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BATTLE ROYALE U
- 1 名前:武 投稿日:2001年12月09日(日)14時35分56秒
- こっちで新しくバトロワもの書きたいです。原作の続きという設定です。
東京都板橋区下赤塚第2中学校3年6組クラス名簿
【男子】 【女子】
1番 石川達也 1番 石井由香里
2番 伊藤久志 2番 今野さやか
3番 井上一也 3番 小田玲子
4番 加藤達也 4番 加護亜依
5番 金川剛 5番 木島寛子
6番 小賀坂繁 6番 笹沼祐美
7番 近陽介 7番 篠原舞
8番 志田壮太郎 8番 清水英子
9番 嶋祐一 9番 関麻衣子
10番 菅健太郎 10番 竹本万理
11番 武田将知 11番 醍醐みなみ
12番 都築健介 12番 次村舞
13番 常田慧 13番 辻希美
14番 友田雄一郎 14番 福山江梨華
15番 松田聖一郎 15番 福羅美月
16番 横田良亮 16番 藤松園花
17番 吉田智幸 17番 宮部麻衣
18番 山田真紀子
※辻と加護は同じ学校、同じクラスという設定です。
- 2 名前:武 投稿日:2001年12月09日(日)15時09分08秒
- 1
バスはようやく大阪に入った。バスの運転席の上のデジタル表示が、ふっと8時57分に、変わった。
加護亜衣(女子4番)は、左側の席、窓際に座って荷物をいじっている辻希美(女子13番)の横顔ごしに
夜の風景をしばらく眺めていた。いい気分だ。仕事、受験、すべてを忘れてぼぉっとできた。本当に、いい気分だ。
「来て良かったね」
ふいに視界に入ってきた辻希美が言った。
「うん。そうだね」
実は、今日も仕事が入っていたのだ。マネージャーに無理を言って、二人はこの卒業遠足に参加することが
出来たのだった。
バスの比較的後ろ寄りのその席から、車内を見回すと、まだみんな元気におしゃべりを繰り返していた。
当然、加護と辻も、いつもの仲良しグループと一緒に雑談を交わしていた。
デジタル表示が9時30分になった頃、加護は、(他にもそう感じた者がいたかもしれない)
なんかガス臭いな、と思いながらも、そこで意識が飛んでしまった。
バスは大阪の港に到着し、静かにエンジンを止めた。月明かりの下、黒々とした海には、5年ぶりに行なわれる
『実験』の選手を運ぶための船がゆらゆら揺れていた。
- 3 名前:武 投稿日:2001年12月09日(日)15時31分37秒
- 2
七原秋也はアメリカに国外脱出した後、ロックに熱心に取り組み、小さなバンドを結成した。
マメリカ国民はそのバンドを快く受け入れてくれた。おかげで、今では俺は有名人だ。
すっかりここでの生活も慣れてしまった。なにより、平和だ。アメリカはどこかの国のように狂っていない。
今日はライブを終えてきた所だ。自宅に帰ると、いつものように中川典子が迎えてくれた。
しかし、典子は何も言わずに俺を部屋に設置してあるパソコンの前まで手を引っ張っていった。
「どうしたんだ?典子。」
とりあえず、俺はパソコンの画面を見た。このパソコンは、いつでも狂った国―大東亜共和国―の政府のサーバーに
入り込めるようになっていた。いつかその政府をぶっ壊す時に役立つだろうと秋也自身が改造したものだった。
画面には、やはり政府のサイトが映っていた。しかし、そこにはとんでもない見出しが書かれていた。
『大東亜共和国、5年ぶりにプログラム実施』
なんでだ―プログラムは俺達の時以来、無くなったんじゃなかったのか?秋也も典子も沈黙した。
- 4 名前:武 投稿日:2001年12月09日(日)15時35分38秒
- 一風変わったバトロワものです。他の娘。メンバーもどこかに出したいな、と思っています。
原作を読んだことのない方は少しわかりづらいかもしれませんが、よろしくお願いします。
- 5 名前:武 投稿日:2001年12月11日(火)14時42分51秒
- 3
眠い。なぜだかわからないが、とにかく眠い。そういえば、さっきから誰かに体を揺すられている。
加護は目を覚ました。竹本万理(女子10番)が心配そうな顔でこっちを見ている。辺りを見回してみると
皆、だらしなく床に寝そべっている。起きている者も何人かいるようだが暗くてよくわからない。ただ、
1つだけ確かなことは、ここはバスの車内ではなく、部屋だということだった。バスから降りた記憶はないのだが―
だんだんと他のクラスメイトが目を覚ましはじめ、この異変に気付いたようだった。その時、ガラッという音と共に部屋に
光が入ってきた。ああ、ここは教室だったのか。黒板も、教壇もある。机や椅子は、よく掃除の時間に見るように後ろに詰めて
置かれていた。まあ、そんなことはどうでもいい。何で、こんな所にいなくちゃいけないんだ?卒業遠足はどうなったの?
- 6 名前:武 投稿日:2001年12月14日(金)16時33分53秒
- 4
光に続き、男が入ってきた。40歳位だろうか?センスが良いとは言えない眼鏡をかけている。
その男は部屋の電気をつけ、黒板の前に立った。そして、ぱん、ぱん、と、2度手を叩くと、
にこにこしながら言った。
「はーい、みなさん、よく眠れましたかー?」
やけに大きな声だった。全員が目を覚ましたようだ。男は言葉を続けた。
「はい、それじゃ説明します。まず、私が新しい皆さんの担任です。田代まさしといいます」
はぁ?と、声がしたかと思うと、山田真紀子(女子18番)が立ちあがった。
「担任?何いってんの?私達の担任は、大村…」
先生、と、言い終わる前に男が言葉を重ねてきた。
「大村先生、死んじゃったんだよ。ちょっと、待ってね。お前達ー、入ってきてくれー」
死んだ?先生が?何言ってんだ?コイツは。加護も、山田も、他のクラスメイトも呆れた顔をしていた。
だが、その顔はひとつ残らずひきつることになった。田代の呼びかけに応じて入ってきたのは3人の兵士
だったのだが、それより、その兵士達にかつがれてきた担架に横たわっているものがそうさせたのだった。
まぎれもなく、それは死体だった。担任の、大村先生の死体だった。
「きゃあああああああ」
ほとんどの女子生徒がソプラノのハーモニーを奏でた。男子生徒も、さすがに身を引いた。酷い死に様だった。
散弾でも撃ちこまれたのだろうか。顔はほとんど潰れ、腹は内臓がとびだしている。芸能界で、心身共に鍛えられた
加護も、これにはさすがに顔を覆った。
- 7 名前:武 投稿日:2001年12月14日(金)17時35分21秒
- 悲鳴は止まる気配が無かった。そして、加護は見た。3人の兵士のうち、1人の手に拳銃が
握られていたことを。その銃が天井に向けられたことを。ぱんっ、と乾いた銃声が部屋に響いた。
悲鳴はぴたっと止んだ。田代がふふ、と笑い、言った。
「君達は、プログラムの対象クラスに選ばれました。」
プログラム―クラスメイトの殺し合いだ。前に、ニュースで見たことがある。それに選ばれたっていうのか?
私達のクラスが?
「約5年ぶりにプログラムは行なわれます。理由は…特に言う意味がないので省略します。」
そう言うと、田代はまた兵士に何か合図をした。すると、今度は部屋にビデオデッキとテレビが運び込まれた。
「今から、ルール説明のビデオを見せます。質問は後から受け付けるので、静かに見るように。」
画面に表情の暗い男が映り、常識を超えたルール説明が行なわれた。首輪(ほとんどの生徒がようやく自分の首に
首輪が着けられていることを知った。加護もそのなかの1人だった。)のこと、禁止エリアのこと、武器のこと。
本当に狂ったルールだった。おまけに、画面の中の男は最後にこう言った。
「誰も信じてはいけません。お互いを疑い、そして、殺し合いましょう。」
ブチッとテレビの電源が切られた。田代があくびをしてから(ふざけやがって)言った。
「大村先生はさ、みんながプログラムに参加するのをだいぶ反対したんだよ。しょうがなく、私達政府が
殺しちゃいました。ごめんね。」
- 8 名前:武 投稿日:2001年12月14日(金)17時50分53秒
- 全員、何も反応を示さなかった。ただ、ぽっかりと口を開けていた。
「じゃ、質問ありますか?」
やはり、無反応だった。田代はふぅとため息をつき、元気よく言った。
「それではプログラムを始めます。これから男子1番から男女交互に名前を呼ぶので、
呼ばれた人は廊下に出て、兵士にデイパックを受け取ってください。そして、すみやかに
この学校から出ていって下さい。それでは、男子1番、石川達也君」
改めてここが学校だということを知ったが、それよりも石川の表情に加護は鳥肌が立った。
笑みが―浮かんでいた。この状況の中、彼は何がおかしかったのだろうか。石川は静かに
教室を出た。次々に名前が呼ばれていった。そして―。
「女子4番、加護亜依さん」
加護は立ちあがり、そして田代を睨みつけてやった。
「怖いよ、アイドルがそんな顔しちゃだめだぞ。」
皮肉交じりのその田代の言葉に加護は心底怒りを感じた。とにかく、加護は教室を出た。廊下には数人の
兵士が並んでいた。そのうちの1人がデイパックを差し出した。無言でそれを受け取ると、加護は
学校の昇降口に向かって走り出した。学校を出てからも、走りつづけた。気が付くと、森の中に
入っていた。プログラムは始まったのだ。
【残り35人】
- 9 名前:145 投稿日:2002年02月25日(月)01時24分47秒
- 期待age
- 10 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年05月10日(金)01時09分44秒
- 続き書きます
- 11 名前:ゲーム開始 投稿日:2002年05月10日(金)01時27分29秒
- クラスメイトが次々に出て行ってついに
「13番辻希美サン」田代が低い声で辻を呼んだ
「あいぼんとも殺しあわなきゃだめだぞー」
田代が挑発的なことを言ったが辻は無言で出て行った
昇降口から校外に出て一言ぼそっと
「あいぼんに会いたいな」と言って走り去った
- 12 名前:トトカルチョ 投稿日:2002年05月10日(金)02時11分40秒
- 「さーてこれで全員出てったな」女子18番山田真紀子を呼んだあと
田代はパソコン等の電子機器が置かれている部屋へ行って
「人気のほうはどうだ」と部下の兵士に話しかけたらその兵士は
「はい、一番人気は男子16番横井良亮です。」
「ほーう、あの柔道部のやつかぁー強そうやなぁー。で、対抗馬は?」
「5番金川、に15番松田が続いています。」
「つーか。松田ってあの大手の会社のマツダの御曹司やろ。
マツダさんも大変やなぁー」
「ところで、女子はどうや?」
「清水英子8番が5番人気ですね。」
「ふーん。で、奴ら二人は?。」
「はい、加護は24番辻は30番人気です。いまいちですね。」
「うーん。ま、このゲームでは普通の女の子やしなぁー。
さて、そろそろ殺し合いも始まるかなぁー。」
「田代は不敵な笑みをうかべてタバコをふかした。」
(残り35人)
- 13 名前:男子15番 松田聖一郎 投稿日:2002年05月10日(金)20時20分29秒
- 男子3番井上一也親友の男子10番菅健太郎と合流してD−5のエリアに滞在していた。小心者の自分が
この殺戮ゲームで平常心を保ってられるのはやはり親友の存在が大きいのかもしれない。互いの武器は自分は包丁で菅は高性能レーダーだった。
しかし安心したのもつかの間で菅がレーダーを片手に小声で「誰かいる」とつぶやき15メートルくらい前を見てみた。
松田だ。松田聖一郎だ。あまりいい感じはしないと思ってていたところ。菅がいきなり
「おい、松田、大丈夫か」と話かけたので。バカっと思ったが。意外に松田はひどく落ち着いた様子で
「ああ、お前たちはどうだ」低くよく通る声で聞き返してきた。
こいつなら大丈夫かと思い一緒に行動しないかと提案すると松田は少し考えた後に
「お前たちの武器は何だ?」と聞いてきたので、正直に答えると松田は低い声にさらにドスをきかせて
「じゃあそれを貰うとするか」
言葉の意味を解する前に松田の右手に握られた黒い塊確認でき、次の瞬間全身に激痛が走った。
井上が最後に聞いた音は激痛が走る直前に聞いたような「ぱららら」という聞いたことのない音だった。
「マシンガンが支給されたのはラッキーだったな」(イングラムM10サブマシンガン)感情のこもらない声でそういうと
菅のレーダーを奪ってその場を立ち去った。
- 14 名前:訂正 投稿日:2002年05月10日(金)20時23分24秒
- 12最後から2行目かぎ括弧いりません
13さいごに(残り33人)
- 15 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年05月11日(土)04時57分47秒
- 海辺の砂浜に一人の美少年が立っていた。
その美しくそれ以上に冷たい瞳は月明かりのみの
暗闇を映しており、規則正しい波音に耳を傾けていた。
・・・波音は・・心が落ち着くな・・・。無感情な少年も
この瞬間だけは、幼少時幸せだったころ海のそばの家で
毎日のように聞いていたこの音の思い出に心を浸らせる。
四歳のときに両親が他界した。その後親戚の叔父の家へ預けられた。
・・しかし・・それが不幸の始まりだった。
叔父の家での生活は熾烈を極めた。
家族全員からの慢性的な嫌がらせ。時代錯誤の重労働。
おそらく、少年が当時本能的に無感情になってなければ
今頃は廃人になっていたことであろう。
ザクッ・・ すなを歩く音だ。
後ろに気配を感じた少年は無表情で支給武器のベレッタM92Fの銃口を向ける
「・・イヤッ・・撃たないで・・」涙声でしゃべっている黒影を確認する。
「あんたは?・・つ・・じ・さん」そうだ、あまり見覚えはないが
こいつはアイドルをしている辻希美(女子13番)だ。
- 16 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年05月11日(土)18時13分44秒
- 「ねぇ、君、・・嶋くんだよね。おねがい、仲間になって一緒にいてよ
・・一人じゃ怖いよ。」
口調ははっきりしていたが、涙声であることに変わりはなかった
俺(男子9番嶋祐一)は目まで伸びた髪をかきあげて
「仲間になる気はない・・だが、一緒にいたいのなら勝手にいてもかまわない。」
淡々と俺が答えると辻は安心した顔でこっちへよってきた。
・・こいつ仲間になる気無いと言ったのに・・ホントわかってんのか。
お互い無言の後に、暫くすると辻はすやすやと寝息を立て始めた。
フッ、気楽なやつだ、毒気抜かれてしまうな。
・・なんだろう?さっきから沸いてくるこの不思議な感じ。
・・でも悪くないな・・。
そう思い嶋祐一は再び漆黒の闇にその美しい眼を向けた。
(残り33人)
- 17 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年05月13日(月)02時29分48秒
- 短く整えられたスポーツ刈り、常にとめられているホック、度が厚そうなめがね
”まじめ”を描いたようなこの少年は男子13番常田慧であった。
・・怖い・・
このゲームでは当然かもしれないが、かつてない圧倒的な恐怖感が心を支配していた。
それに加えて委員長であることが少なからず重みになっていた。
・・もっともこのゲームでは、委員長であろうが、不良であろうが関係ないのだが・・
コロス?コロサレル?
