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野獣の森
- 1 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月22日(木)17時30分25秒
- 第××回 トヨタ ヨーロッパ/サウスアメリカ カップ
ボカ・ジュニオルズ(アルゼンチン)対バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)
- 2 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月22日(木)17時44分56秒
- トヨタカップ。
南米のリベルタドーレス杯の覇者、ヨーロッパチャンピオンズリーグの覇者が中立地の一発勝負で覇権を競う「クラブチームのワールドカップ」。
二十二匹のけだものが、その称号を巡ってここ、国立競技場に集った。
天上にオリオンが輝く。芝の状態も良好。難を言えば、メインスタンドから吹き付ける風が強く冷たい。
七時かっきり。
濃紺のユニフォーム、ボカ・ジュニオルズ、矢口真里主将を先頭に入場。
赤のユニフォーム、バイエルン・ミュンヘン、オリバー・ケイン主将を筆頭に登場。
- 3 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月22日(木)17時50分43秒
- 矢口真里。ボカMF。背番号8。
日本代表。98年ワールドカップ出場。
145センチと小柄な体躯ながら抜群のスタミナと攻守に渡っての粘り強さ、そして強烈なキャプテンシーでチームを引っ張る。
昨年のトヨタカップでは鮮やかなミドルで決勝点を決める。日本人初出場、初得点、そして初MVP。
今年は左腕に腕章を巻き、名門を率いての凱旋。
愛称はアンヘル(天使)きれいに染め抜いた金髪と小動物のような愛くるしい容姿からついた。ただし、中身はドクダミの花。
- 4 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月22日(木)18時03分15秒
- チャム・サヤカ・イチイ。バイエルンFW。背番号6。
アルゼンチン代表/五輪代表。98年ワールドカップ出場。
日本人の両親から生まれながらアルゼンチン国籍を持ち、こちらを選択。
ワールドカップ終了後セロ(パラグアイ)からシュトゥットガルドへ移籍するも不振を極め、クズ値でバイエルンに叩き売られる。
だがここで開花、チャンピオンズリーグ優勝の立役者になる。
最大の持ち味はその抜群のキープ力。細身の体ですり抜けるようにして突破していくさまはさなから風のよう。
- 5 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月22日(木)18時05分41秒
- 石川梨華。ボカMF。背番号14。
日本代表/五輪代表。98年ワールドカップ出場。
テスト入団という異例の加入ながら主力の故障などもあり、瞬く間にチームの主軸となる。
現在は故障から選手が戻ってきた事もあって控えに甘んじているが地の利を知るということで、右のウイングバックでの抜擢となった。
十八番はなんといっても本場すらうならせる右足のフリーキック。またスピードにのった突破からのセンタリングも大きな武器。
また旧知の仲である矢口とのコンビは絶妙で、矢口との対照でディアブロ(悪魔)というニックネームで呼ばれる。
- 6 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月22日(木)18時11分56秒
- オリバー・ケイン。バイエルンGK。背番号14。
オーストラリア代表。
古き良きゴーリーの香りを遺しながら、現代GKの必要な要素をもすべて兼ね備えた「ゴールキーパー・オブ・ゴールキーパー」。
なんといってもそのずば抜けて高い身体能力を活かした豪快なセービングが売り。彼を欲しがらない監督など世界の何処にもいないとまで言われ、この若さでACミラン、FCバルセロナ、マンチェスターユナイテッドといった超ビッグクラブを渡り歩いてきた。またあどけなさと精悍さの入り混じったマスクで女性からの人気も高い。
彼のキャリアにおける唯一の汚点はワールドカップ童貞であること――十代から名を連ねるオーストラリア代表として、まだ一度も世界を見ていない。
- 7 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月22日(木)18時20分35秒
- ノリカ・アルベルト・マンクーソ。ボカDF。背番号3。
アルゼンチン代表。94/98年ワールドカップ出場。
多くの大物選手がそうであるように、現役最後のキャリアを、自らを育んでくれたクラブで送る事を選んだ。
往年ほどのスピードは失われたが、むしろ選手としての老境を迎えるほどに味わい深いプレーができるようになってきた。
さまざまなポジションをこなすが、今日は石川の逆、左アウトサイドでの出場。
- 8 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月22日(木)18時24分58秒
- 保田圭。バイエルンDF。背番号15。
元日本代表。
ヘルタ・ベルリン、1FCケルンを経てバイエルンへ。
キャリアは地味であるがそのマンマークの強さは本物で、自分よりも大きなブンデスのストライカーたちを震え上がらせてきた。
ボカの矢口とは代表の同期。今日はベンチでのスタートとなり、もし途中出場すれば世界の頂点での日本人対決が見られる事になる。
- 9 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月22日(木)18時29分28秒
- コイントスに矢口とケインが出る。
矢口の勝ち。
ケインが風上のエンドを取った。
てっきり前半は風下を取って後半攻めに来るのかと思ったが。
この風は、簡単にはやまねえよ。
「矢口」
チャム・サヤカ・イチイ――市井紗耶香が声をかけてきた。
矢口とチャム、そしてベンチの保田。不思議な宿縁を持っている。
敵になったり、味方に戻ったり。
互いの健闘を祈り、ひじをぶつけあった。
- 10 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月22日(木)18時32分38秒
- 「矢口さん!」
石川に呼ばれる。キャプテンがいなければ円陣も組めない。
今日ぐらい、こいつが同じチームにいてくれてよかったと思う事は無い。
去年はなにがなんだか解らぬまま、MVPをもらってしまった。
今年は違う。車なんていらない。ただ勝利が欲しい。
円陣を組むボカ。肩を寄せるバイエルン。
「がんばっていきまー…」
「ショイ!」
キックオフ。
- 11 名前:モーヲタ家族 投稿日:2001年11月22日(木)19時38分11秒
- また、あなたの作品が読めるなんて・・・
短くてもいいので頑張って下さい。
期待してます。
- 12 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月22日(木)20時16分55秒
- 2分。両チーム最初のファウル。元ドイツ代表ステファン・エフェンベルクが矢口を倒したのだ。
もう、エッフェたら情熱的なんだから。
冗談はさておき、やはり矢口には厳しいマークでくるだろう。コロンビア代表MFマウリシオ・セルナとドイスボランチを組む矢口にいきなりのごあいさつだ。
さっさと始めようぜ。短く蹴り出した。
- 13 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月22日(木)20時46分29秒
- 7分。バイエルン下がり目の左ウイング、チャムがドリブルを仕掛ける。
石川がつく。石川はこの試合、チャムの徹底マークを命じられた。すれ違うように日本代表を去っていった大先輩。
オイラの舎弟が削りにいくからよろしくな、矢口にそう言われた。正直代表の時の印象はとんどないが、すごく伸びてきている聞いた。もし、チャムが市井のままだったら、エースの座を巡って戦うことにになっていただろう。
チャム、鋭く切り返した。追いすがる石川。シュートは右にそれた。
- 14 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月22日(木)21時12分48秒
- 9分。逆サイド、ノリカが持って上がる。
お下がり、下郎。
左足、サイドワインダー。地を這うミドルシュート。
キーパーの右腕が伸びた。思い切りよく弾き出し、咆吼する。
豪州代表オリバー・ケイン、金色に輝く14番は王者の印。
ボカの今日の課題は分かりきっている。クフォ、リザラズ、ロベルト・コバチ。多国籍軍の壁を乗り越え、現在世界屈指のゴールキーパーの守る城を落とすことができるのか。
- 15 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月22日(木)21時29分35秒
- チェスだな、致命的なミスを犯さずに序盤を終えた矢口はこの試合をボードゲームのようだと感じていた。
アルゼンチンではサッカーは喧嘩であると叩き込まれた。肘鉄頭突き、なんでもありあり。まさに格闘技だった。
バイエルンのサッカーももちろん激しい。だが統率された動きには機能美を感じる。マイスターの作り出す工芸品のような。
だから矢口は常にセルナとの距離を確認する。
とにかく、DFラインの前で相手をフリーにしない。ボカの最終ラインは昨年と大幅にメンバーが入れ替わってしまったのだ。
- 16 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月22日(木)22時17分15秒
- そしてこの風だ。長いボールの処理に戸惑い、コロンビアGKオスカル・コルドバが何度か声を荒げている。なんせただの放り込みが豪音を立ててゴールを襲うのだから。
南米は今真夏だ。過密日程のバイエルンよりは早くに日本入りできたが、それでもきつい。
「石川!」
ロングパスがぐぐっと戻された。どうすんべ。
「矢口さん!」
石川の声に我に帰る。チャムがきた。心底うれしそうな顔で。
サヤカ、このシチュエーションは、考えてなかったよ。
わざと右を空けて誘った。ワナと知りつつ飛び込むチャム。
スライディングが決まった。
- 17 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月22日(木)22時50分05秒
- 13分、石川がリザラズにつっかけられた。バンザイをして胸から落ちた。
よっしゃ。フリーキック。石川が飛び上がって立つ。
石川・ノリカ対ケイン。この試合の見どころの一つ。
そでまくりした太い腕を突き出し、壁を作っていくケイン。
石川とノリカ、小声でなにごとかをかわす。
決めちゃうよ。車、もらっちゃうよん。
ノリカ、左に小さく出す。石川が右足でぶっ叩いた。
思い切り、壁を越えた。
「バカタコ助」
矢口の飛びヒザ蹴りが炸裂した。
- 18 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月23日(金)02時03分50秒
- 出張お疲れ様です。
こちらの滞在は短期になりそうですね。
がんばってください。
- 19 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月23日(金)04時20分06秒
- 17分。チャムがノリカを削った。ボカサポーターからのブーイングが降り注ぐ。あたくしのおみ足をなんだと思ってるザマス、ノリカもチャムの手を払った。
チャム・サヤカ・イチイに関して言えば、アルゼンチン国内でも批判の分かれる選手だ。アルゼンチンの選手らしくない、というのだ。
それもそのはずで国内のマイナーチームに在籍した後日本へ。その後パラグアイやドイツを渡り歩いた。タンゴのリズムを吸収しきっていないのだ。
それゆえ、代表での立場も微妙なものに。負ければ真っ先に叩かれるのは彼女である。
- 20 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月23日(金)04時32分22秒
- 22分。バイエルンMFパウロ・セルジオが突破を試みる。
矢口がコースを読んだ。ベテランアタッカーが宙を舞う。
ハーグリーブスのミドルパス、ヤンカーのドリブル、ことごとくつぶした。
天使なんてあだ名がバカげて聞こえるほどその削りは鋭く荒々しい。
こちらはタンゴのリズムを存分に吸収した日本人。
かと思えばペナルティーエリアに侵入し、得意の右足でゴールを狙う。が、ケインの牙城を崩すには至らない。
「どうやって抜くよ、あれ」
石川に問いかける。おまえのフリーキックでなんとかしろよ、そう言っている。
- 21 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月23日(金)04時53分21秒
- 前半の前半を終え、ここまでのMVPはボカのドイスボランチとバイエルンのダブルディフェンシブハーフだ。矢口とセルナ、エフェンベルグとハーグリーブス。
逆に最も働けてないのがリケルメとチャム。アルゼンチン代表エースを狙う二人の対決は今のところ期待ハズレに終わっていた。
サイドでは石川がよく動いていたが、リザラズも時間の経過とともに石川のスピードに慣れ抑えられるように。
石川本人も次の移籍先は欧州と決めている。今日以上のプロモーションの場はちょっとない。
- 22 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月23日(金)12時37分42秒
- そしてケインだ。27分、29分と立て続けに襲ってきたFWデルガドのシュートを軽く止めた。こんな選手が一度もワールドカップに出ていないのだから、世界は広い。
もっともこの試合のリケルメとデルガドはいまひとつ調子が上がらない。昨年よりさらに冷え込む気候に苦しんでいるようだ。
30分、石川が左へサイドチェンジ。ノリカが追いついてセンタリング。クフォが頭でかき出す。
リケルメが後ろに流す。これも矢口、アウトにかけて流した。
ケインがパンチに逃げる。こぼれ球をデルガド。宇宙開発。
- 23 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月23日(金)12時48分15秒
- 33分バイエルン。エフェンベルグとのワンツーで抜け出したチャムがゴール前に駆け上がる。迷わずシュート。コースがない。コルドバの好守に遭う。
苦笑いするチャム。地味だがいいキーパーだ。それでも自分のところの守護神にいつまでも甘えていられない。
38分にはヤンカーへスルーパスを鮮やかに決めたが、セルナにその先でカットされる。
両チームとも、決定的な形を生み出すには、至っていない。
- 24 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月23日(金)15時10分10秒
- ロスタイム。ルックアップするチャム。わずかにボールから集中が殺がれた瞬間を矢口は逃さなかった。
スライディング。鮮やかにさらうとそのまま立ち上がってドリブル。間髪入れずにチップキックをゴール前に。
頭から飛びつく石川、パンチを固めるケイン。手が先。
助かった…胸をなで下すチャム。前半終了の笛が鳴る。
- 25 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月23日(金)17時20分16秒
- 選手達が引き上げる。森は林に木になる。
戻ってくるチャムの鼻を保田の指が弾く。
「しっかりせえよ」
「そんなこと言ったって…」
風上を、まるで生かせなかった。ハイボールの落下地点にことごとく矢口が先回りしていた。国立の風を味方につけたように。
「あれだよ、あれ」
保田が夜空を指さす。
あまりに有名な、アルゼンチン応援団、試合前の紙吹雪。
驚いたことに、その残がいがまだ空中に舞っているではないか。
- 26 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月23日(金)17時49分27秒
- 保田が今季で現役を退く決意を固めたとチャムは本人の口から聞いた。
ドイツの水が合わず、不振を極めていたチャムを救ってくれたのが保田だった。レギュラーを確約されていたケルンを捨て、ストレスの多いビッグクラブにやってきた保田。スタメンが取れないのを覚悟の上で。
それでもまだ働けるのに、日本に帰る事を選んだ。2002年、指導者として日の丸をつけるために。
「後半、あたしも行くからな。ケツ冷えちまった」
- 27 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月23日(金)18時29分46秒
- かたや、ボカ。
「石川、点狙えよ」
リケルメ、デルガドの飛車角が殺されている。チャンスをつかめるとすればそれ以外の選手になるだろう。
去年、矢口はレアルマドリードの中盤に振り回されるチームを立て直すために投入され、わけのわからないまま目の前のボールを軽く蹴ったら決まってしまった。で、MVPだ。
あれから、変われた。
使い勝手のよいハーフから、いっぱしの選手になれたと思う。
だから、石川にも決めてほしい。そして、変わってほしい。
時が満ちる。木が林に、森になる。
- 28 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月23日(金)18時51分31秒
- 開始18秒、石川に早速のごあいさつ。
「おひさ」
リザラズと交代した保田圭が手を差し出す。
後半は風下のバイエルン。なのに平気でファウルにいった保田。あんたのフリーキックじゃケインは抜けないよ、ということか。
ざけんな、おばん。石川が立ち上がる。怒りを込め、壁の右上を狙う。
ケインのトスアップに阻まれた。
- 29 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月23日(金)18時57分05秒
- ボール支配率はほぼ互角。ただ追い風にボールを乗せたボカに勢いが。
チャムが左サイドから何回かいいチャンスを作る。すぐ後ろで保田がバランスを取ってくれているので安心して攻め上がれるのだった。
ピサーロへのセンタリング。大きく風に戻されてGKの処理しにくいボールに。ヘディングシュートがネットに突き刺さる――と思いきやすでにゴールラインを割っていた。
- 30 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月23日(金)19時44分47秒
- そのコーナーキック。左コーナーに石川が向かう。
額をボールに押し付け、小さな祈りを捧げる石川。
やはりバイエルンの選手のほうが高い。ファーに緩やかなボールを上げるよりはニアに速く出したほうが効果的であろう。
だから、その裏をかく。
その意図を汲み取った矢口が、ミドルレンジからファーポストを狙って走る。
軽い助走。右足がしなう。
- 31 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月23日(金)19時53分21秒
- バイエルンGKオリバー・ケインは、すべてを勘に委ねてしまうような愚かなマネはしない。ちゃんと左足にも体重を残しておいた。
が、一つだけ頭に入ってはいなかった。
この、風。
高く蹴り上げたボールは、ゴール上空で吹き荒れる最も強い風をつかまえてしまったのである。
ボールは、矢口に通らなかった。
その前にケインの伸ばした腕の間を抜け、ゴールネットを揺らしてしまったからだ。
- 32 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月23日(金)19時58分44秒
- 最初石川はケインのオウンゴールかなと思った。だからなんでチームメイトがそんなに自分をバンバンはたくかが分からなかった。
だから自分の名が呼ばれ、コーナーキックが直接ゴールを割るのをオーロラビジョンで確認すると、ようやく目を見開いて絶叫した。
ミスキックだったというのに。
ボカジュニオルズ、先制。
- 33 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月23日(金)22時54分08秒
- 結果オーライ!
