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初めての人・・・

1 名前:アーカス 投稿日:2001年12月20日(木)17時03分56秒
はじめまして。アーカスと申します。
小説をかくのは3回目ぐらいですが、
こういった場で発表するのは初めてです。
ヘタクソなりに頑張りたいと思います。

一応いしよしです。

2 名前:アーカス 投稿日:2001年12月20日(木)17時04分33秒
人間なんて孤独で虚しいだけだ・・・
人を信じたっていつか裏切られるんだ・・・
結局頼れるのは自分だけなんだ・・・
3 名前:アーカス 投稿日:2001年12月20日(木)17時06分03秒
その日、黒のコートに身を包みサングラスをかけ、少女はコンビニを目標に決めた。
入るとおにぎりを10個ほどかばんに詰め、レジを横切り平然とした顔で外へ出ようとした。
しかしこんな簡単に万引きができるほど、世の中は甘いモノではない。
すかさず、男性の店員が少女の腕を掴む。
「お客様!お金払ってませんよね?」
「私に触るな」
4 名前:アーカス 投稿日:2001年12月20日(木)17時07分00秒
少女は自分の腕を掴んでいる店員を睨み付けると、反対側の拳で店員を殴りひるんだ隙に凄い勢いで走り出した。
「ぐっ!このガキ、逃がすか!」
少女はまるで手慣れているかのように、人込みの多い街路をすり抜けて走った。
店員も絶対に捕まえてやると少女だけを視界に入れ、意地になっていた。
「ちっ・・・しつこいな」
いくらまいても追いかけてくる少女は呆れながら次の角を左に曲がった。
数10秒も経たずして、彼も同じく角を曲がった。
5 名前:アーカス 投稿日:2001年12月20日(木)17時07分39秒
しかし彼の視界にはすでに少女の後ろ姿は消え去り、アベックの甚だしいキスシーンだけが映っていた。
「くそっ!あのガキ・・・見つけたらタダじゃすまねぇからな」
彼はポツリと呟き、今来た道を帰って行った。
「もう大丈夫みたいだよ、良かったね」
しょんぼりした店員の背中を確認すると、アベックの1人が口を開いた。
「ふざけるな!このアニメ声!」
アベックのもう1人の正体・・・それは紛れもなく万引きをした少女だった。
6 名前:アーカス 投稿日:2001年12月20日(木)17時08分33秒
なぜこんな事になったかと言うと――――
数分前、少女は角を曲がった。もちろん、そのまま店員から逃げるつもりだった。
しかしこのアニメ声のお嬢様系に捕まり、
「あの人に捕まりたくなかったら、私を抱きしめて!!」
と言われた。いくらなんでも知らない奴に構ってる暇はないと考えた少女は、無視をしてこの場を去ろうとした。
しかし、それでもアニメ声は少女を引き止めた。流石にもう逃げるだけの時間もなくなり、仕方なくアニメ声に従った。
そして彼が角を曲がったのを確認し、アニメ声は自分より背の高い少女に唇を重ねた。
唐突な出来事にも少女は動じず、ただ唇を交わしていたのだった。
7 名前:アーカス 投稿日:2001年12月20日(木)17時09分26秒
そして時間は今に辿り着く。
「ふざけるな!このアニメ声!」
少女はアニメ声の女の襟元を掴むと先程のように睨み付けた。
「ちょ、ちょっと、止めてよぉ。せっかく助けてあげたのに」
「・・・助けろと言った覚えはない」
そう言うと少女はアニメ声の服を放し、スタスタと歩き出した。
8 名前:アーカス 投稿日:2001年12月20日(木)17時12分14秒
今日はここまでにしたいと思います。
はぁ〜緊張した。
次の更新は2、3日後ぐらいにしたいです。
読んでくれる人がいるかどうかかなり不安です。
9 名前:夜叉 投稿日:2001年12月20日(木)19時18分45秒
>「ふざけるな!このアニメ声!」
ワイルド吉?の一言が(w。
大胆不敵な石もいい。

読んでますとも。
続き、楽しみに待ってます。
10 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月21日(金)03時24分19秒
おお、荒れてる吉澤・・・
続き楽しみにしてます
11 名前:初めての人・・・(6) 投稿日:2001年12月21日(金)15時36分24秒
いつからか他人と関わるのを拒んだ。今は関わりたいとも思わない。
友情だの愛だのと、そういう言葉に吐き気を憶える程だ。
もちろん人を好きになったことは皆無に等しい。
そう考えているうちに自分から心を閉ざしてしまったのだ。
12 名前:初めての人・・・(7) 投稿日:2001年12月21日(金)15時40分00秒
「ねぇ、待ってよ、あなた名前は?」
「他人に教える義理はない」
いくら問い続けても少女は止まることなく、あくまでも無視を続けた。
「私、梨華!石川梨華って言うの。あなたは?」
「・・・・・・」
突然少女は足を止め、石川梨華という少女の方に向きなおした。
13 名前:初めての人・・・(8) 投稿日:2001年12月21日(金)15時41分11秒
「あ、やっと話す気に―――」
「貴様、何故知りもしない他人に名前など言える?」
「貴様じゃないよ、梨華。ちゃんとした名前があるの!」
梨華はプーっと頬を膨らませると、話を続けた。
「あなた男の子みたいだね。一瞬ホントに男の人かと思ったよ」
「何か不都合でも?」
「ううん、かっこいいなぁって・・・」
14 名前:初めての人・・・(9) 投稿日:2001年12月21日(金)15時43分39秒
サングラスをかけているので顔はよく分らないが、
確かに少女の外見は男っぽかった。
髪が長いわけでもなく、口紅をつけているわけでもなく、
スカートを穿いているわけでもなく・・・
もしかしたら彼女が女性と知ったら驚くかもしれない。
かと言って、少女は決してブサイクではない。
どちらかと言えば美少年いや、美人な方である。
キスをせまった梨華はそう納得した。
だからこそ梨華はそんな彼女が気になってしょうがないのだった。
15 名前:初めての人・・・(10) 投稿日:2001年12月21日(金)15時45分37秒
「いい加減に名前教えてよ!」
「さっきから聞いてれば・・・そのアニメのような声、むかつくんだよ。
 だいたい何故私の事を気に留める?ほっといてくれ」
「気になるんだもん。しょうがないじゃない。
 仮にも私はあなたを助けたどころかキスまでしちゃったんだから!」
「自業自得だ。・・・お前と遊んでいる暇はない。
 もう付いて来るな!殺すぞ!」
忍ばせていたナイフを梨華の頬に突き付けて、少女はサングラスを外した。
16 名前:アーカス 投稿日:2001年12月21日(金)15時51分33秒
ちょっと嬉しいことがあったので更新しました。
改行まちまちだ・・・読みにくくてすいません。
しかも自分でageちゃったし。(泣
でも、くじけずに頑張ります。
17 名前:アーカス 投稿日:2001年12月21日(金)16時04分38秒
感想ありがとうございます。
やはり読んでくれてる人がいると勇気が出ます。

>9 夜叉さん
さて、万引き少女の招待は一体誰なんでしょう?(w
っていうかバレテル・・・

>10 名無し読者さん
少女がよっすぃって分かってもらえて嬉しいです。
あ、冒頭に「いしよし」って書いたからか。(w
18 名前:アーカス 投稿日:2001年12月21日(金)16時08分46秒
あ、上の正体っていう字、間違えました。
恥かしい・・・
ということで誤字脱字を見つけたら指摘してくださいネ。
19 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月21日(金)16時21分35秒
怖ぁ〜飢狼のような・・・
20 名前:夜叉 投稿日:2001年12月21日(金)17時43分55秒
吉の過去に何があったのか…。
気になりますね。

大胆、通り越して、強引、つか自己中な石(w
21 名前:ポー 投稿日:2001年12月21日(金)21時52分05秒
強引な梨華チャンいいっス♪よっすぃ〜の心の扉を開いてあげて〜!
22 名前:初めての人…(11) 投稿日:2001年12月22日(土)10時17分06秒
少女と目が合ったとき梨華は一瞬寒気がした。
少女の瞳は、まるで自分と同じ人間ではないかのように鋭く凍り付いていた。
反面その瞳は何処か寂しそうにも感じとれた。
梨華の脅えた顔を確認すると少女は口を開いた。
「吉澤・・・ひとみ。他人に名を名乗ったのはお前が2人目だよ」
そうさりげなくそう言うと少女・吉澤ひとみはまた歩き出した。
23 名前:初めての人…(12) 投稿日:2001年12月22日(土)10時19分34秒
「バーイバーイ!ひとみちゃーん!また会おーね!」
梨華はナイフを突き付けられたにも関わらず、
ひとみの姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
結局ひとみは1度も振りかえることは無かった。
しかしそのひとみは何も知らなかった。
梨華との出逢いが自分の運命を大きく変えていく事になるとは・・・
24 名前:アーカス 投稿日:2001年12月22日(土)10時23分05秒
ちょっぴり更新です。
ようやく2人の名前が出てきたっす。
本来なら前回時にここまで書きたかったんですけど…

さて2人のこの後はいかに!?
25 名前:アーカス 投稿日:2001年12月22日(土)10時32分06秒
>19 名無し読者さん
ひとみが人間を好きになれるまで、
まだまだ時間はかかりそうです。(爆

>20 夜叉さん
ひとみの過去はもうちょっと後でわかるようになるはず?(w

>21 ポーさん
梨華とひとみ、どちらが先に動き出すやら…

さてと、次の更新は出来たらお昼ごろにでもしたいと思ってます。
26 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月22日(土)13時19分29秒
名乗ったのは2人目か。
1人目だれだろう
27 名前:夜叉 投稿日:2001年12月22日(土)20時38分27秒
確かに気になる…
28 名前:初めての人・・・(13) 投稿日:2001年12月23日(日)08時08分07秒
何故だ?
人間というイキモノが嫌いなはずなのに
気が付けば女と話をしていた自分
1度会った人間なんて3秒で忘れる
しかし
どうしてだろう?
さっきからあの女の事が気になってしょうがない
イシカワリカ・・・不思議な女だ
29 名前:初めての人・・・(14) 投稿日:2001年12月23日(日)08時09分28秒
いつのまにか日が暮れていた。
ひとみはまるで今にもつぶれそうな銭湯へと足を運んでいた。
「おっ、お帰り!よっさん」
「・・・・・・」
中から出迎えたのは、今にも潰れそうなこの銭湯の女将、
中澤裕子・自称27歳(本当の年齢は誰も知らない)。
中澤はひとみの恩人でもあり、ひとみが唯一受け入れた人物である。
ちなみに最初に名を名乗った相手が中澤であった。
かと言って、ひとみは中澤を完全に信用している訳ではない。
中澤には寝る場所とお風呂を借りているだけと言っていい。
30 名前:初めての人・・・(15) 投稿日:2001年12月23日(日)08時10分09秒
ひとみはその場に座りこむとさっき盗んだおにぎりを食べ始めた。
「また盗んだか?・・・あんたが食う分の飯ぐらい作るのに」
「あまり中澤さんには迷惑をかけられませんから」
「あほか!」
中澤はひとみの持っていたおにぎりをぶん取ると説教モードに入った。
31 名前:初めての人・・・(16) 投稿日:2001年12月23日(日)08時11分20秒
「いいか、吉澤?このおにぎり10個分、まあざっと1000円やな。
 その1000円を稼ぐために、どんだけ苦労してるか分かるか?
 何時間も汗水垂らしながら頑張って働いてんねや。
 たかが1000円、されど1000円。
 1000円の重さが分からんようなやつには、食べる資格はない。
 明日からはこの裕ちゃんが責任持ってあんたの食事用意してやるさかい、
 もう万引きなんてするんやないで。次やったら承知せんからな!
 ・・・どうや、カッコイイやろ?裕ちゃんに惚れたらあかんよ」
自我自讃をしている中澤はもうすでに自分の世界に入っていた。
呆れながらひとみは再度おにぎりを奪い取り、がぶりと噛み付いた。
32 名前:初めての人・・・(17) 投稿日:2001年12月23日(日)08時12分17秒
それからひとみは貸し切り状態の浴槽に浸かり、今日1日を洗い流していた。
万引きをして中澤に怒られるのはいつものことで、次の日には忘れている。
しかし、今日は何かが違った。
どうしても気になって忘れることができない。
それは『石川梨華』という少女の存在だった。
中澤以外の人間に名を名乗った人物。
何かを感じさせる・・・今までに味わったことのない何かを・・・

「人間は嫌い、大嫌いだ。でもアイツは・・・嫌いではない?」

その夜、ひとみは久しぶりにぐっすりと眠れた。
33 名前:初めての人・・・(18) 投稿日:2001年12月23日(日)08時12分52秒
閉ざされたひとみの心――――
その扉がほんの少しだけ開こうとしていた

34 名前:アーカス 投稿日:2001年12月23日(日)08時17分22秒
今日も少し更新。
ストックもそろそろ切れてきたっす。
これからは毎日更新は無理かな?

