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十二支物語
- 1 名前:りょう 投稿日:2001年12月19日(水)23時37分31秒
- はじめまして。
初めて小説を書きます。
読みにくい部分は多々あると思いますが、よろしくお願いします。
- 2 名前:りょう 投稿日:2001年12月19日(水)23時38分51秒
- 辺り一面砂の上を3人の少女が歩いている。
「ねぇ〜なっちぃ〜、いつになったら次の目的地に着くのさ〜?」
その中でも一際小さく、背中には1本の剣『ラット』を背負っている少女、矢口真里がいかにもだるそうな声でうなだれていた。
「もぉ〜矢口ったら、もうちょっと我慢出来ないの?」
その矢口がその場に倒れそうになっている姿をまるで母親のように返事をする大きな荷物を持つ女性、安部なつみ。
「そうですよぉ〜、もうちょっとですから頑張りましょう」
それに同意する、矢口と同じくらいの背丈で腰に日本刀『夢桜』を携える加護亜衣。
彼女らは共通の『ある者』を倒す為、そして仲間を捜す為旅をしている・・・
- 3 名前:りょう 投稿日:2001年12月20日(木)16時06分11秒
- 十二支という動物達がいる。
神に選ばれし聖なる動物達は1年を周期にそれぞれが人間世界を守っていた。
しかし『ある者』が現れてからというもの、世界は荒れた。
『ある者』はつんくと名乗り、破壊の限りを尽くした。
人々は逃げ惑い、街から紅の炎は絶えることは無い。
事態を重く見た神は十二支と力を合わせ、なんとか封印することに成功した。
しかし、いつ復活するか分からない。
神は十二支の魂を人間に憑依させ、
その人間達の子孫達に来たる復活の時に再び封印、あるいは退治できる様祈った。
- 4 名前:りょう 投稿日:2001年12月20日(木)16時11分29秒
- 矢口真里は子族の子孫である。
子族というのは世界でもトップ3に入る極小族で、
年によっては平均身長が150cm以下になる事もあると言う。
彼女は子族の中でも特に小さく、そのため素早く敵の懐に飛び込む事ができ、
相手が攻撃する暇を与えずに勝つ事が出来る。
安部なつみは丑族の子孫。
丑族の者は腕力が優れており、安部も例外ではないが、
なぜか彼女には人を癒す能力『ヒーリング』を生まれながらにして持っており、
戦場で傷ついた丑族を小さい頃から進んで癒していた。
- 5 名前:りょう 投稿日:2001年12月20日(木)16時14分20秒
- そして加護亜衣は申族の子孫。
申族は主に偵察、諜報活動に長けていて忍者になるものも多く、
加護も家系が忍者だった為幼少の頃より忍者になる為に育てられ、
14歳という若さで申族のトップ的存在にまで昇りつめていた。
- 6 名前:りょう 投稿日:2001年12月20日(木)16時27分22秒
- 十二支の子孫は、普段は普通と変わりない生活をし、
つんくが世界を破壊しようとした時に創ったと言われる魔物を退治しながら暮らしていた。
しかし近年その魔物が急増し、つんくが復活している兆候だとみた子族の長は、
交流が盛んだった丑族の長、申族の長と話し合い、
彼女達をつんく退治の旅に出したのである。
- 7 名前:りょう 投稿日:2001年12月20日(木)16時29分18秒
- それでは何故彼女達なのか?
それは、彼女達1人1人の身体のどこかにそれぞれの十二支の文字が刻まれた痣があるからである。
その痣のある者は代々一族の直系に1人しか絶対におらず、
その人が覚醒すると十二支だった動物時代の記憶が蘇り、
通常以上の能力が出るのである。
- 8 名前:りょう 投稿日:2001年12月20日(木)16時33分49秒
- とりあえず今日はここまでです。
次回の更新は、多分来週あたりになると思います。
あと、この小説を読んでくれた方はレスをしていただけると嬉しいです。
読んでくれてる人がいるって事だけで結構励みになりますので。
- 9 名前:ポー 投稿日:2001年12月21日(金)00時21分05秒
- どうも!こうゆう系もスキですよ♪(なぜか十二支ってのがスキで..)おもしろそうっス!がんばってくださいね〜☆
- 10 名前:りょう 投稿日:2001年12月22日(土)21時43分25秒
- >>9 ボーさん
レスありがとうございます♪
やっぱレスを貰えると嬉しいですね。
- 11 名前:りょう 投稿日:2001年12月22日(土)21時49分39秒
一行が黙々と歩いている中、加護が何かを感じその場に立ち止まった
「加護?」
「この近くに魔物がいます。しかも複数。」
「あっそう、ヤグチは疲れて動けないから御二人さん頑張ってね〜」
そう言うと矢口はその場に座り込んだ。
それは、この辺りに出現する魔物はたいして強くなく、
安部と加護に任せても大丈夫と判断したからだ。
「まったく矢口ったら、しょうがない、加護ちゃん、
私はコレ組み立てるからそれまで魔物の相手をしてくれる?」
そう言うと安部は持っていた大きな袋を地面に置くと、組立作業に入った。
実は袋の中身を組み立てるのには1秒もいらないのだが、
魔物が魔物だけにゆっくりしているようだ。
「分かりました。」
そういうと、加護は戦闘態勢に入った。
- 12 名前:りょう 投稿日:2001年12月22日(土)21時53分41秒
すると、砂の中から人間くらいの大きさのイグアナを連想させるような姿の魔物が
20匹くらい上がってきた。
立っている者もいるので、二足歩行も可能なようだ。
その中の1匹が加護に襲い掛かろうとした瞬間、
その魔物の額にはすでにくないが刺さっていた。
「ほら、ぼやぼやしてると死んじゃうよ」
そう言いながら、襲ってくる敵を1匹も逃さず倒していく。
そんな時、安部がまるで戦闘中ではないかのような声を上げる。
「よしっ、完成。加護ちゃん、もういいよぉ〜、あとはなっちがやるから」
そう言った安部は自分の身体ほどもある大きな斧『ホーンアクス』を手にしていた。
- 13 名前:りょう 投稿日:2001年12月22日(土)21時56分33秒
- そうして、安部が一歩ずつ敵のいる方向へと歩いていく中、
加護には敵わないと判断した魔物たちは両腕で攻撃しやすいように立ち上がり、
安部を取り囲む様に円を作った。
「ん〜、最高のシチュエーションだね♪」
安部がそう言っている間にもどんどん魔物たちは円を狭めていく。
そして安部の間合いに入った時、安部はホーンアクスを横に薙ぎ払った。
その瞬間、魔物たちの中に上半身と下半身が繋がっている者はいなかった。
「ふぅ〜、矢口、終わったよ。」
「えぇ〜!もう休憩時間終わり!?」
「矢口さん・・・」
- 14 名前:りょう 投稿日:2001年12月22日(土)21時59分28秒
先程の魔物を倒してからどれくらい歩いただろうか
「もう・・・ダメ・・・」
矢口が膝を砂に付け、もうすぐ手も付きそうな所で突然加護が叫んだ
「あっ!!皆さん見えてきましたよ!!あれが午族が住む街ですね!!」
言うが早いか、矢口はさっきの疲労感などおよそ見られないような速さで
目標に向かって走って行った。
- 15 名前:りょう 投稿日:2001年12月22日(土)22時42分26秒
- 「ふぇ〜、やっとついたぁ〜。」
街に着き矢口がもう歩けないと言わんばかりの声を上げるが
「まずは今日の宿を決めなきゃね。」
安部は疲れの色など全く見せず次の行動に移ろうとする。
空はもう暗かった。
- 16 名前:りょう 投稿日:2001年12月25日(火)16時15分38秒
- 宿も決まり、矢口は着くや否や寝てしまい、
それを見ていた加護は独り言を呟いた。
「矢口さんって結構すぐ疲れるんですね。」
それに反応して安部が応える。
「そりゃそうだよ。子族は小さいから基本的に体力が無いんだよ。
私達もそろそろ寝よっか?明日は午族が居る所を捜さなきゃいけないんだから」
その言葉に加護は少し驚く。
「えっ?この街に居る人が全員午族じゃないんですか?」
「あっ、そっか、加護ちゃんは申族しか居ない里で育ったから知らないんだね」
- 17 名前:りょう 投稿日:2001年12月25日(火)16時17分40秒
「えっとね、この世界には大きく二つの人種に分かれてるの。
十二支の血を受け継いでる種と受け継いでない種、
今は血を受け継いでない種の方が世界の三分の二を占めてるけど、
そのうち人類全てが十二支の血が流れるようになると思うよ。
もちろん、直系から離れていく分その血は薄くなっていくけどね。」
安部が説明をしている間、加護は真剣にその説明を聞いていた。
- 18 名前:りょう 投稿日:2001年12月25日(火)23時21分44秒
- 次の日の朝、3人は街の人から話を聞き、
牛族が開いているという道場へと足を運んだ。
道場では、午族の若者達が男女問わず矢口の持っている剣より一回り大きい剣
『大剣』を持って練習していた。
その光景を見ていた加護は驚いた表情で言葉を漏らした
「うへぇ〜、みんな大きい〜。まるで巨人の国に来たみたいだ」
「そりゃそうだよ。午族は子族と真逆で世界で一番大きい種族なんだよ。
男の人は大人になるとだいたい二メートルを越えて、
今訓練してる子達よりさらに大きい剣を振り回してるよ」
「子族の私にはちょっと羨ましいなぁ〜。
・・・ってあれ?あの子だけ妙に小さくない?
なっちよりちょっと高いくらいだよ」
「えっ?本当だ。何でだろう?」
矢口と安部が見る方向には、
周囲に比べるとはるかにちいさい女の子が不釣合いな大剣を真っ赤な顔をして
一生懸命振っていた。
- 19 名前:りょう 投稿日:2001年12月25日(火)23時24分53秒
「どなたですか?」
3人が声のしたほうに振り返ると、女性にしては高すぎる身長の人が立っていた。
その上を見上げるほどの大きさに少しの間圧倒されていたが、安部が話を切り出す。
「私達は十二支の痣を持つ者です。
午族の痣を持つ者にお会いしたいのですが・・・」
それを聞くと女性は、
「あなた達が・・・そうですか、どうぞこちらへ」
と言い、3人を奥に案内した。
- 20 名前:りょう 投稿日:2001年12月25日(火)23時29分19秒
- 女性に案内されて入った部屋には、いかにも応接室と言った感じの、
ソファーとテーブルがあるだけの部屋だった。
「どうぞ腰掛けてください」
言われるがままソファーに座った3人に女性は話し始めた。
「自己紹介が遅れました。私の名は飯田圭織。午族の痣を持つ者です。」
「やっぱりそうかぁ〜」
安部が納得したような感じで言った。
「ご存知だったのですか?」
「あっ、いや、でも周りの午族と比べても全然雰囲気が違うし、
女性の中でも一際大きかったしね。」
「そうですか、それで今回は何の御用でここに?」
「近年、魔物の数が増加しているのには気付いてますよね?
あれはつんくが復活している兆候なのです」
「え・・・!?」
「だから、あなたも私達と一緒に他の仲間を捜す旅に出て頂けませんか?」
飯田は少し驚いたようだったが、すぐに気持ちを落ち着けた。
「・・・分かりました。私の力がどれほど役に立つか分かりませんが、
やってみようと思います。」
- 21 名前:りょう 投稿日:2001年12月25日(火)23時35分07秒
今回はこの辺で。
毎回更新料が少なくて申し訳ないです(^^;
話の構想は決まっているのですが、なかなか文章に出来なくて悩んでます。
慣れてきたらもう少し多くなると思うので、
読まれている方がいたらこれからもよろしくお願いします.
- 22 名前:りょう 投稿日:2001年12月26日(水)00時15分46秒
- 漢字間違い発見。
>>21
更新料→更新量ですね。
お恥ずかしい・・・
- 23 名前:りょう 投稿日:2001年12月27日(木)23時31分31秒
- それを聞いた三人はほっとした表情を浮かべ、今後の旅の話し合いをしている中、
矢口があることを思い出し、飯田に問い掛けた。
「あの〜、ちょっと聞きたいんだけど、さっき道場を見てる時、
周りに比べて妙に小さい娘がいたんだけど」
そこまで言った途端、飯田の表情が重くなったのが誰の目から見ても分かった。
「あ・・・もしかして聞いちゃまずかった?」
「・・・いえ、一族のみんなには隠しているのですが、
あなた達には聞いてもらいたいので聞いてください。
あの娘は、梨華は・・・卯族の直系の娘。しかも痣を持つ者です」
「「「!!??」」」
- 24 名前:りょう 投稿日:2001年12月27日(木)23時40分00秒
三人が驚きを隠せない中、安部が口を開いた。
「卯族の娘がどうして・・・?」
「それは私にも分かりません。ただ、私が小さい頃、
父が雨の中名前が書かれた紙と一緒に捨てられていたあの娘を拾ってきて、
家族で話し合った結果、彼女を育てる事にしました。
梨華には自分は午族で、両親は戦場に出ているから家で預ってる。と言っています。
午族でも小さい頃は普通の身長だから、梨華も周りと同じように過ごしてきました。
けれど、今は御覧の通り、周りよりはるかに小さいです。
だけど梨華は、自分は午族と信じて絶対に扱えない大剣を振り続けています。
毎日毎日・・・」
そう言った後、飯田は俯いてしまった。
その時加護が不思議そうに言う。
「でも、痣を持つ者なら自分が午族じゃないって事くらい分かるんじゃないんですか?」
安部がそれに答える
「その娘はまだ覚醒してないんですよね?飯田さん」
「・・・ええ」
「かくせい?」
- 25 名前:りょう 投稿日:2001年12月27日(木)23時44分00秒
- 言葉の意味を理解出来ていない加護に矢口が説明した。
「覚醒っていうのはね、痣を持つ者だけに起こる事で・・・
ん〜、なんて説明したらいいのかな・・・
えっと、加護は里に居る時、急に目の前が真っ暗になった時がない?」
「あっ、はい。8歳頃修行中に。
そしたら真っ暗な中で大きな白い猿が私の前に現れて
『主に力を与えよう』みたいな事を言われたと思ったら、
急に私の知らない記憶がどんどん入ってきて・・・
気が付いたら自分に尻尾が付いてて、今までとは比べ物にならないほどの力が出てきました。
その後尻尾は消えたんですけど」
「そう、それが覚醒。知らない記憶っていうのは十二支が人間に憑依する前の記憶で、
尻尾が付いたっていうのは『獣化』って言って、十二支の力を借りて自分の力を上げる事なの。
練習すれば、ヤグチやなっちみたいに自由に獣化出来るようになるよ。」
「へぇ〜。そうだったんですか。私はまだまだ修行不足だったんですね・・・」
- 26 名前:りょう 投稿日:2001年12月27日(木)23時44分31秒
誰から見ても明らかな落胆の顔に、矢口は少し微笑みながら励ました。
「そんなに落ち込む事ないよ。加護はまだ14歳でしょ?
私が覚醒したのって15歳の時だよ〜。もっと自分に自信持ちなよ」
「・・・はい、ありがとうございます」
そんな時、道場の方で大きな爆発音が響いた。
- 27 名前:ポー 投稿日:2002年01月04日(金)15時47分26秒
- あけおめ〜!更新まだかなー(・.・)午年ですね!まってますよ〜
- 28 名前:りょう 投稿日:2002年01月04日(金)22時11分19秒
- >>27ボーさん
あけましておめでとうございます。
更新遅くなって申し訳ないです(^^;
今年は午年、つまりカオリンの年(W
それでは、少ないかもしれませんが更新します。
- 29 名前:りょう 投稿日:2002年01月04日(金)22時15分17秒
「何があったの!??」
飯田が焦っている時、突然扉が開き、午族の1人が息を切らしながら叫んだ。
「魔物です!!魔物が攻めてきました!!!」
その言葉を聞くと、ものすごい速さで飯田は道場の方に走っていった。
3人もそれについて行く。
道場につくと、既に道場は半壊し、3メートルはある、
昨日のイグアナの魔物を少し思い出させる魔物の前には、
多くの午族が横たわっていた。
「・・なんてことを・・・・・」
飯田の顔はみるみる憎悪の色に変わっていく。
そんな飯田に気付いた魔物は嬉しそうな顔を浮かべ、言い放った。
「我の名ははリザードマン。
我が主の命により、貴様らを殺しに来た」
そう言うと、まだ生き残っていた一人の少女、梨華に持っている剣を向ける。
「梨華!!逃げて!!」
飯田は叫びながら、梨華の下に行くが、梨華は恐怖で足が動かないようだ。
午族の速さではそこにつく前に梨華はやられてしまう。
- 30 名前:りょう 投稿日:2002年01月04日(金)22時18分05秒
- 魔物の剣が振り下ろされる瞬間、間一髪梨華の前に現れ、
自分の剣で魔物の剣を防いだ者がいた。矢口だった。
「ふ〜、ギリギリ間に合った〜」
「梨華!!」
飯田が梨華に駆け寄ると、梨華は飯田に抱きつき泣き始めた。
「怖かったよぉ〜」
そんな梨華を見つめ、飯田はある決心を決め、矢口に話し掛けた。
「矢口さん、私は梨華と話があるので、少しの間、3人で戦っていてくれませんか?」
その言葉を聞くと、矢口は頷き、魔物に向かって行った。
加護と安部はすでに魔物と戦っていた。
矢口も加わり、勢いよく魔物に剣を振り下ろす。
しかし、魔物には傷1つ付いていない。
「どういうこと!?」
矢口が混乱していると安部が答えた
「分かんない!でも、さっきから私の斧も加護の刀も全然歯が立たないの!!」
そんな時、魔物は笑いながら3人に言った
「ハハハハ!!我の皮膚は刃を通さん!!
さぁ!どうする!!十二支の者どもよ!!」
魔物は防御する必要がないので攻撃だけに集中し、
3人はそれを避け、少しでもダメージを与えようと、必死で攻撃する。
- 31 名前:りょう 投稿日:2002年01月04日(金)22時20分44秒
- その頃、飯田はまだ泣き止まない梨華に話し始めていた。
「梨華、よく聞いて、あなたは・・・本当は午族の娘じゃないの・・・」
「・・・え?」
梨華は泣く事を忘れ、ただ呆然としてしまった。
「あなたは卯族の直系、痣を持つ者よ。
痣を持つものは破壊の根源、つんくを倒せる唯一の存在、
あそこで戦ってる人たちもみんな痣を持ってる。
私はあの人たちに付いて行こうと思ってる。
だから、あなたも一緒に戦っていきましょう。」
飯田はやさしく、しかし力強く梨華に全てを話した。
その時、魔物が2人に気付き、交戦中の3人から離れ攻撃をしかける。
「そこで何をしている!!」
魔物が横に薙ぎ払った剣に気付いた飯田が間一髪で自分の大剣で受けるが、
魔物の方が力が大きい為、飯田は吹っ飛び、壁に激突した。
「お姉ちゃん!!??」
梨華が駆け寄り大声を上げるが返事がない、
どうやら頭を強く打ったせいで意識が無くなっているようだ。
額から血が流れている。
- 32 名前:りょう 投稿日:2002年01月04日(金)22時24分02秒
- それを見た梨華はゆっくり立ち上がり呟く
「私は・・・本当は誰とも戦いたくなかった・・・・・
魔物でも、つんくでも、話し合えばきっと心が通じると思ってた。
けど・・・・それは私の甘い考えにすぎないんですね。
あなた達は人を傷つける。私はそんなあなた達を絶対に許さない!!」
呟き終わる頃には、梨華は真っ直ぐ魔物の方を睨んでいた。
その時、彼女の目の前は急に闇に閉ざされた。
「え?・・・何・・これ・・?」
梨華が動揺しているなか、暗闇から突然大きな白い兎が現れた。
「私はあなたの中に存在する者。
かつて最大にして最強の破壊者と戦った十二支の一人。
私はあなたに力を与えましょう。この世のどんな生物にも負けない『力』を!!」
その頃、魔物を含めた全員が強烈な光を放っている梨華を見ていた。
「な・・・なんだその光は!?」
その光は一層強くなり、最後には道場全体を覆い、
次の瞬間、梨華の頭には兎特有の大きな耳、そして丸い尻尾が生えていた。
- 33 名前:ポー 投稿日:2002年01月06日(日)00時04分27秒
- イイね〜♪梨華チャンが..バニーガール。。。想像してしまったっス! あのー、最初から気になってたのですけどぉ、『十二支』なんだけども、今の娘。は13人で..誰か1人はどうなるのかなぁって、と、それとも元メンとかでるとか?って気になっちゃってマス。。あとぉ..ごっちんは何年かなぁ☆っなんて♪
- 34 名前:りょう 投稿日:2002年01月06日(日)21時57分25秒
- >>33ボーさん
毎度読んでくれてありがとうございます。
質問についてなんですけど、
>13人なのに『十二支』
十二支になれそうでなれなかったあの動物を使おうと思ってます(w
>元メン
は、今のところ登場予定はなしです(^^;
話の展開によっては登場するかもしれません。
>ごっちん
の種族はここで書いてもいいんですかね?
じゃ、ヒントだけで(^^;
「2通りの見方がある」
です。
- 35 名前:りょう 投稿日:2002年01月06日(日)21時59分03秒
このことに1番驚いたのは梨華だろう。
見知らぬ大兎に訳の分からない事を言われた後、
急に目の前が真っ白になって、元の世界に戻ったと思ったら、
自分に耳や尻尾が生えていたのだから。
しかし、梨華はすぐに気持ちを持ち直し、魔物の方を睨む。
それほど飯田への想いは強かったのだ。
「すごい・・・
私に力が湧いてくるのが分かる・・・・お姉ちゃん、私、行きます!!」
そうして戦闘態勢をとった梨華だが、大剣は手にしていない。
というより、何も武器を持っていないのだ。
それもそのはず、卯族は一切武器を使わない。
使うとすれば手足に鉄で出来たガードを付けるくらいの武闘民族なのだから。
しかし何故梨華は戦闘体制をとる事が出来たのか?
それは、梨華の体内で巡っている卯族の血がそうさせたのだろう。
- 36 名前:りょう 投稿日:2002年01月06日(日)22時04分39秒
- それを見た魔物は耳の下まである大きな口を開き、笑い声を上げる
「ハッハッハッ!!
お前ごときの小娘に何ができる!!!」
その瞬間、魔物の視界から梨華が消えた。
「何!!?どこへいった!!」
魔物が混乱している中、自分の後頭部に強いショックを受けたのが分かった。
後ろを振り返ると、消えたはずの梨華が立っていた。
「いつのまにそんな所に・・・
まぁ良い、我にはどんな攻撃も通用しないのだからな・・・・・・・!!?」
そう言った魔物だったが、急に膝を地に付けた。
「クッ・・・どういうことだ?」
- 37 名前:りょう 投稿日:2002年01月06日(日)22時07分44秒
その時、魔物の隙を盗んで飯田を治療していた安部が大声を出す
「そうか!!
たとえ刃物を通さない身体でも、打撃でダメージを与えれば外傷はなくても体内に衝撃が伝わるんだ!!」
それを聞いた魔物は焦る
「何?我はどんな攻撃も受けないはず、そんな事があってたまるか!!」
再び立ち上がり、梨華に向かって剣を振るうが脳に衝撃を受けている為、
今の梨華に避ける事は至極容易だった。
「オオオオオオオオ!!!」
そして梨華は一気に魔物に向かって連打を浴びせる。
「グッ!!グハァッ!!!!」
ついに魔物は口から紫色の混じったタール状の液を吐き出し大きな音と共に倒れた。
- 38 名前:りょう 投稿日:2002年01月06日(日)22時13分19秒
- それを少し悲しそうな目で見ていた梨華には大きな耳や丸い尻尾は付いていなかった。
「私に・・・・こんな力があるなんて・・
あっ!お姉ちゃんは!?」
梨華は飯田が倒れた方へ目を向けると、一気に安堵の色を見せた。
飯田は安部によって完璧に癒され、いつもの優しい目で梨華を見つめている。
「よくやったね。梨華」
そう、確かに自分の耳に飯田の声が届くと、梨華は再び泣き始めた。
このままいくと、十二支一番の泣き虫になるのはほぼ間違いないだろう。
- 39 名前:ポー 投稿日:2002年01月08日(火)19時56分58秒
- おお!泣き虫だけどかっけかったぞ梨華チャン! そっかぁ、十二支になりそこねたあいつかな!?う〜ん..どっちにもとらえられるって..あれかなぁ('O')まっ。その時がくるまで楽しみに読ませてもいます♪
- 40 名前:りょう 投稿日:2002年01月14日(月)19時07分30秒
- 更新滞ってて申し訳ありませんでした。
最近やたらとしなきゃいけないことが多くなったので、もしかしたら週1回の更新になるかもしれませんが、
どうか見捨てないで読んでやってください。
>>39ボーさん
分かりにくいヒントで申し訳ないです(^^;
それでは、今回も少ないですが更新します。
- 41 名前:りょう 投稿日:2002年01月14日(月)19時10分07秒
- その後、梨華もこの旅に参加する事を伝え、
総勢5人のメンバーになり、
親睦会という事で近くの酒場でささやかながらのパーティーを開いた。
やはり歳がある程度近いからか、全員がすぐに仲良くなり、
数時間ほど雑談をした後、いつものように安部が話を切り出す。
「さて・・っと、これからの事なんだけど、とりあえず次の目的地を」
そこまで言った所で梨華が手を上げた。
「なに?梨華ちゃん」
「私・・・やっぱりみんなの旅について行けません」
「「「「えっ?」」」」
誰もが自分の耳を疑った。
「どうして・・・?」
「私、卯族の村に行きたいんです。
私が何故捨てられたのか・・・それを知りたいんです。
そんな事にみんなを巻き込むわけにはいけないし」
「なに言ってんの」
梨華が話し終えてないのに矢口の声が割り込んでくる。
「私達もついて行くよ。
だって私達は仲間でしょ?」
その言葉に他の3人も頷く。
- 42 名前:りょう 投稿日:2002年01月14日(月)19時11分36秒
- 『仲間』
その言葉に梨華はどれほど嬉しかっただろう。
今まで心を許せる相手は飯田しかいなく、ずっと寂しい思いをしてきた。
それが今日始めて顔を合わして、ほんの数時間一緒の時を過ごしただけで、
心が通じ合い、生まれて初めて『仲間』と言われた。
矢口の言ったそれは表面的なものではなく、何か暖かいものを感じただけに、
自然と梨華の目から涙が溢れていた。
「えっ!?梨華ちゃんどうしたの?なんで泣いてるの??
何かいけないこと言っちゃった?」
「違うんです・・・嬉しくて・・・・・・
ありがとうございます・・」
頬には涙の後が残っていたが、梨華は満面の笑みを浮かべた。
- 43 名前:りょう 投稿日:2002年01月14日(月)19時15分46秒
- 5人が街を旅立ってから数日後、
とある森の中、梨華は何故か1人で1匹の魔物と対面している。
梨華の顔は今にも泣きそうだった。
そんな事になったのも数分前、矢口の一言から始まった。
「ねぇ、そういえば梨華ちゃんってあの時以外に魔物と戦った事あるの?」
「へっ?いや、戦ったことないですけど・・・」
すると飯田が会話に入り込んでくる
「えっ?梨華、いつか道場の生徒達と一緒に街の近くにいる魔物と実戦練習に行かなかったっけ?」
「あっ・・あのときは怖くてみんなの後ろで隠れてました」
梨華のばつの悪そうな言葉に、飯田は溜息をついた。
- 44 名前:りょう 投稿日:2002年01月14日(月)19時16分52秒
- 「う〜ん、いつまでも非戦闘要員でいるわけにもいかないし・・・
よし!ここら辺で戦闘練習しよう!!」
その言葉に梨華は驚く
「えぇ〜!!今からですか!?」
「そう、思い立ったが吉日ってね♪」
矢口は何故か楽しそうだった。
そして、安部と加護も賛同する
「そうだねぇ〜。それがいいかも」
「梨華ちゃん頑張って!」
「安部さん、加護ちゃんまで・・・
お姉ちゃ〜ん」
「梨華、頑張んなさい」
「ひぇ〜ん」
その時、草むらの陰から矢口より10センチくらい低い身長で、
それに似合わない老けた顔をした魔物が一匹姿をあらわした。
「『ゴブリン』だね。こんな魔物だったら軽い軽い。
それじゃあ梨華ちゃん、危なくなったら助けてあげるから頑張ってねぇ〜♪」
そう言って3人が加護の周りに集まると、加護は手で印を結び術を唱える。
すると地面の木の葉が4人を包み消えていった。
- 45 名前:りょう 投稿日:2002年01月14日(月)19時18分53秒
- 「ホントに1人なんですかぁ〜?」
梨華の今にも泣きそうな声に返事は返ってこなかった。
仕方なしにゴブリンのほうに身体を向けると、
ゴブリンは顔を真っ赤にして地団駄をふんでいる。
「えぇ〜!?何で怒ってんの??」
どうやら矢口の「こんな魔物だったら軽い軽い」という言葉に怒っている様だった。
そして、その怒りの矛先は梨華に向き、鋭い爪を振り上げ梨華に襲い掛かる。
「きゃあ〜〜〜!!!!」
思わず目をつむってしまった梨華がそっと目を開けると、
ゴブリンは飯田によって縦から真っ二つに切られていた。
「梨華!大丈夫??」
「お姉ちゃ〜ん」
梨華は飯田に抱きつく。
「もぉ〜、かおり何で助けるの〜」
矢口が木の上から飛び降りると、続いて安部、加護も降りてきた。
「ご・・ごめん。ついいつものクセで・・・」
飯田は申し訳なさそうに謝る。
「もぉ〜、せっかく魔物があらわれたのに。
しょうがない、魔物を探すよ!」
こうして『魔物を探す』と言う奇妙な行動は、その後3時間ほど続いた。
- 46 名前:夜叉 投稿日:2002年01月14日(月)23時32分20秒
- 初めてレスします。
一気に読まさせてもらったんですが、惹き込まれてしまいました。
出てきていないメンバーも気になりますが、石のレベルアップにも期待してます。
頑張ってください。
- 47 名前:ポー 投稿日:2002年01月15日(火)03時55分51秒
- よかった〜、更新されてる♪少しでも続きが読みたくて毎日何回もチェックってたんですよよ〜(´u`)忙しくてなかなかこれなくなるんですがこれからも楽しみに読ませてもらいますよ〜♪りょうさんペースで頑張ってくらさいね☆
ヒント、だいたい予想できましたよ♪たぶん..
- 48 名前:りょう 投稿日:2002年01月20日(日)17時51分17秒
- やっぱり更新するのに1週間かかってしまいました・・・
申し訳ないです。
けど今日模試も終わったし、学年末考査がある2月末までは更新ペースが上がると思いますので、
よろしくお願いしますm(_ _)m
>>46夜叉さん
惹き込まれるなんて言ってもらえて嬉しい限りです。
まだまだへたれな文章ですが、よろしくお願いします。
>>47ボーさん
ヒント予想できました?
