道標

1 名前:全権特使 投稿日:2001年11月02日(金)15時45分35秒
ココでは初めて小説を書きます。
人生2作目のこの作品。
長い文章に挑戦するのは初めてです。
受験の為に更新速度は遅いでしょうし、
汚い文章になるかもしれませんが、
温かく見守っていただければ幸いです。

ちなみに1章ずつ更新します。
次章が出来た時点で更新を考えています。
2 名前:全権特使 投稿日:2001年11月02日(金)15時46分21秒
ちなみにこの小説、エピローグから始まります。
3 名前:〜エピローグ〜 投稿日:2001年11月02日(金)15時47分53秒
警告のあと、私は引き金を引いた。
マニュアルどおりの行動。
訓練の通りに銃弾は目標を
生きている者から生きていたモノに変えた。
赤い液体が後ろに飛び散った。
私は分水嶺を越えた。
4 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月02日(金)18時39分17秒
『本日で3中隊配属の吉澤ひとみ3曹です』
私は中隊長の前で辞令を見せた。
前の配属から3週間で転属になった。
5 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月02日(金)18時39分59秒
4日前・・・
6 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月02日(金)18時41分02秒
『ねぇ、なんで?』
電話の向こうのアニメ声。
『知らないよ。 いきなり部屋に呼ばれて気が付いたらこうなってたんだよ』
『だからそれは何でなのか聞いてるの!』
アニメ声がキレだした。
いきなりキレることもなかろうに・・・。
私だって理由なんて聞かされてないし・・・。
『落ち着いてよ。 何で梨華ちゃんがキレる必要があるの?』
『私は理由を聞いてるだけだってば!!』
それをキレてるって言うんだよ、梨華ちゃん。
7 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月02日(金)18時41分41秒
私たちは一般陸曹候補学生で一緒に陸上自衛隊に入った。
梨華ちゃんは学年が1つ上だったが、彼女は1年間海外留学していたらしい。
初めて会った時は『こんな人がついていけるの?』っていうような印象しか持たなかった。
事実、ついていくにはかなりの苦労があったようだが
一生懸命ついていこうとする姿が私にはとても健気に映った。
教官や助教は『男と同じ給料を貰っているんだから、男と同じことをしてもらう』と言った。
あんな細い身体で、狂ったような訓練に耐えていけるわけが無い。
私はいつ辞めてしまうのか気になって仕方がなかった。

8 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月02日(金)18時42分18秒
新隊員訓練課程が終盤に差し掛かった時、彼女は隊列に残っていた。
3分の1が辞めていってしまったにも関わらず、
一番最初に辞めると目されていた彼女は隊列を離れることは無かった。
そんな彼女に興味を持ち、私は話し掛けた。
取っ掛かりにくいのかと思っていた。
話し始めて数分でそんな思いは全て吹き飛んでしまった。
9 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月02日(金)18時42分57秒
解散が告げられて三々五々、散ろうとした時に私は思い切って話し掛けた。
『今日の訓練はキツかったよね』
彼女は振り返った。
顔にはドロがいっぱい付いていた。
『あ、私は吉澤ひとみです』
ヘルメットが多少ズレた感じが面白かった。
『あ・・・、石川梨華です!』
勢い余って彼女はヘルメットのアゴ掛けを外しているのを忘れ、
身体を折った瞬間にヘルメットは私の顔を目掛けて飛び出した。
ものスゴイ音が廊下に響いた。
10 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月02日(金)18時43分28秒
『・・・ごめんなさい』
『もういいよ、止まったから』
飛び出したヘルメットは鼻先を直撃した。
私は鼻から盛大に血を流して、その場にうずくまってしまった。
医務室で医官は『そりゃあんなヘルメットが当たれば鼻血も出る』と至極当然のように言った。
私は話を切り出した。
『でも石川さんって頑張ってるよね』
『・・・?』
彼女は不思議そうな目でこっちを見た。
か・・・、かわいい・・・。
『あ・・・、いや、あの狂った訓練にそんな細い身体でよくついてきてるなぁって』
私はシドロモドロ。
『あぁ・・・、そういうことですか・・・』
彼女は納得したような声で返した。
『なんで自衛官になったの?』
『なんでっていう理由はそこまでないんです。 とりあえず人の役に立ちたくって・・・』
11 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月02日(金)18時44分08秒
そんな話で始まった私たちの関係だった。
人の役に立つのは警察官でも消防官でもいいんじゃない?
私はそう思ってたが、彼女は違った。
人の役に立つ最後の砦は自衛隊なんだ、って。
あんなアニメ声で言われても説得力は無かった。
でもあの真剣な眼差しは今でも忘れられない。
それから私たちの友人としての関係が始まった。
12 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月02日(金)18時44分42秒
最初の部隊勤務のときに、私たちは分かれた。
私は普通科に配属された。
毎日毎日、小銃を担いで山のなかを走り回ってた。
それに引きかえ梨華ちゃんは機甲科に転属した。
教育期間中、梨華ちゃんは本当に銃とかを担いで走ることは全然ダメだった。
でもそんな梨華ちゃんにも誰にも負けないことがあった。
それは歩哨と情報収集分析行動だった。
歩哨ってのは山に溶け込んで敵状を視察することで、
同じ教育隊の中で訓練した時に、最後まで偽装敵にバレずに、
歩哨を8時間やりつづけた。
教官が『石川、歩哨は好きか?』と聞いた時に、
『大好きです!!』と答えていた。
情報収集分析でも、ものすごい能力を見せて、
教育隊内で梨華ちゃん1人だけしか気が付かなかった情報とかもあった。
機甲科偵察隊での活躍を期待されたようだった。
13 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月02日(金)18時45分12秒
『ま、とりあえず転属だから』
私はそう言うと電話を切った。
梨華ちゃんはどうやら諦めてくれたようだ。
折り返し電話してくるようなこともなかった。
14 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月02日(金)18時45分43秒
練馬にある陸上自衛隊第1普通科連隊。
首都機能防衛の一端を担っているこの連隊が、
私の配属された連隊だった。
目の前に中隊長がいる。
辞令をチラッと見て中隊長は私の顔には見向きもせずに
『じゃ、明日から部隊に合流してください』
と言い残してさっさと出て行った。
(何なのよ・・・)
私は憮然として遠くから部隊を眺めていた。
配属の日なので色々手続きもあるから
訓練には参加しなくてもよかったけど、
さっきの中隊長の態度は気にいらない。
15 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月02日(金)18時46分13秒
『やっぱり理由があるのかな・・・?』
私が独り言をボソッと言ったときに、
後ろから声が掛かった。
『よっすぃー、何してるの?』
あのアニメ声。
『梨華ちゃん!!』
振り向きざまに声をあげた。
後ろには予想通り梨華ちゃんが立っていた。
梨華ちゃんは普段着姿だった。
16 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月02日(金)18時46分46秒
『ま、そんなところだよ。 何がなんだか分かんない』
異動の辞令をもらってから、さっきの中隊長の話までを全部話した。
『そう・・・』
梨華ちゃんは思案げに遠くを見て呟いた。
視線の奥には普通科が訓練をしていた。
『あのね・・・、私ちょっと気になる情報をもってるんだけど・・・』
梨華ちゃんは今、陸上自衛隊東部方面調査隊に所属している。
名実共に情報調査のエキスパートになった。
『先に聞かせてね。 本当に36連で何もなかったの?』
私の前の配属は新潟の第36普通科連隊だった。
自衛官としてはまだまだド素人の域を抜けきっていなかった私は、
そこで自衛官のイロハをもう一度、実践して学ぶはずだった。
『本当に何も思いつかないよ』
『そう・・・』
『で、情報って?』
『う〜ん・・・、まだよっすぃに話す段階じゃないかもしれないから・・・』
17 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月02日(金)18時47分16秒
30分ぐらい話をした後、梨華ちゃんは上司と共に帰っていった。
私は梨華ちゃんが何かを知っているということに気付いていたが、
あえてその話は最後まで出さなかった。
多分、朝霞の方でも秘密事項にでもなってただろうから。
とりあえず私は官舎に戻って引越しの片づけをすることにした。
18 名前:全権特使 投稿日:2001年11月02日(金)19時05分41秒
よいしょ。
19 名前:全権特使 投稿日:2001年11月02日(金)22時30分00秒
今思ったことを書きますが、
レスごとに段落は変わっていると考えていただける方が
読みやすくなると思います。
今後は段落変えもレス内で行うようにいたします。
20 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月03日(土)05時31分19秒
引越しの片付けはものの数十分で終わった。
スポーツバッグと段ボール4箱。
普段着と制服、そしてPCと置物がちょろっと。
高校卒業後は全てのものを実家に置きっぱなしにしている。
あ〜、もう自衛隊に入って2年も経つのか・・・。
既に3曹にもなっちゃったしなぁ・・・。
そろそろ部下の統制もやらなきゃならなくなるのに・・・。
正直、こんな時期に転属させられるとは思ってもみなかった。
新潟に配属されて3週間で次は練馬かぁ。
私は知らず知らずのうちに新潟での不可思議な事件に思いを巡らせ始めた。
21 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月03日(土)05時32分36秒
『吉澤ひとみ3曹です。 曹学よりこの度昇進しました。 よろしくお願いします』
緊張していた。
目の前には第36普通科連隊の面々がズラッと勢揃いしている。
みんな精悍な顔つきをしている。
女子隊員もチラホラ混ざっている。
私みたいな新入隊員とは違い、意志の強さを眼から感じた。
一緒に配属された女子隊員がいた。
『松浦亜弥2士です。 よろしくお願いします』
本当の意味での『新入り』だった。
一応、教育隊での訓練は受けているようだったけど。

今回は女子隊員は2人だけだった。
男子隊員は先輩たちから手厚い『歓迎』を受けているようだった。
仲のいい男子隊員もいた。
聞いてみると高校が一緒だった。
自衛隊に入った理由は違っていたけど、
まだまだ女子隊員の少ない自衛隊の中では知っている人がいる、
それが男子隊員であったとしても安心できた。
連隊本部の前で腕立てをさせられているのを見ていた。
気が付くと私も一緒になってやっていた。
曹学になった瞬間は腕立てなんて10回もできなかった。
今となっては100回で終わった時には『え? これだけでいいの?』と考えるようになった。
22 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月03日(土)05時33分09秒

私は男子隊員とも分け隔てなく付き合っていた。
むしろ男に近かった。
時として訓練においては男子隊員より勝っているようなこともあった。
特に同期隊員は仲がよくなった。
同じような訓練を受けているせいか連帯感というものを共有していた。
いつか先輩に聞いたことがあった。
『その連帯感というモノを大切にしろよ』
大切にする。
できる、と思った。
23 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月03日(土)05時33分42秒
突然、松浦が辞めてしまった。
私は対番のような役目を受けていたので相談されることもあった。
けれど1日前には辞めるような気配は微塵も見せなかったのに。
松浦に関するウワサはすぐに流れた。
それによると松浦はいきなり連隊長室に現れたようだ。
たまたま連隊長は在室していた。
松浦は連隊長に対して極めて冷静に話したという。
話の内容は連隊長は誰にも話そうとしなかった。
でも辞表だけは受理したらしい。
私がその報せを聞いたとき、松浦は既に連隊を離れていた。
『突然すぎる』、私は叫んだ。
確かに訓練がキツく、ついていけなくなって辞めてしまう隊員は多い。
だがそんな隊員でも必ず兆候は見せた。
松浦の場合、突然すぎた。
何かある。
私がそう感じはじめるまで長くは掛からなかった。
24 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月03日(土)05時34分24秒
松浦の連絡先は知っていた。
電話をした。
予想通りの機械仕掛けの声が受話器から流れた。
家を訪ねた。
大家の話は『そんな人は住んでいない』ということだった。

家は最初から存在しない。
突然の退職と失踪。
連隊長の沈黙。
全てをつなげて考えることは容易ではなかった。
話を聞くことが出来るのは連隊長だけ。

だがその連隊長は長期の出張に出た。
出先は防衛庁本庁。
長くなる。
連隊本部に残った秘書はそう告げた。
何をしに行ったのか?
秘書は知らなかった。
連隊長が突然『防衛庁本庁に行く。 ちょっと長くなるかもしれない』と言い、
師団司令部から来た迎えの車に乗って急いで出て行ったという。
秘書は本当に何も知らないようだった。
25 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月03日(土)18時22分19秒
連隊長不在中の連隊の指揮は副長が執っていた。
私は松浦の退職に不信感を持ちつづけた。
副長が連隊長の動きを知らないのは明らかだった。
連隊長の動きの真意はどこにあるのか?
地方の一介の普通科連隊長が防衛庁に緊急出張するなんてことが
果たして普通にあることなのか?
私は松浦の退職について詳しく調べることを心に決めた。

そんな中、全く予想外の辞令内示が飛び込んだ。
連隊長は未だ出張中だった。
内示が出たのは配属2週間目に入ったときだった。
正式な辞令は3週間目に入るその日だった。
いきなり訓練中に会議室に呼ばれた。
『戦闘服のままでいいからすぐに行け』
訓練の指揮官が切迫した声で言った。
26 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月03日(土)18時23分32秒
『吉澤3曹、入ります!!』
会議室に入った。
予想外な面々が顔をそろえていた。
出張から戻ってきたらしい連隊長、副長、連隊の人事班長、
それと東部方面調査隊の識別帽を被った人間がいた。
『吉澤3曹ですね』
人事班長が確認した。
調査隊の人間、3尉の階級章をつけていた。
ものすごく厳しい顔をしている。
人事班長が続けた。
『吉澤3曹、第1普通科連隊第3中隊への異動を命じます』
寝耳に水だった。
思わず聞き返した。
27 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月03日(土)18時24分06秒
『何故ですか?!』
『異動に理由はありません。 これは命令です』
人事班長ではなかった。
調査隊の3尉が言った。
『来週中に正式な辞令が届きます。 それが届くと同時に即時配属ですので用意をしておいて下さい』
誰がどう見てもおかしい。
自衛隊の異動内示にこれだけの面々が伝えることはない。
私は食い下がった。
『配属3週間で転属とはどういうことでしょうか?』
『命令です』
連隊長も副長も押し黙ったままだった。
調査隊の3尉殿が話しているだけである。
『異動内示の告知に調査隊の方が関わっているのはどういうことですか?』
『あなたには関係ないことです』
関係なくは無い。
事実、私の異動が関わっているのだ。
私はひっかかっていることを口にした。
『先日退職した松浦2士に関係することなんですか?』
それを口にしたのがいけなかった。
4人全ての顔が一気に強張った。
いいようの無い空気が広がった。
沈黙を破ったのは5秒後の連隊長の言葉だった。
『決定に変更は無い。 出て行きたまえ』
追い立てられるようにして私は会議室を後にした。
28 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月03日(土)18時24分39秒
正式な辞令はキチンと届いた。
『第1普通科連隊第3中隊への異動を命ず』
そんな言葉が並べられた1枚の紙切れを持って、
たった3週間で第36普通科連隊の駐屯地を後にした。

新幹線の中で理由を考えつづけた。
4日前に梨華ちゃんに電話した。
東部方面調査隊本部に勤務する梨華ちゃんなら何かを知っているかもしれない。
転属の報せと共にそれとなく聞き出そうとした。
結果は逆だった。
梨華ちゃんは執拗に理由を聞いてきた。
思い当たらないことが無いわけでもない。
でも理由ではない。
結局何も分からないまま第1普通科連隊に着任した。
29 名前:L.O.D 投稿日:2001年11月03日(土)19時14分15秒
期待sage
30 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月04日(日)02時10分52秒
すっかり夜になっていた。
『あ・・・』
完璧に自分の世界に入っていたようだ。
『松浦・・・、何だったんだろう・・・?』
36連隊を離れた私にはもう何も調べることも出来なかった。
それにする必要もなかった。
晩ゴハン・・・、どうしようかな・・・?
胃は正直に補給を要求していた。
梨華ちゃんでも誘ってみるか。

『もしもし? 梨華ちゃん?』
『あぁ、よっすぃ。 どうしたの?』
後ろがザワめいている。
まだ調査隊本部にいるみたいだ。
『ねぇ、梨華ちゃん。 私の転属祝いにゴハンでも・・・』
そう言いかけたとき、電話越しに叫び声が聞こえた。
何だったのかは分からなかったけど。
『ごめん、よっすぃ。 後から電話するから!』
梨華ちゃんは突然電話を切った。
どうしたんだろう・・・?
あのザワつきようじゃ今日は無理だろうな。
私はとりあえず炊飯器で米を炊いて、1人で食べた。
その日、梨華ちゃんからの電話がかかることは無かった。
31 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月04日(日)02時11分51秒
次の日から私は第1普通科連隊の訓練に参加した。
やっていることは基本的にどこでも一緒だった。
昼頃、梨華ちゃんから電話があった。

『昨日はごめんね。 色々あったんだよ』
あの叫び声か・・・。
何かあったらしいってのは予想がついてた。
『で、なんだったの?』
『あ、うん・・・。 転属早々だし、ゴハンでも一緒に食べたいなと思って・・・』
『あ〜いいね。 行こうよ♪』
『そっちの決着はついたの?』
『だいじょうぶだいじょうぶ♪ 今日はさすがに何も無いでしょ』
『じゃ、勤務明けにまた電話するよ』
『うん、待ってるよ』

梨華ちゃんとの電話でひっかかったことがあった。
『今日はさすがに何も無いでしょ』
昨日の電話向こうの喧騒と、梨華ちゃんの態度。
何か、ある。
ま、夜には会うんだからいいけど。
32 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月04日(日)02時12分55秒
そのまま考え事をしながら勤務明けは来た。
梨華ちゃんの携帯に電話した。
梨華ちゃんはすぐに出た。
今日は静かなようだ。
『梨華ちゃん? 今、終わったよ』
『じゃ、どこで会う?』
『う〜ん・・・、梨華ちゃんが決めてよ』
『自衛官は決断力が大事!!』
いきなり何を言い出すんだよ、梨華ちゃん・・・。
『分かったよ・・・。 じゃ、いつものトコ』
いつものトコ。
私たちが曹学の時に時々行っていたイタリアンレストラン。
『OK♪ じゃ、先に行って待ってるから』
私は空腹を抱えて駐屯地を出た。
33 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月04日(日)02時13分31秒
『よっすぃ、もう飲めるんだったよね』
そう、高校を卒業してから2年になる。
立派に20才を迎えて堂々と酒は飲めるようになった。
梨華ちゃんは普通に白ワインをワンボトル頼んだ。
『ねぇ、そんなに飲めるの?』
『飲めるでしょ』
梨華ちゃんは普通に流した。
レストランには梨華ちゃんが先に着いた。
私が席に着いた時には、もうイタリアンビールを2杯ほども飲んでたのに、
梨華ちゃんって酒に強いんだっけ?
そのうちワインが運ばれてきた。
私のグラスに白葡萄色をした液体が光を反射しながらなみなみと注がれた。
『よっすぃの突然の転属にカンパ〜イ♪』
とりあえず私たちはワインと食事を交互に進めた。

結局、食事中にワインは空いてしまった。
今はもうバーに移って、カクテルを飲み始めた。
やっぱり梨華ちゃん、酒に強いんだね・・・。
ちょっとイメージと掛け離れてるよ・・・。
私たちは初めて会ったころの話に花を咲かせていた。
一通り区切りがついたところで私は思い切って話を切り出した。
34 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月04日(日)02時15分07秒
『ねぇ、梨華ちゃん』
『ぅん?』
梨華ちゃん、ちょっと酔ってきてる。
鼻先が赤くなってきてるよ。
そういう私もかなり酔ってきてるけど。
私はグッとグラスに残った液体を流し込むと本題に触れた。
『ちょっと気になる情報があるって言ってたよね。 何か私に転属に関係ありそうな』
『ん・・・、聞かれると思ってたよ・・・』
『どんな情報なの? 調査隊が関係してきてるの?』
梨華ちゃんは東部方面調査隊本部で情報分析担当をしているように記憶していた。
ってことは東部方面、いや陸上自衛隊全体の情報に関係している可能性もある。
『まだ情報って言えるようなものでもないんだよ』
『でも私の転属に関係しているかもしれないんでしょ?』
『可能性だけ。 あくまでも可能性があるかもしれないっていうだけだから』
『だけどこんな異動のさせられ方、私は納得できない』
『今は知らない方がいいよ』
これ以上、梨華ちゃんを問い詰めたところで絶対に言ってくれるわけがない。
今は知らない方がいいっていうことは時期は来るってことだよね。
私はもうこの話題に触れないことを誓った。
35 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月04日(日)02時15分37秒

日付が変わる直前、私たちはバーを後にした。
次の日はお互いに仕事がある。
でも仕事があるにしては酔いすぎだった。
別れる直前、梨華ちゃんが言った。
『よっすぃ、今は何も知らないほうがいいんだよ』
梨華ちゃんはそう言うと駅の構内へ吸い込まれるように消えていった。
36 名前:全権特使 投稿日:2001年11月04日(日)20時26分47秒
シュールすぎるよ、この小説。
専門用語出すぎかな?
注釈でも付けてみますか?
37 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月05日(月)00時52分02秒
できれば特に注釈付けるんじゃなくって、文中で
さりげなく説明していただけるとありがたい。
38 名前:全権特使 投稿日:2001年11月05日(月)06時52分45秒
では今後、さりげなく説明したいと思います。
え〜っと・・・、
一般陸曹候補学生(曹学)、陸上自衛隊調査隊、普通科連隊、機甲科偵察隊、
あとは階級かな?
上記の分についてもどっかで説明を入れます。
39 名前:全権特使 投稿日:2001年11月05日(月)21時27分07秒
http://www.jda.go.jp/jgsdf/

一応ですよ、一応。
40 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月08日(木)23時25分58秒
何とか官舎に帰りついた。
うあぁ・・・、もうダメだ・・・。
あ・・・、先輩に教えてもらった方法を試してみよ・・・。

濃い塩水をコップに半分飲んだ。
3分後、あの独特の胃の辺りのひきつる感覚を覚えた。
同時に酸っぱい液体が食道を駆け上がってくるのが分かった。
トイレに駆け込み、胃の中の苦い液体を便器にぶちまけた。
ケホッ・・・、ケホッ・・・、グエァッ!!
身体の奥からドンドン流れ出てくる。
永遠に続く苦しみに思えた。