>26 名無し読者さん  27 夜叉さん
以外に呆気なく分かっちゃいましたね。
35 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月23日(日)14時07分49秒
ハード吉澤の狂犬ぶりと銭湯が妙にミスマッチでいいです。
確か本人も健康ランドのお風呂が好きって、へっよろで言ってましたね
梨華ちゃんと通ってるとか(w
36 名前:初めての人・・・(19) 投稿日:2001年12月25日(火)19時41分07秒
数日後、ひとみは手書きの地図を片手に知らない街へと足を運んでいた。
「次の交差点を・・・右か」

それは昨日のこと――――
『ほいっ、よっさん。頼まれたとおり調べといたで」
ひとみは中澤から封筒を貰うと、中に入っている資料に目を通し始めた。
そこには家族構成から現在までの過程、通っている学校のこと、友人関係などと、
石川梨華に関するありとあらゆることが書かれていた。
37 名前:初めての人・・・(20) 投稿日:2001年12月25日(火)19時42分25秒
『珍しいやないの、あんたがこんなこと頼むなんて』
珍しいというより初めてだった。
中澤は別として、ひとみが他人に興味を持ったのは。
資料を熱中して読んでしるひとみを見ながら中澤は思うのだった。
『(よっさん、自分気付いてないかもしれんが、すごくいい表情してるで。
  あんたと一緒に暮らしてもう何年か経つけど、そんな顔見たの初めてや。
  石川梨華っちゅう子、そんなにも気になるんか?
  ・・・この娘ならきっとよっさんを救ってやれる。
  今のあんた見てるとそんな気がして敵わんよ。ま、裕ちゃんの勘やけどな)』
38 名前:初めての人・・・(21) 投稿日:2001年12月25日(火)19時43分59秒
そんなこんなで、ひとみはもう1度だけ梨華に会おうと飛び出していったのだった。

気が付けばひとみは梨華の家の前に立っていた。
資料によると梨華の親は2人とも海外的に有名なビジネスマンで、
10年近く前から海外暮らし。
一緒に外国へ行くことを拒んだ梨華は、数人のメイドと暮らしているらしい。
要するに梨華はひとみと違ってお金持ちのお嬢様なのである。
それだけのこともあり、梨華の家はとてつもなく大きかった。
これも資料で認知済みだったのだが、いざ目の前にすると…
ひとみはしばらく呆然とそこに立ち尽くしていたのだった。
39 名前:初めての人・・・(22) 投稿日:2001年12月25日(火)19時45分28秒
梨華は何の部活にも入っておらず、帰宅する時間は午後4時前後。
ひとみはさりげなく腕時計を見る。現在の時間、午後3時47分。
門の前で仁王立ちしているのも何だと思ったのだが、
他にうろつくような場所も見当たらず、結局そのまま時間を過ごした。
「何故・・・ここまでしてアイツに会いたがる?・・・分からない。
 でも、アイツに会いたい、会って話しがしたい、
 もっとアイツのことを知りたい・・・」
「アイツって私のこと?」
「ああ・・・、えっ!?」
40 名前:初めての人・・・(23) 投稿日:2001年12月25日(火)19時47分05秒
気が付けばひとみの前には梨華が立っていた。
しかもひとみの顔を覗くために背伸び+上目遣いで。
流石にクール?なひとみも梨華のソレには適わず、ドキッとした。
「(どうしたんだ、私は?こんなやつに見とれるなんて)」
「ねぇ、顔赤いよぉ、熱でもあるんじゃない?」
ひとみの顔が赤らめているのは自分のせいとも気付かず、
梨華はさらに背伸びをし、ひとみの前髪をかきあげると、
自分のおでこをひとみの同じモノにくっ付けた。
「ん〜熱はないみたいね。ここじゃなんだから・・・」
「ほっといてくれ!」
41 名前:初めての人・・・(24) 投稿日:2001年12月25日(火)19時48分51秒
自分から会いに来たくせに、いざとなると突っ張ってしまうひとみ。
いつも他人との交遊を拒む彼女にはこれが精一杯なのだ。
不器用と言うべきか、そんな自分が虚しくてたまらない。
散々人間を嫌ってきたのに、今更なんてやはり自分が間違っているのか?

でも、私は・・・アイツのことが―――――――
42 名前:アーカス 投稿日:2001年12月25日(火)19時52分48秒
またしても中途半端な更新に…
あ、遅れましたがメリークリスマスです。
次からはゆっくりいきたいと思います。

>35 名無し読者さん
僕も聞きました。
きっと2人きりでムフフなことをたくさん…(爆
43 名前:Charmy Blue 投稿日:2001年12月25日(火)20時59分44秒
スレ立った時からROMってました。
あっちにレスありがとうございます。
ぶっきらぼうな吉澤いいですね。オデコにピタ♪は私的に萌えなシチュです(w。
頑張って下さい。
44 名前:夜叉 投稿日:2001年12月26日(水)16時41分23秒
裕子姐の姐さん肌な視点、いいですね、やさしくて。
石がクール?な吉をどこまで狂わすか、楽しみです。

でも姐さんって、一体…(汗。
45 名前:初めての人・・・(25) 投稿日:2001年12月29日(土)12時10分01秒
「ひとみちゃん大丈夫?何処か悪いんじゃないの?」
「私は大丈夫だから・・・もう帰るよ」
「待ってよ!」
歩き出したひとみの腕にむりやり自分の腕を絡ます梨華。
梨華は機嫌を取るかのように微笑み、そして口を開いた。
「私、ひとみちゃんとお話したいな。ダメかな?」
「何を?話してどうするつもり?」
「何をって、ひとみちゃんのこと。
 ひとみちゃんのことたくさん知って、お友達になりたい!」
46 名前:初めての人・・・(26) 投稿日:2001年12月29日(土)12時11分22秒
友達・・・ひとみにとって決して好きではないこのコトバ。
でも梨華となら嫌ではない気がする。
梨華もそうとう自分を慕ってくれているみたいだ。
ひとみは一瞬そう思った。
しかしそれもただの偶像に過ぎなかった。
友達になる以上、梨華を好きにならなければいけない。
いや、もしかすると、もうすでに心の片隅では好きでいるのかもしれない。
47 名前:初めての人・・・(27) 投稿日:2001年12月29日(土)12時19分36秒
 
 だけど私は・・・私はあの時、誓ったんだ
 2度と人を信じない、2度と人を好きにならない
 そして・・・2度と人を愛さないって
48 名前:初めての人・・・(28) 投稿日:2001年12月29日(土)12時20分27秒
ひとみは梨華の腕を振りほどくと、その場を逃げるように走り出した。
「待ってよ、ひとみちゃん!」
梨華は追いかけようとしたがすぐに諦めた。
自分の足ではひとみには勝てないと思ったのだ。
梨華は走っていくひとみの後姿を見ながら嘆いた。
「(私信じてるから。いつかひとみちゃんと仲良くなれる日が来るって。
  2人で笑える日が来るって。ねぇ、ひとみちゃん・・・?)」
49 名前:初めての人・・・(29) 投稿日:2001年12月29日(土)12時21分18秒
ひとみの頬には一粒の雫が伝っていた。
気付いたころには、自分でそれを止めることができなくなっていた。
「・・・涙も捨てたはずなのに」
その涙がスイッチとなりひとみの頭の中には、
封印したはずの記憶が否応無しに蘇る。
50 名前:初めての人・・・(30) 投稿日:2001年12月29日(土)12時21分59秒
誰1人何も話さず黙々と食事を続ける家族の中の自分

押す鍵盤を間違える度に義母に叱られ叩かれ、
泣き泣きピアノの練習を続ける自分

仕事にも行かず酒癖の悪い義父の暴力に耐えている自分

毎晩ふとんの中で声を押し殺して泣いている自分

それでも大好きな義兄の前では笑顔で振る舞っている自分
51 名前:初めての人・・・(31) 投稿日:2001年12月29日(土)12時23分55秒
「・・・なんでだよ・・なんで・・・
 思い出すんだよ・・・全部忘れた・・・ハズなのに・・・」
涙が止まるどころか身体までもがブルブルと震え出した。
「もう2度と・・・2度と泣かないって・・・決めたのに・・・」
終いには自分の意思で動くことができなくなっていた。
「なんでだよーーーーーッ!!!」
52 名前:アーカス 投稿日:2001年12月29日(土)12時33分27秒
冬休みのはずなのに、ほとんど学校の補習です。(泣
おかげで話しがなかなか進みません。
読んでくださっている方々、大変申し訳。

>43 Charmy Blueさん
感想ありがとうございます。
実は大ファンなのでとても嬉しいです。

>44 夜叉さん
姐さんは吉にとって特別な存在なのです。
それが分かるのはまだまだ先です、はい。
53 名前:夜叉 投稿日:2001年12月29日(土)17時13分45秒
ゆるくでも吉の感情の歯車が動き始めたことに感謝(合掌。
>姐さんは吉にとって特別な存在なのです。
今のとこで、一番近い他人みたい。楽しみに待ってますね。

補習、それは学生の苦しみ。←チャー(自主規制)風で。
作者様の空き時間でいいですよん。まったり更新お待ちしてます。
54 名前:名無し男 投稿日:2002年01月01日(火)17時52分44秒
あけオメ!

はて、どんな事から人間不信になったのか?

&補習お疲れさんです(俺の場合ビミョーな教科多過ぎで2月末が心配)

55 名前:初めての人・・・(32) 投稿日:2002年01月03日(木)12時16分29秒

「ん〜〜〜〜〜〜〜♪これをここにこうして・・・おっしゃー!
 裕ちゃん特製ハンバーグ、いっちょ上がりぃ〜♪うん、我ながら上出来や!
 それにしてもよっさん遅いなぁ、一体何やっとるんや?」
中澤は鼻歌を歌いながら食事の支度をしていた。
56 名前:初めての人・・・(33) 投稿日:2002年01月03日(木)12時17分20秒
この日の中澤はかなり機嫌が良かった。
何故なら数時間前、彼女は晩御飯の買出しから帰る途中に
見るからに好みのタイプの男性にナンパされたのだ。
「ん〜うちもまだまだ現役やな〜♪
 ま、よっさんのピチピチ肌には負けるけどな(笑)」
57 名前:初めての人・・・(34) 投稿日:2002年01月03日(木)12時17分53秒
しかし、そんな彼女のハイテンションも
ひとみの帰宅時にすっかり冷めてしまった。
「おっ、よっさん遅いやんか。一体何処ほっつき回ってたん?」
「・・・・・・・・・・・・」
中澤と目が合い瞬間的にひとみは俯いた。
そんな彼女の異変に気付かない中澤ではなかった。
「目赤いでぇ・・・泣いとるんか、よっさん?」
「・・・中澤・・・・・・さん」
ひとみはそのまま前に倒れかかった。
58 名前:初めての人・・・(35) 投稿日:2002年01月03日(木)12時18分48秒
中澤は慌ててひとみを支え、そのまま懐抱した。
「一体何があったん?あんたの涙見たのあの時以来やんか」
まるで幼児をあやすようにあくまでも優しく尋ねる中澤。
「石川って子に会って来たんやろ?何かヒドイことでもされたんか?」
何を聞いても口を開こうとしないひとみ。
それどころか、ますます涙が溢れてくる。
「よしよし、・・・余程のことあったんやな?
 裕ちゃんならいくらでも待ってやるさかい、遠慮せんと泣くんや」
ひとみが涙を流している間、中澤はずっと彼女の頭を撫でていた。
59 名前:初めての人・・・(36) 投稿日:2002年01月03日(木)12時19分52秒
結局ひとみの涙が完全に枯れたのは、それから2時間後だった。
中澤はひとみに「久々に背中でも流したろうか?」と誘い一緒に風呂に入った。
「(うわっ、しばらく見ん間に成長したなぁ。それやのになんで隠すかなぁ?
  誰もおらへんのに・・・きっと綺麗な胸しとるんやろなぁ。
  もっと自信持てっちゅーの。無理矢理脱がしたろか!)」
タオルで包まれたひとみの体を見ながら中澤は1人ニヤニヤと笑っていた。
「・・・中澤さん、やっぱり私上がります・・・」
流石にその怪しい視線を悟ったのか、ひとみは風呂場から出ようとした。
60 名前:初めての人・・・(37) 投稿日:2002年01月03日(木)12時21分37秒
中澤はハッっと自分の過ちに気付いた。
「す、すまん、よっさん!悪気はなかったんや、
 ただアノこと忘れとっただけで・・・」
「・・・別に気にしなくていいですよ・・・」
「そ、そうかぁ?だったら最後に(浴槽に)浸かろうや。
 体まだ温まっておらへんやろ?なぁ、よっさん?」
ひとみは素直に中澤の言うことを聞き浴槽にそっと腰を下ろした。
ほっとため息をつき中澤も同じ浴槽に入る。そして口を開いた。
「さっきはホントにすまん。嫌なこと思い出させてしもうて・・・」
「もう気にしてませんから・・・」
それだけ交わすと2人は黙り込んだ。
61 名前:アーカス 投稿日:2002年01月03日(木)12時29分45秒
不覚にもあげてしまったです。はぁ〜
あ、遅れましたがあけましておめでとうございます。
今年は受験を控えてますので、ゆっくり更新をと思ってます。