ごっちんは物語の前半辺りには登場させると思うので。
それでは更新します。
- 49 名前:りょう 投稿日:2002年01月20日(日)17時56分11秒
- 梨華の戦闘強化訓練からさらに数週間が過ぎ、
彼女達はいくつかの街を経て、ようやく卯族の住む村に到着した。
「これが・・卯族の村・・・」
彼女達の目の前に広がったのは、どこか何者も寄せ付けない雰囲気の漂う村だった。
「とりあえず、入ってみましょう」
「そうですね」
何故か飯田が先頭に立ち、何故か縦一列で行動する。
村に入り、辺りを見回すと人の気配はするが、外に出ている者は一人もいない。
すると、前方に1人の老人と、その両隣に立っている男が目に入った。
その風貌から、老人はこの村の長だと分かった。
3メートルほど近づいた所で急に老人の口が開く。
「おぬしらは何者じゃ?こんな辺鄙な村におっても何も出んぞ。
さっさとこの村から出てもらおうか」
その言葉に5人は少したじろいだが、飯田が梨華を前に出し言った。
「この娘は卯族の娘、彼女が何故捨てられたのかを知るために此処に来ました」
その瞬間、今まで閉じているかのごとく細かった老人の目が一気に広がった。
「なんと・・・・・・・
わしの息子夫妻を呼んできてくれ」
老人が少し溜息混じりにそう言うと、右隣にいた男がその場を立ち去った。
- 50 名前:りょう 投稿日:2002年01月20日(日)17時57分48秒
2分ほどした後、男の後ろに老人が呼んだと思われる男女が姿をあらわした。
男女が老人の傍にやってくると、何の前触れもなく老人は持っていた杖で男の方を殴りつけた。
「息子よ・・何故お前の娘の梨華が此処にいる。
わしは確かに梨華を『殺す』よう命じはずじゃ」
「「「「「!!!!???」」」」」
5人は驚愕した。
まず、目の前にいる男女が梨華の父母だという事、
そして梨華の父の親、つまり祖父に殺される所だったという事。
この二つの衝撃に一瞬思考が停止したが、矢口が少し感情的になりながら言った。
「殺す・・・って、あんたそれでも人間か!!!」
「五月蝿い、わしら卯族は戦う事を望まん平和主義民族じゃ。
そう決めたからには痣のある子を生かしておくわけにはいかんのじゃ」
- 51 名前:りょう 投稿日:2002年01月20日(日)18時02分14秒
- そう老人が言った後、安部が感情を押し殺し落ち着いた口調で言う。
「平和・・・って、何だと思ってるんですか。
今、世界がどんな事態になっているか分かってますよね。
平和を望むのなら、そうなるように努力するのが普通なんじゃないですか?
あなたたちの考えは・・・絶対間違ってます」
その言葉に5人は賛同し、老人に目を向ける。
老人は少し間をあけて
「・・・・・・おぬしらの言いたい事は分かった
・・じゃがわしらはまだ戦いの中に身を置く事は出来ん
少し時間をくれ・・・」
そうして、老人はもう太陽が傾き始めた空を見上げ、溜息を1つ漏らし言った。
「今夜はもう遅い。
此処で1泊していくとよかろう。
部屋はわしの家に余っておる」
- 52 名前:りょう 投稿日:2002年01月20日(日)18時03分21秒
- 「それなら」
飯田が梨華の肩に手を置き言った。
「この子をあの夫婦の家に泊めてもらえませんか?
家族で居させてあげたいんです」
梨華は驚き、飯田のほうへ顔を向けるが、
飯田がいつものやさしい顔で見つめてくれてるのを見てホッとした。
老人は少し梨華を見ると、
「・・・・・まぁよかろう。
おい、梨華を家まで案内せい」
そう梨華の父母に言うと、梨華の母が少し進んで梨華の前に立ち微笑みながら手を差し伸べた。
「さぁ、行きましょう」
その言葉に、梨華は顔も覚えていない、ほぼ初対面の女性なのにも関わらず、
何か包み込まれるような気がして梨華も手を出し、民家の方へ歩いて行った。
- 53 名前:りょう 投稿日:2002年01月20日(日)18時04分41秒
- その夜、
老人の家、2階の客間に梨華を除く4人がそこで就寝する支度をしていた。
その時、ふいに加護が言葉を漏らした
「梨華ちゃん、今ごろどうしてるのかなぁ?」
それに安部が応える
「きっと、喜び合ってるはずだよ。だって十何年間も合えなかった親子だもん」
「そうですよね・・」
そう言って加護は横にある窓を見つめる。
窓の外には満開の星空が広がっていた。
- 54 名前:夜叉 投稿日:2002年01月21日(月)14時36分55秒
- なにやらありそうな感じですね。
石がネガティヴにならなければいいのですが。
いいらねえさん、妹想いですな。
更新の方は作者様のペースでお願いします。
こちらはまったりと更新をお待ちしてますので。
- 55 名前:りょう 投稿日:2002年01月21日(月)18時51分36秒
- 少し時間が空いたので書いてみました。
連日更新なんて久しぶりです(w
>>54夜叉さん
はい。何か起こそうと思ってます(w
それでは。
- 56 名前:りょう 投稿日:2002年01月21日(月)18時53分36秒
その頃、梨華と夫婦は自宅の前に着いた。
先に夫婦が入り、電気がつくと、
梨華はその暖かい光に吸い込まれるように入っていく。
母親が扉を閉めると急に父親が背伸びをして、今までとは予想が付かない明るい声を上げた。
「あぁ〜〜〜しんどかったぁ お〜い、夕飯にしようぜ」
「はいはい」
くすっと少し笑って母親はキッチンに向かう。
その変わり様に梨華は目を丸くした。
そんな梨華を父親は何事も無かったかのように言う。
「何してんの?
早くこっちに来て座れば?」
そう言われた梨華は何が何だか分からないまま椅子に座る。
「あ、今までの感じからして暗い雰囲気の奴らだと思ってたろ?
いつからか外では静かにしないといけないことが暗黙の了解になっててさぁ〜、
辛かったんだよね〜
だから、家の中ではその反動でうるさくなっちゃったよ」
そう言いながら笑う父親を見て、梨華は感動の再開とかがあるのかと思いきや、
いきなりまるで毎日の事のように家族として振舞う父母を見て、無償に嬉しくなり、
つられて梨華も笑顔を見せた。
- 57 名前:りょう 投稿日:2002年01月21日(月)18時57分40秒
- その後、父親が異様にはしゃぐ夕食が終わり、
食器をかたずけた後も小1時間家族3人で笑いあいながら話していた。
そして、そのままの雰囲気で父親が話題を変える。
「そういえば、明日には梨華は旅立っちゃうんだよな」
「えっ、・・うん」
「じゃあ今夜しかないって事かぁ〜」
「なにが?」
「よしっ、ちょっとついて来て」
「??」
父親に言われるがまま、寝室らしき部屋に案内される。
そして、その部屋にある本棚を横にずらすと、下に続く階段があった。
父親がその奥に入っていくのを見て、梨華も後を追う。
数十段降りていくと、四方をコンクリートで囲まれ、
下にはなにやら藁らしき物でできた物が敷き詰められている部屋があった。
「あっ、そこで靴は脱いでね」
「えっ? うん
この部屋は?」
「凄いだろ?わざわざ申族の里から仕入れてきた畳を使ってるんだぜ」
「いや、そう言うことじゃなくて、なんでこんな部屋があるのか―」
父親は梨華の言葉が届いていないかのように部屋の中央に立った。
「よし、梨華、これからお前に卯族の戦い方を教える」
「えぇ!?」
「どこからでもかかって来い!」
- 58 名前:りょう 投稿日:2002年01月21日(月)18時59分07秒
- なぜこの人はこんなに突拍子も無い事を言うのだろう。
そう思いながら梨華の頭の中は少し混乱していた。
「さぁ!」
父親に急かされ、梨華は我に返り戦闘態勢を取った。
よく考えれば、自分は自分の戦い方というものを知らない。
知っている事といえば、先日に行った半ば強制的な戦闘教化訓練から矢口に学んだ事くらいだ。
その学んだ事を思い出す。
「いい?梨華ちゃん。
私達スピード型の十二支はなっちやかおりみたいに魔物を力で押さえ込んじゃだめなの。
その速さを生かし、敵を撹乱させ、隙が出てきたところを狙うの。
そしたらいくら力が弱くたって絶対に勝てるよ」
矢口言う通り、梨華は実行した。
まずロケットのような踏み出しから、部屋中を駆け回る。
「おぉ、早い早い」
そして、父親が感心している隙を狙い、背後から殴りかかる。
しかし、梨華の視界はコンクリートの壁をぐるりと見回し、最後には天上が映った。
その端には少しにやけた父親の顔。
- 59 名前:りょう 投稿日:2002年01月21日(月)19時00分48秒
- 「惜しかったなぁ〜、もう少しだったね」
「・・・・今、何やったの?」
「んっ?『柔術』だよ」
「じゅう・・・・じゅつ?」
「そっ、柔術。
相手の力を受け流し、倍の力で跳ね返す。それが柔術。
今梨華に使ったのは基本的な技で、一応跳ね返す力を抑えたからあんまり痛くなかっただろ?」
そう言えば、何が起こったのか分からなくて驚いたが、
自分の身体をよく見ると、少し背中が痛いくらいで、他には痛みが無かった。
「・・・すごい・・」
そう言うと梨華はぴょんっと立ち上がり、急にテンションが高くなった。
「凄いよこれ!!どうやってやるの?」
「それを今から教えるんだろ!」
苦笑いをしながら父親が言う。
その光景は、少し変わっているがすでに父と子の光景だ。
- 60 名前:りょう 投稿日:2002年01月21日(月)19時04分12秒
次の日の朝、
もう既に村の出口に4人は立っていた。
「梨華ちゃん遅いね・・・」
「そだね。きっと別れを惜しんでるんじゃない?」
「大丈夫かな?」
「梨華・・・・・・」
そんな会話をしていると、梨華が息を切らしながら走ってきた。
「ごめんなさい!
ちょっと寝坊しちゃって・・・」
その昨日とは打って変わって明るい口調の梨華を見て、
4人は少し顔を見合わせて驚いたが、すぐにいつもの会話に入る。
「もぉ〜、梨華ちゃん遅い!」
「そだよ〜。結構待ったんだからね!」
「梨華ちゃん子供〜♪」
「もう、夜更かしはしちゃダメって小さい頃から言ってるでしょ!」
「ホントごめんね。 さぁ行こう!!」
こうして、朝日の中5人は歩き出した。
1人の少女に『自信』が芽生え始めながら・・・・・・
「あっ、そういえば加護ちゃん、昨日家で『畳』ってのを見たけどあれ気持ち良いねぇ〜♪」
「えっ!?畳があったの?良いなぁ〜
最近畳で寝てないから恋しくなっちゃったよ。
もしかして畳で寝た?」
「う〜ん、寝たって言うか、倒されたって言うか・・・」
「??
何それ?」
- 61 名前:夜叉 投稿日:2002年01月22日(火)20時23分44秒
- お父さんが気さくな人でよかった。
作者様が何か起こすと言っていたので、正直自分がネガティヴになりそうで(w。
次は実戦?
- 62 名前:りょう 投稿日:2002年01月24日(木)22時44分02秒
>>61夜叉さん
毎度レスありがとうございます。
戦闘シーンはもうすぐあると思いますが、たぶん来週になってしまいそうです(^^;
それでは。
- 63 名前:りょう 投稿日:2002年01月24日(木)22時44分39秒
「はぁっ!!」
飯田の気合と共に振り下ろされた大剣によって切り裂かれる魔物。
「てやっ!」
襲ってくる魔物の攻撃を受け流し、地に叩きつける梨華。
辺りを見回すと、2人以外魔物と戦っているものはいない。
そんな展開になったのも、卯族の村を出てすぐの事だった。
- 64 名前:りょう 投稿日:2002年01月24日(木)22時47分20秒
「ねぇ、」
「ん?なに?かおり」
飯田の言葉に一同は立ち止まる。
「私考えたけどさ、私達1回分かれた方が良いと思うの」
「えっ!?」
「いつ完全につんくが復活するか分かんないし、
このまま5人で行動するより二手に分かれて仲間を捜した方が早いと思うの」
その意見に安部が賛同する。
「うん。そっちの方が良いかもね」
「じゃあ、私と梨華、矢口となっちと加護の分け方でいいかな?
そっちの方が戦闘の時バランスが取れるから・・・・・
その時加護が会話の中に入る。
「いつ会うか決めておかないといけませんね」
「そうだね。 んと、どうしようかな・・・・うん、じゃあ1年後、子族の村で会いましょう」
その言葉に全員が頷き、旅の成功を祈りあい、それぞれの道へ進んで行った。
- 65 名前:りょう 投稿日:2002年01月24日(木)22時50分35秒
- そして飯田、梨華の2人は卯族の村から西の方角の街に酉族が住んでいるという情報を聞き、
そこへ向かっていた途中の高原で魔物に襲われたのだ。
戦闘が終わり、飯田がやっとという感じで口を開く。
「ふぅ、やっと終わったね」
「そうだね。 でも私も十分に魔物と戦えるようになったよね?」
「うん、梨華凄いね。よく一晩であれだけになったよ」
「えへへ。それとこれのおかげだね」
梨華が両腕を飯田のほうに差し出すと、
手の甲から肘にかけて鉄で出来た薄い板のようなものが装着されていて、
足の方にも同様に、足の甲から膝の方までを覆っていた。
それは、卯族の村を出る朝、梨華が父親から貰った物だった。
「これかなり使えるんだぁ〜。ある程度の攻撃なら無傷だし」
「お父さんに感謝しないとね」
「うん♪」
- 66 名前:りょう 投稿日:2002年01月24日(木)22時52分26秒
- そうして再び歩き出すと、梨華が飯田に話しかけた。
「そういえば、最近魔物が多くなってない?」
「やっぱりつんくが完全に復活するのも時間の問題か・・・・・・」
「じゃあ急がないと」
「うん、でも・・・・」
「でも?」
「お金がもう無いの・・・・・」
「へっ?」
「だからお金が・・・」
「じゃあどうするの!?」
「とりあえず、次の街で考えよ」
「・・・・」
「・・・・・」
そこには終始無言のまま歩き続ける少女2人がいた。
- 67 名前:りょう 投稿日:2002年01月24日(木)22時59分19秒
- 数時間後、少しにぎやかな感じがする町に到着し、
そこの酒場のカウンターで少しだけ残っていたお金で軽い夕食を取っていた。
これで、今夜宿に泊るギリギリのお金しか残っていない。
「・・・・・で、どうするの?」
そう言って梨華は飯田の方を向くが、
飯田は此処に到着する前に見せた憂鬱な顔はそこには無く、
変わりに少し真剣な顔があった。
「?? お姉ちゃん?」
「梨華、あれを見て」
飯田の指差した先にはカウンター越しの壁に貼られた紙があり、
そこには魔物の写真と、その下には結構な金額が書かれていた。
「これは・・ハンター専用の広告じゃないですか」
梨華の言う『ハンター』とは、十二支の血を受け継いでいない種であるにもかかわらず、
剣術や武術に長けている為、魔物を倒す事を生業としている者の事である。
その仕事内容はハンター専用のネットワークから人間に被害を与えている魔物を上げ、
その魔物が出現する周辺の町に広告を貼り、ハンターが自らその仕事を各町に設置された登録所で受け、
魔物を倒すというものだ。
- 68 名前:りょう 投稿日:2002年01月24日(木)23時00分33秒
- しかし、剣術や武術が長けていてもやはりある程度弱い魔物でないと倒す事は難しく、
そんな時は近くの町にいる十二支に仕事をネットワークの方から依頼し、倒してもらっているのだ。
飯田が指差した魔物はネットワークが定めている危険度のレベルがA。
レベルBからは十二支に依頼するのが普通であったが、この町の近くには十二支が住んでいなかったらしく、
そのままにしていたのであろう。張り紙の発行日が二ヶ月前になっていた。
「まさかこれでお金をもらうの?」
「そう、それだったら町の人も助かって一石二鳥でしょ?」
梨華は少し考えたが、覚悟を決めたように言った。
「そうだね。このまま放っておくわけにもいかないし」
「よしっ、そうと決まれば早速登録だ」
- 69 名前:りょう 投稿日:2002年01月24日(木)23時02分10秒
- そうして酒場を出た2人は真っ直ぐ登録所へ向かった。
登録所は基本的にいつでも開いていており、カウンターには1人の男性がいた。
飯田はその男に話しかける。
「あのぅ・・・・この広告を見て来たんですけど・・」
「ん?」
男は目を細めながらその広告を見て確認すると、少し遠慮がちに言った。
「これはレベルAの魔物じゃないか。
この魔物をお嬢さん達2人だけで倒すのは無理なんじゃない?
その気持ちは嬉しいけど、死んじゃうから止めておいた方がいいよ」
「大丈夫です。私達十二支ですから」
その言葉に男は驚いた。
「えっ!?そうなのかい?
それならいけるかも知れないな。よし、登録しとこうね」
「ありがとうございます」
登録を済ました2人は、とりあえずなけなしのお金で宿に泊り、
明日の朝、出発する事に決めた。
- 70 名前:りょう 投稿日:2002年01月24日(木)23時17分20秒
というわけで、これからは二手に分かれての行動となります。
まずは飯田・石川グループから。
話の場面がいろいろ替わると思いますがこれからも読んでやってくださいm(_ _)m
- 71 名前:夜叉 投稿日:2002年01月25日(金)12時51分42秒
- 続き、期待してますね。
- 72 名前:りょう 投稿日:2002年01月29日(火)23時07分43秒
- >>71夜叉さん
期待に応えられるように頑張りたいと思います(^^;
それでは。
- 73 名前:りょう 投稿日:2002年01月29日(火)23時14分01秒
次の日の朝、日の出と共に彼女達は颯爽と出発した。
登録所の男からの情報によると、
1、魔物の種類は獣人族、頭が獣で身体が人間。
身長は大人の男より少し高い程度の『シルバーウルフ』である。
2、そのシルバーウルフは現在、それより一回り小さい『ウルフ』を30体前後集め、
盗賊団を結成している。
3、主に南の森で行動をしている。
4、棲家もおそらくその森の何処かにある洞窟。
その情報通り、2人は南にある森へ進んでいった。
前までその森は南にある港町に行く為の交通経路だったのだが、
その盗賊団が現れてから港町に行くには森を避け大きく迂回しなければいけなくなったため、
その町との交流がほぼ無いに等しくなっていたのだ。
その森の中に2人の少女が入っていく。
中はここに来る前に昇り始めた太陽を完全に遮断し、地面は湿り、
あまりの暗さから夜のような錯覚を受けた。
- 74 名前:りょう 投稿日:2002年01月29日(火)23時17分21秒
進んでいくと、50メートル先の木の枝が少し揺れた。
それは木から木へと移動しているらしく、段々と揺れる木が近づいてくる。
2人は素早く戦闘態勢を取り、静かに待った。
梨華が小声で言う。
「魔物かな?」
「多分・・・・」
案の定、木の上から5体の茶色い毛並みのウルフが木を揺らし降りてきた。
そして2人を囲むように陣形を組む。
その中の1人が口を開いた。どうやら言語が使えるらしい。
「こりゃまた可愛いお嬢さんが2人して何しに来たんだい?
最近噂が広まったせいで人が来なくなって退屈してたんだ。さっさと金目の物を置いていきな。
じゃないとその綺麗な顔がグチャグチャになっちゃうよ」
そう言うと周りの魔物も無気味に笑い始めた。
- 75 名前:りょう 投稿日:2002年01月29日(火)23時18分47秒
- その時、魔物の薄笑いを止めるように飯田が言う。
「残念だけど、貴方達には何もあげられないよ。
だって此処で倒されるのだから」
「何言ってんだ?俺達を倒すだって?
つまらない冗談はよしてくれよ」
そう言って大笑いする魔物をまたもや飯田がいたって真剣な表情で止めに入る。
「私は冗談を言った覚えはなんだけどな」
今度は魔物も笑いを止め、その獣の顔を凄い形相に変え、大声で怒鳴り上げた。
「この女、調子に乗りやがって!!
やっちまえ!!!」
その瞬間、魔物たちは一斉に2人に向かっていく。
「いよいよだね。梨華、準備はいい?」
「うん。私、頑張る!」
2人は互いに言葉を交わし、自らも魔物に向かって行った。
- 76 名前:りょう 投稿日:2002年01月29日(火)23時22分56秒
1体の魔物が飯田に指先に付いている尖った爪を振りかざしてくる。
飯田は体制を低くし、その爪を大剣で逸らしてそのまま魔物を蹴り上げる。
魔物はその勢いで後ろにあった木の幹に身体を打ち付けられ、その場に倒れた。
その光景を見ていた魔物に飯田は素早く間合いを詰め、大剣で一刀両断する。
一方梨華には一気に2体の魔物が身体を掴むが、
梨華が魔物の腕を掴み少し重心を下げ、ひとたび力を込めると何故か2体とも地にひれ伏していた。
こうして、2対5の戦いは、一変して2対1になった。
最後の1体は何が起こったのだか分からないと言った表情を浮かべていたが、
気持ちを落ち着かせると『自分もやられる』と理解し、
さっきとは打って変わって恐怖の表情になり、後ろを向いて走り出した。
きっと住処に戻るのだろう。飯田はその魔物を目で追いながら梨華に言う。
「梨華、後を付けるよ」
「うん、分かった」
- 77 名前:りょう 投稿日:2002年01月29日(火)23時24分46秒
- 数十秒後、逃げ出した魔物は恐る恐る後ろを振り向くと、
目の前にはいつもの真っ暗な森が広がるだけだった。
魔物は安心した表情を浮かべ、溜息を一息入れる。
そして再び進行方向に振り返り歩き始めた。
自分の真上の木の枝に少女が2人いることを知らずに・・・・・
- 78 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月12日(火)22時51分00秒
現在、飯田、梨華の2人はある洞窟の前の叢に隠れている。
先程追った魔物がその洞窟の中に入っていくのを見て、進入するタイミングを計っていたのだ。
洞窟の入り口には魔物が2体、入り口の両端に立って見張りをしているが、
退屈なのか、時々あくびをして眠たそうな顔をしていた。
すると飯田が梨華に話しかける。
「あの魔物2体を動けなくする事出来る?」
「うん、何とか」
「じゃあお願いね」
梨華は頷き、一瞬にして飯田の前から姿を消し、
いつの間にか魔物の1体の背後に回り首の後ろを手刀で殴り気絶させる。
もう一方がいきなり倒れる仲間に驚いている隙にもう一度、
今度は頭に回し蹴りを浴びせて倒した。
「上出来。中にも気付かれてないみたいだね」
「うん、自分でもこんなに上手くいくとは思ってなかったよ」
敵の本拠地の前でそんな会話を交わし、2人は中へ入っていった。
- 79 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月12日(火)22時52分34秒
中は天上に明かりが灯っており、廊下と部屋とが分かれた、
とても魔物が作れそうに無い物がそこにはあった。
廊下には誰もいない為、慎重に進んでいく。目指すはシルバーウルフがいる部屋である。
進んでいく中で気付いた事は廊下が多少入り組んでいる事。侵入者を防ぐ為だろうか。
時々方向感覚が狂う時があったが、そこは十二支。持ち前の潜在能力でカバーしていた。
さらに奥に進んでいくと、通り過ぎた部屋からいきなり怒鳴り声が響いた。
2人は一瞬驚いたが、すぐさまその部屋の扉の前に行き、中の様子を伺った。
声だけだが、どうやら先程逃げた魔物が大目玉を食らっているらしい。
という事は、その部屋にはシルバーウルフがいると言う事になる。
2人は一度顔を見合わせ、再び扉の奥に耳を集中する。
- 80 名前:りょう 投稿日:2002年02月12日(火)22時56分48秒
- 中からはまだ怒鳴り声が響いていた。
「この野郎!!何やってんだ!!!!女2人に4体もやられ、
その上お前は逃げてきただと!!??許さん!!死ねぇ!!!」
「ひぃ!!」
「まぁまぁ兄さん、落ち着いて、これ以上仲間を減らしたらこれからの行動に支障が出ちゃうよ」
「(兄さん!? ということはシルバーウルフは2体!?)」
梨華は驚きを隠せず飯田に目をやると、飯田の顔も少し驚いていた。
「・・・・・ふん、」
「うんうん、素直でよろしい。君も今度からは気を付けるんだよ」
「はい・・・ありがとうございます」
「それにしても、ウルフを4体ものしちゃうなんて凄い女だなぁ」
「ああ、一度やり合ってみたいものだな」
「それはもうすぐ叶うよ」
「あ? 何でだ?」
「気付かないの?この逃げてきた奴に付いて来ちゃったんだろうね。
もう部屋の前にいるよ」
飯田はこれ以上隠れても無駄だと判断し、部屋の中に飛び込んでいった。
それに梨華も続く。
「貴方達を倒しに来ました」
「これ以上町の人々に恐怖させない為に」
- 81 名前:りょう 投稿日:2002年02月12日(火)23時01分42秒
中は意外と豪勢で、まるで国王の間にあるような赤い絨毯と玉座があり、
そこには少し顔が腫れ上がっているウルフと、やはり2体のシルバーウルフが立っていた。
シルバーウルフの風貌は、その名の通り銀色の毛だったが、
人間の血液だろうか、その毛には赤茶色の物がこびり付いていた。
「ほぅ・・こんな小娘がウルフを4体も・・・」
「ただのハンターじゃなさそうだね」
弟の方の言葉に飯田は答えた。
「その通り、私達は十二支。貴方達を葬る為、神に選ばれた者よ」
それを聞いて2体は少し驚く。
「十二支ですか。これは面白いですね」
「あぁ、主からの命もあるし、ここで片付けさせてもらおう」
そう言って2体は腰に挿してあった剣を抜くと構えを取った。
それに反応するように2人も各々の戦闘態勢を取る。
- 82 名前:りょう 投稿日:2002年02月12日(火)23時02分42秒
まさに今から戦闘が始まろうとしている一触即発の時に兄の方が口を挟む。
「おっと、そう言えばこいつの始末がまだだったな
おい、もうこいつはいらねぇよな?」
「そうだね。こんな所にまで連れて来ちゃったら流石の僕もフォロー出来ないよ」
その瞬間、少し目を丸くしたウルフの頭が胴体から離れ、赤い絨毯の上に転がった。
「よし、これですっきりしたな。
それじゃあおっぱじめようぜ!!」
それを見ていた梨華は明らかに不快の意を示し言った。
「貴方達、最低です」
こうして、戦いが始まった。
- 83 名前:りょう 投稿日:2002年02月12日(火)23時05分36秒
>>78>>79
名前入れ忘れてしまいました(^^;
- 84 名前:夜叉 投稿日:2002年02月13日(水)21時02分40秒
- ついにここまで来ましたね。
2体いると言うことで、やや劣勢な気もするのですが、二人にはがんばってほしいものです。
ある意味、石にとってはこれが初めての実践のような気がしますね。
作者様も頑張ってください。
- 85 名前:りょう 投稿日:2002年02月13日(水)23時51分23秒
- >>84夜叉さん
レスありがとうございます。
2人にはかなり頑張ってもらおうと思ってたり(w
それでは。
- 86 名前:りょう 投稿日:2002年02月13日(水)23時55分58秒
兄が飯田の方へ一瞬で間合いを詰め、自分が持っている極端に湾曲した剣を振りかざす。
飯田はそれを大剣で防ぎ、その剣を弾き飛ばし、一旦離れる。
あまりの素早さに飯田は少し戸惑い、息が荒くなった。
「(こいつ・・強い!)」
弟は梨華に針のような細い剣を連続で突いてくる。
梨華はそれを素早く避け、突いてきた腕を掴み投げ飛ばしたが弟は空中で一回転をして絨毯の上に着地する。
普通なら投げ飛ばした時点で決着はついているはずだった。
「(この戦い、いつもと違う!)」
梨華は下に伸ばしていた両腕を片腕だけ耳の後ろの方に上げ、
魔物に対して斜めに向き、今まで平手だった手を強く握り絞めた。
これは卯族の柔術の中には含まれていない格闘術だが、
柔術が効かない相手用に梨華が矢口に教わり自分で編み出した拳法である。
- 87 名前:りょう 投稿日:2002年02月13日(水)23時57分34秒
- 「あれ?構えが変わったね。何をするのかな?」
弟は相変わらず軽い感じで話し掛けてくたが、
その瞬間、梨華は少し残像を残しながら高速で移動する。
「おっ、消えた」
そして瞬時に背後に回り、回し蹴りをするが、前に屈まれ避けられた。
「そんな!!?」
「今度はこっちの番だね」
そして梨華にまたもや雨にような剣戟が襲い掛かる。
避けられた事のショックにより梨華は全てを避けれず腕を少し削られたようだ。
右腕の上腕部から血がにじみ出てきた。
- 88 名前:りょう 投稿日:2002年02月14日(木)00時00分24秒
「梨華!!?大丈夫!?」
「おらぁ!よそ見してんじゃねぇぞ!!!」
飯田が梨華の方を向いている隙に兄が斜めから切り下ろしてくるが、
とっさの所で後ろに下がり回避した。
そして飯田対兄の対決は一時の間硬直状態が続いた。
その数メートル横では傷ついた腕を押さえながら梨華が弟の方を向き、
いつでも対応が取れるように気を張り巡らせ考えていた。
「(どうしよう・・・柔術も効かないし、拳法も駄目。これじゃあ勝ち目が無いじゃない・・・・
いや、そんな事考えてちゃ本当に負けちゃう。考えるの。どうすれば勝つかを・・・・
あっ!そうか!!この手を使えばもしかしたら・・・・)」
弟はにやつきながら梨華の方を見ていて、梨華の考えがまとまるのを待っていたようだった。
「そろそろいいかな?」
「ええ、これできっと貴方を倒せます」
「それはそれは」
- 89 名前:りょう 投稿日:2002年02月14日(木)00時02分38秒
梨華は上げた右手はそのままで、下げている左手を広げた。
つまり、柔術と拳法を一緒にしようとしたのだ。
「片手のグーをパーにしただけで何かが変わるのかな?」
苦笑交じりでそう言う弟に対して梨華は無言で待っている。
「そろそろ決めようかな」
そう言うと弟は先程より一段と増したスピードで突いてくるが、
一度冷静になった梨華の反射神経を持ってすれば避けるのは簡単だった。
そして、弟の腕を掴む。
「僕に柔術を使っても無駄だっ・・・・グッ!!」
梨華は掴んだそれを投げ飛ばさず、握っている拳で弟のみぞおちを殴り上げる。
そして舞い上がる弟の腕はまだ持ったまま、絨毯の上へ背中から叩き付けた。
「グハァッ!!!」
弟は口から胃液を吐き出しながらもがき苦しんでいる。
硬直状態の飯田は兄に話しかける。
「どうやら向こうは終わったようね」
「・・・・チィッ!!」
- 90 名前:りょう 投稿日:2002年02月14日(木)00時04分26秒
梨華は弟から離れ、静かに終わるのを待った。しかし
「ハァ、ハァ、」
弟は苦しみながらも立ち上がってきた。
「そんな・・・・」
あれが通じなければ一体どうすればいいのか?梨華は困惑していたが、
その後の弟の言葉は部屋にいる全員を驚愕させた。
「・・・・・フッ、負けたよ。降参だ」
「えっ!?」
「実はね、僕は元々争い事は好きじゃないんだ。
だけど魔物として生まれたからにはしょうがないと思ってた。
今、君に負けてから、何故か心が晴れたような気がするよ。
僕も君達と一緒に戦っていきたい。いいだろ?」
そういうと、持っていた剣を絨毯の上に捨て、梨華に向かって手を差し伸べた。
飯田は何か嫌な予感がして梨華に言う。
「梨華!! そんな奴の言う事信じちゃ駄目!!!」
- 91 名前:りょう 投稿日:2002年02月16日(土)17時05分05秒
梨華は迷っていた。
午族の道場での戦闘以来、梨華は魔物の言葉を信じないでやってきた。
しかし、今自分の目の前にいる魔物は改心し、一緒に戦ってくれると言ってきてくれてる。
果たしてそれは真実なのか?
