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ひまわりの丘
- 1 名前:_ 投稿日:2002年01月14日(月)01時22分35秒
- 夏。太陽のもとで咲くひまわりのように、彼女は笑顔を見せた。
その笑顔はキラキラと輝いて、私の心を和ませる。
そこで私は考える。
もし、夏が過ぎたらどうなる?
夏が過ぎて、秋を越して、冬になったときも、彼女の笑顔はそこにあるのだ
ろうか……?
- 2 名前:第一話 ひまわりは私の横で笑った 投稿日:2002年01月14日(月)01時23分51秒
- サンサンと照りつける太陽の下で、色とりどりの花びらが舞う。その影で、
青く茂る葉が水滴をはじいた。
キラキラ光る水滴はそのまま地面に零れ落ち、土はゆっくりと赤茶色に。
そんな変化を楽しみながら、私はジョウロの傾きをやや急にする。そのまま
花壇の周りをぐるっと一周して、お気に入りの花に近づいた。
ひまわり。
大きな花びらをつけるこの花が、私は大好きだった。入念に水をかけている
と、次第に水の勢いは弱まってくる。
止まりきったのを確認して、壁に刺さったくいにジョウロを引っ掛ける。
そこで一つ思案した。
今年は暑い。もう少しくらいだったら水をかけてもいいのではないか。現に、
見る影もなく枯れてしまった花を私は幾度となく見た。
ジョウロに手を伸ばしかけてやめた。花だって満腹は苦しいのだ。
- 3 名前:第一話 ひまわりは私の横で笑った 投稿日:2002年01月14日(月)01時24分22秒
- 任務完了。脇においてあった鞄を手に持ち、花壇を後にする。
これは別に強制されているわけではないのだけど、なんとなく毎日花に水を
やっていた。なんとなくが日課となり、夏休みにまで来てしまっている。
まあ、おかげでここの花たちは、水不足な今日でも枯れることもなく元気に
咲いている。
- 4 名前:第一話 ひまわりは私の横で笑った 投稿日:2002年01月14日(月)01時24分53秒
- 今日は遠回りをして、土手沿いの道を通ってみた。ミンミンと鳴くセミの声
をビージーエムにのんびり歩く。
川は太陽の光を反射して、様々な色に輝いていた。
そっちに気をとられていたから、少女が近づいてきたことなど、まったく気
付かない。
「どーも、梨華ちゃん」
「……どーも」
掛けられた声に、とっさに言葉が出る。
どーも。で、どちらさま?
「えっとぉ、初めまして」
「あ、はい。初めまして」
まったく要領を得ぬまま、無難な答えを返す。
「加護亜依っていいます」
「はあ」
- 5 名前:第一話 ひまわりは私の横で笑った 投稿日:2002年01月14日(月)01時25分35秒
- 年のころ、十三四。もしかしたら、もう少し幼いだろうか。ともかく、こん
な子供に声をかけられる理由を、私は知らない。
そう言えば、名乗られたのに、名乗ってなかった。
「えっと、石川梨華」
言ってしまってから後悔する。何で私は名乗っているんだろう。
「あ、知ってます」
しかも、知っているらしい。
しばらく物思いにふけっていると、加護亜依さんがにかっと笑った。
どこかで見たことがある感じ。
「友達になりましょう」
ああ、そうだ。この子の笑顔はひまわりだ。
友達の儀式です。そう言って彼女は小さな手を差し出す。私が手を出すと、
嬉しそうに握ってぶんぶん振り回した。
- 6 名前:第一話 ひまわりは私の横で笑った 投稿日:2002年01月14日(月)01時26分11秒
- 「加護亜依さんは、何で私のこと知ってるの?」
石川梨華という名前。自慢するわけじゃないけど、そんなに目立つ名前とは
思えない。
「亜依でいーです」
ああハイと返すけど、質問の答えになっていない。もう一度同じことを言お
うと口を開く。
でも、亜依ちゃんのほうが早かった。
「ここの花、みんなしんじゃいましたね」
川と土手の間の草原は、毎年きれいな花で溢れた。それもあって私のお気に
入りの場所なのだけど、今年はちょっと事情が違う。
休むことなく続く晴天に、川の水かさも減り、その影響は草花にも及んだ。
今も私の足元には、茎の折れたひまわりが横たわっている。
「そうだね」
悲しいことだ。今日久しぶりに通ってみて、改めてそう感じた。
- 7 名前:第一話 ひまわりは私の横で笑った 投稿日:2002年01月14日(月)01時26分52秒
- 「ありがとうございます」
いきなり頭を下げられる。まったくもって意味がわからない。
「ええと、私、亜依ちゃんに何かしたっけ?」
プルプルと首を横に振る。
「かだんの花」
「あ」
学校の花壇の花は、死んでいない。
「花が好きなんだね」
きっとそうだろうと思った。さっき亜依ちゃんは本当に悲しそうな顔をして
いたから。
私の言葉を聞いてか、亜依ちゃんは遠い目をした。その目の先に映るのは花
壇の花か、晴天の空にぽっかりと浮かぶ雲か。
私は、帰るから、と言った。亜依ちゃんが頷くのを確認して太陽が沈む方向
に歩き出す。
蝉はこの暑さの中、ますます声を張り上げていた。
- 8 名前:更新終了 投稿日:2002年01月14日(月)01時29分49秒
- >>1-7
- 9 名前:名無し男 投稿日:2002年01月14日(月)02時42分53秒
- 早速良い作品をハケーンした
- 10 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月14日(月)08時09分06秒
- 情景が綺麗。続き期待です
- 11 名前:第二話 金髪とひまわりと蝉の声 投稿日:2002年01月15日(火)00時56分46秒
- 「ねがいことを三つかなえてあげる」
亜依ちゃんは、いつも唐突だった。
最近、私は学校へ行く道を変えた。
今の私の通学路は、川沿いの土手道。じゃりじゃりと音を立てながら、今日
も私は花の世話をするために学校へと向かう。
そこにはいつも、彼女がいた。
「うん……よくわからないけど」
私があいまいな返事をすると、亜依ちゃんは丸いほっぺをぷくっと膨らませ
てねめつける。
よく見ると、亜依ちゃんのほっぺはマシュマロみたいでおいしそうだった。
指をさしてぷにっとしてみたい。
- 12 名前:第二話 金髪とひまわりと蝉の声 投稿日:2002年01月15日(火)00時57分17秒
- 「だからぁ、加護がねがいごとをかなえるのです」
「うん。えっと……ありがとう」
「しんじてなぁい!」
アニメのキャラのようにビシッと指を突きつける。
「梨華ちゃん、なんでもいいからいってみて」
そう言われて私は深く考え込む。別に、亜依ちゃんの言っていることを信じ
ようと思ったわけではないのだけど。
- 13 名前:第二話 金髪とひまわりと蝉の声 投稿日:2002年01月15日(火)00時57分57秒
- 「何でもいいの?」
「うん」
そう聞いた私の視線の先に、金髪の少女が映った。ああ、そうだ。
「あの人と、知り合いになりたい」
特に接点があるわけでもない。確か同じ学校だったと記憶はしているけれど、
可愛い人だな、という以外には印象に残っていない人だった。
ところが。
「うん、わかったぁ」
「え?」
たかたかたか。
あっという間に、亜依ちゃんは彼女の方へ走っていった。慌てて追いかける。
遠くでドスンという音がした。もつれ合って転ぶ二人。金髪とひまわり。私
は思わず目を覆った。
- 14 名前:第二話 金髪とひまわりと蝉の声 投稿日:2002年01月15日(火)00時58分40秒
- 「ちょっと、私に何か恨みでもあるわけ!?」
金髪が怒った。でも、最もな意見だ。だって、亜依ちゃんは明らかにわざと
ぶつかっていったから。けど、亜依ちゃんも負けずに、
「そっちがぶつかってきたんじゃないですかぁ」
……滅茶苦茶だ。
このままでは収集がつかないと判断した私は、転ばないように土手をゆっく
り駆け下りた。私が通った道に土煙が舞う。
「すみません」
開口一番、わたしは謝罪の言葉を述べた。金髪の視線が私に注がれる。
「……知り合い?」
困った。知り合いというか、なんと言うか。
「ええと、まあ……」
視線を合わせたくなくて、上にずらした。太陽の光が目に入り、慌てて戻す。
目が合った。
- 15 名前:第二話 金髪とひまわりと蝉の声 投稿日:2002年01月15日(火)00時59分11秒
- しばらく見詰め合った後、金髪は息を深く吐いた。
「あなたからも、ちゃんと言っておいてよね」
そう言って、亜依ちゃんのほうを一瞥する。亜依ちゃんも負けずに、あかん
べーをした。
「ごめんなさい」
日差しに照り付けられながら、私は頭を下げた。私が悪いわけではないのに。
というか、暑くてもうどうでもよくなっていた。
- 16 名前:第二話 金髪とひまわりと蝉の声 投稿日:2002年01月15日(火)00時59分44秒
- 金髪がいなくなった後、私は亜依ちゃんを連れて木で出来た日陰に行った。
頭のてっぺんの辺りで、葉っぱがカサカサと音を立てて揺れた。
「わざとでしょ」
私がそう言うと、悪びれもせずに頷いた。黒目の多い瞳がキラキラと光る。
「どうして?」
「だって、梨華ちゃんのおねがいだもん」
首をひねる私を横目に、亜依ちゃんは言葉を続けた。
「あの人と知りあいになりたいっていったじゃない。なったでしょ?」
亜依ちゃんのいたずらな顔が逆光で霞む。
どうにも釈然としない。文句を言おうとしたら、蝉の合唱にかき消された。
その中で、亜依ちゃんの笑い声だけが嫌に大きく響く。
でも、後になって振り返ってみたら、別に不思議なことじゃなかった。
夏の少女が紡ぐ言葉は、夏に映える。
- 17 名前:更新終了 投稿日:2002年01月15日(火)01時06分20秒
- 更新終了
>>11-16
>>9 名無し男さん
ありがとうございます。よく見かけます(w
良い作品になるように頑張りますね。
>>10 さん