>53 夜叉さん
そういってもらえると助かります。
御言葉に甘えさせていただきますね。
もうすぐ歯車は止まらなくなります。(w

>54 名無し男さん
吉が人間不信だって伝わってて良かったっす。
もう少しで分かる日が来ますので御待ちくださいな。
62 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月03日(木)15時00分13秒
はじめて読ませていただきましたが・・・
姐さんのキャラオモロイです。(w

63 名前:名無し男 投稿日:2002年01月03日(木)17時06分51秒
ハイテンション中澤と
ローテンション吉澤のギャップが物凄い(w
64 名前:ポー 投稿日:2002年01月04日(金)02時34分29秒
あけおめ〜!うん..よすぃこの過去がきになるところ。。 受験っスか〜、自分もだし...まっ。お互いがんばりましょ!
65 名前:夜叉 投稿日:2002年01月04日(金)03時05分51秒
吉の過去、かなり気になりますね。
歯車、かなり動いてるのかな?
石の存在がウェイトを占めていく、かぁ〜、知りたいことあり過ぎ(w。
66 名前:初めての人・・・(38) 投稿日:2002年01月06日(日)12時15分59秒
静かな空間に水滴の落ちる音だけがこだまする・・・
先に沈黙を破ったのはひとみだった。
「自分から会いに行ったくせに・・・逃げちゃいました」
中澤は敢えて何も言わず、真剣な眼差しでひとみを見つめていた。
「あの子に会って言われました。『友達になりたい』って・・・。
 何か嬉しかった。・・・嫌いじゃない。多分・・・ううん、好きなんだと思う。
 変ですよね。あれほど人間を拒んでいた私が、好きだなんて・・・」
67 名前:初めての人・・・(39) 投稿日:2002年01月06日(日)12時16分38秒
「人を好きになるっちゅーのは当たり前なことや・・・あんたはただ・・・」

「分かってます。だから・・・だからこそ好きになるのが怖いんです・・・。
 彼女のこと考えてたら急に昔のこと思い出しちゃって、
 いつのまにか涙が出てきて止まらなくて・・・。
 もしかしたら彼女もアノ時みたいに・・・アノ男みたいに・・・
 私の気持ちを・・・裏切るかもしれない・・・そう考えたらやっぱり私・・・」
68 名前:初めての人・・・(40) 投稿日:2002年01月06日(日)12時18分04秒
「・・・ホントにそれでいいんかぁ?
 ま、裕ちゃんが決めることやないけど、これだけは言っておくで。
 もしあんたが、1人になることを望むんならそれはそれでええと思うよ。
 でもなぁ、傷つくのは自分1人だけやと思ったら大間違いや。
 きっとあの子も悲しむんとちゃうか?大げさな言い方やけど、
 今のあんたはあの子の気持ちを裏切ろうとしとるのと同じや。
 裏切られた時の悲しみはあんたがよく知っとるはずやろ?
 ・・・時間はまだまだ有る。もういっぺんよぉく考えてみたらどうや?」
69 名前:初めての人・・・(40) 投稿日:2002年01月06日(日)12時18分54秒
中澤はそれだけ言うと、ひとみを残し風呂場を後にした。
70 名前:初めての人・・・(41) 投稿日:2002年01月06日(日)12時20分45秒
それから1週間が経った。
ひとみはあれ以来、自分の部屋に閉じこもったまま。
きっと自分のこと、そして梨華のことを考えてるんだろうと、
中澤はあまり心配しなかった。
「もう夕方か。さてと・・・そろそろ裕ちゃんも動き出すかな?」
71 名前:初めての人・・・(42) 投稿日:2002年01月06日(日)12時21分23秒
中澤は独り言のように呟いて、ひとみの部屋のドアをノックした。
「よっさん、起きとるか?ちょっと出かけてくるさかい、留守番頼むわ。
 メシ代テーブルの上に置いとくから、好きなもん買って食うんやで。
 多分遅くなると思うから。じゃあ、よろしくな!よっさん」
一方的な会話を終え、中澤は出かけて行った。
72 名前:初めての人・・・(43) 投稿日:2002年01月06日(日)12時22分22秒
――――場所は移って石川邸・梨華の部屋
梨華は勉強もせずピンクのベッドの上で寝そべっていた。
頭の中はひとみのことでいっぱいだった。
 (はぁ〜ひとみちゃん、今ごろ何してるのかなぁ?)
そこへ、コンコン!っとドアをノックする音。
『お嬢様、保田でございます、入っても宜しいですか?』
続いてドア越しに、メイドの中で1番年長の保田の声。
 
 (やばっ!また怒られる〜)
73 名前:初めての人・・・(44) 投稿日:2002年01月06日(日)12時22分59秒
梨華は慌てて椅子に座り、机の上に適当に教科書とノートを広げた。
「あ〜もう!何でこういう時に限って筆箱が見つからないんだよぉ〜」
「これですか?お嬢様」
「あ、ありがとう、保田さ・・・ん。も、もしかして今の・・・」
時既に遅し。一連の行動は、しかと保田の目にと焼き付けられていた。
本能的に危険を察知した梨華は、ゆっくりと視線の先を保田からずらしていく。
「お嬢様!!!こちらをちゃんと向いてください!」
74 名前:初めての人・・・(45) 投稿日:2002年01月06日(日)12時23分39秒
もはや梨華は逃げることも不可で、しょうがなく保田に従うのだった。
 
 (はぁ〜また説教だよ〜。おばちゃんの話し長いからなぁ・・・)

「何か言いましたか?」
「な、何も言ってないよ」
何で分かるの?もしかして心眼?と不思議に思う梨華だった。
75 名前:アーカス 投稿日:2002年01月06日(日)12時48分30秒
更新しました。全然いしよしじゃないですね。(苦w
明日から学校なので、ますます更新遅れると思います。
それでもいいって方は、気長に待ってください。

>62 名無し読者さん
読んでいただいてかなり嬉しいです。
すごく励みになりますので。

>63 名無し男さん
中澤姐さんの辞書には、
「低い」等というコトバはありません。(w

>64 ポーさん
焦らしてる割には大したことないかも…
コレ以上は言えませんな。

>65 夜叉さん
私も書きたいことたくさんあるので大変です。(w
ゆっくりと明らかにしていくつもりです。

次回はおばちゃんメイド、保田暴走!?
76 名前:夜叉 投稿日:2002年01月06日(日)19時29分44秒
年長メイド、暴走ですか(爆)。
楽しみですねぇ。
書きたいことがたくさんあるとのこと、うれしいです。
たくさん書いてくださいね。
77 名前:レイン 投稿日:2002年01月06日(日)23時15分26秒
初カキコです。
いしよし好きなんでよませて
いただきました〜。
いいですね。ここのいしよしも
78 名前:初めての人・・・(46) 投稿日:2002年01月10日(木)18時33分58秒
梨華はつまらなさそうにベッドの上に寝転がる。
立ったままの保田が呆れた顔で話し始めた。

「全く最近のお嬢様はたるんでますよ!」
「そうなのよ、最近お肉がついてきちゃって。
 ダイエットしなきゃって思ってるんだけど・・・」
と、冗談交じりで自分の二の腕を保田に見せる梨華。
「そういう意味じゃありません!」
79 名前:初めての人・・・(47) 投稿日:2002年01月10日(木)18時35分23秒
保田の目は更に鋭くなっていく。

「お嬢様・・・この間のテスト、酷く悪かったそうですね。
 しっかりと旦那様と奥様に報告させていただきました。
 お2人ともかなり驚いてました。ちゃんと勉強なさったのですか?
 最近のお嬢様は、ボーっとし過ぎです。今朝の食事の時もそうでしたし。
 一体どうなされたんですか?・・・私共は大変心配なのです。
 もしかしたらお嬢様が下品な輩にでも、毒されたんじゃないかと・・・
 もしそんなことが旦那様方の耳にでも入ったら・」
「それは大丈夫、私は保田さんと違って飢えてないから」
80 名前:初めての人・・・(48) 投稿日:2002年01月10日(木)18時36分12秒
「!?な、何を、お、おっしゃるんですか、お嬢様!!!
 私はそんな不謹慎なことには一切興味ありません!
 だいたい、お嬢様はいつも一言余計なんですよ。
 人の気にしてることをズバズバと・・・」
「やっぱり飢えてるんじゃない、ふふふ」

梨華はニヤリと微笑む。
1本取られた保田は梨華には勝てないと思ったのか、
顔を赤く染めそのまま黙ってしまった。
81 名前:初めての人・・・(49) 投稿日:2002年01月10日(木)18時36分56秒
不意に梨華が口を開いた。
「ねぇ、保田さん・・・」
「え!?あ、は、はい?何ですか」

あまりの唐突さに保田は口がまわらなかった。

「キスってさぁ・・・どんな味がするのかなぁ?」
「は!?―――――――――」
82 名前:初めての人・・・(50) 投稿日:2002年01月10日(木)18時39分01秒
「あ、あの、お嬢様?言ってる意味が・・・」
「だぁかぁらぁ!好きな人とするキスってどうなの?
 って言ってるの!もう、ちゃんと聞いててよね!」

保田は梨華の態度を見て少々驚いた。
梨華の瞳はハッキリとした光を放っている。
かつてこんなに真面目な顔つきをした
梨華を見た者がいただろうか・・・?
この真面目さが勉強面にも出てくれればと思う保田であった。
83 名前:初めての人・・・(51) 投稿日:2002年01月10日(木)18時40分59秒
反面、質問の返答をどうしようか困った。
見た目以上に経験豊富な保田は、
どの場合のを話したら良いのか素で考えていた。
アレは16歳には過激すぎるから教育上好ましくないとか、
コレは大失敗だったから絶対に誰にも語れないとか、
ファーストキスなんてもってのほか・・・etc
84 名前:初めての人・・・(52) 投稿日:2002年01月10日(木)18時42分39秒
過去の余韻に浸っている保田の口元はどう見ても緩んでいた。
しかしそんな事を考えてるとは知らず、梨華は保田をからかう。

「もしかして保田さん・・・キスしたことないんだ?遅れてるぅ〜」

しかし、この言葉には温和な保田も我慢できなかった。
保田はベッドの上にちょこんと座っていた
梨華の腕を引っ張り自分の方へと引き寄せた。
85 名前:初めての人・・・(53) 投稿日:2002年01月10日(木)18時43分47秒
あっという間に梨華は保田の腕の中。
そっと保田の腕が梨華の背中に回る。
ヤバイ―――!と梨華は瞬時に思った。
と言うよりその言葉しか考えつかない。
今の保田には格好なエモノしか見えていない。
「お嬢様・・・そんなにキスがしたいのなら
 この保田がその唇を奪ってさしあげましょう」

そう言って顔を近づけようとする。
 (ヤバイよぉ、この人マジだよ!)
必死に抵抗するが、保田に捕まっているせいで思うように体が動かない。
86 名前:初めての人・・・(54) 投稿日:2002年01月10日(木)18時46分36秒
「ちょ、ちょっと止めてよ!!!」
梨華の抵抗も虚しく保田との距離はどんどん縮まっていく。
ドアップの保田の顔に思わず目を閉じる。
 (大好きな人だけとするつもりだったのに・・・)
 (大好きな・・・人だけと・・・)
もはや梨華は放心状態だった。
その次の瞬間だった・・・
梨華の頬っぺたに何か柔らかい感触が当たった。
87 名前:初めての人・・・(55) 投稿日:2002年01月10日(木)18時48分56秒
「――――え!?」
完全に唇を奪われると諦めていたのに、
予想外の展開に梨華は驚いて目を開いた。
自分の前にいるのは、いつもの穏やかで優しい目をした保田だった。
保田は梨華を開放すると梨華に言った。

「お嬢様の方がよっぽどお子様ですね。
 もし今のが私じゃなかったらどうする気ですか?
 野郎共だったら、完全に遊ばれ放題でしたよ。
 ・・・あまり調子に乗るからちょっとお仕置きです」

「保田さん・・・」
88 名前:初めての人・・・(56) 投稿日:2002年01月10日(木)18時49分43秒
梨華はその場にへたり込むと俯いた。

「好きな人でもできたんでしょ?顔にそう書いてありますよ。
 私はお嬢様の恋愛に口出しするつもりはありません。 
 でも・・・ホドホドにしてくださいよ、いろいろと。
 今のお嬢様を見てると何だか危なっかしくて・・・
 私はお嬢様の笑顔を見てるのが好きです。
 いつまでもその笑顔を絶やさないでいて欲しいです。
 ・・・キスは人に語るものじゃないと思います。
 きっと愛し合う2人だけが分かる特別なモノなんでしょうね?」

