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微笑みのそばで…。
- 1 名前:詩音 投稿日:2002年01月09日(水)03時18分01秒
- はじめまして。詩音と申します。
数々の名作に心を打たれ、思わず筆をとりました。
内容は個人的な好みにより、少々痛い、暗い話かもしれません。
処女作なので至らない点が多々あると思いますが、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いします。
また、感想や質問、文句等もお気軽にお寄せ下さい。
- 2 名前:詩音 投稿日:2002年01月09日(水)03時18分48秒
- 物語は一応五つに区切ってあります。(あまり意味は無いかもしれませんが…。)
大まかな流れは次の様になっております。
第1章…娘。というモノ
第2章…Last smiles
第3章…傷跡
第4章…痛みの行方
最終章…I WISH
上の通り、すでにストーリは大方出来あがっているので、大きな変更はできません。
よって、そこの所をご理解、ご考慮頂いた上でのレスをお願い致します。
では、『微笑みのそばで…。』よろしくお願いします。
- 3 名前:詩音 投稿日:2002年01月09日(水)03時19分38秒
- 微笑みのそばで…。
加護亜依は色々な事を思い出していた…。
いや、それは夢を見ていたのかもしれない…。
『もう私がモーニング娘。になって、1年半も経ったのかぁ…。楽しかったなぁ…。いっぱい怒られもしたけど、スゴイ楽しかった…。いっぱい、ののと勝手な事しちゃったなぁ…。』
『モーニング娘。…。加護の大好きなもの…。そして大切なもの…。』
『大好きな…メンバー、とっても大切な人達…。』
- 4 名前:詩音 投稿日:2002年01月09日(水)03時20分08秒
- のの……。
『あいぼん!次は何しよっかぁ〜。あれやろうよ!あれ!ぶりんこう○こ!「ぶりんこう○こが、輝いて見える。見える。」ってさぁ〜。』
よっすぃ〜……。
『加護〜。違うよ〜。飯田さんはこうだよ〜。こう!もっと、そう、そんな感じ。』
梨華ちゃん……。
『も〜、あいぼん、あんな事言わないでよ。私の部屋がトイレの匂いなんて。二人してひどいよ〜。』
- 5 名前:詩音 投稿日:2002年01月09日(水)03時21分27秒
- 後藤さん……。
『あたし達は貴さん派だよね〜。』
保田さん……。
『ねぇねぇ、昨日あいのり見た?も〜感動して泣いちゃったよ〜。』
矢口さん……。
『あのさ〜、タンポポよりミニモニ。とか言っちゃダメよ。確かに辻もいて楽しいかもしれないけどさ。かおりと石川に失礼でしょ?』
飯田さん
『ほら、いつまでもお菓子食べてないで行くよ!またお腹出ても知らないから。』
中澤さん……。
『加護ちゃん!めっちゃ好きやで!これからも頑張りや!』
- 6 名前:詩音 投稿日:2002年01月09日(水)03時21分57秒
- 安倍さん……。
『加護ちゃんはホントかわいいね〜。』
安倍さん…、そういえば前に番組で『モーニング娘。のメンバーの中で彼女にするなら?』って聞かれた時、みんな梨華ちゃんとか、よっすぃ〜とか、矢口さんとか言ってたのに、一人だけ『加護ちゃん!』って言ってくれたっけ…。うれしかったなぁ…。
ほんと、めっちゃうれしかった…。おおきに…安倍さん…。
やっぱりモーニング娘。はいいなぁ〜。ね?安倍さん。とっても、たのしいですね。
……安倍さん?あれ?どうして泣いてるの?悲しいの?ダメだよ。泣いちゃ…。安倍さんはいつも笑顔でしょ?加護、安倍さんの笑った顔、大好きなんやから…。ダメだよ、泣いてちゃ…。笑顔だよ…。ねぇ…わらって…。
- 7 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月09日(水)03時27分26秒
- ちょうど四ヶ月程前に新メンバーが加入した。加護にとっては初めての後輩である。
最初は馴染めなかった新メンバー達とも徐々に慣れはじめ、今や二人きりでも話せるようになっていた。
しかし、何かがおかしかった。確かに新メンバーにより、今までにない風は吹いていると思う。だがそれは、決していい風だけではなかった。
13人…。この今までにないメンバーの多さ。28歳の中澤が抜けた後、あまりにすぐに12歳から15歳という低い年齢の加入。しかも中澤を欠いての初めての加入で4人という人数。それぞれのメンバーにかかる負担も大きかった。
表面には出さなかったが、加護でさえ大きなストレスを感じていた。またそんな中、慣れない仕事をしていた新メンバーも余計なプレッシャーを感じていた。
そんな中での仕事は、少しづつだがそれぞれのメンバーの間にも変化をきたしていた。メンバー全員がどこかギクシャクしていたのである。今まで何度となく乗り越えてきたこの変化に、初めて順応できないでいたのである。
こうして『モーニング娘。』のバランスが崩れ始めたのである。
- 8 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月09日(水)03時28分08秒
- 「辻!加護!もう先輩なんだから、少しはしっかりしなさい!」相変わらず保田に怒鳴られる二人。
しかしこれは楽屋での話。収録中は言われる事はなかった。それはしっかりしたわけでも、それが二人の売りだからという訳でもなく、ただ単に新メンバーの加入で、今までのように好き勝手暴れまわれなくなってしまったのである。
加護は悩んでいた。しっかりしなければいけないのもわかっている。でも前のように辻とふざけていたい。しかし、新メンバー達にも見せ場を作らなければいけない。でもそれは自分の個性を消す結果となる。強引に持ち味を発揮しようとするが、どこか昔とは違う。
そんな加護にとって『ミニモニ。』は安らぎの場所となっていた。
- 9 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月09日(水)03時30分03秒
- しかし一方、矢口には『ミニモニ。』さえも悩みの種になっていた。こんな情けない愚痴はこぼしたくないが、元は矢口が考え、結成したユニット。しかし今や、加護と辻のユニットと言っても過言ではなかった。最近の曲では矢口の持ち味を発揮する事もなかった。娘。が長いとは言っても、所詮オリジナルメンバーでもなく、中途半端な位置となっていた。同じ時期に加入した保田はサブリーダーとして頑張っているし、『うたばん』でもいじられる存在として活躍している。
そんな時だった。この矢口の状況を察したのか、他の某事務所から引き抜きの話がきた。
「うちでソロでやらないか?大いにバックアップしたいと思っている。」
そう言われた矢口は、この事を他のメンバーに話せないでいた。せっかくのチャンス、新しい所で頑張ってみたいとも思う。しかし『モーニング娘。』を離れたくはないし、みんなから『裏切り者』と思われるのもいやだった。
中には「せっかくなんだから頑張ってみたら?」と本気で応援してくれる人もいるかもしれない。しかし何より、自分自身、裏切るようでいやだった。
「どうしよう…。私はどうしたいんだろう…。事務所やつんくさんが知ったらどうするんだろう?それとも、もう知ってて私の判断に任せてるのかな?次の脱退者は私になるのかな?こんなにすぐじゃ、新メンバーに余計なプレッシャーかけちゃうかな?でもやっぱり娘。辞めたくない…。」
- 10 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月09日(水)03時30分50秒
- 矢口は一人で悩んでいた。しかし毎日一緒にいるメンバー達。普段が明るいだけに、こんなに急な矢口の変化に、他のメンバー達が気づかないわけはなかった。
「どうかしたの?元気ないみたいだけど…。」やはり安倍が真っ先に気づいた。
「えっ?い、いや…、なんでもない。ちょっと疲れてるだけ…。」
「ほんと?確かに最近いろいろ大変だけど、あんまり無理しちゃだめだよ。何か悩みがあるなら言ってね…。」
「うん。ありがと…。」矢口は力なく答えた。
『言える訳ない…。今みんな大変なのに、余計な心配事増やせない…。』
矢口はそう思った。
こうして矢口は悩みを抱えたまま仕事に望んでいた。
- 11 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月09日(水)03時36分17秒
- その数日後、飯田はつんくに呼び出されていた。
「おう。飯田。どうや?新メンバーも迎えて、リーダーも大変やろ?」
「はい。もう大変ですよ。裕ちゃんはやっぱすごいですね。私なんて圭ちゃんがサブとして手伝ってくれてるのに、なっちとか矢口にまで助けられてるって感じで…。」
「そうか。それでな…、今日呼び出したのはな、矢口のことなんや。」
「えっ?矢口がどうかしたんですか?」
「何も聞いてないか?」
「はい。特に…。」
「そうか。実はな、矢口に引き抜きの話が来てんねん。」
「引き抜き?どういう事ですか?」
「まぁ増員もしたし、そろそろやろ?…脱退。」
「えっ?矢口がですか?もう決定なんですか?」
「いや、まぁ矢口次第なんやけどな。条件も悪くないし、ウチらとしても押していこう思うてんねん。」
「……。」
- 12 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月09日(水)03時36分47秒
- 「まぁ、急すぎてなんやけど、タンポポの事もあるし、おまえにとってもいい経験になるやろうから、こうして来てもろうたわけや。」
「そんな…。あ、あの、もし、もしですよ、矢口が引き抜きの話断ったら?」
「ん〜、まぁ矢口の気持ちは尊重するつもりやけど、こんなええ話もないからなぁ。それにちょっと早いけど、そろそろ次の奴も考えなあかんとこやったし…。」
「脱退ですか…?」
「ほんとは次は、二人同時!なんて案もあったんやけどな。後藤、石川あたりで。でも、それもちょっとやりすぎかなぁ思うてたし…。ちょうどええのかもしれん。こっちとしても矢口とは思ってなかったけどな。どちらにしても、矢口の返答次第でこっちもいろいろ準備あるしな。明日あたり矢口に聞いてみよう思うてんねん。」
「そんな…。じゃあ、矢口が残っても後藤と石川なんですか?」
「いや、あくまで案やで、案。それに、まったく別の方向での案もあるし。とにかく、よろしくたのむわ。」
「そうですか…。わかりました。」
飯田はそう言って、事務所をあとにした。
- 13 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月09日(水)03時46分43秒
- その夜、飯田は泣いていた。
『この話をリーダーとして一人で抱えるべきなのか?一人で抱えて何か解決するのか?でもつんくさんはリーダーということで、自分だけに話してくれた。他言するのは間違っているのか?』
なにより、今まで一緒に頑張ってきた、矢口の脱退が耐えられなかった。
『タンポポをずっと二人で支えてきた。あやっぺがいなくなってから、石川、加護が加入するまで…。矢口と共に成長してきたのに…。もう、タンポポがタンポポじゃなくなっちゃう。』
そう思いながら、ただただ泣いていた。
- 14 名前:詩音 投稿日:2002年01月09日(水)03時47分42秒
- こんな感じで地道に進めていきたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。
- 15 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月10日(木)01時01分38秒
- しばらく経った後、飯田は電話を手にした。
『裕ちゃんに相談しよう。』
トゥルルルルル トゥルルルルル
「はい。おう。かおり。どないした?」
「もしもし、裕ちゃん?」
中澤はその声を聞いて、すぐに飯田の状況を悟った。
「どないしたんや?」
「実は…。」
飯田はすべて話した。矢口の事、今の自分の心境。すべてを話した。
「ねぇ、裕ちゃん、どうしたらいい?」
- 16 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月10日(木)01時02分09秒
- 「そっか…。でもな、かおり、もうウチは『モーニング娘。』じゃないねん。今のリーダーはかおりやろ。愚痴ならなんぼでも聞いたるけど、解決策は自分で決めなあかんで。でも一つだけ経験者からのアドバイスしたるわ。何でも一人で抱え込む事ないねんで。他のメンバーに話して、悩みを共有させるのもリーダーの仕事の一つやで。リーダーだからこそ、こういう話の場合は少なくとも古い奴だけには、むしろ話すべきなのかもわからんで。そしてその悩みの中心に立って、みんなを支えていれば、それで十分リーダーなんちゃう?」
「……。」
「ん?どした?申し訳ないけど、ウチはこんぐらいしか言ってあげられへんで。モーニングの事は責任もってモーニングで解決せな。な!」
「…うん。そうだね。…ごめんね。ありがと。」
- 17 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月10日(木)01時02分43秒
- そう言って電話を切った後、飯田は保田と安倍を呼び出して、今日の話を一部始終二人に話した。後藤たちのことや、中澤に弱音を吐いたことは伏せて。
「そんな…。確かに最近矢口悩んでる風だったけど、まさかそんな事だったなんて…。」保田が言う。
「矢口はどうするつもりなのかな?」安倍が続ける。
「わかんない。でも矢口の気持ちは素直に応援しよう。もし矢口が『向こうで頑張る』って言ったら応援するし、娘。に残るって言ったら、絶対に離さないし。決めるのは矢口だからね。事務所じゃなく矢口の決定に従おうよ。」飯田は答えた。
「そうだね。後は矢口に任せよっか。」安倍がそう話を締めくくった。
しかしそうは言ったものの、『やっぱり矢口には辞めて欲しくない。』飯田はそう思った。しかしそれは、安倍、保田ともに思っていたに違いなかった。
- 18 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月10日(木)01時03分36秒
- 翌日、今度は矢口が事務所に呼び出された。
矢口には大方、話の予想はついていた。
「失礼します。」
そう言って矢口は部屋に入った。
「おう。すまんな。急に呼び出してもーて。」
つんくは、特にいつもと表情を変えぬまま答えた。
「……。」矢口はどう切り出していいのかわからず、ただ黙っていた。
「あのな〜、矢口…。何言われるかわかってるやろうけど、引き抜きの話や…。俺らとしては応援していこう思うてんねん。」
「やっぱり、知ってたんですか…。」
「そりゃあウチの大事な娘。の事やからな。それにこんな事やし、向こうからも話ぐらい来るやろ。普通。」
「それもそうですよね…。」
「…で、どうするつもりなんや?」
「はい…。まだ決めてないんです。」
「そうか…。まぁ簡単には決められへんやろうけど、こんなええ話、そうはないで。」
「……。」
「……とりあえず、前向きに考えてみたらどうや?大チャンスやで。」
「はい…。わかってます。」
「とにかくこっちとしても、結果次第で準備が必要やからな。はやめの返事頼むわ」
「はい…。わかりました。」
こうして矢口は、つんくとの話を終えた。
- 19 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月10日(木)01時04分26秒
- 次の日、加護は未だ自分を出し切れずに悩んでいた。
『はぁ〜なんか最近楽しくないなぁ…。ウチどないしたらいいんやろ…?』
休憩の時間に珍しく一人でいる加護。
『ののはどう思ってるんやろ…?』
そんな加護の所を、偶然安倍が通りかかる。
「あれ?加護ちゃん、どうしたの?こんなところで。」
急な安倍の問いかけに驚く加護。
「あっ、安倍さん……。いや、なんでもないんです。」
「どうしたの?珍しく真剣な顔してたよ。」
「いや、ちょっと…疲れ気味で…。」
「あらら…。若いのに何言ってんの。確かに最近は大変だけどさ。新メンバーの事とかで。加護ちゃんは初めてだもんね。後輩が出来るのは…。」
「はい…。安倍さんは平気ですか?」
「ん〜…、平気じゃないって事はないけど…。馴染めない?」
「いや、そんなんじゃないんですけど、自分自身これからどうしていくべきかわからなくて…。」
そう言って加護はうつむいた。
- 20 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月10日(木)01時05分00秒
- 安倍は『あぁ、なるほど』と思い、ニコッと微笑むと
「え?どうして?加護ちゃんは加護ちゃんでしょ?周りがどうなろうとそれは変わらないでしょ?」
「でも……。」
「あのね加護ちゃん、実はね、内緒なんだけど…。」
加護は『何だろう?』と思い顔を上げた。
安倍は続ける。
「なっちもね、同じような事で悩んだ事あるんだ。増員と言えば、最初に矢口達が入って来たんだけど、この時は本当に最初の増員だったから、すっごい大変だったんだよ。どう接したらいいかもわかんなくて。でもね、『負けらんない』と思った。だから、新メンバーに気を使って自分を殺そうなんて全然思わなかった。そんな事してたら、あっという間に抜かれちゃうもん。だから『ありのままの自分で出来る限りの努力をしよう』って思った。」
- 21 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月10日(木)01時05分53秒
- 「負けらんない…。」加護が呟くのを無視して安倍は続けた。
「でもね、ごっちんが入って来た時、そうも言ってられなくなっちゃって。それまではね、自慢じゃないけど、なっちがほとんどメインをやらせてもらってたのね。でも、『LOVEマシーン』からそうじゃなくなった…。その時はホントどうしようって思ったよ。悔しかったし。『このままの私じゃダメなのかな?』って思った。『変わらなきゃいけない』とも思った。」
そう言って加護に微笑むとさらに続ける。
「でもね、それは違うの。確かにこのままじゃいけないし、変わらなきゃいけない。でもそれは『安倍なつみ』であることを前提に変わらなきゃいけないの。つまり、変わるって言っても、実は何も変らない。『安倍なつみ』のまんま。ただ、『成長しなきゃいけない』ってことなの。変わっちゃったら負けちゃうもん。同じメンバーであると同時にライバルだからね。加護ちゃんも『負けらんない』って思って頑張って成長しなきゃ。あくまで『加護亜依』としてさ。」
「ライバルかぁ…。」
「あっ、でも勘違いしないでね。ごっちんの事は恨んでないよ。その分ごっちんも苦労したし、努力もしてた。そうやってお互いに頑張ったから今があるんだからね。だから同じように新メンバーも色々悩んでると思うよ。その気持ちは、なっちより加護ちゃんの方がわかるでしょ?」
「はい…。」
「ね。お互いに頑張ろう。」そう言ってまた安倍は微笑んだ。
つられて加護も微笑んだ。
- 22 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月10日(木)01時07分13秒
- 辻はその時、楽屋の奥で一人学校の宿題をしていた。他のメンバーはみんなどこかに行っている。なにかのミニコーナーの収録などもあるのだろう。辻はこういった一人の時間は、いつも教科書を開いていた。決して勉強が好きなわけではなかったが、学校で遅れをとるのが嫌だった。他の普通の生徒と同じでいたかったのだ。学校で特別な存在にならないために必死だった。
「ガチャッ。」
そこに飯田が入ってくる。
「あっ、いいらさん…。」
急いで教科書をしまう辻。
「あっゴメンゴメン。邪魔しちゃって。いいよ。またすぐ行かなきゃいけないし…。宿題頑張りな。」
しかし、辻は再開しようとはしない。ボーっと飯田が出て行くのを待っている。
「どうしたの?宿題は?あたしがいるとやりづらい?」
飯田は尋ねる。
「いや、そんなことないれすけど…。」辻は答える。
- 23 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月10日(木)01時08分11秒
- 「そういえば、辻さ〜、いっつも私がくると隠すよね。そんなに勉強してる姿見られたくない?確かに辻が勉強なんてって思うけどさ。」
「そうれすか…?別にそんなつもりは…。」
「他の人の時も隠すの?」
「いや…、えっと…。時々…。」
「ふ〜ん。昔は隠さなかったのにね。よく加護と一緒にやってたけど、最近はやらないし…。ひょっとしてよっぽど勉強できなくなったとか…?」
「……。うん。まぁ…。」
「ははは。がんばりなよ!」
飯田は『変な奴…。』と思った。しかし、いつもの辻に比べていささか暗く、オドオドしている様に感じた。
『よし。いっちょからかってやるか。』飯田はそう思い、「じゃ!」と言って楽屋を出た。
「はぁ…。」辻はため息をつくと、再び課題をバッグから取り出し机の上に広げた。そしてゆっくりと教科書に目をやり、宿題を開始した。
その時…。
- 24 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月10日(木)01時09分04秒
- 「わぁ!」ドアをそーっと開けてゆっくり近づきながら飯田が言う。
「ひゃ!」驚く辻。それと共にすでに自分のそばまで来ている飯田に気付き、教科書をしまおうとする。
「驚いた?」飯田は笑っている。
「……。」返事もせずに教科書をしまう辻。
「どうした〜?なんか元気ないぞ?」
「な、なんでもないれす。」
「まったく、どうしても必死に隠すんだね。そんなに見られると困るのかな?」
「い、いや…、そういうわけじゃ…。」
「じゃあ、ちょっと見せてごらん。」
「えっ?い、いいれす。見なくて…。」
「大丈夫。別にかおりだってたいして成績よくなかったし、みんなには、特に加護には内緒にしといてあげるから。そんな成績なんて気にしないで…。」
「ホントに、大丈夫れす…。もう終わったんで…。」
「う〜ん…。なんかあやしい…。さては好きな男の子の名前でも書いてあるんだな?」
- 25 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月10日(木)01時10分48秒
- 「か、書いてないれす!」
「ますますあやしい…。どれどれ…。」
そう言ってバッグを開けようとする飯田を辻は必死に止める。
「やめてくらさい!やめてくらさい!」
その時飯田にはバッグの中の教科書がチラッと見えた。確かに何かが書いてある様だった。しかしそれよりも、あまりに必死になっている辻が気になった。
『なにもそんなに…。別に好きな子ぐらい…。』飯田はそう思った。
辻は飯田からバッグをとり返すと、すぐさま抱きかかえた。しかしあまりにも強引にとり返したために、バッグの中身を全て地面に落としてしまった。飯田の足元に教科書やノートが散らばる。まだあまり使われていないきれいなノート…、ボロボロのノート…。そしてあまりにもボロボロな教科書。そしてそこに書かれている文字…。
『えっ!?』飯田は目を疑った。
「今の…?」そう言う飯田の前で、辻はそれらを拾い上げる。
「ちょっと、今の何?見せてごらん!」飯田は言う。
「いやれす。」辻は答える。
- 26 名前:詩音 投稿日:2002年01月10日(木)01時13分24秒
- 更新しました。
- 27 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年01月10日(木)08時37分10秒
- ミニモニ。の3人のこれからの展開から目が離せませんね。
楽しみにしております。
- 28 名前:詩音 投稿日:2002年01月11日(金)01時07分06秒
- むぁまぁさん、レスありがとうございます。
これからの展開・・・。
ASA○ANじゃないですけど、「衝撃の超展開が起きてしまうんです!」なんです…。
多くは語りませんが、まぁ、広い心で見守ってください。
それでは更新です。
- 29 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月11日(金)01時08分23秒
- 「いいから見せなさい!」さっきより強い口調で言う。
「い、いやれす!」辻も強い口調で答える。
「見せなさい!!!」飯田は辻から無理やり取り上げる。
ボロボロのノートと教科書。教科書はカッターで切られたのを、セロテープなどで補強してあるような状態…。古いノートにも破れた跡…。そしてどちらにも共通して書かれている、信じられない文字…。
『調子に乗んな!』『ナマイキ!』『ブス!』『デブ!』『学校来んな!』
「辻……。……何コレ?なんで?どうして?」飯田には状況が飲み込めなかった。
「な、なんでもないのれす…。気にしないでくらさい。何でもないれすから…。」辻はうつむいたまま答える。
- 30 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月11日(金)01時09分15秒
- 「何でもない事ないでしょ?どういう事?ひょっとして辻…学校で…。」
飯田がそこまで言うと辻は、
「違います!」そう言って教科書を奪い、すばやくバッグに詰め込むと、部屋を出ていってしまった。
飯田は「待って!」と言ったが、辻を止める事が出来なかった。
『まさかあんな事が…。辻…今までずっと隠して…。』飯田はショックを隠せず、しばらくそこに立ちすくんでいた。
「かおり!何してんの?出番だよ!」矢口が帰りの遅い飯田を、楽屋まで呼びに来ていた。
「どうしたの?かおり?交信中?」矢口は不思議そうに聞く?
『こんな事矢口には絶対話せない!今はこれ以上矢口に負担かけられない。』飯田はそう思い、「ううん。ゴメン。何でもない。すぐ行く。」と答えた。
「何〜?どうしたの?何か変だよ!」矢口はそう愚痴りながら、飯田と一緒に楽屋を出ていった。
- 31 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月11日(金)01時09分57秒
- 『辻…。どうして…?』飯田はそればかり考えていた。
しかし辻は、まるで何も無かったかのように、加護と無駄話をしながらミーティングを受けていた。
「かおり〜!ほら、あとちょっとなんだから交信してないで頑張って。」保田に突っ込みを入れられる。
「あっ、ゴメン。で、何?」飯田の答えにため息を吐く保田。
しかし無事ミーティングも終わり、とりあえず今日は解散という事になった。
みんなが帰る支度をしている中、保田が小声で飯田に話しかける。
「かおり。確かに矢口の事とか大変だけど、しっかりしなきゃダメだよ。」
「うん。ごめん…。大丈夫。」飯田はとりあえずそう答えた。
『辻の事はみんなには話さないでおこう』飯田はそう思っていた。それは他のメンバーにまで負担をかけたくないという気持ちと、今まで辻が隠してきた事を、勝手に言ってしまうのも気が引けたからであった。
そして帰る時、辻を呼び出し聞いた。
「辻、今日の事なんだけど…。」
- 32 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月11日(金)01時10分35秒
- 「はい…。」辻は元気なく答える。
「学校でいじめにあってるの?」
「……。」辻は黙り込んでいる。
「どうして隠してたの?」
「…心配かけたくなくて…。」
「だからって一人で抱え込んでたの?」
「あいぼんだって、里沙ちゃん、あさ美ちゃん、麻琴ちゃん、高橋さんだってうまくやってる…。あたしだけうまくいってないなんて、思われたくなかったんれす。」辻は涙で目を潤ませながら言う。
「辻……。」飯田は言葉を失う。
「私なら大丈夫れすよ…。心配しないでくらさい。」
「辻、明日撮影の空き時間に学校行くんでしょ?負けちゃダメだよ。」
「はい…。がんばります。」
「この事みんなには秘密にしておくから、その代わりこれからはあたしには全部話して。」
「はい…。」辻はそう答えると帰っていった。
『どうしたらいいんだろう…。あたしは何もしてあげられないのかな…?』飯田は考えていた。
- 33 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月11日(金)01時11分36秒
- 翌日、いつもの様に仕事をこなしていくメンバー達。
昼からの空き時間に辻、加護、高橋、小川、紺野、新垣は学校へ行った。
飯田は安倍、保田と共に矢口の事を話し合っていた。
「矢口…、どうするつもりなのかな…?」安倍が言う。
「確かにそんなそぶりも見せないしね。」保田が答える。
しかし、飯田の頭にはそれだけではなかった。今辻は学校へ行っている。きっと今日も学校でつらい思いをしているに違いない。
『このままじゃいけない…。どうにかしてあげないと…。』
「かおり?お〜い!」安倍が呼んでいる。
「え?は、はい。何?」飯田はやっと気付き答える。
「もう!最近交信多いぞ!どうかしたの?」保田が不満気味に言う。
「いや、ゴメン。なんでもない。ホント…ごめん。」
「まったく…、しっかりしてよね。リーダー。」安倍に冷やかされる。
「ところで話し戻すけど、ウチらが知ってるって事、矢口は知らないんだよね?」保田が聞く。
- 34 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月11日(金)01時12分06秒
- 「知らないと思う…。たぶん…。」飯田が答える。
「いつ返事するのかなぁ?」安倍が呟く。
「うん…。でも、つんくさんはもう矢口と話したはず…。」飯田にはそこまでしか分からなかった。
「なんて答えたんだろう…?」三人ともが思ったことを保田が口にする。
「そこだよね〜。あぁ〜あ、どうなるんだろう?」安倍が机に体を伸ばす様に言う。
「でも、きっともうすぐ矢口は返事すると思う…。つんくさんも早めの返事を待ってるはずだし…。」
「だね。ウチら三人で話しても何にも決らないからね。」保田がそう言って話しを締めた。
飯田は気が重かった。確かに矢口の事も気にかかる。しかし辻の事も放ってはいられなかった。
- 35 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月11日(金)01時12分42秒
- その頃当の矢口は後藤、石川、吉澤と四人で無駄話をしていた。
「キャハハハ!マジで〜?」矢口の独特の笑いがこだまする。
「ホントですよ。参っちゃって。」吉澤も笑っている。
「もう!こっちは大変だったんですよぉ。」
どうやら石川の話をしているらしい。
「で、結局どうしたの?」矢口が聞く。
「マネージャーさんとかが必死で離した。」後藤が答える。
「怖かったですよぉ。」石川が言う。
「確かにそれはつらいわぁ〜。」矢口が石川の肩を『ポン』と叩く。
「まぁ、梨華ちゃん襲いたくなる気持ちもわかるけどね。」吉澤が笑いながら言う。
- 36 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月11日(金)01時17分27秒
- 矢口は楽しかった。それは、もしかすると自分がもうこの中で話をする事が、出来なくなるかもしれないという思いからでもあり、それと同時に純粋にみんなの笑顔が好きだった。
『どうしよう…。今ここでみんなに相談してみようかな?』そうも考えた。しかしできなかった。
「やぐっつぁん?どうかした?」不意に真剣な表情をした矢口を、後藤は見逃さなかった。
「え?いや、別に。どうもしないよ。」矢口は笑顔で答えた。
「そう?急に真剣な顔するから…。」後藤は不思議そうな顔をする。
「なんか悩みっすか?」吉澤が乗ってくる。
「違うよ。たまにはあたしだって真剣な顔ぐらいするよ。」矢口は悟られまいと笑顔で答える。
- 37 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月11日(金)01時18分05秒
- 「……。」しかし後藤は『何かあるな。』そう思った。
「ポジティブですよ。ポジティブ。」石川が言う。
「だから、なんでもないって。」矢口は答える。
「そういう梨華ちゃんこそ、ポジテブしてる?」吉澤が話を石川に切り替えた。
「そうそう、ポジテブ。」矢口が笑いながら言う。
「大丈夫ですよ。チャーミーポジテブですから。」石川も笑いながら答える。
こうして四人の笑いの絶えない無駄話は続いた。
- 38 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月11日(金)01時18分58秒
- そして、学校に行っていた六人も戻り、夜から全員での収録が始まった。
それぞれが無難に仕事をこなしていく中、やはり飯田、安倍、保田は矢口を気にしていた。しかし、今回は後藤も矢口を気にしていた。しかも後藤は飯田達が矢口を気にかけている事にも気付いた。
『あの三人は何か知ってるのかも…。』後藤はそう思った。
しかししばらくすると、飯田と安倍の視線はそれぞれ辻、加護に向けられた。
『気にし過ぎかな…?』後藤はそうも持った。
そしてそれぞれ色々な思いのまま、無事収録も終わり、いつもの様にじゃれあっていた。
矢口は考えていた。『もうそろそろこんな事も終わりかもな…。』
「矢口さぁ〜ん。見てぇ〜。」加護が不意に声をかけた。もう加護にこの前までの悩みなどなかった。
「ほら、矢口見てごらんよ。」安倍が加護と一緒に駆け寄る。
なんてことはない、今まで何度も味わった加護のものまねだった。ただ、三人にはすごく楽しかった。何でもないような事が幸せだった…。
- 39 名前:詩音 投稿日:2002年01月11日(金)01時22分00秒
- 更新致しました。
- 40 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月11日(金)06時44分53秒
- 皆、問題を抱えて大変だぁ…
- 41 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年01月11日(金)11時32分15秒
- 辻ちゃん...
実際に在り得なくもない話ですよね...
