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愛の痛み
- 1 名前:Cha-Cha 投稿日:2001年12月09日(日)04時05分10秒
- 石川梨華が主人公の恋愛系小説です。中編になる予定。
他に主な登場人物は、吉澤ひとみ、後藤真希、柴田あゆみ。後は臨機応変に。
最初のカップリングは石×吉ですが、この後どうなるかは展開次第です。
かなーりゆっくりな更新になると思います。
タイトルどおり、ちょっと痛めになるので、そういうのが大丈夫な方のみ、読んでください。
とりあえず、最初の時期設定は2001年10月頃。
では、スタート。
- 2 名前:愛の痛み〜序章〜 投稿日:2001年12月09日(日)04時07分02秒
- 「ねー、今日、梨華ちゃん家行ってもいい〜?」
テレビの収録が終わった後の控え室、ざわざわした雰囲気に紛れるようにひとみちゃんが
声をかけてきた。
「今日?でもよっすぃ〜、これからプッチモニの取材じゃないの?」
「ん〜、だからさ、ちょっと遅くなると思うけど、先に帰って待ってて?」
「……いいけど」
ちょっと煮え切らない返事になってしまった私に、ひとみちゃんは、ん?と顔を覗きこんで、
「何、なんか都合悪い?」
「…あ、ううん。そんなことないよ。……待ってる。」
反応が遅れたのを誤魔化すみたいに、私はにっこり笑ってみせた。
「ん。じゃあ後でね。お疲れ〜」
私の様子に気がつかない筈はないと思うんだけど、ひとみちゃんは手をひらひらっとさせると、
ごっちんと一緒にそのまま控え室を出て行った。
- 3 名前:愛の痛み〜序章〜 投稿日:2001年12月09日(日)04時09分36秒
- 私は、うーんっと伸びをすると、なんとなく鏡に映った自分の顔を眺めた。
……顔色、あんまり良くないなぁ。メークを落とすと隠しようがない。なんだかむくんでいる
ような気もする。
最近あんまり眠れていないから、そのせいかもしれない。
今日はなるべく早く寝たかったんだけれど……そうもいかなくなりそう。
仕方ない。明日は午後からの仕事だから、なんとかなるだろう。
「なーに自分の顔に見とれてんのっ?!」
「きゃぁぁ〜〜!!!」
突然鏡越しの私の上にもう一つ顔が現れ、私はものすごい声をあげてしまった。
「や、保田さんっ!おどかさないでくださいよぅ」
「別に、声かけただけだけど……なんか傷つくわ、その驚き方」
保田さんは不満そうに鼻を鳴らした。
「保田さん、これから取材なんじゃないですか?」
「うん、もう出るよ。……あのさぁ」
保田さんは鏡の私の顔を覗き込んだ。
「石川、ちゃんと食ってる?」
- 4 名前:愛の痛み〜序章〜 投稿日:2001年12月09日(日)04時10分51秒
- 一瞬、ドキっとする。
「え…なんでですか?」
「なんかさぁ、元気ないよ最近。顔色も良くないし」
「そ、んなこと…ないですよ」
うわ、保田さんって結構鋭いんだよね。
「ちゃんと食べてますよう。食欲すっごいあるんです。今、ちょっと疲れてるだけです」
ここで『めちゃくちゃ元気で何の問題もないです!』って言っても誤魔化せないだろうから、
一番無難かなと思う返答を選んだ。
「そう?ならいいけど…。ま、今度なんか美味しいモンでも食べにいこう。今日は早く寝なさいよ」
なんだかお母さんみたいなことを言って、ちょうど呼びに来たマネージャーと一緒にバタバタと
保田さんは出て行った。
……もしかして、それが言いたくて残ってくれてたのかなぁ、保田さん。
ダメだなぁ。他の人にまで心配かけるようじゃ。
- 5 名前:愛の痛み〜序章〜 投稿日:2001年12月09日(日)04時13分04秒
- ◇ ◇
帰りの車は、家より少し前で降ろしてもらって、コンビニでお菓子を少しとオレンジジュース
を買った。
家に着いたら、まず丹念にうがいをする。喉が弱い私は、娘。に入ってからこれがすっかり
習慣化してしまった。
それから、どうしようかな、と思ったけど、たまにはゆっくり入りたいし、ひとみちゃんも
後から来るし、と思って、久々にバスタブにお湯を張った。
ユニットバスだから小さなバスタブだけれど、このほうがやっぱりあったまる。
バスタブの中で手足がじんわりあたたまってくるのを感じながら、
こんなこと……いつまで続ける気なんだろう、私。
自重気味にそう呟いた。
そのくせいつもより丁寧に髪を洗っている自分に気がつき、苦笑してしまう。
- 6 名前:愛の痛み〜序章〜 投稿日:2001年12月09日(日)04時14分19秒
- 髪を乾かしていると、チャイムが鳴った。
早いな。私が帰ってきてから一時間ちょっとしか経ってない。
ドアを開けると、寒そうに首をすくめたひとみちゃん。
ひとみちゃんもなんだか、疲れてるみたい。
「早かったねぇ、よっすぃ〜。もうちょっとかかるかと思ってたよ」
「んー、思ったよりね。サクサク終わったから。」
疲れた疲れた、と独り言を言いながらひとみちゃんは靴を脱ぎ、勝手知ったるナントカで
まっすぐに洗面所にむかう。
「今、お風呂わかしてあるけど、入る?」
手を洗っているひとみちゃんに、リビングから声をかけると、
「あ、そんじゃ入っちゃおうかな」
シャンプー使わせてねーとか言いながら、ひとみちゃんはバスルームに消えた。
- 7 名前:愛の痛み〜序章〜 投稿日:2001年12月09日(日)04時16分14秒
- ひとみちゃんがシャワーを浴びる音を遠くに聞きながら、
私はキッチンに立って紅茶を淹れる。
お料理は得意じゃないけど、紅茶にだけは少し、こだわりがある。
ミネラルウォーターではなく、あえて昨日汲み置きしておいた水を使う。
ミネラルウォーターだと、ヤカンにべっとり白いのが付着するのが嫌なんだ。
紅茶の味もなんだか硬くなる気がする。
本当は西洋風に硬水で淹れるのが正しいのかもしれないけれど、
私の好みじゃない。
しゅんしゅんといい音を立ててお湯がわくのを見ていると、
ひとみちゃんが髪をばさばさっと乱暴に拭きながら出てきた。
「タオル、借りちゃったよー」
「ん、いいよ」
- 8 名前:愛の痛み〜序章〜 投稿日:2001年12月09日(日)04時17分15秒
- 借りちゃったもなにも、それはほとんどひとみちゃん用のバスタオルになってる。
シャンプーだってタオルだって今さら勝手に使っても構わないのに、
いちいち断るのが律儀なひとみちゃんらしい。
でもひとみちゃん、バスタブには入らなかったのかもしれない。
あっという間に出てきたね。
「よっすぃ〜も飲む?冷たいもののほうがいい?」
「紅茶でいい。さんきゅ」
ひとみちゃんもキッチンに来て、私が紅茶を淹れるのを後ろから眺めていた。
- 9 名前:愛の痛み〜序章〜 投稿日:2001年12月09日(日)04時19分34秒
- ディーポットに少しだけお湯を入れてあっためて、
そのお湯を捨ててからリーフをすくって入れる。
One for you, one for me and one for a cup.