梨華ちゃんらしいやね
- 34 名前:No name 投稿日:2001年11月23日(金)22時56分53秒
- あいかわらずフェイクがお得意な(w
- 35 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月24日(土)03時40分45秒
- 1点取ったら後は用済み。守り固めに入るボカ。
バイエルンにはこの風が恨めしい。蹴っても蹴っても跳ね返される。
刻一刻となくなる時間。残り5分を切った。
石川がサイドでキープ。保田が体を入れて奪う。ノーファール。
左足、思い切り蹴り入れた。風に負けぬよう。
意図したものではなかったが、風に押し戻されたボールがゴルフのスピンショットのように急降下。コルドバが出るに出られない。
チャムが、矢口が全力疾走。チャムの右足。矢口の足、届かない。
石川の車が、消えた。
- 36 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月24日(土)03時52分03秒
- 延長でも決着はつかず、勝敗の行方はPK戦に。
先行ボカ、ノリカがいきなりケインの野性に止められた。
バイエルン、エフェンベルグがゲット。
ボカ、リケルメ登場。成功。
バイエルンはクフォが難無く決める。
ボカ三人目は石川。ケインの読みは当たった。ただシュートの勢いで石川が優った。指を弾いてゴール。
バイエルン、ヤンカー登場。コルドバの逆を突く。
後のないボカ、デルガドの右足に命運を託す。
すくい上げるようにしてかき出したケイン。立ち上がり、月に吠える。
ラストキッカーになるのか、チャム。
冷静に、決めた。
- 37 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月24日(土)04時03分25秒
- あちゃー…次に蹴るはずだった矢口が悲しげにそれを見ていた。本当、大舞台のPKにゃロクな思い出がない。
MVPにはチャムが選ばれた。
「最後あたしが決めて終わるはずだったんだけど」
保田が矢口の元へ。嘘つけ、PK、死ぬほど苦手なくせに。
「約束忘れてないよな」
「なんでも言う事を聞く、だべ? スパイクでもなめまっか?」
「ばっちいなあ。今度日本に帰る時、荷物運びやってもらう。もちろん全部自腹切って」
「マジで?!」
宴が終わり、獣たちがねぐらに帰る。
次の戦いに備え、牙を研ぐ。
- 38 名前:4126 投稿日:2001年11月24日(土)04時04分42秒
- 実験終了
- 39 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月24日(土)09時49分28秒
- 短編でも、いいね。楽しませていただきました。青板は、どうなるのかな。
期待を裏切ってもらうよう、応援してます。
- 40 名前:名無し 投稿日:2001年11月27日(火)02時45分12秒
- コルドバ、PKの鬼だから、PKには弱いオリバー君が勝てると思えないよ(w
オリバー君、CLの決勝戦でのイメージが強いけど、普段はPK下手で有名。
ゲルマン魂が目覚めたからナンとかなったけど、普段なら負けてたよ。
- 41 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月27日(火)19時07分15秒
- コルドバって94年アメリカでのヘタレぶりが頭にあんのよね。というわけでトヨタカップ見てますか?
- 42 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月27日(火)19時49分31秒
- 見てるよ。ケイン、じゃなかったカーンマンセー!
- 43 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月27日(火)20時04分27秒
- デルガド退場かよ! でもあのダイビングは見破られるわさ。
- 44 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月27日(火)20時12分42秒
- あとバイエルンの控えにチャム(ティアム)がいるね。出番があるといいな。
- 45 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月27日(火)21時49分11秒
- ちゃむ、れた!
- 46 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月27日(火)22時00分09秒
- リケルメ、泣いてるよ・・・
- 47 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月28日(水)00時01分01秒
- やはりデルガドがA級戦犯って言ってもうてええんやろうか。難しいけどね。
- 48 名前:名無し 投稿日:2001年11月29日(木)01時34分42秒
- @ @
( ‘д‘)<>>47、イヤ、A級戦犯は審判ですよ。デルガドに突っかかるカーンにはナンのお咎めないんは
ヒドイと思うんよ。最初からアルゼンチンに対してかなり厳しく見てましたし。
あのシーンに関して言えばカーンの方が一枚上手やったと思います。
一番最初の決定的な場面(カーンが飛び出しスライディングをしたシーン)以降、デルガドは
明らかにおかしかったですもん。だからカードが出たシーンはデルガドのダイブじゃなくて
デルガドがカーンを避けただけ――そう捉えることも出来ると思います。
ヤッパ役者が違いましたよ。
- 49 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月29日(木)13時20分52秒
- そうか、そういう見方もあるのか。
しかしカーンは冷静ですね。
氾濫する金返せ! という意見はもっともだと思うんですが(確かにあれを金払って見た人は噴飯ものだろうけど)
それでもJの「金返せ!」とは全然違う試合でした。
ボカのあの吉本新喜劇のようなベッタベタの時間稼ぎは、日本じゃおがめないでしょうからね。
- 50 名前:名無し 投稿日:2001年11月29日(木)22時58分43秒
- @ @
( ‘д‘)<確かにストレスのたまる試合やったかもしれませんけど、見るどころは沢山
ありましたよ。前半のリケルメは良かったですし、後半以降も、こねくり回しかたも
堂に入っていて、オモロかったですよ。「まだもつか!?」っちゅーつっこみが
ウチの周りから入ってましたし。もし、海外に移籍して球離れが良くなれたら、
確実に違う世界が見れますね。
- 51 名前:名無し 投稿日:2001年11月29日(木)23時18分06秒
- ( `.∀´)<湯浅さんのHPで、デルガドの退場シーンを解説してるんだけど
それによると@確実に体を入れて、シュートコースを消している
A後ろからクフォーがフォローに走ってきている。などから、カーンは無理をしなくても良いと
判断したんじゃないかと推理してるわ!それ読んでアタシは、カーンが短時間で
ゲームと相手の心を完全に支配しきったことに感動したわ!あぁ、真琴にもそういうGKに
なってもらいたかったんだけどねぇ・・・
(〜^◇^〜)<もう過去形かよ! 死んだんじゃないんだから過去形はないだろ過去形は!
( `.∀´)<そうよね、真琴はこうしてアタシ達のなかでシッカリと・・・
(〜^◇^〜)<だから死んでないだろ!
- 52 名前:四壱弐六 投稿日:2001年11月30日(金)07時14分04秒
- …ダーヤスマンセー。
- 53 名前:4126 投稿日:2001年12月16日(日)14時15分00秒
- エークス!
- 54 名前:ななし 投稿日:2001年12月16日(日)20時15分47秒
- ここで感想書くの?
- 55 名前:4126 投稿日:2001年12月16日(日)21時10分00秒
- 金メダルという快挙を成し遂げて帰国したサッカー日本代表チームを待ち受けていたのはテレビ、ラジオ、雑誌等あらゆる触媒からの取材のマラソンだった。
矢口は石川は早々にアルゼンチンへ向かった。彼の国を打ち破った二人にしばらくは辛い日が続くのだろうが、それでもまるで国民的アイドルのような扱いからは逃げたかった。
他の海外組も同じ。
だが取材を受けるメンツはたいてい決まっている。
泡沫のメンバーには、すぐ日常が戻ってきた。
それでも、金メダルの力は偉大である。
今まで語られることのなかった名も無き星々にまで、脚光を当てられることになったのだから。
- 56 名前:オープニング 投稿日:2001年12月16日(日)22時03分52秒
- エーム!