保田は自分の口から出てきた言葉に赤面した。 
これじゃまた、梨華にからかわれるなと吹き出しながら。
89 名前:初めての人・・・(57) 投稿日:2002年01月10日(木)18時51分41秒
「ほら、お嬢様。自信を持ってくださいよ」
そう言って保田は梨華に手を差し伸べる。
「保田さん、ありが・・・・・・とうなんて絶対に言わないよ〜ん」
梨華は保田のロングスカートを捲り上げ、
ニヤっと微笑み部屋の外に走った。
「きゃっ!?」
「保田さんってさぁ、黒似合わないよね」
「この生意気ムスメ!もう許さないわ!こら、待ちなさい!」
梨華は保田の反応を確認すると慌てて長い廊下を駆け出した。
保田も意地になって梨華を追いかけた。

「こらー!いい加減に捕まりなさい!」
「へっへ〜んだ!おばちゃんなんかには負けませんよぉ〜だ!」

それから2人の鬼ごっこは1時間以上続いたのだった。

 (ちょこっとクサイ台詞だったけど、ありがと!保田さん。 
     おかげでやっと・・・決心できたよ――――――――)
90 名前:アーカス 投稿日:2002年01月10日(木)19時05分42秒
いつもより多めに更新しました。次は3連休あたりかな?
さて物語も中間ぐらいまで進んできました。
早くいしよしシーンを書きたいのですが・・・
もう1シーンぐらい入れたいと思ってます。

>76 夜叉さん
あまり吉以外を絡ませる気はないのでちょこっとだけ。

>77 レインさん
もっと喜んでもらえるよう、頑張ります!
91 名前:Charmy Blue 投稿日:2002年01月10日(木)20時58分34秒
ひさぶりに来たら大量に更新されてる♪
メイドのヤッスーもいいですね。
92 名前:夜叉 投稿日:2002年01月10日(木)22時14分23秒
年長メイド、黒、頂きました(w。
全然大丈夫です。当方、吉推しですが、何か?(爆)。
更新、まったりとお待ちしてます。
93 名前:名無し男 投稿日:2002年01月11日(金)15時12分51秒
鬼ごっこか・・・
ほどほどにね(w
94 名前:初めての人・・・(58) 投稿日:2002年01月13日(日)14時25分07秒
『ひとみはイイ子だなぁ』

『だって私、お兄ちゃんの事大好きだもん!
 大きくなったらお兄ちゃんのお嫁さんになる!』

『ハハ、ひとみが綺麗な大人になったらな』

『うん!』

あれ・・・?この光景・・・どこかで・・・
それにあの小さい女の子・・・『ひとみ』って名前・・・
もしかして私・・・?
じゃあ、あの男の人は・・・オニイチャン?
確か私・・・小学6年生ぐらいだったかな・・・?
・・・そっか、これは夢なんだ・・・
だから私はあんなに笑っていられるんだ・・・
そうだよね・・・そうじゃなきゃ―――――――
95 名前:初めての人・・・(59) 投稿日:2002年01月13日(日)14時26分31秒
『ひとみ、今日はお兄ちゃんが楽しい所に連れてってやるよ』

『やったぁ〜。ねぇ、どこ行くの?』

『それは着いてからのお楽しみだよ』

もしも・・・あの時、お兄ちゃんの誘いを断っていれば・・・
96 名前:初めての人・・・(60) 投稿日:2002年01月13日(日)14時27分21秒
『着いたよ、ひとみ・・・』

『お兄ちゃん、ここドコ?誰もいないよぉ』

『誰にも邪魔されたくないからな・・・』

『何を?』

『・・・・・・・・・・・・』

もしも・・・あの時、あの人から逃げていれば・・・

『お兄ちゃん?どうしたの・・・』

もしも・・・あの人の異変に気付いていれば・・・

私は・・・私は―――――――――
97 名前:初めての人・・・(61) 投稿日:2002年01月13日(日)14時27分54秒
『・・・ねぇ、どうしてお兄ちゃん裸なの・・・?』

『あは?あひゃひゃひゃヒャひゃヒャひゃヒャひゃヒャ』

『ちょ、ちょっとお兄ちゃん!止めて!放して!』

『ずっと・・・我慢してた・・・だけど、もう我慢できない』

『止めて・・・お願いだから・・・止めて・・・』

ずっと・・・信じてたのに・・・
98 名前:初めての人・・・(62) 投稿日:2002年01月13日(日)14時28分37秒
『なんでだよ、ひとみぃ!!!お兄ちゃんの事、好きなんだろ?
 だったらお兄ちゃんに綺麗なその身体、見せてみろよぉ!!!!』

『いやぁぁぁぁぁぁ!!!』

『ほら、さっさと脱げっ!それとも無理矢理脱がされたいのかっ!』

お兄ちゃんだけは・・・私の味方だと思ってたのに・・・

『ハァハァ、いいぞひとみぃ!じっとしてれば何も怖くないよ。
 お兄ちゃんがしっかり可愛がってやるからな、ハハハハ』

誰か・・・助けて・・・誰でもいいから・・・私を助けて・・・

『あっ・・・いやっ!止めて!私の中に入らないでェェェェェ!』

『ひとみぃぃ!!!』

もう・・・これ以上・・・私を苦しめないで・・・・・・
99 名前:初めての人・・・(63) 投稿日:2002年01月13日(日)14時29分08秒
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――」

ばっと目を見開くとそこは自分の部屋だった。
着ていたジャージが汗でじっとりとしていた。
ゆっくりと体を起こし呼吸を整えるひとみ。
時計に目をやると午前3時を過ぎていた。

「また・・・あの夢・・・」

ベッドから起きあがりそっと部屋を出る。
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出すと一気にソレを飲み干した。
空になったペットボトルをテーブルの上に置いた。
100 名前:初めての人・・・(64) 投稿日:2002年01月13日(日)14時30分06秒
「ちくしょぉ・・・ちくしょぉ・・・」

また涙がこぼれてきた。
拭っても拭っても止まる事はなかった。

気が付けばひとみは包丁を片手に立っていた。
ひとみはたまに自分を見失う事がある。
いつもは中澤が傍にいるので心配ない。
しかしその中澤も3日前に町内会の温泉旅行で九州に行ってしまったのだ。
ストッパーがいない今、ひとみの暴走は収まる事はない・・・
101 名前:初めての人・・・(65) 投稿日:2002年01月13日(日)14時30分41秒
(こんな辛い思いをするぐらいなら・・・死んだ方がマシだ)
 
 (どうせ私なんか死んだって誰も悲しまない) 
 
 (生きている意味なんかない・・・)
 
 (死んだら人間はどうなるのかな・・・?)

 (・・・考えるのもめんどくさいや)

 (もう・・・疲れちゃった・・・・・・・・・)
102 名前:初めての人・・・(66) 投稿日:2002年01月13日(日)14時32分13秒
何も考えず、ただ包丁と自分の手首の距離が
縮まっていくのをボンヤリと眺めていた。

その差がわずか数ミリって時だった。

『あなた名前は?』

エ?―――――

『私、梨華!石川梨華って言うの』

イシカワ・・・リカ?

『私、ひとみちゃんとお話したいな。ダメかな?』

ダメジャナイヨ・・・デモ・・・
103 名前:初めての人・・・(67) 投稿日:2002年01月13日(日)14時32分49秒
『ひとみちゃんのことたくさん知って、お友達になりたい!』

ワタシナンカデイイノカ?ワタシミタイナダメナヤツデモ・・・

『ひとみちゃん・・・』

・・・ワタシモ・・・シリタイ・・・モット・・・オマエノコト・・・シリタイ
イッパイ、イッパイハナシガシタイ・・・

ヨウヤクワワカッタヨ・・・

ワタシハ・・・

ワタシハ・・・

「石川梨華・・・お前の事が好きだ――――――」
104 名前:アーカス 投稿日:2002年01月13日(日)14時47分45秒
今回はここまでっす。
カタカナは読みにくいと思いますが、ご勘弁。
ちょっと可哀想過ぎたかなっても思ったりして…

でもやっと吉も自分の気持ちに素直になったかな?
早く通じ合えるといいなぁと思ってます。(w

>91 Charmy Blueさん
ホントはあと2人メイド役に考えてたんですけど・・・
1番仲の良さそうなヤスで。でも石は吉一筋です!

>92 夜叉さん
ヤスので良かったらいくらでもどーぞ。(w
今回は吉のシーンでしたが、どうでしょう?

>93 名無し男さん
結局、現役石川さんがおばちゃんを
振り切ったと言う事でよろしいですか? (w
105 名前:夜叉 投稿日:2002年01月13日(日)15時26分14秒
吉の暗い過去、そんなことがあったんですね。
痛みを安らいでくれる人もいない、極度の精神状態に達する吉を導いたのが石。
これからどんな展開になるのか楽しみです。
106 名前:レイン 投稿日:2002年01月13日(日)20時09分34秒
いいですね
過去の傷の痛みがあるヨッスィーが
かわいそう。
107 名前:名無し男 投稿日:2002年01月14日(月)02時37分43秒
レープ許せん
タイーホしる
108 名前:初めての人・・・(68) 投稿日:2002年01月15日(火)19時01分13秒
2週間が過ぎ、ようやく中澤が帰ってきた。

「お〜い、よっさ〜ん、裕ちゃん帰って来たでぇ〜」

ひとみはお帰りなさいと出迎えると率直に言った。

「中澤さん、私・・・ずっと考えてました。 
 ・・・梨華の事・・・昔の事・・・そして今の自分」

 (“梨華”・・・か・・・今までは“あの子”やったのに)
109 名前:初めての人・・・(69) 投稿日:2002年01月15日(火)19時01分51秒
中澤はホッとため息をついた。
手に持っていた旅行バッグやお土産やらを床に置くと、
いつかのような優しい目でひとみを見つめた。

「そうか・・・答え出たんか。そやったら・・・」

中澤はそっと吉澤を抱きしめた。

「・・・もう自分から逃げたらあかん。
 正面からちゃんと自分の気持ちを伝えるんや。
 あんたならそんぐらい出きるハズやろ?
 自信を持て、吉澤ひとみ!」

再びそっとひとみを放す。
110 名前:初めての人・・・(70) 投稿日:2002年01月15日(火)19時05分11秒
「ありがとう・・・中澤さん」

そう言うと、ひとみは走ってその場を後にした。
ひとみが振り返る瞬間、中澤はひとみの笑顔を垣間見たのだった。

行き先は言うまでもないだろう。

そう・・・ひとみが今1番大切に想っている人物のところへ
111 名前:初めての人・・・(71) 投稿日:2002年01月15日(火)19時06分47秒
ひとみの心の氷を溶かすキッカケになった石川梨華

もし彼女と出逢っていなければ・・・

ひとみは2度と人を好きになる事がなかっただろう―――――


 (イイ笑顔や、よっさん・・・いや、・・・ひとみ)
112 名前:アーカス 投稿日:2002年01月15日(火)19時17分06秒
ちょっぴり更新。
次回はやっといしよしの再会かな? 
あ〜いしよしシーンが書きたい・・・(w

>105 夜叉さん
実は吉の過去はもっと暗いのです…(ネタバレ
やっといしよしになりますが、あまり期待しないでね。(w

>106 レインさん
例え空想世界と言えども、吉をあんな風にしてちょっと罪悪感が。
よっすぃ〜ごめんなさ〜い。

>107 名無し男さん
同じ男としてホント許せませんよね。
私も逮捕手伝います。(w

113 名前:夜叉 投稿日:2002年01月16日(水)20時38分37秒
もっと暗いのですか…(鬱)。
でも、少しでも吉の気持ちが和らぐのなら。
114 名前:名無し男 投稿日:2002年01月17日(木)15時51分12秒
短くとも大きな変化が!!
次回はどーなってしまうのか!?
115 名前:初めての人・・・(72) 投稿日:2002年01月19日(土)21時42分44秒

何週間ぶりだろうか。
ひとみは彼女の家の門の正面に立っていた。
これからだって言うのに、すでに不安を感じていた。

また裏切られたら―――――

 (逃げちゃダメだ・・・梨華に会いに来たんだ)

元凶に囚われながらも、ひとみは首を横に振った。
116 名前:初めての人・・・(73) 投稿日:2002年01月19日(土)21時43分53秒
「あのさ、さっきからずっと立ち止まってるけど。家になんか用かい?」

後ろから聞こえた声に驚きつつ振り返る。
ひとみの目の前には、金髪で背の低い女性が立っていた。

 (この人・・・確かメイドの人・・・?)