「だめだ、だめだ。こここ・・んなななこととかか考えちゃあ。」
自分に言い聞かすも舌がうまく回らないことなど言うまでもない。
恐怖と葛藤が心を支配しつつも残り少ない平常心でデイパックの中を確認した。
慧は運がよかったのかもしれない。
デイパックをあけたら、皮肉にも一番上に
”睡眠薬”と書かれた病院でもらうような白い紙袋が入っていた。
そこには田代の(と思われる)汚い字で
”眠れなっかたら1錠飲めばすぐ寝れるぞ〜全部飲んだらたぶん死ねるぞ〜”
と書いてあった。
これを見た瞬間、慧は微笑を浮かべ
「これが神の啓示か。ハハッ」と小声でつぶやき”武器を”すべて胃の中に流し込んだ。
勿論神などいるはずがない。
慧は35分の1の確率でこのデイパックを受け取ったに過ぎない。
ただ、慧は正しかったのかもしれない。
これから始まるプログラム史上稀に見る”死合”の事を考えると。
(残り32人)
- 18 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年05月21日(火)01時53分31秒
- 娘のメンバーは仕事を終えて各々帰る準備をしていた。石川が物真似で場の笑いを取っていた。
もっともこれから始まる悲劇をこの時点で知る由もないが。
「たいへんですーー。」吉澤が似合わない慌てた様子で、辻加護を除く11人の娘が待機する部屋に飛び込んできた。
「辻と加護ちゃんが・・・」吉澤は走ってきたのであろうか、息が激しく乱れていた。
「どーしたのひとみちゃん?」石川が微笑を浮かべて吉澤に語りかけた。
吉澤のあわてぶりに娘たちは、さっきまでの空気が少し途切れた様子だった。
「辻と加護がどうかしたの?」飯田が落ち着いてと言わんばかりのやさしい口調で吉澤に返した。
「辻と・・加護ちゃんが・・・」そこまで言うと吉澤が急に泣き崩れてしまった。
いきなりクールで通っている吉澤が泣き崩れたことでただ事ではないと悟った保田は強い口調で吉澤に状況を尋ねた。
「つ、辻と加護ちゃんが・・プログラムに・・選ばれました。」
吉澤が声にもならない声でそう言うも瞬時に状況を理解できた者は11人の中にはいなかった。
- 19 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年05月21日(火)03時55分11秒
- 「プログラムってさ・・あの・・・クラスで殺しあう・・あれ?」誰ともなく短い沈黙を破った。
ぷ、プログラム、コ、コロシアイ。くらすで?つじトカゴガ?ここ、殺す?コロシアイ?つつじとかごがが?」
飯田はさっきとはうって変わって目の焦点が定まらない様子で(やはり?)宇宙と交信していた。
「ちょっと、吉澤それホントなの?」先ほどと同じような強い口調で保田が二度目の沈黙を破った。
安田の強い口調に吉澤は一瞬体をビクッと振るわせ押し殺していた泣き声は明らかなものとなった。
そしてだんだん状況が理解できてきたメンバーが騒ぎ出した。
「何なんですか?プログラムって?」
「知らないわよ! 詳しいことなんて。クラスで殺しあうんでしょ。」
「どうして、辻と加護が?あれなくなったんじゃないの?つーかなんで?娘メンバーが選ばれるわけないじゃん。」
「そ、そーだよ。国民的アイドルのうち等のメンバーそんなのに選ばれるのよ。よっすぃー何とか言ってよ。」
全員の非難が吉澤に浴びる。吉澤が悪いわけではないのにあまりの非現実さによる混乱が正常な思考を妨げていた。
- 20 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年05月21日(火)18時53分46秒
- 「し、知らないよ。・・私だって偉そうな人がそういってたの・・たまたま盗み聞きしただけだもん。」
あせりと悲しみで・・こんな吉澤を見るのはおそらく初めてだろう。
その時、“ガチャ”という音と一緒に一人の少女が入ってきた。
「吉澤の言っていることは本当よ。」
次の瞬間、後藤が手に持っているタオルを落として、「い、いちーちゃん?」
保田に負けないくらいの声で懐かしい名前を呼んだ。
「よっ、みんな久しぶり!」
ショートカットのボーイッシュな美少女。それはまぎれもなく“元モーニング娘”の市井沙耶香であった。
- 21 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年05月25日(土)04時22分13秒
- 「いちーちゃん。何か知ってるの?」
「・・プログラム。正式名称、大東亜戦闘実験第68番プログラム。毎年、全国の中学校3年生50クラスがランダムで選抜され最後の一人になるまで殺し合いをするゲーム。
1947年の第一回実施の際には国民的反対運動が起こったけど政府は軍事力を背景に反対派を次々に消していき、異を唱えるものは殆どいなくなった。
そしてプログラム自体も滞りなく進んでいった・・5年前までは。」
そこまで言うと、市井は軽くメンバー全体を見渡し、少し間を置いて再び口を開き始めた。
「・・5年前このゲームに初めて脱走者が出たの。名前は七原秋也と中川典子。二人はアメリカに渡った後すぐにプログラムについて告発を行ったの。
・・でもそれは大きな効果を発揮できなかった。多分、大東亜が世界経済でも群を抜いてトップで力が強すぎたんだと思うの。
だから二人は待った。いや、待っている。大東亜の力が弱まるのを。そして政府側もさすがにプログラムは一時中断したの。」
・・でも、辻、加護は今プログラムに巻き込まれてる。そうプログラムは・・・復活した。5年の歳月を経て。
「なんでだよ!」理不尽な現実に異を唱えたのは、ミニモ二のリーダーの矢口であった。
- 22 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年05月25日(土)15時49分23秒
- 「矢口落ち着いて。私の話を聞いて。」
「落ち着いてなんからんないよ!紗耶香のほうこそ何でそんな冷静なんだよ!」
当然だ。同じ仲間が殺し合いをさせられている状況で落ち着いていられるほうがよっぽど不自然だ。・・今の市井のように。
矢口の取っている態度はごく普通の‘人間’としてのものだ。
「やぐっちゃん。今はいちーちゃんの話を聞こうよ。」混乱した矢口に声をかけた人物。それは以外にも市井ではなく後藤であった。
市井が目で後藤に“アリガト”と視線を送り、また口を開き始めた。
「矢口ごめんね。でもこれは現実なの。」
「ううん。こっちこそ取り乱してごめん。・・・それよりさっきの話・・・聞かして。」市井は黙ってうなずくと
「まず結論から言うと。辻と加護は命の危険にさらされている。5年ぶりのプログラムによって。」
もうすでに危険にさらされる可能性が無いかもしれないが市井が当然そのことを口にする事は無かった。
「そしてこれは私の推測だけど。今回、辻と加護がプログラムに選ばれたのは仕組まれたこと。意図的に選ばれたんだと思うの。」
意図的に?意図的に・・・こんな殺し合いをさせれてるの?
11人のメンバーは例外なくそう思ったのは言うまでもない。
- 23 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年05月25日(土)17時59分49秒
- 困惑するメンバーを尻目に市井がさらに口を開く。
「・・・これも推測だけど。脱出した二人が捕まったあるいはもうこの世に居ないかもしれない。いずれにしても大東亜がプログラムを中止しなくてはいけない理由は・・・無くなった」
「あのさ、いちーちゃんはどうしてこんなこと詳しいの?」
「え、・・そ、それは・・6年前に私の友達の友達がさ、プログラムに巻き込まれて死んだの。私自身は知らない人なんだったけど、その友達がすっごく悲しそうで私も心が痛んだんだよね。
それから・・・私はこのプログラムについて個人的に調べたんだ。政府のコンピューターにハッキングとかして。」
このときの一瞬の市井の動揺はメンバーに気付かれることは無かった。ただ一人後藤を除いて。
「紗耶香。どうして辻と加護が‘意図的’に選ばれたの?何か理由・・知ってるの?」
一番核心を突いた質問を飯田が市井に返す。
「はっきりしたことは判らない。ただ政府はね・・このプログラムで生徒が殺しあっている姿をビデオにとってそれを一部の狂った権力者に売ってるの。破格の値段で。」
メンバーは絶句した。市井の言っている事ははっきりした事と言っても問題ないだろう。
国民的アイドルの死ぬ姿・・殺す姿。不謹慎極まりないが“そっちの人”にしてみたらこれほどの愉快な映像はないだろう。
『・・・狂ってる・・・・狂ってるよこの国“大東亜共和国”は。』
そして三度襲ってきた沈黙の後に全ての発端となる発言をついに市井が切り出した。
「私・・・辻と加護を助けに行こうと思うの」
- 24 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年05月26日(日)15時43分35秒
- 「・・・・・・・!」
この市井の“必然”とも“意外”ともどちらとも取れる発言にメンバーは一気に現実に戻される衝撃を受けた。
「だってさ、こんな理不尽な政府に仲間が殺されてみんな納得できる?
私は絶対認めない!このゲームも。辻と加護が・・・仲間が殺されることも。だからみんな一緒に行こうよ。皆でやれば何とかなるって!」
「・・・そうだよ。辻と加護が黙って殺されそうなのを見殺しにするなんてカオリにはできないよ。」
「飯田さんや市井さんの言う通りです。皆でいけば何とかなりますよ!」
全員の意思の疎通がうまく言ったように見えた。まるで市井に誘導されたかのように。が・・・
「いちーちゃんには悪いけど私は行かないよ。」
「えっ。だって後藤。辻と加護が・・・・・」
慌てたように返す市井に後藤は幾分落ち着いた様子で
「今日のいちーちゃんおかしいよ。辻と加護が危ないのはわかるよ。でもね、この国で政府にたてつくのがどんなに危険か・・・いちーちゃんなら分かるでしょ。
でも・・・いちーちゃんは後藤たちを危険に晒そうとしている。いつものいちーちゃんならこんな事絶対しないよ。」
「・・・・・・・・・」
「いちーちゃん何とか言ってよ!」
「・・・・・わかった。後藤がそう言うなら・・・せめて後藤の意志では連れて行かない。」
えっ・・・・・・?
