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あなたへの想い

1 名前:綾瀬 投稿日:2001年12月26日(水)02時52分48秒
初小説をここで書かせて頂きます。
文章とかまだまだな所があると思うんですが
よろしくおねがいします。いしよしです。
2 名前:綾瀬 投稿日:2001年12月26日(水)03時02分27秒
白い病室の窓から見える綺麗な桜。
何時からか外ばかり見るようになった…
段々思いどうりに動かなくなってきた体。

原因不明の病気、医者もお手上げなんだって

もちろんあたしはモーニング娘を卒業。
その発表が世間で騒がれ始めた時
既にあたしはこのベットの中にいた。

3 名前:綾瀬 投稿日:2001年12月26日(水)03時24分46秒
最初は毎日のように見舞いにきてくれたメンバー。
看護婦さんには何時も怒られてたけど
あたしにとってはすごく嬉しかった。
でも最近仕事が忙しくなったみたいで
見舞いに来る人の数は所序に減って来た。

あたしも元気だったら今頃皆と忙しく仕事してたんだろうな…

このまま忘れ去られて行くのかなぁ…
なんて考えると寂しくなるけど
あたしはあなたが側に居てくれればそれでいいんだ。
4 名前:綾瀬 投稿日:2001年12月26日(水)03時38分18秒
あなただけは毎日会いに来てくれて
元気だった時みたいにその日あった何気ない話をしてくれる。
それがどんなにくだらない事でもあたしは楽しくなれる。

あたしの手をそっと握ってくれるあなた。
あなたの手から伝わってくる体温はとても暖かい。
安心して目を閉じる事ができる。
本当は眠るのが怖いんだ。
眠ったらこのまま目が覚めなくなって
あなたに会えなくなってしまいそうだから。


…少し、眠くなってきたよ…


5 名前:名無し読者 投稿日:2001年12月26日(水)09時25分01秒
痛めですか・・
病気の子はどちらなんだろ
6 名前:夜叉 投稿日:2001年12月26日(水)16時22分43秒
痛めでもいいです。
期待してます。
7 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2001年12月26日(水)21時11分59秒
「あたし」という表現がヨシコっぽい。
8 名前:綾瀬 投稿日:2001年12月27日(木)01時44分43秒

「よっすぃー」

あたしは閉じていた瞼を開いた。
そこは通い慣れたスタジオの廊下。
あたしの名前を呼ぶ声、駆け寄って来る足音。
声の主が誰かは振り返らなくても解る。

甘ったるい、俗に言うアニメ声。

あたしの大好きな人、でもこの事は絶対に言わないと思う。
9 名前:綾瀬 投稿日:2001年12月27日(木)01時58分23秒
この言葉を言ってしまったら
今までの関係が壊れてしまいそうで怖かったし
彼女が自分から遠ざかって行くなんて考えたくもなかった。

今は側に居られて一緒に笑い合えるだけで良かった…

それ以上の事を望むのは贅沢だと思った。
結局あたしは臆病なんだ。

「な〜に?梨華ちゃん」

あたしの大好きな人、石川梨華ちゃん。
10 名前:綾瀬 投稿日:2001年12月27日(木)02時05分48秒
「今日は何時もより来るの遅いのね」

「うん、ちょっと寝坊しちゃってね」

「ふーん、でも嬉しいな」

「何で?」

「え?あ、何でもない」

「変なの〜」

梨華ちゃんが側に居れば、そこが何処であろうと楽しくなれる。
どんな仕事も難なくこなせる気さえするから不思議。

昨日のテレビ番組の話で盛り上がりながら、楽屋へ向かった

「「おはよ〜ございま〜す」」
11 名前:綾瀬 投稿日:2001年12月27日(木)02時13分53秒
少ないですが更新終了…

>>5
解って頂けましたでしょうか…
書き手は解ってるので読み手からしたらどーなんでしょうι

>>夜叉さま
ありがとうございます。嬉しいです。

>>梨華っちさいこ〜さま
正解です、はい。
12 名前:綾瀬 投稿日:2001年12月28日(金)01時05分28秒
今日は雑誌の取材。
仕事中にも関らずあたしの頭は梨華ちゃんの事考えてる。
梨華ちゃんの仕種のひとつひとつがあたしをドキドキさせる。
こんなに人を好きになったのは初めてだ。

ようやく今日の仕事が終わり、各自帰り支度を始める。
あたしも帰る支度をしようとバックに手を伸ばした時
誰かが肩を叩いてきた。
13 名前:綾瀬 投稿日:2001年12月28日(金)01時12分29秒
「よっすぃー」

梨華ちゃんだ。

「何?」

「あ、あのさ、今日うちに来ない?」

偶に来る嬉しい誘い。
誘ってくれる時梨華ちゃんは「駄目ならいいよ」って言うけど
断るわけがないっしょ。
でも少し考えるフリなんかしてみたりして…

「ん〜、いいよ」

「ホント?」

「うん、じゃあ帰ろっか」

「うん!」
14 名前:綾瀬 投稿日:2001年12月28日(金)01時37分56秒
スタジオから駅までの道、横には笑顔の梨華ちゃん。
やっぱり笑顔の梨華ちゃんは可愛い、見惚れそうだよ。

「ねぇ、よっすぃー」

急に呼ばれたもんだから慌てて目を逸らす。

「な〜に?」

「もうすぐあたし達がモーニング娘。に入ってから一年になるね」

「もーそんなに経ったんだね」

「長いようで短かったねこの一年」

「ほんと、あっと言う間って感じだね」

本当にあっと言う間だったよ、梨華ちゃんに出会ってから。
今まで時間を持て余してた自分が嘘みたいだもん。
一分一秒でも長く一緒に居たいのに、時間はすぐ過ぎるんだ。
15 名前:綾瀬 投稿日:2001年12月28日(金)01時46分30秒
そう言えば明日あたし誕生日じゃん。
忙しくて忘れてた、きっと梨華ちゃんも忘れてるんだろうな。


「あ、そうだ、御飯ないからコンビニ行こう」

聞き慣れた台詞、何時も今思い出したかのように言うんだ。

「手料理は何時になったら食べられるのかなぁ」

「もぅ、いじわる」

頬を膨らまして『怒ってます』の意志表示。
そんな子供っぽい所も好きだよ。
16 名前:綾瀬 投稿日:2001年12月28日(金)01時55分55秒
コンビニで御飯を買って、梨華ちゃんの家に到着。

「あがって、あがって」

「おっじゃましま〜す」

御飯を食べ終わってから、交替でお風呂に入って、同じソファーに座って
テレビ見たり、雑誌を読んだりする。
これが梨華ちゃんちに来た時のお決まりコース。
あたしはここで何時も迷うんだ。
テレビを見てようか、梨華ちゃんを見てようか。
髪の毛が濡れた梨華ちゃんってすごく色っぽいんだよな〜。


あ、目が合っちゃった。
17 名前:綾瀬 投稿日:2001年12月28日(金)02時05分29秒
「どーしたの、よっすぃー」

「ん?なんか梨華ちゃん色っぽいな〜なんて思ったりして」

ちょっと照れ混じりに出た本音、これ位なら言っても大丈夫だよね。


「…もうこんな時間だし、寝よっか」

あたしが返事返す前に一人で寝室に行っちゃった。
あれ?何かヤバイ事言ったっけ?
あたしも急いで寝室に向かう。

寝室に入ると梨華ちゃんはもうベットの中に居た、しかも隅の方に…
18 名前:綾瀬 投稿日:2001年12月28日(金)02時31分30秒
お…怒ってる…?
梨華ちゃんは一人暮らしだから当然ベットは一個しかなくて
泊まりに言った時は一緒に寝るんだけど、さすがに今日の雰囲気は…
今からリビングに戻ってソファーで寝るのも申し訳ないから、ベットに入ったんだけど…
う〜ん、何時もだったらさぁ、今頃ふざけ合ってるはずなのに
さっきから黙ったままの梨華ちゃん、気まずすぎる…
やっぱりあの一言が気に触ったのかなぁ…でも何で怒るんだ?

最近暖かくなって来たけど、夜はまだ冷える。
しかも会話ないからあたしにはこの部屋が氷点下の世界に感じる。
バナナで釘が打てるな、きっと…

「よっすぃー」

「は、はい?」

バナナは解凍して食べようなんて考えてる時に声を掛けられて、思わずどもってしまった。
19 名前:綾瀬 投稿日:2001年12月30日(日)03時08分03秒
もしかして、
20 名前:綾瀬 投稿日:2001年12月30日(日)03時17分44秒
もしかして、ベットから出てとか言われるんじゃないだろうか。


「寒いから…側に寄ってもいい?」

思ってもいない言葉が帰って来たから少し驚いた。

「え?うん、いいよ」

何かワケわかんなくなってきたよ
梨華ちゃん、怒ってんの?怒ってないの?

ゆっくり近付いて来る梨華ちゃん。
その距離が縮まる毎に自分の鼓動が高鳴ってく。

「温かいね」

この鼓動を悟られないように「へへっ」っと笑いながら行った途端
自分の体に何かが触れて来るのが解った。
21 名前:綾瀬 投稿日:2001年12月30日(日)03時26分19秒
それは、両脇をするりと滑って行く手の感触。

え―――――――。

突然の異変に混乱している頭をよーく整理させる。
えーっと、これは手だよね、足なわけないもんね。
じゃあ、誰の手?あたしの手はここにあるから…
必然的にこれは梨華ちゃんの手だ、そうだ。
そんでこの状態は…えーっと、抱き付かれてるんだよ…ね?
正解?おぉ正解、とみこ頭いいー!とみこワショーイ!
トップ賞は賞金いちまんえーん!!

って、いちまんえーんじゃねーよ!抱き付かれてるよ!
22 名前:綾瀬 投稿日:2001年12月30日(日)03時34分40秒
脳内が整理されればされるほど反比例するかのように高鳴る鼓動。
気付かれてないかな、気付かれてたらそぅとぅ恥かしいんだけど…
絶対顔真っ赤だよ、電気付いてなくて良かった。

「こうしてても…いい?」

「う、うん」

せめて声だけは通常通りにと努力してみたが、少し上擦ったものになってしまった。

「よっすぃー」

「な、なに?」

今日ばかりは早く寝て欲しいと思った。
今までずっと溜めてきた梨華ちゃんへの想いが暴発してしまうかもしれないから。
23 名前:綾瀬 投稿日:2001年12月30日(日)03時49分33秒
「お誕生日おめでと」

「へ?」

目を凝らして目覚し時計に目をやると針は12時を指していて
あたしはめでたく16歳の誕生日を迎えていた。

「お仕事忙しくてプレゼント買えなかったけど、今度絶対何かあげるからね」

申し訳なさそうな声が聞こえてきた。
今梨華ちゃんがどんな顔してるのか暗闇の中でも容易に想像できて思わず吹き出しそうになった。

きっと困ったような顔してるよ。

つくづく梨華ちゃんはこういう事に律儀だと思う。
断っても絶対に引かないのは目に見えていた。
それよりなにより、あたしは梨華ちゃんが怒ってない事がわかってホッとしていた。

「解った、じゃあ今度ちょうだい?」

「うん、よかった…じゃあおやすみ、よっすぃー」

「おやすみ」
24 名前:綾瀬 投稿日:2001年12月30日(日)03時57分16秒
暫くすると、規則的な寝息が梨華ちゃんから聞こえてきた。
あたしの方はさっきより落ち付いてきたんだけど、だからと言って眠れるわけがない。
だって顔のすぐ下に好きな人の寝顔があるんだもん。