金髪の女性は背伸びをして、じろじろとひとみの顔を覗く。
そして気が済むと続けて言った。

「あ、機嫌損ねた?メンゴメンゴ!
 それより・・・あんた吉澤さんでしょ?
 いっつもおじょーさまから聞かされてんだよね。
 ・・・へぇ〜、想像してたよりかなりカッコイイじゃん」
「・」

ひとみは梨華と対比しながら思った。
この世には、いろんな人がいるんだなと。
117 名前:初めての人・・・(74) 投稿日:2002年01月19日(土)21時44分27秒
でも元気で、明るくて、1人なのに賑やかで、笑顔が似合うっていうか・・・
そんな彼女を見ているのがちょっと面白かった。

「あ、名前言ってなかったね。あたしぃ、ヤグチって言うんだ。
 まあいろいろとワケありで、この家に仕えてんだけどさー。
 立ち話も何だから、家に上がりなよ。どうせ会いに来たんだろ?」

そう言ってヤグチという女性はひとみのコートの裾を引っ張った。

「触らないで!」
「えっ!?」

慌ててヤグチは手を引っ込めた。
118 名前:初めての人・・・(75) 投稿日:2002年01月19日(土)21時46分05秒
「あ、・・・その・・・」
「ハハ、気にすんなよ。ちょっとビビったけど。
 人にはそれぞれ踏み入れられたくないモンがあるからな・・・」

さっきまでの明るさが消えていくのが、ひとみにも分かった。
この人も過去に何かあったのかもと、どこか自分に似ている感じがした。

そのときのひとみはどんな表情をしていたのか・・・

「おいおい、気にしないでいいってば。
 それより入って待ってなよ。どうせ、もうそろそろ帰ってくる頃だし」

ヤグチは再び笑顔で尋ねた。

「いえ・・・ここで待ってますから・・・」
「でも、もう12月だよ?寒いじゃんか。遠慮すんなよ」

それでもひとみはその場を動こうとしなかった。
見兼ねたヤグチは深くため息をついた。

「ったく、しょうがないな。ちょっと待ってな」

それだけ言うとヤグチは着ていたパーカーのポケットから
携帯を取り出すと慣れた手つきで電話をかけた。
119 名前:初めての人・・・(76) 投稿日:2002年01月19日(土)21時47分01秒
「もしもしぃ、ヤグチだけど。今何してんのさ?
 ・・・・・・は?補習?そんなもんサボってさっさと帰って来なよ。
 今さぁ、あたしの横に例のあの子いるんだけど・・・・・・・・・・・・
 ホントだってば、信じろよ!ったくそんなにあたしが信用できないのか!
 と・に・か・く家入って待っててもらってもイイよね。
 ・・・うん、分かったよ。だから早く帰って来いよ。じゃ切るぞ」

はぁ〜と再びため息をつくと、携帯の電源を切った。
そしてひとみの顔をちらっと見て笑った。

「まったく手間のかかる方々だこと・・・。
 おじょーさまから伝言だよ。
 『会いに来てくれてありがとう』だってよ。
 それから、『すぐ帰るから家入って待ってて』だって。
 遠慮すんなよ。ほら頬っぺた真っ赤じゃんか。入りなよ」
「お邪魔・・・します・・・」

これ以上外で待ってると、帰って来た時に梨華に何か言われそうな気がして、
ひとみはしょうがなくヤグチに続いて石川邸にお邪魔したのだった。

 (この人・・・本当にメイドなんだろうか?)
 
ふと、ひとみはヤグチの背中を見てそう思った。 
120 名前:アーカス 投稿日:2002年01月19日(土)21時56分39秒
今日はここまで。
訂正が一箇所。116の「・」は「・・・・・・・・・」の間違いっす。
BD記念にヤグを出したら、また引っ張っちゃいました。(w
さて、今日は石川さんのBD。おめでたいです。
家から福井コンの会場まで15分の私ですが、チケットとれませんでした。(泣

>113 夜叉さん
ある意味、石は癒し系なんでしょうね。
私の心も癒して欲しい・・・(w

>114 名無し男さん
次こそ2人の再会です。
急接近させますので、お楽しみに。
121 名前:名無し男 投稿日:2002年01月20日(日)19時00分35秒
タメ口メイドってのもおもろい(w
122 名前:夜叉 投稿日:2002年01月21日(月)15時36分36秒
今年は「癒し」圭から「励まし」圭になるそうで。
吉の時代がやってくるぅ。←ほっといてくださいね、こいつ。w

知、メイドさんなのね。やっすといい、知といい、濃いよな、ここのメイド。
123 名前:Charmy Blue 投稿日:2002年01月22日(火)21時55分43秒
男口調の矢口、ツボです。
個性的なメイド揃いですねぇ(w.
124 名前:アーカス 投稿日:2002年01月28日(月)15時41分19秒
ちょっとテスト

はあとはあと

テスト きほし

上手くなってるかな?
125 名前:初めての人・・・(77) 投稿日:2002年01月28日(月)17時10分49秒
家の中は、それはもうすごかった。
床には赤い絨毯が敷かれ、部屋の中央には2階へ繋がる大きな階段。
所々には外国製のソファーが置いてあり、天井には眩しく輝くシャンデリアが。
まるで西洋風のお城の中にいるような気分でいっぱいだった。
ひとみは今までに見たこともない、その豪華さにただ息を呑むばかりだった。

「ハハハ、驚いたっしょ?あたしもねぇ最初はびっくりしたなぁ。
 何でヤグチはここに居るんだろうって。今はもう慣れちゃったけどネ。
 さぁ付いて来て、おじょーさまの部屋に案内するから。
 ぼーっとしてると迷子になっちゃうぞ!この家ホント広いんだから!」
126 名前:初めての人・・・(78) 投稿日:2002年01月28日(月)17時12分04秒
ヤグチに続いて階段を登り、さらに奥へと進んだ。
廊下の壁にずらりと並んでいる絵画が、否応無しにひとみの視界に入ってくる。

 (どうして人間って、こう不平等なんだろ・・・)

「おい、何突っ立ってんの?ココだよ、おじょーさまの部屋」

そう言ってヤグチは部屋のドアを開ける。
その中を見たひとみは言葉が出なかった。
部屋中が、かなり大きめのベッドやテーブル、
壁から床まで、何もかもがピンク1色だったのだ。
中澤から借りている何もない自分の部屋とは大違いだった。

「ほら、入った入った。・・・うわっ!きったない部屋だな!
 まったくぅ、だらしねぇな、うちのおじょーさまは」

そう言って、ヤグチは散らばっている雑誌やら何やらを片づけ始めた。
127 名前:初めての人・・・(79) 投稿日:2002年01月28日(月)17時14分27秒
「あ、テキトーにそこらへん座っててよ。
 今何か飲みもの持ってくるからさ」

相変わらずのマシンガントークで、
あっという間にヤグチは部屋から出て行った。 
ひとみは、とりあえず目の前にあったピンクのソファーに腰を下ろした。
 
それにしても、目に付くのはピンクだらけの世界。
黒を好む自分にとって、この異例の光景はあまりイイ気分がしなかった。
それでも梨華の顔を思い出すと、どうでも良くなってくる自分が可笑しかった。

 (帰って来たら何て言えばいいんだろ?さすがに無言じゃな・・・)
128 名前:初めての人・・・(80) 投稿日:2002年01月28日(月)17時15分29秒
ふと机の上に伏せてあった写真立てが気になった。
勝手に見るのも悪いと思いながらも、それを手に取った。

男性と女性の間に小さな女の子。
きっと梨華の幼かった頃の家族写真であろう。
3人ともすごくいい表情をしている。
心から幸せだって感じが伝わってくる。

それに比べて自分は・・・・・・

「!!!!!!!!!」

その瞬間、激しい頭痛がひとみを襲った。
そしてひとみは何の言葉も発することなくその場に倒れ込んでしまった。
129 名前:初めての人・・・(81) 投稿日:2002年01月28日(月)17時17分46秒

そのころ梨華はというと―――――

「う〜ん、どれにしようかなぁ」

街角のケーキ屋で悩みに悩んでいた。
せっかく会いに来てくれたので、
やっぱり何か必要だなと思ってのことだった。

「ひとみちゃんはどんなケーキ好きなんだろ?
 う〜ん、どれも美味しそうで困っちゃうよぉ。
 でも早く帰らないと・・・・・・よし、ここはやっぱり」
130 名前:初めての人・・・(82) 投稿日:2002年01月28日(月)17時18分34秒

「あ〜もう!かなり時間かかっちゃったよ〜。
 やっぱりひとみちゃん怒ってるだろうなぁ」

家に向かって走りながら梨華はポツリと呟いた。
自然とひとみの怒った顔が浮かび上がる。

「でも・・・ひとみちゃん優しいからきっと許してくれるよね」

そんな根拠はどこにもないのに、梨華の口元は緩んでいた。

「あぁ〜早くひとみちゃんに会いたいよぉ・・・」

いつのまにか梨華の足は止まっていた。
131 名前:初めての人・・・(83) 投稿日:2002年01月28日(月)17時19分44秒
梨華にはちょっとした妄想癖があった。
ひとみのことを考えると、どうしても自分の世界に入り込んでしまうのだ。
保田に相談したあの日から、自分でもはっきりと自覚するようになった。

夢の中の自分たちはとても仲の良い友達。
しかし友情の域を越えてしまうことも、しばしばあるのだった。
今が、まさにそうである。

『ひとみちゃん、ただいまぁ〜』
 
『お帰り、遅かったね』

『あのね、ケーキ買って来たんだ。一緒に食べよ!』

『ちょうどお腹空いてたんだ、ありがと。
 でも・・・さぁ、私はケーキより・・・・・・』

『なぁに?ひとみちゃん』

夢の中でひとみがそっと自分を抱きしめる。

『梨華が食べたい』

『やだぁ、ひとみちゃんったら。恥かしいじゃない』

『大丈夫。優しくするから』

『・・・うん』

『好きだよ、梨華』

『私も大好きだよ・・・ひとみちゃん・・・』

そして2人は唇を交わしベッドに沈んでいく・・・・・・
132 名前:初めての人・・・(84) 投稿日:2002年01月28日(月)17時21分03秒

「いや〜んはあとはあと

梨華は現実にもここで全てを吐き出す。
いや、正確にはこの先の行為をよく知らないから
続けられないというのが本音である。

16年間1度も付き合ったことがなかった。
決してモテないわけじゃない。学年を問わず告白は嫌と言うほどされてきた。
梨華の笑顔にやられた男子生徒は数知れず・・・・・・
女子生徒からも告白されたことも何度かあった。
学校へ来て下足箱を開けると必ず数十通のラブレターが入っている。
しかし、梨華はどんなにカッコイイ男が現れても興味を示さなかった。
一部の生徒はそんな梨華の事を『オトコ潰しの小悪魔』と呼んでいる。
当然AとかBなどと言った経験は皆無なのだから知らなくて当たり前である。
133 名前:初めての人・・・(85) 投稿日:2002年01月28日(月)17時22分11秒

そんなウブな彼女が初めて興味を持ったのがひとみだった。

「こんなことひとみちゃんが知ったら、絶対軽蔑されるよね・・・
 でもいつかきっとこの想いを叶えてみせるんだから!
 ひとみちゃん・・・・・・よぉし、梨華がんばるっ!」

そう呟き小さくガッツポーズをする。
再び家へと走り出す梨華は、ひとみの事でイッパイイッパイだった。
134 名前:アーカス 投稿日:2002年01月28日(月)17時37分35秒
1週間ぶりの更新です。(汗
しかもまた引っ張っちゃいました・・・
梨華さんの妄想で許してください。
ほんのちょこっとですけど。(苦笑

>>121 名無し男さん
知メイド気に入ってくれて良かったっす。
ヤスより不人気だったらどうしようかと…(w

>>122 夜叉さん
癒しも励ましも結局はヤスダさんだからね・・・
あまり効果ないかも。(w

>>123 Charmy Blueさん
石川に敬語使う知が想像できなかったので、
どうせなら荒っぽくしてみようかと・・・
でもメイドにさせて正解でした。
135 名前:レイン 投稿日:2002年01月28日(月)23時18分12秒
梨華っち、いい妄想しますね。
帰ったら気絶してるヨシコを…
136 名前:夜叉 投稿日:2002年01月28日(月)23時40分37秒
素敵な妄想癖(爆)。
勝手に始まっちゃう石、思いっきりツボです(笑)。
しかし、吉の方が気になりますね。
続き、楽しみにしてます。
137 名前:名無し男 投稿日:2002年01月29日(火)02時25分47秒
石川さん、大変想像力が豊かなようで(w
138 名前:夜叉 投稿日:2002年02月19日(火)19時23分42秒
続き楽しみにしてますよぅ。
139 名前:アーカス 投稿日:2002年02月20日(水)20時47分30秒
続きを楽しみに待ってくださっている方々、大変申し訳ないのですが、
只今私、受験戦争中なのでもう少し我慢してください。
今週の日曜日には少しでも更新しようと思ってます。

ホントに迷惑かけてすいません。これからもよろしくお願いします。
140 名前:夜叉 投稿日:2002年02月23日(土)10時55分59秒
作者様、受験中ですと?
落ち着いてからでいいので、しっかり本業に力を入れてくださいね。
マターリお待ちしております。頑張ってください。
141 名前:名無し男 投稿日:2002年02月23日(土)16時39分04秒
とにかく受かりたいって気持ちと
自分自身のベストを尽くす事
そうすればきっと神様見てるから
自信持ってこう!