ありがとうございます。
情景描写まだまだ拙いですが、手を抜かずにやっていきます。
- 18 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月15日(火)02時08分18秒
- 2人のやりとりが可愛いくてまるで絵に浮かぶようです
さて、金髪さんは誰なのかな
- 19 名前:第三話 金の雨は私のもとに降る 投稿日:2002年01月16日(水)05時16分46秒
- 最近、少しずつではあるが、過ごしやすい温度になってきた。そんなことを
思いながら、いつもの土手沿いの道を歩く。
どこまで行っても、白い砂利道。どこまで行っても、景色が変わることはな
い。
「あれ?」
おかしなことがあった。彼女が、いないのだ。
今まで亜依ちゃんがいないことはなかった。そのせいか、周りの景色がいつ
もより色あせて感じる。
「まあいいや」
誰に言うでもない呟きをもらし、家路をたどる。
別に、亜依ちゃんがいないから寂しいなんてことはないもん。
- 20 名前:第三話 金の雨は私のもとに降る 投稿日:2002年01月16日(水)05時17分21秒
- 帰り道の途中で、土手の下のほうから声が聞こえてきた。ハッとして、川の
方を覗き込む。
「あ、金髪……」
亜依ちゃんではなかったことにがっかりしながらも、胸の奥から好奇心がム
クムクと首をもたげてくる。
気が付くと、足は勝手に土手を駆け下りていた。
声を掛けようとして、ぎりぎりの所で踏みとどまる。
いや違う。私は、それ以上足を踏み入れることが出来なかったのだ。
耳の奥を抜けていくような高い声で、流行りのポップソングを歌い上げる彼
女は、どこか神々しくて他のものを寄せ付けない威圧感があった。
私は今までこういう雰囲気を持つ類の人とは知り合ったことがなくて、この
場で耳を傾けることしか出来ない。
- 21 名前:第三話 金の雨は私のもとに降る 投稿日:2002年01月16日(水)05時17分53秒
- 「あれ?」
目が合って、歌が急に止んだ。悪いことをした気になって視線を逸らす。
「この間の、ええと……」
「石川梨華です」
「梨華ちゃんね。どうしたの?」
彼女の口からごく自然に梨華ちゃんという言葉が出てきて、私のほうがドギ
マギした。
「えっと……、あなたが、見えたから」
「矢口真里。何て呼んでもいいよ」
私が答え終わるかどうかのところで、彼女は答えを返した。
太陽の光で、金色の髪が鮮やかに光る。それは、彼女のイメージにぴったり
だった。
- 22 名前:第三話 金の雨は私のもとに降る 投稿日:2002年01月16日(水)05時18分31秒
- 「矢口……さんは、なんで歌ってるんですか?」
その言葉を聞いた途端、彼女は破顔する。歌を紡いだときと同じあの声は、
私の胸にじわりと染み込む。
「誉められたことはあったけど、いきなりそんなことを言われたのは初めてだ
よ」
私は、ふてくされたように矢口さんを睨んだ。出会って間もないというのに、
ずいぶんと馴れ馴れしく接されている。
それに気がついたのか、矢口さんは私の肩をぽんぽんと叩いた。
「ああ、ごめんごめん。そういうつもりじゃなくてさ」
じゃあどういうつもりですか、という言葉は口には出さなかったが、恐らく
伝わったのだろう。矢口さんは、肩をすくめた。
- 23 名前:第三話 金の雨は私のもとに降る 投稿日:2002年01月16日(水)05時19分05秒
- ワンテンポずらして、話し出す。
「矢口はね、夢があるんだ」
突然話が変わった。それでも、矢口さんの凛とした瞳に引き寄せられる。
「小さいころからずっと歌手になりたかった」
照れたようにそう言って、それから私のほうを向く。そして、思い出したよ
うに睨んだ。
「出来っこねーよ、とか思ったでしょ」
「そんな」
私は慌ててプルプルとかぶりを振る。矢口さんが微笑んだのを見て、それが
いたずらだったのだと理解した。
「ひどいです」
プクッと頬を膨らませた。そういえば、亜依ちゃんもこんな顔をしていたな、
と思い出す。あれはきっと甘えていたんだ。
- 24 名前:第三話 金の雨は私のもとに降る 投稿日:2002年01月16日(水)05時19分40秒
- 「とまあ、これが私が歌っている理由」
「あ……」
私が思っていた以上に、私の質問を真摯に受け止めていたことに気付く。
少し化粧の濃い矢口さんの頬は、チーク以外の赤に染められていた。
「ちょっと先生に馬鹿にされたりしたもんだから、こうやって日々練習に励ん
でいるのです」
最後は少し茶化した風な物言いで、夢の話題にピリオドを打つ。でも、その
ときの矢口さんの目が笑っていなくて、私をドキリとさせた。
「きっと……」
「ん?」
夢は叶いますよ、という言葉は口には出さなかったが、恐らく伝わったのだ
ろう。矢口さんはもう一度、今度は空に向けメロディーを奏でた。
いつかこの歌が全ての人々に降り注げ、と言わんばかりに。
- 25 名前:更新終了 投稿日:2002年01月16日(水)05時22分01秒
- 更新終了
>>19-24
>>18さん
ありがとうございます。
今回は二人の絡みはお休み。ということで、金髪さんの紹介でした。
- 26 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月16日(水)21時43分37秒
- 歌ってたのはあゆのナンバーと予想
- 27 名前:名無し男 投稿日:2002年01月17日(木)15時59分47秒
- Aベストの中に入ってたアレかな?
- 28 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月18日(金)03時02分38秒
- 石川さんの好きなアノ曲と予想してみる。
- 29 名前:第四話 生まれるもの、死にゆくもの 投稿日:2002年01月18日(金)12時35分26秒
- もうすぐ、一年で最も木々の美しい季節がやってくる。色とりどりの葉がワ
ルツを踊り、見る者の目を楽しませる。
でも、生まれるものがあれば死にゆくものもあるわけで。
今日のひまわりはずいぶんと元気がなかった。
元気になりますように、そんな願いを込めてジョウロを手に持つ。
でも、水をかけようとした私の手は何者かに抑えられた。
「……亜依ちゃん」
亜依ちゃんは、いつものように満面の笑みで私の前に立つ。
そして、私の手からジョウロを取るとその場でくるくると回った。その拍子
に、ジョウロの水がハラハラと舞う。
「元気になりますよ〜に」
そう言っておどけて見せた。私は思わずクスクスと笑う。
- 30 名前:第四話 生まれるもの、死にゆくもの 投稿日:2002年01月18日(金)12時36分00秒
- 少しの間笑った後、私はアレッと思った。亜依ちゃんの顔が、少し青白い。
「亜衣ちゃん、顔が青いよ。どこか具合悪いの?」
「えぇ!?」
まったく心外、とでも言うかのように肩をすくめる。そして手をぶんぶんと
回して、
「シンパイありませ〜ん」
ひとしきり元気さをアピールした後、胸をドンと叩いた。
その後に言った、梨華ちゃんが黒すぎるだけです、という言葉に、私は亜依
ちゃんの額を小突く。
それでも笑顔を絶やさない彼女は、まるで元気の塊のように見えた。
きっと、太陽の真っ白な光が、彼女を青白く見せているのだろう。
- 31 名前:第四話 生まれるもの、死にゆくもの 投稿日:2002年01月18日(金)12時36分31秒
- 「あ、そうだ」
そこで私は、一つのことを思い出した。
「確か、願い事を三つかなえてくれるんだよね」
「もちろ〜ん」
エヘン、と胸を張ってみせる。その拍子にジョウロを落とした。
「じゃあ、もう一つお願いしていいかなぁ?」
ジョウロからこぼれ出た水を目で追いながら、控えめに言ってみる。
「いいよぉ」
そんな私の心のうちを知ってか知らずか、亜依ちゃんは二つ返事で答えた。
それに後押しをされ、私は思い切って願いを口にしてみた。
- 32 名前:第四話 生まれるもの、死にゆくもの 投稿日:2002年01月18日(金)12時37分19秒
- 「矢口さんと仲良くなりたい」
「ヤグチさん……?」
ブリッコのように首を少し傾ける。似合ってるなぁ、などと思いながら、説
明が足りなかったことに気付く。
私だって、一昨日までは金髪って呼んでいたのに。
「ああ、わかったぁ。いつも川でうたってるヒト!」
その言葉に私は驚かされた。
「なんで知ってるの?」
「さぁて、なんででしょう?」
クスリと笑われた。それに腹が立って、理由を必死で考える。
私が話したということはないのだから、必ずどこかで接点があるはずだ。
私は一人、ウンウンとうなる。
……ああ!
「わかった!」
「なに?」
興味深げな表情で、私の顔を覗き込む。
「私たち、いつも川沿いの土手道で会ってるもん。私を待っている間に歌を聞
いてたんでしょ?」
自身満々の言葉に、亜依ちゃんは、さぁどうでしょう、と笑うだけ。私が何
度聞いても答えてくれない。
- 33 名前:第四話 生まれるもの、死にゆくもの 投稿日:2002年01月18日(金)12時37分56秒
- 「じゃあ、いくね」
「え?」
あまりに唐突にそんなことを言うので、私は慌てた。
まだ会ったばかりなのに。話したいことは一杯あるのに。
「ほらぁ、梨華ちゃんのおねがいをかなえてあげないと」
ニコリと笑って言った。
私はぼうっとしたまま、亜依ちゃんが歩いていくのを見送る。
「体に気をつけてね!」
遠くなっていく背中に、私は声を投げかけた。
亜依ちゃんの背中が遠く小さくなっていって、このまま私の元からいなくな
ってしまいそうだったから。
- 34 名前:更新終了 投稿日:2002年01月18日(金)12時58分40秒
- 更新終了
>>29-33
>>26さん
浜崎さんの曲には詳しくないのですが、彼女はどの曲が好きなのでしょうか?