もしかしたら飯田の言う通り、騙されているのかもしれない。
多くの葛藤の末、梨華は答えを出した。
「飯田さん、私・・・・・もう一度・・信じてみようと思います」
「梨華!!!」
「ああ、分かってくれて嬉しいよ。
さぁ、一緒に行こう」
梨華は少し微笑みながら弟に手を差し伸べる。
その時起こった。
梨華の頭の横には獣の頭が乗り、
そして部屋中に牙が肉に刺さる音が響き渡る。
獣の頭が梨華から離れると、梨華は音も無く崩れ落ちた。
- 92 名前:りょう 投稿日:2002年02月16日(土)17時07分30秒
そのわずかの間、飯田の心は一気に絶望に満たされた。
そして同時に視界に入る銀色の魔物達への、憎悪。
弟は高らかに笑っている。兄もそれに釣られて笑っている。
その時から飯田の身体に異変が起こる。
「(こいつらが梨華を騙した・・・・・梨華の純粋な心を・・・
絶対に許さない!)」
そして飯田の身体を光が覆う。
彼女はもう一回り大きくなり、馬特有のたなびく尻尾。
そして長く美しかった髪は少し逆立ち、まるで鬣のようになった。
そう、獣化である。
次の瞬間、飯田は信じられないスピードで向かっていく。
兄の防御した剣を砕き、そのまま振り下ろす。
驚愕している弟に一気に間合いを詰め横に薙ぎ払う。
数秒の間に部屋には縦に割られた魔物と、横に割られた魔物が横たわっていた。
- 93 名前:りょう 投稿日:2002年02月16日(土)17時09分02秒
- 「梨華!!!」
獣化を解かないまま梨華の元へ駆け寄る。
大量の血液が首筋から流れ出ているが、息はあるようだ。
しかしそれも風前の灯。いつ消えてもおかしくなかった。
飯田は梨華を抱きかかえ、走り出した。
一気に洞窟を抜け、森の中を疾走する。
「(もっと速く・・・・もっと速く!!!)」
飯田はそう願いながら森の中を駆ける。
いつしか飯田は四足歩行をし、身体つきも変わっていく。
最後には、巨大な白馬が梨華を乗せて走っていた。
- 94 名前:りょう 投稿日:2002年02月16日(土)17時11分44秒
今飯田の身に起こっている事は『完全獣化』と言う。
本人の強い願いが完璧に十二支に届き、十二支がそれに同意した時のみ発動する。
十二支に全てを委ねる技だ。
これが出来るようになるには、本人と十二支の気持ちが1つにならなければいけない。
今回の場合、飯田の梨華を想う気持ちが、十二支へ届いたのだ。
- 95 名前:りょう 投稿日:2002年02月19日(火)17時51分35秒
梨華はそっと目を開けた。
自分の視界には見知らぬ天井。
「ここは?・・・・・・・・っ!!」
とりあえず起き上がろうとしたが首筋に激痛が走り、
その痛みから鮮明な映像と音声になって記憶が蘇る。
手を差し伸べた相手の顔が近づき自分に牙をむく。
薄れ行く意識の中で最後に聴いた獣の笑い声。
「そうだ・・私、魔物の言葉を信じて・・・・・」
その時、ドアが開き飯田が姿を現した。
「お姉ちゃん・・・」
「梨華・・」
「お姉ちゃん、ごめんなさい。
私、お姉ちゃんが止めてくれたのに、魔物の言葉を信じちゃった・・・・
本当にごめんなさい・・・・」
飯田は無表情のまま、大きな溜息をついた。
「ふぅ、本当だよ。
折角貰ったお金も治療費で三分の一は使っちゃったし、旅も大幅に遅れちゃった」
「・・・・・・」
梨華は何も言わず、ただ下を俯いているだけだった。
- 96 名前:りょう 投稿日:2002年02月19日(火)17時54分09秒
「・・・・でも、それが梨華のいい所なんだよね。
私はそんな梨華が大好きだよ。
いつまでも『信じる』っていう気持ちを忘れないでいてね」
「!!」
梨華ははっと顔を上げ、飯田の方を見る。
飯田の顔はこれまでに何度と無く見てきた、優しい顔をしていた。
「お姉ちゃん・・・・」
梨華は次の言葉を言おうとしたが、瞳から溢れ出てくる液体によって言うことが出来なかった。
「あぁ、もう、また泣く〜。
そんなんじゃ加護に笑われちゃうぞ!」
「うん・・・・お姉ちゃん、ありがとう・・」
「よし、じゃあ行こう!!次の街へ!!!」
「うん!!」
こうして、2人は新たな一歩を踏み出した・・・
- 97 名前:りょう 投稿日:2002年02月19日(火)18時00分37秒
えっと、暫くの間更新できなくなります。
理由は家の引っ越しと、それによる転入試験の勉強のためです。
引っ越してネットに繋ぐまでどれくらい掛かるか分からないので正確な日は書けませんが、
遅くても四月中には再更新出来ると思いますので、それまで待っていて下さい。
読んでいた皆さんには私事で大変申し訳無いのですが、再更新した後もどうぞ宜しくお願いしますm(_ _)m
では。
- 98 名前:感想娘。 投稿日:2002年03月12日(火)03時35分16秒
- いいですねぇ〜。かお・りかの姉妹がすごくはまってますね。
再開、楽しみにしています。
- 99 名前:りょう 投稿日:2002年03月30日(土)01時41分36秒
- 予定より少し早く復活することが出来ました。
実は引越してネットに繋ぐ間に書き貯めておいて大量更新をと考えていたのですが、引越す前にPCが故障してしまった為書き貯める事が出来ませんでした(^^;
なのでいつも通りの更新量となりますので御了承下さいm(_ _)m
それでは
- 100 名前:りょう 投稿日:2002年03月30日(土)01時44分54秒
- >>98さん
レスありがとうございます。
かおりかの姉妹は自分的に書いてて楽しいので、そう言って貰えると嬉しいです。
- 101 名前:友達〜子・丑・申〜 投稿日:2002年03月30日(土)01時46分48秒
時は夕暮れ
卯族の村から北へ50kmほど行った所に在る森の中、
周りが茂みに囲まれ、小さな空間のようになっている所で、加護が座禅を組みその横に矢口が立っていた。
未だ獣化を完璧にコントロール出来ない加護が矢口にそのやり方を教わっているのだ。
「いい?加護。
まずは自分の中の十二支に話しかけるようにするの。
無理に抑えつけず、素直な心で十二支と向き合ってごらん」
加護は頷くとそっと瞼を下ろした。
矢口は立ったまま真剣に加護を見つめる。
数分後
加護の額から流れ出たあせが頬を伝わり顎から滴り落ちている。
落ちる先はすでに小さな水溜りが出来ていた。
そして、少しずつだが加護の体から赤みの帯びた光が纏わり付いてきた。
矢口が突然手を二回ほど鳴らす。
「そこまで」
加護が目を開けると同じタイミングで光も消えていった。
「これ以上やると体の負担が大きいからね。
続きはまた明日にしよう。
森を出るまで後四日はかかりそうだし、まだ時間があるから焦らずやろう」
「……はい」
加護のは少し俯いたまま、矢口の言葉に応えた。
- 102 名前:友達〜子・丑・申〜 投稿日:2002年03月30日(土)01時51分47秒
「みんなー、夜ご飯が出来たよー」
場の雰囲気が一気に崩れるほど明るい声が茂みの奥から聞こえ、安部が顔を出した。
「おっ、待ってましたぁー
ヤグチもうお腹ペコペコだよ〜」
矢口も安部につられるように明るい声を出し安部の方へ向い、
加護もそれに付いて行く。
夕食を食べ始めると、加護も元気よく2人と話し始めた。
そしてその日の夜。
魔物除けの焚き火がまだ赤々と燃える中、加護は静かに体を起こし、
先程の場所へ足を運び、もう一度座禅を組み目を瞑る。
矢口から止められてはいたが、早く安部達のレベルに追いつきたいが為に行動に移したのだ。
瞑想に入り1分も立たないうちにココに来た方向とは逆の方の茂みから物音がした。
それは通常の人間が聞こえる範囲外の物音だったが、十二支である加護には容易に耳に入った。
「…魔物か……」
加護は瞑想を解き傍に置いてある刀を取り、いつでも抜刀できるような体制を取る。
物音がだんだん近づき、茂みも揺れ始め、
人影が見えたところで加護は一歩踏み出し恐るべき速さで人影に向かって刀を抜いた。
- 103 名前:友達〜子・丑・申〜 投稿日:2002年03月30日(土)01時56分41秒
しかしその刀は人影を切り裂かなかった。
人影の頬の真横数ミリの所で止まっていたのだ。
加護の目に入ったその人影の正体は自分と歳があまり変わらない、
何が起こったのか分からず目を丸くして驚いている女の子だった。
「あなた…だれ?」
「……あなたこそ」
加護は瞑想の邪魔をされたからか、少し不満げな表情をし、
刀を鞘に収めながら女の子に言った。
「私? 私の名前は松浦亜弥。
この先の村の娘よ」
「村の娘がこんな夜中に森に入ってきて大丈夫なの?」
「ううん、ホントは駄目なんだけど今日は特別」
「特別?」
「うん、ほら」
そう言って彼女が加護の目の前に差し出したものは、
少し大きめの花弁の部分がほのかに光っている花だった。
「わぁ、キレイ…」
先程までの表情とは違い、すこし感動しながら加護は言った。
「でしょ? これは『moonlight herb』。別名『月光草』って呼ばれるもので、
月の光が強い頃にしか咲かない珍しい花なんだよ。
私たちの村では、これを元に光を作ってるから摘みに来たの」
- 104 名前:友達〜子・丑・申〜 投稿日:2002年03月30日(土)01時59分30秒
- 「へぇ〜……」
加護は月光草を手に取り、まだ眺めていた。
すると少女は少し微笑むと
「こっちに一杯あるから一緒に来ない?」
と加護を誘う。
加護は少し迷ったが、その不思議な花に一目惚れしたせいもあって、亜弥に付いくことにした。
2人が出会った場所から数十mほど歩いた所に、
野原一面、まるで光の絨毯に覆われたかのような月光草畑に辿り着いた。
加護は目を輝かせた。
「わぁ〜!凄い!!」
「でしょ? 私も初めて見たとき鳥肌が立つぐらい感動しちゃったよ」
二人は暫くの間、その光り輝く光景に目を奪われていたが、
夜明けが近くなっているので、亜弥は摘み始めた。加護もそれを手伝う。
加護が一生懸命摘んでいると、後ろから頭へ何か乗せられた感覚がし、
後ろを振り向くと亜弥の満面の笑顔が目に入った。
(??)
加護は首を傾げながら乗せられた物を手に取る。
それは、月光草を円状に編み込んだ物だった。
加護は驚きを隠せないまま亜弥の方を向き直すと、
笑顔の亜弥に涙目になりながら飛び込んでいった。
その後、月光草を摘みながら、時折二人は光の絨毯の上で色々なことをして遊んだ。
- 105 名前:友達〜子・丑・申〜 投稿日:2002年03月30日(土)02時02分16秒
- 数十分後
「うん、こんなもんかな?」
そう言った亜弥の手に提げたバスケットの中には、溢れんばかりの月光草が入っていた。
「亜依ちゃん、ホントありがとうございました」
亜弥が深々とお辞儀をすると、加護は焦った口調で言う
「いやいや、自分が好きで手伝ったんだから…」
亜弥は顔を上げると、いつもの笑顔を見せた。
すると、少し言い辛い感じで加護が言った。
「でさ…あのさ……いつまで此処に摘みに来るの?」
「そうだなぁ〜、あと三日ぐらいは来ようかなって思ってるけど」
「じゃあさ……その三日間、私手伝ってもいいかな?
また…会いたいし……」
そう言って俯きかける加護に亜弥はいつもの笑顔で応える
「いいよ」
加護ははっと顔を上げた。
「えっ!?いいの?」
「当たり前じゃん、私たち友達だよ〜」
「ありがとう!!」
加護は亜弥に二度目の抱擁をした。
「うぷっ、もう亜依ちゃん苦しいよ〜」
「あっ、ご、ごめん」
慌てて離れると、二人は目が合い、くすくすと笑い出した。
- 106 名前:友達〜子・丑・申〜 投稿日:2002年03月30日(土)02時03分17秒
- 加護は村まで送ると言ったが、
「いいよ〜、ここから結構近いし」
と言い断られたので、月光草畑で別れることになった。
加護は何度も振り返り、亜弥に向かって手を振り、亜弥もそれに応える。
そして加護の姿が見えなくなった時、
亜弥は加護の前で見せる笑顔とは別の雰囲気が漂う微笑をし、
加護とは逆方向の森の中へ姿を消していった。
- 107 名前:友達〜子・丑・申〜 投稿日:2002年03月31日(日)20時01分12秒
次の日、
加護は何事も無かったかのように装い安部達と森の中を進むが、
今夜も亜弥と会えることを思うと不思議と笑みがこぼれた。
それを安部が見逃さずに突っ込む。
「あれぇ〜、加護ちゃんご機嫌だねぇ〜。
何かいい事でもあった?」
矢口がそれに同意する。
「ホント、最近元気無かったのに」
「えっ?い、いや、別に。
今日もいい天気だなぁ〜って思って」
「へぇ〜、天気ねぇ」
そう言って安部は加護に疑いの目を向けるが、加護は
「ハハハ…」
と引き攣って笑っているだけだった。
そして再び歩き出す二人の後を付いて行く加護の心中は破裂寸前である。
「(はぁ〜、危なかったぁ。
ここで亜弥ちゃんに会った事話しちゃったら冗談にならないよ)」
- 108 名前:友達〜子・丑・申〜 投稿日:2002年03月31日(日)20時01分46秒
- 何故ここまで加護が隠すかと言うと、
亜弥と別れる少し前に亜弥とこんな会話をしたからだ。
「ねぇ亜依ちゃん」
「ん?」
「今夜私に会ったこと、誰にも言わないで欲しいんだ」
「えっ、なんで?」
「ちょっと…事情があって……
だから誰にも言わないで。これは約束だよ」
「??…うん、分かったよ」
- 109 名前:友達〜子・丑・申〜 投稿日:2002年03月31日(日)20時13分59秒
- 「(友達との約束は守らないと)」
加護は再び心の中でそう呟き、二人の後を付いて行く。
もうすぐ夕暮れ時である。
日が沈み始めたということは、例の事をする時間である。
矢口と加護は適当な場所へ移動し、安部は料理を作り始めた。
30分後
「よし、終わり」
いつもの矢口の制止の声が聞こえ、加護は瞑想を解く。
「だんだん良くなって来てるよ。流石だね」
「いえ、まだまだですよ」
そう言ってはいるが、加護は自分でも今日は集中出来ていたと実感していた。
少しだが、覚醒した時以来会っていないあの老猿の声が聞こえたのだ。
そしていつもジャストタイミングで現れる明るい声が聞こえ、
矢口と加護は安部が待つ場所へと足を動かした。
今日も女の子らしい明るい食卓になるだろう。
- 110 名前:友達〜子・丑・申〜 投稿日:2002年03月31日(日)20時15分15秒
そして夜。
加護は静かに起きて、矢口たちを起こさないよう音を立てずにその場を去り、
素早く走り出した。
勿論、その日進んだ分月光草畑から遠くなっているが、
加護は鼻を利かして木と木の間を飛び移りながら光の絨毯に一直線に向かって行く。
加護がその場所に着くと、すでに亜弥は来ていた。
亜弥は加護に気付くと笑顔で手を振り、
加護もそれに応えながら亜弥へ近づいて行く。
- 111 名前:友達〜子・丑・申〜 投稿日:2002年03月31日(日)20時18分28秒
そんな風に次の日も過ごし、とうとう亜弥に会える最後の日になってしまった。
加護の月光草畑に向かう足も少し鈍る。
「(はぁ…今日で最後か………?)」
加護はふと気配を感じ後ろを振り向くが誰もいない。
気のせいだと思い、再び足を動かす。
走りながら頭の中に浮かんだのは少し疑問に思う事。
それは亜弥に村の話を聞くと、何故かお茶を濁らす感じを受けるのだ
「(村で何かあるのかな? 相談なら乗るのに)」
そう思い、加護は少しスピードを上げて行った。
そして目的地に到着したとき、いつものように…と言っても二日間だけだが、
亜弥の後姿が見えた。
加護は笑顔で亜弥がいる方に向かう。
「お〜い、亜弥ちゃ……!!!??」
しかし加護は亜弥の所へは行けなかった。
何者かに足を取られたのだ。
加護が下に目をやと、一本の太い根が加護の右足に巻きついている。
「(しまった!!魔物がいた事に気づかなかった!!!)」
- 112 名前:友達〜子・丑・申〜 投稿日:2002年03月31日(日)20時19分59秒
- 「加護!!」
突然聞き覚えのある声に呼ばれ振り返るとそこには矢口の姿があった。
「矢口さん!? どうして此処に?」
「最近夜中にコソコソ出ていくから付いて来たんだよ。
まさかこんな事になるなんてな……」
矢口は加護に絡まっている根を切り落とそうとしたが加護がそれを止めた。
「矢口さん! あそこにいる人は私の友達なんです!!
彼女が狙われる前に早く助けて上げて!!」
「分かった!」
矢口が亜弥に向かっている間、加護が亜弥に向かって叫ぶ。
「亜弥ちゃん!!ここに魔物がいる!!!
早く逃げて!!!!」
しかし亜弥の返事は2人を凍りつかせることとなる。
「フフフ…逃げる?どうして?
私がその魔物なのに」
「「!!!!????」」
そう言って亜弥は振り返ると、自分の魔物となった身体の全てを2人に見せた。
下半身から大木の幹のようになっており、そこから無数の根が蠢いている。
そしてその中の一本の先には加護と繋がっている。
矢口は加護の元に戻って加護を助けようとしたが、
すでに根は加護の体中に巻きつき空中へと持っていってしまった。
- 113 名前:友達〜子・丑・申〜 投稿日:2002年03月31日(日)20時20分56秒
- 「加護ぉ!!」
矢口が加護に繋がっている根を切り落とそうとした時、
他の根によって横に叩きつけられ木に激突した。
「あいたたたた…」
そう言って本体の方を見ると矢口は驚愕した。
「デ…デカイ……」
すでに亜弥の上半身は地上から3m付近のところまで到達していた。
亜弥は加護を自分の顔と同じ高さまで上げる。
加護は根に締め付けられているのだろう。少し苦しそうな声で言う。
「亜弥…ちゃん……どうして…」
「あら、まだ分かんない?
あんたは私に騙されたの。つんく様直々の作戦でね。
いやぁ、よくかかってくれたわ。流石つんく様。
加護亜依が『友情に飢えている』事を知り、それを利用するなんて」
「「!!!???」」
- 114 名前:友達〜子・丑・申〜 投稿日:2002年03月31日(日)20時21分57秒
そう、加護は友情に飢えていたのだ。
長い間歳の離れた矢口・安部と行動を共にし、いつも敬語を絶やさなかった。
上下関係を重んじる申族にとってはそれが普通だったからだ。
だから松浦亜弥という敬語を使わなくてもいい、
『友達』が出来たことは天に昇るほど嬉しかったに違いない。
さらに申族の村ではたとえ女の子でも女の子らしい遊びは一切させない。
遊びといっても野山を駆け回ることぐらいだ。
だから加護は花摘みや花冠を作ることが嬉しかっただろう。
そして加護は『友達』と交わした約束は絶対に破らない。
それらを全部踏まえてつんくが張った加護を葬る為の罠だったのだ。
- 115 名前:友達〜子・丑・申〜 投稿日:2002年03月31日(日)20時23分48秒
「さてと、そろそろ殺すとしようかな
じゃあね『亜衣ちゃん』」
そう言って加護を巻き付けている根の力を上げようとした時、
下から何やら光が放たれているのを感じ、亜弥は下を見下ろす。
地上では、強い光を発しながら怒りによって少し震えている矢口の姿があった。
「…許さない…加護の気持ちを弄んだあんたを……ヤグチは絶対許さない!!!!」
そう言うと矢口の身体は光に包まれ、
頭には大きな丸い耳、臀部には少し長めの尻尾が生えた。
亜弥は少し驚いたが、すぐに気を落ち着かせた。
「へぇ〜、それが噂の獣化かぁ、
面白い、相手になってやろうじゃん!」
そう言って亜弥は凄まじい速さで向かってくる矢口に数え切れないほどの根を向ける。
「小ざかしい!!!」
しかし矢口はその向かってくる根を一本も残さず切り裂き、
なおも突進を続ける。
- 116 名前:友達〜子・丑・申〜 投稿日:2002年03月31日(日)20時25分01秒
- これには亜弥も焦りだす
「え、何これ…信じらんない!!!」
亜弥は慌てて加護を捕らえている以外の全ての根を攻撃に使う。
しかしそれもまた、一本残らず消えていった。
「うそ……きゃあ!!」
そして矢口は遂に加護を捉えている根を切り裂き、
卯族には劣るが脅威の跳躍力で亜弥の下半身である幹の部分を切り落とし、
亜弥は上半身だけになり地上に落ちる。
加護はと言うと、
着地はしたものの騙されていたと分かった時からずっと下を俯き続けていた。
矢口は獣化を解き、亜弥の眉間に向かって剣を突き立てる。
「ひぃっ!」
亜弥は怯えた様子で震え続けていた。
矢口は優しい口調で加護に言った。
「加護……」
「…私が……やります…」
「そう…」
矢口は剣を鞘に納め、その場を加護に譲る。
加護は静かに亜弥の前に立ち刀を抜く。
「あ…い……ちゃん…たす…けて」
亜弥は未だ命乞いをしているが、
加護は今まで見せた事の無いような冷静な目をしていた。
そして加護の刀は真っ直ぐ亜弥の顎の下を通り、亜弥の頭は地に落ちた。
- 117 名前:友達〜子・丑・申〜 投稿日:2002年03月31日(日)20時27分20秒
翌朝。
朝食の為の木の実を取りに安部と矢口は森の中を歩いていた。
加護はまだ眠っているようだ。2人だけでの行動である。
「そう…なっちの知らない所でそんな事があったんだ」
「うん……」
2人は少し俯き加減で歩いていたら、
何やら上のほうからガサガサと音がして、木の葉が落ちて来る。
そして両手一杯に木の実を抱えて加護が降りて来た。
その顔は満面の笑顔だった。
「置いて行っちゃうなんて酷いじゃないですかー。
私にも手伝わせてくださいよ」
そう言って加護は安部の持っている布で出来た袋に持っていた大量の木の実を入れた。
「あぁ、ご…ごめん加護」
「ごめんね加護ちゃん」
「全然いいですよ」
2人が誤ると加護は笑顔で返し、2人の前を歩き出した。
「さあ、どんどん取りましょう。今日の私は一杯食べますよ!」
- 118 名前:友達〜子・丑・申〜 投稿日:2002年03月31日(日)20時28分15秒
- 安部と矢口にはそれが偽りの元気だと言う事は分かっていた。
そのわざと明るく振舞う加護の姿が痛々しくて、切なくて、
矢口は思わず加護に抱きついた。
「加護…泣いてもいいんだよ。
そういう時は、思いっきり泣いちゃえばいいんだよ」
「そうだよ加護ちゃん、私たちが受け止めてあげるから、
いつだって泣いてもいいんだよ」
「!!!」
- 119 名前:友達〜子・丑・申〜 投稿日:2002年03月31日(日)20時29分14秒
申族では泣く事は禁止されていた。
『泣く』という行為は自分の弱さが他人に見られる事になってしまう。
そうなると敵にそこを突かれてしまう為、忍者としてやっていけなくなるからである。
しかし加護は、この人達になら弱さを見せてもいいと思った。
この人達なら全てを受け止めてくれる。そんな気がした。
そして彼女は矢口の胸の中で、物心付いてから初めての涙を出す事となった。
- 120 名前:りょう 投稿日:2002年03月31日(日)20時35分27秒
春休みなんでいつもより更新量が多めです。
次回からかおりか姉妹の話になります。こっちは仲間を増やそうと考えてます。
誰が仲間になるかは読んでのお楽しみです(w
それでは
- 121 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月01日(月)14時14分54秒
- 今日初めて最初から全部読んだんですけど、
続きが楽しみな小説が増えて嬉しいです。
誰が仲間になるのかな〜。GかYだと嬉しいな〜
- 122 名前:酉との出会い〜午・卯〜 投稿日:2002年04月14日(日)04時06分14秒
- 一方その頃、梨華の怪我が完治し意気揚々と出発した2人、
「近道をしよう」
と言う飯田の提案によって避けて通るはずだった森の中に入る。
そこまでは良かった。
しかし、
「………………」
「………………」
「……………迷っちゃった…」
「お姉ちゃん……」
この人に付いていって大丈夫だろうか?と自分の身を案ずる梨華であった。
そんな梨華の目線に飯田は少したじろいだが、わざと明るい声を出す。
「大丈夫!方向さえ合ってればそのうち着くんだから。
さあ、行くわよ!!」
「とほほ……」
そうして姉妹は木漏れ日が綺麗な森の中をひたすら歩いて行った。
- 123 名前:酉との出会い〜午・卯〜 投稿日:2002年04月14日(日)04時10分14秒
一時間後
「……着かないね…」
「…………」
梨華の突っ込みに冷や汗を流す飯田。
「だ、大丈夫だって。こんだけ進んだんだからもうすぐ出られるよ
太陽があっちから昇ったんだから方向は合ってるわけだし…」
飯田が指差す方向には、昇ってきた太陽は既に南の空に到達しており、
変わりにカラスを何倍にも大きくしたような一つ目の怪鳥が2人に向かって飛んできた。
「魔物!!?」
戦闘体制に入る飯田のその言葉に反応して梨華も構える。
しかし魔物は2人の所へは行けず、横向きになって地面へと落下した。
「「??」」
2人は不思議に思ってその魔物を覗き込むと、魔物の腹部に矢が2本刺さっている。
「これは…一体誰が……」
その時突然上の方から声が聞こえた
「いやぁ〜、危なかったね。
私がいなかったら君たち死んじゃってたよ」
そう言って木の上から降りて来た人影は身長は高いが飯田より少し低い位だろうか。
髪は梨華より少し短く、肩に弓を掛け、
もう片方の肩には矢を入れているであろうと思われる筒を背負った、
大きな瞳が印象的な少女だった。
- 124 名前:酉との出会い〜午・卯〜 投稿日:2002年04月14日(日)04時12分41秒
いつものように飯田がまず口を開く。
「あなたが助けてくれたの?ありが―」
礼を言いかけた飯田を彼女は人差し指を立てた手を飯田の前に差し出した。
「おっと、礼はいらないよ。
この十二支に選ばれた世界の救世主、吉澤ひとみにとってこんな事朝飯前だからね」
そう言って少女は右腕を捲くり、肩の辺りに浮かび上がる『酉』の文字を2人に見せた。
「「あなたも!??」」
ぴったりと息の合った2人の言葉に少女も驚く。
「あなたも…って事はあなた達も!?」
2人は頷き、そしてひとみに今までの経緯を話した。
彼女は顎に手を当て、少し俯いた。
「そういえば最近魔物の数が急に増えてきたと思ったらそんな事になってたんだ…」
そこで飯田がひとみに問う。
「…で、私たちの仲間になってくれませんか?」
「そんなの当たり前じゃん!
私がやらないで誰がやるのさ!!」
と、ひとみは自分の方へ親指を向け、誇らしげに言った。
梨華はホッとして飯田の方を向くが
「(…お姉ちゃん……?)」
飯田は笑顔を見せているものの、梨華の方へは向かず、
何故か微妙な表情をしていた。
- 125 名前:酉との出会い〜午・卯〜 投稿日:2002年04月14日(日)04時16分12秒
- その後、3人はとりあえず酉族の街を目指してひとみの案内により森を無事に抜け、
道場へと向かった。
道場ではひとみの持っていた弓より何倍も大きく、
常人の身長より少し高いくらいの弓が並び、
それを持っている人が横一列に並んで的を目掛けて矢を放っていた。
梨華が不思議そうにひとみに尋ねた。
「何でここにある弓はあんなに大きいの?」
「ああ、この弓は弓道用の弓だからね。
弓道って言うのは対魔物用の弓術とは違って、人の精神を鍛える為とかにやる競技。
だから弓道には礼儀作法や打つまでの動作が事細かく決められてるんだ」
「そうなんだ」
「うん、でも私はあんまりこうゆうの好きじゃないんだよね」
「えっ?なんで?」
「だってそんな礼儀とかめんどうじゃん?
型…あっ、『型』って言うのはさっき言ってた打つ前の動作の事ね。
その型とかをキレイにしても的に当たんなきゃ意味ないもん。
弓道の階級で『段』って言うのがあって、それは型の素晴しさを見るんだけど、
毎月一回行われる大会では決められた矢の数で多く当てた人の優勝。
つまり型はどうでもよくなっちゃう。
そんな矛盾してるのも嫌いな理由の一個かな」
- 126 名前:酉との出会い〜午・卯〜 投稿日:2002年04月14日(日)04時17分03秒
- 「じゃあ吉澤さんは―」
そこでひとみは何故か会話を切った
「よっすぃーって呼んで。
みんなそう呼んでるし、私も結構気に入ってるから」
「えっと…よっすぃー?」
梨華がそう呼ぶとひとみは笑顔で返した。
「よっすぃーはその『段』は持ってないの?」
「いや、私は別にいらなかったんだけどうちの爺ちゃんがうるさくてね。
『直系のモンが段を取らんとは何事じゃ!!』
とか言っちゃって無理やり受けらされちゃったんだ」
「ふぅ〜ん…」
「ま、一応九段だけどね」
「…それって凄いの?」
「1番上が十段だからその1個下だよ」
「すごぉ〜い!」
「まあね♪」
素直に感心する梨華に、少し誇らしげにひとみは言った。
- 127 名前:酉との出会い〜午・卯〜 投稿日:2002年04月14日(日)04時18分39秒
「この部屋じゃない?」
梨華とひとみが会話をしている中、飯田が言う。
「ん?ああ、ここだここ」
そう言ってひとみは周りより少し大きめの扉を勢いよく開けた。
「ただいま!今帰ったよ!!」
飯田と梨華には十分すぎるほどの大きさだったが、
その声に負けずとも劣らない声が帰って来た。
「この馬鹿モン!!あれほど森へは入るなと言っておるじゃろうが!!!」
ひとみの言っていた『爺ちゃん』なのだろうか?