「…石川打つか。打たない。右にはたく。矢口センタリング! 後藤! 押し込んだ! 金メダル! ニッポン、前人未到の金メダル!」
(ナレーション・田口トゥモロー)
熱狂のうちに幕を閉じた、シドニーオリンピック。
サッカーではアルゼンチンを破り、みごと金メダル。
日本サッカー界、史上初の快挙とうたわれた。
(表彰式の風景。右端にいる二人にスポットが当たる)
しかしこのちょうど一年前、日本サッカーはすでに、世界の頂点に立っていた。
その時のメンバー三人が、シドニーでも、戦った。
その三人、一人の男、そして、名も無き女たちの、知られざる戦いが、そこにはあった。
- 57 名前:タイトル 投稿日:2001年12月16日(日)22時22分14秒
- プロジェクトM 〜妥協者たち〜
(中島みゆき「地上の星」が流れる)
1999年(画面・柴田あゆみを先頭にした入場行進)
知られざる 金字塔(画面・日の丸を口ずさむ木村アヤカ)
ミイラと呼ばれた男(画面・戦況を見つめる寺田農監督)
メキシコの呪縛(画面・セピア色の写真、その右端で笑う寺田)
消滅したチーム(画面・元日の天皇杯でゴールを決めた柴田)
プロとアマの確執(画面・シドニーの試合を見守る眞鍋かをり)
- 58 名前:タイトル 投稿日:2001年12月16日(日)22時22分56秒
- 問題児の加入(画面・ゴール前で指示を出す小川麻琴)
キャプテンのリタイア(画面・松葉杖をついた酒井美紀)
欲しいのは(画面・ネットを揺らす柴田のフリーキック)
黄金色のメダル(画面・敵陣を切り裂くアヤカのドリブル)
宿敵 韓国を打ち破れ(画面・韓国のヘッドを弾き出す小川のセービング)
♪地上にある星を 誰も覚えていない みんな空ばかり見てる
学生の反乱 もうひとつの金
〜北京ユニバーシアード大会 日本サッカーの快挙〜
- 59 名前:スタジオ 投稿日:2001年12月16日(日)22時39分49秒
- キャスター二人の前に飾られた二つの金メダル
窪ズン子「これは、金メダルですね」
肉井マサピコ「はい。そうなんですが、違いが分かりますか?」
窪「どっちも金メダルですが…デザインが違いますね」
肉井「ええ。右がシドニーオリンピックの金メダルです」
窪「見てました。もう、テレビの前で大騒ぎでしたよ」
肉井「そしてこちら、左の一回り小さいほうが、今日の主人公たちが北京でもらった、金メダルです」
- 60 名前:スタジオ 投稿日:2001年12月16日(日)22時48分19秒
- セットの写真がぐるりと回る。
肉「彼女たちが、昨年の北京ユニバーシアードの日本代表メンバーです」
窪「この選手わかります。10番の、柴田選手。これは木村…アヤカ選手のほうですね。それからキーパーの小川選手」
肉「そうです。この三人がチームの中心であり、そしてシドニーでも金メダルを取った歓喜のイレブンに名を連ねました。今夜のプロジェクトM、その忘れられた戦士たちの戦いに迫ります」
暗転。
- 61 名前:ミイラと呼ばれた男 投稿日:2001年12月16日(日)22時55分38秒
- 昨年のスポーツ新聞見出し。
サッカー欄にでかでかと
平家「ワールドユース獲る!」
今回のシドニー五輪チームの母体であり、監督となった平家みちよの初采配を大きく取り上げた記事である。
その下方に、小さく載った試合結果がある。
サッカー 日本「金」
ユニバーシアード決勝(北京)
日本2−0イタリア
(日本は初優勝)
三行広告のようなそれこそ、彼女たちの偉業を日本に伝えるすべてだった。
この結果についてテレビのサッカー番組でコメントを求められた在日ブラジル人のコメンテーターはこう答えた。
「まあ、学生の大会ですからね」
鼻で、笑った。
- 62 名前:ミイラと呼ばれた男 投稿日:2001年12月16日(日)23時01分23秒
- 早稲田大学サッカー部練習場。
学生の動きを見守るロマンスグレーの男。
「おら、もっとキビキビやれ!」
寺田農(みのり)、日本サッカー界に、初めての金メダルをもたらした、男。
以前は、鉄拳制裁が当たり前で通した、筋金入りの体育会系。
「まあ、昔と今は違いますからね。特に女の子は手を上げてもダメ。ディシプリンを築き、コミュニケーションを取って、モチベーションを高めないと」
それでも、いざという時は、握り固めた拳が容赦なく、飛んだ。
- 63 名前:ミイラと呼ばれた男 投稿日:2001年12月16日(日)23時05分45秒
- 現役時代のあだ名は、ミイラ。
蹴られても、倒されても、向かっていく、不死身のフルバック。
ミイラと呼ばれた男には、甥がいる。
日本代表の監督もつとめた、寺田光男だ。
「ほんっと、めッチャ、怖かったですよ。ちょっとしたことですぐにガーンでしたもん。鬼みたいでした。あんな風にはなれんなと思って、僕は我流で通しました」
ミイラには、過去がある。
メキシコ五輪の銅メダリストという、燦然と輝く過去だ。
- 64 名前:メキシコの呪縛 投稿日:2001年12月16日(日)23時16分28秒
- 映像・ゴールを決め、ガッツポーズを作る釜本邦茂。
日本サッカー界の不滅の金字塔、アステカの奇跡と呼ばれた銅メダル。
この活躍を原動力に、Jリーグの前身となる日本サッカーリーグが、設立される。
当時早大四年だった寺田は、このチームから、唯一、実業団へは進まなかった。
- 65 名前:メキシコの呪縛 投稿日:2001年12月16日(日)23時17分11秒
- 「ボクはサッカーも好きだったけど、本を読むのも好きだった。就職なんかしたら本が読めなくなる。今でこそ加藤(久・元早大助教授)君のような人もいるけど、当時は無理だった。サッカーだけさせてくれる読売クラブ(現・東京ヴェルディ1969)みたいなチームがもっと早くできてたら、とは思うけどね」
寺田は大学院へと進み、助教授業の傍ら、後輩たちにサッカーを教えた。
学生たちがドリブルしても、彼を抜くことは、できなかった。
- 66 名前:メキシコの呪縛 投稿日:2001年12月16日(日)23時23分26秒
- 「もしかしたら、あそこで銅なんか取らないほうがよかったのかもしれないな」
引いた位置から、その後の日本サッカーを見てきた寺田は、言う。
「過去の栄光にすがるという、最大の愚行を犯してしまった。後続を育てることを怠ってしまった。今のサッカー人気だって、メキシコじゃなく、サッカー漫画がもたらしたものだろう」
日本サッカーは、長い低迷期に入った。
メキシコワールドカップ、バルセロナ五輪、あと一歩で涙をのんだ。
Jリーグ開幕。ドーハの悲劇。夢物語は現実に近づいた。
そして、奇跡のイレブンたちが、夢を現実にした。
日本がフランスの地を踏んだその年、寺田は、北京で開催される学生の祭典、ユニバーシアード代表監督就任を、打診された。
- 67 名前:メキシコの呪縛 投稿日:2001年12月16日(日)23時46分03秒
- 「まるでゴミタメだな。そう言いました。ゴミタメですよ。そりゃカチンときますって」
青山学院大学監督、ユニバーシアード代表で寺田の補佐をつとめた椎名桔平は、寺田が最初に言った言葉を忘れてはいない。
「キッペイの怒りは分かる。けどゴミタメはゴミタメだ」
集まった選手のほとんどは、プロを目指し、サッカーにその青春を捧げてきた。
しかし、Jリーグというふるいにかけられ、ふるい落とされてきた者たちだ。
どこかに、劣等感が、あった。
しかし、その劣等生の中にも、中心となる選手は、いた。
亜細亜大学のゴールキーパー、このチームのキャプテン、酒井美紀である。
- 68 名前:メキシコの呪縛 投稿日:2001年12月17日(月)00時04分25秒
- 清水商業出身、国体の静岡県選抜でチームメートだった浦和レッズの吉澤ひとみは、語る。
「最初からプロでしたね。子どもの中に一人だけ大人がいるみたいで。よく叱られましたよ。でも怒り方がお母さんみたいで、憎めない人でした」
古豪清水東高校では生徒会長もつとめた。
が、プロになるには足りないものがあった。身長、だった。
その酒井も、最初は寺田に強い反発を覚えている。
「メキシコ、イコール嫌な奴ですよ(笑)ジンマシンが出そうで。でも自分が不満タラタラじゃチームがまとまらないですから、素直に従いました」
寺田もまた、メキシコの呪縛に、縛られていた。
- 69 名前:メキシコの呪縛 投稿日:2001年12月17日(月)00時18分15秒
- 寺田は酒井に強い信頼を置いていた。
が、まだ足りなかった。
「サッカーの仕事は大きく分けて三つある。潰し、繋ぎ、極め。それぞれに要となる選手がいるチームは強い。メキシコなら俺、森、ガマ。今の代表なら後藤、矢口、安倍。潰しは酒井がいる。けど繋ぎと極めがいない。このチームでは、勝てない」
寺田は全国の一部、二部の大学リーグの試合を数多く観戦した。
その間、本業である早稲田の指導はおろそかになった。
しかし、要となる選手は、見つからない。
寺田に、決断の時が迫っていた。
チームの運命を決めた英断は、彼の独断で下された。
- 70 名前:スタジオ 投稿日:2001年12月17日(月)00時52分47秒
- 窪「今日お一人目のスタジオゲストは…私たちMHKの山本山アナウンサーです」
山本山ピロシキアナウンサー、登場。
山「どうも、でいいんでしょうか?」
肉「いえいえ。山本山アナは、MHKのスポーツ中継、特にサッカー中継では第一人者と呼ばれていますが」
山「いえいえ」
窪「最も印象に残っている中継をひとつ上げろと言われたら」
山「…元日の天皇杯決勝戦、横浜フリューゲルスの決勝戦です。やはり」
肉「山本山アナウンサーと、これから登場する選手との間には、不思議な宿縁があります。天皇杯、ユニバーシアード、そしてシドニー五輪。山本山アナが実況した決勝戦で、この選手は一度も負けていないのです」
- 71 名前:消滅したチーム 投稿日:2001年12月17日(月)20時53分06秒
- 私たちは忘れないでしょう、横浜フリューゲルスという非常に強いチームがあったことを
東京国立競技場、空は今でもまだ、横浜フリューゲルスのブルーに染まっています
前の年の暮れ、日本サッカー界を激震が襲った。
全日空が佐藤工業との共同出資で運営するプロサッカーチームからの撤退を表明した。
これにより、Jリーグ開幕当初の加盟チームだった横浜フリューゲルスは、姿を消すことになった。
ある者はうろたえ、ある者は悲しみに暮れた。
しかし、全員十代の、このチームをこよなく愛する四人の少女が、崩れかけたフリューゲルスを救った。
サポーターたちは四人をこう呼び、最後の夢を託した。
四枚の翼、と。
- 72 名前:消滅したチーム 投稿日:2001年12月17日(月)21時37分22秒
- ショートコーナーからのクロス。頭でつないだボールを左足でサンフレッチェゴールに突き刺す柴田
劇的な幕切れだった。
四枚の翼は、最後の大会になった天皇杯で、優勝という最高の結果を出した。
そして、これをもって、横浜フリューゲルスは解散。
映画のクライマックスのような幕切れに、人々は、酔った。
左の翼と呼ばれたゲームメーカー、柴田あゆみは、横浜フリューゲルスジュニアユース一期生。
誰よりも、フリューゲルスへの思いが強く、フリューゲルスサポーターを中心とする有志が立ち上げたチーム、横浜FCに、入団した。
- 73 名前:消滅したチーム 投稿日:2001年12月17日(月)21時46分43秒
- だが、フリューゲルス再興という大事業に着手した柴田を待ち受けていたのは、現実という名の荒波。
練習場の確保すらままならぬ、流浪の民のような練習。
考えがコロコロ変わる首脳陣。
アマチュアリーグからの出発、荒っぽいタックル。
ユース日本代表、神奈川大学の学生としての多忙な日々。
そんな柴田を決定的に打ちのめしたのは、そんな生活が二年目を終えようとしていた時の出来事。
- 74 名前:消滅したチーム 投稿日:2001年12月17日(月)22時04分14秒
- 柴田は、買ったばかりのマウンテンバイクで横浜市内を走っていた。
苦しいクラブ経営への配慮から、アマチュア契約を結んでいた柴田。
必死にやりくりしながら、ようやく買った、念願のマウンテンバイク。
JFLから、J2リーグへ、チームを昇格させた自分へのごほうびだった。
クラクションが鳴り、後ろを振り向く。
かつての同僚が、外国製の乗用車に乗っていた。
自分にプレッシャーをかけるためだと言って、笑った。
ピカピカに輝いて見えたはずのマウンテンバイクが、みすぼらしく見えた。
そう感じる自分の心が、さらにみじめに思えた。
- 75 名前:消滅したチーム 投稿日:2001年12月17日(月)22時21分56秒
- 寺田が白羽の矢を立てたのは、プロチームとアマチュアチームと契約を結び、なおかつ現役の大学生でもある柴田だった。
柴田あゆみには、ユニバーシアード代表チームに加入する資格が、ある。
卓越したゲームメーカーであり、左足のフリーキックを武器に得点力もある。中盤の要、つなぎ役として申し分ない。
考えさせる時間を与えてはいけない。あえて事前に連絡を取らず、直接、大学へ乗り込んでいった。
柴田は、戸惑った。彼女は大学のサッカー部には所属していない。
それでも、寺田は強引に誘った。きみの高いプロ意識が、必要なんだ。
プロという言葉に、柴田は落ちた。
横浜FC、オリンピック代表に続き、三つ目のユニフォームに袖を通した。
- 76 名前:消滅したチーム 投稿日:2001年12月17日(月)22時30分26秒
- 柴田のユニバーシアード初練習は、横浜FCのナイトゲームの翌日のこと。
疲れていた柴田は寝過ごし、練習に20分、遅刻した。
寺田の鉄拳が、炸裂した。
あまりのことに、柴田の精神は、一時的に破綻。荷物をまとめて、帰ろうとした。
それを止めたのが、酒井だった。
「プロっていっても情けないねって、言ってやりました。一発殴るのは監督のあいさつみたいなものだったし」
柴田は、思いとどまった。
同僚たちの顔に泥を塗るのが、嫌だった。
- 77 名前:消滅したチーム 投稿日:2001年12月17日(月)23時12分56秒
- ユニバーシアードチームにのめり込んでいく寺田に、落とし穴が待っていた。
本来監督すべき早大サッカー部が、関東大学リーグ2部降格の瀬戸際に立たされていた。
自分たちの教え子の指導を怠ってきた寺田に、OBの目は、冷たかった。
入れ替え戦の相手は、躍進目覚しい、上智大学。
エース広末涼子を出場停止で欠くとはいえ、まさか昨年まで都の2部のお荷物だった上智に負けるはずはない、そんな楽観ムードが、ぬぐえなかった。
寺田も、長くチームを空けていた負い目からか、あまり厳しいことを、選手に言えなかった。
それが、甘い考えであると思い知らされるに、三十分もかからなかった。
- 78 名前:消滅したチーム 投稿日:2001年12月17日(月)23時27分05秒
- 上智大学のエース、木村アヤカは高校時代読売ユースに所属。
しかしトップチームに上がることはできず、しばらく、サッカーすら忘れる日々が続いていた。
忘れていた情熱を取り戻したのは、ハワイへの観光気分での留学生活。