紅茶がおいしくなるおまじない。これを教えてくれたのは誰だっけ。
改めてお湯をたっぷり注いで、抽出されるまで、ゆっくり待つ。
ひとりでいる時はこの待ち時間が好きなんだけど、今はなんだか……居心地が悪い。後ろの視線が、気になる。
ひとみちゃんの視線がティーポットから私に移っているのが、振り返らなくてもわかる。
「あ、お腹空いてる?お菓子買ってきたし、
あと残り物でよければなんかあると思うけど……」
沈黙に耐えかねて振り向こうとしたら。
それより一瞬早く、抱きすくめられた。
「梨華ちゃんが、食べたい」
耳元で囁かれて、私はビクっと震えてしまう。
- 10 名前:愛の痛み〜序章〜 投稿日:2001年12月09日(日)04時21分15秒
- ひとみちゃんが私の家に来るってことは、つまりそういうことなんだけど。
いつも私は少しだけ抵抗する。
形だけの、抵抗なんだけど。
「……紅茶、飲むんじゃないの…?」
抱きすくめられたまま、かろうじて言葉をつむぐ。
ティーカップに紅茶を注ぐ手元が震える。
「後でいいよ」
「…ダメだよ。今淹れないと、苦くなっちゃ…んっ!」
ひとみちゃんの手が、パジャマの中に滑り込んできた。
「あ、危ないってば…」
「紅茶より、今はりかちゃんが欲しい」
首筋に暖かい唇の感触。まだ乾ききっていないひとみちゃんの髪が、
さらさらと私のうなじを撫でる。
ひとみちゃんの手で、やわやわと胸を愛撫される。
その先端を弄うような手のひらの動きに、私の呼吸が乱れる。
私は。
私は……。
- 11 名前:愛の痛み〜序章〜 投稿日:2001年12月09日(日)04時22分02秒
- 「……ここじゃ、やだ…」
「…ベッド、行く?」
「……ん」
また、何も考えられなくなる。
- 12 名前:愛の痛み〜序章〜 投稿日:2001年12月09日(日)04時26分25秒
- ◇ ◇
「いい格好だね、梨華ちゃん。すっごくそそられるよ」
後ろで、ひとみちゃんのくすくす笑う声が聞こえる。
「…よっすぃ〜、が、したんじゃん…いじわる…」
「えー、だって梨華ちゃん、こーゆうことされんの好きじゃん」
中途半端な四つんばいみたいな格好で、ベッドにうつぶせにされた私。
下半身は膝立ち状態だけど、上半身は肩と、枕に押し付けられた頭とでかろうじて上半身を支えている状態。
せめて腕で上半身を支えたいのに、それができない。枕の中でつく息が苦しい。
私の双腕は。
本来の役目を放棄させられ、バスローブのロープで後ろ手に縛り上げられていた。
- 13 名前:愛の痛み〜序章〜 投稿日:2001年12月09日(日)04時28分03秒
- 「……っく…っ…」
「もっと声出してよ……。梨華ちゃんの感じてる声、好きなんだから…」
「ゃ…っぁ…はぁっ…!」
意地でも声なんて出すもんか、って歯を食いしばっていた時期もあった。
抱かれている間、心を氷みたいにして何も感じないようにしようとしてた時期もあった。
そんなに前のことじゃないのに、今では遠い昔に思える。
「……ぁん…っ…よ…すぃ……っ…」
「なぁに?
