インデックス / 過去ログ倉庫 / 掲示板
彼女達の立ち方 V
- 1 名前:aki 投稿日:2001年12月10日(月)19時50分18秒
- 雪、同じ空と続きとうとう3スレに突入しました。
結局タイトルはこんな感じにしてみました。
彼女達の立ち方の続きです。
これからもよろしくお願いしますm(__)m
雪板 彼女達の立ち方
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=snow&thp=1003246180
同じ空板 彼女達の立ち方(雪の続きです)
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=sky&thp=1005062974
- 2 名前:届かない叫び 投稿日:2001年12月10日(月)19時58分09秒
「ココアでいい?」
中澤はカウンターの向こうから暖かい湯気の立つココアの入ったコップを二つ
手に持ちながら梨華の元へやって来た。
「はい・・・・・・」
力なく答える梨華に中澤は梨華の様子を伺いながらカウンターに座る梨華の隣に
コップをカウンターに置いて座った。
「ほい。」
「ありがとう・・・ございます・・・・」
梨華はそれを両手で受け取るとそっと口をつけた。
中澤も一口それを口にするとそのまま黙って静かに梨華の隣にいた。
「・・・・・・・」
しばらくの間、バー全体が沈黙に包まれた。
中澤はその間ずっと梨華の様子を眺めていたが不意に口を開いた。
「・・・話したくなかったら話さんでもええ。けど一応聞いとくで。何があったんや?石川。」
「・・・・・・・・」
隣に座り真剣な表情でそう声を掛けてくれた中澤に梨華はすぐに何とも答えることができなかった。
ただ、梨華の体の小さい震えは止まらない。
- 3 名前:届かない叫び 投稿日:2001年12月10日(月)20時01分10秒
「・・・・石川・・・」
「・・・・・たとえ好きじゃないって言われても・・・やっぱり私はどうしようもなく
後藤さんのことが好きなんです・・・・・。」
梨華は打ち明けるように言った。
「どんなに振り向いてくれなくても・・・・やっぱり・・・好き・・・・・」
「一体何があったん・・・・?」
ただ力なく呆然と言葉を並べ話していく梨華に中澤は少し強めに聞く。
しかし梨華はそれに振り向く事はない。
「ひと時でも通じ合えたと思った・・・・想いが交差したって思った・・・・だけど・・・・・」
「・・・・・・・・」
「全部・・・・全部私の思い過ごしだったんですか?勘違い・・だったの?でも・・
・・だって・・・・・」
「石川・・・・・」
「私・・・・後藤さんに聞いたんです・・・私のことどう思ってるのかって・・・だけど
後藤さんは『あの人』が好きだって・・・・好きだって言えるのは私じゃないって・・・・・」
既に梨華の瞳からは大量の涙が溢れ出していた。
- 4 名前:届かない叫び 投稿日:2001年12月10日(月)20時02分55秒
「それじゃぁ、あの時抱きとめてくれたのは・・・・あの時言ってくれた言葉は・・・・・
抱きしめてくれたのは、キスしてくれたのは全部嘘だったんですか・・・!?」
「石川っ・・・・・!」
涙で顔をくしゃくしゃにしながら泣き叫び感情を暴走させて暴れそうになる梨華を中澤がとめる。
「私が後藤さんのことを好きになったのがいけないの・・・・・?」
梨華はしゃくりあげながら中澤にしがみ付いた。
「だから・・・・こんなことになっちゃったの・・・?後藤さんも苦しませて私も・・
・・私が好きになっちゃったから・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「でも私何も悪いことしてないよぉ!!」
永遠に流れるかのような涙は次から次へと溢れ出し頬を伝い落ちていく。
- 5 名前:届かない叫び 投稿日:2001年12月10日(月)20時04分49秒
「好きな人にただ好きって言う事がどうしていけないの!?好きだから相手にも好き
だって言ってもらいたいて思うのが・・・どうしていけないのぉ・・・・!?」
叫ぶ梨華にを中澤はただ何も言わずやるせない表情で再びぎゅっと強く抱きしめた。
「好きな人と一緒にいたいって・・・・ただ側にいたいって思うことは悪いことなんですかぁ!?」
「悪いのはあんたやないで・・・・石川・・・」
中澤は梨華の頭を優しく撫でてやった。
「・・どうして・・・・どうしてぇ・・・・?」
それでも溢れ出す涙は止まらず流れていく。
しゃくり上げる声がバーに響く。
「私・・・・私、後藤さんのこと好きなはずなのに・・・それなのに・・・・・後藤さんに
嫌いって・・・・・」
「・・・石川・・・・・」
「私は・・・・一体どうしたらいいのぉ・・・・・!?」
悲しすぎる梨華の悲痛な叫びと涙はただ空しくバーに響いた―――――
- 6 名前:それぞれの覚悟、決心 投稿日:2001年12月10日(月)20時06分52秒
――――――
「・・・・・・・」
中澤はずっと梨華の震える体を抱きしめてあげた。
その間も梨華は涙を流し、しゃくり上げていた。
「大丈夫か?」
「・・・・・・・・」
少し落ち着いてきたのが外から見ても分かり中澤は静かに声を掛けた。
しかしそれには梨華は答えなかった。
ただ胸の中で顔を埋めていた。
しかし、その瞳は何かを心に決めたような、何かを秘めたものだった。
「中澤さん・・・・・・」
「何や?」
「・・・・教えてください・・・『あの事件』のことについて・・・・・・」
「・・・・・・・・。」
「私・・・・後藤さんのこと好き・・・・嫌いになんかなれない・・・・とめられない・・・
知りたいんです。『あの事件』について・・・・『あの人』について・・・・・」
- 7 名前:それぞれの覚悟、決心 投稿日:2001年12月10日(月)20時08分25秒
「・・・・・・・」
崩れてしまいそうな体で必死に中澤の腕にしがみ付きながら梨華が静かに言葉を繋げていく。
それに中澤は何も言えなくなってしまった。
その中澤の表情はやるせないような、悔しそうな、戸惑いと動揺も含めているものだった。
「・・・・分かった・・・・・」
中澤は覚悟を決め、梨華に答えた。
彼女に全てを打ち明けた後、私がすることは、とても残酷で皮肉なもの。
だけど・・・・彼女を守るにはこれしかない・・・・・。
全ての傷を癒すため、私は一人悪者になろう・・・。
中澤は静かに口を開き、話し始めた。
- 8 名前:『あの事件』 投稿日:2001年12月10日(月)20時10分54秒
「どこから話したらええもんかなぁ。」
中澤は雰囲気を変えるように明るい口調でまず第一声を放った。
梨華を隣の椅子にきちんと座らせ中澤はとっくに冷えたココアを口にした。
「・・・・・・・」
梨華は何も返事せず、ただ言葉を待った。
それを中澤が再びちらっと見ると、意を決したように一度軽く息を吸うと話し始めた。
「あんたが来るちょうど一年とちょっと前ぐらい・・・・つまり今ぐらいの時期に『それ』
は起こったんや・・・・・。」
中澤は少し神妙な顔つきと微かに思い出すような口調で言った。
「あんたもしかしてアヤカに聞いたかもしれんけどな、あんたが来る前はうちらと圭ちゃん達は
同じ仲間だったんよ。」
「・・・・聞きました・・・・・」
中澤の言葉に小さく頷き言う。
「そうか・・・・・」
少しの間沈黙が流れた。
中澤は天井を仰ぎ見るようにして続けた。
- 9 名前:『あの事件』 投稿日:2001年12月10日(月)20時12分03秒
「あの時は・・・・・みんな居場所が欲しかった・・・同じ力を持つ者同士、同じ気持ちの者同士ただ一緒に居たかっただけなんや・・・ただ側にいて、同じ時間を過ごしていれさえすればそれだけで良かった・・・・。」
「・・・・・・・」
「でも、やっぱり人間やから仕事してお金稼がなあかんやん。だからうちらはこの
もって生まれた能力をそれぞれ生かして生きていくためにそれを使った・・・・。」
「だけどな・・・・今思えばそれが悲劇の始まりだった・・・。」
いつもでは考えられないほど沈んだ様子で話す中澤に、梨華にも同じ気持ちが伝わってくるような、
切なくて痛い気持ちになった。
- 10 名前:『あの事件』 投稿日:2001年12月10日(月)20時14分16秒
「この能力を使って仕事をこなしてたのはうちらだけじゃなかったんよ。私らの
周りでもそれは普通に行われていた。そして気づかないうちにいつのまにか
うちらのグループはその世界でもトップの位置についとったんや。」
暖炉の火がただぱちぱちと音を立てる。
それ以外の音は、中澤の声しかなかった。
「みんなとてつもない能力を持った人間が偶然にも集まってしまったらしくてな。
いや、必然・・・運命だったのかもしれん・・・・・」
時間が、なぜかとてつもなくゆっくり流れていく気がする。
「まだ何もルールの決められていない自由な世界で一つのグループが力を持ち過ぎ
たらどうなると思う?」
「・・・・・・・・」
中澤の問いかけに梨華は無駄なことは口にせずただその後を待った。
- 11 名前:『あの事件』 投稿日:2001年12月10日(月)20時17分16秒
「あの頃はまだ今の本部とかにこの世界は一つに統治されていなかったから・・・
・・考えられることはたった一つ・・・・・」
「内戦・・・・・?」
「そう。この世界である種の内戦が起きたんや。狂ったバランスを治すため・・・・。いや、もしかしたら内戦に似た革命みたいなものかもしれん・・・・」
「革命・・・・・・」
「皮肉にもそれが起きたのは雪の降る夜のクリスマス・イブ。全てのグループがうちらを
弱体化させようと乗り込んできた。」
言いながら中澤は唇をぎりっと噛んだ。
「結果、いくら力を持ってる人間だとしても束になられたらやっぱかないはせんよな。
みんな傷ついて・・・傷つけあうことに涙を流して・・・そして一人づつ相手も
こっちも・・・その場に居合わせた全員が倒れた・・・・。全てがめちゃめちゃ
になったんや・・・・・」
中澤はそこで少し間を置いた。
まるでそのまま昔のことを思い出すように苦い表情をしている。
- 12 名前:『あの事件』 投稿日:2001年12月10日(月)20時19分49秒
「そしてその争いを起こした者も、被害を受けた者も、ただ傍観していた者も、
全てが心に深い傷を負った。そしてその日以来、この世界は一つの本部によって
統治されることになったんや。二度と、この悲劇を繰り返さないように・・・・・」
「それで保田さん達も・・・・・・」
「そうや。圭ちゃんは進んで加護達を引き連れてここを去っていったんや。
自ら集中しすぎてしまった力を分散させるため・・・・・」
「・・・・・・・」
やるせない表情の中澤に、梨華も何も言うことができなくなってしまった。
- 13 名前:『あの事件』 投稿日:2001年12月10日(月)20時23分07秒
「それで・・・・後藤さんは・・・・・・・」
しばらくして梨華は口を開いた。
中澤も、それに少し時間を置いてからゆっくり再び話し始めた。
「・・・・後藤・・・あの事件で一番の傷を負ったのが他でもない後藤や・・・・」
梨華は息を呑んで全ての神経を次の言葉に傾けた。
「それまでの後藤はなぁ、あんなんやなかったんやで。紗耶香がいきなり連れ
て来た時はそらもうびっくりしたなぁ。何の前振りもなく突然連れて来たから
・・・それに何聞いても無駄やった。ほんっとうに無愛想な子で口もほとんど
聞かんかった。でもなぁ、しばらく経ったらすごく無邪気によく笑う子やって
分かった。特に紗耶香の前では・・・・・」
「・・・・・・・・」
梨華は何とも言えない気持ちになった。
中澤の言っている事は今見た真希の寝顔を見ればすぐに分かる事だった。
複雑で、いろんな気持ちが入り組む感情。
それらの中に微かに『嫉妬』というものが入っている事は拭えない。
- 14 名前:『あの事件』 投稿日:2001年12月10日(月)20時24分39秒
――――――――
『いちーちゃん!』
『いちーちゃんっ!クリスマスはみんなでパーティしようねぇ!』
『明日は帰ってくる時にケーキも一杯買ってくるから・・・・・・・』
『パーティ先にやってたら怒るからね?』
――――――――
- 15 名前:『あの事件』 投稿日:2001年12月10日(月)20時26分04秒
「あの日・・・・後藤は皮肉にも仕事で違う場所に出かけていた・・・・・。
仕事が終わったらみんなでパーティしようって、何度も言うとった・・・・
それが幸か不幸か、争いには巻き込まれなかったんや・・・・。」
「・・・・・・・」
「そして・・・あの事件では一人、犠牲者が出たんや。それが他でもない
後藤の教育係、市井紗耶香・・・。」
「市井・・・さん・・・・・・」
気づけば梨華は確かめるように言葉にして言っていた。
「雪の降る夜、後藤が帰ってきた時にはうちらのたった一つの居場所は火事で全焼。
今も燃え続けるその中には・・・・・一番の深手を負い逃げ遅れた紗耶香がおった・・・・」
「!」
「後藤は叫んで中に入っていこうとした。それをうちはとめた。火の手がすごかったからや。
でも後藤はうちらのやめさせようとする手を払って、その中に飛び込んでいった。」
- 16 名前:『あの事件』 投稿日:2001年12月10日(月)20時28分08秒
―――――――
『いちーちゃん!いちーちゃん!!』
『あかん!もう火の手が回ってるんやで!?』
『だからって・・・・・いちーちゃんを見捨てろって言うの!?ただ指銜えて
見てろって!?あたしには・・・・・そんなのできない!!』
『!・・・・後藤っ!!』
『いちーちゃぁん!!』
『・・・・・・っ・・・くそっ!!』
『!裕ちゃんっ!!』
――――――――
- 17 名前:『あの事件』 投稿日:2001年12月10日(月)20時30分21秒
「あいつずっと叫んでたな・・・・紗耶香の名前・・・・うちも覚悟を決め中に
飛びこんだんや。ちょうどその頃は長い夜も明けて朝日の昇り始める朝方。
火の手も空から降り注ぐ雪と共に弱まって来て必死に探した。そしてやっと
ちょうど部屋の中央のところにいる二人を見つけたんや・・・・」
中澤は少し俯いたため今どういう表情をしているのか梨華からは見えなかった。
「後ろ姿やから最初はよう分からんかった。ただ後藤は床に座りその腕の中には
紗耶香がおったのだけは分かった。そしてうちがあの二人の名前を呼んで近づい
ていったその時や。」
「・・・・・・・・」
「後藤はすくっとその場で立ち上がった。腕から紗耶香を下ろし真っ直ぐ床に
寝かせ、そしてあいつは言ったんや・・・・」
梨華は少し空いたその間に固唾を呑んだ。
- 18 名前:『あの事件』 投稿日:2001年12月10日(月)20時31分47秒
――――――――
『後藤!紗耶香!どこや!!』
『・・・・・・・・』
『そこにいるのは後藤か!紗耶香は・・・・・・・』
『裕・・・・ちゃん・・・・・・・』
『一体何があったんや!?紗耶香は・・・・・・』
『私が・・・・・殺したの・・・・・・』
――――――――
- 19 名前:『あの事件』 投稿日:2001年12月10日(月)20時34分28秒
「!・・・・・・・」
「殺したって・・・・自分が紗耶香を殺したってゆうとった・・・・。最初は
うちも信じられなくてなぁ。柄にもなく後藤に詰め寄ったんや。どういうこと
だって・・・・。でもあいつ涙一つ流してなかった・・・・・。」
「ただ呆然と景色の写っていない瞳。頬には涙の乾いた後、煤が服や髪や顔に
ついて・・・・火傷もしとったし服も焼けてぼろぼろやった・・・・・・」
「後藤さん・・・・・・」
「実はな、『その時』まで後藤の能力は覚醒してなかったんや。仕事ゆうても
簡単な仕事を任せてた。能力がずっと目覚めないのを後藤は気にしてたから
それも紗耶香の配慮やったんやろうけど・・・・・・」
「結局、後藤の能力は皮肉にもその時に覚醒した。『あの事件』の夜に・・・・・」
「それからや。あの子がまた笑わなくなったのは・・・・。」
「・・・・・・・・・」
- 20 名前:『あの事件』 投稿日:2001年12月10日(月)20時35分46秒
全てを知った時、自分はどうなるんだろうってたくさん心配した。
すごく不安にもなった。
だけどいざ全てを知った時、何も考える事が出来なくて。
気付けば自分の瞳からは今さっきとは違う涙が流れていた。
その時の後藤さんの気持ちや感情がなぜか鮮やかなほどに心の中に浮かんできて。
いつのまにか具体的な感情は自分の中から消え去っていた。
よく分からない感情が・・・・自分の中に広がり占める。
後藤さん・・・・・・。
- 21 名前:『あの事件』 投稿日:2001年12月10日(月)20時37分01秒
「あんたが知りたがってた『あの事件』の昔話、これで全てやで。」
「・・・・・・・・・。」
その後も梨華は何も言うことができなかった。
何を言ったらいいのか、何を口にしたらいいのか、分からない。
「そういえばあんたと後藤の力の目覚めは似てたかも知れんな・・・・。」
中澤は小さく独り言を呟いたがそれも聞こえていないようだった。
「・・・・・・・・」
しばらく中澤はそんな梨華の横顔を見ながら心の中ではあることを最後の
最後まで心に言って聞かせていた。
そしてとうとう口を開いた。
- 22 名前:『あの事件』 投稿日:2001年12月10日(月)20時38分12秒
「それでなぁ、うちもあんたに話があんねん・・・・・。」
「え・・・・・?」
中澤の言葉に梨華はふっと顔を上げた。
目の前にいる中澤の表情は真剣そのものだった。
微かに、冷たさがありいつもの中澤の雰囲気はそこにはなかった。
今の話とそれに戸惑いながら返事をする。
「何・・・ですか・・・?」
「また・・・・『あの事件』に近いことが起ころうとしてる・・・・・」
「・・・・・・・。」
突然の中澤の言葉に梨華はすぐには何を言っているのか分からなかった。
しかし何かは聞かず、ただその言葉に耳を傾けた。
- 23 名前:『あの事件』 投稿日:2001年12月10日(月)20時39分47秒
- 「なぁ、知ってるか?あんたの持ってるクリアの能力ってなぁ、かなり珍しいもん
なんよ。類まれな能力や。だからその能力を秘めるもんは選ばれた者と言われとる。
使う者私大でそれはどんな使い方もできるんや。・・・人を救うことも・・・・
破滅を呼ぶことも・・・・・・」
「中澤・・・・さん・・・・?」
「みんなが・・・・・みんながかつてない勢いであんたを狙おうとしてる・・・・。
大きな力を手に入れようと・・・・・」
中澤はただカウンターに片方の肘を付きそれに顎を乗せ前を向いたまま静かに
言葉を繋げていく。
少しの間、沈黙が流れ、そして中澤はふぅと大きく息を吐いた。
その間はとても梨華にとって長くもあり短いものでもあった。
- 24 名前:悲しい選択 投稿日:2001年12月10日(月)20時42分02秒
「うちなぁ、あんたのこと大好きや。出会って間もないけど仲間や思てる・・・・・」
「・・・・・・・・」
「あんたを守るためなら・・・・そしてみんなを守るためならあたしは悪魔にでも
なってみせる・・・・・」
「・・・・どういう・・・・」
「許してな・・・・あんたを守る方法・・・これしかないねん・・・・・」
どういう意味か聞き終わる前に、中澤は言いながらもう一つの手を梨華の目の前に出した。
「中澤さん・・・・?」
「ごめんなぁ・・・。でも・・・これがあんたにとっても一番良いって気づいたんよ・・・・。」
「っ!・・・・中澤さん!どうして・・・・・」
梨華の目には表情を変えないまま涙を頬に伝わせる中澤の顔が映った。
「あんたは傷ついとる・・・・・それも忘れることができる・・・・そして
危険に晒されることもない。・・・・・・だから・・・・・・・」
「!」
梨華の目の前に突き出された手のひらからは薄い紫色の光が静かに溢れ出していく。
「中澤さんっ!?」
「さようなら・・・・・・!」
- 25 名前:悲しい選択 投稿日:2001年12月10日(月)20時44分03秒
バシュッ!!
中澤の手に最大限に溢れた光は一気に梨華に向かって放出された。
「キャッ・・・・・・」
梨華の小さな悲鳴と共に梨華の体は薄い紫の色に覆われた。
川の流れのようにそれは梨華の体を突き抜けていき最後にはスッと小さな音を立てて
消えた。
「・・・・・・・・」
―――――――ドサッ・・・・
それと共に梨華の体が中澤に向かって前に倒れた。
「ごめんなぁ・・・・・石川、ごめんなぁ・・・・・」
中澤はその梨華の体をしっかり抱きとめてあげた。
そしてきつく梨華の体を抱きしめる。
瞳からは溢れんばかりの涙を流しながら。
気を失った梨華に中澤はずっとずっと小さく謝罪の言葉を掛けていた。
それは梨華の耳には悲しくも全く届いていなかった―――――――
- 26 名前:aki 投稿日:2001年12月10日(月)20時46分07秒
- ふぅ、更新が長く続くと結構疲れます。
予め書いてるのをコピーしてるだけなんですけどチェックと修正が
大変で大変で・・・・。
- 27 名前:名無し梨華 投稿日:2001年12月10日(月)20時47分47秒
- お疲れ様で〜す♪
リアルタイムれす(w
僕なんかぶっつけでやってますからいつもドキドキもんですよ(w
ようやくいろんな事が明らかになってきましたね。
続き、楽しみにしてます!
- 28 名前:M.ANZAI 投稿日:2001年12月10日(月)23時41分41秒
- なんだかとてつもなくスケールの大きなモノに抱え込まれて身動きが出来ない感じがします。
それは彼女達だけでなく、拝見しているこちら側まで・・・・
『あの事件』・・・ところどころにあった断片的なものがはっきりとしたのですが、
なんともやりきれない思いが残ってしまいました。はたしてこの事は聞くべきだったのか・・・
梨華に最後に話したのは、中澤なりの思いやりだったのでしょうか。
中澤のこの選択は、本当に彼女達のためになるのですか?
辛いなぁ・・・でもこの先のことが気になるし・・・
次の更新、気持ちを落ち着かせながらお待ちしてます。
- 29 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2001年12月11日(火)01時09分22秒
- お疲れ様です。一気に更新されていたから読んでてドキドキしました。
あの事件が明らかになったけど、石川はこれからどうなってしまうんだー?
なかざわはこれから石川をどうするんだー?
宇宙級に楽しみに次の更新を待っています。
- 30 名前:aki 投稿日:2001年12月11日(火)19時32分46秒
- 27:名無し梨華さん
>おっ、リアルタイムありがとうございますっ!
私も実は「めぐる気持ち」の時はぶっつけ本番で書いてました(w
今の私では絶対に不可能ですが・・・^^;
続きもがんばりますっ。
28:M.ANZAIさん
>新スレ、ありがとうございますっ。
いよいよ「あの事件」が明らかになりました。
昨日その後自分で書いた雪の方とか読んでみたんですけど考えていた物を
実際に文章にした後読み直すととても不思議な感じです。
やりきれない思い・・・・それは石川に対してですかね・・・?
最後に石川に話したのは中澤にとってのたぶん思いやりだと思います。
彼女達がこれからどうなっていくのかは彼女たちに掛かってます。
29:いしごま防衛軍さん
>ありがとうございます。
更新の量ってほとんどが毎日でしかもいつもこんな量なんです^^;
しかも次の更新にあたるのが昨日の翌日・・・・(w
今までも佳境でしたけどこれからも絶えず佳境っぽいです。
これからもがんばりますっ!
- 31 名前:笑顔 〜丘の上の彼女〜 投稿日:2001年12月11日(火)19時35分31秒
そしてそれから一週間の月日が流れる――――――
「・・・・・・・・・・」
真希は冷たく澄んだ空気を胸一杯吸い青い空に白い雲が所々に浮かぶ空を仰ぎ見た。
あれから一週間。
一度もバーには出ていない。
これからもずっとそうするつもり・・・・・。
真希は視線を下に戻した。
真希は緑の草原がそよそよと流れる丘の頂上にいた。
下には所々に小さくだが町並みが見えどちらかというと木々の方が多かった。
そして目の前には―――――
- 32 名前:笑顔 〜丘の上の彼女〜 投稿日:2001年12月11日(火)19時36分40秒
「・・・・・・・・」
目の前には灰色の石のキリスト教の墓石がある。
そこに刻まれる名前は・・・・
「殺した人間に・・・・お墓参られても・・・・・嬉しくないかな・・・・・・?」
真希は小さな花の束をその墓石の前にそっと置いた。
ここに来るのは初めてじゃない。
だけど大分久しぶり・・・。
ずっと来ていなかったのに・・・・・
何とも言えない不思議な感覚。
嬉しくもなく悲しくもなくなぜかここに来るといつもの罪悪感さえも消えてなくなる。
ただ一つ言えることは・・・・とてもここはほっとする・・・・・。
- 33 名前:笑顔 〜丘の上の彼女〜 投稿日:2001年12月11日(火)19時37分36秒
「これで・・・・いいんだよね・・・・・?」
本当ならもう一度あなたに会いたい。
それは再びあなたと過ごしたいのではなく、
自分の本当の気持ちを確かめるため・・・・・。
真希は確かめるように言い墓の前で小さくしゃがみ墓石をじっと見つめた。
墓の向こうにいる彼女は、
心の中に刻まれる彼女の存在は、
どうしてかあれからずっと自分に笑いかけてくれない。
今も・・・・そうだ・・・・・・・
ただ悲しそうにこちらを見ている。
- 34 名前:笑顔 〜丘の上の彼女〜 投稿日:2001年12月11日(火)19時40分01秒
「どうして・・・・・そんな顔で見るの・・・・?」
悲しいのは私なのに、何でそんな目で見るの?
私があなたを殺した事を恨んでるの?
いや、そんな目じゃない・・・・。
何かを憐れむような・・・・『あの時』以前じゃ絶対に見たことのない表情。
「お願い・・・・これでいいんだって言って・・・・それだけで私は・・・・・」
真希はとうとう顔を覆うように両手を顔に添えた。
それだけで私は・・・・心から救われる・・・・・そうじゃないと私・・・・・・
ピピピピピピピ
「!」
突然鳴り響いた音に真希は驚き顔を上げた。
「・・・・・・・・・」
周りを見てみるが音の発信源はありそうにない。
分かってはいたが真希はゆっくりとおもむろにコートのポケットに手を入れた。
- 35 名前:笑顔 〜丘の上の彼女〜 投稿日:2001年12月11日(火)19時43分29秒
「・・・・・はい。」
『もしもし!?真希!?やっと出たっ!あれから何回電話掛けたと思ってんのよっ!
あたしのそれに費やした労苦と時間を返せぇ!!」
「・・・・・切るよ。」
とてつもなくでかい声に真希は携帯から耳を離して呆れるように携帯を見た後言った。
それでも声が立派に大きく聞こえてくるのだ。
微かに向こうから小さくその声の人物を落ち着かせようとする声が聞こえてくる。
「ストップストップ!切るなよっ!それよりあんた一週間も音沙汰ないしどうしたわけ!?
それに今どこにいんの!?』
おもむろに耳に当てて携帯から聞こえてきたのは少しトーンを落としたらしいが
やっぱりいつものでかくて高い声。
この一週間携帯はずっとコートの中で鳴り響いていた。
ずっとそれを無視しつづけていたがボタンを押してみればこの声。
微かに真希は携帯から耳を離しながら会話した。
- 36 名前:笑顔 〜丘の上の彼女〜 投稿日:2001年12月11日(火)19時44分47秒
「・・・・関係ないでしょ・・。それに・・・・私もう・・・・・・」
「関係ない!?はっ!?どうでもいいからバーに来てっ!」
話そうとする自分を遮りその声の主、矢口は話を続ける。
いつも以上にテンションが高くてなぜか暴走している。
「だからっ!バーにはもう行かない。・・・・もう二度と・・・・」
「はぁ!?なぁにふざけた事言ってんの!!んな悪趣味なジョーク聞いてる暇はない
っての!とにかく大至急来てったら来て!」
「・・・・だからぁ!!」
一方的な言葉にムッとして微かに怒りを含みながら言葉を返そうとした時、
「ちょっと電話貸して・・・・・・後藤?とにかく来て。大変なことになってるの。」
「・・・・・・・・」
電話の向こうから声がしてすぐに相手が変わった。
その落ち着いた口調と声にすぐになつみだということが分かった。
- 37 名前:笑顔 〜丘の上の彼女〜 投稿日:2001年12月11日(火)19時46分24秒
「だから何なの・・・・・」
「本当は後藤が来てから言いたかったけど、とにかく、梨華ちゃんもこの一週間
バーに来てないの。」
「え・・・・?」
「それで今裕ちゃんに問い詰めたら・・・・・とにかく後藤も早く・・・・」
「・・・・どういう・・・・こと・・・・・」
電話口の向こうからまた電話を引っ手繰ったのか高い声でいろいろ言ってくる
矢口の声は遠く、真希はもう携帯を持つ腕をぶらんと下に落としていた。
一週間彼女がバーに来てないって・・・・・。
気付いたら私はそこを駆け出していた。
『あなた』を背中に感じ、私は無我夢中で走り始めていた。
- 38 名前:笑顔 〜丘の上の彼女〜 投稿日:2001年12月11日(火)19時48分19秒
ふと後ろからの何か暖かい物に気が付き、振り向くとそこには・・・・
「いちーちゃん・・・・・」
優しく微笑む彼女の姿があった。
どうしてか分からなかった。
だけど彼女は私に微笑み掛けていてくれた。
私はそれにしばらく心奪われ呆然と見つめていた後、すぐに気付いたように走り出した。
このどうしようもなく走り出そうとしてしまう体を動かす感情は一体何なんだろう。
いつもそうだ。
別れを覚悟した今でも、それは尚強く心に残っている。
その時後ろに振り向けば気付いただろう。
彼女がそんな私に、いつまでも『あの時』のように優しく本当に嬉しそうに満面の
笑みかけてくれているその笑顔に・・・・。
- 39 名前:失って初めて気付く本当の気持ち 投稿日:2001年12月11日(火)19時55分21秒
それから一時間弱。
真希はバスやら電車やらタクシーを使いできる限りに一番早くバーに向かうための
交通手段を使っていた。
いつもなら二時間は掛かるバーとその場所を全力で走りぬけるとバーの扉を
荒々しく開け放った。
バンッ!!
「はぁ・・・・はぁ・・・・・・」
膝に手を置き真希は一斉にこちらに振り返った全ての視線を受けた。
しかし、その中には彼女の姿がない。
「どういう・・・こと!?一週間も姿現してないって・・・・・!」
真希はすぐに立ち上がり中澤の目の前まで向かって行った。
近すぎるほどの距離で真希はじっと睨むように中澤を見た。
「・・・・・・・・」
中澤はそれにふっと視線を外し何も答えない。
- 40 名前:本当の気持ち 投稿日:2001年12月11日(火)19時57分27秒
- 「答えてよっ!!裕ちゃん!!答えてっ!!」
真希が中澤に掴みかかろうとしたので矢口が慌てて真希の体を後ろから押さえた。
「ちょ、ちょっと気持ちは分かるけど落ち着いて!」
「っ!落ち着いてなんかいられない!!どういうことなの!?」
「のわっ!」
真希は後ろから脇の下に腕を通し羽交い絞めする矢口をあっという間に
振り解くと中澤の襟元を掴んだ。
「・・・・あんたには言われたくないわ・・。」
「どういう意味!?」
「あんたかて・・・・あの子のこと傷つけたやろ。涙流させたやろ。あんなに・・・・・」
「!」
「あんたのと・・・・うちのは違う・・・・・」
中澤の言葉に真希がびくっとする。
しかし怒りが拭い去れることはなかった。
- 41 名前:本当の気持ち 投稿日:2001年12月11日(火)19時58分59秒
- 「彼女はどこ!?」
真希の言葉に中澤を除く全員が中澤を見た。
「・・・・石川なら・・・自宅に戻って・・・今頃学校やろ・・・」
「!!?」
中澤の言葉は全員、どういう意味なのか分からかったが全員が全て反応した。
「ちょっと裕ちゃん・・・・それ一体どういう意味なの・・・・?」
それでも冷静さを失わずなつみが中澤に改めて問いかける。
「・・・・『あれ』をやったんや。」
「!」
中澤の言った『あれ』に全員が言葉を失った。
ショックと共に計り知れない絶望、それを他でもない真希が一番この中で感じていた。
- 42 名前:本当の気持ち 投稿日:2001年12月11日(火)20時00分40秒
「どういう・・・・意味・・・・!?」
矢口もついには黙っていられなくなり中澤に詰め寄った。
「・・・・あれをやったんや。石川はもう、うちらのことは覚えてない。そして
ここで起こった出来事も全て・・・・・・」
中澤以外全員が息を呑んだ。
何も、言うことができない。
「どうして・・・・・・」
ひとみも珍しく感情を表にして言葉を漏らした。
「本部からの通告や。ちょうど二週間前、電話があったんや・・・それから
一週間、限りある時間の全てをあたしはそれについて考える時間に費やした。
そして答えは出た・・・・『あれ』をすることが彼女にとっても一番良いって・・・・」
「どうして・・・・何も相談してくれなかったの・・・・・?」
なつみが少し悲しそうに俯く中澤に向かって言った。
- 43 名前:本当の気持ち 投稿日:2001年12月11日(火)20時01分44秒
「するかどうか迷った・・・これは本当やで。だけど・・・・その一週間、
石川を見る目をみんなに変えて欲しくなかったんや・・・・」
再びバーに暗い沈黙が流れる。
「・・・・・・・」
真希は一人黙ったまま何とも言えない表情で唇をぎりっと噛んでいた。
「このままじゃいずれ『あの時』と同じことが起きてしまうと本部は思ったん
やろうな。うちも・・・それは薄々感じてはいた。実際いくつものグループが
動き出そうと・・・・」
「だからってっ!!!」
静かに話し続ける中澤に真希が再び前に出て掴みかかった。
「!」
「だからって・・・・どうしてこんな・・・・・・」
中澤から見える真希は止め処ない大量の涙を瞳から溢していた。
- 44 名前:本当の気持ち 投稿日:2001年12月11日(火)20時02分48秒
- 「後藤・・・・・」
「どうしよう・・・・・私・・・・あんなに彼女のこと傷つけた・・・・・
あんなにひどいこと言った・・・・・・」
真希の体が小さく震える。
中澤の服を掴む真希の手の力が徐々に弱まっていく。
「守るって言ったのに・・・・・そう誓ったのに・・・・・・私・・彼女の
こと・・・・・」
とうとう真希は頬に綺麗過ぎるほどの涙を伝わせ中澤にしがみ付いた。
中澤のその体をぎゅっと抱きしめてやった。
「誓ったはずなのに・・・私・・逃げた・・・・・自分が傷つくのが嫌で・・
・・私あんなにひどいこと彼女に・・・・・う・・うわぁ!」
真希は訴えるように溢れ出す涙を全て流した。
- 45 名前:本当の気持ち 投稿日:2001年12月11日(火)20時04分33秒
「真希・・・・・・・」
ひとみは後ろからその真希の後姿を見ていた。
いつもの強がっているその姿はなく、ただ小さい子供のように震えながら泣く
その姿はとても儚くてか弱い存在のように写った。
「梨華ちゃん・・・・・・」
矢口も堪えられなくなり顔を手で押さえたがとうとう涙を流した。
「・・・・・・・・」
なつみもただやるせない表情でその場に立ち尽くしていた。
こうするしかなかった?
全ては決められていたことなのだろうか。
だったら悲しすぎる。
出会った答えがこんなものだなんて・・・・・・。
悲痛な真希の叫びをただただ中澤を含む全員はやるせない表情で聞いていた。
誰のせいでもない。
それじゃぁどうしてこんなことに・・・・・。
人間の力ではどうしようもないような目に見えないその「運命」と言う名の現実に、
ただ全員はどうしようもなく涙を流し、前に多角聳え立つ「それ」を呆然と見ていた―――――
- 46 名前:aki 投稿日:2001年12月11日(火)20時07分19秒
- ここまでです。
本当は39からは明日にしようかと思いましたが載せました。
載せる直前思ったんですけど後藤の行動は矛盾してますかね。
別れを切り出したり失って初めて涙したり・・・。
まぁ、人間の感情なんてそれ自身が矛盾そのものかな、と勝手に理由つけて載せたわけ
なんですけどね^^;
- 47 名前:名無し梨華 投稿日:2001年12月11日(火)20時10分16秒
- 連続リアルタイム(w
ごまがすごく人間らしくて、いいです。
人間って矛盾の動物ですよ。
ま、自論ですけどね(w
- 48 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月11日(火)20時36分01秒
- 読んでてドキドキしました!
梨華ちゃんや裕ちゃん、ごっちんの涙が痛いですねえ。
ごっちんは梨華ちゃんを大切に思っているのに、
過去の出来事から解放される事ができず
ずっと自分を責めてるようなのが辛いなあ・・・。
みんな幸せになってくれー!!!
- 49 名前:桐谷 投稿日:2001年12月11日(火)20時42分27秒
- akiさん、とってもいいです!
初めて空板にきて読ませていただきました。
後藤さん、かっこいいです。これからも頑張ってください。
- 50 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月12日(水)00時05分52秒
- 先が読めない
どうなるんだろ…
毎日楽しみにしてます。
マジで面白い!!
- 51 名前:前スレの89改めJINです 投稿日:2001年12月12日(水)00時13分40秒
- 47>名無し梨華さんの仰る通り、人間って矛盾の塊です。
だからこそ、単純に事がすまないのじゃないですかね…、
何においても。
まただからこそ、深いものがあるんじゃないかな。
「優しく本当に嬉しそうな満面の笑み」の「あの人」
「あれ」を行ったときの中澤の涙、それを知り立ち尽くすみんな。
悲痛な叫びをあげる後藤。
これからどうなっていくんでしょうか。
なんか、せつなくも期待しています。
- 52 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2001年12月12日(水)00時34分50秒
- akiさんお疲れ様です。
後藤の行動は矛盾しているようでしていないと思いますよ。
後藤は確かに梨華に対して酷いことを言ったけど、あの時の後藤のなかには
まだ市井がいた。しかし、市井の笑顔を見た後藤は梨華に対する思いが
はっきりしたんじゃないでしょうか。でも梨華はいない。
自分の言ったことが取り返しのつかないことだとわかっていたから泣いた。
矛盾はしていないと思います。運命のことはよくわかりませんが、
これが運命だったらあまりにも悲しすぎるじゃないですか。
絶対運命は変えられると思います。これからも頑張ってください。
いつでも応援しています。
- 53 名前:M.ANZAI 投稿日:2001年12月12日(水)05時31分22秒
- これほどまでに感情を露にした真希は、ここがスタートして以来初めてです。
それほどに彼女は「あの人」のことで自分を押し込めつづけていたんですね。
しかし「あの人」にはそれが悲しかった・・・
駆け出していく真希、感情を高ぶらせ涙を溢れさせている真希に
「あの人」が微笑みを投げかけていてくれることを願います。
運命を、運命のいたずらを信じたいです。
だって、梨華と真希はあの時見ず知らずの仲なのに出会ったのですから。
また出会わないと誰が言えるでしょう。
何度も読み返して、いろんな思いが駆け巡り、
多くの言葉があったはずなのに上手く書けません。
この先に期待しております。
- 54 名前:aki 投稿日:2001年12月12日(水)11時36分03秒
- おぉ!?!たくさんのレス本当に皆さんありがとうございます(T_T)
47:名無し梨華さん
>続けてリアルタイムありがとうございますっ。
あぁ、確かに矛盾してるとなぜかそれに比例して人間らしさって
出てくるかもしれませんね。
良かった(w
48:名無し読者さん
>ありがとうございますっ!
みんな涙を流してますね、それぞれがそれぞれの感情の中での涙
ですけど元はみんな同じことから・・・・。
後藤はある意味すごく真面目で純粋なのが心に傷も作ってしまったし
自分を責めてしまうんでしょうね。
がんばりますっ!
49:桐谷さん
>初めてのレスありがとうございますっ。
いいと言って貰えて感じて頂けて嬉しい限りです。
これからもがんばりますっ!
- 55 名前:aki 投稿日:2001年12月12日(水)11時53分09秒
- 50:名無し読者さん
>レスありがとうございますっ。
先が読めませんか、書いてる側としては密かに嬉しかったりします(w
これからの展開読んでいくごとに更に先が見えないぐらいに
がんばりますよ(w
面白い<ありがとうございますっ!できるだけ毎日更新できるように
がんばりますっ。
51:JINさん
>おっ、ずっと読んで下さってるんですね。ありがとうございますっ。
矛盾しているから人間らしくて人間なのかもしれないですね。
ロボットみたく感情のないまま決められた事や決まった事をただやって
いたんじゃつまらないですし・・・。
期待に答えられるようにがんばります!