- 42 名前:詩音 投稿日:2002年01月12日(土)02時08分01秒
- レスありがとうございます。
基本的に、非現実的な妄想上の話ですけど、少しでも現実っぽさを出そうと意識しました。
まぁ、ありえないとも言い切れないな。っていうのが一つのこだわりでもあるので。
- 43 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
- ( `.∀´)ダメよ
- 44 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
- ( `.∀´)ダメよ
- 45 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
- ( `.∀´)ダメよ
- 46 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
- ( `.∀´)ダメよ
- 47 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月12日(土)03時22分11秒
- その日、飯田は辻を呼び出し、話し合った。
「どうだった?学校…。」飯田が聞く。
「はい…。いつも通りでした。」辻は答える。
「嫌にならない?」
「楽しい事もあるし、平気れすよ。」
「そう。でもね辻。かおりはこのままじゃいけないと思う。あんたは『モーニング娘。』であると同時に、『中学二年生』でもあるんだよ。わかる?」
「はい…???」
「だからね、『娘。』の仕事をちゃんとやらなきゃいけないのと同じで、『中学二年生』としてもちゃんとやっていかなきゃ。」
「……。」辻は言葉に詰まる。
「ただの『中学生』だったら『このままじゃいけない!』って思うでしょ?でも今辻は『このままでもしょうがない。』って思ってるでしょ?『モーニング娘。』だから。辻自身『他のみんなと私は違う。』って思ってる。それじゃダメだよ。ちゃんと『中学生』できてないよ。」
「でも、どうしたら…。」はやくも辻の目には涙が浮かぶ。
- 48 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月12日(土)03時22分45秒
- 「みんな芸能人である事を羨ましがってるだけなんだよ。だからあんな事をする。学校では辻は『ただの中学二年生』なんだから、そのつもりで頑張らないと。」
「どういう事でしょう?」辻は聞く。
「つまりここでは『中学生のモーニング娘。』、学校では『モーニング娘。だけどただの中学生』じゃないと。」
「……。」辻は『だから、結局どうしたらいいんだろう?』と思った。
「わかった?」飯田は言う。
「???…。はい…。」辻は困惑したまま返事をする。
結局それで話は終わってしまった。
『飯田さんは何が言いたかったんだろう?』辻は悩んだ。
- 49 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月12日(土)03時23分35秒
- その日の深夜、矢口は自宅で『モーニング娘。』のDVDを見ていた。たくさんの記憶がよみがえる。楽しい想い出…、悲しい想い出…。
『モーニング娘。も色々あったなぁ…。私が加入してから、後藤が入って石川、よっすぃ〜、辻、加護。そしてその後、小川、新垣、高橋、紺野…。色々な出会いがあったなぁ…。』
『別れもあった。明日香、彩っぺ、紗耶香、裕ちゃんの脱退。そして今度は、矢口真里の脱退…。一気にみんなと別れるのかぁ…。今までは一人との別れだった。でも今度は全員との別れ…。一人でも十分つらかったのに…。今まで辞めた人はこんな気持ちだったのかな…?辞める方のがつらかったんだね…。全然わかんなかったな…。』
- 50 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月12日(土)03時24分09秒
- 『タンポポとかミニモニ。どうなるのかな?新メンバー加入かな?タンポポはともかく、ミニモニ。の新リーダーはどうなるんだろう?辻?加護?ダメ、絶対無理…。あの二人じゃヤバイ。やっぱミカちゃんかな…?』
『辞めたくないな…。ずっとみんなと一緒にいたい…。大好きなみんなと離れたくない。別々で仕事するなんて…、今までずっと一緒だったのに…。』
『前に「うたばん」で「脱退はイヤですね。」って自分で言ってたのにな…。でもあたしが辞めなきゃ、事務所はいつか他の人を考える…。こんな悲しい思いを他のメンバーが、他の大好きな誰かがしなくちゃいけなくなる…。矢口は辞めてもいい話が来てる。でも、他の人にはどんな話が来るか分からない…。』
『やっぱり……。』
そんな事を考えながら矢口は眠りについた。
- 51 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月12日(土)03時24分39秒
- 次の日、雑誌の取材があった。一人一人別々に取材を受けた。
お題は『自分にとってモーニング娘。とは?』と『今一押しのメンバーは?』だった。
矢口は『すごいタイミングだな…。』と思った。そしてこう答えた。
「私にとって『モーニング娘。』とは家族ですね。大切な大切な家族です。」それと同時にこう思った。
『そう、家族。いつか一人立ちしなきゃいけない…。』
そして一押しのメンバーを「小川。」と答え、矢口の取材は終了した。
また、安倍は一押しのメンバーを「加護ちゃん。」と答えた。理由は「新メンバーが入った事によっての成長に期待。」という事であった。
他のメンバーも淡々とこなし、取材は終わった。
- 52 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月12日(土)03時25分42秒
- 三日後、飯田の希望で前日の記事の大まかな原稿がメンバーに配られた。
後藤が矢口の隣に腰掛け言う。
「やぐっつぁん。やぐっつぁんにとって、あたし達は家族なんだよね?」
「え?やだな〜、恥ずかしい。でも…、そうだね。ごっつぁんも、なっちも、かおりだって、裕ちゃんだって、他のみんなだって大切な家族だよ。急にどうしたの?後藤だって『仲の良い姉妹』って言ってるじゃん?」
「まぁね。後藤もね〜、『モーニング娘。』は『仲の良い姉妹』つまり『家族』だと思う。」
矢口は『何が言いたいんだろう?やっぱり何か疑われてるのかな?』と思った。
そして言う。
「そう、家族…。ホント急にどうしたの?」
- 53 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月12日(土)03時26分13秒
- 後藤は少し間を置いて答える。
「どうしたの?は、こっちが言いたいよ〜。最近、何か悩みでもあるんじゃない?」
「え?悩み?まぁ、そりゃ…あるさ…。でも大丈夫!誰にだって悩みの一つや二つあるさ。私なんかより圭織のがずっと多いんじゃない?」
後藤は矢口から視線をそらすと、息を一つ付き答えた。
「ま、いいさ。やぐっつぁんはやぐっつぁんなりに色々あるもんね。でも、あたし達は何があっても、ずぅ〜〜〜っと『家族』だからね。」
そして後藤は席を立った。
矢口は思った。
『あいつ…、ひょっとして気付いて…。そうだよね…。離れても家族は家族だよね…。』
- 54 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月12日(土)03時26分44秒
- そして他のメンバーがワイワイ騒ぐ中、辻がその原稿を見ると、飯田の一押しのメンバーは辻だった。
理由は「他の子もそうだけど、中学生なのにモーニング娘。をちゃんとやっていけてる。なぜなら辻は『どんな事でも頑張れる子』だから。」であった。
辻はやっと飯田の言いたい事が分かった。そしてとても嬉しかった。
すると飯田は辻の所に駆け寄り、小声で話す。
「辻は『モーニング娘。』をやっていけるぐらい『頑張れる子』なんだから、他の事だって『頑張れる』はずだよ。ね。」
「はい…。がんばります。」辻は答えた。
飯田は何も解決策は与えなかった。結局ただ『頑張れ。』と言っただけであった。つまり、自分自身の力でどうにかしなければいけないと、伝えたかったのだ。そして、辻ならそれができると。『どんな事でも頑張れる子』だから。
- 55 名前:詩音 投稿日:2002年01月12日(土)03時30分34秒
- 更新しました。
う〜ん…、回線の調子が悪い…。
- 56 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年01月13日(日)00時09分55秒
- いいらさん すてきれす
まぁ ゆっくり行きましょ
- 57 名前:詩音 投稿日:2002年01月13日(日)00時18分44秒
- こんばんわ。本日の更新です。
- 58 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月13日(日)00時19分29秒
- その日の夜、矢口は引きぬきの返事をするために一人、事務所に来ていた。
「約束より大分早く着いちゃったなぁ…。つんくさんもう来てるかな…。」
矢口は、事務所の応接室に向かった。
そこではつんくと山崎社長が話をしていた。
「ホンマにこれでええんですかね?」つんくが言う。
「仕方ないだろう。俺はこの事務所を、ジャニーズ事務所のような会社にするつもりだ。そのためには『モーニング娘。』を使えるだけ使って、力をつけなければならない。」
「でも矢口は『モーニング娘。』にとって重要な…。」
「だからこそ他の事務所に行った時のメリットが大きい。それに矢口じゃなけりゃ誰ならいいんだ?」山崎は言う。
「そりゃそうですけど…。この方法しかあらへんのですかね?」つんくが言う。
『まったく…。嫌な話聞いちゃったな…。』矢口はドアの前で思った…。
そして、ドアをノックした。
「矢口でーす!失礼しまーす!」
- 59 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月13日(日)00時20分09秒
- 「お、おう。矢口、早いねんな。」つんくが驚きながら答える。
「いつから居たんだ?」山崎が聞く。
「…ジャニーズなんたら…あたりですかね…。」矢口は答える。
「……。」つんくは言葉に詰まる。
「いいッスよ、別に。事務所ってのは会社ですもんね。大きくしたいってのは当然ですもん。それにウチらが使われるのも普通ですよ。」
矢口は内心は穏やかではなかったが、そんな事はとっくにわかっていたし、仕方ないと言う事も分かっていた。
「まぁいい。で、どうするつもりなんだ?」山崎が聞く。
「…お受けしようと思ってます。引きぬきの話はホントなんですよね?」矢口が言う。
「おう。ホンマの話や。」つんくが答える。
「いいんだな?」山崎が付け加える。
- 60 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月13日(日)00時20分39秒
- 『まったく、そうしてほしいんでしょ?』矢口はそう思った。そして答えた。
「はい。わたし、矢口真里は『モーニング娘。』を脱退します。」
『コレでいいんだよね。コレが大好きなみんなのためには、一番いい事なんだよね。』矢口は自分に言い聞かせた。
「わかった。正確な日取りは後で連絡するわ。メンバーには自分で言うか?」
「はい。自分で言います。」矢口はそうつんくの言葉に答えた。
こうして、矢口の話は終わった…。
帰り道で矢口は呟いた。
「なんか『モーニング娘。』が好きだから『モーニング娘。』を辞めるって感じだな…。矛盾してるよ…。でも、意外とそんなもんなのかもな…。」
- 61 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月13日(日)00時21分19秒
- 次の日、昨日の夜のうちに飯田にだけは、つんくから連絡がいっていた。
しかし他のメンバーには「矢口から話があるまで内密にしておくように。」との事であった。
飯田はショート寸前であった。新メンバーの事や辻の事、そして矢口の事で大きな負担がかかっていた。
そんな中飯田は、仕事中に倒れてしまう。幸いストレス性の胃炎で済み、大事にはいたらなかったが、しばらく休養をとる事になった。この事は安倍、保田はもちろん他のメンバーや、世間の人々に大きな影響を与えた。
特に辻が責任を感じていた。新メンバーもそうである。そのフォローに安倍、保田そして矢口も必死であった。
しかし、世間ではもっと大きな騒ぎになっていた。
- 62 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月13日(日)00時21分53秒
- 「13人もいるから負担が大きくなったんだ。やっぱり今回の追加は失敗だった。」という新メンバーへの批判。
「結局メンバーに迷惑をかけている。リーダー失格だ。」飯田への批判。
それと同時に、「やはり次は脱退だ。誰が辞める?」という話題。
真実とは裏腹に、噂の標的は『加護』、『石川』であった。噂ばかり広がり、特に石川が噂を気にしていた。
インターネットの某掲示板には「梨華ちゃんをクビにはさせない!他にもっといらないヤツがいる。梨華は僕が守る!」などという書き込みまで起こる始末であった。しかし、まさかこの書き込みが、この後起こる事を予告していたとは誰も思わなかった。今後の『モーニング娘。』に大きな変化を与えるほどの悲劇を…。
- 63 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月13日(日)00時22分46秒
- こうして数日が経ち、矢口は飯田が復帰した最初の収録の日にメンバーに話す事に決めていた。
『明日の収録の時にはかおりも帰ってくるし、その日は裕ちゃんもいる。その時話そう…。』
その日の夜、後藤は市井に手紙を書いていた。
- 64 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月13日(日)00時23分25秒
- Dear 市井ちゃん
ね〜聞いて聞いて。聞いてといっても手紙だから、読んで読んでカナ?
明日やっとかおりが帰ってくるよ〜。でもね、ちょっと嫌な予感もする
んだ。前にも言ったけど、やぐっつぁんの様子が変だし。でもねでもね、
今度は前とは違うの。なんかみょ〜に吹っ切れた感じって言うかぁ〜。
だから明日かおりが帰ってきたら、何かありそうでさぁ。明日と言って
も、市井ちゃんが読む時は今日になってるけど…。すでに終わった話に
なってるかもね…。
それはさておき、後藤的には、やぐっつぁん辞めるつもりなんじゃない
かなぁ〜って思う。
- 65 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月13日(日)00時24分00秒
- 世間では梨華ちゃんって言われてるけど、梨華ちゃん励ましてるときの
やぐっつぁんの「大丈夫。がんばろう!」ってのがさぁ〜。なんか裏が
ありそうで…。でもあくまで後藤の予想だから、市井ちゃんは気にしな
いで。でもなんか、市井ちゃんとか裕ちゃんの時の事思い出すよ。あと
彩っぺもね…。あの頃のみんなと今のやぐっつぁんがかぶる感じがして。
でも後藤もあの頃よりは大分強くなったよ。市井ちゃんのおかげで。
特に最近は裕ちゃんがいなくても、みんなで差さえあって頑張ってるし。
もう弱音は吐かないよ。今までは色々迷惑かけたけど…。
- 66 名前:第一章 娘。というモノ 投稿日:2002年01月13日(日)00時25分06秒
- 「ふぅ〜。」後藤はため息をついてペンを置いた。
『明日どうなるかな…。やっぱりなんか嫌な予感がする…。』
後藤はそう思いながら、ミルクティーを一口飲むと再びペンを持った。
第一章 完
- 67 名前:詩音 投稿日:2002年01月13日(日)00時36分25秒
- 更新致しました。
これで一応『第一章 娘。というモノ』は終了です。
次回からは『第二章 Last smiles』に入ります。
前に言いましたが、とてつもない展開が起きます。
『おいおい、話変わり過ぎだろ!』とお思いになるかもしれません。
でも、あくまでこの話のメインはこれからなので…。
もしかすると、内容的に反感を買う事になるかもしれないので、先に謝っておきます。
すいません。
でも、自分はこういう話が好きなもので…。
どうか、寛大な心で受け止めてください。
- 68 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月13日(日)04時06分23秒
- どうなろうと大丈夫です。
すごく先が楽しみです。
がんばってくださいね。
- 69 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月14日(月)03時04分15秒
- 自分もこの手の話は大好きです。
小説なので反感とかはあまり気にせず
詩音さんの好きなようにお書きになってください。
続き期待してます。
- 70 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年01月14日(月)22時35分32秒
- 大丈夫ですよ
- 71 名前:ふにゃ〜 投稿日:2002年01月15日(火)00時42分27秒
- これからどう変わっていくのか楽しみです。
想像を絶する話を期待しています。
がんばってください。
- 72 名前:詩音 投稿日:2002年01月15日(火)04時02分48秒
- レスありがとうございます。
それでは想像を絶する?第二章スタートです。
- 73 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月15日(火)04時03分29秒
- 第二章 Last smiles
静かな朝…。
飯田は部屋の鏡の前で、濡れた髪を乾かしていた。
「ふぅ…。みんなに大分迷惑かけちゃったなぁ…。」
1時間ほどして事務所の車が迎えに来る。
「おはようございます!」
飯田は元気よくあいさつをし、スタジオに向かった。
- 74 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月15日(火)04時04分15秒
- その頃他のメンバーは、一足先に楽屋で飯田を待っていた。
「あぁ〜、いいらさん早く来ないかなぁ〜。」
そんな辻の呟きに、隣にいた加護が答える。
「もう、昨日から『飯田さん、飯田さん。』って…。もうすぐ来るってぇ〜。」
辻はそわそわして落ち着かない。
そんな辻を見ながら、加護は大きくあくびをする。
「ふわぁ〜…。なんか急にねむなったぁ〜。」
しかし辻は、そんな加護には目もくれず、飯田を待っていた。
そんな辻の行動には理由があった。
辻は、飯田が倒れた事に対して、人一倍責任を感じていた。
だからもう心配をかけない様にと、学校での辛い日々を自分の力で乗りきろうと頑張っていた。
そして、その結果を飯田に報告したくて、うずうずしていたのである。
- 75 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月15日(火)04時04分45秒
- 30分ほどして、飯田が到着すると、みんなから次々に「お帰り!」「忙しくてお見舞いにも行けなくてゴメンね。」「これからもよろしくね、リーダー。」等の声が飛んだ。
飯田もそれに笑顔で答えた。
そんな中、辻は目に涙を浮かべていた。
飯田が辻の元に近付き声をかける。
「元気だった?」
すると辻は飯田に抱きついた。
他のメンバーから「甘えん坊だなぁ〜。」等と言われてはいたが、辻にはそんな声は耳に入らなかった。ただ嬉しくてたまらなかった。
久しぶりの再会で盛り上がる会話が一区切りつくと、辻は飯田に自分の手帳を見せた。
- 76 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月15日(火)04時05分19秒
- そこにはたくさんの友達のプリクラ、そしてその中には『今までゴメンね。』と書かれたプリクラもあった。
また、友達と楽しそうにミニモニ。ポーズを決める辻のプリクラもあった。
辻は嬉しそうに言う。
「忙しくて辻はまだ1枚しか撮れてないれすけど、今、すごく学校が楽しいれす。」
飯田は辻の頭をなで、笑顔で言った。
「よく頑張ったね。」
辻も嬉しそうに微笑んだ。
- 77 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月15日(火)04時05分53秒
- そしてその後、それぞれいくつかの収録を済まし、中澤を加えての全員での収録となった。
楽屋に残っていたメンバーもスタジオ入りし、収録の準備は進められていた。そんな中、矢口は心の中で呟いた。
『この収録が終わったら、みんなに言おう…。』
こうして『モーニング娘。』は、再び順調に動き出したかのように見えた。
しかし、そんな思惑とは裏腹に、悲劇は起こった。
それはあまりに突然過ぎた…。そして一瞬の出来事であった…。
- 78 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月15日(火)04時06分26秒
- 収録が始まろうとしていた。
加護の手を引き、安倍が言う。
「ゴメン、ゴメン。加護ちゃんOKです。」
加護が続ける。
「ごめんなさい…。ちょっと寝ててェ…。」
飯田が言う。
「まったく、加護は〜。しっかりしてよねェ〜。」
中澤が付け足す。
「しかしええなぁ、若いって…。遅刻してニコニコしとっても、許されてまうもんなぁ〜。」
矢口が更に追い討ちをかける。
「おぉい!聞いてんのか?加護ぉ〜!」
「はぁ〜。」
加護はニコニコしながら、気の抜けた返事をする。
スタッフが叫ぶ。「はい、じゃあ本番いきま〜す!」
- 79 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月15日(火)04時07分15秒
- こうして収録は始まった。
中澤が言う。
「はい!今日も始まりました。さっそくいってみましょう!ダジャレ一発!ギャグ100連発ぅ〜!」
他のメンバーが騒ぐ。「イエ〜イ!」
そして中澤が言う。「おっ、今日はごっつぁん気合入ってる?」
「いやぁ〜、なんか。ちょっとね、ちょっとだけ。」後藤は笑顔で答える。
「いや、ちょっとて…。全然気合入れてええんやで。ねぇ、たけしさん?」
矢口はすぐさま『ビートたけし』のモノマネで答える。
「こんにちは。ビートたけしです。」
中澤が続ける。「さて今回は新メンバーの成長振りを是非、確かめたいと言う事で…。どうでしょう?大丈夫ですか?飯田さん?」
飯田が答える。「いや〜、まだ圭織ほどじゃないと思うけど、それなりには…。」
安倍がつっこむ。「いや、圭織のもどうだろう?ねぇ、加護ちゃん?」
「……。」加護はボーっとしていて返事をしない。
安倍がもう一度名前を呼ぶ。「加護ちゃん?!」
「へ?あっ、はい。」加護はハッとして答える。
中澤が言う。「なんや?まだ寝ぼけてんのか?」
「もう、ほっといて進めましょ。」保田が言う。
- 80 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月15日(火)04時07分49秒
- その時である……。
「こ、こら、き、き、きみ何してるんだ!」とスタッフの声。
「はーい!カット〜。バカやろう!何だってんだ?本番中だぞ!」
「ダダダダダダダッ!!!!!」
何かを発射したような小さな爆発音。
「キャーーーーー!!!」
「どうした?何事だ?」
次々とスタッフの声が飛ぶ。
「な、何?ど〜したんですか?」スタッフの方に駆け寄る保田。
しかしその行動に対しプロデューサーが、「来るな!!!」と叫ぶ。
「えっ、一体…。」
その時である。
「ダダダダダダダダダッ!!!!!」
再び不可解な音が響いたかと思うと、プロデューサーに続いて保田がその場に崩れ落ちた。
- 81 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月15日(火)04時08分30秒
- 二人が倒れたことにより、その向こうの状況が他の娘。たちにも確認できた。
少し小太りの男が右脇に何か黒いものをを抱えている。
「逃げろ!!!」
誰かがそう叫んだかと思うと、その小太りの男は右脇に抱えた黒いものを娘。たちに向けながら、ものすごい勢いで近づいてきた。
次の瞬間、急に立ち止まり、男は口元を少し緩め、半笑いの状態で「フフッ…りか…僕だけのりかぁ〜!!!」と叫びながら、右脇にある黒いものをかまえなおした。
『マシンガンだ。』全員が気づいたであろう。
「キャーーーーーーーーー!!!」
誰が叫んだのであろう?あるいは全員が叫んだかもしれない。
それを確認する間もなく、また、
「ダダダダダダダッ!!!!!」
瞬間的にその場に倒れこんだ中澤が「あかん!みんな、はよ逃げぇ!」そう叫んだ。
- 82 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月15日(火)04時09分05秒
- しかし、言った本人が逃げられないことに中澤は気づいた。
その場に倒れこんだのは自分の意思ではなっかった。
すでに下半身の感覚は無くなっていた。弾に当たってしまったのである。
それでも中澤は、状態を起こし「はよ、逃げぇ!」再び叫ぶ。
「ダダダダダダダダッ!!!!!」
無常にもその叫びをかき消す。
だが、中澤の叫びが届かないまでも、全員がこの状況を本能的に察知し、逃げようとする。
しかしここはスタジオ。隠れる場所はあるが、逃げるには男の横を通る必要があった。
男は銃を乱射している。
「キャーーー!!!」
男は誰を狙うでもなく撃ち続けている。
「ダダダダダダダダッ!!!!!」
一人の少女がその音に合わせて弾ける。
- 83 名前:詩音 投稿日:2002年01月15日(火)04時31分12秒
- ちょっと中途半端なトコまでですが、更新しました。
どうでしょう?一応こんな感じで第二章スタートです…。
読者様が『えっ?!』ってなるような、結構意外な展開だったと思います。
話は変わり過ぎですが、一章にもちゃんと意味はあるので…。
心温まる一章とは違い、二章は心痛む内容かもしれません。
それでもどうかよろしくお願いします。
- 84 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年01月15日(火)08時08分20秒
- むぅ
凄い展開になりそうだ
- 85 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月15日(火)18時29分31秒
- すげぇ展開だ!かなり先が気になります
誰が弾けたんだ???
中澤は大丈夫なのかな?
保田・…
これからもがんばってください。
- 86 名前:詩音 投稿日:2002年01月16日(水)02時04分40秒
- レスありがとうございます。
この先の話が、ご期待に添えられれば嬉しいです。
では、更新です。
- 87 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月16日(水)02時05分44秒
- 「キャーーー!か、加護ちゃん!?」
加護の手を引いて逃げようとしていた安倍が叫ぶ。と同時に加護の体は崩れる。
「ダダダダダダダダッ!!!!!」
そんな加護に気を取られた辻が転ぶ。
「辻、危ない!!!」「ダダダダダダダダッ!!!!!」
「いいらさん!!!」
辻をかばおうとして飛び込んだ飯田の背中から鮮血が飛ぶ。
それでもなお飯田は辻に覆い被さる形で辻を抱きしめる。
「ダダダダダダダダッ!!!!!」
飯田に体越しに銃弾の衝撃を感じる辻。
「いいらさん!いいらさん!やだ、やだ、いいらさ〜ん!」
辻の顔に生温かい液体が飛ぶ。
さらに衝撃が続く…。
- 88 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月16日(水)02時06分22秒
- 一方、吉澤は石川と共に安倍達と反対の方向に逃げる。
それを追う様にして逃げる高橋、紺野、新垣、小川。
「ダダダダダダダダッ!!!!!」
しかし、高橋の後ろに位置した紺野の体を銃弾が捕らえる。
紺野が倒れた事により、その後についていた新垣の足が止まる。
「ダダダダダダダダッ!!!!!」
音に反応し、すかさず身を低くする新垣。
だが、弾丸をよける事は許されなかった。
顔面に銃弾を浴び、その場に崩れ落ちる。
二人の姿を目撃した小川は、糸の切れた人形の様にその場にペタリと座り込む。
口を開いたまま、変わり果てた二人の姿を見つめる小川。
その時、加護を引きずりセットの陰に逃げ込みながら、安倍は叫ぶ!
「小川!逃げてぇ〜!!!」
しかし、小川は何の反応もしない。すでに意識はどこかへ飛んでしまっている。
男はさらに撃ち続ける。
- 89 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月16日(水)02時07分48秒
- 小川の腹部に数発の弾が当たる。そのまま小川は倒れこむ。
またその一方で、辻は叫ぶ。
「い、いいらさぁ〜ん!」
「つ、つ…じ、あんた…は、つよいこ…だも、んね…。が、が、んばん…な。だ、だ…ひ、すき……、だよ…。だだ、だいじょ…ぶ。あ、あんた…は、あた、しが、まもって……。」飯田は力を振り絞る様に話す。
それと少し離れた所で、下半身の動かない中澤を引っ張る後藤と矢口。
「ウチのことはええから、はよ二人とも逃げて!」
「ダダダダダダダダッ!!!!!」
後藤の右腕に激痛が走る。それでも中澤を引っ張る後藤。
「ごっちん!ウチのことはええから!」
- 90 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月16日(水)02時08分33秒
- 『ダメ!裕ちゃんは絶対に死なせない!』
いままでの後藤からは想像がつかない姿に言葉を失う中澤。
何とか物陰に入ったと思った瞬間、「ダダダダダダダダッ!!!!!」
後藤がその場に倒れこむ。「ごっちん!!!」そう叫んだのと同じくして再び中澤の足に銃弾が撃ち込まれる。
しかし、そんな足のことなど気にせず叫ぶ。
「ごっちん!ごっちん!おい!後藤!しっかりせぇ!」
「ごとうっ!」すでに矢口は泣き叫んでいる。
「ダダダダダダダダッ!!!!!」
そんな悲痛の叫びも打ち消される。
- 91 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月16日(水)02時09分12秒
- 吉澤は石川と高橋と共に奇跡的にセットの裏に逃げることができた。
しかし、男の目的は当然、石川梨華一人であった。
あえて当たらない様にしていたのかもしれない。
全員が一通り散らばったところで銃声は止んだ。
「加護ちゃん!いやっ、加護ちゃん!」
ぐったりとした加護の体を抱え、泣き叫ぶ安倍。
「あ、あべさん…、あ、あついよ、く、くるしいよぉ…。」
声にならない声を出す加護。
「しっかりして、大丈夫だから、大丈夫だから…。」
そう安倍は加護を励ます。
しかし同時に自分に言い聞かせるかのようでもあった。
いつもは愛くるしいその顔も、いまは苦痛と鮮血によって歪んでいた。
安倍にはただ、加護を抱きしめることしかできなかった。
- 92 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月16日(水)02時09分56秒
- しかし男は、そんな二人には目もくれず歩き出す。
「りかぁ〜、どこだよぉ〜、どこに隠れたんだい?」
その声を聞いて固まる石川。
「梨華ちゃんしっかり!逃げるよ。」
吉澤に強引に奥へと引っ張られる。高橋はだまってついて行く。
「ごっちん!あかん、あかんで、死んだら許さへんで!」
そんな中澤の声も届かず、後藤の呼吸は次第に弱くなっていく。
「いやぁ〜〜〜〜〜!!!!!」
そう叫んだかと思うと、突然矢口が立ち上がった。
「ふざけないでよ!何考えてんの?」
「なにしてんねん!矢口、座っとき!」
男は矢口に気づき振り返る。
- 93 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月16日(水)02時12分00秒
- 「気持ち悪いのよ!変態!あんたなんか、あんたなんか…。」
男に飛び掛ろうとする矢口に安倍が気づく。
「だめっ、矢口!だめぇ〜〜〜〜〜!!!」
「アホか!何考えてんねん!こっち戻れ!」
安倍、中澤の声などもう矢口には届いていなかった。
「私の、私達の大切な『モーニング娘。』に何て事……。あんたなんか、私が殺してやる!!!」
そう言いながら向かってくる矢口に、男は驚き、マシンガンを構える。
「うるさい!僕にはりかだけいればいいんだ!チビは来るなっ!」
しかし矢口はさらに踏み込んでしまった。
二人が全て見えていた安倍には、その行動の危険さがわかった。
「だめっ!矢口、逃げて〜!いや〜〜〜〜!!!」
- 94 名前:詩音 投稿日:2002年01月16日(水)02時21分20秒
- と、こんな感じで本日の更新は終了です。
だんだん痛い内容になってきました。(;^_^A)
- 95 名前:85 投稿日:2002年01月16日(水)03時52分54秒
- 更新お疲れ様です!
本当に凄いですね。裕ちゃん生きててよかったけど…
ごっちん!矢口!加護!…・皆どうなるんでしょ?
すごくたのしみです。
- 96 名前:69 投稿日:2002年01月16日(水)04時41分53秒
- 自分の予想以上の展開に正直ビビってます。(w
ここは、みんなの為に石川に人身御供になってもらう…
- 97 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年01月16日(水)12時32分39秒
- 言葉が出ない・・・
壮絶だ
- 98 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月17日(木)00時12分18秒
- 最終章…I WISH
ここまで頑張ってついていきます。
最後に残るのは希望なんですよね?
- 99 名前:詩音 投稿日:2002年01月17日(木)04時51分58秒
- レス大変ありがとうございます。
>85の読者様
楽しみにして頂いていると思うと、とても励みになります。
>69の読者様
「なんだ…。そんな展開か…。」にならなくてよかったです。
>むぁまぁさん
そう言ってもらえるのは非常に嬉しいです。
>98の読者様
章のタイトルが何を意味しているかは、その時までお楽しみです。
ご期待に添えられる結末になるかは分かりませんが、どうか最後までお付き合いください。
それでは更新です。
- 100 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月17日(木)04時53分36秒
- 「ダダダダダダダダッ!!!!!」
安倍の悲鳴を最後まで許すことなく、矢口の小さな体に弾丸を放つ音がする。
音が止み、矢口は静かに倒れこんだ。
「いやっ、もういや〜〜〜〜〜〜!!!」
安倍の声に加護が反応する。
「あ、あべさん?ど、どうして泣いてる、んでとぅかぁ?あ、あべさんは、え、笑顔で…しょ?…。」
すでに意識が朦朧として、現在の状況がわからなくなっているのか、場違いなことを言う加護は、なぜか笑っていた。、
「か、加護ちゃん……?」
安倍は笑うことができなかった。ただ、ただ泣いていた。
一方、中澤は後藤を抱えたまま、
「矢口!なんでやねん!なんでこんな事になってもーたんや?」
泣き続けていた。
- 101 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月17日(木)04時54分24秒
- 動かなくなった矢口を見て安心したその男は、再び石川を探し出した。
「りかぁ〜、どこだよ〜。」
奥に逃げ込んだ吉澤と石川、高橋の三人は、息を潜めて隠れていた。
そして、泣いていた。
「ごめんなさい。矢口さん。あたし、あたし…。」
「梨華ちゃん、静かに!」
そう冷静を装う吉澤もまた、震えていた。
男は三人の隠れている所の前で止まった。
「りかぁ〜、隠れてもりかの匂いでわかるんだよ〜。」
そう言って男は手を伸ばした。しかし男の手は高橋の腕をつかんでいた。
そしておもむろに引っ張り出した。
「ギャーーー!!!」高橋は叫ぶ。
「なんだよ…。おまえはいらないんだよ。」
そう言って男は高橋に銃を向ける。
「い、いや、いや〜〜〜!!!」
- 102 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月17日(木)04時54分58秒
- その時であった。
意を決した吉澤が「くそ!」と叫び、そこから男に蹴りかかった。
男は見えないところからの蹴りに反応できず、モロに急所にくらってしまった。
『いまだっ!』そう思った吉澤は飛び出し、すばやくマシンガンにつかみかかった。
「ぐぅ〜〜〜、なにすんだよぉ〜〜〜。」
もがく男に、吉澤はさらに何発も蹴りをいれた。
その時、
「ダダダダダダダダッ!!!!!」
「キャ〜〜〜!」叫ぶ石川。
しかしさらに、
「ダダダダダダダダッ!!!!!」
- 103 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月17日(木)04時55分29秒
- ……しかし吉澤は無事だった。最初につかんでからマシンガンをずっと離さなかった。そして常にあさっての方向に向けていた。そのため弾丸は、吉澤に当たることなく発射されたのである。しかし、まだ助かったわけではない。再びもみあいになる。そしてまた、
「ダダダダダダダダッ!!!!!」
当たらない。しかし、それと同時に吉澤のみぞおちに男の蹴りが入った。
「うっ」
吉澤がひるんだ隙に、マシンガンが吉澤の方に向いた。
「ダダダダダダダダッ!!!!!」
石川が叫ぶ。
「よ、よっすぃ〜!!!」
男の顔面を吉澤の血が染める…。
- 104 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月17日(木)04時56分17秒
- セットの裏から聞こえる銃声や、石川達の叫び声。
安倍は見えない所で起きている事が、不安で仕方なかった。
『よっすぃ〜…。』安倍は祈る事しか出来なかった。
ふと目線を下ろすと、加護は先程とは一変して、出血のあまり顔面蒼白になっていた。
加護の好きなピンク色の衣装は、今や真っ赤に染まり、小さな体は苦しそうに呼吸だけを繰り返していた。
- 105 名前:詩音 投稿日:2002年01月17日(木)05時09分07秒
- 更新しました。
やや少なめですが、今日の更新はここまでで…。
ちょっと私用も立て込んでいるので、もしかすると来週いっぱいぐらいまでの間、ペースが遅くなるやもしれません。
その時はどうかご理解下さい。
- 106 名前:85 投稿日:2002年01月17日(木)07時00分17秒
- 更新おつかれさまです。
壮絶ですね。矢口に後藤によっしーに加護に飯田・・
まだ生きてるの?ってドキドキしてます。
詩音さんペースでがんばって下さい。
楽しみに待ってます。
- 107 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年01月17日(木)12時23分10秒
- なんか泣けてきちまった・・・
なんか変な日本語になってしまいましたね
マイペースで行っておくんなまし
- 108 名前:詩音 投稿日:2002年01月18日(金)01時38分54秒
- 心優しいレスありがとうございます。
どうしてもって時は、お言葉に甘えさせていただきます。
それでは更新です。
- 109 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月18日(金)01時39分49秒
- 反射的に吉澤は上体をひねって、弾の軌道を避けていた。しかし顔をかすめた弾丸が頬を切っていた。滴り落ちるその血に驚いた男が、一瞬力を抜いた隙に吉澤はマシンガンを取り上げた。そしてそれを男の顔めがけて撃った…。
「ウィーーーーーンン、ウィーーーン」
弾切れだった…。
しかしそれは、十分効果的であった。
撃たれると思った男は、あまりの恐怖に気絶していた。
- 110 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月18日(金)01時40分40秒
- そうこうする内に、警察や救急隊が到着した。
「おせーよ…。」吉澤はつぶやいた。
吉澤が石川と高橋を連れて表に出ると、すでに救急隊が人を運び出していた。
警察に「被疑者は?」と聞かれ、アゴで『裏。』と合図すると、メンバーの所へ向かった。保田、新垣、紺野の三人はすでに運び出されていた。
中澤は「ウチの事はいいから!」と言って、後藤を先に行かせていた。
安倍は加護を引き渡すと、すぐに飯田と辻の元へ駆け寄り「かおり!辻!」と叫んでいた。
中澤はさらに「矢口を先に…。」と言っていた。
吉澤が安倍と飯田の元に行くと、飯田はすでに手遅れだとわかった。
辻を抱きしめたままの形で、完全に停止していた。
安倍も気づいていたらしく、飯田の手を引っ張り、辻を出そうとしている。
救急隊も飯田が辻を離さないので困り果てた様子だった。
- 111 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月18日(金)01時41分22秒
- 『飯田さん、そこまでして…。』吉澤は心の中でそう思った。
すると安倍が涙を流しながら、「かおり、もう終わったんだよ。お疲れ様。後はなっちが引き受けるから、もう辻離していいんだよ。」と言った。すると飯田の手は力無くだらんと垂れ、安倍は辻を引きずり出し抱きしめた。
辻の服は真っ赤に染まっていた。顔も血だらけだった。
誰もが辻もダメかと思ったとき、辻が声も出さずに泣き出した…。
体中の血は飯田のものであった。よほどショックだったらしく、辻はまったく動けずに泣いていた。
そして辻も連れていかれ、飯田と小川が連れていかれた。
安倍は辻についていった。
そしてやっと中澤が運ばれ、高橋が連れて行かれた。
そして最後に吉澤と石川が連れて行かれた。
男は警察により連行された。
- 112 名前:詩音 投稿日:2002年01月18日(金)01時45分27秒
- 一応更新です。
ほんのちょこっとで申し訳ないんですが、区切りも良いので、とりあえず今日はこの辺でご勘弁ください。(;^_^)
次は多めの更新をしたいと思っているので…。
- 113 名前:85 投稿日:2002年01月18日(金)02時24分24秒
- 更新お疲れ様ですー!!
コレから先どうなるのかまったく予測がつきません。
次の更新楽しみです。
がんばってください!
- 114 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年01月18日(金)12時41分54秒
- ホントに言葉にならないっすよ
どうなるのですかぁ? って明るく聞いてみたりして・・・
- 115 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月18日(金)23時57分54秒
- おおっと、泣いちまった。
飯田の件は胸にぐっときました。
- 116 名前:詩音 投稿日:2002年01月19日(土)06時15分13秒
- レスありがとうございます。
>85の読者様
予測がつかないようであれば、こちらとしては幸いです。
>むぁまぁさん
どうなる?う〜ん…どうなるんでしょう…?