ふつーは寝れないっしょ。

やっと目が慣れてきたので、視線を下に向けてみる。

寝顔もやっぱり可愛いや。

ふと脳裏に邪念が過る。
あたしが顔を下げればすぐにでもキスできる位の距離だなぁ…と。
25 名前:綾瀬 投稿日:2001年12月30日(日)03時59分07秒
sage忘れて鬱。
26 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2001年12月31日(月)18時11分57秒
この辺の純な感じがいいな〜
27 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月05日(土)02時17分49秒
…ばれなきゃ…大丈夫だよね…

抱き付かれた事に驚いて気を付けの姿勢のままだった手を
梨華ちゃんを起こさないように注意しながら背中に回して
優しく自分の方へ抱き寄せた。
少し顔を近付けて見る、縮まる梨華ちゃんとの距離。
静まりかけていた鼓動の波が再び押し寄せて来た。

唇まであと…2p…1p……ストップ…

瞼を開いみても近過ぎて焦点が合わないけれど
これは紛れも無く梨華ちゃんだ。
顔に鼻息がかかって少しくすっぐたい。

お願いだから起きないでね…
28 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月05日(土)02時25分29秒
再び目を閉じ、軽く触れるだけのキス。


初めてのキス…じゃないけど、初めて触れる梨華ちゃんの唇。
それはあたしがこれまでにしてきた数少ないキスの中で
一番胸の奥が熱く、苦しくなるものだった。
これがきっと本気で人を好きになった時の気持ちなんだろう。
この気持ちはこの先ずっと梨華ちゃんでしか味わえないと思う。
あたしの一方通行のこの気持ち。
軌跡が起きるなら、通じ合いたいこの気持ち。
29 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月05日(土)02時35分34秒
周りに漂うのは同じ石鹸、同じシャンプ−の香り。
このまま時なんか止まればいいのに…
このまま朝が来なければいいのに…
朝が来ればまたあたしはこの気持ちを沈めて
梨華ちゃんと接しなければならない
今はそんな事考えたくもなかった。

「おやすみ梨華ちゃん…軌跡が起きたら続き…しよう…」

次の日

「誕生日プレゼントはもう貰ったからいいよ」
とニヤケながら言うあたしと
「何もあげてないじゃない、どーしたの?」
その言葉が全く理解できないで、戸惑っている梨華ちゃんがいた。

貰ったプレゼントが何か笑い合いながら打ち明ける日は来ないんだろうな…
30 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月05日(土)02時56分00秒
目の前に光がちらつき、次第に視界に自由がきかなくなる。

視界が薄れて行く―――――


「…夢か…」

ここは…病室…。
どうやら昔の夢を見ていたようだ。
この事をあなたに教えようとおもったら
あたしの手を握っていてくれたあなたの手の感触がない事に気付く。
なんだか急に不安になってきて、あなたの居た方を見上げたんだけど…

「何よ」

…そこに居たのは梨華ちゃんじゃなくて、野じゅぅ…じゃない、保田さんだった。

「うわぁお!!」

「そんなにビビる事ないじゃないのよ!」

「ど、どーしたんすか?」

「どーしたもこーしたも、見舞いに来たんじゃないの」

ぶっちゃけ目を覚まして一番最初に目に入ってきたのが保田さんってのはキツイものが…
やっぱり普段見てるものが綺麗だからかな…なんて。
まぁ、有名な店のベーグル持って来てくれたイイか…って失礼か。

でも、やっぱり梨華ちゃん以外にメンバーが見舞いに来てくれるのは嬉しいや。
31 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月05日(土)03時08分47秒
そういえば梨華ちゃん、どこ行ったんだろう。

「あの、保田さん…梨華ちゃんはどこ行ったんですかね?」

「ああ、石川?さっき飲み物買うって出てったわよ」

「そうですか…梨華ちゃん、仕事頑張ってますか?」

「……ええ、頑張ってるわよ」


あたしの病室には病院側が気を使ってるのかどうかはわからないけれど
テレビも雑誌も置いてなかった。
別に欲しかったわけでもないのだけれど…
だから、今のモーニング娘。がどうなっているのか全然わからなかった。
梨華ちゃんに聞いてみても
「皆もわたしも頑張ってるよ」
位しか言わないし、もし話したくないようだったら
それ以上無理に聞きたくなかったし
あたしもそれ以上問いただそうとしなかった。
人はどう思うか知らないけど、これがあたしなりの思いやりの形。
32 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月05日(土)03時18分40秒
「そろそろ行くわ」

「もう行っちゃうんすか?」

「ちょっと用事があるのよ」

「あ、そうだ。これ、あたしにもしも何かあった時、梨華ちゃんに渡して下さい」

梨華ちゃんの好きなピンク色の封筒を渡した。
梨華ちゃんがいない間に書いた一通の手紙。
保田さんは凄い怒った顔をした、あ、何か懐かしい…その顔。
よく怒られたっけ…ごっちんといたずらして…

「あんた自分の言ってる事の意味わかってんの!?」

「いやだなぁ、もしもですよ、も・し・も」

もしもじゃない、『死』は確実にあたしに迫ってきてるんだ。
だから、一番二人の事理解してくれてる保田さんに渡して欲しいんです。
33 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月05日(土)03時22分59秒
更新終了。

梨華っちさいこ〜さん
レスありがとうございます。読んでくれてる人一人もいないんじゃないかと
少々焦っていたところでした。
34 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年01月05日(土)12時32分25秒
明るく振舞うヨシコの姿が…(涙 
死ぬな〜 死んじゃだめだぞ〜
35 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月05日(土)13時28分12秒
読んでますよー
何とも切ない雰囲気が胸に染みまする・・
36 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月06日(日)05時18分32秒
「保田さん、忙しい中来てくれてありがとうございました」


「吉澤」

「はい?」

「あんた石川を一生大事にしなさいよ」

あたしの返事を待つ事もなく、保田さんは病室から出て行った。
保田さんの顔が悲しそうに見えたのは気のせいだろうか…

誰もいなくなった病室で、あたしは梨華ちゃんの帰りを待っていた。
けど梨華ちゃんは一向に帰って来ない、保田さんと話でもしてるのかな?

あ〜退屈だなぁ…今日も桜が綺麗に咲いてて…陽射しが暖かくて…

なんか梨華ちゃんって桜みたいだなぁ…
桜のピンク色は梨華ちゃんの好きな色だし、甘い匂いもどこか似てる。
梨華ちゃんの体温はちょうど春の暖かさそっくりだ…

何だかまた眠くなってきたよ…さっきみたいな夢、見られるといいなぁ…

次起きた時は保田さんじゃなくて梨華ちゃんと会えますように。
37 名前:保田視点 投稿日:2002年01月06日(日)05時40分22秒
「全く…あの子達はどこまで相手を想いやれば気が済むんだか」


今日は仕事もオフだし、久しぶりに吉澤の顔を見に行く事にした。
食事制限は無いと聞いていたので、あいつの大好きなベーグルを買って。
病室へ向かう階段で石川に会った。
声を掛けてくれると思っていたら、こっちに気付いていないようなので声を掛ける。

「石川!」

「あ、保田さん、お久しぶりです」

「吉澤の調子はどう?」

「今ちょうど眠ったところです」

「あら、タイミング悪いわね、石川はどこ行くのよ」

「ちょっとコンビニで飲み物買ってこようと思って」

「じゃあ先に病室行ってるわ」


「あの…保田さん」

「何よ」

「わたしがモーニング娘。辞めた事、よっすぃーに何か聞かれても黙ってて下さい」

そのまま石川は走って行ってしまった。
あの子がまだ吉澤に言ってなかった事にあたしは驚いた。
だって石川が脱退したのって、吉澤が辞めてすぐだから大分前の事よ?
38 名前:保田視点 投稿日:2002年01月06日(日)05時46分15秒
病室で目覚めた吉澤にビビられたのには少々ムカついたけど
あいつも石川が脱退したとも知らずに、石川の心配するし。
さすがにあたしも泣けて来たわよ。

でも石川に元気が戻ったみたいで良かったわ。
何しろあの子、吉澤が抜けた時凄い落ち込んでたんだから。
もうどん底だったわよ。
39 名前:保田の回想 投稿日:2002年01月06日(日)05時52分45秒
「わたし…モーニング娘。…辞めます」

それは石川があたしに話があるといって呼び出された楽屋裏での出来事。
ちょうど吉澤が入院した次の日だった。

「ちょっと、あんた何言ってんのよ」

「わたし、ずっとよっすぃーの側に居たいんです」 

「そんなわがまま通用するわけないでしょ?」

「もう、よっすぃーは皆と笑ったり、コンサートやったりできないんですよ…?」

石川は涙を流していた。
40 名前:保田の回想 投稿日:2002年01月06日(日)06時00分34秒
「でも退院してから皆で会う事だってできるでしょ?」

「…よっすぃーの…病気…治らない…って…もう長くないって…わたし…看護婦さんの話…聞いちゃったんです…だから…よっすぃーは…このまま…ずっと…病室のベット…出れないんです…」

あたしは言葉を失った。
長くないって…吉澤が死ぬって事なの?
あたしにしたら大事な友達の死。
でも、石川には…大切な大切な…恋人の…死。
41 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月06日(日)06時07分58秒
更新終了。

梨華っちさいこ〜さん
この先どうなるかは作者のみぞ知ると言う事で
こんな駄文を読んでくれてありがとうございます。

>>35
レスどうもです。
読んでくださってたんですね、ありがたい。
そう言って頂けると嬉しいです。
42 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年01月06日(日)10時59分20秒
なんと梨華ちゃんが娘。を辞めていたとは…
ヨシコへの想いの深さを感じます。
43 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月06日(日)13時40分31秒
妻の鏡やね・・・(ノ_・、)ウルウル
44 名前:夜叉 投稿日:2002年01月07日(月)12時05分29秒
石が娘。を辞めて、吉の生命も危ぶまれてるなんて。
久しぶりに覗いたら、大変なことになってる(汗汗。
続き気になります、作者様頑張ってください。
45 名前:保田の回想 投稿日:2002年01月08日(火)01時52分37秒
石川と吉澤の関係は石川から聞いていた。
その話をしている時の石川の凄く嬉しそうで、幸せそうな顔を思い出したら…

「わたし、よっすぃーと一緒に居られるなら
  もっとポジティブになれる気がするんです」

あの希望に満ちた顔を思い出したら…

これ以上、石川をモーニング娘。に留める権利は
リーダ、事務所にすらないのではないだろうかと思えた。

「わかったわ、あたしはもう何も言わない
  石川、どうしたら一番自分の為になるかはあんた自身で決めなさい」

「はい、今までありがとうございました」


その後、事務所の反対を圧しきって、石川は脱退した。

どうか神様、石川から吉澤を取らないでやって下さい。
46 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月08日(火)01時58分49秒

「よっすぃー」

あたしは渋谷の映画館の前に立っていた。
呼ばれた方に顔を向けると、そこには笑顔でこっちを見ている梨華ちゃんが居た。
今度はこの状況をしっかり受けとめる事ができた。

これは夢の中なんだ…

その証拠に、二人の行動を見ているあたしが居た。

また、夢を見れたんだ…
47 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月08日(火)02時13分03秒
「映画なんてヒサブリだね」

「外出なんて滅多にできないからね〜」

そうだ、今日は梨華ちゃんとデート…って付き合ってるワケじゃないけど。
あたしの中ではもうこれはデートと言う事で…
今日観に来た映画は今テレビとかで有名になってる恋愛モノのやつ。
公開前から二人で行く約束してたんだよね。