んぁ・・・、もう・・・、訓練より体力使うよ・・・。
フラつきながら冷蔵庫を開ける。
うまいことミネラルウォーターなんて買ってあったもんだ。
500ミリのペットボトルがカラになった。
もう何もするのも気だるかった。
ペットボトルを投げつけ、そのまま冷蔵庫の横に倒れ込んだ。
・・・・・。
41 名前:〜第1部 治安出動〜  −第1章 『転属』− 投稿日:2001年11月08日(木)23時26分50秒
目が覚めて周りを見回した。
窓の外では気持ちよさそうに夜が明けかけていた。
・・・こっちは正反対にまだまだ吐けるっつうの。
寝てる間に脱いだのか、気が付いたら何も着ていなかった。
うぁ〜・・・、寒いし・・・。
頭がガンガンする。
あれ?
ドアの鍵も掛かってない。
自衛隊の官舎じゃなかったら完璧に侵入されてるよね。
まさかドアの掛かってない部屋で裸の女が寝てるとは思わないか。

昨日の梨華ちゃんと別れた後の記憶が無かった。
かすかに頭に残っているのが梨華ちゃんの最後の言葉。
『今は何も知らない方がいい』
どういうことなんだろ?
ダメだ、考えてるような思考能力が戻ってない。

そうだ、サウナにでも行って汗と共にアルコールを絞り出そう。
そうすればちょっとは思考能力も戻るかもしれない。
私は24時間営業のスパに行くことにした。

42 名前:全権特使 投稿日:2001年11月08日(木)23時29分28秒
第1章、終了です。

私の受験に伴う日程調整の影響で、
今後、更新は1週間に1度にしたいと思います。

ダラダラ遅くなるかもしれませんが、
お付き合いいただければ有り難く思います。
43 名前:全権特使 投稿日:2001年11月08日(木)23時34分22秒
そうだ、1週間おきの更新をすることを宣言した記念に
今、出来てるところまで更新しちゃいますか。
44 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月08日(木)23時38分39秒

『あれ?』
5回目ぐらいのこの言葉に隊長はとうとうキレた。
『後藤!!』
『ハイ!!』
『交代しろ!! もうお前はコレをいじるな!!』
あ〜あ、とうとう言われちゃったよ。
だからイヤだって最初に言ったのに。
高射砲を撃つのは出来るけど、索敵レーダーの管制なんてまだ私に出来るわけ無い。
『あの〜、私は何をすれば・・・?』
『後方連絡でもしてろ!!』
私は後方連絡班に廻された。

やっと訓練が終わった。
『さぁて・・・、ゴハン食べて寝られる・・・』
大きく伸びをしたとき、高射特科の建物の入口で呼び止められた。
『高射特科の後藤士長、至急正面入口まで行って下さい』
警備の2士が私に言った。
『・・・?』
とりあえず正面入口まで走っていった。
そこにはよく知ったあの人が立っていた。

45 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月08日(木)23時39分35秒

私は高校を中退して陸上自衛隊に入った。
高校3年生の受験時に担任教師と進学のことでケンカして学校を飛び出し、
そのまま学校には行かなくなった。
学校を辞めてから私の生活は自分へのショックと絶望で乱れに乱れた。
最初の1週間は布団の中で涙と共に過ごしていた。
少し落ち着いた時、気付けば私は街にいた。
別にタバコにも酒にもクスリにも興味はなかった。
そして男にさえも興味はなかった。
ただ1つ、死にだけ興味があった。
でもそれにさえも恐怖を感じ、
結局何もせず、何も見えずに、ただ街を1日中歩き廻るだけの日々が続いていた。

そんな生活を2ヶ月ちょっとも送っていたとき、高校の先輩が連絡してきた。
彼女の名前は市井紗耶香。
どこから私の事情を聞き出したのか、急いで連絡をしてきたようだった。
彼女は『ちょっと会おうよ』と気軽に言った。
ハッキリ言って、会いづらかった。
彼女の卒業間際に言われた言葉をまっとう出来なかったことがひっかかっていた。
『後藤、高校を卒業したら一緒に祝おう』
そんな言葉を掛けながら、彼女は卒業していった。
46 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月08日(木)23時40分13秒

市井ちゃん、市井ちゃんと呼んでいた。
彼女は私に色々なことを教えてくれた。
彼女の教えてくれたことは私を確実に変えていった。
高校を稀代の成績で卒業した彼女は、大学へ進学した。
大学でも優秀な成績を修めているに違いない。
高校をも途中で辞めてしまって約束も果たせなかったのに会えるわけないよ。

市井ちゃんは強引に私の家まで来た。
本当に会うのはイヤだった。
でも顔を見た瞬間に涙が出て止まらなくなった。
市井ちゃんは私の震える肩を抱いてくれた。
私はそのまま泣きつづけていた。
一晩中、市井ちゃんの隣で泣きつづけた。

朝になって、涙も涸れた。
市井ちゃんは決して何があったのか聞こうとはしなかった。
でも私は自然と話した。
市井ちゃんはアドバイスをくれた。
『そんなら後藤、死んだつもりで自衛隊にでも入ってみな』
私の運命を変える言葉だった。

47 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月08日(木)23時42分10秒

私は自衛隊の入隊試験を受けた。
『死んだつもりで』、その言葉が決め手になった。
自衛隊でもう一度人生を考え直せばいっか。
2年ほど俗世間を離れてみて、また新たな私を見つけ出そう。
2年後の私はきっと違う人になってるハズ。
そう、きっとなってる。
そう思って、2年の任期制である2士採用試験を受けてみた。
学校を辞める前は学校内で成績は3位だった。
学科試験は全問正解の自信があった。
さすがに身体検査のときに全裸にさせられたのは恥ずかしかったけど、
新しい自分が始まるって気分は入隊までどんどん高まっていった。

新隊員の訓練はたしかにキツかった。
それでも私には新鮮さが勝っていた。
そして自分が変わっていってるのが手に取るように分かった。
学校を辞める前の明るい自分が戻ってきてる、と思った。
48 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月08日(木)23時42分41秒

勤務地が決まり、配属された時、私は市井ちゃんに会った。
最初に掛けられた言葉は『後藤、変わったな〜』だった。
笑顔の市井ちゃんは私の顔を見て開口一番そう言った。
市井ちゃんが言うにはまず顔つきが違うらしい。
その日の市井ちゃんは私が初めて会った人のように思えたらしかった。

『後藤、頑張ってるのが良く分かる』
そんな言葉を掛けてもらった。
そういえば人生で初めて頑張ってるかもしれない。
学校にいた時もそこまで勉強せずとも成績は良かった。
頑張るっていうことを初めて身体で感じているのかもしれない。
49 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月08日(木)23時43分22秒

技能では高射特科に選ばれた。
高射特科は領土内の防空を担当しているところで、
航空自衛隊が戦闘機と高高度ミサイルでの高高度防空を担当して、
陸上自衛隊の高射特科が高射砲とレーダーで低高度防空を担当するなどの、
一応住み分けはついている。
だから航空自衛隊にも陸上自衛隊にも高射ミサイルを装備した部隊がついてるってわけ。

私はそんな高射特科で2年を過ごすことを決められた。
高射砲についての教育をする高射学校というところに少しだけ通った後、
北海道の高射特科連隊に配属された。
部隊では発射管制補助を担当していた。
ま、任期制の2士だから言ってみれば下働き。
私は発射管制補助をする傍ら、高射砲の仕組みを勉強し始めた。
50 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月08日(木)23時44分04秒

最初の配属では先輩より彼我不明機より寒さが一番の敵だった。
特に冬は見渡す限りの駐屯地が真っ白に染まった。
何も無く、ただ白い。
『なんか今の私の人生を象徴してるみたいだね』
そう考えると、不思議な感覚に陥った。

情報や司令部の命令に基づいて第3種勤務体制という緊急配備も何度か体験した。
第3種勤務体制というのは駐屯地の全隊員が非常呼集されること。
実際に撃つようなことはなかったけど、
あれほどの緊張感は普通の人では体験することは不可能だろう。
一番の緊張は、やはりあの事件だろう。

航空自衛隊のレーダーサイトからの情報は戦闘機2機の領空侵犯情報だった。
千歳の基地からスクランブル発進した自衛隊機2機を振り切ったあと、
その戦闘機2機は奇妙な動きをした。
サハリン方面からの侵犯だったので、そのままサハリンに逃げ帰ると思われたのに、
その2機は何とオホーツク海沿いに全速力で飛び始めた。
その先に待ち構えていたもの。
北方4島だった。
51 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月08日(木)23時48分16秒

索敵レーダーが確実に敵機を捉えていた。
既に発射準備は整った。
私は発射ブースの横のレーダー画面に見入っていた。
赤いポイントが2つ、すごいスピードで移動していく。
『後藤、発射準備だ』
後ろから声が掛かった。

結局、何もなかった。
高射砲の発射ボタンが押されることも無かったし、
私もその補助を要求されることも無かった。
北方4島を支配している国家の行動ではなかった。
でもあの事件がずっと先の私たちを動かしていくことになるなんて誰が知っていただろう?

52 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月08日(木)23時49分01秒

そんな2年はすぐに過ぎた。
私は継続任用か退職して再就職するかどうか迫られた。
私は何も考えずに継続任用を選んだ。
2年のうちに新しい自分は見つけられた。

その新しい自分。
そう、自衛隊に人生を掛けよう。
2年間、自衛隊にいるうちに私はそこに居場所を見つけた。
幹部昇進を狙わずに現場のプロフェッショナルになる。

ま、ちょっとぐらいは昇進するのもいいかな。
定年制のある階級までは昇進しなくちゃ。
周りのみんなは幹部登用を目指して頑張ってる。
でも現場を知るプロも必要なんだ。
2年間でそういう考えを身体で学んだ。
現場を知るプロになって、一生を自衛隊に掛ける。
53 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月08日(木)23時49分40秒

入隊当初は自衛隊は熱湯だと感じた。
でもその熱湯に浸かっているうちに、それはちょうどよくなった。
自衛隊を知らない友達は『そんな熱湯によく浸かってられるね』と言う。
でも私はその熱湯から出たら、そこはぬる過ぎるのだ。
やっぱり熱湯がいい。

継続任用を選んで、私は高射特科を極めたくなった。
高射砲によって防空を担当する高射特科。
今までは高射砲の発射を担当していた。
これからは高射砲の全てを知る人になってやる。
でも今日の失敗はちょっとなぁ・・・。
54 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月08日(木)23時50分24秒

『あ、後藤』
市井ちゃんがいた。
『許可証もらって・・・、高射の入口まで・・・、来てくれればよかったのに・・・』
他の部隊も駐屯する広い基地の中で高射特科の建物は正面入口の正反対にあった。
いちいち正面入口まで呼ばれるんだから何か重要なのかと思ってダッシュしてきた。
そこで来てみたら市井ちゃんだったなんて。

『だってどこに所属してるかどうかも分からなかったし、この人も・・・』
市井ちゃんの横には厳しい顔をして小銃を構えた立哨がいた。
『自衛隊の施設なんだから警備だってこのぐらいはするよ』
『でも小銃で呼び止められるなんて思わなかったんだから・・・』
立哨の人に話を聞いたらどうも市井ちゃんはいきなり入っていこうとしたらしい。
昔、左翼過激派が自衛隊施設内で自衛官を刺し殺したりする事件も起こったりしてたから、
立哨の人も一気に緊張したらしくて、警告したんだって。
しかも後藤真希って名前だけを言ったもんだから、
警備所もてんてこ舞いだった様子。
この基地内に後藤って名前が1人しかいなかったのが救いだった。
55 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月08日(木)23時51分03秒

『で、どうしたの? いきなり連絡無しに来たってことは何かあるんだよね?』
『うん、ちょっと・・・』
話しにくそうだった。
いままでなんでも気さくに話してくれた市井ちゃん。
その市井ちゃんが話しにくそうにしているのは一体何度目だろう?
たぶん数えるぐらいしか、無い。
よっぽどのことなんだね。

『じゃ、ちょっと待ってて。 帰る用意してくるから』
私は高射特科の建物まで帰る用意をしに行った。
ほんの20分ぐらいだった。
走って帰ってきた私を見て、警備所の人がメモを渡した。
『ごめん、後藤。 やっぱり帰る。 また連絡するよ』
破った手帳に走り書きでそんなことが書いてあった。
『市井ちゃん・・・』
私は立ち尽くしてしまった。
56 名前:全権特使 投稿日:2001年11月08日(木)23時52分44秒
さて、現在の出来ているところまで更新しました。
それでは皆様、1週間後に。

(-。-) ボソッ(気が変わったら、勝手に更新してるかも知れませんが・・・)
57 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月14日(水)16時51分37秒

私は考えながら官舎に帰った。
ホント、何があったんだろう・・・?
あれは市井ちゃんじゃなかった。
私の知っている市井ちゃんじゃなかった。
う〜ん・・・。

学校終わってから札幌に行って市井ちゃんに会いにいこう。
私が大学の2部に通い始めたのは去年の4月。
自衛隊が学費の援助もしてくれているので、
やっぱり大学に行くことにした。
元はと言えば大学進学のことで学校を辞めちゃったんだから。
やっぱり大学は行きたかった。

そこで新しく出来た大学にでも行ってみることにした。
国際公用外国語大学日本校。
国連の肝煎りで政府も資金を出している一応スゴイ大学らしい。
確かに入るのは難しかったけど。
建て前的には国連で使う公用語を2つ以上話せる人間を増やすのが目的らしい。
そんなにスゴイ大学なんだったら何で東京に作らないのかな?
答えは1つ。
土地が無かったらしい。
なんだか凄く納得できた。
んでもいちいち北海道に作ることないでしょ。
58 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月14日(水)16時53分57秒

大学に着いた。
門を通過して、時計台を見上げた瞬間に授業をサボることを決めた。

市井ちゃん。
このまま札幌の市井ちゃんの家まで行こう。
何も聞けなかったら、こっちから会いに行くのみだよ。
私は踵を返して駅へと向かった。
59 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月14日(水)16時55分02秒

札幌に向かう電車のなかからメールを送った。
『市井ちゃん、今どこ?』
2分後、意外な答えが返ってきた。
『千歳空港』
?!
なんで千歳なの?
私の駐屯地から直接行ったってわけ?

『何で? どっか行くの?』
私は快速電車を降り、急いで千歳空港行きの電車に乗り換えた。
電車が動き出してからもメールが返ってこない。
業を煮やした私はもう一度送った。
『どっか行くの?』
60 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月14日(水)16時56分13秒

長い時が経って、メールが返ってきたのは東千歳駅の手前だった。
『航空自衛隊の基地の前にいるよ』

空自の基地?!
もしかして千歳基地?!
何でそんなところにいるの?!

航空自衛隊千歳基地。
千歳空港に隣接しているこの基地は北辺の護りとしての機能を果たしている。
東側共産主義国家の巨頭が崩壊するまでは
この基地からは絶えず戦闘機が北辺を侵す赤い触手の一端から国土を守ってきた。
彼我不明機北方4島逃走事件の時に戦闘機が出動したのもこの基地からだった。
61 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月14日(水)16時57分09秒

何でそんなところに市井ちゃんがいるんだろう?
私のいる陸上自衛隊東千歳駐屯地は全然違う場所だし、
航空自衛隊に市井ちゃんが用があるとはどうも考えられなかった。

『市井ちゃん、千歳空港の出発ロビーに来て』
今度はすぐに返事が返ってきた。
『後藤、ちょっとの間、東京に行ってくる。 東京行きの最終便で行くから』
全然答えにはなっていなかった。

『市井ちゃん、答えになってないよ。 大体何で東京に行くの?』
長い時のあと、市井ちゃんからのメールは単純なものだった。
『後藤、またこっちからメール送るから。 じゃあね』

このメールが私と市井ちゃんとの最初の別れとなるものだなんて全く予想だにしなかった。
62 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月14日(水)16時58分07秒


悶々とした2週間が過ぎた。

63 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月14日(水)16時58分52秒

3週間目に入ったとき、私の我慢は限界を超えた。
市井ちゃんの携帯に電話をした。
なんだか携帯には繋がらない気がしていた。

やはり予想通り。
電源が入っていないどころではなかった。
携帯の番号は既に存在してはいなかった。
64 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月14日(水)17時00分14秒

また大学をサボった。
今回は札幌にある市井ちゃんのマンションを訪ねた。

もぬけのカラ。
家具も何もなくなっていた。

管理人に話を聞いたが、それによると突然『契約を打ち切りたい』ということだった。
あまりにも一方的だったが、家賃3か月分を置き、
家具もその日のうちに全てが引き払われたらしい。

おかしい・・・。
次の休暇で私は東京に行くことに決めた。
65 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月14日(水)17時01分30秒

私を乗せた飛行機は千歳空港の誘導路をタクシングしていく。
風の状況から今日は航空自衛隊千歳基地を左に見る形での離着陸がなされている。
遠くに見える整備場の中に戦闘機が駐機されている。

急にGがかかり、飛行機が加速しはじめた。
あの独特の感覚を覚えた瞬間にはもう空港と基地が眼下に広がっていた。
66 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月14日(水)17時02分21秒

ひさしぶりの東京に着いた。
いつ以来だっけ?
そうだ、高射学校にいたとき以来だ。

1日だけで市井ちゃんが見つかるわけがない。
でも何もせずにいられない。
自己満足に浸るだけになってしまうかもしれないけど、
何もしないでいるよりマシだった。

まずは市井ちゃんの知り合いに当たってみることにした。
市井ちゃんの知り合いで私も知っている人が何人かいた。
突然訪問しても何も分からない人ばかりだった。
ただ4人目の人は違った。
67 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月14日(水)17時03分18秒

『あぁ、2週間ぐらい前だったかな。 突然訪ねてきたよ』
私は思わず身を乗り出した。
『何を言ってたんですか?! どこへ行くとかは?!』
『どうしたんだよ、急に』
驚くのも当然だ。
『あぁ、どこへ行くとかは聞かなかったなぁ・・・。 車で来てたのは確かだよ』
『車で? どんな車でした?』
市井ちゃんは車の免許を持っていない。
取得したというのも全然聞いていない。
教習所に行ったとか言うのも全然聞かされてはいなかった。

『ん〜、どんな色だったかとかは忘れたけど・・・。 あ、運転席と助手席に男が座ってたね』
男?
じゃあ1人で動いているわけではない。
誰かと共に行動している公算が高いようだ。
『どんな男でしたか?』
『さぁ・・・、夜だったからねぇ・・・。 市井、どうかしたのか?』
『いえ・・・』
私は感謝の言葉を残して、家を出た。
68 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月14日(水)17時04分24秒

あ〜ぁ、市井ちゃん・・・。
どこにいるんだよ・・・。
もう行く当てをなくしてしまった。
手がかりはさっきの人の車のことだけ。

雑踏の中であることに気付いた。
『(あれ・・・? あの車・・・)』
緑の極めて普通のセダンタイプの車。
でもさっきから何度も見かける。
尾行でもされてる?
んでも尾行される理由なんて全くない。
とりあえず用心に越したことはないか。
69 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月14日(水)17時05分52秒

ナンバーを記憶した。
横からや後ろからしか記憶がないうえ、スモークが張ってあるので中が見えない。

曲がり角を左に曲がり、交差点を渡ってから右に曲がった。
さっきの通りとは1本違う道にでた。
数ブロック進んだ時に元の通りに出た。
少し前方にさっきの車が見える。

やはりおかしい。
今度は通りの反対側に渡り、数ブロック戻った。
そして先ほどと同じ要領で元の通りに戻ると、
やはり少し前方に緑の車体が見える。
ナンバーも合っているようだ。

私は確信した。
尾行されている。
その真実を私は知ったが、疑問が湧くばかりだった。
『(尾行される理由なんて本当にないよ。 しかもココは東京だよ?)』

尾行されていると分かれば、もう手段は2つ。
逃げるか、無視するか。

自衛官は決断力が大事。
私はすぐに結論を出した。
構わず市井ちゃん探しを続けた。
70 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月14日(水)17時07分16秒

いつのまにか緑の車は消えた。

私はその後も1日中、東京を歩き回った。
帰りの飛行機の時間もドンドン迫ってきている。
私は羽田に向かって戻ることにした。

羽田空港で私は驚かされた。
千歳行きの最終便にチェックインした私は国内線出発ロビーにいた。
結局、何の情報も掴めなかった私はただ歩き疲れていた。

ヘトヘトになった身体を預けるようにソファに座った。
気が付いたら女性の声でアナウンスが流れた。

『日本国際エアサービス497便、千歳空港行きにお乗りのお客様は搭乗口へお越しください』
その声で私は眼を覚ました。
いつのまにか眠り込んでしまっていた。
『んっ・・・』
首筋が痛い。
変な体勢で寝ていたようだ。
とりあえず首をコキコキ言わせながら、搭乗券を持って私は搭乗口へ並んだ。

千歳行きの便が数本立て続けに出ているせいか、
あまり混雑した様子もなくスムーズに搭乗は行われているようだった。

数名前の客が機械に搭乗券を通すのを見た瞬間、私は全身が凍りついた。

『市井・・・、ちゃん・・・』
1日中探し求めていた人物がそこには存在した。
71 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月14日(水)17時08分27秒

私は急いで搭乗改札を終え、ボーディングブリッジを市井ちゃんの元へ走った。
『市井ちゃん!!』
そう叫ぶと同時に私は後ろから抱きついた。
『あ、後藤!!』
驚いた表情で市井ちゃんは振り返った。

『市井ちゃん、何で何も連絡くれなかったの? 携帯も繋がらないし。 私・・・、私・・・』
3週間も我慢しつづけていた感情が一気に噴出した。

『後藤・・・』
市井ちゃんは何も言わずに、ただ泣きつく私を抱いていた。
いつかのことに似ているこの状況。
市井ちゃんの温かい腕。
涙はどんどん止まるところを知らずに溢れ出ていた。
72 名前:全権特使 投稿日:2001年11月14日(水)17時10分28秒
1週間目の更新作業。