そう言うと市井は部屋を出て行き、次の瞬間後藤は・・いやメンバー全員は強烈な眠気に襲われた。
- 25 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年05月26日(日)20時40分58秒
- 「よう。市井ご苦労やったな。後はあいつら会場へ運ぶだけや。ほか数人オマケ付けてな。」
「・・・・つんくさん。如何して・・こんな事するんですか?」
「んーー。まあ、政府の命令やったし『モー娘でプログラムするぞ〜』てな。それに俺的にもちょうどよかったんや。
正直、娘のプロデュースもう限界やねん。お金は入るけどやっぱ俺はプロデューサーとしてやなくてミュージシャンとしてやりたいねん。
それに、今なら『娘たちの意志をついでー』ってそんな感じでいけるやろ。一石二鳥や一石二鳥。」
「・・・・・・・・・・・・・」
「市井。そんな罪悪感感じることないで。どっちみちあいつ等死んでたんや。一人を除いてやけど。」
つんくに怒りも感じることも無く、市井はひとつの覚悟を決めて言った。
「・・・つんくさん。私もプログラム会場連れて行ってくれませんか。」
「ん。あー別にええで。俺も今から行くところやから一緒に行こか。政府の専用ヘリやからこっからやったら一時間ちょいで着くわ。」
市井は規則正しいプロペラの音が聞こえるヘリの中でずっと思っていた。同じことを。
『みんなごめんね。でもね絶対市井は助けるからみんなのこと。またみんなで笑いあったり喧嘩したりしようね。絶対だよ』
無論、声に出すことは無く心の中で強く強く。頬に一筋の液体が月明かりで綺麗に光った。
ただ歯車のずれはもはや一人の少女では如何にもならなくなっていた。もう・・・すでに・・・・・。
- 26 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年05月28日(火)02時36分35秒
- 「チチチチ・・・・・」鳥の鳴き声で辻希美(女子13番)は目を覚ました。
あれ?私の家じゃない。・・・・・・そーだプログラムってのに巻き込まれて・・・昨日学校を出て・・・
「随分と早いお目覚めだな。」不意に聞こえてきた声に驚きその方向を見つめた。
・・・あっ。嶋君・・。
・・・・昨日の夜、砂浜あたりで嶋君と一緒になったんだ。
「今は5時56分だ。ここは最初に逢ったB−2から少し南下したC−2の集落のうちのひとつの民家だ。」
辻の心を見透かしたように口を切り出す。
「あと・・・」少し表情を暗くして嶋が続けた。
「あと・・・昨日からかなりの回数の銃声が聞こえた。さらにその中でもひとつのマシンガンと思われる物が目立った。幸い遠くだったけどな。」
まるで用意されていたかのような言葉を言い切ると辻の様子を気にするそぶりも見せずボールペン、島の地図、(自作したと思われる)クラスの名簿をディパックから取り出した。
支給された時計が6時を指すと1秒の狂いもなく島のいたる所にあるスピーカーから大東亜共和国の国歌が流れてきた。
- 27 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年05月28日(火)21時09分08秒
- 「みなさ〜んおはようございま〜す。よく眠れましたか?担任の田代で〜す。午前6時の第1回放送で〜す。」
田代の嫌悪感溢れる声が聞こえてきた。
「まずはお楽しみの死んだお友達の名前を言うぞ〜。男子からな〜。
2番伊藤久志君、3番井上一也君、6番小賀坂繁君、10番菅健太郎君、13番常田慧君。以上の5人で〜す。
次に女子な。
1番石井由香里さん、2番小野さやかさん、7番篠原舞さん、8番清水栄子さん、14番福山絵梨華さん、18番山田真紀子さん。
合計11人でーす。非常にいいペースです。皆さんこの調子で殺しあいましょう!」
11人・・・・かなりの数だな。
そう思うもいたって機械的に嶋祐一(男子15番)は名簿の中の死亡者の名前に横線を引いて消していった。
「次に禁止エリアな〜。しっかりメモれよ。
7時からJの3、9時からDの5、11時からGの8、以上の3つで〜す。
みんながんばれよ〜。もっと頑張れば先生からゴホウビあるかもしれないぞ。じゃあな〜次は12時に逢いましょう。あ、生きてたらだけどな。」
そこまで言うと“プツ”という音とともに田代の声は途絶えた。
【残り24人】
- 28 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年05月28日(火)23時58分43秒
- 放送を聞き終えてディパックに名簿とペンをしまっていると辻がベッドの上で小さく体育座りで頭をうずめて震えていた。
「辻さん。気持ちは解るけど、いちいち悲しんでいる余裕は無い。次は自分が呼ばれるかも知れない。
あまり知らない人だったんだろ。親友の加護亜衣(女子4番)が呼ばれなかったんだしそう悲しむことは・・・・」
「・・・・そんなこと無いよ。あまり面識が無くてもクラスメイトだったんだよ。私にとっては大切な・・・友達だよ。
私は悲しいよ。」
消え入りそうな声で嶋に返した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・そうだな。辻さんの言うとおりだ。悪かった。」
自分にはとても言えないような人間的な言葉に少しだけ後ろめたい衝動に駆られる。
・・・ぜんぜん悲しくないのは悲しいことなのかもしれないな。
そうして嶋は辻から少し目をそらすように窓から海の方向を眺めた。
- 29 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年05月30日(木)00時01分41秒
- 35−11でもう24人しか残ってへんのか。C‐10エリアの灯台の2階で加護亜衣(女子4番)は現実を受け止めていた。
・・・昨日からしきりに聞こえる銃声。もうゲームは始まってるんやな。みんな・・殺しあってるんやな。
このゲームでは冷静さを保てる者、それができない者、と大きく2種類に分けられることが出来るが加護は確実に前者に含まれる者と思われた。
ウチは人殺しはしたくない。だけど自分が生き残るためにはそれをしないとほぼ100%・・・・死ぬ。(しても死ぬかもしれないが)
昨日からこの葛藤に対して昨日からずっと頭を悩ませていた。
葛藤から抜け出せずに支給武器のダイヴァーズナイフを手の中で器用に回しながら方角では南の方向になるD‐10をなんとなく見つめていた。
・・・・あ。人がいる。2人や。あれは・・・竹本万理(女子10番)と醍醐みなみ(女子11番)や。
あの2人やったら信用出来そうやな。
実際この2人は殆ど学校へ来ない加護にとって数少ない友達と呼べる人間だった。
そして加護は2人の元へ走っていった。何の疑いも無く・・・。
【残り24人】
- 30 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年05月30日(木)21時16分56秒
- 「おーい。万理にみなみやろ。うちや加護亜衣や。」
加護は限りなく日常に近い親近感を持って話しかけた。
2人は加護の呼びかけに一瞬驚き、体をビクッと振るわせたが加護の姿を確認すると安心したような笑みを浮かべた。
「うちは人を殺す気なんか無いんや。二人やってそうやろ!」
“ぱんっ”
乾いた銃声が島に鳴り響いた。
・・・・・・え?
「ふーん。でもねあんたに無くても私たちにはあ・る・の。勝手に決めないでよ。ねぇ、みなみ?」
「そーゆうこと。という訳で・・・あなたにはここで死んでもらいまーす。アイドルの加護亜衣ちゃん。」
あっけらかんとした態度で笑みを浮かべながら銃を持った醍醐みなみ(女子11番)の姿がそこにあった。
なんで?なんでや?
加護の問いが言葉になる前に先程と同じ音が連続して鳴り響いた。
【残り24人】
- 31 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年05月30日(木)22時04分42秒
- ぱん、ぱんぱんぱんぱんっ。カチッ、カチッ。
玉切れが起こるまで容赦なく放たれた銃弾は加護の右肩と右肘を貫通した。
「キャハハ。だめじゃーん。みなみぃー。しっかり頭打ち抜かないと。」
「ごっめーん。銃なんてさー。撃ったこと無かったからさー。」
日常会話を交わすようまったく悪びれた様子も見せずに弾を装填しつつ醍醐みなみが0距離射程まで近づいてきた。
「なん・・・・・でや?」
「理由?そんなの簡単よ。私たちはねーとっても嫉妬深くてーあんたが大っ嫌いなの。それだけよ。死ねよ・・ブス。」
恐らく今、傍観者が居るとしたら99%加護の死亡を確信するであろう。
・・・が、この傍観者は残りの1%に含まれた。それだけの事だったのかも知れない・・・・。
“ぱらららら”
一瞬の刹那。加護が気づいた時には醍醐みなみが紅い花を咲かせて倒れていた。そして間髪いれずに竹本万理も。
「よおー。加護ちゃん。危なかったね。」
そこには松田聖一郎(男子15番)銃口を加護に向けて立っていた。
【残り22人】
- 32 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年05月30日(木)22時53分38秒
- 「ぱらららら――。・・・・なーんてね。」
松田がおどけた感じで言葉を発した後、銃口を加護から背けた。
無論、加護はこの松田の行動がまったく理解できなかった。松田に銃口を向けられた瞬間から加護はすでに死を覚悟していた。
「何・・・・・何で?」
「・・・・。解せないという様子だね。でもねそれでいいんだよ。多分直に解るさ。僕の読みが正しければ君はまだ生かしておいた方が断然面白そうだ。」
・・・読み?・・・・面白そう?何を言ってるんやこいつは?
そして松田は竹本と醍醐のディパックを乱雑に加護の前に投げ置いて。
「これで自分の身を守ってせいぜい生き延びなよ。僕を楽しませてくれよ。・・・・じゃあね。」
それだけ言って松田は何事も無かったように立ち去った。
あーーー・・・。イタッ、イタタタタタ。今は考えてるときちゃうわ。とりあえず治療や。
加護は醍醐の銃を左手で取って再び灯台に戻って行ったのは時計が6時から僅か8分進んだ時だった。
- 33 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年06月01日(土)01時11分21秒
- 「うーん。相変わらずいいペースやなぁー。また二人死んだな。」
田代は1箱目のタバコが切れたのに気付き2箱目に手を伸ばしながらそう呟いた。
その時、「田代教官、寺田氏が到着しました。」二等兵が部屋に入ってきて田代に報告した。
「どうも、はじめましてつんくですー。娘+その他オマケ連れてきましたよ。面白いことになりそうですね。」
「今回はご協力有難う御座います。いつもテレビに拝見させて頂いてますよ。・・・あっ、今の所は辻も加護も生きてますよ。
―――あと・・連中を投入するタイミングですが残り10人ちょっと位が目安です。」
「そうですか。まぁどっちにしても催涙ガスが強烈ですし夕方までは起きませんよ。」
「ところで・・・・そちらのお嬢さんは誰ですか?」田代は市井のほうを向いてつんくに訊ねた。
「あっ。市井の事ですか。こいつは市井紗耶香。元モーニング娘のメンバーです。」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
市井はいたって無言で、そして無表情で田代に軽く会釈をした。
――――こいつ・・・・もしかしてプログラムを・・・・・。
田代は笑みがこぼれそうになるのを制して市井に怪しい視線を送った。
【残り22人】
- 34 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年06月01日(土)15時07分33秒
- 「――――くそっ。やっぱり電話回線がどうにもならねえ。」
E−7にある森の中で加藤達也(男子4番)は愛用のノートパソコンと車のバッテリーを前にして一人で呟いていた。
ハッキングしようにも電話回線が無けりゃ普通にネットするのだって無理だ。さーてどうしようか?
元々、体力派じゃあないからなおれは。普通にやっても勝てる可能性は低い。唯一他人と比べて勝っているパソコンのスキルこの島じゃ役に立たない。
支給武器もこれだしなぁー。
そう皮肉めいて呟く加藤の右手には“人も殺せる黒魔術”と書かれた本が握られていた。
・・・・・ったく。誰が考えたんだ、センスいいぜ。
――――――ガンッ
次の瞬間急に加藤の頭に衝撃が走った。
―――な、何だ?ハッ、バッテリーが無い。そっか俺・・バッテリーで殴られ・・・た・・・・・・んだ。
こいつ・・・・誰だ?女子の制・・・・服?
だが、確認する前に加藤の意識は無くなった。
「・・・・サンニン」そう言ってその“女子の制服”は立ち去った。
次なる“ヨニン”を探して。
- 35 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年06月01日(土)15時09分45秒
- 【残り21人】
- 36 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年06月01日(土)20時43分08秒
- 「随分と・・静かになったな。」嶋祐一(男子9番)はポツリと呟いた。
現在の時計の時刻は10時5分もうかれこれ3時間以上は目立った銃声は聞こえてこない。
――――まぁそれでも殺し合いは続いているんだろうけど。
・・・・それにしても“ゴホウビ”って何だろうな?
6字の放送で田代が言っていた不可解な単語を嶋は聞き逃していた訳ではなかった。
「なぁ、辻さんはご褒美って何だと思う?」
「・・・・・・・・・・・・・」
不意に口を開いた嶋に対して辻は困惑した表情を浮かべた。
「えーと、あの、朝の放送で田代が言ってたこと。聞いてなかったか?」
「・・・・・・・・・・・ゴメン・・・・」
――――まぁ無理も無いか。ショック受けていたしな。
「いや、こっちこそ変なこと聴いて悪かったな。」
まぁそうは言っても8割方は何も無いだろう。むしろ・・・・何も無ければいいな。
この希望は午後6時の第3回放送でものの見事に裏切られることになるのだが今の嶋にそれを知る由はない。
【残り21人】
- 37 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年06月02日(日)16時36分38秒
- 「何とかして脱出・・・・できないかな?」と辻希美(女子13番)は呟いた。
「かなり難しいと思う、辻さんも知ってると思うけどこのゲームは5年前に脱走者が出たんだ。政府が同じ失敗を繰り返すようなバカな真似をするとは考えにくい。」
「・・・・・・・・・・」
「でも・・」
ん?
