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雪の妖精-15分間の恋人-

1 名前:神楽綾稀 投稿日:2002年01月17日(木)17時14分26秒
白い息

凛とした空気

時は11月

───今年も冬が訪れた。




【神楽綾稀】短編集Vol.1

【雪の妖精-15分間の恋人-】
2 名前:神楽綾稀 -冬の訪れ- 投稿日:2002年01月17日(木)17時17分43秒
俺の名前は椿唯人(ツバキ ユイト)
高校2年生。

ここは屋上。
昼休み、俺はいつも1人でここに来る。
購買でパンとコーヒーを購入し、特に何をするでもなく
午後の授業が始まるまでの時間をゆっくりと過ごしている。
といっても5時間目はサボることが多いのだが…

適当に飯を済ませ、寝転んで空を見上げる。

この屋上の存在はあまり知られていない。
ほぼ俺専用だ。
ドアにはしっかりと鍵がかけられているように見えるのだが、実は壊れていたりする。
そんなこんなで俺の時間が持てる貴重な場所でもあるのだ。

…今日もサボるかな
3 名前:神楽綾稀 -冬の訪れ- 投稿日:2002年01月17日(木)17時20分45秒
「唯人発見!ったく、またここにいたのね。授業始まっちゃうよ!サボる気?」
「…うっせぇな、誰だよ…」

誰だよなんて聞くまでもない。
俺に話し掛けたのはこの場所を知っているもう1人の人物。


市井紗耶香。


俺の数少ない友人の1人である。
いや、女の友人が少ないというわけじゃなくて『友人』自体が少ないのだ。
普通に話せる奴は何人かいるが、皆うわべばかりの付き合いに過ぎない。
まぁ紗耶香の話によると皆俺が怖くて寄って来ないとのことだが…

「誰ぇ?何よその言いぐさ。せっかくこの市井ちゃんが相手してあげようと思ったのに」
「別に相手なんていらねぇよ」

紗耶香とは中学からの知り合いで約4年。
中学からの友人はこいつぐらいしかいないし、4年といえど俺の中では最も古い友人にあたる。

かと言って付き合ってるわけでもない。
紗耶香には他校にちゃんと彼氏がいるし。。
4 名前:神楽綾稀 -冬の訪れ- 投稿日:2002年01月17日(木)17時23分02秒
「それにもうすぐ授業が始まるんじゃないのか?俺の相手してたらおまえもサボり決定だぞ」
「そうだった。あんたの相手してる時間なんてないんだった!んじゃ、私は行くから。」

背を向けてスタスタと行ってしまう紗耶香…

これでまた1人になれる。。。





「なぁ〜んてね!私もサボっちゃお〜」

「…バーカ」

結局、5時間目は揃いも揃ってサボることが決定した。
5 名前:神楽綾稀 -冬の訪れ- 投稿日:2002年01月17日(木)17時27分36秒
俺が寝そべっている横に腰を下ろす紗耶香。
特に何を話すでもなく、くだらないことを話題にしては2人でゆっくりとした時間を過ごす。

「…なぁ、おまえ彼氏とは上手くやってんのか?」
「あれ?唯人がそんなこと聞くなんて珍しいじゃん。
 ふふふ、さては市井ちゃんのことが気になってるのかな?」
「…ふぅ」
「な、何よそのため息は!失礼にも程があるわよ!」

と言って俺の首を絞める。

「…苦しいからやめろ」
「ちょっとあんたねぇ、リアクションも冷め過ぎてない?」
「俺はいつもこんなだろ?」
「そうだけどさぁ。そんなふうに冷めてるから皆寄ってこないのよ。
 あんた女子間では結構人気あるの知ってる?」
「ふーん…」
6 名前:神楽綾稀 -冬の訪れ- 投稿日:2002年01月17日(木)17時29分29秒
「ふーんってね、つうかあんたは私から言わせれば冷たすぎ。
 しかもその冷たすぎオーラが露骨に表に出すぎてんのよ。そりゃ寄り付き辛いわ」
「別に寄ってこなくてもいいんだけど」
「ふぅ…と・に・か・く!その性格直しなさいよね!そしたら彼女なんていくらでもできるんだから」
「おいおい、いつ俺が彼女がほしいなんて言ったよ?」
「え?いらないの?だってあんたさっき私にコイバナ(恋愛話)ふったじゃない」
「別にそんな意味じゃねぇよ。何となく聞いただけだし」

呆れた表情の紗耶香。

「もういいわよ。ずーっと彼女ができなくても市井は知らないからねー!!ベーだ。」
「余計なお世話だ…」


俺はこんな日常を繰り返し送っている。
7 名前:神楽綾稀 -Confession- 投稿日:2002年01月17日(木)17時33分12秒
1年の時は紗耶香と同じクラスだったのだが
2年では別々になってしまったので教室にいる時はだいたい1人だ。
自分からクラスメイトに話掛けることは少なく、話し掛けられたら場合のみ話程度。
なのでそもそも教室にいることは少なく、休み時間は屋上に常住している。


そんないつもと変わらないある日のことだ。


俺の日常を変化させる出来事が起った。


4時間目が終り、俺は購買にパンを買いに行こうとしていた。
自分の席を立とうとしたその時。

「私と付き合ってください!!!!」

目の前にいきなり現れるなり俺に告白する女の子。

「え…?」
8 名前:神楽綾稀 -Confession- 投稿日:2002年01月17日(木)17時35分57秒
こんな突発的なことは初めてだ。
というよりこんな状況下に置かれたことがある奴なんてそうそういないだろう。

『え…?』

これが俺の正直な反応だった。

当然ながら教室全体が一瞬で静まりかえり、一呼吸置いて今度はドッと騒ぎ出す。
注目の的、今の俺はもはやネタである。


「え?って、そんな…私と付き合ってほしいんですけど…」


そんな雰囲気など気にもせず、引き続き俺の目を見て告白をやめようとしない女の子。
これはどうしたものか。

「ってさ、あんた誰だよ?俺あんたのこと知らないし」
これも正直な話だ。
俺は目の前の女の子を知らない。
見たこともなければ先輩なのか後輩なのか、はたまた同級生なのかさえもわからない。
9 名前:神楽綾稀 -Confession- 投稿日:2002年01月17日(木)17時38分16秒
「そんなの関係ないよ。だって、私もあなたのこと知らないし」
「はぁ?」

加えて突拍子もないことを言い出す女の子。
普通、告白する側は相手のことをよく知ってるもんじゃないのか?
知らないって言われても…なぁ。。

教室はざわめくことをやめない。。
こんなんじゃ後から何を言われるかわかんねぇな。

「まぁいい、とにかくこっちへ来い!」
「えぇ!?」

俺はその子の腕を引っ張り屋上へ走った。
10 名前:神楽綾稀 -Confession- 投稿日:2002年01月17日(木)17時40分43秒
「はぁ…はぁ…はぁ…」

かなりの勢いで階段を駆け上がったため息が切れる。

半ば強引に例の女の子を引っ張ってきたが大丈夫…なぜ笑顔?
その女の子は特に息を切らすこともなく、この状況を楽しんでいるかのように見えた。

屋上の金網に寄り掛かる。
その隣には先程知り合ったばかりの女の子。

俺から特に話し掛けるでもなく、女の子の出を待った。
11 名前:神楽綾稀 -Confession- 投稿日:2002年01月17日(木)17時42分36秒
「…あのぉ、続きいいですか?」

「あ、あぁ…」
「続きと言っても私はもう告白したから、あなたの返事待ちなんだけど…」

「ちょ、ちょっと待てよ。お互い何も知らないだぜ?年齢、そもそも名前も知らない関係だろ?
 俺は告白された側だからともかく、だいたいあんたも俺のことをよく知らないってのは
 どういうことなんだよ?」

「だって…知らないと告白しちゃいけないの?」

「いや、しちゃいけないとかそういうのじゃなくてさ、普通知ってない?つうか俺の名前知ってる?」
「…ごめん、わかんないや」

おいおい、告白する以前の問題だな。

「だろ?告白するなら相手の名前くらいは調べとけよ」
「わかった。今覚えるから名前教えてよ。」
「…本気?」
「本気だよー!好きになったから告白したんだよ!!」
12 名前:神楽綾稀 -Confession- 投稿日:2002年01月17日(木)17時44分10秒
『好きになったから…』…『好き…』

