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科学と世界観

1 名前:インターフェロン 投稿日:2001年12月23日(日)16時14分11秒
試しに書いてみます。
もし、いしよし以外を希望する方は読まない方がいいかもしれません。
2 名前:インターフェロン 投稿日:2001年12月23日(日)16時17分11秒
#1

仕事帰りの電車の中で、浅い眠りから目覚めようとした瞬間、こんな言葉が思い出された。
『その時代、科学は恐ろしいほどの速さでめざましい発展を遂げた。
そのおかげで今の我々が存在するといっても過言ではないし、例えば鉄腕アトムのような、昔の人々が夢見た世界まで、今やそう遠くはない。
そして未だ解明されない不可解な現象、つまり幽霊だとかUFOといったものでさえも、科学によってのみ、それが一体何であるかわかるだろう』

確か、学校の英語の補習で見たような文章。担当講師のいまいましい声が耳の奥で響く。
…バカバカしいと思う。科学のことは科学者に任せればいい。そこまで私たちが科学を理解してどうするというのだ。
確かに科学で生活が楽なのはありがたいけど。
それに。私は自慢じゃないが、幼い頃からヘンな物を見てきた。
空をビュンビュン飛ぶ光の束だって見たし、肝試しで行ったどこぞのお墓でだって聞こえないはずの声を幾度も聞いた。
そんなのを見るのはいつも唯一私だけだから、信じてくれといくら周囲に言っても、到底無理な話だ。
人間が証明しようもない現象を、人間の創った科学でどう解明しようというのだろう。
所詮、科学の信じどころは生活の便利さでしょ。私は科学なんて大して信じない。

3 名前:インターフェロン 投稿日:2001年12月23日(日)16時18分58秒
吉澤ひとみ、17歳。現在は高校2年生。あ、今は3月だからもうちょいで3年生か。
そして、人気絶頂のモーニング娘。の第4期メンバー。
っつうか誰に自己紹介なんてしてんだよ…。ヒトリゴトにしても度が過ぎてる。
いよいよおかしくなったかな。
あのヒト――私が愛した、たった一人――が一緒に第4期メンバーとして加入したモーニング娘。を脱退したから…?

…“石川梨華”…。
お互いに何となく好きだってわかってた。
一緒にいると落ち着いたし、相性はそれなりにバッチリだったんじゃないかな。周囲も公認でさ。
彼女は私の全てだった。未来さえ、彼女になら捧げてもよかった。
自分でもあれほど人を愛したことはないと思う。そしてこれからも彼女のように人を愛することはない、とも思う。

4 名前:インターフェロン 投稿日:2001年12月23日(日)16時20分05秒
軽々しく口にしてはいけない単語なんだろうけど、『運命』だと確かに感じた。
おそらく、彼女も私と同じように、私が『運命』だと感じたはずだ。
まぁ、言うのもアレなんだけど、肉体関係もなかったわけじゃない。
秘密なんてものはもってのほか。つくろうもんなら、隠す暇もなくすぐに相手にバレてしまう。そんな間柄だったのに。
なのに、梨華は突然脱退した。私に相談しないで。理由は、『勉強がしたいから』だった。
彼女は高校へは進学しなかった。
正確に言うと、高校入学とモーニング娘。加入とを天秤に掛けた結果、梨華が選んだのは芸能界への一歩だった(私なんかは欲張りだから両方取ったけど)。
何故、彼女は私に何も言わなかったのか。ずっと一緒にいたんだし、相談できるチャンスはいくらでもあったはずだ。
私は梨華の恋人だと思ってたから…相談して、ほしかったのに…。
5 名前:インターフェロン 投稿日:2001年12月23日(日)16時21分18秒
そんな風に梨華を責めたって仕方がないってこと。自分が一番承知してるはずなのに。
まだこんなことを、ぐちゃぐちゃと蒸し返すなんて。
「…何で勝手に決めちゃったの!?何も言ってくれないなんて酷いよ!!」
彼女の部屋で。声を張り上げた。
「あの、ごめんね…よっすぃーに相談…しなくて…それは、悪いことしたなって…思ってる…」
私を見づらそうに、消え入りそうに言った。私はその時、泣きそうな彼女を真正面から凝視していた。
「私は梨華ちゃんの何だったわけ…?相談も必要ない、ただのメンバーだったの!?ねぇっ!!」
「やっ…大きな声…出さないで…」
苛立って出した大声に、彼女は怯えた。
左手を左耳にそっと添えて俯く様子が、あの時は腹立たしく思えた。私は彼女の小刻みに震える肩を揺さぶる。
「理由を言ってよ!!何で娘。を辞めるのか、わかるように説明してよ!!」
「だからっ…勉強したいから…」
6 名前:インターフェロン 投稿日:2001年12月23日(日)16時22分34秒
「…っ…そればっかりじゃん!!!」
掴んでいた彼女の肩を、多少は手加減しながら突き飛ばした。彼女は抵抗なく横向きに倒れた。
「あれだけ私のことが大事だよって…ずっと一緒にいようねって…言ったよね?
娘。辞めちゃったら、ほとんど一緒にいられないんだよ…その言葉は嘘になるんだよ!!
それとも私への気持ちはいい加減だったの!?そうじゃなきゃこんなこと…!!」
梨華を見下ろしながら吐いた、めちゃくちゃな言葉。一体何に対して、私は嫉妬していたのだろう。
彼女が私よりも勉強をとったこと?私のいた世界よりも、他のものに目を向けたこと?
駄々をこねる、わがままな子供と同じ。軽く息を荒げる私に向かって、彼女はこう言った。
「…もう…あなたの傍には…居させてもらえないの…?」
傷つけた。人一倍、他人の言葉には敏感な彼女を。
しまったと思い、私は彼女を抱き起こした。彼女の体は、異常なほど軽く感じられた。
横に流れた涙の跡が胸に刺さる。私は彼女を壊さないように抱きしめた。
7 名前:インターフェロン 投稿日:2001年12月23日(日)16時23分29秒
「ごめん…言い過ぎた…」
他人を責める時、人は大きな声を出すものなのに、謝る時に小声なのはどうしてだろう。
彼女はかすかに首を横に振ったけど、きっと心の奥底にできた傷の痛さに声も出せなかったのだと思う。
私はただ彼女を責めたいだけだったのかもしれない。私だけに、脱退の真相を教えてもらいたかったのだ。
そして外界と私たちを隔てる、彼女と私だけの“秘密”という壁を作りたかっただけだ。自己満足に過ぎなかったんだ。
今更ながらにそれを思い知った。自分で自分を殴り殺したいくらい。
8 名前:インターフェロン 投稿日:2001年12月23日(日)16時35分36秒
眠たさに未だ悲鳴を上げるまぶたをこじ開け、疲れに浸りきった重いからだを動かして、電車を降りた。
春が近いとはいえ、雨が降ると夜はぐっと冷える。
改札を出て傘をさし、大した距離もない自宅までのろのろと歩く。
私のつまらない傲慢さから引き起こした喧嘩――至極一方的なものだったけど――のせいで、彼女とはぎこちなくなっていた。
メールにしろ電話にしろ、いまいち会話が弾まない。当然と言われれば当然のことだ。
そのうち彼女はモーニング娘。を脱退した。余計に話しづらくなった。お互いに避けているようにも思えた。
私の空元気を総動員した会話だって、彼女の不自然さに消されてしまう。
やはり私は彼女の部屋を訪れた。傍に居ないと彼女と別れてしまいそうで、怖かった。
9 名前:インターフェロン 投稿日:2001年12月23日(日)16時45分07秒
「…どう?元気してる?勉強、頑張ってる?」
ソファーにゆっくり腰を落ち着けると、そう訊いた。
「どうって…昨日もメールしたじゃない」
その響きは何だか、彼女が『別に来なくてもよかったのに』と言っているようだった。
沈黙が作り出した、単なる私の思い込みかもしれないけど、少なくともあの時の私にはそう感じられた。
「あの…っ」
ゆるりとかかった暖房の音だけが支配していた静寂を、無残にも切り裂いたのは私。
何となく組んだ指を見つめながら。
「梨華ちゃんと会えなかった間、ずっと考えてたんだ…」
梨華は俯いたまま。相槌さえも打たなかった。
「もしかしたら…梨華ちゃん、そのうちに私と別れようって言うのかなって…」
「そんなっ…」
顔をふっと上げて、私を見た。いつも見慣れている、ちょっと困ったような顔。
10 名前:インターフェロン 投稿日:2001年12月23日(日)16時48分35秒
すいません、支離滅裂な二人のケンカになっております。
わっかんないんスよ、恋人同士のケンカって(藁
そして現在と過去が入り混じってるのでわかりづらいかもしれませぬ。
そこらへんはご勘弁を…。
11 名前:インターフェロン 投稿日:2001年12月23日(日)16時53分32秒
「確かによっすぃーとは気まずいなって…別れようとか言われるかもって思ってた…でも…」
「でも?」
「あたしはよっすぃーが好きなの」
「梨華…ちゃん…」
好きという言葉は、私の耳を通って脳に届き、全身の神経を痺れさせた。
未だかつて、こんな痺れを経験したことはない。
「気まずいのは今までに何度もあったし、あたしたちはこんな事…て言うのも何だけど、離れちゃいけないんだって…信じてる」
「私も…梨華ちゃんが好き!!」
言うが早いか、私は彼女を抱きしめた。腕の中で、彼女が柔らかく微笑んだのがわかった。しかし。
「…!!」
「どしたの?梨華ちゃ…」
「ごめ…よっすぃーちょっとごめん!!」
彼女は私の腕をほどき、口元を押さえて洗面所に向かった。私は心配で後を追う。
「梨華ちゃん!大丈夫!?」
大丈夫なわきゃないだろう…私は焦る一方で自分に突っ込んだ。
梨華は苦しそうに咳込み、吐いていた。当時の私はわけもわからず、彼女の背中をさすっていた。
なにぶん、子供だったもんで。
12 名前:インターフェロン 投稿日:2001年12月23日(日)16時54分30秒
やけに時間がかかったような気がするけれど、とにかくマンションに着いた。
郵便箱には、事務所から届いた茶封筒一通のみ。エレベーターに乗り込むと、隔離された空間が懐かしかった。
梨華との仲直りから数日して、私はたまたま仕事場でテレビを見ていた。
空き時間だと言い渡された午後2時は中途半端な時間帯なので、面白そうな番組はやっていない。
ボーッとしながらチャンネルを変えていた。その時、ワイドショーが私の目に留まった。
衝撃。
頭を灯油の一斗缶で殴られたような。鉄板を頭に落とされたような。
私は震える手で携帯の液晶画面に“石川梨華”を出す。
通話ボタンを押して、受話器を耳に当てる。
長いコール音。ワイドショーが発する雑音と混じる。
「…もしもし」
やっと出た。早く…早く言わなきゃ…。
「あの…」
ああもうっ…うまく言葉が出ない…。
「…よっすぃー…」
「テレビ、見たんだけどっ…」
彼女の受話器の向こうからは、怒声とも思えるざわめきが聞こえた。
「梨華ちゃん、妊娠してるって…どういうこと?」
13 名前:popi 投稿日:2001年12月23日(日)22時09分34秒
おもしろいです!続きがかなり気になる・・・。
この二人は幸せになれるのかな?
作者さん、頑張ってください!
14 名前:作者 投稿日:2001年12月23日(日)23時17分20秒
どうも…ありがとうございます…ああなんかもう嬉しいっす(感涙)。
やっぱしチャ―ミーブルーさんとか萌え男さんとか式神さんみたいな人に比べると全然文章力もないし…
でも頑張って書きます。このお三方にならって。
ってことで更新します。実はストーリーも全部決まってますんで。
15 名前:科学と世界観 投稿日:2001年12月23日(日)23時20分39秒
エレベーターが止まり、また冷たい空気の中を歩き出す。
私はスニーカーを履いているから、足音はあまり立たない。せいぜい、ギュッというゴムの音くらいだ。
上着のポケットから鍵を出し、手早くドアを開ける。自分の使っている香水の匂いに迎えられた。
「ただいま…」
傘を置く。玄関の電気を点ける。次に内側から鍵を掛ける。それから靴を脱いで奥に進み、リビングの電気も点ける。
何て淡々とした習慣だろう。生活の深みが感じられない。何となくリビングを見渡す。
『おかえり!』
長時間、私の帰りを待っていたのに、疲れを微塵も感じさせないような、そんな声が頭の中で響いた。
あの頃は、梨華が合鍵を使って、スケジュールの違う私を待っていてくれることがあった。
尤も、今の私を待っていてくれるのは、親切にも湿った空気だけ。
梨華の妊娠を知ってしまった日。私は仕事を終え、急いで彼女のマンションに駆けつけた。
既に時刻は午後10時だというのに、テレビクルーや新聞・雑誌記者やギャラリー、特にファンの男どもが多かった。
伊達メガネに野球帽といういでたちで変装している私も、他人から見れば野次馬以外の何者でもなかっただろう。
マンションの入り口で、管理人さんらしき人が黒山の人だかりを散らそうと必死になっている様子が見えた。
マイクを向けられて、顔を真っ赤にしながらも。
16 名前:科学と世界観 投稿日:2001年12月23日(日)23時22分05秒
梨華のもとにさっさと駆けつけたい気持ちはやまやまなのだが、こうも人が多いと、余計な混乱を招きかねない。
そうすると、困るのは梨華一人ではなくなる。
ギャラリーを遠巻きに見ながら、どうしようかと迷っていたその時。
「兄ちゃんも、あのマンションにいる子のファンかい?」
ダミ声が私に話し掛けているとわかり、声のした方向を向く。
少し中年太りして頭はパーマがかかっている、俗にいう“おばちゃん”だった。
「いや…その…」
返事に困った。確かに私は背も高いほうだけど。そんなに男に見えますかね?
「不憫だね、あの子も。芸能人になんてならなきゃ、こんな騒がれずに済んだろうにさ」
「はあ…」
「あんたも可哀想なこと、するんじゃないよ」
それだけ言うと、“おばちゃん”はゆっくり去っていった。ぞくぞくと集まる野次馬を、忌まわしそうに睨みながら。
可哀想。興味も何もない人から見れば、そうなのかもしれない。
私は、マスコミとか野次馬とかが帰るのを待った。しかし、結局会えずに終わった。
家に帰ってふと携帯を見ると、梨華からメールが来ていた。
受信時刻は、私が梨華のマンションに駆けつけたのとほとんど同じ時間帯。画面にはたった7文字。
“私達、離れよう”
17 名前:科学と世界観 投稿日:2001年12月23日(日)23時24分56秒
やはり、どんな季節でも雨は冷たい。
体が冷えきっているので、風呂を沸かした。肩まで浸かって、大きな溜め息をひとつ。
梨華の妊娠は、芸能界に大きな波紋をもたらした。若干17歳の、しかも人気絶頂期のアイドルの妊娠。
『元モー娘。石川梨華・勉強がしたいと銘打って出産!?』
こんな感じの雑誌や新聞。もう飽きた。
それなりに彼女自身は大いに叩かれたが、とにかくモーニング娘。関係も叩かれた。
つんく♂さんも、かつて仕事を扱ってくれた和田マネージャーも、アップフロントも。
ここのところネタに飢えたワイドショーにはうってつけの話題だった。
メンバーのみんなは彼女の話題を避けるようにした。
それは私を気遣う親切心から来たものもあるだろう。
彼女のせいで仕事もあまりうまくいかなくなった、とはさすがに言えない。
ただ一人、遠慮も親切心もなかったらしい。親友だと思っていた人が。
「…梨華ちゃんもよくやるよ。こぉーんなに愛してくれるよっすぃーがいるのにさ。
どんな男だろーね、梨華ちゃんをオトシた人って…ねぇ、よっすぃー?」
「ごっちん、その話はやめてよ」
そう強く言った。梨華ちゃんのことで揉め事は起こしたくなかった。
だが彼女は私の傷をえぐるかのように続けた。メンバーが心配そうに見ている。
18 名前:科学と世界観 投稿日:2001年12月23日(日)23時27分07秒
「やっぱ男の方がさ、色んな面で満足させてくれるんじゃないの?ねぇ、よっすぃー」
その言葉にカチンときた私は、ごっちんの襟首を掴んだ。周りが息を呑む。
「やめてって言ったでしょ」
「やめないよ。やめるわけないじゃん。梨華ちゃんはよっすぃーを裏切った!!
梨華ちゃんのせいで仕事も減っちゃったし、みんなが迷惑してる!!梨華ちゃんってほんっとに大迷惑!!!」
「…っ…てめぇぇっ!!」
私は歯を食いしばって、あらん限りの力でごっちんを壁に叩きつけた。メンバーの数人が短い悲鳴を上げた。
すぐさま飯田さんと安倍さんが私を抑え、保田さんと矢口さんがごっちんを救出する。
辻加護や高橋・紺野・小川・新垣の年下チームが、私の変貌ぶりに怯えていた。
いくら普段は言葉遣いが雑な私に慣れていても、喧嘩をする私は初めて見たかもしれない。
「吉澤!バカッ!!落ち着いてよ!!!いくら後藤がムカツクこと言ったからって…!!」
「後藤、平気?頭とか骨とか何ともない?」
ごっちんは相当痛かったらしく、保田さんの問いには答えないで顔を苦痛に歪めていた。
が、一分もすると鋭い眼差しで私を睨んでいた。
「オイコラァ!何だよ、その目は?仕返ししたかったらやってみろよ?かかってこいや!!」
「ちょっと吉澤!!」
飯田さんに抑えられながらも、私はごっちんを挑発した。
するとごっちんが保田さんの制止を振り切って、私に殴りかかってきた。私も飯田さんを振り切った。
その後、マネージャーやスタッフをも巻き込んだ大喧嘩になったことは間違いない。
19 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月24日(月)05時42分42秒
重いな…
どうなるのかな一体?
20 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月24日(月)08時14分40秒
シリアスですな・・・
期待!!
21 名前:空で書いてる作者 投稿日:2001年12月24日(月)10時01分05秒
>14
いしよし新作が始まったので読んでいたらいきなり名前があって
ビックリしました。他の2人の方がよっぽど凄いです。
なんか重い話ですけど、引き込まれますね。頑張って下さい。
22 名前:作者 投稿日:2001年12月24日(月)22時16分48秒
すいません、最初から重い話で…。
でも後からだいぶ明るくなると思いますんで今だけは悲しみに暮れるよすぃこを見てやってください。
ついでに言うと娘。の中での自分の好みがえらい反映されてます。新垣が好きな方、ほんっとごめんなさい。先に謝っときます。

ちなみにこの『科学と世界観』というタイトル…。
ごめんなさい、どっかの教科書出版社さん!!!(藁
自分、今高校生なんで試験範囲だったところからもらってきました。

わかる高校生にはわかる題名じゃないかなぁ…。
23 名前:夜叉 投稿日:2001年12月25日(火)11時58分58秒
重みのある話ですね。
でも、期待してますんで、頑張ってください。
24 名前:作者(インターフェロン) 投稿日:2001年12月25日(火)14時28分49秒
ごめんなさい、今さっきこのスレ全部見たら『インターフェロン』って…タイトルの『科学と世界観』と間違えてしもた…。
でわ更新します。
25 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月25日(火)14時31分35秒
冷たかった手足が次第にお湯の温度に癒され、じんじんと疼いてきた。
どこか遠くで、パトカーのサイレンが聞こえる。両手でお湯をすくって、顔を濡らした。
あれから、仕事以外ではごっちんと会話することはない。テレビでは営業用に仲良く見せてるけど。
梨華の妊娠騒動が落ち着いた後――2ヶ月もかかったわけだが――私は改めて彼女を訪れた。
時間が経つにつれ、私たちの関係は恋人というよりもほとんど友達感覚に近かった。
下品な雑誌によると、どうも梨華は堕胎をしたらしい。私は敢えてその話には触れなかったのだが、本人からそれとなく聞いた。
彼女の堕胎もまた日本中を揺らすのだろうかと考えたが、それはただのとり越し苦労で、もうワイドショーは他の芸能人の逮捕だか何だかを取り上げていた。
しかし、何でもすぐに嗅ぎつけてバラしてしまうマスコミでも唯一暴けないことがあった。
それは子供――もう彼女の腹の中には存在しない――の父親である。私も遠まわしに訊いてみたのだが、いつも流されてしまった。
でももうそんなことは何でもよかった。梨華さえ傍に居れば。
26 名前:作者(インターフェロン) 投稿日:2001年12月25日(火)14時32分34秒
「…大変、だったね。マスコミとかさ」
「まぁ…ね」
“私達、離れよう”という梨華のメールが気になり、私の動きはいちいち不自然になる。
座り慣れたはずのソファーに、何故か座ることができなかった。
「やだぁ、他人行儀なんだから。いつもみたいにドカッと座ってよ」
梨華はくすっと笑った。
「あ、あぁ…うん」
そっとソファーに腰掛けた。やはり心のどこかで、彼女に関連するもの全てに気を遣ってしまう。
「今日はどうしたの?」
「いや、その…」
つむじのあたりを軽く掻いて、本題に入った。
「この間の『離れよう』ってメール、どういうこと?」
梨華の顔から笑みが消える。私の質問には答えなかった。
いや、むしろ答えを探していたために答えられなかったという感じだ。
「ねぇ、どういうことなの?」
語調は柔らかく、しかしはっきりと尋ねた。
27 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月25日(火)14時34分15秒
はあとはあと
28 名前:作者(インターフェロン) 投稿日:2001年12月25日(火)14時34分58秒
「…だから、その…メールでも言ったでしょ?ほとぼりが冷めるまでって…」
「ほんとに?…そうは思えなかったんだけど」
今度は少し、疑わしげに梨華を見る。数秒の沈黙。
「…ほんとだよ…」
懇願するように私の顔を見る彼女が悲しかった。だから私は彼女の嘘に目を瞑ることにした。
本当は梨華の嘘に気付いていたけど、そのことを悟られたくなくて、何も言わずに彼女を抱きしめる。
前にもこんなシチュエーション、あったような気がする。
どうしたの。軽く動揺する彼女の体は温かく、心地がよい。抱きしめる度にそう思う。
「梨華ちゃんがだぁーい好きっはあとはあと
本来甘ったれな私を、全身で受け止める梨華。
「もう…子供なんだからぁ…」
その夜、私は彼女を抱いた。彼女は私が何をしても、受け止めてくれる。
でも、受け止めるばっかりでいたような気がする。
私に甘えることは何度もあっただろうか?辛くなることも、多少はあったのではないだろうか?
29 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月26日(水)05時08分00秒
科学と世界観、このタイトルが作品とどう関係してくるのか興味深いです
30 名前:科学と世界観 投稿日:2001年12月26日(水)18時52分46秒
風呂から出て濡れた髪をタオルで乱雑に拭く。体のだるさも少しはとれた。
火照る体には、冷蔵庫でキンキンに冷えたミネラルウォーターがぴったり合う。
ペットボトルに直に口をつけて飲む。いわゆるラッパ飲み。
梨華ちゃんは私がラッパ飲みをすると、いつも『コップで飲みなさい!』と年上ぶって怒ったものだ。
テレビを点けて、力なくソファーに倒れ込む。
どのチャンネルも安っぽい恋愛ドラマしかやっていないので、大して見はしない。気を紛らわす雑音が欲しいだけだ。
何があっても私は梨華から離れられないのだとわかった日から10日して、再び彼女の部屋を訪れた。
メールをしても電話をしても、どうにも繋がらないのだ。
さすがに鈍感な私でも、何かよくない、悪い予感にも似た異変を感じた。
31 名前:名無しさん 投稿日:2001年12月26日(水)19時02分38秒
>29さん
そうなんですよ!自分が書きたいのは『科学と世界観』がどう絡んでくるのかなんですよ!!!
でも表現が難しくて参ってます。ちょっと鬱です。

はぁ…一度でいいからチャ―ミーブルーさんのようなエロが書きたい!!!!書きたい!!書きたい!!書きたい!!!
なのにどう書いていいかわからず、書けない状態…。勉強不足でございます。

チャ―ミーブルーさん…もしこのスレを見たら是非ご指導を!!!(藁
32 名前:四季賀実(w 投稿日:2001年12月27日(木)00時13分02秒
題名に惹かれました。話もおもしろいです。
頑張って下さい!!
33 名前:21 投稿日:2001年12月27日(木)00時25分34秒
>31
人をエロ書き野郎みたいに書かないで下さい(w。
式神さんの方がよっぽど(略。(誉めてます)。
で、私は暫くはエロは書かない方向でいます。予定。
雑談だけでごめんなさい。期待しております(Notエロ)。
34 名前:インターフェロン 投稿日:2001年12月27日(木)18時56分51秒
書くたびに名前がバラバラですんません。
何かもう嬉しくてしょうがないっすね、こんなにレスがあるなんて…。
今日のとくばんでいしよしの絡みはあるのかな?
以前のうたばんで梨華さんがよしこの腕をとってささやかに『ダーリンです!』って笑顔で言ったのには笑えた…。
では、ほんのちびっとですが更新します。
35 名前:科学と世界観 投稿日:2001年12月27日(木)19時00分14秒
何回かインターホンを押してみる。
無反応。
ドアを叩いてみる。
返答はない。
電話をしてみる。
コール音が続くのみ。
メールを送ってみる。
返事がくる可能性は少ない。
まさか実家に帰ってるってことは…電話したいけど実家の番号知らないしなぁ。
私は万策尽きて立ち尽くしていた。すると、彼女の部屋の隣人が出てきた。
「あのっ!ここの人、何してるかわかりませんか?」
場違いにも、お隣さんは女の人だから安心なの、という梨華の言葉が思い浮かんだ。
「石川さんねぇ、最近は全然見かけませんよ…っていうか引っ越したのかも」
「ええっ!?」
何も…聞いてないッスよ…。
「この間…確か先週かな?業者みたいな人がね、中の荷物を運び出してたのよ。それで石川さんは…」
それから先は、あまり憶えていない。
いつの間にか家に帰り、いつの間にか仕事をしていた。気付いたら歌の収録中だったのだ。
情けないかもしれない。笑い話かもしれないが、体は梨華よりも仕事の重要性を選んだということである。
梨華は突如として私の隣からいなくなった。
36 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月28日(金)06時30分59秒
とにかく石川の行動が謎ですな
それに科学と世界観というタイトル。。ふ〜む
37 名前:??? 投稿日:2001年12月28日(金)17時35分18秒
おもしろいっ
38 名前:科学と世界観 投稿日:2001年12月28日(金)21時29分28秒
彼女の蒸発という傷はひどく痛んだために、薬を塗るだけでも相当な時間がかかった。
1年と半年以上経った今でも傷は癒えない。
おそらく一生癒えることのない傷を私は負っているのだ。
二人でも余裕で寝られるようにと買った新品のダブルベッドも、見ているだけで辛くて処分した。
彼女の存在を示す残り香が、異様に胸を締め付けたからだ。
「…梨華ちゃん…」
会いたい。
会いたい。
今すぐ会いたい。
何でもいいから会いたい。
とにかく会いたい。
急に湧き上がった感情。にじみ出た涙で視界がぐにゃりと曲がる。
肩に掛けていたタオルで顔を覆い、腹に力を込めた。
でもそんなことをしたって無駄。眼球がどんどん熱くなる。
そんな自分が嫌で、キッチンの流しで顔を洗う。
泣いていたということを誤魔化したかった。
39 名前:インターフェロン 投稿日:2001年12月28日(金)21時39分05秒
更新です。
ああ…疲れた…。バイトで疲れきっているのでちょっとしか更新できませんが、ご勘弁を。
実況するわけじゃないんですけど、さっきMステに娘。が出てましたね。
いつ見てもいしよしを意識しちゃいます(藁
ほんっとにいつも一緒にいますね、あの二人は。後藤さんとよしこが会話してるときの石川さんの顔…
女の嫉妬ってすごいっすね。

>36さん
石川の行動が謎なのは文章力のせいもあるかもしれません(藁
彼女の謎は後でわかると思います。

もう少しで#2になります。そこからはマターリしすぎて笑えないコントになります。
40 名前:夜叉 投稿日:2001年12月29日(土)16時36分22秒
バイト、お疲れさまです。
作者様のペースで良いので、まったり更新でいいでやす。
何か、吉がかわいそうになってきた…(鬱)。

M捨て、良かったですよね。
個人的に舞台発射のセット、やって欲しかったんでうれしい限りです(w。
当方、吉推しなので、ザ☆ピースの時も萌えまくり(爆)。

板違いで申し訳(略。
41 名前:科学と世界観 投稿日:2001年12月29日(土)19時01分17秒
再び濡れた顔をタオルで拭いていると、インターホンが鳴った。
「誰だぁ?こんな時間に…」
時計は午後10時を指していた。集金なんてやるわけないし、もしかして回覧板とか…かな?
モニター付きのインターホンは便利である。いちいちドアを開けずに相手が確認できるからだ。
「はい?どちらさまですか?」
ボタンを押しながら言うと、相手にも聞こえる仕組みになっている。
「……」
しかし相手は答えない。
モニターに写っているのは、帽子を目深く被った女の子…いや、眠っている赤ん坊――ブルーのバスタオルで包まれていることからして男の子だろうか――を抱いているので女性と言った方が適当かもしれない。
過激な男性ファンのように私に会いたくて来たってことでもなさそうだった。
42 名前:科学と世界観 投稿日:2001年12月29日(土)19時02分01秒
「…あーもう、今行くんで待ってて下さい!!」
ボタンから手を離すと、モニターの画像が途切れる。何となくその女性に腹が立った。
失礼だぞ、あんた。自分が誰か名乗っちゃマズイ事でもあんのかよ?
私は相手にぶつけないようにしながらドアを勢いよく開けた。
「何ですか?」
不機嫌に言った。女性は困りながらもやっとの様子で呟いた。
「あの…」
その声と見慣れた唇に、私の体中を電流が駆け巡る。
まさか、と私は震える手で彼女の帽子を取った。
43 名前:インターフェロン 投稿日:2001年12月29日(土)19時12分10秒
更新です。この終わりかたはちょっと波乱の予感です。

>夜叉さん
どうーもありがとうございます。バイト代で正月コンの追加公演(2月16or17日)に行こうかと思ってるんです。
吉推しなんですね。じゃぁ女の子バージョンのよしこは発狂ものでしょう(w
ちなみに自分も吉は好きです。ひいきにしているのは辻ですけどね。こういうと、よくロリコンだって友人にもひかれます(w
特に石川さんと一緒にいるときのオーラが…。
44 名前:夜叉 投稿日:2001年12月30日(日)14時31分20秒
ををぉっ、あの人が帰ってきたのですか???
自分の思い人?だったらうれしいのですが(w。
でも、波乱…???(鬱)。

彼女もいいけど、彼氏もいい(爆)。
吉ならなんでも(略。w
辻ちゃんですか、大丈夫です、うちの友達のとこでは大人気ですよん。
追加公演の横アリですね。自分は大阪に行きますよ、うちの王子様を見に(w。
バイト頑張ってくださいね。
更新も楽しみに待ってます。

