TEA  IN  THE  SAHARA

1 名前:車地雷AM 投稿日:2001年11月25日(日)00時50分47秒
カップリングはよしごまです。 話はちょっと痛めですが…。
物語の構成が変わっていますがご容赦ください。
2 名前:車地雷AM 投稿日:2001年11月25日(日)00時51分51秒
1

 私は全力で疾駆していた。
 夜だから静かに、とか。 病院の廊下だから走るな、とか。
そういった世間一般の常識は今の私にとってはどうだっていいことだった。
 本当は、仕事なんて放り出して、すぐにでも彼女の傍に行きたかったのに。
 
 もどかしい。 くやしい。

 どうでもいいはずなのに、もう、仕事なんて。 彼女がいないモーニング娘。なんて
どうでもいい。 なのに。

      バン

 私は乱暴に、病室の扉を開けた。
3 名前:車地雷AM 投稿日:2001年11月25日(日)00時53分22秒
彼女は、居た。
 消灯はとっくにされてたけど、彼女は眠っていなかった。
 上半身を起こして、窓の外に広がる夜の景色を、ぼんやりと眺めていた。
 月の光と、人の作り出した光に青白く照らし出された彼女の輪郭は朧で、儚く。

 「……よっすぃー…?」

 息をきらせて入ってきた私を、少し驚いたように見て…でも、すぐに彼女の目は
いつもの悲しそうな、寂しそうな目に、戻る。
4 名前:車地雷AM 投稿日:2001年11月25日(日)00時54分30秒
「…ごっちん…私……」
 「ごめんね。 仕事、大変なのに、気ぃ使わせちゃって。
  別に見舞いなんていつでもいいのに」

 穏やかに儚げに、微笑む彼女。

 「…もうちょっともつかな、って思ってたんだけど…結局、迷惑かけちゃったね。
 明日から…色々、大変だと思うけど……」

  こんなことになってまでも。 あくまで他人への配慮を口にする。
 そんな姿が私は悲しくて仕方がなかった。
  追い詰められて、疲れて、疲れきって、擦りきれてしまった彼女。
 その果てに待っていた結末は……
5 名前:車地雷AM 投稿日:2001年11月25日(日)00時55分42秒
「!!…何…言ってんだよぉ……!!」

 私は涙目になって叫んだ。
 「……そんなこと… そんなこと…私、言わせたいんじゃないんだよ…
 …ごっちん…死ぬんだよ…もっと…言いたいこと…言ってよ…?
 本当に言いたいこと、言ってよ…… 
  私…私、ヤダよ… ごっちんが居なくなるの……
  だから、私、憎いよ…ごっちんを追い詰めた人たちのこと」

 私は泣きながら、彼女のことを抱きしめていた。
 冷たい身体。 痩せた身体。 癌という、死の病に、蝕まれた身体。

 「…よっすぃー…」
 
 静かに彼女は私の背中に両腕をまわして……

 「ここは…ヤダよぉ… ずっと、よっすぃーのそばがいい……」

 まるでせきとめていた何かが壊れたように、彼女は泣いた。
 私はきつく、きつく、彼女を抱きしめた
6 名前:車地雷AM 投稿日:2001年11月25日(日)00時57分24秒
   2

 わずかに吹く風が、足元の砂を舞い上げる。
 ただ、ただ、広がる、澄み切ったブルー。 
 雲のひとつさえない、冴えわたった青の空と、果てもない砂の大地。

 「ごっちん…来たよ… 」

 私は呟いた。 私1人以外、誰もいない、虚無の地で。

 「…ホントは… 生きてるうちに…いっしょに来たかったよ… 」

 それは私の本音。 私はリュックから缶を取り出した。
7 名前:車地雷AM 投稿日:2001年11月25日(日)00時58分42秒
あれから。

 私たちは一緒に暮らし始めた。
 末期の膵臓癌だし、意外にもあっさりと「自宅療養」は認められた。
 モーニング娘。2人の突然の卒業はマスコミを騒がせたが、ごっちんが末期癌に侵されている
という事実を明るみにしたくない事務所側の圧力は、結果的に私たちのその後の追及を
阻むことになった。
 過ぎ去った月日を埋めるように、私たちは濃密な時間を過ごした。
 彼女は最後まで投げ出さずに、病気と懸命に闘った。
 家族から疎外され、あまりにも純粋すぎる魂と夢をもって芸能界へやってきて、
それでも孤独で、でも私と出会って、そして待ちうけていた早過ぎる死という結末は。
 
8 名前:車地雷AM 投稿日:2001年11月25日(日)00時59分29秒
「表情」を、私の前ではよく見せてくれるようになった彼女は、笑って言った。

 「大好きな人に看取られて死ねるんだよ? サイコーの贅沢だよね」

  でもね。

  残酷だよ。 それは。

  残された人間にとっては。
9 名前:車地雷AM 投稿日:2001年11月25日(日)01時00分34秒

 私は缶の蓋を開けて、缶を逆さにする…

     私は今、砂漠という、虚無と虚空の支配する地に立っている。

 逆さにした缶から、灰がこぼれ落ちていく…

     私は今、サハラ砂漠にいる。 
     そこは生前、彼女が行きたがっていたところ。

 こぼれ落ちる灰を、風がさらって…

     彼女が夢見た大地。
     その両足で立つことは、ついに出来なかったけれど。

 灰は風にのって、空に舞った。

 私は静かに歩き出した。
 目をつぶると、思い出す。  今でも、鮮明に。


    The End and Beggining
10 名前:車地雷AM 投稿日:2001年11月25日(日)01時05分10秒
  20001110

  なんっっっかっ。 イライラする。

 タバコに火を付けて一息つく。
 それでも心の中のイライラは消えない。

 ( 今月はタバコ、結構、吸ってんなぁ……)

 普段はそんなにタバコは吸わない。…え?お前、まだ20歳過ぎてないじゃん?
その会話おかしーよ?…なんて自分に対するツッコミはさておき。
 吸ったって一月に1、2箱空けるか空けないか程度だったのに、今月はすでに5箱は
空けてしまっている。 しかもまだ月始めだっていうのに。
 とにかく、ふとした瞬間にイライラして、そのイライラが喫煙という行為におよばせる。
11 名前:車地雷AM 投稿日:2001年11月25日(日)01時06分05秒
タバコをくわえたまま、少しまどろむ。
 壁にもたれて、しゃがみこんで、上を見上げる。
 少し肌寒い夜気と、朧に光る月。

 その時だった。

 「…あ…」
 「誰…?」

 私が人の気配を感じて、そちらのほうに顔を向けたのと彼女が小さく声を出したのは
同じくらいだったか。
 気配の主は…… まぎれもなく… 私のイライラの元凶だった。
12 名前:車地雷AM 投稿日:2001年11月25日(日)01時07分43秒
「…ごめん…」

 相変わらず「表情」のない顔。だけど、明らかに動揺してる声。
 見てはいけないものを見た後ろめたさに、その場所から立ち去ろうとする
彼女の手首を私は掴んだ。

 「ごっちん、休みに来たんでしょ? 別に私、邪魔じゃないよ?」

 私は意地悪く笑った。

 「… タバコ、…吸うんだ…」
 「イメージ狂った?」
 「………」

 世間一般の私のイメージは、真面目。明朗快活。裏表のないさっぱりとした人間。
 世間一般ばかりか娘。内でも、関係者内でも私はそーゆーキャラで通している。
 
13 名前:車地雷AM 投稿日:2001年11月25日(日)01時09分49秒

何故かって? 
 そのほうが何かと楽だからだ。
 もとより理不尽なこの世界で、いちいち「本当の自分」を押し通すことは、
いかにも面倒。
 
だから、そんな「本当の吉澤ひとみ」を垣間見た彼女は、さすがに驚きを
隠せないようで…そんな彼女の「表情」を見れて、
私はちょっと嬉しかったりもするんだけど。
14 名前:車地雷AM 投稿日:2001年11月25日(日)01時11分09秒
「吸ってみる?」

 私はタバコを差し出してみる。からかうように。

 「… いい。別に」
 「事務所にバレるのが怖い?」
 「……」

 私の挑発に、彼女は「表情」を曇らせた。

 「… うん。 怖いから…吸わない」
15 名前:車地雷AM 投稿日:2001年11月25日(日)01時13分15秒
「表情」は、消え失せた。

 気がつけば、口づけていた。

 収まりかけた苛立ちが、再びもたげてくるのを感じて。
 「表情」のない彼女の顔を見たくなくて。
 
 引き寄せて、壁に両の手を押さえつける。
 
16 名前:車地雷AM 投稿日:2001年11月25日(日)01時14分22秒
 噛み付くように、キスをした。
 始めは自分が何をされているのか分からないのだろう、
おとなしくされるがままになっていた彼女も、さすがに唇を割って舌が
口腔に侵入した時には状況が飲み込めたようで、次第に身体がこわばっていく。
 それでも私は彼女の口内を荒らすことをやめない。
 歯も、歯茎も、頬の裏側の口内の粘膜も。 口の中の隅々を舐め回す。
 そして、彼女の唾液を貪るように飲む。

 「……ん…ううっ……」

 息苦しさに、彼女はくぐもった悲鳴をあげた。
 
 長い口付けの後、離れた二人の唇の間には、明かりでなまめかしく光る唾液の細い糸。

 無言だった。

 そして、彼女は無表情で、でもその瞳に悲しそうな、寂しそうな光をともして、
私を見ていた。
17 名前:名無しさん 投稿日:2001年11月25日(日)20時07分51秒
名作の予感。
とても期待しています。
18 名前:バービー 投稿日:2001年11月25日(日)20時12分55秒
何だかものすごく、大作の予感。
独特のシリアスな雰囲気の話に引き込まれて、切なくなりました。
これからも期待しています、頑張って下さい。
19 名前:ポー 投稿日:2001年11月25日(日)23時36分10秒
大期待!あなたについてゆきます。。。
20 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月26日(月)01時07分03秒
きたきたきたっ!
出だしから引き込まれました。期待してます。
21 名前:車地雷AM 投稿日:2001年11月28日(水)17時36分52秒
 あ、レスが来てる。 やっぱり反応があると嬉しいなー。
 でもって、レス返し(?)書くのは始めてなんで、ちょっと緊張(^^;)


>>18 バービー さん
  実は最初に読んだよしごま小説は貴方の小説だったりするので、こうして
  見ていただけて、本当に嬉しいですよー。 
   いつも楽しみに読ませてもらってます。 がんばってくださいね。 

>>19 ポーさん
   ありがとうございます。 
   大期待に答えれるよう、がんばりたいです。
   でも、どうしても痛めな話が多くなりますけど…  

>>20 名無し読者さん
   ありがとうございます。
   書き手としては、こう言われると、とても嬉しいのです。
22 名前:車地雷AM 投稿日:2001年11月28日(水)18時20分50秒
 しまった… 早速レス返し、失敗してる…
 会社のパソコンはこの頃、調子悪い(ほやき)。
>>17 名無しさん
… というわけで、すみません。無視したわけではありませんので…
  これからも、よろしくおねがいします。
23 名前:この回は後藤さん視点 投稿日:2001年11月28日(水)18時22分00秒
20010919.

   いつまでも色褪せることのない夢や希望は、時に残酷。
   現実が、この身体を、この心を、確実に蝕んでゆくのに、それでも色褪せない
   夢や希望は、精神を引き裂いて、確実に狂わせていく。
    病んでゆく……  堕ちてゆく…
24 名前:この回は後藤さん視点 投稿日:2001年11月28日(水)18時22分32秒
 ジー……

  薄暗い部屋の奥で光る、赤い点。

 「……やめて……」

 無機質で、かわいた機械の作動音が、やけに耳につく。

 ジー……

 「…… お願いだから……」
25 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月29日(木)02時37分11秒
久々に続きが読みたくなったシリアス物 期待しとる
26 名前:車地雷AM 投稿日:2001年11月30日(金)14時45分26秒
 「… っちん… ごっちん… !!」<BR>
 「… や… い…や… …あ… 」<BR>
<BR>
 私は乱暴に肩を揺すられて急激な覚醒を強いられた。<BR>
 でも、それで良かった。 それであの「悪夢」から逃れることができたのだから。<BR><BR>
<BR>
 「…う… は…あ… はあ…」<BR>
<BR>
 それでも、鳩尾の鈍痛と、こみあげてくる吐き気に、私は苦痛の声をあげずには<BR>
いられなかった。<BR>
27 名前:この回は後藤さん視点 投稿日:2001年11月30日(金)14時47分36秒
「 …… 」

 そっと私を抱きしめてくれる両腕。
暖かい腕。 暖かい胸。 ひとのぬくもり。
 そのぬくもりは心地良くて、私はぬくもりの中に自分を委ねる。

 「…落ち着いた…?」 
 「…うん…」

 こんな時は優しい。 いつもは聖人君子面した、私の独裁者…
28 名前:車地雷AM 投稿日:2001年11月30日(金)14時49分17秒
  初めの頃。 
 私は吉澤ひとみに対して、良い感情を持ってはいなかった。
 
 そこそこ礼儀正しくて、誰にでもフツーに愛想が良くて、優しくて、だから吉澤ひとみはみんなから好かれていた。 孤立した私とは対照的な、同い年の人間。
29 名前:この回は後藤さん視点 投稿日:2001年11月30日(金)15時01分59秒
 だけど、何故だろうか。 私はみんなから好かれる吉澤ひとみの
それが彼女の「偽りの姿」であることに気付いていた。 
 鼻持ちならない「偽善者」。 
 そしてその姿に嫌悪を抱かずにいられなかった。

 彼女はメンバーの誰も信じてはいない。
 誰にでも優しいということは、裏を返せばその人間がどうでもいいことでもある。
 その人間たちが、自分の感情を何ら動かすことがない、自分の存在を何ら脅かすことがない、卑小な存在であることへの、尊大さ、優越感。
 誰も信じず、どこか見下している …… それは、私も同じなのに、私は吉澤ひとみのようにみんなから好かれる存在ではない。

  私は吉澤ひとみのことが、きらいだった。
30 名前:この回は後藤さん視点 投稿日:2001年11月30日(金)15時03分43秒
 だけど、どこかで、その姿を追っていて、妙に惹きつけられて。

 そんな私の矛盾した感情を知ってか知らずか、当初から何かと私を
かまうその存在は、私をひどく不安にさせた。
 「切れ者」な吉澤ひとみが、既に娘。内で孤立していた私に、
必要以上に近付いてくる理由が、見当つかない。
 私の存在にメリットもあるだろう。
 だが、偽善を徹底して、善にいたらんとする「吉澤ひとみ」のスタイルを貫くつもりなら、必要以上に私に関わることは、デメリットだ。
31 名前:この回は後藤さん視点 投稿日:2001年11月30日(金)15時04分28秒
 他のメンバーに対するように、優しくて、紳士的に接してきて。
 どんな辛辣な態度をこっちがとっても、微笑んでいて。 
 なにもかも、見通しているかのように。
 
 私もまた、他のメンバーといっしょなのだろうか。
 見下された、卑小な存在なのだろう?
 じゃあ、どうして、そんなにかまってくれるのだろう?
 
  私は、私をひどく不安にさせる吉澤ひとみが、きらいだった。
32 名前:この回は後藤さん視点 投稿日:2001年11月30日(金)15時06分00秒

「ごめんね。なんか、いつも起こしちゃって」
 「んー? そー思うんだったらさぁ…」

 …… なんか、ヤな予感…。

 「キスしてよ。ごっちんのほうから」
 「な… や、やだよ…そんなの…」
 「なんで?」
 「恥ずかしいもん…」
 「はあ? いっつもしてんじゃん、キスなんて」
 「それは…! よっすぃーが、無理矢理…」

 いつもは聖人君子面をした、私の独裁者。
 暗くて、よくその表情をうかがい知ることはできないけれど、今、
彼女は私の反応をニヤけながら楽しんでいるに違いない。 
私がそういった行為に不慣れなことを知ってるのに、彼女はそうして
私をからかい、翻弄する。
33 名前:この回は後藤さん視点 投稿日:2001年11月30日(金)15時07分48秒
 私は、私の心を翻弄する、吉澤ひとみがきらいだった。

 始めてキスされた時。
 あの時の彼女は「いつもの吉澤ひとみ」でなかった。 自身の苛立ちを隠すこともなく不敵に笑って。
 それはまぎれもなく、彼女の本当の姿。

 だから、私はとまどった。
 キスという行為の持つ、その意味は、吉澤ひとみの中ではどんな
意味を持つのか?
 苛立ちの感情のはけ口? 
 嫌がらせ?
 
 それとも… 
  …愛情表現…?

  私は、とまどった。
 自分から湧き上がってきた感情に。
  どんな意味でも悲しくなる自分の感情に。

34 名前:この回は後藤さん視点 投稿日:2001年11月30日(金)15時12分51秒

 暗闇に慣れた私の目が、彼女の表情をとらえた。
 まるでギリシャ彫刻を彷彿させる造形美に浮かんだ微笑みは、
とても綺麗で。
 そして、その微笑みが、いつもメンバーに向けている、どこか
見下した微笑みと違うことに安堵して。
35 名前:この回は後藤さん視点 投稿日:2001年11月30日(金)15時14分37秒
 あの時、私はとまどっていた。
 この世界に入ってきた時、私は1人きりだった。
 何も知らず、まだ力もなく、支えや救いを必要としていた頃、私に
手をさしのべてくれる人間はいなかった。
 そして、たったひとつの信頼も踏みにじられて、私は決心したはず
なのに。
  私は誰も愛さない。  私は誰にも支配されない。
  私は1人で生きていく。 今更、誰の手もいらない。
 そう誓ったはずなのに。
36 名前:この回は後藤さん視点 投稿日:2001年11月30日(金)15時15分47秒
 私は静かに、微笑んでいる彼女の唇に、自分の唇を重ね合わせた。
 目の前で、驚きを隠せないその姿に、ちょっと勝利者の気分。

 「… これでいいよね。 … だから…」
 …… 好きでいていい?

 それを言葉にすることはできなかったけれど。
 
 孤独を寂しいと気付かせたのは、吉澤ひとみのせい。
 私がひどく不安になるのは、吉澤ひとみが好きだから。
 
 「だから…何?」
 「ううん。何でもない。寝る」
 「はあ…? ヘンなごっちん」

 眠たそうに、欠伸をして、でも、私を再び抱き寄せて、優しく頭を
撫でてくれて。



 くすぐったいような、そして切なさ。

 幸せ。 幸せだよ、私。 
 でも、こわい。
 よっすぃーは知らない。 私の「悪夢」の正体を。

 神様… どうか後少しだけ、この幸せを続けさせてください… 
37 名前:車地雷AM 投稿日:2001年11月30日(金)15時29分07秒
> 26 失敗。 猛烈にかっこ悪ー。(> <)

 … というわけで、この回はおしまい。かなり一気に内面を掘り下げて書いたので、読みにくかったかもしれません。m(_ _)m
 書いてて思ったけど、この物語の2人は結構、インテリジェンスなキャラになってるんで、萌えれないかもしれない。
 次回のエピソードはエロありで、ちょい甘め。

>25 名無し読者 さん
  どうもありがとうございます。 
  変則的な時間軸で進む作品ですが、ついてきていただけると幸いです。
38 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月30日(金)17時46分09秒
いえいえ。淡々としたテンポに萌え心がくすぐられます
二人の微妙な関係性に早くもすっかり虜です。

ストーリーも気になるところ。
次回更新も期待してます。
39 名前:踊り子 投稿日:2001年11月30日(金)18時35分25秒
更新早めにお願いします。
すごい!はまりました。大変でしょうが、長編希望です。
40 名前:バービー 投稿日:2001年12月01日(土)21時47分22秒
初めて読んだよしごま作品が私の物だったんですか?これは何と光栄な・・
有り難うございます、あんなヘボ文章読んで頂けていると聞いただけで
嬉しいです(w これからも宜しくお願いいたしますね(w
すごい作者さんのこの小説は引き込まれるものがあります。
次回の甘エロな(w エピソードにめちゃめちゃ期待っっ!!!
41 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月06日(木)15時13分22秒
マターリ続きマテマス。。。

期待してます〜
42 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月07日(金)03時23分50秒
続き期待!
43 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月07日(金)03時57分08秒
 今回の更新は「Together Clips」発売記念につき急遽、こんな話を
書いてみました。  なにせ時間かけて書いてないからちょっと構成とか、描写が稚拙ですけれど。
 DVDの画質に関しては、すきずきだと思いますので、あまり深く受け
取らないでくださいね。

>>38 名無し読者さん
ありがとうございます。 淡々としすぎてるかもしれない、とも思い
 つつ、ネット上の読み物なので読みやすくていいかなあ、と
 自己弁護。(苦笑)

>>39  踊り子 さん
 更新は、週に1回のペースでは、していく予定です。
 長編には…なると思います。これからも2人には色々波乱があります ので。

>>40 バービー さん
 今度、通りすがりの1読者として感想書きに行きます。
  そちらの物語の市井さんは矢口さんのところに納まっているようで、 なんか個人的に安心したりして。

>>40 , 41 の名無し読者さん 2名
   …というわけで、以下から続きです。どうぞ。 
44 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月07日(金)03時57分54秒
2001204.


『… まったくまったくまったく やる気が無いって… 』

 「… かわいーなー、ごっちん…」

 花畑の中に学校の机があって、手を挙げるごっちん… 可愛くて思わず声に出して呟いてしまったりして。

 私が今、何をしているのかというと…
45 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月07日(金)03時58分36秒
 今度、発売されるグループ内ユニットのPVを集めたDVDの製品バージョンを見ていたりする。
 今回はオーサリングにちょっとは時間かけてるのかな?
 前回のシャッフルユニットの時のDVDなんて、肌の質感つぶれまくってて…。 (でも、曲が曲だから、あえてビビットな色調にしたのかもしれないけどね。 それはすきずきというものなのかもしれない。)
 翌日、本物に会った時、思わずベタベタ触りまくって怒られたっけ
なぁ…
( 「ああ…やっぱり本物っていいなぁ…」 
「ちょ、ちょっとよっすぃー、仕事場でベタベタしないでって言った   じゃん…!」 )
46 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月07日(金)03時59分18秒
そりゃあ、まあ、私みたく、プロジェクターにつないで、100インチのスクリーンで再生するような酔狂な輩なんて、そうそういないだろう
から、そーゆー労力はかけるだけ無駄というものだろうけど。

「よっすぃー、ただいまー」
「げ… ごっちん…」
47 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月07日(金)04時00分18秒
私はあわててリモコンの停止ボタンを押した… 
 別にやましいことをしてるわけでも、やましいものを見ているわけ
でもないんだけど…
 … さすがに5本の大きなスピーカーで、映画館さながらの状況で、
自分達のPVを見ているというのは…… ひかれるかもしれない…と
思ったりして。

「き…今日は家、帰るんじゃなかったっけ…?」

 ちょっと動揺、隠せない私。

「遅くなったらそうするつもりだったんだけどねー。 なんか早く
終わったから、こっちに来ちゃった」
48 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月07日(金)04時01分08秒

 ”こっち”というのは、ちなみに私が都心に借りているマンションのこと。
 いくら埼玉が関東近県だからって、都心から帰っているとそれなりに時間はかかる。 娘。の仕事に時間の余裕なんてないのだから、
いちいち真面目に帰ってたら身がもたない。
  
「なに見てたの?」
「え… えーっと…」

 こっちが答えに窮している間に、ごっちんはつかつかと歩み寄って
きて……さっさとDVDプレーヤー本体の再生ボタンを押してしまう。
49 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月07日(金)04時03分03秒

  『… なんにもなんにもなんにも 手につかない …』

 スクリーンに映し出される、花畑の向こうから手を振って駆けてくる私の姿。

「…このよっすぃーって大嘘つきだよね」
「…ほっとけ」
「写真集のよっすぃーもすっごい嘘つきだけどね」

 … だから、ほっとけって…。
50 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月07日(金)04時04分15秒
 
  『… あなたに会って 変わった …』

スローモーションで顔をあげるスクリーンの中の私を一瞥して…

「ホント、変わったと思うよ… 私、よっすぃーと会って」

 … と、彼女はつぶやく。

「この頃って…私、よっすぃーのことばっかり気になっててさ…。
 あんな…ことあっても…よっすぃーの考えてること、今イチつかめな かったから… 。 この歌みたいに正直に好きって言えたらなって
 思ってて… 」
「今は?」
「え?」
「今は…?言える?」

 スクリーンの光に照らし出される彼女の、少しとまどった顔。

  『… 正直に言うわ「I Love You」 …』

 だけど、すぐに真っ直ぐに見つめてくる、素直な彼女のまなざし。

「…好き…よっすぃー…大好き…」
51 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月07日(金)04時04分57秒

 彼女の手をとって、引き寄せる。
 ゆっくりと、互いの顔を近づけていく… そのままどちらともなく、唇を重ね合わせて…。
 しっとりと濡れた、柔らかな彼女の唇。  その感触に酔いながら、私は彼女の上着を1つ1つ脱がせていく。
 外気に素肌をさらされて、少し強張る、まだ冷えた身体。 
 私はその身体を、ゆっくりとソファに押し倒すと、首に、鎖骨に、
舌を這わせる。

 「…はぁ… ん… 」

 舌をつけるたびに、彼女はかすかにに声を震わせる。
 次第に熱を帯びてくる、冷たかった身体。 
 甘い、匂い。 彼女の肌の、かすかな味…

 「やぁ ん…っ!」

 胸の突起を口に含み、吸い上げた時、びくん、と彼女の身体が
仰け反った。
 
 好きだから  ひたすら好きだから
 もっと狂わせたい ひとつになりたい…

52 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月07日(金)04時06分24秒
 「ね…よっすぃー…」
 「ん…?」

 青白い光で満たされた部屋。
 スピーカーから流れてくるのは、泣き出しそうな、後藤真希の歌声。
 そして、私の腕の中にいるのは、本物の彼女。

 「この曲のPV撮ってた時ね…」

 私は視線をスクリーンのほうに向ける。

 薄曇りの空、広大な砂漠に、ひとりでたたずんでいる後藤真希の姿。

 「あとで合成する風景の資料で持ってきてたんだと思うんだけど。
  サハラ砂漠の写真集があったんだよね…」
 「ふーん…」
 「いつか… 忙しくなくなったら、行きたいなーって…」

  ためらいがちにしゃべる彼女と視線が交わる。

 「その時は私もいっしょに行っていい?」

 耳元でささやくと、彼女のしなやかな腕が首に巻きついてくる。

 「うん…いっしょに行こ。 約束だからね」

 
53 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月09日(日)05時40分40秒
これ最近一番気になる
54 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月09日(日)17時29分14秒
エロシーンが、ちょっとだったのに萌えた!もっと希望(w
55 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月13日(木)18時37分15秒
(・∀・)イイ! 萌え!

エロい展開も続きも期待です。
頑張って。
56 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月14日(金)05時17分17秒
200401110.

「起きてよー、ごっちん」

 私はバッグを抱え込むようにして眠りこけているごっちんの肩を揺すった。

「… んー? あ、よっすぃー、早いねー」

 本気で眠りこんでいたらしい彼女は、まだ眠そうに、薄目でこちらを見ている。

「早くない。ったく、マジ寝してさー。もう会計すましといたから
 帰るよ」
「え…うそ…。名前呼ばれてたんだ…」
  
 彼女が定期的に通う大学病院は、とにかく途方もなく規模が大きい
 紹介状なしに受診できないにもかかわらず、患者はたくさん通って
きていて、会計ひとつとっても40分くらい待つのが「普通」なわけで
57 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月14日(金)05時18分16秒
「よく寝れるねー。私、病院って嫌いだから、とても寝る気に
 ならないけど」」
「んー。私、ほら、子供の時、入院してたじゃん? だから慣れてん
 だよね、病院の空気」

 彼女が幼少の頃、入院していた話は以前、聞いたことがある。
 その入院が、彼女と家族との溝を作ってしまったことも。
58 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月14日(金)05時19分10秒
 幼い頃、彼女は難病を患った。  
 それをどんなことをしても治療したいと思うのは親として、当然の
ことだ。 別に「特別扱い」しているわけじゃない。

 入院の間、親類に預けられていた彼女の姉弟たちが、言いたいことも言えず、両親に甘えられなかったことが不満でも、それは彼女のせい
じゃない。

 病気は奇跡的に完治したが、長期にわたる入院費、手術費が家計を
圧迫し、そのため、彼女の父親が無理をして仕事をして、その結果、
死亡したとしても、それは彼女のせいじゃない。

 本人の意思とは無関係に生まれた悪意や嫉妬や憎悪が、彼女を追い
詰め、傷つける。   
  それは、娘。にいたときも同じで。
 私も… 私もまた、彼女を傷つけた1人である事実が、今更ながら
重くのしかかる。 

「… ねー、よっすぃー」

 私の回想は、今の彼女の呼びかけに中断された。
59 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月14日(金)05時20分41秒

「今日、車で来てるんでしょ?」
「あ、うん」
「じゃあさ、これから何処か行こうよ。 てきとーに遠くて近い所」
「いいけど… 身体の調子はいいの? アレ、打ったんでしょ?
 抗がん剤、気分悪くなるヤツ」

 「自宅療養」にきりかえてからも、彼女は2ヶ月に1回は大学病院に
通っている。
 完全に治すことはできないまでも、1日でも長く、健康な状態で日々を過ごすために。 
 彼女に投与されている抗がん剤は、日本では承認されていない。
 …と言っても、別に怪しい薬じゃなくて、すでに欧米では広く使われて、その効果も確認されているやつだ。
 ただ、承認されてない薬は、病院は使いたがらない。 
 基本的に病院という施設は、保険が通る医療行為しかできない
わけで。  それ意外のことをやる場合、全額病院が負担することになり、患者に請求することができないのだ。 だから、未承認の薬は使えば使うほど、病院が赤字になってしまう。 そういうわけで、普通の病院では、いかに効果があろうとも、そーゆー薬は出してくれない。
 
 じゃあ、彼女はどうして、その薬を使った治療ができるのか?
というと… いわゆる「超法規的手段」ってやつ? そこまで大仰でもないか。 つまりは、「コネ」。
60 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月14日(金)05時21分43秒
 私は「吉澤」の一族のことは嫌いだ。 
 一族の「模範的な道を歩んだ」人たちが築きあげた人間関係、地位や財力を、私は憎んでいるし、軽蔑もしているけれど。
 ……それが後藤真希をこの世にとどめるために利用できるものなら、話は別だ。 
 ただの自己満足かもしれないけれど、それでもやっぱり私は、
1日でも長く、彼女といっしょにいたい。それが本音。 
 
「あれ?言ってなかったっけ? 私、動注療法受けてるから、そんなに 気分悪くならないって」
「…そうだっけ… あ、でもこの前、めちゃめちゃ気分悪そうにして
 なかった?」
「う… だけどさ、気分悪くなるのは何処に居ても変わんないよ?」
「うーん…それはまあ、そうだけど…」

 筋の通ってるような、通ってないような彼女の理屈に半ば押しきられるような形で、私はその望みを承諾することにした。

 …… まあ、最近は都内から出てないから、気分転換に、何処かに小 旅行もいいかな、って思ったのもあるんだけどね。
61 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月14日(金)05時22分48秒


「ひ…ぁ…」

 唇で彼女の耳を嬲る。 耳朶を甘く噛み、ピアスホールを舐め上げてそれから輪郭を緩く辿り、舌先を耳の中に入れて掻き回す。

 「…や…あ…」

    ばちゃり 

 腕の中から逃れようとして、派手な水音があがる。
 でも。 逃れることなんて出来ない。 逃すはずがない。
 左腕を彼女の腰に回して抱き寄せ、少し強引に口付ける……

62 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月14日(金)05時24分30秒


 …… あれから…。
「てきとーに遠くて近い所」と行こうってことになって、それから温泉に行こう、ってことになった。
 箱根は定番すぎるんで、湯河原(ここも定番ではあるんだけど)に
やってきた私たち。
 秋のみごろも終わり、本格的な冬でもないこの時期だから、そこそこ高級な旅館も予約なしでとれたりする。
 部屋には露天風呂がついてて、扉を開けると、そこは外。
 もちろん、周りは塀で覆われているけれど、空を見上げると、空!みたいな感じなんだよね。

 …… はじめは…。
 抱っことか、キスで終わろうと…思ってた…んだけど…。

 湯煙のせいもあるだろう。 夜空と月の光りのせいもあるだろう。
 不意に、彼女が消えていきそうに思えて。
63 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月14日(金)05時29分13秒
 「ん…んん…」

 水音をたてて、絡み合う舌。 
そして、そのまま空いた右の手で彼女の胸の突起を探り当てる。 
指の腹できつく擦ると、たちまち硬く尖ってくる。

 「…ふ…ぅっ…ん…」

 胸をいじっていた手を更に下へ滑らせて、秘裂に指を這わすと、彼女はくぐもった喘ぎ声を漏らす。
 そして、彼女の中に、指を突き入れる。 その瞬間、苦しげに、ギュッと目をつぶって呻く。  そのつらそうな表情が、私に猛々しい愉悦を感じさせる。 二の腕にギリリを突き立てられた彼女の爪のもたらす痛みでさえ、今の私には心地良い。

 「あっ…んん……っ」

 ゆっくりと指を動かすと、彼女の唇から掠れた声が漏れる。
鎖骨を強く吸い、ひときわ深く、指を突き立てると、苦しげだった声が悲鳴にも似た嬌声へと変わる。

 「はっ…ぅあああっ!!」

 反り返った背と。 目の前にさらされた、白い喉。 
その喉に舌をゆっくりと這わせる。 二の腕に食い込んだ爪の痛みが、更に増すけれど。私は彼女の背中をしっかりと抱いて、激しく攻め続ける。

 「…ごっちん…」

 耳に唇を押し当てて、囁いてみる。

 「あぁ…はっ…よっすぃ… ん…も…もう…」
 「…真希…」

 もう一度、名前を呼んで、耳朶を噛む。

 「は…うっ あ、ああぁっ…!!」

  しなやかに身体をのけ反らして… 
64 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月14日(金)05時30分08秒


 「……よっすぃーのばかぁ…」

 そう罵る声も少し力ない。

 「私、病人なんだからねー。 それも重病人なのにぃ」
 「ごめん…」

 謝るより他になし。

 そりゃあ…風呂の中であんなことをすれば…のぼせるにきまってる。私ものぼせたんだけど、本当は今すぐにでも寝転びたいけど、そんなことは言ってられない。
 タオルを再び水につけなおして、そっと額に置く。 うちわなんて季節外れな物体はないから、雑誌を代わりにしてあおぐ。
 
65 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月14日(金)05時31分09秒
 ぐったりとした彼女。
 私の中で、先刻、感じた不安が甦る。 消えていきそうな彼女への。 …いや、間違いなく、いつかは私の前から、彼女は消えてしまう。
その確定された未来とは裏腹に、私の想いは少しも廃れることがない。 好きで、好きで、たまらなくて、飽くことのないその想いは、
時としてコントロールできない衝動を産む。 そして、その制御不可能の衝動は、結果として彼女を傷つけ、疲弊させている、後悔と不安。

 「ホント… ごめんね…」

  声が、 ふるえる。 視界が、少し、ゆらぐ。

 「… バカ…」

 不意に、首に火照った両腕の感触。

 「そんな顔…しないでよ……」

 両腕に力がこもる。

 「好きだよぉ…よっすぃー…」

 泣いている彼女を、力いっぱい、抱きしめ返すしか、なかった。
 
 「私も…。好きだよ… ごっちん…ずっと…ずっと…」

 確定された未来に、不安を感じているのは、私だけじゃない。
 いつか、訪れる別離が。 
 あまりにも、かなしい。
66 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月14日(金)05時59分42秒
 訂正 56の冒頭 誤:「200401110.」 → 正:「20041110.」

 えーっと、気付いているかもしれませんが、各話の冒頭の数字は、その話があった西暦と日付だったりします。 
 というわけで、この回はこれで終了。  うーん、なんか甘エロとか予告しておきながら、あらためて見てみると…全然、甘くないじゃん。 甘いのを期待していた方がいたら、すみません。

 53 名無し読者さん
 ”一番気になる”なんて言われると… 嬉しすぎるじゃないですか。

 54 の 名無し読者さん
 55 の 名無し読者さん
  今回はエロ多めに書いてみたんですが。どんなものでしょう。
67 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月14日(金)23時58分59秒
こんな作品があるなんていままで知りませんでした。
硬質な文体がイイです。
続き期待してます。
68 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月15日(土)19時07分39秒
この作品すきです。
期待しています。
69 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月21日(金)04時06分07秒
時期が時期だけにクリスマスネタ(勿論エロありで)、やりたいんだけど、よしごまの諸先輩方とネタ被ったら申し訳ないし…。
(…しかし銀板の作者さんは感想レス返しが大変そうだ… とか言いながら、この前自分も感想書き込んだけど)
 というわけで、24日頃までしばし静観。
70 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月21日(金)07時56分56秒
続き待ってます。。。
71 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月21日(金)13時18分08秒
うぉぉ・・・そんなもったいぶんないでください(w
マイペースで続きキボンヌ!
72 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月22日(土)05時34分05秒
今すぐにでも続きを…!
73 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月26日(水)07時21分44秒
20011224.

世間はクリスマスだかイブだかで浮かれている今日というこの日。

しかし、多忙を極めるモーニング娘。の私たちは、当然、そんな日
でも仕事。  番組の企画でクリスマスものをやったりはしたけど、
あくまでも仕事は仕事。それなりに楽しいけど、それなりでしかない。
 大体、今日って、クリスマスだっけ?イブだっけ?
74 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月26日(水)07時25分00秒
「ねー、ごっちん」
「んー?」
「今日ってさぁ、クリスマスだっけ?イヴだっけ?」
「今日はクリスマスイヴ。でもって明日がクリスマス」
「ふーん。そうだったんだ。ありがと」

 なんとも年頃の少女の会話にしては色気ない…。 
 でもそれは仕方のない話。
 ここが楽屋である以上。
 仕事場では、休憩であろうとも、ベタベタしないのが彼女のポリシーである以上。

 いや、とりあえず、今日の仕事は終わってるんだけど、終電の過ぎて少しの時間帯は混んでるから、もう少ししてから帰ろうということになったわけで。
 となりで彼女は適当に雑誌を読みながら、スタッフがさし入れてくれたファーストフード店で売っているビスケットを食べている…
75 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月26日(水)07時26分26秒
「…それってさぁ、メイプルシロップかけて食べんじゃない?」
「うん。 でもあれ、手についたらベタベタするから。やだ」

 …それは、あとで手を洗えば良いのではないでしょうか。

と思うんだけど、多分、面倒なんだろう。
 料理を作るのも、下準備やらはマメにするのに、後片付けはしない。 部屋がいつも散らかっているのも、彼女に言わせれば、物が常に何処にあるのか把握しやすい、らしいし。
 後藤真希独特の合理主義、というやつだろうか。
76 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月26日(水)07時27分25秒
 それにしても今日とか明日とかいう日は。
…世間一般の恋人たちは盛り上がるんだろうなぁ。 
 祭日とか休日とか関係なく「仕事」がある非日常な生活が始まった
のは、たかだか1年と半年くらいのものだけど、普通の学生であった頃が遠い昔のことのように思える。 
 その頃の私って、この時期、何してたっけ?
 昨年は?

 …昨年はすでにこの非日常な日々が始まっていて……
 … そうだ。 昨年は……。
 我ながら、思い出してヤブヘビだった、と後悔する。
77 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月26日(水)07時34分01秒
本当は、単発でクリスマスネタを書こうと思ったんだけど、書いてるうちに変更。 思ったより本筋に絡む内容になったんで、長くなりました。と、いうわけで、今日は前フリ。 続きは明日。

 遅ればせながらモーたいのSPを見たが、パジャマたくさんもらった発言に卒倒しそうになった…。
 
 雑談スレで当作品を推して(?)くれた名無しさん。
どうもありがとう。
 「RPG幻想辞典」の日本編は持ってる、私。 私は同じソフトバンク
Beep発の「魔法王国シムルグルド」が未だ欲しいんだけどね。
……ここで書くことじゃないか。
78 名前:通りすがりの地雷 投稿日:2001年12月27日(木)05時00分19秒
20001225.

