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市井TV!
- 1 名前:黄色い狛犬 投稿日:2001年11月03日(土)00時27分04秒
- いちごまはもういいですか?
期間限定です。
中編です。
- 2 名前:1 番組スタート 投稿日:2001年11月03日(土)00時29分13秒
中澤がハンディカメラを構えている映像が、モニタに映っている。
「はーい。今日は、元モーニング娘。リーダーの中澤裕子が、本番前のメンバーの姿に
直撃しちゃいまーす」
カメラは、テレビ局の廊下を進んでいく。そして『モーニング娘。』と書かれた紙の
貼ってある楽屋へと辿り着く。
中から、娘。たちの賑やかな声が聞こえてくる。
「えー、圭ちゃん、そんなことないってば」
「ウソだあ。ごっちん、朝からはしゃいでるじゃんか」
「なんかさあ、圭織、緊張してきたよ」
「落ち着きなよリーダー」
みな、一様にテンションが高い。
カメラはぐるりと回り込んで、部屋の中へ。私服のメンバーたちがいる。画面は、額を
アップにしてメイクの最中の石川に寄っていく。
「中澤さん、おはようございます」
「チャーミー。なんか面白いコト云えよ」
面白いことですかあ、じゃあですねえ、と話し始めた石川を置き去りに中澤は移動する。
- 3 名前:1 番組スタート 投稿日:2001年11月03日(土)00時30分04秒
- 「裕〜ちゃ〜〜ん、知ってただろお〜〜」
がっ、と画面が天井を向く。おい矢口、やめろっ、と叫ぶ中澤の声がかぶる。
壁一面の姿見には、中澤の背後から抱きついて首を締めている矢口の姿が映っている。
後藤が駆け寄ってくる。
「そうだよ、裕ちゃんズルイよ。先に会ってた──」
(娘。全員の声で)『ハロー!モーニング!』
(ナレーション)
今日のスペシャルは伝説のアイドルをお迎えするモーニング。トークが復活。涙と笑いの
45分スペシャルをお送りしちゃいます!
- 4 名前:1 番組スタート 投稿日:2001年11月03日(土)00時31分37秒
- 〜 CM 〜
- 5 名前:1 番組スタート 投稿日:2001年11月03日(土)00時32分47秒
- 「伝説のアイドルをお迎えするモーニング。トーク! 司会の後藤真希です」
頭に赤いリボンをつけた後藤が、ちょん、と頭を下げる。
「はいッ」
「ごまちゃーん」
「よっよっよっ」
矢口や安倍が、お囃子のような声をあげる。
「本日の伝説のアイドル、さっそく登場していただきましょう。この方です、どうぞ!」
ひょい、と、茶色の髪が扉の外から見える。
「うわあ!」
「なにやってんだよう」
メンバーたちがわいわい騒ぐ中、
「いっえーい、って、こんちは市井紗耶香でーす」
はいはい、どうもどうも、と腰を低くして、市井がスタジオにその姿を現したのだった。
- 6 名前:1 番組スタート 投稿日:2001年11月03日(土)00時33分32秒
- 「ちょっと紗耶香ー」
「今までなにしてたんだよう」
「かあさん!かあさん!」
旧メンや一期増員メンバーは大騒ぎだ。なぜか、石川も市井さーんと叫びながら、両手を
バタバタさせている。対して、吉澤は控えめに拍手、加護辻はきょとん、としていた。
「ちょっと待って!」
後藤が立ち上がって、勝手に騒ぎ立てる娘。たちを制止する。
「質問コーナーは、もっとあとだから」
おお〜っ、ごっちん司会っぽーい、とざわめく。
えっへん、と胸をそらして、後藤は言葉を続ける。
「というわけで、今日は帰ってきた市井ちゃんをゲストに進めていきたいと思います」
「はーい。よろしくお願いしまっす」
「お願いしまーす」
- 7 名前:黄色い狛犬 投稿日:2001年11月03日(土)00時34分35秒
- 心のおもむくままに、思いつきを書き殴ってるんで、構成とか人称とかメチャクチャです。
ゴメン。
- 8 名前:2 舞台裏1 投稿日:2001年11月03日(土)00時36分36秒
- 少し前の話。
「ごっちーん、いいビデオあるでー」
『溢れちゃう…BE IN LOVE』のキャンペーンで、一人で楽屋にいた私を、久しぶりの
裕ちゃんが訪ねてきた。ニヤニヤしながらラベルの貼ってないビデオを取り出した。
「これ、なんなんですか?」
って聞いても、ええからええから、感想文は明日提出な、とかなんとか云ってイヤラシク
笑うだけだった。
「んじゃ、ウチはこれで」
「もう帰っちゃうの?」
お茶の準備の途中だった私は、手を止めて裕ちゃんに云った。
「これでも忙しいねん」
慌ただしく、裕ちゃんは楽屋を出ていった。
- 9 名前:2 舞台裏1 投稿日:2001年11月03日(土)00時39分10秒
- ◇
- 10 名前:2 舞台裏1 投稿日:2001年11月03日(土)00時42分06秒
- 『もしもし……ふわ……? 今何時や? まだ夜中やんか』
「二時だよッ! 裕ちゃん、なにこのビデオ!!」
『……なんやビデオって?』
どうやら、裕ちゃんは寝ぼけているみたいだ。私は再生しっぱなしのビデオを振り返った。
画面には、市井ちゃんが、映っていた。
薄い青のTシャツを着て、下はジャージで、フローリングのフロア――多分、リハーサル
スタジオなのだろう――で、声出しをしていた。
「市井ちゃんのビデオじゃん! なんで市井ちゃんが映ってるの? これ、いつのヤツ?
なんの素材?」
『お休みー』
通話を切られてしまった。
その後、何度電話をかけなおしても、呼び出し音が続くばかりでもう裕ちゃんは出なかった。
私は、市井ちゃんのレッスンビデオを何度も巻き戻して見た。このビデオのいわくは全然
分かんないんだけど、見てるだけで、ほんわかと幸せになった。
この時は、まだ深くは考えていなかった。
どうして、こんなビデオが撮影されたのか。どうして、このビデオを裕ちゃんが持って来たのか。
- 11 名前:2 舞台裏1 投稿日:2001年11月03日(土)00時44分24秒
- 「おはよー。ごっちん、顔むくんでるよ」
今日は、娘。メンバーたちと一緒に仕事。ミュージックスの収録だ。
眠くて眠くてふらつきながら現場入りした私に、圭ちゃんが話しかけてきた。
「寝てなくてね。あ、そういえばさ、圭ちゃんは――」
みんなは、市井ちゃんのビデオのこと、知ってるんだろうか?
「後藤さん、ちょっといいですか。ビデオ、見て頂けましたか?」
ASAYANのスタッフの人が、横から声をかけてきた。
あっ、と思った。あのビデオは、ASAYANだったんだ。……ええっ!
ひらめいた!
「パーソナルレボリューションですか!」
そっかあ。そうなんだ。
「ごっちん、なに一人で納得してるのよ。なんでそんなに笑顔なのよ」
メンバーのみんなも、不思議そうな表情で私を見ていた。やっぱり、市井ちゃんのことは
知らされてはいないみたいだ。
- 12 名前:2 舞台裏1 投稿日:2001年11月03日(土)00時45分27秒
- ん?
んん?
市井ちゃんのレッスン中ビデオ。
娘。レボリューション。
(まさかッ!)
今日は、寝不足の割には、頭がよく回る。
ASAYANのスタッフさんの手を引いて、セットの裏に連れ込んだ。私は興奮した口調で、
「市井ちゃん復帰するんですか?」
イチイチャンフッキスルンデスカ?
自分で発したその言葉の響きだけで、少し泣きそうになった。
スタッフの人は、不思議そうに、
「ご存じじゃなかったんですか? 中澤さんから聞きませんでした?」
そう云った。
- 13 名前:2 舞台裏1 投稿日:2001年11月03日(土)00時46分06秒
- (裕ちゃんの野郎ッ!!)
すぐここを飛び出して、裕ちゃんを問いつめたい、そう思ったけど、ぐっと我慢した。
今は、それどころじゃなくて、
(市井ちゃん、復帰決定なんだあ)
「あーっ、ごっちん苛めてる」
私を探しに来たらしい、よっすぃが大声を出した。
「ちょっと、ウチの後藤なに泣かしてるのよ!」
飯田さんが、ASAYANのスタッフの人にくってかかった。
私は弁明しようとしたんだけど、涙と鼻水でなにも云えなかった。
- 14 名前:黄色い狛犬 投稿日:2001年11月03日(土)00時46分36秒
- 続く。
5日以内に完結予定。
- 15 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)01時27分12秒
- おお、狛犬氏、えらく久しぶりですな。
いちごまも狛犬氏も歴史と化してしまったと思っていたが、市井復帰に触発されたかな。
期待してますよ。
- 16 名前:L.O.D 投稿日:2001年11月03日(土)01時51分40秒
- 師匠マンセー。ごま萌え
- 17 名前:Hruso 投稿日:2001年11月03日(土)02時09分55秒
- 狛犬さんの久しぶりの新作ですね。
頑張ってください〜。
- 18 名前:黄色い狛犬 投稿日:2001年11月03日(土)11時37分22秒
- 期待しないでね☆
- 19 名前:3 舞台裏2 投稿日:2001年11月03日(土)11時40分25秒
- 「ASAYAN、パーソナルレボリューション! 第3弾は後藤真希のナレーションで
お送りします!」
市井ちゃんの復帰は、またたくまにモーニング娘。のメンバーたちにも知られることになった。
みんなでひとしきり大喜びした。私ややぐっちゃんや圭ちゃんで交代でおめでとう電話した。
次に、みんなが気になったのは、どういう形で市井ちゃんが復帰するのかだった。モーニング娘。
に帰ってきてくれるのが一番嬉しいんだけど、きっとそれは無理だろうと思う。(深い理由がある
のです……ゴニョゴニョ……)
だけど、仕事で関わるなら、それほど無理じゃない。だから、ASAYANで市井ちゃんを取り上
げる企画で、私が起用されたことをみんなうらやましがった。
- 20 名前:3 舞台裏2 投稿日:2001年11月03日(土)11時41分12秒
- 「今週からは、復帰に向けて頑張っている、市井ちゃ──市井紗耶香さんにスポットを当てて行き
ます。あワンツー、レッツゴー!」
編集室を見ると、スタッフの人に案内されてゴソゴソと隠れるように入って来た高橋愛ちゃんの姿が
見えた。最近、彼女は私の周りをウロウロしてる。気に入られちゃったかなあ。えへへ。
と、モニタに市井ちゃんの姿が映った。
私は、画面に釘付けになった。
「市井ちゃんは、今日も、レッスンにいっしょうけんめいです。がんばれ、市井ちゃん!
