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君と揺れていたい

1 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月14日(水)21時11分40秒
初めまして、きみまよと言います。
今回は初小説の上、国語力がないので文章が変になると思いますが
どうぞ読んでやってください。
主人公は男で、ヒロインはよっすぃーです。
2 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月14日(水)21時14分55秒
(桜舞う季節)
――それは高校に入学したばかりの 桜舞う春の出来事だった。

高校生活も1週間が過ぎ徐々にみんなクラスに馴染み始めていた。
俺は幼なじみの弘樹と一緒のクラスになれ、周りの席の奴らとも
結構話が合いすぐに親しくなれた。
今からの1年間はこのクラスに憂鬱を感じる事なんかないと思う。
バイトも決まり、念願のひとり暮らしも始まっている。
いや、ひとり暮らしは思った以上に大変だけど…。

3 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月14日(水)21時16分41秒
いつも通りの朝。家を出てチャリで学校へ向かう。
まだ静かな商店街を抜け、住宅街に入る。
そこで、そう…そこでいつもとは違う事が起きたんだ。
「あっ、ねぇ!」
俺は誰かに呼び止められた。チャリを止めて振り返ればそこには…。
…。
…。
えーっと…。
…。
…。
た、確か同じクラスの…。
…。
…。
あ、あれ??
…。
んーと…。
…。
あっ!そうだ!吉澤だ!!
「お前同じクラスの吉澤だよな。なんだよいきなり呼び止めて」
俺は吉澤の所まで自転車を押して行く。
「ちょっと、今の妙な間は何?」
吉澤は俺を怪しげな目で見てそう言った。
ギクリッ!
「いや、ちゃんとすぐに吉澤ってわかったさ。あ、当たり前だろ」
どもりながら俺は聞かれてもいない事を答えてしまった。
「ふーん…。私の名前が出てこなかったんだ…。そっか…」
吉澤は少し…、いやかなり落ち込んでしまった。
「…」
「…」
お、俺が悪いのか!?
4 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月14日(水)21時18分00秒
「ご、ごめん。でもちゃんとフルネームは覚えてるぞ。
 吉澤ひとみだろっ?」
俺がそう言うと吉澤は黙ったままコクリと頷いた。
でも自分で言っといてなんだがフルネーム覚えていたからどうなんだ?
どうやら俺はかなり動揺している。
「あー、もう悪かったよ!」
とりあえずもう1度謝ってみた。もちろんちゃんと反省はしています。
「…1つお願い聞いてくれたら許してあげる」
吉澤は泣きそうな声でそう言った。
お願い?
なんだろ?
んー、まぁ許してもらえるなら聞いてみるか。
「いいよ。なんだよ?」
俺がそう言うと吉澤はいきなり顔を上げ明るい表情になった。
「やったー。じゃあチャリの後ろ乗っけて行って!」
「え…?」
さっきまで落ち込んでたんじゃあ…。
「ほらっ、レッツゴー!!」
…。
だ、だ、騙された!!!!!
「ねぇ、早く!!」
俺は仕方なく2ケツをして学校へ向かった。
まぁこれくらいならいいか。
これくらいなら。
…この考えは甘かった。

5 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月14日(水)21時20分11秒
俺の後ろに乗っている、イイご身分の吉澤が話しかけてきた。
「これから毎日よろしくねぇ」
「えぇっ!?」
毎日…。毎日ですと!!
おやおや、朝から何寝ぼけた事言ってるんだこのお嬢さんは?
「なんで毎日お前さんを送らないといけないんだよ!」
「えー!だってさっきお願い1つ聞いてくれるって言ったじゃん!」
少し拗ねた声で言う。
「あれっ、毎日送るって意味だったのか!?」
“キーッ!!”
思わずハンドル操作を誤る勢いの衝撃が俺の体内に走った。
なんとか体制は持ちこたえたけど…。
「そう、毎日よ・ろ・し・く・ね」
吉澤はかわいい小悪魔のような声で答えてくれた。

これが俺の運命(?)を変えたある春の日の朝だった。
6 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月14日(水)21時23分35秒
更新はちまちましていく予定です。
そんなに長い話にはならないと思います。
7 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月15日(木)16時50分11秒
(駅前のファーストフード店)

5月に入り、やはり俺は毎朝途中で吉澤を乗せて学校に向かっていた。
あれから学校でもよく吉澤と喋るようになった。

「おっはー。今日もご苦労様」
吉澤が満面の笑みで俺を迎えてくれる。あんまりうれしくないけど。
「はいはい。ほら、さっさと学校に行くぞ」
今日もまた吉澤を乗せて走る。
吉澤の家を少し先に行った辺りの下り坂に、ついこないだまで咲き乱れていた桜も
もう時期を終えていて少しだけ寂しい感じがする。

「ねぇねぇ、確か駅前のファーストフード店でバイトしてるんだよね?」
唐突な質問がやって来た。なんだ急に?
「そうだよ。それがどうかしたのか?」
「ううん、別に何でもない」
変な奴だな。
「あれ、吉澤はバイトしてないの?」
「うん。でもしたいなーって思ってるんだ。
んでね、今日面接に行くの」
「ほぅ。どこに面接に行くん?」
「内緒」
「なんだよ、ケチ」

それから学校に着くまで俺のバイトの話を吉澤に聞かせた。
何だかわからないが、やたらと質問が来た。

8 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月15日(木)16時55分42秒
昼休み。俺はいつものように購買部でパンを買って屋上に向かう。
意外と屋上は人がいない。特に昼休みは俺だけだ。
フェンスにもたれかかり、定番のやきそばパンを食べながら空を見る。
今日もいい天気だ。

と、そこへ誰かがやって来た。
「見ぃーつけた!」
そう言いながら俺に近づいてくるのは吉澤。
「ねぇ、隣に座ってもいい?」
「どうぞ」
俺の隣に吉澤が座る。
「俺の事捜してたの?」
「うん。いっつも昼休みいなくなるじゃん。だから何処行ったのかなーと思って。
 それで牧村君に聞いたら屋上にいるよって教えてくれたの」
なんだよ弘樹、余計な事を…。

「なんで屋上にいるの?」
「なんでって、たいした理由はないさ。ただ、ここにいると落ち着くんだよ」
俺はコーヒー牛乳を一口飲んでそう答えた。
ここは他に人があまりいないせいか、どこか安心できる場所。
「ふーん。そっかー」
吉澤もなんとなくここの雰囲気を理解したのか、頷いた。
9 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月15日(木)16時57分17秒
少しの間2人でボーっとしていると風が吹いた。
風に乗って吉澤の髪のイイ香りが流れてくる。
隣を見てみれば、遠くの景色を見つめている吉澤の横顔。
その横顔が…とてもキレイだった。
吉澤ってキレイな顔しているな。

俺の視線に気付いたのか、こっちを見て「何と?」聞く。
慌てて俺は反対側を向きなんでもないと答える。
俺はほんの少しだけ、ドキドキした。
10 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月15日(木)16時58分36秒
“キーンコーンカーンコーン”
6時間目の授業も終わりを告げ、俺は帰る用意をした。
そこに弘樹が俺に話しかけてきた。
「なぁお前今日バイトだっけ?」
「ああ。なんか用か?」
「いや、たまにはゲーセンでも一緒に行こうと思ってさ。
 バイトなら仕方ないな。また今度誘うわ」
「悪いな。また今度な」
弘樹は俺に「頑張れよ」と言い残し帰って行った。

すると今度は吉澤がやって来た。
「今からバイト?」
「そうだよ」
すると吉澤は「頑張ってね〜」とニヤニヤしながら帰って行った。
なんだったんだ??
11 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月15日(木)17時00分35秒
今日は17時から21時。平日だからいくら駅前でもそんなに忙しくはない。
もう1ヶ月がたち段々仕事も覚えてきて、他の人たちとにも仲良くなり
微妙に楽しくなってきた。
ただ、他の皆は年上。同い年はいない…。これだけは寂しい。
まぁ皆イイ人達ばかりだから良いけども。

そう言えば今日は面接者がいるって聞いていた。しかも俺と同じ1年生で同じ学校!
どんな奴が来るんだろう。男かな、女かな?
仕事中もその事が気になっていた。

「今日の面接の子、すっごいかわいいぞ!」
バイトの先輩がそんな事を言ってきた。
うーむ。
気になるなぁ。
…おっと、資材がなくなりかけている。これは下っ端の俺が行かなくては!
「資材補充に行ってきまーす」
そう言い残し、資材補充に行った。
そして、その資材補充のついでにどんな子か見に行く。

どれどれ?
…。
あれれ?
あの女の子…。
…。
うん、確かにかわいいぞ。
でも…。
よ、よ、吉澤じゃねーか!!!!!!

面接って吉澤のだったのか!?そう言えばあいつ今朝、今日バイトの面接って言ってたな。
まさかこの店だったとは…。
それでやたらと質問してきたのか。
12 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月15日(木)17時03分31秒
帰り際、社員の中澤さんに吉澤の事を聞いてみた。
「あの、今日の面接の子って採用っすか?」
「え?あぁ、吉澤さんか。採用する予定やけど、何かあんのか?」
「いえ、別に」
「そういや、アンタと学校一緒やないか。知り合いか?」
「はぁ、まぁ一応。じゃあ俺帰りますね。お疲れ様でした」
「はい、お疲れ様」
俺は中澤さんに挨拶をして店を出た。
それにしても吉澤がここで働くのか。
…まぁ、いいか。

俺はチャリで家に向かった。途中コンビニで弁当を買う。
我ながら寂しい食生活だ。

家に着く頃には既に10時を回っていた。
シャワーを浴び、コンビニ弁当を食べてメールのチェックをする。
っと、吉澤からだ。
『バイトお疲れ!あたしって採用かなぁ?』
はいはい、採用ですよ。おめでとうございますっと。
返信すると俺はすぐにベッドに入って眠りについた。
13 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月15日(木)22時34分18秒
すいません、文章の訂正。

>『バイトお疲れ!あたしって採用かなぁ?』
のところの「あたし」→「私」で。
失礼しました。
14 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月16日(金)22時29分51秒
(冷たい5月の雨)


朝起きて天気予報を見てみれば、曇りのち雨。
午前の降水確率は20%だけど、午後からが80%。

今日はチャリで行くのはやめて、たまには歩いていくか。
そうと決まれば吉澤に言っとかないと。メールでいいよな。
俺は吉澤にメールで今日は歩いて行く事を告げた。

いつもはチャリで10分の距離も歩いていけば30分もかかる。
さて、そろそろ行きますか。
15 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月16日(金)22時30分42秒
いつものように住宅街に入り、吉澤の家の前を通り過ぎる。
とその時…

「おはよー!」

なんと、元気よく吉澤が現れた。
「おはよーって、お前待ってたのか俺を?」
「そう、待っててあげたの」
吉澤は笑顔で答えた。

「待ってたって、なんでまた?」
「なんとなく」
「なんとなくって、もし俺がお前の家の前通らなかったらどうしてたんだよ?」
俺は足を止めて質問した。
「んー、その時はその時かな。
でもいいじゃん。こうして私の家の前通ったんだからさ」
少し先に進んだ吉澤も足を止め、振り返ってそう言った。
確かに、結果論から言えばそうだけどさ…。

「ほら、早く行くよ!」
吉澤はまた歩き出した。
「あっ、待てよ」
俺もまた学校へ向かい歩き出す。
結局チャリがなくても一緒に登校か。

たまには歩いて行くってのも、悪くないな。
16 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月16日(金)22時31分32秒
今日は1時間目に席替えがあった。
うちのクラスは珍しく、先生の気分で席替えがある。
しかも自分の授業中にやるもんだから、何考えてるのやら。
聞いた話だと1週間で席替えがあったり、はたまた1学期中
1回もなかったりと。

ちなみにこのクラスの席替えは初めて。で、席順はくじ引き。
まぁ、俺は窓際か後ろの方の席だったらどこでもいい。

くじ引きの結果…。
俺は見事窓際の1番後ろをゲット!!しかも隣の席は弘樹。
今日はツいている!そう確信した。
で、前の席は…吉澤だった。
なんか縁があるなぁ。
17 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月16日(金)22時32分21秒
本日の2時間目・数学。
「ねぇねぇ、この問題どう解くの?」
吉澤が数学の問題を尋ねてくる。