世間はクリスマスだかイヴだかで浮かれている今日というこの日。

 しかし多忙を極めるモーニング娘。に加入した私は当然、そんな日でも仕事。
 もっとも、今日は、13日に発売されたニューシングルのリリース祝いと、今日で年内の撮影が終了した番組の打ち上げを兼ねて20時頃からホテルでパーティーが行われている。
79 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月27日(木)05時01分14秒
まだ新しいメンバーとして加入して1年も経ってない私は、当然、
「来年もよろしくおねがいします」なんて口上を、テレビ局やら
レコード会社やらの偉い方々に述べるために、会場内をマネージャーにあちこち連れ回されるわけで。
 ようやく、そういったやり取りから解放された頃、当たり前だが
私は後藤真希の姿を見失ってしまっていた。
 
 すでにパーティーが始まってから2時間ほど経ってしまっている。
 多分、とっくの昔に、彼女はこの会場から引き上げてしまっているだろう。

(…まだ早い時間だしなぁ… 家帰ったんだろうなぁ…)

 私はエレベーターの中で、あきらめの溜息をついた。
80 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月27日(木)05時03分14秒
一応、明日も仕事はあるし、だから今日はこのホテルにそのまま宿泊することになっている。
 天の采配、というのは怖いもので、今日の部屋割りで私と後藤真希は同室… なんだが、この時期にこの采配は、全然、ありがたくない。

 …… 一ヶ月ほど前。
 衝動的に、キスしてしまった。 遊びとか、ふざけ、とかの言い訳もできない、ディープなやつ。

 彼女に対する、私の感情が、恋愛感情だということを確信してからもその感情は隠してきた。 
 少しづつ、私を信頼してくれて、心を開きつつあった彼女。
 何かに傷つけられて、怯えている彼女に対して、その感情を
打ち明けることは、今は得策じゃないと思っていた。

 …だけど。 やっぱり恋は理屈じゃないってことだろーか。
 頭のなかでいくら冷静な判断を考えていても、感情には嘘を
付き通せない。
81 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月27日(木)05時04分58秒
 ただ、少し意外なのは、それからの彼女の私に対する態度。
 怒るわけでもなく、あからさまに避けるわけでもなく。
 こっちはこっちで、何事もないように接すると、時々、寂しそうな顔をする。 でも、微妙に私のことを避ける。

 その微妙に避ける、というのはつまり…

 今日のように私が挨拶回りをしている間、特に長居の必要もない
彼女は自然の行動として会場を出ることができるということ。 
 都内に実家のある彼女が、ホテルで泊まるのを辞めて帰ったとしてもそれは全然、自然な行動だということ。


 私は少し重い扉を押し開けて、部屋の中へ入った。
82 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月27日(木)05時06分23秒
真っ暗。
 … あれ?おかしいな…。 
 フツー、ホテルの部屋って始めに入室した時はどこか電気がついてるはずなんだけど。
 
 手探りで入り口近くのスイッチを探し出し、ようやく部屋はほのかに明るくなる。


 … 部屋が真っ暗だった時点で、予想はついてたんだけれど。
 でも、しかし、それでも予想外な展開がなされていることに、私はいつになく動揺している。

 後藤真希は、帰っていなかった。
83 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月27日(木)05時09分02秒
 彼女は窓側のベッドで眠っていた。

 …… 困った…これは、本当に予想外すぎる展開だ… 
やっぱりこの天の采配は、ありがたくなさすぎる……

 別に。 疲れてるし。 自分のベッドにまっすぐ向かえば
いいじゃないか……。

 …と考えていられるのは頭のなかだけで。 
 身体は自然と彼女の横たわるベッドへと近づいていく。

 うずくまるようにして眠っている彼女。 綺麗な横顔。
 
 …どうしよう。
 自然と鼓動が早くなっていく自分を感じる。

 どうしよう。 どうしても、触れてみたい。 彼女に。

 そっと、右手で彼女の柔らかな頬の線をなぞる。
84 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月27日(木)05時10分53秒
「……ん…」

 吐息と共に、彼女は仰向けに寝返りを打つ。
 寝返りの際に、乱れた長い髪が、枕に散らばる。

 鼓動はますます早くなっていく。
 どうしようもない欲望に、身体が勝手に動き出す。
 
 彼女のかすかな寝息を間近に感じて。 私はそっと唇をおとした。

 何度も、角度をかえて、柔らかく唇をついばむと、少し乾燥していた唇が、いつしかしっとりと潤っていった。 歯列を割って、舌を差し入れて口内を探る。

「ん…ん…」

 …… あ  起きたかな……?
 塞いでいる口元から、少し苦しげな吐息が聞こえてきた。
 …でも、いいや。
 私は彼女の口内を探ることをやめなかった。 八重歯をなぞり、触れた彼女の舌をしなやかに絡めとる。

「……っは……」

 唇を離して、少し顔を上げると、少し乱れた呼吸で私を見上げる彼女の目が…。

「…な…に…してる…の…」
85 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月27日(木)05時12分27秒
 その声は震えていた。 とまどいと怯えが、その目から見てとれる。
「なに…って? わからないんだ?」

 私はからかうように、ニヤリと笑った。

「…!何で…!? そ…んなこと! するの…!?」
「寝てたから」
「そんなの…! 全然、理由になってな……!」

 起き上がろうとする彼女のうなじに手を差し入れて、思いきり引き
寄せて、その唇を塞ぐ。
 無理矢理、歯の間をこじ開けて舌を入れると、反射的に逃げようと
する彼女の舌を執拗に絡め取り、口内を蹂躙する。

「…ん…く…ぅ…」

 なんとか私から離れようとして、彼女は必死で体と体の間に両腕を
割り込ませようとする。
 
 …ふーん。 あくまでも抵抗するつもりなんだ…。

 いったん、彼女を解放する。 荒い息を吐いて、ぜいぜいと喉を鳴らして、怯えた目で見つめる彼女。 
 私はわざとゆっくりとした動作で、ベッドの上に乗った。

「や…だ… 来ないで…」
「嫌だったら逃げればいいじゃん…」
 
86 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月27日(木)22時53分53秒
やばい!超萌えー!!
作者さん早く続きを…!!
87 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月29日(土)01時59分04秒
 少しづつ、近付くたびに彼女はビクッと、後ずさる。
 けれど、後ずさる先はヘッドボードで遮られて、逃げ場を求めて
その瞳が、キョロキョロとせわしく動き回る。

 「…逃げないワケ?」
 「…… っ!」

 あからさまな私の挑発。
 彼女は右手を振り上げて、殴りかかろうとしてくる。 
 けれど、それはとても予想通りの行動で、私は難なくその手を
掴み、手首をきつく握る。

 「痛…いっ…!離して! 離してよぅ…!」

 答えるかわりに、彼女の腕を後ろに回して、その両腕を片手で
拘束する。 浴衣の帯を引き抜いて、それで彼女の両手首を縛り
あげた。
88 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月29日(土)01時59分58秒
 別に。 こんなことをするのは始めてなのに。
 妙に慣れた手つきで、そうした行為を淡々と遂行する自分が、
自分でないみたいに思える。 
 冷淡な狂気と、凶暴な意識つき動かされるままに、私は後ろから
彼女のほっそりとした身体を抱きしめて、うなじに舌を這わせる。 
首筋を嬲るように舐め上げて。 吸い上げて。 耳朶を噛んで。
耳の中に舌を差し入れて。 淫らな音をたてて掻き回すと、彼女は
悲鳴をあげた。
89 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月29日(土)02時01分13秒
 「ひあ…ぁ…や…だぁ…やめ…」

 首を振って、必死になって身体を揺する彼女の望み通り、
抱きしめていた腕をほどくと、バランスを失って呆気なく
ベッドの上に転がった。 
前のめりになって倒れている彼女の髪を乱暴に掴み、再び唇を貪る。 貪りながら、空いた手で、浴衣を引きずりおろし、剥き出しに
なったその肌を探る。
首筋を。肩を。胸元を。

 「や…だ…やめて…」
 
 彼女の目から大粒の涙が流れて、頬を伝ってこぼれ落ちていく。
90 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月29日(土)02時02分33秒
「こんな…の…!やだ…やだよぅ…よっすぃー…」

 涙と共にこぼれ出る哀願の言葉。

 …けど、そいつは逆効果だよ…。

 名前を呼ばれて、私の苛虐的な心理はかえって煽られたような
ものだ…。  
 ああ、でも、なんかの犯罪心理学の本じゃ、強姦殺人者が被害者に
名前を呼ばれたら、親近感が湧いて殺す気が失せた、なんて書いて
あったような…。
91 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月29日(土)02時04分14秒
 脈絡もない思考と思考が、頭の中を奔流する。 
  私は何をしているのだろう…
  私は後藤真希を愛している…
  私は彼女が欲しい…
  私は何をしているのだろう…
  私は彼女を愛している…
  私はその彼女を、犯している…
  私は何をしているのだろう…
  私は……

 思考の奔流を嘲笑うかのように、本能的な部分の私は、彼女の胸の
突起を口に含んだ。 ねっとりと、執拗に舐めあげ、そして軽く歯を
立てる。
 
 「ひぃ…あぁ…!」

 髪を掴まれたまま、その身体がびくん、と跳ねた。
92 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月29日(土)02時05分21秒
「ぁ…あ…も…たすけ…て…」

 …… たすけて ……?

 「おねがい…だから… たすけて… だれ…か…」

    ガツン

 狂気と思考で氾濫するアタマに そのつぶやきは強烈な痛打と
なって叩いた。
 
93 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月29日(土)02時06分40秒
怯えた顔をして、涙を流している彼女。 
 その身体は小刻みに震えている。
 けど、その見開かれた目は私を見てはいない。 
 痛々しく、誰かに助けを求めるそのつぶやきを聞いたのは、
始めてじゃなかったのに。

 「ごめん…」

 私は両手首の戒めを解いて、浴衣を着せなおした。

 「ごめんね…」

 謝ったところで…。 心のなかで自嘲する。
 許されるはずはなく。

 すすり泣く彼女を後にして、私は部屋を出た。
94 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月29日(土)02時30分22秒
うーん。思ったより長くなってます。クリスマス編。単発ものをやるはずだったのに。今、何日よ?(苦笑) もう年末ですが、ひょっとしたら正月まで入りこむかもしれませんが、このままクリスマス編終わるまで続行しますので。

 67 名無し読者 さん
  実は一人称で小説書くのは始めてなので、どうも硬質な文体に
 なりがち…。  

 68 名無しさん
  このところの更新は痛いし、エロいですけど。 甘いのが好き
  でしたら、ごめんなさい。
 
 70 名無し読者さん
 71 名無し読者さん
 72 名無し読者さん
 86 名無しさん
  クリスマス編終わるまで、今日からは毎日更新する予定です。
95 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月29日(土)03時59分39秒
インテリっぽい吉澤萌え(w
続き期待。
96 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月29日(土)20時23分07秒
マジはまる!ここのエロ最高!!
97 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月30日(日)01時30分46秒
20001225_02.

「帰らなきゃ…」

 まだ、この時間なら家に戻る交通手段は在る…
 …荷物を部屋に置き忘れた… 
 どうでもいいや… もう。
 ああ、でも、なんか。
 体を動かすのが、とてもだるい。

 ドアにもたれかかったまま、ずるずると私は座りこんだ。
98 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月30日(日)01時32分24秒
 ホテルの薄暗い照明を、ぼんやりと見つめる。
 
 さっきまでの思考の奔流が、まるで嘘のように、今はとても静かだ。
 ぼんやりとしたゆるい思考の中で、はっきりとわかるのが。
 もう、終わりだ。
 もう、元に戻れない。 壊れた。 
壊したのは自分。
 明日も仕事あるのに。
 会いたくない。
逃げたい。
逃げ出したい。
99 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月30日(日)01時34分08秒

プロである以上、そんな甘えた考えが許されるはずはないこと
ぐらい、わかっているけど。
 私だって。
 私だって、まだ15歳の、ただの子供なのに。
普通だったらまだ学校行ってて。
 同級生と買い物行ったり。
 恋愛話に花咲かせたり。
 受験勉強に日々を追われたり。
 朝7時に起きて電車に揺られて登校したり。
 途方もなく贅沢に時間を過ごして。
 そんな毎日を享受するはずの、ただの15歳の人間なのに。
 大人みたいに感情をごまかし続けるのは、とてもつらい。
しんどい。
 自分でその原因を作っておきながら。
 でも、逃げたい。
100 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月30日(日)01時35分29秒

 「あー! ひとみちゃーん!!」

 え…?
 
 大声で呼ばれて振り向くと、廊下のむこうから歩いてきたのは…
 …  石川梨華。

 ちょっと…夜なのに…声大きいよ…。 
 他の部屋で休んでる人に迷惑じゃん…。

 「なぁーにしてるのぉー? そぉんなとこでぇ」
 
 よろよろと、倒れこんでくる彼女をあわてて抱きとめる。
 ひどく酒くさい。
101 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月30日(日)01時41分51秒
 「梨華ちゃん…酔ってる…?」
 「よってないよぉ? わたしぃ」

 ろれつの回らない、その台詞は、決まって酔っ払いの吐く台詞。

 「ハイハイ… ちょっと、立てる?」
 「んーん! たてなぁーい!」
 「はぁ? 酔ってないんでしょ? ホラ、立つ」

 ただでさえ…。 こっちが鬱入っている時に、酔っ払いに
絡まれるのは。 つらい。
 普段ならもっと優しく接することが出来るのだろうが
今の私にそんな余裕なんてなく、自然とその態度は刺々しいものと
なってしまう。

 「やだぁ。 ひとみちゃん、つめたいよぉー?」

 子供のようにイヤイヤと首を振って、泣き出しそうになる彼女に
さすがにあせった。

 「ちょっと…分かったから! どうすればいいわけ?」

 私のその言葉を聞いて、彼女は今度は満面の笑みを浮かべて、

 「へやまで おんぶして」
102 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月30日(日)02時20分36秒
とりあえず100突破。

95 名無し読者さん
  こんな吉澤さんでも萌えてくれたありがとうございます。
96 名無し読者さん
  ありがとうございます。  今回は念願の後藤さんを縛るエロが
  書けて、作者的には満足です。(←アホです)
103 名前:すなふきん 投稿日:2001年12月30日(日)02時45分18秒
うわっ!!もうやばいっす!
かなりツボ!
期待大です♪頑張ってください!
104 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月31日(月)04時56分46秒
 20001225_03.


 石川梨華。
 私と同じ時期にモーニング娘。の新しいメンバーとして加入した、
いわゆる同期の同僚。
 その容姿といい、その声といい、その性格といい、おそらくは
「アイドル」らしい「アイドル」体現した存在といえるかもしれない。 
だが、私から見ればその「性格」というのも……
105 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月31日(月)04時57分42秒
 「ちょっとぉ、ひとみちゃん、どこいくわけぇ?」

 ……背負っていた彼女をベッドに下ろして、さっさと立ち去ろう
とした私は、彼女に引き戻された。
 その細い腕からは信じられないほどの強い力で。

 「……まだ何か用?」

 彼女はベッドに腰掛けたまま、ニコニコと笑っていた。

 「私、シャワー浴びたいの」
 「あ、そう」

 勝手に浴びればいいじゃないか…。
 何も他人が手伝わないと出来ないことなんてない…。
106 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月31日(月)04時59分02秒
 おそらくは怪訝な顔をしているだろう、私。
 石川梨華は、相変わらず、笑っていた。

 だが、その目には…… 何か炯々としたものを…… 感じて…

 「だから、服脱がせてよ」
 「はぁ?」

 おもわず。 素っ頓狂な声をあげずにはいられない。

 「そんなの…一人で…やってよ…」

 ……だけど… ”服を脱がす”というその行為に…
107 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月31日(月)05時00分40秒
 脳裏には先ほどの… 後藤真希に対して私が行った… 
その行為がよぎっていた…
… それが未遂で終わったことに、何とか封じ込めた 欲望が
甦ってくるのを感じて… 。
 
 私の放つセリフの語尾は、とても鈍い。
 それを見透かしたように、彼女は私の首に、両手を添えてきた…

 「私…ひとみちゃんのこと…好きなの」

 酔いで潤んだその目はとても妖艶な… 
 
 「… 後藤さんと喧嘩でもしたんでしょ?」
108 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月31日(月)05時01分41秒
 首に添えていた両腕をそっとスライドさせて、羽織っていたシャツを払うように脱がせていく… 。

 「知ってるよ… 私… ひとみちゃんが後藤さんをかまう理由」

 妖艶さと、狡猾さに輝いた瞳。 
 酔った姿は、狡猾な甘い罠…。
 
 それが「石川梨華」の本当の姿。

 可憐で、弱々しい、「アイドル 石川梨華」の姿はフェイク。
 それは自分を弱々しく見せ、相手に敵意と警戒心を抱かせない
方法にすぎない。
109 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月31日(月)05時04分13秒
「いいじゃない…もう。いずれ私がモーニング娘。の中心人物に
 なるんだから」

 ”思いがけずモーニング娘。の新メンバーに選ばれて”
 ”困惑する少女” 
  の姿の奥底には野心が満ちていて。
 意図して他人に見せている姿よりもはるかに器用でしたたかな
人間…… それが石川梨華。

 彼女とは… 後藤真希とは… まるで正反対…。
 クールで、他人に無関心な一匹狼を装っていながら、本当はとても
弱くて不器用で誰よりも寂しがり屋な彼女とは…。
110 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月31日(月)05時07分14秒
「ねぇ… だから…。 私を選んで…ひとみちゃん」

 ある意味、私と石川梨華は似ているのかもしれない。
 互いに栄光と野心を内に秘め、外側にその光をもらそうとはしない。 私は「真面目で、明朗快活な吉澤ひとみ」を演じ、
 彼女は「弱々しく、可憐な石川梨華」を演じている。

 「選んだらさ…」
111 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月31日(月)05時08分12秒
私は彼女に、わざと荒々しくキスしてみた。

 「こーゆーことしてもいいワケ?」

 私は目を細めて、酷薄に笑ってみせた… 多分、本当の私の、
その姿を石川梨華に見せるのは、これが始めて。

 彼女は答えるかわりに、私の唇を濡れた舌先でそっと舐めた。

 「同室の人は?」
 「辻ならとっくに加護ちゃんのところ」
 「そう… よかった」

 私はゆっくりと、彼女の身体とベッドの上に押し倒した…。 
112 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月31日(月)05時11分46秒
 いしよしのエロを期待していた方がいたら、すみません。
この先の描写はありません。 いや、一日のなかで2回もエロシーンを入れるのはちょっとくどいかな、と思って。と、いうわけで、クリスマス編はまだ続きます。
 予想通り、正月をまたいでしまいました。(苦笑
 
103 すなふきんさん
 恐れ多くも同じ板によしごまを連載している自分を
 許してください。m(_ _)m
 赤板の頃から楽しく作品読ませていただいてます。
 よしごまのパイオニアからレスいただいて、嬉しい限り。
 他板との並行連載、大変でしょうが頑張ってくださいね。
113 名前:車地雷AM 投稿日:2001年12月31日(月)05時12分25秒
流石に年始からエロ書くのはどうかと思うので、1日、2日の更新はなし、続きは3日から、ということで。
 こんな駄作でも見てくださった方々、レスくださった方々、本当に
どうもありがとうございました。 
 来年もどうぞよろしくおねがいします。
 それでは良い年を。
114 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月31日(月)06時54分33秒
続き待ってます。。。良いお年を。。。
115 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月31日(月)11時43分36秒
うわぁ〜よしこさんやっちゃいましたか…
これからよしとごまがどう動くのか期待してます!
よいお年を♪
116 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月04日(金)01時26分05秒
20011224_02.


「…… よっすぃー」
「…え…あ…?」

 すっかり「自分の記憶の世界」に没頭していて、ごっちんが
近づいていたのも気付かなかった私。

「な、なに?」
「そろそろ帰ろって言ったんだけど… 聞いてなかったでしょ」

 上目遣いに、無邪気に笑いかけてくる。

「ね? 何考えてたの?」
117 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月04日(金)01時26分57秒
「え…うん…昨年の今日って何やってたかなーって…」

 って……しまった…。
 ちょっと小悪魔入ったその微笑みに見とれていると、ついつい
余計なことを言ってしまって、後悔。 

「昨年…って…あ…」

 私は多少”記憶の掘り起こし作業”が必要だったけど、
そりゃ”被害者”な彼女にしてみれば、そんな作業、必要ある
わけない。
 私の”余計な言動”に、昨年の、おそらくは”忌まわしい”記憶を
思い出したのだろう。 
 彼女はふいっと、目を反らして、俯いてしまった。
118 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月04日(金)01時29分19秒
「ごめん…その…」

 私は何に対して謝っているのだか。
 昨年の私が彼女に対して犯した行為に対する謝罪?
 それを思い出させた自分の軽率な言動に対する謝罪?
 
 考えてみれば、私はあの日のことを、ちゃんと彼女に謝っていない。
「ごっちん…」

 私はおもむろに彼女を抱き寄せた。
 瞬間、腕の中で少し、彼女の身体が強張った。
119 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月04日(金)01時30分20秒
「ごめんね…本当に…。 その…どう謝っても…あの日のこと、
許してもらえるわけないと…思ってるけど…」
「いいよ…別に…」

 彼女は苦笑いを浮かべて、小さく首を振った。

「ほんとに…ごめんね…」
「もういいってば」

 彼女は優しく微笑んで、両腕を首に回してきた。
 ふわり、と、ほのかに甘いリンスの香り。
 柔らかいその髪に指を絡め、そっと撫でてみる。
120 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月04日(金)01時32分04秒
「よっすぃー、来年もよろしくね?」
「なに、それ。クリスマスに言うセリフじゃないじゃん」
「ん、ホラ、本当の年末はバタバタしそうだから。言えるうちに
言っとこーかな、って思って」

 至近距離で、見つめあっている私たち。
 私は彼女の髪に絡めていた指先を滑らせ、唇をなぞった。
 ごっちんは困ったような瞳で見上げてきて… けど、唇をなぞって
いた指をそのまま顎に滑らせ、持ち上げると、そっと目を閉じた。
 
私はゆっくりと、彼女の唇に顔を近づけて……
121 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月04日(金)01時43分59秒
あけましておめでとうございます。
新年最初の更新はふるさとでしてます。 
今年の初夢は「他人のスレッドに間違えて自分の小説をあげてしまい、おたおたする」という嫌な夢でした。
122 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月04日(金)01時44分56秒
114 名無し読者 さん
  あけましておめでとうございます。
  新年最初の更新は、まぁ、ジャブ程度のものですが。
  今年もよろしくおねがいします。

115 名無し読者 さん
  あけましておめでとうございます。
  石川さんはやはりよしごまを書くうえでは欠かせない人物ですから
123 名前:ポー 投稿日:2002年01月04日(金)02時57分40秒
あけおめ〜!どうもです!今年もあなたの作品を生きがいにしつつ..がんばってゆこうと思いますp(@-@) 自分の気持ちに正直になるって意味ってことで。。。
124 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月05日(土)23時39分26秒
「あー、おったおった。 探したで、ごっちーん!!」

    バーン

 勢いよくドアが開ける音と共に現れたのは…。
 せっかく築き上げた甘いムードをぶち壊したのは…。 
 …加護亜依。 

「何か用?」

 思いっきり不機嫌な声で、私は言い放った。
125 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月05日(土)23時40分37秒
「よっすぃーに用ない。 ウチが用あるんはごっちん」
「あ? あんたに用あっても、ごっちんに用ないって。
 だから帰れ」
「ちょ、よ、よっすぃー」

 ぎゅう、と抱きしめると、腕の中でジタバタともがく彼女。
 その様子をニヤニヤしながら見ている加護は、

「よっすぃー、ごっちん、嫌かっとるやん」
「あ…いや…別に…嫌じゃない…けど…そのぉ…」
「え?」

 腕の中で、消え入りそうにつぶやく彼女の言葉が、とても。
 本当に、とても、意外だったので、思わずまじまじとその顔を
覗き込む。
126 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月05日(土)23時42分33秒
「イチャつくんはウチの用が済んでからにしてや」

 またしても…。
 加護は強引に彼女を私から引き剥がして、自分の方へ向き直らせた。
 私と加護の間を走る、明らかな敵対的な空気にとまどうごっちん。

「えーっと、加護、用って何?」
「クリスマスなのに大変やねー、って、さっきスタッフの人にケーキ、貰うたん。 ごっちんにも分けたげよー思て」

 加護は脇に置いていた皿を差し出した。
 その皿の上には、真っ白いケーキがひとつ、乗っていた。
127 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月05日(土)23時54分57秒
「あの…ひとつ…?」
「よっすぃーにはやらん」

 むか。 
 別にこんな時間にケーキ食べたら太るから欲しくないけど。
 でもムカつく。

「あーそう。 じゃ、もう用は済んだね。早く帰れっての」

 壁にもたれて、ひらひらと手を振る私に、加護は少し険しい顔をして近づいてきた。

「ホンマやったら、ウチの梨華ちゃん、傷モンにしたよっすぃーのこと許さへんけど」
「………」
「ホンマやったら、よっすぃーの好きな人に10倍にして仕返する
とこやけど」

 その言葉に、ごっちんの両肩がビクッと震えた。
128 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月05日(土)23時57分07秒
「やけどウチ、ごっちんのことも好きやからなぁ。それは許し
といたるわ」
「そりゃ、どうも」

 肩を竦めて笑ってみせるが。  …そんなこと、させるかっての。
 私の目は多分、今、とても鋭くなってると思う。

「ま、せっかくのクリスマスや。せいぜい楽しんでや。 
ウチはこれから梨華ちゃんとラヴラヴな夜過ごすよって」
「このエロガキ」
「ほな、なー。 ごっちん、メリークリスマスや」
「あ…!」
129 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月05日(土)23時59分20秒
 加護は…ごっちんに軽く口付けて…
  悠然と去っていった…
 
「加護ぉ! てめ…!!」
「だめ! ちょっと、落ち着いてよ!よっすぃー!!」

 キレまくっている私の横から、ごっちんが抱きついてきた。

「大人げないよ?よっすぃー… らしくない」
「だって! キスだよ?!さっきの! っていうか、何でそんなに
平然としてるのさ!?」
「ん…なんか…よっすぃーが、そうやって妬いてくれてるのが
嬉しくて…」
「……」
130 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月06日(日)00時03分27秒
 照れながら、ふにゃりと笑う彼女。 
 
 なんか……。
 なんだか……
 沸騰した全身の血液が、さーっと音を立てて冷めていく感覚。
 そんな健気なセリフを聞いた日には……

「なんか…ごっちん…」
「ん?」
「今日、すごく可愛いこと言ってくれんじゃん」
「むぅ。それじゃ、いつもは可愛気ないみたいじゃんか」

 少し膨れっ面の彼女に、今度こそ、唇を落とす。
 舌は入れないけど、長く熱いくちづけを交わす。
131 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月06日(日)00時05分58秒
「…そろそろ…帰ろ…」
 
 唇を離すと恥ずかしそうに、うつむいてつぶやく。
 やっぱり、ここが楽屋であることが、どうしても気になるらしい。
 私は苦笑した。

「そうだね…」
「ケーキ、どうしよ」
「ま、せっかくもらったんだし。食べて帰ろ、二人で」

 机の上の皿を引き寄せた…。
 だが、私は皿の上に足りない物を見出して、ぽつりと言った…

「スプーンがない」
「え?」

 なんて言うか、こうゆうところは、加護らしいと言えば加護らしい。
「はぁ。 どっかでスプーンもらってこよ…」
「待って」

 立ち上がろうとする彼女の手首を掴んで。
 私は今、すごく、”いいこと”を思いついていた……
132 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月06日(日)00時26分45秒
 今日の更新終了。 故郷ののんびりとした雰囲気の中では冴えない文章しか書けず、困ったものです。テンポの悪い文章で申し訳ないです。  この先の更新は東京に戻ってからにします。 m(_ _)m
 
 そのうち落ち着いたら石川さん、加護さん、辻さん、保田さんの4人の話なんかも書きたいですねぇ。番外編で。

123 ポー さん
 あけましておめでとうございます。
 生きがいだなんて…勿体ない言葉です…。
 でも、ありがとうございます。今年もよろしくおねがいします。 
133 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月06日(日)03時22分58秒
積極的な吉澤がイイ。
続き期待してます。
134 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月06日(日)18時53分20秒
受身なごまがたまらんです!ここ大好きです。
135 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月12日(土)01時39分50秒
私は今、すごく、”いいこと”を思いついていた……

 おもむろに2本の指でケーキをすくって彼女の目の前に差し出す。

 予想通り、戸惑いの視線を向ける彼女。

 けど、そのとまどいは「私の要求の意味が理解できない」戸惑い
ではなく。
 「私の要求の意味を理解している」、だからこそ、戸惑っている、
そんな視線。
 
 私はそんな彼女の様子を黙って見続けている。
136 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月12日(土)01時40分41秒
彼女はきょろきょろと、何度も何度も部屋中を見回した。
 そうした行為を数回繰り返した後、彼女は意を決したように、
私の前に座りなおして。

 … ゆっくりと顔を近づける。

  おずおずと、唇を開いて、私の指を口に含んだ。
137 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月12日(土)01時42分06秒
艶やかな唇が被さり、熱く湿った空間が、私の指を包み込む。
 そして、クリームを舐め取るその舌先が絡みつく。
 ざらついて、ぬめる感触と。 その行為に恥ずかしさと淫らさが
入り混じった彼女の表情のなまめかしさに。
 頭と身体にゾクゾクと、熱い感覚が這い上がってくる。
 空いた右手で無造作に、残ったケーキをすくって、彼女の顎から
首筋に塗りつける。

「や…っ!だめ… よっすぃー!!」

 塗りつけたケーキに貪るように吸い付くと、彼女は驚いて身を
捩る。 私は彼女の身体を抱き寄せて、素早くその唇を奪う。

「ん…う…」

 彼女の柔らかな舌を舌先でなぞりながら、口内を存分に味わう。
 レアチーズの、甘く、そして少し酸っぱい味とともに。
138 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月12日(土)01時43分46秒
… 腕の中で、相変わらず彼女は逃れようとしてもがいている。 
 
 けれど何度も舌同士を絡め、キスを繰り返すうちにその抵抗も
次第になくなり全身からは力が抜け去っていた。

「…明るいのは…ヤダ…」

 長い口づけから解放すると、彼女はとろんとした表情で懇願するように呟いた。

 ……仕方ない。
 入口近くにある部屋の明かりのスイッチを切りに行きながら…
 
 私はその途中に ”ある物” を見つけた。

 それは、おそらく番組で使う衣装の一部なのだろう。
 部屋に束になって置かれてある鉢巻を一本、私は取り上げた。

「…よっすぃー…?」

 鉢巻をもてあそびながら近づく私を、彼女は不安そうに見つめる。
 
 …その不安に満ちた瞳を、私はそっと、鉢巻で覆い隠した…
139 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月12日(土)01時44分46秒
 そっと頬を撫でると、びくっと身体を震わせる。

「怖い?」

 耳元で低く囁く。
 少し緊張に強張る身体をゆっくりと押し倒す。
 服のボタンをひとつ、ひとつ、ゆっくり外し、胸を覆う薄布をするりと抜き去る。
140 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月12日(土)01時46分39秒
 ……なんかの映画で見たことあるんだよね。
 一度やってみたかったこと。 その自信の欲望をかなえるために、
私は机の上に手を伸ばす。

 スタッフの人たちが差し入れてくれたファーストフード店の
ドリンク。 紙コップなのがとても残念なんだけど。 
 … 私は中の氷をひとつ、摘んで取り出す。
141 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月12日(土)01時47分25秒
「…ひ…っ…!」

 氷から垂れた雫が、彼女の胸元に滑り落ちると、彼女は小さく悲鳴をあげた。
 ポタポタと、首筋や口元にも雫を落とすと、得体の知れない感覚に
身体を震わせて、彼女はせつない吐息を漏らす。

「フツーの氷だよ。安心して」

 氷で鎖骨から首筋… 顎の下からまた首筋… そして胸の膨らみを
緩くなぞる。 
 細い喘ぎを繰り返す彼女の身体に、溶け出した氷の軌跡が刻み込まれていく…
  蛍光灯の光に反射するその道筋はとても妖しく。

「…んやぁ!」

 臍にたまった水を強く吸い上げると、彼女の身体は電流が走ったように大きく揺れた。
142 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月12日(土)01時48分15秒
 … 緩く脱力した彼女の両脚をゆっくりと広げ、私は体を
割り込ませていく。

 … 私の眼下に、目隠しをされて横たわる 後藤真希の姿態…

 敏感になった彼女の身体は、緩く指を這わすだけで反応する。
 内股をそっと撫で回し、ショーツをそっとなぞると、緩い刺激に
堪えられずに、彼女は顎を反らせた。

 … 私の眼下には、少し荒い呼吸をしながら、目隠しをされて
横たわる 後藤真希の姿態…
143 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月12日(土)01時50分17秒
 密やかな征服感。

 彼女が、手がベタつくから、と嫌がって使わなかったメイプル
シロップを手に取り、口で乱暴に封を切る。

「…っは…ぁ…今度は…! な…に…?」

 メイプルシロップにまみれた彼女の口元を舐め上げる。
 下唇を吸い、上唇を吸い、舌を差し込み、口内を貪る。

「ん…あ…んふ…ぅ」

 … 口づけの束縛を続けながら
 … 私は指を下の方へ降ろしていく。
 脇腹をなぞり、下腹をたどり、スカートの中にすべりこませた指が
秘裂に触れると、太腿に小さな緊張が走った。

「…… いれるよ…」
144 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月12日(土)01時51分00秒
…下着をゆっくりとずらして…
 浅く息づく入り口に、愛液を絡ませて、指に力を入れる。

「…ぁ…んあぁ…」

 卑猥な音と共に、指先が彼女の中に埋まっていく。
 … 蕩けそうに…。 
 …熱く。
 …狭い。

「っ…はぁ… ぁは…っ」
「ごっちん…」

 荒い息を吐きながら私にすがりつく彼女に耳元で囁く。
145 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月12日(土)01時52分09秒
「この前…雑誌の取材で…クリスマスに欲しいもの…言ってたよね…
 自由と…幸せが…欲しいって…」

… 二本目の指を埋め込まれた彼女に会話する余裕なんて
 無いだろうけど。

「自由は…あげれないよ… …でも…幸せは…」

  ねぇ? 
  いっしょに 幸せに なろうよ?

 …彼女の頭を引き寄せて、キスをする。
 …深く…。
 …深く。
  互いを貪り合いながら。
 
 彼女の奥からあふれ出る液体が指をつたってきたその時だった……
146 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月12日(土)01時52分57秒
「ごめんなー、スプーン渡すん忘れとったぁー!」

   バーン

  …………
「…………」
「…………」
  …………
147 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月12日(土)01時58分45秒
「なんや、よっすぃーってゲロ甘なセックスしかせぇへん
思とったのに。結構、鬼畜やなー」

  …………
「…………」
「…………」
  …………
148 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月12日(土)01時59分40秒
「あー、でも面白そう。ウチも梨華ちゃんにやってみよ。
 衣装さん、鉢巻借りてくでー」


 ……… 衣装さんはここにはいないって。

   バタン
149 名前:車地雷AM 投稿日:2002年01月12日(土)02時04分21秒
「…… …っ…ひ…く…」
「ごっちん…?!」

 疾風のように現れて、嵐のように去っていった加護。
 しゃくりあげるように泣き始めた彼女。
 慌てて目隠しをほどく私。
 
 … それは…泣きたくも…なるよね… 。 
 私もちょっと違う意味で 泣きたいけど… いや。
 … 服、脱がせなくて良かった…いや。 そうじゃなくて。

「…だから…ひっ…こんなとこで… ひくっ…するのはヤダって
 …っ…言ったのにぃ……」
「ごめん…」

 2年連続してクリスマスの夜に彼女を泣かせてる私って…。
 これはちょっと最低かもしれない…。
 
 来年は まったりしたいよ クリスマス 
 … 今日のゴナゴトなんて考えてる場合じゃないって。
150 名前:更新終了 投稿日:2002年01月12日(土)02時11分10秒
 とりあえず、前年から引きずっていたクリスマス編はようやく終了です。 えーっと、分かる人には分かると思うんですが、映画「ナインハーフ」の要素(?)を少し。 
 今回ほど絵がつけれればと思ったことはなかったですねぇ。
(本業は画像描き兼作曲兼音色作り屋なので)頭の中のビジュアルを字に興すことの難しさをあらためて痛感した次第です。 
 今回の回は前半、特にダラダラだったし。
 
151 名前:ちょっと独り言 投稿日:2002年01月12日(土)03時18分11秒
 雑談スレには結構行っているんですが、色々考えさせられますねぇ。
 「最近増えたエロ」&「海板そのうちエロしかなくなるんじゃないか」の片棒担いでる一員だし。。 自分が一定水準を満たしたエロを書けているのかどうか不安だったり。
152 名前:ちょっと独り言 投稿日:2002年01月12日(土)03時19分07秒
が、しかし、書きたいものは書きたいんでこのままこの話は続けるのです。
 海板の作家さんたちすまぬ。
153 名前: 「語り手(視点)の変更」について。 投稿日:2002年01月12日(土)03時22分48秒
この小説では既にやってしまっているので今更どうしようもないのですが、
早速、当分の更新分で語り手変更があるので、
一応、これからの更新分では
「日付の8桁の横に語り手の名前を表記する」形をとることにします。 
…本来、書き分けが出来てないなら視点変更は行うべき
ではないのでしょうが… そこはご容赦ください。
154 名前:レス感謝 投稿日:2002年01月12日(土)03時30分52秒
133 名無し読者 さん
134 名無し読者 さん
 ありがとうございます。 こういうレスはとても励みになるのです。
 今年もよろしくおねがいします。
155 名前:ポー 投稿日:2002年01月12日(土)17時00分22秒
エロがおおくなってもかまわなぁ〜い(´O`)♪・・・。自分は作者さんが描くこの甘せつない!?のが大好きです♪ けど、しばらくの間この小説板じたいにこれないことに..携帯の方からきてるもので(;;)たまにPCからも読ませてもらうんで!ではまた〜
156 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月12日(土)21時17分09秒
萌え〜 
これからもがんがって
157 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月14日(月)03時34分19秒
今一番楽しみにしている小説です。
デカダンな感じがたまらん(w
>本業は画像描き兼作曲兼音色作り屋
う〜ん、想像がつかない。とにかくアーティストなんですね。
158 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月20日(日)13時16分21秒
続き待ってます。。。
159 名前:作者 投稿日:2002年01月23日(水)22時21分07秒
先週に続き今週も更新出来ない。申し訳ない。仕事が多い。眠いよー。自分が3人欲しいよー。 あとはワープロうちだけだけど、家帰ってまでパソコンたちあげる気力がない。ワガママな話だが。(これは携帯から書いてる) 来週は更新する。「よしごまは放棄が多い」の悪例になるつもりはないよ。と、いうわけでこれから寝ます。おやすみなさい。
160 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月24日(木)00時02分53秒
お待ちしてます。頑張ってくださいね。
161 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月25日(金)13時10分04秒
実際のヨシゴマのようにマターリやってくださィ
162 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月25日(金)20時42分49秒
マターリ待ってます
163 名前:テスト用小話 投稿日:2002年02月14日(木)23時56分20秒
   「白き狼 蒼き雌鹿たち」

 その1

吉澤「お〜い、石川。オレちょっと蹴りたいんだけど」
石川「? 駄目だよ〜何いってるのよっすぃー…え?ちょっと!」

   バキッ

石川「痛いよ!骨折れたよ!」 

 相変わらず大げさな石川

吉澤「アハハハ!スゲー!弱いな〜!」

 スゲーのあたりで声がちょっと裏返る。

吉澤「なぁ もう一回蹴ってもいい?」
石川「だ…ダメだって!」

    バキッ

石川「イタタタ!もう歩けないよ!」

 やはり大げさな石川。いつものように半分は演技だ。

吉澤「おいおい大丈夫かぁ〜」

 と、いうものの あまり心配そうではないよっすぃー。

    バキッ

石川「あうっ!!」

 うずくまっている石川を再び蹴る。

石川「…っ…ひどいよ…よっすぃ〜…」
吉澤「アハハハハ!」

 今度は演技ではなく本当に痛い石川。
 石川のいつまでも痛がる姿をみて本気で笑うよっすぃー。
164 名前:テスト用小話 投稿日:2002年02月14日(木)23時59分20秒
 その2

吉澤「あ、ごっちん。ちょっとお願いがあるんだけど」
後藤「? 何?よっすぃー…?」
吉澤「昨日テレビで見たんだけどさぁ。
   後頭両手縛りやってみてもいい?」
 
(トゥ○イトとかタ○リ倶楽部あたりでも見たということで)

後藤「は?こーとーりょーてしばり? 何それ?
   よくわかんないんだけど」
吉澤「とりあえず両手挙げてみ」
後藤「こう?」
  
 吉澤、後藤の後ろに回って、ロープを取り出して縛る。

吉澤「うん、うまくできた」
後藤「…よっすぃー…恥ずかしいよー」
  
 後藤、恥ずかしそうにうつむく。
165 名前:テスト用小話 投稿日:2002年02月15日(金)00時00分56秒

   その3

吉澤「お〜い、梨華ちゃん。オレちょっと逆海老縛りしたいんだけど」石川「? 駄目だよ〜何いってるの、よっすぃー…え?ちょっと!」
 
 吉澤、有無を言わさず石川をうつ伏せに転ばして縛りあげる

吉澤「うーん…意外と簡単に出来たなぁ。この縛り方」
石川「よっすぃー!恥ずかしいよ!早く解いて!」
 
  と、言いながらも、あまり恥ずかしそうではない、石川。  
  それを見ながら吉澤は首をかしげる。

吉澤「じゃーね。梨華ちゃん」
石川「あ、ちょっと! ひとみちゃん、待ってよ!」

   石川を放置して楽屋を出て行く吉澤。
   数分して、加護がやってきた。

加護「なんや、梨華ちゃん、えすえむが好きなんか。
    言うてくれたらいつでもしたったのに」
 
166 名前:テスト用小話 投稿日:2002年02月15日(金)00時03分36秒

   その3

吉澤「お〜い、梨華ちゃん。オレちょっと逆海老縛りしたいんだけど」石川「? 駄目だよ〜何いってるの、よっすぃー…え?ちょっと!」
 
 吉澤、有無を言わさず石川をうつ伏せに転ばして縛りあげる

吉澤「うーん…意外と簡単に出来たなぁ。この縛り方」
石川「よっすぃー!恥ずかしいよ!早く解いて!」
 
  と、言いながらも、あまり恥ずかしそうではない、石川。  
  それを見ながら吉澤は首をかしげる。

吉澤「じゃーね。梨華ちゃん」
石川「あ、ちょっと! ひとみちゃん、待ってよ!」

   石川を放置して楽屋を出て行く吉澤。
   数分して、加護がやってきた。

加護「なんや、梨華ちゃん、えすえむが好きなんか。
    言うてくれたらいつでもしたったのに」
 
167 名前:テスト用小話 投稿日:2002年02月15日(金)00時05分28秒
   その4

 楽屋で後藤と石川が休憩している。そこへ吉澤がやってきた。

吉澤「あ、ごっちん。ちょっとお願いがあるんだけど」
後藤「な、 何…よっすぃー…」
  
 後藤、少し不安そうに後ずさる。

吉澤「今度はさ。後高手小手縛りの難しいやつ
   やってみたいんだけど。いい?」
後藤「…! ヤダ」
石川「ちょっとよっすぃー、なんでごっちんにはお願いなの?!」
吉澤「(石川を無視して)あ、別に服脱がなくていいからさ」
後藤「そういう問題じゃなくて! 梨華ちゃんにすればいいじゃん!」
吉澤「あー、梨華ちゃん、反応が面白くないんだよね。
   こーゆーのって、やっぱり恥じらいが欲しいからさぁ」
石川「…ひどいよ、よっすぃー…」
吉澤「だからやっぱりごっちんがいい」

  なんだかんだ言って、吉澤にされるがままに縛られ始める後藤。

吉澤「…うーん…今回のは難しいなぁ… 」
 
 今回の縛り方には悪戦苦闘する吉澤。

吉澤「  …やっぱり服、邪魔。 ごっちん、脱いで」

          
 終わり。
168 名前:テスト終了 投稿日:2002年02月15日(金)00時08分46秒
 ちゃんと書き込めるし、
ちゃんと読めるようなので、来週あたりからそろそろ更新。
169 名前:テスト終了 投稿日:2002年02月15日(金)00時16分45秒
 いい機会なので、amazonでサハラ砂漠の資料を購入。(…ちゃんと調べてから書けよ、てな話ではありますが) しかし、何故か「この本を購入した人は他にこういう本を買っています」と出てきたのはエロ系コミックばかりだった。…何故?
170 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月16日(土)13時00分16秒
天然にキチクなよしおさん萌え〜
なんか行動がハマりすぎっす(w

固めの文章なのにたまにコミカルな感じがして、
そのへんもスキです。

ひとまずおかえりなさいませ。
次回の更新も楽しみに待たせてもらいます
171 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月17日(日)04時24分08秒
待ってたよ ヨシゴマ萌え〜
172 名前:車地雷MA 投稿日:2002年02月23日(土)03時24分29秒
Introduction , or the future :Hitomi Yoshizawa 

 
 ――――
 ――
 …

ゆく河の 流れは 絶えずして、しかも、もとの水にあらず。
 
 よどみに 浮かぶ うたかたは、かつ消え かつ結びて、
 久しく とどまりたる ためしなし。

 …
 ――
 ――――

173 名前:車地雷MAK 投稿日:2002年02月23日(土)03時27分06秒

エルフードを発ち、メルズーカのホテルに到着した私は、
フロントで砂丘まで案内してくれるラクダ使いを紹介してもらった。
 砂丘から沈む夕陽が見たいから、今すぐ出発したい、と
アラビア語で交渉すると、彼らは快く応じてくれた。 

 本来ならば、ラクダに乗って、砂丘の中へ進んでゆく。
 だけど私は、ラクダ使いの少年のあとについて、歩くことを選んだ。

 太陽の光が肌につきささるような暑さ。
 灼熱の太陽にさらされた砂の暑さが、靴底からじわじわと
伝わってくる。

 1時間半ほど歩き続けて、黒いテントの前に到着した。
 彼らがいれてくれたミントティを飲み終わった私は、
夕陽を見るために少し小高い砂丘の上へ駆け上がった。

 赤い夕陽と、赤茶けた砂の大地。

 まるで切り絵のようにはっきりとした影と砂のコントラスト。
 砂の稜線がえんえんと連なり、風がふく度に刻まれた紋様が、
緩やかに形を変えてゆく。


 何もいない。
 誰もいない。


 ただ、ただ広がる砂と空の中に、溶けてしまいそうな感覚を
覚えながら、私は何故か、その一文を思いだしていた…

174 名前:車地雷MAK 投稿日:2002年02月23日(土)03時28分56秒
 
――――
 ―――
 …

「あ、それ知ってるよ。アレでしょ? 
 えーっと、”奢れる者は藁をも掴む”…のやつでしょ?」

 新しいメンバーが加入して、楽屋はいつもちょっとした
喧騒の状態が続いていた。
 
だから久しぶりに彼女と2人きりになれた時、私は前までの
喧騒と今の嘘のような静けさに、思わず「方丈記」の有名な一文を
思い出して、呟いていた。
 それを聞いた彼女が、ちょっと得意そうにそう言ったので、
私は苦笑せずにはいられない。
175 名前:車地雷MAK 投稿日:2002年02月23日(土)03時30分15秒

 ――― 河の流れは絶えることがなく、
     そして、
     行きては還らぬ流れの水は、昨日のそれではない。
     流れもせずにいるかのように見えるその場所に浮かぶ
     水の泡は消えては浮かび、浮かんでは消え、
     その命はたちまち尽き、
     瞬時もこの世に留まることはない…
176 名前:車地雷MAK 投稿日:2002年02月23日(土)03時32分56秒
「……ごっちん…」