今の気分を言葉に表すと『ふにゃあ♪』。
よく分かりませんね ( ̄∇ ̄)♪
73 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月16日(金)16時45分32秒
『後藤、とりあえず人の通行の邪魔だしさ。 中に入って座ろうよ。 ね?』
数分後、市井ちゃんは人目も気にしたのか私にそう告げた。
確かに通行の邪魔になっている。
人の行き交いができるぐらいしかない狭いボーディングブリッジの片隅を占領してしまっていた。

とりあえず機内に入った。
けっこう空いていたので、フライトアテンダントが『席はご自由にどうぞ』と言ってくれた。
色とりどりに光っている滑走路をゆっくりと動いていく。
比較的小さい機体だったが、一路千歳に向かって飛び立った。
その間、私たちは一言も交わすことはなかった。
74 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月16日(金)16時46分31秒
上昇を終えて安定飛行に入ってから、シートベルト着用のランプが消えた。
市井ちゃんはやっと落ち着いたようだった。
そういえば市井ちゃんは飛行機が苦手だとか言ってたっけ。
市井ちゃんが口火を切った。
『ごめんね、後藤。 何も連絡しないでさ』
『うん・・・』
『もしかして・・・、私を探しに来たの?』
『うん・・・』
『でも、どうして?』
『何も連絡が取れなくて・・・、携帯も何か解約したみたいでメールもアドレスはなくなってるし・・・』
『そっか・・・』
『市井ちゃん、教えてよ。 何でいきなり東京に行ったの? 何で全然連絡も何もくれなかったの?!』
私は自分の声がドンドン大きくなっていくのを感じた。
感情的な声が機内に響いた。
『後藤、落ち着きな』
市井ちゃんは私をなだめる。
でもそれに比例して私の声は更に大きくなった。

『何で何も教えてくれなかったの?! 市井ちゃんはいつでも私に話してくれたじゃん!!』
『後藤!!』
フライトアテンダントが近寄ってきて言った。
『他のお客様のご迷惑にもなりますので・・・』
私は黙り込んだ。
市井ちゃんは結局、千歳に着くまで何も話してくれなかった。
75 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月16日(金)16時47分03秒
ランディングギアが滑走路に擦れる音が聞こえ、
飛行機は千歳空港に着いた。
私たちはすぐに空港を離れ、電車に乗った。
東千歳駅で私は電車を降りなければならなくなった。
76 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月16日(金)16時47分38秒
『市井ちゃん・・・』
市井ちゃんは声を出さずに顔をこちらへ向けた。
『市井ちゃん・・・、もう私に連絡はくれないの・・・?』
市井ちゃんは眼を逸らせた。
『後藤、電車出るよ』
『市井ちゃん・・・、私は市井ちゃんを知ってるつもりだった。 そして一番近い存在だと思ってた』
『またこっちから連絡するから心配しなくていいから』
『市井ちゃん・・・』
発車のベルが聞こえてきた。
私はもう何も言うことは出来なかった。
闇に消えていくテールランプを見送りながら私は何を考えていたんだろう?
私は市井ちゃんも、そして自分までも分からなくなった。
77 名前:全権特使 投稿日:2001年11月16日(金)16時49分29秒
とりあえず出来たトコまで更新。
1週ごとの更新って言ってありましたけどね。
2章が終わるところまでは行けました。

それでは。
78 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月17日(土)00時52分48秒
読んでるよ〜
更新早くなって嬉。
79 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
( `.∀´)ダメよ
80 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月17日(土)02時37分57秒
今日始めて読んだ。
面白い!続きが気になる。他のメンバーは出て来るのか?
吉澤と後藤の接触はあるのか?転属の理由は?領域を侵した戦闘機は?
壮大な話になりそう。期待してるっす。
81 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月17日(土)19時55分56秒
私は官舎に戻った。
帰り道の途中、私は何も考えてなかったと思う。
いや、考えていたのかも知れない。
でも何を考えていたのかは思い出せなかった。
思い出したく無かったっていうのが本音かもしれないけど。
私は風呂も入らず、歯も磨かずにベッドに倒れこんだ。
そのまま寝てしまおう。
でも眠れなかった。
82 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月17日(土)19時56分33秒
結局、グズグズしているだけで朝になってしまった。
休暇の次の日はキチンと出勤しなければならない。
行きたくないよぉ・・・。
でも遅刻したら処罰だしなぁ・・・。
布団の中でダラダラと過ごしていたら7:30を過ぎた。

もう起きなくちゃ。
私は布団を跳ね上げて立ち上がった。

『おはよ〜ございま〜す・・・』
やはり最後だった。
遅刻は免れたが、一番最後になってしまった。
みんなの視線が何故か痛い。
とりあえず私は戦闘服に着替えて集合場所に向かった。
83 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月17日(土)19時57分13秒
今日は私の部隊は訓練の日ではない。
正面入口や通用門などの警衛所での警備担当の日だ。
何しろ広い駐屯地なので小隊ごとに警備担当を割り振る。
私の小隊は正面入口の警備に当たることになった。

入ってくる車を止め、確認をしてから入場許可証を渡す。
いちいち敬礼をしなければならない。
警備強化中ではなかったので小銃や防弾チョッキを持たされることはなかったけど、
戦闘服でヘルメットをかぶって、左腰には40センチぐらいのナイフをぶら下げている。
警衛所の中には普通に外から見えるところに小銃が10丁ほど立て掛けられて並んでいる。
怖いトコだな、よく考えると。
84 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月17日(土)19時58分03秒
交代してから4時間ほど経った。
私はあることに気付いた。
駐屯地は幹線国道沿いにあり、交通量はめっぽう多い。
その向こう側の歩道沿いに1台の車がずっと駐車されている。
私が警衛に立ってからずっとだ・・・。
そう考えると不審に思えてきた。
警衛所のなかにいる小隊長に報告することに決めた。

『小隊長、駐屯地の前に同じ車がずっと駐車されているんですが』
『どれだ?』
2人で窓に寄って、相手から見えないように確認する。
まだ、いた。
『あれです。 あのブルーの車です』
『ん〜、ナンバーからするとレンタカーだな。 いつぐらいからいる?』
『私が警衛に立ってからずっとです』
『それはおかしい。 保安中隊に連絡して道警に通報させろ』
『了解』
『それから念のために警衛所の中にいる人員の4人ほどは武装して待機』
『了解』

警衛所の連絡班員が保安中隊に連絡してから6分ほどで遠くからパトカーの音が聞こえてきた。
保安中隊はすぐに道警に通報したようだ。
私は報告後も門前での警衛に当たっていた。
85 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月17日(土)19時59分18秒
警察官を3人乗せたパトカーは対象車両の前方で止まった。
防弾チョッキを着た警察官が2人、パトカーから降りてきた。
1人はパトカーの運転席に残った。
パトカーを降りた警察官の1人が車の窓を軽く叩き、
職務質問でも行おうとしただろう。
その瞬間に私は、とんでもないことを目撃した。

突然、窓を窺っていた警察官のヘルメットが赤いモノを伴って砕け散った。
直後にその身体が道路の中央まで飛んだ。

その警察官の意識は既に無かっただろう。
もう頭部がなくなってしまっていたのだから。
そこまで見たとき、私は警衛所に駆け寄り、叫んだ。

『撃たれて!! 警察官が・・・!! 早く!!』
動転して何を言っているのか分からなかった。
86 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月17日(土)20時00分35秒
重武装をした隊員のうち、2人が私を警衛所に引っ張り込んだ。
あとの2人が入口の鉄門を閉めに掛かった時、
また銃声が立て続けに3回ほど聞こえた。

多分、助手席側に廻った警察官を撃ったのだろう。
そして車は動き始め、逃走すると思われた。
だが予想に反して車は駐屯地の鉄門を目掛けて加速した。

隊員が鉄門に閂を掛けた瞬間、車は激突した。
『全員、武装して威嚇応戦しろ!! 敵方の発砲があった場合は発砲も許可する!!』
小隊長が怒声を飛ばした。
私も防弾チョッキと小銃、そして防弾ヘルメットに被りなおして
防弾盾を持って外へ駆け出た。

車から4人の男が降りてきた。
その瞬間、パトカーが横から車に体当たりした。
男の1人がパトカーに向けて発砲した。
連射可能の自動小銃のようだ。
パトカーに乗った警察官も瞬間で絶命したようだった。
87 名前:〜第1部 治安出動〜  −第2章 『監視』− 投稿日:2001年11月17日(土)20時01分23秒
『武器を捨てろ!!』
隊員の1人が声を張り上げた。
その声に触発されるように男たちが発砲した。
私の防弾盾にも銃弾が当たったようだ。

『応戦しろ!! 撃て!! 撃て!!』
小隊長が命令した。
私たちは小銃を構え、撃ちまくった。
遠くから連絡を受けたのだろう保安中隊の緊急車両の音が聞こえてきた。

男の1人が銃弾を受けて倒れた。
保安中隊の車両から隊員が車を盾に拳銃を撃ち始めた。
男がまた1人、銃弾を受けて倒れた。
残る男は2人。
パトカーの音が接近してきた。
男たちが死んだ警察官を引き摺り下ろし、パトカーに乗った。
パトカーはサイレンの音を残して走り去った。
88 名前:全権特使 投稿日:2001年11月17日(土)20時08分41秒
読んでくれてる人っていたんですね♪
とっても嬉しいです。

>>78
今後の更新速度は期待しないでください(涙)

>>80
>他のメンバー
はい、そのうち出てきます。

>吉澤と後藤の接触
これもそのうちあります。

>転属の理由
今後ハッキリした形で吉澤に通告されます。

>領空侵犯の戦闘機
第1部第3章以降、及び第2部以降での重要なカギになるものの布石です。

今後の更新速度には期待しないでいただきたいのですが、
読んでくれてる方が1人でもいる限り、全権特使は頑張れます♪
89 名前:名無しさん80 投稿日:2001年11月20日(火)19時38分31秒
全権特使さん、細かいレスありがとうございました。
今回は話しが急展開というか、何かしら起こってきましたね。
続きがとても気になるっす。
自衛隊という組織の中身がわかった気がして、読むとえらくなった気分になれます(w
もちろん、ストーリーも面白くて、引き込まれます。
これからも頑張って下さい。完結までお付き合いさせていただきます!
90 名前:全権特使 投稿日:2001年11月21日(水)02時23分32秒
うわぁ♪
完結までお付き合いいただけるなんて嬉しいです♪
今後もよろしくお願いしますね♪

現在、第3章を書いています。
ちょっと私生活がヤマを迎えているので
更新速度が更に遅くなる可能性がありますが
ご容赦ください。

森板のほうで短篇書きました。
コチラの更新まではあっちを見てみてください。

http://mseek.obi.ne.jp/wood/index.html#1005824919
91 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時40分50秒
サウナに入って18分が経過した。
うぅ・・・、もうダメだ・・・。
昨日の夜に官舎に帰ったときと同じことを考えていた。
このままだとアルコールどころか水分が全部抜けちゃうよ。
今、何時だ・・・?
シャワー浴びてもう出よう。

汗を拭いて朝の道へ出た。
6:37
ふと見たデジタル時計はこんな数字を刻みだしていた。
そうだ、梨華ちゃんの言っていた意味は何だったんだ?
急に思い出して考え込んだ。
『今は何も知らない方がいい』
時期は来る。
私の転属にワケがありそうなのは明白だった。
92 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時41分27秒
考えられるとすれば・・・、松浦の失踪。
やっぱりそれしか考えられないけど・・・、
それがどうして私を異動させる必要があった?
自衛隊が松浦の失踪に関しての情報をそこまで隠す必要はあったのだろうか?
調査隊は、梨華ちゃんはどういう情報を持っているの?
私の疑問はとめどなく広がっていった。
93 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時41分59秒
官舎に帰ると携帯に着信があった。
6:31に公衆電話からだった。
間違いかな・・・?
ま、いっか。
どうせ出なかっただろうし。
94 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時42分55秒
今日の朝はどっかで食べていこう。
そう思ってそのまま官舎を出た。
でもやっぱり考えることは1つ。
梨華ちゃんの言っていたことしか考えることは無かった。
でも同じことしか頭に浮かばないし、
ずっと堂堂巡りを繰り返しているばっかり。
ブラブラと20分も歩いただろうか。
駐屯地の正面入口に着いた。
95 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時43分27秒
目指す喫茶店は駐屯地の裏手に小さく建っている。
転属してきた日に転属手続が終わってから駐屯地の周りをウロウロしていたら発見した、
木造で一見、山小屋のような雰囲気を抱く喫茶店だった。
思わず引き込まれるように中に入っていった。
96 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時44分01秒
内装は窓際にハーブの植木鉢、テーブルは木製というシンプルでセンスのいい店だった。
70歳前後のように見える老夫婦が経営していた。
中に客は誰もいない。
とりあえずカウンターに座り、ベーグルとハーブティーを注文した。
メガネをかけ、人のよさそうな眼をしてエプロンをかけたご主人が話し掛けてきた。
97 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時44分51秒
『お嬢さん、自衛隊の人かい?』
『ええ、そうです。 今日、ここの駐屯地に転属しました』
ハーブティーを淹れていたおばあさんも話に乗ってきた。
『制服がお似合いだねぇ』
『ありがとうございます』
そんな話で打ち解けた私達はしばらく話をしていた。
『ここは案外、自衛隊の人は少ないんだよ』

意外だった。
自衛隊施設のほんの近くに建っているのに、自衛官が来ないなんて。
『まぁ、お茶と軽食ぐらいしか出してないから訓練で疲れてる自衛隊の人には物足りないんだろうねぇ』
『でも美味しいですよ、このベーグルとか。 ハーブティーの種類も豊富だし』
ものの30分ぐらいの間にーブティーは3回ほどもおかわりした。
メニューには15種類ほどのハーブティーが名を連ねていた。

『ありがとう。 そう言ってくれると嬉しいよ』
そう言ったおじいさんの顔は本当に嬉しそうだった。
98 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時45分25秒
確か7:00に開くとか言っていたと思う。
私が喫茶店のカウベルを鳴らしたときには、
もう既に店は開いていた。
店内は朝の光が満ち溢れていた。
客が1人、既にサンドウィッチとコーヒーを前にくつろいでいた。
99 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時45分59秒
『おや、やはり来てくれたのかい』
昨日、店を出る間際に『また来ますね』と言ったことを思い出した。
『このお店が気に入っちゃったようですね』
笑いながらそう答えた。
『モーニングセットにするかい?』
『はい』
『パンはベーグルだね』
『あ、ええ』
何も考えずにそう答えた。
先客をちらりと見た。
髪はロングで茶色がかっている。
朝の光を受けて光っているように見えた。
100 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時46分32秒
やがて目の前に出されたセットはシンプルなものだった。
ベーグル2個とゆで卵、そしてサラダとハーブティー。
だがシンプル イズ ベスト。
ゆで卵はちょうどいい具合に茹であがっており、
サラダの横にちょろっとついたマヨネーズも自家製っぽい味がする。
101 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時47分17秒
だが食べている間にも先客が何故か気になった。
足元には大きいスポーツバッグ、その上で帽子が無造作にひっくり返っている。

一瞬、眼が合った。
私は瞬時に目をそらした。

それに触発されたように先客は立ち上がり、勘定を払って出て行った。
帽子を目深に被り、スカーフを巻いて、まるで逃亡者のように。
それ以来、私はその先客だった人物の記憶は脳の奥底に沈めてしまった。
102 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時47分50秒
ハーブティーを飲み終えて、私は出勤することにした。
店を出る際におじいさんは『また来てくれることを祈って、半分はサービスしとくよ』と言ってくれた。
私は『必ず来ます』と残して店を出た。
裏門から駐屯地に入る。

今日は座学かァ・・・。
座学って嫌いなんだよなぁ・・・。
何か、あの座ってゴソゴソ実習したり、戦略論をノートに書いたりするのが大嫌いだ。
そんなことを考えながら普通科の建物へ向かってプラプラと歩いていった。
103 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時48分24秒
うっとおしい座学が終了したのは昼を回ったぐらい。
今日は戦略概論のシュミレーションをした。
2度ほど失敗したが、教官は『これは慣れが肝心だ』と言っていた。
座学から解放された時に携帯から梨華ちゃんに電話しようとした。
104 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時48分56秒
着信履歴があった。
10:47
また公衆電話からだった。
同じ人かな・・・?
そそっかしい人なんだよ、多分。
そう思い、あまり気にせずに梨華ちゃんに電話をかけた。
105 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時49分29秒
20回以上のコールでも梨華ちゃんは出ない。
朝霞の司令部から調査隊へ繋いでもらおうとしたら、
『調査隊の回線は一般、専用も全て使用中です』
という何とも言えない答えが返ってきた。
あんなに回線がいっぱい引いてあるのに全部使用中?
もう一度、携帯に電話した。
15回ほどで繋がった。
だがその瞬間にこの世のものとは思えない喧騒が耳に入った。
106 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時50分04秒
梨華ちゃんの聞きなれた声が聞こえたのは4秒ほど後だった。
『よっすぃー? 何? 何で電話なんてしてこれるの?!』
梨華ちゃんが早口でまくしたてる。
何でって言われてもなぁ・・・。
『何かあったの?』
『もしかしてよっすぃー、まだ知らないの?!』
『まだって何を?』
『北海道の駐屯地で外部からはっぽうがあったの!!』 
はっぽう?
はっぽうって・・・、何?
『はっぽうって?』
『自動小銃が乱射されたんだよ!! もう命令降りてるからそのうち集合かかるよ!!』
それを言った梨華ちゃんはそのまま電話を切ったようだった。
107 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時50分37秒
はぁ・・・、もうワケわかんない・・・。
何で自動小銃なんて言葉が出てくんの?
命令とか集合とかって何?
ブツブツ言いながら、そのまま食堂へ雪崩れ込んだ。
自衛隊の食事はハッキリ言って多い。
量が半端ではない。
トンカツがドカーンと皿に乗っていることもある。
108 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時51分08秒
そんな糧食を食べていると全館放送が掛かった。
『普通科第3中隊、総員第4駐車場へ集合』
はぁ?
どうせまた抜き打ちの訓練でしょ。
昼ご飯を食べている時にするのは止めて欲しいよ。
109 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時51分47秒
何だろうな?
あ、もしかして災害派遣かな?
自衛隊に入ってから災害派遣は一度も経験してないから
いい経験になるかもしれないな。
でも1つの中隊は60〜70人前後。
災害派遣にそれだけの少人数で行くはずもないしなぁ・・・。
そんなことを考えながら第4駐車場へ走っていった。
110 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時52分19秒
第4駐車場は第1普通科連隊本部管理中隊の倉庫の前にある。
管理中隊とは連隊などの装備や需品の管理を担当している中隊で、
連隊の裏を支えるいわゆる縁の下の力持ちだ。
111 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時52分55秒
中隊長が前に立った。
『敬礼!!』という号令の下、全員が敬礼をする。
中隊長が話し始めた。
『先ほど、北海道東千歳駐屯地で銃撃戦があった。
 外部からの発砲のため、今後、こういう事態が全国で起こらないとも限らない。
 そこで師団司令部からの命令により、警備強化が指示された。
 本駐屯地でも普通科第3中隊による警備強化を実施する。
 詳細な指示は小隊長から聞くように』
梨華ちゃんの言ってたのはこれだったんだ!!
中隊長の話が終わった時、管理中隊の倉庫が開けられた。
112 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時53分26秒
『第1小隊は正面入口における検問、車両検査を行う。
 総員武装の上、直ちに整列せよ!!』
小隊長の指示によって全員が警備用の武装を開始した。
防弾チョッキ、防弾ヘルメットなどの護身具と小銃、ナイフなどの武器を装備する。
武装を終えたところで輸送車両の前に整列した。
113 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時54分03秒
輸送車両では管理中隊の隊員が検問の道具を点検している。
歯医者が使うような鏡の大きいヤツや防弾盾などが車両の奥に山積している。
こちらの隊員たちはただ命令されて動いているだけなので
まだ何が起こっているのかあまり分かってはいない。
多分、小隊長も分かっていないだろう。
分かっているのは連隊長や師団司令部の人間のような幹部ぐらいに思われた。
114 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時54分36秒
梨華ちゃんが焦っていた原因はこれだったんだろう。
多分、既に情報調査は始まっている。
何故発砲されたのか、発砲したのは誰か、自衛隊側の被害状況などの情報収集に追われているだろう。
こういう事件が起こった場合、全国の自衛隊施設に防衛庁から警備強化が指示されるはずだ。
そのために事件の情報調査は事件の起こった北部方面だけにとどまらず、
全国の調査隊が一斉に動き出し始めるはず。
梨華ちゃんとの電話の後ろがうるさかったのも既にパニック状態になっている証左だったんだろう。
115 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時55分08秒
『全員乗車!!』
輸送車両がエンジンをかけ、隊員が乗り込んだ。
駐屯地内といっても結構広い。
正面入口に着いた時には当直警衛担当部隊がおおわらわだった。
鉄門が閉められ、第1小隊が展開する。
駐屯地内への入場許可は必要最低限にとどめられ、
一般人の見学などは全て中止にされた。
耳に入れた無線受信機からは警備内容を指示する無線と、
逐次、状況を報告する部隊からの無線が入り乱れていた。
その無線の中を聞く限り、幹部の方も情報が混乱しているようだ。
116 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時56分21秒
1台の車両が駐屯地に入ろうとしている。
1つの分隊が車両を取り囲み、
運転手に状況を説明し、車両検査と必要なチェックを行っていく。
鏡で車両下部まで念入りに調べ上げた後、その車両は駐屯地へ入ることを許可された。

私は警衛所の横から、それをずっと見ていた。
あの運転手とかがいきなり撃ってきたりしたんだろうなぁ・・・。
隊員は大丈夫だったのかな・・・?
北海道の駐屯地で何が起こったのかは私たちには知らされていない。