後藤も、おうえんしてるよ!」
- 21 名前:3 舞台裏2 投稿日:2001年11月03日(土)11時42分02秒
- ◇
- 22 名前:3 舞台裏2 投稿日:2001年11月03日(土)11時43分04秒
「愛ちゃん、勉強しにきたんだ。えらいねえ」
スタジオを出る時にはち合わせた愛ちゃんは、真っ赤になって、たまたま通りがかって
とかなんとかしどろもどろに云った。私は、愛ちゃんの頭を撫でてあげた。
すっごく機嫌が良かった。世の中は嬉しいことと楽しいことでイッパイで、スキップし
ながらIwishを歌いたい気分だった。
いい知らせは続いた。
マネージャーさんに呼ばれて楽屋に行くと、お姉さんメンバー5人が私を待っていた。
LOVEマシーンを歌っていた頃のチームで(石黒さんはいないけど)市井ちゃんの
復帰アルバムの応援をしよう、って話だった。私は「きゃあ」って叫んじゃった。
打ち合わせ終了のあと、圭ちゃんに抱きついて「プッチだよ、プッチだよ」って何回も
云った。圭ちゃんも、うんうん、って半泣き状態でうなづいてた。
新しい市井ちゃん、っていうよりも、昔に戻れる、って感覚のほうが強かった。一番濃密
だったあの頃に。
気持ちだけは、先に戻っていたのかも知れない。
圭ちゃんや圭織に「今日のごっちんは甘えんぼだ」って云われちゃったから。
- 23 名前:3 舞台裏2 投稿日:2001年11月03日(土)11時43分53秒
- だから、あの話を聞いた時は、ショックだった。
正直、裏切られたみたいに思ったんだ。
- 24 名前:4 モーニングトーク本番 投稿日:2001年11月03日(土)11時46分40秒
- 楽屋割りを見たとき(ああ、やっぱり)って思った。
私は、モーニング娘。さま、って書かれた大部屋で、市井ちゃんと裕ちゃんは、二人で
一部屋だった。まあ、当然なんだけど。
リハーサルには、市井ちゃんは姿を現さなかった。今が、一番大変だし大事な時期だ。
時間がいくらあっても足りないんだろう。それっくらいは分かる。アルバムCDの録音の
時も、ちゃんとは話出来なかったんだ。遠くから、ちらっ、と市井ちゃんの姿を見たり、
挨拶を交わしたりしただけ。
この点については、他のみんなも不満げだった。
私は、朝からそわそわしていた。さりげなく、市井ちゃんが楽屋入りする時間をマネージャー
さんに確認したりした。
メイクの途中で、携帯にメールが入った。仲良しの女性ADさんからで『市井さんが今、いら
っしゃいました』とあった。
ドキドキしてきた。もしかしたら、楽屋に挨拶に来てくれるかも知れない。こんな、おでこを
出した状態で市井ちゃんに会うのは恥ずかしい。
- 25 名前:4 モーニングトーク本番 投稿日:2001年11月03日(土)11時47分37秒
……。
来なかった。
ざんねん。
まだ、本番までには時間がある。
会いに、行ってみようかな。
手早くメイクと衣装合わせを終え、忍び足で楽屋へ移動した。
『中澤裕子さま、市井紗耶香さま』
と書かれた紙が貼られた扉の前まで来た。
少し、機嫌が悪くなる。どうして、この二人の名前が並んでいるんだろう。
(二人は同じ楽屋だから、当然なんだけど)
(二人は一緒に仕事してるんだから、当然なんだけど)
分かってる。
私は、裕ちゃんに、嫉妬してるんだ。
あの時――二枚目のソロを歌った時に、娘。を卒業していたら、あるいは……なんてこと
を考えたりもした。
私にとって、モーニング娘。ってなんだろうね。
今の市井ちゃんを見ていると、分かんなくなってくるよ。
- 26 名前:4 モーニングトーク本番 投稿日:2001年11月03日(土)11時48分22秒
- 「なんやねんそれ!」
中から、大きな笑い声が聞こえた。
裕ちゃんだ。続いて、市井ちゃんの声。なんだか、とても楽しそうだな。
昔っから、市井ちゃんと裕ちゃんって、こうだったっけ?
こんなにうち解け合った関係だったっけ?
入り口でうじうじ迷ってるうちに、ADさんが私を連れ戻しに来た。さっきから探して
いたみたいだ。まだ時間はあるはずなのに、どうしてだろう? って思った。結局、
市井ちゃんとお話はできないまま、楽屋に帰ってきた。ホームビデオを構えた裕ちゃん
が、楽屋に乱入してきたのは、その直後だった。
- 27 名前:4 モーニングトーク本番 投稿日:2001年11月03日(土)11時49分00秒
- ◇
- 28 名前:4 モーニングトーク本番 投稿日:2001年11月03日(土)11時49分42秒
- わあっ、と、メンバーたちがにぎやかに騒ぎ出す。
私は、最初、ぼーっとしてた。やぐっちゃんにひじで小突かれて、今、収録中だったことを
思い出した。
(CM開けたんだ!)
「はーい、では、最初のコーナー行きまーす」
新しくなったモーニングトークのゲストは市井ちゃん。
少し髪が伸びた市井ちゃん。
少し背が伸びた市井ちゃん。
茶髪の市井ちゃん。
キレイになった市井ちゃん。
ねえ、復帰が決まってから、ちゃんと逢えたのって、今日が初めてなんだよ?
おかしくない? 姉妹みたいに……ううん、姉妹以上に仲良しだったのにさ。
「ほらほら、ごっちん、番組に参加して」
また黙り込んでしまった私に、裕ちゃんがキツめの口調で云う。分かってる。裕ちゃんの
フォローだってことは。
でも、嫉妬混じりに、私は裕ちゃんをギン、って睨み付けた。本来、裕ちゃんは気弱なんだ。
目をまん丸くして、私から視線をそらしてしまった。
スタジオが、気まずい雰囲気になった。
- 29 名前:4 モーニングトーク本番 投稿日:2001年11月03日(土)11時50分53秒
- 「市井ちゃんに云いたいことー」
はいはーい、とみんなが手をあげる。
私は、台本どおり、まずは圭織を指名した。
圭織は、へへっ、と笑って、市井ちゃんに向き直った。
「お帰り、紗耶香」
なぜか、上目遣いの圭織は、モジモジと云った。そして、座った。
「それだけなの?」
「うん。それだけ」
全然リーダーらしくない圭織は、はにかみ笑いをした。
(ホントは、適当にアドリブ入れるハズだったのに)
続いて、よっすぃ。
「オーウ、市井サ〜ン!」
よっすぃは、よく分からないギャグ?で、市井ちゃんを迎えた。
「お、おう」
「ワタシたちで、デカモニやりまショウ!」
マジなのかボケなのかキャラなのか分からない。市井ちゃんも対応に困っているみたいだった。
- 30 名前:4 モーニングトーク本番 投稿日:2001年11月03日(土)11時51分42秒
- みんなからの発言は続いた。
「今日のあさごはんはなんでしたか?」
「市井さんの留守は、チャーミーが守ってました!」
「紗耶香、可愛くなったよねえ」
「私のモノマネ見てください。誰やー、ここでバナナ食べたん」
「紗耶香ぁ、またユニットやろうよお」
市井ちゃんは、たじろいでるみたいだった。
こそっと私に耳打ちして、
(モーニング娘。ってこんなグループだったっけ?)
と囁いた。
私は、市井ちゃんを真っ正面から見据えた。
「前からこうだよ」
って表情を変えずに云った。
市井ちゃんは、あれ? って表情になった。それ以上、なにも話しかけてこなかった。
- 31 名前:4 モーニングトーク本番 投稿日:2001年11月03日(土)11時52分40秒
- そして、私が喋る順番になった。
私は、市井ちゃんを見て、にっこり笑いかけた。
「この1年半、市井ちゃんは何してたの?」
台本にない問い。
「え?」
「市井ちゃんは、この1年半で、ビッグになったのかな?」
メンバーたちの視線が、私に集中した。
「ちゃんとシンガーソングライターの勉強してたの? ユウキとの噂、あれってなに?」
ユウキ本人に問いつめた時は否定してたけど、実際のところはどうなのか分からない。
スタジオが、シーン、ってなった。
カメラの回る、かたかた、って音だけが聞こえた。
- 32 名前:4 モーニングトーク本番 投稿日:2001年11月03日(土)11時53分45秒
- 「ブイ、止めて止めてー」
ADさんがカメラの前に飛び出して、手をぶんぶん振った。騒然とした空気の中、圭織が
私の正面に、腰を当てて仁王立ちした。
「ちょっとごっちん、どういうつもり!?」
私はふてくされて、横を向いた。
「別に」
「アンタねえ――」
圭織を、市井ちゃんが手で制した。
十センチくらいまで顔を近づけて、私の目を覗き込んだ。
「私に、なにか云いたいことがあるの?」
私は黙っていた。
今、なにか喋ると、泣きそうになるから。
- 33 名前:4 モーニングトーク本番 投稿日:2001年11月03日(土)11時54分18秒
- 「ごとう?」
「……」
「ごーとーお!?」
「……」
「分かったよ。はいはい、分かりました。後藤は、市井のことが気に入らないんだね」
市井ちゃんは、ぷい、とそっぽを向いた。そのまま、スタジオを出ていってしまった。
やぐっちゃんとなっちが、市井ちゃんを追いかけて行った。
結局、この日の収録はこれで終わりになった。
- 34 名前:黄色い狛犬 投稿日:2001年11月03日(土)11時55分36秒
- 今日はこのへんで。
- 35 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)14時09分26秒
- 相変わらず狛犬さんの後藤はかわいいっす。
頑張ってください!
