インデックス / 過去ログ倉庫 / 掲示板

ごっちん、危機一髪!

1 名前:エブロス 投稿日:2001年12月14日(金)04時02分17秒
初めて小説を書きます。稚拙な文章ですが、お付き合い頂ければ幸いです。
一応、後藤真希が主人公です。
2 名前:エブロス 投稿日:2001年12月14日(金)04時03分03秒
ここは赤坂TBSスタジオ。
うたばんの収録を終えた後藤真希は楽屋へと向かっていた。
今日の仕事はこれでおしまい、後は食事して、寝るだけ。
そう思うと気が楽になる。心なしか足取りも軽い。
横にいる吉澤ひとみも同じ気持ちだろう。二人して他愛もない話を
しながら歩いていた。

「圭ちゃんはほんとにおもしろいね〜。」
「うん、でも私達まで、圭ちゃんいじりをしてよかったのかな。」
「いいんじゃないの。圭ちゃんにとっても、おいしかったと思うよ。」
3 名前:エブロス 投稿日:2001年12月14日(金)04時03分40秒
一足先に楽屋へ戻っているはずの保田圭をネタにしながら、
楽しそうに歩く。
やがて、薄暗く長い廊下に差し掛かった。ここはいつも人がいない。
TBS社屋の中でもとくに不気味に感じる一角だ。
後藤はここを通るのはイヤだった。
しかし、他のルートでは遠回りになる。
吉澤と「ここって不気味だよね。」などと言いながら、
早足で通り抜けようとした。
そのとき、後藤は不意に、背後から呼び止められた。

「後藤、ちょっといいかしら。」
4 名前:エブロス 投稿日:2001年12月14日(金)04時04分13秒
後藤は、びっくりして振り返った。
そこには、後藤のマネージャーの間根が立っていた。

間根は24歳、女性、独身。後藤の現場担当となってから
半年が経っている。

「何だ、間根さんか〜。びっくりさせないで下さいよ〜。」
「ちょっと話したいことがあるの。そんなに時間はとらせないから。」
「話ですか? わかりました。じゃあ、よっすぃ〜、先、行ってて。
長くなりそうだったら先に帰っていいよ。」
「うん、わかった。」
一緒にいた吉澤はそう言い残して、行ってしまった。
5 名前:エブロス 投稿日:2001年12月14日(金)04時04分50秒
長い廊下の片隅で、後藤と間根は二人きりになった。
「それで、話って、なんですか?」
「…………」
しかし、間根は答えようとしない。

(どうしたんだろう? 話があるんじゃなかったの?)
不思議に思った後藤は、間根の顔を見つめる。
すると、間根の表情が普段とは違うことに気付いた。
それは廊下が薄暗いせいではなかった。
間根は明らかに困惑の表情をしていた。何か只事ではない、
そんな雰囲気を醸し出している。
6 名前:エブロス 投稿日:2001年12月14日(金)04時05分23秒
(いったい何なの?)
後藤の背中に緊張が走る。こんな間根は今まで見たことがない。
彼女はいったい何を言おうとしているのか? そんなにスゴイことなのか?
言いようのない戦慄が後藤を包み込む……。

黙り込んでしまった後藤と、思い詰めた表情の間根。
薄暗い廊下に二人きり、立ち尽くしたまま、沈黙が続く。

やがて、意を決したかのように、間根がようやく口を開いた。

「会ってもらいたい人がいるの。」
7 名前:エブロス 投稿日:2001年12月14日(金)04時05分59秒

―3日前―

「後藤真希のマネージャーだね。」
セットの隅でFUNの収録を見守っていた間根は、不意に声をかけられた。

「はい、そうですが……」
そう言いかけて、声のした方を見た間根は一瞬、自分の目を疑った。
そこにいたのは紛れもなく、大物俳優のHだった。
芸能界の一線で仕事をしている間根でさえ、めったに出会うことのない
クラスの俳優、いわゆる、"大御所"だ。
8 名前:エブロス 投稿日:2001年12月14日(金)04時06分39秒
(Hさんがいったい何の用?)
いぶかしる間根。その隣に並んだHは、じっと収録を見ている。
その視線の先には、後藤真希がいた
Hはセットを指差して言った。
「彼女、後藤真希、あの娘はいい。大物になる素質を持っている。
ところで……」
Hは視線を後藤から間根に移すと、こう言った。

「真希君と話をさせてもらえないかな。」
9 名前:エブロス 投稿日:2001年12月14日(金)04時07分12秒
後藤と話がしたいとはどういうことなのだろう。仕事の話だろうか。
だがそれなら、Hサイドもマネージャーを通じて話を持ってくるのが
普通だ。それをなぜ、H本人が直接交渉してくるのか。

(まさか……)
いやな予感がした。
(後藤には16歳とは思えないほどの色気がある。8歳も年の離れた私でさえ
かなわないほど。まあ、私は体育会系だし、仕事一筋だし、色気なんて
たいして重要視してないんだけど……。負け惜しみじゃないって。
いや、そんなことより、この場をなんとか穏便に切り抜けないと。)
そう考えた間根は、Hに答えた。
「わかりました。それではこの収録が終わったら後藤を連れてきます。
ただ、この後スケジュールがありますので、なるべく手短に……」
だがHは、間根が話し終わらないうちに、話を遮るように、言った。

「いや、そうじゃない、私は真希君と二人きりで話がしたいのだ。」
10 名前:エブロス 投稿日:2001年12月14日(金)04時07分51秒
二人きり……その言葉が何を意味するのか、考えるまでもない。
予感は的中した。
とまどう間根。そんな間根の内心を見透かしたかのように、
Hはさらに続ける。
「セッティングは君に任せる。よろしく頼むよ。」
「あの……、私は一介の現場担当なので、後藤のスケジュールを
調整する権限はないんです。」
「真希君にもプライヴェートの時間があるだろう。その時間を
使えばいいじゃないか。」
「ウチではプライベートの時間についてもきっちり管理しているんです。
プライベートの時間を使う場合は、プロデューサーのつんくに了承を
得ないことには……。」
11 名前:エブロス 投稿日:2001年12月14日(金)04時08分49秒
二人きり……その言葉が何を意味するのか、考えるまでもない。
予感は的中した。
とまどう間根。そんな間根の内心を見透かしたかのように、
Hはさらに続ける。
「セッティングは君に任せる。よろしく頼むよ。」
「あの……、私は一介の現場担当なので、後藤のスケジュールを
調整する権限はないんです。」
「真希君にもプライヴェートの時間があるだろう。その時間を
使えばいいじゃないか。」
「ウチではプライベートの時間についてもきっちり管理しているんです。
プライベートの時間を使う場合は、プロデューサーのつんくに了承を
得ないことには……。」
12 名前:エブロス 投稿日:2001年12月14日(金)04時09分40秒
もちろんそれはウソだ。プライベートまで管理するわけがないし、
つんくの名を出せば、この話は内密のものではなくなる。
そうすれば、Hも引き下がるのではないか。
一瞬の刹那に間根が考え出した精一杯の言い逃れだった。

しかしHは、そんな間根の期待をあっさり打ち砕いた。
「そうか。それならつんく君の了承を取ってくれ。
もちろんこの話は、君とつんく君との二人だけの秘密だ。
他の誰にも言ってはならない。いいね。」
そう言うと、Hは連絡先が書かれたメモを間根に渡す。
「三日以内に返事をくれ。いい返事を期待している。」

不敵な笑みを浮かべながら、Hは去っていった。
13 名前:エブロス 投稿日:2001年12月14日(金)04時10分22秒
「ああ、とんでもないことになってしまった。
いったい、どうすればいいの……」
間根は頭を抱え込んでしまった。
「私だけじゃ、どうにもできない……。
とにかく、つんくさんに相談しなければ。」

FUNの収録は、なおも続いている。が、それどころではない。
間根は、つんくのいるレコーディングスタジオへと向かった。
14 名前:エブロス 投稿日:2001年12月14日(金)04時12分02秒
すいません。10と11が、かぶってしまいました。

とりあえず、こんな感じです。
今後ともよろしくお願いします。
15 名前:エブロス 投稿日:2001年12月15日(土)02時07分38秒
レコーディングスタジオに着いた間根は、早速つんくを探した。
幸い、今日はレコーディングはないみたいで、誰もいない。
そんな無人のスタジオで、つんくは一人、ギターをかき鳴らしていた。

「あの、つんくさん!」

ギターに没頭していたつんくが間根の存在に気がつく。
「間根やないか。なんでこんなとこにおるんや。仕事はどないしたんや。」
「あの……、後藤のことで相談が……」
「今、曲のイメージがふくらんでるとこなんや。後にしてもらえへんか。」
「それどころじゃないんです!」
語気を強めた間根に、つんくはぎょっとした。どうやら只事ではないらしい。

「わかった。後藤がどないしたんや。」
16 名前:エブロス 投稿日:2001年12月15日(土)02時08分17秒
間根はこれまでのいきさつを話した。つんくは黙って聞いていたが、
その表情は徐々にこわばってゆく。
間根は話終えると、深々と頭を下げた。
「申し訳ありません!」

「いや、間根が悪いわけやあらへん。むしろ返事を保留したのは、
ええ判断やった。」
「後藤は人形やない。後藤のことを思ったら、当然断るべきや……」

そのとき、つんくの頭を一人の女性がよぎった。娘。のよきライバル
だった鈴木あみ。人気の絶頂を極めながら、体制に逆らったがために、
闇に葬り去られた……。
17 名前:エブロス 投稿日:2001年12月15日(土)02時08分50秒
つんくはため息をついた。

「相手は大御所や。下手したら、後藤の芸能生命が絶たれてまう。
それだけやない、娘。全体にもどんな影響を及ぼすか計り知れん。
オレの持ってる力なんてHの影響力と比べたら微々たるもんや。
オレではどうにもできん。いっそのこと、山崎社長に相談すべきか。
いや、そないなことをしたら話が大げさになる。それもまずい……。
いったいどないすればええんや……」
18 名前:エブロス 投稿日:2001年12月15日(土)02時09分25秒
間根が思い詰めたように、口を開いた。
「……あの、私が断ってきます。私が独断で断ったことにすれば、
私のクビだけですむんじゃないでしょうか。」

「アホ言うな! 娘。はもちろん、マネージャーもオレにとって
大事な存在や! マネージャー一人、守れんかったら、オレは
プロデューサー失格や!」

「……すいませんでした。もう私どうしたらいいのか……」
間根は、その場に座り込んでしまった。

「すまん。きつく言い過ぎた。オマエが後藤のことを思いやってるのは、
ようわかる。とにかく考えるんや。なにかええ方法があるはすや。」


とるべき道は二つに一つ。受け入れるか、断るか。
19 名前:エブロス 投稿日:2001年12月15日(土)02時10分04秒
それは、答えのないクイズのようなものだった。どちらを選んでも
イバラの道が待っている地獄のようなクイズ……。

つんくと間根は、なんの打開策も見出せないまま、タイムリミットの
三日間は瞬く間に過ぎ去った。

ついに決断を迫られるときがきた。つんくは、レコーディングスタジオの
片隅で、力なく腰を下ろしている。その顔は苦渋に満ちていた。
そんなつんくを見て、間根は何も言えなかった。
きっとこの三日間、つんくは苦しみ抜いたはずだから。
それは間根も同じだった。


つんくが重々しく口を開いた。
「…………オレがホテルを手配する……。…………間根は後藤に伝えてくれ……」
20 名前:エブロス 投稿日:2001年12月15日(土)02時11分02秒
更新しました。
21 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月15日(土)19時11分34秒
いいっす!!
22 名前:エブロス 投稿日:2001年12月16日(日)04時40分06秒
>>21
ありがとうございます。
レスがついて、正直ホッとしてます。
この話、カップリングとかが出てこないので、
ウケは悪いだろうと思ってましたから。


ここから場面は再び、>>13 に戻ります。
23 名前:宣告 1 投稿日:2001年12月16日(日)04時40分55秒

「会ってもらいたい人がいるの。」


その言葉を聞いて、後藤はホッとしたように言った。
「もう、間根さん、何言い出すかと思ったら、人に会え、だなんて、
そんなこと、深刻になっていうことじゃないじゃないですか。
あたし、何事かと思ってヒヤヒヤしちゃいましたよ。」