夢って不思議だね、その時思ってた事が頭の中に入ってくる。

劇場の中に入り、座席に座った。

「梨華ちゃん、ハンカチ持ってる?」

「え?持ってるけど、何で?」

「梨華ちゃんすぐ泣くから」

「そんな事ないよ、泣かないもん」

「うっそだ〜、この前観に行った映画だってボロ泣きだったじゃん」

上映終わってからたっぷり一時間思い出し泣きしてたよね。
周りからあたしが泣かしたみたいな目で見られて焦ったんだから。
48 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月08日(火)02時18分45秒
「じゃあ今日は泣かないもん」

「どうでしょうかねぇ」

飽きれるくらいからかいがいのある負けず嫌い体質。
でもきっと、ラストのあたりで梨華ちゃんは泣くんだろう。
これまであたしが見てきた梨華ちゃんはいつもそうだったから…
からかっていると、客電が薄っすらと落ちてきて、幕が開いた。

「始まるね」

「うん」
49 名前:上映中 投稿日:2002年01月08日(火)02時20分47秒




50 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月08日(火)02時32分47秒
映画も終盤に差し掛かり、最も感動的なシーンになった時。
肘掛に置いてあるあたしの手に梨華ちゃんの手が重なってきた。
一瞬「もしかして」なんて思いながら隣に目をやると…

思った通り期待は外れていて
そこにはスクリーンを一心に見詰める梨華ちゃんが居て
逆の手ではしっかり握られたハンカチで涙を拭っていた。

やっぱ泣いてんじゃん


映画は終わり、あたし達は映画館を後にした。

「あ〜、良い話だったね」

「…うん…」

いかにも今まで泣いていたとわかる、鼻声、涙目。
でも客電が点いた時には必至に涙を止めていたので
敢えてそこは突っ込まないでおいた。
51 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月08日(火)02時40分37秒
「わたしも…あーゆー恋…してみたいな」

小さな声で漏らした言葉。
できるならすぐにでも恋人に立候補したかった。
でも、冗談っぽくでしかこの気持ちを伝える事ができない…

「いいね〜、あたしとしてみる〜?」

その言葉がいかなかったらしい。
梨華ちゃんは悲しい顔をして――――

「からかわないでよ!」

…って怒っちゃった。

「何言ってんのよっすぃー」

とか言うとばっかり思ってたのに…
52 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月08日(火)02時50分33秒
思い切り張り上げたアニメ声に
周囲の人も目線だけこっちに向けて、そのまま通り過ぎる。
そんなのはお構いなしに人の波を掻き分けて
一人で歩き出す梨華ちゃん、しかも早歩きで…

「待ってよ!梨華ちゃん!」

聞こえてるはずなのに振り向いてくれない。
追い付いても何も話してくれない、ただ前だけを見て歩いてく。
あたしは何であれで怒ったのかわからないまま付いて行く。

その時ふと思い出したのは、梨華ちゃんの家に泊まりに行った時の出来事。
あの時は怒ってるのかと思ってたけど本当は怒ってなかった。
そしてあたしに…抱き着いてきた…
もしかしたらまた抱き付いてきたりして…?
53 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月08日(火)02時56分33秒
梨華ちゃんの家の玄関の前まで来てやっとこっちを向いてくれた。


「じゃあね」

え?!それだけ?

考えが甘かった…
自分勝手な期待を裏切られて少しがっかりしているあたしをよそに
ドアの鍵を開けて部屋に入って行こうとする梨華ちゃん。

このままケンカした状態のまま別れるのが辛くて
思わずあたしは梨華ちゃんの腕を掴んだ。
54 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月08日(火)03時04分53秒
「ちょっと待ってよ!何で怒ってんの?」

「怒ってない!」

「嘘だ!怒ってんじゃん!」

「怒ってないって言ってるじゃない!」

「じゃあこっち向いてみろよ!」


無理矢理こっちに振り向かせた時、あたしの胸はズキンと痛んだ。
絶対膨れっ面になってると思ったから
「ほら怒ってんじゃんか」
って続けるはずだったのに…
どうやって慰めるかまで考えてたのに…

振り向かせた梨華ちゃんの顔は、涙で濡れていた。
これが映画を観た時に見せた涙と違う事ぐらいあたしにでもわかった。
予想もしてない事に、あたしは酷く動揺した。
55 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月08日(火)03時14分18秒
「ちょ、まっ、何で泣いてんの?!」

「…う…ぐっ…」

「ね、ねえ、どうして泣いてるの?」

「う…よ…っすぃ…は…無神経…だよ…」


むしんけい?何で?

なぜ日常会話に近い程度の冗談で泣くのかがわからなかった。
いつも一線越えないところでからかって、笑って終わる。
今日もそのはずだったのに…
梨華ちゃんはあのぐらいでは普通に受け流すってわかってたから言ったのに…

今日はなんで?何で怒るの?何で涙を流しているの?

それともあたしは違うところで一線を越えてしまったのだろうか…
とにかく怒った理由を聞いて謝らなくちゃ。
56 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月08日(火)03時25分13秒
「謝るから、何で泣いてるのか言ってよ、じゃなきゃわかんない」

「いや……い…ったら…よっすぃーは…わたし…の事…嫌いになる…」

あたしが梨華ちゃんを嫌いになる?
梨華ちゃんがあたしを嫌いになるんじゃなくて?

「ならないよ、だから教えて?ね?」

「っく…ぜったい…?」

「絶対に決まってんじゃん」


「…わたし…」

「何?」


「……わたし……よっすぃーの事が……好き…」


「………え?」

「だから…さっき…からかわれ…たの…すごく辛かったの…
  …わたし…本気で…よっすぃーの事…好きだから…」

「……」

「お…ねがい…わたしのこと…きらいに…ならないで…」
57 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月08日(火)03時45分36秒
中途半端に更新終了。
夢と現実の違いが読んで頂いてる方に
ちゃんと理解できるか不安なんですが…どうでしょうかι

>>梨華っちさいこ〜さん
でもイシコは言わないんです。
感じとって頂けて光栄です。

>>43
夫の為ならエ〜ンヤコ〜ラです。

>>夜叉さん
続き、期待に添えられるように頑張りますのでよろしくお願いします。
58 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月08日(火)06時25分29秒
>夢と現実の違い
だいじょぶ。理解できてますよ
59 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年01月08日(火)10時45分15秒
「どうか神様、石川から吉澤を取らないでやって下さい。」
でグッときました。
今後も二人の一番の理解者である圭ちゃんの登場を期待します。
60 名前:夜叉 投稿日:2002年01月08日(火)14時31分18秒
夢だと分かってるなんて、あまりにも切なすぎる。
違い、理解できますよん。ただ、この夢は以前あったことですよね?分かってなくてごめんなさい。
続きが気になって、気になって。
61 名前:ポー 投稿日:2002年01月08日(火)23時57分43秒
自分もよんでますよー♪夢と現実、たぶん理解してます!あぁ、せつなさがこみあげてくる(´o`)自分的にはよすぃこの手紙が気になります..その手紙の内容がでてくるときには、きっと自分は、自分は..(>n<)
62 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月09日(水)02時02分49秒
あたしはまだ眠っていて、これは夢のワンシーンなのかと思った。
このまま夢を見ているのもよかったけど
目覚めてから現実を受け入れるのが辛いだろう。
しかもお母さんに起こされたりなんかしたらサイテーだよ。

だから自分は起きてるのか、寝てるのか
確認する為に頬を抓ってみる。

いって――――――――――!!!!!!!

スゴイ…スゴイ痛い…ちょっとは手加減すればよかった…
でも痛いって事はこれ…夢じゃないんだよね…なんか泣けてきた。
出てきた涙は痛いからってのもあるんだろうけど
本当の涙の原因は――――

嬉しいから

…信じていれば軌跡は起こるものなんだね、神様ありがとうございます。
63 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月09日(水)02時09分36秒

「嫌いになんてならないよ、ってかなれないの方が正しいか」

「……?」

「あーあ、損しちゃったよ」

「え…何…?」

「だーかーらー、今まで我慢してて損したって言ってんの」


「よっすぃー…?」

「あたしも好きだよ」
って答えるのが照れ臭くて代わりに抱き寄せてキスをした。

今度は梨華ちゃんが起きてて、二人の想いが通じ合った上でのキス。
あの時より胸の奥が熱くて苦しい…

…本当に…奇跡は起きたんだ。
64 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月09日(水)02時15分29秒
こんなドラマみたいな体がむず痒くなる
言葉や行動が平気でできる自分に驚いた。
こんな事できるのはドラマだからだ、と冷めた目でテレビを観てきたけど
今のあたしは『こんな事』紛いの事をやっている。
恋の力ってスゴイね。


「これがあたしの答えなんだけどわかる?」

「よっすぃー…」

あ、やっと笑ってくれた。
65 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月09日(水)02時24分34秒
これからは素直な気持ちで思った事言ってもいいんだよね。

「やっぱり梨華ちゃんは笑顔が一番可愛いよ」

「…ばか…」


梨華ちゃんはあたしの腕から離れた。

あれ?この夢実際と違う、あの時はもう暫く抱き合ってたんだけど…
…このままどうなるの?

「ばいばい…よっすぃー…」

え?ちょっと待ってよ、何?どうなってんの?
梨華ちゃんはあたしをおいてドアを閉めようとする。
何で夢のあたしはそれを見届けてんの?

「止めなよ、止めろってば!」

あたしの声は届かない…やがて扉は閉められた…

この前と同じく目の前が光に包まれる…


夢から…覚める――――――
66 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月09日(水)02時31分18秒


目を覚ましたあたしはいつもと違った。

それは体を覆う違和感
脳裏を過る以前より確実な『死』のイメージ

でも不思議とあまり不安にならなかった。

それはあたしの手を握ってくれている人がそこに居たからだと思う。
その人は眼が合うとにっこり微笑みかけてきた。

でも…あなたは…誰…?
67 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月09日(水)02時38分14秒

「よっすぃーおはよ、保田さん来てたでしょ」

まるで知り合いのように話しかけられて少し戸惑う。
この人、もしかして人違いしてるんじゃないだろうか…

「あの…すいません…どちらさまですか…?」

「何言ってんの?そんな冗談やめてよー」

「いや、冗談とかじゃないんですけど…」

その子の顔が凍り付いたのがわかった。

もしかして本当に知り合い?
あ、遠い親戚とかかなぁ…

自分は記憶力いい方だと思ってたんだけど。

…全く思い出せない…
68 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月09日(水)02時45分06秒

ちょっと待って、何かがおかしい。
よく考えてみよう、あたしは…吉澤ひとみ。
…吉澤ひとみ…吉澤ひとみ…

他には?他にあたしを位置付ける記憶は…

……記憶が…何もない……

どこで生まれたのかも、家族の事も、友達の事も
あたしの中には記憶が何もない。

ただ一つ思い出せる事があった
それはあたしが入院して間もない頃
病室のベットで交わした医者との会話――――
69 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月09日(水)02時54分10秒

「吉澤さん、落ち付いて聞いて下さい」

「何ですか?」

「…あなたの病気、残念ながら原因がわからないんです」

「…どういう事ですか?」

「つまり…私達には治す事が不可能です」

「じゃあ、このめまいや吐き気も…歩く事すらもうできないんですか?」

「…はい…」

「あたし、死ぬんですか?」

「…いえ、その心配はありません、安心して下さい」

「…そうですか…親には黙っててもらえませんか?」

「…わかりました」

その時の医者の作り笑顔と言ったらなかった
その時から覚悟してたんだ、あたしは死ぬんだなって…
まさか記憶までなくなるなんて、もうヤバイんだ…あたし。
70 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月09日(水)03時10分00秒
ちょっことですが更新終了。

皆様御意見ありがとうございます
これからもヘタレな文ですがよろしくお願いします。

>>58
あ、わかって頂けましたか、良かったです。

>>梨華っちさいこ〜さん
圭ちゃんは再登場するかも…しれません。

>>夜叉さん
はい、以前にあった事です。夢で思い出したみたいな感じです。
気になって貰えて嬉しいです。

>>ポーさん
読んで下さってありがとうございます。
手紙の内容は見る事…あるんでしょうかね…
71 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月09日(水)03時18分42秒
リアルタイムで読ませていただきました!
もうせつなすぎて…続き期待してます!
72 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月09日(水)07時52分51秒
あ〜よすぃの記憶がなくなっちゃうなんて・・・
梨華ちゃんよすぃに元気を・・・
73 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月09日(水)11時47分18秒
ああ、早くBLACK JACK先生に電話を…
74 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年01月09日(水)12時34分19秒
おい手を握ってくれていた人って梨華ちゃんだよな?
梨華ちゃんのことまで忘れちまったのか?
ああ…ヨシコがだんだん遠くに……
75 名前:夜叉 投稿日:2002年01月09日(水)17時45分42秒
手を握ってくれてたのが石やとすると、吉の記憶が夢から覚めた時点で(略。
そんなん辛すぎますわぁ、夢を見てたことが石との最後か?

