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桃源郷への階段

1 名前:lou 投稿日:2001年11月30日(金)15時31分48秒
初めまして。
louと言います。
ある人の助言を受けて、ここで書いてみようと思います。
たいしたものではありませんが、よろしくお願いします。
2 名前:lou 投稿日:2001年11月30日(金)16時06分14秒
桃源郷・・・人々がもっとも幸せでいられる理想の場所。
私は、あなたと連れ添って桃源郷へと向かいたい・・・。

※※※※※※※※※

「コラー加護。待ちやがれー」
「矢口さーん。ごめんなさ〜い。ののと間違えたんですわ〜」

朝っぱらから、頭に響きそうな二つの声。
集合時間十五分前に着いた中澤は、またか、とため息ひとつで楽屋へと入っていった。
目の前では、加護と矢口の鬼ごっこが展開されている。

「オハヨ。今日は何なん?」
「あ、おはようございます。
今日はですね、矢口さんの背中にとび蹴りを食らわせたんです」

いち早く中澤に気付いた吉澤が、二人のやりとりから目を離し、今の状況を説明。

「は〜。
で、その言い訳が辻と間違えた、か?ムチャクチャやな」

最近の加護は、徹底的に矢口をターゲットにしているらしく、いつみても二人で突っつきあっている。

3 名前:lou 投稿日:2001年11月30日(金)16時17分18秒
「でも、矢口さんには悪いですけど助かりますよ。
こっちまで被害が及んできませんから」

吉澤の言うとおり、最近の加護の矢口以外のメンバーへのいたずらは全くといっていいほど無くなっていた。
おかげで、今までのターゲットだった後藤や保田は、

「加護〜、がんばれ〜。
やぐっつぁんなんかにつかまるなよぉ〜」
「矢口〜、後はまかせた。
加護の子守りお願いね〜」

などと、言いたい放題である。

「でも珍しいな。
加護がおんなじメンバーばっかにいたずらすんの」
「そんなことないですよ。
この前は、梨華ちゃんばっかりやられてましたから」
「あれ?そうやった?」

全く記憶に無いが、そう言われればそんな気もする。

「それより、矢口ホンキかあれ?」
「あ〜・・・かも知れないですね・・・」

追いかけられている加護は明らかに楽しんでいる。
しかし、追いかけている矢口の方は、ちょっと目がホンキっぽい。
さすがに、ホンキで怒るようなことはしてはいけない。
これは加護に一言いるな・・・、心の中で大きくため息をついた中澤だった。
4 名前:lou 投稿日:2001年11月30日(金)16時27分32秒
と言うわけで、仕事が終わった楽屋に中澤、矢口、加護の三人の姿があった。
まず、二人に朝の事態を確認してみる。

「いきなりコイツが後ろから蹴り入れてきたんだよ〜」
「でも、ののの時みたいに軽〜くやりましたよ?」
「どこがだよ!ヤグチつんのめってこけちゃったじゃないかー!」
「ああ、もう何があったかは一応知ってんねん」

口ゲンカを始めそうな二人の間を割って、中澤が口を挟む。

「アタシが言いたかったんは、最近加護のやっとる事はいたずらの範囲を越えとるっちゅうことよ。
朝、矢口ホンキでおこっとったやろ?」
「当たり前だよ!あんなことされたら誰だって怒るって」
「だから、軽くやったって言ってるじゃないですか!」
「なんだとコノヤロー、いい加減に・・・」

また、あーだこーだと言い出す二人。
5 名前:lou 投稿日:2001年11月30日(金)16時39分30秒
「うっさいな!少し黙れや!」

くわっと形相を変化させ、怒気を含んだ口調で中澤が叫ぶ。
二人とも、ピタッと口論をやめ中澤のほうを見る。

「ええか、加護は矢口に謝り!んで、明日からはこんなことするな!
矢口もいつまでもグダグダ言っとらんと許したりや!」

さすがはリーダーである。
たった一言で、矢口も加護も、すっかり沈黙してしまった。

「ああもうムシャクシャするなぁ!
あとは勝手に二人でやっとり!」

乱暴にバッグを手に取り、荒々しくドアを閉め、中澤は出て行ってしまった。
当然、残された二人には気まずい空気が流れる。
相手を気にしつつ、時計を見たり、ドアに目をやったり・・・。
時計の音が嫌に大きく響く中、刻々と時間は過ぎる・・・。


6 名前:lou 投稿日:2001年11月30日(金)16時50分05秒
重く苦しい一分弱の沈黙を破ったのは、加護だった。

「あの・・・矢口さん・・・ゴメンナサイ・・・」
「・・・何さ・・・」
「・・・今日のは、やっぱりカゴが悪かったです。
明日からはやりませんから・・・許してください」