だが、間根の反応がない。なんだか考え込んでしまっている感じだ。

(間根さん、ほんとにどうしちゃったんだろ? 普段はもっとノリの
いい人なのに。なにかヤバイことでもあるのかな。)
24 名前:宣告 2 投稿日:2001年12月16日(日)04時41分33秒
実はこの瞬間に至ってもなお、間根は回避策を探していた。
目の前には不安げな後藤がいる。何としてでも後藤を守りたい。
なにかいいアイデアがないものか……。
しかし、なにも思い浮かばない。

気まずい沈黙が続いた。
その雰囲気にいたたまれなくなった後藤が口を開いた。

「で、誰なんですか。あたしが会わなきゃならない人って。」
25 名前:宣告 3 投稿日:2001年12月16日(日)04時42分04秒
間根はついに腹を決めた。
「俳優のHさん。知ってるかしら。」
「名前は聞いたことがあるかも。どんな人だっけ。うーん、思い出せないや。」
「とても有名な大御所俳優よ。それくらい知っておきなさい。」
「はーい。それで、どこで会うんですか?」
「明日の夜8時。Zホテル。」
「Zホテル? 食事でもするんですか? 知らない人と食事だなんて、
あまり気乗りがしないんですけど。」
「ううん、そうじゃないの。直接部屋に行ってほしいの、一人で。」
「えっ! 部屋に? 一人で? それってまさか……」
26 名前:動揺 1 投稿日:2001年12月16日(日)04時42分48秒
「ウソ! ウソでしょ! ウソだって言って!」

しかし、間根は何も言わない。その瞳は潤んでいた。
「ごめん、後藤。私ではどうにもならない……」
その後は涙で言葉にならなかった。

後藤は激しく動揺した。いま、自分が置かれた境遇もさることながら、
間根の涙を見るのが初めてだったからだ。間根は後藤の前では泣いた事が
なかった。チーフマネージャーにこっぴどく叱られたときでさえ、決して
泣かなかった。そんな間根が今、泣いている。
27 名前:動揺 2 投稿日:2001年12月16日(日)04時43分33秒
間根の涙が、これは避けられない運命なのだいうことを物語っていた。
もはや間根に返す言葉はなかった。

これまでもそういう話は聞いたことがあった。ただあくまで噂話であって、
本当に行われているのかどうかは疑わしかったし、自分とは無関係なことだと
思っていた。
だが、それがまさか自分の身に降りかかってこようとは。

「これが芸能界の掟なの?……ひどいよ……」
28 名前:動揺 3 投稿日:2001年12月16日(日)04時44分26秒
重い足取りで楽屋へ向かう。目の前は真っ暗、もうなにも考えられない。
楽屋の扉を開けると、吉澤が待っていた。

「ごっちん、遅いよ〜。圭ちゃん先に帰っちゃったよ。」
「うん……」
「どうしたの? なにかあったの?」
「ううん、なんでもない……」

なんでもないはずがないのは見ていて明らかだった。
「ごっちん、ほんとにどうしたの? あたしに出来ることなら相談にのるよ。」
「うん……ありがとう……でもほんとになんでもないの……」
29 名前:動揺 4 投稿日:2001年12月16日(日)04時45分01秒
目をそらす後藤。
吉澤はこれ以上は、もう何も聞かないほうがいいのだと悟った。
(それなら、あたしにできることは、ごっちんを元気付けること。)
「じゃあさ、これからゴハン食べに行こうよ。焼肉にする? それとも鍋にする?
とにかくパアーッとやろうよ!」

「ううん……いいよ……食欲ないの……。あたし、帰る……。
よっすぃ〜、ごめんね……」

「……うん、わかった。でも、もしなにかあったら、いつでも力になるからね。」

「ありがとう……よっすぃ〜……」
30 名前:エブロス 投稿日:2001年12月16日(日)04時45分39秒
ここまで更新です。
20からは、名前欄にはサブタイトルを入れてます。
31 名前:運命の日 1 投稿日:2001年12月17日(月)03時26分03秒

その晩は一睡もできなかった。


運命の日。
後藤はとても仕事をこなせるモチベーションではなかったが、
それでもなんとか無難に仕事をこなした。
普段から無気力なように見えるので(本人はいたって真剣なのだが……、
そのせいでよく誤解されることがある)
今日も、いつもと同じように周りの目に映ったようだった。
32 名前:運命の日 2 投稿日:2001年12月17日(月)03時26分37秒
この日の仕事をすべて終えて、後藤は迎えを待っていた。
今日は間根は同行していなかった。

間根の顔を見ると、これから起こるであろう"運命"をいやでも
思い出してしまう。そんなことは少しでも忘れていたかった後藤にとって、
間根がいないことは好都合だった。

しかし、一方では心細くもあった。いや、一日中、心細さで一杯だった。
これから起こる"運命"、 それを知っている者は間根の他にはいない。
自分以外の全員はいつもと同じ日常なのに、自分だけはこれから地獄が待っている……。
33 名前:運命の日 3 投稿日:2001年12月17日(月)03時27分08秒
迎えの車がやってきた。運転するのは間根だった。

間根は何も言わず、ただ、メモを渡した。
メモには「Zホテル 3511号室」とだけ書かれていた。
車中で二人は一言も交わさなかった。今はどんな言葉もなぐさめには
ならないことがわかっていたから。

(このままどこにも着かなければいいのに。)
後藤の思いもむなしく、車はZホテルに到着した。
34 名前:運命の日 4 投稿日:2001年12月17日(月)03時27分45秒
Zホテルは入口が12ヶ所もあるために、密会にはもってこいのホテルだ。
つんくがこのホテルを選んだのも、万が一でもマスコミに知られないように、
との精一杯の配慮からだった。

二人はロビーに入った。そのとき、一人の男が近づいてきた。
変装しているが間違いなく、つんくだった。

「……すまん。恨むならオレを恨んでくれ。」
「……つんくさん……」
後藤が力なく答える。
「恨んでなんていません。つんくさんは悪くないですよ、
もちろん間根さんも。誰も悪いわけじゃない……」
35 名前:運命の日 5 投稿日:2001年12月17日(月)03時28分46秒
つんくと間根は、エレベーターの入口で後藤を見送る。
後藤は黙ったままエレベーターに入ってゆく。そして、
振り返ったその顔は、少し微笑んでいた。

「何があったって、あたしは二人のことが、ずっと好き。」

エレベーターの扉が閉まった。
階数ランプの点滅が35階へと登っていった。
36 名前:エブロス 投稿日:2001年12月17日(月)03時31分03秒
後、1,2回で終わりにします。
37 名前:ポー 投稿日:2001年12月20日(木)02時47分26秒
誰かぁ..ごっちんをたすけて!。。。
38 名前:エブロス 投稿日:2001年12月25日(火)16時32分11秒
1週間もほったらかしてごめんなさい。
このお話は、すでに書き上げていたのですが、
私のPCが壊れてしまって、データがすべて消えてしまいました。
もちろん、ネットもできない状況です。
今もインターネットカフェから書き込んでます。
なんとか思い出しながら完結させようと思ってます。
39 名前:部屋 1 投稿日:2001年12月25日(火)17時08分32秒
3511号室の前に立ち、軽く深呼吸する。

(覚悟はできてる・・・。)

ドアをノックしようとする手がとまる。

(やっぱり怖い・・・。誰か、助けてよ・・・。)

でも、もう引き返せない。震える手でノックした。

少し間を置いて、Hが顔を出した。

「よく来たね。さあ、お入り。」
40 名前:部屋 2 投稿日:2001年12月25日(火)17時28分43秒
立派なホテルの外観とは裏腹に、部屋はシンプルな内装で、
なにより、思いのほか、狭かった。

「まあ、そこに座りなさい。」
「はい・・・。」

ソファに腰掛ける後藤。
なんとか平静を装おうとするが、体の震えは止まらない。

「何が飲みたいかね。いいワインがあるのだが。」
「・・・未成年なんです。」
「おっと、そうだった。真希君があまりにも色っぽいから、
まだ16歳だってことを忘れていたよ。」

Hは冷蔵庫を覗き込み、オレンジジュースを取り出すと
グラスにそそぎ、後藤に渡す。

「・・・ありがとうございます。」
グラスを受け取る手は小刻みに震えていた。
41 名前:部屋 3 投稿日:2001年12月25日(火)17時42分44秒
Hは、後藤の対面のソファに座った。
その右手にはワイングラスが揺れている。

「そんなに緊張する事はない。もっとリラックスしなさい。」
「……はい。すいません。」

「ハハハ、謝る事はない。どうかね、芸能界は楽しいかね。」
「はい……。楽しいです。」

「そうか、楽しいか。なんと言っても、天下の“ゴマキ”だからな。
なにも怖いものなど、ないだろう。」
「……そんなことないです。いつもメンバーに助けられてます。」

「そうか。いい仲間を持っているようだな。友は財産だ。大切に
するがいい。」
「はい……。ありがとうございます。」
42 名前:エブロス 投稿日:2001年12月25日(火)17時48分46秒
ちょっとキリが悪いですが、今日はもう時間がないので
今回はここまでです。
43 名前:エブロス 投稿日:2001年12月28日(金)13時41分19秒
今日中に完結させる予定です。
44 名前:部屋 4 投稿日:2001年12月28日(金)13時42分55秒
「私も若い頃は随分と友人達に助けられたものだ。そうそうあの時は……」

Hは、とつとつと話し続ける。さすがは大御所だけあって、その体から
にじみ出る迫力は大したものだ。
だがしかし、怪しい雰囲気になる気配は感じられない。

(どうしたんだろ。なにもしないのかな?)
後藤が不思議に思い始めたとき、Hが言った。

「ところで、ユウキ君は元気かね。」
45 名前:部屋 5 投稿日:2001年12月28日(金)13時49分42秒
「えっ? ユウキですか? はい、元気です。」

まさかユウキの話題が出るとは思わなかった後藤は、少々面食らった
表情でHを見た。

そんな後藤を気にも留めず、Hはさらに続ける。

「今、EEジャンプは大変な試練を迎えている。だが、私は
きっと乗り越えられると信じている。そして来春にはユウキ君が
復帰する。それまでソニーちゃんには頑張ってもらいたいものだ。」

(ソニーちゃん、じゃなくて、ソニンちゃん、なんだけど。)

でも突っ込めるはずがなかった。
46 名前:部屋 6 投稿日:2001年12月28日(金)13時57分59秒
「でも……、やっぱりユウキ君がいないと寂しいな。
ユウキ君のカワイイお顔が見たぁーーい。ユウキく〜ん今頃
なにしてるのかなぁ。」(注:Hの発言です)

目を丸くする後藤。
(なに? どうしたの、この人? なんで突然、女言葉になったの?
それに、さっきから気になってたんだけど、ワイングラスを持つ手の
小指が立ってるのは、なぜ?)