 うーん… どこからつっこもうなかなぁ…

「あのね」
「うん」
「”溺れる者は藁をも掴む”… これは諺ね」
「うん」
「”おごれる人も 久しからず…”…これは平家物語ね」
「うん」
「”ゆく河の流れは 絶えずして…”これは方丈記」
「うん」

 ……こころよく頷いているけど、多分、全然理解していないと
思われ…
177 名前:車地雷MAK 投稿日:2002年02月23日(土)03時35分28秒
  

その あるじとすみかと 無常を 争ふさま
  いはば 朝顔の 露に異ならず ……


 それを儚さと言うのだろうか。 

 永遠は何処にもない。

 私たちは、芸能界という、巨大な河の流れに一時浮かぶ、
水の泡のようなものだ。 
その命は、悠久に近い時の流れの中の、ほんのまばたき程度
でしかないだろう。

 最初に5人だったモーニング娘。は増員と脱退を繰り返して、
その姿を変え続けている。 

 少しでも、淀みに浮かび続けるために、変化を続け、
生を長らえようとするその姿は、さながら情報の波に翻弄され、
生と快楽に執着する今の人の社会の在り様の縮図にも思えた。
178 名前:車地雷MAK 投稿日:2002年02月23日(土)03時37分10秒

「…… よっすぃーってさ…」
「ん?」
「ホントは頭良いのにさ。どーしていつもテレビとかの前だと
ボケるわけ?」
 
 小首をかしげて、少し不満そうに、彼女は言った。

「ピエロが面白いのと同じだよ」
「…よくわかんない。 その例え」
「”モーニング娘。の吉澤ひとみ”はピエロと同じだよ。
 人間って自分より優れた存在には危機感を抱くけど、自分より
劣った存在には寛大になれるもんだから」
「ふぅん? でも、よっすぃーはそれでいいの?
 つらくない? そーやって自分のこと、偽るのって」

 … 鋭いね。 その通り。

 いつだって、そう、彼女は正論しか言わない。
 でもだからこそ、彼女の存在は、この偽りで塗り固められた世界に
なじめない。

「ありがと…ごっちん…」

 私はやんわりと、彼女を抱き寄せた。

「私が私でいられるのは、ごっちんのおかげだから…」
「… よっすぃー…」


179 名前:車地雷MAK 投稿日:2002年02月23日(土)03時38分16秒

 …
 ――
 ――――


 閉じていた瞼を、そっと開いた。
  
 
 … 風が止んだ。

 
 無限に広がる空間は、いっそうの静寂を帯びて。

 ただ、砂の大地が広がる。
 そこにあるのは砂と空と。 
 
 そして私と。

「…知らず 生まれ 死ぬる人、 いづかたより来たりて
 いづかたへか 去る。
  また知らず、 仮の宿り たがために 心悩まし、
 何に よりてか 目を喜ばしむる… 」

 
 砂の大地の果てに、沈んでいく、赤い夕陽。

 
 リュックを下ろし、中に入れてあった缶を取り出しながら、
私は呟いていた…
 
180 名前:車地雷MAK 投稿日:2002年02月23日(土)03時39分18秒
20001110_02 : Hitomi Yoshizawa


長い口づけの後、離れた2人の唇の間には、なまめかしく光る
唾液の細い糸が……。

 … 無言で私は、彼女と見つめ合う。

 彼女は、何も言わない。
 寂しそうとも、悲しそうとも言える目で、私を見上げている。

 沈黙の空気の中で、私は考えていた。
 自分のしでかした事の、その理由、意味を…。
181 名前:車地雷MAK 投稿日:2002年02月23日(土)03時40分47秒


 … 私はイライラしていた。
 
 どうしようもなく、イライラしていたから、私はそのイライラを
収めるために、人気の少ない所でタバコを吸っていた。
 
 そこに現れたのは、後藤真希だった。

 彼女は、私が普段は禁じている、”職場での喫煙”におよばせた、
私のイライラの元凶だった。

 … 私は考える。

 何故、彼女が「イライラの元凶」なのか。
 何故、私は普段、自制している「職場での喫煙」を行ってまで、
そのイライラを収めようとしたのか。

 … そもそもは……。

 
 … それは、番組の企画だった。
 
 私たち新メンバーが加入して迎える年末(そのVTRが流されるのは
12月頃なので)。
 新しいメンバーがどれだけ、モーニング娘。になじんで、そして、
メンバーが結束しているかを測る、とかの理由で、大縄跳びを行う
ことになった。
182 名前:車地雷MAK 投稿日:2002年02月23日(土)03時43分26秒

 競技ごとに関しては、我を忘れてしまう私は…
 夢中になって大縄跳びに興じてたんだけど。

 目標の「10回」を飛び終えた時、それは起こった。

 喜び勇んで駆け寄る私たちに混じって、ほんの一瞬。
 
 彼女は。
 
 … 後藤真希は   … 突き飛ばされた。

 抱き合う私たちの輪の中から、彼女は疎外され。
 あっけなく、床に倒れて。
 

「カッットォーッ!!」

 スタッフの声が、スタジオに響き渡った。

「これから30分の休憩に入ります!」

 
 ステージの右端で、両膝を抱えて、ぽつりと座っている
彼女に、私は手を差しのべた。

「… 大丈夫…?」
「あはは…恥ずかしいね…。 はしゃいで、1人で
こけちゃうなんて… バカみたいだよね… 」

 彼女は、差し出された私の手を掴んで立ち上がりながら、
寂しそうに笑った……
183 名前:車地雷MAK 投稿日:2002年02月23日(土)03時47分00秒
 ……
 …
 …ちがう…。

 … 違う。 違うじゃん。

「…… 嘘… 」
「……」
「… なんで… そんな嘘、つくの…」
「…嘘なんてついてない…」
「嘘だよ!! どうして…!? 
 ごっちん、突き飛ばされたじゃん…!! …私……」
「違うよ…よっすぃー…。 私が1人で転んだだけだよ…」

 … 力なく笑う彼女が… 。

 … 私は苛立ちを感じた。
 
 どうして? 
 彼女は被害者なのに。
 
 彼女が突き飛ばされる所は、間違いなく、カメラに収められている。
 編集でカットしようもない、絶妙なタイミングで行われたそれは、
テレビ馴れしてない新メンバーの2人が独自の判断で行ったことでは
ないだろう。
 おそらくは、馴れた人間の教唆したこと…。

 あっけなく、転ばされ、そのみっともない姿をさらす羽目になった
彼女は、それに対して文句のひとつも言っていい。
 その権利を持ち合わせているのに。
184 名前:車地雷MAK 投稿日:2002年02月23日(土)03時48分51秒

 … 私は、苛立ちを感じた。
 
 そこまで分かっていながら、気付いていながら、
「見ている」ことしかできなかった自分が。
 私は、全てを知っていながら、彼女に手を差し伸べることが
できなかった。

 … 正直言って…。

 私は、怖かった。

 そこで彼女に駆け寄った時。
 私が支払うもの。 例えば、カメラを止めて、NGを出すこと、
スタッフやメンバーの心証を悪くすること。
 
 自分の保身と、彼女への気持ちを天秤にかけた時、勝ったのが
自身の保身だったことが、何よりもショックで、苛立ちを感じ
させた。


「… もう…いい…」

 …私は、どうしようもなく苛立って、スタジオを後にした。
185 名前:車地雷MAK 投稿日:2002年02月23日(土)03時51分08秒

 ……
 …全く、勝手で、自己中心的な感情なのは、自分が一番よくわかって
いる。 
 
 … でも。
 
 それでも、その感情はどうしようもなくて、だからわざわざ人気の
ないところにやってきたというのに。


 … 多分。
 彼女は、休憩しにきたんじゃない。

 彼女は不機嫌に立ち去った私を探して、ここにやってきたのだ…
 
 … どこまでも…。
 
 … どこまでもお人好しな彼女が…。
 
 今の私にはとても腹立たしかった。

   だから。
 ……

186 名前:車地雷MAK 投稿日:2002年02月23日(土)04時00分31秒

 ……
 … 両手を壁に押さえつけられたまま、悲しそうに私を見ている
後藤真希の姿が、愛しさを通り越して、今の私には憎くさえ感じた。

  どうして 罵らないのさ?
  どうして 怒らないのさ?
  どうして 逃げようとしないのさ?

「 ……… 」
「 ……… 」

 沈黙は、永遠のように続く。

「 ……… 」
「 ……… 」 

 張りつめた空気。

 実際に、その沈黙の時間は、たったの1分かもしれないし、
もっと長かったかもしれない。
 
 それでも、その沈黙の時間は、今の私には長すぎた。

187 名前:車地雷MAK 投稿日:2002年02月23日(土)04時02分25秒

 切れそうな唾液の細い糸を辿って、再び口づけた。

 … 静かに。
 … ゆっくりと。
 … 味わうように、優しく。

 彼女の口腔内で、彼女の舌を探す。
 少しざらついたそれを探しあてた私は、彼女の舌を絡めとった。

 … もう。 なんだか…。

 より強いキスを求め合って、左手で彼女の頭を引き寄せて。
 手首を拘束していた右手を、彼女の左手に重ねて。
 沈黙の時間を埋めるように、無我夢中で、狂おしく貪り…。
 
 … 好きだよ… 好きなんだよ… 
 あなたのことが… どうしようもなく…

 互いの唾液の混じる音が、静けさの中に響き渡り。
 彼女の胸の早い鼓動と、息遣いが聞こえて。
 
 舌と舌。
 指と指。 
 絡み合い、絡めあう。
 吐息は次々に訪れる、新たな口づけの波に飲み込まれ…。
 高ぶる互いの鼓動と恍惚の波に、溶けてしまいたい…。
188 名前:車地雷MAK 投稿日:2002年02月23日(土)04時03分50秒


 … 好きだよ… 好きなんだよ…
 あなたのことが… どうしようもなく…
 分からないよね… 分からないだろうけどね… 。
 … いや。
 …分からなかった。 私も。
 ほんの今まで。 
 ほんの今の一瞬まで。
 後藤真希に対する自分の感情のこと。

 ほんの今まで、一瞬まで、私は何処かごまかしていたかもしれない。
 私は、彼女に対する想いに気付いていたようで、気付いて
いなかった。

 こんなにも。 愛している。
 後藤真希のことを。 
 激しく。 
 愛している自分がいる。

 自分の中で、何かが、音を立てて、崩れ去るような気がした。
189 名前:車地雷MAK 投稿日:2002年02月23日(土)04時04分55秒


「… ごっちん…」

 … ゆっくりと、舌を出して。
 粘液の糸と、彼女の口の端から流れ出している唾液を舐め取る。

 … 好きだよ… 

 その一言を。  
 放つ。 
 その瞬間。

「ひとみちゃーん! そろそろ収録、始まるってー!!」
「…… ! …… 」
「…… ! …… 」

 一瞬、私が、その独特のアニメ声に気をとられたその瞬間。

 彼女は、私から逃れて、脱兎の如く、駆けていった。

 私が引き止める間もなく…… 

190 名前:更新終了 投稿日:2002年02月23日(土)04時08分04秒
 M-Seek復活おめでとう。 
 …ということで、もしエロ小説が外郭部隊扱いになった場合、
この小説はどちらの部隊に配属されていたのでしょうか… 
 この駄文でロンドベル隊に配属された場合、私はジェガンどころか民間
のホビーハイザックがオチ…(νガンダムはさしずめ式神さん
でしょうか)… ガンダムネタです。分からない人すみません。
191 名前:レス感謝 投稿日:2002年02月23日(土)04時10分31秒
>>155 ポーさん いつもレスありがとうございます。
   携帯で読んでたんですか?読みにくくないですか?
   自分もたまに自分の小説を携帯で読むことがありますけど。

>>156  ありがとうございます。 
   …ザンギユラのスーパーウリアッ上。(絶対、誰も分からない
   このネタは…)これからも頑張ります。

>>157 ありがとうございます。デカダン…いい響きだ…。
   仕事柄、娘。のデモテープを入手することができたりします。
   
>>158 , >>160 , >>161 , >>162
 まったりと更新しようかなぁ、と思ってアクセスしたら、
   事件が起こっていてびっくりしました。

>>170 , >>171
こっそりsageで載せた小話に気付かれるとは…。
   この話自体は弟とやりとりしていたメールの内容を転載。
   これからもよろしくお願いします。
192 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月28日(木)21時54分36秒
マジでここの小説好きぜよ
193 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月09日(土)20時54分07秒
続き期待
194 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月15日(金)04時56分42秒
待っとります。マターリ。
195 名前:車地雷AM 投稿日:2002年03月21日(木)03時40分45秒
( ´Д`)∫ ∫(^〜^0)
    つ旦 旦 ⊂

< 最近、更新ないねぇ〜
< ないねー

 そういえば、短編集に投票してくださった人がこのスレ見てたら
 どうもありがとうございました。

(;´Д`)< 起きた時後藤、裸なの…?
(0^〜^0)< もちろん
196 名前:せっかくネット繋いでるから何か書いていこうか 投稿日:2002年03月21日(木)03時43分46秒
 「もしもスクーターCMの吉澤が
   この小説の吉澤の性格だったら」


(0^〜^0)<家の近くでいいお店見つけたんだ〜。
      いっしょに食べに行くよ。
(;´Д`)<食べたいけど…。
      困りました。お小遣いは残り300円。
      よっすぃ〜の家までは電車とバスで700円。



  <移動中> (((((((((((´Д`)\
      ( O┬O
 ◎-ヽJ┴◎
            
197 名前:AAは苦手だ…  投稿日:2002年03月21日(木)03時44分52秒


 実は吉澤は後藤がお金がないのを知っていて電話で呼んだ。
 そうとも知らず、スクーターで吉澤宅へむかう健気な後藤。

(´Д`)<よっすぃー、遅くなってごめーん
(0^〜^0) ……
(´Д`)< … どしたの?
(0^〜^0)< 来なかったら罰与えようと思って
       色々考えてたのに…。
(;´Д`)< … よっすぃー…
198 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月21日(木)05時56分54秒
ヨシゴマ(・∀・)イイネ! ツヅキマッテマス
199 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月22日(金)21時11分40秒
短編集入賞おめでとうございます。
その話の続きもコソーリ希望
200 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月27日(水)01時56分41秒
20000725. : Hitomi Yoshizawa  


 見ていると、とてもつらそうで。 
 痛々しくて。
 
 誰も気付いてないと思っているのだろうか。

 時折見せる、まるで心の失せた、抜け殻のような顔を見て。
 右腕の肘のあたりに刻まれた、白い、細長い傷跡を見て。 

 かつて、同じ顔をして、同じような傷痕を持った人を、
私は知っていた。

201 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月27日(水)01時57分51秒

  ・


 「ひとみ、あんたの人生はまだまだ長いよ」

 … わけもわからない。 

 どう答えてよいのか分からず、無言でいる私に笑いかける。 
 今までの憑き物が、すっかりとれたようなその笑みに、
私はどこか不安を覚えた。


 … ならば、止めればよかったのだ。 理由なんて考えずに。
 「行かないで」って、言えば良かったのだ。

 私はずっと後悔している。 
そしてその後悔は、決して消えることはない。  
 なぜならば。
 それが、彼女の最期の言葉だったから。

 私の姉は、自らの手で、自らの生を断った。
 そして、そんな「不名誉」な終わり方をした彼女のことは、
「吉澤」の家から「いない」存在となった。


  ・


202 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月27日(水)01時59分18秒

 「ね、お昼、いっしょに行かない?」
 「は?」

 … 私は思いきって、彼女に声をかけた。
 
  驚いた「表情」をしている彼女。

 … 良かった。
 まだ彼女は「死んで」ない。

 「……私に言ってるの…?」
 「この部屋に今居るのって、後藤さんしかいないよー?」
 「いや…独り言かもしれないかなー、って思って」
 「何言ってんの。 行くよ?」

 … まだ返事も聞いてないけれど。
 
 私は彼女の手をとってさっさと歩き始めた。

203 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月27日(水)02時01分12秒

 「なんで、そんなムツカシそーな顔して食べてるの?」

 近くの落ち着いた雰囲気の和食屋で、定食を食べている私たち。
 
 目の前で、何とも複雑な「表情」をして料理を食べている
彼女に素直な質問をぶつけてみる。

 … そんな顔して食べてちゃ、せっかくの料理の味が
 分からなくなるよ?
 
「…別に…」

 返ってきたのは予想通り、全く要領を得ない、答えとも
いえない答え。

 「怒ってる?…かな…無理矢理連れてきて」

 … 私は少し、すまなさそうな顔をしてみた。

 「違うよ…そんなんじゃないって…。嫌なら来てないもん」
 「本当?」
 「うん…」
 「じゃあさ…」
 「ん?」
 「これからも…食事誘っていい?」
 「え……」

  いつも見ていると、とてもつらそうで。 
  痛々しくて。
  もうちょっと、楽に生きようよ。 
  生きていいんだよ?

 「だめ?」
 「…そ、そんなこと、ないよ…」
 「じゃ、いいんだ。 良かった」

204 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月27日(水)02時03分55秒





 メンバーに合流する際、私は個人的に事務所に持ちかけられた
取り引きがあった。

 それは『後藤真希をモーニング娘。に繋ぎとめる』こと。

 来年の3月の契約更新時に、彼女がモーニング娘。のメンバー
として契約更新することを、事務所は望んでいた。
 
 すでに彼女のメンバー内での孤立は深刻だったようだ。
 
 勿論、面を向かってそうは言われなかったが、おそらく今回、
私が新しいメンバーとして選ばれたのは、孤立している彼女に
対する配慮もたぶんにあったことだろう。
 同期というものが存在せず、同い年のメンバーも存在しない、
彼女への。
  「後藤真希」が「モーニング娘。」にとって必要不可欠な
存在であることぐらい、私にだって分かる。
 もう少し、彼女が大人であったなら、純粋に利益をちらつかせて、
もしくはちょっとした脅しをかけたりして、望む行動を
とらすことも出来るだろう。
 だが、残念ながら、15という年齢は、まだまだやり直しも
利く年齢。 本人さえ望めば、至極、簡単にこの世界から抜け出せる
ことだろう。 
 だから、人間関係という面から彼女を繋ぎ止める手段を
講じたワケだ。 

私に彼女の「トモダチ」になれ、ということ。
 
 … 私はその取り引きに応じた。 

プライド?
 そんなものでチャンスを逃すわけにはいかない。
私は、この世界で成功しなければならないのだから。

205 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月27日(水)02時05分37秒

 取り引きに応じた私に始めに与えられたチャンスは、
市井紗耶香が卒業した後のプッチモニに、私が加入することだった。 
そして来年の3月の契約更新時に見事、後藤真希がモーニング娘。の
一員として更新すれば、取り引きは成就。
私がセンターで、私だけにしか歌えないような曲が用意されることに
なる。

 … そう、それはチャンスだった。
   単純に。

「後藤真希」は私がこの世界で成功するためのチャンスに
すぎなかった。
  
  … はじめは。

 はじめは、だから私も「仕事の一環」で「義務」として彼女に
接していたところがあった。
 それを彼女は察していたのだろうか。
 とにかく、その頃の彼女はまるで「ハリネズミ」。
とげとげしいことこのうえない。
 露骨に私を嫌悪していた。

206 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月27日(水)02時07分29秒

 「あの頃に戻りたいですよ…」

 いつだっけな。 
彼女が言った。
私が加入する前のプッチモニを懐かしんで言ったセリフ。
 
 あとから保田さんに「配慮のない発言だ」って、ひどく叱られて
いたけど。

 それはどんな意味を含んだ台詞だったのか。
 いずれにしても、そういった台詞は様々な邪推を生みかねない、
危険な発言だろう。
 だが、その台詞を呟いたその一瞬。
 その一瞬、つらそうな顔を見せた彼女がどうしようもなく
気になった。

 … それが始めて、彼女に対して心が動かされた瞬間。 
 …「仕事の一環」「義務」ではなく彼女のことが気になった瞬間。
 
 「戻りたい」…? 
 いつに戻りたいのだろうか? 彼女は。


 それから、取り引きなんて、どうでもよくなった。
 彼女の全ての行動、言動、表情から、目が離せない。
 惹きつけられた。
 そして、そうすれば見えてきた。
 ひどく傷ついた、彼女の姿が。





207 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月27日(水)02時08分55秒

「… 今日はこっちのおごりでいいよ」
「え? いいの?」
「うん。 強引に連れてきちゃったし。そのお詫びも兼ねて」
「あ…えーっと…」
「ん?」
「あの…さ…」
「……」
「… ありがと…」

 ぎこちないけれど、それは「笑顔」。
 たどたどしく紡ぎ出されたその言葉は、私だけに向けられた
 彼女の「感謝」の気持ち。
 

 … もう、取り引きなんでどうでもいい。
 こうして、これからも、傍に居て、いっしょの時を増やしたら、
 彼女はもっと私に「笑顔」を見せてくれるようになるのだろうか。

208 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月27日(水)02時17分42秒
20000907. :Hitomi Yoshizawa


  それはひとつの兆候だった…

「失礼しまーす」

 ドアを3回ノックして、私はゆっくりと病室のドアを開けた。

 後藤真希は昨日から入院している。
 なんでもストレス性の胃炎らしい。 その病名を聞いた時、彼女の
倒れる数日前の出来事を私は思い出した。
 
 確か1週間ほど前だっただろうか…

209 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月27日(水)02時19分07秒





「ごっちん、昼行こうよー……って…」

 休憩時間。 私は彼女を昼に誘おうと思っていた。
 しかし…

「……寝てる…?」

 彼女は机に突っぷして眠っていた。

「後藤さん、忙しいから。疲れてるんだよ。起こしちゃ可哀想だよ。
 ね? 早く行こ?」

 石川梨華に急かされるように腕を引っ張られて楽屋を出ざるを
得なかった私。

「ごっちんさぁ、大丈夫かな?最近すごく疲れてるみたいだけど。
 あんまり食べてないみたいだし」
「うーん。でも後藤さんってそーゆー人じゃない?
 別にひとみちゃんが心配する必要ないと思うよ」

 ……”そーゆー人”って、どーゆー人だよ?

 腹立たしい。
 分かったような口ぶり。
 そしてまるで自分が後藤真希と関わりを持とうとすることを
警戒するような口ぶり。
 それからその後、まるで申し合わせたかのように出先で合流した
メンバー達。

 … 嫌な感覚。 とても不快な。

 事務所が私に持ちかけた話から類推して、彼女と他のメンバーの
溝が思ったより深いことが分かる。

 後藤真希のことを邪魔だと思う人間。
 後藤真希のことが嫌いな人間。
 自分の保身のために、それを黙認する人間。
 自分の保身のために、それらに同調する人間。

「後藤真希と他のメンバー」という図式が、そこには見てとれた。

 だが、私はその”他のメンバー”にはなりたくない。


  ・


210 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月27日(水)02時21分35秒

 カーテンから漏れる夕陽でオレンジ色に染められた病室。
 点滴に繋がれて彼女は眠っていた。
 
 その寝顔を見るのは始めてかもしれない。
 そう、始めて。

 彼女が眠る姿を見ることは、別に珍しいことじゃない。
 いつでも、どこでも、彼女はよく眠る。
 ただ、何かこだわりでもあるのか、寝顔は決して見せない。
 机に突っ伏していたり、雑誌やタオルを顔にかけたりして、
かたくなにその寝顔を隠す。

 それが今は無防備にその寝顔を晒している。

 夕陽に透けた鮮やかな薄茶色の髪。 さらさらとして柔らかな髪。
 艶っぽい唇…

 釘付けになる、というのはこういうことを言うのだろう。
 目が離せない。
 ただその寝顔は、とても安らかに眠っている、そんな顔では
なかった。 どこか悲しそうで苦しそうな寝顔。

「……っ……」

 端正な顔が少し歪み、そして苦しそうに息を殺すように呻く。
211 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月27日(水)02時24分00秒

 … 無性に心が騒ぐ… その苦しそうな顔に…

 そっと彼女の前髪を払って… 顔を近づけていく。
 触れるか、触れないかの口づけ……

      ナニ 考エテんノ?  コノ人 女の人ダヨ?

 … そう。 後藤真希は女。私と同性の存在。

      さっきノハ  キス だヨネ? 正気?

 … どうだろう。
 でもどうしてか。私はそうしたかった。
 ただ、それだけ。

「…… す… けて……」

 苦しそうに震える彼女。 その指が宙へ伸びる。

「…ごっちん…」

 指は宙へ伸びたまま、虚しく空を切っていた。
 うっすらと開かれたその目から一筋の涙がこぼれ落ちる。
 とてもつらそうで。 とても苦しそうで。
 私は虚空を泳ぐその手をぎゅっと握りしめた。
 だけどその途端…

「……?!」

 どうやら夢から覚めたらしい。
 しっかり見開かれて、焦点のあった目は、一瞬とまどい、
それからうっとおしそうに私を睨んで。
 握られていた手を無言で振り払う。
 … やれやれ。 なんか触らせてくれない猫ってカンジ。

「何してんの?!」

212 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月27日(水)02時26分21秒

 詰問口調で言ってるケドさ…。

「泣いてるじゃん…」
「なんで… 泣いてなんか…」

 泣いていることに気付いていない彼女の頬に、私は手を押し当てた。 薄く濡れた頬を親指でそっと辿る。

「ちがっ… 欠伸して…!出ただけだよ…!」

 … 虚勢なのは分かってるけどね。 
 虚勢を張った本人が、それからもボロボロと涙をこぼし続けて
いるのでは説得力の欠片もない。
 
 何が彼女を苦しめてるのか、私には分からない。
 だけど彼女は確かに言った。

 「たすけて」 と。

 自然と彼女を抱きしめていた。

「は…離してよぉ…」
「ヤダ」

 抱きしめて、その涙を舐め取ると、それは少ししょっぱかった。

 嫌だ。 離したくない。 離さない。
 どうしてか。 どうしてそうしたいのか。 
 私も分からない。
 でもどうしても、そうしたかった。
 ただそれだけ。

    それはひとつの兆候だった…。

213 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月27日(水)02時28分37秒
20000831. : Maki Gotoh


「ごっちーん… 昼行こうよー…って…寝てる?」

 …近寄らないでよね。 私、これから寝るんだから。
 貴重な休み時間。 貴重な睡眠時間。

 …私はあなたのことが大キライなんだから。

「後藤さん、忙しいから。疲れてるんだよ。起こしちゃ可哀想だよ。
 ね?早く行こ」

 急かすような石川さんの声。
 楽屋の扉が開いて、それから閉じる音。
 
 足音が完全に消えて、回りの人の気配が無くなってから、
私は机の上から顔を上げた。

「… はぁー…」

 大きくのびをして、そのままゴロリと畳の上に仰向けに寝転がる。
214 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月27日(水)02時30分44秒

 『忙しいから。疲れてるんだよ。起こしちゃ可哀想だよ』

 明らかな皮肉を含んだそういったセリフを聞くのは、別に
始めてじゃないし、むしろ馴れている。 
 だけど、新メンバーの人に言われるのは始めてかもしれない。

 石川さん…… 吉澤ひとみのこと、好きなんだろうな。

 同じオーディションをくぐり抜けた仲間意識だとか、
同じ年の生まれとかの親近感がそーゆー感情を持たせるのかな。
 私には、同期なんていないから、そういった感情はよく分からない。
 正直、そのほうが気が楽でいい。
 こういう世界だし、同期なんてものは、何かと比較の対象になるから
 むしろ1人なことに安堵していたところもある。

「何か疲れたなぁ…」

 時折、石川さんは、敵意に似た鋭い視線を見せる。
 それは吉澤ひとみが私のことを構うからだ。
 でも、自分の思い通りにならない状況を他人のせいにするのは、
間違ってると思う。

 私は吉澤ひとみが大キライ。
 私は吉澤ひとみのことが大キライ…

215 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月27日(水)02時34分16秒


 大キライ。 大キライ。
 ……
 1人で居る空間。  
 広い。 
 … おかしい。
 いつもはそんなこと、なかったのに。
 ずっと1人になりたかったのに。
 

 … 私は…吉澤ひとみが大キライ。

216 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月27日(水)02時36分34秒
 … 吉澤ひとみが大キライ …

     心ノ中ヲ見透カシタヨウナ微笑ガ…
 
 … 構ってくるのは一方的なだけ。

     大人ブッタ下手ナ笑顔ジャ心隠セナイ…


 今はこんなにも広いと感じる、唯1人の空間……。



  ・



  ・




  ・


  ・



   『後藤ぉー、これから仕事ないんでしょ?』
   『あ、うん。 ないよ』
   『パン、買ってきたんだけどさぁ、いっしょに食べない?』
   『いいよー』
   『はい、これ。飲み物』
   『あは。気が効くねぇ  …… … …


     ダメ  だ  よ


    この さ き は   



      ぉ モ ぃ ダ シチャ  … …


               ・
  ・


  ・

217 名前:更新終了 投稿日:2002年03月27日(水)02時39分06秒
あ、ずっとHN入れないで更新してしまった。
名無し読者になってるけど作者が更新しました。
218 名前:レス感謝 投稿日:2002年03月27日(水)02時51分01秒
>>192 ありがとうございます。
    駄文書きですが、こういったレスははげみになります。
>>193 >>194 >>198 気がつけば一ヶ月も更新してないことになってました。
    総合案内で割と更新早め、とか言われてたのにも関わらず…
>>199 ありがとうございます。
    あの話の続きですか… この話が落ち着いたらおいおい…。
    
 短編のほうのちょっとしたあとがきですが…
 題名は以外と適当。始めは「SILVER HEART」という題でしたが、
「プラチナの精神」という題の作品が出てきたので急遽変更。
 別に「人間解体」でも「クローンは早安娘。の夢を見るか」でも良かった程度。
 少女漫画は見るのも買うのも未だ恥ずかしいです。 以上
219 名前:スレ隠しに懲りずにAAに挑戦してみる 投稿日:2002年03月27日(水)02時52分47秒
ゴッチーン > ヾ(^〜^0
( ´ Д `)<ンァ?
220 名前:スレ隠しに懲りずにAAに挑戦してみる 投稿日:2002年03月27日(水)02時59分31秒
 コノマエサー>(^〜^0)
 ( ´ Д `)<ウン
221 名前:スレ隠しに懲りずにAAに挑戦してみる 投稿日:2002年03月27日(水)03時01分37秒
 (´ Д ` ;)
             アタマ オトシテタデショー>\(^〜^0)

( ´ Д `)煤I!!
222 名前:そしてやはり失敗している 投稿日:2002年03月27日(水)03時03分09秒
 ゴッチン ノ アタマノ
 ネダンハ500エン?>(^〜^0)
         ソレハ アトムノ
(; ´ Д `)<  アタマノ ネダン…
223 名前:そしてやはり失敗している 投稿日:2002年03月27日(水)03時04分36秒
            アタマ ヲ ヌラスト ネムクナル?>\(^〜^0)

(; ´ Д `)<ビミョーニ アンパンマンガ マジッテルヨ…
224 名前:空白の調整がうまくいかない 投稿日:2002年03月27日(水)03時06分19秒
          アンパンマン ト フクヤママサハル ノ
             タンジョウビハイッショ!>\(^〜^0)/

(; ´ Д `)<ソレハ ハナシガズレスギ…
225 名前:空白の調整がうまくいかない 投稿日:2002年03月27日(水)03時07分46秒
         ゴッチンヌラシテタベタイナー>ヾ(^〜^0)

(; ´ Д `)<ソレハ…  エ?!
226 名前:本編とギャップありすぎだろうか 投稿日:2002年03月27日(水)03時09分42秒
(^〜^0) ))>>
(; ´ Д `)……。
227 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月01日(月)13時23分23秒
sage進行なんですか? 
と言ってageてみる。 
228 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月01日(月)13時59分24秒
切ない本編とのギャップにわらた。
それにしても、よしごまは本気でいいね〜。
229 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月02日(火)01時35分22秒

      彡( ´ Д `)ンアー
(ノ^〜^)ノage !
  このスレッドは別にsage進行ではないです。
 (でもこのレスはsageてるけど)
230 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月02日(火)23時34分17秒
もしかしてこれは… あの人が…

や、AAのズレっぷりも愛嬌があってイイ(w
231 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月05日(金)01時37分09秒

20040413. :Hitomi Yoshizawa


  吹きつける強い風。  生ぬるい風。
  青黒い闇。 空は不気味な唸り声をあげている…

 泥酔した彼女を肩で支えながら、別荘の扉を乱暴に開く。

 閉じ忘れた窓。
 風が絶えずカーテンを揺らす。
 外の光が廊下を青白く浮かび上がらせる。

 廊下でもつれるように倒れこんだ。

   …  チリン

 彼女の胸の小さなベル型のペンダントがか細く鳴った。
 絨毯の長い毛並みが頬をくすぐる。
 顔を窓のほうに向ける。 
 揺れ続ける、カーテンの隙間から夜の海。 遠くに灯台。
 
 … 身体の奥が疼く。
 
 何かに操られるような感覚。
 だけどそれは決して不快な感覚ではない。
 自己を超越した自己が、私を欲望に忠実で、貪欲な獣へと変貌させる。

232 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月05日(金)01時38分58秒

 … 熱く。 疼く。 身体じゅうが。

 身に纏っているものがうっとおしくて、無造作に脱ぎ捨てる。

  …  チリン

 そして、彼女の身につけているものも全て、乱暴に剥ぎ取る。

  …  チリン

 灯台の光がカーテンの隙間から、その裸身を照らし出す。
 少し痩せた身体。
 青と黒のコントラストに浮き出たその病的に美しさは、
決して見ることの適わない、シュレーディンガーの猫を垣間見たようで。
 
 … 別段、寝室までそんなに距離はない。
 たったの5メートルかそこらでしかない。
 それでも今はそのわずかの数メートルですら、もどかしい。
「熱に浮かされた」とは、こういうことを言うのだろう。

  …  チリン

 その細い身体をきつく抱きしめて、何度も口付けを交わす度に、
小さなベルの音が鳴る。
233 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月05日(金)01時41分14秒

  …  チリン

   空が大きな唸り声をあげる。
   やがて、静かに雨音が聞こえてくる。

 私は彼女の右腕を取り上げた。
 肘に刻まれた幾筋もの細い傷痕。
 いつもは白いその傷痕は、アルコールと欲情でほのかな桜色に
染まっている。
 傷痕に、そっと舌を這わせながら、ゆっくりと脇腹を掌で撫で回す。

「…… っ… ぁ……」

  …  チリン

 小さなベルの音色に、彼女のかすかな吐息が混じる。

   そして、雨が、激しく地面をうがち始める。

 浮き出した肋の右側を、優しく啄ばみながら口付ける。
 指で左側の肋の窪みをなぞる。

 遠くに落ちた雷の光が、彼女の快楽に酔った姿を照らし出し、
そして落雷の音にその声は掻き消された。

  …  チリン  …  チリン

 吐息が溶け合う。 熱い身体が擦れ合う。
 窓から降り注ぐ大粒の雨が、熱い身体に心地良い。

  …  チリン

 … 鼓動が速い。
 … 鼓動が全身に鳴り響く。
 小さなベルの音とともに。
 膨張した全身の血管に、揺れる音の波が響き渡る。

 彼女が私の名前を呼ぶ。
 私は彼女の名前を囁く。

  …  チリン

 夢を散らして、快楽に委ね合う。

  …  チリン

 そして。
「真っ白い世界」に、 溶け合う…
234 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月05日(金)01時43分00秒

20001226. :Hitomi Yoshizawa


「これ…荷物…」

 翌日、彼女が仕事場に現れたことは、別段、意外なことではなかった。

 私よりもずっとプロ根性と責任感の塊な彼女だ。
 どんなに辛くても、逃げ出したくても、彼女が仕事を
放り出すわけがない。
 意外だったのは、私に話しかけてきたこと。
 私が部屋に置き忘れた荷物を保管していたこと。
 その荷物を私に返してくれようとしていること。
235 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月05日(金)01時46分44秒

 伏せ目がちなその目は、悲しみと混乱に満ちていた。
 少し虚ろな表情。
 彼女に、そんな「表情」をさせているのは、間違いなく私なのだ。

 出会った頃の彼女は「無表情」だった。
 全ての感情を遮断して、悲しみも苦しみも、全て内に閉じ込めた、
その切ない「無表情」を見るのがとても嫌だった。
 彼女の生きた「表情」を見たい、と思った。 
 その願いは今、とても皮肉な形で叶えられているのだが…

「………」

 私は、逡巡した。

 ここで何も言わずに荷物を受け取ってしまったら?

 どうしようなく、不安になる。

 その荷物は、私と後藤真希を繋ぐ、唯一の、とてもとても細い蜘蛛の
糸のような気がして。
 何か言わなければ、自分の目の前にいる彼女が、何処か遠い所へ
行ってしまうようで。
236 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月05日(金)01時50分23秒

 ………。
 じゃあ、何を言う? 何を言えばいい?
 
 謝罪する? それから。 …それから? 
 どうする? …どうすればいい?
 あんなことをしておいて? …許してもらえると思う?
 もうトモダチには戻れない。 …戻れるわけがない。

 … いや。

 そんな関係は… もう、いい。
 私はそんな地位は望んでいない。
 私は彼女が欲しいのだから。
 仲間とか、親友とか、そんな曖昧な地位はいらない。
 醜いまでの開き直りが、今の私にある。
237 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月05日(金)01時54分03秒

「…… 何か… 言ってよぉ…」

 沈黙に耐えかねて、彼女は弱く呟いた。
 顔を上げて、少し高い位置にある私の顔に視線を向ける。
 今にも泣き出しそうで、壊れそうなその表情。

 … 抱きしめたい…。

 どうしようもなく。  理屈では、そんなことしたって、更に
彼女を傷付けるだけだと考えられても。

 … ゆっくりと腕を伸ばす。

 全身が心臓のように、鼓動が大きく感じられた。
 痺れるような緊張感で、少し指先が震えている。

 … 彼女に触れる。 もう少しで。 
 もう少し……

「なーに?ひとみちゃん、荷物忘れて帰ったんだぁ?」

 ………
 ―――― 脱力……。

238 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月05日(金)01時59分56秒

 その可愛らしい声とは裏腹に、それはまるで私と彼女を繋ぐ
細い糸を断ち切る、剣呑な刃物だった。
 石川梨華は、彼女の手から私の荷物をやすやすと取り上げ、
私にそれを押し付けた。

「もう、ひとみちゃん。結構、うっかりさんだよね?
 私の部屋に泊まるのは構わないけど、ちゃんと荷物忘れないようにね、
 って言ったでしょー?」
 
 私の顔を覗き込んで、いたずらな微笑みを浮かべる石川梨華。
 
 …… 
 … 忘れてたわけじゃない…。
 忘れていたわけじゃない… だけど。
 そこに突きつけられたのは、あくまでも事実の提示だった。
 私が作り上げた事実の、再確認、再認識。
 私は、あの夜、後藤真希との友人関係を破壊し、そして、石川梨華を
選択した、ということ…。
 それが、昨日の、吉澤ひとみの行動の結果なのだ…。
239 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月05日(金)02時01分03秒

「… 忘れてたわけじゃないんだけどね…。行こっか…梨華ちゃん」

 私は手渡された荷物を持ち帰ると、歩き始めた。
 私と彼女に、もはや「つながり」は何もない……。
 ……

  ……  もう、やめよう。
 この気持ちは伝えない。
 エゴイスティックで独りよがりな、醜い欲望の刃で彼女を二度と
傷付けないためにも。 
 「好き」だ、なんて、言わない。
 「愛している」と、伝えない。
 綺麗ごとかもしれない。いや、綺麗ごとだろう。 
 それでも、今の私はどんな言葉を言い繕ったところで彼女を傷つけること
しか出来ないような気がした。
 だから。

 … 背を向ける彼女は一体、どんな「表情」をしているのだろう…

240 名前:更新終了 投稿日:2002年04月05日(金)02時03分28秒

イタッ(´Д `(○=(^▽^ )<ホイ♪

ナニスンノ!リカチャン(#` Д ´) ((\(^▽^ )<HO〜ほら行こうぜ
 ⊂
241 名前:更新終了 投稿日:2002年04月05日(金)02時22分12秒

    (´Д `(○=(^▽^ ))) <じゃない♪
  (TД T(○=(^   )ノ )))  <ファイ♪
|+Д + (○=(^▽^ )つ )))) <ハッピー♪
       3Hit COMBO!

 ピヨピヨ
 ⊂σ=σ⊃
((( ;+ Д +;))) ヤメテヨー  (^▽^ )<イヤ♪そんなの悲しすぎる
242 名前:COMBO=技が連続して当たること 投稿日:2002年04月05日(金)02時37分04秒
 吉澤ひとみの世界の必殺技〜>
 ピヨピヨ
 ⊂σ=σ⊃
〜( ;+ Д +;)  ( ^▽^)Σ
243 名前:AAテスターでテストすればいいのに 投稿日:2002年04月05日(金)02時42分23秒
 )三≡=...       (○三≡(^〜^0)))三≡=バーンナックル! 
      ピヨピヨ
     ⊂σ=σ⊃
    〜( ;+ Д +;)))         
              
244 名前:そこまでする必要もない 投稿日:2002年04月05日(金)02時44分41秒
           ごっちん、酔拳出来るんだ〜> (^〜^0)カッケー
      ピヨピヨ
     ⊂σ=σ⊃
チ チガウ…((( ;+ Д +;)〜〜              
       
245 名前:レス感謝 投稿日:2002年04月05日(金)02時55分17秒

      彡( ´ Д `)ンアー
(ノ^〜^)ノage !

>>227 特にage駄目とかsage進行とか当スレッドにはありませんので
    気になさらず。(こんなくだらんスレは沈んどけ、と言われたら
    仕方ないが…)
>>228 本編は痛いし暗いんで、くだらないAAで口直し。(逆効果だろうか)
    AAのネタを書いてる人と本編書いてる人は同一人物です。一応。
>>230 AAのズレっぷりは生暖かい目で見守ってくだサイ。
246 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月05日(金)23時50分05秒
いいな〜ここの吉澤。
247 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月10日(水)02時53分03秒

  Introduction






 棺の中に横たわった少女はとても安らかな顔をして眠っていた。
 誰にも邪魔されずに、永遠に眠り続けられることに。 
 その蝋人形のように白く、滑らかな顔が、わずかに微笑んでいるように
見えるのは、私だけだろうか。

 しかし、彼女のために涙を流す人はいない。
248 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月10日(水)02時57分21秒

 棺の置かれた狭い空間の中に居る人間は、私も含めて10人も
満たない。
 誰もが皆、一様に、難しそうな、険しい顔をしている。
 私の心に流れ込んでくる、淀んだ、彼らのどす黒い感情が、私には
不快でならなかった。

 『… 睡眠薬を飲みすぎたそうだが……』
 『… 自殺だろ……』
 『… とんでもないことをしたもんだな…』
 『… 吉澤の長女が…』

 誰も彼女の死を悲しむことも、哀れむこともしなかった。
 偽善の涙を流すことさえない。
 冷ややかな視線、軽蔑の眼差し。
 それを受ける、両親の困ったような表情。

 ……。
 … どうして?


 
249 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月10日(水)03時00分35秒

 私は何度も考えた。
 私の姉さんが死んだのに。
 自分たちの子供が死んだのに。
 彼らは悲しいと思わないのだろうか?
 私はとても悲しいのに。
 そんなに家の名誉は大切なの?