日本人を母に持つ、一人の少女との出会い。
ミカ・タレッサ・トッド。日本人となって、日本代表に名を連ねた。
負けられない――木村の、くすぶっていた情熱が、大きく燃え上がった。
結果は、5−2。早大は上智に、いや、木村に敗れた。
- 79 名前:消滅したチーム 投稿日:2001年12月17日(月)23時33分15秒
- この時、敗戦の将である寺田は、傷ついた教え子を慰めるより先に、上智大学のストライカーに寄っていった。
「私はいろんな会場に試合を運んだつもりでいた。全国、津々浦々。しかし都のリーグとは考えなかった。木村の持っていたゴールへの貪欲な姿。まだ足りない、足りないという飢え、これがユニバーのストライカーには欠けていた」
寺田は、最後の一人を、見つけた。
だがその寺田に対する、OBの目は、辛らつを極めていった。
自らの立場をわきまえない愚か者、いっそ監督などやめてしまえ。
だがその寺田をかばった者があった。
スタンドで試合を見守ったエース、広末だった。
- 80 名前:消滅したチーム 投稿日:2001年12月17日(月)23時53分18秒
- 破れたジーンズにトレーナー姿の広末、椅子の上で膝を抱えている。ガムをかんでいる。
「てゆっか、あの人にやめられたらまずかったんですよね。授業出なくても練習と試合にさえ出てりゃ卒業させてくれるってから早稲田入ったのに。勉強嫌いだし、授業に出てまで卒業したいなんて思わなかったですよ、あの頃は。今は違いますけどね、ビミョーに」
中学時代に四国のトレセンメンバー入り、中学を卒業すると横浜マリノス(当時)ユースへ。
オールラウンダーの点取り屋として鳴らすも、当時、マリノスは、FWの人材が、余っていた。
- 81 名前:プロとアマの確執 投稿日:2001年12月18日(火)00時04分32秒
- こうして、柴田と木村、二人の異端児が、ユニバーシアード代表の門を叩く。
しかし、二人は決して、歓迎ムードをもって迎え入れられたわけではなかった。
広末と同じ四国選抜に選ばれ、南宇和高校時代「愛媛の頭脳」と恐れられたディフェンダーの眞鍋かをりは、特に柴田の存在を、うとましく感じていた。
眞鍋、きっちりとしたスーツ姿。質問者のほうをしっかり見据え、就職師試験を受ける学生のようなハキハキとした受け答え。ナチュラルメーク。
「…プロのチームの人が、なんで、自分たち学生の中に入って来れるんだろうって。正直言って、その神経を疑ってしまいました。反則じゃないかって、そう思いませんか?」
- 82 名前:プロとアマの確執 投稿日:2001年12月18日(火)00時13分00秒
- そう語る眞鍋、野望があった。
そのために、一般入試で難関・横浜国立大学を受験した。
「スポーツキャスターになりたいんです。プロサッカー選手になれないのは、高校の時思い知りましたから。それでも表舞台でサッカーに、スポーツに携っていたかった。誤解を恐れないでいってしまえば、ユニバーシアードも、セールスポイントのひとつになるって。英検や運転免許のような資格と同じように、サッカーで大学選抜になってましたって言えば、見る目は違いますからね」
柴田には、そんな真鍋が信じられなかった。
自分のすべてである、サッカー。
そのサッカーを、立身出世のための武器にしようとする真鍋が。
サッカーに対し、柴田はあまりにも、潔癖すぎた。
- 83 名前:プロとアマの確執 投稿日:2001年12月18日(火)00時19分42秒
- チームは分裂した。
バラバラになってしまった。
美学とも言うべき自らの信念を押し通そうとする柴田。
どこか一歩引いて、チームの輪に加わろうとしない木村。
なんとかまとめようとする酒井の苦悩は続いた。
柱となる選手を置くことで、チームを固めようとした寺田の決断は、失敗したかに思えた。
- 84 名前:問題児の加入 投稿日:2001年12月18日(火)00時24分24秒
- 年が明けた。
1999年、ユニバーシアード開催の年の春季リーグ。
事件は起こった。
それぞれ代表候補に名を連ねるキーパーがいる、筑波大学と明治大学の試合。
カードが乱れ飛ぶ、荒れた試合。試合を充分コントロールしきれなかった主審にも、責任はあった。
乱闘が始まった。
二人のキーパーは、友人同士。
必死になって仲間を止めた。
筑波大学、明治大学、ともに、一年間の対外試合禁止。
もちろん、二人のキーパーのユニバーシアード大会出場は、消えた。
- 85 名前:問題児の加入 投稿日:2001年12月18日(火)00時31分24秒
- 「ロックバンドのメンバーの一人が覚せい剤で捕まる。すると残りのメンバーも活動ができなくなる。おかしいと思わないか? あの二人は必死に止めたんだ。それでも連帯責任というなら学校単位で責任をとればいい。なんで個人レベルで出場するユニバーシアードに出られなくなるんだ?」
寺田の意見は、通らなかった。
次の日から、キーパー探しが始まる。
このチームの正キーパーは酒井。しかし、万が一に備え、実力的に遜色ないサブキーパーを用意する必要に迫られた。
寺田のお眼鏡にかなったのはただ一人。
この春入学したてながら順天堂大学のゴールを守る、不適な面構えの、無名のキーパーだった。
プロジェクト、エーム…
- 86 名前:スタジオ 投稿日:2001年12月18日(火)00時56分57秒
- 窪「では本日、お二人目のゲストです。北京ユニバーシアード、シドニー五輪金メダリスト、現在はポルトガルリーグで活躍される、柴田あゆみ選手です」
ささやかな拍手に迎えられ、パンツルックの柴田、登場。
山「山本山です」
柴「あ、はじめまして。いつもお世話になっています」
山「いえいえ。それより、私、シドニーの時、言ってしまいました」
柴「仰ってましたね、思い切り(含み笑い)」
山「かつてない偉業というつもりで前人未到という表現を使ったのですが、大嘘になってしまいました(冷や汗)」
- 87 名前:スタジオ 投稿日:2001年12月18日(火)01時00分49秒
- 肉「柴田選手はオリンピックとユニバーシアード、二足のワラジをはくことになったわけですが、不安はありませんでしたか?」
柴「…人に来てくれと言われることは、幸せなことですから。不安がなかったといえば嘘ですけど」
肉「でもその努力が実って二つの金メダルを獲得された」
目の前の二つの金メダルがクローズアップされる。
肉「オリンピックとユニバーシアードの両方で金メダルを取ったケースは、これが初めてだそうですね」
柴「ええ」
- 88 名前:スタジオ 投稿日:2001年12月18日(火)01時05分15秒
- 肉「もう一人のダブルゴールドメダリストである木村選手とは?」
柴「Jリーグのユースの試合で何度か当たったことはありました。向こうがヴェルディの右、こっちがフリエの左。速いし、うまいし、嫌な奴でしたよ」
肉「その嫌な奴が今度は味方になった。心強かったんじゃないですか」
柴「話が通じるのが、木村と、酒井だけでしたから…プロに行った奴と話してて、ズレって感じるんです。それがアマの選手との間にもあって、正直、自分がどっちなのかわからなくなりました」
窪「そしてもう一人、三人目のダブルゴールドホルダーが、登場します」
- 89 名前:スタジオ 投稿日:2001年12月18日(火)07時18分39秒
- 寺田「とにかくね、顔が気に入った。現代人の食生活をしてるとは思えない。野生児の顔ですよ」
眞鍋「嫌な奴が来たって思いましたね。順大の小川っていったら、乱暴者の代名詞でしたから。なんであんな奴まで呼んだんだって」
酒井「まるで山から出てきたみたいな風貌で。そう本人に言ったら、山じゃない、海から来たって真顔で言われたのは笑っちゃいました」
順天堂大学の一年生ゴールキーパーは、まったくの無名だった。
全国大会はおろか、選抜歴も無い、どこにでもいる選手だった。
入学当初、出番を与えられるとそのケガを恐れないプレースタイルで、並み居るストライカーを震え上がらせた。
小川麻琴、まさに、隠れた才能だった。
- 90 名前:問題児の加入 投稿日:2001年12月18日(火)07時24分28秒
- 「なんで大学に入ったかって? …他に行くとこがなかったから」
「暴れてやろうとか、そんな気は全然なくって」
「…ディズニーランド、行きたかったんですよ。で、同じ沿線にある学校を受けた。そしたらそこだけ受かっちゃった」
順天堂大学で一般入試で入った選手がいきなりレギュラーを奪うのは、極めて異例のこと。
それでも、大したことじゃないと小川は言う。
「運がよかった。謙遜じゃなくて。あの時は、本当に運があった。自分でも驚くくらいにね」
そう小川が言うのは、初参加の際、彼女が起こした事件が理由だった。
- 91 名前:問題児の加入 投稿日:2001年12月18日(火)07時28分13秒
- 発端は、コーチである椎名の些細な言葉だった。
なんて学校でやってたんだ?
椎名は、常に裸で選手に向き合う。この時もそうしたに過ぎなかった。
余計なお世話だと、小川は無視した。
「誰も知らない学校ですよ。そしたら、ふーん、て、鼻で笑うに決まってるんだ。仲間バカにされたみたいで、むかついた」
小川の横柄な態度に、椎名の張り手が飛んだ。彼もまた、そうした中で育ってきた男だった。
小川は、椎名を、殴り返した。
- 92 名前:問題児の加入 投稿日:2001年12月18日(火)07時33分19秒
- 小川の巡る処分を、選手全員で検討した。
もし満場一致で小川を否決するのであれば、彼女は、チームを追放される。
採決がなされた。
追放に、反対する者はたった一人。
キャプテン、同じゴールキーパーの、酒井だった。
「人間性とかなんてわかんないですよ。悪い噂もずいぶんあるやつだったし。でも、キーパーとしての力量はすばらしかった。ああいうキーパーがベンチにいると、ケガを恐れることなく、存分に動けるんですよ」
「助かった、もうそれだけですよ。酒井さんには、感謝してます」
小川は、寸でのところで、追放を免れた。
だがチームは、不協和音を打ち消せないまま、決戦の地、北京へと、向かった。
- 93 名前:キャプテンのリタイア 投稿日:2001年12月18日(火)21時14分30秒
- 小川には、七つ離れた従姉がいる。
日本代表の守りの要であった、保田圭。
その存在が、小川には、重荷であった。
保田圭(現・ジュビロ磐田ユース監督)
「あいつが中学三年生の時、私の母校の市立船橋高校に入らないかって誘ったことがあるんです。あっさり断られました。あ、この子はとことんサッカーをやっていくって気はないんだ、その時はそう思いました。もちろんそれはそれで尊重したかったんだけど、正直、かなりガッカリはしましたよね」
「冗談じゃない、って思いましたね。イチフナになんか入ったら比較されるだけ。有名な学校に入ってたらどこでも同じ。あの保田の、って言われるのは絶対嫌だった」
小川は、従姉の存在を、ひた隠しに、した。
- 94 名前:キャプテンのリタイア 投稿日:2001年12月18日(火)21時55分09秒
- 酒井は、違った。
北京の宿舎で、同室だった酒井に、小川はそのことを打ち明けた。
「ああ、そうなんだ、いい従姉がいるね。それだけです。こんな人もいるんだって、驚いた」
酒井は、小川を色眼鏡なしで見ていた。
小川は、酒井を、実の姉のように、慕った。
しかし、チームは相変わらずまとまらなかった。
依然、溝が、消えなかった。
- 95 名前:キャプテンのリタイア 投稿日:2001年12月18日(火)22時15分27秒
- 柴田「でもそれって当然なんですよね。18人いれば、そこには18通りの考え方がある。ユースやオリンピックみたいに、考えが統制されてることが前提になってる世界のほうがむしろ異常なのかもしれない」
眞鍋「柴田みたいに純粋な気持ちでサッカーやってる人間を見てると、自分がすごく不純な人間に思えてくるんですよ。いつからこんなに打算的な人間になっちゃったのかなって、すごく悲しくなったし、それを認めるのが嫌で反発を感じてたんでしょうね」
それでも、なかなか、歩み寄りがなされることはなかった。
開戦前夜、あの夜の出来事の前までは。
- 96 名前:キャプテンのリタイア 投稿日:2001年12月18日(火)22時39分14秒
- 午後八時。
寺田と椎名の部屋の電話が鳴る。
椎名が取った。
酒井だった。
風呂場で転んだ、起き上がれないからすぐ来てくれ。
数分後、椎名に抱えられて部屋を出る半裸の酒井と、酒井に言われてフロントまで新聞を買いに行っていた小川が廊下ですれ違った。
英字新聞が、小川の手から、落ちた。
長い夜が、始まった。
- 97 名前:キャプテンのリタイア 投稿日:2001年12月18日(火)23時00分44秒
- 午後11時。
誰一人として眠らずに待っていた酒井は、左足に、ギプスをはめた姿で戻ってきた。
誰もが、かける言葉を見つけられない。
ごめんなさい、そう言って、酒井が泣き出した。
つられるようにして、小川が泣き出した。
運命を呪いたい気持ちより先に、詫びを入れてきた酒井の気持ちが、痛ましかった。
- 98 名前:キャプテンのリタイア 投稿日:2001年12月18日(火)23時58分12秒
- 全員が涙する中、一人腕を組み、事態をじっと静観する者があった。
木村アヤカだった。
「とても危険な光景に見えた…団結とファッショは時に似ている…冷静にならなければと思った」
それでも、酒井が言った。
試合に出たいと。
寺田が怒鳴りつけた。
現役時代、満身創痍で、体中に包帯を巻きつけて試合に臨み、ミイラと呼ばれた男。
同じ道を、教え子には、歩ませなかった。
- 99 名前:キャプテンのリタイア 投稿日:2001年12月19日(水)00時03分11秒
- 時間が、なかった。
試合は、明日に押し迫っていた。
小川が、ゴールマウスに立つことになった。
柴田が、新しいキャプテンに選ばれた。
真鍋は、言う。
「酒井さんは本当にキャプテンなんだなと思いました。あのケガがなかったら、きっと、バラバラの気持ちで、大会に臨んでいたと思います」
体の傷は、時が経てば癒える。
しかし、友の負った心の傷を癒せるものは、黄金色に輝くメダル以外にありえない。
ユニバーシアード代表は、ひとつになった。
- 100 名前:運命の日韓戦 投稿日:2001年12月19日(水)04時42分48秒
- 日本大学選抜の快進撃が始まった。
これが、あのバラバラだったチームかと、寺田や椎名は目を見張った。
小川の体を張ったセーブ、眞鍋の鋭い読みが相手にチャンスすら与えない。
柴田が持ち前のテクニックでゲームを支配、広末と木村のツートップを走らせる。
緒戦のアメリカ戦こそ引き分けたものの、その後はすべて無失点勝利。
気が付けば、ベスト4にまでたどり着いていた。
しかし、そこが最大の難関。
現役の代表選手四人を擁する、韓国大学選抜が、待ち受けていた。
- 101 名前:運命の日韓戦 投稿日:2001年12月19日(水)20時32分08秒
- 韓国は二大名門、高麗大学と延世大学の連合軍。
この前の年の初め、韓国と北朝鮮の合同チームはワールドカップ予選を日本と戦い、敗れている。