まぁ、読者様を飽きさせないような展開になればいいのですが…。
>115の読者様
僕も書いてて、そんな飯田にぐっときました…。
ではでは更新です。
- 117 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月19日(土)06時16分08秒
- 大事件を物語る様に、街の中を何台もの救急車が走る。
矢口を乗せた救急車の中では、懸命に止血作業や応急手当てが行なわれていた。
すでに自分の力では呼吸さえ困難な状態になっている矢口は、確実に死へと向かっていた。
矢口は薄れ行く意識の中でこんな事を思っていた。
『す、好きだよ…。みんな、みんなみんな大切な家族…。私は、「モーニング娘。」が…大好き……。』
救急員が叫ぶ。
「血圧低下!心搏数が下がっています!」
矢口の目からは一筋の涙が流れた。
それは、体から溢れる液体とは対照的に、曇りのない、透き通った美しい雫だった。
直後、矢口の心臓は停止した。
救急員は必死の救命作業を続けたが、その後二度と矢口が息を吹き返す事はなかった…。
- 118 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月19日(土)06時16分46秒
- 病院に到着して三十分ほど経った頃、奇跡的に無傷だった安倍、石川が軽い検査を済ませて、吉澤を待っていた。
「いや〜、お待たせ…。」
「よっすぃ〜大丈夫?」石川が聞く。
「うん。ちょっと切っただけだよ。少し頬っぺた腫れちゃったけどね。」
そう言って吉澤は、安倍に聞いた。
「安倍さん、他のみんなは?」
安倍は吉澤に視線を移すことなく答える。
「圭ちゃんとかおりと新垣は、やっぱりあの時点でもう…。矢口と紺野は救急車の中で…。高橋は検査終わって帰った。他のみんなはまだ手術終わらないみたい。」
「ののは?手術?」
「ううん。ののはちょっと…。」石川が濁す。
「体の方はたいした事ないんだけど、心の方がね…。今は眠ってると思う…。」
安倍が付け加える。
「そう…。」そう言って吉澤は石川の隣に腰をかけた。
- 119 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月19日(土)06時17分17秒
- それから一時間ほど過ぎたであろう。石川が沈黙を破った。
「みんな大丈夫かな?」
「中澤さんは大丈夫だと思うけど、ごっちんと加護と小川がね…。」吉澤が答える。
続けて安倍が「平気だよ。だって、加護ちゃん最後笑ってたもん。『あべさん、笑顔〜』って。そこまでの元気があったもん、きっと大丈夫。小川も…。ごっちんだって、きっといつもみたいに『ふはぁ〜』って言って出てくるよ。……きっと……。」
安倍が涙を隠しながら言う。
『きっと…か…。』吉澤は思った。
- 120 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月19日(土)06時17分54秒
- それからさらに数時間が経って、中澤の手術が終わったとの連絡が入った。
三人は急いで手術室の前に移動する。
するとすぐに、中澤が出てきた。
麻酔が効いているのか、中澤は眠ったままであったが、三人には中澤が無事であることが確認できた。
「とりあえず、よかったね…。」安倍が石川に言う。
中澤はそのまま病室に連れていかれた。
- 121 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月19日(土)06時18分27秒
- そして三人は、ひとまず辻の様子を見に行く事にした。
「辻ちゃんに裕ちゃんの無事を伝えないとね。」
安倍はそう言うと辻の病室に向かった。
『ちゃんと伝えられるかな…。』安倍はそう思った。安倍だけは辻が、今どんな状態か知っていたからだ。
そして辻の病室の前につく。
扉の前で安倍が振り返り二人に告げる。
「本当は会わせない方がいいかもしれないって思ってたけど、二人もちゃんと知っといた方がいいもんね。辻ちゃん見ても驚かないでね。」
安倍はそう言うと、ノックをして扉を開けた。
そこには、辻の両親と、ベッドの上でピクリともせずに、座っている辻がいた。
三人は両親に挨拶をするとベッドの横に腰をかけた。
安倍が聞く。
「辻ちゃん、どう?具合は?」
辻は相変わらずピクリともしない。何かに取り付かれたかのように、遠くを見ている。
- 122 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月19日(土)06時18分57秒
- 『聞こえてるのかしら?』
石川は思った。
安倍は気にせず、続ける。
「裕ちゃんねぇ〜。無事手術終わったよ。まだ麻酔が効いてて眠ってるけど、目が覚めたら一緒に…。」
安倍が最後まで話す前に、辻の様子がおかしくなった。
突然ガタガタと震え始めたのだ。涙を流しながら…。
「の、のの?!」
石川が驚きを隠せない様子で言う。
辻の震えは止まることなく、むしろ強くなっていく。すでにベッドを揺らすほどの震えに変わっている。それと共に大量の冷や汗。
「希美!」そう言って母親が、辻を押さえ付けるように抱きしめる。
辻はひざを抱えた状態で震えつづけている。その瞳からは涙が流れつづけ、呼吸も荒くなっている。
- 123 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月19日(土)06時19分49秒
- 「辻ちゃん…。」
安倍は悲しそうに辻を見つめ、泣いていた。
吉澤と石川は、あまりの事に唖然としている。
「希美!落ち着け。しっかりしろ!」
父親も辻の震えを止めようと、押さえ付けている。
母親はナースコールをする。
「すいません!希美が……。」
すぐに駈けつけてきた医者と看護婦が辻に注射を打つ。
しばらくすると辻は落ち着き出した。急に力が抜けた様に手がだらんとなり、母に支えられながら、横になった。しかし、変わらず泣いていた…。
「どうしてこんな…。」
吉澤が言った。
安倍が答える。
「最初はね、救急車の中で。その時も注射を打ってもらって…。やっぱりよっぽどショックが大きかったらしく、心にひどい傷を負っちゃったみたい…。」
- 124 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月19日(土)06時20分21秒
- 「コレで5度目なんですよ。最初の薬の効果が切れてから何度も…。ひどい時は吐いたりもしちゃって…。今は精神安定剤を打ってもらってるんだけど、あんまり効果が無くて…。発作が起きるたびに打ってもらってるの。この子注射嫌いなのに…。」
辻の母が付け足す。
「そんな…。」
石川が言う。
さらに母が言う。
「精神的なものだからね。体は元気だから大丈夫よ。心配しないでね。」
三人には返す言葉がなかった。こんな状態の辻を、心配するなと言われても無理な話であった。
そして数十分後、辻の涙が止まったのを見て、とりあえず一安心した三人は、両親に挨拶をして部屋を出ていった。
- 125 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月19日(土)06時20分54秒
- その時ちょうど小川の手術は終了していた。三人はすぐに駆けつけた。
しかしすでに小川は集中治療室に運ばれ、面会謝絶の状態だった。
「先生。小川は?」安倍が聞く。
医師は答える。「手は尽くしました。しかしまだ子供ですし、いや、子供なのに日々の過労がたたって、抵抗力が大変低い危険な状態です。油断は出来ません…。」
話を聞いて安倍はショックを受けた。『モーニング娘。』での頑張りが、こういう形で返って来た事に…。
- 126 名前:詩音 投稿日:2002年01月19日(土)06時23分58秒
- 更新致しました。
- 127 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年01月19日(土)09時00分14秒
- 今日も泣いちゃいました
何故、こんなことに?って物語にのめり込んで画面に向かって心の中で問い掛けている
自分がいる
続き楽しみにしております
- 128 名前:85 投稿日:2002年01月20日(日)15時00分39秒
- お疲れサマです!
ほんとうにこれからどうなるんでしょ??
彼女が無事だったのに安心…
しかし他のメンバーが…
続き期待してます。
- 129 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月21日(月)03時17分26秒
- 題名に騙されて来ました(w
まさかこんな展開になるとは……という感じです。
処女作ということですが、引き込まれる内容で(・∀・)イイ!です。
1行が長くなるところは改行した方が読みやすいかなと思います。
(これは、個人的な趣味なのでそのままでもいいです。)
- 130 名前:詩音 投稿日:2002年01月21日(月)04時17分17秒
- レスありがとうございます。
昨日は無断で更新できず、申し訳ないです…。
>むぁまぁさん
いつもいつも励みになるレス、ありがとうございます。
のめりこんで頂けるとは、嬉しい限りです。
>85の読者様
もし、推しのメンバーが無事なら幸いです…。
勝手な扱いをお許し下さい。m(__)m
>129の読者様
お褒め頂き、非常に嬉しいです。
>1行が長くなるところは改行した方が読みやすいかなと思います。
ご指導ありがとうございます。
確かに読みづらいかもしれません…。勉強になりました。
これからはよく考えて、出来る限り実践していきたいと思います。m(__)m
では、更新です。
- 131 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月21日(月)04時18分20秒
- その後三人は、中澤の病室にいた。
そして三人は、眠っている中澤を囲む様にして、休んでいた。
いや、それは休んでいたのではなく、それぞれが突然の出来事を整理していたのかもしれない。
そんな中、急に石川が泣き出した。
今更『急にどうしたの?』という状況でもなかったが、安倍は聞いた「梨華ちゃん、どうかした?」
石川は答える。「私がいけないんです。あの男の人は私だけが目的だったのに、他のみんなまで巻き込んじゃって…。」
『おいおいこいつは何言ってんだ?』と吉澤は思った。
しかしそれを言葉にする前に安倍が言った。
「何言ってるの?そんなの関係無いべさ!……関係無いよ!別にあんな奴の責任を梨華ちゃんが背負うこと無いよ。たまたま梨華ちゃんだっただけで、誰が目的でも変わらないよ。」
- 132 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月21日(月)04時18分58秒
- 「でも、あの人がもし、中澤さんが好きだったら、中澤さんはこんな目に会わなかった。あたしじゃない人が目的だったら、その人は助かったのに…。」
それを聞いて吉澤が言う。
「じゃあ、あの男が中澤さんが目的だったとして、中澤さんは助かる。でも結局、それでも保田さんは殺される。その時は中澤さんが悪いの?梨華ちゃんの言ってる事はそういう事だよ?」
「そうだよ。誰々のファンだったから誰々のせいとかじゃないよ。それにあの目は、梨華ちゃんを差し出したからって、おとなしくなる目じゃなかったし…。」
安倍が付け足す。
その時、ドアがちょこっとノックされた。
「はい…。」安倍が返事をすると、ドアが開き一人の女が入ってきた。
そしてその女は一言。「まぁ、あえて言うなら石川の魅力のせいだね。美しさを恨みなさい。」そう冗談交じりで言った。
- 133 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月21日(月)04時19分38秒
- 続けて、「でも、あたしが知る限りでは、石川のファンが特別ヤバイって事でもないから、なっちの言うように、たまたま石川ファンだっただけだろうね。」
安倍が目を丸くして言う。
「さ、さやか?!」
二人も続けて「市井さん?!」
市井は軽い感じで言う。
「オッス。久しぶり。」
「どうして?」
「たいせーさんのところに電話があってさ…。それで…。」
安倍の問いに答えながら、中澤の横に座り、その中澤の手を握る。
そして「一通り聞いたよ。何があって、今どういう状況か…。」
市井の気配を感じたのか、中澤が目を覚ました。
「…っんっ、んん〜……さ、さやか?!」
「ヤッホー、裕ちゃん。」またも市井は軽く答える。
- 134 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月21日(月)04時20分15秒
- 「なんでさやかが…?どうしてここに?」
「こんな状況なら普通来るよ…。」
中澤は、そんな市井の言葉を聞いて思い出したのか、周りを見渡し、強い口調で言った。
「せ、せや!み、みんなはどうなってるんや?」
興奮気味の中澤に、安倍が静かに答える。
「無事なのはウチらと高橋だけ…。ごっつぁんと加護ちゃんはまだ手術中…。小川は手術は終わったけど、絶対安静の状態…。辻ちゃんは精神的にちょっと…。体は大丈夫なんだけど、言葉も話せなくて…。それで…、…後のみんなは、…もう……。」
中澤は言う。
「な、なんやて?他のみんなって…。や、矢口は…?まだあの時矢口は…。」
安倍は首を横に振り、答える。
「ううん。病院に着く前に…。」
- 135 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月21日(月)04時20分49秒
- 中澤は顔の前で手を合わせ、目をつむると言った。
「どうしてこんな事に…。なんであいつらがそんな目に遭わなあかんねや…。ウチらが何をしたって言うねん……。」
「裕ちゃん…。」
市井は中澤を見つめながら言った。
すると安倍が、俯いたまま一言呟く。
「夢なら…、早く覚めて欲しい…。こんな悪夢…。」
すると全員が言葉を失った。
今ここにいる者みんな、同じ気持ちに違いなかった。
しばらくの沈黙が続いた後、市井が言いづらそうに言った。
「あのね…、彩っぺと明日香も来てるんだ。」
「うそ?!」安倍と中澤が声を合わせる。
「失礼しま〜す。」福田と石黒という懐かしい顔。
- 136 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月21日(月)04時21分19秒
- 吉澤は石川にひじで合図をして立ち上がると、「じゃあ、私達ちょっとごっちんの様子見てきますんで。」と言って二人に挨拶をすると、石川と共に部屋を出ていった。
こうして久々の再会を果たした5人だったが、こんな状況では楽しめるはずもなかった。
中澤や安倍だけではない、市井や石黒、福田にとっても、失ったものは大きく、暗い時間を過ごすだけだった。
突然中澤が言う。「あんな〜、紗耶香、ごっちんなんやけどな。」
「なに?」
「普段はあんまりウチになついてこんくせに、命がけでウチを助けようとしてたんや。なんかあまりにも意外でなぁ…。なんでなんやろ?」
- 137 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月21日(月)04時22分39秒
- 「そう?後藤何にも言ってなかった?昔ね、後藤があたしに言ったんだ。『私は娘。で市井ちゃんを一番尊敬してる。』って。その時にあたしが言ったの。『あたしなんか全然ダメだよ。裕ちゃんの足元にも及ばない。あたしなんかよりずっと頼りになる。何か大変な事が起きても、裕ちゃんが何とかしてくれる。助けてくれる。とにかくスゴイ人だって。誰よりも尊敬できる。』って。」
「いや、そんなウチは全然…。」
- 138 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月21日(月)04時23分19秒
- そんな中澤の言葉を切る様に、市井は言う。
「そしたらその時は後藤の奴『そ〜なんだ。でもあたしには市井ちゃんだよ。』なんて言ってたんだけど、赤組やってたころかな?『市井ちゃんの言ってた事が最近わかるようになった。』って、私が辞めた後も電話で、『市井ちゃんの言う通り、裕ちゃんはスゴイ。頼りになるし、誰よりも尊敬できる。でも、年が離れてるせいか、あんまり素直になれないし、甘えられない。』なんて言ってて、裕ちゃんの脱退が決まった時なんて『市井ちゃん、どうしよー。裕ちゃんがいなくなったら、後藤ヤバイよ〜。他のみんなが頼りにならないわけじゃないけど、やっぱり裕ちゃんがいないとぉ…。』って泣きついてきたんだよ。」
- 139 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月21日(月)04時24分11秒
- 市井はそこで一息つくと、中澤から視線をはずし、続けた。
「それは誰もが思ってる事なのにさ。『しかたないじゃん。』って言ったら、『まだ、お世話になった分お礼できてない!』って。そんなのあたしだって返しきれてないよ。まったく…。とにかく、後藤はなんだカンダ言って、裕ちゃんの事大好きなはずだよ。何かの番組で言われなかった?」
『確かに言われたなぁ。…でもな、ごっちん…お礼なんてこっちがしたいぐらいや…。十分返してもらってたで…。しかもでっかい借りまで出来てもーた…。』中澤がそう思ったとき、市井の目から涙がこぼれた。
「紗耶香?どないしたん?」
「あれ?どうしたんだろう?勝手に…ゴミでも入ったかな?」
市井自身、不思議な涙だった。自分の意思とは関係無く流れた涙だった。
そう、まるでこの涙は自分のものではないかのように。
『まさかこれはあいつの…?』
- 140 名前:詩音 投稿日:2002年01月21日(月)04時27分21秒
- 更新致しました。
- 141 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月21日(月)07時35分52秒
- 期待を良い意味で裏切る展開!びっくりしました。期待してます。
- 142 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年01月21日(月)08時04分30秒
- 再会・・・
しかし、そこには飯田も保田もそして矢口の姿はもうない
一推しの娘は亡くなってしまいましたが、彼女らしい最期だったのがせめてもの救いですね
- 143 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月21日(月)08時15分20秒
- 「とてつもない展開」とか「衝撃の超展開が起きてしまう」とか何度か先に書かれて
あ〜あ…と思ったんだけど、本当にとてつもない展開だった。今後も楽しみです。
卒業したメンバーの雰囲気が気になります。
- 144 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月21日(月)09時12分14秒
- バトロワもののように思えてきて仕方ない・・・泣く・・・
斬新なストーリーなので続きも期待です
- 145 名前:詩音 投稿日:2002年01月21日(月)09時18分32秒
- レスありがとうございます。
>141の読者様
ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
>むぁまぁさん
>一推しの娘は亡くなってしまいましたが、彼女らしい最期だったのがせめてもの救いですね
大変申し訳ない…。m(__)m
ちなみにどなただったんでしょう?
>143の読者様
>「とてつもない展開」とか「衝撃の超展開が起きてしまう」とか何度か先に書かれて
>あ〜あ…と思った
それもそうですね…。(;^_^)
浅はかでした…。
どうでしょう?そこの部分の削除依頼、出した方が良いでしょうか…?
とりあえずレスだけ…。更新は夜にでも致しますので…。
- 146 名前:143 投稿日:2002年01月21日(月)11時58分37秒
- 違う違う。こういう前フリすると大抵醒めるというか、たとえ衝撃だったとしても
衝撃的じゃなくなるところがあるんだけど、この話はそれを上回ったということで…
要はすごいって思ってるんです。無視してください。
- 147 名前:しーちゃん 投稿日:2002年01月21日(月)15時05分41秒
- 作者さんお願いします。ごっちん死なせないで下さい。
無理だったらいいのですが・・・なんかみんな切ない
でもすごく引き込まれる作品です。がんばって下さい!
- 148 名前:85 投稿日:2002年01月22日(火)01時47分12秒
- 推しのメンバーは生きていました。よかったよかった。
もし、亡くなっていても読みつづけていますけどね。
いやぁ、これからどうなっていくのかが本当にわからなく、
すごくドキドキしています。
皆でてきましたね。展開が楽しみです。
がんばってください。
- 149 名前:詩音 投稿日:2002年01月22日(火)06時40分36秒
- 皆様、本当にレスありがとうございます。
更新遅れて申し訳ありません。
しかし、僕なんかが作った話が、皆様に受け入れられているかと思うと、非常に嬉しいです。
ただ、如何せん素人なもので、期待に応えられるような展開が出来るかわかりませんが、プレッシャーに負けず頑張りたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします。
それでは更新です。
- 150 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月22日(火)06時41分30秒
- 「後藤…?」市井がそうつぶやいた時だった。
一人の看護婦がドアを開け言った。
「ご、後藤さんが……。」
「後藤!」そう叫んで市井は、部屋を飛び出していった。
安倍がそれを追いかけた。
部屋に残った中澤は、静かに目を閉じて祈るほか無かった。
福田と石黒も、そんな中澤を見ていることしかできない自分たちに腹が立った。
市井は走った。深夜の病院に場違いなほどの足音が響く。
市井が手術室についた時には、手術室のドアの前に立ちすくむ吉澤と、イスに腰掛けたまま泣いている石川の姿があった。
「後藤は…?」市井がそうたずねると、石川は首を横に振った。
- 151 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月22日(火)06時42分10秒
- 市井はその意味を理解できるはずなのだが、したくなかった。
「えっ…?どういう意味…?そ、そんなわけないよ!あいつは…後藤は、あたしが作った歌を歌うって約束したんだよ。約束したんだよ!それを…あいつが破るわけないじゃん!あたしとの大切な約束を破るわけないじゃん!あたしはそんな破り方教えてないよ!ふざけた事言わないでよ!ねぇ、どういう意味?わかんないよ!」
そう言って石川の肩を掴み叫ぶ市井を、遅れてついた安倍が止めに入る。
「さやか!やめなよ!梨華ちゃんに当たってどうなるの?梨華ちゃんだってつらいんだよ!やめなよ!」
「信じない!絶対に信じない!あいつはちゃんと帰ってくる!帰ってくるもん!」
- 152 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月22日(火)06時42分58秒
- 石川の元を離れ、一人で泣き叫ぶ市井に向かって吉澤が言う。
「市井さん!ごっちんは…後藤真希は死んだんです!もうこの世にはいないんです!もう私達の所には帰ってこないんです!死んだんです!死んだんです!」
吉澤は何度も叫んだ。
市井は、その吉澤の叫びに負けたのか、その場に崩れ落ちて泣いた。石川も泣いていた。
『ごっつぁん…。』安倍も泣きながら市井を抱きしめていた。
こうして三時間が過ぎた…。加護の手術は未だ続いている。
- 153 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月22日(火)06時43分41秒
- すでにこの事件でニュースは持ちきりになり、世間は大騒ぎしていた。
「先ほど、あの大人気アイドルグループ『モーニング娘。』が収録中、マシンガンを持った男に襲われました!え〜現在確認できている情報では飯田圭織さん、保田圭さん、矢口真里さん、紺野あさ美さん、新垣里沙さん以上5名死亡。え〜中澤裕子さん、後藤真希さん、加護亜依さん、辻希美さん、小川麻琴さん以上5名重体…。え〜、犯人はすでに逮捕されています。えぇ〜、犯人はすでに逮捕されております。え〜繰り返します。先ほど…あっ今、新しい情報が入ってきました。え〜なんとあの後藤真希さんが死亡!先ほどまで懸命の手術が行われていました、後藤真希さんの死亡が今、発表されました。え〜これで死亡者は6名です。え〜たった今入りました情報によると、後藤真希さんが死亡!え〜死亡者は6人。繰り返します。…………」
- 154 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月22日(火)06時44分18秒
- 今だかつて無い大事件で、国民のほとんどがTVに釘付けになった。
それは皮肉にも、高視聴率ゲッターの異名を取る『モーニング娘。』にとっても新記録となり、また、歴代視聴率の記録をも、同時に更新するほどの快挙であった。
しかし、そんな外とは隔離された空間にいる娘。たちは、そんな事を知る由も無かった。
- 155 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月22日(火)06時45分41秒
- 再び中澤の部屋に戻った4人は、さらに沈んでいた。
加護の手術は、かなりの時間がかかっている。そうとう難しいのであろう。
先ほどの後藤の一件で、どうしても不安になる。
『あいぼんもダメかもしれない…。』
『もうメンバーが死ぬのはたくさんだ。もうコレ以上悲しみたくない。』
『加護ちゃん、今ごろ一人で寂しいかな?』
「なっち、ちょっと加護ちゃんのトコ行ってくる。」安倍はそう言って立ち上がった。
すると、誰かが話しだすのを待っていたかのように、石黒が「ゴメン。私も子供いるから帰らないと。」と言った。
すると中澤「せやな。今日はありがとう。久々に会えて嬉しかったで。すまんなぁ、色々と…。明日香ももう遅いから帰っとき。」
そう言うと吉澤に見送る様合図した。
「うん。またね。」福田もそう言って、部屋を出た。
- 156 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月22日(火)06時46分12秒
- 部屋の外で安倍は言った。
「福ちゃん、彩っぺ、今度、落ち着いたらゆっくり話そうね。今日は二人に会えて何か…ホッとしちゃったよ。」
安倍は何を言ったらいいかわからなかった。そんなに気が回らない状態であったのだろう。しかし、この言葉に嘘は無かった。懐かしい顔を見て、こんな状況でも一瞬だけ心が和んだのである。
石黒と福田の二人も、少し微笑んで頷いただけで、特に言葉はださなかった。
そして玄関近くのロビーまで送った吉澤は、その時に初めて外の状況がわかった。
- 157 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月22日(火)06時47分31秒
- 『そりゃそうだよな。こんだけの事があれば大騒ぎにもなるよな。』
そして言う。
「福田さん、石黒さん、すいません。この後、外でたら大変ですよね。もう芸能界からは離れていらっしゃるのに…。迷惑かけます。」
「いいって。いいって。」石黒は強気に答える。
「あと…、こんな事私が言うのもおかしいんですけど、お二人から受け継いだモーニング娘。を、こんな目に会わせてしまって…、なんというか…、すいません。」
福田は笑って、吉澤の肩を『ポン、ポン。』と叩くと、こう言った。
「がんばっていきま〜…」吉澤は一瞬驚いたが、すぐに微笑んで手を出した。すぐに石黒も手を出し、三人だけで叫んだ。
「しょい!!!」
- 158 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月22日(火)06時48分08秒
- そのころ安倍は、加護の手術室の前ににいた。
「加護ちゃんは、大丈夫だよね…。」
そう呟きながら安倍は、さっきの加護の言葉を思い出していた。
『あ、あべさんは、え、笑顔で…しょ?…。』
そして、「頑張れ、ちびっこ…。」
安倍はそう言うと、再び静かに祈りつづけた。
- 159 名前:詩音 投稿日:2002年01月22日(火)06時55分08秒
- 更新致しました。
最初の頃言いましたが、話は大方出来あがっているので、変更は効かないッス…(;^_^A
読者様の推しの娘。の勝手な扱い、謝っときます。すいません…m(__)m
- 160 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年01月22日(火)07時41分35秒
- >大変申し訳ない…。m(__)m
>ちなみにどなただったんでしょう?
気にしないで下され
いいらさんなのれす
ごっつぁんも逝ってしまったか・・・
ちびっこ二人はどうなるんでしょうね?
続き楽しみにしておりますので頑張って下さいね
- 161 名前:詩音 投稿日:2002年01月23日(水)03時20分46秒
- レスありがとうございます。
>むぁまぁさん
いいらさんでしたか…。最近どんどん綺麗になっていきますよね。
>彼女らしい最期だったのがせめてもの救いですね
僕の中のイメージで書いたので、そう言ってもらえると助かります。
それでは更新です。
- 162 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月23日(水)03時21分47秒
- 吉澤が部屋に戻ると、そこでは中澤、市井、石川の三人が、何を話す事も無くただうつむいていた。
「あっ、おかえり。すまんな吉澤。頼んでもーて。」
「いえ…。むしろ、ありがとうございます。」
『え?何でだろう?』
石川はそう思ったが、今はそんな事を聞く気分ではなかった。
その時、中澤が言った。
「よっすぃ〜、石川と一緒になっちの所へ行ってやってくれへん?あの子も、そして加護も寂しいやろうから…。」
「はい。行こう。梨華ちゃん。」
そう言って吉澤は、石川を連れて出ていった。
- 163 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月23日(水)03時22分32秒
- そして二人が出たのを確認して中澤は言う。
「さやか、こっちおいで。」
そう言って市井をベッドの上に座らせると、だまって市井を抱きしめた。
市井はたまらず泣き出した。
中澤は言う。
「さやか…、つらいけどウチは何もしけあげられへん。唯一、弱音を聞いてやることぐらいしかできん。それでもよければ姉さんに話してみい?」
- 164 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月23日(水)03時23分05秒
- 市井は泣きながら答える。
「あたしね、実は時々後藤が『市井ちゃん!市井ちゃん!』ってうるさいな〜。とか思った時もあったのね…。『ねぇ、市井ちゃん聞いてる?』とかさ…。『こっちも色々あるんだよ!』って言いたい時もあったのね。で、でも、もうそんなうるさい目にも逢えないかと思うと、あたし、あたし……。もう、何もかも嫌になっちゃう…。後藤に何もしてやれなかった…。守ってあげられなかった…。最後にそばにいる事さえできなかった…。こんなんじゃ教育係失格だよね…。今も泣いてるだけだし…。情けないよ…。でもわかってるんだけど、勝手に涙が出て来るんだよ…。後藤だけじゃない、かおりも矢口も圭ちゃんも…。一度に大切なもの失い過ぎだよ!」
- 165 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月23日(水)03時25分13秒
- 「それはみんな一緒やで。ウチもなっちも…。」
「わかってる、わかってるよ。でも、でも…あたしはその場にいなかった。苦しんでる後藤を、抱きしめてやる事さえできなかった。みんなに何もできなかった…。同じ思いを少しでもしてあげたかった…。本当に何もできなかった。」
中澤は市井から目線をはずし言う。
「いや、あんな思いはしない方がええ…。それに…あの場におっても、きっと何もしてあげられへんかったと思う。ウチだって何にもできんかった…。むしろ後藤に助けてもらったぐらいや…。ウチが足さえやられなければ…後藤も…。ウチがもっとしっかりしてればなぁ…。かおりは命がけで辻を守ったってのに…ウチは後藤に守られてもうた…。ウチの方が…なんぼ情けない奴やで…。」
「裕ちゃん…。」
- 166 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月23日(水)03時25分45秒
- 「でもな、ウチらは生きてんねん。情けない奴でも生きてんねん。ええか?だからせめて、精一杯生きて、強い女に、立派な女にならな。負けたらあかんで。ごっちんの分も頑張るんや。」
そう言って中澤は市井を抱きしめた…。
それから市井は、中澤の胸でしばらく泣いた後、「頑張ろうね。」と言って小さくガッツポーズをして帰っていった。
- 167 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月23日(水)03時26分21秒
- 手術室の前で加護を待つ三人。
手術が始まってどのくらいたったであろう。
重く閉ざされていた扉が開き、手術室の中から一人の医師がでてきた…。
「せ、せんせい!亜依は?亜依は?」加護の母が聞く。
「亜依は大丈夫なんですか?」加護の父も医師に詰め寄る。
医師は言う。
「とりあえずなんとか一命は取り留めました…。…ですが……。」
医師は言いづらそうに続ける。
「亜依さんは出血がひどかったため、脳の方に被害が出てしまいまして…、この後状態が落ち着いたとしても、二度と目覚める事は無いと思われます。お力になれなくて申し訳ございません。」
そう言うと深く頭を下げ、帰っていった。
- 168 名前:第二章 Last smiles 投稿日:2002年01月23日(水)03時28分28秒
- 「そんな…。植物状態って事…?」吉澤が呟いた。
「加護ちゃん……。」安倍は涙も出なかった。
命が助かった事は、正直嬉しかったが、二度とあの笑顔は返ってこない。
跳ね回って騒いだり、ものまねを披露したりする事もない。
もちろん、踊る事も。
そして歌う事も…。
『あ、あべさんは、え、笑顔で…しょ?…。』
安倍はまた、加護の言葉と笑顔を思い出していた。
そう、もう聞くことの出来ない言葉と、加護の最後の笑顔を…。
第二章 完
- 169 名前:詩音 投稿日:2002年01月23日(水)03時43分07秒
- 第二章終了です。
次回からは第3章…傷跡に入ります。
先に言っていた通り、私用が立て込んでいるので、三日ほど更新できないかもしれません。
ご了承下さい。
レスを返すぐらいは出来ると思うので、感想や質問、ご指導、文句などにはお答えしたいと思っています。
ちなみに…、話の中にメンバーが本当に言ったセリフや、歌の歌詞がちょこっとですが、入っているのに気付いて頂けましたかねぇ…?
これからもささやかだけど、出てくると思うので…。
ありきたりな事かもしれませんが、作者の小さなこだわりというか、ほんの遊び心という事で…。
まぁ、気にしないで下さい(;^_^)
どうか今後とも、よろしくお願い致します。
- 170 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年01月23日(水)07時44分22秒
- 加護ちゃん...
更新お疲れ様でした。
マターリと行きましょう。
あまりにのめりこんでしまったので気が付きませんでした。
読み返して探してみます。
- 171 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年01月23日(水)08時02分15秒
- この作品にBGMをつけるとすればCINDY BRAGGS(EN VOGUE)がカバーしたPEACE!(ザ☆ピース!)かな
- 172 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月24日(木)03時13分33秒
- 号泣。
残された子達は辛いですよね。
死ぬよりもいいとか、そんな問題でなく。
次の更新、楽しみにしてます。
- 173 名前:詩音 投稿日:2002年01月24日(木)05時18分32秒
- レスありがとうございます。
>むぁまぁさん
Tonya KellyのMEMORIES(Memory 青春の光)とかもいいかな?
もしくはJessica SimpsonのIRRESISTIBLE(溢れ…略
>172の読者様
そうですね。生き残った事が幸せとは、言えないのかもしれませんね。
暗い話ですが、お付き合いください。
もうしばらく更新の方はお待ちください。
- 174 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年01月25日(金)12時48分13秒
- >作者様
いずれもイイ曲ですよね
- 175 名前:詩音 投稿日:2002年01月28日(月)07時50分56秒
- お久しぶりです。
更新遅れて申し訳ありません。
今回からは『第3章…傷跡』に入ります。
では、さっそく更新です。
- 176 名前:第3章…傷跡 投稿日:2002年01月28日(月)07時51分52秒
- 第三章 傷跡
あの突然の悲劇から一週間ほどたった。
亡くなったメンバー達の告別式には、安倍、吉澤、石川、高橋の四人しか出席していなかった。いや、むしろできなかったのだ。
加護はもちろん、中澤、小川、辻さえも、未だ病院から出れる状態ではなかった。
しかし、安倍ら四人も体は無事とはいえ、とても冷静でいられる状況ではなかった。まるで作業のように淡々と葬儀や挨拶を済まし、四人ともたいして言葉を交わさないまま、お互いの帰路に着いた。
石川は突然思い出した様に、涙を流しては拭い、流しては拭いを繰り返していた。吉澤は黙って口を閉じ、涙をこらえる様にして一言だけ呟いた。「ちくしょう…。」安倍は何も言わずに病院に向かっていた。
- 177 名前:第3章…傷跡 投稿日:2002年01月28日(月)07時53分05秒
- すでに辻は専門の精神病院に入院しており、今やこの病院には中澤と加護、小川の三人だけとなっていた。
安倍はまず中澤の部屋に向かった。
安倍はノックして「裕ちゃん、なっちだけど入るよ。」そういって部屋に入った。「おう、お疲れさん。どうやった?」
「うん。なんか、よくわかんない…。悲しすぎて涙も出ないっていうか、現実を受け入れられないっていうか、まるで他人事の様だったかな。」
「そうか…。そうかもしれんなぁ…。」
「ところで裕ちゃんの方は調子どう?」
「ん〜ボチボチやな。まぁ、相変わらず下半身の感覚は無いけどな。」
「感覚…ないんだ…。…平気なの?」
「どーやろ?でも、神経関係もきっとボロボロやろし、仕方ないんちゃう?」
「…まさかこのまま…なんて事にならないよね?」
- 178 名前:第3章…傷跡 投稿日:2002年01月28日(月)07時53分37秒
- 「いや、正直アカンかもしれんなぁ…。一応ちゃんと検査して、直るんなら手術するつもりやけど。まぁ、どっちに転んでも生きてるだけで十分やからな。万が一、足が動かん様になっても、そんぐらいでピーピー言ってられへんよ。」
「裕ちゃんは強いんだね…。」
「まったく…沈んでてもしゃーないやろ。石川じゃあるまいし。ポジティブ、ポジティブやで。」
「そうだね…。ありがと。なんかお見舞いに来たのに、逆に励まされちゃったね。」
「そうやで。笑いの一つでも提供してってや。ホンマ…。」
「うん。ゴメン。じゃあ、あたしそろそろ…。まだ加護ちゃんと小川にも報告しなきゃいけないし…。」
「せやな。しっかりしいや。」
「うん。またね。」安倍はそう言って部屋を出た。
安倍が去った後中澤は思った。『なっち本当に大丈夫やろか…?笑顔一つも見せんで…。』
- 179 名前:第3章…傷跡 投稿日:2002年01月28日(月)07時54分07秒
- 安倍は相変わらず面会謝絶のままの小川に、病室の外から話しかけた。
「小川…、今日高橋に会ったよ。寂しそうにしてたよ。早く元気になって出ておいで。」
安倍はそれ以上話すことが出来なかった。痩せこけた小川は、様々な機器に囲まれ痛々しかった。
その後安倍は、眠ったままの加護の横で、みんなの話をしていた。あの一件以来、ちゃんと加護と話したのは初めてだった。しかし安倍は今の状況を話してはいなかった。すべて昔の話だった。「あの時はね…。」とか「これからさ…。」などと、まるでみんなが生きているかのような様子で話していた。一筋の涙を流しながら…。それは加護に心配や絶望、苦しみ、を与えない様に励ましている様でもあり、現実を受け入れたくない自分に言っている様でもあった。しかし加護は、そんな安倍の言葉や涙など、まったく届いていないかの様に、変わらない状態で眠りつづけていた。
- 180 名前:第3章…傷跡 投稿日:2002年01月28日(月)07時54分55秒
- 翌日、中澤は医師から足についての説明を受けていた。
「先生、どないなんでしょう?ウチの足は…。」
それは中澤が想像していた中で、もっとも最悪の回答だった。
「…ひどい…ダメージを受けていますからね…。回復は不可能でしょう…。」
「そうですか…。つまり、もう…二度と…歩く事はできひんって事ですよね…。」
「ええ。それどころか…立ち上がる事さえも…。」
「まぁ…、仕方ないですよね…。」
「でも、あれだけの傷で助かっただけでも奇跡ですよ。」
「いやー、ほんま先生のおかげですよ。ありがとうございます。」
「いえ、中澤さんの頑張りがあったからですよ。」
そう言って医師は部屋を出ていった。
「はぁ〜、やっぱりアカンかったか…。」
中澤はそう呟くと、頭から布団をかぶり、小さく泣いた。
- 181 名前:第3章…傷跡 投稿日:2002年01月28日(月)07時56分07秒
- 数日後、病院には安倍、吉澤、石川、高橋が集まっていた。
小川の状態が急変したのである。
安倍が話しかけたあの日の夜、わずかながら意識が回復したと連絡があった。しかし今はそれを感じさせないほど状態が悪化していた。
一命を取り留め、無菌室に入っていたとはいえ、内臓に大きなダメージを受けた小川は、あの後も移植などの手術を受けていた。
幼い体には限界だった。いくつもの感染症を併発し、手の施し様がなかった。
集中治療室の外には、安倍、吉澤、石川、高橋、の四人が集まり、小川を見守っていた。
- 182 名前:第3章…傷跡 投稿日:2002年01月28日(月)07時56分39秒
- 四人の前で電気ショックによる心臓マッサージが行われる。
「3、2、1、バン! 3、2、1、バン!」
それと共に小川の体が弾む。
「3、2、1、バン! 3、2、1、バン!」
まるで壊れたおもちゃの様に。
結局、医師や家族、四人の祈りもむなしく、小川は息を吹き返さなかった。
全員言葉がなかった。
ただ、悲劇がまだ終わっていないという現実が四人の胸に突き刺さった。
その後安倍達は、加護の病室へ向かった。
しかし高橋は一言「すいません。」とだけ残し、帰って行った。
- 183 名前:第3章…傷跡 投稿日:2002年01月28日(月)07時57分34秒
- 三日後、小川の葬儀。
相変わらず高橋は、安倍達と関わる事なく帰って行った。
帰り道、安倍は泣きっぱなしの石川を励ましていた。
安倍自身、正直気が気ではなかったが、ひたすら言葉を掛けた。
「梨華ちゃん、しっかりして…。あたし達がしっかりしないと…。」
石川は泣きながら答える。
「でも、でも…、どうしてこんな…。どうしてこんな事に…。もうイヤ!」
表面上は隠していたが、当然安倍も同じ気持ちだった。
「梨華ちゃん…。」
安倍にはその後の言葉が出てこなかった。
いつもならここで吉澤が声を掛けるはずだった。
安倍も無意識のうちに、それを期待していたのかもしれない。
- 184 名前:第3章…傷跡 投稿日:2002年01月28日(月)07時58分06秒
- しかし、吉澤からの言葉はなかった。
そんな二人を気遣うような素振りもなく、ただ、ボーっと前を見つめ歩いていた。
『よっすぃ〜…?』
安倍は心の中で呟いた。
そんな吉澤の姿は、安倍には異様なものに感じられた。
安倍の知っている吉澤の顔ではなかった。
いや、いつもと何も変わらない表情だったかもしれない。
ただその時、安倍には直感的に何か違うものが感じられた。
- 185 名前:詩音 投稿日:2002年01月28日(月)08時02分25秒
- 更新しました。
う〜ん…、何箇所か改行し忘れた…。
せっかくご指導頂いたのに…。
ちょっと読みにくいかも知れませんが、以後気をつけるのでご勘弁下さい。
これからはサクサク更新していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。
- 186 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年01月28日(月)08時25分11秒
- ・・・
更新楽しみにしてます
- 187 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月28日(月)21時20分34秒
- 気丈に犯人に立ち向かった吉澤に何が起きたんだ?
