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なちふく

1 名前:究極完全態・名無し読者 投稿日:2001年12月04日(火)03時07分40秒
あたしの写真と記事が東スポの一面を飾った日、
なっちからメールがあった。

福ちゃん、元気にしてる〜?
なっちはねえ 年末で忙しいけど、元気だよ
時間とれたら会えないかな?

やっぱ、あの記事の内容についての話かな。
真相をメールで、っていうのも長すぎるし
投稿してるHPがあるけど、そのURLを貼って送るのも
ちょっとなんだかねぇ。

OK そっちが時間とれたら連絡して
こっちが合わせるから

それだけ書いて、返信した。
2 名前:究極完全態・名無し読者 投稿日:2001年12月04日(火)03時08分40秒
それ以来何日か連絡がなくて、
まあ、忙しいんでしょう…メールの不着だったりして…
だったらやだな…でももう1通送って2通届いちゃって
くどいと思われるのも…まあいいや、忘れて待とう
と思うころに連絡がきた。

今晩あいてる?

あの新聞記事のおかげでまーた職を失うハメになりましてねぇ。
「仕事が長続きしない最近の若者は」なんて言われたら
さすがに温厚なあたしでもキレちゃうかもね。
そんなワケで、あいてます。

OKだよ
仕事中だよね?
終わったら教えて

そう返信して、さてそれまでどうしてようかな、
シャワー浴びてから着替えておくか、と思う。
あ、いや、シャワー浴びる必要は…とりあえず
ないんだけど…ま、エチケットってことで。
芸能人と会うわけだし。
3 名前:究極完全態・名無し読者 投稿日:2001年12月04日(火)03時09分20秒
なんか最近、自分ももとは芸能人で、
あのなっちと並んで歌ってたっていうことを
忘れているときがある。
…正確には、「忘れたい」かも…。
この年齢で隠居生活かい!と我ながら思うことも
あるんだけど。
まあでも、あたしが辞めた後の娘。を見てると、
やっぱりやめといて正解だったと思うときもあるし。
あたしはねぇ、歌と音楽が好きなだけだから。
それ以外の部分での悩みや疲労のほうが大きい状況には
どうしても魅力を感じられそうにない。
いや、今の娘。がそうだと決め付けるつもりはないんだ。
あたしにはもうわからない世界のことだしね。
時々ライブやテレビで見て
「ああ、頑張ってるなぁ、みんな」と思うだけ。
4 名前:究極完全態・名無し読者 投稿日:2001年12月04日(火)03時18分14秒
でもなっちの頑張りは、結構すごいと思うぞ。
歌もダンスも、上手くなったよなぁ。
どんな路線でも、なんでもこなしていくって感じ。
後藤さんとの2トップも決まってきて、
なんか「大きくなった」って感じ、するよ。
いや、体形じゃなくて…
戻ってきてよかったね…体形。
昔あんなに痩せてて、「この人は何食っても
太らないんだろうな、うらやましい」と思ってたのに
辞めた時のあたしより太ったときはさすがに心配したさ。
そういえば紗耶香が卒業のライブで
楽屋入れてもらったとき、つい昔の調子で
「なっち、こんなに太くなって!」
なんて言ったら一瞬空気が凍りついたっけ。
今のメンバーだと、誰もなっちに堂々と突っ込める人が
いないんだろうか、あの様子だと…。
入ったばっかりの5期メンバーになっちへの突っ込みを
期待するのも無理な話だろうしねぇ。
でも、その状態って、ちょっとつまんないかもね。
5 名前:究極完全態・名無し読者 投稿日:2001年12月04日(火)03時20分52秒
シャワーを浴び終えて部屋で髪を拭いていたら
ベッドに放り出してあった携帯が鳴りはじめた。
なっちだ。

「あ、もしもし、福ちゃ〜ん?」
「うん」
「今から、大丈夫?」
「うん。場所は?」
「ん〜どうしよ。決めてなかった」
「おいおい」
「一緒にごはん食べてさ、それからうち来ればいいっしょ」

なっちんち…はちょっと…
いや、考えすぎだな。恥ずかしいなこれは。
たぶん昔のことなんてなっちは覚えてない。

「いいけど。この時間からだと…」
「つもる話もあるんだから、お泊りの用意してくるべさ」
「明日仕事早くないの?」
「大丈夫。ちょっと遅めだから明日。ユニットの皆さんより
ちょいとお得なんだわこの時期特に」

ユニットの皆さんって…タンポポとかプッチとかミニモニ。に
入ってないからラクだと言いたいのか。
そんなこと言ってていいのだろうか。
…って、あたしが口出すことじゃないし…。
6 名前:究極完全態・名無し読者 投稿日:2001年12月04日(火)03時23分02秒
「わかった。じゃ、場所と時間…」

お母さんに「安倍さんちに泊まる」ことをきちんと告げて
時間より少し早く待ち合わせ場所に着くように出かけた。
待ち合わせ場所って、スタジオの前なんだけど。
あたしはともかく、なっちは普通に人の多い
街中でちょっと簡単に待ち合わせ、なんてしにくい人なわけで。
スタジオは入り口だけだけど
うん、ちょっとは懐かしい雰囲気、かな。

夜はもう冷え込む時期だ。
ジャケットのポケットに手を入れて少し待つと、
なっちが出てくるのが見えた。
一緒に出てきたのはえーっと…辻さん…と紺野さんか。

「…あれ? 安倍さんは車で送ってもらわないんですか?」
「あ、うん、なっちはちょっと約束があるから」
「かれしなのれすか」
「なわけないっしょ! 女の子だから心配しなくても大丈夫だよ!」
「べつにしんぱいなんてしてな〜いも〜んだ! べろれろれ〜!」
「まぁったくぅ、もう。辻は会ったことあるでしょう?
福ちゃんだよ」
7 名前:究極完全態・名無し読者 投稿日:2001年12月04日(火)03時25分56秒
芸能界の仕事してたときのあたし、今の辻さんと確か…同い年。
辻さんが幼いのか、それともあたしがマセてたというか
老けてたというか…うーん、どっちだろ?

帰宅の2人が車に乗りこんで、ドアを閉めたのと同時くらいに
なっちがあたしに気付いた。

「おー福ちゃん、待たせた? ごめんよ」
「あ、いや、そうでもないよ」

「あ〜、ふくらさ〜ん!」
閉めた車の中からも聞こえる辻さんの声。
へえ、結構通る声してる。
ちゃんとあたしのこと覚えててくれたんだ。
車が走り出したので、とりあえずなっちと並んで、
一緒に微笑んで手を振った。
辻さんと紺野さんと2人で、手を振り返してくれた。
8 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月04日(火)05時13分37秒
単なる懐古主義に終わらないような爽やかな文章がいいですね。
頑張ってください。
9 名前:名無し銀杏。 投稿日:2001年12月04日(火)11時59分49秒
自分のことでも客観的に見つめてしまう明日香の雰囲気が良いっす!
なちふく……響きも良いじゃないですか。
期待してます。
10 名前:究極完全態名無し読者 投稿日:2001年12月04日(火)22時19分11秒
おお、読んでくださる方がいらっしゃるとわかると
嬉しいものですね。書き込みありがとうございます。

>>8
福田ものは懐古主義的な話が多いのでしょうか?
私、「あすりか」以外の福田ものを読んだことがなくて。
おすすめ小説がありましたら教えていただけましたら幸いです。
萌えが止まらなくて書き始めてしまった話なので、
今後も爽やかな内容でいられる自信は全然ありませんが
文体…というか明日香の一人称口調は崩れないでいけるよう
努力していくつもりです。

>>9
「なちあす」よりは「なちふく」かなやっぱり、と思って
タイトルにしました。
あと、福ちゃん受になる予定なので「ふくなち」じゃなくて
「なちふく」っていう理由もあり…。
彼女は自分を客観的に見つめる能力が高そうだと私は思うんですが、
どう思われます?
出遅れ福ヲタですので、今は情報収集が命!ってとこでしょうか。
よろしかったらいろいろお教えくださいませ。

それでは更新させていただきます。
今後ともどうぞよろしくお願い致します。
11 名前:究極完全態名無し読者 投稿日:2001年12月04日(火)22時20分55秒
食事はなっちに奢ってもらってしまった。
高い…店だなここは。なんか、個室だし。
今のなっちは、衆目の中での食事も簡単にはできない人なわけで。
いや…そんなこともないか。
コンビニだってファミレスだって行くよねえ?
自分の分は自分で払いたかったんだけど
「呼び出したのはなっちだし。
だいたいなっちはねぇ、高額所得者なんだよ?」
と押し切られてしまった。
「悪かったな、どうせあたしは失業者だよ!」
そう言ったあたしの顔を見てなっちは、笑い出した。
「なに? ひとの不幸がそんなに楽しいですか」
「いやいや…違くて…」
まだ笑ってるし。
「…素直におごられてくれて嬉しい」
あ…そうですか。
…とそのまま言うわけにいかない気がして、返事の言葉に詰まる。
ほっぺたがちょっと熱くなった。
少し…顔が赤くなっちゃったかも知れない。なんだかなぁ…。
こういう雰囲気はちょっと勘弁…。
12 名前:究極完全態名無し読者 投稿日:2001年12月04日(火)23時03分52秒
なっちの部屋は、昔来た時と較べると
少し物が減ってすっきりした感じかな。
どっちにしろ、あたしの部屋よりずっと
女の子らしい部屋であることには変わりない。
なっちの部屋に着くまで、着いてからも、
いろんな話をしてる。
主になっちの仕事の話。
あたしは主に、聞き役。
…というか、話題を振ってなっちに話させる役、か。
うん、元気そうで何よりだ。
できればあのふざけた新聞記事の話はしたくないし。
もしかして、なっちは東スポなんて見てないかも。
だったら助かるけど。

「Mr.MOONLIGHTのなっちってさぁ、七五三かと思いきや…」
「なーんだと〜こら〜」
うわ、首締めるな。
つーかひとの話を最後まで聞け。
13 名前:究極完全態名無し読者 投稿日:2001年12月04日(火)23時41分53秒
あたしの首にあった両手を急にすとんと落とす。
「…やっぱ背がねぇ。もうちょっとあればさ、七五三とか
言われないで済むのにな。体重は努力でなんとかなってもねぇ、
身長はもう無理だしなぁ」
七五三って…他の人にも言われたことあったのか。
そりゃ失言だった。でもあたしの言いたいのは
そこで終わりじゃなくて…。

「…なーんて、矢口が聞いてたらふざけんな!って
怒鳴られそうだよねー」
「はは、そうだね…。でもさぁ、それ言われたのって、
顔が若く見えるってことなんじゃないの?」
「ハタチに見えない?」
「うん、けっこう見えない」
「ガキっぽいかい」
「そうじゃなくて」
「そっか。じゃあ、素直に喜んでおこう」
「…つーか、それだけじゃなくて」
「なに?」
「…思ってたよりカッコよくて驚いたよ」
「…」

うわ、なっち、なんでそこで黙り込むっ!?
14 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月05日(水)00時11分49秒
なちふく(・∀・)イイ!!
旧メンヲタにはかなり嬉しい作品です!!
がんばってください!!
15 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月05日(水)01時53分35秒
なちふくヲタとして、とても楽しみにしてます。
頑張って下さい。
16 名前:名無し福ちゃん 投稿日:2001年12月05日(水)02時55分00秒
なちふくヲタの安らぎの場になりそうだね。
明日香となっちの喋り方も良くて、雰囲気出てるし…
楽しみにしてます、頑張ってくださいね。
17 名前:究極完全態名無し読者 投稿日:2001年12月06日(木)00時31分35秒
なちふく好きが集まってくれちゃうと、
嬉しくて床を転げまわっちゃうかも。
(本当にやろうと思ったけど思いとどまった)

>>14
旧メンヲタは、当時からですか?
だったら、羨ましくて妬み死にそうです。
>>15
なちふくヲタは、福ちゃん在籍当時からですか?
だったら、羨ましくて妬み死にそうです。
>>16
なちふくヲタの安らぎの場に…なれるでしょうか?
これから全然安らげない雰囲気になる可能性が高いんですけど…。
…というか、やらしくなっちゃうこと確定なんですけど。
(以下続く…長すぎた…)
18 名前:究極完全態名無し読者 投稿日:2001年12月06日(木)00時32分37秒
(コメント続き)
せりふや口調を想像して考えるのは、楽しいです。
ただ、妖しいシーンでも明日香でいられる明日香を描くには
やはり「あすりか」のチャーミー銀杏師匠(勝手に師匠にして
すみませんが、私あそこの名無し読者出身なものでこのHNなのです)
にならうしかないか…しかし同じじゃ意味ないし。カップリングも違うし。
自分の妄想力の精一杯に挑んでみたいと思ってます。

そんなわけでこの先どんどん妖しくなっていきます。
最初から決まってたんで、そう書いておけばよかったですね。
一応妖しい展開になる予告的伏線は入れたつもりですけど…
弱かったかも。
爽やか路線や清純さをご希望の方は、このへんで読むのを
おやめになったほうがいいかも知れません。
それでは更新させていただきます。
やらしくてもOKな方は、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
19 名前:究極完全態名無し読者 投稿日:2001年12月06日(木)00時36分24秒
なんか返事してくれよー…。
なっちがなぁ、首締めたりさえぎったりしなければ
もっと自然に言えてたんだぞ!
なんか調子狂うなぁ…。
黙り込まれちゃうと、あたしがしゃべるしかないじゃん。
だいたいあたし、そんなにしゃべりなほうじゃないんだけどなぁ…。
…なんかまた、気にさわることだったんだろうか。
でも、なっちの表情は、あたしの続く言葉を待ってるようにも見える。

「…えーと、なんつーか、動きがね、すごいいいと思うわけ。
決まってるし…声もさあ、あの曲の雰囲気に合った声がよく出てて…。
身長なくても男装でカッコよく見えるって、たいしたもんだよ。
…歌もダンスもさ、上手くなったよね」

まだ黙り込むか…いったいあたしにどうしろと?
昔のなっちだったら、こういう時どう反応したっけ?

「…明日香、好きよ」

幻聴…じゃないな…。今なっちの唇がそのかたちに動いた。
聞き覚えがある声と言葉。
20 名前:究極完全態名無し読者 投稿日:2001年12月06日(木)00時38分54秒
「…うん、聞いたこと、あるよ、それ」

そう、ラジオやってたとき。なっちと二人で。
なんかドサクサ紛れに言われちゃってた感じだったけど。
だいたい、リスナーがいるラジオ番組でどう反応しろって…それ…。
平気なフリしてたけど、結構困ったっていうか、あせったっていうか。

「あのときだけじゃないよ。なっちはずっとそう思ってたし、
ずっとそう言ってた」

ラジオの時のことを言っているのがなっちにもわかったみたいだ。
ラジオではそれ以外にも、すごーくいろいろ言われたしねぇ…。

そして、その時だけでなく、あたしにそれを言った記憶もちゃんとあるらしい。
そっか、覚えてたか…やっぱ、来なきゃよかったかなぁ…。
…いまさら、遅いか…。
21 名前:究極完全態名無し読者 投稿日:2001年12月06日(木)00時43分15秒
「だいたいさぁ、からかってたんじゃないの? あたしのこと。
どう反応するか試してたとか。
…だってさぁ、本当に好きな人にさ、ラジオ番組で言うか普通…」

あたしの反応というか意見は、その時から一貫して、こうだ。
というか、そう思うしかない。

「なっちはねぇ、一途なんだよ? 知ってるくせに」
「知らない、知らないって」

そんなリスナー無視な一途さは理解できないってば。
…いや、二人っきりでも、だめだって。よけいだめ。

「そっか、知らないか…。…でも、なっちのお部屋にまた来てくれたね。
すごく嬉しいよ」
「…帰ってもいい?」
「だめに決まってるべさ」
22 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月06日(木)06時50分15秒
更新お疲れさまです。
妖しくなるんですか・・・
自分も「あすりか」読者なんで大丈夫っすよ(w
このカップリング自体珍しいんで、楽しみにしてます。
23 名前:究極完全態名無し読者 投稿日:2001年12月07日(金)00時58分36秒
>>22
そう言ってくださる方がいらっしゃると大変救われます。
つくづく「あすりか」のあの始まり方の正しさを実感させられます。

このカップリング、片方が現在芸能界にいないわけですから
今では珍しくても仕方ない気がするものの、
在籍当時には主流でもよかったはずのカップリングと思うのですが
当時はこの手の小説ってなかったのでしょうか?

それでは更新させていただきます。
24 名前:究極完全態名無し読者 投稿日:2001年12月07日(金)00時59分17秒
なっちは、仕事帰りだから、とシャワーを浴びに行った。
一緒に入る?と訊かれて、来る前に入ってきたから、と言って断った。
言ってから、しまった、と思った。
準備してきたみたいじゃないか!
いや、違う!…と弁解したかったけど、そこになっちが
気付いているのかいないのか、つっこんでくれなかったんで、
ホッとはしたものの
弁解のチャンスを失ってしまった。
25 名前:究極完全態名無し読者 投稿日:2001年12月07日(金)01時05分01秒
バスルームのほうから水音が聞こえる。
DVDプレイヤーがあったんで、何か見ていようかと思ったけど
やっぱりやめた。
もやもやしていた記憶がだんだん鮮明になっていく。

最後になっちの部屋に来たのは、いつだったっけ。
辞めないでほしい、って言われた。
もう決めたことだから、と答えると、
なっちは顔も手も、袖口や胸元まで、びしょびしょに濡れるほど泣いた。
泣かれるのは、苦手。
だからなるべくそういう雰囲気にならないよう
努力したつもりだったんだけど。
おどけるのも話そらすのも、二人っきりだと限度があるね…。
26 名前:究極完全態名無し読者 投稿日:2001年12月07日(金)01時06分44秒
かえって申し訳ないような気がして、ハンカチを差し出すこともできなかった。
なっちも、拭こうともしないで、ただただ涙を流していた。
風邪ひかないかと心配になるくらいの大量の涙だった。
服、着替えたほうがいいね、とすすめると
ぼんやりした顔でシャワーを浴びに行った。

…そして、裸で出てきた。

その時あたしは、実はすごく動揺したけれど、
「着替え持っていくの忘れた? 取ってきてあげようか?」
と、何事もなかったかのように立ち上がった。
そこへ、抱きつかれた。

…いやでも思い出してしまう。
やっぱりDVD見てようかな。
でもそんな気にもなれないし…。
27 名前:究極完全態名無し読者 投稿日:2001年12月07日(金)02時24分29秒
あたしは、何を言っていいのかわからなかった。
でも、なっちも何も言わない。
痩せぎすだったなっちの鎖骨や腰骨が、
服を来ているあたしにもわかるくらい
ぴったりと抱き締められてる。
何か、何か言わないと。

「…ねえ、裸だと風邪ひく…」

あの時のあたしに、それ以外の何が言えただろう。
28 名前:訂正! 投稿日:2001年12月07日(金)02時31分02秒
>>27 4行目
「来て」じゃなくて「着て」です。

あせるな私!

明日も更新できそうです。
29 名前:究極完全態名無し読者 投稿日:2001年12月08日(土)00時38分28秒
「…ひいても、いい…」
「だめだよ。ほら、服着ないと」
「…やだ…」
「なんで!? ほらもう、こっちおいで!」

なっちの手を引いてベッドの方へ連れていった。
ベッドわきのタンスになら、着替えがあるはずだと思って。
そうしたら、なっちは裸のままベッドへもぐりこんでしまった。
30 名前:究極完全態名無し読者 投稿日:2001年12月08日(土)00時39分26秒
「…福ちゃん、来て。一緒に寝て」

その日も泊まる覚悟で来てたから、それは別に構わないと思った。
わざわざ別に寝床を用意しろとも言えないし。
…単に、寂しいのかも知れないし。
なっちって、子供っぽいところがあるから…と
無理やり自分を納得させて、
持ってきてたパジャマにしっかり着替えてから
隣に潜りこんだ。
31 名前:究極完全態名無し読者 投稿日:2001年12月08日(土)00時40分06秒
「…明日香、好きよ…」

耳元で言われて、本当にどうしようかと思った。
自分は我ながら頭の回転の早い、機転のきく人間だと思っていたけれど
呼び方まで変えられて、動揺してる。

「うん、ありがとう」

それしか返事が思いつかなかった。
なっちの裸の腕があたしを軽く抱きしめた。
そのあたたかさに、何もあたしを傷つけるものはなかった。
急に安心して、あたしは多分、そのまま眠ってしまった。
32 名前:究極完全態名無し読者 投稿日:2001年12月08日(土)01時36分00秒
…記憶が細かいところまで鮮明になってくると、
なんだか恥ずかしくて、いてもたってもいられない気分になってくる。
なっちはバスルームからまだ出てこないから、
そのうちにこっそり帰っちゃおうか…と本気で思うけれど
いや、それはあんまりひどいか、と思いなおす。
まさか今日は、裸で出てこないよねぇ…。
33 名前:究極完全態名無し読者 投稿日:2001年12月10日(月)03時11分30秒
そもそも、だいたいさぁ、「一途」なんて、
よく言うよって感じなんですけど。
おじいちゃんの口癖じゃないけど「ちゃんちゃらおかしい」っつーか。
あたしのこと、なんにも知らないと思って、ガキ扱いしてない?
自分より子供だと思って、馬鹿にしてない?
34 名前:究極完全態名無し読者 投稿日:2001年12月10日(月)03時12分25秒
「福ちゃ〜ん、お待ったせ〜! 安倍なつみ、キレイになって参りました〜ぁ!」
なーに言ってんだか…ワケわかんねっす安倍さん。…謎のポーズ決めてるし…。

…とりあえず、バスタオル巻いてるから、全裸よりはましか…。

「あ〜、髪乾かさないと。へんなクセついちゃうと明日大変だから。
ちょ〜っと待っててね」

そう言ってなっちは、鏡台に座ってドライヤーを使い始めた。
「待ってて」って、何をよ!?
誰も何も待ってないっつーの!
35 名前:究極完全態名無し読者 投稿日:2001年12月10日(月)03時13分16秒
「…明日って、何? ドラマの撮り?」
「…え、何? ごめん、聞こえない」

ドライヤーの騒音で聞こえないらしい。
もう一度大きな声で言う。

「…ああ、うん、そう。他にもあるけど」

ふーん、そっか。
忙しいんだねぇ。
まあ、いいことだね。芸能人として。

…と寛いでたら、いきなりなっちがドライヤーのスイッチを切った。
急に静かになる。

「…チェックしてくれてるんだ? なっちのスケジュール」

「あ、うん、まあ一応…ふつーのファンでも想像できる程度には」
と答えると、
またドライヤーの音が響き出す。
36 名前:究極完全態名無し読者 投稿日:2001年12月11日(火)23時34分20秒
騒音でよく聞こえないけど、なんか鼻歌うたってるみたい。
…あ…コレは…アレか…トウモロコシと空と風…。
…お、だんだんちゃんと…歌詞つきに…
よ〜し、コーラス入れてやるよ。
できるもんねー、エフェクトなくても。
…ちょっと、ギリギリか!?
あ、そうでもないか、主旋律じゃなければこれくらい出せる。
ちゃーんと、ボイトレしてます。訓練の賜物。へっへっ。

お、間奏のタイミングもバッチリじゃん。
頭の中にベースラインを流して、
足でリズムを取って次の出だしに備える。
37 名前:究極完全態名無し読者 投稿日:2001年12月11日(火)23時35分07秒
BLUE SKY
美しい風〜が〜
髪〜と無邪気に遊んで〜る〜
BLUE SKY
この風に乗せて
想いを運んで、、、

BLUE SKY
サラサラな風が〜

お、転調もバッチリ!
…と思ったら、何故そこで止まる!?
ついでにドライヤーの音も止まってる。
うわーなんか消化不良じゃないっすか!? こういうの。
38 名前:究極完全態名無し読者 投稿日:2001年12月11日(火)23時36分08秒
「…ここ、一応防音はまあまあ大丈夫なんだけどさ…、この時間だし」
…あ、もうとっくに12時まわってる…って、ドライヤーの音はいいのかよ!?
「もう、髪も乾いたし」
ああ、そーですか…。大した理論だねまったく…。

「…しかし…リピートまでオッケーかぁ。へぇ…」
「へへぇ、まっかせなさーい」
「よっぽどよく聴いてくれたんだねぇ、嬉しいな」
…いや…それよりは…どっちかっつーと
声出ることを誉めてほしいんですけど。
…ま、いーか…。
39 名前:完名無 投稿日:2001年12月12日(水)03時12分22秒
「さて、寝よっか」
そう言ってなっちは体に巻いていたバスタオルをさっさとはずして
ベッドにもぐりこんだ。
「おいでよ」
その言い方がなんだか落ち着き払ってるように見えて
反発してみたくなる。
「いや」
「どうして?」
「…裸じゃん」
「裸で寝たほうが健康にいいんだよ」
へーえ、大人になるって、そういうことかい?
いけしゃあしゃあとそういうこと言えるようになるってことかい。
「だから明日香も裸になっておいでよ、ね?」
「いーや!」
今日もちゃんとパジャマ持ってきたから、しっかり着ます!
「プロポーション良くなったねぇ、明日香」
着替えてるとこ、見るなよ!
40 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月14日(金)03時09分49秒
タイトルに惹かれて(二人のヲタじゃないけど)覗いてみたら
久々のヒットでした。
テンポの良い明日香の語りで引き付けられます。
続きを楽しみにさせてもらいます。


41 名前:完名無 投稿日:2001年12月14日(金)06時46分02秒
>>40
ここまでで大丈夫な方はたぶんこの先も
大丈夫と思われますので、
そういう方に読んでいただけて大変嬉しいです。

明日香視点固定だと、例えどんな行為をしていても
きっとやらしい雰囲気になりそうにない、
ということに気付きつつあります。(…でも、するけど。)
そこが彼女の魅力かな〜と思いつつ、
更新させていただきます。
42 名前:完名無 投稿日:2001年12月14日(金)06時47分49秒
ベッドの中にいるなっちと目があわないようにして
隣へすべりこむ。
そのとたんに体に腕をまわされる。
しなやかにのしかかられて、なっちの顔が上から近づいてくる。
うわ、どうしよう、と思う間もなく
あたしの唇になっちの唇が触れていた。
目を閉じる間もない。
素早く手際のいい動作。
今日は前みたいに無事に済みそうにない…ことは
さすがにあたしにも、わかる。
43 名前:完名無 投稿日:2001年12月14日(金)06時48分46秒
わかるんだけどね…でも、
おとなしく言いなりになる気もないわけだよ。
こらっ、ちょっとっ、ストップ!
パジャマの前ボタンを外していこうとする手を
つかんで止めた。
「…ちょっと、あのさぁ、なっち…」
「なに?」
なに?って純粋に疑問そうな表情で訊かれても…困る。
なぜ?って訊きたいの、こっちだし…。

うーん、なんて切り出すべきか。
素直に、なんでこんなことするの?って訊いてもいいんだけど
それだと、なに答えるか、もうわかっちゃうし。
…さっきも言われたこと。
44 名前:完名無 投稿日:2001年12月14日(金)06時50分13秒
「好き」と言われて「ふーん、それで?」と返すのも
さすがに気がひけるっつーか…そこまで鈍感なわけでも
ないわけですよ、あたしも。
でもねぇ、「好き」と言われて「あ、そうですか」と
そのまま流れに任せちゃうには、
ちょーっとひっかかるところがありすぎるかな?
ねぇ、なっち?
「…つきあってる人、いなかったっけ?」
45 名前:完名無 投稿日:2001年12月15日(土)04時21分38秒
「…えーっと、なんのことかな」
ふーん、そう来るか。

「…いや、あたしもさ、くだらない記事とか…そういうの
丸ごと信じるつもりはないんだけど」
「んー、そうだねぇ、そういうのそのまま全部信じるなら、
明日香のあの記事も事実ってわけだぁね」

げっ、やっぱり見てた!?
イヤミ!? なっち渾身の嫌味攻撃なわけ!? これ。
しかもこんな体勢の、至近距離で。

いまさらあんなあたしの記事は、もうどうでもいいよ。
どうせいいかげんなでっちあげなんだから。
それにあれ、なっちには何の関係もない話でしょう?
今はその話とちがうでしょう?