ただ、『外部からの銃撃があった』とだけ伝えられた。
梨華ちゃんの口からも同じことしか聞いてはいない。
私たちは命令通りに動いただけだった。
117 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時56分54秒
結局、私たちは日が暮れるまで警衛に立った。
最後まで私たちの駐屯地では何も起こらなかった。
警備強化の命令が解除されていなかったので、
第2中隊が召集されて私たちと交代した。
第3中隊は当直を残して帰ることが許可された。
その時、小隊長に呼び止められた。
118 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時57分24秒
『おい、吉澤』
『はい』
『当直人員の増強しろとのことで、師団司令部から命令が出てる。
 お前、やってくれるか?』
別に帰ってもやることは無いし、何も困ることは無い。
『分かりました。 業務内容は変わりませんね?』
『業務内容は基本的に変わらない。 部隊内の連絡調整だけだ』
私は当直を引き受けた。
119 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時57分55秒
何かがあったときには警衛の援助をしたり、部隊召集の連絡と調整をする。
平時では当直幹部がいるので、基本的には仕事は無い。
今日は警備強化の影響で当直隊員を多く残されている。
何かがあった時の為に即応力が欠かせない自衛隊においては、
何かが起こるという予想がされうる時は官舎や海上自衛隊の場合は艦艇居住をしている者が
特別に召集される場合もある。
120 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時58分27秒
部隊の夕食を食べ、一段落したところでやっと今回の事件の全体像が見えてきた。
テレビや新聞などの報道機関は、こぞってこの事件をトップで扱っている。
『自衛隊 襲撃される!!』や『白昼の銃撃戦 自衛隊施設を襲撃』などと面白おかしくしている。
報道や部隊内での情報を総合して考えると、このように考えられた。
121 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時59分03秒
北海道東千歳に駐屯している陸上自衛隊の施設前で
職務質問を受けた車両に乗った何者かが警察官を射殺し、
直後に陸自駐屯地への車による突入を図った。
突入は陸自警衛部隊によって阻止されたが、
犯人グループは4人組で自動小銃で武装しており、
陸自駐屯地内に対して銃撃を加え、
陸自側も武装した警衛部隊が小銃によって応戦した。
陸自と警察側の被害状況は警察官3人が射殺された。
また、応戦した自衛官のうち、1人が銃弾を受けて重態。
2人が重傷と軽傷を負った。
犯人グループは1人が陸自側の応戦により射殺。
もう1人が同じく陸自側の銃弾を受けて軽傷を負った。
残る2人組はパトカーを強奪して逃走。
札幌方面へ逃げ込んだと思われるが、まだ捕まっていない。
北海道警は広域緊急配備を掛けて、全道を捜索中。
122 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)16時59分34秒
当直に残った隊員の全員がテレビの前でニュースを見入った。
自衛隊側の正当防衛を容認する声が高まっているようだが、
一方、革新勢力の中では自衛隊の虐殺や権力の謀略などを訴える者もいるようだ。
自衛隊や警察は報道協定でも結んでいるのだろうか、
報道は最初の道警本部で行われた記者会見と、
陸上自衛隊北部方面総監部、防衛庁・陸上幕僚監部で行われた説明記者会見の3つの情報を
総合的にまとめたものしか流していない。
123 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)17時00分12秒
いい加減、全員が飽き始めた。
仕事に戻る者、雑誌を読み始める者などと次第に散らばっていった。
私も机に戻って、午前中の座学での戦略概論を復習し始めた。
ふと気が付くと、携帯が光っていた。
20:24
他の隊員に呼ばれてテレビを見ていたときだ。
また公衆電話からだった。
124 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)17時00分43秒
もう間違いではないだろう。
誰かが私に連絡を取ろうとしている。
でも心当たりは無い。
梨華ちゃんでは無いだろう。
調査隊はそんなヒマはないはずだ。
125 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)17時01分13秒
誰?
ま、また電話があるだろう。
たまたまタイミングが悪いんだから、そのうち出られるさ。
そう思って、またノートに目を落とした。
126 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)17時02分14秒
日付が変わり、2時間ほども経った。
私はとっくに復習を終わり、靴磨きをしている時だった。
携帯の着信音が鳴った。
液晶画面を見ると、公衆電話から。
私は外へ出て、携帯の通話ボタンを押した。
耳に入ってきたその声は・・・
127 名前:全権特使 投稿日:2001年11月26日(月)17時05分52秒
はい、更新終了。
第3章は『紅い血の革命』という題名で行きます。
ここで半分ぐらいかな?

ちなみに全権特使は自衛官ではないので、
時折間違う部分がありますし、
小説の為にちょっと制度を無視する場面もありますが、
見逃してやって欲しいです。
(大概の部分は合ってますので・・・)
128 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月26日(月)17時22分57秒
日付が変わり、2時間ほども経った。
私はとっくに復習を終わり、靴磨きをしている時だった。
携帯の着信音が鳴った。
液晶画面を見ると、公衆電話から。
私は外へ出て、携帯の通話ボタンを押した。
耳に入ってきたその声は・・・
129 名前:全権特使 投稿日:2001年11月26日(月)17時37分48秒
何か間違ったね、おれ。
ブラウザで戻っていってたら最後の投稿部分をリロードしちゃった。
↑の128、気にしないで下さいね。
130 名前:レク 投稿日:2001年11月28日(水)21時31分23秒
期待sage
131 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月29日(木)17時59分54秒
『吉澤・・・、先輩・・・、ですか・・・?』
その声を聞いた瞬間に思い出した。
3週間前の初対面。
教育隊と部隊との違いに焦って、夜中に電話してきたこと。
色々なことがフラッシュバックした。
『松浦・・・? 松浦なの?!』
『えぇ・・・、先輩、今どこですか・・・?』
喘いでいる。
何かの痛みに耐えているような息遣いだ。
132 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月29日(木)18時00分41秒
『今どこって・・・、あんたこそ今どこなの?! いきなり相談もなしに退職しちゃって』
『わ・・・、私のことは後で・・・、説明しますから・・・。 今、どこなんですか・・・?』
『転属させられて練馬の1連。 今日は当直勤務だよ』
『先輩・・・、今すぐ・・・、自衛隊を離れてください・・・』
『ハ? 何言ってんの?』
『今すぐ・・・、東京を・・・。 私は・・・、反対したのに・・・! グフッ!』

何かを吐き出した音がした。
地面に液体がこぼれる音が電話を通して聞こえた。
133 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月29日(木)18時01分19秒
『松浦?! どうしたの? どこから掛けてるんだよ!!』
『私は・・・、反対したんです・・・。 でももう止められない・・・。
 すぐに・・・、自衛隊を・・・。 私・・・、先輩には感謝してます・・・。
 だから・・・、先輩を危険に晒したくはない・・・。
 私は・・・、こんなやり方が通用するとも思えない・・・。
 でももう動き始めてしまった・・・。
 2時間後には・・・、東京は・・・、自衛隊が・・・』
『松浦!! 大丈夫なの?!』
『見つかった・・・。 先輩・・・、すぐに・・・、自衛隊を・・・!』
そこまで言った時、後ろで声が聞こえた。
134 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月29日(木)18時01分51秒
『見つけたぞ!!』
『手間かけさせやがって!!』
何かを殴ったような鈍い音がした。

『そんなことはいいからまず電話を切れ』
抑揚の無い、あくまでも冷静な声が聞こえた。
男か女かの区別はつかない。
そこで電話は途切れた。
135 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月29日(木)18時02分32秒
手に持った携帯からは既に一定音しか聞こえなくなっていた。

松浦は何を伝えたかったんだ?
自衛隊を離れろってどういうこと?
2時間後に何があるっていうの?
今、松浦はどこにいるの?

私のそんな疑問は2時間後に全てが分かった。
136 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月29日(木)18時03分06秒
『航空自衛隊芦屋基地に武装集団が警備を突破して乱入した模様。 詳細は不明』
松浦からの電話があって2時間と少しが過ぎた時だった。
緊急全館放送でそういう至急報が流れた。
館内がザワめき、隊員が動き始めた。
137 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月29日(木)18時03分37秒
続けて第2報。
『第1普通科連隊総員、第3種勤務体制へ移行。 
 当直隊員は全隊員を非常呼集し、警備体制を万全にせよ』
私は何が起こったのかを大して理解できず、流されるままに隊員の非常呼集に掛かった。
138 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年11月29日(木)18時04分20秒
後に『血の3週間革命事件』と呼ばれる史上最悪のクーデターが幕を開けた。
139 名前:全権特使 投稿日:2001年11月29日(木)18時05分39秒
中途半端だけど更新。
紅い血の革命の幕開けです。
140 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月30日(金)16時35分55秒
うわぁ…いったいこの後どうなってしまうのか…。
なんか凄い…この世界観?にこう入っていっちゃうっす

PS.あの…森版に書いた短編は…どれですか?…
141 名前:全権特使 投稿日:2001年12月01日(土)01時41分16秒
あ、レスがついてますね。
しかもタイミングがバッチリ。
そう、森板の短篇で新しいものを書き始めたとこです。
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?page_num=10&dir=wood#1005824919
142 名前:名無しさん80 投稿日:2001年12月02日(日)19時44分51秒
おいおいおい〜!!!
これから一体何が起こるってんだ?えーコラッ!
なんで言うんだろう?読んでいて血が騒ぐとはこの事か?
続きが気になる。ちりじりになってるそれぞれがいずれ繋がるのか・・・
面白い!続きまってるっす!
ところで全権特使さんは自衛隊員ではなかったのか。てっきり・・・
元自衛隊員とか?まーいいか。すんまそん。
143 名前:全権特使 投稿日:2001年12月03日(月)14時16分57秒
第3章が出来上がりました。
娘。は出てきません。
内乱事件の経緯が書いてあります。
何しろこの内乱が小説の舞台とならなければいけないので、
その舞台を整えなければ話になりませんもんね。
第1部はその舞台を整えるための大きい序章だったと思ってくれればいいです。

第2部から本格的に他のメンバーが出てきます。
散り散りのメンバーたちも出会います。
第2部から小説が始まるような気がします。

あ、第3章の更新は何時がいいでしょうか?
保障は出来ませんが、水曜日ぐらいにでも?
144 名前:名無しさん80 投稿日:2001年12月03日(月)20時14分21秒
ん?第3章は娘。は出てこない?
今、やってるのが3章ですよね?ムムム、頭悪い、自分?
あっ、わかりました。申し訳!
2部からもっとすごい事になるんですね。楽しみだ。
その前に小説の概要を知っておかないと・・・
更新はいつでもいいっすよ。ってか今でも(w
都合のいい時にして下さい。お待ちしております。
145 名前:L.O.D 投稿日:2001年12月03日(月)22時02分49秒
いいペースで更新してるなぁ。がんばっ!
146 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時30分52秒
航空自衛隊に続き、海上自衛隊横須賀基地が襲撃された。
その襲撃は海上自衛隊の陸上警備部隊が阻止した。
陸・海・空の自衛隊施設が立て続けに襲われ、
しかもそれは全国に散らばっていることから、
警察は自衛隊を標的をした同時多発襲撃事件と認定した。
147 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時31分39秒
警察庁は全国都道府県警察本部に自衛隊施設付近の警備を
最高レベルに強化させ、自衛隊施設の監視を強めた。
それは東京、警視庁も例外ではなかった。
148 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時32分12秒
その日の当番隊、つまり当直業務担当である警視庁第3機動隊は、
連絡を受けた時点から都内の自衛隊施設付近の警備に投入された。
全ての監視の目は自衛隊施設に注がれた。
だが襲撃を敢行した武装集団にとっては、
その『監視の目を逸らさせること』こそが本当の目的達成の布石とするものだったのだ。
149 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時32分45秒
都内に武装集団が散らばって出現した。
第3機動隊は中隊ごとに分担して自衛隊施設の警備に当たった。
その中隊が移動中に武装集団に襲撃され、
隊員たちは銃撃されて、200名近くが重傷を負った。
それが終わると武装集団は本来の目的を開始した。
150 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時33分21秒
最初は中央官庁だった。
総務省、内閣府、財務省、外務省、経済産業省などといった
国家運営に欠かせない組織がどんどんと武装集団の手中に収められていった。
ひとつひとつを襲った人数は30人ほどと見られたが、
連射のできる銃で武装した者たちはすぐに庁舎を制圧した。
151 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時33分53秒
武装集団の手中に渡った官庁は全体で1府6省だった。
内閣府、財務省、外務省、経済産業省、農林水産省、厚生労働省、文部科学省。
これらの機関が襲撃から制圧される間、たった20分も掛からなかったという。
それだけ日本が平和ボケしていたというのが実証された形となった。
152 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時35分15秒
この官庁群の制圧を終わったところで、
武装集団は警察や報道機関に対して犯行声明と予告を出したらしい。
内容は報道によるとこんなものであった。
153 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時38分13秒
『我々、国際共産主義革命戦線「UFA」の革命的戦士たちは
 今回、日本国において一斉武装蜂起し、文字通りの世界同時革命への第1歩を踏み出した。
 現在、我が戦線の革命的戦士たちは日本国の唾棄すべき帝国主義的政治強要を主導してきた
 主要な官庁を怒りの武力と共にして制圧することを目的とした攻撃に邁進している。
 第2次大戦後の米国主導の世界帝国主義に終焉をもたらし、
 プロレタリアートによる新たなる秩序を立ち上げることが我々の絶対的使命である。
 その使命達成のための階級的武装闘争を今まさに開始し、
 プロレタリアートの新秩序を広めることが今回の一斉武装蜂起の最高最終目的である。
 今後、日本国の公的暴力機関やブルジョワ的報道機関を制圧し、
 そのプロレタリアート弾圧の首謀者を処刑することが我々のとりあえずの目標である。
 その後、この日本国から全世界革命へと発展させていくことが我々の使命達成への階段なのである。
 
154 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時38分47秒
我々は今後、行政の中枢を中枢を掌握していく一方で、立法、司法も制圧していく方針である。
 プロレタリアートによる人民民主主義をこの日本国において実現させ、
 世界同時革命、そしてプロレタリアート独裁への
 足掛かりとしていくことへの布石を今、作っているのである。
 世界に散在する弾圧を受けているプロレタリアート達よ!!
 今こそ立ち上がれ!!
 そしてプロレタリアート独裁へ向けた武装闘争を実現し、真の自由と希望を手にするのだ!!』
155 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時39分41秒
この犯行声明が警察と報道機関にFAXで流された時、
警察庁警備局を牙城とする警備公安警察が動き始めた。
156 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時48分53秒
警備公安警察とは、機動隊等の運営をする警備警察と、
超国家主義や共産主義などを標榜して暴力によって国家の存在を脅かしている組織を
取り締まることを生業とする公安警察とに分けられる。
『公安警察=情報警察』と称されるとおり、
公安警察にとって情報とは命綱である。
極右や極左暴力集団の動向などを察知し、組織解明が第一の仕事とされる。
157 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時49分28秒
極右や極左暴力集団の場合、普通の爆弾事件などとは違って、
犯行声明が組織側から出されることが非常に多い。
それはその組織の政治的目的を示すための示威的犯行が多いためだ。
犯行声明が無い場合でも、爆発物の構造や被害を受けたものから、
それまでの傾向から犯人を割り出せることが多い。
なので公安警察の場合、独自の情報を何かと独り占めする傾向にある。
情報警察であるが故、情報が広まることは情報警察の死を意味するからである。
今回の犯行声明によって全国の公安警察は、一斉に動き始めた。
だがその動きも、UFAの組織状況も開示されることは無かった。
158 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時50分02秒
UFAは予告どおりに2次攻勢を開始した。
始めに国会議員の議員宿舎が制圧された。
国会は閉会中であったため、多くの議員は選挙区に帰っていることが多かったが、
与野党の要職に就いている議員が何人か人質になった模様だった。
159 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時50分34秒
次に報道機関も制圧された。
全国ネットの大手民放4局がほぼ同時に襲撃され、放送局は電波ごと占拠された。
4局ともにこの襲撃事件の内容を放送していたが、
その放送は全て中止、以後、UFAによる『革命放送』と称される放送が流された。
160 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時51分04秒
交通の要所も次々にUFAが制圧していった。
東京駅、東京港、羽田空港などのターミナルは完全にストップし、
外から入ってくる電車なども完全に封鎖に追いやられた。
161 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時51分37秒
UFAは空からの攻撃も同時に行っていった。
ヘリコプターなどを使用して上空から攻撃を加えていた。
その最大目標は国会議事堂、そして首相官邸だった。
既に国会議事堂周辺には厳戒態勢が機動隊によって取られ、
UFAの地上部隊も手が出せる状況ではなかった。
そこにヘリコプターが飛来し、地上部隊を援護する形で銃撃を加えた。
機動隊がひるんだ隙にUFA地上部隊は攻勢を強め、
襲撃開始から3時間後の7:00には国会議事堂が陥落した。
162 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時52分09秒
警察庁、警視庁、防衛庁、自衛隊などの治安機関も断続的に攻撃を受けていたが、
いずれも警備が固く、UFAの部隊も撤退を余儀なくされたようだった。
163 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時52分40秒
警察も全く手を拱いていたわけではなかった。
中央官庁が襲撃、制圧されたのと同時期にSATと呼ばれる特殊急襲部隊を緊急召集した。
この特殊急襲部隊はテロや篭城事件に対処するために設置されている部隊で、
機動隊などから精鋭隊員を選びだし、特殊訓練を積ませてある。
この部隊を全国から東京へ結集させる命令を警察庁は出していた。
164 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時53分14秒
UFAによる襲撃が始まってから約5時間後の午前9:00には
全国から集められたSAT部隊が中央官庁など制圧された建物への突入準備を完了した。
この5時間の間にもUFA部隊は、どんどんと勢力範囲を伸ばし、
首都は武装集団の手に落ちようとしていた。
それをなんとしても阻止するために、
SAT部隊は9:15に一斉に官庁等の奪還に向けた作戦を開始した。
165 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時53分46秒
SAT部隊が突入を開始する2時間前。
警察庁内の会議室には警察幹部が一同に会し、
SAT部隊の指揮官も列席していた。
既にUFAからの犯行声明は出されていた。
166 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時54分19秒
『このままでは警察の治安維持官庁としての威信は丸潰れだ!!
 何としてもSATを突入させて官庁を全て奪還しろ!!』
警察庁刑事局長が叫ぶように言った。
すぐに反論の声が上がった。
刑事局とは犬猿の仲であり、SATを含む機動隊の運営もしている警備局の局長が言った。
『UFAからの犯行声明もあるにはあったが、相手の状況も分からない。
 しかも相手は自動小銃で武装していて、1つの建物には30人も居るらしいじゃないか。
 そんなところにいくらSATであろうと派遣することは出来ない。
 隊員の命をむやみに捨てさせるような命令が出せるか!!』
167 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時54分51秒
刑事局長は犬の鳴くような声で言った。
『だがこのままでは自衛隊に治安出動命令が出てしまう。
 それもまた警察の威信は丸潰れだ。
 SATには何億円もの税金が投入されているのに、
 肝心な時になって「命令は出せない」では済まされる問題ではないんだ!!』
168 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時55分22秒
たまりかねたようにSAT指揮官は立ち上がり、言った。
『隊員も人間です!!
 訓練は受けていても、それは対テロであり、
 ここまでの大規模なものは想定していないんです!!』
169 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時55分55秒
その時、国会議事堂が陥落し、国会議事堂周辺の機動隊が全滅したという情報、
そして首相官邸、危機管理センターの警備に全てが動員するという情報が入った。
この情報が会議を決した。
警察組織の最高責任者、警察庁長官が決定した。
『SAT部隊を突入させ、全て奪還しろ』
SAT部隊の指揮官は唸るように言った。
『これで警察も終わりか・・・』
170 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時56分27秒
『突入開始』
SAT隊員が耳につけた無線受令機から指揮官の声が流れた。
隊員を乗せたヘリが最初の奪還目標に選ばれた総務省の屋上に強行着陸し、
地上からも警察の防弾装甲車が4台、庁舎に横付けされた。
黒いアサルトスーツに身を包んだ隊員150名が、
自動小銃などを手に突入していった。
171 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時56分59秒
『全員が突入に成功。 制圧に向けて行動開始』
指揮官の声が会議室に響く。
全国から集められたSAT部隊の精鋭150名が総務省奪還へ向けて突入した。
突入に成功した今、奪還も確実視するムードが広がった。
警察幹部の間には『SATだから大丈夫』という雰囲気が漂っていた。
172 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時57分49秒
だがその雰囲気も次第に焦燥へと変わっていった。
現場からの無線は吉報など1つも入ってこない。
悪い知らせばかりであった。
『屋上からの突入部隊、全滅!!』
『敵方は機関銃を装備している模様!! 応戦できない!!』
爆発音が響く。
SAT部隊の小型爆弾か?!
『敵方から爆弾!! 第3分隊に直撃!!』
総務省奪還作戦は失敗し、帰ってこれたSAT隊員はいなかった。
173 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時58分22秒
UFAから2度目の文面が寄せられた。
『警察諸君、我々UFAは総務省奪還作戦を完全鎮圧した。
 生き残ったSAT部隊員は40名。
 他の隊員は全て我々が怒りの鉄槌を下した。
 警察は今回の作戦失敗で自分たちの無力さを痛感したことだろう。
 もう諸君らには何も出来はしない。
 何もせずに投降をすることをお奨めする。
 我々は12:00を待ち、君たちの投降が認められない場合、
 第3次攻勢として警察庁・警視庁を襲撃する』
174 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時58分54秒
警察はUFAの前に完全に敗北した。
機動隊などによる突入も試みたが、
全て失敗に終わった。
12:00が過ぎても既に警察は奪還も何もできる状態にはなかった。
警察庁・警視庁のビルを守る以外には。
175 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)13時59分27秒
それからもUFAは首都の中で勢力を伸ばしつづけ、
残るは首相官邸、危機管理センターなどの僅かな機関だけだった。
176 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)14時00分16秒
2日後の13:00過ぎ、官邸地下の危機管理センターでは最後の協議がなされていた。
『もう他に方法は無いでしょう』
『警察も手は無いと言っている。 これ以上、引き伸ばすわけに行きません』
東京は完全にUFAによって制圧された。
最終的なUFAの武装集団は都内全域に5万人は下らないと思われた。
あらゆる道路が封鎖され、東京は武装集団の占領地となった。
同盟国も内政干渉になるので手は出せず、
UFAの日本以外の活動拠点を絞るしかなかった。
177 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)14時00分54秒
『分かった・・・』
日本の首相がある決断をした。
178 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)14時01分24秒
『自衛隊の治安出動を命じる』
179 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)14時01分55秒
この命令が出て、初めて自衛隊は施設の外へ出た。
それまでは自身の駐屯地などは警備が出来たものの、
街中の治安維持は警察の仕事であり、
自衛隊は命令がなければ動くことは出来なかった。
自衛隊の初めての自衛権行使は国内に向けて使用されることとなった。
180 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)14時02分26秒
『第1普通科連隊、総員治安出動命令に伴い、集合せよ!!』
やっとむず痒い時間が終わった。
自衛隊は何も出来なかった。
命令がなければ一歩も外に出ることができない自衛隊に
やっと『外に出ろ』との命令が出た。
181 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)14時03分02秒
2日もの間、官邸は何をしていたんだろう?
すぐに自衛隊に出動命令を出していれば、
せめて交通封鎖が終わるまでに命令が出ていれば、
東京はこんな事態にならなくて済んだのではないか?
自衛官達はまたもどかしく思いながら事態を見ていた。
182 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)14時03分35秒
『吉澤ぁ、この一連の襲撃事件ってどう思う?』
ちょうど犯行声明文が報道機関から流されたぐらいの時だった。
私は既に指揮所の連絡係から連隊に戻り、
駐屯地司令が判断して『治安出動の恐れ』として
いつでも出動できる状態で待機していた。
臨戦待機する時は、本当にすぐ戦場へ行ける体制が取られる。
私もずっとヘルメットを被って戦闘靴も履きっぱなしである。
駐屯地の隊員全員がその格好で待機していた。
183 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)14時04分11秒
『さ〜、でもUFAってとこの組織力とかってものすごいものがありますよね』
私は話し掛けてきた先輩にそう返した。
『でもあんまり聞かねえよな。 結成したのが・・・、90年ぐらいだったな。
 その結成当初は何か色々マスコミに言われてたみたいだけどなぁ』
90年代なんて小学生だ。
テレビのニュースになんて全然興味は持たない年代だった。
『私は全然知りませんよ』
『だろうな』
184 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)14時04分44秒
先輩は続けた。
『でもマスコミも結構言ってたぞ。
 「政治闘争の再来」だとか言ってな。
 警察は楽観視してたことをマスコミが叩いてたんだ。
 警察は既に90年ぐらいに武力政治闘争は時代遅れだと思ってたし、
 市民もそういう雰囲気が多かったからな』
『実際、既に武装闘争の時代は70年代から80年代に掛けて終わったような雰囲気ですよね』
185 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)14時05分23秒
先輩はタバコを吸いながらもなお続けた。
『確かにな。 でもそれは街頭武装闘争が減っただけで、地下潜行が進んだことでもあるんだよな』
『あ、そういうことでもありますね』
私たち自衛官は結構、政治に関しての関心が強い。
自衛隊が政治的な問題でもあることの証左であることも明白だからだ。
186 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)14時05分58秒
『ま、調査隊は今頃大変だろうな。 ここまでの事件なら治安出動が考えられないことも無いし、
 そうなった場合は組織の情報を持ってないことには話にならないしな』

