置に金属反応があります。」
カオリはすぐに指示を出す。
「よし、キャンサーとパイシーズを出せ」
空母の先にあるドーム上のハッチ構えにせり出し、中からMSが三機出撃していった。
その名の通り、真っ赤なかにのような形状をしたキャンサー。
そして、胴体の左右に腕を兼用した二つの推進システムを持つパイシーズ二機である。
- 55 名前:サヤカとノゾミ 投稿日:2001年11月02日(金)23時55分15秒
- 三機が出たと同時に今度はソナーに反応があった。
「カオリ特尉、海軍のMSがこちらに向かってきます」
ピーンという、ソナー音が管内に響く。
モニターには海上の艦隊から潜行してくるMSが点となって表示されていた。
「我々の動きに気がついたか」
ユウコの言葉にしたがって、なるべく無用の刺激を与えないよう海上の
連合艦隊司令官にはエンジンの故障で修理させてくれと伝え、
丁寧に故障しているかのようにエンジンを断続的に切って
芝居までしたのだが、無駄だったようだ。
連中もそこまで馬鹿ではなかったという事か。
時間稼ぎになっただけで良しとすべきだな。
カオリが内心でつぶやいたとき、艦の壁を通して重い振動が響いてきた。
「爆発音?」
ソナーに確認する。
「我々と同じ深度で連合のMSが次々と破壊されています。」
「停止しろ。状況がつかめん」
「パイシーズとキャンサーは?」
「かまわん。先行させろ」
報告を受けて矢継ぎ早に命令し、
カオリは少しでも状況を把握しようとモニターを覗きこんだ。
- 56 名前:サヤカとノゾミ 投稿日:2001年11月02日(金)23時57分28秒
- 「艦隊が爆雷を開始しました。こちらに向かってきます」
今度はソナーからの報告。
「無能な指揮官め」
カオリがうめくように言ったとたん、空母を激しいゆれが襲った。
爆発の衝撃が外壁をたたき、艦内に大音響を響かす。
自分たちのMSを襲っているのが何物かわからぬまま、
疑わしきは敵という理論でカオリの艦まで攻撃しているのだ。
無能としか言いようがない。
いや、連合の古株将校にとってZTMは敵なのかもしれんな。
カオリは皮肉交じりに無能といった己の言葉を否定した。
「ずいぶん騒がしいですが、何かあったのですか?」
キャンサーのパイロットから通信が入る。
海中で騒がしいとは地上でいうと自分の周りに障害物が立ち並んでいる状態に近い。
周りが良く見えないのだ。
「気をつけろ。どうやら近くに敵がいるらしい。」
カオリの言葉にパイロットの顔色が変わった。
「あのガンダムがまだ生きているのでしょうか?」
「まさかな。だが、油断するな。」
カオリは可能性を否定しながらも厳しい声でキャンサーの
パイロットに指示を出し通信をきった。
あのパイロットが生きていたとしても、今までここにいる必要はない。
それならば逃げているはずだ。では、この敵は何だ?
その時、爆雷攻撃が不意にやんだ。
「海上の艦隊の様子が変です。どうやら全滅したようです。」
ソナーの捕らえたモニターを見たカオリはうなずいた。深度0地点には何もない。
変わりに大きな物体がいくつも沈んで行く様子が映し出されている。
- 57 名前:サヤカとノゾミ 投稿日:2001年11月03日(土)00時00分28秒
- 「まずいな。急がねばならん」
カオリがそうつぶやいたとき、キャンサーから通信が入った。
「リーオー発見。しかし、ガンダムは確認できません」
カオリのリーオーがあればその近くにガンダムも沈んでいるはずだ。
探索隊もそのつもりでもぐっている。
「どういうことでしょう?レーダーにも反応ありません」
「感度を上げろ。ガンダニウムはかすかにしか金属反応しないはずだ。」
カオリが指示を出してまもなく、パイシーズから報告があった。
「ありました。30メートルほど海流に流されたようです。肉眼で確認しました。」
「そうか、見つけたか」
「ですが驚きました。まったくの無傷です。」
パイシーズのカメラを通してカオリの前に映し出された白いMSは
うつぶせになっているが確かにリーオーのビームライフルと
エアリーズの銃撃を食らった後は見当たらない。
しかも、目の前にあるのに金属反応は無視できるほど小さい。
「我々の敵はとんでもない怪物を作ってくれた。
だが、それを回収することで我々もまた怪物になれるわけだ」
さすがに驚きを隠せない声でつぶやくとカオリはMS隊に通信を入れた。
「海流に気をつけろ。我々はこの深度で待機する。」