「もぉ…おねが、いっ…!」
今の私は。
どうあがいても、結局はひとみちゃんに流されてしまう自分の身体を知っている。
- 14 名前:愛の痛み〜序章〜 投稿日:2001年12月09日(日)04時29分35秒
- 好きな人に抱かれているのに、心は満たされない。
数え切れないほど身体を重ねたのに、そうすればするほど、
距離が離れていくのを感じる。
でも、私はもう、ひとみちゃんの本当の心がどこにあるのか探す気力もないほど、
この一方的な恋に疲れてしまっていた。
「ぁふ……もっと…して…んん……」
「どこ…?…ココが、気持ちいいの…?」
それなのに、ひとみちゃんのことを拒めないのは。
「あ……そ、こぉ…っ…よ…すぃ……んんっ……きもち、いいっ…」
「すごい…りかちゃん、いやらしい…こんなになってる…」
「ぃ…やぁ…んっ…いわないで……っ…」
そんな関係でもいいから。身体だけでもいいからひとみちゃんを繋ぎ止めておきたい
自分がいるから。
- 15 名前:愛の痛み〜序章〜 投稿日:2001年12月09日(日)04時31分50秒
- 波が、来る。
私を押し流す。余計なことを、思い出させなくさせる。
それでいい。
「や、っ……、だめ、い、きそうっ…よっすぃ…んっ…」
「いいよ……イっちゃって……いっぱい感じて…」
「ぁ…ぅああ…やっ……ぃっちゃう……イク…っ………ぁあああああっっっっ!!!」
汚れてしまった。
私自身も。この恋も。
- 16 名前:愛の痛み〜序章〜 投稿日:2001年12月09日(日)04時33分16秒
- ◇ ◇
「ねー、なんで名前で呼んでくれないの?してる時」
終わった後で、今も時々ひとみちゃんはこんなことを言う。
「うーん、なんか今さら……照れくさくって呼べないよう。
よっすぃ〜、のほうがしっくりくる」
私の返答も、いつも同じ。
「こーゆう時は、名前で呼んでくれたほうが気分出るんだけどなぁ。
前はそう呼んでたんだし、慣れだと思うけどねぇ…」
ひとみちゃんは呑気にそんなことを言うけど、いつも決して強制はしてこない。
だから私は、決してひとみちゃんとは呼ばない。声に出しては。
- 17 名前:愛の痛み〜序章〜 投稿日:2001年12月09日(日)04時33分51秒
- 心の中では今だってずっと、ひとみちゃん、って呼んでるんだよ。
ただ、口に出せないだけ。
口に出して言わないのは。
私のせめてもの。
せめてもの……。
- 18 名前:Cha-Cha 投稿日:2001年12月09日(日)04時35分06秒
- 今日の更新はここまでです。
- 19 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月09日(日)13時28分00秒
- 面白いです。すごくいい感じ
梨華ちゃんせつないですね・・・よっすぃ〜の心は何所にあるのでしょうか
がんばってください
- 20 名前:popi 投稿日:2001年12月09日(日)13時34分52秒
- あーーー・・・切ないです。
これからこの二人はどうなってしまうんだろう・・・?
- 21 名前:Charmy Blue 投稿日:2001年12月09日(日)16時03分25秒
- 切ないけど、こういうの、すっごく好きです。
頑張って下さい。
- 22 名前:愛の痛み〜序章〜 投稿日:2001年12月09日(日)20時42分55秒
- 「痛かった?」
「…ううん、だいじょうぶだよ」
ひとみちゃんが、私の自由を奪っていたものをほどくと、
手首のところが赤くなっているのがわかった。
「あ〜、跡ついちゃったかな。そんなにきつく縛ったつもりないんだけど…
梨華ちゃん暴れるから」
ひとみちゃんはからかうようにそう言って、
赤くなった個所にちゅっと音を立ててキスをした。
「タオル地だから、跡にはならないと思う…多分明日には消えてるよ」
私はまだけだるさの残る声で、そう答えた。
- 23 名前:愛の痛み〜序章〜 投稿日:2001年12月09日(日)20時45分56秒
- 結局、2人とももう一度シャワーを浴びた。
さっき淹れた紅茶は、もちろん冷めきっていた。
淹れなおそうか?と言ったけど、ひとみちゃんは、これでいいよ、と言って
すっかり冷たくなった紅茶をひと息に飲むと、おやすみ、と私の額にキスをして、
さっさと寝室に戻ってしまった。
明日、ひとみちゃんは朝から仕事だ。
一緒に仕事場に行かなくていいことに、なんとなくホッとする。
疲れているはずなのに、妙に神経がとがって眠れない私は、
自分の分の紅茶だけ淹れなおすことにした。
今度はアッサムを濃いめに淹れて、暖めたミルクを注ぐ。
…こんなの飲んだら、ますます眠れなくなっちゃうかな。
ミルクがさぁっと紅茶の色を変えていくのを眺めながら、
私はぼんやりと昔のことを思い出していた。
私が、一生分の勇気をふり絞ってひとみちゃんに告白した時のことを。
<序章おわり>
- 24 名前:Cha-Cha 投稿日:2001年12月09日(日)20時51分17秒
- 序章を少し付け足しました。
次から本編に入ります。これから書くので(爆)気長にお待ちください。
早速のレスありがとうございます。とても励みになります。
>19 一番乗りレスありがとうございます。甘く切なく痛く、になる…かな?
>20 私にもわからないのです。小説の神様が降臨するのを待つだけの私(笑)
>21 いつもCharmyさんの小説を楽しみに読ませて頂いています。
こちらはグダグダの駄文でお恥ずかしいのですが、頑張ります。
- 25 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月10日(月)15時22分17秒
- 最後の一行が気になりますねぇ
いったい何があったんだろう・・・
- 26 名前:じゃない 投稿日:2001年12月11日(火)01時37分14秒
- |.∀´)チラッ
生暖かく見守ります。
- 27 名前:夜叉 投稿日:2001年12月11日(火)21時00分44秒
- はぁ、最後の一言が気になります。
ぬるま湯?で見守ってます(w。
- 28 名前:尾依羅 投稿日:2001年12月11日(火)21時03分48秒
- ユックリ、マッタリ頑張ってください。
- 29 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2001年12月16日(日)22時02分36秒
- 地球が21世紀を迎えてから18日後、1月19日に私は16歳になった。
年が明けてすぐに誕生日を迎えるのはいつものことだけど、
16歳っていうのは何か特別な感じがする。
原付ならバイクの免許も取れるし、親の承諾さえあれば
−−そんな予定は全然ないけど−−結婚だってできる。
条件付ながら、あなたはもうオトナなんですよ、と言われたような気分だ。
21世紀になった年に、私がそういう特別な歳になったのは、
何か特別な意味があるに違いない。
これを機会に、もっと積極的で前向きな自分に生まれ変わりなさいって神様が言ってるんだ、
そうだ、そうに違いない!