『治安出動・・・、あるんですかね?』

『さぁな。 おれの範疇じゃないし。 でも陸幕とかは考えてるんじゃないの?』
187 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)14時06分28秒
90年代に発生した新興宗教が化学物質をばら撒いたりした事件。
陸上幕僚監部や防衛庁は治安出動も視野に入れて準備を進めていたらしい。
最終的には化学科の部隊が災害派遣で化学物質の除去などに貢献しただけだったが、
最悪の場合に治安出動を考えたマニュアルが陸幕で作成されたらしい、
というウワサも耳にしたことがあった。
今回も同じことを考えているのではないだろうか?
188 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)14時06分59秒
結局、自衛隊には何も出来ず、臨戦体制をひいたまま2日が過ぎ、
やっと自衛隊に出動命令が来た。
しかし、初めて自衛力を行使する相手が同じ日本人であることに
何ともいえない感覚を覚えざるを得なかったことも事実だった。
189 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)14時07分35秒
第1普通科連隊に所属する隊員が全員集合した。
駐屯地司令が私たちを前に師団司令部から来た命令内容を説明した。
190 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)14時08分05秒
『本日、13:30をもって内閣総理大臣より陸上自衛隊に対して治安出動命令が出た。
 よって陸上自衛隊による治安の回復、及びその維持を目的とした出動が命令された。
 第1普通科連隊は早急に東京地方の治安回復に当たれとの陸幕からの指示である。
 だが東京地方は武装集団によって完全に封鎖され、
 自衛隊施設付近等以外は武装集団の制圧下に入っている。
 よって普通科連隊は火力による武装集団の制圧、そして民間人の救出が命令された。
 ただちに兵装し、出動せよ!!』
191 名前:〜第1部 治安出動〜  −第3章 『紅い血の革命』− 投稿日:2001年12月04日(火)14時08分41秒
私たちは銃を日本人に向けて撃つことを命令された。
192 名前:全権特使 投稿日:2001年12月04日(火)14時09分30秒
今日はココまで。
いや〜、テスト中は筆が進みますね。
193 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月04日(火)17時30分21秒
大量更新、お疲レンジャー!!(寒っ)
うわぁ…こんな展開になってくとは…。
えっ…とうか…作者さんテスト中だったんすか
学生さん…?!まぁいいんですが…(採点者という可能性もあるしね)
無理せず、でも頑張ってください。(オイ)

PS.森版の発見できました。どうもです。
194 名前:全権特使 投稿日:2001年12月09日(日)00時49分34秒
>>193
大量更新、でも娘。出現率が低いという読者泣かせ。
ごめんなさい。
森板のほうは10番以降まで沈んだら更新します。

現在、第2部第1章を書いています。
ちょっと待たせてしまう結果になるかもしれませんが、
クリスマスイブまでに更新したいですね。
予告どおり、他のメンバーが出てきます。
ゆっくりココアでも飲みながら待ってていただければ嬉しいです♪
(↑『何杯飲めばいいのか?』という類のツッコミはダ〜メ♪)
195 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月14日(金)18時35分37秒
クリスマスまでかぁ…。
ココア…吐くまで飲みましょう(爆)
↑アレルギーなんでココアは無理ですが(苦笑)
 まぁ、紅茶でも飲んでのんびり待ってるです。

もうすぐ、冬休みになるんで…見れるのは正月明けです(涙)
ので、レスできませんが…無理せず頑張ってかいてください。


196 名前:全権特使 投稿日:2001年12月24日(月)05時37分27秒
さて、待たせた割りの少量更新、スタート!!
197 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2001年12月24日(月)05時39分53秒

『市井ちゃん』

この声が私の頭の中を巡る。
昨日、後藤にメールを送った後、
すぐに千歳発の最終便で東京へ行った。
198 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2001年12月24日(月)05時40分53秒
これで何度目だろう?
後藤を騙してしまったのは。

『またこっちから連絡する』

そんなことを言ったが、私にはもう後藤に連絡できる手段は無かった。
連絡なんて出来ないのに、もう知らせることは出来ないのに、
私は妹のように可愛がっていた後藤よりも組織を選んでしまった。
もう私には後藤に慕われる権利も何もない・・・。
そんな自己批判をしながら横にいる小さい女を見た。
199 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2001年12月24日(月)05時41分39秒

『んで、松浦さんだっけ?』

『そう、松浦亜弥ちゃん。 2年ほど前からの同盟員だったんだけどね・・・』
 

200 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2001年12月24日(月)05時42分29秒
パソコンの前に座った私に、その小さい女は解説をした。
パソコンの画面には1人の女についてのプロフィールが出ている。
松浦亜弥。
18歳で陸上自衛隊に入るまでの経歴は
組織に関連する事項以外は全て不明。
組織の情報部門を統括する『安倍機関』と呼ばれる情報機関の
いわば情報調査のエキスパートが経歴を洗ったが、
主だった経歴は発見できなかった。
安倍機関からの報告は『政治思想的には問題なし』。
そして末尾にはこう記されていたという。
『当機関に最も適した人材と言える可能性が高い』と。
201 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2001年12月24日(月)05時43分35秒

『あの安倍機関が人を欲しがったの?!』

『そう、アノ安倍機関が。 信じられないでしょ?』
 
202 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2001年12月24日(月)05時44分11秒
組織員の中での『安倍機関』とは恐怖の存在だった。
組織運営のための情報などを収集するのが組織の表面に向けられた建て前だった。
確かに情報収集能力は最高であり、組織が動くための情報を逐一集めてくるのもこの機関だ。
しかしこの機関は一般人の想像を絶するほどの特性を持っている。
それは『排他性』と『秘匿性』だった。
私たちの組織の中央機関の方針は絶対であり、
内部からそれに反発する者には死という名の粛清が下される。
その反発する者を探し出し、実際に粛清を加えることが
この機関、国際共産主義革命戦線UFA情報局、通称『安倍機関』の仕事でもあった。
203 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2001年12月24日(月)05時45分02秒
何故、『安倍機関』などという通称がついているのか?
私が入党したのは発足当時ではなかったから、
詳しくは知らなかった。
ただ1つだけ、横にいる小さな女、矢口真里に言われたことだけは覚えている。
204 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2001年12月24日(月)05時45分34秒

『安倍機関のことは知らない方がいいらしいよ。 組織のためにも、ね』

私と同じ日に入った彼女は先輩から聞いたらしいその言葉を
忠告するように私に言った
205 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2001年12月24日(月)05時46分06秒
私は5年ほど前から北海道に集中調査員として派遣され、
その間の情報は組織防衛のために全てシャットアウトされていた。
ただ北海道での『革命に関する情報』を一般市民に混じって収集し、
それをありとあらゆるクッションを重ねて『中央本部』に送りつづけた。
206 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2001年12月24日(月)05時46分38秒
一般には『彼我不明機北方4島逃走事件』と呼ばれた
国籍不明の戦闘機2機がサハリン方面から北方4島方面に駆け抜けた事件が起きた時、
私は一般市民の仮面を被って一般市民の調査をした。
一般市民感情など市民の動向をつぶさに調査し、
逐一『中央本部』に報告していった。
今思えばそれは未来的な私の『仕事』の勉強をさせることが
『中央本部』の狙いだったのだろう。
207 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2001年12月24日(月)05時47分28秒
1年に1度ぐらいの間隔で『中央本部』に呼び出され、
直接、話を通しに行くことがあった。
だが今回は違った。
その発端となる矢口からの手紙は実に簡単なものだった。
208 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2001年12月24日(月)05時48分21秒

『今日のサンディエゴは晴れになる予定』

差出人は書かれておらず、茶封筒にそう書かれた1枚の紙が入っているだけだ。
出した主は別にチリの一都市の天気を気にしたわけではない。
派遣されるときに知らされた『緊急帰還命令』だった。
209 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2001年12月24日(月)05時49分15秒
この手紙を見たとき、私は東京へ帰りたくなかった。
高校3年の時に後藤と交わした約束を反故にしてしまう予感がしたから。
それで東京へ行く直前に後藤に会いに行った。
だがやはり後藤と話すのはムリだった。
そして結局、何も言うことは出来ずに東京へ戻った。
東京へ戻ってから1週間ぐらいは矢口に連絡は取れなかった。
代わりに私を迎えに来た組織員が矢口からの親書を手渡した。
210 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2001年12月24日(月)05時49分50秒

『紗耶香へ 革命闘争へ向けたオルグをお願いします。 矢口』
 
211 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2001年12月24日(月)05時50分24秒
そのときは何も感じなかった。
集中調査員の仕事が交代になり、
私は東京での活動に戻れることになっただけ、と感じたに過ぎなかった。
だがオルグ活動に入って1週間が経ち、
矢口に会ったとき、全ての真相を知った。
そしてそこで矢口に関する驚愕の事実をも聞かされた。
212 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2001年12月24日(月)05時52分10秒
それは中央の『政治計画局』と『闘争委員会』、そして『安倍機関』が
3年以上もかけて周到に計画・準備したものだった。
毛沢東の掲げた『新民主主義』のような共闘をエサに
ロシア右翼勢力(共産主義勢力)などから自動小銃や拳銃など
数知れない軍事力を世界中から集めていた。

矢口は計画の内容を少しばかり話したが、私に全てを話す気は無かったのだろう。
今の矢口はもう昔の矢口ではなかった。
矢口は『安倍機関』の情報員になっていたのだ。

そしてもう1つ、その場で私にも新しい役割が矢口から知らされた。
そこで私の記憶は途切れている・・・。

213 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2001年12月24日(月)05時53分08秒

『同盟員、だった・・・?』

『そう、同盟員だったんだけどね、中央指令を無視して脱落した可能性があるの』

『所在は?』
 

214 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2001年12月24日(月)05時53分49秒
そこで矢口は言葉を濁した。
何かを話しにくそうにしている。
もう一度、語気を強めて聞いた。
215 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2001年12月24日(月)05時54分21秒

『この松浦の所在は?』

『ん・・・、掴めてない・・・。 私たちが全力で情報を集めてるけど・・・』
 
216 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2001年12月24日(月)05時55分04秒
話せないわけだ。
安倍機関は組織員の恐怖の存在、故に組織員の連帯を強めている。
つまり脱落時の安倍機関による粛清を恐れ、
それが組織からの脱落の抑制と、中央への忠誠を強制するのだ。
そしてそれは強力な活動家を育成することにも繋がっている。
だが安倍機関が失敗するということは恐怖の存在という意識も薄れてしまう。
故に安倍機関は失敗を公表しない。
だから矢口は私にこのことを話したのだ。

217 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2001年12月24日(月)05時55分55秒

『んで? 私に松浦をどうしろと?』
 
218 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2001年12月24日(月)05時56分29秒
分かりきっていることを聞いた。
だが聞かずには私は動くことは出来ない。
安倍機関の指令をキチンと聞かなければならないのだ。
219 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2001年12月24日(月)05時57分03秒

『ん〜・・・、こんなこと・・・、教宣にお願いすることではないんだけど・・・』

『何だよぉ? 母さんに何でも言ってみな?』

『松浦の発見に協力して欲しいの』
 
220 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2001年12月24日(月)05時57分38秒
その後は何を言ったか覚えていない。
ただ声を荒げてしまったのは覚えている。
それは驚きだけではなく、自分の新しい役割への戸惑いもあったのだろう。
221 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2001年12月24日(月)05時58分10秒
私の新しい役割、それはUFA情報局教宣部門、
つまり安倍機関の新設された部局に就いたのだ。
首都制圧後の一般市民に対する安倍機関の眼を光らせるために
市民浸透を目的とした安倍機関のいわゆる市民対策部門だった。
222 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2001年12月24日(月)05時59分18秒
3年前から調査部門にいたらしい矢口は松浦捜索の指揮を執っている。
しかし計画実行のために人員が割けず、
上部組織からは『下部組織の動揺を誘うから早くしろ』と圧迫され、
安倍機関内にも動揺が広がっている。
上から下から圧迫される矢口は他に頼める人間がいなかったのだろう。
計画が実行に移される直前、4日前に教宣部門にいる私を呼んで、
私の率いる班に動いてくれないか、と言われた。
組織に縛られる矢口の悲痛な表情に私は断ることが出来なかった。

223 名前:全権特使 投稿日:2001年12月24日(月)06時04分29秒
う〜ん、少量だ。

今回は紗耶香ですね。
松浦を追い詰めていきますが。
紗耶香がUFA同盟員でした。

UFAに主眼を置いた章になるので、
今回の更新もそうでしたが、
左翼用語や左翼的な独特表現が出てきますが、
なるべく説明ができるようにしますので、
我慢していただきたく思います。

それでは。
次回の更新は年内にも。
224 名前:全権特使 投稿日:2001年12月30日(日)04時03分07秒
あぁ・・・、年内の更新が危うくなってきましたぁ・・・(涙)
どうすればいいんですかぁぁぁぁぁぁ?!?!?!?!?!
↑狂った?
225 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2002年01月01日(火)01時06分49秒
マターリとお待ちしますので、どうぞゆっくりじっくり更新してください。
226 名前:名無しマスター 投稿日:2002年01月02日(水)17時15分31秒
結局読まなかったのですが…。。うん…まぁよいと思ひます。。
なんか、楽しく書いているようですし(文面から伝わってくる)。
これからも自己を破壊しつつ、頑張ってください。

梨華ヲタマンセー!(苦笑)
227 名前:全権特使 投稿日:2002年01月04日(金)19時34分09秒
>>225
お願いします、マッタリとお願いします(涙)

>>226
最近、どんどん壊れていく自分が分かります(笑)
3回ですね、3回。
1晩で3回ですよ。
でもオレは平等派です(笑)

私は酒が入ると筆が進むことは進むんですが、
あとで自分が何を書いたのか分からないんですよね。
ミスタイ多いし、おかしいこと書いてるし。
その後、自分でその部分をどのように修正していくか
悩んでしまうんです。
今日も酒が入ってます。
既にワインが1本空きそうです<ワイン好きの全権特使
ま、7日に裁判所行った後に更新しようと思います。
それまでにストックが書ければの話ですが・・・(涙)
228 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月11日(金)02時31分57秒
一応、安倍機関の組織員である私たちの班は、
すぐに松浦捜索の情報調査を始めた。
戦闘訓練と情報収集のために陸上自衛隊に潜入させていたため、
自衛隊側への情報流出、または寝返りを疑い、
自衛隊で松浦と接触あった隊員の身辺調査を開始した。
その調査を始めて間もなく、私の班員が変なことを言い始めた。

『自衛隊も動き始めている』。

陸上自衛隊の情報調査部隊、調査隊の牙城である
陸上自衛隊中央調査隊と防衛庁情報本部が松浦の行方を探し始めているらしい、と。
229 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月11日(金)02時32分44秒
私たちの仕事が増えた。
中央調査隊が動き出していることを安倍機関の上部に報告すると、
すぐに調査員の増員が認められた。
中央調査隊は東部方面調査隊を動員して調査網を広げているようだ。

私たちが自衛隊側の情報を突き止めたとき、
まだ自衛隊ではUFAを疑うところまではたどり着いていなかったが、
その発覚も時間の問題だった。
UFAと自衛隊の戦いは水面下で始まっていたのである。
230 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月11日(金)02時33分15秒
私たちは自衛隊側に関する情報も集めだした。
その結果、失踪直前に一番接触のあった自衛官の1人を突き止めた。
吉澤ひとみ、という女性自衛官。
松浦の失踪後、自衛隊が理由もなしに異動させた。
この異動には何かがある。
だが自衛隊内部に送り込んだ組織員からも何も情報は無かった。
231 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月11日(金)02時33分47秒
矢口の班が計画が開始される1日前に松浦の居所を掴んだようだ。
矢口は安倍機関の襲撃班に連絡し、
襲撃班はすぐに松浦をかくまっていると思われる民家を襲撃した。
松浦は、いた。
だが松浦も元自衛官であり、組織から持ち出した拳銃で
襲撃班に向けて発砲した。
232 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月11日(金)02時34分19秒
襲撃班は民家にいた全ての人間を殺害した。
ただ1人、松浦を除いて。
松浦は襲撃班との銃撃戦の末、
腹部に銃弾を受けながらも追跡の手を振り切り、逃走した。
233 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月11日(金)02時35分11秒
松浦の逃亡の報を受けた矢口は怒り狂い、
安倍機関の上層部に大部隊を動かすように上申した。
だが上層部はそれを認めず、
逆に矢口に対して松浦隠匿の疑惑を突きつけた。
タイムリミットは計画を本格始動させる時間、
2日後の午前4:00とされた。
矢口はとうとう追い詰められた。
234 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月11日(金)02時35分53秒
興奮して戻ってきた矢口はその場にいた人間全てに
八つ当たりと上層部への不満をぶちまけた。
安倍機関で班長の役職さえ就いている矢口が、である。
いや、矢口だからこそ、なのかもしれない。

自分が粛清されることへの恐怖。
意志を持つことがなくなった後の身体は切り刻まれ、
体の内側を構成したモノは全て裏の世界へ流れる。
そしてUFAの資金源をして丁重に処分されるらしい。
235 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月11日(金)02時36分39秒
だが、あくまでもウワサであり、ウワサだからこその恐怖である。
安倍機関の構成員といえど、自分以外の構成員の活動内容を知ることはない。

全世界に散らばるUFA最大の機関、安倍機関の構成員でも
世界の何処に、どんな機能を備えた機関があるのかは知りようがなかった。

臓器売買に関しても安倍機関がどのように関わっているのかは分からないし、
UFAの別に機関が実行しているのかもしれない。
236 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月11日(金)02時37分58秒
だが粛清はそれだけでは終わらないのである。
何しろ全世界に展開しながらも日本警察が、そしてインターポールが
八方手をつくしたところで全く尻尾をつかめないような組織である。

粛清の仕方も半端なものでは済まされない。
自分がこの世に存在したという証しは完全に消し去られてしまうのだ。
237 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月11日(金)02時39分15秒
いくら過去を捨て、ただ『革命』のために尽くしている活動家でも、
自分が生を営んでいたという証しが組織によって全て消されるのは
やはり望みたいものでもない。
活動家といえど、完全に自分への心までは失っているわけではないのだ。

238 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月11日(金)02時40分12秒
いつになっても矢口の興奮は留まるところを知らなかった。
部下に吐き捨てるように命令を下し、怒りをぶつけた。
しかし眼には粛清への恐怖を最も近くで見続け、
その恐怖を目の当たりにしてきた者であるが故の怯えに満ちていた。
仕方なく私は矢口に即効性のある鎮静剤を投与した。

矢口に残された時間は40時間に迫ろうとしていた。
 
239 名前:全権特使 投稿日:2002年01月11日(金)02時42分26秒
お待たせしました。
少量ですが、更新です。
ごめんなさい。
それではまた♪
240 名前: 投稿日:2002年01月14日(月)00時25分35秒
自衛隊等の細かい描写をおいても、引きこまれます。
末端から物語の中心に収束していく流れは読んでてとても面白いです。
期待させていただきます。
241 名前:全権特使 投稿日:2002年01月15日(火)03時22分03秒
>>240
細かい描写ってより、マニアックなのかも知れませんよね(苦笑)
物語の中心が未だに見えてこない上に、時系列が複数動いてるので
読みにくいのでは、と感じる今日この頃だったりします。
期待してくださって、どうもありがとうございます。
その期待を裏切ることの無いように努力したいです。

次回の更新、少し遅れそうです。
今週中はないでしょう。
早くて来週中にでも、遅ければ2月になっちゃうかも知れません。
まったりとお待ちいただければ有難く思います。
242 名前:全権特使 投稿日:2002年01月18日(金)02時32分54秒
一度、北海道に帰らなければならなくなった。
計画の実行のために動いていた北海道の下部組織にいきなり動揺が広がり、
安倍機関が活動家数人を捕らえ、2人が殺されたようだ。

元々、北海道には強力な指導者はおらず、安倍機関の幹部が指示を出している状況だった。
計画に直接関連することはなかったが、後方支援に北海道の組織は欠かせない存在であり、
こんな時期に組織が崩壊するのは阻止しなければならない。
そこで私が動かなければならなくなった。

私は羽田に飛び込んだ。

243 名前:全権特使 投稿日:2002年01月18日(金)02時34分12秒
ぐは、間違えた。
題名入れるの忘れたよ、くそぉ。
ってことで仕切りなおします。
244 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月18日(金)02時35分50秒
一度、北海道に帰らなければならなくなった。
計画の実行のために動いていた北海道の下部組織にいきなり動揺が広がり、
安倍機関が活動家数人を捕らえ、2人が殺されたようだ。

元々、北海道には強力な指導者はおらず、安倍機関の幹部が指示を出している状況だった。
計画に直接関連することはなかったが、後方支援に北海道の組織は欠かせない存在であり、
こんな時期に組織が崩壊するのは阻止しなければならない。
そこで私が動かなければならなくなった。

私は羽田に飛び込んだ。
 
245 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月18日(金)02時37分28秒
スンナリと席が取れ、すぐに飛行機に乗ろうとしたとき、後ろから衝撃を受けた。

『市井ちゃん!!』

聞きなれた声。
そして忘れようのない声。

『あ、後藤!!』

でも何故ココに後藤がいる?
後藤は北海道にいるはずじゃないの?