(もしかして、もしかして、この人って、モーホー!)
47 名前:ホ○ 1 投稿日:2001年12月28日(金)14時06分01秒
後藤ににじり寄るH。

「もうわかっているだろうが、君をここへ呼んだのは
ユウキ君との橋渡しをしてもらうためだ。
明日のこの時間、この部屋でユウキ君を待っている。
必ずユウキ君に伝えなさい。もちろん誰にも言ってはいけないよ。」

「でも……」

「断ったらどうなるかはもちろん分かっているだろう。」

「……」
48 名前:ホ○ 2 投稿日:2001年12月28日(金)14時11分36秒
(どうしよう……。いつもケンカばかりしている弟だけど、
でもユウキは……ユウキは……、私の大切な弟。
こんなホ○の餌食になんてさせたくない!
いったいどうしたらいいの……。)

そのとき後藤にあるアイデアがひらめいた。

(うまくいくかどうか分からないけど、やってみるほかない!)
49 名前:ホ○ 3 投稿日:2001年12月28日(金)14時24分24秒
「Hさんにはお教えしますけど、ユウキが謹慎中なのには、
誰も知らない本当の原因があるんです。」

「なに! ユウキ君にいったい何があったんだ!」

「実は、ユウキはもう、別のモーホーにホラレてしまったんです。
ユウキはそれがショックで休養に……」

「なにいいいいいぃぃぃぃーーーー!!!!!!
それは本当かああああぁぁぁーーーーー!!!!!」

「申しわけないですけど、本当の事なんです。
Hさんにはとても残念なお知らせでした。」
50 名前:ホ○ 4 投稿日:2001年12月28日(金)14時30分03秒
「うわああああぁぁーーーーん!かなしぃすぎぃるぅぅーーー。
ユウキ君が、ユウキ君が、もう、けがれてしまっているなんて!
ユウキ君のヴァージンをいただけるって、楽しみにしてたのにぃーー!
こんなショックなことってないわっ。」(注:Hの発言です)


悲しがるH。そのとき、ふとテレビの方を見たHは、
テレビに釘付けになった。
テレビ画面では若い男性3人組が踊っていた。
テレビを見つめるHの顔が、みるみる紅潮してゆく。
Hは興奮した面持ちでテレビを指差し、後藤に尋ねた。

「ちょっと、ちょっと、あの子達はいったい誰?」
51 名前:ホ○ 5 投稿日:2001年12月28日(金)14時44分27秒
「ん? ああ、w-indsですね。」

「ういんず? あの子たちは、ういんずって言うのね。
うーん、みんなカワイイ! カワイイわっ! ああん、
興奮しちゃうぅ!」(注:くどいようですがHの発言です)

「……そうですか。まあ、可愛いといえば……」
後藤は、あきれてしまって言葉が続かない。

Hはもはや夢の中。
「ああん、ジャニーズはかかさずチェキィしてたのにぃ。
こんな子たちがいるなんて知らなかったわぁ。うーん不覚ぅ。
不覚だわっ!」(注:しつこいですがHの発言です)


Hはテレビに夢中になっている。

「あの、私はどうすればいいんでしょう?」

「んん?まだいたの。もう、帰っていいわよ。
あっ、そうそう、ユウキ君によろしくね。」(注:Hの発…、もういいか)
52 名前:凱旋 1 投稿日:2001年12月28日(金)14時51分57秒
部屋を出た後藤。
安堵感でいっぱいだったが、肩透かしをくらったような気もした。
今だからいえるが、色気には自信があった。
それが、まさか、w-indsに負けるなんて。

1階に降りてくると、ロビーにつんくと間根がいるのが見えた。

(待っていてくれたんだ! いつになるか、わからなかったのに。)

嬉しくなって、駆け出す後藤。
53 名前:凱旋 2 投稿日:2001年12月28日(金)15時05分37秒
ロビーで黙り込んだまま座っていたつんくと間根。
そんな2人のもとへ、後藤が駆け寄ってくる。

「つんくさん、間根さん、ただいま!」

きつねにつままれたような顔で、間根が口走る。
「えっ? もう終わったの。早い、早すぎる。いくらなんでも早漏……」

「おいおい、一応女性なんやから、早漏なんて言うたらあかんがな。」
思わず突っ込むつんく。後藤の笑顔を見たつんくは、
後藤の身に、何事もなかったことを確信していた。
54 名前:凱旋 3 投稿日:2001年12月28日(金)15時07分33秒
「後藤……、すまん。オレが謝ってすむことやないんやが。」

「いいんですよ。気にしないで下さい。つんくさんと間根さんの気持ちは
よくわかってます。」

「ほんとに、ごめんね……」涙ぐむ間根。

「もう、間根さんに涙は似合いませんよ。」

「グスッ、私だって女なのよ。泣くことくらいあるわよ……。」
55 名前:凱旋 4 投稿日:2001年12月28日(金)15時12分00秒
「それにしても、よう無事ですんだな。いったい何があったんや?」

「あのですね、じつは……」
後藤は部屋での出来事を説明する。

「そうか。Hはモーホーやったんか。そういえば、
そんな噂を以前に聞いたことがあったような……」

「そんな大事な事はもっと早く言って下さいよ!」

「ハハハ、いや、すまんすまん。ええがなええがな。」

「もう、つんくさんったら……」
56 名前:凱旋 5 投稿日:2001年12月28日(金)15時21分16秒
「でも、w-indsはなんだか気の毒ですね。」

「せやな。w-indsにHの魔の手が伸びるのは間違いないやろな。
でもこれが芸能界の掟や。かわいそうやけど彼らは、Hにケツを
貸さなあかんやろな。」

「なんか痛そう……」

「せやねん。めっちゃ痛いねんで。ケツが裂けたかと思うたくらいや。
でも二回目からは痛みがだんだん快感に…………………………ハッ!」

「……つんくさん…………」

「…………変態!」

後藤と間根は、行ってしまった。


「……違うんや…………誤解や…………オレの話を聞いてくれ………………」


おわり
57 名前:エブロス 投稿日:2001年12月28日(金)15時36分26秒
と、いうわけで終わりです。
読んでくださった方、レスしていただいた方、ありがとうございました。

改めて読み返してみると、前フリを引っ張りすぎたかなと思います。
おまけに、私のPCがぶっ壊れたため、後半は、インターネットカフェから
リアルタイムで書き込んだので、まともに校正もできませんでした。
そのうえ、次回作用に準備していた原稿も消えてしまいました。

ただ、せっかくスレをたてたので、このまま終わらせるのは
もったいないので、今後もなにか書いていく予定です。
58 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月28日(金)21時47分54秒
後藤ファンなのでこの小説好きでした。
次回作にも期待
59 名前:遊鬼 投稿日:2001年12月29日(土)05時18分14秒
なんか、ツライ終わり方になるのかと思ったらほのぼの系の終わり方で安心しました(w
ちょっと意外な展開で面白かったです。
次回作も期待して待ってます^^
60 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月29日(土)18時44分43秒
まさに大どんでん返し(w
次も期待してます。
61 名前:エブロス 投稿日:2001年12月31日(月)01時20分07秒
58さん、59さん、60さん、レスありがとうございます。
レスをいただけると励みになります。
それから、私のPCが復活しましたので、近いうちに新作をupします。
62 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月31日(月)02時09分42秒
楽しみにしています。
63 名前:エブロス 投稿日:2002年01月01日(火)03時48分56秒
>62さん、ありがとうございます。

短編「矢口の大暴走」をupします。
いたってお気楽なコメディです。
64 名前:矢口の大暴走 1 投稿日:2002年01月01日(火)03時49分44秒

TV東京にて、ハローモーニング収録前のひととき。

矢口はトイレに行きたくなった。
そこで、まず安倍を誘った。しかし、
「なっちは今おしっこしたくないべ。矢口ひとりで行ってくるべさ。」
と、あっさり断られ、不本意ながら石川を誘おうとしたところ、
「しないよ。」
と、ひとこと。
そのため、ひとりでトイレへと向かった。

65 名前:矢口の大暴走 2 投稿日:2002年01月01日(火)03時51分02秒

トイレで、矢口はスッキリした。

そして、トイレから出てきたところで、吉澤と出くわした。
「あっ、よっすぃ〜!」
「矢口さーん、相変わらずちっちゃくてかわいー。抱きしめちゃいたい!」
「もぅ、よっすぃ〜たらー。からかわないでよー。」
「あははは、ごめんなさーい。あっ、そうだ。矢口さん。これから
いいことしてあげます。」
「えっ、いいこと? “いいこと”っていったら、あんなことやこんなこと……
いやーん、よっすぃ〜のえっちぃー。」
「違いますよー。矢口さん、なに勘違いしてるんですかー。
ほら、これですよ。じゃーん!」

66 名前:矢口の大暴走 3 投稿日:2002年01月01日(火)03時52分09秒

そういって吉澤が取り出したモノは、30センチほどの“ひも”の先に
5円玉がくくり付けられている。

「なにそれ?」
「もう、わかんないんですかー。催眠術ですよ、さ・い・み・ん・じゅ・つ。
マリックさんに教えてもらったんですよ。」
「へえ。マリックさんに催眠術を……、って、ちょっと待って。
マリックさんは催眠術なんてやらないよ。」
「そんなことないですよー。ちゃんとグラサンしてましたよ。」
「グラサンしてる人なんてマリックさん以外にも、たくさんいるじゃない。
よっすぃ〜、いったい誰に催眠術を教わったのよ。」
「まあ、かたいことはいいじゃないですか。それより始めますよ、矢口さん。
さあ、この5円玉を見て下さい。」
「あのねえ、いまどきこんな古典的な催眠術にかかる子はいないって。
オイラをばかにしてんじゃない?」
「いいから! さあ、あなたは『オバケのQ太郎』になーる。『オバケのQ太郎』
になーる……」

67 名前:矢口の大暴走 4 投稿日:2002年01月01日(火)03時53分16秒

ブラーン……ブラーン……
矢口の目の前で5円玉が揺れる。

「もうー、オイラがQちゃんになるわけないじゃんか…………オイラが…………
……Qちゃんに…………………………キ……………………キュ…………………
………キュー………………………………キューちゃん……………………………
……………Qちゃん…オイラはQちゃん……
…オイラはQちゃん!」

「あの……矢口さん?」
「オイラQちゃん。ヤグチってなに? それよりおなかへったよ。
正ちゃんはどこ? 正ちゃーん! どこにいるのー!」

バタバタバタ……………
走り去る矢口を吉澤は呆然と見送る。
「ほんとにかかっちゃった。催眠術なんて冗談だったのに。矢口さんって、
単純……じゃなくって、純粋なんだなー。」

68 名前:矢口の大暴走 5 投稿日:2002年01月01日(火)03時55分04秒

ところ変わって、ここは楽屋。まだ出番まで時間があるのでメンバーは
思い思いに過ごしていた。
部屋の隅では新メン4人が固まって、小声で話しをしている。
その隣では辻加護がじゃれあっており、部屋の真ん中では飯田が交信中……
他のメンバーは部屋にはいないようだ。

バターン!
勢いよくドアを開けて、矢口が駆け込んできた。
しかし、あまりに勢いがありすぎて飯田と衝突してしまった。ひっくり返る飯田。
「痛たたたた。ちょっとー、やぐちぃ! なんでぶつかってくるのよ!
腰打っちゃったじゃない、痛たたた……」
「オイラ、Qちゃん。正ちゃん、おなかへったよ。ゴハンまだ?」
「正ちゃん? カオリは正ちゃんじゃないよ。矢口いったい何言ってるの?」

69 名前:矢口の大暴走 6 投稿日:2002年01月01日(火)03時55分49秒

加護が横から口をはさむ。
「Qちゃんとか、正ちゃんとか、っていうたら『オバケのQ太郎』のことと
ちゃいますのん。」

それを聞いて納得する飯田。
「ああ、そうだ、『オバケのQ太郎』だ。ってことはカオリは正ちゃんの役
なのか。まー、いっか。ゴハンなら、ここにお弁当が一個だけ残ってるよ。」

「わーい! いただきまーす。パクパクパク ごちそうさまー。おかわり〜!」
喜ぶ矢口。あっという間に弁当1個をたいらげてしまった。

「ちょっと、矢口、食べるの早すぎるよ。もうお弁当 残ってないよ……
まさか本物のQちゃんみたいに、ゴハンをお茶碗20杯分食べるつもりなの?
おなかこわすよ。」

70 名前:矢口の大暴走 7 投稿日:2002年01月01日(火)03時56分39秒

そこへ中澤が入ってきた。
「オーッス! みんなおはよう! やぐちーっ、逢いたかったでーっ!」

しかし、矢口は中澤を見た瞬間、その表情が凍りついた。と、同時に叫んだ。
「キャーーーッッ! 犬ーーーっ! こわーーーいっ!」

「犬? なんでウチが犬なん?」不思議そうな中澤。
「そうだよ矢口。なんで裕ちゃんが犬なの?」飯田も同調する。

しかし矢口は叫び続ける。
「いぬーーーっ、こわーーーいいいっ! たすけてーーっ!」

「なんでウチが犬やの、アンタ何言うてんの。…………、ああーーっっっ!
思い出したっ! ヤグチッ! アンタ以前、オールナイトニッポンスーパーで
ウチの鼻は『犬鼻』や、って言うたんやってなあーーーっ!」