1人の老人がこめかみに青筋を立てて怒りをあらわにしていた。
ひとみは老人の怒りを軽くあしらった。
「まあまあ、いいじゃん。
それより私、つんくを倒しにこの人達と旅に出るから」
「なに!?」
老人がひとみの奥を見ると2人はお辞儀をした。
「午族の飯田圭織です」
「卯族の石川梨華です」
- 128 名前:酉との出会い〜午・卯〜 投稿日:2002年04月14日(日)04時19分19秒
- 老人はさっきとは打って変わって声の大きさを普通に戻し、2人に言った。
「あぁ、よくぞおいでなさった。
私はこの娘。の祖父で源三と申します。
……少し時間を貰えんじゃろうか?少し話しがしたい」
その言葉に飯田が応えた。
「ええ、いいですけど」
「ありがとう……おい、ひとみ」
「ん?なに?」
「少し席を外せ」
「えぇ!!何で!!」
「何ででもじゃ」
「…ふん!いいよ〜だ!梨華ちゃん、道場の中案内してあげるよ!!」
「えっ?う、うん…」
梨華は少し困ったように飯田を見た。
「いいよ、話は私が聞いとくから、行ってらっしゃい」
「ほら、行こ!!」
半ば強引にひとみは梨華の手を引っ張り、その部屋を後にした。
部屋には源三と飯田の2人。
源三は2人が出て行くところを見るとゆっくり口を開いた
「さて…、あなたは分かっているようじゃが……」
「はい、ひとみさんの事ですね」
「そうじゃ…あいつは……」
- 129 名前:りょう 投稿日:2002年04月14日(日)04時25分26秒
- すみません。ここで一回切ります。
新しい環境に慣れないせいか、文章が上手く書けませんでした。
まだ本調子とはいかないですけど、頑張っていこうと思いますので宜しくお願いしますm(_ _)m
>>121さん
レスありがとうございます。
あなたのレスが復活を早めてくれました。ありがとうございます。
>誰が仲間になるのかな〜。GかYだと嬉しいな〜
予想当たっちゃいましたね(w
分かりやすい小説でごめんなさい(^^;
- 130 名前:no-no- 投稿日:2002年04月14日(日)23時22分03秒
- りょうさんこんな小説も書いていたのね。
かなり面白かったです。
続き期待してます。
- 131 名前:no-no- 投稿日:2002年04月14日(日)23時30分22秒
- リアルでしたー。
よしこは何が言いたいのかがわからないー。
続きが気になるー。
更新待ってますです。
- 132 名前:しんご 投稿日:2002年04月14日(日)23時48分23秒
- >>130>>131no-no-さん
多分他の作者さんと間違えてると思います。今調べたら同じ名前の作者さんがいました。
勘違いさせてしまって申し訳ないです。
これからは『しんご』でやっていこうと思います。
本当にすみませんでした。
- 133 名前:no-no- 投稿日:2002年04月15日(月)14時56分29秒
- どううもすみません。
でも、面白かったのは本当です。
これからもよんでいきます。
- 134 名前:酉との出会い〜午・卯〜 投稿日:2002年04月20日(土)03時10分58秒
その頃、梨華は1人である部屋にいた。
ひとみにそこで待っているように言われたのだ。
その部屋はと言うと、さっき酉族が矢を放っていた場所と似ているが、
打つ所と的との距離が明らかに開きすぎている部屋だった。
「よっすぃー遅いなぁ〜」
少し呟いていると、扉が勢いよく開き、袴姿のひとみが登場した。
「お待たせ〜♪」
「あっ!よっすぃー似合ってるね!カッコいい!!」
「でしょ?弓道するときはこの格好なんだ」
そう言ってひとみは梨華に見せるように一回転した。
「で、今から何するの?」
「もちろん、梨華ちゃんに弓道を見せてあげるんだよ」
「ここで?」
「うん」
あっさりと答えるひとみに梨華は少々困った感じで尋ねた。
「でも…、さっき見たのより随分的が遠いよ」
「大丈夫。これは『遠的』って言ってちゃんとした弓道の中の種目なんだよ」
「へぇ〜」
- 135 名前:酉との出会い〜午・卯〜 投稿日:2002年04月20日(土)03時12分33秒
- 「まぁ見てて」
そう言うとひとみは左手に弓、
右手に『弽(ゆがけ)』と呼ばれる篭手の様な物を着け矢を2本持ち腰に当て、
的に向かって摺り足で進んで行き、的に対して真横に向き直し、体制を整える。
弓を床から垂直に目の高さぐらいまで持ち上げ、2本の矢を重ね、
弓と弓を持っている手の指で挟むように1本を押さえて、
残りの1本は持ったまま挟んでいる1本を的の方へ滑らせ、
羽根が付いている方にある『筈(はず)』と呼ばれる凹の部分と弦を噛み合わせる。
その時静寂な場に「カチッ」と噛み合う音が響いた。
さらに右手に持っている矢を、
弓に付けた矢の先と逆になるように重ねて右手を腰に当てる。
それと同時に弓を左足の膝に乗せる。
重ねた矢を矢の先1cmのところを右手の小指と薬指で持ち、腰に当てた。
そして弽を弦と合わせ、顔を的の方へ向ける。
ひとみが目を瞑り一呼吸置いた時、ひとみの身体から光が溢れ出し、
次の瞬間ひとみの背中には大きな白い翼が2つ生えていた。
- 136 名前:酉との出会い〜午・卯〜 投稿日:2002年04月20日(土)03時13分31秒
- 「(獣化!?)」
梨華は驚き目を大きく開いてひとみを見ると、
彼女は真剣な眼差しで的だけを見ていた。
そして弓を頭の上まで上げ、そのまま的の方へずらす。
右手を後ろに引き、左手を的の方へ押し出すように弓を下ろす。
矢の高さはひとみの口の部分でピタリと止まった。
その後、数秒間さらに静かな雰囲気が道場全体を包み込み、
次の瞬間、矢は放たれ、常人には見えないようなスピードで的に向かい、
「タンッ」と渇いた様な音が道場に響き渡った。
「ふぅ…」
少し疲れた調子でひとみが溜息を漏らす。
その時既に獣化は解けていた。
梨華は思わず拍手をした。
「すごい…、今矢が物凄く速かったよ!!」
「当たり前じゃん!私がああやって打つ矢は誰も止められないよ!!」
笑顔で返すひとみはいつもの様に答えた。
- 137 名前:酉との出会い〜午・卯〜 投稿日:2002年04月20日(土)03時15分06秒
- 「いるわよ。ここに一人」
聞きなれた声がして2人は振り向くと、扉のほうに飯田が立っていた。
飯田の言葉にひとみが反応する。
「何?誰が止められるって言うの?
もしかして飯田さん?」
「いいえ、私じゃない。――
梨華よ」
「えっ!?私!!??」
梨華は自分を指差し動揺している。
「おいで、梨華」
そんな梨華の手を引き、先ほど矢が通った線上に梨華を立たせた。
梨華とひとみとの間は約20m。
ひとみは少し驚いて飯田に忠告する。
「いいの?梨華ちゃん怪我しちゃうよ」
「大丈夫。この娘は止めるから」
その言葉でひとみが段々本気の顔になってくるのが遠目でも分かった。
梨華は少し泣きそうになりながら飯田に小声で言う。
「ちょっとお姉ちゃん!!何てこと言ってんの!?
あんな速いの止められるわけ無いじゃん!」
「梨華、大丈夫。あなたなら止められるわ。
自分に自信を持ちなさい」
こうして、
これから先何度もあるかもしれない、十二支の痣を持つ者同士の対決が始まった。
- 138 名前:酉との出会い〜午・卯〜 投稿日:2002年04月20日(土)03時16分51秒
飯田は梨華とひとみの中間点あたりから離れて立っている。
ひとみはさっきと同じように型をこなしている。
梨華はと言うと、覚悟を決めたようだ。ひとみに全神経を集中させている。
とうとうひとみの背中に翼が生え、弓がしなっていく。
そして次の瞬間、ひとみから矢は放れ、梨華に向かって飛んでいった。
力と力の拮抗の結果だろうか。ひとみの矢が梨華に近づいた刹那、
梨華の手の辺りが光り、光が収まった頃、
梨華の手から摩擦により煙が出ていて、その手には矢がしっかりと握られていた。
- 139 名前:酉との出会い〜午・卯〜 投稿日:2002年04月20日(土)03時18分19秒
- 「うそ……どうして?」
床に膝を付き愕然としているひとみに飯田が近き口を開く。
「何故あなたの矢が梨華に止められたか分かる?」
ひとみは俯いたまま首を横に振った。
「それはね…今のあなたに『心』が篭ってなかったからよ」
「…『心』……?」
「そう、私達の力量には身体的な物もあるけどそれは十二支の相性の問題。
私と梨華がかけっこしたらもちろん梨華が勝つし、腕相撲したら私が勝つと思う。
でも今回はあなたも梨華も同じスピード型。
じゃあなぜ獣化も出来るようなあなたが梨華に負けたかというと、
『心』なの。
あなたは弓道の心を知らなかった。
例え格好が完璧でも、『心』が篭ってないと真の強さは生まれないの」
じっと飯田の話を聞いていたひとみは口を開いた。
「私は……どうしたらいいの?」
「大丈夫。仲間との約束の日までまだあるわ。
しばらく此処で源三さんにしっかりと『心』について学んでいきましょう」
ひとみはしっかりと頷いた。
いつの間にか飯田のそばに来ていた梨華が飯田に言う。
「あのお爺ちゃんと話したことってこの事だったんだね」
「うん」
- 140 名前:酉との出会い〜午・卯〜 投稿日:2002年04月20日(土)03時20分02秒
――――――――――――――――――――――――――――――
「…あいつの射には『心』が篭ってないのじゃ。
九段を取ったときも心が篭ってないから取らせまいと思ったのじゃが、
型が完璧じゃから他の審査員が許さなくてな……」
「心が篭ってないと心に隙が出来てしまう。心を利用する事が得意なつんくに狙われやすい。
十二支の記憶による先の戦いで分かっています」
「人間でつんく側に付いた奴もおるらしいしの…」
「ええ…」
「そこで、もう少しひとみを此処に留めてくれんじゃろうか?
あのまま行かすとあまりに危険じゃ」
「はい、分かりました
その代わりと言っては何ですが、どこか部屋を1室借りてもよろしいでしょうか?」
「もちろんよいが、またどうして?」
「梨華がまだ自由に獣化出来ないのでこれを機に修行しようと思うんです」
「そうじゃったか、分かった。すぐに用意させよう」
「ありがとうございます」
――――――――――――――――――――――――――――――
こうして、酉族の街にて、ひとみと梨華の修行が始まった。
- 141 名前:酉との出会い〜午・卯〜 投稿日:2002年04月20日(土)03時21分28秒
- 修行1日目。
とある1室、ひとみが源三の話を聞いている。
「まずは弓具の説明からじゃ」
「え〜そんな所から!!?」
「当たり前じゃ!!ほら、行くぞ!!」
そしてこちらは飯田と梨華の2人。
梨華が座禅を組んで集中している。
「はい、やめ」
梨華は瞑っていた目を開けた。
飯田が梨華に聞く。
「どう?なにか感じた?」
「ううん、まだぼんやりとしか…」
「そう…、焦らずじっくりやりましょう」
「うん…」
修行5日目。
ひとみは源三の教えに口では文句を言いながら真面目に取り組んでいる。
飯田は瞑想している梨華の身体のオーラが強くなっていくのを感じ、
初めて梨華は自分の中の十二支の声が聞こえた。
修行1週間目。
ひとみの方はもう今日の修行は終わったらしく、梨華の修行を見に来ていた。
その時、梨華は見事獣化することが出来た。
「梨華ちゃんやったじゃん!!」
「うん!!!」
大喜びする梨華だが、次の瞬間、勝手に足が動き出し、木の壁に衝突してしまった。
飯田は頭を押さえ、仰向けになって倒れている梨華に言った。
「あっちゃぁ〜、あとはコントロールだね」
「うん……」
- 142 名前:酉との出会い〜午・卯〜 投稿日:2002年04月20日(土)03時22分12秒
- 修行12日目。
この日の朝、荷物を抱えた3人が酉族の街の前に立っている。
そう、今日がついに出発の日なのだ。
見送りには源三が来ていた。
「ひとみ、『心』を忘れるんじゃないぞ」
「うん、分かってるよ」
飯田が口を開く
「よし、じゃあ行こうか」
「「うん!!」」
こうして、新たな仲間を得て旅は続いていく……
- 143 名前:酉との出会い〜午・卯〜 投稿日:2002年04月20日(土)03時24分08秒
酉族の街を出発してすぐの事、ひとみは梨華に話しかけた。
「梨華ちゃん」
「ん?なに?よっすぃー」
「私、梨華ちゃんの事好きになっちゃった」
「ええ!?好きってそんな簡単に……」
「いいじゃん、痣を持つ者同士が恋愛しちゃいけないって言うのは無いんだし」
「そういう問題じゃないんじゃ…」
そこに飯田が話に割り込む
「ちょっとぉ!姉の私を通さないでイキナリ言わないでくれる?」
「いや、それもちょっと違うんじゃ…」
「まあまあ。お義姉ちゃん認めてくださいよ」
「もぉ〜〜〜!!!!!」
梨華の叫び声が響く中、奇妙な3姉妹が誕生した……
- 144 名前:しんご 投稿日:2002年04月20日(土)03時30分28秒
- いかがでした?
吉澤のキャラがあんまり出てないように感じたのですがどうでしょう?(^^;
もうちょっと過信家にしたかったのですが…
>>no-no-さん
>面白かったのは本当です。
ありがとうございます。嬉しいです。これからもお付き合い下さいm(_ _)m
- 145 名前:no-no- 投稿日:2002年04月20日(土)16時40分58秒
- 更新お疲れ様です。
前はすみませんでした。
梨花ちゃんも無事獣化できるようになってよかったです。
よしこの暴走を楽しみ続き待ってます.
- 146 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月20日(土)20時52分04秒
- 今日はじめて読みました!!
おもしろいですねー(w
頑張ってください♪
いしよしなのか?(w
- 147 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月21日(日)06時47分51秒
- 白い翼が生えたよっすぃー・・・いいね
- 148 名前:性格の違い〜子・丑・申〜 投稿日:2002年04月26日(金)23時50分06秒
矢口は自分の目を疑い口を開いた。
「ここが…辰族の住む街……?」
「…そうみたいだね……」
「………」
安倍は何とか返事をしたものの、
加護に至っては言葉を出すことも難しかった。
それもその筈、3人が目にした光景は、
今まで見た街とはまるで違う、ひどく寂れた街だった。
街全体を砂煙が薄く立ちこめ、ビルはその殆どが役目を果たしておらず、
もちろんそれには人の気配も無かった。
矢口は此処に到着するひとつ前の町の酒場で男性から聞いたことを思い出す。
「辰族が住む街? 知ってるには知ってるが、
お譲ちゃん達あそこに行くのはよした方がいいよ。
彼らは十二支の末裔としての自覚がまったく無い集団だからね」
「(おじさんの言ってた事はこの事だったんだ…)」
矢口はもう一度辺りを見回し、かろうじて光が出ている建物を見つけ、
3人はとりあえずそこへと足を運んだ。
その建物の正体は小さな酒場のような感じで、
彼女たちは自由兆番で作られた扉を開け中に入る。
「いらっしゃい」
無愛想な男の声が店内に響いた。
実際その声は小さいのだが、何故かよく響いた。
- 149 名前:性格の違い〜子・丑・申〜 投稿日:2002年04月26日(金)23時51分49秒
- 3人は扉の前で一瞬たじろいだが、
そのまま中へ進んで行きカウンターに座った。
「何にする?」
何故この人の声はこんなに響くのだろう?
そう思いながら安倍が
「あっ、おまかせします」
と言い、男は何も言わず準備に取り掛かった。
その後少しの間、沈黙が続いたが、矢口が外の光景を思い出し男に尋ねた。
「あのぅ…、なぜこの街はこんなに人の気配が無いんですか?」
その言葉に酒の準備をしていた男の手が止まり、
少し驚いた表情で言う。
「あんた達、そんな事も知らないでこの街に来たのか?」
「ええ…、まぁ……」
矢口の言葉を聞いた男は、再び手を動かし出した。
「…そうか、悪いことは言わん、早くこの街から出て行け」
「イヤです」
男の言葉にすかさず安倍が応えた。
「どうしてだ?」
「私たちは辰族に会いに来たからです」
男は3人の前に飲み物を出しながら言った。
「だったらなおさらだな」
「どうしてです?」
「ここに辰族の連中はいないからな」
「「「!!??」」」
「いや…、いるにはいるがいないも同然、と言ったほうがいいか…
辰族の連中はこの街のどこかに隠れているからな」
- 150 名前:性格の違い〜子・丑・申〜 投稿日:2002年04月26日(金)23時55分00秒
数秒間沈黙が続いた後、安倍が口を開いた。
「…、何があったんですか?」
「なに、ただ辰族の子供達が遊んでるだけさ」
「子供が遊んでるだけ!?
そんなことでどうしてこんな事に?」
「その遊び方が半端じゃなくてなぁ、人の言うことをまったく聞かず、街を荒らし放題。
最終的には辰族の大人達の力で抑えつけ様としたが、
1人の少女の力によって大人たちは完敗。
結局、その子供達から逃げるように暮らしてるよ」
「その1人の少女って言うのはもしかして…」
「ああ、辰族の直系の娘。痣を持つ娘だ――」
- 151 名前:性格の違い〜子・丑・申〜 投稿日:2002年04月26日(金)23時56分04秒
- そこまで言った所で「パリン」とガラスの割れた音がした。
音の発生地は加護の手の中、出されたグラスを握り壊してしまったらしい。
加護の手は震えていた。
矢口が今にも噴火しそうな加護に恐る恐る声をかける
「か…加護?」
「もぉ許せません!!!
今からその娘に会いに行きます!!」
「ちょ…ちょっと待てよ!」
矢口が止めるのを無視して加護は店を出て行った。
矢口は加護を追いかける。
安倍も席を立ち、追いかけようとするが何かに気づき動きを止め、
頭を下げながら男に言った。
「グラスを壊してしまってすみません。
飲み物代も込みでおいくらですか?」
「いいよ。そんなモン。それより早く追いかけな」
「いえ、こう言うことはキチンとしないとダメなんです」
そう言って安倍はカウンターに適当な額のお金を置き、店の外へ走り出した。
- 152 名前:性格の違い〜子・丑・申〜 投稿日:2002年04月27日(土)00時00分37秒
「…何? その乗り物」
安倍が2人に追いついた時はもう既に事は始まっていた。
加護が16・7歳位の男数人に囲まれていたのだ。
男は何やら車輪が2個一列に並んでいる乗り物に乗っており、
それから出る壮絶な音に矢口と安倍は耳を押さえているが、
加護はそれをせず、男達を睨んでいた。
「こいつ等、バイクを知らないらしいぜ」
1人の男が嫌味な笑みを浮かべ言うと、他の男達もいやらしく笑みをこぼした。
また別の男はバイクから降り、口に白煙の出ている棒を銜え、
加護に近づいてきた。
「おっ、こいつ小っこくて中々可愛いじゃん。俺達と一緒に遊ばない?」
その言葉に違う男が焦った様に言った。
「お、おい、何言ってんだよ。
可愛い娘はヘッドの所に連れて行くってルールだろうが!」
「別にいいじゃねえか。1人くらい。ヘッドにバレなきゃ問題ねぇよ」
「そ、そうかな?」
そこに嫌味な笑みをした男が話に入ってきた。
「そんな事言って、ヘッドが聞いたらボコボコにされるぞ」
「分かってるよ。痣持ってる直系のヘッドを相手にそんな事直接言えねぇよ」
今まで無表情だった加護の顔がピクリと動き、すぐに無表情に戻る。
- 153 名前:性格の違い〜子・丑・申〜 投稿日:2002年04月27日(土)00時01分48秒
「とにかく、この可愛い娘は俺達のモンってことで――」
男はそう言って振り返ると度肝を抜かれた。
銜えていた棒を唇すれすれの所で加護が切ったのだ。
男はその場にへたりこみ、加護はその男を見下ろして言う。
「その、ヘッドって言う人に会わせて頂けますか?」
- 154 名前:しんご 投稿日:2002年04月27日(土)00時15分52秒
- やっぱり前半部分で切らしてもらいます(^^;
早く1話分一気に書き切れるように努力します。
あと、娘。メンバー同士で、「この娘。とこの娘。のやり取りが読みたい!」って言うのがあれば、リクして下さい。
構成上問題ない程度だったら応えようと思ってますので。
それでは。
- 155 名前:しんご 投稿日:2002年04月27日(土)00時17分01秒
- レスです。
>>145no-no-さん
すみません。よしこ出なくなっちゃってしまいました(^^;
この話が終わるとまた出てくるので楽しみにしていて下さいね。
>>146さん
面白いと言って頂けて光栄です。
>いしよしなのか?(w
う〜ん、どうでしょう?(w
これからの展開によって変わるかもしれませんね
>>147さん
翼の生えた吉澤と、兎の耳の石川は早い段階で決まってました(w
- 156 名前:性格の違い〜子・丑・申〜 投稿日:2002年04月29日(月)23時16分55秒
数分後。
加護・矢口・安倍をそれぞれ乗せたバイクは爆音を響かせながら走り、
とある空き地らしき場所へ到着した。
「……ここです」
「…ありがとうございます」
加護に恐れをなして敬語を使っている相手に対してまでも、
年上というだけで敬語を使っている加護に矢口は周りに分からない程度の笑みを浮かべた。
「ヘッド!あいつらが帰ってきましたよ!!」
空き地の奥では、矢口たちを連れてきた男達と変わらない歳の男の声が聞こえた。
「だからごっちんって呼んでっていつも言ってるでしょ〜」
「す…すみません。でも……」
「でもじゃない!」
「じゃあ…後藤さん」
「う〜ん、まぁ、いっか」
「それより、あいつら誰か連れてきましたよ」
「んぁ?誰だろうね?」
「さぁ…ここからだと良く見えないですね」
「ふぅ〜ん…」
空き地の入り口では砂煙の為声しか聞こえなかったが、
奥に進むにつれてだんだんと姿がはっきりしてきた。
『ヘッド』と呼ばれる、声から判断して女と予想される後藤と呼ばれた女性は、
加護から見て後姿を見せている。
「あなたが…ヘッドですか?」
加護が声を出すと、後藤はやる気なく振り向いた。
- 157 名前:性格の違い〜子・丑・申〜 投稿日:2002年04月29日(月)23時18分01秒
- その女性は綺麗だった。
真っ直ぐに伸びた美しい髪。
すっと通る鼻筋、長身に似合うスタイル。
何と言ってもその独特な雰囲気は、
冷静だった加護でさえ、心が少し揺らぐのを抑える事が出来なかった。
「んぁ?………」
後藤は少し眠たそうな目を加護に向けると、
その目を大きく開いて声を張り上げた。
「か…可愛いー!!」
そして不意を付かれたとは言え加護に避ける暇を与えずに抱き付いた。
「うぷっ、な…、な!?」
加護は少し混乱しているようだ。
しかしすぐに後藤から離れ、間隔を取る。
「はぁ…はぁ……」
「あぁ、もうちょっと抱きしめてたかったのにぃ」
「私はこんな事する為にここに来たんじゃないんです!!」
「ありゃ、そうなの?」
「そうです!!」
- 158 名前:性格の違い〜子・丑・申〜 投稿日:2002年04月29日(月)23時19分03秒
加護は息を整え、本題に入った。
「あなた、自分の生まれ育った街をこんな風にしていいと思っているのですか?」
「へっ?」
「とぼけないで下さい!
あなた辰の痣を持つものでしょう!?
そんな人が……、十二支としての自覚が無さ過ぎます!!」
「確かに私は痣を持ってるけど…、そういうの嫌いなんだよねぇ〜。
周りの大人達も私達子供に戦いの事しか教えないし、それにうんざりした子供達が集まって、
ちょっといたずらしたらあいつら逃げちゃったんだから、私たちが街をどうしようと勝手でしょ?
あっ、あと、仲間にも入らないから。
今はこいつらと一緒に遊んでるほうが楽しいしね♪」
加護の手は既に怒りで震えていた。
「あなたは間違ってます!!
故郷を想い、両親を始め育ててくれた大人たちを敬うのが十二支として…、
いや、人間としての在り方です!!」
「もぅ、そんなに怒んなくてもいいじゃん?」
- 159 名前:性格の違い〜子・丑・申〜 投稿日:2002年04月29日(月)23時20分08秒
なおも軽くあしらう後藤に加護は酒場の時よりも激しく噴火する。
「勝負して下さい!!!絶対あなたに勝って見せます!!」
「あら、そんな事言ってイイのかな?可愛い顔が台無しになっちゃうよ」
「構いません!!」
「あら、そう…じゃあ……」
そう言って後藤は傍にあった布に巻かれた長い棒のような物を手に取ると、その布を外す。
中からは肩位の高さの棒に、三つ矛の刃が付けられている槍が姿を現した。
「やってみる?」
こうして、またもや此処に十二支同士の対決が繰り広げられた――
- 160 名前:性格の違い〜子・丑・申〜 投稿日:2002年05月01日(水)23時26分54秒
加護は刀を構えると小さく深呼吸をし、目を閉じる。
すると加護に眩い光が包み込み、
光が消える頃、猿特有の尻尾が生え、茶色い体毛が薄く身体を覆う加護が立っていた。
「ほぉ〜、その歳で自由に獣化出来るんだ」
後藤は少し感心している。
瞼を開けた加護はその性格からか静かに口を開いた。
「そう言えば自己紹介がまだでしたね。
私は加護亜依。ご覧の通り猿の痣を持つ者です」
戦いの前だというのにそんな事を言う加護に、
後藤は少し笑みをこぼしながら応えた。
「私は後藤真希。ごっちんって呼んでね♪」
「……嫌です」
「いいじゃん、ケチ」
「それでは…行きます」
加護は一瞬のうちに後藤に近づき一閃を浴びせる。
しかし後藤は後ろに少し飛び難なく避けた。
その後休む間もなく加護は次々に刀を振るうが、
後藤は最小の動きで避けていく。
「くっ!」
加護は今までより大きく振るい、後藤は大きく後ろに跳び間隔を開けた。
- 161 名前:性格の違い〜子・丑・申〜 投稿日:2002年05月01日(水)23時28分12秒
- 呼吸が荒い加護に対して、後藤は平然とした様子だ。
「ハァ…ハァ……、どうして反撃して来ないんですか!!?」
物凄い形相で怒る加護に後藤は頭を掻きながら言う。
「いいの?本当にやっちゃって。
あんまり気が進まないんだけどなぁ」
「いいです!!」
「じゃあ…ちゃんと避けてね」
そう言った直後後藤は消え、加護の身体は後ろに飛ばされ、
服を破り身体中に切り傷を作られた。
「あぁ!ちゃんと避けてって言ったのに」
加護は少し深く傷付いた腕を押さえ、なおも刀を構えている。
「ハァ…ハァ…今の、もう一度お願いします」
「えっ!?やだよ〜。もうボロボロじゃん。
はやく手当てしてもらいなよ」
「大丈夫です。次は避けてあなたを倒します」
後藤は少し悩んだ後、
「う〜ん、約束だよ」
そう言って後藤は再び消えた。
しかし前回とは違い、飛ばされる加護の姿はそこにはなかった。
「えっ!?どこに行ったの?」
後藤は辺りを見回すが加護は確認できない。
その時上から血が後藤の頬へ落ち、ハッと気付き上を見上げる。
そこには後藤の上から無数の剣閃を従えて降りてくる加護がいた。
「うおぉぉぉ!!!」
- 162 名前:性格の違い〜子・丑・申〜 投稿日:2002年05月01日(水)23時30分07秒
加護が後藤と衝突する瞬間、砂煙が舞い上がり勝敗の行方は誰にも分からなかった。
しばらく経ち、砂煙が収まると、加護と同じ位傷付いた後藤の姿があった。
2人の間は約7m
「あいたたたた…、いやぁ、やられちゃったなぁ」
後藤のその言葉に加護は口の端を上げる。
「こんなにやられちゃったの久しぶりだよ。ちょっと悔しいから本気出すね」
「えっ?」
後藤はそう行った刹那、後藤の身体を光が包み、
頭に鹿の角のような、根元は一本で先が二股に分かれた角が2本生えていた。
「へへへ。私も獣化してみちゃった」
「………」
「よぉし、こうなったらあれ出しちゃうからな!!」
加護があっけに取られている間、後藤は1人で急にやる気になり、
我に返ったとき、後藤が持っている槍の先には自分から出した炎が纏っていた。
「「「!!!??」」」
それは矢口、安倍も始めてみる光景だった。
「いくよ!!そりゃあ!!!」
掛け声と共に炎を纏った槍を突くと、炎が渦を巻き加護に襲い掛かる。
「うわぁぁ!!」
そして加護はなすすべも無くその渦に巻き込まれてしまった。
- 163 名前:性格の違い〜子・丑・申〜 投稿日:2002年05月01日(水)23時32分01秒
「加護!!」
「加護ちゃん!!!」
渦が収まる頃、矢口と安倍は加護に近づき、安倍が加護の傷を治療する。
加護の傷が癒える頃、後藤は我に帰り加護に近づいた。
「あぁ!!ゴメン!!!つい……
てっきり加護ちゃんも炎で対抗してくるかと……」
加護は体力がまだ回復出来ていないらしい。
静かに後藤に応える。
「いいんです……それより…今のは何だったんですか…?」
「へっ?」
加護の質問に矢口が頷く。
「そういえば今『加護ちゃんも炎で対抗してくるかと……』とか言ってたね。
あの炎いったい何なの?」
後藤は困った顔をして言った。
「えぇ〜っと…、十二支にはそれぞれ属性があるって知らないの?」
3人は同時に頷く。
「あっ…、そう言えば私が覚醒した時私の中の十二支が
『他の者は属性については覚醒しないから主が導け』とか何とか言ってたような……」
後藤は冷や汗を掻きながら言った。
もう3人の視線に耐え切れないといった感じだ
「いやぁ……、ごめんなさい!!