本日の3時間目・倫理。
「ねぇねぇ、今日バイト?」
吉澤が今日バイトか尋ねてくる。

本日の4時間目・英語。
「ねぇねぇ、辞書貸して?」
吉澤が英語の辞書を貸してくれという。

本日の5時間目・化学。
「ねぇねぇ、この先生の授業っておもしろくないよね?」
吉澤が同意を求めてくる。

本日の6時間目・家庭科。
「ねぇねぇ、なんか面白い話ない?」
吉澤が笑いを求めてくる。

―もしかしてこんなのが毎日続くのか??
…なんてこったい。
18 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月16日(金)22時33分23秒
本日の授業も終わり、俺も吉澤もバイトって事で一緒にバイト先に向かう。
靴を履き替え、外に出てみれば今にも雨が降りそうな雰囲気。
俺達は急いで店に向かった。

丁度店についた直後に雨が降り出した。
「あーあ、降ってきたね」
吉澤が空を見ながら言う。
「そうだな。帰るまでにはやんでて欲しいな」
まぁ傘持ってるから困る事はないんですがね。

明日は第4土曜日とあって学生まで休みのため客の数が若干増える。
しかし今日は雨が降っているので客の数も少し減るから、結局いつも通りの
平日だと思っていた。

しかし現実はそう甘くなかった。
厨房担当の人が急きょ来れなくなり休みになった。
しかも代打なし。その上、いつもよりも客は多かった。

ちょっとしたピークは8時前まで続いた。
俺は正直よくやっただろう。中澤さんにも「成長したな」って褒められた。
しかし…いつもなら7時までには終っているであろう閉店作業は
なに1つ終ってないし、床はさっき落としたケチャップで赤く色を染めている。

たぶん言われるであろう事を俺は先に聞いた。
「延長っすね?」
中澤さんは申し訳なさそうに頷いた…。
今日の俺はツいているのか??
19 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月16日(金)22時34分37秒
「何やってんだ?」
資材を取りに来た時、吉澤が関係者用の入り口で立っていたので
俺は声をかけた。
あれ、あいつ今日は8時までだったのに。

「んー、雨やまないかなーと思って」
空を見るが、雨は一向にやむ気配はない。
「お前、傘は?」
「学校に忘れてきちゃった」
学校に忘れたって、どじな奴だな。

俺はドアの横に立てかけてある自分の傘を吉澤に渡した。
「しょうがないな。ほら、これ貸してやる」
「え?でも…」
「あー、心配すんな。俺一応、折りたたみもあるから」

俺は念のためいつもカバンに折りたたみを入れている。
よく言えば用意周到、悪く言えば心配性。
まぁ、どっちでもいいや。

「そうなんだ。じゃあ今度返すね。ありがとう」
吉澤は俺の傘を差して帰っていった。
さて、仕事に戻るか。
20 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月16日(金)22時35分11秒
予想通り9時には終らず、なんとか頑張って10時には終った。
中澤さんが自分の仕事を置いといて、だいぶ手伝ってくれたからなぁ。
それでも今日はかなり疲れた。

俺は着がえを済ませ、外に出てみると、やはりまだ雨はやんでない。
仕方なくカバンから折りたたみの傘をだ…。
…。
ガサゴソ ガサゴソ。
…。
オイオイ…折りたたみ傘、ないよ!?
マジでか?
21 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月16日(金)22時37分26秒
折りたたみ傘をどうやら家に忘れたみたいだ。
で、でも誰か傘忘れて帰ってる人がいるだろう。

…しかし傘立てを見てみるが今日に限り全滅。
今日の俺はツいてない。

俺は猛ダッシュで家に向かう。どうせ家に帰って風呂に入るんだから
濡れてても一緒だろ。俺は出来るだけポジティブに考える。
でも空から降りしきる雨は、疲れた体にはひどく冷たく感じられた。

家に着く頃にはびしょ濡れ。速攻で服を脱いでシャワーを浴びる。
ふぅー、今日は本当に疲れた。
いつもより長めにシャワーを浴び、スッキリして晩御飯を食べた。

録画しておいた音楽番組を見ながら、吉澤からのありがとメールに返信をした。
あ、そうだ。
机の上を見てみれば折りたたみ傘。やっぱり家に忘れていたか。

「ックシュン!」

―え?
くしゃみが出た。
そ、そう言えば、さっきから何だか寒気を感じるぞ。
もしかして風邪をひいたのか!?

俺は念のため薬を飲んですぐに寝ることにした。

次の日…。
「ックシュン!!」
完璧に風邪をひいた…。
どうやら昨日の俺はツいてなかった。そう確信した。
22 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月17日(土)22時40分29秒
(風邪をひいた日)


あ、あ、頭痛ぇ!!!!!
熱を測れば39度を超えていた。これは本格的にやばいぞ。
なんとか布団からでて起き上がり、薬の置いてある棚まで歩く。
母親がだいたいでだけど、薬の種類を袋ごとに分けてくれている。

「…おっとっと…」
自分の意志どおり体は動いてくれない。何だよ、ちくしょう!
「確かこの棚の…これこれ」
そう思って手にとったのが正露丸だったのにはさすがに驚いた。

とりあえず薬飲む前に何か食べないと。
でも食欲は全然ない。おかゆでも作るか。
…。
…。
そういえば俺はおかゆ作れないじゃん。

ダメだぁ、思考回路がおかしくなってる。仕方なくリンゴを剥いて
食べて薬を飲んだ。リンゴ剥く時危うく指切りそうだったけど。

今日はバイト休むしかないよな。
なんとか代わりを見つけようと、バイトの先輩方にメールを送った。
するとすぐにOKの返事が来た。昨日休んだ先輩からだ。
店に電話を入れ、安心して俺は布団にもぐりこんだ。
23 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月17日(土)22時41分40秒
昼頃、1度目が覚めて熱を測る。
39度。
全然下がってないじゃん!!あー、これはやばいぞ。
相変わらず、頭痛いし。

フラフラする体をなんとか動かす。
母親に連絡して来てもらうか、なんとか病院に行くか。
どっちにしよう。

そもそも、何で薬効かないんだよ。
テーブルの上の今朝出した薬を見る。

―酔い止め―

どうやら俺は間違えて酔い止めを飲んでしまったらしい。
それじゃあ効かないよなぁ。あははははっ。

俺は思わずその場に倒れそうになった。
24 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月17日(土)22時42分25秒
“ピーンポーン”
チャイムがなった。くそっ、誰だよこんな時に?

頭を抑えながらドアから覗いて見ると吉澤だった。

「ど、どうした?」
「どうしたじゃないよ!お見舞いに来たの。んじゃお邪魔しまーす」
俺の許可を得ることなく吉澤は部屋に上がっていった。
「ちょっと、おい…」
「ほら、アンタは寝てなきゃダメでしょ!」
そう言いながら俺をベッドに促す。なんだよ、一体。

「台所借りるね」
台所から寝てる俺に話しかけてくる。
「…どーぞご自由に」
どうやら中澤さんに聞いて、バイトの休憩中に俺の家に来たみたいだ。

自前のエプロンをして台所に佇む吉澤。妙にかわいい気がする。
胸の鼓動が高まっていたが、風邪をひいている俺はそれが熱のせいだと
思った。
25 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月17日(土)22時43分13秒
「はい、おかゆ出来たよ」
吉澤は茶碗におかゆを盛り持って来てくれた
俺は起きて、ベッドに座った。

吉澤はスプーンにおかゆをのせ、冷ましてから俺の口元に持ってくる。
これって…

「はい、あーん」

マジっすか!

「いいよ、自分で食べれるから」
「何言ってるのよ、病人は黙って言う事を聞きなさい!」
吉澤の目はマジだ。少し恥ずかしいけど、いいか。

あーん、と口を開けると吉澤がおかゆを口の中に運んでくる。
「おいしい?」
「んー、普通」
「何よ、こういう時はお世辞でもおいしいって言ってよ」
そう言われたので俺はお世辞を言った。
「おいすぃー、これ」
「ウソつき」
少し頬を膨らませて言う。吉澤って子供みたいだな。
なんか微笑ましいぞ。

「でもさ、なんでおかゆ作れるの?俺はおかゆなんて作れないぞ」
「来る前にお母さんに聞いてきた」
へぇー、わざわざ聞いてまで作ってくれたおかゆなのか…。
体が弱っているせいか、変に嬉しく感じた。

「おかゆさぁ、ホントおいしいよ。ありがとな」
俺が普通にお礼を言うと、吉澤は少し照れたのか、顔を伏せた。
26 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月17日(土)22時43分44秒
おかゆを食べ終え薬を飲んで、また布団に入った。

「そう言えばさ、中澤さんから伝言があるんだけど」
「何?」
「無理そうだったら明日も休んでもいいよって。無理そうだから
 後で私から言っとくね」

確かに明日は無理だろうな。今日中には治して、明日は安静にしとけば
学校の方には問題ないな。

「じゃあ、私そろそろバイトに戻るね。終ったらまた来るから」
そう言って吉澤は俺の部屋を出た。
また、来てくれるんだ。
27 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月17日(土)22時44分23秒
目が覚めるともう7時になっていた。

「あっ、起きたんだ」

本当に吉澤は来てくれていた。
吉澤って優しい奴だなぁ、純粋にそう思った。

熱を測ってみると37度まで下がっていた。
「だいぶ良くなったよね。頭は痛くない?」
「もうあんまり痛くない」
「そう、良かったぁ」
吉澤は俺の言葉に安心して笑顔になる。

その笑顔がに思わずドキッとしてしまった。
28 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月17日(土)22時44分58秒
俺は風呂に入りたかったので吉澤に頼んでお湯を貯めてもらう。
風邪の時は風呂には入らない方がいい、入った方がいいと両方聞くが
どっちが本当なのかはわからない。でも汗をかいていたので
風呂に入ることにした。

体中少し痛かったけど、なんとか体と頭を洗った。
風呂から上がり、髪を乾かし終えると晩御飯が用意されていた。
と言っても、おかゆだけどね。

おかゆを食べて薬を飲んでから、また布団に入った。
そのすぐ隣に吉澤が座る。


なぜか、少しの間沈黙が続いた。
29 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月17日(土)22時46分25秒
「ねぇ、昨日濡れて帰ったでしょ?」
沈黙をやぶったのは吉澤の言葉だった。
「だから風邪、ひいたんでしょ?」
「な、何言ってんだよ。俺は折りたたみがあるって言っただろ」
俺はそう言ったが、机の折りたたみを見られてすぐにウソがばれた。
昨日濡れた傘がそんなに早く乾くはずがなかったから。

「ごめんなさい」
そのまま吉澤は俯いてしまった。
「私が傘借りちゃったから…」
ふと吉澤の顔を見れば、初めて見る悲しそうな顔…。

俺は、それがものすごく嫌だった。

「謝る必要なんてないよ」
俺は出来るだけ優しい声で言った。
「でも―」
「いいよ。俺が風邪ひいただけだろ?」
「えっ?」

「それにさ、吉澤は看病してくれただろ?おかゆ作ってくれただろ?
 俺はそれがホント、嬉しかったよ。
 だから、もうそんな悲しそうな顔すんなよ」

吉澤は相変わらず俯いたままだったけど悲しい表情じゃなくなった
気がする。
30 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月17日(土)22時47分11秒
「…優しいね」
ようやく吉澤は顔を上げてくれた。穏やかな表情をして。

「当たり前だろ?俺の体の半分は優しさで出来てるんだからな!」
「何よ、それっ」
俺がいつもの様に冗談を言うと、いつもの様に吉澤も笑った。
ふぅー。良かった、良かった。

俺は安心したせいか、それとも薬のせいなのか、いつの間にか眠っていた。

次の日、目が覚めるともう熱は下がって、頭痛もなくなっていた。
そしてテーブルの上には吉澤からの書置きがあった。

吉澤の事を考えると、少しだけドキドキする。

やばいなぁ、まだ熱があるのか?
31 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月17日(土)22時50分10秒
今回の更新終わりっす。
32 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月18日(日)02時44分07秒
なんか初々しくてイイ!!
33 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月18日(日)14時19分02秒

>32 名無し読者さん
ありがとうございます。読んでくれてる人はいたのですね。
頑張ります。
34 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月19日(月)00時49分58秒
(遅く気付いた恋)


うざったい梅雨も明け、期末テストも終わり、もうすぐ夏休み。
制服も夏服になり女子のブラが透けて見える。
…うそ。

「ねぇ、テストの結果どうだった?」
吉澤が後ろの席の俺に聞いてくる。
結局1学期中は1回だけしか席替えがなかった。だから今も俺の前の席は
吉澤。俺はテストの順位が表記された紙を渡した。

「すっごーい、10番だぁ!」
フフフッ、吉澤は驚きの声を上げる。無理もない。
なんたって学年順位10番だからな。
うちの学年は一応400人。全員が受けたわけじゃないだろうけど。
それでも10番はすごいっしょ。

「でもね」
そう言いながら今度は吉澤が自分の順位表を見せてくる。
「…な、何!?」

学年順位…9番!!!!