その時の選手が、この日のチームには四人もいた。
総合的な実力でも、日本を大きく上回る。
今度こそは、の思いが強かった。
日本チームには、ユース代表経歴の選手が何人かいる。
アジアユースで戦った時は、韓国に苦杯を飲まされた。
韓国コンプレックスは、まだ死語ではなかった。
- 102 名前:運命の日韓戦 投稿日:2001年12月19日(水)21時03分42秒
- 韓国に対し、苦手意識のない者も、いた。
柴田はオリンピック代表で確実に自信をつけ、世界の強豪に対しても物怖じしないだけの経験を積んでいた。
木村はヴェルディユース時代、監督が韓国人だったこともあって何度も韓国遠征を積んでいた。
そして、小川は、少し変わった理由でコンプレックスがなかった。
「港町で育ったんで。ロシア人とか、韓国人とか、ウロウロしてるんですよ。ケンカしても、フットサルしても、負けたことなかったもん」
そして、寺田も。
「メキシコ五輪の予選で、韓国に勝っとるんです、私は。韓国コンプレックスなんていわれ始めたのは、我々の後なんですよ」
- 103 名前:運命の日韓戦 投稿日:2001年12月19日(水)21時41分12秒
- 日本は、眞鍋を中心に五人で扇形の最終ラインを作る。
さらに二人の守備的な選手をその前に配し、キーパーを含め八人でゴールを守る。
前線には三人。右に木村、左に柴田、中央に広末。
中盤は韓国に明け渡し、ゴール前で勝負する。実を取ったサッカーを、寺田は選んだ。
試合開始前、先発メンバーが酒井にギプスに触れる。
結果の出せなかった広末が誤ってギプスを蹴ってしまった右足でゴールを決めた。
ギプスは、日本の守り神になった。
皆、足や、手、頭、思い思いの場所に触れて、控え室を、出て行った。
- 104 名前:運命の日韓戦 投稿日:2001年12月19日(水)21時49分04秒
- 自分より力の上回る相手と戦う時は、絶対、先に点を取られてはいけない。
だが、前半終了間際、日本はPKの反則を取られてしまう。
眞鍋が、倒した。
眞鍋は天を仰ぎ、おかあちゃん、助けてと思ったという。
PKはあまり得意ではない、小川はキッカーを見た。
目が、血走っていた。
「あ、向こうも余裕ねえなって。こっちに動きを見て蹴るとかはしないと思った」
確率は二分の一。右に飛んだ。
ボールは、小川の懐に、収まった。
- 105 名前:運命の日韓戦 投稿日:2001年12月19日(水)21時55分07秒
- そのボールを、小川が柴田に投げる。
柴田が、巧みなドリブルで左サイドを駆け抜ける。
「おもしろいいもんでね、サイド攻撃の強いチームは、自分がサイドを突かれると弱いってことがあるんだ。韓国もそうだった」
小川の読みは、当たった。
左コーナー付近。柴田が、センタリングを上げる。
キーパーをひきつけた広末の頭上を越えたボールは、その右へ飛び込んだ木村の額に吸い寄せられた。
ネットが揺れると、それまでクールネスを突き通して来た木村が、大きく、ガッツポーズをした。
- 106 名前:運命の日韓戦 投稿日:2001年12月19日(水)22時01分54秒
- 後半、韓国は早めに日本ゴール前にボールを上げる作戦に出た。いわゆる、キック・アンド・ラッシュ。
勝算はあった。
高いボールを処理しに出るキーパーの小川は、両腕を上げている。
その無防備な体に、激しいチャージをしてきたのだ。
酒井の故障は明白だった。二人しかキーパーのいない日本、もし小川が出られなくなれば、そこですべてが終わる。
小川は必死に耐えた。ベンチで試合を見守る酒井の気持ちを考えたら、短気は起こせなかった。
- 107 名前:運命の日韓戦 投稿日:2001年12月19日(水)22時06分42秒
- それが、韓国の狙いだった。
押し込む攻めに慣れていた日本は、中盤で韓国がボールを持っても、飛び出して奪いにいけなくなってしまっていた。
スルーパスが、出た。
虚を突かれた小川の飛び出しが遅れ、韓国にシュートを許す。
が、オフサイドの反則。韓国、幻のゴールに。
とっさの判断でラインを押し上げたのは、眞鍋の声。
こんな展開でも、周囲と連携を図る冷静さは、失っていなかった。
- 108 名前:運命の日韓戦 投稿日:2001年12月19日(水)22時17分38秒
- 守備陣の頑張りに、攻撃陣が応えた。
木村が右サイドで粘り、コーナーキックを得る。
柴田の左足がボールに触れた瞬間、広末、眞鍋は二アサイドに走った。
ボールは誰にも触れず、そのまま、韓国ゴールに飛び込んだ。
相手キーパーが前に出るのを見切って、直接狙ったものだった。
これで、試合の大勢は決した。韓国は守りの人数を減らして攻めにいかなばならず、その間隙を縫う日本のカウンターが冴えた。
終了直前、今度は日本にPKのチャンスが。木村が倒されたのだ。
反対側のゴールから走ってきた者がある。小川だった。
「蹴らせろって、それだけ」
たまりにたまった鬱憤を、その一蹴りで、晴らした。
- 109 名前:運命の日韓戦 投稿日:2001年12月19日(水)22時39分44秒
- イタリアとの決勝。すでに柴田のゴールでリードしていたが、まるで負けているかのように日本は攻めた。
もう1点取ったら、あいつを出してくれる。選手は寺田と約束していた。
スペースを作る動きに腐心していたこの日の広末の動きから、木村が飛び出していく。
寸分たがわぬ正確さで、その足元に柴田のパスが通る。
その瞬間、椎名は手にした金槌で、幸運のギプスを、粉々にした。
「ゴールキーパーが交代します。小川に替えて、酒井」
二人のキーパーは、笑顔ですれ違った。
柴田は本来のキャプテンに、キャプテンマークを手渡した。
わずか数分の出場が、酒井の、引退試合となった。
- 110 名前:運命の日韓戦 投稿日:2001年12月19日(水)22時57分13秒
- 優勝の瞬間、誰もが歓びを爆発させた。
感情を露にすることを避けてきた木村も、当たりはばからず泣いた。
多忙の中、ギリギリの精神状態に陥りながらもやり遂げた柴田も、心地よい達成感に包まれていた。
日本サッカー史上初の、世界の頂点。
自分たちは歴史を作ったんだ。
名も無き戦士たちは、絶頂にあった。
そんな中、素直に喜べない者がいた。
無失点優勝の立役者となった小川だった。
登りきってみれば、あまりになだらかな山だった。
これが世界のてっぺんであるはずがない。
暗い失望だけが、残された。
- 111 名前:運命の日韓戦 投稿日:2001年12月19日(水)23時09分35秒
- 小川の予感は当たった。
凱旋帰国したユニバーシアード代表への反応は、ひどく冷淡なものだった。
その半月後、二十歳以下代表がワールドユースで三位入賞を遂げると、まったく忘れられた存在になってしまった。
「国を背負って戦ってるんだって意気込んでた自分が、哀れになりましたね」
「向こうも金だっていうなら分かる。でも銅でしょ? なにそれ? って思った」
しょせん、学生の大会。
それが、現実だった。
- 112 名前:スタジオ 投稿日:2001年12月19日(水)23時26分58秒
- 肉「日本に帰ってみて、なにを思いましたか?」
柴「月並みだけど、現実は厳しいなあって。でもすぐに切り替えましたよ。五輪予選が近づいてましたから」
窪「ユニバーシアード代表として戦って、なにか得られたものは?」
柴「技術的にはあまり…でも、精神的には、大きな経験ができたと思います。なにより、この仲間と出会えたこと、自分はこいつらの分までやらなきゃいけないんだってことを五輪代表で思えた、それが大きかったと思います」
窪「では、ここでもう一方、ゲストをお呼びしたいと思います。ユニバーシアード代表のキャプテンだった、酒井美紀さんです」
- 113 名前:スタジオ 投稿日:2001年12月19日(水)23時38分22秒
- スーツ姿の酒井、登場。
柴田との空気が、なぜかぎこちない。
窪「お二人はどれぐらいぶりの再会になるんですか?」
酒「…北京以来だよね」
柴「シドニー来なかったもんな」
肉「そして、酒井さんがお持ちなのが…」
酒「はい。あの時のギプスです」
酒井、透明なビニール袋いっぱいの石灰の破片を見せる。
肉「ところどころ何か書いてありますが」
酒「寄せ書きみたいに、みんなが落書きしてったんですよ」
窪「この物語はこれで終わりません。意外な結末を迎えます」
- 114 名前:エンディング 投稿日:2001年12月19日(水)23時57分31秒
- 中島みゆき「ヘッドライト・テールライト」が静かに流れ出す。
酒井美紀は、いくつかあったチームの誘いを断り、日本中央新聞に入社。
スポーツ面ではなく、社会面を担当する第三社会部を自ら志望、配属された。
柴田、木村、小川がメンバーに入ったシドニー五輪の優勝の瞬間は、部内にいた。
手に持っていたホットコーヒーを、撒き散らしてしまったという。
- 115 名前:エンディング 投稿日:2001年12月20日(木)00時08分07秒
- 「見に行くことなんて、できませんでした。私には、その資格は無い」
帰国後、酒井の足を診断した医師は驚きを隠せなかった。
どこにも、傷など無かったのだ。
ケガは、酒井と椎名で仕組んだ、狂言だったのだ。
- 116 名前:エンディング 投稿日:2001年12月20日(木)00時09分12秒
- 「小川と話してて、驚いたんですよ。彼女は韓国に負けるなんてことを考えてもいない。私は、勝てるなんて、考えたこともなかった。その瞬間思ったんです、こいつはもう私を越えてるんだ、こいつでなきゃ世界を相手にはできないんだって。でもキャプテンがそんな理由で降りられないから、あんなことしたんです――道を譲った? 違いますよ、逃げたんです。だから、もう、サッカーも続けられなくなりました」
会社のデスクの引出しには、今も、メダルとギプスが収められている。
- 117 名前:エンディング 投稿日:2001年12月20日(木)00時13分41秒
- 眞鍋は、リポーターとして、シドニー五輪サッカー日本代表を追った。
金メダルを足がかりに、着実に、自分の夢を実現させようとしている。
広末は、授業に出るようになった。
八年かけて、ゆっくり、卒業できればいいと思っている。
寺田は早稲田を再び関東大学リーグに復帰させた。
当面の目標は、一部昇格になる。
- 118 名前:エンディング 投稿日:2001年12月20日(木)00時25分05秒
- そして、シドニーで二つ目の金を手に入れた三人。
小川は大学を通信制にと切り替え、ジュビロ磐田に入団。
練習の傍ら、子どもにサッカーを教えている。
木村はJリーグで好調だ。
新人王は、ほぼ確定と言われている。
柴田は、ポルトガルに移った。
現役生活の最後は、横浜に戻りたいと考えている。
志の異なる者が、ともにつかんだ金メダル。
その輝きは、追憶の中で、ひっそりと、息づいている。
♪旅はまだ 終わらない…
- 119 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)21時07分33秒
- ザ☆ピースでも聞きながら読んでくれ。ほんとにラストだ。
- 120 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)21時09分58秒
- いくとかの出会いと別れ。
涙と笑顔。
対立と和解。
勝利と敗北。
旅は永遠に続くような気がした。
しかし、明けない夜がないように、旅にもいつか終わりが来る。
終わりと呼ぶにははばかりあっても、一区切りはつけねばなるまい。
すべてはこの日のためにあった。
- 121 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)21時14分02秒
- 2002年、二十一世紀最初のワールドカップ、開幕。
ホスト国、日本のファーストゲーム。
さいたまスタジアム2002に、ベルギー代表を、迎え撃つ。
- 122 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)21時20分40秒
- 「行こうぜ、みんな!」
「行こうぜ!」
青のユニフォーム、日本代表の行進。
先頭に、145センチのミッドフィールダー、キャプテンの矢口真里。
続く石川梨華、加護亜依、吉澤ひとみ、紺野あさ美、辻希美、飯田圭織、安倍なつみ、高橋愛、後藤真希、新垣里沙。
ベンチで腕を組む保田圭、その傍らに小川麻琴。
「がんばっていきまー…」
「しょーい!」
キックオフの笛が鳴る。
- 123 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)21時29分03秒
- 「立ち上がり、大事にいけ!」
2001年春、日本代表を率いていたガックン監督が祖国フランス代表監督の急逝に伴い帰国、そのまま新監督に就任。
監督と選手の掛け橋になっていたアシスタントコーチがそのまま監督代行就任、大陸間王者の集うプレワールドカップとでもいうべきコンフェデレーションズカップに準優勝。
そのまま、代行が取れた。
保田新監督の誕生である。
コンフェデレーションではガックンのやり方を踏襲するのみだった保田も、その後の一年で自分の色を出してきた。
- 124 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)21時35分01秒
- 「姉ちゃん、そんなにあわてんなって」
「姉ちゃんて言うな」
小川麻琴は、選手登録はしてあるものの、事実上このチームの副官をつとめている。
本人曰くパシリ、しかし練習メニューを組み立てたり、マネージメントを担当したり、専門であるゴールキーパーのコーチをつとめたり、八面六臂の活躍で監督経験の浅い従姉を支えている。
本当は教育実習と時期が重なったのだが、もちろんこちらを優先させた。
「大丈夫、自分の努力と選手の力、それに運を信じようぜ」
- 125 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)21時42分11秒
- 「辻、慌てて取りに行く必要ないぞ!」
右サイドの辻を叱咤するのはキャプテンマークを左腕に巻いた矢口。
システムは3−5−2だが、中盤の形に少し特徴がある。
菱形に選手の張り出したフォーメーションの中心、前後と左右の選手を線でつないだ交差点にいるのが矢口だ。
前の石川のケツをひっぱたき、後ろの新垣とともにボールを奪い、サイドの加護と辻が上がったサイドをカバーし、時には前線や最終ラインにも入っていく。
トップ下でもボランチでもアウトサイドMFでもない、「ハーフ」の矢口に、保田が与えたポジションだった。
- 126 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)21時52分30秒
- 左タッチを切りそうで切らないボールを、飯田がテーピングをガッチリ巻いた左足でクリア。
ポジションは左のDF。保田は3バックの端の二人に強さと高さ、なによりゲームを作れる能力を求める。