こんなダイレクトに『好き』なんて言われたことはない。

お互いに何も知らない関係。

名前、年齢、性格、趣味…

しかし、そんなものを全て無効化する言葉…


『好き』…


好きだから…関係ないのか?
好きだから…お互いのことなど後からついてくるとでも言いたいのか?
好きだから…


…馬鹿らしい。

13 名前:神楽綾稀 -Confession- 投稿日:2002年01月17日(木)17時47分44秒
女の子が創り出す不思議な空間───

その空間で吹く風が俺の背中を押した…

「…わかったよ。俺の名前は椿唯人、2年だ。」
「つばき…ゆいと…良い名前だね。」
「そうか?別にそうは思わないけど」
「ううん、良い名前だよ。よし、もう大丈夫!ちゃんと覚えたよ。
 あ、呼び方はどうすればいい?椿くん?唯人くん?」
「どうにでも。別に呼び捨てで構わないけど」
「じゃ、唯人!これで決まりね」

…いきなりかよ。

「あぁ、別にいいよ。じゃ、次はあんた。せめて名前くらいは承知の上で返事させてくれよ」
「わ、私?私は…」
14 名前:神楽綾稀  投稿日:2002年01月17日(木)17時55分13秒
この板でははじめましてですね。
「ポッコーンラブ」という小説を書いている神楽という者です。

この『冬』という季節にどうしてもこの物語を書いておきたかったので
「ポップコーン」の合間を縫って執筆しておりました。
話自体はポップコーンに支障をきたさないために
完結してからageようと思っていたので、すでに完結しております。
一気に掲載するのも面白味がないので、何回かに別けてageていこうかなと。

「ポップコーン」とはまったく違った小説になっていますので
ポップコーンの読者の方も、また新しく興味を示していただけた方も
よろしければ最後まで読んでいただけたらなと思います。
15 名前:邑雲 投稿日:2002年01月17日(木)18時25分38秒
あらっ!神楽さんがこんな所で違う物を書いていらっしゃったとは!?

是非読まねば・・・って事で読みました、この後の展開が気になる〜。

告白した「女の子」か昔からの「紗耶香」う〜ん、罪な奴め!(爆)

これからもチェキしていきます! (「短編集vol1」って事は「2」も「3」もって事ですか?)
16 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月17日(木)18時30分26秒
神楽さんハケーン!
神楽さんの書く小説の主人公って娘。じゃなくて1人の男ですよね。
それでいて娘。も物語の軸になって…
娘。同士というのも好きなんですが
恋愛物に関しては個人的にこういう方が読みやすかったりします。
男を引き合いに出すのは難しいですけどね。
読者に受け入れられなかったら終りですし。
私は期待させていただきます。

#ちなみに主人公の名前ですが花の種類?+「人」って決めてます?
なんとなくそんな気がしたので
17 名前:神楽綾稀 -Confession- 投稿日:2002年01月17日(木)22時11分38秒
名前を聞くと突然慌てふためく女の子。

「私は…なつみ、そう、なつみ…」
「なつみ?苗字は?」
「あ、え、あの…安倍、安倍です」

「安部なつみ…」
「そう、安部なつみ。あなたと同じ…2年生だよ」
「…ふーん。んじゃ次呼び方。俺はあんたをどうやって呼べばいい?」
「私も名前で呼んでいいよ。『なつみ』って」

今日出会ったばかり、それもさっきだ。
それなのに名前で呼び合う2人…


「…わかった。じゃ、なつみ」
「はい」

でも

名前で呼ばなければいけない

そんな気がした…
18 名前:神楽綾稀 -Confession- 投稿日:2002年01月17日(木)22時13分29秒
普通なら『考えさせて』とか『少し時間がほしい』とか『まずは友達から』とか
そんな返事をするだろう。
それは付き合うにしてもそうでないにしてもだ。

でも今回ばかりは普通じゃない。
すべてにおいて普通じゃないのである。

通常の告白スタイルをすべて無視した告白…
他人の目も、相手の壁も何も関係ない。

俺の『ココロ』に直接…ウッタエカケルモノ…
19 名前:神楽綾稀 -Confession- 投稿日:2002年01月17日(木)22時14分56秒
「…もう一度ちゃんと言うね…
 好きです…私、唯人のことが好き。付き合ってくれませんか…」


『ココロ』に直接…


『俺』に直接…



───ウッタエカケルモノ



ドクッ

ドクッ

鼓動が高鳴る

俺の中の何かがこの不思議な空間によって




───動いた
20 名前:神楽綾稀 -Confession- 投稿日:2002年01月17日(木)22時18分00秒
「…わかった。いいよ、その告白受けるよ」

「…え、ほんとに?」

「…あぁ」

「ほんとに!?やった!やったー!!!!」

俺の返事。
それは特に考えもせず、自然と出た。
普通なら断わるだろうが、俺が出した答えは『YES』だったのである。
正直俺も驚いている。
この子の何かが、なつみの何かが俺を動かしたのだ。

俺の返事を受けて安堵の表情と満面の笑みを浮かべる少女。

たった今から俺はなつみの彼氏、なつみは俺の彼女という関係になる。

告白から彼氏彼女に至るまでの数十分。
それはまるで別世界にでもいるかのように思えた不思議な時間の流れだった・・・
21 名前:神楽綾稀 -Confession- 投稿日:2002年01月17日(木)22時20分58秒
これが俺となつみの出会い…



冬の儚い物語は

たった今、その秒針を動かしはじめた

ゆっくりと

ゆっくりと

───急がなければ…ならないのに…
22 名前:神楽綾稀  投稿日:2002年01月17日(木)22時36分11秒
>>15  邑雲さん
一番乗りありがとうございます。
ちょっと歯切れが悪い切り方をしてしまって申し訳ないです。
今回は主人公1人と娘。2人で物語が進んでいきます。
人数を少なくすることによってリアルな心情が書ければなと。

>(「短編集vol1」って事は「2」も「3」もって事ですか?)
とりあえずポップコーンをメインとして、短編は合間合間に執筆できればと
思っています。
もちろんWeb上での同時進行は難しいので、ちゃんと完結させてから
掲載という形になりますが。
よろしければこれからもどうぞよろしくお願いします。

>>16 名無しさん
感想ありがとうございます。
主人公の名前…バレましたか。
作品ごとにまったく違う名前をつけるよりも、ある一定の法則でつけたほうが
受け入れられ易いかなぁと思いまして。

>恋愛物に関しては個人的にこういう方が読みやすかったりします。
個人的に私もそうですね。
恋愛モノに関してはそう思っているところがあるのでこんな形なんですよ。

続きも楽しみにしていただければ光栄です。
23 名前:take 投稿日:2002年01月17日(木)23時58分08秒
>神楽さん
お忙しそうですね。いろいろ書いてて。
いや、俺もなんですけど(w
ちなみに「安部」じゃなくて「安倍」ですね。
それでは立派ななっちヲタになれませんよ?(w
何いってんだ、俺(w

感想というよりもビクーリしたのが正直な感想です。
だって、告白の仕方ってか、付き合う順序が俺の作ってるAMと同じなんですもん(w
最近、神楽さんとはネタがかぶりますね。
まさかこれは・・・テレパシー!?(誤爆
24 名前:神楽綾稀 -過ぎ去る時間と感情の変化- 投稿日:2002年01月18日(金)00時21分59秒
付き合いはじめて数週間。
しかし、俺となつみの関係に変化はなかった。

恋人同士である以上必然であるデートなんかもしていない。

毎度、休み時間になるとなつみは必ず俺の教室を訪れ、俺の前の席に腰を下ろす。
丁度前の席のやつが休み時間になると何処かへ行ってしまうので
ここに俺となつみだけの空間ができる。