矢口のほうにぺこりと頭を下げる。

「うん・・・まぁ、ヤグチも大人気なかったから・・・」

また流れる沈黙。
これを破ったのもまた、加護だった。

「・・・くっ、やぐちさ・・・ん・・・」
「えっ?ちょ、どうしたの?」

突然、加護が泣き出してしまった。
どうしていいかわからない矢口は、とりあえず加護の頭を撫でてやる。

「ひっ・・・ゴメンナサイ・・・。
もうしないです・・・。
だから・・・だから、カゴの事嫌いにならないでくださいぃ・・・」
「加護・・・」


7 名前:桃源郷への階段 投稿日:2001年11月30日(金)17時01分41秒
「大丈夫だよ、加護」

優しくそう言った矢口は、服の袖で加護の目をぬぐってやる。

「もう怒ってないからさ。
仲直りね。
約束どおり、明日からはするんじゃないぞ」

目を真っ赤にして、加護は何度もうなづく。

「よし!
それじゃ、仲直りもしたし帰るか」
「ハイ!・・・あ、矢口さん・・・」
「ん、何?なんかあった?」
「いや、あの、いっしょに帰ってくれるんですか?」
「うん、そのつもりだけど」
「ホントですか?ヤッター!」
「何だよ、そんなに喜ぶことかぁ?」

ぴったりと矢口に抱きつく加護。
まるで姉妹のようである。

一方、楽屋のドアの外・・・。
「そっか、だから加護・・・なるほどねぇ・・・」
不思議な人影ひとつ・・・。
8 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
( `.∀´)ダメよ
9 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
( `.∀´)ダメよ
10 名前:名無し読者 投稿日:2001年11月30日(金)17時59分27秒
やぐかご?なんか面白そうで楽しみにしてます。ほかのメンバーの心境はどんなん
でしょうか。頑張ってください。
11 名前:桃源郷への階段 投稿日:2001年12月01日(土)00時47分10秒
>>10さん
申し訳ないです。
8、9番スレは間違いで、削除依頼出してきました。
カップリングに関しては、一言ではいえないくらいぐちゃぐちゃになってしまいます。
もし、それでもよろしければお付き合いください。
12 名前:桃源郷への階段 投稿日:2001年12月03日(月)12時50分16秒
翌日、連れ立ってやってきた中澤と吉澤が楽屋の前に来ると、

「ごめんなさーい。ちょっとしたお遊びですやん〜」

中から、昨日と同じような加護の声が聞こえてきた.

「なんや、またやっとんのか。
もうすんなってあれほど言うたのに」

なんだか自分の立場を否定された気のした中澤は、ぶつくさと一人呟いている.

「でも、矢口さんの声が聞こえませんね」

吉澤のもっともな疑問も耳に入らなかったのか、中澤が不機嫌そうな顔でドアを開けた.
まず目に飛び込んできたのが、いたずらを終え勝ち誇った表情の加護。
その加護の視線の先には、ほっぺたをぶくっと膨らませ、不機嫌極まりない表情の後藤がいた。
13 名前:桃源郷への階段 投稿日:2001年12月03日(月)13時30分05秒
「なんや、今日はごっちんか」

やや拍子抜け気味の反応をした中澤に、さっそく後藤が食って掛かった.

「なんやとはなんだよ裕ちゃん!
やぐっつぁんじゃなかったらどーでも良いわけ?」
「誰もそんな事言うてへんやん。
で、ごっちんは何をされたんや?」

後藤の攻撃をさらりとかわし、逆に訊ねる。

「・・・・・・」

しかし、後藤からの返事は返ってこない。
不思議に思う間もなく、

「!ごっちん・・・泣いてる?」

後藤の顔を覗きこんでいた吉澤の口から、全く予想しなかった言葉が出てきた。
14 名前:桃源郷への階段 投稿日:2001年12月06日(木)18時47分51秒
「えっ!?」

これには、楽屋にいたメンバー全員反応を示した。

「ごっちん、大丈夫かい?」

メイクの手を休め、真っ先に安倍が後藤に駆け寄る。

「ちょっと、ホントに泣いてるの?」

隣にいた保田も、驚いている様だ。

「へ?へへ・・・大丈夫?」

少し瞳を潤ませながら、いつものフニャッとした笑顔を見せる後藤。
それでも、他のメンバーは不安そうなまなざしで後藤を見つめる。
・・・その直後また、メンバーを驚かせる事態が起きた。

「ごっつぁん!」

なんと、後藤から一番離れていた矢口が、いつのまにか後藤の側まで来ており、
後藤の頭をグッと抱きしめたのである。
15 名前:桃源郷への階段 投稿日:2001年12月06日(木)18時54分48秒
矢口の行動に、メンバーは再度ビックリ。
ただ呆然とするばかりである。
当の後藤も、