医者の作り笑いなんて、大っ嫌いだぁ!!!
76 名前:ポー 投稿日:2002年01月10日(木)19時48分40秒
えっ!?記憶なくしちゃったの..(;.;)好きな人のことも思い出せないなんて..悲しすぎる!
77 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月11日(金)00時23分27秒

「いやあ」

突然その子が壊れてしまったかのように叫び出し我に帰る。
耳を突き抜けて行くアニメ声

叫びたいのはこっちだっていうのに…

こんな状況にも関らず冷静な自分がいる
一度に色んな事が起こりすぎて
わざわざ感情を変化させるのも馬鹿らしくなってきた

こんなのもうやだ…
できるならあたしも壊れたいよ
そしたら何も考えなくて済むかもしれない

でもあたしよりこの子の方がヤバそうだ
見た感じ目の焦点が合ってない気がする
とりあえずナースコールを押して看護婦さんを呼んだ
78 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月11日(金)00時25分48秒
訂正
「いやあ」ではなく
「いやあああああああああ」です
これじゃあ叫び声になりませんよねι
79 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月11日(金)00時35分29秒

「吉澤さんどうしました!?」

「よっすぃー!よっすぃーってば!」

思いきり肩を揺すられて鈍い痛みが走る
でも拒絶しようとしないのはなぜだろう…

普通、知らない人に理由もわからず
肩を揺すられて問い詰められたりなんかしたら
当然肩の手を払い除けるだろう
でもあたしはされるがままにその行動を見ている

突然の事に驚いているから?
感情が薄れてしまってきているから?
それとも…この子に対して罪悪感があるから?
80 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月11日(金)00時46分25秒

「石川さん!石川さん!!しっかりしてください!!」

「いや!!よっすぃー!わたしよ!梨華よ!!」

彼女の瞳から次々と涙が零れ落ちた

「石川さん!落ち付いて下さい!!」

「ねぇ!いつもみたいに梨華ちゃんって呼んでよ!
  ねぇよっすぃー!わざとだよね?!またわたしの事からかってるんでしょ?!」

「石川さん!!」

一人の看護婦さんがその子の肩を掴んだ

「いや!離して!冗談だよって言っていつもみたいに笑ってよ!!」

暴れて言う事を聞かないその子は
看護婦さん数人に取り押さえられて病室から出て行った
81 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月11日(金)01時07分12秒
一体あの子は誰なんだろう

『いつもみたいに』

耳に残る彼女の言葉
それほど身近な人間だったのだろうか…

看護婦さんは石川さんって呼んでたし
あの子は自分の事梨華って呼んでた

『イシカワリカ』

イシカワリカ…聞いた事があるような…
思い出そうとすればするほど頭が痛くなる…

あたしの頭の中はペンキで塗りたくられたかのように真っ白だった
楽しかった思い出、家族、友人の思い出は一体どこへ消えてしまったのだろう

そもそも『思い出す』という行為は
どうやったらできるものなのだろうか…
やがて人間の仕組みについてまで考えてしまいそうな勢いだった

このままじゃ頭は混乱する一方で何の解決にもならない
もう、今日は考えるのはやめにしよう
少し眠って…そうしたら何か思い出すかもしれない

何も思い出さないのだろうけど…

すぐにでも考える事から離れたかったので
あたしは医者に貰っておいた睡眠薬を飲んで目を閉じた
82 名前:保田視点 投稿日:2002年01月11日(金)01時21分00秒
吉澤には用事があると言って病室を出たが
本当の所は仕事だった
ようやくその仕事も終わり
楽屋でカバンの中の携帯をチェックすると

ディスプレイに着信ありの文字があった

その時カバンの中に入れてあった吉澤の手紙が目に入り
…何だか嫌な予感がした

着信:石川梨華

自分の中で予感から段々確信に変わって行くのが嫌だった
震える手を『気のせいだ』と誤魔化しながら電話を掛ける

院内は携帯の使用を禁止してるから
もしかしたら電源を切ってて電話に出れないかもしれない
コールをカウントする度に気持ちばかりが焦る

早く…頼むから早く石川出なさい
83 名前:保田視点 投稿日:2002年01月11日(金)01時29分50秒

「もしもし…」

「あ、石川?さっき電話掛けてきたでしょ?」

声が暗い…まさか…そんな事あるわけない

「保田さん…わたし…わたしどうしたらいいか…」

「あんた今どこに居るのよ」

「病院の…中央入り口です…」

なんで入り口に…
あたしからの電話を待ってたから?
それとも…

「ちょっと、そんな所にいないで病室にいなさいよ」

「でも…わたし…よっすぃーの顔…見れません」

やっぱり…吉澤は…

「いいから!病室に戻ってなさい、すぐそっちに向かうから」

「…はい…」
84 名前:保田視点 投稿日:2002年01月11日(金)01時39分24秒

電話を切るとあたしはスタジオの出口に向かって走り出した
タクシーを捕まえて乗り込み、行き先を告げる
あたしのあまりの勢いに運転手は驚いてたみたいだけど
今はそんな事気にしてる場合じゃなかった

頭の中では祖父の御葬式に行った時の風景が広がって
御棺を開けた時の見た祖父の青白い顔を思い出してしまった

あたしがマイナス思考でどうするのよ!
しっかりしなさい保田圭!!

頬を叩いて雑念を払う
詳しく理由を聞いてから出てくるべきだったと後悔した
85 名前:保田視点 投稿日:2002年01月11日(金)01時53分44秒

「お客さん、着きましたよ」

おつりも受け取らずにタクシーから飛び降りた
病室に向かう為の階段がいやに長く感じる

吉澤…無事でいてよ!

辿り着いた病室の中は日が落ちたというのに
電気は点いていないし、カーテンは開けっぱなしだった
手探りで電気のスイッチを入れると
そこには目を瞑っている吉澤と、項垂れた石川が居た

石川は吉澤の手を握っていなかった

「…し…かわ…」

「あ…保田さん…」

あたしの顔を見ると共に抱き付いてきて泣き出す石川
吉澤の方に目をやるとまだ点滴が体に付いていて
生きている事が確認できた

よかった…無事だったのね…
…じゃあこの子は何で泣いてるの?
86 名前:保田視点 投稿日:2002年01月11日(金)02時14分20秒

「どーしたのよ」

「よっすぃー…の記憶が…わたしとの…思い出が…」

「ちょっと、落ち付いて順序よく話なさい」


石川の涙混じりのたどたどしい説明で
吉澤の記憶が無くなってしまった事を知る

どうして…お願いしたじゃないですか
神様は石川をこんなに苦しめてどうする気ですか?

今は落ち付きを取り戻しつつあるようだけど
そうとう気が動転しただろう
その場に居てやれなかった事を悔やんだ
あたしでも少しは心の支えになってやれただろうに

肩を震わせて泣きじゃくる石川
ただ頭を撫でてやる事しか思い付かない

こういう時どうやって慰めればいいのだろう
こんな場面に立ち会った事がないから
どう対応していいものかわからない

まずこんな悲劇はそうあるもんじゃない
ありえないと言っても過言じゃないだろう

どうして石川と吉澤にばかり…
87 名前:保田視点 投稿日:2002年01月11日(金)02時28分32秒

「石川…こんな事になっちゃったけど
   ちゃんと吉澤の側に居てあげるのよ」

「……」

「絶対あの子はあんたの事思い出すから」

「でも…でも…」

「ほら、あんたがそんなんでどうするの?
   何もできないからこそ相手の事信じてあげるんでしょ?」

「……でも」

「ほら!しっかりしなさい!前にあんた言ったでしょ
   吉澤といればポジティブになれるって」

「……」

「あたしが見る限りでは今のあんた最高にネガティブよ?」

「…はい…」

「あんたが今の吉澤にしてやれる事は信じて待ち続ける事なのよ
   それができそうにないようだったら吉澤の事はもう諦めなさい」

「…そんなのいや…わたし…よっすぃーを信じます…」

「頑張れるわね?」

「…はい…がんばり…ます…」
88 名前:保田視点 投稿日:2002年01月11日(金)02時44分59秒
そう言うと石川はあたしに身を預けたまま眠り始めた
きっと泣き疲れたのだろう、無理も無い
こんなに災難が続いて起こったのは初めての経験に違いない
この子の描いていた吉澤との未来は
もっと平凡なものだっただろうに…

できるならその被害を
あたしが代わりに受けてやりたい
最愛の弟子の身に起きた事は
あまりにも現実離れしすぎている…

ずっとこうしててやりたかったけれど
明日も朝早くから仕事が入っていて
支度をする為にも家に帰らなきゃいけない
89 名前:保田視点 投稿日:2002年01月11日(金)02時52分37秒
信じると決心した事で心の揺らぎは治まったはずだし
もうあたしが付いててやらなくても大丈夫だろう
それに皆が思ってるほど
弱い子じゃないって事をあたしは知ってる

看護婦に頼んで病室に簡易ベットを用意してもらい
そこに石川を寝かせた

「じゃあね、また二人の顔見に来るわ」

病室の電気を消してそのままあたしは病院を後にした


「信じ抜きなさい」

90 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月11日(金)03時09分30秒
どこで止めたらいいかわからないまま更新終了。

急に圭ちゃん視点になってしまってわからなくなる方が
いるんじゃないかなぁと少々不安です…

>>71
そう言うお言葉とても嬉しいです、ありがとうございます。

>>72
梨華ちゃんの踏ん張り所です。

>>73
いや、ドクターキリコに(略

>>梨華っちさいこ〜さん
はい、ヨシコには申し訳ないんですけど…

>>夜叉さん
このヨシコは夢を見ていた事も憶えていません
だから梨華ちゃんとの記憶は(略

>>ポーさん
無くしてしまいました、戻ってくるんでしょうか…
91 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年01月11日(金)10時44分40秒
圭ちゃん再登場ありがとうございます。
梨華ちゃんには早く元気になってほしいです。
そしてヨシコは…何とかして戻ってきてほしいです。
92 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月12日(土)02時42分34秒
踏んだり蹴ったり・・
93 名前:通りすがりの地雷 投稿日:2002年01月12日(土)02時44分04秒
 同じ板内で病人ネタやっててすまぬ。 しかし不思議だ。
94 名前:吉澤の夢 投稿日:2002年01月13日(日)07時00分23秒