今から説明するね」
- 164 名前:性格の違い〜子・丑・申〜 投稿日:2002年05月01日(水)23時33分44秒
- そう言って後藤は説明に入った
「属性って言うのは火・風・水・土の四つで出来ていて、
十二支によって属性が違うの。
何だかそれを見分けられるのは私だけみたいだから言うね。
えっと、加護ちゃんは私と同じ『火』だね。
それから……」
後藤はそこで止まる。
矢口はなぜ止まったか気付いた。
「あっ、ごめん。私は矢口真里。それでこっちが」
「安倍なつみです」
「ありがと。矢口さんは『風』だね。安倍さんは「土」みたい。
属性を絡めた攻撃はそれなりに練習すれば出来ると思うから。
じゃあ私はこれで」
その言葉に安倍が驚く。
「えっ!?一緒に来てくれないの??」
「言ったでしょ。私はこの生活から離れたくないの。
でも…、今ちょっと気が変わりかけてるから、
加護ちゃんが私と付き合ってくれるって言うんなら付いて行っちゃうよ♪」
「嫌です」
加護は即答した。
- 165 名前:性格の違い〜子・丑・申〜 投稿日:2002年05月01日(水)23時35分00秒
- 「じゃ、バイバイ」
後藤はあっさりと3人に背を向け歩き出した。
そこに矢口の声が響く。
「ちょっと待って!!加護並みに可愛い娘が仲間にいるんだけどなぁ…」
後藤の背中がピクリと動く。
「……本当?」
「本当本当。スレンダーなボディに豊満な胸。
まさに出るトコは出て引っ込むトコは引っ込んでるってカンジだね。
さらに蜂蜜ような甘い声。そんな娘に会いたくない?」
後藤は振り返り矢口に聞く。
「……名前は?」
「石川梨華。ちなみに卯族だよ」
「兎の梨華ちゃんかぁ……、よし!私仲間になるよ!!」
「本当?よろしく!!」
そう言って2人はあつい握手を交わした。
「(梨華ちゃん…どんな娘なんだろう?楽しみだなぁ)」
「(梨華ちゃん……ごめん!)」
「(あぁ〜あ、矢口あんな事言って、私知らないよ)」
「(………)」
- 166 名前:性格の違い〜子・丑・申〜 投稿日:2002年05月01日(水)23時35分40秒
こうして、かなり不純な動機により、
『属性を見極めれる唯一の十二支』辰族の後藤真希が仲間に加わった。
- 167 名前:しんご 投稿日:2002年05月02日(木)00時16分03秒
何だか後藤の性格が明るくなり過ぎた気がします(w
ちなみにGW中は予定が入って更新出来ないのですが、GWが終わって最低でも一週間後までには更新するつもりなので気長に待っていてくださいm(_ _)m
それでは。
- 168 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月02日(木)18時13分34秒
- 学校から帰って来たら交信してるーーー(ww
いやー後藤の動機笑えますね(w
石川を取り合う、よしごまが見れるのかな♪
楽しみです。GW楽しんできてください
- 169 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月08日(水)21時40分49秒
- お待ちしてます(w
- 170 名前:ひとみの企み〜卯・午・酉〜 投稿日:2002年05月08日(水)23時51分36秒
飯田・梨華・ひとみの三姉妹は、さらに西へと足を運んでいた…はずだった。
「お姉ちゃん…」
「ん?なに?梨華」
「私達、西に向かってるんだよね?」
「そうだよ。何言ってるの?当たり前じゃん」
「夕日が右に見えるのは私の気のせい?」
梨華の言う通り、太陽は彼女達から見て右の方へ沈んでいる。
「あ……」
「…もう……」
飯田はしまったと言う顔をし、梨華は顔に手を当て呆れ果てている。
「本当は今日中に付く予定だったはずなのに…
これじゃ町まであとどのくらいか分かんないじゃん……
まだ他の十二支の情報も入ってないし…」
嘆く梨華をひとみがなだめる。
「まぁまぁ、お義姉ちゃんもワザとやったわけじゃないんだし」
「でも…」
「よ〜し、私があとどの位で着くか見て来てあげる♪」
「えっ?どうやって?」
「こうやって♪」
そう言うとひとみは素早く獣化し、上空へ舞い上がっていく。
「うわぁ…」
そんな彼女を梨華はずっと見上げていた。
- 171 名前:ひとみの企み〜卯・午・酉〜 投稿日:2002年05月08日(水)23時53分11秒
数分後、
颯爽と降りてきたひとみは2人に言った。
「今から歩いて2・3時間ってトコかな?
どうする?今から行こうと思えば今日中に行けるよ」
「行こうよ。こういう時間は早くしないと」
「うん、分かった。
じゃあ、お義姉ちゃん行こ…う……、ってあれ?」
「ん?どうしたの?」
「いや、お義姉ちゃんが…」
ひとみの指差すそこには、
うずくまり、暗くなりかけている景色よりさらに暗くなっている飯田の姿があった。
「みんな……私がいなくてもやっていけそうだね…」
「お…、お姉ちゃん……」
梨華は飯田に話しかけようとしたがそのあまりの暗さに跳ね返されてしまった。
小声でひとみに言う。
「(ちょっとよっすぃー、助けて〜)」
「(よっしゃ)」
次は梨華の代わりにひとみが飯田に近づく。
「お義姉ちゃん、何情けない事言ってるんですか。
みんなで支えあってやっていくのが仲間でしょう?
私を変えてくれたのはあなたなんだから、もっと自信を持って!」
- 172 名前:ひとみの企み〜卯・午・酉〜 投稿日:2002年05月08日(水)23時54分37秒
- ひとみのその言葉に飯田の周りが明るくなる。
「そう…かな……、うん、そうだよね。
なんか元気が沸いてきたよ!よっすぃーありがとう!」
「それでこそお義姉ちゃん!」
「(よっすぃー、ナイス!)」
「ところで、もっと支えあっていくには、
やっぱり私と梨華ちゃんの仲をお義姉ちゃんに認めてもらわないと…」
「(え…ちょ、ちょっと何言ってるの?)」
「そうだね、梨華をよろしく頼むよ。よっすぃー」
「任せてください」
そこでひとみと飯田は堅く手を取り合った。
「ちょっと待ったぁー!!話が変わってるぞ〜!!!」
梨華の叫びは軽やかに空を舞うだけだった。
- 173 名前:十二支を嫌う娘〜卯・午・酉〜 投稿日:2002年05月08日(水)23時57分35秒
ひとみの言った通り、2・3時間ほど歩くと街に到着した。
「ふぇ〜、やっと着いたぁ〜」
「私もヘトヘト」
「しょうがないなぁ、私が今日泊まるトコ探してくるから、
それまでそこの噴水で休んでな」
「「はぁい」」
そこには、さっきとは逆にごく普通の姉妹のやり取りが交わされ、
飯田は街の中へ消えて行き、梨華とひとみは公園の噴水の淵に座り、
しばしの休息を取った。
「ふぅ〜、疲れたね〜」
「そだねぇ」
2人は流石に歩きすぎたのだろう、
会話もまばらになる。
そうなると周りの音が何故か良く聞こえるものである。
遠くですすり泣く声が聞こえて来た。
「…よっすぃー、今の聞こえた?」
「うん、なんだろう?女の子みたいだったね」
「どこからだろう…」
「おーい、泊まるトコ見つかったよ〜」
そこまで話した時、飯田が現れ2人を呼んだ。
2人は立ち上がり飯田に付いて行く。
公園から出て行く最後、梨華は一度声のした方へ向いたが、
「何してんの〜?行くよ〜」
飯田の呼ぶ声で振り返り、今夜泊まる場所へと進んで行った――
- 174 名前:しんご 投稿日:2002年05月09日(木)00時00分50秒
- 最近、何故か予定がいっぱいなので少ない更新量で申し訳(^^;
一応明日も更新する予定なのでもう少し待っていて下さいm(_ _)m
- 175 名前:しんご 投稿日:2002年05月09日(木)00時04分04秒
- >>168
そのシーンが見られるかどうかは秘密という事で…(w
>>169
待たせた上にこの少なさでは頭が上がりません(^^;
- 176 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月09日(木)16時15分47秒
- 少量でも嬉しいです(w
続きお待ちしてます
- 177 名前:十二支を嫌う娘〜卯・午・酉〜 投稿日:2002年05月09日(木)21時47分43秒
- 太陽の光が街を覆い始め、それと共に街も活気付いてきた所で3人は動き出した。
今日の目的は他の仲間がいる場所を見つける事。
前に梨華が言った通り、未だその情報が入っていないのだ。
3人は今日の夕方、昨日の噴水のある公園で集合することを決め、
各々街の中に消えていった。
- 178 名前:十二支を嫌う娘〜卯・午・酉〜 投稿日:2002年05月09日(木)21時50分17秒
―飯田圭織の行動―
飯田はまず街の中央に位置し、東西へ一直線に伸びている市場の方へ足を運んだ。
此処なら色々な人が行きかう為、十二支の情報も得易いと考えたのだ。
市場には果物や野菜、肉などの食材や、木彫りの人形や髪飾りなど、
置物や装飾品に至るまで様々な売り物が所狭しと並んでいた。
さらに行き交う人々はとても多く、目的のものを探す者、
置かれている商品をただ眺めている者もいて、正に市場と言った感じである。
飯田はその市場を一通り眺めた後、行商人らしき男が開いている露天で立ち止まる。
「(この人なら色々知ってそうだな)」
そう思い、飯田は座っているその男に目線を合わすようにしゃがみこみ話しかけた。
「あの…、この辺りで十二支の噂は聞いてませんか?」
「う〜ん、あんまり聞かないな。私はそういう情報に疎くてね。
悪いね。教えてあげられなくて」
「いえ、ありがとうございます」
飯田は丁寧にお辞儀をし、その場を立ち去った。
その後何人かの行商人と話しをしたが、結局情報は聞けなかった。
- 179 名前:十二支を嫌う娘〜卯・午・酉〜 投稿日:2002年05月09日(木)21時51分47秒
- 夕方になり、飯田は行商人を諦めて街の住人に聞いてみる事にした。
果物を売る為に大声を張り上げている元気のいい女性に飯田は声をかけてみる。
「あの…」
「はいいらっしゃい!今日は特別に新鮮なのが入ってるよ!!
さぁ、何を買う?」
「いえ、私は買い物に来たんじゃなくて、ちょっと話を聞きたくて…」
「あら、そうなのかい?
いいよ。何でも聞いておくれ。私は結構情報通なのよ」
「えっと、十二支について何か知ってませんか?」
そこまで言った所で女性は一瞬明らかに表情を変えた。
「……悪いけどその事はあまり知らないね」
しかし飯田はその一瞬を見落とさず、その女性に問い詰める。
「何か知っているのですか?知っているのなら教えてください!
お願いします!!」
「だから知らないよ。
さぁ、商売のジャマだ。さっさとお行き!」
飯田は女に押され強引にその場から出された。
「(この街には何かある…)」
そう思い、明日もう一度情報を集めようとしたその時だった。
街の南側から爆発音に似た音が町全体を包み込む。
「(!!? 何があったの!?)」
飯田は音のした方へ向かって走り出した―
- 180 名前:十二支を嫌う娘〜卯・午・酉〜 投稿日:2002年05月09日(木)21時54分23秒
―吉澤ひとみの行動―
ひとみは街の北にある酒場街へ足を伸ばした。
「(ここならお酒も飲めるし情報も入るし一石二鳥だね♪)」
そう自分に言い、足早にいくつもある酒場の中から一件選び中に入る。
こんな昼間から人がいるのかと疑問に思うかもしれないが、
そういう人はどこの街にもいるものである。
案の定、2・3人の男がカウンターでグラスを口に運んでいた。
ひとみは男の横の空いている席に座る。
男は嬉しそうにひとみに話しかけてきた。
「おっ、こんな昼間から姉ちゃんやるねぇ」
「おっちゃんこそ」
「はっはっは、そりゃそうだ。
よし、ここはおっちゃんが奢ってやろう」
「マジで!?ありがとう!」
「いいって事よ。お〜いマスター。この姉ちゃんに酒を出してやってくれ」
男がそう言うとひとみの前にグラスに入った酒が置かれた。
「(もうちょっと仲良くなってからの方が聞き出し易いかも)」
ひとみはそう思い、男と共に飲み始めた―
- 181 名前:十二支を嫌う娘〜卯・午・酉〜 投稿日:2002年05月09日(木)21時54分53秒
どれ位経っただろうか?
2人はすっかり意気投合し、顔を赤くし飲み合っている。
ひとみはふと時計を見る。針を見る限りではそろそろ日も暮れる時間であった。
「(そろそろ約束の時間だし…聞いてみようかな)」
そう思い、ひとみは男に尋ねた。
「おっちゃん、この辺で十二支の話聞いてない?」
「おっと姉ちゃん、この街でそんな話はしちゃいけないぜ」
「へっ?どうして?」
「それは教えてやれねえな〜」
「え〜、どうして?教えてよ〜」
「しょうがねぇな、じゃあヒントだ。
この街を良く見てみな。そしたら一発で分かるぜ」
「そんなんじゃ分かんないよ〜」
ひとみは男に近づき答えを求める。
すると男は鼻の下を伸ばし、ひとみの腰に手を当てながら言った。
「どうしても教えて欲しいって言うのならそれなりの事をしてもらわないとなぁ…」
- 182 名前:十二支を嫌う娘〜卯・午・酉〜 投稿日:2002年05月09日(木)21時56分02秒
- その瞬間ひとみは素早い動きで腰に装備していた短剣を抜き、男の顔に近づける。
「おい、あんま調子乗ってると痛い目見るよ。
早く言った方が身の為だと思うんだけどな」
男は赤い顔を青くして言った。
「わ…、悪かったよ。言うよ。
言いますからその剣をどけて…」
「ふん」
ひとみは剣を収め元のイスに座った。
「…実は――」
男がそこまで言った所で、遠くの方から爆発音のような音が聞こえた。
「何事!??ココが街の北側だから南の方?」
そう言って、ひとみは男を置いて酒場を後にし、走り出した――
- 183 名前:十二支を嫌う娘〜卯・午・酉〜 投稿日:2002年05月09日(木)21時57分38秒
――石川梨華の行動――
梨華は飯田とひとみの後姿を見た後、
2人が行っていない南側へ向かった。
昨日の晩、少女のすすり泣く声を聞いたのも南の方だったことを思い出し、
その事も気になったので声のした方へ足を運んでみた。
行く道に市場の上に位置する少し高い陸橋なものがあり、
そこのちょうど中央の所で梨華はふと立ち止まりあることに気付く。
「えっ、これって……」
梨華の気付いた事、それは市場を境に南と北でまったく違う光景が広がっていたからだ。
北は大きく綺麗な家が並ぶいかにも高級感が漂う街並み。
そして南には、北や中央の市場と一段ほど下がった所にあり、
それとは真逆に小さな家がぽつりと5・6軒あるだけだった。
「…どういうこと?」
その時だった。
「やーい、ヘビ女!ヘビ女!お前骨が無いって本当だろう!」
と、南の方で少年数人が少女に向かって小石を投げ、
苛めている姿が梨華の目に映った。
- 184 名前:十二支を嫌う娘〜卯・午・酉〜 投稿日:2002年05月09日(木)21時59分57秒
- 梨華はすぐにそこに駆けつける。
「コラ!!何てこと言ってるの!!!」
梨華の一喝により少年達はすぐに何処かへ逃げて行った。
梨華は少年達の後姿を見ると、少女の方へ身体を向け話しかける。
「大丈夫?」
梨華は小石によって少女の身体に付いた泥をはたき落としながら言った。
目が印象的な少女は静かに礼を言った。
「はい…大丈夫です……ありがとうございます」
「お礼なんていいよ。
でも許せない子達だね。女の子に向かってヘビ女だなんて…」
「いいんです。本当の事だから…」
「えっ?今…何て言ったの?」
「…私、巳族なんです。しかも直系。痣を持ってます」
「!?」
「でも私、この血が大嫌いなんです。
いつもみんなに迷惑ばかりかけている…」
「どうして?十二支は人々を守る為に神が造られた種族じゃない」
「はい、でも私の中にいる十二支『巳』は一ヶ月に一度くらい、
夜に無理矢理私を獣化させて街を破壊するんです。
なんでそんな事するのかは全然分かんないし…
そうなった夜はお父さんとかが何とか鎮めてくれてるみたいなんだけど、
これ以上街の人に迷惑かけたくないから……、だから私達はここで暮らしてるんです」
- 185 名前:十二支を嫌う娘〜卯・午・酉〜 投稿日:2002年05月09日(木)22時02分07秒
その時少女は涙を一筋流した。
少しの沈黙の後、梨華は口を開く。
「…その話、詳しく聞かせてもらえないかな?」
「えっ?」
「私も十二支の痣を持つ者なの」
「そうなんですか!?」
「そう、そしてつんくが目覚めようとしてる今あなたの力が必要なの」
「でも私は…」
「大丈夫。私の他にも仲間が今この街に来てるから、
その人たちと力を合わせて乗り越えようよ」
「……ありがとうございます」
少女は涙を拭い礼を言う。
梨華はそれに笑顔で返した。
「さて…と、もうそろ日が暮れそうだね。
話はまた明日にしようか?」
梨華の言うとおり、空は橙色に染まっていた。
「はい」
「じゃあ、明日のお昼、噴水のある公園で―」
そう言った所で梨華は気付き口を止める。
「そう言えばまだ自己紹介してなかったね」
「あっ…、そうですね…」
「馬鹿だね私って。ハハハハハ」
陽気に笑う梨華につられて少女も笑顔を見せた。
「私は石川梨華。卯族の娘よ」
「私の名前は高橋愛です」
「それじゃまた明日!」
「はい!」
- 186 名前:十二支を嫌う娘〜卯・午・酉〜 投稿日:2002年05月09日(木)22時04分00秒
元気良く別れを告げ、梨華が帰ろうとしたその時だった。
愛の身体が突然痙攣を起こし、それと共に光を発し始めた。
「愛ちゃん!!!??」
「イヤ……何でこんな時に…石川…さん……」
愛がそう言った直後、身体全体を光が覆い込み、
光が収まる頃、突然梨華の横にあった倉庫のような建物が激しく破壊された。
「な…、なに!!?」
一瞬倉庫の方を見た梨華がすぐに愛に目を移すと、
愛の身体には別段変化していないように見えた。
「(いや…、違う!!)」
梨華の考え通り、愛の身体は確実に変化していた。
目付きは明らかに鋭くなり、綺麗な黒髪も今はそれぞれが蛇のように蠢いている。
そして何より、愛を取り巻くオーラが悪寒の走るものになっていた。
愛が扱う武器、それは鞭だった。
倉庫もそれで破壊したのであろう。
「(こんな時、どうすれば……)」
梨華が迷っていたその時だった。
- 187 名前:十二支を嫌う娘〜卯・午・酉〜 投稿日:2002年05月09日(木)22時06分06秒
- 「梨華!!!」
「梨華ちゃん!!!」
声のした方へ振り向くと、飯田とひとみが立っていた。
「爆発音がして来て見れば…、梨華!!これはどういうこと!?」
「この娘は巳族の娘なの!」
「「!!?」」
「なぜか今十二支が暴走してるの!!早く助けてあげないと!」
「よし分かった!
梨華!!ひとみ!!私達も獣化するよ」
「うん!!」
「りょーかい!!」
3人の身体はそれぞれ光を放ち出し、獣化して愛と対峙した。
- 188 名前:ぶらぅ 投稿日:2002年05月10日(金)17時36分45秒
- あの泣き声は高橋だったのか・・・
高橋は大変な事になっているようですね
石川の優しさや、みんなによって幸せになれることを祈りつつ(w
続きが物凄く気になります(w
- 189 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月10日(金)21時57分07秒
- た、、、高橋がっ!!!(w
なーんとなく、たかいしになって欲しいなぁ(w
- 190 名前:十二支を嫌う娘〜卯・午・酉〜 投稿日:2002年05月11日(土)00時43分07秒
その時、一軒の家から男が出て来て叫んだ。
「愛!? いや、また獣化したのか!??」
梨華はそれに気付き男に向かって叫ぶ。
「お父さんですか? 大丈夫!! 私達が必ず助け出します!!!」
「!! あなた達は十二支!?
……、分かりました。愛をよろしく頼みます」
そう言って男はまた家の中へ入って行った。
- 191 名前:十二支を嫌う娘〜卯・午・酉〜 投稿日:2002年05月11日(土)00時44分01秒
- それを見ていた愛は口を開く。
「クックック、あんた達が来たからって何とかなるわけじゃないのにさ」
しかしその声は梨華が聞いていた愛の声とはまるで異質の物だった。
どこか妖艶さを感じさせる女の声である。
飯田が愛に話しかけた。
「…あなたが『巳』ね」
「そうとも。今この小娘の身体の中は私が支配している。
もうこの身体は私の物と言っても過言じゃないわね」
梨華が半ば感情的になり叫ぶ
「どうしてこんな事するんです!!
何の罪も無い人を傷付けて、それでも十二支ですか!?」
その言葉に『巳』は少し嫌な笑みを浮かべながら言った
「刺激が欲しいのさ。
十二支になったのも刺激が多そうだったからだし、
つんくを封印する時もかなり刺激的だったねぇ……
それが封印してから全然刺激が無くて飽き飽きしてた所、
どうも私が憑依した人間は生真面目で心が脆いやつが多い事に気付いて、
そんな時はこうやって出てきて刺激を求めてるのさ。
この小娘もその1人だったワケ」
- 192 名前:十二支を嫌う娘〜卯・午・酉〜 投稿日:2002年05月11日(土)00時45分27秒
- 「…、そんなわけない……」
「ん、何か言ったかい?」
「そんなわけない!!
この娘は、まわりのみんなに苛められてて、泣いたりしてたけど決してやり返してなかった!!
本当に心の脆い娘だったらこの力を使ってるはずだよ!
だから絶対愛ちゃんは心の脆い娘じゃない!!」
「チッ!五月蝿い奴だねぇ!!」
『巳』は右手を振り上げて鞭をしならせ、3人に向かって襲い掛かる。
しかし梨華と飯田は左右に跳び、ひとみは上空へ飛んでかわした。
「愛ちゃん!!!
私の声聞こえてるんでしょ!? こんな奴に負けないで!!
あなたは強い娘なんだから!!」
梨華が愛に呼びかけている隙を突き『巳』の鞭が梨華の頬に激しく打ち込まれ、
その衝撃で梨華は数メートル飛ばされた。
「梨華ちゃん!!? この野郎〜!!!!」
ひとみは空から弓を引き『巳』に的を絞る。
「よっすぃーやめて!! お姉ちゃんも!」
梨華の制止の声にひとみは弓を戻す。
そして今にも『巳』に飛び掛りそうになっていた飯田も止めた。
梨華は愛に呼びかけ続けている。
「愛ちゃん!! 頑張って!!!」
- 193 名前:十二支を嫌う娘〜卯・午・酉〜 投稿日:2002年05月11日(土)00時47分12秒
- 「いい加減におし!!」
『巳』はまたもや鞭を使い梨華に襲い掛かるが今度は無事に避ける。
『巳』は空を切った鞭の先を自分の左手で受け取り、先程と同様に嫌な笑みを浮かべた
「……、ん〜、いいねぇ。だんだん感じてきちゃったよ。
今日は気分がイイし、もう少し力を解放してみようかね」
「「「!!!??」」」
そう言うと、愛の身体は再び光り出す。
しかし、光は愛の身体を覆う前に静まってしまった。
『巳』は驚いた表情で自分の身体を見やる。
「!? どういう事!!? ハッ!! まさかあの小娘が!?」
「愛ちゃん!?」
「何故だ!! 私があんな小娘に抑えられるなどあってはならぬ!!!」
『巳』は予想外の出来事に叫びだすが、自分の思う通りに身体が動かないのだろう。
動きがぎこちなくなってきた。
「本当に…、小娘にこんな力が……
いやぁ!!」
頭を抱え、とうとう『巳』はその場へ倒れてしまった。
「愛ちゃん!!」
梨華は愛のもとへ行き抱きかかえる。飯田とひとみも愛の方へ向かった。
- 194 名前:十二支を嫌う娘〜卯・午・酉〜 投稿日:2002年05月11日(土)00時48分42秒
- 「愛ちゃん! 愛ちゃん!!」
梨華が愛の名前を呼ぶと、愛はそっと目を開ける。
すでに『巳』は抑えられている様だ。
「…、いし…かわ……さん?
私…石川さんの声……ちゃんと聞こえたよ……」
「うん! よく頑張ったね!!」
「へへ…」
愛は微笑むとまた静かに目を閉じた。
「愛ちゃん!?」
「梨華、大丈夫。眠ってるだけだよ」
飯田が梨華をなだめる。
3人は愛を父親のもとへ返すと、とりあえず今夜はそっとしておいて、
また明日会いに行くことを決めた。
- 195 名前:十二支を嫌う娘〜卯・午・酉〜 投稿日:2002年05月11日(土)00時49分53秒
そして次の日。
3人は再び愛のところへ行くと、愛は既に旅の準備を済ませて家の前に立っていた。
梨華は驚き声を上げる。
「愛ちゃん!?」
「もう大丈夫です。私も旅に連れて行ってください。
私の中の十二支の事は、私がもっと強くなって、きっと協力してくれるようにします」
愛の目は、輝いていた。
それに梨華は笑みで返す。
「…、そっか。一緒に頑張って行こうね!」
「はい!!」
「それじゃあ、私達の自己紹介をしなきゃね。私は午族の飯田圭織よ」
「酉族の吉澤ひとみ。よろしくね♪」
「巳族の高橋愛です。よろしくおねがいします!!」
高橋は大きな声で言いながらお辞儀をした。
「よ〜し! じゃあ行こうか!!」
「うん!」
「おっけぇ〜!」
「はい!」
- 196 名前:十二支を嫌う娘〜卯・午・酉〜 投稿日:2002年05月11日(土)00時50分53秒
こうして、新たな仲間を加え、彼女達の旅は続く――
- 197 名前:ひとみの企み2〜卯・巳・午・酉〜 投稿日:2002年05月11日(土)00時53分07秒
街を出てすぐの事、ひとみは思い出したように愛に話しかけた。
「そう言えば、愛ちゃん」
「はい?」
「私と梨華ちゃんは将来の愛を誓い合った仲だから、邪魔しちゃダメよ♪」
「そ…、そうなんですか?」
「そうそう♪」
「もう、愛ちゃんに変なこと吹き込まないでよ〜!!」
- 198 名前:しんご 投稿日:2002年05月11日(土)00時57分01秒
- 少しの間更新出来なくなると思います。
今月末か来月の頭くらいからの再開を予定してます。
本当、波のある更新速度で申し訳ないですm(_ _)m
- 199 名前:しんご 投稿日:2002年05月11日(土)01時03分24秒
- >>188ぶらぅさん
高橋に課題が出来ましたが、これからの旅できっと解決してくれるでしょう。
>>189さん
何となくたかいしになってるかな?(w
あと、>>175で「さん」付けするのを忘れていました。
遅くなってしまいましたが、どうもすみませんでした。
- 200 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月11日(土)02時11分13秒
- 吉、何を吹き込んでいる(w
最近、高石好きなんでならないかなぁ〜ほあとはあと
と思ってみたり(w
- 201 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月11日(土)02時12分01秒
- あぅ失敗を・・・
- 202 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月12日(日)15時49分31秒
- 初めまして。
一気に読ませていただきました。
凄く面白いです!
こんな面白いのを見逃していたなんて
ショックです。。。
今月末までとはちょっと残念ですが、
マターリ待ってマス♪
- 203 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月12日(日)17時53分07秒
- こんにちは。
はじめまして。
全部読みました。おもしろいですね〜。
私が読んでるマンガも十二支がでてくるんですよね〜。
がんばってください!
- 204 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月12日(日)21時45分05秒
- こんばんは〜。質問です。
えっと、痣がない人(○○族にひと)達も「獣化」と「完全獣化」は
できるんですか?
- 205 名前:しんご 投稿日:2002年05月12日(日)22時22分01秒
- ちょっと覗きにきたらレスがいっぱいあって嬉しいので返レスします(w
>>200さん
過度にたかいしにすると吉澤さんが怒るのでほどほどにと言う事で…(w
>>202さん
更新できなくてすみません…
なるべく早く復活できるように頑張ります。
>>203さん
そのマンガはもしや…(w
>>204さん
結論から言うと、痣が無い人は『獣化』『完全獣化』共に出来ません。
痣がある=その人の中に十二支がいると言う設定になってます。
十二支はそれぞれ1体だけで、十二支が中にいる人しか『獣化』系は出来ませんから、
痣がない人は獣化は出来ない。と言う事になります。
しかし、痣が無くても、十二支の血を引いているのであれば、身体能力的に見れば血を引いていない普通の人間より優れます。
例
卯族→『柔術』に長ける。
午族→普通の人間より身長が高い。『剣術』に長ける
などです。
これで答えになってるでしょうか?(^^;
分かりにくい説明ですみません…
- 206 名前:ぶらぅ 投稿日:2002年05月20日(月)21時34分57秒
- 石川を巡る戦い?を見てみたい〜(w
やっぱり痣が無くても強いんですね。
なんの漫画なのでしょう?自分も読んでみたいもんです(w
続きお待ちしております♪
- 207 名前:変わった条件〜子・丑・辰・申〜 投稿日:2002年05月22日(水)22時23分32秒
矢口は口を大きく開け『それ』を見上げて言う。
「これって…、サーカス?」
同じく口を開け『それ』を見上げる3人の内、後藤が応えた。
「サーカス…、だねぇ……」
『それ』に入るために開けられている大きな入り口の上には
「未サーカス団」
と、はっきり、そして大きく書かれていた。
- 208 名前:変わった条件〜子・丑・辰・申〜 投稿日:2002年05月22日(水)22時25分16秒
- 「噂を聞いて来てみれば…、十二支でも色んな人達がいるもんだねぇ」
後藤がいつもの口調で言う。
「とりあえず入ってみる?」
矢口が3人を誘うと、3人は同時に首を縦に1回振り、
入り口の中に吸い込まれるように入っていった。
「わぁ〜」
加護が一瞬童心に帰り驚きの声を上げる。
テントの中は、中心に丸い円状の砂で敷き詰められているステージがあり、
それを囲むように客席が設けられている。
客席は大勢の人で埋め尽くされていた。
4人はちょうど空いている席に座り、サーカスが始まるのを待った。
- 209 名前:変わった条件〜子・丑・辰・申〜 投稿日:2002年05月22日(水)22時27分27秒
- すると、突然ライトの光が消え、人々の話し声も止まる。
そしてステージの一点に光が集中し、その光の中に1人、
何とも愉快な衣装とメイクをしているが、小柄な女の子と思えるピエロが立っていた。
ピエロは両手を大きく上げ、客席の全員に聞こえるような大きな声で言う。
「みなさま!!本日はこの未サーカスにお越し頂きありがとうございます!!
わたくし、本日の進行役を勤めさせていただく、『ノノ』と申します。以後、おみしりおきを」
ピエロが深々とお辞儀をした時、後藤は何かを感じた。
「あの娘……」
安倍がそれに気付き、後藤に話し掛ける。
続いて矢口と加護の2人も後藤の方を向いた。
「なに?どうかした?」
「うん…、あの娘から『土』の属性を感じたんだ…」
「えっ!?じゃあ…」
「…あの娘は痣を持つ娘だよ」
4人は再びステージ上のピエロへ目線を向けた。
「それではまず始めに、
若干15歳にして超一流の調教師となった「マサト」と動物達がおりなす
アニマルショーをご覧ください!」
- 210 名前:変わった条件〜子・丑・辰・申〜 投稿日:2002年05月22日(水)22時29分16秒
- その後盛大にサーカスは進行し、
中盤に差し掛かった所でオープニングで見たピエロが丸い大きな玉と共に姿を現した。
ライトの光もピエロに集まる。
「さて皆様。大きなセットを使っての大掛かりなショーに目も疲れた事でしょう。
ここでわたくしノノがちょっと休憩時間がてら小技を披露したいと思います」
観客は大きなステージに似合わない小さな身体のピエロを見て、
笑顔で暖かい拍手を送る。
「それで使うのはこの―」
すると、手に何も持っていなかったピエロは、一瞬にして4本のナイフを出現させた。
「4つのナイフです」
これには4人も含め、観客席全体が少しどよめいた。
「そしてお察しの通りこれに乗ります」
そう言うとピエロはひょいと玉の上に乗り、上手にバランスをとる。
「そしてそして、ナイフを持っていると言う事は、こうなるわけです!」
ピエロが叫ぶと、ステージの袖から地面に垂直に立てられた円状の板に括り付けられている少女が連れて来られた。
少女にもライトが当たる。
少女とピエロとの間は約10m
「もうお分かりですね。それでは回しちゃって下さい!」
- 211 名前:変わった条件〜子・丑・辰・申〜 投稿日:2002年05月22日(水)22時30分28秒
- 少女を連れてきた人が勢い良く板を回す。
当然の如く括り付けられている少女も一緒に回っている。
ピエロは少し息を吐き、片手に2本づつ指と指の間に挟み腕を大きく振りかぶる。
そして一気に放たれたナイフが板に突き刺さる音が聞こえ、回転を止めると、
見事少女の身体から数センチ離れた所に刺さっていた。
この演技に観客は休憩どころか熱くなってピエロに溢れんばかりの拍手を送った。
それに対してピエロは玉の上で片手で逆立ちをしたりと愉快に応える。
「それでは、後半に移らさせて頂きます!