「ふえ?やぐっつぁん・・・?」

と不思議顔。
ただ矢口だけが、

「ごっつぁん、大丈夫?ごっつぁん!」

鬼気迫った表情をしている。

「だからぁ。大丈夫だって−。
・・・でも、ありがとね、やぐっつぁん」
16 名前:桃源郷への階段 投稿日:2001年12月06日(木)19時02分01秒
先ほどと同じ、フニャッとした笑顔を浮かべた後藤。
ただ、その目からは、涙が流れていた。
その涙に、一瞬怪訝そうな表情をしたものの、

「そっか。よかった」

矢口も、やっと安心した表情になった。
黙って見詰め合う二人にはなんだか、暖かい空気が流れている・・・。

完全に二人の世界と化した楽屋。
リーダー中澤さえも立ち入れなかった領域に踏み込み、現実世界に戻した殊勲者は・・・加護だった。

「あのぉ・・・そろそろ仕事・・・」
17 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月08日(土)14時37分57秒
次はまきまりですか?複雑ですね。頑張ってください。
18 名前:lou 投稿日:2001年12月12日(水)13時45分48秒
>>17さん
レスどうもです。
うーむ・・・やぐごま、とも言えない・・・。
とにかくごちゃごちゃして大変です。
それでもよろしければこれからもお付き合いを。
19 名前:桃源郷への階段 投稿日:2001年12月12日(水)14時00分22秒
仕事の休憩時間、肝心な事をすっかり忘れていた事に気付いた中澤は、後藤を呼んだ。

「そういえば、今朝は何があったん?」

もともと今朝の騒ぎの原因は、後藤が加護にされたいたずらである。
泣きそうになるまでのことをしたと言うなら、また加護に注意しなければならない。

「え?ああ、大した事じゃないから」

返ってきた返事は、中澤にとっては意外なものだった。
元々後藤には良くも悪くもあっさりしている面がある。
そのため、あまり物事に深く突っ込んではこないのだが、今朝は自分事、
さらには、あの不機嫌さは中澤が今まで見た中で1,2を争うほどだった。
そこまで不機嫌になるようなことも、たった半日で忘れられるというのだろうか。
20 名前:桃源郷への階段 投稿日:2001年12月12日(水)14時25分53秒
「できれば、何されたか言ってほしいんやけどな」

リーダーとして、やはりメンバーのこと、ましてや揉め事とあっては当然の行動であろう。
しかし後藤は、

「うん・・・。じゃあ、言いたくなったら言うよ・・・」

などとわけのわからない言葉ではぐらかしてしまった。

夜・・・
仕事も終わり、各々帰路へ着く準備を始める。

「よっしゃ、圭坊、飲み行くで」
「えぇ?今日も?」
中澤と保田がいち早く楽屋を出た。

「んじゃよしこ、帰ろう」
「そだね」
続いて後藤と吉澤、

「矢口さん、帰りましょう?」
「そうだね、帰るか」
加護と矢口、

「あべさ〜ん、なんかたべてかえりましょう?」
「いいね〜、何食べたい?辻ちゃん」
辻と安倍、

「そういえば、石川と帰るの久し振りだねー」
「そうですねー」
飯田と石川。

綺麗に五組に分かれて帰っていった。
21 名前:桃源郷への階段 投稿日:2001年12月12日(水)14時35分12秒
「もう、あいぼんたらー」
「そんな怒らんといてよ、梨華ちゃんー」

次の日、三たび朝から加護の声が響いた。

「またか」
「みたいですね」

楽屋のドアの前で、顔を見合わせて苦笑する中澤と吉澤。
なぜか、中澤は今日はイラついていない。
やはり、標的が石川だからだろうか・・・。

「おはよーさん、今日はなんや」

昨日とは違い、笑みまで浮かべながら楽屋へと入ってきた中澤。
しかし、そこには想像以上に深刻な問題が起きていた。

まずは、赤くなって加護を睨んでいる石川。
対して、してやったりの表情の加護。
ここまでは充分に予想の範囲内である。

しかし、どう言う訳かあたふたしている矢口に、不思議そうな顔をした後藤。
さらには、意外そうな、興味深そうな顔をしているほかのメンバー。
多少、不思議な空間である。