あたしは桜の木の下に座っていた
その桜は子の場所一面に咲いている桜の木の下で
一番ピンク色が濃くて、一番甘い匂いがした

ここはどこなんだろう…

肩には花びらが積もっていて
どうやら居眠りをしていたみたいだ

あれ?あたしは病院にいたんじゃなかったっけ?
体はちゃんと動くし
体型は入院する前に戻ってる
あ、そうか…これは夢の中か…

…こんな事前にもあった気がする


急に後ろから肩を叩かれて振り返った
95 名前:吉澤の夢 投稿日:2002年01月13日(日)07時05分40秒

「ん?」

見上げてみたものの確認できたのは
そこに人が立っているというだけで
顔には影が掛かっていて誰かまでは確認できなかった

「誰?」

あたしの質問は聞こえているのかいないのか
彼女はこっちに顔を向けて立っているだけだった

顔を向け合ったまま動きが止まる
静まり返ったその場所で
桜だけが散り急いでいた――――――
96 名前:吉澤の夢 投稿日:2002年01月13日(日)07時14分25秒

この人とのこの距離あたしは前から知ってる…?
初対面の人と話す時特有の緊張感が
この人とだとまったく感じない
きっとこの人の事も忘れてしまったんだろう

「きっとあたし、あなたの事前から知ってるよ」

「……」

「今は思い出せないけど…絶対思い出してみせるから…だから…」

「……」

「思い出したらまた…この桜の木の下で会えないかな?」

「……」

黙ったまま彼女は頷いた
顔は見えないのに
彼女が笑ってるような気がした
97 名前:吉澤の夢 投稿日:2002年01月13日(日)07時24分25秒

強い風が吹き突けてきて咄嗟に目を瞑る
再び目を開けるとそこに彼女の姿はなかった――――

彼女が去った後もあたしはずっと桜の木の下にいた

今日こそは何か思い出すんじゃないか
全部思い出せなくてもいい
…せめて彼女の事と梨華ちゃんの事を…

彼女がいなくなってから
一体何日朝と夜を迎えたんだろう
あたしは一歩も桜の木の下から動かなかった

夢の中ではお腹って空かないもんなんだなぁ

たとえお腹が空いたとしても
あたしはこの場所から動かないだろう
だってここは彼女と会う約束をした場所だし
ここなら彼女の事を何か一つでも
思い出せそうな気がした
それに、もしあたしがあなたの事を思い出して
彼女がここに来てくれた時にあたしが居なきゃ意味ないし…
98 名前:吉澤の夢 投稿日:2002年01月13日(日)07時34分46秒

…ってちょっと待て

あたしの記憶が戻ったとしても
どーやってそれを彼女に伝えればいんだ?
夢では願えば思いが通じるのかな?

その時、頭上に何かが落ちてきた
上を見ると空は雲っていて雨が降り始めていた
おまけに雷の音までする

「マジかよ…」

時間が経つほどに激しくなる雨と雷
あたしの体はすでにびしょ濡れだった
お腹は空かないくせに雨の冷たさだけは感じる

すぐにでも夢から覚めたかったけど
次見る夢にこの桜の木が出てくるとは限らなかったし
第一どうやったら夢から覚める事ができるのかわからない

するとものすごい雷の音と共に目の前が明るくなる

「うわああああああああああああああ」
99 名前:目覚め 投稿日:2002年01月13日(日)07時45分03秒

どれくらい眠ったのだろう…変な夢を見た

結局彼女に会えずじまいで夢から覚めてしまった
それより夢の中のあの桜の木…
どこかで見た事あるような…

病室には記憶をなくしたあの時と同じ
あたしの手を握っている石川梨華が居た

彼女は俯いたまま動かない
自分の手が濡れている事に気付く

水かな…?
いや、違う…これは…涙だ…

それは石川梨華の涙だった
留まる事を知らないみたいに次々と零れ落ちる涙

俯いて見えないけど
その顔は必死であたしの事を問い詰めてる時と同じ

…悲しい顔をしてるんだよね…

なぜだろう抱き寄せたい衝動に駆られる
この子の匂い、その涙、どこか懐かしいような…
100 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月13日(日)07時58分57秒
更新終了。

やっと100達成、この駄文、もうちょっとで完結しそうです。
ストックない状態だからまだはっきりとは言えませんが…

>>梨華っちさいこ〜さん
ヨシコと梨華ちゃんにはもう少し頑張ってもらいます。

>>92
ホント申し訳。です。

>>通りすがりの地雷さん
いえ!謝るのはこっちの方なんです。
僕が後からスレ立てたんですから
立ててから気付いちゃったんですよ。
それなのに…申し訳ないです…。
101 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月13日(日)12時06分57秒
思い出しそう?なのかな…
完結寂しいですが続き期待してます!
102 名前:夜叉 投稿日:2002年01月13日(日)15時33分44秒
完結ですか、寂しいです。
桜の下の彼女も気になりますが、これからの展開も気になります。
頑張ってください。まったりと更新お待ちしております。
103 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年01月14日(月)17時57分42秒
完結か…寂しいけどがんばってください。
なんとかこの美しい二人にハッピーエンドを…
104 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月15日(火)00時28分34秒

「泣かないで…」

「あ…よかった…やっと起きてくれた…
   このまま起きなかったら…どうしようかと…」

やっと起きたって…
って事はあたし何日間か眠ってたんだ
…ずっとここに居てくれたの?

顔を上げた石川梨華の目は赤く腫れていた

そんなに赤く腫れるなんて
泣いてすぐのものじゃない…
ずっと…泣いてたの?

今は頭の痛みよりも胸の痛みの方が強かった

105 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月15日(火)00時34分33秒

「この前はごめんなさい…今も…泣いたりなんかして…」

この前?
ああ、あたしが記憶なくした日の事か

「いいよ、全部謝るのはこっちの方だから」

「ごめん、またネガティブになっちゃってるね…
   よっすぃーが目を覚ました時はポジティブでいようって決めてたのに…」

ネガティブ…
こんな言葉めったに聞かないはずなのに
…どこかで聞いたような
106 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月15日(火)00時43分36秒

「…石川さん、だっけ?」

「梨華でいいよ」

「じゃあ梨華ちゃんでいいかな?あたし達はきっと仲良かったんだよね
   こうして手を握ってもらってると落ち付くし、なんか懐かしい感じがするんだ」

梨華ちゃんは悲しみを隠すような笑顔を見せた
でもあたしにはどうする事もできない
そんな自分に腹が立ってしかたがなかった

「すごく…仲良しだったんだよ…」

「そっか…ごめん、何も思い出せなくて…」

「いいの、わたしはこうやって
   よっすぃーの側に居られるだけで良いから…」

そう言えばこの場所には記憶をなくす前から
ずっと誰かが居てくれたような気がする
いつもあたしの手には
誰かの暖かい温もりがあったような…
この子なのか…
それともあたしの思い過ごしなんだろうか…
107 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月15日(火)00時47分31秒

「あたしの記憶がこのまま戻らないんなら
   また一から仲良くしていこう?」

「…そうだね」

「改めてよろしく」

「うん…よろしく…」

あたしは握ってくれてる方の手を上下に振った
108 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月15日(火)00時55分18秒

梨華ちゃんはすごく友達思いな子で
面会時間ぎりぎりまであたしの側に居てくれた

「もう面会時間終わるから…帰るね」

「うん」

そこで一つの疑問が浮かぶ

梨華ちゃん、学校はどうしてるんだろう
一日中一緒に居てくれたのは嬉しかったけど
今日は平日だし…

「梨華ちゃん今日学校は?」

「…ずっと前に辞めちゃったの」

聞くんじゃなかったかな…

あたし達は仲良かったみたいだし
本当だったらこの事知ってたはずだ

でも今のあたしには
辞めた事も辞めた理由もわからない…
109 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月15日(火)01時05分26秒

「そっか」

それ以上聞くのは止めといた
その理由を聞く事であたしの記憶が
戻るきっかけになったかもしれないけど
もしその理由が梨華ちゃんにとって
思い出したくないものだったら
あたしのせいで思い出しちゃうなんてのは嫌だし…

「今日はいろいろありがとう」

「ううん、また明日…来てもいいかな…?」

とまどいがちに伺う梨華ちゃん

「うん、よろしくお願いします」

梨華ちゃんの顔はあっと言う間に笑顔になった

「いいの!じゃあねよっすぃー」

「ばいばーい」

帰り際に変な事聞いちゃったな
でも最後に笑顔になってくれてよかった

その笑顔に安心してあたしも笑顔になっていた
110 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月15日(火)01時14分00秒

今日一日中梨華ちゃんを見ていて
その面白いくらいころころ変わる表情に
顔には出さなかったけど
心の中で過敏に反応している自分がいた

梨華ちゃんが悲しい顔すると
どうしたら笑顔になってくれるかなって焦るし
笑ってくれるとすごく嬉しい
そのくせにあたしは梨華ちゃんをからかって
わざと怒らせたり、悲しませたりする…

梨華ちゃんの表情一つにこんなに感情が揺さぶられるなんて…
もしかして…いや、まさかな…

そう考えるだけでニヤけてしまった

その夜はなかなか寝付く事ができず
こういうのは病は気からって言うのかな?
頭痛は次第に気にならなくなってきて
梨華ちゃんのことばかり考えていた
111 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月15日(火)01時23分50秒

次の日の朝
梨華ちゃんと一緒に
家族と名乗る人達が病室にやってきた

「ひとみ!!」

「姉ちゃん!」

『お父さん』も『お母さん』も『弟達』も
あたしの顔を見ると泣き始めた

きっといい家族だったんだろうけど
あたしはそれを見て何も感じなかった
血が繋がっている自分にとって
かけがえのない人達のはずなんだけど
それをわからせてくれる記憶がないから…
その人達はあたしからすると『他人』と同じだった
梨華ちゃんに感じたような懐かしさは
あまり感じなかった…

この人達はあたしの為に泣いてくれてるのに
あたしは何も感じないのか…?