52:いしごま防衛軍さん
>ありがとうございます^^
「運命」ばかりのせいにするのはまずいかもしれませんね。
そう口にすることによって責任をそれになすりつけるのはまずい・・・。
運命は私も必ず変えられると信じてます。
そして変える力は誰にでも秘められているはず。
ありがとうございます。がんばりますっ。
53:M.ANZAIさん
>ありがとうございます。
「あの人」はどんな時でも後藤を見守っているはず。
そして後藤の心の中にもいい意味であの人は残っている・・しかし今はそれが
違う形に変わってしまったんですよね・・・。
二人の運命を私も信じます。
がんばりますっ。
- 56 名前:違和感 投稿日:2001年12月12日(水)19時36分32秒
「・・・・・・・・・・」
ベッドに体が横になったまま目覚ましの音で目が覚める。
窓から差し込む朝日が気持ち良かった。
意識はまだ完全にはっきりしてなくて目を開けたまましばらくはただ静かにぼーっと
横になっていた。
しばらく経って壁に掛けてある時計を見る。
午前6時50分。
ベッドから体を起こしパジャマのままダイニングへと向かう。
トースターにパンを入れてその間に冷蔵庫から牛乳をグラスに入れ一口飲む。
ストンッと軽やかな音を立ててパンがそれから飛び出す。
それを口に加えたまま自分の自室へと戻る。
パジャマから制服へ着替えまたダイニングへと戻る。
パンを一気に飲み干して胸に少しつかかったのを牛乳で流しいれるとそのまま
洗面台へと向かった。
「ふあ〜・・・・・・・」
大きなあくびで瞳に涙を微かに浮かべ歯ブラシに歯磨き粉を付ける。
そしていつものようにうがいをして顔を洗って髪を整えてちょうど7時半。
- 57 名前:違和感 投稿日:2001年12月12日(水)19時38分58秒
- 「いってきま〜す・・・・・」
誰もいない部屋に別れを告げ、梨華は後ろ手にドアを閉めカギを掛けた。
寒い外へと制服のコートと学校指定の地味な白のマフラーを付けて足を踏み出す。
7時半にも関わらずまだ外は明るくなかった。
寒い冬の北風が痛いほどに体に突き刺さる。
これがいつもの学校に行くまでの朝の日課。
いつも同じ事をして同じ道を通って学校に通う。
ただこの約一ヶ月近く、梨華にとって不可解な事が起こっていた。
- 58 名前:違和感 投稿日:2001年12月12日(水)19時40分44秒
- 「・・・・・・どうしてだろう・・・」
それは記憶がないと言う事だった。
梨華はコートに手を突っ込みながら一人駅までの道で呟いた。
この一ヶ月の記憶がまるっきり梨華にはなかった。
正確には見に覚えのない事ばかり。
親戚のおばさんによれば自分はずっと何らかの病気に掛かり学校に許可を
取った上で休んでいたらしい。
ちゃんと記憶の中には病院に通院していたらしきそれがある・・・・。
「らしい」と言うのが変と自分でも思うが全くそれらが具体的には頭の中に思い
浮かばれないのだ。
定期的に通って薬を貰っておばさん達がたまにお見舞いに来て・・・・そんな
あからさま過ぎるほどの当たり前で当然な記憶しかなかった。
そして今日は学校を休んでいてからの初めての学校だった。
俯きながら考えていると人の歩く音や町の喧騒が聞こえてきた。
顔を上げるとそこにはすぐいつもの駅が聳え立っていた。
「・・・・・・・・・」
納得できないまま梨華は駅の改札口へと走って行った。
- 59 名前:違和感 投稿日:2001年12月12日(水)19時43分29秒
――――――プシュー
音を立ててドアが閉まる。
「・・・・・・・・」
梨華は一番窓際で走る電車から流れる町並みをぼーっと眺めていた。
何かが違う。
何かは分からないけど何か違和感みたいな物が心の中に残る。
そして一番大切な部分が自分の中から欠けてしまったような・・・・。
胸にぽっかり穴が開いたような気持ちだった。
いくつかの駅を通り過ぎやっと自分の降りるべき駅が次にやって来た。
「〇〇駅〜〇〇駅です〜。降り口は正面に向かって左側になります〜。」
のんびりした口調の男性の声が車内に響く。
そしてそれから1分もしないでその駅のプラットホームに電車が流れ込んだ。
まるで津波のようにその駅へたくさんの人が流れ出る。
梨華もそれに押されるように一緒に駅に降りる。
すぐにほとんどの人間が改札口に向かうため駅の構内に出るための階段に足を
運んでいった。
あっという間にプラットホームはがらんとした寂しい物に変わった。
- 60 名前:違和感 投稿日:2001年12月12日(水)19時45分02秒
- 「・・・・・・あれ・・・?」
梨華は同じようにして階段を登りに行こうとしたが足が進まなかった。
何かが、おかしい。
「何だろう・・・・・」
何かは分からなかった。
なのに体がスムーズに動かない。
心も、何かが欠けたようにぽっかりしている。
つい一ヶ月前はこうすることが当たり前で普通だったのに、今では何か違和感がある。
どうしてか、こうすることが当たり前ではない物に変わっていた。
何かが違う・・・。
こんなんじゃない・・・・
でも・・・それじゃあ何・・・・?
この違和感を埋める物は一体・・・・・
梨華は呆然としたままプラットホームにいる駅員や殺風景な周りの風景を見ていた。
- 61 名前:違和感 投稿日:2001年12月12日(水)19時48分56秒
- 「6番線、14車両の〇〇行きの電車が到着します。足元の白い線の内側までお下がり
下さい・・・・・・」
プラットホームに再び駅員の声が流れ梨華ははっとした。
「・・・・・・・・」
拭い去れない違和感を抱えたまま梨華は歩き出した。
当たり前だったはずの学校への道へと―――――
- 62 名前:違和感 投稿日:2001年12月12日(水)19時49分36秒
「あ、おっはよう〜!風邪治ったの?」
「おっ!やっと来たか!ちょっとすっごい久しぶりなんだけど。元気だったぁ?」
「・・・・・・・・」
教室に入るなり顔見知りのクラスメートに声を掛けられても梨華はしばらくぼーっとしていた。
教室の中は一ヶ月前と同じように自分と同じ制服の生徒達がにぎやかに話し合っていた。
いつものように・・・・・。
「お〜い、聞こえてる?それともまだ病み上がりできついの?」
一人が梨華の顔の前で手をひらひらと振った。
「ううん・・・・大丈夫・・・・・」
適当に返事して梨華は未だぼーっとしながら自分の席についた。
「?」
声を掛けた二人が同時に首を傾げそんな梨華に顔を見合わせた。
- 63 名前:違和感 投稿日:2001年12月12日(水)19時52分02秒
キーンコーンカーンコーン・・・・・
学校の鐘が鳴ると教室で他愛無い会話を楽しそうにしていたクラスメート達がそれぞれ
自分の席に向かい座った。
そしてしばらくして担任の教師が教室にやって来る。
「あ、石川さん。風邪は大丈夫なの?」
「はい・・・・大丈夫です・・・・・・」
「病み上がりなんだから無理しなくて良いからね。何か体調が悪くなったらすぐに・・・・・」
「・・・・・・・・」
それから何やら言う担任の声は悪いが全く梨華には届いていなかった。
何なんだろう・・・これは・・・・・・。
今更またあの違和感が大きくなっていく。
つい一週間前おばさんに言われた時よりも疑問は増えていっていた。
全くそれ以前のことを覚えていなくて、その時もおばさんに自分がこの一ヶ月何を
していたのかを尋ねた。
すると自分は風邪をこじらせこの一ヶ月を大事を取って休んでいたらしい。
でも何かおかしい。
記憶の中には病院の記憶もお見舞いに来てくれたおばさんの姿も電話をくれた
友達の声も残っているのに・・・・。
- 64 名前:違和感 投稿日:2001年12月12日(水)19時53分45秒
- それから授業はさっさと進み時間は過ぎていった。
有名私立高校だけあって授業進度は都立とは比べ物にならないほど速い。
先取り教育で高校三年間分を二年でやってしまうのだ。
そのため一ヶ月のハンデはかなり大きかった。
さっぱり授業の内容が分からない。
だけどそれにも至って梨華は焦る事もなかった。
ただ頭の中にあるのはこの胸にぽっかり空いた空白の部分だけ・・・・。
キーンコーンカーンコーン・・・・・
放課後を知らせる鐘が鳴る。
それと同時にさっさと帰宅する生徒も街に繰り出す生徒も部活の生徒もざわざわと教室から
教師が出て行くと同時におしゃべりを始める。
- 65 名前:違和感 投稿日:2001年12月12日(水)19時54分57秒
- 「ほい。休んでた分のノートのコピー。やっぱりきついでしょ?一ヶ月休むと。」
「あっ、ありがとう・・・・・」
喧騒の騒がしい教室で仲の良い友達が熱い紙の束を持って帰り支度をする梨華も元へ
やって来た。
これには梨華も感謝の気持ちを一杯含みお礼を言った。
「いいって。それより一ヶ月も学校休むほど風邪ひどかったんでしょ?早く今日は
家に帰りなよ。」
「うん・・・・」
「あ、梨華〜?もう聞いてよ〜、この一週間分の係りの仕事全部あたし一人でやったんだよぉ?」
向こうからこちらに気付き明るい調子でまた違うクラスメートが側にやって来る。
「あ・・・・ごめんね・・・」
「あはは、いいって。いじわるしてみたかっただけ。早く元気になりなよ?」
「うん。」
- 66 名前:違和感 投稿日:2001年12月12日(水)19時58分31秒
- それから帰るまで、すれ違うクラスメートや道が一緒になった友達にたくさん
声を掛けられた。
一ヶ月休んだことでみんながこんなにも暖かく接してくれるのが嬉しかった。
何もかもが今までと一緒だ。
この空白の一ヶ月意外は全て・・・・。
一緒に帰るかどうか誘われたがそれを梨華は断った。
病院を理由にし友達と学校の門の前で別れた。
何の疑いも掛けずその子は笑顔で「お大事にね!」と言い別れてくれた。
それに少し罪悪感が残る。
本当は一人になりたかった。
なぜかはわからないけど、このままみんなといるとこの疑問や違和感が
消えてしまいそうな気がしたのだ。
自分の中で何でもないことに変わってしまうことが怖かった。
何よりそれらを感じなくなってしまうことが・・・・・。
帰り道、梨華は一人そのまま自宅へと向かっていた。
大きな疑問と違和感を抱えたまま、明日からまた続いていく当たり前だったはずの
生活に備えて・・・。
「・・・・・・・・・」
それを上から別々の場所でそれぞれ見張る者、ちょうど三人・・・・。
- 67 名前:aki 投稿日:2001年12月12日(水)19時59分26秒
- 今日はここまでです。
- 68 名前:名無し梨華 投稿日:2001年12月12日(水)21時22分38秒
- う〜…梨華たん…ガンバレ(何を?
ごまたん…ガンバレ(イロイロ
akiさん…ガンバレ(これが言いたかっただけ(w
- 69 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2001年12月12日(水)23時16分22秒
- とにかく梨華が全てを思い出してしまったらどうなるのだろうか?
akiさんファイトいっぱーつだ。(すみません、よくわかんない文章で)
ただ応援しているということを言いたかっただけです。
- 70 名前:M.ANZAI 投稿日:2001年12月13日(木)11時58分58秒
- かつての、ごく普通の日常に戻った梨華、このまま過ごしていくことが
“あの場所”のメンバーにも彼女自身にもベストだとされる判断だったわけですね。
>このままみんなといるとこの疑問や違和感が消えてしまいそうな気がした
彼女の中にかすかに残るこの違和感が、このあとの彼女をどこへ導くのか・・・
akiさんの素晴らしい文章に、この先の展開が気がかりになっています。
続き、期待しております。
- 71 名前:aki 投稿日:2001年12月13日(木)17時54分41秒
- 68:名無し梨華さん
>ありがとうございます^^
レス見たときなんだかおもしろくて楽しかったです(w
梨華ちゃんも後藤もついでに私もがんばりますっ!
69:いしごま防衛軍さん
>ファイト一発ですね(w
楽しいレス嬉しいです。やる気出ますっ(w
これからも石川からは目が離せなさそうです。がんばります!
70:M.ANZAIさん
>嬉しいお言葉本当にありがとうございます。
違和感が残ったのも奇跡かもしれないです。
それだけ梨華にとってこの一ヶ月のことが何よりも大切だったんでしょうね。
続きも期待に答えられるようにがんばりますっ!
- 72 名前:取り巻く者達2 投稿日:2001年12月13日(木)20時32分03秒
――――――
カーテンと特殊なガラス張りの車の運転席部分に向こうから歩いてきた男が
すっと乗り込んだ。
ドアがぱたんと音を立てて閉める。
「どうやら中澤は本当に彼女に術を掛けたみたいです。」
男は後部座席をバックミラーで確認しながら静かに言った。
「・・・・そうか・・」
後ろに座っていた太り目の男性は相手の言葉に顎に振れながらしばし黙った。
「中澤には・・・つらい役を任せてしまったようだな・・・・。しかし・・・こうする
しかないのだ・・・・・」
「そうですね・・・・・・」
つらい表情を浮かべ2人はそれ以外何も言葉を交わさず、しばらくして車はそこから
静かにエンジン音を立て消えていった――――――
- 73 名前:取り巻く者達2 投稿日:2001年12月13日(木)20時33分36秒
――――――
「なんだとう!?」
「だ、だから・・・その・・中澤は石川梨華にアレをしたらしいです・・・・。
今は石川梨華は普通の女子高生の生活に戻っていまして・・・・・・」
男が気まずそうにして相手に告げる。
「くそっ!あの豚会長まんまとやってくれたな・・・・・」
男は机をばんっとすごい力で叩いた。
そしてくやしそうに歯軋りをする。
「『あの時』の再来に備えてのためか・・・・・結構なことをしてくれるじゃないか・・・・・」
隣では秘書の男が怒りで狂うその男の横で気の利いたことも頭に思い浮かぶこと
もできずただおどおどと視線を泳がしていた。
「ふっ・・・・・ならばこちらにも考えがある・・・・大きな力を・・・・神にも
届く力を手にするのは・・・私だ・・・・・・」
不敵な笑みを口元に小さく浮かべ悔しそうな表情も浮かべつつ男は椅子に再び
座りなおした。
- 74 名前:取り巻く者達2 投稿日:2001年12月13日(木)20時34分30秒
「例のあれは、今どうなっている?」
「あ、・・・はっ、例の物は今必死に残り一つをAグループ班が探している模様です。
それも時期に社長の手に届くかと・・・・・」
「そうか。ならばいい。何も・・・計画には支障は出させん。」
男はその答えに満足すると広げていた掌をぎゅっと握り締めた。
「神をも超える力を手にするのは私だ・・・・・何者も、この運命からは逃れられん・・・・。」
卑劣な笑みを浮かべ、男は隣の秘書にも聞こえいほどの小さな声でそう呟いた。
- 75 名前:取り巻く者達2 投稿日:2001年12月13日(木)20時35分10秒
――――――
それから翌日、梨華は疑問を抱えたままとりあえず学校に通っていた。
しかしだんだん体がそれに普通になっていくのも感じていた。
朝食を食べて、満員の電車に乗り、学校に行く事が・・・・。
あれから今日は5日目。
梨華はそんな日常に慣れてしまうことへの大きな不安を抱えて今日も学校に
通うところだった―――――
- 76 名前:取り巻く者達2 投稿日:2001年12月13日(木)20時36分07秒
―――――――
「「ぬわんだってぇ!?!!?」」
「うわっ・・・!」
突然の飯田の言葉に加護と辻が目を目一杯に見開き驚愕の声を上げた。
「・・・・・・・」
保田も驚きを隠せず驚いた表情のままただ呆然と何も言葉が出てこなかった。
「び、びっくりさせないでよぉ・・・・」
返って来た反応に飯田は一人情けない表情で後ろに吹き飛ばされそうになっていた。
「どういう・・・こと、それ・・・・」
呆然としたまま保田がやっとそれだけ飯田に問い掛ける。
「だから・・・・・アヤカの所から今連絡があったんだけど何でも石川が裕ちゃんに
あれをされたとか・・・・・」
「「「・・・・・・・・」」」
これにはさすがの三人も何も言えなくなってしまった。
ただ呆然とし何かを言おうと考えても何も言葉が出て来ない。
- 77 名前:取り巻く者達2 投稿日:2001年12月13日(木)20時36分42秒
- 「そ、それじゃ・・・・加護達のことも覚えてないって・・・ことですか・・!?」
加護が混乱しながら必死に保田達に問い掛ける。
「・・・・そういう・・・ことになるわね・・・・・」
保田はやるせない表情でそれに答える。
「辻達と焼き芋食べた事も・・それ以外のこともみんな・・・・」
辻もただ唖然として声を震わす。
「加護達と友達だってことも・・・・・・何よりうちらと友達だった梨華ちゃんが
いなくなったってことですか!?!!?」
加護の瞳が微かに潤いだす。
「・・・・・・そうだよっ・・・・!」
居た堪れなくなって保田は微かにやけになりながら強く言い返す。
「裕ちゃん・・・・・・」
飯田も悲しそうに中澤の名前呟くように呼んだ。
- 78 名前:取り巻く者達2 投稿日:2001年12月13日(木)20時38分54秒
『あれ』と言うだけで何か伝わるそれ。
それは「記憶操作」だった。
能力に目覚め、術を欠かすことなく磨いた高レベルの者が取得することができるそれを
扱える者は本当にごく少数。
生半可な気持ちでは習得することはまず不可能なそれは扱う人間を選ぶ。
しかし本部が出来た今、それを勝手に使用する事は許されていなかった。
それだけ強力でそれをされた人間の人生も変えてしまいかねないからだ。
一度それをされた人間にはそれ以上の記憶操作を行うことはできずそれを
治す事も不可能。
そして・・・それをされて記憶の戻った者はいないとされている・・・・。
「石川・・・・・・」
保田は自分でも気付かないうちに小さく声を漏らしていた。
何とも言えない喪失感。
あれから何の接点が会った訳ではないが何か大事な物が欠けてしまった空白感。
仲間という名のかけがいのない大切な人を永遠に失ってしまったような・・・・
そんな一言ではとても言い表せないような感情にここにいる全員がのまれていた・・・・。
- 79 名前:遅すぎる後悔 投稿日:2001年12月13日(木)20時42分19秒
―――――――
「・・・・・・・・・」
下には他でもない彼女が自宅から最寄りの駅へと向かうところだった。
それを何とも言えない表情で見守る少女が一人。
至って普通に学校へと向かう彼女の制服姿は少女の胸を計り知れないほどに
締め付けさせた。
同じ顔、同じ体、同じ瞳でも自分が今まで接していた彼女と今目の前にいる彼女は
全くの別人。
何かに対する怒り、苛立ち、そしてそれとは全く反対の感情、とてつもなく悲しく
切なくやるせない、なのに心のどこかでは安心している。
これで彼女が危険に晒される事がないというのはあれからしばらく経った今は冷静に
考える事が出来た。
あのままでは彼女は絶対にあの事件と同じことを起こす中心的人物になっていたに
違いない。
いや、起ころうとしていたそれはあの時よりも遥かに醜くて汚い物になっていたかもしれない。
それならばこうすることの方が彼女にとっても安全でいいのかもしれないと思う。
だけど・・・・・
- 80 名前:遅すぎる後悔 投稿日:2001年12月13日(木)20時44分24秒
- 「・・っ・・・・・・」
言葉も何も発していないのに、頭では必死に理解しているはずなのに、
涙は自分の瞳から溢れ出してしまう。
中澤に告げられた時あれほど涙は流したはずなのに・・・・。
何よりも大切な物をどこかに置いてきてしまったように、時に考え込む彼女の
表情が切ない。
そして普通に生活している彼女の普通の表情を見るのが苦しかった。
「ごめんね・・・・・・」
涙を流しながらただ聞こえる事のない懺悔の言葉を彼女へと小さく告げる。
あんなに守るって約束したのに・・・・。
大丈夫だって・・・・守るからって彼女の目の前で誓ったのに・・・・。
守る方法はこれ以外にもあったはず。
もしその時が来たら自分は傷ついてでも彼女を守れば良かった。
それなのに・・・・・私は・・・・・・。
「っ・・・ごめんねぇ・・・・・」
もう二度と彼女の目の前に現れないって、消えるってその前に決めたはずなのに・・・。
失って初めて気付くその大切さ、本当の気持ち。
失ってからでは・・・・もう遅い・・・・・。
「・・・・・・・・っ・」
真希は涙を腕で雑に拭うと顔を彼女から横に外し静かに音も立てずスッと消えていった。
- 81 名前:遅すぎる後悔 投稿日:2001年12月13日(木)20時45分47秒
「・・・・・・?」
何か風がスッと切るようにして微かに聞こえた音に梨華は後ろに振り向いた。
当然そこには誰もいなかった。
誰もいないのだからすぐに前に向き直り再び歩き出せばいいのだが、梨華はしばらく
ずっと後ろを振り向いていた。
何でか、梨華にも分からなかったがそこからずっと目を離すことができなかった。
- 82 名前:不思議な感覚 投稿日:2001年12月13日(木)20時48分28秒
――――――――
「2番線に電車が入ります〜。白い線の内側にお下がりください〜。」
「ドアが閉まります。駆け込み乗車は危険ですので止めて下さい。・・・・それでは
発車します。」
「・・・・・・・・・」
駅につくとそこはもう慌ただしくサラリーマンや同じ学生やらOLやらで
ごった返していた。
梨華は改札口に定期を通し、ただゆっくりといつものプラットホームへと向かっていた。
周りを忙しく人々が行き交う。
自分は周りとはワンテンポ遅く歩いていた。
それを迷惑そうに見たり、そんなことよりも遅刻しないように必死に走ったりと
たくさんの人が梨華を追い抜いていく。
- 83 名前:不思議な感覚 投稿日:2001年12月13日(木)20時49分40秒
「・・・・・・・」
あの時の違和感、空白感、疑問はまだ胸の中に残っていた。
しかしそれは時間と共に砂漠に放置されたように砂を被り風化していきどうでも
よくなっていくのも感じていた。
それと共にとてつもない不安が生まれていく。
不安は生まれたときよりも遥かに大きく胸の中に存在を主張していた。
いつもの倍以上の時間を掛けやっとプラットホームについた。
いつもならここに7時50分ぐらいにはついていないといけないのに今はもう
8時をゆうに超えていた。
しかしなぜか焦る気持ちにはならなかった。
それよりもこの不安に対しての気持ちの方が大きい。
「・・・・・・」
制服に隠れている腕時計を腕元に出すようにしながら梨華は時計を見た。
午前8時19分。
あと少ししたら学校の一日の始まりを知らせる鐘がなる。
そして担任も教室にやって来る。
- 84 名前:不思議な感覚 投稿日:2001年12月13日(木)20時50分46秒
プ――――ッ!!サーーーー・・・・・・
大きな音を鳴らし電車がホームに入ってきた。
それと同時に風が目の前をすごい勢いで流れる。
梨華の髪と、制服とスカートが横に流れた。
「もう・・・いいや・・・・・・」
梨華は時計のつけている腕をまた下に降ろし興味なさげにそう呟いた。
今日はもう学校には行かない。
今から慌てて行っても無駄だし何よりこの不安を抱えたまま無理に普通の生活を
送ろうとするのにはかなりの体力が必要だから。
実際この5日間、ずっと自分の心に無理しすぎて疲れていた。
梨華は音を立てて左右に開いた電車の出入り口に足を踏み入れた。
- 85 名前:不思議な感覚 投稿日:2001年12月13日(木)20時52分22秒
(あれ・・・・・・?)
何だろう、この気持ち・・・・。
もう学校には行かない。
遅刻しているからどうせ急いでも一緒・・・・。
今考えたことがすごく懐かしいような気がした。
普通に考えた事なのに・・・・・。
遠い昔、何かがそこから始まったような・・・・・・。
梨華は新たに生まれた疑問から今さっきまでの大きな不安が微かにだが軽くなった
のをまだこの時は気づいていなかった――――――
- 86 名前:aki 投稿日:2001年12月13日(木)20時54分29秒
- ここまでです。
今回は載せる前に一通りチェックしてたので疲れずにかなり早く更新できました。
今年中には・・・・終わるかな・・・・?^^;
- 87 名前:M.ANZAI 投稿日:2001年12月13日(木)21時29分28秒
- “例の物”を探し出し、“神をも超える力”を欲しようとする奴等・・・
そのモノが何なのか、何をしようとしてるのか、
例によって謎は深いまま、やきもきする気持ちは作者の思うまま・・・
中澤が手心を加えたとは思えませんが、梨華に対する思いがその術に
何らかの影響を及ぼしたのでは・・・とは深読みし過ぎでしょうか?
梨華を見るそれぞれの視線がそれぞれの立ち位置を鮮明にしていて
さらにその目を通した各々の思いまでしっかり浮き出ています。さすがです。
中澤に術を施されて“あの場所”から立ち去ってから一週間、
さらに元の学生生活に復帰して5日間、誰もがもはや戻りようの無い
梨華の姿を認めた頃に、彼女の取った行動とは・・・まさか・・・。
- 88 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2001年12月13日(木)22時46分35秒
- うーむ、神をも超える力を手に入れようとしている者達の考えも分からないこと
もない。誰だって力を手に入れたいと思うことはある。
それがあるから争いは起きると思う。それを抑えるためには強大な力を持つもの
が必要なんですが、それが本部なんでしょうか。しかし、本部にはそれほどの力
がないような気が・・・。
なんか梨華が奴等に利用されそうだ。梨華は記憶を取り戻し始めたのかな?
今後に期待しています。(^−^)頑張れ!!
- 89 名前:名無し梨華 投稿日:2001年12月14日(金)14時31分34秒
- ドキドキドキドキ・・・・・
しんぷるな感想をお伝えしました(w
- 90 名前:aki 投稿日:2001年12月14日(金)16時19分05秒
- 87:M.ANZAIさん
>レスありがとうございます。
謎はまだまだありますね、やきもきさせてしまって申し訳ないです^^;
中澤は故意に力を弱めたとは考えられません。
それは梨華に対しても失礼ですし覚悟を決めた以上全力でやったはず・・・。
しかしやっぱり心のどこかでは梨華に対しての気持ちは拭えなかったん
でしょうね・・その「全力」に歯止めは掛かったはずです。
深く読んでくれて嬉しいです^^
いろんな視点から書いた今回の更新では結構分かりづらいかなと不安も
あったんですけど良かったです。
88:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
「あの時」の再来に関して予防していたり見守っていたりしてるので
もしかしたら本部はさほど力を持っていないかもしれません。
実際本部が出来た今でもこの世界のルールというのはあまりなく自由勝手な
感じですからね^^;
これからもがんばりますっ!
89:名無し梨華さん
>ありがとうございますv
がんばりますよー!
ちなみに私も一読者としてあちらの更新をドキドキしながら
待ってます(w
がんばってくださいっ!
- 91 名前:始まる物語 投稿日:2001年12月14日(金)21時24分02秒
- 電車に乗るともう8時過ぎのためか椅子が少しだけ空いていた。
いつもなら満員のため朝は座る事は避けるのだが、今日は座る事にした。
ちょこんとそこに座るとすぐにすごい人が電車に乗り込んできて8時過ぎた今も
やっぱり電車は満員へと変わってしまった。
(う〜・・・・・・)
電車が走り出す。
梨華は小さく心の中で唸り声を上げた。
満員の時椅子に座ると目の前がすごく圧迫感があるのだ。
立っている人達は普通なら入りきらないようなスペースに強引に入ってくる。
あっという間に前も左右も人、人、人だらけになった。
立っていると壁に持たれかかりまぁ楽なのだが、座っていると自分のすぐ目の前
まで倒れそうになりながらも詰めてくる。
いつものように座らなければ良かったと梨華は今後悔していた。
- 92 名前:始まる物語 投稿日:2001年12月14日(金)21時25分39秒
- それでも一つ、二つと駅を抜けていくうちに、電車の中からは徐々にだが人の数が
少なくなっていった。
小さくため息を吐き、椅子を小さく座りなおした。
「次は〇〇駅〜〇〇駅です〜。××線への乗り換えはこの駅になります〜。
降り口は向かって左側になります〜。」
俯きがちだった顔を上げた。
いつのまにか次はいつもの降りる駅まで来ていたらしい。
少し慌ててコートのポケットから定期を出す。
しかしすぐにその腕は止まった。
(・・・・そうだ・・・そうだよ・・)
今日はもう学校は休むんだった。
だからもう慌てる必要はないじゃん・・・・。
出しかけた定期を再びコートに戻すとただ電車の繰り出す一定の同じリズムに
瞳を閉じ耳を傾けた。
- 93 名前:始まる物語 投稿日:2001年12月14日(金)21時27分46秒
- ホームに電車が入り梨華はとりあえず降りようと椅子から腰を上げた。
鞄を持ち、駅側のドアの前に立つ・・・・
(・・・・あれ・・・?)
電車がホームに入ったため少しづつ徐々にスピードが落ちてくる。
梨華以外にも降りようとする人が後ろに同じようにして立つ。
そんな中突然胸に浮かんだ小さな違和感。
いや、違和感より何かと一致したような・・・・・。
(何?・・・・何これ・・・・・)
体に電流が走ったようだった。
それだけ突然の感覚に動揺し戸惑った。
- 94 名前:始まる物語 投稿日:2001年12月14日(金)21時28分38秒
- ドアが開く。
一斉に人が降りる。
梨華は降りる事が出来なかった。
足が、動かない。
後ろに並んだサラリーマン風な男性が迷惑そうにしながら梨華を抜いていく。
ある人は首を傾げ何だろうと不思議そうに顔を見ながら降りていく。
「・・・・・・・」
その間も梨華はただ呆然と何も見ることも感じることも考える事も出来なかった。
「6番線、〇〇線××行きの電車、発車します。駆け込み乗車はお止めください。」
駅員の声が遠くに聞こえる。
しかし梨華の耳には入ってこない。
- 95 名前:始まる物語 投稿日:2001年12月14日(金)21時32分20秒
プシュー・・・・・ガー―――――
ドアが閉まる。
梨華はその前でただ呆然としていた。
ドアが閉まる事によって心の中に生まれた一致感が再び大きくなり広がっていく。
(この駅で降りなくて・・・それで・・・・・)
呆然と立ち尽くす梨華を乗せて電車は走り出す。
何か不安が、微かに小さくなったのがこの時初めて梨華は感じ取っていた。
それからは流れるように窓からの町並みは過ぎさり、
今の一つ目のホームがあっという間に流れ、気付けば学校の最寄りの駅からの二つ目の
駅に電車が入っていた。
- 96 名前:始まる物語 投稿日:2001年12月14日(金)21時34分37秒
- 「・・・・・・・・」
今までと同じように音を立てドアが開く。
気付くと梨華はホームに降りていた。
考えてやった事じゃない。
自然と、体がまるでそうすることが当たり前のごとく動いたんだ。
どうしてかは分からない・・・・。
そのまま何かの流れに乗るように歩を進めた。
階段を登り向こうのホームへ出て改札口を抜けて・・・・
「・・・どうして・・・・・・」
気付けばもう駅の外に来ていた。
休みの日に若者が集うその街には平日にも関わらずごく少数だが暇そうにしている
制服の子やフリーターのような人が目に映った。
今から会社に向かおうとするサラリーマンやOLの姿も目に映る。
- 97 名前:始まる物語 投稿日:2001年12月14日(金)21時35分41秒
懐かしい・・・・。
なぜかは分からない。
なのにこの心に生まれてくる安心するようなどきどき緊張するような感情は何なのだろう。
梨華は後ろに振り返った。
そこには大勢の人々が行き来する大きな駅の改札がある。
そう、確か前にもここで・・・・・。
学校に行かないでそれで・・・・・
- 98 名前:始まる物語 投稿日:2001年12月14日(金)21時37分38秒
「あっ!」
今心の中で思い始めて梨華は気が付いた。
まだ休む事を学校に連絡していない。
学校が学校なだけ、しかもずっと病気で休んでいたとすれば何か遭ったのでは
ないかと必死に探すに決まっている。
梨華は急いでコートから携帯を取り出した。
指でボタンを動かし学校の連絡先を呼び出す。
画面に電話番号が表示されすぐに梨華は電話を掛けるボタンを押した。
「はい、〇〇女子高等学校ですが・・・・」
向こうから受付の女性の声が聞こえてくる。
「すいません、二年Bクラスの石川梨華です。今日ちょっと学校を欠席したいんですけど・・・」
梨華は電話先の女性と話しながら駅の方へ向いていた体を前に直した。
「ちょっと待って下さい。今担任の谷川先生に・・・・・・」
向こうでは電話の通信を他の場所へと切り替える作業を行っていた。
決まった音楽が携帯から流れ出す。
「はい、谷川です。変わりました。」
「あ、先生実は・・・・・・!」
休む事を伝えようとしたその時、梨華の頭の中は真っ白になり何も
考えられなくなった――――――
- 99 名前:始まる物語 投稿日:2001年12月14日(金)21時39分31秒
目の前に微かに茶を含む髪の少女が通った。
すぐ目の前じゃない。
遠く向こうで。
人と人が別々の方向から行き交い交差する中、彼女は颯爽と歩を進めていた。
さらさらの腰ぐらいまでありそうなストレートの綺麗な髪。
スタイルの良い華奢な体、整った横顔、そして・・・他に二つとないであろう、
その独特のオーラ――――――
「・・・・・・・・・」
梨華は一瞬にして心を奪われていた。
「石川さん?もしもし?」
「・・・・・・・」
携帯の向こうからとやかく言う声は全く耳には届いてこない。
ただ呆然とそこに立ち尽くし、少女の一瞬の姿に何とも言えない感情を覚えていた。
何も考えられない。
(ドクンドクン・・・)
胸の中でこれでもかというくらい高鳴る鼓動、そしてこの瞬間、なぜか心に
あった不安を跡形もなくかき消えていた。
癒される心――――
- 100 名前:始まる物語 投稿日:2001年12月14日(金)21時41分44秒
- 「もしもし?石川さん?」
「・・・・・・・」
携帯を持つ手に力が入らなくなり微かに震える。
ほとんど携帯は耳から離され、あと少しすれば携帯を持つ腕はぶらんと下に降ろされ
そうになっていた。
「・・・・・すいません・・・私・・・今日は休みます。」
「え?」
「失礼しますっ!」
梨華は訳がわからず聞き返す担任を余所にすぐに携帯の切るボタンを押していた。
そして動き出す体。
まるで何かに動かされるように、導かれるように彼女の過ぎ去った場所へ
駆け出していた。
独特のオーラ。
どこか安心する、居心地の良いそれ。
確か・・・・確か前にも・・・・・
それを求める自分。
確か前にも同じようなことが・・・・。
遠い昔に・・・何よりも大切でかけがえのない何かがそこから生まれたような―――――
- 101 名前:aki 投稿日:2001年12月14日(金)21時44分46秒
- ここまでです。
- 102 名前:M.ANZAI 投稿日:2001年12月14日(金)21時51分09秒
- ええーっ!
- 103 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2001年12月14日(金)22時29分50秒
- おおーついに後藤との再会か!(^−^)
でも、梨華はまだ彼女が誰なのかはっきり思い出していない。
だから、どういう再会になるのでしょうか。
これは運命の出会いとかじゃなくて、梨華の本心がそうさせたんじゃないでしょうか。
やはり、大切な人を忘れることはできないと思います。
誰かがいくら忘れさせようとしても。
なんか偉そうなこと書いてしまいました。申し訳ない。
しかし、正直なきもちです。
あとは見守るしかありませんなあ。ベストを尽くしてください!
- 104 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月14日(金)23時49分29秒
- め、目が離せません。
ああ〜。
- 105 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月15日(土)03時31分38秒
- 記憶が戻り始めているのって、やはりクリアの能力がわずかでも影響しているんでしょうか?
- 106 名前:M.ANZAI 投稿日:2001年12月15日(土)12時42分48秒
- クリアの能力が・・・?
そう言えば中澤も、この能力だけは扱ったことがない、というような事を言っていた・・・
あの中澤でさえ予想できない能力が・・・
「始まる物語」今改めてこのタイトルを読み返して、
とんでもない事が頭に浮かんでしまいました。(♪でも言わないでおこう〜)
この続き、とっても楽しみになってました、期待してお待ちいたします。
- 107 名前:aki 投稿日:2001年12月15日(土)18時52分32秒
- 102:M.ANZAIさん
>おお?その「ええーっ!」はこの展開が意外でしたか?それとも驚き?がっかり?
103:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
再開・・・・ふふふ(謎)どうなるか楽しみに待っててください(w
記憶がなくなり後藤のことを知らない石川に戻ってもやっぱり
また新しい形で彼女に惹かれてしまったのかと思います。
持てる力は全て出し切るようにがんばりますっ!
104:名無し読者さん
>これからも離させませんよ(w
がんばります!
105:名無し読者さん
>実は・・・レスを見た時書いてる私も納得してしまいました(爆)
ダメな作者です(w
もしかしたら梨華の気付いていないところで能力が発動してるかも
しれませんね。
アイディア頂いてよろしいでしょうか・・・?
- 108 名前:aki 投稿日:2001年12月15日(土)18時56分36秒
- 106:M.ANZAIさん
>レスありがとうございます。
実は上に書いたようにあらかじめこれに関しては伏線は張ってなかったんです(爆)
考えてみると驚くぐらいにマッチしてしまうので本当に
作者としてはダメダメです。
タイトルで思いついたとんでもないこと、気になりますねぇ。
続きもがんばります。
- 109 名前:一致?違和感? 投稿日:2001年12月15日(土)19時08分53秒
- 「はぁ・・・・・はぁ・・・・・・!」
梨華は今さっき彼女がいた場所まで全力で走ってきた。
しかし当然のごとくそこにはもう今さっきの少女の姿はない。
すぐに自分の周りを首を動かし、体の向きを変え近くから遠く向こうまで探したが
どこにもいなかった。
「・・・・・どうして・・・・?」
どうして自分は今こんな事をしているんだろう。
少女に対して確かに言えることはたった一つ、それは赤の他人だと言う事。
今まで出会ったこともない・・・・はず。
なのにこんなにも懐かしいような安心するような気持ちは一体何なのだろう。
そして・・・こうすることが今始めてのような気がしない。
気のせいなんかじゃ絶対に違う。
- 110 名前:一致?違和感? 投稿日:2001年12月15日(土)19時10分31秒
- 少し走って荒れていた息も整い始めたが辺りをいくら見渡しても少女の姿は
見つからず梨華はその場に立ち尽くし困り果ててしまった。
どこにも今さっきの少女が見当たらない。
諦める?
いや、そんなこと絶対にしたくない。
してはいけない。
すぐ目の前の大きな横断歩道の全ての信号が一斉に赤から青になる。
周りにいた人も多くがそちらに流れていった。
「・・・・・・・・」
梨華もとりあえずそっちの大きな通りがある方へ足を向けた。
CDショップ、有名なブランドのお店、大きな本屋が存在するそっちは
若者で溢れ返っていた。
- 111 名前:一致?違和感? 投稿日:2001年12月15日(土)19時11分49秒
- 「どうして・・・・・・」
再び口から零れる疑問の言葉。
自分でも気付かないうちに言葉として発せられるぐらい自分の胸の中には「この」感情に
対する疑問が溢れているのだ。
学校に行かない。
遅刻して、もうどうでもよくて休んで・・・・
それですぐ近くの大きな繁華街に出てぶらついて・・・・
別に普通な事なのにどうしてこんなにも懐かしいんだろう・・・・。
- 112 名前:一致?違和感? 投稿日:2001年12月15日(土)19時15分04秒
- 梨華はこの疑問の答えを必死に心の中で探しながら町を歩いた。
当たりは平日なだけあっていつもならたくさんの人が行き交うそこも今日だけはどこか
がらんとしていて寂しい物だった。
学生の姿はほとんど目にしないが梨華は制服など構うことなく町を歩いた。
そして案の定それは起こった。
(・・・・まずい・・・・・・)
今の自分の位置からは少し離れた目の前の方向で二人組みの男が梨華に気が付いた。
2人の視線は制服から梨華の顔に行きそして最後に二人でこちら全体を見ながら
なにやら話をしている。
「・・・・・・・・・」
その光景に今から起こることを軽く想像し引き換えそうかと思い足を止めようとした。
しかしなぜか・・・こんなことさえもが懐かしいと感じている自分がいる。
二人組みの片方がこちらに軽い足取りで近づいてくる。
なるたけそれに気が付いていないように振舞った。
- 113 名前:一致?違和感? 投稿日:2001年12月15日(土)19時16分31秒
- 「ねぇねぇ。君○○女子高校の生徒だよね?いいのぉ?あんな有名な学校の生徒が
こんな時間に町ぶらついてて。」
「・・・・・・・・」
嫌な前振りに梨華は呆れも似たため息を小さくついた。
「それともまずい仕事でもしてんの?どっちでもいいけどさぁ暇なら遊ばない?」
よくしゃべる男だ・・・・。
目の前で淡々と話していく男を見てそう思った。
答えは当然・・・・
「暇じゃないんです。」
それだけ冷たく言うと梨華はその男を抜き去りまた前に歩き出した。
- 114 名前:一致?違和感? 投稿日:2001年12月15日(土)19時17分48秒
- 「あ〜ちょっと待ってよ。いいじゃん。どうせさぼりでしょ?ね?」
「・・・・・・・」
男は慌てて梨華の歩き出した方向の前に再び進路方向を遮るようにして立つと言いながら
後ろをちらっと見た。
後ろでもう一人の男が小さく頷くのが見えた。
「しつこいんですけどっ・・・・!」
「そう言わないでよ〜。今さ、あいつとどっちが可愛い子ナンパできるか勝負してんのよ。
ちょっとだけでもさ〜。」
「っ!私には・・・・・・」
「しつこいよ。」
男に対して梨華が何か言い返そうとしたその時、それを遮るようにしてもう一つ男でも
梨華の声でもないそれがその場に発せられた―――――――
- 115 名前:一致?違和感? 投稿日:2001年12月15日(土)19時23分02秒
- 「「!?」」
二人は突然の声に驚き同時にそちらを振り向いた。
すると梨華のちょうど後ろ斜め横に彼女はいた。
「・・・・・・??」
見覚えのない少女。
ショートカットで身長が自分より高くどこか男の子っぽい子だった。
「何だよお前・・・・・」
「しつこい男は嫌われるよ?さっさとどっか行きなよ。」
「!」
少女の言葉に男が怒りを露わにしているのが見ていても分かった。
そんな相手の様子に隣の少女は小さく口元を緩める。
「お前いきなり出てきて・・・・・何様・・・・」
「あんたにだけは言われたくない。誰にでも声掛けるやわなナンパ男に。」
「!いい気に乗ってんじゃねえよ、このっ・・・・・」
男が少女の方に一歩近づくと襟元を掴もうとした。
「!」
梨華はそれに驚き目を咄嗟に瞑ってしまった。
しかし少女は後ろに引くことも避ける事もたじろぐ事もしなかった――――――
- 116 名前:一致?違和感? 投稿日:2001年12月15日(土)19時25分59秒
- 「なっ・・・・・!?」
「・・・・・・・」
男の手が少女の襟元に触れようとするかしないかのその瞬間、ぴたっと止まった。
少女が無言のまま嘲るようにそれに苦笑する。
「え?」
戸惑ったような男の声と何の変化も訪れない様子に梨華は恐る恐る目を開けてみた。
「!?」
そして目の前の光景に梨華は目を見開きとてつもなく驚いた。
男がいくら自分の腕を動かそうとしてもそれは断固として動こうとするのを拒否しているのだ。
見ているこちらからにもそれはすぐに分かった。
まるで何かすごい力に掴まれたように・・・・。
「うざいからさっさとどっか行ってよ。」
「う、うわっ!」
少女が言いながら男の目の前に掌を出した。
と同時に、男の体ががくんと思いっきり後ろに押された。
ものすごい衝撃を受けたように男の体が後ろによろめく。
- 117 名前:一致?違和感? 投稿日:2001年12月15日(土)19時29分00秒
- 「な、なんだよ!?今の・・・・。」
「それとあっちも・・・・・・」
少女は目の前で体を支えるようにしてなんとかその場に立つ男の言葉は無視し向こうで
こちらの状況に目を丸くしおどおどしている方の男に目を向けた。
それと同時に向こうでびくっとする男の姿が目に入る。
「!?」
少女がそちらを見たと同時に男もこの目の前の男同様、前から何かものすごい衝撃を
受けたように後ろによろめき小さな悲鳴を上げた後地面にしゃがみこんでしまった。
「な、何・・・一体・・・・・」
梨華は驚いてその光景を目にしていた。
「う、うわぁ!!!?」
目の前にいた男は混乱し向こうへ逃げ出してしまった。
「・・・・・くだらないやつ・・・」
それを楽しそうに苦笑しながら見送る少女。
「・・・・・・」
助けてもらったのはすごく有り難いことなのだが梨華はあまり少女に対して良い
印象を持つことができなかった。
- 118 名前:一致?違和感? 投稿日:2001年12月15日(土)19時30分22秒
- 「大丈夫だった?」
「あ・・・はい・・・・・」
いきなり振り返らると共に今さっきとは全く別の笑顔で微笑みかけられ戸惑ってしまう。
「あ〜ゆう男は気を付けないとねぇ。特にあなたみたいに可愛い子は。」
いたずらっぽく笑みを浮かべる少女に一瞬小さくどきっと時めいてしまった。
それと共に今さっきまでの少女に対するあまりよくない第一印象もどこかへと
飛んで消えていってしまった。
「それじゃね〜。」
「あ・・・・・・・」
少女はそれだけ言い残すとすぐに歩いていってしまった。
- 119 名前:一致?違和感? 投稿日:2001年12月15日(土)19時31分24秒
(何・・・・これ・・・・・)
梨華は胸の中でより一層大きく響く鼓動に戸惑った。
今さっきの一致感がより大きくなっているのだ。
だけど・・・・何か一番重要なところが違うような・・・・・・。
「あ、あのっ!!」
気付くと少女に向かって走り出していた。
彼女は・・・・きっとこの疑問を解くカギを握っている・・・・
必ず・・・・
そして、今しかない・・・・。
そんな気がした――――――
- 120 名前:再生への扉 投稿日:2001年12月15日(土)19時39分13秒
―――――――
「・・・・・・・・・」
驚き。
運命というのは本当に存在するのかもしれないとこの時思った。
そんな目に見えない物、今まではずっと否定していたがこれにはそう思わざるをえない。
だって目の前には駅の改札口で佇む彼女。
そしてその彼女の視線の先、少し向こうには真希が居たんだから。
これをただの偶然と呼べる?