よーしっ、がんばるぞーっ!
無理やりにでもそう理屈をつけて、私は自分を駆り立てようとしていたのかもしれない。
告白されたことはあっても自分からしたことなんてない、
それどころか今まで恋愛らしい恋愛もしたことのない私は、
そうでもしなければとても、こんな勇気なんて出せそうになかった。
仲良しの友達、という関係が壊れるかもしれないのを覚悟の上で、女の子に告白するなんて。
◇ ◇ ◇ ◇
- 30 名前:Cha-Cha 投稿日:2001年12月16日(日)22時04分21秒
- あぁ最初っからやってしまった…。29は無視してください。
- 31 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2001年12月16日(日)22時35分05秒
- 地球が21世紀を迎えてから18日後、1月19日に私は16歳になった。
年が明けてすぐに誕生日を迎えるのはいつものことだけど、16歳っていうのは何か特別な感じがする。
原付ならバイクの免許も取れるし、親の承諾さえあれば−−そんな予定は全然ないけど−−
結婚だってできる。
条件付ながら、あなたはもうオトナなんですよ、と言われたような気分だ。
21世紀になった年に、私がそういう特別な歳になったのは、何か特別な意味があるに違いない。
新世紀にオトナの仲間入りをしたんだから、もっと積極的で前向きな自分に
生まれ変わりなさいって神様が言ってるんだ、そうだ、そうに違いない!
よーしっ、がんばるぞーっ!
無理やりにでもそう理屈をつけて、私は自分を駆り立てようとしていたのかもしれない。
告白されたことはあっても自分からしたことなんてない、それどころか今まで恋愛らしい恋愛も
したことのない私は、そうでもしなければとても、こんな勇気なんて出せそうになかった。
仲良しの友達、という関係が壊れるかもしれないのを覚悟の上で、女の子に告白するなんて。
◇ ◇ ◇ ◇
- 32 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2001年12月16日(日)22時36分57秒
ひとみちゃんの印象は、娘。最終オーディションの寺合宿の時からすごく良かった。
可愛いのにカッコ良くて、なのにそれを全然ひけらかさないサバサバした感じに好感を持った。
正直、ここまで残ったコ達の中には、自意識過剰になってる人も少なくなかったから、
そんな中で自然体の彼女は逆に目立っていた。
一緒に娘。に入れた時は、素直に嬉しかった。
四人の同期の中で、12歳コンビの辻ちゃんと加護ちゃんはすぐにガッチリとスクラムを組んだので、
自然と私とひとみちゃんは一緒にいることが多くなった。
仲良くなればなるほど、どんどん好きになっていった。
それが、単なる友情じゃないと気付いたのは、私がたんぽぽ、ひとみちゃんがプッチに入ってからだった。
- 33 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2001年12月16日(日)22時39分18秒
プッチに入ったひとみちゃんは、ごっちんと急速に仲良くなっていくのがメンバー内の誰の目から見てもわかった。
もともとひとみちゃんは誰からも好かれるコだ。
同じ歳で性格も似ているごっちんと仲良くなるのは、考えてみれば当たり前のことだった。
たとえひとみちゃんがプッチに入らなくても、遅かれ早かれこうなっただろう。
でも私は、ひとみちゃんとごっちんが彼女達にしか分からない話題で笑い転げているのを見るたびに、
胸が焼けつくような痛みを覚えた。
ひとみちゃんにとって私は、ただ同期で年が近いからたまたま仲良くなったコ、っていうだけなのかもしれない。
話の合うごっちんとのほうが、一緒にいて楽しいのかもしれない。
- 34 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2001年12月16日(日)22時39分56秒
- ただでさえこの時期は別々のユニットの仕事が多くて、私はひとみちゃんに全く会わずに一日を終える日も少なくなかった。
その間にも、ひとみちゃんはどんどん世界を広げて、私よりもっと仲の良い人が出来てしまうんだと思うと、たまらなかった。
私もまだたんぽぽに入ったばかりで、やらなきゃならないこと、覚えなきゃいけないことがたくさんあるはずなのに、
ひとみちゃんのことを考えると集中できなくなっている自分がいた。
それで、分かったんだ。
私は、ひとみちゃんのことが好きなんだって。友達としてではなく、恋愛対象として。
- 35 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2001年12月16日(日)22時42分14秒
- 自分の気持ちに気付いて最初の数ヶ月は、自分でもこの気持ちを持て余していた。
好き、と意識してしまったせいで、かえってひとみちゃんと自然に話せない。
話し掛けられるとすごく嬉しいのに、ドキドキしてまともな受け答えができない。
そんな状況が嫌だった。
こんな感情さえ持たなければ、普通にお友達として仲良くできるのに、なんて思っていた。
ひとりで空回りしている私のことを、ひとみちゃんがどう思っていたかはわからない。
私の気持ちには、なんとなく気付いていたかもしれない。
でもひとみちゃんは、それを態度には全く出さなかった。
相変わらず彼女は優しくて面白い子で、私は一緒にいるだけで楽しくて…
つまり、もうどうしようもなく私は、ひとみちゃんのことが好きだったんだ。
- 36 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2001年12月16日(日)22時42分46秒
- ただ、そう、気持ちがどんどん大きくなっていくのは私のほうだけで、
ひとみちゃんの態度はずっと変わらなかった。
変わらない…。そう、私が動かなければ、この関係はどうにも変わらない。
この気持ちに決着をつけなければ、私自身も変われない。
悩んで悩んでそう結論を出したのは、21世紀に入ってからだったんだ。
21世紀。16歳。
私は、変わりたかった。
◇ ◇ ◇ ◇
- 37 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2001年12月16日(日)22時46分58秒
ひとみちゃんに、告白する。
そう決心したのが、1月19日。
あれから一ヶ月以上経ったのに、私はまだ、言い出せずにいた。
今日こそは、と毎日思ってはいるのだ。
でも、毎日があわただしいスケジュールに追われていると、なかなかタイミングをつかめない。
…なんて自分に言い訳して、先延ばしにしているだけなんだけど。