- 36 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月03日(土)18時49分28秒
- なぜか後藤の周りをうろうろしている愛ちゃんがかわいいです。
- 37 名前:名無し梨華 投稿日:2001年11月03日(土)21時51分01秒
- やはりあれですか、高橋はあの日記のやつとリンクしてるのですか?
狛犬さん頑張ってくださいね♪
- 38 名前:市井商事 投稿日:2001年11月04日(日)01時32分57秒
- うおおおおおおおおお(狂喜
- 39 名前:( ^▽^) 投稿日:2001年11月04日(日)12時51分39秒
- ドウなるんですかぁー
- 40 名前:5 自販機前 投稿日:2001年11月04日(日)19時35分41秒
- CD発売に向けて、市井ちゃんのスケジュールは目白押しだ。テレビや雑誌の仕事が
頻繁に入っている。それなりに、事務所も力を入れてるみたい。
私はまだ、市井ちゃんとは仲直りしていなかった。
新曲も出すし、ソロ写真集の撮影もあって忙しかった。
明日こそ謝ろう、明日こそ、と思っているうちに、時間は過ぎていった。
- 41 名前:5 自販機前 投稿日:2001年11月04日(日)19時36分39秒
- 十一月に入った。市井ちゃんアルバムのコーラス部分の収録の日。スケジュールを見ると、
市井ちゃんもスタジオに来るみたいだった。当日、さっそく集合時間に遅れてしまった。
久しぶりだったし、着ていく服を選ぶのに時間がかかっちゃったんだ。
息を切らしてスタジオに飛び込む。まだ収録は始まってないみたい。
一番奥に、市井ちゃんの後ろ姿が見えた。心臓が跳ね上がった。市井ちゃんはちらっ、
と私を見て、話をしていた圭ちゃんに向き直った。私はじっと市井ちゃんの後ろ姿を
見ていたけど、もう振り返ってはくれなかった。私は確実に避けられてた。
- 42 名前:5 自販機前 投稿日:2001年11月04日(日)19時38分58秒
- 機材の調子が悪いみたいで「もう少し待機していて下さい」とスタジオの人から連絡が
あった。居づらくなって、部屋を出た。コーヒーの自販機前で一人、しゃがんでウーロ
ン茶を飲んでいた。
「……」
誰か、来た。
そう思って顔をあげると、市井ちゃんだった。
私と目が合いそうになると、市井ちゃんはぷい、と無表情のまま顔をそらした。
ここで私がこれみよがしに別の場所に移動するのもなんだし、その場にじっとして、
ここぞとばかりに市井ちゃんの横顔を観察した。
洗い晒しのTシャツに、スリムのジーンズ。
背は、私と同じくらいかな。
痩せたね、確実に。
それとも、大人の顔になったのかな?
髪伸びた?
眉がちょっとヘンだよ。
- 43 名前:5 自販機前 投稿日:2001年11月04日(日)19時40分01秒
- 市井ちゃんは、紙コップの自販機にお金を入れて、コーラのボタンを押した。
私の視線を意識していたのかも知れない。まだなにも出てきてない取り出し口の扉を
開けてしまった。そこから、勢いよく、紙コップが飛び出して来た。そして、ころこ
ろと転がって行った。
「あ……」
「あ……」
じゃーっ。
コーラが、出てきた。
どうしようもなく、市井ちゃんは茫然と、流れ落ちていくコーラを見つめていた。
くくくくく。
私は、肩を震わせて笑った。
声に出さないように我慢すると、余計に笑えてしまった。
「なにさ?」
市井ちゃんは、じろりと横目で私を見て云った。
私は笑いを引っ込めた。
「別に」
市井ちゃんは、コーラはもう諦めたらしい。
じゃがんでる私の横に、ぺたん、とお尻をつけて座った。
「なによ?」
「別に」
5分ほど、二人とも一言も喋らずに黙っていた。
- 44 名前:5 自販機前 投稿日:2001年11月04日(日)19時40分58秒
- あとからADさんに聞いた話。
『あの時、誰も自販機に買い物に行けなかったんですよ。遠くから見ても、あそこだけ
違う空気でした。だって、ロングスカートの後藤真希とGパンの市井紗耶香がツーショ
ットで、怖い顔して座り込んでるんですよ。近寄りがたいって云うか、迫力っていうか、
勿体ないっていうか』
どうやら、私たち二人で、あの場所を占領してたみたいだ。
- 45 名前:5 自販機前 投稿日:2001年11月04日(日)19時42分04秒
- 「最近、後藤はどうよ?」
市井ちゃんが、ぶっきらぼうに話しかけてきた。
「どうって、普通」
「ふーん」
今度は、私がなにか云わないといけないんだろうか。聞きたいことはたくさんあるんだ
けど。
「……別に、気になる訳じゃないんだけどさ、最近の市井ちゃんはどうなの?」
市井ちゃんは、目を大きく広げて私を見て、肩をすくめる仕草をして、
「充実してるよ」
そう答えた。
まだ私が黙ってると、
「今度のアルバムさ、そんなには売れないと思う。売り出す前からこんなこと云ってるの
もおかしい話なんだけど」
云っちゃ悪いけど、私も多分売れないと思う。
「でも、充実してるんだ」
- 46 名前:5 自販機前 投稿日:2001年11月04日(日)19時43分25秒
- 市井ちゃんは饒舌に、
「昔を思い出すんだよね。明日香がいた頃。毎回、今出してるシングルが売れなかったら
次はないよ、とか和田さんに脅されてさ、どれだけソロパートが貰えるかお互いにライバ
ル心むき出しにしてた。タンポポに矢口が選ばれた時はくやしくて仕方なかった。ふるさ
とが売れなかった時はみんなで抱き合って泣いたなあ。ラブマが出るまでは、ずっとそう
だった。……あの頃の気持ちが、戻ってきた感じかな。確かに、この復帰は、私の望んだ
形じゃないけど、やりがいはある。まずは、12月10日を目指して。うん。だから、今
は充実してる」
嬉しそうに、懐かしそうに話す市井ちゃんを見ていると、胸の奥がぎゅうっ、って痛く
なった。
「私のせい?」
「え?」
「私のせいなの? 私が入ってLOVEマシーンが売れて……市井ちゃん、前に云って
たよね? あの頃から、卒業を考えてた、って。石黒さんもそう。裕ちゃんも。私が悪
いの? 私が入ったせいで、みんな娘。を辞めたい、って思うようになっちゃったの?
だから、もう、私とはユニットを組みたくないの? また、芸能活動がつまんなくなっ
ちゃうの?」
「ちょっと、後藤」
- 47 名前:5 自販機前 投稿日:2001年11月04日(日)19時44分28秒
- 「圭織とかなっちとか、いつも云うんだ。手売りの頃は大変だったねえ、って嬉しそうに。
私も、五万枚売りたかったよ。みんなでモーニング娘。を作りたかった。ねえ、私って、
モーニング娘。なのかな? いつまでも、みんなからお客さん扱いされてるみたいでイヤ
なんだ。後から来た梨華ちゃんの方が、ずっとモーニング娘。みたいだよ。知ってるよ。
後藤真希がいつ娘。を卒業するのか、ってみんな噂してること。ソロなんてやりたくない。
みんなと一緒にいたい。でもさ、事務所がやれ、って云うんだから仕方ないじゃん。ワガ
ママ云えないじゃん」
云ってるウチに、どんどんテンションが上がってきて、自分がなにを話してるのか訳が分か
らなくなって、
そして、
「市井ちゃんのバカー!」
それだけ叫んで、走って逃げた。
「……なんでやねん」
ぼそり、とつぶやく市井ちゃんのツッコミが聞こえた。
- 48 名前:黄色い狛犬 投稿日:2001年11月04日(日)19時47分55秒
- つづけ
- 49 名前:次回予告 投稿日:2001年11月04日(日)19時49分16秒
- ミュージックスに市井ちゃん登場。短いが。
- 50 名前:黄色い狛犬 投稿日:2001年11月04日(日)23時52分16秒
- 続きー
- 51 名前:6 ミュージックス 投稿日:2001年11月04日(日)23時53分11秒
- 「あんたら、まだケンカしてるんか?」
裕ちゃんの呆れたような声。
ミュージックスのゲストが市井ちゃんだったんたけど、例によって楽屋は別々で。
また収録中に妙なことを言い出さないか心配だったんだろう、トイレに行く途中、楽屋の
前を通りかかった私に裕ちゃんが、
「ウチらの楽屋に遊びに来るか?」
と誘ってくれたのだ。
どうしようか、一瞬迷った。
だけど、
がちゃり。
- 52 名前:6 ミュージックス 投稿日:2001年11月04日(日)23時53分53秒
- 楽屋の扉が開いて、市井ちゃんが顔を覗かせた。私と視線があった。そして、下から、
ちらっ、とグラビア雑誌みたいなのを出した。
おすまし顔でちょっぴりセクシーポーズな写真のページを開けていた。――って、私の
ソロ写真集じゃん! 試し刷りのヤツ? なんで市井ちゃんが持ってるのよ!