しかもそれを見つめる彼女はただ呆然と真希を見てる。
心を奪われたようにただ呆然と・・・・・。
携帯を持つ手が微かに下がる。
するとそれと同時に彼女は携帯に向かって何か叫ぶように言うとすぐにそれをバッグの
中にしまい走り出していた。
既に遥か向こうに歩いていってしまった他でもない真希に向かって―――――
- 121 名前:再生への扉 投稿日:2001年12月15日(土)19時40分30秒
- 全力で走る彼女を私はただゆっくりと歩きながら後を追っていた。
だって真希の行く方向は分かってるから。
しかし彼女は真希を見失ってしまったらしい。
辺りをきょろきょろ見渡し最後にはため息と共にがっかりするように肩を落とした。
そして目の前の信号が青に変わる。
しばらく彼女はその場でぼーっと佇んでいるとそれからすぐに気付いたように歩道を
渡り始めた。
人の流れる方向に同じように歩いていく。
私もただその後ろ姿を静かに追っていた。
人の波に姿と気配を隠しながら。
そして少し歩くと彼女をじろじろ嫌らしい目つきで見てくる男が2人。
これには私も小さく苦笑してしまった。
まったくよく声を掛けられる子だ。
そして既にそれに気付いているらしい彼女の後ろ姿は当然あらさまに嫌な態度を充分示していた。
「・・・・・・・・」
私はただそれを5mぐらい後ろから静かに傍観していた。
- 122 名前:再生への扉 投稿日:2001年12月15日(土)19時42分19秒
話しかけられている様子。
男が軽いテンションで彼女に話し掛けてるのが分かる。
当の彼女は・・・・案の定最大の嫌悪感を後ろ姿からこれでもかというくらい
醸し出していた。
それからしばらくしても男は諦めない。
「・・・・・・・・」
気付くと私はその場へと歩を進めていた。
何でかなぁ?
分かんないけど気付いたらそうしてたんだよね。
中澤さんにばれたら殺されちゃうよ。
だって今から私がしようとしていることは物語の再生なんだもの。
リセット。
そして新たなスタート。
今までのみんなの涙も中澤さんのしたことも無駄になっちゃうかもしれない。
- 123 名前:再生への扉 投稿日:2001年12月15日(土)19時43分27秒
―――――――
『私、あんなにひどいこと彼女に・・・・』
『守るって言ったのに・・・・・・』
『う・・うわぁ!』
「・・・・・・・」
あの時の真希の叫びが脳裏に蘇る。
- 124 名前:再生への扉 投稿日:2001年12月15日(土)19時44分06秒
- あんな真希を見たのは初めてだった。
そして涙も。
実は私は『あの事件』が起きたその時期にはまだバーの存在は微塵も知らなかった。
聞けばあの事件のすぐ後に私は来たらしい。
だから話には聞いている物のその事件以降の真希がどういう人間だったのかは
知らなかった。
私の目に映る真希はどんな物にも興味を示さないでいつもぼーっとしている。
そして感情を滅多に表に出さない性格。
私は来て真希を見てすぐ彼女に対して興味が湧いた。
- 125 名前:再生への扉 投稿日:2001年12月15日(土)19時47分29秒
- それからしばらくしてあの事件の存在を知った。
しかし話を聞いた後でもあまりぴんとこなかった。
そして私はわざと彼女を怒らせるようなことやいらつくことをした。
それによってちゃんと反応を返す真希の姿は私の心のどこかをほっとさせていた。
いつも冷静で無感情な彼女に果たして「感情」というものがちゃんと
あるのか心配だった。
そしてそれからしばらく経ち例によって石川梨華がバーに来始める。
彼女が真希に対して私とは別の感情から興味を湧いている様子は見ていてもすぐに分かった。
そして真希は彼女と出会い急激に変わっていった。
正確に言えば私の知ってる真希が、だが。
怒り、いらだち、不安、戸惑い、安心、全てを素直に現す真希はとても目に新鮮だった。
いつのまにか私にとって真希は目の離せない人物になっていた。
「好き」という感情でもない、なぜか見守ってしまう存在・・・・・。
- 126 名前:再生への扉 投稿日:2001年12月15日(土)19時48分29秒
- そんな彼女にはこの世にたった一人しかいない少女、「石川梨華」の存在が必要だ。
もちろん私は石川梨華に対しても真希とは異なる感情を抱いていた。
「好き」?
分からない。
これが正直な気持ち。
『あんた彼女のことどう思ってんの?』
この前真希に彼女に対して疑問を尋ねた時、
あれはもしかしたら真希に対してもかもしれないし彼女に対してなのかもしれないと
あれから考えそんな小さな答えが出ていた。
もしかしたら彼女よりも真希の方が好きなのかもしれない。
そして同じ事が逆にも言える。
ある意味石川梨華にはただ単に真希とは異なる形で惹かれているのかもしれない。
一つ確かに言えることは2人共私にとって「大切」な人。
そして・・・・2人は片時も離れてはいけない、一緒にいないといけない・・・・。
- 127 名前:再生への扉 投稿日:2001年12月15日(土)19時49分02秒
- 「そう言わないでよ〜。今さ、あいつとどっちが可愛い子ナンパできるか勝負してんのよ。
ちょっとだけでもさ〜。」
しばらくすると距離が縮まり始め男の声がはっきり聞こえるほどまでになった。
それに彼女がびくっと体を反応させるのが見える。
「っ!私には・・・・・・」
関係ない、とでも言いたそうだった。
「しつこいよ。」
そこに割ってはいるようにして発せられた自分の言葉。
2人が同時に私に向かって振り向く。
そんな同時のリアクションがおもしろくて心の中で小さく苦笑していた。
「何だよお前・・・・・」
「しつこい男は嫌われるよ?さっさとどっか行きなよ。」
「!」
私の言葉に男が顔を赤くし恥ずかしさと怒りを露わにしているのが見ていても分かった。
そんな相手の戸惑っているような怒っているような表情に私は小さく笑みを溢す。
「・・・・・・・・」
それを隣で彼女が不審そうに見ていた。
- 128 名前:再生への扉 投稿日:2001年12月15日(土)19時50分04秒
おっと危ない危ない。
素のままじゃまた嫌われちゃうよ。
私はこの場だけは少し我慢し、「これからのこと」に対しての準備に取り掛かった。
「お前いきなり出てきて・・・・・何様・・・・・」
「あんたにだけは言われたくない。誰にでも声掛けるナンパ男に。」
「!いい気に乗ってんじゃねえよ、このっ・・・・・」
男が私の言葉にとうとう切れると辺り構わず襟元を掴もうとした。
「!」
咄嗟のことに驚き目を瞑る彼女。
- 129 名前:再生への扉 投稿日:2001年12月15日(土)19時51分12秒
- (無駄無駄・・・・)
私は瞬時に精神を集中させると自分の目の前に普通の人間では見えない気の壁を
作った。
その壁は柔らかく水のようで、掴みかかろうとした男の手を小さく音を立てて飲み込む。
そしてゼリーのようなそれは一瞬にして固まり男の手はてこでも動かなくなってしまった。
「なっ・・・・・!?」
それに戸惑い微かに怯えながら腕を必死に動かそうとする男に再び苦笑する私。
隣では彼女も確かに動揺している。
当然、壁の存在には気付いていない。
「うざいからさっさとどっか行ってよ。」
男の目の前に掌を翳し、そして体に微弱に覆うようにしている力のオーラを
一瞬にして瞬時に何の加減もなしに前に解放させた。
「う、うわっ!」
それだけで男はものすごい衝撃を喰らい後ろによろめく。
- 130 名前:再生への扉 投稿日:2001年12月15日(土)19時51分59秒
- 「それとあっちも・・・・・・」
同じようにして向こうの男にも小さな攻撃を加える。
おどおどしていたその男は突然の衝撃で後ろに小さな悲鳴と共によろめき、地面に
しゃがんでしまった。
こういうの、あまり慣れてないのと遠くにいたせいか加減を間違ったみたい。
「な、何・・・一体・・・・・」
隣で彼女が驚いてその光景に言葉を漏らす。
「う、うわぁ!!!?」
目の前にいた男は混乱し向こうへ逃げ出してしまった。
「・・・・・くだらないやつ・・・」
あれだけでかい顔しておいていざとなるとへっぴり腰で逃げ出す姿に
思わず苦笑してしまう私。
すると隣ではそれをいぶかしげな目で見る彼女の姿があった。
あぁ、やっぱり素が出ちゃうな。
- 131 名前:再生への扉 投稿日:2001年12月15日(土)19時52分48秒
「大丈夫だった?」
できる限りの優しくて人当たりの良い笑顔を浮かべそっちに向き直る。
「あ・・・・はい・・・・・・」
するとそれに戸惑ったのか困りながら返事をする。
ちょろいもんだ。
そして留め・・・・。
「あ〜ゆう男は気を付けないとねぇ。特にあなたみたいに可愛い子は。」
にこっと微笑みながらいつもの自分では考えられないセリフと笑顔で言うと
あっという間に彼女は微かに頬を赤く染め私に対する印象も良くなってしまったようだった。
「それじゃね〜。」
そしてさよならを言う。
- 132 名前:再生への扉 投稿日:2001年12月15日(土)19時53分29秒
「あ・・・・・・」
後ろではまだ何か言いたそうに戸惑って小さく漏らす彼女の声が聞こえる。
もしこれであなたが引き止めてくれなかったら全てがゲームオーバー。
今あなたが何も行動を起こさなければ、私の感では永遠にあなたは今のあなたのまま・・
・・・な気がする。
ならもっと優しい方法にしてあげろって?
大丈夫・・・・
彼女はきっと私を引き止める。
なぜかは分からないが私はそれを信じて疑わない。
そして、再びそこから私達みんなの物語が始まる――――――
- 133 名前:aki 投稿日:2001年12月15日(土)19時55分23秒
- 大量に更新しました。
昨日に引き続き体がだるい・・・。
なんかここのよっすぃーはサドちっくですね(爆)
- 134 名前:M.ANZAI 投稿日:2001年12月15日(土)20時17分18秒
- よっすぃー、カッコイイ〜♪
すごいです、こんなに大量に。 そして“始まり”ましたね。
前回の更新分を読んで、「ええーっ!」と書き込んだのは
『また振り出しに!?』という思いからでした。
しかし、他の方のレスを見てからもう一度読み返し、
それは見当違いだと気づき、さらに今の更新を読んで
その『始まり』という考えに間違いの無い事を確信しました。
本部の判断、中澤の術の施し…これらは偶然なのか必然なのか、
実は梨華自身が、そして梨華の能力がさらに大きく前進するための
きっかけを与えたようです。
遠くにボールを投げようとする時の腕・・・
飛び上がろうとして一旦低くするの姿勢・・・
さぁ、ここから梨華がどう出るのか、中澤や真希たちがどうするのか、
akiさんの書く「そこから再び始まる彼女たちの物語」に期待します♪
- 135 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2001年12月15日(土)22時32分36秒
- おおおーなんとよっしぃーとの再会だー。(^−^)
梨華があそこでよっしぃーを引き止めないはずがないと信じてました。
これから新たな彼女達の物語が始まるんですな。
もはや本部には止められないと思いますね。
これからどうなるのか楽しみで待ちきれない。
でも、akiさんはマイペースで頑張ってください。応援してます!(^−^)
- 136 名前:105 投稿日:2001年12月16日(日)00時29分21秒
- よっすぃーかっこいいけど、ときめいちゃダメじゃん(w
>アイディア頂いてよろしいでしょうか・・・?
はい、もちろん。
光栄です。
考えてみればクリアの能力って最強なんですよね。一見地味だけど(w
- 137 名前:読書の秋 投稿日:2001年12月16日(日)02時19分10秒
- そして、再びそこから私達みんなの物語が始まる――――――
なぜか鳥肌が立った。
かっこいいっすね。
すごい楽しみです。
- 138 名前:名無し梨華 投稿日:2001年12月17日(月)16時30分36秒
- 再生か、終焉か、それとも・・・・・
佳境な気がします。
頑張ってください♪
- 139 名前:aki 投稿日:2001年12月17日(月)19時30分50秒
- 134:M.ANZAIさん
>リアルタイムはどきどきしますよね。私もそうです。
よっすぃーの気持ちみたいな物もこれには入れてみました。
皆さんの期待にとにかく答えられるようにこれからもがんばりますっ!
135:いしごま防衛軍さん
>そうです、これはよっすぃーとの再開になりました。
後藤との再開は・・・楽しみにしててください^^
マイペースで・・<ありがとうございますm(__)mがんばりますっ!!
136:105さん
>私も書いてて時めいちゃっていいのかとも思いましたが
この時めきは恋愛とは異なる物・・・みたいないろんな感情が含まれる
感じっぽいです。
考えてみれば・・・>いいところ突きますね、なぜかひやっとします(w
- 140 名前:aki 投稿日:2001年12月17日(月)19時35分54秒
- 137:読書の秋さん
>レスありがとうございます。
これからのよっすぃーの行動にも目が離せませんよ(w
楽しみに答えられるようにがんばりますっ。
138:名無し梨華さん
>レスありがとうございますっ。
おぉ、中々鋭いです。ひやひやもんです(w
がんばります!
- 141 名前:あの時の言葉 投稿日:2001年12月17日(月)19時47分57秒
- 「待ってくださいっ!」
梨華は急いで歩いていってしまう少女を呼び止めた。
「なあに?どうかした?」
「あ、あの・・・・・え・・・と・・・・・」
呼び止めたのはいいもののどう説明していいのか分からなかった。
どこから説明したらいいのか、何て言ったらいいのか。
それよりも理解してくれるのだろうか、変な人と・・・思われないだろうか・・・・。
「ん?」
「あの・・・そう、お礼でも・・・・・」
あれ?
何だろう・・・・まただ・・・懐かしい・・・このセリフ・・・・。
「お礼?いいよ悪いし。」
「あ・・・でも・・・・・」
- 142 名前:あの時の言葉 投稿日:2001年12月17日(月)19時49分32秒
知っているのにわざと困らせることを口走る私。
別にいじめたいってわけじゃないよ?
ただ私は彼女に対して赤の他人を演じなければならない。
「そうだ。それじゃお茶でもしない?なんかこれこそナンパっぽいけど、良いとこ
知ってるんだ。どう?」
「!します!」
突然の誘いに梨華は喜んで嬉しそうに答えた。
とりあえず引き止めることも成功したからだ。
「それじゃいこっか♪」
少女はにこっと笑うとすぐに前に歩き出す。
梨華もすぐにそれに従った。
- 143 名前:あの時の言葉 投稿日:2001年12月17日(月)19時51分14秒
これがあなたの選んだ道。
もう引き返せない。
出会ってしまったが最後、2人はもう後には戻れなくなってしまったのかもね。
でも・・・・もしも2人の気持ちがいつまでもすれちがっていくようなら・・・・。
ひとみはちらっと横の梨華を盗み見た。
そこには緊張しているようなどきどきしている表情の梨華がいる。
それがどこか無性に可愛かった。
『取っちゃうよ』
(あの時の言葉、実現させちゃうから。)
小さく笑みを溢すとひとみはそのまますぐに前に向き直った。
梨華はそんなひとみの様子など全く気付かずただ何かが変わろうとしている
この少女との出会いに胸を膨らませていた。
- 144 名前:あの時の言葉 投稿日:2001年12月17日(月)19時52分54秒
- それから2人は軽い自己紹介をしたもののその後はほとんど会話することなく
『そこ』にたどり着いた。
会話はほとんどなかったがそれぞれがそれぞれの胸の内を秘めているせいかなぜか
ぎくしゃくすることもなかった。
「着いたよ。ここ。」
「・・・・・ここ・・・ですか?」
「うん。」
それは今さっきの大きな通りから外れた小さな通りに存在する薄暗い気味の悪い
路地だった。
「・・・・・・・・」
梨華は本当にこの先にいいお店があるのか疑問になりいぶかしげな表情でひとみを
見た。
「平気平気♪ちょっと薄気味悪いけど〜良いお店があるんだからっ!」
そう言うとひとみは梨華の腕を取りその路地へと足を踏み入れようとする。
「わっ!ほ、本当ですか〜?」
どんどん入っていこうとする少女に梨華は戸惑いながらとりあえず後に付いた。
- 145 名前:あの時の言葉 投稿日:2001年12月17日(月)19時54分25秒
- 路地は幅2mほどぐらいしかない。
昼間なのに左右の建物が作る影によって薄暗くどこかじめじめしていて
すごく気持ちが悪い。
それでもどんどん先に進んでいく少女に梨華は微かに泣きそうな顔をしながらでも
ちゃんと後に付いていた。
もしかしたら変なところに連れて行かれるんだろうか。
この街ではそういうことがありそうだ・・・・。
でもこの人は私をそんなところには連れて行くような気がしない。
なぜか・・・・分からないけど・・・・・。
(ドクンドクン・・・・・)
今さっきの高鳴りはずっと収まる事はない。
いや、今まで以上にこの路地に対して体が反応し感じている。
出会い、追いかけて、路地・・・・・。
この薄気味悪い路地・・・。
何だっけ・・・。
前にも確かこんなところが・・・
そしてそれは私にとって・・・・・
- 146 名前:あの時の言葉 投稿日:2001年12月17日(月)19時55分16秒
- 「ついたよ〜ん。」
のんびりした口調で少女が梨華の手を離した。
「え?」
そして少女の見つめる先を見てみる。
するとそこはなんとバーだった。
外装が木でまとめられているよくアメリカとかにありそうなバー。
しかしお店の名前を照らす照明もとりあえずセットされているネオンもほこりを
被りその光を照らす役目はもう何年も果たしていないようだった。
――――どこか不思議な雰囲気だった。
- 147 名前:あの時の言葉 投稿日:2001年12月17日(月)19時56分10秒
- 「さぁ、行こう〜。」
「え、でも・・・・ここやってるんですか?」
少女は迷うことなく歩を進めていく。
小さな階段を登りバーの木の扉をギーと音を立てて開く。
「だーいじょうぶだいじょうぶ。」
扉を開けるとどこか古ぼけた鐘のからんからんという音が響いた。
「でも・・・・・・」
「嫌だったら無理強いさせないけど、私はここに用があるからそうなるとお別れに
なっちゃうよ。」
少女は扉を開けながら梨華の方に向き直り言った。
「・・・・・・・・」
その言葉に戸惑いすぐには何の返事が出せなかった。
少女は梨華を少しの間じっと見るとすぐにバーの中に入って姿が見えなくなってしまった。
- 148 名前:あの時の言葉 投稿日:2001年12月17日(月)19時58分20秒
- 「どうしよう・・・・・・」
中で彼女が歩いているせいだろう、靴の木の上を歩くような乾いた音がこちらに
聞こえてくる。
何で躊躇ってるんだろう。
それに何でこんなに心の中に懐かしむ感情が出てくるんだろう。
彼女は何かきっと知っている・・・・気がする。
行こうよ。
行かなくちゃ。
だけど・・・・心のどこかで何かがそれをしてはいけないと警告を出してる。
何かその大切なことを・・・・思い出してはいけないって・・・・・。
でも・・・・
「・・・・・・待ってくださぁい!行きます〜!」
しばらくその場で躊躇っていた後、梨華は固まっていた足を無理やり動かせた。
胸の中では絶えず警告を出す何かがいる。
心になぜか固く存在する留め金を外してはいけないと叫ぶものがある。
だけどもう手遅れだ。
知りたい。
ここがどんな場所なのか。
もう、とまらない―――――――
- 149 名前:aki 投稿日:2001年12月17日(月)20時00分33秒
- 毎回そうなんですけどサブタイトルで時間を使います^^;
今回はなんかあまり良くなかったかも・・・。分かりづらいかもしれません。
実はここの更新の部分ともう少しぐらいぼんやりしてた中で書いたので
文章が変じゃないか心配です(w
- 150 名前:M.ANZAI 投稿日:2001年12月17日(月)22時25分20秒
- あの時の言葉・・・言葉という中には実にさまざなモノが集約されていますね。
薄気味悪い路地裏… だいぶ前に閉じられた様子のバー… そこへ踏み込む自分…
そしてそれらに繋がる、知らぬうちに発した自らのキーワード…
梨華が自ら自分の心の中に響く警告に背き、その留め金を外した時・・・
留め金を掛けさせた者は、それを嘆き悲しんだ者達は梨華をどのように迎えるのか…
あるいは…
いつもいつも素晴らしい文章につい引きこれれてしまします。
この続き、期待してます。
- 151 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2001年12月17日(月)23時41分03秒
- 全然変じゃありません。
どんどん引き込まれて行く感じがします。
ついに梨華は中澤達のバーに足を踏み入れるんですね。
なんかすごくドキドキしてきたぞ。
梨華が入ってきたら中澤達はどういう反応をするのか楽しみです。
我々いしごま防衛条約機構はできる限り、akiを応援します。
(我々と言っても自分一人なんですけどね。)(^−^)
この条約機構は変ですか?
とにかく頑張ってください!!!!
- 152 名前:名無し梨華 投稿日:2001年12月18日(火)00時00分25秒
- 梨華はバーへと足を進める
繰り返される始まり
ただ一つ違うのは彼女の心に残る違和感
彼女は記憶を取り戻せるのか
そして物語は始まるのか、終わるのか
次回、「あの場所へ」
勝手に番宣作って申し訳m(_ _)m
気にしないでくださいね(w
- 153 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2001年12月18日(火)01時36分59秒
- akiさん、ごめんなさい。さきほどakiと書いてしまいました。
気にさわったなら深くお詫び申し上げます。
本当にごめんなさい。
これからもいしごま防衛条約機構は、akiさんを一生懸命応援し続けます。
- 154 名前:aki 投稿日:2001年12月18日(火)20時00分13秒
- 150:M.ANZAIさん
>レスありがとうございます。
いつもこんな私の書く文章を誉めて下さってとても感謝です。
これからの展開・・・今までもずっとでしたが目が離せないと思います(w
がんばりますっ!
151:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
変じゃありませんか、良かったです^^
おぉ!!ありがとうございます!嬉しいですよ(w <条約機構
がんばります!
152:名無し梨華さん
>レスありがとうございます。
なんかドラマの予告みたいですね(w
かっこいいです(w
やる気が出ますよっv
153:いしごま防衛軍さん
>気にしないで大丈夫ですよ^^
今レス見て気付いたぐらいです(w
私自身そんな大層な者ですしね^^;
でもわざわざありがとうございますv
むしろ嬉しかったですよ(w
- 155 名前:aki 投稿日:2001年12月18日(火)20時03分12秒
- Σ( ̄□ ̄;;;おお!?上のとんでもない間違いしちゃいました。
「大層な者でもないので」に訂正です(爆)
最高級にアホですね、自分・・・・(++)
気に触ったらすいません。
- 156 名前:再会 投稿日:2001年12月18日(火)20時36分02秒
中に入ると外から見たと同じように中もほこりだらけの全く使われていないような
汚いバーだった。
「あ、あのぉ〜ここ本当にやってるんですかぁ?」
「『ここ』じゃない。こっちこっち。」
ひとみは入り口付近で中をきょろきょろ見渡している梨華にもうひとつのドアの前から
手を振った。
「なんですかここ。」
「今言ったでしょ。『こっち』にあるの。」
「え?」
ひとみは梨華の戸惑いを余所に重い木の扉を体全体で押し出した。
ギギーと木の軋むような音を立てて扉が開く。
「ここだよ。」
「わぁ・・・・・・」
梨華は思わず驚きの声を上げてしまった。
中は所々にしかない薄暗い照明に照らされ全てが木でまとめられているシックなバーだった。
向かって左にぱちぱちと小さく音を立てる暖炉。
そしてその近くには大きなビリヤード台があり向かって正面にはおしゃれな
バーのカウンターがあった。
- 157 名前:再会 投稿日:2001年12月18日(火)20時41分45秒
- 「何にする〜?」
薄暗いがどこか不思議な感じを漂わす照明の中カウンターに向かって歩き、ひとみは
後ろで立ち尽くす梨華に向かって聞いた。
「え・・・・あ・・・・何があるんですか?」
「何でもあるよ。」
梨華に答えながらコートを脱ぎ椅子に掛けカウンターの中に入る。
「あれ?もしかして・・・・っていうよりお店の人は・・・?」
「お店の人はいないよ。っていうかここ公なお店じゃないし・・・私の通ってる場所っ
ていうか・・・・・。」
梨華の言葉につい笑みをこぼしながらひとみは曖昧に答える。
「そうなんですか・・・・でもいいんですか?突然お邪魔しちゃって・・・・」
「いいのいいの。ここはそういうとこだから。で、何にする?」
「えーと・・・・・・・」
やっと梨華も気付いたようにひとみに続いてカウンター前に行き椅子に腰掛けた。
しかし座ったのはいい物の意外にメニューがないと飲みたいものは思いつかずそのまま
梨華は首を傾げてしまう。
- 158 名前:再会 投稿日:2001年12月18日(火)20時44分05秒
- 「何だったらお勧め作ってあげる。」
「ありがとうございます・・・・って作る?」
最後の疑問には答えずひとみは言うと同時にさっさと『それ』を作り始めた。
「・・・・・・・・」
梨華はひとみがなにやら『飲み物』を作っている間、バーの中をずっと椅子の上から
見渡していた。
「あのぉ、中、見てもいいですか〜?」
「どうぞどうぞ〜♪そっちの方が都合がいいし。」
「え?」
「なんでもないこっちの話」
ひとみはにこっと振り返り言うと強引に誤魔化す。
「??」
疑問は拭い去れなかったがとりあえず椅子から立ち上がりバーの中を見るため
辺りを歩いてみることにした。
- 159 名前:再会 投稿日:2001年12月18日(火)20時53分16秒
ビリヤード台、暖炉、そして暖炉の上にはトランプにダーツの矢。
見れば向こうの壁にダーツの的が掛けられている。
バーの中にあるもう一つのバー。
独特の雰囲気。
(何でだろう・・・・・)
居心地のいい空間。
そしてどこか全てが懐かしい・・・。
このにおい、空気、雰囲気、どこかで感じたような・・・・。
初めてなのに初めてじゃない気がする。
- 160 名前:再会 投稿日:2001年12月18日(火)20時57分07秒
「お腹空いてない?」
向こうから少し大きめの声でひとみが呼びかけてくる。
「あ・・・少し空いてます・・・・・」
「それじゃ軽い物プラスするね。」
「いいんですか?そんなにしてもらっちゃって・・・・・」
「いいのいいの♪」
気にする梨華を余所にひとみは一人料理作りに楽しそうに励んでいた。
今日は中澤は珍しくどこかに出かけているようらしい。
なつみと矢口もどこかに買い物と前から言っていた。
そして、真希も今日は仕事で出かけている。
ひとみはちゃかちゃかフライパンを動かしながら頭の中では考え事をしていた。
(さぁて・・・と・・・・・)
考えているこれからの行動を誰にも気付かれないように一人小さく頭に思い浮かべる。
そして演じていた自分の仮面を剥ぎ取り胸の内で、心の奥底で元のいつもの自分の瞳を開ける。
冷静に元の自分を覚まさせる―――――
- 161 名前:aki 投稿日:2001年12月18日(火)21時02分24秒
- 今日はここまでにします。
- 162 名前:綾小路文麿(´∀`) 投稿日:2001年12月18日(火)21時09分19秒
- そんなーーーー!!
いい所なのに・・・。akiさん、うまいっす。
ごっちん!早く仕事から帰ってこないと!
- 163 名前:名無し梨華 投稿日:2001年12月18日(火)21時24分01秒
- おおう、ここまでっすか。
うーん、ひっぱるなぁ(w
次も頑張ってくださいね♪
- 164 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2001年12月18日(火)23時23分06秒
- うおーなんかすごく良いところだけどここまでですか。
ますます引き込まれていくー。次が待ち遠しいです。
全然気にしていません。誰だって書き間違いはしますよ。
よっしぃーはいったい何を考えているのであろうか?気になるなあ。
楽しみだ。ごっちん、早く帰ってこーい!
むしろ嬉しかったですよ。と言ってくれてなんか嬉しくなりました。
aki頑張れー!!!!(^−^)
- 165 名前:M.ANZAI 投稿日:2001年12月19日(水)05時07分53秒
- いつもながらいい所で“次回に続く”ですね。
ひとみが梨華を誘うためにかけていた仮面を剥ぎ取り、
本来のひとみに戻った時、はたして梨華に何が!?
そして今の所ここにいない他のメンバー、
はたして次にあの扉を開けて入ってくるのは・・・そしてその時何が・・・!?
『再会』・・・しかし本当の再会はこれから訪れる・・・予感。
akiさん、次の更新も楽しみにお待ちしてます。
- 166 名前:aki 投稿日:2001年12月19日(水)13時24分11秒
- 昨日は変なところで止めてしまってすいませんでした^^;
ちょっとあの時私が集中力も散漫だったのとこのまま載せてしまうと
区切りのいい所が結構後になってしまうのでこんな切り方をしてしまったわけ
なんですが、すぐに更新しますので(w
162:綾小路文麿さん
>すいません^^;
今日もちゃんと大目に更新しますので(w
ごっちんは今ごろどこに・・・・・。
がんばります。
163:名無し梨華さん
>引っ張ったつもりはないんですが結果的にそうなっちゃったみたいですね(w
がんばりますよ!
164:いしごま防衛軍さん
>ありがとうございます。
よっすぃーの考えてる事・・・・楽しみにしてて下さい(w
応援いつもありがとうございます。
がんばりますっ。
165:M.ANZAIさん
>このサブタイトルにも悩んだんです・・・(爆)
早く載せたいんですが良いのがあまり浮かばないんですよね。
この「再会」はまずバーとの再会、みたいな感じにしました。
今日も更新しますんで楽しみに待っててくださいvv
- 167 名前:Who did I love ? 投稿日:2001年12月19日(水)21時36分17秒
- 「はい。吉澤特製パスタに特製ジュース。」
「わぁ・・・・ありがとうございます〜。」
カウンターから差し出されたのは軽い空腹を満たすにはちょうどいい量の魚介類の
たっぷり入ったトマトソース仕立てのパスタに何やらオレンジ色の飲み物だった。
「あの・・・・これは何ですか?」
「それ?それね、まぁ・・・オレンジジュースみたいなもんかな。」
「・・・・でもなんか不思議な香りがしますよ。」
「それがお手製なんだって♪」
半分納得させられるような返事が返ってきたのが少し気になったが梨華はひとまず
それは置いといていいにおいが漂うパスタに目を向けた。
「いただきま〜す。それじゃ・・・良いですか?食べて。」
「どうぞどうぞ。」
悪そうにする梨華にひとみは微笑みながら答えてあげた。
しかしその微笑みが今さっきまでの物と微かに違うのを梨華は気付かなかった。
ただひとみの答えに安心し、フォークをパスタに絡めさせた。
- 168 名前:Who did I love ? 投稿日:2001年12月19日(水)21時38分56秒
- 「そういえばさ〜どうしてあの後私を呼び止めたの?突然助けてもらっただけの
見ず知らずの人に。」
至ってひとみは今始めて梨華と会ったかのように接する。
「あ・・・それは・・・・・」
梨華はそんなひとみの心の中など知らずパスタを口に含みもぐもぐ食べながらひとみの
問いに答えようとした。
「いいよ。食べてからで。」
それに小さく笑いながらひとみもカウンターから出て隣に座る。
「すいません・・・・・・」
少し恥ずかしそうに今口の中にあるパスタをごくんと飲み込み再び梨華は口を開いた。
- 169 名前:Who did I love ? 投稿日:2001年12月19日(水)21時40分13秒
- 「あの・・・・変って思われるかもしれませんけど・・・・なんか・・・その・・・・
あなたに特別なものを感じたんです・・・・あの・・変なら変って言ってください・・。
私も自分で変だと思ってるんで・・・・」
「変じゃないよ。変なんかじゃない。それで?特別なものってどんな?」
「つまり・・・・・上手く言えないんですけどあの時初めて会ったんじゃないような・・・・
どこか懐かしいような・・・・」
「初対面なのに?」
「はい・・・・・すいません、おかしなことばっかり言って・・・・」
そこまで言うと再び梨華はパスタを口に含み頬張り始めた。
「おかしくないって。でもなんかドラマみたいだね。会ったこともないのに懐かしい
なんて。」
ひとみは隣でパスタを食べる梨華を見ながら言う。
「それに・・・・それだけじゃないんです・・・・。この一ヶ月私にとって何か不可解なことが
あって・・・・ってうぅ・・!」
一気に食べていたせいか喉に詰まらせてしまい急いで梨華はその特製のジュースに手を
伸ばした。
- 170 名前:Who did I love ? 投稿日:2001年12月19日(水)21時42分08秒
- 「だいじょーぶ?」
「・・・大丈夫です・・・・」
微笑みながらその姿を見るひとみに梨華は少し恥ずかしそうに返事する。
「・・・なんか・・・・これ・・不思議な味しません?」
「そう?気のせいじゃない?」
とたんに首をかしげた梨華にひとみはさもなんでもない風に答えた。
「?」
梨華もそれ以上考えることをやめ再び残りのパスタにフォークを絡め始めた。
「・・・・・・・・」
そんな梨華をひとみはただ隣で静かに無言で見つめる。
実は。
この飲み物の正体はお酒をオレンジジュースで割った物だった。
色素がきつめの果汁100%オレンジジュースの上にちょこっと大目のアルコール。
アルコールの匂いがばれないようにパスタにも少量のワインが含まれてある。
不可解な行動、その答えはひとみにしかわからない。
- 171 名前:Who did I love ? 投稿日:2001年12月19日(水)21時43分52秒
- 「それで一ヶ月不可解なことがあった、の続きは?」
「あ、そうです。よく分からないんですけど確かに頭の中にはそれの記憶が
あるはずなのに体とか私自身がそれを受け入れてないって言うか・・・・なんか
変な感じ・・・なんです・・・・・」
だんだん梨華も頭がくらくらしていくのを感じていく。
声も最後には途切れてしまう。
「ふーん・・・・・」
「それでですねぇ〜。今日、学校休んだんですけどぉ、何かそれが懐かしく感じてる
んですよね〜・・・・何ででしょう??」
梨華は微かに頬を染めながら食べ終わったパスタのあった更にフォークをからんと
音を立てて置いた。
「パスタおいしかった?」
「すっごいおいしかったですよぉ〜」
すっかりごきげんになり満面の笑顔で梨華はその後ひとみに「ありがとうございましたぁ〜」
と頭を下げながら舌足らずな口調でお礼を言った。
- 172 名前:Who did I love ? 投稿日:2001年12月19日(水)21時45分57秒
- 「そ。なら良かった。」
食べ終わった皿をひとみがカウンターに戻す。
「それでぇ〜なんかナンパされる事もぉ、そこを助けてもらうのもぉ〜なんかよく
分かんないけど懐かしいんですよ〜〜どうしてでしょう〜〜???」
「・・・・・・・・」
ぽか〜んとした表情で天井を眺めながら言う梨華にただひとみは黙って見つめる。
「・・・・・うぅ・・・なんか胸が熱い・・・・・」
途端に顔を下に戻し俯き加減で小さくうめき声を上げた。
「もしかしたらパスタにアルコール入れたからそれかもよ。」
人事のように言うひとみの表情と口調はすっかりいつものものに変わっていた。
「水〜・・・・・」
それにしてもグラス一杯のお酒でここまで酔ってしまうのも珍しいかもしれない。
「ちょっと待ってて。」
ひとみはうめくように訴える梨華に再びカウンターへ戻った。
- 173 名前:Who did I love ? 投稿日:2001年12月19日(水)21時48分56秒
- 「だけどぉ・・・なんかおかしいんですよぉ〜〜。学校を行く事もなんかしっくり
来ないし・・・そう!今さっきナンパされた時助けてくれたんですけどその時も・・・
・なんか違うような・・・・・」
「・・・・はい、水。」
水と言いつつ透明のため見た目ではほとんど分からないが差し出すのは立派なお酒。
「ありがとうございます〜。」
それをぐびっと一気に飲み干してしまう梨華も梨華だが水かお酒かなど今では
違いが分からなくなっているようだった。
「それであの時助けてくれた時に声掛けなくちゃって・・・・掛けないといけないって
思ったんです・・・・・」
空になったグラスはドンッと音を立ててカウンターに置かれる。
「そっか・・・・・・」
「・・・・・・・・」
しばしの間沈黙が流れる。
梨華は寝たようなそれともただそうしているだけなのか顔が見えなくなるぐらい
俯いていた。
「体が・・・・熱い・・・・・・」
「・・・・・大丈夫?」
「うー・・・・・」
小さく唸った後梨華は顔を赤くさせながらなぜか切なそうな表情で話し始めた。
- 174 名前:Who did I love ? 投稿日:2001年12月19日(水)21時50分02秒
- 「何だろう・・・・『どうしても』分からない・・・・私は一体何を・・・・・」
切実な想いで梨華は頭を抱えた。
「苦しい・・・・何かが・・・私の中で・・・・封じ込まれてる・・・・」
「・・・・・・・」
ひとみはずっとその梨華の様子を黙って見ていた。
そして不意に口を開いた。
「・・・・疲れてるんじゃない?あっちに休憩室があるから・・・休んだら?」
ひとみは椅子から立ち上がると俯いてだるそうにしている梨華の体を言いながら催した。
「・・・・・休憩室・・・」
小さくぼんやりした表情でひとみの言葉を復唱してみる。
- 175 名前:Who did I love ? 投稿日:2001年12月19日(水)21時51分11秒
休憩室・・・・
確か・・・いつも限って・・・そこで誰かと・・・・
誰か・・・・?