45 名前:科学と世界観 投稿日:2001年12月30日(日)19時32分24秒
#2

…“石川梨華”…。
また会うとは思ってもみなかった。しかも今度は子連れで。
子供がいるということは、あれから結婚でもしたのだろうか。私に何も言わずに引っ越してから。
久しぶりに見た彼女の体は、いささか肉付きがよくなり、胸が大きくなったように感じられた。
それは子供を産んだのだから、当たり前といえば当たり前だ。
不覚にも、以前にもまして抱き心地がよさそうだねと言いかけた。アホか私は。
「あの…来ちゃった」
会いたかった、何も言ってくれなかったのに、どうして今?
一気に色んな感情が押し寄せてきて、ぐちゃぐちゃになりそうだった。
「上がっても…いい?」
うん、と言おうとして声が掠れた。咳払いをして返事をする。
「…いいよ」
「ありがとっ。突然来ちゃってごめんね」
あの日の、私を受け止めてくれた日の笑顔と変わらない…。
彼女の笑顔が眩しくて目を細めたことに、梨華は気付いただろうか?
46 名前:インターフェロン 投稿日:2001年12月30日(日)19時50分57秒
更新です…。遠出したのでいささか疲れてます。
今日はバイトを休んでコミケに行ったのです。いしよし本を買いまくり(w
広場で娘。の『ザ☆ピ〜ス!』とプッチモニ(『ぴたクリ』)とタンポポ(『王子様〜』と『恋しちゃ』PV版&テレビ版)のコスをしてる婦女子を見ました。
特にタンポポは本物の衣装かと思われ。

これからしばらくの間、更新がまちまちになるかもしれません。宿題とバイトに追われる日々に突入しますんで。
47 名前:夜叉 投稿日:2001年12月31日(月)13時49分34秒
石に何の思惑があって部屋を訪れたのか。
気になりますねぇ。
まったり、更新お待ちしております。

コミケですか、懐かしい響きかも…(w。
結構出てるもんなんですね、いしよし。
タンポポ見てみたいですね。ザ☆ピ〜ス!のって、裸(略。w
48 名前:名無し 投稿日:2002年01月03日(木)00時17分57秒
ザ☆ピースのは水兵さんバージョンでした。
なんて言うと自分もどこにいたかバレるな(w
ミスムンのヨシココスの人もいたけど(略 
49 名前:科学と世界観 投稿日:2002年01月03日(木)18時24分16秒
私はできるだけ明るく振舞った。
さも、彼女がいなくても平気だったのだと言いたげに。
それはここ1年の私を見ている人は嘘だとすぐに見抜けるほど、異常な空元気。
「早く座って座って!!寒くなかった?雨、降ってたもんね」
「うん…」
「あ、今お茶出すから。紅茶でいい?
今一番のお気に入りでさ、ストロベリーのフレーバーなんだけど、結構おいしいよ。
駅前のデパートで見つけてきたんだ」
まくしたてるように話し掛けると、背を向けていそいそとキッチンで作業に入る。
絶対に気付かれたくなかった。私が、今でも彼女をひどく愛しているなんて。
「あっ…よっすぃー」
「ん?なぁにぃ?」
「そんなに…構わなくていいから…」
赤ん坊を抱えたまま立ち尽くしているようだった。
「だーからもう…そんな遠慮とかしないでさ。とにかく座りなよ。赤の他人でもあるまいし」
裏切りはしたけどね、と残酷な私が心の奥で呟いた。
「じゃぁ…お言葉に甘えて」
梨華はようやく鞄と腰を落ち着けた。
私の中の残酷な私を押しのけて、キッチンに戻る。
50 名前:インターフェロン 投稿日:2002年01月03日(木)18時31分25秒
本当に少しです。更新です。

>48さん
えっ!!ミスムン、ありました!?うわ――――衝撃!!!
結構、広場以外のところでも見ますよね、娘。コスは。
でもかわいい格好のわりに萎えません?
自分は目が悪いので、遠目で見ると萌えまくるんですが、近くでじっくり見ると激萎えでした。
51 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月03日(木)19時33分17秒
まあ着る人が着ないとね(w
52 名前:48の名無し 投稿日:2002年01月04日(金)00時10分46秒

自分は「売り子」をしていたので、コスしてる人から
来てくれるので大概の人は見られたと思います。
……まあ、なんにでも「ピンキリ」っちゅーもんがありますな(ニガワラ

今、この話しが1番気になっているので、ちょっとでも更新あると
嬉しいです。
続き期待してます。
53 名前:夜叉 投稿日:2002年01月04日(金)02時46分12秒
ピンキリですか…(爆)。
そういうこともあるでしょう、世の中。

石の行動の真意を知りたいでございます。
54 名前:科学と世界観 投稿日:2002年01月04日(金)10時51分31秒
もともと電気魔法瓶にあったお湯を温めなおすだけだから、沸騰させるにはさして時間はかからない。
うちのやかんは、湯が沸騰するとピーッという音が鳴る。
「…ありゃっ」
梨華が変な声を出した。
「ん?どうかした?」
「起きちゃったぁ…」
赤ん坊が起きたらしい。梨華のあんな安らいだ表情は初めて見るかもしれない。
「ああっ…ごめん」
「ううん、平気…この子、昼寝いっぱいするから夜行性なの」
「そっか」
茶葉を陶器のポットに入れて、やかんから湯を注ぐ。あとは茶葉が開くのを待つのみ。
梨華は抱っこしている赤ん坊に、色々な顔をしてみせている。
首をかしげて微笑んでみたり、頬を膨らませて『ばぁっ』と言ってみたり。
彼女の笑顔を独り占めしているのがあの小さな子供だと思うと、少し妬けた。
梨華を横目で見ながら折りたたみ式のテーブルを出し、ティーカップとスプーンとミルクを2つずつお盆に乗せて、梨華の座るソファーへと向かう。
「ねぇ、梨華ちゃん」
「何?」
私は紅茶をカップに注ぎながら尋ねた。
「その子、何て名前なの?」
ようやく子供の話題に触れ、梨華は非常に嬉しそうな顔をした。
やはり親になったのだと思った。私も親になったら、こんな顔ができるだろうか?
いや、親になる気もほとんどないくせに、何を言ってんだかな。私は心の中だけで自嘲した。
55 名前:インターフェロン 投稿日:2002年01月04日(金)11時00分57秒
更新でございます。ごめんなさい、まだ本題には入ってません…←遅すぎる

>51さん
確かに着る人が着て欲しいっすね。たまに「お前、そのコスやめろよ!!」って怒りたくなります(w

>48さん
ほぉ。売り子だったんですか。まさか娘。の同人にいたってことは…(疑
この話が気にかけてもらえるなんて光栄っす!気になるところで切っといてよかった(w

>夜叉さん
レスを毎回頂いちゃって…まいどどーもぅ(w
この間の追加公演(横アリ)なんですけど、行けるかどうかわからなくなりました。
もしかしたらその日に模試があるかもしれないので…(涙)
56 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月04日(金)14時21分08秒
そろそろ謎が解けてきそうですね
57 名前:科学と世界観 投稿日:2002年01月07日(月)11時26分06秒
「ふふっ…この子ね、“みか”っていうの。もうすぐ1歳。誕生日は2月14日!バレンタインデー生まれなんだぁ」
「ふーん。ココナッツ娘。のミカと同じ名前だね」
「あ、そうだねぇ。でも名前は平仮名で書くんだよ」
「平仮名?今時珍しいね。難読漢字と一緒でさ、“月”って書いて“ルナ”って読む子とかいるのに」
「漢字もよかったんだけど…どうしてもひらがなじゃないと、変な名前になっちゃうからね…」
梨華は紅茶の入ったカップを手に取り、一口飲むとくしゃみをした。
「へぇ…“みか”ちゃんはバレンタインデー生まれか…っていうかさ、初めて名前聞いてわかったんだけど、この子って女の子だったの?」
そう言って私はポットをテーブルに置き、その“みか”ちゃんに目を遣る。
梨華はちょっと怒った顔をして“みか”ちゃんに話し掛けた。
「失礼ですねぇ、よっすぃーは…みかちゃんが男の子だって思ってたんだってぇ」
その言葉に“みか”ちゃんは、あーとかうーとかいう類の声を出していた。
58 名前:科学と世界観 投稿日:2002年01月07日(月)11時26分51秒
「あ…いや、その…バスタオルが青いからてっきり男の子だと…ごめん」
「バスタオルかぁ!そうだね、この色なら確かに間違えるかもね」
そういえば顔もまだ見ていなかった。どちらに似ているのだろう。
女の子だから、梨華ちゃんに似たら将来はかなり美人になるんだろうな…。
「ねっ、この子の顔、見ていい?」
「どぉぞぉ…ほら!可愛いでしょ?」
梨華の傍に行くと、付き合っていた頃と変わらない香水の香りがした。
彼女によく似合う桜の香りだ。それは紅茶の強いフレーバーに混じってすぐに消されてしまったが。
そっと“みか”ちゃんの顔を覗き込んだ。その瞬間、私はギョッとした。引いた。眩暈を感じた。
59 名前:科学と世界観 投稿日:2002年01月07日(月)11時27分54秒
「…ほぇ?」
「ほおぉぉら!何てよっすぃーにそっくりなんでしょ☆」
…オイオイ、ちょっと待ってよ。『私にそっくりでしょ』って…。
「あ…あの…梨華ちゃん…?」
私は左手で目を押さえて、右手で梨華の肩を叩く。
「んー?どうかした?」
何だか本っ当に嬉しそうだな、梨華ちゃんよぉ…。誰か夢と言ってくれ、この状況を。
みかの目は、確かに母親である彼女にそっくりだ。しかし。
どうして他人の私とホクロの位置と数が一緒なんですか!!!
っていうかさぁ、全体的に私と似てるよ!!とにかく似すぎ!!
一時期、誰かにチャームポイントだと言われて嫌だった『頬袋』までも…。
私はしばらく硬直して、みかの顔をじっと眺めた。
小さい頃のアルバムを引っ張り出してくれば、みかは私の生き写しと言ってもいいほど似ているだろう。
60 名前:インターフェロン 投稿日:2002年01月07日(月)11時34分27秒
今日はココまで更新です。やっとバイトが終わり、明日から学校です。

>56さん
まだまだ謎が解けるわけではないんですよ…石川さんはもっと重大な秘密を抱えて(略

板違いで申し訳なんですが、昨日のMUSIX!では総集編でしたね。
昔の映像はいしよしばっかじゃないですか!!(w
いい感じに少年時代の吉澤と少女石川が見られて嬉しかった…。
61 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月07日(月)12時09分38秒
みかたん萌え〜とか言ってみる。
いつのまにか妙な話になってきたね(良い意味で)
62 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月07日(月)12時38分42秒
ようやくタイトルに近づいてきた気も。
子供の名前は下一文字ですか。なるほど。
63 名前:夜叉 投稿日:2002年01月07日(月)20時24分03秒
なぬっ(笑)。
そうか、そうきたのか。←一人納得(w。
石のさらなる秘密、気になりましゅ。作者様、頑張ってくださいね。

横アリの日に模試ですか。
自分も今訳あって試験を受けないといけない身なんですが、大阪の前日に試験が。(苦笑
久しぶりになれないことをするので、今から焦っております。
とか言いながら、巡回してますが、何か?(笑)。
64 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月07日(月)20時33分26秒
やはり・・・
65 名前:科学と世界観 投稿日:2002年01月08日(火)18時18分47秒
母なんかはみかを見たら、えらく喜ぶはずだ。
母は今の私はひねくれすぎて困っているらしく、以前『最初の子育ては失敗したわぁ…』なんて愚痴をこぼしていたから。
でもお母さん!!私で失敗したとか言ってるけど、あのわんぱく坊主の弟二人はどうすんだよ!!
私より頭も遙かに悪いしうるさいし、だいたいこの間も私が帰省した時。野球の素振りやってて、また家の窓ガラス割っただろ!!しかも今度で7回目!!
もう中2と小6なんだからさぁ、いい加減にどうにかしたら?
っつうかちゃんとあの馬鹿どもを怒ってんのかよ、お母さん!!こんな調子じゃまたしょうもないことやらかすってば!!!
とにかく…あの母のことだから、みかを見たと同時に梨華ちゃんから取り上げて『ひとみをもう一度育てなおすわッ!!』とか何とか言うかもね。
うわっ!そんなん考えただけで超怖えぇ…。
いや、それより今はこのみかちゃんのことだろ。
まさかとは思うけど、ねぇ。この顔は絶対に私の遺伝子持ってますよ。
私の遺伝子をそっくりそのまま持った男がいたら怖いし…。私、男じゃないしさぁ。
梨華ちゃん。普通は私たちの子供なんてできないよ…?
「頼むから…説明してください…」
「何を?あ、みかのこと?よっすぃーにそっくりな理由?」
「そうだよぉ!!それ以外に何がありますか!!」
思わず私が大声を出すと、みかちゃんが怯えたので、怒られてしまった。
66 名前:インターフェロン 投稿日:2002年01月08日(火)18時31分06秒
更新です。が、やっちまいました…間違い発覚!!!
レス57の梨華さんの発言にある『(みかは)もうすぐ1歳』は間違いです。
お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、最初の方に『今は3月』とあります。
誕生日が2月14日なのに一体どうゆうことだと自分で気付きました。
ううう…細心の注意を払っていたはずなのに…。ごめんなさい…。

>61さん
そうですか、萌えですか(w
自分はこの二人のクローンがいたなら誘拐する勢いです(爆

>62さん
科学はクローン技術も含めます。これからの展開にも『科学』が絡んできます。

>夜叉さん
いやぁ、ありがとうございます。この話、意外性がありますでしょ?(w

やはり追加コンには行けませんでした(涙
いいですね、大阪の方にいらっしゃるんですか。
試験の方も頑張ってください。模試は捨てました!!
そして試験があろうともどんどん巡回しちゃってください(w
67 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月08日(火)21時50分10秒
パニくる吉澤
気持ちはわかる(ワラ
68 名前:夜叉 投稿日:2002年01月08日(火)21時57分44秒
まだ巡回してるし(爆)。

気になる気になる気になる気になる気になる気になる。
69 名前:ポー 投稿日:2002年01月08日(火)22時43分15秒
まぢですか!?と、今私は衝撃的にビックリしてました、はい。。ん〜、梨華チャンどうゆうことなんだ?
70 名前:科学と世界観 投稿日:2002年01月10日(木)21時29分12秒
梨華が話をする間、私は冷静でいられなかった。
そわそわしたりはしないで黙って聞いていたのだが、いつも胸の奥がざわざわした。
それは嫌な予感というか、何かに追われているような緊張感というか。
「…で、要するにこの子はどーやってできたの?」
延々と続いた梨華のたどたどしい説明を一通り聞いて、私は言った。
「んーとね…クローンだって」
「えええぇぇっ…やだぁ…」
即座に顔をしかめてしまう。
たぶん、自分の子供がクローン技術でつくられたのだと聞いた人は誰だって私のような反応をすると思う。
「何でさ!!!よっすぃーとあたしの子供なんだよぉ!?あたしたち女の子だし、ずっと出来ないと思ってて、でもやっと授かったのにぃ…」
「だって…信じろって言ったって…」
あまりにも胡散臭い。
梨華の知り合いの科学者がクローンを研究していて、その人に頼んだらできてしまったという結果。
しかも娘。脱退までに貯金した給料の全額をつぎ込んで…。
「…クローンでしょ?羊のドリーとか猿の何とかで話題になったやつ…」
「みかは人間だよぉっ!!ほらっ!よく見て!!こぉぉんなに可愛いじゃない☆」
梨華は私たちの声にまったく反応せず、いつしかすやすや眠ってしまったみかを、優しく抱きしめた。
確かモラルの面でも人間のクローンはダメだってニュースでも言ってたっけ。
っつうか誰だよ。みかをつくった科学者…。逮捕されっぞ、あんた。
ついでに梨華ちゃん。クローンって遺伝子が必要なんだよね?いつ私の細胞を持っていったの?
もしかして枕についてた髪の毛を…?あああ…すっげー怖い!!!!
71 名前:夜叉 投稿日:2002年01月10日(木)22時10分03秒
だんだん石が怖いキャラに見えてきたりなんかして(汗汗。
髪の毛ならまだしも、細胞やったら他にも(略。
吉の動揺はまだまだ続きそうですね。
72 名前:インターフェロン 投稿日:2002年01月11日(金)21時04分00秒
すいません、お返事できなかった方々…。
パソコンがバグってました。せめてものお詫びに大量更新です。
73 名前:インターフェロン 投稿日:2002年01月11日(金)21時08分09秒
「ね、ちょっと抱いてみなよ」
放心しかけた私に梨華が言った。
「ええぇぇ!だってクローン…」
「ごちゃごちゃ言わずにハイ!あなたの子供でもあるんだよ!!」
半ば強制的に抱かされた。意外にもみかはずっしりとしていて、重い。
座って抱くと疲れるので立ってしまった。従姉妹の子供は抱いたことあるが、しょっちゅうでないので不慣れである。
まさかこの年で子持ちになるとは思わなかったな…。あはは…。あははは…。
意味不明の笑いが頭の中で響く。ふと、“みか”という名前に疑問。
「ねぇ梨華ちゃん、“みか”って名前…もしかして…」
梨華が上目遣いで微笑んだ。
「あ、わかった?実は…ひとみの“み”と、梨華の“か”をくっつけて“みか”なの!!
あたしとよっすぃーの遺伝子を半分ずつ受け継いでるから、名前も半分こ☆ついでに言うとね、誕生日もあたしたちの真ん中バースディ!!」
そうか…だからひらがなじゃないとだめだったのか…。そして誕生日まで仕組むなよ!!!!!
ああ神様仏様、誰でもいいから…いちいち喜ぶこのやっかいな人をどうにかしてください…。

74 名前:インターフェロン 投稿日:2002年01月11日(金)21時09分17秒
「うーん…何だかなぁ…」
みかの顔をじっくり見る。切れ長の目だけは梨華そっくり。しかしそれ以外は全て。全て私のものだ。
自分の分身を見ているような気分になった。まぁ、クローンだからしょうがないか。
気持ち悪いと言ったらみかに失礼だし、梨華ちゃんに怒られるだろうけど、今はそうとしか言いようがない。
父と母はどんな気分で我が子を抱いたのだろうか。
眠る子供の顔を覗き込み、『ここは私に似てるわね』とか『ここは俺に似てるな』とか言い合いしたのかな?
私はみかをとにかく調べた。バスタオルにくるまれているので、調べられるところは限られているが。
というのも、クローンが関節炎を起こしたと聞いたことがあるからで…この子は本当に平気だろうか?
「…ねぇ、よっすぃー…さっきから眉間に皺寄せて、何やってんの?」
「え!あ、いや、子供ってちっちゃいなぁって…」
クローンは何かの病気を持つっていうから心配なんだよ、と梨華の前でどうして言うことができようか。
とりあえず、みかには何の異状も見られなかったので安心した。
75 名前:インターフェロン 投稿日:2002年01月11日(金)21時09分52秒
やはり見ているうちに愛情が湧いてくる。そのうちに可愛いくてたまらなくなってきた。
ほっぺたが柔らかそうなので、思わず人差し指でつつく。下手をすればつきたての餅よりも柔らかい。
みか…お願いだからそのほっぺたを…。
そんな私の思いは顔に出ていたのだろうか、梨華が見透かしたように言った。
「柔らかいでしょ?見てるとね、あたしでも時々食べちゃいたくなるんだよ」
正直、ドキッとした。
「いや…食べたいっつうか…」
嘘をついた。本当は食べたいくらいだ。自然と頬が緩む。
続けてぷにぷにとみかのほっぺたをつついていると、みかが顔をしかめていやいやをした。
「おっと、起こしてごめ…」
言いかけた時、みかの小さな小さな手が私の指を掴んだ。
その何とも言えない感触が起爆剤となり、自分の中の何かが爆発した。
「か…かわ…いい…」
もうこの際…みかがクローンでも何でもいいッス!!可愛いから!!!
この子の存在をインモラルだとか倫理に反するだとか主張するやつがいたら出て来い!!!!
父親(?)の私が迷いもなくブッ飛ばしたる!!!消去したる!!!!
そう思ったその時、陰で梨華がほくそえんだことを、私は知らない。
76 名前:インターフェロン 投稿日:2002年01月11日(金)21時16分28秒
けっこう大量更新のつもりです。
あーあ…名前の由来はもう62さんに見破られてるんですけどね。
吉はよくも悪くも鈍感なので(←実際はどうだかわかりませんが)気付かなかったってことにしてください(w

>67さん
吉はパニくってますが、思い当たるふしがあったのか…(w

>夜叉さん
吉はパパです。実はこの題名、もともとは『パパ・吉澤』だったんです(爆

>ポーさん
梨華さんの意味不明な行動はもっと続きます…確かに衝撃大きい話ですよね、これは。
77 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月11日(金)21時47分30秒
ついに父親の自覚芽生えちゃったんすね(w
78 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月12日(土)02時45分22秒
いやいやこの展開、目が離せませんな
79 名前:夜叉 投稿日:2002年01月13日(日)15時06分26秒
黒石ハケーン(w。
どうなるんすか、これ。
80 名前:インターフェロン 投稿日:2002年01月13日(日)19時57分40秒
宣伝です。
白板に新作出しました。もしよろしければそちらもどうぞ。
何だか白板の作品の中でカブってるのがありました(汗
書き出しがかなり似ていて…。驚きです。
81 名前:インターフェロン 投稿日:2002年01月13日(日)19時58分13秒
「どぉ?あたしたちの子供は?」
私が一人で浸っている間に、いつしか梨華も隣に立って、みかの顔を覗き込んでいる。
「あの…さ」
私は顔を赤らめながら言った。
「やっぱ、自分の子供って…可愛いもんだね」
罠と言ってもおかしくない程の梨華の魔法に、まんまとかかった私。
その魔法とは、言い換えると俗に言う『親バカ』。
「…うんっ!!そーだねっ!!」
傍から見ると、本当にただの親バカ夫婦である。
ただ一つ一般の夫婦と違うのは、私たちは日本の法律において、結婚が許されていないカップルだということ。
腕の中のみかから視線を外し、何気なく時計に目をやると、既に11時半だった。
「そろそろ梨華ちゃん、終電なくなるよ?」
すると梨華はムッとした顔をした。
「ひどぉーい!こんな夜中に子連れで帰れっていうわけ?」
「あっ…その、そーゆーんじゃなくて…その…」
「ならどーゆーこと?」
「その…実家に電話しなってこと」
またしても私の顔が赤くなる。私って、本当は赤面症だったんじゃ…なんて思ってしまう。
「今日、一緒にいてもいいの?」
梨華の遠慮がちな目。返事だって知っているくせに、そう訊く。
「どーぞどーぞ。いてくださいな」
そのつもりで荷物も持ってきたんでしょ。ちゃーんとわかってますって。
82 名前:インターフェロン 投稿日:2002年01月13日(日)20時03分35秒
ちびっと更新です。
タイトル間違えました…鬱だ…。

>77さん
ええ、父親の自覚です。
バカですねぇ、まんまと石川の術中に(略

>78さん
自分でもわかってます…この展開は危ないっす(w

>夜叉さん
ほくそえんだ石川はそんなに黒いですかね?(爆
微笑み方は、石川さんがよくやってる確信犯的な笑みをイメージしたんですが…。
83 名前:夜叉 投稿日:2002年01月13日(日)23時58分57秒
いいえ、石の考えが(略。w
ちゃんと荷物を持ってきていること自体、確信犯(爆)。

新作覗きに行って来ますぅ。
84 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月14日(月)02時52分23秒
俺の独断において、2人のケコーンを許します。
85 名前:Charmy Blue 投稿日:2002年01月15日(火)23時01分50秒
石川の方が1枚も2枚も上手(うわて)ですな。
86 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月15日(火)23時33分11秒
やはりバカップルという言葉が妙にしっくりきますな(w
87 名前:科学と世界観 投稿日:2002年01月18日(金)18時46分00秒
「あのっ…よっすぃー、でもぉ…」
梨華はもじもじしながらゆっくりと言う。
また何かあるんじゃないかと、私はいささか心配になった。
「何?何か都合の悪いことでも?」
「ううん、そうじゃないの。できたらあたし…一生、ココにいたい」
…んあ?一生?ってことは…。
「もしかして…同棲したい…の?」
両手を組んで、こくんと頷く彼女。思わず守りたくなるような仕草だ。
「ねぇ…ダメかなぁ?」
上目遣いで私を見る。そんな顔したら…ダメなんて言えないよ…。
「一生、ココにいていいんだよ。梨華ちゃんも…みかも」
精一杯のカッコイイ笑顔で答えるのと裏腹に、心中は狂っていた。
私…とうとう言っちまったよぉぉぉ――!!これで私もパパになっちゃったのねッ!!
きっと世界初だよ!!!…ってそりゃ当たり前か。
ふふっ。一家の主ってか!!大黒柱ってか!!そしてこの年で妻子持ちってかぁ!!!
ああ…いっそアメリカで式でも挙げようか?なんつって…あうう…。
88 名前:科学と世界観 投稿日:2002年01月18日(金)18時57分10秒
またもやかなり少しの更新になってしまいました。
ごめんなさいです…いい加減に休日が恋しい日々です(w

>夜叉さん
どうもです。新作…突然市井さんからですいません!!
次はいしよしにする予定ですので(w

>84さん
自分もそう思ってました!!
実際にケコーンしてほしいくらいです(爆

>Charmy Blue師匠
突然こんな呼び方をしてしまって申し訳ないです(w
これからは師匠と呼ばせてください!!!
石川さんが意味不明な感じで書けたらいいなぁと思っております。

>86さん
ええ、バカップルですね。明らかに。
もっとだるくなるぐらいドロドロにしてみましょう(w

厚かましいのを承知でちょっとみなさんにお聞きします。
エロ…くないかもしれませんがそーゆーシーンは欲しいですか?(爆
89 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月18日(金)20時09分33秒
そーゆーシーン欲しいです。(ニコッ
90 名前:夜叉 投稿日:2002年01月18日(金)23時00分28秒
作者様の書きやすいように進行していただければいいのですが。
エロなし、ぷちエロ、エロ、ごっついエロ、何でもござれ。

ついに吉、父親宣言か?(爆)つか、逝(略。w
でもやはり石の思惑が絡んでいるような…(苦笑。
91 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月18日(金)23時44分15秒
そうですね〜ちょっと読んでみたい気がします。

石にながされていく吉がおもろくもあり頼もしくも…(w
92 名前:科学と世界観 投稿日:2002年01月20日(日)20時21分31秒
そんな私の危険な精神状態も知らないで、よかった、と梨華は一言呟いて私の肩に頭を預けた。
「あたしってつくづくオバカさんだなぁ。ありえないことだけど、女の子に優しいよっすぃーがもし万が一でも渋ったら、『責任とってよ!』とか言おうかと思っちゃった☆」
あんた…そんなこと考えてたんですか…。そりゃ心当たりはあるけど責任までは…。
「ほーんとによっすぃーって優しくて好きっ!」
「それはいいんだけど…梨華ちゃん。お父さんとかお母さんに何も言わないでいいの?」
すると、彼女は真顔になってゆっくりと目線を落とした。
「んと…それは平気。お父さんもお母さんも、あたしのことはもういないと思ってるはずだから…」
ああ、彼女特有のネガティブ思考だ。
確かに…自分の娘が何も言わずに妊娠、更に堕胎なんてしてしまったら――ましてやそれを彼女本人からではなく、第三者から聞いたとしたら――勘当もありうる。
私はもうそれ以上は何も言わずにいた。
93 名前:インターフェロン 投稿日:2002年01月20日(日)20時43分33秒
石川さん、誕生日でしたね…今更ですがおめでたいこってス。
やはりMUSIX!で獲得した温泉宿泊券、この土日に使ったんでしょうかねぇ(w
そしてバースデー更新したかったんですが無理でした…。
しかし本当に微妙な更新ですね。今日は風邪で1日中寝てまして…。
今さっきになってようやく起きられる程度になりました。

>89さん
そうですか…そーゆーシーンは楽しいですもんね(w

>夜叉さん
夜叉さんのレスを拝見しまして、どんなエロにしようか迷っております(w
そうですね…吉の父親宣言は全て石のせいです(爆

>91さん
頼もしいですか?ヘタレ吉はかなり甘すぎる気が…。
それを甘やかして終わらせる石も(w

まだ再会してから1日が終わってません。遅ぇな、この話(w
せめて吉澤さんの誕生日までには終わらせたい話です…。
94 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月21日(月)03時27分39秒
大丈夫。4月12日まではまだまだありますぜ(w
95 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月22日(火)22時08分41秒
石川さん、なかなか波乱万丈な生き方で…

まあ、のんびりといきましょう(w
96 名前:科学と世界観 投稿日:2002年01月23日(水)22時10分31秒
一人暮らしって…便利なんだか不便なんだかな。
私は、自分で使っていたベッドを梨華に譲り、ソファーで寝ることになった。
当然みかは梨華のベッドの傍に作った、専用の小さい布団で寝る。
つまり今夜は梨華に何も出来ないということだ。
梨華はみかと風呂に入っている。私は掛け布団にくるまりながら呟いた。
「今夜はおあずけか…くそぉ…」
こんなことを言っていると誰かさんに『欲求不満の中年みたいだよ』なんて言われるかな。
「なぁにぃ?何か言った?」
いないと思って呟いたつもりなのに、その誰かさんはみかを抱っこしてリビングに入ってきた。
思わず布団を跳ね除けて飛び起きる。
「あっ、いやいや、何でもないし…っていうかお風呂、早かったね」
「そう?結構長く入ってたつもりなんだけどな」
そう言いながら、梨華がやや濡れているみかの頭をタオルでそっと拭く。
私の独り言は気にも留めてないというか本当に聞こえていなかったようなので、私はすっかり安心していた。
97 名前:科学と世界観 投稿日:2002年01月23日(水)22時11分58秒
だが、それは梨華のずば抜けて鋭い勘をなめていたことになる。この勘は、いつ発揮されるかが不明である。
なので、自分にやましい事があれば、いつも私はビクビクしていたものだ。
え?やましい事って何かって?そーゆーのは言えませんよ、公共の場じゃぁ。
「あ、そっか。あのね、よっすぃーの考えてることはよくわかんないけど、今日はダメだよぉ。
だいたい二人で寝るところがないじゃない?あのダブルベッドも買い換えちゃったみたいだし、狭いもん」
図星。返事をしようにも声が上ずってしまった。
「はい!?そんっ…そんなこと考えてるわけないじゃん!!」
この変な声では、普通はバレるのだろうが、彼女は少し違った。
「ふぅん。そーだよね、考えてたら本当に欲求不満の中年みたいになっちゃうよね☆」
勘が鋭いのは無自覚なのか…やっぱり天性の才能なのか?
98 名前:科学と世界観 投稿日:2002年01月23日(水)22時13分30秒
それよりも大事なことがある。私は密かに拳を握り締めた。言いたいことが山ほどあったからだ。
「あ。よっすぃーって明日も仕事でしょ?早く寝なきゃダメだよ?収録中に眠たくなっちゃうから。
もうみかがあくびしてるし、寝るね。ってことでおやすみぃ〜」
「ちょっ、ちょっと待っ…」
だが彼女は早口で言って軽やかにリビングを去った。ドアの閉まる音が虚しい。
「ま、いっか…」
どうせこれからずっと一緒にいるわけだし、その気になればチャンスはいくらでも…って本当に中年になっている気が…。
やめやめ、こんなん考えるのは。