やっと話を切り出したのは、もう2月も終わろうかという頃。
珍しく仕事が早く終わり、なんとなく一緒にお買い物をしてから帰ることになった日だった。
- 38 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2001年12月16日(日)22時48分34秒
帽子を目深にかぶって、人目につかないようにと気にしながらだったけど、
ひとみちゃんとふたりっきりでたわいないおしゃべりをしながらのお買い物は、それだけで嬉しかった。
私とひとみちゃんは基本的に趣味が違うから、買いたいものも全然違う。
だから一緒にお買い物にいくと、お互いの買い物を済ませるにはいつもの2倍時間がかかってしまう。
この日も例外じゃなかった。
その上、パッパッと買いたいものを決められるひとみちゃんと違って、私は決めるまでにものすごく時間がかかる。
でもひとみちゃんは、私のあまりの”女の子趣味”をからかいながらも、いやな顔一つしないで付き合ってくれた。
私だけに向けられるひとみちゃんの笑顔は、私の目にはキラキラ輝いてみえた。
言うなら、今日しかない。
話が途切れた帰り道、歩きながら、ぐっとひとみちゃんのコートのすそをつかんだ。
身を切るような寒さだというのに、私の頭は沸騰寸前だった。
- 39 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2001年12月16日(日)22時49分34秒
「あのね、あの、よっすぃ〜、話が、っていうか、言いたいことがね、あるんだけど……」
「なに、改まって?」
立ち止まって、笑顔で聞き返してくるひとみちゃん。
どうかどうか、私の話が終わっても、この笑顔が変わらずにありますように。
オリオン座がひときわ綺麗に見える、冬の夜だった。
◇ ◇ ◇ ◇
- 40 名前:Cha-Cha 投稿日:2001年12月16日(日)22時56分28秒
- 今日の更新は以上です。読みづらい更新ですみません。
>25&27 気を持たせるような書き方だったかな。
今回もまだそのシーンまで行きませんでした。ごめんなさいー。
>26 あー、いつもお世話に…って、某版に私が書き込んでからすぐのレスですねコレ(w
ナマアタタカク、ナマヌルク、真綿で首を絞めるように見守ってくらはい(w
>28 そちらの小説も楽しみに読んでますー。マッタリ頑張ります。
- 41 名前:闇の住人 投稿日:2001年12月17日(月)00時32分47秒
- 石川、言うのか?
がんがれ梨華ちゃん!!!
早くもつづきが気になるっす!作者さん、がんがって下さい!
- 42 名前:夜叉 投稿日:2001年12月17日(月)02時34分59秒
- いえいえ、そんなつもりはないですよ。
作者様のペースで進行していってください。
続き、楽しみに待ってます。
- 43 名前:夜叉 投稿日:2001年12月17日(月)20時37分08秒
- 作者様、ごめんなさい。
今、気がつきました。逝ってきます…(鬱)。
- 44 名前:Cha-Cha 投稿日:2001年12月21日(金)01時49分44秒
- あー、タンポポが平仮名になってたことに今気付いた。アホなミスだ…。
気を取り直して、少しですが更新します。
- 45 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2001年12月21日(金)01時51分15秒
- 「んーっとね、あの、笑ったりバカにしたりしないで、聞いてほしいんだけど…」
「あの、何から話したらいいんだろ。えっと…」
「よっすぃ〜と知り合って、もうすぐ一年になるよね…?」
「一緒にオーディション合格して、一緒にモーニング娘。に入れて。
それで、色々相談に乗ってもらったりとか、仲良くしてもらって…」
「それで、えっと、私はよっすぃ〜と仲良くなれてすごく嬉しかったんだけど…」
「えっと、あの……」
ああ、もう、何言ってんだろ、私。
覚悟してきた筈なのに。
ずーっと悩んで悩んで、とうとう告白する決心して、言う言葉まで考えて、
それでもなかなか言い出せなくて、やっとの思いで切り出したのに。
好き、のひと言が言えなくて、どうでもいいことばっかり口から出てきて。
そんな自分が情けなくて泣きたくなって、余計にそのひと言が言えなくなった。
- 46 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2001年12月21日(金)01時52分33秒
- ひとみちゃんは黙ったまま、私の言葉を聞いてくれていたけど。
私は、ひとみちゃんのコートのすそを握りしめてうつむいたまま黙り込んでしまう。
うつむいたままでも、今ひとみちゃんがどんな顔をしているか分かる。
ずっとひとみちゃんのこと見てきたから、こんな時にどんな顔してるかなんて、
見なくても分かるようになっちゃったよ。
私をじっと見つめる、吸い込まれそうな薄茶色の瞳。その眼が好き。
さらさらと顔にかかる髪も、好き。
身長差を補うために、いつも少し首をかしげて私の顔を覗き込む。その癖も、好き。
私、私……。
- 47 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2001年12月21日(金)01時53分38秒
- 「……好き、なの。よっすぃ〜のこと」
やっと吐き出したその言葉は、ひとみちゃんにやっと届くか届かないかの、消え入るような声だった。
頬が燃えるように熱い。顔なんて上げられない。地面を見つめるばかりの私。
そして、黙ったままのひとみちゃん。
泣くまいと思っても、じわっと涙が出てくる。
沈黙が怖い。早く、なにか言って。ダメならダメでいいから。
なにか……。
- 48 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2001年12月21日(金)01時54分50秒
- 「かわいいね」
「えっ?」
私がシミュレーションしていたどれとも違う言葉が返ってきて、思わず顔を上げた。
「なぁに泣いてるの、梨華ちゃん」
ひとみちゃんはそう言って、人差し指の甲で私の涙を拭った。
「でも、泣いてるとこもかわいいね。梨華ちゃん、何しててもかわいい」
「え、えっと、あの……」
予想外の展開に戸惑う私の顔を、ひとみちゃんはいつもにみたいに覗き込むようにして
「今日、まだ時間平気だよね。なんか食べに行こっか?」
さらっと言った。
- 49 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2001年12月21日(金)01時55分40秒
- 私のさっきの言葉、聞こえてなかったの?