「う゛あッ」
私の喉から、しゃっくりみたいな妙な悲鳴が出た。かーっ、と顔が熱くなった。多分、
耳まで真っ赤になってる。
市井ちゃんは、きしししし、と手をグーにして笑い、引っ込んだ。
「……ほら、ごっちん来な」
「ゼッタイに行かない」
「あんたら……」
腰に手をあてて、裕ちゃんはため息をついた。
- 53 名前:6 ミュージックス 投稿日:2001年11月04日(日)23時54分57秒
- ◇
- 54 名前:6 ミュージックス 投稿日:2001年11月04日(日)23時55分43秒
- 先に、歌の収録があった。
なっち、圭織、圭ちゃん、やぐっちゃん、裕ちゃん、そして私がステージにあがる。
六本のマイクが一列に並んでいる。
それぞれのマイクの前に立つ。横に並んだモーニング娘。たち。そして、私たちより
前に置かれた、マイクが一本。
市井ちゃんがステージにあがると、観客席から物凄い歓声があがった。
市井ちゃんは、私たちを従えて、マイクの前に立った。
「市井紗耶香でーす」
さやかー、と声援が飛ぶ。
市井ちゃんは、目を閉じて、顔を上に向けていた。久しぶりに帰ってきたステージの
空気を深呼吸していた。
口元に、笑みが浮かんでいる。緊張はしていないみたいだ。
「帰ってきたよぉ!」
両手を突き上げて、いきなり叫んだ。
- 55 名前:6 ミュージックス 投稿日:2001年11月05日(月)00時00分17秒
- うおおおっ、と観客が反応する。
市井ちゃんは、しーっ、と人差し指を口元に持って行った。それだけで、収録スタジオ
はシーン、となった。
イントロが流れる。
『ふるさと』だ。
東京で一人暮らしたら
母さんの優しさ心にしみた
市井ちゃんが歌ってる。
たくさんの人が、息をひそめて、ステージに見入ってるのが分かる。
私は、胸の中がじーん、ってなった。
- 56 名前:6 ミュージックス 投稿日:2001年11月05日(月)00時01分00秒
- 涙 止まらなくても
昔のように しかって My Mother
涙 止まらないかも
わがままな娘でごめんね Mother
市井ちゃんは、市井ちゃんのふるさとを歌った。
私は、コーラスを入れながら、少しだけ泣いてしまった。隣を見ると、圭織も、やぐっ
ちゃんも泣いていた。
- 57 名前:6 ミュージックス 投稿日:2001年11月05日(月)00時02分03秒
- ◇
- 58 名前:6 ミュージックス 投稿日:2001年11月05日(月)00時02分57秒
- 「はぁい、オトゲノムぅ!」
キャイーンの天野さんがタイトルコールする。
私と圭ちゃんが調査員役だ。
「今日のゲストは、元モーニング娘。の市井紗耶香さーん」
ちわーす、と軽いノリで、市井ちゃんが出てきた。後ろから、当然のように、裕ちゃんが
ついてきた。
私は少し、不機嫌になった。
今日のテーマは『今だからフォークソング』だった。市井ちゃんが歌うフォークの波形が
1/fのゆらぎでなごみ系でリラクスゼーションでと、どこかの大学の先生が云っていた。
- 59 名前:6 ミュージックス 投稿日:2001年11月05日(月)00時03分41秒
- 「あれえ? この三人って、もしかして!」
ウドさんが、市井ちゃんと私と圭ちゃんを見て云う。ほら、あれあれ、と云いながら、
テレビカメラに向かって、お尻を振った。客席から笑いが飛んだ。
「なにやってんだよウド。男の尻振りなんて見たくねえよ」
ほらほら、と云いながら、ウドさんは、まる、まるまるまるフー、とかやった。
圭ちゃんも市井ちゃんも、大笑いした。
私は、無表情でいた。圭ちゃんが肘でわき腹をつついて来たけど、無視した。
どうして、こんなに腹が立つのか分からない。
私は、私がなにをしたいのかが分かんないんだ。
- 60 名前:黄色い狛犬 投稿日:2001年11月05日(月)00時04分24秒
- つづけ
- 61 名前:黄色い狛犬 投稿日:2001年11月05日(月)00時05分15秒
- 次回予告
ハロモニ劇場 バスが来るまで
- 62 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月05日(月)00時57分19秒
- 本当に…アナタの書く後藤は…
ワクワークダヨー
- 63 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月05日(月)02時38分15秒
- 再び狛犬様のお話が読めるとは…。
- 64 名前:名無しだよ 投稿日:2001年11月05日(月)10時12分56秒
- 最高です。ごっちん……
- 65 名前:名無しだよ 投稿日:2001年11月05日(月)10時15分00秒
- うあ。。。あげちゃった。。。ごめんなさい。
- 66 名前:名無し様 投稿日:2001年11月05日(月)14時41分23秒
- 狛犬先生の作品を再び拝めるとは。。。
感激ですぞぉ!!
- 67 名前:黄色い狛犬 投稿日:2001年11月05日(月)21時56分46秒
- 市井妄想中
スレッド更新中
- 68 名前:7 ハロモニ劇場 バスが来るまで 投稿日:2001年11月05日(月)21時57分17秒
- (ナレーション)
〜都会のとある一角に、ハロモニ。女子学園の生徒たちが利用するバス停があった〜
- 69 名前:7 ハロモニ劇場 バスが来るまで 投稿日:2001年11月05日(月)21時57分51秒
- 「ワァオ、イェー!」
ヘッドフォンをつけ、ブレザー姿でノリノリの矢口真里。
バスの停留所に立っている、同じくブレザーの飯田圭織に気がつかないのか、腰から
ドン、とぶつかってしまう。それでも気にせず踊り続ける矢口。
「朝っぱらから迷惑なヤツだなあ。なに聴いてんだよ」
男口調の飯田、矢口からヘッドフォンを奪い取る。
大音響のロックが鳴り響く。
- 70 名前:7 ハロモニ劇場 バスが来るまで 投稿日:2001年11月05日(月)21時58分29秒
馬鹿はしょうちのすけだよ いかにゃならねぇ
無理な夢ほどかっちょ良い Yatto uho
- 71 名前:7 ハロモニ劇場 バスが来るまで 投稿日:2001年11月05日(月)21時59分36秒
「これじゃあボケでないだろ、って推定少女かよ!」
いや、あのセクシービキニ、着てみたいなあとか思っちゃって、と口ごもりながら云う矢口。
そりゃあ俺も着てみたいさ、と小声で云う飯田。
「誰がセクシーですって?」
ボディコン(死語)スーツの中澤裕子が登場する。
メガネの縁をくい、と上げて、
「セクシー、と聞いて、黙ってる訳にはいきませんわ。ある意味、むしろ推定少女の
中澤裕子としてはね」
「いやいやいや、裕ちゃんにあの衣装はキツいって」
推定少女は、特に左の娘がビキニの水着のような、嬉し楽しい衣装をまとっているのだ!
- 72 名前:7 ハロモニ劇場 バスが来るまで 投稿日:2001年11月05日(月)22時00分23秒
- 「はあ? 誰がキツいのさ!?」
矢口の耳をつかみ、中澤は口調をがらりと変えて凄む。その剣幕に、ごめんなさい
ごめんなさい、と口の中で繰り返す矢口。
いーえ、許しません、と中澤は矢口を抱きかかえ、
「罰としてチューします。チュー」
お約束の展開になだれ込む。
「なんでそうなるんだよッ!」
どこか嬉しそうな矢口ではある。
- 73 名前:7 ハロモニ劇場 バスが来るまで 投稿日:2001年11月05日(月)22時00分58秒
- 端から見るとじゃれているとしか映らない二人に、
「ほんらあ、あれが、レズっちゅーもんだよ」
「オウ! てめえらレズビアーン!」
でっかいメガネをかけた安倍なつみが、帰国子女吉澤ひとみに何やらレクチャーしていた。
「安倍さん、ウソを教えないで下さい」
矢口が安倍に抗議する。
「矢口は照れ屋やなあ。昨日の晩はあんなに大胆に燃え上がったのに」
「してねえだろ!」
「お前、女が好きなのか?」
「だから違うってば圭織!」
- 74 名前:7 ハロモニ劇場 バスが来るまで 投稿日:2001年11月05日(月)22時02分20秒
- わいわい騒いでいる五人。
そこへ、杖をつきつき、おばあちゃん姿の保田圭が階段を降りてきた。
前後の流れは全く無視して、
「く、苦しい、持病のしゃくが」
胸を押さえて倒れ込んだ。
「ソレはイケマセン。ほら、ヨコになって」
吉澤が、保田を床に横たえる。
「こういうトキは、ヒトハダがヨいとキきます。さあ、ヌいでヌいで、アタタめあいまショウ!」
- 75 名前:7 ハロモニ劇場 バスが来るまで 投稿日:2001年11月05日(月)22時03分39秒
- がばっ、と男らしくブレザーの上着を脱ぎ捨てる吉澤。身の危険を感じた保田が逃げ出す
前にマウントポジションを確保。そのまま、保田の着物の合わせに手をかける。
「ワシらもレズビアーン!」
「今日のシナリオ、絶対おかしいって。こら、吉澤、なんでそんなに乗り気――マジで
帯をほどくな!」
「ヤスダさーん(はあはあ)ヤスダさーん(はあはあ)」
空気の読めない暴走列車、吉澤にいいようにされて、なすすべもない保田。着物の前を
はだけられ(まだババシャツとか着込んでいるにも関わらず)きゃっ、と叫んで胸を両
手で隠す仕草がちょっぴり色っぽい。
- 76 名前:7 ハロモニ劇場 バスが来るまで 投稿日:2001年11月05日(月)22時04分12秒
- 「よしやすかよッ」
矢口が叫ぶ。
「いい加減に、しろ!」
飯田に頭を叩かれて、
「はっ、ワタシはナニを……」
正気に戻る吉澤。
カツラも半分ずれて、ほうほうのていで吉澤の下から這い出す保田。
「なんか今日の台本はマニアックだよ」
矢口がぼそりと呟く。
- 77 名前:7 ハロモニ劇場 バスが来るまで 投稿日:2001年11月05日(月)22時05分00秒
- 「人間って……」
左から、石川梨華がフレームインしてくる。髪をお下げにして、両手は揃えて前に。
もの悲しい表情で台詞を続ける。
「人間って、悲しいね」
またヘンなのか現れた、と矢口。
「で、一体どうしたんだよ、石川」
飯田のうながしに、石川はうなづいて、
「私、ポジティブになろうと思って、カウンセリングを受けに行ったんです」
「ふんふん」
「そしたら、貴方の願望をこの紙に書いてください、いえ、簡単な心理テストですから、
って云われて」
どっかで聞いた話だな、と矢口と飯田は顔を合わせる。
- 78 名前:7 ハロモニ劇場 バスが来るまで 投稿日:2001年11月05日(月)22時05分35秒
- 「素敵な王子さまに愛されたい、って書いたら、昨日のラジオの本番中に、よっすぃに
チ(ピー)が生えてきて、怖い顔でテーブルに手をつけ、って命令されて――私、スタ
ッフさんたちに見られてる中で後ろから……恥ずかしい声が、全国に放送されて……」