なんてことを思い、ちょっと歌詞を調べたりしました(w
>>27 名無し男さん
ありがとうございます。
Aベストの中のなんだろう。僕的にはvogueだと予想。
>>28さん
アルバムの中に入っているあのソロでしょうか?
加護さんがどうなるのかは徐々にわかっていくのかな……?
- 35 名前:名無し男 投稿日:2002年01月18日(金)13時07分24秒
- 何と意味深な・・・!!!
この後の展開がマターク予想できぬ
- 36 名前:第五話 そして私は罪を犯した 前編 投稿日:2002年01月19日(土)03時27分52秒
- 遊園地の乗り物は夕日の赤で染められ、私を少し切なくさせた。その赤が徐
々に伸びていき、私たちまでも赤に染める。
隣にいる矢口さんの表情は伺えなかった。ただ、私と同じ方向を見つめてい
た。
そのまま目を合わせずに、私は口を開いた。
「ねえ、矢口さん」
ん、とだけ答えて、視線は動かさない。そのまま、沈黙が私たちを包む。
そう言えば、どうしてここにいるんだっけ。
私はどこか場違いなことを考えながら、矢口さんの温度を感じていた。
- 37 名前:第五話 そして私は罪を犯した 前編 投稿日:2002年01月19日(土)03時29分38秒
- 土手を一人で歩きながら、私は昨日のことを思い返していた。
二つ目の願い。
どうして、あんなことを言ってしまったんだろう。これじゃまるで、私が矢
口さんの事を好きみたいではないか。
今日もいつものように学校へ行ったが、亜依ちゃんの姿はなかった。
もちろん、いつも一人で水遣りをしているわけだけども、なぜか少し寂しか
った。
言い訳くらいはさせて欲しい。
- 38 名前:第五話 そして私は罪を犯した 前編 投稿日:2002年01月19日(土)03時30分13秒
- 今日は歌が聞こえないな、などと考えながら歩いていると、土手の真ん中辺
りに差し掛かったところで聞き覚えのある声。それも二人。
私の頭の中を、二つ目の願いがぐるぐると回った。
なにか、嫌な予感がする。
私はいつものように土手を駆け下りた。
本当は、そのたびに靴下が汚れるから、洗濯するのがめんどくさくて嫌なん
だけど。
もくもくと立つ砂ぼこりを気にしながら一気に下まで駆け下りると、そこに
は予想した通りの二人がいた。
そしてこれもまた予想したとおり、私の口からは大きなため息がこぼれた。
- 39 名前:第五話 そして私は罪を犯した 前編 投稿日:2002年01月19日(土)03時32分31秒
- 「だからぁ、加護はゆーえんちにいきたいんです!」
「だから、なんで矢口に言うんだよ!」
はぁ。
もう一度ため息が出た。
「いこーって約束したじゃないですか」
「してねーよっ!」
身長が小さいせいもあってか、亜依ちゃんとケンカしていると彼女まで中学
生くらいに見える。
少しだけ、お姉さんの気持ちが芽生えた。
- 40 名前:第五話 そして私は罪を犯した 前編 投稿日:2002年01月19日(土)03時33分35秒
- 「もう、なんですぐケンカするの?」
二人は私が近づいてきたことにも気付かなかった様子で、びっくりしていた。
私は、ゆっくりと二人の顔を交互に見る。
「だってさ……」
ばつの悪そうな表情で矢口さんが口を開いた。
「だって、矢口さんがわたしたちといっしょにゆーえんちいくの、いやだって
いうんだもん!」
が、何かを隠すような必死さで、亜依ちゃんが言葉を遮る。
「しょうがないでしょ! あんたたちと……ええ!?」
突然大きな声で叫んだ。私たちの上空を飛んでいた鳥が、ぶるっと身震いを
する。
「ちょっと、梨華ちゃんのことなんて一言も言ってないじゃん」
止めるつもりだったはずが、さらに油を注いでしまって。
もうどーでもいいや、何て思いながら見守っていたら、いつのまにか面白い
展開になっている。
こちらをちらりと見た亜依ちゃんの目で、何を考えているかわかった。
うん、面白そう。
- 41 名前:第五話 そして私は罪を犯した 前編 投稿日:2002年01月19日(土)03時34分06秒
- 「えぇ、私たちと行くの嫌なんですか?」
「な……なんだよ、梨華ちゃんまで」
予想外の援軍に、情けない声を出す矢口さん。
ここぞとばかりに亜依ちゃんが攻勢に出る。
「ほんとひどいわぁ、こんなヒトだとはおもわへんかった!」
ずいと一歩前に出た亜依ちゃんは、なぜか関西弁でたたみかけた。
二人の気合に負けたのか、矢口さんは両手を上に上げると、
「わかったわかった、行くよ」
と、だけ言った。
悪乗りしすぎたかな、と思い声を掛ける。
「あの、矢口さん……」
それを見た矢口さんは口元だけで微笑んで見せた。そしてゆっくりと唇を動
かす。「何も言わないで」
- 42 名前:第五話 そして私は罪を犯した 前編 投稿日:2002年01月19日(土)03時34分38秒
- こうやって、私は遊園地に行くことになったのだ。
矢口さんと別れた後、亜依ちゃんはにやっと笑って見せた。
「ね、ねがいごとかなったでしょ?」
それを聞いた私は口をあんぐりとあけた。
今回も私が間に入ったおかげじゃない。
でも、それを口に出す気にはならなかった。そのかわり、こう思うことにし
た。
亜依ちゃんは、嘘をついてはいない。
だって、その方がきっと楽しいだろうから。
一つくらい、私の理解に収まりきらないことがあったっていいのだ。
だから、私はフィルターを通さずに亜依ちゃんを見ることに決めた。不意に
視線を川に移したとき、みなもがいつもよりきれいに見えた気がした。
- 43 名前:更新終了 投稿日:2002年01月19日(土)03時41分34秒
- 更新終了
>>36-42
>>35 名無し男さん
今回はちょっと軽めな話でいってみました。ただ、タイトルが意味深ですが……(w
あと、先のレスにより、この先のネタが思いつきました。ありがとうございます。
- 44 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月19日(土)05時47分20秒
- ここの加護ホントに天真爛漫で可愛いですね
頬緩みっぱなしです(w
- 45 名前:名無し男 投稿日:2002年01月19日(土)15時31分55秒
- 加護ちゃんが無垢でイイ!
作者さんのお役に立てて光栄ですわ
- 46 名前:第六話 そして私は罪を犯した 後編 投稿日:2002年01月21日(月)02時13分21秒
- 夏休みが残りわずかということもあって、遊園地は多くの人で溢れていた。
あまりに多すぎて息が詰まるけど、これくらい多い方が楽しさも増すのかも
しれない。
少し歩くと右側にジェットコースターがあって、長蛇の列を築いていた。
そのまま道なりに進むとお化け屋敷、観覧車など定番のアトラクションが続
き、どこから回っていいのか迷ってしまう。
私は矢口さんの方を見た。
亜依ちゃんと一緒に、どこで昼ご飯を食べるか、という議題についての論争
を行っている。
ここに来てまで、と思わないこともなかったけど、二人の笑顔を見ていると、
この場所の雰囲気を楽しんでいるんだなってわかった。
- 47 名前:第六話 そして私は罪を犯した 後編 投稿日:2002年01月21日(月)02時14分56秒
- 「ねえ、どれから乗ろっか?」
矢口さんの言葉に、私は辺りを見回す。左手の方には、上空から急激な速さ
で落ちてくるアトラクションがあった。
その視線の先を矢口さんが追う。
「……いきなり?」
苦笑しながら言った。
「加護ものりたーい。」
「ねー」
「ねー」
矢口さんは困った顔をして、それから笑った。
「しょうがないなぁ、いいよ」
- 48 名前:第六話 そして私は罪を犯した 後編 投稿日:2002年01月21日(月)02時16分00秒
- 「もぅ、つかれたよぉー」
斜め後ろから亜依ちゃんの声。
「じゃあ、そろそろ帰ろうか」
矢口さんはチラリと腕時計に視線を落とし、言った。
太陽はずいぶんと低い場所まで落ちていて、少し薄暗くなってきている。
親子連れの客はもうほとんどいなくなり、代わりにカップルの数が増えてき
た。
それを見て、乗り忘れていたものに気付く。
「ねえ、あれ」
私は、この遊園地目玉の巨大な観覧車を指差した。
矢口さんも軽く頷いて、
「ああ、締めにぴったりだね」
笑顔で言う。
- 49 名前:第六話 そして私は罪を犯した 後編 投稿日:2002年01月21日(月)02時16分33秒
- 幸いなことに、まだ日があったため、列はそれほど込んでいなかった。五分
ほど待って、最前列へ行く。
「あのぅ」
亜依ちゃんが申し訳なさそうな声を出す。
「加護、高いのにがてでぇ」
「はぁ?」
矢口さんがどこから出たかわからないような声で答えた。
「今まで散々乗ってたくせに」
それには私も同感で、うんうんと頷く。
ここに来て真っ先に、観覧車より高いところまで上る乗り物に乗ったのは、
一体誰だ。
- 50 名前:第六話 そして私は罪を犯した 後編 投稿日:2002年01月21日(月)02時17分10秒
- 「ちょっとつかれちゃってぇ、二人がもどるまでまってますから」
矢口さんに見えないように、私へウインクする。
恐らく、二つ目の願いを叶えてやるってことなのだろう。
「待ってますからって……」
「じゃあ、お言葉に甘えていきましょう」
まだ食い下がるヤグチさんに腕を絡め、観覧車に乗り込む。
係りの人の「いいんですか?」という言葉に頷き、扉を閉めてもらった。
- 51 名前:第六話 そして私は罪を犯した 後編 投稿日:2002年01月21日(月)02時18分00秒
- 徐々に観覧車は高度を増し、亜依ちゃんの顔が小さくなっていく。手を振っ
たら、亜依ちゃんも手を振り返した。
亜依ちゃんの表情がわからなくなった辺りで、彼女は近くのベンチに向かい
歩き出した。
「あいつ、本当に疲れてたんだな」
ポツリ、と矢口さんがもらす。
「え?」
「だってさ、疲れてるからこれに乗らなかったんじゃないの?」
矢口さんは勘違いをしている。
亜依ちゃんが、どうしてこの観覧車に乗らなかったのか。答えは簡単だ。
「……矢口の顔になんか付いてる?」
私の視線をまっすぐに受けて、矢口さんは視線を逸らした。少し頬が赤く染
まっている気がするのは、私の自惚れだろうか?