冷血人間になってしまったかのようで
自分自身が怖かった
112 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月15日(火)01時31分41秒

「ひとみ、お母さんよ?わからないの?」

『お母さん』がそう聞いてきたけど

「ごめんなさい…」

この言葉で『お母さん』は
また涙を流すとわかっていたけれど
あたしにはそうとしか言えなかった

「これからお医者さんとお話して、その足で帰るわね…
   梨華ちゃんいつもどうもありがとう…それじゃあね…」

『お母さん』はあたしが好きだったらしいベーグルと
着替えを窓際に置いた
やがてあたしの『家族』は病室を出て行った
113 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月15日(火)01時38分18秒

悔しい…あたしが記憶をなくしたばっかりに
家族の事も、梨華ちゃんの事も…
どれだけ人を泣かせばいいんだ…

「よっすぃー…元気出して…」

梨華ちゃんはそう言ってくれるけど
梨華ちゃんだってあたしのせいで
心に傷を負ったでしょ?
…あの時泣き叫んでたじゃないか…

「皆…あたしのせいで…あたしさえいなかったら…!!」

「そんな事ない!!」

梨華ちゃんはあたしをきつく抱き締めた
114 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月15日(火)01時55分07秒

「よっすぃーがいなくなったら…もっと悲しむよ…
   家族も…よっすぃーの友達も…わたしも…だからそんな事言わないで…」

「梨華ちゃん…」

昨日までだったら「優しい子だなぁ」で終わってた
でもきょうのあたしはそれだけじゃ終われなかった
胸のドキドキが止まってくれなかった
昨日の夜に感じた心の変化は事実だったんだ

あたし…梨華ちゃんの事…好きになった
いや…きっと記憶がなくなる前からずっと好きだったんだ
ずっと片想いしてたんだ…
だからこの懐かしい感じは友達としてじゃなくて
ずっと想ってきた人としてなんだ…

「ありがとう…」

この事は言わないでおこう…
この事を言った事で梨華ちゃんが
病室から出てってしまったら…
そんなのは絶対に嫌だ
梨華ちゃんにはずっと側に居てもらいたい
最期くらいは好きな人に看取ってもらいたいから…
115 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月15日(火)02時09分22秒

それから数日経っても
あたしは何も思い出さなかった

なんで何も思い出せないんだろう…
何も思い出せないくせに死ぬ気配もない
あるのは頭痛、めまい、吐き気
まだ死なないんだったら思い出してもいいじゃないか

毎日が自己嫌悪だった
そのせいで眠れない夜が続いて
精神的にも肉体的にも疲れが見え始めていた
精神安定剤と睡眠薬の量は増える一方

梨華ちゃんの存在だけが救いだったけど
その梨華ちゃんに辛く当たってしまう日もあった
でも梨華ちゃんは毎日病室に来てくれて
そしてこう言うんだ

「よっすぃーが生きていてくれれば…それでいいんだよ」

その言葉はすごく暖かくてありがたかった
でもそれがあたしの自己嫌悪の原因にもなっていた

どうして何も思い出せない
梨華ちゃんの為に思い出してやりたい
一緒に居た日々の事を…

116 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月15日(火)02時30分14秒
いつ死んでもおかしくない
そんな日々を過ごす事で
あたしの臆病体質に変化が見えてきた
…どちらかというとヤケに近いかもしれないけど

前言撤回なんかしない
梨華ちゃんとの記憶が戻ったら
一番最初に想いを伝えるって決めた

『ずっとあなたが好きでした』と…

もう死ぬって事はわかってるんだ
怖いものなんてあたしにはない
悔いを残して死ぬのは御免だ

この想いを伝えても
梨華ちゃんはあたしを嫌いにはならないと思う
梨華ちゃんはきっとわかってくれるはず…
離れて行かないよね?看取ってくれるよね?

もしかしたら記憶を取り戻す前に
伝える事になるかもしれないけど…
117 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月15日(火)02時44分13秒
たまに熟睡できる時があるんだけど
その時見る夢はいつも同じだった
桜の木の下に座って彼女を待ってる夢
でも記憶は戻ってこないから
桜の木の下であたしは独りぼっち
ただ木の下で記憶が戻ってくる事と
再び彼女がここにやってくる事だけを待っていた

夢の中の彼女に対するこの気持ちは何なんだろう
彼女の事も出会った時から懐かしさを感じていたし…
それにこの気持ち、梨華ちゃんを想う気持ちに似てる
彼女の事も好きだったんだろうか…
118 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月15日(火)02時56分55秒
更新終了。

多分…いや、きっと次回で完結です。
海板選んどいて短過ぎなのはどーゆう事だ自分。

>>101
どうなるかは次回でわかります
期待に応えられるような結末になってるとよいのですが…

>>夜叉さん
ありがとうございます、精一杯頑張ります。

>>梨華っちさいこ〜さん
結末考えてあるんですけど人によって捉え方が違いそうなので…
自分的にはハッピーかなぁ…?
119 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月15日(火)10時07分29秒
次、最終回ですか
心して待ってます・・・
120 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年01月15日(火)10時33分25秒
作者さん的にハッピーなものがオイラ的にもハッピーでありますように。
121 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月15日(火)11時46分51秒
少しづついい感じになってきてますね。
この先、神様はどうするのでしょう。
最後、少々残念ですが楽しみにしてます。
122 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月15日(火)23時53分07秒

さらに何日か経っても
記憶は戻ってこなかった

今日も何も思い出せないのかなぁ…

これはもう口癖になっていた

記憶をなくしてからどれくらい経ったんだろう…
病室の中でこうして寝ているだけだと
日付感覚が麻痺してくる
窓の外を見ると桜はすべて散り掛けていた
あの桜みたいにあたしももうすぐ…
桜と共にあたしも…それは確信になっていた…
123 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月15日(火)23時58分57秒
それを確信させる最大の原因は
最近になって痩せ方が普通じゃなくなってきたから
薬を飲むからだと医者は言ってたけど
これは薬のせいだけじゃないんじゃないか?
細い腕…ここまでくると…醜いよ

それに今日はめまいも吐き気も頭痛もひどいんだ
もしかしたら今日で桜もあたしも散ってしまうかもしれない…
124 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月16日(水)00時04分37秒
このまま何も思い出せないで死ぬのは嫌だ
せめて夢の中の彼女の事と
梨華ちゃんの事を思い出してから…死にたい

さらに頭痛がひどくなり
胃から何かが込上げてくる
この前『お母さん』が持ってきてくれた
ベーグルを食べたのが最後の食事だから
胃袋には何も入ってないのに…

もう駄目かもしれない
今日が最期かもしれない
早く梨華ちゃん…来て…
125 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月16日(水)00時08分22秒

「よっすぃーおはよう」

願いが通じたのか梨華ちゃんがやってきた
手には綺麗にラッピングされた箱を持っていた

「梨華ちゃん何?その箱…」

頭痛で途切れ途切れになる声
苦痛に歪む顔だけは見せたくない
普通を装おうのがこんなに大変だとは思わなかった
126 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月16日(水)00時14分15秒

「ふふ、何だと思う?」

「んー…何だろ、わかんない…何?」

「じゃーん♪」

箱の中身はケーキだった

「どーしたの?ケーキなんて」

「よっすぃーお誕生日おめでとう!」

「へ?」

記憶がないからわからなかったけど
今日はあたしの誕生日なんだ…
127 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月16日(水)00時19分54秒

「昨日の夜一生懸命作ったんだよー、すごいでしょ?」

「へ〜」

「ちゃんとね、食べやすいように切ってきたんだよ」

覗き込んだ箱の中には苺の乗った大きなケーキ
中央には板チョコが乗ってて
あなたの事が好きです
ってぐにゃぐにゃな文字で書いてあった

…これって両想いって事?
128 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月16日(水)00時24分16秒
大声を出して喜びたい
大きくガッツポーズをとりたかったけど
いまのあたしにそんな気力と体力は残ってなかった

「はは、普通何歳おめでとうとか書くんじゃなかったっけ?」

「いいの、これで」

「あたしもこれでいいや」

「え?」

「惚れたかもしれん」


「…また両想いだね…」
129 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月16日(水)00時36分39秒
梨華ちゃんがあたしの17回目の誕生日を祝ってくれた日
梨華ちゃんがケーキに想いを込めてプレゼントしてくれた日
あたしが梨華ちゃんに照れ交じりの告白をした日

神様はあたしに最期の軌跡を見せてくれた

『…また両想いだね…』
そうだ…告白する必要なんて…なかったんだ…

あたしが告白した時に照れながら見せた笑顔

その笑顔があたしは前から大好きで
どうしたらあなたが笑顔になるか必至で考えてたあたしがいた事
あなたの特別可愛い笑顔があたしだけのものになった時の事
あなたの手の温もり、唇の感触

あなたとの思いで一つ一つが頭の中に入り込んできた
130 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月16日(水)00時43分21秒

やっと思い出したよ…
これで二度目の告白だね
一度目はあなたから
二度目はあたしから
これこそ究極の両想いじゃない?

あたしの願った通り
あなたの事は思い出した
でも夢の中の子の事までは思い出せなかったみたいだ
彼女は結局誰だったんだろう?

でも一つでも願いが叶ってしまったって事は
…あたしはもうおしまいって事
外の桜ももうすぐ散り終わる
時間はない、早くこの事をつたえなきゃ
131 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月16日(水)00時48分14秒

「ケーキ食べよ?」

それよりこっちの方が大事

「梨華ちゃん…あたし思い出したよ…」

「ん?」

「梨華ちゃんの事が好きだった事、あたし達が付き合ってた事」

「ほ…んと…?」

ドサッという音と共にケーキの入った箱が落ちた

「うん、ごめん…今まで悲しい思いさせたね…」

「よっすぃー!」
132 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月16日(水)00時55分49秒

梨華ちゃんはあたしをきつく抱き締めた
あの時より強く、それでいて優しかった
抱き締められるのは嬉しかった…けど…

こんなに醜く痩せ細った体を抱き締められるのは嫌だった

でもそんな事今はどうだっていい
今は何でもいいから一秒でも長く話しがしたい

「記憶も戻った事だし、ちょっと思い出しながら話そうよ
   付き合い始めの頃の話しとかさ」

二人のこれまでを一つ残らず言葉にして
きつく脳味噌に、胸に焼き付けておきたかった

…悔いないように…
133 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月16日(水)01時03分18秒

梨華ちゃんは体を離して心配そうな顔をした
なんとなく悟ってしまったのだろう
あたしの異変を…
でもまだ確信はしてないみたいだ

「ね、話そう?」

「…うん」

「落としたケーキでも食べながらさ…」

「あ!ケーキ!!」

慌ててしゃがみ込む梨華ちゃん
声を殺して笑うあたし

記憶がなかった時に梨華ちゃんと交わす会話が
懐かしいと思ったのは本当に嘘じゃなかった
実際にあたし達はこうして会話をしてきたんだ
友達だった時も、恋人同士になった時も、今も…
134 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月16日(水)01時09分18秒

梨華ちゃんは落ちて形の歪んだケーキの箱を持って立ち上がった

「一生懸命作ったのにぃ」

「味は変わんないよ、ポジティブポジティブ」

「そーだよね、ポジティブだよね!」

ケーキをお皿に乗っけて一口食べてみる

「どう…?」

「んー、うまい」

「やったー♪」

このまま普通の話しをしてる時間はない
あたしから話題を持ち出した
135 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月16日(水)01時13分47秒

「付き合い始めの頃はいっぱいケンカしたよね」

「うん」

「いっつも同じような理由で梨華ちゃん怒らせんの」

「だってよっすぃー皆に優しいから…」

「でも嬉しかったよ、だってそれは妬きもちだもん」

初めてしたケンカはすごいくだらなかったね


少し思い出してみる――――――
136 名前:吉澤の回想 投稿日:2002年01月16日(水)01時20分23秒

「怒ってるよね?」

「いいえ」

怒ってなかったらそんな敬語使わないくせに

「何が気に入らないんですかぁ?」

「別に」

「気に入らない事があったら言ってもらわないとわからないんですけどぉー」

「よっすぃーにはわたしの気持ちなんかわからないのよ!」

「言ってくれなきゃわかるわけねーじゃんか!」

「もう知らない!よっすぃーのばか!!」

ばかって言われたってわからんもんはわからんよ
そっちだって中卒でそれなりにバカじゃんか!!
137 名前:吉澤の回想 投稿日:2002年01月16日(水)01時33分37秒

あの時はホント悩んだ
何で梨華ちゃんが怒ってるのかわからなかったから

ただあたしはごっちんと二人で遊びに行っただけなのに…って
それで一人で考えててもわかんないからごっちんに相談しに行ったんだ


「ねー、ごっちんと二人で遊びに行っただけで何で梨華ちゃんは怒るの?」

「よっすぃーわかんないの?」

「うん…」

「うーんとね、梨華ちゃんはーネガティブだから」

「それと怒るのと何の関係があんの?」

「だからー梨華ちゃんは
   『よっすぃーあの子と仲いいな、わたしなんかどうでもいいのかな』とか思っちゃってー」

「そんで怒るの?」

「どっちかってゆーとヘコむ…かな?
   んでよっすぃーが口聞いてくんないって怒るから梨華ちゃんも爆発すんの」

「つまりはどーゆー事?」

「鈍感だなー、つまりごとーが思うに梨華ちゃんは妬いてるんだよ」
138 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月16日(水)01時37分40秒