後半は空中でのアクロバットショーです!!華麗な大技をとくとご覧あれ!!!」
ピエロがステージから消えると、空中ブランコなどの演技が披露され、
サーカスは無事幕を降りた。
- 212 名前:変わった条件〜子・丑・辰・申〜 投稿日:2002年05月22日(水)22時31分38秒
「ほぉ〜、凄かったですね♪」
テントから出る時、加護は笑顔で3人に言った。
「いやん、興奮しちゃって加護ちゃん可愛い〜♪」
後藤はいつもの様に加護を抱きしめる。
「わぁ、もう止めて下さいよ!」
「止めなよ、ごっちん。
今からやらなきゃいけない事があるんだからね」
「はぁい」
後藤は残念そうに加護から離れた。
「さて…と、じゃ、裏に回ってみますか」
安倍が3人を誘い、4人はテントの裏に回って行った。
- 213 名前:変わった条件〜子・丑・辰・申〜 投稿日:2002年05月23日(木)22時54分48秒
裏に回ってみると、大勢の団員が後片付けに追われ走り回っている。
その中の1人から団長の居場所を聞き、そこへ向かった。
団長と言う位だから、きっと未族の長なのだろうと思ったのだ。
しかし教えられた場所へ行くと、先頭を歩いていた矢口の足が止まる。
「ちょ、ちょっと待って…、団長って……もしかしてあの娘?」
その場所には、メイクは取っているものの、小柄な身体、ほのぼのする雰囲気ですぐに分かる。
サーカスに登場していたピエロが立っていた。
ピエロは4人に気付き、こっちに向かって来た。
そして、矢口の前に立つと、
雰囲気に良く似合う少し舌ったらずな明るい声で話しかけてきた。
「何か御用ですかぁ?」
「……失礼だけど、あなた本当に団長さん?」
「そうですよ」
「お父さんやお母さんは?」
「パパさんですか……」
そこで彼女は俯くと、矢口は少し焦った。
「あっ、聞いちゃまずかった?ごめんね」
「パパさんは…………
昨日の稽古でギックリ腰になっちゃったのです」
「はぁ!?」
「で、ママさんはその看病で忙しいから私が今日だけ団長さんなんです!」
「あぁ…そうなの……」
矢口は肩を落としうなだれた。
- 214 名前:変わった条件〜子・丑・辰・申〜 投稿日:2002年05月23日(木)22時57分08秒
「で、何の用ですか?」
「あっ、ごめん」
矢口はすぐに気持ちを切り替え、真面目な口調で言った。
「私たちはみんな十二支の痣を持つ者なの?」
「そうなんですか!?」
「うん、それで、あなたも痣を持ってるよね」
「はい…、でも何で知ってるんですか?」
「それは、彼女、辰族の後藤真希があなたの『属性』の力を感じたからよ」
「『属性』?」
「まぁ、その話はまた後でするから。
ここからが大事なの。私たちは今復活しつつあるつんくを倒す為に仲間を探してるの。
そして痣を持つあなたの力が必要。だから…、私たちと一緒に行こう」
- 215 名前:変わった条件〜子・丑・辰・申〜 投稿日:2002年05月23日(木)22時57分41秒
矢口は彼女が同意してくれるかどうか微妙な所だと思っていた。
この大きなサーカス団を抱えている団長の娘なのだから、色々あるだろう。
そう思って、何とか説得するような言葉を頭に巡らせていたが、
彼女は意外にもあっさりと答えを出した。
「いいですよ。今からパパさんの所に行って話してくるね」
「へっ?う、うん…」
彼女がそう言って走り出して行ったあと、
4人は小さく円になるような体制になり話し始めた。
「あんなに簡単にOKもらってイイの?」
「なっちもそれ思った」
「あの娘これからの事分かってないんじゃない?」
「私もそう思います…」
- 216 名前:変わった条件〜子・丑・辰・申〜 投稿日:2002年05月23日(木)22時59分59秒
「おまたせ〜」
数分後、見事に身支度が整った彼女の姿がそこにはあった。
その後ろには綺麗な女性に肩を抱かれて何とか立っている男の姿が見える。
きっと団長だろう。
その男が4人に話しかけた。
「本当にこいつを連れて行くのですか?」
それに矢口が応える
「ええ、この娘の力が必要なんです」
「まぁこいつが強いのは分かりますが……」
「どうしたんですか?」
「こいつ……、むちゃくちゃ食べますよ」
「へっ?」
「一日五食は当たり前。時にはそれ以上食べる時もありますよ。
もし食べないような事があったらこの娘本当に倒れますし…
それでもいいんですか?」
「私はそ〜と〜食べますよぉ」
辻が相槌を打つ。
「もちろん、イイに決まってるじゃないですか…
(お金…大丈夫かな……。でも、これも世界が平和になる為だ…)」
「そうですか…、じゃあ、こいつを頼みます」
そう言って男は女性と共にその場から立ち去った。
- 217 名前:変わった条件〜子・丑・辰・申〜 投稿日:2002年05月23日(木)23時00分30秒
残された五人はぞれそれ自己紹介を始めた。
「とりあえず自己紹介しよっか?私は丑族の安倍なつみ」
「私は子族の矢口真里。よろしくね!」
「私はさっき紹介されたよね♪ごっちんって呼んでね♪」
「私は申族の加護亜依です。よろしくお願いします」
「はいっ、未族の辻希美です!よろしくお願いします!!」
- 218 名前:変わった条件〜子・丑・辰・申〜 投稿日:2002年05月23日(木)23時02分10秒
こうして、『一日五食』条件で、未族、辻希美が仲間に加わった――
- 219 名前:変わった条件〜子・丑・辰・申〜 投稿日:2002年05月23日(木)23時04分00秒
再び旅を始めて少し経った後、後藤が不思議そうに辻に質問をする。
「そう言えば、サーカスでやってたあのナイフを出すやつ、あれさぁ――」
「これですか?」
そう言って辻はあっさりとナイフを一本出現させた。
「それ!ホント不思議〜。どうやってるの?」
「それは教えられません。これが私の武器『暗器』ですから」
「へぇ〜」
「まだまだありますよ」
そう言って辻は一瞬にして鎖鎌を取り出し木に向かって投げ、突き刺した。
確かに、辻の着ている服装は身体に似合わずゆったりした装備をしているが、
とても武器が入っている様には見えないのだ。
それを後藤と見ていた加護に辻は近づきにっこりと笑顔を作り話しかける
「歳は同じ位?仲良くしようね!」
「あ、あぁ、よろしくな……」
「うんっ♪」
そう言って先を行く安倍達に追い付こうと走りだす辻の後姿を見て、
加護は少し微笑むと、はっと気付き口を塞ぐ
「(今、『よろしくな』って……、地の口調が出た!?)」
どうやら、加護が本当の意味で心を開くのはすぐの事かも知れない―――
- 220 名前:しんご 投稿日:2002年05月23日(木)23時06分42秒
ようやく辻の登場です。
彼女の口調はかなり悩みましたが、今回は「れす」を使わずに書いてみました。
どっちの口調が良いかレス付けてくれるとありがたいです。
- 221 名前:しんご 投稿日:2002年05月23日(木)23時11分13秒
- >>206ぶらぅさん
はい、痣がなくてもある程度は強いです。薄くても血が通ってますからね。
十二支を題材にしたマンガは自分の知ってる限り2作品ありますがそれが合ってるかどうか分かりません^^;
- 222 名前:力〜卯・巳・午・酉〜 投稿日:2002年05月25日(土)03時22分35秒
安倍達に追いついた辻は矢口の腕にしがみ付き尋ねた。
「今からどこに行くの?」
「ん?子族の村だよ」
「えっ?矢口さんが子族じゃないんですか?」
「そうだよ。実はもう一組別の方向から仲間を探してる娘達がいてね。
その娘達と約束の時に子族の村で会おうって決めてたんだ。
その約束の時が近くなったから、もう帰ろうと思ってるの」
「へぇ〜」
そんな時安倍は遠くを見つめ何かを思い出していた。
「もう一年になるのかぁ。2人とも元気かなぁ…」
- 223 名前:力〜卯・巳・午・酉〜 投稿日:2002年05月25日(土)03時23分42秒
変わって飯田、梨華、ひとみ、愛の4人は、
体長が2mは超えていると思われる巨大な白虎と対峙していた――
- 224 名前:力〜卯・巳・午・酉〜 投稿日:2002年05月25日(土)03時25分48秒
話は数時間前に遡る。4人は寅族が住んでいるという町に足を踏み入れていた。
早速寅族を探す為町を歩き、ある一件の大きな家の前を通り過ぎる時、
突然その家から大きな声が聞こえてきた。
「コラー!!待ちなさい!!!
今度と言う今度は絶対許さないんだから!!」
その声に驚きその家を見ると、小さな少年が突然飛び出し、飯田と衝突してしまった。
少年は尻餅をつき痛がっている。
「あいたたたた…」
「あっ、ごめんね。大丈夫?」
飯田はそう言い少年を起こそうと手を伸ばすが、それより早く別の手が少年を掴んでいた。
「もう、どうしてあんたはいつもいつも……」
その手の正体は愛と同じくらいの歳の娘に見える、少しボーイッシュな感じがする少女だった。
少女はそこまで言ったあと4人に気付き頭を下げる。
「あっ、すみません。お怪我はありませんでしたか?」
「いや、大丈夫だよ」
「本当にすみませんでした」
- 225 名前:力〜卯・巳・午・酉〜 投稿日:2002年05月25日(土)03時26分37秒
- 少女はもう一度頭を下げると家の中へ入って行く。
「お姉ちゃん!」
突然飯田の耳に梨華の呼ぶ声が聞こえる。
「なに?」
「これ見て…」
「!!?」
梨華が指差したそこには、家の門柱に小さな子が書いたと思われる字で
「とらの子のいえ」
と書かれていた。
- 226 名前:力〜卯・巳・午・酉〜 投稿日:2002年05月25日(土)03時27分56秒
飯田は慌てて少女を止める。
「ちょっと待って!」
「えっ?」
「あなた達、寅族なの?」
「…、はい、そうですけど」
「もしかしてあなたが痣を持ってるの?」
「え!?どうして分かったんですか?」
「やっぱり…」
飯田は彼女に痣を持つ者特有のオーラを感じていたのだ。
「私たちもみんな、痣を持つ者なの。そして、あなたに会いに来たの」
「…そうですか……、とりあえず中に入ってください」
少女に招かれ、4人は家の中へ入って行った。
- 227 名前:力〜卯・巳・午・酉〜 投稿日:2002年05月25日(土)03時31分29秒
中では10数人の子供達が所狭しと遊びまわっていた。
応接室らしき部屋に入ると、それぞれソファーに腰掛ける。
「先程は本当にすみませんでした。あの子はいたずら好きで…」
「いえ、いいですよ」
「そう言えば自己紹介がまだでしたね。私は小川真琴と言います」
「あっ、午族の飯田圭織です」
「石川梨華、卯族です」
「吉澤ひとみ、酉族だよ」
「巳族の高橋愛です」
「早速だけど、小川さん。
一年前位から急に魔物の数が激増した事は知ってるよね?」
「ある程度は…」
「それは、つんくが復活する前兆なの」
「はい…、きっとそうだろうと思ってました」
「それじゃあ私達と一緒に―」
そこまで言った所で小川は冷静に返す。
「すみません。お断りします」
「えっ!?どうして?」
「見ての通り、ここは孤児院です」
「大人達は!?」
「あの人達ですか…、あの人達は私達をここに置いて「戦いの旅」とやらに行ってます」
「何なのそれ!?」
「血が疼くらしいんです。寅族は大人になるにつれ、
戦わないといられない性格になるんでしょうね」
「そんな……」
- 228 名前:力〜卯・巳・午・酉〜 投稿日:2002年05月25日(土)03時32分34秒
「だから私はこの子達を守らなければいけないんです。何があっても……」
「でも、それもつんくを倒せば――」
「その間にこの子達が襲われたら誰が守るんですか?
私しかいないんです……」
「小川さん…」
その時、町の入り口のほうから爆発音が聞こえ、家の外から男の声が聞こえた。
「大変だ!!魔物だ!!!魔物の大群が攻めてきたぞー!!」
「「「「「!!??」」」」」
- 229 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月25日(土)16時07分57秒
- おおっ!!進んでる〜♪
- 230 名前:ぶらぅ 投稿日:2002年05月25日(土)18時23分51秒
- おっ♪だんだん揃ってきましたね〜(w
自分も1つは漫画は想像出来るんですけどみなさんと一緒なのかわかりません(w
あっ、名前間違え発見しました。真琴ではなく麻琴ですよ〜
- 231 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月25日(土)21時13分40秒
- 復活キターーーーーーー!!!!
マジで面白い。辻ちゃんの口調は
作者さんが思ったように書いてってOKだと
思います。何か新鮮でいいですよ?
- 232 名前:力〜卯・巳・午・酉〜 投稿日:2002年05月26日(日)20時26分54秒
小川は誰よりも早くその場から出て行った。
「みんな!!行くよ!!!」
「うん!!」
「分かった!」
「はい!」
飯田の掛け声により4人は素早く動き出す。
家の外に出ると、既に町中で魔物が暴れまわっていた。
魔物の大群、それはただれた身体を引きずりながら動くゾンビだった。
家の庭も例外ではなく、外で遊んでいた子供達は固まって恐怖で動けないでいた。
その子供達にゾンビが腕を伸ばしたその時、ゾンビの腕は身体から離れ地に崩れ落ちる。
小川が子供達の前に現れ、
両手で逆手に持っている武器『ファング』と呼ばれるダガーで切ったのだ。
「私達も助けるよ!!」
飯田はそう言い、子供達に近づくゾンビを切り倒していく。
それに梨華、ひとみ、愛も続く。
「みなさん…、ありがとうございます!!」
小川は礼を言い再びゾンビを倒していく。
- 233 名前:力〜卯・巳・午・酉〜 投稿日:2002年05月26日(日)20時28分29秒
「しっかし、この多さはなに?」
弓を引きながらひとみが苛立って言った。
「うん、1体1体は弱いけどこう多いと…」
梨華はそう言って周りのゾンビを回し蹴りで一掃する。
一方、小川は子供達の前で向かってくるゾンビを切っていく事で精一杯だった。
「こんな風にやってたら体力を消耗するだけだ……何とかしないと…、
くそ……、私にもっと力があれば……、力が…」
その時小川の身体から急に光が溢れ出した。
「えっ!?何これ!!?どうなってるの?」
光はさらに強くなり小川を包み込む。
「きゃぁ!!!!」
そして小川の視界は暗闇に包まれた。
「覚醒!?覚醒中は動けない!!」
飯田がいち早くそれに気付き子供達の前に行き小川をフォローする。
- 234 名前:力〜卯・巳・午・酉〜 投稿日:2002年05月26日(日)20時30分02秒
「ここ…、どこ…?私は魔物と戦ってて……」
『力が欲しいか?』
「!?」
声のした方へ振り向くと、巨大な白虎が現れていた。
『我は十二支『寅』。力を欲するお前に力をやろう。全てを凌駕する力を!!』
寅がそう叫び放った後小川の視界は光に包まれ、目に映る光景が元に戻ると、
彼女の身体には白い毛並みの虎の耳、そして尻尾が生えていた。
- 235 名前:力〜卯・巳・午・酉〜 投稿日:2002年05月26日(日)20時33分25秒
「す…凄い……、これならこいつらを…」
小川はダガーを握り直しゾンビに向かって行く。
そしてゾンビ達の間を縫う様にして通ると、ゾンビは全て両断されていた。
「は、ははは、これだ!この力があれば!!」
小川は叫び再びゾンビを次から次へと切り刻んで行く。
「ヤバイ!みんな小川を止めて!!」
飯田は焦り3人に言う。それにひとみが不思議そうに尋ねる。
「どうして? このままでイイじゃん」
「駄目なの!あの娘の表情見て!!
あの娘……、力に溺れて本来の目的を忘れてる!」
確かに、彼女の表情は、戦いの最中だと言うのにどこか楽しげで、
口の端が上がっている。
そして、既に庭の中に入っているゾンビをほぼ倒しつつあった。
「本当だ…、完全にイっちゃってる顔だね」
「早く止めないと!!」
石川の最後の一言で4人は小川に向けて走り出す。
「「「「!!!??」」」」
しかし、時は既に遅く、小川の身体は光を放ち、
次の瞬間、巨大な白虎へと姿を変えた。
- 236 名前:力〜卯・巳・午・酉〜 投稿日:2002年05月26日(日)20時36分46秒
- そこへ再びゾンビの集団が庭へと侵入して来た。
寅はそれをみると恐るべき速さでその集団に向かっていき、
口から炎を吐いてゾンビを焼き払う。
そして寅は凄まじい音で吼えると、途端に笑い出した。
『ハハハハ!!!外だ!!久しぶりの外だ!!!
あいつめ、自分の力量も知らず我の力を解放しすぎた。
此の際だ、暴れさせて貰おう』
「なに!?あなた十二支でしょう!!そんな事していいと思ってるの?」
飯田は感情的になり寅に叫ぶ。
『お前は……、十二支だな。後そこの3人も。
何故こんな多くの十二支が………、そうか、あいつが復活しそうなのか』
「そう、だからもう大人しくあの娘の中に戻って!」
『ふむ…、あいつとやり合うのは楽しいしな…、
いや、折角外に出たんだ、もう少し暴れても罰は当たらないだろう』
「なっ!?これ以上町を破壊してどうするの!!?」
『そんな事は我の知った事ではない』
「この……」
『だが、ただ町を破壊するのも詰まらないしな。
よし、お前達と勝負をしよう。
もしお前達が勝ったら我は大人しくあいつの中に戻ってやるよ』
- 237 名前:力〜卯・巳・午・酉〜 投稿日:2002年05月26日(日)20時37分25秒
- 「……約束だよ」
『ああ…』
「梨華!! よっすぃ!!」
「うん!!!」
「よっしゃあ!!」
3人は光を纏い獣化し、寅と対峙した。
- 238 名前:力〜卯・巳・午・酉〜 投稿日:2002年05月26日(日)20時38分50秒
「私は一体どうしたら…」
そんな中、1人獣化出来ない愛はとまどっていた。
そこに梨華が叫ぶ。
「愛ちゃん!愛ちゃんはゾンビがまたここに来るかもしれないから、
子供達の傍にいて!!」
「は、はい…」
愛は梨華の言葉通り、子供達の所へ行く。
その内の1人が愛に心配そうに言った。
「麻琴姉ちゃん…どうしちゃったの?」
「ん?大丈夫。あそこにいる人達がきっと助けてくれるよ」
愛はそう励ますと、彼女達の方を向き思う。
「(私も獣化出来たら…、もっとみんなの役に立てるのに……)」
拳を握り締め、愛は歯痒さを感じた。
- 239 名前:力〜卯・巳・午・酉〜 投稿日:2002年05月26日(日)20時40分38秒
まず始めに動いたのは寅だった。
地面を一蹴りするだけで3人の所へ跳ぶ。
それを3人はそれぞれ分散して避け、寅を大きく囲むような陣形を取った。
「(こんな大きさじゃ柔術は効かない!)」
梨華は大きく跳び、腹に蹴りを浴びせるが微動だにしない。
「クソッ!!」
ひとみがこめかみに向かって矢を放つが寅は矢の方を向き炎を吐き矢を消滅させた。
さらに斜め後方から飯田が剣を振るおうとするが、
近づくと寅の尻尾が迫り、それを避けるので精一杯だった。
「つ…、強い……」
『なんだ、勝算があると思っていたのか?
十二支の力を少し開放しただけのお前達に完全体の我が負けるとでも?
片腹痛いわ!!』
そう吼えると寅は円を描くように炎を吐く。
この素早い攻撃に何とか避けれたものの、若干スピードが劣る飯田は腕に火傷を負ってしまった。
「お姉ちゃん!!?」
「梨華ちゃん危ない!!!」
梨華が飯田に気を取られている瞬間寅の大きな腕が梨華を捉え、
そのまま吹っ飛び庭の鉄柵に激突した。
- 240 名前:力〜卯・巳・午・酉〜 投稿日:2002年05月26日(日)20時41分39秒
- 「梨華ちゃん!!」
ひとみは素早く寅の上空を飛び越し倒れている梨華を抱きかかえる。
「大丈夫!?」
「う…、うん……」
梨華は苦しそうだが何とか立てる事が出来た。
「くそ…、こんなヤツにどうやって勝つんだよ…」
ひとみは悔しそうに寅を見つめた。
寅は2人の方を向き、ゆっくりと向かってくる。
その時だった。
寅の横顔に何者かが一瞬で殴ったのだ。
『ガハァッ!!』
寅に初めて苦痛の表情が浮かぶ。
- 241 名前:力〜卯・巳・午・酉〜 投稿日:2002年05月26日(日)20時42分37秒
「(お姉ちゃんはこんなスピード出せない……、一体誰?)」
梨華がそう思っていると、寅を殴ったと思われる人が梨華とひとみの前に着地する。
それは、少し釣り上がった目が印象的な大人の女性だった。
その女性は目の前の2人に言う。
「まったく、獣化した位で十二支の完全体と戦うなんて、あんた達無茶しすぎよ」
「あ…、あなたは?」
梨華が尋ねたが、女性は聞こえていないのか、話を続けた。
「まぁ、この戌族の直系、痣を持つこの保田圭にかかれば、
こいつを静める事ぐらいなら出来るわ」
そう言って保田と名乗る女性は寅の方を向き、不敵な笑みを浮かべた。
- 242 名前:しんご 投稿日:2002年05月26日(日)20時51分22秒
- >>229さん
前よりは更新スピードが上がっていると思いますので、見捨てず読んでやって下さい(^^;
>>230ぶらぅさん
名前間違い発見ありがとうございます。そして申し訳ありませんでした。
更新する前に一度目を通すのですがこう言う間違いなどがたまにあるので、見つけてもらうと非常に助かります。
>>231さん
面白いなんて言って貰えて嬉しい限りです。
辻の口調は一応このままいこうと思いますが、だんだん変わっていくかも知れません(w
それでは。
- 243 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月27日(月)05時19分40秒
- ヤッス〜キタ―――――――――――!!
ってかカッケ〜登場ですね。
更新が楽しみでたまりません(w
- 244 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月27日(月)09時15分59秒
- やはり、やっす〜はいぬなのですね.....
でも、かっけ〜。
- 245 名前:力〜卯・巳・午・酉〜 投稿日:2002年05月27日(月)22時30分31秒
『お前も十二支か!?しかしさっきのお前は完全体になっていなかったはず…
何故我にダメージを与えられる?』
「さぁ、何故でしょうね」
『クッ!』
寅は保田に向かって鋭い爪を振るうが、保田は難なく避けた。
「じゃあ、ヒント。どうして私が袖の無い服を着ているか分かる?」
確かに保田の装備は袖が無く、腕が根元から出ている物だった。
「その理由は…、これよ」
そう言うと、保田の両腕から光が放たれ、
次の瞬間、彼女の両腕は人間のそれではなく、
まるで熊のような大きな白い毛並みの腕に変わっていた。
『そ…、それは戌の腕!!?』
「そう、十二支の力を身体全体に巡らせる普通の獣化とは違い、
身体の一部、私の場合は両腕だけに集中して獣化させる『部分獣化』を私は編み出したの」
『なに!?』
「これなら腕だけが十二支の力だから、図体のでかいあなたに対して有利という訳。
じゃ、行くよ!!」
- 246 名前:力〜卯・巳・午・酉〜 投稿日:2002年05月27日(月)22時30分48秒
- 保田がそう言った後、
動体視力の良い梨華やひとみでさえ追っていくのがやっとのスピードで間合いを詰める。
『!!?』
寅は慌てて炎を吐くが保田は素早く避け、寅の下に入った。
そして、
「ハァッ!!!」
掛け声と共に保田の拳が寅の腹部にめり込み、寅を中に浮かせる。
さらに落ちてくる寅に先程と同じ場所を一瞬で数十発入れた。
- 247 名前:力〜卯・巳・午・酉〜 投稿日:2002年05月27日(月)22時32分00秒
- 『ば…、馬鹿な……』
寅はそこまで言うと、凄まじい音と共に横に倒れた。
そしてそれにより起こった砂煙と共に寅の身体は光を放ち、
砂煙が収まる頃には、横たわる小川の姿があった。
「小川!!」
飯田は駆け寄り、裸の小川をマントで包み込んだ。
それを見ていた保田が助言する。
「早くその娘寝かせてあげな」
「う…、うん」
そう言って飯田は小川を抱き家の中へ入って行った。
子供達も心配そうに後を付いて行く。
「さて…と、あなた達」
急に呼ばれ少し驚きながら梨華とひとみ、愛は保田の方を向いた。
「あなた達、まだ戦える?
町に残ってる魔物を今日中に退治したいんだけど」
「私は大丈夫だけど…、梨華ちゃんは―」
そう言ってひとみは梨華の方を向くが、
「私も大丈夫です」
と、梨華はまだ苦しそうな表情だが言った。
「私も」
愛もそう言った。
「そう、じゃあ、手伝ってくれるね」
「「「はい!」」」
ゾンビ自体は弱いので、ほんの数時間で町の中の魔物は倒しきった。
- 248 名前:力〜卯・巳・午・酉〜 投稿日:2002年05月27日(月)22時33分21秒
その夜。
子供達はやはり昼間の件で中々寝付けなかったが、今はすっかり寝てしまっている。
そして保田、飯田、梨華、ひとみの4人は先程小川と話した部屋で会話していた。
「なぜこの町に?」
まず飯田が保田に尋ねると、保田は溜息を吐いて言った。
「あなた達が私の村に来るのが遅いからよ」
「へっ?」
「ずっと前から魔物の数が増えてきて、
他の十二支の娘が迎えに来ると思ってたのに全然来ないし。
もう待ちくたびれて私だけで旅に出ちゃったって訳」
「は…、はぁ……」
「まあ、途中で出会えるかどうか賭けだったんだけどね。
こうして会えたんだしイイって事にしようよ。ハッハッハッ」
「「「ははは…」」」
「あれ?ところで巳族の娘は?」
「愛ちゃんですか?小川さんを看病するって言って出て行きましたよ」
- 249 名前:力〜卯・巳・午・酉〜 投稿日:2002年05月27日(月)22時34分10秒
その時小川はベッドの上ではなく、庭の木の下に座っていた。
「こんな所にいたんだ」
「あっ…」
声をかけたのは愛だった。
「部屋に行ってもいなかったから探しちゃった。
となり、座ってもイイ?」
「…、どうぞ」
愛は小川の隣に座る。
「高橋さんは―」
「愛でイイよ」
「私も麻琴でいい」
「じゃあ、まこっちゃん」
「へっ?」
「だめ?今パッと閃いたんだけど」
「いや、駄目じゃないけど、
今までそう呼ばれなかったからちょっと驚いただけ」
「そう、よかった♪」
小川は、少し妙な気分になった。
- 250 名前:力〜卯・巳・午・酉〜 投稿日:2002年05月27日(月)22時35分43秒
- 「愛ちゃんは―」
「うん」
「こんな旅をしてて怖くないの?」
「う〜ん、怖くないと言ったらウソになるかな。
あっ、あとね、私も上手く獣化出来ないんだ」
「そうなの?」
「うん、しかもこの間まで私の中の十二支に月に一度、夜に操られてたの」
「うそ…」
「ホント。でもね、そんな事に負けちゃいけないって、
気付かせてくれた人たちがいるんだ」
「あの人達?」
「うん。私が操られている時も諦めずに助けてくれたの」
「そう…」
「だから、まこっちゃんも負けないで、頑張っていこう!」
「…そうだよね。負けちゃいけないよね」
その時愛は急に立ち上がった。
「そうだ!!競争しよう!」
「競争?」
「うん!どっちが早く自由に獣化出来るか競争!」
「競争か…、よ〜し、負けないんだから!!」
小川も立ち上がり拳を顔の高さまで上げ言った。
「私も負けないよ!」
それは、小川が仲間に加わる事を意味したものだった――
- 251 名前:力〜卯・巳・午・酉〜 投稿日:2002年05月27日(月)22時37分08秒
翌朝。
保田は昨日の夜から仲間になる事を伝えていた。
後は小川。
小川は荷物をまとめ、5人の前に立っていた。
飯田が尋ねる
「本当に仲間になってくれるの?」
「はい。昨日愛ちゃんと話して」
「愛ちゃん?」
梨華が不思議そうに愛の方を見ると、
愛も梨華の方を向いて笑顔を作っている。
「「「「「「麻琴姉ちゃん!!」」」」」」
その時、子供達が家から出て来た。
「みんな…、ごめんね。やっぱり姉ちゃん…」
その時、最初に飯田にぶつかった少年が小川に言う。
「姉ちゃん、悪いやつ倒しに行くんだろ?
そんな凄い事俺達が止めるはずないじゃん。頑張って倒してこいよ!!」
少年は親指を立て小川の方を向ける。小川の目には既に涙が溜まっていた。
「あ!姉ちゃん泣くなって!!
ほら〜、こいつらだって泣き出したじゃん」
小川の涙につられて、小さい子達は号泣していた。
「……うん、絶対やっつけて帰ってくるからね!!!」
- 252 名前:力〜卯・巳・午・酉〜 投稿日:2002年05月27日(月)22時37分42秒
こうして、寅族の小川麻琴。戌族の保田圭を仲間に加え、
彼女達もまた、子族の村へと歩き出した――
- 253 名前:ひとみの企み3〜寅・卯・巳・午・酉・戌〜 投稿日:2002年05月27日(月)22時39分53秒
旅を再開して数時間後、ひとみは例の如く小川と保田を呼んだ。
「そうそう、2人とも聞いて。私と―」
「わー!!!そこまで!!」
梨華が素早くひとみの口を塞ぐ。
「モゴッ。モゴモゴ(チッ、気付かれたか)」
「ふぅー」
「吉澤さんと石川さんは恋人同士なので邪魔しちゃいけないそうです」
そう2人に言ったのは愛だった。
「愛ちゃん!!?何て事を…」
「えっ?違うんですか?」
「高橋ナイス!!」
「あなた達……」
「そうだったんですか…」
「なんで結局こうなるの〜!!!」
- 254 名前:しんご 投稿日:2002年05月27日(月)22時44分16秒
そろそろ話の後半部分に差し掛かって来た所かな?