71 名前:矢口の大暴走 8 投稿日:2002年01月01日(火)03時57分39秒

みるみる憤怒の表情になる中澤。しかし矢口は止まらない。
「いぬーっ、いぬーっ、こわいよーー!」
「いぬいぬって言いなやっ! ええ加減、おこるでっ!」

すると矢口はななめ後ろにいる辻にしがみついた。
「Oちゃんたすけてーーっ!」

きょとんとする辻。
「? おーちゃんって、なんのことれすか?」

飯田が辻に教える。
「辻はO次郎の役ってことだよ。」
「はなしがみえないのれす。わけわかんないのれす。」

「Oちゃんたすけて、犬が、犬がーーっ! ……………………」

72 名前:矢口の大暴走 9 投稿日:2002年01月01日(火)03時58分37秒

中澤が辻につめよる。
「辻、アンタもグルなんか? ……もしグルやったら許せへんで。」

「なかざわさんがおこってるのれす。なんれおこってるのか、わかんないのれす。
だいまじんみたいでこわいのれす。いいらさん〜、たすけてくらさい〜。」

飯田はニヤリと不敵な笑みを浮かべて、辻にアドバイスを出す。
「じゃあ、とりあえず『バケラッタ』って言ってみな。」
「?…………ばけらった……」
「やっぱりグルやったんかーーっ! ほんまに許せへんでーーっ!」
「ひいいいい。かんにんしてくらはい……」
「あはは、面白いね、ふたりとも。」

その様子をじっと見ていた加護がつぶやく。
「あの……、矢口さん気絶してるんですけど……。ほっといてええんですか……」

73 名前:矢口の大暴走 10 投稿日:2002年01月01日(火)03時59分44秒

そこへ保田がやって来た。
「どうしたの、加護?」
「あ……保田さん。矢口さんが気絶してるんです。」
「大変じゃないの! やぐちーっ、大丈夫!」
「…………う、う、う、う、う〜ん……」
「あ、気がついた。」

矢口は、保田と加護に抱き起こされた。
「……あ……P子ちゃんにU子さん。あっそうだ! 犬は? 犬はどうしたの?」
保田は、犬、と聞いてあたりを見回すが、犬なんているはずがない。
「犬なんていないよ。」
その言葉を聞いて、嬉しそうな矢口。
「追っ払ってくれたんだ! ありがとうU子さん。」
「U子さん? なんで私がU子さんなの? なんの冗談?」
状況を理解できない保田に、加護が言った。
「(ウチはP子ちゃんかい。)ほら、保田さん、あっちでやってるでしょ……」

74 名前:矢口の大暴走 11 投稿日:2002年01月01日(火)04時00分33秒

加護が指差した先には、中澤、辻、飯田が……

「腕ひしぎ逆十字やーーっ!かんねんせぇーーーっ!」
「ぐえええ。ぎぶ、ぎぶ、ぎぶなのれす。」
「あははは、つじー、反撃しろー。ののらりあっとを喰らわせろー。」

保田が3人に言い放つ。
「ちょっと! 何してるの! 矢口が気絶するなんて、いったい矢口に
何したの!」

「そんなん知るかっ! ウチが知りたいわっ! カオリ、アンタ何か
知ってるんやろ!」

「なんか、よくわかんないけど、『オバケのQ太郎ごっこ』らしいよ。
カオリたちは仕方なく付き合ってあげてたの。」

75 名前:矢口の大暴走 12 投稿日:2002年01月01日(火)04時01分29秒

そこへ安倍と後藤がやって来た。

安倍はあたりをきょろきょろと見回している。何かを探しているらしい。
「なっちのお弁当がないべ。ここに置いといたのに、どこにいったんだべさ。」

その言葉を聞いた飯田はハッとする。
「あ……、あのお弁当、なっちのだったんだ。ごめーん、矢口にあげちゃった。」
「カオリひどいべさ。お弁当はなっちのささやかな愉しみなんだべさ。」
「違うの、なっち。矢口がお弁当食べちゃったのは『オバケのQ太郎ごっこ』の
せいなの。ある意味、カオリも被害者なの。」

「なっちの楽しみを奪うなんて、矢口、ひどいべさ! ちょっと、矢口! 聞いてるの!」

76 名前:矢口の大暴走 13 投稿日:2002年01月01日(火)04時02分36秒

矢口は楽しそうに歌っている。安倍の声など耳に入っていないようだった。
「♪あっのっねっきゅーたろーはねー、 きゃはははははははは」

そんな矢口に、後藤が心配そうに話しかける。
「やぐっつぁん、いったい、どうしちゃったの?」
「♪あたまーにーけがさんぼんしかなっいんだよー きゃははははははは」
「やぐっつぁんがおかしくなっちゃった!やぐっつぁーん! しっかりしてえ!」

バチン! 後藤が矢口をひっぱたく。
しかし矢口は止まらない。
「♪きゅっきゅきゅっきゅきゅきゅきゅーたろーはねー きゃははははははは」
「やぐっつぁーん!しっかりしてえ! 正気に戻ってえ!」

バチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチン

77 名前:矢口の大暴走 14 投稿日:2002年01月01日(火)04時03分34秒

バチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンバチン…………

「あれ……? オイラいったい……?」

「やぐっつぁん…… 正気に戻ったんだ! よかったーーっ!」ダキッ
「ちょっと、ごっつぁん、そんなに抱きしめられたら苦しいよ……。
そうだ思い出した。オイラ、よっすぃ〜の催眠術でQちゃんになってたんだ。」
「やぐっつぁんがおかしくなったのは、よっすぃ〜のせいだったんだ……」
「ところで、ごっつぁん、往復ビンタやりすぎじゃない? オイラのほっぺ、
腫れ上がってんだけど。まだヒリヒリする……」

「え…… あはは、気のせいだよ。」

78 名前:矢口の大暴走 15 投稿日:2002年01月01日(火)04時04分32秒

矢口は吉澤に催眠術をかけられたことをみんなに話した。
と、そこへタイミングよく(悪く?)吉澤が入ってきた。
「あれー? みんなどうしたの? なんか殺気立ってるよ。」

後藤が吉澤に問いかける。
「ねぇ、よっすぃ〜。やぐっつぁんに催眠術かけたんだって?」
「うん、そうだよ。冗談のつもりだったんだけどね。」
「ほんとだったんだ……。よっすぃ〜を信じてたのに……」
うなだれる後藤。

そんな後藤を見て、吉澤は何か只事ではないことに気がついた。
「そりゃ催眠術をかけたけど……、なんかまずいことでもあったの?
ねぇ矢口さん……わっ! どうしたんですか、その顔? 腫れ上がってますけど……」

79 名前:矢口の大暴走 16 投稿日:2002年01月01日(火)04時05分27秒

矢口が吉澤ににじり寄る。
「よっすぃ〜、ひどいよ。オイラをおもちゃにするなんて。」
後藤がにじり寄る。
「いくらよっすぃ〜でも、今回ばかりは許せない。」
安倍がにじり寄る。
「なっちのお弁当、どうしてくれるんだべさ。」
飯田がにじり寄る。
「腰がまだ痛いんだけど。」
中澤がにじり寄る。
「よしざわ! ウチは犬か、犬なんか!」
辻がにじり寄る。
「ののらりあっとを おみまいしてやるのれす。」
加護がにじり寄る。
「ウチもQ太郎ごっこに参加したかったのに、P子ちゃんじゃ、
キャラが薄すぎて、どう絡んだらええんか、わからんかったわ!」

80 名前:矢口の大暴走 17 投稿日:2002年01月01日(火)04時06分27秒

後ずさりする吉澤。
「みんな、ちょっと待ってよ。圭ちゃーん、たすけてよー。」

保田は首を横に振る。
「吉澤が悪い。まあ、加護の言い分はどうかと思うけどね。」

「そんなー。催眠術なんてほんの冗談だったのにー。みんな許して。」
(ほんとにやばそう、どうしよ。あたしの魂が“逃げろ”と叫んでいる。
やっぱりここは逃げたほうがいい……)

ダダダダッ 吉澤が逃げ出した。

「あっ! 逃げたっ! 絶対逃がさない!」
全員が吉澤を追って出て行った。

81 名前:矢口の大暴走 18 投稿日:2002年01月01日(火)04時07分32秒

楽屋に静寂が戻った。

残された新メン4人は呆然としていた。
「いったい、なんだったんだろ……」
「いつもばかばかしい遊びをしてるけど、今日のは、いつにもまして……」
「でも面白そうだったな。私も参加したかったけど、話しかけられなかった。」
「やっぱり4人で固まってちゃ、いけないんだよね。もっと、先輩たちと
打ち解けないと……」
「うん、そうだね。もっとがんばんなきゃね……」

そう言いながら部屋の隅を見た小川は何かに気がついた。
「あっ!」
絶句する小川。震える手で、部屋の隅を指差した。

「なに? どうしたの?」
小川の指差すほうを見た3人。

「あっ!………………石川さん………………いたんですか………………」


「……シクシクシク……………………いたよ……ずっとここに…………
……みんな………………わたしを置いてかないで…………………………」

82 名前:矢口の大暴走 19 投稿日:2002年01月01日(火)04時08分20秒

おわり
83 名前:エブロス 投稿日:2002年01月01日(火)04時10分05秒
と、いうことで、63−82まで、
短編「矢口の大暴走」をupしました。
84 名前:エブロス 投稿日:2002年01月01日(火)04時12分21秒
次はカップリング小説を予定してます。
85 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月02日(水)18時15分18秒
期待!!ゴッツァン絡みですか?
86 名前:遊鬼 投稿日:2002年01月04日(金)00時32分57秒

りかっちの放置ぶりに乾杯(w
おもしろかったです♪

次回作にも期待してますYO!

87 名前:ポー 投稿日:2002年01月04日(金)17時59分40秒
うけるー!おもしろかった〜ハッハッハッ...次のも期待ですね〜、ごっつぁんがでるとうれすぃけれども。。
88 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月04日(金)22時19分35秒
l
89 名前:エブロス 投稿日:2002年01月05日(土)21時58分50秒
レスありがとうございます。

>>85
もちろん、ごっちんも登場する予定です。
>>86
石川さんのキャラはおもしろいですね。いじりがい があります。
と、いいつつ、放置プレイだったわけですが(w
>>87
ごっちん危機・・・は、前半がシリアスすぎたので、矢口の・・・は最初から
エンジン全開でいきました(w

ところで次回作ですが、なかなか筆が進まなくて、もうちょっと
かかりそうな感じです。2、3日中には、なんとかしたいのですが。
ご期待に添えられるよう、がんばります。
90 名前:エブロス 投稿日:2002年01月10日(木)03時54分06秒
>84で、カップリング、なんて予告をしたんですが……、
書いてるうちに、なんかカップリングとはちょっと違うな、
と思い始めたりしてます。
91 名前:エブロス 投稿日:2002年01月10日(木)03時55分01秒
「二人の距離」


よっすぃ〜を巡るお話。高橋がメインです。

92 名前:二人の距離 1 投稿日:2002年01月10日(木)03時56分25秒
二人の距離



小さい頃から “タカラヅカ” に憧れてた。
何度も何度も、見に行った。
大きくなったら、宝塚歌劇団に入るんだ!
そう胸に決めて、クラシックバレエも習い始めたし、
“清く 正しく 美しく” をモットーにがんばった。
とにかく “タカラヅカ” ! 私の大いなる夢だった。
だけど……、中学2年になる頃、その夢が揺らぎ始めた。
……身長が伸びない。
93 名前:二人の距離 2 投稿日:2002年01月10日(木)03時57分15秒