「知ってる?上には上がいるんだよ」
自慢げな顔をして見下してくる。
クッ!
35 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月19日(月)00時50分46秒
そんな俺たちを見て、隣の弘樹が話しかけてくる。
「オイオイ、お前ら。たかが順位ぐらいで争うなよ」
「何おぅ!そういう弘樹は何番だ!!!」
俺は無理やり弘樹の順位表を奪った。

「…!?」
絶句。

「ちょっと、何よ?私にも見せてよ。
 …!!」
絶句。

弘樹は学年順位5番だった。

「お前部活してんのになんでこんなに良いんだよ!!!」
弘樹は空手部に所属していて、うちの学校の空手部は全国レベルで
その分練習量もハンパじゃないって聞いた。

「文武両道って言葉を知ってるかい?」
今度は弘樹が自慢げな顔をして俺たちを見下ろす。
クソッ、俺の負けだ!

36 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月19日(月)00時51分16秒
今はもう短縮授業が始まっていたので、学校は昼まで。
バイトの時間までだいぶ時間があったので屋上に行った。

あいかわらず屋上には人がいない。ボーっとするには最適の場所だ。
下を見下ろせば、夏なのに頑張って汗かいて部活をしている方々が。
水泳部は気持ちよさそうだけど。

弘樹も今、学校の周りをランニング中。あいつは1年生で既に空手部最強と
噂されている。すごいなぁ、親友。
俺も昔は空手やってたけど、なんとなくで辞めちゃったんだよな。
続けとけば良かったかな。


しばらくすると吉澤がやって来た。

37 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月19日(月)00時52分11秒

「私ね、好きな人が出来たんだ!」

それは突然だった…。
少し、ほんの少しだけ心が痛む。でも今の俺にはその意味がわからなかった。

「そ、そうなんだ。へ、へぇ、誰を?」
なに俺は動揺してるんだ。
「うん。1コ上の相沢先輩!」

相沢先輩、学校でも有名な人だ。かっこよくて頭もいい。
部活こそしてないが、スポーツ万能らしい。

「ねっ、応援してくれる?」
「あ、当たり前だろ!!俺でよかったらいくらでも応援してやるよ。
 大丈夫だよ、お前十分かわいいから」
「ホント、ありがとー!」


応援してやる…か。
俺はボーっと空を見上げた。なんだろうな、この変な感じは。


38 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月19日(月)00時52分53秒
吉澤の「好きな人が出来た」宣言から1週間。
今日は1学期の終業式。いつも通り吉澤をチャリに乗せて登校。
なんだかんだで、今日で1学期もおしまいか。

終業式―
予想のつく学年主任の話、無駄に長い校長の話、ほぼ歌われていない校歌
が終わり教室に戻る。通知表もまずまずだった。
これで俺たちは宿題を抱えて、ようやく夏休みに入る。

その日吉澤は相沢先輩を呼び出して告白した。

帰りに吉澤と相沢先輩が仲良く歩いてるのを見かけた。
そっか、返事はOKだったんだな。
良かったな、吉澤。

―でも、なんでこんなに切ないんだろうか。

39 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月19日(月)00時53分43秒
その夜、吉澤から電話があった。
「あのね、なんと吉澤ひとみは相沢先輩と付き合い始めました!!」
その声は、本当にうれしそうな声だった。

「そっかー、よか…」
ふいに言葉に詰まる。その先の言葉が出ない。
いや、言いたくないのか?
―なんで祝ってあげられない!!

「えっ?何?」
「いや、なんでもない。それよりごめん。今からちょっと出かけないと
いけないんだ」

ウソだ。

「そうなんだ。ごめんね、忙しい時に電話しちゃって」
「いや、こっちこそ。じゃあな」
そのまま逃げるように電話を切った。くそっ、なんで俺は喜べないんだ?

ベランダに出て夜風に当たる。冷静に自分の心を向き合う。
「…」
それは、あまりにも簡単すぎた答えだった。

なんだ…。

そうか…。


俺は吉澤ひとみに恋をしていたんだ。


…気付くの遅ぇーよ、バカ。


40 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月19日(月)00時55分44秒
更新終了。次回更新は最後まで話し作れたらします。
次の話から長くなります。
41 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月19日(月)22時28分52秒
すごいせつないっす。これから一体どうなるのか
続き期待です!!!
42 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月20日(火)22時43分29秒

>41 名無し読者様
今週中には更新できそうです。たぶん最後まで。
しばしのお待ちを。
43 名前:children(小文字ver) 投稿日:2001年11月20日(火)23時49分34秒
次終わりなんですか・・・すごく残念です。
応援してますんで頑張って下さい。
44 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月21日(水)18時36分26秒

>43 children様
いえ、次の話ではまだ終らないっす。ただ、今週中で最後まで更新できるかなー
って感じっす。応援どもありがとうございます。
45 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月21日(水)19時17分53秒
(繋いだ手)


今日はバイトが休みだったので、弘樹とどっか遊びに行く事にした。
その弘樹は部活中。俺は暇だったので学校に行った。

さすがに私服で学校に入るわけには行かず、すぐそばのコンビニで
涼んでいた。

「あ、あの…」
「ん?」
雑誌を立ち読みしていたら声をかけられた。

「あぁ、石川先輩じゃないっすか。どうしたんすか?」
「この前はどうもありがとう。お礼言えずにごめんね」
「いやいや、気にしないで下さい。あれ、部活の帰りっすか?」
「うん。今日は午前中だったんだ」
それから少し、俺は石川先輩と他愛のない話をした。

「あ、あの…ですね。その…」
「はぁ…何すか?」
聞き返すと石川先輩は困ったように俯いてしまった。
あらら?

少し間を置いてから、石川先輩は意を決したように少し強い口調できりだした。
「明日ってヒマかなぁ?」
明日?明日はバイトもないから暇だなぁ。
「暇っすよ」

「明日10時に駅前で待ってるから。それじゃあ」
そのまま石川先輩は店を出て行った。

…おーい。


46 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月21日(水)19時18分28秒
―あれは2週間くらい前の事だった―

「ねぇねぇ、いいじゃん。俺たちと遊びに行こうよ」
「あ、あの…」
「いいじゃんか、楽しいよ?」
「で、でも…」

駅前で俺が弘樹を待ってたら、かわいい子がナンパされてた。
暇だったのでそっちのやりとりを見ていたら、女の子の顔に覚えがあった。

あ、あれは確か同じ学校の人だ。
そうだ、テニス部の人だ。名前は確か…1コ先輩の石川さんだ!
屋上から何回か見たことがあるんだよ。

その石川先輩、困ってるよ。
そう思った俺はおもわず大胆な行動に出てしまった。

47 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月21日(水)19時19分25秒
「ごめん、待った?」
「え?」
石川先輩に待ち合わせに遅れたかの如く声をかけた。
もちろん石川先輩は驚いた目でこっちを見てる。

「じゃあ行こっか」
「あ、あのっ!」
俺はほぼ無理やり石川先輩の手を繋いで適当な方向に歩き出した。
すると後ろの方から「なんだよ、彼氏持ちかよっ」と声が聞こえた。

1つ角を曲がった所で歩くのをやめた。
「ふぅー。もう、いいかな。
ああいうのはきっぱりと断った方が良いっすよ」
「…はい。でも、あのっ」
なぜか石川先輩はまだ困った顔をしている。

「もしかして、俺って余計な事しましたか?」
「そうじゃなくて…」
そのまま石川先輩、顔を赤らめて俯いてしまった。
なんでさ?

48 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月21日(水)19時20分21秒

「手…」
恥ずかしそうな声で言った。
「手?」
手といえばこの手か?俺は自分の手を見て重大な事に気付く。
…あぁっ!繋ぎっぱなしだった!!

「す、すいません!」
慌てて手を離したが、少し気まずい雰囲気になる。
なんだかこっちまで恥ずかしくなってきた…。

「あのっ、それじゃあ俺はこれで」
俺はその場を後にした。
石川先輩は何か言いたそうだったけど、弘樹が待ってるといけないので
俺は待ち合わせ場所にすぐに向かった。


49 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月21日(水)19時21分59秒
俺はコンビニを出て石川先輩の後を追ったが、既に見えなくなっていた。
うーん。明日10時かぁ、どうしようかなぁ。
断れなかったし、行こうかな。
俺が明日の事で迷っていると、弘樹が部活終え学校から出てきた。

「悪い、待たせたな」
「いや、いいよ。それよりも行こうぜ」
とりあえず弘樹が腹減ったって事で俺のバイト先の店に行った。

「なぁ、吉澤って相沢先輩と付き合いだしたんだろ?」
「へぇ、よく知ってるな」
「当たり前だろ。あの相沢先輩もだけど、吉澤だって学校じゃ結構有名なんだぞ」

そう、吉澤も特に1年生の男子には大人気だった。
1時期俺と吉澤が付き合ってる説が流れて、その時は痛い視線を浴びたもんだ。

50 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月21日(水)19時22分43秒

「良いのか?お前さ、好きなんだろ吉澤の事?」
「と、突然なに言い出すんだよ?そんなわけ…」
「オイオイ、何年親友やってると思ってんだよ」
なんだよ、バレてたのか。さすが親友。

「良いんだよ、あいつに応援するって言っちゃったしさ」
俺がそう言うと、弘樹は少し黙り込んだが
「そうか…、わかったよ。お前がそういうならそれで良いんだろうな」
と言った。

弘樹にはああ言ったけど、バイトで会うたび辛くなるんだよな…。
そんなに割り切って考えられるほど大人じゃないよ。

それから他の友達も誘って、カラオケに行ったり
ゲーセンに行ってバカ騒ぎをした。

なんとか俺は気持ちを紛らわしたかった。

51 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月21日(水)19時23分50秒
明日、ホントどうしようかな。
家に帰ってもその事をずっと考えていた。
とりあえず、俺の返事を聞いてから帰って欲しかったよ。

石川先輩への連絡手段もない。
明日駅前10時か…。俺が行かなかったら石川先輩ずっと待つのか?
そういう事はさせたくないなぁ。

「はぁー」
悩んでても仕方ないな。いいや、明日行こうっと。
そもそも、俺には断る理由がないんだし。


52 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月21日(水)19時24分28秒
次の日、遅刻しないように余裕を持って家を出た。
でも俺が駅に着いたのが約束の10分前だったのに、もう石川先輩は来ていた。

「あぁ、来てくれたんだ」
「はい。だって石川先輩、俺の返事聞かないで帰ちゃったっしょ?」
俺がそう言うと石川先輩はようやく昨日の自分のミスに気がついた。
「あっ!ご、ご、ごめんなさい!!」
普通に謝罪された。ちょっと意地悪だったかな。