これからも気合を入れて頑張りたいと思いますので、宜しくお願いしますm(_ _)m
- 255 名前:しんご 投稿日:2002年05月27日(月)22時51分47秒
- >>243さん
はい、保田来ました(w
彼女は強くてかっこいい役が似合いますよね。
>>244さん
やっぱり分かっちゃいましたか(^^;
- 256 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月29日(水)00時26分24秒
- 今日初めて一気に読みました。
いしよし好きな自分にはかなり嬉しいです。
設定とかかなり面白くて感心しました。
続き、期待してます。
- 257 名前:子族の村にて〜子・丑・辰・未・申〜 投稿日:2002年05月29日(水)23時04分04秒
此処は子族の村。
全ての家屋が平均身長150cm前後の子族を基準に作られているので、
身長の高い者は入る時に少し頭を下げるようにして入らなければならない。
その子族の村に矢口、安倍、加護、後藤、辻の5人が到着してから3日が経とうとしていた。
「早く来ないかな〜♪」
後藤は外で近くにあった大きな石の上に座り、遠くの方を眺めている。
中で待っていても良いのだが、やはり少し窮屈な為外で待っているのだ。
その待ち人とは、もちろん石川梨華。
「ねぇ、そろそろ梨華ちゃん来るかなぁ?」
「さぁ…」
後藤は石を背もたれにして足を投げ出したように座る加護に尋ねたが、
加護はそっけない返事を返しただけだった。
- 258 名前:子族の村にて〜子・丑・辰・未・申〜 投稿日:2002年05月29日(水)23時05分02秒
- その時どこからか辻がやって来て加護の前に立つ。
「あいぼん!今日も獣化の練習付き合って!」
「よっしゃ、じゃあ行こうか」
「うん♪」
まだ覚醒していなかった辻は子族に向かう旅路の途中での戦闘で覚醒し、
今まで獣化の特訓をしていた。
「しかし、加護ちゃんも丸くなったねぇ…」
後藤は辻と一緒に歩いて行く加護の背中を見てそう呟く。
それは恐らく辻との出会いだろう。
彼女と出会い、行動を共にするうちに加護はその歳相応の雰囲気になっていった。
- 259 名前:子族の村にて〜子・丑・辰・未・申〜 投稿日:2002年05月29日(水)23時05分32秒
その日の夕食時、
「―で、遂に私は自由に獣化出来るようになったのです!」
「おっ中々早いじゃん。辻もやるねぇ」
矢口に褒められた辻は何とも言えない嬉しそうな笑顔をした。
実際、こんなに早く獣化出来る様になったのには訳がある。
もちろん辻の才能もあったが、それ以外に十二支の『性格』が関係していた。
辻の中に住む『未』は人懐っこい性格。それ故辻に力を貸す事になんの抵抗も無かったのだ。
逆に『寅』や『巳』など比較的凶暴な十二支は他人に力を貸す事を嫌い、
獣化するのにはそれなりの時間がかかるのだ。
そして次の日も、5人はもうすぐ来るであろう仲間達を待ち続けていた。
- 260 名前:子族の村にて〜子・丑・辰・未・申〜 投稿日:2002年05月29日(水)23時06分31秒
5人が子族の村に到着した頃、もう一方の6人はというと…
「いい?けっして精神で負けちゃだめよ」
保田は座禅を組んでいる高橋に声をかける。
「愛ちゃん、頑張って!」
「愛ちゃんなら出来るよ!」
「高橋、頑張れ!」
梨華、小川、飯田もそれぞれ声をかける。
今夜は愛が自由に獣化出来る様にする為の特訓の日。
保田、小川を仲間に加えた日から数えて一月が経とうとしていた。
その間、愛、小川の2人は獣化するべく特訓を重ねてきた。
前記の通り、この2人は十二支の性格の問題により時間がかかっている。
「はい、やってみます」
そう応えると、愛は静かに目を閉じた。
- 261 名前:子族の村にて〜子・丑・辰・未・申〜 投稿日:2002年05月29日(水)23時07分59秒
「よし、ここまでは大丈夫」
愛の視界は真っ暗になるが落ち着いている。
「………来た」
その時、暗闇から白い鱗の大蛇が姿を現した。『巳』である。
『なんだい、今日はやけに自信があるようだね』
巳は愛の顔を見るとそう言った。
愛は一度静かに深呼吸すると巳に話しかける。
「今回はあなたと取引をしに来ました」
『取引?』
「はい。あなたは以前、刺激が欲しいと言いましたよね?」
『あぁ、言ったねぇ』
「私の中にずっといて、刺激がありますか?」
『ないよ。だからあんたの身体をおとなしく私に渡せと言ってるじゃないか』
「私はあなたの力を借りたい、あなたは刺激が欲しい。
そこで、私の力だけじゃ敵わない相手、
つまりあなたに刺激を与えてくれそうな相手が現れた時、あなたの力を貸して下さい。
そうすればあなたも刺激欲が満たされると思いませんか?」
『はっ、何を言うかと思えば。
あんたが獣化した途端、私があなたの身体を乗っ取らないとでも思って?』
巳は口の端を吊り上げ嫌な笑みを浮かべるが、愛には通じていない。
- 262 名前:子族の村にて〜子・丑・辰・未・申〜 投稿日:2002年05月29日(水)23時09分02秒
- 「忘れてませんか?
私は自分であなたの力をコントロールする事は出来ませんが、
あなたが暴れだした時、無理矢理私の中に抑え込む事は出来るんですよ」
『……』
「もしあなたが力を出しすぎて私を乗っ取ったのなら、
私はあなたを私の中に入れ……、自害します」
『なっ!?』
「私が死ねば私の中にいるあなたも消滅するでしょう
どうです?結構いい条件だと思うんですけど」
『……、私がこんな小娘に丸め込まれるのは癪に障るけど…、
しょうがないねぇ、それで了解してやるよ』
巳がそういった途端、愛の視界は光に包まれ、
光が収まると、元の世界に戻っていた。
「高橋?どうだったの?」
保田が高橋に問いかける。他の3人も愛の顔を見る。
「はい。力になってくれると約束してくれました」
笑顔でそう言う高橋に4人は安堵の色を浮かべる。
「あ〜あ、これで競争には負けちゃったな」
「まこっちゃん…」
「まぁ、覚醒するのも私の方が遅かったんだし、
当たり前と言ったら当たり前か。
でも、すぐに追い付いてやるんだから覚悟しとけよ!」
「…うん!まってるよ!」
- 263 名前:子族の村にて〜子・丑・辰・未・申〜 投稿日:2002年05月29日(水)23時09分35秒
こうして、条件付きで自由では無いかも知れないが、
愛は獣化する事に成功した。
そしてその5日後、6人は子族の村へ到着する。
- 264 名前:しんご 投稿日:2002年05月29日(水)23時13分47秒
- >>256ごまべーぐるさん
恋愛物がどこまで入るか分かりませんが、サブストーリー的にやっていけたらいいなと思ってます。
設定については、文中では矛盾してる所もあるとは思いますが、それが解決できるように書いていくつもりです。
それでは。
- 265 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月29日(水)23時35分03秒
- >「とらの子のいえ」
なんか可愛い家だ・・・・(w
犬やっすーがかこ(・∀・)イイ!!惚れますた。
虎・巳コンビが微笑ましいなぁ・・・。∬`▽´∬も早く制御できるように
なるといいですね。
つーじ。の獣化姿はやはりもこもこの毛で身にまとわれているんでしょうか・・・
仲間がだいぶ集まってきましたね・・・・続き楽しみにしてます。
- 266 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月30日(木)07時51分36秒
- う〜ん!仲間が揃ってきましたね!
毎回の更新が楽しみです。
今、一番のお気に入りです!
がんがってください!
- 267 名前:子族の村にて2〜子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌〜 投稿日:2002年05月30日(木)23時24分42秒
後藤はいつもの様に子族の村の外を眺めていると、
遠くから6つの人影が見えた。
「あっ!!あれじゃない??」
その一言で他の4人も集まる。
そして、見事ここ子族の村にて十二支がほぼ集まった。
子族の村に着くなり梨華は加護の元に歩み寄りどちらも笑顔で手を取り合う。
「加護ちゃん!!元気してた?」
「梨華ちゃんこそ!!」
「あれっ?加護ちゃん少し変わった?前より雰囲気が違うよ」
「ん?そう?」
「再開を喜ぶのは後にして、先に自己紹介をしようか?」
飯田は微笑みながら2人を止める。
- 268 名前:子族の村にて2〜子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌〜 投稿日:2002年05月30日(木)23時25分36秒
- それぞれが自己紹介を交わし、最後に後藤の番になった。
「辰族…の、ご…後藤…真希……」
身体を震わせながら喋るその不自然さに梨華が気付き声をかける。
「どうしたの?具合でも悪いの?」
「も〜我慢できない!!梨華ちゃん可愛すぎる!!!」
後藤はそう叫びいきなり梨華に抱きついた。
「えっ!?えぇ!!!?」
梨華が混乱している間もずっと後藤は抱きしめたまま。
これをひとみが放っておく訳が無い。
「こらー!!私の梨華ちゃんに何をする!!!」
そう叫び梨華から後藤を引き裂く。
「あらよっすぃー。いつからあなたの物になったワケ?」
「恋敵によっすぃーなんて呼ばれたくないね」
「じゃあ、よしこ」
「それなら良し」
「……、話変わってない?」
後藤とひとみが睨み合っている間に梨華が冷や汗を流している。
- 269 名前:子族の村にて2〜子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌〜 投稿日:2002年05月30日(木)23時27分18秒
- 「そうそう、ごっちんは『属性』を見ることが出来るんだよ」
矢口がそう言うと、ひとみや梨華、飯田、愛、小川、保田は不思議そうに後藤の方を向く。
「んぁ?そうだった。えっとねぇ…
梨華ちゃんは『風』
よしこも『風』
飯田さんは『土』
高橋と保田さんは『水』
小川は私と同じ『火』だね」
後藤が全員分の属性を言うと、飯田が訳の分からないといった感じで尋ねる。
「ちょ…、ちょっと待って矢口。『属性』ってなんなの?」
「あっ、ゴメン。『属性』っていうのは十二支が持っている自然界の力なの。
まぁ、言葉で説明するよりやって見せた方が早いね。加護ちゃんやってくれる?」
「あっ、はい」
加護は光に身を包み獣化すると、鞘から刀を抜く。
「行きますよ」
そう言って加護が力を込めると、刃の部分に炎が纏う。
「こんな感じです」
6人は驚きそれに見入っていた。
「属性を使っての攻撃は獣化する時と同じ感覚だからすぐに覚えられるよ♪」
後藤がそれに補足するように言った。
- 270 名前:子族の村にて2〜子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌〜 投稿日:2002年05月30日(木)23時30分35秒
- 「加護〜、そろそろ獣化解いてもイイよ」
「いや、矢口さん。さっきから解こうと思ってるけど解けないんです…」
「えっ?なにそれ?」
「私にも初めての事で何が何だか…!!?」
すると加護の身体を強い光が包み、
光が収まると、普通の人間より一回り大きいくらいの白い毛並みの老猿が姿を現した。
「なっ!!?申!!!?」
その出来事に全員顔が強張る。
- 271 名前:子族の村にて2〜子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌〜 投稿日:2002年05月30日(木)23時31分11秒
- 『案ずるな。わしは別に暴れたりせん。そこの犬コロに用があるのじゃ』
申がそう言うと、突然保田の身体も光を放ち出した。
「はっ!?なに?なんなのよ!!?」
保田が驚愕する間に光は保田を包み込み、寅より二回り小さいくらいの白い犬が現れた。
『はっ!ジジィがでしゃばりやがって。昔の決着でも付けようってのか?』
『その通りじゃ』
『しょうがねぇな。何度も言わせるように、卵が先に決まってるだろ!』
『お主は何も分かってないのじゃ。鶏が先に決まっておろうが!!』
どうやら2体は「卵が先か鶏が先か」で口論しているようだ。
その後それはしばらく続き、共に息が切れてきた。
『ハァ…ハァ…、相変わらず折れねぇジジィだな…』
『ゼィ…、ふん。若い奴に負けられんからの…』
『でも…今日はこれ位で許してやらぁ…』
『それはこっちの台詞じゃ…』
そこまで言った所で2体は同時に光を放ち、次の瞬間完全獣化は解けていた。
その一部始終を彼女達は何も出来ずに見ていただけなのは言うまでも無い。
- 272 名前:子族の村にて2〜子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌〜 投稿日:2002年05月30日(木)23時31分47秒
保田と加護は少し放心状態になっていた。
「保田さん…」
「ん…?」
「私達は仲良くしましょうね」
「そうだね……」
- 273 名前:子族の村にて2〜子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌〜 投稿日:2002年05月30日(木)23時33分01秒
その時安倍が改まって全員に話しかける。
「さて、あとは亥族だけなんだけど…」
それに飯田が応える。
「その事で私考えたんだけど、
これだけ世界中を探し回って噂一つ聞かないなんておかしいと思うの。
だから、噂も出ない様な未開の土地が怪しいと思う」
それに矢口が賛同した。
「うん。そうだね」
保田が続いて言う。
「未開の土地って言ったらあそこしかないじゃん」
飯田が結論を出す。
「最北端の大陸…、『アイスランド』」
- 274 名前:子族の村にて2〜子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌〜 投稿日:2002年05月30日(木)23時34分02秒
『アイスランド』
世界の最北端に位置し、その全てを雪と氷に包まれていると言う大陸だ。
しかしそれ以外の正確な情報は無く、未だ開拓されていなかった。
近年、アイスランドの気温が一番上がる週が解析されてから、
毎年その週になるとアイスランドに一番近い港から表面全体から熱を発する特別な船を出港し、
その未開の大陸の調査を続けていた。
- 275 名前:子族の村にて2〜子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌〜 投稿日:2002年05月30日(木)23時35分09秒
- 「その船に乗せてもらうと…」
「うん。もうそれしか道は無いと思う」
保田の問いに飯田は答える。
「でも、この人数で行ったら逆に動き辛くない?」
そこで矢口が口を挟む。
「そうだね。今回は4人で行こうか」
その時話を聞いていた小川が会話に入った。
「あの…、私まだ獣化出来ないんでもしもの時役に立てないし…、
私は外して貰えませんか?」
飯田は優しく微笑み小川を見つめる。
「そうだね。その間に特訓しとこうか?」
「はい!」
「さて、どうやって決めようか?」
保田が話を戻すと安倍が即答した。
「やっぱジャンケンじゃない?」
「えっ?そんな簡単なので決めてイイの?」
「いいんじゃない?意義ある人」
飯田がそう全員に尋ねるが、異議を唱えるものはいなかった。
「じゃあそれで。みんな用意はいい?」
- 276 名前:しんご 投稿日:2002年05月30日(木)23時40分47秒
今回はリクエストを受け付けたいと思います。
アイスランドに向かわせたい娘を選んでください。
上位4名を使いたいと思います。1人で何人選んでもOKです。
締め切りは5月3日(月)の午前0時。
それから一週間以内に更新しようと思います。
- 277 名前:しんご 投稿日:2002年05月30日(木)23時44分29秒
- >>265さん
辻の獣化姿はまだ出てませんが、もこもこになる予定です(w
>>266さん
>今、一番のお気に入りです!
始めた当初、そんな有難い言葉を言って貰えるなんて思ってなかったので凄く嬉しいです。
- 278 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月31日(金)01時24分36秒
- 石川、吉澤、後藤、保田なんかどうでしょうか?
石川を取り合う二人、そして眉毛下がりっぱなしの石川、キレまくりの保田を
見てみたい(w
- 279 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月31日(金)05時31分56秒
- 名無しさんの意見、いいですねぇ。
私も見て見たいです。
でも矢口も捨てがたいなぁ…。
う〜ん…。
- 280 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月31日(金)20時32分32秒
- >278さんの意見いいですね〜(w
でも石川吉澤後藤高橋で石川との絡みを見てみたい(w
矢口も捨てがたいですが・・・
- 281 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月31日(金)21時07分36秒
- 『石吉後保』希望です。
石との絡みで高も捨てがたいのですが。。。
- 282 名前:翔 投稿日:2002年05月31日(金)21時27分35秒
- はじめまして!
石川・後藤・吉澤・高橋希望です!
- 283 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月01日(土)00時23分41秒
- うーん・・・。これはかなり迷います。らってどれセレクトしても面白い・・・
アイスランド、北。とくるときっと亥はあの子だと思うんで
ぜひやっすーとの会話みたい(w)と、戦力的にもかなり頼りになるんでヤッス―。
あと3人は。・・・・三人ときたらヤパーリ兎・酉・辰のドタバタトリオですかね(w
完全体が犬猿な(w)保加護も見たかったり・・・。うーん。
- 284 名前:石高保後 投稿日:2002年06月01日(土)17時50分20秒
- 石川が出てればOK 高橋を助ける石川も見たい
保田につっこまれる石川も見たい 後藤とラブラブな石川も見たい
この小説めっちゃおもろいので楽しみです
- 285 名前:しんご 投稿日:2002年06月01日(土)18時27分29秒
- あ……、締切日間違ってる…
すみませんでした。6月3日(月)の午前0時に訂正します。
>>276じゃ地方TV局の再放送みたいじゃないか…
- 286 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月01日(土)21時56分50秒
- >276じゃ地方TV局の再放送みたいじゃないか…
ワラタ
278さんと同意見。なので石吉保後キボーンですね。
- 287 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月02日(日)05時41分27秒
- 自分は>284さんに同意で石高保後キボソです。
石高と保後が面白そうなので。
続き期待してますー
- 288 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月02日(日)10時38分35秒
- 石・吉・高・矢 希望です
石川と一緒に行けなくて拗ねる後藤が見たいです。
- 289 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月02日(日)18時35分22秒
- 加護、辻、石、吉がいいな。
四期好きなんで。
- 290 名前:しんご 投稿日:2002年06月03日(月)01時22分36秒
- 集計結果発表
1位 石川 11票
2位 後藤 9票
2位 吉澤 9票
4位 保田 6票
5位 高橋 5票
6位 矢口 1票
6位 加護 1票
6位 辻 1票
という訳で、石川・吉澤・後藤・保田の4人に決定しました。
>>276に書いてある通り、一週間以内には更新をしようと思いますので、今しばらくお待ちを…
- 291 名前:パーティ決定後〜子・丑・寅・卯・辰・巳・午・羊・申・酉・戌〜 投稿日:2002年06月04日(火)21時08分49秒
その日の夕方、ジャンケン終了後。
「と言う事で、圭ちゃん、梨華、よっすぃー、ごっちんに決まったんだけど…」
そう冷や汗を流しながら言う飯田の目線には、睨み合った後藤とひとみの姿があった。
「梨華ちゃんは絶対渡さないんだから!」
「だから、いつからよしこの梨華ちゃんになったのよ!」
「やるかぁ!?」
「いいとも!!」
「ちょ、ちょっと2人共…」
梨華が頼りなく止めに入ると2人は同時に梨華の方を向く。
「ごっちん!こうなったら梨華ちゃんがどっちを取るか決めてもらおうじゃないの!」
「望むところ!!」
「えっ?」
「さぁ!!」
「どっち!!」
「急にそんな事言われても…」
- 292 名前:パーティ決定後〜子・丑・寅・卯・辰・巳・午・羊・申・酉・戌〜 投稿日:2002年06月04日(火)21時09分57秒
- 梨華が返答に困っているその時、
「2人止めなさい!!!!!」
遠吠えにも聞こえる保田の怒号が響き渡った。
その声にひとみと後藤が一瞬すくみ、保田の方を向く。
「あなた達、今回の旅で必要以上に石川に近寄るのを禁止します!!」
「「えぇ〜!」」
「文句を言わない!!さぁ!明日の朝には出発するんだからもう寝る!
それとも…、私に無理矢理寝かされたいの?」
「「…おやすみなさい」」
保田の睨みに負けて2人はそそくさと家の中に入った。
「おいら、この4人で大丈夫なのかちょっと心配…」
「圭ちゃんがいるから何とかなるんじゃないかな…」
「なっちのせいじゃないよね…」
こうして、11人の十二支が集まった最初の夜は更けていった―――
- 293 名前:パーティ決定後〜子・丑・寅・卯・辰・巳・午・羊・申・酉・戌〜 投稿日:2002年06月04日(火)21時14分15秒
- 翌朝。
日の出が上がる頃に4人は子族の村を後にし、
一路例の船が出港する港へ歩き出した。
―数時間後。
「ごっちん」
前を歩く保田と石川に聞こえない程度の小さな声で後藤を呼ぶ。
「んぁ?なに?」
「こうなったら、この旅でどっちが梨華ちゃんに相応しいか勝負しようじゃないか」
「ふふ、いいねぇ。で、何をするの?」
「今から出てくる魔物を多く倒した方が勝ちって言うのはどう?」
「了解」
「2人共!何やってるの!!魔物よ!!」
突然の保田の叫び声に2人は前を向くと、保田と梨華の目の前に2m前後の黒い熊の様な魔物、
そしてピンク色をしたスライム状の魔物が2体現れていた。
- 294 名前:パーティ決定後〜子・丑・寅・卯・辰・巳・午・羊・申・酉・戌〜 投稿日:2002年06月04日(火)21時14分50秒
- 「早速だけどいかせてもらうよっ!」
後藤はそう言って魔物の方へ走り出すと、自分の横を何かが高速で通り過ぎるのを感じた。
すると、保田と梨華の間を縫って矢がスライム状の魔物を一体捕らえていた。
「なっ!?」
後藤が振り向くと、勝ち誇った顔で矢を放ったひとみの姿があった。
「よしこやるねぇ!でも私も負けられないよ!」
後藤は再び走り出し、その勢いでもう一体のスライムを突き刺す。
「「あと一体!」」
後藤とひとみはもう一体の方を向くが、
「石川!いくわよ!!」
「はい!!」
保田が魔物の懐に入り拳を入れ、そのまま後方へ吹き飛んだ魔物の腕を梨華が掴み、
スピードをさらに加えて地に叩き付けたる。
魔物は口から緑色の液体を吐き出すと、二度と動く事は無かった。
- 295 名前:パーティ決定後〜卯・辰・酉・戌〜 投稿日:2002年06月04日(火)21時18分01秒
- 「あなた達!」
保田はそう叫びひとみと後藤を睨み付けると、2人は反射的に気を付けの姿勢を取る。
「今のは魔物のレベルが低かったから良かったものを、もう少し回りに気を張りなさい!」
「「……」」
「まったく、今回の旅はある意味貴重なのよ」
「「「えっ?」」」
その言葉に梨華も一緒になって聞き返す。
「今まで私達は魔物を個人の技だけで倒してきたけど、
これからもそれが通用するとは限らない。
だからこの旅でチームワークを養ってもらいます。
丁度あなた達3人は歳も同じだし、攻撃範囲もバラバラ。
上手くいったらどんなに強い敵でも倒せるようになる―」
「はい!梨華ちゃんとだったら最強の連係技出せそう!」
「あぁ〜!!それ後藤が先に言おうとしたのに!」
「もう…」
相変わらずの2人に保田が頭を抱える。
「まぁいいわ。その内分かってくるでしょう」
―そうして歩き続けて2日後、4人は港町に到着した。
早速港の方へ向かうと、丁度例の船が停泊しているところだった。
- 296 名前:パーティ決定後〜卯・辰・酉・戌〜 投稿日:2002年06月04日(火)21時18分45秒
対極寒海域用大型船舶『HS』
普通の蒸気船の様だが、それより数倍の熱を出し、
その熱を逃がさず、空洞のある厚い装甲を通る様に設計して作られた船である。
従ってこの船の内部は常軌を逸した暑さになっており、
これに乗船する者はそれなりの体力が必要になる。
しかし、常人には計り知れない体力を持つ4人にはあまり関係の無い事だった。
- 297 名前:パーティ決定後〜卯・辰・酉・戌〜 投稿日:2002年06月04日(火)21時19分45秒
早速その船の船長と交渉して乗船許可を貰い、
午後1時、出港した。
- 298 名前:パーティ決定後〜卯・辰・酉・戌〜 投稿日:2002年06月04日(火)21時20分24秒
出港して少し経ち、
まだ極寒海域に入っていない為甲板に出て外を眺めている梨華に保田が近づく。
「今はあの2人はいない様ね」
「あっ、保田さん」
「何考えてたの?」
「いや、残ってるみんなは何してるのかなって。
小川もちゃんと獣化出来てるか心配だし…」
「きっと大丈夫だよ。上手くやってる」
「そうですよね…」
そう言って梨華は再び外を向く。
波は穏やか、沈みかけた太陽が梨華を紅く照らしていた――
- 299 名前:子族の村にて3〜子・丑・寅・巳・午・未・申〜 投稿日:2002年06月06日(木)20時52分23秒
- <>
「やったー!!愛ちゃん!私やったよ!!」
小川の歓喜の声が子族の村に響き渡った。
「よかったね!!まこっちゃん!」
愛も一緒になり喜びを分かち合う。
そう、小川は遂に獣化する事に成功したのだ。
と言っても、実際は愛と同じく、力のコントロールの大部分を寅に任せている状態だが。
「小川、良かったね」
今までずっと特訓に付き合っていた飯田が笑顔で言う。
「はい!ありがとうございます!!」
「………」
それを黙って見ていた矢口に安倍が不思議そうに尋ねた。
「どうかした?」
「うん…、ちょっとかおりと3人で話したい事があるんだけどイイ?」
「そりゃいいけど…」
「じゃあ今夜、私の部屋に来てくれる?」
「うん。かおりにも言っとく」
「ありがと」
「?」
- 300 名前:子族の村にて3〜子・丑・寅・巳・午・未・申〜 投稿日:2002年06月06日(木)20時53分50秒
―そして次の日。
子族の村の裏手側。
一列に並んだ加護、辻、小川、愛の前に矢口を中心に飯田、安倍が立っている。
その後ろに昨日には無かったはずの、1辺が20m位の正方形になるように張られたロープがあった。
「矢口さん何するんですか?」
加護が質問すると矢口が真剣な顔をして答えた。
「今からみんなに一対一で戦ってもらいます」
「「「「!!!??」」」」
「なにも殺し合いをしろって言ってる訳じゃないから大丈夫。
これはあなた達のレベルアップを計るものなの」
「どういうことですか?」
再び加護が聞く。
「あなた達は十二支の痣を持ち、優れた能力を持っているけどまだ戦闘経験は浅い。
この辺りはいい経験になるような強い魔物がいないし。
ここでただ4人の帰りを待つだけじゃ勿体無いと思うんだ。
―だから、自分の力を試す意味でも一度対決しておいて貰いたい」
4人は同時に頷く。
「よし。じゃあルールを説明するよ。
トーナメント式の時間無制限。
どちらかがギブアップするか私達3人が危険と判断した場合で試合終了」
こうして、4つの十二支のぶつかり合いが始まった――
- 301 名前:子族の村にて3〜子・丑・寅・巳・午・未・申〜 投稿日:2002年06月06日(木)20時55分52秒
―第一回戦―
加護亜依 高橋愛
2人はロープの中に入り、互いに向き合う。
「はじめ!!」
矢口の合図と共に2人は同時に獣化した。
加護は高橋の方へ走り出した。
しかし愛は鞭をしならせ加護を寄せ付けない。
「(武器の間合いじゃ圧倒的不利…、でも今の私なら)」
加護は刀に炎を纏わせた。
「ハァッ!!」
そしてその刀を振るうと炎の刃が飛び出し愛を狙う。
「(どう?『巳』。刺激的なのが来たよ…)」
心の中でそう呟き、愛は鞭を自分の前で円を描くように動かす。
するとその円は水の壁になり炎の刃を消し止めた。
- 302 名前:子族の村にて3〜子・丑・寅・巳・午・未・申〜 投稿日:2002年06月06日(木)20時56分31秒
- 「なっ!?」
「今度はこっちからいくよ!」
愛はそのまま前へ進み鞭を加護に向ける。
「くっ!」
加護は間一髪で避けるが、鞭はさらに軌道を変え加護の背中を攻撃した。
加護はダメージを受けながらも愛との間を大きく取る。
「(しょうがない…、あれを使うか)」
加護は両手を胸の前で重ね合わせ、印を作った。
すると加護の身体が2人、3人と増えていき、最後には5人の加護がそこにいた。
「なにそれ!?」
愛が驚愕している隙に加護達は一斉に飛び掛る。
「えっ!?えぇ?」
愛は混乱し、近くに来た加護を狙い鞭をしならせるが、
当たった瞬間その加護は陽炎のように揺らぎ消えた。
「!!?」
背後から気配を感じた時には既に遅く、
加護は愛の首筋に刀を当てていた。
- 303 名前:子族の村にて3〜子・丑・寅・巳・午・未・申〜 投稿日:2002年06月06日(木)20時57分28秒
- 「そこまで!!」
矢口の終了の声に加護は刀を早々と鞘に収める。
「ふぅ、やっぱり強いね」
「いやぁ〜、愛ちゃんも強かったよ〜。まだ背中痛いもん」
「加護ちゃんこっちおいで。治してあげるから」
安倍に呼ばれロープの外へ出る加護の後に続いて愛もロープをくぐる。
その愛の元へ矢口がやってきた。
「今の戦いで反省点ある?」
「はい、急に相手が増えて取り乱しました」
「うん、そうだね。多対一になっても決して慌てない事。
でも高橋の武器なら身体全体を覆うように振り回せるから
多対一に適してるんだけど…」
「……」
「…、分かってる。そんな事したら高橋の身体がもたないもんね」
「はい…」
「大丈夫。これからしっかりと身体を作っていこう」
「はい!」
- 304 名前:子族の村にて3〜子・丑・寅・巳・午・未・申〜 投稿日:2002年06月08日(土)18時45分01秒
―第二回戦―
辻希美 小川麻琴
「はじめ!!」
矢口の合図で先の試合と同じく2人とも獣化する。
「あれが…、辻さんの獣化?」
小川の目に飛び込んできたのは、
羊の特徴的な角と、大き目の装備が丁度良くなる位の白い羊毛が生えた辻の姿だった。
「あぁ〜!今ちょっとバカにしたでしょ!!」
辻は少し傷付いたようだ。涙目になって小川を怒鳴った。
「もう怒った!!」
そう言うと、いつの間にか手にナイフを握っていた辻が小川に向かって突進する。
「(お…遅すぎる…)」
拍子抜けしながら辻の攻撃を難なくかわす小川。
それもその筈。スピード・パワー両方が均等に備わっている『バランス型』の小川に対し、
『パワー型』しかも速さを全く排除して、
完全力量重視の辻が攻撃を仕掛けた所で簡単に避けられてしまうのだ。
- 305 名前:子族の村にて3〜子・丑・寅・巳・午・未・申〜 投稿日:2002年06月08日(土)18時47分17秒
- 「次はこっちの番!」
小川はダガーで辻の左腕を狙い攻撃するが、
金属音と共にダガーは受け止められた。
「!!?」
「そりゃあ!」
辻は受け止めた腕を大きく振り、ダガーもろとも小川を弾き返す。
「暗器って武器だけじゃないんだよね〜」
そう言って辻は袖を捲ると、腕には鉄で出来た手甲がはめられていた。
「どこからそんな物が!?」
「それはヒミツ♪」
その後すぐに小川は辻から少し離れ間を取った。
「ふぅ…」
小川は小さく息を吐き、神経を集中させる。
次の瞬間、ダガーに炎が纏った。
「ハァッ!」
そしてその場でダガーを連続的に振るうと、
振った分だけの火球が辻に襲い掛かった。
「うわぁ!」
辻は何とかして避けきったが、足の方の羊毛が少し焦げてしまった。
「よくも焦がしたなぁ!!」
そう辻は吼えるとナイフを小川に投げる。
しかし例の如く小川は避け、ナイフは地面に突き刺さった。
- 306 名前:子族の村にて3〜子・丑・寅・巳・午・未・申〜 投稿日:2002年06月08日(土)18時50分30秒
- その時辻が目を閉じ集中すると、そのナイフは光を放ち出し、
ナイフの周りの地面が徐々に膨らんでいく。
「なに!?」
驚く小川の前には土で作られたと思われる、3mはある二本の巨大な腕が出現した。
そしてその内の一本腕が容赦なく小川に向かって来た。
「!!!」
小川は何とか避ける事が出来たが、続いてもう一本が襲い掛かる。
「あぁっ!!」
小川はその腕に弾かれ、ロープにぶつかった。
すこしよろめき何とか起き上がれたものの再び迫ってくる腕に必死に避ける。
数分後、腕の動きに段々目が慣れてきて、幾分容易に避けるようなった時だった。
「(よし、これで攻撃に転じれる………!!?)」
小川は急に身体が動かなくなるのを感じた。
「く、鎖!?」
小川の動きを封じた物、それは先端に分銅がついた鎖だった。
その鎖を辿ると当然、辻の元へ行き着く。
「そんな…」
終に大腕が小川を掴み、空中に持ち上げた
そしてその腕は小川を掴んだ手の力を上げ締め付けていく。
「うぅ…」
- 307 名前:子族の村にて3〜子・丑・寅・巳・午・未・申〜 投稿日:2002年06月08日(土)18時53分29秒
「そこまで!!」
矢口が叫ぶと腕は両方共一瞬で消え、小川は地面に落ちた。
「はぁ…はぁ…、流石ですね――!?」
小川は辻の方を向きそう言ったが、辻はその場に倒れ込んでいた。
「辻!!」
矢口が叫び辻の元へ向かうと、
「すぅー、すぅー」
辻の寝息がはっきりと聞こえた。
「こいつ…、寝てるだけだ…」
「まぁ、あれだけ力を使えば体力も無くなるっしょ。
それより小川、ダメージ大きいから早く来なさい」
「あっ、はい」
小川は急いでロープをくぐり安倍の方へ向かった。
安倍によって小川が回復している中、小川の前に飯田が立つ。
「今のは判断能力の無さが原因だね」
「…」
「2本の腕の攻撃からの打開策を早く練らないといけなかったな。
4人が帰って来るまでどうやったらあの状況から抜け出せるか良く考えておく事」
「……はい」
- 308 名前:子族の村にて3〜子・丑・寅・巳・午・未・申〜 投稿日:2002年06月08日(土)18時54分02秒
「どうしよっか。こいつ寝ちゃったし」
矢口は寝ている辻を指差し全員に言った。
それに飯田が応える。
「う〜ん、最終戦は起きてからでいいんじゃない?」
「そっか、加護はそれでイイ?」
「はい。いいですよ」
こうして暫しの休憩時間が与えられ、
ロープ内には気持ちよさそうに眠る辻の姿があった。
- 309 名前:子族の村にて3〜子・丑・寅・巳・午・未・申〜 投稿日:2002年06月08日(土)18時54分57秒
――数時間後。
「ふぁ〜」
辻は大欠伸をしながら身体を起こした。
それに矢口が気付く。
「おっ、やっと起きたな。そろそろ始めようか」
「ふぇ?何をですか?」
「何寝ぼけてんだよ。あんたさっき小川と戦って体力使い果たして寝てただろうが」
「……!! そうでした!!」
「まったく…、じゃあ加護、中に入って」
「はい!」
- 310 名前:子族の村にて3〜子・丑・寅・巳・午・未・申〜 投稿日:2002年06月08日(土)18時56分07秒
- ―最終戦―
加護愛 辻希美
「あいぼん、本気で行くからね」
「よっしゃ、かかって来い」
「よし、はじめ!!!」
合図とほぼ同時に2人は獣化した。
「そりゃあ!!」
辻はナイフを立続けに5本加護に投げる。
加護はそれを難なく避け、ナイフは地面に刺さる。
そして先程と同じようにナイフは光出し、周りの地面が盛り上がった。
「さっきと同じ攻撃?芸がないなぁ」
「ののがそんなワンパターンな事するわけ無いじゃん。
だって――」
すると盛り上がった地面は腕では無く、人間大の人形に姿を変えた。
「―ののはお客を楽しませるピエロだよ」
- 311 名前:子族の村にて3〜子・丑・寅・巳・午・未・申〜 投稿日:2002年06月08日(土)18時57分19秒
- 「ののが大人数で来るなら!」
加護は印を組み5人の加護を創り出す。
「あいぼんの方が同じ攻撃じゃんか」
「分かってないなぁ。こいつらはさっきと全然違う」
そう言って、創った一体の肩に手をかける。
「さっきは幻影だったけど、今回のは『実体』
つまり普通の人間と大差無いって事」
これで両者の前には、五体の土人形、五体の加護が現れた事になる。
「面白い…、どっちが上手に操れるか勝負だね」
「そうやな…」
「じゃあ行くよ!!」
「おう!!」
そして、本人は動かず5対5の戦いが始まった。
- 312 名前:子族の村にて3〜子・丑・寅・巳・午・未・申〜 投稿日:2002年06月08日(土)18時58分44秒
- 「………」
「………」
2人共操作に集中して一言も発していない。
しかし、両者の間では敵味方入り乱れての小さな戦争が起こっていた。
一方で1体の加護が1体の土人形の腕を切ると、
他方では土人形が力の入った拳を加護の顎先に決める。
そうして十数分が過ぎた所で、明らかに加護達の動きが鈍くなった。
そこを突いて土人形達が怒濤の攻撃を仕掛ける。
遂に、5人の加護はその全てが地面に倒れ消えていった。
「はぁ…はぁ…、もう戦えるほどの体力が残ってないや。
悔しいけど……、ギブアップ…」
- 313 名前:子族の村にて3〜子・丑・寅・巳・午・未・申〜 投稿日:2002年06月08日(土)19時00分00秒
- 「そこまで!!」
加護の宣言により矢口が試合終了の合図を出す。
矢口の声が聞こえたと同時に2人はその場にへたれこむ。
「加護ぉ、パワー型の奴に体力で勝てる訳ないじゃんかぁ」
「いやぁ、つい……
操作力はこっちが上だと思ったんですけどねぇ」
「もう……」
その時、村の入り口の方で破壊音が鳴り響いた。
「なに!?」
「とりあえず行ってみよう!!」
7人は緊張の中入り口の方へ走り出す。
- 314 名前:子族の村にて3〜子・丑・寅・巳・午・未・申〜 投稿日:2002年06月08日(土)19時01分13秒
村の入り口では一体の魔物が暴れていた。
その魔物は獣人族。
姿は首から足首まで人間、頭と足首からつま先まで牛で構成されていた。
それを見た矢口は呟く。
「ミノタウルスか……。何でこんな所に…」
「なっちあいつ嫌い。だって牛の形してんだもん」
そして全員戦闘態勢に入った所で飯田は加護、辻、愛、小川に言った。
「あなた達は今回は休んでなさい。さっき戦ったばっかりでしょう」
「えっ、でも…」
「私達なら大丈夫。
矢口、なっち、3人でもやれるよね?」
「当然!」
「なっちはやる気まんまんだよ」
「そう言う事。私達の戦いを見て勉強しておくのもたまには良いわよ」
「はい…」
加護がそう言い後ろに下がると、それに他の3人も付いて行った。
- 315 名前:子族の村にて3〜子・丑・寅・巳・午・未・申〜 投稿日:2002年06月08日(土)19時03分26秒
3人は獣化し魔物と対峙する。
先に動いたのは魔物。
手に持った斧で3人を狙い打ち下ろすが、
飯田、安倍は左右に避け、矢口は風の力を使い上空へ跳び上がった。
「なっち!かおり!! あいつの動きを封じて!!」
「よっしゃ!なっちいくよ!」
「あいさぁ!!」
魔物から少し離れ左右に展開した2人は持っている武器を地面に向かって突き刺す。
すると武器が光を放ちそこから地面が盛り上がり、それが魔物の足元まで進んでいくと、
突然地面から土の棘が勢い良く出現し、魔物の足を突き刺す。
「グォォォ!!!」
「これで終わりだ!!!!」
上空へ跳んでいた矢口は風の力プラス重力加速度を加えながら恐るべき速度で下降し、
その勢いで魔物を縦に裂いた。
縦に2分割された魔物は、そのまま左右に倒れた。
- 316 名前:子族の村にて3〜子・丑・寅・巳・午・未・申〜 投稿日:2002年06月08日(土)19時04分12秒
「す…、凄い……。
私達も…、あんな風に強くなりたい…」
愛の言葉に3人も頷き、さらにその意思を固めたのだった――
- 317 名前:しんご 投稿日:2002年06月08日(土)19時23分36秒
遅くなってしまいましたが、
>>278さん>>279さん>>280さん>>281ごまべーぐるさん>>282翔さん>>283さん>>284さん>>286さん>>287さん>>288さん>>289さん
リクエストに応えて頂きありがとうございます。
今後、アイスランドの話を載せたら新スレに移行しようと思うのですが。
その時に十二支の面々を1人ずつ戦闘タイプ等をまとめて載せる様な事は要りませんかね?