宝塚音楽学校の入学規定に “身長制限” があるわけじゃない。
でも、背が低いのは、明らかにマイナス。っていうか致命傷。
牛乳もたくさん飲んだ。にぼしもいっぱい食べた。……でもだめ。
歌もダンスも自信があった。 “タカラヅカ” を目指してがんばってきた。
でも……。
やりきれなかった。
実力が足りないのなら、まだ諦めもつくけど。
背が伸びないのは私のせいじゃない。
私の夢は、このまま終わってしまうんじゃないかと思うと、
だんだん自信がなくなっていった。

94 名前:二人の距離 3 投稿日:2002年01月10日(木)03時58分08秒

“LOVEオーディション21” に応募したのは、
不安な気持ちを紛らわしたかったから。
モーニング娘。は好きだったけど、
大好き、っていうほどでもなかった。
だけど、思いがけず、新メンバーに選ばれた。

うれしかった。
自分の実力を認めてもらえた、ということもあったし、
芸能界みたいな華やかな世界で、人気絶頂のモーニング娘。の
メンバーとして、活躍できるってことがうれしかった。
でも、それは同時に、 “タカラヅカの夢” との、お別れを意味してた。

バイバイ“タカラヅカ”

95 名前:二人の距離 4 投稿日:2002年01月10日(木)03時59分06秒

モーニング娘。に入ったものの、
レッスンは想像以上に厳しかった
何度も泣いたし、レッスンの先生を恨んだりもした。
だけど、逃げたくなかった。
くやしいけど、先輩達との力の差は明らかだったし、
他の3人もがんばってたから。
高橋はダメなやつ、と思われたくなかった。
自分で言うのもなんだけど、私、がんばったと思う。

96 名前:二人の距離 5 投稿日:2002年01月10日(木)03時59分56秒

それに、訛りのことも。
つんくさんや周りの人は “訛りがいい” って言うんだけど、
どうしてだろう?
だって田舎者丸出しじゃない。
メンバーのみんなが標準語をしゃべってるのに、
あぁ、安倍さんは別だけど
私だけ福井弁だなんて、やっぱり恥ずかしい。
だから最初、テレビやラジオではうまく喋れなかった。
緊張してたってこともあるけど、訛りが出ちゃうんじゃないかと思うと、
恥ずかしくなって、なにも喋れなかった。
だからみんな、最初の頃、私のこと、おとなしい子って思ってたかもしれない。
今はそんなことないけど。

97 名前:二人の距離 6 投稿日:2002年01月10日(木)04時00分49秒

13人になって初めての曲が
Mr.moonlight に決まったとき、私ちょっとうれしかった。
だって、“タカラヅカ” に似てたから。
うん、“プチ・タカラヅカ” って感じ。
だから私、ステージで思いっきり楽しんで踊った。
“タカラヅカ” の夢はかなわなかったけど、今はそれよりもっと
すばらしい夢を見ることができてるんだなって、ステージの上で実感してた。

そして……、ステージの中央で華麗に舞う吉澤さん……。
とっても素敵だった。
“タカラヅカ” 男役のトップスターなんて、目じゃないくらい、
吉澤さんはキラキラ輝いていた……。



98 名前:二人の距離 7 投稿日:2002年01月10日(木)04時04分49秒

〜.


高橋にとって、元タカラヅカ雪組トップ、高嶺ふぶき、は、
とても手の届かない存在だった。ただ憧れることしかできない人。
そう、“好き”、というよりは、“憧れ”、と言ったほうがいいのかもしれない。
しかし、吉澤は違う。とても身近な存在。手を伸ばせば、そこに吉澤がいる。
高橋の恋の炎が “燃えない” わけがない。

「こんなにそばにいるんだから、告白しないなんて手はないよね。
でも、吉澤さんは、かっけーから、もう付き合ってる人、きっといるはず。
わたしの見たところ、その可能性があるのは、矢口さん、石川さん、ってとこかな。
うーん、強力なライバルだなぁ。勝てるかなぁ。ううん、ぜったい、負けない!」
99 名前:二人の距離 8 投稿日:2002年01月10日(木)04時05分44秒

「それから、後藤さんとも仲がいいけど、親友って感じだから、わたし的にはOK。
それに、ひょっとしたら、付き合ってる人、いないかもしれない。
だったらラッキー! まずは、そのへんを確認しなきゃ。」


吉澤ひとみに恋する、モーニング娘。の新メンバー、高橋愛 15歳。
恋する少女は最強の戦士。恋の戦場へと突き進む。

100 名前:二人の距離 9 投稿日:2002年01月10日(木)04時06分38秒

吉澤は楽屋入りが早い。3時間前に入っているときもあるほどだ。
だから、吉澤と二人きりになろうと思えば、誰よりも早く、楽屋入り
すればいいだけのことだった。

「吉澤さん、おはようございます。」
「おはよう。高橋、早いね〜。」
「あの……、吉澤さん。」
「なに?」
「あの……、吉澤さん……」
「なに? 聞きたいことでもあるの?」
「あの……、吉澤さん……、つき……、付き合ってる人……って、いるんですか?」
「えっ? あたし? いないよ。それがどうかしたの?」
「あ……、いえ……、なんでもないです。」


会話終了。

101 名前:二人の距離 10 投稿日:2002年01月10日(木)04時07分31秒

ひとまず楽屋を出た高橋は、頭を抱え込む。あわよくば告白を……などと
考えていたのだが、現実は厳しかった。

「あー、だめだ。吉澤さんの前じゃ、緊張して、うまくしゃべれなかった。
でも、吉澤さんが今、フリーだってことがわかっただけでも収穫はあったよね。」

「それに、よく考えたら、今のわたしは、告白どころか、普通に話しかけることさえ、
まともに出来てない。やっぱり段階を踏まなきゃ だめなんだろうな。
それじゃ、まずお話をするところから始めて……。
ううん! そんなのんびりしたこと言ってられない。
だって、うかうかしてたら、吉澤さんをとられちゃう!」

「でも、強力なライバルのあいだに割って入っていくんだから、
普通に告白したんじゃ、インパクトがないよね。
電話やメールなんて、もってのほかだし、なにかいい告白の方法はないかな。」

102 名前:二人の距離 11 投稿日:2002年01月10日(木)04時08分21秒

高橋は、どう告白すればいいか思い悩んでいた。
そんなある日、思いがけず、告白のチャンスがきた。


その日はFUNの収録だった。
高橋は、収録に先立って、アンケートをスタッフから渡されていた。
このアンケートは本番のフリートークで使う ということだったのだが、
正直なところ、何を書けばいいのか わからなかった。
そこで、マネージャーに相談したところ、高橋がフリートークで
アピールすべきことを書けばいい、とのことだった。

103 名前:二人の距離 12 投稿日:2002年01月10日(木)04時09分07秒

「アピールしたいこと…………って、何だろ。えーっと、
わたしがアピールしたいのは、タカラヅカが好きだってこと、かな。
それから、高嶺ふぶきさんのファンだったってこと。
そうそう、Mr.moonlightがタカラヅカに似ているから好きだってことも
忘れちゃいけないよね。それに、Mr.moonlightといえば、吉澤さんが かっけー、
ってことも……。」

と、ここまで考えた高橋は、ふと、ひらめいた。
「……これって、“使える” かも。」

104 名前:二人の距離 13 投稿日:2002年01月10日(木)04時10分35秒

それは、つまり、こういうこと。
(1)タカラヅカが好き → (2)Mr.moonlightがタカラヅカに似ている
→ (3)Mr.moonlightのセンターは吉澤さん → (4)吉澤さんが好き

「テレビで告白って、インパクトあるよね。よしっ決めた!
名付けて、“テレビ告白大作戦”! っていうほどでもないんだけどね。」

高橋はアンケートを書き始めた。
『えーっと、タカラヅカが好きで……………………吉澤さんが好きです。』

「うーん、でも、やっぱりテレビなんだから、“好き” って直接書いたら、
いくらなんでもストレートすぎるかな。吉澤さんが引いちゃうかもしれない。」

『吉澤さんにドキドキしてます。』

「これでよしっ。わたしって、大胆!」

105 名前:二人の距離 14 投稿日:2002年01月10日(木)04時12分22秒


FANの収録が終わった。

高橋が書いたアンケートは“私の秘密”という形で、収録に採用され、
“テレビ告白大作戦” は、一応は成功に終わった。
“一応は”、という訳は、告白はしたものの、返事はもらえない、という
結果になったからだ。

高橋的には、「あたすぃも好きよ〜。」みたいな返事を期待していたのだが、
吉澤は、何も喋らなかった。
しかも、高橋は前列に座っていたので、後列にいる吉澤がどんな表情を
していたのかさえ わからなかった。

106 名前:二人の距離 15 投稿日:2002年01月10日(木)04時13分02秒

翌日、高橋は、FUNの収録テープをもらい、早速チェックをしたのだが、
待望の吉澤の反応といえば、なんだか、うまく流されてしまった感じで、
少々へこんでしまった。

「うーん、ちょっとショック。上手いこと いかないなぁ。
でも、わたしの気持ちを伝えられただけでも、よし、としなきゃ。」

そして、高橋は吉澤にばかり注目して テープを見ていたため、気が付かなかった。
ドキドキ発言のとき、高橋の真後ろに座っていた矢口が神妙な表情をしていた、
ということを……。

107 名前:二人の距離 16 投稿日:2002年01月10日(木)04時13分40秒

あれから、何日か経った。
高橋は、吉澤と二人きりになるチャンスもなく、
吉澤の思いを聞けないでいた。
吉澤はいつもと変わらない。他のメンバーも、とくに
なにも変わらなかった。
いや、変わっていないように高橋の目に映っていた。

しかし……、
……それは、ハロモニの収録前のことだった。

108 名前:エブロス 投稿日:2002年01月10日(木)04時18分11秒
今回はここまでです。
補足ですが、92〜97は高橋のモノローグです。
109 名前:エブロス 投稿日:2002年01月10日(木)04時43分39秒
もうちょっとだけ。

102〜105の展開は、11/9放送のFUNで、宝塚ファンの高橋さんが
「元宝塚トップの高嶺ふぶきの大ファン」
「ミスムンで男装している吉澤さんにドキドキしている。」と打ち明けた
エピソードを元にしています。
なので、FUNを見てなかった方には、?な内容だと思いますが、つまり、
そういうことですので、苦しい…ですが、補足ということで。
110 名前:エブロス 投稿日:2002年01月11日(金)01時15分59秒
>109も、なんだかよくわからん文章ですね。
つまり、何が言いたかったかというと、次の、>111 のようになる、ということです。
お手間ですが、「二人の距離 13」と「同 14」の間に挟んで下さい。
111 名前:二人の距離 13-2 投稿日:2002年01月11日(金)01時17分14秒
FUNの収録は滞りなく進んだ。
トークコーナーの収録では、新メン初登場ということで、当然のことながら
高橋にもスポットが当たった。
紀香「高橋さんは、元タカラヅカの高嶺ふぶきさんの熱烈ファンということで、
   男装している吉澤さんにドキドキしている、とのことだそうです。」
高橋(きゃー、言っちゃったー。)
吉澤「…………」
高橋(あれ? 吉澤さん…、なんで何も喋らないんだろ?)