古傷との戦いは予想以上に長引き、治療に専念するため矢口にチームを任せ、なんとか間に合った。
右の吉澤も、地元の声援を受けて、伸び伸びとプレーしている。
シドニー五輪での反省を活かしたのか、冷静にことを運べるように。
その間に挟まれるのがスイーパーの紺野。この年代では世界でも指折りのセンターバックと言われている。
ベテラン、中堅、若手。年齢的にもバランスの取れた3バック。時にゾーンで、時にマンマークでベルギーを止める。
- 127 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)21時57分35秒
- 加護がテクニカルなドリブルで左サイドを突破する。
右の辻との両サイドからのアタックはいまだ健在。
ポジションはMFだが、スタミナを活かし、ウイングからサイドバックのポジションまでこなせよと言われている。
一度、監督になる前の保田に相談した。
このまま続けていけるかどうか分からないと。
保田は軽く受け流した。できるとこまでやったらいい。やめるのなんかいつでもできるんだ、そう思えばいい。
胸のつかえが、すっと降りた。
もう、やめようとは思わなくなった。
- 128 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)22時09分18秒
- 敵のストライカー、ユーカレンスを引き倒す新垣。
シドニーで見た天国と地獄は、小さな彼女を大きく成長させていた。
二年後のアテネ五輪代表チームでは不動のエース。辻や加護とともに2002年以降の日本を引っ張る存在として注目されている。
「リサちゃん!」
その新垣のパスを受け、右サイドを突っ切る辻。
相変わらず加護とのコンビは抜群だが、以前のように加護がいなければ何もできなくなるようなことはなくなった。
今も時々、バレーボール全日本チームを手伝っている。
- 129 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)22時15分11秒
- 辻のセンタリングに、日本のツートップが飛ぶ。
左の後藤が頭で落として、右の安倍がダイレクトでシュート。上に消えた。
「ごめん!」
安倍はチームの精神的支柱となっていた。
恐らく、これが最後の大舞台になるだろう。
「なっつぁん、もう一回!」
後藤の願いはただひとつ。
もう一度、アルゼンチンと戦うこと。
- 130 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)22時21分24秒
- この試合、チャム・サヤカ・イチイは札幌の石黒彩の家で見ていた。
現地で観戦したかったのだが、アルゼンチン代表は明日、イングランドとの大一番を控えている。
死のグループに放り込まれたアルゼンチンにとっても、日本との再戦は並大抵ではない。
が、チャムはその時を心待ちにしている。
後藤、日本、今度こそ負けない。
「どうよ、いけそう?」
石黒がビールをあおる。明日のアルゼンチン戦を彼女はテレビ解説する。
「こんなところで消えてもらっちゃ困るよ」
それは、心からの言葉。
- 131 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)22時25分40秒
- 「日本、いけそうですね」
「いや、まだまだ。ベルギーも弱ないですしね」
実況席の寺田光男が首を横に振る。
今戦っているのは、そのほとんどが彼に見出された者たち。
そして、彼を越えていった者たち。
指導者、冥利に尽きる。
しかしギャンブラーの性、負けるのは大嫌いだ。
今度こそ、じぶんらをヒーヒーいわしたる。そんなチームを作ったる。
- 132 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)22時32分34秒
- 「明日香、出たかったんちゃうか?」
プレス席で見守るのは、横浜のロシア戦を解説する中澤裕子と、ゲストに招かれる福田明日香。
いかなる理由があれ、一人の選手が複数のナショナルチームのユニフォームを着てしまった、その罪は重い。
FIFAが福田に課したペナルティは、二年間の国際試合出場停止(クラブチームではその限りではない)。
自国開催のワールドカップに出られない福田は、それでも動じない様子でいる。
その涼しげな顔に、つい意地悪な問いかけをぶつけた中澤。
「お祭りは苦手です」
福田は、やはり、フクダだった。
- 133 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)22時42分32秒
- 「おら、いかんかい、ボケッ」
大阪のチュニジア戦を解説する平家みちよは、母校・四日市中央工業のサッカー部室で、教え子と一緒にテレビ観戦していた。
オリンピックの金メダル監督は、日本サッカー界から追放された。
毎年末に選考される、日本五輪代表チームに授与されるはずだったFIFA最優秀チームの名誉を独断で辞退してしまったのだ。
主力四人が出場停止で決勝に出られないアンフェアなチームがそんな名誉にはあたらないというのがその理由だがもちろん表向き。
日本サッカー協会への、最後のあてつけだった。
当面の目標は、選手として優勝した高校選手権で、監督としてもう一度頂点を見ること。
- 134 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)22時53分25秒
- 矢口が転がされる。
でっけー…自分の腕を引いて、助け起こしてくれるベルギー選手に圧倒される矢口。
トップも、ハーフも、バックもキーパーも。
山だ。赤い山脈だ。
足のサイズなんかすごい。矢口の倍はありそうだ。
オランダに隣接する小国。強豪という印象は無い。スタープレーヤーもいない。
ただ、大きな大会には強い。
伝統的に守りがいい。特にキーパーには世界的な人材をコンスタントに輩出し続けているのがベルギーだ。
こういうチームにとって、なにが重要か。
点を取ってくれる選手がいるかいないか。
- 135 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)22時59分10秒
- ジャン・マリー・フカキョン。矢口を倒し、腕を引いて起こした選手。
この選手がキーだという。
蹴ったシュートが、空中で一度止まるのだという、オカルトな選手。
そのキックには、
「マメミムメモ・マメミムマモ・マメミム・マジカルキック」
という名前がついてるそうだ。あまりに長いのでマジカルキックと略。
そう、矢口との「魔球対決」でもあるのだ。
- 136 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)23時11分34秒
- 試合前から日本を刺激するような発言を繰り返していたベルギーGKワダーキコのロングキックを、FWユーカレンスが新垣に競り勝ってヘッドで落とす。
フカキョン、そのドナルドダックのように幅広い足でインパクト。
足の甲で包み込み、押し出すようにして前に。
日本の守護神高橋、予備動作に入りながら、小川の言葉を思い出す。
二人で、さんざフカキョン対策を練り上げた。
キーパーは体を沈め、飛びつき、弾き出す動作を1、2、3のリズムで行う。
飛びつく動作を、半拍遅らせる。
どれだけ、飛びつく直前に粘れるかが、マジカルキックを防げるかどうか。
- 137 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)23時17分23秒
- 低い。左。
足を広げ、ぐっ、と腰を落とす。左足に体重を乗せる。
ここで、ふんばる。飛ばずにこらえる。
ボールが失速する。空気抵抗を受けるためだ。
ベルギーの魔法が、日本ゴールに襲い掛かる。
黒い翼が、その行く手を阻む。
タイミングが、ぴたりと合った。
「石川さん!」
低い弾道で蹴り出した高橋。カウンター開始。
- 138 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)23時25分54秒
- トップ下に入った日本のゲームメーカー石川が赤い壁に挑む。
加護との壁パス。鋭い切り返し。浮き球を用いてのフェイク。
仲間を使い、時には単独で敵陣を切り裂く。
湘南あたりをうろついていた一匹の野良犬は、さまざまな経験を積み、多くの友に囲まれて、大人のサッカー選手になれた。
一発の弾丸になって、ゴール前に切り込む。
華奢な足を、かっさらわれた。
- 139 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)23時32分04秒
- 「梨華ちゃん!」
「石川!」
足首を抱えて倒れる石川に寄って行くイレブン。
「…なんてねー」
小さく笑ってみせる石川。もちろん、審判には見えないように。
「少し大げさに倒れておけば相手もガツガツ当たりに来にくくなるしね。あ、ダイビングじゃないですよ。靴下に少し泥がついてるでしょ?」
本当に、少しだけだけど、演技もうまくなった。
さも足が痛むように、よろよろと起き上がる石川。ごていねいにガクガクと足を震わせながら。
- 140 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)23時36分57秒
- フリーキック。ベルギーGKワダーキコが壁に指示を与える。
ベルギー本国ではゴッドシスターという名で呼ばれている、カリスマ的存在。
ことあるごとに、日本をボロクソに言いつづけてきた。その発言に愛情や尊敬は感じられなかった。
ボールの前に、後藤と石川、それに矢口が立つ。
飯田と吉澤がベルギーゴール前に上がっていく。
「ゴトーも行くー」
ボールの前には、石川と矢口。
「蹴る?」
「どうぞ、お先に」
矢口が、ボールのヘソを正面に向けた。
- 141 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)23時43分01秒
- ピッチの上で、一番背の低い青の8番が、中澤の位置からは点に見える。
矢口、おまえなら分かっとるはずや。
選ばれた11人にいることの意味が。
あんたの目の前にあるんは、ボールのようであってボールやない。
サッカーに携る、ちゃう、すべての日本人の希望なんや。
今、あんたの一蹴りは、この試合を見ている人間すべての喜びと悲しみとを操るんや。
そこにあんたがいるんは、権利やない、義務や。
そこの立てなかった人間、すべての思いを背負って、あんたは戦っとるんやで。
- 142 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)23時48分32秒
- 矢口は目を閉じる。
これまでのことが、一瞬で胸のうちを過ぎる。
初めての代表。
フリューゲルス消滅。
その身を支配した狂気。
国立に起きた奇跡。
南半球での歓喜。
すべて、このためだった。
目を開く。
スローモーションのように、ゆっくりと歩き出す。
アキレス腱を伸ばし、爪先をボールに突き立てた。
- 143 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)23時52分42秒
- ボールがゆっくりとボールを越えてくる。
白と黒がはっきり肉眼で捕らえられるほど。
ワダーキコ、しっかりと目でボールを追う。
ボールがゆっくりと、高度を下げてきた。
腰を落とし、捕球に入るワダーキコ。
しかり捕らえていたはずのボールが、ブレて見える。
大きな体を投げ出し、体で当てにいく。
その腕をすり抜け、足元で弾み、股間をくぐって、ゴールネットが揺れた。
- 144 名前:4126 投稿日:2001年12月20日(木)23時57分02秒
- 六万人が、ふるえた。
日本中が、熱狂した。
保田が小川と。
辻が加護と。
飯田が吉澤と。
後藤が安倍と。
石川が新垣と。
高橋が紺野と。
チャムが石黒と。
寺田が解説者と。
スタジアムの外で偽物の姉のサインを売っていたユウキが客と。
平家が部員と。
中澤が福田と。
抱き合った。
- 145 名前:4126 投稿日:2001年12月21日(金)00時02分37秒
- セクシーボールをベルギーゴールに叩き込んだ矢口真里は、両腕を高くかざした。
もちろんこれは始まりだ。
長いながい旅が、ようやく始まるのだ。
その道連れである、日本代表イレブンに向かって、叫ぶ。
「ヤッホーイ!」
145センチの身体が、高く高く、空に舞い踊った。
To be 2002…FIFA WORLD CUP KOREA/JAPAN
- 146 名前:タッカー 投稿日:2001年12月21日(金)01時12分22秒
- 作者さん、本当にお疲れ様でした。恥ずかしながら何度となく涙を流しては読ませていただきました。
シドニー五輪が最後ではあるまいと信じております。
To be 2002…FIFA WORLD CUP KOREA/JAPAN は、To be continued…FIFA WORLD CUP KOREA/JAPAN
であることを
- 147 名前:あとがき 投稿日:2001年12月22日(土)17時19分00秒
- やっと終わったなあ…という感じです。もうパケット料金に青くなることもないし。
言いたいことは作品の中で語り尽くしたので、これからのことについて。
このレスをもって4126は名無しに戻ります。
W杯編の可能性は、新曲で矢口がセンターに立つのと同程度の確率? としておきましょう。
丁寧にレスをつけられなかったのが悔まれます。ごめんなさい。
多くの人に愛された、幸福な作品だったとつくづく思います。
本当にありがとうございました。
よいクリスマスを、そしてよいワールドカップイヤーを。 4126
- 148 名前:ついでに 投稿日:2001年12月22日(土)17時43分50秒
- この話が終わった日(正確には日付変わってたけど)ドーハ戦士がまた一人引退しました。さみしさと引き換えに、日本のサッカーは進んでいく。その共通項が、アイドル嫌いな俺を娘。にはまらせた気がします。
それからこの話を書いてる最中に事件がありましたね。BANSEN? いえ、市井復帰です。小説以上の奇跡が、この話にも勢いを与えてくれた気がします。ありがとう市井。
娘。とサッカー、この二つがあってよかったと思います。
この半年、ほんま楽しかった。
物語は幕引きを迎えましたが、娘。とサッカーのお楽しみはこれからですよ。では。
- 149 名前:小さな保存屋のあるじ 投稿日:2001年12月22日(土)23時42分43秒
- 作者本人から作品の保存に関してオフィシャルなお答えを最後にいただきたいと思います。
”Time of Blue”は323で(完)と宣言されました。
その後、レス342から349に”Ms Moonlight〜世界一の夜"の前に当たると思われる部分があります。
さらに、レス355から362に”特報”という名で、予告のような部分があります。
これらについて、保存の際の扱いを指示していただけないでしょうか?