「パンのカスが付いてます」
「んなわけないだろ。さっき鏡見たもん」
「知ってるんじゃないですか」
どちらともなく、クスリと笑った。
- 52 名前:第六話 そして私は罪を犯した 後編 投稿日:2002年01月21日(月)02時18分38秒
- 「ああ、梨華ちゃん見て」
促されるままに窓の外を見る。
大きく広がる街は、夕日の赤に染められていて、どこか知らない場所のよう
に思わせた。
ぼんやりとそのまま外を眺める。
世界がゆっくりと動いている感覚。その中には私と矢口さんの二人だけ。そ
れは、どんなにすばらしいことだろう。
けど、その世界にも終わりはやってきて。
ゆっくりと地上が近づくにつれ、私たちの間にも会話が戻る。
人々のざわめきが耳につき始めた頃、亜依ちゃんの姿がないことに気付いた。
「トイレかなぁ?」
矢口さんの言葉に、ううんと首をひねる。
「それとも、何か食べに行ったかな」
亜依ちゃんなら、ありそうだけど。
- 53 名前:第六話 そして私は罪を犯した 後編 投稿日:2002年01月21日(月)02時19分23秒
- しばらく探しても亜依ちゃんはいなかったので、少し歩くことにした。
しばらく左手の方向に進んだところに、いい場所があった。ここなら、観覧
車のところも見えるし、街の景色も一望できる。
歩道に沿って並んでいるオブジェに二人で腰をおろす。
辺り一面が赤に染められていて、私は少し切なくなった。
でも、これでいい。もし今夕日が消えたら、私の頬の色までばれてしまうだ
ろうから。
- 54 名前:第六話 そして私は罪を犯した 後編 投稿日:2002年01月21日(月)02時20分43秒
- 矢口さんはまっすぐ街の方を見つめていた。私視線と同じ方向。
「ねえ、矢口さん」
「ん」
観覧車にいたときのような沈黙が私たちを包む。それでも、不安はない。
隣にいる矢口さんの温度が、私を安心させた。
「なんでもないです」
このままでいいと思った。
この世界に二人しかいない感覚。これ以上、何を望めというのだろう。
「そっか」
こちらを向かずにそれだけ言う。その代わり、ギュッと私の手を握った。
私は矢口さんの肩にもたれかかる。
- 55 名前:第六話 そして私は罪を犯した 後編 投稿日:2002年01月21日(月)02時21分19秒
- どれくらい時間が経っただろうか。
「梨華ちゃぁん、矢口さぁん」
遠くから聞こえる亜依ちゃんの声。
「あ、忘れてた」
そんな矢口さんの言葉に私は声を出さず笑った。
幸せな時間。
この時間を長く持ちたいと思うことは、罪深いことなのでしょうか?
たった一瞬だけ、亜依ちゃんがこなければいいと願ったことが、私の最大の
罪だったのでしょうか……?
- 56 名前:更新終了 投稿日:2002年01月21日(月)02時25分04秒
- 更新終了
>>46-55
>>44さん
加護さんの会話文を書くのが一番疲れます(w
標準語の加護さんを受け入れてくれてよかった。
>>45 名無し男さん
いつもありがとうございます。
役に立つどころか、レスを励みに毎回の更新を頑張っています。
ストックがないもので……(苦藁
- 57 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月21日(月)16時56分44秒
- む、思わせぶりな引き・・・
- 58 名前:名無し男 投稿日:2002年01月22日(火)00時01分48秒
- この『罪』とやらはここで終わるものなのか?
はたまた次に結びつくものなのか?
うーん・・・ツヅキガキニナール
- 59 名前:第七話 夏、過ぎ行く頃 投稿日:2002年01月22日(火)02時54分30秒
- あの日から数日、亜依ちゃんの姿を見かけることはなかった。矢口さんにも
会っていない。
そのうちに長かった夏休みも終わり、学校が始まった。
まるで全てが夢のことのようで、私はあの日々のかけらを探そうとした。
でも、蝉の声すらもう聞こえなくて、時は流れるものだということを改めて
実感する。
きっとそのうちに全てを忘れるのだ。
亜依ちゃんとの出会いも、矢口さんの温度も。
私は友達の笑い声に包まれて、なんとなくそう思った。少し寂しかったけど、
それが悪いことには思えなかった。
- 60 名前:第七話 夏、過ぎ行く頃 投稿日:2002年01月22日(火)02時55分14秒
- 久しぶりの学校は日常の匂いがした。
廊下を踏みしめる靴の音、古い窓ガラスを揺らす風。
外はちょうど曇り空で、思わず笑った。
曇りの日は晴れの日と違って目立たないけど、それなりに温かいのだ。太陽
によって温められた空気を、そのまま保存してくれる。
それはまるで、太陽のようにキラキラと輝いている過去を思い出にすること
のように。
- 61 名前:第七話 夏、過ぎ行く頃 投稿日:2002年01月22日(火)02時55分48秒
- 学食への廊下を友達と歩いていると、ねえねえ、と声を掛けられた。
友達が指差した先を見ると、彼女がいた。
鮮やかな金の髪に、誰にでも愛着を感じさせる小さな体。
「先輩、勇気あるよねぇ」
この学校の生徒指導を取り仕切っている体育教師と、にらみ合いを続ける矢
口さん。
きっとそれが彼女の日常で。
こんな平凡な私とは、元々交わるはずのなかった人なのだ。
夏の日の私は今の私とは違う。シンデレラは十二時になったら、本当の自分
がばれないうちに帰らなければならない。
私は目を伏せて矢口さんの横を通り過ぎる。
ちょうど真横まで来たとき、矢口さんが何かを言った気がした。
それが私に対してなのか、体育教師に対してなのかはわからなかったが、そ
のまま歩みを緩めない。
そのまま学食まで、私は顔を上げることが出来なかった。
- 62 名前:第七話 夏、過ぎ行く頃 投稿日:2002年01月22日(火)02時56分55秒
- いつものように花壇に寄ってから、家路につく。
大切に守りつづけてきたひまわりはしおれてきていて、夏の終わりを感じさ
せた。
申し訳程度に水を遣り、いつのまにか習慣になっていた土手沿いの道を歩く。
いつもと変わらない土手沿いの道。
白煙を立てる、白い砂利道。
そこにはいつものように、亜依ちゃんがいた。
「あ、魔女」
不意にシンデレラに出てくる魔女の顔が頭に浮かんだ。
「なぁに、それ?」
クスクスと笑われる。
気付かないうちにずいぶんと大人びた笑いをするようになった。この年頃の
少女は成長が早いのだろうか。
- 63 名前:第七話 夏、過ぎ行く頃 投稿日:2002年01月22日(火)02時57分50秒
- 「なんか久しぶりだね」
「だねぇ」
「どこに行ってたの?」
「ちょっと家でやすんでた」
そう言った亜依ちゃんは、以前よりもずっとやせ細っているように見えた。
「なにかあった?」
亜依ちゃんは首をプルプルと振る。
「そうだ」
私はポンと大げさに手を叩いてみせる。それをニコニコした表情で見つめる
亜依ちゃん。
「とっておきの場所に連れて行ってあげる。悩みなんてみぃんな吹っ飛んじゃ
うような」
亜依ちゃんがコクリと頷くのを確認すると、私は手を引いて走り出した。
自分でもなぜだかわからないけど、少しでも早く亜依ちゃんにあの場所を見
せたかった。
- 64 名前:第七話 夏、過ぎ行く頃 投稿日:2002年01月22日(火)02時58分40秒
- 学校側に土手沿いの道を歩くと、小さな橋が見えてくる。そこから川を横切
って対岸に渡ると、土手と呼ぶには立派過ぎる丘が広がっていた。
「足元気をつけてね」
転ばないように手を引いてやる。
枯れ木や切り株などに加え、誰も手入れをしていないために背丈の高い草が
数多く生えている。
今よりもっと幼くて、少しばかりやんちゃだった頃は、よくここに登ったも
のだけど。
- 65 名前:第七話 夏、過ぎ行く頃 投稿日:2002年01月22日(火)02時59分12秒
- 「もう少しだからね」
よいしょとおばさんのような声を出して上った先には、あの日の遊園地から
見たような景色。街の全貌が見渡せる。
名も知らないような野の花に囲まれた、小高い丘のてっぺんに私たちはいた。
「うわぁ」
そればかりを繰り返して、亜依ちゃんが辺りを見回す。
ここは誰にも教えていない、石川梨華とっておきの場所。
「みてみて、ほら。あんなところにちっちゃいこーえん」
目をキラキラ輝かせながらはしゃぐ亜依ちゃんを見て、ここに連れてきてよ
かったと思った。
- 66 名前:第七話 夏、過ぎ行く頃 投稿日:2002年01月22日(火)02時59分42秒
- 「ありがとぅ」
少し落ち着いた亜依ちゃんが、いきなりそんなことを口に出した。
「どうしたの、いきなり改まっちゃって」
照れたのを隠すように、少しぶっきらぼうに言ってみる。
「すごくいいバショだね、ここ」
亜依ちゃんは近くにある白い花に触れた。
「みんな、いいかおして笑ってる」
みんな?