112 名前:エブロス 投稿日:2002年01月12日(土)01時32分33秒
少しだけですが、更新します。
>107「二人の距離 16」からの続きです。
113 名前:二人の距離 17 投稿日:2002年01月12日(土)01時33分37秒

高橋は、ひとりでトイレに向かっていた。
その途中、うしろから声をかけられた。

「高橋、トイレでしょ。オイラも一緒に行くよ。」
矢口だった。

矢口と高橋、二人並んで歩く。
だが、矢口は黙ったまま、何も喋らない。

(気まずい……。矢口さんと二人っきりになるなんて、これが始めてだし、
なにを喋ったらいいんだろう。)

114 名前:二人の距離 18 投稿日:2002年01月12日(土)01時34分27秒

気まずい沈黙が続く。が、ふと、矢口が口を開いた。
「高橋……、覚えてる?」
「えっ? 何をですか?」
「高橋が初めてオイラの『オールナイト ニッポン スーパー』に、
出たときのこと。」
「はい。覚えてます。わたし、すごく緊張してました……」
「そうじゃないの! オイラがなに言ったか、覚えてる?」
「えっと……」
「オイラ、言ったはずだよ。『よっすぃ〜はオイラのものだから
取っちゃだめだよ』って。」

115 名前:二人の距離 19 投稿日:2002年01月12日(土)01時35分41秒

「あ……、」絶句する高橋。

「それなのに……。高橋、どういうことなの。なんで、よっすぃ〜なの?
他にもいるじゃない。ごっつぁんでも なっちでも 圭ちゃんでもいいじゃない。
なんで、よりによって、よっすぃ〜なの? オイラのよっすぃ〜を取らないで!」

「でも……、好きになってしまったんです。いくら矢口さんの言うことでも、
私のこの気持ちにウソはつけません!」

116 名前:二人の距離 20 投稿日:2002年01月26日(土)03時20分26秒

矢口をまっすぐ見据える高橋。だが、本当は怖くてたまらない。
しかし、目をそらしたら負けだ。勇気を振り絞って矢口と向かい合う。

矢口の目から涙が溢れた。
「グスッ……、よっすぃ〜は、オイラのものなんだからね……。
負けないからね。ぜったい、負けない!」

涙を拭うと、矢口は走り去った。

117 名前:二人の距離 21 投稿日:2002年01月26日(土)03時22分19秒

一人残された高橋は呆然と立ち尽くす。
吉澤にアタックすると決めたときから、こんな日がくることはわかっていた。
恋敵が誰であろうと、必ずこの恋を叶えてみせる、と心に決めていた。
だが、今、高橋の胸には、なんともいえない複雑な想いが輻輳する。
それは、矢口を傷つけてしまった、という想い。そう、矢口はただの恋敵ではない。
恋敵であると同時にモーニング娘。のメンバーなのだ。大切な仲間。
自分の想いを遂げるということは、大切なメンバーを傷つけてしまう、ということだ。
だからといって、吉澤への想いが消えたわけではない。

「まるで、わたし、悪者みたい。でも、負けられない、わたしのためにも。
こんな気持ちを引きずるのはいや。早く決着をつけたい。」

118 名前:二人の距離 22 投稿日:2002年01月26日(土)03時23分33秒

翌日、吉澤と二人きりになるために、早めに楽屋入りした高橋。
しかし、そこには吉澤の姿はなかった。

「あっちゃー、誰もいない。早く来すぎたな。しょうがない、
吉澤さん、早く来ないかな。」

吉澤を待つ高橋。
ほどなくして、楽屋の扉が開いた。だが、入ってきたのは石川だった。

「よっすぃ〜、いないの?」
「はい、まだ来てないみたいです。」
「そう……、いないんだ……」

石川は楽屋の隅に座った。
なんだか暗い表情をしている。
それは、色が黒いから、とかいうことではなく、
いつも暗い表情でしょ、とかいうことでもなく、
明らかに思い詰めたような、そんな表情だった。

119 名前:二人の距離 23 投稿日:2002年01月26日(土)03時24分40秒

石川は黙ったまま、何も喋らない。気まずい沈黙が続く。

(気まずい……、なにを喋ったらいいんだろう。あれ? 前にも
これと似たようなことがあったような気がする……。あっ、そうだ、
昨日の矢口さんとの……)

「あのね……高橋……」
突然、石川が話しかけてきた。

「はい……。」
「よっすぃ〜とは、どうなってるの?」
「別に……、どうもなってませんけど……。」
「そうなんだ……。よかった。高橋はかわいいから、ひょっとしたら、
と思って……」

120 名前:二人の距離 23 投稿日:2002年01月26日(土)03時25分10秒

高橋は思い切って尋ねた。
「あの……、石川さんは吉澤さんと どういう関係なんですか。」

「……………………」
石川は、うつむいたまま、なにも答えない。

「石川さんは、吉澤さんのことが好きなんですか。」

「……よっすぃ〜は、よっすぃ〜は、大切な人なの……。
お願い……、よっすぃ〜は諦めて。」

「そんなこと言われても……」

「そうよね……。ごめんね、勝手なこと言って。」

121 名前:二人の距離 25 投稿日:2002年01月26日(土)03時25分54秒

石川はうつむいたまま、顔を上げない。
楽屋を沈黙が支配する。
だが、この沈黙の中で、高橋は石川の想いを感じていた。
それは昨日、高橋が矢口に対して抱いたのと同じ想いだった。
石川にとっても、吉澤を好きだと同時に高橋は大切な仲間なのだ。
石川の想いが高橋の心に突き刺さる。
高橋は居たたまれなくなって、楽屋を出た。

もう、どうすればいいのか、わからない。

「わたし、なんで吉澤さんを好きになっちゃったんだろう。
こんなつらい恋は初めて……。」

122 名前:二人の距離 26 投稿日:2002年01月26日(土)03時26分48秒

だが、高橋は、ふと疑問に思った。
「肝心の“吉澤さんの気持ち” は、どうなんだろう。
吉澤さんは付き合ってる人はいないって、前に言ってた。ってことは、
矢口さんと石川さんは、吉澤さんの眼中にはないってことなのかな。
それじゃ、いったい誰が好きなんだろ? もしかしたら、他に好きな人がいるのかも……。」

「吉澤さんに聞いてみたい。だけど、今、吉澤さんに会うのはなんとなく怖い。
誰かに相談してみようかな。……保田さんなら、プッチのメンバーだし、
吉澤さんのこと、知ってるかもしれない。それにオトナだし。」

「保田さんは……、たぶん、ロビーだよね。」

保田は、普段から楽屋にいることは少ない。ロビーなどで、スタッフと
談笑していることが多かった。
案の定、保田はロビーにいた。しかも、運のいいことに他には誰もいない。

123 名前:二人の距離 27 投稿日:2002年01月26日(土)03時30分35秒
高橋は恐る恐る保田に近づく。保田もすぐに高橋の存在に気付いた。

「高橋じゃない。どうしたの?」

「あの……、保田さん。相談したいことがあるんですけど。」

「珍しいね。私に相談なんて。いいよ、相談にのってあげるよ。」

「じつは、吉澤さんのことなんですけど。吉澤さんは誰か好きな人が
いるんでしょうか。」

「うーん、そういうことは本人に聞いてみたら? って、本人に
聞けないから私に聞いてるのか。
そういえば、高橋は吉澤のことが好きだったんだっけ。
そうね、吉澤を巡る関係って、なかなか複雑そうなんだよね。」

124 名前:二人の距離 28 投稿日:2002年01月26日(土)03時31分45秒

保田は一旦、天井を仰ぎ見てから、再び話を続ける。

「それはね、本人達に任せてるのよ。娘。の活動に支障を
きたすようだったら困るけど、今のところ上手くいってる
みたいだから、干渉しないようにしているの。
だから、私も詳しいことは知らない。」

保田はさらに続ける。

「そうね、ごっつぁんだったら、何か知ってるかもしれない。
ちょっと待ってて、ごっつぁんを呼んでくるから。」

「え……、いいです。わたし、自分で……」

125 名前:二人の距離 29 投稿日:2002年01月26日(土)03時33分27秒

「いいのよ。せっかく私に相談してくれたのに、このままじゃ、
ごっつぁんに丸投げするだけで、私、何の役にも立ててないしね。
これくらいのことは、してあげるよ。じゃあ、待っててね。」

保田が去り、高橋は、一人、ロビーで待つ。
今日は、他に収録がないのだろうか、閑散としている。
やがて、保田が後藤を連れて、戻ってきた。

「お待たせ。ごっつぁんを連れてきたよ。じゃあ、私はお邪魔かな。
食事でもしてこよっと。」

保田が食堂へと消え、ロビーには高橋と後藤の二人きりとなった。

126 名前:エブロス 投稿日:2002年01月26日(土)03時37分59秒
>120 の名前欄は、「二人の距離 24」の誤りです。
127 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月16日(土)12時54分26秒
どうなったんだ〜高橋と後藤!!
飼育も再開して、この作品の再開もいつになるかと待ち焦がれています。

エブロスさん、頑張ってください!
128 名前:エブロス 投稿日:2002年02月20日(水)01時41分30秒
>>127
お待たせしてしまって、すいません。ここのところ忙しかったもので…
放棄するつもりはないので、近いうちに更新再開したいと思っています。
129 名前:二人の距離 30 投稿日:2002年02月23日(土)01時51分06秒

「圭ちゃんをパシリに使うなんて、高橋もやるねー。でも、高橋から相談が
あるなんて珍しいね。なんでも遠慮なく聞いていいよ。」

後藤はニコニコしている。後輩から相談されるということが満更でもないのだろう。
高橋も、そんな後藤を見て少しホッとした。何でも聞けそうな雰囲気だったからだ。

「はい、ありがとうございます。吉澤さんのことなんですけど。」
「ああ、よっすぃ〜のことね……」

吉澤のこと、と聞いて、後藤は少し怪訝そうになったが、すぐに笑顔に戻った。

130 名前:二人の距離 31 投稿日:2002年02月23日(土)01時52分41秒

「どう? よっすぃ〜とは、うまくいってるの?」
「いえ、それが……」
「ははーん、やっぱりね。」
「やっぱり、って、どういうことですか?」
「高橋はふだん、よっすぃ〜とは、どうなの? 話とかしてる?」
「いえ……あまり……」
「でしょ? だからね、まず二人の距離を縮めることから始めなきゃ。」
「でも、そんなのんびりとはしてられないんです。」
「高橋は直球勝負だねー。でも、そんなんじゃ、当たって砕けちゃうよ。」
「そんな……」
「恋はあせらず、って言うでしょ。」
「はい、わかりました。やってみます。」
「がんばってね。」

131 名前:二人の距離 32 投稿日:2002年02月23日(土)01時53分52秒

後藤が行ってしまうと、高橋はソファに座り、考える。

「二人の距離を縮める、か。実はわたしも気になってたんだよね。
後藤さんに相談してよかった。よしっ、作戦変更。まずはお友達から始めて、
恋人へとステップアップ……。ふふっ。吉澤さんはもらった。」

そして、意味なくガッツポーズ。

132 名前:二人の距離 33 投稿日:2002年02月23日(土)01時55分02秒


リハーサルが始まった。

メンバーはそれぞれ台本を見ながら、各々の段取りを確認してゆく。
そんな中、高橋はリハーサルもうわのそら、作戦実行の機会をうかがっていた。

やがて、吉澤がスタジオの隅へと移動した。今ならフリーだ。チャンス到来。
すかさず、高橋は吉澤の前に立ちはだかった。まあ、立ちはだかった、とは言っても、
どちらかというと、吉澤が高橋の前に立ちはだかったように見えてしまうのだが…

133 名前:二人の距離 34 投稿日:2002年02月23日(土)02時09分26秒

じっと吉澤を見つめる高橋。
いつものびっくり顔が、今は妙に真剣な眼差しなので、
さすがの吉澤も少したじろいだ。

「……高橋、どうしたの?」
「あの、お友達になってください!」

一体、何を言われるのかと思って構えていた吉澤だが、高橋の言葉を聞いて
拍子抜けしてしまった。

「はぁ? お友達? 何言ってんの? 私たち同じモー娘。メンバーなのに、
 今まではお友達じゃ、なかったんだ?」

「……いえ、お友達です。」


134 名前:二人の距離 35 投稿日:2002年02月23日(土)02時10分40秒

「そうでしょ。高橋、何を言い出すのかと思ったら……、変なこと言うね〜。」
「そうじゃなくって、吉澤さんともっと親しくなりたいんです。」
「ふーん、だったらさ、もっと話し掛けてくればいいじゃん。いつも新メンだけで
 固まってないで。」
「はい……。でも、吉澤さんからも話し掛けてください!」
「う、うん、いいよ。しかし、どうしたの? 高橋、今日は やけに積極的ね。」
「はい、後藤さんのおかげです。」
「……ごっちんの?」
「そうです。後藤さんのアドバイスです。」
「ふーん、そうなんだ……。ごっちんのねぇ……」