『市井ちゃん、何で何も連絡くれなかったの? 携帯も繋がらないし。 私・・・、私・・・』

後藤は感情が瓦解したかのように泣き喚いた。
私には何も言うことが出来なかった。
 
246 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月18日(金)02時38分35秒

『後藤・・・』

何とか搾り出せた言葉はそれだけだった。
彼女よりも組織を選んだ私。
もう会うことはないだろうと思っていたし、会えるとは思っていなかった。
もちろん、会う権利もなかった。

247 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月18日(金)02時39分44秒
私が彼女に自衛官を勧めたのは、単純に彼女を妹のように思っていたからだった。
組織云々は関係なかった。

もちろん、彼女に勧めたときは組織のことが頭をよぎったりもしたし、
自分が自衛隊を目の敵にする組織に身を委ねていることも引っかかった。

だが彼女を立ち直らせてあげるにも自衛隊のような組織が性に合っていることも、
自分が身を委ねた組織の観点から知っていた。
248 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月18日(金)02時40分34秒
彼女が自衛隊に入隊し、しばらくの間は連絡を取らなかった。
彼女も連絡はしてくる気配はなかった。
頑張っているのだろう、立ち直るために。

彼女が連絡を取ってきたのは教育期間が終了し、配属先が決定した頃だった。
その頃も私は組織の人間として情報を集めることをしていたし、
実際に自衛隊に関する情報収集も何度かやっていた。

だが彼女が連絡を取ってきた時は単純に会いたいと感じた。
それも彼女のことが妹のように可愛かったから。
それだけだった。
 
249 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月18日(金)02時41分13秒

私が北海道を離れなければならなくなったとき、
何故か私の足は空港へ向かう直前に後藤の職場へ向いていた。
入口で後藤に会ったときの後藤を見て、何かを感じた。
それが何だったのか、未だに分からない。

だが、その感覚が非常に怖くなり、私は逃げた。
後藤が帰ってくる前に、そっと。
 
250 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月18日(金)02時42分13秒

数時間後、私は航空自衛隊の基地の前にいた。
何かがあったわけではない。
でも何もなかったわけでもなかった。
今、考え起こせば、それは逡巡だったのだろう。
後藤と別れ、東京に帰る。
そのことに何かの逡巡を感じたのだったと思う。
そこに後藤のメールが来た。



そのメールで私の心が決まり、後藤との別れを決意した。
サヨナラ、妹。
そう感じていた。
涙が込み上げそうになるのをこらえながら空港へ向かい、
最終便に飛び乗ったことを今でも鮮明に覚えていた。
 
251 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月18日(金)02時43分25秒

そして今までとは何もかもが違う3週間が過ぎた。

安倍機関の構成員になり、計画のことを初めて知り、矢口の感じる恐怖を知った。
今も安倍機関の人間としてもう一度、妹がいる北海道へ向かおうとしていた。

一度は別れた妹。
だが妹はそこにいた。
 
252 名前:全権特使 投稿日:2002年01月18日(金)02時44分43秒
相変わらず少量更新でゴメンなさい。
253 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月21日(月)07時19分00秒
まったりお待ちしてます。
254 名前:全権特使 投稿日:2002年01月26日(土)03時59分18秒
>>253
まったりとお待ちいただけて嬉しいです。

今月中にもう1度更新します。
まったりと書いているうちに最近沈むのが早いのに気づいてきてますが、
何しろ書くのが遅いので・・・。
ゴメンなさい。
255 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月26日(土)22時28分31秒

急に我に帰り、後藤に話し掛けた。

『後藤、とりあえず人の通行の邪魔だしさ。 中に入って座ろうよ。 ね?』

ただただ泣いている後藤。
できることならこのまま抱きしめてあげたかった。
だがそれもできない。
私は周囲の人の目を気にすることしか出来なかった。
 
256 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月26日(土)22時29分14秒

フライトアテンダントは席を自由に座らせてくれた。
できることなら離れて座りたかった。
このときほど飛行機が空いていることを恨んだことはないだろう。
漆黒の中に緑や赤のランプがキレイに際立つ滑走路が
私の暗澹たる気持ちを更に引き立てた。
後藤は泣きつづけていたが、私は何も言うことが出来なかった。
私の緊張は飛行機嫌いというのではなく、隣にいる後藤の涙がそうさせていたのだろう。
 
257 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月26日(土)22時30分12秒

飛行機が上昇を終えた頃、後藤の涙も止まっていた。
私の緊張もやっと解けてきた。
私は覚悟を決め、後藤に話し掛けた。

『ごめんね、後藤。 何も連絡しないでさ』
『うん・・・』
『もしかして・・・、私を探しに来たの?』
『うん・・・』
『でも、どうして?』
『何も連絡が取れなくて・・・、携帯も何か解約したみたいでメールもアドレスはなくなってるし・・・』
『そっか・・・』
『市井ちゃん、教えてよ。 何でいきなり東京に行ったの? 何で全然連絡も何もくれなかったの?!』
 
258 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月26日(土)22時31分01秒

私の電話は解約したのは事実である。
いきなり東京へ行ったのも事実。
そして全く連絡しなかったことも・・・。

でもその理由を後藤に伝えることは出来ない。
後藤が心配して私を探しに来てくれたのは分かってる。
突然何も言わずに姿を消した私を心配して。

本当はここで理由を伝えることが一番安心させられる方法なのだろう。
でもそれは普通の理由であった場合。
後藤は私と組織との関係を知らない。
知ったとしたら?
それ以上は怖くて考えられなかった。
 
259 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月26日(土)22時31分49秒

後藤が私から離れるという何ともいえない淋しさから来る恐怖。
妹のように可愛がったこの子がいる組織と、その存在に反目する組織。
例え、この子がそれでも私を許したとしても、
私がそんな組織の人間であったことを伝えていなかったことを許したとしても、
この子が属する組織は私との関係を許すことは無いだろう。
必ず引き離しに来る。
何をしてでも。
 
260 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月26日(土)22時32分40秒

『後藤、落ち着きな』

私にはコレだけしか言えない。
理由を告げず、ただの言葉だけで興奮するこの子をなだめることしか出来ない。
理由を伝えることは至極簡単だった。
何も考えずにただ言葉に出せばいい。
でもそれが私たちの関係を瓦解させる。
私は彼女の心の柱であり、同時に彼女は私の心の柱でもある。
その柱を折ることが私には出来なかった。
 
261 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月26日(土)22時33分40秒

『何で何も教えてくれなかったの?! 市井ちゃんはいつでも私に話してくれたじゃん!!』

『後藤!!』

彼女の声はドンドンと大きくなる。
私は止める術がなく、私の声も大きくなるだけだった。

『他のお客様のご迷惑にもなりますので・・・』

フライトアテンダントがそう言って彼女は黙った。
そして決して彼女は私に顔を向けようとはしなかった。
その沈黙が私には深く突き刺さった。
結局、千歳空港に着くまで私は何も口に出すことが出来なかった。
 
262 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月26日(土)22時34分37秒

千歳空港に着き、電車に乗っても私たちの沈黙は破られることはなかった。
そしてそのまま電車は後藤の降りる駅、東千歳駅に到着した。
後藤は席を立ち、淋しそうに話し掛けた。

『市井ちゃん・・・』

私は何も答えずに顔だけを向けた。

『市井ちゃん・・・、もう私に連絡はくれないの・・・?』

連絡できるわけがない。
私は彼女を裏切っているも同然なのだから。
私は彼女の痛々しい表情に眼を背けた。

『後藤、電車出るよ』

『市井ちゃん・・・、私は市井ちゃんを知ってるつもりだった。 そして一番近い存在だと思ってた』

『またこっちから連絡するから心配しなくていいから』

またウソをついた。
  
263 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年01月26日(土)22時35分22秒

『市井ちゃん・・・』

後藤がもう一度そう言ったときに発車を知らせるベルが鳴った。
もう彼女は何も言わずに電車から降りた。
そして動き出す電車。
彼女は無表情に電車を見送っていた。
 
264 名前:全権特使 投稿日:2002年01月26日(土)22時38分56秒
来週は結構時間があることも多いと思います(←勉強しろよ)
なのでちょいとだけ更新しました。
少量更新ってイヤですか?
大量に更新する方がいいんですかね?
読者の皆さん、どうでしょうか?

−第1章 『計画』−はもうちょっと続きます。
 
265 名前:名無し読者@市井さん復活おめでとう! 投稿日:2002年01月29日(火)22時49分58秒
随分と長い小説をお書きですね。
そうだ、私も聞いた話なのですがおもしろい話があったのでこの場をお借りして書かせていただきますね。

確かあれは、ある夜に行われた会話で、とあるアイドルについての話だった。
この女性の話になると活気に溢れ、とても盛り上がる高校生がいた。
それをA氏としよう。A氏は自分が彼女にのめり込んでいると言うことに自覚をしていない。
しかし、A氏は明かに彼女を『女性』として“性の対象”ともしている。
その証拠にはA氏の発言から見て取れる。
「想像の中ではすでに処女膜をぶち抜いている。」
「確実に最低3回はするね。」
A氏は
自分ではそのアイドルだけが好きなのではなく、他もみんな好きだ。
と主張するが、他のアイドルでそういったことを考えることも少ないということもわかっている。
そこまで言うのにも関わらず否定しつづけるA氏。
おそらくA氏も、ここまできてしまって引っ込みがつかなくなってしまったのだろう。
しかしここであえて、そのアイドルに対する『Only One』というのを見せてもらいたいものだ。
いつまでも子供みたいな言い訳が通じるわけではないのだから。
266 名前:全権特使 投稿日:2002年02月11日(月)03時47分35秒
とりあえず復活したようで。
サザエさん、おつかれさまです。

>>265
へぇ、誰のことですか?

>>娘。小説保存庫管理人さん
この作品を収録していただきましてありがとうございます。
とっても嬉しく思います。
今後も頑張っていきますので、よろしくおねがいします。

この作品の復活は17日頃の予定・・・。
267 名前:全権特使 投稿日:2002年02月21日(木)14時27分18秒
少し個人的な事情ができまして、
この小説『道標』の更新を3月7日(木)まで停止いたします。
ストックもありますが、それも含めて7日に全てアップいたします。
2月17日に復活すると宣言したところで申し訳ありませんが、
何卒ご理解のほどをお願いしたく思います。
268 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月08日(金)03時59分18秒
3月7日が過ぎてしまった(哀
この日(3/7)を指折り待っていたのに・・・。
でも次の更新待ち続けております。
269 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月08日(金)12時19分08秒

電車は札幌に向かって走っていた。
このままどこまでも走っていって欲しい。
もう全てから解放されたかった。
組織からも後藤からも。
270 名前: 〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月08日(金)12時20分13秒

もう後藤との縁は切らなければならないだろう。
明後日には計画が本格的に実行に移される。
そうなると後藤のいる組織とは完全に対立し、
場合によっては、その組織を壊滅させることにも着手するかもしれない。
今まで後藤という人間が近くにいながらも安倍機関のような秘密組織に入ったのは
何かの手違いのほかに考えられなかった。
だが計画が始まれば、後藤との関係は捨てなければならないものの1つだった。
271 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月08日(金)12時21分02秒

昔、ドラマでこんなことを言っていた。

『何かを成功させたければ何かを捨てなければならない』

共産主義革命を成功させるためには、人民による政治を実現させるためには、
それに反する権力の暴力機関の最高峰に位置する自衛隊にいる後藤との縁は切らなければならない。
私の共産主義への入れ込みは単純なものであった。
政治に興味を持ち始めた頃の政治への絶望が、そのまま横滑りしただけの。
そして今もそう感じている。
272 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月08日(金)12時21分42秒

何も考えることもできないままに電車は札幌駅に着いた。
北海道の下部組織の連絡員と接触し、幹部のいる場所に誘導してもらう。

そこは札幌の歓楽街の一角にあった。
どこにでもあるような喫茶店。
だがその喫茶店にはある特殊な造りがあった。
それこそ北海道の下部組織の司令部だった。

安倍機関からその組織に派遣されている連絡員と、その組織の実質上のトップ。
その2人からイザコザの原因を聞き出したとき、
私は思わずその場所から逃げ出したくなった。
273 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月08日(金)12時22分31秒

なんと安倍機関は計画の前段階で北海道のある場所を
その下部組織に襲撃するように指令を出していたのだ。
その北海道のある場所。
陸上自衛隊東千歳駐屯地、後藤のいる自衛隊施設だった。

しかも安倍機関の出した指令はただの襲撃ではなかった。
安倍機関がロシア経由で入手した武器を使って駐屯地を急襲し、
自衛官を全て殺害、武器弾薬を全て奪ったあとに爆破するという
最近の小学生でも考えないような作戦の立て方だった。
274 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月08日(金)12時23分46秒

勿論そんな作戦が成功するはずも無い。
安倍機関の方にも成功させる気は全くない。
安倍機関の真意は既にそこには無いのだから。

北海道の下部組織、その全てを計画のための踏み台にすることが
安倍機関の幹部、そしてUFAの幹部が考えた非道の作戦だった。
つまり下部組織が動き始めた瞬間に派遣されている連絡員を引き上げさせ、
その直後に警察へ通報する。
勿論その内容は『テロ情報』である。

『北海道の過激派がテロを計画しているようだ』と。
 
275 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月08日(金)12時24分25秒

少し詳しい情報を警察に流せば、警察は情報収集を開始する。
そして公安の眼が北海道に向いた瞬間に
UFA部隊5万人が東京郊外に散らばって時間を待つ。
情報上の敵、公安の眼は全て北海道に向けられて、
UFAへの眼が全くゼロになるようにすることが安倍機関の真意なのだ。
 
276 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月08日(金)12時25分12秒

だが北海道の幹部は反対した。
勿論そんな幼稚な作戦に対して、である。
安倍機関の連絡員はそれをつっぱねた。
北海道の組織にコレが出来なければ、それは計画の失敗を意味する。
双方の言い争いは2日間に及び、遂に昨日、安倍機関の連絡員が手を出したのだ。

そして今、私が来た意味さえも無くなった。
 
277 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月08日(金)12時26分13秒

5人の亡骸を目の前にして私は唸った。
安倍機関の連絡員は表情を崩さず、淡々と血のついた服を着替えて出て行こうとした。
 
278 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月08日(金)12時26分55秒

『どうするつもり?』

『もちろん、彼らは反革命分子だった。 それだけです』

『そういうことじゃない!!』

『そういうことですよ』

『私は人がただ殺されるのを見に来たわけじゃない!!』

『ただ殺されたんじゃないでしょう。 私は反革命分子を粛清しただけです。
 計画は滞りなく実行されますよ』
 
279 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月08日(金)12時27分33秒

私は凍りついた。

『革命のため』『革命のため』『革命のため』。

安倍機関は『革命のため』には何でもするのだ。
今さらながら、自分のいた組織ながら、私は改めて怖くなった。
逃げ出したい。
もう革命なんて言ってられない。
コレはただの犯罪だ。
革命のための一歩ではない。
 
280 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月08日(金)12時28分36秒

『計画の開始時間を遅らせることは出来ないんです。 もう連絡がつかない部隊も多いですから。
 みんな武器を持って北海道の襲撃を待っているんです。 
 こんな反革命分子の相手をしている時間はありません』

『じゃぁどうするつもり?』

『札幌を城にしている暴力団に身元を隠して接触します。
 もちろんカネにモノを言わせることになるでしょうがね。
 彼らには武器と車、そしてカネを渡して実行させます』

『相手は自衛隊だよ?』

『やるのは暴力団です。 しかもちゃんと過激派を名乗らせるようにしますよ。
 ところで市井さん、ココでこんなことしてていいんですか?』

『何が?』

『何だ・・・、まだ聞いてないんですね』

逃げられない理由がまた出来た。
 
281 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月08日(金)12時29分26秒

『矢口さんが失踪したらしいです』
 
282 名前:全権特使 投稿日:2002年03月08日(金)12時31分17秒
>>268
ごめんなさい。
昨日は寝ちゃいました・・・。
指折り数えて待ってくださったのに・・・(涙)

今日から復活です。
まったりと更新していきます。
283 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月12日(火)02時02分28秒
ヤッタ、更新されてる(嬉
284 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月18日(月)00時47分01秒
ここ毎日来てるのに全然気づかなかったっス。ナサケナシ……
保存庫経由です。
こういうタイプの小説は、知ってること・好きなことを書きたいだけという感じがするものが多いが、
これはしっかり構成を練り上げていて、とても読み応えがあります。
さらなる更新を期待してます。

……マジレスってなんか恥ずかしい
285 名前:全権特使 投稿日:2002年03月18日(月)04時43分58秒

>>283
喜んでいただけて私も嬉しいです。

>>284
お褒めの言葉、ありがとうございます。

更新を期待されるって、とっても嬉しくなりますね。
レスをいただけるのってこんなにもやる気が出るとは最近まで知りませんでした。
期待されると照れくさいですが(笑)
マジレス、大いに結構です♪
構成を誉められちゃったりしたら、
もう眼をキラキラさせて次の段落へ進むことができます(嬉)

次回更新はストックを含めて全て放出します。
第2部第1章を一気に終わらせて、第2章に移りたいと思ってます。
しばしのお待ちを・・・。
 
286 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月21日(木)03時39分43秒

数分後、私にも連絡が来た。
その時、連絡員とは反対の方向へ歩き始めていた。

もちろん組織を裏切ったわけではなく、
並んで歩くことに気が引けただけだった。
そして何かイヤな予感がしていた。
 
287 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月21日(木)03時40分21秒

闇ルートに闇ルートを重ねて手に入れた携帯電話。
それが急に鳴りはじめた。
機密保持のために普段は電話がかかってくることは無い。
そこに掛かってきたという意味。
それは『緊急事態』だった。
 
288 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月21日(木)03時41分31秒

『紗耶香!!』

『えっ・・・、矢口?!』

『紗耶香、今どこにいるの?』

『そんなことより矢口、安倍機関から抜けたって本当なの?!』

『そんなことはどうだっていいから!!』
 
289 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月21日(木)03時42分17秒

全く話は噛み合わない。
両方が両方とも焦って相手の安否を確認するなんて。
まず・・・、まず落ち着け紗耶香。
矢口は今、逃亡中なんだ。
誰にも頼る人はいない。
私がどうにかして助けないと。

『矢口、まずは焦って仕方ないから。 ね? 落ち着いてよ』

『そんな落ち着いてられる状況じゃないよ!!』

矢口は何をそんなに焦っているのか?
もう逃亡したんなら、逆に私に電話してくるなんてどう考えても不自然でもある。
とりあえず矢口の話を聞こう。

『ねぇ、矢口。 とりあえず・・・』

言いかけた瞬間に矢口特有の高音な怒声が耳を貫いた。
 
290 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月21日(木)03時43分11秒

『紗耶香!! 紗耶香のことなんだよ!!』

『えっ・・・?』

ワケがわからない。
私のこと?
私のことって、今は矢口のことだよ?