22 名前:桃源郷への階段 投稿日:2001年12月12日(水)14時44分42秒
「なんやのこれ?一体どうしたん?」

当然の反応である。

「あのですね、り・・・」
「だめ、あいぼん!」

何かを言おうとした加護の口を石川が押さえる。

「ええがな、言っても」
「ダメなのっ!」

ものすごく話したそうな加護と、ものすごく話して欲しくなさそうな石川。
ごちゃごちゃ暴れる加護の口を、しっかりと押さえている石川の姿は、傍目から見ると非常に面白い。
メンバーもじっと見入っている。

「きゃっ・・・」

今まで必死に加護の口を封じこんでいた石川の手が、不意に離れた。
どうやら、加護が石川の手のひらを舐めたらしい。
なかなかの力技である。
そして、加護がやっと、待望の言葉を吐き出した。

「梨華ちゃんは、後藤さんのことが好きなんですわ!」
23 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月15日(土)05時26分22秒
おお、なにやら不思議感覚な小説ですね
楽しみにしてます、がんばってください
24 名前:lou 投稿日:2001年12月18日(火)10時32分53秒
>>23さん
レスありがとうございます。
不思議感覚ですか?なんかうれしいですね。
自分としてはただごちゃごちゃにならないか心配なんですがね(苦笑
25 名前:桃源郷への階段 投稿日:2001年12月18日(火)10時41分55秒
「なんやて!?それは聞き捨てならんなぁ」

この一言に、中澤はさすがに鋭く反応する。

「へぇ〜、梨華ちゃんはごっちんなんだ・・・」

今まで黙っていた吉澤を、興味深そうに続ける。

「ち、違いますよぉ」

抵抗する石川。
しかし、

「で、ごっちんはどうなん?」

中澤はあっさりスルーして、後藤に振る。

「ふぇ?梨華ちゃん?かわいいよね〜」

他人事だと思っているのか、非常にのんきな発言である。
このタイミングでこの発言は、かなりの爆弾だと言う事に気付いていない様だ。
26 名前:桃源郷への階段 投稿日:2001年12月18日(火)10時49分38秒
事実、この発言で、それぞれのメンバーに変化が見られた。
中澤は目を輝かせ、石川は顔を赤らめ、
加護、辻、吉澤、安倍は笑みを、
飯田、保田、矢口は驚愕の表情を浮かべた。

「それはごっちん、つまりは、そう言う事でええんか?」

かなり興奮気味に中澤が尋ねる。
石川も、顔は真っ赤ながら、しっかりと耳を傾けている。

「え?確かにかわいいけどさ・・・」

後藤の口から出た言葉は、皆に疑問を抱かせた。
どう聞いても否定的に聞こえた後藤の発言。
メンバー皆、固唾を飲んで次の言葉を待つ。

「もう付き合ってんだよね」
27 名前:桃源郷への階段 投稿日:2001年12月18日(火)11時07分23秒
言葉を発したのは矢口だった。
全員の目が一斉に矢口の方へ向く。

「ふえ?やぐっつぁん?」

しかし、当の後藤は矢口の発言にキョトンとしている。
そんな周りの反応など気にもかけず、ツカツカと後藤に歩み寄る矢口。
そしてそのまま、

「ごっつぁん・・・」

ふわっと、後藤と唇を重ねた・・・。

一体全体、何が起こっているのかサッパリわからない。
ただでさえ今日はいろいろとあったのだ。
頭がショートしそうになる。
後藤と矢口はと言うと、唇を重ねたまま、矢口が後藤の体を引き、楽屋を出て行ってしまった。

シーンとしてしまった楽屋、最初に響いたのは石川の泣き声だった。
泣けても来るだろう。
好きな人の目の前で自分の思いを加護に暴露され、自分の目の前で矢口に好きな人を持っていかれてしまったのだから。
そんな悲惨な石川にかける言葉も見当たらないメンバーたち。
しばし、楽屋には石川の泣き声だけが聞こえていた。
28 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月18日(火)17時20分58秒
むっちゃ複雑ですね。それぞれの想いは一体?
面白いですね。独特の雰囲気があって。がんばってください。
29 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月25日(火)20時27分16秒
名小説のよかんんんんんん
30 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月25日(火)21時36分07秒
今はじめて読みましたがかなりイイ!
ごま萌え
31 名前:lou 投稿日:2001年12月25日(火)22時58分00秒
>28さん
複雑ですよね。
読みにくくならないよう頑張るです。

>29さん
エコーどうも。(笑
名小説になりますかねぇ・・・?頑張ります。

>30さん
どうもありがとうございます。
ごまさん萌えですか。
ごまさんは、この後どうなりますかねぇ<ヲイ

あ、あとできればsageでお願いします。
一瞬見つからなくて焦りました。(笑
32 名前:桃源郷への階段 投稿日:2001年12月25日(火)23時13分28秒
そんなこんなで、午前中の仕事はどのメンバーも精彩を欠いた。
朝からの何とも言えない雰囲気がメンバーの間には流れていたのである。
何とか仕事をこなして昼の休憩。
弁当を食べようとしていた中澤のところに後藤がやって来た。