電気を消して部屋中を真っ暗にする。こうしないと私は落ち着かない。
外から差し込むぼんやりした光を頼りにソファーに寝そべった。
それから掛け布団にもう一度くるまる。
ベッドで寝るよりも寒いはずなのだが、体の芯から――心の奥から――温かさを感じるのだ。
これが、梨華がいる日常といない日常との違い。
幸福感という何よりも温かい毛布に包まれ、私は深い眠りに落ちた。
99 名前:インターフェロン 投稿日:2002年01月23日(水)22時22分49秒
はぁぁぁ…やっと吉の長い1日が終わりました!!!
長い間更新できなくてすみませんでした。
お詫びにドカンと更新…のつもりです。

>94さん
そうですねぇ、あと3ヶ月くらいあるし、どうにかなりますかね?(w

>95さん
波乱万丈ですかぁ…もっと恐ろしい大波乱が起きるとも知らずに、このバカップルは(略

このスレ、見返してみるとすごいもんです。もう100まで来ちゃいましたよ!!!
自分でも感動しました(w
これから、時々『intermission』なんて形で石川さん視点のものが出てきます。
やっぱり石川さんの行動が意味不明なんですよ、この時点では。
完結しないとわからないかも…(w
本当に長くなりそうな話なんですが、もしよろしければお付き合いください。
100 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月23日(水)23時24分05秒
すっかりぱぱな吉…
それにしても初めの頃のぱぱの見ているこっちが痛いくらいの切なさはどこへ…(w
さすが石川さんですね(w
ここの二人すごく好きです。
続きに期待!
101 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月24日(木)21時56分10秒
やはり単純な吉澤さんは石川さんの手のひらの上ですな…(w

102 名前:科学と世界観 投稿日:2002年01月27日(日)13時55分36秒
intermission 1 

気が付いたら、あたしは見覚えのあるマンションの前に来ていた。
この子を、みかと名づけた子を抱いて。
まだa
103 名前:科学と世界観 投稿日:2002年01月27日(日)13時56分41秒
intermission 1 

気が付いたら、あたしは見覚えのあるマンションの前に来ていた。
この子を、みかと名づけた子を抱いて。
まだあの人がこのマンションにいるかどうかもわからないのに自然と足は動く。

『ほんとに?』
ほとぼりが冷めるまで距離をおきたいというあたしに、こう問い掛けたあの人。
しばらくあの人の目はまともに見られなかった。あの人の寂しそうな目が、あたしの嘘を見抜いていたと確信したから。
『…ほんとだよ』
でもあたしは嘘を突きとおすしかなかった。本当は別れたかった。
キレイ事と言われても仕方ないけれど、愛しているからこそ逆にあの人を傷つけたくなかったのだ。
自分で自分の体を恨んだ。妊娠なんてしなければ…あたしがもっとしっかりしていれば…。

携帯も電源を切りっぱなしだったから、あの人に完全に会えなかった2ヶ月の間、あたしは耳をふさいで目を閉じ、一言も発せずに現実から逃げるしかなかった。
ううん、それはちょっと違う。ただ現実逃避したわけじゃない。妊娠と堕胎を機に、あの人との関係をじっくり振り返りたかった。
あの人は…あたしがこんなになっても今までどおりに付き合ってくれるのかな…そんな野暮な疑問ばかりが頭にこびりついた。
104 名前:科学と世界観 投稿日:2002年01月27日(日)14時03分49秒
ぎこちなかったものの、あの人が私を愛してくれていることは充分にわかった。
あたしの人生で最大級の過ちを許し、受け入れてくれた。
そしていつも微笑ってくれた。

それが何と胸の痛むことか。
あの人があたしにくれた優しさの痛みだった。
あたしは良心の呵責に苛まれつつも、あの人を愛した。
でも…あたしはあの人の前から消えた。さよならも言えずに。
おそらくあの人は、ひどく痛む傷口をさらしたまま、一人で歩いていたのだろう。
105 名前:科学と世界観 投稿日:2002年01月27日(日)14時05分04秒
会ったら、受け入れてくれるかもしれないという期待は微塵もない。
それでもあたしは来てしまった。あの人の部屋の前で、しばらく佇んでいた。
やがて決心し、おぼつかない手つきでインターホンを押すと、あの人の声が柔らかく耳に響いた。
あたしは何かを言おうとしたが、結局できなかった。
『……』
懐かしさ?未だに残る愛情?彼女への罪悪感?
自分でも把握はできないけれど、それらがあたしの心を支配して言語を司る中枢神経を麻痺させた。
あの人は半分怒ったような感じで何か言い、インターホンを切った。
一瞬どきりとしたけど、すぐにあの人がドアを開けた。
『何ですか?』
かなり怪しんでいる様子だ。帽子を目深くかぶっている上に胸が詰まって顔を上げられないので、あの人に顔は見えなかったと思う。
あたしからは、あの人が着ている青いチェック柄のパジャマが襟元まで見えた。
『あの…』
それしか言えなかったけど、あの人はすぐにあたしだとわかってくれたらしく、あの人の手があたしの帽子をそっと取った。
視界が開けて最初に目に飛び込んできたのは、以前よりも少し大人びたあの人。
髪の毛、ちょっと切ったんだね。
色も戻して黒くなったし、雰囲気全体が引き締まった感じで…。

…よっすぃー、今でも愛してます。
106 名前:インターフェロン 投稿日:2002年01月27日(日)14時11分36秒
微妙な更新具合です。
しかも更新しようと思ったら変になっちゃうし…(涙

>100さん
ありがとうございます。
ゲンキンな吉に仕上げてみました(w
痛みは全て石が取り払ってくれたようです(w

>101さん
そうですねぇ…イメージとしてはお釈迦様・石川の手の上で動き回る孫悟空・吉澤です(w
例えが古くてスマソ(w
107 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月28日(月)03時04分18秒
石川視点ですか。続きはどうなるのかな
108 名前:夜叉 投稿日:2002年01月28日(月)23時17分45秒
いない間に石川視点がある。
これである程度、不可解な行動の糸口が見えてくるとうれしいかも。
頑張ってくださいね。
109 名前:科学と世界観 投稿日:2002年01月29日(火)20時25分21秒
#3

じゅううっ。
何かをフライパンで焼くような音が聞こえて、私は目を覚ました。
カーテンの隙間から差し込む光に朝の到来を知らされる。
久々にソファーで寝ると、体がおかしくなったように感じられた。
寝返りをうつと、色んなところの関節が軋んだ音を立てた。
首を動かしてキッチンの方を見る。すると、エプロン姿の梨華がキッチンに立って料理をしていた。
昨日までの心の疼痛はどこへやら…。彼女の姿を見ているだけで嬉しくなる。
しばらくの間は梨華をじっと見ていた。
夢じゃない。幻覚でもない。梨華ちゃんはちゃんとここにいる。
そして昨日のこと、つまりみかのことも現実なわけで…それだけは複雑な気分だ。
夢であって欲しいような欲しくないような。
梨華は私が見ていることに気付いていない。こうして見ると普通の女の子だよね…。
この子が母親してるなんて、誰も想像できないって。
110 名前:科学と世界観 投稿日:2002年01月29日(火)20時26分45秒
また体勢を動かして仰向けになると、昨日から長引く体のだるさが復活した。
しかし、結局それも梨華の存在には勝てない。彼女がいればだるさなんてそんなもの。
背中を丸めて布団に顔をうずめてみると、彼女の鼻歌が聞こえた。
今起きるのもちょっと恥ずかしい気がする…何かキッカケでもないかな…。
そう思っていると急に赤ん坊――もといみかの泣き声が聞こえた。体がビクッと反応する。
みかの声が聞こえた梨華は『あっ』と小さく言ってリビングを出た。
よっしゃ!チャンス…って何をやってんだ私は…。これじゃ泥棒みたいじゃん…。
とにかく急いでソファーから立ってキッチンに立つ。梨華の料理はいつもいい匂いがする。
どうやら朝食にハムを焼いているらしい。鍋にはゆで卵も用意されている。

私が勝手にデレデレしていると、梨華がみかを抱いて戻ってきた。
「あ、よっすぃー!おはよぉ!」
「おはよ。みかちゃんも早起きでしゅねぇ!おはよぉごじゃいます〜」
寝起きにも珍しくみかに笑顔で言うが、みかもやはり私の子供なので寝起きは悪いらしい。
顔の相似性のみならず、しっかりとそういうところも受け継いでいる。
およそこの年齢の子供にはないようなムッとした顔で私を拒否する。
「昨日は遅くまで起きてたし、ずっと寝るんじゃないかと思ったけど…意外と早起きだね」
「まぁ、ちょくちょくどこかで寝てるから…」
111 名前:科学と世界観 投稿日:2002年01月29日(火)20時27分45秒
しかし上目遣いで私を睨む顔もそぉ〜とぉ〜可愛い。
目は母親に似ている為か、子供の頃の梨華ちゃんに睨まれているようで、変な錯覚を起こした。
「何だよぅ!私の機嫌がいいのは今のうちだぞぉ」
頭を撫でようとしても嫌がられ、みかは顔を反対に向けて梨華にきつくしがみついた。
梨華の顔がふにゃっとした笑顔になる。
「ふふっ…やっぱりよっすぃーの子だね。この子も寝起きは最悪だよ」
こういう時に母親はズルイと思う。今更ながらお父さんの気持ちがわかったような気がした。
「え!っていうか私の寝起きってこんなにヤバイ顔なの?」
「うん、そっくり!!」
彼女はいたずらっぽく笑った。その笑い方が私の網膜に貼りついて、なぜか剥がれることはなかった。
「あっ!もう7時半だよ!!早くご飯食べなきゃ、お仕事に遅れちゃう」
「ほんとだぁ…でも今日の収録、気が進まないんだよね。体もだるいし…」
いつもはメンバーとの収録は楽しいものだった。
泣き言一つ、一切口にしなかった私が、梨華もいるせいか甘えたような発言をしてしまった。
「そーゆーこと言わないの!自分でこのお仕事を選んだんでしょ?」
「ちぇーっ。またお姉さんぶってさ」
112 名前:科学と世界観 投稿日:2002年01月29日(火)20時28分58秒
梨華がみかを私に預け、テーブルの上にいそいそと朝食を並べる。
その間、私は椅子に座りながらみかの顔を見ていた。
「おわぁ!ブッサイクな顔だなぁ」
「もう…誰の子供だと思ってるのぉ?はい、お箸」
私はみかと箸を入れ替わりに持った。食卓にはやはり、私の好物であるベーグルとゆで卵がある。
あとはサラダに焼いたベーコンとコーンスープ。
久しく買い物に行かなかった為にがら空きになった冷蔵庫のありあわせで、よくこんなに作れたものだ。
「ごめんね?こんな簡単なもので…」
「いやいや、何をおっしゃいますか!十分だよ!!いただきまっす!!」
と言って早速食べ始める。朝食というものがこれほどまでにおいしいなどとは思わなかった。
「う〜ん…うまいッス!!」
「そぉ?ありがと…ほら、みかちゃん、『あーん』して?」
はにかんで、梨華は箸で小さく切ったベーコンを膝の上にいるみかの口へと運んだ。
その光景を見ていて思った。昔なら、その役は私だったのになぁ…。
『よっすぃー、あーんして?』
『あ〜ん』
とかって。あぁ…やっぱしズルイな…みかは。とみこ、ちょっとジェラシー。
113 名前:科学と世界観 投稿日:2002年01月29日(火)20時30分41秒
「…よっすぃー?どうしたの?」
頭ではしょうもないことを考えてはいても、目はみかを凝視していたらしい。梨華が訝しげに私を見る。
当のみかは梨華の膝の上で、両親の顔を交互に見ていた。だいぶ機嫌もよくなったらしい。
「ん、何でもない」
照れ隠しのつもりでベーグルにがっつく。梨華も食事を再開する。

「ねぇ、よっすぃー?」
「何?」
「今日のお仕事、一緒に行っちゃダメかな?」
一瞬、言っている意味を掴みかねた。
「それは…どういうことで?」
「あのね、久しぶりにメンバーに会いたいの…」
114 名前:インターフェロン 投稿日:2002年01月29日(火)20時35分35秒
更新終了…。
今日は気分がいいので、更新はやや多めです。

>107さん
石川視点…これはあまり長くは続きません。
たまに石川さんからみないとわからない点があることに気付いたので(w

>夜叉さん
ありがとうございます!頑張ります!
ここではお久しぶりですね(w
実はキーワードがいくつか出てきてます。
でもすぐにわかるものではなさそうです(w
115 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月30日(水)05時52分53秒
料理上手い石川とは新鮮
なるほど、子供ができるとこうも変わるのか(w
116 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月30日(水)18時28分35秒
赤子にやきもちを焼くとみこが、ほんとのぱぱっぽくて、素敵だ。
117 名前:夜叉 投稿日:2002年01月30日(水)22時09分22秒
吉パパ、萌え(爆)。
ほのぼのしてて、自分の子供をぶっさいくだなんて(笑)。

幾つかキーワードがでてるんですね。
分かる日が楽しみです。それまでゴリゴリ読み返しますね、何度も。
118 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月11日(月)00時25分56秒
ああ、何か一波乱が起こりそうな…。
119 名前:科学と世界観 投稿日:2002年02月16日(土)16時32分01秒
そのことを聞いた時、即座にごっちんの顔が思い浮かんだ。
未だ続く冷戦に、二人を巻き込みたくはなかった。
でも私の都合で断ったら、梨華が可哀想だ。
「ああ。仕事前ならいいんじゃないかな。みかも一緒?」
「もちろん!お披露目するんだぁ」
ねー、と何もわかっていないみかに笑顔で言う。私は慌てた。
「ちょっ…お披露目はいいけど、私の子供だってことは絶対に言ったらダメだからね!!」
「えっ?何で?」
そんなきょとんとされても…。
「何でって…私がパパだなんてメンバーに言っちゃったら混乱しちゃうよ!」
「あ、そっか」
この梨華の態度…。
いつかボロを出すのではないかと不安を感じずにはいられなかった。
120 名前:科学と世界観 投稿日:2002年02月16日(土)16時34分35秒
「いい?もう行くよ!?」
早々に出かける準備を終えた私は玄関で叫んだ。
「ちょっと待って!もうちょっと!!」
みかが風邪をひかないように厚着をさせているらしく、かなりの時間がかかっている。
「もう…早くしないとみんなに会えなくなっちゃうのにな…」
そういえば私の父も、出かける時はせっかちだった。
一人で玄関先にいて、独り言を言いながら勝手に焦って。思い返すと行動パターンがそっくりだ。
「よっすぃー、お待たせ!」
みかを抱き、小走りで梨華が現れた。二人とも、昨日と同じ洋服の上に同じ帽子。
近いうちに服の3着でも買ってやろうと思った。
「うん。じゃぁ行こうか」
ドアを閉めて鍵を掛ける。ごとん、と鍵のまわる音が心地よい。
私はいつもの野球帽だが、梨華はチューリップハットにも似た、少しよれよれな白の帽子。
しかもそれはみかとお揃いだった。
こんな帽子を3人で目深にかぶっているのは余計に目立つのだろうが、
着るものがない梨華たちには仕方がなかった。
121 名前:科学と世界観 投稿日:2002年02月16日(土)16時36分19秒
エレベーターのボタンを押すとすぐに扉が開いた。
「ねぇ、よっすぃー。そういえば、ご近所の方に挨拶回りはしなくていいの?」
乗り込むやいなや、彼女が言う。エレベーターが下りていく感覚がした。
「何で?別に新しく引っ越してきたわけじゃないじゃん」
「それはそうだけど…ほら、みかが夜泣きとか大声出したりしたらさぁ…」
そう言いながら、よいしょっ、とみかを抱きなおしたところで1階に着いた。
まず梨華が出て、次に私が『開』のボタンを押しながら外へ出る。
春先の生ぬるい空気が吹き抜け、いささか気分が悪くなった。
「でもさ…そんなに大きな声出すの?こんなちっちゃな体してて」
「そりゃぁ、よっすぃーの子供ですから」
私は声が大きい上に、体が大きいせいか肺活量が多かった。
確かテレビで測った時は3000ccくらいあったような気がする。
「ハイハイ、そうですか…」
122 名前:科学と世界観 投稿日:2002年02月16日(土)16時37分31秒
途中で掃除しているマンションの管理人さんに会った。管理人さんはおばさんで、とても気さくないい人だ。
もちろん私が芸能活動をしていることも知っているので、ファンが押しかけたりメディアの取材が来たりしたら丁重に処理してくれる。
しかし、度を越したお節介なのがたまにきずだった。
挨拶をすると笑顔で返してくれたが、朝から子供連れの私たちに非常に興味を持っているようで、目が事のいきさつを聞きたがっているように見えた。
こちらも笑顔でそれをかいくぐり、駅のタクシー乗り場へと歩を進める。
「梨華ちゃん…なるべく管理人さんとか、知らない人は会話しないでね」
「どうして?仲良くしたいのに…」
「…いいから、とにかくあんまり話さないこと!」
不思議がる梨華の背中をそっと押す。そして私はこんな言葉を思いついた。
『敵は身内にあり』
123 名前:科学と世界観 投稿日:2002年02月16日(土)16時39分03秒
駅前にはタクシーが列をなして待機していた。
その列の先頭にいたタクシーに乗って行き先を告げ、発車してまもなく、
「君たち、結構若いみたいだけど、もしかして夫婦かい?」
と運転手のオヤジに話し掛けられた。また男に見えるらしい。“夫婦”という単語に梨華がニコニコしている。非常に嫌な予感がした。
「ふふっ…そう見えます?」
やはり。嬉しいことは何でも他人に話してしまう彼女の口を即座に人差し指で押さえる。
目を見て首を横に振ると、やっと梨華は気付いた。つい先程決めたルールに。
運転手はこのやりとりを見ていなかったので、勝手に喋り続けていた。
「やっぱそうか!オネエチャンが抱いてんのって赤ん坊だよね?そこまで人目につかないようにしてるってことは内緒なのかい?でも子供ってーのは可愛いもんだよなぁ。いやぁ、昔は許されなかったんだもんだよ。そんでも今は……」
目的地であるテレビ局に着くまで、私は大して彼の話は聞いていなかった。一方の梨華は話がしたいようで、うずうずしていた。
124 名前:科学と世界観 投稿日:2002年02月16日(土)16時43分06秒
「じゃ、2人とも頑張るんだよ!!」
車を降りる間際にこんなことを言われ、梨華が笑顔で返事したものだから、私は何故か悲しくなった。
「もうやだよ…うう…」
「あれ?よっすぃー、どうかした?」
「…何でもない…行こうか」
玄関の警備員に会釈をして入社許可証を見せる。梨華が止められたが顔の広い私の口利きもあり、
仮の許可証を発行してもらって、どうにか局内に入れた。
後で、子連れだったなんて誰かに話さなきゃいいけどな、あの警備員さん。
「うわぁ!ここは全然変わってないねぇ」
「そりゃ、梨華ちゃんが辞めてからはまだそんなに経ってないもん…あ、ここだ」
楽屋口に『モーニング娘。様』と、ある。全員が揃っているらしく、笑い声が外まで響いてきた。
私は野球帽を取った。前髪がさらりと流れる。
「どう?懐かしいでしょ。緊張する?」
入る前に訊いてみると、『ちょっとね』と笑ってみかを抱きなおした。
「それなら行ってみよう!おっはようございまぁーす!」
勢いよくドアを開けると、メンバーが一斉にこちらを見た。
「よっすぃー遅い…って後ろにいる人は?誰?」
矢口さんが早速梨華に目をつけた。まだ彼女はモジモジとドア付近に立っている。
「ほらっ、こっちおいでよ…今日はメンバーに会いたいって来たんだ」
「…もしかして石川!?」
飯田さんが叫ぶと、ごっちんを除く全員が近くに寄ってきた。梨華も帽子を取って、
「どうも…」
と恥じらいながら小さな声で言う。部屋中が湧いた。
125 名前:インターフェロン 投稿日:2002年02月16日(土)16時58分08秒
やや長めの更新です。M−seekが直ってよかったです。

>115さん
そうですね、母親は自覚を持つと料理の腕まで変わるらしいです(w
>116さん
すいません、自分でもパパなよしこに萌えてました…。
でもパパといっても何しろ子供はクローンですから(w
子供もやきもちやきだと思いますよ(w
>夜叉さん
あれは暴言でした。よしこのブッサイク発言は(w
萌えますよね、パパよしこ!!!(w

ひとつ忠告です。こんな駄文、ゴリゴリ読み返してもきっと飽きます(爆
ではキーワードをひとつ。”石川、空白の1年間”です。
何だかサ○エさんの次回予告みたいですけど。
>118さん
波乱ですね。起きますよ、もう少しで(w
今度は子供の無邪気さが原因です。
126 名前:よすこ大好き読者 投稿日:2002年02月16日(土)17時34分16秒
復活してたんですね!うれしいです。
駄文じゃないっすよ。楽しみにしているので、がんばってください!
127 名前:夜叉 投稿日:2002年02月16日(土)22時49分39秒
ゴリゴリ読み返す前に飼育が停まっちゃったし(苦笑)。
パパよしこ同様、石の行動に目を光らせておかなければ。
128 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月17日(日)21時33分15秒
波乱…おきますか、やはり…。

吉澤さんの敵はかなりてごわそうだ。
129 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月03日(日)18時27分02秒
そろそろ続き読みたいなぁ
130 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月05日(火)20時52分50秒
>129
禿同
131 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月07日(木)21時30分39秒
私は梨華のそばにいて、脱退以来の出来事でわからないことを話すようにした。
彼女は脱退後の娘。のことに関しては何も知らないらしい。5期メンバー以降の増員が全くなかったことも。
すると、輪に入り遅れた圭ちゃん――今は敢えて保田さんと呼ぶと語呂がいい――が言った。
「ちょっと!アタシにも話させてよ!石川ぁ、元気してた?」
「あ、保田さん!お久しぶりです!何だか老けましたねぇ」
他のみんなはゲラゲラと笑った。ふとごっちんを見ると、いつもの無表情でこちらを見ていた。
「そーゆーあんたはちょっと太ったんじゃない?あら、この子って…石川の子?」
「はい!名前は“みか”っていいます!」
みかの帽子を取ると、『カワイイ〜!』と言う声があがった。
みかは大勢いる他人に馴れていない為か、不思議そうに首をひねった。
「うっわぁ!梨華ちゃん、ちょっとだけ抱かせてぇ!お願いやから!!」
加護があまりにせがむので、梨華は心配そうにそっとみかを渡した。
やはりこのくらいの子供は母親からは離れようとしないのだが、人懐っこいみかは梨華を見ながら加護に身を預けた。
「あいぼん、気を付けてね…?」
「まかしぃな!うちは梨華ちゃんより子供に慣れてんもん」
そう軽口を叩くと、さっさと行ってしまった。梨華は膨れっ面になる。
132 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月07日(木)21時31分10秒
「本当にもう…顔つきは大人になったけど、性格は変わってないんだね」
「ま、とにかく子守りしてもらってるんだと思えばいいじゃん?」
「ううーん…」
私は梨華をなだめるつもりで言ったが、逆に不安にさせてしまったらしい。みかの方しか見ていない。
「早くこっちに座ったらいいっしょ!なっちも話したいことがいっぱいあるんだぁ」
安倍さんが促したので、私はあたかもそれが自然であるかのように梨華にくっついて座った。
「中学生チームはみんな大人っぽくなっちゃって…あ、でも新垣はまだ地味…ってあいぼん!気を付けてって言ったじゃん!まだしっかり歩けないんだから!」
「ごーめーん!!」
遠い目で見ているのは足元のおぼつかないみかか。それとも辻加護や5期メンバーだろうか。
133 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月07日(木)21時32分04秒
辻・加護・小川・紺野は高1、高橋は高2になった。
高校生になると私たち同様に髪を染めるようになり、一層垢抜けて見えた。しかし新垣のみが未だに中学生で地味だ。
何も考えずに彼女達を見ると、意外と子供だ。一歩引いて他人を見る私は、いつの間に大人“もどき”になったのだろう。
「あいぼんと小川と高橋が茶髪…不思議だなぁ」
「そう?矢口には違和感ないように思えるけどね」
矢口さんや飯田さんや保田さんは、梨華からみると大きな変化はないようだった。
「それはいつも見慣れてるからでしょや!最初に見たらね、やっぱし高橋の茶髪は変だべさ!」
「えー!なっちだって茶髪にした時は変だって思ったけどなぁ」
と、保田さん。ごっちんは相変わらず雑誌に読みふけり、私たちに関わろうとはしない。
「あ!それは矢口も思った!!黒髪の道産子がエセ都会人に!!って感じでさ」
「だよねー!」
「ひっどぉー!!」
こんな会話で梨華の緊張が緩んだ頃、梨華の登場以来しばらく交信中だった飯田さんが突然椅子から立ち上がった。
134 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月07日(木)21時33分15秒
「石川!!ちょっと来て!!」
そう言うと飯田さんはさっさと楽屋を出て行った。
「えっ…あ、待ってくださいよぉ!じゃ、よっすぃー。みかのことよろしくね!バイバイ、みか!」
「はぁ!?ちょっと、梨華ちゃんっ…」
私が言い終わる前に梨華も急いで楽屋を出た。
みかは悲しそうな顔で、母を引きとめようと小さな腕を伸ばしながら『ままぁ…』と言う。
しかしドアの閉まる音が虚しく響く。
そしてみかは私譲りの大声で泣き始めた。が、ここまで大きな声だとは知らなかった…。
「うわ!でっかい声やな…泣いたら顔がぐちゃぐちゃになんで」
「くぅ…耳が痛いのれす…」
辻・高橋・小川・紺野・新垣は顔をしかめて耳を塞ぐ。ついでに言うとごっちんも。
そんななか、加護は勇敢にも荒れる幼い吉澤ゴジラの相手をしてくれていた。
135 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月07日(木)21時34分58秒
「でかい声だねぇ!!肺活量が多いんだな。この子は将来、スポーツ選手にでもなるんじゃないかい?」
安倍さんは嬉々として言った。そこへすかさず保田さんがツッコミを入れる。
「んなわけないない、なっち。何を喜んでんのさ」
「だってさ、こんなにいい泣きっぷりは将来が楽しみだからさ」
しばらく黙っていた矢口さんがフォローする。
「何かそれってよっすぃーに失礼じゃない?」
「いや、いいんですよ。すいません、みかがうるさくて…」
私はつい謝ってしまった。墓穴を掘るとはこういうことだ。
「どうして吉澤が謝るのよ?別にあんたの親戚でもないのに」
保田さんに言われて気が付くなんて、私も梨華ちゃんのことは言えない。
矢口さんも安倍さんもそう言いたげだった。私は露骨に、しまった、という顔をしていたことだろう。
「あ、いや、私が梨華ちゃんを連れてきたから…」
「ふぅん。そう」
「何でもいいけど、カオリと石川、どこ行くんだろ?」
「どうせ屋上だべ。カオリの行くところってあそこくらいしかないっしょ」
うまく逃げたものの、梨華の無防備さに肩を落とす私を見て、矢口さんたちは何故かケラケラと笑った。
「キャハハハ!安心したよ。
前にあんなことがあってさ、絶縁状態かと思いきや、結局はよっすぃーと梨華ちゃんって相性がいいんだよねぇ」
矢口さんは伸びをしながら言う。保田さんは大きく頷いて一瞬だけみかを見遣った。
無関心なごっちんの隣で、みかは5人に囲まれて泣いていた。
136 名前:インターフェロン 投稿日:2002年03月07日(木)21時40分27秒
更新終了です。今は期末テスト中なのでストックで繋ぎました。

>よすこ大好き読者さん
そう言っていただけると嬉しいです。でもまだまだ未熟ゆえ…。

>夜叉さん
ここからですね、石川さんの言葉の端々に違和感がわいてくるのは。

>名無し読者さん&130 名無しさん
スマソです…。忙しくて…。
137 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月08日(金)06時27分00秒
メンバーは子どもの顔見て気付かないのかな…
138 名前:夜叉 投稿日:2002年03月08日(金)17時49分22秒
テスト中の更新有難うございます。
思わず口が滑ってしまう吉パパ、まだまだ序の口でござるぞ(爆)。
いいらさんと石の行動が気になりますなぁ。
139 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月09日(土)22時11分28秒
あ〜なんだかばれるのも時間の問題ってきが…(w
さあどうなる。
140 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月13日(水)16時44分49秒
みかが私にそっくりだというのは気付かれてはいない。
どこかで披露したこともあったが、昔の私の顔をあまり知らない他人にはわからないのだろうか。
それに、梨華に似ていると言われれば似てるし、自分でもそう思えなくもない。
『みかは梨華の子供』という先入観を持っていれば、私に似た頬袋なんか気にならないのかもしれない。
私は気にしすぎていたようだ。
「あのさ、よっすぃーと梨華ちゃんって朝から待ち合わせでもしたんかい?」
「えっ?」
みかの泣き声にちょうどよく重なって、私は聞き返した。
安倍さんの方に体ごと耳を向けると、少し大きめの声で再び訊かれた。
「だから、よっすぃー達は待ち合わせして来たんかい?」
「いえ。昨日、久々に梨華ちゃんが家に泊まったんですよ。したら、みんなに会いたいって言うんで…」
私も腹式呼吸で答える。すると矢口さんがニヤッと笑った。
「泊まったのかぁ…もしかして久々に会ったついでにヨリ戻しちゃって、やっちゃったんじゃない?」
どうしたらこんなダイレクトな発想にたどり着くのかわからなかった。確かに手は出したかったのだが。
141 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月13日(水)16時45分29秒
何も言わずに答えを探している顔がよほど困っているように見えたのか、安倍さんが救いの手を差し伸べてくれた。
「ほんっとにアホだな、矢口は。すぐそっちの話に持ってくんだから…よっすぃーが困ってるでしょや」
「だってさ、よっすぃーの言い方がやらしいんだもん…」
「ちょっ…私のせいッスか!!」
保田さんは苦笑いしながら言った。
「でもマジな話、石川とヨリ戻したの?」
矢口さんと安倍さんも心の根底にはこの質問があったようだ。心配そうな顔で私を見ている。
「あ…その、ヨリっていうか…」
もしここでヨリを戻したと言えば、いずれそのうちにみかのこともバレてしまうだろう。
それに、ごっちんと喧嘩した時のように(まだ継続中だけど)もうメンバーには迷惑は掛けたくない。
「何だよぉ!はっきりしないなぁ」
いつもの私なら、だいたいこんな矢口さんの一言で白状してしまうのだが、今日は少し違った。
「まぁ、梨華ちゃんにとって頼れる存在になったってところですかね」
“頼れる存在”というのは半分嘘で半分当たり。あいまいに流すよりもいい言葉だと思う。
安倍さんたちは、へぇ、と言って柔らかく微笑んだ。
142 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月13日(水)16時46分17秒
5期メンバーや、特に辻加護が奮闘してくれたおかげで、みかは泣き止みつつあった。
「ほら、よっすぃー!泣き止んできたんやけど、何かこの子に食べさせるお菓子とかあらへんか?」
「お菓子ぃ?うーん…」
私はそばに置いてあった梨華のバッグを開けた。
すると、ビニール袋に入ったソフトせんべいがあった。幼児用の味があまりないお菓子だ。
「あ、これかも」
それを袋ごと加護に渡す。加護は慣れた手つきでせんべいを取り出し、みかに持たせる。
しっかりとせんべいを両手で持つ仕草が可愛らしく、私の脳が溶けていきそうだった。
「あ、その前に洟をかむのれす」
辻はポケットからティッシュを出して鼻水をかませた。
「ふふっ。何から何まで世話しちゃって…」
安倍さんが小さな声で言った。
私がみかの仕草に溶けかかっている時、みかと目が合った。
可愛いと思ったのも束の間、まだしゃっくりの止まらないみかは、衝撃的な単語を発した。
143 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月13日(水)16時47分19秒
「ぱ、ぱぁ…」
…はい?何て言いました?
今…今、“パパ”って言わなかったか!?
梨華ちゃん、みかに私のことをパパって言えって教えたんですか!?ヒィィィィ!!!
みかは鼻が詰まっていて、実際には“ババ”に近い発音だったが、私をじっと見て言うのだから“パパ”に違いない。
「あら?吉澤、あんた顔色悪いわよ?」
保田さんが訊いてきたが、答えることが出来なかった。思考能力が衰えていくのがわかる。
「みかちゃん?どした?ババって誰や?」
そして、みかは私を見つめてまた“パパ(ババ)”と言った。
「ババって誰れすか?あ、保田さんの方をじぃっと見てるから、ババは保田さんれすね!」
「ゴルァ辻!ババを連呼するんじゃないの!!誰がババよッ!!」
「せやけどそっちばっか見てんで?」
みかは相変わらず私を凝視している。
“ババ”の謎に首を小さくひねる加護の肩を、辻が叩いた。
「あいぼん、もしかして…ババじゃなくて…」
そこまで辻が言いかけて、ようやく私は動くチカラを取り戻した。
いかん!!辻に続きを言わせたらバレる…!!!
144 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月13日(水)16時47分58秒
「“パパ”って…」
「よぉーし!!みかちゃん、もう時間だからママのところに行こうか!!!」
辻の言葉を遮って、私はみかを抱きかかえて楽屋を急いで出た。
みんなは突然の私の行動に目を丸くしている。
「あっ!そんなラグビーのボールみたいに抱えたらアカンって!!」
ドアが閉まる直前に加護に言われたが、そんなことを気にしている場合じゃなかった。
小走りで階段の近くに来て、ようやくみかを抱きなおした。
みかはせんべいを持ちながら最高の笑顔で一言。
「ぱぱぁ!」
悔しい…負けた…。
145 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月13日(水)16時48分51秒
intermission 2