「でも、なっちさぁ、あれ、写真撮られてなかったっけ? 思いっきり」

…あ、しまった…じゃあ、この話はあたしに関係あったか…?
46 名前:完名無 投稿日:2001年12月15日(土)04時23分31秒
「…んー、ねえ、もしかしてさぁ、なっちの仕事とか記事とか、
ぜんぶチェックしてくれてたりとかする?」
「いや、全部ってことは…」
…ないと思うけど。
「なっちのこと、気になるんだ? そんなに」
「いや別に…ごめん、関係ないよね」
そこにつっこまないでよ…悪かったってば。
「さては明日香、なっちに惚れてるな?」
…なんでそうなるかな。
47 名前:完名無 投稿日:2001年12月15日(土)04時26分01秒
「だからねぇ、あれでしょ?
プレステしてたんだよ、ほんとだよ」

その言い方と表情があんまりおかしくって、
ごめん、いきなり笑いが止まんなくなった。
なっち、面白いよ、面白すぎる、それ。

体をよじって笑い転げてたら
しぶしぶなっちがあたしの上から体を起こす。
それに乗じてあたしも体を起こして
座り体勢になる。

「もー、ひどいなぁ。そんなに笑わなくったって…」
「ごめん…でも」
あーまた笑いがこみ上げてきちゃうってば…。

でも、なっちの言うことだから、少し心配になる。
「…まさかとは思うけどさぁ、なっち」
「なによ」
「本気でそう信じさせようとして言ってるんじゃないよねぇ?」
…ギャグなら全然許すけど。
ちょっと申し訳ない気分を吹き飛ばしてくれたし、面白かったから。

あれ、困った顔してる…。
えぇ〜っ! 
そんなバカな…
48 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月15日(土)10時05分52秒
福ちゃんのキャラがいいなあ。
あすりかの石川と比べて、こっちのなっちは押しが足りない(w
49 名前:完名無 投稿日:2001年12月15日(土)17時02分20秒
>>48
この情けないなっちはですね、…

「あすりか」の梨華ちゃんどころか、
「あすりか」のなっちにも負けてますってば(爆

よわよわ…と言いますか、
そう苦労なしに喰われてたまるか!と言いますか…
福ちゃんが相手で「完璧攻」に徹しきれるほどの人に思えない
ということもありますが。
福ちゃんにこの話題を出されたところで、もうちょっと
女っぷりを上げてほしいところではあります。
50 名前:完名無 投稿日:2001年12月15日(土)17時04分13秒
「まぁ…男の人ってさぁ、簡単なんだよね…」

…なんか、いきなり語り出すし。
結局さっきの、ギャグかそうじゃないのか、どっちだったんだ。
まあいいけど。いいよもう、なんでも。

なっちの考えていることが、わかるようで、わからない。
それどころか、自分が今どうしたいのか、
どうなればいいと思ってるのか、
それもなんだかよくわかんなくなってきてる。
51 名前:完名無 投稿日:2001年12月15日(土)17時05分48秒
「簡単って…何が」

いちおう訊いてみる。
あたしが持ち出しちゃった話題なんだけど
あんまり詳しく聞きたくない気もする…なんでかな。
でも、訊いてほしくて話し出してるんだよね、なっちは。

「…あんな苦労、いらなかったもん…全然…」
「あんな苦労って…何?」
「あんな苦労は、あんな苦労だ、ばか!」

そう言い放たれてあたしは、枕でぶったたかれる。
52 名前:完名無 投稿日:2001年12月15日(土)17時09分34秒
「ちょっと…あたしがいったい、何をしたって?」
「なんにもしてないよ!」
「じゃあなんで」
「なんにも…」

そう言ったきりなっちは、あたしを叩いたまま持っていた枕を
抱え込んで、それに顔を埋めてしまった。
…耳は見えてる。赤くなってる。
それで、少し理解が進んだ気がする。

「…それ、あの日のこと?」

なっちは答えない。
53 名前:完名無 投稿日:2001年12月16日(日)01時51分15秒
あれは、苦労してたのか…そうだったのか…。
しかし、ねぇ…。

「あのさ、わかってると思うけど…言っておくけど」
そう前置きして、続ける。
「あの時のあたし、一応、ごく普通の、中学生の女の子だったわけで」
「…『ごく普通の』はよけいだね。うさんくさ」

枕から顔を半分上げてなっちが悪態をつく。
普段なら突っ込み返したいところだけれど、
ほっぺたもやっぱり赤くなってるじゃん、なっち。
54 名前:完名無 投稿日:2001年12月16日(日)01時52分37秒
「…んじゃ、『ごく普通の』は無しでいいから、
中学生の女の子だったわけで」
「知ってたさ、そんなこと」
「だったらさぁ、そーゆーあたしにさ…いったいどうしろって」
「あの時はね。もう今は社会人だから…未成年でも大人だ、うん」
「え、今は…そうか、そういうことになるのか…あ、でも」
「なに」
「あたしもそうだったし…今のみんなも、中学生でも働いてるじゃん。
そういうのはどうなんの?」
「…ああ、あの子らはもう子供じゃないよ」
「そうなんだ」
「うん。まー子供っぽいのもいるけどねぇ。
でも、『普通の子供』じゃないよやっぱり。なっちはそう思ってる。
そうじゃなきゃ困る。仕事仲間だし」
「…まあ…確かに、そうだろうね。うん、そうかも」

さっきの待ち合わせの時にちょっとだけ会った
辻さんと紺野さんを思い出す。
芸能界って、『普通の子供』が居る場所じゃないよね。
それはあたしにもよーくわかります。
55 名前:完名無 投稿日:2001年12月16日(日)01時53分54秒
「…でね、福ちゃんさ」
「なに?」
「なっちはねぇ、福ちゃんのこと、子供だなんて思ったことは
一度もないんだよ」
「…子供扱い、したことってなかったっけ? ほんとに?」
「え…それは…まぁ、なっちも大人ぶりたい年頃だったんだよ」

なんだそれは…一体どっちなんだ…。
なっちの話は本当に、ときどき絶望的にわけがわからない。
それでもあたしとの会話は、
結構なんとかなっちゃうところもあったけど。
…それで笑いをとる方向に行ければ、今でも
結構面白いんじゃないかと思うんだけどね。

…と考えていたら、いつの間にかなっちの両手が
あたしの胸元にのびていて、前ボタンの続きをはずしていた。
56 名前:完名無 投稿日:2001年12月16日(日)01時56分04秒
「う…ちょっと待てってば、こら」
「もう待たないよ。このまんまだと夜が明けちゃうっしょ、また」

うーん、それも少しは狙ってたんだけど…。
無理か、やっぱ。
あの時、あたしが寝ちゃったあとも起きてたのかな、なっち。

「待ってちゃダメなんだよね。もう、わかっちゃったもん」

そっか…うん、いいよ、もう。
ちょっとおろおろするなっち見てたら、なぜか覚悟が決まったよ。
…でも、これだけは言わせて。

「…つまり、なっちは大人ぶりたい年頃なんだね、まだ」
「なーに言うかなぁこの子は。どこをとっても、
もーホントに完璧に大人のこのなっちをつかまえてさ」

もう、しゃべんなくていいぞ、なっち。
返事の代わりに口を塞いであげよう。
今は言葉で「OK!」なんて、言いたくないからね。
でもその後は…任せるからね?
いちおう頼むぞ、大人のなっち。
57 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月16日(日)07時46分12秒
もぉ〜萌え萌えですねぇ。
なちふくってリアルタイムで知らないんだけど、
ハマってしまいそう。おねモー聞いてみたいなぁ。
楽しみにしてるんでがんばってください。
58 名前:完名無 投稿日:2001年12月17日(月)04時49分40秒
>>57
萌えていただけて大変嬉しいです。
よろしかったらこの後も一緒に萌えてください。
私もあの頃のラジオをとてもとても聞いてみたいです。
その頃モーヲタでなかったことが今悔やまれてなりません。

それではお誕生日記念更新させていただきます。
59 名前:完名無 投稿日:2001年12月17日(月)04時50分24秒
そっと唇を離して、
息をひそめてなっちの出方を伺う。

…なんか、硬直してる?
視線が宙を見つめたまんま、固まったみたいに動かない。
…どういうつもり?
あたし、もう前ぜんぶはだけてる状態なんですけど…。
なっちがやったんだよ? これ…。

ん?
なんか、言ってる?

「…あふれる愛…」
「え?」
「…あげなきゃ、いけないのに…もらっちゃってる感じ…」

えーと…それは…。
60 名前:完名無 投稿日:2001年12月17日(月)04時56分03秒
「…明日香」
「はい」
「17歳のお誕生日、おめでとう」

…そう、日付が変わって、今日はあたしの誕生日。
食事ごちそうしてくれたのも、だからかな、とは少し思ってたけれど。
でも今、この瞬間まで、なっちは一言もそのことを口にしなかった。
あたしも、自分から言い出す気にもなれなくて、別に口にしないでいた。

「うん、ありがとう」
「誰よりも先に言えて嬉しいよ」
「…そのためにあたしを今日呼んだの?」
「今日なら、この先何があってもさ、今日のことは一生絶対忘れないでしょ?」

今日じゃなくても、忘れたりはしないと思うんだけど。

「…なっちの『あふれる愛』なわけね、これ…」
「うん、そーだ。受け取れ明日香」

顔を見合わせて二人でくすくす笑う。
それから、今日三度目のキスをする。
61 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月19日(水)02時25分37秒

>「…なっちの『あふれる愛』なわけね、これ…」
「うん、そーだ。受け取れ明日香」

 すげーいい感じなんですけど。このセリフ。
 銀杏コンビはなんかいいよねぇ。
 萌えの極みだね・・・。
62 名前:完名無 投稿日:2001年12月21日(金)00時47分24秒
>>61
ありがとうございます。
ここまで読んでいただける方がいらっしゃって
大変嬉しく思います。
>銀杏コンビはなんかいいよねぇ。
よすぎて、いろいろ想像すると脳が沸騰しそうです。
…だからってここまで勝手に想像すんな、って意見もありそうで
ちょっと恐いですけど。
では更新させていただきます。
63 名前:完名無 投稿日:2001年12月21日(金)00時54分19秒
それまでのキスは唇が触れ合うだけの、軽いキスだった。
あたしからした二度目のキスも、そう。
でも、三度目のキスは、違ってた。
なっちの手が、あたしのあごに添えられて、
その動きに導かれて力が抜けた上の歯と下の歯の合わせに
舌が割り込んできた。
上側をなぞられると、少しくすぐったい。
舌と舌が絡むと、なんだか頭がぼーっとする。
このままもう、どうなってもいい、という気分に、何故か、なる。

やっと口が開放されて、ぼんやりと目を開ける。
視界に映るのは、なっちの顔のアップ。
…キレイな顔、してるよね…。
前からそう思ってたけど…こんな間近で見ると
よけいそう思う。
64 名前:完名無 投稿日:2001年12月21日(金)00時57分19秒
なっちの目も開く。
射すくめるように見つめられる。
心の中まで、見ようとしてるみたいに。
…なんか、目が合ったままずっといると、
だんだん頭の芯が麻痺してくる感じ。
酔ってるみたいな感じ。見つめられてる。

こういう、なんというか、まあカワイイ、としか言いようのない人が
…なんであたしの口の中に舌入れたりして
そのあとおっきな瞳で、こんなふうに見つめるんだろう。
…あたし、まだいまいちこの状況を
ちゃんと理解できていないかも知れない。

視線が絡んだまま、
わきの下に滑り込んできた手が、
あたしのパジャマの上を脱がせる。
あたしは、おとなしくその動きに従ってしまう。
そして上半身が裸になる。
…恥ずかしい。
そう思ったとたんに、なっちがすでに全裸なことに
あらためて気付く。
65 名前:完名無 投稿日:2001年12月21日(金)00時58分56秒
背中を支えられて、軽く肩を押される。
ゆっくりベッドに沈んだあたしの体のすぐ上に
なっちの裸の体がある。体温が伝わるくらい近くに。

すぐにそっと抱きしめられる。
彼女の乳首が、あたしの体の微妙な位置に当たる。
当たっているのがわかるってことはたぶん
固くなっているからで、
そう思うとなんだか自分の心臓の鼓動が
耳にうるさくなってくる。

ふと体温が少し離れた気がしたら、そのとたんに
なっちの手があたしの胸元に伸びる。
掌でやわらかく、胸を包まれる。

まだ冗談とか、言えるかなあたし。
…無理だ、もう。
66 名前:完名無 投稿日:2001年12月21日(金)18時45分19秒
なっちの指先があたしの胸の先端を探り当てた、と思った瞬間に
もう片方の胸の先端が温かく湿ったものに包まれた。
不意な刺激に息を吸い込むと、彼女の髪の香りが
鼻の奥まで流れ込んできた。
頭があたしの胸元に降りてきていた。

あくまで、軽く。最初は、やわらかく。
だけど、心の準備をするための遠回りをしてくれる気は
もう、ないらしい。
最初の目的地(…なんだと思う、たぶん)に
まっすぐ行きついたなっちは、そこからあたしに
微妙な感覚を与え始める。

最初に感じたのは、…なんというか、違和感。
わきの下をくすぐられる感じ…ほどは反発はないんだけど。
でも、くすぐったいというか。
何が違うかな、これは。くすぐられる感じと。

こんな状態で考えなんてまとまるだろうか。
でも、今じゃないと、わからなくなる。
67 名前:完名無 投稿日:2001年12月21日(金)18時46分29秒
口に含まれて、舌で転がされているらしい右の乳首と、
指にはさまれて、軽く転がされているらしい左の乳首。
両方の乳首から受け取る刺激が、だんだん一定の圧力で、
リズミカルになってくる。
声が、出そうになる。

…なんか、わかってきた。
これは…あれだ。
わきの下とかじゃなくて、
普段あんまり刺激してほしくない部分…
自分の中に、あるのは、わかってるんだけど
普段あんまり意識したくない部分…
を、くすぐられてる、感じ。
「寝た子を起こさないで」っていうか…
…なんか、違うか?
ああ、うまい表現がみつからない。

とりあえず、どんなことでも「やめて」って言うのは
よそうと思う。
なっちに今、何をされてもいいって、決めたんだから。
今のなっちになら、任せていいって
自分で決めたんだから。
68 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月22日(土)03時50分18秒
明日香をコントロールするなち・・・。
新しい展開に萌えっっっっ!!
69 名前:完名無 投稿日:2001年12月22日(土)21時40分39秒
>>68
いっしょに萌えて、いきま〜っしょい!
年齢差&経験値の差がなければきっと
絶対になち攻は無理なんだろうな…と思いつつ
更新させていただきます。
70 名前:完名無 投稿日:2001年12月22日(土)21時41分49秒
決意を新たに固めつつ、目をかたく閉じて
不意に出てしまいそうな声を抑える。
両方の乳首から、柔らかい、けれど確かに継続する刺激が、
体の芯に何か訴え始める。
声を抑えることに気持ちを集中していたら
勝手に腰が跳ねてしまうのをうっかり止めそこねた。

使っていないほうの手により体重をかけて、
少し傾いた感じであたしの両脇にひじをついて、
あたしのすぐ上になっちの体があった。
なっちの体に腰をぶつける、というか、
押し付けるかたちになってしまって、
あたしは慌てた。

なっちがそっと、あたしの胸元から顔を上げる。
慌てて目を開けたあたしと視線が合ってしまい
恥ずかしくてどうしていいかわからない。
つ、と手が体の上を這う感触があったかと思うと
パジャマのズボンのゴムと、その下のゴムも一気に通りぬけて
なっちの手が、いきなりすぎて信じられない部分に触れていた。
視線は、合ったまま。
反射的にひざを閉じる力が入ってしまう。
71 名前:完名無 投稿日:2001年12月22日(土)21時43分39秒
「…足、ひらいて」

ばっちり視線合わせたままで、そんなこと言われても。
それは、意識的にも、体の反射的にも、むずかしいよ…。

とりあえず、一呼吸して、閉じる力を緩めてみる。
すぐに指先が、かき分けて進んでくる。

…何か、ぬるっとした感触。
そこに指先が行きついたとたんに、
なっちが深いため息をついた。

「…よかった…濡れてる…」

そんなこと、言葉にして再確認させるのかい!
72 名前:完名無 投稿日:2001年12月22日(土)21時44分56秒
「…それは…当たり前、じゃないの? なんか、違う? あたし…」
「いや、そうじゃなくて…え、でも、でもさ…あ、今、生理じゃないよね?」
「…ちがいます」

…わかんないんだけどさぁ、安倍さん…そーゆーコトは普通、
ここまでくる前に訊いとくものじゃないのかなぁ…。
っつーか、生理中だったら普通OKしないでしょーが!
…あれ? 普通って、どうなんだろう?
いや…よく考えてみたら…考えなくても、
あたしが、女の子のなっちとこういうことになってるってのは…。
何が普通? もーわかんないってば。

「…そっかぁ、濡れてるかぁ…よかったぁ…」
「…だから…それは…」

当たり前じゃないんでしょうか?
あたしがなんか、おかしいんでしょうか?
不安にさせないでよ、こんなところまできて。

「…濡れてなかったら、どうしようかと思った…」

…ああ、そうか、そういうことか…。
なっちも、不安だったんだ。
73 名前:完名無 投稿日:2001年12月22日(土)21時46分52秒
「…そんなこと、あるわけないじゃん…」

そう答えたら、なっちはまたため息をひとつついて、
それからニッと笑って、唇を寄せてきた。
目を閉じたら、あたしの唇に、なっちの柔らかい唇の感触。
さっきよりも湿ってる感じがするのは、
たぶん、あたしの乳首にキスをしていたせい。
そう思うとまた、自分の心臓の音が耳につきはじめる。
74 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月23日(日)04時20分58秒
連日の更新お疲れ様です。
安倍さん、いいっすね。お姉さんかと思いきや明日香の前ではやはり弱キャラか。
今後ともがんばってください。
75 名前:完名無 投稿日:2001年12月24日(月)06時19分26秒
>>74

>安倍さん、いいっすね。
とおっしゃってくださったのはあなたが初めてですね。
明日香がさめた感じの人なんで、明日香視点だと、こういう状態の
安倍さんを描写するのは難しいだろうな…とは思っていました。
安倍さん視点で明日香を描写すればもっとずっと萌えやすいのは
自分でもわかってはいるのですが、あえてこのまま頑張ります。
よろしかったら最後まで見守っていてください。
それでは更新させていただきます。
76 名前:完名無 投稿日:2001年12月24日(月)06時31分40秒
唇を合わせたまま、あたしの部分に触れていた手が、
そのまま下にさがり出す。
…腰は、浮かせたほうがいいよね?
いったん唇が離れて、ひやっとした空気にさらされる。
下半身を覆っていた2枚を、体を起こしたなっちに
まとめてゆっくり下げられる。
足首を持ち上げられて、まとめて抜き取られる。

…なんか赤ちゃんのおしめ替えの格好みたいで…
かっこ悪いっていうか…恥ずかしい。
こんなことなら自分で潔く脱いでおけばよかった。
…それから、明かりを消しておいてもらえばよかった。
もともと暖色の間接照明だから、
そんなにすごく明るいってわけじゃないけど
なっちの体が見えるのと同じ程度に
あたしの体も、なっちに見えてるんだろうな。
脚を見せるのは、未だに苦手だよ。
でも今、脚どころの話じゃない…。
77 名前:完名無 投稿日:2001年12月24日(月)06時32分45秒
「…寒くない?」
「…大丈夫…だけど」
「…やっぱ、少し寒いかな?」
「…湯冷め、したんじゃない? さっきからずっと裸で」
「…んー、やっぱ空調よりも、こっちかな」

掛け布団を背負うかたちに持って、
そのままあたしの体の上にかぶさってくる。
首に両腕を回されて、しっかり抱きしめられる。
あたしは、なっちの体と掛け布団の2枚掛け。
あ、確かに、少し冷えてるかな、体。
だけど、耳元で聞こえた深いため息は
熱い…ような気もした。

「…あったかい…」

ため息のあとになっちは、そうつぶやいた。
78 名前:完名無 投稿日:2001年12月24日(月)06時33分49秒
「…さて、探検、しちゃおっかな」

探検って…布団の中を?
なっちの頭が下がって、掛け布団に半分くらい隠れると
ちょうどそこにはあたしの乳首があるわけで。
すぐにまた、さっきの、くすぐったいような、
どうしていいかわからない感じに襲われる。
…なんでかな…これ、背骨つたって、腰にくる感じで。
あんまりそうされてるとさ、腰が勝手に…跳ねちゃうんだよ、なんか。
これはどうなの安倍さん。やっぱあたし、おかしい? おかしくない?
79 名前:完名無 投稿日:2001年12月25日(火)21時55分35秒
さんざん両乳首を刺激されて
時々ため息みたいな声が出ちゃうのも
止められなくなってきてる。
どうしよう。
ふと刺激から開放されたんで
ほっと一息ついたら、
なっちの頭がさらに下がり始めた。

「やめて」って言わないって決心したばかりだけど
やっぱり言いたい! 言いたい!
なっちの体を支える手の位置も下がって
あたしだけが掛け布団から顔を出してる状態。
…それ…はやっぱり、勘弁してほしい。
わからないけど、たぶん男の人との普通の…
その…セックス…よりも…
ずっときっと恥ずかしさが強いっていうか、抵抗があって。
思わず身がすくんじゃう感じで。
脚開けなんて言われても、絶対に
無理だ無理だ無理だ!
80 名前:完名無 投稿日:2001年12月25日(火)21時56分25秒
「…ぷはぁ、息が苦しい…」

突然なっちが掛け布団をまくって体を起こした。
…そりゃそうでしょう。
…え、ということは…
直接明かりの下で、脚開けって言われるの!?

ベッドから少し離れたテーブルの上に、
エアコンのリモコンが置いてある。
なっちがちらっとそっちに目をやった。
それからあたしの顔を見た。

「…ん、まあ…いいか、うん」

そうつぶやいて、

「横、向いてみて」

と指示した。
81 名前:完名無 投稿日:2001年12月25日(火)21時57分21秒
「…横って」
「…えーと、そうだな、こっちが右…だから…
左側、下にして」

促されるまま左腕側を下にして横向きになる。
そうしたら、あたしの背中にぴったりと寄り添うように、
なっちが体を横たえた。
その上から、また掛け布団に包まれた。

「これなら、恥ずかしくないっしょ」

…気を、つかってくれたんだろうか。
82 名前:完名無 投稿日:2001年12月26日(水)01時35分28秒
なっちの右手が、あたしの腰をそっと撫でる。
首のわきから前にまわされたなっちの左手の指先が
あたしの左の乳首に絡みつく。
たしかに、顔を見られないで済むのは、少し楽。
目を閉じて、うっかり声が出ちゃう時とか、
顔を見られているかも、と思うと気が気でないから。
脚を大きく開かなくて済みそうなのも、少し楽。

なっちの呼吸と心臓の音が
さっきよりよく伝わってくる。
落ち付いてるわけじゃないんだね、なっちも。
下手すると、あたしより鼓動早くない? 今。

あたしの腰を撫でていたなっちの右手が
「さっきの部分」へ進んできたのがわかる。
…濡れてるのは、もうわかってる。

そこをいいようにあしらわれて、
少しして、頭の中が真っ白になった。
83 名前:完名無 投稿日:2001年12月26日(水)01時37分06秒
「…ごめん明日香、なっちも、もう」

え?

「…も、ガマンできないや」

え…え、同じことをあたしにもしろと…?
自信が…全然ないんですけど…

「…明日香は…何もしなくていいから」

え?

「…悪いけど、脚、ひらいてくれる?」

うそ…どうする気よ?
いまさら協力しないとは、言わないけど…
84 名前:完名無 投稿日:2001年12月26日(水)01時38分17秒
なっちが体を起こしてあたしの体を上に向ける。
あたしのひざを割って、その間にひざをつく。
両足首を持たれた。
そのまま思いっきりももを開かせられる。
ひざは曲がったまま、M字型に脚が限界まで左右に開かれてしまう。
つられて開かれてしまう中心部分をあわてて手で隠した。

「…こ、こんなに思いっきり開かないと、だめなの…?」
「…ごめん、なっちも、でっぱってるわけじゃないから」

…いや、そりゃそうだ、「でっぱってる人」は娘。にいないはず。
85 名前:完名無 投稿日:2001年12月26日(水)01時54分00秒
ひざ立ちのなっちが、ひざ立ちのままひざを左右に広げていく。
そしてさらに、脚の間のそこを、片手の人差し指と中指で広げる。

…うわ、見えるよ…初めて見た…。

そのままの体勢でなっちは体を進めて、あたしの上に
覆い被さってきた。
片手で自分の体重を支えて、片手は自分のそこを
広げた状態で。

…吸い付いた…驚いた…本当に…。

そのまま腰を強めに押し付けられて、あたしの両膝は本当に真横に全開。
広げていた部分から片手を離して、両手で自分の体重を支え直した
なっちが、あたしのすぐ上でささやく。

「…大丈夫? 股関節、痛くない?」
「…ん…大丈夫、みたい…」
「…体固いと無理だね、これ…」
「…柔らかいよ、今も…大丈夫」
「…ごめん…えっと、…すぐいくから」

…これって…ビデオで見たことある、男女の…
正常位っていうの? あれと同じじゃん…
できるんだぁ、知らなかった…
86 名前:作者蛇足トーク 投稿日:2001年12月26日(水)01時55分15秒
これ、2chの同性愛板で「できない」って
断言してた人がいましたが、できます。ご心配なく。
87 名前:完名無 投稿日:2001年12月26日(水)01時56分36秒
この体勢のまま、キスをされた。
舌を絡められたまま、なっちが少しずつ動き出す。
…あ、動きはビデオとちょっと違う、かも…。
…そか、「出し入れ」じゃないからね…
…押しつけられて、腰で上下に揺さぶられる感じ…

すぐになっちの息が荒くなってきて、
合わせていた口と口が外れる。

「…明日香、明日香ぁ…」

切ない声で呼ばれる。
…お互いの、同じ部分なんだよね、これ。
固くなって当たってるのも、柔らかく絡み付いてるのも。たぶん。
ぬるぬるするのは、もうどっちのかわかんない。
たぶん、混ざってる。
それで、あたしだけ冷静でいられるわけもない。

あたしの体のすぐ上で、なっちの胸が
動きに合わせて揺れている。
固くなった乳首が、時々あたしの乳首をかすめる。

腰の動きが、だんだん切迫したリズムを刻んでいく。
切れ切れの声で、何度も名前を呼ばれる。
そのあと、小さな悲鳴のような声が漏れた。
88 名前:完名無 投稿日:2001年12月26日(水)01時57分22秒
あたしの上で、荒い息をしているなっち。
密着したままのそこが、まだ不規則に痙攣してるのが伝わってくる。

少しして、ふっと力が抜けたように
あたしに体重を預けてきた。
髪を撫でたら、汗でしっとり濡れてた。
せっかく寝る前に、乾かしたばっかりだったのに。
89 名前:完名無 投稿日:2001年12月26日(水)02時07分52秒
…次の日はね、うん、
あたしが先に目が覚めて、なっちを起こしたよ。
目覚ましセットしておかなくて、大丈夫だったのかな。
疲れてたんだろうね。
仕事が忙しくて疲れてたのか、
あんなことしたせいか、わかんないけど。
…どっちも、かなぁ…。
なんか電話が鳴って、あわててた。
朝はもうゆっくり話す暇もなくて、ただ、
「これから先、年末も年始も忙しくて
しばらく逢えなくて、ごめん」
って言われた。
家にもまともに帰れなくなるみたい。
ドラマも生番組も、年明けライブもあるしね。
年長組だから、娘。本体の仕事も遅くなるし。
クリスマスも年越しも一緒にできなくて…って
残念そうだったけど、
この時期に仕事がない芸能人のほうが心配じゃない?
って言ったらなんか、苦笑いしてた。
もともとクリスマスも年越しも、そういう予定じゃなかったし、
あたしはそんなこと全然気にしてなかったんだけど。

…もしかして、かなり無理してあの日、
あけてくれたのかなぁ。
90 名前:完名無 投稿日:2001年12月26日(水)02時10分25秒
それから、別れ際にこう言われた。
「なっち、何があっても、どんなかたちでもね、
芸能界に残るよ。待ってるから」

きっと来年はね、なんか、いろいろ
変わってくると思うんだ。
あたしのあの記事も、
全部が全部嘘八百ってわけでもね、ないし。
ヨリコっちも、デビューするし。
そしてなっちもね、たぶん、何か変わる。

変わるのが世の中。そして人生。
何が起こるかもわからないのが、人生。
モーニング娘。もいままでどんどん変わってきたし、
今後も変わっていくんでしょう。
あたしだって、変わっていくと思うよ、いろいろ。
まだ若いんだしねっ。
91 名前:完名無 投稿日:2001年12月26日(水)02時11分29秒
それでね、えーと…
ごめん、呼び方わかんないから「あなた」でいい?
あなたにこんな話、したのはさ…

え? そりゃ、恥ずかしいよ! 当たり前じゃん!
もーホントにこんなコト話すのガラじゃないしさ、
いやんなっちゃうんだけど…
…聞いてるほうもいやだったかな?
だったら…ごめん。
だけど、そのへんテキトーに話しちゃうとさ、
ほんとのこと、わかんないかもって思って…さ。
どうしても、わかんないって言うかさ…知りたいんだよね…

なっちの気持ち? あ、それはもう、たぶんわかった…と思う。
…いや、わかってないのかな? どうかなぁ?
うーん、もともとねぇ…「何も言わずに分かり合える」って
相性ではなかったと思うよ。
正直…理解できない人って思ってたこともあったし。
なっちもあたしのこと、そう思ってたこともあるだろうなぁ。
でも、あの日、とりあえずさ、精一杯伝えようとしてくれたってことは
わかったっていうか。
今はそれでいいと思ってるんだ。
92 名前:完名無 投稿日:2001年12月26日(水)02時12分33秒
知りたいのは、自分の気持ちなんだよね。…そう、あたしの。
一歩一歩確認してきたわけじゃないし。
うん、昔は、忙しすぎた。
で、あの日は、やっぱり忙しすぎた…かな、心も体も。
自分のことなんだけどさ、
自分でもよくわかんないとこがあって。

あたしってさ、なっちのこと…好きなのかな?
…愛してる…のかな? 

よかったら、あなたの意見を聞かせてよ。


―END―
93 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月26日(水)06時10分09秒
なんか良いですね…
うまく言い表せないんだけど、すごく好きです。
終わり方も綺麗ですね。
…って終わっちゃうんですか?
もっと読みたいですよ〜
94 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月26日(水)08時46分37秒
感涙。
95 名前:完名無(私信) 投稿日:2001年12月27日(木)03時37分33秒
最後まで読んでくださった方がいらっしゃって
大変嬉しく思っております。

私事で大変恐縮なのですが、昨日祖母が亡くなりました。
昨日かなり無茶な量の更新をしたのですが、
それから何時間かあとの、午前中の出来事でした。
虫の知らせとは思いたくありませんが
昨日終わらせていなかったら、
意地でも年内に終わらせるつもりで書き始めたこの話が
しばらく中途半端になってしまうところでした。

読んでくださった方は、今、生きているわけですよね?
それが今はなんだか救いです。
どうか生きている今を輝いて、
活き活きと精一杯生きてください。
若い人も、若くない人も。生きている限りは。

この話を祖母に捧げるわけにはいきませんが、
「仕上げさせてくれてありがとう」と言いに
数日出かけます。

戻りましたら、続編をここで書かせてください。
つらいことも嫌なことも忘れて癒される、一番好きな時間なのです。

辛気臭い話で大変申し訳ございませんでした。
続編はもちろん辛気臭い話にはなりませんので。
96 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月27日(木)07時04分53秒
実際のなっちは今でも明日香を待ってるんだろうか・・・。
銀杏コンビよ、永遠なれ!


>完全無さん
 御祖母のご冥福をお祈りいたします。
97 名前:完名無(トーク) 投稿日:2001年12月31日(月)22時37分58秒
>>96
ありがとうございます。お葬式、行ってきました。
今思うと「13人がかりのクリスマス」のオープニングで
辻が紺野のひざをさわった時の手つきみたいだったかな、と
思うのですが、そっと指先で祖母の手に触れてみました。
冷たかったけど、生きている間はきっと楽しい人生だったと思います。

生きてる間に「一番やりたいこと」ができれば一番幸せな人生でしょうね。
若い人も、若くない人も、そのために生きて欲しいと思います。
なっちは…明日香がいたら可愛さ200%アップ、やる気300%アップとか
2chでも言われていますが、この前のHEY!×3の、明日香が映った時の
反応を見るとやっぱり、一緒に歌いたい人第一候補なのかな今でも…と。
明日香がそう思っているかどうかは…なところがなんか微妙に
片想いっぽい気もしますけれど。そんな感じを表現したかったんですよね。
「なっちがんばれ!」の想いも込めて。
とりあえず、今やりたいことを精一杯頑張って欲しいです、みんなに。
98 名前:完名無(トークその2) 投稿日:2001年12月31日(月)22時38分58秒
2ch羊板に「後藤吉澤組VS石川福田組」というスレがあるのですが
12/25の名無し書き込みに、まるで上で終わった私の小説みたいな
妄想があってびっくりしました。あれ、私じゃないです。
でも、そんな似たこと考えてる人がいるんだなあ…と感動しました。
ただ、「石川福田組」に書いていい妄想かどうかとは思いますが。

私が今一番やりたいことといえば、この続きが書きたいです。
銀杏二人が関わってくる、別カップリングの話になる予定ですが
それでもよろしいでしょうか?
また、このタイトルのここで続けていいものなのでしょうか?
99 名前:完名無(ご挨拶) 投稿日:2002年01月03日(木)19時11分50秒
とりあえず続きご希望の方は現在いらっしゃらないようですので
やはり上記ENDにて終わりにしておきます。

もし今から、もしくは倉庫行きになってからご覧になる方が
いらっしゃいましたら、下げ書きのトーク部分(間違えて
上げてしまっている部分もありますが)は完全に読み飛ばして
いただけると感情移入度が高められることと思われます。

それではこれにて失礼致します。
100 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月05日(土)02時35分34秒
ありゃ、あのままエンドなのかい?
でも、銀杏コンビがラブラブな設定だったら、別の小説でも有りかと。

よーするに銀杏コンビ最高ということで。よろしくおねがいします。
101 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月05日(土)03時57分55秒
銀杏コンビが入ってる小説は貴重なので続きをお願いします。
余裕があったら、この小説の安倍視点を希望。
102 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月05日(土)07時38分56秒
いやいやいや・・・
続きを待ってますよ。
レスをしないこっちも悪いんですが・・・
是非続きをお願いします。
103 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月06日(日)19時34分21秒
あの、私も楽しみに読んでました。レスが遅くてごめんなさい。
なちふくコンビも出てくるなら、ぜひぜひ読みたいです。
待ってますよー。
104 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月07日(月)08時41分10秒
みなさんに同感。ここで終わるのはもったいないっす!
105 名前:完名無(私信) 投稿日:2002年01月07日(月)21時49分50秒
読んで下さってる方、いらしたのですね。
ご発言いただけて誠にありがとうございます。
読んでくださる方が1人でもいらっしゃれば
ここに書く意義はあるかな、とは思っていましたが
0人なら自分が楽しむためだけにしかなり得ないので
日記帳にでも書くべきかと思っていました。

正月休みの間にまた一気に進めておきたいな、と思って
読んでくださる方がいれば、とお伺いを立ててみたのですが、
もう休みが終わってしまい、これから一ヶ月ほど
ほとんどこのための時間がとれなくなってしまいます。
前とは比べ物にならない遅々としたペースでよろしければ
時々このスレを覗きにきてみていただけますか。
106 名前:完名無(ご挨拶) 投稿日:2002年01月07日(月)21時56分08秒
ちなみにここまでの安倍さん視点の話は
切ないほど想像しながら書いていましたので、可能です。
ただ、この後の続きで安倍さんが赤くなったりうろたえたり
する様子をとても書きたいと思っていましたので、
それで代替させていただいてもよろしいでしょうか?
107 名前:完名無 投稿日:2002年01月07日(月)22時09分52秒
すみません、上の書き込み、何故か(ご挨拶)に…
クッキーが別々にあったのですね、ここ…

更新ペースが遅いと倉庫落ちって、ありますよね?
可能な限り努力しますので、よろしくお願い致します。
読んでくださる方がいらっしゃるとわかって、
とても心強くなれました。
では、少しずつになってしまいますが、可能な日に書き始めます。
108 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月08日(火)03時10分59秒
よかったぁ、おかえりなさい。
保全協力しますんで、ムリせずマイペースで書いてくださいね。
安倍さん視点は、機会があったら外伝って感じでもいいのでお願いしたいなぁ。
とにかく続き、楽しみに待ってます。よろしこ〜!
109 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月08日(火)07時12分47秒
お帰りなさい、待ってました。
保全が必要なら協力しますので、是非作者さんのペースで更新してください。
それでは今後もよろしくお願いします。
110 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月09日(水)06時43分58秒
保全はまかせてください。
楽しみに待ってます!!銀杏コンビさいこー!!
111 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月10日(木)05時42分06秒
おもしろい!これからもがんばってください〜♪
112 名前:完名無 投稿日:2002年01月11日(金)07時39分28秒
その日の午前中、あたしは山手線の池袋駅にいた。
新しいバイトの面接があって、池袋の外れの
オフィスビルっていうの? その一室に行ってきた。
勤め先自体は、もうちょっとうちからアクセスのいい
違う場所なんだけど、なんかチェーン店みたいで、
本社?人事部?かなんかのあるここまで来いってことで。
面接はすぐ終わって。
履歴書置いて、後ほど電話で連絡ってことで、
本日はさっさと開放。

いちおう一日予定空けておいたんだけど、
思ったよりもずっと早く時間が空いちゃった感じで。
まあいいんだけど。
池袋で行きたいところもとりあえず今はないし、
とりあえず地元まで帰ろうかと思って
池袋駅から電車に乗った。
113 名前:完名無 投稿日:2002年01月11日(金)07時40分59秒
通勤ラッシュはもうほぼ終わってる時間で、
電車の中は、他人と体を触れ合わせないで済む程度には
余裕がある感じだった。
押し合い状態のラッシュって、
それほどひどいのは経験したことない。
高校行ってた頃も、下り方向だったし。
でも、話に聞くひどいラッシュ電車は
できればなるべく経験したくないもんだ、と思う。
ま、ラッシュ電車に乗らなきゃいけない職業に就く気なんて
ないんだけどさ。

池袋を出て少しした時、そばに立っていた
大学生っぽい男の人2人組が話してるのが聞こえた。

「…なぁ、あれさぁ、辻じゃねえ?」
「え? 辻ってモームスの? 嘘だろ?…あ」
「な? 辻だよな? あれ」

一人が指差すほうを見ると、向こうの出入り口そばに
立っている女の子が見えた。

帽子とかサングラスとか、そういう顔隠すモノを
一切身につけていない潔い辻さんの姿がそこにあった。
最近だったらこの前なっちと待ち合わせした時に生で見てるし、
どう見ても人違いでもないと思う。
度胸あるなあ…顔丸出しで電車通勤か…。
あたしがいた頃の娘。とは事情が違うと思うんだけどなぁ…。
114 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月13日(日)03時46分46秒
わ、いきなり始まりましたね!!
お待ちしてましたよ(^^)
明日香視点で、辻ちゃん登場!
別カップリングの一人は辻ちゃんなのかな??
バイトがまだ決まっていなかったところを見ると
あれからそんなに日がたっていないのかしらん??
とにかく、楽しみにしてます。けどムリせず、マイペースでね。
115 名前:完名無 投稿日:2002年01月14日(月)10時54分21秒
>>114
書き込みありがとうございます。
読んでくださる方がいるとわかると
励みになるものですね、やっぱり。

>あれからそんなに日がたっていないのかしらん??