『後藤真希って自衛官のことが安倍機関の幹部にバレたんだよ!!』

市井ちゃん。
確かにそんな声が頭に響いた。
 
291 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月21日(木)03時44分17秒

当たり前だといえば当たり前だった。
今まで後藤との関係が安倍機関、そしてUFAにバレなかったなんて話があるはずが無かった。

『それでね、紗耶香。 矢口・・・、紗耶香に関する情報を持って・・・』

矢口は突然泣き声になり、何も話さなくなった。
電話の後ろでは車のエンジン音だけが聞こえていた。
私はただ茫然と矢口が話し始めるのを待っているしかなかった。
何分待っただろう?
何十分待っただろう?
何時間も待っただろう?
私には居心地の悪すぎる時間だった。
矢口の声が聞こえた時、私は正直言ってホッとした。
 
292 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月21日(木)03時45分43秒

『あのね・・・、』

『矢口、失踪したって話が・・・』

矢口は私を遮った。

『紗耶香、とりあえず今は時間が無いの。 いい? 矢口が誘導するから・・・』

『うん・・・』

『もう紗耶香への追っ手は放たれたよ。 今、北海道にいるんでしょ?
 昨日、突然私のところへ安倍機関の人間が来て私を監禁したの。
 北海道の連絡員には私が失踪したと伝えられてるみたい。
 紗耶香をいちいち北海道に行かせた本当の理由は分からないけど、
 北海道へ行かせたのは紗耶香を調停役にするためじゃない。
 紗耶香、とりあえず身を隠して。 私はできるだけの手助けをするから・・・』

『矢口・・・、矢口はどうするの?』

『私は紗耶香とその自衛官とのことを調べたフロッピーを持って逃げてる。
 幹部の考えてることを知ったときにはフロッピーだけ隠しちゃおうかとも思ったんだけど、
 監禁されてたところから逃げるときにしくじっちゃって私も裏切りもの扱いになっちゃった。
 それに・・・』
 
293 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月21日(木)03時47分13秒

『それに・・・?』

『ううん、何でもない。 とりあえず早く逃げて!
 紗耶香は捕まったら拷問に掛けられちゃう!』

『矢口、後藤はどうなるんだろう?』

『その自衛官? それだったら大丈夫っぽいよ。
 ファイルからだと幹部どももそっちの抹消指令は出してないみたい。
 とにかく早く逃げて!』
 
294 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月21日(木)03時48分04秒

その言葉を合図に私は脱兎の如く走り始めた。
どこへ行くでもない。
とにかく無我夢中で走った。

もう誰を助けるということも出来ない。
私が安倍機関、そしてUFAに姿をあらわしたところで、
後藤との関係を言い訳するどころか、私の生命が短くなるだけだった。

もう私も矢口と同じくしてUFAには戻れない。
安倍機関に捕らえられ、UFA幹部の面前に引きずり出されること。
そして拷問を受けた後に惨殺されるだけ。
私とUFAとの関係はそれだけになった。

それならもう自分を守るしかなかった。
自分を守ること、それだけしかできなくなった。
 
295 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月21日(木)03時49分17秒

でもせめて、せめて後藤にだけは知らせたい。
後藤の身に危険が迫っていることを。
それはある意味での後藤への償いだろう。
こんな日が来ることは自分なら予想がついたはずだった。
しかしそれが分かっていながら自衛隊を薦めたのも私だ。
一種の責任という感覚が私を支配していた。

だが後藤を助けるにはあまりにも時間は無さ過ぎる。
それに後藤を助けるまでに私が殺されてしまえばそれでオシマイだ。
矢口によると後藤に対する抹消指令は出ていないみたいらしい。
それでも、私は後藤を助けたかった。

矢口にも迷惑をかけている。
私と後藤との関係なんだから、何もせずに見過ごしていれば、
矢口には何ら関係の無いことなのだ。
こんなことをすれば矢口自身も安倍機関に追跡される身になる。
それは命を投げ出したのと同じことでもあるのだ。
それでも矢口は私に知らせようとしてくれた。

私の背中にある十字架は2人の命をも背負っていた。
 
296 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月21日(木)03時52分04秒



そして・・・。


 
297 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月21日(木)03時53分35秒

計画は予定通りに実行に移された。
私は何もすることが出来ずに、
ただ事の成り行きを見送るしか出来なかった。
後藤のいる基地が、そして各地の自衛隊基地が襲撃されて、
東京が武装した組織の手に落ちていく全てを
ただ見ていることしか出来なかった。
 
298 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月21日(木)03時54分57秒

ごめん、後藤。

市井ちゃんは妹を助けることすら出来なかったよ。

自分を守ることしかできなかったよ。

ごめんね。

そしてどうか生きていて。
 
299 名前:〜第2部 対峙〜 −第1章 『計画』− 投稿日:2002年03月21日(木)03時55分57秒


後藤の上にも繋がってるはずの空を見上げて私は言った。

 
300 名前:全権特使 投稿日:2002年03月21日(木)04時02分19秒

第2部第1章、終了です。

次は第2章へ。
まぁ、気長に待っていただければ嬉しいんですが。
 
301 名前:名無し読者。 投稿日:2002年03月30日(土)21時03分53秒
章立てがわかりにくい。(見にくい)
普通は第1章−第1部となる。
302 名前:全権特使 投稿日:2002年03月31日(日)11時46分28秒
次回更新より改善します。
ご指摘ありがとうございます。
303 名前:読んでる人 投稿日:2002年04月01日(月)21時50分13秒
今まで、こんな面白い小説があったのを気づかなかった・・・。
不覚だ・・・。
次回更新楽しみ♪
304 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月14日(日)07時22分18秒
更新まだかなっと。
書いてみたりする。
305 名前:全権特使 投稿日:2002年04月15日(月)02時00分47秒
ごめんなさい。
気が付けば2週間以上も更新してませんね。
楽しみにしていただいてる方には本当に申し訳ないです。
そろそろ更新を考えていますので、
もう少し待っていただきたいと思います・・・。
m(。−_−。)m
306 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月03日(金)06時19分25秒
作者さんが復活宣言をされてから更に2週間以上。
作者さんも忙しいようで、催促なんてと思い、じっと我慢してきたけど・・。
楽しみにしてるお話だけに待つ身はもつらいなぁ。
307 名前:全権特使 投稿日:2002年05月07日(火)21時51分27秒
復活宣言からの作者がエグイほどの忙しさを被りまして、
未だにヒマが出来てません(涙)
少しずつ少しずつ書き足していってるのですが、
更新している時間もありません(血涙)
ただ1つ、これだけは読者の皆さんに誓います。


『絶対に放棄しません!!!!』


待ってていただけますか?
308 名前:gg 投稿日:2002年05月07日(火)23時27分28秒
作者〜を〜信じ〜て〜待つのだぴょ〜んカッカッ
309 名前:読んでる人 投稿日:2002年05月09日(木)10時15分06秒
名作集で待つコトには慣れてます。
310 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年05月09日(木)14時57分59秒

内乱が始まって1週間。
私たちに治安出動命令が下ってから5日という時間が過ぎた。
 
311 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年05月09日(木)14時58分49秒

この5日間。
私たちの戦果は悲惨といっても過言ではないほどのものだった。

ゲリラ戦を得意とし、主戦力は南米でゲリラ活動の訓練をしたというUFA。
そして元々は防衛戦闘を目的とした訓練を積んでいる自衛隊。

東京という大都会を舞台にした市街戦において、
どちらが圧倒的に有利なのかは火を見るより明らかだった。
 
312 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年05月09日(木)14時59分21秒

『本日、13:30をもって内閣総理大臣より陸上自衛隊に対して治安出動命令が出た。
 よって陸上自衛隊による治安の回復、及びその維持を目的とした出動が命令された。
 第1普通科連隊は早急に東京地方の治安回復に当たれとの陸幕からの指示である。
 だが東京地方は武装集団によって完全に封鎖され、
 自衛隊施設付近等以外は武装集団の制圧下に入っている。
 よって普通科連隊は火力による武装集団の制圧、そして民間人の救出が命令された。
 ただちに兵装し、出動せよ!!』
 
313 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年05月09日(木)14時59分59秒

この命令を受け、私たちは戦闘活動のための装備を着装し、
輸送車に乗り込んで制圧された市街地へと向かった。
 
314 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年05月09日(木)15時04分17秒

初めての実戦。
輸送車の中で私たちへ向けて必死に檄を飛ばす指揮官の声が震えていた。
その震えはまるで私たちの未来を象徴しているようにも聞こえていた。

輸送車の外には普段はビジネスマンばかりが歩き回り、
超高層ビルに囲まれた日本経済の中心である大通りが
いまは誰もおらず、まるで違う世界に来たような雰囲気を出していた。

『本当に違う世界なんだよ・・・』

1人の隊員がボソッと言った。
私もそう思い込みたかった。
 
315 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年05月09日(木)15時04分54秒

『全員降車!! ただちに配置に就け!!』

指揮官の声が飛び、私たちは輸送車から都心の大通りに飛び降りた。
一緒に走っていた輸送車5台からも隊員が飛び出し、
自身の任務に取り掛かっていく。
 
316 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年05月09日(木)15時05分55秒

私の所属する第1小隊には5つの分隊があり、
その第3分隊のなかの第4班長として私は部下数人と共に輸送車から離れた。

私たちのいるずっと前に現場に到着し、状況を見極めていた偵察隊と合流して、
その状況報告を主力部隊に伝える任務を受けていたのだ。

班員5人を引き連れ、偵察隊のいる方向へ走り出したとき、
主力部隊が展開している方向から
ものすごい爆音が耳を貫き、同時に爆風で身体を押し倒された。
 
317 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年05月09日(木)15時06分56秒

後ろを振り返った時、私たちが乗ってきたはずの輸送車はコナゴナに消し飛び、
火だるまになった隊員たちの叫び声が聞こえた。
そして爆発した輸送車の火は次々に周りの輸送車や弾薬に火をつけ、
辺りはまさに火の海と化していった。
 
318 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年05月09日(木)15時07分59秒

『班長!!』

班員の声で我に帰った私は、重大な決断を迫られた。
前方にいる偵察隊と合流するか、ここで主力部隊の救出をするか。
私は迷った。
小さな班の指揮官である私はその2つの選択を迷った。
だが次の瞬間、その選択さえもできないような状況が目の前に起こった。
319 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年05月09日(木)15時09分16秒

未だ火の海である主力部隊のいた両側のビル。
そこから銃声が発せられた。

パーンという音に続き、断続的な掃射音。
機関銃?!

生き残った隊員たちが抵抗も出来ずに次々と血を流して倒れていった。
 
320 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年05月09日(木)15時10分23秒

まだこちらには気付いていない!
だが気付かれるのも時間の問題だ。

主力部隊は全滅。
前方には偵察隊がいる。
このまま此処に留まっていても敵の銃弾に倒れるだけだ。

『自衛官は決断力が大事!』

梨華ちゃんの言葉が頭をよぎり、私は決断した。
 
321 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年05月09日(木)15時11分39秒

『偵察隊のいる場所までビルの裏側を走れ!』

私の声に班員は頷き、同時に走り始めた。
ビルとビルの隙間を縫いながら私たちは走りつづけた。
ただひたすら偵察隊を目指して。

走り出したとき、耳の中に入っている無線受令機は
主力部隊の最後の叫びを司令部に伝えていた。
 
322 名前:全権特使 投稿日:2002年05月09日(木)15時12分49秒
少量更新。
323 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月10日(金)07時13分31秒
今日初めて読んだ。
おもしろい。
がんばって。
324 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年05月25日(土)18時44分17秒

部下たちは何も言わずにひたすら走っていく。
彼らの耳にも無線受令機は入っている。
私と同様に主力部隊の叫びは聞こえているはずだった。
 
325 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年05月25日(土)18時45分05秒

同じ部隊、同期の隊員、苦しみを分かち合った者たち。
私と違ってずっと一緒に暮らしてきたはずの彼らの仲間。
その仲間たちが訓練の成果を発揮することもなく無抵抗のまま殺されていく。

彼らの苦しみは私の理解を遥かに超えているだろう。
仲間が殺されていくのを尻目にただ前線を目指して走るしかない
彼らの苦しみ、無力感。
そして彼らの苦しみが少しでも分かっていながらも
ただ冷徹な命令を下した私には何か重いものが背中にのしかかっていた。
 
326 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年05月25日(土)18時45分37秒

『班長・・・、あれを・・・』

突然、一番前を走っていた部下が走るのを止めて言った。
彼の指差す先はビルとビルとの隙間。
その隙間から見えるもの、それはある1台のオートバイだった。
 
327 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年05月25日(土)18時46分07秒

カラカラと車輪が回りつづけている。
私たちはそのオートバイの持ち主が誰であるかが分かっていた。

偵察隊。

だがその肝心な持ち主はどこかへ消え去っていた。
 
328 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年05月25日(土)18時46分54秒

実戦において偵察隊は機動性のある車両と航空機で行動する。
それは高機動車という6輪車、偵察用ヘリコプター、そしてオートバイだ。
偵察用ヘリコプターによって上空からの偵察をし、
最終的には高機動車と偵察用のオートバイで直接的な偵察を行う。
既にヘリによる偵察は終了し、高機動車とオートバイによる偵察を行っているはずだった。
 
329 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年05月25日(土)18時47分24秒

『よし、見てこい』

まだ偵察隊がいるはずの場所へは到着していなかった。
だが事実、偵察隊のバイクが放置されている。
何が起こっているはずだった。
しかしどんな報告も知らされていない。
もっとも本隊が全滅したらしい今、それを知る術もなかった。

ただ1つ、直接見る以外は・・・。
 
330 名前:全権特使 投稿日:2002年05月25日(土)18時48分51秒
久々に更新しようと思ったら、
別の場所で書いてたストック分を自分のPCに送ってないという事態。
読者の皆さん、ごめんなさい。
331 名前:Dr.マルッチ 投稿日:2002年06月09日(日)01時10分24秒
期待sageです。

今までまったりROMってましたがレスします。
すごく面白いです!!
せっつくつもりはありませんが、更新がんがって下さいなぁ!
332 名前:Dr.マルッチ 投稿日:2002年06月09日(日)01時12分46秒
期待sageとか言ってsage忘れました・・・逝って来ます・・・
333 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年06月16日(日)02時26分25秒

『了解』

1人の隊員が短く返事をし、そのまま路地を抜けていった。
そして路地を抜け、彼の姿は見えなくなった。
私たちは待った。
息を殺してひたすら待った。
他の隊員は何も話さない。
話すことを許していたわけでもなかったのだが、
何を考えているのか、それすらも分からなかった。
 
334 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年06月16日(日)02時27分39秒

いくら待っても帰ってこない。
既に10分は経過しているだろう。
班員にも動揺の色が見えてきている。

これ以上は待てない。
そう決断した私は新たな命令を出した。


『全員で行く』


既に何かがあったことは確実。
状況によっては戦闘行為もあるだろう。
私は初めて『死』というものを覚悟した。
 
335 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年06月16日(日)02時28分22秒

音を立てないように慎重に路地を進む。
心臓は飛び出そうなほどの鼓動を打ち、
小銃を握る腕は強張ってきている。
だが一抹でもある勇気というものを振り絞り、
隊員たちに目線と手で指示を送る。

(1人ずつ路地を出てビルに忍び込め・・・)

隊員は頷き、1人目が出る。
その時だった。
 
336 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年06月16日(日)02時28分58秒










ドスッッ!!!!!!









 
337 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年06月16日(日)02時29分55秒

思わず小銃を振り向けた。
叫んでしまいそうにもなったが幸い誰も声を発しなかった。
しかしその安堵もすぐに打ち消されてしまった。



ズタボロになった真っ赤なモノ。
一部には白い色が見えている。



それが人間であった『モノ』と想像がつくまではかなりの時間がかかった・・・。
 
338 名前:全権特使 投稿日:2002年06月16日(日)02時32分07秒
>>331 Dr.マルッチさん
どうもありがとうございます。
これからは更新スピードを上げられると思いますので、
暖かく見守っていただければ幸いです♪
マルッチさんの小説も読ませていただいてるので、
そちらも頑張ってくださいね。
339 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月20日(土)07時05分58秒
一ヶ月経ちましたよ
340 名前: 〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年07月23日(火)02時57分01秒

何故こんなモノが上から降ってくるんだ?
上を見ても横を見てもコンクリートで固められたビルしか見えない。
まさかビルから降ってきたとでも言うのか?
 
341 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年07月23日(火)02時57分33秒

その瞬間、頭上から聞こえるはずの無い声が聞こえてきた。
笑い声。
楽しくて笑っているのではない、こちらを嘲笑った笑い声。
全員が上を見上げた。
だが何も見えない。
両側に立つコンクリートの壁しかない。
それでも笑い声は狭い空間に反響するように響き渡っていた。
 
342 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年07月23日(火)02時58分21秒

そこにいた全員が絶句し、声をあげることもできなくなっていた。
ただ茫然とモノを見下げているだけ。
そして何もない上空を見上げているだけだった。
 
343 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年07月23日(火)02時59分00秒

何も感じなかった。
感じることが出来なかったのだ。
あまりにも衝撃的で直接的過ぎる死への直面に、
誰もがショックという言葉では表現できないような痛みだけを感じていた。
 
344 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年07月23日(火)02時59分39秒

後で物音を感じた。
フッと振り返ったときには既に事切れていた。
路地から今まさに出ようとしていた隊員。
その隊員がこちらに悲しそうな眼を向けている。

そしてそのまま隊員は倒れ込んだ。
その首と背中にはナイフの根元だけが光っていた。
まるで自分がどこにいるかをを誇示するかのように。
 
345 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年07月23日(火)03時00分20秒

そして倒れた隊員の後ろから現れたのは
それこそ私たちが捜し求めていた者そのものだった。
迷彩服、ヘルメットにはゴーグル、そして肩にかけられた小銃。
手にはご丁寧にもこちらに向けられた拳銃があった。
偵察隊だった。

前にいた隊員が声をあげた。
いや、あげようとした。
だがそれよりも早く、偵察隊員が手に持った拳銃が声をあげた。
声をあげるヒマもなく、隊員はそのままパッタリと後ろに倒れた。
ドラマのように派手に回りながら倒れるでもなく、
後ろにいる私のほうへ、そのまま何も無かったように、
まるで操っていた人形の糸が切れたかのように倒れた。
額に1つの穴をあけて。
そしてその穴からは液体が溢れ、
行き場を無くした液体は彼の顔を染めていった。

ただ狭く、赤く染まったビルの隙間。
その中でまだ生きている2人と私、空から降ってきた人間だったモノ、
そして一挙に隊員2人を消し去った機械が1つ。
そう、彼らは機械のように正確に冷酷に命を奪っていった。
そしてその機械の次なる目標は、目の前で生きている私たちだった。
 
346 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年07月23日(火)03時01分21秒

私は無意識だった。
今考えても何も覚えてはいない。
憎しみも驚きも悲しみも怖さも。
何も感じてはいなかった。
何も覚えてはいなかった。

覚えていることがただ1つ、ただ1つだけあった。
 
347 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年07月23日(火)03時02分03秒





銃口を機械に向け、引き金を引いたこと。





 
348 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年07月23日(火)03時02分34秒

再び気が付いた時にはセットされた銃弾は手元に無かった。
全てが機械の中をいとも簡単に通り抜け、
全てが機械の中をいとも簡単に抉っていた。

機械からも液体は流れた。
飛び散りながら、撒き散らしながらも
機械が殺した隊員たちと同じ色の液体が流れ出していた。
狭い狭い空間の赤い海はまた存在を広げた。
今度は私の手によって・・・。
 
349 名前:全権特使 投稿日:2002年07月23日(火)03時03分04秒
ちょっと更新。
350 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月25日(木)00時32分34秒
初めて読ませてもらいました。
かなり面白いっす。
作者さんこれからも頑張れ。
351 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年07月31日(水)00時59分20秒

冷静だった。
目の前にある海を見ても、目の前にある自分で動くことの無いモノたちを見ても。
初めて動くものを動かないものにしたことにも。
全てに対して冷静だった。



『班長・・・』

狭い空間に、静かな空間に、声が響いた。
その声が私をかろうじて現実に引き戻した。
声を出せずに振り返った。
生き残った2人の隊員がこちらを頼るような目を向けていた。
 
352 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年07月31日(水)01時00分01秒

そうだ、私は部下を持っている。
私を頼りにし、私の指示に従うことが彼らの使命。
私が自分を失っていたら、彼らもまた彼らを失うことになる。

自衛官は自身の判断と共に、指揮官の指示を頼りに行動する。
彼らの使命が私に従うことであれば、私の使命は彼らの生命を守ることだ。
それが指揮官としての存在意義だった。
 
353 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年07月31日(水)01時01分09秒

『よし・・・』

私が声を発した瞬間、彼らは恐怖をたたえる人間から自衛官の顔に戻った。
私自身もその顔ぶれに自身の使命を思い出した。


『今は他のことを考えなくていい。自分たちの命、それだけを考えよう』


彼らの顔が一瞬、悲痛に歪んだ。
それは彼らの自衛官としての心がそうさせたのだろう。
国民を守るために、そして守るべきもののために、
彼らは辛い訓練をも必死に耐えてきたのだ。
決して自分の命だけを守るためではなかった。
 
354 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年07月31日(水)01時01分41秒



『私もこんな命令、出したくないよ。できるなら生き残った人たちや隊員を助けたい。
 でも今は私たちが生きること、それだけを考えないと。
 生きて連隊に戻って状況を説明しなきゃ、私たちだけではどうしようもないことだってあるんだ!』


 
355 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年07月31日(水)01時02分31秒

たぶん私は隊員に言ったのではなかった。
自分に言い聞かせただけだった。
心の中では此処にとどまって生きてる人たちを助けたいと思っている自分に。

でも私は今、指揮官だ。
生き残り、私を頼りにしている部下を持つ、1人の指揮官なんだ。
一市民である前に一自衛官でありたい。
だったら仲間を連れて帰ってくるほうが多くの人を助けられるはず。
私は確信を持ち、宣言した。
 
356 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年07月31日(水)01時03分02秒



『戻ろう、連隊に』


 
357 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年07月31日(水)01時03分47秒

2人の隊員も頷き、立ち上がった。
そして何も言わず、ただ振り向いて再び路地の奥へ入っていった。
私もそれに続いた。

生きる。
生きて連隊へ戻る。

私たちは仲間たちが血を流した戦場に背を向け、
そして生きるために走り出した。
 
358 名前:全権特使 投稿日:2002年07月31日(水)01時04分20秒
ちょっとだけ更新。
359 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月31日(水)03時23分28秒
ビルごと発破しよう。
こいつが有効かと。
http://isweb28.infoseek.co.jp/motor/f15/lgb.html
360 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月31日(水)08時44分29秒
空自のイーグルでぺイブウェイは使えないはず…
361 名前:やぐちゅ〜みっちゅ〜狂患者 投稿日:2002年07月31日(水)11時01分28秒
360さんに同意w
同じイーグルでも最初からペイブウェイ載せれるのは、F-15Eストライク・イーグルだけみたいだし。
けど空自のF-15Jもハードポイントいじれば載せられるはずw

どうも、いきなりこんな挨拶で失礼しました。
風板で裕ちゃん達が戦闘機乗りの話を書いている作者です。
私の所では、ヨッスィ〜は梨華ちゃんとペアでトムキャットを飛ばしていますw

地上部隊の戦闘描写のリアルさには鬼気迫るモノがw
これからも参考がてら、ちょくちょく訪れたいと思います。
362 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年08月23日(金)13時25分18秒

目を覚ますと薄暗い部屋だった。
カバーも何も無く寂しく吊り下げられた蛍光灯。
それさえも光を失っていた。
 
363 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年08月23日(金)13時25分50秒

身体のあちこちが悲鳴をあげている。
首をまわすことさえにも苦しみが身体の底からこみ上げてくる。
痛みに耐えて身体を起こした。
 
364 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年08月23日(金)13時26分21秒

真っ白な部屋。
6畳ほどの何も無い部屋。
左側にはかろうじて光を失っていない外界が見える。
そこから漏れる光がこの部屋を少しだけ映し出している。
 
365 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年08月23日(金)13時26分53秒

窓の外はグランドのようなものが見えた。
金網に囲まれたグランド。
そして誰かに植えられたような木が寂しそうに立っていた。
 
366 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年08月23日(金)13時27分23秒

静かだった。
海の底ってこんな感じなのかな。
そんな場違いなことをも感じさせるような静けさだった。
 
367 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年08月23日(金)13時27分53秒

全部・・・、夢・・・?
今まで見てきたのはただの幻?
 