 … ネエ   ドウシテ …
   
 何度も何度も考えて、辿り着いた私の答えは、人間という存在の
弱さだった。
 血の繋がりでさえ、所詮は仮初の絆にすぎない。
 己の足場を危うくする者に、人間は害意を抑え切れず、己の足場を
守るために、築いた信頼関係でさえ、簡単に反古することを厭わない。 

 ごく、ごく一部の身内で、葬儀はひっそりと行われて、
それが終わってから何事もなく日常が戻ってきた。

     彼女ハ居ナイノニ
 
 まるで、彼女は始めから居なかったと、錯覚しそうになるほどの、
代わり映えのない、穏やかな日常が、次の日から訪れていた……。




250 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月10日(水)03時02分27秒

 ……。

 「 ……… 」

 … あんまり夢見がいいとは言えない…。

 ずっと忘れていたかった。
 昔のこと。
 私の日常が終わりを告げた日のこと。

 … 私は今、幸せで、全てが上手くいっている。
 何が不安なんだろう。
 何も不安なんてないのに。

 「 ………?」

 … いない。

 となりで眠っていたはずの彼女が。
 いない。
 
 嘘だ。
 
 今日はオフだから泊まるって。
 昨日、いっしょに帰って。
 ここでいっしょに晩御飯を作って。
 いっしょにお風呂入ろうって言ったら断られて。
 でも寝る時はいっしょに寝ようって、このベッドで愛し合って。
 
 … でも今、隣に彼女はいない。
251 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月10日(水)03時03分54秒

 「 ……… 」

 たまらなくなって、部屋という部屋を回る。
 最後に辿り付いたリビング。

 机の上には茶碗とお椀がふたつずつ。
 ラップをされて置いてある焼き魚。
 炊飯器の中には暖かいご飯。 
 ガスコンロの上には味噌汁の入った鍋。
 
 それは彼女が作ったものに、間違いない。
 でも、肝心の彼女がいない。 
 まるでそこはマリーセレスト号。
 「日常」の中にぽっかりと浮かび上がった「非日常」の空間に
迷い込んだような、嫌な感覚。

 
 私はたまらなくなって、彼女の携帯に電話する。
252 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月10日(水)03時05分08秒


  RRRRR……   1回目の呼び出し音が鳴る
  
  RRRRR……   2回目の呼び出し音が鳴る

  RRRRR……   3回目の呼び出し音が鳴る

  RRRRR……   4回目の呼び出し音が鳴る

 彼女は出ない…

  RRRRR……   5回目の呼び出し音が鳴る

  RRRRR……   6回目の呼び出し音が鳴る

  RRRRR……   7回目の呼び出し音が鳴る
253 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月10日(水)03時07分24秒

  RRR…
『… もしもし?』
 
 ………

『もしもーし? よっすぃー?』
「… ごっちん……」

 掠れた声で、ようやく私は彼女の名前を呼び返すことしか
できなかった。

『今起きたの?遅いねー』

 代わり映えのない彼女の声が、スピーカー越しに聞こえてくる。

「…今何処にいるの?」
『駅前のデパート。 明日の朝ご飯の材料買ってるところ』
「起こしてくれたらいっしょに行ったのに」
『んー、だってすごく気持ち良さそーに寝てたから。
起こすの悪いかなって』
「迎えに行く…」
『大丈夫だよー?ここからよっすぃーのマンションまで近いし。
 もう買い物終わったから。 すぐ帰るね』

   ツー ツー ツー
254 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月10日(水)03時09分01秒

 …そうだ…。
 そうだよ。
 何も心配なんてすることはない。
 今までだって、彼女が料理の材料を買いに行くことはあった。
 何かあったことなんてない。 
 大丈夫。
 大丈夫……
 ………。
 
 デパートからマンションまで歩いて10分もかからない。

 … それでも…。
 それでも。
 長い。 
 とても。

 その僅かな時が、今の私にはとても長く感じられた。
   
255 名前:更新終了 投稿日:2002年04月10日(水)03時15分11秒
 眠…。 
256 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月10日(水)16時37分36秒
この小説、めちゃくちゃイイです!ファン多いと思うなぁ〜。
毎日楽しみに更新待ってるんですよね〜♪
深夜の更新お疲れ様です。これからも期待してます、頑張って下さい!
257 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月10日(水)19時13分37秒
>>242-243
バーンナックルにワロタ。
世界の必殺技シリーズ化をひそかにキボンヌ
258 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月12日(金)00時09分31秒
 
 20021411 : Hitomi Yoshizawa


 夜半から降り出した雨。
 窓ガラス越しに見下ろす夜景は、雨に煙る。
 
 あと少しで私はまたひとつ、歳を重ねる。
 
 歳を重ねるその瞬間を、大切な人間に祝ってほしいと思うのは、
決して我儘な願いじゃないと思う。
 だが、我儘な願いであろうがなかろうが、残念ながら今年はその
願いが叶えられそうにない。
259 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月12日(金)00時21分45秒

 彼女は今、忙しい。
 そろそろソロの活動が始まろうとしている現在。
 
 …私は窓をそっと開けた。
 
 雨が降っている時の、外気のにおい。
 埃っぽい、都会の雨の日の。

 そして、私はベッドに寝転がった。
 楽屋で別れる際に、何度も謝る彼女の姿を思い出す。
 午前0時に『おめでとう』を言えない自分を何度も詫びる彼女の姿。

 後藤真希は、今、忙しい。
 だから4月12日午前0時、私の誕生した瞬間を祝福してくれる彼女は
居ない。
260 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月12日(金)00時33分31秒



 「プレゼント、何が欲しい?」
 「あのさぁ、フツーそーゆーの本人に聞く?」
 「え?聞いちゃダメなの?」
 「だめじゃないけど…。 女の子ってあれこれ悩みながらプレゼントを
  選ぶもんじゃない?」
  
 …… 私も女だけどさ…一応。 
    まぁ、そこはあんまり深く考えないように。

 「んー。でもさー、ごとーは要らない物貰ったらいつも困るから。
  よっすぃーにはちゃんと欲しい物あげたいんだよね。
  だから本人にちゃんと聞くのが一番”合理的”だよ?」

261 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月12日(金)00時46分44秒

 … 私の欲しいもの。
 そんなの決まっている。 ただひとつ。
 私が欲しいのは「後藤真希」。 それひとつ。
 何もかも欲しい。
 身体も。 精神も。 ココロも。 全て。
 彼女は今、確かに私の恋人でも、それでももっと欲しい。
 ずっと彼女を傍に置いておきたい。
 ずっと彼女に私だけを見ていて欲しい。
 なんといっても「後藤真希」の無意識に人を誘引する魅力、フェロモンは
あぶなっかしい。 
 鎖に繋いで、私のものにしてしまいたい…。

 醜い独占欲。
 だが、それが例えかなったところで…
262 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月12日(金)00時58分59秒

 例え、彼女を鎖で繋いで、彼女の世界に存在する人間が私だけになった
ところで。
 それは表面的に支配しただけにすぎない。
 「全て」を手に入れることはできない。

 …… 人は本当に欲しいものは 決して手に入らない …

 そんな話を何処かで聞いた気がする。
 
 多分、それは正論だろう。
 人間は多分、本当に欲しいものを手に入れることは、永遠に出来ないだろう。
 だから人間は生き続ける。
 決して満たされない欲望と、渇くことのない煩悩を抱えて。

 ・
 ・
 ・

263 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月12日(金)01時08分27秒

〜 ♪ 

 … なんか音が聞こえる…。
 
 〜♪  〜♪
 あ…
 
 携帯の呼び出し音か…。

 いつの間にか寝てしまっていたらしい。

 「… もしもし…?」
 『あ、よっすぃー。 私』
 「どしたの? こんな…」

 私は素早く壁の時計に目をやる。

 「… 遅くに。もう2時になるよ?」
 『あのね… 今よっすぃーのマンションの前なんだけど…』
 「え… 」

 私は、もう一度、素早く目を壁の時計にやる。
 もしかしたら見間違えたかもしれないと思ったから。
 だが、どう目をこらしたところで、時計の針は午前2時を指そうとしている。
264 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月12日(金)01時24分04秒
 
 『部屋、行ってもいいかな… あ、寝てたんならいいけど
  … 帰るから…』
 「何言ってんの? 早く上がってきなよ!」
 『いいの?』
 「当たり前じゃん…」
 
 スピーカー越しに聞こえていた雨の音が消えた。
 廊下に反響する足音が変わりに聞こえてくる。

 『… 今ねぇ、エレベータの前』
 「うん」
 『… エレベータに乗ったよ』
 「うん」

 私は携帯を片手に、ドアのロックを外す。
 
 『… あとね…3階でよっすぃーの部屋の階』
 「うん」

 
265 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月12日(金)01時37分32秒

人間は多分、本当に欲しいものを手に入れることは、永遠に出来ないだろう。
 そして、どんなに私が彼女を支配し、束縛したところで、彼女を全て、
手に入れることはできないだろう。

 … ドアの前で、携帯を片手に佇んでいる私。

 でもそれを悲観する必要はない。
 彼女はもうすぐ此処にやって来る。
 私の誕生日を祝福するために。
 夜ももう、遅いのに。 きっととても疲れているはずなのに。 
 それでも彼女はあと少しで此処にやって来る。
 私の誕生日を、世界中の誰よりも早く、祝福するために。
 
 それは素直に、とても嬉しい。

 … 私の目前のドアのノブが少し傾いた。
 そして。

 「よっすぃー、誕生日、おめでとう」

266 名前:更新終了 投稿日:2002年04月12日(金)01時50分10秒
 帰ってきてから気付いた、4月12日。吉澤さんの誕生日です。
 しかし、誕生日ネタなんて何も書いてなくてあせる。
 しかし、一応、よしごま作家の端くれの風上に置かせてもらっている
立場としては、誕生日に誕生日ネタを書かずにはおけようか。いや、おけまい。
 と、言うことで、即興。 初めてコピペしないで直に書き込みしました。
 かなり文章も構成もヘンですが、お許しください。
267 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月12日(金)01時57分45秒
>>246 いいですか?それは良かった。ここの吉澤さんは結構、ネガティブ
   すれすれ。 考える人です。(そして黒い)
>>256 ありがとうございます。 嬉しい言葉ですねぇ。
   これからも完結に向けて頑張ります。
>>257 格ゲーファン以外置いてけぼりなネタなんですが。
   個人的にはシリーズ化したかったりしますね。
268 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月12日(金)16時11分50秒
いやぁ、いいなぁ・・
やっぱりバースデーってことでエロにも期待(w
269 名前:車地雷AM 投稿日:2002年04月13日(土)00時09分39秒
>>268
 エロね… やっぱり書いたほうがいいですかね…(苦笑
 とりあえず今日は無理なんで、また後日、近々。
 
270 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月24日(水)17時24分57秒
待ってますよ〜!ここの小説大好きなんで、楽しみにしてます。
271 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月13日(月)05時20分54秒
待っとります作者さん。がんがれ。
272 名前:作者 投稿日:2002年05月13日(月)23時05分19秒
( ^▽^ )<放棄は…
 ( ( ( ( ( ( (  ( ´ Д `)< しないよ


( ^▽^ )<…
           ゴメンネ>(´ Д ` )


ホイ!>(*^▽^)=○´ Д `)イタッ
273 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月19日(日)04時12分44秒
待ってます。。。
274 名前:車地雷AM_k 投稿日:2002年05月25日(土)01時24分56秒

20010128. : Maki Gotoh



 「それではまた来週」
 「ダーイバーイ!」





 …… つらい……。

 ラジオの収録が予定通りに終わって、「現実」に戻ってきた瞬間。
 よっすぃーと自分を忘れてバカ騒ぎする空間が「楽しい」と思えば
思うほど。
 「現実」に戻ってきて、よっすぃーが冷めた目をして
『じゃあ、また明日』って、すぐに帰ってしまうことが。
 「現実」の空間の中では何一つ話せない、弱い自分が。

 …つらい。


275 名前:車地雷AM_k 投稿日:2002年05月25日(土)01時33分32秒
 屋上の扉を開ける。 冬の夜の冷たい空気が肌をさす。
寒い。
 けど。 屋上の中央まで駆けていく。 そして空を仰ぎ見る。

 冬の夜空は好き。 星が輝いて見えるから。
 でも都会の夜空って、あんまり星が見えてないらしい。
 ずっと東京に居る私にはその違いを知ることは出来ないんだけど。


  『田舎のねー、山の方に行くと夜空がすごく綺麗なんだよ。
   一面星空ってカンジでさぁー。時々流れ星とかも見えるんだよ』
  『ふーん。そんなに綺麗なの?』
  『うん。もう、さぁ、全然違うんだから!ホントに。
   ごっちんにも見せてあげたいなぁ』


 よっすぃーは星が好きなんだよね。
 田舎の夜空の綺麗なことを喋ってる時のよっすぃーは、なんか無邪気な
少年ってカンジで。 いつものどこか冷めて大人びたカンジとは大違い。

 私はポケットから煙草を取り出した。
 この煙草はあの日、よっすぃーが部屋に置き忘れた荷物の1つ。
 本当なら返さなきゃいけなかったんだけど。
 
 なんか、返したくなかった。
276 名前:車地雷AM_k 投稿日:2002年05月25日(土)01時34分37秒

 … ヘンなの。 

 あんな酷いことして、「ごめん」のひとつさえ言わない。
 
 …大キライ… になれたらまだましなのに。

 煙草に火を着けてみた。
 先が赤く燃えて白んだそれをくわえて、思いっきり吸い込んで……
 …… 思いっきりむせた。
 煙が目に入って痛くて、涙がぽろぽろ出てきた。

 「堂々と喫煙してんじゃないの。未成年」
 「け…圭ちゃん…?!」

 横合いから伸びてきた手が、吸いかけの煙草を奪っていった。

 「熱っ…! あー、もう。あんたがプライベートで何やってても
  構わないけどね。ここは一応、仕事場なんだから。軽率なこと、
  してもらっちゃ困るんだけど」
 「うん… ごめん…」
 「何かあったんでしょ…吉澤と」
 「え?」

277 名前:車地雷AM_k 投稿日:2002年05月25日(土)01時35分43秒
  … 驚いた。
 よっすぃーと何かあったことを指摘されたことは勿論だけど。
 圭ちゃんがそーゆー風に突っ込んだことを聞いてきたことが何よりも
驚きだった。
 圭ちゃんは何て言うか、クールな人で。
 仕事とプライベート、自分と他人をきっちり分けた人で。 
 だから必要以上に”仕事の仲間”のプライベートに踏み込むことはない。
そーゆー人。

 「後藤、あんたいっつも吉澤のことばっかり見てるの、気付いてる?」
 「え?! う、うそ!」
 「うん。嘘」
 「………」
 「…だけどその反応じゃあ、あながち嘘とも言えないわねー」

 圭ちゃんは手すりにもたれかかって、自分の煙草に火をつけた。

 「私はハタチだからいいのよ」
 「何も言ってないよ…」
 「でも何か言うつもりだったでしょ」
 「う…」

278 名前:車地雷AM_k 投稿日:2002年05月25日(土)01時41分09秒
 煙草の白い煙がゆったりと冬の夜空に舞い上がっていく様子を
ぼんやりと見つめる。

 「ね…圭ちゃん…」
 「うん?」
 「よっすぃーってさ… どんな人…なのかな…」
 「はぁ?」
 「あ…!やっ…なんでもないっ!」

 …… 何聞いてんのかな、私…。
 圭ちゃんに聞いたって仕方ないじゃん…
 それに…。 別に…。
 よっすぃーがどんな人だって…そんなの…。
 カンケーない。

 「後藤さ…あんた変わったね」

 短くなった煙草を放り投げて、火種を足で踏み潰しながら。

 
279 名前:車地雷AM_k 投稿日:2002年05月25日(土)01時41分56秒
「吉澤のことはねぇ。私もよく分かんないけど。
  あんたをこんなに変えちゃうんだから、まぁ、大した子だと思うよ」
 「… そんなこと…!」
 「あんたの目、すごく優しくなったよ。 なんていうかね、吉澤と
  会う前のあんたってさ、いつも1人で生きてます、って目、
  しててねぇ」
 「………」
 「あんたはどうなの? 吉澤のこと、どう思ってんの?
  吉澤がどんな人間かって考える前にそっちから考えてみたら?」
 「圭ちゃん…」
 「ま、あんたたちがどうなったって私には関係ないことだけどね。
  あー、ここ寒いわ。 私、もう帰るから。
  あんたも黄昏てないで早く帰りなさいよ」

280 名前:車地雷AM_k 投稿日:2002年05月25日(土)01時42分45秒

 
 … 私は吉澤ひとみのこと、どう思ってる…?

   嫌い?  それとも。
   ね、本当はどうですか?

 よっすぃーの煙草をお守りみたいにずっと持ってる私。
 私を乱暴しようとした酷い人の忘れ物をいつまでも持っているワケの
分かんない私。

  …… 会いたいな…。

 最近、早く帰るけど、やっぱり梨華ちゃんと会ってんのかな…。

  …… すごく不安になる。

 明日は梨華ちゃんと同じロケなんだよね…よっすぃー。

  …… なんか ヤダ。

 私はよっすぃーのこと……

 嫌い? 
 … それとも。


 ………   


          すき?
281 名前:更新終了 投稿日:2002年05月25日(土)02時00分44秒
(0^〜^0) 吉澤は考える
       アイドル、それは「偶像」
       私たちはその「偶像」



(0^〜^0) 人が「偶像」を崇めて
       心の平穏を得るのなら、
       「偶像」は何から
       平穏を得るのだろう?



ポジチブポジチブ!
( ^▽^)/<ちゃお〜。よっすぃー、なんかネガネガしてるね〜


                          アタニ言ワレタナイト思ウデ
                                (`◇|

   
   
 ナリータイ
( /▽\)<ひとみちゃんの「偶像」はわ・た・し         
282 名前:( ´ Д `)<哲学? 投稿日:2002年05月25日(土)02時01分52秒

           
(0^〜^0) 吉澤は思う
       梨華ちゃんの
       「偶像」…          

 
イヤ!嬉シスギル!
( /▽\)




(0^〜^0)それはまるで         
       黒い聖母信仰
       のようだ  

ハリキッチャウ!
( /▽\)

( ´ Д `)ノ<ンアーヨッスィー



(0^〜^0)  ちなみに
         ごっちんは
         オレの「木偶」

ソンナ…
( ´ Д `)
 
283 名前:レス感謝 投稿日:2002年05月25日(土)02時02分54秒
>270 ありがとうございます。このような駄文を大好きと言ってもらえるとやはり嬉しいものです。

>271,273 お待たせしました。大変長い間更新できずに申し訳ないです。
284 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月26日(日)19時43分14秒
更新まってました。
この小説大好きなのでこれからもマターリ頑張ってください。


285 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月26日(日)23時17分44秒
やったーー!!更新されてる!!ここの小説の独特な雰囲気が
好きです。これからも期待してます。
286 名前:車地雷AM_K 投稿日:2002年05月31日(金)01時00分17秒

0010129. : Hitomi Yoshizawa.





『 …待って… 』

 私は彼女を追いかける

 『 …逃げないで… 』

 私は彼女の手首を掴む

 まるでしなやかな野生の猫。 

… 誘惑される。
 
 柔らかな髪にも。   滑らかな肌にも。  上目遣いのその目にも。 

 『 …好きだよ…』

 その細い腰を抱いて引き寄せる。
 何か言おうとして開いた艶やかな唇を塞ぐ。

 ……… 。

 『や… だ… やめて… 』

 彼女の目から大粒の涙が流れて頬を伝って落ちていく。

 『こんなの…!やだ… やだよぅ… よっすぃー… 』

 涙と共に零れ落ちる哀願の言葉。
 だが私は彼女の髪を掴んで、無慈悲にその胸の突起を口に含み、
舐め上げ、軽く歯を立てる。

    ヤメルンダ   ヤメテクレ    ヤメテ…
    ドウシテ オマエ ハ カノジョ ヲ キズ ツケル?
    カノジョ ヲ マモリタイ ン ジャ ナカッタ ノ ?

 私は「私」の狂態に叫び続けた。
 それでも「私」は彼女を蹂躙することを辞めない。



287 名前:車地雷AM_K 投稿日:2002年05月31日(金)01時02分47秒


「…… っ… !」

 目を見開いた。

 飛び込んでくるのは見慣れない天井。
 そして段々分かってくる現状。 
 ここは今、行われているロケ先のホテルということ。

 私はベッドから出ると、冷蔵庫の中から小瓶のウィスキーを取り出し、
ストレートのまま一気に飲みほした。
 喉の奥から込み上げてくる熱さに少しむせそうになって、それを抑える
ために、新たにビールを取り出して流し込む。

「ダメでしょ? 未成年がお酒なんか飲んじゃ」
「梨華ちゃん… 」

 横合いから伸びてきた浅黒い手に、ビールの缶を取り上げられた。
 ビールを机の上に置いた彼女は、同じ机上に置いてあるウィスキーの
空瓶を見つけて、眉をひそめた。

「ストレートで飲んだの…? 信じらんない… 」
「… 悪かったね」
「おいしい? そんな飲み方して」
288 名前:車地雷AM_K 投稿日:2002年05月31日(金)01時05分49秒

 ……。
 おいしいわけがない。 
 元々、酒には強い体質だからこれぐらいで酔えるわけがないけれど、
それでも無理矢理にでも酔ってしまいたい。 無茶な飲み方はたんに
キッカケにすぎない。 
 いつも見る、あの夢の後にあっては。
 切なさと狂おしさと、罪悪感と自分に対する怒りでどうにかなって
しまいそうで。

「… ひとみちゃん…」

 首にそっと両腕を絡めてきて、自発的に唇を重ねてくる石川梨華に、
私は反射的に拒絶してしまった。

「ひとみちゃん?」
「ごめん…。 ちょっと嫌な夢見たから… そんな気になれなくて」


 「彼女」との繋がりを失った。
 
 その喪失感を埋めるように「石川梨華」を抱く私。
 けれど現実からの逃避に行う、その行為の後から追いかけてくるのは
「彼女」の怯えた瞳。 涙に濡れた顔。 「吉澤ひとみ」の狂態を、為す
術もなく見なければならない私。 その繰り返し。

 …その繰り返し。

289 名前:車地雷AM_K 投稿日:2002年05月31日(金)01時07分23秒
「好きなの?」
「え?」
「後藤さんのこと。 好きなの?」
「………」

 唐突につきつけられたその問いに、何も言えない。
 いつもなら適当にごまかして答えることも出来るだろうけど。

「ふーん。 好きなんだ」

 石川梨華は、つまらなそうな顔をした。

「ひとみちゃんが後藤さんを構う理由って、”契約事項”って聞いたから」
「… そうだよ」
「お守りしているうちに段々惹かれました、ってトコ?
 以外に純真なんだね、ひとみちゃん。 もっと策士な人だと思ってたけど」
「私もそう思うよ…」

 私よりも数段上の”策士”に、事実を的確に言い当てられて、苦笑するより他にない。

「…でも、じゃあ、どうして? そこまで分かっていて…」
「だって、ひとみちゃんは私を選ぶしかないから」
「………」

 いつもの純情可憐でネガティブな「石川梨華」は、そこにはいない。
 
「…私、この前聞いたんだ…」


何もかも見透かしたような、子悪魔的な目で、私を見つめる。
290 名前:車地雷AM_K 投稿日:2002年05月31日(金)01時09分34秒


「後藤さん、今度ソロデビューするんだって」


 
291 名前:レス感謝 投稿日:2002年05月31日(金)01時16分54秒
>284  ( ^▽^ )<哲学? さんではないです。(当たり前ですが。)
   ネタのキレが違うでしょう。 あのスレが面白いと思ったので、
   ちょっと悪ノリ。 ( ^▽^ )<哲学?さん及び、あのスレのファンの方、
   気を悪くしたら申しわけありません。

>285 特に本人は意識して書いているわけではないのですが、独特なんでしょうね、
   この小説の雰囲気。 しかし私にとっては…
        
         褒 め 言 葉 で す
292 名前:更新終了 投稿日:2002年05月31日(金)01時21分59秒
さて、そろそろこの話も第1部終了です。 
多分来週、再来週辺りには終了するでしょう。 
第1部終了したからといって、新しいスレッドを建てるわけでもないのですが、
締めくくり的な意味で。
 それでは。
293 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月31日(金)18時11分24秒
吉澤……後藤を救ってくれえ〜!
294 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月31日(金)22時31分53秒
ぬわ〜!ソロデビューで後藤と吉澤にどういう影響があるのか気になります!
続き期待!!!
295 名前:名無し娘。 投稿日:2002年06月04日(火)09時24分20秒
これから更に痛そうな予感…でも目が離せない。
二人の行く末をしかと見守っています。
296 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月27日(木)21時07分43秒
荒らしに負けるな!
作者さん、更新待ってます。
297 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月01日(月)17時36分20秒
続き待ってます。。。
298 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月01日(月)21時38分10秒
私も待ってます…
299 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月03日(水)13時12分15秒
書く気あるかないかなんか反応してくれ…。
300 名前:車地雷AM_k ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年07月07日(日)01時00分23秒

Intoroduction End


 人間は、皆、孤独だ。
 結局、人間は独りで、知ることのない時間と運命の流れの中を歩いていく。
 様々な出会いも別れも、やがてその生の終わりと共に、風の中の塵と
なって、消えていく…
 
「死」という事象。
 
それは人間に定められた、絶対の「秩序」。
 善人にも悪人にも、等しく訪れるもの。
 
 「死」という事象。
 
 それは絶対なまでの「混沌」。
  
 絶えず「自由」という幻想に憧れる。だが、人間は「秩序」の中でしか己の存在を確立することが出来ない。 
 死ぬことによってのみ、この世の理の全てから解放され、真の「自由」を得ることが出来るという皮肉。


301 名前:車地雷AM_k ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年07月07日(日)01時03分51秒


 カーテンから漏れる夕陽でオレンジ色に染められた病室。
 点滴に繋がれて彼女は眠っていた。
 
 その寝顔を見るのは何度目だろう。
 そして、あと何度、その寝顔を見ることが出来るだろうか。


 夕陽に透けた鮮やかな薄茶色の髪も。
 さらさらとして柔らかな髪も。
 艶っぽい唇も。

 初めてその寝顔を見た時と変わらず、私は釘付けになっている。
 目が離せない。
 
 とても安らかに眠っている。
 初めて見た時を違って、安らかに。
 だが、今は、その寝顔が安らかであればあるほど不安になる。
 二度と眠りから醒めることがないかもしれない不安に。

 そっと彼女の前髪を払って… 顔を近づけていく。
 あの時と同じ。
 触れるか、触れないかの口づけを……
302 名前:車地雷AM_k ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年07月07日(日)01時06分47秒
「…… ん… 」

 うっすらと目を開く。 その指が宙へ伸びる。

「…あ… よっすぃー…」

 伸ばされた手が、私の頬に触れる。
 少し冷たい、その手の感触。

「…どしたの?」

 優しく微笑みかけるその姿が…。 とても私は悲しい。

「…別に」
「泣いてる…」

 冷たい指先が、目尻をそっとなぞる。

「…泣かないで…」

 彼女に抱きしめられて。
 かつて鼻腔をくすぐった甘い香りは、今では消毒薬の香りに変わってしまっていた。
 どうしようもなく、涙がこみあげてきて。
 もう、それを堪える気など、全くなくて。 
 私は彼女の胸の中で、ぼろぼろと涙を零し続ける。
 
「… 嫌だよぉ… いっちゃ…ヤダ…」

     時間は過ぎてく
     嫌だよ  サヨナラ

「まだいかないから… そんなに泣かないでよ…」

 … でも いつか居なくなるんだよね…。
 
 穏やかに微笑む彼女。 
 「死」を受け入れた人間の見せる余裕の表情。
 或いは慈愛にも満ちたまなざしも。 嘘偽りない自然体の微笑みも。 
 そんな死と隣り合わせの穏やかなその表情を二度と見たくなかったのに。

     夜中抜け出したり  くちづけたり
     幸せだったわ
     過去形にしたくない

 彼女の歌を思い出す。
 それからあの日のことも。

 そうだね… 「愛のバカやろう」。   
 
 時間は過ぎ、迫ってくる。
 もうすぐ、全てが過去形になる日がくる。
 いつの日も、いつの夜も、彼女のいない日常がやってくる。
 分かっていても想像がつかない、そんな日常が。

 だから私はずっと泣き続けた。   

303 名前:更新終了 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年07月07日(日)01時33分08秒
レス感謝です。

>>293 , 294
 珍しく内容に関してのレスが…。あまり救いのない話では
ありますが、今後もよろしくおねがいします。

>>295
  石吉後推進委員なんですね。 はい。更に痛くなると思います。
 あまり甘いラヴラヴな話は苦手なんですけどね。(苦笑

>>296
  荒らされたようですね。(苦笑 
 ちょっと仕事が忙しかったので子細はよく分からないのですが。
 叩きに騙りに荒らし… フルコース制覇?

>>297 , 298
 お待たせしました。すみません。

>>299
書く気あります。

 今後もよろしくおねがいします。
 
304 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月07日(日)21時46分34秒
更新キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!

やっぱりここの小説は(・∀・)イイ!
よしごま小説の最高峰だと思ってます。
マターリ待ってますので作者さんのペースで頑張って下さい。
305 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月08日(月)12時19分42秒
同じく!
更新キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!
もうダメかと思ってたから余計に嬉しいよ。。。
306 名前:名無しよしごま好き 投稿日:2002年07月08日(月)14時38分59秒
待ってたよ〜。 ついでに荒し防止age。
これからも飼育よしごま小説を引っ張っていってください。
307 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月09日(火)14時52分16秒
待ってました!
相変わらず切ないですね…
それにしても荒らされてたことさえ知らなかったとは、作者さん大物(爆
308 名前:名無し娘。 投稿日:2002年07月11日(木)22時32分19秒
再開を待ちわびていました!
痛い話ですが、目が離せません。稚拙な表現で申し訳ないですが、最後まで
必ずついていきますので、更新がんばってください。
309 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年07月21日(日)04時54分34秒

20010213. :Maki Gotoh


 陽はとっくに暮れていた。

 夕方になって降り出した雪は激しさを増している。
 傘をさして歩いている人波の中を、私は降られるに任せて歩いている。

  … 私は何処に向かっているのだろう …


 ビルのネオンが、白い雪の輪郭を照らしている。


 『よっすぃーってさ… どんな人…なのかな…』
 『はぁ?』
 『あ…!やっ…なんでもないっ!』


 遠くで電車のブレーキ音が聞こえる。
 地面に積もり始めた雪は、人やタイヤに踏み散らされて、茶色くドロドロになってしまっていた。
 
310 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年07月21日(日)04時56分37秒

 
  … 私はひたすら歩いていた。
  … 私は何処に向かっているのだろう …

 『あんたの目、すごく優しくなったよ。 なんていうかね、吉澤と
  会う前のあんたってさ、いつも1人で生きてます、って目、
  しててねぇ』


 吐く息は白く。

 どれだけ私の目の前を赤いテールランプが流れていっただろう。
 どれだけの人達とすれ違ったのだろう。
 どれだけ歩いただろう。

  … 私は何処に向かっているのだろう …


 
 『あんたはどうなの? 吉澤のこと、どう思ってんの?
  吉澤がどんな人間かって考える前にそっちから考えてみたら?』


 いつしか、電車の音も、車の音も聞こえなくなっていた。
 人の喧騒から離れた閑静な住宅街。
 降り積もった新雪に、私が跡をつけていく。
 マンションの前の植え込みは雪が積もっていた。
 てきとーに雪を掻いて、腰を降ろす。
 身体を動かすのを辞めたら途端に寒さが全身を襲ってくる。

311 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年07月21日(日)04時59分27秒


  … 空を見上げる。


 雪が静かに降り続けて、頬や鼻先を濡らしていく。
 そのまま目を瞑る。

   … よっすぃー…。 吉澤ひとみ。

 秋の月の明かりに照らし出されたその綺麗な顔が、姿が、瞼の裏に焼き付いている。
 
 ぬけるような白い肌、長い睫毛、大きな目と知的に輝く瞳。
 少年のような無邪気さも鋭さも、少女のようなあどけなさも穢れなさも、その全てが「吉澤ひとみ」の中に矛盾無く同居している。
 長身に、均整のとれた身体、すらりと伸びた手足、長い指。
 惹きつけられる。
 その姿を追わずにはいられなかった。
 出会った時から。
 危機感とともに、でも、惹かれていく自分が止められない。
 どこかで、私は彼女のことを認めていた。
 でも認めたくなかった。
 私の中を占拠していく彼女の存在を。

 誰にも愛想良くて優しい「よっすぃー」。
 
  … 嘘つき。 偽善者。

 優しくて、愛想良くて、みんなから好かれる「よっすぃー」の姿が
ニセモノなのを気付いたのは、知らないうちに彼女のことをずっと見続けていて、その姿を追っていたから。
312 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年07月21日(日)05時02分23秒


 『ごっちん、ご飯食べに行こうよ』

 『ごっちん、ダンス教えてよ』


 嘘つき。  偽善者。
 嫌い。 キライ。 大嫌い。       
      
                   … 嘘。


 私なんか誘わなくたって、よっすぃーとご飯を食べに行きたい人はたくさんいるよ。
 私なんかに教えを請わなくたって、1人でダンス覚えられるクセに。

 ほっといてよ…   

         … うそ。


 『あはは…恥ずかしいね…。 はしゃいで、1人でこけちゃうなんて… バカみたいだよね…』
 『……嘘…』
 『……』
 『…なんで… そんな嘘、つくの…』


 番組の企画で大縄跳びをやった時のこと。
 目標の10回をみんなで飛べて嬉しかった。 だけど、私はみんなといっしょに喜ぶことは出来なかった。 拒否された。
私を突き飛ばした2人。
 多分、2人の意思じゃないんだろうね… みんな不安なんだね。
 自分の居場所を確保するために必死なんだ…


 『違うよ…よっすぃー…。 私が1人で転んだだけだよ…』
 『… もう…いい…』


 よっすぃーは眉を寄せて、怒ったように去っていった。
 その後ろ姿を見ながら急に不安になった。


  … いやだ  …置いてかないで …



313 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年07月21日(日)05時04分11秒

 それはいつの間にか日常になってしまっていた。
 彼女が私の傍にいる日常。
 どんなに私がそっけなくしても、悪態づいても優しく微笑んでいるよっすぃーが、私の傍に居る日常。
 どんなに認めたくなかっても、それはもう私の日常になっていた…。
 少し不機嫌に立ち去った彼女を見て。
 私はそんな日常が失われていくような気がして、彼女を探した。


『休みに来たんでしょ? 別に私、邪魔じゃないよ?』


“本物の吉澤ひとみ”がそこにいた。
 煙草を吸いながら、不敵に笑って…。


 頭にも肩にも膝にも。
 雪が積もっていた。
 雪は相変わらず降り続く。
 うっすらと白かった道路は完全に白一色に変わっていた。
 寒くてかじかむ。
 手も脚も、鼻先も耳も。 感覚があやしい。

「…… っか… みたい…」

 “バカみたい”…… 言おうとして、口が半分も開かなかった。

 バカみたい。
 
 こんな所でずっと待ってて。
 このマンションに彼女が帰ってくる保障なんてない。
 もしかしたら埼玉のほうに帰ってるかもしれないし。
 もしかしたら今日はホテルで泊まってるかもしれないし。
 もしかしたら、もうとっくに部屋の中かもしれないし。

314 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年07月21日(日)05時05分30秒


 『3月末にソロデビューだ。 モーニング娘。としてやっていくか
  どうかは任せよう。 よく親御さんとも相談して。
  また3月に結論を聞こう』


 ずっと夢見てたソロデビュー。
 嬉しいはずなのに、そんなに嬉しくなかったのはどうして?


 『… お母さん…あのね…今日ソロデビューの話、されたんだけど…』
 『モーニング娘。は?辞めるの?』
 『……』
 『あんたねぇ。ソロでやってけるわけないでしょー。
  あんたより歌上手い人、いっぱいいるよ』
 『…お姉ちゃん… 私、別に…』
 『あんた世の中舐めてるでしょ。 テレビ見ててもさぁ、いっつも
  ヤル気ないし。 ちょっとは謙虚に… 』
 『私!! 別にモーニング娘。辞めるなんて言ってない!!』


 怒りにまかせて家を飛び出してきた。

 別にモーニング娘。を辞めるなんて言ってないし、思ってもいないのに。 周りは私が辞めると思ってるし、決め付けている。

  … 辞めればいいじゃん…。

 ずっと1人になりたかったはずなのに。
 辞めればいいのに、どうして辞めたいと思わないの?

315 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年07月21日(日)05時11分25秒



         …  それはね…

 出会った時から惹かれていて。
 だから嫌だった。 
 偽りの姿で近づいてくる彼女が。
 本当の彼女と話したかった。 だからキライだった。
 でもそのクセ、本当の彼女に乱暴に求められた時、本能的に怖かった。 あんなに嫌っていた“偽りの吉澤ひとみ”の姿にもさえも、いつの間にか、彼女の全てに惹かれていることに、今更気付く。

         …  違うね。
 
 偽りの姿が嫌だとか。本当の姿を見たいとか。
 
 そんなものは結局、自分をごまかすための言い訳。
 誰も必要としない、誰も愛さない。 
 そう、あの時に誓った自分に対する単なるごまかし。


 流れていく雪をずっと眺めて続ける。
 もう寒いとか、よく分からない。
 このまま凍ってしまってもいいかもしれない。

 
街灯の青白い光に照らされて、雪は静かにただ、降り続けていく…。
 


   <第1部 : INTOROITUS編 終了>
316 名前:更新終了 投稿日:2002年07月21日(日)05時25分34秒
 時系列がばらばらな話なので、現時点のエピソードで順番にまとめてみました。 

INTROITUS編

>>200-207 2000.07.25
>>213-216 2000.08.31 (視点:後藤)
>>208-212 2000.09.07
>>10-16   2000.11.10_01
>>180-189 2000.11.10_02
>>78-85 2000.12.25_01
>>87-93 2000.12.25_01
>>97-101  2000.12.25_02
>>104-111 2000.12.25_03
>>234-239 2000.12.26
>>274-280 2001.01.28 (視点:後藤)
>>286-290 2001.01.29
>>309-315 2001.02.13 (視点:後藤)
>>23-36 2001.09.19(視点:後藤)
>>44-52 2001.12.04
>>73-76 2001.12.24_01
>>116-120 2001.12.24_02
>>124-131 2001.12.24_02
>>135-149 2001.12.24_02

>>247-254  「KYRIE」

>>258-265 2002.04.11

>>56-65  2004.11.10
>>231-233 2004.04.13

>>300-302 SUNCTUS
>>172-179  AGNUS DEI


>>2-9   COMMINIO「LUX AETERNA」


317 名前:レス感謝 投稿日:2002年07月21日(日)05時37分41秒
>>304 ありがとうございます。よしごま小説の最高峰…勿体無い言葉です。(でも嬉しいです)
>>305,
>>306,
>>307 平日はあまりマメにネット徘徊できないので、荒らしをリアルタイムでは見てなかったりします。(苦笑)
沈んだ自スレなんか更新する時以外見ませんから…。 心配かけましてすみません。
>>308 私自身、読者として書き込む時は稚拙な感想しか書けません(汗。 ので、安心して、また感想いただければ幸いです。

 大幅に予定が遅れてしまいましたが、第1部はこれにて終了。
 とはいえ、このスレで話は引き続くのですが。 今後もよろしくおねがいします。
318 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月21日(日)13時09分14秒
>304 に間違いがあります。 この小説は、よしごま小説最高峰なんかじゃありません。
   娘。小説の最高峰です。
319 名前:304 投稿日:2002年07月22日(月)00時23分10秒
第1部終了お疲れ様でした。
更新されているのがこれ程嬉しいと思う小説は他にないです。
引き続き第2部も楽しみにしていますので頑張って下さい。

>318それはスマンかった
320 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年07月30日(火)01時56分43秒
 
BENEDICTUS


 都会の濁った青い空の中を灰色の煙がふわふわと、ゆっくりと、舞い上がり広がる。
 時にその中に黒い粉や白い蒸気を交えながら。

 国道より一段低い川辺の野原に建つ、古めかしい灰色の建物。
 その建物からそびえる堅牢な煙突から、もくもくと煙が立ち上がる。
 川辺の野原は、アスファルトで覆いつくされた都会に不釣合いなくらい青々としている。
 
 私はそこにしゃがみこんで、ぼんやりと眺めている。
 彼女が消えていく様を、遠くから、ぼんやりと見つめている。
 やがて、肉体だけではなく、人々の記憶からもその存在は消えていくことだろう。
 私でさえも、彼女の記憶を、この世に永遠にとどめておくことはできない。 いずれ私もこの世から消えてなくなるから。
 別に彼女の後を追うつもりはない。
 それだけはしない、それは彼女との「約束」だからだ。
 だが、人間が定命の存在である以上、私もいずれ、この世から消える。 そして、私の命と共に、私が記憶にとどめた彼女の記憶も消えるのだろう。
321 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年07月30日(火)01時58分17秒

「… 今頃天国かなあ…」

 隣にやってきた“そいつ”が口を開いた。

「人は死んだら灰になって土に還るだけですよ」
「相変わらずのリアリストぶりだね」
「ああ、でも地獄はあってほしいかもしれません」
「どうしてさ?」
「私はあなたには地獄に落ちてほしいからです」

 別に黒い冗談とか高度な皮肉とかのつもりはない。
 それは心の底からのセリフだ。
 私は心の中でさえ“そいつ”の名前を呼びたくはない。

「はは。まぁ、天国に行けるとも思ってないけどさ。自分自身でも」

 “そいつ”は自嘲めいて笑った。

「だけどさ。私も吉澤には地獄に落ちてほしいと思ってるよ」
「… 私も天国が在ったとしても、行けるとは思ってませんから…」
322 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年07月30日(火)02時01分21秒

 私は“そいつ”がとても憎い。

 だが私と同じだけ“そいつ”も私のことが憎いだろう。
 互いの憎悪の理由は、すなわち近親憎悪というやつだということを、互いに分かっている。
 互いの憎悪が激しくぶつかり合う分、私と“そいつ”は同じ1人の人間を愛した。

 「後藤真希」という1人の人間を、私も“そいつ”も激しく愛した。
 
 私はかつて、「後藤真希」を独占し、支配したいと願った。
「後藤真希」を鎖で繋いで、彼女の世界に存在する人間が私だけになって欲しいと願った。
 だが、私はそれを実行には移さなかった。
 
 “そいつ”はかつて、「後藤真希」を独占し、支配したいと願った。
「後藤真希」を鎖で繋いで、彼女の世界に存在する人間が“そいつ”だけになって欲しいと願った。
 そして、“そいつ”はそれを実行には移した。

「後藤真希」という1人の人間を、私も“そいつ”も激しく愛し、求めた。

323 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年07月30日(火)02時02分59秒

「葬式、出なかったんだってね」
「ええ。彼女の家族とはそういう取り決めでしたから。あなたは出たんですか?」
「通夜には少しだけ」
「そうですか…」
「… 安らかな顔…して…眠ってたよ」
「………」
「1度でいいから、生きてる時に見たかったよ… 後藤が安らかな顔で、私の前で眠ってくれたら…」

 私は視線を上げた。 “そいつ”の表情は悲しそうにも、悔しそうにも見えた。

「好きだった。本当に好きだったのに。それだけなのに。なんでだよ。何でお前なんだよ。後藤のこと、ずっと見てきて、一番愛してるのは私なのに」

 何が私と“そいつ”の明暗を分けたのか、私にも分からない。
 少しだけ、ほんの少しでも違う出会い方をしていたら、私は彼女と愛し合えなかったかもしれない。 少しだけ、ほんの少しだけ、違う出会い方をしていたら“そいつ”は彼女と愛し合えたかもしれない。

 それがノルンやアトラク=ナクアの紡ぐという、「運命」の糸なのか。

 偶然という必然の重なり合い。 
 願うもの、求めるものは同じでも。
 偶然のように見える、見えない、紡ぎ紡がれた無数の運命の糸が。
「私」と「彼女」を結び、「そいつ」と「彼女」は結ばれなかった。
 願うもの、求めるものは同じでも。

324 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年07月30日(火)02時04分00秒

「… そろそろ焼き終わる頃かな…」
「灰、貰うんだってね」
「ええ。よく知ってますね」
「まあ、ね」

 私は立ち上がった。

 “そいつ”と視線を合わせる。

 互いに一歩ずつ、近付いた。

「………」
「………」

 更に近付いた。

 “そいつ”は少しだけ、私の方に首を斜め上に傾け。
 私は少しだけ“そいつ”の方に首を斜め下に傾け。

 触れ合った。

 互いの間に少しだけの空白の時間が流れる。

「じゃあな」
「ええ」
「さよなら」
「さよなら」

 社交辞令でも「またね」なんて言いたくないし、言いたくもないだろう。
 
 
 唇に残る余韻は、互いが愛した「後藤真希」の最後の余韻……


325 名前:更新終了 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年07月30日(火)02時11分50秒
    
 (\ ⊂⊃
 (ヾ( ´ Д `)
. /// つ_|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|カタカタカタ
 (/(  |\||.... .....    ....|
      '\,,|==========|

326 名前:レス感謝 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年07月30日(火)02時28分16秒
>>318 ありがとうございます。 嬉しい話ですが…  
  
              それはありえん話や!
         !!    @ノハ@
        ;・゚(゚作者(( ⊂(‘д‘ )三=-
          ( つ つ  ( ⊂ )三=-
           ヽ ヽ ヽ   ヽ_)ヽ_)三=-
            (_)_)

>>319 ありがとうございます。 
   第2部とか言ってもスタイルも何も変わりませんが、これからもよろしくおねがいします。

 最近はよしごま小説が各板に増えて一読者として嬉しい限りです。


327 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月01日(木)12時09分47秒
今回の更新を見て、何だか今日の後藤脱退と妙に重なって泣けてきました。
328 名前:327 投稿日:2002年08月01日(木)12時10分24秒
すみません… ageてしまいました。 鬱だ…
329 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月01日(木)15時55分09秒
せめて小説のなかでは夢見させてけれよう
330 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月02日(金)10時43分30秒
放置はいやだよ
331 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月10日(土)13時10分33秒
まだ続きますか?
332 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月10日(土)23時52分45秒
>331 あたりまえだ! マターリ待て!
333 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月17日(土)23時28分53秒
続き楽しみにしております
334 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月31日(土)09時56分07秒
ひと月、経ちますた・・・
作者たん・・・
335 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月13日(金)13時23分10秒
そろそろ続きをお願い
336 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月27日(金)14時07分45秒
とりあえず保全。
337 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月16日(水)19時28分15秒
保全
338 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月06日(水)20時25分09秒
まだ待つよ保全
339 名前:もうしばしお待ちください ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年11月11日(月)23時35分38秒
作者です。 ほぼ4ヶ月近く更新なしで申しわけありませんです。
こまごまと仕事が忙しかった…とか言っても、言い訳にすぎないので、これだけは宣言します。

 放置するつもりは全くありません。

>>327,>>328 後藤さん卒業は大ショックでした…。別にこのスレッドはsage進行を特に指定しておりませんので、ageても私は問題ないです。
>>329 そうですね… (…夢のような甘い話が自分も書ければいいのですが(苦笑)
>>330 放置はしません。断言。
>>331 すみませんが、まだ続きます。
>>332 ありがとうございます。 ちょっとまったりしすぎでしょうが…(苦笑)
>>333 ありがとうございます。 頑張ってワープロ打ちします。
>>334 すみません。一月どころじゃないですね…。もうしばし、お待ちください。
>>335 はい。何とか近々、更新したいと思います。
>>336>>337>>338 保全どうもありがとうございます。保全がつくのは(私的には)とても嬉しい限りです。
340 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月12日(火)01時26分13秒
放置しない宣言ありがとうございます。
いつまででも待っています。
作者様とこの小説と心中する覚悟はできていますよ。
341 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月26日(火)23時35分30秒
作者さんおかえりなさい。
続きが読める日までずっとお待ちしております。
てなわけで保全…
342 名前:荒らしじゃないよ ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年12月01日(日)01時39分48秒

                        ,,.              ,,.     ..;
                      :;'" "';: :;;      ,:; :;'" "';..   ..;
                   :;          :;''"'"' '"',:;         ..;
                    :;          :;,  ,:;        ..;
                     ..;         :;,,.:;        ..;
                   .. .. :  ..;; ..:
                  _.. :; .. : :;
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          /| ロ ロ ロ ロ | |
      /| ̄ ̄ ̄ iiiiiiiiiiiii  .| |
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( 0´〜`)
(    )
 |  | |
(_)___) 
343 名前:荒らしじゃないよ ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年12月01日(日)01時41分05秒



|   
|
|
344 名前:荒らしじゃないよ ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年12月01日(日)01時42分34秒


|    にゅ
|ノハヽ
|o・-・)
⊂ノ
|


|
|ノハヽ
|o・-・).。oO(思う存分sagaってますね…。)
⊂ノ
|


   | 隊長!死にスレを発見しました! |
   \_________  ____/
                  ∨

                     ビシィ
 ((( ( `.∀´)y-~~   Σ <(・-・o川

       |\
 / ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄\
 | ムッハァ…ご苦労…! |
 \_________/

345 名前:荒らしじゃないよ ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年12月01日(日)01時48分29秒

    
     _(0^〜^0)   ( `.∀´)y−〜〜  Σ <(・-・o川
  三(⌒),    ノ⊃    (    )         (   )
     ̄/ /)  )      | |  |           | | |
    . 〈_)\_)      (__(___)         (__(___)

          |
    ─┐‖─┐‖─┐‖
    ─┘  ─┘  ─┘ 



        勝手に…  
         ( 0^〜)Σ(`.∀´ )
        ≡≡三 三ニ⌒)   .)      (((((
        /  /)  )  ̄.| |  |      (( 川o・−・)つ
        〈__)__)  (__(___)       (つ  /
                              (__ノ(⌒)


          |
    ─┐‖─┐‖─┐‖─┐‖─┐‖    ↑紺野ライン移動中
    ─┘  ─┘  ─┘  ─┘  ─┘


          死にスレに…          
          (   0^)ノ⌒):;:;)∀´)
          /    ̄,三     )
         /   /~ / /   /
         /   / 〉 (__(__./
         \__)\)
346 名前:荒らしじゃないよ ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年12月01日(日)01時50分08秒

    ─┐‖─┐‖─┐‖─┐‖─┐‖                        
    ─┘  ─┘  ─┘  ─┘  ─┘  オ オ オ オ オ オ オ     

                  (⌒) ―― ★ ―――
            (   0) /|l  // | ヽ しないでください!
           (/     ノl|ll / / |  ヽ
            (   ノ 彡''   /  .|
            /  ./ 〉
            \__)_)



   ⊂⊃
(\ノノハヽヽ
(ヾ( ´ Д`∩ <オー
.//( つ  ノ
(/(/___|″ フヨフヨ
  し′し′
      / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
      | 感動と涙の(ウソ)RPG巨編!(ウソ)|
      | どっすーんと行くよ!!          |
      \
         ̄ ̄ ̄|/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

        (0^〜^0)
       (ぃ9  ノ              ハイハイ
        /    /.            川o・-・)∫
       /   ∧_二つ          /  つ旦

 ※RPG巨編ではありません
347 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年12月01日(日)01時51分52秒

20011020_01.