そう、だから休みのとれる間に一気に進めてしまいたかったのですが
今は週に一日も休みがとれない時期になってしまいまして
自分でももどかしいです。
あらすじは頭の中でできていますので、時間を見つけて
なんとか進めていきたいです。


116 名前:完名無 投稿日:2002年01月14日(月)11時23分12秒
「…なぁ、声かけてみねぇ? 辻さんですか?って」
「えー、マジ?」
「だってよ、こんなチャンスめったにねーじゃん」
「…そーだけどさぁ…」
「行こうぜ、な」

…あ…ヤバいかも…。
そっか、辻さんは、実家から電車だと池袋乗り換えになるか。
まあ顔出し状態で電車通勤しちゃうことがあるんなら
こーゆーのも慣れっこなんだとは、思うけど。
でもちょっと心配だ。

見回すと、他にもこんな感じの、大学生だか予備校生だかって
感じの男の人が何人もいて、
2人連れの、積極的でないほうの一人が
その人たちに声をかけてる。
辻さんはその人たちに
何気に取り囲まれたような感じになっちゃって。
女の人とか、座ってる人とかも「何事?」って感じで、
注目を集めちゃってる。
117 名前:完名無 投稿日:2002年01月14日(月)11時25分17秒
何か言われてるみたいだけど、
こっちからだと後ろ向きに立ってる人たちなんで、
よく聞こえない。
でも、辻さんの通る声は聞こえた。

「すみません、通してください」

降りたい…んだろうな。
通してやれっつーの。
だいたい、一人じゃ声もかけらんなかったんだろうに
人数の力を借りてぐずぐず取り囲んでるのも
どうかと思うよ。
本人が困ることをするのは、正しいファンじゃないよね。

「…ちょっと…ちょーっと、ごめんなさい」

姿勢を低くして、辻さんを取り囲んでいる男の人たちの
下をくぐる感じでかきわけて、
辻さんから見える位置に顔を出してみる。
おせっかい焼きたい性分では決してないんだけど
…やっぱ、見てらんないっていうか。
知らない人でもないわけだし。
118 名前:完名無 投稿日:2002年01月14日(月)11時27分35秒
「…えっと、『田中さん』、元気? 久しぶりだね、
こんなとこで会うなんて」
「…え…あ、あれ? ふくらさん!」

…合わせろってば…無理か、こんな急には。

「え…福田…?」

取り囲んでる男の人たちの中の一人が
そう言ったのが聞こえたけど、
この際無視するしかないでしょう。

「どこ行くの? 買い物? あたし今日ヒマなんだ、
よかったらいっしょに行こう!」

そう言って、手を差し出す。
我ながら強引すぎるとは思うけど
もうこの際それも仕方ないでしょう。
あとはこれに辻さんがのってくれるかどうかなんだけど。
119 名前:完名無 投稿日:2002年01月14日(月)11時34分53秒
114のメール欄にも励まされ頑張って進めてみる。
120 名前:完名無 投稿日:2002年01月14日(月)12時00分43秒
(●´ー`●)(0゜一゜0)まで行きつくのに
どれだけかかるかわからないけど…
121 名前:完名無 投稿日:2002年01月14日(月)12時02分11秒
「…うん!」

そう言って辻さんが
差し出したあたしの手を握った。
OK!

ちょうど駅に着いた電車のドアが
開く音が、背中の方から聞こえた。
タイミングをはかって、少しだけ待ってから
辻さんを人の囲いから引っ張り出す。

手を引いて、電車から降りたとたんに
ドアが閉まった。成功!
取り囲んでた人たちは誰も降りられなかった。
走り出した電車の窓から呆然と見てる。

…どこだここ…高田馬場?

「…ねぇ、ここで降りる予定だった?」
「…ちがうけど…」
「そっか…遅刻させちゃった?
余計なことしちゃったかなぁ…ごめんね」
「だいじょぶです。すぐ次の電車きます。
時間も全然、余裕で出てきたし」
「…これから仕事、だよね?」
「うん。でもお買い物もいきたいですね」

そう言って辻さんはにっこり笑った。
手は、さっきからつないだまんま。
なんか、かえって目立っちゃいそうじゃない? これは…。
122 名前:完名無 投稿日:2002年01月14日(月)12時03分21秒
「ね、顔隠さなくて大丈夫なの?」
「…帽子かぶってたんだけど…駅で風で飛んで
線路に落ちちゃって」

そういえば今日はちょっと風があるね。
だからあたしも、マフラーを巻いていた。

「これ、貸そうか」

つないでいた手を離してもらって、
首に巻いていたマフラーをはずす。
それを辻さんの、顔の下半分がなるべく
隠れるように巻いてみる。

「…ちょっと不自然かな…どう?」
「…あったかいです」

…いや、そういう理由で貸したんじゃなくて…。
芸能人って自覚があるんだか、ないんだか。
とりあえず、なにもないよりはマシっぽいね。
123 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月14日(月)16時57分25秒
114の人じゃないっすけど。更新されててうれしいです
完名無さんがんばってください!
なちふく大好きです。マジ。
今、1番好きな小説っす!
124 名前:チャーミー銀杏 投稿日:2002年01月14日(月)21時55分51秒
 すっげぇ良い感じですねぇ。
 ぶっ通しで読んじゃいました(藁
 うちのなっちには不憫な思いをさせてるので、なちふくを読ませてもらって、
何だか私が嬉しくなってしまいました(藁
 頑張ってください!
125 名前:114 投稿日:2002年01月17日(木)02時06分51秒
をを、チャーミー銀杏さんの後に書くなんて緊張〜!!
>>115>>119
なんかこちらが楽しませてもらってるのに喜んで頂いて恐縮です。
出てくる娘。達の雰囲気が私のイメージと合ってるせいか、
自然に入り込めるんですよね。今回は辻ちゃんのボケボケがツボ(^^;)
なんだか(●´ー`●)(0゜一゜0)までは遠いみたいですけど、
あらすじが出来てるってことで安心しました。
ま、なっちは今忙しいしね(ワラ
出きるだけながーく読んでたいので、ぼちぼちとがんばってください。
126 名前:完名無 投稿日:2002年01月17日(木)03時20分33秒
108-111へのレスをしないでいきなり始めてました。
すみません。

>>108>>109>>110
ありがとうございます。
保全が必要なほど間があかなければ
それに越したことはないのですが。
私自身が今すっかりこの話作りに中毒っぽいので
(時間がない時に限って妄想が止まらない状態)
無理やりなんとかしちゃうかも知れません。
本当は毎日更新したいのですが…もどかしい…。
「メール欄に本音を書くスレ」的ご意見、承りました。

>>111
ありがとう!なんとかがんばってみます〜♪
127 名前:完名無 投稿日:2002年01月17日(木)03時22分40秒
>>123
私も、更新を読んでいただけてうれしいです。
この後も終わりまで1番好きでいていただけるかどうかが
問題…と、ちょっとずうずうしい心配してみたり。
いや、2番目でも5番目でも10番目でもそれ以下でも全然大丈夫。
読んで頂けさえすればそれだけで大感謝。
よろしかったら終わりまで見届けていただけますか?

>>124師匠
わ…藁わないで…ああぁ(自爆
ネット上で発表していくのって、思ってたより恥ずかしいものでした…。
しかし其方のなっちが不憫ってことは…
やはり梨華ちゃんの一時の不安通り…
明日香に激しくよこしまな想いを…実は抱いていると…?
そういう「あすりか」ファンにとって重大に気になることを
さらっと言って去っていく粋な師匠…ああぁぁ(永久回転運動

とりあえず、「あすりか」がなかったらこの話もなかった、
ということはお伝えしておきたいと思います。
128 名前:完名無 投稿日:2002年01月17日(木)03時25分03秒
>>125=114
コテハンさん…てことでよろしいですか?
いや、レスってありがたいものなんですよね…ほんとに。
読んでくださっている方がいることがわかって。
(●´ー`●)(0゜一゜0)までは…とりあえずは
それほど遠くもないんです。
今回の更新で、このままどこへ連れていかれるのか見え見えでしょう?
ただ、落ち付いてまた2人っきりにしてあげられるまでが…
更新ペースの関係もあって…ああ、毎日更新ができればなぁ…

では更新させていただきます。
129 名前:完名無 投稿日:2002年01月17日(木)03時26分22秒
次の電車が来た。
あたしもここで降りる予定じゃなかったんで
辻さんと一緒に電車に乗る。
乗る車両の位置はさっき降りたところからずらして、
次の駅に着いた時の用心。一応ね。
さっきの電車より少し空いている感じで、
乗ってる人たちも年配の人が多い感じで
ちょっと安心。

「それ、返してくれるのはいつでもいいからさ。
したまま行きなよ」
「…今日、ヒマなんですよね? ふくらさん」
「…え、それは…」

言葉の勢いっていうか。
あれがとっさのお芝居だって、
理解してくれてるんだと思ってたけど、違う?
まさか、いくらなんでもそんなことはないよね?
まあ、今日、予想外にヒマになっちゃったのは
事実なんだけど。

それ以上あたしの返事を待たずに
辻さんは腕を組んできた。
130 名前:完名無 投稿日:2002年01月17日(木)03時26分55秒
「…あのさ、辻さん…」

どういうつもりかわからなくて尋ねようとしたら
顔を近づけてきて、耳元でマフラーの布ごしの口に
ささやかれた。

「電車の中では田中さんと呼んでくらさい」

…思わず吹き出してしまった。
131 名前:完名無 投稿日:2002年01月17日(木)03時27分50秒
辻さんは思ってた以上に強引で力強いというか…
本当に力が強いのかも知れない。
有無を言わせず腕を組まれたまま引っ張られて
彼女の乗り換え駅であたしも乗り換えさせられた。

「あの…ちょっと…?」
「まあまあ」

まあまあ、じゃなくて!
いや、大声で抗議するわけにもいかない。
目立っちゃうから。
そうじゃなくてもやっぱり、時々
辻さんの顔をチラチラと見ている人がいるわけで。

仕事場まで送ってほしい、ってことなのかな、これは。
ま、しょーがないか。確かに、その方がいいかもね。
一人のほうが無防備っぽい感じに見られやすいだろうし。
132 名前:完名無 投稿日:2002年01月18日(金)16時15分27秒
…で、結局辻さんに腕組まれたまま
娘。の控え室に向かう廊下を歩く羽目になっているワケです。

腕組まれたまま…通れてしまいました、スタジオ受付。
パスが必要なとこじゃなければね、まあ
辻さんと腕組んでる人は入れるわけだけど。
でもさ、なんで?

甘え上手っていうか、この子…
有無を言わせず年上の人間を思い通りに動かす天才なんじゃないの?
なっちに甘えられたときは「イヤ」とかもはっきり
言えてたもんなんだけどね…辻さん相手だと…
いや、言ったんだけど。一応。
でも、いつの間にかここまで連れて来られてる。
…なんだかんだ言って、他人に流されやすい人なのか? あたし…。
いや、そんなことはない! …と信じたい…。

けど…結局なっちにもねぇ…イヤって口では言っても
最後までそれで通したことって、あったっけ…?
なんだかんだ言ってやっぱ、つきあわされたりしたし。

…っつーか、ついこの前! あれは!?
あれも…「つきあわされた」ことに…なるのか?

そうだよ…なっちも、いるかな…控え室。
もしいたらどうしよ…あ、いや、普通にしてればいいのか…。
133 名前:完名無 投稿日:2002年01月18日(金)16時20分28秒
「おはよ〜ございま〜すぅ」

と屈託のない声で、ドアを開けて入っていく辻さん。
腕は、組まれたまま。
わかった、もう、覚悟を決める。
「何しにきたの」って言われたら
懐かしい友人や新しい友人に会いに来た。
そういうことにしとこう。
嫌々流されたわけじゃない。
ちょっとみんなの顔を見たかったから、あえて流されてみた。
そうだよ、うん。

「お〜辻、来たかぁ…
って、あれ!? 何? 明日香? うそ、なんで?」

真っ先に声をかけてくれたのはまりっぺ…矢口。
あ、なっちは、いないみたいだね。

「お〜、矢口ぃ、最近ますます可愛いねぇ」
「明日香ぁ…え〜、ちょっとぉ〜…ねぇ、なんで辻と一緒に?」
「えーっと…」
134 名前:完名無 投稿日:2002年01月18日(金)21時13分48秒
今考えてた理由をうまく言おうと思ったら、
辻さんが組んでいた腕からやっと離れて
奥へすっ飛んで行った。

「あのねー、ちかんがいてねー、助けてもらったの!」
「えーっ! マジかよぉ! おい!」
「えぇっ!?」

…あたしも辻さんのその言葉に驚いたもんだから
矢口が不審な目で辻さんとあたしを交互に見る。
辻さんは自分のカバンを開けてる。
中からお菓子の袋を取り出して、開けて、ひとつ自分の口に放り込む。

「辻さん! 痴漢だったの? あいつら…」
「ん〜」

どっちともつかない返事で、何かを探してる様子。
紙のお皿を見つけて、それに袋の中身を空けた。

「はい」

お菓子山盛りのお皿を持ってきて、あたしに差し出す。
135 名前:完名無 投稿日:2002年01月18日(金)21時15分45秒
「あ、うん、ありがと」

ひとつつまんで口に入れる。
それを見て納得したようにニコッと笑うと、
机の向こうにいる加護さんのほうへ戻っていった。

お礼のつもりなのかな、これ…。
ほんっと、憎めない子だね。
思わずくすくす笑っちゃうあたしに、
矢口はまだ不審顔。

「…なーんか、ワケわかんないんだけどさー、
2人とも、大丈夫だったわけ? なんか後からヤバいコトに
なったりさぁ、しない?」
「あ、うん。大丈夫だと思う」
「…んー、明日香がそう言うんなら大丈夫なんだろーけど…
ここまで送らされたの? おい、こら辻ぃ!
なんかさ、謝んなきゃいけないかな」

「辻希美のやることにいちいち理由なんてなぁい!…です」
そう言って微妙な表情で笑ったのは、加護さん。
…フルネームで呼んでるの? 辻さんのこと。
136 名前:完名無 投稿日:2002年01月19日(土)01時52分22秒
あとここに他にいるのは…小川さん、高橋さん、
…奥に新垣さん、と紺野さん。
紺野さんと目が合ったんで微笑んだら、会釈を返してくれた。

「…え、と、おはようございます!」

それにつられて、そう声をかけてくれたのは、小川さん。
さらにつられて「おはようございます」と言ってくれたのが
高橋さんと新垣さん。
そのあと4人で何か話してる。

「ね、矢口、控え室分かれてるの?」
「あー、13人もいるとねー。ここ、狭いでしょ。
別撮りがあるからプッチとタンポポが別んなってんだよ」
「え、タンポポ…」

矢口と加護さんがいるここって…。

「まあ、メイクの順番来るまではさ。
他の連中もきっとこっち顔出すと思うから会ってけば?
つーかおいらは、辻待ってたんだよ。おい辻ぃ! ちょっと」
「…はぁい」
137 名前:完名無 投稿日:2002年01月19日(土)01時53分33秒
辻さんは加護さんと並んでお菓子を頬張りながら、台本読んでる。
5期メンバー4人は、着替えはじめてる。
忙しそうだね…。
ここはもう、頑張ってね、としか言えない存在の
あたしのいる場所じゃないんだよね。
別にそんなことで寂しさなんて味わうつもりもないけど。

それに、何がっていうわけじゃないんだけど、
なんとなーく、微妙にどこかぎくしゃくした感じが
しないでもないのも、
まあ当然といえば当然なんだよね、きっと。
あたしがいた頃の8人だって、全員和気あいあいってわけでも
ない時もあったし、ねぇ。

ま、カオリや圭ちゃんと会う機会はまたいつかあるでしょう。
そろそろ退散しようかと思ったところに
聞き覚えのある声が飛び込んできた。
138 名前:完名無 投稿日:2002年01月19日(土)02時11分28秒
「おっはよ〜」

…なっちだ。
心臓がひとつ音をたてたけど、うろたえてたまるか。

「おー、おはよう。今日も遅いね」
「…へぇっ!? 明日香ぁ!?」

入ってきたとたん、体全体で驚くなっち。オーバーアクションだねぇ。

「今日も一日、頑張れよ! んじゃ!」
「ちょ、ちょっ…ちょーっと待った!」

入れ替わりに出て行こうとしたあたしの腕を
なっちがあわててつかんで止める。
139 名前:完名無 投稿日:2002年01月19日(土)02時15分03秒
「なんで明日香がここに? あ、なっちのメール、見てくれた?」
「へ? メール?」

携帯を取り出してみる。電車乗る時に電源切ってたんだよ。
…あ、来てる。なっちから。

 今晩会える?

…それだけのメール。
見て、顔を上げたら、なっちと至近距離で見つめ合う状態に
なってしまった。

「…待ちきれなくて、なっちに会いにきてくれたのかい?」
「…え、や、あの」
140 名前:完名無 投稿日:2002年01月19日(土)02時16分45秒
そこへ辻さんが、体当たりの勢いですっ飛んできて
そのままあたしに抱き付いた。
突進かこれは…転びそうになったよ。
っつーか、なんであたし? なっちじゃなくて?
あ、あたしのマフラー持ってきてくれた…のか。
そうか、返してもらうの忘れるとこだった。
って、うわ、なんでそんなに密着するかな。
あたしのマフラーを持って、あたしの首筋に顔を寄せて
辻さんは、たぶんこの控え室にいる
全員に聞こえる大きさの声で言った。

「ん〜、これとおんなじにおいがする〜」
「…なっ、ちょっとぉ! 辻ぃ! こら〜!」

あたしが反応するより先になっちが、
辻さんをあたしから引き剥がしにかかる。
141 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月19日(土)13時31分04秒
頑張って下さい。
18迄下がったので保全しときます。
142 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月19日(土)17時57分14秒
なっち登場!うれしいっす。
今日はなっちのドラマ。さらにうれしい。
143 名前:銀杏猫 投稿日:2002年01月20日(日)01時42分44秒
なちふく!萌えました!!萌える話をありがとうございます。
今後も是非、なっちと明日香を出してくださいませ。
144 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月20日(日)03時28分26秒
辻にやきもちなっち。
激しく、烈しく萌えぇ〜!!
145 名前:value 投稿日:2002年01月20日(日)17時38分07秒
激しく萌え!!
146 名前:名無し福ちゃん 投稿日:2002年01月21日(月)06時03分00秒
他のメンバーとどう絡むのか楽しみです。
実際には楽屋とかでは会ってるんでしょうけど、
こっちの世界の住人では解らないですからね…

作者さんの描くなちふく以下娘。達を楽しみにしてます。

147 名前:完名無 投稿日:2002年01月21日(月)09時52分28秒
あの、コテハン有りの方はもしかして、作家さんの方も
いらっしゃるでしょうか?
すみません、今他の方々の作品を
探索したりじっくり読んだりする時間がとれなくて
(読みたいのですが…以前も書いたとおりまだ時間が
ままならない時期でして)
失礼があるかも知れませんがどうかお許し下さい。

>>141
そんなに下がってましたか。
今この板、活発ですよね。最初このスレを立てるときは
一番スレの少ないところを選んで…ということでしたので
ここ緑板にしたのですが。活発なのはいいことですが
なんか消えてるスレもあるようで、
頻繁な更新ができない今の私としては、少し不安になります。

>>142
ドラマ、なっちの出番少な…かったですね初回は。
でも、ちょっと黒っぽいキャラっぽくてまた萌え。
148 名前:完名無 投稿日:2002年01月21日(月)09時53分24秒
>>143
あ…もしかして紫板…の方でしょうか。(違いましたらごめんなさい)
すみません、今発見して、まだ全部読んでないのですが
後ほど読ませていただきますね。なち語りのようで、楽しみです。
私もこれ、最後のほうでなち語りにさせていただこうかと思ってます。
流行カップリングに…なれるかな?
いや、そういう野望を持って書いてるわけではないですが。

>>144
実物の辻となっちって、仲よさそうですよね。
だからこそ書いてみたくなったところです。

>>145
書いてる私が一番萌えてるわけで…
その萌え妄想の共有…成功!ってことで、いいんでしょうか?

>>146
わからないからこそ、妄想が楽しい…って
言いきっちゃってよいでしょうか?
>他のメンバーとどう絡むのか楽しみです。
と言っていただけたのは、実はとても嬉しいんです。
タイトルがもろカップリングというこの状態で
(「あすりか」の影響なわけですが)
それ以外の方向に行き過ぎることに少々悩みもあったもので。
おかげさまで初志貫徹できそうです。ありがとう。
149 名前:完名無 投稿日:2002年01月21日(月)09時54分35秒
5期メンバーたちが呆然とした表情でこっちを見てる。
紺野さんだけ何故だか楽しそうに笑って見てる。
矢口と加護さんは、呆れてるのかあきらめてるのか知らないけど
やれやれ、といった感じで見てる。

…やっと離れてくれた辻さんに
「頑張ってね。またね」
と告げると、
なっちに手を引かれて控え室外の廊下に連れ出された。

「…辻さんって、いつもあんな感じ?」
「…んーまぁ、基本的にはそうだねぇ。でも…」

なっちがひとつため息をついて、続ける。

「ちょっと微妙かな、今、辻加護が」
「へぇ、そうなんだ」

仲が悪い、というわけではないらしい。
ただ、あえてお互いの目の前で
自分が他の人と仲良くするところを見せたがるという。
なんか、あれかな、姉弟がお母さんの愛情を
取り合うみたいなものなのかな?
いや、それとは違う…のかなぁ…。
150 名前:完名無 投稿日:2002年01月21日(月)09時55分22秒
「ま、でも、あの2人もさ、世間じゃいっしょくたに
扱われちゃうことも多いみたいでね…それがまた
しゃくのタネみたいなとこもあるらしいんだけどさ」
「うん」
「ほんとーは、正反対に近い気がするんだよね。
性格とか、いろいろ」
「ああ、そうかもねぇ」

加護さんのさっきの、微妙な表情を思い出す。
…あたしが娘。にいた頃に、同い年の辻さんみたいな人が
もし同期でいたら、どうだったかな。
楽しかったかも知れない、とは思う。
でも、辞めなかった…かどうかは…わかんないな、やっぱり。
151 名前:完名無 投稿日:2002年01月21日(月)09時56分25秒
「お互い、自分にないモノにひかれあうってのは
なっちにもよーくわかるんだけどねぇ。
…補い合う関係、っていうの?」
「そんな感じなんだ」
「そう、なっちと明日香みたいにね」

…なんか妙に饒舌だと思ったら、
そっちに話がくるのか。
っつかさぁ、あたしも、なっちに惹かれてる…って
ことに…なってるのか。決定なのか。
納得していいもんかな、これは。
とりあえず同意の返事をしていいものかどうか
考えていると、
ちょうどそこへ矢口がドアを開けて出てきた。
タンポポの控え室へ戻るらしい。
152 名前:完名無 投稿日:2002年01月21日(月)09時57分52秒
「何コソコソ話してんだよ〜2人で」
「いやいや、なんでもないよ」

なっちが営業用スマイルでそう答える。

「…いーけどさぁ…明日香」
「へ?」
「…なっちをさぁ、持ってかないでよね?」
「はぁ?」
「頼むよ!」

それだけ言って矢口は行ってしまった。
安倍さん! 今の人間関係はいったいどうなってるんすか!?
まったく何が何やら…わかんないんっすけど。
153 名前:完名無 投稿日:2002年01月21日(月)10時01分42秒
「きっと、あれだなぁ…うん」
「…なに」
「明日香と歌いたい、って話したことがあって」
「え…それは、まずいでしょ…
今一緒に頑張ってるメンバーにさぁ、それは」
「明日香がこっちに復帰すればねぇ、全部丸くおさまるけど」
「馬鹿言うなって、もう!」

やっぱ、あたしの来るところじゃなかったね、ここは。
居心地悪いったらありゃしない…。
154 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月21日(月)11時06分33秒
>っつかさぁ、あたしも、なっちに惹かれてる…って
>ことに…なってるのか。決定なのか。

明日香っぽいっす!萌え。っつうか泣けてくる(W
155 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月22日(火)00時00分40秒
相変わらず明日香のセリフうまいっすねぇ。
おかげで萌える萌える・・・ハァハァハァ。

「…なっちをさぁ、持ってかないでよね?」
ここもちょっと萌えたりして。
156 名前:完名無 投稿日:2002年01月24日(木)02時38分02秒
>>154
そう言っていただけると妄想力フル回転した努力も
浮かばれます。まあ、なっちに抱かれちゃってる時点ですでに
「明日香らしくねー!」って意見をお持ちの方も…
いらっしゃるかもしれませんが…。
でも、最後まで読んで欲しいな、ここまで読んでくれた方みんなに。

>>155
今でも明日香は、もし男だったら彼女にしたいのは
矢口なんでしょうかね?
んー、気になる…。

この後、ちょっとレス付けにくい雰囲気に…
なっちゃったらごめんなさい。
レスなくても…もしくは叩きレスなんかついちゃったりしても
平気で進めていくつもりです。保全も自力でなんとかします。
とにかくどうか、少しでも気にしていただけるのなら、
読んでください、最後まで。
157 名前:完名無 投稿日:2002年01月24日(木)02時40分08秒
正直なところ、その話は一番いやなわけだよ。
そんなことなっちだってわかってくれてるって思ってたよ。

「ね、あたしもう、帰るから」
「何か用があるのかい、このあと」
「…いや、まあ、帰るだけだけど」
「じゃあさ、今晩、なっちんち、来てくれるかな」
「…いや」
「え、なんでさ…用あるわけじゃないっしょ?」

用があるわけじゃなくても、いやなもんはいや。
だいたいなっち、無神経すぎる。
そりゃさ、あたしだって、周りに気をつかった発言が
できないことも、少しはあったよ。

…少しじゃないか? …いや、少しだと…思う…けど。
あたしのことはとりあえず、置いといて。
158 名前:完名無 投稿日:2002年01月24日(木)02時40分52秒
あたしがいやなことを言うのもそうだけど…
まあ、それは冗談として流せるとしてもだ。
矢口に平気でそーゆーコト言っちゃうのってやっぱ、
ちょっと無神経すぎないかな。
そんなコト言ってたんなら当然なんだろうけどさ、
おかげでなんか、矢口があたしに冷たい気がするしさぁ。

「今日、ここだけで終わりなんだよ。やっと早く帰れる日なんだ。
だからね、会うなら今日って思ってメールしたんだよ?」
「いや。帰る。行かない」
「…なんで!? もう!」

なっちの声がちょっとヒステリックな感じに上がる。
…そういう時に限って、ていうか、
声聞こえちゃったのかも知れないけど、
加護さんがそっとドアを開けて、また閉めた。
タンポポの控え室へ戻りたいんじゃないのかな。
ここであんまりもめたり長く話してるのも
ますますまずい感じだしさぁ…。
159 名前:完名無 投稿日:2002年01月24日(木)02時41分48秒
ここだと邪魔が入るねぇ、とつぶやいて
なっちがあたしの手を引く。
どこに連れていく気だ。
もう帰るってば。

「タンポポ…は今いるんだよね、絶対」
そう言ってなっちが
タンポポの隣の控え室のドアを軽くノックする。
あの…「プッチモニ様」って書いてあるんですけど…。

「よしよし、やっぱりこっちは誰もいないや」
「ちょっと…勝手に入っちゃまずいって」
「へーきだ。いないんだから。だいたい3人で
一部屋なんてぜーたくだ」

出たよ、なっちの理論…。
だいたい、なっちがよくてもあたしはいやなんだってば。

「ね、帰るって、あたし」
「だめ、待ってよ、ね? お願いだから」

すでにプッチモニ様の控え室内に歩を進めているなっちが
あたしの手を引く。…強引。
もともとそういうところ、なくはなかったけど…
でも、こんなに強烈に強引だったっけっか、なっちって。
そんならこっちも強引に、振りきっちゃおうか、とも思うんだけど
それも大人げない…よね、やっぱり…。
160 名前:完名無 投稿日:2002年01月24日(木)02時42分23秒
あ、やば、あっちのドア。
たぶん加護さんが出てくる。
内側、ドアのすぐそばで辻さんと話してる。
一緒に出てくるかも知れない。
あっちのノブの回るかすかな音がした時、
あわてて中に入ってドアを閉めてしまった。

…振り向くと、なっちが、ちょっとホッとした顔してる。

「…奥行こう」

…なんでかなぁ、もう。なっちの思うつぼ…。
161 名前:完名無 投稿日:2002年01月24日(木)02時43分03秒
奥の、窓沿いの長いすの奥側に座らされると、
退路を塞ぐようになっちが隣に座る。
持っていたバッグから何か取り出す。

「…これ」

あたしに差し出したのは、鍵だった。
ちょっと変わった形をした…あれだね、ディンプルキーっていうの?
泥棒とかに開けられにくくて、複製ができないやつ。

「…なにこれ」
「なっちの部屋の鍵。今晩待ち合わせした時に
先に渡そうと思って、持ってきてた」
「…なんで」
「…なんでって…いつでも、来てほしいから」

…そんなこと言われてもさ…。
162 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月24日(木)03時12分43秒
明日香がなっちを捨てようとも!!
なっちが明日香を捨てようとも!!
例えば全然萌えなくなっても!