- 318 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月09日(日)22時37分13秒
- お話しだいぶ進んでますね。最近ここにきてなかったので大量に進んでてビク―リ
ののの獣化姿いいなぁ・・・可愛い(w
>十二支の面々を1人ずつ戦闘タイプ等
見たいです。ぜひ載せてくださいな♪
- 319 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月10日(月)14時58分00秒
- 皆ちょっとずつだけど成長してますね。
続き、がんがってください。
- 320 名前:沖 投稿日:2002年06月10日(月)22時48分11秒
- はじめましてぇ!
今日全部読んでしまいました。
この先楽しみです!!
- 321 名前:ぶらぅ 投稿日:2002年06月11日(火)00時29分55秒
- 進んでますねぇ〜。
みんな少しづつ強くなってきてもいますし、
続きが気になります(w
- 322 名前:たけし 投稿日:2002年06月11日(火)18時17分05秒
- はじめて読ませて頂きました。
メンバーの個性も生かされており、速攻でハマってしまいました。
残る『亥』ですが、私にはまだわかりません。誰なんでしょうね?
期待しております。
- 323 名前:アイスランド〜卯・辰・酉・戌〜 投稿日:2002年06月11日(火)22時56分50秒
「――寒いっ!!」
4人がアイスランドに上陸してひとみが放った一言が全てを現していた。
見渡す限りの銀世界。大陸なのに氷の上を歩いている感覚。
そして人間が生活できる範囲を超えた気温。
気温の適応能力においても常人のそれとはかけ離れている十二支の血を引いている者。
しかし、その4人でさえ防寒装備をしているにもにもかかわらず「寒い」と言わしめる
この大地に果たして亥族が居るのかどうか。
4人に一株の不安が芽生えた。
「――では私達は此処で一週間調査をするが、それまでに帰ってこれるかね?」
完全耐寒装備を着用している船長が4人に尋ねる。
「ええ、もし一週間を過ぎて私達が帰って来ないのならば帰って貰って構いません」
冷静に保田が答えた。
「…分かった。君らの無事を祈る」
- 324 名前:アイスランド〜卯・辰・酉・戌〜 投稿日:2002年06月11日(火)22時57分49秒
- こうして4人はアイスランドの地を蹴り歩き出して数時間。
未だ360度何処を見ても銀の大地が広がっているだけだった。
「ねぇ〜、こんなんで本当に見つかるの〜?」
つい先程まで4人でしりとりをしていて、
『梨華ちゃん』で終了を迎えさせた後藤がうんざりした表情で言う。
「確かに、周り一面氷だもんね。
目標物がないとまっすぐ歩いてるのか分かんなくなってくるよ」
「でしょ?さすが梨華ちゃん」
「つべこべ言わない。こうするしか方法は無いんだから」
「はぁい…」
保田の言葉で後藤は大人しく歩き出す。
「……へぶしっ!」
しかし後藤は何故か何かにぶつかり尻餅をついた。
「いったぁ…、何なのよ」
そう言って後藤がぶつかった辺りを探ってみると、そこには『壁』があった。
「壁?なんで見えない壁がこんな所に…」
- 325 名前:アイスランド〜卯・辰・酉・戌〜 投稿日:2002年06月11日(火)22時59分11秒
- そう言って保田がその壁を叩き疑問に思っている時、
少し遠くのほうでひとみの声が聞こえた。
「ねぇ〜!、こっちに何かあるよ!」
ひとみに呼ばれそこに行くと、見えない壁に光の線が引かれていた。
それは扉を縁取っているように見える。
「…、入ってみる?」
保田は3人の答えを確信し微笑して聞いた。
「当然!」
「当たり前じゃん♪」
「入らないと…、先に進めないよね」
「よし…、じゃあ開けるよ」
そして保田はゆっくりと扉を開ける。
- 326 名前:アイスランド〜卯・辰・酉・戌〜 投稿日:2002年06月11日(火)23時00分04秒
- 扉の奥には、30m四方の殺風景な空間が広がっていた。
そしてその奥に更に扉がある。
「扉と扉の間になんでこんな広い空間が?」
「梨華ちゃん、そんな事考えてちゃ先には進めないよ♪」
不思議に思う梨華にひとみはそう言って扉に進む。
そして扉に手をかけたその時、激しい機会音が鳴り響いた。
「な!?なに?この耳をつんざく様な音は!!?」
梨華をはじめ4人が耳を押さえる。
「シンニュウシャハッケン シンニュウシャハッケン
コード0087 セントウプログラムハツドウ」
機会音と共に謎の声が部屋中に響いた時、
保田が何かに気付き叫んだ。
「吉澤!!上!!!」
「!!?」
吉澤が間一髪避けたその場所には、上から降って来た巨大な謎の物体が立っていた。
「魔物!?……いや、何か違う!
こいつにはまるで生気が感じられない!」
保田が困惑するのも当然、その物体は人型をしているものの、
身体の全てが鉄のような物で構成されていて、今まで見た魔物とは違っていた。
- 327 名前:アイスランド〜卯・辰・酉・戌〜 投稿日:2002年06月11日(火)23時00分59秒
- その物体は頭部に光る丸い光の焦点を4人に合わせると、
その大きな身体を突進させてきた。
「「「「!!?」」」」
4人はかろうじて避けると、保田は戦闘体制を取り3人に向かって叫ぶ。
「仕方が無い! 戦うよ!!」
「はいっ!」
「りょーかい!!」
「……、こいつかっけぇー…」
「よっすぃー!」
「よしこ!!」
「吉澤ぁ!!!」
「い、いや、冗談だよ」
気を取り直して4人は獣化しその物体と向き合った。
「吉澤は上!石川と後藤は左右!
私は正面からいく!!いいね!!」
3人は同時に頷く。
「よし、じゃあ……散!!!」
保田の掛け声と共に4人は各々の方向に散って行った。
- 328 名前:アイスランド〜卯・辰・酉・戌〜 投稿日:2002年06月11日(火)23時03分10秒
「まず私から!」
上に舞い上がったひとみは弓を引き2本同時に放つ。
そして属性である風を操り、腕の付け根を狙い見事命中させる。
「よし!梨華ちゃん!!ごっちん!
腕を狙って!!!」
「うん!」
「任せとけ!!」
ひとみの言葉に応え2人は左右から高速で近付き先に梨華が右腕を蹴り、
後藤が矢が刺さった腕の根元を槍で突いて両腕を床に落とした。
「あいつら…、中々やるじゃない。
私も負けてらんないね!!」
そう言って保田は部分獣化した腕で左足を引き千切る。
「なんだ。結構弱い奴じゃん」
ひとみが上でそう言っていると、再びあの声が鳴り響く。
「ホンタイソンショウ
コード0088 シュウフクプログラムハツドウ」
すると突然ひとみの横を何かが通り過ぎ、
それが物体の壊れた部分に付いた。
そしてそれはたちまち形を変え、足は元通りに、
両腕は先程より更に太くなって蘇った。
「コード0089 リミッターカイジョプログラムハツドウ」
さらに声が鳴ると、物体の背中からもう2本同じ腕が現れた。
- 329 名前:アイスランド〜卯・辰・酉・戌〜 投稿日:2002年06月11日(火)23時04分42秒
- 「なに!?こいつ!」
ひとみは再び次は4つ矢を放つが、先程より数倍速いスピードで動き矢を弾いていく。
しかし一本、右腕にかろうじて刺さった。
「よし!せめて一本でも!!」
梨華はその一本を目掛けて勢い良く近付き蹴りを入れようとした瞬間、
背中からの腕によって叩き落されてしまった。
「きゃあっ!!」
「「梨華ちゃん!!!??」」
「石川!!」
3人は梨華に駆け寄る。
「石川! 大丈夫?」
「ん、大丈夫です…」
「…、でも落ちた時後頭部を殴打したからしばらく立てないよ。
少し休んでなさい」
石川を診てそう言った保田はひとみと後藤の方を向く。
「後藤、吉澤、こうなったら一気に――!?」
見ると2人は体中から光を発していた。
「梨華ちゃんを……許せない…」
「あの野郎……」
「あんた達…、もしかして…」
「「うおぉぉぉぉ!!」」
2人は吼え、さらに光を放ち部屋全体を包み込んだ。
- 330 名前:アイスランド〜卯・辰・酉・戌〜 投稿日:2002年06月11日(火)23時06分50秒
- 光が収まる頃、そこにはその物体よりさらに大きな鷲のような白い鳥と、
部屋に収まり切らず少しとぐろを巻いた状態の白い鱗を持った龍が現れていた。
「完全…、獣化」
「キィエエエエ!!」
白鷲は一度超音波のような高い声で鳴くと、
翼を羽ばたかせた。
するとそこから真空の刃が無数に飛び出し物体を切り刻む。
かろうじて原型を留めた物体の頭部を龍が銜え、灼熱の炎を全身に浴びせた。
その後龍が口を開くと、丸い鉄球が灰の上に転がった。
その姿を見届けると、2体の十二支は光を放ち、
再びひとみと後藤に戻った。
2人は同時に梨華のもとに駆け寄る。
「梨華ちゃん!もう大丈夫だよ!!」
「しっかりして!!」
梨華は少し頬を赤らめて応えた。
「うん、本当に大丈夫だから……
その…、先に服着てくれない?」
「「あ……」」
- 331 名前:アイスランド〜卯・辰・酉・戌〜 投稿日:2002年06月11日(火)23時11分23秒
完全獣化
その破壊力は凄まじいが、
装備が破れ散っている為元に戻った時何も着ていない状態になるのが唯一の難点である。
- 332 名前:しんご 投稿日:2002年06月11日(火)23時22分40秒
>>318さん
>ののの獣化姿いいなぁ・・・可愛い(w
結果、辻だけ浮いている罠(w
>>319ごまべーぐるさん
毎回読んで頂きありがとうございます。完結させれるよう努力していきます。
>>320沖さん
この先も楽しませれるように頑張ります。
>>321さん
続きを早く更新できるように精進したいと思います。
>>322さん
>メンバーの個性も生かされており、速攻でハマってしまいました。
個性が出ているかどうか心配だったので、その言葉を聞いて嬉しい限りです。
期待に応えられる様頑張ります。
- 333 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月11日(火)23時42分36秒
- 凄い面白いです。
こういう系のファンタジーって、
間違えると凄く分かりづらい話になっちゃうけど、
このお話は分かりやすい上に面白いです!!
吉→石←後の構図が好きな自分的には、そっちも面白いし♪
これからも頑張ってください。
- 334 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月12日(水)19時05分34秒
- アイスランドのエピソードが始まりましたね。
ヨシコとゴチーンのパワーがMAXになるのは(^▽^)絡みの時というのが
よーく分かりました。
がんがってください。
- 335 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月12日(水)19時35分16秒
- ( ´ Д `)と(0^〜^0)の完全獣化のきっかけがなんとも
二人らしいきっかけで(w
機械に(0^〜^)<かっけー!
って言ってるのにわらいますた。絶対冗談じゃなくて本気で思ってたに違いない
- 336 名前:頭脳〜卯・辰・酉・戌・亥〜 投稿日:2002年06月14日(金)23時07分38秒
「やっぱりもう1着ずつ持って来て正解だったわね」
着替える2人を見て保田が溜息交じりに言った。
「流石圭ちゃん♪」
「感謝感謝♪」
「…あんた達本当に感謝してんの?」
そう言っている間に2人の着替えは完了し、
4人は扉の前に立った。
「…開けるわよ」
保田の声に3人は頷く。
そしてゆっくりと扉を開けると、
そこには想像をはるかに超えた街が広がっていた。
「なんなのよ…、これ……」
「すごーい、まるで別世界だね」
「かっけー…」
「ここに…、亥族が…?」
4人の視界に飛び込んで来た世界、
それは今まで見てきたどんな魔物より高い建物が並び、
その間を数p浮かんだ鉄のような箱が何台も走っていて、
一台一台に人間が乗ってた。
- 337 名前:頭脳〜卯・辰・酉・戌・亥〜 投稿日:2002年06月14日(金)23時08分44秒
4人が今立っている所は公園のようだ。
公園を唯一理解できる木々が囲んでいる。
しばらく4人は呆然と周りを見ていると、
公園の中に先程見た箱が入ってきた。
するとその箱の一部が開き、黒い服を着た男が数人と、
白衣を着た少女が出てきた。
少女は少し警戒している4人の前に立つと、
淡々と喋り出した。
「ようこそ、亥族の街へ。
私はこの街の開発部長、亥の痣を持つ者の紺野あさ美です。
保田さん、石川さん、後藤さん、それに吉澤さん―」
「どうして私達の名前を!?」
いきなり名前を呼ばれ保田が驚き尋ねる。
「あの部屋での戦闘をカメラで見させて貰ってましたからね」
「かめら?」
知らない単語を聞き石川が反復する。
「…あっ、そうでした。外の世界とこっちでは文明が全然違うんでしたね。
まぁ、遠くから監視出来る機械とでも言いましょうか」
「はぁ…」
実は未だ良く理解していないのだが、石川は曖昧な返事をした。
- 338 名前:頭脳〜卯・辰・酉・戌・亥〜 投稿日:2002年06月14日(金)23時09分29秒
その時後藤はある事に気付き紺野に尋ねる
「と言う事は、あの変な鉄の塊はあなた達が作ったの?」
「はい。その通りです。あれは侵入者撃退装置『ゴーレム』
私の作品の1つです」
「見てるんだったら助けてくれても良いじゃないの?」
すかさずひとみが口撃する。
「『ゴーレム』は一度作動すると攻撃目標がいなくなるか、
壊れるかのどちらかにならないと止まらない構造になってるので、
こちらからは何も出来ませんでした。その事については謝罪します」
紺野が深く頭を下げると、男達も続けて頭を下げた。
- 339 名前:頭脳〜卯・辰・酉・戌・亥〜 投稿日:2002年06月14日(金)23時10分24秒
これまでの事で分かる通り、
亥族は他の十二支とは少し違っていた。
彼らは十二支唯一の『ブレイン型』
戦闘能力が全体的に劣るが、その莫大な知識で欠点を埋めている種族である。
彼らはその気になれば世界の3分の1を消し去る武器も作れる。
が、その知識がもたらす世界の影響を考慮し、人知れず此処アイスランドに移り住み、
独自の文明を築いたのだ。
- 340 名前:頭脳〜卯・辰・酉・戌・亥〜 投稿日:2002年06月14日(金)23時11分38秒
「もういいから、早く頭を上げて」
保田がそう言うと、彼女達は頭を起こした。
そして保田は早速本題に入る。
「最近、魔物の数が増えている事に気付いてる?」
「はい、4年前からアイスランドでの魔物の数が毎年20%ずつ増えてます」
「そう…、それは遠い昔封印した怪物、つんくが復活しかけている前兆なの」
「…やはり学会での私の仮説は正しかった訳ですね」
「だから、私達はあなたの力が必要なの。
一緒に戦ってくれる?」
紺野の答えは決まっていた。
「もちろんです。私も十二支の端くれ、世界の平和に一役買いましょう」
「…、ありがとう」
彼女の歳と口調のギャップに少し違和感を感じたが、
保田は構わず続けた。
「で、獣化は出来るの?」
「いえ、でも今研究中ですのであと4日程あれば何とか」
「(研究…?)まぁいいわ、じゃあ先に属性を見ておこうか。後藤」
「は〜い」
保田に呼ばれ後藤は紺野をじっと見つめる。
「う〜ん、紺野ちゃんは『水』みたいだね」
「『属性』? 『水』?」
紺野が4人に会って始めて疑問を投げかける。
後藤がいつもの様にそれに答えた。
- 341 名前:頭脳〜卯・辰・酉・戌・亥〜 投稿日:2002年06月14日(金)23時13分00秒
「…そうですか。
と言う事は、あれの冷却装置が要らなくなりますね。
だったら……」
紺野は突然自分の世界に入りぶつぶつと独り言を言い始めた。
「あの〜、もしも〜し」
「…あっ、すみません。私の悪い癖が出てしまいましたね。
どうでしょう?私の獣化が完成するまで此処に残っておくというのは」
紺野の提案に保田が応える。
「でも、それだと船の出発に間に合わなくなるかも…」
「その点は大丈夫です。この大陸を出る手段はこちらで用意します」
「そう…、それじゃあ――ってあれ?
あの3人は?」
保田が3人の方へ振り返ると、そこには誰もいなかった。
辺りを見回すと、
公園の出入り口の方へ石川を担いで向かっているひとみと後藤の後姿が見える。
「圭ちゃん!ちょっとみんなで探検してくるね!!」
「そーゆー事♪」
「保田さん助けて……」
約一名明らかにテンションの違う人物がいたが、
あっという間に公園から姿を消していた。
「あいつら……」
呆れ果ててそう言う保田の傍で、紺野はくすくすと小さく笑っていた。
- 342 名前:頭脳〜卯・辰・酉・戌・亥〜 投稿日:2002年06月14日(金)23時16分26秒
5日後、アイスランド出発日――
紺野を含めた5人は亥族の街で一番高い建物の1階から小さな個室に入ると、
その箱は静かに下降を始める。
以前なら「かっけー」など驚きの声が出るはずだが、
この街で5日間過ごした4人は、もう何が起きても驚かない心構えでいた。
「ふむ、当初の予定と違いますがこれの改良に一日掛かりましたから
こんなものでしょう」
個室の中で少し不満を漏らす紺野に保田が尋ねる。
「これって……、それ?」
保田が指差す先には、紺野が背中に担いでいる奇妙な物があった。
「あぁ、そうです。
これは私が造り出した対魔物用戦闘兵器『K−アームズ』
『K』は紺野の『K』、『アームズ』は『武器』
つまり私専用の武器という事です。
これは近距離格闘から遠距離射撃まであらゆる戦闘パターンが内蔵されており、
その構造は――」
「わ、分かったからそれ以上説明しないで」
「これからが良い所でしたのに…」
少し慌てて説明を止める保田を、
紺野は少し寂しそうな目で見つめた。
- 343 名前:頭脳〜卯・辰・酉・戌・亥〜 投稿日:2002年06月14日(金)23時17分38秒
- 「―で、この下には一体何があるの?」
実は何も聞かされていなかった4人の内、
後藤が紺野に尋ねた。
「もうすぐ分かりますよ。 ほら、前を見てください」
いつの間にかその箱は向こうの壁が見えないくらいの倉庫の中に入っており、
紺野の指差す方向には、大きな円筒形の物体が倉庫の真ん中に据えられて、
何百人の亥族で整備されている光景が4人の視界に入ってきた。
「かっけぇー!」
これには流石に4人も驚き、ひとみの叫び声が響いた。
「もしかしてこれに乗って…?」
保田は紺野に尋ねる。
「そうです。これは私が設計し、開発チームの主任を勤めた飛空挺『風林火山』
ようやくこいつの出番がやってきましたね…」
「何かこれだけ名前の雰囲気違うような……」
石川の突っ込みは紺野の耳には入っておらず、
彼女は口の端を上げ自分の世界に入っていた。
- 344 名前:頭脳〜卯・辰・酉・戌・亥〜 投稿日:2002年06月14日(金)23時18分58秒
そうこうしている内に乗っていた箱は倉庫の床に到着し、
ドアが開く。
紺野は風林火山の傍で調整していた男のもとに向かって行った。
「どうです?いけそうですか?」
「はい。安全性、操作性…、どのテストも合格です」
「そうですか、今までありがとうございます」
「いえ、私もこれが飛び立つ日を待ち望んでいましたから」
男がそう言った所で、紺野は何か考え事をしていた。
「……」
「紺野主任?」
「…、お願いしても良いですか?」
「はい、私に出来る事でしたら」
「それでは――」
「…、分かりました。チームの、いや亥族全員に呼びかけてみます」
「……、ありがとうございます」
男との話が終了すると、紺野は4人の方へ戻ってきた。
「さぁ、行きましょうか」
- 345 名前:頭脳〜卯・辰・酉・戌・亥〜 投稿日:2002年06月14日(金)23時19分36秒
こうして、十二支一の頭脳を持つ少女、
亥族の紺野あさ美を仲間に加え、飛空挺『風林火山』はアイスランドから空高く飛び立った――
- 346 名前:ひとみの企み4〜卯・辰・酉・戌・亥〜 投稿日:2002年06月14日(金)23時22分21秒
風林火山のブリッジ内、
自動操縦に切り替えた紺野にひとみが駆け寄る。
「紺野、これだけは肝に銘じておかないといけない事があるの」
「はい?」
「それはね―」
「私、後藤真希と梨華ちゃんは付き合ってるのだー!」
「わ〜!!ごっちん!どっから湧いて来たんだ!?
ってか何でごっちんと梨華ちゃんが付き合ってる事になってんの!?」
「だって倒した魔物の数は87対86で私が勝ったじゃん!」
「最後の機械は私が倒したじゃん!!ごっちんの炎が無くても壊れてたよ!!」
「い〜や、あれが無いとあいつは踏ん張ってたね」
「そんなこと無い!!」
「ある!!」
「ない!!」
口論を続ける2人を見ていた紺野に梨華が話し掛ける。
「今のは気にしないでね♪」
「はぁ…」
梨華は誰にも見られないように小さくガッツポーズをした。
「(やった、やっと1人吹き込まれない娘が出来た♪)」
「(ゴーレムは魔物じゃないのにな…)」
- 347 名前:しんご 投稿日:2002年06月14日(金)23時29分53秒
>>333さん
>凄い面白いです。
この言葉が凄く励みになります。これからも頑張ります。
>>334ごまべーぐるさん
あの3人は自分も書いてて楽しいです(w
>>335さん
>絶対冗談じゃなくて本気で思ってたに違いない
彼女は正直者ですから(w
- 348 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月14日(金)23時37分11秒
- 紺野がブレイン型というのはぴったりです。
しかし、いちいち( ´ Д`)(0^〜^)<<梨華ちゃんと付き合ってるの!
宣言をするこのふたりに毎度ながら笑ってしまいます(w
そして、川o・-・)<(ゴーレムは魔物じゃないのにな…)
イイ感じです。
- 349 名前:たけし 投稿日:2002年06月16日(日)20時23分35秒
- おお、遂に12人揃いましたか・・・!
でも出てきてないヤツもいますよね?
一体どうなるんでしょうか?っていう私は、かなりのせっかち者です(w
頑張って下さい!!!
- 350 名前:しんご 投稿日:2002年06月19日(水)00時01分53秒
- 白板に新スレ立てました。
「十二支物語 弐」
http://m-seek.net/white/index.html#1024410806
早速間違ってしまいましたが、今後とも宜しくお願いします。
- 351 名前:しんご 投稿日:2002年06月19日(水)00時03分49秒
- >>348ごまべーぐるさん
全員集まった今、もうこの宣言は見られないかも知れませんね(w
>>349たけしさん
>でも出てきてないヤツもいますよね?
はい。でもちゃんと登場させるつもりですので安心してください。
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