誰かって・・・誰・・・・・
- 176 名前:Who did I love ? 投稿日:2001年12月19日(水)21時53分36秒
- ひとみに支えられ梨華はその休憩室へと来た。
「・・・・・・・・・」
何やら考えているような、そして呆然として微かに瞳の潤う梨華の表情をひとみは
黙って横目で見る。
「あんまり自分に無理しちゃダメだよ。」
既によろよろの梨華をひとみはソファに座らせてあげる。
「・・・・・・・・・」
梨華はそれには何も答えなかった。
(誰・・・・誰かって・・・・確かそれは・・・・・)
おぼろげな姿が頭の中に過ぎる。
整った顔、自分より年上のようなどこか色っぽさもあり・・・スタイルの良い体・・・
優しい・・・笑顔・・・・・。
断片的なキーワードが出てくるのにその人物の顔が出て来ない。
まるで深い霧に包まれたように正体が見えない。
- 177 名前:Who did I love ? 投稿日:2001年12月19日(水)21時55分36秒
- 「誰よりも・・・・大切な人・・・・・・」
「!」
気付けば梨華の瞳からは溢れんばかりの涙が溜まっていた。
それに気付きひとみも驚く。
「・・・私の・・・・愛しい人・・・・・・」
涙はとうとう瞳から零れ出す。
梨華の顔が、涙でぼろぼろになる。
口から言葉が勝手に飛び出すように、考えていない言葉が取って出てくる。
まるで魂が梨華にそうさせるかのように。
「・・・・どうしても分からない・・・・・・」
梨華は苦しそうに声を漏らすと顔を両手で覆った。
「・・・・・分かるよ。」
「え・・・?」
不意にひとみが隣で呟いた。
それに梨華が顔を上げる。
「すぐに分かる・・・・・だって二人は出会っちゃったんだもん。『運命』なんて言葉に
収まらないぐらいに二人は互いに惹かれてる、互いを・・・求めてる・・・・・・。」
「・・・吉澤さん・・・・・?」
ひとみのふとした言葉に梨華は首を傾げた。
なぜかその言葉に流れていた涙もぴたりと止まる。
- 178 名前:Who did I love ? 投稿日:2001年12月19日(水)21時57分07秒
- 「でもね、私もあなたのこと好きだよ?」
「!」
言うと同時にひとみは梨華の両肩を前から掴んだ。
突然のひとみの行動に梨華は驚く。
しかし戸惑う暇のなく次の行動に移される。
「・・・むぅ・・・・!」
突然、唇を奪われ驚いたように梨華は目を見開いた。
「・・・・・・」
それに関係なくひとみは一方的に唇を奪っていく。
「やっ・・・・吉澤さ・・・・・っ・・・!」
微かに唇を離されたかと思うと再び今度はもっと深く口付けを交わそうとする。
梨華は拒むように目をぎゅっと瞑り抵抗しようとした。
しかし、体に力が入らない。
無情にも唇は貪られつづける。
- 179 名前:Who did I love ? 投稿日:2001年12月19日(水)21時58分22秒
- 「んん・・・・・!」
抵抗するように体を動かすがそれはいとも簡単に押さえつけられてしまう。
(違う・・・・違うよ・・・・でも何が違うの・・・・・)
交わされる口付け。
そして頭の中には霧に包まれた誰かが存在する。
強引に奪われるキス・・・・・優しいキス・・・・確か前に・・・誰かと・・・・・。
梨華の頭の中に砂嵐が舞いながらもテレビ画面のように情景が流れる。
互いに求めて交わした深い口付け。
愛しいあの人との幸せなキス。
初めて見せてくれた・・・・笑顔・・・・。
頭の中で回想されていくシーンを余所にひとみの手は梨華の服の下から
滑り込む。
- 180 名前:Who did I love ? 投稿日:2001年12月19日(水)22時00分46秒
- 「んっ!・・・やぁ・・・!!」
必死の抵抗は空しく、押さえつけられた体は自由を奪われただなす術もなく
いいように胸を弄られる。
「あまり可愛い声ださないでよ。余計にそそるだけなんだからさ・・・・・」
小さく囁くように言うとひとみは軽く力を入れ梨華を強引にソファに寝かせた。
「や・・・だぁ・・・・!」
白い喉元に唇が這う。
そしてちろっとそれを舌が舐める。
手首は押さえつけられ好き勝手に進んでいく行為にとうとう梨華は今さっきとは違う
涙を瞳から溢れさせた。
「だれ・・・かぁ・・・・・・」
徐々に体からほとんどの力が抜けていく。
抵抗することもままならなくなってきた。
「気持ちよくさせてあげるから・・・・・」
「うぅ・・・・・」
言葉と共に服が上にたくし上げられ、その白い胸がとうとう露になろうとした時――――――
- 181 名前:Who did I love ? 投稿日:2001年12月19日(水)22時03分06秒
「・・・・え?」
突然梨華の目の前からひとみが消えた。
そして次に凄まじい音が部屋に響いた。
――――――バキッ!
「・・・・・・・・」
ひとみの顔がそれによって横に弾かれる。
それと同時に髪が綺麗なほどに横に流れた。
「!!」
突然の目の前で起こる出来事に梨華は訳が分からずただその姿のまま呆然としていた。
そして、見た。
- 182 名前:Who did I love ? 投稿日:2001年12月19日(水)22時05分06秒
「はぁ・・・・はぁ・・・・・・」
微かに茶色を帯びた髪、整った顔、その独特のオーラ――――
目の前のひとみが弾かれ視界が開かれた所には他でもない駅前で見かけた、
そして何の違和感もなく全てと一致するあの人が、息を荒くして立っていた。
しかし既に梨華の意識は深い闇に落ちようとしているため相手の顔がぼんやりと
してしまいはっきりと見えない。
だが梨華は全ての答えが彼女にあると確信していた。
(そうだ・・・この人・・・いつも私がピンチになると真っ先に駆けつけてくれる・・・・)
朦朧とする意識の中で梨華は最後に最大の安心感を手に入れていた。
『守ってあげる』
また・・・助けてくれた・・・・・――――――
- 183 名前:Who did I love ? 投稿日:2001年12月19日(水)22時07分18秒
――――――グインッ!!
「・・・っ・・!!」
すごい力で後ろから服の襟元を捉まれ梨華から引き離されたかと思うと次にはひとみの
頬には真っ直ぐ凄まじいほどの力で拳が入っていた。
「痛っ・・・・・・」
そのパンチに体をよろつかせながらひとみは殴られて熱くなり始める頬を押さえ
そちらに振り返る。
「はぁ・・・・はぁ・・・・・」
そこには息を荒くする真希の姿があった。
信じられない物でも見るかのようにその瞳は怒りと戸惑いと動揺など様々な感情を秘めている。
「来ちゃったか・・・・・・」
「彼女から離れてっ。」
ひとみの呟くような声を完全に無視し真希が息を切らしながら真っ直ぐひとみの目を睨み
つけながら言う。
- 184 名前:Who did I love ? 投稿日:2001年12月19日(水)22時09分53秒
- 「はいはい、離れますよ。ったくあ〜あ、残念。真希が来なかったら後で報告しようと思ったのに。」
「ふざけないでっ!!」
両手を空に上げてふざけるような仕草に真希が荒々しく怒鳴る。
「・・・・・・・・」
「一体・・・どういうつもり・・・・?」
黙るひとみに真希が心から尋ねるように聞く。
「記憶がなくなった彼女をまた連れてくるなんて・・・・何考えてんだか本当に理解できない・・・」
呆れるように悲しむように真希が切実とひとみに気持ちの言葉を投げかける。
「真希のせいだよ。」
「・・・・どういう意味・・・」
「柄にもなく誰かのために何かしたいなんてあたしに思わせたの真希のおかげだよ。」
「・・・・・・・」
俯いていた顔を真希は上げた。
そこには真っ直ぐこちらを見据えるひとみの姿があった―――――
- 185 名前:aki 投稿日:2001年12月19日(水)22時11分33秒
- ここまでです。
このシーンの一部がなんかプリティウーマンに出てくるシーンに似てるな、
なんて思ったり。
- 186 名前:名無し梨華 投稿日:2001年12月19日(水)23時06分31秒
- あうう、ここで切るとわ・・・・
何やらいろんな人の想いが混ざり合ってますね〜
んー、梨華たん、頑張れ!
作者サンも頑張って♪
僕も・・・やらなきゃ(w
- 187 名前:読書の秋 投稿日:2001年12月19日(水)23時28分49秒
- 続きを・・・
もはや禁断症状
- 188 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2001年12月20日(木)00時03分24秒
- よっしぃーいったいどうしてこんなことをしたんだ。
でも、なんか分かる気がしますね。よっしぃーも梨華のことが好きなのは
よくわかりますからねえ。しかし、よっしぃーは梨華と後藤を再会させるために
わざとこういうことをしたとも思えないでもない。
実際によっしぃーの行動によって梨華と後藤との再会が果たされ、梨華も
はっきりとではないが後藤との記憶が蘇り始めたのだから。
この後、後藤はどういう行動をとるのかなあ。目が離せません。
akiさんは皆を引き込む力があります。すごいです。
ふと思ったんですが、中澤がここに戻ってきたらどう思うでしょうか?
なんか楽しみです。
次の更新を心待ちにしております。(^−^)
ファイト〜ファイト〜aーkiー!!
- 189 名前:M.ANZAI 投稿日:2001年12月20日(木)01時00分51秒
- ひとみが梨華にしようとした事…
そうでしたか、そういう事なんですね。
ひとみが自分自身の気持ちに気づいてどんどん行動して行きますね。
少し荒療治にも見えますが、まさか梨華を本当の危機にさらす訳にもいかず…
そして真希の『守りたい』という思いは、こんな所でも発揮されています。
ひとみの仕掛けにはまった、と言うには見事なぐらいの登場です。
たとえ梨華の記憶が無くとも思いが届いてる、ということなのでしょう。
中澤はまた苦悩の選択を迫られそうです。この場所、この仲間を守るために…
akiさん、いつもですが映像が浮かび上がって来ます。そして絶妙な場面でCMへ…(笑)
この続きも期待して待ってます。
- 190 名前:ごまっち 投稿日:2001年12月20日(木)09時58分15秒
- いつも楽しませていただいております。面白いです!!
ちょっと屈折した見方ですが、「ひとみ」は案外「真希」のことが好きだったりして・・・。「ひとみ」の「真希」へのちょっかいの出し方が、好きな人をいじめる、みたいな行動のような感がして。
akiさん、これからも、がむばってください、応援してます。
また「仕事」でのバトルシーンも、もっと読みたいっす。
- 191 名前:aki 投稿日:2001年12月20日(木)17時42分33秒
- 読んでくださっている皆さん本当にたくさんのレスいつもありがとうございます(T_T)
何よりやる気と励みになります。
そして結構レスに考えさせられ展開をまた考え直したりなどさせてもらったりも
したので本当に感謝です。
186:名無し梨華さん
>すいません^^;また変な切り方しちゃいましたね。
わざとじゃないんですが後から見てみるとなんか変ですね。
がんばります!
私も気長に待っとります。名無し梨華さんもがんばってください^^
187:読書の秋さん
>書いてる側にしてみると何とも嬉しい症状なわけなんですが(w
すいません、今日もちゃんと更新しますんで^^;
188:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
よっすぃーの行動の真意は今日の更新で明らかになりますね。
おお、そんな力がありますか。嬉しいです(w <引き込む
これからももっと引き込んでいきますよ(w
がんばりますっ!
- 192 名前:aki 投稿日:2001年12月20日(木)17時54分18秒
- 189:M.ANZAIさん
>レスありがとうございます。
もしかしたらこの中ではひとみが一番大人かも・・・。
いやかなり大人です(w
後藤と石川の二人がなんかとても子供みたいにも見えそうになりますね。
それだけ2人とも純粋で一生懸命なんですね。
このシーン書き始めた頃から考えてたシーンなので納得いくように書けて
嬉しいです。
裕ちゃんにはこれからまた苦しい事になっちゃいますね。
一番この中で悩んでるのかもしれないです。
良い所でいつもCMに入ってすいません^^;
こちらもよりCMを短くするようにがんばります(w
190:ごまっちさん
>お、初めてのレスでしょうか?ありがとうございます^^
おぉ、鋭いですね(w
これも今日の更新で明らかになりますよ。
仕事でのバトルシーンですか。そうですね、これからのでもっと入れられる
ようにしますv とても参考になります。
応援本当にありがとうございます。
これからもがんばります!
- 193 名前:再開 投稿日:2001年12月20日(木)18時08分46秒
- 二人はそれから意識の途絶えた梨華をソファに寝かせ二人だけ場所を変え
バーへと戻った。
暖炉の火はただ小さく音を立てて薪を燃焼させていく。
二人はカウンターに距離を置いて座った。
「今さっきの『来ちゃったか』、あれ訂正。正しくは『やっと来たか』だよ。」
「・・・・・・・・」
「全くやんなっちゃうよ。今の今まで彼女のオーラ、微弱にでも気付かなかったの?」
「・・・・・・」
ひとみのわざと軽く投げかけてくるそんな言葉にも真希は心の奥底でずきっと
来る物を感じていた。
「念のため言っとくけど。あたしは本気で彼女のこと抱く気なんてなかったからね。」
「・・・じゃぁ、どうして・・・」
「ま。抱いても良かったんだけどね〜。」
「・・・・・・・」
ひとみの言葉がからかってやっていることなどすぐに分かったが、そんなひとみを真希は
睨まずにはいられなかった。
- 194 名前:再開 投稿日:2001年12月20日(木)18時13分10秒
- 「怒んないでよ。冗談だってば。だって真希がとてつもないオーラ出して殺気丸出しで
近づいて来てるの分かってたもん。それより・・・・」
それから少し間を置きその間ずっとひとみは真希の様子を伺っていた。
真希はと言えばまだかと次の言葉を待ち徐々にじれったそうになっていく。
「・・・・この前、彼女が記憶を操作される前、あんた彼女のこと振ったんだって?」
「!・・・・・・・」
ひとみは何も言葉を返さない真希に言葉を続けた。
返事が返って来なくても黙って聞いているというのが分かっているからだ。
「何で振ったのさ。」
「・・・・・ひとみには関係ないでしょ。」
「ここまで来て今更第三者扱いするのやめてよ。」
「・・・・・・・」
「こうでもしないと・・・・あんた自分の気持ちに気付かないでしょ?」
ひとみの言葉に真希は更に黙ってしまった。
- 195 名前:再開 投稿日:2001年12月20日(木)18時15分35秒
- 「昔の『あの人』の影が拭い去れないんだか傷が癒されないんだとかよく分かんないけどさ、
面倒くさいこともうやめよーよ。」
「・・・・・・」
ひとみがふざけるような口調で笑いながら真希に言う。
それをただ真希は黙って聞いていた。
「そう、はっきり言って邪魔くさいんだよ。そういうの全部。それでも目の前に
そういうのが現れたら、殴ればいいじゃん。今見たく。ぶっ壊して行っちゃいなよ。」
「何で・・・・そんなこと言うの・・・どうしてこんなこと・・・・」
「それは・・・・二人のことが好きだからだよ・・・・・」
少し間を置いてから答えるとひとみは椅子から立ち上がりカウンターの中に入り熱を持つ
頬を蛇口から流す水で冷やし始めた。
水の流れる音が静かに耳に気持ちよく伝わる。
- 196 名前:再開 投稿日:2001年12月20日(木)18時17分11秒
- 「どういう意味・・・・?」
「そのまんま。あたしは二人が好きなんだよ。」
「・・・・・・・」
はっきりと言うひとみに真希は再び何も言葉を返す事が出来なくなってしまう。
「あんた達二人はねぇ、お互いが想ってるよりずっとお互いを必要としてる。見てると
じれったいぐらいにね。」
ひとみは濡れた顔をタオルで拭き氷をそれで包んで頬に宛がう。
「彼女の記憶が戻らないのならそれでもいい。だけど後悔するのだけはやめて。
あんたが彼女を傷つけたのは事実。涙を流させたのも事実。だけどね、後悔する暇が
あるのならこれからのことで全てを精算しなよ。」
- 197 名前:再開 投稿日:2001年12月20日(木)18時18分32秒
- 「・・・・・・・・」
「何も変わってないはず。お互いを想う気持ちは何も変わってないでしょ?ならまた
出会えば良いじゃん。そしてまた好きになればいい。何もあんたは失ってないんだから。」
タオルの持ったままひとみは再びこちらに戻った。
「その代わり、今度は真希の方から彼女に接しなよ?あんなにしてくれたんだからさ・・・・
それが償いってもんじゃない?」
「・・・償い・・・か・・・・」
「また一からやり直しな。いや、まだ二人はスタートラインにも立ってなかったかもね。
全てはこれからだよ・・・・」
言うとひとみは椅子に掛けてあった自分のコートを取りそれを羽織った。
「帰るの?」
「まぁね。それと、彼女が目を覚ました時に側にいてあげるんだよ?」
「・・・・・考えとく。」
真希の返事にひとみは小さく笑うと側に近づいて言った。
- 198 名前:再開 投稿日:2001年12月20日(木)18時20分11秒
- 「行ってやんな。彼女の側に・・・・・」
「でも・・私・・・・・」
「あの時の・・・あたしを殴った時のことをよく思い出して。そして・・・・勇気を出して。」
まだ本気で踏み出せないで躊躇っている真希にひとみは小さく囁くように言うと真希の頬に
手を添えそっと唇を合わした。
「!」
「あの子がいなかったら・・・・・あんたがいなかったら・・・・あたしどちらにも
本気で好きになってたかもしれない・・・・。」
「え?」
呟くようにして言った本当に小さな声に真希が聞き取れず聞き返す。
「これであたしのはチャラね!」
ひとみはそれに答えずいたずらっぽく軽くウィンクをするとびっくりして戸惑っている
真希を余所にバーの外へと静かに向かって行った。
真希と彼女を残して――――――
- 199 名前:再開 投稿日:2001年12月20日(木)18時21分41秒
- 「・・・・・・・・」
真希はそのひとみの後ろ姿をしばらく見つめていた後、顔の向きを変え休憩室に
通じるドアを見た。
あの時、仕事場に向かう時、自分の体を突き抜けるように電流が走ったような感覚を受けた。
それは鳥肌が立つくらいに衝撃が走った。
だって消えたはずの彼女のオーラがはっきりと確実に感じることが出来たから。
微弱になり普通の人間と同じになったはずの彼女のそれが自分に届いたのだ。
優しくて、暖かくて、居心地のいいそれ。
間違えるはずがない。
それから気付けば無我夢中でそれに向かって走っていた。
彼女のいるらしき、バーに向かって―――――
- 200 名前:再開 投稿日:2001年12月20日(木)18時23分22秒
真希は今ひとみが触れた唇にそっと手を触れた。
「・・・・・・・・」
しばらくそのままで何か考える表情をした後、真希は再び休憩室に通じるドアを見た。
「・・・また一から・・・か・・・・・」
小さく呟くと真希は梨華のいる休憩室へと向かって歩を進めた。
- 201 名前:再開 投稿日:2001年12月20日(木)18時26分29秒
- ひとみの考えている事はいつもよく分からない。
どういうつもりでそれをするのか、それには一体どういう意味が含まれているのか
いつも考えてる。
だけど決まっていつもそれらは何か意味がある物だった。
このバーで雪の振る聖夜のあの悲劇が起きてからみんなは私に対してどこか気を使い、
いつしかそうすることがみんなの中で暗黙の了解になっていた。
悲しかった。
そしてどうしてみんなそうするのか分からなかった。
しばらくして自然と出来ていく距離感。
いつのまにか私は何かからも全てのものから孤立していた。
そんな時、ひとみがバーに来たんだ。
来てからと言うもののよく分からないけど私に興味を持ったみたいで、
わざとなのか無意識なのか私をいらつかせることばかりしていった。
そして感情を爆発させた後いつも思う。
失いかけていた、失っていた『感情』という物を再び気付かせてくれたんじゃないかって。
いつもふざけたような軽いノリのひとみがそこまで考えてるんだか知らないけど。
- 202 名前:再開 投稿日:2001年12月20日(木)18時30分40秒
- 『吹っ切れた』
今にはこの言葉がよく合うかもしれない。
言葉が悪いけどあの時ひとみを殴った時の感情を今でもすぐにはっきりと思い出すことが
できる。
彼女を他の誰かに触れられるのが嫌だった。
誰にも触れさせたくない。
誰にも渡したくない。
その声・・その綺麗で汚れなき体・・・さらさらな髪を・・・・・。
彼女に対しての気持ち、
ずっとはっきりしなかった想いは、
今なら分かる。
それはたった一つの感情―――――
- 203 名前:再開 投稿日:2001年12月20日(木)18時33分32秒
- 休憩室のドアを静かに開く。
そこにはソファの上で安らかに眠る彼女の姿があった。
「・・・・・・・・」
真希はそれに静かに近寄ると梨華の顔のすぐ隣へ行き床にしゃがんだ。
そっとその髪に指を通す。
「ん・・・・・・」
それに微かに反応し小さく寝息を立てて毛布が微かにずれた。
それをただ起こさないように静かに再び梨華の体に掛けてあげた。
「・・・・好きだよ・・・・・」
梨華の寝顔をただ静かに見守りながら、真希は眠る彼女に対してはっきりと
想いを告げた。
「・・・・・・・」
真希の言葉に反応するように寝ていながらも梨華の体が微かにびくっとする。
しかし起きる事はない。
「愛してる・・・・・・」
真希はそっと梨華の頬に手を添えた。
- 204 名前:再開 投稿日:2001年12月20日(木)18時35分11秒
- 「んっ・・・・・・」
そして優しくその唇に口付けした。
二人だけの時間、二人だけが共有する同じ時間。
まるで全てが今この瞬間リセットされたかのよう。
この瞬間、ずっと続くように時が止まればいいなんて思うほど今の自分は愛しい彼女の
ことしか考えてなかった。
何も変わってない。
何も失ってない。
全てはこれから・・・・・
愛してる。
今度は私が・・・・・・
新たな誓いを、今この瞬間再び胸に刻みながら――――――
- 205 名前:aki 投稿日:2001年12月20日(木)18時36分36秒
- すいません、ストックが寂しくなってきたのと区切りの関係で
今日もこの辺で・・・・。
- 206 名前:名無し梨華 投稿日:2001年12月20日(木)21時16分53秒
- ごまが、段段素直になり始めてる・・・いや、最初から素直だったのかな。自分の気持ちに。いろんな意味で純粋なのかも。
よすぃこは、そんなごまが好きなんですね。
自分には無いものを持っているから?
と、解釈してみましたが。
ああ、何か『癒され』ます。
akiさん、ありがとう・・・
- 207 名前:M.ANZAI 投稿日:2001年12月20日(木)21時42分19秒
- かなり男前な役所ですね、自分を殴らせてまで・・・
ひとみの二人に対する思いのほどが伺われます。
>「あの子がいなかったら・・・・・あんたがいなかったら・・・・
>あたしどちらにも本気で好きになってたかもしれない・・・・。」
真希に対するひとみの告白・・・、
切なくなりそうな場面なのに実に爽やかです。
さっそうとしたひとみの姿が目に浮かぶようです。
そんなひとみのおかげで、ようやく梨華との関係に正面から向き合う気になった真希。
『再開』、まさしくこのタイトルどおり。真希の静かな、そして心強い誓いに期待します。
そして梨華が次に目覚めた時、そこには・・・
You'll Never Forget Me …
I'll Never Forget You …
- 208 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2001年12月20日(木)22時41分18秒
- よっしぃーは二人のことが好きだったんですね。
だから、ごっちんが近づいてきているのが分かっていながらも
行動に移したのかあ。なんかせつないですなあ。
やっと、ごっちんは梨華のことを好きだと言いましたねえ。
一度リセットされてまた最初から始まる梨華とごっちんの関係
まさしく再開ですなあ。(^−^)
この二人の関係によっしぃーもなくてはならない存在になったような
気がしますなあ。
梨華が目覚めたときどうなるのかドキドキしますなあ。楽しみにしています。
akiさん、無理せずにマイペースで頑張ってください!
いしごま防衛条約機構は応援しておりますぞ!
- 209 名前:ごまっち 投稿日:2001年12月21日(金)13時58分09秒
- akiさん、はじめまして・・・あいさつ遅れました、スイマセン
・・・う〜ん、そうきたか!!果たしてバーを去っていく「ひとみ」は笑顔だったのか、涙だったのか・・・。
今回の更新分読んで「恋しさとせつなさと心強さと(篠原涼子)」って曲が頭をよぎりました。
切ないですね・・・「ひとみ」>いい相手見つけてやってください(w>akiさん
そして「真希」。「あの人」の呪縛から解きはなたれるのだろうか?
「梨華」の「クリアの力」というキーワード。この力は、何を、何処まで?クリアさせてくれるのでしょうか・・・楽しみです。
- 210 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2001年12月21日(金)16時57分43秒
- うわーなんかすんごく間をあけてしまった。悪気があってしたわけではありません。
気づいたらこうなってました。
本当に申し訳ありません。ごめんなさい。
これからもakiさんを応援し続けます!
- 211 名前:aki 投稿日:2001年12月21日(金)19時01分02秒
- 206:名無し梨華さん
>後藤の素直になり始めたのが伝わったみたいで嬉しいです^^
よしこはもしかしたら見た瞬間に後藤のことを好きになってたかもしれませんね。
本当に気付かないほどのほのかな想い・・・。
しかし最後までひとみの「らしさ」が貫かれたような・・・。
ありがとうございます^^
これからもがんばりますっ。
207:M.ANZAIさん
>レスありがとうございます。
これから年末は特別番組多いですよね〜。楽しみ♪
ひとみは本当に真希のことも梨華のことも好きだから2人に幸せになって
欲しいんでしょうね・・・。
これからの真希の姿にも見守っていてください^^
がんばります。
208:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
書いてる本人はあんまり感じなかったんですがこのシーンは今見ると
結構切ないですね。
そうです、やっと言えましたぁ(T_T)<告白
本当に良かった良かった・・・。とりあえずはですが・・・(w
ありがとうございます!がんばります!
- 212 名前:aki 投稿日:2001年12月21日(金)19時07分42秒
- 209:ごまっちさん
>レスありがとうございます^^
ひとみの去っていく時の表情は・・・あえて断定しない方がいいかもしれませんね。
それぞれのご想像にお任せしたいと思います(w
「恋しさとせつなさと心強さと(篠原涼子)」<いい曲ですよね。偶然にも
つい最近昔の引出しから掘り出して聞いたりしましたv
ひとみのいい相手・・・・考えておきます(w
がんばりますよ〜!
210:いしごま防衛軍さん
>大丈夫ですよ^^
レスわざわざありがとうございます^^
今日は・・・もしかしたら更新できないかも・・・。
- 213 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2001年12月21日(金)23時53分16秒
- akiさん、無理せずにマイペースで書いてください。(^−^)
いしごま防衛条約機構はいつでも見守っておりますぞ!!
- 214 名前:読書の秋 投稿日:2001年12月21日(金)23時55分17秒
- この小説・・・好きだよ・・・
愛してる・・・(壊
おもろいっす!おもろいっすよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
- 215 名前:aki 投稿日:2001年12月24日(月)22時41分30秒
- これを書き始めてからでは初の長い間を空けちゃいました・・。
本当に申し訳ないです。
ちょっとショッキングなことと同時にか〜なりハッピーなことがありまして・・・(?)
今から、ちょこっとですが更新します。
213:いしごま防衛軍さん
>ありがとうございます。
これからもがんばります。
214:読書の秋さん
>嬉しいお言葉本当にありがとうございます。
これからもがんばらせて頂きます。
それにしても長編って今更ですが大変ですね・・・。
- 216 名前:始まりはいつも2人で・・・・ 投稿日:2001年12月24日(月)22時54分18秒
―――――
「・・・・・・・」
すっと意識が戻り梨華は閉じていた瞳を開けた。
しかしまだ意識はぼーっとしているため何も言葉を発さないまま梨華はただ今の
状態から天井を眺めていた。
「・・・・私・・・・」
ソファに横になる自分の体。
そして掛けられている毛布。
一瞬自分がどこで何をしているのか分からなくなり微かに記憶を辿ってみた。
(そうだ・・・・・・私・・・・)
そしてすぐにここがバーの休憩室だと言う事が思い出される。
街で少女と出会って、連れてきてもらって・・・それで・・・・・。
「!」
梨華はその次のことに驚き上半身をばっとソファから起こした。
「・・・・・・・」
戸惑いを隠せず確認するように自分の唇にそっと触れてみる。
微かにだが記憶に残っている感触。
突然キスをされて・・・それで・・・・・・
- 217 名前:始まりはいつも2人で・・・・ 投稿日:2001年12月24日(月)22時55分14秒
- 「目が覚めた?」
「!」
ふと掛けられた声に梨華は驚いて後ろに振り向いた。
するとそこには自分の頭の方向にあるもう一つソファに腰を掛け雑誌を手に持つ
一人の少女の姿があった。
「あっ・・・・・・・」
「体だるくない?平気?」
戸惑い動揺する中、少女は自分に普通に声を掛けてくる。
(ドクンドクン・・・・)
高鳴る鼓動。
(この人・・・・そう、この人だ・・・・・)
何より体が彼女に反応する。
駅前で見かけた、あの時救ってくれた人。
疑問や違和感が全てなくなり残るのは胸の鼓動。
この人に違いない。
だけど・・・・何が彼女なのか分からない。
それ以前に何を自分が疑問に感じているのかも分からない。
彼女の名前も・・・・思い出せない・・・・・。
- 218 名前:始まりはいつも2人で・・・・ 投稿日:2001年12月24日(月)22時56分35秒
- 「!・・うっ・・・・・・・」
突然頭に締め付けるような頭痛が走り梨華は頭を押さえた。
「大丈夫・・・?」
真希はただそんな梨華の側に寄り体を支えてあげる。
「ごめんな・・・さい・・・・大丈夫です・・・・・」
少女の手のぬくもりが体に伝わり、梨華は微かに体をびくっとさせながら何とか答えた。
「・・・・・・・・」
彼女の顔がすぐ近くに来る。
体がすぐそこにある。
それだけで自分の心は跳ねるように高鳴る。
顔が熱を持ち頬が赤くなるのが分かる。
梨華はそんな自分の状態に戸惑いながら少女の方に静かに振り向いた。
「・・・・あなたは・・・・一体・・・・」
今始めて出会った、はず。
なのに全くそんな気がしない。
ドキドキはとまることなく益々激しくなっていく。
そして、彼女の存在は私を癒す―――――
「私は・・・・・」
開きかけた口は何を言っていいのか分からず言葉を失う。
真希はなんと答えたらいいのか困りそのまま黙ってしまった。
- 219 名前:始まりはいつも2人で・・・・ 投稿日:2001年12月24日(月)22時57分32秒
- ポーン、ポーン・・・・
そんな時休憩室の壁に掛けかけてある古い時計が鳴った。
二人が同時にそれに反応し音のなった方へ顔を向けた。
振り子を静かに揺らしながらそれは埃を被りながらも昔ながらの音で
時間を告げる役目を果たしている。
「・・・・・4時・・・って午後4時・・・・!?」
時計の針はちょうど午後4時ちょうどを示していた。
「・・・・・・・」
真希もただ静かに時計に振り返り見ていた。
「確か私ここに午前中に来たはず・・・・・・!」
言いかけて梨華はあることに気付き驚いた表情で真希に向き直った。
「もしかして・・・・ずっと待っててくれてたんですか・・・!?」
「え?あ、うん。」
真希はただそれにさも普通に返事する。
- 220 名前:始まりはいつも2人で・・・・ 投稿日:2001年12月24日(月)22時58分51秒
- 「ご、ごめんなさいっ!!ずっと気付かないで私・・・寝てて・・・・」
「いいよ別に・・・・。私が待ちたくて待ってただけなんだから。」
慌てて謝る梨華に真希はただありのままの気持ちを伝える。
梨華はそれに益々彼女に対して惹かれていくのを感じていた。
「すいません・・・・」
「・・・それと、あなたをここに連れてきた子だけど・・・・」
梨華が謝る中、真希はひとみの事を切り出した。
このままでは何の話のないままひとみのした事が終わってしまうような気がした。
「あ・・・・・・」
思い出すようにそれに微妙な反応を梨華は見せた。
気まずそうな、微かに動揺しているような。
「彼女がした事・・・・突然のことで驚いたと思うけど・・何でもないから・・・。
許してあげてとは言えないけどちゃんとした理由があった中で取った行動なの・・・・。
上手く言えないんだけど・・・・」
「・・・だ、大丈夫です。大丈夫・・・・・」
真希の悪そうにして言う言葉に梨華はひとみのした事よりもそちらの方が気になってしまった。
ただやっぱり体に残る感触に戸惑いながらやっと返事する。
- 221 名前:始まりはいつも2人で・・・・ 投稿日:2001年12月24日(月)23時00分24秒
- 「・・・・・・・・」
ひとみのした事も結局は自分のせいだと真希は思っていた。
『真希のせいだよ。』
あの時ひとみの言っていた言葉がやっと理解する事が出来る。
そう、私が悪い。
ひとみは・・・何も悪くない・・・・。
「吉澤さんと・・・友達なんですか・・・・?」
梨華は気付いたらそんなことを真希に対して尋ねていた。
苦しそうな切なそうな表情で少女のした事を代わりに謝る彼女の姿になぜか
胸がずきっとし、無性に気になった。
- 222 名前:始まりはいつも2人で・・・・ 投稿日:2001年12月24日(月)23時01分35秒
- 「友達・・・そう、友達かな・・・・。いや・・・あれでも私の親友かも・・・・」
「親友・・・・」
「むしろ悪友って言った方がしっくりくるかもしれない。誰よりも対等で・・・・
ちょうどいい距離を保ってる・・・・そして・・いつも見守っててくれてる・・・。」
「そうなんですか・・・・・。」
返って来た答えは微妙に複雑だった。
親友。
そう言ったときの彼女の表情は本当にそう思って言ってるようだったから。
それに・・・・二人は自分なんかが入り込めないぐらいに・・・似合ってる・・・・。
- 223 名前:始まりはいつも2人で・・・・ 投稿日:2001年12月24日(月)23時03分19秒
「・・・・・・・」
尋ねられた疑問に答えた自分の言葉は思ってもいなかった物だった。
今までひとみとの関係なんて考えた事もなかったのに。
彼女の質問で初めて私自身も自分に問い掛けた。
親友、悪友。
そんな言葉がまさか自分の口から出てくるとはね・・・。
- 224 名前:始まりはいつも2人で・・・・ 投稿日:2001年12月24日(月)23時04分24秒
「・・・もう外も暗くなり始めてるかも・・・帰り送っていこうか。」
「え!?い、いいです。悪いですよ。」
「私がそうしたいからそうするの。それとも迷惑?」
「め、迷惑だなんて!むしろ・・・・嬉しいです・・・・」
彼女に誤解されないように必死に否定しようとしたらそんな言葉が口から出てた。
本当に思っているありのままの気持ちだから自分でも気付かないうちに
口からとって出たんだろう。
だけどやっぱり恥ずかしくて・・・・紅くなる顔を見られないように俯きながら答えた。
「そ・・・良かった。」
梨華の返事に真希はそっけなく答えソファから立ち上がりバーに通じるドアに向かった。
ぶっきらぼうなその態度は本当は微かに嬉しくて照れる感情を表に出さないようにするため。
- 225 名前:始まりはいつも2人で・・・・ 投稿日:2001年12月24日(月)23時07分20秒
- それから2人はコートを羽織り梨華も微かに乱れている制服を調え指定のコートを
着て、寒く既に暗くなり始めている外に出た。
街の煌びやかなネオンはクリスマスに近いというだけあっていつもより特に
目に鮮やかな物だった。
「綺麗・・・・・」
ふと口にした言葉は白い息とともに発せられる。
「・・・・・・・」
真希も梨華と同様言葉にはしなかったがどこか嬉しそうに暗い外に映えるネオンを
眺めていた。
そんな真希の横顔を梨華は見つからないようにそっと見つめていた。
「・・・・あの・・・・」
「何?」
「あそこに・・・よく来るんですか?」
「・・・まぁね。」
「っ・・・・・・」
何か言いかけた梨華の口は上手い言葉が探せず音を途中で失う。
- 226 名前:始まりはいつも2人で・・・・ 投稿日:2001年12月24日(月)23時10分03秒
- 「・・・暇な時来てもいいよ。」
「!本当ですか!?」
「うん。」
考えていた事をはっきり当てられ梨華は嬉しさよりも驚いてしまった。
それに微笑みながら真希が答える。
「良かった・・・なんて聞いたらいいのか分かんなくて・・・・・」
嬉しそうに梨華はかじかむ手に息を拭きかけながら言った。
「寒いの?」
「あ・・・ちょっと・・・・」
「・・・・・・・・」
返事に真希は黙ったまま梨華の手を取った。
- 227 名前:始まりはいつも2人で・・・・ 投稿日:2001年12月24日(月)23時16分13秒
- 「え?あっ・・・・・!」
「少しは・・・暖かいと思うけど・・・・・」
その冷たくかじかんでしまっている手を真希は優しく握り締め自分の頬に当てた。
優しい、暖かいぬくもりがそれから伝わる。
真希はただ黙って梨華の全てを感じるかのように頬の手を抱きしめた。
「あ・・・の・・・・・・」
「・・・・・・・」
戸惑う梨華を余所に真希はそれを自分のコートにそのまま閉じ込める。
「あ・・・あの・・・・・・」
(ドクンドクン・・・)
やっと治まり始めた胸のドキドキが再びすごい速さで押し寄せてくるのが分かる。
暖かい手。
綺麗で柔らかくてしなやかで、そして優しい。
自分の冷たくなった手がそのぬくもりに包まれていくのを感じる。
いつしか時めきはいつもの梨華以上に積極的にさせようとしていた。
- 228 名前:始まりはいつも2人で・・・・ 投稿日:2001年12月24日(月)23時17分39秒
- 「・・・・う・・腕っ、組んでもいいですか・・・・?」
「・・・どうぞ。」
ぶっきらぼうな答えはどこか暖かくて。
かなり緊張しながら彼女の腕に自分の腕を絡めた。
(わっ・・・・・・・)
夜のネオンの街を腕を組んで歩くのは何とも言えない気持ちだった。
女の子2人が腕を組んでいても寒いためもあり全く人が変な目で見ない。
ちょっと大胆に、彼女の腕に再びぎゅっとしがみ付く。
手と同様腕から体に伝わっていく彼女の温もり。
このまま時が止まっちゃえばいいのに・・・・。
- 229 名前:始まりはいつも2人で・・・・ 投稿日:2001年12月24日(月)23時18分32秒
- 「あっ・・・・・」
しかし願いは空しく目の前に現れた人が慌ただしく出入りする駅の改札口。
だんだん視界に広がっていく。
あっという間に幸せな時間は過ぎ去り駅の目の前まで着いてしまった。
「・・・・あ、ありがとうございました。わざわざ駅まで送ってもらっちゃって・・・」
「いいよ。別に。」
「明日も・・・行ってもいいですか・・・?」
「待ってる。」
そんなシンプルな答えが嬉しくて、家に帰ることなんてもうどうでもよくなってしまい
そうになる。
- 230 名前:始まりはいつも2人で・・・・ 投稿日:2001年12月24日(月)23時19分21秒
- 「それじゃ、またね。」
ぽーっとしてしまっている梨華に真希はそれだけ言うと駅とは逆の再びどこかへ
向かおうとしてしまう。
「あ・・・待ってくださいっ・・・!」
「なに?」
「名前・・・・名前・・聞いてないと思うんですけど・・・・・」
真希は後ろから呼び止める声に首だけ動かし振り向いた。
「後藤真希・・・・」
「!」
「・・・じゃあね。」
それだけで済ますと真希は人々の行き交う雑踏の中にまぎれて見えなくなってしまった。
- 231 名前:始まりはいつも2人で・・・・ 投稿日:2001年12月24日(月)23時20分01秒
「後藤・・・さん・・・・・・」
繰り返してみる彼女の名前。
初めて聞いたのに今まで何度も呼んでような・・・。
不思議な感覚。
しかしそれよりも何より・・・・
自分が聞いた時の彼女が見せた微かな表情、
どこか寂しげで悲しそうだった瞳・・・。
それになぜか無性に罪悪感を覚えた。
- 232 名前:aki 投稿日:2001年12月24日(月)23時21分22秒
- ここまでです。
ストックが・・・大幅になくなってしまいました。
次の更新は・・・もしかしたら来年になるかもしれません。
もしものことがあればまた今年中に更新できるかもしれませんが・・・。
これからもよろしくお願いしますm(__)m
- 233 名前:名無し梨華 投稿日:2001年12月24日(月)23時32分06秒
- いやついに出会って会話もしちゃいましたねー。
ごまのぶっきらぼうさで照れを隠すところ、いいなぁ。
ある意味素直なんだよねぇ(w
お年玉として続きを読ませてください(w
お待ちしてます♪
私的報告ではありますが、僕も昨夜交信しました(w
- 234 名前:M.ANZAI 投稿日:2001年12月25日(火)00時24分20秒
- まさしく始まりましたね、真希と梨華の関係が。
今度は真希の方から梨華に手を差し伸べ、それを素直にうれしく受け取る梨華、
そんな二人が微笑ましくもあります。
次の更新、年内でも年越しでもヒタスラお待ちしております。
- 235 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2001年12月25日(火)00時48分23秒
- おおーなんか二人の会話があまりにも新鮮過ぎてなんか言い表せない
ほど感激しました。なんかドキドキしました。二人の心は通じ合って
いるんでしょうなあ。これから二人はどうやって歩んで行くんでしょうか?
前途多難であっても二人の関係はもう崩れないような気がします。
梨華とごっちんの二人には幸せになってほしいです。
よっすぃーには二人を見守っていてほしいですなあ。
そうですか。次の更新まで受験勉強を頑張ろう。
いしごま防衛条約機構はいつまでも待ちますぞ。(^〜^)
自分も受験勉強頑張るんでakiさんも頑張れ!!
- 236 名前:aki 投稿日:2001年12月28日(金)00時00分29秒
- 233:名無し梨華さん
>レスありがとうございますっ。
あちらは既にチェック済みですよ(w
レスが多いのでこちらで返事させてもらいますがかなり切なかったですv
当然梨華ちゃんとごっちんがくっつくことを一読者として願ってますが・・・
どうなってしまうんでしょう。期待して待ってます^^
なるたけがんばります!
234:M.ANZAIさん
>レスありがとうございます。
2人のシーンは書いてても幸せです(w
更新のペースが大幅に落ちちゃいましたがゆっくりがんばります。
235:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
そうですね、もう2人は離れることはないと思います。
これからどんなことが会ったとしても絶対に・・・。
そう願ってます(w
受験勉強この時期本当につらいと思いますががんばって下さい。
私も、がんばります!