よっすぃーに連れられて、あたしは久々にメンバーに会った。
前よりも大人になったみんなを見て、ちょっと緊張したけど、会えてすごく嬉しくなった。
「ちょっと!アタシにも話させてよ!石川ぁ、元気してた?」
教育係をしてくれた保田さん。前にも増して老けたかも。
「あ、保田さん!お久しぶりです!何だか老けましたねぇ」
そう言うとみんなが笑った。ああ、すごく懐かしい感覚…。
みかのことはメンバーにはバレないみたいで、よっすぃーに似てるなんて誰にも言われなかった。
よっすぃーはずっとあたしの隣にいて、本当にだんなさんみたいだった。
ふふっ…よっすぃー、そんなに隣でくっついてたら、あたしたちのことがバレちゃうよ?
146 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月13日(水)16時49分24秒
「うっわぁ!梨華ちゃん、ちょっとだけ抱かせてぇ!お願いやから!!」
あいぼんが両手を合わせてせがむから、あたしは心配だけどみかを預けた。
あまり人見知りをしないみかはすぐにあいぼんに慣れた。あたしが気を付けてね、と言うと、
「まかしぃな!うちは梨華ちゃんより子供に慣れてんもん」
って言われちゃった。軽口叩くのは昔から変わってないなぁ。
やっぱり気になってみかの方を見ていたら、よっすぃーが気楽そうに言った。
「ま、とにかく子守りしてもらってるんだと思えばいいじゃん?」
子守りはいいんだけど…何だかみかを取られたような気分。
そしたら立っていたみかがよろけて転びそうになった。
まだ支え無しで歩けないんだから、もっと気をつけてほしい。あたしはあいぼんにちょっと怒った。
147 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月13日(水)16時50分11秒
あたしはののやあいぼんや新垣を除く5期メンバーの成長に驚いた。特に茶髪になったあいぼん、小川、高橋。
彼女たちをずっと見ていなかったから、まさかこんなに垢抜けたなんて思いもしなかった。
対照的に、飯田さんと安倍さんはあまり変わらない。矢口さんも微妙に太ったくらいで変化はなし。
前から変わらない感じの話であたしの妙な緊張もほぐれた頃、交信中だった飯田さんが突然立ち上がってあたしを呼んだ。
「石川!!ちょっと来て!!」
そう言ってさっさと楽屋を出ていったので、あたしはよっすぃーにみかを預けることにした。
「じゃ、よっすぃー。みかのことよろしくね!バイバイ、みか!」
「はぁ!?ちょっと、梨華ちゃんっ…」
よっすぃーが何か言いたそうだったけどお構いなし。お父さんぶり、試させてもらうよ。
困っているよっすぃーの姿を想像して笑いながら、飯田さんの後を追って着いたのは屋上。
重苦しいドアが古い音を立てて開くと、白い陽光があたしの目を刺した。その明るさに慣れるまでに、数秒かかった。
148 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月13日(水)16時51分26秒
今日は、屋上にしては珍しく風があまりなくて過ごしやすかった。
何の話をされるのかと思ったら、飯田さんはフェンスにもたれて、しばらく眼下に広がる人の流れを見ていた。
喧騒だけしか聞こえない沈黙にたまらなくなって、あたしは尋ねた。
「あのう…話があるんじゃ…?」
「……」
でも答えは返ってこなかった。あたしはフェンスに近づいた。
「飯田さん…」
「えーと。あんたの子供。みかちゃんだっけ?」
飯田さんは急に話し出すので、どうもタイミングがつかめない。
「はい」
「あの子、吉澤の子供だよね」
「あ…」
何で飯田さんはこういうことには鋭いんだろう…やっぱり交信パワーかな?
それはさておき、あたしはどう答えていいかわからなくなった。
よっすぃーにはあまり言うなって言われてるし。でも相手がわかってるんだったら言ってもいいかなぁ?
「そのぅ…何で飯田さんはそう思うんです?」
「うん。バレない方が難しいって」
「そうですかぁ?」
「そうだよ、石川の子供だっていう先入観を捨てたら吉澤そっくりじゃないの!
まったく…どうやってつくったんだか…驚いたのなんの」
あたしはこの時、少なからずリーダーという人の第六感に恐怖を覚えた。
確か中澤さんも鋭くて、あたしとよっすぃーの仲を誰よりも先に見破ったっけ。
149 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月13日(水)16時52分37秒
「で、これからどうすんの?」
「はい?話が見えないんですけど…」
「つまりみかちゃんが大きくなってからのこと」
「…というと?」
飯田さんはじれったい様子で髪をかきあげた。時おり吹く風のいたずらで、あたしの髪も乱れる。
「だから、現代じゃ同性では子供ができるなんてことはあり得ないでしょ。
それを物心ついたみかちゃんにどう説明するのかなってあたしは思ったわけよ。
『パパもママも女の人なのはどうして?』なんて訊かれたらどうすんのさ」
確かに飯田さんの言うことは正論。だけど、あたしは…。
「もう、いいんです…あたし…」
飯田さんに聞こえないように小さく呟く。飯田さん、ごめんなさい。
訊き返される前に、よっすぃーがみかを抱っこして現れた。
「飯田さーん、もうそろそろ時間ですよ!」
「さんきゅ!今行く!!」
あたしはよっすぃーのタイミングの良さに内心ホッとした。
これ以上飯田さんと話したら、きっと全部を話してしまいそうで怖かったから。
150 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月13日(水)16時53分27秒
「じゃぁ石川…元気でね。今の話、考えとくんだよ?」
何時間でも交信するし、しょっちゅう話が飛ぶ。
そんな飯田さんだけど、短時間であたしたちのことをしっかり考えてくれたのだと思ったら涙が出てきた。
「梨華ちゃん、どうかしたの?目が潤んでるけど…」
よっすぃーは飯田さんの後ろ姿を見ているあたしのそばに来た。
飯田さんは背中を見せたまま、ドアを閉めて屋上を去った。
「ん、何でもない。目に塵が入っちゃったみたい」
「本当?ならいいけど…」
と、みかをあたしに抱かせて、
「あの…もう仕事の時間だって。しばらく会えないね」
なんて子供みたいに言った。あたしはそんな風にされると、どうしても年上ぶってしまう。
「もう!仕事が終わったらまた会えるでしょ?頑張って行ってらっしゃい!」
「うん、わかった!みか、帰ったら遊ぼうな」
よっすぃーがみかだけにさよならを言うので、あたしは少し妬いた。
「ひどぉーい!あたしには?」
「えぇ?そうだなぁ…梨華ちゃんにはこっち!」
こっちと言われて、してもらったのはキスの不意打ち。触れるだけの軽いキスだった。
「じゃ、行ってきまーす!」
真っ白な光の中を走っていくよっすぃー。
あたしはきっと、こんな何気ない瞬間でも忘れることはないと思う。
151 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月13日(水)16時54分29秒
帰り道、スーパーに寄ってお昼ご飯を買うついでに晩ご飯の買い物も済ませる。
誰かはわからないけど、どこかのおばさんにみかは可愛いねって言われちゃった。
ふふっ。可愛いのは当然です。
愛するよっすぃーとあたしの子供ですから。あ、でもそんなことは思っても口には出さなかったから安心してね、よっすぃー。
渡された鍵で家に帰ると、あたしはまず掃除から始めた。
きちんと整理されてて綺麗なことは綺麗なんだけど…埃っぽい。みかがアレルギー持ったら大変。
まず洗濯機を回して、洗濯物と一緒に布団を干したら掃除機をかけて、みかを昼寝させる…これを一気にこなしたあたし、完璧な主婦じゃん。
それを全部終えたら既に夕方。先にみかの晩ご飯を作って食べさせる。
あたしとよっすぃーのご飯はもうちょっと後。一緒に食べたいなぁ。
テーブルの上に晩ご飯の支度をしてラップをかけ、空いた時間で後片付けをする。
目が届く範囲でみかを遊ばせて、テレビを点けっぱなしにしていたら、みかが騒ぎ始めた。
152 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月13日(水)16時55分08秒
「ぱぱ!ぱぱ!」
あたしは一度もよっすぃーのことを“パパ”なんて言った覚えはないんだけど…テレビかな?
何かと思ってテレビを見ると、某音楽番組に娘。が出ていたのだった。
ついあたしは皿洗いをやめてテレビの前に行き、みかを膝の上に乗せて番組に見入る。
収録したものらしく、髪型が微妙に昨日とは違っていた。
「ああ、よっすぃーか。みかはよっすぃーが誰だかわかるの?」
みかは返事の代わりに『ぱぱ!』とよっすぃーを指差した。
153 名前:インターフェロン 投稿日:2002年03月13日(水)17時00分29秒
どかんと更新終了。すごい量っすね、これ…。

>137さん
メンバー、意外に鈍いらしいです(w

>夜叉さん
パパになりたてですからね。初心者は大変です。
ちょっといいらさんが怖かったかもしれません。

>138さん
時間の問題…うーん…いいらさん、みんなに喋らなきゃいいですね(w
って喋らないか。リーダーだし。

パパと口走ったみかの無邪気さが引き起こした波乱でした。
やっぱりこの話、よしこの誕生日まで終わらなさげ…。
154 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月14日(木)00時29分16秒
さて、飯田の問いかけがどう絡んでくるのか…
155 名前:巧すぎだ 投稿日:2002年03月14日(木)13時34分55秒
あーもう、読みたかったのはこーゆー小説!
わし的アンソロジー収録決定。
単行本化決定。文庫化も決定。

作者さまがんがれ。。。大好き。
156 名前:夜叉 投稿日:2002年03月15日(金)18時57分29秒
石のことが気になりますねぇ…。続きが…(禁断症状)。
いいらさん、あーた、いい人だ。
157 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年03月16日(土)21時05分19秒
みかの「パパ」発言がイイ!かわいいっす〜
こっちまでとろけてしまいそうになりながら読んでいます。
がんがってください!
158 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月17日(日)23時20分50秒
さすがはリーダーとでもいうべきですなー。
この平和な家族(?)に何が待っていることやら…。
159 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月18日(月)12時10分47秒
#4

みかを抱っこして屋上へ行くと、何だか飯田さんと梨華は深刻な話をしているように見えた。
私は梨華が俯いたところで話が終わったものだと思い、飯田さんを呼んだ。
「さんきゅ!今行く!!」
飯田さんは梨華に何か言って、こちらに走ってきた。すれ違う時、
「あんたも早く戻ってきなさいよ」
と言われただけだった。何か言われると思ってたのに。
梨華のそばに行くと、彼女の目が潤んでいるのがわかった。
どうしたのか訊いても、どうせ答えはわかっている。
「ん、何でもない。目に塵が入っちゃったみたい」
ありきたりな嘘だとわかっていても彼女を許してしまう。
そうして心の核に触れないことが一番の優しさだと、当時の私は思っていた。
160 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月18日(月)12時12分31秒
「あの…もう仕事の時間だって。しばらく会えないね」
自分でもよくわからないが、私は無意識のうちに、寂しげな子供のように言った。
「もう!仕事が終わったらまた会えるでしょ?頑張って行ってらっしゃい!」
しかし梨華は、甘える私をこうして送り出してくれる。
本当は私と同じで、もっと一緒にいたいくせにお姉さんぶって私を元気づける。
自然にそれがわかっているから無意識に甘えるのだろう。
「うん、わかった!みか、帰ったら遊ぼうな」
頭を撫でてやると、みかは私に手を振って『あー』と言った。またね、と言ってるつもりだろうか。
「ひどぉーい!あたしには?」
きたきた…わかってるんだ、絶対に言うと思ってた。
「えぇ?そうだなぁ…梨華ちゃんにはこっち!」
確信犯な私は素早くキスをして、屋上を去った。
161 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月18日(月)12時13分43秒
みんなのところに戻ったら、さっきのみかの『“パパ”発言』に関して何か言われるのかとビクビクしていた。
しかし拍子抜けするほど何もなく終わった。
それはたぶん、次から次へと移るメンバーの話題に流されたのだと思う。随分、単純すぎやしないかと私は思った。
その後、家族のために頑張るぞ!と決意も新たに気合を入れたはいいものの、午後3時を過ぎた辺りから全く仕事に集中できなくなった。
私のせいで10分ほど休憩時間が入った。それは収録の終了時間が10分遅れることを意味する。
朝から仕事で疲れてるはずのみんなも早く帰りたいだろうに…申し訳ない。
スタジオの隅で座り込む私のところに、矢口さんがやってきた。
「どうしたの、よっすぃー?今日は気が散ってるね」
「あ、ごめんなさい。体が…すんげーだるいんですよ」
昨日からひきずっているだるさが戻ってきたのだ。保田さんもやってきた。
「吉澤、風邪でもひいたんじゃないの?ボーッとしちゃってさ」
「それは…ないと思うんですけど…」
「何とかは風邪ひかないっていうもんねぇ」
楽しそうに保田さんが私の肩を叩く。
「それって“バカ”ですよね…」
「世間じゃそう言うみたいよ」
「圭ちゃん、そりゃヒドイって」
ありがとうございます…矢口さん…。でも何で顔が笑ってるんですか?
162 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月18日(月)12時14分29秒
すると飯田さんまでもが私に向かってきた。
矢口さんと保田さんはお説教だと感付き、巻添えをくらいたくないのか、すうっと逃げた。
「吉澤!!」
怒られると思い込んだ私は立ち上がり、即座に腰を曲げて謝った。
「飯田さん、ごめんなさい!」
「ハァ?」
飯田さんの気の抜けた声が頭上から聞こえた。思わず頭を上げた。
「えっ?お説教、するんじゃ…」
「そうだけど。あのね、いくら石川とみかちゃんだっけ?に会いたいからって集中しないのはダメ!」
飯田さんの言葉に、私は心臓を口から吐きかけた。
「ちょっと…しーっ!!飯田さん、知ってるんですか!?」
「知ってるも何も、子供見たらわかるっつうの。あんたの子供でしょ?」
「うぅ…そうです」
やっぱり怖いなぁ、リーダーって。中澤さんもそうだったけど、リーダーになると第六感が冴えるのか?
「このことは誰にも言わないから安心して。とにかく集中しなさい。仕事なんかすぐ終わるんだから」
飯田さんはそう言って戻った。ぶっきらぼうな物言いだけど、励ましてくれているのはわかる。
一言で表せば冷たくてあったかい人、とでも言うべきか。私は笑ってしまう。
「ふはは…体が…だるいだけなんだけどなぁ…」
163 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月18日(月)12時17分27秒
それからどうにか収録を終えた。まだ17歳なので、仕事は9時までに終わる。
誕生日の翌日である4月13日からは仕事が延長するので、残った日にちを楽しもうと思う。
着替えを済ませて楽屋で解散の旨を言われると、私は真っ直ぐ歩いてドアを開けた。廊下に出ると呼び止められた。
「よっすぃー!待って!!」
その声の主はごっちんだった。
「…何?」
「ちょっとさ、話があるんだけど…いいかな?」
私は時計を見た。すぐ帰らないと梨華が待ちくたびれるし、みかも寝てしまって遊べなくなる。
それに梨華のご飯が食べたいが為に、用意された弁当も半分しか食べずにおいたのだ。本当はこんなところで時間を割きたくない。
「5分で…済むならいいよ」
「うん、すぐ終わるから」
ごっちんは私を屋上に近い、外の非常階段に連れてきた。
こんなところで話をしようなんて、やはり人に聞かれてはまずいことなのか…と警戒した。増してや喧嘩中なので、緊張する。
164 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月18日(月)12時18分24秒
踊り場で立ち止まると、焦る気持ちで私はごっちんに訊いた。
「何?また梨華ちゃんのことで何か言うつもり?」
「いや、あの…何か…」
その続きを待ったが、ごっちんは一向に言う気配がない。私は帰りたくて仕方がない。
「もう時間がないんだよね。話がないなら帰るよ?」
そう言ってごっちんに背を向けた時だった。
「ごめんね!!」
「……」
黙って振り返ると、下を向いて泣きそうなごっちんがいた。
「あの…今までごめん…梨華ちゃんのことで、よっすぃーに嫌な思いさせた…」
「別に、いいよ。そんなこと…今更謝られたって困るし」
精一杯の強がりで言った。
ごっちんが泣きそうな顔をすると、なぜかごっちんにすまない気持ちになる。
ごっちんがふっかけてきた喧嘩なのに、私がこんな気持ちになるなんて。
「でも…何で謝ろうと思ったわけ?」
これがいけなかった。
心に湧いて出た疑問をそのまま訊いてしまう癖がいけなかった。
165 名前:インターフェロン 投稿日:2002年03月18日(月)13時26分10秒
微妙な時間帯に更新。試験休みマンセー。
昨日のハロモニで初期の4期メンに溶けそうになりました(w

>154さん
リーダーの問いかけは…どうでしょう。絡むのかどうか(w

>155さん
そう言っていただけると嬉しいです。がんがります!
でも文庫化その他は…
題名が村上○一郎の本からとっているので著作権にひっかか(略

>夜叉さん
禁断症状ですか!?あわわ、早く書きますね!
リーダーは他の小説じゃいいキャラがないので(w、ちょっとイイヒトにしてみました。

>よすこ大好き読者さん
作者もパパ発言にドロドロになってます。みか大好き(w
ありがとうございます。がんがります!

>158さん
平和ボケしてます、この家族。
特にお父さ(略

後藤さん、やっと謝りましたねぇ。遅いけど(w
展開としてはちょうどいい感じなんですけどね。
166 名前:夜叉 投稿日:2002年03月19日(火)15時05分15秒
はぁ…、症状はだいぶ抜けてきました(^^;;。
この調子でお願いします。がんがってくださいね。
167 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月20日(水)19時54分12秒
いけなかった…って、どうなるんでしょ。。気になる
168 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月21日(木)22時45分25秒
またまた吉澤さんのよけいな一言ですか…。
困ったもんじゃ。
169 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月22日(金)22時23分10秒
「好きだったんだもん…よっすぃーのこと」
それを聞いて私ができたのは、息を呑んで目を開くことだけ。
「好きで好きでしょうがなかった…
よっすぃーは梨華ちゃんが好きなのわかってんのに好きになっちゃったんだもん!!」
「私を…?」
「好きだけど…でもよっすぃーが幸せならそれはあたしの幸せなんだって…
ありきたりなキレイ事を自分に言い聞かせて、気持ちを我慢して…」
ごっちんは目に涙をたくさん溜め、一生懸命泣かないようにしていた。
「でもよっすぃーが梨華ちゃんの妊娠とかで落ち込んじゃって、
『梨華ちゃんがこんなひどいことさえしなきゃ、よっすぃーは笑っていられたのに』って思って…ムカツイた…」
声も震えて、言葉も途切れそうだった。
「…だから梨華ちゃんは所詮、あーゆー人なんだっていうのわかってほしくて喧嘩ふっかけたの!!」
それから頭を抱えて、とうとう泣き始めた。
「梨華ちゃんが、いなくなったら…絶対、よっすぃーを癒せるのは、あたししか、いないって、思って…
ただ、あたしは、よっすぃーに、振り向いて…ほしかっ…」
それなりにごっちんも辛かったのはわかる。
私は知っている。ごっちんが優しいひねくれものだってことを。
彼女がしたことは、単なる愛情の裏返しなんだ。まさに裏返し。単純すぎて気付かなかったよ。
そんな風に感じて、考えなしに泣きじゃくる彼女を抱きしめた。
170 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月22日(金)22時25分53秒
「よっ…すぃー?」
一瞬泣き止んだのを確認して、ごっちんにゆっくり話し掛ける。
「…あのね、ごっちんが優しいことは前からわかってるよ。
私も…ずっとごっちんのこと、勘違いしてて…ごめんね。ごっちんのこと、すごく好きだよ」
「ふぇ?」
「だけど、“友達の好き”なんだ。それはずっと、この先も変わることはない」
私はごっちんから体を離した。彼女の目を見ると真っ赤になっていた。
「“嫌い”にはならないよね?」
「うん、もちろん」
ハンカチを差し出すと、ごっちんはそっと受け取って乱暴に涙を拭いた。
「絶対に?」
まだ訊いてくるので、『絶対』というところに力を込めて言った。
「絶対だよ。だからもう泣か…」
「じゃぁ、まだ“友達の好き”以上になる可能性もあるんだよね」
「はっ?」
いきなり豹変した彼女に面食らった私に、ごっちんは強引にキスをしてきた。
梨華ちゃんとは若干違う、唇の柔らかさ。
「んっ…ぐっ…」
逃げようと思っても意外に彼女の力は強く、私でも逃げきれない。
これはマズイ状況だと、頭の中ではわかっている。
そのうちにごっちんの舌が私の口腔内に侵入しようとした。
それだけはヤメテくれ…!!!
しかし快楽に勝てないのは人間だけじゃないような気がする。
唇を舐められて気が緩んだ私の口の中に、ごっちんの舌がするりと入り込む。
生温かくてぬるっとした感覚。
「…くっ…ふあっ…」
絶対に!!絶対にこんなエロイ声…梨華ちゃんには聞かれたくない!!!
171 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月22日(金)22時26分51秒
ごっちんに口腔を蹂躙され、脳が麻痺してくる。視界が白んできた。
数秒のうちに自分でも立っていられなくなった。
彼女はやっと私を解放し、力の抜けた私を抱きとめながら耳元で囁く。
「だらしないなぁ、よっすぃーは」
くすくすとごっちんは笑う。くそ…油断してたか…泣いてたのは演技じゃないと思うけど…。
「ねっ、よっすぃー。あたしのこと、好きになりそうじゃない?」
彼女は耳元で囁き、ぺろっと耳を舐めた。次いでうなじに顔をうずめる。ごっちんは柔らかくて温かい。
私は襲い掛かる快楽に痺れて動けなかった。
こうしてされるがままになってたらどうなるんだろう…とか、身を委ねてしまおうかとも思った。
「ほら、好きになるなら今のうちだよ?」
「うん…」
また囁かれてつい頷いてしまった。昔から、強く言われると断れない性格だから。
172 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月22日(金)22時28分04秒
しばらく経って、急に響いた救急車のサイレンに、とろけた思考が引き締まる。
「…!!」
もたれていたごっちんから再び体を離す。
「よっすぃー?どうしたの?」
ごっちんの言うことなんか耳に入らない。耳の奥で繰り返される、梨華の笑い声。
私は…何をやってたんだろう?ごっちんにキスされたくらいで気持ちが揺らぐなんて…。
「ごめんね、ごっちん。
それにはやっぱり応えられない。どんなに仲良くなっても、ただの友達なんだ」
「ちょっ…」
「じゃ、帰るから!!」
一方的に言い、私は半ば逃げるようにその場を去った。
その勢いでテレビ局を出て、最寄駅から電車に乗る。
荒くなった息を整えると、車内の広告に目が行く。
娘。の宣伝するジュースの広告。ごっちんはいつもの笑顔だ。
そう言えば、非常階段から屋内に続くドアを開けた時、後ろの方でごっちんがなぜか明るく、
「頑張れ!」
と言うのが聞こえた。次の瞬間、意味がわかったような気がして凍りつく。

…もしかしてごっちん、最初から私が断るのをわかってて…?
173 名前:インターフェロン 投稿日:2002年03月22日(金)22時32分09秒
…更新終了。だめなよしこ…でも魅力的じゃぁ!!(w


>夜叉さん
更新スピード、また遅くなりました…スマソです(哀

>167さん
こうなりました…っつうか作者がだめぢゃん(泣

>168さん
ほんとにだめなのは作者ということで…許してください(大泣

はぁ…初めてえっちぃ描写でした。
不満もあるかもしれません。
その時は未熟な作者を蹴り飛ばしてください!!(w
174 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月23日(土)04時27分39秒
さぁ妻と子の待つマイホームへ
175 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年03月24日(日)11時43分55秒
ごっつあんは、反則です。(笑
作者殿。不満はありませんよ。(w
でも、よしこには、ミカと梨華ちゃんがいるんだから、しっかりするのじゃ吉!
と、言いたい私でした。
176 名前:夜叉 投稿日:2002年03月25日(月)17時07分00秒
腰抜かしてはいけないです(爆)。がんがれ吉パパ!
もしかしてごっつぁんは確信犯なのでは?と思ってみたり(笑)。
177 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月30日(土)11時04分40秒
#5

帰り道、どれだけ溜め息をついたことか。
明日は幸運にもオフだが、明後日は午後から仕事だ。
気まずいというか恥ずかしいというか…とにかく会いたくない。
私がダラダラしていたせいで、すっかり帰宅が遅くなってしまった。
時刻は既に11時。みかは完璧に寝る時間である。梨華も起きているかどうか疑わしい。
エレベーターに乗って目的の階を急いで押す。何だか遅く感じられ、非常にイライラした。
ようやく家の前までたどり着いて鍵をポケットから出す。
鍵穴に差し込んで回すが、鍵はかかっていないようだ。例のごとん、と鍵の回る音がしない。
「ちょっと不用心じゃないかい…?」
小さく独り言を言って玄関に入り、内側から鍵を掛ける。
そっと靴を脱いで風呂場の前で止まる。風呂場の反対側にある私の元・寝室を覗く。
ドアの隙間から何とか見えた。やはりみかは寝ているらしく、幼児特有の甘い匂いがした。
少し視線をずらすと、みかの隣でベッドにもたれて眠る梨華がいた。
今は起こさない方がいいだろうと判断した私は、そっとリビングのドアを開けてそっと閉める。
テーブルの上にはラップのかかった夕飯があった。ついさっきまで忘れていた空腹感が蘇る。
「うわぁ…うまそぉ」
レンジにかけて温めたかったが、電子音で梨華を起こしたら可哀想なので、冷たいままで我慢。
178 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月30日(土)11時05分43秒
純和風の献立で、焼鮭と肉じゃがと炊き込みご飯に大根のみそ汁だ。
内側に水滴のついたラップを取り、すっかり冷たくなった肉じゃがに箸をつける。
ちょうどいい大きさのじゃがいもを口の中に入れて、思わず昇天しかける。
「やばすぎる…これはうまいッス」
続いては焼鮭。肉よりも魚が好きな私にはこだわりがあったが、それも文句なしに合格。
前よりもずいぶんと料理の腕が上がったもんだとしみじみ思う。
炊き込みご飯にはしめじと人参と油揚げ、そして春らしくしたのか、たけのこが入っていた。
「…すげー豪華じゃねぇ?」
豪華なのには驚いたが、食べてみてもおいしい。みそ汁もかつおのダシがよくきいている。
179 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月30日(土)11時07分07秒
幸せに浸りながら食べ終えて、お茶を飲みながらテレビを点ける。ボリュームは最小限に抑えた。
深夜番組でお笑いがやっているので、それを見て笑っているとリビングのドアが開く音がした。
振り返ると寝ぼけ眼の梨華がいた。
「あ、起こしちゃったかな」
「ううん…お帰り…」
「ただいま。眠たかったら、先に寝ていいよ?」
「平気…ちょっと喉が渇いて…」
いや、傍目には平気じゃなさそうなんですけど…。
梨華はあくびをしながら冷蔵庫の方に向かった。
構わずにテレビを見続けていると、ドンという大きな音がした。
変に思ってキッチンを見ると、梨華が倒れていた。血の気が引くのがわかる。
「梨華ちゃん!どうしたの!?梨華ちゃん!!」
駆け寄って体を起こし、梨華の顔をみる。と、彼女の顔は真っ赤だった。
「…何で…?」
そこで目に入ったのが、コップの半分まで入った私専用・秘蔵の梅酒。
万が一、親が来た時の為にジュースに見えるよう、偽装工作で500mlのペットボトルに入れておいたやつだ。
180 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月30日(土)11時07分55秒
「あの…これ、飲んだの?」
私の問いに、梨華はヘラヘラしながら答えた。
「うん!」
そうか…梅酒のこと、まだ言ってなかったか…本気でジュースと間違えたんだね…。
「ほら、起きて…」
「あいよぉ〜!」
返事からもわかるように、梨華は少し酔っているらしい。
見かけからして酒に弱い人だろうな、とは思っていたが、こんな微量で酔うとは…。
そんなに即効性あったっけ?この梅酒。
やれやれ、と立たせようとしたが立ってくれない。しばらく座らせておくことに決めた。
私が原液を飲んでも、こんな簡単には酔ったりしないぞ?
でもみなさん…お酒は20歳になってからですよ(泣)。
181 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月30日(土)11時13分52秒
「はぁぁぁ…情けねぇ…」
自分の使った食器を洗っている時、思っていたことをつい言葉にしてしまった。
自業自得と言われればそうなのだが。
「誰がぁ?よっさんがぁ?」
私の後ろで座り込んでいる梨華はいちいち口を出すが、舌足らずになっている。
「よっさんはヤメテ!違うよ!梨華ちゃんが情けないの!!」
「うー?何れさ」
「こんな少しの梅酒で酔っ払ってどうすんだ、って思ったの」
未だに梅酒の残るコップを濡れた手で大げさに持ち上げて見せる。
梨華は意味もなく目を丸くして、
「そぉぉぉぅ?」
と、甲高い間抜けな声を出した。私の言う意味、わかってますか?
「もういいや…酔っ払いにまともな話はしても無駄か…昔からそう言うもんね」
会話を諦め、洗い終えた食器の水気を切って拭く。
すると梨華は数秒遅れて反応した。
「…あらしが酔っ払いれすってぇぇ?しづれいね(失礼ね)!」
「あーぁ、ののよりひどい喋り方だね…ちょっとごめんよ」
私は皿を置こうと、梨華の真上にある食器棚の戸を開けた。
小皿を並べると、他の皿までがちゃがちゃと音を立てた。
182 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月30日(土)11時15分16秒
「よしっ…完了!」
シンク周りに飛び跳ねた水も拭きとってふきんを絞り、一息つく。ぴかぴかの台所は見ていて気分がよい。
料理があまり得意ではなくてキレイ好きな私としては、これくらいしか特技がない。
「梨華ちゃん、片付け終わっ…あれ?何?何で睨んでんの?」
振り返ってみると、梨華は仏頂面のみか同様に上目遣いで私を睨んでいた。
「……」
ピンク色の頬をぷっくりと膨らませた、彼女なりの無言の訴えらしい。
「黙ってちゃわかんないんですけど?ん?」
しゃがんで彼女の目線に合わせると、胸倉を掴まれた。梨華の顔が眼前に迫る。
「一緒にご飯が食べらいなって思って、ずぅっと待ってらのにぃ!!」
「え!?ってことはまだ食べてないの?」
梨華は頭を大きく縦に振った。道理でアルコールの吸収が早いわけだ。
「もぉ嫌!!」
そう言うと、彼女は私の胸倉を掴んだままガクガクと揺さぶった。
抵抗しても仕方がないので、なすがままになっている。
私は無理な体勢に耐え切れず、座り込んでしまった。景色が幾重にも重なった線のように見えた。
この時点で、梨華は『ブラックリスト・オブ・一緒に飲みたくない人』のNo.1に輝いた。
それから突然揺さぶるのをやめると、梨華がまた私を睨んだ。
「だから何なの?って…んっ!!」
凄い勢いで引き寄せられ、私はキスされた。
軽く歯と歯がぶつかり、ガチンという音が頭の中で響いた。
それにしても今日はよくキスされる日だな…。
183 名前:科学と世界観 投稿日:2002年03月30日(土)11時16分30秒
少し長めのキスだったが、ディープなものではなかった。梨華はそっと唇を離して、
「ずっと寂しかったんらから…」
と言った。ほんのり上気した彼女の顔。
酒臭くなく、梅の香りがふんわりと鼻腔をくすぐる。
今度は私が梨華をぐっと抱き寄せた。
「よっ…すぃ?」
「…私だってさ、すんげー会いたかったんだよ。ずっとこうしたかった…」
「うん…」
安心したのか、梨華は私に体を預けてきた。服の上から、彼女の体温がじんわりと伝わる。
そのまま抱き合ってどれくらい経っただろうか。
30分のような気もするし、5分だけにも思える。
ふと体を離され、いたずらっ子と同じ目で梨華に言われた。
「ねぇ、よっさん」
「だからそれはやめなさいって!」
それから彼女は潤んだ目で、
「抱いて…」
と言った。なぜか、すっかり忘れていたごっちんの笑顔が脳裏に蘇る。
184 名前:インターフェロン 投稿日:2002年03月30日(土)11時23分18秒
微妙なところで更新終了。
これからの展開…どうしようか迷います。