怒った原因がわかった時はすごく驚いた
ごっちんが言うには
「鳩が豆鉄砲くらった顔」
になってたって
その後は一人で笑ってた
そんな簡単な事かよって飽きれたってのもあったけど
…嬉しかったんだ…
あたしはそんなに想われてるのかーって
139 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月16日(水)01時45分11秒

「何とか仲直りできたけどね」

「だって…いやだったんだもん
   よっすぃーが何も言わないで他の人とどっか行っちゃうなんて」

「その日からちゃんと一言言うようになったんだよね」

「でもちょっといやだったよ、他の人とどっか行っちゃうの」

「そこが梨華ちゃんの可愛いトコなんだけどね〜」

「もぅ…でもこうやって話してると尽きないよね」

「…尽きない方がいい…」

本当に尽きないで欲しいんだ
この話しも…あたしの命も…

梨華ちゃんそんな悲しい顔ばかりしないで…
…笑顔…見せて…
140 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月16日(水)01時54分01秒

「あたしさ、17何間生きてきてさ、いろいろあったけど
   梨華ちゃんと過ごしたこの2年間が一番幸せだったよ」

「いや…そんな事いわないで、わたし達これからもっともっと思い出作るんだから」

「うん…そうだよね」

ごめんね、もう梨華ちゃんと思い出…作れそうにないや
さっきより意識が曖昧なんだよね…目も霞んできちゃってるし
梨華ちゃんの顔が…はっきりわからなくなったきちゃった…
もう普通に喋ろうとするだけで精一杯
あたしが病気になんてならなかったら
梨華ちゃんともっと思い出作れたのにね

もっとデートしたり…キスしたり…
キスから先にだって進めたかもしれないのに…
141 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月16日(水)02時04分08秒

付き合って3ヶ月くらい経った頃
あたしは焦ってた

なぜ梨華ちゃんは求めてこないのだろう
普通の子だったらして欲しいと思う頃なんじゃないのだろうか…
もしかして心には別の人がいるんじゃ…
やっぱり…異性の方がいいのかな…って

もちろん本人に聞けるわけもなかった
予想が当たりだったら嫌だったから

それを察したのか梨華ちゃんはこう言った

「皆と一緒じゃなくていいじゃない
   わたし達は焦らず一歩づつ確実に進んで行こうよ」

それを聞いて一人で焦っていた自分が恥かしくなった


その決まり事…もう達成してたはずだよ
あたし達は確実に1歩づつ進んできた

こんな事になるんだったらせめて1回だけでも
この手で…梨華ちゃんを抱きたかった…
142 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月16日(水)02時10分54秒

「我侭な事…言ってもいいかな…」

「よっすぃーの我侭ならなんでも聞くよ」

「…よっすぃーじゃなくて前みたいにひとみちゃんって呼んで?」

「いや」

「あ〜ずるいや…今なんでもいいって言ったじゃん…」

「だって呼んだらよっすぃーがどこかに行っちゃいそうだから…」

「大丈夫どこにも行かないよ、だから呼んで?」

「絶対?」

「絶対だよ」

ごめん…我侭言うし嘘まで付いちゃった
でもこれが最後だから許してね…
143 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月16日(水)02時17分42秒

「…ひとみちゃん」

「へへ、何か照れ臭いね…もう1回呼んで?」

「ひとみちゃん」

「…じゃあ最後にもう1個だけ…キスしよう?」

「…うん」


あ、何も見えなくなっちゃった―――――――――

テレビの電源を消したみたいに
プツリと遮断された視界
急に不安が込み上げてきて
初めて死ぬのが怖いと思った

違う…死ぬのが怖いんじゃない
梨華ちゃんを失う事が怖いんだ…

もっと梨華ちゃんと一緒に居たい
梨華ちゃんの笑った顔が見たい…

…もう奇跡は起きないの…?
144 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月16日(水)02時23分48秒

「梨華ちゃんどこ?」

「…よっすぃー?」

「早く、お願い早くキスして」

「う、うん」

肩に梨華ちゃんの手が触れる感触
顔に何かが近づいてくる気配
あたしは今目を瞑ってるのかなぁ
もうそれすらわからなくなっちゃったよ…

唇に柔らかいものが触れた、梨華ちゃんの香り
いつもリードしてたのはあたしだったから
どこかぎこちない感じのキス…

…初めてした時みたいだ…
145 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月16日(水)02時29分06秒

その時、真っ暗だった視界一面に桜の木が広がった

夢と同じ景色…

あたしはいつものように桜の木の下に座っていて
隣にはずっと待ってたあの子がいた
彼女の顔にはもう影が掛かっていなかった

「やっと、思い出してくれたんだね」

「え…」

そうか…この子は梨華ちゃんだったんだ…
146 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月16日(水)02時34分49秒

「…り…か…」

「ひ……み…ちゃ…」

人前で泣くのは好きじゃないんだけど
涙は止まってくれなかった
あたしの涙以外の雫が頬に触れる
梨華ちゃんも泣いてるんだ…

この感触、忘れるもんか

梨華ちゃんの感触
梨華ちゃんの匂い
梨華ちゃんの口癖
梨華ちゃんの仕種
梨華ちゃんの表情

梨華ちゃんの全部、忘れないで持ってくから

…ずっとこの時が続けばいいのに…
147 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月16日(水)02時41分54秒

…最後に言いたい事がある
この言葉、照れ臭くって言えなかったから…
手紙に書いたけど唇が離れたら聞こえるようにはっきり言おう
誤魔化したくないから

少し名残惜しい気もしたけど唇を離した


「…梨華…」

「ひとみちゃん」


「愛してるよ」

「わた――――――――


何も見えない、何も聞こえない、何も感じない
あたしは生きてるの?もう死んだの?
148 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月16日(水)02時48分01秒
神様って最後はいじわるなんだね
最期に梨華ちゃんの言葉くらい聞かせてくれたっていいじゃん…
でも今まであたしに数々の軌跡を見せてくれた事には感謝してます

生まれた日と死ぬ日にあなたと一緒に居られてよかった

梨華ちゃん、あたしはこのまま永遠に眠っちゃうと思うけど
いつまでも泣いてたりしちゃだめだからね
あたしは梨華ちゃんの笑顔が一番好きなんだから

それじゃあ梨華ちゃん…おやすみ
…ばいばい…
149 名前:3年後、病院内の噂 投稿日:2002年01月16日(水)02時57分50秒

「なぁなぁ、知ってる?」

「何?」

「ここの病院出るんだってよ〜」

「うそぉ?マジで?」

「マジマジ!あの桜の木の下に幽霊が出るんだって〜」

「マジかよ〜、どの木どの木?」

「ほら、あの一番ピンク色の花の桜の木だよ」

「怖っえ〜!あ、誰か来た」

「お前モー娘憶えてる?」

「うん、最近じゃん解散したの」

「あそこにいんの石川梨華と保田圭だぜ」

「あ〜本当だ」

「桜が咲くと毎年来てるんだって、花束持って」

「じゃあその幽霊知り合いなのかな〜」
150 名前:保田視点 投稿日:2002年01月16日(水)03時07分56秒
あたしと石川は毎年桜が咲くと
連絡を取り合って病院へ桜を見に行った

「今年の桜は一段と綺麗ね」


石川の電話を聞いて病院に掛け付けた時
石川に抱かれて吉澤は冷たくなっていた
案外石川は落ち付いてて、涙は流してたけど
ちゃんと現実は受け止めているようだった

あたしが吉澤から預かった手紙を渡すと
無言で受け取り読み始め
そして笑顔になった

読み終えたみたいで手紙をこっちに差し出してきた

「読んでもいいの?」

石川は何も応えず窓の外を見始めたので読んでもいいって事なんだろう
151 名前:吉澤の手紙 投稿日:2002年01月16日(水)03時20分44秒

Dear梨華ちゃん

この手紙を保田さんからもらって読んでるって事は
オイラはもうこの世にいないんだろうね。
いつの話なんだろう?できれば読んでほしくないです。
今梨華ちゃんは泣いてるんじゃないかなぁと思う。
とか言って笑ってたりしてね。
コラッ石川!泣くな!メンバーが心配するぞ。
もう先輩なんだからしっかりしないとダメだよ。
これからもモーニング娘。でオイラの分も頑張ってね。
ネガティブはダメだからね
ポジティブに行きまっしょい!!
オイラはあの世で梨華ちゃんの事見守ってます。

最後に

吉澤ひとみは石川梨華を永遠に愛しています

過去は2度と戻らないかもしれないけど
絶対生まれ変わって梨華ちゃんの事
探し出してみせるから
その時までオイラの事待っててくれないかな?

Fromよっすぃー 
152 名前:保田視点 投稿日:2002年01月16日(水)03時33分17秒

「…よっすぃーね、あのピンク色の桜が好きだったんですよ
   だからわたしあの桜が咲く季節に毎年来ようと思ってるんです」

「またあんたは待つ事になるのね」

「いいんです、信じていれば軌跡は起きるんです」

「あたしも信じるわ」

今年で3年目、今だ吉澤は姿を見せない
でもあたしは1回だけ吉澤の声を聞いた

それは今年、桜の蕾が芽生え始めた頃
ひとりでこの桜の木を見に来た事があった

「吉澤早く出てきなさいよ…石川待ってんだから」

木に向かって喋り掛けた時
あたしの耳にははっきり聞こえた

『桜が咲いたら会いましょう』

明らかにそれは吉澤の声だった

だからあたしにはわかってた
もうすぐ吉澤がここに来るって事が…

「石川、ちょっとトイレに行ってくるからここに居なさい」

「はい」

やっぱり再会するなら二人きりの方がいいでしょ
153 名前:石川視点 投稿日:2002年01月16日(水)03時39分03秒

今年で3年目
今年の桜は3年間の中で一番綺麗だった

保田さんがトイレへいって暫くすると
後ろから誰かに肩を叩かれた

誰かはすぐにわかった
この叩き方、忘れるはずないもの…

振り向いたらきっと泣いちゃうかもしれない
その人は優しい目で見詰めてるってわかるから

「おかえり、よっすぃー」

「…ただいま、梨華ちゃん…」
154 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月16日(水)03時45分58秒
これにて完結。

>>119
こんなんなってしまいましたが、どうでしょうか?

>>梨華っちさいこ〜さん
自分的にはハッピーだと思うのですが
いかがでしょう…

>>121
いい感じで終われたでしょうか?