今日は更新はしません。
なんとか年内にもう一度・・・と思ってます。
- 237 名前:名無し梨華 投稿日:2001年12月29日(土)10時42分29秒
- ちぇっく済みだったんですね(w
メール欄でぶっちゃけてます(w
- 238 名前:名無し梨華 投稿日:2001年12月29日(土)10時43分54秒
- ミス(死
年内交信、楽しみにしてます。
まあまいぺーすでいきましょう♪
- 239 名前:aki 投稿日:2001年12月29日(土)21時53分19秒
- 238:名無し梨華さん
>レスありがとうございます。
同じくメール欄で返事を書かせてもらいましたが・・・。
びっくりです、あえてこれ以上は聞かないことにしますが・・(w
マイペース<ありがとうございますTT がんばりますっ!
これから更新します――
- 240 名前:覚悟 投稿日:2001年12月29日(土)21時55分40秒
それから翌日。
梨華は当然学校を休みバーに向かった。
朝起きて服に着替えて髪を整え顔と歯を洗って・・・
そんな毎日のありきたりなことがそれからのことによって全く別の物に代わった。
寒い外に出てドアにカギを掛ける。
絶え間なく胸の中では高鳴る鼓動。
いつのまにか、あの時の違和感は跡形もなく消えていた。
電車に乗りその駅で降り、その道を進んでいく。
- 241 名前:覚悟 投稿日:2001年12月29日(土)21時57分37秒
- 目の前に広がるのは木で作られている、昨日彼女と出会ったバーの姿。
「こんにちは〜・・・・」
恐る恐る手前の外に通じるバーの扉を開けてみるが中に人の姿はなかった。
ただ寂しく埃やくもの巣が冷たい風で床を泳いでいる。
「ん?・・・ってもしかして・・・・梨華ちゃん!?」
「え?」
しばらく辺りを見渡していると声を掛けられた。
大きくて高い声。
しかし振り向いてみても知っている人ではない・・・はずの人だった。
「ど、どうして・・・・・」
「?・・・あの・・どこかで会いましたっけ・・?」
「!・・・・・・」
矢口はあの見覚えのある後ろ姿に驚愕した。
その声、その姿、全てが彼女だ。
たった一つ・・・
私たちとの「記憶」を取り除いては・・・。
- 242 名前:覚悟 投稿日:2001年12月29日(土)22時00分20秒
- 戸惑いながら動揺しながらもとりあえず矢口は梨華をバーに案内する。
「お、矢口おはよう〜・・・って・・なっ・・・・」
なつみも矢口同様、矢口の後に現れた梨華の姿に言葉を失ってしまった。
「・・・・・?」
梨華は一人不思議に感じていた。
目の前の彼女も、たぶん初対面のはずだが明らかに相手はそうではないらしい。
「矢口ちょっと・・・これはどういうこと?」
「知らないよ・・・矢口じゃないってばぁ・・・。」
なつみに微かに睨まれるように見られ矢口は微かに後ろに後ずさりながら
情けない様子で弁解する。
そのままなつみの視線は矢口から梨華に向かった。
「あなた・・・・どうして・・・・」
なつみが梨華に何かを尋ねようとしたその時、
- 243 名前:覚悟 投稿日:2001年12月29日(土)22時02分40秒
「私が連れてきたの。」
部屋にはっきりと三人に向かって言う言葉が響いた。
「・・・真希・・・・」
バーの扉を開けながらこちらに向かって言ったのは他でもなく真希、彼女だった。
「後藤さん!」
梨華は途端に嬉しそうにしてそちらに近寄る。
「どういう・・こと・・・・?」
矢口もなつみ同様表情を険しい物にして詰め寄るように真希に尋ねた。
「彼女をここに連れてきたのは私。」
「聞きたいのはそれじゃない!一体どういうつもりなのか聞いてるの!!」
なつみが珍しく声を張り上げて真希に問いただす。
矢口が微かにそれに驚きながら反面なつみの気持ちも理解し真希に向き直った。
- 244 名前:覚悟 投稿日:2001年12月29日(土)22時04分50秒
「ごめん・・・・でも私決めたの。もう一度・・・最初から始めるって・・・」
真希が一度梨華の方をちらっと見て後答えた。
それには何かを確実に心に決めた覚悟のような物を秘めた表情だった。
「後藤・・さん・・・?」
「大丈夫・・・・」
状況が分からず不安げに真希の方を見る梨華に真希は安心させるように小さく微笑む。
「裕ちゃんには・・・どう説明するつもり?例えどんなこと言ったとしても・・・
裕ちゃんは許してくれないと思うよ・・・?」
「・・・それでも・・いいの。覚悟してる。」
「・・・・・・・」
なつみも矢口も何かを確かに固く胸に決心している真希に何も言えなくなってしまった。
その時再びドアが開く音がした。
- 245 名前:覚悟 投稿日:2001年12月29日(土)22時11分56秒
「おっは〜ようございます〜。」
ひとみが元気よく手を上げながらバーに入ってきた。
「よっすぃー・・・・」
気まずい空気が一瞬だけ取り除かれ矢口がひとみの名前を呼ぶ。
「真希を責める前に私を責めて下さい。真希をこうしたのは私です。」
ひとみは平然と四人を見渡し最後になつみに言った。
「・・・・・・」
「ったく・・・みんな甘いんだから・・・。なっちだって責めたくて責めてるんじゃないよ。」
ひとみの登場、そしてそのセリフに全員の視線がなつみに注がれる。
なつみも結局はそれに視線を横に外しぷいっと拗ねたように呟いた。
「なっちなっち!」
そんななつみを矢口が笑いながら肩を叩く。
梨華も状況がいまいち分からないでいたがなぜかこのバーに流れる空気が一気に良くなった
のを感じて真希を見た。
その時真希も同時に梨華の方を見たためタイミングが合い二人は自然と微笑みあった。
四人だけのバーに再び楽しく明るい空気が流れようとした――――
- 246 名前:覚悟 投稿日:2001年12月29日(土)22時13分57秒
- 「あかんでぇ。」
バーに一際声を張り上げたよく通る声がバーに響いた。
「!!」
四人がそちらに同時に振り向く。
そこには確かに怒った様子の中澤が豹柄のロングコートを着込んで四人を
見下ろすように腕を組み立っていた。
「裕ちゃん・・・・」
矢口が中澤の姿に気づき小さく声を漏らす。
そこに立つ中澤はいつもの中澤ではなかった。
私情を全く挟まずただ非情なほどに冷静で仕事をやり遂げようとする精神、
それが今は嫌というほどに四人に剥きだされていた。
- 247 名前:覚悟 投稿日:2001年12月29日(土)22時19分30秒
- 「後藤・・・これはどういうことや。」
「・・・・・・」
こつこつとハイヒールの音を耳に気持ちよく立てながら中澤が真希に近づいていく。
真希は何も言い返せずただ中澤が目の前まで近づいてくるのをただ黙って待っていた。
「答えられないんか?」
「もう一度、初めからやり直すためです。」
睨む中澤を真希は真っ直ぐ見据えはっきりと答えた。
「どういう意味や・・・?」
「彼女と・・・また一から始めることに決めたんです。そして・・・私自身も
変わるため・・・・」
「後藤・・・自分が何言うてるのかわかっとるのか・・・。あの時全てを終わりにした
はずや!全てを・・・守ったはずやんかぁ!!」
中澤が怒鳴るようにして真希の襟元を荒々しく掴む。
- 248 名前:覚悟 投稿日:2001年12月29日(土)22時22分14秒
- 「ちょ、ちょっと裕ちゃん!」
矢口が慌てて前に出てやめさせようとする。
「だめ・・・・」
それをなつみが黙って手で制した。
「なっち・・・・!?」
「ここからまた・・・始めるんです・・・・!」
真希は一歩も引かない。
中澤はただ真希の目を真っ直ぐ見据えていた。
「・・・・ったく、この頑固もんは・・・・」
しばらくその確固たる想いを秘める真希の瞳を見据えた後とうとう中澤は真希から
視線を外した。
そしてそのまま梨華を見る。
「うちはな、あの時身を切る想いであんたにあれをしたんや。ただの本部の命令やからと
ちゃうで。あんたのこと想ってや・・・。それがあんたにも、みんなにもええからと
判断したんや・・・。」
- 249 名前:覚悟 投稿日:2001年12月29日(土)22時26分02秒
- 「・・・・・・」
何のことか分からなかったが梨華はなぜか自分とは全く関係のないことを言っているとは
思えなかった。
「もう一度始めるんならそれでもええ。うちも・・・最後まで付き合うたるわ・・・」
ため息混じりに中澤は言うと真希の肩をぽんと叩き向こうへ行ってしまった。
「・・・・ごめん・・・」
真希はただそのままの体勢のまま俯き加減で小さく中澤に対して呟いた。
「後藤・・さん・・・?」
梨華が心配そうに真希のほうへ近づく。
真希はただ梨華に小さく微笑んだ。
それに梨華も安心するようにつられて表情を柔らかいものにする。
「裕ちゃん・・・」
矢口も微かに表情を和らげ中澤の後ろ姿を見た。
なつみもひとみも小さく息をついた。
そして今日から再び始まった。
五人のかけがえのない日々が――――
- 250 名前:aki 投稿日:2001年12月29日(土)22時26分43秒
- ここまでです。
これからもがんばりますっ。
- 251 名前:aki 投稿日:2001年12月29日(土)23時10分42秒
- す、すいません・・・上の・・249の最後「六人」・・・ですね。
かなりやばいミスをしてしまった・・。
本当に申し訳ないです
- 252 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2001年12月29日(土)23時51分38秒
- いえいえ、気にすることはないと思いますよ。
akiさんは本当にベストを尽くしていると読んでてわかります。
いつもいつも読ませていただき本当にありがとうございます。
なんかいつも癒されます。
中澤さんはやっぱりごっちんの気持ちを理解してくれたんですな。
これで六人がみんなそろったわけですが、梨華と保田チームとの
再会はあるんでしょうか?うーん、なんか楽しみです。
楽しみに待っています。
akiさんの作品を読むと勉強をするやる気と元気がでてきます。
akiさん、頑張ってください!!
- 253 名前:名無し梨華 投稿日:2001年12月30日(日)01時13分40秒
- 遂に戻り始めましたね。
うーん、梨華たんの記憶はどうなるんだろう。。。
ああ次回が待ち遠しい(プレッシャー(w
- 254 名前:M.ANZAI 投稿日:2001年12月30日(日)17時16分42秒
- 中澤の気持ち、痛いほどですね。
しかし誰も憎んでいる訳でもない、むしろなおもみんなの思っている。
きっとそこに梨華の顔を見た時から、中澤の心の中にはこれまでにも増して
ここにいる仲間と共にこの場所を守る“覚悟”が刻めれている筈です。
そしてそれは4人も同じ事でしょう。梨華を除いては。
中澤の能力の練度の高さを考えれば梨華が元にもとることはまず無いでしょう。
しかし目覚める可能性は・・・?
梨華に対する想いが保田や加護達にもある以上、
流れは自然とひとつになり大きな海へと注ぐことでしょう。
年内の更新、お疲れ様です。
そしてありがとうございました。
- 255 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年01月01日(火)00時46分58秒
- akiさんあけましておめでとうございます!!
今年もよろしくおねがいします。また楽しく読ませていただきます。
これからどうなるんでしょうか?ドキドキしながら待っています。
- 256 名前:aki 投稿日:2002年01月02日(水)00時10分23秒
- 新年あけましておめでとうございますm(__)m
今年もよろしくお願いします^^
252:いしごま防衛軍さん
>嬉しいお言葉本当にありがとうございます。
一人でも癒されると感じてくれる方がいるんだと知りとても嬉しいです。
これから勉強忙しくなってくると思いますががんばって下さい。
私もがんばります(w
253:名無し梨華さん
>失われた記憶・・・どうなるか楽しみにしててください^^
次回の更新・・・もう少し時間を空けさせてもらいます。がんばりますっ。
254:M.ANZAIさん
>いつも深く読んでくださっているようでとても嬉しいです。
ありがとうございます^^
いい所突いてますね。
今はどれも口を塞いでおきます(w
ありがとうございます、これからもがんばります。
255:いしごま防衛軍さん
>おめでとうございます^^
今年もこちらこそよろしくお願いします(w
これからの展開、気を抜かずがんばりますー!
- 257 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月03日(木)19時37分46秒
再び全員は自己紹介をした。
そしてゲームもいろいろ教えあった。
ここからまた始まる。
それを全員が確信していた。
そしてクリスマス・イブ。
「あれ」からちょうど一年の月日が流れたんだと今更感じていた。
ケーキを用意する。
クリスマスでは定番のブッシュ・ド・ノエルを。
- 258 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月03日(木)19時41分05秒
―――――――
用意されるケーキ。
辻が嬉しそうにそれを見つめていた。
しかしどこか寂しそうな瞳で。
「みんなと食べたかったな・・・・」
人知れず呟いた小さな独り言はしっかり飯田の耳に届いていた。
何も言わずただその肩をぽんと抱いてあげる。
「今・・・裕ちゃんから電話があった・・・・。」
保田が向こうからどこか複雑な声と共にこちらにやって来た。
辻と飯田、そしてソファに寝転がっていた加護がそれに顔を上げた―――――
- 259 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月03日(木)19時48分28秒
―――――――
中澤が電話をチンと音を立てて切ったのが部屋に響いた。
そしてそのまま歩きながらコートを羽織りクリスマスの飾り付けをする矢口の横を
通り外のバーへと出る。
そこには既になつみがコートに手を突っ込み白い息を吐きながら立っていた。
「・・・いつまでも・・このままでいいわけあらへんで・・・・。」
「分かってる・・・。」
険しい表情と共に二人だけの会話を交わす。
外は昼間だというのに既にどこか暗かった。
- 260 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月03日(木)19時54分46秒
「シャンパン買ってきたよ〜。」
専用の細長い茶色の紙袋にシャンパンを包みひとみがバーの扉を勢いよく
開け放つ。
「そこ置いといて〜。よっすぃーも飾り付け手伝ってよ。」
「それはいいですけど・・・真希達は?」
必死に背伸びをして飾りを壁につける矢口に答えながらひとみはきょろきょろ辺り
を見渡す。
「今さっきよっすぃーと一緒に行ったじゃない。まだ帰ってきてないよ。」
「そうですか。」
向こうからのなつみの返事にひとみは小さく微笑むと矢口の隣に行きさっきから
苦戦している壁の飾り付けを手伝った。
誰も「あの事件」について触れなかった。
誰もこれからの不安についてのことも口にしなかった。
梨華とのこれからのことも。
何かが起ころうとしているのなら、この瞬間だけは全てを忘れてしまいたかった。
- 261 名前:aki 投稿日:2002年01月03日(木)19時56分17秒
- 新年明けての更新は少なめですがここまでにします。
今年もよろしくお願いしますm(__)m
- 262 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年01月03日(木)22時26分25秒
- 何かが起きる前の平和な一時という感じがしますねえ。
この平和がずっと続いてくれればいいんだけどそういうわけにも
いかないのでしょう。
これからどういうことが起きるのだろうか。
ドキドキしながら待っています。
akiさん、今年もベストを尽くして頑張ってください。
自分もセンター試験が間近に迫ってきたので最善を尽くしたいのですが
ここまできてなんか不安になってきました。
しかし、いしごま防衛条約機構は最後まで頑張りますぞ!!
akiさん、今年もポジティブに行きましょう。
- 263 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年01月04日(金)14時02分30秒
- あれから一年・・・それを目の当たりにした者達にとって、
こんな形で迎えたこの日を淡々とすごそうとしていますね。
中澤から保田への電話。いったいどんなことを中澤は話したのでしょうか?
けっして無関係ではいられない保田たちにいったい何を・・・。
>akiさん
あけましておめでとうございます。
この先の展開をドキドキハラハラでお待ちしております。
- 264 名前:aki 投稿日:2002年01月04日(金)18時45分32秒
- 262:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
いよいよゴールがおぼろげにですが見えてきた気がします。
長かった・・・。
今年もがんばります。
センター試験、がんばって下さい!この時期精神的にも辛くなってくるかも
しれませんが応援してます。
263:M.ANZAIさん
>レスありがとうございます。
これから徐々に全てが一つになって来ると思います。
電話はそれに繋がる内容・・・ですね。
あけましておめでとうございます^^
この先もがんばります。
- 265 名前:ごんた 投稿日:2002年01月04日(金)18時50分15秒
あけましておめでとうございます。
おもしろいっす!!ごっちんが今度は・・・!!という夢を見てしまい、
ついここをのぞきました。自分の所でああなってしまっただけに・・・。
幸せになってほしいっす!
- 266 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月04日(金)18時56分20秒
「まだ買うの?」
真希は両手に袋を抱えながら後ろから楽しそうに前を歩く梨華に言った。
「あ、もう買いません。ただ・・・楽しいなって・・・・」
梨華は後ろに振り返りながら街のイルミネーションやお店に飾られている服を
見る。
「後ろ見ながら歩くと転ぶよ。」
はしゃぐ梨華に白い息と共に言いながら真希も梨華と同じように辺りに目を向けた。
外は既に日が沈み始め辺りは深い青い闇に包まれようとしていた。
それに町のイルミネーションが目に鮮やかに美しく映る。
風が微かに吹き全く葉をつけていない木々がそよそよと優しく揺れた。
あちらこちらでクリスマス限定のきらびやかで大掛かりなイルミネーションが光っている。
- 267 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月04日(金)19時01分01秒
「・・・・ま、綺麗だけどね・・・。」
小さく微笑みながら梨華に答える。
そんな真希の表情を梨華は満足そうに嬉しそうにただ黙ったまま見つめ真希の側に
寄っていった。
「重いですか?私一つ持ちます。」
「いいよ、別に。約束でしょ。」
そう、三人は一緒に買出しに出ていた。
何を買い物するかでじゃんけんをし一番に勝ったひとみは一番楽なシャンペンを
担当、梨華と真希が鳥やらクラッカーやらパーティに必要な物の買出しをすること
になった。
そしてその後なぜかひとみ主導で荷物持ち係のじゃんけんを再びすることになり
結局それに真希が当てはまってしまったのだ。
そしてさっそく二手に別れひとみはさっさと買い物を済ませ一人先にバーに戻ってきて
しまった、というわけ。
- 268 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月04日(金)19時04分46秒
真希の返事に梨華がふっと小さく微笑んだ。
「楽しみですね。クリスマスパーティ。」
「そうだね。」
梨華は真希に近づきながら本当に嬉しそうに言った。
黙ったまま梨華がすぐ真希の隣に来て顔を見る。
それに真希が「どうぞ」と言わんばかりに荷物を持つ腕を小さく上に上げた。
梨華がそれに満面の笑みを浮かべて飛びつくように腕にしがみ付く。
そんなことが目で合図できるほど、言葉が必要なくなるほど二人はこれまでの時間を
充実してすごしていた。
梨華は真希のぬくもりが服越しにでも感じられることが何よりも嬉しかった。
そしてこの時間が他の何よりも幸せなひと時だった。
- 269 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月04日(金)19時09分16秒
- 「プレゼント、交換しあうんですよね?」
「うん。」
「何にしたんですか?」
「秘密。言えないよ。」
前を見て話す真希の顔を下から覗きこむようにして訪ねる梨華に真希は小さく笑い
ながら答える。
それに梨華も返ってくる答えは分かっていたのか小さく微笑むと「それじゃ私も秘密です。」
と前を向きながら言った。
「そういえば・・・・去年のクリスマスって後藤さん誰と過ごしたんですか?」
突然頭に浮かんだ疑問を梨華は考える前に尋ねていた。
何よりも気になること、それを今の今まで思いつかなかった。
こんなに大切なこと・・・
なんで今まで思いつかなかったんだろう・・・・。
- 270 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月04日(金)19時17分23秒
- 「・・・・・・・」
ふとした梨華の言葉に真希は自分の体が強張るのを感じた。
それは真希の腕を組む梨華にも伝わっていた。
「?」
黙り込んでしまった真希に梨華は首を傾げる。
「去年は・・・仕事とか・・・いろいろ会って・・・・・」
つい真希は記憶のなくなる前の、「それ」について知らなかった時の彼女に対して
取っていた態度を今の彼女に対して取ってしまった。
どうしても咄嗟に私の中の何かがそれに反応し前のような冷たく、感情が全く
ないような自分になってしまう。
- 271 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月04日(金)19時19分41秒
「後藤・・・さん・・・?」
突然態度の変わった、いや人が変わったような真希の様子に梨華は首を傾げた。
どこか不安そうに。
(この感覚・・・どこかで・・・・)
確か随分前、いやいつのことかも覚えていない・・けど、
自分にとって誰よりも大切だった誰かが、目の前の彼女と同じような態度を取ったような。
胸に生まれる不安。
そして無性に気になる自分の気持ち。
この感覚、全く同じ物を昔どこかで・・・・・。
- 272 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月04日(金)19時21分00秒
- 「ごめん。何でもないの。」
真希は不安そうにする梨華に微かに俯いた顔を上げながらいつもよりもわざと明るい
口調で梨華に対して答えた。
「そう・・ですか・・・・?」
真希が心配させないように、気にさせないようにしているのは梨華にもすぐに分かった。
しかしそうまでする彼女に対してこれ以上この疑問を尋ねる事はできなかった。
それからしばらく二人の間に沈黙が流れた。
気まずい雰囲気の中、梨華も真希も何も話さないままバーへの道を歩いていた。
- 273 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月04日(金)19時22分40秒
―――――――
「ごめんなさい・・・・私・・変な事聞いちゃいました・・?」
ちょうどバーへ繋がるいつもの狭い路地に入った時梨華はどうしても今さっきの
ことが頭から離れず思い切って話を切り出した。
「そんなことないよ・・。」
しかし返ってくる答えはいつもとは違いどこか冷たい物。
「でも・・・・」
「何でもないから・・・っ!」
再び梨華が話を戻そうとしたとき、真希は怒鳴るようにしてそれを止めた。
梨華がそれに驚いたように目を見開く。
真希もはっとすぐに自分の行動に気がついた。
- 274 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月04日(金)19時26分45秒
「ご、ごめんなさい・・・」
驚きと共に胸に押し寄せてくる切なさややるせなさに梨華は真希に背を向けバーに
足早にもはや走るように駆けていこうとした。
「!待っ・・・・・」
止めようとしたが言葉が全て出る前に梨華の背は真希からどんどん離れて行く。
真希は急いで梨華を追った。
「ちょっと待ってっ。今のは・・・・・」
「ごめんなさい。何度も聞いたりして・・・・迷惑ですよね。」
自然と発せられていく切なすぎるほどの必死に感情を押し殺したような声。
- 275 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月04日(金)19時28分31秒
- 「違うの、今のは・・・・・」
真希の言葉にも振り返らず梨華はただバーへと突き進もうとする。
「待ってっ・・・!」
「!」
止まらない梨華を真希は少し乱暴とも思えるほどにその細い腕を掴み自分の方へと
振り向かせた。
「後藤・・・さんっ・・!!」
戸惑う中言葉を発しようとしたとき、それは次の行動によって中断される。
片手に収まっていた二つの大きな買い物袋を何のためらいもなく地面に落下させ、
真希は強引なほどに梨華を前から抱きしめた。
- 276 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月04日(金)19時30分47秒
- 「違うの・・・。ごめん・・・・ごめんね・・。」
「後藤・・さん・・・・?」
必死に胸の内の何かを伝えようとするようなその声と、抱きしめる腕の力強さに
梨華はただ真希の胸の中でどうしたらいいのか分からず戸惑った。
ほんのわずかな時間かもしれない。
しかし梨華にとってとてつもなくこの時間は長い物に感じられた。
- 277 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月04日(金)19時35分07秒
- 「あ・・・あの・・・・・」
自分の胸の中で痛いほどに響くその鼓動をただ梨華は戸惑いながら体の全てで
感じていた。
彼女に抱きしめられている、それだけでこんなにも高鳴ってしまう。
いつのまにかどうして今、自分がこの状態でいるのかさえも分からなくなり抱きしめら
れているという事実以外は全てが記憶の彼方へと消えていこうとしていた。
- 278 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月04日(金)19時41分58秒
- 「・・・・・・・」
真希は静かに体を梨華から離した。
そしてただ何も言葉を発さないまま梨華の目を真っ直ぐ真希は見つめた。
「後藤・・さん・・・・」
どういう意味か考える前に、真希の手が頬に添えられていた。
そして顔が梨華に近づいていく。
いつも見つめていた彼女の横顔。
見ているだけでいつもどきどきしていた。
完全に自分の視界に彼女が埋まったとき、唇には柔らかく暖かい感触がそっと触れていた。
自然とこの時全く胸は高鳴っていなかった。
- 279 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月04日(金)19時49分48秒
- 「・・・・・・・」
触れるだけのキスはゆっくりとそのまま離される。
真希は何も言わずただ梨華の頬に添えていた手も離した。
「・・・・私・・・」
こんな時にも関わらず嫌に冷静な自分の思考回路は徐々に頭の中に今の事実を
浮かばせてくる。
梨華は今更のようにそれに戸惑い頬を赤くさせた。
今の感覚を確かめるように唇に触れてみる。
その時落ち着いていた分の反動が一気に押し寄せるかのように胸が高鳴り始めた。
「後藤さん・・・・」
「ごめん・・なんでもないから・・・今のは・・。」
地面に置かれた袋を再び持ち上げ言いながら真希は梨華から逃げるようにバーに向かって
歩いていこうとした。
- 280 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月04日(金)19時55分11秒
- 「!」
その言葉にズキンと胸に痛みが走ったのを梨華は感じた。
遠ざかっていく彼女の背中。
梨華は無我夢中でそれに向かって叫んだ。
「何でもないって・・・・今のは・・何の意味もない物からなんですか・・・・!?」
胸の中で様々な感情が廻る中、切実とした口調が疑問を投げかける。
「!違うっ!!」
それに真希が体全てで反応し完全に否定するように後ろに振り向いた。
「違うよ・・・。意味がないわけないじゃない・・・・。」
切なそうに呟くその言葉は梨華の耳にはっきり届いていた。
真希はそれからすぐに思い出したようにバーに向かって歩いていってしまった。
角を曲がり見えなくなる彼女の姿。
それまでずっと梨華はそこに立ちすくみ見つめていた。
「後藤さん・・・・」
小さく彼女の名前を最後に呟きながら。
- 281 名前:aki 投稿日:2002年01月04日(金)20時06分04秒
- 265:ごんたさん
>明けましておめでとうございます^^
ごっちんの不吉な夢ですか!?
ごんたさんの方では何とも思ってもいなかった方向へ進み驚いてます。
これから何か救われることはあるのでしょうか・・・?
私もこの小説に関しては幸せな結末を願ってます。
がんばります。
今日は久しぶりに大量に更新しました。
が、書き溜めていた物がほとんど0に等しく・・・(爆)
これからもがんばります。
- 282 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年01月04日(金)21時29分25秒
- 切ないですね・・・
>「・・・去年のクリスマスって後藤さん誰と過ごしたんですか?」
記憶を無くされる前の梨華にした仕打ちを思い出し、
さらにあの事件を思い出してしまう真希。
しかしここを乗り越えられなければ、梨華とのこれからが踏み出せない気がします。
辛いかもしれない、そしてまたあの時のような態度を取ってしまうとしてたら・・・
忘れ去れとは言えない、でも真希には頑張ってこの過去も踏まえた上で
梨華との新しい関係を築き上げて欲しい、と願うばかりです。
そしてこのクリスマスがその良いきっかけになってくれる事を。
>いよいよゴールがおぼろげにですが見えてきた気がします。
akiさんの描くゴールがどこへ向うのか、楽しみに続きをお待ちしてます。
- 283 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年01月04日(金)22時32分07秒
- うーん、切ないですなあ。梨華が記憶を消される前のことを
思い出していないからさらに切ないです。ごっちんはそのこと
を全て知っているぶん心の中は複雑だと思います。
ゴールが見えてきたということはそろそろ終盤ということですな。
このクリスマスに何かが起きるような感じがするんですが、
何があってもこの二人は幸せになると確信しました。
楽しみに待っています!!
自分なんかを応援していただき本当にありがとうございます。(^〜^)
必ずセンターで勝利し志望大学に合格するよう最善を尽くします!!
akiさんも最後まで頑張ってください。
- 284 名前:名無し梨華 投稿日:2002年01月05日(土)00時33分54秒
- あけましておめでとうです。
ええもう今akiさんマンセーって感じです。
やっすーとかそろそろでせうかね。
がんがってください^^
- 285 名前:ごんた 投稿日:2002年01月05日(土)19時46分02秒
ごっちんせつねえ・・・・。梨華っちの心の痛みってのはあの時言われた言葉だった
からですね。せつないっす!泣いてもいいですか?
- 286 名前:aki 投稿日:2002年01月07日(月)17時56分00秒
- レスたくさん本当にありがとうございますm(__)m
昨日、今日でちょこっと旅行に行ってました。
282:M.ANZAIさん
>レスありがとうございます。
クリスマスを2人がどう過ごすかに懸かってますね。
特に再び真希には試される時が来たような感じがします。
がんばりますっ。
283:いしごま防衛軍さん
>切なさが出せたようでとても嬉しいです。
全てを切り開く術は後藤が秘めてますね。
ゴール・・・よくよく考えてみるともう少し遠くのようなあと少し
のような^^;
とにかく楽しみに答えられるようにがんばります(w
284:名無し梨華さん
>ありがとうございます^^嬉しいです(w
保田達はもう少し後・・・になるかもしれないです。
がんばります!
285:ごんたさん
>そうですね、あの時言われた事も少なからず影響してるんでしょうね。
自分なんかの作品に御涙嬉しいですTT
これからもがんばりますっ!
- 287 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月08日(火)20時05分44秒
――――――
冬のせいか、どこかいつもより寂しさを漂わす表のバー。
そこの木の床を耳に気持ちよく伝わる低い独特の音を鳴らせながら歩く。
するといつもの一見壁のように見えるその扉には、暗いバーの中で一際目立つ可愛い
クリスマスのリースが飾られていた。
期待と嬉しさ、そしてどこか緊張を胸に秘め高鳴らせながら扉を開く。
「・・・・・わぁ・・。」
目に入ってきた光景、それは別な場所を思わせるほどに綺麗で、煌びやかで、
まるで夢のような場所だった。
- 288 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月08日(火)20時08分44秒
小さい頃に夢見るような、憧れるような場所がそこにはあった。
定番ともいえる飾り付け。
なのにどこか懐かしく、逆にすごく新鮮だった。
壁には金や銀の何とも色鮮やかなそれが半円をゆったりといくつも描き、バランス
よく飾られている。
いつものバーに置かれている高めのテーブルやら椅子やらは隅に片づけられ真ん中には
クリスマスらしい赤と緑のお洒落なテーブルクロスの乗った長テーブルがセットされ
ていた。
テーブルの上には紅い炎をどこか神秘的に揺らすオレンジや赤のお洒落なキャンドル。
そしてそれを更に引き立てるガラスのキャンドル立て。
その横にはこれから用意されるための料理を待ちかねるかのように白い皿と
銀のフォークがセッティングされている。
- 289 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月08日(火)20時17分09秒
- バーは隅々まで掃除され見たこともないほどに綺麗になっていた。
もちろんそれは暖炉の中も。
ぱちぱちと心地いい音を鳴らし真新しい薪を燃焼させる暖炉の上には
中に絵が書かれている大き目の飾り用のお皿が立てかけてあり、その周りには
シンプルに洋風の小物が置かれている。
そして、暖炉の隣には大きなクリスマスツリーが立っていた。
ツリーのてっぺんに飾られるのは金色の星。
木には金色の鐘や紅いリボン、上から下まで巻かれた金や銀の飾り、シンプルだが
全てがどこか統一されていてとても綺麗だった。
- 290 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月08日(火)20時19分56秒
「す、すごぉ〜〜いっ!!」
つい子供のように目をきらきらさせ梨華は大きめの声を漏らしてしまった。
梨華の声にバーにいた何人かがそちらに振り向く。
「綺麗だよね。これほとんどなっちが考えたんだよ。」
「そうなんですかぁ。」
矢口が最後の壁の飾り付けを一生懸命に背伸びしながら完成させ向こうから
振り向き言う。
梨華はまだ目をきらきらさせたまま辺りを見渡していた。
「ふっふ〜♪なっちはこういうコーディネイトは得意だよ。」
話を聞いていたのかなつみが得意げにカウンターの中から現れる。
「すごいですねぇ!綺麗ですねぇ!!クリスマスって感じですね!!」
はしゃぐ梨華に矢口となつみが楽しそうに微笑む。
胸を躍らせ梨華は辺りをどきどきしながら見て歩いてみた。
- 291 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月08日(火)20時24分21秒
- 「すご〜い・・・・」
外国の家庭風で本格的なクリスマス雰囲気を漂わすそこはいるだけで梨華を楽しく
嬉しい気持ちにさせた。
テーブル、暖炉、クリスマスツリーと順番にバーを回りながら見て歩く。
すると最後にカウンター前に来た。
「ケーキのお出ましやで〜。」
「!!」
誰もいないと思っていたカウンターの中から屈んでいたらしき中澤が冷蔵庫から
ケーキの箱を取り出し突然立ち上がった。
「お?石川やんか。帰ったか。」
「あ、はいっ。」
「これなぁ、うちがよく買いに行くおいしいケーキ屋さんで特別に作ってもらったんや。」
中澤は嬉しそうにケーキの入った箱を持ち上げる。
- 292 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月08日(火)20時28分06秒
- 形から普通の円形のケーキではなくブッシュドノエルだということが察しついた。
「それあのブッシュドノエルですか?」
「そうやで」
カウンターから出ながら梨華に答え中澤はそれを長テーブルの真ん中に置いた。
「あの2人これ好きやったんやで〜。いや、ケーキが大好きやったんやな・・・。」
中澤が箱からケーキをそっと取り出しながら小さく呟く。
独り言のようだったがそれははっきり梨華の耳に届いていた。
「あの2人・・・?」
「!・・・・・・」
梨華の聞き返した小さい声に中澤は今更気付いたようにびくっとした。
- 293 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月08日(火)20時30分17秒
- 「いや・・・なんでもあらへん。なんでも・・・・。」
「そう・・ですか・・・?」
中澤らしくないほどにあからさまに何かを誤魔化すようなうやむやなその態度に
梨華が首を傾げる。
この中澤の態度、そう今さっきの真希そっくりだ。
自分が・・・知らないはずのことを呟いた。二人とも。
尋ねる自分。
うやむやな答え。
そしてこれ以上聞いてはいけないような雰囲気。
なのになぜかどうしても気になってしまう。
なんだろう・・・これ・・・・・。
- 294 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月08日(火)20時34分58秒
「っ・・・・!」
梨華は突然額に頭痛が走ったのを感じた。
思わず額に手を当てる。
しかしすぐに痛みはどこかに消えていってしまった。
この痛み・・・そうこれもどこかで・・・・。
「シャンペン冷えましたよ〜。」
額に走った痛みを考えている途中、ドアの開く音と共にバーに響いたその声に一旦
考えるのを中断させそちらに振り向いた。
するとひとみが冷えたグラスとワインセラーに入れていたシャンペン2本を持って
休憩室からこちらの部屋に現れたのが目に入った。
その後ろから真希がすぐに現れる。
- 295 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月08日(火)20時38分59秒
- 「・・・・・・・・」
真希は後ろからひとみが持ちきれなかったグラスを半分持ってあげていた。
中断させていたはずなのに既に頭の中には痛みのことは残っていなかった。
胸を占めるのはただ目の前の光景。
至って普段通りのひとみの様子。
いつものどこかおちゃらけたようなそれともそれは作っているのか、とにかくそんな
いつも通りな様子のひとみの後ろにはどこか落ち着いたようなリラックスをしたよう
な真希の姿があった。
(ズキッ・・・・)
胸に響く今さっきとは別の痛み。
初めて見た時から感じてた。
2人はお似合いだって・・・・。
- 296 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月08日(火)20時41分08秒
『親友』
『悪友』
2人はどこかで固く通じ合ってると思う。
固く結ばれていると思う。
信頼しあってる。
それに・・自分では入り込めないほどに・・・似合ってる・・・・。
『誰よりも対等で、ちょうどいい距離を保ってる。
そしていつも見守っててくれてる・・・・・。』
それって特別だってことだよね・・・・。
- 297 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月08日(火)20時43分24秒
- 「・・・・・・・」
今さっきのことを確かめるように唇に触れてみる。
まだ残ってる。
思い出せばすぐに高鳴ってくる。体が熱くなってくる。
あれは・・・一体どういう意味だったんだろう・・・。
でも、言ってくれた。
はっきりと否定してくれた。
何の意味もない物からではないって・・・・。
それじゃぁ・・・どうして・・・・・?
梨華の疑問の答えが生まれることなく、
パーティは始まった。
外ではちらほらと白い雪が空から降り始めていた。
- 298 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年01月08日(火)20時45分41秒
- 楽しい、きらびやかな風景。
笑顔で話し掛けてくる仲間達。
とっても幸せである筈なのに、なんで・・・
やはりそこにふたを閉めて鍵をかけてしまう作用が働いてしまうのか・・・
それとも目の前の2人は互いに気づかないまま本当は引かれあっているのか・・・
- 299 名前:aki 投稿日:2002年01月08日(火)20時45分43秒
- 更新しました。
なんか大幅に更新スピードが遅くなってますね(++)
できるだけ前のように一杯更新できるようにがんばります。
- 300 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年01月09日(水)00時18分13秒
- うーん、ホワイトクリスマスって良いですなあ。
幸せいっぱいのはずなのに梨華の心の中は複雑なのでしょう。
でも、これは梨華のごっちんと皆との記憶が蘇る前兆であるような
気がするんですけどどうなんでしょうか。
akiさん、無理しないでマイペースで頑張ってください。
いしごま防衛条約機構はいつでも楽しみにしていますし応援しています。
マイペースが一番いいかな。自分もこの時期無理して体調崩したら
大変なことになるから。
ひそかに梨華とあいぼんの再会が楽しみです。
- 301 名前:aki 投稿日:2002年01月09日(水)20時20分16秒
- 298:M.ANZAIさん
>レスありがとうございます。
ここは2人の気持ちがいろいろ動く場所だと思います。
「あの事件」の内容を考えるとどうしても乗り越えるのは
大変なことかもしれませんね。
がんばりますっ。
300:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
このクリスマスに何かが起こることは確実かもしれませんね。
ありがとうございますm(__)mペースも崩さずまた更新も早くなるように
がんばりますっ。
- 302 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月09日(水)20時21分24秒
――――――――
「・・・・・・・・」
バーに帰ってくるとすでにそこは飾りつけがほとんど終わっている所だった。
黙ってその中を進み買い物をして来た袋をカウンターに無造作に置くとそのまま
休憩室のドアを開けた。
「ふぅ・・・・」
小さくため息をつき誰もいない休憩室に顔を上げる。
「何ため息ついてんのさ。」
「!・・・・」
誰もいないと思っていた休憩室には先客がいた。
俯きながらため息をつく私を彼女は隅でしゃがみながら首を傾げて振り返る。
- 303 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月09日(水)20時26分22秒
- 「何してんの・・・・?」
「シャンパンとグラス冷やしてんの。それより真希は?」
気だるそうに尋ねた自分の質問にもひとみは普通に答えた。
何でだろうね。
本当は一人で疲れを取りたかったはずなのに。
疲れを取ろうとする場所にひとみがいても、別に嫌な感じがしない。
まるでそこにひとみがいることが当たり前のことのように違和感がない。
むしろ・・・存在が必要だ・・・・・。
- 304 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月09日(水)20時28分32秒
- 「私は・・・・ちょっと・・ね・・・。」
「あっそ。」
うやむやな答えにひとみは何も聞き返さない。
そのまま私も休憩室のいつものソファに向かった。
どかっと腰を下ろしそのまま寝転がり足を向こうに放り出す。
頭の下に両手を組んで敷いた。
「何かあったの?」
至って普通に尋ねてくるそれがどこか居心地が良かった。
無理に気遣うような、心配するような言い方は居心地が悪いだけ。
- 305 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月09日(水)20時30分58秒
- 「ちょっとねぇ・・・・。」
ふあ〜とあくびをのんびりしながらひとみに答える。
「そればっかじゃん。」
さっきからの私の答えにひとみがからっと乾いた笑いを漏らす。
飾ってない、本当に自然なその態度は私を自分でも驚くほど気持ちに素直にさせる。
「実はさ・・・・・。」
やりきれない想いを遂に私はひとみに話し出した。
あの時、
ひとみが記憶のなくなった彼女を初めてここに連れてきた時から、
私とひとみの関係が何か変わった気がする。
もっと・・・深くなった気がする・・・。
- 306 名前:aki 投稿日:2002年01月09日(水)20時33分16秒
- >>302-305
更新しました。
- 307 名前:名無し梨華 投稿日:2002年01月09日(水)21時07分23秒
- おお。
よすぃーに惹かれてるのかな、ごま。
微妙にごまよしなのがよいれす(w
でもやっぱごまと梨華たんはくっついて欲しいと思う僕の意見(w
続きがドキドキ♪
- 308 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年01月09日(水)22時37分12秒
- ごっちんにとってはよっすぃーはどんなことでも話し合えるなくてはならない
存在になったのでしょう。梨華と何があったのかを素直に言えることができた
ということは良いことですなあ。これからどんどんごっちんとよっすぃーの
関係は深まっていくのでしょう。それと同時に梨華とごっちんの関係も深く
なるような気がします。
ドキドキしながら待っています。
ともに頑張りましょう!!(^〜^)
- 309 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年01月10日(木)03時01分18秒
- 梨華との関係が、元に戻るものではなく先に進んでいくのと合わせて、
真希とひとみの関係も先に進んでいくようですね。
ただそばに居るだけではなく互いに不可欠な関係。
梨華が怪しむほどの二人の親密さは、良い意味で他の仲間にも影響を与えるかもしれません。
いや、すでに与えているのか・・・
梨華が自分の胸の奥底に沈んでいる物に気がつけば必ず真希の事を信じていられる筈。
- 310 名前:aki 投稿日:2002年01月10日(木)17時04分43秒
- 307:名無し梨華さん
>私も微かにごまよしだなぁと思ってます(w
ある意味大人な関係かもしれませんね、この2人。
がんばりますっ。
308:いしごま防衛軍さん
>素直になるきっかけを生んだのがよっすぃーですからね。
梨華が記憶をなくしたのが2人にとってそれぞれとても大変な事
だったんだと思います。
期待に答えられるようにがんばりまっす!