>174さん
マイホームですか…温かい響きだけど哀しい出来事がすぐに(略

>よすこ大好き読者さん
みんな不満だらけのはずですよ…描写が下手ですので(泣
ここの吉はだいぶヘタレにしてみました。実際はクールなんでしょうけどね。

>夜叉さん
もちろんごっつぁんは確信犯です(w
いっそエロにしちゃおうかと思いましたが…無理でした(w
185 名前:夜叉 投稿日:2002年04月01日(月)21時05分15秒
本格エ○ですか!?心の準備がまだですよ(汗汗)
でも、ごっつぁんの(略。汗
がんがってくださいね。作者様。
186 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月03日(水)01時02分31秒
あぁ、酔った石川さん可愛さ倍増です。
そんな彼女を吉澤さんは…どうなる(ドキドキ

187 名前:科学と世界観 投稿日:2002年04月04日(木)16時03分06秒
「ねぇ、お願いらから…」
私は体のだるさがとれなかった。
でもあと少しで泣きそうな顔をしながらこう頼まれると、さすがに断るのもはばかられた。
むしろこの状況はチャンスなのか?久々にチャンスってことかい?よっしゃ!!
「…わかった」
再び唇を合わせて舌を彼女のうなじに這わせる。梨華は体をピクリと反応させて私にしがみついてきた。
「んっ…よっすぃ…」
頃合を計って彼女を寝かせる。床だけど…我慢してね。
久しぶりに彼女の乳房をそっと掴むと、昔よりも柔らかくて大きく感じられて、時々漏れる喘ぎ声まで異様に私を興奮させた。
雰囲気に呑まれ、もう何も考えずに覆い被さった時だった。
「いや…だ…っ」
耳元でか細い声が聞こえ、私は動くのをやめて起き上がり、胡座をかく。
乱れた服を直しながら梨華も体を起こして、私と向き合う形になる。
「何?何が嫌なの?」
彼女の怯えた表情に思わず動揺してしまった。そんな顔をされると心臓が痛む。
「えり…」
「エリ?あ、襟ね…」
注意されるまま、シャツの襟を引っ張ってよく見ると、口紅がべったりと付いていた。
「ええぇ!?」
口紅に全く気付かなかったものだから、私は梨華よりも甲高く叫んだ。
いつ付けられたかわからないが、これはごっちんのものだ。まだ香りがふんわり残っている。
あいつめ…やりやがったな…。
「よっすぃ…ひどい…誰らのよぉ」
梨華が涙目になった。私の呼吸は速くなり、鼓動も速い。動悸・息切れに救○下さい…。
「こっ…これは違うよ!あいつだよ、ホラ…加護がふざけて後ろから…」
188 名前:科学と世界観 投稿日:2002年04月04日(木)16時05分13秒
「嘘ら!」
怪しさが言葉の端々から窺えたためか、あっさり見破られて更に動揺する私。
「んなっ、何で!?」
「口紅、前に向かって消えれんらもん…後ろから抱きつけば後ろに向かって消えるハズらもん!!」
呂律が回らなくても観察力・洞察力・思考力がクリアな彼女を羨ましく思う。
「あのっ…これ…は…」
「…誰?」
ほんの数分前までのとろけそうな表情とはうって変わって、上目遣いを通り越した睨み方がとにかく怖い。
酔いの勢いも手伝って、怒りのオーラが感じられる。
色で例えたら?もちろんピンク!全身ピンク!!
黒い肌からピンクが滲み出てるよ!!!あはははは…(以下エンドレス)
「ねぇ、誰?」
…ははは、はっ!?あああ!!そんな場合じゃないのに…もう!!!
「え、と…」
「…ごっぢんれしょ?」
何故に!!!!!どうしてわかるの!!!!!
固まっている私をよそ目に、梨華は細かく説明し始めた。
「その桜色はごっぢんにしか合わないもん。
あいぼんとかののはもっと薄赤いピンク、矢口しゃんはグロス付き…」
私は忘れていた。彼女はこういうことに関してなら非常に記憶力がいいということを。
189 名前:科学と世界観 投稿日:2002年04月04日(木)16時06分35秒
もう言い逃れられないと思い、覚悟を決めた。
視線が滑らかに床に落ち、私は梨華の顔が見えないまま話し出した。
「うん…そうだよ、この口紅…ごっちんのだよ。仕事が終わったら話があるって言われて突然…」
スパシィィィィィィィィン!!!!!!!
いきなり左頬を武蔵丸並に強く殴られ、しりもちをついて軽くパニックに陥った。
「はひゃっ!どうしたの、梨華ちゃん!?」
この状況でどうしたもこうしたもない。とっさにこんな言葉が出る私って…。
涙いっぱいの梨華を見ると、彼女は澄みきった冷たい目をしつつ、仁王立ちで私を見下ろしこう言った。
「…そんなにあらしに飽きらってーんなら、そこらへんのごっぢんとれも遊べばいいじゃない。もぉ知りゃない!!」
あの、そこらへんのごっちんって何ですか?どうでもいいけど…。
激しい痛みと理解できない捨て台詞で、私は呆けながら怒ってリビングを出る梨華を目で追うことしかできなかった。
190 名前:科学と世界観 投稿日:2002年04月04日(木)16時09分07秒
叩かれた後に放置されてだいぶ経った頃、沸々と怒りが湧いてきた。
浮気が妻にバレた夫によくありがちな感情だと思う。
とりあえず他人のせいにしたいのだ。
ごっちんが不意打ち喰らわしたこととか、こっちだって色々と事情があるんだよ。
話も聞かないで殴るのは反則じゃないスか?自分から訊いてきた癖に。
そうやって思考をめぐらすうちに悔しくなってきたので、さっさと寝ようと思った。
「…私だって知らないっつうの!!」
今更遅いが、これが寝る間際の私の捨て台詞。
夫婦になって初日からこれかよ!!
と、怒りで眠れないままメモリアルな一日が終了した。
191 名前:インターフェロン 投稿日:2002年04月04日(木)16時13分11秒
とりあえずここまで更新終了。
浮気は嘘をつきとおすものなのに…馬鹿だなぁ、パパったら(w

>夜叉さん
がんがってみましたよ。
大丈夫です、エロに辿り着かなかったので(w

>186さん
酒を飲んだら笑い上戸になりそうですね、イシカーさん。
吉、一応手は出したものの、不発に終わりました(w
192 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月05日(金)13時30分35秒
子どもを擁したら女は強いのです
193 名前:夜叉 投稿日:2002年04月06日(土)20時51分34秒
途中までいい雰囲気だったのに…(^^;;。
母は強し、と言いますからね。吉パパもがんがらないと(爆)。
194 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年04月10日(水)21時04分30秒
吉パパ正直すぎ!!(笑
>スパシィィィィィィィィン!!!!!!!
この音が、私のツボでした。(^^
195 名前:科学と世界観 投稿日:2002年04月14日(日)21時36分49秒
intermission 3

ご飯も食べずによっすぃーの帰りを待つうちに、あたしはベッドの横で寝てしまったみたい。
気が付いたらあの人は帰っていて、少し驚いた。
きっとあたしを気遣って起こさないようにしたんだと思う。
リビングをそっと覗くと、あの人はご飯を食べ終えてしまったみたいで、お茶を飲んでテレビを見ていた。
たまに笑っているけど、それが寂しそうなのは気のせい…?
目を擦りながらドアを開けると、優しい顔があたしの方に向いた。
「あ、起こしちゃったかな」
「ううん…お帰り…」
お帰り、って言ってあげると、よっすぃーはすごく照れたような表情をするの。
「ただいま。眠たかったら、先に寝ていいよ?」
「平気…ちょっと喉が渇いて…」
喉が渇いたどころか、お腹が空いて変になりそうなことは敢えて言わない。
またよっすぃーを気遣わせるだけだから。
あたしは冷蔵庫を開けてジュースらしきものを出し、ペットボトルの3分の1ほどコップに注いだ。
何だか微妙に梅の匂いがしてるけど…まぁいいか。
体の水分を補おうと一気にそれを飲むと、体が内側から温かくなって地面が右に50度くらい傾いた。
体が浮くようですごく気分がいい。
196 名前:科学と世界観 投稿日:2002年04月14日(日)21時38分11秒
「…ゃん…し…たの!?梨…ちゃん!!」
あたしを呼ぶ声がしてぼやける焦点を合わせると、よっすぃーが眉を顰めていた。
どうやらあたしは倒れたらしい。
「あの…これ、飲んだの?」
「うん!」
よっすぃーがひきつっている顔が非常に面白く感じられて、返事をする前にあたしの口元は緩んでしまった。
「ほら、起きて…」
「あいよぉ〜!」
気分が高揚して、ポジティブになれるような。
あたしが飲んだのは明らかにお酒だってわかった。
何かを諦めたような表情であの人が腕を掴むけれど、あたしは足に力が入らなくて立てない。
197 名前:インターフェロン 投稿日:2002年04月14日(日)21時42分40秒
更新終了。も…もうダメじゃ…。

>192さん
そうですね、でも武蔵丸ぐらいムキムキになってほしくはないですね(w

>夜叉さん
がんがるって…情事にですか?(w

>よすこ大好き読者さん
音がツボですか!
あの音はオカムラが知に殴られた時のを参考にしました(ネタ遅い
198 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月15日(月)22時42分50秒
梅酒くらいで…(w
199 名前:夜叉 投稿日:2002年04月16日(火)20時53分54秒
えっ!?そりゃいろんなことに(爆)。

作者様のペースで更新して下さいね、マターリお待ちしております。
200 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月21日(日)21時06分21秒
立ち直ることをお祈りしつつ待たせていただきます。。。
201 名前:インターフェロン 投稿日:2002年04月28日(日)20時25分20秒
よっすぃーはあたしに構わず、背を向けてさっさと皿洗いを始めた。
ずっと会えなくて寂しかったのに、その態度はないんじゃない!?じゃない!?
あたしがむくれてよっすぃーを睨んでいると、あの人は振り返って笑うの。
その顔が綺麗で…正直に言えば見とれて何も言えなかった。
「黙ってちゃわかんないんですけど?ん?」
無言の抗議だととったみたいで、あたしを子ども扱いした話し方で訊く。
だから、すごく照れちゃって。
「一緒にご飯が食べらいなって思って、ずぅっと待ってらのにぃ!!」
なんて心にも無いことを口走って…あの人の胸倉を掴んで揺さぶった。
それからあの人を引き寄せて、キスした。
キスがしたかっただけなのに、あたしはひねくれてる。
「ずっと寂しかったんらから…」
近くであの人の顔を見て言うと、あの人は切なそうに目を細めて、あたしを抱きしめた。
「…私だってさ、すんげー会いたかったんだよ。ずっとこうしたかった…」
あの人の体はいつも優しくて…くっついているだけで愛情を感じた。
ずっと、ずっとこのままでいられたら。
神様、あたしはいつまでこうしていられるでしょうか?
202 名前:インターフェロン 投稿日:2002年04月28日(日)20時27分03秒
「抱いて…」
あたしは焦っていた。今、
この手の中にある幸福感が逃げないように。
疲れているらしいあの人は渋ったけれど、もう一度頼むと承知してくれた。
お疲れのところ、ごめんね、よっすぃー。
あの人からキスされただけで、背筋にぞくぞくと電流が走った。
あの人はあたしの弱い所を熟知している。
頭の中はあの人のことで満たされていて、でも一方であたしは喘ぐあたしを冷静に見ていた。
本当に、こんなことをして幸福感を掴まえていられるのか?
そんな疑問が、指に刺さった小さなとげのように痛痒く、あたしを困らせる。
あの人がくれる悦びを、素直に受け止められなかったのはこの疑問のせいだと思う。
あたしは気付いてしまった。
あの人の上着の襟に、随分と見慣れた口紅が付いていたのを。
203 名前:インターフェロン 投稿日:2002年04月28日(日)20時29分20秒
『よっすぃーのこと、好き?』
仕事の休憩中に、ごっちんが突然訊いてきた。
まだ正式にあの人と付き合う前のこと。
あの人とは気が付けばいつも一緒にいたし、隣にお互いがいるのが当たり前って雰囲気だった。
でもあの人は時々、ごっちんを目で追っていたし、あたしは自信があまりなかった。
好き“かもしれない”なんて断言できないでいた。
ごっちんには何と言えばいいのか迷った。
『え…と…』
返答に困ったあたしはその時の気持ちを正直に伝えた。
『ふぅん。そ、か…』
つまらなさそうな顔をして頷くと、ごっちんはあの人のところへ走っていった。
じゃれあうごっちんとよっすぃー。
当然、あたしの目はあの人だけを追う。
その時のあたしはきっと、無関心を装っているのがバレバレって表情だったと思う。
何となく、その日以降のあたしとあの人は、離れられなくなっていた。
ごっちんは仲立ちをしてくれたと思っていた。
ある日の収録後、ごっちんとあの人がふざけあっていた。
ふとした拍子に、彼女の口紅があの人の袖に付いてしまった。
204 名前:インターフェロン 投稿日:2002年04月28日(日)20時30分38秒
『うわ!ごめんね、よしこぉ…』
『ん?いいって。拭けばそんなに目立たないだろうし』
あの人が手で擦ろうとしたので、あたしは慌てた。
『ダメだよ!手で擦ったら広がっちゃうよ!んもう…よっすぃー、袖貸して』
と、あたしがハンカチで擦ると、少し薄く残るくらいになった。
あの人の水色のトレーナーによく映える、ごっちんの桜色の口紅。
そのコントラストが印象的で、あたしはごっちんの口紅の色が密かに好きだった。
好きな色は忘れない。よく見れば、あの人の首にも口紅がついていた。
あたしはあの人の性格――強く言われると弱い――を知っている。
あの人を疑うより先に、ごっちんが強く迫ったのではないかと思った。
けれど、なぜあの人はちゃんと断れなかったのだろう。
そのことに腹が立ってあの人を張り倒し、自分でもわけのわからない言葉を吐いて寝室に戻った。
205 名前:インターフェロン 投稿日:2002年04月28日(日)20時32分51秒
それからその夜は不思議な夢を見た。
あの人の大きな手、綺麗な黒目、白い背中、微笑んだ唇がフラッシュバックして見えた。
最後にはあの人特有の低い、ものすごく落ち着く声で、
『愛してる…』
と言う声が聞こえた。
恥ずかしさのあまり、あたしは飛び起きてしまった。
あのシーンってきっと…たぶん…恐らく…。
「…欲求不満なのかなぁ…」
顔が熱いのに気付き、頬に手を当てた。
時計は7時半を示し、あの人はまだ寝ている時間だった。
「あたし…」
みかを見ると、幸せそうに眠っていた。
寝顔があの人に似ていて、とても胸が苦しくなった。
あの人を許してあげたいけれど、それはごっちんまで許すことになる。
あたしの気持ちはぐちゃぐちゃで…何もかもわからなくなった。

お願い、よっすぃー。今日だけでいいから…考える時間を下さい。
206 名前:インターフェロン 投稿日:2002年04月28日(日)20時39分55秒
生の(#´▽`)´〜`0 )は最高です!!
今気付きました…名前が間違ってましたね。
×インターフェロン →○科学と世界観

>198さん
そうなんですよ。梅酒くらいで、なんですよ。
激しく弱い方が作者は好きなので…(w

作者は缶ビール2本とチューハイ4本で二日酔いになりましたが何か?(w

>夜叉さん
どうもお待たせしました。
色んなことに…ですか。
それは参りましたね(照。謎。

>200さん
どうもお待たせしました。
鬱はどうにかなりましたので、ご安心ください。

凄い下がっているのでageさせていただきます。
207 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月29日(月)01時22分52秒
犬も食わないってやつですからね
子供のためにも早く仲直りを…
208 名前:夜叉 投稿日:2002年04月30日(火)23時13分13秒
もしやと思いますが、いしかーさんは(略。w
いえいえ、おとなしく続きを楽しみにしています。
209 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月04日(土)18時00分26秒
#6

滅多に夢など見ない私が、夢を見た。
梨華の鎖骨、滑らかなうなじ、細い太腿、不規則な息遣いが次から次へと浮かんでは消える。
終わりには切なそうな彼女の声で、
『ひとみちゃん…』
と呼ばれた。
驚いて飛び上がり、それが夢であることを痛切に感じた。
「…やっぱり欲求不満だよ…」
垂れてきた前髪を両手でかきあげて大きく息をする。
ふと、考えた。いつから名前で呼ばれなくなったのだろう。
私が梨華を抱く時しか、名前で呼んでくれない。
メンバーと一緒だとか、人前だったら必ず“よっすぃー”だった。
言葉で言い尽くせないほど、梨華のことを愛しているのに。
私はバカだ。アホだ。大間抜けだ。
「梨華ちゃぁぁん…」
もう少しで泣きそうな時、ギャーッというみかの泣き声が聞こえた。
梨華があやしてすぐ泣き止むだろうと放っといたら、いつまでも泣き止まない。
210 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月04日(土)18時01分10秒
「ちょっと…まさか…!」
慌ててリビングのドアを開けると、足に角が当たった。
声にならない痛みを我慢して寝室に行くと、みかが一人で泣いていた。
「みかぁ…」
私を見つけると、みかは両手を伸ばしたので、急いで抱っこする。
みかが必死で私の服を握りしめ、顔を胸に押し付けて泣く。
「ほら、泣くなよ…ママがいなくてびっくりしたんだよな、な?」
小さい体で大泣きするみかは、とても温かい。
リビングに戻って初めて、テーブルに上のメモに気が付いた。
『夕方までには戻ると思います。みかをよろしく。 梨華』
子供を置いてどっかに行ったんですか?あんたも親でしょうが!!!
と、半分キレたところで、原因は私だったことを思い出した。反省。
みかはまだしゃっくりをしていた。
211 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月04日(土)18時01分56秒
そして、みかにてこずる私。
おしめを替えるのにも一苦労。ご飯の時は遊んでばっかりで食べてくれない。
怒れば泣くし、たまったもんではない。
「頼むよぅ…みかぁ…」
母親は大変だ、と梨華を想った。単に私が慣れていないせいもあるが。
そろそろ夕方になり、梨華が帰ってくるのではないかとそわそわしてしまう。
「ぱぁぱ!」
「ん?」
既に“パパ”と呼ばれることに抵抗は無くなった。
みかを見ると、抱っこを要求していた。抱き上げると、外を指差した。
「何?お外に行きたいの?」
「うー!」
私のジャージの上着をみかに掛けて玄関を出る。
「うわ…すげぇ空…」
夕方はオレンジとか、赤の類の色だと思っていたが、珍しくピンク色の空だった。
「みか、この空の色はね、ママの好きな色だよ」
みかは空を見上げてキャッキャッと喜んだ。
212 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月04日(土)18時04分40秒
マンションを出ると、梨華がいた。
多分、私の部屋を見上げて、じっとしている。
その横顔が綺麗すぎて。どうにかなりそうだった。
「ままぁ!!」
急にみかが梨華を呼び、私は必要も無いのに焦ってしまった。
梨華がこちらを向く。
いつものような柔らかい笑顔。
本来の彼女の顔はこんな風に優しいのだと思った。
でもそれは一瞬のことで、彼女は影のある顔で下を向いた。
私は梨華に近づき、
「ねぇ、帰ろう?」
と言うと、素直に頷いた。
エレベーターまで、梨華は私の一歩後ろを歩いた。
エレベーターに乗り込んでほっとしたのも束の間、やはりどこか気まずい。
その雰囲気は帰ってからも続いた。
晩ご飯は何も言わずに梨華が作ってくれた。
料理の間、私とみかはリビングでテレビを見ていた。
近頃の教育テレビでは大人の使う単語も沢山使っている。
会話の一つも無い梨華を盗み見たいのを我慢して、テレビに集中しようと努力するが、全く無駄だった。
「ご飯、出来たよ」
小さく言われたので、梨華に集中してなければ聞こえなかった。
みかと一緒に座ろうとすると、無言でみかを引き離された。
「あ、えっと、いただきます…」
「どうぞ」
人生一気まずい晩ご飯、スタート。嫌過ぎる…。
213 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月04日(土)18時05分50秒
メニューはたらこスパゲッティ、粉ふきいも、ゆで卵入りのサラダ。
気になったのだが、なぜかゆで卵が切られずにそのままドンと置いてある。
みかは市販の幼児用トマトリゾット。
みかが一生懸命スプーンを握って食べようとしているが、どうもうまく食べられない。
それなのに梨華は一切手助けせず、淡々と食事をしている。
「あのぅ…みかが…食べられてないんだけど…いいの?」
私が遠慮がちに尋ねると、梨華に睨まれた。
「いいの!!この子は誰かに似て、甘やかすととことん甘えるんだから」
「ああ…はい、すいません…」
梨華ちゃん、最強に怒ってるよ…。
ご飯が終わっても非常に気まずい。
むしろ、さっきよりも気まずい。
214 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月04日(土)18時06分44秒
みかと遊んでいて、どうしたら仲直りできるか考えていた。
突然ごめんねのキス→張り倒されてお終い。
土下座で謝る→無視されてお終い。
ダンナの浮気は当然だと逆ギレ→家出されて本当にお終い。
ずっと最悪なパターンが頭の中を巡っている。
これではいけない。
まずは無難に会話から。
「ねぇ!梨華ちゃん!!」
「なっ…何よ、大声出して」
しまった…緊張しすぎた。
驚かしては逆効果。もっと優しく。
「あのさ。お風呂、もう入れる?」
この優しさあふれる素敵な言い方はどうだ!
「入るんだったらみかも入れてください。準備は整ってますから」
ダメだ…敬語を使っている時点で希望は減った。
風呂にみかと入るのは初めてだし、どう入れていいかわからない。
あまり熱いと騒ぐし、ぬるくても嫌がるし…また一苦労だ。
どうにか暖まって風呂から出ると、みかが眠そうに欠伸をしたので、寝室へ運んで寝かしつける。
これはうまく行った。
おずおずとリビングに入る。
梨華は私に背中を向けてお茶を飲んでいた。
215 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月04日(土)18時07分51秒
「梨華ちゃん…」
名前を呼んだら、梨華がリビングを出ようとした。
私はとうとうキレた。
「…逃げないでよ」
彼女の手首を掴んで言う。
「逃げてない。離してよ」
私はそのまま離さないで無言だった。
「ちょっと…離してよ、ねぇ!」
「…嫌だ」
「え?」
「嫌だ。好きだから、離したくない。隠すことなんてないから離したくない」
私という人は、言いたいことがうまく言えない人らしい。
「それに…手ぇ離したら絶対に逃げるもん」
「何であたしが逃げるのよ!!あなたにはごっちんがいるんでしょ!?だったらあたしなんか…」
まだそんなことを言うので、私は怒鳴った。
「バカッ!!!」
梨華の体がビクッと動く。私は彼女を引き寄せて、強く抱きしめた。
「もう離れるのは嫌なんだよぉ…」
迷子になった子供のように、私は梨華を抱きしめて泣いた。
泣くまいと思って我慢していた涙が、この時ばかりは止められなかった。
梨華も私の背中に手を回した。
しばらくそうしていて、梨華がゆっくり口を開いた。
「あたしだって…同じだよ…」
「うん?」
そっと体を離すと、梨華の目に涙がうっすらと浮かんでいた。
216 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月04日(土)18時08分50秒
「あたしも、離れるのは嫌だよ…?もう、浮気したって怒らないから…あたしだけを見ててよ…あたしもあなただけ、見てるから…」
梨華の目を見て頷くと、自然に唇が重なった。
すると、梨華の方から舌を入れてきた。
私も応じて、舌を絡める。
お互いの唾液が混ざり合い、口の端からつうっと流れる。
時おり聞こえるぴちゃぴちゃという音に、興奮が高まった。
「ぅぎゃぁぁぁぁ―――っ!!!」
「「!?」」
突然響いたみかの泣き声。
「んやっ…だっ!」
梨華は私を突き飛ばしてリビングを去った。
私は勢い余って冷蔵庫に頭をぶつけてしまい、座り込んでしまった。
口元の唾液を拭って独り言を言う。
「チッ…またいいところで邪魔が…!!」
今度は私のせいではない。梨華がみかを抱いて戻ってきた。
みかの口にタオルを当てている。
「大きな声出さないで…お願いだから…」
困っている梨華に、一言。
「梨華ちゃん、口によだれがついてるよ?」
「…バカ!!!」
梨華は真っ赤な顔でごしごしと手の甲で拭いた。
みかの夜泣きは止まらず、結局私たちが寝たのは午前2時だった。
学校があるのに…恨むぞ。
217 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月04日(土)18時09分45秒
intermission 4

あたしは家を出て、どこに行くでもなく街の中を彷徨った。
行き交う人々。排気ガスが臭い。
やっぱり行く場所なんてわからなくて、マンションの周りをうろうろしていた。
マンションの右の上り坂を行くと、少し高台の公園がある。
そこのベンチでしばらく思い出に浸っていた。
確か、この公園であの人と初めてキスをしたんだっけ。
仕事帰りに家に呼ばれて、見せたいものがあるから公園に行こうって連れて行かれて…あの日は凄く寒かった。
『何?寒いから早く帰ろうよぉ』
『いや、もうちょっとのはずなんだけど…あ!』
『え?』
あの人が指差した先には、冬には珍しく花火が上がっていた。
『見せたいものって…あの花火?』
『そう。冬に見る花火だよ!』
夏に見るのと違った風情があったので、あたしは見とれていた。
ふと、急に目の前が暗くなって、気が付いた時にはあの人にキスされていた。
あの人はすぐに離れて、花火をじっと見ていた。
その顔が真っ赤に見えたのは、花火のせいだけではない。
『よっすぃ…』
『あの、名前で…呼んでほしいなぁ、なんて…』
前を向きっぱなしでそう言うあの人は、可愛かった。
『ひとみちゃん?』
名前で呼ぶと、照れたようにゆっくりとあたしに向かって、
『…何?』
と言った。見つめあって数十秒。
あたしたちはまた、キスをした。
218 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月04日(土)18時10分46秒
気が付くと、小さな子供を連れた母親たちが帰路につくところだった。
もう夕方で…みかの為にも帰らないわけにはいかなかった。
マンションの前まで来て、今更あたしは躊躇った。
あの人の部屋を見上げて、あたしは本当に帰っていいのか、迷った。
「ままぁ!!」
みかの声がして、あの人が歩いてきた。
みかにてこずったみたいで、少し疲れている顔。
「ねぇ、帰ろう?」
その言葉が懐かしく耳に響いて、あたしは素直に頷いた。
しかし帰ってからも気まずい。
昨日の雰囲気をどう壊していいかわからない。
「ねぇ!梨華ちゃん!!」
あの人がいきなり呼ぶから、あたしは驚いた。
あの人も気まずいのに耐えられなかったらしい。
「なっ…何よ、大声出して」
せっかく話し掛けてくれたのに、どうしてこんな言い方をしたのか。
「あのさ。お風呂、もう入れる?」
「入るんだったらみかも入れてください。準備は整ってますから」
あたしは、もしかしたらあの人よりも数倍は不器用かもしれない。
みかとあの人がお風呂に入っている間、またあたしは考えた。
いつあの人を許したことを伝えようか…と。
あの人はモテるし、浮気のひとつやふたつ、いちいち気にしていては身が持たない。
そしてお風呂から出てきたあの人が、リビングに入ってきた。
反射的に、あたしはその場を去ろうとした。
219 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月04日(土)18時11分42秒
「…逃げないでよ」
あたしは手首を掴まれた。
「逃げてない。離してよ」
やっぱり意地を張ってしまう。
「ちょっと…離してよ、ねぇ!」
嘘。離して欲しくない。
「嫌だ。好きだから、離したくない。隠すことなんてないから離したくない」
浮気のこと、隠そうとしなかったあの人。
そのことに初めて気が付いた。
「それに…手ぇ離したら絶対に逃げるもん」
図星だったので、あたしは気持ちとは裏腹に言葉が怒っていた。
「何であたしが逃げるのよ!!あなたにはごっちんがいるんでしょ!?だったらあたしなんか…」
そんなことを引き合いに出すあたしは卑怯です。
「バカッ!!!」
あの人は怒鳴り、あたしを引き寄せて、強く抱きしめた。
「もう離れるのは嫌なんだよぉ…」
シャンプーの匂いにそっと包まれた。
あたしもそこでやっと正直になれた。
気持ちを伝えると、どちらともなくキスをした。
今日はみかの子守りをしてくれたお礼も兼ねて、あたしから舌を絡めた。
しかしいいところでみかが夜泣きを始めて、あやしたり何だりで、あたしたちが寝たのは午前2時。
220 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月04日(土)18時12分48秒
その後、またあたしは夢を見た。
公園の砂場で遊ぶ幼いあたし。
隣にいるのは幼いあの人。
ふいにあの人は急にどこかへ走り出して行く。
『待って…待ってよぉ!!』
あたしも追いかけるけれど、ちっとも追いつかない。
そのうちに距離は広がって、とうとうあの人を見失った。
『離れるのはもう嫌だって…言ったじゃない!!』
あたしは泣いて、その場にしゃがみこむ。
すると、肩を叩かれた。
振り向くと中澤さんだった。
『もう時間やで…』
やめて…まだあたしはあの人とみかと、一緒にいたい。
何であたしとあの人を引き離すの?
あたしはあの人と一緒にいてはいけないの?
あたし…あたし…あの人を…。
ゆっくり瞼を開けると、目の前が揺らいでいた。
瞬きをすると、涙が横に流れた。
「嫌な夢…」
夢だと思いたい一方であたしは確信した。
これは夢ではなく、はっきりとした予感だと。
そしていきなり、
「梨華ちゃぁぁん!!遅刻するぅぅぅ!!!」
ドンドンとドアを叩いてあの人が叫ぶ。時計は7時を指していた。
「…あ!!ごめんね、よっすぃー!!」