強いて言えばこれだけ。

自然と告白を承諾した俺だが、それは半ば強引に引き寄せられたという形。
なので俺はこの関係から発展させようとも思わなかった。

ただ単に俺のすぐ近くにいるという事実。

なつみがいるという現実。

俺に最も近い距離に存在する

───なつみ
25 名前:神楽綾稀 -過ぎ去る時間と感情の変化- 投稿日:2002年01月18日(金)00時23分31秒
しかし、彼女もこの関係を打破しようとしない。
俺の近くの席に座っては笑顔で俺に話しかけてくれる。

性格上、俺はその返答に愛想がない。
でも彼女はそれに対してでさえ変わらぬ笑顔…

「なぁ」
「ん?」
「楽しいか?」
「うん、とっても。」
「どこが?」
「うーん、そうだなぁ。唯人のそばにいれることかな。」
「俺のそばに?こんな愛想ない返事しかできない俺のか?」
「愛想ない?そんなことないよ。いくら愛想がなくたって今の唯人が発する言葉っていうのは
 私に向けてだよね。他の人じゃなくて私にだけの言葉。それが嬉しくて嬉しくて」


なつみの視線は一点、俺の瞳。。
26 名前:神楽綾稀 -過ぎ去る時間と感情の変化- 投稿日:2002年01月18日(金)00時25分42秒
はっきり言って俺はなつみの言っていることがわからなかった。
俺が発する言葉、それはなつみに向けての言葉。
そんなの当たり前じゃないか。
なつみの話し相手をしているんだから。

「…ふーん、そんなもんかねぇ。。」
「うん、私は充分楽しいよ。だって唯人とおしゃべりできる人って少ないよね?」
「…」
「私はその数少ないうちの1人だもん。しかも彼女なんだよ?楽しいに決まってるよ」
「…」
「…唯人は私といて楽しくない?面白くない?」

「俺は…」

俺は…正直何とも思わなかった。

「楽しくない?」
「楽しくないことはない。でも…」
「でも?」
「いや、なんでもない。」
「そっか」

なつみはそれ以上聞いてこなかった。
俺の曖昧な返答に不満の色を浮かべたかというと、そうでもない。
こんなことではなつみの笑顔は絶えなかった。
27 名前:神楽綾稀 -過ぎ去る時間と感情の変化- 投稿日:2002年01月18日(金)00時27分21秒
俺にはなつみが不思議で仕方がない。

なつみは俺と話せるということをすごく嬉しいと言ってくれる。
でもこんな関係なら恋人同士じゃなくてもいいんじゃないのか?


───恋人同士であるという理由


今まで彼女なんか作ったことがないのでどうこう言える立場ではないが
俺が抱く『恋人同士』という先入観がなつみによってことごとく壊されていく。

彼氏彼女…

俺の固定観念ってやつが間違っているのだろうか…

こんなに曖昧でいいのだろうか…

そして、俺は本当になつみを必要としているのだろうか…

28 名前:神楽綾稀  投稿日:2002年01月18日(金)00時34分49秒
>>23 takeさん
ご指摘ありがとうございます。
正直こんな間違いはないと思ってたんですよね。
だってその問題の安「部」の部分の1行上はちゃんと安「倍」になってるんすからw
馬鹿PCの変換のせいにしたいところですが
ここは素直に俺のチェックミスということにしておきます。

>AM
すいません、まだ手をつけてないんですよ。
触りの紹介を見る限り告白から始まるようですね。
今回の短編の場合、実は序盤にインパクトがないんですよ。
それをいきなりの告白という形でつけたつもりなんですが
それも結構使われている技法のようで。
ネタかぶりは…たぶんこの先はないかと^^;
じゃっかんポップコーンやAMと似ているってぽいですが
そろそろ風向きが変わってきているはずです。。
29 名前:take 投稿日:2002年01月18日(金)01時34分46秒
えぇ、すでに別物になってます(w
そうそう、変換ってやかましいですよね。
俺もたまに梨華を梨可と書く(w
30 名前:神楽綾稀 -スレチガウカンジョウ- 投稿日:2002年01月18日(金)12時08分46秒
11月ももう末日。

いよいよ冬も本格化してきた。

俺は親と離れてマンションで1人暮らしをしている。
至って普通の小さなマンションだが、1人で暮らすには充分な広さだ。
今日はアルバイトが休みだったので、学校から帰ると俺は大人しく本を読んでいた。

すると


ピンポーン


玄関のチャイムが鳴る。
俺の家に来るやつは1人しかいない。

ガチャ

「来ちゃった」
31 名前:神楽綾稀 -スレチガウカンジョウ- 投稿日:2002年01月18日(金)12時10分02秒
「…紗耶香か」
「だーかーらー!リアクションが薄すぎるのよ!!
 もっとさ、あぁ愛しの紗耶香ちゃん!来てくれたんですね!ささ、どうぞお入りください!!
 くらいは言えないの?」

「…閉めるぞ」

「だぁー、ちょい待ち!!嘘、嘘!!」
「ならさっさと入れよ」
「…おじゃましまーす」
紗耶香は口を尖らせながら部屋に入った。
32 名前:神楽綾稀 -スレチガウカンジョウ- 投稿日:2002年01月18日(金)12時11分43秒
「ほんと、生活感がない部屋ね。性格が出てる」
「ほっとけよ。で、何か用か?」
「あぁそうそう。ちょっと用事があって近くまで来てたの。せっかくだから一緒に夜ご飯でも
 食べようかなぁなんて思ってさ。最寄のスーパーで買い物してきたわけよ」
「それはありがたいな」
「でしょ?日頃から市井ちゃんには良いことしとくもんだよ?」
「…」
「だから、そこで冷めるなって!!」
「はいはい」
「ったくー。まぁいいや。キッチン借りるよ」
「あぁ、自由に使ってくれ」


「エプロンはー?」
「そんなのねぇよ。」
「嘘ぉ、この前来たとき私が置いていったでしょー?」
「…あ、キッチンの冷蔵庫の横にある引き出しに入ってる」
「ういー」





トントントントン

ジュー

「ふん〜ふ〜ん♪」

トントントン

エプロン姿の紗耶香を背に、俺は引き続き本を読んでいた。
台所からは食欲をそそる音と匂い、そして紗耶香の鼻歌が。
33 名前:神楽綾稀 -スレチガウカンジョウ- 投稿日:2002年01月18日(金)12時14分10秒
なんとなく話しかけてみる。

「なぁ、おまえに前から聞こう思ってたんだけど、俺の家に来てしかも料理なんか作ってさ
 彼氏とかなにも言わないの?」
「気にしない、気にしない。内緒にしてるし。
 それよりあんたの方こそこんなとこなつみちゃんに見られたらマズイんじゃない?」


「あいつは…」
なつみは俺の家はもちろん、私生活等、つまり学校以外の俺を知らない。
無論、俺も学校以外のあいつを知らないわけだが。

そんな不思議な関係。。


「あいつは俺の家も知らねぇし、見られたら見られただ。
 やましい事なんて何もないんだし、ちゃんと理由を話すだけだよ。」
「あら、やましい事が起らない保証なんて一つもないよ?」
「バーカ、それだとおまえも困るだろうが」

「へへへ、そっか。」
「…」
34 名前:神楽綾稀 -スレチガウカンジョウ- 投稿日:2002年01月18日(金)12時15分19秒
「それよりさ、ほんといきなりだったよね」
「何が?」
「彼女よ彼女。なつみちゃんのこと。
 こんなに早くあんたに彼女ができるなんて思わなかった。女子の間では噂になってるわよ。
 椿くんってすごく理想高いんだねぇ、とか。実際になつみちゃんってかわいすぎるし」
「理想が高い?そんなんじゃねぇよ。あっちから言い寄って来たのはおまえも知ってるだろ」
「知ってるけどさー。あんた他に言い寄ってきた子いたでしょ?
 で、なんでなつみちゃんだけOKしたのか?それはなつみちゃんが美少女だから。
 イコール、あんたの理想は高いってことになってるわけよ。」

───なぜなつみちゃんだけOKしたのか…だって?