309:M.ANZAIさん
>2人にとってひとみは絶対に必要な人物ですね。
2人とも押しが弱いですからそのきっかけが必要ですね(w
これからもどんどん気持ちが動いていくと思います。
続きもがんばります。
- 311 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月10日(木)19時11分45秒
―――――――
「ふ〜ん。」
ひとみは話を聞き終わりどこか興味なさそうに答えながら再びワインセラーに
視線を戻す。
「ふ〜んって何さ。」
ソファの上の足を組みなおしながら聞き返す。
私の言葉にひとみが再びこちらに向き直った。
「それで?」
「・・・・それでって・・・どういう意味、それ。」
「まだ真希の気持ち聞いてないんですけど。」
眉をしかめる私にひとみは間髪入れず尋ねた。
それについ一瞬呆気を取られたように目を丸くしてしまった。
- 312 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月10日(木)19時14分17秒
- 「そういえば・・・・・」
そこでやっと自分が自分の気持ちを話していなかったことに気が付く。
話した内容と言えば全て今さっき起こった出来事だけだ。
「それで。今何を感じてるの?」
「・・・・・・・。」
ひとみの言葉に私は言葉を失ってしまった。
『何を感じる?』
もう一度心の中で自分に問いかけてみる。
寝ていた体を起こし、私はソファに座りなおした。
- 313 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月10日(木)19時16分32秒
- 「不安・・・なのかもしれない・・・・。」
口から零れた飾らない正直な気持ち。
「・・・・・・・。」
ひとみがそんな私を今までとは微かに違う目つきで見た。
それはとても真剣で、いつものふざけた感じがない。
「もう一度・・・同じ事を繰り返さないか・・・・・」
部屋に沈黙が流れる。
しばらくの間、ただ静かに時計の針が時を刻む音と振り子が揺れる音だけが部屋に響いた。
- 314 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月10日(木)19時19分42秒
- 「大丈夫だよ。」
ひとみがおもむろに口を開く。
「とは言うあたしも、もう二度と2人の涙は見たくないけどね。」
「・・・・・・。」
「真希は変わったよ。あたしが知ってる範囲だけど。どんな時でも、自分を
しっかり持っていれば大丈夫。」
「・・・・うん・・。」
セラーから人数分のグラスとワイン2本を手にし、ひとみは静かに立ち上がった。
「半分持ってよ。」
「ん。」
私も立ち上がりひとみが持ちきれなかったグラスを手にする。
グラスは飲むにはちょうどいい具合に冷えていた。
「自信持ちなよ?」
その一言を最後にひとみはいつものひとみに戻った。
私は何も答えなかったが黙ったまま心の中にその言葉を刻んでおいた。
- 315 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月10日(木)19時30分31秒
『私』は一人だから。
一人しかいないから。
もう一人の自分を含む他の誰がなんと言おうと関係ない。
どんな時でも自分の気持ちや答えは、「私」の中に秘められている―――――
「ありがと。」
ドアの取っ手を取り開こうとしているひとみの背中に本当に小さく呟く。
いつのまにか私は独りじゃなくなってたんだね。
「シャンペン冷えましたよ〜。」
私の最後の言葉が当の本人に届いたのかは定かでない。
- 316 名前:aki 投稿日:2002年01月10日(木)19時32分08秒
- >>311-315
更新しました。
何かちまちま更新してしまってすいません++
- 317 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年01月10日(木)20時17分28秒
- そうですよ。ごっちんは一人じゃないんだ。仲間たちに支えられて
生きているんだ。その中でも梨華とよっすぃーは最も大切な存在
何が起ころうとこの関係は壊れることがないと思います!!
応援していますよ。頑張ってください。
少しずつでもよいと思いますよ。ドキドキ感がさらに増してくるような
感じがするから。
- 318 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年01月11日(金)00時00分18秒
- >いつのまにか私は独りじゃなくなってたんだね。
真希が自ら気づいてくれてるのならもう心配ないのでしょう。
少しずつ「その時」に向けて静かに進行していくようで、絶妙なペースですね。
またこの先を読むのが楽しみです。
- 319 名前:aki 投稿日:2002年01月11日(金)16時29分39秒
- 317:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
後藤がいろんなことに気付いていきますね。
応援嬉しいです。自分に無理せずがんばっていきます。
318:M.ANZAIさん
>レスありがとうございます。
このペースだとまだまだ時間が掛かりそうです++
もう少しペースを上げないと・・・。
続きもがんばります。
- 320 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月11日(金)21時13分19秒
―――――――
それからパーティは始まった。
シャンパンは水と氷の入った銀製のワインクーラーに斜めに入れられテーブルの
一番端に置かれた。
買って来た鶏やらサラダなどをテーブルの中央にある大皿に大雑把に盛る。
なつみとひとみが冷蔵庫にある物で軽いパスタやリゾットなどを作った。
テーブルに置かれているお洒落なキャンドルがゆらゆらと不思議に炎を揺らす。
暖炉の火、キャンドル、そしていつものバーの照明は部屋一体をどこか不思議な
ムードに包んでいた。
「「「メリークリスマス!」」」
全員が揃って声を合わせそれと共にクラッカーの紐を引っ張る。
盛大な音と共に紙ふぶきが上から舞い降りた。
それを合図にここにいる全ての者に笑みが溢れ、バーは久しぶりに笑い声で満ちた。
- 321 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月11日(金)21時14分33秒
- 「このシャンパンおいしいなぁ〜♪」
中澤がワインクーラーから氷の掠れる音を立てながら満足そうにシャンパンを取り出す。
次から次へとシャンパンはグラスへと注がれた。
微かに頬を紅くさせているが飲んでいる量の割にはあまり酔ってはいないらしい。
「メリークリスマスだよ〜ん」
それに比べグラス一杯か二杯で完全に酔ってしまった矢口は顔を赤くさせサンタの帽子を
被りながら隣のなつみに絡みつく。
「弱いのに飲むんだから・・・・。」
やれやれとどこか楽しそうにため息をつきながらなつみがそんな矢口の相手をする。
「鳥がおいひい〜!!」
買って来たフライドチキンや七面鳥のローストをひとみが嬉しそうに頬張りながら
もごもご口を動かし言う。
- 322 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月11日(金)21時16分46秒
- 幸せな時間が流れる。
笑いの絶えないこの時間は梨華にとっても嬉しく幸せで一杯だった。
ひとみや矢口がふざけ合い、それを中澤が楽しそうに咎め、なつみも微笑む。
そんな他愛無い会話ややり取りに梨華も笑みを溢す。
それは真希も同じだった。
そんな時梨華がパスタを口に運んでいるとふと真希と目があった。
真希はちょうどグラスをテーブルに置いたところだった。
「・・・・・・・・」
思わず目が合ってしまった事に気まずさを覚え梨華は俯いてしまう。
そんな梨華に真希もすぐに何か言葉を返す事ができず戸惑う。
お互いを意識する中微かに時間が流れる。
そして真希が不意に口を開いた。
- 323 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月11日(金)21時18分35秒
- 「鳥・・・食べないの?」
「あ・・・私・・苦手なんです。鳥は・・・・。」
ぎこちない会話。
どうしても上手く言葉が出て来ない。
「っ・・・・・」
真希が再び口を開こうとした時、
「今梨華ちゃん鳥が嫌いって言ったぁのぉ??」
「へ?」
突然横から声がして驚いて振り向く。
するとそこには完全に寄った矢口がいた。
とろんとした目つきで顔を紅くさせている。
- 324 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月11日(金)21時19分56秒
- 「クリスマスにぃ〜鳥食べないでどうするの〜〜!?」
「や、矢口さんちょっと・・・・と、鳥はダメなんですぅ〜!!(涙)」
キャハハと楽しそうに笑いながら矢口が梨華に鳥を進める。
梨華は半分涙目になり矢口に絡まれながら必死にじたばたしていた。
「鳥さんがかぁいそうでしょう〜。」
「ダメなものはダメなんですぅ〜!勘弁して下さいぃ〜!」
矢口に絡まれ涙目のまま梨華は再び真希と視線があった。
- 325 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月11日(金)21時23分24秒
「あっ・・・・・・」
本当に自然に、その時彼女は私に微笑んだ。
その優しい笑顔に私は見とれる。
気付けば私に絡んでいた矢口さんは安倍さんによって解かれていた。
バーに響くみんなの楽しく明るい声がこの瞬間だけは遠くに聞こえた。
目の前の彼女にただ心を奪われる。
どれぐらい時間が経ったんだろう。
ほんの一瞬だっだのだろうけどとても長く、まるで時が止まったかのようだった。
手からは力が抜け、持っているフォークがからんと小さく音を立ててテーブルに落ちる。
高鳴る胸の鼓動。
徐々にそれは大きく早くなってくる。
- 326 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月11日(金)21時24分52秒
- 真希はそれから隣のふざけるひとみや矢口、楽しそうな中澤となつみを見て、
珍しく本当に心から楽しそうに表情を明るくさせ笑いあっていた。
無邪気で、純粋なそのあどけない笑顔。
(私・・・・・・)
目の前の彼女を前にして、彼女の楽しそうな笑顔を見て、
(私・・・この人が好きだ・・・・・・)
今更のように、自分の気持ちがはっきりと胸に生まれていた。
その笑顔だけで、
側にいるだけで・・・満たされる。
癒される。
ただ一緒にいたい。
それだけで・・・・・。
- 327 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月11日(金)21時26分46秒
- 新しく買った二本のシャンパンはあっという間に飲み干されバーにあった前に買った
シャンパンを用意する。
大盛りに用意されていた料理もあっという間に空になり全員がお腹一杯満足で
椅子に凭れていた。
「お腹苦しい〜。」
その中で特にひとみが苦しそうにしていたが、
「だらしないで〜。若いのにそれぐらいで限界なんて。うちの若い頃なんてなぁ・・・・」
だんだん昔話が多くなってきた中澤と、
「もっと持ってこ〜い!!キャハハ〜!!!」
上機嫌の矢口だけはまだまだと言った具合にハイテンションもいい所だった。
- 328 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月11日(金)21時28分59秒
「まだケーキもあるよ〜?」
なつみがみんなに声を掛けるが一気にかきこんだひとみはそれに「うぷ・・・」と
小さく声を漏らす。
「そやでぇ!うちが買って来た特注品やぁ!」
「うまそぉ〜。」
テーブルの真ん中には普通よりは大き目のブッシュドノエルがあった。
「まだお腹苦しいからちょっと休もうよ。それにプレゼント交換。みんな用意した?」
なつみの言葉に全員がそれぞれの答えを返す。
矢口は「は〜いっ!」と手を真っ直ぐ上に伸ばし兵隊のような格好をした。
- 329 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月11日(金)21時31分51秒
- 「それじゃケーキの前にプレゼント交換ね。なっちはこの上を片づけるわ。」
テーブルの上の空になった大皿やたくさんの食器を見てなつみが言う。
「私も手伝うよ。」
「あ、私もっ!」
立ち上がるなつみに続いて真希と、そして梨華も椅子から立ち上がった。
「あたしはパス。食休み。」
ひとみはテーブルに突っ伏すと暇そうになぜかクリスマスソングを歌い始めた。
「とりゃっ!!」
残っていたクラッカーを矢口が楽しそうに引っ張る。
するとパンッと大きな音と共に紙ふぶきがそれから溢れ出た。
- 330 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月11日(金)21時34分56秒
- 「こらっ!掃除が増えちゃうでしょ!」
「怒られちゃったぁ♪」
今さっきのクラッカーを掃除していたなつみがいたずらする矢口にまるで子供を
叱る母親のように言う。
当の矢口はさっぱりなつみの言葉も頭に入っていないのかすぐに隣のテーブルに
突っ伏すひとみにちょっかいを出し始めた。
「重い〜・・・・。」
背中に乗っかってくる矢口にひとみが情けない声を出す。
側で皿をまとめていた梨華がそれに笑みを溢す。
ふざけ合う矢口達の横で梨華は空になった皿やフォークやナイフ、スプーンを全て
まとめカウンターへと回った。
- 331 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月11日(金)21時40分10秒
「これで全部です〜。」
さすがにこれだけの量の皿を一度に持つのは重かった。
なんとかゆっくり歩きカウンターを回ってキッチンで皿を洗う真希の隣にやって来る。
「そこに置いといて。」
「すごい量ですね・・・・手伝います。」
洗い場には皿が大量に詰まれそれを真希が一つ一つ洗っているところだった。
梨華は近くの棚からタオルを取り洗われた皿を同じように丁寧に水分をふき取った。
「ありがと。」
「!いえ、そんな・・・・・」
皿から目を離さず前を向いたまま言った真希の言葉に梨華は恥ずかしそうに顔を
俯かせながら答える。
カウンターの向こうからは矢口やなつみ達の楽しそうな喧騒が聞こえた。
- 332 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月11日(金)21時47分13秒
それからはほとんど2人の間に会話はなかった。
しかし梨華にとって隣同士で皿を洗いあうこの状況だけで心満たされていた。
こんなことだけでも、
真希の存在が遠くに感じることがなくなる。
ひとみと一緒にいるリラックスしたような真希を見るとすごく寂しいような切ないような、
・・・むしろつらい気持ちになる。
自分の知らない彼女のことをひとみはもっとずっと知っているような気がした。
嫉妬?
そうなのかもしれない。
「好き」って気持ちに気付いた今、
あの時の胸の痛みもどうしてかはっきりと分かる。
- 333 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月11日(金)21時48分59秒
「後藤・・さん・・・・」
「何?」
「今日・・・クリスマス・・誰かと過ごす予定あるんですか・・・?」
「え?」
思わず真希はどういう意味なのか分からず聞き返してしまった。
皿を洗う手を一旦中断させる。
振り向くと梨華はただ俯いたまま微かに頬を紅くさせていた。
「このパーティの後・・・誰かと過ごすんですか?」
「別に・・・予定はないけど・・・・・」
真希は微かに戸惑いながら答える。
- 334 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月11日(金)21時51分54秒
「・・・・・・」
梨華は返って来た言葉にしばし言葉を失った。
胸が跳ねるようにこれ以上ないぐらいに高鳴ってる。
自分が言おうとしてる事、自分が望もうとしてることを、
言葉が口から取って出ようとしている。
しかし、口が微かに開くがそこから声が出て来ない。
「あ、あの・・・・この後・・私と・・・・」
「!・・・・」
梨華の次に出ようとする言葉に真希がただ心を真っ白にし俯く梨華に目を奪われていた。
「私と・・・・・!」
珍しく驚いたようにただ次の言葉を待ち、自分を見つめる真希に対して梨華がとうとう
意を決し顔を上げ告白しようとした時、
- 335 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月11日(金)21時53分45秒
「カラオケ行こう〜!!」
矢口の一際大きな声がバーに響いた。
その後にパンッと盛大な明るい音が響く。
「だから!クラッカーを使って仕事増やさないでっての。」
「ひたい〜!」
なつみがため息混じりに矢口の頬を引っ張る。
それに矢口が涙目で情けない声を上げた。
「あ・・・・・・・」
突然の妨害に梨華は言葉を失ってしまった。
開きかけた口がやけに空しい。
- 336 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月11日(金)21時55分42秒
「私と・・・・・?」
「な、何でも・・・・何でもないですっ・・・!」
首を傾げ聞き返す真希に梨華は顔をぼっと一気に真っ赤にさせ再び顔を俯かせると
咄嗟に誤魔化した。
「何でも・・ないの・・・・?」
梨華の一方的な言葉に真希は当然話を終わる事ができず梨華の顔を覗こうする。
「き、気にしないで下さいぃ・・・・」
益々顔を紅くさせて梨華はただ視線から逃れるように顔を俯かせる。
「・・・・・・・」
そんな梨華にこれ以上聞き返すことも出来ず真希は納得できないまま皿洗いに戻った。
- 337 名前:Christmas Eve 投稿日:2002年01月11日(金)21時58分13秒
(はぁ・・・・)
熱を持った顔は中々治まる事を知らず梨華は心の中で小さくため息をついた。
(私・・・・何考えてるんだろう・・・・・)
言おうとしていた事に梨華は一人で顔を紅くし恥ずかしさを覚える。
「・・・・・」
ちらっと隣の真希の横顔を盗み見る。
梨華の目に映る真希の横顔は至って普通の、落ち着いて大人びた物だった。
(一人で慌てふためいて・・・恥ずかしい・・・・・)
はぁとため息混じりのそれを白い皿に吹きかけ梨華はきゅっきゅと音を立て皿拭きに
戻った。
「・・・・・・」
そんな梨華の様子を、真希も人知れず黙って見つめていた。
- 338 名前:aki 投稿日:2002年01月11日(金)22時01分14秒
- >>320-337
更新しましたぁ。
- 339 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年01月11日(金)22時23分06秒
- なんかいい雰囲気ですねぇ、“初めての告白”みたいで。
- 340 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年01月12日(土)01時04分08秒
- うーん、なんかこの二人の会話がじれったいなあ。
気持ちは通じ合っているのに先に進みませんねえ。
でも、新鮮さがあっていいです。梨華頑張れ!!akiさん頑張れ!!
- 341 名前:aki 投稿日:2002年01月13日(日)20時38分59秒
- 339:M.ANZAIさん
>レスありがとうございます。
確かに「初めて」な感じが漂ってますね。
もうしばらく2人を見守っていてください。
340:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
じれったいですか^^;確かに2人を見てるとそうなりそうですね。
よっすぃーも含めてみんながそう思ってそうです(w
がんばりますっ。
- 342 名前:聖夜の告白 投稿日:2002年01月13日(日)20時40分17秒
それからテーブルも片付きケーキの前のプレゼント交換が行われた。
六人が全員目を瞑り中澤がストップを掛けるまでプレゼントを回しあった。
結果偶然にも自分の用意した物が自分に回ってくることはなく全員がそれぞればらばらに
プレゼントを受け取った。
梨華には矢口の用意した可愛らしいプーさんの描かれている銀のアクセサリー型の
時計がプレゼントされ真希にはひとみが用意したワインが回ってきた。
「それおいしいんだよ。ワインのラッピングもあたしがしたんだぁ。」
にこにこしながら満足そうにひとみが真希の手に持つワインを指差す。
ワインは専用の布製の手提げ袋に入れられ上のボトルの部分には可愛い赤の
リボンが結ばれていた。
「未成年なんだけど・・・・」
「今だって飲んでるじゃん。」
全く拘っていない様でひとみは笑いながら真希に対して言う。
まんざらでもないのか真希もワインを見つめながら結構嬉しそうにしていた。
- 343 名前:聖夜の告白 投稿日:2002年01月13日(日)20時45分12秒
- 「可愛いでしょ〜それ期間限定物なんだよ〜。」
酔いも冷めてきたがまだ頬が微かに赤い矢口が頬杖を突きながらトロンとした
目つきで梨華に言う。
「ありがとうございます〜!」
包みを空け梨華は本当に嬉しそうに受け取ったプレゼントを見つめた。
結局梨華のプレゼント、小さいがアンティークのようなおしゃれなオルゴールは
中澤の手に渡り真希の用意した物は矢口の手に渡った。
「マフラーじゃぁん。それにネックレス〜。サンキュー!これ結構するでしょ〜?」
「まあまあだね。」
矢口はほろ酔い加減で真希の用意したマフラーをまじまじと眺めた。
バーバリーのあまり目にしない可愛い柄の物だった。
ネックレスはシルバーの物で十字架を象り細かく細工がされている。
すごくセンスが良くてシンプルなのにどこか魅力的な物だった。
(いいなぁ・・・・・)
にこにこする矢口の顔を梨華が頬杖を突きながら羨ましそうに眺めていた。
- 344 名前:聖夜の告白 投稿日:2002年01月13日(日)20時46分30秒
- プレゼント交換も終わり特製のブッシュドノエルを人数分に切り分け皿に盛り、
全員のコップに暖かいアールグレイを注ぎそれからは今さっきよりも少しトーンを
落としみんなで楽しく談笑した。
それから約一時間後。
なつみはケーキを分けた皿などを片づけ始め中澤はなんとなく外に出たりなど
みんなそれぞれの時間を過ごしていた。
「これから近くのカラオケに行こうってことになったんだけどさぁ。2人は行く?」
コートを羽織った矢口がテーブルの上を布巾で拭く梨華に話し掛けた。
「あ・・・私・・・・・」
矢口の誘いに梨華は一瞬どうしようか迷った。
これからの予定についてあの人と何か話したわけでもない。
無論約束したわけでもなかった。
ちらっと様子を伺うように向こうで何気なく暖炉の前で立つ真希の顔を見る。
するとちょうど目が合った。
- 345 名前:聖夜の告白 投稿日:2002年01月13日(日)20時49分09秒
- 「私・・・は、いいです。このまま・・・帰ります。」
「そう?」
「はい。」
顔を覗き込む矢口に梨華は慌てて誘いを断った。
そんな梨華の様子に矢口は訳を知ってかしばらく興味津々で顔を覗いていた。
その視線から逃れるように梨華が体をよじる。
「それじゃごっつあんは〜?」
「私・・・・?」
しばらくして梨華から顔を視線を外し後ろに振り向き大き目の声で矢口が真希に尋ねる。
それに梨華は心の中で密かにぎくっとした。
もしも真希が誘いを受けてしまったら、その時はどうしようもなくなってしまう。
そんな時、真希も困ったように矢口の誘いの後すぐにちらっと梨華を見た。
梨華は戸惑い咄嗟に視線を外してしまう。
- 346 名前:聖夜の告白 投稿日:2002年01月13日(日)20時54分03秒
- 「私も・・・いいや。カラオケの後それからまたお店回ったりするでしょ?みんな。」
「・・・!」
真希の言葉に梨華は確かめるように顔をばっと上げた。
するとまた視線が合う。
「マジで〜?ふ〜ん、お2人ともこれから予定でもあるの〜?」
「!」
からかうように楽しそうに言う矢口に梨華が再びぎくっとする。
そんないちいち反応する梨華の様子を全て察しは付いているのだが矢口は密かに
楽しんでいた。
「矢口さん!カラオケ行くんでしょ〜?」
そんな時こちらもコートを羽織り外出用に準備したひとみが出入り口の扉の前で
矢口を呼んだ。
「行くよ〜。行く行く。なっち〜?」
ひとみに答え矢口は後ろに振り向きなつみの姿を探す。
「はいは〜い。」
するとちょうど洗い物が終わったところだった。
みんなと同様なつみもコートを羽織り、そのまま扉に向かっていく。
- 347 名前:聖夜の告白 投稿日:2002年01月13日(日)20時55分34秒
- 「2人は行かないの?そっか。それじゃまた明日ね♪」
歩きながらなつみは二人に話し掛け扉へと向かっていった。
「んじゃね♪」
なつみと矢口が扉から出て行き最後にひとみが真希に軽くウィンクをしながら
2人に声を掛け出て行った。
―――――パタン
扉が閉まる。
あっという間にバーには沈黙が流れ出した。
「・・・・・・・。」
(ど、どうしよう・・・・)
真希が誘いを断りバーに残ってくれた。
約束はしてないけど、様子を伺うように見てくれた。
これって・・・どういう意味だろう・・・。
- 348 名前:聖夜の告白 投稿日:2002年01月13日(日)20時57分56秒
- そんな時カタッという音がすっかり静かになったバーに響き
梨華は何かと思い顔を上げた。
するとコートを羽織った真希がテーブルに近づき、ひとみから貰ったワインを
どこか表情を柔らかい物にして見つめていた。
「・・・・・・・。」
胸の中でズキっと痛むのを感じる。
自分の好きな彼女の表情が、そのワインに向かって、いやワインの向こうに向かって
注がれていたから。
今さっきの休憩室からこちらに来た時の彼女の様子が脳裏に蘇る。
胸の痛みはだんだん大きくひどくなってくる。
- 349 名前:聖夜の告白 投稿日:2002年01月13日(日)21時03分03秒
- 「それ・・・そんなに大切なんですか・・・・・?」
思ってもいない言葉が口から発せられていく。
「え?」
ずっと心を奪われるようにワインを見つめていた真希が突然の梨華の言葉に顔を上げた。
「吉澤さんは・・・・後藤さんにとってそんなに・・・大切な人なんですか・・?」
自分でも嫌になるほど皮肉な事を言っている気がする。
だけど止められない。
止める事が出来ない。
暴走する気持ち。
理性を押しのけて雪崩のように溢れ寄せるそれは一旦暴走し始めたらもう自分では
止められない。
「どう・・したの・・・?」
「特別・・・なんですか・・・・。」
口調は既に沈んだ落ち込んだ物になっていた。
自分の言っている事にさせ自分の気持ちは暗くなっていってしまう。
だから気付かなかった。
静かに響いていたその音と、
目の前に優しい影が出来ていた事を。
- 350 名前:聖夜の告白 投稿日:2002年01月13日(日)21時05分17秒
- 「!」
「ひとみは・・・仲間だよ?良い意味で・・・それ以上でもそれ以下でもない・・・・。」
真希はぎゅっと梨華を前から抱きしめた。
梨華の体はすっぽり真希の腕の中に治まる。
「あ・・・・・・」
服越しに真希の暖かい優しい温もりが伝わってきて梨華の胸の中では心臓がばくばく言っていた。
(伝わらないで・・・・)
自分でも戸惑うぐらいの鼓動に梨華は顔を紅くさせ真希の肩に顔を埋めた。
恥ずかしい。
こんなにドキドキしてる・・・。
- 351 名前:聖夜の告白 投稿日:2002年01月13日(日)21時06分04秒
- 「っ・・・・!」
今でも自分の体はこんなになってるのに、彼女は私の髪に触れた。
優しく撫でて、指を通す。
とても大切な、大事な物に触れるかのように、愛しむように髪に口づけする。
(ダメ・・・・・)
体が、熱い・・・・
でも・・・・・
その昂ぶる体に微かな戸惑いを覚えながら、その中にある最大の安堵感に
梨華は真希にただ身を任せていた。
しばらくの間ずっと2人は抱き合っていた。
- 352 名前:聖夜の告白 投稿日:2002年01月13日(日)21時06分54秒
- 「暖炉・・・見てくるね・・・・。」
真希が微かに名残り惜しそうにして梨華の耳元で囁き体をそっと離した。
「あ・・・・・・。」
離れていく真希に梨華も残念そうに声を漏らす。
真希は梨華から完全に体を離すと暖炉の前にしゃがみ火の始末に取り掛かった。
「あ、あの・・・・・」
その後ろ姿に梨華が話し掛ける。
「何?」
真希は暖炉の中の様子を見ながらそのままの状態で梨華に答えた。
「今日・・・これからどうするんですか・・・・?」
緊張しながら少しづつ真希に近づいていく。
熱くなり、火照る体を抱きしめながら。
- 353 名前:聖夜の告白 投稿日:2002年01月13日(日)21時08分57秒
- 「予定は・・ない、けど・・・・っ!」
梨華の存在に気付き真希は立ち上がって後ろに振り返ろうとした。
しかしそれは次の梨華の行動によって遮られた。
「帰りたくない・・・私・・・まだ後藤さんと・・一緒に居たいです・・・・。」
梨華はぎゅっと立ち上がった真希の背中に抱きついた。
恥ずかしさのあまり顔が熱を持ち紅くなり始める。
だけど、言わずにはいられない。
「・・・・・・・」
真希は微かに胸を高鳴らせながら、ただ前に来る梨華の手を自分のを添えた。
「後藤さんと・・・まだ離れたくない・・・・」
「!・・・・」
ゆっくり、静かに囁くようにして言う梨華に真希は答えるように添えた手を
ぎゅっと握り締めた。
- 354 名前:聖夜の告白 投稿日:2002年01月13日(日)21時14分29秒
- 「梨華・・ちゃん・・・・・」
そして握り締めた手を離さず繋いだまま真希は梨華に振り返り向き直った。
初めて名前を呼んでもらったこと、それに今の梨華は気付く事が出来なかった。
「家に・・・行きたいな・・・・。」
「!・・・・・・」
梨華のその言葉に真希は自分を押さえる事が出来なくなった。
気付けば、真希は強引と言えるほどにその唇を奪っていた。
「っん・・・・・!」
突然の真希の行為に梨華は戸惑った。しかし拒む事はしなかった。
ぎゅっと目を瞑り真希の服を掴む。
ぎこちなくはあったが梨華も積極的に舌を絡めた。
「ん・・・・はぁ・・・っ・・・」
甘い声と、深いキスの小さなメロディーがバーに響く。
2人はしばらくの間ずっと夢中で唇を合わしていた。
- 355 名前:聖夜の告白 投稿日:2002年01月13日(日)21時18分44秒
- やっと唇が離れた頃、梨華は高揚したように頬を紅くさせ、荒くなった息と共に
体を真希に預けた。
「・・・・・・」
それを何も言わず真希はただ優しく受け止め、再び強く梨華を抱きしめた。
「後藤さん・・・・私・・・後藤さんのことが好きです・・・・。」
肩で息をしながら梨華が真希の胸の中ではっきりと言った。
微かに間を置いてから梨華は顔を起こし真希をその潤う、とろんとした瞳で正面から
真っ直ぐ見つめた。
真摯なその瞳を、真希もただ真っ直ぐ見つめ返す。
「後藤さんは・・・・私のことどう思ってますか・・・・?」
「・・・・・・・」
- 356 名前:聖夜の告白 投稿日:2002年01月13日(日)21時21分43秒
- 彼女にとっては始めての告白。
初めての言葉。
だけどそれは私にとっては・・・苦い思い出を蘇らせる。
「っ・・・・・!」
突然頭に痛みが走り真希は立ちくらみがするのを感じた。
梨華を抱きしめたままなんとか体勢を保つ。
「後藤・・・さん・・・・?」
様子のおかしい私を彼女が首を傾げ心配そうにする。
そして現れそうになる。もう一人の自分が。
悲劇は繰り返すの?
彼女も、私も、永遠に悲しみを引きずる?
そんなの嫌だ。
やだ・・・。
運命?
ふざけないで。
もしもそうなることが・・・人間の手ではどうしようもない定められた運命と言うのなら・・
・・・私がそれを変えてみせる・・・・!
- 357 名前:聖夜の告白 投稿日:2002年01月13日(日)21時31分22秒
- 閉じかけていた瞳をゆっくりと開き、真希は梨華に向き直った。
明るい未来のために。
2人の未来のために。
真希も気付かないうちに、覚醒しようとしていたもう一人の自分の影は再び心の奥底へ
消えて行っていた。
いや、他でもない真希の力でそれは無意識のうちに力づくで奥底へ追いやられていた。
「私も・・・好きだよ・・・・・」
真希は微かに息を切らせ、額に一筋の汗を流しながら梨華にはっきりと告げた。
「え・・・・・?」
思わず梨華は返って来た言葉を再び確かめるように聞き返す。
「私も・・・あなたのことが好き・・なの・・・・・」
一気に疲労が押し寄せてきた自分の体を何とか奮い立たせ今できる精一杯の笑顔で
真希は梨華に想いを告げる。
「あ・・・・・・」
やっとその言葉と、大好きな笑顔に梨華は意味を理解することが出来た。
思わず顔を赤らめる。
勢いに近い形で自分の気持ちを伝え告白したためこんな真剣な返事が返ってくるとは
思わなかった。
- 358 名前:aki 投稿日:2002年01月13日(日)21時33分16秒
- 中途半端ですがここで今日の更新は終わりにします。
- 359 名前:名無し梨華 投稿日:2002年01月13日(日)23時50分50秒
- いやぁ、いいなぁ。
ごまよ、今度こそ包んであげるんだよ・・・・
もう離しちゃダメだからね・・・・
- 360 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年01月14日(月)01時33分50秒
- うーん、最高ですなあ!!(^〜^)
ごっちんはついにもう一人の自分を打ち破り梨華に本当の気持ちを
伝えましたねえ。梨華もやっとごっちんに気持ちを伝えることができた。
これで梨華とごっちんは結ばれるはずだ何者にも引き裂かれない強い力で
永遠に・・・
梨華ちゃんごっちん万歳!!やはりクリスマスっていいですね。
akiさん、応援してますよ。頑張ってください!!
自分もあと一週間でセンターに突入します。akiさんからも力をもらいました。
全力を尽くして絶対勝利したいです。
- 361 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年01月14日(月)13時37分57秒
- ついに真希がもう1人の自分を押し込めて先に進む一歩を踏み出しましたね。
だいぶ遠回りで、哀しい思いもさせて、ようやくここへ辿り着きました。
そしてそれは真っ直ぐな偽りの無い心。
もし神が与えた試練だとしたら、真希は見事にそれを乗り越えました。
この後さらなる出来事が起ころうともこの2人なら必ずどんな障害でも打ち砕いて
明るい未来へと歩いていけると信じます。
>中途半端ですがここで今日の更新は終わりにします。
いやいや、何とも言えない絶妙な区切りにこの場面の余韻に酔いしれると共に
CM開けを心待ちにしているような期待感が盛り上がりますよ。
- 362 名前:aki 投稿日:2002年01月14日(月)23時55分27秒
- 359:名無し梨華さん
>レスありがとうございます。
良い感じに描けたみたいで安心です。
後藤はかなり大きくなりましたね。もう私から見ても安心です^^
360:いしごま防衛軍さん
>ありがとうございます^^
やっと「もう一人の自分」を押しのけたわけですが・・・まだ
その存在を消し去ったわけではないんですよね。
なんて意味深なことを言ってみたり・・・(w
あまり深読みしないで下さい。期待はずれになるのはつらいので(爆)
ただこれからの二人は余程のことでも引き裂かれないと思います。
センター頑張ってください!力の全てを出せることを願ってます。
361:M.ANZAIさん
>レスありがとうございます。
長かったですねぇ。そのせいか余計にたどり着いた場所が大切で
何よりも高い気がします。
二人には未来を切り開く力が秘められていると思います。
これからどうなるか、最後まで期待に答えられるように頑張りたいと思います。
- 363 名前:White Christmas 投稿日:2002年01月16日(水)21時02分29秒
しばらくの間二人の間に時間が流れた。
梨華は顔を赤らめどうしようか迷い、真希は荒くなった息をなんとか整えようとしていた。
「・・・家に・・行こうか・・・・・」
流れる汗を拭い、やっと息が整い始めた真希が困ったようにする梨華にそう声を掛ける。
「え・・・・!?」
「結構ここから近いし・・・それに外は・・・クリスマスのイルミネーションが
綺麗だと思うよ・・・・。」
「そ、そうです・・よね・・・・。」
にこっと微笑む真希に梨華は自分の考えていた事に恥ずかしくなり俯きながら答えた。
純粋で優しい笑顔。
何も偽っていないその無垢な笑顔に何も勘ぐる事はない。
逆に微塵にもそう考えた自分が恥ずかしい・・・。
- 364 名前:White Christmas 投稿日:2002年01月16日(水)21時04分36秒
- そして二人は外に繰り出した。
外に出るとそこは銀世界・・・までは行かないが地は完全に雪で覆われふかふかの
白のクッションを敷いているように思えるほどに積もっていた。
空からはなお混じりけのない澄んだ白い雪が綺麗に街に降り注いでいる。
そしてそれに加え、東京でも日ごろ若者で溢れかえることで有名な街だけあり外の
イルミネーションは美しく目に鮮やかな物だった。
「うわぁ、すごい・・・・・。」
外は既に夜の海のように深い青い闇に包まれていた。
闇の中に所々に小さい金色の星達が輝き、そこからは真っ白な雪が舞い降りて来ている。
そして今日だけは、地上も美しい光に包まれている。
- 365 名前:White Christmas 投稿日:2002年01月16日(水)21時11分46秒
- 「綺麗だね・・・・。」
梨華の隣では真希が夜風に髪をなびかせ、冷たい空気に締め付けられた
頭を冷やしていた。
空高く聳え上から街を見守るケヤキの木々にもゴールドの飾り付けが施され、
その上にはさらさらな雪が積もっていく。
見慣れた店のウィンドウもいつもに増して綺麗に輝き目の前に広がる全てが
夢の世界のようだった。
話すたびに二人の口からは白い息が空に流れる。
梨華はいつものように真希の腕に自分のを絡め、街を一緒に歩いた。
「・・・・・・・」
白い息を吐きながら、梨華は町並みを見渡してみる。
街は恋人たちで溢れかえっている。
所々に友達同士や、家族連れの姿が目に映る。
さまざまな形の絆。
それらのどれについても言えること、それは全ての人が自分にとって大切な人と、
大好きな人と来ているということだった。
- 366 名前:White Christmas 投稿日:2002年01月16日(水)21時13分15秒
- (私も・・・・そう、この人は私の大切な人・・・・)
胸の中で小さく呟きながら真希の腕をぎゅっと抱きしめる。
腕の力を強めたことはほとんど無意識に近くそれに梨華は気づいていなかった。
「・・・・・・」
真希は梨華のぬくもりが強くなったのに気づき上から梨華を見た。
するとそこには楽しそうに街を眺める梨華の姿があった。
何の穢れもない純粋で子供のようなその表情は真希を安心させる。
- 367 名前:White Christmas 投稿日:2002年01月16日(水)21時14分50秒
しばらく歩き、街の外れまで来ると道路を流れるタクシーを止めた。
「肩に雪積もってるよ。」
真希が小さく笑いながら梨華の肩に積もった白い雪を払ってあげた。
「あ、本当だ・・・・」
今気づいたように梨華も雪が積もっていた肩を見る。
ちょうどその時タクシーが二人の前に流れるように止まった。
真希が先に乗り込み運転手に大体の目安の場所を告げる。
続いて梨華も乗り込みドアはバタンと音を立てて閉められた。
- 368 名前:White Christmas 投稿日:2002年01月16日(水)21時19分38秒
『今日はクリスマスということでクリスマスソングをリスナーの皆様に
お届けします。一曲目はワムのラストクリスマス―――――』
上品な女性DJの声がラジオから流れてくる。それと共に微かに曲が流れ出した。
最後の方はDJの声がだんだん小さくなっていきメロディが次第にはっきりし始めた。
ラジオから聞こえてくる音楽と共にタクシーは目的の場所へと走り出す。
「・・・・・・・」
足を組み、肘を付いて真希は所在なさ気に窓から流れていく外の景色を眺めていた。
それを梨華が横で小さく盗み見る。
頬杖に伏し目がちの瞳は窓のもっと向こう、はるか遠くを眺めているようだった。
普段しているような、何物にも興味を示さないと思わせるような不思議な瞳。
それに何が映っているのかは梨華には知ることができなかった。
- 369 名前:White Christmas 投稿日:2002年01月16日(水)21時27分06秒
- 「・・・・・・」
梨華は座席にぶらんと置かれる真希の手をぎゅっと上から握り締める。
それに気づいたのか真希が我に返るように梨華に向き直り顔を見た。
梨華はそれには何も答えずただ黙って確かめるように手を握り締める。
梨華の様子を伺っていた真希もすぐに前の体勢に戻り窓の向こうを眺めた。
しかし今さっきとは違い、ただ黙ったまま手の甲に感じるぬくもりをもっと感じる
ように手のひらを上に位置を変える。
そして繋がるように下から梨華の手をぎゅっと抱きしめた。
指を絡ませて一つになるように――――
それに微かに安心するように、梨華は視線を下に落とした。
ラジオからはシューベルトのアヴェ・マリアが流れて来る。
梨華は黙ったまま隣の真希の肩に頭を乗せ、体を預け寄りかかった。
それに真希は何も言わずただ受け止める。
- 370 名前:White Christmas 投稿日:2002年01月16日(水)21時29分58秒
―――――――
あなたは今どこを見てるの・・・・?
何を考えてるの?