あたしはあの人が、何にも気付かなければいいと思った。
221 名前:インターフェロン 投稿日:2002年05月04日(土)18時19分07秒
ゴールデンウィークの大漁更新。
だいぶ長い間書いてなかったので、せめてものお詫びです。

>207さん
犬どころか、この二人の喧嘩はアリクイでも喰いません(謎
つらいですよね、親がケンカしていて挟まれる子供の立場は(w

>夜叉さん
おや、夜叉さんも埼玉に?
そしてイシカーさんは…なんでしょう?(w
フフ…続きどころか…(略

少しずつですが終わりに近づいてきました…はぁ。
でもこのスレで終わるかなぁ?(w
222 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月04日(土)20時57分23秒
親子三人ずっと一緒に居てほしいなぁ…
223 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月04日(土)23時41分36秒
さまざまなドタバタがあるけどこの幸せな親子の行く末は…
やはりトラブル発生となるのでしょうか。
224 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月05日(日)17時31分05秒
7時に家を出ようと思ったら、7時に起きた。
「はっ!ヤバッ!!」
焦って梨華を起こしに行く。
「梨華ちゃぁぁん!!遅刻するぅぅぅ!!!」
半泣きで叫んだ。何しろ、遅刻・早退が多くて進級が危ぶまれているのだから。
原因はそれだけじゃなくて成績のこともあるけれど…。
「…あ!!ごめんね、よっすぃー!!」
部屋の中からは慌てて起き上がる気配がした。
私は急いで制服に着替え、鞄を持って洗面所に行き、顔を簡単に洗う。
髪を素早く梳かして出かけたいところだが、側頭部の寝癖が直らない。
「…っくしょぉ!」
乱暴にジェルを塗りつけて梳かし、ブローをする。
すると、梨華が弁当の包みをふたつ――青いのと黄色いのを――持ってきた。
寝起きで辛かろうに、眠そうな顔をしながらも速攻で弁当を作ってくれたとは、非常に嬉しい。
「これ、朝ご飯とお昼ご飯だよ。黄色いのが朝ご飯だからね」
そう言うと鞄を開けて包みを入れてくれた。
「あー、ありがとう!よし、髪はオッケー!!」
玄関で革靴を履く。
背を向けたままで尋ねる。
「みかは?まだ寝てるよね」
「うん…」
225 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月05日(日)17時32分00秒
振り向いて『行ってきます』を言おうとすると、梨華が自分の頬骨のあたりを人差し指で指した。
「よっすぃー、目ぇ閉じて。まつげが目の下にあるの」
「ん?あ、はいはい」
目を閉じ、取ってもらうのを待っていると、キスされた。
まつげはフェイントだとわかり、目を開けるが早いか、梨華はパッと顔を離し、
「えへへ…」
と笑った。
顔が赤くなるのがわかる。
照れ隠しにまくし立てるように言う。
「あのっ…今日は、学校が終わったら仕事に行くから、帰りは遅くなるよ。ご飯、先に食べてていいから」
「了解!」
ニコニコと敬礼をする梨華はやはり可愛い。
「じゃ、行ってきまーす!」
「いってらっしゃい!」
元気に飛び出たが、体がだるい。
何故だろう?
梨華と再会した日くらいからだるさは続いている。
226 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月05日(日)17時33分29秒
学校までは待ち合わせ時間も含めたら、1時間ちょっとかかる。
余裕を持って着かないと、下手をすれば遅刻扱いだ。
駅まで猛ダッシュ、タイミングよく来た電車に飛び乗り、大きな駅で降りてバスに乗る。
待ち合わせ時間を我慢してバスに乗れば、どうにか学校に着く。
8時半ギリギリだ。
下駄箱から早足で教室に入って自分の席に座る。
すぐにHRが始まったので、梨華の作ってくれた朝食は1時間目と2時間目の休み時間に食べることにした。
黄色い包みを解いて中のタッパーの蓋を開けると、ベーグルとゆで卵が入っていた。
卵が少し冷たかったので、冷蔵庫にストックを置いてあったのだろう。
何にしろ、梨華の作るものはおいしい。
昨日の晩ご飯は味わう余裕が無かったが…。
私には珍しく集中して午前の授業を終え、青い包みを解くとこれもタッパーで、中身はおにぎりが3つ。
「朝はパンで昼は米かい…ま、文句は言えないけど」
苦笑しながらも食べていると、3つとも具が違うことに気が付いた。
梅干と、たらこと、おかか。
あんな短時間でよく作れたものだ。
母親になると変わるって本当だなぁ。
227 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月05日(日)17時34分50秒
午後の授業は体育があったので、時間が早く感じられた。
帰りのHRを済ませたら仕事が待っている。
校門に向かって歩いていると、事務所の車が迎えに来ていた。
「そんなわざわざ…」
その時、私は気付いてしまった。
胸の奥に隠れていた疑問に。
「何で…?」
私はマネージャーが制するのもきかず、嫌な予感に急かされるまま走った。

帰ろう。帰るんだ。梨華のいる、あの家に。

ねぇ、梨華ちゃん。

『わざわざ』みかが1歳になるのを待って私の前に現れたのはどうしてなの?
228 名前:インターフェロン 投稿日:2002年05月05日(日)17時41分05秒
クライマックスっぽくなってきました。
このスレだけで終わらなかったらどうしましょ。

>222さん
ずっと一緒にバカップ(略)&親バ(略)しててほしいですね。
ラストを書いて荒らされるのは覚悟してます(w

>223さん
末はトラブル…うーむ。
トラブルというより石川さんって何者!?って感じですね。

まだ稚拙な文章なので、
「これは何が言いたいんじゃ!!」
と、わかりづらいところがあったら是非質問してください(w
229 名前:夜叉 投稿日:2002年05月05日(日)22時49分00秒
ぬぬ、なにやら大変なことになりそうですな。
分かりました、ここは黙って続きを見守るですよ。
230 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年05月06日(月)10時14分34秒
いったい何がおこるんだ。
231 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月06日(月)13時52分31秒
んあ??なんか大変なんだ!!
どうなるのか、ドキドキしてまってます。
232 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2002年05月10日(金)23時38分42秒
なんかものすごい急展開!!
ついに次回、梨華の隠してることや、みかの謎がわかるんでしょうかね!?
233 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月19日(日)21時10分59秒
intermission 5

あの人を送り出すと、急にあたしは寂しくなった。
それは異常なまでにあの人への想いを募らせて、あの人の布団を干そうとした時に胸が苦しくなった。
みかにご飯を食べさせている時も苦しかった。
みかはあの人によく似ているから…。
あの人に関係する全てのものをもってしても、この寂寥感は消えない。
「ま、ま?」
3時半を過ぎ、学校が終わった頃、膝の上のみかはあたしにくっついて離れようとしない。
何をするでもなく、飽きずにあたしにしがみついている。
テレビにも興味はないらしい。
「ん?なぁに?」
掃除をしなければいけないのに、何も出来ずにみかと遊ぶことが、今日はやけに大事な気がした。
「ま、ま!」
「わけわかんないよぅ…ね、買い物行かない?」
「うー!」
そのままみかを抱いて買い物に行く。
この3日間で、あの人の苦手な肉類は少し避けてきたけれど、そろそろメニューのバリエーションにも困ってきた。
「ま、いっか…」
今日は簡単に、鯵の干物で。
234 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月19日(日)21時12分31秒
1時間後、帰宅して冷蔵庫に生ものを入れていると、インターホンが鳴った。
「あれ?誰だろう…」
モニターを見なくても、すぐにわかった。
「梨華ちゃん!!いるよね!?開けて!!」
あの人の声がした。ドアを叩いて、よほど急いでいるよう。
でもどうして帰ってきたの?仕事は?どうしたの?
「はいはい、今開けるから…」
鍵をはずすと、制服姿のあの人は凄い勢いでドアを開けて入ってきた。
息を切らせて、肩を大きく上下させて。
「よっすぃ…?どうしたの?仕事があるんじゃ…」
「梨華ちゃん!!」
あの人が遮って、真剣な眼差しであたしを見る。
「聞きたいことが…あるんだ…!話そう、頼むから」
言うや否や、あのひとはあたしの手首を強く掴んでリビングに引っ張っていく。
あたしは鳥肌が立った。
今までにあの人のこんな怖い顔、見たことがなかった。
またも、嫌な予感が脳裏を掠める。
「痛い…よっすぃー!痛いから放して!!」
リビングに入り、あたしはあの人の手を払った。もしかして、という焦燥感がそうさせた。
「何で帰ってきたの?仕事があるんじゃないの?」
「いいから!!聞きたいことがあるの!!」
あの人の後ろにいるみかがきょとんとした顔であたし達を見ている。
「ねぇ…」
急に落ち着いた声に、あたしが視線を戻すと、あの人は今にも泣きそうだった。

神様…?もうこれ以上、意地悪しないで下さい…。

235 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月19日(日)21時14分00秒
#8

夢中で走って帰ったから、どこで鍵を落としてきたかわからない。
鍵には梨華と一緒にお忍びで行った、ディズニーシーで買ったミッキー(梨華はミニー)のキーホルダーが付いていたのに。
マンションに着くと、エレベーターがちょうど行ったばかりだった。
焦る私は階段を昇った。
このマンションは階段が多い。駆け上るとどんどん足が重くなり、バカみたいに息が上がる。
バレーボールもやっていて、前は簡単に2段飛ばしもできたのに、いつからこんなに筋力が落ちたのだろう。
そしてもう1階というところで、つま先が段に引っかかり、つんのめった。
何だかわからないが、悔しくてたまらなくなった。
「…っくしょぉ!!」
へとへとになって部屋の前にたどり着く。休む間もなく、私はドアを叩いて梨華を呼ぶ。
ドアを開けた梨華は困惑していたが、構わずにリビングへ連れて行く。
みかが驚いた顔で私を見た。
「よっすぃー!痛いから放して!!」
梨華が叫んで、ようやく私は落ち着いた。
仕事のことを言ったので、非常にいらいらした。
今はそんなことを気にしている場合ではない。
「いいから!!聞きたいことがあるの!!」
梨華が言いかけたのを遮ると、私は自分を抑えるようにゆっくり訊いた。
「どうして、みかが1歳になってから、私のところに来たの…?」
「それ…は…」
答えられないのか、目線を泳がせて俯く梨華。
236 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月19日(日)21時14分59秒
私は珍しく、急かしたいのを辛抱した。すると、電話が鳴った。
留守電にしていないので、ずっと鳴り止まず、仕方なく出る。
「はい、もしもし!!」
邪魔をされてしまい、半分は相手にあたる口調になった。
「何や?何をそんなに怒っとるんや?」
「な…中澤さん…」
彼女の名前を口にした時、梨華の体がビクッと動いたのは目の錯覚か。
「何ですか?今、ちょっと取り込み中なんですけど」
「アホ!!あんた、仕事もせんと家に帰っとんのやろうが!!」
「あ…すいません…」
「ま、ええわ。そんでな、これは緊急の電話や。あんたにまず知らせとかんと、って思うて」
何だか中澤さんのいるところがうるさい。
電話の鳴る音とか、男の人の叫ぶ声とか。
「うちも驚いて、だいぶパニックになっててん。落ち着いて、よう聞き」
「はあ。何です?」
中澤さんは大きく息を吸ったようだった。それから、低い声で言う。
「石川の死体が…見つかった」
237 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月19日(日)21時28分16秒
ますます深まる謎。
死んでんのかよ!って感じですね。

>夜叉さん
見守ってください、このカップルの行く先を(w

>いしごま防衛軍さん
あ!初めましてですよね?どうもです。
まだ全貌は解き明かされません…申し訳。

>よすこ大好き読者。さん
お待たせしました!今回はかなりビクーリすると思います。

>ラヴ梨〜さん
ラヴ梨〜さんも初めましてですよね?どうもです。
ごめんなさい…まだ明かされないんです…
もう少し!!もう少しなのにィィィ!!

私事でひどく恐縮なのですが、もうすぐ中間テストなので更新はやや遅くなると思います…。
遅かったら来週の水曜日までないと思います…ごめんなさい…。
238 名前:インターフェロン 投稿日:2002年05月19日(日)22時55分00秒
名前…間違えました…。
239 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月20日(月)01時24分02秒

またもや思ってもいなかった展開に……。
中間テストガンガレー
240 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年05月21日(火)00時17分13秒
なっなんということにいったいどうなってんだ!!
ああ二人は幸せにならんおでしょうか?では今の梨華たんはいったい!!
ちゃんとお買い物ができるから幽霊ではなさそうですな。
どんどん謎が深まる。
241 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月22日(水)19時00分29秒
はいぃ??カナーリビクーリしてしまって、頭が真っ白ですが、何か?
すげー心臓バク×2しています。
242 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月26日(日)20時35分20秒
「…はい?」
言われたことが素直に信じられなかった。
「あのな、よっさん。もう1回言うで。ほんまによう聞き。石川の死体が見つかったんや」
中澤さんが真剣に嘘をついているのではないかと思った。
私が苦笑しながら、
「そんなわけないですよ、中澤さん。エイプリルフールじゃあるまいし」
と言うと、中澤さんは怒った。
「この阿呆!!しっかり現実を受け止めんか!!!」
受話器を少しばかり耳から離す。
ふと梨華を見ると、いつものように眉毛を八の字に下げていた。
その顔がいつになく切なそうで、私は何となく彼女に背を向けた。
「だって、梨華ちゃんは、今ここにいるんですよ?死んでるなんてこと…」
笑いながら言った時、目の端を何かがさっと通過していくのが見えた。
手を伸ばしても、一瞬だけ遅かった。
「…ごめんなさい、中澤さん!!また後で!!!」
なぜ梨華が逃げる必要があるのだろう。
何もかもわからなかったが、追いかけないと、と思った。
もう玄関のドアが開く音がする。
「コラ!よっさ…」
中澤さんが言いかけたのも構わず、私は受話器を乱暴に置いて走り出す。
玄関を出て、エレベーターが動いているのを見る。
梨華が乗っているのだと確信した私は、またも階段を使う。
243 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月26日(日)20時36分18秒
不思議だった。
心臓が壊れる程、ダッシュで帰ってきて疲れているはずなのに、止まろうとは思わなかった。
むしろ体の痛みも感じないようだ。
勢い余ってコンクリートの壁で手を擦ったのにも後で気付いた。
それだけ夢中だったのだろう。わけもわからず、対象を追いかけることに。
あと2階、というところで梨華が道路に出て、マンションの裏の上り坂へ走って行った。
私も道路に出て、同じ方向へ。管理人さんが驚いた目で見ていたけど、無視。
どこへ行くのか察しがつかないが、彼女の後を追い、ひたすら走る。
距離の開いた梨華の後ろ姿は非常にか細くて、ごく普通の女の子。

彼女は何を隠している?

迷子になった時の、いなくなった母親を想うような、もどかしい寂しさにかられた。
余計なことは考えないで、上り坂の苦痛を我慢する。
こりゃ、明日は完全に筋肉痛だな。
坂を登りきると、高台になっている公園の階段が見えた。
あそこは確か、初めて梨華とキスしたところ。
どきどきして、どんな感じだったかもうろ覚えだ。
ただ、キスした後の、照れた梨華の笑顔だけが微かに残っている。
梨華は…この場所を憶えていたらしい。
244 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月26日(日)20時37分18秒
公園は少し山になっていて、頂上からは街が見下ろせる。
傾きかけた日が美しい朱色を空に溶かす。
小さな山の頂上に着くと、梨華は私に背を向けたままようやく止まったのが見えた。
彼女を見ながら遅れること約30秒。
膝に両手をつく。
立ち止まった梨華に声をかけようと思ったが、喉が乾燥して声が出ない。
喧騒の一切聞こえない、公園。荒い呼吸音が私たちの周りを囲んでいる。
「…よっすぃー、ごめんね…」
梨華はあれだけ走ったというのに、ずいぶんと呼吸が落ち着いている。
夕方のひんやりした空気とは反対に、私の体は熱をどんどん上げていき、汗をしっかりとかいていた。
唾液をゆっくり飲み込んで喉を濡らしてから、私は返事をした。
「全部、話してもらえないかな…?」
怯えたようにそっと振り向く梨華。
次から次へと彼女の目から涙が落ち、鎖骨のあたりに染みをつくっていく。
そんな顔をする程、つらいことなのだろうか。
いや、いい。全て受け止める覚悟はできている。
「頼むよ、梨華ちゃん…」
すると梨華は目を閉じた。
そのままじっとしていると、目の前の景色がテレビの砂嵐のように歪んできた。
目がおかしくなったかと思って目を擦るが、砂嵐は変わらない。
だんだんと砂嵐に支配されて怖くなると、梨華の声がした。
「あたしの身に起きたこと…これからよっすぃーに見せるね…」
限られた視界の中、梨華は寂しそうな顔で私を見ていた。
245 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月26日(日)20時38分52秒
intermission 6

電話が鳴って、嫌な予感がした。
でも、出ないで、なんて言う前にあの人が受話器を取った。
相手は中澤さんで、ますます不安は強くなった。
あの人はやっぱり仕事をサボったみたいで、怒られたみたい。
「…はい?そんなわけないですよ、中澤さん。エイプリルフールじゃあるまいし」
突然、あの人はそう言った。
『この阿呆!!しっかり現実を受け止めんか!!!』
あたしにもわずかに聞き取れた、中澤さんの怒声。
あの人は耳から受話器をずらし、あたしを見た。
あの人の頭の上にはクエスチョンマークが浮かんでいた。
あたしと目が合うと背を向けてしまった。
そうしてあの人はこう口走った。

「だって、梨華ちゃんは、今ここにいるんですよ?死んでるなんてこと…」

あたしの中の何かが音を立てて崩れた。
何も知らないあの人の傍を、あたしはすり抜けて逃げた。
逃げる理由はひとつだけ。
あたしがここに来たことを、考えて欲しくないから。
急いでエレベーターに乗り込んでから、みかのことを思い出した。
こんなことなら、もっと抱きしめていればよかった、と。
246 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月26日(日)20時39分47秒
1階に着いて、マンションの前の道路に出る。
体は自然と、昨日も行った公園の方に向かった。
そろそろ、走っているのもつらくなくなった。
公園の中の小さな山の頂上。あたしはそこで立ち止まった。
あの人はきっとあたしを追いかけてくるし、
遅かれ早かれ、あたしのことを話さなければならなかったのだ。
少しして、あの人はあたしに追いついた。
不規則で苦しそうなあの人の呼吸。
振り向くと、汗をびっしょりかいていて。
「…よっすぃー、ごめんね…」
色んな意味を含めて、あたしは謝った。
これからあの人は、耐えがたい真実を聞かされることになる。
でもあの人は全部話して欲しいと言った。
あたしがまごついていると、ダメ押しのように一言。
「頼むよ、梨華ちゃん…」
あの人の眼差しに、全てを話す覚悟を決めた。
247 名前:科学と世界観 投稿日:2002年05月26日(日)20時45分41秒
ここまでです。中途半端でごめんなさいです。
明日は暗記科目なんでキレそうです。

>名無しさん
ありがとうござーます。
がんがって赤点とらないようにします。
>いしごま防衛軍さん
笑はて〜許して(和田ア(略
ってな状態です(?
梨華さんは何なのか…作者もわかりません(ぉぃ
>よすこ大好き読者。さん
まだひっぱります…ごめんなさい…
救心、いりますか?(w

いいかげんにひっぱりすぎですね、マジスマソ。
248 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2002年05月27日(月)00時37分34秒
どうなってるんでしょう…混乱…
とりあえず死んでいたことがショックすぎる(悲)
ハッピーエンドは待っていないのだろうか…
249 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年05月27日(月)00時54分13秒
いったい梨華たんにはどんな謎が隠されているんだろうか?
気になる。マターリ待ってますよ。
250 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月27日(月)23時53分09秒
救・救○ください!(w 心臓が、バクバクしております。
どういうことなんだYO!
続き、またバクバクしながら待っています。
251 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月29日(水)01時10分09秒
初レスです。
しばらく来てなかったら急展開でビクーリしました。
続きお待ちしてます。。。
252 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月03日(月)23時28分21秒
石川もクローンか・・・微妙。
253 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月04日(火)20時11分46秒
>>252
ゴルァ!!ネタばれだよぅ
254 名前:過去 〜潰された日常〜 投稿日:2002年06月06日(木)19時32分46秒
あたしはあの日、仕事が終わって事務所の車に乗り、マンションの前まで送ってもらった。
あの人とは方向が違うから、テレビ局で別れてしまったけれど。
翌日は学校があるのに、あたしと一緒にいると言ってきかなかった彼女。
そんなことを思い出して笑いそうになった時だった。
「最近は本当に物騒な事件が多いよなぁ…」
マネージャーはどこか遠い目で言った。
どう返事をしていいものかと考えていると、
「石川も気をつけろよ。いつどこでどんな事件に巻き込まれるか、わかんないんだから」
彼は、マジでさ、と付け加えた。
「大丈夫ですって。いざとなったらこうしてやりますよ!」
ボクシングが好きなあの人の真似をして、拳を前に小さく突き出すと、マネージャーは笑った。
「そりゃ頼もしいこった」
「あ!バカにしてるでしょ?」
お互いに笑い合ったところで、ちょうどマンションに着いたので、あたしはお礼を言い、車から降りた。
255 名前:過去 〜潰された日常〜 投稿日:2002年06月06日(木)19時33分38秒
車を見送ってマンションに入ろうとすると、タイミングよくあの人からメールが来た。
『今日は梨華ちゃんといたかったのになぁ〜。明日の午後まで会えないし』
ふふふ。いつもはクールなのに、どうしたんだろう。
返信のボタンを押そうとした瞬間。
背後からあたしの口にハンカチが当てられ、羽交い絞めにされた。
ハンカチ…薬の臭いがする…!
パニックになって、持っていた鞄ごと、やみくもに腕を振り回してみるが、全く効果はない。
すると、もう2人――目出し帽にゴーグルで、完全に顔はわからない――があたしの足を押さえつける。
どんなに叫んでも、ハンカチの下からはくぐもった声しか出なかった。
暴れたのがいけなかったのか、気化した薬品を大量に吸い込んでしまい、目の前が白んできた。
耳の奥で聞こえた。
『石川も気をつけろよ』という、マネージャーの声。
そして。

『梨華ちゃんと一緒に帰らせてくださいよぉ〜!!』

…よっすぃー…。

気を失う前に見えたのは、あの人の、笑顔。
もちろんそんなものは、幻覚でしかない。
256 名前:過去 〜潰された日常〜 投稿日:2002年06月06日(木)19時34分29秒
あたしが再び意識を取り戻すと、どこかの公園のベンチに寝かされているのがわかった。
何時かはわからない。
今は夜だということだけ。
寒気を覚えて、ようやく着ていたものがボロボロなのに気付いた。
しかも下着は上下ともない。
太腿のあたりがべとべとする。
下半身が…痛い…。
まさか、と震える体を起こして辺りを見回すと、そこは、あたしがあの人に告白した場所で。
急激な吐き気を感じ、あたしはその場で吐いた。
空っぽの胃からは胃液しか出てこない。
やがて胃液も底をつくと、空気を吐き出す嫌な音がした。
「う…うえっ…」
ふらつきながら水飲み場へ行き、まずい水を胃に流し込んでうがいをする。
口腔内にまとわりつく酸っぱい胃液と唾液を、水と共に吐き出して何回目か。
あたしは決めた。

早く…出来るだけ早く娘。を脱退しよう、と。
257 名前:過去 〜潰された日常〜 投稿日:2002年06月06日(木)19時35分12秒
あの人には、嘘をついた。
その際に色々とあったことは、もう言わない。
学校に行っていないあたしの言葉を、誰もが素直に信じた。
そして1ヶ月先のスケジュールも無視した、早めの脱退。
それまでのあたしは苦しくて、どうにかなってしまいそうだった。
身に起きた出来事のショックをひた隠し、明るくふるまって。
薬はあの後、多めに飲んだ。
妊娠しないように、と祈るばかり。
誰にも言えはしない。
事務所はおろか、あの人にも。
増してや警察になんか…。

身の保身なんて考えてる場合じゃない。
たくさんの人に迷惑をかけてしまうことを想像すると、怖いのだ。
258 名前:過去 〜潰された日常〜 投稿日:2002年06月06日(木)19時36分04秒
仕事を辞めてから少しして、あの人があたしを訪ねてきた。
お互いの気持ちを吐露し、あの人に抱きしめられた時。
急にお腹の奥から喉にかけて違和感がした。

突然の吐き気。

洗面所に走って吐く。
あの忌まわしい日、自分が何をされたのか、どこにいるのか、わかった時と同じ。
心配そうに背中をさすってくれるあの人。
あたしは茫然自失。
薬、飲んだのに…あたし…。

オナカノナカニ、コドモガイル。

あたしの耳に、知らない男達の高笑いが響いたような気がした。
259 名前:過去 〜潰された日常〜 投稿日:2002年06月06日(木)19時36分50秒
マスコミは本当に嗅ぎつけるのが早い。
あの人もたまたまテレビを見ていて、そのことを知ったらしい。
電話越しに聞こえるあの人の声は震えていた。

ごめんなさい、よっすぃー。
謝っても許してもらえないかもしれない。
でも。

ごめんなさい。

マンションに駆けつけたファン、マスコミその他。
彼らのざわめきは日が暮れるにつれて大きくなっていった。
家族や事務所やメンバーにかける迷惑は、何と残酷なことか。
これじゃ、殺すにも等しいくらい、あの人を傷つけている。

一瞬だけでいい。
勝手と言われてもいい。
あの人の保身の為に、あたしはメールを打った。

“私達、離れよう”
260 名前:過去 〜潰された日常〜 投稿日:2002年06月06日(木)19時37分21秒
その後、あの人からメールは返ってこなかった。
今でも当たり前だとはわかっているけれど。

病院に行くと、嫌な視線があたしを刺した。
お医者さんも看護婦さんも、他の患者さんまでもがあたしを見ているような。
いずれここにはマスコミが来る、と思った。
心労なのか、診察中にあたしは気を失ってしまった。
また外に出るのも面倒なので、そのまま堕胎まで入院。
入院すると、母・姉・妹がマスコミをかいくぐって看病に訪れた。
聞いたところによると、父はあたしと『縁を切る』つもりなのだそうだ。

一体あたしが何したっていうの!?
そんなことで家族を捨てないでよ!!

あたしは…母にあたった。
行き場のないこの感情を、母はきちんと受け止めてくれた。
母もマスコミに追いかけられて疲れていただろうに。
261 名前:過去 〜潰された日常〜 投稿日:2002年06月06日(木)19時38分03秒
会えなかった間、あの人はメールを毎日くれた。
必死で妊娠のことを考えないようにしてくれているみたい。
あの人は友達だ、と自分に言い聞かせて、普通のメールを返すことは簡単すぎた。
当然、あたしは苦しくなる。

そんなに愛さないで…。
どうしてあなたは、こんなあたしを愛せるの?

そう思っていた。
でも、実際には逆だった。

さすがに2ヶ月もすると、マスコミはもう興味が失せるらしい。
体調も回復して、退院から数日。
あの人が、久し振りにあたしと会いたい、と。
会って、ぎこちなく『離れよう』というメールについて訊かれた。
そして気持ちを殺したつもりが、気付かされた。

あたしが愛情を向けるから、あの人が愛してくれる。
あたしが愛してしまうから、あの人に愛されるのだ。

その晩、結局、あたしはあの人に抱かれた。
262 名前:過去 〜潰された日常〜 投稿日:2002年06月06日(木)19時38分33秒
それから3日して、昼間にインターホンが鳴った。
用心深くモニターを覗くと、どこかの宅配員みたいだった。
大きく、重そうなダンボール箱と、小脇に伝票を持っている。
帽子を目深に被り、お荷物です、と言うのが聞こえた。
『あ、ご苦労様です』
あたしは印鑑を持って迷わずドアを開ける。
『これ、すごく重いんですよ。中まで運んでもいいですか?』
親切そうな口調に安心して、何の荷物か確認もせず、
『じゃあ…お願いしますね』
と言う。
そろそろと中腰で歩く宅配員はいささか滑稽に見えた。
ふいに、勝手に閉まるはずのないドアが閉まった時だった。
『あれ?ドアが…』
と、あたしが宅配員に背を向けると、ドサッと何かが落ちる音がした。
宅配員の方に向き直ろうとした瞬間、後頭部を殴られる。
(うぐっ…)
余りの鈍痛によろめき、頭を押さえて壁にもたれかかる。
(何で…宅配員が…!?)
彼はあたしのお腹を数発殴り、あたしは意識を失った。
263 名前:過去 〜潰された日常〜 投稿日:2002年06月06日(木)19時39分05秒
(う…何か、寒い…?)
小さく残る頭痛と肌寒さに、うっすらと目を開ける。
声を出そうと思っても、口にはガムテープが貼られている。
体の自由がきかないのは、ロープでぐるぐる巻きにされているからだ。
今が夕方なのは紅い空の色でわかった。

しかし、ここはどこなのか?