「それってシャイニング娘。だろ!」
エロマンガ読むなあ、とツッコミを入れる矢口。
「もう私、学校に行けない」
「そりゃあ確かに、そんなことがあったら学校にはいけないわな」
納得している飯田。
「人間って悲しすぎる……」
- 79 名前:7 ハロモニ劇場 バスが来るまで 投稿日:2001年11月05日(月)22時06分21秒
- 「分かる、分かるよその気持ち」
紺の学生服に身を包んだ、ナルシスト後藤真希が登場する。
つかつかと石川に歩み寄り、両肩を抱く。
「僕には分かる、君の気持ちが。僕も、TV局でぬいぐるみに――って違う違う」
咳払いをする後藤。
人の世に愛がある
人の世に夢がある
この美しいものを守りたいだけ
- 80 名前:7 ハロモニ劇場 バスが来るまで 投稿日:2001年11月05日(月)22時07分01秒
- 「デビルマンのEDかよッ!」
やぐっちゃんも結構マニアだねえ、と素に戻って云う後藤。
「ダメだね、全然ダメ。ちゃんちゃらお話にならないよ」
純白の詰め襟姿で現れた、もう一人のハンサムは、市井紗耶香だった。
ぽかんとしている後藤を後目に、つかつかと中央まで移動する。
石川の腰に手をかけ、ぐいと引く。弓ぞりになった石川の顔すれすれに、市井は自分の
顔を寄せる。
汚れっちまった悲しみに
いつか本気で笑おうや
- 81 名前:7 ハロモニ劇場 バスが来るまで 投稿日:2001年11月05日(月)22時07分45秒
- 「うーん、中原中也と見せかけて、魁!男塾の主題歌ですね!」
さすが梨華ちゃん、分かってるねえ、と嬉しそうな市井。結局アニメシリーズかよっ、
とまたしてもツッコミ役の矢口。
「それって(宝塚風ポーズ)梨華ちゃんの悩みとは関係ないだろう?」
後藤は、ハンサムキャラのまま市井に詰め寄る。
「後藤のだって(流し目。タメ五秒)全然、関係ないね」
なんだと、と、後藤は市井の胸ぐらをつかもうとする。あらがう市井と絡み合って、
二人は転んでしまう。
白の詰め襟市井が、紺の学ラン後藤を押し倒す格好になった。
ヘアバンドが外れ、市井に組み敷かれた後藤の髪が床に広がる。
両手は、市井に押さえられ、身動きが取れない。
- 82 名前:7 ハロモニ劇場 バスが来るまで 投稿日:2001年11月05日(月)22時08分30秒
- 「(息荒く)なにをするんだ、どけよ。……紗耶香」
「(息荒く)……俺を、紗耶香、と呼んだな。真希」
市井は、毛先が触れんばかりに顔を寄せる。
どちらも、目を見開いて、互いの目を凝視している。後藤の呼気が、市井の髪を揺らしている。
「なにが、したいんだ?」
「……キス……かな……」
市井の唇が半開きになり、ゆっくりと降りてくる。市井の髪が、後藤の表情を隠す。
「好きにすれば……いいさ……」
後藤の声だけが、髪の間から聞こえてくる。
カメラが、ギャラリーの表情を抜く。
固唾を飲んでいる矢口と飯田。耳まで赤くなって二人を見ている安倍。おろおろしている
石川。病院窓から様子を伺う保田と吉澤と中澤。
- 83 名前:7 ハロモニ劇場 バスが来るまで 投稿日:2001年11月05日(月)22時09分03秒
- 「いぢめちゃダメ!」
ハモり声で、辻希美と加護亜依が登場。
がばっ、と市井は顔をあげる。なんだか、気まずそうな表情になっている。後藤は顔を
横に向け、潤んだ瞳で親指の爪を噛んでいる。
はあーっ、とギャラリーからため息が漏れる。
「苛めてないさ。可愛がってあげたんだ」
やっちゃった? やっちゃった? と、矢口が市井のそばに駆け寄って問う。
市井は首を振って髪を散らし、どうかな? と答える。
- 84 名前:7 ハロモニ劇場 バスが来るまで 投稿日:2001年11月05日(月)22時09分41秒
- 「オンナノヒトどうしでチュウしてるよ」
「おいしいのかな?」
「子どもは見ちゃダメー!」
飯田に叱られて、チビッコ二人は走って逃げて行った。
「あっ、バスが来たよ!」
矢口の声に、モーニング娘。のメンバーたちがぞろぞろと勢揃いする。
- 85 名前:7 ハロモニ劇場 バスが来るまで 投稿日:2001年11月05日(月)22時11分29秒
- (ナレーション)
〜今朝もにぎやかにバスを待つ、ハロモニ。女子学園の先生と生徒たちだった〜
- 86 名前:黄色い狛犬 投稿日:2001年11月05日(月)22時12分02秒
- 例によって、なにを書きたいのか自分自身でも把握しておりません
- 87 名前:黄色い狛犬 投稿日:2001年11月05日(月)22時12分42秒
- 市井妄想中
スレッド更新中
- 88 名前:8 FOLK SONGS 投稿日:2001年11月05日(月)22時13分42秒
- 台本を読んで、なんだこりゃあ? と思った、狂乱のハロモニは、結構評判が良かった。
みんな、モーニング娘。に何を期待してんだろ?
11月29日。市井ちゃんのアルバム「FOLK SONGS」がついに発売になった。
初めてその企画の話を聞いた時は、まだどこか現実味がなくて、本当にそんな日が来るん
だろうか? とか思ってた。
でも、その日はあっけなく来た。
自分のお金でCDを買った。
もう、何度もマスターは聴いてるんだけど、改めて自分のCDラジカセから流れてくる
市井ちゃんの声を聴いてると、ああ、市井ちゃん帰って来たんだなあ、ってしみじみと
思った。
- 89 名前:8 FOLK SONGS 投稿日:2001年11月05日(月)22時15分44秒
- ねえ、市井ちゃん。
約束したよね? プッチモニダイバーで、復帰した市井ちゃんにゲストに来てもらう、
って。あの番組が終わっちゃったのは、まあ、いろいろとゴタゴタでアレがナニで仕方
なかったんだけどさ。
復帰の話を聞いて、再会した途端に、ぎゅーん、ってあの頃の私と市井ちゃんに戻れる、
って思ってたんだよ。その瞬間まで。
でも、実際には、なんだかよそよそしくなっちゃったね。私と市井ちゃんの間の時間は
凍り付いてなんてなくて、ちゃんと流れてたんだ。ひょっとしたら、いつの間にか、大
切なものを無くしちゃったのかも知れないね。お互いね。
私も、市井ちゃんも、変わったのかな?
- 90 名前:8 FOLKSONGS 投稿日:2001年11月05日(月)22時16分41秒
- ベッドにごろりと寝転がる。
昨日、郵便で届いたチケットを、顔の上でひらひらさせる。送り主は市井紗耶香。
12月10日、SHIBUYA−AXでの、市井ちゃんのライブの招待状だ。それも、
一般の観客席じゃなくて、二階にある関係者だけの特別席。
そりゃあ、見に行きたい。
見に行きたいに決まってる。
でも、
でも、どうして、こんなに淋しいんだろう。
ぐっ、と握りこぶしを作る。
一年半前から、ずっとしまいっぱなしになっていたアレをもう一度、出そう。ベッドから
跳ね起きて、ぱんぱん、ってほっぺを叩いて気合いを入れる。
- 91 名前:8 FOLKSONGS 投稿日:2001年11月05日(月)22時17分24秒
- タンスの引き出しの奥をごそごそと引っかき回して、
かちり
指先に、ソレが触れた途端、胸の奥に痛みが走った。ずっと、記憶に沈めていた想い出が、
わあっ、と溢れて来た。
(市井ちゃん……)
CDからは、市井ちゃんと裕ちゃんの歌う『待つわ』が流れて来る。
- 92 名前:8 FOLKSONGS 投稿日:2001年11月05日(月)22時17分55秒
- 行ったり来たりすれ違い 貴方と私の恋
いつかどこかで結ばれるって
ことは 永久(とわ)の夢
そのとき初めて、心の底から、市井ちゃんに会いたいと思った。市井ちゃんに甘えたい、
って思って泣いた。
私、嫉妬してたんだ。
- 93 名前:8 FOLKSONGS 投稿日:2001年11月05日(月)22時18分35秒
- 市井ちゃんが帰って来たら、なにもかもがうまく行くって思ってた。なのに、市井ちゃんの
かたわらにはいつも誰かがいて、でもそれが当然のように市井ちゃんは振る舞って。
ドキドキしてた私に、
「後藤、久しぶりー」
とか、そんな当たり前の言葉をかけてきて。
そうじゃないじゃん!
そんなんじゃないんだよ!
市井ちゃんは変わってしまった。
市井ちゃんは変わってしまったんだ。
- 94 名前:8 FOLKSONGS 投稿日:2001年11月05日(月)22時19分13秒
- 私は、市井ちゃんの招待券をビリビリに破った。
細かく細かく、紙吹雪になるくらいに千切った。
そして、窓を開けて、ばあっ、て投げ捨てた。
私はえぐえぐと鼻をすすった。
ステージの市井ちゃんを、私には二階から見てろ、って云うの? そんなの我慢できない。
我慢できる訳ないじゃん。
何度も何度も深呼吸する。
左手を広げて、薬指にはめられたソレを凝視する。
市井ちゃん。
後藤真希を甘く見て貰っちゃ困る。
やるよ。
やっちゃうよ、私は。
- 95 名前:8 FOLKSONGS 投稿日:2001年11月05日(月)22時20分01秒
- ◇
- 96 名前:8 FOLKSONGS 投稿日:2001年11月05日(月)22時23分17秒
- 私の大決心とは関係なく、淡々と日々は過ぎていき、あっという間に、市井ちゃんの
ライヴの日がやってきた。
メンバーのみんなにも招待状は行ってたみたいで、マネージャーさんが手配してくれた
一台のワゴンに乗り合わせて会場に向かった。
そして、二階席に向かう通路をゾロゾロと歩いていく娘。たちの列から、そろりと離れた。
- 97 名前:8 FOLKSONGS 投稿日:2001年11月05日(月)22時24分59秒
- 途中、スタッフの人とすれ違う。
「あれ? 招待席はこっちじゃないですよ?」
「ちょっとだけ、市井ちゃんに頑張って、って云おうと思って」
にっこりと笑う。親切なスタッフさんは、楽屋までの道を教えてくれた。
ありがとうございます、ってお礼を云う。
そっちには行くつもりはないけどね。
私は、開演前からすでに熱気が伝わってくるステージへと続く道を、ずんずんと進んだ。
- 98 名前:黄色い狛犬 投稿日:2001年11月05日(月)22時27分15秒
- つづけ
- 99 名前:黄色い狛犬 投稿日:2001年11月05日(月)22時28分30秒
- 次回予告
『SHIBUYA−AX(1)』
- 100 名前:名無し 投稿日:2001年11月05日(月)23時29分20秒
- 求めていたいちごまはやっぱり狛犬様のものだった…
- 101 名前:ななしの一 投稿日:2001年11月06日(火)00時44分41秒
- す、す、す、すっきやー、これ。
でも一番おもろいのは、狛犬さんのコメントかも(獏
- 102 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月06日(火)02時30分44秒
- 後藤は何を狙ってる?