- 188 名前:詩音 投稿日:2002年01月29日(火)07時56分00秒
- レスありがとうございます。
それでは更新です。
- 189 名前:第3章…傷跡 投稿日:2002年01月29日(火)07時56分48秒
- 翌日の事だった。
昨日の吉澤の事が気になっていた安倍は、加護のお見舞いの帰りに、吉澤の家に向かった。
インターホンを押すが返事はない。
『どこかに出掛けてるのかな?』
そう思い、吉澤の携帯に電話を掛ける。
しかし、電話には出ない。
耳を澄ますと、ドアの向こうから吉澤の携帯の着信音が響く。
いつもならここで『寝てるのかな?』で済んだ事だったかもしれない。
しかし、昨日の吉澤の様子が気になっていた安倍にとって、今日はそのような感情が出てこなかった。
インターホンを連呼する。
しかし反応はない。
- 190 名前:第3章…傷跡 投稿日:2002年01月29日(火)07時57分19秒
- ドアノブに手を掛けるとカギは開いていた。
「よっすぃ〜!」
安倍はそう声を張り上げ、部屋に入った。
部屋に入ると、ベッドに横たわり眠る吉澤が目に入った。
『なんだ…。本当に寝てただけか…。』
そう思った矢先、安倍の目に吉澤が眠る理由、目を覚まさない理由そのものが映った。
男らしいと言われてはいるが、やはり女の子と言える、華奢な手に握られた小さなビン。
安倍はすぐさまそのビンを取る。
吉澤が握っていたものは睡眠薬の入れ物であった。
「よ、よっすぃ〜!!!」
安倍はそう叫びながら、吉澤の体を揺する。
しかし吉澤の体は、まるで人形の様な反応しか示さなかった。
- 191 名前:第3章…傷跡 投稿日:2002年01月29日(火)07時57分49秒
- すぐさま救急車を呼び、病院に運ばれる吉澤。
安倍は震えが止まらなかった。
不思議と涙は出なかった。
『冷静になれ!』
そんな気持ちも出なかった。
何の余裕もなかった。
- 192 名前:第3章…傷跡 投稿日:2002年01月29日(火)07時58分19秒
- 一時間ほどして、吉澤の処置は終わった。
一人待ちつづける安倍に、看護婦は言う。
「大丈夫、心配いりません。命に別状はありませんでした。」
しかし安倍に安堵感などなかった。
『よっすぃ〜…。どうして…?』
そればかりが頭の中を駆け巡っていた。
眠る吉澤の横で、そればかり考えていた。
それから三時間ほど経ったであろうか、吉澤がふと目を覚ます。
「あ、安倍さん…。」
「……。」
安倍は返事をしなかった。出来なかったのかもしれない。
「……。」
沈黙が続く。
- 193 名前:第3章…傷跡 投稿日:2002年01月29日(火)07時58分54秒
- しばらくして吉澤が口を開いた。
「死ねなかったな…。」
安倍は、その一言を聞くまで自分の中で吉澤の行動を否定していた。
『よっすぃ〜が自殺なんてするわけない。』と。
しかし吉澤の言葉を聞いて安倍は、現実を認めざるを得なくなった。
「どうしてこんな事…?」
安倍は聞いた。
吉澤はすぐに返事をせず、窓の外を眺め一息つくと、答えた。
「いや、なんか…、どうかしてました。すいません。」
意外なほど軽い返事だった。
安倍は言う。
「変な事考えないで!あたしが、どんな気持ちで…。」
- 194 名前:第3章…傷跡 投稿日:2002年01月29日(火)07時59分26秒
- 「……。」
黙り込む吉澤を無視して、安倍は続ける。
「死のうとするなんて…、そんなの最低だよ!他のみんなだって苦しんでるのに…、誰だって辛いのに…、情けないよ!最低だよ!」
「すいません…。」
「もうこんなバカな事考えないで!これ以上…、これ以上誰かを失うなんて…。お願い…、もう…。」
安倍はそう言いながら涙を流した。
こらえていた涙が溢れたかのように、涙が止まらなかった。
吉澤の服を掴んだまま、泣きつづけた。
しばらくして、安倍が落ち着きを取り戻すと、吉澤は静かに言った。
「安倍さん…、この事…、みんなには内緒にしといてもらえません?」
- 195 名前:第3章…傷跡 投稿日:2002年01月29日(火)07時59分57秒
- 「……。」
安倍が黙っていると、吉澤は言いづらそうに続ける。
「だって…、なんか恥ずかしいじゃないッスか?こんなバカな事して…。」
「……。」
安倍はそれにも答えなかった。
「お、お願いしますよ…。」
吉澤がそう言うと、安倍は顔を上げ吉澤を見つめた。
そして一言、「もう…、こんな事は絶対にしない?」と言った。
吉澤は笑って答えた。
「しないですよ〜。やだなぁ〜。反省しましたよ。」
「……わかった…。みんなには内緒にしとく。」
- 196 名前:第3章…傷跡 投稿日:2002年01月29日(火)08時00分29秒
- 「申し訳ないッス。ありがとうございます。」
そして吉澤は、大事を取って2・3日入院する事となった。
安倍はみんなに隠しつつも、毎日通っては「あんな事はもうしないで。」と、吉澤に言いつづけた。
吉澤も「しませんって〜。」と繰り返していた。
そして三日後無事退院となり、吉澤は安倍に連れられて帰宅した。
日にちが短かったせいか、石川にさえ知られる事はなかった。
- 197 名前:第3章…傷跡 投稿日:2002年01月29日(火)08時01分03秒
- そんな吉澤が退院した夜だった。
中澤は悪夢にうなされていた。
両足が体から離れていく夢だった。
中澤は目を覚ます。そして急いで自分の足を確認する。
布団をめくると、両足はちゃんと中澤の体から離れる事なく付いていた。
「またか…。」
中澤はそう呟く。
いつもの夢だった。最近毎日のように見る夢。
中澤はこのところ、満足に眠る事もできないでいた。
自分の中で理解していたはずだった。仕方ない事だと。
しかし毎日のように見る夢が、中澤の精神を乱していた。
「くそ…。なんでや?なんでなんも反応せんのや?足があるゆう感覚さえあらへんやないか…。」
そう呟き、一人泣き続けた。
しかし日が昇る頃には、落ち着きを取り戻し、そんな中澤の悩みに気づくものはいなかった。
- 198 名前:詩音 投稿日:2002年01月29日(火)08時02分29秒
- 更新致しました。
- 199 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年01月29日(火)11時26分03秒
- 辛いですね
- 200 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月29日(火)22時42分41秒
- 吉澤や中澤、生き残った者も暗い部分を抱えてるね。
- 201 名前:詩音 投稿日:2002年01月30日(水)06時26分28秒
- レス大変ありがとうございます。
では、さっそく更新です。
- 202 名前:第3章…傷跡 投稿日:2002年01月30日(水)06時27分07秒
- 安倍は吉澤が退院してから、吉澤を自分の家に泊まらせていた。
それには理由があった。
安倍は病院で医師に言われていた。
「今回は無事、何事もなく済みましたが、こういう事は常習性と言うか、また同じ事を繰り返す可能性があります。くれぐれも気を付けて下さい。」
そのため安倍は、吉澤を監視するかのように、毎日そばを離れなかった。
夜もゆっくり眠れず、体に負担をかける毎日だった。
- 203 名前:第3章…傷跡 投稿日:2002年01月30日(水)06時27分38秒
- ある日吉澤が言った。
「安倍さん…、最近ちゃんと寝てないんじゃないですか?あたしの事なら心配せずに…。」
安倍は答える。
「心配いらない訳ないでしょ?あんな事して…。なっちは大丈夫…。ちょっとぐらい眠くても平気。」
「いやぁ〜、でもあんまり迷惑かけらんないッスよ。これ以上負担かけるわけには…。もう絶対にあんな事しませんから…。」
「ダ〜メ!今のよっすぃ〜が平気でも、またいつどんなよっすぃ〜が出てくるかわかんないでしょ?」
「……。はぁ〜〜〜い…。」
吉澤はそう答えた。
そして付け足す。
「でも、夜くらいはしっかり寝てくださいね。安倍さんがくたばっちゃいますよ。」
安倍は答える。
「分かってるよ。大丈夫。」
- 204 名前:第3章…傷跡 投稿日:2002年01月30日(水)06時28分15秒
- その日の夜。
眠る安倍の横で、吉澤が静かに立ち上がる。
安倍を起こさない様に、物音を立てずに。
吉澤がドアに手を掛けると、後方から声が飛ぶ。
「よっすぃ〜?どこ行くの?」
そんな安倍の声に驚いた吉澤は答える。
「び、びっくりしたぁ〜。やだなぁ〜、トイレですよ、トイレ。」
「そっか…。ゴメン…。」
「もう…、起こしちゃ悪いと思って、そーっと行こうと思ったのに。ちゃんと休んでくださいよ。」
「うん…。ありがと…。」
そして吉澤が戻った後も、安倍は熟睡する事などなく、夜は明けていった。
- 205 名前:第3章…傷跡 投稿日:2002年01月30日(水)06時28分59秒
- それから三日ほど経った日の朝だった。
吉澤は言う。
「安倍さん。昨日もちゃんと眠らなかったでしょ?」
「そんな事ないよ。ちゃんと寝たよ…。」
「だってスゴイくまが出来てますよ。」
「平気だって…。」
「いや、全然平気そうじゃないですよ。」
安倍は答えを返さないまま、朝食の準備を始める。
「もう…。」
吉澤は呟く。
しばらくして吉澤が言う。
「そうだ!あたし今日梨華ちゃんの所泊まりますよ。誰かがいれば大丈夫でしょ?ちょうど梨華ちゃんも『どうして安倍さんの所に泊まってるの?』なんて言ってたし…。」
- 206 名前:第3章…傷跡 投稿日:2002年01月30日(水)06時30分07秒
- 安倍は答える。
「この前の事、梨華ちゃんに言うの?」
「ん〜…、それはわからないけど、とりあえず梨華ちゃんと一緒にいれば、あたしも変な気起こさないと思うし…。というか、梨華ちゃん励ますので精一杯で、むしろ起こす暇ない…?」
「…でも、二人で変な気起こさない?相乗効果で…。」
「ハハハ。そりゃないッスよ。大丈夫。」
「……。」
黙って考え込む安倍に、吉澤は言う。
「だって…、毎日安倍さん辛そうだし…。あたしなんかより、よっぽど思い悩んだ顔してますよ?笑った顔さえ見てないですもん。」
「……。」
「とりあえず…、梨華ちゃんに電話しますね。いいッスか?」
「…うん、わかった…。」
そして吉澤は石川に電話を入れ、泊まる事を了解してもらった。
- 207 名前:第3章…傷跡 投稿日:2002年01月30日(水)06時30分46秒
- そして朝食を終え、家を出ようとする吉澤に安倍は言う。
「梨華ちゃんの家に着いたら電話して。」
「はい。なんかお母さんみたいッスね。お世話になりました。今度こそしっかり休んでくださいね。」
吉澤はそう答えると家を出た。
安倍はその時、吉澤の表情が一瞬変わった様に感じた。
『あれ…?』
そう思い、声を掛ける。
「よっすぃ〜!」
吉澤は振り返り答える。
「はい?」
しかしその表情に曇りはなかった。
- 208 名前:第3章…傷跡 投稿日:2002年01月30日(水)06時31分18秒
- 安倍は思った。
『気のせいか…。ホントに疲れてるんだな…。』
そして言う。
「ううん。何でもない。梨華ちゃんによろしく。今度なっちも泊まりに行くよ。」
「ええ。伝えておきます。ありがとうございました。」
吉澤はそう言うと去って行った。
安倍は少し不安だった。
『さっき…、あの時と同じ目をしたような気がする…。でも、あんなにしっかりしてたもんね…。何もないよね…。なっちの勘違いだよね…。』
三十分後、石川の家から吉澤が着いたとの連絡が入った。
安倍はホッとした。
『よかった…。ちょっとなっちが過敏になり過ぎてただけかな…。』
そして、『ん〜、今寝ても生活逆転しちゃうな…。』そう思い安倍は、中澤と加護のお見舞いに向かった。
- 209 名前:詩音 投稿日:2002年01月30日(水)06時33分31秒
- 更新しました。
- 210 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年01月30日(水)12時21分44秒
- なんか吉澤の様子が気懸りですね
安倍も倒れなきゃいいのですが・・・
- 211 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月30日(水)13時17分20秒
- 一人だけ、かやの外的な高橋の動向も気になるぞ。
- 212 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月30日(水)21時06分54秒
- 中澤の悩み
安部・吉澤の動向
惹き込まれてます。
- 213 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年02月14日(木)11時50分04秒
- 復活したけど作者さんは戻ってくるのかな?
- 214 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月15日(金)15時23分35秒
- 復活切望
- 215 名前:詩音 投稿日:2002年02月25日(月)05時02分28秒
- 遅くなりました!お久しぶりです。
ずいぶんと長い間放置してしまって、申し訳ありません・・・。
今さらながら、サザエさん復活ありがとうございます。
そしてお疲れ様です・・・。
それではほぼ一ヶ月ぶりの更新です。
よろしくお願いします。
- 216 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年02月25日(月)05時03分37秒
- 病院に到着し、中澤の部屋に入る。
「失礼しまーす。」
「おう。なっつぁんかぁ。まぁ入りぃ。」
「どう?調子?」
「ん?全然元気やでェ。」
中澤はいつも通り精一杯元気に振舞う。
「なんか顔疲れてるよ?ちゃんと寝てる?」
「アンタに言われたないわ!なっちのがなんぼ寝不足て顔してるで?」
「あっ、そっか…。」
「まぁ、ウチは入院してる身やからな、ちょっと元気なさそうなぐらいがちょうどええかもしれんけど、なっちはどないしたん?」
「え?…どうもしないよ。大丈夫…。元気。」
「元気て…。ほんなら少しぐらい明るい顔してゆうたらどうや?」
- 217 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年02月25日(月)05時05分54秒
- 中澤がそう言い終えた時、病室の扉が開く。
「中澤さぁ〜ん、お見舞いに来ましたよぉ…。」
石川だった。
安倍はすぐさま聞く。
「あれ?一人?よっすぃ〜は?」
「あっ、安倍さん来てたんですかぁ?なんだ寝てると…。」
そんな石川の言葉を無視して安倍が言う。
「よっすぃ〜は?」
「え?なんか、急用が出来たって…、帰っちゃいました…。」
「うそ?いつ?」
あせる安倍に中澤が言う。
「なっつぁん、どないしたんや?」
しかし安倍はそれには答えず聞く。
「どうして帰したの?いつ帰ったの?」
「どうしてって…。来て三十分もしないうちに…。」
- 218 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年02月25日(月)05時06分32秒
- 「よっすぃ〜なんか変じゃなかった?いつもと違う感じしなかった?」
「え?別にしなかったですよぉ。普通でしたよぉ。」
それを聞いて考え込む安倍に中澤は言う。
「どうした?よっすぃ〜になんかあるんかいな?」
「…いや、ちょっと…。」
安倍は思った。
『まさかよっすぃ〜…。…それとも、そんなに一人になりたかったのかな?ずっとなっちと一緒にいたから…。』
「なんやぁ?隠し事かいな?」
そう言う中澤に続いて石川が言う。
「あっ、でもそう言えば…。」
安倍がすばやく反応する。
「そう言えば?何?」
「伝言頼まれて…。なんか安倍さんに『ごめんなさい。』って言ってました。『どうして?』って聞いたら、『ちょっとね…。今寝てると思うから、あとででいいから。お願い。』って…。でもなんでわざわざ石川に頼んだんだろう…?」
- 219 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年02月25日(月)05時07分32秒
- 安倍はそれを聞いて部屋を飛び出した。
『まさか?!よっすぃ〜…。』
中澤が言う。
「なんやねん?一体…。」
安倍は二人を無視して走った。
病院を出て急いでタクシーに乗りこむと、吉澤の家に向かった。
車内、何度も電話を掛けるが、当然の様に電話には出ない。
『うそ…?うそ!絶対そんな事…。』
「すいません、運転手さん、急いでください!」
安倍の慌てぶりを感じた運転手も、タクシーを飛ばす。
二十分ほどして吉澤の家に到着する。
安倍はその間何度も電話をかけたが、一度も吉澤が出る事はなかった。
「おつりはいいです!」
そう言った安倍は、急いで玄関へ走る。
カギはかけられていた。
仕方なく電話を掛けながら、ドアを叩き叫ぶ。
「よっすぃ〜!よっすぃ〜!!!」
しかし反応はない。
『家にはいないのかも…。』
そう思った。
- 220 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年02月25日(月)05時08分19秒
- そして呼びかける事を止め、考えた。
『よっすぃ〜の行きそうな所…、どこ?ドコ?』
冷静な考えの浮かばない自分を、落ち着かせるかのようにドアを叩き考える。
『落ち着け!落ち着け!自分ならドコに行く…?なっちがみんなの事を追うとしたら…?』
その時安倍の携帯が鳴る。
安倍がすかさず電話に出ると、相手は石川だった。
「安倍さん?一体どうしたんですかぁ?よっすぃ〜に何かあったんですか?」
「梨華ちゃん…。」
「安倍さん?」
石川の声を聞いて、少しだけ冷静さを取り戻せた安倍は聞く。
「よ、よっすぃ〜の行きそうな場所知らない?」
「え?よっすぃ〜の行きそうな所?う〜ん…ドコだろ?一体どうしたんです?」
- 221 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年02月25日(月)05時08分57秒
- 「今よっすぃ〜を一人にしちゃいけないの…。死ぬ気かもしれない…。詳しい事は後で話すから。思い当たる所ない?」
「え?そんな…。変な冗談は止めてくださいよぉ。よっすぃ〜に限ってそんな事…。」
「冗談なんかじゃないの…。ホントに…、ホントによっすぃ〜死んじゃうかもしれないんだから!時間がないの!」
「うそ…?よっすぃ〜…。」
そう言って黙り込む石川に、安倍は言う。
「とにかく!なっちはよっすぃ〜探しに行かなきゃいけないから切るね。」
「あっ、安倍さん。待ってください。…石川はスタジオにいると思います。みんなを失ったあのスタジオに…。」
「え…?まさか…。…わかった。行ってみる。」
「石川もすぐ行きます。」
「うん。それじゃ。」
安倍はそう言って電話を切った。
- 222 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年02月25日(月)05時09分49秒
- そして、急いであの時のスタジオがある場所に向かう。
道中、安倍は祈るしかなかった。
『よっすぃ〜…。お願い…。』
到着してそのスタジオに向かう途中、顔見知りのスタッフに出くわす。
「おう。安倍ちゃん、久しぶり。」
「あっ、すいません!よっすぃ〜見ませんでした?」
「え?あぁ。なんか花持って来て、さっき例のスタジオの方に…。」
「うそ…?誰か付いてます?」
「えぇ?いや、誰も付いてないけど…。どうかした?」
安倍はそれに答える事なく、スタジオに走った。
『お願い…。間に合って…。』
スタジオに入ると、重苦しい空気が漂う。
今や楽しかった時の記憶など蘇らず、あの時の悲劇ばかりが思い出される。
警察の現場検証なども終わり、今は使われてはいないそのスタジオは、安倍にとって苦痛意外の何物でもなかった。
- 223 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年02月25日(月)05時11分54秒
- 安倍はその気持ちを吹き飛ばすかのように、大声をあげる。
「よっすぃ〜!!!どこにいるの?」
返事はない。
薄暗いライトの中、安倍はスタジオの奥へと足を進める。
あの時のままのセット…。
安倍は周りを見渡す。
しかし、吉澤の姿は見えない。
下を見ると、まだあの時の血痕が残っていた。
無意識のうちに、血痕を順番に目でたどる安倍。
『圭ちゃん…。かおり…。新垣、紺野…。小川…。矢口…。ごっちん…。』
その時、端にあるセット…、そう、後藤が倒れていたであろうセットの影から、血痕と呼ぶには新しすぎる液体が広がっている事に、安倍は気付いた。
安倍は我に返り、駆け寄る。
そこには、吉澤の姿があった。
左手首から大量の血を流した吉澤の姿が…。
「よ、よっすぃ〜…。いや〜〜〜!!!」
安倍は目の前が真っ暗になった。
『誰かを呼ぶ』
そんな冷静な感情さえ出てこないほど、安倍の思考は潰されていた。
- 224 名前:詩音 投稿日:2002年02月25日(月)05時14分10秒
- とりあえず今回はココまでです。
本当に長い事お待たせして申し訳ありませんでした。
これからもどうぞよろしくお願いします。
- 225 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月25日(月)06時30分35秒
- 復活!
作者さんありがとう。
- 226 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月26日(火)00時07分27秒
- 吉澤、死ぬなよ。
死んだら全てが空しいだろ?
- 227 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年02月26日(火)08時15分00秒
- やってしまったか・・・
作者さん復活嬉しいです
これからも宜しくです
- 228 名前:詩音 投稿日:2002年03月02日(土)03時06分56秒
- レスありがとうございます。
長期間放置してしまったので、読者様に愛想をつかされてしまったのでは?と不安でした。
本当にありがとうございます。
さて、実は今、私事で自宅を離れ、出先のPCを借りての更新となっているので、少々更新が不定期になってしまうと思います。
(今回遅くなったのもそのためです…。すいません。)
可能な限りバシバシ更新して行こうと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
(わがままばかり申し訳ない…。)
では、という事で更新です。
- 229 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月02日(土)03時08分14秒
- 「よっすぃ〜!安倍さぁ〜ん!」
遅れて到着した石川が、先ほどのスタッフに連れられ声をあげる。
そして奥に進むと、薄暗いスタジオの端の方で涙を流しながら震える安倍がいた。
「安倍さん?!」
そう言って安倍に近付いた石川の目に、その隣に横たわる吉澤が映った。
「い、いや…、キャアァァァ〜!!!」
そう叫ぶと、石川はその場に座り込んだ。
「よ、よっすぃ〜!!!」
しかし、安倍、石川共に冷静になれぬ中、すぐに状況を悟ったスタッフが救急車を呼んだ。
- 230 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月02日(土)03時09分43秒
- 病院に到着すると、すぐに吉澤は手術室に入った。
そして石川は中澤に状況を説明しに向かった。
一人手術室の前で待つ安倍は、またあの時の悲劇を思い出していた。
わずか数週間前、何時間も待ち続けていたあの時と同じ風景だった。
後藤を失い、加護があんな状態になったあの時と。
『よっすぃ〜…。』
安倍には不安しかなかった。
『また、あの時みたく…。』
そんな悪い想像しか浮かんでこなかった。
その時安倍に、ベッドに寝かされたまま看護婦に連れられた中澤が、石川と共に現われ、安倍に声をかける。
「大丈夫!心配あらへんで!」
驚いた安倍が言う。
「裕ちゃん…?」
「よっすぃ〜は絶対に死なせはせん…。ウチが救ったる!」
「え…?」
そう言う安倍に、中澤は微笑んで答える。
「なんでもアイツ、輸血せなアカンらしい…。そこでな、姐さんが世界最強の血を提供したろうと思ってな。」
「え?裕ちゃんの血を…?」
「まぁ、年寄りの血で不満かもしれんけどな。…せやから心配せんで待っとき。」
中澤はそう言うと、看護婦に連れられて手術室に消えていった。
- 231 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月02日(土)03時10分30秒
- そして、その世界最強の血の効果かどうかはわからないが、発見が早かった事も幸いして、吉澤は奇跡的に一命を取り留める事が出来た。
それから半日ほどして、吉澤は意識を取り戻した。
「……。あれ…?ハハ…、また失敗しちゃったか…。」
その時病室の扉が開き、石川が入ってくる。
「あっ、気がついた?よかったぁ…。」
「梨華ちゃん…。」
「びっくりしたよ。まさかあんな事…。」
「……。」
「でも、よかった…。」
「……。」
「……。」
石川も何を話していいのか分からず、沈黙が続く。
しばらくして、吉澤が聞く。
「あのさ…。安倍さんは?」
石川は答える。
「疲れて寝ちゃってる…。」
「そっか…。」
「……。」
「……。」
- 232 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月02日(土)03時11分40秒
- そして石川は、聞きづらそうに言う。
「あの…、よっすぃ〜…。」
「ん?何?」
「あの…、ホント…、何ともなくてよかったね…。」
「…ハハ、そう?」
「うん…。」
「……。」
「でも…、どうして自殺なんて…?そんなのよっすぃ〜らしくないよ…。」
「……。私らしくない?じゃあ聞くけど、私らしいって何?どうする事が私らしいの?」
吉澤は少し強い口調で聞く。
石川は答える。
「え?そんな…。…よっすぃ〜は男前キャラで、いつも前向きで、明るくて…、すごく頼りになって…。」
「だから?そんな人は自殺なんてしちゃいけないとでも言うの?」
「そ、そういうわけじゃ…。」
石川はそう言うと、涙目になり俯く。
- 233 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月02日(土)03時12分11秒
- それを見た吉澤は言う。
「…なぁ〜んて心配かけた私が悪いんだよね。ゴメンゴメン。梨華ちゃんは何も悪くないのに、責めるのはお門違いか…。」
「ううん…。私も無神経な事言っちゃってごめんね…。」
「そんな梨華ちゃんは謝らないでよ。別に間違った事言ってないんだから。」
「うん…。」
「……。」
「……。」
そしてまた沈黙が続いた。
三十分ほどして吉澤が言う。
「そうだ。中澤さんは?」
「あっ、よっすぃ〜起きたって言いに行かないと…。」
「怒ってるかな?」
「うん。すごく…。」
「あちゃ〜…。やべぇ…。」
「うそ。すっごく心配してた。でも、お説教はされると思う…。」
「ハハ…。参ったなぁ…。まぁ、仕方ないか…。」
「じゃ、ちょっと中澤さんの所行ってくるね。」
「うん。『心配かけてスイマセン。』って言っといて。」
「うん。」
石川はそう答えて部屋を出ていった。
「ふぅ…。」
吉澤は大きくため息をついた。
- 234 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月02日(土)03時13分10秒
- 石川は中澤の部屋に入ると、小声で言った。
「今、よっすぃ〜意識戻りました。」
それは中澤の隣で眠る、安倍に気を使っての事だった。
中澤も小声で答える。
「そうか…。それはよかったわ…。…で、どうやった?何かゆうてたか?」
「はい…。『心配かけてスイマセン。』って…。」
「何言ってんねん。謝るぐらいなら初めからこんな事すんなっちゅうねん。」
「中澤さんの機嫌、心配してましたよぉ。」
「アホか。まったく…、何考えてるかわからんわ…。でもウチなんかより、なっちの方がなんぼ怒ってるんとちゃうか?この娘、こんなになるまで心配しとったのに…。」
そう言って中澤は安倍を見つめる。
石川も安倍を見つめると言う。
「すいません…。私がちゃんと…。」
中澤は石川に視線を戻すと、『ヤレヤレ…。』と思い言う。
「いや、だから石川は知らんかったんやから、しゃーないて。別に何の責任もあらへん…。もちろん、なっちにもや…。だれが悪いっちゅう訳でもないやろ。あんな事があったや…。よっすぃ〜の気持ちだってわからん訳でもないしなぁ…。」
中澤はそう言うと、自分の足を見つめた。
- 235 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月02日(土)03時14分10秒
- そして石川に悟られない様、すぐに目を離すと続けた。
「しかし2回目やったとはな…。気を付けんと、またやらかすかもしれん。次は無事って補償はないで…。」
「はい…。よっすぃ〜…、『自殺しちゃいけないの?』って言ってました…。このままじゃまた…。」
「なんやて?!で、アンタは何て言ったん?」
「いや…、『そういうわけじゃ…。』って…。」
「かぁ〜…、アホか…。そこでこっちが弱気になってどうすんねん?」
「すいません…。」
「まぁ、ええわ…。そこで何を言おうが、それだけで何かが変わるってほど、簡単な問題でもないやろ…。」
中澤がそう言い終えた時、安倍がふと起き上がり言った。
「よっすぃ〜目さましたの…?」
「なんや?なっち起きたんかいな?」
「だって…、いきなり大声で『なんやて?!』って…。」
「あっ…。そうやった…。ゴメンなぁ。静かにするから寝ててええで。」
- 236 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月02日(土)03時15分01秒
- 「ううん…、大丈夫。もう十分寝たから…。それより梨華ちゃん、よっすぃ〜は?」
「あっ、さっき…、意識戻って…。」
「そっか…。何て言ってた?」
「私が『よっすぃ〜らしくない。』って言ったら、『私らしいって何?』って…。だから『男前で、明るくて、前向きで…。』って言ったら、『そんな人は自殺しちゃいけないの?』って言われちゃいました。」
安倍は石川から視線をはずし、小さく答える。
「そっか…。」
「でも…、その後『ゴメン。』って…。なんかすごく普通で…。明るいし…。こんな状況なのに普通過ぎて…。何言ったらいいかわからなかったです…。」
「うん…。そうだよね…。前もそうだった…。」
すると中澤が言う。
「困ったもんやな…。普通やっちゅう事は、死ぬ事に対して何の疑問もないっちゅう事かもしれん…。」
石川が呟く。
「そんな…。」
- 237 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月02日(土)03時15分51秒
- 安倍が言う。
「よっすぃ〜は…、あえて普通に振舞ってるんだと思う…。ウチらに止められない様に…。なっち…、まんまと騙されて…。だからこんな…。」
中澤が驚いて言う。
「そうなんか…?アイツ…、そないな事までして死にたいんか…。」
安倍が答える。
「うん…。死ぬ事しか考えてないって感じ…。」
一瞬、三人を静寂が包む。
そして石川が言う。
「イヤ…。そんなの嫌です。また大切な人を失うなんて…。」
「せやな…。ウチかて嫌や…。」
すると安倍が立ち上がり言う。
「よっすぃ〜と話してくる。」
そう言って歩き出す安倍を見て、石川が言う。
「あっ、安倍さん、私も…。」
安倍が答える。
「ううん、一人で平気…。梨華ちゃんもずっとよっすぃ〜に付きっきりで疲れてるでしょ?少し休んでていいよ。」
- 238 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月02日(土)03時16分21秒
- 「そんな…、大丈夫ですよぉ。」
すると中澤が言う。
「ええって。ここはなっちに任せて、石川は少し休み。」
「え?でも…。」
そう言う石川を無視して中澤は言う。
「なっち…、頼むで。」
すると安倍はドアの前で立ち止まり、
「誰もよっすぃ〜が死ぬ事なんて望んでないんだから…。」
そう言って部屋を出ていった。
- 239 名前:詩音 投稿日:2002年03月02日(土)03時17分16秒
- 以上、更新致しました。
- 240 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年03月02日(土)19時42分04秒
- 言葉が出ないですよ
コメントが軽くなるようで・・・
作者さんの状況がわかり少し安心しました
ゆっくりマイペースで行って下さい
- 241 名前:詩音 投稿日:2002年03月06日(水)03時12分05秒
- むぁまぁさん、いつもいつもレスありがとうございます。
それでは早速更新です。
- 242 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月06日(水)03時14分44秒
- 石川が出て行ってから10分ほどして、吉澤は窓の外を眺め呟く。
「どうして死なせてくれないの…?もう…、生きたくないのに…。」
そして思う。
『早く楽になりたい…。』
吉澤の脳裏をあの時の映像がかすめる。
『ごっちん…、保田さん…、みんな……。』
しばらくして吉澤は思う。
『こうなりゃ…。』
そして自分の舌に歯をそえると、心の中で呟いた。
『安倍さん…、梨華ちゃん…、中澤さん…。ごめんなさい…。』
そして吉澤が、その歯を食いしばろうとしたその時、ふいにドアが開いた。
吉澤がドアの方に振り返ると、安倍が立っていた。
「安倍さん…。」
「……。」
安倍は何も言わずに吉澤に近付く。
- 243 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月06日(水)03時15分25秒
- そしてベッドの横に立ち、吉澤を見つめる。
しかし、それでも何も言わない安倍に、痺れを切らした吉澤が言う。
「あ、あの…。」
その瞬間…。
パァァァン!!!