背中にはジメジメしたコケの感触。
空に向かって伸びている多種多様な木。
その木からだらりと下がっているツル。
264 名前:過去 〜潰された日常〜 投稿日:2002年06月06日(木)19時39分42秒
(どこなの…怖い…!!)
心臓が胸の辺りで撥ね飛び、恐怖でおかしくなりそうだった。
『あ、起きたみたいだぜ』
『うわ、本物だ…チャーミー、可愛いねぇ』
『しかも細いなぁ、芸能界やめたのに』
どす低い声、粘っこい声、掠れた声。
ぬっと現れたのは3人の影。
あたしはあの日のことを思い出して鳥肌が立つ。
『ふん、大丈夫だよ。犯したりなんてしないからさ』
でも怖いのに変わりはない。
もぞもぞと腕を動かしてみるが、縄がほどける余地はない。
『ねぇ、チャーミー?』
粘っこい声があたしの近くに来る。
『どうしてチャーミーはさ、彼氏がいること、黙ってたの?』
あたしは変な質問に動きを止める。
『ボク、ずっとチャーミーが好きだったのに…』
他の2人が喉でくっくっと笑う。

この男は…あたしのファンだった?

『それなのに…妊娠なんかして…!!』
そう言うと、粘っこい声があたしのわき腹を蹴った。

彼は、狂って、いる。
265 名前:過去 〜潰された日常〜 投稿日:2002年06月06日(木)19時40分15秒
『どうしてボク以外の男の子供なんて…汚らわしい!!』
奇声を上げて、男はあたしを蹴り続けた。
体を縮めてガードしようとしても、体勢が体勢なだけに、それも出来ない。
幸い、顔は傷つけられずに済んでいる。
せめてもの情け、といったところだろう。
そして最後に彼は息を荒げながら、
『キミなんか嫌いだよ!!!』
と叫び、あたしのお腹を、全体重をもって両足で踏んだ。
一瞬にして内臓が、体の中で動くのがわかる。
同時に呼吸も出来なくなった。
思考は停止し、痛みは痛みを通り越して、ただの“感覚”に変わる。
ぴくりとも動かなくなったあたしを見ると、
『あーあ、何やってんだよ!殺しちゃったのかぁ?』
などと無邪気に掠れた声が言う。
『そりゃ面倒なことになっちまったなぁ』
だるそうな、どす低い声。
『ひどいよ、2人とも!ボクだけ犯罪者にするのぉ?』
ははは、と明るく響く笑い声。
266 名前:過去 〜潰された日常〜 投稿日:2002年06月06日(木)19時41分02秒
『ま、何でもいいや。埋めちまうぞ』
『えー?どうせだったらさ、ボクのオブジェにしたいんだけど』
『どこに飾るんだよ?死体のオブジェなんて見たかねーっつんだよ』
こんな会話を聞きながら、あたしはまだ生きていた。
刻々と死が近づいてくるのはわかっていた。
あたしはこの男達のことを恨みながら死ぬのは嫌だった。

だから、あの人を…ひとみちゃんを。

ひとみちゃんを想ったまま、死んだ方がいい。
267 名前:過去 〜潰された日常〜 投稿日:2002年06月06日(木)19時41分38秒
ザクッ、ザクッ。
土を掘る音。

ひとみちゃん、ずっとあだ名で呼んでたのはね。

あたしが、あなた以上に照れ屋だったからなの。

ガラン、ドサッ。
シャベルが置かれる音。

ひとみちゃん、あたしがいちばん好きだったのはね。

あなたと一緒にくっついていることなの。

ふわっ、ぼすっ。
あたしの体が宙に浮き、大きな穴に放り込まれる。

ひとみちゃん、ひとみちゃん。

あなたの綺麗な声、すごく落ち着くよ。

ぱさっ、ぱさっ。
次々にあたしの上に土が積もっていく。

ひとみちゃん、ひとみちゃん。

あなたの香水の匂い、すごくどきどきするよ。

口に、目に、鼻に。
どんどん土が入ってくる。

ああ、ひとみちゃん…?

…好き…。

あたしの視界は、とうとう真っ暗になった。
268 名前:科学と世界観 投稿日:2002年06月06日(木)19時42分38秒
#9

砂嵐はゆっくり消えていき、やがて目の前には夕日を背にした梨華が立っていた。
「梨華っ…ちゃんっ…」
私はぼろぼろと涙を流していた。
それを拭くでもなく、歯を食いしばって目の前のヒト――少なくとも今の彼女はヒトだと思う――を凝視した。
「…わかった?」
梨華は薄く笑顔を浮かべ、言った。
「中澤さんが言ったこと、わかった?あたしね、死んでるの…」
自虐的にも思える彼女の言葉。
私はふらふらと梨華に歩み寄る。
「あの日に、死ん…」
「もういいよ!!!」
叫んで梨華を思い切り抱きしめる。
「もう…言わなくていいよぅ…」

何だよ。
実体じゃないか。
触れることもできるじゃんか。
抱きしめることもできるじゃんか。
269 名前:科学と世界観 投稿日:2002年06月06日(木)19時43分13秒
「でもっ…」
梨華はまだ言うつもりだった。
「黙って!!それ以上言ったら怒るからね!!」
遮って、更に腕の力を強く込める。
「今、ここにいる梨華ちゃんが、」
「うん」
優しい相槌。
「幽霊だろうと、何だろうと、」
「うん」
いつものアニメ声。
「私と過ごした3日間は、事実でしょ…?」
途切れ途切れに、精一杯の気持ちを言葉にする。
「ねえ、本当のことでしょ…?」
少ししてから、胸の中で梨華が言う。
「…そうだよ…」
きっと私の顔は、泣き笑いになっていたはずだ。
彼女の顔が見えないのは嫌だが、変な顔を見られないように梨華の耳元で囁いた。
「…そうだよね」
梨華は小さく、ふふっ、と笑って、
「知らなかったの?」
と言った。
270 名前:科学と世界観 投稿日:2002年06月06日(木)19時43分53秒
intermission 7

身に起きた出来事を見せたら、今までにないくらい、強い愛情を感じた。
もっと一緒にいたいし、もっと話もしたい。
しかし、タイムリミットがすぐに訪れる気がする。
「ねえ、よっすぃー?」
呼んだのに、あの人は返事をしなかった。
「よっすぃーってば…」
聞いてる?と言おうとすると、あの人は、
「やめてよ。今は名前で呼んでよ…」
と遮った。
やや照れながら、
「ひとみちゃん?」
と呼ぶと、
「んー?」
なんて、あの人は満足そうに返事をした。
「もう、眠くなっちゃった…」
少しだけ、あの人の呼吸が止まった。
271 名前:科学と世界観 投稿日:2002年06月06日(木)19時44分46秒
「だからね、お願い…」
「何…?」
「あたしのこと…ずっと抱きしめてて…?」
するとあの人は、ははっ、と笑って、
「今も抱きしめてるじゃん?」
と言った。
当然、あたしは抗議する。
「違うもん。もっと、強くがいい」
「…こう?」
腕がきゅっと締まり、あたしはもっとあの人にくっつく。
「やだ。もっと強くして」
「…これ以上強くしたら、私も息が出来なくなっちゃうよ」
そうは言いながら、あの人はやっぱりあたしの言う通りにしてくれた。
「ねえ、ひとみちゃん…?」
「…どうしたの?」
そこであたしは間を空けた。
「ずっとね、ずーっとね、」
「…ずっと?」
「ひとみちゃんのこと、」
「うん…」

「愛してるからね」

ああ…もっと、あの人に抱きしめられたかった…。
272 名前:科学と世界観 投稿日:2002年06月06日(木)19時45分38秒
# 10

最後に聞こえたのは、梨華のこんな言葉だった。
『愛してるからね』
その時、夕日が目に刺さって、瞼を閉じずにはいられなかった。
本来ならば、じっと彼女の顔を見ているべきだったのに。
気が付いたら、私は大の字になって地面に倒れていた。
夕日はもう沈みかけていて、不揃いの地平線に、闇と太陽の色が混じっている。
辺りを見渡し、梨華はもういなくなったのがわかる。
腕にも、彼女の感触はあまり残ってはいない。
「何も言わないで行ったのかよ…」
どれだけ泣けば気が済むのか。
また涙が湧き出てきた。
「…私だって愛してるよ…」
こんな形で迎えた“最期”への想いは、やはり愚かしいもので。
誰がくれたのか、この3日だけの短い逢瀬を。
「ばっきゃろう!!!」
落ちた雫が、土にただ染み込んでいく。
この時期には特に珍しい、鮮やかな夕日は、一生忘れないと思う。
273 名前:科学と世界観 投稿日:2002年06月06日(木)19時46分18秒
腫れぼったく感じられる目を押さえながら、のろのろ歩いて家に着く。
もう、梨華を思い出させるものは何もないのだろうか。
体のだるさも、今や全く感じない。
幽霊はとりつくと生気を吸い取ってしまうのだとか言う。
それならば梨華は幽霊か。
何とバカバカしく根拠のない。
中に入り、リビングのドアを開ける。
そこで私は凍りついた。

みかがいた。

みかは私の顔を見るなり、大声で泣き始めた。
寂しかったと言いたそうに、私に向かって小さな両腕を伸ばす。
私はみかに近づき、そっと抱きしめてやる。
梨華を抱きしめていた、この腕で。
泣き足りないのか、私も大声で泣いた。
みかはふっと泣き止み、私を抱き返すかのようにくっついてきた。
274 名前:科学と世界観 投稿日:2002年06月06日(木)19時47分00秒
ここまで更新。
怒られそうな内容です。
きっと作者に殺意を感じられた方もいらっしゃることでしょう。

>ラヴ梨〜さん
混乱させてごめんなさい(ペコリ
ショックを受けさせてごめんなさい(ペコリ
ハッピーエンドは…未定です(ペコリ
全てはエピローグで。

>いしごま防衛軍さん
こんな謎でございました。
ああー泣きたくなってきた(鬱

>よすこ大好き読者。さん
ではマツモ○キヨシへ行きますか(w

>ごまべーぐるさん
テンションが低いんですが、初めまして。ありがとうございます。
ビクーリさせてごめんなさい。

>252さん・253さん
クローンではないんですね、これが。
たぶん、みなさん『石川もどうせクローンなんだろ?』
って思っていらっしゃったはずで。
でもネタバレよりむしろ深読みですね。
気分屋な作者のことですから、話の展開を予想しないほうがいいかと思われ。

一応、エピローグも用意しております。
こんな駄文で申し訳ないです…。
275 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月06日(木)21時14分14秒
石川さんが埋められていく場面はやりきれない気持ちになりました…。
2つの事件の犯人達に対する怒りがふつふつと湧いて来とります。
276 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年06月06日(木)23時03分59秒
なんてことだ。梨華たんを酷い目にあわせた男達にも梨華たんを
殺した男達にも制裁を!!怒りがこみあげてきました。
太閤梨華殿下を殺害およびレイプするとは国家反逆罪である。
その男どもを発見しだい射殺、梨華たんの父上からも社会的地位を剥奪、
この事件に関わったマスコミ各社は営業停止処分、マスコミ各社の指導的立場
にあった人間は国外追放。とまあ無茶苦茶ですが、そこまで怒りが収まらない
です。なんで梨華たんがこんな目にあわんといかんのですか。と言いたい。
せっかくよしこと梨華たんが一緒になったのに梨華たんが消えてしまうなんて
切なすぎますよ。みかは母親なしで生きていかんといかんのかー!!
悲しすぎますよ。うあーーーーーーーーーーん(;−;)
いや待てよ。なんでみかがおるんですか。いったいみかは何者!!
作者さんのことだから梨華たんがひょっこりでてきたりして・・・
ってことはありませんよね。激しく鬱であり更新激しく期待しております。
277 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月06日(木)23時50分21秒
>>276
あの…だから話の内容を書いちゃうのはちょっとどうかと思う…
278 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月07日(金)06時20分30秒
おそろしく不条理で、救いの無い展開だなぁ
石川さんには全く何一つとして悪いところは無かったというのに…
ストレス感じさせられたまま終わってほしくないんで、今後のカタルシスに期待
279 名前:夜叉 投稿日:2002年06月10日(月)21時46分25秒
黙って見守っていたのですが、衝撃的な展開に、正直びっくりしてます。(←いい意味で)
この続きがひじょーに気になります。
280 名前:. 投稿日:2002年06月13日(木)19時31分10秒
>作者様
すごいっす!萌え男さん、A24さん、の作品を読んで以来の鳥肌だ〜!
ROMしかできませんが、マイペースで頑張って下さい。
281 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年06月13日(木)20時57分26秒
鳥肌が立ちました。&仕事ちうにもかかわらず泣いてしまいました。
黙って続きをお待ちしています。
282 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月14日(金)16時58分53秒
予想外の展開に何も言えません。(涙が…)
自分も黙って続きを待ちます。
時節柄、お体に気をつけてがんがってください。
283 名前:ラヴ梨〜 投稿日:2002年06月17日(月)00時44分56秒
もうなんというか…梨華ちゃんのセリフ一言一言に号泣!!
こんなの悲しすぎる〜
284 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月24日(月)18時45分13秒
作者さん、忙しいのかなぁ・・・
我がまま言うと・・・読みたい。
285 名前:インターフェロン 投稿日:2002年07月03日(水)19時42分04秒
作者です。
更新が遅くて、本当に申し訳ありません。
期末テストがありまして…ああ、保健体育が追試になる勢い(涙
テスト終了次第、てきぱきと更新したいと思っております。
たぶん、来週にはできるのではないかと。
いつでもダメな作者です…。

>275さん
彼らは逝きすぎたヲタですね。
現実が見えてないがための行動を表現したかったんです…。
自分でも書いてて『こいつら氏ね!!』って思いました。

>いしごま防衛軍さん
制裁の数々に、
禿 同 で す が 何 か? (w
そしてみかの謎にハマる罠。もうしばらくお待ちください。

>277さん
大丈夫ですよ。
話の内容とはかすったようでかすってないかもしれないので。

>278さん
す、ストレス感じさせて申し訳ないです…。
薄幸すぎですよね、石川さん。

>夜叉さん
お褒めの言葉、ありがたき幸せです。

>.さん
あわわわ…そ、そんな偉大な方々と並べられるなんて…恐縮です!

>よすこ大好き読者。さん
仕事中でしたか!泣かせてごめんなさい!ありがとうございます!

>ごまべーぐるさん
泣かせてごめんなさい。体調はまずまずです。どうもです。

>ラヴ梨〜さん
せりふは考えて考えて授業中に思いつきました。
僕にはわかる、あなたのその悲しみが…

>284さん
お待たせして本当にすみません。
もう少しです、ごめんなさい!
286 名前:インターフェロン 投稿日:2002年07月10日(水)21時46分58秒

今度は梨華の死亡ということで、マスコミは再び事務所の関係者全員に付きまとった。
ファンとか、記者とか。
夜中にも関わらず、家に押しかけてくる。
たぶんきっと、他のメンバーも同じなんだろう。
娘。での仕事は少なくなった。
見合わせているというより、仕事を断っているらしかった。
だから必然的に、私は家にいることが増えた。
テレビをつければ、どこも梨華に関するワイドショー。
新聞もそう。

死亡状況、半白骨化。
死亡原因、内臓破裂。
犯人像の特定。
関係者のインタビュー。

梨華が私に見せてくれたものと同じ。

情報ばかりが私を取り巻くので、現実感が失われる。
もしかして、これは大掛かりなドッキリなのではないかと思うこともあった。
287 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月10日(水)21時48分06秒

しかし、ひとつの現実が私を支える。

みか。

私と、消えてしまった梨華の、子供。
一体この子は何なのか。
梨華はこの子について何も言わずにいなくなった。
時々その存在を疑うが、梨華に似た目を見ると、つい抱きしめてしまう。
みかは相変わらず、私の腕の中で毎日遊んでいる。
ある日の夕方、電話があった。
中澤さんからだ。
『明日、石川の葬式やから、行ってやり。な?』
私は余計なことを一切言わない中澤さんは、やっぱり大人なんだと実感した。
クローゼットから、黒のパンツスーツを出して部屋で干す。
みかが悪戯しないように。

ねぇ、今日のご飯は何にしようか。
288 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月10日(水)21時48分44秒

翌日、梨華の葬儀は横浜の葬儀場でマスコミを排除した、関係者のみで行われた。
もちろんみかは連れて行く。
黒っぽい服を着せて。
入り口ではマスコミが待ち構えていた。
私は帽子とマスクとサングラス、みかは帽子だけをかぶり、壁を突破する。
だが、子連れということで、写真を2・3枚撮られただけだった。
よかった。誰だかわかんなかったんだな。
受付で、梨華のお姉さんと妹さんに会った。
2人とも、だいぶ辛そう。
最初は黒ずくめで子連れの私に驚いていたが、全てを取ると彼女達は深くお辞儀をした。
私も頭を下げる。
みかだけがきょとんとしていた。
289 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月10日(水)21時49分30秒

会場には、娘。の中学生チームが来ていた。
周囲の人に挨拶しながら前へ進む。
やはりみかの存在は気になるらしいが、上手くかわした。
辻加護は私を見つけると、走って抱きついた。
「ふぇぇん…よっすぃー…」
「梨華ちゃんがぁ…ひっく…」
みかを抱いたままなので、空いた方の手で頭を撫でてやる。
わかってるよ。
私だって泣きたいけどさ。
2人はマネージャーになだめられて席に戻った。
年下チームは、ほとんど泣いていた。
290 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月10日(水)21時50分00秒

梨華のご両親は、親族側の席で疲れきった顔をしていた。
敢えてみかを抱いたまま、挨拶をする。
「この度は…どうも…」
月並みな言葉しか出さない。
「あら、吉澤さん…でしたね。わざわざありがとうね」
梨華の家族は、私が梨華と付き合っていたことを知らない。
「いいえ…」
複雑な気分で返事をする。
お母様は気丈に振る舞っていたが、お父様はげっそりやせて放心状態だった。
「あの、その子は…」
お母様がみかのことを訊いてきた。
「ごめんなさい、連れてきちゃって。でもうるさくはさせませんから」
「そう?」
それからお母様はみかを見て、
「何だか、梨華に似てるような気がするわ」
なんて言っていた。
その時、お父様は意識を取り戻したかのようにみかを見た。
だけどすぐに元に戻ってしまう。
291 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月10日(水)21時51分03秒

席に着いてしばらくすると、隣に矢口さんが来た。
「よっすぃー、おはよう…」
「おはようございます」
矢口さんも元気がない。
化粧で隠そうとしても、目はパンパンに腫れている。
あれだけ梨華ちゃんをイジって“アゴン”なんてあだ名つけたりしても。
やっぱり大好きだったんだ。
「久々だよね、全体での仕事ってなかったし…」
「ええ。矢口さん…ラジオは?」
「なかったね。っていうかさ、その子。誰?」
「…え?」
確か、消える前の梨華がメンバーに紹介したはずだ。
梨華の子供として。
現実に存在する、元メンバーの子供として。
「親戚の子か何か?」
矢口さんは全くわからない様子。
「憶えて…ないんですか…」
「え!?どっかで会ったっけ?」

こめかみに、頭痛を感じた。
292 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月10日(水)21時52分05秒

梨華は司法解剖やら何やらで、既に荼毘に伏していた。
だから祭壇には骨壷のみがある。
豪華に飾られた祭壇に、小さな、小さな、白い骨壷。
真上には、大きな、大きな、梨華の遺影。
お気に入りのピンクの服。
私が撮ったオフショット。
光を鈍く撥ねかえす、あの入れ物の中に。
…あれに梨華の骨が…。
二度と、あの明るい笑顔に会えることはない。
もちろん、柔らかな肌に触れることもできない。
先程の頭痛が痛みを増していく。
みかはうとうとし始めた。
そこで順番が回ってきた。
焼香をみかと2人であげに行く。
子連れの私に、少しだけ会場がざわついた。
293 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月10日(水)21時52分45秒

遺影の前に立つ。
「ほら、お母さんだよ…」
読経にかき消されるくらいの声で、みかの耳元で囁く。
本当に梨華が母親なのかもわかってはいないのに。
みかは遺影をじっと見詰めて、母の服を掴みたそうに手を伸ばした。
私は左手で焼香をあげる。
流れで梨華の親族に頭を下げて挨拶をする。
みんな、ハンカチを握りしめて必死に涙を堪えている。
当たり前だよね。
ああいう死に方したら。

…頭が…すんげー痛い。

もうだめかもしんない。

そのままみかを抱えてしゃがみ込んでしまい、とうとう立てなくなった。
294 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月10日(水)21時53分47秒

数日後、娘。は結局、無期限の活動停止となった。
言い換えれば、ただの解散。
それは事務所が勝手に決めたことだが。
ほとんどのメンバーが実家に帰った。
メンバーは道を選んで、しっかりと自分を磨いている。

辻加護・紺野・小川はそれぞれの地元の高校に編入。

高橋は留年して、東京の夜間高校へ進学。

飯田さんと矢口さんは、巧みな話術を利用して、2人でラジオ番組を細々と続けている。

圭ちゃんは趣味を仕事にしようと、有名なカメラマンさんの弟子入りをした。

安倍さんは俳優としてドラマに出ている。

ごっちんは元々ソロとしてやっているから、歌手として活動している。

なぜか新垣は学業を放棄、ごっちんのようにソロでやるとゴネて聞かないらしい。
…豆はさやの中に帰れ。
295 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月10日(水)21時54分32秒

そして私は?
未だに何もしていない。
几帳面にみかの世話はしているが、以前のような安定感はどこかに行った。

梨華が忘れられない。

毎晩、みかが寝付いた後、梨華の体温を思い出しては偲び泣く。
梨華の脱退前に撮っておいたビデオを再生して、何度も何度も見返す。
無数の写真盾には梨華と2人で写したものばかり。
静止画像で見る梨華にはちっとも翳りがあるようには思えない。
今、悲しみは感じない。
その代わり、楽しさや嬉しさも感じない。
感情がすっぽりと抜け落ちたかのよう。
みかは梨華の死など知らない。
毎日、無邪気に。
296 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月10日(水)21時55分08秒

ある日の昼間のこと。
私はみかを抱いて、一緒に梨華のビデオを見ていた。
みかは飽きると暴れたが、私の泣きそうな顔をじっと見ると静かになった。
これじゃ、どっちが子供だか。
無理にビデオを見せることに関しては、申し訳ないとは思う。
そこへ父と母が訪ねてきた。
2人とも、私の腕の中のみかを見て、驚いていた。
「ひとみ!誰なの、その子は…!!」
私は黙ってみかを抱きしめ、後ずさった。
それはまるで、大事なものを取られそうになった子供が、威嚇して相手を睨むのと同じ。
「オイ、ひとみ…」
父は私の豹変振りに困惑していた。
家族に敵意を示すことなんて、なかったもんだから。
「ひとみ、誰も取らないから…その子は誰なのかだけ、教えて。ね?」
母が私を刺激しないように、恐る恐る言う。
297 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月10日(水)21時55分44秒

「…だよ…」
「え?」
「この子は…私の子だよ…」
2人の顔が蒼くなる。
異変を感じたみかが、私の服をぎゅーっと掴んだ。
「なっ…何を言ってんだ、お前は!!」
「そうよ!あなた、いきなりどうしちゃったの!?」
私のことを、おかしくなったように扱う両親。
「とにかく…座って話をし…」
「私の子だってば」
「ひとみ、落ち着きなさい。その子は…」
「私の子供だって言ったでしょ!!みかは一番大切な私の子供なの!!!」
みかの頭を優しく肩に押し付けて、怒鳴った。
みかは泣き始めた。
「ひとみ、ひとみ…」
戸惑う母。
立ち尽くす父。
私は壁際にうずくまって、みかと一緒に大声で泣き狂った。

梨華ちゃん、これでいいんだよね…?

写真の梨華は、相変わらずの笑顔。
298 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月10日(水)21時56分23秒

その後は、みかを吉澤家の戸籍に入れた。
いつまでも名前だけしかないのはおかしい、と母が言ってくれたのだ。
父も、困惑気味に賛成してくれた。
本当は私の籍に入れたかったが、いかんせん私は未成年なので、みかは親の戸籍にいる。
吉澤家の“次女”として。
みかは戸籍も不明だったので、申請が遅くなった新生児だと誤魔化した。
その時には役所の人に怒られて、そぉ〜とぉ〜大変だったらしい。
一切を訊かずに私を助けてくれた両親に、感謝。
もうひとつ。
私に子供ができたことは、弟達には内緒にしてある。
恐らく両親以上に混乱するだろうから。
299 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月10日(水)21時57分01秒

しかし、両親がここまでしてくれたのに、まだ私は道を切り開いていなかった。
毎日毎日、梨華が出ているビデオや雑誌を見て呆けるだけ…。
19歳の誕生日はいつの間にか過ぎ去った。
もうマスコミの興味が散った頃。
朝起きてから夕方まで、ずっとビデオの中の梨華を追っていた。
「…梨華…ちゃん…」
甘い声が脳を真っ白に漂白する。
浅黒い肌に目を奪われる。
ただ残ったものに想いを馳せていた時。
『うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!』
みかが急に背後で泣き出した。
そのおかげで、私の頭の中に住みついていた幻影が消えた。
吹っ切れた。
泣き声を背に聞きながら呟いた。
「私…何してんだろ…」
することはもっとあるはずなのに。
私はゆっくり振り返り、大泣きのみかをあやしながら謝った。
「ごめんね、バカな親で…」

忘れるわけじゃない。

梨華ちゃんを支えに。

生きなきゃ、だめだよね。
300 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月10日(水)21時58分16秒

吉澤ひとみ、19歳の夏。
立ち直るまで時間は掛かったが、私は今、予備校に通っている。
他人より、同級生より、浪人より遅いスタートだけど。
勉強も仕事でしてなかったから、マイナスからのスタートだけど。
絶対にトップレベルの大学に進学してみせる。
もちろんバイトもしつつ、勉強もしつつ。
ついでに子育ても。
予備校の時間には、母が面倒を見てくれている。
両親は何だかんだ言って、みかにメロメロ。
生活費は親が出してくれている。
でも事務所からの給料を貯金していたので、それを切り崩して生活している。
親のお金は新しく口座を作り、みかの貯金にしている。
来年になれば、私は成人する。
20歳になったら、すぐにみかを私の戸籍に入れるつもり。
戸籍上は養子になるが、実際に私の血を分けた子供だから、気にすることは何もない。
301 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月10日(水)21時58分52秒

予備校の帰り、偶然にも圭ちゃんに会った。
圭ちゃんは、カメラの入った黒いバッグを肩からぶらさげていた。
近くの喫茶店に入ると、冷房がひんやりと寒かった。
「元気だったぁ?今は何やってんの?」
「えっとね、予備校通い。ついさっきまで授業だった」
「ふぅん。大学でも行くの?」
「うん」
そこで感慨深げに大きく頷く圭ちゃん。
「そっかぁ…とんちんかんなあんたがねぇ…」
その言葉は少し、懐かしんでいるように聞こえた。
だから私は笑って返す。
「それってすげー失礼じゃない?ケメ子のくせに!」
「あ、言ったなぁ!懐かしいあだ名を!」
何だか、仕事をしている時のような雰囲気を感じた。
302 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月10日(水)21時59分42秒

「で、あんたは将来、どうするつもりなの?」
しばらくふざけあうと、圭ちゃんがコーヒーを口にしながら言った。
「どうするって…」
「大学に行くんでしょ?その後のことよ」
「ああ…」
私は間を置いて返事をした。
「実は、刑事になろうかと思って」
「…へぇ。じゃぁ、法学部志望なんだ?」
「うん」
圭ちゃんは一切、茶化さないで真面目に聞いてくれた。
「何で、刑事になろうって思ったの?」
「…罪を犯した人間が、許せないんだ…」
そう言うと、圭ちゃんの顔が曇った。
「もしかしてさぁ…石川のことがあったから?」
梨華を殺した犯人は、まだ捕まっていなかった。
証拠もないから、もうレイプした犯人は永久に見つからないだろう。
「正直、そうだと思う…自分でもよくわかんないけど…」
「自分の手で、犯人を捕まえたいってこと?」
「いや…復讐とか、そんなんじゃなくって」
「つまり?」

「そういう事件で苦しんでる人たちを、一人でも多く、救いたいんだよね…」

303 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月10日(水)22時00分14秒

私は膝の上に置いていた手を握りしめた。
小さな沈黙が私たちを包む。
と、圭ちゃんがぽつりと言った。
「…ま、でも、安心したよ」
「え?」
「自分で直接復讐するんだとか言ったら、どうしようかと思ったの」
「圭ちゃん…」
意外な反応に、私は驚いた。
「石川を…あんたの好きな人を殺されて、復讐したくないって奴はいないだろうし」
私は何も言えず、目の前のテーブルを見ていた。
「その犯人への憎しみってヤツが、吉澤をいい方向に導いたってワケか…」
「ハハ、刑事が性に合ってるか、わかんないけどね」
すかさず首を横に振る圭ちゃんは、優しかった。
「大丈夫。あんたは…他人の痛みがわかる子だよ。自信持ちな。ね?」
圭ちゃんは私の肩を叩くと、伝票を持って立ち上がった。
304 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月10日(水)22時00分47秒

別れ際、私は圭ちゃんに『ありがとう』とお辞儀をした。
何となく、お礼が言いたかった。
圭ちゃんの顔は一瞬で赤くなったように見えた。
「ヤダ!他人行儀なんだから…じゃぁね!キリキリ暮らすのよ!」
少し不機嫌そうにまくし立てたのは、単なる照れ隠しか。

…かっけー!!!