 
 今日の私はガラになく緊張している。
 いや、私だけじゃない。
 視線を彼女に向けると、彼女は見るのも哀れなほどに、その様子は落ち着かない。
 初めて私が彼女と出会った時の、全ての感情を封じ込めた「無表情」を、今の彼女は作ることが出来ない。
 何かを耐えるように眉根を寄せたかと思えば、天井を仰ぎ見たり、泣き出しそうな目をしたかと思えば、あきらめたように首を振る。

「…ごっちん…ちょっと出ようっか…」

 私は彼女の肩にそっと手を置いた。
 瞬間、びくり、と驚くその姿は怯えた子猫のようでひどく切ない。

「………」

 彼女は無言で頷いて、私の手を握り締めた。
348 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年12月01日(日)01時52分40秒

 楽屋を出たものの、何処か行く宛てがあるわけでもない。
 壁に無言でもたれている私たち。
 ただ彼女は私の手を握ったまま、離さない。

「……よっすぃー…」
「ん?」
「喉…渇いた…かも…」
「あぁ…そだね。ジュース買いに行こっか…」
「あっ…でも…」
「どしたの?」
「お金、持ってきてない」
「それくらい奢るよ」

 私は苦笑した。つられたように彼女も笑うけれども、その笑顔にはいつものあどけなさも精彩さもなく、私はたまらない気持ちになる。
 ここがテレビ局の廊下なんかじゃなければ今すぐにでも彼女を抱きしめるのに。
 抱きしめられない代わりに、私は繋いだその手をぎゅっと握り締めた。
「お、後藤 …………に吉澤じゃん」
「あ……」

 自販機のあるコーナーまでやってきた時、そこには一番、遭いたくなく、彼女に遭わせたくなかった人物の姿があった。

349 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年12月01日(日)01時55分16秒
UPDATE20011021_01  >>347->>348

 
    C⌒ヽ     。
   ⊂二二⊃  ./\
   ( 0^〜^)./   \
    (  つ/@.      \
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄7.     \
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♀〜〜〜〜〜
                   |
                   |
                  J
 
            ノノノゝ
         /⌒ ̄ ̄~ヽノ)
        (´ Д `; ゝゝ 〈
         `─ムー──、)
350 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年12月01日(日)01時59分14秒

20030513. :吉澤ひとみ


「よっすぃー、よっすぃー、ちょっとこっちに来てよぉ」
「あー。ちょっと待ってねぇ」

 台所を歯磨き粉でピカピカにしている最中、彼女が私を呼んだ。

「掃除なんて後でいーじゃん。はやくぅ」
「はいはい。すぐ行くから」

 歯磨き粉を荒洗い流していると、再度、彼女のお呼びがかかった。
 彼女の声のする庭の縁側へ、小走りで向う。

「よっすぃー、見て、見て!」

 縁側の彼女は、小魚を持って立ち上がる。

「あ!!」

 彼女の足元に居た子猫が。
 2本の後脚で、たどたどしく立ち上がり、ぴょん、っと飛び上がった。
 前脚を上空に向け、しなやかな身体を思いっきり伸ばして、ごっちんが片手で摘む小魚を掴む。前脚で小魚をキャッチして、そのまま着地し、小魚を貪り食う子猫。

「うわ!すっげー、かっけー!!」
「えへへー。ちょっとねぇ。仕込んじゃった。ね、可愛いでしょ?」
351 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年12月01日(日)02時00分41秒

 ごっちんは、足元で夢中で小魚を食べている子猫を、しゃがんで撫でた。 子猫はごっちんに触れられた途端、びくっ、と全身の毛を逆立てたが、ごっちんの方を見ると、再び食べることに集中しだした。

「………」

 私は、微笑まずにはいられなかった。
 その子猫は、まるで「ホントは触られるのはヤなんだけどなぁ。しょーがないや。ご飯くれたし。触らせてやろっかなー」とでも言いたそうな素振りで、私は同じような反応を見せた人間のことを思い出す。

「よしよし。かわいーねぇー」

 ふにゃふにゃと、優しく微笑んで、子猫の背を撫でている。

「………」

 まるで同じ毛並みの子猫同士がじゃれ合っているようにしか見えない。 その微笑ましい光景。
 眩暈がしそうなくらい、幸せを絵に描いた光景。
 小春日和の季節。
 小鳥が木々の間で囁き、春を告げる暖かい風がそよぐ。
 空は薄青。 白い雲が流れ。
 車のエンジン音も聞こえない、田舎の土地。
 たんぽぽや菜の花の咲き乱れる緑の庭で子猫とじゃれる、最愛の人。  それを縁側で見ている私。
 
 眩暈がしそうだった。
 その幸せな日常に。
352 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年12月01日(日)02時01分26秒

「ねー。よっすぃーもやってみない?」

 小魚を食べ終わった子猫は、ごっちんの方を見上げて、にゃーにゃー、と鳴いている。

「次の魚、欲しいって言ってるよぉ?」

 ごっちんは、縁側に置いてあった小魚の入った袋を、私に渡す。

「う、うん。…どーやるの?」
「えっとねえ。こーやって、手で魚を、持ってるだけでいいよ」

 彼女は小魚を摘んで、子猫の上空でふらつかせる。
 餌に気付いた子猫は、再び跳躍して、小魚を取ろうとする。
 けれど、今度は跳びすぎて、小魚を上手く掴めず、餌は子猫の顔面でバウンドする。子猫は急いで餌を探して、ありつく。

「うーん、出来るかなぁ…」

 私は小魚を摘んだ。
 小魚が私を見上げてにゃーにゃー、と鳴く。

「……う……」

 私は小魚を手放してしまった。

「よっすぃー!ダメじゃん!」
「だってさ… カワイイんだもん…」
「とばなきゃ、あげちゃダメだよ」
「いや、でもさ…かわいいし」
「お客さんに損させた、と思わないように、練習ちゃんとしなきゃいけないんだよ」

 つまるところ、子猫がパフォーマンス無しで、食べ物をゲットしたことは、ロクに練習もしないでコンサートをやって観客からお金をとるに等しい、と言いたいわけだろう。
 プロ意識の強い彼女らしい。

 眩暈がしそうな、幸せな光景……。
353 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年12月01日(日)02時02分39秒

 ・
 ・
 ・

 2002年9月23日。
 後藤真希、モーニング娘。を卒業。
 同時に、芸能界も卒業。
 2003年4月12日。
 吉澤ひとみ、モーニング娘。を卒業。
 同時に、芸能界も卒業。
 
 それに伴い、ハロープロジェクトは、大幅な改変が行われることになった。
 私とごっちんの抜けたプッチモニには、ココナッツ娘。のアヤカさんと、5期メンバーの新垣が入ることになった。
 新垣は長い髪をばっさり切って、今では少年のような成りをしている。 たんぽぽは、矢口さん、飯田さんが抜け、メロン記念日の村田さん、柴田さん、五期メンバーの紺野が、ミニモニはメンバーチェンジがなく、五期メンの高橋と安倍さんがまとめ役する、キッズ達のユニットが新たに作られるらしい。
 その事実が報道されたのは7月の終わる頃。
 あまりにも衝撃的で、急な事実は当時、様々な議論、憶測を呼んだ。

 彼女が卒業し、私が卒業するまでの間、事務所、彼女の家族、私の家族と、粘り強く交渉して、今の日常を勝ち取った。
 昔、サナトリウムとして使用され、戦後、別荘として改築された、伊豆の吉澤の別荘へ、私と後藤真希は引っ越してきたばかりだった。

 ・
 ・
 ・
354 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年12月01日(日)02時03分28秒

『真希を…よろしくお願いしますね…』

 少し寂しそうに微笑えむごっちんのお母さん。

『分かってたんですけどね。あの子が…1人ぼっちになってることを…』
 私はただ、黙って、見ていた。

『言い訳にしかならないですけどねぇ。 …あの人を失ってから、とにかく店を守ることに必死でした。
 他の子たちが、私が店に出るのを嫌がってても、真希だけは「大変だけど、頑張ってね」って…まだ小さいのに、言うんです。でも、口をへの字にきゅっと結んでねぇ…』

 後藤真希を、この世に生み出した女性の片目から液体が零れ落ちた。

『あの子が芸能界に入る時も、何も言えなかったんです』
「………」
『… あの子がね…あなたの…“よっすぃー”の話をするようになって…心の底から笑った顔を見れるようになったんです』
「………」
『私は母親として失格でしたね。あの子や、他の子のことも、全部分かっていながら…。 私は母親としてよりも、あの人の恋人としての立場を選びました』

 そう言い切る女性の姿は、時々、彼女が見せる、毅然とした何事にも動じない姿に重なる。

『あの人と作った店を、守りたかったんです。どんなことをしても、手放したくなかった。…でも詭弁ですよねぇ』

 彼女は確かに、後藤真希の母親だった。

『真希を、よろしくね。吉澤…ひとみさん』
「はい」

 私はごっちんのお母さんに、深く頭を垂れた。

 ・
 ・
 ・
355 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年12月01日(日)02時05分59秒

 眩暈がしそうな、幸せな日常。
 
 私たちが引っ越して来てから数日して、その子猫は庭先にひょっこりとやって来るようになった。
 始めは母猫と、他に3匹の子猫が居つけようよたが、ゴールデンウィークも終わる頃、その1匹を除いて他の猫たちは居なくなってしまった。

「ね。ごっちん、その子の名前とか、つけた?」
「や。ふつーにネコさんって呼んでるだけだけど」
「名前つけようよ」
「そうだねぇ。よっすぃー、つけてよ。 “ごなつよ”みたいないい名前」
「いい名前なの…?ごなつよ」
「うん」

  番組で下関にロケに行った頃。私の乗った漁船の網にかかっていたクロアナゴのことを、私はごなつよ、と名づけてみたことがある。
 まだ2年ほどしか経っていないのに、まるでとても昔のことのように思える。
 私とごっちんは、…友達とか親友以上の……付き合い…を始めたばかりで。
 でも私はごっちんに、仕事外では指1本も触れることも出来なかった。
 そんなこともあった…。

「何?よっすぃー…」
「やー、そだね。こういうの、どう? “アメリカンショートヘアの、後藤真希に似た子猫”を略して“ショマ”」
 
 ……冗談だけどね。

「ショマ?んぁ、いいねぇ!ショマ!かわいーねぇ」
「え?!マジで?」
「うん。カワイイ。ショマ、おいでおいでー」

 にゃーん

「………」

 ま…いいか…。本人がカワイイって言ってるし…。
356 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年12月01日(日)02時09分27秒

 眩暈のしそうになるほどの、幸せな日常。
 私とごっちん(…と、ショマ)のたわいもない日常の一風景。

 家族って何だろう?
 私は幸せのひと時の中で思う。
 血の繋がりなんて、少しもない、私と彼女。

「ごっちん、何かいいねぇ」
「何が?」
「うん…何かね。家族みたいだね、って思ったりして」
「ふぇ?!」
「ウチが父親で、ごっちんが母親で、ショマがウチらの子供、なーんてね」
「………」

 ごっちんは少し赤くなって、うつむいてしまった。
 足元には相変わらず餌を食べることに夢中のショマ。

「バカよっすぃー」

 照れながら、私の隣に座って呟く彼女。

「…私ね… 別に… 私の家族の事、好きだよ…」
「………」
「でもね、ホントはおかしいんだよね。好きとか嫌いとか。思うもんじゃないと思うんだよね、家族ってさ」

 私は隣の彼女を優しく抱き寄せた。

「娘。に入ってからもさ、なるべく近くの神社に行って、お賽銭入れて、お参りしてたんだよね。 神様に“家族がずっと健康で幸せでありますように”って」
「うん」
357 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年12月01日(日)02時10分20秒
「でもね、そーゆーお願い事、何処かでおかしいと思ったし…私、知ってたんだよね」
「何を?」
「…私、何処かで憎んでた。家族のこと。…でもそれはいけないことで…」
「ごっちん…」
「ホントはね…ホントは… 娘。に入ったのも…。 お母さん、お父さんが死んでから、お店のことで必死で、お姉ちゃんもユウキも、お母さんが居ないの、寂しがってた」
「………」
「私が入院してた時もね、お母さんもお父さんもつきっきりで傍に居てくれたんだよ。 でもねぇ、ある日、お爺ちゃん家に預けられてたユウキがさ、寂しいって泣いたんだよね。お父さんに、行かないでって。いっしょに遊んでって。私ばっかりずるいって」
 
 彼女はうな垂れた。

「お父さん、山男だし。典型的な江戸っ子の頑固親父だから。ユウキにも容赦なくしかってさ。おしおきで裏山に置いてけぼりにした事とか、あったらしいんだよね…」
「………」
「お金が欲しかった。芸能界でアイドルになって、人気が出たら、たくさんお金が手に入って……お母さんも店に出なくて良くなって、好きなもの、買えるようになって… 前みたいに…幸せな家族に戻れると思ってた」「………」
「でもね、どこかで認めさせたかった。 家族に、私が必要な人間だってことを、認めさせたかった。 いつの間にか、家族のことは“大切な存在”っていう義務みたいになってて…」
「ごっちん。考えすぎだよ。ごっちんは何も悪くない」

 にゃー にゃー 

 子猫は餌が欲しいと鳴いている。
 後藤真希は、私の肩に顔をうずめて泣いている。
 
 
358 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年12月01日(日)02時14分14秒
UPRATE >>350-357


         ノノハヽ  ンァンァ あわてないあわてない
       /| (  ´ Д)
      || / ⌒つ⊂ノ /l
       ||ヽ  /   / |
      || ⌒| ̄ ̄ ̄|   
       ´  |      |

     /(( 0´〜`)(() /ひと休みひと休み
    / ̄⌒⌒⌒⌒⌒ ̄,)
  / ※※※※※ /
 (________,,ノ
359 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年12月01日(日)02時15分23秒

 20020616_01: 後藤真希


   いつまでも色褪せることのない夢や希望は、時に残酷。
   現実が、この身体を、この心を、確実に蝕んでゆくのに、それでも色褪せない
   夢や希望は、精神を引き裂いて、確実に狂わせていく。
    病んでゆく……  堕ちてゆく…
    どうして? 私は…

 ・
 ・
 ・


 ジー……

  薄暗い部屋の奥で光る、赤い点。

 「……やめて……」

 無機質で、かわいた機械の作動音が、やけに耳につく。

 ジー……

 「…… お願いだから……」

 朦朧とした頭。
 でも身体が動かない。

 




360 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年12月01日(日)02時16分20秒


 「… っとう… 後藤!!」
 「… や… い…や… …あ… 」

 私は乱暴に肩を揺すられて急激な覚醒を強いられた。
 でも、それで良かった。 
それであの「悪夢」から逃れることができたのだから。

 「…う… は…あ… はあ…」
<
 それでも、鳩尾の鈍痛と、こみあげてくる吐き気に、私は苦痛の声をあげずにはいられなかった。

「 …… 」

 そっと私を抱きしめてくれる両腕は、何故かひどく冷たい。

  チャラ…  チャラ…

「あぁ…」

 その金属音は、私が「悪夢」から逃れてもなお、突きつけられる「悪夢の続き」。

361 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年12月01日(日)02時17分09秒
「あの…お願いがあるんだけど」
「何?後藤の願いだったら何でも聞くよ」
「足錠、外してよ…足首の擦り傷のこと、注意されたから…事務所の人に」
「そっか。ごめんね。今度は皮製の用意しとくよ」
「…外してくれないんだ…」
「それはダメだよ」

 即座の却下は、予想通りだったので、私はあまりショックを受けることはなかった。

「だって、逃げるっしょ?外したら」
「逃げないよ。だって約束だから」
「…約束…」

 さっきまで、穏やかに見えたその目が、一瞬で冷たい色に変わった。

「約束… 約束!! そうだよ!!!!」
「や…!」

 乱暴に両肩を掴まれて、押し倒される。 

「結局はアイツのため…!! アイツのためなんだろ!!!此処に居るのも!!!!」

 身体を這い上がってくる、冷たい手の感触。

「…っつぅ…」

 胸元に爪を立てられる。爪が食い込む。 そのまま爪は肉を裂いてぎりぎりと肌を傷つけていく。 しばらくすると、傷口からプチプチと、赤い血が溢れ出してくる。

「何で!! 何でアイツなんだよ!!」

 二重にはめられた金属の枷のふちが、アキレス腱や、骨に食い込み、既に出来た擦り傷にすれて痛む。
 痛みと金属のぶつかり合う音は、認めたくない「日常」へ、私を引き戻す…。

  ぐるぐると 頭の中を巡る。

  よっすぃーと、「約束」。

  市井ちゃんと、私の「約束」。

362 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年12月01日(日)02時19分32秒
UPDATE >>359-361


          ,、''"´ ̄ ̄`''、
        /        ヽ
       /   ごっちん  ゙、
       i           | 彡
       l    LOVE    !
       ヽ          /
         \      /
          \_  _./
            ∀    ふわふわ
            │
            │
            ∩(^〜^0) 
              (     )
               (_(_ノ  ))
363 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年12月01日(日)02時22分47秒

HOSTIAS


 「サハラ砂漠」―――― アフリカ大陸の3分の1を占める地球最大の乾燥地帯。
 その面積はおよそ860万平方キロ。 同じ砂漠でもアラビア砂漠の約4倍、ゴビ砂漠の約6.6倍。日本の国土面積の23倍という巨大な砂漠は数々の国を跨っている。

 有名なメルズーカの大砂丘の存在するモロッコに入る前に、私はアルジェリアを訪れた。
 アルジェリア内のサハラ砂漠に存在する、「ある場所」を訪れるために…

 ・
 ・
 ・
364 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年12月01日(日)02時23分32秒

「何でサハラ砂漠なんて何も無いクソ熱い所に行きたいとか思うわけ?」

 或る日、私は彼女に尋ねてみた。

「うーん…何でって言われるとね…うまく説明出来ないんだけどさぁ…」

 彼女は少しだけ眉根を寄せる。

「サハラ砂漠ってどうやって出来るのか知ってる?」
「あ、うん。知ってるけど?」

 私は素直に返答したが、それはNGだったらしい。

「ちぇっ。知ってんだ。じゃあいいや。別に説明しなくても」

 おそらく彼女は砂漠がどうやって出来たのか、一生懸命調べたんだろう。拗ねて頬をぷぅ、と膨らませる。

「あ!ごめん。ウソ!ちょっと見栄張っちゃったよー。実は知らないんだな、これが」
「ウソ、ウソ。よっすぃー、物知りだもんね。ホントは知ってるんでしょ!どーせ、ごとーはバカですよー」
「ちょ、そんなこと言ってないじゃん。っていうか!知らないから!ホントに!」
「………ホントに……?」

 疑わし気なまなざしで、見上げてくる彼女の両頬に、私は両手を添えて。

「本当に。知らないから…教えて?ね、ごっちん」

 真正面からその瞳を見つめる。

「…ウソツキ…」

 視線をずらして彷徨わせ、少し恥らうその様は、昔から変わらない、彼女の表情。

「あー、もう…!やっぱりよっすぃーにはかなわないなー」

 私の視線から逃れるように、抱き着いてくる。
 その身体をしっかりと抱きしめると、全身を委ねてくる。
365 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年12月01日(日)02時24分31秒

「…サハラ砂漠ってね、昔は砂漠じゃなかったんだよね」

 彼女を抱きしめたまま、そのままカーペットの上に倒れ込んだ。

「…でも、えーっと…大陸が動いてぇ… 雨が降らなくなってぇ… 雨が降らないってことは雲がないってことでぇ…」

 懸命に言葉を紡ぎ出す彼女の長い髪を片手で梳く。

「…だから昼間はすっごく暑いのに、夜はすっごく寒くなるわけでぇ…」
 心の中で、説明補完。
 大陸移動によって、3000年ほど前からサハラ一帯の砂漠化は始まった。
 本来なら、太陽の熱をやわらげる効果がある雲が、サハラ一帯の上空にほとんど流れなくなってしまった。
 大地は、陽の出ている間は、常にその光線の元に晒され、熱される。
 だが、一度、陽が沈めば、地上の熱は、雲がないためにあっという間に上空に放射されてしまう。

「…でね、もともとはそこにあった大きな岩が、どんどん砕けて小さくなっていって、小さい石になって、更に砕けて、最後に砂になるの」

 砂漠の夜は、昼の暑さが嘘のように冷える。
 その急激な温度差で、岩は膨張と収縮を繰り返し、やがて、耐え切れずに砕け散る。

「…で、砂は軽いから風に飛ばされて、飛ばされた所に砂ばっかり集まって砂漠になるの」
「うん」
「なんかね。そーいう感じがね…」
「うん」
「分かるかなぁ…そーいう感じ」
「あぁ…分かるかも。そーいう感じ。何となく」
「だから行ってみたいんだよね。サハラ砂漠」
「そっかぁ…」

 ・
 ・
 ・
366 名前:車地雷AM99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年12月01日(日)02時25分19秒


 アルジェリア内にあり、世界遺産としても登録されている「タッシリ=ナジェール」。
「タッシリ=ナジェール」とは現地トゥアレグ語で「水の台地」を意味する。
 砂地と轢地の上に切り立つ岩は脆く、それでいて、奇妙に曲がりくねり、「水に台地」を思わせるような光景はそこにない。
 だが。
 洞窟や岩山に残された無数の壁画。
 狩をする人々や、牧畜を営む人々の姿が、いきいきと描かれている、それは、古代において、ここが「水の台地」と呼ばれるに値する、湿潤で肥沃な土地だったことを表している。
 
 彼女がサハラ砂漠に見出した「そーいう感じ」と、私が彼女から感じた「そーいう感じ」が、同じものかどうかは分からない。

 ただ、彼女は「ここ」を知っていただろうか?

 干からびて、脆い岩と岩と轢地を縫って、幾筋にも伸び、連なり、緑の傘を掲げるそれは。
 樹齢4000年を越えるイトスギの木は、サハラが緑豊かだった頃の面影を残した場所である。
 私は木陰に腰を下ろし、水筒の蓋を開ける。
 すっかり生ぬるくなっていたが、水は喉を心地良く潤した。

367 名前:更新終了&レス感謝 ◆fGYOqHlg 投稿日:2002年12月01日(日)02時33分11秒
UPDATE >>363-366


         ,、''"´ ̄ ̄`''、
        /        ヽ
       /   ごっちん  ゙、
       i           | 彡
       l    LOVE    !
       ヽ          /
         \      /
          \_  _./
            ∀    ふわふわ
            │
            │
          ノノハヽ  ∩ミ 
        ⊂(´ Д `⊂⌒`つ 
           ∩^〜^∩) 
            (     )
             (_(_ノ 

>>340さん ありがとうございます。心中覚悟のその心意気に負けないように、いい文章を書ければと思います。
>>341さん お待たせしました。続き、書きました。本当は一気に最後まで書きたかったのですが、どうしてもしっくり書けないエピソードが2つほどありまして…。

 1年以上かけて書く代物でもないのに、1年以上も結果、かけてしまっている始末です。
 でもようやく終わりが見えてきました。年内完結しますので、今後ともよろしくおねがいします。
368 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月01日(日)04時01分20秒
復活おめでとうござます〜。
(更新したならageてくださいよう)
369 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月01日(日)05時45分23秒
更新キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!!!!!!!!!
ショマにワロタ
370 名前:名無し娘。 投稿日:2002年12月01日(日)12時51分28秒
待つってだいじだね。
371 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月01日(日)14時52分32秒
復活、おめでとうございます。
よしごま大好きなので、放置かなと思っていただけに、凄く嬉しいです。
372 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月01日(日)16時01分03秒
復活、おめでとうございます。
待ってたかいがありました(涙)
ショマとお父さんとお母さん。イイですねぇ・・
年内完結ですか?楽しみです。
これからも付いて行きます!
373 名前:名無し娘。 投稿日:2002年12月01日(日)16時25分00秒
更新待ってました!!そして年内完結ですか……寂しいような、待ち遠しいような…
毎回の更新の度にえらく興奮してしまう自分がいます(w
どんな展開になろうとも最後までついていきます、仕事やら何やらお忙しいとは思い
ますが、頑張ってくださいね。
374 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月01日(日)23時16分20秒
更新ありがとうございますありがとうございますありがとうございます。
ずっと待ってたかいがありました!
続き期待しています。
375 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年01月01日(水)02時41分35秒

20011020_02. :吉澤ひとみ


 その人間に宿る精神が最もよく表れるのは“目”だ。

 1年半ぶりに再開した市井紗耶香の“目”を見た時、私は本能的に危険なものを感じた…。

「後藤、緊張した時よくここにジュース買いに来てたよね」

 まるで私など視界にないように、市井紗耶香は彼女に近付いて来る。

「待ってたんだ。ここに居れば多分、来ると思って」
「………」
「会いたかったよ、後藤。あ、ケータイの番号変えたでしょ?」
「………」
「何で教えてくれないのさー。つれないねー」

 目の前に立った市井紗耶香の視線を避けるように俯く彼女に…

「キレイになったね。しばらく会わないうちに……」

 そっと手を伸ばす…

「こんな衣装着て…誘ってる?」

 露出した太腿を撫で回して、耳元で囁く。
376 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年01月01日(水)02時43分24秒
「…ゃ…」
「…!市井さんっ!!」

 私は市井紗耶香の手首を掴んで捻り上げた。

「やめてください」
「痛タタ… あんた力強いんだから手加減しなよ」

 手首を抑えて大仰に痛がりながら、それでも笑っている市井紗耶香。

「何、ムキになってんのさ? 久しぶりに再会したカワイイ後輩とのちょっとしたスキンシップじゃん」
「ごっちんは嫌がってます」
「何で?吉澤がそんなこと判断するのさ?」

 笑いながら、だが、その目は笑っていない。

  ―――― コイツ ハ 危険 ダ ―――― 


 その目はモーニング娘。の市井紗耶香の面影を残してはいなかった。
 危険な光を燈した瞳。
 この1年半、市井紗耶香を取り巻く環境が容易なものでなかったことを物語る。
 「自分」というものを破壊され、それでも生き続けなければならず、だが、「自分」が破壊されたが故に、何者にも縛られない――――。
 虚飾を捨てた獣は、後藤真希を狙っている…。

「彼女は渡しませんよ」
「ふーん…」

 人の血を吸った刃のように、鈍く光る瞳に、私は微笑みながら答えた。
「あー、今度さ、ユニット組むんだけどさ。ギター弾く奴の名前が“吉澤”なんだよね。アンタの親戚かなんか?」
「知りません」
「吉澤って誰にでも優しいけどさ、全然、周りのこと、バカにしてたよねぇ。後藤のことも踏み台ぐらいにしか考えてないかと思ったんだけど。何か意外」
「そうですね。始めはそうでした。でも今は違います」
「…まぁ、いいや。何だって。私は自分のやりたいようにやる。それだけだから」

 うすら笑いを浮かべて、私の肩をポン、と叩いて市井紗耶香は去っていった。
377 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年01月01日(水)02時44分19秒

「…ぅ…あ…」
「ごっちん!!」

 市井紗耶香の気配が消え、辺りを支配していた緊張の鎖がほどけたと同時に、彼女は崩れるようにその場にヘタリ込んだ。
 私が無言で抱きしめると、彼女も必死でしがみついてきた。
 泣くことさえも出来ないほどに怯えて、震えている彼女。

「…よっすぃー…」

 私の肩に頭を乗せて。
 長い髪が私の頬をくすぐる。
 柔らかな唇の感触が、震えながら首筋に。
 そして委ねられた全身の重み。

 彼女を抱きかかえて、無人の楽屋を探し出した。
 
 鍵をかける。
 電気はつけない。
 窓のない無人の楽屋は暗く、空調が効いていない空間は少しひんやりとしている。

 畳の上に倒れ込み、互いの衣装を無我夢中で脱がせ合う。
 全裸で抱き合い、口づけ合う。

 ここが仕事場で、今が仕事前でも。

 少し噛むようにしてその皮膚を吸い上げて、彼女の身体に所有の証を刻みながら。
 刹那の快楽と、背徳的な行為に溺れる私たちは。
 これから何処へ向かっていくのだろう。
 
 荒い吐息と淫らな音が、暗い部屋の中でやけに響く。

「よっすぃー… 離さないで… お願い…」

 首に両腕を絡ませて、きりぎれに懇願する彼女をきつく抱きしめた。

「離さないよ… 絶対…」

 
 
378 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年01月01日(水)02時46分32秒
UPDATE>>375-377


             ノノノノヽ((( グツグツ
            ( `.∀´))))     ノノハヽヽ 
            ( _つ i―――i  (^〜^O )
             ,ヘ ̄ `===o='  ̄ ⊂⊂、 )  
            /´ソ===============ヽ^ヽ、
              (※/※※※※ノノノノヽヽ....※、 )
.           `ー-----='( ( ´ Д `)つ(|;;;|
                       ヽ.,,) ̄ ̄ンア-  ̄

379 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年01月01日(水)02時47分37秒

LACRIMOSA


「よっすぃー、あのね」
「なに?」

 それは、デートの帰り道。
 何度も歩いた原宿の街並み。
 
「すっごい不謹慎なこと言うの、分かってるんだけどさ…。
私、ちょっとホッとしてるんだ」
「…?何が?」
「…死ぬこと」
「…… 不謹慎すぎるよ…」
「ごめんね。……でもね、…でもね…
 私が死ぬまでの間、よっすぃーは私のことしか見ない。
 それがとっても嬉しかったりするんだよね…。
 …もしも、もし、病気なんか無かって、これからも2人とも元気だった時のこと、考えると、私いつも不安だったんだよ…」
「ああ…」

380 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年01月01日(水)02時50分05秒
 
 ああ、なるほど。
 不安。 それは在る。
 どれだけ互いのことが好きで、愛し合っていたとしても、私達は何処まで行っても「女性同士」「同性」という「現実」がある。
 私達がどれだけ愛し合っても、私と彼女は結婚することも、子供を作ることも出来ない。
 “誓約”“制約”“セイヤク”で互いを縛ることのない、それは一見、美しい理想でありえるが、人の弱さにその理想は“理想”でしかない。
 本当は“セイヤク”によって、互いを縛り合いながら、愛し合い、生きていくしかない、それが現実。

「…じゃあさ…。ごっちん、何か残そうよ」
「何を?」
「ごっちん、何か私に“約束”してくれない?何でもいいからさ」
「約束……」
「約束ってさ、凄く簡単だけど、でも、凄く難しいことだと思うんだよね」

 “約束”は、守れるようなら、とても簡単。
 でも、それは大抵、守れない。
  だから、とても難しいこと。
381 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年01月01日(水)02時51分09秒
「……… 例えばさぁ……  ごとーと一緒に死んで?……って言っても?」
「いいよ」
「あは。嘘だって。そんなこと、言わないよ」
「そっか…」

 …… そっか。
 本当はそう言って欲しかったかもしれない。それが本音。
 それが私にとっては一番、楽な“約束”。
 人間は…いや、私は強くない。 弱い。
 彼女を失ってからの自分の人生が、今の私には予想もつかない。
 だから、こうして楽しく過ごしていても、漠然と不安で仕方ない。
 それでも「死」という、「人間の根源的恐怖」「生物の本能としての恐怖」と戦っている彼女に較べれば、私の不安など、贅沢なものだ。
 だから、その「不安」を彼女に悟らせないように、なるべく素っ気なく、無表情で答えたはずなのに。

「よっすぃー…」
「…ん?」

 …?!
 彼女は私の腕を強引に引っ張った。
 
 人気のない路地裏。

「…?…ちょ…ごっちん……な…」

 彼女の両腕が私の首に絡まる。
 背中と後頭部にコンクリートの感触。
 そして、私の唇に、柔らかな彼女の唇の感触。
 何度も味わった「後藤真希」の唇の、その感触。
 恥ずかしがり屋の彼女が、路地裏とはいえ、公衆の真ん中で、キスしてくるなんて珍しい…。
 ぼんやりとそう考えていると、半開きの唇を割って、生温かい物体が侵入してくる……
382 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年01月01日(水)02時52分23秒

「………」
「………」

 彼女はどんな表情で私に口づけているのだろう…?
 酔いしれながら、うっすらと瞼を上げて、視界をゆるりと巡らす。
 そうしたら、まるで私が目を開いたことを知っているかのように。
 彼女の右の手の平が、私の視界を覆う。

 …暗闇。

 そう…暗闇。
 もう、この暗闇の中には私と彼女しか居ない。
 瞼に触れる柔らかな指の感触と。
 唇に触れる柔らかな唇の感触と。
 それは、私に、そう錯覚させるに充分。

 彼女を引き寄せて、体勢を入れ替える。
 壁に両手首を抑えつけて、その唇を貪る。

「……ん…ううっ……」

 くぐもった彼女の声を聴きながら、思い出したのは彼女に口づけた晩秋の頃のこと。

 … 好きだよ… 好きなんだよ… 
 あなたのことが… どうしようもなく…

 舌と舌。
 指と指。 
 絡み合い、絡めあう。

「… ごっちん…」

  … 好きだよ… 好きなんだよ…
 あなたのことが… どうしようもなく…
 ねぇ、分かる? 分かるかなぁ?
 今でも、今までも。
 そして、これからも。きっと、ずっと。 
 あなたのことが好きで。 どうしようもなく。

 … ゆっくりと、舌を出して。
 粘液の糸と、彼女の口の端から流れ出している唾液を舐め取る。


  口づけしたこと覚えてる
  ほんの一秒足らずでも
  Ah 一生忘れない

383 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年01月01日(水)02時54分02秒

 そういえばあの時は「好きだよ」と言おうとして、邪魔されたことを思い出す。
 不意によぎるアニメ声のこととか。
 それに気を取られた瞬間、脱兎の如く逃げていった事とか。
 そんなに昔の話じゃない。
 なのに、今はとても遠い昔のことのように思える、不思議な感覚。
 でも、私はあの時と変わらずに、あの時から一度たりとも「後藤真希」のことを忘れたことはない……


  ドキドキしたと同じ分だけ
  恋に落ちて行った


「よっすぃ…?」

 しばし記憶の波に意識を巡らせていると、彼女が少し不安そうに見上げてくる。

「…ごっちんが欲しい」
「………」
「…なーんてね」
「…いいよ…」
「はは、嘘だって。ちょっと”ひとむ”モードに入ってみたりしましたー。ってことで」
「いいよ。やろうよ…」
「な…に言って…」
「よっすぃーが欲しい」
「ちょ、冗談…」
「本気だよ!!」



 鎖骨をきつく吸われる。
 全身の毛穴が開いたような、カッと熱くなる………

「今…すぐ…やってよ……」


  Do It! Now
  いつもいつもでも何年経っても
  決心したこの愛が続くように
  
  間違ったって しょうがないでしょう
  迷ってたって 始まんないでしょう
  誰もが不安な日本の現状
  BUT「KISSがしたい」が人間の本能
  愛の形はイメージ通りです
  恋の行方はあなたと二人です
  もっと下さい 愛を下さい
  あなたのその胸の中で… いつまでも



384 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年01月01日(水)02時54分45秒




「……よっすぃーは生きててね」

 転がり込んだホテルで、彼女の身体を貪った。
 久しぶりに抱く。 抱き合う。

「よっすぃーは生きててね。ずっと。私のこと、忘れてもいいし。…って言ってもそれはきっと難しいと思うから。
 よっすぃーがいつか私のことを“思い出”にした時、よっすぃーはよっすぃーの人生を歩んでね。
 それがごとーが残す“約束”かなぁ…」 
 
 後藤真希と。
 吉澤ひとみと。
 久しぶりに身体を重ねた。
 抱き合った。 口づけあった。 何度も。 何度も。

「なんか…それって、すっげー勝手な“約束”じゃん」
「あはは。うん。分かってるからさ。 だから、ただの口約束。いつでも破っていいから」
「破らないよ。絶対」
「さぁ?どーでしょうねぇ?」


  どんな未来が訪れても
  それがかなり普通でも

  いつもいつまでも何年経っても
  決心したこの愛が続くように

  宇宙のどこにも見当たらないような
  約束の口づけを原宿でしよう



  …… それが、「後藤真希」と私、「吉澤ひとみ」の約束……。

385 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年01月01日(水)02時58分11秒
UPDATE>>379-384

 ※ちなみに原宿には女同士で入れるラブホテルはありません。
  あくまで、この話はフィクション、ということで。

   @ノノ_, ,_ヽ@
    ( ‘д‘)  < えぇ? よっすぃー女?  
   ┌────┐
   O 女男? O
   └────┘


 ( 0^〜^) < NGだわ…
 ( ´ Д `)<………
386 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年01月01日(水)03時07分11秒

20020617 :後藤真希


「………」

 いつもなら、扉を開ける音を聞いて、玄関までやってくる人が、その日は違っていた。
 
 部屋は真っ暗だった。
 でも、電気をつけるまでもない。手探りで、何処をどう辿ればその人の部屋に行けるのか、感覚が覚えてしまっていて、少し自己嫌悪に陥る。

「……市井ちゃん…?」

 部屋の灯りは消えていたが、テレビがついていている。
 ベッドに腰掛けて、そこに横たわる市井ちゃんの姿を観察してみる。
 片手はリモコンを握りっ放し。 テレビを見てて、そのまま眠ったんだろうな、と思う。
 足元に無造作に丸め込まれたタオルケットを、ちゃんと肩口までかけようとした時だった。

「……!!っ はぁ!!」
「市井ちゃん?」

 市井ちゃんが、もの凄い勢いで起き上がってきた。

「…あ…いつ…あいつっ…!!!! 来るっ!! ナイフ…!」

 両目をカッと見開いて、窓のほうを見る。
387 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年01月01日(水)03時08分02秒

「市井ちゃん? …後藤だけど…? 」
「……………?……ぁ………あぁ……」

 市井ちゃんは、ぼんやりとした様子で、私の方に振り返る。
 小首を少し傾げ、私を見つめるその目から段々、怯えと混乱の色が収まっていくのが分かった。

「後藤…後藤なんだよね…!」
「うん……」

 市井ちゃんは、ぎゅーっと私を抱きしめた。
 痛いぐらいに。
 胸に押し付けられた私の耳に、市井ちゃんの胸の鼓動が聞こえてくる。
    ばくっ。    ばくっ。

「…薬…飲まないで寝ると…嫌な夢を見る…いっつも。いっつも… くそっ」

 胸を突き破りそうなほどの激しく、早い鼓動。

「後藤ぉ…傍に居てよ……」
「…………」

 消え入りそうな、泣きそうな声で、私は市井ちゃんに組み敷かれる。
 悲しくなる。 悲しかった。





   いつまでも色褪せることのない夢や希望は、時に残酷。
   現実が、この身体を、この心を、確実に蝕んでゆくのに、
   それでも色褪せない夢や希望は、
   精神を引き裂いて、確実に狂わせていく。
    病んでゆく……  堕ちてゆく…
    そう… 私も。 彼女も。

 ・
 ・
 ・
 
388 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年01月01日(水)03時09分36秒
  ・
 ・
 ・
 
「後藤は吉澤のこと、何も知らないでしょ?」
「そんなこと…ない…」

 そんなことない。
 深く考えずに否定した。

「嘘だね。じゃ、どれだけ知ってるか、言ってみなよ」

 どれだけ知ってるか?
 そんなの言い出したらキリがない。
 本当は優しいのに、時々、冷酷で。 本当はすごく子供っぽいのに、大人びた考え方と視点を心がけている人。
 本当は結構、激情家で、正義漢なのに、結局は理性的に合理的に物事を考えてしまう人。 本当はロマンチストなのに、どうしてもシニカルに構えてしまう人。
 よっすぃーの周りにはたくさん、よっすぃーのことを好きな人が集まってくる。
 だけど、その中心のよっすぃー自身は、いつも孤独なまま。
 あんまりにも「偽りの自分」を演じることに馴れてしまったよっすぃーは、「本当の自分」の姿で、人と接することが出来なくて、いつまでもひとり。
 私は知っている。 そんな吉澤ひとみのことを。


 ――― そこで私は、ひとつの疑問を見出してしまう ―――

389 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年01月01日(水)03時10分59秒

 どうして? 
 じゃあ、どうして?
 そこまで彼女は違う自分をかたくなに演じる必要があったのだろう?