「裕ちゃん、ちょっといい?」

何かの相談のようだ。
朝のことだと思った中澤は、

「ほな、ふたりで食べよか」

後藤と二人で無人の部屋へと向かった。

(後藤と二人で弁当食べるなんていつ以来やったかな)
無言の空間の中、中澤がボーッとそんな事を考えていると、

「あのね、裕ちゃん・・・」

後藤が口を開いた。

「ああ、話し聞くんやったな。朝のことやろ?」
「え?ん・・・ちょっと違う」

てっきり朝のことだと思っていた中澤だったが、どうやら違ったらしい。
後藤が続ける。

「んとね・・・この前の加護のコト」
33 名前:桃源郷への階段 投稿日:2001年12月25日(火)23時40分05秒
そう言えばこの前は、言いたくなったら言うとか言っていた。
何にしても大事なメンバーからの相談。
じっと耳を傾ける中澤。

「あのね、加護はね、ごとーの大事な写真に落書きしたの」

・・・正直言って、そんなに大したコトではないんじゃないか。
そう思ったものの、あの泣きそうな後藤を見たら、そんな軽口を叩けるはずがない。
一応もっともらしく聞いてみる。

「その、大事な写真ってなんやの?」

後藤からの返事は返ってこず、かわりにもじもじと体を揺するばかり。
(・・・ちょっと待つか)
焦ってもしょうがないと考えた中澤は、弁当に手をつけた。
別にこの行動に意味はなかったのだが、どう受け取ったのか、急に後藤が話し始めた。

「この写真・・・」

後藤から手渡された写真には、吉澤の口にジャガイモを運ぶ後藤が写っていた。
もっとも、すでに写真には真っ黒な線が何本も走っていたが。

「これか・・・。でも、何も泣く事はないんちゃう?」

中澤の本音だった。
メンバーの中でも一番と言ってイイほど仲の良い後藤と吉澤。
二人で写っている写真などいくらでもあるだろうに。

「だって・・・このよっすぃが一番かわいいんだもん・・・」

34 名前:桃源郷への階段 投稿日:2001年12月25日(火)23時51分39秒
この後藤の発言に、中澤は違和感を覚えた。
先程からの写真に対するはっきりしない行動や、落書きだけで泣いてしまったと言う事・・・。
すべてを一まとめにして、中澤の頭に浮かびえた答えは一つだけだった。

「ごっちん、アンタ・・・」

思わず口から出た言葉に、言ってからしまったと思った。
あんなに矢口と仲が良かったんだ、そんなわけがないじゃないか。
変なことを言っても、後藤を困らせるだけだ。
きっと、あの写真にはなにか思い出でも・・・。

そんな中澤の考えを知ってか知らずか、後藤は

「・・・うん、ごとーは、よっすぃが・・・好き」

この言葉を口にした。
35 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月27日(木)10時23分51秒
ごまはよっすぃーなのか!複雑ですね〜
よしごま応援します!
36 名前:lou 投稿日:2001年12月28日(金)21時58分26秒
>>35さん
レスどうもです。
いやー、実はですね、吉澤さんの相手は1話の時から既に決まってたんです。
まあ誰とは言いませんがね。(笑
37 名前:桃源郷への階段 投稿日:2001年12月28日(金)22時08分42秒
「な・・・」

・・・何となくは予想できたとはいえ、やはり絶句してしまう。

「アンタは矢口やないんか?」

今まで矢口と後藤の間に流れていた雰囲気は、まさに恋人のそれである。
本当に、吉澤の事が好きなのだろうか?

「あの・・・やぐっつぁんがね・・・
 ごとーのコト・・・好き・・・なんだって・・・。
 でも、それはそれだけだから・・・」

・・・もういい加減にして欲しい。
どういうことなのだろうか。
イライラするほど訳がわからない。

38 名前:桃源郷への階段 投稿日:2001年12月28日(金)22時16分20秒
「つまりは、矢口の一方的な片思いなんやな?」
「ん・・・だから今日はビックリしたんだよ。
 いきなりやぐっつぁんがキスしてくるんだもん・・・」