Time of Blueのラストとするか、Ms Moonlightのはじめのプロローグとするか?
あるいは、無くしてしまうか。
よろしくお願いします。
- 150 名前:モーヲタ家族 投稿日:2001年12月23日(日)00時22分38秒
- お疲れ様でした。
俺もこの作品で、サッカーに興味が湧きました。(まだ海外はよく分かりませんが)
ここ何ヶ月か毎日読んでいたので、これから暇になっちゃうなぁ。
いつの日か続編を読めるのを楽しみにしてます。
本当にお疲れ様でした。
- 151 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月23日(日)02時42分07秒
- ほんとによくやったよ
がんばったよなあ
そして物凄く面白かった
実際仕事中とかでもこのお話のことを思い出しては
やる気を出していたし
本当にご苦労様
娘。とサッカーは最高だね
- 152 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月23日(日)03時17分27秒
- ヤグセンターと同じ確率か。 それって、ヤグヘッドとどっちが高いのかな。 でも、ヤグヘッドはたしかストーリー中二回炸裂してるよね。 と、謎かけしてみる。
- 153 名前:>保存屋様 投稿日:2001年12月23日(日)04時54分51秒
- ご苦労さまです。
ご質問の個所は青の続きに。(完)の後、少し空白をおいて以降のレスを(演出効果と考えておりますので)。特報についてはリアルタイムで読んで下さった方への特典と考えてますのでカット。
森板の短編三つに関しては「野獣の森」「プロジェクトM〜妥協者たち」「フィナーレ・20020604」というタイトルをつけてください。保存の際はひとまとめで構いません。
一両日中に読み直して、誤字脱字の訂正を致しますので、そちらのほうもお願いします。
以上、不都合がありましたらこちらのスレにてお尋ねください。
- 154 名前:第一部「The Cried Red Monster」 投稿日:2001年12月23日(日)14時53分28秒
- 29
「またかよ」
「手柄の横取りか。ふざけやがって」
この行間、詰めてください。
32
か稲葉が口火を切った。→稲葉が口火を切った。
43
決別→訣別
71
「成功、失敗問わず」削除
108
ナイジェリア行きの経由地→ナイジェリア行き旅客機の経由地
- 155 名前:「 投稿日:2001年12月23日(日)15時10分20秒
- 132
イングランド、勝ち点4の得失点差+1。
カメルーンとチリ、共に勝ち点3の±0。
日本、勝ち点1の−1。
を、
イングランドとカメルーン、勝ち点4、得失点差1。
日本とチリ、勝ち点1、得失点差−1。
に。
180の名無しは私。
184
決勝→予選決勝
197
イタリア後→イタリア語
- 156 名前:第一部「The Cried Red Monster」 投稿日:2001年12月23日(日)15時36分37秒
- 213
守備範囲の狭いGK→GK、ベガルタ仙台の村田めぐみ
227
右辛夷→右拳
229
17時53分24秒のほうをカット。
240
フラッグチトン→フラッグ付近
246の名無しは本文。
以上。
- 157 名前:第二部「Zinc white」 投稿日:2001年12月23日(日)16時45分39秒
- 43を冒頭に持ってきてください。
66
「切り捨てなきゃだけだからね→「切り捨てなきゃダメだからね
107
加護が地獄耳をおっぴろげていた。
と
「あいぼん!」
の間で改行。
118
「ああ。負けたよ、負けました」
小川が負けを認め、それでも悔しがる。
詰めて。
121
まるで八十の老婆に。→まるで八十歳の老婆のように。
127
ドアをノックする音で我に返る二人。長話が過ぎたようだ。
衣類を直し、深く頭を下げる小川。
詰めて。
- 158 名前:第二部「Zinc white」 投稿日:2001年12月23日(日)17時34分32秒
- 166、181の名無しは本文。
190
バーン、である。
を削除。
193
人様の行為→人様の善意
235
後藤が鼻先で→後藤が爪先で
262
「柴田、フリーカック」→「柴田、フリーキック」
309
今大会では反則への罰則が一段と厳しくなりそうなので
を
今大会では反則への罰則が一段と厳しくなり、また予選リーグでの警告が決勝トーナメントに持ち越されるので
- 159 名前:第二部「Zinc white」 投稿日:2001年12月23日(日)18時34分10秒
- 341以降はカット。これもリアルタイム読者への特典。
で、二本目へ。
17
従妹に対してそう言っていたはずの保田
を
従妹と初めて同じチームでプレーすることに対してそう言っていたはずの保田
65
ナイジェリア→スペイン
89
加護亜依→柴田あゆみ
112
ダースベーダーのテーマ→慎吾ママのおはロック
118
彼の誘いを→日本代表だった彼の誘いを
以上。
- 160 名前:訂正の訂正 投稿日:2001年12月23日(日)18時59分33秒
- 118
日本代表監督だった彼の誘いを
- 161 名前:ちょい一休みね 投稿日:2001年12月23日(日)19時09分55秒
- 明日は用があるんでなんとか今晩校正終わらせてみせる。
- 162 名前:第三部「Time of Blue」 投稿日:2001年12月23日(日)22時26分58秒
- 6-9
ズレを訂正してください。
21
さらに切り札とも言えるもう一人。
を削除。
36
恐れているからだ→恐れている
56
CK→カメルーンのコーナーキック
61
向き合う→向き合うシャクボマ
111
実力は遜色ない→実力は小川に遜色ない
エリート高橋にとって→エリートで通ってきた高橋にとって
135
吉澤、保田、戸田、大谷、斎藤、村田にミカを加えて。
- 163 名前:第三部「Time of Blue」 投稿日:2001年12月23日(日)22時57分55秒
- 152
ガブリエル・ヒロミストゥータに→の
210
見えねえような→見えねえように
211
攻撃をもって攻撃を制す→攻撃は最大の防御
松浦の位置にまで→松浦のいた10番の位置にまで
215は本文。
220
つかんで地に叩きつけた。伸び切った体は→つかんで地に叩きつけた小川。伸び切った体では
222
警告・退場の欄に
ワカナ(警・後37・ラフプレー)
を追加。
242
なるたけオーダーはいじるたくない→負けてもいないのに、なるたけオーダーはいじりたくない
- 164 名前:第三部「Time of Blue」 投稿日:2001年12月23日(日)23時37分36秒
- 243
「誰が望み捨てたって」
「出てえけど」
の間に
「小川、あんた、本当は試合に出たくないんでしょ」
を追加。
259
次々策→次々善策
279
ピッチにいた試しがない。
の後に
試合開始2分45秒で退場になったこともある。
と、追加。
290
チームメートのカトッチを→戸田がチームメートのカトッチを
306
正確に落とす→保田の足元に正確に落とす
319
石川が矢口を出迎える。が、一人足りない。
を削除
322
手術は良好→手術は成功、経過は良好
342
下ネタ嫌いで有名な→下ネタ嫌いの
そこどはない→そこではない
- 165 名前:ファイナル「Ms.Moonlight 〜世界一の夜〜」 投稿日:2001年12月24日(月)00時33分10秒
- 1
『No nane』→『No name』
28
飛び乗ったわいいが→飛び乗ったはいいが
39
チャンスに恵まれず→チャンスにまで恵まれたというに
41
どこまでも堕ちらろやないか
削除
55
ともにゴール、アシストを→ゴールもアシストも
67
人がいるわけで→来た人がいるわけで
74
吉澤が勝ち、ボールをゲット→レフアが勝ち、風上のサイドをゲット
124
押し上げているのに→押し上げている
126
伸ばす→伸ばす。
131
加護ばかり気づいて→気遣って
143
が、そんあことは→が、そんなことは
149
本当だ。
削除
157
勝利の瞬間、
削除
158
ただ一人の→ただ一つの
163
日が暮れるまで→日が暮れて
- 166 名前:ファイナル「Ms.Moonlight 〜世界一の夜〜」 投稿日:2001年12月24日(月)00時35分07秒
- 165
日本 2−2 アメリカ
(PK4−2)
GK 小川(119分高橋)
DF ミカ、紺野、木村ア
MF 吉澤、柴田、石川、木村麻(50分後藤)
FW 松浦、加護、辻(105分新垣)
得点
ア 37分 チェルシー(エイプリル)
日 53分 後藤(石川)
日 59分 辻(加護)
ア 85分 レフア(PK)
警告・退場
柴田(警告・遅延行為)
Woman of the match
後藤 真希(日本)
- 167 名前:ファイナル「Ms.Moonlight 〜世界一の夜〜」 投稿日:2001年12月24日(月)01時06分25秒
- 172
ジェイン→シェイン
178
頭から布団をかぶった→頭から布団をかぶせた
184
戸田がその背中を→戸田が木村麻美の背中を
190
これもパンチでかき出した→鋭いステップから、これもパンチでかき出した
212
右に逸れた、の後に。を
223
フレー→プレー
225
突如、から改行
232
こ同じように→同じように
245
天岩戸→地獄の門
255
超アドバンテージがついて→超・アドバンテージがついた
259
あの人→あの女の人
「…ちょっとだけ、泣かしてくれますか」
「いいよ。こんな小さな背中でよかったら」
を
「…ちょっとだけ、泣かせてください」
「いいよ。こんなチンケな背中でよかったら」
- 168 名前:ファイナル「Ms.Moonlight 〜世界一の夜〜」 投稿日:2001年12月24日(月)01時57分55秒
- 296は本文
306
「思いっきりやってこい、矢口」
の後に改行、
平家が届かないハッパをかける。
とつなげてください。
316は本文
317
コマイヌ、カット。ご迷惑だったようなんで。
352
膝の骨が→肘の骨が
364
福田→ギンナン
ぺナ→ペナルティエリア
371
主に→重荷
372
落ちることなと→落ちることなど
374
サヤカ、聞こえるか
削除
393
最後に
ギンナン、頭から、落ちた。
と追加
399
あたしは、ずいぶんと時間がかかった。
わずか数センチを埋めるまでに。
を
あたしは、いまだに、その数センチを埋められないんだから。
に
405
とっているはず→とっといてるはず
415
すべてに幕を引いた→世界一の夜に幕を引いた
- 169 名前:ねぇねぇ名無しさん 投稿日:2001年12月24日(月)02時16分48秒
- あんた、ホントにいい人だ。>4126
作品に対する愛を感じるよ。
気が向いたら、また何か書いてください。
シアターの再開とともにいつまでも待っています。
- 170 名前:野獣の森 投稿日:2001年12月24日(月)02時18分00秒
- 13
すごく伸びてきている聞いた→すごく伸びてきている選手と聞いた
141
そこの立てなかった→そこに立てなかった
とりあえず、以上。
他にも明らかな誤字ありましたら指摘してください。勝手に直していただいても結構です。
スレ立ちましたら見てみたいのでリンク張ってください。
ちかれたー…
- 171 名前:>>169 投稿日:2001年12月24日(月)02時19分19秒
- これから読んでくださる人への、最低限の義務っす。
しかし誤字多すぎ。
- 172 名前:名無しバカよね 投稿日:2001年12月24日(月)23時30分47秒
- Zinc(二本目)にデータ集作りました。よかったら見て笑ってください。
- 173 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月25日(火)22時37分46秒
- これはどう考えてもメイコスの殿堂入りだろう
まだ入らないのかな?段取り中?
- 174 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月26日(水)21時30分08秒
- >>173
あれは今申請形式になっていると思う。
- 175 名前:小さな保存屋のあるじ 投稿日:2001年12月30日(日)21時34分36秒
- 構成までなされて、お疲れさまです。
つきましては以下の点、こちらで訂正及び、疑問が生じましたのでご確認願います。The Cried Red Monster
The Cried Red Monster
70 比ゆ → 比喩
Time of Blue
229 Boan in the USA → Born in the USA
Ms Moonlight
67 言ってることがわるで分からない → 言ってることがまるで分からない
83 似るよなぁ→似てるよなぁ
155 跳ね返されたール → 跳ね返されたボール
272 時間によって上げたり下げたりってことがまるでできてたじゃないか。
これは、”まるで出来てない”でいいのでしょうか?それとも、”よく出来てた”でしょうか?
- 176 名前:小さな保存屋のあるじ 投稿日:2001年12月30日(日)21時37分33秒
- Ms Moonlight
399 ”あたしは、いまだに、その数センチを埋められないんだから。” の訂正のところの、”その”が不可解。
426の試合結果の表記について
当初の登録では、DF 紺野、FW 後藤で、使われた場所が違った、ということでしたが、ここでの表記はDF 後藤、FW 紺野となっています。
いかがしましょうか?