「吉澤! 出番だよ!」

「話の途中だけど、ごめん。じゃ、行くね。」

135 名前:二人の距離 36 投稿日:2002年02月23日(土)02時12分30秒

吉澤はスタジオセットへと戻って行った。
お友達作戦は成功した、かのように見えたのだが……

「あっ、こないだの告白の返事を聞けばよかった! お友達作戦に夢中になって、
すっかり忘れてた。……でも、吉澤さん、ふだんと変わらなかったな。
これって、ダメだってことなのかな……」

ふぅーっとため息をつくと、落ち込む高橋。と、そこへ…

「こらーっ! 高橋さぼるなーっ!」

「ごめんなさいっ。」


この日の収録は、リハーサルに集中しなかったせいもあって、
いいリアクションがとれず、散々な出来だった。

136 名前:二人の距離 37 投稿日:2002年03月07日(木)02時54分25秒

それから何日かが経った。
高橋は、吉澤だけでなく、他のメンバーにも極力、話し掛けるよう努めた。
その甲斐もあって、先輩達とも少しずつ、打ち解けられるようになった。

これまでは、楽屋に居る時でさえ、どこか緊張しているところがあったりしたが、
今では、いつも笑顔でいられるようになった。吉澤とも屈託無く話せるように
なったし、周りのバカ話にも笑えるようになった。
なにより、メンバーと一緒にいることが楽しいと思えるようになっていた。

しかし……

確かに、当初の思惑通り、吉澤とはグッと距離が縮まった。
……だが、そこから先へ進めない。その、わずかな兆しさえ見えない。
高橋にとっては、それこそが肝心な事なのに。

137 名前:二人の距離 38 投稿日:2002年03月07日(木)02時55分37秒

そして、一ヶ月も過ぎようとする頃、高橋は限界を感じていた。
二人の関係は、メンバー、仲間、友達……それ以上の関係へと
進展することはないのではないか、ということを……


今日も、他愛も無い話が繰り広げられている。みんな笑っている。その輪の一角で、
高橋も笑っていた。しかし、だんだん笑顔が苦しくなってゆく。


高橋は、静かにその場から離れた。

138 名前:二人の距離 39 投稿日:2002年03月07日(木)02時57分26秒

「いくら、仲良くなれても、二人は友達……」

一人、ため息をつく高橋。
ふと、背後に人の気配を感じて、振り返ると、そこには後藤がいた。

「何だか元気ないみたいだけど。」

「そんなことないです。」

「ずっと、よっすぃ〜のこと見てたみたいだけど……、そのことなの?」

「……もういいんです。」

139 名前:二人の距離 40 投稿日:2002年03月07日(木)02時59分04秒

後藤の表情が少し曇った。
「どうして? 諦めたの?」

「この一ヶ月、後藤さんのアドバイスどおりにやってきました。
みんなと もっと仲良くなれたし、それは良かったと思ってます。
だけど、吉澤さんとは何も……。
吉澤さんはわたしの気持ちを知ってる。だから……もう答えは出てる。」

話し終えると、ふぅーっと、一際大きくため息をつく。
後藤はそんな高橋を励ますように話しかける。

「そんなことないよ。まだまだこれからだって。私はね、お互いのことを
よく知ったほうがいいと思って言ったことなんだよ。それなのに、もう、
弱音を吐くなんて高橋らしくないよ。」

「いえ。お互いのことを知って、わかりました。二人は先輩、後輩の関係なんだって。
それ以上には ならないってことがわかったんです。この一ヶ月で痛いほど感じたこと
なんです。」

140 名前:二人の距離 41 投稿日:2002年03月07日(木)03時00分18秒

「本当にそれでいいの? このまま引き下がっちゃうんだ。」
後藤の口調が少し険しくなった。

「はい。だけど、このままでも、吉澤さんとは、今までどおり友達として
いられる。これってそんなに悪くはないことですよね。」

「高橋は、それで満足なんだ。」

「満足なわけ…………だけど、どうしようもないし……」

「よっすぃ〜に直接、自分の気持ちをぶつけたことある? 面と向かって、
好きって言ったことある?」

「それは…………でも、もう、わかりきってることだから。」


「意気地なしっ!」

後藤が怒鳴った。

141 名前:二人の距離 42 投稿日:2002年03月07日(木)03時01分35秒

「やってもいないくせに、わかったようなこと言うんじゃないわよっ!」

「…………だけど……」

高橋は後藤の厳しい言葉に、激しく動揺した。その大きな瞳から涙が溢れ出した。

「怖いんです。振られてしまうのが……。わたし、今まで振られたことなんて
なかったから……これまでは、周りの人はみんなわたしのことを見てくれた。
自分が振られるなんてこと、考えたこともなかった。ひそかに私が一番だって
思ってた。
だけど現実は、ほんとはそうじゃなかった。わたしの思い通りにならないことが
たくさんあるってわかった。……わたしがどれだけ吉澤さんを見つめても……、
吉澤さんがわたしを見ることはなかった。だから……」

142 名前:二人の距離 43 投稿日:2002年03月07日(木)03時02分53秒

きっと想いは叶う、そう信じて疑わず、これまで、強気の発言を繰り返してきた高橋。
だが、冷たい現実は、じわじわと高橋の心に染み込んできていた。自分は自分が思う
ほど大した人間ではないのではないかと。
高橋はそんな自分を認めたくなくて、言い得ぬ不安をかき消したくて、強い自分を
演じようとしてきた。
しかし今、心の底に溜まっていた不安、現実という名の不安が、堰を切ったかのよう
に、噴き出したのだった。

「……わたし、きっと……振られる……」

後は涙で声にならなかった。

143 名前:二人の距離 44 投稿日:2002年03月10日(日)03時37分38秒

「きつく言ってごめんね。」

後藤は高橋をそっと抱き寄せた。

「高橋は今、スタートラインに立ってるんだよ。だけど今の高橋は、スタートせずに
終わろうとしている。そんなのもったいないよ。スタートをきってみなよ。
ゴールできるかどうかは分からないけど……。無責任な言い方だけど、私も正直な
ところ厳しいと思う。
でもね、やれることは、やってみなよ。でないと、きっと後悔するよ。」

「でも……こわい……」

涙に濡れる高橋。後藤はその涙の筋を指で拭うと、優しく微笑む。

「そうだね。振られるって分かってて、告白するのって、勇気がいるよね。でも、
もし私が高橋だったら、迷わず告白してる。私、高橋は幸せだと思う。羨ましいよ。
告白する資格がないよりは……ずっと幸せなんだよ。私はスタートラインにさえ、
立てないんだから……」

144 名前:二人の距離 45 投稿日:2002年03月10日(日)03時39分14秒

後藤の言葉を黙って聞いていた高橋。だが、最後のセリフが気になった。

「資格がない? ……スタートラインに立てない? それって、どういう……?」


後藤は、ちょっと困ったような顔をしたが、すぐに、元の優しい顔に戻った。

「ちょっと、喋りすぎたかな。そうね、どう言えばいいのかな。
高橋はさっき、友達としていられることが、そんなに悪くはない、って言ったよね。
私は、そうは思わない。友達だったら、お互い何でも話し合えることができるけど、
本当の気持ちだけ、話すことができないのは、何よりもつらい。それなら、いっそ、
嫌われたほうが楽だって思うこともある。」

145 名前:二人の距離 46 投稿日:2002年03月10日(日)03時40分28秒

「それはわたしにも分かります。今のわたしと吉澤さんの関係がそれに近いから。
でも、後藤さんがそんなことを言うってことは……
後藤さんにも、わたしと同じように、友達以上になりたい人がいるとか?」


「うん、まあね。……もう友達以上なんだけどね。」

「へえ! いいなぁ。その人と想いが通じ合ってるんですね。」

「そうだといいんだけどね……」

「違うんですか?」


後藤は何も答えなかった。後藤は、どこか遠くを見つめるような、少し悲しそうな
表情をしていた。

146 名前:二人の距離 47 投稿日:2002年03月10日(日)03時41分48秒

その切なげな表情に、高橋は思わず息を飲む。
ほんの少しの沈黙の後、ふと我に帰ったかのように、後藤が口を開いた。

「ちょっと話がそれちゃったけど、私の言いたいことは大体言えたかな。
後は、高橋が決めることだから。」

わたしは逃げ出そうとしていた。そう思うと、高橋は自分が小さく思えた。

「わたし、決めました。吉澤さんに、この気持ちを言います。」

「そうだね。よく決心したね。そうしたほうがいいよ。」

後藤は優しく微笑んだ。

147 名前:二人の距離 48 投稿日:2002年03月10日(日)03時43分32秒

翌日。

高橋は一人で吉澤を待っていた。
昨日、後藤と別れた後、すぐに吉澤に電話して、二人きりで会うことを約束していた。

「ダメでもいい。最初から、こうすればよかった。ずいぶん遠回りしたな。」


程なくして、吉澤が来た。

高橋は頭を下げる。
「すいません。突然、無理言って時間を作ってもらって……」

「いいよ。こういうことは大切なことだから。」
吉澤も、おおよそのことは、察しているようだった。

148 名前:二人の距離 49 投稿日:2002年03月10日(日)03時45分00秒

「わたし、吉澤さんの事が好きです。」


吉澤は、特に驚きもせずに、高橋を見つめる。

「高橋……。」

吉澤は何か言いかけて、いったん、息を飲み込む。
高橋は唇をかみ締めて、吉澤の返事を待った。


「高橋、ごめん。私、高橋のことは好きだけど、妹としてしか見れない。」

「……そうですか。やっぱりな。」

「ほんとにごめんね。」

「ううん、いいんです。これですっきりしました。あれ? なんで涙が……」

149 名前:二人の距離 50 投稿日:2002年03月10日(日)03時46分15秒

「高橋、ごめんね。ずっとつらかったでしょ。私がはっきりしないから……。」

「そんなことないです。わたし、平気です。こうなることは、覚悟してたから……。
あの……、ひとつだけ……、どうしても聞きたい事が……。」

「うん、言ってみて。」

「吉澤さんの本当の気持ちを知りたいんです。……わたしが吉澤さんのことを
好きだってことは、前から知ってたはず。それに、矢口さんや石川さんが吉澤さんの
ことを好きだってことも。
でも、吉澤さんの気持ちは、誰に向いてるのかわからない。
だから、これだけはどうしても聞きたかったんです。」

150 名前:二人の距離 51 投稿日:2002年03月10日(日)03時47分04秒

潤んだ瞳で吉澤を見つめる高橋。

吉澤は以前にも、高橋に同じような事を聞かれた。そのときは、ただ興味本位で
聞かれただけのように思えたので、適当に受け流した。
しかし、今は違う。高橋の真心が伝わってくる。

「私、みんな好きだから、今の関係が心地よかったから、何となく、うやむやに、
してきた。だけど、そうもいかないよね。みんなにつらい想いをさせてしまってる。
もう、はっきりさせなきゃいけない時に来ているのかもね……。」

吉澤は真剣な面持ちで答えると、そのまま黙り込んでしまった。

151 名前:二人の距離 52 投稿日:2002年03月10日(日)03時48分43秒

高橋は、そんな吉澤をじっと見守っている。
やがて、吉澤が口を開いた。


「高橋の言うとおりかもしれない。私、はっきりさせなきゃいけない。
私にとって、大切な人は誰なのか……。」


「それ、誰なのか、わたしも聞きたいです。でも……」

高橋はうつむきながら、つぶやいた。

「でも……、それはわたしじゃない。」

152 名前:二人の距離 53 投稿日:2002年03月10日(日)03時49分53秒

「ごめんね……」
悲しそうな表情の吉澤。今はただ謝ることしかできない。

しばらくの間、うつむいていた高橋。
やがて、ゆっくり顔を上げると、涙を拭いて、言った。

「最後にひとつだけ、お願いを聞いてもらえますか?」

「いいよ。 何でも言って。」

「一回だけでいい、ギューッ、って、してください。」

「わかった。」

吉澤は静かに高橋を抱きしめる。
吉澤の腕の中で、高橋はゆっくり目を閉じた。


……さよなら、吉澤さん。


153 名前:エブロス 投稿日:2002年03月10日(日)04時00分17秒
ageてしまった…
あと1,2回、更新すれば終わりです。
154 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月10日(日)15時43分43秒
よしこは誰が好きなのかな?気になる〜。よしごまだったらよいな。もうすぐ最後なんですね。作者さん頑張って下さい。
155 名前:二人の距離 54 投稿日:2002年03月18日(月)03時33分27秒