「結局、アイツは後藤に何も教えてないんだよ。自分の醜いところ」

 私の疑念を見透かしたような、その言葉。

「……… 好きな人に自分の醜いところは見せたくないよ…」
「ま、そうだよね。吉澤は知らないだろーね。アンタが私に……」
「辞めてよ!!」
「奇麗事だよ。 みんな自分が大切なんだよ。 好きとか、愛してる、とか。全部ウソだよ。まやかしだよ。分かる?後藤」
「……じゃあ、どうして…どぉしてこんなこと…するの?」
「後藤のことが好きだから」
「わけわかんないよぅ…」








390 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年01月01日(水)03時12分18秒










「…ごめんね…後藤。…他に方法があれば…」



「…何も生真面目に狂気を選んだりはしなかったよ…」





    …いしき の とおく で いちいちゃん の 
    そんな つぶやき を きいたような きがした…





391 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年01月01日(水)03時15分40秒
UPDATE>>386-390


〃  ";ヾ ;ヾ ;ヾ ; ;ヾ" ;ヾ" ;ヾ ;ヾ ;;ヾ ;../ ;ヾ  ;" ;ヾ ;;ヾ ;ヾ"
  " ;ヾ ;ヾ;_"  ; ;";ヾ ;;"ヾ ; ;"//  ;ヾヾ ;ヾ  ";"; ;;"ヾ ;
ヾ ;ヾ ;ヾ ;ヾ ;";ヾ ;ヾ ;"ヾ   ; ;"  ; ヾ 〃";ヾ ;"  ";. ; ;ヾ ;ヾ ;" ;
";  ;"ヾ ;ヾ;"  i  i  l ";ヾ ;;ヾ ;;"      "ヾ; ;";ヾ ;;"
;ヾ ;ヾ;_"  ; ;ヾ|i   l  l i|/"/゙   "    "    " ヾ "
 " ;ヾ ;ヾ; " ヾ|ll l | |゛l|/"  "    ,
   ヾ;"ヾ゛  | | l l  l ! |    " "  "     "
    "    | |  i | l | ノノハヽ  
  ,,,,      | l  l.l|l |( ´ Д `) ,, ,,, ,,  ,,,,,  ,,, ,,,,
       ノノ l  l !l | l(っuuっ     ,,,,   ,,,  ,,,,

             ダダダダッ ⊂( 0^〜^)
            ⌒ヽ     ヽ   ど)
             ;;;人,,.,   人  Y
           Y⌒ヽ)⌒ヾ;; ) し'(_)

392 名前:更新終了&レス感謝 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年01月01日(水)03時31分48秒
 あけましておめでとうございます。
 今回の更新より、諸事情でHNを変更しております。
 年内完結、とかいいながら、まだ終わりません(泣&苦笑)。
 
>>368さん。 ありがとうございます。なんかついsageるクセが…(苦笑)
>>369さん。 ありがとうございます。
 ショマネタは私の小説にしては珍しい小ネタでした。分かっていただけて幸いです。
>>370さん。 待っていただいて、ありがとうございます。鳴かぬなら鳴くまで待とう不如帰。
>>371さん。 ありごとうございます。後藤さん卒業でもよしごまは不滅です。
>>372さん。 ありがとうございます。……年内完結できませんでしたが…今年も付いてきてほしいです…
>>373さん。 いつもレスありがとうございます。 「えらく興奮してしまう」…勿体ない言葉です。
>>374さん。 レスありがとうございますありがとうございますありがとうございます。

 たくさんのレス、本当にありがとうございます。
 飼育で小説を書いていてよかったなぁ、と思います。
 今年もどうかよろしくおねがいします。
393 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月02日(木)23時27分42秒
年明け早々の更新お疲れ様でした。
シリアスな内容とAAのギャップが(w
完結してなくてホッとした自分は逝ってきます。
今年もこの小説についてゆきますので頑張って下さい!
394 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月05日(日)07時14分07秒
あけおめです!どうも久しぶりです。1年ほど前、最初らへんにレスしてたポーですm(__)mペコリ って憶えていないと思いますが(^^;)
今はかぶっちゃったりしてるんで名無しになりました(笑)
この話すごい好きなんでずっと読ませてもらってます。最後までついていきますので更新がんばってくださいね(^-^)
395 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月06日(月)09時50分32秒
あけましておめでとうです。
これからもマターリ作者さんの納得いくものを書きあげてほしいです。
396 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月06日(月)19時03分25秒
更新されてる!
ラブホって女同士で入れないんだ。知らんかったよ。
397 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月08日(水)03時14分02秒
更新、お疲れ様です。
年内完結とは行かなくても、またこのお話を読む楽しみが出来たと思って、
密かに嬉しかったりw
マタ〜リお待ちしております。
398 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月22日(水)15時11分05秒
続きまだ?
399 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月10日(月)15時41分44秒

20020710_01. :後藤真希



    いつまでも色褪せることのない夢や希望は、時に残酷。
   現実が、この身体を、この心を、確実に蝕んでゆくのに、
それでも色褪せない夢や希望は、精神を引き裂いて、確実に狂わせていく。
    病んでゆく……  堕ちてゆく…
    そして私は灰になる ―――― ……


ざああああああ―――― ……

 …蛇口から流れっ放しの水音と

「はぁ… はぁ…」

 …私の吐く荒い息遣いの音。

 ニガい。
 鼻をつんざくような酸っぱさと苦さ。
 痺れるような舌先。 妙に渇いた喉。

「あはっ。…もう吐くもんもないみたい…」

 軽いようで、重い身体。
 鳩尾の辺りに鉛を埋め込まれたような不快感や、皮と骨と内臓が、引きつる不快感。
 ここ数日、まともな食事を摂ったことがない。
 暑さのせいもあると思う。
 けど、それよりも根本的に「食べ物を食べたい」という「欲求」が、ここのところはすっかり失せてしまっている。
400 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月10日(月)15時42分52秒
 食べても、身体が受けつけてくれない。
 何か食べれば気持ち悪くなって吐き出す行為を繰り返すうちに、すっかり私の「食欲」は失せてしまっていた。
 ただ、メンバーやスタッフの手前、配られた食事を食べないわけにはいかなかった。
 余計な心配をかけさせたくないから。
 だから、食べる。
 ご飯や、から揚げや、トマトや。 サンドイッチや、ハンバーグや……
 昔の私は「おいしい」と思ったのかな…?
 今の私にとって、それらは口の中につめこむだけのカタマリでしかない。
 まるで味を感じない。 砂や粘土や錆びた鉄くずを食べているような感覚さえ持つ。
 肉体の疲れを何とか気力でカバーしながら。

    もう少し。   もう少し。

 休もうと思えば思うほど焦って眠れず。
 漠然とした不安や焦りや苛立ちとは逆の、奇妙な充足感。

    もう少し。   あと少し。

 壊れていく。
 身体も。 心も。
 何もかも、壊れて、燃え尽きていくような感覚……
 
「…もうそろそろ…行かなきゃ…」

 最近、独り言が多くなったかもしれない。
 早く帰り支度しなきゃ…また着信履歴がいっぱいになっちゃうしね…。
 苦笑する。
 念入りに口をすすぎ、顔を洗ってタオルで拭いて、私は給湯室を後にした。
 
401 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月10日(月)15時44分02秒
UPDATE>>399-400
                         \            /| 
                       ,,-'―\       _,/ノ 
        ___,,-―――='' ̄ ̄    _,,-'―=''' ̄_,/|  
_,,-―=''' ̄      ___,,-―――='' ̄ __,-―='' ̄   / .  
   _,,-―=''' ̄        _,,-―='' ̄ ヽ       /  +
 ̄ ̄        _,,-―=''' ̄          \    /  . . .
      ,,-='' ̄                   ヽ  /    
    ,,,-''                        i ヽ/     。. 
-―'' ̄   |      ●           ●  |   .
  |  |  |   ................            ......:... | + 
  |  |  |  ........:.........:   ━━━━  ........... !   get401   . 
  /  |  |   ............:     *      .   ノ  ☆ . *  +.  .
/     |                    /   .  . .   +★

402 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月10日(月)15時44分54秒
Dies irae


  ―――― サイレンの音が遠くに聞こえる ――――

 私は枕を頭の辺りに置いて、静かに部屋を出た。

 部屋を出ても、誰も居なかった。
 私以外の人の気配は、まるで無かった。


 私は自分の部屋に戻ってテレビをつけた。

 ベッドにもたれかかって、ぼんやりとテレビを見続ける…。


  ―――― サイレンの音が遠くに聞こえる ――――


 歌番組の中でモーニング娘。が歌っている…。

  ―――― サイレンの音が遠くに聞こえる ――――
  ―――― サイレンの音が遠くに聞こえる ――――

 安倍なつみが真ん中で歌っていた。
 矢口真里、市井紗耶香は後ろの方で弱々しく歌っていた。

  ―――― サイレンの音が遠くに聞こえる ――――

そして…




403 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月10日(月)15時45分35秒
20020710_02. :吉澤ひとみ


   ヴーン.. ヴーン.. ヴーン.. .

「………?!ぁあ、またかよ!?」

 私以外、誰ひとりもいない楽屋で、小刻みな振動音が耳につく。
 携帯電話の振動音なのは見なくても分かる。
 そして、その携帯電話の持ち主がここには居ないことも分かる。 
 ただ、それは、しつこく、何度もかかってきて、私をイライラさせる。 
 何故、イライラさせるのか?
 それは、その携帯電話が誰のものであるか、分かるからだ。

  .. .. ヴーン.. ヴーン.. ヴーン.. 。

 携帯電話は鳴り止んだ。
 いけないことだと思っても、私はその携帯に手を伸ばす。
404 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月10日(月)15時47分27秒

『着信履歴01:7/10  20:03 090××××××××』
『着信履歴02:7/10  20:25 090××××××××』
『着信履歴03:7/10  20:34 090××××××××』
『着信履歴04:7/10  20:46 090××××××××』
『着信履歴05:7/10  20:58 090××××××××』
『着信履歴06:7/10  21:03 090××××××××』
『着信履歴07:7/10  21:13 090××××××××』
『着信履歴08:7/10  21:15 090××××××××』
『着信履歴09:7/10  21:23 090××××××××』
『着信履歴10:7/10  21:35 090××××××××』
『着信履歴11:7/10  21:44 090××××××××』
『着信履歴12:7/10  21:54 090××××××××』
『着信履歴13:7/10  21:59 090××××××××』
『着信履歴14:7/10  22:10 090××××××××』
『着信履歴15:7/10  22:20 090××××××××』
『着信履歴16:7/10  22:31 090××××××××』
『着信履歴17:7/10  22:40 090××××××××』
『着信履歴18:7/10  22:49 090××××××××』
『着信履歴19:7/10  23:02 090××××××××』
『着信履歴20:7/10  23:13 090××××××××』


「…!!…なんだよ…コレ…」

 ある程度は予想していた「事実」…ではあるが、まるでドラマや漫画のような、ストーカーチックな不在着信履歴を見て、私は絶句した。
 
405 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月10日(月)15時49分41秒
 
    .. .  ガ タッ ..

「…よ…っすぃー…!」
「…あ…」

 戻ってきた彼女と目があう。
 私の手には、彼女の携帯が握られたままだ。

「何で! 何でよっすぃーがごとーのケータイ見てるの!!」

 ごっちんが声をうわずらせる。

「だって… オカシイよ!コレ!!何で…」
「よっすぃーにはカンケーない!!」

 彼女は私の手から携帯を奪い返して、部屋を出ようとする。

「待ってよ!!ごっちん!!」

 ドアノブに手をかける彼女の後ろから、羽交い締めにして、そのままドアに押しつけて重なる。

「カンケーなくない!!私…! 同じモーニング娘。の一員なんだから!!」
「だからって! だからってヒトのケータイ覗き見する権利はないよ!!」
「…それは…… 謝るよ…」

 ゆっくりと、彼女の身体から離れて…

「…よっすぃー……」
「大丈夫… 誰も見てないから…」

 私は、後藤真希を抱きしめる……

406 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月10日(月)15時51分02秒
UPDATE>>402-405

      ZZZzzz ________
          /  ノノハヾ      )
        / ( ̄(´ Д ` ) ̄() /
       /    ⊂    つ ̄ /
     / ̄⌒⌒(⌒ヽ (⌒)  /
    / ※※\  ⌒⌒⌒ )く
   (_____(___,,___ノ
407 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月10日(月)15時54分32秒
20020710_03. :後藤真希

.
.

「…よ…っすぃー…!」

 楽屋に戻った私。
 そこに居た人影は…

「…ぁ……」

    見た??! 見られた??! 
    よりによって!! 一番見られたくない人に。 

「何で! 何でよっすぃーがごとーのケータイ見てるの!!」
「だって… オカシイよ!コレ!!何で…」
「よっすぃーにはカンケーない!!」

 私はよっすぃーの手から携帯を奪い返して、走り出す。


    どうしよう???! 逃げよう。 
    にげなきゃ……… 

 アタマの中が、一瞬で真っ白になる。

  ぐるぐるぐるぐる 
    にげなきゃ。 
    パニくるっていうのは、きっとこーゆーことだろう。 
  ぐるぐるぐるぐる 

「待ってよ!!ごっちん!!」

 ぐるぐるぐるぐる
   逃げなきゃいけないのに。
   ぐるぐるぐるぐる

「カンケーなくない!!私…! 同じモーニング娘。の一員なんだから!!」
「だからって! だからってヒトのケータイ覗き見する権利はないよ!!」
「…それは…… 謝るよ…」

 ドアノブに手をかけた瞬間、よっすぃーに捕まえられた。
 
   ぐるぐるぐるぐる
   ダメだよ。
   逃げなきゃ。
   ぐるぐるぐるぐる

 あっ、という間に引き寄せられて、一瞬で抱きすくめられた。 
408 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月10日(月)15時55分45秒

 ぐるぐるぐるぐる
   ダメだよ。 逃げなきゃ。 ダメなのに。
     ぐるぐるぐるぐる

 暖かいその人のぬくもりに身を委ねたくなる欲求。
 でも、そうしちゃいけないという、煩い声。

「…よっすぃー……」
「大丈夫… 誰も見てないから…」

 低く掠れた声で耳元に囁かれて、ぐるぐる迷走し続けていた混乱の暴れ馬が一瞬でおとなしくなっていくのを感じる…

「大丈夫だから…」

 再び囁かれて、頭を優しく撫でられる。
 ずっと避けてたのに。 
 だけど、ずっと欲しかった。 懐かしいと思うほどの久しぶりのその温もり。

「…ごっちん……」

 まどろみかけた意識に囁かれる。

「もう見てらんないよ…」

 ねぇ…どうして、そんなに優しい声で囁いてくれるの?
 私が言ったこと、覚えてないの?
 私から言ったんだよ?
 
「別れよう」って。
 「大嫌い」って。
409 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月10日(月)16時00分41秒
「もう見てらんないんだよ…」

 そのまま顎の下をそっと持ち上げられる。
 久しぶりに真っ直ぐに見た。
 大好きな、ヒトミ。
 …そんな瞳をしないでよ… 戻りたくなっちゃうよ…。

「もう…今日絶対連れ戻す…」
「…!? ダ…」

ダメ…!!
 
 …言いかけて、唇を塞がれた。
 ダメなのに。 
そう。約束だから。 
 何が? 
約束って何?
 よっすぃーがいいのに。
よっすぃーの腕の中に居るのが好きなのに。
 よっすぃーの胸の温もりが好きなのに。
 よっすぃーの口付けが好きなのに。
 ずっと…。 昨日も。今日も。明日も。明後日も。
 もういいじゃん… 約束なんか…。
 でもだめなんだよ… 約束なんだから…。
410 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月10日(月)16時04分30秒

  …約束……って…?
 
 『吉澤がモーニング娘。から居なくなってもいいの?』

     ………  ダメ ………

  『結構さ、私も色々追っかけられてるうちにさ…』
  『…ソレ系の情報に通じてる人達と、まぁ、仲良くなってさ…』

       ………  駄目 ………

  『…吉澤が娘。に居られなくなるよーなヤバイネタ…』
  『…知ってんだよね、私』

「…―――― ダメぇ!!!」

 よっすぃーがモーニング娘。から居なくなるなんて嫌だ。
 よっすぃーが悲しいめに遭うのは嫌だ。
 よっすぃーが居なくなるのは嫌だ。
 だから、私は……
 だから、私は。

 自分のもののはずなのに、自分が動かしている実感が湧かない、この身体、この感覚
 バタバタと、廊下に打ちつけられる足音だけが、ヤケにはっきりと聞こえる。
 走っている。  
 逃げている。
 なのにまるで感覚がない。 意識だけが、走り、逃げ続ける。 
 
 走り続ける。 そして ―――……


 鈍い衝撃も、冷たいリノリウムの感触も…
 どこか…… 遠い…―――― 。 

411 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月10日(月)16時05分28秒
UPDATE>>407-410

       ( ´ Д `)
((0^〜^⊂    ⊃
 (  つ  ノ ノ
   〉 〉(_)__)
  (__)_)           

412 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月10日(月)16時06分18秒

20010214_01:吉澤ひとみ


街灯の青白い光に照らされて、雪は静かにただ、降り続けている。

「よっと」

 滑らないように、慎重に足を運んでいく。
 何が楽しい? 何か楽しい。
 学校が休みになって、雪だるまや雪うさぎを作ったり。 近所の子供たちと雪合戦したり。 そんなたわいもない日常が、今はとても懐かしくて微笑ましい。

 マンションまで、まだちょっと歩かなきゃならない。

 別に、タクシーでマンションの前まで送ってもらっても良かったんだけど。
 別に、雪が珍しいってわけじゃないけど。
 忙しさに日々を追われる今の日常を、少しだけでいいから、忘れていたかった。
 静かに降り続ける雪は、頬や鼻先を濡らしていく。
新雪を手ですくって、丸く握り締める。

「ていっ!」

 思いっきり、投げつける。
 電信柱にぶつかって、雪玉は砕け散った。

 そうやってひとり遊びをしながら、吐く息は白く、手指が冷たさで痺れた頃、やがてマンションが見えてくる。

「……?」

 私は歩みを止めた。
 ……人? なんだろうか。
 入口の前の植え込みに座っている人影。 座ったままで、微動だにせず、その身体にはうっすらと雪が積もっている。
 何だろう……。 追っかけの人とかだったらヤダな、と思う。
 無視することを決め込んで、そ知らぬふりで、通りすぎようとした。

「……………よ……っ すぃー……」

 …………    
 …… え?!

413 名前:更新終了&レス感謝 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月10日(月)16時21分07秒
>>393さん。
      Å
  ∋8ノノハ)
   川 ;’ー’;) ┌─────┐
   (《(愛) つ│逝かないで │
    (;;__);;;_)? └─────┘

>>394さん。
      Å
  ∋8ノノハ)
   川  ’ー’) !┌─────┐
   (《(愛) つ │覚えてるよ。│
    (;;__);;;_)?  └─────┘

>>395さん。このところは月1更新になってしまってます。申し訳ありません。
>>396さん。女同士で入れるラブホテルは少ないようです。
>>397さん。ありがとうございます。このスレ内で終わることが出来るかな…
>>398さん。ペースが遅くて申し訳ありません。
414 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月16日(日)22時39分14秒
あー更新されてる。
メチャ嬉しいです。けど、せつねー・・。
いいとこで、切りますね更新待ってます
415 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月24日(月)17時20分34秒
20010130. 吉澤ひとみ
416 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月24日(月)17時21分20秒


「後藤さん、今度ソロデビューするんだって」


417 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月24日(月)17時21分59秒

何もかも見透かしたような、子悪魔的な目が、私を見つめる。

「…そっか」
「まずいよね?ひとみちゃん」
「そうかもね」
「だからなの」
「何が?」
「ひとみちゃんは、私を選ぶしかないでしょ? 後藤さんの事、引き止めれなかったもんね?」
「……あぁ」
「私、来年ね、リリースするシングルのセンターに決まったんだよね」
「へぇ。それは良かったね」
「だから、ね。私と居るしかないの。 事務所の方でも私とひとみちゃんの事、“同期”で同じ“85年生まれ”だし、こーゆールックスだし。
 そーゆー売り出し方しよう、って思ってるらしいし」
「“そーゆー売り出し方”?」

 私は怪訝に、石川梨華を見る。
 私の疑問に、石川梨華は私をそっと抱きしめて、答える。
 そして、首筋を、顎を、耳朶を、軽く啄み、口づける。
 私はその行為に目を細めた…。
418 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月24日(月)17時22分48秒

「…梨華ちゃん、やっぱり私なんかよりずっと利口だね」
「仕事だもん」
「へぇ?」
「私もひとみちゃんも、この人生を選んだ。 それが得意で、簡単だったから。みんなそれぞれ得意なものがあるから。道を選べば、代償もあるわ。 …ねぇ、そうでしょ?」
「……どっかで聴いたことあるセリフだけど」
「忘れた。何かの映画の受け売りなのは間違いないけど」

 “石川梨華”の表情は、可憐で気弱な少女の、そのものだった。
 
 この世は全て、ギブ&テイク。
 頭で分かっていても、私はまだまだ15歳の、何も知らない小娘ということだった。
 私はその概念を知ったつもりでいた。
 だから後藤真希と“トモダチ”になった。 
 私はその概念を知ったつもりでいた。
 だから石川梨華と“カンケイ”をもった。
419 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月24日(月)17時27分14秒


  ―――『ひとみ、あんたの人生はまだまだ長いよ』―――

 目を瞑った瞬間、儚く笑った少女の姿と言葉が甦る。

 神なんていない。 神なんて信じない。
 もしも、人を愛し、信じ、救おうと願うその精神が、神の望むものだというのなら、私は神を信じたくない。 何故なら、神は、少女を見捨てたからだ。

 私は知りたかった。
 生きている意味を。
 家族という、血の絆でさえ、脆く、儚い。
 いや…

  ―――『なんか疲れた…かもしれない』―――

 そんな話は聞きたくない、と私は少女のほうを振り向きもせず、目の前のノートと参考書にかかりきりだった。 
私は犬のようにバカなほど忠実で、そのクセ、何でも出来る少女のその言葉が、単なる愚痴にしか聞こえなかった。

  ―――『…別に、誰かに助けてもらおうとか、思ってないから』―――

 違う。見捨てたのは神じゃない…
 
  ―――『誰かに助けてもらえるとも…思ってないから…』―――

 …………。
 再び目を瞑った時、棺桶の中の死体と、困った顔の両親の姿が甦る。
 
420 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月24日(月)17時30分42秒

 ある日、少女の勤務先の病院から、封筒が届いた。
 封筒の中から、小さな鍵が転がり落ちた。
 ロッカーの中を掃除していた業者さんがそれを見つけてn何処のものか分からなかったので送り返してきたらしい。
 私は直感的にその鍵が、唯一鍵のかかった、部屋の机の引き出しのものだと思った。
 開錠した引出しの中から出てきたのは、モーニング娘。のCDや、彼女らを掲載した雑誌だった。
 それは、世間の娯楽とはおおよそ縁遠かった生真面目な少女の、奇妙な一面だった。
 それは、とても些細な事かもしれない。それでも、私が自分の人生を、始めて真摯に考えた瞬間だった。

 生きている意味とは何だろう?
 
 孤独な少女は、当時、まだまだマイナーだったこのアイドル集団に何を見出したのだろう?
 自然と、そのアイドル集団を追う私がいた。 
 ――― そして。
 本来なら一周忌が行われるはずの盛夏に、「彼女」が私の前に現れた…

421 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月24日(月)17時32分32秒

「……梨華ちゃん。ごめん」
「………」
「どう罵られても構わない。でも、もう……、こういう付き合い方はできない」
「都合のいい話ね」
「うん」
「私から逃げるのね」
「うん。そうかもしれない」
「いいよ。逃げても。別に」
「ありがとう」
「逃げ続けるといいよ、よっすぃー。私、知ってんだから。よっすぃーの家のこと……。 お姉さんのこと」
「そっか…流石だね、やっぱり梨華ちゃんには敵わないかも」
「逃げて、逃げて、逃げ続けて、でも逃げ続ければそのうち袋小路にはまっちゃうよ。 そうなった時、私は素直によっすぃーのことを笑うね」
「うん。そうしてくれて構わないから」

 私と石川梨華は、2回握手を交わした。
 私も石川梨華も、ずっと微笑んで、分かれた。
 こうして、私と石川梨華のカンケイは、あっけなく終わった。

422 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月24日(月)17時33分37秒

UPDATE>415-421


ゴロゴロ      ⌒            ⌒ゴロゴロゴロ〜
   へ へ   ⌒  ∩  ∩     ⌒   へ へ 
   ヽ    ヽ    ヽノノノハヽ      ヽ    ヽ  
   ⊂*、∀ ,)⊃   ⊂*´ Д `)⊃     ⊂*、∀ ,)⊃
ンァンァ ノノノハヽ    エヘヘ    ゴロゴロ      ノノノハヽ ンァンァ


423 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月24日(月)17時36分28秒
20031120.吉澤ひとみ


 さくっ  さくっ


 私は夢中で地面を掘り続けている。 既に陽は落ち、辺りは薄闇に覆われている。

「これくらいでいいかな…」
「よっすぃー…」

 ごっちんは、大事に抱えていた白い包みを私に手渡してくれた。
 私は重みのあるその包みを、そっと、地面にぽっかりと開いた穴の中に置いた。
 そして、掘り返した土で、穴を元のように埋めていった。

「何で死んじゃったのかな…」
「分かんない」

 そんなやりとりをしたのは何回目だっただろう。
 
424 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月24日(月)17時37分39秒

 ショマが、死んでしまった。
 
 子猫から、成猫に成長する頃、ショマは居なくなった。 大人になったんだし、飼い猫でもないわけだから、ここから出ていくのは、おかしなことではなかった。
 ごっちんが、ショマの死体を見つけたのは、ショマが居なくなってから1週間ほどしてからだった。 庭の掃除をしていた時、偶然、縁側の床の下で見つけたのだ。
 外傷もなく、何か吐いている形跡もなかった。 小さな骸は、その命が消えた理由を少しも語ってはくれない。 それでも、間違いなくそれは死んでいた。
 悲しい、というよりは、寧ろ、虚ろな気分になった。だから、私もごっちんも、泣く事はなかった。
 死体に付いた泥や枯葉を拭い、綺麗に洗い、白い布で幾重にも包み、死体を埋める穴を掘る。死体を土に返す速度を速めたいなら、石灰を撒くところだろうが、生憎、そんなものはここにはない。
 
私もごっちんも、ほとんど無言で、その作業を施行した。
 
 とても虚ろな気分だった。
 あまりにもあっけない、生の終焉。
 
425 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月24日(月)17時40分17秒

 埋葬を終えても、夕食を食べる気分にはとてもなれず、私は縁側からずっと月を見上げていた。 鈴虫の奏でる音とひんやりとした夜気が、晩秋の寂しさを余計に感じさせる。
「よっすぃー。寒くない?」

 ふわり、と肩にブランケットがかけられた。
 隣に座ったごっちんは、お凡を置くと、急須から湯のみに緑茶を注ぎ、私に手渡してくれた。 ほんのり温かい茶碗。 立ち上る湯気。

「ごっちん、ご飯は?食べた?」
「ううん。食べてない、ってか、食べる気しない」
「そりゃそうだね」

 鈴虫の鳴き声だけが、空間に流れていた。
 息を呑むほど静かで、私は茶をすする彼女の横顔を、瞬きもせずに見とれている。

「…あー、ねぇ、ごっちん」
「んあ?」

 目を閉じれば、消えそうな気さえする。
 抱きしめたら、壊れるかもしれない。 

「……キス…してもいい?」
「え?」

 こんな時にそんな気分にはなれないかもしれない。でも、だからこそ、温もりが欲しかった。私も、彼女も、今は間違いなく生きているという確証が。大切なものを失う、どんなに努力をしたところで、自分の力ではどうしようもできない絶望と空虚に、押し潰されそうになるから。
 だから。温もりが欲しかった。

「よっすぃー…」

 彼女が茶碗を横へ置く。私は細い腰を抱き寄せて、そっと口付けた。
 
 季節がまた擦りぬける。 
 カタチを成さない想いは、ただ降り積もる。 
426 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月24日(月)17時41分20秒
UPDATE>>423-425

               o ・。 ⊂⊃ 。 ゚
              (\ノハヽヽ 。・ ゚
              (ヾ(/)Д(ヽ < もう帰る!
             . //(    .ノ
           (( (/(/___|″ヒックヒック
     ノノノハヽ      し′し′
    Σ川;・-・)∩   
     ( つ ノ 

427 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月24日(月)17時42分14秒
20020630.:後藤真希


 車のテールランプの群れは、まるで光の帯のよう…… 
 タクシーの中から、通り過ぎる夜の街のイルミネーションはとっくの昔に見慣れて飽きた。
 仕事が終わって市井ちゃんのマンションに行くのは、すっかり日常になっていた。 人間っていうものは、どんな環境に居ても、そのうち慣れてきちゃうもんでね…いや、慣れる、というよりは何だか「麻痺」していく感じがする。 「自分」が「自分」だという「当然の感覚」が、何だか薄れていくようで……私にしては随分と難しげな表現をしているけど、これは市井ちゃんが自分のことを説明する時に言ってたことの、使いまわし。
428 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月24日(月)17時43分40秒



 ある日、訪れた時、市井ちゃんは真っ暗な部屋の中で、四つん這いになっていた。
 足にはいつも私にはめる銀色の足錠を、手にはいつも私にはめる黒い手錠をかけて、じっと暗闇を見つめている。

「吠えたくなるんだ」

 市井ちゃんは空間の一点をじっと見詰めながら喋る。

「光の中にいるのは、人が人である証だよ。 私は暗闇が好きなんだ。裸になって、吠えながら外を走り回りたいよ」




 ある日、訪れた時、市井ちゃんはテーブルスタンドの灯った部屋でうつぶせに倒れていた。 目だけがきょろきょろと動いている。

「身体と心と思考がどんどん離れていくんだよ…バラバラになっていくんだ」

 目と口以外は動いていない。何だか、死体が喋っているみたいに見える。

「どこも、何も痛くはないよ。でも不安なんだよ。怖い。少しでも気を緩めると、狂いそうになるんだ。怖いよ。とても怖いよ。ねぇ?失くなるんだよ。弾け飛ぶんだよ。誰も知らないんだよ。それは、とても困ったことだよ」
「何が困ることなの?」
「私と、私の周りの人達にとって、私が錯乱することは、とても困ったことだと思うよ」
「そうかな」
「そうだよ」

 市井ちゃんは床に倒れたまま、私を見上げて笑っていた。



429 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月24日(月)17時46分16秒



 時々、市井ちゃんは強烈な吐き気でのたうち回ることがあった。
 そうなった時、私はたくさんの薬の中から「ワイパックス」という薬を探し出して、市井ちゃんに渡す。そう言われていたから。市井ちゃんが曰く、強烈なパニック状態に陥った時は、この薬を舌の下に置いて飲むと、速効で効くらしい。
 薬が効いて、ぼんやりとなった市井ちゃんは、いつもろれるの回らない口調で言う。

「私とこの世界を繋ぐものは後藤しかいないんだよ…家にも帰りたくない……お願いだから、もう少しでいいから、傍に居てよ…」



430 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月24日(月)17時47分30秒



 今日、市井ちゃんがいった。

「People who live in glass houses shouldn't throw bricks. 」
「英語?わかんないよ…」
「『ガラスの家の住人は、レンガを投げるな。 』」
「ああ…あ、それ、諺だよね」

 『よっすぃーが言ってた』と言いそうになって、私は寸前で押し黙った。

「『最後には被害は石を投げた当人に及ぶのだから、自分のことを棚に上げて人の悪口を言うな』って言う意味の諺らしいね」
「ああ…うーん。らしいね」
「でもねぇ、私、始めに医者から聞かれた時、ガラスを壊したら困るからでしょ?って答えちゃった」
「……?」
「この前さ、映画見てる時、耳朶触ったら血まみれだってね…。鏡で見たら、ピアスの頭がめりこんでたんだ。とりあえず引っこ抜いて、夜遅かったから。次の朝、病院に行ったんだけどね」
「寝れたの?」
「寝れたよ。医者にも『本当は痛いはずなんだけどなぁ』って言われたんだけど。全然痛くないんだよね」
「………」
「煙草をギリギリまで吸って、指先を火傷することもある」
「……?」
「どういうことか分かる?後藤」
「わかんない」
「“スティグマ”、だよ。私と、私の家族にとっての。そいつは不名誉な“スティグマ”なんだ…」
431 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月24日(月)17時48分48秒




 疲れ果てて、まどろんでいると、いつも決まって市井ちゃんは頭を撫でながら言う。

「何も生真面目に狂気を選びたくはなかったよ。他に道があるのなら、それから逃れる道があるのなら…でも、それは“始めから決まってた”ことなんだよ……奇跡や偶然や、奇妙な符丁が絡む、全ては必然なんだよ」

 難しいこと言うなぁ…と思った。市井ちゃんは私の教育係だった時から、結構理屈屋さんなところがあって、時々、理解できなかった。その、何処か漂う、理解できない得体の知れなさが、怖いと思う時があった。でも今は、怖いとは思わない。どんなに酷いことをされても、哀れんだり、憎んだりすることが出来ない自分がいる。
 そして、ある時に、それがどうしてなのか、ふと気付いた。

 そうだ。 
 似てるんだ、この人は。 よっすぃーに。

432 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月24日(月)17時49分58秒
UPDATE>>427-431
              o ・。 ⊂⊃ 。 ゚
              (\ノハヽヽ 。・ ゚
             (ヾ(/)Д(ヽ < もう帰る!
             .//(    .ノ
    待って!(( (/(/___|″ヒックヒック
   ノノノハヽ      し′し′
 Σ(●´ー`)∩   
  ( つ ノ 

433 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月24日(月)17時50分46秒
20010214_02:吉澤ひとみ


 私を呼びとめる声は、とても弱々しかった。
 そして、私はその声に聞き覚えがあった。
 でも、その声を、ここで聞けるはずがない、とも私は思った。

「…………よっすぃー…」

 今度は、はっきりと、私の名前を呼ばれる。

「…ごっちん……?」

 濡れ鼠の、動かぬ人間の、その顔を覗き込む。
 半信半疑だった。
 声の主が、後藤真希であるはずがない。ありえない。彼女がここに居るはずがない。

「…何で……」

 ありえない。
 目の前の光景は、まるで現実感を伴っていない。
 粉雪を被った茶色い髪はすっかり濡れて、肌も唇も、血色が失せて青白い。
 夜の銀世界に浮かぶ、頼りなく、儚い姿。 小さく、そして弱々しい、捨てられた子猫のような。 それでも、何処か訴えかけるようなまなざし。

「あ…の…ね…」

 ぎこちなく、唇が動く。
 雪は静かに降り続けている。
434 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月24日(月)17時52分06秒
「…よっすぃー… あの…ね…」

 青白い唇から、弱々しく私の名前が紡がれた時、私は現実感のないこの光景が、やっぱり夢なんかじゃないことを、理解しようとした。
 私は手を伸ばす。
 これが現実なら、私は彼女に触れることが出来るはずだ……

「…ぁ のね… よっすぃー…」

 うわ言にように呟く彼女の頬に触れる。

「…………」

 冷たかった。
 温もりは少しも感じない。 それでも私は、彼女に確かに触れている。
 もう片方の手を伸ばして、更に彼女に触れてみる。
 顎、頬、耳、額、それから髪をゆっくり梳く。濡れた髪は、しっとりと指に絡みつく。
 ――― 私は、確かに彼女に触れている。

 どうして? 何故?

 頭の中を駆け巡る、疑問と疑念。

 冷たい。 ――― 冷たいということは、彼女が雪の中に随分の時間、晒されていたということだ。
 何故。 ――― 彼女が、そんなにしてまで、ここに居る理由が思いつかない。
 それでも ―――
435 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月24日(月)17時52分53秒
それでも……
 ――― 私は、彼女の手をひいて、自分の部屋に導いていた。
 エレベーターの中で、その冷たい手をずっと握り締めていても、少しも温かくならなかった。

「あの…さ…ごっちん…」
「ん?」
「とりあえず、さ…シャワー浴びてきなよ… あ、別に…!ヘンな意味じゃなくて!ほら、だって、すごく身体冷えてるしっ!風邪とかひいたらヤバイし…あの…えと、私、リビングにずっと居るから…その……」
「ん…わかった」

 彼女は素直に頷いて、脱衣場に消えていった。
 
 私は来客用のパジャマとバスタオルを取り出して、脱衣場の籠の傍に置く。擦りガラスのむこうで、タイルをうがつシャワーの音と、彼女のシルエットが見えた。なまめかしい想像が、頭の中をよぎる。
 
  何故? どうして? 彼女が、ここに居る理由が思いつかない。
 
 煩悩を打ち払うように頭を振ると、私はリビングに戻った。
 テレビをつける。 ニュースを放送している局にチャンネルをあわす。
 キッチンにむかう。 やかんに水を入れて、コンロに火を点ける。
 ティーカップを2つ取り出す。 アールグレイのティーバックを、それぞれに入れる。

  どうして? 何故?

 彼女がこの部屋に居るのは事実でも、私には分からないことだらけだった。
 ニュースはローカルニュースに切り替わり、雪の降る関東一帯の様子を中継していく。 そして、やかんは沸騰を知らせてピーピーと鳴り出す。
 確実に刻まれていく時間、それでも、私には何ひとつ、疑問の答えを見出せずにいた。
436 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月24日(月)17時53分41秒
UPDATE>>433-435

ノノヽ                 (((     
.∀´)         ハハハ く\)))・。ノノヽヽ アヂー
つつ        ( ´ Д `)つヾo\。・。`〜´∩
  |         (  _つ____  ⊂、  ノ
_)_)       (( ノ/)===-=====-=====ヽ^ヽ、
             (※/※※※※※※※※:※、 )
.           `ー-----=--------=-----′


437 名前:更新終了&レス感謝 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月24日(月)17時57分04秒
>>414 ありがとうございます。
   >いいとこで、切りますね
    切り方は一応、狙ってやってます(苦笑)

 ぎりぎり500で終わるかな… このままひっそり終了を目指します。
438 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月25日(火)21時29分33秒
ひっそり待ってました。
あー、またいいとこで・・・更新が。
切ねーですね。
続き待ってます!
439 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月26日(水)15時47分37秒
更新ありがとうございます。
気付いてよかった。
440 名前:補足 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年02月26日(水)19時44分37秒
 連載終わったら、ちゃんと時系列順にならべたリンク一覧を作ります。
 多分大勢が「ワケわからん!!」と思いますので…
441 名前:fGYOqHlg 投稿日:2003年03月04日(火)13時56分32秒


   …恋愛ものって書くのむずかしいね…

       (´ Д ` )
       (⌒)(⌒~)
       (_(__)ノ....:..
       .........:..


442 名前:340 投稿日:2003年03月05日(水)14時29分59秒
がんばってください。一ファンとしていつまででも応援しています。
443 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月21日(金)00時18分35秒
そろそろ保全しとくよ
444 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月31日(月)17時17分56秒
hozen
445 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年04月03日(木)16時07分17秒
20020716:吉澤ひとみ   

     いもうとペンギンはおさかなを
     たべることはできませんでした。





446 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年04月03日(木)16時08分32秒

 …… つらいなぁ……。

 番組の収録が予定通りに終わって、「現実」に戻ってきた瞬間。
 ごっちんと自分を忘れてバカ騒ぎする空間が「楽しい」と思えば思うほど。
 「現実」に戻ってきて、ごっちんが悲しそうな目をして『先、帰るね』って、すぐに帰ってしまうことが。
 「現実」の空間の中では何一つ話せない、弱い自分が。

 …つらい。


 屋上の扉を開ける。 春の夜の少し生暖かい空気が全身を覆う。
 心地良い。
 だが。 私の心の中は、重く暗い。
 屋上の中央まで駆けていく。 そして空を仰ぎ見る。
 黄砂で霞む春の夜空はあまり好きじゃない。 
 雲っていてあんまり星が見えないからだ。


  『田舎のねー、山の方に行くと夜空がすごく綺麗なんだよ。
   一面星空ってカンジでさぁー。時々流れ星とかも見えるんだよ』
  『ふーん。そんなに綺麗なの?』
  『うん。もう、さぁ、全然違うんだから!ホントに。
   ごっちんにも見せてあげたいなぁ』


 いつだったか。彼女とそんなやりとりをしたことがあった。
 まだその頃、私と彼女はただの仕事仲間だった。
 いや… 今も、彼女とはただの仕事仲間なんだけど。
 
447 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年04月03日(木)16時10分00秒
私はポケットから煙草を取り出した。
 私が部屋に置き忘れた煙草を、何故かごっちんはずっと持っていた。
 返してくれたけど、私はその煙草をずっと吸わないでいた。
 
 …どうすればいい? 

 ひっきりなしに震える彼女の携帯。
 10分おきにかかってくる、同じ電話番号。
 携帯を手にとって見る度に、悲しそうな顔をする彼女。
 
 …私はどうすればいい?