吉澤の言葉を切る様に、安倍の平手が飛んだ。
吉澤が叩かれた左の頬を押さえながら、ゆっくり安倍に視線を戻すと、安倍は静かに言った。
「ばか……。」
吉澤は答える。
「すいま……」
「謝らないで!」
しかし安倍がまたも吉澤の言葉を切った。
- 244 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月06日(水)03時16分26秒
- そして続ける。
「気持ちがこもってない言葉なんていらない…。ホントに悪いと思ってない人に、謝ってなんか欲しくない!」
「……。」
吉澤は返す言葉がなかった。
安倍は言う。
「約束したでしょ?だからなっちはよっすぃ〜を信じたんだよ…。なのに…、どうして?」
吉澤は答える。
「すいません…。」
「だから嘘の言葉なんて聞きたくない…。そんなに…、そんなに死にたいの?ごまかして、嘘ついて、裏切ってまで、生きていたくないの?」
「……。」
「なっち達だって苦しいんだよ…。どうして自分だけ逃げようとするの? 卑怯だよ!みんな闘ってるんだよ…。なっちも梨華ちゃんも、裕ちゃんだって…、高橋だって…。辻ちゃん、加護ちゃんだって…、あんなに小さいのに必死に頑張ってるんだよ!」
- 245 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月06日(水)03時17分20秒
- 「……。」
「……。」
しばらく沈黙の後、安倍が静かに言う。
「ねぇ…、よっすぃ〜…。言い訳ぐらいしてよ…。よっすぃ〜のホントの気持ちも聞かせて…。」
すると吉澤は、少しずつ話し始めた。
「……いつも聞いてた声が聞こえない…。いつも見ていた笑顔が見えない…。みんなのぬくもりを感じる事もない…。日にちが経てば経つほど、どんどん暗闇の中に吸い込まれてく…。生きてる…、気がしないんです…。あの日から、生きてる心地がしないんです。なのに私は、なぜか生きてる…。もう…、生きているって事が、どういう事かわからないんです…。自分が何の為に生きているのかもわからない…。」
安倍は吉澤をにらむ様に見つめ、答える。
「なっちだって…、あの日から生きた心地なんてした事ないよ…。きっと他のみんなだってそうだと思う…。確かに失ったモノは大きい…。二度と聞く事も、見る事も出来ない…。でも…、それはみんな同じ…。だからこそ、残ったみんなで支え合っていかなきゃいけないんじゃないの?」
- 246 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月06日(水)03時18分15秒
- 吉澤は下を向き、安倍と目を合わせない様にして言う。
「わかってます!みんなだって辛いんだって事は…。自分だけじゃないって事は…。でも、毎日…、毎日毎日、絶望に押し潰されそうになる…。忘れる事なんて出来ない…。辛くても涙も出ない…。それでも頑張って生きていこうとしても、日に日に悲しさが増していくだけ…。もう…、これ以上苦しみたくない…。それならいっその事…。」
「勝手な事言わないで!なっち達はどうなるの?さらによっすぃ〜まで失ったら、なっち達はどうすればいいの?そう考えた事ある?」
「そ、そう言われても…。」
「よっすぃ〜は一人じゃないんだよ…。いなくなったら悲しむ人がいるんだよ。よっすぃ〜の事で本気で泣いたり、怒ったりする人がいるんだよ…。わかる?つまり、よっすぃ〜と共に生きる事を大切に思ってる人がいるの…。一緒に苦しみを乗り越えてくれる仲間がまだいるんだよ…。一人じゃないの…。」
吉澤は顔を上げ、安倍の方に向き直すと呟く。
「一人じゃない…。」
- 247 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月06日(水)03時19分07秒
- そんな吉澤を見て、安倍は言う。
「よっすぃ〜にはなっちだけじゃない…。梨華ちゃん、裕ちゃん、高橋、辻ちゃん、そして加護ちゃん…。共に助け合い、励まし合っていける友達がいるんだから。一人だけで苦しさと闘う必要なんてないんだよ…。じゃなきゃ、なっち達はなんのためによっすぃ〜のそばにいるのかわかんないじゃん?」
「でも…。」
「でもじゃないでしょ?情けない事言わないの。今よっすぃ〜の体には中澤裕子の血が流れてるんだからね。弱音は似合わないよ。」
「…中澤さんの…?」
「そう。裕ちゃんの…。よっすぃ〜が生きていくために…、流れてる…。…ね?一人じゃないでしょ?」
「……。」
胸に手を当て黙り込む吉澤に、安倍は静かに話す。
「実はね…、今回助かったのは本当に奇跡なんだって。裕ちゃんの力もあるだろうけど、傷の深さの割りには出血がなぜか少なかったんだって…。お医者さんがね、『あれだけの傷で、それなりの時間が経ってた訳だから、普通なら病院に着く前に…。』って言ってた。なっち思うんだけどね、きっとあそこで死のうとしたからだと思う…。」
- 248 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月06日(水)03時19分46秒
- 「え?それは…?」
「なっち達だけじゃなく、他のみんなも『よっすぃ〜には生きて欲しい!』って思ったんじゃないかな…?きっとごっちんとかもさ、『よっすぃ〜、死んじゃダメだぁ〜!』って…。みんなよっすぃ〜が来る事なんて、望んでないと思うよ。」
吉澤は心の中で呟いた。
『ごっちん…。みんな…。』
そして安倍は言う。
「だからさ…、生きよう!13人の大切な娘達を悲しませるような事はもう二度としない。みんなのためにも…、そして自分のためにも…、精一杯頑張ろうよ。」
吉澤は返事をしなかった。
しかし、安倍も返事を求めるような事はしなかった。
吉澤の目を見て、その必要がないと悟ったからであった。
それは男前キャラと言われている、吉澤らしい目の輝きであった。
そして吉澤は安倍を見つめ、少しだけ微笑んだ。
安倍は笑みを返す事はなかったが、吉澤の手を優しく握ると、小さく頷いた。
- 249 名前:詩音 投稿日:2002年03月06日(水)03時20分47秒
- 更新しました。
- 250 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年03月06日(水)08時02分47秒
- うんうん・・・
作者さん更新お疲れ様です
- 251 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月06日(水)10時51分30秒
- いつもお疲れ様。かなり引き込まれています。
アンドお誕生日おめでと(w
- 252 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月08日(金)16時45分27秒
- 今日はじめて読んだ。感動した。
悲しくて泣いた。けど、死んでても生きてても、がんばっていこうと思った。
娘。小説に考えさせられた。すげぇよ作者さん。
- 253 名前:詩音 投稿日:2002年03月13日(水)03時28分39秒
- 皆様、レスありがとうございます。
更新ペースが遅くて申し訳ない…。
>251の読者様
ありがと(w
>252の読者様
そ、そこまで言って頂けるとは…。
ちょいビックリ。褒め過ぎでは?
でも非常に光栄なお言葉、ありがとうございます。
大変嬉しいです。
ではでは更新です。
- 254 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月13日(水)03時30分29秒
- それから一ヶ月後…。中澤が晴れて退院となった。
その夜…。
「裕ちゃんの退院を祝って、ささやかだけど記念パーティーでもしようよ。」そんな市井の言葉から、安倍、吉澤、石川、市井、石黒、福田の六人が中澤の家に集まっていた。しかし、高橋は来ていなかった。
「愛ちゃんは?」石川が安倍に尋ねる。
「電話したら、おかあさんに『もう電話しないでください!』って言われちゃった。」
安倍は淋しそうに答えた。そして続ける。
「でも、しょうがないよね。あんなひどい目にあわせちゃったんだもん…。」
「せやなぁ〜。高橋、時々小川の様子見に行っとったらしいし、新メンバーで残ったのが一人だけやから、キツかったやろな。」中澤が言う。
しばし沈黙が起きる。
その沈黙を破る様に、福田が話を切りかえる。
「ま、とりあえず今日は、裕ちゃん退院おめでとう。」
「そうだね。おめでとう。」市井もすかさずその話に乗る。
「みんなホンマにありがとなぁ〜。まぁ、足は動かんようになってもうたけど、無事、退院できました。これもみんなのおかげやで。」
「ほんと、よかったねぇ。」石黒が言う。
次々とメンバー達が祝福と安堵の声をあげる。
- 255 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月13日(水)03時31分17秒
- すると突然中澤が言う。
「辻は結局まだ出てこれへんのか…。」
「うん。まだかかるみたい…。なっちも会ってないからよくわかんないけど…。」安倍がそう返答する。
「っていうか、誰もあの日以来会ってない…。」吉澤が付け足す。
吉澤はあれからというもの、すっかり以前の様な落ち着きを取り戻し、今となっては誰もあの時の事に触れる者はいなかった。
「連絡もないしなぁ〜。まぁ、しゃーないやろ。いろいろあったしな。まっ、今日はおおいに飲もうや。」
「ダメだよ。退院してきたばっかりなんだから。」
そう福田に突っ込まれて中澤は「冗談や、冗談…。」と言いながらも少し残念そうな顔をした。
そうこうしながら三十分も経ったころ、突然中澤が「なんやて?!そんな事があったんかいな。」と驚きの声をあげた。
「あたしん所だけじゃないよ。他の全員の所にあったんだよ。」市井が言う。
続けて石黒が「まぁ、もちろん断ったけどね。ウチら三人はもう辞めてる訳だし、今さら勘弁だよ。子供もいるし…。」
「それに、よりによってこんな状態の時に、芸能界に戻るなんてできないでしょ?」福田が言う。
- 256 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月13日(水)03時32分00秒
- 「それもそうやな。で、あとの三人はどないするん?」中澤はそう言って安倍達の方を見る。
「なっちは来週から出るつもり…。」安倍が答える。
「吉澤はどないするん?」
「あたしも安倍さんと一緒に…。」
「石川は?」
「あたしはちょっと…。」
「そっか…、まぁ無理に出る必要はないやろ。きっとつらい思いをするだけやろうし。」
「しかし、山崎社長も無理言うよね。今さら『モーニング娘。』に戻れなんて。あたしはもう、たいせーさんとの話があるのに…。」市井が言う。
「ホンマ何考えてるんやろな?」中澤が答える。
「まぁ、ウチらは力になれないけど頑張ってね。」福田はそう言って安倍の肩を叩いた。
「うん…。」安倍は少し不安げに答えた。
こうしてささやかなパーティーの夜はふけていった。
- 257 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月13日(水)03時32分39秒
- 三日後、中澤はメンバーの墓参りに来ていた。
保田、紺野、新垣、小川と周り、矢口の所で中澤は思った。
『矢口…、結局どうするつもりやってん?辞めるつもりやったんか?』
『あん時言うてたな。「大切なモーニング娘。」って…。あれはどういう意味やったんや?』
そしてしばらく間を置くと、中澤は言う。
「アカン…。自分の中でちゃんと心の整理つけて…、覚悟決めて来たつもりやったのに…。やっぱり…、イヤや…。そんなん…、受け入れられへん…。」
そして中澤は心の中で『矢口…。矢口、やぐちぃ〜!』
と叫び、大粒の涙を流した。
中澤の頭の中を、大好きな矢口との思い出が駆け巡る。
中澤は、矢口がいつの日か言っていた言葉を思い出した。
『裕ちゃんが、毎日の生活からいなくなるなんて…。』
中澤は呟く。
「せやなぁ…。本当に…、当たり前の生活なんて消えてしもた…。」
そして中澤は立ち上がり、涙を拭うと言った。
「ウチらの大切な『モーニング娘。』は、これからどうなるんやろな…?」
中澤はそれ以上何も言わずに矢口の元を去った。
- 258 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月13日(水)03時33分19秒
- そして次に後藤の所に向かった。
車の中では、あのときの後藤の姿ばかりが思い出された。
右腕に銃弾を浴びながらも、必死の形相で中澤を引っ張る姿を。
墓に着くと中澤は「ごっちん、ホンマにすまんなぁ…。」そう言ったまましばらく泣きつづけた。
しばらくして中澤は言う。
「いっぱいお礼してもろてたで。もう十分返してもらったわ…。だから安心して眠り。」
そして中澤は「ありがとな…。」と告げて帰っていった。
そして最後に飯田…。しかしすでに飯田の墓の前には、一人の少女が立っていた。どこかで見たお下げ頭の後姿。しかし当時の少女とはどこか違う雰囲気を感じた。
「辻……?」中澤はそう呟くと、車椅子でその少女に近づき話しかけた。
「辻?辻!どないしたん?こんなトコで。退院しとったんか?なんで連絡してくれへんかった?みんな心配してたんやで。」
- 259 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月13日(水)03時38分18秒
- 「……。」しかし辻は返事をしない。
「よかったわ〜、元気そうで。他のみんなにはもう会ったんか?」
「……。」辻は言葉を発することなく、ただ呆然と立っている。
『まさか、この子まだなっちの言ってた通り…。』
その時不意に声がかかった。
「中澤さん?」辻の母だった。
「あっ、ご無沙汰してます。」中澤は驚いたが、すぐに挨拶を交わした。
「よかった。退院なさってたんですね。」辻の母は言う。
「ありがとうございます。おかげさまで…。希美ちゃんも退院できて…。」
中澤がそう言うと、辻の母は「ちょっと…。」と言って中澤を呼んだ。
母の話によると、辻は発作は起きなくなり、体の方にも何の弊害もなく、無事普通の生活を送れているという。
しかしあの日以来、一言も言葉を発さなくなってしまったと母は言う。
医者の話によると、ショックからはまだ完全に立ち直ってはおらず、声を出せない状態であるという。
そして、おとといに退院して以来、毎日の様にここに来ている事を母は話してくれた。
「そんな…。」中澤は言葉に詰まった。あんなに元気だった辻が、うるさいくらい騒いでいた辻が、今はもう、話すことが出来ないのである。
「どうすれば…?」中澤は聞く。
「希美自身が乗り越えてくれないと…。立ち直らないと…。私達も何もしてあげられなくて…。」母はそう答えた。
「そうですか…。」中澤はそう言って再び辻の隣に行き、飯田への挨拶を済ませた。
- 260 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月13日(水)03時39分25秒
- そして中澤が退院して一週間が経った日、安倍と吉澤はあの悲劇以来、久々に番組に出演した。
悲劇のアイドルの特別番組だった。
当然あの日の事…、今の事…、触れられたくない事ばかり聞かれた。
心を切り裂かれる思いだった。
しかし『ファンの人達も心配してくれている。ちゃんと伝えなきゃ…。』
二人はそう思い、仕事をこなした。
それからいくつかの番組に、同じような内容で出演したが、一区切りついてしまうと、仕事の依頼はこなくなった。
レギュラー番組も次々と終わり、まったく仕事のない状態になってしまった。
安倍も吉澤もお互い会話もなく、ただ事務所に通う毎日だった。
- 261 名前:詩音 投稿日:2002年03月13日(水)03時45分26秒
- 更新しました。
- 262 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年03月13日(水)22時20分41秒
- つい引き込まれてしまう不思議な世界・・・
どうなるんだろ? 娘。ってグループは?
それぞれの傷を抱えたメンバーは?
相変わらずまともなコメント出来なくてすみません
いっぱいいっぱいです
- 263 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月14日(木)03時04分56秒
- 中澤は引退しちゃうのかな?
つらいなぁ・・・安倍ががんばってる。
本当に引き込まれてます、この話に。
- 264 名前:詩音 投稿日:2002年03月19日(火)03時32分12秒
- レスありがとうございます。
>むぁまぁさん
そんな事ないですよ(^_^)
レス頂けるだけで幸せでございます。
それに,話的にコメントしづらいってのも確かにわかるし…。
少なくとも僕にとっては,いつも十分なコメントです。
>263の読者様
どうなんでしょう…?
もし現実に起こったとしたら,姉さんはどうするんだろう?
まぁ僕自身にもそんな葛藤はありますが,どうかお付き合いください。
それでは,同じく傷を抱えたあの人の話から更新です。
- 265 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月19日(火)03時34分22秒
- その頃市井は、再デビューの準備が始まっていた。
あの事件の渦中の人間ではないものの、『元モーニング娘。』この絶妙な位置が、市井には追い風となっていた。しかし市井にやる気はなかった。日々淡々と仕事をこなす。しかしどこかむなしい。市井は日にちが経つにつれ、脱力感に襲われていた。
『もう、再デビューなんてどうでもいい…。今さらやりたい事なんて何もないよ。』そう思っていた。
そんなある日、市井はあの日以来、散らかし放題だった部屋のポストがいっぱいになっているのに気付き、中の新聞などを整理していた。
そしてその中に一通の手紙を見つけた。
決してきれいとは言えない見なれた文字。でも、大好きな文字…。
後藤真希からのものであった。
消印はあの事件の日。その朝に出したものだと思われた。
市井は震える手を抑えながら封を開け、読んだ。
- 266 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月19日(火)03時35分44秒
- Dear 市井ちゃん
ね〜聞いて聞いて。聞いてといっても手紙だから、読んで読んでカナ?
明日やっとかおりが帰ってくるよ〜。でもね、ちょっと嫌な予感もする
んだ。前にも言ったけど、やぐっつぁんの様子が変だし。でもねでもね、
今度は前とは違うの。なんかみょ〜に吹っ切れた感じって言うかぁ〜。
だから明日かおりが帰ってきたら、何かありそうでさぁ。明日と言って
も、市井ちゃんが読む時は今日になってるけど…。すでに終わった話に
なってるかもね…。
それはさておき、後藤的には、やぐっつぁん辞めるつもりなんじゃない
かなぁ〜って思う。
世間では梨華ちゃんって言われてるけど、梨華ちゃん励ましてるときの
やぐっつぁんの「大丈夫。がんばろう!」ってのがさぁ〜。なんか裏が
ありそうで…。でもあくまで後藤の予想だから、市井ちゃんは気にしな
いで。でもなんか、市井ちゃんとか裕ちゃんの時の事思い出すよ。あと
彩っぺもね…。あの頃のみんなと今のやぐっつぁんがかぶる感じがして。
でも後藤もあの頃よりは大分強くなったよ。市井ちゃんのおかげで。
特に最近は裕ちゃんがいなくても、みんなで差さえあって頑張ってるし。
もう弱音は吐かないよ。今までは色々迷惑かけたけど…。
- 267 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月19日(火)03時37分15秒
- 市井は涙が止まらなかった。
後藤が手紙をポストに入れ、懸賞でも応募するかのように、手を合わせている姿が浮かんだ。
その後起こる事を知りもせず、はしゃぐ姿が…。
市井は涙を拭いながら続きを読んだ。
- 268 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月19日(火)03時37分47秒
- だから今度は市井ちゃんの愚痴を聞いてあげる。
これから大変な事いっぱいあると思うけど、後藤は市井ちゃんの味方だ
からね。市井ちゃんになんかつらい事があったら、後藤がどっからでも
飛んでいって弱音を聞いてあげる。少しは大人になった『後藤真希』も
見てもらわないとね。
そうだ!市井ちゃん。後藤との約束覚えてる?市井ちゃんの作った歌を
後藤が歌うっていう約束。あれ絶対守ってよね。もし破ったら許さない
よ。後藤は絶対忘れないからね。ず〜っと待ってるから…。
10年でも20年でも、100年でも…。あっ、100年も生きれないか(笑)。
でもたとえ生きてるうちに間に合わなくても、生まれ変わってからでも
いいから待ってるよ。後藤は市井ちゃんの歌を歌うために、生まれてく
るからね。市井ちゃんも後藤に歌を作るために精一杯生きてね。
後藤も頑張るから、市井ちゃんも頑張るんだぞ!
また、お手紙します。
かわいいかわいい後藤真希より
- 269 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月19日(火)03時39分14秒
- 市井は泣き崩れた。まるで後藤が、今の自分に言っている様に感じた。
『市井紗耶香の歌を歌うために、後藤真希は生まれ変わって帰ってくる。だからこれからも精一杯頑張ってほしい。』と…。
市井が手紙を握ったまま、床に伏せる様に泣いていると、
『いち〜ちゃん!』
どこからともなく、後藤の声が聞こえたような気がした。
市井は涙を拭うと、あの日からずっと伏せてあった、机の上の後藤との写真を見た。
そこには何一つ変わらない、後藤の笑顔があった。
市井はその写真を抱きしめると言った。
「後藤…。頑張るよ。だから帰ってきたら手紙ちょうだい…。」
- 270 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月19日(火)03時40分31秒
- それから一週間が過ぎた。
市井は勢力的に活動をしていた。あの手紙で吹っ切れたらしく、着々と準備は進んでいた。
しかし一方、安倍、吉澤は相変わらずの状態だった。
「仕事こないですね…。」吉澤が呟く。
「うん…。」安倍は力なく答える。
「しょーがないかもな…。前は13人もいたのに…。今は『モーニング娘。』って言っても二人しかいないし…。」吉澤はそう言って立ち上がる。
「うん…。」安倍はまた、力なく返事をする。
「あんな事があっちゃ、どこも使いづらいッスよね〜。」
「うん…。」
「どうします?これから…。」
「……。」
「仕事…探しに行きません?もうバラエティでも何でも…。どうせ歌もできないし…。このままじゃ…。」
「…うん。そうだね…。」
「もう!安倍さんがそんなんじゃダメですよ。がんばりましょ。みんなのためにも。」
「うん…。わかってる…。」
安倍の変わらない返答に、吉澤は「ふぅ…。」と一息つくと言った。
「あの時…、あたしに『頑張ろう!』って言ってくれたのは、安倍さんじゃないですか?『負けちゃいけない。』って…。あの時の安倍さんはドコに行っちゃったんですか?」
「……。」
安倍は言葉を返さなかった。いや、返せなかった。
吉澤もそれ以上何も言わなかった。
しばらく沈黙が続いた後、安倍が口を開いた。
「ごめん…。がんばろう。やるしかないもんね。」
- 271 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月19日(火)03時41分12秒
- それから二人は積極的に売りこみを行った。
そして、ナインティナインの計らいで番組が決まった。
しかしその収録中、思わぬ障害に気付いた。
「おい〜。安倍〜。もちょっと笑わんかい。そんなにオモロないか〜?」
矢部に突っ込まれる。
「えっ?!おもしろいですよ。」安倍は不思議そうに答える。
「いや、だったらもっと笑いましょ!」岡村にも突っ込まれる。
「はい、すいません…。」安倍はそう言うと、必死に笑おうとした。
しかし、顔が引きつるだけでうまく笑えなかった。
「あれ?あれ…?」安倍は笑う事が出来なくなっていた。笑顔を作ることさえも…。
「安倍さん…。」吉澤も困り果てている。
「あれ?よっすぃ〜、どうやって…笑うんだっけ…?」安倍は言う。
『そんな…。どうやってって言われても…。それは安倍さんが一番得意な事じゃ…。』吉澤は思った。
「キ、ム、チ〜や!キ、ム、チ〜!」岡村が言う。
そうして色々試したが、安倍は結局うまく笑う事が出来なかった。
- 272 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年03月19日(火)03時42分11秒
- その後、今度はどこに行っても、二人は相手にされなくなってしまった。
「いや〜。君らがでると暗くなっちゃうんだよね。」
「だめだめ。番組の印象が不幸一色になっちゃうよ。」
「笑う事も出来ないんだろ?問題外だよ。」
等と言われ、どこの局も使ってくれなくなっていた。
ある日安倍は、加護の所を訪れていた。
「どうしよう?加護ちゃん…。なっち…笑えなくなっちゃった…。おかげで仕事もこない…。暗いんだって…。」
相変わらず眠ったままの加護に、安倍は話しかけていた。
「加護ちゃんにも言われたのにね…。『安倍さん、笑顔〜』って。」
「『安倍さんは笑顔でしょ?』って言われたのにね…。」
そう言って安倍は、加護の布団に顔を埋めて泣いた。
- 273 名前:詩音 投稿日:2002年03月19日(火)03時47分50秒
- 更新しました。
268の出だし,空白ミスった…。
どうかご了承下さい。
- 274 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月19日(火)12時25分35秒
- 市井に光が見えて良かった。(><)
安倍も吉澤もこんな時こそ歌いたいだろうなぁ。
- 275 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月19日(火)23時03分47秒
- 安倍が笑顔を忘れる、か…
ある意味、一番の不幸だ。
- 276 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月19日(火)23時59分28秒
- どこまでも痛い・・・・。
でも、目が離せない・・・・!!
- 277 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年03月22日(金)08時52分28秒
- > 後藤は市井ちゃんの歌を歌うために、生まれてくるからね
このフレーズに思わず涙が零れた
笑顔を忘れた安倍・・・
まるで歌を忘れたカナリア・・・
こんな悲劇はないだろう
- 278 名前:ヤグヤグ 投稿日:2002年03月29日(金)23時26分01秒
- 詩音さん、更新待ってますよ。頑張って。
- 279 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年03月30日(土)14時12分55秒
- 私もいつまでもお待ちしてますよ
- 280 名前:詩音 投稿日:2002年03月31日(日)12時05分11秒
- すいません。
ちょっと仕事が立て込んでまして…(;^_^A
落ち着いたらすぐに更新致しますので。
もうしばしお待ちを。m(__)m
- 281 名前:詩音 投稿日:2002年03月31日(日)12時05分24秒
- すいません。
ちょっと仕事が立て込んでまして…(;^_^A
落ち着いたらすぐに更新致しますので。
もうしばしお待ちを。m(__)m
- 282 名前:詩音 投稿日:2002年03月31日(日)12時07分20秒
- やべっ!二重…。
- 283 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月01日(月)01時58分31秒
- 年度末だからねぇ〜。私も出張続きで・・・・。
がんばってください。
- 284 名前:ロ〜リ〜 投稿日:2002年04月03日(水)05時49分39秒
- お初です。
いやー、面白いっスネ!!
涙もろいので泣きながら読んでます。
詩音さんのペースでマターリやって下さい!
いつまでも待ってます。
- 285 名前:ロ〜リ〜 投稿日:2002年04月03日(水)05時52分24秒
- すいません。
sage忘れてました。
- 286 名前:詩音 投稿日:2002年04月03日(水)07時48分54秒
- お待たせ致しました。遅くなってすいません。
たくさんの方々のレス、非常に嬉しい限りです。
>274の読者様
いや〜、王道のいちごまは、やはり避けて通れないって感じでした。
>275の読者様
ですよね。そこを分かって頂けるとありがたい。
僕の中で安倍=笑顔みたいなトコあるもんで・・・。
>276の読者様
>どこまでも痛い・・・・。
なにげに大変嬉しいお言葉。
- 287 名前:詩音 投稿日:2002年04月03日(水)07時57分51秒
- >むぁまぁさん
手紙のシーンは僕も好きなシーンなので嬉しいです。
軽く某名作の流れ(パクリ?)も入ってるかもしれませんが(w
>ヤグヤグさん
H.Nからすると非常に気まずい感じですが、待って頂けているとは光栄です。
>ロ〜リ〜さん
はじめまして。
文才には自信がないので読みづらい事もあるでしょうが、どうかお付き合いください。
ではでは、更新です。
- 288 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年04月03日(水)07時58分51秒
- 数日経って、つんくは安倍、吉澤、石川、中澤を集め、話をしていた。
「しかたないやろ…。俺だって辛いんや。」
「でも、そんなのイヤです!」安倍は大声を出す。
石川は黙って下を向いている。
中澤が言う。
「なっち…。気持ちはわかるけど、つんくさんの言う通りや。もう…、終わりやろ…。」
「だって…、そんな…。」安倍は答える。
「もうあかんねや。『モーニング娘。』はみんなに幸せを与える、見ている人が笑顔になる、そんなグループやった…。でも、今は悲しい気持ちしか与えられへん…。しかたないんや…。」つんくが言う。
「あたしが、あたしが笑えないからいけないんですか?だったらよっすい〜だけなら…。」安倍は涙を流しながら言う。
「いや、あかん。安倍が笑えん事は関係あらへん。あれだけの事が起きたんや。何をしても一緒やろ。逆に二人でヘラヘラしとっても、それはそれでイメージ悪うなるだけや。それに、吉澤一人の時点で『モーニング娘。』ってのもおかしいやろ?無理なんや。」つんくは少し強い口調で言う。
「いつ…解散…なんですか?」吉澤が聞く。
「そうやな〜。今月いっぱいやな…。」つんくは答える。
「今月いっぱい…。そうですか…。」吉澤はそう言って、つんくから視線をそらす。
「なっち…。」中澤は安倍を抱きしめる。
安倍は震えていた。泣いていたからか、悔しさからなのか、震えていた…。
- 289 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年04月03日(水)07時59分36秒
- 翌日安倍は加護の病室に来ていた。
「加護ちゃん。ウチら…、解散だって…。もう…、終わりだって…。」
安倍は独り言の様に話しつづけた。
「ごめんね…。なっち…、何にもできない…。ごめんね…。」
「あたしホントダメだね。いっつもそう…。あの時『お互い頑張ろう。』なんて言ったくせにね。加護ちゃんはこんなに頑張ってるのに…。」
それきり安倍は、何も言わずに泣きつづけた。
そしてしばらくすると、泣き疲れたのか安倍は眠ってしまった。
- 290 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年04月03日(水)08時00分25秒
- 安倍がふと気がつくと、そこははるか昔に見た風景だった。
安倍は泣いていた。
「ごめんね…。なっちのせいで…。」
矢口が答える。
「そんな…、別になっちのせいとかじゃないよ!」
安倍は言う。
「でも…、でも、なっちが力不足だったから…。」
市井が言う。
「そんな番組が勝手に盛り上げた事、まにうける事ないって…。」
安倍はそれでも泣きつづけていた。
飯田も続けて言う。
「勝ち負けなんてどうだっていいじゃん!」
すると、今まで黙っていた中澤が口を開いた。
「そうやで。なっちは何の為に歌ってるんや?誰の為に歌ってるんや?売れる、売れない…。そんな勝負事をするためだけに歌ってるんか?歌が好きやから歌ってるんちゃうの?そんな自分の為に歌ってるんやろ?」
安倍は答える。
「けど…。なっちなんかがメインで歌ったから、こんな…。みんなに迷惑かけるような結果に…。」
中澤は少し声を強くして言う。
「うぬぼれるんもええ加減にしい!歌ってるんはなっちだけやない。ウチらかて歌ってるんや。それをまるで自分だけが悪いみたいな言い方しよって。『ふるさと』はなっちの曲やない。『モーニング娘。』の曲なんや。だからアンタ一人に全部責任がある訳やない。それになっちだけの『モーニング娘。』やないねんで。ウチらみんなで『モーニング娘。』なんや。せやから『モーニング娘。』に起こる全ての事は、誰々が悪いとか、誰々のためだけとかゆうんやない。みんな平等に責任があるんや。一人で騒いどっても何も解決せんやろ?みんなで力を合わせて次に向かって行かな。な!」
- 291 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年04月03日(水)08時02分22秒
- そして安倍がまたふと気がつくと、今度は楽屋で移動の支度をしている風景だった。
カバンに荷物を詰めている安倍の後ろで矢口が言う。
「正直さぁ〜、ウチらいつまでかなぁ…?」
「いつまでって、何が?」
「私達『モーニング娘。』の寿命。」
すると鏡の前でメイクを直していた保田が言う。
「なによ。急に…。」
矢口は答える。
「いや、なんとなく…。」
安倍は自分の中にも常に存在していた同じ悩みを、押し隠すかの様に言う。
「そんなの!考えたって分かる訳ないじゃない。」
矢口は気まずそうに言う。
「そうなんだけどさぁ〜。」
すると安倍の向かいで交信中だった飯田が言う。
「でも、確かにそれは気になるよね〜。」
矢口は内心ホッとしたらしく、飯田のもとに駆け寄り言う。
「でしょ、でしょ!まぁ別に、ホントに知りたいのかって言ったら微妙だけどさ。やっぱ不安だよね〜。」
すると保田が言う。
「だからその寿命を少しでも長くするために、ウチらは頑張ってるんでしょ?」
- 292 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年04月03日(水)08時03分22秒
- 矢口は答える。
「それはわかってるよ〜。矢口も日々精進してます。でもさ、もし、もしだよ。その寿命が来た時はみんなどうする?」
安倍は言う。
「そんなのわかんないよ。その時になってみないと。まったく縁起でもない事言わないでよ〜。」
すると飯田が言う。
「かおりはお嫁さん…。なんちゃって。そういう矢口はどうすんのよ?」
「えぇ〜?う〜〜〜ん…、矢口はねぇ〜、それでも続ける!『モーニング娘。』としての寿命が来ても、また違った形で復活する!」
保田が言う。
「よく言った!その通り。っていうか、あたしはむしろモーニングに寿命なんてないと思うけどね。人気がなくなって解散しても、ウチらはずっと『モーニング娘。』でしょ?まぁたとえあったとしても、要はその時までに何をしたかってのが大切だと思う。」
すると飯田はその場に立ち上がり言う。
「圭ちゃんいい事言うねぇ。そ!『モーニング娘。』は死なない!」
そう言って飯田は鏡に映る自分を指差す。
すると楽屋の扉が開き、加護と辻が手をつないで入って来る。
「うえぇ〜〜〜い!」
「腹減ったぁ〜〜〜い!」
保田は言う。
「あぁ〜あ…。ウルサイのが来たよ。」
矢口が付け足す。
「まったく…、子供は気楽でいいよなぁ〜。」
- 293 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年04月03日(水)08時03分57秒
- そして安倍が三度目に気がついた時は、目の前で加護が眠り続けている現実だった。
「夢か…。」
すると安倍は、いつのまにか自分に掛けられていた毛布をどかすと、心の中で呟いた。
『みんな…。そうだよね。なっち…、頑張る!』
- 294 名前:詩音 投稿日:2002年04月03日(水)08時06分16秒
- 更新しました。
とりあえず今回は、ここまででご勘弁を・・・。
- 295 名前:ロ〜リ〜 投稿日:2002年04月03日(水)08時49分50秒
- あっ、更新されてる!!
うーん、娘。の寿命ですか・・・
痛いっすねー・・・
現実の娘。達もやっぱり考えてるんですかね・・・辻&加護以外・・(爆)
ご勘弁なんてとんでもないマターリやって下さい。
- 296 名前:詩音 投稿日:2002年04月05日(金)00時19分28秒
- レスありがとうございます。
早速ですが更新です。
- 297 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年04月05日(金)00時20分26秒
- それから一週間が過ぎた。
安倍はつんくの元を訪れていた。
理由はラストシングルの相談だった。
最後に、死んだメンバー、今も闘っているメンバー、みんなで送る歌を歌いたいと。
つんくは快諾した。しかし条件もあった。
それは「中途半端な事はしない事。」であった。
「コレはある意味自己満足や。最後の思い出作りにやるようなモンや。でも『モーニング娘。』の最後の仕事や。そう仕事なんや。今までと同じように、たくさんの人に聞いてもらうために、精一杯やらなアカン。そのためにはどうしたらいいかを、いつもと同じように安倍なりに考えてやる。後悔をしないように。ええな。最後の仕事やぞ。今までで最高のものを作る。それが条件や。」
という事であった。
- 298 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年04月05日(金)00時25分02秒
- 安倍は翌日から行動をはじめた。
はじめに吉澤に連絡した。
吉澤は前向きになった安倍の考えを素直に喜んだ。
そして、「梨華ちゃんに連絡してみます。」と言い、電話を切った。
安倍はそれから高橋にも連絡をしたが、やはり電話を繋いでもらう事は出来なかった。
『やっぱり三人じゃ…。どうしよう…。』
安倍は思った。
そして『裕ちゃんにお願いしてみようかな…。』そう思い、電話を取った。
トゥルルルルル トゥルルルルル
「もしもし、裕ちゃん?なっちだけど…。」
「おう。なっつぁんか。どうした?」
「今ちょっと平気?」
「うん。平気やけど?」
安倍はラストシングルを出すこと、それに『モーニング娘。』として参加して欲しい事を伝えた。
すると中澤は聞く。
「ウチはかまへんけど、つんくさんはそれでもええって言ってるんか?」
「うん…。特に言われなかったけど、なっちが考えてやれって。」
「そうか…。もしこんなオバンでもええなら、なんぼでも力かしたるで。」
「うん。ありがと。」
「そうや!もしあれなら紗耶香も誘ってみたらどうや?」
「え?そっか。わかった。聞いてみる。」
安倍はそう言って電話を切った。
- 299 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年04月05日(金)00時25分32秒
- そしてすぐにつんくに電話をし、脱退メンバーの参加の許可をもらった。
つんくはこう言った。
「ほう…。それええな。最高のフィナーレやんけ。最後やもんな、それでいこう。で、市井には声掛けたんか?」
「いえ、まだこれから…。」
安倍は答えた。
「そうか。ほんならあいつはたいせーの事とかもあるし、俺の方から頼んどいたるわ。ええか?」
「はい。お願いします。」
安倍はそう言って電話を終えた。
- 300 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年04月05日(金)00時26分38秒
- その頃、吉澤は石川に電話をかけていた。
「梨華ちゃん。そういう事なんだけど、どう?みんなで最後に頑張ろうよ」
「うん…。でも…。あたし…。」
「大丈夫。テレビに出る訳じゃないし。」
「うん。わかってるけど…。」
言葉を詰まらせる石川。
そう、実は石川はあの一件以来、カメラの前に立つ事が出来なくなっていた。それは、安倍達のテレビ復帰の一週間前、中澤の退院祝いの前日だった。
ファンに向けてのメッセージビデオの収録をしていた時、石川は土壇場で撮影中止となったのだった。
カメラを向けられた途端、震えが止まらなくなり、うまく言葉を話す事も出来ず、仕方なく安倍、吉澤二人での撮影となった。
そのため石川はテレビ復帰もせず、いままで自宅療養という事になっていた。
この事は吉澤だけではなく、安倍も知ってはいたが、中澤などにも話さず、事を内密にしていた。
「梨華ちゃんだってみんなへ何か伝えたいでしょ?ファンの人達はもちろん、いなくなったメンバー達にも…。」
「……うん。」
「大丈夫だって。あたしも安倍さんもいるんだから。」
吉澤は元気いっぱいに言う。
こうして半ば強引ではあるが、石川も参加を了承した。
- 301 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年04月05日(金)00時28分06秒
- 一週間ほどが経ち、安倍と吉澤はつんくに呼び出された。そしてラストシングルのデモMDを渡された。
「まだこの後アレンジとかあんねんけど、とりあえずそんな感じの曲になる予定や。とりあえず、市井の参加もOKやし、他にも特別ゲストが来る事になったわ。そっちには俺の方からゆうとくから、おまえらは石川、中澤にちゃんとコレ渡しといてな。あと歌詞は大まかにしか決まってへん。おまえらで考えながら、ええ歌詞作って完成さしといてくれ。」
つんくはそう言うと、安倍に四枚のMDと大まかな歌詞を渡した。
安倍は吉澤に石川の分を渡し、自分は中澤の家に向かった。
中澤の家に着き、インターホンを鳴らすと「開いてんでぇ〜!」という中澤の声が聞こえた。
安倍はドアを開け、部屋に入った。
中澤は車椅子に座ったままテレビゲームをやっていた。
「あれ?裕ちゃん、珍しいね。ゲームなんて…。」
そう言った安倍は言葉を失った。
なぜなら、その隣にソファーの陰になって、すぐには気付かなかったが、見覚えのある顔が見えたからだった。
- 302 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年04月05日(金)00時30分11秒
- 「つ、辻ちゃん?!」
そうそれは紛れもなく辻だった。
「ちょっとコレどういう事?ねえ、裕ちゃん?」安倍は驚きを隠せないといった表情で尋ねる。
「あのな〜、あれやねん…。あっ!か〜くそ!この!」中澤はゲームに夢中の様子だったが、すぐにゲームオーバーとなり振り返った。
「くそ〜、また負けたわ。こんなガキに…。まったく…、もっと人のためになるような特技身につけろっちゅうねん。ホンマ…。」
辻は笑っている。中澤は続けて安倍に言う。
「まぁ、座ってや。驚いたやろ?でもどっからどう見ても辻やで。」
「どうして?」安倍は聞く。
「実は五日前から預かってんねん。ご両親から頼まれてな。」
中澤はそう言うと、飯田の墓で会った事、一週間前に電話で頼まれた事を話した。
そして続ける。「でも、こいつな…。まだしゃべれへんねん。声が出ないらしくて…。だからウチがこき使って『ヒイヒイ』言わしたろ思ってな。」
「そうなんだ…。こんな元気そうなのに…。」
そう言う安倍を辻は嬉しそうに見つめている。
「辻も一生懸命話そうと努力はしてんねんけどな。うまく声が出せへんらしくて…。まぁ、少しずつ頑張っていけばええんちゃうかな〜って思って…。」
中澤はそう言うと続ける。
「ほら、辻!ヘラヘラしとらんでお茶ぐらい入れたらどうや?」
- 303 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年04月05日(金)00時32分10秒
- すると辻はテレビを指差し、ニコッと笑った。
「なんや?ウチが負けたんやから、ウチがいれろって言うんか?」
辻は頷く。
「わかった、わかった。まったくなんやねん。たかがゲームぐらいでオバハン使いやがって…。」
そう言って中澤は車椅子で台所へ向かった。
「あっ、いいよ。裕ちゃん。なっち自分で…。」
そう言った安倍を辻は引き止め、ゲームのコントローラーを差し出した。
「何?ゲームしたいの?」
安倍がそう尋ねると、辻は笑って頷いた。
すると中澤は「あっ、ええで、ええで。なっちは辻の面倒見てやって。まったくお茶入れのがなんぼ楽やで…。」と言いながら、キッチンの奥へと消えていった。
「……。よーし、辻ちゃん。じゃあいっちょ勝負するか?」
安倍はそう言ってコントローラーを手にした。
そして「裕ちゃんが『ヒイヒイ』言わされてるね。」と辻に言うと、辻は満面の笑みを浮かべた。
安倍も久しぶりに少しだけ…笑えた気がした。
- 304 名前:詩音 投稿日:2002年04月05日(金)00時35分23秒
- 更新致しました・・・。
- 305 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月05日(金)04時07分28秒
- 中澤の闇は消えたのだろうか?