このヘタレ駄文を読んでくれた皆様方に感謝。
155 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月16日(水)03時58分04秒
最初にお疲れ様でした。
切なくて悲しいのに最後まで読んでしまいました。

楽しい事を、全部(夢で見る)過去の出来事で展開するなんて
もう、始まった頃から泣かせて頂きました。

作者さんお上手!
番外編を読んでみたいです。
156 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月16日(水)04時55分25秒
2人の強い絆に感動。ホント感動
良かったよ…
157 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月16日(水)10時40分46秒
良かったです…とっても。
手紙を読んだあと、泣いてしまわないで
笑顔になれた石川さん…ステキです。

また、読める日を楽しみにしてます。

158 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年01月16日(水)12時36分22秒
なんとか病気が治って二人で仲良く暮らせる…
そんなこともちょっと期待しましたが、そういうわけにはいきませんね(w

作者さん、美しい作品をありがとうございました。
次の作品も期待してます。
159 名前:白死 投稿日:2002年01月16日(水)20時30分43秒
まず、作者さんお疲れ様です。始まった頃よりひっそりと読ませて頂いては、涙しておりました。悲しいんだけど、どこか心の温まる、そんな作品でした。次回作も期待しております。
P.S. 後半の方になって思ったんですが、この作品のもとにあるのは『304号室〜』ですか?桜の下とか、最期になって思い出すあたりがそんな感じするのですが…。違ってたらゴメンなさいm(__)m
160 名前:夜叉 投稿日:2002年01月16日(水)20時35分41秒
ほんとに有難うございました、感動しました。
こうなること分かってたんで、そうなるのは仕方ないと。
でも、二人の絆があまりにも強く、そして切なく優しいこと、心に強く打たれました。

お疲れさまでした、そして、本当に有難うございました。
次の作品も拝見できるとうれしいです。
161 名前:通りすがりの地雷 投稿日:2002年01月16日(水)21時06分54秒
 お疲れさまでした。 
 サナトリウム文学的な美しい流れは真似できないなぁ、と。
 個人的にはとても勉強になりました。
 次回作も期待しています。
 
162 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月17日(木)00時23分48秒
>>155−157・梨華っちさいこ〜さん・夜叉さん・通りすがりの地雷さん
様々なご感想本当にありがとうございます。
全く自信なんてなかったのですが
こんな拙い文章でも皆様に
少しばかりの感動を覚えてもらえる事ができて
本当に嬉しい限りです。

>>白死さん
ご感想ありがとうございます。
やはり知ってる方が居たんですね。
僕あの人の詩、大好きなんですよ。

次回作…のんびりゆっくり考えて行こうと思ってます
はたしてどんな話になるのやら…
163 名前:白死 投稿日:2002年01月17日(木)00時59分49秒
やはりそうでしたか。自分も彼らの曲大好きなんで、わかりました。なもんで、今回の最終回の部分は曲を聞きながら読ませて頂ました。
次回作、マイペースで頑張って下さい。個人的にはまた彼の詩に沿った作品を書いて頂けるととても嬉しいです。
164 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月19日(土)23時18分32秒
梨華ちゃん誕生日記念で
ちょこっと続き書かせて頂きます。
165 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月19日(土)23時22分49秒

「梨華ちゃんお誕生日おめでとう」

「ありがとうよっすぃー」

「これ、オイラからの気持ちなんだけど…」

よっすぃーの手には小さな箱が握られていた

「何?」

「いいから開けてみてよ」

綺麗に包装を剥がし、そっと箱の蓋を開けた
166 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月19日(土)23時26分20秒

「よっすぃー…これ…」

「急に指輪あげんのもどうかと思ったんだけどね」

「ううん、すっごく嬉しい!」

「梨華ちゃん、オイラと結婚して?」

「え!?」

「いや?」



「ううん!よろこんで!!」
167 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月19日(土)23時33分35秒

誰も居ない部屋に響きわたる
わたしの浮かれきった声
夢だったという事に気付き暫く放心状態だった

出てくるのは溜息ばかり
何で今日に限ってこんな夢を…
実際に今日はわたしの誕生日だし…

よっすぃーとあの桜の木の下で再会してから
早一年が経とうとしてるけど
よっすぃーのどこまで生まれ変わる前の
記憶を持ってるかわからない
わたしの記憶すら曖昧なものみたいだし…
168 名前:石川の回想 投稿日:2002年01月19日(土)23時37分36秒

「…ただいま、梨華ちゃん…」

振りかえるとそこには
元気だった頃と全く変わらないよっすぃーが
あの頃と同じ笑みでわたしを見ていた

わたしが抱き付くと
まるで子供を宥めるように頭を撫でてくれた

「君が石川梨華ちゃんなんだね?」

え?
169 名前:石川の回想 投稿日:2002年01月19日(土)23時44分52秒

「あの人が石川梨華ちゃんだったらどうしようかと思っちゃったよ」

そう言ってよっすぃーは
木の影に隠れていた保田さんを指差して苦笑した

「気付いたらこの桜の木の下に立っててさ
 頭ん中は石川梨華に逢うって事しかなかったんだ
 そしたら君がこの木にいたでしょ?
 顔見た瞬間『ああ、この子だ』って思ったんだよね」

…記憶はやっぱり戻って来なかったのかな…
170 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月19日(土)23時52分40秒

それでもわたしは良かった
よっすぃーがわたしに会いに来てくれただけで…

でも今のよっすぃーはわたしの事どう思ってるんだろう…

よっすぃーとわたしの今の関係は
お互いの家に遊びに行ったり、お買い物に行ったり
友達同然の付き合いでしかなかった

「…ケーキでも買いに行こうかな」

今年は一人で誕生日会か…
よっすぃーが居ない間は
毎年保田さんが祝いに来てくれてたけど
今年は中澤さんと会う約束があるからって言ってたし…

「もう日が変わっちゃうよ…」

一人暮しは独り言が増えるから嫌ね
171 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月19日(土)23時59分31秒

「はぁ…」

一月の夜はまだまだ寒い、息が白く見える
もう時計は12時になるかならないかを指していたので
コンビニでケーキを買った

溜息を付きながら家路に着く
エレベーターを降りて自分の部屋のドアを見ると
そこには人影が…

まさか空き巣?ストーカー?
怖い、どーしよう…
172 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月20日(日)00時06分31秒
勇気を出して近付いてみると
その人影の正体はよっすぃーだった
…しかも眠ってるし…

「よっすぃー、よっすぃー起きて
   こんな所で寝てたら風邪引くよ?」

「ん…へっくしょい!!」

「ほら、うちに入って?」

「おお、ごめんごめん」

何の用だろう…
誕生日お祝いしてくれるのかなぁ…

違うかも…

時計を見ると針は12時を過ぎていた
173 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月20日(日)00時12分17秒

「今日はどうしたの?こんな遅くに」

「どうしたのって今日は梨華ちゃんにとって大切な日じゃないか」

「覚えててくれたんだ…」

「当たり前でしょ?」

その『当たり前』は友達だから?
それとも…

「…よっすぃー時計見た?」

「ん?……あ―――――――!!」

廊下に響きわたる声
慌ててわたしはよっすぃーを部屋に押し込んだ
174 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月20日(日)00時20分46秒
叫んだと思ったら急に肩を落とし始めた
見た目のクールさを覆すような子供っぽさ
あの頃とちっとも変わってない

「昨日中に言おうって思ってケーキまで買っといたのに…」

「あー、わたしも今買って来ちゃった
   でもありがとう、食べようよ紅茶入れるから」

「…うん」

よっすぃーが買ってきてくれたのは
2人分の苺のショートケーキ
わたしが買ってきたのも
2人分の苺のショートケーキ
ケーキの定番っていうのもあるんだろうけど
苺のケーキはわたしにとって特別なものだった
175 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月20日(日)00時25分38秒

「はは、何で2個買ってんの?」

「だって1個じゃ寂しいじゃない」

それは嘘
気付いたら2個ケーキを買っていた
もしかしたら期待してたのかもしれない
こうやってよっすぃーが来てくれるのを…

よっすぃーはロウソクに火を点けてくれて
歌まで歌ってくれた

その歌声はあの頃を思い出させる
一緒に歌ってたあの頃を…
176 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月20日(日)00時34分21秒

「お誕生日おめでとうでした!」

「ありがとう」

素直に喜びきれていないわたしに
気付いていないよっすぃーは
もくもくとケーキに口を運ぶ

その姿を見れるだけでいいんだ
本当だったら見れないはずのものなんだから…

「今日は泊まってっていい?」

「うん、いいよ」


結局何も起きないままわたしはベットで
よっすぃーはソファーで眠りについた
177 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月20日(日)00時39分58秒

部屋に漂う食パンの焼ける匂いで目が覚めた
キッチンの方では何かを作ってる音が聞こえる

起き上がろうとしたその時
指に違和感を覚えた

何だろう…

右手の薬指にはめられていたもの
…それは指輪だった

「もしかして…これって…」

急いでキッチンの方へと向かう
178 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月20日(日)00時46分18秒

「よっすぃー!」

「ん?ああ、おはよう
   キッチン勝手に借りてるよ」

「うん、っじゃなくて…これ!」

わたしはよっすぃーに右手を見せた
それを見たよっすぃーはキッチンに体を向き直して

「まぁ…梨華ちゃんの気持ち次第でガラクタにもなるし
   それ以上のものにもなる、とりあえずあたしは梨華ちゃんの事が好き」

「よっすぃー…」

「やっぱ梨華ちゃんにはガラクタ?…その指輪」
179 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月20日(日)00時54分38秒

よっすぃーはわたしの事好きでいてくれたんだ…

やっとよっすぃーの想いが
わかったのが嬉しくて涙が出てきた
と同時にわたしはよっすぃーの背中に抱き付いた

「梨華ちゃん?」

「…よっすぃー…左手の薬指にしても…いいですか?」

「いいよ…ほら」

よっすぃーは自分の左手をわたしに見せた
わたしの指輪と同じものが薬指にはめてあった

なんだか見透かされてたみたいで悔しいけど
やっぱりそれ以上に嬉しい…
180 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月20日(日)01時09分21秒
「ごめんね…あの桜の木の下で逢った時は
  イマイチわからなかったんだ、梨華ちゃん逢いたかったわけとか」

「…うん」

「それでそれから一年近く経ったでしょ?やっとわかったんだ
  あたしは梨華ちゃんの事が好きで、再び逢う為に戻ってきたんだって」


「…よっすぃー…一緒に住もう?」

「うん」


よっすぃーが生まれ変わってから初めて交わすキス
それは昨日食べたケーキよりも
甘くて懐かしい味がした
181 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月20日(日)01時12分02秒
更新終了。

はたして気付かれる方はおられるのでしょうか

梨華ちゃんお誕生日おめでとうでした。
そして矢口さんお誕生日おめでとうございます。
182 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月20日(日)02時41分25秒
たったひとつ疑問が…
生まれ変わったって吉澤は今何歳?
183 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月20日(日)03時23分10秒
>>182
ついにきてしまったその質問…
あえて目を逸らしてました、痛いですね。
生まれ変わるって事は0歳から始めないといけないんでしょうけど
この話の吉澤さん、17のままです。
梨華ちゃん21歳になっちゃったんですけどね…

これじゃあ死者甦生術でも掛けた方が…

ウワアアア-ン
184 名前:梨華っちさいこ〜 投稿日:2002年01月20日(日)12時22分07秒
さらにお姉さんになった梨華ちゃんもいい。
185 名前:夜叉 投稿日:2002年01月21日(月)16時39分57秒
痛いとこついちゃいやん(爆)。

正直、続編読んで、ほっとしました。
約束通り、二人が再開できて、感無量です(号泣)。
ありがとうございます。

死者甦生術には笑いました(笑)。
186 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月21日(月)22時12分39秒
いや〜よかお話でした。
やはり、特別な日に特別な人と過ごせるというのは
幸せなことですね〜。

吉澤さんは、石川さんのためならどんなものにでもなれるのです(w
187 名前:綾瀬 投稿日:2002年01月23日(水)03時26分33秒
>>梨華っちさいこ〜さん
そう言って頂けて嬉しいです。
読んでくださって有り難うございました。

>>夜叉さん
ついちゃいやん(爆死
いや、ホント的確な指摘だったんですよね…直球ストレートな…
こちらこそ読んでくださって有り難うございました。

>>186
やっぱりお二人には幸せであって欲しいですよね。
ラブパワーサイコーでございます(恥
有り難うございました。

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