───なぜ…

───なぜだ…

「…くだらねぇな」
「くだらないっちゃくだらないわね。それを聞いた時私も笑っちゃってさ」
「それは俺に失礼だろ」
「唯人はいつも私に失礼でしょ?おあいこさま!!」
「…」

「 さ、夕食できたよ。運ぶの手伝って」
「うい」
35 名前:神楽綾稀 -スレチガウカンジョウ- 投稿日:2002年01月18日(金)12時15分58秒
紗耶香が作ってくれたのはトンカツに豚汁。
見かけによらず紗耶香は料理が上手い。
食事のほとんどをコンビニで済ます俺にとっては非常にありがたい夕食だ。

「相変わらず美味そうだな」
「ありがと。良いお嫁さんになるのが夢だからねー」
「ま、なれるんじゃないか」
「イヤミに聞えるんだけど」
「美味い美味い」
「ちょっと!話題変えないでよ!」



36 名前:神楽綾稀 -スレチガウカンジョウ- 投稿日:2002年01月18日(金)12時17分09秒
紗耶香といると落ち着く…
別にいやらしい意味で言っているわけではない。

安心に近い安らぎ。

…そういえば最近、これに似た感覚をどこかで…

「ねぇ、なつみちゃんとデートとかどこへ行った?やっぱ遊園地?」
「…どこへも行ってねぇよ」
「ええぇ!?」

その場に立ち上がる紗耶香。

「座れよ。騒がしい女だな」
「これが黙っていられますかっての!!なんでデートしないのよ?
 あんた面倒だからって頑なに断わってるんじゃないでしょうね?」
「断わってねぇよ。そもそもどこかへ行こうって話になんないし。」
「え?なつみちゃんから誘ってこないの?」
「あぁ。休み時間は教室で話す。昼休みは屋上で2人で昼食。
 そうそう、最近あいつ弁当作ってきてくれるようになった。」

「それだけ?」

「あぁ、それだけ。帰りも家まで送ったりとかしないし。」
37 名前:神楽綾稀 -スレチガウカンジョウ- 投稿日:2002年01月18日(金)12時18分24秒
「ばっかじゃないの!?あんたは男としてすべき行動をしてなさすぎよ!!
 付き合ってかれこれ1ヶ月でしょ?デートは当たり前!キスの1つや2つもおかしくないわよ!!」
「んなこと言われてもなぁ…なつみはこの1ヶ月で少なからず俺の性格を知ったわけだろ?
 俺から誘うことはまずないってことぐらいは承知してるんじゃないか?
 そんな俺の性格を知ってるならなつみから誘ってくるはずだし。」

「…確かに。それもそうねぇ。ちょっと変よね…
 普通好きな男の子とはデートしたいもんよね。で、あんたみたいな性格ならこっちから誘わないと
 動いてくれない。となると誘うわよね。でも誘ってこないところをみると…」

「…」

「あんた、遠かれ近かれふられるんじゃないの?」

「…かもな。」

「かもなって…あんたそれでいいの?」

「…」



38 名前:神楽綾稀 -スレチガウカンジョウ- 投稿日:2002年01月18日(金)12時20分11秒
「よし!じゃ、唯人から誘う!!これ最強!!!」

「はぁ?」

「聞えなかった?あんたから誘うのよ。それでなつみちゃんが断わればそこで終了。
 あんたに愛想が尽きたってことで」
「ハッキリ言うなよ」
「名案でしょ?」
「…まぁ、確かに」
「じゃ決まりね」

「…」

強引に説得された感じだが、たまには俺から動いてみるのもいいかと思った。
せっかく付き合ってるんだしな。

───この時、すでに俺の心情には変化が起っていた。

───今までの俺ではなく、そう、違う俺に…

───それがあたかも必然的であるかのような

───カンジョウの揺らぎと

───不安



39 名前:神楽綾稀 -スレチガウカンジョウ- 投稿日:2002年01月18日(金)12時20分53秒
帰り際。

「ぜぇぇ〜ったい!なつみちゃんを誘うんだよ!!わかった?」
「…わかったよ」
「じゃ、市井は帰るから」
「あぁ、夕食サンキューな。」
「水臭いことを言うのはなしって約束でしょ?」
「そうだったな」

「…」
「…」

「…おまえさ、ほんとに彼氏と上手くやれてるのか?」
「…」

「…」
「…」
40 名前:神楽綾稀 -スレチガウカンジョウ- 投稿日:2002年01月18日(金)12時22分20秒
「…」
「…お見通し…か…」

「遠慮すんなよ。それこそ水臭いだろ?」
「そだね。でも大丈夫、なんとか自分で解決してみるからさ。
 あんたは私なんかよりなつみちゃんに愛情を注いであげなさい!これは市井ちゃんからの命令です! わかった?」
「…」


「…1人でどうしようもできなくなったらさ…その時は相談しにくるから…」


「…わかった。まぁがんばれよ。」
「じゃあね!」
「あぁ」

紗耶香は昔からこんな性格だ。
俺のことにはいつもちょっかいを出してくるが、自分の事は1人で解決する。

俺はそんなあいつが羨ましくもあった。


…あいつは強いな…
41 名前:選択人 投稿日:2002年01月18日(金)12時35分01秒
このヤロウ!
うめぇじゃねぇか!(w
楽しみにしています
42 名前:ふぁーすと。 投稿日:2002年01月18日(金)14時40分42秒
忙しい中、執筆活動御苦労様です。
短編と聞いてましたので、「ポップコーンラブ」外伝的なものを想像してましたが、
予想を裏切られました。
どっからアイデアが湧いてくるんでしょうか?
本当に感心します。
なっち推しの私としては、最初の短編に書いていただいたこと嬉しく思います。
「15分の恋人」このタイトルが示すものは何か?楽しみにしています。

43 名前:神楽綾稀 -その欲求が意味するもの- 投稿日:2002年01月18日(金)17時04分08秒
───12月

休み時間。
俺の横にはいつもと変わらぬ笑顔の少女が。
それはもはや空気という存在に近かった。

「…なぁ、なつみ。さっきから書いてるそれ。何なんだ?」

なつみの手には一冊の白い日記帳が。
毎日大事に抱えている白い日記帳…
今まで全然気にならなかった俺だが、なぜか無性に聞きたくなった。


───なつみのことを知りたいという欲求
44 名前:神楽綾稀 -その欲求が意味するもの- 投稿日:2002年01月18日(金)17時08分37秒
そんな気持ちがじょじょに芽生えはじめているということ。
しかし、今の俺はそれを不思議な『感覚』としてでしか捉えることができなかった。

まだわからない自分の気持ちに、そしてなつみの気持ちに
ココロが欲求という形に変わり言葉を発する。

「これ?日記だよ。」
「日記?そういや俺の隣にいる時は常に持ってるよな」
「うん。ここにその日に起きた嬉しいことを全部書いてるんだ。」
「どうしてだ?」

「記憶ってね、悲しいことは忘れないのに、嬉しかったり、楽しかったりすることは
 結構忘れてしまったりするんだよ。悲しいけどね。」

「…確かに」

「自分が意識してても、片隅に埋もれちゃうこともあるんだよ。
 だから私は日記を書いてる。記憶じゃなくて物として残せば思い出せるから。
 それに…」

「…それに?」
45 名前:神楽綾稀 -その欲求が意味するもの- 投稿日:2002年01月18日(金)17時10分33秒
「……唯人とのことは忘れたくないんだ、私…。だから唯人のことがいっぱい書いてあるんだよ…」

「…」
「…」

俺のこと…?

俺は…

わからない…

「あ、あのさ、明日暇か?ほら学校休みだろ」
「あした…?
「あぁ、俺達付き合ってるのに学校以外で会ったことないだろ?
 だから…何処か遊びに行かないか?良かったらでいいんだけどさ…」
46 名前:神楽綾稀 -その欲求が意味するもの- 投稿日:2002年01月18日(金)17時12分58秒
俺はなぜか答えが怖かった。

もともと俺は『彼氏彼女』という枠に特別興味を持っていたわけじゃない。
なつみとも最初からそうだった。
俺はそう思っていた。

そして今も…

今も…?

それじゃなぜ怖がる?