辻を癒すはずが・・・逆に癒されそうだな(w
作者さん復活・・・待ってました〜♪
- 306 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年04月05日(金)12時21分46秒
- 安倍の復活
何よりも辻に笑顔が戻ってきたということが一番大きい
なんとかなるって予感がしますもの
- 307 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月06日(土)02時26分49秒
- キーは辻加護か・・・。
実際の娘。そしてこの話の娘。両方とも。
頑張ってください。
辻、みんなを癒してくれ。頼んだぞ!!
- 308 名前:詩音 投稿日:2002年04月07日(日)07時03分44秒
- いやぁ〜、皆様とても鋭いレスですね。
っていうか、バレバレか…。
>305の読者様
鋭すぎる…。
まぁ、本日分の更新を見て頂ければ分かりますが、タイミングよすぎです。
>むぁまぁさん
そうですね。
正直、今回話には出しませんでしたが、辻に笑顔が戻るまでも大変だったんです。
一番心に深い傷を負ったのは、辻ですから…。
>307の読者様
こんな時、むしろ子供の方が純粋に、前を向いていけるのかもしれません。
- 309 名前:詩音 投稿日:2002年04月07日(日)07時08分13秒
- ではでは更新ですが、本日で『第三章…傷跡』は終了です。
ちょっと、駆け足な感じもしますが、ご了承下さい。
それでは更新です。
- 310 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年04月07日(日)07時09分04秒
- その日の夜、中澤はいつもの様に悪夢にうなされていた。
中澤は起きて冷や汗を拭うと、「はぁ…。」とため息をついた。
車椅子での不自由な生活にも、何とか馴染んできてはいたが、そんな事は関係なく、あいかわらず毎日の様に悪夢は続いていた。
しかし最近は、慣れてきたせいか足を確認する事はなくなっていた。
その後の行動はいつも決まっていた。
中澤は体を起こし、ベッドから這う様にして、車椅子に乗りこむ。
ただ最近は、隣に敷いた布団で辻が眠っているので、大きな音は立てないよう、静かにリビングに向かっていた。
冷蔵庫からビールを取りだし、一気に半分ほど飲み干す。
テーブルの所の小さな明かりだけともし、一人ため息をつく。
辻が来てからは、テレビをつけることも、大音量で音楽をかける事もなくなっていた。
中澤が一人物思いにふけりながら、つまみを取りにキッチンへ向かおうとすると、寝室の扉の所で、枕を抱えたまま立ちすくむ辻が目に入った。
「つ、辻?すまん…。うるさかったか?」
辻は首を横に振る。
「ごめんなぁ。ウチの事は気にせんで、寝ててええで。」
辻は答えることなく、中澤に近付く。
「どうした?気になって寝られへんか?」
辻は頷く。
「そうか…。分かったわ。ウチもすぐ寝るから、布団に入っとき。」
そう言ってキッチンに向かう中澤の服を辻は掴み、首を傾げる。
「なんや?何を不思議そうな顔しとんねん。ちょっとお酒飲みたなっただけやんか?」
- 311 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年04月07日(日)07時09分45秒
- しかしまた、辻は首を横に振る。
「何がちゃうねん?たまにはふと、飲みたなる時もあんねんて。」
辻は少し間を置くと、さらに激しく首を横に振り、テーブルにあるメモ用紙とペンを取った。
辻はサラサラと何かを書くと、中澤の前に突き出した。
中澤はそれを読み上げる。
「なになに…、『たまにじゃないじゃん。毎日のんでるの、辻しってる。』…そっかバレてたんか…。まぁ、あれや。色々悩む事もあるやん?夜中にちょっと飲むくらい…。」
中澤がそう言うと、辻は次のメモを出す。
『毎日ねてる時うなされてる。辻がいるとたいへん?』
中澤は答える。
「はぁ?いや、ちゃうで。辻の面倒見るんは確かに大変やけど、そんなん今に始まった事やないやん。他の悩みや…。彼氏欲しいなぁ〜とか…。」
辻はまた首を振ると、紙にペンを走らせる。
『うそ!そんなつまんない事じゃない。』
「つまらん事って…、失礼なやっちゃなぁ。ウチにとっては大事な事やのに。ホンマに何でもないて。心配せんでええから。」
中澤はそう言うと、つまみを取りにキッチンへ向かった。
帰ってくると、辻は膨れっ面をしてテーブルに座っていた。
「なんや?結局眠らへんのか?しゃーないなぁ…。」
そう言いながら中澤は、再びキッチンの奥へ向かった。
そして戻ると、「まったく…。これでも食べて機嫌直してや。」と言い、辻の前にアロエヨーグルトを出した。
- 312 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年04月07日(日)07時10分33秒
- しかし、辻は封を切ろうとはしなかった。
「どうした?大好きなアロエヨーグルトやで?食べへんの?」
辻は相変わらず膨れっ面をしたままだった。
中澤は呆れた様にため息をつくと言った。
「わかったわ…。アンタには負けたよ。正直に言うわ。」
そう言うと中澤は、ゆっくりと話し始めた。
「ウチ…、足が動かへんやろ?それでなぁ〜…、よくイヤな夢見んねん…。それで眠れんくてな。こうしてビール飲んでるっちゅうわけや…。これはホンマ。嘘やないで。」
すると辻は少し悲しそうな顔をして、中澤を見つめた。
「ほらぁ〜、そんな目で見られるからイヤやったんや。自分かてまだしゃべれへんやろ?同じようなモンやで。だからホンマ気にせんでええからな。」
中澤はそう言って、辻の頭をなでた。
辻は再びメモを取ると、ゆっくりと書いた。
『辻は声がでないです。だから中澤さんが辻の口。そのかわり辻が中澤さんの足になる。』
「辻…。」
中澤は呟いた。
辻は大きく頷いた。
中澤は思わずこぼれそうになる涙をこらえて言う。
「ありがとな…。でも、辻の声は期間限定やろうけど、ウチの足は一生やで。気持ちだけでええよ。それだけで十分や…。」
すると辻がそのメモに付け足す。
『じゃあ、ずぅ〜〜〜っと足になる。』
書き終えると、辻は笑顔で胸を張る。
- 313 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年04月07日(日)07時11分03秒
- 中澤は泣き顔を見られるのを隠す様に、後ろを向くと言った。
「ほら!ヨーグルトはよ食い!食べないならウチが食べてまうで。」
辻は満足した様に微笑むと、ヨーグルトの封を開け、あっという間に平らげた。
しばらくして中澤が言う。
「そうや!ウチが辻の口いう事は、さっきのヨーグルトもウチが食べるべきやったな…。これからはそうするか…?」
すると辻は思いっきり首を横に振り、『じゃあ、足やめる。』と書いた。
中澤は「冗談や、冗談!辻の分まで食うてたら、ものすごい体型になってまうわ。」と言うと、2本目のビールを開けた。
そして空が明るくなってきた頃、二人一緒に中澤のベッドで眠りについた。
中澤はその日から、不思議と悪夢を見る事はなくなった。
- 314 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年04月07日(日)07時11分49秒
- こうして数日後、ラストシングルのレコーディングの日を迎えた。
安倍は吉澤、石川と共に中澤を待っていた。
すると、中澤が辻に車椅子を押されながらやって来た。吉澤達はもちろん驚いたが、安倍と中澤の説明を受け、久しぶりの再会を喜んだ。
つんくのもとに行くと、市井と共に石黒、福田が待っていた。
つんくと市井の計らいで、結局全ての脱退メンバーが集結した。
そして、それから一週間ほどかけて、ラストシングルのレコーディングは終了した。
その日の夜のうちに安倍、吉澤、中澤の三人で『モーニング娘。』の解散記者会見を行い、夢のメンバーでのラストシングルの発売を発表した。
「ラストシングルのタイトルは『Friends』です。色々な意味が込められていますが、一言で言うと、全ての友達へ送りたい曲です。」
安倍はそう伝えた。
- 315 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年04月07日(日)07時12分19秒
- 2週間後、ラストシングルは発売された。『Friends』は今までで最高の売上を記録した。しかし、かつての様にオリコンと共に、カラオケチャートで上位に入るという事はなかった。
こうして『モーニング娘。』は正式に解散となった。
- 316 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年04月07日(日)07時12分57秒
- 数日後、今や一般人となった安倍と吉澤は二人で集まっていた。
これからの事を決めるために。
安倍が言う。
「これで本当に暇になっちゃったね。」
「そうですね。どうします?ゆっくりしますか?」
「よっすぃ〜はどうしたい?」
「え?どうって…?」
「なっちはね、止まりたくないんだ…。ゆっくりでもいいから走りつづけたい。」
安倍はそう言うと、遠くを見つめる様にして続ける。
「前にね、もし『モーニング娘。』が終わっちゃったらどうする?って話した時にね、矢口が言ってたんだぁ…。『矢口はねぇ〜、それでも続ける!『モーニング娘。』としての寿命が来ても、また違った形で復活する!』って…。」
「矢口さんが…?」
「うん。その時はなっち、何も答えられなかったんだけど、今なら答えられる。やっぱり、なっちには歌しかないから…。ずっと歌いつづけていきたいから…。だからこれからも、死んだメンバーのために…、そして何より歌が大好きな自分のために…、歌を続けていこうと思う。そう…、違った形でもいいから復活を目指して走りたいと思う!」安倍は言った。
「ノった!その話、吉澤もノらせて頂きます。梨華ちゃん、のの、高橋、中澤さん、そして加護のためにも…。」吉澤が答える。
「うん。二人しかいないけど頑張ろう!」安倍は言う。
- 317 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年04月07日(日)07時13分30秒
- 「でも…、どうしましょう?どうやって…?せめてなんか楽器でも出来たらなぁ…。ストリートライブとか出来るのに…。」吉澤が聞く。
「う〜ん…。楽器かぁ…。そうだ!楽器弾けるようになればいいんじゃん!練習しよう!」安倍は力一杯答える。
「か、簡単に言うなぁ〜。でもやるだけやってみますか?」吉澤も半分やけ気味に言う。
「よーし!そうと決まればさっそく練習しよう。」
「あ、安倍さん。楽器は…。」
「あぁ!そうだった…。」
「まったく…。」
こうして二人は再出発を心に決めた。
- 318 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年04月07日(日)07時15分37秒
- 一週間後。
「そうか〜。ストリートライブな〜。おもろいやん。がんばりや〜。」
中澤が言う。
安倍、吉澤、石川の三人は中澤の家に来ていた。
「でも大変ですよぉ。」
石川が言う。
「だから、頑張るんじゃない。」
安倍が答える。
吉澤が呆れた様に言う。
「でも安倍さん、前向きになったのはいいけど、今度は楽観的過ぎて…。」
中澤が言う。
「ハハハ!ええやん。やっとなっちらしくなってきたわ。」
「裕ちゃんもやろうよ。」安倍が言う。
「いや、ウチは遠慮しとくわ。もうご隠居やし、ガキの面倒も見なアカンしな。」
そう言って中澤は辻を見る。
しかめ面をしている辻の頭をなでながら安倍が言う。
「むしろ、裕ちゃんが面倒見てもらってるんじゃないの?」
「そうですよぉ。ののの方が大変ですよ。老人介護してるんだもんね?」
石川が言う。
「なんやと〜!?」
中澤が石川に掴みかかろうとする。
「ハハハハハ!」
全員の笑いがこだまする。
その時、吉澤が言う。
「あれ?安倍さん、笑顔…。わ、笑えてるよ。ちゃんと笑えてるじゃん!」
安倍が答える。
「え?あっ!」
「なんや?なっつぁん!そんなにオモロかったんか?!失礼な!」中澤が言う。
そして、またみんなの笑いが響いた。
- 319 名前:第三章…傷跡 投稿日:2002年04月07日(日)07時17分39秒
- 2004年1月28日
「ほら!安倍さん早く!」
「だ、だって重くて…。」
安倍は大きな荷物を抱えながら吉澤について行く。
「よっしゃ!ここでいいかな…。」
吉澤は荷物を置くと、おおきなケースからギターを取り出した。
「ふぅ…。重かった…。」
安倍もバッグからキーボードを取り出した。
準備を終えると安倍は言った。
「あ〜、なんか緊張してきたよ。人前で歌うなんて久しぶりだもんね。」
「うん。しかもこんな事するの初めてだし…。」
「大丈夫かな?まだあんまり上手に弾けないんだよね…。」
「帰ります?今日じゃなきゃダメって言ったのは安倍さんですよ?」
「わかってるよぉ…。新しい旅立ちだもんね。デビューの日はこの日じゃないとね。」
「でも、ホント緊張しますよね…。深呼吸、深呼吸…。」
「おぉ〜きくふ!た!つ!深呼吸〜、フ、フー。だね!」
安倍が続ける。
「よし!じゃあ、いきますか?」
そして二人は手を合わせ叫んだ。
「がんばって、いきま〜しょい!」
第三章 完
- 320 名前:詩音 投稿日:2002年04月07日(日)07時41分02秒
- 以上で『第三章…傷跡』終わります。
次回からは『第四章…痛みの行方』に入ります。
実はここで、話が大きく分かれているとも言えます。
それでもどうか、今後ともお付き合いください。
ちょっと、月日が飛び過ぎな感じがしますが、元々小説を書こうと決めた時はココで完結の予定でした。
でも、解決していない事や、もう少しいじりたい人がいたため、続きが出来ました。
それでも、本当は『微笑みのそばで…。U』にでもしようかと思っていたのですが、Uの話があまり続かないし、初めて書くくせにUなんて…。と思い、止めて一つにしました。
それに一つにした事で、自分の中で思っていたよりも、ずっと大作になりましたし。(あくまで自分的にね)
という事で、三章と四章の間にはそのような背景があった事をご理解下さい。
だから三章の最後、駆け足気味なのかも…。エンディングに向かう感じ。
一応修正も色々考えたんですが、どうも納得いかなくて。
そのままで…(w
以上、長レスでした。
- 321 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月08日(月)01時34分42秒
- 確かにUにしても良かったかもね。
でも、続きでやるからこそのつながりってものが生まれるものでして・・・。
その分、筆力も問われますが(ニヤリ)。
でも、詩音さんなら大丈夫かな?
えらそうなこと言って申し訳無いが、期待しております。
自分では文章書けない、いうだけ大将なもんで。
生死にかかわらず全メンバーの心に決着をつけてあげてください。
- 322 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月09日(火)02時14分49秒
- いやいや、せっかく容量ある空板なんだからこのスレで続行は正解と思われます。
なっちに笑顔が戻ってよかった♪なっちありがとう(w
今、すごい気になるお話なんで作者さんがむばってねー
- 323 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年04月09日(火)12時30分47秒
- これがモーニング娘。なんだなと思わせるエンディングでしたね
第三章の執筆お疲れ様でした
新章の方、楽しみにしております
またよろしくお願いしますね
- 324 名前:詩音 投稿日:2002年04月11日(木)19時27分47秒
- >321の読者様
筆力ですか…。
いやぁ〜、それにはあまり自信がなかったり…。
>322の読者様
がむばらせて頂きます。
もうしばらくお付き合いください。
>むぁまぁさん
いつもあたたかいレス、励みになっております。
こちらこそよろしくお願いします。
ではでは『第四章…痛みの行方』スタートです。
- 325 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年04月11日(木)19時28分52秒
- 第四章 痛みの行方
「ありがとうございましたぁ〜!」
安倍、吉澤二人の声が響く。
あれからというもの、二人はストリートライブを積極的に行っていた。
最初は他のアーティストのコピーだけだったが、徐々にオリジナルも作り始め、『元モーニング娘。』という事がどう働いたかは分からないが、小人数ながらも見に来てくれるファンも増えていた。
今日は中澤、辻の二人が来てくれていた。
「いや〜、たいしたもんやな。意外と形になってるやん。」中澤が言う。
「意外って、失礼ね!」
安倍が口を尖らせながら言う。
吉澤が付け足す。
「そうですよ。形にするだけでもどんだけ大変だった事か…。」
「いやいや、別にケチつけるわけやないで。ホンマに頑張ったんやなぁ〜おもて…。」
中澤は急いで弁解する。
「はい。お疲れ様。ジュース買ってきましたよぉ。」
今や安倍、吉澤のマネージャー気分で手伝いに来ている、石川が駆け寄る。
「あっ、ありがと。」
吉澤がジュースを受け取る。
「えっ?梨華ちゃん、なんでなっちは『おしるこ』なの〜?もっとさっぱりしたヤツがよかったのに〜。」
安倍が石川の差し出したジュースに文句をつける。
「いや、なんか『何が出るかお楽しみ…。』ってヤツがあったから面白そうだな〜と思って…。ダメですかぁ…?」石川が言う。
- 326 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年04月11日(木)19時29分22秒
- 安倍は『おしるこ』の缶を見つめながら答える。
「いや、ダメって事もないけど…、これじゃあ…ねぇ?」
「私のもそれで買ったの?」
スポーツドリンクを飲みながら吉澤が尋ねる。
「うん。よっすぃ〜のは当たりだった。」石川が答える。
「って事はやっぱりなっちのははずれなんじゃん!」
安倍は頬を膨らましながら言った。
「エヘヘヘヘ。これからは毎回運試しって事で…。」石川が言う。
それを見つめていた中澤が口を開く。
「まったく…、えらいマネージャー雇ってもうたな。」
みんなの笑いがこだまする。
しかし辻も微笑んではいるものの、未だ声の出ない状況だった。
- 327 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年04月11日(木)19時29分54秒
- その後全員で加護に会いに行った。
辻も何度か足を運んではいたが、やはり加護の姿を見るのは辛いらしく、病室に行くといつも暗くなっていた。
病室でも一人、加護と距離を置き、寂しそうに加護を見つめる辻。
そんな辻に中澤が言う。
「ほら!アンタがジメジメしとったら加護も元気でぇへんやろ?」
石川が付け足す。
「ほら。ののもこっちおいでよぉ。」
しかし辻は下向いたまま動こうとはしない。
すると安倍が、急に思い付いたかの様にそっと中澤に耳打ちする。
「裕ちゃん、突然なんだけどさ〜。辻ちゃんと加護ちゃん二人きりにした事ある?」
中澤も小声で答える。
「なんで?そーいえば…、二人にした事はないけど…。」
「二人きりにしてあげようよ。辻ちゃんのためにも。」
そう言うと安倍は立ち上がり「さっ、後は若い二人にお任せしてウチらはお茶でもしに行きますか?」と言うと、中澤の車椅子を押し、吉澤、石川と共に外へ出た。
辻は困った顔をして、みんなを追おうとしたが、安倍が辻に言う。
「ちゃんと加護ちゃん元気付けてあげてね。」
そして出る間際、安倍は「二人で悪さしちゃダメよ。」と付け足した。
- 328 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年04月11日(木)19時30分33秒
- 外へ出て、安倍は四人分のジュースを買い、全員に配った。
すると石川が「あぁ〜!安倍さん。なんで石川『おしるこ』なんですかぁ〜?」と不満そうに言った。
「お、か、え、し。」
安倍はそう言うと、椅子に腰掛けた。
石川が膨れっ面をしながら聞く。
「ところで安倍さん。なんで二人きりにしたんですか?」
安倍は答える。
「なっちもね、よく加護ちゃんと二人きりでお話するんだけど、加護ちゃんにいろんな話聞いてもらうとすごく元気が出るからさ。辻ちゃんも他の人の前じゃ言いづらい事もあるだろうし…。」
吉澤も思い出した様に言う。
「そういえばあの二人、昔よく内緒話してたしな〜。」
石川がさらに聞く。
「でも、ののしゃべれないですよ?」
中澤がつっこむ。
「アホか!加護かて話さへんわ。」
安倍が付け足す。
「お互い声は出なくても、積もる話はいっぱいあるだろうから…。」
そう言ってしばし沈黙が続いた後、中澤が口を開いた。
「そういえば、高橋はどないしてるんや?」
吉澤が答える。
「さぁ?みんなの一周忌にも見なかったし…。」
安倍が言う。
「相変わらず電話つないでもらえないし…。」
「そっか…。」
中澤はそう言うと俯いた。
しばらくして四人は加護の病室に戻った。
辻は疲れたのか、加護の手を握ったまま眠っていた。
「まったく…、こうして見ると二人ともまだまだ子供やな。」中澤が言う。
そして眠る辻を起こし、安倍が中澤の車椅子を押して帰って行った。
- 329 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年04月11日(木)19時31分02秒
- 一週間後。
今日も安倍達三人はライブ活動をしていた。
いつもの様に順調に進んでいたが、突然安倍の手が止まった。
吉澤はすぐに気付き、安倍の方を振り返るが、安倍は見ている人の中の帽子を深くかぶった女の子を見ていた。
『え?誰だろう?』
吉澤はそう思ったが、演奏を止めるわけにはいかないと思い、安倍の視界に入り合図を送った。
安倍は慌てて演奏をはじめようとするが、なぜかうまく再開できぬままその曲は終わってしまった。
吉澤はすぐに「いや〜、みなさんスイマセン!なんかハプニングが…。」と言って取り繕うとした。
安倍も「すいません。なんか電波が…。」などと言ってごまかした。
その後の安倍の演奏もなぜかギクシャクしてはいたが、なんとか無事終わる事が出来た。
その時にはすでに、さっきの女の子はいなくなっていた。
「ありがとうございましたぁ〜。」
吉澤はそう言うと、すぐに安倍の元に駆け寄り聞いた。
「どうしたんですか?急に…。」
安倍は自分の手を見つめながら答える。
「うん…。なんか今さら緊張ってのも変だけど、手が震えちゃって…。」
吉澤は不思議そうに聞く。
「途中、誰か見てませんでした?」
「あっ、なんか高橋がいたような気がして…。」
「まさかぁ〜。」
その時いつもの様に石川がジュースを持ってくる。
「はい。お疲れ様です。どうぞ。」
今日は安倍がオレンジジュース、吉澤は『ミルクシェーキ』だった。
「うげ〜!マジかよ?」
吉澤は顔を歪ませる。
その日はそれで解散となった。
- 330 名前:詩音 投稿日:2002年04月11日(木)19時32分56秒
- 更新しました。
短めですが、とりあえず今回はこれにて…。
- 331 名前:ヤグヤグ 投稿日:2002年04月12日(金)00時10分47秒
- 高橋に何が?
これからも期待してます。頑張って下さい。
- 332 名前:ロ〜リ〜 投稿日:2002年04月12日(金)02時40分48秒
- 4章始まりましたね。
今まで絡みの無かった高橋も出てきたし。
今後どう展開していくか楽しみです。
それと好奇心旺盛でボケてる石はいいっすね!!(萌)
子音さんがんばって!!
- 333 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年04月12日(金)12時23分15秒
- 新章いよいよ開始ですね
しかしスナック菓子と同じで読み出すと止まらないっていうか
次が楽しみで楽しみで仕方がありません
誌音さんのペースで頑張って下さい
- 334 名前:詩音 投稿日:2002年04月14日(日)10時12分34秒
- >ヤグヤグさん
ありがとうございます。
期待に応えられるよう、頑張ります。
>ロ〜リ〜さん
萌?
いやぁ〜、ちょっと意外なお言葉ですね。
子音…(w
これからもよろしくです。
>むぁまぁさん
楽しみにして頂いていると思うと、大変励みになります。
ありがとうございます。
誌音…(w
今後とも見守ってやってください。
では、更新です。
- 335 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年04月14日(日)10時14分00秒
- 次の日、辻は一人加護の病室を訪れていた。
最近は誰よりもよく来ていた。
辻はただ加護と一緒にいれるだけで、よかったはずだった。
しかしその日は違った。
いつもの様に花瓶の水を取りかえる。
この日は差してある花も、辻が買ってきた新しい花に取り替えた。
そしてまた、いつもの様に加護の隣の机に置く。
しかしその時、謝って手を滑らし花瓶を落とす。
ものすごい音と共に花瓶は割れ、花は床に散らばった。
『ゴメン!』
すかさず謝ろうとしたが、声は出ない。
加護を見ると、そんな事にも気付いていないという風な様子だった。
割る前と何も変わらないまま、眠り続けている。
辻は思った。
『自分が何を言おうとしても、声は出ない。何をしても加護には伝わらない。二人ともちゃんと生きているのに…。何も繋がらない…。』
『あいぼん!』
そう叫ぼうとしたが、やはり声にはならない。
お互いに、別々の閉鎖された空間の中に孤立している。
辻は水浸しになった床を見つめたまま、昔を思い出す。
『昔はあんなに繋がっていたのに…。何をするにも一緒だったのに…。』
辻の目に涙がにじむ。
- 336 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年04月14日(日)10時15分11秒
- その時、病室の扉が開き吉澤が入ってくる。
「あれ?のの来てたんだ?」
辻は急いで涙を拭い、笑顔を作る。
「いやぁ〜、スポーツジムの帰りにさ、ちょっといい物見つけてさ。遠回りだったんだけど、早く加護に見せたくて、走って来ちゃったよ。」
そして吉澤は加護の頬をつつくと、バッグから大きな袋を取り出した。
しかし吉澤は、辻の足元で花瓶が割れている事に気付き、荷物を置くと言う。
「ののぉ〜。やっちゃったね?それ中澤さんが『高かったでぇ〜!』って言ってた奴なのに。」
辻は気まずそうに下を向く。
「とりあえず片付けないと…。中澤さんには後で一緒に謝ってあげるから。ケガはない?」
辻は頷く。
割れた破片を集めながら吉澤は呟く。
「接着剤とかでくっつけりゃバレないかな?…いや、無理か…。」
そして、一通り片付け終えると、吉澤は言う。
「そうそう!さっきの続き。お土産があるんだよねぇ〜。」
そう言うと、先ほどの大きな袋を開け、中身を取り出す。
「ジャーーーン!!!」
その中身は大きなぬいぐるみだった。
「どう?加護の大好きなピンク色のドレス着たキティちゃん。かわいいっしょ?」
吉澤は誇らしげに加護の前に掲げる。
当然、加護が反応をする事はないが、吉澤はそんな事気にしないという感じだった。
- 337 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年04月14日(日)10時16分21秒
- 辻は不思議だった。
果たして加護が喜んでいるのかどうかも分からない。
それ以前に、今加護はぬいぐるみどころか、自分たちの存在さえ気付いていないかもしれない。
それなのに普通にしていられる吉澤が不思議だった。
すると突然、吉澤がぬいぐるみを辻の方に向け言う。
「どう?ののはイイと思う?」
辻は一瞬たじろいだが、素直にイイと思えたので頷いた。
「そっか。よかった〜。ののが気に入れば、加護も気に入るでしょ?」
そう言うと吉澤は、ぬいぐるみを加護のベッドに置いた。
そして言う。
「ねぇ、なんか嬉しそうな顔してると思わない?」
辻は首を傾げる。
「加護だよ、加護。よく見てごらん。ほら、なんか嬉しそうな顔してるでしょ?」
辻にはわからなかった。
そのため、返事はしなかった。
すると、吉澤は言う。
「あれ?ののが一番加護の事は分かると思うんだけどな…。」
しかし辻は、変わらず何の返事もしなかった。
- 338 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年04月14日(日)10時16分54秒
- 吉澤は辻の気持ちを察したのか、静かに話し始めた。
「いい?加護は生きてるんだよ。あたし達と同じ。動きもしないし、目も開かない。でも、ちゃんと生きてる。ハートは生きてるんだよ。だから、ちゃんと感じてるよ。このキティちゃんも、あたし達の事も。…ののの気持ちも。」
辻は視線を加護に移す。
すると吉澤が続ける。
「人間ってさ、コミュニケーションの取り方が下手だと思うんだよね。他の動物より。つまりさ、言葉とか科学技術が進歩したせいで、それに頼らないとダメになっちゃった。もともと動物はそんなものなくても、意思の疎通なんて出来るはずじゃん?それを最近、加護とかののを見てて思うよ。相手の気持ちとか、相手の心を感じ取ろうとすれば、そんなものなくてもお互いの気持ちって、通じ合えるんだな〜って。」
そして吉澤は辻の手を取ると、加護の手を握らせた。
そして二人の頭を優しく撫でた。
すると辻にも、さっきまで無表情で眠っていた様に見えた加護が、今度は微笑みかけている様に見えた。
そして、まるで語り掛けるかのように。
『やっと、ののとお話できるよ。これからもヨロシクね。』と。
辻は目に浮かぶ涙をこらえながら、加護の手を握りなおした。
そして、『あいぼん。こっちこそヨロシクね。』と、心の中で呟いた。
吉澤もそんな二人を見て、心から微笑んだ。
しかし、後日花瓶の事で中澤にお説教をくらったのは、言うまでもなかった。
- 339 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年04月14日(日)10時22分23秒
- 数日後。
今日もライブ活動の予定だったが、安倍の体調不良により、中止となっていた。
特にお見舞いは必要ないと言われた二人は、中澤の家で辻とゲームをしていた。
やり込んでいるだけあって相変わらず辻はうまかったが、吉澤はなぜかさらにうまかった。
辻はいつも悔しそうに何度も何度も挑戦していた。
しかし、面白いのは中澤と石川の二人だった。
当然二人ともダントツでへたくそなのだが、それでも最初は中澤のが強く、よく石川を馬鹿にしていた。
しかし、慣れ始めた今は石川が勝つ事が多くなっていた。
「やった!また勝った!中澤さんダメですよぉ。あそこであれじゃ…。」
「うるさい!ちょっとうまくなったからって、ええ気になんなよ!もう一回や、もう一回。」
「いいですよぉ。」
………
「勝ちー。もうダメですね。中澤さん。」
「くぅーーーーー!!!うるさい!もう一回!」
「『お願いします』は?」
調子に乗る石川。
「キーーー!このガキ!お、お、お願いします!」
「石川様?」
さらに調子に乗る石川。
吉澤と辻は大笑いしている。
- 340 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年04月14日(日)10時23分07秒
- 「いぃ〜、いぃ〜!イ、シ、カ、ワ、サ、マ!!!」
「しょうがないなぁ…。」
こうしてまたゲームが始まった。
しかしまたも石川有利となったその時、中澤が叫んだ。
「あっ、辻!と、鳥や!にわとりがおるで!」
一瞬辻は驚いたが、すぐに気付いた。
しかし何より石川の驚き振りがすごかった。
「キャー!えっ?!う、うそ?ど、どこ?イヤ!」
吉澤は思った。
『おぉう、卑怯…。』
そうこうしているうちに、やはり中澤の勝利となった。
「しょーーーり!!!いや〜アンタも大した事あらへんな。お?」
「ひ、ひどい…。そんなのズルですよぉ!」
「なんでやねん?別に嘘はついてへんもん。ウチには確かに鳥がいたように見えたし…。でも、見間違いやったわ。ハッハッハー!」
吉澤は思った。
『さ、さすがに汚ねぇ…。』
そして横にいる辻に小声で言った。
「ののはああいう大人になっちゃダメだよ。」
辻も分かっているらしく、大きく頷いた。
- 341 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年04月14日(日)10時23分44秒
- 「なんやと?よっすぃ〜、聞こえとるで!」中澤が言う。
吉澤は答える。
「い、いや、なんでもないです。冗談冗談…。ハハ…。」
『ひゃっほう!地獄耳…。』
吉澤はそう思った。
石川が言う。
「もう一回、お願いします!」
当然のごとく中澤は言う。
「中澤様は?ビューティー中澤様!」
石川は言う。
「ビューティー中澤様!」
そして始まった途端に今度は石川が言う。
「あっ、ゴキブリ!」
中澤は答える。
「甘いわ!そんなモンおったら、おまえかてアカンやろ?少しは考え。」
『くそぉ〜。』
石川はそう思い、続けて言う。
「あっ、ビール!」
「効かん!!!」
中澤はサラッとあしらう。
石川はひらめいた。
『よぉ〜し…。』
そして石川は言う。
「あっ、イイ男!!!」
すると中澤「え?うそ?ホンマ?どこ?ドコ?」
見事石川の勝利に終わった。
「イエ〜〜〜イ!中澤さんもマダマダですね。フン!」
「しもた〜〜〜!クソ〜…。なかなかヤルやん!もう一回や!」
「……。」
石川は返事をしない。
「チッ。お願いします、イシカワサマ!」
「チャーミー?」
「はいはい!チャーミー石川様!」
吉澤、辻は大爆笑である。
こうしてこの日の夜は過ぎていった。
- 342 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年04月14日(日)10時25分05秒
- 次の週、安倍も体調が少しよくなったと言う事で、ライブをする事になった。
しかし、相変わらず安倍はうまく弾けていない。
吉澤が「辛いなら今日は終わりにしましょうか?」というと、「ゴメン。大丈夫。」と安倍は答えた。
そして今日も帽子を深くかぶった少女は来ていた。
安倍が声を掛けようとすると、逃げるように帰っていってしまった。
そしてこの日の演奏も終わり、恒例の石川ジュースを飲み、それぞれは帰路に着いた。
吉澤は帰る途中に呟く。
「あぁ〜、もう口の中トマト臭い…。まぁ安倍さんの豆乳よりはマシかな…?」
そして思った。
『そういえば安倍さん大丈夫かな?まだ調子悪そうだけど…。ひどくならなきゃいいけど…。それとあの子はなんなんだろなぁ…。』
- 343 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年04月14日(日)10時25分34秒
- その頃安倍は加護の病院に来ていた。
ノックして部屋に入ると、そこには辻がいた。
「あれぇ?辻ちゃん、一人?」
辻は頷く。
「今日裕ちゃんは?」
辻はゲームをしているそぶりを見せる。
「あぁ。なるほど。特訓中か…。」
安倍はそう言って加護の横に座ると、いつもの様に加護に話しかけた。
加護がこうなってからというもの、安倍は定期的に『最近こんな事があった、あんな目にあった。』等と、日記に記してある事を事細かに報告していた。
それは加護を一人にさせたくない、みんながしている事を同じ仲間として、知っていて欲しいという、安倍の気持ちからだった。
ただこの日は辻がいたからか、最近の自分の不調を言う事はなかった。
- 344 名前:詩音 投稿日:2002年04月14日(日)10時35分44秒
- 以上、更新致しました。
それと、ちょっと三章は長めでしたけど、第四章、最終章は共に短めになると思います。
前にも言いましたが、あまり長い話にならなくて…。
なので今のところ、構想上は結構サクサク進む予定です。
では、また。
- 345 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年04月15日(月)08時06分44秒
- 更新お疲れ様です
今日も朝から泣けちゃいました
それから漢字間違ってましたね
ごめんなさい・・・
- 346 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月16日(火)01時17分01秒
- 辻加護、つながったー!