「あぁ、気にしないで下さい」
「でも、迷惑じゃなかった?」
「全然。それより今日はなんで?」
「…この前のお礼しないとって思って。あの、お礼何が良いかな?」
んー、お礼っていってもそんなたいそうな事した覚えはないけどなぁ。

「じゃあ、どっか連れて行ってくださいよ」
「うん。どこが良い?」
「石川先輩にお任せしますよ」
それから石川先輩は少し悩んでいる。

…訂正、すっごい悩んでいる。

「あの、じゃあエキストランドは?」
その希望に先輩も同意してくれて、俺たちはエキストランド(簡単に言えば遊園地)
に行く事となった。


53 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月21日(水)19時25分02秒
20分ほど電車に揺られて、目的地のエキストランドに着いた。
予想通り、人が多かった。それでも平日だからマシな方だと思う。

俺も石川先輩もフリーパスを買った。石川先輩が俺の分までお金出す
って言い張ったけど、さすがにそこまではさせられないので自分の分は
自分で出した。石川先輩はあんまり納得してなさげだったけど。

「ねぇ、何から乗ろうか?」
「そうだな〜」
最初に乗る乗り物、なぜかそれで5分くらい2人して悩んでしまった。
なにやってんだか。

結局入園口から1番近くにあった乗り物にした。
それがよりのもよって1番人気のジェットコースター『龍神V』だった。
待ち時間30分。空を見上げれば眩しく照らす太陽。
「暑いね…」
「そ、そうっすね…」

汗が止まりません…。


54 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月21日(水)19時25分55秒
ようやく龍神Vを乗り終えた。1番人気とあっておもしろ怖かった。
30分待ちの暑さも吹っ飛んだよ。
でもあの強烈なアップダウンに少し酔ったかも…。
「すっごく怖かったね」
「全く。ちょっと酔っちゃったかも…」
俺がそう言うと石川先輩は心配そうに顔を覗き込む。
「大丈夫?」

石川先輩の顔が間近にある。
近くで見るとすっごいかわいいな。美少女って感じだよ。
じっと石川先輩の顔を見ていると顔を赤らめて下を向いちゃった。
「そ、そんなに見られると恥ずかしいよ」
「あっ、ごめん。その、石川先輩かわいいなぁと思って…」

数秒後、自分の言った言葉に意味に気付く。
しまったぁ!
案の定さっきよりも顔を真っ赤にしている石川先輩がいる。
気まずい雰囲気…。

「つ、次さ、あれ乗りましょうよ」
俺は何とか言葉を発した。
「そ、そうだね」
ギクシャクしながら次の乗り物へ向かった。

なんか初デートのカップルみたいだよ。


55 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月21日(水)19時26分33秒
その後、幾つか乗り物に乗って遅めの昼食を、テラスのある
ログハウスレストランで済ませた。

「オバケ屋敷行きましょうよ」
「えぇっ、でもぉ…」
「何言ってんすか?定番ですよ!」
俺は半ば強引に先輩をオバケ屋敷まで導いた。

ここのオバケ屋敷は特別なルールがあり、数箇所のポイントで
チェックを受けないと出られない仕組みになっている。

「うわぁ、真っ暗だよぅ」
「ビビり過ぎっすよ。そんなにたいしたことないって」
そう言ったが、内心俺も少しだけビビっていた。

突然冷風が吹いたり、大きな音が鳴ったり、ゾンビが出てきたり。
「キャッ!」
石川先輩はその声共に俺の腕にしがみついてくる。
「だ、だ、大丈夫っす!」
なんかおいしいシチュエーションだなぁ。

そん中、怖がりながらも何気に石川先輩は的確に
チェックを受けて通過して行った。
「次のチェックは…あ、あそこだよ」
「…」
石川先輩ってすごいかも…。


56 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月21日(水)19時27分07秒
俺たちは無事オバケ屋敷を出られた。(当たり前だけどね)
さっきまで暗い空間にいたので、外が眩しく感じる。

「もう、怖すぎだよ」
石川先輩がちょっと泣きそうな顔で言う。
「確かに、ちょっと怖かったよね。でも石川先輩ずっと俺の腕に
しがみついてたよね」
俺が意地悪言うと、石川先輩はまた顔を真っ赤にする。
「鬱陶しかった?」
「そんな心配そうな声で言わないで下さいよ。全然。
石川先輩だから良いよ。ほらっ、次行こう!」

で、次の乗ったのがまたもジェットコースターのヒドラ。
これが…とんでもなく凄かった。
宙づりコースタのうえ、数え切れない程の宙返り。
最高速度も88km/h。

今度は完璧に酔ってしまった…。

俺はこんなに乗り物に弱かったのか!?


57 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月21日(水)19時27分39秒

「ごめん、石川先輩…」
俺たちは近くのベンチで休む事になった。というか、休みたいのは俺だけ。
「ううん、気にしないで。それよりも大丈夫?」
石川先輩は優しい笑顔でそう言ってくれる。
ううっ、俺って奴は…。

「何か冷たい飲み物でも買ってくるね」
「すいません、お願いします」
ううっ、情けない…。


石川先輩が自販機に行った直後、会いたくない奴に会った。

「あれ?何してんの?」

吉澤…と相沢先輩。


58 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月21日(水)19時28分10秒

「私たち、今日が初デートなんだ!」
見れば2人は手を繋いでいる。
「今日は牧村君たちと来てるの?」
「あ、いや…」
俺は動揺してて、うまく話せない。なんだよ、くそっ!

その時、石川先輩が帰ってきた。
「あれ、石川?」
「えっ?相沢君…」

「ああ、そう言うことか。なんだ、君は石川と付き合ってたんだ」
相沢先輩が俺を見て何か勘違いをして、納得した。
「あぁ!そうなんだ!もう、教えてくれたらよかったのに!」
吉澤は嬉しそうに言う。

なんとか俺は言葉を口にする。
「あのさ、吉澤。俺と石川先輩は―」
俺の言葉が終らぬうちに、石川先輩が少し怒った感じで割り込んできた。
「そうよ。私達付き合ってるの!ほら、次行こうよ!」
石川先輩は俺の手を持って歩き出した。


59 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月21日(水)19時28分54秒
「……」
「……」
しばらく手を繋いだまま無言が続いた。
別に恥ずかしいからとかそんな雰囲気じゃない。

もう日も沈みかけで、周りの景色も夕焼けに染まる。

「…ごめんなさい」
石川先輩は静かに謝る。
気付けば観覧車の前まで歩いていた。

「最後に、これに一緒に乗ってくれる?」
俺は黙って頷いた。


60 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月21日(水)19時30分34秒

「…ごめんね。さっきの迷惑だったよね?」
観覧車が丁度てっぺんまで上り詰めた時、ようやく石川先輩が口を開いた。

「迷惑…なんかじゃないよ」
「えっ…」
「さっきはありがとう。本当に助かったよ。
正直、あの場にはいたくなかったんだ」
石川先輩は黙ったまま「うん」と頷いた。

「私ね」
「えっ…」
「私はずっとあなたの事を見てたんだよ」

「いつも吉澤さんと自転車で登校してきて。
 いつもお昼になると屋上に行って。
 たまにそこからグランドを見てたり。
 私は部活中も屋上にいるあなたを見てた…」

「気がつくと、あなたの事を考えてた…」

いつの間にか、石川先輩の頬には涙が伝っていた。

61 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月21日(水)19時31分48秒

「私は…あなたの事が好き」
石川先輩はどこか寂しそうな、それでも一生懸命な笑顔で言った。
その笑顔にドキッとした。よくわからないけど
なんだか守ってあげたいって言うか…そんな感じがする。

俺は石川先輩にハンカチを差し出した。
ゆっくりだけど観覧車も終着へ向かっている。


「あの、うまく言えないけど…ありがとう。
 石川先輩の気持ち、とってもうれしいよ。
 今も、すっごいドキドキしてるし…」


結局今の俺にはそれしか言えなかった。
でもきっとどこかで石川先輩に惹かれていたと思う。

観覧車を降りた時従業員の人はビックリしたんじゃないかな。
石川先輩の目が真っ赤だったもんな。


62 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月21日(水)19時32分19秒
帰り、俺は石川先輩を送っていった。俺の家からは意外と近い場所にある。
吉澤の家と俺の家の中間地点くらい。ちなみに俺の通学路の途中。

「今日はとっても楽しかったっす」
「うん。私も今日はとっても楽しかったよ。
 それよりもお礼ってこんなので良かったの?」
「はい、ありがとうございました」
もう、十分すぎるくらいだ。


「「あのっ」」


ふいに2人の声が重なる。俺も石川先輩もお互いを見て驚いた。

「な、何?」
「いえ、石川先輩からどうぞ」
「ええっ!いいよ、そっちからで…」
「いえいえいえ、レディーファーストっす」
使い方は違うけどね…。


63 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月21日(水)19時33分43秒

「う、うん。それじゃあ………。
 また、また遊びに行こうね」
「えっ?」
俺がそう言うと石川先輩の顔が沈む。

「やっぱりダメかなぁ…」
「ち、違うよ。俺も同じこと言おうとしてさ」
「ええっ!」

「はは、あははっ」
「ふふふっ」
思わず俺も石川先輩も笑ってしまった。
なーんだ、いっしょの事を同時に言おうとしてたんだ。

「それじゃあ、バイバイ」
「バイバイ」
石川先輩が家に入ってから俺はその場を離れた。

家に帰って携帯を見てみれば、吉澤からのメール。
『いつから付き合ってるの?』

もう辛い気持ちはない。これもきっと石川先輩のおかげだ。
俺は『内緒』と返してベッドに倒れこんだ。

ありがとう…石川先輩。


64 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月21日(水)19時35分49秒
本日の更新はここまで。あと3話の予定です。
やっぱり1話ずつ更新していきます。
65 名前:Laiz. 投稿日:2001年11月21日(水)20時46分31秒
更新お疲れ様です。
残り3話が早く読みたいですね(笑)

というか、ウマイ… 私もこんな風に書けたら;
66 名前:children(小文字ver) 投稿日:2001年11月21日(水)21時34分24秒
すごい更新量ですね、お疲れさまです。
67 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月21日(水)22時42分53秒

>65 Laiz.様
すいません、残り4話でした。
実は読んでますよ、あなた様の作品。好きです、ああいうの。

>66 children様
どうもです。そちらの方も頑張ってください。
68 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月23日(金)00時48分15秒
あ〜なんか石川がすごくかわいいです
更新のたんびにワクワクさせてもらってます。

もしかして「エキストランド」っていうのは「エキスポランド」
からもじっているのですか。
69 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月23日(金)01時34分37秒

>68 名無し読者様
ありがとうございます、ワクワクして頂いて。
ずばりエキスポランドからもじってます。あと乗り物の名前も微妙に。
70 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月23日(金)02時43分30秒
(寄り添うココロ)


夏休みもラスト1週間となった。
あれから石川先輩とは何度か会い、会えない時でもメールのやりとりをしている。
俺はしだいに、石川先輩を想うようになっていった。

今日も向こうは部活、こっちは弘樹と吉澤で宿題大会。
もう吉澤の事は好きじゃない。いや、友達としては好きだけど。

「お邪魔しまーす!」
吉澤と弘樹が来た。いよいよ宿題大会の始まりだ。

テーブルの上に宿題を並べてさぁ始めよう!って時にこの質問。
「石川先輩とはどうなったの?」
好奇心満開の目で吉澤が尋ねてきた。
「んー、別にぃ」
「もう、何よ!隠さなくてもいいじゃない!」
と、言われましてもねぇ…。

「ほらっ、それよりも宿題だろっ!」
なんとか宿題に軌道を向けた。いちいち説明するのもめんどくさいし。
それにやれる時に宿題やっておかないと。

で、その後は弘樹の部活話、吉澤の惚気話でほとんど時間が潰れ
残りの時間はゲーム。弘樹は対校試合でまた活躍したらしい。
たぶんうちの学校で弘樹の事を知らない人はまずいないだろうな。

あれれ、宿題は??