完名無さんに付いて行くっす〜!!
163 名前:名無し福ちゃん 投稿日:2002年01月24日(木)06時12分48秒
妄想もファンの一つの楽しみですからね…
ありがとうなんて言われてしまって恐縮です。
どんな展開になろうとも最後まで読み続けますよ。
頑張ってください。
164 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月26日(土)02時21分28秒
うーむ、今回は黒なち全開か・・・。
なちヲタにしてみればそれも魅力なんだが。
さて、明日香はどう調教(?)するのかねぇ。

ここと銀杏猫さんとこが最近の私の癒し。
ああ、ヲタだなぁ・・・。
165 名前:完名無 投稿日:2002年01月26日(土)06時21分48秒
>>162
よ〜し、あたいについておいで!
…と威勢良く言ってみたいところなんですが、
あなたのその、たぶん「最悪」の予測とも
違う方向へ行ってしまう場合はどうしたら良いでしょう?

>>163
>妄想もファンの一つの楽しみですからね…
激しく同意致します。だいたい、
妄想がダメだって言われたら脱退者ファンなんて
切な過ぎてやってらんないじゃないですか。
最後まで、どうかよろしく!

>>164
ヲタですよねぇ、お互い…(w
ここまでで「黒なち」なら今回はどうでしょ?
私が書くと、黒くなりきれると思えないんですけど…

ああやっぱり私、明日香の前でてんで情けないなっちを愛してる…のかも。
だったら「なちふく」じゃなくて
素直に「ふくなち」にしとけって話ですけど、
それでもやっぱり私だとこうなるわけだ。
166 名前:完名無 投稿日:2002年01月26日(土)06時23分29秒
「今日さ、なっちの部屋で待っててよ。ね?
終わったら電話するから」
「えー…」
「少しでも早く会えるっしょ、そうすれば」

…だいたいさ、まだ行くって、決めてもいないのに。

「鍋やろうよ、一緒に。二人で材料買いに行ってさ」
「…いや」
「なぁんでぇ〜?…もぉ」

あたしは、なっちが、以前にも増して強引な気がする
その理由を考えてる。
あたしが一般人やってる間も、なっちはずっと
モーニング娘。を支えてきた。
ずっと「芸能人」をやっていた。
その間に大変なこともいっぱいあっただろうし、
芸能人としての経験も多く積んでいる。
そのことからくる自信が、あたしに対しての態度にも
現れているのかも知れない、と思う。
それなら別に、構わないんだ。
やる気のあるなっちを見てるのは、あたしだって
もちろんいやじゃないよ。
…今現在のなっちが、何に対しての「やる気」を
発揮してるのかは…とりあえず置いとくとして。
167 名前:完名無 投稿日:2002年01月26日(土)06時24分29秒
ただ…気になるのは、もうひとつの仮定。

この前、「抱かれちゃった」こと…
こういう表現はしたくないんだけど…
他に今、言葉が思いつかないや…

そのせいで、前より強引になれちゃうんだと、したら…
なんかどうも納得いかないっていうか…
いやなんだよね…そういうの…。

「ねー、明日香…」
「なに」
「今日さ、来てよ…ね? いいでしょ?」
「いや、やめときます」
「…明日香ぁ…」

…なっちは、悲しそうな顔をする。
そこまでがあたしの予測の範囲。
168 名前:完名無 投稿日:2002年01月26日(土)06時25分09秒
その先はちょっと、予測できてなかった。
だから不意をつかれた。
覆いかぶさる体勢になったなっちが
あたしに噛み付くような勢いでキスをする。
…本当に、歯と歯が少しあたった。
そんなことものともしないなっちの舌が
あたしの口の中に進入してくる。
押し返そうとするんだけど、
なかなか離してくれない。

「ちょっと…なっち、や…めろって、もう!」

なっちも肩で息してる。

「…場所考えなよ…もう…」
「…二人っきりなんだから…いいでしょ?」
「だめだよ…まったく…これから仕事の人が
何言ってんだか…」
「…じゃあ、仕事終わってから…ね?
来てよ。いいでしょ?」
「…だから、いやだって…」
「…ふーん、そうかい…じゃあ、ここで」

なっちの射すくめる目がまた近づいてくる。
絶対、やばいって!
169 名前:完名無 投稿日:2002年01月26日(土)06時29分16秒
…んぁ。
…目を開けると、控え室の天井が見えた。
…えっちな夢をね、見ちゃったと思って
あわてて目を開けたら。

…その時あたしはねぇ、ソファーで寝てたんだよ。
たまたまね、壁の鏡台に向かって置いてある椅子がここは
ソファーの長いのになってて。
ちょうど横になると、鏡に映って見えるのは天井だけ。
ってコトは、あたしが寝てても、天井に貼りついてる人でも
いない限り見えないってコトだよね。
そう思って安心して、普段の睡眠不足を解消するべく
貴重なスペースと睡眠時間を確保中だったわけ。

えっちな夢はねぇ、最近、時々見る。
細切れの睡眠でも見ちゃうときもあって、ちょっとあせる。
だからまたか、やばい、と思って目を開けてみたんだけど
目を開けてもなんかまださ、聞こえるんだよ。
170 名前:完名無 投稿日:2002年01月26日(土)06時30分34秒
話し声はさ、最初、圭ちゃんかよっすぃーが
戻って来たのかな、って思った。
でもその二人ならあたしがここで寝てるの知ってて
起こしてくれそーなもんだし、
よく聞くと声が、違うんだよね。
向こうからこっちが見えないってことで、
こっちからも向こうが見えないんだけど。

「ちょっと…なっち、や…めろって、もう!」

なっち…なっつぁんかぁ?
なんでここにいるんだよ…
つーか、何やってんだよ!

「…二人っきりなんだから…いいでしょ?」

あー、確かになっつぁんの声だね。
二人っきりじゃないっつーの!
…えー、もう一人って誰?
171 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月26日(土)08時05分07秒
ごっちんとうじょおおおおおお!!ハァハァ…。
完名無さんの小説はホント、泣けるぐらい萌えます…。
えーっと、全然、予想違いに最悪になってもですね。
もちろん付いていくっす!
172 名前:1111 投稿日:2002年01月27日(日)01時36分10秒
更新お疲れ様です。
黒なちよりも勢いに押し切られそうな明日香がよい!!
なんか立場逆転って感じでちょっと新鮮だ。
ごっちん登場でどう話が動くのか・・・。

これからもがんばってください。
173 名前:完名無 投稿日:2002年01月27日(日)04時10分28秒
>>171
早!
なち語り希望の声があったのにそっち行かずに
いきなりごち語りで、いーんですかホントに…
(ダメって言われても決めてたんだけど…)
まずそうなところはなるべく自ら微妙にネタばらしして
進んでいこうと思いますので、そこでオッケーだったら
続きを読んでください。で、できれば最後まで…。

>>172
「勢い」…なんて大切な言葉…
梨華ちゃんの勢い、少し分けて欲しい、ほんとに…
真っ黒なちとか、鬼畜なちにでもしない限り、
やっぱりなち攻はむずかしい…
でも楽しい…のはちょっと倒錯してるんでしょうね、私が。

今日は少しなので、sage更新で。
174 名前:完名無 投稿日:2002年01月27日(日)04時11分49秒
まだ夢見てるってワケじゃないよねぇ…これ。
んー、確かに見えるのは寝る前に見た天井だし。
さっきの、なんか、あの…やらしー息遣い。
あのへんからちゃんと目ぇ覚めてるはず…。
あんなリアルな夢…見れるんならあたし、すごいよ。
得した気分だよ。
…あでも、キャスティングがこれじゃ、だめじゃん!
なんで「なっつぁんと誰か」なんだよー、もー!

「だめだよ…まったく…これから仕事の人が
何言ってんだか…」

…だからさー、やっぱ夢じゃないんだよ。
175 名前:完名無 投稿日:2002年01月27日(日)04時12分41秒
…どっかで聞いたことはあるよーな声…なんだけど…
メンバー…の声を順に思い浮かべてみても
思い当たらない。

「…だから、いやだって…」

でも、やっぱり、聞いたことはあるような声な気もする。
…女の人…だよねぇ…。
ねーなんかさー、イヤがってんじゃん。
…なっつぁん、エロくない? ちょっと…。
176 名前:1111 投稿日:2002年01月28日(月)00時19分12秒
>…なっつぁん、エロくない? ちょっと…。
ちょっとじゃないんだよ、後藤君・・・(謎+誰?)。

なち攻めは難しいですか。基本が受身の人やからねぇ。
甘甘か黒にしなきゃならんから。
がんばってください。完全無さん!!

177 名前:171 投稿日:2002年01月28日(月)05時14分45秒
やたら、っす!とか泣けるとか付いていく!とかテンション高いレスが
私だったりします(謎)
ごち語りでも、誰語りでもイイです。完名無さんの文章好きです。
これからもがんばってください
それにしても受け身のなっちが攻めって萌えですね。
178 名前:完名無 投稿日:2002年01月29日(火)06時04分34秒
>>176 1111さん
はい、頑張ります!
確かに「ちょっと」じゃないですね。
今までにない積極性を見せてるなっちですが
まだ安心して見ていてください。

>>177 171さん
コテハンさんってことでいいんでしょうか、これは。
好いていただき光栄に存じます。ありがとう。
こんな中途半端な攻なちじゃなければ、もっと早く
終わる話かも知れないんですけどね。
179 名前:完名無 投稿日:2002年01月29日(火)06時05分55秒
ここでこのまま隠れてれば
そのうち出て行くのかなぁ。
別になっつぁんが誰と何をしようと
口出すつもりはないんだけどさ。
ここはプッチモニの控え室で。
こんなコトされてたら、寝れないし。
かと言って、起きれもしないし。このまんまだと。

…何よりも、目がさめるまで見てた、
中途半端な夢なのか、なんなのか…
あれが、なっつぁんのエロさのせいだったのかと
思うとちょっと、腹立ってくるよ。

「…あ、だめだって、こら!
…やめろ、馬鹿なっち! もう!」

ちょっとさぁ、相手の人マジでイヤがってない?
やめる気、ないわけ?
エロすぎるよ、うるさいんだよ、いいかげんにしろ!
180 名前:完名無 投稿日:2002年01月29日(火)06時06分42秒
「…なっつぁん」
「…ひゃあぁっっ!!」

体を起こして、ソファーの背もたれから顔を出した。
なっつぁんは驚いてすっ転げて、床にへたりこんでる。

あわてて服の乱れを直してるもう一人の人は…
あー、誰だっけ、見たことある…会ったこともあるよ、
あ、わかった。
わかったとたんに口をついて出ちゃったのがこの言葉。

「あれ? あの…復帰、するんですか?」

いきなり、こんなときにきくことじゃないか。
でも口が勝手にそう言ってた。
もしそうなら、ここにこの人がいる理由も一応わかるし。
いやまぁ…それでもねー、その人がなんでここで
そんなコトになってたかは、わかんないんだけど。
181 名前:完名無 投稿日:2002年01月29日(火)06時07分55秒
そうしたらその人はぶんぶん、と首を横に振って、笑った。

「ごめんね。邪魔しちゃったね。…ほらなっち、立って!」

まだ腰が抜けたみたいになってるなっつぁんの手を引いて
その人は出て行く。

「おじゃましました〜」

落ち着いた、明るいその声と同時に
ドアが外から閉められた。

…この状況で、あの落ち着きって…なんか、すごい。
まー2人揃ってあわてられてもたぶん、
こっちが困ったと思うけど。
それにしても…
なんだったんだよ〜今の…いったい。

ん〜…ま、いいか。静かになったわけだし。
まだ寝てられるんなら、寝てよっと。
182 名前:171 投稿日:2002年01月29日(火)08時26分19秒
ごっつぁんのとぼけ具合が(・∀・)ィィ!
なっつぁんの不器用な所も(・∀・)ィィ!
183 名前:完名無 投稿日:2002年01月29日(火)20時38分57秒
>>182 171さん
なっつぁん…書いてる本人が言うのもなんですが、
不器用で不憫で、まったく可哀想でたまりません。
こんな情けない攻キャラの娘。カップリング小説って、
他にあるのかな…とちょっと心配になってきます。
(でも、やめられない…)
184 名前:完名無 投稿日:2002年01月29日(火)20時40分22秒
次にあたしを起こしたのは、よっすぃーの声だった。

「…ね〜、ごっちん、そろそろ時間。起きて」
「…んぁ…うん」
「あのさぁ、これ、ごっちんの?」

よっすぃーが持ってるのは、なんか変なキーホルダーに
ぶらさがっている、変なかたちの、鍵。
そーゆーキーホルダー、あたしが使うと思う?
あたしは首を横に振る。

「…そっかぁ。圭ちゃんも知らないっていうんだよね。
なんだろこれ…車の鍵かな。スタッフさんの誰かかな」

あたしは体を起こして伸びをして、ゆっくり立ちあがる。
ああ、なんか寝疲れしてるかも。

「…どこにあったの?」
「そこのテーブルの上。こんなの、来た時はなかったよねぇ?」

…そこって。
さっき、なっつぁんが。
…座ってた椅子の前、だね。
185 名前:完名無 投稿日:2002年01月29日(火)20時41分31秒
「車…じゃなくて、部屋の鍵なんじゃない?」
「へー、そうなのかなぁ。これ…誰か来たの? ねーごっちん」
「んー、たぶん、なっつぁん…」

…か、あの人だ。福田さん。

「え、安倍さん来てたの? ここに? なんで?」
「…なんでだろー。あたしも、わかんない」
「…わかんないって…ごっちん、いたんでしょ?」
「…いたけど…寝てた」
「えー、じゃあ、なんで」
「…さあ」
「…まさか…ごっちんの寝込みを襲いに来たとか」
「あははっ、それは絶対にない」

なんの心配してんの、よっすぃー。
あんまり見当はずれで、笑っちゃうよ。

「でもさぁ、安倍さんが来たの知ってるってことは、
その時は起きてたんでしょ?」
「…んー」
「何か話したの?」
「ん、まぁ、少しは…」

…話した…ことになるのかな、あれは。
186 名前:完名無 投稿日:2002年01月29日(火)20時43分14秒
「なんの話してたの〜? これ、安倍さんの部屋の
鍵なんでしょ? なんで〜?」

…あー、そーか。
それでそういう心配が出てくるわけね。
めんどーなもん忘れてくなぁ…もう。

「いや、なっつぁんの部屋の鍵かどうかは、わかんない。
ただ、なっつぁんにきけば、わかるかも」

そう言って、とりあえずその鍵はあたしが預かった。
よっすぃーはまだなんか、納得いかないような顔してる。
でも、…さっき見たこと。
詳しく話しちゃっていいことかどうかわかんないし。
あたしは全然かまわないんだけど、
なっつぁんが可哀想な気もするし。
まあ、よっすぃーは
細かいことにあんまりこだわらない人だと思うから
たぶん大丈夫だよね。
さ、仕事仕事。うん、もう目もすっきり覚めた。
187 名前:銀杏猫 投稿日:2002年01月30日(水)00時16分27秒
遅レスで恐縮なんですけど・・・。
>>88 髪を撫でたら、汗でしっとり濡れてた。
   せっかく寝る前に、乾かしたばっかりだったのに。
個人的にこれ、すごい好きです。それまでとの状況をみると
ちょっと深みがある文章で・・・。ああー、説明下手でスイマセン
あと、自分はあまりレス入れてないですけど、毎日ちゃんと見て
ますので更新がんばってください。これだけ伝えたかったです!
188 名前:1111 投稿日:2002年01月30日(水)00時43分16秒
後藤しゃん、もしかして眠かっただけなのか・・・。
しかし、ここのなちも不器用だな。萌えどころでもあるが。
がんばって欲しい!がんばって明日香を肉体の虜に・・・。

あれ?なんか方向性が間違ってます?
189 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月11日(月)00時18分25秒
完名無、どうした?
2chにはまりすぎて、こっち忘れた?
待ってるよ〜ん。
190 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月11日(月)00時53分40秒
ほんとにどうしちゃったんだろう。。。
続き読みたいな。。。がんばって〜!!
191 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)22時26分48秒
>>187銀杏猫さん
今はここにレスする必要もないかも知れませんが、
一言言いたくなりました。
それを書きたいがために!延々と描写してた部分があります。
>>188 1111さん
間違ってない…と思います。ただそこまでが長いだけ…なのかなぁ?
>>189
何故そんなことがわかるんだ! 2ch…微妙に、当たりです。
>>190
ありがとうございます。
実は、M-SEEKが落ちたときに避難所を自作して、
今までそこに引きこもって続けていました。悩んでいたのですが、
このスレッドが一杯になるまでは移植してみようかと思います。
どうせこのままでも、他の方が引き継いで使えるわけでもありませんし。
192 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)22時37分52秒
ちょっと…190さんの期待通りの展開に全然なってないのが
不安なんですけど…なってから移植するべきか悩んでいたんです。
まだスレ一杯になるほどは、進んでいません。
更新が遅いわりには我ながらもどかしすぎな展開なんですけど、
楽しんで書いてるところがタチ悪いです、私。
久々の引きこもり脱却にドキドキしてます。
193 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)22時45分54秒
「のの、のの! おいで!」

全員での撮影の間、時間が空くとなっつぁんは
辻を呼び寄せてだっこしてる。
人恋しくて仕方ないのか、それとも、
あたしに話しかけられたくないのか知らないけど。
…ま、あんなとこ見られたら、そりゃーねぇ。
いろいろと、顔もあわせにくいのは、わかるけど。
でも、鍵のこと、きかなきゃ。つい預かっちゃったし。

話しかけようとして近づくあたしを追い越して
圭ちゃんがなっつぁんに話しかけた。

「ねぇ、今日、明日香来てたんだって?」
「…あー、うん…」
「なんで? 何かあったの?」

あたしもその話が聞きたくて、そばへ行く。
…なっつぁんが、露骨に困った顔をする。
あたしは何気に圭ちゃんに腕を絡めて
「ついでだよ」って感じを演出してみたりする。
194 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)22時46分50秒
「…いや、みんなの顔を見に来ただけだと…思う、けど」
「…だったら、あたしにも声かけてくれればよかったのに」

…それもそうだ。あたしにあんなとこで会っちゃって、
圭ちゃんには会わないで帰っちゃったのかー、あの人。
何しに来てたんだろう…マジで。
まさか、なっつぁんとえっちしに来た…
ってワケでもなさそうだったし。
イヤがってたもんねぇ。んー。

なっつぁんが答えに困っていると、
抱っこされていた辻がいきなり口を開いた。

「一緒に来たんだよ、ののと、ふくらさん」
「…はぁ?」

三人の疑問符が偶然きれいにハモった。
195 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)22時48分11秒
辻の説明はなんかよくわかんなくて。(田中さんって誰よ?)
でも、福田さんと電車で会って一緒に来たみたい。
なっつぁんも、今初めて聞いたのか。驚いてるよ。
ってことは、前もって示し合わせてあそこで…ってワケじゃなかったんだね。
…そりゃそうか…うちらの控え室だっつうの。

…なんで来たのかわかんなくて、それでいきなり
あーゆーコトするもんなのかな…
なんかやっぱりまだ、よくわかんない。
なんなんだろ、二人の関係って。

その…なんていうか、恋人同士、として、
つきあってるのかな、とも思ったんだよ。
福田さんがいた頃、なっつぁんがすごーくベタベタしてたって
きいたことあるし。
だから、その頃からデキてたのかな、って。
やらしーよね。
196 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)22時49分07秒
…だけど、どーなんだろ。
それだったら、福田さんもあたしがいるの知らなかったと思うし、
あんなにイヤがんないよねぇ?
…あー、でも、イヤがるか。あんな場所じゃ。
…やっぱ、付き合って…んのかな、二人。うーん…。

…って考え込んでたら、いつの間にか
あたしとなっつぁんの二人だけになってた。

「…ありがとね」
「…え、なに?」

話しかけられて、ふっと目の前の現実に戻ってあたしは、
何に感謝されているのかわからない。

「…黙っててくれて」

あ、そのことか。
197 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)22時50分10秒
いえいえ、感謝されることでも…言えるわけないじゃん、そんなこと。
あたしはただ黙って首を横に振った。

…忘れるとこだった。

「…、ね、なっつぁん、鍵さぁ」
「あ!」

…やっぱ、そうだったか。
今は衣装だからもちろん持ってきてない。

「あたし、預かってるからさ。あとで」
「…うん」

まったくなっつぁんはなんか、さっきから、
可哀想になるくらいしょげている。…感じがする。
これから新曲の撮りなんだからさー、頑張ろうよ。
198 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)22時51分16秒
全員の撮りが終わった後もプッチモニのお仕事がちょっとあって、
終わったのはもう9時をまわってた。
だめじゃん、ねぇ。18歳未満のヒトに遅くまで働かせちゃ。
まー、実際はよくあるコトなんだけどさ。
なっつぁんとはあの後けっこうすれ違いみたいな感じで
控え室に戻れる時間も合わなくて、
なっつぁんもあの後何も言ってこないもんだから
鍵返すのはまぁ明日でもいいのかなって思った。
そしたらなんか、待っててくれたみたい。

「…遅くまで大変だね、そっち」

…またプッチモニの控え室にいるし。
あ、そうか、あっちの控え室はもう撤収済みか。

なっつぁんだってソロ活動いっぱいあって、
いろいろ大変な時もあるんじゃない?
…とか言おうかと思ったけど、
イヤミに聞こえちゃうかもしんないから、やめた。
199 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)22時52分07秒
「なっつぁん、どーしたよ」

圭ちゃんが話しかける。

「んー、ごっつぁん待ってた」
「えー、なんで? 安倍さん、なんで?」

よっすぃーはわかるでしょうが。これだよこれ。
さっき預かった時にしまった鍵をカバンから取り出して
振って見せる。

「ああ、それ、なっつぁんのだったんだ」
「そうそれ! どーして鍵、ここに? 安倍さ〜ん」

鍵をなっつぁんに渡す。
圭ちゃんとよっすぃー二人の疑惑の視線を浴びて
どう答えるのかな。
200 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)22時53分25秒
え…とね、ごっつぁんと昼間、ここで話しててね、
…そん時、落としちゃったみたいで」

そうきたか。まー、協力するしかないよね。

「そ。今日終わったら一緒にごはん食べいこーって。ね?」
「…そう、うん、そう! ね? ごっつぁん」

なっつぁんもちゃんとのってきた。

「あたしも一緒にいきた〜い」

…よっすぃーものってきた…どーすんの? なっつぁん。
201 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)22時54分18秒
「そっか、それで待ってたんだ。なんか相談事とか?」

…圭ちゃんはやっぱ、鋭いわけで。
いや、二人だけで話すっていうと
そういう想像するのはすごく普通で、健全なんだけど。

「…うん、そう。なっちちょっと、ごっつぁんに相談したいことがあってさ。
だから悪いけど今日、借りてくね、この子」

着替え終わったばかりのあたしは手を引かれて、
さっさと外へ連れ出された。
202 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)22時57分48秒
二人でタクシーに乗る。
まー、なんかおごってもらってもいいよねぇ?
口止め料ってわけじゃないけど。
そう冗談っぽく言ってみると、

「わかってる。そのつもりだよ」

と答えてなっつぁんは、どこかの行き先を
運転手に伝えた。
…やっぱりなんか、しょげてるっていうか、
元気がない声な気がする。

車の窓から見える街はもうとっくに夜で、
学校もなかなか通えないで仕事してるんだなぁ、と思う。
今日はまあ、遅いほうってわけでもない。
もっと遅くなる時だって多い。
…なんとなく、娘。を辞めたくなっちゃう人の
気持ちも、わかる気がしてくるときも、ある。
なっつぁんの横顔もなんか、よけい寂しげに見えてくる。
203 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)22時59分11秒
「ねぇ、あの鍵ってさ」
「ん、何?」

…なんか話しかけなきゃいけないような気がしたんだよ。

「やっぱ、なっつぁんの部屋の鍵だったわけ?」
「…うん…」

ありゃ、よけい暗くなっちゃったね。

「…じゃあ、それなかったら今日部屋に入れないとこだったの?」
「いや、これ、スペアキーだから。自分のは持ってる」
「そっかぁ…じゃあさ、もっと目立たないように取りにくればよかったじゃん」
「…見つけてくれたの、よっすぃーかい」
「そーだよ。なんで安倍さんの鍵がここに、って」
「なっちのだって、言わないでくれればよかったんじゃないのかい」
「だったら、受付行き。下手するとゴミ箱行き。不燃物。」
「……」

…ごめん、いじめるつもりはないんだよ。
あたしの鍵だって言っとけばもっと気がきいてたんだと思うけどさ、
寝起きでそこまで頭まわんないよ。
事情だってよくつかめてなかったし。
204 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)22時59分52秒
「…どっちにしろ、あそこで待ってたら、言ってなくても一緒じゃん」
「…そっか…そうだね。そうだよね…ごめん、どうかしてたよ」

…寝起きのあたし以上に、頭まわってなくない?
今日ずっとおかしかったのも、きっとよっぽど
ショックなことがあったからなんだろうな…っていうのは
想像つくから、さすがに「ふられたの?」とはきけない。
205 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)23時00分42秒

落ち着ける、個室のある店だった。
なっつぁんとあたしの二人連れ、確かに個室のあるとこじゃないと
目立ちすぎると思うけど。
高いんじゃない? ここ。
まー、なっつぁんなら大丈夫か。
あたしよりずっと給料いいもんね。
未成年じゃないから、あたしと違って
全額自分の自由に使えるんだろうし。

案内してくれる人との会話で、なっつぁんが少し前にも
この店に来たことがわかる。

「…この前はね、福ちゃんと一緒に来たんだ、ここ」


あたしは、ふうん、そう、としか相槌が打てない。

…福田さん。
娘。にいたことがある人の中で
唯一あたしが、少しも一緒に仕事をしたことがない人。
だから、どんな人かもよくわからないし、
なんて言っていいのかわからない。
206 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)23時01分20秒
とりあえずあたしは、自分の食欲を満たすことにする。
なっつぁんは、あんまり食欲がないみたいで
自分のお皿を下げさせたあと、何かのカクテルを注文してる。
…お酒、ダメだったんじゃなかったっけ?

「んー、甘くておいしい。飲みやすいや」

そう言いながら、少しずつ、なめるように飲んでいる。
…ヘンなグラスの持ち方…細い足のついてるグラスの
その足のとこ、丸ごと握りしめてるよ。
やっぱり飲み慣れてないんじゃないかな、と思う。
すぐ酔いがまわってきたみたいで、顔が赤くなってくる。
207 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)23時02分23秒
酔っ払って陽気になってくれればいいんだけど、
泣き出す人もいるんだよね、たまに。
うちはお店やってるから、酔っ払った人っていうのも
子供の頃から見慣れてて、酔っ払いの扱い方もまあ
全然わかんないわけじゃない。だけど、
「泣き出す人」ってちょっとやっかいなんだよね。
なっつぁんがそうじゃなきゃいいけど…と思いながら
あたしは二人前に近い量の食事を平らげる。

…そういえば、福田さんのうちも、お店やってるって
聞いたことがある。
やっぱ、こういう時のなっつぁんの扱い方も
うまかったり、するのかな。
とにかく、あんまり乱れないでくれることを祈ってみたりする。
208 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)23時20分00秒
あんまり話さないで、黙々と飲む人って、結構やばいんだよね。
いきなり何かが爆発したりする。
…前にどこかで聞いた
子供の頃の苛められ体験とか話されても
きっと困るとは思うんだけど。

「…ごちそーさま」
「…あ、うん」

少しずつ飲んでても、黙って飲んでると
もうじき空けちゃうんだよね、1杯。
誰かと二人っきりで、こっちがリードして会話に気をつかわなきゃ、
と考えることなんてめったにない。
ただ…なっつぁんがこんなに
黙り込んでることも、たぶんめったにない。
209 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)23時20分28秒
「…ね、そろそろ帰る?」
「…ん、そーだなぁ…もう一杯…飲もぉかな…って…
ごっつぁんも…なんか、頼みな」

話し方がおかしい。ため息をつきながら…息継ぎが多いっていうか。
ろれつが回ってない…ってほどの状態じゃないと思うけど、
微妙に話し方のテンポも遅くて。

「もう、やめといたほうがいいんじゃない?」
「…なぁーに、言ってんだぁ…つきあえ、ごっつぁん」

やっと話し出したと思ったら…まさか、絡むタイプ?
それは…泣かれるより最悪。
210 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)23時21分13秒
なっつぁんがここ、払うのに、
あたしが何か指図するわけにもいかない。
堂々とハタチの人に、飲むなとも言えない。
言っても、きいてくれるとも思えない。

とりあえずあたしの分、もちろんアルコールでない飲み物を
なっつぁんのおかわりと一緒に頼む。
…おごってもらって、かえって高くつかないといいんだけど。

とにかくね、黙ってるといけないんだよ。
その間、どんどん飲んじゃうんだ。
なんか、しゃべらせないと。

「ね、なっつぁん」
「んー?」

なんか、目つきもちょっと変だよ。
こっちを見てるようで、どこ見てるかわかんない、ぼんやりした目。
211 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)23時21分50秒
「福田さんって、どんな人?」

急に目つきが変わる。え? うそ。睨まれてんの?