よかった、よかった。
しかし、安倍しゃん・・・。どうしたんだ?
- 347 名前:ロ〜リ〜 投稿日:2002年04月16日(火)20時30分40秒
- 辻と加護のシーンは泣きました・・・。
やっぱり詩音さんはうまいですね。
石とゲームで子供のように張り合う姐さんには爆笑でしたが・・・。
短くても詩音さんのことだから中身の濃い話になるんでしょう。
期待していますのでがんがってください!!
あと、漢字が間違ってましたね・・・。
すいませんでした。
- 348 名前:詩音 投稿日:2002年04月17日(水)23時28分25秒
- 皆様レスありがとうございます。
ちなみに名前間違いなど、全然気にしておりませんので(^_^)
では、更新です。
- 349 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年04月17日(水)23時29分49秒
- 数日後、今だ体調の優れない安倍の家に、吉澤と石川がお見舞いに来ていた。
石川が聞く。
「安倍さん、大丈夫ですかぁ?」
「うん…。ちょっと頭痛いけど、大丈夫。」
安倍は答える。
吉澤が言う。
「いいッスよ、寝てて。」
しかし安倍は二人にお茶をいれながら答えた。
「平気だって。ただの風邪だから。」
「でも、ひどくなったら大変じゃないですか。」
吉澤は言う。
「どーしても辛くなったら、ちゃんと大人しくするよ。」
「病院行きました?」石川が聞く。
「ううん。行ってないけど…。あっ、でも加護ちゃんの所には行ったよ。」
「ダメですよぉ。ちゃんと診てもらわないと…。」
石川は言う。
「そうだね。あんまり治らない様じゃ行かないとね。」
安倍は笑顔で答える。
- 350 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年04月17日(水)23時30分27秒
- 吉澤はその安倍の顔を見て『まったく…。』と思いながらも、少しホッとして言う。
「ところで、あの子はなんなんでしょうね?一体いつから来てたんだろう?」
安倍が答える。
「高橋?」
「うん。高橋…?この前なんてマスクまでしてきて、顔なんてわかったもんじゃないけど…。」
吉澤がそう言うと、石川が付け足す。
「あれホントに高橋なんですかねぇ?」
「なっちはそう思う。どうして来てるのか、そしてどうして逃げるのかはわかんないけど…。」
そう言う安倍に、吉澤は口をへの字にして答える。
「やっぱり避けられてるのは確かですよね。っていうか、あれっきり誰も連絡取れてないのに、どうして知ってるんだろう…?」
石川が言う。
「誰かから聞いたのかなぁ〜?」。
吉澤が聞く。
「誰かって?」
「ん〜…。わかんないけど…。」
そして少し会話に間があいたところで、安倍が言う。
「まぁ、どうやって知ったとしてもやっと高橋と会えたんだから、今度こそ逃がさない様にしなきゃ。」
すると吉澤が腕組しながら答える。
「よ〜し、じゃあ罠でも仕掛けときますか?逃げられない様に。」
石川がそれに答える。
「やるかぁ。で、どんな罠?」
安倍が付け足す。
「絶対に捕まって、絶対に逃げられない罠ね。」
石川が言う。
「ケーキとか?」
吉澤が呆れて答える。
「そんなのののぐらいしか捕まんないよ。」
「そっかぁ…。」
そしてその後は、いつもの様にたわいのない話をして終わった。
- 351 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年04月17日(水)23時30分57秒
- 更に数日後、今日はライブ活動の予定の日だった。
しかし朝のうちに安倍から吉澤の所へ電話が入った。
「ゴメン。ちょっと今日も頭痛くて…。」
「え?またですか?ホント大丈夫ですか?病院行きました?」
「ううん、行ってない。」
「ダメですよ。行かなきゃ。ホントに風邪なんですか?」
「うん…。多分ね、偏頭痛ってやつだと思う。ちょっと調べたんだけど、そこに書いてある通り、頭の片側が痛いし、ちょっと吐き気もするの。でも、特にどこが悪いって訳じゃなくて、持病として持ってる人結構多いんだって…。だから心配ないんだけど、今日もちょっと出来そうにないんだ…。ごめん…。」
「そうですか…。まぁ、こっちは全然構わないッスけど…。ホント大丈夫ですか?早く良くなって下さいね。」
「うん。ありがと…。」
「それじゃ…。」
吉澤がそう言って電話を切ろうとした時、安倍が言った。
「あっ、あのさ…。」
「はい?どうかしました?」
「この事…、裕ちゃんには内緒にしといて…。」
「え?なんでですか?」
「心配かけたくないんだ…、裕ちゃんには…。だって裕ちゃんは自分の足の事もあるのに、辻ちゃんの事でも苦労してる。あたし達は辻ちゃんの事全部裕ちゃんに任せっきりで、好きな事させてもらってる…。だから…。」
「確かにそうですけど…。まぁ、わかりました。とりあえず内緒にしときますよ。」
「ありがと。ゴメンね。」
こうして安倍との電話は終わった。
- 352 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年04月17日(水)23時31分38秒
- その後も、安倍は不調を訴えつづけた。
吉澤達は何度も「ちゃんと診てもらいましょうよ。」と言っていたが、安倍はいっこうに病院には行かなかった。
しかし安倍が病院に行かないのには理由があった。
ただの偏頭痛だと思っていたのは確かだが、それ以上に安倍はこの痛みをみんなの痛みだと感じていた。
後藤の痛み、矢口の痛み、飯田の痛み、保田、小川、紺野、新垣の痛み、中澤、辻の痛み、高橋の痛み、そして加護の痛み。
みんなの痛みを少しでも味わいたかった。
決して自殺などを考える安倍ではなかったが、そうする事で自分が生き残った事への理由を付けようとしていた。
正直安倍は、眠ったままの加護を見て何度もこう思っていた。
『どうしてあたしなんかが生き残ったんだろう?こんなに加護ちゃんが辛い思いをするぐらいなら、ごっつぁんがあんな目に遭うくらいなら、かおりが…。あの時、無理矢理にでも矢口を止める事ができたなら…。あの時矢口を助ける事が出来たのはあたしだけなのに…。あたしがもっとしっかりしていれば…。あたしなんか……。』
だから安倍は、自分が苦しい時ほど、メンバーの苦しみをわかったような気がして、気が楽だった。
そのため安倍は、ギリギリまで苦しみを耐えていた。
しかし、それは決して正しい行動ではなかった。
- 353 名前:詩音 投稿日:2002年04月17日(水)23時36分39秒
- わずかな更新で心許ないのですが、今回はここまでで。
- 354 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年04月18日(木)12時23分27秒
- 自分をあまり追い込むとね・・・
安倍はどうなるんだろ・・・
更新お疲れ様です
- 355 名前:ロ〜リ〜 投稿日:2002年04月18日(木)21時45分47秒
- なっち・・・。
そんなに自分を追い詰めないで〜〜(泣
なんか体調も良くないみたいだし・・・。
なんかなっちを見ていると心が痛い・・・。
詩音さんあんまりなっちを悩ませないで。(願
- 356 名前:読み人知らず 投稿日:2002年04月29日(月)00時15分42秒
- お初です。
今日発見して一気に読みました。泣きまくりです。
更新心待ちにしてます。
- 357 名前:詩音 投稿日:2002年05月07日(火)06時50分29秒
- 長い事お休みして申し訳ありません。
とっかえっ娘。や春紺、親友の事など、色々忙しかったもので…。
言い訳にしかなりませんが…。
とにかく、無断で休止してしまい申し訳ありません。
ではしばらく振りに更新です。
一気にいきたいと思います。
- 358 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年05月07日(火)06時51分51秒
- そして、安倍が不調を訴えつづけてから、一ヶ月ほど過ぎたある日。
突然安倍の方から「今日、ライブやろう。」と電話があった。
吉澤は『ホントに大丈夫なのかな?』という不安は拭い切れなかったが、安倍の強い希望で結局、ライブを行なう事になった。
吉澤は考えていた。
『高橋どころじゃないよな。安倍さんのが心配だよ。今日もあんまり具合が悪い様だったら、安倍さんには悪いけど、中澤さんに言わないとな…。』
石川も思っていた。
『はぁ〜…。何でだろう?何か胸騒ぎがする…。久しぶりだし、緊張してるのかなぁ…?何事もなく、うまくいくといいんだけどな。』
二人ともそれぞれ不安を抱えながら、安倍と合流する。
いつも特に集合場所が決まっている訳ではなかったが、今回は二人とも安倍の家に集合した。
インターホンを鳴らす。
しかし返事がない。
「あれ?」
二人は顔を見合わせる。
吉澤が携帯を取り出し、安倍に電話を掛けようとすると、ドアが開いた。
「はぁ〜い!あっ、よっすぃ〜。梨華ちゃんも…。ごめん、もうそんな時間だった?」
気が抜けるほど、安倍らしいマイペースで明るい言葉だった。
石川は少しホッとして言う。
「もう!ちょっとビックリしちゃったじゃないですかぁ。」
安倍は不思議そうに聞く。
「え?なんで?」
「だって最近、安倍さん具合悪いって言うからぁ…。出て来れないのかと思っちゃったじゃないですかぁ。」
安倍は笑いながら答える。
「心配し過ぎだよ〜。梨華ちゃんたら相変わらずだな〜。」
- 359 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年05月07日(火)06時53分03秒
- すると吉澤が言う。
「いや、梨華ちゃんの気持ちもわかりますよ。私もちょっと焦ったもん…。」
「えぇ?よっすぃ〜も?大丈夫だよ。なっちは元気!じゃ、すぐ準備するね。」
そう言って安倍は振り返り、部屋の奥に消えていった。
吉澤は言う。
「安倍さ〜ん!ウチら外で待ってますね!」
部屋の奥から安倍の返事が聞こえる。
「はぁ〜い!」
五分ほどして、準備を終えた安倍は外に出る。
しかし付近に吉澤と石川の姿はない。
『あれ?』
そう思った安倍が、辺りをキョロキョロと見まわしていると、後方から車のクラクションの音がする。
安倍が振り返ると、その車の助手席に乗っている石川が言う。
「チャオ〜!」
「え?何それ?どうしたのさ〜?」
安倍はそう言いながら近付く。
するとその石川の陰から、ハンドルを握った吉澤が安倍に声を掛ける。
「ヘェ〜イ。お嬢さん乗ってくかい?」
「よっすぃ〜、どうしたの?」
「ハハハ。買っちゃいました。安モンですけどね。」
「免許なんて持ってたっけ?」
「取りたてッス!」
「えぇ〜!大丈夫?」
すると石川が答える。
「あたしもう結構乗ってますけど、よっすぃ〜上手ですよぉ。」
「ホント?なんか信じらんない。よっすぃ〜が運転なんて。」
そう言う安倍に吉澤が答える。
「まぁ梨華ちゃんよりは安全だから安心してくださいよ。」
「えぇ?梨華ちゃんも取ったの?免許。」
「いや、あたしはまだ…。」
「一緒に教習通ってたんですけどね。梨華ちゃん進みが遅くて…。」
「だからって先に取っちゃうなんてヒドイよぉ。」
「だ、だってとりあえず誰か持ってた方がいいじゃん!」
ちょっと困った様に吉澤は言う。
- 360 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年05月07日(火)06時53分36秒
- 安倍はそんな吉澤をフォローするかの様に言う。
「二人で行ってたんだ〜。いいな〜、今度なっちも行こうかな。そしたら今度はなっちが付き合ってあげるよ。」
「梨華ちゃん、安倍さんにまで置いてかれたりして…。」
「もう!よっすぃ〜ヒドイ。」
「冗談、冗談。」
そして三人は大騒ぎしながら出発した。
車中、安倍は車の中で『モーニング娘。』のCDを見つけた。
そして静かに言う。
「もう、あれから二年も経つのかぁ…。早いような長かったような…。」
一瞬、前の二人も言葉を失ったが、吉澤がそれに答える。
「そうですね。二年って言ってしまえば簡単だけど、あの日から今日までとても簡単なものじゃなかった…。あたしも迷惑掛けたし…。」
すると石川が言う。
「その事はもういいからぁ。」
安倍も付け足す。
「そ。梨華ちゃんの言う通り。もうよっすぃ〜も車の運転してるぐらいなんだからあの事はもういいの。」
吉澤が答える。
「車の運転って…、あんまり関係…。」
石川が言う。
「いいの!」
すると安倍が言う。
「ね、久々に聞いてみようか?これ。なっち最近聞いてないんだぁ〜。」
吉澤が答える。
「あたしは別に構わないッスけど、梨華ちゃん平気?泣かない?」
「な、泣かないよぉ。」
「じゃ、聞こう!何聞きたい?」
そう言う安倍の質問に吉澤が答える。
「そうだな〜、どうせなら楽しいヤツで『ザ☆ピ〜ス!』とかどうッスか?」
「いいね〜。それいこう!」
- 361 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年05月07日(火)06時54分08秒
- 懐かしいイントロと共に独特のピースラップが流れる。
そして流れる今はいない飯田、保田、矢口の歌声。
聞くことの出来ない加護、辻の声。
後藤の声…。
石川にああ言ったものの、吉澤もそして安倍さえも正直苦しかった。
それをごまかす様に吉澤が言う。
「すぅ、き、な、ひと、が。…って梨華ちゃんこれは…。」
「な、なによぉ〜…。」
安倍も言う。
「だ、い、じ、なひと、が。」
「あ、安倍さんまで…。」
吉澤が笑いながら言う。
「いやいや、上手だなぁ〜って思ってさ。」
「いいよぉ〜、どうせ下手ですよぉ〜。」
そう言う石川をフォローすることもなく、三人はその後無言で聞き入った。
そして『でっかい宇宙に愛がある』が流れ、しばらくして安倍が言う。
「今度さ、みんなで旅行行こうよ。この車でさ。裕ちゃんも辻ちゃんも、高橋も、加護ちゃんも連れてさ。」
「か、加護もッスか?そんなに乗れるかな〜。」
「じゃ、その時はあたしが運転する。」
「いや、それは勘弁…。よっすぃ〜の運転で…。」
「今はホント死にたくないし…。」
「あぁ〜、またいじめぇ〜…。」
そしてそうこうする内に、ライブの予定場所に到着した。
淡々と準備を進める三人。
吉澤は思っていた。
『よかった…。安倍さん元気そうで。これなら心配ないかな…。』
そして小声で石川に言う。
「ウチらの取り越し苦労だったかな?」
石川も小声で答える。
「うん。そうだったかも。」
そしてライブは始まった。
まだ帽子の少女は来ていなかった。
安倍も少しぎこちない感じはあったが、とりあえず順調に演奏していた。
- 362 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年05月07日(火)06時54分46秒
- しかし突然、二人の思いむなしく、ライブ途中またも安倍の演奏は止まった。
だが、今回は吉澤も演奏を止めた。
「あ、安倍さん?大丈夫ですか?顔色真っ青ですよ?!」
安倍は震える手を抑えながら言った。
「ゴ、ゴ…メン。ちょっと…風に、当たって、来る…。」
「え?あ、安倍さん?」
吉澤にはそう言って立ち上がった安倍の声は、弱々しくて聞き取れなかった。
安倍はふらつきながら吉澤達の元を離れていった。
石川が心配そうに言う。
「ちょ、ちょっと、大丈夫かなぁ…?」
吉澤は取り囲む客に向かって言う。
「す、すいません。ちょっと、今日…中止です。すいません。」
続けて石川に言う。
「軽く片付けて安倍さんの様子見に行こう。ちょっと尋常じゃない…。」
「うん…。」
石川は顔をこわばらせながら答える
そして、片付けを済まし安倍を探しに行こうと思った瞬間、これだけ不定期にライブを行なっていたにもかかわらず、今日もいつのまにか来ていた帽子を深くかぶった少女が駆け寄ってきて叫んだ。
「あ、安倍さんが!安倍さんが!」
帽子の影から覗かせた顔は、やはり高橋だった。
高橋に連れられ向かった所には、すでに人だかりが出来ていた。
人ごみを掻き分け、中に入ると安倍が倒れていた。
- 363 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年05月07日(火)06時55分23秒
- 「あっ、安倍さん!ちょっと…、大丈夫ですか?安倍さん!安倍さん!」
吉澤が叫ぶ。
「ゴ…、…メン…。なっち…、め、迷惑…、ばっ、かり…。」
安倍は力無く答える。
「そ、そんな…。ウチらは別に…。」
吉澤が答える。
「…ホ、ホン…トに…、ゴメン…。ア、…アリガト…ね…。」
安倍は震えながらそう言うと、微笑んだ。
そしてそのまま気を失った。
「ちょっ、あ、安倍さん?!安倍さん!り、梨華ちゃん!救急車!救急車呼んで!早く!」
吉澤は安倍を抱えたまま、そう石川に言った。
「う、うん……。」
石川はそう答え、すぐに救急車を呼んだ。
救急車が来るまでの間、吉澤は安倍を見つめながら「どうして…。」と、呟いていた。
石川は携帯を握り締めたまま、祈る様に目を瞑り、高橋は立ちすくんだまま、泣いていた。
救急車が到着すると、吉澤が同乗して安倍は連れて行かれた。
救急車の中でも安倍の意識は戻らず、吉澤はずっと手を握り締めていた。
数年前とまったく逆の風景だった。
吉澤は思った。
『さっきあんなに元気だったのに…。あんなにたくさん笑ってたのに…。どうして…。』
石川は高橋と共にタクシーに乗り、その車内で中澤に連絡をして、安倍達を追いかけた。
連絡が終わると石川は高橋から「心配になって見に行ったら、突然安倍が倒れた事」、「親には内緒で毎週欠かさず来ていた事」、「中止だった時も、予定の日には待っていた事」、「安倍に見つかった時、あわせる顔がなくて逃げてしまった事」を聞いた。
- 364 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年05月07日(火)06時56分01秒
- 石川は病院に着くと、すぐに吉澤と合流した。
そして聞く。
「よっすぃ〜、安倍さんは?」
吉澤は答える。
「今、処置室の方に…。」
高橋が聞く。
「大丈夫なんですか?」
「わかんない…。梨華ちゃん、中澤さんには連絡した?」
「うん。安倍さんの両親に連絡したら、すぐ来るって。」
「そっか…。まったく…、どうしてこんな…。」
吉澤はそう言って、安倍のいる処置室の方を見つめる。
15分ほどして人工呼吸機をつけた安倍が、医師や看護婦と共に出て来た。
しかし安倍に意識はなく、医師達の慌てぶりもただ事ではなかった。
「せ、先生、安倍さんは?」
吉澤が聞く。
しかし医師は答えることなく、安倍と共に吉澤達の前を走り去る。
「え、ちょ、ちょっと…、一体…。」
石川が言う。
すると、婦長らしき看護婦が立ち止まり言う。
「頭蓋内圧亢進により、脳ヘルニアを起こしている可能性があります。親族の方は…?」
石川が答える。
「ま、まもなく来ると思います。」
吉澤が聞く。
「脳ヘルニア?どういうことですか?」
看護婦は答える。
「頭蓋骨内の脳圧が上昇した事により、脳が圧迫され圧の低い所に流れ出してしまう症状です。あくまで脳ヘルニアの可能性があるというだけですが…。」
高橋はただ黙って涙を浮かべている。
「どうして急にそんな…?」
石川が聞く。
「恐らく、倒れた際に頭を打って内出血を起こしたか、元々脳腫瘍などの疾患を患っていたか、だと思われます。とにかく、まずは早急に脳圧を下げる必要があるため、外科的な処置を行ないます。」
そう言って看護婦は行ってしまった。
「安倍さん……。」
吉澤はそう呟いた。
- 365 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年05月07日(火)06時57分07秒
- 10分ほどして中澤と辻が到着した。
辻に車椅子を押されながら中澤は叫ぶ。
「どういう事や?なっちは?なっちはどうなってるんや?」
吉澤は看護婦から言われた事を伝えた。
すると中澤は驚いた様に言った。
「の、脳ヘルニア?!ホンマか?」
石川が答える。
「それはまだ分からないらしいですけど…。あくまでも可能性があるってだけで…。」
すると中澤は肩を落とし、うつむきながら言った。
「何で急にそんな事になったんや…?一体いつから…。」
石川が答える。
「ずっと…、安倍さんは具合がよくなかったんです…。頭が痛いって…。吐き気もするって…。それなのに私達が、無理矢理にでも病院に連れて行かなかったから…。こんな…。」
「なに?そんなやったなんて…?なんでウチに言わんかった?」
今度は吉澤が答える。
「中澤さんには心配かけたくないから、黙っててくれって…。すいません…。」
「アホか?なに考えてんねん?心配なんて…、そんな事…。」
そう言って中澤は車椅子を叩いた。
それからしばらくして両親も到着し、全員で手術室の前で待っていると、急に中澤が呟いた。
「もうこの病院には、加護のお見舞いでしか来ない思うてたのになぁ…。」
隣にいた吉澤も同じ事を思っていた。
- 366 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年05月07日(火)06時57分40秒
- そして三十分後。
一人の医師が出てきた。そして言った。
「脳腫瘍です…。それも悪性のグリオーマ。しかも最も悪性である膠芽腫という種類の…。」
全員言葉がなかった。医師は続ける。
「とりあえず、頭蓋内圧を下げる事は出来ましたが、その原因である肥大した腫瘍を取り出す事は、非常に困難を極めます。後…、脳ヘルニアを併発しているので、もちろん全力は尽くしますが、助かる可能性は極端に低いかと…。」
「そ、そんな…。」
安倍の母は泣き崩れている。
あまりに絶望的な説明を受け、吉澤達は言葉を発する事が出来なかった。
- 367 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年05月07日(火)06時58分29秒
- それから1時間ほど経ったであろうか、手術室の前は重苦しい空気であった。
『もう、助かる事はない。安倍なつみは帰ってこない。』
そう全員の頭には刻まれていた。
その時、石川が呟いた。
「もうイヤ…。飯田さん達を失って…、今安倍さんまで…。そんなの…、悲しすぎる…。」
誰も言葉を返さなかった。
しばしの沈黙の後、石川が続けた。
「みんなに出会わなければ、こんなに悲しい思いをする事もなかったのに…。こんな…、こんな思いをするくらいなら、『モーニング娘。』になんて…、ならなければよかった…。」
その言葉に中澤が答える。
「…石川……。それは違うで。確かにみんなに会わなければ、こんな思いをする事はなかったやろ…。でもな、思い出してみぃ。みんなの笑顔を…。『モーニング娘。』に入らんかったら、あんな素敵な笑顔に会う事もでけへんかったんやで。その方がなんぼ不幸やったんとちゃうか?あの娘達と同じ時間を過ごした事は、何より幸せな事やと思うで。」
石川は黙って泣き続けている。
すると、突然吉澤は立ち上がり言った。
「でも、絶対に助からないとは誰も言ってない…。助かる可能性が1%でもある限り、ウチらは祈りましょう。安倍さんを応援しましょうよ!」
そして吉澤が続けて言った。
「私、ちょっと加護の所行ってきます。一緒に応援したいし…。」
そして、吉澤は石川に「行こう。」と言うと、石川の手を引き、振り返る事もなく、行ってしまった。
- 368 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年05月07日(火)06時59分01秒
- 残った高橋は一人思っていた。
『安倍さん、ごめんなさい…。私…。あの日の事は『モーニング娘。』が悪いわけじゃないのに、あんな事…。せっかく安倍さんが、何度も何度も電話してくれたのに…。結局こんな形でしか…、ちゃんと面と向かって謝る事もできなくて…。安倍さん…。頑張って下さい…。』
そして涙を流した。
向かい側の辻もまた、泣いていた。
辻は隣にいる中澤に、何か言葉を求めているようであったが、中澤は何も言葉をかけず、辻の頭を『ポンッ』と叩いただけだった。
中澤は思った。
『すまんなぁ…、辻…。石川にはあんな事ゆうたけど、ウチも今回ばかりは、人の事気にかける余裕…、あんまりないんや…。何も言ってあげられへん…。情けない話やけど…、「大丈夫。心配ないで。なっちは帰ってくる。」なんて強気なセリフ出て来んのや…。』
そして中澤は車椅子の方向を変えると、一人みんなの所から離れた。
辻は最初、特に声もかけず行ってしまう中澤を、寂しそうに見つめていたが、中澤の気持ちを察したのか、唇を噛んで手術室の方に目を向けた。
- 369 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年05月07日(火)06時59分31秒
- 一人ロビーに来た中澤は、窓越しに外を眺めながら呟いた。
「助かる可能性なんて1%もあらへん…。万が一助かったとしても、加護と同じ状態になるだけや…。」
他のメンバーより長い人生を歩んでいる中澤。
それだけに安倍の症状の重さも、誰より理解していた。
中澤は一筋の涙を流すと、心の中で叫んだ。
『なぁ、なんでや?あいつ、あんなにツライ目におうて、それでもあんなに頑張っとったのに…。どうして…?もう十分苦しんだやろ?まだ足らんゆうのか?これじゃあ…、あいつ今までなんのために頑張って来たんか…。なぁ神様、もしホントにおるんならお願いや。ウチの命なんかイラン!ウチの命持ってってエエから、あの娘の命は持ってかんでくれ!もう…、これ以上大切なもの失いたくないんや…。なぁ、頼むわ!頼むから持ってかんでくれ…。あの娘を殺さんでくれ…。なぁ…、頼むわ…。』
そして一人、崩れる様に泣き続けた。
- 370 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年05月07日(火)07時00分09秒
- 加護の部屋に来た吉澤達。
しかし加護はこんな状況でも、いつもと何も変わらないというような感じで、眠っていた。
ベッドの横に腰をかけた吉澤が声を掛ける。
「お願いがあるんだ…。安倍さんがね…、今、手術してる。脳腫瘍なんだって…。助からないかも知れないって言われた…。」
そう言うと吉澤は立ち上がり、壁に向かい歩き出した。
そして壁を思いきり殴ると、続けた。
「でも、そんなのイヤ。絶対認めない…。突然過ぎるよ…。そんなの受け入れられないよ…。安倍さんあんなに頑張って…、だからあたしも、あたし達も、必死に頑張ってこれた…。今までずっと一緒に頑張ってきた…。安倍さんがいたから、辛い事何度も乗り越えてこれた。安倍さんがいなかったらあたしなんかとっくの昔にいなくなってる…。安倍さんのおかげでこうして生きてる。だから安倍さんが死ぬなんて、絶対にイヤ!だから…、お願い!安倍さんを…、安倍さんを助けてあげて…。こんな事加護に頼むなんておかしいけど、もう一度…、いや、これからも、安倍さんの笑った顔が見たいの!お願い…。安倍さんを助けて…。」
そう言うと吉澤はその場に座り込み、「お願い…。お願い…。」と繰り返しながら、涙をこぼした。
「よっすぃ〜…。」
石川はそう呟く事しか出来なかった。
石川にとって、こんなに弱気な吉澤を見るのは初めてだった。
「あいぼん…。私からもお願い…。安倍さんを…、助けてあげて…。」
そう加護に言う事しか出来なかった。
- 371 名前:第四章…痛みの行方 投稿日:2002年05月07日(火)07時00分48秒
- こうして数時間後、安倍の手術は終了した。
吉澤達や中澤もいったんは手術室に戻ったが、今は辻、高橋と共に加護の病室に集まっていた。
誰一人として言葉はなかった。
中澤以外は全員静かに泣いていた。
中澤はふと車椅子に手をかけると、部屋の窓の方へ向かって行った。
そしてカーテンを開け、部屋の明かりを消すと、空を見つめながら言った。
「ほら!いつまで泣いとんねん!見てみい…。月が綺麗やで…。」
しかし、その中澤の肩は小刻みに震えていた。
その月を見つめる姿は、まるで涙がこぼれない様にしているという感じだった。
そして明かりを消したのも、そんな姿を隠すためだったのかもしれない。
部屋には寂しく月明かりだけが射し込んでいた。
第四章 完
- 372 名前:詩音 投稿日:2002年05月07日(火)07時18分23秒
- ちょっと曖昧な感じもありますが、以上で『第四章…痛みの行方』終了です。
次回からは『最終章…I WISH』に入ります。
長い休暇を勝手に戴いた分、多めの更新だと思いますがいかがでしょう?
結局四章も一章、二章と同じぐらいの長さになってしまった…。
でも最終章こそはとっても短めになると思います。
なので、たぶん一回でいきます。
つまり、次の更新で完結かな?と。
エンディングはとても悩む所が多いので、すぐには更新できないかもしれませんが、待たせてばかりはいられないので、早めの更新心がけますです。
一応、書き上がってはいるのですが、いつも修正やら書き足しの嵐なもので…。
では、また。
- 373 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年05月07日(火)08時22分03秒
- 悲しすぎて言葉も出ない・・・
第四章執筆お疲れ様でした
- 374 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月08日(水)01時53分44秒
- 痛いよ・・・。痛いよ・・・。
お母さん、この作者さんが僕の心を痛めつけるよ・・・。
と、いうことでラストに期待!