それから数日が経った、ある午後のこと。
高橋は吉澤に呼び止められた。

「高橋、今日のダンスレッスンが終わっても、帰らないで
残っててほしいんだけど、いいかな?」

「吉澤さん……あのことですか?」

「そう。でも、高橋、無理に立ち会わなくてもいいんだけど。」

「いえ、わたしもう平気です。立ち会わせてください。」

「わかった。じゃ、そういうことだから。また後でね。」

「はい。」

156 名前:二人の距離 55 投稿日:2002年03月18日(月)03時34分42秒

夕暮れも押し迫る頃、ダンスレッスンが終わって、メンバーは帰り、
スタッフも撤収して、スタジオは、がらんとしている。
照明も落とされた、薄暗いフロアの真ん中で、窓から差し込む西日だけが、
4人を照らしている。


そこにいるのは、吉澤と石川、矢口、そして高橋。


157 名前:二人の距離 56 投稿日:2002年03月18日(月)03時36分18秒

4人は立ち尽くしたまま、誰も喋ろうとしない。
重苦しい空気の中、たまりかねた様に、矢口が口を開く。

「よっすぃ〜、話って何なの? 面白い話?」

とは、言ってみたものの、このメンバーを見た時点で、
その内容は、容易に想像がついていた。

「ねぇ……、なんなのよ……」
だんだんトーンが下がってゆく。

矢口の隣には、うつむき加減の石川が震えながら立っている。
そこから2,3mほど離れて、高橋が真剣な眼差しで3人を見ていた。

158 名前:二人の距離 57 投稿日:2002年03月18日(月)03時37分50秒

再び、4人の間に沈黙が流れる。矢口ももう何も喋ろうとしない。

吉澤は、まだ少しためらっているようだった。しかし、もう後へは引けない。
意を決して、宣言する。

「今から、私、好きな人を告白します。」

「えぇっ!」

驚愕の声を発する矢口。石川はビクッと震えると、またうつむいてしまった。
高橋は固唾を飲んで成り行きを見守っている。

緊迫した雰囲気の中、吉澤は、矢口と向き合う。

「矢口さん……」

159 名前:二人の距離 58 投稿日:2002年03月18日(月)03時40分05秒

「えっ、オイラ?」

一瞬、驚喜の表情を浮かべる矢口。しかし、吉澤の顔を見るとすぐに
意気消沈してしまった。

「オイラじゃ、ないんだ……」


「矢口さん、ごめんなさい。矢口さんは大人だから……、
こんな状況でも、きっと耐えられると思って……」

「まあ、仕方ないよね。よっすぃ〜が決めたことだからね。
オイラはオトナだから大丈夫だよ。」

その言葉とは裏腹に、目に一杯涙を浮かべる矢口。

160 名前:二人の距離 59 投稿日:2002年03月18日(月)03時41分56秒

「ほんとにごめんなさい。矢口さん、気が済むまで、私をぶって下さい。」

「……わかった。」

腕を振り上げる矢口。しかし、吉澤の頭には届かない。
吉澤は中腰になって目を閉じる。


「なでなで」

矢口は吉澤の頭を撫でる。


「矢口さん……」

161 名前:二人の距離 60 投稿日:2002年03月18日(月)03時44分13秒

「よっすぃ〜は偉いよ。よく決心したね。オイラがよっすぃ〜を好きになって
しまったせいで、よっすぃ〜を困らせてるんだなって思うと辛かった。
よっすぃ〜は一体どうするつもりなんだろうって、ずっと思ってた。
だから、今日こうして、答えを出してくれて、オイラ嬉しいんだよ。ほんとだよ。」


「矢口さん……悪いのは私です……」

「そんなことないって。よっすぃ〜は、一番好きな人を選んだらいいだけのこと。
ただ、それがオイラじゃなかったってこと……ただ、それだけ。
……じゃあ、オイラ、行くね。」


矢口は涙を一杯浮かべながら、それでも、一滴もこぼすことなく、精一杯の笑顔を
見せると、吉澤に背を向けてフロアから去って行く。その肩は少し震えていた。

162 名前:エブロス 投稿日:2002年03月18日(月)03時48分37秒
たぶん、次回で、最後まで更新できると思います。
163 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月19日(火)22時28分06秒
よすぃは誰を選ぶのだろう……ドキドキ
次回で最後ですか?楽しみなような、寂しいような……
とにかく待ってます!
164 名前:二人の距離 61 投稿日:2002年03月25日(月)02時51分39秒

矢口の後姿を見送った吉澤は、石川の方へと向き直った。
石川はずっとうつむいたまま、泣いていた。

「梨華ちゃんが泣くことないじゃない。」

「……うん……そうだけど……」

「梨華ちゃん、下ばっかり見てないで、ちゃんとこっち見て。」


石川は恐る恐る顔を上げる。
吉澤は、涙に濡れた石川の顔を真っ直ぐ見据えて、言った。


「梨華ちゃんと正式に付き合いたい。」

165 名前:二人の距離 62 投稿日:2002年03月25日(月)02時52分46秒

驚きの表情を浮かべる石川。
「…………ほんと?」

「ほんとだよ。」

その言葉を聞いた石川は、両手で顔を覆ってしまった。
「……よっすぃ〜…………」
何か言おうとするが、嗚咽で言葉にならない。

吉澤が石川に一歩近づく。
「ねえ、梨華ちゃんは、いいのかな?」

「…………うん……」

石川は、うなずくのが精一杯だった。止め処なく溢れる涙で、顔は くしゃくしゃに
なっている。

166 名前:二人の距離 63 投稿日:2002年03月25日(月)02時53分54秒

吉澤は、石川の肩をそっと抱くと、ハンカチを差し出す。
「梨華ちゃん、ごめんね。つらい想いをさせちゃったね。」


「…………いいの…………もういいの…………うれしい……よっすぃ〜が……
……私を……選んでくれた…………」

「梨華ちゃん……」

「よっすぃ〜…………えへっ」

「うん、梨華ちゃんは笑顔がいちばん似合ってるよ。
でも、せっかくの笑顔が涙でグシャグシャだよ。顔、洗ってきなよ。」

「……うん!」


石川は、嬉しそうに駆けて行った。

167 名前:二人の距離 64 投稿日:2002年03月25日(月)02時55分02秒


フロアは、吉澤と高橋の二人きりとなった。


「石川さん、すごい嬉しそうだった……羨ましいな。吉澤さんも……」

高橋は、そう言いかけて、吉澤を見た。きっと、吉澤も嬉しいに違いないと
思っていた。しかし、そうではなかった。


吉澤は、どこか寂しげな表情をしていた。

168 名前:二人の距離 65 投稿日:2002年03月25日(月)02時56分03秒

高橋はその判然としない状況に、思わず、吉澤に問いかける。
「どうしたんですか? あまり嬉しそうじゃないみたいですけど。」

「そう? そんなことないよ。」
吉澤は曖昧な返事を返すばかり。高橋には納得がいかない。

「二人の想いがようやく通じ合ったんじゃないですか。
それなのに、今の吉澤さん、全然嬉しそうに見えません。」

「だから、そんなことないって。高橋、疑い深いんじゃないの。」

「じゃあ、笑ってください。」

「…………」


吉澤は……笑わなかった。

169 名前:二人の距離 66 投稿日:2002年03月25日(月)02時57分39秒

吉澤は静かに高橋を見つめる。

「梨華ちゃんはね……私が支えてあげなきゃダメなの。梨華ちゃんはガラス細工
みたいに壊れやすい子だから……私が傍にいてあげないと……」

思いがけない吉澤の言葉。それは高橋には納得のいく言葉ではなかった。


「吉澤さんの言ってること、おかしいです。石川さんのこと、本当は好きじゃない、
って、ことじゃないですか。わたし、そんなの納得できません。
吉澤さんは、本当にそれでいいと思ってるんですか?」


吉澤は何も答えなかった。吉澤は、どこか遠くを見つめるような、少し悲しそうな
表情をしていた。


高橋は、その切なげな表情に見覚えがあった。

「今の吉澤さんの顔、あのときの後藤さんと同じ……」

170 名前:二人の距離 67 投稿日:2002年03月25日(月)02時58分53秒

「吉澤さんと後藤さん…………吉澤さんと……後藤さん…………後藤さん?
まさか……だって、二人は親友だから、そんなことありえない……」

吉澤と後藤……それは高橋にとって、思いもよらない組み合わせだった。
まさか、と思いつつ、今まで考えもしなかったことを尋ねてみた。

「吉澤さんは……後藤さんが好きなんですか……?」


「ごっちん? 違うよ。ごっちんとは親友だからね。」

しかし、あっさり否定された。
そう、二人は親友。周りの誰もが認める仲良しの……。
ふと、高橋の脳裏に、あの時の後藤の言葉が甦った。


…………もう友達以上なんだけどね。

171 名前:二人の距離 68 投稿日:2002年03月25日(月)03時00分05秒

「あのとき、後藤さんが言ってた、友達以上の人って………………
………………そうか……そういうことだったんだ。」

高橋の頭の中で、線が一本につながった。


吉澤に後藤の気持ちを伝えなければ…、高橋は、そう思った。
きっと、吉澤は喜ぶはずだと。

「吉澤さん、実は、後藤さんがですね……」

「やめて!」

しかし、吉澤は一喝して高橋を睨みつけた。
その思いがけない態度に、高橋は動揺を隠せない。

172 名前:二人の距離 69 投稿日:2002年03月25日(月)03時01分33秒

「でも……吉澤さん……」

「もう、やめて……ごっちんのことは、それ以上、言わないで……」

睨みつけるその瞳は、しかし、少し潤んでいた。


「…………どうして? 吉澤さんは後藤さんのこと……」


吉澤は天井を仰ぎ見て、大きくため息をついた。


「私達は、親友なのよ。」

173 名前:二人の距離 70 投稿日:2002年03月25日(月)03時02分56秒

「私達二人、お互いのことは何でも知ってる。知りすぎてるくらいに、どんなことも。
でも、知らない事がひとつだけある。それは、ほんとはいちばん知りたいこと……。
だけど……それを知ってしまったら……二人は二人でなくなってしまう気がする。
私は、ごっちんと、ずっと一緒にいたいから……」



廊下の向こうから、石川が手を振りながら駆けて来る。


高橋は、頭を何度も左右に振った。
「わたし、わかりません。そんなの、わかりません……」

吉澤は、力なく、つぶやいた。
「高橋には わからないと思う。」


174 名前:二人の距離 71 投稿日:2002年03月25日(月)03時04分53秒


吉澤と石川が二人並んで、廊下の彼方へと消えていった。


夕陽も落ちて、すっかり暗くなったフロア。
途切れ途切れに並ぶ非常灯だけが、ぼんやり光っている。


高橋はその場に一人、立ち尽くしていた。

「わからないよ……」

その目から涙がこぼれた。


175 名前:二人の距離 72 投稿日:2002年03月25日(月)03時05分41秒

おわり

176 名前:エブロス 投稿日:2002年03月25日(月)03時07分00秒

「二人の距離」 >>92-175 完結しました。



177 名前:エブロス 投稿日:2002年03月25日(月)03時08分49秒

ここまで、随分と時間がかかってしまいました。
レスして頂いた方、読んで頂いた方、本当にありがとうございました。

178 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月25日(月)20時34分37秒
なんだか切ないですね。
二人が今後どうなるのか気になります。
179 名前:エブロス 投稿日:2002年03月31日(日)02時15分26秒
>>178
続きを書く予定はないんですが、たぶん二人(石川と吉澤)は別れるでしょうね。
だからといって、吉澤×後藤、となるかというと、きっと、そうもいかないでしょう。
180 名前:エブロス 投稿日:2002年03月31日(日)02時17分29秒
ごっちん、危機一髪! >>2-56
矢口の大暴走 >>63-82
二人の距離 >>92-175



Converted by dat2html.pl 1.0