142 名前:初めての人・・・(86) 投稿日:2002年02月24日(日)18時03分49秒
『――ここは一体・・・?』

何もない、真っ黒な世界の中にひとみはいた。
青い空も、街も、道路を走っている車も、
大嫌いな人間も、道端に生えている花すらなかった。
ただ自分だけがポツンとそこに立っていた。


何かを探そうと目の前をひたすら歩き続けたが結局無駄だった。
ひとみは諦めてその場に座り込んで俯いた。

『さっきまであいつの部屋にいたハズなのに・・・』

見えない重圧は、ひとみがそれ以上言葉を発するのを許さなかった。
急に何も無いことに虚しさを覚え、
同時に孤独な自分に寂しさが立ち眥めてきた。
ひとみは俯いたままだった。
143 名前:初めての人・・・(87) 投稿日:2002年02月24日(日)18時04分56秒


どのくらい時間が経っただろうか。
周りは真っ暗なまま、ひとみを包んでいる。

『どうして何も無いの・・・』
『どうして誰もいないの・・・』
『どうして私はここに・・・』

―――――――
―――――
―――


『・・・私が望んでいたのは・・・こんな世界なのか・・・?』
『何も無くて・・・大キライな人間もいない・・・自分だけの・・・』
『・・・分からない』
『でも・・・』
『1人って寂しいな・・・』
144 名前:初めての人・・・(88) 投稿日:2002年02月24日(日)18時05分57秒


『私・・・何の為に生まれてきたんだろ・・・』
『生きてたって・・・つまらないのに・・・』
『生きてる意味なんかないのに・・・』

―――――――
―――――
―――

『私・・・このままどうなるんだろ・・・』
『もう、元の世界に戻れないのかな・・・』
『死んじゃうのかな・・・』
『ふふ・・・私にはお似合いかも・・・』
『・・・どうせ私なんか死んだって・・・』
『誰も悲しまないんだから・・・』

145 名前:初めての人・・・(89) 投稿日:2002年02月24日(日)18時07分08秒


『人間って死んだらどこ行くんだろ・・・』
『天国・・・?』
『それとも地獄?』
『・・・止めた・・・』
『考えるのめんどくさいし・・・』
『それに・・・』
『何か眠たくなってきたし・・・』

―――――――
―――――
―――


『最後に・・・』
『あいつに・・・梨華に・・・会いたかったな・・・』
『・・・・・・・・・』
『あれ・・・?』
『・・・梨華って誰だっけ?』
『・・・・・・・・・』
『分からない・・・』
『ダメだ・・・思い出せないや・・・』

『もう・・・』
『疲れちゃった――――』
146 名前:アーカス 投稿日:2002年02月24日(日)18時22分05秒
久々に更新しました・・・
が、自分でもワケがわからない展開です(汗
しかも吉澤さん、アブナイ方向に突っ走ってますし・・・

>>135 レインさん
妄想の続きは・・・
あまり期待しない方がいいと思います。

>>136 夜叉さん
実は石川さん、毎晩やってたり…(謎
>>140
正確に言うと3月の初めなんですけど・・・
精一杯頑張ります。ありがとうございました。

>>137 名無し男さん
おかげで勉強に手がつかない石なのです。(私もですが
>>141
エールありがとうございます。
受験さえ終わればこっちに専念できますので・・・

かなり遅れましたが、管理人様、ご苦労様でした。
そしてありがとうございました。
147 名前:夜叉 投稿日:2002年02月25日(月)14時47分47秒
ヨシ、キトク。スグカエレ。←ヲイヲイ(汗)。急げ!石川梨華!!

更新有難うございます。催促したみたいでごめんなさいです。
受験頑張ってくださいね。こちらはそれからでいいですよ。
148 名前:よすこ大好き読者 投稿日:2002年02月27日(水)12時57分42秒
え?吉危篤なのですか?
うーん。気になります・・・・・が、受験生様と言うことで
マターリ待っていますので、がんばってください。
149 名前:名無し男 投稿日:2002年02月27日(水)17時21分36秒
ドスタンドスカー?
一体吉澤の身に何ガ!?
木ががどー店して訳がわ化Gりえおph@pm!!!!!
150 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月23日(土)15時21分58秒
オモシロイッス
151 名前:ヨスコ記念日 投稿日:2002年04月07日(日)18時47分44秒
ハ…ハヤク更新ヲ……<バタッ
152 名前:アーカス 投稿日:2002年04月09日(火)18時25分49秒
作者です。しばらく放置しててすいませんでした。
新学期が始まったばかりで、慌しいんです。(汗
もう少し落ち着いた頃に更新したいと思ってます。
待っている方々がどのくらいいるか分かりませんが、
もうちょっとだけ、ワガママを言わせてください。悪しからず。

153 名前:名無し男 投稿日:2002年04月10日(水)09時58分08秒
あいよ!(そば屋のおっちゃん風)
154 名前:アーカス 投稿日:2002年04月14日(日)18時22分36秒
すいません、待たせました。
早速更新です。とりあえずage

えーと、吉澤視点からっす。
155 名前:初めての人・・・(90) 投稿日:2002年04月14日(日)18時26分28秒
…気が付けば、私の上半身は彼女の両腕に包まれていた。
胸に埋められた表情からは、明らかに涙が溢れていた。
“どうして泣いてるの?”私は聞けなかった。
何も言えなかった。何を言えばいいのか分からなかった。


卑怯者だよ、全く


自分のいる居場所が病室だと分かるまでに、
それほど時間はかからなかった。
自分の体のすぐ横に、呼吸器のマスクが置いてあった。
部屋は・・・彼女と二人だから多分個室であろう。
起きあがった上半身にしがみつくように、彼女はまだ泣いていた。
156 名前:初めての人・・・(91) 投稿日:2002年04月14日(日)18時27分18秒
しかし

“さっきまで真っ暗だったのに”
“何もなかったのに”
“一人ぼっちだったのに”
“どうして急に…?”


でも

これでいいんだ

ここにいるから

生きているから

彼女がいるから
157 名前:初めての人・・・(92) 投稿日:2002年04月14日(日)18時27分50秒
「…梨華」

私は弱々しく囁いて、彼女のうなじから、そっと髪をかき上げた。
彼女は俯き加減に頭を起こし、

「…お医者さん呼んで来るね」

決して私の顔を見ようとはせず、そそくさと部屋を出て行った。
入れ替わるようにして見覚えの有る金髪の女性が入ってきた。

「中澤さん…どうして…?」
「ウチのことはどうでもええ」

中澤さんは窓際に移動すると、ぼんやりと夕暮れの景色を眺め始めた。

「ちょうど七日や…」
「えっ?」

不意に発せられた声に私は戸惑った。
158 名前:初めての人・・・(93) 投稿日:2002年04月14日(日)18時28分37秒

「何のことですか?」
「率直に言えば、植物状態やったんや」
「えっ・・・」
「原因は不明なそうやけど、医者らは、意識を取り戻すのは絶対に
 有り得へん言うとった。一生をこのままで終える他ないってなぁ。 
 その間、それでもあの子は、ずっとあんたの傍におったんや・・・
 あんたが目を覚ますのを信じてたんやろうなぁ」
 
そんなこと、全然気付かなかったし、知らなかった・・・
疲れてただろうに、眠たかっただろうに
自分の身を削ってまで看病してくれたのに

私ってヤツは

“ありがとう”の一つも声をかけてやれなかった自分が情けない
159 名前:初めての人・・・(94) 投稿日:2002年04月14日(日)18時29分31秒

「昔、よう言ってたなぁ、“私は一生一人ぼっちだ”って。
 “誰も信じない、自分だけが頼り”やって。今もそう思うか?」
「・・・・・・・・・」
「いるやんけ、ちゃんとあんたのこと考えてくれるやつが。
 あんたの為に涙流してくれるやつが!あんたはもう一人やない。
 ちゃんとあの子の気持ち、受け止めてやりな」


そんなこと言わなくたって

分かってる

私には

彼女が必要なんだ

だから言わなきゃ

伝えなきゃ

ホントの気持ち
160 名前:初めての人・・・(95) 投稿日:2002年04月14日(日)18時30分42秒
コンコンとノックの音と共に、
白衣を着た女性の医師と、看護婦が何人か入ってきた。
中澤さんは彼女らに気が付くと

「じゃ、そういうことやから。ちゃんとあの子にお礼言うんやで」

軽く一礼して病室を抜けていった。
口には出さなかったが、中澤さんの目にも・・・


女医による検診は数分で終わった。
ふと気が付けば石川の姿も見えていた。
だが、やはり顔は下を向いていた。
161 名前:初めての人・・・(96) 投稿日:2002年04月14日(日)18時32分11秒
「・・・全く、驚かされましたよ。まさか一週間で覚醒するとは・・・
 ICUなんて関係ないって感じですね。しかも、自分で呼吸器を外して、
 起き上がるなんて、過去に例を見ません。奇跡ですよ。
 何十年もかかって意識を取り戻す患者さんですら、
 ごく僅かだと言うのに。植物状態だったのが嘘みたいですよ。
 患者さんさえ宜しければ、明日から再検査をしたいと思います。
 一見、元気そうですが、退院の判断は、検査の結果を待ってからで。
 ・・・とりあえず今日一日は安静にしてもらいましょう。それでは失礼」


医師たちは、大げさに話していたが、そんな実感が少しもなかった。
そんな彼女らに石川も個室の外まで出て、何度も頭を下げていた。

再び入室した彼女からは、ようやく肩の荷が下りたかのように、
“はぁ〜”と大きなため息が漏れた。

ホント、彼女には迷惑かけちゃったな・・・
162 名前:初めての人・・・(97) 投稿日:2002年04月14日(日)18時33分22秒
不意に目が合い、気まずい雰囲気が辺りに漂う。
彼女は一歩も動かず、ただ私の目をじっと見つめていた。
その潤んだ瞳が逆に私の不安を募らせ、沈黙に耐えきれなかった。
私はずっと起こしっぱなしだった上半身を、ベッドに投じ、
仰向けになり、布団を覆った。

「あ、あのさ・・・、その・・・ずっと傍にいて・・・くれたんだって?」

ただ首を縦に振って頷く彼女。
そして、ベッドのすぐ横にある椅子、
私の手が十分に届くそこに、そっと腰を下ろした。

「そ、その・・・何て言うか・・・あ、ありが・・・」
「・・・私ね」

ようやく聞けた彼女の声は、
今にも消えてしまいそうで震えていた。
163 名前:初めての人・・・(98) 投稿日:2002年04月14日(日)18時34分16秒
「私、・・・ひとみちゃんが目を覚ましてくれるって、
 信じてたんだよぉ・・・ずっと・・・」
「・・・・・・・・・」
「だから、絶対に泣かないって決めてたのに・・・
 ・・・なのに、いざひとみちゃんが目を開けたら・・・」

それ以上、彼女の言葉は続かなかった。
私は彼女の頬にそっと右手を当て、親指で溜まった涙を拭った。

先程の医師の言葉を思い出す。

“奇跡ですよ”

もしも、私が目を覚まさなかったら、このまま一生を終えていたら・・・
明らかに彼女を不幸にしてしまっていたはずだ
彼女の気持ちを裏切っていたはずだ


「顔色が悪い・・・、少し痩せたんじゃない?」

彼女は静かに首を横に振り、私の右手に自分の左手を重ね、涙を流し続けた。

「ありがとう・・・、梨華」
164 名前:初めての人・・・(99) 投稿日:2002年04月14日(日)18時34分54秒
その後、泣き止んだ彼女は優しい眼差しをして、
自分のことを私に話し始めた。
中澤さんにもらった資料に書かれていたことばかりだったが、
何もかもが新鮮で、初めて彼女の顔を知った気がした。
いや、正確にはまだ知り始めたばかりである。

もっと彼女を知りたい

そんな衝動に駆けられるが
彼女の甘い声は まるで子守唄のように
私の耳に収まっていく

いつしか私は 虚ろな目を閉じて
寝息を立てていた


しっかりと彼女の手を握りながら
165 名前:アーカス 投稿日:2002年04月14日(日)18時46分43秒
>>155-164
更新です。
しかし、両役者が揃うまでにこんなに時間がかかるとは(汗
そもそも、すれ立てたの、去年の12月だし・・・
早く終わらせなきゃマズイなぁ