「…福ちゃんに…興味があんのかい」

なんか、勘違いされてる気がする。
でも、少し正気に戻った感じもする。

「いや、だからさぁ…なっつぁんみたいな興味じゃ、ないけど」
「ふーん…」

ふてくされたみたいな返事。
でもこの話題なら、たぶんここでは終わらない。

そうだね、興味、なくはないよ。
ききたいことは、確かにある。
本当にききたいのは、今きいたことじゃないけど。
212 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)23時22分28秒
「…福ちゃんはねぇ…」
「…うん」

ほらね、絶対終わらない。

「…なんかねぇ…」
「うん」
「…いいんだよ、すごく…」

具体性に欠けるね、すごく。
まぁ、酔っ払いの話って、こんなもんか。
そのまま、夢見るような、どっかいっちゃってる表情してる。
こっちがちゃんと話、振らないと。

「どこがいいの?」
「…うーん、全部…」
「全部って、どんな?」
「…だからぁ、全部…どこも、ぜ〜んぶ」

…なんか、あんまり嬉しそうに言うから
ちょっとほほえましくなってくる。
213 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)23時23分30秒
あ、でも、今、うまくいってないのかな。もしかして。
でなきゃ、今日あんなに落ち込んでないよね。
まさか、あたしに「見られた」ことが原因じゃないと思うんだけど。
とにかく今の、そっちの方向に話がいくとまずいね。

「…一緒に仕事してた時って、どうだったの?」
「…えー…そりゃもう、さぁ…」
「うん」
「…ずーっと、さぁ」
「うん」
「ドキドキ、してた」

…なんか、わかる気がしてくる。
あたしも、そんな感じだった時が、あったと思う。

「…またさぁ、福ちゃんはさ…いい声、してるんだよ。
知ってる? ねぇ、知ってる?」

うん、声は知ってる。
昼間は声だけだと思い出せなかったけど、
もう今なら、声だけでもわかると思う。
歌ってる声も…生では聴いたこと、ないんだけど。
ここまで話し始めれば、もう話を促す相槌もいらない。
214 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)23時24分44秒
「…隣で、なっち歌ってるっしょ…もぉ、ずっとドキドキ…
なんか、声に…抱かれてる、みたいで」
「…んなこと考えながら、歌ってたの?」

やっぱ、やらしーわ、なっつぁん。

「…やぁ…そーゆう意味じゃ、なくて…
…あぁ、でも…そーなのかなぁ…でもね、それだけじゃなくて…
なっちも、頑張ろうって…すごく、そう思えて」

…ふーん。じゃあ、今は?
あたしと2トップなことが、多いよね?
215 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)23時25分32秒
酔っ払いに、あたしの感情まで気が回るわけもない。
でも、どうせ酔っ払いだから、イヤミもきっと通じない。

「…今は、どうなの?」
「…いま…んー、今だって…頑張ってるよ…なっちは…
福ちゃんが、いつも…見てくれてるって…わかったし…」

…ふーん、そう。良かったね。
こういう状態の人に気をつかう必要なんてもう、
ないように思えてくる。

「ねえ、なっつぁん」
「あ?」
「女の人とするときってさ、どうやんの?」
「…あぁ?」

意味、理解するのに少し時間がかかる?
酔っ払いだからね。
きっと明日には忘れてる。
だから、今のうちに、教えてよ。
216 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)23時26分37秒
「…あー…なんで…そんな、こと…」
「慣れてそうだから」
「…なんで…慣れてなんか」
「だって、福田さんがいた頃から、ずっと、つきあってるんでしょ?」
「…ずっと、って…」

あんなに嬉しそうに福田さんのこと話すんだからさ。
まあ今日はたまたま倦怠期だったとかさ。
そんな感じなんじゃないの?

「…つきあってる、って…」
「違うの? だって、なんか、しようとしてたじゃん」
「…できなかったよ…見てたでしょ」
「そりゃさぁ、あんなとこじゃ」
「…この前…この店来たあと」
「…え?」
「…日がまわって、福ちゃんの誕生日…その日が、初めて」
「え…」

…うそ。
217 名前:完名無 投稿日:2002年03月11日(月)23時27分11秒
「…それは、さぁ…ちょっと、やりすぎっていうか」

…お願い、泣き出さないでね。

「…だって…用があるわけじゃないのに…来てくれないって…」

…やばいよ、泣かないで。

…無理か…。

もー店出るとき絶対へんな目で見られた。
それでもちゃんと払ってくれたなっつぁんには、感謝する。
218 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月12日(火)07時09分54秒
ここのなっち、すごく可愛い。
続き楽しみにしてます。
219 名前:1111 投稿日:2002年03月12日(火)23時02分35秒
いや〜、まってましたよ。
某所の銀杏猫さんの所では良くお見かけしてましたが・・・。
あちらもドキドキするけど、こっちの続きもずっと気になってました。

自己中でネガティブななっち・・・。いいっすね。
非常に本物っぽいっす。

これからものんびりお待ちしております。
220 名前:完名無 投稿日:2002年03月13日(水)01時52分12秒
コピペ失敗してしまったでないかい。
200の最初、「 が抜けてます。205、余分に一行空いてるところがあります。

>>218
読んでくれてありがとう!
地の文では語っていないなっちの描写に、頑張ってます。

>>219 1111さん
某所の銀杏猫さんの所、1章が今dat行きしてしまいましたね。
(…って、ここ↑のことですよね?)
ネガティブ…そうか、それは梨華ちゃんの専売特許だと思ってた…
でも、言われてみると確かにそうです。この先も、しばらくは。
221 名前:完名無 投稿日:2002年03月13日(水)01時55分28秒
でもさ、こういうのってやっぱ、
あたしが泣かしちゃったことになるわけ?
…違うと思うんだよ。ぜったい。
もし電話番号知ってたら、福田さん今呼び出してやりたい。

もうきっちり家まで送ってあげるしかないじゃん。
酔って泣いてしょぼくれてるなっつぁんなんて、
一人でもし歩かせたら絶対さらわれるし、
一人でタクシーに乗せたらタクシー運転手にさらわれる。

部屋につくまでのなっつぁんとあたしは、
まあありがちな酔っ払いと、それを介抱する人。
そのまんま自然に部屋に入っちゃって

「…おうちに電話しときなよ」

って言われたとき、初めて気が付いた。

泣きたかったんでしょう?
一人で泣きたくなかったんでしょう?

なんかなぁ…それ、ずるいって。もう。
222 名前:完名無 投稿日:2002年03月13日(水)01時56分29秒
部屋がきちんと片付いてるのは、
福田さんを引っ張り込むため。
飲み物とかね、用意してあるのも、絶対。
そうとしか、思えないよ? っつーか、そうでしょ?
いちいちきく気も失せるくらい。

…って、どこ行ったのよ。トイレか。
…あ、まさか。吐いてる?
少し待って、心配になって行ってみると
バスルームから水音。

「ちょっとー」
「わっ」

いきなりドアなんか開けてやる。
別に驚かなくてもさ、裸なんてお互い
見たことも見られたこともあるじゃん。

「なにやってんの」
「…ごめん、ちょっと、汚しちゃって…」
「あー、やっぱり…」
「ごめん、ちょっと待ってて」
「はいはい」

…まったく、もう。カッコ悪…
急に、さっき最初にした質問と逆のことが気になる。
福田さんは、なっつぁんのどこがいいんだろう?
223 名前:完名無 投稿日:2002年03月13日(水)01時58分54秒
部屋に戻って、立ってる高さからふと、見てしまった。
枕が二つある…セミダブルのベッドに。
枕持って恋人のところへ泊まりに行く人って…聞いたことないし、
やっぱなっつぁんが用意、したんだな。

2回目…の予定だったってことだよね?
やっぱ、やりすぎっていうか…引かないかな、これは。
…つーか、見てるこっちのほうが…
恥ずかしくなってくる…よ? これ。

…いや、普段から…枕、二つ使ってるってことも、
あるかも知れないか。
でももし、福田さんが最初に来たとき一つで、
今日来て二つになってたりしたら…
…あ、わかる。あの人がどんな顔して、
どんなふうに反応しちゃうか。
なんでかな、目に浮かぶくらいはっきり想像できる。
224 名前:完名無 投稿日:2002年03月13日(水)01時59分25秒
…そっか、昼間、おんなじよーなシーン見たからか。
あれ…でも、「見た」のはちょっとっていうか、ほとんど…。
…ま、想像、つくよね。ほとんど、誰でも。
なっつぁんが想像つかないんだとしたら、
そっちのほうが絶対おかしい。
あたしよりずっとあの人のこと知ってるんだから。
…わざと恥ずかしがらせて、それを楽しむプレイっていうか…
…そういうのなのかな。

えー、2回目で、そういうの?
悪趣味だよー、なっつぁん…
225 名前:完名無 投稿日:2002年03月13日(水)02時00分14秒
なっつぁんが、裸にバスタオルを巻いて、上がってきた。

「…気分悪いの、治った?」
「や、も、大丈夫。ごめんごめん」

ほんとかなぁ。
まぁ、一回吐くと楽になるってよく聞くけど。
そのままなっつぁんはドライヤーを使い始める。

「ねー、あたしもシャワー借りていい?」
「あ、うん。服はなっちの今洗ってるから、
それ終わったら入れとけ」

あ、そっか。着替えの下着とか、持ってないっけ。
でも、なっつぁんのゲロった服洗った洗濯機で?
…なーんてね。全然気にしないけど。

「…なっちのゲロ洗った後だけどな」

ちょうどそこでなっつぁんがそう言ってくれたんで、
結構笑えた。二人で。
226 名前:完名無 投稿日:2002年03月13日(水)02時01分04秒
お風呂出て、なっつぁんの洗濯が終わってたんで
声をかけてから乾燥機に移して、あたしの洗濯物を
始めさせてもらう。

そこで気がついたんだけど、
あたしこれ終わるまで何着てればいいの?
とりあえず借りたバスタオルを巻いて
なっつぁんに相談しに行く。

「そのままでいいんでないかい」

えー…でも、なっつぁんもそのままか。
なっつぁんの服って、借りても小さくて着れなさそうだし。
ま、いいか、うん。

「ドライヤー貸してね」
「どーぞ」
227 名前:完名無 投稿日:2002年03月13日(水)02時01分49秒
で。
あたしの髪も乾いて、服のほうはまだ乾燥中で。
なっつぁんは、着替えはあるんだろうけど、そのままで。
二人してこういう格好のままで、この状態で、泣く?
ねえ、まだ泣く?
そういう気持ちを込めて顔を覗き込むと、

「ごめんね、ごっつぁん。なんか今日、すごく迷惑かけたわ」
「…いえいえ」

あ、ほぼちゃんと、伝わった感じ。いい感じ。うん。
228 名前:完名無 投稿日:2002年03月13日(水)02時03分46秒
「しかしごっつぁん、いつ見ても、すごいねぇ」
「カラダ? うん、よく言われるよ」
「ああ、そーかいそーかい」
「なっつぁんさぁ、あたしの体見て、したいとか思う?」

ここでバスタオル取って見せるのは…あんまりだから、やめとこう。

「んー…、いや…きれいだとは、思うけど」
「…そっかぁ、やっぱ、そーゆーもんかぁ、うん」
「…なんで?」
「…あたしもそう思う。あたしねぇ、なっつぁんと福田さんが
そうなったのが最近って聞いて、ほんとは、感動した」
「あ…ごっつぁんのしたい人って…もしかして、紗耶香かい」

…驚いた。マジで。
なっつぁんって、こんなに察し、よかったっけ?
たぶんぐでんぐでんに酔ってた時なのに
あたしの言ったこと、覚えてるし。
ちょっと酔っ払いへの認識、甘かったかな。
229 名前:完名無 投稿日:2002年03月13日(水)02時04分31秒
「…違ったかい」
「…いーや、当たり。大当たり。ご名答。お見事」

ため息と一緒に思い付く限り言ってみたりする。

「…そりゃーごっつぁんさぁ…それこそ、一緒の仕事してる間に…」
「だからぁ、それができてれば、苦労はないって」
「…そっかぁ…そうだよね…そうなんだよねぇ…」

そこで二人で苦笑い。
230 名前:完名無 投稿日:2002年03月13日(水)02時05分23秒
「市井ちゃんと、圭ちゃんと3人でラジオやってた時ね、
バレンタインデーの話になる回があって」
「うん」
「あたしがね、学校で女の子にもあげるって話、したのね。
まだ中学生だったんだけど、あたし、その時」
「ああ、うん」
「…そしたら市井ちゃん、なんて言ったと思う?
『レズチョコってやつですか、それ』って…」

「…そりゃあ、釘を差された感じだねぇ」
「…釘を差されたっていうの? そういうの」
「え、あれ、言わないかな」
「いやゴメン、あたしがその言葉知らないだけかも」
「とにかくさ、ごっつぁん、ほんとは紗耶香にチョコを渡して
告白したかったのに、できなくなっちゃったってことだよねぇ?」
「う…、そう、そういうこと」
「そんなこと気にしないで、思った通りにすればよかったんじゃないかい」
「できないよ! だって、ケーベツされちゃうよ」

…一瞬あの頃の気持ちに戻ってた。
まあ、あの頃はね。まだあたしも今より子供で。
231 名前:完名無 投稿日:2002年03月13日(水)02時06分07秒
「…まぁ、紗耶香ねぇ…あの子も、ハッキリものを言うっていうか…
ちょっと恐いくらいのときも、あったねぇ、そういえば」
「…今もだよ」
「そうなのかい」
「だって、一人で寂しくないかってレポーターにきかれたとき、
全然寂しくありませんって…笑ってた」

…やばい。あたしが泣きそう。

「…今、会ったり話したりは…」
「…してないよ、全然。恐くて」
「…あ、でも…あ、まずいか」
「…何よ」
「いいのかい? 紗耶香って、ごっつぁんの弟さんと、確か」

…ごめん、なっつぁんに泣くなって言っておいて…
…あたし、泣いていい?

「…そっか…なっちの悩みは、贅沢ってことだね」

あたしの髪を優しく撫でてくれる手。
涙は、なっつぁんの胸元のバスタオルが吸収してくれた。
232 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月14日(木)00時42分13秒
明日香が早く登場しないかな。
楽しみにしてます。
233 名前:1111 投稿日:2002年03月14日(木)07時16分57秒
>完名無さん
 そこのことです(w。
 しかし、すごい更新量ですねぇ。

 ・・・後藤かわいいな。
 今日はおねぇさんモードが入ってますね、なちこさん。
 あぁ、バスタオルになりたい。
234 名前:完名無 投稿日:2002年03月22日(金)02時15分38秒
>>232
登場はもちろん…するんですけど、ご希望の状態かどうか
激しく謎…
>>233 1111さん
…移植なので一気に更新できるだけ…だったりする。
実際の更新は今、すごく遅い…と思う…。
後藤さんに目を向けてくれるのはすごく嬉しい!

ここまでで「…やな予感…」と思った方がもしいらっしゃったら、
読むのはここでやめたほうがいいかも…たぶん当たりですので…。

スレッド整理されたようで、スレッド数が減ってますね。
あわててみたりして…
235 名前:完名無 投稿日:2002年03月22日(金)02時17分53秒
泣いてても、何も進まない。何も伝わらない。
それはもうずっと、痛いほど、わかってる。
だから顔を上げる。

「…そ、なっつぁんはぜーたくだよ。福田さんの最後のライブ、
たっぷり泣けたでしょ?」
「ああ、そうだねぇ…他にもいっぱい、泣いたけどね」
「あたしなんか、泣いたらもー絶対、歌えない、踊れない曲で、
お別れだったんだよ」
「…そっか。そうだったね…ありゃ、無理だねぇ」

見詰め合って、笑う。
やっぱ、笑ってたほうがいいよね。

なっつぁんが立ちあがって、バスタオルを体から外して、
ベッドへもぐり込む。
黙ってあたしも、同じように、させてもらう。
…とりあえず、枕、借りちゃいます、福田さん。
236 名前:完名無 投稿日:2002年03月22日(金)02時18分24秒
なっつぁん自身まで借りちゃうつもりは…
なかったと言えばなかったし、あったと言えばあった。
裸のカラダ見てその気になるのとは…たぶん、また、別問題。
なんだかあったかくて、柔らかくて、
いじらしくて、愛おしい。
抱きしめても、なっつぁんは嫌がらない。

…触れ方はね、だいたいわかるんだよ。
だって、基本的に、自分と同じでしょ?
…それでも人によって、少しは、違うか。

「…ごっつぁん…ちょっと…」
「…やめないよ。だいたい、あたしの質問覚えてたんなら…
部屋に入れた時点でアウトじゃん」
「…そんな…あ、そっか…」
「…そんな調子じゃさぁ…誰にでもやられちゃうじゃん」
「…そんなことない」

…そう言いつつ、心当たりがありそうな気弱さ。
察しが、いいんだか、悪いんだかさっぱりわかんない。
不思議な人だよね、なっつぁん。
237 名前:完名無 投稿日:2002年03月22日(金)02時19分09秒
先端の敏感な部分をあんまり刺激しないように
両胸をそっと掌で包み込んでみる。落ち付いて、ゆっくりと。
あたし、自分でする時は、かなりせっかちだって自覚あるから。
まあ、睡眠時間も大切だし、仕方なしにっていうのも、あるんだけど。
あのさ、でも、「やめない」とは言ったけどさ、
ほんとーにイヤなら、やめるよ? どうなのかな。

「なっちの胸が…ちっちゃいっていうのも、あるけど」

胸をすっぽり包んで余裕があるあたしの手に、自分の手を重ねて触れて、
なっつぁんが言った。

「ごっつぁん、手、大きいねぇ」
「…あ、うん、それもよく言われる」
「…ふうん」
「…こーゆー時に言われるのは、初めてだけど」
「…ほんとに?」
「だって…大きいったって、男の人ほどじゃないし。
女の人とするのは…ほんとに初めてだし」
「…ふうん」

…何に納得したんだか…いまいちよくわかんない。
でも、「ほんとーにイヤ」ってコトは、なさそうだね。
238 名前:完名無 投稿日:2002年03月22日(金)02時19分42秒
人の上になると、自分の髪の毛がじゃまなもんだね。
肩からすべり落ちてきて、かかる。
それはまあ、悪くもないこともあるかもしんないけど、
かかりすぎるとうっとおしい。たぶん、なっつぁんも。
しかもなっつぁんが少し動くと肩とかで踏まれちゃうし、
体を支える自分の手でも踏んじゃう。

仕方ないからぱっと潔く起き上がって、立ち上がる。
自分のカバンを探って、髪留め用のゴムを見つけて、
それで後ろで一つに束ねる。

あ、なっつぁんがちょっと心配そうな目でこっち見てる。
さっきまでずっと目、閉じてたくせに。
…大丈夫だよ。途中でやめて帰ったりしない。
教わりたいこと…たぶんこれからのとこだから。
239 名前:完名無 投稿日:2002年03月22日(金)02時20分17秒
あたしがベッドに戻ると、なっつぁんは安心したように
また目を閉じる。
その閉じた目の中で誰を相手に思い描いているかは
ききたくないくらい明らかなんだけど、
今、この間くらいはずっと、
目の前の人を見る気ってないのかな、とも思う。
さっき手の大きさの話をしてからその後、
あたしが髪をまとめに立ち上がるまでの間、
なっつぁんはたぶん、一度もあたしを見ていない。
目を閉じてる間、ずっと違う人に抱かれてる。

…だから、耳元で話しかけてやる。あたしの声で。

「…ねぇ、なっつぁん」
「…なに」

ちょっとびっくりしたみたいに目を開く。ほら、やっぱり。

「相手がさ、してくれないときに…自分もいく方法って、あるのかな」
「…え、…あ、ごめん」
「いや、そうじゃなくて。…たぶん、あたしのほう、
もしできても、最初で最後のチャンスしかないと思うから」
240 名前:完名無 投稿日:2002年03月22日(金)02時20分46秒
「そんな…そうならないよう、続くよう、頑張れば…」
「そうは思うけどさ。でも、そう上手くいかないこともあるじゃん」

この仮定はなっつぁんにとっても、キツいだろうね。

「…まぁ、ね…」

ため息混じりにそうつぶやくと、あたしの下で大きく脚を開く。
あたしの背中に、腕が回される。
その腕が、背中を撫で付けるようにして下がって、
あたしの腰を引き寄せるような力が加わる。

「…そっちももうちょっと、脚、開いて…そこも」

そこって、ここですか。
えっと今、なっつぁんも自分でしてるみたいに、片手で。

「…そう…そのまま…来て」

そのまま、って…結構、難し…あ。
うわぁ…。へぇ…。
241 名前:完名無 投稿日:2002年03月22日(金)02時21分17秒
「…これで…あたしが動けばいいんだ…」
「…そう…できる?」
「できる」

思いきり、即答。
腰使うような恥ずかしいダンスなんて、あったもん。
…てことは、夏先生、上手そう…ってこと?
あ、いや、今そんなコト考えるのよそう。

えっと、離れちゃダメだから…男みたくやっちゃダメだね。
じゃあ…こう。…かな。…あ、あ、ちょっと…。

「…自分のいいように動いて…いいと思う…
こっちも、おんなじだから、たぶん」

…なっつぁんも、感じてる?
…でもこれ、自分のいいように動いてるほうが、
絶対先いくと思うんだけど。いいのかな。

なっつぁんが、続きを催促するように
あたしの背中に回した手をまた腰まで滑らせる。
そのへんを、微妙なリズムで撫でまわす。
…もう、どうなっても知らない。
242 名前:完名無 投稿日:2002年03月22日(金)02時21分56秒
なっつぁんの吐息混じりの細い声が、時々、切れ切れに上がりだす。
下からの、あたしに合わせた動きも、協力的で。
あたしはさっきから、動きながら、
なっつぁんの顔にキスの雨を降らせたり、
いっそ顔じゅうを舐めまわしたりしたくて仕方ない。
でも、それは許されないように思えて、我慢してる。
…そこまでしたら、気持ち悪がられそうだし。
…目も、ずっと閉じたままだし。また。

でも、声はかけるよ。
今なっつぁんにできるあたしの唯一の、自己主張。

「…ね、なっつぁん」
「…どした」
「…も、いきそ…なんだ、けど」
「…いいよ…どうぞ」
「…え…でも…」
「…女の子は…早いほうがいいんだよ」

え、そりゃまあ…早くて困ることは…ないか。
でも、この場合でも?

「…一回終わってもこのままで…少しして、続けて…くれる?」

そっか、それが強み、か…。
体力…っていうかパワーには自信あるから。うん。
243 名前:完名無 投稿日:2002年03月22日(金)02時22分43秒
「ん…わかった」

お言葉に甘えて、一回いっちゃうね。
…最初だから、許してね。

また動き出すと、なっつぁんの唇が開いて吐息が漏れる。
…これも、最初だから、許して。
開いた唇をあたしの唇で捉えて、舌を滑り込ませる。
…噛み切られても、いいや、もう。

「…んんっ…」

揺れる口の中を確かに味わいながら、あたしは、
魂が持っていかれるような絶頂感を経験した。
244 名前:完名無 投稿日:2002年03月22日(金)02時24分12秒

魂…持ってかれてる場合じゃ、ない。
ああでも、痙攣がまだ完全には収まらない。
まだ、不規則に…不意に脈打つ状態で。
息もまだ実は整わない…良すぎて。やばい。参った。

なっつぁんがあたしの肩に吸い付く。舌を這わせてから、軽く歯を立てる。
…うん、大丈夫、いけるよ。だけど。

「…ね、2回目、間、あけないと…すぐかも…」
「…だいじょぶ…こっちも、も、ちょっと…だから…」

続けてると、何回でも続けていっちゃいそうだよ。
…まずいね、これ。
愛し合ってたりしたら、死ぬまでやっちゃわない?
…あたしだけかな、そんな風に思うのは。
なっつぁんは少なくとも、あたしよりは冷静なんだよね、きっと。
245 名前:完名無 投稿日:2002年03月22日(金)02時24分53秒
今度はなっつぁんのそこを、自分よりもきちんと意識するように動いてみる。
…でも、だめだよね…同じ場所なんだもん。こっちも。
あたしよりもだいぶ小柄で華奢な感じがする体を
こんなに抱き締めてるって実感するだけでも、もうどうにかなりそうなのに。

なっつぁんが、前に弓なりに反って、またあたしの肩に吸い付く。
…たぶん、誰かの名前を呼んでしまわないように。
いまさら、いいのに。もう。そんな気、つかわなくても。
ただ、あたしは、2回目も、今抱いてるその人を
めいっぱい感じながら、いく。そう決めてる。

肩で顔を殴っちゃわないように、腰中心の動きに変えてみる。
なっつぁんの手は、あたしの腰よりもさらに下、
お尻を自分に向かって引き寄せるような力が入ってる。
…やらしいよ、なっつぁん、…どーしてこんなに…もう。

吸い付いたままの口からあたしの肩に軽い痛みが走って、
くぐもった声が鼻から漏れる。
それが合図のように、あたしも、自分の我慢を
一気に開放した。
246 名前:完名無 投稿日:2002年03月22日(金)02時25分38秒
今の衣装、肩出しじゃなくてよかったな、と思う。
ま、肩ならすぐ消えると思うし、
ファンデーションでも髪の毛でも隠せるし、なんとでもなる。
首筋じゃなかったのは、なっつぁんの思いやり、ということにしておこう。
次の日あたしは、圭ちゃんに、福田さんの電話番号をきいた。

「…何か、不穏なこと企んでんじゃないでしょうね?」

いきなり「釘を差された」けど、
いや、昨日のことでちょっと、とだけ説明する。

「昨日あの後、なんかあったの? なっつぁんも、あんたも、なんか変」
「ん、だから…なっつぁんが、悩んでるからさ。協力しようかなって」
「…協力ぅ? あんたが?」

…そんなに意外? いや、確かに、協力になるかどうかも
わかんないんだけどさ。
相手次第ってとこかな。
場合によっては…「協力」とは反対方向に進むかもね。わかんない。
でも、そんなことは圭ちゃんには、言えない。
とりあえず番号を教えてもらえたことにほっとする。
…ごめん圭ちゃん、話せるようになったら、話すかも知れない。
もし話すんだったら…誰よりも先に。
247 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月23日(土)01時07分55秒
すっごいHの描写がリアルなんですけど(w
いや、イイ意味で(w
ちょっと…かなりドキドキしてしまいました(w
う〜ん…女のコとHしたくなりました、ってくらいすごい巧い描写でした^^
これからも頑張って下さいね〜
248 名前:1111 投稿日:2002年03月23日(土)01時49分42秒
ここのなちこさんはすごい不思議です。
大人なのか子供なのか・・・。
とても不思議です。そして魅力的です。

・・・・・後藤、かわいかったっす。
249 名前:完名無 投稿日:2002年03月31日(日)05時15分57秒
>>247
ちょっと書き込むのが恥ずかしいかも知れないことをありがとう!
あなたのレスに作者もドキドキ、感じてしまいました。

>>248 1111さん
天使か悪魔か人間か…作者は、そういうところに惹かれています。
後藤さんはまたそれとは違った魅力を。
250 名前:完名無 投稿日:2002年03月31日(日)05時17分15秒
番号をきいてから、ふと思う。
福田さんって、かかってきたことない相手からの電話、出るかな。
よくわかんないけど、たぶん、あの人、結構微妙な立場のはず。
もし留守電になってて…あたしが名乗って録音しても…
やっぱ、なんか、怪しいと…思われるだろうなぁ。
そういうの、無頓着そうな人に思えないし。

こういうことって、勢いでいっちゃわないと、だめなんだよね。
へんに予測とか立てられちゃうと、かえって手強そう。
とりあえずね、どうしても、会う約束してもらわないと。
…だから、決定。圭ちゃんの携帯借りる。

「だぁ、ちょっと、もう! 何すんのよ!」
「…お願い」
「…もー、なんなの?」
「…お願い。ね?」
「…わかったわよ、もう、好きに…すぐ返しなさいよ」
「うん、わかった」
「…今言えないことなら…片付いてからでもいいから、報告すること」
「…うん」

…やっぱ、圭ちゃんに隠し事するなんて、無理なんだよね。絶対。
251 名前:完名無 投稿日:2002年03月31日(日)05時17分53秒
「片付かなくても、途中で無茶になりそうだったら、報告すること。
…というか、あんまり無茶しないこと」

…う、それは…。

「…うん」

…そうできるといいんだけど。
252 名前:完名無 投稿日:2002年03月31日(日)05時18分27秒
圭ちゃんの携帯を持って、非常階段のほうへ向かう。
なっつぁんに見つかるのだけは、避けたい。
自分の携帯にも、番号は入れておいた。
でも、あえて、借りた携帯で初めて電話で話す相手に電話する。
数回のコール音の後、昨日初めて声だけでわかるようになった相手の声が聞こえる。

『…もしもし? あれ? 圭ちゃん?』
「じゃないっ」

市井ちゃんの過去のパートを真似て言ってみる。
今は…そっか、辻だ。
でも、今のはあくまで市井ちゃんの真似。

『…はぁ?』

…よく考えてみなくても、市井ちゃんの声とあたしの声は
全然似てない。
それでも、突然こんなことにこだわってみたくなるあたしは
もしかしてバカなのかも知れないと思うけれど、
自分の緊張がほぐれて正解だったかも、とも思う。
253 名前:完名無 投稿日:2002年03月31日(日)05時19分04秒
「…福田さん? えっとねぇ、わかるかな? 後藤です」
『…あ…ああ、はい…』
「…昨日はどうも…ごめんなさい」
『…あ…』

少し考え込んでるみたい。
ため息…かな、今の音は。

『…それは、どっちかっていうと…こっちが謝らないと
いけないことだと思うけど』

どことなく生真面目っぽい、それでいてユーモアがあるようにも
思えるその答え方が面白くて、
あたしは声を出して笑ってしまった。
254 名前:完名無 投稿日:2002年03月31日(日)05時19分42秒
『え…と、あの…そんなに笑われても、困るけど』
「あははっ、はは、そうだよね…ごめん…あのさ、今晩時間、あります?」
『…え、なんで、かな』
「んー、ちょっと話したいことがあって。だめですか?」

また少し間があく。
なっつぁんのことは今、一切言わないほうがいい。
野性のカンがあたしにそう告げる。

『…何時ごろ?』

お、やった、いけそう。

「えーとね、9時前には終わると思う…から、終わったら電話します」
『…そう』
「時間、大丈夫かな?」
『うん』
「あたしの携帯から電話するけど、出てくださいね」
『あ、うん』
「…それじゃ、またあとで」

そう言ってあたしは、圭ちゃんの携帯での通話を終了した。
255 名前:完名無 投稿日:2002年03月31日(日)05時20分22秒
控え室に戻って携帯を圭ちゃんに返すと、
圭ちゃんはいきなりそれで電話をかけた。

「…ああ、もしもし、明日香? …うん、今、後藤から
電話あったでしょ? …うん、ごめんね。あたしにも、話さないのよ。
だから、よくわかんないんだけどさ。…そう、うん、たぶんね。
無茶なことしないって、約束させたから。…うん、悪い子じゃないし。
…うん、あとできく。大丈夫だと思う。…うん、そうか、
悪いけど、よろしくね。…うん、それじゃ」

電話を切って、圭ちゃんがあたしを横目で見る。

「…さて、これでもう無茶なこと、できないわね」

…あたしってもしかして、信用ない?
ホントにただ、話したいだけなんだけどなぁ。
そんなへんなこと、言う気ないし。今のところね。

「信用してるからね」

…えー、ホントに?
…それは、いいんだけどさ。
あったことほんとに全部、
圭ちゃんには話さないと済みそうにない感じに…。
…あたしがウカツだった? …そんなことないよね。
うん、絶対そんなこと、ない。
256 名前:完名無 投稿日:2002年03月31日(日)05時21分11秒
予想していたよりも少し早めに仕事がひけた。ちょっとラッキー。
早速、さっきメモリーに入れた番号を呼び出して、通話ボタンを押す。

「…もしもし、福田さん…後藤です」
『…あ、はい』
「これから、いいですか?」
『もう終わったの?』
「うん、ついさっき。もうすぐ出られるんで」

…なんか、友達と話してるみたい。
ちょっと不思議な気分。

『…場所は…?』
「んー、そっちの便利な場所まで、行きます」
『…じゃあ、うちでいい?』
「うちって…え、福田さんち?」
『うん。わざわざ来させるの、悪いんだけど』
「いや、そんなことない…けど、いいの?」
『…別に、全然いいけど…なんのお構いも、できないけど。
あ、夕飯もう食べた?』
「…さっきお弁当が出たけど…まだ食べてない。
…あ、持って行こうかな」
『…もしかして、余ってる? 数』
「うん、結構余ってるかも。食べないで帰ってる人いるし。…いる?」
『うん、よろしく。今日うち誰もいなくてさ。お腹すいた〜』

思わず笑っちゃう。…なんか、面白いぞ、この人。
257 名前:完名無 投稿日:2002年03月31日(日)05時21分45秒
最寄りの目印をきいて、タクシーで乗り付けることにする。
お弁当は…思ったとおり。豊富に余ってた。
福田さん今一人って言ってたから…3個でいいか。
あたしが2個。…福田さんも2個欲しかったりして。
…4個にしよう。

今日の仕事場からは、わりと近かった。
呼び鈴を押す前に、ふと考える。
やっぱ、圭ちゃんのおかげなのかな、これは。
だって、急に警戒心ゼロだと思う。
…こういう状態で、相手が傷つくようなことは言えないよね、普通。
そこまで計算済みなのかな、圭ちゃんは。
…何も言わなくてももう、全部知ってたりして…。
いや、さすがにそれはないか。いろいろ、全部、昨日の今日だし。