ドキドキーリ
- 103 名前:黄色い狛犬 投稿日:2001年11月06日(火)21時10分42秒
- ごま写真集、売ってないよ!
チャーミー写真集は置いてたよ!
どーゆーこと??
- 104 名前:9 SHIBUYA−AX(1) 投稿日:2001年11月06日(火)21時12分00秒
- 市井紗耶香の公演は、15:30からの部と19:00からの部の二回公演だった。
平日であるにも関わらず、チケットは発売後五分で完売、その後もネットでは高値で
取引されており、その価格が十万を超えることも珍しくなかった。
後藤が会場に来たのは開演三十分前である。舞台裏にこっそり入り込んだ彼女は、途
端、気圧があがったような気がして軽くよろめいた。ごおおおお、と地鳴りのような
音が聞こえてきて何事かと戸惑い、それが観客席からの熱気だと分かって、二度驚いた。
ゲートに入ってスタートをじりじりと待つ競走馬のような、焦燥感めいた空気に、圧
倒された。
紗耶香!(ダンダン)
紗耶香!(ダンダン)
すでに、市井コールが始まっている。
(……この雰囲気は覚えてる。5月21日、雨の武道館だ)
後藤は、慎重に場所を選び、ステージのそで、全体が見渡せる暗闇に身をひそめた。
スタッフが、昼の部の盛り上がりについて話している。それは伝説に成り得るステージ
だった様で「こんなにもたくさんのファンが待っていてくれた市井さんは幸せですよ」
と興奮口調でまくし立てていた。
- 105 名前:9 SHIBUYA−AX(1) 投稿日:2001年11月06日(火)21時12分45秒
- 「おはようございます」
「今日はよろしくお願いします」
「いいステージにしましょう!」
「市井さん頑張って」
スタッフたちが騒がしくなる。楽屋から、市井が出てきたようだ。あちこちから、市井に
向けて声が飛んでいる。ずっと昔からコンサートツアーを組んでいた仲間同士、といった
連帯感がすでに生まれていたようだ。昔から、市井紗耶香は裏で支えるスタッフたちに人
気が高かった。
晴れやかな表情の市井の姿を後藤は確認した。隠れている後藤に向かって歩いて来た。隣り
の中澤の方がガチガチに緊張しているようで、市井に肩を叩かれたりしている。
後藤には気づかず、二人は前を通り過ぎる。
開演、五分前。
- 106 名前:9 SHIBUYA−AX(1) 投稿日:2001年11月06日(火)21時13分17秒
- ◇
- 107 名前:9 SHIBUYA−AX(1) 投稿日:2001年11月06日(火)21時13分57秒
- 「あれえ? ごっちんは?」
ジンジャエールのペットボトルを手に、安倍はキョロキョロと辺りを見回した。
SHIBUYA−AX二階特別席。みな、出来るだけ予定を空け、市井紗耶香の復帰を
共に祝おうと集まっていた。
「そういえば見てないなあ――こら、加護辻! おとなしく座ってろってば!」
走り回っている二人を矢口が叱りつける。
新しいメンバーの四人は大人しく席についている。会場の雰囲気に飲まれているようだ。
「凄い盛り上がりですね」
吉澤が、額の汗をぬぐう。休みなく冷気を吐き出し続けているはずの空調も、ほとんど
効果がないようだった。観客たちの盛り上がりは、開演前から天井知らずだった。二千
人入るか入らないかのライブ会場は、しかし、一万人を数えるモーニング娘。コンサー
トよりも、熱気の点で勝っていた。
二階席にモーニング娘。が来ている、と気づいたのか観客席の一部が、ざわつき始めて
いる。
チャーミー、とか、ののちゃーん、などと叫ぶ声も聞こえる。
- 108 名前:9 SHIBUYA−AX(1) 投稿日:2001年11月06日(火)21時15分10秒
- だが、
紗耶香!(ダンダン)
紗耶香!(ダンダン)
サヤカコールが始まると、そういったうわついた声は歓声に飲み込まれてしまった。
みな、市井の名を叫びながら、手を叩いたり足を踏み鳴らしたりしている。ライブ会場
自体が揺れているのではないか? と思えるほどだ。
もはや、二階にモーニング娘。がいる、ということを気にかけるものはいない。みなの
注目は、ステージに注がれていて、今日のメインを今か今かと待ちかまえていた。
すでに保田は涙ぐんでいる。
「圭ちゃん、泣くのは早いよ」
飯田が声をかける。
「ね、圭織。思い出さない?」
「圭ちゃんもなんだ。思い出すよ。紗耶香の――」
そこまで云って、飯田もひっく、としゃっくりをして、言葉を続けられなくなった。
「圭織も泣いてるじゃん」
「だって、紗耶香が、やっと本当に帰って来たんだなあ、って思ってきて。あの日から、
長かったなあ、私も待ってたんだなあ、って」
「うん。私も待ってたよ。紗耶香を」
会場の照明が暗くなる。
いよいよだ、と、客たちの悲鳴めいた歓声は、地鳴りのように空間に響きわたった。
開演、一分前。
- 109 名前:9 SHIBUYA−AX(1) 投稿日:2001年11月06日(火)21時15分41秒
- ◇
- 110 名前:9 SHIBUYA−AX(1) 投稿日:2001年11月06日(火)21時16分30秒
- 「みなさん、輪になって下さい!」
市井の呼びかけで、スタッフたちの中で手が空いてる者たちみんなで円陣を作った。
「今日の私があるのも、みなさんのおかげです。市井紗耶香。本日を持ちまして、芸能界
に復帰します。頑張って、最高のステージにしましょう!」
がんばっていきまーーっしょい!
と、市井のかけ声をみなが追従した。
後藤も、こっそり何もない空間に手を伸ばし、小声で(しょーい)とやった。
ステージにスポットライトが灯る。
途端に、会場は静寂に包まれた。
じりじりとした、二千人の沈黙。
- 111 名前:9 SHIBUYA−AX(1) 投稿日:2001年11月06日(火)21時17分12秒
- 「いっえーーーい!」
叫んで、市井はステージの光の中に飛び込んで行った。
その瞬間、会場は沸騰した。
市井は笑顔のままで、マイクを構えた。再び、観客たちはしん、となった。
「ええと、市井紗耶香、帰ってまいりました。(紗耶香ー、と声援が飛ぶ)ありがとう。
みなさんには、本当に、ご心配をおかけしました。市井は、元気です」
ぐっぐっ、と市井はポーズを取る。
「今日は、いっぱい楽しんでね! じゃあ、行くよー!」
曲のイントロが流れ初める。市井紗耶香のステージはこうして幕をあけた。
- 112 名前:9 SHIBUYA−AX(1) 投稿日:2001年11月06日(火)21時17分44秒
- ◇
- 113 名前:9 SHIBUYA−AX(1) 投稿日:2001年11月06日(火)21時18分15秒
- 市井は、アルバムの曲を順に歌っていった。
基本的に、モーニング娘。本体のような盛り上げ用の曲は、今回のアルバムには収録
されていない。観客たちはみな、熱狂しつつ、しみじみと市井の復帰を実感している
ようだった。
息つくヒマもなく、第一部が終了した。
十分の休憩後、第二部開始となる。
「ふう」
保田は、乗り出していた身体をシートに深く沈めた。握りしめたこぶしに今気づいたかの
ように、手を閉じたり開いたりした。じっとりと汗をかいていた。
「圭織、さっきから、なにブツブツ云ってたのよ」
飯田は、ずっと、いいなあ紗耶香、いいなあ紗耶香、とつぶやき続けていた。ソロで(中澤
もいるが)コンサートを開催できる市井が羨ましくて仕方がないらしい。
「市井さん格好いい! 市井さん格好いい!」
石川が、はしゃいで感想を云っている。
- 114 名前:9 SHIBUYA−AX(1) 投稿日:2001年11月06日(火)21時19分00秒
- ふと、保田は、なにかを忘れているような気がした。
心の隅に引っかかった疑問について、じっくり考えてみる。
(うーん。なんか、すっごく重要なことだったように思えるんだけど。紗耶香のステージが
始まっちゃって、どこかにすっ飛んじゃったんだよねきっと)
「紗耶香さ、ハロプロコンサートにも参加してくれないかな? ファンのみんなも喜んで
くれると思うんだけどな」
矢口が、興奮に頬を紅潮させて云う。
(そうだよね。紗耶香と一緒にLOVEマシーンも歌いたいし、ああ、そうだ。プッチモニが
出来るじゃん。ちょこっとLOVEは絶対に……)
保田は、はっ、として立ち上がった。
「あのさ、誰か後藤を見――」
照明が落ちた。
ピンスポットが、ステージの中央を照らした。
光の輪の中に、市井がいた。
ちょこっと可愛らしい、ピンクのフレアスカートだ。
「第二部、始まるよー」
- 115 名前:9 SHIBUYA−AX(1) 投稿日:2001年11月06日(火)21時19分59秒
- 歓声。
ざわめき。
五秒ほどおいて、割れんばかりの歓声。
「あれえっ!」
安倍の素っ頓狂な叫び声に、保田は睨み付けるように振り返り、安倍の指さす方向を
見返して、凍りついた。
- 116 名前:9 SHIBUYA−AX(1) 投稿日:2001年11月06日(火)21時20分30秒
- 観客たちのおかしな反応に当惑気味な市井の背後に、
笑顔満開の後藤真希の姿が浮かび上がっていた。
ちゃっかり、市井とお揃いのフレアスカート姿で。
- 117 名前:黄色い狛犬 投稿日:2001年11月06日(火)21時21分27秒
- つづけ
- 118 名前:黄色い狛犬 投稿日:2001年11月06日(火)21時22分00秒
- 次回予告
『SHIBUYA−AX(2)』
- 119 名前:黄色い狛犬 投稿日:2001年11月06日(火)21時23分04秒
- 明日こそ、ごま写真集を……
- 120 名前:名無し梨華 投稿日:2001年11月06日(火)22時33分04秒
- ごま写真集。
あれは犯罪です。それも重度の(w
交信、お待ちしてます
- 121 名前:市井商事 投稿日:2001年11月07日(水)00時02分12秒
・・・・・・・・・・・ヤッスーは喜ぶさ。うん。あー。
痛いコメントばっかだな俺も。ごまちちありがとう。
- 122 名前:ハロモニ劇場って結局 投稿日:2001年11月07日(水)00時07分03秒
- よしな(略
- 123 名前:黄色い狛犬 投稿日:2001年11月09日(金)21時00分03秒
- ごま写真集げっと!