どうやらこれで、二人の関係ははっきりしたようだ。
・・・しかしまた、新たな問題も浮上である。

「矢口は、ごっちんがよっさんのことを好きやって知ってんのか?」
「うん、言ったよ。
 けど、そしたらやぐっつぁん”そう、じゃあ待ってるから”って・・・」

その時を思い出したのか、不思議そうな顔をする後藤。
矢口の答えは少し奇異な感じがするからであろう。

一方の中澤は、黙って下を向いていた。
心の中の動揺を隠し切れなかったのである・・・。
39 名前:吉胡麻系 投稿日:2001年12月30日(日)19時16分01秒
どうも、ここでも某所でもお世話になってます、吉胡麻系です。
いやぁ〜、複雑ですね〜!
すごく次の展開が気になります!
頑張って下さい!
40 名前:lou 投稿日:2001年12月31日(月)01時02分40秒
更新じゃなくて申し訳ないですが。

>>吉胡麻系さん
どうもです〜。
あ、あと一応まだ誰にもばれてない様なんで、できれば御内密に(爆
期待は、ほどほどの方向で(笑

てか、絶対ばれてるよなぁ・・・。
41 名前:桃源郷への階段 投稿日:2002年01月05日(土)10時28分30秒
「え、ごっちんがですか?」
「せやねん、困ったなぁ・・・」

所変わって中澤の部屋。
ホットココアを手にした中澤と吉澤が、顔を寄せて話し合いをしている。

「そうですか・・・」

今日あった事の一部始終を中澤から聞いた吉澤は、一瞬のうちに表情を曇らせた。
優しい彼女ならではである。
後藤の気持ちを知って、悩んでいるのだろう。

「うん・・・アタシもビックリしたわ…」

中澤はそんな吉澤を心配そうに見つめる。
吉澤の優しさを知っているから、おのずとこんな表情になってしまうのだろう。

「中澤さん・・・」
42 名前:桃源郷への階段 投稿日:2002年01月05日(土)10時36分11秒
「・・・言わんでエエよ」

口を開きかけた吉澤を、中澤がグッと抱き寄せる。
吉澤の頭は、そのまま中澤の腕の中へ。

「よっさんが辛いのはわかる、アンタは優しいからな。
 ごっちんの事が気になるんやろ?
 自分の考えがまとまるまで、ゆっくり時間かけてエエから・・・」

そこまで聞いて、吉澤は急に腕の力が強くなったのを感じた。
それと同時に、

「でもなぁ、よっさぁん・・・」

中澤の嗚咽が耳に飛び込んできた。
43 名前:桃源郷への階段 投稿日:2002年01月05日(土)10時43分39秒
「ホンマはなぁ、ごっちんのことなんか考えてほしくないわ。
 アタシのことだけ考えてほしいのよ・・・」

目に涙を浮かべながら、中澤はそう続けた。

「中澤さん・・・」

吉澤も、体勢を整えて中澤を抱きしめ返す。

「ハハッ、ゴメンなよっさん、困らせてばっかで・・・」
「大丈夫です、中澤さん、私は・・・」

そのわずか数秒後、一回り年の離れた恋人たちの唇が静かに重なった・・・。
44 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月06日(日)05時12分45秒
やっぱり・・・なかよしか(w
なかよしは大好きなマイナーカップル!
先が楽しみ〜。
45 名前:名無し愛読者 投稿日:2002年01月08日(火)14時16分26秒
なかよし(w
結構このカップリング好きかも。
作者さん期待してます。
46 名前:lou 投稿日:2002年01月08日(火)17時14分23秒
>>45さん
あら?読まれてましたか。(笑
まぁ自分が好きなモンで。
未だに片目も開いてないんでこれからどうなるか・・・。(苦笑

>>46さん
やはりなかよし好きはけっこういますね。
私も大好きです。
私はこれからの展開が浮かんでくる事に期待します。(苦笑
47 名前:lou 投稿日:2002年01月08日(火)17時23分19秒
「なぁよっすぃ」

朝、いつも通り早めに楽屋に来た吉澤に、
いつもより大分早く来ていた加護が声を掛けた。

「ん?どした?」
「矢口さんて鈍感なんかな?」
「は?」
「いや、だから、矢口さん鈍感やないかなって」

急に、しかもワケのわからない事を言われて、吉澤の表情に困惑の色が浮かぶ。

「なあ、どー思う?」

なおも加護は問い詰めてくる。

「んと、矢口さんでしょ?
 結構カンとか鋭いから、鈍感じゃないと思うけど・・・」
「そう思うやろ?うーん・・・」
「・・・て言うかさ」

吉澤が加護に何か言おうとした時、タイミングよく楽屋に飯田が現れた。
48 名前:桃源郷への階段 投稿日:2002年01月08日(火)17時29分55秒
「オハヨー。何話してたの?」
「あ、おはようございます、飯田さん。あのですね・・・」
「なんでもありませんよ〜、飯田さん。おはようございます〜」
「あー、ヒドーイ。カオリ仲間はずれ?」
「違いますよー。ホントに何もないんですってばー」