詩音さん、がむばって。
- 375 名前:ミカ・ニネン 投稿日:2002年05月10日(金)00時39分58秒
- どもです。金板で書いている者です。
先日はチャットで暴言すみませんでした。
お話の方、じっくり読ませて頂いております。
マイペースで更新して下さいな。期待して待っております。
ではでは。
- 376 名前:ロ〜リ〜 投稿日:2002年05月10日(金)03時57分08秒
- なっちまで・・・
更新お疲れさまです。
次の更新で完結ですか・・・
ちょっと淋しいですが、期待してます。
- 377 名前:詩音 投稿日:2002年05月15日(水)07時22分49秒
- お待たせしました。詩音です。
皆様レス本当にありがとうございます。
今回は『最終章…I WISH』になります。
先に言っていた通り、短い内容なので一発でいきたいと思います。
つまり、遂にラストの更新となりました。
章タイトル通り、話が終わった所で『I WISH』を聴いてみる…なんていうのもまた一興かと。
それでは更新です。
- 378 名前:最終章…I WISH 投稿日:2002年05月15日(水)07時25分19秒
- 最終章 I WISH
あれから一ヶ月の時が経っていた。
トゥルルルルル トゥルルルルル
中澤の家の電話が鳴る。
「はい。中澤ですけど。あっ、どうも。どないしたんですか?突然…?」
辻は相変わらずポケーっとテレビを見ている。
「何かあったんですか?はい。…はい。」
中澤は真剣に話をしている。
「そうですか…。はい…。でもそんな…。確かにあの状態じゃアレですけど…。はい…。でも…。」
中澤の表情が曇る。
辻も中澤の様子を悟り、振り返る。
「………はぁ…。…分かりました…。みんなにはウチの方からゆうときます…。はい。いえ…。はい…。それじゃ失礼します。」
中澤は電話を切り「ハァ…。」と一息つくと天井を見つめた。
- 379 名前:最終章…I WISH 投稿日:2002年05月15日(水)07時26分47秒
- 辻が駆け寄り中澤の前で首をかしげる。
「ん?いや…。ちょっとな…。大事な話やから、みんなを呼んでから話すわ。」
中澤はそう言うと、再び受話器を手に取り、吉澤に電話をかけた。
「もしもし?よっすぃ〜か?今ちょっと時間作れるか?」
「はい?どうしたんですか?作れますけど…。」
「実は大事な話があんねん…。石川も一緒か?」
「ええ。梨華ちゃんと高橋と一緒ですけど…。」
「なら話は早いわ。今からウチ来てくれるか?」
「かまわないッスけど…。大事な話って、電話じゃマズイ事ですか?」
「あぁ。ちゃんと会って話さなアカン。加護の事や…。」
「加護?何かあったんですか?」
「いや、これからの事や。とりあえず、来てから話すわ。」
「わかりました。」
そう言って中澤は電話を切った。
辻は中澤が『加護』と口にしたため、心配そうな表情で中澤を見つめた。
しかし中澤は黙ってその場を離れた。
辻はその後を追い、中澤の服を引っ張った。
仕方なく中澤は、ゆっくりと話し始めた。
「……分かってた事なんや…。いつかはこうなるって…。」
- 380 名前:最終章…I WISH 投稿日:2002年05月15日(水)07時27分21秒
- 三十分後。
吉澤達三人が到着した。
三人が部屋に入ると、辻が机にうずくまり泣いていた。
「一体…どうしたんですか?」吉澤が言う。
一向に泣き止まない辻に、困り果てた様子の中澤は答えた。
「実はさっき、加護のご両親から連絡があってな…。」
中澤は三人に先程の電話の内容を伝えた。
「臓器移植…?」石川が早くも涙目になりながら呟く。
「そうや。あの日から加護はずっとあんな状態やった。何の変化も無くずっと…。回復する事はあらへん。アイツの脳はとっくに死んどる…。機械で無理矢理生かされとる状態や。脳死判定はとっくに出とったらしい。辛いかもしれんけど、当然の結果なんや。」
「いつ…ですか?」吉澤が言う。
「来週の水曜日…。生きとる加護に会えるのはその日の一時までや。その次に会う時はもう…。」
「ずっと…、あのままじゃダメなんですか?」高橋が言う。
「そうもイカンやろ…。ご両親も悩んだ挙句、決めた事や。世の中にはウチらよりも加護を必要としてる人がおる。加護だってあんな状態で、生かされとるよりは、誰かの為に何かしたいやろ?」
「そんな…。でも…。」すでに泣き出している石川が言う。
「…お別れや。」中澤は小さく答えた。
- 381 名前:最終章…I WISH 投稿日:2002年05月15日(水)07時27分51秒
- 次の日から中澤達は、毎日の様に加護の所に通った。
テレビやゲーム機まで持ち込み、看護婦の注意を無視して、病院だと言うのに夜中まで騒いでいた。
「しょーーーーーり!」
中澤はすでにほとんど石川に勝てなくなっていたが、高橋という新しいカモを見つけ、大はしゃぎだった。
「ダメだぁ〜。コレ難しい。」悔しそうにする高橋。
すると石川が「中澤さん、私とやりましょうよ。」と言った。
「ん?い、いや、今は高橋とやってんねん。ちょっと待っとき。」
「あっ、私もういいですよ。石川さん、どうぞ…。」高橋が言う。
「じゃ、仇とってあげる。」石川が自信ありげに言う。
「あっ、あの、あれや、ウチはもう疲れたから、ウチが変わるわ。」
「あぁ〜!そうやって逃げるんだ〜。」石川が言う。
「ア、アホか。な、なんでウチが石川ごときから逃げんねん。」
「じゃあ、相手してくださいよぉ。」石川が高橋からコントローラーを受け取り、言う。
「……。え、ええよ。あっ、でもそろそろ止めんと、また看護婦さんに叱られるで?」
「はぁ〜。まったく…。このチャーミー石川様にビビってるわね?」
「ア、アホか?な、なんでやねん!」
部屋にはみんなの笑いがこだまする。
初めは沈んでいた辻も、気持ちの切り替えが出来たのか、今は加護の手を握りながら微笑んでいる。
こうして中澤達は、加護との残された時間をただひたすらに楽しんだ。
- 382 名前:最終章…I WISH 投稿日:2002年05月15日(水)07時28分57秒
- そして水曜日。
中澤は辻と共に、加護の病院に向かっていた。
「ついに加護ともお別れやな…。辻、泣いたらアカンで。笑顔でお見送りや。」
辻はしばらく間を置いて頷いた。
病室に着くと、すでに吉澤と石川、高橋の三人が到着していた。
「おう。早いやん。」中澤が言う。
「はい。なんか眠れなくて…。早く起きちゃって。」吉澤が答える。
「この娘ともお別れか…。なんや実感わかんな。」
「石川は…、やっぱりイヤです…。」石川が言う。
そんな石川の肩に手を置き、吉澤が言う。
「しょうがないよ。出会いがあれば別れがあるんだから。」
「何言ってんねん。加護はな、確かにウチらの前からはいなくなるかもしれへん。でもな、加護はみんなの所に行くんや。かおりや、圭坊達、ウチらの大切なメンバーの所に行くんやで。だから別に加護を失う訳やない。あいつらの所に行くだけやもん。」中澤は言う。
「でも…、悲しいです…。」高橋が言う。
「なんでや?高橋は小川や紺野、新垣の事嫌いか?その三人だけやない。他の娘達の事好きやないんか?」
「え?好きですよ。好きですけど…。」
「せやろ?石川もよっすぃ〜も辻だってあいつらみんな大好きやろ?その大好きな、大切な人の所に行く事の何がイヤやねん?何を悲しむ事があるんや?」
「………。」高橋は言葉を失った。
中澤は続ける。
「そこでや。みんな加護に伝言頼もうや。ウチらはまだかおり達の所には行かへんからな。加護に伝えて欲しい事頼んどこうや。」
「そうですね。そうしよう!」吉澤が言う。
そして中澤が言う。
「よっしゃ。じゃあ…まずはかおりから。」
- 383 名前:最終章…I WISH 投稿日:2002年05月15日(水)07時30分45秒
- 吉澤が言う。
「えーっと、飯田さん。お久しぶりです。吉澤は最近、ちょっと身長伸びて、飯田さんに近付きつつあります。最近髪も飯田さんみたく伸ばそうかと思ってる、今日この頃です。あと…、そっちでも交信してますか?たまにはウチらにも交信してくださいね。」
すると、中澤が言う。
「そうや!交信で思い出したけど、辻が交信する事あんねんけど、かおりの仕業か?交信の仕方まで教えてたんとちゃうやろな?まぁええわ。本家ほどやないしな。辻の事は心配せんでええで。ウチらがしっかり面倒みるから。」
辻は言葉は話せないが、加護に何かを伝えているという様な感じであった。
「ほら、辻もいい子で頑張るって言うてるし…。っていうか、もう子供やないしな。かおりに褒められるような立派な女になるよな?辻?」
辻は大きく首を縦に振る。
- 384 名前:最終章…I WISH 投稿日:2002年05月15日(水)07時31分17秒
- そして中澤が続ける。
「ほら!アンタらもグジグジしとらんで何か言ったらどうや?」
そう言われた石川は、自分の中で何かを決心した様に頷くと言った。
「飯田さん…。お元気ですか…?えっと…、飯田さんは石川にとってお姉さんみたいな人でした。いっぱいお世話になりました。盗聴事件の時もスゴク励まされました。きっと…、一番弱音を聞いてもらってたと思います。だからネガティブ石川を一番知ってたのは飯田さんかもしれません。いまだに情けない所ばっかりですけど、いつか飯田さんに認めてもらえる様な、立派な人間になるんで応援しててください。」
高橋も言う。
「えーと…、飯田さん。私にとってリーダーといえば飯田さんです。私が入った時には中澤さんはいなかったし…。でも、とっても頼りになるリーダーでしたよ。分からない事ばかりでたくさん迷惑もかけちゃいましたけど、力いっぱい引っ張ってってくれて、どうもでした。」
そして、保田、矢口、後藤と順番に次から次へと中澤達四人は伝言を言う。
- 385 名前:最終章…I WISH 投稿日:2002年05月15日(水)07時31分50秒
- 「圭坊。アンタにゃホンマ世話んなったな。圭織の時だけやない。ウチがおる時も、影ながらモーニングを支えてもろてたわ。ホンマありがとな。」
中澤がそう言うと、石川が続ける。
「保田さん。石川の教育係ありがとうございます。おかげで歌もとっても上手になりました。」
すると、すかさず吉澤が突っ込む。
「えぇ?うまく…?あ〜…、まぁ…確かに梨華ちゃんのあのスタッカート歌唱法は、保田さんあっての…かな?」
「よっすぃ〜!何それぇ?」
石川は口を尖らせる。
すると高橋も言う。
「石川さんの歌はともかく、私も最初は正直恐かったけど、保田さんに色んな事教わりました。ありがとうございます。」
「高橋までぇ…。」
そう言う石川の言葉を吉澤が切る。
「ハハハ。まぁまぁ梨華ちゃん。とにかく私もすげぇお世話になりました。まさに保田大明神!」
- 386 名前:最終章…I WISH 投稿日:2002年05月15日(水)07時32分23秒
- すると中澤が言う。
「よっしゃ、ほんなら次は矢口。お前はなぁ〜…。あのまま何事もなかったらどうしてたんか分からんけど、あの時の『私達の大切なモーニング娘。』って言葉、今でも忘れてへんで。その通りや。これからもずっと…、『大切なモーニング娘。』や。矢口にとっても、ウチらにとっても。矢口、好きやで…。」
石川が言う。
「矢口さん…。昔よく矢口さんと二人で行った焼肉屋さん、最近はよくみんなと行くんですけど、よっすぃ〜もやっと牛タンの魅力に気付いてくれましたよぉ。高橋もはまっちゃってて…。お金が大変ですよ…。中澤さんは相変わらずビールばっかり飲んでるし…。時々飲まされそうになるし…。ののは物凄く食べるし。なんでも食べちゃうんですよぉ。内臓系とか…。もう恐くて…。でも、やっぱり元気の源はお肉ですよね。」
すると吉澤が言う。
「そうなんですよ。吉澤はあんまり肉好きじゃなかったんスけどね…。梨華ちゃんが無理矢理…。」
「えぇ〜!いいじゃん、よっすぃ〜…。だっていつもベーグルとかじゃ栄養偏っちゃうよぉ。」
そう言う石川に続いて高橋が言う。
「そうですよ。ベーグルよりおいしいじゃないですか?」
吉澤が答える。
「いや、ベーグルは不屈の名作だよ。」
中澤が突っ込む。
「なんやねん?不屈の名作て?じゃ、次。後藤。」
- 387 名前:最終章…I WISH 投稿日:2002年05月15日(水)07時33分02秒
- 吉澤が言う。
「ごっつぁん…。最近は欲しい服があっても、心配なく買えるよ。梨華ちゃんとは絶対にカブらないし…。そっちであたしと同じ様なの着てるのかな?」
そして吉澤はちょっと間を置いて続ける。
「…正直……、ごっちんが死んだ時は、気が狂いそうだった…。市井さんが来るまで、先生の胸倉掴んで叫んでた…。『ふざけんな!説明してる暇があるなら、諦めないでごっちんを助けろ!』って…。その後市井さんが来て、あたしと同じ気持ちを叫んでた…。でもその時、安倍さんが『梨華ちゃんだってつらいんだよ。』って言ってた。…それで思った。『そうだよ。あたしだけじゃない。市井さんも、梨華ちゃんも、安倍さんも辛いんだ。』って…。だからその後、市井さんに言いながら、自分にも言い聞かせてた…。『もう、死んだんだ。』って。でもその後、みんなを失った事がすっごい辛くて…。苦しいのは自分だけじゃないって事は分かってたはずなのに、ごっちんのいない生活があまりにも寂しくて…、……後を追おうとした…。みんなにすげぇ迷惑かけちゃった…。だってさ、心に大きな穴が空いた様な感じで…。心どころか、体全体に大きな穴が空いてる感じで、生きているのが嫌だった…。…けど、今は元気にやってるよ。ごっちんに教えてもらったおかげで、ゲームも一番強いし。お互いこれからも頑張ろうね。」
- 388 名前:最終章…I WISH 投稿日:2002年05月15日(水)07時33分32秒
- すると中澤が言う。
「なんや?あの強さは後藤譲りか?かなわんなぁ…。しかしなんやな…。ウチが今生きとるのは矢口とごっつぁん、二人のおかげや…。しかもお前は自分の危険も考えんとあんな…。ホンマありがとな。あんたにもろた命、これからも大切にしていくわ。」
高橋は言う。
「私の目標は後藤さんでした。踊りとかもすごくカッコ良くて。ずっと憧れてたんです。きっとこれからも変わらないと思います。いつか後藤さんに褒めてもらえる様に高橋は頑張りますから。どうか見守っていてください。」
石川も言う。
「ごっちん…。私…、いっつも迷惑ばっかりかけてたね。私の方が年上なのに子供っぽい事ばっかり…。今もよっすぃ〜に迷惑かけてばっかりだし。でもこれからも石川らしく頑張るから。ごっちんもそっちから冷ややかな視線送ってね。なんちゃって…。大好きです、文麿様。」
- 389 名前:最終章…I WISH 投稿日:2002年05月15日(水)07時34分13秒
- そして紺野、小川、新垣。
高橋は言う。
「みんな元気にしてますか?麻琴ちゃんが死んだあの日、家に帰って泣いてたら、お母さんに『あんな世界に入ったからいけないのよ!今までの事は全て忘れて、これからは普通に生きていきなさい。』って言われた。でもね…、麻琴ちゃんと紺ちゃん、里沙ちゃんと四人で『がんばろう!』って約束して支えあったあの日々を、そんなに簡単に忘れる事なんてできなかった。でも、辛いから、苦しいから、そんな気持ちから逃げたくて、必死に忘れようとしてた。だけど…、再び頑張ってる先輩達を見た時は、とても恥ずかしかった…。思い出したんだ。とても真剣な麻琴ちゃんの顔…。一生懸命頑張る紺ちゃんの姿…。いつも前向きな里沙ちゃんの言葉…。だから私も、これからは逃げるんじゃなく、何事も正面から堂々と向かっていく。前向きに一生懸命頑張る。どうか見守っていてね。」
吉澤が言う。
「紺野。お前のボケっぷり、最近聞けなくて寂しいよ。そっちでも美人ですかぁ〜?」
石川が言う。
「小川…。元気ですかァ〜?そっちでも猪木してる?なんだコノヤロ!」
中澤が言う。
「新垣。まだ小さいお前まで大変な目に遭わせてもーたな…。ウチはモーニングとして新垣達五期メンと会う事はなかったけど、他のみんなのように大切な仲間やと思ってる。そっちでもしっかり頑張りや。」
- 390 名前:最終章…I WISH 投稿日:2002年05月15日(水)07時34分52秒
- そこまでが終わると、小さな沈黙が起きる。
そしてその沈黙を破る様に、静かに中澤が言う。
「そして最後に…。…なっち……。まさかアンタがいなくなるとは思わんかったわ…。ずっと一緒にいろんな思いをしてきたな。うれしい事や悲しい事…。楽しい事や辛い事…。散々説教もしたな。ウチにとっては一番の問題児やった…。最後までそうや。やっぱり、一番心配をかけた娘や。でも、その分誰よりも本当の妹の様に思とった。なっちと『モーニング娘。』がやれてホンマによかった…。アンタには色んなものをもらったで…。今はもう、なっちの笑顔を見る事はできひんけど、それでも、そっちで楽しそうに笑っとるなっちの笑顔は伝わって来るで。これから加護がそっちへ行くけど、アンタが先輩としてしっかり面倒見るんやで。コイツもなっつぁんに負けず劣らずの問題児やからな。大変やろうけど、ウチも辻という大荷物を抱えてるんやから、アンタも頑張るんやで。」
- 391 名前:最終章…I WISH 投稿日:2002年05月15日(水)07時35分27秒
- 吉澤は言う。
「安倍さん…。安倍さんには何度お礼を言っても、言い足りないぐらいお世話になりました。こうしてあたしが元気でいられるのも、安倍さんのおかげです。吉澤も安倍さんに分けてもらったパワーを、みんなに分け与えていける様、頑張っていきます。最近、高橋がキーボードの練習始めたんです。はっきり言ってまだまだだけど、いつか…、安倍さんが喜んでくれる様な、りっぱな演奏して見せるんで、楽しみにしていてください。」
高橋が言う。
「そうなんです。最近高橋頑張ってますよ。いつかみんなで素晴らしい演奏するんで、待ってて下さい。それと…、何度も電話してくれたのに、いつもいつもすいませんでした。こんな形で謝るのも申し訳無いんですけど、ホントにごめんなさい。」
- 392 名前:最終章…I WISH 投稿日:2002年05月15日(水)07時36分02秒
- 石川が言う。
「石川は最近、目標が出来たんです。それは『安倍さんのような、素敵な笑顔のできる女性になる事』です。でもやっぱり石川だから、すぐネガティブになっちゃうかもしれないけど、それでも、楽しい時やうれしい時は思いっきり笑って、いつかきっと、笑顔の絶えない、人に元気を分け与えていけるような人になります。期待しててくださいね。」
そして辻も必死に話そうとしていた。
「……………。」しかし思う様に話す事はできなかった。
中澤が言う。
「大丈夫や。加護にはちゃんと伝わっとる。きっと、なっちに辻の気持ちを伝えてくれるはずや。」
すると石川が言った。
「でもあいぼん、こんなにいっぱい覚えられますかねぇ?」
「確かに…。加護には無理があるかも…。」吉澤も言う。
「そりゃ覚えてもらわな困るわ。」中澤が答える。
そして五人とも加護を見つめる。
そこで会話は止まった。
そう、その場の全員が理解していた。
もう時間だという事を。
- 393 名前:最終章…I WISH 投稿日:2002年05月15日(水)07時36分45秒
- すると中澤が言う。
「さて…、そろそろ加護ともお別れやな。加護ぉ〜、向こうでちゃんとみんなの言う事聞くんやで。いつまでも迷惑ばかりかけてちゃアカンで。」
石川も言う。
「そうだよぉ。しっかりやるんだよ。保田さんの事、からかってばかりいないで、いい子にしてなきゃダメよ。」
「いや…。」
吉澤はそう言うと続ける。
「あたしは大暴れしてほしいかな…?だってもう二年も大人しくしてたんだから。加護もストレス溜まってるでしょ?あたしは久々に大騒ぎしてもいいと思うな。」
高橋も言う。
「私もそう思う。久々にみんなに会うんだもん。思いっきり楽しんで欲しいな。」
すると中澤が言う。
「それもそうやな。いままで頑張って我慢してたんやもんな…。やりたい様にすればええ。もうなんも我慢せんでええ。好きな様にしたらええわ。その方が加護らしいしな。」
- 394 名前:最終章…I WISH 投稿日:2002年05月15日(水)07時37分18秒
- 石川も言う。
「そうですね。よぉ〜し、じゃあ思いっきり大暴れしよう。私達の分も…。もし向こうのみんなに怒られても『中澤さんが許可しました。』って言っちゃえ。」
「ハァ?何ゆうてねん?お前らだって許可したやん?」
そんな中澤の言葉を無視して、吉澤も言う
「そうそう。『天下の中澤裕子の命令だ!』って。」
「な…。よっすぃ〜…、先に言ったん自分やん?」
しかし吉澤はまたも無視して言う。
「じゃあね、加護。みんなにヨロシク。」
中澤は言う。
「な…?ちょい…。」
石川が言う。
「元気でね。向こうでも頑張って。」
「おい!」
しかし今度は高橋に流される。
「今までありがとう。バイバイ。」
「…ったく。揃いも揃ってなんやの?わかったわ。ウチが責任取ったる。好きなだけ大暴れしてこい。」
中澤はそう言って加護の頭をなでた。
しかし辻は相変わらず言葉をかける事が出来なかった。
全員がにこやかに別れを告げる中、一人寂しそうな顔をしていた。
- 395 名前:最終章…I WISH 投稿日:2002年05月15日(水)07時38分11秒
- そしてついに、臓器を摘出するため、加護は手術室へ運ばれた。
その手術室前でみんなは思っていた。
『ここを出てきた時には、加護はもう呼吸はしていない。本当の別れなんだ…。』
その時である。
今までずっと涙をこらえていた、辻が泣き始めた。
それは言葉をかけられなかった、悔し涙だったのかもしれない。
「辻…。」そう呟いて中澤が辻を抱きしめると、辻は何かを言おうとしていた。
「…………んっ……うぅ……。」
「辻?」中澤は辻を見つめる。しかし辻の目は手術室に向けられている。
「………ぼん…。…あい…ぼん…。あ、あいぼん!」
全員が驚き、辻を見る。しかし辻はそんな視線に気付く事はなく、立ち上がり言った。
「あ、あいぼん!ありがとう!ずっと…、ずっとずっと…、友達だからね!友達だからね〜!!!」
誰もが驚きを隠せなかった。
中澤は自分の目から涙がこぼれた事に気付いた。そしてその涙を拭いながら言った。
「ええか…、加護はなぁ〜、世界中の体の悪い人のところに、加護の体の一部を、元気を分け与えるために、旅立って行くんや…。辻には元気な声を分けてくれたな。これからは加護のためにも、元気いっぱい話したり、笑ったりせなアカンで。」
辻は「うん…。」と言って、深く頷いた。
中澤は涙が止まらなかった。
- 396 名前:最終章…I WISH 投稿日:2002年05月15日(水)07時38分44秒
- 数時間後、加護が手術室から出てきた。
その加護にはもう今までのような、様々な管や機器はついていなかった。
久しぶりに見た素直な加護亜依だった。
全員涙が溢れた。
『もう加護は行ってしまったんだ。』
そう思わせるのに十分なほど、加護の表情は豊かだった。
中澤は思った。
『きっと…、これで終わったんやな…。あの事件から続いた悲劇はこれで…。』
中澤の頭の中には次々と消えていった、たくさんの笑顔が思い出された。そして、こぶしを強く握り締め、心の中で呟いた。
きっと、全員が同じ事を思っていた。
『ありがとう…。元気でね。』
- 397 名前:最終章…I WISH 投稿日:2002年05月15日(水)07時39分35秒
- その頃、加護亜依は色々な事を思い出していた…。
いや、それは夢を見ていたのかもしれない…。
……あれ?みんなどうして泣いてるの?悲しいの?ダメだよ。泣いちゃ…。笑顔だよ…。ねぇ…安倍さん…。
『そうだね。笑顔だよ。笑顔。ね!加護ちゃん。』
安倍さん…。
『加護ちゃん。』
笑顔〜…。
- 398 名前:最終章…I WISH 投稿日:2002年05月15日(水)07時40分09秒
- 『何言ってんの?加護ちゃん?ねぇ、加護ちゃん!』
へ…?
「加護ちゃん!もう、加護ちゃんたら!」
「……ん〜…。あれ?安倍さん?どうして?」
「何寝ぼけた事言ってんの?みんな待ってるよ。なっち迎えに来たんだから。ほら、早く起きて。」
「え?あぁ!なんだ…夢か……。」
「まったく…、どんな夢見てたのか知らないけど、しっかりしてね。」
そう言うと安倍は、加護の手を引いて走った。
加護は思った。
『なんだ…全部夢だったんや…。よかったぁ…。』
そして言った。
「安倍さん、これからはみんな…、ずっと…、ずっとずっと一緒ですよね?」
安倍は一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐに答えた。
「うん!ずぅ〜〜〜っと一緒だよ!」
- 399 名前:最終章…I WISH 投稿日:2002年05月15日(水)07時41分56秒
- 加護は願った。
『いつまでも「モーニング娘。」のままでありたい。』と……。
微笑みのそばで… 完
- 400 名前:最終章…I WISH 投稿日:2002年05月15日(水)07時43分05秒
- 以上で、『微笑みのそばで…。』全五章すべて終了です。
皆々様、最後まで「微笑みのそばで…。」ならびに、詩音にお付き合い頂きありがとうございます。
なんとか完結にまで持っていく事が出来ました。
これも読者様あってのことだと思っております。
本当にありがとうございました。
さてエンディングの事ですが、これのとらえ方は読者様に委ねます。
「みんなのもとへ旅立つ加護を、安倍が迎えに来た…。」と、そうとるも良し、「全てが加護の夢だった…。」と思うのも良し。
読者様次第という形を取らせて頂きたいと思います。
エンディングを見て、読者様が率直に思ったモノがエンディングという事で…。
僕的には何となくいい結末になれば、それでいいかな?と、思ってますんで。
一応、ハッピーエンドというつもりです。
ご期待に添えられる結末だったかは分かりませんが、精一杯書き切ったつもりです。
最後になりましたが、話の雰囲気的にレスしづらいという事もあった中、たくさんのレスありがとうございました。
非常に励みになりました。
無事完結したという事で、ROM専だった方もこの機会に感想、批評など戴けると大変嬉しいです。
では、♪最後に、もいっちょ!♪ 本当に長い間ありがとうございました。
- 401 名前:詩音 投稿日:2002年05月15日(水)07時46分28秒
- 最後にミス…。
>400の名前欄、章タイトルのままだった…。
>400はストーリーとは関係ないので。(読めば分かるか…)
- 402 名前:詩音 投稿日:2002年05月15日(水)07時48分01秒
- 何となく、エンディング隠し…。
- 403 名前:詩音 投稿日:2002年05月15日(水)07時49分02秒
- どのくらいで隠れるのかな…?
- 404 名前:詩音 投稿日:2002年05月15日(水)07時51分51秒
- よし。
このへんで。
お疲れ様でした。
- 405 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月15日(水)12時16分48秒
- 完結お疲れ様でした。
かなり痛い系のお話でしたが、最後にきちんと救いがあって
良かったです。うまくいえませんが、かなり感動しました。
次作も期待してます。長い間本当にお疲れまでした。
- 406 名前:ロ〜リ〜 投稿日:2002年05月15日(水)17時44分37秒
- 完結おめでとうございます。
加護の最後は痛いけど、すごく加護らしいかなと思います。
これだけの話を書けるんだから次回作も期待していいですよね?
長い間本当にお疲れ様でした。
- 407 名前:ROM 投稿日:2002年05月15日(水)21時16分46秒
- 衝撃と波瀾の展開の中で、人の絆という物を
考えさせられました。こんなに泣いた作品は
初めてでした。お疲れ様でした。
- 408 名前:名無し池 投稿日:2002年05月16日(木)00時11分33秒
- 最後の各メンバーへのコメント、泣けてしょうがなかったです。
ずーっと読ませてきてもらって本当に詩音さんに感謝してます。
4ヶ月間お疲れさまでした。次回作期待してますよ。
- 409 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年05月16日(木)07時55分54秒
- 泣けました いや泣かされましたかな
ホント感動の連続でした
このような名作に出会えて本当によかった
お疲れ様でした
またお会い出来る日を楽しみにしております
- 410 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月16日(木)13時15分54秒
- 娘。小説でこんなに泣いたのは「カテキョ」以来です。
内容が内容だけに詩音さんも書くのが辛かった時もあったと
思いますが、見事なエンディングだったと思います。
次回作、期待してます。
- 411 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月17日(金)02時13分18秒
- 本日一気に読みました。2時間くらいかかりました。^^;
泣きっぱなしでした。ところどころのメンバーの台詞が、
現実と錯覚した部分もあり、感情移入してしまいました。
そして、いろんな意味で、生きるという事を考えさせられました。
本当に感動しました。すばらしい作品をありがとうございました。
そして完結お疲れ様でした。
- 412 名前:toku 投稿日:2002年05月17日(金)16時51分22秒
- ずっとROMってましたが出てきました
こういうエンディングかなり好きです
完結おめでとうございます
そしてお疲れ様でした。
- 413 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年05月18日(土)21時19分04秒
- 今日、娘。小説保管庫でこの小説を見かけましたよ
また最初から一気に読み返してみたいと思ってます
- 414 名前:詩音 投稿日:2002年05月19日(日)12時59分04秒
- 皆様、感想レス非常に嬉しいです。
本当に今までお付き合い頂き、ありがとうございました。
>405の名無しさん
たぶん、あの方ですよね?
ありがとうございます。
「かなり痛い系」といえるモノになっていれば、僕の目的は果たされたかな?という感じです。
>うまくいえませんが〜…
そのお言葉に僕も感動しました。
>ロ〜リ〜さん
>加護らしい〜…
そう言って頂けると嬉しいです。
>これだけの話を書ける〜…
どれだけの話が書けたのかは分かりませんが、もし次回作を書く時があったらこの話を超えられる様、精進したいと思います。
>ROMさん
感想ありがとうございます。
絆って大切ですよね。
人間一人では、生きる事も死ぬ事も出来ないんですから…。
>こんなに泣いた〜…
そのお言葉がなにより嬉しいです。
ありがとうございました。
>名無し池さん
>最後の各メンバーへのコメント〜…
ありがとうございます。
くどいかなぁ〜…。と心配していた所なので、そう言って頂けると救われます。
むしろ感謝をしたいのはこちらですよ。
読者様のおかげでやってこれたんですから。
今までありがとうございました。
- 415 名前:詩音 投稿日:2002年05月19日(日)13時00分13秒
- >むぁまぁさん
思えば、初めてのレスはむぁまぁさんでした。
今回が初めての執筆だったので、本当に初めてのレスです。
開始当初から何度も励まされました。
支えになりました。
そのような方に名作などと言ってもらえて大変光栄です。
本当に最後までありがとうございました。
保存庫確認しました。ご報告感謝です。
読み返しして頂けるなんて…(T_T)
>410の名無し読者様
僕も「カテキョ」はすごく好きな作品です。
なので、そう言ってもらえるのはとても感激です。
正直、自分の推しの娘。達を追いこんだり、死なせたりするのはツライ所でしたが、そうする事で自分自身感情移入が出来たかな?と思います。
自分で考えたくせに、その状況を妄想してグッっと来たりしましたからね…(w
結構、精神を疑われないか不安だったりもしました…(^_^;)
本当にありがとうございます。
>よすこ大好き読者。様
まず、よすこは元気でよかったです(;^_^A
>ところどころのメンバーの〜…
そうですね。実際本当に言っていたセリフや、言いそうな言葉を使った方がイメージしやすいと思い、意識して書いていたので、そう言って頂けるのはとても嬉しいです。
>色んな意味で生きるという事〜…
生きる…、一言でいうと簡単なんですけどね。考えてみると深いものですよね。
しかし、そこまで深く考えて頂ける様なモノになっているならば、僕としては嬉しいです。
>tokuさん
出てきてくれてありがとうございます。
>こういうエンディング〜…
そう言って頂けるととても嬉しいです。
やはりエンディングはとても悩み、そして不安もありました。
ちなみに僕もあの世モニ。です(w
- 416 名前:詩音 投稿日:2002年05月29日(水)21時43分04秒
- コソーリ…。
- 417 名前:詩音 投稿日:2002年05月29日(水)22時01分28秒
- やっと下がって来たので、ちょっとだけ番外的な駄文を…。
とある友人の希望で書いた、もう一つのエンディングです。
正直うpしないでおこうと思っていた物なんですが、せっかく書いた物なので。
ちょっと後味の悪い続編的な物になります。
一瞬ですが(w
最後の解釈は読者様に任せると言っておきながら、
「全て加護の夢だった…。」
という場合の続編になるかと思います。m(__)m
ただ、あくまで特別続編という形なので、もちろん僕自身、真のエンディングとは思っていません。
僕的にはあの最終章の終わり方が好きなので。
でも、人によってはこちらの終わり方のが好きな人もいると思います。
なので、あの終わり方にご不満のあった方だけお読みください。
- 418 名前:最終章(特別続編) 投稿日:2002年05月29日(水)22時04分00秒
- 「あれ?辻、加護は?」飯田が言う。
辻が答える。
「楽屋で寝てるかもしれないれす…。」
保田が言う。
「ちょっとぉ〜、もう収録始まるよ。何考えてんだか…。」
中澤が言う。
「まったく、しょうがあらへんなぁ〜。ちょっと誰か起こして来てくれへん?」
「じゃ、なっち行ってくるよ。」そう言って安倍は楽屋に向かった。
楽屋の扉を開けると、加護が机にうずくまったまま眠っていた。
「お〜〜い!加護ちゃん、起きろ〜。」
しかし加護はピクリとも反応しない。
安倍は加護に近付き続ける。
「ほら加護ちゃん起きて!」
すると加護は寝言を言う。
「……笑顔〜…。」
安倍は『はぁ〜?。』と思い言う。
「何言ってんの?加護ちゃん?ねぇ、加護ちゃん!」
やっと加護が反応を見せる。
「加護ちゃん!もう、加護ちゃんたら!」
「……ん〜…。あれ?安倍さん?どうして?」
「何寝ぼけた事言ってんの?みんな待ってるよ。なっち迎えに来たんだから。ほら、早く起きて。」
「え?あぁ!なんだ…夢か……。」
「まったく…、どんな夢見てたのか知らないけど、しっかりしてね。」
そう言うと安倍は、加護の手を引いて走った。
安倍が『まったくこの娘は…。』と思っていると、加護が言う。
「安倍さん、これからはみんな…、ずっと…、ずっとずっと一緒ですよね?」
安倍は『突然なんなんだ?まだ寝ぼけてるんだな。』と思ったが、答えた。
「うん!ずぅ〜〜〜っと一緒だよ!」
すると加護は満面の笑みを浮かべ、安倍と共に走った。
- 419 名前:最終章(特別続編) 投稿日:2002年05月29日(水)22時05分07秒
- スタジオに入り、安倍は言う。
「ゴメン、ゴメン。加護ちゃんOKです。」
加護が続ける。
「ごめんなさい…。ちょっと寝ててェ…。」
飯田が言う。
「まったく、加護は〜。しっかりしてよねェ〜。」
しかし加護は、飯田に怒られているにもかかわらず、嬉しくてたまらなかった。
『飯田さんに、保田さん、矢口さんに後藤さんもいる。まこっちゃんや紺野ちゃん、里沙ちゃんもいる。ちゃんとみんないる。よかったぁ〜。ホントに夢だった…。』
中澤が付け足す。「しかしええなぁ、若いって…。遅刻してニコニコしとっても、許されてまうもんなぁ〜。」
それでも加護は『よかったぁ…。「モーニング娘。」だぁ…。』と思い、全員を見渡して微笑んでいた。
すると矢口に「おぉい!聞いてんのか?加護ぉ〜!」と突っ込まれる。
「はぁ〜。」加護はニコニコしながら、気の抜けた返事をする。
スタッフが叫ぶ。「はい、じゃあ本番いきま〜す!」
こうして収録は始まった。
- 420 名前:最終章(特別続編) 投稿日:2002年05月29日(水)22時06分21秒
- 中澤が言う。
「はい!今日も始まりました。さっそくいってみましょう!ダジャレ一発!ギャグ100連発ぅ〜!」
他のメンバーが騒ぐ。「イエ〜イ!」
そして中澤が言う。「おっ、今日はごっつぁん気合入ってる?」
「いやぁ〜、なんか。ちょっとね、ちょっとだけ。」後藤は笑顔で答える。
『え…?』
「いや、ちょっとて…。全然気合入れてええんやで。ねぇ、たけしさん?」
矢口はすぐさま『ビートたけし』のモノマネで答える。
「こんにちは。ビートたけしです。」
『あれ…?』
中澤が続ける。「さて今回は新メンバーの成長振りを是非、確かめたいと言う事で…。どうでしょう?大丈夫ですか?飯田さん?」
飯田が答える。「いや〜、まだ圭織ほどじゃないと思うけど、それなりには…。」
『これって…。』
安倍がつっこむ。「いや、圭織のもどうだろう?ねぇ、加護ちゃん?」
「……。」加護はボーっとしていて返事をしない。
安倍がもう一度名前を呼ぶ。「加護ちゃん?!」
「へ?あっ、はい。」加護はハッとして答える。
中澤が言う。「なんや?まだ寝ぼけてんのか?」
「もう、ほっといて進めましょ。」保田が言う。
『うそ?!まさか…?!』
最終章(特別続編) 完
- 421 名前:詩音 投稿日:2002年05月29日(水)22時08分05秒
- 本当に一瞬…。
まさか3レスで終わるとは…。
- 422 名前:詩音 投稿日:2002年05月29日(水)22時09分08秒
- やっぱり蛇足過ぎたかな…?
- 423 名前:詩音 投稿日:2002年05月29日(水)22時10分47秒
- まぁスレ容量も余ってたし、大目に見てやってください(;^_^A
- 424 名前:詩音 投稿日:2002年05月29日(水)22時15分24秒
- ではせっかくなので、もっと無駄なあとがきみたいなものを…。
え〜、実はこの話を書き始めたのは昨年の六月なんです。
当然新メン加入前(w
基本的に書くのが遅いのと、こういった形で公開するつもりはなかったので、マターリ書いておりました。
当然、完成はもちろんずっと先の予定でした。
つまり、とりあえず新メンを付け足すつもりで書いていたんです。
しかしまさか四人も入るとは…(w
せいぜい二人ぐらいだろうと思っていたので、正直焦りました…。(^_^;)
なので正直、新メンの扱いは悪かったと思います。
しかも市井さんまで復帰するし…(w
嬉しかったけど。
そして半年近く経ち、いざ試作版ができた時、やはり公開してみようと…。
しかしながら、あくまで試作版だったので、皆様にお披露目するための修正や付け足しは数知れず…。
それすらしていなかったら、とてもお見せする事は…って感じです(w
- 425 名前:詩音 投稿日:2002年05月29日(水)22時35分13秒
- さて、やはり皆様が思われたのは「ダダダ…!」の衝撃だと思います。
色々な所で色々な評価を頂きました。
しかし実はこの話、最初に書いたのは二章なんです。
その後三章と同時進行で一章を書きました。
つまり元は二章からの話だったんです。
でも「いきなりあんな出だしじゃつまらん!」「いなくなるメンバーについても描きたい。」
「二章の前の描写があった方が、二章からの話に重みが増すのでは…?」
という手前勝手な考えで、一章は出来ました。
確かに一章からの展開にしては、急変って感じですが、もしそういう事が起きるなら、誰も予想できないのが当たり前で、突然何気ない日常を壊すものじゃないかと。
つまり、それまでの全てを無駄にしてしまう様な出来事で当然なのだ…。
そう思い、あの展開に踏み切りました。
無理を承知で(w
まぁ、僕としても最初は二章が話のメインのつもりだったんですけど、
最終的はそうでも無くなったかな…?
あの展開が最大の売りだった事は確かなのかも知れませんが、皆様の記憶にその衝撃だけではなく、
全体を通して「痛い話だったなぁ…。」と残して頂けると、幸いです。
次回作の予定は今の所ありませんが、また機会があれば書いてみようと思っております。
その時はまた是非よろしくお願いします。
- 426 名前:ROM 投稿日:2002年05月31日(金)12時50分05秒
- 最終章(特別続編)だと、あのシ−ンもエンドレス
で来ちゃいますね。やっぱり夢のままで終わって欲
しい。また作者さんの作品を読んでみたいです。
ありがとうございました。
- 427 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月01日(土)10時16分24秒
405の名無しです。例の人です。
じつは某所で続編があると言ってたのをログでみてました。
というわけでひそかに待っていました。残念、一番レスとられたなあ。
痛さ的には最終章がないほうが痛い気もしますが、後を引く感じはあるほうが強いです。
いや、本当に良い作品を有難うございました。
次作、マターリとお待ちしてます。
- 428 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月01日(土)23時23分06秒
- 泣きました。マジで良かったです。
次回作期待してます。
- 429 名前:むぁまぁ 投稿日:2002年06月03日(月)08時02分52秒
- 特別編拝読させて頂きました
こういう終わり方って好きなんですよね
いろいろ想像(妄想)出来るんで
>一番レス
確かに一番最初だったですね・・・
でも今見るとなんとマヌケなレスをしてしまったんだなぁとちょっと苦笑い
もうちょっと気の利いたレスが出来ればよかったんですが・・・
次回作楽しみにしてます
- 430 名前:詩音 投稿日:2002年06月04日(火)08時33分58秒
- 皆様レスありがとうございます。
>426のROMさん
なんかアメリカ映画みたいな感じ?の謎を残すような終わり方だったかと思います。
やっぱ後味悪い感じですよね(;^_^A
本編の終わり方が本当なので、特別編はあまりお気になさらずに…。
最後までお付き合い頂いて、本当にありがとうございました。
>427の名無しさん
やはり例の方でしたか。(大変素晴らしかったです。感動しました。)
まさかログを見られていたとは…。
うかつな事は言えませんね。
しかし向こうで僕の名が出ていて驚きました。
大変光栄でした。ありがとうございました。
- 431 名前:詩音 投稿日:2002年06月04日(火)08時47分53秒
- >428の名無し読者様
ありがとうございます。
至らぬ点も多かったと思いますが、そう言って頂けるととてもうれしいです。
>むぁまぁさん
>こういう終わり方って好きなんですよね
とてもホッとしました。そう言って頂けると、UPした甲斐があります。
>一番レス
いやいや、とても嬉しかったです。
でも正直あの時は「3人のこれからの展開かぁ…。」と、気まずい気持ちもあったりしました(;^_^A
でも、本当に励みになりました。ありがとうございました。
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