71 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月23日(金)02時44分18秒
その夜石川先輩から電話があった。

『もしもし、あの、石川ですけど…』
受話器から聴こえてくる、かなりかわいい声…。
「石川先輩…」

『明日って空いてる?』
「明日っすか…。それが…」
『そっかぁ、ダメか…』

「…全然、ばりばりオッケーっす!!!」
『へっ…。も、もう、からかわないでよ!』
メールでもそうだけど、ちょっとイジメちゃうんだよな。

「じゃあ、明日駅前に11時で、はい。それじゃ、お休み」

明日は久々に石川先輩に会える…。
今日は早く寝ようっと。


翌日、俺は寝坊してしまった…。


72 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月23日(金)02時45分06秒
遅刻する事1時間。
「ご、ご、ご、ごめんなさいぃぃぃぃ!!!!!!」
土下座する勢いで謝罪する。
「あ、あぁ。いいよ、気にしないで」
「で、でも…」
「いいから。ほら、行こう」
石川先輩は俺に対し怒っておらず、許してくれた。
くぅっ、俺って奴は!これが戦国時代なら切腹もんだよ。

「今日はどこに行こうか?」
「んー、そうっすねぇ」
とりあえず駅前から離れて、ショッピング街の方に向かう。

「あっ、お腹すいてるんじゃない?」
「そう言えば…」
そういや、今日は起きて速攻で身だしなみ整えて、速攻で駅前に来たからなぁ。
お腹すいたな。
「じゃあどこか食べに行こう」

俺たちは目に付いたスパゲッティ店に入った。


73 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月23日(金)02時45分42秒
俺は明太子スパ、石川先輩はケーキセットを頼んだ。
「いいんすか、ケーキで?」
「うん。私甘いもの大好きだから」
うーん、その割には石川先輩ってスマートだよなぁ。
部活してるからかな?それともやっぱ体質かな?

「本当に今日は遅れてごめん」
俺はもう1度謝った。
「もう、気にしないでって。それに…」
「それに?」
「待ってる間も…デートなんだよ…」
そう言うと石川先輩はいつものように顔を赤らめて俯いちゃった。
くー、かわいすぎ。男ならイチコロだよな。

俺はずっと疑問に持っていたことを思い切って聞いてみた。

「なんで俺の事好きになったの?」
「えっ?」
「だから、好きになった理由」
石川先輩は最初恥ずかしそうに戸惑ってたけど、話してくれた。


74 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月23日(金)02時46分35秒
―今年の4月(回想)―

「…届かないよ」

ここは学校の図書室。私は一生懸命目的の本を取ろうとしているけど
どうにも手が届かない。あー、あの本見ないと課題が出来ないよぅ…。
もう、なんで女子の手が届かない高さに本があるのよっ!
あーあ、このまま課題出来なかったらどうしよう…。

こういう時は後ろから「この本ですか?」って取ってくれる優しい
男の子がいても良いのに。現実はそう甘くはないか…。

「よーし」
私は思い切ってジャンプして取る事にした。

「えいっ!」

“ガシッ!!”

「取れた!!やったぁ!!」

…しかし!

直後、目的の本の近くに並べられていた本がバランスを崩して
落ちてきた!?

「きゃっ!!」

私は思わず目をつぶり、その場に伏せた。

石川梨華、超ピンチです!!


75 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月23日(金)02時47分47秒
―今年の4月(回想)―

「…届かないよ」

ここは学校の図書室。私は一生懸命目的の本を取ろうとしているけど
どうにも手が届かない。あー、あの本見ないと課題が出来ないよぅ…。
もう、なんで女子の手が届かない高さに本があるのよっ!
あーあ、このまま課題出来なかったらどうしよう…。

こういう時は後ろから「この本ですか?」って取ってくれる優しい
男の子がいても良いのに。現実はそう甘くはないか…。

「よーし」
私は思い切ってジャンプして取る事にした。

「えいっ!」

“ガシッ!!”

「取れた!!やったぁ!!」

…しかし!

直後、目的の本の近くに並べられていた本がバランスを崩して
落ちてきた!?

「きゃっ!!」

私は思わず目をつぶり、その場に伏せた。

石川梨華、超ピンチです!!


76 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月23日(金)02時48分31秒

「っと!」

“バタバタバタ!!!!”

図書室に騒音が響いた。

…あれ?どこも痛くないよ。
目を開けてみると、そこには誰かが私を目掛けて落ちてきた本を
掴んでいてくれていた。

「大丈夫っすか?」

それは男の子で、たぶん1年生の子かな?

私は少しの間ビックリしてた。
その子が周りに散らばった本を元に戻してくれてた。


77 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月23日(金)02時49分21秒

「あのっ、どうもありがとう」
「いえ、それよりも怪我はないっすか?」
「だ、大丈夫です」
「そうっすか、それは良かった。
っと、これでおしまいっと。…はい」
すごい優しい笑顔で、しゃがみ込んでる私に手を差し伸べてくれた。

“ドキッ!”

「あの、それじゃあこれで」

男の子はそのまま図書室を出て行った。
私は自分の取った本を拾ってその場に立ち尽くしていた。

胸がドキドキしてる…。

その後、図書室の管理の先生にすっごい怒られちゃった。
高い所にある本は先生に頼みなさいって。


78 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月23日(金)02時50分00秒

「その男の子があなた…。覚えてる?」
「そ、そう言えば!あれ石川先輩だったんすか!!」
言われてみれば、あの時の女の人が石川先輩だったような気がする。

「それでね、その後あなたの事が気になって、気になって。
 そしたら毎朝見かけるようになったんだ。それで同じテニス部の
1年生の子に色々あなたの事を聞いたんだ」

そうかー、そんなところに出会いがあったとは…。
人生何があるかわかんないな。

79 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月23日(金)02時50分30秒
昼(朝?)食後、そのままショッピング街に入った。
どうやら石川先輩はアフロ犬が好きみたいだ。
レターセットやら、MDポーチやら、色々と買っていった。

「ねぇこれ見て!かわいいー!!」
「そ、そうっすね…」
俺にはアフロの犬の良さがわからん…。

その後は服を見に行ったりした。
1時間くらい2人で店の中を何周もしたけど、結局衣服類は買わなかった。
入った店が間違ったのかもしれない。

で、なんとなくゲームセンターに入った。
「ほら、行きましょうよ!」
「んんー。じゃあ行こっか。あとでプリクラも撮ろうよ!」


80 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月23日(金)02時51分38秒
石川先輩とテトリスを対戦でした。他のゲームも誘ってみたけど
基本的にゲームは苦手らしく、これなら出来るってのがテトリス。

「…」
「あぁっ、失敗しちゃった!」
「…」
「うー、また間違えた…」

石川先輩、正直弱いっす…。
2回やって楽勝だったので、他の簡単なゲームに行こうとしたら
「くやしい!もう1回!!!」
と言われた。負けず嫌いなのか…?

その後3回目でようやく石川先輩が勝った。

…ごめん、ちょっと手ぇ抜いた。


81 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月23日(金)02時52分11秒

「次はプリクラ撮ろう!」
「はーい」
テトリスからやっとの事で離れて、次はプリクラ。
あんまりプリクラ好きじゃないけど、石川先輩となら良いや。

「あー、ここ天井からも撮れるよ」
「ホントっすね」

天井からのカメラで2回撮ったけど、微妙に納得がいかなかった。
俺がこの機種が初めてで、なんかうまく写れなかった。
時間制限があるから早くしないと!

“カシャッ!”

「これいい感じじゃないっすか!」
「うん。じゃあ次は正面から撮ろう」
次は正面っと…。

“カシャッ!”

「うん、これもいい感じだね。最後はどうしよっか?」
「そうっすね…って、時間がないっす!」
「あぁっ!ホントだ!?」
やばい、時間が…!?


82 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月23日(金)02時53分33秒

「のぁっ!?しまった!」
間違えて天井からの撮影を決定してしまった!
「えぇっ!何!?」
何事?って感じの声を上げる。2人ともいっぱいいっぱい。

「天井っす!天井のカメラを見て!」
「ええ?天井!」
なんとか天井は見たものの、石川先輩の場所は撮影範囲内にきちんと
入っていない!そう思った俺はとっさに石川先輩を抱き寄せた。

「あっ…」

「はい!笑顔で天井!!」

“カシャッ!”

見事石川先輩も俺もバッチシ笑顔で、綺麗に写っていた。
速攻で文字を書き込む。

何とか文字も書き込めて、数分後、現像し終えたプリクラが出てきた。


83 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月23日(金)02時54分20秒

「見てくださいよ!こんなにいいのが撮れてますよ!!」
「あ…うん…」
さっきから石川先輩の様子がおかしい。何だ?

「どうかしました?」
「ど、どうかしましたって…さっき…」
石川先輩は俺が何かしたような、そんな訴えが含まれた表情で俺を見る。
さっき?さっきといえば……!?
そ、そう言えばとっさに抱き寄せちゃったんだ!しまった、時間の事だけ
考えてて大胆な行動に出てしまった…。

「す、すんません!!!!」
一体俺はきょう何回謝ってるのだろう。
「…あっ、ううん。いいの、いいの。怒ってるんじゃないよ。
 あまりにもいきなりだったから…ちょっと驚いちゃって」


そしてまた、お約束のちょっと気まずい雰囲気…。


84 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月23日(金)02時54分58秒

この気まずい中、俺は1つの考えを出した。

「次、行きましょう!」
「えっ?」
俺は石川先輩の手を強引に握って歩き出した。最初は戸惑ってたけど
すぐに握り返してくれた。手を繋ぐのはこれで3度…4度目か。
もうそろそろこの雰囲気にも慣れないとな。
そういう意味で、俺はあえてこの行動に出た。

この後、実は何人か通りすがりの人に笑われたんだ。俺も石川先輩も
余程ぎこちなかったんだろうな。


85 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月23日(金)02時55分34秒
帰りに石川先輩の家の近くにある公園に入った。
夏ももう終わりに近づき、7時にもなれば辺りは暗くなっている。

ベンチに座って、何気ない2人の何気ない会話。
なんか、今とっても幸せだ。

「あのさ」
「うん?」
「今さらだけど、これは言っておきたいんだ」
「何?」

俺は石川先輩と向き合う。
1回深呼吸してから言った。

「俺は石川先輩の事、好きだよ。だから俺と付き合ってください!」

石川先輩、最初はビックリしてたけど
「はい…」
と言ってくれた。

なんか照れくさいや…。


86 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月23日(金)02時56分04秒

その勢いでと言いますか、俺は石川先輩の肩に手を置いた。
一瞬ビクッとしたけどそのまま俺にもたれかかって来てくれた。

“ドキドキ”

俺は石川先輩を見つめる…。

石川先輩も俺を見つめている…。

しだいにお互いの顔が近づいていき、石川先輩は目を閉じた。

“ドキドキドキドキドキドキ!!!”

背筋がピンっと伸びる。
風のざわめきももう俺の耳には届かない。

もう少し、後2センチ程で石川先輩の唇に触れる…。
俺も目を閉じる。


87 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月23日(金)02時56分54秒

後1センチ…。

――が

「ねぇママ見て!あそこのお兄ちゃんとお姉ちゃんがチューしてるよ」
無邪気すぎる少年の声が、静まり返った公園内に響いた…。
「あっ、こら!この子ったら!!」

閉じていた目も見開かれ、俺と石川先輩は速攻で離れる。

お母さんはばつが悪そうにこちらに向かって何回も頭を下げた後、そそくさと
公園を出て行った。その後、5分くらい2人は何も喋れなかった…。


不自然な2人の不自然な沈黙。

なんでこーなるの?