頑なに飯田には話そうとしない加護。
結局、その直後に辻が来た事もあり、この話しは途切れてしまった。
49 名前:名無し愛読者 投稿日:2002年01月12日(土)16時52分11秒
違ったらごめんなさい。どこかで・・・お見かけしたお名前かな?(w
なかよし大変楽しみにしてます。
50 名前:lou 投稿日:2002年01月15日(火)16時43分46秒
間があいちゃいましたが。

>>49さん
ん〜、どなたかな〜?
多分どこかで見かけられてると思いますが。(笑
はい、頑張らせていただきます。
51 名前:桃源郷への階段 投稿日:2002年01月15日(火)17時17分12秒
「ねぇ加護、私さ、加護の言ってる事がよくわかってないんだよね・・・」
「ん?」

夜、仕事も既に終わりここはファミレス。
朝のことを詳しく聞くために、吉澤が加護を呼んだのである。

「いや、いきなり矢口さんて鈍感かなんて聞かれてもさ」

アイスレモンティーに口をつけつつ加護に目を向ける。
一方の加護は大きめのパフェをほおばりながら

「ん、まぁな・・・」
「矢口さんとなんかあったの?」
「いや、なんもあらへんよ」
「そう?じゃあどうしたのさ?」

畳み掛ける吉澤だが、明らかにいつもとは違う加護にあまり強い態度に出ることは出来ない。
肩をすくませ小さくなってしまっている加護は、今にも泣き出しそうに見える。

「いいよ、加護。ゆっくり聞いたげるから」

ふわふわした加護の頭をふわふわと撫でる吉澤。
姉妹の様である。
52 名前:桃源郷への階段 投稿日:2002年01月15日(火)17時39分52秒
「・・・ありがとな、よっすぃ」

1分ほど黙って吉澤に甘える形になっていた加護だが、すっと頭を離した。
吉澤の見た加護の顔には、いつものいたずらっぽい笑みが浮かんでいる。

「でも、ホンマになんもないねん。
 ちょっと矢口さん鈍感やな〜って思っただけやから」
「・・・そっか」

抱きしめてしまいたくなるほどの可愛さをかもし出している加護。
しかしそこからは、同時に淡い悲壮感も感じられる。
もっとも、吉澤はそこに触れはしなかった。
強がっている(であろう)加護の気持ちを考えて。

「それじゃあ、何かあったら言いなよ。
 お姉さんがしっかり相談乗ったげるから〜」
「ハハッ!誰がお姉さんやの〜」

吉澤の一言には、どんな気持ちがこめられていたのだろうか。
53 名前:桃源郷への階段 投稿日:2002年02月20日(水)14時56分40秒
ファミレスを出て吉澤とわかれた後、家に向かうなか、加護の頭は矢口のことでいっぱいになっていた。
矢口が鈍感だとは、当の加護さえも思ってはいない。
むしろ、敏感だと思っているからこその行動。
つまり、意識的に加護は矢口にちょっかいをかけていた。
鋭い矢口が、加護の様子に気付いていないとは、どうしても考えづらかった。

「なんなんやろ〜……」

頭の回転が速いと言われている加護も、年相応の知識と経験しか有していない。
矢口の行動の意味など、わかりえるはずもなかった。
と、その時、
♪リ〜リ〜リ〜リ〜リ、リリ〜リリリ〜リ〜♪
ケイタイがなった。
54 名前:桃源郷への階段 投稿日:2002年02月20日(水)15時08分31秒
「はいは〜い」
突然なったケイタイ、反射的に出たために相手を確認していなかった。

「あ、加護ちゃ〜ん」
「あれ?安倍さんですか?」

電話の相手は安倍だった。
安倍から電話がかかってくるなんて、かなり珍しい。

「どうかしたんですかー?」
「え?ああ、加護ちゃんに言っときたいことがあってね〜」
「言っときたい事ですか?」
「そう。加護ちゃん絶対聞きたいことだから」

この時、加護は間抜けにも食べ物のことを考えていた。
前に安倍に食事に誘われたことがあったし、どうせそんなことだろうと。
しかし、安倍の言葉は加護の予想とは大きく違っていた。

「あんね〜、矢口はごっつぁんが好きなんだよ〜」

……加護の動きが止まった。
55 名前:桃源郷への階段 投稿日:2002年02月20日(水)15時22分59秒
いきなり安倍に聞かされた事実(かどうかはわからないが)。
さすがの加護も動揺した。
なにしろ、矢口は後藤の事が好きだというのだから。

が、冷静になって考えてみると、さし当たって二つ、不思議に思う点が見つかった。
まず、ナゼ安倍が矢口の好きな人を知っているか。
しかし、これについてはわりと素直に想像がついた。
安倍と矢口の仲なら、そのくらいの話しをしていてもなんの不思議も無いからだ。