「…いらっしゃい。どうぞ」

暗いところから急に、ドアの中の家庭の明かりがまぶしい。
…そういえば、昨日も帰ってなかったんだ。
なっつぁんち、泊まったから。

「おじゃまします」

…今日は、遅くなんないうちに帰ろっと。
258 名前:完名無 投稿日:2002年03月31日(日)05時28分45秒
「わざわざ、ごめんね。一人で留守番になっちゃって、出られなくて」
「あ、いや、こっちこそ、突然…」
「突然じゃないじゃん。ちゃんと電話で約束したし」
「…あ、そーか」

リビングダイニング…っていうのかな、こういう部屋。
そこへ通されたあたしは、持ってきたお弁当を取り出した。

「おー、助かる…あれ? なんで四つ?」
「え、あたし、2個食べるから。福田さんは…?」
「うーん、結構魅力的な誘惑だけど…」

そう言いながら、通して見えるキッチンへ向かって歩く。

「…毎日ダンスとか、してる人と違うからねぇ」

お湯、沸かしてるみたい。
1個でいい、ってことかな。

「…じゃあ、余った1個はとっとくか、だめだったら捨てちゃってください」
「うん」
259 名前:完名無 投稿日:2002年03月31日(日)05時29分42秒
少しして沸いたお湯で、お茶とカップスープを
二人分、作ってきてくれた。

「さ、食べよ。ああ、お腹すいた」
「あ、どうも。あの…」
「なに?」
「自分で作ったりとかって、しないのかなって」
「え、料理?」
「うん」
「…昔からあんまり興味なくて…今も、まあ、しないなぁ。
インスタントのこれ、カップスープとかにお湯、入れるくらいしか」
「ふーん」
「後藤さんは?」
「んー、忙しいときは全然しないけど、時々は」
「作るの?」
「うん」
「へぇ、いいね」

そう言って微笑む福田さんの顔を見て、何か他の人と
ちょっと違うような気がした。
何がどう違うのかは、よくわからない。
とにかくもうあたしも、お腹すいた。
260 名前:完名無 投稿日:2002年03月31日(日)05時30分28秒
…だから、食べてる間の福田さんの様子は
あんまりよく見てなかった。しゃべんなかったし。
食べ終わる時間が、2個食べたあたしと、普通に1個食べた福田さんと、
そんなには違わなかったような気がする。わかるのは、それだけ。

でも気が付くと、少し先に食べ終わった福田さんは
あたしのこと見てたみたい。

「…お腹いっぱいになった?」
「…うん」
「そう。よかった」

そう言ってまた微笑む福田さんの顔を見て、
さっき食べる前に思った、ちょっと違う気がする理由がわかった。
口の端が、下がってる。
ふつう口閉じて笑うときって、口の端って上がるよね?
下がると口が「への字」に見えて、ふつうムッとしてるみたいに
見えるはずなのに。ちゃんと、笑ってる。笑ってる顔に見える。
こういう笑い方って、テレビ的には、どうだったんだろ?
…なんて、そんなの他人のことまで考えるほどあたし自身は
気にしてないけど。
…いや、ほんとは、時々は気にしてるけど…。
261 名前:完名無 投稿日:2002年03月31日(日)05時31分04秒
福田さんは空いたお弁当のパッケージとスープのカップを
片付けて、新しくお茶を入れてきてくれた。
…なんとなく、料理も、やらないこともなさそうな
雰囲気の人な気が、するんだけどな。

「…でさ、話って、なにかな?」

…そうだよあたし、何くつろいでるんだろ。
そう話しかけられるまで、自分が何しに来てたか
すっかり忘れてた。
262 名前:完名無 投稿日:2002年03月31日(日)05時32分20秒
忘れてたのは、別にあたしがバカだからじゃないと思う。
話したいことが、どうでもいいことだからでもない。
この人…福田さん。
なんだか人を、不思議な雰囲気に引き込むっていうか。
まともに話すのは初めてなのに、なんとなく落ち付けちゃうのは、
この声のせいなのかな。

「なっつぁん…なっちも、料理、するよね?」
「そうみたいだね」

そうみたい…って、そっけないね。
ってかあたし、何言ってんだろ。

なっつぁんって呼ぶようになったのは…圭ちゃんの影響だったかな。
それともなっつぁんがあたしのことを「ごっつぁん」って
呼ぶようになったからかな。
んー…わかんないや。
263 名前:完名無 投稿日:2002年03月31日(日)05時33分13秒
福田さんは、それ以上何も言わずに、慎重にあたしの次の言葉を待ってる。
なんか、緊張してくる。
おかしいな、あたし、めったに緊張なんてしないのに。

そう言えば、たしか市井ちゃんがそう呼んでた。

「…ねえ、明日香って、呼んでいい?」
「…いや」
「…えー…」
「だって、なんか、やな予感がするから」

そう言って彼女は口の端を下げて、笑った。
264 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月31日(日)05時57分26秒
う〜夢の対談ですなぁ。。。
なんだかこないだから意外な展開で、これからも想像つかないです。
でも、それがまた良し!
早くなちふくツーショットも見たいけどね。
265 名前:1111 投稿日:2002年03月31日(日)20時35分35秒
更新お疲れっす。
天才肌二人のトークは実際にも聞いてみたいところですが。
でも、噛み合わんだろうね(w。

さて、後藤さんは何を企んで(?)いるのか。
次回を待て!!ってことでお待ちしておりま〜す。
・・・・次回はなちこをだしてあげてね。
266 名前:完名無 投稿日:2002年04月03日(水)23時05分13秒
>>264
すみません、じらしてるわけでは全然ないんですが…
必ずお見せできることはお約束できるんですけど。
私も自分でちょっと欲求不満で(w、途中でなちふく短編を1本書いたのがあるんで
途中ですがここに載せてお見せしてみようかと。

>>265 1111さん
噛み合わない部分は多そうですよね、確かに。
でも、意外なところで噛み合う部分もあったりするのかも。
次の本編更新ではまだなちこが出てこないんで…

では、途中ですが短編を1本割り込ませていただきます。
タイトルは「挑む目」。いろいろな経緯があって書いたものなのですが
ここではとりあえずそれは、置いといて。
267 名前:完名無 投稿日:2002年04月03日(水)23時06分30秒
春の生暖かい風があたしの頬を撫でる。
なんだかボーっとするような、それでいて目は冴えているような
中途半端な気分にさせられる。
こんな日にきっと人は頭のネジが1本緩んで、
どこかおかしくなったりするんだろう。

中途半端なのは、今のあたしの立場。
過去にしていた仕事のこともあるけれど、
それ以上に、今目の前にいる人との関係。

忙しい仕事の合間を縫っては、何かと理由をつけては
あたしに会いに来る人。
過去にしていた仕事の、仕事仲間だった人。
ふと会話が途切れた時に目が合うと、
何気ないふりを装って、視線を落とす。
…それまでの視線に込められていた感情を
隠すように。
まだ明るいこの時間、外を二人で歩いているときに
視線に込めていい感情ではないからだろうね。

一度、この人に抱かれた。
性別があたしと同じなのが少し気になったけれど
後悔はしていない。
268 名前:完名無 投稿日:2002年04月03日(水)23時07分18秒
「なんかね、最近、だるくて」
「春だからね」

そっけない返事だと、我ながら思う。

「どうも調子が出ないんだよ」
「ふうん、それで?」
「…冷たいなぁ」

そうかな?
そっけないのは認めるけど、冷たくはないと思うけど。

「…今のあたしに、何か、してあげられることって、あるかな」
「あると思う」

そう言ってあたしに絡む視線に、さっき目を伏せる前の
感情の光が少し、甦る。
でも、まだ弱い。

「なに?」
「…いや、別に」

また目を伏せてしまう。
269 名前:完名無 投稿日:2002年04月03日(水)23時07分58秒
「…ちゃんとこっち、見て」
「へ?」
「あたしの目、見て」

言われた通りにあたしの目を見たまま、動けなくなってる視線。
怯えてる? ねえ、あたし、恐いかな?

「抱いてほしい? 抱かれてほしい? どっち?」

見る間に顔が赤くなっていくけど、
視線はあたしの目を見たまま。

「…こ、こんなとこで…まだ、明るいのに…なにを…」
「こんなとこで、まだ明るいのに、そういう目で見られるとさ」
「『そういう目』ってなにさ! 知らないよ!」
「そう。それならそれで、別にいいけど」

顔を真っ赤にしたまま、ぷいと横を向く。
目にもっと、力があればね。
この人、誰にも負けない人なのに。
270 名前:完名無 投稿日:2002年04月03日(水)23時08分43秒
また視線が戻ってきた。
でも、やっぱりちょっと、弱いかな。

「…あのね、えっとねぇ、…どっちも」

…それはそれで、確実な意志を秘めていた。

目に表現されることがなくても。
素直な心と強い意志に、
人の心は動かされることを知った
春の夕暮れの出来事。

―「挑む目」終―
271 名前:完名無 投稿日:2002年04月03日(水)23時10分45秒
では、以降本編続き。
272 名前:完名無 投稿日:2002年04月03日(水)23時12分15秒
そうだね、いろいろ悩んだり、作戦なんか巡らすのは
あたしも性に合わない。

「…じゃあいいや、福田さん」
「なに?」
「なっちのこと、どう思ってんの?」

軽いため息をつかれる。
…予想どおりの質問だったのかな。
でもね、相手の心の動きなんか予想して、
いちいち細かく気を使うのも性に合わないし。

「…どう思ってるって…何がききたいのかなぁ」
「思ってること、そのまま言ってくれればいいんだけど」
「だって、関係ないじゃん、後藤さんには」
273 名前:完名無 投稿日:2002年04月03日(水)23時13分06秒
その言葉にかちんときたから、
あたしも黙っていられなくなった。

「…昨日さぁ、なっちのこと、ふったじゃん」
「…あたしが?」
「そうじゃん。あの後なっち、大変だったんだよ?」
「…やつあたりでもされた?」
「…そうかもね。…うん、やつあたりだったのかも」
「…なに?」

…少しは、ためらったよ。
でも、なんか、挑戦的な目。
そう、見えちゃったから。

「…あたしと、寝た」
274 名前:完名無 投稿日:2002年04月03日(水)23時15分33秒
あたしを見たまま、小さく頷く福田さん。
…全然動揺してない、とか?
そっちがそうなら、こっちもなんでも言っちゃうよ?
いいの?

「…ただ一緒に寝るだけじゃなくて」
「…うん」
「…福田さんとするのとたぶん、同じコト、したよ」
「…うん」
「…あ、ちょっと、逆だったかもしんないけど…」
「…ふうん…」

何か考えるように少し視線を、落とした。
でも、うろたえているようにも全然見えない。
いいの? ホントにそれでいいの?
275 名前:完名無 投稿日:2002年04月03日(水)23時16分30秒
「…あのねぇ、後藤さん」
「…なに」

急に話し出してちょっとびっくり。

「…なっちはねぇ、別に、あたしのモノじゃないよ」
「…え」
「…でね、同じように、あたしも、なっちのモノってわけじゃ、ない」

…かなり予想外の反応…
どーしたらいいのか、ほんとにわかんなくなってきた…。

「…後藤さんもさ、恋愛すると、相手が自分のモノ、って
考えちゃう人?」

そんなコト、いきなりきかれてもわかんないよ…。

「…え、あー…どーなんだろ…んー…」
「普通はみんな、そうなのかな」
「…んー…」

…そういう人のほうが多い、って気は、してきた。
そんな、アンケートとか統計とか?
そーゆーのは、わかんないけど…。
276 名前:完名無 投稿日:2002年04月03日(水)23時17分15秒
「…あたしねぇ、そういう考え方がちょっと、だめでさ」

…あ、あたしと違う。わかった、今。
あたしは、相手を自分のモノにしたいって、思うほうかもしんない。
今ごろ気がついたよ。

「…福田さんが…変わってる人、かも…」
「…やっぱ、そう思う?」
「…うん…今、思った…」
「…そっかぁ。まあ、そうなんだろうね」

あ、でも、これで話、終わっちゃ、イヤかも。
…あれ? なんでだろ?

「…だから福田さん、娘。辞めちゃったの?」
「…それって、なっちのことって意味?」
「いや、えっと、それもあるかもしんないけど…それだけじゃなくて」
「…なっちとはねぇ、あたしがいた頃は、そうなってなかったよ?」
「あ、うん、きいた」
「…そんなコトまで話したのか、なっちは…」
「あ…」
「や、いいよ別に。後藤さんに知られて困るコトなんてないよ」

…そう言われるとちょっと嬉しかったりするのは
なんでかなぁ…。
277 名前:完名無 投稿日:2002年04月03日(水)23時18分18秒
「…まあねぇ…あたしのそういう、『変わってる』とこが
原因なのは、確かだと思うんだけど」
「…辞めたこと?」
「…うん。後藤さんも、そう思わない?」
「…いま思ったかも」
「…でしょ?」

そう言って笑う口元は、口の端が特に下がってて
いたずらっぽい感じ。
278 名前:完名無 投稿日:2002年04月03日(水)23時19分16秒
「…まあ、なっちもカオリも、偉いな、って思ってる。
ずーっと娘。支えてきてるしね。いろんな、すごい変化にも耐えて」
「…んー…」

その「変化」っていうのは、あたしが入ったことも
含まれるのかな。

「でも、あたしはそれ、無理だし。いやだったから。
それだけなんだけど」
「…福田さん、今のあたしたち見て、どう思う?
やっぱ、辞めておいてよかったとか、思う?」

福田さんはさあ、と言って首をかしげる。

「…今の娘。にあたしがいることなんてあり得ないことだから、わかんない」

…それは…さ、辞めておいてよかったって意味だよね…?
…なんでそういう、ちょっとわかりにくい言い方するかなぁ…。
今いるあたしに気をつかって、ってワケでもなさそうな…。

「…あ、でもさ、後藤さん」
「なに?」
「後藤さん、一人で入ってきて、頑張ったよね」
「…過去形にしないでよー」
「はは、そうだね、ごめん。…これからもさ、頑張ってね」
「…なっちと一緒に?」

もう、何話しに来たか忘れないよ。
この人のペースに、乗せられない。
279 名前:RLの読者 投稿日:2002年04月04日(木)02時06分19秒
161 ディンプルキーであっても複製、ピッキングできますがなにか?
( 5月号参照) 
完全な管理システムを望むなら虹彩認識(眼球)もしくは、DNA認証を推奨します。
RL、http://www.radiolife.com/RL-Online/index.html
280 名前:完名無 投稿日:2002年04月04日(木)03時27分09秒
>>279
おお、ずいぶん細かく読んでくれてるんだね、ありがと♪
RLって真面目に読むと人間信用できなくなってくるよね(w
5秒で開かなきゃそれでいいのさ♪
161は一応福田語りのつもりなんだけど…語りの人を意識して読んでもらうと、
他にも事実と違う部分もあるよ!探してみてね!
ageてもらっちゃってゴキゲンなんで(wさらに更新。
281 名前:完名無 投稿日:2002年04月04日(木)03時28分33秒
口元をちょっと引き締めてから、福田さんは口を開く。

「…やあ、やっぱりさぁ、今一緒に仕事してる人のほうが
有利だとは思うんだけど」
「…そーゆーコトききたいんじゃなくてさ」
「…あたしだってききたいよ。後藤さんは、なっちのこと
どう思ってんの? 好きなの?」

…今度はこっちが言葉に詰まることになった。

あーそうだ、あたしは市井ちゃんがずっと好きで…
なっちはずっと福田さんが好きで…
なっちが福田さんにふられて? 落ち込んでて…
それでいつの間にかああなっちゃって…

あたし…
何が言いたくてここへ来たんだろう…
何が知りたくてここへ来たんだろ…
282 名前:完名無 投稿日:2002年04月04日(木)03時29分30秒
「…まあ、そういうこと、したんなら…普通好きなんだとは
思うんだけど…」
「…ん、そうだよね…」
「…違うの?」

とにかくこういう時、思ったことを正直に言うしか
あたしにできることはない。そうとしか思えない。

「…そのときは、なっちしか見てなかった。あたしは」
「…そのとき、って…」

そうつぶやいて、福田さんは複雑そうな表情になる。
…全然動揺してないわけじゃなかったんだね。
きっと、さっきも。

「…でも、なっちは…あたしのこと、ほとんど見てなかったと思う」
「…そういうのって、わかるもんなの?」
「…わかるよー、そんなの…こっちは見てるんだから…」
「…そっか…」
「…福田さんはさー、そういうコトされたことないから
わかんないんだよ」
「…そういうコトもなにも…そういうの、初めてだったから…」
「…そっかぁ…でもさぁ、初めてでさ、ちゃんと見てもらえて…
なっちのあの様子じゃさぁ、すごく一生懸命だったんじゃないの?」
「…なっちのあの様子って…どんな」
「…知らない。もう、言いたくない」

あーもー、なんかムカついてきたよ。
283 名前:完名無 投稿日:2002年04月04日(木)03時34分57秒
もひとつ>>279
ねえねえ、あの表現でメーカー名までわかる?
284 名前:完名無 投稿日:2002年04月05日(金)23時31分53秒
「…そうか…でも、後藤さん」
「え、なに?」
「『そのときは、なっちしか見てなかった』って言ったよね?
そのときじゃないときは、違う人?」

…あたしって、そんなにわかりやすい性格してる?
ひとっこともそーゆーコト、言ってないつもりなんだけどなぁ…。
…さっきの福田さんの複雑そうな表情は…そっか、
そこまで、読んでたのかぁ…。

もうそれも、正直に言うしかないね。

「…うん」
「…そうか…それなら、あたしの方が有利ってことも、あるかもね。
他の人と、って悩んでるわけじゃないから」
「…そうなんだ」
「…そうだけど」
「…じゃあさ、なんで昨日なっちに、あんなに冷たかったの?
あんな場所だったから?」
「…それはもちろんあるけど」
「でもさ、終わってからの約束も断ったんでしょ?
他に用あるわけじゃないのに」
「…うん」
「なんで?」
「…だから…あたしは、なっちのモノじゃないから」
「…なにそれ…わかんない」
285 名前:完名無 投稿日:2002年04月05日(金)23時32分24秒
わかんないよ、福田さん。
やっぱり、すごーい変わり者なわけ?
…あたしとなっちのこと、気になったり、
嫉妬心だってちゃんと、あるくせに…。
どうしてそういう、あたしに理解不能なことばっか言うかな。

「…まあ、そうだね。わかってもらおうとも、思ってない」
「…あたしがわかんなくても別にいいのかもしんないけどさぁ…
なっちも、わかんないんじゃないの?」
「そうかもね」
「だから、こーゆーコトになっちゃうんじゃん、もー…」
「…あたしのせい?」
「…あー…えっと、うん、そうだよ」
「ほんとに、あたしだけのせいかな?」
「…ごめん…違うかも」

そうだね、もう、とっくにばれてる。
きっとあたしが、ここへ来たときから。
286 名前:完名無 投稿日:2002年04月05日(金)23時34分06秒

「…じゃあ、もう少しわかってもらいやすそうな
理由のほうを言おうかな」
「…なに、なに?」
「…昨日ね、生理、まだちゃんと終わってなかった」
「…は?」
「…用はなくてもさ、そういう都合も、あるわけじゃない。
同じ女の子なのに、なんで気が回んないかな、って」

…えーっと、…待て待て、落ち付いて考えてみよう。

「…それは、さー、」
「…なに」
「…なっちんち、行ったら、…えっと、終わってたら…
するつもりでいた、ってコトだよねぇ?」

顔が、見てる間に、わかるほどに赤くなる。

「…だって…あのまま、行けば…それは、そう、なるでしょう…
違った、かな?」

こんな、自信なさげな福田さんは今日、初めて見る。
287 名前:完名無 投稿日:2002年04月05日(金)23時34分40秒
…なるほど、まんざら悪趣味でもないかも。なっち。
こういう福田さんの様子が見たくて、わざと見え見えに
枕二つにしてみたとか。
…それとも、そこまで考えてなかったかなぁ。

「…じゃあ、自分から、今日はできないって言えばよかったのに」
「…だって、しようって言われたわけじゃないのに? こっちから?」

顔じゅうもう、真っ赤にして。

「そんなの、なっち、する気でいたに決まってんじゃん。
自分でもいま、そうなるでしょうってわかってたじゃん」
「でもねぇ、部屋で待ってろとは言われたけど。しようとは、言われてない」

…なにを気にしてるかな、この人は…。
288 名前:完名無 投稿日:2002年04月05日(金)23時35分26秒
まあ、でもね…少しは、わかるか。
付き合い始めでまだ何でも言える間柄じゃないときは、
そういうことも、あるかもね。
…あれ、でも。

「…メンバーだった頃さ、なっちとそういう話、しなかったの?」
「…え、生理のこととか?」
「うん」
「してたけど」
「じゃあ、言えるじゃん」
「…そのときと今は、違うんだよ」

…たしかに…違うか。
話さなきゃいけない理由も。
二人の間柄も。

…福田さんの、なっちに対する感情が、いちばん、違うんだろうな。
なっちはきっと、ずっと、あまり変わらない感情を抱いてる。この人に。
289 名前:完名無 投稿日:2002年04月05日(金)23時36分22秒
「できないならできなくてもさ、行ってあげたほうが
嬉しかったと思うけど。なっちは」
「…どうかなぁ。がっかりされるとか。『それでもいいから』って
やられちゃうのもいやだし」
「…それはないんじゃないの…? それじゃ、まるっきり
カラダ目当てみたいじゃん」
「…そうなんじゃない? 後藤さんでもいいんだろうし。
あ、あたしなんかより、後藤さんのほうがずっといいか」

ムカ!…ついたけど、やばい…返す言葉がない。
…ここはひとつ、冷静に、冷静に。
落ち付いて、考えよう。どう言うといいのかな、こういうとき。
…これはどうかな。

「…いや、ほんとはさー…落ちこんでるなっちをね、
あたしが、無理やり…」

…あたしってなんか、いい人すぎない?
でも福田さんは、さめた目であたしを見て、言う。

「…だからさ、いいんだよね、どっちでも…
なっちは、あたしのモノじゃない、から」
290 名前:完名無 投稿日:2002年04月05日(金)23時38分18秒
さっきも福田さんが言っていたその言葉は、
今になってみると不思議な説得力があるようにも思える。
…でも、わかんないんだけどね。
だってさ、そう言いつつ、もう、嫉妬むき出しじゃん!

「…だからさー、なっち絶対、福田さんのコト好きなんだってば」
「…まあ、好きなことは好きなんでしょうね、きっと」

そんな、そっけないふりしてももう、だめだと思うよ。

「…たぶん、えーと…4年以上なのかな。4年半以上かも。
本気だよ? 苦しかったと思うよ?
あたし、その気持ち、すごくよくわかったから…」
「…あ、後藤さんの『違う人』って…紗耶香?」

…なんでまたバレてるかな、もう…。
いいんだけど。
だいたい、同じような境遇の人のことがすぐわかるのは
自分も同じような境遇だからなんじゃないの?

「…そうだよ」
「…そうか…うーん…」

あごに手をあてて、考え込むしぐさ。
…いや、べつにそれは、
福田さんに考えてもらわなくてもいいんだけど。
291 名前:完名無 投稿日:2002年04月05日(金)23時39分24秒
「…まあ、いいか。なっちのことも紗耶香のことも…
あたしが口出すことじゃないね」

ほんとはさ…あたしも、そうできればよかったんだけど。
でも、できなくなっちゃったんだからもう、しょうがないじゃん。

「…いいの? なっち、もらっちゃうよ?」
「…紗耶香はどうするの?」
「いちーちゃんは、もともと、あたしのモノ」
「…ぜーたく…」

そう言って苦笑する福田さんはちょっと、大人っぽい。
そして、ちょっと皮肉っぽいんだけど、落ち付いた口調でまた、話し出す。

「…狂わなければね…先月はとっくに終わってて、
今月はまだ先だったんだけど…残念、運が悪かったかな」
「…え、生理?」
「うん。あの後、狂ったんだよね。次の日来ちゃって、
そのまま早まっちゃって。それまで、月末くらいだったんだけど」
「…あの後って…」
「うん、初めての…去年の、12月17日」
「…誕生日…だったんだよね…?」
「うん」
292 名前:完名無 投稿日:2002年04月05日(金)23時40分08秒
周期が狂うほど…心にとっても、カラダにとっても、
感動的な出来事だったってこと?

それはさー、ノロケに近いと思う。わかって言ってんのかな。

…あ。

「…昨日も、17日じゃん!」
「…そういえば、そうだね」
「だからなっち、大丈夫だと思ったんじゃないの?」
「でもさ、狂うことだってあるじゃん。後藤さんはないの?」
「…ある。でもね、なっち今、生理短いよ。2日か3日で完全に終わるって」
「…へえ」
「けっこうきついダイエットしてたから…そんときからみたい」
「…そうなんだ」
「それだとさー、そういうの…なかなか終わんないときの感じとかも、
気がまわんなくなるかもね」

福田さんは、ため息をひとつついた。

「…やっぱり、一緒に仕事してる人は、違うね」

そういう結論にいくためにいま、一生懸命話したんじゃないってば!
…なんであたしが、なっちの弁護してあげなくちゃいけないかな。
293 名前:完名無 投稿日:2002年04月05日(金)23時41分06秒
全部やっぱり、なっちが悪い!
もう、絶対そうだ、これは!

あたしはもう迷わず自分のカバンから携帯を取り出す。
メモリにいれてある番号から、この一番の原因の、悪い人を
素早く選んでボタンを押す。

『…あれ、ごっつぁん?』
「そっちももう、終わった? 仕事」
『あ、うん、さっき』
「今どこにいんの」
『…帰るとこだけど』
「福田さんち、知ってるよね」
『えっ』

小さく声を上げたっきり、黙り込む。
いくらなっちでも、のんきな気分じゃいられないでしょ?

「知ってるよね? 場所」
『…知ってるけど…』
「すぐ来て。飛んできて」
『…なんで…ごっつぁん、いるの? なんで!?』
「いいから! 今すぐ来て!」

そう言ってすぐ、通話を終了してやった。
294 名前:完名無 投稿日:2002年04月05日(金)23時41分50秒
気が付くと福田さんは、テーブルを挟んだ向こうで、呆然とあたしを見てる。
さっき切ったあとあたしの携帯は鳴らないから、
なっちは間違いなく今、ここに向かって急いでる。

「…いいよね。なっち呼んでも」
「…もう呼んでるじゃん」

そう言ったあと福田さんは口を閉じて、笑う顔になる。
口の端は、上がってる。

「…あたし、もう、帰ったほうがいいかな? 気をきかせて」
「…いや、いてくれないと、困るけど」
「そう?」
「あたし一人じゃ、どうしたらいいかわかんないし」
「話し合えば、いいんじゃない?」
「…何を」
295 名前:完名無 投稿日:2002年04月05日(金)23時42分23秒
「んー、あのさー、さっき言ってたあれ。えーっと、
あたしはなっちのモノじゃないとか、なっちはあたしのモノじゃないとか」
「…え」
「あれってさ、結局、生理終わってなかったとか、それが
言えなかったとか、それだけのことなの?」
「や、違うよ。それも関係なくはないけど。全然、それだけじゃない」
「だったらさー、やっぱりよくわかんないし、
なっちもわかんないんだと思う。だから、話し合えば?」
「…うーん…でも、後藤さんは?」
「だからー、あたしはー、ずっと前からいちーちゃん一筋」
「…嘘ばっか」

そう言って福田さんは、声を漏らして笑い出す。
296 名前:完名無 投稿日:2002年04月05日(金)23時43分21秒
「今日はさ、もう、終わってるんでしょ? きっちり」
「あ、うん」
「家族のひと、帰ってこないの?」
「うん」
「だったら、泊めてあげなよ、なっち」
「…さあ、どうしようかな」
「…そういう意地悪いうからさー、なっちがさぁ」
「や、べつに、意地悪ってわけじゃないと思うけど」
「そうなの?」

…やっぱりよく、わかんないや。福田さん。

そうやって話してるうちに、玄関の呼び鈴が鳴った。
297 名前:1111 投稿日:2002年04月06日(土)02時40分38秒
連日の更新、お疲れっ!!