88 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月23日(金)02時57分46秒

「か、か、帰ろうっか」
「そ、そうっすね…」

苦笑いを浮かべたまま公園を出て、石川先輩を家まで送った。
くそっ、あの少年がもう少し黙っててくれたら…。

「じゃあね…」
「うん」
もう石川先輩の家に着いてしまった。
俺がしょぼくれた顔で帰ろうとしたらいきなり石川先輩に呼び止められた。
振り返った瞬間、何かが俺の唇に触れた。

“チュッ”

「えっ??」
「ほらっ、落ち込まないの」
石川先輩はお姉さんっぽい笑顔を浮かべたまま家に入っていった。


89 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月23日(金)02時58分23秒
俺は自分の唇に手を当て、さっきの感触を思い出す。
今…確かに石川先輩がキスしてくれた…よな。

ま、ま、ま、マジっすか!!!!!!!
思わず俺はそう叫びだしそうだったけど、さすがにそれは近所迷惑だろうからやめた。

抑えきれない鼓動を抱えたまま帰宅。

帰りに買ったコンビニ弁当が喉を通りません。

その日、ドキドキして眠れなかった。


今日もまた、昨日よりも石川先輩を好きになりました。


90 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月23日(金)02時59分28秒
夏休みも終わり2学期が始まる。
俺は石川先輩と登校するようになり、吉澤とは一緒に行かなくなった。

俺はバイト、石川先輩は部活と会えない日が増えていったけど、毎日電話したり
暇があればメールしたり。気持ちが静まる事はなかった。

ずっとこんな幸せな日々が続くと、そう思ってた…。


91 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月23日(金)03時02分01秒
ごめんなさい。74番のカキコはミスです。飛ばしてください。
こーして見ると、ベタな話だ。最後までこのベタさは続きます・・・。
92 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)01時11分20秒
(はじめて見せた涙)


秋も終わり、季節は冬になった。
めっきり外は寒くなり、朝チャリ通の俺には手袋、マフラー、コートは必須。

「石川先輩、おはよう!」
「おはよー」

石川先輩の家からは自転車から降りて歩くようにしている。
まぁ、その、自転車だとすぐ学校に着くから。

「ねぇ、今度の土曜日って部活?」
「部活は2学期の期末テストまでで、テスト後から当分は休みになるんだ。
 あっ、土曜日だよね?空いてるよ」
俺は土曜日はバイトを休みにしていたので、映画に誘ってみたら
快くOKしてくれた。

土曜日が楽しみっす。


93 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)01時12分24秒

「吉澤、おはよう」
俺は自分の席に着き、隣の席の吉澤に挨拶した。
あれから何度か席替えがあったけど、前回の席替えでまた吉澤とは
近所になった。

「…」
「吉澤?」
「…えっ?あ、おはよう」
最近どうも吉澤の様子が少しおかしい。どうしたって聞いても
「なんでもない」としか答えてくれない。バイトでもミス連発で
中澤さんに怒られたり。ほんと、どうしたんだか…。


94 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)01時12分58秒
期末テストも無事終わり、やってきました土曜日!!
俺は授業が終ると速攻で教室を出て校門に直行。
しばらくしてすぐに石川先輩も来た。

「んじゃ帰ろうっか」
今日は1回家に帰ってから映画を見に行く事になってる。

帰り道、石川先輩の様子が少しおかしかった。
気になったのでどうしてか問いただした。

「あのね…、実は相沢君の事なんだけどさ…。
 あくまでも噂だけど、吉澤さん以外にも付き合ってる子がいるって」
「えっ!?」
そ、そうか!それで最近吉澤の様子がおかしかったんだ!
「で、でもさ、噂だろ?」
「うん…噂だけどね」

ったく、下らない噂だよ。


95 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)01時14分00秒
家に帰り昼食を済ませて、吉澤にメールを送った。
『噂なんて気にすんなよ!』
すぐに『うん。そうだよね。ありがとう』って返ってきたけど、きっと
全然気にしてるだろうな。今度相沢先輩の所に行ってみるか。
…余計なお世話かもしれないけど。

さて、メールも送ったことだしそろそろ行くかな。
俺はすぐに待ち合わせ場所の駅前に向かった。
1時の約束だけど、石川先輩は10分前には絶対に来てるから早めに出た。

で、駅前に10分前に着いたけど、石川先輩はまだだった。
珍しい…。これが普通だと思うけど。

ボーっと周りを眺めてると知っている人を見つけた。
あれ?相沢先輩??
相沢先輩は誰かと待ち合わせしている様だった。

あっ、相手の人が来た…女の人だ。
…!?
吉澤じゃない!


96 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)01時14分43秒
いや、落ち着けって俺。もしかしたら妹さんかもしれないし
ただの友達かもしれない。
そう自分に言い聞かすも、不安は消えない。

「お待たせ」
確かめに行こうか…。でも、もしかしたらすごい失礼かもしれないし…。
「あの…」
いいや、今度まとめて聞いてみようっと。
「もしもーし」
「…へっ?あぁっ、石川先輩!」
「んもう、ボーっとしちゃってどうしたの?」
「い、いや。なんでもないっす。それよりも行きましょうか」

とりあえず相沢先輩の問題は置いとこうっと。それよりも石川先輩
とのデートを楽しまないと!

しかし、いざ映画の上映が始まってもずっとその事が気になっていた。


97 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)01時15分17秒
―2時間後―

結局映画に集中出来ず、あんまり内容わからなかった。

映画館を出て近くの喫茶店に入った。
俺はミルクティーを、石川先輩も俺と同じのを頼んだ。

「すっごい面白かったよね!私感動しまくりだったよ!!」
「う、うん。そうだね…」
面白い?わかんなかった…。感動?しそこねちゃったよ…。

「どこのシーンが良かった?」
「えっ!?」
ど、どこのシーンですと!?やばい…印象に残せるほどちゃんと
見てないよ。俺は適当に最後と答えたら「私も」と同意してくれた。

それから少し映画の話で盛り上がった(盛り上げた?)後に喫茶店を出た。

その時、少し離れた人ごみの中に相沢先輩がいるのを見つけた!


98 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)01時15分58秒

「石川先輩、ちょっとごめん!!」
そう言い残し、相沢先輩を追いかけた。
「ちょっと?何??えっ???」

道行く人を避けながら、なんとか相沢先輩を目で追って行った。
ようやく近くまで来れた時に、さっき一緒にいた女性と腕を組んでいるのが
確認できた。もちろんその女性は吉澤じゃない。
くそっ!あの噂本当だったのか!!

「相沢先輩ぃ!!」
俺の声に相沢先輩も気付いてくれて振り返ったが、その表情は
気まずそうだった。

「はぁ、はぁ、はぁ…」

「ねぇ誰?相沢センパイの知り合い??」
隣の女性…こいつ確か同じ1年の奴だ!


99 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)01時16分46秒

「その子とどういう関係っすか?」
俺の質問に相沢先輩は言葉に詰まっていたので、隣の女が代わりに答えた。
「恋人同士に決まってるじゃん」

恋人同士…だと?

「つまんねー冗談よせよ」
「冗談なんかじゃないよ!」

冗談じゃない?

「…どう言う事っすか、相沢先輩?」
真相を求めると、相沢先輩の表情が一変して面倒くさそうに言った。
「ちっ、見ての通りだよ。俺はこの子と付き合ってんだよ」
「な、何、言ってんすか?じゃあ吉澤は!?」

「何よアンタは?吉澤ってもうとっくに相沢センパイに捨てられたじゃん」
女の言葉に追い討ちを加えるように相沢先輩が吐き捨てた。
「吉澤さぁ、なんか面倒くさいんだよ」


この言葉に俺はキレた。


100 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)01時17分44秒

「今なんて言った…」
俺は相沢先輩を睨みながら胸倉を掴んだ。
「だから、吉澤ウザイって言ったんだよ。
 ついで言うと、お前もウザイんだよ!!!」

“バシッ!!”

相沢先輩のパンチが俺の顔にヒットした。
あまりに突然だったので避ける事も出来ず、そのまま倒れこんだ。
その時石川先輩も俺に追いついて、すぐに側まで駆け寄ってきた。
「ちょっ、大丈夫!?」

「おい、行こうぜ」
相沢先輩は女とそのまま立ち去ろうとする。

「待てよ」
俺は立ち上がり呼び止める。
「なんだよ?まだやられたいのか?俺も昔は結構ケンカやって…」
そのセリフが終る前に俺は殴りかかった。俺の拳は完璧に
相沢先輩の顔面を捉えている。悪いが素人が避けれるほど遅くもない。

しかし後少しで顔面に入る、ってところで誰かに止められた。


101 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)01時19分01秒


「はい、そこまで」
ふっ、と我に返り、そこには弘樹が俺の拳を掴んでいた。
「ひ、弘樹?」
気がつけば周りがざわついている。

「とりあえず落ち着けよ?」
「…あぁ」
弘樹は俺をなだめた後、相沢先輩のほうに向き直った。

「なんだよ、牧村かよ…。おい、助かったなお前」
相沢先輩はヘラヘラしながら弘樹の後ろにいる俺に話しかけてきた。
「牧村が止めてくれてよ」
俺はまた殴りかかりそうになったが、今度は石川先輩に止められた。


102 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)01時19分57秒

「相沢先輩、何言ってんすか?助かったのはアンタの方だよ」
弘樹の言葉に相沢先輩は怪訝な表情を浮かべる。
「言っときますが、こいつ、俺より強いっすよ。それにこいつが
こんなに取り乱すことなんて、よっぽどの事がない限りまずないよ」
弘樹の言葉に相沢先輩は驚愕している。余計な事言うなよ、弘樹。

「アンタさ、よっぽどウザイ事したんだろうね。これ以上やるなら
 俺も相手になりますよ、相沢先輩?」
その言葉を聞いた相沢先輩は一目散に逃げて行った。

俺たちも騒ぎがこれ以上大きくなる前にこの場を離れた。


103 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)01時20分53秒

「弘樹、サンキューな」
弘樹がさっき俺の拳を止めてくれたことに感謝している。
「危なかったよな、部活帰りに通りかかってよかったよ。
 お前って誰かを殴るの相当嫌がってたからな」
ううっ、親友ありがとよ!

「じゃあ俺はここで」
弘樹は石川先輩にも挨拶をした後、家に帰っていった。

「石川先輩、さっきはごめん」
「…ううん、いいよ。あなたもたいした怪我じゃなくて良かった」
相沢先輩の貰ったパンチも、俺にしてみればたいした事ない。
弘樹のなんかあれの何倍も痛いからな。

「じゃあ帰ろうっか?送って行くよ」
「ううん。今日はここで良いよ。それじゃあ」
そう言って石川先輩も帰っていった。

石川先輩は表情は笑顔だったけど、あれはちょっと無理してた。
どこか悲しげっていうか、寂しげだった気がする。
んー、途中で置いていったのはさすがにまずかったなぁ。
後で謝ろうっと。

さて、俺も帰るか。


104 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)01時21分30秒

「あっ、おかえり」
家に着くと、なんと吉澤が俺の部屋のドアの前で待っていた。

「おかえりって、お前いつからそこにいたんだよ?」
「んー…ついさっきだよ」
「そうなんだ。でも寒かっただろ?今開けるから入れよ」
「うん。ありがと」
俺はドアを開けて吉澤を部屋に上げ、すぐに暖房を入れた。

「ココアで良いか?」
「うん…」
なんだか元気のない返事だ。相沢先輩のこと気にしてるんだろうな。
…って、今日のことなんて言えば良いんだ!?
いや、そもそも話せないぞ!?

「ねぇ、顔ちょっと怪我してるよ。どうしたの?」
ギクッ!?
「え、えーっと、弘樹が…そう弘樹とちょっとケンカしたんだ」
適当に答えてしまった。ウソってばれませんように!

「そーなんだ、2人もケンカする時あるんだ?」
「お、おう!めったにないけどな!」

ふぅー、なんとかごまかせたかな?
もっとも、弘樹と殴り合いのケンカなんかしたら、この程度じゃ済まないけど。


105 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)01時22分20秒

「はい、温かいココア」
吉澤にホットココアを差し出し、俺も座る。
「ありがとー」

吉澤はココアを1口飲んだ後、俺の顔の傷に触れる。
「な、何?」
「ウソつき…」
「えっ?」
「相沢先輩に殴られたんでしょ?」
ええっ!?なんでわかるんだ!?どうやったらバレるんだよ!?
「な、な、何で知ってるんだよ!?」
「だって…見てたもん。私もあの場所にいたんだよ」

ガーン!バレてます…。って事は成り行きもすべて…?