「ではワイヤーで固定後フロートで海上まで引き上げます」
「了解した。敵がくる。作業を急げ。」
- 58 名前:サヤカとノゾミ 投稿日:2001年11月03日(土)00時02分16秒
- カオリは指示を与えると、レーダー管制官に状況を確認する。
「レーダーに反応ありません。」
今しばらく時間があるということだ。
カオリがそう思った直後、ソナーが叫びをあげた。
「ソナーに感!何かが急速接近中」
「何!?」
直後、パイシーズからの映像を写していたモニターがホワイトアウトした。
何かが海中で閃光を発したのだ。
「うわっ!」
「なんだ、これは?!」
パイロットの混乱した叫び。
「敵襲!」
そして空母にも爆発の衝撃が伝わってきた。何かがMS隊を襲っているのは明らかだ。
ほんの数秒だけキャンサーのカメラが捕らえた映像がモニターに映った。
「これは……ガンダム?」
思わずカオリはつぶやく。
- 59 名前:サヤカとノゾミ 投稿日:2001年11月03日(土)00時02分54秒
- モニターにはあきらかに違うタイプのMSがあった。
白と黒を基調としているがカオリが落としたガンダムと同じタイプである。
右腕には鎌のようなエネルギービームを出す武器を持っている。
突然、左腕に装備されていた盾のようなものがビームを出したかと思うと、
モニターに向かって突っ込んできた。
直後、モニターはブラックアウトし、後にはノイズが走るだけとなる。
通信士がマイクに向かって応答を求めて叫ぶ。しかし返ってくるのは沈黙だけ。
「カオリ特尉、キャンサー、パイシーズ共に反応ありません」
「そうか……。こちらにMSがない以上、これ以上は危険だな」
通信士の報告にうなずき、カオリはひき返すように命令した。
その唇は硬くかみ締められていた。
「ガンダムを一目見たものは生きて戦場から戻れない――――。
悪いジンクスにならなければよいが…」
カオリが苦しげに漏らしたセリフは自分のことを含めているのかどうか。
口調ではわからなかった。
- 60 名前:サヤカとノゾミ 投稿日:2001年11月03日(土)00時03分45秒
- 「連合とZTMがけん制しあってくれたお陰で、仕事が楽になったなぁ」
狭いコクピットの中につぶやきが漏れる。
キャンサーとパイシーズ二機を葬った直後である。
その前には海上で連合の空母と巡洋艦二隻を沈めている。
それだけの仕事をラクと表現するのはまだあどけなさを
残した少女――――グアム沖に落下したカプセルに乗っていたナツミ・アベであった。
コンタクトする予定だったカオリ・ワダというサルベージ船の
老船長の下に向かう途中、ZTMの無線を傍受し、急遽こちらに向かったのである。
「さてと。ZTMの連中が狙ってた未確認MSってのを拝見させてもらおうかな」
ナツミは期待に満ちた声で足元のペダルを軽く踏みこんだ。
MSが二歩前進し、足元にMSの姿が浮かび上がった。
頭部のサーチライトを操作して姿を確認する。
- 61 名前:サヤカとノゾミ 投稿日:2001年11月03日(土)00時04分33秒
- 「なに?私のデスサイズにそっくりじゃん」
ナツミは驚きの声を漏らした。
「ま、いいや。予備のパーツに使おうっと」
あまり深く考えないたちなのかナツミは軽く肩をすくめると
操縦桿を操り横たわっていたMSをつかもうとした。
その瞬間、背面に設置されたバーニアの
ちょうど真中あたりに赤い光点が点滅し始めた。
「自爆装置?」
どうやら接近するものを道連れに自爆するつもりらしい。
「あぶないなぁ」
いいながらナツミはビームサイズの出力を絞って軽く自爆装置に突き刺した。
起爆装置を破壊されて、カウントダウンは停止する。
「起爆装置の位置までそっくりだ。いったいどうなってんだろ。
プロフェッサーHはなーんもいってなかったけど」
訳がわからないというふうに顔をしかめ、それでも作業は順調に進めている。
「とりあえず、海面まで引き上げて、あとはおじさんに連絡しとこう」
ナツミは自機にそっくりなMSを担ぎ上げさせると、
バーニアを噴射させ海面へと向かって上昇させた。
- 62 名前:テス 投稿日:2001年12月23日(日)07時49分00秒
- これは、つづかないかなぁとおもってたんだけど、、、やっぱしそうだったか、、
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