私が不思議そうな顔をしたのを見ると、亜依ちゃんは自分の心臓に手を当て
て笑った。
「生きてるのはどーぶつだけじゃないんだよ。しょくぶつだって生きてる。お
なじように、笑ってり泣いたりしてるんだ」
亜依ちゃんが言うと、本当に聞こえるから不思議だ。科学的な根拠なんかよ
りも、彼女の一言の方が重く感じた。
「じゃあさ、あのひまわりも喜んでくれてるかなぁ」
私は、街の中でひときわ目立つ建物に目をやった。
亜依ちゃんも立って、同じ方向を見る。
「……きっと、よろこんでるよ。だれよりもしあわせだって思ってる」
しおれたひまわりの笑った顔が浮かんで、消えた。
一瞬だけ亜依ちゃんの笑顔と被って見えて、ドキリとした。
- 67 名前:第七話 夏、過ぎ行く頃 投稿日:2002年01月22日(火)03時00分14秒
- 「それよりぃ」
亜依ちゃんはジャンプをして、体をこちらに向けた。
「三つめのねがいごとは?」
「え?」
そう言えば、そんなものもあった。
過程はともかく一応成功しているわけだから、私もそれなりに真剣に考える。
そこでふと、ある考えが頭に浮かんだ。
「ねぇ、この願いを叶えたら、私の前からいなくなったりしない?」
亜依ちゃんは、え? という顔をした後に、黙り込む。
私は、自分の胸がドキドキと鳴っているのを感じた。
- 68 名前:第七話 夏、過ぎ行く頃 投稿日:2002年01月22日(火)03時00分45秒
- 「梨華ちゃんのたんじょーびはいつ?」
いきなりの話の展開についていけず、私は間抜けな顔になる。プッと吹き出
す亜依ちゃん。
「なによぉ」
拗ねた顔をした私に、ゴメンゴメンと平謝り。そして真面目な顔になると、
「石川梨華さんのたんじょーびをおききしたいのですが」
と、言って見せる。
舌ったらずなしゃべり方と見事に不協和音を引き起こしていて、私の顔はほ
ころぶ。
今度は亜依ちゃんが不機嫌になる番だった。
「一月十九日です」
亜依ちゃんの真似をして、改まった口調で言ってみた。
亜依ちゃんは膨れっ面になりながらも、
「たんじょーびプレゼントわたさなきゃだめだから、そうかんたんにはいなく
なれないな」
私が一番喜ぶことを、事もなげに言ってのけた。
- 69 名前:第七話 夏、過ぎ行く頃 投稿日:2002年01月22日(火)03時01分18秒
- 「じゃあそろそろ帰ろう」
そんな私の声にも、亜依ちゃんは微動だにしない。
「また来れるから」
つとめて優しく言って、亜依ちゃんの肩に手を乗せる。その肩は、少しだけ
震えていた。
「いつか、ここにすみたいなぁ」
誰に言うでも無しに、亜依ちゃんが呟いた。私も誰に言うでもなく、そうだ
ね、と漏らす。
- 70 名前:第七話 夏、過ぎ行く頃 投稿日:2002年01月22日(火)03時02分29秒
- 亜依ちゃんは振り向くと、太陽のもとで咲くひまわりのような笑顔を見せた。
その笑顔はキラキラと輝いて、私の心を和ませる。
そこで私は考える。
もし、夏が過ぎたらどうなる?
夏が過ぎて、秋を越して、冬になったときも、彼女の笑顔はそこにあるのだ
ろうか……?
でも、亜依ちゃんがいる限り夏はいつまでも続く。
明日学校で、矢口さんに声を掛けてみようと思った。
- 71 名前:更新終了 投稿日:2002年01月22日(火)03時09分21秒
- 更新終了
>>59-70
>>57さん
引きの部分に目が行ってくれて嬉しいです。
明日更新できるかどうかわからないので、多めに頑張ってみました。
>>58 名無し男さん
『罪』。果たしてこれから引っ張っていくのかどうか。
今回はあまり関係がない内容でしたが、もしかしたら引っ張るかも……(w
- 72 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月22日(火)04時13分58秒
- ゴメンナサイ。
何故か綺麗な描写に溺れすぎ
勝手に涙が…今はサキを想わず、待ってます。
- 73 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月22日(火)18時50分15秒
- 名作の予感。。。
- 74 名前:名無し男 投稿日:2002年01月24日(木)14時49分55秒
- やべぇ
だんだんネガテ部な事を連想して
おaになってきた
- 75 名前:第八話 もう一人の私と夏の幻 投稿日:2002年01月25日(金)04時02分05秒
- 私は花壇の前で一人立ち尽くしていた。
たったの一日で、見る影もなくしおれてしまったひまわり。
悔しいくらいに明るい太陽に向かって、お辞儀をするように首をうなだれて
佇んでいる。
だから私は、昼休みが終わっても、ジョウロを右手に立ち尽くす他なかった
のだ。
「梨華ちゃん?」
後ろの方から、私を呼ぶ声。
真綿のような柔らかさを伴って、私の耳に入ってくる。
その人はゆっくり私の元へ近づくと、ひまわりの頭をなでて笑った。
「サボリ?」
- 76 名前:第八話 もう一人の私と夏の幻 投稿日:2002年01月25日(金)04時02分37秒
- それを見て、絵になっていると思った。
金髪とひまわり。いつかどこかで見たような風景。
「違います」
自分の動揺が悟られないように、ゆっくり、はっきりと喋った。それは思っ
たよりも冷たい響きを持っていたけど、矢口さんは大して気にした風でもなく
ひまわりに目を向ける。
「つまり、ひまわりが枯れそうでセンチな気分になっていたわけね」
不意打ちのようにズバリと答えを言われ、顔から火が出そうなほどに熱くな
る。
「そんなんじゃないです」
視線をずらしながら言った。
そんな言い訳が意味を持たないことはわかっていたけど。
- 77 名前:第八話 もう一人の私と夏の幻 投稿日:2002年01月25日(金)04時03分11秒
- 「じゃあ、帰ろっか」
「え?」
戸惑う私を見て、矢口さんは笑った。
「サボリが先生にばれちゃマズイでしょ。こういうときは、さっさと帰るの」
私はこれから授業を受けようとしていて、ましてや今だってサボっていたわ
けではないのだけど、ついコクリと頷いてしまっていた。
視界の隅に太陽の線が見えた気がしたのだ。
雨のように降り注ぐ太陽の線。
その線は、今がまだ夏であることの象徴のように思えて。
「その代わり、矢口さんの歌を聞かせてください」
仕方ないな、と笑って頷いた矢口さんを見て、私はまだシンデレラでいられ
ると思った。
馬鹿みたい。
魔女がいなければ、何も出来ないくせに。
- 78 名前:第八話 もう一人の私と夏の幻 投稿日:2002年01月25日(金)04時03分42秒
- 学校からの帰り道は、いつも色のない世界だった。
そして白と黒だけの世界は、真っ白な砂利道に入った途端にその色を取り戻
す。
でも、今日は違った。矢口さんと二人の帰り道。
校門を出てすぐに立ち並んでいる街路樹は、思っていた以上に青かった。
最初の交差点のガードレールが壊れていることに、初めて気が付いた。
そして、今まではるか遠くに思えていた川べりの道は、矢口さんの家の場所
を教えてもらう間に着いてしまうほどに近かった。
「じゃあ、ここで歌おっか」
矢口さんの言葉に頷き、いつもの土手を二人でゆっくりおりる。
「あれ?」
矢口さんが小さな呟きを漏らした。
その視線の先を追う。
そこには、草に守られるように亜依ちゃんが倒れていた。
- 79 名前:第八話 もう一人の私と夏の幻 投稿日:2002年01月25日(金)04時04分14秒
- 「亜依ちゃん!」
捲れあがるスカートの裾も気にせず、足を動かす。そして、亜依ちゃんを抱
きかかえた。
その顔は青白く、やせ細っている。
たったの一日、たったの一日なのだ。
昨日亜依ちゃんは私の前で、ひまわりのような笑顔を見せた。
「……なんで?」
矢口さんも驚いた顔をしている。その声は、かすかに震えていた。
- 80 名前:第八話 もう一人の私と夏の幻 投稿日:2002年01月25日(金)04時05分33秒
- 数分後、亜依ちゃんが目を覚ました。そのことに 少しだけほっとする。
「えへへ、たちくらみしちゃったぁ」
その笑顔が痛々しくて、まともに視線を合わせることが出来ない。
亜依ちゃんは立とうとして、しりもちをついた。
「矢口さん」
私の呼びかけに、神妙な顔で頷く。
「加護、乗りな」
有無を言わさぬ口調で亜依ちゃんに言う。亜依ちゃんはあいまいな表情で笑
ったけど、私がムリヤリ矢口さんの背中に乗せた。
その時亜依ちゃんの口から小さな声で、ごめんね、という言葉が聞こえた。
- 81 名前:第八話 もう一人の私と夏の幻 投稿日:2002年01月25日(金)04時06分10秒
- 三人で私の家に向かう。
嵐が来るという天気予報とは裏腹に、太陽は明るく輝いていた。その下で、
すやすやと気持ちよさそうに眠る亜依ちゃん。
私は隣で、無言のままに歩く。
しおれてしまったひまわり。衰弱してしまった亜依ちゃん。
この二つがあまりにきれいに重なって、嫌な想像が私を包む。
そう言えば。
――私と亜依ちゃんが過ごしてきた傍には、いつもひまわりがあった。
初めて会った日の会話にも、衰弱してしまった今日にも。
でも、だからどうだというのだ。
亜依ちゃんは亜依ちゃんであって、それ以上でもそれ以下でもない。
私はくだらない考えを振り払うように、首を振った。
あまりに勢いよく振りすぎて、軽い眩暈がした。
きっと亜依ちゃんも同じように、眩暈がしただけなのだろう。そう思った。
- 82 名前:更新終了 投稿日:2002年01月25日(金)04時15分07秒
- 更新終了
>>75-81
>>72さん
最後は明るく書ききったつもりでしたが、やはり悲しさが残っていたみたいですね。