 煙草に火を着けてみた。
 先が赤く燃えて白んだそれをくわえて、思いっきり吸い込む。
 古い煙草は既に湿気て、とても苦い。

 「何、堂々と喫煙してんの。未成年」
 「…あぁ…保田さん…」

 横合いから伸びてきた手が、吸いかけの煙草を奪っていった。

 「熱っ…! あー、もう。あんたがプライベートで何やってても構わないけどね。ここは一応、仕事場なんだから。軽率なこと、してもらっちゃ困るんだけど」
 「はい…すみません…」
 「後藤のこと、心配?」
 「…そりゃあ、まぁ…」

 保田さんは手すりにもたれかかって、自分の煙草を取り出した。
 私は自分のライターの火をつけて、差し出す。

 「随分、気がきくじゃない。吉澤らしくない」
 「吉澤は… いつでも吉澤ですよ」
 「…難しいこと言うわね… そろそろバカキャラ、卒業?」
 「そうですね」

 煙草の白い煙がゆったりと、春の夜空に舞い上がる。
 私はその様をぼんやりと見つめる。

 「ごっちん、この前、倒れてから、ここのところ、仕事終わったらすぐ病院に行ってるじゃないですか。やっぱり心配ですよ」
 「それはメンバーとして心配なの? それとも…それ以上の存在として心配なの?」
448 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年04月03日(木)16時12分25秒

  …ふぅん… これは驚いた。
 
ごっちんと何かあったことを指摘されたことは勿論だが、保田さんがそんな風に突っ込んだことを聞いてきたことが何よりも驚きだった。
 保田さんは、自分の立場と器を知っていて、わきまえた人だ。
 そして仕事とプライベート、自分と他人をきっちり分けた人でもある。 
 だから必要以上に“仕事の仲間”のプライベートに踏み込むことはない。
 そういう人。
 
 「保田さん…ごっちんの携帯…ヘンですよね」
 「見たの?あんた。後藤の携帯」
 「…はい…」
 「そう…」
 「保田さん…何か知ってるんですか…だったら…」
 「ストーップ!さっきの質問の答え、聞いてないわよ。メンバーとして心配なのか、 それとも…それ以上の存在として心配なのか!」

 保田さんは何か知っている。
 ただ、一体、私からどんな言葉を引き出そうとしているのか、分からなかった。
 内心、怪訝さでいっぱいだ。 だが、それを顔に出すわけにはいかない。
 
「どうなの?後藤のこと」
「…大切ですよ」
「それだけ?」
「それは…メンバーとしても、勿論ですけど。それ以上に、後藤真希のことは大切です。だからとても心配なんです」
「…あんたってさ…ホント、警戒心、強いよね。全然変わんない。入った時から。別にそれがダメとかイヤ、ってレベルじゃなくて。完璧に近すぎるから分からない」
「…あんまり難しいこと言わないでくださいよ」

 そうやって肩をすくめてへらへらと笑ってみせると、保田さんは、眉をひそめて、煙草の灰を落とす。
 灰は赤い火の粉をまとって、コンクリートの地面に消えた。
449 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年04月03日(木)16時14分06秒
「それ、それよ。 アンタがそう答えることは、多分、みんな分かる。予想できる。それで、みんなはアンタのことを分かったつもりになる。でも、それは本当の吉澤じゃない。
 私は別にそれでも構わない。 アンタがどんな人間であっても、何を隠していようが、仕事に支障がなければ問題ないと思ってる。  
  …でも、後藤はどうなんだろうね?」
「………どうって…」

「後藤は、アンタに依存してる。あの子は孤立してるから。アンタしかいない。
 でも、吉澤はそうじゃない。 アンタは …誰も信用していない… 後藤のことも」
「違う…っ」
「違わない!!」

「!」

「………後藤のことが本当に心配なんだったら、今すぐ病院に行けばいいじゃない!
 それで携帯のことでも何でも、聴けばいいじゃない!
 吉澤は卑怯だよ!ペテン師!大詐欺師だよ!」
「保田さん…」
「……アンタがそんなだから…あの子は、後藤は…そうするしかなかったんじゃない…」
450 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年04月03日(木)16時16分33秒

 ・
 ・
  『よっすぃー…ゴメンね。ごとー、よっすぃーの事、嫌いになった』
 
       それは2ヶ月ほど前のことだった。
 
  俯いて、震える唇。
  
  『だから、別れたい』
  
  苦しそうに、呟く。
  
       だから私は承諾した。 
  
  分かったよ…。
  別れたら、ごっちんは悲しくなくなる?苦しくなくなる?
  
  そう聞くと、彼女は小さく頷いた。 
  頷いた拍子に、堪えていた涙が床に散った。
 ・
 ・
 
 あっという間の別れだった。
 だが、気が狂いそうなぐらい、私の心の中は様々な感情が煮えたぎっていた。
 どうして?何故?どうして!ワケを聴かせて。何がそんなに苦しいの?何がそんなに悲しいの?どうして嫌いになったの?どうしてそんな嘘をつくの?私は好き。私は後藤真希のことを愛している。別れたくない。そんなの許さない。嫌だ。別れるなんて嫌だ。イヤダ。ワカレタクナイ。いやだ。わかれたくない。イヤダ。ワカレタクナイ。イヤダ。ワカレタクナイ。イヤダ。ワカレタクナイ。いやだ。わかれたくない。イヤダ。ワカレタクナイ。イヤダ。ワカレタクナイ。イヤダ。ワカレタクナイ。
 
     『  嫌だ!!!!! 別れたくない!!!!!! 』
 
 そう言いたいのに、そう言いたかったのに、言えなかった。言わなかった。
 保田さんの言う通りだった。
 私は変わっていない。偽善者の、卑怯者の私が、そこに居る。
451 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年04月03日(木)16時19分53秒

「………… 何だか、イヤな感じがするんです…ごっちんが…今にも消えてしまいそうで…何処か知らない遠い所へ行ってしまいそうで…不安なんです…」

 私は、偽善者で、卑怯者で、詐欺師だろう。
 だが、成りたくてなったわけじゃない。
 私には、どうしても記憶と心の底に沈めた闇を、沈めたままにしておかなければならない。彼女だからこそ。世界で一番大切で、失いたくない人間だからこそ、私は私の闇を見せたくはない。知らせたくはない。
 それは。
 はたして。
 正しいことだったのか?

 「…保田さん、何か知ってるんですよね…お願いですから、教えてください…。
 私、私は彼女が…後藤真希が…何に苦しんでいるのか、知りたい…。
 迷惑でもいい、お節介でも、何でもいいから…」
 
 既に盛夏に入ろうとする頃、後藤真希は倒れた。私の目の前で。
 短期間で、頬がこけるほど痩せたその容姿は、彼女の心身に何らかの異常が起こっていることを感じさせた。
 多忙のスケジュールの合間をぬって、病院に通う日々に。
 
 とても嫌な予感がした。
 
「……私は…ごっちんを失いたくないんです……」
452 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年04月03日(木)16時21分00秒

 夏バテ、過労による疲労…… そういった、よくある一過性の異常だったら、まだそれでいい。
 だが、私はとても嫌な予感がした。
 
 ……重なってくる。
 ……その目が。
 ……彼女の目が……
 
 レコーディングも、ダンスレッスンも、テレビ収録も、雑誌取材も、彼女は精力的にこなしていた。
 まるで疲れや弱みを見せない、完璧なまでの仕事ぶり。
 
 とても嫌な感覚だった。
  
  後藤真希の、精力的な仕事ぶりは、けれども私を不安にさせ続けた。
 その目が。
 悲しみや不安や焦りといった、負のエネルギーを超越した、暗く燃える光。
 「虚無」へと向う、燃え尽きて、灰塵と帰すような、あやうい輝きが。


 「私と紗耶香はさ、同期だし、同じ千葉出身ってことで仲良かったんだ…」

 短くなった煙草を放り投げて、火種を足で踏み潰しながら。

 「たんぽぽに矢口が入って、ウチら悔しかったから。プッチやるって決まった時はホント嬉しくて、気合入れてたよ」

 保田さんは新しい煙草に火を点ける。

「あんたが入る前の後藤はさ…まぁ、何考えてるか分からない子でね。それなりにウチらにも懐いてたけど、ハッキリ言って他人行儀もいいところだってね」

 ふぅー、と鼻から煙を吐いて、保田さんは私のほうへ顔を向ける。とても神妙な顔で。
453 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年04月03日(木)16時21分59秒

「あんたが加入する、ホント寸前。紗耶香が辞めるって話が、みんなに伝わる前。
 泣きながら紗耶香が私に電話、かけてきたんだ…」
「…!」
「ひどく動転してて……錯乱してた。 『ごめんね、圭ちゃん。私、もう駄目かもしれない。もう千葉ーズ結成出来なくなっちゃった。』って、泣きながら、何度も謝ってね…。 こっちがどうしてそんなことになったのか、訪ねても理由は教えてくれなかった…。
 ……次に会った時は…2人とも、全く違う、別人になってた」
「………」
「さて、と」

 まだ半分ほどしか吸っていない煙草を捨てて踏み消して、保田さんはライターを煙草の箱をバッグの中にしまった。 

「私が知ってるのはこれぐらい。 あー、蒸し暑い。 私、もう帰るから。あんたも黄昏てないで早く帰りなさいよ」
「保田さん…」
「あ、煙草の吸殻、吉澤が始末しといてね」
「ひでぇ…」
「情報料。世の中はギブアンドテイクよ」

 夕闇を背に、階下へと消えていく保田圭の姿は、これでもかというくらい、かっこよかった。


454 名前:更新終了&レス感謝 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年04月03日(木)16時29分37秒
UPDATE >>445-453

     ∧∧
     ( ´Д`) ンァッ
    〜ミ,uu)彡
     /   く  
    ( ´ Д `) < 454!
    / / ̄ ヽフ
    /ノ      |
    人___z___z'

>>438さん、>>439さん
 自治スレにてエロ、鬼畜はsage進行という暗黙のルールが明文化されましたので、やっぱりひっそり進行します。
 よろしくお願いします。
>>442さん
 ありがとうございます。最後までよろしくお願いします。
>>443さん、>>444さん
 保全ありがとうございます。
455 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月08日(火)00時47分58秒
続きますます期待です。
楽しみに待ってます。
456 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月21日(月)18時02分37秒
20010214_03:後藤真希
 


 綺麗に掃除されたバスルームは、たちまち湯気に満たされた。
 私はシャワーに打たれながら、考えていた。



    彼女の言った色んなことが
    彼女の言った色んなことが
    頭の中を駆け巡ってる



――『後藤さん、知ってる?』
――『よっすぃー、多分、来年モーニング娘。辞めるみたい』
―― え…?

 石川さんは眉を八の字にして、とても困ったような、そして悲しそうな顔をした。

―― あの…何で…?
――『あ! そう言えば! 後藤さんソロデビュー決まったんでしょ!おめでとう!』
―― いや、え…っと、あの、よっすぃーは何で…
――『後藤さん、前からソロやりたかったって言ってたもんね。これで夢が叶ったわけじゃない!』

 口篭もる私の手を取って、石川さんはまるで自分のことのように喜んでくれた。
 でも、私はそれどころじゃなかった。
 石川さんの言った“よっすぃーが娘。を辞める”っていう事の方が気になって仕方がなかった。

―― 石川さん…何で、よっすぃー…
――『私、絶対、後藤さんはソロでやるべきだって思ってたもん。何ていうかさー、レベルが違うっていうか、私たちとは』

―― 梨華ちゃん!!!

 叫んで、石川さんの両手を振り払った。
457 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年04月21日(月)18時04分46秒
―― あ…ごめん、その…

 途端に何か罪悪感が沸いてきて、私は俯いたまま石川さんの表情を盗み見た。

――『…………』

 そこに居た石川さんは、今まで見たことのない、私の知らない石川さんだった。
 みんなに「チャーミー」とか「黒い」とか「きしょい」とか、からかわれても笑っている石川さんとは別の人だった。
 
 背筋がぞくり、とした。
 その視線は冷たく私を見下ろしていた。 敵意と憎悪と侮蔑に満ちた視線。
 
 怖かった。

 芸能界に入ってから、私を見る周りの視線は変わった。
 好意的な目で見られるようにもなったけれど、それ以上に敵対的な目でも見られるようになった。 それは少なからず覚悟していたし、で、そういった人達は私に直接的な被害を及ぼす事は稀だ。 ストーカーとかピンポンダッシュとかいたずら電話とか、そう言った実害は勿論、嫌だけれども、私はそんなことをする人達と何の面識もない。 嫌だけれども、怖いとは思わない。何故なら、彼らは結局、何もできない人たちだし、一生縁のない人たちだから。
 でも、石川さんが私に向ける目は、違う。
 「石川梨華」という、1人の人間が、少なくとも知己の仲間が、「後藤真希」という1人の人間を激しく憎んでいる。
458 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年04月21日(月)18時05分50秒

――『私はひとみちゃんの事が好きだったわ。 オーディションで始めて会った時からすごく輝いていたもの。 同い年のバカな人達と違って、ひとみちゃんは何もかも全部知ってる人だったわ。次元が違うのよ。 だから、私はひとみちゃんが好きだったわ。ひとみちゃんは私の共同統治者になるはずだった。 私と一緒に、この世界を席捲して、バカな人達に崇められる存在になるはずだったのに』

――『後藤さんのお守りを任せられたのは当然のことだと思ったわ。 それは私にとっても、ひとみちゃんにとっても必要なステップだと思ったから。でもひとみちゃんは惑わされちゃったの』

――『ソロデビューが決まっても、しばらくはモーニング娘。に残る選択を選ばせるための、頼まれた“ただの御学友”のはずだったのに』

――『ひとみちゃん!可愛そう!私との関係も終わりだって!! 娘。辞めさせられるのも仕方ないって!! 信じられない!後藤さんを好きになったからって!?どうしてよ!!』

――『バカよ!ひとみちゃん! 後藤さんはひとみちゃんなんかに振り向くはずないのに!! 女同士なのに! それでも好きだって!! バカよ。気持ち悪いわ! 何であなたなの?! あなたモーニング娘。のことなんかちっとも好きじゃないクセに! 大嫌っいよ!!ひとみちゃんも! あなたも!勝手に恋愛ごっこでもやって、無駄な人生歩めばいいんだわ!!』

459 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年04月21日(月)18時07分30秒

 今、思い出してみれば、随分酷いことを言われてることに気付く。
 でもその時の私は、それどころじゃなかった。
 怖かった。 
 石川さんのことが。
 少女漫画なんかじゃ、こういう時、私は石川さんの頬を叩いて反論したりとか、もしくは「ごめんね」とか言いながら抱きしめたりとかすれば良いんだろう、と思った。
 だけど、現実はそれどころじゃない。 そんな余裕は微塵もなかった。
 怖くて、石川さんのことが怖くて仕方がなかった。

   ……… う っ…  ぁ ………

 下腹のあたりから、嫌な感覚が競りあがってきた。
 もぞり、と音をたてて、鎌首をもたげるように。
 押し込めていた恐怖と嫌悪が私の全身を支配するのに時間はかからなかった。

     ……『……後藤、好きだよ…』
     ……『愛してる。好きなんだ。』
     ……『名前を呼んでよ…後藤』
     ……『後藤、愛してる…』

「……ひ……ぃ… 」

 泣き喚きながら私を罵倒する石川さんの声と、“あの時”の囁きが反芻した。

 怖い。助けて。やめて。もう嫌だ。やめて。助けて。おねがいだから。
 助けて。
 助けて… よっすぃー…。



    彼女の言った色んなことが
    彼女の言った色んなことが
    頭の中を駆け巡ってる


460 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年04月21日(月)18時08分12秒

 それからは、まるで映画のフィルムを見ているようだった。
 
「私」は廊下の上から、その様子を見ていた。

 私はたまらなくて、その場で嘔吐した。
 廊下に片手をついて、片手は喉を押さえてうずくまり、吐き続けた。
 それでも石川さんは私を罵倒し続けていた。
 あんまりヒステリックに声をあげるから、流石に周りが騒ぎに気付き始めた。
 廊下の向こうから圭ちゃんと裕ちゃんとマネージャーさんが走り寄ってきた。
 圭ちゃんは暴れる石川さんを羽交い締めにして、無人の楽屋の中へ連れ去っていった。
 相変わらず吐き気のやまない私の背中を、裕ちゃんは優しくさすってくれたけど、どうしてよっすぃーが居ないのか、よっすぃーに背中をさすって欲しくて、よっすぃーの気配を探して、私は必死で視線をめぐらせていた。


    本気でヤバイことになってる
    すっかり途方に暮れてる
    私が助けを求めてるとしたら




 私が助けを求めているとしたら……それは。
 吉澤ひとみ。

 ずっと目を閉じているのに、あなたの事を追い出せない。
 上辺を取り繕うことも、忘れることも出来ない。
 私は駆り立てられて、追い詰められたかもしれないけれど、混乱したりイカれたりして、ここに来たわけじゃない。
 理屈や常識なんて、分からない。
 決して怖さが消えたわけでもない。
 例えこの感情が「異常」で「罪」だとしても。
 私は……

 シャワーのコックをひねる。
 辺りは飛沫が飛び散る僅かな水音と、静寂に包まれた。

461 名前:レス感謝 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年04月21日(月)18時16分43秒
UPDATE>>456-460

しゅたたたたた…

     
≡≡≡\♪ヤサポサナ〜/≡≡≡≡≡≡
≡≡≡≡≡ ノノハヽ≡≡≡ ノノハヽ
≡≡≡≡≡( ´ Д `)≡≡≡(0^〜^)<♪ヤサポサナ〜
≡≡≡≡ ⊂    O≡≡≡⊂    O
≡≡≡≡≡(  /≡≡≡≡(  /


>>455さん。 ありがとうございます。終了まであと少し、よろしくお願いします。
462 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月21日(月)22時36分06秒
残りわずかですか・・・楽しみでもあり残念でもあり。
がんばって下さい。
463 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月28日(月)23時08分11秒
終わっちゃうのは悲しいけど、続き楽しみで仕方ないです。
464 名前:Easestone 投稿日:2003年05月18日(日)22時15分26秒
今日、一気読みさせていただきました。
素晴らしいですね。こんなすごい作品があったなんて知りませんでした。
ダークなのにダークじゃないよっすぃがいいです!続き期待してます。
ワイパックスなんて薬が出てきたのには驚きました。。。
465 名前:Easestone 投稿日:2003年05月18日(日)22時16分04秒
ごめんなさい。すいません。
あげてしまいました。。。。
466 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月22日(木)23時54分11秒
All The Things She Saidを思い出しました。
終了まで頑張って下さい。
467 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月25日(日)00時09分48秒
待ち続けることをやめないで良かったと
これほど思ったことはありません。
頑張って下さい。応援してます。
468 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月09日(月)22時27分40秒
待ってます
469 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年06月23日(月)20時26分15秒


   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | もうあと一回の更新でこの話も終わりね
   \
      ̄ ̄ ̄|/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

                   ⊂⊃
       ノノノハヽ   ノノハヽヽ/) < そうだね
       ( `.∀´)y-~~(´ Д ` )/)
    /|  (つ   ノ    (つ⊂ )ヾ  |\
  / ̄ ̄ ̄|保田| ̄ ̄ ̄|ショマキエル| ̄ ̄ ̄\
  | ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄|  
  |    .        .             .|
   ̄| ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄


470 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年06月23日(月)20時28分20秒


   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | で終わったらちゃちゃっと500まで埋めるのよ
   \
      ̄ ̄ ̄|/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

                   ⊂⊃
       ノノノハヽ   ノノハヽヽ/) < なんで?
       ( `.∀´)y-~~(´ Д ` )/)
    /|  (つ   ノ    (つ⊂ )ヾ  |\
  / ̄ ̄ ̄|保田| ̄ ̄ ̄|ショマキエル| ̄ ̄ ̄\
  | ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄|  
  |    .        .             .|
   ̄| ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄


471 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年06月23日(月)20時32分14秒

   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | 終わっても何も感想つかなかったら悲しいじゃない。
   \
      ̄ ̄ ̄|/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

          ドン!       ⊂⊃
       ノノノハヽ    ノノハヽヽ/) < ウン
       ( `.∀´)))   (´ Д ` )/)
    /|  (つ   ノ○    (つ⊂ )ヾ |\
  / ̄ ̄ ̄|保田| ̄ ̄ ̄|ショマキエル| ̄ ̄ ̄\
  | ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄|  
  |    .        .             .|
   ̄| ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄

472 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年06月23日(月)20時32分54秒

   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | …だからその対策よ。
   \
      ̄ ̄ ̄|/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

                   ⊂⊃
       ノノノハヽ    ノノハヽヽ/) < カナシイネ
       (`.∀´ )))  (´ Д ` )/)
    /|  (つ   と)   (つ⊂ )ヾ  |\
  / ̄ ̄ ̄|保田| ̄ ̄ ̄|ショマキエル| ̄ ̄ ̄\
  | ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄|  
  |    .        .             .|
   ̄| ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄

473 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年06月23日(月)20時33分41秒


  | ̄ ̄" ̄ ̄ ̄" ̄ ̄" ̄ ̄ ̄| 
  | レス数制限上がってますよ|
  |__.___. __. ___.」
    ノノノハ ||
    川o・−・)||
     /   づΦ


474 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年06月23日(月)20時34分24秒


    うそっ
       \从/      ⊂⊃
       ノノノハヽ    ノノハヽヽ/)   
       (`.∀´; )   (´ Д ` )/)   
    /|  (つ ~-と)   (つ⊂ )ヾ  |\ 
  / ̄ ̄ ̄|保田| ̄ ̄ ̄|ショマキエル| ̄ ̄ ̄\
  | ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄|  
  |    .        .             .|
   ̄| ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄


475 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年06月23日(月)20時35分11秒

    ノノノハ アヒャ
    川*・∀・)ノ  

『 24 名前 : 容量変更!! 投稿日 : 2003年04月25日(金)21時05分41秒
容量制限が変更したようです。
以下、勝手ながら転載させて頂きます。

http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi/imp/1049478762/14-16n
空・海・森を除く各板で、スレッドの容量制限を緩和しました。
各板、従来の256KBから320KBまで拡大されています。
文字数制限、レス数制限はそのままです。

空・海板は576KB、森板は192KB・350レスまで制限緩和しました。

空・海板のレス数制限を500→1000まで、そのほかの板を500→750まで、
それぞれ緩和しました。 』
   (案内板:【小説板自治スレッド】より)


476 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年06月23日(月)20時35分53秒


                   ⊂⊃      
       ノノノハヽ   ノノハヽヽ/) 
       (;`.∀´)   (´ Д `;)/)  
    /|  (つ と)    (つ⊂ )ヾ  |\
  / ̄ ̄ ̄|保田| ̄ ̄ ̄|ショマキエル| ̄ ̄ ̄\
  | ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄|  
  |    .        .             .|
   ̄| ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄


477 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年06月23日(月)20時36分24秒


                     o ・。 ⊂⊃ 。 ゚
                     (\ノハヽヽ 。・ ゚
                     (ヾ(/)Д(ヽ < もう帰る!
                    .//(    .ノ
                 (( (/(/___|″ヒックヒック
         ノノノハヽ      し′し′
        Σ(;`.∀´)∩   
    /|    ( つ ノ     |\ 
   / ̄ ̄ ̄|保田| ̄ ̄ ̄|ショマキエル| ̄ ̄\
  | ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄|  
  |    .        .             .|
   ̄| ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄
478 名前:というわけで ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年06月23日(月)20時40分22秒

 Now 1000umetate Kangaething…


       (´ Д ` )
       (⌒)(⌒~)
       (_(__)ノ....:..
       .........:..
479 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)16時42分34秒

   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | 1000埋め企画考えたわよ。
   \
      ̄ ̄ ̄|/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

                   ⊂⊃
       ノノノハヽ     ノノハヽヽ/) <ドンナ?
       ( `.∀´)    (´ Д ` )/)
    /|  (つ   ノつ   (つ⊂ )ヾ  |\
  / ̄ ̄ ̄|保田| ̄ ̄ ̄|ショマキエル| ̄ ̄ ̄\
  | ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄|  
  |    .        .             .|
   ̄| ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄

480 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)16時43分52秒

   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | 割りとこの話って誤字多いじゃない。
   \
      ̄ ̄ ̄|/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

                   ⊂⊃
       ノノノハヽ    ノノハヽヽ/) <カイギョウタグガ入ッテタリネ
       ( `.∀´)    (´ Д ` )/)
    /|  (つ   ノつ   (つ⊂ )ヾ  |\
  / ̄ ̄ ̄|保田| ̄ ̄ ̄|ショマキエル| ̄ ̄ ̄\
  | ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄|  
  |    .        .             .|
   ̄| ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄

           ※ごめんなさい。
481 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)16時44分34秒

( `.∀´)<最初のほうは作者も飼育の勝手が分かってなかったじゃない。
( ´ Д `)<ウン。

( `.∀´)<日付の後に視点、エピソード間にAAを入れるスタイルが確立したのは結構、最近だしね。
( ´ Д `)<ウン。

482 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)16時45分39秒

   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | とりあえず残りエピソードをあげて一端は終了させた後に…
   \
      ̄ ̄ ̄|/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

                   ⊂⊃
       ノノノハヽ    ノノハヽヽ/) <ソノホウガイイネ。
       ( `.∀´)    (´ Д ` )/)
    /|  (つ   ノつ   (つ⊂ )ヾ  |\
  / ̄ ̄ ̄|保田| ̄ ̄ ̄|ショマキエル| ̄ ̄ ̄\
  | ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄|  
  |    .        .             .|
   ̄| ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄
483 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)16時46分14秒

 
   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | もう一度書きなおしするわよ!
   \
      ̄ ̄ ̄|/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                   ⊂⊃
       ノノノハヽ   ノノハヽヽ/)   
       ( `.∀´)∩ Σ(´ Д ` )/) バカナ!
    /|  (つ   ノ   ( つ つヾ |\ 
 / ̄ ̄ ̄|保田| ̄ ̄ ̄|ショマキエル| ̄ ̄ ̄\
  | ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄|  
  |    .        .             .|
   ̄| ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄

484 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)16時46分51秒

   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | 題して「TEA IN THE SAHARA」Re Pure。
   | 略してティリピュアよ!
   \
      ̄ ̄ ̄|/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

          ドン!       ⊂⊃
       ノノノハヽ    ノノハヽヽ/) <シスプリカヨ! 
       ( `.∀´)))   (´ Д `;)/)
    /|  (つ   ノ○    (つ⊂ )ヾ |\
  / ̄ ̄|保田| ̄ ̄ ̄|ショマキエル| ̄ ̄ ̄\
  | ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄|  
  |    .        .             .|
   ̄| ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄

         ※Re Pureではありません。
485 名前:レス感謝 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)16時49分05秒
と、いうわけで、完全版(いわゆる流行りのディレクターカット版)の詳細は後ほど。

>>462さん こういうことになってしまったので、読むのがめんどい人は最後の目次から読んだほうが良いと思います。

>>463さん 結局、終わりまで1年半ほどかかってしまいました。最後までついてきていただき、ありがとうございます。

>>Easestoneさん ワイパックスの説明は完全版のほうでして。また一気読みしてくださいね(笑)

>>466さん はい。ご指摘の通り、t.A.T.uの曲を聴きながら書いた話です。

>>467さん どうもありがとうございます。待たせすぎな感もありますが、ここまでやってこれたのも467さんを始めとする暖かいレスのおかげです。

>>468さん とりあえず完成しました。お待たせしました。
486 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)16時51分35秒
20010214_04:吉澤ひとみ


「……ソロデビュー……することになったんだ…」

 バスローブに身を包み、ティーカップを握り締めたまま、彼女は呟いた。

「そう…」

 私は紅茶をすすった。
 彼女はキッチンに突っ立ったまま、俯いている。

「…おめでとう…」

 彼女は俯いて、黙ったままだ。

「…って言うとでも思った?」

 彼女は何も言わない。

「それとも、言って欲しかったとか?」

 私は意地悪く笑って、キッチンを出た。

「こんな遅くに人ン家来てさ。何を言うかと思えば」

 私はソファに身を沈めた。

「ただの自慢話?へェ。良かったねェ?オメデトウ。念願のソロデビューじゃん。まー、同僚のよしみ?だから1枚くらいは買うよ。給料でさ…」
「…聞いた…」

487 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)16時52分54秒

「え?」

「よっすぃーと事務所の取引…」

 私が紡ぎ出す、歯止めの効かない罵詈雑言の中で、ぽつりと彼女は呟いた。

「私…辞めないよ。モーニング娘。…」

 更に、彼女は呟いた。

「取引なんだよね…。私がモーニング娘。辞めなかったら。よっすぃー、私のトモダチで居てくれるって…」
「なっ……」

 私は飲みさしの紅茶を慌てて机の上に置く。
 彼女が頼りなげに呟くそのセリフが、信じられなかったから。

「な、何言ってんの…?!自分が何言ってんのか分かってる?」
「わかんない…」
「………」
「分かんないよ…。私、ずっと歌手になりたかった。一人でやりたかった。だけどっ…!事務所の人からそう言われてもあんまり嬉しくなかった……!」

 彼女の声は震えていた。

「どうして?!分かんないよぉ……。みんな私がモーニング娘。辞めるって決めつけてて!! 私、何も言ってないのに!! でも分かんない!辞めたかったはずなのに、そう思えない私が分からない!分かんない!!」

 私がキッチンへ辿り着いた時、彼女は泣いていた。

「……どうしてかなぁ…分からなくって…したら…よっすぃーに会いたくって…顔見たくて…話たくて…」

 零れ落ちる涙が、彼女の足元を濡らしていく。彼女は俯いて、ティーカップを握り締めたままだ…。

「ごっちん…あのさ…」
「………」

 彼女は、静かに、顔をあげた。

「残念だけど…」
「………」
「トモダチにはもう、なれないよ…」

 サイレンの音が遠くに聞こえる…。
488 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)16時55分03秒
 サイレンの音が遠くに聞こえる…。
 彼女は私をじっと見詰めている。 泣きながら、でも唇をぎゅっと噛み締めて。

「…ねぇ…私が前にキスしたことも、ホテルでやったことも…。夢とかに思ってるの?
「………」

 サイレンの音が遠くに聞こえる…。
 喉が、妙にじりじりと渇いた。

「好き…なんだよね…。どうしようもないくらい。 欲しいんだよね、後藤真希のこと。“トモダチ”なんて薄っぺらいカンケー、もう要らない…から」

 喉が、妙に渇く。
 サイレンの音が遠くに聞こえる。
 こんな形で告白することになるなんて思わなかった、と頭の中でガンガン響く。
 握り締めた手は、汗ばんでいた。
 身体は自然と彼女へと近づいていく。 あの夜の時のように。
 涙でくしゃくしゃになった彼女の顔が、愛しかった。
 自然と鼓動が早くなっていく。
 
「………」

 サイレンの音が遠くに聞こえる。 
 彼女は私をじっと見詰めている。

 身体が勝手に動き出す。
 サイレンの音が遠くに聞こえる。
 どうしても、触れてみたい。 彼女に。
 だから、そっと。 
 私は右手で彼女の柔らかな頬の線をなぞる。

「…ごっちん…ねぇ…」

 問いかけながら、彼女の顔に、自分の顔を近づけていく。
 彼女のかすかな吐息を間近に感じた。
 
 私はそっと唇をおとした。

「…何で…」
「………」

 彼女はじっと、私を見上げている。

「さっき言ったこと、聞いてた? 私、後藤真希のこと、欲しいって言ったよね?意味分かってる?」
「分かってるよ…」

489 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)16時55分57秒

 両目を閉じて。彼女の睫が細かく震える。

「…いいよ…好きにしても…。でも…だから…。前みたいに…そばに居てもいい…?ご飯いっしょに食べに行ったり…買い物一緒に行ったりしても…いい?」
「本気で言ってるの?」
「私…よっすぃーと居たい…。どんな関係でもいいから…。よっすぃーの傍がいい…傍にいて欲しい…」

 背中に回された彼女の両腕も、胸にうずめるように預けられた頭も、何処か怯えているように震えていた。
 なのに、どうして、そうまでして彼女がそんなことを言っているのか、やっているのか、私には分からなかった。
 何故なら、私には、何ひとつ、彼女に愛される資格も、理由もなかったから。
 自分が成り上がるために、彼女を利用しようとした。
 自分の欲望を抑えきれずに、彼女を傷つけた。
 そのクセ、独り善がりな考えで、彼女を突き放して。
 
 私は、たくさんの人を哀しませて、傷つけた。

 何ひとつ、私は彼女に傍に居て欲しいと懇願される理由はない。

「ねぇ…ごっちんって…バカでしょ…」
「うん…」

 私がぎゅっと抱きしめると、彼女の身体がびくり、と震える。

「怖いんでしょ。…怖いクセに…なんで…」
「怖い…よ…」

 なのに、彼女は私にしがみつくように身体を預けてくる。

「怖いけど…でも…でも…」
「…ごっちん…」
「多分…ムズカシイことは…わかんない…けど…」
「………」
「よっすぃーが…思ってることと…欲しいって…気持ちと…おんなじ…だよ」
「ねぇ…ごっちんってさぁ…」
「ん…」
「バカでしょ…」
「うん…」
490 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)16時56分54秒

 サイレンの音が近くに聞こえる。
 
「…もう一度キス…していい…?」

 サイレンの音が近くに聞こえる。

 今、後藤真希は、私の腕の中にいる。

「うん」


491 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)16時58分12秒

UPDATE 20010214_04 >>486-490

          ,、''"´ ̄ ̄`''、
        /        ヽ
       /   ごっちん  ゙、
       i           | 彡
       l    LOVE    !
       ヽ          /
         \      /
          \_  _./
            ∀    ふわふわ
            │
            │
            ∩(^〜^;0)< 着地失敗…ごめんYo。 
              (     )
               (_(_ノ  ))ドシ!
             ノノハヽ  ∩ミ 
           ⊂(´ Д `⊂⌒`つ  イタ…
492 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)16時58分42秒
DIES IRAE:市井紗耶香


 @感覚の変容

『いや、本当に! ひどく神経過敏だったし、今でもそうなんです。』
           『でも何故、皆さんは私をおかしいと言いたいんですか。』
   『天と地の一切のものが、地獄からのものまで聞こえました。』
 
                            『それじゃ、やっぱり私はおかしいとでも?』『まぁ。聞いて。そして見てください。』
  『皆さんに一切の事を、どんな健全にどんな心静かにお話できるかを─── エドガー・アラン・ポー「The Tell-Tall Heart」』
    

 ・


 ・
493 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)16時59分45秒
「…ね…ね…ぇ…。 冗談…だよね…」

 声が震エて、少しロレツが回ってナいのは、まだ後藤に盛った薬の効果が残ってイるせいカもしレない。

「いちーちゃん…ねぇ…… 冗談でしょ…コレ…」

 ばーか。
 冗談なワケないっしょ。

「いちーちゃん!!」

 ビデオカメラの赤い光りに、煙草の煙の揺らメきが照らし出されテいる。
494 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)17時00分43秒
 B妄想と幻覚


 ・

 『「二度とそんなマネはするな!俺に背を向けるなんて!」』
 『───ある時、パンズラムが心を許す看守のレッサーが』
 『───彼の独房に入り、背中を向けて作業するのを見て 』
 『───激しいショックを受けて、彼は叫んだ。 』


 ・

495 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)17時02分58秒
  脅えている?
 
でもねぇ。その“濡れた瞳”ってヤツ? 誘ってるカンジで、こっちはもうゾクゾクしている。 まだ触れてもいないのに。

「やだー… 来ないで!」

 こンなに自分が理性の効かなイ人間だッたなんて。
 後藤真希。
 後藤。
 ごとー。

 大好きなのに、なのに。私の気持ちに気付かないでスキばっかり見せル。
 終ワりだ。 私はもウ終わりだ。
 
 A解釈と反応の異常
 
 精神が爆発する臨界点に達してしまったんだ。
 だから、彼女を鎖で繋いだ。
 ・
・ 


  ・

 ・
 『「君は私に危害を加えないさ」』
 『「ああ、そうだ。 確かにアンタは俺が傷つけたくない」』
 『「たった一人の人間だ」 』
 『「でも俺はいつまたころりと気が変わるかもしれない。」』
 『「何をするか自分でも分からないんだよ」 』

 ・ 
 ・
496 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)17時03分44秒

「やめ…やめて!!……ねえ!!」
「じっとしてなよ。 危ないじゃんか」
・ 
 ・
 ・
 『─── パンズラムが最後にレッサーに宛てた手紙はこうある。』
 ・
『俺が不思議でならないのは、一体どう転んだらお前のような頭の良くて才能のあるヤツが、俺をよく知っている人間が、まだこんな男と交流していられるか、ってことだ。
 俺は、俺を軽蔑してるし、ゾっとするほど嫌っている』
 ───。

 『─── 1930年9月30日 』
 『─── カール=パンズラムは絞首刑に処された。』
 ・
  ・
 ・
 私は後藤を傷つケたくない。だカら慎重にナイフで服を切り裂いテるってノに、ムダに身体を動かすもンだから、アぶなっかしくて仕方ナい。
  ・
 ・
 ・
 
497 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)17時05分05秒
「はぁ… 綺麗だね。 後藤、すごく綺麗」

 ため息が漏れる。
 切り裂いた服の中から現れた、後藤真希の裸体に。
 綺麗で、健康的で、肉感的で……あー、これ以上、形容詞?が思いつかないや。
 身体にそっと唇をはわす。
 夢に見た、後藤真希が、市井紗耶香のものになる。

「なんで… なんで?こんなこと…するの?」
「好きだから。いや?違う…。愛してるから?違う、違う。そうだね…」

 “愛情”というもノは、あルと思う。 認めるサ。
 じゃあ“恋愛”は? ハハッ、唾を吐きたクなるね!
 結局、人間なんてサルなんだよ。欲しい。気持ち良くなりたい。だからセックスをしたい。同じ動物のクセに人間と動物を別格に扱う奴らは、サルと同じ欲望を高尚でオキレイな哲学で飾りたイだけなのサ…。


「欲しいから。後藤のことが欲しい。やりたい。そういうことかな」

498 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)17時06分20秒

  C自我の変容感、自明の喪失

 「いちっ…ちゃ!」

 全身が震えた。
 今にも泣き出しそうな顔中にキスを落とす。
 顔をそむけた後藤の耳元に囁く。

「ダメだから。どうしようもないんだよ…」

 “自分ハ自分です。”

 そレは、普通は分かり切った、当たり前の事です。
 でモね、何カの拍子ニ自分……自我の膜が破れてしまったら?
 それはひどい!
 マるで洪水ノようニ、思考が湧き上がり流れ込ミ、当たり前のこトさえ、当タり前じゃなクなる。
 人は何処から来た? 何故目が見える? 何故音を聞き分けられる?
 食べなければ生きていけない生物になったのは何故?朝起きて顔を洗うのはなぜ?
499 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)17時50分53秒

 D感情の異常

 市井紗耶香の上で見下ろす市井紗耶香達が「ごめん」とか「許して」とか、謝っている。
 でも、そんな謝罪を述べテイる奴らだって、後藤真希のことが好きで好キでたマらないくせニ。

「ど…して…こんなの…やだぁ…。ねぇ…これからどうすんの…さぁ…。プッチは?娘。は?…どうすんの…あたし…」
「黙れ」

 ちぎれたシャツを口の中にねじ込む。

 『プッチモニ』
 『モーニング娘。』
 
 どっちも聞きたくない。 私には、もう、どうでもいいことだから。
 ・

 ・

 『時間とは何か?』
             『意味のある偶然の一致』
 

 

 ・
500 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)17時52分19秒

 むしゃぶりつく。思い通りに。
 首筋に口付け、胸の突起をつかみ、摘み、吸いつく。紅い印を後藤の身体に刻みながら。

「………ぅ……ぐぅ……」

 苦しそうに身を捩ってるけどさ。

「後藤。インランじゃん」

 右手で秘部をそっと撫でる。

「感じてんじゃん。濡れてるよ」

 口の中に突っ込んでいたシャツを引き抜き、右指を1本、1本、舐める。
 そして。
 ・

 ・
『ひとつの文字を連続して羅列させることで言葉として意味をもつ』
 『降り積もった静止画が連続して動きとなる』
 『時間とは?』 ───『動き』『ひとつの流れ』


・ 
 ・
501 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)17時53分03秒

「…んん…ひ…ああ…!!」
「はぁ…後藤…! ねぇ、分かる?アンタの中に入ってるんだよ。私の指が…。 セックスしてんだ…私と…後藤… …はぁ…」

 二本、三本と、指を交互に差し入れるたびに、くちゅくちゅ、と淫靡な音がした。
 後藤の声が聞こえる。 それが快楽のものなのか、苦痛のものなのか、私にはもう関係ない。 「市井紗耶香」が後藤を支配しているその事実が、心地よくて仕方ない。

 私は一度、指を引き抜くと、かたわらに置いてある道具を装着し始める。
 後藤は目を瞑って、荒い吐息を吐き続けている。
 左脚の足枷を外した。
 ぐったりと力の抜けた両足を、私の肩に乗せた。
 後藤は……。
 これから起こることに気付いていないようだった。

 「…!!……んんん…! く…ぁ…あ…!!!」

 ゾクゾクする。後藤の中に入っていくのが仮物だとしても。

「ふ…あ あ…ダメぇ… 動か…な……ぃ…んくぅ!」

 眉根を寄せて。悲痛な声。
 手錠をかけられた両手は行き場もなくもがき、やがて手の平に血がうっすらと滲んだ。 私は、愛らしく膨らんだ蕾にローターをあてがい、それから、ふたつの道具のボリュームを最大まで上げる。

「んんんあああ!! やだああぁぁ!!」

 今まで聞いたことがない。 後藤真希の嬌声。
 両目をかたくなに閉じ、狂ったように頭を左右に振る。
 鎖がひっきりなしに鳴る。

「…ふぅ… ん…ああ… やあ…いちーちゃ…もうやめ… んあああ…」

 腰をグラインドさせて、後藤の身体を抱き寄せる。
 彼女の悲鳴が高まる。

「も…ヘンに…な…るぅ…ああ はぁ」

502 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)17時53分48秒


 ・

                        『私の岩、私の神に言おう』
     『何故私をお忘れになったのか』

『何故私は敵に虐げられ嘆きつつ歩くのか』



 私は“獣”になった。
 彼女が空気を求めるように、泣く。
 罪悪感はない。
 後藤。 後藤真希。好き。大好き。

「ごとう…好き。愛してる…」

503 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)17時55分09秒

UPDATE DIES IRAE >>492-502 


        ( ´ Д `)
        (  つ(\             
     (\_ノ(___)⌒ ⌒ヽ_         
     ) ____  ・_つ       
    (/      (/         
    。 ゚                  

   。 ゚                 
504 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)17時56分13秒
RECORDAC:吉澤ひとみ


 渇いた風を服越しに感じながら、雑踏の中を歩く。
 ビルを覆うガラスが、穏やかな午後の陽光を反射して、キラキラと眩しい。
 枯れ落ちた葉は、風に舞い、人に踏みにじられていく。
 ふと、振り向いても、何もなく、私は誰を探していたんだろう、と苦笑する。

 電車に揺られて、目的地に着く頃、陽は傾きかけていた。
 草抜きを黙々とこなし、白い御影石で出来た墓石をごしごしと洗う。
 枯れかけた花を花瓶から抜き取って、水を入れ替える。
 
 ふと見下ろした町は、夕暮れに彩られいた。
 線香の煙が、風に乗って消えていった。

「やっとさ、サハラ行けるようになったよ。 女の医者ってことでなかなか返事はもらえなかったんだけどさ。まぁ背に腹は変えられないってとこかな。むこうも腕のいい外国の医者、欲しがってるみたいだから」

 鮮やかな、けれど何処か寂しい秋の夕暮れ。
 寝床を探して、鳥の群れが空を行き交う。

「…誰もツッこんでくれないか」

 私は一人、苦笑した。
『自分で腕のいい医者なんて言うなよ』って、誰もつっこまない。最も、彼女はそんな基本的なところは突っ込まないだろうけど。
505 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)17時57分10秒
「この前ね…。市井さんに会った」

 都会から離れたここは、車の音も、電車の音も聞こえない。
 鳥の囁きと、風に揺らされた木々のざわめきの音。
 ここは、空が、見える。

「会ったっていうよりは、見かけた、ていうのが正しいかなぁ…」

 私がたまたま、精神神経科病棟の医師に用事があった時のことだ。医師は私が昔、モーニング娘。に居たことを知っていたので、市井紗耶香が入院していることを教えてくれたのだった。
 
『ここは、空が、見える』
『青いねぇ。でも汚いなあ』
『なんで私が青なんだよ』
『嫌いだねぇ。青色は。でも好きだねぇ。青は』

 喫煙所でぼんやりと腰掛けたまま煙草をふかして、窓の外を見つめる市井紗耶香はぶつぶつとそう呟いていた。
 
「…時々、モーニング娘。の歌を歌うことがあるんだって」

 担当医にそう聞いた。
 だが、ほとんどは一日中、ベッドの上で無為にすごしていて、他の患者と交流することはないらしい。
 私はカルテを見せてもらった。
 市井紗耶香が強制入院でやってきたのは、私がこの病院に赴任することが決定した頃と同じくらいの頃らしかった。
506 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時00分07秒