368 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年08月23日(金)13時28分24秒

いや、違う。
何もかも現実だった。
全てが目の前で起こった逃げようの無い現実。
記憶の中にある、確かな現実だった。
 
369 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年08月23日(金)13時28分58秒

気が付くと身体中に真っ白な包帯が幾重にも撒かれていた。
肩、うで、太もも、そして頭にも。
そして腕の包帯は赤く滲んでいた。
 
370 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年08月23日(金)13時29分31秒

どうなっているんだろう・・・?
ここはどこだ?
誰が寝てる間にこんな治療をしたんだろう?
全てのことが疑問へと変わっていった。
 
371 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年08月23日(金)13時30分01秒

そのとき、窓とは反対側にあるドアがノックもなくゆっくり開いた。
 
372 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年08月23日(金)13時34分14秒
>>361
初めまして。
この話では空自はあんまり出てきません。
楽しみにされているなら考えますけど(笑)。
戦闘描写で誉められたのは初めてです。
とっても喜んでおります。
これからよろしくおねがいしますね。

読者のみなさん、ごめんなさい。
更新スピードを上げたいのですけども、
なかなか時間が取れません。
長い眼で見てあげてください。
373 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月24日(土)19時13分49秒
(・e・)ノ<ここまで読んだ…ラブラブ
374 名前:よしや 投稿日:2002年09月09日(月)00時52分20秒
おもしろい!
更新を期待しています。
375 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月13日(金)03時46分33秒
面白いっす。
自衛隊という、扱い方によってはマニアックになってしまいそうなものが、
知らない人にもわかりやすくなってますね。
更新、まったり待ってます。
376 名前:やぐちゅ〜みっちゅ〜狂患者 投稿日:2002年09月15日(日)00時20分21秒
地上軍の戦闘展開描写に脱帽です。
>>楽しみにされているなら考えますけど(笑)。
そんなこと考えてもらって、いいんですか〜?

でしたら、裕ちゃんとみっちゃんがF-15DJに2ケツで偵察に来て、
ヨッスィ〜に襲いかかろうとした、UFAのヘリを叩き落としていく!てのどうですか?
何はともあれ、全権特使さんの作品を崩さないように書いて下さいw

その内、私のところでも地上戦闘が展開されます。
その時には、御批評をぜひ(w
377 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年10月03日(木)10時30分44秒
亀レスだが、265は何を言いたいのだ?
378 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年10月03日(木)16時42分12秒

・・・誰?
姿も何も見えない。
ただコツコツという靴音が響く。
 
379 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年10月03日(木)16時42分46秒




動かないで。

近付かないで。



 
380 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年10月03日(木)16時43分23秒

まだ恐怖が残ってるのか、そんな思いが全身を覆う。
去来するあの恐怖。
いや、あの時は恐怖なんて微塵も感じなかった。
ただただ夢中だったから。
でも今は違う。
あの時の記憶が蘇って私の脳裏を襲う。
 
381 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年10月03日(木)16時43分53秒

表情も何も無かった偵察隊員。
一度にして3人の部下を失った。
動いてるモノに対して小銃を撃ち尽くした。
あの時は何も感じず、全てに対して冷静だった。
 
382 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年10月03日(木)16時44分34秒

でも今は違う。
あの記憶が全て恐怖と絶望に変わっていく。
惨劇がフラッシュバックする。
ただそれだけで私は気が狂ってしまいそうな感覚さえ覚えた。
 
383 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年10月03日(木)16時47分24秒

怖い、そして憎い。
もしこの部屋に入ってきたのが殺人集団の一味だったら。
部隊を全滅させ、目の前で部下を3人も殺された。
転属して日が経っていなくても、
かわいい部下であったことは間違いない。
少しの間だけだったけども辛い訓練を受け、
同じことで泣き、同じことで笑った。
そんな部下達をこいつらは一瞬にして奪い取った。
しかも正気の沙汰とは考えられないような酷いやり方で。
 
384 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年10月03日(木)16時48分00秒

足音は願いとは裏腹に平然と近寄ってくる。
そしてベッドの横に立った。
 
385 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年10月03日(木)16時48分38秒



もうダメだ。

殺される。


 
386 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年10月03日(木)16時49分09秒

弱気な思いが身体中を駆け巡る。
あの恐怖が全身を覆う。
私の中の『自衛官ではない私』が身体を支配し始めた。
 
387 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年10月03日(木)16時49分39秒

でも相手は動き出す前に制圧したら何とかなるかもしれない。
相手から何かが聞き出せるかも知れない。
武器を奪い取ればここからの脱出も可能だし、
情報をもって部隊に帰れば、大部隊を派遣して反撃もできる。
そう、何もできずに散った隊員たちの恨みも晴らせるんだ。
私の中の『自衛官である私』は叫んだ。
 
388 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年10月03日(木)16時50分13秒

やるしかない。
相手はこっちのことを怪我人だと思っている。
さっきよりも部屋の暗さは増してきている。
暗闇の中では先に手を出した方が圧倒的に有利だ。
気付かれないように身体を動かすと、確かに全身が痛みに包まれる。
身体は満足に動かないかもしれないが、
それをもカバーできるだけの憎しみに由来するパワーが
こちらには備わっているんだ。
 
389 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年10月03日(木)16時51分02秒

あとは決断だけだった。
恐怖もある。
相手が発砲したら隊員たちの恨みを晴らすどころか
彼らのあとを追って別の世界に旅立ってしまう。
でもこのまま殺されるよりはマシ。
何もせずに殺されるよりも最後まで抵抗したい。
  
390 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年10月03日(木)16時51分34秒



『自衛官である私』は『自衛官ではない私』を制圧した。


 
391 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年10月03日(木)16時52分07秒

決まった。
まだ相手は動いていない。
じっとこちらを窺っているように見える。
 
392 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年10月03日(木)16時52分48秒

今だ!!

私は意を決して布団を跳ね上げ、相手に被せかけた。

『自衛官である私』は躍り掛かった。
 
393 名前:全権特使 投稿日:2002年10月03日(木)17時00分24秒
>>373さん
あそこまで読まれたんですか・・・。

>>374さん
ありがとうございます。
更新は・・・、遅いです・・・。

>>375さん
まったりお待ちしていただけると嬉しいです♪

>>376さん
批評させていただくほどの技量なんて持ち合わせておりません(笑)

>>377さん
ごめんなさい、知り合いが書き込んだようです。


いつもながら更新が遅くてごめんなさい。
必ず完結させます。
皆さん、暖かく見守ってやってもらえますか?(涙)
ごめんなさい(号泣)
394 名前:読者 投稿日:2002年10月04日(金)18時04分50秒
待ってましたー!
にしても、いいところで切りますねぇ。
次回更新、楽しみに待ってます。
395 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月26日(土)17時44分36秒
上げちゃいます
396 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年11月09日(土)03時41分33秒

そのまま上から圧し掛かり、床に引き倒した。
布団の下からは唸り声が聞こえるけども、
そんなのにはかまってられない。

相手の上に馬乗りになる。
なんとか手探りで布団の中から相手の腕を引き出し、
右手で手首を思い切り捻りあげた。
相手が悲鳴をあげる。
だが夢中になった意識は相手の手首が妙に細いことに気付いていなかった。
 
397 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年11月09日(土)03時42分58秒

真っ暗な部屋。
力の入らない、包帯の巻かれた左腕。
そんな左腕が布団の下にいる叛乱者を何度も殴りつける。
布団がクッションになろうが、全く力が入らなかろうが、
全く関係は無かった。

散っていった仲間の恨み、犠牲になった人たちの憎しみ、失った部下達の無念。
そして何よりも私の中の自分に対する呵責。

その全てを憎むべき叛乱者にぶつけた。
こいつらが・・・、こいつらがっ!!
 
398 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年11月09日(土)03時43分30秒

何度も何度も、腕が血だらけになるまで何度も殴った。
どれだけ殴ったかも分からない。
相手にどれだけのダメージが与えられたかも分からない。

でも気が付いて腕を止めると相手も静まっているし、
敵に覆い被さっている布団は自分の血で赤い点々がいくつも付いていた。
 
399 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年11月09日(土)03時45分37秒

そうだ・・・、武装解除・・・。
殴るのを止めて少し放心していた意識が、
武器を手に入れろと伝えている。
そう、このままこいつを人質にするなりで脱出するんなら、
何か武器を手に入れなきゃ。
そう思って布団の隙間から相手の腰辺りに手を伸ばした。
 
400 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年11月09日(土)03時46分15秒

全くの手探りで敵の腰周りを探る。
無意識に手が動く。
するとすぐに手に冷たく固いものが当たった。
直感的にそれを引き抜く。
そして布団の隙間から出てきたのは
まぎれもなく拳銃だった。
 
401 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年11月09日(土)03時46分55秒

どうしてこんなにすぐに分かったんだろう?
答えはすぐに分かった。
普段の私と同じところについていたから。
ポケットの配置も何かもが同じ。

こんなに似てることもあるんだな。

状況とは全く場違いな言葉も思い浮かぶほど。
そこまで来て、私はあることに気付いた。
 
402 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年11月09日(土)03時47分54秒

腰の辺り・・・、くびれがあった・・・。

それに気付いたと同時に、
私は無意識に布団をめくりあげていた。
何かを確認しようとした。
どういうものを確認しようとしたのかも分からない。
でも何かが引っかかり、思わず布団を捲り上げてしまった。
 
403 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年11月09日(土)03時48分27秒

ヤバい!!
まだ相手の行動を封じてない!!
なんて軽率な自分の行為に危険を感じた時には遅かった。
私が気付くより前に、相手は行動を起こしてしまった。

馬乗りになった私のバランスが崩れる。
そして腕がつかまれた感覚を覚えたとき、
私は既に真っ暗な宙を舞っていた。
 
404 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2002年11月09日(土)03時49分50秒
>>394さん
今回の更新はほんのちょっとで申し訳ないです。

>>395さん
あげてくださってありがとうございます。

明日も更新できたらいいな、とか考えております。
405 名前:名無し 投稿日:2002年12月07日(土)20時33分06秒
保全します
406 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月31日(火)01時45分38秒
保全上げ
407 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月30日(木)00時58分11秒
hozensage
408 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2003年01月31日(金)23時56分46秒

『えいっ!!』

そんな掛け声が頭に響く。
何度も何度も聞きなれた高い声。
宙を舞いながらも懐かしい声。
2人で辛酸を舐めあった声。


梨華ちゃんの声。


そんな梨華ちゃんの声を知覚したとき、
私の身体は床に叩きつけられていた。
  
409 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2003年01月31日(金)23時58分09秒

強烈な衝撃が身体を突き抜ける。
痛いとかではなく、衝撃。
余りにも強すぎる感覚に私は悲鳴をあげることもできず、
ただうずくまるしかできなかった。

『あっ・・・。よっすぃ?ねぇ、よっすぃ!』

何年も聞いてなかったような声。
そんな声で呼びかけながら梨華ちゃんが身体を揺する。
両腕で何度も何度も揺する。
 
410 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2003年01月31日(金)23時59分28秒

『り・・・、梨華ちゃん・・・』
『よっすぃ!よっすぃ!!』

私が声を出したことで一層私を揺さぶる梨華ちゃん。

『梨華ちゃん・・・、痛い・・・』
『あっ・・・』

やっと梨華ちゃんが揺するのを止める。
痛みを堪えて顔を上げると
目の前には目頭に涙を浮かべた梨華ちゃんの顔があった。
 
411 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2003年02月01日(土)00時00分14秒

その梨華ちゃんの顔に私は堰を切ったように感情が噴出しそうになる。

『りっ・・・、りっ・・・』
『り?りんごでも食べたいの?糧食にりんごなんてあったかなぁ?』

梨華ちゃんはアゴに手を当てて考え込む。
何年も見てなかったような姿。
数日前に見た姿でも懐かしいその仕草。

『りっ・・・』
『やっぱり糧食にりんごみたいな豪華なものはないよぉ!』

『りっ・・・、梨華ちゃん!梨華ちゃん!』
『いっ、いきなりどうしたの?!』

急に梨華ちゃんの顔が歪んだ。
いや、見ていた全ての景色が一瞬にして歪んだ。
私は・・・、泣いていた。
 
412 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2003年02月01日(土)00時00分53秒

梨華ちゃんがいる。
私の前には梨華ちゃんがいる。
そう、私は連隊に戻ってたんだ。
どこをどうやって帰ったのか、そんなのは全然分からない。
それでも目の前には梨華ちゃんがいる。
私は今、自衛隊にいる。
そう考えると涙が止まらなかった。



生きてる。



本当に死と隣り合わせの戦場から戻ってきたんだ。
自分自身も殺されかけた、あの地獄から戻ってきた。
 
413 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2003年02月01日(土)00時01分44秒

『梨華ちゃん!私は生きてる!生きてるんだよ!!』
『うん、生きてるよ。生きて戻ってきたんだよ!
 よっすぃは1人ででも生きて帰ってきたんだよ!!』

えっ・・・?
1人で・・・?
突然、私の言葉がフラッシュバックする。

『戻ろう、連隊に』

確かに私はそう言った。
そして2人の隊員は力強く頷いた。
覚えてる。
私のそばには2人の隊員がいた。
生命を危険に晒しながらも私を信頼してくれて、
そして私も信頼していた2人の隊員がいた。
でも梨華ちゃんは・・・、
 
414 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2003年02月01日(土)00時02分20秒

『り・・・、梨華ちゃん・・・。私のほかにもいたでしょ・・・?』

『えっ?何が?』

『私のほかにも・・・、隊員はいたんだよね?いたよね?!』

『よっ・・・、よっすぃは1人だったらしいよ?
 入口のところから飛び込んできたって・・・』

『そんなはずない!私は!私は3人で帰ったはずだよ!
 3人で確かめたんだよ?!生きて連隊に戻るって!
 死んでいった隊員たちのためにも、殺された隊員のためにも!
 絶対に生きて帰るっていう命令を出したんだよ!
 ねぇ梨華ちゃん!梨華ちゃん調査隊でしょ?!
 教えてよ!生きてるよね?!生きてるんだよね?!』
 
415 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2003年02月01日(土)00時03分29秒

涙が流れていた。
梨華ちゃんの肩を揺すった。
絶対に生きてる。
命令したんだ、生きて帰ることを。
なのに私だけが帰ってきたなんてありえない!
でも・・・、でも梨華ちゃんは顔を背けた。

『なんで・・・?なんで梨華ちゃん答えてくれないの?
 梨華ちゃん知ってるよね?!調査隊だったら知ってるよね?!』

『・・・・・』

『なんで・・・?なんでだよ?!なんで答えてくれないんだよ!!』

私は叫んだ。
とにかく叫んだ。
梨華ちゃんの肩を掴み、これ以上ないほど揺さぶった。
揺すったら答えでも出てくるのだろうか?
そんなはずはなかった。

それでも梨華ちゃんに問いつづけた。
それでも梨華ちゃんは無言を貫いた。
 
416 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2003年02月01日(土)00時04分42秒

そのうち騒ぎを聞きつけたのか、
制服の上に白衣を着た隊付の医官とヘルメットを被った隊員が数人、
バタバタと飛び込んできた。

『吉澤3曹!落ち着いてください!』

隊員たちは叫びつづける私に飛び掛り、
ムリヤリ梨華ちゃんから引き離す。
それでも私は押さえつけられたまま梨華ちゃんに向かって叫んだ。

『教えてよ!ねぇ梨華ちゃん!!』

その時、首筋にかすかな痛みを感じた。
急激に意識が遠くなる。

『梨華・・・、ちゃん。教え・・・』

完全に意識を失う瞬間に見た梨華ちゃんは
とても悲しげな眼をしていた・・・。
 
417 名前:全権特使 投稿日:2003年02月01日(土)00時05分36秒
みなさま、保全していただき有難うございます。
418 名前:名無しさん 投稿日:2003年02月01日(土)02時04分55秒
す、すごい…戦闘描写、ストーリー展開…どれも三ツ星級!
私は四月から曹学行くんですけど、これ読んでたらなんか急に
怖くなりました(爆)これからも頑張って更新してください!!
419 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2003年02月02日(日)03時30分47秒

次に目を覚ました時にあの暗い部屋は無かった。
寂しそうだった蛍光灯は仕事を思い出して光り輝いていた。
海の底のようだった窓の外はブラインドの向こうに消えている。

『よっすぃ、おはよ』

梨華ちゃんの声。
もう間違えることのない梨華ちゃんの声。
視線を移した先には悪夢の前と何ら変わりない笑顔があった。

『梨華ちゃん・・・』

目覚めた矢先に出てきた言葉はそれだけだった。

『身体は大丈夫?突然暴れだしてビックリしちゃった』

そういえば身体は痛むし、何よりも全身に鉛でもつけたように重い。
そうだ・・・、梨華ちゃんに向かって叫んでたんだ。
それで隊員が走りこんできて押さえつけられたんだよね。
それから・・・、それから何だったっけ・・・?
急に意識が遠くなったんだよね?
それから・・・?それから・・・?
 
420 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2003年02月02日(日)03時31分23秒

『あんまり暴れるから医官が鎮静剤を打ったの。しかも例の自衛隊特製』

『そっか・・・、それじゃぁ記憶が吹っ飛ぶわけだ・・・』

『医官は「一番強いヤツを打った」って言ってたし・・・』

全て納得。
その理由は『自衛隊の発給する薬剤は全て強力』だから。
何かヤバイものでも入ってそうな勢いで効いてしまう。
実際に隊員が訓練課程中に40度の熱が出て隔離された時も
次の日には何も無かったかのように訓練に出ていた。
本人によると薬をもらって寝かされていただけらしい。
そしてその本人は目の前にいる。
 
421 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2003年02月02日(日)03時31分58秒

『3時間も寝てたんだよ?また2日も寝てるのかと思っちゃった』

『・・・どういうこと?』

『だってよっすぃ、フラフラになって帰ってきた日から2日も寝てたんだよ?』

『2日も?!戦闘始まった初日に出て行ったんだよ?!えっ?私、2日も寝てたの?
 もう3日目なの?!戦況どうなってんの?!もう鎮圧しちゃってるとか?!』

『あん!そんなに一緒に聞かれても説明困るじゃない!』

『・・・はい』

『もう・・・、先に医官を呼んでくるから・・・』
 
422 名前:〜第2部 対峙〜 −第2章『ウソ』− 投稿日:2003年02月02日(日)03時32分35秒

そう言って梨華ちゃんは出て行った。
部屋に1人残された私。
寝そべったまま身体を動かしてみる。
予想はついていたけど全身が悲鳴をあげる。

『これじゃぁ3日はぜってぇ動けねぇよ・・・』

ポツリと独り言を呟いたとき、部屋のドアが開いた。
もうさっきのような恐怖は無かった。
 
423 名前:全権特使 投稿日:2003年02月02日(日)03時37分09秒
>>418
誉めていただきありがとうございます。
4月から曹学ですか・・・。
頑張ってくださいね♪
ちなみに薬は本当に効くらしいです(笑)
424 名前:>418 投稿日:2003年02月09日(日)00時40分48秒
よっすぃ〜の失われた2日とは…?気になるっ!

 ああ…入隊が近づいてくる…
425 名前:名無しさん 投稿日:2003年02月18日(火)20時41分06秒
保全上げ
426 名前:名無しさん 投稿日:2003年02月20日(木)22時02分16秒
今日偶然見つけて一気に読みました。マジで面白いです。
物語に吸い込まれるといいますか。次の展開が待てないって
かんじですね。まーまったりお待ちしておりますので頑張ってくださいね。
427 名前:名無しさん 投稿日:2003年02月28日(金)20時34分02秒
保全
428 名前:名無しさん 投稿日:2003年03月11日(火)17時14分55秒
保全2
429 名前:小池裕敏 投稿日:2003年03月31日(月)01時09分23秒
これは傑作ですね。娘。ファンアンド普通の左派のわたしとしては、
二重の醍醐味ですw
430 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月02日(金)14時37分50秒
保全
431 名前:名無しさん 投稿日:2003年05月06日(火)21時45分50秒
hozen
432 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月06日(金)01時11分13秒
ホゼン
433 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月06日(日)19時00分51秒
hozem 舞ってます
434 名前:arut 投稿日:2003年07月10日(木)15時26分40秒
今日初めて読みました。とても面白いですwこの後の展開も、楽しみにしていますw
435 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月12日(土)16時11分35秒
もう前期が終わっちゃうよぉ〜保全
436 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月07日(木)23時00分01秒
hozen
437 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/13(土) 02:19
hozen
438 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/16(木) 00:39
ほぜん
439 名前:名無しさん 投稿日:2003/11/27(木) 04:14
hoze
440 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/05(月) 23:42
保全
441 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/08(木) 20:56
陸自先遣隊派遣で保全
442 名前:名無しさん 投稿日:2004/01/16(金) 23:48
陸自先遣隊出発で敬礼しつつ保全

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