圭ちゃんに会ってみて、他のメンバーとも会いたくなった。
まだみんなは忙しいだろうけど、落ち着いたら絶対、たくさんの話をしたい。
そう、ごっちんとも。
ケンカをしかけられるわ、キスはされるわ、告白されるわで、散々な関係だったけど。
仲が良かったんだから、きっと自然に会えると思う。
「…さて。みかのお迎えに行くか!!」

日差しの強い都会の蝉は、タフでうるさい。
305 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月10日(水)22時02分11秒

とりあえず、これだけ更新しました〜。
微妙にみか放置…?嘘嘘。
更新前のレス返し、申し訳ない気分ですが。
たぶん、次回で終わる予定です。

待ちに待たせて、本当にごめんなさい。
早めに更新したいと思っております。
306 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月13日(土)21時11分43秒
…豆はさやの中に帰れ。
かなりウケました!
大量更新お疲れ様です。
307 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年07月14日(日)15時04分02秒
今回更新分読んでちょっと救われました。
マターリ待ちます。がんがってください。
308 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月30日(火)19時06分25秒

あれから、みかも3歳になった。
生意気盛りで、とにかくおてんば。
近所のガキ共とケンカもしょっちゅうする。
毎日、泥まみれになるので、洗濯も大変。
昨日なんか泥水に突っ込んだ。
みかはあの公園の砂場で遊ぶのが好きらしい。
梨華の消えた、公園で。
それと、みかはよく喋り、よく笑う。
たどたどしいけど、一生懸命に話し掛けてくる。
暇さえあれば一人でしゃべるし。
…本当に幼い頃の私と性格がそっくりだネ…。
顔や声が何だか梨華に似てきた。
微妙にアニメ声っぽいし。
泣くと絶対に眉がハの字になるし。
怒ると絶対に頬を膨らませる。
肩まで伸びた髪をふたつに結うと特に似ている。
そんなみかが可愛くて仕方がない。
でもぎゅうっと抱きしめると、
『パパ、ちからがつおい(←“強い”と言いたいらしい)からキライ!!』
だってさ。
いい加減に“パパ”はやめようよ…。
309 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月30日(火)19時07分40秒

吉澤ひとみ、21歳の春。
私は結局、2年掛かって大学に入った。
猛勉強しても、1年ではさすがに無理だった。
本当は受かったところもあったんだけど。
家から遠いし、授業料も法外に高いし。
ということでもう1年、同じ勉強。
数学の証明が大嫌い。
英単語が覚えられない。
古典の文法がとにかく苦手。
現代文は漢字が1行目から読めないこともあり。
でも、今は有名な大学の学生なんですよ?
実は紺野も同じ大学。
紺野は…現役で医学部だけど…。
ま、いっか。
私は私だからさ。
法学部でしっかり法律を勉強してます。
バイトもしっかりやってるけどね。
おほほほほ。
ちょっと自慢。
そぉ〜とぉ〜自慢。
日本地図が描けなかった私。
四国が全部答えられなかった私。
そんな私にサヨウナラ。
310 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月30日(火)19時08分19秒

ついこの間。
私の誕生日に、梨華の墓参りに行った。
梨華は彼女の実家のすぐ近くで、静かに眠っている。
海が見える、高台の綺麗なところ。
疲れたとごねるみかを左手で抱っこし、右手で花を持っていく。
生前に梨華が好きだった紅茶も、プラスチックの水筒に入っている。
「じゃんけんぴょんっ♪」
疲れたにしては、みかは遠出ができてご機嫌らしい。
最近、活動を再開したミニモニ。を歌っている。
「みーちゃん、たまにはひーちゃんも抱っこしてよ?」
この“みーちゃん”はみかが自分で言い出した愛称。
この頃の子供にはアリガチなこと。
そして、自分で自分を“ひーちゃん”と言うのは嫌だけど。
“パパ”よりもマシだと思う。
女性でパパじゃ…ね。
みかは小さな腕を私の首に回して抱きつき、笑う。
「やーだ!パパ、おもいもん」
「こらぁ、みか!パパって呼ぶのはやめなさいって言ってるでしょ?」
少し語気を強くして言うと、みかはシュンとなった。
「でもぉ…パパはパパじゃないのぉ?」
そして間近で梨華と同じ上目遣い。
「うっ…」
みか…それに弱いこと、知っててワザとやってんのか?
311 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月30日(火)19時09分00秒

「とにかく!“パパ”じゃなくて“ひーちゃん”って言いなさい。ね?」
「うー…」
みかは頬を膨らませて、いかにも『拗ねてます』って顔。
「ありゃ。しょうもないこっちゃなぁ」
そう言って抱きなおす。

まったく、“パパ”なんて誰が教えたんだかねぇ。
梨華ちゃんが一番疑わしいんだけどね。
…あれ?
っていうか、もしかして。

『本能』…?

まさか。
そんな本能、あったら怖いっつうの。
…でも…可能性はゼロではない…かも。
いやいや、自分。
変なことを考えなさんなよ。
312 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月30日(火)19時09分46秒

嫌なことが頭の中を巡っているうちに、みかの声で現実に引き戻された。
「ひーちゃん!ママはあっちだよ!」
「…ん?あ、もうひとつ向こうの道か」
分かれ道を右に行くと、視界が開けて海が眼下に広がった。
春先の湿った風が出迎えてくれる。
一番奥の墓が、石川家の墓だった。
「ひーちゃん、もうおりる!」
「はいよ。転ばないでね」
ゆっくり降ろしてやると、みかは背中のリュックを揺らして走った。
みかを見守りながら、私も追いつく。
梨華のご両親が掃除を毎日してくれていて、花も枯れることはない。
「みーちゃん、リュックから水筒出してくれる?」
「うん」
その間に私は花を添える。
何となく、梨華のご両親とは趣味が合わないようで、花の組み合わせがアンバランス。
「あはは…ごめんね、梨華ちゃん…」
謝ると、梨華が苦笑するシーンが脳裏に浮かんだ。
「はい!すいとうだよ」
両手で差し出すみかにありがとうを言って、蓋を開ける。
そして墓石のてっぺんから紅茶をかける。
「久し振りだね。入学式の帰りに来て以来、忙しくて来れなかったよ」
琥珀色の液体が石をつたって流れていく。
「お茶、ストレートだからさ。ベタベタにはならないし、安心してね」
313 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月30日(火)19時10分37秒

私が線香を置くと、みかも同じように、梨華に話し掛けた。
「ママ!あのね、みーちゃんね、きのうね、おうちのかぎね、なくしちゃったの。ひーちゃんにはないしょだよ」
みかは人差し指を立ててにこにこしている。
(家のカギじゃないけど、どうりでチャリのカギが見つかんないわけだ)
本当は聞こえているのだが、子供の発想に合わせようとすると聞き流さざるをえない。
「…くそっ…ま、いいか。よーし、そろそろ帰ろうか?」
「うん。あ、まって!」
突然、みかはしゃがみこんだ。
「何?どうしたの?」
「はい、これ!」
立ち上がったみかが私に差し出したのは、たんぽぽだった。
「え…?」
「ママにあげるの!」
満面の笑みでそう言う。
「ひーちゃん、ママのところにおいてあげて?」
「あ、うん」
鮮やかな黄色が印象的である、たんぽぽを一輪。
お供え物のように墓前に横たえる。
しばらくそのまま、黙って立ち尽くしていた。
ふとみかを見ると、唇をきゅっと真一文字に結んで、目を細めていた。
年齢にはおよそ似つかわしくない、大人びた表情。
その表情は今までにも何度も見た。
みかを梨華と錯覚してしまうのはおかしいのだろうか。
314 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月30日(火)19時11分12秒

「…梨華ちゃん、また次の休みに来るからね。さ、帰るよ」
「…うん…」
「ママに“またね”って言いなさい」
「またねー」
みかはあっさりした顔で手を振る。
それから私を置いて先に走っていってしまう。
「みーちゃん!おてて繋がないと転んじゃうよ!」
「いいの!へいき!」
「平気って言って何度も転んだでしょうが!」
「ころばないもーん」
下り坂で走るみかを見ながら、幸せな気分でため息をつく。
「…転ぶって言ったじゃんかよぅ!」
と叫び、私も走ってみかを後ろから抱き上げた。
みかはきゃーきゃーと喜んでいる。
「こいつめぇ!」
「やーぁ!くすぐったいぃ〜」
ふざけ終わってみかを降ろすと、みかが私を見あげて言う。
「あのね、みーちゃんね、はなびがみたい!」
315 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月30日(火)19時11分50秒

「花火ィ?だってまだ先だよ?」
「いいの!ひーちゃんと、おうちのこうえんでみたいの」
おうちの公園、とはみかがいつも遊ぶ場所だ。
「お外が暑くならないと見れないよ?」
「ちがうの。おそとがさむくても見れるやつ」
「よくわかんねーなぁ。花火って夏のもんだし…」
「ねぇ、どれくらいねたらはなびがくるの?」
私は一瞬だけ答えに困った。
子供にとったら、あと4ヶ月近くも待つんだよ、なんて残酷すぎるだろう。
「うーん…10じゃ足りないくらいかな」
「そっかぁ…」
みかが残念そうな顔で歩き出す。
励まそうと思い、優しく頭を撫でてやる。
「でも花火の日が来たら、一緒に行こうか」
するとみかは嬉しそうな顔で大きく頷いた。
「うん!やったぁー!」
みかはぴょんぴょん跳ねて、背中のリュックが上下に揺れた。
そして私は、靄がかかった違和感を持った。
316 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月30日(火)19時12分28秒

その違和感は、電車の中ではっきりと形を現した。
運良く空いた席に座ると、みかはさっそく膝の上で眠り始めた。
30分して、ずり落ちてきそうだったので、抱きなおそうとした時。
「…あ!」
驚きのあまり、小さく声を上げてしまった。
隣のおばさんがちらっと私を見た。

わかった。

変な違和感の理由が。

みかは冬に花火が見たいって言ったね。

みか、誰に教わったの?

あの公園から『夏ではなく冬に』花火が見えること。

あそこで遊んでる時も、私は一緒だったよね。

誰もそんなこと、みかに教えちゃいないよ?

私と一緒に冬の花火を見た人はただ一人。

速く動く心臓をなだめるようにゆっくりと呼吸を整える。
膝の上のみかがずり落ちてきた。
しかし、抱きなおそうと思っても、どうにも体が動かない。

「…梨華…?」

そう呟くと、みかが起きる気配がした。

やっぱり、私は科学なんて信じはしない。

世界は全て、証明できないものだらけだから。
317 名前:科学と世界観 投稿日:2002年07月30日(火)19時13分08秒

       科学と世界観  Fin
318 名前:インターフェロン 投稿日:2002年07月30日(火)19時13分59秒
たぶん、終わりました。
相当なスランプだったので時間がかかりました。
早めに更新したいとか言っておきながら…意気込みだけで。
意味不明な箇所もたくさんありましたね。
ラストに非難轟々なことを覚悟の上でございます。
ひとつだけ石川さんについて解説を。
あの人は何者でもございません。
浅田○郎原作の『鉄道員』の雪子みたいなもんだと思ってください。

>306さん
豆…本当にアレだけが書きたかったのかもしれません。
真剣にヴァカな作者です。

>ごまべーぐるさん
お待たせしました。がんがりました。
吉澤さんは救われた…のかどうか。

こんな駄文を今まで読んでくださった方々へ。
そしてこんな駄文にレスを下さったたくさんの方々へ。
どうも有難うございました。
レスが付く度に小躍りなんぞしておりました。
実力不足でこんな終わり方となりましたが、とにかく有難うございました。
319 名前:.(280) 投稿日:2002年07月30日(火)21時12分27秒
家族にばれないように、すすり泣く「おっさん」がここに。

インターフェロンさんの小説、すごい良かったよ。
ラストも子持ちの私には、ぐっ!・・と来るものがありました。
とにかく今は、「お疲れ様でした、素敵な作品をありがとう」かな。

また、会えるかな?


320 名前:皐月 投稿日:2002年07月31日(水)11時48分14秒
一気に読んで号泣しました(泣
すっごいよかったです。
お疲れ様でした。今後もがんばってくださいね。
321 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年07月31日(水)19時16分02秒
完結お疲れ様でした。
笑ったり、泣いたり、怒ったりと、色々あった私の中で
思い出深い作品になりました。
7ヶ月間ありがとうございました。
322 名前:インターフェロン 投稿日:2002年08月08日(木)14時41分40秒
レスのお返事を。

>.さん
いやぁ、ありがとうございます。
出来たら、また小説を書きたいと思いますが…
受験に向けて頑張ります。
>皐月さん
ありがとうございました。
今後も…妄想は…続くと思います(w
>よすこ大好き読者。さん
7ヶ月間もお付き合いいただき、ありがとうございました。
すごく…ネガテブな話になってしまった気がします。

では、短編(長いかも)を残して終わりたいと思います。
323 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)14時42分24秒

まだ私があなたに片思いをしていた頃。
あなたは、少しずつだけど、確かに何かが変わり始めていた。

背が高いのに、楽屋では常に隅っこをキープして。
体育座りで震えながら、いつの間にかブツブツと呟いていた。

なのに、誰かが不審がって話し掛けると、百点満点の笑顔で、

『どうかした?OK牧場!』

なんて答えたの、今でもはっきりと思い出せるよ。

衣装合わせなんて、あの時は大変だったよね。
あなたは衣装を持ったまま、着替え室でうずくまって寝ちゃったんだっけ。

いつまで経っても出てこないから、カーテンを開けたら、気持ちよさそうな寝息を立ててたね。
おかげで時間が押しちゃって、マネージャーに随分と怒られていた。

だからと言って、あなたは凹むこともなく、笑顔だった。
324 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)14時43分05秒

メイク室に行けば、あなたは鏡の中のあなたと無表情のにらめっこ。
誰かが止めなかったら、きっと永遠に続くにらめっこ。
あれにはメイクさんも困っていた。

でもメイクが終わると、何もなかったように、

『よっしゃ!』

って言って椅子から立ち上がるのよね。

スタジオまでだって、急に口をぽかんと開け、宙を見る。
私が手をひいて連れて行かなければ、そのまま立ち尽くす。

メンバーは全然、最後尾のあなたの様子に気付くこともなかった。

あなたの手を引いていたら、矢口さんに、
『イヨッ!おしどり夫婦だねぇ〜』
とか何とかからかわれたのよ。

嬉しさ半分、悲しさ半分。
325 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)14時43分43秒

収録の合間の休憩時間も、あなたは不思議だった。
私が隣に座って話し掛けても、全くの上の空。

それどころか、持ってきていた多種類の薬を飲むことに専念してしまう。
だから私は諦めてじっと黙る。

ようやくあなたは薬を飲み終えると、がくんと頭を垂れて泣きそうな顔。
それからいきなり大声で笑い始める。

おかしい話は一切していないのに、涙が出るほど笑ってたね。

あなたを見て、あいぼんとののが私に話し掛けた。

『何か楽しい話?教えて教えて!!』

私、すっごく困ったよ。
326 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)14時44分16秒

あの日の夜、私の部屋に泊まりに来たあなたが打ち明けてくれた。

きっと忘れることはできない。

寝る前にぽつりと。
本当にぽつりと。

脈絡のない、掴めない話を延々とした後に。

『あの…今、精神科に通ってるんだ…』

訊きたいことは山いっぱい、てんこ盛り。
だけれど、敢えて返事は短く。

『そう、なんだ…』

私は不可解な行動の理由を垣間見た気がしたの。
それは単に、いい気になっていただけだったけれど。

ほんの数センチでも、数ミリでも、あなたと近づいたって思いたかった。
327 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)14時45分07秒

次のオフの日が、定期検診と重なったって電話で言っていた。

『一緒に行ったら…迷惑かな?』
どうしても、あなたを知りたくて知りたくて。

『いいけど…誰にも話さないでね?親にも内緒なんだ…』

やっぱり。

あなたは私にだけ、秘密を打ち明けて。
私はあなたとだけ、秘密を共有する。

秘密よ秘密よ秘密さん。
二人の距離を、もっと縮めてね。
328 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)14時45分52秒

とうとう定期検診。

待ち合わせして行ったのは、有名な大学病院。
精神科は隔離された病棟にあった。

そこは監獄みたいで息苦しい。
時々、叫び声が聞こえてきて、その度に私は驚いた。

『怖かったら、帰ってもいいよ?』

あなたは優しく私に微笑む。
だけど、その目だけは正直だった。

『どうか、一緒にいて…お願い…』

わかってる。

今さら帰れるものですか。

私はあなたと、小さな世界を共有しているのよ?
329 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)14時46分33秒

診察室は薄暗い方が落ち着くのだそうだ。

お医者さんからアンケート用紙をもらうあなた。
手馴れた様子で鉛筆を走らせる。

それだけで診察は終わったらしいが、私はお医者さんに呼ばれた。

『彼女は、簡単に言うと鬱病のひとつにかかっています』

『あの…原因は?』

『恐らく仕事ですね。はっきりとはわかりませんが』

『仕事…』

『本人が言うには、今はまだ、大した影響もないみたいなんです。しかし…』

『…何か?』

『すぐに表面化すると思いますよ。体は騙せませんから』

『そうですか…』

『元々、環境に敏感なんでしょう。仕事によって、良くも悪くも、研ぎ澄まされてしまったのではないかと…』

帰りのタクシーの中では、あなたも私も無言だった。

それからあなたは声を押し殺して泣き始めた。

『…うぇっ…うっ…』

『大丈夫、平気だよ?私がついてるからね?』

私はあなたの手を握って背中を擦った。

そうよね。
繊細なのよね。
330 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)14時47分26秒

以後は出来るだけ、定期検診に付き合うようにした。

相変わらず病棟は重苦しい。

そして、また薬の種類が変わった。

かなり量も増えた。

毎日、あなたは黙々と決まった分の薬を消化していく。

仕事中の私のポジションは、いつもあなたの左隣。

泣き始めたり呆けたりすると、私は真っ先に気付いて薬を差し出す。

座りトークの収録中に、あなたの手が震えていた。

顔も真っ青で引きつって。

薬は近くになかった。
なので、隣にいた私がカメラから見えないところで、手を強く握る。

『安心して。つらいことは何もないのよ…』

気持ちを目いっぱい込める。
そうすると、あなたは休憩まで持ちこたえてくれた。

でももう、どんどん限界は近づいてくるわけで。
331 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)14時48分00秒

ロケバスで移動中、呆けながら窓際に座っていたあなたは、いきなり叫んだ。

『うおおおあああああああ!!!』

私も驚くくらい、尋常じゃなかった。
他のメンバーはお喋りをやめて、私たちを見る。

それからあなたはスモークを張った窓を拳で叩き始めた。

ドンドンドン、ガンガンガン。

『ねえ、ゆっくり1から数えてみようか?いーち、にーい…』

こうして呼吸を整えてやるといいのだとお医者さんから聞いた。
が、背中をさする私に気付く様子もない。

『どうしたの!?』

『何があったの!?』

『大丈夫!?』

そうやって声をかけることが、余計に不安にさせるだけだと、私はわかった。

口々にあなたに話し掛けるメンバーは、明らかに動揺していた。
私は運転手に向かって怒鳴った。

『バス、止めてください!!!』
332 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)14時48分44秒

安定剤を打たれたあなたは、ベッドの上ですやすや眠っていた。

あの重苦しい病棟の、薄暗い病室。

白い壁、格子つきの窓、監視カメラ。

始めて見たそこは個室のようで、まるで監獄。

ううん。監獄そのもの。

ドアロックなんて四重にかけるんだから。

マネージャーから、メンバーに鬱病のことが話されたと聞いた。

マネージャーさえも知らなかったことを、メンバーに。

数時間して目覚めたあなたは、付き添っていた私に謝ったね。

『えっと…迷惑かけて、ごめんなさい…』

私は何も言わずに、柔らかく笑った。
333 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)14時49分37秒

仕事に復帰したあなたに、メンバーは自然に振る舞っていた。

“発作”が出る時以外は。

急に震え始めると、みんなはすっと離れて、私に目で助けを求める。

みんな、怯えた目をする。

休憩中に、二人だけで廊下に佇む。

あなたにまともに接することが出来たのは、私ひとりだった。

『私の頭がおかしいからだね…』

何て自虐的な言葉なのだろう。

『…何、言ってるの!』

『え?』

『頭がおかしい人なんてどこにもいない!』

『…梨華ちゃん…?』

『ここが、さ…』

胸のあたりを手で押さえる私。

『傷ついて、ボロボロになっちゃっただけなの…』

私はあなたの肩口に頭を預けた。

そのまま、廊下で泣いた。
334 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)14時50分28秒

『最近はどうですか?』

『もう、楽しいことばっかりです!』

何故か笑顔で、あなたはお医者さんに言っていた。

『そうですか。それは何よりですね』

お医者さんも笑顔。

でも。
私は知っている。

前回の診察以来、ずっとあなたが“発作”続きだったのを。

あなたは上機嫌でアンケートを終わらせる。

すると、私だけが診察室に残された。
お医者さんは随分な間を置いて、渋い顔をした。

『彼女は嘘を…ついていましたね?』

『何で…』

『わかりますよ。これでも精神科医の端くれですから…』

予想以上に、薄暗い部屋のお医者さんは優しい口調だった。

『話してください…彼女は昨日まで、どうでしたか?』

私は簡潔に、発作ばかり起こしていたことを話した。
正直、自分より大きくて力のある人を宥めるのは大変だった。

『歌収録も、落ち着くまで時間が掛かるんです…』

お医者さんは低く唸って呟いた。

『薬もこれ以上増やすわけにはいかないし…発作の間隔も短くなっていることを考えれば…』

嫌な、予感がした。

『入院しないと、危険かもしれない…』

誰が危険なのか、どうして危険なのか。

私は訊けなかった。
335 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)14時51分14秒

レギュラー番組の収録の日。
朝からあなたは沈んでいて、すごく不安になった。

それは私だけじゃないんだって自分に言い聞かせて。
あなたは薬をがぶ飲みしていた。

だんだん収録が終わりに近づき、無事に過ごせたな、と思った時。
高橋と紺野と収録を進めるあなたを見守っていた時。

『…ううっ…ひっく…』

例の“発作”。

カメラが止まる。

みんなの視線が一気に集中する。

『ほら、よっすぃー、深呼吸だよ』

駆け寄った私が手を握っても、落ち着くどころかひどくなる一方。

あなたは叫びながら私の手を振り切った。

セットの椅子を投げる。

スタッフの使う机の上の書類をぶちまける。
336 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)14時52分06秒

途端にその場が騒然とする。

『吉澤!!やめろ!!』

スタッフやマネージャーが羽交い絞めにする。

『うがあああああああ!!!!』

苦しそうに抗うあなた。

そして、マネージャーの決定的な一言。

『お前、鬱病だからってやっていいことと悪いことがあるぞ!!』

それは…どういうこと?

よっすぃーがわざと泣いて、わざと暴れているってこと?

鬱病なんて大したことはないって言いたいの?


あんなに、つらそうにしているのに…?

337 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)14時52分44秒

私はあなたを取り押さえる人たちに飛び掛っていった。

あまり腕力も無いのに、あなたから引き剥がそうと必死になった。

『やめて!!離れて!!よっすぃーに触らないで!!』

喉が壊れるかと思った。

揉み合って、私はあなたを抱きかかえるような形で倒れこんだ。

『…うえっ…うっく…』

上半身を起こすと、あなたが泣きじゃくっているのがわかった。

私はあなたを強く、強く、抱きしめる。

いつの間にか、スタジオ内は静寂に侵されていた。

あなたの泣く声と、荒い息遣いが、やけに大きく聞こえる。

『石川、吉澤を離しな?ね?』

飯田さんが言う。

『嫌です』

『石川…!』

またマネージャーが手を出そうとする。

『来ないで!!』

マネージャーが私の声に動きを止める。

『…来たら、殺しますよ…』

メンバーの表情も凍った。

『…誰であろうと、殺します…』

そう、危険なのは…私。
338 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)14時53分23秒

そして、とうとう入院することになった。

だから仕事を辞めざるを得なかった。

理由は、一人で仕事がしたいから、だった。

もちろん事務所が用意した答え。

そんなことはわがままだ、なんてワイドショーの芸能コメンテーターが言っていた。

何も知らないくせに、どうしてそんなことが言えるんだろう。

入院して初めて、鬱のことが家族に知らされたようだった。

私は仕事があったけど、面会だけは週に3回、欠かさずに行った。

面会するのもまるで、服役中の囚人と面会する感じ。

頑丈なプラスチックの壁を通して話をする。

息が詰まる重苦しい部屋の中、監視付き。

話している最中に“発作”が出ることもしばしばあった。
339 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)14時53分57秒

ある日、私がその日にあった出来事を話していると、

『うわあああああん!!!』

と、あなたは泣き始めた。

それから、プラスチックの壁を両手で激しく叩く。

『りかぁぁあああ、りかぁぁぁあああああ』

私の名前を叫びながら、目いっぱい拳を打ち付ける。

涙を流して、私を呼んでいる。

『よっすぃー!!よっすぃー!!!』

私たちを隔てる目の前の壁。

私も壁を叩く。

コレを壊したら、ずっと一緒にいられるような気がしたから。
340 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)14時54分35秒

でも、女の子2人が壊せるほど、プラスチックはやわなものではない。

すぐに、看護婦さんやお医者さんが止めに入る。

羽交い絞めにされながらも、泣きながら私を呼ぶあなた。

私まで押さえつけられたけど、ちっともやめようという気分にはなれなかった。

引き離されてようやく落ち着いた私は、お医者さんに呼ばれた。

気が付けば、私の手は真っ赤だった。

『今もねぇ…あなたの名前を叫んで暴れるんですよ。安定剤まで効かなくて…』

『はぁ…』

『あなたは、吉澤さんの薬にも、毒にもなるんです』

『…え?』

『彼女を落ち着かせることができるのはあなただけだし、彼女の発作の原因となるのもあなただけです…』

私はその言葉に黙っていた。
お医者さんは私に構わず病状について話し出した。
341 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)14時55分15秒

そしてひとつの決断を、私は下した。

『……なのでこれからは、少し…』

『あの、すいません』

『え?はい、何ですか?』


『私が、吉澤ひとみを引き取ります』


お医者さんは厳しい顔になった。

『引き取って、それでどうします?』

『私が彼女の薬になるというなら、例え毒を含んでいても、きっと傷は治るはずです』

『…本当に、そう思いますか?』

『はい』

お医者さんは黙り、しばらくして、再び口を開いた。

『わかりました。これから吉澤さんのご家族を呼んで、話をしてみますか…』
342 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)14時55分53秒

話し合って、向こうは私が引き取ることを、快諾してくれた。

簡単に言えば、“厄介払い”になる。

その日から私は地方の物件を探し始めた。

ごみごみした都会で暮らすより、人が少ないところで暮らした方がいいと思った。

お医者さんもそのことには賛成してくれた。

そうして北海道のいい物件を買って、私も仕事を辞めた。

結婚だの何だの、ありもしないことをまた芸能コメンテーターが言っていた。

私たちは今までの給料を貯めていたので、細々と暮らしていくには充分な金があった。

引っ越して早々、“発作”が始まったが、やっぱり私がいればすぐにおさまる。

私は薬。

あなたを癒すための、薬。

毒を孕んだ、あなただけのクスリ。

まだ告白なんて、できないけれど。
343 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)14時56分31秒

年月を重ねるうちに、私は気付いた。

どんどん、“発作”が起きる間隔が短くなっていることに。

おかしいなぁ。
私はクスリなのに。

ある冬の日。
忘れもしない、雪がしんしんと降っていた日。

私は夕食にホワイトシチューを作って、煮込んでいた。

背後でテレビを見ているあなたがやけに気になって、振り返らずに声を掛けた。

『ねぇ、よっすぃー?』

返事はない。
寝てるのかな、と思って後ろを向く。

あなたは震えていた。
すぐに“発作”が始まるサインだ。

しまった。
どうして見ていてあげなかったんだろう。

『うわあああああ!!』

あなたは立ち上がり、手当たり次第に家具を叩き始める。

小物なんかは投げることがわかったので、置かなくなっていた。
344 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)14時57分10秒

私は落ち着いてコンロの火を消し、駆け寄った。

『どうしたの?寂しかったの?』

あなたは激しく首を横に振る。
ここで更に質問すると混乱させるだけなので、無理矢理にこじつける。

『寂しかったんだよね、そうだよね、ごめんね?』

暴れるあなたをきつく抱きしめる。

すると、あなたの振り上げた拳が私の頬を直撃した。

『んっ…いたっ…』

瞬間的にさびた鉄の味が口内に広がり、頭がくらくらした。

そのまま口を押さえて動けない私を無視するかのように、暴れるあなた。

今までに顔に怪我をすることは無かったのに。
345 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)14時57分50秒

しばらくして、魂が抜けたように、あなたは頭を垂れて床に座り込んだ。

『…ごめんなさい…』

小さく呟く声が聞こえた。

何だか急に切なくなり、私はあなたのところまで膝立ちで行く。

それから両手で顔をそっと包み、上に向かせる。

『大丈夫だよ…?』

あなたは無表情で涙を一筋だけ、流した。

『もお…泣かないで?ね?』

私も泣きたいのを、笑顔を作る。

無表情の下に隠されている、あなたの苦しさ。

私から触れるだけのキスをする。

あなたの唇に、少しだけ血がついた。

『大好き…』
346 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)14時58分53秒

でも、あなたは突然、私を押し倒して馬乗りになった。

『どうしたのっ…』

私の首に手を掛けるあなた。
その手に、どんどん力がこもっていく。

『く、るし…』

あなたは無表情で泣きながら、首をしめる。

あなたの涙が私の頬に落ちた。

『…好き…』

視界が白み始めた時に聞こえた、あなたの声。

ふいに、あなたの表情が戻ってきた気がした。

あなたが本来持っている、穏やかな顔。

『…わ、たし、も…』

消えかかったの意識の中、私は右手であなたの頬に流れた涙を拭った。
347 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)15時00分25秒

もう死ぬかな、と思った瞬間。

あなたの手が離された。

あなたは壁際で震え始めた。

私の首をしめた、両手を見つめて。

私はひどく咳き込んだ。

涙ぐむほど苦しかった。

喘息のように喉の奥から、ひゅうひゅうという音が聞こえた。

『…ふえぇぇぇん…ううぅぅっ…』

子供のように泣き出したあなた。

その様子を見て、私は言った。

『もう、終わりにしよっか…?』

あなたはこくん、と人形のように頷いた。
348 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)15時01分04秒

とある喫茶店。

「何だよ、裕子。久々の休みに呼び出すなよぉ」

「すまんの、矢口に聞きたいことがあってな」

「何?」

「いや…石川と吉澤のことやねん」

「あの2人がどーかしたの?」

「変な噂を聞いたんよ。不安になって…」

「うーん。どんな噂?」

「あの2人が心中したって…」

「しんじゅう!?」

「コラ、静かにしい。あいつらと連絡とれる奴はおらんやろ?」

「ああ、携帯も壊すからだめだって言ってた」

「せやから変な噂が出回っとるんよ」

「ふーん…」
349 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)15時01分41秒

「何回手紙出してもな、返事が来おへんねん。やっぱ噂は…」

「それは筆不精なだけかもしんないじゃん?」

「楽観的すぎんで!その根拠は何や?」

「だって…死んだこと、テレビとかで報道してないじゃん」

「それはやな、警察やら関係者やらが隠しとんのかもしれんやないか!」

「でもフツーはさぁ、心中ってテレビで言うでしょぉ?」

「わかっとらん、矢口は。あまりにも異常な場合は隠すってことも…」

「あああウザイよ、裕子ぉ!!そこまで心配なら自分で調べろよ!!」

「怒るなや。アンタは心配ちゃうんか?」

「…そりゃ、心配だけどさ」

「ウチは心配しすぎなんか?」

「ってゆーか過保護っぽい」

「ウチは親か…ってアレ、石川と吉澤ちゃう!?」

「あれが?後ろ姿だけじゃん。そっくりさんだろぉ」

「…あ、見失ってしもうたやないか!」

「知らねーよ」
350 名前:成熟できない若者達。 投稿日:2002年08月08日(木)15時02分31秒



2人は今、どこにいるのか。




それは誰にもわからない。


351 名前:. 投稿日:2002年08月08日(木)21時14分58秒
痛い・・切ない・・。こうゆうのも好き。
欲を言うと、やぐちゅうの会話は、
私的には無いほうが、よかったかな。

でも、感動させてもらいました。
あなたの綴った言葉で、心を動かされた人
きっと、たくさんいます。

受験、頑張って下さい。応援しています!
ほんと、素晴らしい作品をありがとう。
352 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月10日(土)00時28分13秒
どきどきしながら読みマシタ。
痛さ含めて面白かった〜。
353 名前:クロイツ 投稿日:2002年08月19日(月)18時42分43秒
最初からここまで、一気に読みました。
涙が止まりません・・・。
痛いんだけど、あたたかい話で・・・なんて言い表したら良いのかわかりません。
本当に本当に、とっても良い・・・素晴らしい話だと思いました。

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