  統合失調症。

 昔は精神分裂病と呼ばれたそれが市井紗耶香の抱える病だった。
 
 始まりは、モーニング娘。を辞めた辺りから始まった離人症状と世界没落体験。
 モーニング娘。在籍時から、何度か精神科へ通っており、薬をその頃から処方されていたようだった。その頃に彼女に処方された薬の履歴を見て、私は、16年前に市井紗耶香が起こした凶事を思い出す。
 それからは、転げ落ちるようにアルコールや、覚せい剤を飲用するようになり、お決まりの精神運動興奮、幻聴、独語、思考化声ときて、自閉へと悪化していく。
 現在は末期とも言える、無為と感情鈍磨の残遺状態にあるようだ。

「…きっとさぁ…。市井さんの頭の中じゃ、初代プッチのメンバーで踊ってるんだろうね…」

 まるで同じ経緯を辿って死んだ人の事を思い出して、心が重く沈んだ。

 これから私がどれほどの人の命を救っても、彼女達は帰ってこない。


 カラスが泣いた。

507 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時01分22秒

UPDATE RECORDAC >>504-506


ツダッテヤルYO〜   イイデスゥ〜

   MM      ......∞α
  〆;;;;;;◎・∋ ・ ◎....:ゞ
  (;;;;(0 ^〜^)(´ Д `*)..:)
 (( (;;;;フ;;;;;;;;フ <........<....) ))
 <;;;;;;;;;;;ノ    ヾ、、、、、ゝ
 W W        W W


508 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時02分29秒
20020922:吉澤ひとみ


「“努力は天才勝る”とかさぁ“才能は有限、努力は無限”とかさぁ…よく言うじゃん
そーゆー甘っちょろい台詞…反吐が出るよ…。大抵、そーゆー事言う奴らってさ、ホンモノの“天才”とか“才能のある人種”を見たことないんだよね…」

 訪れた楽屋で、花束を膝に抱えたまま「そいつ」は吐き捨てるように言った。

「ウチら二次メンは最初っから大変だったんだ…。矢口も圭ちゃんも必死だったんだよ…5人になじもうと思って努力した…5人にだけじゃない、世間を納得させてやるんだって…頑張ってたんだ…」
「………」

 私は無言でそいつの独白に耳を傾ける。

「後藤の教育係に指名された時さ、別に悪い気はしなかった。あいつ、鳴り物入りなカンジで入ってきたじゃん?そんな人間の教育係ってことで、自分をアピールするにはもってこいだしね…。 ……だけどさ…四六時中、アイツと迎い合うようになってから…よく分からんなくなってきた…自分のやってること…。 …後藤はさ…正直で…ホント、正直で…バカ正直すぎるんだよ…」

 私は無言でそいつの独白を聴き続ける。

「吉澤が加入することはさ…結構早い段階で決まってたんだ。 その頃はこっちも私の待遇のあれこれで親が口挟んだりして揉め始めたりしてさ…。後藤のお守りを今度は吉澤にさせるつもりなんだって話、聴いた時さ………。  …凄くムカついた」
「………」
509 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時03分27秒

私は無言でそいつの独白に耳を傾ける。

「私は………自分で思ってたよりも後藤のことが好きになってた…。その頃は後藤の方が私の事を好きなんだ、って…勝手に思い込んだ。思い込ませた。…そうでも思わないと …同性を好きになる事や、自分がモーニング娘。に居る理由付けが出来なかったんだよ…」
「………」

 私は無言でそいつの独白を聴き続ける。

「アイツはさ、世間一般では大胆不敵なイメージもたれてるけど…私の前ではフツーにおとなしかった。真面目に練習もしてたし、他のメンバーに陰口とか、皮肉とか、言われてもふにゃふにゃ笑ってた…。 それがさぁ、お前の事、テレビで見た時さ…ホラ、何かエラそーな事、言ったじゃん?何言ってたっけ…」
「『ライバルは後藤真希ちゃんです』」
「そう。ソレソレ。それだ。… すごく戸惑った顔してたんだ…アイツ。あんな顔した後藤、始めて見た」

 そいつはいかにも嫌そうに、顔をしかめた。
 私は無言でそいつの独白を聴き続ける。

「多分、そこからかな。私が“狂った”としたら。その辺りからだよ。事務所との交渉も上手くまとまらないし、アンタは加入してくるし、後藤のソロの話もぼちぼち持ち上がってたしね…。 …もう、何かどうでもよくなってきたんだよね…」

 そいつは人差し指を、自分のこめかみの辺りに当てて、目を細めた。
 そして。

「…疲れたんだ…。“市井紗耶香”を演ってることが…」

 ニィ、と笑う。
 その全ての表情が、上面であることを嘲笑するかのように。
510 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時09分13秒
「その頃から、結構、鬱入ってたから、そーゆー医者にかかって薬貰ってたんだよね」
「………」
「アイツに差し入れ持って行くのは珍しくなかったし。その日、バリューセット二つ買ってさ…後藤に渡す飲み物の中に入れたよ」
「………」
「薬。抗鬱薬でさ、色々出されたんだけど、中にすっごく眠たくなるやつがあってさ。何て名前だったっけな。……覚えてないや。ま、いいか。で、それ飲んだ時、3日ぐらい爆睡したことあってさ」

 大概、患者に処方される「抗鬱剤」は眠気とダルさを肉体にもたらす。
 眠さを導く薬は、何もハルシオンやロヒプノールなどの「睡眠導入剤」である必要はない。

「いっしょにタクシーに乗って…しばらくしたら眠った。運転手さんには先にウチの方に向ってもらうことにしてたし。私と後藤が仲良いのも知ってたから。特にあやしまれなかった。眠ってる後藤を、一緒に家の中まで運ぶの手伝ってもらったしさ」

 淡々と、でも何処か楽しそうに“市井紗耶香”の行った行為を語るそいつ。
 
 そいつは全て知っている。
 やらかしたことの全てを。 それが後藤真希を傷つけ、自分さえも傷つけ、“市井紗耶香”築き上げた何もかもを破壊することも、全て承知の上で。
 そして何もかも失ったそいつは、何処までも“市井紗耶香”の傍観者でしかない。 
511 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時13分04秒
「…それから先の事は…知ってっかな…?」
「知ってます」
「説明してもいいけどさ」
「結構です」

 目を細めてニヤニヤと笑う。壊れた「市井紗耶香」。
 偶像に押し潰されて、壊れた、哀れなまでに悲しい魂。

「ベッドに運んで…ネット通販でさ、手錠と足錠…黒色のカッコイイやつ、買ったんだよ。 両手と両足にはめて片足以外は固定した…」
「もう、いいです」
「それから冷蔵庫で冷やしてあった水を後藤の頭にぶっかけた」
「やめてください」
「服は脱がさなかった。映画みたいにさぁ、ナイフで切り裂いてみたかったからさ…」
「やめろ…」
「………」
「ほんとは吉澤もそうしたいんじゃない? はは…!相変わらずの聖人君主ぶりだね!」
 
 そいつは、幾分皮肉な微笑をうかべる

「ふざけるな…」


 脳裏に「あのビデオテープ」に収録された画像がフィードバックする。
 全身が強張る。
 薄暗い部屋。 朦朧とした意識の中、すすり泣く彼女。何度も許しを請い、助けを求めるか細い声。
 全身の総毛がたつ。
 ノイズと共に聞こえる音の数々。ベッドの軋む音、もがく度に布の擦れる音、鎖が揺れる音、くぐもったモーター音、淫靡な水音…。
 その画像の中に封じ込まれた様々な感情。
 欲望、愛情、憎悪、恐怖、狂乱、悲しみ、哀しみ、あきらめ…
 
 
 
 殺意にも似た憎悪が、静かに湧き上がってくるのをはっきりと感じた。
512 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時14分02秒
「…今、吉澤の考えてる事、あててやろっか?」

 そいつはさも楽しそうに、笑う。

「同じ問題を抱えている何千人もの女性が、日夜もっと穏便な方法で対処している時に…」
「貴方のウンチクなんて、聴きたくないんですけど」
「彼女たちは極端な解決方法をとる」
「つまり? ……貴方は私を殺したい?」
「違うね。あんたが私を殺したい、だろ?」

 市井紗耶香は、ケラケラと乾いた笑いをあげた。
 花瓶や、椅子や、果てはボールペンまでが、全てが私の憎悪を解放するツールに見えてくる、眩暈にも似た思考がぐるぐると回る。
 市井紗耶香は笑いながら、両腕を緩慢な動作で広げる。

「別にいいよ」

 私と市井紗耶香の間に、一層、張り詰めた空気が生まれる。


 私はゆっくりと近付く。
 両手で、そいつの細い首を、掴む。


「お前を殺したって…後藤は私のことなんか、見ちゃくれないんだ…」
 
 まただ。
 また、この目に会うなんて。
 一人は私が殺した。 一人は死の病に侵されている。 
 そして、この人は、三人目。
 負のエネルギーを超越した、暗く燃える光。
 「虚無」へと向う、燃え尽きて、灰塵と帰す、あやうく輝くその瞳。

513 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時15分23秒

  .. コン コン

「…誰…?」

 ドアをノックする音に、私は訝しむ。
 私は言った。 私が、市井紗耶香の楽屋を訪れている間は、何人も此処に来ないで欲しい、と。

「…よっすぃー、市井ちゃん…私」
「ごっちん?!」
「後藤!?」

 扉のむこうから聞こえた声に、私と市井紗耶香は驚き、そしてとまどった。

「あのね…これ…」

 ドアの下の、僅かな隙間から、二つ折になった紙がすすっ、と侵入してきた。

「私、口で説明するの、下手だから… これ見て欲しいんだ…」

 私はその紙を拾いあげる。
514 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時17分19秒

『太陽は私たちを照らしてくれます。
 木は根を張って、ちょっとだけ疲れた私たちを休ませてくれます。
 風は私たちの背中を押して、前に進む力をくれます。
 私は生まれてきたことに、感謝しています。
 私とよっすぃー、私と市井ちゃん、私とモーニング娘。のみんな。
 出会って生まれた、悲しみや喜びや夢や希望や、全てはどれも無駄じゃなくて、多分、きっと、何かの運命だと思います。 

 市井ちゃん、ありがとう。そして、さようなら。
 私がやりたいことは、これからの人生をよっすぃーと共に生きていくことです。
 だから、ごめんなさい。 でもありがとう。』

 
515 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時20分20秒

たどたどしい言葉で綴たれた、ごっちんの精一杯の誠意が、紙の上に並んでいた。

「…後藤はさ…」
「んあ?」
「吉澤のことが好きなんだね」
「うん。好きだよ」
「こいつがどんな人間か知ってても好きなんだね」
「大好き。大好きだよ。どんな人間か、私は知ってるよ、よっすぃーのこと。よっすぃーはね、私の太陽で、風で、大きな木なんだよ…だから」
「もういいよ」

 市井紗耶香は、苦笑した。
 その目は心なしか、穏やかだった。先刻までの、射抜くような光はその目にない。

「これ以上聞いてもどうせ『よっすぃーなしで生きていけない』とかノロケられるだけだろうし」
「うん。当たり」

 ドアを挟んで、互いの姿を見ないままに進む奇妙なやりとり。
 それでも、二人は多分、分かり合って話している。
 元、モーニング娘。の市井紗耶香と、モーニング娘。を去る後藤真希。
 二人はかつて、師弟だった。市井紗耶香は後藤真希を指導し、後藤真希は市井紗耶香を信頼していた。それはまぎれもない事実で、私と彼女の間には存在しない絆。
516 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時20分50秒
「後藤、この手紙、貰っていい?」
「いいよ」
「……謝らないから」
「うん」
「私は後藤のことが好きだよ。今だって」
「うん。知ってる」
「吉澤に飽きたらこっち来いよな」
「んー…それはないよ」

 二人はかつて、師弟だった。
 互いを信頼し、尊敬しあった二人。
 それは私の知ることのできない、二人の過去だろう。
 正直なところ、その過去に嫉妬する。 
 だけど、未来は私たちが作る。 私たちしか築けない、私たちしか知らない、僅かばかりの未来を。

「よっすぃー、そろそろリハ、始まるって」
「らじゃー。今行く」

 私は席をたつ。 ドアノブへ、手をかける。
 彼女が待つ、扉のむこうへ。


517 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時22分27秒

UPDATE 20020922 >>508-516


   
  (´ Д `∩ オー (^〜^0∩ Yo
  (|    ノ    (|    ノ
   (__,(___)    (__,(___)

518 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時23分21秒
KYRIE

   
   『 死ぬ前にこれを願っている』
   『 奇妙に聞こえるかもしれないけし 』
   『 錯乱してると思われるかも、だけど 』
   『 私たちに何も尋ねないでほし 』
   『 空の下に身を寄せ合い 』
   『 私達はこの奇妙な妄想に取り憑かれてる 』
   『 あなたは山のような財産を持っている 』
  
   『 私たちはあなたと一緒に 』 
   『 サハラでお茶を飲みたいんだ 』

519 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時24分11秒

 ・
 ・

    カツーン…  カツン…

 私は階段を降りている。
 螺旋状の階段を、ずっと下り続けている。
 どれだけの時間が経ったのか、どれほどの地下深くに居るのか、まるで分からない。
 それでも私は螺旋の階段を降り続ける。

    カツーン…  カツン…

 ぐるぐると回りながら、次第に方向感覚や、意識が薄れ、眩暈がしてくる…―――― いや……

    カツーン…  カツン…

 暗灰色の苔むした石の壁も、薄闇の空間に響く足音も、肌にまとわりつく重く湿った空気も……
 あまりにもリアルなその感覚は、かえって不自然にさえ感じる。

    カツーン…  カツン…

 そうだ…… これは「現実」じゃない……。

    カツーン…  カツン…

 私は今、「非現実」の空間に居るんだ……。

    コツッ…

 そう思った途端に、螺旋の階段は唐突に終わりを告げた。
520 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時24分54秒
 螺旋の終点は、薄暗い石室だった。
 高さもあまりない、6畳ほどの石室の半分は、鉄の柵で仕切られている。
 つまり、ここは牢獄ということなのだろう。
 牢番の少女は見知らぬ人物だった。
 鴉色の腰まで届く長い髪、白滋のように滑らかな白い肌、紅玉のような赤い瞳の少女は、白い裸身を黒いマントで覆っている。体型に不釣合いな巨大な鎌を片手に持ったその少女は、見知らぬ人物だが、「私」は確実にその少女の事を「知っている」。
 
 私は少女を一瞥した後、牢の中を覗きこむ。
 冷たい石畳の隅に、「それ」は膝を抱えて座っていた。
 特に鎖や錠で拘束を受けているわけではないが、「それ」は同じ姿勢のまま、うつむいて動かない。
 ボロボロに薄汚れた白衣、寝巻き。素足を晒しているのに、両手にビニールの手袋をはめている。 麻袋をそのまま頭から被り、首の部分をロープで結んだ「それ」の姿は、まるでB級ホラー映画に出てくる怪人のようだ。 左目のあたりに穴が空いているが、「それ」の表情を伺い知ることはできない。

 私は近づいて、鉄柵の1本を握った。
 冷たい鉄の感触。
 そして「それ」はそっと頭を上げた。
 左目の穴の奥で、閉じられた瞼がゆっくりと開かれた。

 その目は……――――  

 ・
 ・
521 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時25分27秒
 ・
 ・

 1人の人間の精神が異常をきたすことに、大層な原因など要らない。

 「幼児期の虐待体験」とか「悲惨な戦場体験」とか「聖職者より受けた陵辱体験」とか…。 
 ある意味、ドラスティックなトラウマが、精神障害の原因である、という「リアリティ」は、往々にして小説やドラマなどが必要とするリアリティであることが多い。
 或いは「正常な精神」を持つ人々が、「精神の異常」という、理解し難い現象を、かろうじて納得させるためのリアリティかもしれない……

 事の起こりは、大病院にありがちの、医療ミスだった。
 また、これもありがちだが、その医療ミスに「権威」ある医者が関わっていた。
 そしてお決まりのように、「権威」のミスは様々な人々の責任として転嫁された。
 当時、研修医だった姉にも、そのミスの一部が被せられたが、キャリアに傷がつくほどのものではなかった。 ほとんどの責任は、看護婦や看護士ら、弱い立場の人々に被せられたのだが。

 生来、繊細で責任感が強く、何処かペシミスティックな姉にとって、それは大きな衝撃だったのだろう。
 力を持たない者たちが、有無を言わさず、強い力によって捻じ伏せられる様は、絶望であり、悲哀だった。

「世の中にはさぁ… 自分の力とか努力ではどーにもならないことって、あるんだよね…」

 ある時、彼女が寂しそうに、でも自嘲するように微笑んで、呟いたことがあった。
522 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時27分03秒

 少女は次第に壊れていった。

 不安や憂鬱感を取り除くために、抗不安薬や抗鬱薬を服用する。
 しかし、それらの薬は副作用として、眠気や倦怠感を催す。 
 仕事中には疲労や倦怠、無気力を脱するために、神経刺激薬や中枢神経改善薬を服用する。
 いくら、それらが認可された医薬品とはいえ、連用はやがて耐性と依存を生じる。
 薬の力に依存し、生き永らえる最悪のサイクルの中で、少女は次第に精神分裂病の陰性症状を様してきた。
 休日時の薬の抜けた状態の少女は、まるで廃人のようだった。
 1日中、部屋に引き篭もっていた。
 床の上で膝を抱えて座り、首を僅かにかしげたまま、ぼんやりと中空を見ている。
 その目には、何も映していない。
 何の関心も示さない。
 服も着替えず、顔も洗わず、食事も摂らず。
 話しかければ、ぎこちなく顔をこちらに向けて微笑みながら返答するが、その瞳に感情の動きはまるで感じられず、その様子はさながら、デスマスクに無理矢理表情をつけたような奇怪さと違和感に満ちていた。
 
 彼女の「異変」は、身近の誰もが気付いていた。
 だが、誰もその「異変」を正そうとせず、誰も気付かないフリをした。
 それは、身近の誰もが、彼女の「異変」の原因と、それの意味するものを知っているからでもあった。

523 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時29分29秒
 ・
 ・

 本当に偶然だった。
 私がその日、姉の部屋に入ったのは。

 床には空のカプセル包装が大量に散らばっていた。傍にはプレーンヨーグルトの空箱。

 ベッドの上の少女が、睡眠薬を大量に摂取することによる自殺を図ろうとしているのは明白だった。
 だが、食欲の失せて衰弱した消化器官は、それらを受けつけるに難く、そして、弱りきった身体は異物を吐き出すことも困難にしていた。

     ―――― たすけてくれ
     ―――― タスケテクレ
     ―――― たすけてくれ
     ―――― ラクニナリタイ
     ―――― らくになりたい
     ―――― たすけてくれ

     ―――― たすけてくれ
     ―――― タスケテクレ

     ―――― コロシテクレ

        『…… 殺して ……』

… それは本当に少女の発した言葉だったのだろうか?
  それとも私の幻聴だったのだろうか?

 私はゆっくりとベッドに近づき、頭から枕を抜き取った。そして、おもむろに枕を顔面に押しつけた。
 少しの抵抗もなかった。
 濁った瞳に、穏やかな色の光が宿った。
 全身が痙攣して、僅かに反り返った。

 その一瞬だけだった。
 その瞳に感情が宿ったのは。

 すぐに眼球はでろん、と横に回転し、白目を剥いた。
 押しつけていた枕と顔面の間をぬって、よだれと黄色い泡と吐寫物が、ダラダラと流れ出しベッドに溜まっていく。
 顔面から引き剥がしたテンピュールの枕には、鼻と上唇と歯列と下唇と顎の形が、くっきりと残っていた。
 私は枕を頭の辺りに置いて、静かに部屋を出た。
524 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時30分27秒

 部屋を出ても、誰も居なかった。
 私以外の人の気配は、まるで無かった。

 紅茶を入れて、リビングのテレビをつけた。

 …… 私のやったことは自殺奉助だろうか…。
 …… いや、それは殺人だろう。
 それでも、まるで現実感が湧かない。
 ソファに身を沈めて、ぼんやりとテレビを見続ける…。

  ―――― サイレンの音が遠くに聞こえる ――――


 歌番組の中でモーニング娘。が歌っている…。

  ―――― サイレンの音が遠くに聞こえる ――――
  ―――― サイレンの音が遠くに聞こえる ――――

 安倍なつみが真ん中で歌っていた。
 矢口真里、市井紗耶香は後ろの方で弱々しく歌っていた。

  ―――― サイレンの音が遠くに聞こえる ――――

 そして、後藤真希は、まだいない……。

 ・
 ・
 ・

  ―――― サイレンの音が近くに聞こえる ――――

 ・
 ・
 ・
525 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時31分16秒

   『 ひとりの若者が同意して 』
   『 彼女らの望みを叶えた 』
   『 そこで 計り知れないほどの喜びを胸に 』 
   『 彼女らは男のために踊った 』
   『 毎年 同じ場所で 』

   『 あなたと一緒にサハラでお茶を 』
   『 あなたと一緒にサハラでお茶を 』

526 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時32分30秒


 外から聞こえる救急車のサイレンの音で目が覚めた。
 簡易ベッドからゆっくりと身体を起こす。
 気だるい。
 全身が汗でぐっしょり濡れていた。ダンスレッスンの時にかくような心地よいものではない。とても不快な気分だった。
 喉が渇いたので、病室の冷蔵庫を物色する。

「……何やってんの?」
「あぁ…ごめん。 起こしちゃった?」
「ん…別に。サイレンの音が聞こえたから」
「そっか…」
「で…何やってたの?」
「喉、渇いてさ」
「あ、私も喉渇いた」
「でも冷蔵庫。空なんだよね」
「じゃ、いっしょに買いに行こ?」
「そうだね」

 車椅子をベッドの横につけて、彼女の身体を支える。
 痩せて骨ばった身体は、決して温かいとは言えない。それでも、その身体には人の温もりがある。
527 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時33分33秒

「よっすぃー…」
「ん?」
「すっごい汗…」

 彼女の右手が私の額に触れる。

「風邪ひいた?何かすごく顔色悪いし…」

 私は大切な人を、人知れず殺した。
 大切なだけ、憎かった。 だから殺したのかもしれない。
 それは私が一生背負っていく十字架のはずなのに、その時はひどく軽かった。
 そして、大切な人がまた居なくなる。
 それはやはり重かった。
 それはやはり一生背負っていくものなのだ。

「ごっちん…あのさぁ…」
「んぁ?」」
「もしさぁ…私が人殺しなんかじゃなかったら、ごっちんはもっと長く生きていられたかな…」
「…さあ。わかんない」
「そうだよね」
「神様に会ったら、聞いとく」
「それって、答えが分かっても私に教えられないじゃん」
「どうかな…もしかしたらさ、ユーレイとかになって教えれるかもしんないよ?」
「あー、映画みたいだね。そーゆーの」
「でもねぇ、答えが分からなくても、ユーレイになれたら、ごとーはよっすぃーの所に会いに行くよ」

 ・
 ・
 ・
528 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時34分58秒

   『 空が真っ暗になった 』
   『 高い砂丘にのぼり 』
   『 月に祈った 』
   『 けれど 彼女は二度と戻らず 』
   『 私たちは焼き殺された 』
529 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時36分17秒
 ・
 ・
 ・

 風に舞っていった灰は、とっくに空の彼方に消えていったというのに。
 砂漠の洛陽は過ぎ、夜の帳が落ちようとしているというのに。
 それでも私はただ、立ちつくしていた。 空を見上げながら。
 ただ、ずっと立ち尽くしていた。

 始まりがあれば終わりもある。
 出逢いがあれば別れもある。
 昔、見た少年漫画で、敵キャラの言っていた台詞をふと思いだす。

 「こんなに苦しいのなら、愛なんていらない」
 「愛故に、人は苦しまねばならない」

 人を愛することで得る喜びや幸せが、今の私にはとても苦しくて、悲しかった。
 そして、この想いに出口も行き場もないことを、私は知っている。
 何故なら、私は後藤真希を今でも愛しているから。
 いつか、この想いが風化していくのを待つしかないのだろうか?
 だが、それが望みの薄い可能性であることも、私は知っている。
 何故なら、後藤真希と出会ってから、随分の年月が過ぎた。 だけど今でも、私は彼女を忘れられない。
 彼女のユーレイが、一度も現れない今でも。
 愛している。 
 楽しかった日々、悩み苦しんだ日々、全てが今でも鮮明に、私の中で息づいている。 
 彼女と「約束」した。
 だから、私は生き続けなければならない。 後藤真希の居ない世界の中で。
 どんなに苦しくても、悲しくても、私が彼女の事を忘れられない限り、「約束」を守っていかなければならないこと。
 その「約束」が、彼女が私に残したものならば。
530 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時37分08秒

「…ドクター。そろそろテントのほうにお戻りください。砂漠の夜は冷えますから」

 背後にやってきたボディーガードのほうに、ゆっくりと振りかえった。

「うん。すぐ戻るから」

 振りかえった瞬間に私は「医師・吉澤ひとみ」の仮面を被り直した。
 「後藤真希と共にあった吉澤ひとみ」は、「よっすぃー」は、もう、そこには居ない。

 砂漠の夜はとても静かだ。
 「静けさ」が、まるで音になったような静寂が、孤弱な心を浮き彫りにする。

 今日は生きる。だけど明日は?
 明日のために今日を生きるんじゃない。 
 朝が来て、夜が巡って、それでも彼女は何処にもいない。
 恐ろしいまでに広々と広がるこれからの人生は、不毛な砂漠に同じ。

 生まれ、そして死んでいく人間たちは、何処から来て、何処に去っていくのだろう。
 分からない。
 分かるはずがない。
 ただひとつ、分かるのは、彼女はいないということだ。
 私は毛布にくるまって、静かに涙を流した。
 涙が枕を濡らして冷たくなっても、それでも私は泣き続けた。
531 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時37分49秒


   『地面を見つめる彼女らのコップはいまだに砂でいっぱいだ』

532 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時38分43秒


 「後藤真希」はもう、この世界にいない。
  私は「後藤真希」を失った。
  


   『あなたといっしょにサハラでお茶を…』


 「後藤真希」はもう、この世界にいない。
  私は「後藤真希」を失った。


 その事実だけがこの世界に残った。


533 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時40分46秒
UPDATE KYRIE >>518-532


o ・。 ⊂⊃ 。 ゚
(\ノハヽヽ 。・ ゚
(ヾ(/)Д(ヽ
.//(    .ノ
(/(/___|″ヒックヒック
  し′し′



534 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時46分34秒
AGNUS DEI :後藤真希





 ふらふら  ふわふわ

 夜の世界。 モノクロームの景色の中で「私」は漂っていて、さまよっている。

 さくっ  さくっ

 それから、浮いたまんま、「私」は夢中で地面を掘り続けている。
 「私」が浮いている感覚だけがあって。
 土の感触も、それを掘る指先の感触も、何処にも無い。

 さくっ  さくっ

 どうして「私」は、そんなことをしているのか。
 
 さくっ  さくっ

 分からない。 分からないけど、そうしなければならない。

 さくっ  さくっ  さくっ さくっ
    さくっ  さくっ  さくっ さくっ

 虚ろなままに、盲目的に「私」は地面を掘り続けている。
 もっと深く、もっと広く。

 そして、「私」がその作業の「終わり」を感じた時、土の中から現れたのは、私の死体だった。 白い着物を着て、両手をお腹の上で組み合わせている私の死体。
 私は安心していた。 私が死んでいたことに。
 そして、ふと思った。
 いつから、私は死んだんだろう。





 私が居るべき世界。 それは昔からずっと決まっていた。
 だから私はほっ、とした。 元の世界に戻ってきたことに。



535 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時47分23秒

 病院の5階から見える風景はいつも同じ。
 高いビルのむこうに、また高いビルがあり、更にむこうに高いビルが。
 僅かに見える、隙間の空の色の記憶は、灰色でしかない。
 時々、窓の外の手すりに、ハトが泊まりに来ては、飛び去って行く。

 病院の給食は美味しくなくて、いつも残していたから、婦長さんによく叱られた。
 1日中がベッドの上だから、運動不足でなかなか寝つけなかった。
 私が点滴を打たれるのは、朝に1回だけだったけど、同じ病室の、私よりもちょっと年上の女の子は、1日中、点滴に繋がれていた。

 自由を奪われることの、漠然とした不安。

 ある日、ユウキが見舞いにやってきた。
 両腕にウサギのぬいぐるみを持って、小走りで近付いてきた。
 ぬいぐるみは、別にプレゼントでも何でもなかった。
 「可愛いから障らせて」と頼んでも、障らせてくれなかった。

 何故だろう。

 私も、目の前の少年と同じように走ることが出来るのに、私は外へ出ることが出来ない。それは何故だろう。
 変わることのない風景を、面白くもない風景を見ながら、早く自由になりたいと願った日々。
 途方もなく、自由になりたいと願いながら、何時の間にか、何処かで諦めていた。
 どうあがいても、ここから私の意思で、出ることは出来ない、ということ。

 だから、本当は待ちに待ったはずなのに、退院の時のことを、私は少しも覚えていない…。
536 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時48分11秒



 私が居るべき世界。 それは昔からずっと決まっていた。
 だから私はほっ、とした。 元の世界に戻ってきたことに。


 夢と現の間でさまよっていた意識が、ハッキリしてきた。

 とっくに消灯されているけど、私は上体を起こして、大きく背伸びした。
 ベッドから少し降りて、硝子窓を覆うカーテンを開け放つと、都会の夜景が広がった。 夜空は晴れて、綺麗な三日月が輝いている。

 1枚の硝子で隔たれた、ココと、ムコウは、「死者の世界」と「生者の世界」。
 
 幼い頃だったからこそ、私は、病院の張り詰めた空気を身に染みて感じた。
 病室を出れば、廊下には、パジャマ姿で、松葉杖を付いた人や、包帯で腕を吊った人や、車椅子に乗った人が往来する。 
 それから、「ここから先には行っちゃいけない」と言われた、別病棟への廊下。その先に流れる沈黙と静寂の空気…そして死臭。
 
 「生」と「死」が隣り合わせに存在する病院という空間。
 「異界」とでもいうんだろうか。
 自由を漠然と諦めた時、私は異界の住人になってしまったのかもしれない。
 だから、普通の世界…生きていることが当たり前な世界の住人とは、馴染めなくなったのかもしれない。
 その推測に、正解はないし、誰も答えを教えてはくれない。
 分かっていても、こんな事を延々と考え続けるようになったのは、よっすぃーや市井ちゃんが、時々、小難しい事を考えて話すからだ。 何だか私まで小難しい事を考えるようになった。
 ただ、自分でもハッキリ分かるのは、その「異界」に居ることは、決して嫌でも不快でもないということ。
537 名前:END ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時50分10秒
 
「…よっすぃー……」

 ベッドの上で、膝を抱えて、顔をうずめる。

  …… 寂しい。

 「寂しい」と、素直に感じる。
  死ぬことは、別に怖くない。 
  ただ、きっと、私が大切に思う人たちが、私が死んだ事を本気で悲しんだり、哀れんだり、泣くことはないんだろう。 それが寂しいと思わせる。
 
  . ..ぱたぱたぱた…

 夜の病院の静けさに、誰かの走る音が響く。
 何処かの部屋の患者さんがナースコールでも押したんだろーか。

  ぱたぱたぱた…

 足音はここに近付いてくる。

  ぱたぱた…

 「………?」

       バン


 乱暴に開かれたのは、私の病室の扉だった。






  END. and go back to >>2
538 名前:スレ隠し ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時52分57秒

e
539 名前:スレ隠し ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時53分33秒


540 名前:スレ隠し ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月11日(金)18時54分12秒


541 名前:名無し娘。 投稿日:2003年07月11日(金)23時55分01秒
うおっ!
542 名前:chako 投稿日:2003年07月12日(土)08時51分42秒
お疲れ様でした。
初めて読んだときから飼育でコテハンを使うのは
この作品が終わったときだと決めていました。
この作品は私に本当に感動したとき
身体がどんな反応をするか教えてくれた作品でした。
同時に本当に素晴らしい作品とはどんなものかも教わりました。
伝えたいことは沢山ありますが割愛させていただきます。
完全版のほうも楽しみにしています。
本当にありがとうございました。
一生あなたについていきます!!
543 名前:chako 投稿日:2003年07月12日(土)08時52分30秒
ageてしまいました。
スレ汚しごめんなさい。
544 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月13日(日)02時02分05秒
完結、本当にお疲れ様でした。
この作品の更新がいつも楽しみでした。
もう一度最初から読み直してしまいました。
やっぱ、よしごま小説の最高峰です。
ディレクターズカット版も楽しみにしております。
素晴らしい作品をどうもありがとうございました。
545 名前:やりわすれ ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月18日(金)19時34分03秒
時系列順年表


>>402 :DIES IRAE-T(怒りの日)

>>492-502  :DIES IRAE-U(怒りの日)/市井紗耶香

>>200-207 :2000.07.25

>>213-216 :2000.08.31 /後藤真希

>>208-212 :2000.09.07

>>10-16   :2000.11.10_01
>>180-189 :2000.11.10_02

>>78-85 :2000.12.25_01
>>87-93 :2000.12.25_01
>>97-101  :2000.12.25_02
>>104-111 :2000.12.25_03
>>234-239 :2000.12.26

>>274-280 :2001.01.28 /後藤真希
>>286-290 :2001.01.29
>>415-421 :2001.01.30

>>309-315 :2001.02.13 /後藤真希
>>412 :2001.02.14_01
>>433-435 :2001.02.14_02
>>456-460 :2001.02.14_03 /後藤真希
>>486-490 :2001.02.14_04

>>23-36 :2001.09.19  /後藤真希

>347-348 :2001.10.20_01
>>375-377  :2001.10.20_02 

>>44-52  :2001.12.04
>>73-76 :2001.12.24_01
>>116-120 :2001.12.24_02
>>124-131 :2001.12.24_02
>>135-149 :2001.12.24_02
546 名前:やりわすれ ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年07月18日(金)19時35分14秒
>>247-254  :KYRIE-T

>>258-265 :2002.04.11

>>359-361 :2002.06.16_01 /後藤真希
>>386-390  :2002.06.17   /後藤真希
>>427-431 :2002.06.30   /後藤真希

>>399-400  :2002.07.10_01 /後藤真希
>>402-405 :2002.07.10_02
>>407-410 :2002.07.10_03 /後藤真希
>>445-453 :2002.07.16:

>>534-537 :AGNUS DEI-T(神の子羊) /後藤真希

>>508-516 :2002.09.22

>>379-384 :LACRIMOSA(涙の日)

>>350-357 :2003.05.13
>>423-425 :2003.11.20

>>231-233 :2004.04.13
>>56-65  :2004.11.10

>>300-302 :SUNCTUS(聖なるかな)

>>320-324  :BENEDICTUS(祝せられさせたまえ)

>>504-506 :RECORDAC(憶えたまえ)
>>363-366  :HOSTIAS (犠牲と祈りを)
>>172-179 :AGNUS DEI-U(神の子羊)
>>2-9   :COMMINIO「LUX AETERNA」(絶えざる光もて)
>>518-532 :KYRIE-U



「REQUIEM in D minor, K.626」(Wolfgang Amadeus Mozart)

547 名前:次回予告 投稿日:2003年07月18日(金)19時38分37秒

ノノノハヽ  
川*・∀・)   ついにベールをぬぐ!(←大げさ)     
( つ つ   「完全版TEA IN THE SAHARA」の全容!(←大げさ)
         お楽しみに!

 
548 名前:桃ノ木 権三郎 投稿日:2003年07月21日(月)21時04分01秒
お疲れ様でした!
途中、このまま終らないのでは!?と危惧しましたが、余計な心配だったようです。
個人的には保田さんの屋上喫煙シーンが韻を踏んでて好きです。
また面白い小説をよろしくお願いします!!
549 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月07日(木)23時55分35秒
完全版楽しみにしとります。
550 名前:名無し読者。 投稿日:2003年08月08日(金)02時59分56秒
いつの間に終わってたんだ…
今まで気づかなかった自分に反省。
娘。小説でひさぶりに泣いちゃいました。
娘。小説の伝説に残る名作だと思います。マジで
551 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月08日(金)16時53分14秒
完結おめage。乙。
552 名前:( ´ Д `) 投稿日:2003年08月09日(土)18時22分35秒
初めまして。今日このスレを見つけ全部読みました。
そして一言だけ言わせて頂きます
良い作品と、感動をありがとう。
553 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月10日(日)04時57分52秒
完結してたの知らなかった…
お疲れ様です、そしてありがとうございます。
久々に最初から読み返し改めて名作だと確信しました。
554 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月13日(水)03時37分02秒
よしごまの最高作だよ。ありがとう。
555 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月16日(土)06時42分39秒
yやっぱり基地外と変態じゃねーとこんな狂った話書けねぇよなあ。
なんでこんなんが有名作なんだ?
駄作屋のところのインタビュー見て、作者には興味持ったがなあ。
これが本当によしごまの最高作とかでいいのか?
俺「Seek内ネタバレ感想スレ」に持ち込むぞ。
556 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月16日(土)10時13分44秒
感想スレに引き継いだからochiしとくな。
557 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月17日(日)23時43分12秒
なんて言ったらいいのかわからないけど
まじで面白かったです。鳥肌が立った。
完全版めっちゃ楽しみです。
がんがってください。
558 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年08月18日(月)20時57分05秒

-----ここより「seek内小説感想スレ(ネタバレあり)」160以降へのレス返し--------
(案内板http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi?dir=imp&thp=1027587387

559 名前:レス感謝 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年08月18日(月)20時59分38秒
 160、162さん。 

 おっしゃる通り! 私は、基地外の変態ですから。否定はしませんよ。(笑
 しかし、如何な理由があれ、個人サイトを引き合いに出してくるべきではないと思います。 

560 名前:レス感謝 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年08月18日(月)21時01分26秒
 161さん。
 
 加護と石川の関係のエピソードは書いたのですが、当時何の反応もなかったのでレス数勿体ないしで勝手に没にしました。
 保田さんが結果、典型的な便利屋扱いになってしまったのは、自分でも悔いのあるところでした。 
本来は市井の観察者としてのエピソードを予定しており、完全版ではそれについて補完する予定でした。

561 名前:レス感謝 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年08月18日(月)21時04分29秒
 163さん。

 釣られてしまってすみません(笑 
 でも、感想も批評も自己主張も、全ては紙一重だと思います。

 「加護絡みは一見ギャグなだけに余計きしょい。」→全くその通り。私もあの部分は削除したい気分です。 いいわけではありますが、当初は飼育の空気や娘。小説という未知のものを、何とか追っていくのが精一杯だったのです。

 「よしごま作品の殆どがそうなのでどうでもいい」→ジャブ→ボディ→左フック→右ストレートの練習台にしたい気分です。

 「エロと癌をとったら、何が残るのあの話?」。→よしごまの話が残ります。

「1、よしごまじゃなくて、娘。小説の最高峰って言われたらどう思う?>よしごま者以外の人」→そりゃ、むかつくでしょう。
「2、終了直後のレスの少なさについて。こんなもの? 」→こんなものじゃないですか?まあ。感想スレでたくさん感想をもらえたので私的には結果オーライです。

562 名前:レス感謝 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年08月18日(月)21時05分06秒
 166さん。

 そうですね。 「我が闘争」を初めて読んだ時は、私はさっぱり分かりませんでした。でも、これは名作だと、皆さんが認めている以上、そうなのでしょう。所詮、世の中そんなものです。

563 名前:レス感謝 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年08月18日(月)21時05分59秒
 167さん。

 末期のすい臓がん患者が3年ぐらい持つことも有り得ないし、また吉澤がコネで取り寄せたという設定の医薬品も、2002年には日本で承認されている始末です。
 かようにいい加減な話だということでしょう。


564 名前:レス感謝 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年08月18日(月)21時06分51秒

 169さん。

 世の中には色々な人がいます。


565 名前:レス感謝 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年08月18日(月)21時07分41秒
 174さん。

 よしごまを好きな方は両者が親友関係であってほしい、というほうが多数派のようですね(某ネタスレ)。 
 ですが、この話は決して、万人の需要と娯楽のために書かれてものではありません。これは私が読んで楽しむために書き出した作品なのですから(笑

566 名前:レス感謝 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年08月18日(月)21時08分22秒
 175さん。

 おっしゃる通り、クリスマスの頃ぐらいまでは、スタイルの確立が成されていませんでした。
 好意的な感想、どうもありがとうございます。 

567 名前:レス感謝 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年08月18日(月)21時09分14秒
 184さん。

 とても綿密な感想、ありがとうございます。
 「個人的には片山恭一「世界の中心で愛を叫ぶ」より上。」→読んだことはないのですが、商業作品、しかもベストセラーと較べれるような話ではありません。

568 名前:レス感謝 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年08月18日(月)21時10分06秒
 
 190さん。

 ポリスの「TEA IN THE SAHARA」を聴いた私のイメージが、こんなんなんですが。(苦笑) 
 「白いレガッタ」に収録されている「MESSAGE IN A BOTTLE」と「WALKING ON THE MOON」も混じっているかもしれませんが。
 「スローターハウス5」って何ですか?「スプラッターハウス」なら知っていますが。

569 名前:レス感謝 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年08月18日(月)21時10分52秒

 191さん。

 1本のビデオクリップを作る時、素材の中に連続性はあっても、素材と素材の連続性を作り上げるのは編集者です。
 そういった感覚で書きましたから。



570 名前:レス感謝 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年08月18日(月)21時11分38秒
 
 192さん。
 
 いいえ。あれは必要なのです。 
 その答えは193さんと194さんの推測通り。 
 重いエピソードを連続させて更新した時、後から自分で読んで「重い。テンションがもたん」と思ったので、くだらないAAを導入したのです。

571 名前:レス感謝 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年08月18日(月)21時13分13秒

 238さん。

 削除を出す必要はないと思いますが。顎さんの手間を考えると…。
 
572 名前:レス感謝 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年08月18日(月)21時13分44秒


 239さん。

 自演って?本スレ555さんが私だとおっしゃりたいのですか?
 それは絶対、ありえません。なんて失礼な人だ(笑
573 名前:ブランカSY99 ◆fGYOqHlg 投稿日:2003年08月18日(月)21時18分03秒
 休暇で帰省中、ネットに接続できない状況の中で、このような感想合戦(?)が始まっていたのには、正直とても驚きました。
 本来なら、ここで作者が出てくるべきではないのでしょうけれども、連休明けを持って、本業の方がかなり忙しくなることが判明し、この界隈ともしばらくお別れをしなければならなくなりました。
 完全版も連載作品も結果、放棄せざるをえなくなってしまうことの身勝手、深くお詫び申し上げます。
 
飼育で書き始めて1年8ヶ月、色々ありましたがとても楽しかったです。
 
 それでは、ひとまずさらば。
 そして、管理人さん、読者の皆さん、どうもありがとうございました。

 
574 名前:名無し戯言 投稿日:2003年08月18日(月)21時44分59秒
>>567 未読なら一度読んでみてください。世の中で称賛されるものの全てに中身が伴っているわけではないことがわかりますから。恋人が癌になり死んだ恋人の骨を外国で散骨するという話ですが、どこかの話に似ていませんか? ただ決定的に違う部分は、この作品が恋人の死の間際を描いてしまっていること。茶砂漠はそこの部分が拍子抜けするほど省かれていて、逆にそれが喪失感を際立たせていたような気がします。確かに娘。という予めここの読者に説明する必要のない人物を使っているアドバンテージはありますが、茶砂漠が良作だと誇りを持っていいと思いますよ。
575 名前:名無し読者 投稿日:2003/09/19(金) 20:01
一応保全しとくな
576 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/08(水) 17:41
http://www3.diary.ne.jp/user/335083/
577 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/15(水) 16:38
ヽ(´ー`)ノ
578 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/31(金) 00:36

579 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/23(日) 22:05
保全

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