- 124 名前:10 SHIBUYA−AX(2) 投稿日:2001年11月09日(金)21時00分58秒
- 「ズルイっ!」
保田が、身体を二階席から乗り出す。
慌てて、吉澤と飯田が後ろから羽交い締めにする。
「圭ちゃん、落ち着いて」
「保田さん、危ないです」
「なんでごっちんが紗耶香のステージに立ってるのよ! ごっちんが出るんなら、私も出る」
二階から飛び降りんばかりの勢いで保田は暴れた。
「保田さん、ごめんなさい」
「はうっ」
- 125 名前:10 SHIBUYA−AX(2) 投稿日:2001年11月09日(金)21時01分36秒
- ◇
- 126 名前:10 SHIBUYA−AX(2) 投稿日:2001年11月09日(金)21時02分25秒
- なかなか曲のイントロが流れて来ないからか、市井はスタッフに目で合図を送ろうと振り返り、
「げっ」
と、うなり声をあげた。その声をマイクが拾い、会場中に『げっ』が響いた。
市井の背後には、だらしなく口を開けて笑っている後藤が立っていたのだ。
『へへっ。いちーちゃん、来ちゃった』
『来ちゃったじゃないっしょ! 今、本番中なんだよ!』
『だって、来たかったんだもん。おめでとう、って云いたかったんだもん』
後藤は、ぶーっ、とふくれっ面をした。
二人の会話は、すべてマイクを伝って会場に流れている。客たちは、寸劇が始まったものと
思っているらしかった。ごまきぃ、さやかぁなどとコールする者もいた。
- 127 名前:10 SHIBUYA−AX(2) 投稿日:2001年11月09日(金)21時03分47秒
- 『後藤、あとで説教だからね』
『えへへー』
『なんでそこで笑うんだよ』
『いちーちゃんだあ』
やれやれ、という具合に、市井は肩をすくめてみせた。観客たちはもとより、二階席の
娘。たちも、後藤の幼児化に驚いていた。娘。屈指のアイドル然とした彼女はしかし、
市井の前では、普通の十六才の女の子だった。
曲のイントロが流れ出した。
『待つわ』だ。
市井は、まずい、という表情を作り、顔をあげた。
『大丈夫だよ、いちーちゃん。後藤さあ、ちゃんとe-karaで練習したんだよ』
市井は心配そうに、仕方なさそうにメインパートを歌い出した。
- 128 名前:10 SHIBUYA−AX(2) 投稿日:2001年11月09日(金)21時04分25秒
可愛い振りしてあの子 わりとやるもんだねと
云われ続けたあの頃 生きるのが辛かった
- 129 名前:10 SHIBUYA−AX(2) 投稿日:2001年11月09日(金)21時05分03秒
- 後藤がマイクを構える。
行ったり来たり すれ違い あなたとわたしの恋
いつかどこかで結ばれるって
ことは永遠(とわ)の夢
市井のボーカルに、後藤のコーラスが綺麗にハモった。
- 130 名前:10 SHIBUYA−AX(2) 投稿日:2001年11月09日(金)21時06分56秒
- ◇
- 131 名前:10 SHIBUYA−AX(2) 投稿日:2001年11月09日(金)21時07分42秒
- 十分間の休憩時間中のこと。
後藤は、チャンスを狙っていた。
中澤が、スタッフたちから離れてペットボトルのお茶を飲んでいる。その背後から後藤は
そろりと接近した。
(ふふふ……裕ちゃんには恨みはないけど)
「なんやあ、ごっちん。なんか用か?」
「うわっとお、バレバレ!?」
中澤は、後藤の肩を抱き、そのまま体をぐるりと入れ替えた。後藤をぐい、と押し、
背にしていた衣装室に押し込んだ。あまりにも自然な動きで、この様子に気づいたス
タッフはいなかった。
薄暗い衣装室に、二人っきり。
- 132 名前:10 SHIBUYA−AX(2) 投稿日:2001年11月09日(金)21時08分12秒
- 中澤は、笑顔のままで、
「ごっちん。なんか、悪いこと企んでへんか?」
ぶんぶんと首を振る後藤。
「考えてない考えてない。やあ、市井ちゃんのステージ、最高だねえ、おめでとうだねえ」
中澤は、冷ややかな視線のまま、
「その服脱ぎ」
「なんで?」
「口止め料は身体で払ってもらわんとな。ごちゃごちゃ云わんと、脱いだらええねん」
「いやーん」
- 133 名前:10 SHIBUYA−AX(2) 投稿日:2001年11月09日(金)21時09分09秒
- 三分で、後藤の着替えは終了した。
「うん。ごっちん可愛い可愛い。それやったら、堂々とステージに立てるで。お偉いさん
にはウチから説明しといたるからな、第二部が始まったら、ごっちんから紗耶香に直接お
めでとう云ってあげたり」
「いいの?」
「最初からそのつもりやったんとちゃうん? ええねんええねん。こっちの方が面白そう
やしな」
まったく、手間のかかる二人やで、と中澤は小声で云った。
「紗耶香な、ずっとグチっててんで。なんでごっちんと前みたいに笑ったり出来なくなっち
ゃったんだろう、って。二人とも、意識しすぎなんちゃうか? ……ほら、もうすぐステー
ジ始まるで。仲直りしておいで」
「うん。ありがと、裕ちゃん。裕ちゃんも大好きだよ」
後藤は、スカートの裾をふりふり、衣装室を飛び出して行った。中澤は笑顔で、後藤の背中を
見送った。
- 134 名前:10 SHIBUYA−AX(2) 投稿日:2001年11月09日(金)21時10分13秒
- ◇
- 135 名前:10 SHIBUYA−AX(2) 投稿日:2001年11月09日(金)21時10分52秒
- 市井と後藤のステージに、観客たちは大喜びだった。
「チキショー、やるなごっちん」
矢口はじたんだを踏んで、二人のステージを悔しがった。
市井も肩の力が抜けたのか、声がよく伸びているようだ。初ライブの緊張がとれ、笑顔も
自然になった感じがした。
市井と後藤は、間奏中にウインクを交わしあったり、アカンべーをしたり、飛び上がって
ハイタッチした。
「矢口さん、矢口さん」
「なんだよ、石川」
「保田さんがいません」
矢口は、辺りを見回した。保田の姿はどこにも見あたらなかった。先ほどの吉澤のみぞおち
突きだけでは、彼女の行動力を奪うには不十分だったようだ。
「圭ちゃん……」
矢口は、ため息をついて、席に座った。
もうなにも考えないでいよう、そう思った。
- 136 名前:10 SHIBUYA−AX(2) 投稿日:2001年11月09日(金)21時12分23秒
- ◇
- 137 名前:10 SHIBUYA−AX(2) 投稿日:2001年11月09日(金)21時13分02秒
- 『待つわ』を歌い終え、市井と後藤は腕をクロスさせた。
後藤は、マイクを口元に持っていった。
『お帰り、市井ちゃん』
『……ただいま、後藤』
『帰ってきたねえ』
『うん、帰ってきたさ』
しばらく言葉を止めて、後藤は少し涙ぐんだ。
『復帰おめでとう、市井ちゃん。お祝いのお花とはは持って来れなかったけどさ』
『いいよいいよ、気にしないでうひゃあ!』
後藤は市井の首根っこにかじりついて、ほっぺにキスをした。
- 138 名前:10 SHIBUYA−AX(2) 投稿日:2001年11月09日(金)21時13分45秒
- 『お祝いのチュウー!』
後藤は、嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねた。
市井はそんな後藤の様子をやれやれ、と眺めていた。
『ん? どうしたの?』
『いやー、しばらく見ないうちに、えっちな身体に成長したなあ、って思ってさ』
後藤は、衣装の胸の辺りをぐっと掴んで広げた。
『これ、市井ちゃんの衣装でしょう。胸がキツくってさあ。でも、お腹はブカブカなんだ
よね』
『なんでだよ!』
ステージ上だ、ということを忘れたかのようにのほほんとじゃれあう二人。観客も、
幸せな光景にみな笑顔だ。
- 139 名前:10 SHIBUYA−AX(2) 投稿日:2001年11月09日(金)21時14分18秒
- 『ちょっと待ちなさいよッ!!』
きぃん、とマイクがハウリングを起こす。市井も後藤も耳を押さえた。会場の客たちも
同様だった。
ステージの裾に保田が現れていた。後ろに、インカムをつけたスタッフがおろおろと
ついている。どうやら、保田はスタッフたちの制止を振り切ってステージにあがって
来たらしい。
- 140 名前:10 SHIBUYA−AX(2) 投稿日:2001年11月09日(金)21時22分22秒
- ◇
- 141 名前:10 SHIBUYA−AX(2) 投稿日:2001年11月09日(金)21時49分12秒
- 「あのー、矢口さん……」
「もういい。石川、なにも云わなくていい」
- 142 名前:10 SHIBUYA−AX(2) 投稿日:2001年11月09日(金)21時51分20秒
- ◇
- 143 名前:10 SHIBUYA−AX(2) 投稿日:2001年11月09日(金)21時52分03秒
- なんとなく、市井と後藤はぎょっ、とした表情で保田を振り返った。二階からここまで
全速力で駆けて来たようで、髪は乱れ、汗だくで、ぜえぜえと息を切らしていた。
「圭ちゃん、怖いよ」
後藤がぼそりと云う。
市井はにっこりと笑って、
「圭ちゃんもお祝いを云いに来てくれたんだ」
と云った。
保田は、初めきょとん、とした表情で、次第に泣き顔になってきた。
「紗耶香、お帰り……おかえりぃ!」
どーん、と市井に体当たりする勢いで飛びついた。市井は右足を半歩さげて、保田の
衝撃に耐えた。
そして保田の背中に手を回して、ありがと、ただいま、と笑って云った。
- 144 名前:10 SHIBUYA−AX(2) 投稿日:2001年11月09日(金)21時54分59秒
- 市井はやれやれ、といった表情で、保田のぼさぼさになった髪を撫でつけ始めた。
「ほら、女の子なんだから、キレイにしないとね」
市井に髪を直してもらっているうちに、保田はえぐえぐと泣き始めた。
後藤は、市井のそばにすり寄って、後藤もキレイにするー、と頭を市井に向けた。
自分でやりな、と冷たく言い放たれ、後藤はふくれっ面をした。
- 145 名前:10 SHIBUYA−AX(2) 投稿日:2001年11月09日(金)21時55分42秒
- 『特別ゲストの後藤真希と保田圭でーす!』
立ち直った市井は、観客に二人をアピールした。
横一列に、後藤、市井、保田、と並んだ。
客席からは、初め、雑多に三人の名を叫んでいたが、そのうち、一つのコールに収束していった。
プッチモニ!