駆け引きやね、明日香さん。
なちこしゃんは頭悪いんだから(笑)、駆け引きなんてしてあげんなよぅ。
後藤のじたばたぶりも良いね。

さぁ、なちこ登場!!
明日香の気持ちは?そしてなちこしゃんの性欲は!?
期待しながら待っております。
298 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月06日(土)04時22分04秒
なっち、はやっ!!!
ホントに飛んできた(w
最近、更新も早くてうれしいかぎりです。
ふくちゃんの事情と気持ちの変化がこんな形でわかろうとは。。。
マイペースなようで、ふくちゃんもごっつぁんもするどいねぇ。
真打なっち登場でどうなるですかぁ??期待してやす。
299 名前:完名無 投稿日:2002年04月09日(火)04時03分47秒
>>297 1111さん
やっぱりほら、会話は、駆け引きが楽しいわけで(w
なっちはそういうの、確かに、向いてなさそうですよね(w
正直に言います。早く愛と性欲の赴くまま、明日香を抱かせてあげたいな。

>>298
>なっち、はやっ!!!
そうですね(w だから、そこから更新初めてみました。
>マイペースなようで、ふくちゃんもごっつぁんもするどいねぇ。
恋する女の子は、するどいよ! みんな。

300 名前:完名無 投稿日:2002年04月09日(火)04時06分06秒
二人で顔を見合わせる。

「…ほんとに…飛んできた? はや…」
「…飛んできたんじゃない?」

二人で、くすくすと声を出して、笑う。

「今日ね、ここからわりと近くの…ほら、知らない?」
「…あ、わかった。あそこか」
「うん、そこだったから」

もう一度、呼び鈴が鳴る。

「…あたし、出てみようか? インターフォン」
「…後藤さんが出ると…びびって帰っちゃわないかな?」
「…心配?」
「…いや、面白いかも…」
「福田さんへの愛、試しちゃおっか?」
「や、そういう意味じゃなくてさ」

照れ隠しってふうでもなく、楽しそうに、
イタズラを企む子供みたいな表情になってる。
なんだかあたしも、楽しくなってくる。
301 名前:完名無 投稿日:2002年04月09日(火)04時08分49秒
廊下のインターフォンの受話器を、福田さんに促されて
取ってみる。

「…どちらさまですかぁ?」

沈黙。息を飲む音が聞こえてきそうな。

「…あれぇ、イタズラかな? 誰もいないのかなぁ?」
『…その声…ごっつぁんだね…』
「そうだよ〜。そういうあなたは…なっつぁんですね?」

また、沈黙。
福田さんは、あたしの持ってる受話器に耳を寄せてる。
あたしは、少しかがんで、福田さんにも聞きやすいように、
受話器を耳から少しずらして、浮かせている。
顔と顔が、すぐそば。
こんなにこの人と接近したのはこれが、初めて。
302 名前:完名無 投稿日:2002年04月09日(火)04時09分42秒
「…おやぁ? 返事がありませんねぇ。いるのかな?」

…ほんとに返事がない。
ほんとに…恐くなって帰っちゃったりして。
でも、福田さんは、そういうあたしを止めようともせず
口も出さず、黙って聞いている。
その表情がなんか、可愛かったから、肩に腕を回してみた。
…ちょっと驚いたみたいだったけど、嫌がってはいない。
そーゆーのは、わかる。
引き寄せる必要もないくらい、もともと顔と顔が近く。
だから、そのまま唇に軽くキスをしてみた。

「…は…、びっくりした…」
『明日香!?』

…お、ちゃんといるじゃん。福田さんの初めての発言には
ちゃんと反応して。
聞き耳立ててんのかな、外で。インターフォンに耳当てて。
…それは、怪しいよー、なっつぁん。
303 名前:完名無 投稿日:2002年04月09日(火)04時10分37秒
「なっつぁんはもー、帰っちゃったのかな?」
『…いる! いるよ! 開けてよ!』
「は〜い、ただ今。少々お待ちくださ〜い」

あたしがそう答えると、福田さんが、玄関のドアを開けに行く。
開いたドアから、ここからも見える門扉の向こうに、
見慣れた人の不安げな顔。

「明日香ぁ! なんか…なんか、されなかった? 大丈夫?」

…顔合わせて第一声がそれかよー。失礼な…。
暴力でも振るったとか? それとも手を出したとか?
なんにもしてないって。…あ、今のは…
そうだなぁ、まあ、福田さんの解釈次第ってことで。

なんか、よろよろした歩き方で玄関の中までたどり付いた
なっつぁんは、上がり口で福田さんの肩を掴んで、もう一度、尋ねる。

「…ね、ごっつぁんに…なんか、されなかった?」
「…なんかって、何?」
「…え…」
「別にさぁ、ただ、話してただけだから」
「…ほんとに、何も?」
「…だから、何が」

なっつぁんは、いや、なんでも…とつぶやいて黙り込む。
304 名前:完名無 投稿日:2002年04月09日(火)04時11分09秒
「だいたいさぁ、なんの心配してるか知らないけど…
そういう言い方は、ごっつぁんに失礼じゃないかな。ねえ、ごっつぁん?」
「そうだよねー」

初めてごっつぁん、って呼んでくれた。
そのことが、単純に、嬉しい。

結局なんだかいろいろ、自分の気持ちすら
よくわかんないとこも多いけど。
今日の訪問は、あたしにとって、よかったと思う。
楽しかったし、充実していた。
だからあとはもう福田さんに任せて、あたしは帰ろうと思う。

…福田さんにとっても、そうだといいんだけど。
305 名前:完名無 投稿日:2002年04月09日(火)04時11分49秒
「…じゃ、あたしもう帰るね」
「あれ、帰っちゃうの?」
「おジャマしちゃ悪いしさー」
「べつに、全然」

そう言って、いたずらっ子みたいに微笑むその
口の端が上がっていたか下がっていたか…
もうどうでもよかったから、よく見てなかった。
カバンをとりに行ってから、靴を履いているところに、声をかけられた。

「よかったら、また来てよ」
「うん。あのさー、うちもさ」
「…なに?」
「建て替えして、きれいになったんだよ」
「へえ、いいね」
「今度、遊びにきてよ。また電話してもいい?」
「うん、待ってる」
306 名前:完名無 投稿日:2002年04月09日(火)04時12分26秒
上がってから、少し奥に立って呆然とその様子を見ている
なっつぁんをよそに、
あたしは福田さんを手招き。

「ちょっと、耳貸して」
「…なに?」

大丈夫だよ。なっつぁんが見てる前で、さっきみたいなコトはしないから。
…別に心配してないか。自然な感じで耳を貸してくれた。

「…あのね、ガマンさせすぎって、よくないと思うよ。
かわいそーだよ?」

そう囁いてから顔を離すと、また福田さんの赤くなった顔が見れた。

「じゃ、なっつぁん! 頑張ってね! 明日遅れないようにね!」
「…ちょ、ちょっと! ごっつぁん!」

あわててあたしに声をかけるなっつぁんと
顔を赤くした福田さんを残して、あたしは福田さんちを後にした。

さて、大通りに出て、タクシーつかまえようか。
それとも、お姉ちゃんたちに車で迎えに来てもらおうかな。
今晩は、家族がいるあたしの家で。
あたしの部屋の、あたしのベッドで。
ゆっくり眠ろう。
307 名前:完名無 投稿日:2002年04月09日(火)04時14分13秒
ここでごま語りを終わらせて頂きます。
次からは初めての、なち語りの予定です。どうぞよろしく。
308 名前:完名無 投稿日:2002年04月09日(火)04時26分42秒
>>299自己・誤変換
298レス「初めて」→「始めて」
309 名前:1111 投稿日:2002年04月10日(水)01時19分35秒
更新お疲れ様れす。そして、自分の気持ちに超素直に従う天然娘の登場ですな。
なち語り・・・。いろんな意味でデンジャーやね、期待してしまう。

新旧天才対決、後藤の勝ちっすね。なかなか見ごたえがありました。
しかし、よく人物像が書けてますねぇ。いつもながら感心しまふ。
さぁ、行けなちこ!! 気持ちの赴くままに!!
310 名前:完名無 投稿日:2002年04月12日(金)23時54分49秒
>>309 1111さん
>いろんな意味でデンジャーやね
ほんとに…まさに。一番制御不能な人かも…作品的にも、危険で心配。
>なかなか見ごたえがありました。
面白かったですか? だとしたら、とても嬉しい。

またある程度まとまったので更新致します。

311 名前:完名無 投稿日:2002年04月12日(金)23時56分37秒

ごっつぁんが帰っていったあと…わたしは不安で仕方がない。
電話があってから…ここへ来るまでも…ずっと、不安だったけど。
帰っちゃったから…よけいに不安。
話してただけ、って言うけど…いったい、何を話してたの?

ずいぶん親しげな様子の別れ方で…もしかしたら、
わたしの知らない間に、明日香とごっつぁんは、仲がよかったのかな…。
だとしたら、ずるいよ。くやしい…。

ああ、なんで…
だったら…昨日のことは…まずかったなぁ、ぜったい…。

「…なっちは、今晩、予定なかったの?」

話しかけられて、心臓が飛びあがる。

「へぇっ?」
「…やっぱ、なんか、予定あった?」
「ややや、全然! 帰って、寝るだけだったから。ほんと」
「…そっか、よかった。まあ、呼び出したの、あたしじゃないけどさ。
よかったら、ゆっくりしてって」

たとえ予定があったとしても、明日香と過ごせるなら…
蹴るよ、そんなもん。…仕事以外なら。
312 名前:完名無 投稿日:2002年04月12日(金)23時57分12秒
このテーブルにあるカップ…ひとつは、ごっつぁんが
使ってたんだよね。
まだ、あったかいのかな。
…確かめようとしたら、明日香がさっさと片付けてしまった。
そして、わたしのために、別のカップとお湯を用意してくれている。

ごっつぁん、さっきまで、ここにいたのかな。
それとも、明日香の部屋に…ベッドの中、とか…
うわー、考えたくない! っていうか、そんなはず、ないよ!
いくらごっつぁんが手が早くても…
明日香がそんな簡単に…

でも、さっきの…あの…。
インターフォンから一回だけ聞こえた、明日香の声。
ちょっとかすれた声で…びっくりした、って聞こえた。
色っぽい声…に、聞こえた。わたしには。
313 名前:完名無 投稿日:2002年04月12日(金)23時58分01秒
気になって…どうにも我慢できなくて。
新しいお茶を私の前に置いてくれた明日香に、尋ねる。

「…ね、明日香」
「んー?」
「ごっつぁん、何しに来てたの?」

明日香は自分の分のお茶をテーブルに置きながら、
向かいに座る。

「…だから、話、しに…」
「…なんの話?」
「…聞きたい? 詳しく?」
「…あ…」

…それも、恐い。
ごっつぁんのあの性格からすると…昨日のこと、
言っちゃったかも知れない、と思う。
でも、言ってないかも知れない、とも思う。
…確認するのも恐い。
314 名前:完名無 投稿日:2002年04月12日(金)23時58分44秒
「…聞きたければ、言うけど」
「あ、いや、やっぱり…
プライバシーとかさ、そういうのもほら、あるし、ね?」
「…そんな大げさな…」

…あれ? ほんとにただ、お友達として話、してただけ、なのかな。
そういえばさっき明日香、「ごっつぁん」って呼んでた。

「…ごっつぁんと、仲、よかったんだ?」
「…そうだね…うん、そうかも」
「『そうかも』って…変な言い方だね」
「だって、まともに話したの、今日が初めてだし」
「そうなのかい?」
「うん」
「え…じゃあ、なんで今日…」
「…だから。詳しく、聞きたい?」

苛立ったようなその口調に、
明日香が昨日の出来事を、すべて知っているに違いないことを
思い知らされる。
打ちのめされて、わたしはただ、これしか言えない。

「…ごめん…」
315 名前:完名無 投稿日:2002年04月12日(金)23時59分16秒
「…何か、謝らなきゃいけないようなこと、したの?」

ああもう! 知ってるのか知らないのか、どっちなの?
…知ってるよね、絶対…。
じゃなきゃごっつぁんがここにいて、なっちをここに呼び出すなんて…。
いくらなっちでも…いま、この状況で…
そこまで楽観的には、なれない…。

「…きいたんでしょ、ごっつぁんから…」
「…何を?」
「…だから、あの…ごめん…」
「…だから。謝る必要なんて、ないってば」
「…え?」
「なっちは、あたしのモノじゃ、ないんだし」

その言葉にわたしは、胸をえぐられる思いだった。
316 名前:完名無 投稿日:2002年04月12日(金)23時59分55秒
涙が…出ちゃいそう…。

ガマン、しなきゃ、だめかな。
なっちが、悪いんだし。
大人なんだし。
でも…。

「…なっちが泣くんなら…あたしも泣いてもいい?」

その言葉に、涙がこぼれおちる寸前に、明日香の顔を見つめる。
…あ、っと。とまんなくて、一滴テーブルに落ちた。

「…な、かない、で…明日香…泣いちゃ、いや…」
「…でしょう? だったらさ、なっちも、泣かないでよ」
「…ん…わかった…」

…明日香の目、見てたら…
涙、とまった。

「…だいたいさぁ、この場合…泣いてもいいの、
あたしのほうだと思うんだけどなぁ。そう思わない?」

明日香はやっぱり、今でも…
わたしより、大人なのかも知れない。
317 名前:完名無 投稿日:2002年04月13日(土)00時00分32秒
何も言えなくなってるわたしに、
明日香が続けて、言葉を、くれる。

「…なっちさぁ、本当に、偉いと思うよ。
あんな移り変わりの激しい…激動のモーニング娘。の中に
ずっといてさ…もう、4年半…以上だよね。ずーっと、支えてきて」

明日香に誉められると、無条件に、嬉しい。
…けど…別れの言葉を切り出すため、だったとしたら…
胸がちくりと痛みだす。

「…昔からそうだったけど…なんでもこなしちゃうし。
演技も、…うまくなったよね」
「…そんな、こと…」

映画収録中に太ったりしたよ。
共演相手と写真撮られたりもしたよ。
…充分、いろいろ…失格だと思うよ。

…明日香がずっと、わたしのこと、見てくれてたって…
…あの頃から、知ってれば…
もっと生活にも、仕事にも、張り合いが持てたのに。
…たとえもう、あまり歌えなくても。
…歌えるとき、明日香が隣にいなくても。
318 名前:完名無 投稿日:2002年04月13日(土)00時01分10秒
「…だから、もう、さ。あたしの手の
届くとこにいる人って感じ、しないしね。
あたしは、続けられなかったわけだから」
「…そんな…」
「…なっちはさ、みんなのモノ、なんだよ」
「…そんなこと…言わないで…」
「…だって、アイドルグループの『顔』なんだから…
そういう自覚と自信、必要なんじゃない?」

アイドルグループ…そうだね。
「歌手」になりたくて、オーディションを受けたけど…
昔から…デビューしたときからわたしたち、そうだったよね…。
明日香はたぶん、それに耐えられなくなった。耐えたくなくなった。
…決してそうは、言わなかったけど。
319 名前:完名無 投稿日:2002年04月13日(土)00時02分05秒
「でも、明日香がいたころは…
今よりもわたし、下手だったけど…
歌うことが、もっと、楽しかった…」

…そして、その頃からずっと…
わたしは…
明日香を。
今目の前にいる、この人を。

「…そうか…今は?」
「…うん…大丈夫だよ。頑張れるよ…明日香がいなくなった後も…
ずっと、頑張って、きたんだから」

…感傷的になってちゃ、だめ。
…少しは…大人っぽいとこも見せないと。
…これ以上、軽蔑、されたく、ない。
これ以上、明日香にとって無関心な存在になりたく、ない。

「…これからもさ、できれば…見てて。頑張る、から…」
320 名前:完名無 投稿日:2002年04月13日(土)00時02分52秒
「…見てるだけで、いいの?」
「…え?」

向かいに座っていた明日香が、椅子から立ちあがる。
テーブルのわきを回って、わたしの側へくる。

「…じゃあ、去年の…あたしの誕生日の日の、あれは…
やっぱ、あれかな。一時の気の迷いとか…気晴らしとか…
そういう感じだったのかな?」
「…ち、ちがっ、…う…」

…抱きしめられた。
あわてて立ちあがる前に、背中から。
321 名前:完名無 投稿日:2002年04月13日(土)00時03分36秒
「…愛されてるんだよ。なっちはさ。みんなに」

わたしを後ろから抱きしめたまま、明日香は、そうつぶやく。
…嬉しい…嬉しいけど。ちょっと、違うよ、ねえ、明日香。
なっちは…わたしは、できれば。
ずっと前から。
今も。

「…明日香には…?」

わたしは、明日香のモノになりたい。
明日香を、わたしのモノにしたい。

「…前よりもずっと、大人っぽくなったと思う。
素敵なひとになったと、思う。…それじゃ、だめかな?」

…あ、だめ、もう。
…たまらなく、嬉しくなってきちゃって。
…頭に、血がのぼってきちゃって。

…細かいこと、考えられなくなった。
322 名前:完名無 投稿日:2002年04月13日(土)00時04分14秒
「…なっちさぁ、痩せてた頃より今のが、
抱きごこち、いいよね。言われない?」

聞くだけで心が弾む…耳元で聞くと、もうとろけそうになる、声。

「…言われないよ」

その頃と今を比較できる人なんて。
明日香しか、いないよ。

「…そう? あ、でも、あの人…写真撮られちゃった人。
あの人とつきあってたのって、今より丸いときからだよね?
あたしと同じこと、思う人もいるね、きっと」

…明日香…意地悪だ…。

「…今はもう…会ってないよ」
「…ふうん」

…あの人は。…一見しただけじゃ、わからないかも知れないけれど。
わたしと、似ていた。
昔、苛められていたこととか。
それを、克服したこととか。
共感できる部分も多くて、よく話をしているうちに、
そういう関係になった。
…けれど、わたし以外にも付き合っている女の人がいて。
わたしもそれを、知っていて。
323 名前:完名無 投稿日:2002年04月13日(土)00時05分01秒
…「一番好きな人」以外はみんな、どうでもいいんじゃないのかな。
「一番好きな人」に想いを伝えられないでいる間。
だめかもしれない、って、あきらめかけてしまったとき。
ただ寂しかったからとか。
そう、一時の気の迷いとか…気晴らしとか。
…わたしは正直にそういう気持ちを、明日香に、話した。

「…オトナの考えることは、わかんないねぇ」

わたしの後ろから離れて、歩き回りながら
その話を聞いていた明日香は、
両手の掌を開いて上に向けて肩をすくめて、
茶化すようにそう言った。

人と人…完全にすべてわかりあうなんて、無理。
それはわたしも、わかってる。

でも、わたしは、明日香が好き。
昔から、ずっと…誰よりも。
これだけは、どうしてもわかって欲しい。
324 名前:完名無 投稿日:2002年04月13日(土)00時05分35秒
「…自分にないものを持ってる人に
惹かれちゃうとこがあるんだなぁ、なっちは」
「…誰かがなっちのこと好きって、他の人に教えられると、
…じゃなかったっけ?」
「…んなの、それだけで、誰でもいいってワケないっしょ!」
「…それもそうだ」
「…この前さ、収録で…好みのタイプ、聞かれたのね」
「…ああ、もう放送されたやつだよね? あれ、見たよ」

やっぱり、見てくれてる。
それだけでも、心が踊り出す。

「…ま、『異性の』タイプなんだけどさ」
「…そりゃ普通、そうでしょう。きかれるのは」
「うん、だけどねぇ…『好みの異性』って言われて
真っ先に思い出しちゃうのって…明日香なんだよね」
「…いや、安倍さん…異性じゃないから」
「…そうなんだけどさ…知ってるんだけど」

そこでちょっと顔が赤くなってくる明日香が、
やっぱり可愛くて仕方がない。
わたしは話を続ける。
325 名前:完名無 投稿日:2002年04月13日(土)00時06分10秒
「…すごく、違うんだよね。なっちと。
ほんとの異性よりも、ずっと、違うっていうか」
「…はあ」
「…だから、なっちは、明日香がね、好きで好きで、たまらないんだよ。
やっぱり、あきらめたりなんてね、できないんだ」
「…なんだか、あの…よくわかんない理由なんですけど…」

そうかな? わかんないかな?
なっちにとっては、こんなに当たり前のことなのに。
でも、さっきよりももっと顔が赤くなってる明日香を見てると、
それでもいいか、って思えてくる。

「…ね、明日香、もうかなり遅い時間だけど…
家族の人、帰ってこないの?」

帰ってくるなら、きちんとご挨拶してから、
礼儀正しく明日香を、連れ出す。
もう、そう決めてる。

「…あ、うん。親戚の何回忌とか、そういうので、泊まりだから。
弟は、それをいいことに友達のうちに泊まりに行っちゃったし」
「…そっか。じゃあ、寂しくない?」
「べーつにっ!」
「…なっち、泊まってってもいいかい?」
「…いいよ」
326 名前:1111 投稿日:2002年04月14日(日)03時52分47秒
更新おつかれさまです。

安倍さんの描写、おみごとっす。
うろたえ振り、意外としっかりしている物事の考え方、言葉足らずなところ・・・。
 
もう一方の「なちふく」小説も盛り上がってきてるし。
なちふくっていいっすね。まじで。
327 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月19日(金)01時44分12秒
どうやら、なちふくは上手くいきそうですね。良かった。
密かにゴマの野望が達成されるかが気になってるんですが(w
続き、お待ちしてます。
328 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月27日(土)01時53分59秒
まだかな・まだかなぁ〜なちふくの更新まだかなぁ♪
↑元歌がわかるヒトはけっこう・・(ry
続き読みたいなぁ。。お願いしまっす。
329 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月28日(日)23時49分17秒
私も後藤が気になる。
作者さんの書くいちごま(ごまいち?)が読んでみたいっす。
もちろん、なちふくが終わってからで(笑)
330 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月01日(水)22時44分45秒
念のため保全
作者さん、更新待ってますよ

なち福いちごまの4人でのシーンを書いて欲しい
331 名前:完名無 投稿日:2002年05月02日(木)11時55分34秒
わわ、上がってて驚いた!
保全って上げないとできないのかな?
だとしたら、330さん、お手数をおかけしてしまって
すみません。

>>326 1111さん
こちらこそ、いつも読んでくれて、励ましてくれて、ありがとう。
安倍さんの捉え方については、いろいろな実際の出来事や
他の方々のご意見にも影響を受けます。
それでも結局は私の解釈になってしまうわけではありますが。
>もう一方の「なちふく」小説も盛り上がってきてるし。
これって、何のことなんだろう。銀杏猫さんの作品以外
私、知らなくて。他にもご存知ならどうか教えてください。

>>327
ゴマの野望って…「ごまふく」!?
ものすごく強い誘惑はありましたけど。
それともあれかな、「ごまいち」のほうだろうか。

>>328
いつもありがとう。更新遅くてごめん…。
名無し読者さんでも同じ方ってわかるのがいいね。
332 名前:完名無 投稿日:2002年05月02日(木)11時56分36秒
>>329
移植元の私の掲示板も
ご覧いただいている方な気がするのですが、
もしそうでしたら、そちらで述べさせていただいた理由で
「ごまいち」部分がカットに…。
そのへんをどうしたらいいものか、もしよろしければ
相談に乗ってください。

>>330
age保全ありがとう。「4人でのシーン」もご興味がおありですか。
ただ、「ごまいち」部分で、タイトルの二人がどっちも
出てこなくなっちゃうのが悩みなのですよ。
タイトル変えて、別に書くしかないかな…。

更新遅くて、すみません。
まだここに書けるほど進んでいるとは言えなくて…。
でもとりあえず、できているところまでは。
333 名前:完名無 投稿日:2002年05月02日(木)12時02分32秒

明日香の家で、お風呂とタオルと、ドライヤーを借りることにした。
明日だと、仕事へ行く前に、時間が足りなくなると困るから。

明日香は…最初嫌がったけど、根負けして
わたしと一緒にお風呂に入ってくれた。

お風呂は、昔も一緒に入ったことは、あったよね。
5人で一部屋で生活も、仕事も一緒だったとき。
…それ以外でも。
その頃からわたしは、いろいろ、ドキドキしてたけど。隠してたけど。
明日香はその頃は、平気な顔して
わたしの目の前で、裸で、いた。

でも、今日は…すごく恥ずかしそうに、嫌がってた。
根負けして一緒に入ることを決めてからは、
無理してその頃と同じように、何も意識していないふうを
装っていた。
それがわかったから、わたしも、その頃以上にドキドキしてたけど、
その頃と同じように装った。
…こういうところを傷つけてはいけない人だって、
もう、わたしも、気付いてる。
恥ずかしそうに嫌がってくれただけでも、大進歩なんだよね、きっと。
わたしを意識してくれてるってことだから。

…でも、もう、それだけじゃ足りないけど。
334 名前:完名無 投稿日:2002年05月02日(木)12時03分41秒
交代で湯船に入って。交代で体を洗って。
今は明日香が体を洗っている。
じっと見つめていたいけど…こんなときに
堂々とそんなこと、したら。
いろいろなとこ、洗いにくくて、困るだろうね。
だからわざと、そっちに向けるのは横顔。
アルバムでもらったソロ曲を、口ずさんでみたり。
でも、すぐにやめた。
横目で見た明日香の洗っている部分やそのしぐさに
気をとられると、歌がおろそかになりそうだったから。
それだと、わたしが見ていることを、明日香に気付かれそうだから。

とりあえずお風呂では、
何も意識されていなかった「あの頃」と同じように、
何事もないように、過ごした。
「あの頃」と違うところは…その間、ほとんど、
会話らしい会話が、なかったこと。
335 名前:完名無 投稿日:2002年05月02日(木)12時04分47秒
明日香は、しっかり自分の下着とパジャマを用意していて
さっさとそれを着込んでいる。
…そうだ、明日。
借りたバスタオルで、いつものようにそれだけを身にまとって
髪を乾かしているときに、気付いた。
ここから直接出かけるとすると…着替えは、どうしよう。
どうせ着いたらすぐ衣装だし、外側はまあいいとして…下着。

「明日香の、貸してくれる?」
「え、あ…ストッキングは買ってほったらかしのやつ、あるから、使ってよ」
「ブラはいいとしても…ぱんつは、どうしよう」
「…それは今、買いたての、新しいの、ないよ」
「いつも明日香が履いてるので」
「えー…それは…」
「だって、今日は寝るまで、履いてなくてもいいけどさ」
「…ばか」
「替えがないと、明日、困る…」
「…んー…」
「真里ちゃんがさ…この前、テレビでさ」
「あ」

わかった、って表情。
…それもやっぱり、見てたんだね…。
336 名前:完名無 投稿日:2002年05月02日(木)12時05分31秒
「なっちが不潔なヒトだって思われちゃいそうなコト、言われちゃってさぁ…」

明日香は、遠慮も容赦もなく、吹き出してそのまま笑い出す。

「…なっちさぁ…変わったっていうか」
「…そうかなぁ」

なっちにとって「見られてることを意識するとき」っていうのはね。
仕事で、カメラが回ってる時。
そこに映って残る部分だけが「事実」って判断されることは
もう長い経験から、知ってる。
映らない部分にまで神経をすり減らして、疲れ果てるのなんて。
そんなことしてたら、長続きしない。
もう、そんなこと、わかってるんだよ。

あと…もうひとつ。
これは…「芸能人として」じゃなくて、
「女の子として」。
好きな人が、そばにいるとき。

明日香がいないとさ。
映んない部分は、どうでもいいやって、思っちゃうときも、あるよ。
…でも、今は、いるから。
337 名前:完名無 投稿日:2002年05月02日(木)12時06分06秒
「…でも、そういうトコもあったほうが、親しみが持てるかもね」
「…いや、それをアピールするつもりでそうしてたんじゃ…」
「…そりゃ、そうだろうね」

そう言って明日香はまた、笑い出す。

「…真里ちゃんも、そのために言ったとは思えないけど」
「や、でも、仲いい証拠でしょ」
「…ま、そうだけどね」

…でもねぇ…他の人にどう思われても今さら仕方ないし
もういいんだけど…
明日香に、そう思われるのは…。

「ほんとはなっち、そういうヒトじゃないんだよ?」
「はいはい」

もう。笑うのやめてよー…。
338 名前:完名無 投稿日:2002年05月02日(木)12時06分45秒
「だからさ、貸してよ。ね?」
「だからー、ぱんつは新しいの今、ないんだって」
「だからぁ、いつも明日香が履いてるので、いいじゃない。
いいっしょ? お願い!」
「…わかったよ…」

やったぁ!
…これで明日は、離れても、一日中うきうきして
仕事に臨めそう。

「…今でも、980円のやつかい?」
「…今は、もっと安い。3枚で千円とか」

二人で顔を見合わせて、笑う。
339 名前:完名無 投稿日:2002年05月02日(木)12時08分10秒
歯ブラシは、使っていないのがあるから、と
わたしのために、おろしてくれた。
寝る仕度を整えて、二人で明日香の部屋へ行く。

「あ、そうだ、なっちの今日の着替えもいるね…
あたしのでサイズは、大丈夫だよねぇ?」
「…言ったっしょ。今晩はいらないよ」
「う…」
「明日香のベッドで、明日香と一緒に、裸で寝るんだから」
「…決定、なのかな、それ…」

…どこまでわたしを焦らせば、気が済むのかな…この子は。
おとなしく待ち続ければ、いつかかなうの? この気持ち。

わかってるよ。
わたしは、こういう形でだけ、明日香を欲しいわけじゃない。

ステージの上での、熱い時間。
交わされる視線。
絡み合うあなたとわたしの、声。

それがかなわない今、同じだけの熱さで
わたしを満たしてくれるものって、他にあるの?
それができるのは、いつだって、明日香しか、いないのに。
340 名前:完名無 投稿日:2002年05月02日(木)12時09分04秒
「…ここまできて、また逃げるんなら…なっちもう、ぐれるわ」
「は…」
「ぐれてもう、仕事辞めちゃう」
「なに言ってんの…」
「いやもう、ほんとに」
「ちょっと…なっち…」

勝手に明日香のベッドに座ったわたしの隣に
明日香も並んで座る。

「どうせ今だって。ここまで頑張って続けてきてもさ。
夢なんてかなわないし。歌えないし」
「…だから、もっと頑張って、続けなきゃいけないんじゃないの?
夢をかなえるために」
「じゃあ、明日香はなんで!」

…その先は言葉にならなかった。
341 名前:完名無 投稿日:2002年05月02日(木)12時14分31秒
…あのままで、よかったのに。
今ほど売れていなくても…
いや、今、歌自体は、「抱いてHOLD ON ME!」と
あんまり変わらないくらいしか、売れてないみたいだけど。
どうでもいいや、もう、そんなこと。
ただ、歌う以外の仕事がどんどん増えて。
あの頃よりも、忙しくて。
忙しいのに、心はどこか虚ろな感じで。
虚ろな気持ちのまま、ただ、笑顔をつくるのは上手になって。

…仲間は、いるけれど。
もう、あの頃とは違う。ぜんぜん違う。

なんで明日香は、なんて。
こうなることが、わかっていたから、だよね。きっと。
だからその先はもう言えない。

…明日香が、いない。
明日香と、歌えない。

…なんでわたし、こんな仕事、続けてるんだろ…。
342 名前:完名無 投稿日:2002年05月02日(木)12時15分15秒
…それでも、明日香が、見ていてくれるなら。
まともに歌えない、今の。
こんなわたしでも、応援してくれるなら…。

そう思って、なんとか自分を納得させようとしていたけれど。
だめだよ、もう。
それだけじゃ、足りないよ。
あの頃と同じ熱さで、わたしを満たしてよ。
明日香と、歌えない今。
それでも、わたしを満たせるのは。
やっぱりあなたしか、いないんだよ。
343 名前:完名無 投稿日:2002年05月02日(木)12時16分37秒
言葉にならなかったわたしの問いかけ。
その答えはきっと二人とも、知っていて。
だから明日香は、それには答えることなく。
ただ、自分のパジャマの前ボタンを
ゆっくり外しはじめた。

「…役に、立てるのかな。あたしは、なっちの」
「…明日香」
「…今の、あたしでも」
「明日香…」

わたしは、この愛おしい人を強く抱きしめた。
344 名前:1111 投稿日:2002年05月03日(金)01時21分43秒
連休中更新お疲れ様です。
もうひとつの「なちふく」→銀杏猫さんのところですよ、もちろん。
他は・・・。オムニバス短編集にあったかな。
あとはもうレスされてましたけど、池田屋さんですか。
なんか知ってる人ばかりがレスしてましたが(w。

欲張りなっち、かわいすぎ・・・。でも、せつない。
歌手なち>女優なち>>>放置なちの私としては、今回の話は切なくなりますね。

>やったぁ!
>…これで明日は、離れても、一日中うきうきして仕事に臨めそう。
(0°−°0)<「なっち・・・・。ほほえましいけど、変態っぽいよ・・・。」
345 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月06日(月)23時24分42秒
ごまふくは勘弁。
明日香にはなっち、後藤にはいちーちゃんで。
続き、楽しみにしてます。
346 名前: 投稿日:2002年05月24日(金)00時45分43秒
http://members.tripod.co.jp/ginnanneko/musume.htm
↑ご参考に>>作者様
347 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月24日(金)01時14分10秒
いいとこなのになぁ。。。。
復活きぼん。。。がんばってね!
348 名前:カンナナ 投稿日:2002年05月25日(土)16時16分35秒
なんかいろいろ負けそうな今日この頃なのですが
とりあえず「負けないぞ〜!」

>>344 1111さん
あなたのレスはいつも、なんだかすごい。
作品を書いたり、どこかで何か語ったり表現したりしてはいらっしゃらないのですか?
もし何かおありでしたらお教えいただけませんか。

>>345
勘弁と言われても、もしやりたければきっとやってしまうのだな、私は。
このスレでこの話の中で、は、ないと思うけど。

>>346
お、URL貼りどうもです。
貼るのって、いいことですよね。お互いを刺激し合えるから。

>>347
復活…そうか、このペースは、死にかけているかのようですよね…。

またこの板のスレ数が減ってる!
管理人さん、消さないでくれてありがとう!
349 名前:カンナナ 投稿日:2002年05月25日(土)16時18分28秒
もうこの今の感情にただ身を任せてしまいたい。
そう思って、弾力のある明日香の胸に顔を埋めて
力いっぱい抱きしめる私にふりそそぐ、明日香の声。

「…ね、なっち」
「…なに」
「このままだと、ボタンはずせない」
「いいよ、なっちがやる」
「や、自分で」
「いいから」

続きはわたしに外させて。
覚悟は、もう、決めてくれたんでしょ?
そうそう、下も、ね。
…ホントに素直で、ちょっとびっくり…。
350 名前:完名無 投稿日:2002年05月25日(土)16時19分03秒
覚悟を決めた明日香は、きっと誰よりも潔い。
おとなしくわたしに、生まれたままの姿にさせられたあと、
まっすぐ立ったまま、まっすぐわたしの目を見ている。
立ちあがったわたしと同じくらいの目の高さで。至近距離で。
こっちが恥ずかしくなってきそうなくらい、まっすぐ。
…わたしは、バスタオルをはずすだけ、なのに。

自分で脱がせておいてなんなんだけど、
どこ見ていいのか、わかんない。
視線を落としても、明日香の、裸の胸や腰のラインの
豊かさに圧倒されそうになってしまう。
あわてて顔を上げて、また目が合ったとき、
たぶんわたしのほうが顔が赤くなっている、と思った。
…ほっぺたが、熱い。

そんなわたしの様子を見て、明日香は
「なんだかなぁ…」とつぶやいた。
そして、わたしの体に巻いていたバスタオルにゆっくり、
手を延ばしてきてくれた。
さっきお風呂でも、裸なんて見たし、見られたんだけども。
すごくドキドキしながら、腕を少し上げて脇をあけて、
明日香に、裸にされる。
351 名前:カンナナ 投稿日:2002年05月25日(土)16時20分31秒
「…最初の日も、ちょっと思ったんだけどさぁ」
「…な、なに?」
「…なんか、頼りないっていうか」
「え…」
「あたしの裸見て、やっぱり気が、すすまなくなった、とか?」
「…ち…」

ちがう!
絶対に違う、違う!
喉がつまったように声が出なくなって、
あわてて首を横に思いっきり振ったら、
目が回ってくらくらした。

そのくらくらからやっと立ち直って、ため息をついて、
声ももう出そうだと思ったから、
明日香の両肩を両手でつかまえて、はっきり言った。

「ぜんっぜん、違うから。それ」

でも明日香は、どう違うのか、よくわかってくれてないみたい。
これは、そういう表情だ。
でも、「違う」という以外、どう言っていいのかわからない。
…やめてよ。ここで、こんなことで明日香に誤解されたら、
まじで声出なくなりそうだよ。
歌えなくなっちゃいそうだよ。
352 名前:カンナナ 投稿日:2002年05月25日(土)16時21分09秒
「…なっち、なんか喉、いま、傷めなかった? 大丈夫?」
「…だいじょぶ、ちょっと、こわばっただけ」
「…ほんとに?」
「…ほぐしてくれる?」

そう言って、もう返事も待たずに、明日香の唇に吸い付く。
閉じた唇に舌の先で触れて、催促。
…口、開けてよ。潤して、ほぐして。

素直に唇が開いた、と思ったら、
わたしの舌が明日香の口の中に入り込むよりも先に、
明日香の舌がわたしの口の中に入ってきた。
353 名前:カンナナ 投稿日:2002年05月25日(土)16時21分43秒
口の中じゅうを、撫でるように探ったあと、
呆然と固まってるわたしの舌に、柔らかく、絡み付いてきた。
抱きしめられてる。
二人とも、裸。
明日香の、わたしよりもずっと豊かな胸が
わたしの同じ場所と、心を、柔らかく圧迫する。
そんな状態で、舌を絡められて、されるがままに。
胸の大きさの差に劣等感を感じるよりも先に、
その心地よさに、とろけそうになる。

やっと舌と唇が開放されたときは、
別に息をとめていたわけでもないのに、
息が苦しい状態になってる。
そのわたしの目を覗きこんだ明日香が、涼しい目をして言う。

「…どう? ほぐれた、かな」
354 名前:カンナナ 投稿日:2002年05月25日(土)16時23分05秒
喉はほぐれても、わたしはやっぱり、返事ができない。
もう、言う言葉なんて、思いつかないよ。
立ってるのも、危なっかしいくらいなんだから。

だからわたしも、明日香のからだに腕をまわして、
そのままベッドに腰をおろすようにして、「引き倒す」。
押し倒してもよかったんだけど、
方向的に、無理だったから。
わたしに覆い被さるかたちで、
わたしの上にいる明日香の唇と舌を、
今度はわたしが下から、思いっきり貪ってやった。

もう絶対、逃がさないからね。
355 名前:1111 投稿日:2002年05月26日(日)04時12分45秒
更新お疲れ様です。
ついに思いが通じましたか‥‥。よかったよぅ。
(●´ー`●)>もう絶対、逃がさないからね。
はい、逃がさないでください。そして満たされてください。
そして、顔と心、両方とも笑顔になってください!