「でも私は簡単には諦めないよ。簡単に諦めたら出来るものも出来なくなるよ
どんなに追い込まれた状況でも最後の最後まで諦めなければきっと何とかなるよ!」
嶋は驚いたなという感じで辻を見た。
「ああ。大切な・・・事だよな。辻さんいい事言うな。」
「―――――あのさ・・・・“希美”でいいよ。」辻は少し恥ずかしそうに口を切り出した。
「え?それは下の名前で呼べって事か?」
辻はコクリと頷いた。
「・・・・・分かった。お前―――いや、希美の言うとおりにするよ。」
そう嶋が返すと嬉しそうに微笑む辻の姿が見えた。
【残り21人】
- 38 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年06月04日(火)23時01分32秒
- この島での北西の端にあたるC−10の灯台に醍醐みなみに撃たれて負傷した加護亜衣(女子4番)はまだ留まっていた。
――――マシンガンを持っている敵が居る事の危険性を考えたら――まぁ近寄ってくるまず奴はいーひんやろ。
みなみと万理のことは・・・・・もうええわ。これ以上考えてもしゃーないし・・・第一そんな余裕あらへん。
この辺りはさすが芸能人といったところだ。
これからどうしようか。まだ腕は痛むけど・・・もう血は止まった。松田の言ってたことも・・・これも考えてもしゃーない。
・・まずは・・・ののや信用できる仲間を集めてここから脱出する方法を考えよう。特にののとは絶対合流したい。
それにののはこんなゲーム絶対乗らへん。きっと今頃一人で怖がっているに違いあらへん。
・・・・・のの待っといてや絶対見つけたるからな。
―――――“プツ”
「みなさーん元気ですか〜。担任の田代で〜す。正午の放送です。」
もう正午!?時間経つの早いなー。
加護は慌ててペンと地図を取り出した。
- 39 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年06月04日(火)23時56分22秒
- 「まず死亡したお友達の名前を言いま〜す。男子5番金川剛君、男子8番志田壮一郎君、男子はこの二人だけでーす。
女子はー――5番木島寛子さん、10番竹本万理さん、11番醍醐みなみ、12番次村舞さん、15番福羅美月さん、16番藤村園花さん、さん、以上で〜す。つーか女子多いな〜。生き残ってる女子がんばれよ〜。
ゲームが始まって半日で残りたったの13人!!皆さん非ィーーーじょーーーに優秀です!皆さんのような優秀な生徒を持って先生幸せだなぁ〜。
次に禁止エリア行くぞ〜。13時からC−3、15時からF−7、17時からG−6、この3つです。みんな気を付けろよ〜。
今回の放送はこれまでで〜す。みんながんばって殺し合いそして生き残りましょう!」
能天気な田代の声に加護はさすがに怒りを感じずにはいられなかったが辻希美(女子13番)が呼ばれなかったことには(仮に呼ばれていたら今自分は理性を保っていないだろう)に対しては素直に安心できた。
―――――良かった。ののは生きてる。
―――――でも・・・・ほかの友達は・・・たくさん死んだ。
このとき初めてクラスメイトの死を悲しまない自分に気付いた。
・・・・・みんなゴメンな。ウチには何もできひんかった。―――だから絶対脱出して政府の奴らに復讐したる。絶対や・・・・。
【残り13人】
- 40 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年06月05日(水)00時51分08秒
- 「・・・・・・・!」
残り・・・・13・・・・・・人?この狂ったペースにさすがに嶋祐一(男子13番)も驚きが隠せなかった。
いくらなんでも速過ぎる。いったい何人このゲームに乗ってるんだ?・・・少なく見積もっても最低4〜5人は乗ってるな。
マシンガン野郎意外にも厄介なのがいっぱいそうだ。・・・だが今はあせってる暇は無い。
「つ・・・いや希美。ここは1時間後に禁止エリアになる。もう少し南に動こう。」
希美は悲しそうにしていたが午前とは違って泣いては無かった。・・・勿論この方が良いけど。
嶋は慎重にドアを開けて外に出た。そして嶋が辻を誘導する。
「ところで希美の武器は何だったんだ?」
「あの・・・わたしのは・・・これ・・・」
そう言うと辻はテレビのリモコンより2回り位小さいリモコンをポケットから取り出した。
「・・・・何コレ?」
「・・・・首輪のスイッチ。あっ、でも使用回数限度3回までなんだって。」
「・・・・・・・。多分・・それ支給武器中最強の武器だと思う。」
しかし嶋と辻の会話は1発の銃声で中断することとなった。
【残り13人】
- 41 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年06月05日(水)22時42分03秒
- “ぱん”と静寂を切り裂いて放たれた銃弾は辻希美(女子13番)の靴を掠め地面を砕いた。
次の瞬間、嶋は反射といって良いほどの速度で辻の手を引いてひとつの民家の玄関前に隠れた。
―――――――不味いな・・・・狙われてる。
「希美!撃たれてないか。」
「うん。大丈夫!」
―――――意外に平気そうだな。よしっ。
そしてすかさず嶋が民家の塀の上からベレッタを撃ち返す。
―――あいつは・・・石川達也(男子1番)だ。こいつは・・ゲームに乗ったんだな。
・・・・・・・・・・・・・ヤバイ!?
石川が弾の装填を終えて再び撃ち返してきたのでいったん塀の下に姿を隠す。
「希美。敵は石川だ!あいつはゲームに乗っている絶対油断するな!」
「嶋君。・・・・・リモコン・・・。」
「それはまだ必要ない。それより強力な武器を持ったやる気の奴が寄ってくるかもしれない。ここはいったん退こう。
裏口から先に行っといて。ここ、F−2の工場。俺もすぐに行く。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「そう心配するな・・・行ってくれ。」
「・・・・分かった・・・絶対死なないでね。」
そうして辻は一人工場に駆け出した。
【残り13人】
- 42 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年06月05日(水)23時36分27秒
- 銃声以外は不気味なほどに静かな状況で二人の死合いが続いていた。
――――さてと・・そろそろ俺も行かなきゃな。
希美が離れてもう5分くらいたったな。・・・・ところでこいつ弾の残りとか考えてんのか?さっきから撃ちまくってんぞ。
乱射して距離を詰めようとする石川、最小限の弾数でそれを防ぐ嶋。さっきからこの膠着状態が続いていた。
うっ・・・。
その時苦痛で顔を歪めたのは石川であった。嶋が放った銃弾が見事に石川の右太腿を撃ち抜いたのだ。
ん?銃声が止んだ。
嶋が慎重に顔を上げると石川がうずくまっているのが確認できた。その石川を認めると“チャンス”と思いディパックを拾い軽快な足取りで裏口から出た。
――――25M位距離あったのにな・・・ラッキーだったな。
―――――石川、悪いなでも自業自得だ。
そう心の中で呟きながら走る嶋の耳にはさっきの民家あたりから発生した新たな銃声は聞こえていなかった。
【残り13人】
- 43 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年06月10日(月)23時05分37秒
- 嶋祐一(男子9番)はE−2とF−2の境目くらいの所を走っていた。
勿論、辻希美(女子13番)と待ち合わせたF−2の工場を目指して。
―――ここだな。
そう心の中で呟いて工場の中へ入って行った。
工場の中は薄汚く汚れていたものの荒廃してる訳でもなくつい先日まで使われていた様子だった。
「希美・・・居るか?」
・・・・・・・・。
「・・・・うん。居るよ。・・・・・嶋君は・・・・大丈夫?」
そう言って辻は物陰の後ろからひょっこり姿を現した。
「当然だ。あんな奴にやられるほど弱くねーよ」
辻の心配を打ち消すように明るく言った。
「・・・・・良かった。」
ん?
よく見ると希美は目を赤く腫らしていた。
・・・・・希美。そんなに心配してくれるなよ。俺そういうに結構苦手なんだよなぁ。まっ嬉しいけど。
その時――――
――――コツッ。足音?
嶋は反射的に入り口に振り向く
「しぃ〜まぁ〜、お前、一難さってまた〜・・・って言葉知ってるか。ヘッヘッヘッ。」
そこには下卑た笑みを浮かべた横田良亮(男子16番)がデザートイーグルを構えて立っていた。
- 44 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年06月13日(木)21時39分05秒
- ・・・・・・・・・・・・・・!
つけられてたのか?・・・・くそっ、迂闊だった。
「へへへ〜おまえら〜出てきていいぜ。」
すると横から、都築健介(男子12番)、吉田智幸(男子17番)が姿を現した。
こいつらか・・・
この3人はクラスで言う不良グループと呼ばれる人間だ。とはいっても横田の馬鹿でかい体を生かして(柔道部だったっけ)もこそこそこの弱い奴らを苛めたり授業をサボったりする程度の中途半端な不良だ。
「なんだ〜おまえら付き合ってんのか」
「・・・・どっちにしてもお前達には関係ないことだ」
「・・・・・・ヒッヒッヒッお前にそんな余裕ねーぜ。」
がんっ!
鼓膜を破るような銃声が工場内に鳴り響く。
その銃声は横田のデザートイーグルから放たれたもので銃口は真上を向いていた。
「嶋ぁ〜。お、俺達はもう人を殺してるんだぜそれも4人もだ。し、しかもなぁそのうちの一人はさっきまでお前と銃撃戦をしてた・・石川だぁ〜。」
「・・・・・・・・だからなんだ?そんなのが脅しになると思ってんのか。」
「へへへ(さっきから何笑ってんだ)まぁそうかりかりすんなって。別にお前を殺そうって訳じゃないんだ」
・・・・どういうことだ?
「へヒヒヒヒ・・お俺達が用があるのはそっちの辻希美の方だお前は今すぐここを立ち去れ。そうすりゃー見逃してやるよ。お前も男だ。意味は・・分かるよなぁ、ヒヒヒ」
・・・・・・・・・。なるほどね、それだからへらへら笑ってたんだ。
「俺がお前達の言うことにみすみす従うと思ってんのか。ボケが。」
そして嶋のベレッタの引き金が再び引かれる。
【残り12人】
- 45 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年06月15日(土)15時38分42秒
- 嶋の銃弾は横田の右肩を的確に捕らえた。
が・・・・・・
すぐに嶋にもカウンターの弾が返ってくる。
ぱんっ。どんっ。
都築と吉田、各々の銃から発せられる銃弾が嶋と辻を襲うが幸い被弾は無かった。
「希美隠れてろ!」
―――希美は武器を持ってないからな・・・3対1・・横田を除いても2対1じゃ不利だ。
ぱんっ、ぱんっ、どんっ・・・・・・・・
このままじゃ埒があか・・・・・
・・・・どっ・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・!
次の瞬間嶋の背中に強烈な衝撃が走った。
――――――な・・・ん・・・・・・だ?
疑問を解するはずも無く嶋は膝から崩れ落ちる。
そして崩れ落ちた嶋の後ろには横田が立っていた・・・・・
果物ナイフを持って。
- 46 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年06月17日(月)21時37分19秒
- 「へへ・・・へへへ・・ひひ」
とどめだと言わんばかりに横田が再びナイフを振り上げるが・・・・
その前に嶋が両手を前に付いて前に体重をかけその反動で横田の股間を蹴り上げる。
「ひぎぃーーーーーー」
横田が情けない奇声を上げ後ろへよろめく。
その隙を見逃すはずも無く激痛を堪えて嶋がベレッタを拾い上げて(横田に刺されたときに落とした)引き金を引く・・・
―――死ね・・横田・・・
ぱんっ・・・
一発の銃声が工場内に鳴り響く
――――だが無常にもそれは都築の銃から聞こえたそれだった・・・
そして・・・・・・
嶋がゆっくり崩れ落ちた
- 47 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年06月17日(月)22時13分31秒
- 崩れ落ちた嶋に横田がゆっくり近づく
「ひっひ。嶋ぁ〜お前、普段はすかし野郎なのにこんな時だけナイト気取りか。あーん。」
「・・・・・別・・・・に・・そう・・・いうわけじゃ・・・・ねえよ」
「・・・・。まだ元気そうじゃねえか・・・・でも心配すんなすぐに殺してや・・・・・」
――――――ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ・・・・・・・・
「んー何だぁ?この音は。携帯は使えないって田代の野郎が・・・・・」
「横田・・お前それ・・・・・首輪」
―――――ピピッ、ピピッ、ピピッ・・・・・・・
吉田、首輪がどうか・・え、この音・・・首輪から来てる?
――――ピピピピピピピピピ
首輪って禁止エリアとかに入ったら・・・・爆発する
――――――――――――――!?
―――ピーーーーーーーーーーーーーーーー
へ?じゃあもしかしてこの首輪ば・・・・・
――ボンッ
その音とともに横田の知覚は消滅した。
【残り11人】
- 48 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年06月22日(土)16時44分09秒
- な・・なんで?横田の首輪爆発したの。え?
「おい、よ、吉田どどどどどうしよう。横田の首輪ばばば爆発した。」
俺が知りてーよ。この首輪は禁止エリアに入らなければ・・・・・・
――――――禁止エリア?
―――――――――――――――!?
うっ・・・
「うわあああぁぁーーああぁああーーーーーーーー
都築!ここ禁止エリアだ!早く逃げなきゃ俺たちも・・・・」
ぱらららら―――――
古いタイプライターの聞きなれない音と共に都築の体がくの字に折れ曲がる。
何?お、おい都づ―――――
ぱん、ぱん
次の瞬間吉田の背中と後頭部に一つづつ穴が開いた。
「ここはF−2、禁止エリアではないよ。」
感情の篭らない声でそう言った先には松田聖一郎(男子15番)が立っていた。
【残り9人】
- 49 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年06月23日(日)20時38分39秒
- 人を殺してしまった・・・・・
殺してしまった
殺した
首輪が爆発した
リモコンが支給武器。それを使って・・・
・・・・・違う!これは正当防衛で・・・・・
「―――横田・・・殺したの辻さんでしょ?」
松田が罪悪感を奮い立たせるように言う。
―――――――――――――――!?
「ち・・・」
「違わないよ。手に持っているそのリモコンが首輪の起爆装置と見た。・・フフ、正解?」
―――なんで面白がっているの?人が死んだのに・・
――――――ヒトガシンダノニ
松田の態度に急に怒りを感じキッと睨み付ける。
「クスクス。怖いなぁそんなに怒らないでよ。別に殺したのを咎めようってわけじゃないんだ。僕も人の事言える立場じゃないしね。」
「ただ・・・ちょっと面白いこと教えてあげようと思ってね」
- 50 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年06月23日(日)21時12分31秒
- 〜それは時を遡ること約2時間前〜
松田聖一郎(男子15番)は森の中を歩いていた。
ブルッ、ブルッ。
あれ?携帯にかかってきた。・・・・・・・・・とりあえず―――
「もしもし」
「よう!松田君。担任の田代です。今のところKILLスコア(殺害人数)君がダントツトップだよ。頑張ってるねぇ。」
・・・どうも
「そこで今から少し君に質問をしてもいいかな?」
・・・・・・・何だこの電話は?