この先、果たしてどうなるのか……。
>>73さん
ありがとうございます。少しプレッシャー……(w
期待に添えるように頑張ります。
>>74 名無し男さん
やばいな〜。もっとネガテブなこと想像させそうな第八話(w
そろそろクライマックスです。と言ってみたり。
- 83 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月25日(金)11時39分38秒
- 水やって下さい
水やって下さい
手後れイヤーソ…
- 84 名前:名無し男 投稿日:2002年01月26日(土)00時50分56秒
- 水ヲ下サイ・・・
- 85 名前:第九話 vogue 投稿日:2002年01月29日(火)02時11分52秒
- 亜依ちゃんを家に連れて来てから、時計の長針が三回転した。
それでも、一向に具合がよくなる気配はなく、時折眉をひそめて苦しむ亜依
ちゃんに付き添い続ける。
外は、音も聞こえないような細かい雨が降っていた。
「矢口さん、後は私一人でも大丈夫ですから」
今でももう、女の子が一人で歩くには遅い時間だ。
じゃあ、と言って矢口さんが紙に何か書き出した。
「これ、私の携帯の番号。何かあったら遠慮なく掛けて」
そう言うと、矢口さんは玄関を出て行った。最後まで、亜依ちゃんのほうを
見て、不安げな表情をしながら。
- 86 名前:第九話 vogue 投稿日:2002年01月29日(火)02時12分24秒
- 部屋の中が亜依ちゃんと私だけになっても、特に何も変わらない。
ただ一心に、亜依ちゃんの手を握りつづける。
しばらくして、亜依ちゃんの目がかすかに揺れた。
「亜依ちゃん?」
その言葉に、彼女はしっかりと目を開け私を見た。
「あぁ、梨華ちゃん。ごめんね」
弱音を吐くでもなく、ただ謝りつづける。そして、痛々しい笑顔を浮かべた。
「何も言わなくていいよ!」
「だいじょーぶ」
亜依ちゃんはゆっくりと口を開く。
「どうせ、夏が終わったら私はしぬから」
- 87 名前:第九話 vogue 投稿日:2002年01月29日(火)02時12分55秒
- その言葉は、私の脳にゆっくりと染み渡っていった。
食べ物を消化するときのように段階を踏んで、正確に運ばれていく。
「え……?」
でも、私は理解することを拒んだ。
真っ直ぐな言葉は、かえって現実味を帯びていなかった。
「そんな……なんで?」
亜依ちゃんは少し曖昧な笑顔を見せた後、遠慮気味に呟いた。
「私はひまわりなの、って言ったらしんじる?」
その言葉を一笑に付すことも出来た。
でもその真剣な瞳を見ると、冗談では済ませられない何かを感じた。
- 88 名前:第九話 vogue 投稿日:2002年01月29日(火)02時13分27秒
- それに、今までのこと。
偶然とは言えないほどのひまわりとの関わりは、もはや必然と言われても疑
いようがなかった。
「おん返しがしたくって、このすがたになっちゃった」
笑顔の亜依ちゃんに花壇のひまわりが重なる。
夏のための花、ひまわり。
考えるまでもなく、亜依ちゃんのイメージそのものだった。
「もともと死ぬはずだった命だもん、こわくないよ」
私を慰めるように優しい声で囁く。
子供のくせに……。
でも、その言葉は声にはならず、嗚咽に変わる。
頭の中に、今まで亜依ちゃんと過ごしてきた一場面一場面がよみがえった。
- 89 名前:第九話 vogue 投稿日:2002年01月29日(火)02時13分58秒
- そうだ。
「後一つ……お願いが残ってるよね……。お願いだから、死なないでよぉ!
お願いだからさぁ……」
三つ目の願いが終わったら、私の前からいなくなってしまう気がして、今ま
で願いを言えなかった。
でも、もしこのまま死んでしまうのなら……。
私の元からいなくなってしまってもいいから、生き残って欲しい。
だだっこのような私を見て、亜依ちゃんは困ったような顔で笑った。
見る影もなくやせ細ってしまった手で私の頭をなでる。
「しかたないなぁ」
「え……」
唇を動かすことも辛いのか、亜依ちゃんは目だけで笑う。
「三つめのおねがいじゃ、かなえないわけにはいかないじゃない。そのかわり、
矢口さんにコクハクすること」
何もいえないでいる私に、さらに言葉を続ける。
「やっぱりふたりを引き合わせたものとしては、うまくいってほしいわけです
よ」
そんなこんなで、私は小姑亜依ちゃんの手によって家から追い出された。
- 90 名前:第九話 vogue 投稿日:2002年01月29日(火)02時14分35秒
- 雨はさっきよりも強くなっているようで、傘のふちから滝のように水が流れ
る。
水のカーテンはいつもと違った景色を私に見せてくれて、歩く道のりを退屈
させない。
考えてみると、こんなにまともに雨が降ったのはずいぶん久しぶりのことだ。
でも、私が亜依ちゃんに会えたのは雨が降らなかったおかげだから、今まで
我慢してくれていた雨雲に、感謝をしなければいけないのかもしれない。
細く曲がりくねった道を抜け、いつもの砂利道に出る。
土手から川を見下ろすと、水かさがずいぶんと増していて、その流れの中に
生命を見た。
もしかしたら、この水が亜依ちゃんを救ってくれるのかもしれない。
だって、亜依ちゃんは笑って言ったんだ。「しかたないなぁ」って。
- 91 名前:第九話 vogue 投稿日:2002年01月29日(火)02時15分07秒
- 思っていたよりも早く、矢口さんの家は見えてきた。
土手を川とは反対側に下って、信号を三つ越えた先に矢口さんの家はあった。
玄関の前で深く深呼吸をする。
気付けば、今までの私と矢口さんとの間の出来事は、全て亜依ちゃんにお願
いをして叶えられてきたものだった。
でも、三つめの願いはもうない。誰も背中を押してはくれないのだ。
- 92 名前:第九話 vogue 投稿日:2002年01月29日(火)02時15分37秒
- 「はい?」
インターホンを押すと、矢口さんの母親らしき人が私の目の前に現れた。本
人が出てくると思って緊張しまくっていた私は、いきなり出鼻をくじかれる。
「あの……真里さんいらっしゃいますか?」
「あら、お友達?」
そう言うと、私の髪の毛をチラリと見た。そして、まじまじと顔を見つめら
れる。
「あなたみたいな真面目そうな子がうちに来るなんて、珍しいわねぇ」
……矢口さんは、一体どんな人たちと友達なんだろう。
様々な顔が浮かんで消える中、ドタドタという音が家の中から聞こえてきた。
「ちょっと、余計なこと言わないでよ!」
ぷんすかと怒った矢口さんは、おばさんをキッと睨むと、私の腕をしっかり
掴んで来た道を引き返していく。
階段を一段早く上った矢口さんの目線が私の視線と重なって、ちっちゃいなぁ
と改めて思うけど、さっきの機嫌の悪さを思い出して口をつぐんだ。
すっかり忘れていたけど、わたしは「コクハク」をしに来ているのだ。
余計な波風を立てる必要はない。
- 93 名前:第九話 vogue 投稿日:2002年01月29日(火)02時16分08秒
- 二階の一番奥に彼女の部屋はあって、散らかっているけどなんて謙遜しなが
ら通された。
彼女だって散らかった私の部屋を見ているはずだから、その言葉は謙遜以外
の何者でもない。
「で、亜依ちゃんがどうかした?」
二人ともベッドに腰掛けると、矢口さんはおもむろに口を開いた。
「えっと、亜依ちゃんのことじゃなくって」
「じゃあ何?」
何? と聞かれて素直に言えるなら、人間そんなに苦労しないわけで。
私の顔を下から覗き込んでくる矢口さんが視界に入って、ドギマギする。
「やっぱり亜依ちゃんのことでいいです」
「は?」
びびった余り、ごまかした。
- 94 名前:第九話 vogue 投稿日:2002年01月29日(火)02時17分31秒
- 「そっか、意識戻ったんだ」
矢口さんは、本当にほっとした表情で呟いた。
私は、亜依ちゃんがひまわりだった、というところをうまく外して、矢口さ
んに話して聞かせた。
もちろん、願い事の話も教えていない。
「でも、電話でもよかったのに」
それはきっと、矢口さんにとって何気ない一言だった。雨が降っていたこと
にも、起因しているのかもしれない。
でも、私にとっては違った。
- 95 名前:第九話 vogue 投稿日:2002年01月29日(火)02時18分14秒
- 「私がここに来るの、迷惑でした?」
視線を下におろしたまま言った。
チェック柄のお洒落なじゅうたんが冷房の風に吹かれて毛先を揺らしている。
「え? ちょっと、何言ってるの? そんなわけないじゃない」
矢口さんも、まさか私がこんな反応をするとは思っていなかったのか、急に
慌てた様子で私の肩に手を掛ける。
「じゃあ、矢口さんは私のこと……」
途中まで言いかけたとき、ゴンという鈍い音が耳に入った。慌てて振り返る
けど、矢口さんの「バケツがぶつかった音だよ」という言葉で再び向き直る。
どうやら、外には風も出てきたらしい。
「外が雨だったから、無理してここまで来る必要ないよって意味だったんだけ
ど……。気を悪くしたんだったらごめん」
矢口さんは丁寧に説明した。
でも、丁寧に言われれば言われるほど、私の中の惨めな気持ちが増していく。
恋をするということが、ものすごく汚いことに思えた。
- 96 名前:第九話 vogue 投稿日:2002年01月29日(火)02時18分50秒
- 「それにしても、天気予報の通りだったね」
窓を揺らす風、締め切った室内にも聞こえる雨音、それは確かに予報どおり
の嵐だった。
「ひまわり無事だといいけど」
そう、ひまわりが無事だといい。
あんなにしおれてしまったひまわりが、この嵐に耐えられるかどうか不安は
あった。
……え? ひまわり?