プッチモニ!
と。
『あ、そうだねえ。これって、プッチだねえ』
二人の顔を交互に覗き込んで、市井は云った。
『懐かしいねえ』
『懐かしいよう』
わあああっ、と再び歓声。
- 146 名前:10 SHIBUYA−AX(2) 投稿日:2001年11月09日(金)21時56分19秒
- 『でも、もう市井は、プッチの曲は歌いません』
ええーっ、とブーイングが飛ぶ。
一緒になって、ええーっ、と叫ぶ後藤。
『だってもう、市井はモーニング娘。は卒業したんだし、今はさ、ほら、ソロシンガー
市井紗耶香だからさ』
『そろしんがー?』
いぶかしげな後藤の視線。
なんだよー、と、市井は肩で後藤をこずいた。
- 147 名前:10 SHIBUYA−AX(2) 投稿日:2001年11月09日(金)21時58分28秒
- 『はいはいはい。同窓会は終わりやで』
しもてから中澤が姿を現した。
『涙の再会の時間はここまでや。今の寸劇のせいで時間が押してもうたやんか。残りの
プログラム、ちゃっちゃっと手際よく行くで』
次の曲のイントロが流れる。
後藤と保田は、舞台の隅に置かれたパイプイスに座って、大人しく二人のステージを
見ることになった。
後に、彼女たちの母体であるモーニング娘。の何度目かの変動により、この三人は再び
同じステージに立つことになるのだが、それはまた別の話である。
- 148 名前:黄色い狛犬 投稿日:2001年11月09日(金)21時59分06秒
- つづけ
- 149 名前:黄色い狛犬 投稿日:2001年11月09日(金)21時59分50秒
- 閉鎖もどうやら無いようで、一安心。
- 150 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月10日(土)01時09分04秒
- これ本当に AXで起こらないかなぁ・・・。
観たいです。
でも、市井だったら、ホントに「プッチは やらない」って
言いそうですよねぇ・・・、そういうとこがまた 好きなんだけども。
- 151 名前:とまときっど 投稿日:2001年11月10日(土)08時00分15秒
- >>147
最後の2行。狛犬さんはこの作品だけの復帰だけではないという事ですか?
これは・・・大期待しちゃってもいいんですかね?(笑)
- 152 名前:黄色い狛犬 投稿日:2001年11月12日(月)23時13分45秒
- 今回で終わりでっす。
ちょっとあげるです。
- 153 名前:エピローグ 投稿日:2001年11月12日(月)23時15分46秒
- 「今日は楽しかったあ」
「そりゃあ、あれだけ無茶やればね」
「えへへ」
「なによ」
「なんだよう」
「これからもよろしく、だね」
「うん。そうだね」
「後藤も!」
「はいはい」
「あーあ。これからまた仕事だよ」
「相変わらずだね。頑張りなよ」
「市井ちゃんもね」
- 154 名前:エピローグ 投稿日:2001年11月12日(月)23時18分01秒
- 「……」
「……」
「……」
「じゃあね」
「……うん」
「また逢えるよ。いつだってさ」
「ほらごっちん、そこで落ち込まない」
「……うん」
「ほら、笑って笑って」
「びーー」
「ごとおーー笑えーー」
- 155 名前:エピローグ 投稿日:2001年11月12日(月)23時18分53秒
そして、私たちは、また別々の道を歩み始めた。
市井ちゃんが復帰したからといって、いつもいつも一緒にいられる訳はなくて――昔に
戻れるハズもなかった。初めから、分かってた。
私の毎日は相変わらずで……モーニング娘。の後藤真希として、目の回る日々に追い立
てられている。自分を振り返る余裕はない。
- 156 名前:エピローグ 投稿日:2001年11月12日(月)23時19分47秒
- 季節はめぐる。
- 157 名前:エピローグ 投稿日:2001年11月12日(月)23時20分52秒
- 2002年2月。裕ちゃんは、正式にハロプロメンバーから卒業した。
紆余曲折をえて、市井ちゃんの処遇も決まり、春のメジャーデビューに向けて、今は
再びレッスン漬けの毎日らしい。
- 158 名前:エピローグ 投稿日:2001年11月12日(月)23時21分29秒
- 季節はめぐる。
- 159 名前:エピローグ 投稿日:2001年11月12日(月)23時22分25秒
- 「ね、ごっちん。私さ、娘。を卒業することにしたんだ。ほら、もういい歳だしさ」
「……そっか。やっぱ、おめでとう、なのかな」
「泣かないでよ。決心が揺らぐじゃん。……泣かないでってば……」
出会いと別れを繰り返し、モーニング娘。は変わっていく。私も変らずにはいられない。
いつまでも変わらないのは……
- 160 名前:エピローグ 投稿日:2001年11月12日(月)23時23分28秒
- ◇
- 161 名前:エピローグ 投稿日:2001年11月12日(月)23時24分06秒
- 私は、スポットライトに照らされて、ガチガチに固くなっていた。マイクを握る手が、
汗で滑り落ちそうだ。
私以外、誰もいないステージは広すぎて、足がすくむ。心細い。どうしても、声が震え
てしまう。
「こんにちは、後藤真希です」
大きな拍手。
「今日は、私のソロライブに来て頂いて、本当にありがとうございます」
笑顔がこわばっているのが自分でも分かる。緊張しすぎて、泣き出しそうだ。
- 162 名前:エピローグ 投稿日:2001年11月12日(月)23時25分04秒
- と、
お客さんが、おかしな反応をした。
沈黙。
ざわめき。
そして、爆発的な歓声。
それは、懐かしい、デジャヴのような光景。
さっきまでの緊張がウソのように消し飛んでいた。
振り返ると、
そこには――
- 163 名前:エピローグ 投稿日:2001年11月12日(月)23時28分29秒
- (終わり)
- 164 名前:黄色い狛犬 投稿日:2001年11月12日(月)23時33分38秒
- 構成もなにもない、思いつきのダラダラした文章におつき合い下さいまして、
ありがとうございました。
- 165 名前:黄色い狛犬 投稿日:2001年11月12日(月)23時34分10秒
- それでは、またいつか。
- 166 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月12日(月)23時39分02秒
- 読破一番乗り。
復帰作お疲れさまでした。&チケットゲットおめでとうございます。
一作品で再び眠りに落ちないよう心より祈っております。
- 167 名前:ちゅー 投稿日:2001年11月12日(月)23時40分45秒
- このラスト、最高。
狛犬さん、ありがとう。
- 168 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月13日(火)02時37分54秒
- やっぱ、いちごま最高!
市井最高です。
- 169 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月13日(火)11時13分48秒
- 最高、最高!
久しぶりの黄色い狛犬さんの小説、最高です。
早くも次回作に期待。
- 170 名前:市井商事 投稿日:2001年11月14日(水)09時10分37秒
ど真ん中直球見逃し三振ってかんじでございます。(号泣
- 171 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月17日(土)15時15分06秒
- いちごま!!永久不滅!!バンザーイ♪♪
次回も、いちごま…ですよね!?市井ちゃん、MUSI○!に出るみたいだし…
- 172 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月23日(金)02時43分50秒
- 何も考えずに書いたってそんな、、、それはイヤミですか、、、
でも面白かったです
- 173 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月23日(金)04時55分54秒
- とっても面白かったです!いちごまは永遠です!
ここと、「時かけ」「のの裕&後藤P」以外で、狛犬さんが書かれた小説って
どこかにありますか?
是非読みたいので、良かったら教えてください。
- 174 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月27日(火)18時55分33秒
- 書き逃げプチ小説、OURDAYS、娘。だよ全員集合、新・LOVE論(続編・吉澤震含む)、
亜依ちゃんと私、まきちゃんとわたし、真夜中の王子
- 175 名前:173 投稿日:2001年12月01日(土)01時50分27秒
- >174
ありがとうございます!
書き逃げプチ小説は早速読みました。面白かった!
真夜中〜は違うHNですが、狛犬さんのなの?
他は見つからなかった・・・・。教えて君ですいません、どこにあるか教えていただけますか?
- 176 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月02日(日)02時47分31秒
- >173,175
あまりここで話すべき内容ではないかな・・・。
ググルで作品名や狛犬さんの名前で検索かければ見つかるはずです。
- 177 名前:175 投稿日:2001年12月02日(日)13時28分05秒
- >176
そうですね、大変失礼いたしました。
探してみます、ありがとうございます。
Converted by dat2html.pl 1.0