「質問1、君は殺す事と生き残ることどっちがいい」
・・それは勿論
「後者・・の方です」
「なるほどじゃあ質問2、君のクラスには某人気アイドルグループのメンバーがいますか。」
「・・・はい。」
まさか・・というかやはり
「質問3、君は加護亜衣(女子4番)と会ったときなんて言っていた」
・・・・そういうことね
「・・・・・そういうことですか」
「ほう。物分りが良いな。感心、感心。本当は辻・加護以外のクラスメイトは全員首輪を爆発させようとしていたんだがね君は優秀だから生き残ってもらうことにしたよ。」
今更言うまでも無いかな?これら全てプログラム開崔自体が・・・
ハロプロメンバーで殺し合いをさせる為のものだって事は。
- 51 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年06月23日(日)21時44分59秒
・・・・・・・・・・・・・・・。
「ちょーっと衝撃が強かったかな?でもさ死亡するペース速すぎるのとかちょっとは不自然に思わなかった。」
「んーまーという訳で。今日はちょっとハロプロメンバーで殺し合いをしてもらいまーす。って。クスクス
あ、でも朗報もあるんだよ。そこで寝転がっている嶋君。彼も特別に生き残らせてくれるらしいよ。」
そう言うと松田は嶋の方へ近寄って
「うーんまだ生きてるなこいつ。
なんかさー田代先生が嶋と会ったらこの事伝えてくれって言われたんだ。
そんでもって分校まで連れて帰ってきてくれとか言うんだ。訳わかんないよね。
ふー。だいぶおしゃべりが過ぎたけど僕たち2人はこれからこのゲーム降りるわ。
あっそうだ君の仲間は午後6時ジャストに分校スタートするらしいよ。僕には関係ないけど。
あと僕の使ってた武器とか全部あげるよもう僕には必要ないからね。」
そして松田は何事も無かったかの様な顔で工場を後にした。
こうして奪うために戦った少年。守るために戦った少年。対極に位置する2人は共に島を去ることになる。
- 52 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年06月26日(水)00時59分15秒
- 信じられない・・・・
―――信じたくない
松田の話を聞いた後の辻のショックはプログラムに選ばれたと最初に告げられたときより何倍も大きなものだった。
目の前には3人の死体がある。そのうちの一人は自分で・・・・殺した。頭はグチャグチャになり脳と思われるゼリー状の物体が散乱している。
が・・・・・
はっきり言ってそんなことはどうでも良かった。今から自分に降りかかるリアルじゃないリアル。
無論この事実を肯定したい訳ではない。ただ松田が嘘を言っていないこと。これは紛れも無い事実。
現実は受け入れざるをえない。現実逃避をしてもいつかは現実に捕まる。このことを自覚する理性はまだに残っていた。
でもさ
――――モウ・・・・イヤダヨ
ミンナ・・ミンナ・・・・・・・シンデ・・・イク
―――ワタシモ・・・・・・イッソ・・・・・・イイヨネ?
この時辻の目にはベレッタM92Fしか映ってなかった。
- 53 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年07月09日(火)21時18分56秒
- 少し肌寒さを感じながら加護亜衣(女子4番)歩いていた。
ここは大体D−3辺りであろうか。
加護が灯台から移動を決めたのは島のほぼ反対側から聞こえる銃声のためである。
本来なら銃声のする場所は避けたいところだが先刻の放送で残り人数が10人と少ししかいない事が分かった。
さらに親友の辻希美が生きてることを考慮して探し出すにはこの時を置いて他に無いないと踏んだからだ。
それに人数が少なくなるほど撃たれているのが辻本人である可能性も上がってくる。
・・・のの絶対死んだらあかんで。うちが見つけたるからな。
―――その時加護は自分の前方で倒れている物体を確認した。
うっ、血だらけや・・・あれはもう・・・・・
幸い仰向けに倒れていたので顔を見ずに済んだがそれでも胃からこみ上げてきそうな物があった。
・・・・ゴメンな。今はやらなことがあんねん。ののを・・ののを・・
決意を新たにして加護は一歩を踏み出した。親友を自分の手で守るために。
ただその瞬間にヒュウと吹き付けてきた冷たい風に少しの不安を感じた。
- 54 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年07月10日(水)00時29分58秒
- ベレッタて結構重いな。
辻は自殺を決心しベレッタを拾い上げたもののなかなか決心がつかずベレッタをまじまじと見つめていた。
・・・大丈夫・・・一発・・・・たった一発で終わる。
怖くない・・・・・何も・・・怖くなんかない。
短いけど・・・忙しい人生だったな。
昔はとってもどんくさくてよくバカにされたなぁ。
でもモーニング娘に入って・・・・ずいぶん生活が変わったな。あ、当たり前か。
学校には行けなかったけど学校じゃあとても習えないようなこといっぱい学んだな。
仕事のストレスや焦りとかでいっぱい喧嘩とかもしたけど・・・
もう終わりにするから。みんな・・・先に逝っとくね。私みんなと殺し合いは出来ないよ。
辻はゆっくりとベレッタの銃口を自分のこめかみに押し当てた。
―――――――――――――!?
「のの!何やっとるんや!!」
え?
―――亜衣ちゃん・・・・来てくれたんだ・・アリガト・・・でも・・・・ゴメンネ。
最後に逢えてすごく嬉しいよ。
そしてベレッタの引き金がゆっくり引かれた。
- 55 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年07月13日(土)12時45分41秒
- ――――――――――――――――――――――――!!
・・・・・・・・・・・カチッ
あれ?もしかして・・弾・・・・切・・・・・・れ。
「ののーーーーー!」
―――――?・・・・・・亜衣ちゃん?
「あほーーーー。何考えとるんや。今、それ弾入っとったら死んどったねんぞ。わかっとんのか。」
「・・・・・・・・・・ごめん」
「・・・・なんで、なんでこんな事したんや?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
加護がそう言うといきなり辻は泣き出してしまった。
「・・・・・・・・のの。なんで自殺しようとしたんや。なにがあったんや聞かせてくれへんか。」
さっきとはうって変わって優しい口調で加護が訊ねた。
加護は辻はどんな絶望的な状況に追い込まれても自ら命を絶つような人間ではないと信じていたし実際そういっても間違いではないと思う。
だけど・・・辻は自殺しようとした。結果、弾切れという奇跡のため大事に至らなかったが辻が一時的に生存することを諦めた。この事実は加護にとって重くのし掛かる。
よっぽど例外的な何かがあった。自殺を決意させるようなものが。
「・・・・・・・・・・・・・・うん」
それから辻は政府に利己的過ぎる醜い陰謀の一部始終を加護に話した。
- 56 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年07月13日(土)14時08分00秒
- >55
政府に→政府の
- 57 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年07月17日(水)14時22分13秒
- ――分校PM5:20――
「さぁーてそろそろ説明を始めるかぁ〜。」
田代がさっきから絶え間なく吸っているタバコを灰皿に押し付けて言った。
ふーまた忙しくなるな。
なんせ3時に辻、加護を除く生存者全員の首輪を爆発させてからというものの何もする事がなかった。
まぁ連絡の不備でトトカルチョに混乱が起きたがモーニング娘の殺し合いを見せるということであっさり納得してくれた。
「おい、もう奴ら起きてるのか」
「いえっ、まだです」
「ガスが強力すぎたか。・・まあいい。時間も押しているし行くぞ!」
田代はやる気満々に言ってモーニング娘たちがまだ寝ている教室に入っていった。
・・・ホントに寝てやがる。今から自分がなにやらされるとも知らずに・・・クックックッ。
・・・・目ぇー覚ましてやるか。
ぱん―――ぱんっ。
「皆さーん。起きてください、夜ですよぉー」
田代は2発の銃声とそれに負けない馬鹿でかい声を張り上げた。
そしてその音と共に顔を上げる者も出始めた。
「おはようございます。突然ですが皆さんの担任になった田代まさしです。短い間だとは思いますがどうぞよろしくお願いします。」
・・・・本当の惨劇はこれから始まる。
- 58 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年07月20日(土)18時06分29秒
- ・・・・・・・?
目が覚めるとそこは・・・・・教室だった。そして制服を着せられていた。
随分と学校に言っていない私にとってはとても懐かしく感じられた。
「皆さーん。起きてください夜ですよ。」
は?何、このおじさん。私たちは仕事が・・・・・仕事?
そういえば・・・
昨日は・・仕事を終えて・・家に帰っ・・いや帰ってない・・・・そうだ!確かよっすぃーが
―――辻、加護がプログラムに選ばれた―――
とか言って混乱して――――・・・・・
いちーちゃんが現れたんだ。
「皆さん、起きましたか。それでは説明を始めます。」
説明?
「まず此処には私を除いて16人の人間がいます。松浦さん、藤本さん、中澤さん、平家さん、市井さん・・・と
辻さん、加護さん以外のモーニング娘。以上です。
えーー。皆さんは何故辻さん加護さんが此処にいないかはもう知っていると思います。あ、中に知らない人もいましたっけ。
あの二人は幸運にもプログラムに選ばれたんですよ。でも皆さんは仲間です。幸せは分け合いましょう。
まぁー、というわけでー・・・・
今日は皆さんで殺し合いをしてもらいまーす。」
【残り18人】
- 59 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年07月20日(土)23時00分06秒
- どういうこと・・なんでいちーちゃんが?
昨日の夜いちーちゃんが現れて・・助けに行こうって言ったけど私が反対してその後は・・・眠らされて無理やりここに居させられている(多分)。
つまりいちーちゃんは政府と私たちの架け橋になっている政府側の人間と考えるのが普通。
でも・・今いちーちゃんはここにいる。私たちと同じ立場で。
・・・・何故?
―――――――――――――――
「今から殺し合いのルールを説明しますが・・抵抗するようなことがあれば即射殺させていただきます。まぁ芸能界で活躍するような兵(つわもの)の皆さんに限ってそんなことはないと思いますけど。
えー、ルールは基本的には他の人が全員死んで自分が生き残れば優勝なんですが・・いくつか守らなければ死んでしまう事があるのでしっかり聞いてください。
まず一日4回私が放送を流します。その放送では死んだ人の名前と禁止エリアとその時間を言います。禁止エリアに入ると皆さんの首についている首輪が爆発します。仮にそうなったら即死間違いなしです。
ちなみに禁止エリア等は後で皆さんに配るディパックの中に入ってます地図で確認してください。すでにいくつかは禁止エリアになってますけどそれは地図に記してあります。
説明は以上です何か質問はありませんか。」
「・・・はい」
小さな声で飯田が手を上げた。
「何ですか飯田さん」
「辻と加護は無事なんですか・・」
- 60 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年07月22日(月)14時33分46秒
- 「もちろん無事ですよ」
田代は薄笑いを浮かべながら言った。
「そう・・・ですか」
飯田は少し安心した・・とは言いがたい表情で再び椅子についた。
「他にありませんか〜」
―――畜生何様のつもりだ。
田代のまったく感情の篭らない事務的な態度に後藤は激しい怒りを感じていた。
だが今は・・・・
どうすればいい?
まず第一にここから逃げ出す。みんなで協力して。
でも・・・・
そんなのは不可能だ。
たった18人の人間が協力したところでひとつの国家を敵に回して勝てるはずがない。
それ以前に・・・・・・
―――本当に他の人間が信用できるのか―――
極限の精神状態の中で自我を保って一緒に行動できるのか。狂って襲ってこないか。
いや客観的に言っているが自分だってそうなるかもしれない。
・・・くっ、どうすれば
「質問がないなら早速始めて行きまーす」
田代の声で葛藤から現実に引き戻される。
「一人2分間隔で教室を出てもらいますが1人1個入り口のところでディパックを受け取ってください中には戦うための武器や食料などが入っています。
それでは五十音順でいきますので・・・まずは安倍なつみさん」
いきなり呼ばれたので安倍はビクッと体を震わせそのままおぼつかない足取りでふらふら教室を出て行った。
こうして最悪の殺戮ゲームは静かに幕を開けた。
【残り18人】
- 61 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年07月22日(月)16時06分16秒
- 「次、市井紗耶香さん」
市井は呼ばれると非常に落ち着いた様子で誰とも目をあわさずディパックを受け取るとすっと無表情で出て行った。
いちーちゃんが呼ばれた・・。
でも・・・怖いよ。どうして無表情なの。いちーちゃんはヤル気なの。
いちーちゃんは私を殺せる?私は・・・無理だよ。
―――――――――――――
「・・・後藤、後藤真希さん」
ついに私が呼ばれた。動く気になれなかったが田代が銃に手をかける仕草を見せたのでそうもいかなかった。
どんっ
無造作に投げられたバックが非常に重く感じられた。
田代が出て行くときにがんばれよと声をかけてきたきっと睨みつけたが汚い笑みが返ってくるでけだった。
・・・・・・・・・・・・・。
廊下に出るとそこは静寂と闇に包まれた空間が広がっていた。
コツ、コツ、
自分の足音がいやになるほど響くし体の震えも止まらない。
それにさっきから胸が苦しい。何かに締め付けられる嫌な感じ。
そんなことを思っているとあっという間に昇降口(出口)に着いた。
ふう。別に走ったわけでも長距離歩いたわけでもないのにこの疲労感。
よっぽど精神状態が高揚しているのだろう。
「誰かいますかぁ〜」
場違いとも思われる抜けた声で訊ねるも別に返事が返ってくるわけでもなかった。
次は―――さ行はいないから・・高橋・・愛ちゃんだ!
愛ちゃんならヤル気になってないよね(出来るなら全員になってほしくないが)。
とりあえず後藤は校舎の隅に隠れて高橋を待つことにした。
【残り18人】
- 62 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年07月22日(月)22時48分15秒
- そろそろ来る筈。あ、そうだ一応武器の確認をしとかなきゃ。
ディパックに中には水2ℓ×2本、大きめのパンが1つ、地図、磁石、時計(5時47分を指していた)、
と・・・刃渡り1m位の日本刀が入っていた。
これが武器かぁでも・・ちょっと重い・・かな。
なんとなく鞘を抜いてみると刃がキラッと怪しく光った。
――――――――――――――
暗闇沈んだ廊下を高橋は一人歩いていた。
うう、いやだよこんなゲーム。大体、一緒にがんばってきた皆と殺し合いなんて出来るわけないよ。
・・・・・・・・・・!