ううん、聞こえてないとしたら余計、こんなリアクション返ってくるはずない。
聞き返すとか、私の言葉を促すとか、するはずだもの。
ひとみちゃんの反応をどう解釈したらいいのかわからなくて、
でもあの言葉をもう一度言う勇気なんてとてもなくて、
私はただ
「うん」
とうなずくしか出来なかった。
- 50 名前:Cha-Cha 投稿日:2001年12月21日(金)02時00分18秒
- 今日の更新終わりです。次は少し間が開いてしまうかも。
ぶっちゃけ、先週のオソロ聞いて以来筆が進まなくなった。
現実のあいつらはあんなラブラブなのに、なんでこんな痛い話書いてるんだ私…。
>41 初レスありがとうございます。
梨華ちゃんがんがりました。作者もヘタレつつがんがります(w
>41 暖かいお言葉ありがとうございます。こんな感じですが今後もよろしく。
age、sageはあまり気にしないで下さい。そんなにこだわりはありませんので。
- 51 名前:Cha-Cha 投稿日:2001年12月21日(金)02時07分01秒
- ↑すいませーん、二つ目のレスは >42 ですね、勿論。
- 52 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月21日(金)15時06分11秒
- 吉澤の不思議な反応(w
気になるねぇ
- 53 名前:Charmy Blue 投稿日:2001年12月21日(金)18時31分51秒
- 現実はラブラブ、このギャップがイイかも。
気にせず自分のペースで書いて下さいぃ。
ゴマ柴が出て来るのはまだ先かな。
- 54 名前:夜叉 投稿日:2001年12月21日(金)18時55分52秒
- オソロ、やられましたよね(w。
自分、落としたんですが、聞くことができずに…(鬱)。
文面だけで萌えました(爆)。
自分は痛くないと思うのですが、何か?
ハマってます、まぢで。
作者様の優しい言葉に感謝。(合掌)
- 55 名前:闇の住人 投稿日:2001年12月22日(土)15時34分05秒
- 石川さん言っちゃったぁー!
それにしてもよっすぃーの反応はなんなんだ?気になるっす!
続きがんがって下さい!
- 56 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月22日(土)19時49分40秒
- 同じく続き、待ってます。
- 57 名前:Cha-Cha 投稿日:2002年01月04日(金)13時49分13秒
- 食事、と言っても、もう時間も遅かったので適当に入ったファミレス。
奥のほうの席に、テーブルをはさんで向かい合わせに座った。
幸い、客はほかにほとんどいなくて、私達に気づく人もいなさそうだった。
「どしたの?コレおいしいよ、食べないの?」
「あ…う、ん」
とてもじゃないけど、食事なんて喉を通らない私をよそに、
ひとみちゃんはなぜだかニコニコと上機嫌で、惚れ惚れするくらいよく食べた。
私は、フォークでサラダを申し訳程度につつきながら、ちらちらとひとみちゃんを盗み見てしまう。
「よっすぃ〜のことが、好き」
私、確かにそう言った。
言ったはずなんだけど、目の前のひとみちゃんを見ていると自信が揺らぐ。
本当にちゃんと言葉に出して言えたんだろうか。
あまりに頭に血が上って、言えた気になっているだけなのかもしれない、なんて。
だって、ひとみちゃんの態度があまりにもいつもと同じで。
曲がりなりにも女の子から告白されたばっかりのコが、こんなにフツーでいられるものなのかな。
そりゃ、ひとみちゃんは男女を問わず知り合いが多くてモテる人だし、
同性からも告白され慣れているのかもしれないけど。
それにしても…。
- 58 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2002年01月04日(金)13時55分14秒
「……たの?梨華ちゃん」
「りーかーちゃーん!起きてるー?」
ハッと我に返ると、ひとみちゃんが私の目の前で手をひらひらさせていた。
「え…あ、えっ何?」
「もーう、心ここにあらずってカンジ。さっきから変だよ梨華ちゃん」
私からすれば、ひとみちゃんの態度だってずいぶん変なんだけど。
心配そうにこっちを見ているひとみちゃん。
私が曖昧に笑ってみせると、彼女はちょっと眉根を寄せて、それから微笑んだ。
「だいじょうぶ?なんかまた悩んでるの?」
……ええ。私の目の前にいる人の態度が、理解できないんです。
「ううん。別に…なにもないよ」
「そ?ならいいけど」
ひとみちゃんはすっと手を伸ばすと、私の右頬をむに、と軽く引っ張った。
多分、ひとみちゃんにとってはたいした意味のないしぐさ。
それなのに、触れられた所だけかあっと熱を持ったように熱くなる。
- 59 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2002年01月04日(金)13時56分25秒
「なに、今の?」
ごまかすためにわざと何でもないような口調で聞く。
「うーん、なんだろ。元気が出るおまじない、かな?」
そう言うとひとみちゃんは、ふふふ〜んと鼻歌まじりに、空になったグラスに水を注いだ。
「…私、元気だってば。おまじないなんてしなくっても」
「んー。まあいいじゃん。じゃあより元気になるようにってことで」
きっとこれって励ましてくれてるんだよね。
不思議な行動だけど、このテの不思議ならいつものことだから慣れてる。大丈夫。
いや……こういうとこも、好き、なんだよね。
「よっすぃ〜…は、元気そうだよね。って言うか…なんか機嫌いいね」
私は思わずそう言ってしまった。
そう、なんでだか分からないけれど、ファミレスに来るちょっと前から、ひとみちゃんはやたらと上機嫌だった。
「え、そっかな」
「うん…。さっきからあからさまに機嫌よさげだよ」
フォークの先でサラダをもてあそびながら言う私に、ひとみちゃんはへへへっと照れくさそうに笑う。
「まあ、そりゃねー。こんなかわいい子からコクられればうれしいもん。機嫌良くもなるさぁ」
- 60 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2002年01月04日(金)13時58分53秒
「……へ?」
あまりにさらっと言われて、間抜けな返事を返してしまった。
こんなかわいい子…かどうかはこの際置いといて。
ひとみちゃんが言ってるのって、私のことだよね?