>>147 夜叉さん
危篤じゃなくてスマソ。でも、結構似てるかも。

>>148 よすこ大好き読者さん
受験生ではなくなりましたが、忙しいです。はい。
でも頑張って更新しますよ。

>>149 名無し男さん
気が動転してたのは、どうやら私の方で。(w

>>150 名無し読者さん
初めての方ですよね。
こんな駄にレスいただけると、すごく励みになります。

>>151 ヨスコ記念日さん
随分と待たせて、申し訳。
でも、その割にはたいしたことないかも。
166 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年04月16日(火)18時58分20秒
待ってましたよ!
吉が目を覚ましてよかったです。
これからどうなるか?マターリ待っています。
がんがってください。
167 名前:名無し男 投稿日:2002年04月18日(木)18時57分05秒
一途さが起こした奇跡に感動したパキスタン人が約700人
168 名前:夜叉 投稿日:2002年05月01日(水)00時24分38秒
意識が戻って良かった…。
吉の気持ちも少しは開けてくるかな…。
169 名前:くわばら。 投稿日:2002年05月08日(水)02時34分46秒
待ちましょう。自分。
170 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月21日(日)15時43分05秒
作者さん頑張ってください
171 名前:初めての人・・・(100) 投稿日:2002年07月22日(月)16時34分00秒
「じゃあ、明日には退院出来るんだ?」

梨華は着ていたコートをハンガーにかけながら言う。

「だってさ」
「やったね、ひとみちゃん!」

お気に入りなのって言っていたピンクのマフラーを棚に放り投げ、
いつものように傍にある椅子に座る。

私より喜んでいる・・・
当たり前だよね
ずっと心配してくれていたんだから

今日は彼女の学校の終業式で、半日もかからず、
帰りに直接ここへ来たそうだ。


一般病棟に移って二日目の朝、回診の時に聞いた話。
これで長いようで短かった入院生活にさよならできる。
そして・・・

もう彼女に心配も苦労もかけることはないんだ

“私の世話”という枷から解放され
今までと同じ生活に戻ることができる。
172 名前:初めての人・・・(101) 投稿日:2002年07月22日(月)16時35分04秒
「あっ・・・ちょっと待っててね」

フフっと微笑み、彼女はそっと病室を抜け出した。
私は窓際の壁にかけられている時計をチラッと覗いてみる。
案の定、時計の針は両方とも天井を指していた。

「じゃんじゃじゃーん!今日の昼食はビーフシチューだよぉ」
 
食事を運ぶ運搬車のガタンガタンという音。
そして、私にとってあまり聞きたくない断末魔の叫び声・・・
 
「はい、あーんしてはぁとはぁと」
「・・・・・・・・・」

ついつい、はぁ〜っと大きな溜息が漏れる。
どうしても彼女は、私を子供扱いしたいようだ。
絶対に嫌!という訳でもないのだが、その、何と言うか・・・

「どうしたの?照れなくてもいいのに」
「ば、ばか!・・・そんなんじゃないよ」 
「ひとみちゃんったらかわいい〜はあとはあと
「もう!からかうなっつーの!」

なんだかんだ言いながらも、照れ隠しに目を閉じてから口を開け、
彼女が口元にスプーンを運んでくれるのを待つ。
173 名前:初めての人・・・(102) 投稿日:2002年07月22日(月)16時35分49秒
・・・思えばこの数日の間、ずっと彼女のペースに圧され気味だ。
だけど、梨華の笑顔に、自然と口元が緩む自分がそこにいる。
彼女と一緒にいると、心が落ち着くのもまた事実であった。

私にとって特別な存在・・・


「なにマヌケな顔してるの?」
「えっ!?」

予想外の返答に驚き目を開けると、ニヤつく彼女。
ようやく自分の立たされている状況に気が付く。

「なーんだ、やっぱり食べさせて欲しいじゃん。
 ふふ、素直じゃないんだから」
「・・・不器用なんだよ、悪いか!」

それ以上、彼女を見ることが出来ず、
咄嗟に布団に潜り込んだ。
それでも頭に浮かぶのは・・・


そんな甘い目で見られると胸が苦しくなるんだよ
174 名前:初めての人・・・(103) 投稿日:2002年07月22日(月)16時36分32秒
「もしかしてぇ・・・照れてるのぉ?ひとみちゃん、かわい〜い!」
「かわいいって言うな!」


結局、主導権を握っている彼女に敵うはずがなく、
大人しく昼食を食べさせられたのだった。
そのときの自分の顔がどれほど赤かったのか、
言うまでもなかっただろう・・・


「ねぇ、顔赤いよ?」
「飯が辛かっただけだよ!」
「フフ、・・・意地っ張りなんだから」

175 名前:アーカス 投稿日:2002年07月22日(月)16時51分09秒
3ヶ月近くも放置していて、誠に申し訳ありませんでした。
何人の方がコレを読んで下さっているのかは、
全然分かりませんが、不快感を与えてしまったのは事実です。
本当にごめんなさいでした。

先日から夏休みに入りました。
補習が毎日のようにありますが、
今までよりは時間に余裕がありますので、
少しはまともな更新が出来るはずです。
もう少しの間、温かな心で見守ってくださればと思います。
176 名前:名無し男 投稿日:2002年07月28日(日)17時31分12秒
ガムバリンサイヨー
マターリマットルカラー
177 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月09日(水)19時27分11秒
いつまでも待つのでがんがって下さい。
178 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年10月10日(木)11時10分02秒
「連載中」フォルダに登録しておきますた。

続き待ってま〜す。
179 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月01日(金)14時32分35秒
保全
180 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月25日(月)21時30分12秒
( ´ D`)ノ保全れす
181 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月19日(木)14時40分33秒
復活きぼん
182 名前:初めての人・・・ 投稿日:2002年12月21日(土)22時22分13秒

「もうすぐクリスマスだね」
「・・・・・・」
「サンタさん来てくれるかなぁ」

梨華の考え方は実に幼稚だと思う。
サンタなんているわけないじゃんか。
なんて口には出せない。

「わたし、メイドさん以外の人と過ごすの初めて」
「両親は?」
「いっつも向こうからカード送ってくるだけ」
「淋しくない?」
「別に、・・・慣れちゃった」

強がってる。
いつも高い声のトーンが少し落ちた。
本当に酷い親だな。
ま、捨てられた私が言えることじゃないけど。

「かわりにって言うとなんだけど」
「ん?」
「ひとみちゃんとのクリスマス、すっごい楽しみにしてるから」
「ハハ・・・」
「じゃあ、また明日ネ」
「ああ」
183 名前:初めての人・・・ 投稿日:2002年12月21日(土)22時23分25秒
あれから一年の月日が流れた。
私たちはこの一年ずっと一緒に過ごしてきた。
多分、いやこれからも一緒。
どんなに辛いことがあろうとも、
二人で乗り越えると約束を交わした。

そういえば、去年の今頃は入院してたんだっけ。
クリスマスも私のせいで台無しだった。
振り返ってみれば・・・
退院後も随分と彼女にも迷惑を掛けた。
何個ありがとうのコトバを並べても足りない。

だから、私は決めた。

今年のクリスマスこそは梨華に喜んでもらおう、
今までで一番のクリスマスにしよう、
心から『幸せだ』って感じてもらおう、と。


“ひとみちゃん”

私を慕ってくれる、その愛しい声を、彼女を、浮かべて私は帰路についた。

184 名前:アーカス 投稿日:2002年12月21日(土)22時24分41秒
正直、自分が情けなくてしょうがない。
言い訳は見苦しいので止めておきます。

だけど、1つだけ。
事情により当初予定していた
エンディングまで書けなくなりました。
なので、25日。
今までと多少変わった設定になりますが、
クリスマスに完結するように書き換えます。
25日まで毎日少しづつ更新して行きたいと思います。
幾度の放置、さらに作者のわがまま。
こんな性もない私の作品を楽しみに待っててくださった方々。
申し訳ありません。
私は最低です。クズです。
本当にごめんなさい。
185 名前:初めての人・・・ 投稿日:2002年12月22日(日)23時09分34秒
高三になった梨華は、もうすぐ短大の受験を控えている。
認めたくないが、一月の彼女の誕生日には遊んでいる暇はない。
だからこそ今年のクリスマスは大事にしたい。

「おい、アンちゃん、それこっちに運んでくれ」
「ハイヨ」

私は数ヶ月前からバイトを始めた。
いつまでも梨華や中澤さんに頼っていてはいけない。
自分から変わろうとしなければ何も意味がない。
そう思った。

「んじゃあ、これ今月分」
「すんません、親方。無理言って早めに頂いて」

どうにか人並みには言葉を交わせるようにもなった。
だけど人間って存在をまだまだ好きになれそうにはない。
そんな私に梨華は、
『そんなんじゃ生きていけないよ』なんて。
思わず口元が緩む。
まったく、大袈裟だっつーの。
186 名前:初めての人・・・ 投稿日:2002年12月22日(日)23時11分17秒
身支度を済ませ、携帯の新着メールを開く。
読まなくたって分かるような内容なのに、
送信者の名前を見るとついついオープンしてしまう。

『もうすぐ学校終わるか
 ら迎えに来てね。はや
 くひとみちゃんに会い
 たいな♪   梨華 』

甘え過ぎではないかと少々、対応に困る。
それでも慣れというものは恐ろしい。
こんな文章でも、届かないと寂しいのである。

“今行くから”

本当はしゃれたコトバの一つでも送ってやりたい。
梨華のように自分の気持ちをストレートに表現できたら、
どんなに楽なことだろうか。
不器用な自分がもどかしくてしょうがない。
187 名前:初めての人・・・ 投稿日:2002年12月22日(日)23時13分00秒

 好き

たった二文字で彼女は毎日のように私を満たしてくれる。
しかし、自分はどうだろうか。
面と向かって言ったことなんて一度もない。
彼女はそんな私に何を想うのだろうか。
私なんかと一緒に居てもいいのか。

何だか急に悔しくなった。
情けなくなった。
私は走った。
ただただ、がむしゃらに。
私は走った。
愛してやまない彼女の元へ。

視界には手を振る彼女が小さく映える。
だんだんと大きくなっていくそれと、
もう目の前という距離まできたとき・・・

私はこれ以上にないくらい、
強く、深く、彼女を抱きしめていた。

「ちょっとぉ、周りに人が・・・」
「関係ないよ」

鼻に少しかかる柔らかい彼女の髪。
甘く切ない声が飢えた私を潤す。
もう彼女しか見えない。
彼女のことしか考えられない。


次第に梨華の手の温もりを背中に感じる。
その華奢な身体のどこにこんな強い力が。
負けずと彼女を抱く腕に力が入る。
188 名前:初めての人・・・ 投稿日:2002年12月22日(日)23時14分05秒


「おかえり」




「ただいま、ひとみちゃん」







クリスマスまで後二日―――――

189 名前:アーカス 投稿日:2002年12月22日(日)23時15分48秒
今夜分更新終了です。
残り三日、頑張ります。
190 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月23日(月)13時20分48秒
再開してたのですね。嬉しいです。
あと少しの更新頑張って下さい!
191 名前:初めての人 投稿日:2002年12月23日(月)23時17分52秒

23日。


明日のイブの夜は梨華の家でディナーを兼ねたパーティ。
(招待されたのは私と中澤さんだけで、
 残りの参加者はメイドの数人ぐらいらしいが)
25日は当日の雰囲気に任せることにした。



今日も補習だった梨華を迎えに行き、
適当に街中を歩き時間を潰した。
他愛もない会話はいつになく弾み、
時間が経つのを忘れるほど、
私たちは微笑みを絶やさなかった。

なんとか門限の8時までに彼女を送り、
閉店後の少し冷めた湯船で余韻に浸った。
192 名前:初めての人 投稿日:2002年12月23日(月)23時21分37秒

きっと矢口さんと何か良いことでも在ったのだろう。

先ほどから中澤さんは携帯画面を見つめながら、
ニヤニヤと笑みを浮かべている。
それの表情がとても不気味に思えた、
というのは口が裂けても言えるわけない。

193 名前:初めての人 投稿日:2002年12月23日(月)23時22分33秒
時計の針は11時半を回ろうとしている。

部屋の掃除を簡単に済ませ、特にすることもなくなった。
ベッドの上に大の字に寝転がる。
明日、明後日はとても大切な日。
自然と気持ちは落ち着いていた。

私は前から抱いていたある決意を、

“おやすみ”

4文字に込めて彼女に送った。


数分もせずに返信が届く。
内容なんて読まなくてもわかる。
彼女は至って単純だから。


そして眠りに就いた。
194 名前:アーカス 投稿日:2002年12月23日(月)23時27分54秒
今夜はここまで。
スレの使い方(切り方)も下手で
つくづく嫌になります。

それから188の最後の行。
大した差支えはないんですが、後三日の間違いで。

>>190 名無し読者さま
ご迷惑をおかけしました。
そしてどうもありがとうございます。
195 名前:名無し冬のセーター 投稿日:2002年12月24日(火)00時31分52秒
残り僅か、頑張ってください。
ずっと読んでた者より。
196 名前:初めての人・・・ 投稿日:2002年12月25日(水)01時18分36秒

にぎやかで、楽しかった(?)
パーティーもそろそろお開きのようで。
何人かのメイドがせっせと後片付けを始めた。

中澤さんは、未成年にも関わらず矢口さんに酒を勧め、
ベロンベロンに酔わせて相変わらずニヤニヤしていた。
私の視線に気づいたのか、中澤さんはウインクをこちらに返す。
不意に今朝の話を思い出した。
197 名前:アーカス 投稿日:2002年12月25日(水)01時19分16秒
「なあ、あんたら夜どないするん」

「夜って・・・別に何もしませんよ」

「あかんなぁ。今日はイブやで、イ・ブ!
 べっぴんさんな彼女おるのに何もせんわけないやろ。
 ほれ、恥ずかしがらんと言うてみ」

「・・・・・・」

「しゃーない、裕ちゃんがアドバイスしたろ。ええか、
 酒飲ませたら勢いに任せてまえば、後は簡単やで」

「・・・何の話ですか」

「もう、分かってるくせに。いけずなヤツやなぁ」

「勝手にしてください」
 
「でなぁ、酔った矢口の可愛さ言うたら、もう堪らんでぇ。
 今日はここがうちらの愛の巣やから、帰ってこんでええよ」

「結局のろけ話ですか・・・」

「吉澤ぁ、チューはええでぇ」
198 名前:初めての人・・・ 投稿日:2002年12月25日(水)01時20分00秒
一方、私らはと言うと・・・
 
「保田さんって、彼氏いないのぉ?」
「いませんよーだ」
「らってオバチャンだもんねぇ〜」

呂律が回らないほど、すっかり出来上がってるねお2人さん。
って言うか、未成年に酒なんか飲ませんなよ!