そうよ、こんなゲーム誰がやるものか。私はこんなゲーム乗らない。
それに皆もおんなじ気持ち(のはず)。
あ、もう出口だ。・・・・大丈夫、誰も殺さないし殺しにも来ない。
その時高橋は自分の右側に人の気配を感じた。
誰か待っててくれたんだ。あの背丈、・・・後藤さんだ!
ほら私たちが殺し合いなんてするわけないじゃん。バカな政府。
高橋が後藤に話しかけようとした時高橋の目にきらりと怪しい光が映った。
そして高橋が目を凝らして見たものはあきらかに“日本刀”と呼ばれるものだった。
【残り18人】
- 63 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年07月22日(月)23時42分03秒
- 「・・・・・・・・・・」
なんで、何で刀を抜くんですか。もしかして・・・・
「あ、愛ちゃん、待ってたんだよ」後藤が笑みを浮かべ易しく言った。
そうして後藤は高橋に近づいてきた一歩、一歩、日本刀を右手に持ちながら。
何なんですか、その刀。それに・・怖くないんですか?何で笑ってるんですか。
ちなみに後藤が笑っているのは出来るだけ高橋に恐怖を与えないためと後藤の気遣いだが高橋の知るところではなかった。
『愛ちゃん待ってたんだよ』
『・・・・・な何でですか』
『そりゃ勿論・・・・・・・・
愛ちゃんを殺すために』
「い・・・」
「愛ちゃん?」
「いやああああああーーーーーーーー。
来ないでください。こっ殺す気なんでしょう。そそ・・その刀で私を」
「あはは、やだなぁ。私はそんな気は全然・・・・・」
「嘘っ、じゃあ何で後藤さん刀なんて構えてるんですか」
え・・・
ここで始めて後藤は自分の失態に気付いた。が・・・・・
後藤が刀を下ろしたころには既に高橋は自分がいた方向と反対に走り出していた。
「愛ちゃん・・・・・・」
後藤は自分の犯した軽薄な行動を激しく悔やんだ。
愛ちゃんが逃げたのは・・・・当然だ。こんなもの持ってたらね・・・ハハ・・・・・。
さらに高橋が大声で叫んだため現時点の仲間作りは断念せざるおえなかった。
こうして後藤の仲間を作ろうという試みは失敗に終わった。
【残り18人】
- 64 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年07月23日(火)17時43分34秒
- ハァハァ、ここまで来ればもう大丈夫だよね。
新垣里沙は学校を出た後全力疾走で校外まで駆け抜けた。無論高橋と後藤のやり取りの影響を受けてのことだ。
やる気になってる人なんていないと思ったのにあの様子じゃ絶対後藤さんはやる気だ。
それに愛ちゃんは・・・・・
本当は高橋の生死くらいは確認しときたかったが恐怖心と最悪の事態を想定してするに出来なかった。
それにしてもここ何処だろう。磁石、磁石。えーとここは・・・分校から見て南だからH−5かな。
このまま見何へ行くと役場が見えるな。少し走って疲れたしとりあえずそこ行ってみよう。
あ、その前に・・・あった。
そう思い新垣はディパックから唯一日常とはかけ離れた物・・・・支給武器のワルサーP39を取り出した。
使う気なんかないけど一応ね、一応。
そう自分に言い聞かせ少しだけ南にある役場を目指して歩き出した。
- 65 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年07月23日(火)22時00分57秒
- 大東亜共和国戦闘実験台68番プログラム―――言わずと知れたこの殺人ゲームのこと。
専守防衛軍が『防衛上必要・・・』と言って選手の意思とは無関係で行われる。
本来なら中学3年のみが対象となるが今回は私たちハロプロメンバーが選ばれた。
ふー厄介なことになったな。市井紗耶香はE−7の森にいた。
まず私が何でこのゲームに参加してるのか説明しよっか。まぁ深い理由はないけど田代のアホに参加しろって言われた。それだけ。
田代が私を警戒したんだろう。プログラムをぶっ潰そうとしてるんじゃないかって(正解だけど)。
さらに私はプログラムにおいて他人との会話&その他のコミュニケーションを封じられた。破ると速攻首輪爆発。
これで脱出するためにほかの人と協力するのは不可能ってわけ。
それに加えて支給武器がこれだからね・・・
カチャリ
市井の持ってるウージー9oサブマシンガンが不意に音を立てた。
ふん、いくらマシンガンを渡しても私は乗らない、こんなゲーム。
それに一人でもあきらめない。当然でしょ。皆と殺し合いをするよりよっぽどまし。
「さーて、どーやって脱出するかな」
月明かりが目立つようになったとき脱出を試みるものがここに一人。成否は誰も知らない。
【残り18人】
- 66 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年07月26日(金)01時19分26秒
- ―――フフッ、フフフフフフ
この殺人ゲームの中不適な笑みを浮かべていたのは平家みちよだった。
フフ、上等やない。ええよ、殺ったるよ。
それにしてもこんな機会を設けてくれた政府に感謝せなあかんな。
この平家は娘たち・・正確には全ての成功者を憎んでいた。さらにこのゲームに大いにやる気になっていた。
原因は『理不尽な結果』であった。
なんで、私があいつ等に負けてんねや。昔オーディションに受かったのは私。私は勝利者のはずなんや。
しかし世間的にはモーニング国民的アイドルかたや自分は・・・・もう芸能界でははしっこな存在になってしまった。
もしあの時落ちていれば、落ちていれば、落ちていれば・・・・・・・このifを問いただした回数はか数え切れない。
でもな・・・・
そんな事はもうどうでも良い・・・・いやむしろラッキーかもしれない。憎しみの対象を自分の手で葬れることは。
あいつ等はここで死ぬ。芸能界の堕落者であるこの私に殺される。
―――――――――――――――
「一人見ーつけた」
あいつは・・・・・・
不幸にもやる気満々の平家に見つけられたのは松浦亜弥だった。
【残り18人】
- 67 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年07月26日(金)14時43分03秒
- フフ、最初に殺すにはもったいなすぎる獲物やね。
後から現れたのに自分地は比べ物にならないほどの脚光を浴びている松浦も無論、憎悪の対象だった。
慎重に、慎重に・・・・大丈夫あいつやってまさか私がやる気になってるとは思わへんやろ。
最初は友好的に・・・・ほんでもって油断したところで・・・・・殺す!
平家は支給武器のピアノ線をポケットに隠して松浦に近づいていった。
――――――――――――――――――
「まーつうら」
「・・・・・・・!誰?」
「私や、平家。」
「へ、平家さん・・」
そう言うと松浦は平家に抱きついてきた。
「怖かったやろ、もう大丈夫やで、私が守ったる。」
「平家さん・・・良かったぁ。私・・・」
ザクリッ・・・・
この瞬間平家は自分のわき腹あたりに激しい痛みを感じその場に倒れこんだ。
「・・・・・・・・・・・!」
な・・・んや・・・痛っ・・・・・・。・・・・松浦?
そして平家が最後に見たものは刃物らしきものを振りかぶっている松浦の姿だった。
「大丈夫ですよ。平家さんごときに守ってもらわなくても。私は死なない・・・・
他の人を全員殺してもね♪」
そう言い松浦は暗闇に歩いていった。そしてその目には狂気という光が宿っていた。
【残り17人】
- 68 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年07月26日(金)23時07分04秒
- C−8の港で吉澤ひとみは海を眺めていた。
最初は脱出するためには船が必要だと思い(可能性は0に等しいとは解っていたが何もせずにはいられなかった)
港に来たのだが期待通りというか当然船はきれいさっぱり1隻も残ってなかった。
目的は失ってしまったがそこから動く気にもなれなかったので暫くはそこに滞在することにした。
ふーやっぱもぬけの殻か。まぁ仮に船があっても脱出できるとは思わないけど・・・。
それにしてもみんなどうしてるかなぁ。こんなゲームやる気になってる人はいない・・よね。
でも襲われたらどうしよう・・・やっぱ私もいざとなったら戦うのかな。誰だって死ぬのはいやだからね。
「動かないで」
へ?
吉澤はこの時自分の後ろに人が立っていることが分かった。
「吉澤・・・だよね?」
この声・・・
「飯田さん!」
振り返るとそこにはモーニング娘リーダーの飯田が立っていた。
「吉澤はこのゲームやる気じゃないよね」
「あたりまえです」
吉澤は少し大げさとも思えるほどに首を大きく縦に振った。
「アハハ、そうだよね。ところでさ吉澤は一人?私と一緒にいよっか?」
「はい!」
こうして吉澤&飯田の長身コンビが誕生した。
【残り17人】
- 69 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年07月28日(日)16時37分00秒
- H−3の集落の中に佇む寺に紺野あさみ、小川真琴、高橋愛、の3人はいた。
学校でたまたま席が隣だったので紺野が小川に、「寺で会おう」と田代に聞こえないように言ったためであり、
そこで合流したところに高橋がなぜか全力疾走で走ってきたので今はこの3人が一緒にいる。(実はこの時高橋を落ち着かせるのにかなり苦労した)
「まさか後藤さんがやる気になってるとはね。」
「私も信じられなかったけどいきなり刀を・・・」
「愛ちゃんもう落ち着いた。」
紺野が高橋に優しく言いかけた。
「うん、ごめんね取り乱しちゃって」
「しょうがないよ。襲われかけたんだもん」
―――――――――――――――――――
「ねえ、これからどうしよう」
「私は禁止エリアになるまではここにいようと思う。
下手に動き回っても疲れるし、やる気になってる人に見つかっても困るし。
仮に脱出しようとしても私たちの力じゃ何も出来ないのは明白だど思う」
と紺野が小川に返した。
「私もあさみちゃんに賛成!ところで武器の見せ合いっこしない。」
そして武器は・・高橋が目覚まし時計、小川が国語辞典だった。
よって唯一の当たり武器は紺野のショットガンとなった。
「はは、私以外はずれっぽいね」
そしてこの時紺野が浮かべた笑みの真意をほかの二人は気付かなかった。
【残り17人】
- 70 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年07月29日(月)00時06分46秒
- あわわ、とんでもない事になってきたべさ。なっち達は何も悪いことしてないべ。
なんで、こんなことさせるべ。
と、さっきから自問自答を繰り返しながら、安倍は一人で支給武器の斧を持って歩いていた。
地図で言えばD−3の辺りである。
ふーそれにしてもこの斧重いべ。どっかべ休憩するべさ。
あ、あそこに家があるべ。ちょっとお邪魔させてもらうべ。
「ごめんくださーい」
・・・・・・・・・・・・。
安倍の目に映ったのは何もない暗闇と静寂・・・・・・
ではなく鉄パイプを持った藤本美貴の姿であった。
【残り17人】
- 71 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年07月29日(月)01時01分43秒
- 「あ、・・・・」
安倍は藤本の登場に驚くタイミングを失ったという感じだったが次の瞬間戦慄を覚えることになる。
藤本の目は真っ赤に充血しており常人の目をはるかに逸しているというのは一目瞭然だった。
さらに口からは涎と乾いた笑みがこぼれていた。
「・・・・美貴ちゃん?」
――――――――――――――!
そして藤本は安倍の姿を確認するやいなや鉄パイプで襲い掛かった。
彼女もまたこのゲームの恐怖に押しつぶされ狂ってこのゲームに乗ってしまった者の一人だったのだ。
安倍は咄嗟に横に移動し藤本の攻撃を避けようとするが安倍は狭い玄関にいたためその全てを避けるのは不可能だった。
それとは逆に藤本は走ってきた勢いで閉じられたドアに豪快に突っ込んだ。
うっ・・・・痛いべ・・・・・・・。
藤本の鉄パイプの一撃は安倍の右肩の骨を完全に砕いていた。
逃げなきゃ・・・殺される。
肩の激痛に耐えながら逃走を試みる安倍だったがドアの方では藤本がいるので
本来としては逆の方向となる家の中へ逃げなければならないことを余儀なくされた。
そして安倍は使い物にならなくなった右腕と一緒に全力を振り絞って殺人者から逃れようとした。
【残り17人】
- 72 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年07月29日(月)16時18分06秒
- 安倍は歩き続けるのが困難なことと藤本がすぐ起き上がってくるのを危惧し結局すぐ横の和室に隠れた。
ギィ、ギィ・・・・
死神の到来を告げる足音がいやおうなしに安倍の恐怖心をくすぐる。
ただ安倍にとっては唯一の幸運だが藤本がドアに激突したことによってごく短時間ではあるが
気を失っていたのでその間に押入れに隠れることが出来た。
「・・・・・!」
藤本が和室に入ってきた。
お、落ちつくべ。大丈夫、美貴ちゃんは狂ってる。押入れまで気が回る可能性は低いべ。
さらに美貴ちゃんはここをやり過ごせば必ず2階へ行く(多分)。要はここで見つからなければ・・・・・
生き延びられるべ!
藤本が和室を詮索している音が聞こえる。
――――・・・・・。
ギー・・・バタン!