NOで終っても構わないと思っている俺

満たされないのならば終らせてしまえ───

いつしか存在していたYESであってほしい俺…

欲求という形で何かが動きだす───

なつみを知りたい…欲求

なぜ

なぜ…
47 名前:神楽綾稀 -その欲求が意味するもの- 投稿日:2002年01月18日(金)17時16分26秒
「…」
「それって…デートってことだよね?」
「…まぁな」
「ほんと!?ほんとに私でいいの!?」


なつみから返ってきた答えは───YES


「私でいいの?って付き合ってるからその…当然だろ」
「そ、そうだよね。唯人は私の彼氏だもんね。
 あー嬉しいな。ほんと嬉しい。」

ココロが…痛い…

初めてココロに痛みを覚える…


───NOで終っても構わないと思っていた俺


好きとか、嫌いとか、付き合うとか、彼氏とか、彼女とか…

そんなこと

どうでもよかったのに…

なのに

ココロが

痛い…

コタエを聞かされ満たされた欲求は

安心というものに形を変えた…

しかし、俺はまだその欲求の存在に気付いていない


素直になれない…
48 名前:神楽綾稀  投稿日:2002年01月18日(金)17時26分50秒
>>29 takeさん
あってはいけないことなんですが、よくあることなので困りますね>誤変換
もう辞書の機能をはたしてないときなんかありますしw

>>41 選択人さん
なんかいかにも小説だ!っていうのが書きたかったんですよ。
表現力での勝負ってやつでしょうか。
まだまだボキャブラリーが少ないので、勉強しないととは思ってるんですが
作品毎に今の自分を全て出し切れればなとは考えています。

>>42 ふぁーすと。さん
読んでいただけて光栄です。
ポップコーンは設定上どうしても「かわいい恋愛」になっちゃうんですよね。
それが書きたくて始めたんですけども。
それに読者さんの意思が反映されるというのがポップコーンを
構成する大きな要素だと思います。
今回はそれとは別に「神楽綾稀の文章」を書きたかったんですよ。
なんか偉そうで嫌になるんですが、良い意味で自己中的な文章を書いたつもりです。
ふぁーすと。さん予想を裏切ったことで成功といえるでしょうか^^
いろんな一面を見せれればなと思っています。
49 名前:邑雲 投稿日:2002年01月18日(金)18時28分06秒
ここはあえてageで。
神楽さんって、プロの方じゃないですよね?  なんか凄く、この世界に引き込まれる〜。
文法(?)なんですかね?「神楽さんみたいに」って思っても、蓋を開けたらまったく違うんですよね・・・。
あ、ごめんなさい。 なんか圧巻されちゃって・・・。

先が読めないですねぇ、今回も。
しかも「雪の妖精」は目に入ってたんですけど、「15分間の恋人」はふぁーすと。さんのご指摘で気が付きました・・・。
不覚ぅ・・・。
50 名前:take 投稿日:2002年01月18日(金)21時06分42秒
予想通りの展開だった(w
だんだんと神楽さんの書き方がわかってきたぞ〜(w
これを吸収して俺はさらに成長します(w
ピンじゃないと生きないんだけど(ww
51 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月19日(土)07時16分24秒
一応娘。の掲示板なんだから、安倍はちゃんと安倍と書こうや……
52 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月19日(土)17時29分02秒
>>51
>>28でガイシュツ読んどけ
53 名前:51 投稿日:2002年01月19日(土)20時28分12秒
ごめんなさい。書いてから気がつきました。消えてしまいたい…
主人公にラヴラヴ光線送る捨て駒役が案の定安倍で更に名前間違ってたんで
軽くキレてしまいました。すまん。
54 名前:take 投稿日:2002年01月20日(日)01時07分48秒
>>51
キニシナイアルヨ
55 名前:神楽綾稀 -揺れるココロ- 投稿日:2002年01月20日(日)02時55分47秒
───翌日

ここはセンター街。
待ち合わせの時間にどちらから現れるでもなく合流する俺となつみ。

「昨日眠れなかったよー」
「…どうして?」
「だってさ、デートだよデート。考えるだけでニヤけてきちゃって、ふふふ。
 あ、今もだ」
「おかしなやつだな」
「何言われたっていいもーん。ほんとに嬉しいんだから」
「…そっか」
56 名前:神楽綾稀 -揺れるココロ- 投稿日:2002年01月20日(日)02時56分27秒
12月に入ったばかりなのに街はすでにクリスマス一色。

センター街を華やかに彩る飾り付け。

そして独特の雰囲気。

クリスマス…

そんな雰囲気をなつみはカラダで感じているようだ。

伝わってくる、不思議な感覚。。。
57 名前:神楽綾稀 -揺れるココロ- 投稿日:2002年01月20日(日)02時59分10秒
12月に入ったばかりなのに街はすでにクリスマス一色。

センター街を華やかに彩る飾り付け。

そして独特の雰囲気。

クリスマス…

そんな雰囲気をなつみはカラダで感じているようだ。

伝わってくる、不思議な感覚。。。


同じ空間にいるのに

同じ空の下にいるのに

俺はなつみと同じではない

同じでは…ないのだ…





58 名前:神楽綾稀 -揺れるココロ- 投稿日:2002年01月20日(日)03時01分15秒

「…ぇ…ねぇ」
「…」
「…唯人ってば!」
「あ、わ、悪い」
「どうしたのボーッとしちゃって」
「いや、何でもない」
「今日はホントに楽しかった。ありがとう」
「…それはよかった」


「…唯人は楽しくなかった?」


楽しくなかった?

どうなんだろう…

俺は…どうなんだろう…

「楽しかった。センター街なんて久しぶりに来たからな」

なつみからの突然の問い掛けに俺は嘘をついた

いや、嘘ではない

ただ、わからなかった

自分の気持ちが

わからない

この心情、一体いつまで続くのだろう…
59 名前:神楽綾稀 -揺れるココロ- 投稿日:2002年01月20日(日)03時02分03秒
「ふふふ、良かった」

それでもなつみの笑顔は変わらない。
俺がどんなことを言おうと。



時に俺はその曖昧な自分を表情に出したこともあった。

それでもなつみの笑顔は変わらない。

色褪せない。




60 名前:神楽綾稀 -揺れるココロ- 投稿日:2002年01月20日(日)03時03分25秒
「そういや市井さんのことなんだけど…」

紗耶香のこと?

なぜ紗耶香が出てくるんだ?

「…すっごく良い人だね。何回かお話したんだけど、すっごく面白い人だった」

ただの印象か…

「…まぁあの性格だからな。ウザイ時もあるけど」
「はは。でもさすが古くからの友達だね。唯人のこと良く知ってた。
 無愛想でしょ?とかリアクション薄いでしょ?とか」
「…ったくあいつ」
「でも…ちょっと羨ましい」


───ドクッ

───ドクッ
61 名前:神楽綾稀 -揺れるココロ- 投稿日:2002年01月20日(日)03時04分25秒
「ねぇこれ見てー」

ちょっと目を離した隙に、なつみはショーウィンドウに駆け寄っていた。
なつみが見ていたのはシルバーのペアリング

「かわいいなぁ。でもちょっと高いかな?」
「まぁシルバーだからな。それなりの値段なんじゃないか」
「そだね。うーん…」
「…ほしいのか?」
「あ、いや、そんなんじゃないよ。そんなんじゃ…気にしないでいいから」
「…」

「帰ろっか」

「…あぁ」

普通の恋人同士が過ごす当たり前のような時間。

誰から見ても俺となつみは彼氏彼女。


───そのうち、そのうちコタエが出るはず


強引に言い聞かせる。

俺はまだ



なつみを知らない 

62 名前:神楽綾稀  投稿日:2002年01月20日(日)03時09分39秒
>>49 邑雲さん
プロだなんてそんなたいそうなもんじゃないですよ。
至って普通の書き物が好きってだけの人なので。
文法。そうですね、これが結構内容を別けるかもしれません。
はじめは好きな小説とか、漫画なら独特の雰囲気がある作品などの表現方法を
真似てみるといいかもしれません。
そこから自分の文章が生まれればそれが成長ですね。
って自身もまだまだで恐縮なんですが。