「最近さ、相沢先輩の様子がおかしかったから変だと思って
 今日、後をつけて行ったの」


106 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)01時23分38秒
吉澤はすべて知っていた。相沢先輩に他の彼女がいた事も、あの噂が
本当だった事も。俺の怪我の原因もすべて。

「さっきね、正式に相沢先輩と別れてきた」
「えっ?」
「…エヘへッ、なんかもう湿っぽいよね。ごめんね。
 もう綺麗さっぱり忘れたやるんだ!」
吉澤は急に明るい表情になった。いや、無理に明るくしてるんだ。

「あーあ、外も真っ暗だね。あっ、もう7時だ!
 このココア飲んだら帰るね」

…。

「このココア、ホント美味しいよ」
「…無理すんなよ」
「えっ?べ、別に無理なんかしてないよ!!」
吉澤は何かをごまかすように言った。
口ではそう強がっているけど吉澤は……ずっと泣くのを我慢しているんだ。
さっきからお前の体が…震えてるよ。

107 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)01時24分12秒

「そうだ!最近石川先輩とはどうなってるの?聞かせてよ!」
「俺の事なんてどうでもいい!!!」
少し叫び気味に言ったせいか、吉澤はちょっと怯えている。
でも…。

「無理すんなよ、なぁ?」

「もうしつこいな!別に無理なん…て…。
 あ…あれ…おか…おかしいな…」
吉澤の目には涙が溜まっている。それでも笑おうと必死になっている。

「お願いだから…無理しないでくれよ。
 泣きたい時は泣けば良いさ。愚痴りたい時は愚痴れよ。
 俺がいくらでも聴いてやるからさ」

そう言うと、吉澤は張り詰めた自分を抑えきれず泣き崩れた。

「うわぁぁぁぁぁん!!!!!」
吉澤はそのまま俺に抱きついてきた。


108 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)01時24分48秒

「ひっく…わた、私…本当に先輩のこと…好きだったん…だよ……」
「…うん」
俺はそっと吉澤の頭を優しくなでた。わかるよお前の気持ち…。

「うっ…ひっ…ごめ…ん…ね…」
「気にすんなって」

吉澤が泣き止むまで、ずっと頭をなでていた。
俺に出来るのはこれくらいだから…。

それから吉澤は泣き疲れたせいか、そのまま眠ってしまった。
俺は吉澤を自分のベッドまで運んで寝かせてた。

「…」

涙の跡が残る吉澤の顔はそれでも……。



109 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)01時25分52秒
俺は晩御飯をコンビにまで買いに行った。
特に厚着をしていたわけではなかったので少し寒かった。
「はぁー」
吐いた溜め息は白い。マジでちょっと、寒いなぁ…。

コンビニで弁当を買った後すぐに家に戻った。
寒かったのもあるけど、それ以上に吉澤の事が気になっていた。

晩御飯を済ませた頃、吉澤が目を覚ました。
「あ…ごめんね。いつの間にか寝ちゃってたんだ」
吉澤は目を擦りながら起き上がり、そのまま洗面台に行き自分の顔を鏡で見た。
「あーあ、ひどい顔だ…」
そう言いながら顔を洗っていた。

「もう良いのか?」
「うん!もう大丈夫!!かなりスッキリした!」
「そうか、それは良かった」
「どうもありがとうございました!
 アンタのおかげでだいぶ楽になったよ」
まだ完全には立ち直ってはいないようだが、それでもさっきに比べれば
かなり晴れた顔だった。その顔を見てようやく俺は安心できた。

吉澤はもう1度俺に礼を言った後、帰った。


110 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)01時27分06秒

吉澤が帰った後シャワーを浴びて、髪も乾かさずにベットに寝転がった。

なんでだろう、吉澤の事があんなにも気になって。


そして石川先輩のことを思うと、なぜか心が痛んだ…。



111 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)01時29分39秒
残り2話くらいとなりました。次の話は出来てて
これから最終話つくります。
でわでわ
112 名前:children(小文字ver) 投稿日:2001年11月24日(土)12時04分23秒
よっすぃ〜・・・・(涙)
113 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)18時06分39秒
(愛しさに『サヨナラ』)


日曜日はバイトだった。吉澤もバイトでちゃんと休まずに来ている。
無理してる様子もなく、今日はミスらしいミスもなかった。

「あ、そうや」
休憩中、中澤さんが話しかけてきた。
「あんなー、24日にみんなでパーティーしようと思ってんねんよ。
 あんたら来れるか?」
「24日っすか?大丈夫っすよ」
一緒に休憩だった人も同意した。でもクリスマスにみんなって、恋人いない
宣言みたいな…あれ?

「中澤さんも来るんすか?」
「当たり前やん。私が企画者やねんから」
「って事は…中澤さんには恋人が…」

“ギロリッ!!!”

ゾクッ!?
と、とんでもない殺気を感じた!?しまった、中澤さんには恋人は禁句だ…。

「何か言うたか?」
そう言った中澤さんは限りなく優しく引きつった笑顔だった。
「な、な、何でもないっす!是非参加させていただきます!!」
「ええ返事や。吉澤も来るって言うてたし、これで参加者は15名くらいやな」
15名…そんなにも寂しい人たちがいるんだ…。


114 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)18時09分07秒
―翌日―

「石川先輩、おはようございます」
「あ…おはよう」
「あのどうかしました?元気ないよ?」
「え…そ、そんな事ないよ!」
いつもの石川先輩だった。気のせいか…。

「ねぇ、吉澤さんにはあの事話したの?」

あの事?そう言われ最初は何のことかと思ったけど、すぐに
相沢先輩の事を指してるとわかった。

「あいつ全部知ってましたよ。あの日、実はあの場所にいたみたいっす」
「そうなんだ。吉澤さんは大丈夫?」
「はい、もう立ち直ってますよ」
「そっか…良かったね…」
じっと前を見据えていた石川先輩は、少し寂しそうだった。


115 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)18時23分53秒
それから1週間が過ぎた。あれからも石川先輩は時々寂しそうな表情を
浮かべていた。理由を聞いたら「なんでもないよ」と言ってすぐに
いつもの石川先輩になる。一体どうしたんだろうか…。

授業中もボーっとその事を考えていた。
「―ねぇ」

俺何か悪いことしたのかな…。

「―ねぇってば!」
ようやく俺は吉澤が声をかけているのに気がついた。
「あ…あぁ、ごめん。何か用か?」
「もう!さっきからずっと呼んでたのに!!」
ちょっと顔を赤らめて、怒り気味でそう言った。

「悪い…。で何だ?」
「24日って行くの?バイトのパーティー」
「あぁ、お前も行くんだろ?でもあれって店が終ってからやるつもり
だろうな。これはオールになるのを覚悟しとかないと!
でもお前ん家は良いのかそれで?」

まだ16歳の女の子が普通はオールはまずいっしょ。
と、思ったけど保護者(中澤さん)付だから良いらしい。
そんもんなのか??


116 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)18時26分47秒
今日はバイトがなかったので石川先輩と一緒に帰る事になってる。
靴箱でスリッパから靴に履き替えて外に出ると、もう石川先輩は
校門の前で待っていた。

「お待たせ、帰ろうか」
「うん」
いつもの様に手を繋ぎ、歩く速度も石川先輩に合わせる。
空を見れば少し曇っている。そういや、今日は雪が降るって天気予報
で言ってた。ホントに降れば良いな。

「ねぇ、今日ってこれから暇?」
「あぁ、暇だけど」
「それじゃあさ、今からデートしよ?」
石川先輩にしては珍しく積極的に誘ってきた。
「今からっすか?別にいいよ」
こんなに突然誘われたのは初めてだった。逆のパターンは良くあるけど。
どこに行くのか聞いてみたら既に行き先も決まっていた。

行き先は――エキストランド。最初にデートした場所だ。


117 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)18時27分57秒
今日はそんな長い時間遊ぶわけではないのでフリーパスは買わなかった。
始めて来た時と同じように『龍神V』から乗った。
あの時とは違い待つ事もなく乗れる。普通に平日だから。

乗り終えた後、別に酔う事もなかった。
「大丈夫?」
「フフフッ、あの時の俺とは違いますよ。もう余裕っす!!」
俺はおどけて見せた。そんな俺を見て石川先輩は笑う。
石川先輩はいつも通りだ。悩んでた事があったなら、きっともう
解決したんだろうな。良かった良かった。

その後も色んな乗り物に乗っていった。

で、やってきました極悪コースター『ヒドラ』。
リベンジ!!!
「行きましょう!!」
「う、うん」
妙に張り切っていた俺に対し、石川先輩は苦笑いを浮かべていた。


―今日も…負けた…うっ…。


118 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)18時29分52秒

「大丈夫?」
ベンチに座り、石川先輩は俺の背中をさすってくれている。
ううっ、情けない…。

「ごめん…、今日は体調的に大丈夫と思ったんだけど」
「良いのよ、気にしないで。それよりもゆっくり休んだら
観覧車乗ろうよ!」
観覧車か…、一番の思い出の場所だ。なんたって石川先輩に
告白された場所だからな。

5分くらいしたら体調も元に戻り観覧車に乗った。
あいかわらずゆっくりとしか進まない。まさにカップルには
もってこいの乗り物だ。

「私達の街が見渡せるね。とっても綺麗」
「うん。ほら、あそこ俺ん家で、あそこが石川先輩の家だ!!」
はっきりと確認できるわけじゃないけど、おおまかに指差した。
あの時と同じように、空が夕焼けに染まっていく。
「前に乗ったときは2人とも外の景色なんて見てなかったもんな」
「うふふっ、そうだね。あの時はずっと黙ってたもんね」
「そうそう」
懐かしいなぁ。



119 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)18時31分26秒

「懐かしいね…。私ここであなたに告白したんだよね。
 今考えたら、ちょっと恥ずかしいな」
少し照れたように言う。顔もほんのり赤みがかっていたけど
本当に照れてるのか、それとも夕日のせいなのかわからなかった。

「あれからもう4ヶ月も経ったんだね……」
そうか…、もうそんなになるのか。石川先輩とちゃんと付き合い始めて
からは3ヶ月とちょっとか。
「早いもんだね、月日が経つのはさ」

俺はいつまで石川先輩といれるのかな?これからもずっと一緒だったら
いいなぁ…。

やがて観覧車も1周して、俺たちは降りた。

「今日はもう帰ろうか?」
「そうっすね。石川先輩がそういうならそうしましょう」
ちょっと時間は早めだったけど俺たちはエキストランドを後にした。


120 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)18時33分36秒

帰りに石川先輩の家の近くにある、いつかの公園に寄った。
もう6時を回り暗くなったし、十分寒くなっていたので子供たちも帰っていて
周りには誰もいなかった。

電灯の下にあるベンチに俺たちは座りしばらく2人の思い出話をした。
ここでキスし損ねた話とかさ…。
でもなんでこんな話をするのか、この時の俺は気にも止めなかった。


しかし、その答えはすぐにわかる事となった…。


そっと石川先輩が立ち上がり、2歩程度前に出た後、呟くように言った。



「別れよっか?」


一瞬その言葉の意味が理解できなかった…。



121 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)18時34分34秒

「え…、今…何て…??」
別れよっか…??な、何かの聞き間違いだよ。
「別れようって言ったんだよ…」
石川先輩はずっと俺に背を向けたままだった。

「何冗談言ってんすか?」
「冗談…なんかじゃないよ。本気で言ってるんだよ」
ようやく石川先輩がこっちを向いてくれた。その時の石川先輩の顔は
今まで見た中で1番優しい笑顔をしていた。

「何で!?」
「だって…あなた…吉澤さんの事が好きなんでしょ?」
「えっ……」
「そう…でしょ?」
「…」



122 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)18時35分37秒
最近ずっと石川先輩の様子がおかしいと思ってた。でも、あの相沢先輩の件
以来、様子がおかしかったのは俺の方だったんだ…。

「そ、そんな事ないよ!」
「本当にそう?」
「えっ?」
「本当にそうなの?ちゃんと自分と向き合ってみて。
確かめて、自分の本当の気持ちを」
俺の本当の気持ち…。そんな事ないよな?俺は石川先輩が…。

「でも、俺は…」
「お願い…他の人にはいくらでもウソついてもいいよ。
でも自分にはウソをつかないで!」

「っ!」

俺は…そう、俺は怖かったんだ、自分の今の気持ちに気付くのが。
石川先輩をずっと好きでいたいって思っていたから…。
だから認めなくなかった。

でも…もう認めるしかないんだね?