- 177 名前:小さな保存屋のあるじ 投稿日:2001年12月30日(日)21時39分08秒
- 野獣の森
55 矢口は石川は→矢口と石川は
57 日の丸を口ずさむ木村アヤカ→君が代を口ずさむ木村アヤカ
104 こっちに動きを見て→こっちの動きを見て
136 さんざフカキョン対策を→さんざんフカキョン対策を
77で、関東リーグ2部降格の瀬戸際としており、その入れ替え戦に敗れている。
一方、117では、関東リーグに復帰させたとなっている。
77の時点で、昨年まで都の2部に上智がいたのなら、今年は都の1部の上智の対戦のはずなので、77は”関東リーグ2部からの降格”と読み替えてよろしいでしょうか?
また、プロジェクトM〜妥協者たち、に関しては、名前の欄を小見出しとして使用すればよろしいでしょうか?
以上の点、ご確認願います。
- 178 名前:4126 投稿日:2001年12月31日(月)11時56分44秒
- The Cried Red Monster
70 比ゆ → 比喩
このままで。喩という字は難しいと思うので。
Time of Blue
229 Boan in the USA → Born in the USA
訂正願います。
Ms Moonlight
67 言ってることがわるで分からない → 言ってることがまるで分からない
訂正願います。
83 似るよなぁ→似てるよなぁ
似るもんだなぁ、に訂正願います
155 跳ね返されたール → 跳ね返されたボール
訂正願います
272 時間によって上げたり下げたりってことがまるでできてたじゃないか。
時間によって上げたり下げたりってことがまだ徹底できてないね、に訂正
- 179 名前:4126 投稿日:2001年12月31日(月)12時20分31秒
- 399 ”あたしは、いまだに、その数センチを埋められないんだから。”
その、を、あの、に訂正
426
これはオフィシャルの試合結果と考えてますので、このままで。
野獣の森
55 矢口は石川は→矢口と石川は
57 日の丸を口ずさむ木村アヤカ→君が代を口ずさむ木村アヤカ
104 こっちに動きを見て→こっちの動きを見て
以上、訂正願います。
77
そのように。
136
さんざは散々と同義語なんでこのままで。
プロジェクトMの小見出しはカットしてください。
これで全部かな。
出来あがり、楽しみにしています。
- 180 名前:小さな保存屋のあるじ 投稿日:2002年01月03日(木)22時32分49秒
- ひとまず完成しました。
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Hemingway/7323/second/hozon/145.html
ここに、145cmシリーズがまとめてあります。
ただ、第一部、第二部は、自前で保存はしてません。
うちは、保存屋というより紹介屋が本業という感じなのですが、何かご要望があれば、またおっしゃって下されば出来る限りで対応します。
- 181 名前:4126 投稿日:2002年01月11日(金)19時41分43秒
- では、今宵の爆音にて亜依ましょう
- 182 名前:こんなんつくってみたななしファン 投稿日:2002年01月20日(日)17時27分01秒
- 所属チーム変遷
中澤 京都紫光クラブ→京都
石黒 フジタ→広島→札幌
飯田 札幌→トリノ→リバプール
安倍 札幌→浦和→札幌→トリノ→ユベントス
福田 東京X→パルメイラス
保田 市原→磐田→C大阪→ヘルタベルリン→1FCケルン→バイエルン・ミュンヘン
矢口 横浜F→横浜M→FCサウスイースター→ボカ・ジュニアーズ
市井 柏→セロ・ボルテーニョ→シュトゥットガルト→バイエルン・ミュンヘン
後藤 エスパニョール→東京V→レアル・マドリード
- 183 名前:こんなんつくってみたななしファン 投稿日:2002年01月20日(日)17時28分27秒
- 石川 横浜F→湘南→横浜F→C大阪→ボカ・ジュニアーズ→ハンブルグ?
吉澤 浦和→アストンビラ?
辻 FC東京→フェイエノールト?
加護 G大阪→PSVアイントホーフェン?
高橋 京都
小川 順大→磐田
紺野 北大→札幌
新垣 横浜FM
※福田は浦和へ、石川は札幌へ1試合のみレンタル有
- 184 名前:こんなんつくってみたななしファン 投稿日:2002年01月20日(日)17時29分48秒
- 平家 名古屋→コスモ四日市
稲葉 東海大→G大阪→C大阪
信田 日産→FC東京
松浦 神戸→鹿島→アヤックス?
前田 福岡
ミカ 清水
アヤカ 上智大→神戸
戸田 札幌
木村 札幌
柴田 横浜F→横浜FC(神奈川大)→鹿島→FCポルト
大谷 札幌
斉藤 新潟
村田 仙台
- 185 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月20日(日)18時35分39秒
- おもろいな。プロ以前のキャリアだと
矢口 マリノスJY→桐光
加護 ガンバユースと奈良育英の二重登録
保田 市船
吉澤 三菱養和→清商
だったかな?
- 186 名前:4126 投稿日:2002年01月20日(日)20時48分57秒
- >182-185
コップクンマーカー(タイ特番見た?)。ついでに年表も作って。メチャクチャすぎて作者は断念したのでw
こーゆーの作っていただけると、145の続編も書かねばなーとかも思う。結局どちらが望まれてるんだろう、続きの話と別の話。
- 187 名前:こんなんつくってみたななしファン@森板某作者 投稿日:2002年01月20日(日)23時32分52秒
- こんなんにレスついてびっくり。
>>185
サンクス。さらに補足するなら
安倍 札幌ジュニアユース→札幌ユース
飯田 札幌ジュニアユース→札幌ユース
福田 読売クラブユース
市井 アルゼンチン二部のどっか(w
後藤 読売クラブユース
石川 横浜Fユース
辻 東京ガスユース
高橋 京都ユース
小川 景虎高
紺野 札幌ユース
新垣 横浜FMユース
平家 四中工
松浦 神戸弘稜
アヤカ 読売クラブユース→ハワイ留学
戸田 札幌ユース
木村 札幌ユース
柴田 横浜Fユース
こんな感じかと。
- 188 名前:こんなんつくってみたななしファン@森板某作者 投稿日:2002年01月21日(月)00時12分08秒
- >>186
作者様が出てくるとは思いもよらず。年表は・・・時間ができたら(w
以下個人的意見。聞き流してね。滅多にない機会なので。
145の続編に関しては、本人が書きたければ書くべきだし、そうでなければ書かなくていいと思う。
職業作家じゃないんだから、求められてるからって書くのも変な話で。
182以降のレスが、「続編書け」っていうプレッシャーになってたら申し訳ないです。
そんな意思はさらさらないので。なんか書き始めたら教えてほしいなとは思うけど。
でわ。
PS. タイ特番、見てない(w
- 189 名前:4126 投稿日:2002年01月21日(月)02時13分34秒
- なんにしてもまた書きたいなという気持ちはあるですよ。文章は書かずにいると下手になるし。ただ自分というか4126というコテハンに求められてるのは何かというのを考えてしまうですよ。なまじ名前がでかくなりすぎて、逆にサッカー以外のものが書きづらくなっている。比べられたくないし。
実は続編の大まかな構想はすでにありますが、どうしても書きたいところまで気持ちが高まるまでは手をつける気はないし、やるなら先に改訂版を出すべきかとも思うし。
- 190 名前:4126 投稿日:2002年01月21日(月)02時29分20秒
- 時間かけて育てた矢口たちにすごく愛着あるし、うっちゃりたくないけど、すでに娘。の名前を持った別人格になってしまった(LOVEセンチュリーのようなもの)。話自体も娘。小説の範囲でくくれなくなってしまっている。「Zinc white」書いてる頃は書き続けることにさえ葛藤があったんだ。実は。
結局いずれなにか書くとは思うけど、それがどんな形になるかはまるで分からない。続編を読みたいと言ってくれる人がいるなら、それも頭の隅に入れるべきだなと。それだけ。
そちらもがんがれ。例のタイ語はありがとうという意味。
- 191 名前:こんなんつくってみたななしファン 投稿日:2002年01月22日(火)00時30分38秒
- 気分悪くしたらごめんね。
求められてるものを書いておこう(悪い意味で)っていうのが、Zincの投票やり始めたあたりで見えた。
あれ、投票された意見ほとんど全部どっかしらで取り入れてたでしょ?面白かったけど。
本人の意思を超えたところで、作品もHNもでかくなりすぎた弊害かなと勝手に思ってた。
書きたいモノ書かせてやればいいのにって。言いつつ投票してるんですけど(w
- 192 名前:こんなんつくってみたななしファン 投稿日:2002年01月22日(火)00時49分18秒
- だから、個人的な読者としての反省も含めて、好きなモノを好きな時に書いてほしい。
ただ、「4126」っていう名前はある種ブランド化(狛犬氏みたいに)してるから、その辺の葛藤は本人しかわかんないだろうけど。
続編にせよ違う話にせよ、楽しみなのは間違いないけどね。
狩だか愛の種で矢口新曲センター説も出てることだし(w
・・・支離滅裂だな。スマソ。
いつかまた、どっかのスレで会えることを楽しみにしております。
でわ。
- 193 名前:こんなんつくってみたななしファン 投稿日:2002年01月22日(火)02時41分34秒
- 年表は時間かかりそうなので(完成するかもあやしい)年齢設定だけ。
2000.9月(シドニー五輪当時)
新垣 19
小川 20
紺野 20
高橋 20(五輪初日に21)
- 194 名前:こんなんつくってみたななしファン 投稿日:2002年01月22日(火)02時42分48秒
- 加護 19(翌2月で20)
辻 20
吉澤 22
石川 22(翌1月で23)
後藤 21(五輪期間中で22)
市井 23(2000.12で24)
矢口 24(翌1月で25)
保田 26(2000.12で27)
- 195 名前:こんなんつくってみたななしファン 投稿日:2002年01月22日(火)02時44分18秒
- 福田 22(2000.12で23)
安倍 26
飯田 26
石黒 30
中澤 34
平家 28
- 196 名前:こんなんつくってみたななしファン 投稿日:2002年01月22日(火)02時54分29秒
- しもた。矢口は25で。
これなら大きな破綻はないような気がする。・・・がどうだろう。市井もギリギリU-23だし。
矢口だけ実際の年齢差との誤差が出てしまいますが。
- 197 名前:4126 投稿日:2002年01月22日(火)12時43分19秒
- 赤の時か、DF軽視って書かれたのがこたえたのよね。オイラ自身がDFだったので余計に。どんな布陣がいいんだろうと考えるうちにだんだんわけがわからなくなって、リサーチを試みたと。
もちろんこびたつもりはなくて、小さい部分ではサービスしながら大筋は自分の書きたいものを書いたつもり。レスが作品に反映されてこそのネット小説だと思うし。基本的には書きたいものしか書けないよ。
- 198 名前:4126 投稿日:2002年01月22日(火)12時48分56秒
- 加護はアテネ五輪にも出られるんだ。保田の引退は少し早すぎたか。市井が大晦日生まれなのを利用して矢口と同じ年に生まれたのを回避するつもりだったがよいネタが思いうかばんかった。
矢口のセンターはあるんかなあ。取らせてあげたいとは思うけど、脇に回ってこそ生きるタイプだし…むずいね。
- 199 名前:転居先不明 投稿日:2002年03月11日(月)22時41分47秒
- http://www.metroports.com/test/read.cgi/morning/1015715225/
夜中の3時に会おうぜ。sageで。
- 200 名前:名無し娘。 投稿日:2002年04月01日(月)11時28分28秒
- 今朝放置宣言したと思ったら、もう削除されてるみたい・・・
自分が駄レスを付け過ぎたせいだろうか
マジで凹む・・・
戻れるものなら昔に戻りたい、今度は黙って見てるから
- 201 名前:名無し娘。 投稿日:2002年04月03日(水)01時11分04秒
- エイプリルフールだったのか、迂闊だった(^-^;
まぁ、応援スレも多いし静観しよう
がんばってくださいねーL(^−^)
- 202 名前:七誌のごんた 投稿日:2002年04月09日(火)10時46分10秒
- 星版でかかれていたやつをいくらさがしてもみつからない・・・
ちょーよみてーーー
- 203 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月11日(木)09時36分11秒
- 星?
月なら読めるぞ。逝ってみれ
- 204 名前:31087 投稿日:2002年04月11日(木)15時53分44秒
- 狩が死んでるので、こちらでご報告
関係者の皆様、ご理解のほどを。
少しずつ書き溜めてはおります。
近日中に、復帰できるかと。
飼育の募金、まずまず集まったようでよかった。
- 205 名前:名無し娘。 投稿日:2002年04月11日(木)17時17分21秒
- なんにしても、良かった良かった
- 206 名前:31087 投稿日:2002年04月12日(金)00時02分02秒
- 復旧までまだかかりそうだね。
しかしどうして俺が書き始める板は閉鎖するかな。2ch、飼育、狩・・・
西原理恵子にでもなった気分です。
ま、幼稚で無知なトラブルメーカーらしいっちゃらしいですが。
- 207 名前:とまときっど 投稿日:2002年05月02日(木)23時01分33秒
- >>作者さま
リバプールということで、あの事件に触れると思っていました。
よっすぃーとウエートの絡みの時は
『うっわ、どんな方向に行くんだろ?』
とドキドキしてしまいましたが(笑)
新曲が好評の最後のカナリアも気になりますが
これからも楽しみに読ませていただきます。
無理せず、頑張ってくださいませ。
楽しみに待っている読者の存在アピールでした。
…何が言いたかったのか、よくわからんな、こりゃ(苦笑)
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