和室の扉が荒々しく閉められる音がした。さらにその後すぐ階段を上るような音がした。
やったべ!今のうちに逃げるべさ。
安倍は、細心の注意を払って左手で押入れの戸を開けた。
【残り17人】
- 73 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年07月29日(月)22時09分30秒
- 足音を立てないように靴を脱いで安倍はさっき自分の入ってきた玄関へ急いだ。
激痛で気を失いそうになるのを必死に我慢して生存本能のみで安倍は歩いた。
ふう、これで逃げられるべ・・・・ってこれ・・・
無常にもさっきの藤本の突進で藤本自身かもしくは鉄パイプが当たったのかドアノブが壊れてドアが開かない状態になっていた。
あ、慌てちゃだめだべ。美貴ちゃんが2階に言ってる間に別の出口を探してそこから逃げるべさ。
安倍はさっきまでいた和室を通り過ぎて1つの部屋に入っていった。(和室には窓があったが今の安倍の腕ではそこからの脱出は無理と判断した)
・・・・・!ラッキー、裏口があるべ。あそこから外へ出るべさ。
そして安倍は手動で開けられるロックを外して念願の外へ出た。
さぁ今度こそ逃げ・・・・・・
――――――――――――――!
ドサッ
この瞬間安倍は頭上に重みを感じてその衝撃で地面に激しく倒れこみ、それと同時に右腕にも耐えがたい痛みが走った。
そしてその重みの正体は偶然的にも2階から外に出た安倍を発見して飛び降りてきた藤本美貴だった。
「美貴ちゃんやめ・・・」
その願いは叶えられるはずもなく藤本は安倍に向かって鉄パイプを振り下ろした何度も、何度も、何度も、何度も。
自身も血まみれになろうがお構いなしに。
もう2度と安倍がマイクを持って歌うこともない、踊ることもない。
【残り16人】
- 74 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年07月31日(水)01時06分46秒
- 飯田と出会ってから雑談等を交わしにもだいぶ楽になった吉澤だが表情を少し暗くしてから本題に入った。
「これから・・・・・どうしましょう」
「うーん、かおりはね・・・ゲームに乗らない仲間を集めてここから脱出しようと思うの」
「私もそれには賛成ですが・・・・何か策はありますか」
「それはまだ無いんだけど皆で考えれば何とかなるかもしれないし」
その時二人の後ろにある茂みがガサっと音を立てた。
そして二人はまるで時が止まったかのようにぴたっと動きを止めた。
・・・・・・・・・・。
「誰か・・・・いるの」
膠着状態から飯田が切り出した。
「こっちは私――吉澤と飯田さんの2人でいるの。全然人を殺す気なんて無いから出てきて」
と吉澤が飯田に続く。
15秒くらい経っただろうかひゅんと空気を切る音がして飯田の右肩に矢のアンテナが立った。
吉澤は一瞬何が起こったが解らなかったがすぐに飯田がボウガンもしくは弓で撃たれたと言うことを悟った。
「飯田さん!」
飯田の様態を気にしながらも支給武器のコルトガバメントを茂みの方に発砲するが予想以上の反動に耐えられずに銃口は上がり弾は見当違いのほうに飛んで行った。
「吉澤・・・大丈夫・・・・・だから・・・・・撃っちゃ・・・・・だめ」
「でも・・・」
しかし口論をしている間にボウガンの主が走って逃げる音がした。
そして吉澤はボウガンを撃った奴を諦め飯田に治療に当たることにした。
【残り16人】
- 75 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年07月31日(水)20時50分46秒
- 撃ってしまった、撃ってしまった・・・・
矢口真里は学校を出る時順番が後ろから二番目だったために待ち伏せを恐れて全力疾走で分校を離れた。
それから暫くは動けなくなるまで走ってもうだめだというところで少し休憩していたら何か物音が聞こえた。
何かと思い警戒しながらそこに目をやるとなんとそこには藤本が安倍を何か棒のような物で殴りつけている姿だった。(ただこの時矢口の視点からは暗かったので安倍とは解らなかった)
なんで、なんで、なんで・・・・・
矢口は恐怖からかまたは防衛本能が働いたのかさっきまでの疲労など忘れ即座に藤本とは逆の方向へ走り出した。
そして飯田と吉澤のいる地点までたどり着いた。
私だって進んで人を殺す気なんてないよ。でも怖くて・・・・怖くて。
あの時何がなんだかわからなくて気がついたら引き金にかかっている人差し指に力が入って・・・
矢口は今更とはいえ飯田を撃ってしまったことを激しく後悔した。
「ごめんかおり・・・・・・」
そして遂にはその罪悪感から涙が流れてきた。
やる気になってる奴が近くにいると危険極まりないのだが少し声を上げて泣いた。
「矢口か?」
・・・・・・・!
【残り16人】
- 76 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年07月31日(水)21時29分46秒
- いきなり聞こえてきた声に対して矢口は脅えた小動物のように体をビクッと振るわせた。
ボウガンを構えようとしたが慌てていたので地面に落としてしまいがしゃんと音を立てた。
「ちょ、そんなん向けやんといてや。うちや、中澤や」
「裕・・・・ちゃん?」
一番会いたかった人間の登場の安堵からさっきとは違った意味の涙がこぼれてきた。
裕ちゃんなら分かってくれるよね。
そして矢口は今までの一部始終を中澤に話した。
―――――――――――――
「なるほど、まぁしゃーないっていえばしゃーないな」
「でも矢口的にはもう一度あそこへ行ってかおりと吉澤に謝って仲間に入れてもらいたい」
「今すぐはちょっと難しいな」
「え・・・・・」
「いや、だってな矢口の話によると、吉澤は発砲したんやろ、普通に考えたらそんなとこすぐに離れるやろ。
さらにかおりは怪我したんやろ治療するためには病院かどっかの家に入らなあかん」
「・・・・・・・」
矢口は飯田に怪我をさせてしまったという事実を思い出し顔を顰めた。
「そんな顔したらあかん。もう一度会うんやろ、かおりに。会って謝るんやろ」
「うん!」
「じゃあこれからどうするか決めるで」
これから行動を起こす二人に月が優しく光を照らしていた。
【残り16人】
- 77 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年08月01日(木)21時19分02秒
- 辻希美と加護亜衣は二人でC−5の商店街を歩いていた。
最初に合流してからはB−3の民家の1つでずっと体を休めていたが6時になってからは
他のメンバーがスタートすると聞いていたので仲間を探すためにそこを離れた。
「ののー、誰か見つかったかー」
「ううん、誰もいない」
この二人がこんなに精力的に仲間探しをするのにもこの二人には十分な戦力があった。
イングラムM10サブマシンガンを中心とした銃器合計10丁それは辻と加護で半分ずつ持った。(イングラムは力の強い加護が持っている)
さらに辻の首輪の起爆スイッチこれは後2回しか使えないとはいえ武器としての力は絶大だ。
これだけあれば万が一相手がやる気になっていてもそう負けること無いと2人は考えていた。
しかしこの考えはいともあっさり破られることになった。
―――――――――――――――
「おい、のの誰かいたで」
「あ、ホントだ。あれはーーーー亜弥ちゃんだ」
30M位前方を横切る松浦の姿が二人に見えた。
「おーい亜弥ちゃーん。待ってー」
と二人は松浦の傍まで駆けていった。
【残り16人】
- 78 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年08月02日(金)20時42分53秒
- 「・・・・ののちゃんとあいぼんもやっぱり居たんだ」
松浦は自分の殺気が悟られないように気を使った。
「うん、元はといえば私たちのクラスが選ばれたんだからね」
「あーそれでも会えて良かったわ。うちらな今、仲間探してんねん。政府に反抗するための。亜矢ちゃんも一緒に来いや」
ふふ、おばかさん
「・・・りします」
「え、今なんか言っ・・?」
『今なん』の部分で加護は自分の右手に違和感を感じた。見てみると何と加護は自分の右手の肘から先を失っていた。
そして加護の目の前にはビームサーベルを構えている松浦の姿があった。(平家を殺したには刃物は民家から盗んできた)
「ひっ」
「お断りしますって言ったんです。だってこんな面白そうなゲームなんで参加しないわけないじゃないですか」
「亜弥ちゃん!自分何言っとんのか分かっとてのか」
「日本語の意味が理解できない?ところで加護、随分元気そうだが。もう少し自分の心配すれば。
このビームサーベルの光は物質を原子の粒子に分解する現代科学の結晶のような物なんだ。
ちっとも痛まないし血も出ないだろ。痛みを感じ取る神経や血さえ分解されてるんだ」
松浦は以上の説明を実に楽しそうに言った。そしてこれは死刑執行を楽しむ暴君の様でもあった。
「のの逃げるで!」
「あ、うん」
辻は何が起きたのか理解するのが精一杯で恐怖も怒りも感じることはなかった。
そして松浦はなぜかお世辞にも早いとはいえないスピードで逃げる二人を追わなかった。
松浦は二人が逃げ去るのを確認してから一言呟いた。
「カウントダウン」
【残り16人】
- 79 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年08月03日(土)00時58分46秒
- 松浦は辻と暫くはサーベルの刀身を見て余韻に浸っていた。
急に何か切ってみたい衝動に駆られて商店街のいろいろなものを切った。
そしてそれら全ては解けたように何の反動もなく消えていく。
松浦はこのことに激しく快感を感じていた。だが松浦は決してビームサーベルの虜になってゲームに乗っているわけではない。
この世には勝ち組負け組に人間は分類されると私は考える。
私は幼いころから容姿は勿論のことあらゆる学問を独学で学び、スポーツは男子以上にこなし全てにおいて完璧だった。
全ては勝ち組になるために。
私には愛、思いやり、道徳心等の人間的な感情は必要ない。どんな奇麗事を言っても負ければ意味を成さない。と私は認識する。
人生は一度しかない、それならその人生の中でいかに自分が納得できる存在まで精進するか、これは私の目標だ。だから私は平凡とは遠ざかっている芸能界に身をおいた。
しかしそこは思っているようなものではなかった。実力主義と年功序列が中途半端に存在しあう。さらに金で全てを解決できると言う人間を見ない現状。
実にくだらない
しかしこのゲームはどうだ。人間が自分自身を掛けて戦う。
すばらしい
私はこのゲームを優勝しよう。そして今後このゲームに志願しよう。そしてまた優勝する。
政府の駒になる?そんなことはどっちでも良い。ギブアンドテイクって奴かな。
仮にそれで死ぬことになるなら私は負け組みだ。生きていてもしょうがない、死んだ方がましだ。
―――――――――――
「・・・・少し考えすぎたかな」
松浦は再び歩き始めた
全ては自分が勝ち組になるために
【残り16人】
- 80 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年08月03日(土)01時39分44秒
- 「当初の予定からはだいぶずれたけど結局うまく行ってるじゃないか」
最初は一般生徒の勝ち残りVSモーニング娘をやらせようとしたが政府上層部の反対により生徒に首輪は爆発させた。
さぞいきなり首輪が爆発した奴はびっくりしただろう。
松田君が伝えたから問題ないけど時間的に6時の放送が出来なかった。(次の放送で禁止エリアを増やさなければ)
「田代教官!教育長からお電話です」
そこで田代の思考は中断させられることになる。
「・・・はい、もしもし」
「おお、田代君プログラムは順調かね」
「はい、勿論です」
「早速だが誰に掛けたら儲かるのかね」
「プログラム前までは市井や吉澤の身体能力が高い者が人気でしたがここに来て松浦に掛けるものが一気に増えていますね。
個人能力以上にやる気になっていることが高く評価されています」
「なるほど、参考にさせてもらうよ。じゃあがんばってくれたまえ。私も忙しいのでここらで失礼させてもらうよ」
「ありがとうございます」
そこでツーツーと言う音と共に電話が切れた。
「さぁてそろそろもう一人逝ってくれよ」
【残り16人】
- 81 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年08月03日(土)17時07分43秒
- 田代が教育長と電話をしている時とほぼ同時刻、市井紗耶香は発見したノートパソコンを起動させようとしていた。
しかし何故かこのあたりの地面には人間の血と思われるものが大量に付着していた。(ここには本来男子4番加藤の死体があったのだが政府が回収した)
そしてこのとき市井は政府のパソコンにハッキングを仕掛ける道具もスキルも持ち合わせていた。
市井の携帯は特別製で本来の機能意外に電話会社のテスト用電話に早変わりするという特殊なものだった。
遊びで作ったんだけどこんなとこで役に立つとはな・・・
けれども市井は現時点で政府にハッキングするつもりは無かった。
元々私一人対政府、勝ち目ははっきり言って低い。さらに私以外に脱出のための知識を持っている人間がいるとは考えにくい。
下手に行動を起こして私が死んだらそれこそ終わりだ。
それにハッキングを成功させて首輪を使い物にならないようにして学校を襲撃しようにも敵の兵力が分からない。こんな危険なことにみんなを巻き込むわけには行かない。
それと最大の切り札になりうる“首輪の解除”これは方法を知らない上他人との会話等が禁止されている時点で仮に方法を知っていたとしても自分以外の解除は99%以上の確率で不可能だ。
くそ・・・どうすれば
このとき市井は一瞬自分が諦めかけていることに気付いた。
「くっ諦めるな、諦めちゃだめだ」
誰もいない森の中で市井は一人自分に言い聞かせた。
さらに市井の苦悩は続く。
【残り16人】
- 82 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年08月03日(土)23時38分41秒
- 松浦の襲撃を逃れて辻と加護の二人は海の見えるB−3のエリアまで走ってきた。
「ハァ、ハァ、ハァ、ここまでく
- 83 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年08月03日(土)23時39分51秒
- <82、見なかったことに
- 84 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年08月04日(日)00時22分19秒
- 松浦の襲撃を逃れて辻と加護の二人は海の見えるB−3のエリアまで走ってきた。
「ハァハァハァ、のの、ここまで来ればもう安心や」
「何とか逃げ切ったみたいだね、それより腕・・・」
「大丈夫や、めちゃくちゃ変な感じやけどぜんぜん痛みを感じへんねん。」
「・・・・・・!」
「どうかしたかのの?」
「え、いや、あのさ無くなったのって肘くらいからだよね」
――――――――――――――!