私はここのレスという形でしか文章は書いてません。
語ることはできるんですけど、長文構成能力がないものでいつも読み専門です。
なもんで、自分の好みの小説を見るとついつい長文レスを(ry。

完名無さんや銀杏猫さんはすごいと思いますよ。
自分の思い・考えを文章に表現できるんですから。
心から応援してます。これからも自分のペースで頑張ってください。
356 名前:名無し 投稿日:2002年05月30日(木)02時09分54秒
今日始めて一気に読みました。
雰囲気がとても好きです。
銀杏猫さんとカンナナさん(でいいのかな)のおかげでふくなちにはまりつつあります。
頑張って下さい!マターリ待ってます。
357 名前:カンナナ 投稿日:2002年06月09日(日)01時27分18秒
>>355 1111さん、>>356さん、ありがとう。
しかしこのペースではいくらなんでも
スレッドを維持してもらうのが申し訳ない感じです。
しかし、少量の更新で上げたりするのも問題があるようで、
まとまるまで更新することもできず悩んでおります。
すみません、めちゃくちゃ不規則な仕事をしておりまして
ある程度の量の定期的な更新が不可能な期間ができてしまいます。

もし更新不可能な間にこのスレッドが書けなくなっていましたら
こちらをご覧頂けましたら幸いに存じます。
http://jbbs.shitaraba.com/movie/bbs/read.cgi?BBS=308&KEY=1013109413&START=170

また、1111さん、もしよろしかったら雑談にご参加いただけませんか?
http://jbbs.shitaraba.com/movie/bbs/read.cgi?BBS=308&KEY=1013175082&LAST=50
358 名前:カンナナ 投稿日:2002年06月28日(金)20時20分45秒
ベッドの中ではもう、積極的に。
へんにためらってると、明日香はきっと不安がる。
なにかよけいなことを誤解して、心配する。
それがやっと、わかったから。

だけど、なんかね。
明日香にわたしは、圧倒されちゃうとこがあって。
でも、とにかく、わたしがね、
どうしようもなく、明日香が欲しいのは
もう間違いなくて。

明日香の片方の乳首に吸い付いて、
もう片方の乳首を片手で転がす。
だんだん荒くなる呼吸と、吐息に混ざるかすかな声が色っぽくて、
ほんとにもう、こっちが、どうにかなっちゃいそう。

このままちょっと、体重、預けてもいい?
もう片方の手も、使いたい。

「…大丈夫、かな。重くない?」
「…ん…」
359 名前:カンナナ 投稿日:2002年06月28日(金)20時22分37秒
また口を乳首に戻すと、体重を支えなくてよくなったほうの手を
下へすべらせていく。
自分の腰を少し浮かせてできた、
明日香とわたしの間の空間をくぐり抜けて
たどり着いた部分は、心配する必要がないくらい、潤ってた。

明日香の声、もっと、聞きたいな。
甘い声も、震える声も。

中指を、入り口の潤いを絡みつけてからそっと、
中へ進めてみた。

「…はっ…」
「…あっ…」

わたしたちは、同時に声を上げた。
わたしが声を上げた理由は…ちょっと待って、
それより明日香!

「…痛い?」
「…いや、びっくり、しただけ…」

わたしはそっと、明日香の中から指を引き抜く。
明日香が、一瞬表情を歪めたあと、ふうっとため息をつく。
360 名前:カンナナ 投稿日:2002年06月28日(金)20時23分32秒
「…やっぱ、なんかヘン、かな、あたし」
「いや、そうじゃなくて…だけど、これ…」

入り口のところに…輪みたいに細く、そこだけ狭く
不自然に締めつける感触。

「これ…って…」

自分のそれは、よく知らない。
その頃、確かめたことも、なかったから。
今は…そう、破れたあとの残りみたいなのが
あるのはわかるけど。
そうか…破れる前って、こうなってたんだ…。

「…ああ、それ…、うん、そう、たぶん…」
「…だよね…」
「…破ってよ」
「…へ?」
「…いや、かな」
「…じゃ、なくて。だけど…」

混乱してくる。とりあえず、尋ねる。

「…見ても、いい、かな」
361 名前:カンナナ 投稿日:2002年06月28日(金)20時24分23秒
少し悩んだのか、時間をおいたあと、明日香が答える。

「…うん」

そういえば…したことないわけじゃないのに、
見たことって、ないかも。なんでだろ。

ゆっくり顔を下げていって…動きが、ぎくしゃくして見えないように。
視線がたどり着いたその先をゆっくり、指先で触れる。
透明なぬめりがあふれ出ているその部分をそっと、押し広げてみる。
外側よりもずっと淡いピンクが、その向こうにのぞく。

「…はぁ…」

つい、声が出てしまった。
驚き? 感動? それとも…なんだか、わからないんだけれど。
362 名前:カンナナ 投稿日:2002年06月28日(金)20時25分03秒
わたしの指一本しか入らなさそうな、淡いピンクの関門。
二本だとたぶん、いくらかでも破れないと入らない。
三本だと、一気に破れる。…血も、出るね、きっと…。

「…どう…かな」
「…え」
「…無理?」
「…や、あの…」

怖気づいてるのかな、わたし。

「…っていうか、ね、明日香。なんで…?」
「…だって、さぁ…」

その後、言いにくそうにしているから、
明日香も恐いのかな、と思ってわたしは、
顔を上げて、もとの位置に戻ってみた。
横から抱きしめてあげて、顔と顔がすぐ近くで。
363 名前:カンナナ 投稿日:2002年06月28日(金)20時25分40秒
「…後のことなんてさ、わかんないわけだけど」
「…え?」
「…だってさぁ、なっち、引退するときって、結婚するときでしょ?」
「…あ…」

それはたしかに、言った覚え、あるけど…。

「…そしたらもう、そのときは、あたしとこんなことってさ、
してないわけだよね…?」

わたしは言葉を失う。
正直、いま、そこまで考えてなかった。なにも。
ただ目の前の「いま」に夢中で。

「…や、それはそれでさ、いけないってわけじゃ…
それが普通だしさ。あたしだって、先のことなんて、わかんないし」

…なんだかまた、泣きたい気持ちになってくる。
そんなわたしの表情を見て、明日香が気をつかってくれてるみたい。
…だめだなぁ、わたし。
ほんとはわたしのほうが、こういうことだって、
気をつかってあげなきゃいけないことなのに…。
364 名前:カンナナ 投稿日:2002年06月28日(金)20時26分11秒
明日香が言葉を続けてくれる。

「…でも、さ。とりあえずさぁ、『初めて』って、
あるわけじゃない」
「…え…」
「…だから、さ…あたしもこの先、どうなるかなんて、
わかんないんだけど」
「…ん…そ、だよ、ねぇ…」

なんか胸が締めつけられる。
そう返事をするのが精一杯。

「…とりあえずさ、この先、他の誰とどうなってもさ…
そのときにそれを『初めて』って主張する気は、
ないから…ってことなんだけど」

…どう解釈したらいいんだろう。
わかるような、わかんないような…。
365 名前:カンナナ 投稿日:2002年06月28日(金)20時26分44秒
「…え…それって……えぇっと…」
「…ん…だって、さぁ…あたしの場合、『初めての人』って…
なっちになるわけだよね? …違う、の、かなぁ…?」

…あ、これは…わたし…嬉しいのか。喜んでいいことなのか。
でも、ほんとに全然、そこまで考えてなかったから…
やっぱりなんて返事していいか、わかんないんだよ。

明日香は、泣きそうな表情になる。
単に曇った表情…にも見えるんだけど、これって
もしかして、泣きそうな表情なんじゃないのかな、と思う。

「…やっぱ、さぁ…あたしがそう思ってるとさ、
迷惑…かな」

…声は、ぶっきらぼうな感じで。
なんとなく強がってるようにも聞こえて。

「…まさか。」

そう言って、肩を抱いて、キス。
軽く、ね。
恐いかも知れないから。…恐いの、わたしのほうかも。
…あれ、明日香と…これが初めてじゃ…ないのに。
二度目なのに。
366 名前:カンナナ 投稿日:2002年06月28日(金)20時27分15秒
初めて明日香としたときも…それはいろいろ、恐かったんだけど。
いまも、あの日と同じくらいか…それ以上に。
…恐いのは、なんでだろ。

好きだから…大好きだから。
傷つけるのが恐い。
…心もね。体もさ。

わたし、こういうとき、なんて言われたっけ。
どう言われれば女の子って、安心するかな。
…あ、そうだ、これだ。

「…嬉しいよ、明日香」

明日香は、私の腕の中で小さくため息をついて、
小さな声で、言った。

「…そっか…よかった…」

わたしはもう一度、その唇にキス。
…こんどはもうちょっと大胆でも、いいかな。
367 名前:カンナナ 投稿日:2002年06月28日(金)20時28分05秒
「…でも、困ったな…」
「…は?」
「あんまり明日香が、あの…いじらしくて…可愛くてさ」
「…え…」
「そんなこと、できないなぁ、やっぱり…痛いし、さ」
「…そう…なの?」
「…うん、人によって違うのかもしれないけど…たぶんね」
「…そ…かぁ…」

明日香にわたしの存在を刻み付けたい…気持ちもあるけど…
それは、こんな方法で、じゃなくて。
もっと違う方法で。

…だって、そんな「初めての相手」なんてさ。
ほんとの恋、そのあとにすれば、忘れちゃわない?
…わたしが、いま、そうだもん…。
368 名前:カンナナ 投稿日:2002年06月28日(金)20時28分37秒
「…でも、さ…じゃあ、もっと慣れたら…いつか」

言いにくそうに…それでも決意のようなものを込めた目で
明日香はわたしを見つめて、そう言う。
わたしは、たぶんこういうときの男の人とは
全然違う感慨をもって、考えている。
「もっと慣れたら」って…慣れるほどずっと、ってこと?
ほんとにもう、わたしから逃げたりしない?

わたしが黙ってるから、明日香はまた、少し不安そう。

「…だめ…かな?」
「…や、そんなことない、けど」
「…けど…いや?」
「…じゃなくて、だから…そんな無理しなくてもっていうか。
…男の人じゃないんだから、困んないし、さ…」
「…だけど、このままだと…中途半端じゃん、あたし…
なんか、さぁ」
「別にそんなこともないと思うんだけど…」
「…なっちには、わかんないんだよ」

ま…ね。いまの明日香の気持ちってもう、わたしには、
わかんないのかも。
いまのわたしの気持ちも、明日香には、わかんないのかな…。
痛いって、わかってるから、なんだけどな…。
369 名前:カンナナ 投稿日:2002年06月28日(金)20時29分07秒
…ていうか、明日香、なんか、意地っ張りで…
駄々っ子みたいだよ…。
可愛いかな、やっぱり。こういうところも。…だけど。

「…だけどねぇ。痛いんだよ?」
「…う…」
「血も、出るよ?」
「…ん…」
「そしたらもう、今日、できなくなっちゃうよ」
「…え?」
「…だって。明日香は、そのあと痛くてもう絶対無理だし。
わたしも絶対無理だし、できないでしょ?」
「…え、なんで、なっちも…?」
「…そうだよ。そうに決まってるっしょ?」
「…え…あ…」
「明日香が痛いのわかってて、わたしがその後
なにも、できるわけないっしょ?」

明日香は、ちょっと考え込んでる。
こんな当たり前のこと、なんで考える必要があるんだろ。
370 名前:カンナナ 投稿日:2002年06月28日(金)20時29分37秒
「……そうなの?」
「…だからぁ、そうだって…わかんない?」
「…や、わかるけど。…わかんなかった…ていうか」
「…なんで…」

もー、気が抜ける。
明日香ほど、頭の回転のいい子がさぁ、なんで…。
ひとの気持ちにもちゃんと頭がまわる子だったし…それに。
…そういう話だって、昔から、わたしよりずっと得意だったのに。
ラジオなのに話があぶない方向へ行っちゃって、
わたしのほうがあわてたことだってあったのに。
何をするかは知ってても、その時の気持ちなんて、
想像つかないものなのかなぁ…。

好きな人が、痛くてさ、どうしてわたしだけ、楽しめると思うのよ。
そんなふうに思われちゃうだけでも、ショックだよ。
…って…あれ?…普通の男女の場合って、どうだったっけ…?
…なんか、違ったっけ…?
371 名前:カンナナ 投稿日:2002年06月28日(金)20時30分10秒
「…そう、か、なっちだもんねぇ」
「…へ?」
「…男の人じゃ、ないんだし」
「…明日香ぁ…」

…ほんとに、気が抜ける…。
どうしたらいいんだか、もう。

「…それは、いま初めてわかったことなのかい?」
「…や、違う…けどさぁ、なんか」
「…何よ」
「…え、と、ほら、さっきなっちも、言ってたじゃん」
「…なに」
「…異性がどうの、って」
「…言ったけど」
「…うん、だから…さ、あたしも、そんな感じで」
「…だからって、わたし。明日香を男だと思ってたわけじゃ…」
「うん、ごめん、それは、わかるんだけど」
「…ほんとに、わかってる?」
「わかってるよ。なっちが男じゃないってことぐらい」
372 名前:カンナナ 投稿日:2002年06月28日(金)20時30分49秒
だからそれは、当たり前すぎるっていうか…。
そういうことじゃなくてさ。
わたしがさっき、言いたかったことは、そうじゃなくて。

男だと思ってるわけじゃないけど。
異性みたいに思えちゃう。
当たり前のように、惹かれて。
一緒に過ごしたり、話したり、笑い合ったり。
同じ夢に向かって、一緒に努力したり、お互いを磨き合ったり。
…才能とか、人柄を、尊敬してて。
もっと長く、ずっと一緒にいたい。
ドキドキして。ずっとドキドキしてて。
だから。
あなたを、もっと、感じたい。
あなたにわたしを、感じてほしい。

わたしをあなたで、いっぱいにしてほしい。
あなたをわたしで、いっぱいにしちゃいたい。

…こんな気持ち、明日香に…わかってもらうのは、
無理なのかな…。
373 名前:カンナナ 投稿日:2002年06月28日(金)20時31分22秒
「…だけど、さぁ」
「…え?」
「…なんか、さ、そう、男なわけじゃないんだけどさ、
そんな感じで」

…え? あれ?

「…昔の仕事仲間とか、友達とか…そういう感じじゃなくて。
うーん、なんて言っていいのか、よくわかんないんだけど…」
「…それって…」
「…何よ」
「…なっちを、意識しちゃってるってことかい?」
「…ん、まあ…そうなんじゃない?」

…わ、わ、それ、ほんと?
え、あ、さっきから、そういう意味で言ってたの? ほんとに?
374 名前:カンナナ 投稿日:2002年06月28日(金)20時31分56秒
「…それに、さぁ」
「…な、なに、なに?」
「…なっちなら、できるっていうか」
「…へ?」
「…その…それ、以外はほら、男の人とたぶん、さ、
そんなに変わんないで」
「…んん?」
「…あたしのこと、抱けるっていうか」
「…は」
「…だから…ああもう! いいよ! 話してるほうがずっと恥ずかしい!
早くやろう!」

そう言ってのしかかってきた明日香の
体重を感じながら…心地よく受けとめながら。
わたしは唇を、唇で、塞がれる。
明日香の気持ち、まだちょっと…なんだかよく、わかんないんだけど…。
とにかく今、ほんとに、嬉しいから。気持ちいいから。
今はもう、明日香を感じることに没頭しちゃいたい、と思う。
375 名前:カンナナ 投稿日:2002年07月09日(火)01時41分40秒

…あ、あれ、いいの? ね、いいの?
任せちゃって、いいのかな。大丈夫?
…大丈夫か。同じ…だもんね、うん。
いちおう、二度目だし、ね。

目を閉じて、肌の感覚だけを追う必要はなくて。
目を開けると、わたしのあごのすぐ下。
胸元に、昔とは違う色の、
でも確かに、同じ人の、相変わらず、多い髪。
そっと手を置いてみたら、彼女が顔を上げて、
目が合った。
…ちょっと、恥ずかしいね。こういうの…。

「…え…とさ、あの…もしなんか、違ったら、教えて」

そう言ってまた、わたしの胸の両先に没頭する。
…違うもなにも、ないよ。
明日香の思うままにしてくれれば、それで。
ほら、もうわたしは。
言葉での返事なんて、できなくなってるんだから。
今晩この家に、わたしたち二人しかいないなら。
声、抑えなくても大丈夫なのかな、とか。
もう、そんなことしか考えられなくなってるんだから。
勝手に荒くなっていくわたしの吐息が
返事代わりになってる…はず。
376 名前:カンナナ 投稿日:2002年07月09日(火)01時42分37秒
…この前の、わたしと以外に、
したことあるわけじゃないよね?…明日香。
リズミカルな、かなりいい感じに継続的な刺激が
両方の乳首から、背骨を伝って、
すでにわたしの全身を翻弄してる。
この前わたしが明日香にしたこと、
まさか、冷静に受け止めて、覚えてた、とか?
…や、「冷静に」ってことは、なかったよね、たしか…。
…ていうか今、わたしがもう冷静じゃ…。

片方の乳首を刺激してた手がそこから外れて、
わたしの下腹部を下に、伝いだす。
…そこは、もう。
なんて言っていいかわかんないくらいの切なさになってるのはもう、
間違いなくて。
…びっくりしないかな、明日香。
そう心配になると、少しだけ冷静に戻る。
少し戸惑うみたいなゆっくりさで
わたしのそこを、かき分けて進んでくる
明日香の指先に、
わたしは、いろんな意味で、ドキドキしてる。
377 名前:カンナナ 投稿日:2002年07月09日(火)01時43分37秒
ごく、って喉の鳴る音。

え、嘘、そのへんから、もう?
…あ、そうだ…。
触れられて、自分でも、わかった…。
触れてないのに、上に伝って、そのへん、まで…。

自分でもびっくりするほど、
すごく濡れたとき、に、
そういう状態になることを
わたしは自分で、知ってる。
誰かとして、こういう状態になったのは
これがたぶん、初めてで、
やっぱりいま、自分で、びっくりしてる。

「…そっか…うん…」

明日香が言葉を漏らす。
…やだ…恥ずかしいよ…。

「…この前の、なっちの気持ちが、わかった…」

…なに…が、わかったの、かな…。
378 名前:カンナナ 投稿日:2002年07月09日(火)01時44分25秒
「…あの日のなっちと、おんなじこと、思った」

…あのときのわたしって…。
そう、…濡れてなかったら、どうしようかと思った…んだった…。
よーく覚えてるよ。不安だったもん。
…わかって、ほんとに、安心した。
すごく嬉しかった。
…いまの明日香も、あのときのわたしと…
おんなじ気持ち、なのかな…。

逆にわたしは…あのときの明日香の
恥ずかしい気持ちが…
いま、よーくわかっちゃった…。
379 名前:カンナナ 投稿日:2002年07月09日(火)01時45分02秒
言葉にして言うべきことじゃなかったかな。
だけど、嬉しくて。
その気持ち、伝えたくて。
勝手に言葉が口をついて出て、
勝手に体も動いちゃったんだ、あのとき。
それは、わたしにとって。
することは初めてでも、わたしにとって。
忘れかけていた、久々の感動と衝動だった。

…明日香は、どうなのかな。
…あのときのわたしと今、同じ気持ちだって。
…信じていいのかな。
380 名前:カンナナ 投稿日:2002年07月09日(火)01時45分53秒
わたしはそれを、言葉にして尋ねたりはしなくて。
明日香も、それ以上、言葉で伝えてくれる気はないらしくて。

ただ、明日香の緊張した指先が、
わたしのその部分を、そっと撫でる。
また、喉の鳴る音。
鼓動が肌からじかに伝わってくる。

ひとつため息をついたあと、
明日香の指先がもっと、動き出す。
確実なリズムを刻んで。
381 名前:カンナナ 投稿日:2002年07月09日(火)01時46分29秒
ね、明日香。
自分でするとき、こうするの?

…うっかりそんなことを思っちゃったわたしは、
もう、ぎりぎりのところまで追い上げられてしまう。

そりゃ、女の子は…早いほうが。いいはずだけど。
これはっ…。
あんまりっ…。
ちょっと…待っ…。
382 名前:カンナナ 投稿日:2002年07月09日(火)01時47分08秒
唐突に、動きが止まった。
と思ったら、明日香の体全体が下に下がり出す。
わたしの足元の方向へ。

それも…ちょっと…待っ…。

「…あ…すか…」
「…なに」
「…わたしには…させて、くんなかった、くせに…」
「…なんでも、なっちのほうが先じゃないと、だめかな?」

返事をする余裕もなく、両脚が押し広げられた。
…そんな、そんな。
そんな、真剣な目で。
…見ないで…。
383 名前:カンナナ 投稿日:2002年07月09日(火)01時47分39秒
普通のときでも、絶対恥ずかしいのに。
いまもう、そこ、普通の状態じゃないから。絶対。
…恥ずかしくて。
…息がつまりそう。

「…お願い、見な、いで…」

…恥ずかしくて。
…目がくらんでくる。
もう、目を開けていられない。
384 名前:カンナナ 投稿日:2002年07月09日(火)01時48分12秒
「…近すぎると、見えないから」

そう明日香の声がしたとたん、
腿の内側に体温を感じる。
…そして、さっきさんざん指先で煽られていた部分が
暖かく湿ったものに触れて、含まれる。

「…やっ…」

…やめて、とは、言わなかった。わたし。
385 名前:カンナナ 投稿日:2002年07月09日(火)01時48分42秒
…だけど、だけど。

そっと、含まれて。
じっくり、なぞられて。
舌先…で辿られて、弄ばれるのは。

…気持ちいい、よりも、恥ずかしい。
してくれる、相手の気持ちが、気になってしまって。

…と思っていたら、また、確実なリズムが。
わたしを、襲いはじめる。

腰ががくがくと勝手に揺れそうになる。

…と、入ってきた。

明日香の指が、たぶん二本、わたしの中に。
386 名前:カンナナ 投稿日:2002年07月09日(火)01時49分15秒
ゆっくりと、遠慮がちに。
だけど、じっくり、探るように。

いろいろな動きでわたしの中を探る、指。
…声なんて、もう、抑え…られない…。

「…っ、ちょっ…」

…明日香の、声。
なに…なに…? どうかした?
わたし、なにか…。

「…痛く、ない? なっち…これ…」
「…なに…」
「…すごくさ…きついんだけど…」

嬉しくて。
わたしのカラダも、勝手に嬉しがって。
…わたしの中にある、明日香の指を。
締め付けちゃってた、みたい…。
387 名前:カンナナ 投稿日:2002年07月09日(火)01時49分56秒
「…ごめ…ん…」
「…や、こっちも…キツいけど…
なっちはこれ、痛くないの? 大丈夫?」
「…痛く、ない…」

もっと、素直に、正直に。
…なっちゃっても、いいかな…。

「…嬉しくて…すごく…」
「…続けて、大丈夫なのかな、これ」
「…うん…」
「…あんまり、きつく…締めない、でね」

…そんなこと、言われても…。
努力は…してみる、けど…。
388 名前:カンナナ 投稿日:2002年07月09日(火)01時50分35秒
探る指が、わたしの反応を。
わたしが、いちばん大きく反応してしまう、場所を。
冷静に、探り当てる。

わたしの反応を、見ながら。
だんだんとリズミカルに、
繰り返し、押しはじめる。

わたしの反応にたぶん確信を持った明日香は、
その動作を続けたまま、
またわたしの、もうたぶん、むき出しになった部分を。
たぶん、また、口に含んでくれて。
たぶん、わたしの中の指と同調するリズムで。
389 名前:カンナナ 投稿日:2002年07月09日(火)01時51分11秒
わたしはもうそのリズムに飲み込まれていて、
はっきりと、どうされているのかはもう、
よくわからなくなってる。

知りたい…とも、思うけど、
だめ…もう、もたない。
我慢なんて、できない。

「…あ……あっ…!」

愛しいひとの名前を全部呼ぶこともできないうちに、
息がつまるほどの痙攣がわたしを襲った。
390 名前:カンナナ 投稿日:2002年07月09日(火)01時51分42秒
…それなのに、明日香は。
リズムを刻むのを、やめてくれなかった。
波のように全身を襲う痙攣に何度も襲われて、
わたしの意識は真っ白になった。



………
391 名前:カンナナ 投稿日:2002年07月09日(火)01時52分14秒
気が付くと、明日香がわたしの顔を見つめていた。

「…あ」
「…おはよ」

窓の外はもう明るくて。

「…わたし…寝てた?」
「…うん…たぶん」
「…ごめん…」
「…いや、べつに」
「…明日香は、起きてたの?」
「…や、なっちより先に目が覚めただけ」
392 名前:カンナナ 投稿日:2002年07月09日(火)01時52分48秒
ほんとかな。…ほんと…かな。そうかも。
…あ。

「…なっち、白目むいてなかった?」

心配になって、きいてみる。

昔からわたし、寝てるとき、
そういうときがあって。
そんな恐い顔、見られてないといいんだけど…。

「…ちょっと」
「やぁ〜!」

…恥ずかしくて、顔が合わせられなくなる。
393 名前:カンナナ 投稿日:2002年07月09日(火)01時53分24秒
「…や、大丈夫、可愛かったよ」
「うそだぁ〜!」
「うそじゃないって」
「びっくりしたでしょ? 恐かったでしょ?」
「や、だって…初めて見たわけじゃないし」
「…え」
「昔から、なっちのそれは、知ってたし」

…そ…っか。そういえば。
昔も、一緒に寝泊りしたことがなかったわけじゃないし、
話したこともあったっけ。
でも、こんな日に…。
394 名前:カンナナ 投稿日:2002年07月09日(火)01時53分56秒
「…初めて見たこととか、いっぱいで。
それにくらべたら、昔から知ってたなっちの白目なんて」

…そう言ったあと、明日香は、
「…あ、初めてじゃなかったか、それも」
と付け足した。


395 名前:カンナナ 投稿日:2002年07月09日(火)01時54分49秒
………
控え室で今日初めて顔を合わせたときから。
なっつぁんは、すこぶる機嫌がいい。
昨日あのあと、うまくいったのは
聞かなくてもわかる…のに、
今はいてる下着が福田さんのものであることも
わざわざ、教えてくれた。

「あ〜、はいはい。よかったねぇ」

そう返事をしながらあたしは。
昨日あたしが、したことも。
おととい、あたしがしたことも。

どっちもなっつぁんは怒っていないどころか、
浮かれてすっかり忘れてしまっているかも知れない様子に、
とりあえず、安心する。
それなら、まあ、いいかと思う。
396 名前:カンナナ 投稿日:2002年07月09日(火)01時55分39秒
…なっつぁんがあたしにつけた、肩の跡。
…まだ完全には、消えてないんだけどね。

そんなこと、こんなに嬉しそうにしてる人に、言えるわけもなくて。
そんな、カッコ悪いこと、できるわけもなくて。

仕方ないから、それも、まあ、いいかと思う。
397 名前:カンナナ 投稿日:2002年07月09日(火)01時56分12秒
ふと、浮かれ顔だったなっつぁんの顔が、
真顔に戻る。
…この人の真顔が綺麗なのは、あたしも認める。

「…ね、ごっつぁん」
「…なに?」
「…あのさ、ごめんね」
「…え」
「…じゃないか。えっと、ありがと」

そう言って彼女は、あたしを話し相手から
開放してくれようとする。
398 名前:カンナナ 投稿日:2002年07月09日(火)01時56分45秒
「…えーっと…んー…」

何か言葉を返したいけれど、
なかなか思い付かない。
こーゆー場合にふさわしい言葉って、なんだっけ。

考えているうちに彼女はあたしに背を向ける。
離れていく背中にあたしは、
やっと思い付いた言葉を投げかける。

「…こちらこそ!」
399 名前:カンナナ 投稿日:2002年07月09日(火)01時57分31秒
…そう言えば、そうだなぁ、圭ちゃんには。なんて言おう。

…まあ、あたしが言わなくても。
なっつぁんと福田さんのことは。
きっとみんな、もう、知ってるようなもの。


−END−
400 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月10日(水)09時31分13秒
完結お疲れさまでした。
正直、福田さんのことはよくは知らないのですが、あぁ、こんな女の子なのかぁ、と思いながら読んでいました。
作者さんの文体好きですよ。
なっちと福田さんに対する愛情が伝わってきました。
401 名前:カンナナ 投稿日:2002年07月11日(木)20時46分38秒
>>400
ご感想ありがとうございます。
私も福田さんは、とっくに脱退していた頃に知りました。
でも、この話を書きながらいろいろなことを教えていただいたり、
知ったりすることができたと思います。
また、なっちには、今後も頑張って欲しいな、と思っています。

私の文体も気に入っていただけて嬉しく思います。
また何か書きたくなるに違いないとは思うのですが
このスレの容量も一杯に近づいていますし、
その頃にこのスレは倉庫行きしているようにも思いますし、
このスレでの他作品連載やお知らせはできないかと…。

http://jbbs.shitaraba.com/movie/308/
こちらでなら新たな作品を書いた場合も
その場所をお知らせできると思いますので、
よろしければまた、お読みいただければ幸いです。

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