瞳に映る物が分からない。
何よりも大切で、他のどんな物にも代えられない存在を見つけた時、
失うのが怖くなる。
こんなに近くにいるのに、まるで手が届かない遠くにいるみたいに感じる。
だからお願い、
どんな時でも私を見つめていて。
不安にならないくらい、ずっと・・・。
あなたの瞳に私が映っている。
その事実だけが私を安心させてくれる。
あなたの瞳に映る私をずっと見ていたいの――――
- 371 名前:White Christmas 投稿日:2002年01月16日(水)21時32分17秒
―――――――
さまざまな想いが胸の中を駆け巡る。
怖いぐらいにたくさんの感情が・・・。
その中にはなぜか切なさがある。
そして分からないのに不安を感じる。
母親とはぐれて、一人迷子になった時みたいに無償に不安なの。
まるで周りが真っ暗闇みたいで、確かなのは自分の存在だけ。
再び大切な物を手にした時、
前の苦い思い出が蘇る。
私は決して強くないから――――
- 372 名前:White Christmas 投稿日:2002年01月16日(水)21時35分02秒
だけどそんな時、
抱きしめられる手。
感じるぬくもり。
暖かくて、居心地のいいそれをもっと確かめるように、握り返す。
伝わってくる服越しの暖かい気持ち。
それに感じたこともないぐらいの安心を感じる。
ずっと強がってる自分が嫌いだった。
だけど今は違う。
あなたのために・・・強くなるよ。
守りたい存在があるから、
私は強くなる。
伝えたい言葉があるの。
ずっと胸に秘めている想い。
どんな時でも、いつでも、あなたに感じてる―――――
- 373 名前:aki 投稿日:2002年01月16日(水)21時37分35秒
- 更新しました〜・・。
今日のは結構神経使ったかも・・。
- 374 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年01月16日(水)22時05分53秒
- 真希の瞳の中に自分を映していたいと願う梨華。
今までは強がっていたが梨華のために強くなろうと願う真希。
互いに自分の気持ちに気づき始めたばかり、ゆっくりと確かに踏み出す2人・・・。
華やかで、そして賑やかなクリスマスの街の喧騒の中で
2人の周りだけ静かに暖かい空気が包んでくれているようで
読んでいてこちらも心温まる想いです。
ここからはゆっくりとしかし確実に互いの想い、相手を想う気持ちを
通わせあって行って欲しいです。焦らずに・・・。
- 375 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年01月17日(木)00時35分18秒
- そうですねー。周りはクリスマスで賑わっているけどこの二人だけは
別の空間にいるような気がしました。まだ心の中で共有していない
部分はあるけども着実に二人の心は密着してきていると思います。
なんか、タクシーの中で手を抱きしめあっているところが東京マリーゴールド
という映画のワンシーンと重なってしまいました。
そんでその映画はすんごく切ない映画だったのでさらに切なさがこみ上げて
きました。
これからどうなっていくんでしょうか。楽しみです。
akiさん、頑張ってください。
センターの前日はakiさんのこの小説を読んで翌日の決戦に臨みたいです。
- 376 名前:しーちゃん 投稿日:2002年01月17日(木)08時45分23秒
- あ〜akiさん良いです。最高に痺れますよ。あなたの文章に・・・
そして、りかごまマンセーですね。あなたの小説楽しみに読んでいますよ。
がんばって下さい。
- 377 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年01月19日(土)07時02分56秒
- うーん、石川梨華さんの誕生日にセンターを受けれるとは感動でいっぱいだ。
梨華ちゃん、お誕生日おめでとーーですね。
ここの梨華とごっちんも幸せになれたらなあ。
それでは行ってまいります。akiさん、応援しててください。(^〜^)
出陣じゃーーーー!!
akiさんも頑張ってください!!応援しています。
- 378 名前:aki 投稿日:2002年01月19日(土)20時37分15秒
- 374:M.ANZAIさん
>レスありがとうございます。
心温まる風に書けて良かったです。
2人のシーンはまだ続きそうです。見守って上げてください。
376:しーちゃんさん
>嬉しい言葉本当にありがとうございますm(__)m
やる気と励みがかなり溢れてきます。
がんばります!
377:いしごま防衛軍さん
>とうとう当日ですね。
返事遅くなりましたが気になってました。
上手く行ったことを願っています。
そして今日は石川さんの誕生日ですね〜。
まだまだ時間が掛かりそうですが、がんばります。
- 379 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年01月20日(日)23時48分38秒
- akiさん、全力を尽くしてきましたよ。
しかしながら、英語の大敗北によって志望大学のボーダーラインまで
60点足りない。なんかあきらめたくはないのですが、無条件降伏を
突きつけられている感じがします。敗戦の一文字が頭から離れない(;−;)
しかししかし、あきらめませんよ。最後の最後まで戦います!!
akiさんに力を分けてもらっているのだから負けるわけにはいきませんよ。
akiさんも頑張ってください!!
今日は矢口さんの誕生日ですね。
- 380 名前:White Christmas 投稿日:2002年01月21日(月)19時39分23秒
- 口数の少ないドライバーに道案内をし、タクシーが止まる。
流れていた町並みがストップし、白い雪が窓の向こうでただ静かに深々と空から
振り続ける。
バタンとドアが閉まる音を最後に、エンジンの吹く音を微かに響かせながら
タクシーは白い煙を後ろに靡かせ消えていった。
鈍い音を鳴らしながら雪道に足を進ませる。
目の前にはどれだけ体を仰いでも見渡せないほどに空高く聳えるマンションが
存在していた。
「高い・・・・・」
降り注ぐ雪に目を細めながら暗い空のせいか余計に頂上が見えないそれを梨華は
見上げた。
「何階なんですかぁ?」
「・・・一番上。」
マンションに向かってすたすた歩きながら真希がこともなげに答える。
- 381 名前:White Christmas 投稿日:2002年01月21日(月)19時40分22秒
- 「一番上!?」
「そう。」
梨華を置いて真希はさっさとマンションの出入り口付近に付いてしまった。
梨華はまだ感心するようにタクシーから降りた場所からマンションの上を眺めている。
「行っちゃうよ?」
「あ、待ってください〜!」
既にマンションの中に入ろうとする真希に向かって梨華は急いで駆け出した。
- 382 名前:White Christmas 投稿日:2002年01月21日(月)19時41分41秒
- 既にマンションの中に入ろうとする真希に向かって梨華は急いで駆け出した。
(そういえば・・・私、バーに来てる人の細かい事って何も知れないんだよね。)
走りながら小さな独り言を胸の中で呟いた。
(何だっけ?確か・・・・・)
どこから来てどこへ帰るのか。
今までどう人生を送ってきたのか。
そしてどういう経路でバーに訪れたのか。
お互いの深いことは全く知らない。
(どうして?)
居心地が良いから。
近すぎず離れすぎず、みんな自分の力だけでその場所に立っている。
(・・・・・・・・。)
疑問に自分の頭が、体が勝手に答えていく。
まるで遠い過去の思い出が、自分にそう呼びかけるように。
何かが、自分の奥底に閉じ込められているような気がした。
どうしてかは・・・分からない――――
- 383 名前:White Christmas 投稿日:2002年01月21日(月)19時44分06秒
- そうこうしているうちに、答えは出ないままいつのまにか梨華は真希の姿が目の前に
来るほどに近づいていた。
「・・・どうかした?」
微かに顔色が変わった梨華に真希が心配そうに顔を覗き込む。
「・・・・・・・。」
しばらく梨華は真希に尋ねられても呆然としていた。
瞳には真希の姿は映っていない。
ただ今の不思議な感覚に気持ちが奪われる。
「・・・梨華ちゃん?」
やっと真希の次の呼びかけに梨華ははっと我に返った。
「ご、ごめんなさい。何でもないんです・・・。」
「・・・・・・・。」
梨華は気付いたように真希にすぐに謝った。
真希はまだそれに納得することが出来ずまだ心配そうに梨華を見る。
- 384 名前:White Christmas 投稿日:2002年01月21日(月)19時45分16秒
- 「大丈夫・・です。すいません・・。」
「・・・・そう?」
自分だけを見つめる瞳が恥ずかしくて、梨華は視線を下に落とし顔を紅潮させながら
答える。
まだ腑に落ちないようだったがとりあえず真希も納得することにする。
そしてスッと梨華の手を取った。
「え?」
「私もだけど・・・『何でもない』は頼りにならないから・・・・。」
そして手を取ったまま前を歩き出す。
「あ・・・・・」
梨華はそれにドキドキしながらも真希の後に続いた。
幾分恥ずかしいのか真希も前を向いたまま梨華からは視線を外し歩いていた。
エレベーターに乗り込む。
クリスマスのせいなのか日頃からなのかマンションは静まり返っていた。
微かな機械音と共にエレベーターが頂上を目指す。
- 385 名前:White Christmas 投稿日:2002年01月21日(月)19時46分05秒
「・・・・・・。」
会話のない中、私は彼女の暖かいぬくもりをぎゅっと握り返した。
(やっぱり、私は・・・・・)
この人が好きです。
どうしようもないくらいに、この人に溺れてしまっている―――――
- 386 名前:aki 投稿日:2002年01月21日(月)19時51分09秒
- すいません、短いですがここまでです。
実は最近書く意欲がかなり絶不調だったため書くスピードも
落ちてしまい更新も遅れてしまいました。
今もきつい状態ですが、がんばります・。
- 387 名前:ごんた 投稿日:2002年01月21日(月)20時21分24秒
梨華ちゃんが少しずつ記憶を戻している!やっぱりクリアの能力ですね。
私は、理科の授業中に書いてるんです。下書き。でも焦ってなかなかいい作品が
書けません。いつまでもまってますんで、頑張ってください。
- 388 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月21日(月)21時10分52秒
- ゆっくりでもいいので自分の納得のいく作品を書いてください。
絶対に見捨てたりしません。このお話、大好きです。
頑張ってください!!!!
- 389 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年01月21日(月)23時25分02秒
- そういえばバーの皆はお互いのことをそんなに深くまで知らないんですねえ。
でも、それでもよいのではと思う。ドキドキしながら読んでました。
きつい時は無理をしなくてもいいと思いますよ。ゆっくり静養することも
大切だと思います。ゆっくりマイペースでいきましょう。
この小説大好きですから、いつまでも待ってますよ。どれだけかかっても
いいですから途中でなげださないでください。
自分も最後の逆転勝利のために頑張ります。
だからakiさんも頑張ってください。無理せずゆっくりマイペースで(^〜^)
ずっと待ってますよ。
- 390 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年01月22日(火)10時55分05秒
- 頭をよぎる懐かしい感覚、居心地の良い場所・・・
記憶としては思い出せなくとも、心の奥底に残っている何かが梨華の中に湧いているようですね。
akiさん、焦らずにゆっくりと仕上げて行って下さい。
- 391 名前:Pocky名無し風味 投稿日:2002年01月23日(水)00時52分39秒
- 一昨日に辿り着いてから時間を見つけては読んできました!
akiさんの小説は最高ですね♪今は、他のも探して読んでいます。
『めぐる〜』と『とある〜』以外にもあるなら教えてください m(_ _)m
更新がんばってください!!楽しみに待ってま〜す♪
- 392 名前:aki 投稿日:2002年01月23日(水)13時13分58秒
- たくさんのレス本当にありがとうございます(T_T)
387:ごんたさん
>レスありがとうございます。
クリアの能力がもしかしたら影響しているのかもしれませんね。
ゆっくりがんばろうと思います。ごんたさんの話も読んでます。がんばって下さい^^
388:名無し読者さん
>ありがたいお言葉本当にありがとうございます(T_T)
擦り減ったやる気が断然沸いてきます。
がんばります!
389:いしごま防衛軍さん
>ありがとうございますm(__)m
できるだけ早くペースを取り戻せるようにがんばります。
書いてない時間も大切に使いますね。
390:M.ANZAIさん
>ありがとうございます。
焦らず自分のペースを守って書いていきます。
最後まで無理せず・・・。
がんばります。
- 393 名前:aki 投稿日:2002年01月23日(水)13時20分52秒
- 391:Pocky名無し風味さん
>こんなに長くなったのを読んでくださったんですか、
本当にありがとうございます(T_T)
新しい読者さんが増えることや時間を割いてくださった事が
何よりも嬉しいです。
励みになります。やる気もかなり出てきます。
考えてみると…「めぐる〜」と「とある〜」以外は私まだ書いてないかも
しれません。「とある〜」の中の短編ぐらい・・ですね。
もったいない言葉本当に感謝です。画面の向こうで頭下げてます(w
がんばります!
実は、近頃やる気の減少と共に書くのも時間が空いてしまって話の
全体図が飛んでしまったんです(汗
前のを読んだりメモ書きを見てやっと近頃取り戻しつつありますが
できるだけ早く前のペースを取り戻すようにがんばります。
- 394 名前:White Christmas 〜それぞれの想い〜 投稿日:2002年01月25日(金)19時15分42秒
低い小さな音を立ててエレベーターが上昇する。
しばらくすると2人を乗せた小さな箱が止まった。
廊下に出るとそこはマンション同様に静まり返り、普通のマンションでは考えられ
ないほどに部屋のドアとドアが離れていた。
さっさと自室へと向かっていく真希に慌てて梨華も続く。
どこなのかと思い辺りを見渡しながら真希の後ろを歩くと着いた場所はエレベーター
から一番離れている部屋のドアの前だった。
真希がポケットに手を入れカギを探す。
後ろでは梨華が密かにどきどきしながらそれを待っていた。
カギを指し込みカチッという音を共にロックを解除させ、ドアを開く。
「どうぞ」
ドアを完全に開き背中で押さえながら真希が部屋に梨華を催した。
「お邪魔します・・・・・」
梨華は緊張を隠せず、胸を高鳴らせながら部屋の中に足を踏み入れる。
- 395 名前:White Christmas 〜それぞれの想い〜 投稿日:2002年01月25日(金)19時18分35秒
廊下を進み中に入るとコンクリートの壁が剥き出しのどこか殺風景な部屋だった。
シンプルで飾らない部屋。
ただ無造作にごくわずかな家具が置かれている。
そして、目の前には大きなベランダが開いていた。
(後藤さんの部屋だ・・・・・)
良い意味で、真希を現したような部屋だった。
殺風景だしほとんど何も置かれていないが、部屋一杯の真希の良い香りとこの
シンプル感が梨華をほっとさせる。
遅れて部屋に入った真希はひとみから貰ったプレゼントのワインをテーブルの上に置いた。
- 396 名前:White Christmas 〜それぞれの想い〜 投稿日:2002年01月25日(金)19時23分01秒
「何か飲む?」
しばらく梨華はぼーっと部屋を見渡していたが不意に後ろから声を掛けられてはっとした。
「一応紅茶とかココアとかあるけど。・・・まぁ待ってて。」
梨華が気を使い悪そうにしているのに気付き真希はいささか言いくるめるように言うと
一人暮らしには大きめのキッチンへと向かった。
「あ・・・・・・」
気を使わせてしまうのも悪いと思ったが、断るのも気が引け困っていると真希はさっさと
それだけ言い背中を向けて向こうへ行ってしまった。
伝わってくる不器用な気遣いがどこか嬉しくて小さく微笑む。
今いる部屋の真ん中のリビングには大きなソファがあった。
その前にガラス製のシンプルなテーブルがあり、目の前にはテレビがある。
しかしどれもただ置かれていると言った風な印象があり全てがどこか殺伐としていた。
モデルルームのような、センスがあるし理想の部屋なのに――――そう、生活感が
感じられなかった。
- 397 名前:White Christmas 〜それぞれの想い〜 投稿日:2002年01月25日(金)19時26分47秒
- 上着を脱いでソファにそれを掛ける。
しかしソファに腰を掛けることなくリビングのすぐそこのベランダに足を向けてみた。
「うわぁ・・・・・・!」
思わず感嘆の声を漏らしてしまった。
マンションの最上階だけありほとんどの家の屋根や建物が下に見える。
視界を邪魔する物は何もない。
そして、目の前には綺麗な夜景が広がっていた。
向こうにはオレンジ色のような赤い塔、東京タワー。
クリスマスのイルミネーション、街を彩る町のネオン、そしてそこに降り注ぐ純白の雪。
そこはまるで夜の海に浮かぶ星達を見ているようだった。
- 398 名前:White Christmas 〜それぞれの想い〜 投稿日:2002年01月25日(金)19時29分21秒
「綺麗でしょ?」
テーブルの上に二つの湯気の立つコップを置き真希が後ろから声を掛けた。
「すご〜いっ!すごい景色良いですね!!」
はしゃぐ梨華に真希が小さく笑みを浮かべる。
「ここからバーのある辺りって見えるんですかぁ?」
「ん、見えるよ。―――あの辺かな?」
一口暖かいココアの入ったコップを口にした後真希は梨華の隣に来て向こうの方へ
指差した。
「・・・・あ、本当だぁ・・・」
梨華はそちらの方へ視線を向けしばらく探した。
すると上からでも分かるいつもの見覚えのある町並みとネオンに気付き、次にバーのある
場所に気付く。
今さっきまでいた場所を、今この場所で真希と一緒に見ていることが不思議な気持ちだった。
止まない緊張のドキドキと、隣の彼女への時めき。
そして言葉では言い表せないほどの安心感。心が満たされるのを感じる。
ずっとこの時間を、
ずっとこのままでいたいと心から願った。
しかし、そんな時ちょうどこの場には不似合いの高い携帯の着信音が鳴った。
- 399 名前:White Christmas 〜それぞれの想い〜 投稿日:2002年01月25日(金)19時31分29秒
「!」
一気に現実に戻されたような気がした。
「あ・・・・・」
明らかに沈んだ声が自然と口から気付かないうちに漏れた。
この瞬間までの、今さっきまでの全てが儚い夢のような気になってくる。
残念な気持ちと、とてつもなく不安な暗い気持ちが梨華を襲ってくる。
「・・・・・・・」
真希は振り返らずただ前を向き携帯の着信音をどこか冷めた表情で聞いていた。
「誰だろう・・・」
いつまで経っても切れることのないそれに今までの甘い感覚も完全に冷めてしまい
とうとう梨華はソファの上に置いてあるバッグの元に行こうとした。
しかしその行動はすぐに止められる事になる。
- 400 名前:White Christmas 〜それぞれの想い〜 投稿日:2002年01月25日(金)19時33分31秒
- 「・・・・・・!」
「出ないで・・・」
梨華の腕を後ろから真希が掴んだ。
暖かいぬくもりと、しなやかで綺麗な感触が自分の腕に触れる。
梨華は一瞬でそれが自分の全てを占めるのを感じた。
彼女の言葉と、切なそうな声にどう表現したらいいのかも分からない気持ちが胸に
一気に溢れ出し押し寄せて来た。
「後藤・・・さん・・・・」
真希の方へ振り返ろうとした時、
まるでこちらのタイミングと合わしたかのように梨華の携帯の着信音が止まり、
次にすぐ真希の携帯が鳴り出した。
「後藤さんの携帯も・・・鳴ってますよ・・・・」
自分に言ってくれた言葉とは裏腹に、彼女の携帯が鳴り出す。
それにどこか複雑な気持ちになる。
彼女の言葉、嬉しかったはずなのに携帯音がそれを紛らわす。
誰かに目の前の大好きな人が呼び出されている。
そんな事実に微かに嫉妬しながら、無意識に近いほどに声を幾分落としながら
呟くようにして言った。
- 401 名前:White Christmas 〜それぞれの想い〜 投稿日:2002年01月25日(金)19時35分30秒
「いいよ出なくて。」
梨華の気持ちを察してか、それともただ感じたままの行動か、真希は掴む腕をぐいっと
自分の方へ引っ張り言葉と共に梨華を自分の腕の中に強引に閉じ込めた。
「っ!後藤さん・・・・」
ただ確かめるように、真希は梨華をきつく抱きしめる。
「・・・・・・・」
体を覆う全てのぬくもりとそれから注がれてくる暖かい気持ちに梨華もただ黙って
肩に顔を埋めた。
――――安心する。
何よりも、暖かくて。
冷めてしまった感情が再び一気に蘇ってくる。
彼女といればどんな時でも、すぐに夢の続きが見ることが出来る。
頭の中で空想するような理想の気持ちの中に、自分が存在する事が出来る。
彼女さえいれば・・・他には何もいらない――――
「・・・・・・」
二人は自然と言えるほどに顔を近づけ唇を合わした。
目を閉じて、それだけを味わうように口づけする。
しばらくの間ずっと二人は抱き合い唇を合わしていた。
- 402 名前:White Christmas 〜それぞれの想い〜 投稿日:2002年01月25日(金)19時37分26秒
―――――――
「二人とも携帯繋がらないよ〜?」
「一緒にいるんじゃない?」
ハイテンションのままカラオケから出て来ながら矢口が上気する頬と共に不満げに隣の
なつみにぼやいた。
「らぶらぶかよ〜。いいよなぁ。クリスマスにそういうのって〜!!」
どこか悔しがるようにして矢口がなつみに寄りかかりながら愚痴る。
「乗り込んじゃうぞ〜?」
「でも二人が本当に一緒にいるか分からないですよ?」
ぶうぶう愚痴をこぼす矢口にひとみが後ろから声を掛けた。
「あぁ、よっすぃーは二人の肩を持つってわけだ?本当はよっすぃーだって
分かってるくせにぃ。」
「まぁ、とにかく。よっすぃーの言う通り二人の邪魔しちゃダメだよ。」
なつみに言い聞かせられ矢口が再び小さく独り言のように愚痴を零していく。
そんな矢口の後ろ姿を見つめながらひとみは隣で中澤が微かにぼーっとしているのに
気付いた。
- 403 名前:White Christmas 〜それぞれの想い〜 投稿日:2002年01月25日(金)19時40分44秒
- 「中澤さん?」
「・・・・ん?何や?」
「何か考え事してるみたいですけど・・・・どうかしたんですか?」
「いや・・・ちょっとな・・・・」
ひとみに答えながら中澤はふっと顔を上に上げた。
灰色の雲からは白い雪が降り注ぐ。
その向こうを見つめるその表情はどこか切なく、何か儚い物を見つめているようだった。
「・・・いつまでも・・・こんな生活が続くとええなぁって・・・」
「そうですね・・・」
「でもな・・・」
最後に不安げに中澤が言葉を漏らす。
仰いでいた顔も下にふっと落とした。
「?」
それ以上言葉が続かなくなった中澤にひとみが首を傾げて横から中澤の顔を覗いた。
「いつまでも・・このままでいいんやろか・・・そんな不安もあるんや・・・」
「・・・・・・」
誰かに尋ねるようにして呟く中澤の言葉はひとみの耳にはっきり届いていた。
しかし何も言葉は返さなかった。
その疑問を感じていたのは自分も同じだから。
こんなささやかな幸せが、いつまでも続くといいと願っているのに。
心のどこかではいつかそれが壊れる日が必ず来るんじゃないかと、どこかで冷静に感じ
取ってもいた――――
- 404 名前:White Christmas 〜それぞれの想い〜 投稿日:2002年01月25日(金)19時51分45秒
――――――
窓から見える空から降り注ぐ白い雪。
「・・・・・・」
パーティも終わりそれぞれが気ままに時を過ごす。
辻は一人窓から外の景色を眺めていた。
息が窓に掛かり白い跡が出来る。
「風が・・・怯えてる・・・」
強い風のためガタガタと音を鳴らし揺れる窓に手を当てながら辻が呟いた。
独り言のような自分だけにしか聞こえないような声に向こうの飯田がびくっと反応する。
加護と保田は、それに気付かずパーティの余韻から顔を紅くしてソファに寝転がっていた。
「辻・・・・」
窓の向こうをただ見つめる辻に飯田が近づく。
「飯田さん・・・海が・・荒れてます。風も、草木も、大地も・・・何かに怯えてる・・・」
「・・・そう、さっきから・・星も何かを私に告げようとしてる・・・」
窓から飯田は灰色の空を仰ぎ見た。
その向こうの星達を見透かすように。
「・・・・・・」
飯田の言葉に辻も俯き加減に黙った。
(逃れられない。この不安の前兆には・・・・・)
いつもの表情のままだが、節目がちのその瞳には確かな不安な色が覗いていた。
それは感情を忘れたような、これからの何かを物語るかのような物静かな瞳――――
- 405 名前:White Christmas 〜それぞれの想い〜 投稿日:2002年01月25日(金)19時54分07秒
「・・・・・・」
保田は辻と飯田の会話をソファに寝転がりながら密かに耳にしていた。
目を細く開き、今さっきの電話の内容を思い出す。
『石川が戻った。記憶は戻っていない――――』
無駄な会話はいらなかった。
それだけで何を意味するかははっきり伝わっていた。
中澤の口調から伝わる、秘められた『覚悟』
(もう誰も、逃れられない・・・)
瞳を閉じ、息を軽くつく。
平静を保つように、そして押し寄せてくる不安と弱い自分を押さえつけるため――――
- 406 名前:aki 投稿日:2002年01月25日(金)19時56分13秒
- 更新しました。
- 407 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年01月26日(土)00時09分04秒
- うーん、この後何が起きるのか気になります。
ごっちん、何が起きても梨華を守り抜いてくれ。
akiさん、応援してますよ!!(^〜^)
- 408 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年01月26日(土)00時41分48秒
- 幸せを静かに味わう間もなく、彼女たちの能力は警告を打ち鳴らすのですね。
- 409 名前:aki 投稿日:2002年01月29日(火)19時36分45秒
- 407:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
全ては、二人に懸かってますね。
がんばりますっ。
408:M.ANZAIさん
>レスありがとうございます。
それが彼女達にとって避けられない出来事のためか・・余計に感じてしまうん
だと思います。
今も充分幸せで一杯なはずなんですけどね・・。
すいません、今日も更新できなさそうです。
このシーンは一気に乗せようかと思ってるのでもう少し時間を下さいm(__)m
なるだけ早く載せられるよう、がんばります。
- 410 名前:呂布 投稿日:2002年01月29日(火)21時41分18秒
- 焦らずにゆっくりやって下さい。
頑張ってください。
- 411 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)18時50分01秒
――――――――
「プレゼント・・欲しかったな・・・」
「え?」
唇を離した後、梨華が呟くようにして言ったその言葉に真希が聞き返す。
「あ、その・・・・何でもないんです。」
何と言葉を続けたらいいのか分からず梨華は答えないまま黙ってしまった。
真希は梨華の様子を伺おうとしたが梨華はそのまま窓の方を向いてしまう。
「・・・・・・・」
しばらくその後ろ姿を見つめていたが、真希は不意に自分の首の後ろに手を掛けた。
「これ・・・あげる。」
「え?あ・・・・」
言葉と共に目の前に一つのシルバーのネックレスが現れた。
細かい細工の施されている十字架のネックレス。
バーでのプレゼント交換の時のネックレスと似た感じだが目の前のそれはあの時の物とは
違うのにあれ同様、シンプルなのにどこか不思議な印象のデザインだった。
- 412 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)18時55分02秒
- 「い、いいんですか?」
「うん。」
「でも・・・」
「クリスマスプレゼントだよ。受け取ってよ。」
「・・・・・・」
手渡されたネックレスをそっと受け取る。
まだ彼女のぬくもりが残っていた。
「あ、ありがとうございます・・・」
しばらく呆然と心奪われるようにそれを見つめていたが思い出したように梨華は
顔を上げ真希にそのままの気持ちを告げた。
「いいよ別に・・・それより・・・敬語使わないで・・・」
「え・・・?」
突然の真希の言葉に梨華が不安そうに顔を覗く。
「他人行儀な感じがするから・・・無理強いはしないけど・・・」
上目遣いの完全に不安の溢れているその表情に真希も最後は言葉を濁してしまう。
- 413 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)18時59分13秒
- 「あ、す、すいません。そういう訳じゃないんですけど・・・あの・・・その・・・」
「だからいいってば。分かってるよ、そんなんじゃないっていうのは・・・ただ・・言って
みただけだから・・・」
困ったようにして眉を八の字にする梨華に真希が小さく息を付きやれやれといった顔をする。
しかしどこか暖かい表情でさも申し訳なさそうにする梨華の肩に手を置き、声を掛けた。
「ごめんなさい・・・じゃなくてごめん・・・ね・・・?」
「そうそう。」
疑問系だが梨華のその言葉に真希が笑みを溢しながら後ろのソファに向かい腰を掛け
コップに口をつけた。
真希の笑顔に梨華も安心するように微笑むとL字型のソファのもう一つの方へ
同じように腰を掛けた。
テレビを適当に付け、他愛無い会話と時間を過ごす。
貰ったネックレスを梨華は大切に胸ポケットに入れると出されてすでに冷め始めている
ココアに初めて口を付けた。
真希は何をするわけでもなくクリスマスの特別番組を見ていた。
- 414 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)19時03分52秒
テレビの画面ではクリスマスのため特別に延長されている歌番組が流れ、
有名な歌手がその歌声を披露していた。
「・・・・・・・」
同じようにテレビを見ながら、密かに梨華は彼女の横顔も隣で盗み見る。
整った横顔。
部屋に入った時からずっとドキドキは治まらない。
こうして横顔を見つめているだけでも、何ともいえない気持ちが胸に沸き起こってくる。
(はぁ・・・私って・・・)
こんな自分の状態にため息混じりに俯く。
しょうがない。自分では止められないのだ。
ずっと、絶え間なく彼女のぬくもりを感じていたいと願ってしまう。
(ずっと・・・・・・)
再びぼーっとただ心奪われるように恍惚とした表情で梨華が真希を見つめていたその時、
- 415 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)19時10分50秒
「っ!」
「暑くなって来たから暖房消そうか・・・・ってどうかした?」
「な、何でも・・・」
突然言いながら立ち上がった真希に過剰なほどに梨華が反応する。
未だどきまぎする梨華を真希が怪訝な表情で首を傾げた。
しかしすぐに壁に備え付けされている暖房のリモコンの元へと歩いていった。
(び、びっくりした・・・)
完全に自分の世界に入りぼーっとしていたので突然の事になぜか心の中を
見透かされてしまったような気がしてしまう。
まるでいたずらをしてそれを見つかった時の子供のような気持ち。
暖房を切り向こうから真希が戻ってくる。
火照ってしまったのかシャツのボタンを上から二つまで外していた。
覗く白い肌。
綺麗な鎖骨。
それから漂う艶めかしいほどの年相応ではない色っぽさ。
今までとは違う胸の高鳴りが徐々に大きくなって押し寄せてくる。
(やだ・・・私・・・もしかして期待してるの・・・・?)
これから起こるかもしれない事に少なからず期待している自分がいる。
それは部屋に入った時から、実際家に誘われた時からそうだった。
その事に対しての不安、緊張、そして胸に大きく占めるこの胸の鼓動と比例する、期待。
本当はずっとそれは胸の中に存在していた。
- 416 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)19時17分03秒
「・・・・・・」
一気にそんな自分に対して恥ずかしさを感じ、羞恥に頬を紅く染めながら自分の胸元の
服をぎゅっと掴み押さえる。
(恥ずかしい・・・・・)
嫌になるほど自分の気持ちに気付き、そんな自分を目の前の彼女に見られたくないと言う
意思から上気し、紅潮する顔を下に俯かせる。
「・・・・・・」
そんな梨華の様子に真希が気付く。
しかし心の内など知る由もなく何か言葉を掛けようとした時、
一際強い風が窓を叩き付けた――――
- 417 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)19時19分03秒
- 「!」
不意の事に梨華は驚いたように顔を上げ、真希も梨華から窓に目を向けた。
「すごい風・・・」
窓が風のせいでガタガタと低い音を立てる。
外では風がなお暴れているのか特有の空気の擦れた音が部屋に伝わり、
強風によって空から降り注ぐ雪はしばらくの間吹雪のように外を荒れ狂った。
「・・・・・・」
何かを心の中で考えているような表情で、真希が窓に視線を向けていた。
『――――それでは明日の天気予報をお伝えします―――』
付けていたテレビからそんな女性の声が聞こえてくる。
見ていた番組が終わり、次の番組までの短いニュースが始まっていたらしい。
二人が黙ったままそちらに視線を送った。
まるで何かに呼ばれたように―――
- 418 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)19時23分14秒
『明日の天気は曇り後雨。東京都心一帯の上空にこの季節では稀な厚い低気圧の雲が
流れて来ます。昼間も含め一日中太陽は雲の中に隠れ暗くなりそうです。
それから一週間、天気はあまり回復しそうにありません。お出かけの方は傘をお忘れにならない
ようくれぐれもお気をつけて下さい――――』
それからテレビの中のアナウンサーが頭を下げ、コマーシャルに入る。
「・・・・・・」
ニュースが終わった後も、梨華は尚それをどこか不安そうな表情で見つめていた。
梨華が胸をぎゅっと押さえるのを、真希は横で気付いていた。
「どうしてだろう・・・」
突然の梨華の言葉に真希はゆっくり顔を上げそちらに向き直る。
「分からない・・・けど何だかすごく・・不安・・・・」
テレビから視線を話さないまま梨華が小さく呟く。
それには言葉同様、微かに自分に対して問い掛ける様な口調だった。
- 419 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)19時27分02秒
- 「不安って、どんな風に?」
「怖い・・ような・・・・」
梨華は真希の問いかけにほとんど無意識に答えていた。
真希に答えると言うより聞こえてきた疑問に答えた、と言う感じに近い。
梨華自身、自分が意識して答えた物ではなく何か本能のような、「自分」と言う物が
意識下で答えたような感じを受けていた。
(これ・・・そう、マンションに来た時と・・・同じ感覚・・・・)
感じたことのある感覚に記憶の中を辿ってみる。
するとすぐに答えは出た。
タクシーを降り、マンションに着いて真希に駆け寄った時と全く同じ―――
そもそも言葉を発したのも気付かないうちに口から取って出ていた。
「・・・・・・・」
梨華はただ呆然と、今の不思議な感覚に意識を向ける。
(何だろう・・・これ・・・・何だろう・・・・)
近くの物音さえ聞こえなくなるほどに、梨華の意識は自分の中に向けられていた。
(分からない・・・・どうしても分からないっ・・・!!)
心の中の自分が、真っ暗な闇の中で小さくしゃがみ、自棄に近い形で何かに叫んだ。
- 420 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)19時31分04秒
それは昔、自分が持っていたもの?
そしてどこかで無くしてしまったもの・・・?
分からないじゃない。
分からないといけないの・・・・!
だけど・・・どうしても分からない・・・!!
心に押し寄せてくる不安という闇。
怖い。
何でかは分からない。
けどどうしても・・・不安を感じる。
どうして・・・
『これから―――いや、明日に何があるか分からない――――――』
- 421 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)19時32分53秒
「大丈夫・・・?」
「!」
不意に自分を覆った影と、そのすぐに感じた人のぬくもりに梨華は驚いて
はっと我に帰った。
「わ、私・・・・」
今まで自分が何をしていたのか分からないと言った風に辺りを見渡す。
しかしその瞳には何も映らずただ胸の内を現すようにうろたえるように空を泳ぐだけ。
「・・・泣いてたの・・・?」
今の状況が分からないまま、悲しむような、心配するような優しい声が自分に
掛けられる。すごく近い距離から。
「・・・・・・」
梨華は掛けられた言葉で初めて気付いたように、自分の顔に触れた。
すると頬には確かに熱い涙が流れた後が出来ていた。
「泣かないで・・・」
切なそうな声と共に、何か暖かく柔らかい物が自分の瞳の近くに触れた。
今も溢れ出しそうになる自分の涙を、それが拭う。
「あっ・・・・・」
そしてやっと梨華は自分の今の状況に気が付いた。
- 422 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)19時34分25秒
「ご、後藤・・さん・・・・」
目の前にいるのは、自分の体を抱きしめていたのは他でもない真希本人だった。
ぎゅっと自分をその腕で抱きしめている。
それから伝わってくる暖かく優しいぬくもり。
そして、今自分の瞳から流れた涙を彼女が口付けして拭ってくれたことに気付く。
頬に添えられる手。
失っていた体の感覚全てが蘇り、今の出来事が頭の中を駆け巡りそれと共に
一気に体が熱くなってくるのを梨華は感じる。
抱きしめられる体、頬に添えられる手、触れる唇、掛けられる言葉。
今更のように遅れて心臓が高鳴り出す。
部屋に来てから今が一番高鳴っているのは梨華自身が分かっていた。
そして、たぶん絶対にそれは真希に伝わっている・・・。
- 423 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)19時36分38秒
自分の心の中など知らず、彼女は私の髪に優しく触れてくる。
とても大切な物に触れるように愛しむように、優しく・・・。
大丈夫だから・・・と囁くように、安心を感じさせるように抱きしめてくれる。
それに益々胸の鼓動が高鳴るのを感じる。
こんなに感じてしまう自分に恥ずかしさを感じ、頬を幾分紅くし俯く。
そして緊張してか、思ってもいないような言葉が自分の口から飛び出した。
「ダメ・・・・」
思ってもいない言葉と共に自分の手が彼女を拒むように前に出される。
「梨華ちゃん・・・?」
突然梨華によって体が離され、拒むその手に真希が微かに困惑したように聞き返す。
しかし真希からは俯いている梨華の表情は分からない。
- 424 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)19時37分46秒
「・・・・・・・」
梨華は梨華で俯いたまま自分の行動に戸惑い驚いていた。
どうしてこんなことをしてしまったのか分からない。
考えてしたことじゃない。
しかし、次に自分の口から発せられる言葉に答えはあった。
「ダメです・・・このままじゃ私・・・止まんなくなっちゃう・・・・」
どこか情けないように自嘲気味に梨華は呟いた。
真希がまだその言葉の意味が分からずただ梨華を見つめ次の言葉を待っていた。
「私・・・後藤さんが思ってるよりもずっとずーっと後藤さんのことが好きなんです。
プレゼント交換の時みたいにあんた小さなことでもやきもち焼いちゃうぐらいに・・・・。」
そう、あなたといると・・・いつも自覚させられちゃう。
こんなにあなたを好きな事・・・。
- 425 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)19時39分54秒
「しかも欲張りなんです。こんなことされたら・・・止まんなくなっちゃう・・・・。」
「梨華ちゃん・・・」
「後藤さんはどうして・・・こういう事・・するんですか・・・・?」
俯いたまま胸に生まれた小さな疑問を投げかける。
こんなに自分は時めいてしまう。
体が火照ってしまう。
そんな事をさせるあなたは何を思って私にそれをしているの・・・?
「・・・好きだからだよ・・」
「・・・・!」
真希は梨華の言葉にその一言だけで小さく答えると、次に俯いている梨華を顎に手を
添えくいっと上に上げさせると顔を横に傾けそこにきつく唇を合わした。
- 426 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)19時42分26秒
「んっ・・・・・」
突然のキスに戸惑う梨華を余所に真希は唇を合わしたまま口を開かせる。
そしてそこに強引と言えるほどに舌を入れた。
「ん・・・・ん・・・・・!」
貪るように口の中を暴れる真希に戸惑いを隠せず梨華は行為を返す事が
出来ずにただ成すがままにされていた。
「・・・っ・・んん・・・」
しかししばらく経つと梨華も自分から舌を絡め真希に答えた。
目をぎゅっと瞑り、強く求めてくる真希に答えるように腕を抱きしめた。
部屋には二人から繰り出される音だけが静かに響き渡り、それと共に二人の途中の
息が口から零れる。
ただ夢中で互いの唇を求め貪り、今までで一番深く激しい口付けを交わしていた。
- 427 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)19時44分43秒
「ん・・・はぁっ・・・ん・・・」
梨華の口の端から唾液が流れる。
しかし二人はそれに関係なく行為を続けた。
「はぁ・・・・はぁ・・・」
「・・・・・・」
やっと唇が離れた頃、呼吸は乱れ荒くなっていた。
熱い息を吐き、新しい空気を取り入れるように肩で息をしている。
真希も珍しく呼吸を乱していた。
俯いて、同じように小さく肩で息をする。
- 428 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)19時47分17秒
「欲しいよ・・・梨華ちゃんが欲しい・・・。ねぇ、言って・・・梨華ちゃんの気持ち・・
聞きたいの・・・止めないで・・いいから・・・・・」
キスの余韻から頬を紅く染め、恍惚とした表情の梨華に真希が言う。
流れたままの唾液を指でそっと拭いながら。
「私も・・・あなたが欲しい・・・・ずっと・・そう思ってた・・・」
「梨華ちゃん・・・」
閉じ込めていた想いを全て吐き出すように二人は再び顔を近づけ唇を合わした。
梨華は真希の首に腕を回し、今さっきよりももっと深く、激しく。
不意に梨華の肩ががくっと力を無くしたようにソファの背もたれからずれる。
「だめ・・・ここじゃ・・・やだ・・・・」
唇が離れ、荒い息と共に目を潤ませながら梨華が真希を見つめ必死に言葉を繋ぐ。
「うん・・分かってる・・・」
言葉の意味を察し、気持ちが伝わっていることを感じさせるように真希が答える。
そして既に激しいキスにぐったりする梨華の体を優しく持ち上げた。
- 429 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)19時52分39秒
「あっ・・・・・」
思ってもいなかった行動に戸惑うように梨華が声を漏らした。
「い、いいです。歩けます。それに・・・・」
「すごく軽いね、梨華ちゃん。腰なんてこんなに細い・・・・」
梨華の言葉を予測していたように真希が途中で遮る。
そして困ったようにしている梨華に小さく微笑みかけた。
「そんなこと・・ないです・・・・」
恥ずかしがるように顔を隠しながら真希にぎゅっと抱きつく。
胸の近くの服を小さくぎゅっと掴んだ。
真希は梨華の背中と膝の下に腕を通し、その華奢で軽い体を簡単に持ち上げる
お姫様抱っこのままリビングを後にした。
抱かれるまま、ぬくもりと彼女の存在を確かめながらそっと瞳を閉じて心の中で呟く。
(どうして・・・こんなに・・・・)
感じるぬくもりは暖かい。
服から伝わってくる彼女の鼓動も、どこかいつもより早く動いているようだった。
それに安心と嬉しさを感じる。
(嬉しくて仕方ないぐらいのことを・・・どうしてそんなに簡単にしちゃうの・・・?)