>>50 takeさん
うーん、なんとか展開を裏切りたいなぁ。

>>51 名無しさん
どうも申し訳ないです。
63 名前:( `.∀´)ダメよ 投稿日:( `.∀´)ダメよ
( `.∀´)ダメよ
64 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月20日(日)03時36分22秒
>>63
ネタばらすような発言は厳禁だろ?
削除依頼出したほうがいいよ
65 名前:64 投稿日:2002年01月20日(日)03時43分54秒
>作者様
一読者としてネタバレを若干含んだように思えた>>63に削除依頼を出しておきました。
勝手な行動と思いましたが早い方がいいと思ったのでご理解いただけたらと思います。
66 名前:神楽綾稀 投稿日:2002年01月20日(日)04時16分15秒
>>64-65
ドンピシャネタバレってことではないのですが
できればない方がいい発言ですね。
素早い対処ありがとうございます。
でも次回からは俺の判断でさせていただきますのでm(_ _)m

>>63
ネタバレの意図を含む意思があったのかどうか不明なので
一概にやめてくださいとは言えませんが、もしあったのなら
なるべく控えていただければと思います。

どれもこれも俺の引っ張りの悪さが原因かな。
まだまだですね。
67 名前:神楽綾稀 投稿日:2002年01月20日(日)15時47分08秒
はっきり言ってよくわかりませんが
なんかムカツカレタようで。
削除依頼出してきます。
68 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月20日(日)15時58分43秒
>>67
そんな必要は全くないと思うが。
69 名前:51 投稿日:2002年01月20日(日)16時27分33秒
>>68
同感。
>>67
せめて全部アップしてから削除依頼出してくれ。我侭ですまないが、読みかけの
まま消さないでくれよ。
70 名前:  投稿日:2002年01月20日(日)17時08分42秒
67は64にむかつかれたから63を削除依頼出すってことだろ?
takeと神楽ってやっぱり同一人物?
71 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月20日(日)17時15分18秒
>>70
違うよ。
同板内の某作品作者にむかつかれたの。

向こうがむかついてるからと言って、削除はどうかと思いますが。
サザエさんの苦労も考えましょうよ。
作品の完結をを待ってる人だっていると思いますよ?
72 名前:take 投稿日:2002年01月20日(日)17時15分21秒
ふむ・・・。まったくネタバレを書いた気はしないのだが・・・。
そうとってしまわれたなら謝罪します。m(_ _)m
>それでもなつみの笑顔は変わらない。
これの率直な感想だったのですが。。。

神楽さん>なんかいつも余計ですみませんねm(_ _)m

>>70
違うよ。
73 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月20日(日)17時20分46秒
スレ汚しごめん。この問題はこちらに移動してほしい。経緯は今から書き込む。
http://mseek.obi.ne.jp/cgi/hilight.cgi?dir=imp&thp=1005379821&ls=50
小説は、できれば最後まで続けて欲しい。せっかく出来ているのに勿体無い。
74 名前:選択人 投稿日:2002年01月20日(日)17時52分31秒
・・・
75 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月20日(日)18時45分01秒
とにかくsageろって事ですね
sageてない人が多いから
76 名前:take 投稿日:2002年01月20日(日)18時46分25秒
>>75
そういうことになるね。
俺も今度からsage進行にする
77 名前:神楽綾稀 投稿日:2002年01月20日(日)18時48分46秒
ここは俺が行動を起こすべきところなので起こしておきます。

>>67で述べたとおりハッキリいって俺にはわかりません。
それでいろんなスレを徘徊してきました。いろいろ書かれてましたねぇ。
まぁ自分のことなので笑い事じゃないんですがね。

それを見て削除依頼出して正解だったかなって思っていたんですが
案内板のレスとか、某スレの後半を見てると「ちゃんと読んでくれている読者に
失礼だな」と思ったんですよね。
罵倒云々のレスはともかくとして。
なので削除依頼がいつ執行されるかわかりませんが、一応最後までageたいと思います。

完成といっても実はラストの方が見直しと手直しをしてないので
2回に別けてということになりますが。

読者の方、俺は作者として最悪ですね。
本当に申し訳ございません。
78 名前:神楽綾稀 -もうひとつの…- 投稿日:2002年01月20日(日)18時50分50秒
デートはあれ1回きり。
また同じ日常を変わることのない関係で繰り返し送っている。
あれだけデートを喜んでくれたなつみだが、なつみから何処かへ行こうという誘いはなかった。

そんな日常。

未だ自分の気持ちがわからない。

その気持ちをなつみに悟られてはいけないと

曖昧な気持ち、表情を極力押し殺しおくる日々。

俺はそんな日々が次第にハガユク、そしてうっとおしく思えてきたのである。
79 名前:神楽綾稀 -もうひとつの…- 投稿日:2002年01月20日(日)18時53分14秒
───いまいち掴めないなつみの気持ち

───どうしたらいいのかわからない俺の気持ち

───コタエがでないなら、出せばいいじゃないか

───この関係にピリオドを…

───別れる


もう、どうでもいい…





80 名前:神楽綾稀 -もうひとつの…- 投稿日:2002年01月20日(日)18時54分54秒
冬休みに入るため学校は今日で終りだ。
終業式が終り、教室で先生の話が少しあったようだが
どうやら俺は後半辺りから眠ってしまったらしく
気づいた時には解散、そしてすでに1時間が経過していた。

当然教室には誰も…いや、1人いたようだ。

見慣れた鞄、そして書き置きされたメモ


■お腹が空いてると思うのでちょっとコンビニに行ってくるね
 一緒に食べよー -なつみ-


俺のこと待ってたのか。
先に帰ればいいのに…

…せっかくだし、帰ってくるのを待つか。

そんな中、俺の視界に飛び込んできた


白い日記帳…


いつも大事に持ち歩いてる物を無用心に置いてくなよな…

81 名前:神楽綾稀 -もうひとつの…- 投稿日:2002年01月20日(日)18時55分31秒
その時、俺の中でフラッシュバックが…



───記憶じゃなくて物として残せば思い出せるから

───それに…

───唯人とのことは忘れたくないんだ、私…

───だから唯人のことがいっぱい書いてあるんだよ…



これを見れば


なつみの気持ちが




わかる…
82 名前:神楽綾稀 -もうひとつの…- 投稿日:2002年01月20日(日)18時57分43秒
今の俺は

最低なヤロウだ…

そんな葛藤と戦いながらも、行動がまるで逆なのが腹立たしい。


11月1日
一目惚れ…しちゃった。
あの人が私に愛をくれる人だ('-'*)
決めた!明日あの人に告白しよう。

今日から宿題の人…





11月5日
唯人と話をしている時間が何よりも楽しい。
やっぱり私は唯人が好きなんだ。
なーんて。
キャー、なんかはずかしいよー(*^-^*)
もっともっと…




83 名前:神楽綾稀 -もうひとつの…- 投稿日:2002年01月20日(日)18時58分42秒
11月11日
もっともっと唯人とお話がしたい。
でも時間が足りないよー(TT)
お話できなかったぶんはここに書くんだ。

ホントはデートしたいけど、私のわがままは押しつけたくない…
ずっと好きでいたいから…
ずっと一緒にいたいから…

この日記が唯人への気持ちでいっぱいになったらいいな。。





11月29日
とうとうデートだよー(^^)
唯人から誘ってくるなんて夢みたい!
やっとここまで来たんだなぁ…




12月22日
今日で学校が終り…寂しいな。。
唯人と会える時間がなくなっちゃうよー。

クリスマスまであと…3日か。。。。
84 名前:神楽綾稀 -もうひとつの…- 投稿日:2002年01月20日(日)18時59分46秒
「なつみ…」


ガラガラガラー


とその時、なつみがコンビニから戻ってきた。

一瞬何が起こったのかわからない俺。

目をキョトンとさせているなつみ…

しかし、なつみの日記を勝手に見てしまったということに何も言い訳ができない。

「ご、ごめん!そんなつもりは…でもパラパラッとしか見てないから!
 そのなんつーか、ごめん!本当にごめん」

必死にあやまる。
俺は最低のことをしてしまったのだから…

怒っているに…違いない…
85 名前:神楽綾稀 -もうひとつの…- 投稿日:2002年01月20日(日)19時00分41秒
しかし、俺の目に映るその少女はいつもと変わらない笑顔でこう答えた。