気付くと私は、荷物を持って立ち上がっていた。
「ちょっと梨華ちゃん、いきなりどうしたの!?」
先程よりもさらに慌てた様子で矢口さんが私の袖を掴む。本来の私はそれを
振り払えるほど強い人間ではないはずだったが、何故かこのときは違った。
そのことに、矢口さんは驚いた表情を見せる。
「ひまわりを助けなきゃ……」
それだけを言い残して彼女の部屋を出た。
- 97 名前:第九話 vogue 投稿日:2002年01月29日(火)02時19分20秒
- おばさんへの挨拶もそこそこに、私は学校へ向かう。
自分が住んでいる街でも意外と知らない場所があるもので、私は一度川沿い
の土手道に出なければならなかった。
川は少し前とはまったく違った姿を見せていた。
荒れ狂うその姿はしかし、先程と同じように生命を感じさせる。
ただ、私は思い違いをしていたのだ。
川のその生命力は余りに巨大すぎて、時として多くのものの命を奪うことす
らある。
走っているにも関わらず、学校までの道のりは非常に長く感じた。
今日矢口さんと二人で歩いたのと同じ道とは思えないほどに。
それでも私は学校に着き、ひまわりを見ることになる。
かろうじてそこに生えているだけのひまわり。これがどういうことを意味す
るのかは、私にもわかった。
でも、私はひまわりを包むように、その花を抱きかかえる。
「やだ……よぅ……」
もし一晩こうしていることで亜依ちゃんが助かるのなら、自分はどうなって
いいとさえ思った。
- 98 名前:第九話 vogue 投稿日:2002年01月29日(火)02時19分50秒
- 「もういーよ、梨華ちゃん」
でも、それは叶わなかった。
辺りの空気にゆっくりと染み渡っていく声。
「……亜依ちゃん」
私は目を見開いた。
「もういーよ」
亜依ちゃんは、笑っていた。暗闇の中の一筋の光のように、そこだけが輝い
て見えた。
「ありがとぅ、たのしかった」
視界が歪んで、彼女の顔がまともに見えない。
ゆらゆら、ゆらゆら揺れるその先にかすかな光が浮かんだ。
- 99 名前:第九話 vogue 投稿日:2002年01月29日(火)02時20分22秒
- 「さいごに一つだけたのんでいいかなぁ」
なに、とかすれた声で返す。
「あのおかに、わたしをうめてほしい」
きっと、以前に二人で行った高台だろうと思った。
あの日も彼女は笑って、住みたいと言ったのだ。
数多くの花に囲まれて笑う彼女の姿を想像した。それはどんなに幸せなこと
なのだろう。
私は黙って頷く。
「だいじょーぶ、またあえるよ」
亜依ちゃんは私を優しく抱きしめた。そして何度も何度も頭をなでる。
……温かい。
亜依ちゃんの顔を見ると、ずいぶんと困った笑顔で私を見つめている。
それを見て初めて、私は声を出して泣いていることに気付いた。
そんな中、季節はずれの蝉の大きな鳴き声が、一度だけ聞こえて消えた。
- 100 名前:第九話 vogue 投稿日:2002年01月29日(火)02時20分54秒
- どれだけ眠っていたのだろう。
気付くと太陽がうっすらと出てきていて、もちろん亜依ちゃんはどこかに消
えていた。
目をこすろうとして腕を上げたとき、自分の体におうど色のコートがかかっ
ていることに気付く。
「あ、起きた?」
「……矢口さん」
さわやかな笑顔が私の目の前に降り注ぐ。
ちょうど逆光で、私は目を細めた。
「あ、別に連れて帰ろうってわけじゃないから心配しないで。ひまわりが心配
なら、気のすむまでここにいていいから」
そう言った矢口さんは、寒そうに両手をこすり合わせていた。
私はクスリと微笑み、
「いいです。もう用事は済みましたから」
と、太陽に向かって言った。
「そっか」
「そーです」
でも、私たちはしばらくその場から動かずに、じっとひまわりを見つめてい
た。
- 101 名前:第九話 vogue 投稿日:2002年01月29日(火)02時21分27秒
- 太陽の光が増してきた頃、私はおもむろに立ち上がりひまわりに向かう。
「え……梨華ちゃん?」
ひまわりの周りの土を掘り起こす私を見て、矢口さんが驚いた声をあげた。
その間にも、土は少しずつ掘り起こされていく。
「人から頼まれたんです」
言い訳がましくなってしまったことを苦笑しながらも、一心に掘り返す。
「……誰に?」
「内緒です」
その話がそれ以上追求されることはなく、矢口さんも私の手伝いを始めた。
亜依ちゃんは、私にこの仕事を頼んだ。
でも、きっと、矢口さんと二人でやるほうが彼女も喜んでくれるって言う確
信はある。
だって、金髪とひまわりと、この馬鹿なシンデレラの三人が揃って初めて、
夏を終わらせることが出来る。この曖昧な季節に終止符をうつことが出来るの
だ。
- 102 名前:第九話 vogue 投稿日:2002年01月29日(火)02時23分09秒
- 「どこまで行くの?」
ひまわりを掘り起こした後、私たちはあの丘に向かった。
川は一夜限りのパーティーを終えていて、今ではすっかりと落ち着いた流れ
になっている。
私は亜依ちゃんにそうしたように矢口さんにも声を掛け、矢口さんは亜依ち
ゃんと同じように感嘆の声をあげた。
「すごぉ……い」
それに対して、とっておきの場所ですから、とだけ返しておいた。
- 103 名前:第九話 vogue 投稿日:2002年01月29日(火)02時23分43秒
- 「ここに埋めるんです」
この丘の中でも一番見晴らしのいい場所を選んだ。
私の家と、矢口さんの家と、学校と、遊園地と。その全てが見える場所。
先程と同じように二人で土を掘っていく。
だいぶ穴が深くなってきたところで、私は矢口さんからひまわりを手渡され
た。
その全てが埋まるように横に寝かせて、土をかぶせる。
地面が雨に濡れて黒さを増す。
私は空を見上げた。そこには太陽が覗いている。
ああ、これは涙なんだ。
そう気付いたときにはもう止まらなくて、声を出して泣いていた。
今までこれほどに泣いたことがあっただろうか。きっと、昨日の雨は川だけ
ではなくて、私の涙の水かさも増やしたんだ。
- 104 名前:第九話 vogue 投稿日:2002年01月29日(火)02時24分21秒
- そんな時、耳元に優しい歌が聞こえた。
街を見下ろして矢口さんが歌う。そして、いつかと同じように歌を止めた。
「泣かないで」
そうして、亜依ちゃんと同じように私の頭をなでる。
「あなたの分も、私が泣いてあげるから」
矢口さんの顔を見ると、頬がかすかに輝いていた。
矢口さんは視線を元に戻すと、さっきの続きからもう一度歌を歌いだす。
その歌は、聞こえるはずのない蝉の声と共に、いつまでも頭の中にこだまし
ていた。
- 105 名前:更新終了 投稿日:2002年01月29日(火)02時29分36秒
- 更新終了
>>85-104
>>83さん
とりあえず、水を与えてみました。
……ごめんなさいごめんなさい! 初めから決めていたことでした。
>>84 名無し男さん
助けてあげられない分、更新量を多くしてごまかしました……(汗
次が最終話です。よろしくお願いします。
- 106 名前:名無し男 投稿日:2002年01月29日(火)02時45分41秒
- 半リアルタイムでした!!
悲しい!
悲しいけどええ話や〜(TζT)
最終話も勿論期待しとります!
- 107 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月29日(火)07時56分43秒
- やっぱそうなったか……泣ける展開ですねぇ
でも、感動のラストが待ってそうな予感もあり
静かに期待
- 108 名前:華守 投稿日:2002年01月30日(水)22時42分36秒
- とても切なく好い話だと思います。
最終話、頑張って下さい。
- 109 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月15日(金)10時21分46秒
- 待ってます
- 110 名前:最終話 過ぎ去った季節に置き忘れた時 投稿日:2002年02月15日(金)13時04分12秒
- なぜなのかはわからないけど、今日は目覚ましよりも早く目が覚めた。枕元
に置いてある目覚ましを止め、思い切り伸びをする。
それからベッドを降りて、机の上にあるもう一つの目覚ましを止めた。
寒い。
暖かなベッドに誘惑されながらも、なんとか踏みとどまり寝巻きを脱ぎ捨て
る。
タイマーをセットしていたストーブは点いて間もないために、冷ややかな空
気を私に運んできた。
制服に袖を通し、私は部屋を出た。
そのまま、親に気付かれないようにそっと玄関を通り抜ける。
運転したままのストーブが気になったけど、戻って消す気にはならなかった。
もうすぐ親が起きる時間だ。いつまでも朝食を取らない私を起こしに部屋に来
るだろう。
- 111 名前:最終話 過ぎ去った季節に置き忘れた時 投稿日:2002年02月15日(金)13時05分20秒
- 外に出ると透明な空気の層が私の頬に触れて、ピリピリとした。私の口から
出る息は、煙のようにもくもくと空高く上っていく。
少しだけ風が吹いて、息は何の抵抗もなく流された。
特に急いで学校に行く理由もなかったので、私は息が流される方へ歩くこと
にした。
その方向がちょうど学校の方だったので、私は誰にもばれない程度にがっか
りとした。
しばらく歩いていくと、ジャリ、という音がした。
眼下に広がる真っ白な砂利道。私の息を覆い尽くすほどの白さに、そっと目
を細める。
私はこの道を見たことがあった。
ずいぶんと前、私はよくここに通ったものだ。
今では記憶の中だけにある道。それがいざ目の前に広がってみると、懐かし
さよりも先に戸惑いが生まれた。
- 112 名前:最終話 過ぎ去った季節に置き忘れた時 投稿日:2002年02月15日(金)13時06分56秒
- 「あれ、梨華ちゃん?」
突然肩を叩かれて振り向く。いたずらを見つけられた子供のような気持ちが
私を包んだ。
「どーも」
そっけなく返事をする。というか、私にはそのような反応しか出来ないのだ。
「……はは、おはよ」
矢口さんも苦笑いで返す。
いつからか、私たちの間をぎこちない雰囲気が包むようになっていた。
私は話し掛けられてもそっけない対応しか出来なくなったし、矢口さんは矢
口さんで、いつも私の顔色を伺うようになった。
となれば当然のごとく、次第に話す回数は減っていって、今では挨拶を交わ
す程度の関係になってしまっている。
どうしてこんな風になってしまったのだろう。
矢口さんのことが嫌いになってしまったわけではない。今でもたまに矢口さ
んを見かけるとドキドキする。
彼女も、私のことを嫌いになってしまったような感じではなかった。
じゃあ、どうして?