私、ちゃんと口に出して言えてたんだ。
とりあえずそれは分かった。そして、少なくとも嫌われてはいないってことも。
でも…じゃあなんで、何も言ってくれないの?
「あの…」
「うん?」
「えっと…ちゃんと、聞こえてたんだ?」
「え?そりゃ聞こえてたよー。ちゃんと耳澄ませてたもん」
「うん、そっか。…うん」
ここで、ひとみちゃんの返事が聞きたいって言えばいいんだ。言わなきゃ。
「あの…」
「ふーっ、お腹いっぱい。ごちそうさまーっと。…あ、ごめん、なに?」
「あ、えっと…なんでもない」
「へーんな梨華ちゃん。ほとんど食べてないしさ。具合、悪いの?」
結局、食事をしている間じゅう、肝心なことは何も聞けなかった。
私は食べたものの味も、それどころか何を食べたのかさえ、よく分からなかった。
……ひとみちゃんの気持ちが、いちばん分からなかった。
- 61 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2002年01月04日(金)13時59分49秒
ひとみちゃん。
私、一大決心して言ったんだよ。生まれて初めて、自分から好きって言ったんだよ。
ひとみちゃんにとってはよくあることでも、私には世界がひっくり返るくらいの出来事なんだよ。
両想いになりたいなんて言わない。
けどせめて、ちゃんと受け止めてほしい。
ごまかしたり流したりしないで。
でないと私…前に、進めないよ。
- 62 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2002年01月04日(金)14時00分59秒
ファミレスを出て、二人並んで駅まで歩いた。
----久しぶりにゆっくり買い物できて楽しかった〜。
----明日、集合何時だっけ?
----そう言えば、昨日加護がさぁ…。
他愛ない会話。いつもと同じ会話。
本当に言いたいことだけが、どうしても口から出てこない。
告白した後のこと、いろいろと考えてたけど、こんな風になるなんて思いもしなかった。
駅まであと少し、という曲がり角にさしかかったとき。ひとみちゃんが急に立ち止まった。
「よっすぃ〜?どうしたの?」
振り返ると、ひとみちゃんは立ち止まったまま、上空を仰いでいた。
「星」
「え?」
「星が、すっごい綺麗だよ。あれ、オリオン座だよね。ばっちり見える」
- 63 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2002年01月04日(金)14時01分44秒
- そのままの姿勢で、ほう、っとため息をひとつついたひとみちゃん。
私は、星空よりもそんな彼女に目を奪われてしまう。
ただでさえ高めの身長を、すうっと伸ばして。
くっと上げた顎のライン。少し目を細めた表情。
そのまま星空に吸い込まれてしまうんじゃないかと怖くなるくらい、綺麗。
慌てて、その残像を振り払うかのように瞬きして、私も夜空を見上げる。
…そのとき、そっとひとみちゃんのコートの袖口をつかんだ。
私が目を逸らした隙に、夜空に消えてしまわないように。
「う、ん。ほんとだ。星…きれいだね…」
寒空に冴え冴えと輝いている星たちは、陳腐な言葉だけど確かに宝石みたいだった。
東京でこんなに星が見えるなんて、めったにないことかもしれない。
それとも、普段の私達があまりに忙しすぎて、ゆっくり夜空を見上げる余裕を失っているだけなのかな。
さっきひとみちゃんに告白したときも、
彼女のむこうに見えるオリオン座がとってもきれいだな、なんてぼんやり考えていたっけ。
人間ってどんなに真剣なときでも、頭のどこかで違うことを考えていられるもんなのかな…。
- 64 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2002年01月04日(金)14時03分29秒
「梨ー華ちゃん、口開いてる」
「え…あ、やだっ」
いつのまにかひとみちゃんはオリオン座じゃなくて、ぽかんと口を半開きにして夜空を眺めている私を見ていた。
慌てて口を引き締める私を見て、くっくっと喉の奥で笑う。
「もうっ、何見てるのよぉ」
「あはは、梨華ちゃんてホンット、かわいいよね」
う…。
なんでそうやって、思わせぶりなことばっかり言うの?