問い掛けるようにして胸の中で呟く。
その素朴な態度や行動で私は何ともいえない気持ちで一杯になってしまう。
まるで魔法をかけたみたいに・・・。
- 430 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)19時55分57秒
「今何か考えてる?」
「え!?」
突然の真希の声に梨華が驚くように目を開き上の真希に顔を向けた。
「何か考えてたんだ?その態度は。」
「え、あ・・・・」
何と答えたらいいのか分からずただ言葉を濁す。
戸惑う梨華に真希はにっこり微笑むと言った。
「梨華ちゃんが思ってること・・・感じてること、今は・・今だけは全部聞きたい・・・。
だから胸の中で閉じ込めないで全部言葉にして・・・・」
「後藤さん・・・」
梨華が真希の名前を口にした時、ちょうど部屋の前まで来た。
真希がドアを静かに開く。
「私も言うから・・・全部・・・・」
囁くようにして言った言葉と共に部屋の明りが付いた。
- 431 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)19時58分01秒
その言葉から溢れ出す感情を表現する前に、
目の前に部屋の中が開く。
部屋はリビング同様無駄な物が飾られていないシンプルな部屋だった。
家具もほとんど置かれていない。
殺風景だしどこか寂しい。
けどベッドを取っても部屋の中を見てもどこも真希を現すようにシンプルだけど
どこか暖かかった。
真希が部屋の中に歩を進めそっと静かに優しく梨華の体をベッドに降ろす。
「いつも後藤さんは・・・私がドキドキするような・・嬉しくなるようなことを、
素朴にしてくれるなって・・・そう思ったんです。」
今さっきの質問の、少し遅れた答えを返す。
彼女の気持ちに嬉しさを交え。
- 432 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)20時02分00秒
「そっか・・・」
真希はそれに少し照れたように、だけど嬉しそうにそれだけ返事する。
そして上に体重を乗せないようにして重なる。
梨華の頬に手を添え、反対の頬に唇を合わす。
「心も繋がりたい・・・」
「っ・・・!」
それだけ言うと真希は強引に唇を奪った。
返事を聞かないように、態度を見られなくてすむように、恥ずかしさを微かに
胸に秘めて。
真希の態度に気付くように梨華も何も言わずただそれに答えた。
そして二人の夜が始まる。
初めて共有する同じ時。
それは激しく、深く、そして何よりも優しいものだった。
外ではただ静かに雪が深深と降り、積もっていく。
そんな外とは裏腹に――
- 433 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)20時03分23秒
「・・っぁ・・・」
体の全てを愛するように口付けしていく唇。
耳元、首筋、綺麗な鎖骨、胸元―――
いくつもの二人の繋がりを示す痕ができる。
一枚一枚丁寧に服を脱がしていく。
それと共に現れる何の汚れもない純粋で華奢な体。
「電気・・・消して下さい・・・・」
「ダメだよ。ちゃんと・・見たい。それにずっと私を見てて・・」
言いながら体に触れる彼女の手。
初めての感触と行為に思わず体をびくっとさせる。
甘い感覚を感じる前にどうしても胸に生まれてしまう不安の混じる戸惑い、だけど
それ以上に何よりも熱い感情が胸に溢れる。
どれも優しく安心させてくれる。
今まで味わった事のない感覚。
何よりも居心地が良くて、ずっとこうしていたいと願う気持ち。
- 434 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)20時07分13秒
- 「・・ん・・・っやぁ・・・・」
暖かくて優しい唇が胸のそれに触れる。
今まで生きてきた中で出した事もない声が自分の口から発せられている事に
思わず恥ずかしさに頬を紅くする。
「恥ずかしがらないで・・・全部見せて・・・・」
「後藤・・さぁ・・ん・・・・っ・・・!」
優しく頬に触れてくれる手。
それに自分のを重ねる。
だけど徐々に確実に熱くなり始める体は上手く彼女の名前を呼ばせてくれない。
そして熱くなる一番の中心、敏感な所に手が触れる。
「あっ・・・・!」
思わず今まで一番体をびくつきさせ戸惑う声を上げる。
「怖い・・?」
それに一旦手を離し真希が尋ねた。
「少し・・・だけ・・・・」
いつもの頑張り屋な自分はここでは出てこなかった。
ありのままの飾らない言葉が口から出て行く。
- 435 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)20時09分34秒
「大丈夫・・・好きだよ・・・・」
安心させるように優しく囁くと真希はそっと唇にキスをする。
それに一気に緊張が体から解き解れていったのを梨華は感じた。
不思議なくらいに、不安が消えていく。
真希は少しづつ梨華の中に入っていった。
優しく、全部を愛するようにゆっくりと・・・。
「・・・あっ・・・んん・・・・・!」
「大好きだよ、梨華ちゃん。」
目を瞑り、始めての快楽に徐々にだが確かに身を委ねようとする梨華に真希が囁く。
ありのままの気持ちを、飾らない言葉で彼女を癒すように。
「はぁ・・・ん・・・・もっ・・と・・・」
彼女の言葉が、胸に染みていくのを感じる。
そして不安なんか消えて、暖かい気持ちが溢れてくる。
体も、どんどん熱くなってくる。
- 436 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)20時11分44秒
「もっと・・・言って・・・・・」
「好きだよ、大好き・・・」
「ふぁ・・・・ぁん・・・・・」
言葉と共に指先に感じる彼女が熱くなってくるのを感じる。
それに答えるように、彼女をもっと愛すように動きを早める。
「もっと・・・言ってぇ・・・」
「好き・・大好き・・・他の誰よりも、愛してる・・・!」
「私も・・好き・・・後藤さんが・・好きぃ・・」
火照る体、口から漏れる熱い吐息、ぎゅっと瞑る瞳と上気する頬。
荒い息を吐きながら、必死に自分も想いを告げようとする梨華に真希は
表現できないぐらいの熱い気持ちが――梨華を求めようとする気持ちが胸に
沸き起こったのを感じた。
「好きだよ・・・」
全てをそれに含めるように一言優しく囁き、そして今までで一番彼女を求めた。
「あっ・・・・・!」
一気に押し寄せた快感の波に、梨華は何かが弾けたのを感じた。
「大好き・・・・」
最後に彼女の言葉を耳にしながら、梨華は意識が遠のくのを感じていた――――
- 437 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)20時14分30秒
梨華の体がベッドに沈んだのを確認すると真希は部屋の明りを消して暗くした。
「・・・・・・」
横で息を吐き、紅潮する頬と共に肩で息をする梨華を見つめながら、ぎゅっと
ベッドに置かれるその手を握り締める。
いつ起きても不安にならないぐらいに、ずっと繋がっているように
真希は隣で横になる梨華の体をそっと抱きしめた。
「後藤・・・さん・・・・?」
「起こしちゃった・・かな・・・?」
真希の胸の中に抱かれる梨華がそっと瞳を開ける。
まだ体は今の感覚の余韻から体を火照らせている。
「・・・私・・・」
次第に意識がはっきりし始めてきたのか梨華は確認するように声を出す。
- 438 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)20時16分19秒
「大丈夫・・・?」
「あ、大丈夫・・です。大丈夫・・・・」
真希の言葉になぜ自分が今こうしているのかに気付き恥ずかしそうに顔を
紅くして答えた。
それに真希が気付きにこっと微笑み言う。
「すごく可愛かったよ。」
「うぅ・・言わないで下さいぃ・・・」
梨華は真希から視線を外すように俯いて顔を埋めていく。
「ごめんね。」
あはっと乾いた笑いの後真希が梨華の髪を撫でた。
「・・・・・・」
その笑顔を梨華は下からそっと見つめていた。
子供のような純粋で無垢なその笑顔、私の一番大好きな笑顔。
ぎゅっと黙ったまま目の前の彼女の体に抱きつく。
しかしまだ抱きしめた彼女の体は服に包まれているのにそれで気付いた。
- 439 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)20時18分30秒
「・・・ん・・やだ・・・・・」
「え?」
「直に・・・触れたい・・・後藤さんの体・・・・」
「あ・・・・・」
梨華の言葉の意味に気付き真希も自分の服を見た。
言って後から自分が今何を言ったのかに気付き今更のように梨華は顔を紅くして
真希から体を離し向こうにごろんと寝てしまった。背を向けて。
「ご、ごめんなさい。何でもないんです・・・。」
訂正するように言うとそのまま梨華は真希に背を向けたままになってしまった。
- 440 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)20時21分04秒
「・・・・・・」
しばらくその後ろ姿を見つめる。
綺麗な背中。
華奢でその美しい背骨と腕が部屋の微妙な明りに綺麗すぎるほどに映える。
真希はその背中に熱い感情が溢れてくるのを覚える。
「触れてよ、体・・・・」
「え・・・?」
不意の言葉に梨華がどういう意味か分からず顔だけそっちに向けた。
「梨華ちゃんの手で・・・服を脱がしてよ・・・・」
同じようにして横になっているその姿で言う真希に梨華は何と言葉を返したら
いいのか分からなかった。
ただ今さっきと同じぐらいに胸が高鳴ってくるのを感じる。
- 441 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)20時22分29秒
「取って・・・」
「あっ・・・・」
戸惑う梨華の手を取ると真希は今さっきの行為のため微かにはだけた自分の服へと
触れさせた。
しばらく梨華は困惑するようにただ言葉を失い戸惑う瞳で真希を見つめていたが
その熱く真摯な瞳に心を決めた。
そっと、服に手を掛ける。
はだけている服を一枚一枚丁寧に取っていく。
恥ずかしさからか、嬉しさからか、自分の顔も体も火照り熱を持ち始めて来たのを
感じる。
徐々に露になる彼女の体。
綺麗な胸元、鎖骨、白い肌、色っぽさを秘めるその体は自分なんかよりも
成熟した女性を思わせる。情熱的で肉感的な体。
目の前の彼女の体にくらっと目眩いに似た、魅せられる感覚を感じた。
「・・・・・・」
真希は服を取っていく梨華の紅潮した顔をずっと黙ったまま見つめていた。
- 442 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)20時23分39秒
そんな事にも気付かず梨華は背中に腕を回し、ブラのホックを外す。
ふっくらとした彼女の胸がそこから解き放たれた。
「あ・・・・・」
思わず声を出してしまった。
裸の彼女が、目の前にいる。
それは思っているよりもずっと大人っぽくて艶めかしいほどだった。
胸のドキドキが止まらない。
離れているのに音が彼女に聞こえてしまうのではないかってぐらいに高鳴っている。
全て服を取り除いたまではいいものの、その目の前の体にただ目を奪われぼーっとただ
何も出来なくなってしまった。
- 443 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)20時24分24秒
「・・・ドキドキした。梨華ちゃんが脱がしてくれてる間・・・」
言葉を失いただ心を奪われたように呆然とする梨華を真希が前からぎゅっと抱きしめる。
「後藤・・さん・・・・」
直に彼女のぬくもりが伝わる。
服越しじゃない。
そのままの体温が体に伝わってくる。
体温と共に伝わる胸のドキドキは自分と同様高鳴っていた。
同じ気持ちなのが嬉しくて、
すごく、気持ちいい――――
- 444 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)20時25分11秒
「触って・・・」
「え?」
「感じたいの・・・梨華ちゃんを。だから、触れて・・・」
切なそうな、真剣だけどどこか懇願するようなその表情に胸の高鳴りは治まることなく
もっと強くなってくる。
今さっき彼女がしてくれたように、そっと胸に触れてみる。
「んっ・・・・・」
びくっと体が反応して、彼女が目を瞑ったのが目に入った。
何とも言えない気持ちになって、行為を続けた。
「はぁ・・・・梨華・・ちゃん・・・・」
悩ましげな声と共にぎゅっと梨華の頭を抱きしめる。
そんな彼女に、熱い感情が胸に溢れてくる。
「好きです・・・全部・・・。感じて、下さい・・・」
「・・・っぁん・・・・・」
- 445 名前:繋がった気持ち 投稿日:2002年01月30日(水)20時27分25秒
それから二人は激しく抱き合った。
心まで繋がるぐらいに深く。
夜を越えて、二人の時がそのまま永遠に変わるぐらいに。
互いの熱い吐息と火照る体を感じながら、
二人は初めて確かに心まで繋がったのを感じあっていた。
そして互いの手を取り、ぎゅっと握り締めて眠りに落ちた。
離れないように、これからもずっと―――
これからどんなことが起きたとしても、ずっと繋がっていられるように―――
- 446 名前:aki 投稿日:2002年01月30日(水)20時29分31秒
- 更新しました。
大量更新です。たぶん今までの中で一番・・・。
間が空いてしまったため急いで二日間使い計6、7時間で書きました(汗)
- 447 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年01月30日(水)20時33分18秒
- とても幸せな2人の時間・・・しばらくは余韻におりましょう。
- 448 名前:aki 投稿日:2002年01月30日(水)20時33分35秒
- 410:呂布さん
>すいません、レス遅れちゃいました(汗)
ありがとうございますm(__)m
感謝です。これからもよろしくお願いします。
後、リンクを・・。
雪板 T http://www.gufatutu.f2s.com/snow/1003246180.html
空板 U http://www.mradio.f2s.com/sky/1005062974.html
- 449 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月30日(水)21時47分12秒
- 嵐の前の静けさ・・・中澤ってせつないな。
幸せな二人も今から・・・
めが放せない作品です。
- 450 名前:aki 投稿日:2002年02月12日(火)22時33分19秒
- 447:M.ANZAIさん
>レスありがとうございます。
幸せな時間ほど永遠を願う時はありませんね。
449:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
関わっている全ての人がこれからの事に対して不安を抱いてるみたいですね・・。
今が怖いぐらいに静かですし・・。
嬉しい言葉本当にありがとうございますm(__)m
久しぶりのレスになりましたが、実はずっと復旧までの経過を傍観させて
もらってました。
そして前回の更新から結構間が空いてしまったわけなんですが、これからの
更新も遅くなるかもしれません。二月から忙しくなる予定だったので…。
なるべく早くするように努力はしたいと思ってはいるんですが…。
こんなんでよければこれからもお付き合いくださいm(__)m
- 451 名前:rika-mode 投稿日:2002年02月13日(水)11時21分36秒
- おひさしぶりです。・・・ってもう覚えてもらってないかも。
12月から今まで、パソのないところで生活してたので、もう
このお話が読めなくて気になって気になって・・・・。
ようやく今日一気読みしました。
新たな展開にドキドキしつつ、梨華ちゃんと真希ちゃんが
幸せな時間を過ごしていることにホッとしました。
・・・でも、事件はこれから、なんですよね?
どんなことがあっても二人は二人でありますように・・・。
梨華ちゃんが「真希」って呼べるようになたらいいなぁ〜。
- 452 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年02月13日(水)11時22分05秒
- ずっとお付き合いさせていただきます。
復旧してから少しの間レスできなかったので遅れました。
やっとごっちんと梨華が結ばれてこれからという時にseekが休止
してしまったのでちょっとショックでした。
でも、復旧してまたakiさんの小説が読めると思うと元気が出てきました。
どれだけ更新が遅くなってもずっと楽しみに待っていますよ。
頑張ってください。応援しています。
- 453 名前:aki 投稿日:2002年02月14日(木)14時13分39秒
- 451:rika-modeさん
>レスありがとうございます。
覚えてますよ^^久しぶりのレス嬉しいです。
12月辺りからだと結構長くなってますが・・一気に読んで下さるとは
本当に感謝ですm(__)m
私も同じように二人に関しては願ってます。
呼び方は・・変わるでしょうかこのままでしょうか、少し考えてみますv
がんばりますっ。
452:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
有難いお言葉すごく感謝してます。
ちまちま更新するのはこの話には合わないと思うので、もうしばらく
待って下さい。
できるだけ更新した分が一つに固まっている方が良いと思うので・・。
がんばります。
- 454 名前:二人の朝 投稿日:2002年02月19日(火)19時48分01秒
―――――――
「ん・・・・・?」
視界の向こうに降り注いでくる白い光に瞳を開く。
しかし意識はまだはっきりしてこないため横になったまましばらく
ぼーっと目の前を当てもなく見つめる。
耳にはどこからともなく鳥のさえずる音が小さく聞こえてきた。
「朝・・・・?」
上半身を軽くベッドに上げて辺りを確認する。
ブラインド越しの神々しいほどのその光が目に眩しく、思わず開いた瞳を薄く閉じた。
「・・・・・・」
まだ自分の今置かれている状況が分からず無言で辺りから自分へと視点を変えた。
「!!」
真っ裸だった。
一糸纏わぬ自分の姿。
一瞬どういうことなのかわからなくなりパニックを起こしそうになるが
すぐに昨日の記憶が梨華の頭に蘇ってきた。
「そうだ・・・そうだよ、私・・・昨日は・・・・」
言いながら昨日の夜の鮮やかな記憶が頭を廻り梨華はぼっと顔を紅くする。
- 455 名前:二人の朝 投稿日:2002年02月19日(火)19時48分54秒
「・・・ん・・・・」
「!」
隣から小さな寝息が聞こえ急いでそちらに目を向ける。
するとそこには自分と同じ姿の真希の姿があった。
「ご、後藤さん・・・・」
一枚の毛布を掛けてうつ伏せがちの形で同じベッドに寝ている。
毛布から覗く白く綺麗な背中が窓から降り注ぐ光によって余計に美しく映える。
戸惑いながらもそれに胸が高鳴るのを感じた。
「梨華ちゃん・・・・」
寝言と共に自分の手がぎゅっと何かに握り締められるのを感じた。
寝ながら自分の名前を呼んでくれた嬉しさに浸りながら目を真希からゆっくり
自分の手に移す。
- 456 名前:二人の朝 投稿日:2002年02月19日(火)19時49分43秒
「あ・・・・・・」
するとそこには強く握り締め合うお互いの手があった。
あの時、繋がってから今の今まで離れず強く結ばれていたらしい。
安心感と、嬉しさを感じて再び真希に視線を戻す。
子供のような可愛くてあどけない寝顔と小さな寝息に微笑むと真希の顔に
掛かる髪をそっと拭ってあげた。
「大好き・・・・」
眠っている彼女にそっと小さく囁く。
瞳を閉じて、静かに昨日のことを振り返ってみる。
日頃あまり話さない目の前の彼女。
だけど昨日だけはたくさん言葉を交わすことが出来た。
一杯話しかけてくれた。
甘いセリフを、たくさん耳元で囁いてくれた。
私だけに・・・。
心まで、繋がれた気がする―――
それに・・・
- 457 名前:二人の朝 投稿日:2002年02月19日(火)19時51分04秒
「すごく、優しくしてくれた・・・・」
言いながら微かに頬を染める。
全てに気持ちを含んでいてくれたような気がした。
大好きだよって、伝えながらしてくれた・・・。
しばらくの間梨華は昨日の事を振り返りながらただぼーっと心を奪われるように
真希の寝顔を見つめていた。
「ん・・・?」
そんな中真希が続いて目を覚ました。
梨華同様まだ意識がはっきりして来ないのかぼーっとただそのままの体勢で
瞳を開いている。
隣の梨華は頭の中が忙しく駆け巡り真希が起きた事に気付いていない。
「私・・・・」
当の真希はまだ今の現状が分からないのか確かめるように声を出し辺りを見渡し始めた。
- 458 名前:二人の朝 投稿日:2002年02月19日(火)19時52分39秒
「!」
突然起き出した隣の真希にやっと気付き梨華がびくっと大きく上に飛び上がる。
ついこの間までで考えれば現在の状況ほどこんなに非現実的な事はない。
辺りを見渡す真希に隣でどぎまぎしながら見守る。
声を掛けようかとも思うが勇気が出ずただ言葉の発しないまま梨華は困ったように
口を開いていた。
「・・・・あ」
俯きがちだった体を仰向けに反転させながらやっと真希の瞳に梨華の姿が映った。
隣でベッドに上半身を起こしただ言葉なく困ったようにする梨華に真希が気付き
思わず一言声を漏らす。
「あ、あの・・・」
目が合ったはいいもののそれまでの緊張が最大限に引き出されてしまい梨華は
真希の瞳を正面から受け止めながら何を口にしたらいいのか分からずただ
困ったようにおろおろしてしまう。
そんな梨華の様子に真希はちいさくふっと笑うと言った。
- 459 名前:二人の朝 投稿日:2002年02月19日(火)19時58分48秒
「おはよう」
「あ・・・お、おはようございます・・・」
起きて始めての会話に梨華は緊張しながら頭を下げながら答える。
その胸の中は朝にも関わらずすごい量の血液を体中に巡らせていた。
「ごめん、すぐに気付かなくて。朝弱いんだよね・・・」
「い、いえ。そんな・・こと・・・」
そんな梨華の胸の内など知らず真希はベッドに寝転がり梨華に言葉を
掛けながら自分の額を手で押さえた。
未だ緊張が取れず梨華は掛けられた言葉にぎくしゃくしながら答える。
「・・・・・・」
背中を向け俯き、未だ前を向いたままの梨華の様子に戸惑いを秘めることをやっと
気付いた真希は、後ろからそれを何か思うような表情でぼーっとただ見つめた。
そしてしばらくした後、真希は静かにばれないように体を起こすとゆっくりと
距離を縮め言った。
- 460 名前:二人の朝 投稿日:2002年02月19日(火)20時01分41秒
- 「ねぇ」
「!は、はい・・・っ!!」
言葉を掛けられた、と思ったすぐ後に背中に感じたぬくもりに梨華はびっくりして
思わず飛び跳ねるように反応する。
「ご、後藤さん・・・」
「何でそんなにぎくしゃくしてるの?」
答えは分かっていたが真希は後ろから梨華を抱きしめたまま耳元で囁くようにして
尋ねる。
「あ・・・その・・・・」
背中に感じる彼女のぬくもりと言葉に、梨華の口からは意思とは裏腹に言葉が上手く
出てこない。
そんな梨華の様子に真希は楽しそうに幸せをかみ締めるように小さく微笑みを零すと、
梨華の頬に唇を軽く落とした。
- 461 名前:二人の朝 投稿日:2002年02月19日(火)20時07分50秒
- 「!」
「梨華ちゃん・・・」
「は、はい!」
呼びかけられ梨華は慌てて真希の方へ体を向けた。
真希は微笑みを絶やさないまま梨華の両手を取り、そして言った。
「大好きだよ!」
飾らないその純粋で、梨華が見てきた中で一番最高で素敵な笑顔と共に。
「あ・・・・・・」
一秒としないうちに頬を紅くぼっと染めた梨華の様子に真希が楽しそうに笑う。
そして近くのバスタオルを体に巻きつけるとベッドから立ち上がった。
「朝食にしよっか!」
顔だけ梨華のほうへ振り向かせながら言うと真希はドアに向かっていこうとする。
「あ、ま、待って下さい!」
真希の言葉に梨華は急いでベッド近くにあるサイドテーブルの上からネックレスを
手に取った。
- 462 名前:二人の朝 投稿日:2002年02月19日(火)20時09分19秒
- それは他でもない昨日真希から貰った大切なネックレス。
大切なそれを慌てながらも丁寧な手つきで首に回すと、同じようにタオルを取り
すぐに真希の近くへと向かった。
ドアの前で待つ真希はずっとそんな梨華の様子と、首に掛けられたネックレスを嬉しそうに
見つめていた。
「シャワー一緒に浴びる?」
「え!?」
「あはっ、冗談冗談。」
子供のような無邪気な笑顔でそう答えると真希は梨華が近づいてからドアを開いた。
そんな真希の綺麗な肩が全て露になっている後ろ姿を見つめながら梨華は胸の中で思う。
(ずるいよぉ・・・)
「・・・朝からこんな気持ちにさせて・・・」
「え?何か言ったぁ?」
「!な、何でもないですっ!」
密かに熱く火照る体を必死に隠しながら梨華は聞こえた声に慌てて答えた。
心で思っていたことがつい口から取って出てしまっていたらしい。
- 463 名前:二人の朝 投稿日:2002年02月19日(火)20時14分52秒
「?」
腑に落ちないようだけどそれ以上聞き返すことはなく真希は梨華の前を歩いていく。
「・・・・・・」
しばらく何かを考える様子で梨華は真希の後ろについて歩いていたが何かを心に
決めたかのように顔をばっと上に上げた。
「後藤さんっ!」
「ん?」
「私は・・・私は後藤さんに名前呼ばれるだけで感じちゃうんですよ!」
私の口から飛び出した言葉にあなたはいつもでは考えられないくらいに一気に
顔を紅くさせた。
今さっきまでずっと存在していたのにあなたの素朴な気遣いで、いつのまにか吹き
飛んでしまった私の中の緊張。
目の前のあなたは突然の言葉にただ戸惑っているみたいで返す言葉も思いつかないみたい。
そんなあなたの様子にいたずらな笑顔を浮かべ、きつくその背中に抱きついた。
- 464 名前:aki 投稿日:2002年02月19日(火)20時19分16秒
- かなり久しぶりの更新・・・約3週間ぶりの更新になりました。
お待たせしてすいませんでしたm(__)m
ちょっとスランプ?みたいな状況で遅くなりやっと更新できたわけ
なんですが…なんとageてしまうという状態…。
どうも上手く投稿することが出来ず何度もトライしていたらなんと
上げちゃいました(ーー;)
とにかくがんばりますね(汗)
これからもよろしくお願いしますm(__)m
- 465 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年02月19日(火)21時23分46秒
- お帰りなさい♪ そして更新ありがとうございます。
素敵な朝を迎えた二人の情景に心温まりながら読ませてもらってます。
こちらこそ、これからもよろしくです。
- 466 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年02月20日(水)00時29分59秒
- 待ってましたよ。(^−^)
二人のこの関係がものすごく良いです。
この平和で最高な時間がずっと続けばいいのにと思いました。
一時とは言えこの二人の幸せな夜と朝を読ませてもらいました。
元気一杯になりました。更新ありがとうございます。
そして、これからもよろしくおねがいします。
いしごま防衛条約機構はakiさんを応援し続けますよ。
頑張ってください。このakiさんからもらった元気で受験を
最後まで頑張ります。
- 467 名前:aki 投稿日:2002年02月26日(火)15時05分09秒
- 465:M.ANZAIさん
>ありがとうございます。
二人のシーンはもうしばし続きます。
前より格段ペースが遅くなってますがちょこちょこ書いてますので。
がんばります。
466:いしごま防衛軍さん
>ありがとうございます。
自分の書いたものが元気を与えられていることはとても嬉しいです。
がんばります。がんばりましょう。
- 468 名前:永遠を願う瞬間 投稿日:2002年02月26日(火)21時06分12秒
それから二人は梨華を最初に熱いシャワーをそれぞれ浴びるとさっそく朝食
にすることにした。
真希は気楽に細く足に合ったジーンズを上手く履き、上は白いYシャツを着て
テーブルで頬杖を付きながら所在無さげに着けられたテレビを眺めていた。
梨華は昨日の服をそのまま着ると、キッチンで朝食作りに励んでいた。
引出し奥底にある大分長い間使われずにずっと眠られていたエプロンを借りて、
食パンをトースターにセットしその傍らで朝の定番のメニューを作るのに
頑張っていた。
目玉焼きにベーコンのソテー、そして冷蔵庫にあった物から作ったサラダ。
「♪」
鼻歌交じりに本当に楽しそうに嬉しそうに梨華は料理に励む。
そんな背中は後ろから見ていても真希も暖かい気持ちになった。
「………」
しばらくその後ろ姿を見つめていたが不意に立ち上がると真希は付けていたテレビを
そのままにし、そっと静かに梨華に近づいていった。
- 469 名前:永遠を願う瞬間 投稿日:2002年02月26日(火)21時10分18秒
当の梨華はそんな自分にそろそろと近づいてくる真希のことなど全く気付かず
ただ楽しそうに笑顔でお皿に作った料理を見た目に気を使いながら乗せていた。
「♪」
笑顔は絶える事を知らない。
それだけ梨華は嬉しさと幸せに心を一杯に満たしていた。
キッチンの向こうのダイニングとリビングには大きなベランダの窓から白く本当に
気持ちの良い光が部屋の隅々まで遠慮することなく目一杯降り注いでいる。
電気を付けずにその朝の光だけで照らされる好きな人と長い夜を共にした
部屋で、大好きな人のために朝食を作るなんてついこの間まででは夢のまた夢の話で。
こんなに理想な形で実現するとは思いもしなかった。
窓の向こうには視界を塞ぐ物は何もないし下に見える物は続いて連なる建物の頂上だけ。
太陽が浮かぶ空は真っ青で白く立体的な雲が所々に綺麗に浮かんでいる。
眼下に広がる街は鮮やかな一面の雪景色、反射する太陽の光が眩しい。
そして、料理を作るその向こうにはダイニングに腰を掛け自分を待っている愛しい人。
だんだん笑顔は零れ落ちそうになるぐらいの笑みに変わっていく。
- 470 名前:永遠を願う瞬間 投稿日:2002年02月26日(火)21時11分17秒
「何かまるで……」
「まるで?」
突然真横から聞こえた声に梨華は思いっきり後ろに仰け反りながらそちらに振り向いた。
「っ!」
そこにはお腹を空かせておいしい朝食を待つ真希の姿があった。
お皿の上の朝食を今か今かと子供のように必死に眺めていた。
「後藤さんっ」
「まるでの後は?」
どきどきする梨華の隣で真希は首を傾げながら尋ねる。
その手はお腹に当てられていた。
そんな様子に梨華は小さく微笑むとしばらく考えてから何を思ってか頬に両手を当て
押させながら微かに紅潮するそれと共に言った。
- 471 名前:永遠を願う瞬間 投稿日:2002年02月26日(火)21時13分32秒
「?」
「まるで新婚さんみたいだなって…思ったんです」
うっとりするようにだけどどこか恥ずかしいのか体を捩らせながら梨華は
思ったままのことを言った。
「あはは、そうかもね」
それに真希もつられて微かにぼっと頬を紅くさせたがすぐにごまかすように子供のような
無邪気な笑顔を浮かべた。
「恥ずかしい…」
自分で言ったにも関わらず梨華は満足そうに頬を紅くさせながら未だ瞳を閉じ
もじもじしていた。
「………」
しばらくそんな梨華の様子に呆気に取られるように眺めていた真希だが無邪気に
喜ぶ仕草に熱い気持ちが胸に沸き起こってくるのを覚える。
そしてぎゅっと横からその細い腰を、華奢な体を抱きしめた。
- 472 名前:永遠を願う瞬間 投稿日:2002年02月26日(火)21時17分35秒
「!」
「可愛い…」
心に浮かんだ気持ちをそのまま口から零れたかのように囁くと、真希は突然の行動に
手が離れた梨華の頬に軽くチュッと触れるだけのキスをした。
「っ…ご、後藤さん…」
突然の行動に梨華は戸惑いながらも恥ずかしそうに離れたすぐ目の前にある真希の
顔を見た。
そんな様子に胸に溢れた愛しさが益々込み上げて来るのを感じて、真希はぎゅっと
前から梨華を強く抱きしめる。
そして静かにゆっくりと顔を近づけようとした。
- 473 名前:永遠を願う瞬間 投稿日:2002年02月26日(火)21時20分04秒
「あ、朝ですよ?」
「梨華ちゃんがいけないんでしょ。そんな可愛い仕草で誘惑するんだから」
触れる直前の会話を優しく囁くと、真希は梨華の唇に微かに自分が高い背を倒しながら
近づけた。
掛けられた言葉に胸の中を一瞬で熱くさせると、梨華も近づく唇に微かに背伸び
して瞳を閉じ、唇を微かに上に出し待った。
「…ん……」
優しく触れた唇は次第に味わうように重なり絡み、徐々に朝にも関わらず深く濃厚に
なっていく。
口付けを交わしながら真希は梨華の唇を開かせると舌を中に滑り込ませた。
梨華ももう抵抗することなく真希のシャツを握り締め、求めてくる舌に自分からも
求めるように絡めた。
きつく密着する体を抱きしめ合い、深いキスに頬を紅潮させていきながら
更にもっと求め絡めていく。
- 474 名前:永遠を願う瞬間 投稿日:2002年02月26日(火)21時22分19秒
「…っ……」
朝から熱いキスに胸の奥に沸き起こる気持ちを押させられずその上、唇が
離れた後も息を荒くし恍惚な表情をして視点がぼんやりと合わない梨華に真希は
そのまま躊躇うことなくネックレスの掛けられる耳元、首筋に唇を這わした。
「あぅ…ん……」
耳元で聞こえてくるその甘く自分をもっと更に深く誘惑させて来るような声に
真希は不意に数秒行為を止め、考えるようにした後うな垂れるようにして梨華の肩に
頭を預けた。
「はぁ……」
「…??」
中断した行為と深いため息混じりの真希に梨華は内心おろおろしながら
どうしたのかと困ったようにする。
- 475 名前:永遠を願う瞬間 投稿日:2002年02月26日(火)21時24分21秒
「後藤さん??」
「……好き」
困ったようにして言った真希の言葉に梨華は不意打ちを食らったように顔をかぁっと
一気に赤らめた。
会話がなくなり、そのままの体勢になってわずかの時間を梨華はおろおろと恥ずかしさと
嬉しさとどうしたらいいのかとで入り混じった気持ちの中その場に真希を受け止めながら
立ち尽くしていた。
そんな梨華の様子は見なくてもこうして肩に顔を埋めるだけで真希にも伝わってくる。
「止まんなくなっちゃうってば……」
「後藤さっ…」
そんな仕草も自分の体は火照らせられてしまう。
真希は今さっきのように困ったようにため息混じりに呟いた。
梨華は未だ顔の火照りが取れず困ったようにして真希の名前を呼ぶ。―――呼ぼうとした。
- 476 名前:永遠を願う瞬間 投稿日:2002年02月26日(火)21時27分23秒
ストンッ!
「「!!」」
突然の第三者の登場に二人は同時に驚いたように体を上に跳ねさせた。
甘いムードのこの場には明らかにお邪魔虫のやけに高い音を発した方向へ二人は
ゆっくりと顔を近づける。
「………」
そこには何も知らずただパンを焼くという役目を果たしたトースターが
二枚のこんがり焼けたパンを吐き出し、悪びれすることもなくただ素っ気ない何知らぬ顔で
存在していた。
当然二人の胸の内など知る由もない。
あっという間に消えてしまった雰囲気に二人はしばし言葉を失う。
「…食事にしよっか」
「はいぃ……」
残念そうに言う声と、恥ずかしがるその声。
二人はそれから熱いコーヒーと紅茶を入れるとダイニングへと向かって行った。
- 477 名前:永遠を願う瞬間 投稿日:2002年02月26日(火)21時28分42秒
『今日の午前中は真っ青な空が広がる気持ちの良い快晴となるでしょう。
気温はこれから徐々に上昇していって汗を掻くほどになるかもしれません―――』
梨華と真希は二人で向かい合うようにしてテーブルに腰を掛けながら梨華の作った
朝食をからっぽのお腹を満たすように口に運んでいた。
少し焦げ目のついてしまったパンにジャムやバターを塗りながら頬張る。
真希が食べる仕草をずっと梨華は一緒に食べながら嬉しそうに眺めていた。
『午後からは気温も下がり雲が空を覆い始めるかもしれません。風や雨の恐れも
あるので天気の移り変わりにはくれぐれもお気をつけ下さい。朝のニュースでした―――』
アナウンサーは丁寧に頭を下げると画面の向こうはCMへと変わり始める。
- 478 名前:永遠を願う瞬間 投稿日:2002年02月26日(火)21時31分20秒
「今日午後から天気が崩れるみたいだね」
「あ、そうですね」
ぼーっとしていた梨華は掛けられた言葉にはっとしてすぐに答える。
真希はそんな梨華の様子に気付かずコーヒーの入ったカップの取っ手を手にしていた。
「そういえば…矢口さんたちあの後どうしたんでしょうね?」
「たぶん…カラオケ行った後夜通しでお店回ってたりして……」
考えた後呟くようにして言った真希の言葉にしばらく沈黙が流れる。
まさか…と思うがしていないとも絶対とは言い切れない。
むしろあの面子ならありえないと言う方が難しかった。
- 479 名前:永遠を願う瞬間 投稿日:2002年02月26日(火)21時32分21秒
「バーには……」
「たぶん来ると思う。看病するのが大変だろうな…」
やれやれと肩を竦めて小さくため息をこぼす真希の姿は困ったようにしていたが
どこか小さな子供を見守るような温かな表情だった。
梨華はそんな真希の様子に小さく微笑むと言った。
「今日も楽しくなりそうですねっ!」
梨華の言葉に真希はしばらく呆気を取られたようにしていたが溢れんばかりの笑顔に
つられるようにして笑みを零した。
「うん」
それだけ答えると真希も優しく微笑んだ。
- 480 名前:永遠を願う瞬間 投稿日:2002年02月26日(火)21時34分47秒
朝食を食べた後しばらく休憩を取り、それから服を外用に着替えなおすと
コートを羽織り、二人は過ごした真希の部屋を後にした。
部屋を出るときに梨華がどこか寂しそうにしているのに気付き真希が声を掛ける。
「いつでも来ていいから。それにいつか……」
「?」
止まった言葉に梨華が首を傾げる。
しかし真希は止まった言葉の続きを不思議そうにして待つ梨華をしばし見つめた後
小さく微笑んで梨華の手を取り、前を歩き出した。
「後藤さん?」
「今はまだ秘密」
楽しそうに微笑むと、真希は取った手の指を一つ一つ絡ませ離れないように一つに
握り締めると前を向いたまま言った。
- 481 名前:永遠を願う瞬間 投稿日:2002年02月26日(火)21時37分36秒
(でもいつかきっと…必ず……ね…?)
「?」
後ろで首を傾げる梨華に真希は満足そうに微笑むと梨華を隣に来るように優しく
前に引いた。
「行こうっ」
優しく微笑む真希の表情に梨華も胸を温かくさせると、何も言わずとも手を握り締めた
まま真希の腕に自分のを通し抱きついた。
「はい!」
幸せに包まれたこの瞬間、二人は同じ物を共有しながら互いを感じていた。
この気持ちを感じる時は、どんな時だってあなたが必要なの。
他の誰かじゃダメで、あなたじゃないといけない。
永遠に続くかのような瞬間。
『いつか』
二人にとって決して遠くない未来。
しかしそれが二人に訪れる事が果たしてあるのかどうか分からないなんて、
この時の二人はまだ知ることが出来なかった。
- 482 名前:aki 投稿日:2002年02月26日(火)21時46分40秒
- 更新しました。
全く書いてなかったので今日がんばって書いたんですが、またこっちが0に…(汗)
何でも良いのでロムの方も遠慮なく感想いただけると感謝ですm(__)m
それと、今回の更新でこのスレにはお別れすることになります。
見計らっていた辺りでちょうどここまで書けて良かった良かった…。
次回の更新分が書き溜められて更新するって時になったら新しいスレは
立てようと思ってます。
ちなみに新しいスレの候補先は雪板と決まってます。
そこが始まりですんで…ちっぽけなこだわりですが終わりもそこに、します。
この先もゆっくりとがんばろうと思ってますので最後までお付き合いくださると
嬉しいです。
これからも皆様よろしくお願いしますm(__)m
彼女達の立ち方
T http://mseek.obi.ne.jp/kako/snow/1003246180.html
U http://mseek.obi.ne.jp/kako/sky/1005062974.html
- 483 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年02月26日(火)23時02分37秒
- 真希と梨華、2人の幸せの情景が穏やかに伝わってきます。
2人が、そしてあの場所にいる仲間が、
それぞれに思い出に残るクリスマスを過ごせたようですね。
こんなふたりのやり取りがいつしか日常へとなっていって欲しい・・・
まさしく「永遠を願う瞬間」ですね。
この後に何が起こるのか分かりませんが、
2人がしっかりと手を繋いでその手をけっして離さないでいってもらいたいものです。
>akiさん
この小説、とても好きです。
まだまだこれからもずっと読ませてください。お願いします。
新スレ、立ちましたらまたお邪魔します。
- 484 名前:vivi 投稿日:2002年02月27日(水)06時37分45秒
- つい1週間前から読み始めました。
すごくよいです。でもこの板の影響か、彼女との電話で
彼女を「リカ」と呼んでしまい・・・・こんな時間に(涙)。
でも面白いので可!更新大変だと思いますががんばってください。
- 485 名前:rika-mode 投稿日:2002年02月27日(水)09時42分37秒
- おつかれさまですー。
ほんと、穏やかなムードですよね。
真希自身がずいぶんと、優しくあったかになった感じ。
梨華ちゃんのおかげだね(^_^)
この幸せは、長く続かないのかなぁ?・・・永遠であってほしい〜。
早くーなどと要求はしませんので、続きがんばってくださいね!
- 486 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年02月27日(水)12時02分34秒
- この二人の関係を見ていたら本当に幸せな感じになります。
そのいつかが必ずくることを願っています。でもその前には大きな障害が
ありそうですね。何が二人を待っているのか。楽しみに更新を待っています。
これからもよろしくお願いします。最後まで付き合わせていただきます。
マイペースで頑張ってください。いしごま防衛条約機構は応援してますよ。
- 487 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月27日(水)22時43分33秒
- 更新お疲れ様です。
いや〜、幸せそうですね、このふたりは。
このあと起こるであろう事が気になってしかたないです。
次は新スレですか。
マターリ待たせていただきます。
- 488 名前:aki 投稿日:2002年03月03日(日)20時14分01秒
- たくさんのレス本当にありがとうございます(T_T)
484:viviさん
>レスありがとうございます。
新しくこれを知ってくれた読者さんがいることが感激です。
私もこれ書いててやたらに頭の中で二人の名前がリピートされたり
する時があります(w
彼女さんと何事もないことをお祈りしています^^;
がんばりますっ!
485:rika-modeさん
>ありがとうございますー(涙)
私も近頃感じてます。何だか書き始めた頃とは大分変わったなぁと。
ここの後藤は特に純粋なせいか出会った人とか経験した事に対して
真剣に受け取ってますね。
それが良い方向にも悪い方向にも…。でも今の後藤は前みたいに何かに
とらわれたりする事はないでしょうね。 二人が出会えた偶然に私も感謝(w
ありがとうございますm(__)m がんばりますっ。
- 489 名前:aki 投稿日:2002年03月03日(日)20時30分34秒
- 483:M.ANZAIさん
>!すいません!上に書くのを忘れてしまった…。
改めた(+_+)レスありがとうございます^^;
そういえばこれはまだクリスマスでしたね(爆)ちょこっと忘れてました(汗
目の前の壁は、厚くて高いですが乗り越えられたならその後に
手にするものは果てしなく幸せな物だと思います。
サブタイトルだけで56……注目してくださって嬉しいです。
この話が始めてサブタイトルを実行した所ですが、56…こんなになるとは(w
新スレもよろしくお願いします。
486:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
二人のいつかが描かれる日を私も願う日々です。
読んでくださる方も同じ気持ちになっていてくれる事はかなり嬉しいです。
いよいよ次は4すれ目…最後まで気を抜かずがんばりたいと思います。
長かったなぁ…。(まだ終わってないですけど^^;)
487:名無し読者さん
>ありがとうございます(T_T)
余計に、幸せに感じるのかもしれませんね。この二人の場合は…。
これからの事に関しては私もどきどきしてますv
次はいよいよ新スレになりますね。
もうしばらくお待ちください。なるだけ早く新しいスレで皆さんに
会えることを望んでいるのですがなにぶんほとんど書いてなくて…(++)
大切な所なんで慎重に一番納得できる形で載せるようがんばります。
レスたくさん本当にありがとうございます。励みになりますっ。
これからもがんばります。
- 490 名前:aki 投稿日:2002年03月11日(月)21時37分47秒
- とうとう雪板に新スレを立てました。
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi?dir=snow&thp=1015849440
これからもよろしくお願いしますm(__)m
もしかしたらそのスレだけで終わらないかも…。なんて考えが過ぎってますが(汗)
Converted by dat2html.pl 1.0