「たすけてぇ〜。ケメコがキスするぅ」
「待ちなさい、このお転婆ッ!」

追われている梨華は咄嗟に私の胸に抱きついた。
毎日のように抱きしめている感触なのに、今日は何かが違った。
『酒飲ませたら勢いに任せて―――――』
不意にあのコトバが頭の中でリフレインする。

「ひとみちゃ〜ん、しゅきぃ」

今日の梨華・・・酔っているせいか色っぽい。
それに唇がいつになく艶やかで・・・

心臓の音が梨華に聞こえてしまうのではないかと思うほど、
私の興奮は最高潮に達しようとしている。
199 名前:初めての人・・・ 投稿日:2002年12月25日(水)01時21分04秒
ダメだ、我慢なんかできそうにない。
中澤さんが変なこと吹き込むからだ。
そうだ、私が変なのは中澤さんのせいだ。
全て中澤さんが悪い!ホント恨むよ・・・

「ひとみちゃん?」

ヤメテ。
今の私にとって彼女の甘い声ほど毒なものはない。
誰かタスケテ。
このままじゃ私、・・・死んじゃうかも。

「吉澤ぁ!お嬢様に手ぇ出すなんて十年早いわ!
 ちょっとこっち来て酒の相手しなさいッ!」

この瞬間、保田さんが天使に見えた。
私は未だに抱きついている梨華をそっと離して

「部屋で待ってて、すぐ行くから」

彼女は軽く頷くと、ふらふらとした足取りで
自分の部屋に戻って行った。
はぁっと、ため息が自然に漏れる。
保田さん、本当に恩にきります。
200 名前:初めての人・・・ 投稿日:2002年12月25日(水)01時21分38秒
地獄だった。
保田さんの愚痴は予想をはるかに超えて、
一時間があっという間に過ぎてしまった。
何とか隙を見抜いて逃げ出した私は、
梨華が機嫌を悪くしていないか心配で、
すぐさま彼女の部屋に向かった。

少し走ったぐらいなのに体がとても熱い。
保田さんに飲まされた酒のせいだろうか・・・

軽くノックをして彼女の名前を呼んでみる。
返事は返ってこなかった。
私は諦めて、そっと部屋に入った。

部屋の中は暗かった。
ベッドの傍のスタンドライトだけが唯一の明かり。
寝むってしまったのだろうか。
そっと近づいてみる。
その小さな口元からは規則正しい寝息。
私はしばらく可愛い寝顔を見つめていた。
201 名前:初めての人・・・ 投稿日:2002年12月25日(水)01時22分09秒
『吉澤ぁ、チューはええでぇ』

まただ。
どうしても中澤さんの言葉が耳から消えてくれない。
別に初めてなわけじゃないんだ。
ちょっとぐらいならイイよね?
ついに私の心は折れた。
ベッドの上で四つん這いになり、

絶対起きるなよ

そう強く願って梨華の唇にそっと重ねる。
ほんの一瞬の触れ合いが私にはとても長く感じた。

やわらかい

率直な感想。
私は自分の唇を指で触った、後からくる余韻を味わっていた。
そんな時だった。
202 名前:初めての人・・・ 投稿日:2002年12月25日(水)01時22分45秒
「ひとみちゃん?」

寝ていたハズの梨華と目が合ってしまった。
しまった。
私は奈落の底に突き落とされたような強いショック受けた。
既に頭の中はショートしてパニックに陥っている。

「ご、ごめん・・・何だか酒で酔っちゃってて。その、つい・・・」

やっとのことで出た言葉がこれ。
めちゃくちゃカッコワルイ。
反応が怖くて、もう梨華の顔が見れなかった。

彼女は私の首に腕を回し、ぐいっと引き寄せる。
それにより私たちの距離は目の前となり、

「お酒のせいにしないでよ、意気地なし」

梨華はキスをしてきた。
私の中で何かがプツンと切れた。
結果、私は彼女の唇を何度も貪った。
理性を失い、本能だけが私を生かす。
甲高く喘ぐ声は私をさらにエスカレートさせる。
203 名前:初めての人・・・ 投稿日:2002年12月25日(水)01時23分37秒


めちゃくちゃにしたい

私の意識すら支配するウイルス。
もう誰にもトメラレナイ


汗ばんだ熱気が辺りに漂うのに、
それほど時間は掛からなかった。
204 名前:アーカス 投稿日:2002年12月25日(水)01時30分33秒
やってしまつた。25日になるまでに更新したかったのに。
ということで24日分、終了です。
えっと、作者が未成年なだけに、この続きは自粛させていただきます。
期待していた方、ごめんなさい。

後、微妙にやぐちゅーなのは、昨日のHEY×3で
「おし○こ」と叫んで飯に叩かれた知が可愛かったからです。(w


>>195 名無し冬のセーターさん
応援ありがとうございます。
24、25と小説書くぐらいしか予定のない、
私の心が少し暖まりました。(爆

明日でラストの予定です。
無事完結するのかなぁ。
205 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月14日(火)14時36分10秒
頑張ってください。
206 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月16日(日)15時59分55秒
保全
207 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月13日(木)14時46分36秒
保全
208 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月04日(金)15時08分49秒
復活してください。
209 名前:初めての人・・・ 投稿日:2003年04月12日(土)02時06分09秒

時が経つのは早いもので。
一線を越えたあの日から既に3ヶ月。
210 名前:初めての人・・・ 投稿日:2003年04月12日(土)02時06分48秒

不意に目が覚めた。
あたしのすぐ横には愛しい彼女。
211 名前:初めての人・・・ 投稿日:2003年04月12日(土)02時07分24秒


「一緒に暮らさないか」


あの夜。
コトが終わって、ようやく呼吸が落ち着いてきたときだったかな。
彼女は真剣な眼差しであたしを捕らえた。
とても優しい目をしていた。

あたしは今でも忘れないし、忘れたくない。
何をかって?
それは初めて出会ったときのこと。
あたしを睨みつけた彼女の目。
鋭くて冷たくて、はっきり言ってあたし、すごく怖かったんだよ。

でも今は違うよ。
綺麗に澄んでいて、まるで宝石のよう・・・ってのは行き過ぎかも。
まぁ、でもそんな感じ。

ねぇ、あなたは自分が変わっていることに気が付いてる?
自分の瞳が優しくなったこと、気付いてる?

あたしはとても気に入ってるんだ、艶のある煌びやかなその黒を。
212 名前:初めての人・・・ 投稿日:2003年04月12日(土)02時08分19秒

あたしは名前を呼ばれるまで、彼女に魅入っていた。
どうやら彼女は返事がないので心配になったらしい。
あ、そう言えばと、思い出した。
もちろんあたしは喜んでオーケーした。
だって好きな人と一緒に暮らせることって、とても幸せなことだと思うから。

ふんわりと笑った彼女は、再びあたしを抱きしめる。
彼女の温かい腕の中はこの上なく心地良いもので。
2人の時間を大切にして生きたいと身をもって感じていた。


だからって2ラウンド目に突入することはないでしょうが。
その後まさにあたしは、身をもって“ 感じ ” てしまったのだった。
213 名前:初めての人・・・ 投稿日:2003年04月12日(土)02時09分31秒

そんなわけであたしたちはアパートの一室で2人暮し(仮)を始めた。
なぜ、(仮) かと言うと、2人の力のみではないからである。
要するに彼女のバイト代だけでは生活できていないってこと。

2人暮しを決めたあたしたちに、立ちはだかったのは金銭問題だった。
それは初めから無理だと分かっていた。
だからあたしは言った。
そんなお金ぐらいあたしの方でどうにでもなるよ?
だけど彼女は首を横に振って、それじゃあ意味がない、と。
それでもあたしは、すぐにでも2人だけの空間が欲しくて。
ワガママ言ってるうちに泣いちゃって、彼女をうんと困らせてしまった。
狙っていたわけではないのだけれど、彼女はとうとう折れた。
ちょっと悪かったかなって思う。

結局彼女は、一生働いて返します、と結論を出した。
最後まであたしは、そんなことしなくても・・・、と言っていた。

「いや、ケジメだから」

素直にカッコイイと思った。尊敬した。
早く(仮)が取れる日が来るといいな。
214 名前:初めての人・・・ 投稿日:2003年04月12日(土)02時10分45秒

あたしたちの家っていうか部屋にはTVがない。
TVがなくったって、あたしたちにはお話しだけで十分。
はっきり言って必要がないのだ。
在るのは必要最小限の家具やインテリアぐらい。
初めての手当で買ったのは洒落たフロアーベッド。
もちろんダブルで。
あたしの趣味でピンクだらけにした部屋に彼女は文句を言う。
けれども、今日も彼女はそのピンクのベッドですやすや眠っている。
凛とした彼女の表情はカッコイイよくて何処か可愛らしい。

そうよ、あたしのひとみちゃんはカッコかわいいのだぁ。



あたしはひとみちゃんを起こさないようにそっと布団から出た。
どうやら眠気がどこかへ行ってしまったようだ。
キッチンでお水を飲み乾いた喉を潤す。
だけど何か物足りない。
お水じゃ何も満たされない。
あたしは急に泣きたくなった。
理由は分かんない。
でも、声を出すとバイトで疲れてるひとみちゃんを起こしてしまうかもしれない。
だから声を押し殺して泣いた。
215 名前:初めての人・・・ 投稿日:2003年04月12日(土)02時12分45秒

しゃくりあがる声を必死に抑えながら、あたしは再び布団に潜り込んだ。
意味がないだろうけど、少しでも声が届かないようにとひとみちゃんに背を向けた。
多分2人で寝るようになってから初めてだったと思う。
ひっく、ひっく。
どうしよう、止まんないよぅ。

「んー・・・どうした?」

背中越しに眠そうな声が聞こえた。
結局起こしてしまったのだ。
あたしってほんとメーワクな女だなって自己嫌悪。

「ううん、何でもないよ・・・」

せめてもの強がり。かっこわるいよね。

「ほれ」

ひとみちゃんは片腕を差し出して誘う。
うでまくら。
あたしはゴメンね、ゴメンね、とその行為に甘えた。
必然的に余ったもう一方の腕を腰に回し、あたしをそっと引き寄せる。
そして軽く口付けを交わす。
216 名前:初めての人・・・ 投稿日:2003年04月12日(土)02時14分08秒

「大丈夫」

ひとみちゃんはそれ以上語らなかった。
でもあたしにはそれだけで十分。
物足りないあたしを満たしてくれる。潤してくれる。
大切な人。


今でもあたしたちの時間はゆっくりと流れています。






終わり
217 名前:アーカス 投稿日:2003年04月12日(土)02時27分31秒
作風が最初と最後で全然違って、違和感があるかもしれません。
当時厨房だった私が、興味半分で後先考えず、書きなぐった結果がこれです。
これに懲りて、もう小説なんて書きません。
ホントは書き込み終わったら、速攻で消えるつもりでした。
でも、保全してくださった方に一言お礼が言いたかったので。
更新を気長に待っていて下さった方、本当にありがとうございました。
心温かいレスをどーもでした。さようなり。
218 名前:毎日読者 投稿日:2003年04月12日(土)21時58分21秒
お疲れ様でした。
219 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月16日(金)15時05分18秒
保全
220 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月18日(水)01時31分34秒
ホ是mm。
221 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月18日(金)01時03分16秒
ほぜん

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