「…うん、俺は吉澤の事が…好きだ。でもどうして……」

「……わかるよ。だって、私はあなたの事大好きなんだよ」
穏やかな表情で、穏やかな声で言った。



123 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)18時36分37秒
俺は今にも泣き出しそうだった。でも石川先輩の方が辛いに決まってる。
ずっと涙をこらえてるんだから。それでも表情は優しい笑顔のまま。

「でも、それでも俺は石川先輩と…」
「ダメ……だよ」
「なんで…さ?」
俺は泣くのをこらえ、なんとか言葉を発する。なんでダメなんだよ?

「私もね…最初はそれで良いって思ってたんだ。
 あなたといれたらきっと幸せになれるって、そう思ってた。
 でもね…私が良くても、あなたは良くないはずだよ?」
それから息をすぅっと吸ってから、石川先輩ははっきりと言った。

「だから…ね?別れよう?」

俺はそのまま俯いた。そしたら…石川先輩は俺の前まで来てくれて
優しく頭をなでてくれた。

歯を食いしばりどうにか泣くのをこらえる。

「ほら…先輩の言う事は聞くものよ…」


俺は黙ったまま頷いた。



124 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)18時38分40秒

「あ…あなた…と……いて本当に…たの、楽しかった…よ。ありがとう。
 そ、それじゃあ…サヨナラ」

はっきりと俺に笑顔を見せてくれて、公園を去っていった。

最後まで石川先輩は泣かなかった。最後まで優しくてかわいい声だった。
最後まで……俺の好きな石川先輩の笑顔だった。


とっても悔しくて、悲しい。自分がすごく嫌になる。
高校生になって少し大人になったって思ってた、でも全然勘違いだ。
俺はまだまだ子供なんだ…。

くそっ!なんであんなに優しい石川先輩を傷つけたんだよ!!

“バンッ!!”

自分の座っていたベンチを思い切り何回も殴りつけた。

くそっ!くそっ!くそっ!!!!!!!
どうしてだよ?なんでなんだよ??なんで今さら思い出したんだ!!!

“バンッ!!”

俺は吉澤の事好きじゃなくなったって思ってた。
でも違ってたんだ。ただ好きな気持ちを忘れてただけなんだ…。



125 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)18時39分46秒

――どれくらいこの状態で、俯いたままだったろう。
何回ベンチ殴ったかな。

気付けば雪が降っていた。周りにほんの少し雪が積もっている。
あっ、でも俺の周りには積もっていない。なんでだろ?
顔を上げてみれば誰かが俺の上で傘を差してくれていた。

「吉澤?」
「うん」
吉澤だった。

「お前いつから?」
「1時間くらい前…かな」
「なん…で?」
「アンタがここにポツンといるのが見えたんだ。声かけようと思ったけど
 そんな雰囲気じゃなかたし…」
「そっか…。ごめんな、気付かなくて」
吉澤は「いいよ」と言って俺の隣に座った。俺の右手が血だらけだったので
それに気付いてハンカチを巻いてくれた。



126 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)18時40分54秒

「俺さ…石川先輩にフラれちゃったんだ」
「そう…なんだ」
「本当に好きな子がさ……他に…いた…んだ」
その時自分が涙声になっているのに気付いた。

「無理しないでもいいよ。泣きたい時は泣けば良いさ」
前に俺が吉澤に言った事を、吉澤が俺に言ってきた。
「へへっ…なんだよ。勝手に人のセリフ、パクんな…よ…。
 ……でも、ちょっ…とだけ…ごめん……」
今まで溜まってたのを吐き出すかのように俺は泣き出した。

人前で泣くのなんて何年振りかな…。弘樹と大喧嘩した時以来かな?
こんなに大泣きしたの、きっと初めてだな。

吉澤は俺が泣き終えるまでずっと隣にいてくれた。



石川先輩…ごめん。そして…今日までありがとう。



127 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)18時42分01秒
更新終了っす!
128 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)18時45分26秒

>112 children(小文字ver)様
こちらこそ、いつもありがとうございます。こんなもん読んで頂いて。
恐縮です。よっすぃー・・・次回で・・・。
129 名前:children(小文字ver) 投稿日:2001年11月24日(土)18時45分53秒
お疲れさま。
私の中でどんどんこの小説像が出来てくる。
こんなすごい小説はないよ。すごいの一言
あと少し頑張って!
130 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月24日(土)18時48分06秒
とうとう次回更新で最終回となりました。
最終話は短いです。
131 名前:Laiz. 投稿日:2001年11月24日(土)19時35分14秒
更新お疲れ様です!

やはりこうなっちゃうんですね…
石川が凄い切なくて良かったです;

最終話、いよいよですね。
頑張ってください。
132 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月25日(日)18時49分05秒
(Merry X’mas…)



12月24日。

「暇っすね…」
「そうやな……」

只今午後7時で店内のお客様2組。店は………すっごい暇だった。
当たり前か…。わざわざクリスマスイヴの日にまでファーストフード店
には来ないよな。今すぐにでも閉店できる体制となっている。
お偉いさんが視察に来たらきっと激怒するだろうな。

その後、案の定閉店時間9時まで暇だった。

バイトが終ると俺は一旦帰宅して、とりあえずシャワーを浴びて
店のニオイを洗い流した。厨房担当だと、なーんかあの店特有のニオイ
が染み付くんだよな。

10時に集合だったので急いで髪を乾かしてから、軽くワックスで髪を整えて
服を着て、よし、これでオッケー!


133 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月25日(日)18時52分52秒

「みんな揃ったな。ほな…メリークリスマス!!!」
半ば自棄になったような中澤さんの声でパーティーは始まった。
意外にも高校生が多かった。1年生は俺と吉澤のみだけど。

「よーし、今夜は飲むでぇ!!!ほら、アンタも飲みなさい!」
中澤さんが未成年の俺にお酒を勧めてくる。
ちょっとちょっと…。
「いや、あの、俺まだ高校生ですから…」
「あぁ!?なんや、アンタは私の注いだビールが飲まれへんのか!!」
こ…怖いよ…。

「そ、そ、そんなわけないじゃないっすか!!!
丁度ビールが飲みたかったんすよ!」
そのまま俺は一気に飲み干した。うげぇー、苦くてまずい。
俺が飲んだのを確認すると中澤さんはターゲットを他の人に変えた。
やれやれ…。
こんな感じで被害者続出していった。楽しいからいいけどさ。

それからはカラオケで盛り上がったり、ビンゴゲームで盛り上がったり。
そうそう、これ全部バイト先のお店のおごり。太っ腹だ。


134 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月25日(日)18時54分13秒
俺はこっそりパーティールームを抜け出して、ちょっと酔いを覚ますため
ベランダに出てベンチに座った。ふぅー、みんな騒ぎすぎだよ。
ここからは街のイルミネーションが見える。なんでかイヴの日だけ24時間
光が点灯している。

「ねぇ…」
後ろから声をかけられた。
「えっ?…なんだ吉澤か」
「なんだとは何よ!…まぁいいや。
エヘへッ、イルミネーションキレイだね〜」
こいつ…ちょっと酔ってる。オイオイ、誰だよ酒のませたの…。

……中澤さんだろうな。

「もうっ、なんで抜け出したの〜?」
「別にぃ…、ちょっとあそこのテンションについていけなかったんだよ」
「そうかなぁ?」
そう言いながら隣に座って、俺の腕に自分の腕を絡めてきた。
「お、おいっ!……お前結構酔ってるぞ?未成年者が酒飲むなよ」

(注意)未成年者の飲酒は法律で禁止されています。


135 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月25日(日)18時55分29秒

「良いじゃんか〜、かたい事言わないでよぅ〜」
少し口を尖がらせて言ってきた。吉澤酔いすぎ…。
でもみんなよく飲むよな。中澤さんなんか明日も仕事なのに。
まぁ俺もだけどさ。

「ねぇねぇ」
少し甘えた声で聞いてくる。
「んー、なんだよ?」
「前に言ってたぁ、アンタの好きな人って誰?」
「…内緒」
「えー、いいじゃん。教えてよぅ??」
「そんなに聞きたい?」
もったいぶらすと、興味津々の目で聞きたいって言ってきた。

「仕方ないなぁ…」
俺は吉澤が絡めてきた腕を丁寧に解いて、立ち上がった。


136 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月25日(日)18時56分37秒

「俺の好きな奴はさ…

 自転車の後ろに図々しく乗ってきて
 

 屋上に1人でいたかったのに邪魔しに来て
 

 いきなりバイト先に面接に来る驚かせ屋で
 

 雨の日に傘を学校に忘れてくるようなドジで
 

 でも風邪ひいた時はわざわざ看病に来て
 美味しいおかゆ作ってくれてさ
 

 寒い中ずっと黙って俺の隣にいてくれた…そんな奴だよ」


俺が言い終えると吉澤は「うーん?」と言いながら何か考えてた…。
もしかして気付いてないのか??
と、思ったら、すぐにハッとした顔で俺の顔を見てくる。
「そ、その…アンタの好きな子って……」
ようやく気付いたみたいだ。1人しかいないだろっての!

「お前に言っておきたい事があるんだ。1度しか言わないから
よく聞いとけよ」

俺は吉澤の方を見て、少し間を置いてからこう言った…。

「俺は吉澤ひとみが大好きなんだ」




137 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月25日(日)18時59分06秒

〜それから〜

季節は春、再び桜舞う季節がやって来た。

この1年、色んなことがあったな…。吉澤に恋をして
石川先輩にも恋をして…。

石川先輩とは学校とか通学路でたまにすれ違うけど、その時は
普通に挨拶してくれる。そうそう、新しい恋人も出来たみたい。
まだ見た事ないけどかなり優しい人らしい。良かった…。

弘樹はあいかわらず空手部のエース。全国大会の個人の部で優勝するほどの
実力。たぶんもう勝てないだろうな……。

アルバイトも変わらずに駅前のファーストフード店で
中澤さんや、バイトの皆さんと仲良くやっています。


そして―

「何考えてるの?」
隣にいるひとみが俺の顔を覗いてくる。
「色々とな…。この1年色んな事があっただろ」
「うん…そうだね」

そっとひとみの肩を抱き寄せて、まぶしい朝に歩きながらKISSをした。

ねぇ、ひとみ。これからもさ…ずっと…ずっと…


  君と揺れていたい…


       ―END―





138 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月25日(日)19時00分03秒
これにて「君が揺れていたい」終わりです。
139 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月25日(日)19時01分03秒
ちょっと物足りないかもしれませんが、ご勘弁。
読んでいただいた皆様。心から ありがとう。
140 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月25日(日)19時04分50秒

>129 children(小文字ver)様
お褒めいただいてありがとうございます。

>131  Laiz.様
終っちゃいました。最後もベタな終え方になりました。

いざ終えてみると、なんか寂しいものがあります。達成感もありますが。
お二方もこれからも頑張ってください。
141 名前:Laiz. 投稿日:2001年11月28日(水)07時34分10秒
おつかれさまでした。
告白のシーン、凄い感動しました。
こんなにスラッと読めて感動できる小説なんて滅多に無いと思いますyo

次回作とかあったらまた読ませてもらいます!
142 名前:きみまよ 投稿日:2001年11月28日(水)21時29分11秒

>141 Laiz.様
ありがとうございます。次回作・・・只今一応作ってます。
というか、そっちの方がこれよりも先にあったんですがね。
次回作は矢口主役の王道RPG的なファンタジー小説。
さて、完成するのかなぁ〜。でわでわ

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