「…見られちゃったね…」
「…」



「ううん、別に良いよ。怒ってないから。
 でも私のココロの中を覗かれたみたいで…ちょっとはずかしいかな…」



なつみは怒っていなかった。


「できればずーっと秘密にしておきたかった」


怒るどころか、いつもの笑顔で俺に接してくれる。


「私がこんなに唯人のことを『好き』だって…バレちゃったんだよね…
 やっぱはずかしいなぁ…」


どうして…


「どうしたの?唯人」
86 名前:神楽綾稀 -もうひとつの…- 投稿日:2002年01月20日(日)19時01分24秒
なつみの『好きは』大きすぎた。

大きすぎるから…なつみは俺に迷惑をかけちゃいけないと思っていた…

大きすぎるから…

なつみから会いたいと言ってくることはなかった───

なつみからデートに誘ってくることはなかった───

なつみから───

どれもこれも俺に迷惑をかけると思っていたから

それくらい、なつみは俺のことを…



好きだったんだ



そんなことにも気付かなかった俺。



ココロガイタイ
87 名前:神楽綾稀 -もうひとつの…- 投稿日:2002年01月20日(日)19時02分11秒
「…どうして…」

「ん?」

「やめろよ…やめてくれよ!!!」

「え…」

「どうしてそんな笑顔でいられるんだよ!!!俺は最低のことをしたんだぞ!!!」

「さ、最低だなんて思ってないよ…ただちょっとはずかしいなぁって」

「なんでだよ!!なぜ怒らない!なぜ笑顔でいられるんだよ!」

───止まらない

「なぜ俺をそこまで好きだと言える!!なぜこんな俺を好きでいられる!!」

───止まらない

「俺はおまえに何一つとして応えていない!!おまえを満たせてやれてないんだぞ!!」

───感情の暴発

「おまえが…わかんねぇよ…ああ、そうさ!!わかんねぇよ!!!」

───俺はその感情を自分自身にぶつけてた

───なつみの大きな気持ちに気付かなかった1人の馬鹿な男に

88 名前:神楽綾稀 -もうひとつの…- 投稿日:2002年01月20日(日)19時02分56秒
「こんな男を…どうして…」



しかし、少女の笑顔は揺るがなかった





「だって…」







───好きだから











なつみのコタエに

時間が

止まった…





俺は…


本当に…本当に馬鹿な男だ…
89 名前:神楽綾稀 -もうひとつの…- 投稿日:2002年01月20日(日)19時03分48秒
ガラガラガラー


「ちょ、ちょっと!唯人!」


俺は教室を走り去った。

なつみに会わせる顔などない。


なつみのいないところへ

とにかく俺は走った

それが自分に課せられた罰であるかのように



走らずにはいられなかった───
90 名前:神楽綾稀 -もうひとつの…- 投稿日:2002年01月20日(日)19時04分18秒
人間の足で行けるところなんてたかがしれている

そんなの誰であろうと同じこと

当たり前のこと

でもそんなこと当たり前のことでさえ

今は自分の無力さと感じてしまう




行き着いた先は見慣れた公園。
俺はベンチに腰を下ろし、少し頭を冷やした。

91 名前:神楽綾稀 -もうひとつの…- 投稿日:2002年01月20日(日)19時04分59秒
なつみの『好き』…

それはなつみ自身の中でセーブするのもやっとという程

深くて

大きくて

そして


あたたかい…


なつみが言葉にしなかったのはそこに理由があった。
大きすぎて俺が迷惑をしてしまう。
迷惑をかけてしまう。

そんな馬鹿げた理由で…

…はは、笑っちまうよな

俺の方がもっと馬鹿なのに…


はじめてなつみを知ったような気がする。

知れたような気がする。

いや

知った

俺はなつみを知った…
92 名前:神楽綾稀 -もうひとつの…- 投稿日:2002年01月20日(日)19時06分13秒
どうなんだ

あんなに知りたがっていたじゃないか

今度は俺の番だぞ

早く言葉にしてみろよ

行動で示してみろよ





怖いのか?

───怖い…だと?

おまえは自分の気持ちを出すのが、正直になるのが怖いんだろ?

───怖くなんて…

なつみを受け止めるのが怖いんだろ?

───怖くなんて…


───怖い…


──


93 名前:神楽綾稀 -もうひとつの…- 投稿日:2002年01月20日(日)19時06分43秒
「怖くねぇよ!!!!!!!!」

なつみに気持ちを伝えなければ。

俺の気持ちを伝えなければ。。

すべてが吹っ切れた。

そしてすべてがわかった。

俺となつみが

彼氏彼女でなければならない理由…

頑なに拒否をしていたのは

俺だけだったんだ…
94 名前:神楽綾稀 -もうひとつの…- 投稿日:2002年01月20日(日)19時08分09秒
携帯を取り出しなつみに電話をかける。

プルルルルル…

ピッ

『あ、もしもし』
『…もしもし』

『…』
『…』

『俺…頭冷やした』
『…』

『で、わかった』
『…』



『俺もなつみことが』


───好きだ



理由を話せば長くなってしまう
理屈を話せば回りくどくなってしまう

俺はただ一言…

好きと伝えた
95 名前:神楽綾稀 -もうひとつの…- 投稿日:2002年01月20日(日)19時09分04秒
電話越しに泣く声が聞える…

『お、おい泣くなよ!俺が悪いんだからさ』
『ふぇっ…泣いてなんか…う…グスン』
『バカ!泣くな!こっちまで…』
『だから…泣いて…』


───あっ


『雪…』
『雪か…』

場所は違うけど

同じ空の下

2人に降る雪…

その雪は

とてもあたたかかった…

『…ありがと』
『ごめんな…』
『ううん、だから怒って…ないから』
『…ありがとう』

1つになれた気がする…

カラダじゃなくて

もっと大切な

ココロで




96 名前:神楽綾稀  投稿日:2002年01月20日(日)19時10分24秒
ここで一区切り。
煽ろうがなんでもやっちゃってください。
俺はちゃんと読んでくれてる読者に対してそれが伝われば
いいと思ってますので。

我侭な作者で申し訳ございませんm(_ _)m
97 名前:take 投稿日:2002年01月20日(日)19時12分03秒
ご苦労さまですm(_ _)m
今回はいろいろすいませんでしたm(_ _)m
98 名前:take 投稿日:2002年01月20日(日)19時14分16秒
サザエさんはこのスレを消さないそうです。>神楽さん
とりあえず、報告まで
99 名前:神楽綾稀 -妖精の贈り物- 投稿日:2002年01月20日(日)21時48分19秒
───12月25日 クリスマス

イブがアルバイトで潰れた俺は、25日になつみと会う約束をしていた。
といっても会える時間直前まではバイト。
急に休ませてくれと頼んだのだから仕方ないんだが。。


バイトが終ったのは20:00。
待ち合わせの時間は21:00なので、帰ってから着替えやなんだかんだしてると
ギリギリになるっぽい。
俺は急いで家路についた。


急いでシャワーを浴び、着替え。
あぶない、プレゼントを忘れるところだった。
ちゃんと用意してある。
100 名前:神楽綾稀 -妖精の贈り物- 投稿日:2002年01月20日(日)21時49分06秒
───俺の気持ちをちゃんとあいつに伝えなければ

待ち合わせの場所は近所の公園。
俺のバイトのせいで一緒に食事をする時間がない。
それでもなつみはいいと言ってくれた。

なつみがいるから俺は公園へ行く

俺が来るからなつみは公園で待っている




101 名前:神楽綾稀 -妖精の贈り物- 投稿日:2002年01月20日(日)21時50分05秒
「よし、準備完了。やばい、少し走らないと間に合いそうにないな」

走る覚悟を決め、いざ外へ

しかしその時

目の前に現れた1人の少女───

「…紗耶香」

「…唯人…」

出会うやいなや俺の体にすべてを委ね、泣き崩れる紗耶香。

「お、おい、どうしたんだよ。さっぱり意味がわかんねーよ」
「…」

「…」
「…彼氏と別れた」

「え…」

言葉を失った。
そして、それと同時に運命の歯車が狂いだしたのだ…
102 名前:神楽綾稀 -妖精の贈り物- 投稿日:2002年01月20日(日)21時51分05秒
どうすればいい

友人の失恋にどんな言葉をかけてあげればいいのだろう

がんばれとでも言えばいいのか?