少し悩んだけど、答えは意外と簡単に出た。
亜依ちゃんが死んだ日で、私の夏が終わったからだ。
- 113 名前:最終話 過ぎ去った季節に置き忘れた時 投稿日:2002年02月15日(金)13時07分31秒
- 「矢口さ、毎朝ここで歌ってるんだよね」
「あ…そうなんですか」
私の口から出てきたのは戸惑いの言葉で、思わず視線を上に向ける。
「たまぁに寝坊して、放課後歌ったりもしてるんだけどねぇ」
矢口さんはそう言って笑った。
笑い声と共に零れ落ちた白い煙を目で追いながら、矢口さんの様子がいつも
と違う理由について考えた。
いつもならば、私がそっけない対応をすると、ばつの悪そうな顔をしてどこ
かへ行ってしまうのだ。
そう考えたそばから、矢口さんはばつの悪そうな顔をして、そして口を開い
た。
「ちょっと時間あるかな?」
すこし考えた後、私は自然と頷いていた。
- 114 名前:最終話 過ぎ去った季節に置き忘れた時 投稿日:2002年02月15日(金)13時08分05秒
- 「どこにいくんですか?」
無言のまま砂利道を歩いていく矢口さんに、何度となく言葉を投げかけてみ
る。その度に彼女は、ちょっとね、などと曖昧な言葉しか口にしない。
諦めた私は、黙ってその後を付いていくことに決めた。
しばらく歩いた後に一つ目の橋を使って、川を横切った。そのまま真っ直ぐ
と背丈の高い草の中に入っていく。
そこまで来て、矢口さんは初めて私の方を振り向いた。
「もしさっきそこで会わなくても、どっちにしろ今日梨華ちゃんをここに連れ
てこようと思ってたんだ」
言い訳のように言う。
辺りを見回してみると、見覚えのある景色。いつか亜依ちゃんと来たあの丘
へ続く道。
私はもう一歩踏み出してみた。
「梨華ちゃんに教えてもらった場所に連れてくるのもどうかと思ったんだけ
ど……」
その瞬間、私の視界を黄色い光が覆った。
- 115 名前:最終話 過ぎ去った季節に置き忘れた時 投稿日:2002年02月15日(金)13時08分47秒
- 「あ……」
私の目の前にあったのは、丘一面に咲くひまわり。おとぎ話の中の世界のよ
うに一点の曇りもなく一様に太陽に向かって微笑んでいた。
「今日って、梨華ちゃんの誕生日でしょ? 本当はもっといろんなプレゼント
考えたんだけど、梨華ちゃんってひまわりが好きみたいだったから……さ」
その後で、私が直接何かを上げても喜んでくれなさそうだったし、と寂しそ
うに付け足した。
そう、今日は私の誕生日なのだ。
一月十九日。ひまわりが生えているはずのない季節。
なのに……どうして?
――たんじょーびプレゼントわたさなきゃだめだから、そうかんたんにはい
なくなれないな
あ……。
- 116 名前:最終話 過ぎ去った季節に置き忘れた時 投稿日:2002年02月15日(金)13時09分51秒
- 「こんな季節に生えてるなんて思わなくって、慌てて梨華ちゃんに知らせなき
ゃって思ったんだ」
矢口さんは前ならえより少し遠くの位置で、私の方を向かずに言った。
これが、今の私たちの距離。
そして、この距離を作り出してしまったのは私自身だ。
「……気に入らなかった?」
一瞬だけ私の方を見て、またそっぽを向いた。きっと、私の顔色を伺ったの
だろう。
- 117 名前:最終話 過ぎ去った季節に置き忘れた時 投稿日:2002年02月15日(金)13時12分41秒
- 「嬉しかったです」
「……え?」
私も矢口さんのようにそっぽを向いて言う。でも、そっぽを向いた理由は矢
口さんとは違っていて。
「もぅ、何度も言わせないでください!」
夕日じゃないからごまかせないな、なんて思いながらひまわりを見る。
「……最高のプレゼントでした」
亜依ちゃんの笑顔が浮かんで、そのまま滲んでいった。
- 118 名前:最終話 過ぎ去った季節に置き忘れた時 投稿日:2002年02月15日(金)13時13分11秒
- 亜依ちゃんと、そして矢口さんと過ごしたあの短い夏の日を想う。その間、
様々な言葉が浮かんでは消えていった。
初めて二人と会った日のこと。遊園地でのこと。そして、三つの願いのこと。
亜依ちゃんが消えた日、私の夏は、私たちの関係は消えてしまったのだと思
っていた。
でも、彼女は四ヵ月後に夏の約束を果たして見せた。
「ねぇ、矢口さん」
「ん?」
次は、私の番だ。
もう一度、亜依ちゃんの笑顔を思い出す。夏に映えるあの笑顔。
そして私は、ひまわりの丘のてっぺんで、ひまわりのようにはにかんで口を
開いた。
「あなたが、好きです」
ひまわりの丘……FIN
- 119 名前:更新終了 投稿日:2002年02月15日(金)13時15分34秒
- 更新終了
>>110-118
- 120 名前:連載終了 投稿日:2002年02月15日(金)13時36分35秒
- >>1-7 第一話 ひまわりは私の横で笑った
>>11-16 第二話 金髪とひまわりと蝉の声
>>19-24 第三話 金の雨は私のもとに降る
>>29-33 第四話 生まれるもの、死にゆくもの
>>36-42 第五話 そして私は罪を犯した 前編
>>46-55 第六話 そして私は罪を犯した 後編
>>59-70 第七話 夏、過ぎ行く頃
>>75-81 第八話 もう一人の私と夏の幻
>>85-104 第九話 vogue
>>110-118 最終話 過ぎ去った季節に置き忘れた時
- 121 名前:連載終了 投稿日:2002年02月15日(金)13時44分27秒
- ようやく終わりました
>>106 名無し男さん
本当に最後までありがとうございます。
最終話、少しは満足いただけたでしょうか?
>>107 さん
やっぱりそうなりました(w
ラスト、少しは救いになればいいのですが……。
>>108 華守さん
以前別なスレでも感想いただきました(w
もっと温かい話にしようと思ったのですけど、無理でした……。
>>109 さん
すいません、またいろんな作品が読める〜と喜んでたら、自分の忘れてました(w
一月中には書き終わっていたんですけどね。
- 122 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月15日(金)13時54分15秒
- うん、よかった。美しかった。
- 123 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月15日(金)19時17分47秒
- 素敵なお話ありがとう
- 124 名前:華守 投稿日:2002年02月16日(土)03時54分37秒
- 別のスレってどれか分からないです……。
私は明るい話や温かい話は、余り好きではないので
私的には、この話は良かったです。
それでは、お疲れ様でした。
- 125 名前:名無し男 投稿日:2002年02月16日(土)16時27分57秒
- 素晴らしかった
それしか言葉が見つからん
( T▽T)・・・
- 126 名前:LVR 投稿日:2002年02月17日(日)02時37分13秒
- みなさん、レス感謝です。
>>122 さん
綺麗な描写をしようというコンセプトだったので、美しいっていうのは嬉しいです。
次は、もっとスムーズに行くよう努力します。
>>123 さん
ありがとうございます。
読んでいただけただけで感謝です。
>>124 華守さん
名前書くの忘れてました(w
暗い話かどうかはわかりませんが、気に入ってもらえたならよかったです。
>>125 さん
本当に最初から最後まで読んで頂いて……感謝です。
ラストに満足していただけたみたいで心底ほっとしています(w
- 127 名前:LVR 投稿日:2002年02月17日(日)02時43分32秒
- あとがきです。
あとがきが嫌いな方は、申し訳ないですが、読み飛ばしてください。
いしかごを目指して書いたのですが、無理でした。
結局いつもどおりの展開(いしやぐ)に……(w
でも、ストーリー自体はほとんど決めていたんですけどね。
次回作も、このスレを使ったほうがいいのかなって思っています。
まだまだ余っていますし。
石川さん主役の話が多いのに、いしよしをほとんど書いていないので、
次はそれに挑戦してみようかなと(w
それでは、失礼いたします。
- 128 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月17日(日)05時33分35秒
- 約束を守った加護ちゃんに感動しました…。
いしやぐかごが皆すごくはまってると思いました。
次回作も期待してます。
- 129 名前:華守 投稿日:2002年02月17日(日)05時51分18秒
- いや、せつない話も好きなので…良かったです。
次回作も是非、頑張って下さい。
- 130 名前:名無し男 投稿日:2002年02月27日(水)17時37分29秒
- 次回作激しく期待!!
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