そのたびにドキッとする私を見て、面白がってるのかな…。
「ねえ梨華ちゃん」
「ん?」
「…さっき言ったこと、うそじゃないよね?」
「え…?」
「さっき。うちのこと好きって言ったの、ホントだよね」
いつもみたいに私の顔を覗き込んで、ひとみちゃんが聞く。
こんなに顔を近づけて話すのもいつものことなのに、
あんなことを言ってしまった今となってはそれだけで恥ずかしくてたまらない。
「……う、ん。ほんと、だよ。うそなんかじゃない」
うつむきそうになるのを必死でこらえて、今度はちゃんとひとみちゃんの眼を見て答える。
今更ながら、また顔が赤くなるのがわかる。ホントにホントに、言っちゃったんだよね。
- 65 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2002年01月04日(金)14時04分35秒
「へへへっ、うれしいな」
ひとみちゃんがニッコリ笑う。月に照らされた彼女の瞳に吸い込まれ、一瞬言葉を失った。
その瞳が、だんだん近づいてくる。ぼおっとそれに見惚れていた私の唇に、何かが重なってきた。
- 66 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2002年01月04日(金)14時07分11秒
「ん…っ!…よ、っすぃっ!」
我にかえってひとみちゃんを押しのけたのは、彼女の舌が性急に入ってこようとしたときだった。
「な…に…すん…」
あまりのことに言葉が出てこない。呆然と目を見開いて彼女を見つめるばかり。
自分が何をされたのかわかっているはずなのに、私の頭はそれを理解するのを拒否しようとしていた。
「あれ…ヤだった?」
けろっとした顔で聞いてくるひとみちゃん。
「うーん。パスタ食べたしな。ニンニクくさかったかな。ちゃんとガム噛んだんだけど」
「え、あの、そう言うことじゃなくってね」
はーっ、と自分の両手に息を吹きかけて確認しているひとみちゃんをよそに、私は完全にパニックになっていた。
い、今、あの、ひとみちゃん、私に、その、き…きす、した、よ、ね?
「あ、もしかして梨華ちゃん、初めてだった?ちょっと突然過ぎたかな」
それは全くもってその通りなんだけど。でも、そう言うことでもなくって。
- 67 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2002年01月04日(金)14時08分52秒
- 「あ、あの…な、何でこんなこと…」
「え?だってあたしのこと、好きなんでしょ?」
「だからっていきなり…あ、の、よっすぃ〜…私のことどう思ってるの?」
動揺していたせいで却って、何も考えずに一番聞きたかった質問が口から出てきた。
「うーん。そうだなぁ」
ひとみちゃんは、唇をきゅっと締めて考え込んだ。
キスされたことから考えて、期待していた答えがすぐに返ってくるんじゃないかとなんとなく思っていた私は、
その反応にまた不安になる。
「可愛い。あたしのモノにしたい!って感じかな」
「………えぇ…?」
また、予想外の答え。
今日の…ううん、私が告白してからのひとみちゃんは、言うことやること全てが、全然読めないよ。
ほんとうに、これがひとみちゃん?
…ホントウニアナタガ、ワタシノスキニナッタヒトデスカ…?
- 68 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2002年01月04日(金)14時09分45秒
「ねえ梨華ちゃん、あたしのモノになってよ」
ほとんど鼻の頭がくっつきそうなくらい、ぐぐっと顔を近づけて、ひとみちゃんはそう言った。
- 69 名前:愛の痛み〜第一章〜 投稿日:2002年01月04日(金)14時11分00秒
自分が告白することで精一杯で、ただでさえ余裕がなかったこの日。
それに続く訳のわからない展開に、私はもう完璧についていけなかった。
いつもと変わらない笑顔のひとみちゃんが、まるで知らない人のように見えた。
- 70 名前:Cha-Cha 投稿日:2002年01月04日(金)14時12分34秒
- ひっそりとsage更新。今回はここまでです。
- 71 名前:Cha-Cha 投稿日:2002年01月04日(金)14時23分57秒
- レス下さった方々、ありがとうございます。
今後も更新は遅いと思われますが、どうぞよろしく。
52> まだまだ謎な言動は続きそうです。
53> Charmy Blueさん
柴田はもっと早く出てくる予定が…まだ…(w
54> 夜叉さん
そですねー。まだそれほど痛くはないかな。
あのオソロの後、Wよしごまパンチ。お陰で筆が進んだとか進まないとか(ニガワラ
55> 闇の住人さん
イシカーさんと一緒に、謎な吉澤に振り回されてください(w
56> ありがとうございます。やっと更新です。
- 72 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月04日(金)21時33分13秒
- いつも決まって顔と顔が近いいしよし(w
- 73 名前:名無し 投稿日:2002年01月18日(金)19時31分36秒
- 吉澤の本心がイマイチ見えないですな。
でも、不安にくれる梨華たんにハアハア(w
続き期待してます!
- 74 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月21日(月)22時30分43秒
- ん〜、かすかにこわい吉澤さん気になります。
どういう思惑が…
- 75 名前:Cha-Cha 投稿日:2002年03月02日(土)04時13分05秒
- 放棄しませんの意志表示保全。
- 76 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月05日(火)20時52分09秒
- 密かに期待……
- 77 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月06日(土)08時10分28秒
- 復活を心待ちにしながら…。
- 78 名前:ホーチ 投稿日:2002年04月25日(木)19時21分31秒
- もう更新しないに決まってんじゃん。
- 79 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月26日(金)00時17分05秒
- >78
たぶんそれは在りえない。
茶々さんマターリ待ってます。
- 80 名前:Cha-Cha 投稿日:2002年05月06日(月)00時47分48秒
- 保存のためだけにヒサブリに来てみたら、アタタカイレスが。
ありがとう。放置なしの方向でいますので。
- 81 名前:くわばら。 投稿日:2002年05月08日(水)18時14分16秒
- 作者さんからレスが...よかった放置じゃないんだ。(:_;)
- 82 名前:名無し編集部 投稿日:2002年06月01日(土)13時13分08秒
- *読者のみなさんへ
お待たせしており申し訳ございません。
Cha-Cha先生が某娘。卒業生に浮気中につき、
ツアーが終わるまで今しばらくお待ちください。
- 83 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月10日(月)16時02分57秒
- ( ´D`)ノ<マターリ待つのれす!
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