このとき加護は自分の右腕が肘と肩のちょうど半分くらいしかなくなっているのに気付いた。
「な・・・減っ・・・・・・てる?」
そしてその手は今この瞬間にも少しずつ短くなってきていた。
―――――――――――――――――
「のの!うちの右腕切ってくれ」
そう言いながら加護は自分のダイヴァーズナイフと肩まで無くなりかけている右腕を差し出した。
「でも・・・・」
「のの、お願いやこのままじゃうちは脳や心臓まで原子分解して死んでまう」
「・・・分かった」
それから辻は切断作業にかかった。
加護は激痛が走るけど辻のことを思って声は出さなかった。
また辻も少しでも痛みを減らすために罪悪感を押し殺して手に力を込めた。
「ありがとうな、ののこれで止血さえしとけばとりあえず死ぬことはないわ。
「うん、後は亜弥ちゃんは・・」
「ああ、止めんとあかんな」
【残り16人】
- 85 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年08月05日(月)06時49分30秒
- 後藤真希はF−5にある公園のベンチに腰掛けていた。
――――ハァ他の人は何してるかなぁ
完全に暗闇に沈んだ中後藤は一人深くため息をついた。
高橋を仲間にし損なってからはそのショックで何もする気にならずフラフラ歩いてきたらここに着いて気がついたら座っていた。
ふと時計に目をやると長針は4を指しており現在は7時20分であることが分かった。
・・・・もうこんなに時間が経ったんだ
後藤がこんなことを考えていると北の方から銃声が聞こえてきた。
戦ってる―――やっぱやる気になってる人もいるんだ。
「ふう、やっぱり私が甘いのかな」
そう小さく呟き後藤は自虐的な笑みを浮かべた。
*
「う゛・・・」
と、なになにやらうめきにも近い声が聞こえてきた。こんな声を出すのは怪我をしているのかと思ったがどうもそういう感じでもない。
さっきまでの後藤なら迷わず声を掛けたていたが先程の銃声から人殺しに対する禁句また政府に対する憎しみが薄れてきていた。
よってとりあえず“人を信頼する行為”を控えとりあえずベンチの後ろに隠れた。
そして皮肉にもこの判断は正しい方向に働いた。
あれは―――ふじもっちゃんだな。
【残り16人】
- 86 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年08月05日(月)08時01分00秒
- ―――情けないな
教室で威勢良く田代を睨みつけた自分はもういない。いや、正確には居る。しかし例えるならそれはチューブから出した絵の具を水で薄めたかのような存在になってしまった。
・・・ふじもっちゃんが今ベンチの前にいる。
デイパックにしまっている日本刀は柄の部分を右手に持ち鞘の部分を左手に持って何かあったらすぐに使えるようにしてある。
出来たらこのままどっか行ってくれないかな―――しかし後藤の願いもむなしく次の瞬間藤本の鉄パイプの一撃により目の前のベンチが豪快に弾けた。
「・・・・・・!」
そして次に後藤の目に映ったものは斧と鉄パイプという2つの武器を装備した藤本美貴の姿だった。
このゲームは藤本を狂わすだけでなく彼女に残っている死にたくないと言う執念―――その大きさに比例して後藤のかすかな息遣いも見逃さないほどに感覚を鋭くしていた。
後藤は咄嗟にしゃがんだ状態から立って藤本に15Mほど距離を置いた。
―――やるしかないか
瞬時に後藤はデイパックから日本刀を出し鞘を抜きそれを構え藤本を睨んだ。
このとき後藤は藤本を説得しようとは微塵も思ってなかった。
そしてその瞳には“元仲間”と戦う覚悟が出来ていた。
私は・・・・・死なない
【残り16人】
- 87 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年08月05日(月)22時05分18秒
- 来る!
「う゛・・・あ゛あ゛ーーーーーーーー」
藤本は咆哮を上げながら一気に間合いを詰め後藤の脳天をめげて斧を振り上げた。
「シ、ネ」
ビュンという空気を切る音がした。後藤はバックステップでかわし命中しなかったがそのバックステップの着地の際足を軽く捻ったため反撃に機会を失っていた。
渾身の一撃をかわされた藤本は、前方にこけかけたが、安倍のときとは違いギリギリで持ちこたえた。
そして逆の手ですかさず鉄パイプの一撃を繰り出す。
―――キーン
時代劇さながらの透き通るような金属音がした。無論刀と鉄パイプのそれである。
やるじゃんふじもっちゃん―――でも負けないよ。
「ハァ!」
と、いう掛け声と共に後藤は左のハイキックで藤本の手に握られていた鉄パイプをけり落とした―――しかし休む間もなく斧が飛んでくる。
「くっ」
またもや紙一重にかわすがその代償としてセーラー服がばっさり破れた。
―――今のはやばかったな
そして2人は再びある程度距離を置いて対峙した。
―――次の一撃で決まる・・・・
特に戦いの経験のない後藤にも雰囲気でそれが分かった理解できた。
*
「コ・・・ロス」
一言小さく呟き藤本は足元の砂場の砂を後藤の顔に投げつけてきた。
――――――!前が見えない
「うあああああーーーーーー」
獣のような雄たけびを上げ藤本が突進してきた。
【残り16人】
- 88 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年08月07日(水)23時10分21秒
- ・・・・単純だなぁ、ふじもっちゃんは。
「もらったぁぁぁーーーっ」
と、後藤は手に持ってる日本刀を一直線に突進してくる藤本に野球のピッチャーよろしく思いっきり投げつけた。
「・・・・・・!」
そして藤本は断末魔も上げることもなく後藤の数メートル前で力を失ってその短い生涯を終えた―――日本刀が喉に突き刺さって。
目は大きく見開かれており藤本の普段の面影はなかった。
*
は・・ははははは・・殺しちゃったよ。で、でもさしょうがないじゃん。正当防衛なんだし。
―――『別に殺したって良いじゃん』
え?
―――『人殺しは悪いこと?』
そ、そんなの常識・・・
―――『それは誰が決めたの。その常識にあなたが納得できる価値があるの。たった一度しかない人生、善悪や常識にとらわれて後悔しない?』
後藤の頭の中で悪魔―――天使が囁く。
「そう・・・だなぁ。ちょっと“冒険”してみよっかな」
人間の生々しい血の匂いが残る中後藤は藤本から荒々しく刀を抜くとそこから立ち去った。そしてその顔は確かに笑っていた―――目意外は。
【藤本美貴死亡・残り15人】
- 89 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年08月14日(水)12時41分15秒
- 島の南東部、地図中ではI−9に当たる山岳地帯の1つの山小屋に保田圭は潜んでいた。
そしてその手には支給武器のワルサーP99がしっかりと握られていた。
保田は積極的に他の人を殺そうという気は無かった。
昨日まで一緒に仕事をしていた仲間を簡単に殺せるほど無感情な人間ではない。
ただ保田は積極的にこのゲームに参加しないと言っても決して殺人を完全否定したわけではない。
また自身もこのゲームで死ぬ気ではなかった。
人数は私を含めて17人居る。確率だけで考えたら5%ちょっとしか生き残る可能性は無い。
勿論これは極めて単純な数学的な考え方なのでこれをそのまま適応することは当然無い。しかしこれで分かることはいずれにしても自分は死ぬ可能性が高いと言うことだ―――
よって死なないためにはミスは許されない。
まず極力の戦闘は避ける。これは死と言うリスクを負うこととは前提として怪我をする危険性もある。
仮に無事に勝っても相手を殺してしまったらその罪悪感、この精神的負荷は容易に耐えられるものではない。
―――だから殺すのは最後の一人
これが保田が考えたこのゲームに対する姿勢であった。
私がこのゲームに生き残ったら気が狂いそうに・・・いや狂ってしまうかもしれない。
けれどもそのときは所詮ゲーム終了後。命の危険に晒されることは無い。
だから今はこれで良い・・・・あとで自分がどうなろうが。
【残り15人】
- 90 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年08月17日(土)02時49分54秒
- 保田がこの小屋ににみを落ち着けてから随分と時間がたったころ一人の人間の来訪を告げる
コンコンと言うノックの音が保田の耳に聞こえてきた。
また保田は戦略上あまり人との接触を避けたいところなのでこのことはあまり好ましい事ではなかった。
ちょっと、よりによってなんでこんな所に来んのよ休むところにいっぱいあるでしこの山にしたって
このくらいの小屋ならいっぱいあるでしょ。
コン、コン、コン・・・・ガチャリ。
「・・・・・石川」
「保田さんいたんですか」
石川か・・・まぁこいつはどう転んでもプログラムをやる気になってないだろうね。
教育係の時から見てきてるけどとてもじゃないけど人殺しの出来るような度胸のある奴じゃないしね。
「あのっ・・・嫌じゃなかったら私と一緒にいてくれませんか?・・・・一人じゃ怖くて。
保田さんならきっと信用できると思うし」
―――石川だったらまず裏切って殺しにかかってくることはないだろうし―――それに戦闘になっても
こっちの数が多ければそれだけ有利になる。
「・・・・・保田さん?」
「ん?ああ、いいよここに居なよ」
「あ、ありがとうございます」
- 91 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年08月17日(土)03時14分42秒
- 「・・・・!ちょっとストップ!その前にあんたの武器見せて」
保田が慌てたようにそう言うと石川はいきなり服を脱ぎだした。
「あ、あんた何を・・・・」
「これです」
「は?これって?」
「解りませんか・・・防弾チョッキですよ」
石川のセーラー服の下には明らかにセーラー服とは違うような物を着ていた。
へーいいもん持ってんじゃん―――よしっ!
「石川それ・・・・」
「保田さん、これ保田さんが着けといてください」
え?
「・・・・いいの?」
「はいっ」
そう言って石川は保田に着ていた防弾チョッキを保田に手渡した。
*
「う゛、・・・・これって結構重いね」
「スイマセン。でもこれを着けてたら多少の銃弾は軽々防げるのでがんばってください」
当たり前。こーんな便利な物みすみす手放すわけないでしょ―――悪いけど石川、生き残るために存分利用させてもらうからね。
と、保田がこんなことを企んでいる時静寂が支配する島にノー天気な声が響いてきた。
「時刻は午前0時。お待ちかねの放送の時間でーす」
【残り15人】
- 92 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年08月22日(木)17時03分12秒
- およそ6時間ぶりに聞く気味の悪い声。思い出しただけで虫唾が走るあの田代の声だ。
とはいえ禁止エリアのチェックをしなければならないので矢口は仕方なく耳を傾けた。忘れずに地図と鉛筆も取り出した。
そしてご丁寧にもその地図の裏側には死亡を確認するためにメンバー全員の名前が書いてあった。
―――へっ余計なお世話だ・・・。
「それじゃーこれまでに死んだ奴の名前を言うぞ。五十音順です・・・安倍なつみ、藤本美貴・・・」
藤本の名前を聞いたとき矢口の心臓がドクンと強く脈を打った。
なぜなら最低でも一人を殺しその現場を目撃した藤本が死んでいたからだ。
藤本が馬乗りになって鉄パイプを何度も何度も振り下ろしてる姿が脳裏をよぎった。
「・・・・平家みちよ―――以上の3人だ。ちょっと少ないな。もう少し頑張れ!」
- 93 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年08月22日(木)17時42分10秒
- 「・・・3人」
矢口は一人ポツンと呟いた。
どうやら政府は今回の死亡者数に多少不満があるようだが、矢口にとっては一人死んだだけでも多すぎるくらいだ。
そしてさらにメンバー3人の死を目の当たりにしつつもそれを冷静に受け入れている自分に強い憤りを感じた。
「次に禁止エリア行くぞ。あと今回から1時間に一つのペースで増やすからそのつもりでな。
午前1時から順にD−8,E−9,H−1,B−2,E−2,D−6だ。
間違っても禁止エリアに入って首輪爆発なんて事態は避けてくれよ。
えーとあと最後にみんな友達が死んでつらいかもしれないけどくよくよせずに頑張んなきゃだめだぞ」
――ー畜生、人事だと思いやがって。
この時はまだ直後に自分に降りかかる災難を矢口は知らない。
【残り15人】
- 94 名前:えりまきとかげ 投稿日:2002年08月22日(木)22時56分34秒
- 実際奴らからしてみれば人事であることはおろかただの仕事の一環であるのだからしょうがないことなのだが。
矢口は放送が終わり地図を直そうとしたとき名簿が目に入り再び死んだメンバーの1人1人の顔を思い浮かべた。
―――なんで・・・なんでこんなことに。
と矢口は考えていたがゆっくりしている暇は無かった。
「矢口、うちらのいるD−8は1時間に禁止エリアになる。もうちょっと移動するで」
「・・・裕ちゃん」
無論中澤の言っていることは必然なのだがこのときの中澤はまるで感情が篭ってなかった。
誰が死のうが自分には関係ないといわんばかりの。
「ん、なんや?」
「裕ちゃんは何も感じないの!?3人も死んじゃったんだよ。何でそんなに平気でいられるんだよ!」
「・・・矢口。うちやって別に悲しくないわけやない。
でもなぁ悲しんだって別にその3人が帰ってくるわけではないんやで。今のうちらには死んで行った人間のことを忘れないことくらいや」
「・・・・!でも・・・でもさぁ・・・・・・」
二人の間に沈黙が走った。
(矢口の気持ちは良く分かるけど―――・・・・)
「矢口・・・」
「シッ、誰か来る!」
「え・・・?」
そして中澤の目には暗闇の中、人のシルエットが1歩1歩近づいてくるのが見えた。
誰や・・・・?
【残り15人】
- 95 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月04日(金)09時37分55秒
- 続き待ってます
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