が、もうひとつは……。
とりあえず、加護は電話の向こうの安倍に尋ねた。

「あの〜、安倍さん、教えてくれてありがとうございます」
「あ〜、お礼なんかいいよ〜」
「でも安倍さん、なんで加護に教えてくれたんですか?」
「?だって加護ちゃん、矢口のことが好きなんでしょ?」
「!」
「だから、がんばんなきゃね〜ってこと」

やはり、安倍は加護の気持ちについて知っていたのだ。
56 名前:桃源郷への階段 投稿日:2002年02月20日(水)15時34分36秒
お礼を言って電話を切った加護は、道を歩きながらも考えこんでしまった。
ナゼ、加護の気持ちが安倍に知られてしまっていたのか。
正直言って、安倍は敏感なタイプではないと思う。
実際、吉澤も全く加護の気持ちには気付いていない様だったし。
ならば、誰かが安倍に教えたか。
いや、教える意味などないだろう。
教えるメリットのある人は……考えれば、すぐに浮かんだ。

「矢口さん……?」

矢口が、加護の気持ちを知っていて……。
しかし、すぐにこの考えは否定された。
矢口なら、面と向かって言いそうな物である。
わざわざ安倍を通すとは考えにくい。
と言う事は、やはり安倍が気付いて……。
しかし、応援するとはどう言うことだろう。
矢口に好きな人がいるといったら、加護がやる気になるとでも思ったのだろうか。

「なんやねんな……」

頭を抱えながら、加護は家へと着いた。

57 名前:lou 投稿日:2002年02月20日(水)15時37分45秒
非常に久しぶりの更新になった上に手違いでageてしまい鬱ですが(泣
更新しました。
この後は少し安倍さんが出て来る事になります。

それと、・・・を……に変えました。
大したことではないのですが一応。
58 名前:よっちゃん 投稿日:2002年02月20日(水)15時45分32秒
復活おめ!この小説好きなんでガンバッテ下さいね。個人的には中吉に期待。
59 名前:lou 投稿日:2002年02月23日(土)21時27分04秒
>よっちゃんさん
ようやっと復活しました。
好きと言ってもらえると嬉しいですね。
なかよしは……どうなりますかね(笑
60 名前:桃源郷への階段 投稿日:2002年02月23日(土)21時43分24秒
「さてと、加護ちゃんはどうするかね」

電話を終えた安倍は、微笑を浮かべながら呟いた。
ひょんな事から加護の気持ちに気付いてしまってから、この一週間いろいろと走りまわったのだ。
矢口の好きな人だって、自分の好きな人との交換条件で情報を得たもの。
ある意味、捨て身に近い行動を取ってきた。
加護には、ある程度予想通りの行動をしてもらわなくてはならない。

と言っても、加護なら思い通りに動くであろうという自信はあった。
「頑張ってね〜、加護ちゃん」
こみ上げてくる笑いをこらえもせず、新たにケイタイを持ち上げた。
61 名前:桃源郷への階段 投稿日:2002年02月23日(土)21時59分56秒
「あ、ごっつぁん?なっちだよ〜」
「んぁ〜、わかってるよ〜」

今度は後藤に電話をかける。
もちろん、予定の行動。

「ねぇねぇごっつぁん、いい事教えてあげようか?」
「ん〜、なに〜?」
「矢口の好きな人。どう、聞きたくない?」
「え?んあ〜、実は知ってるんだよね〜」

これは予想外だった。
となると次は、

「そうなの?じゃあごっつぁんは矢口の事どう思ってんの?」
「そりゃカワイイし好きだよ〜。でも〜……」

後藤は矢口ではない。
それを確認すると安倍は、五分ほど雑談して電話を切った。
62 名前:桃源郷への階段 投稿日:2002年02月23日(土)22時08分40秒
ここで初めて、ちょっとした誤算があった。
矢口の気持ちを後藤が知っている。
という事は、

「矢口、言ったのか……」

思わず口に出していた。
しかし、もし言ったとしていたら、後藤は間違い無く断わったであろう。
さっきのリアクションからはそうとしか読み取れない。

ならば、何故矢口は未だに後藤のことが好きなのだろうか。
矢口が嘘をついたか、とも考えたが、矢口の嘘はすぐに見破る自信がある。
少なくとも、安倍の目には嘘だとは映らなかった。
という事は、ダメだとわかっているのに好きだという事か?

「なんだぁ〜……」

計算が違ってきた。
思わずグチがこぼれた。
63 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月16日(土)09時45分17秒
そろそろ更新をお願いしたい今日このごろです。

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