違う。

「…唯人…私…どうしたらいいかわかんないよ…」



「…どうかなっちゃいそうだよ」

俺にできることは

「…唯人…」

紗耶香を抱きしめてあげることだけ…

俺は何も言わず紗耶香を抱きしめた。
それは『好き』という感情ではなく『友情』という感情。
ここで紗耶香を突き放したら間違いなく俺は紗耶香という存在をなくしてまう。



───でも

──時間が



ない

103 名前:神楽綾稀 -妖精の贈り物- 投稿日:2002年01月20日(日)21時52分12秒
「…わりぃ俺なつみと…」

ギュッ

言いかけた瞬間、紗耶香の手に力が入る


───紗耶香ってこんなに弱かったか?

───小さかった?


「…ったく仕方ない…なつみにはちゃんと理由を話せばわかってくれるだろう。
 いいよ、おまえと一緒にいてやるよ」

なつみは必ず『YES』と言ってくれるはずだ。
あいつはそんなやつだから…

そんなやつだから…

そう思いポケットから携帯を取り出そうとした瞬間───

グッ

俺の手をさえぎる紗耶香の手───

「おい」
「…電話しないで…お願い…」
104 名前:神楽綾稀 -妖精の贈り物- 投稿日:2002年01月20日(日)21時52分43秒
───ダメだ

───せっかくなつみとひとつになれたんだ

───ここで約束を破ったら

でも…

「…電話しないで…私と一緒にいてほしい…」

そんな俺の気持ちを覆す紗耶香の泣き崩れた表情

こんな紗耶香は

はじめてだ…

「わかった…とりあえず中に入ろう」
「…」




105 名前:神楽綾稀 -妖精の贈り物- 投稿日:2002年01月20日(日)21時53分40秒
あれからどれくらいの時間が経っただろう…

部屋の片隅で会話もなく、ただただ時間の流れを感じる2人。
紗耶香はずっと俺の手を握ったまま離さない。

「…ありがとう。もう落ち着いたみたい」
「…そうか」

共に多くを語らず。

「…なつみちゃんのこと、ごめんね」
「気にするなよ」
「でも」
「大丈夫だって」

内心、俺はビクビクしていた。

───なつみと離れたくない

そんな感情がハッキリと確立していたからだ。

それなのに…俺はこんなところでなにをしてるんだ…
106 名前:神楽綾稀 -妖精の贈り物- 投稿日:2002年01月20日(日)21時54分50秒
「なつみちゃんのとこ、行ってあげなくていいの?」
「おまえが引き止めたんだろ」
「そっか、ごめん。でも今からでも」

時間は…

───23:30

「待ち合わせ時間は21:00なんだ。もう待ってねぇよ」

「バカ!!…って私が言うのもおかしんだけど…でも、行ってあげなよ!!」
「…紗耶香」
「なつみちゃんだよ?待ってないって確信できるの?あんたたちってそんなものだったの?」
「…」

なつみ…

俺のこれまでとってきた発言、行動すべてにおいて笑顔をくれた

───待ち合わせ時間は21:00なんだ。もう待ってねぇよ

そんなのどうしてわかる?

俺に何がわかるっていうんだ?

まだなつみのことを知ったばかりじゃないか
107 名前:神楽綾稀 -妖精の贈り物- 投稿日:2002年01月20日(日)21時55分50秒
それに、俺とあいつの距離が本当に縮まってからの数日
様子がおかしいかった。
これまでの遠慮とはまた少し違う何か…

───寂しい表情

そうだ、あいつは笑顔の反面に寂しい表情を持っていた。
今までそんな顔は見せたことなかったのに。
俺が踏み込まなかったら気付かずにいた表情…





あれ───

ふとあの日読んだ日記が頭を過る…
108 名前:神楽綾稀 -妖精の贈り物- 投稿日:2002年01月20日(日)21時57分01秒
───決めた!明日あの人に告白しよう。

───今日から宿題の人…



───決めた!明日あの人に告白しよう。



───今日から宿題の人間観察が…




───やっぱやらなきゃいけないのかなぁ
───でもやらないと『大人』になれないからなぁ
───好きな人だから…いっか。




───12月22日
───今日で学校が終り…寂しいな。。
───唯人と会える時間がなくなっちゃうよー。

───クリスマスまであと…3日か。。。。

───あと3日で…







───会えなくなる






109 名前:神楽綾稀 -妖精の贈り物- 投稿日:2002年01月20日(日)21時59分03秒
「!?」
「?」

「ごめん!俺やっぱ行くわ!!」
「あ、え、え、うん、わかった」

何かを感じとった俺は、待ち合わせ場所に行かなければならない衝動にかられた。


───会えなくなるだと?


なんだよそれ

意味わかんねぇよ!

玄関を勢いよく飛び出してとにかく走る!

「あー!つくづく運動不足ってやつを呪うぜ!」

走る

とにかく

速く
110 名前:神楽綾稀 -妖精の贈り物- 投稿日:2002年01月20日(日)21時59分33秒
「そうだ、電話で」

走りながら携帯を取り出しなつみに電話する

しかし

『お客様のおかけになった電話番号はご本人の都合により…』


「クッソー!!!!!」


待ってくれよ!なつみ!!





そこに行くから!!!!
111 名前:神楽綾稀 -妖精の贈り物- 投稿日:2002年01月20日(日)22時00分15秒
「はぁ…はぁ…」


無我夢中で走った。
それが早かったのかどうかはわからないけど
とにかく公園に着いた。

「なつみ…なつみ!!!!!」

案の定、公園に人気はない。

それでも必死でなつみを探す。

「なつみ!!!!今着いた!!!何処だよ!返事してくれよ!」


───


「なつみ!!!!!」


とにかく必死でなつみを探す。
ベンチ、遊具…

しかしなつみの姿はない…

「遅かったか…」
112 名前:神楽綾稀 -妖精の贈り物- 投稿日:2002年01月20日(日)22時01分05秒
と、ふと噴水の方に目を向けると


そこには


白いコートを纏った


なつみが…


「なつみ…」

「…唯人」


23:45

俺となつみのクリスマスは



15分間───
113 名前:神楽綾稀 -妖精の贈り物- 投稿日:2002年01月20日(日)22時01分58秒
「よかった、待っててくれれて」
「…そんなのあたりまえでしょ」

遅れてきた俺にいつもの笑顔は…


───なかった


「グスン…」

はじめて見る笑顔じゃないなつみ…

「ごめん!本当にごめん」
「…不安だった…もう来てくれないのかと思ったよ…」
「そんなわけないだろ」
「…」

「そ、そうだ。プレゼントがあるんだよ!ほら」

俺がなつみに用意したもの

それはいつしかなつみがショーウィンドウで見ていたシルバーのペアリング
114 名前:神楽綾稀 -妖精の贈り物- 投稿日:2002年01月20日(日)22時02分39秒
「これを…わたしに?」
「あぁ、はめてやるよ」
「うん」

スラッと伸びるなつみの左手薬指に

シルバーのリングをはめる

「…すっごく奇麗…すっごく…」
「…泣くなよ」
「ありがとう」

そこにいたなつみは

いつもの笑顔のなつみだった…
115 名前:神楽綾稀 -妖精の贈り物- 投稿日:2002年01月20日(日)22時04分03秒
そんななつみが愛しくて…

「なつみ」

俺の本能がなつみを抱きしめる

「…」
「…」

そして、軽いキスを

交わした…


「ありがとう…」
「なんでおまえが言うんだよ…言いたいのは俺の方だよ」
「ありがとう…」
「…」

何度かありがとうを繰り返したなつみは俺と少し距離を置く

すると次の瞬間、信じられない光景が…
116 名前:神楽綾稀 -妖精の贈り物- 投稿日:2002年01月20日(日)22時04分53秒
「これは私から、唯人へのクリスマスプレゼントだよ…」

そう言ってなつみ指をパチンと鳴らす。


すると、それまで真っ暗だった公園に色鮮やかな光が…


公園を囲む木々が赤や黄、青の閃光を放つ…


「おい、これって…」


まるで公園がひとつの大きなクリスマスツリーになったようだ


「魔法だよ」

「魔法…?」
117 名前:神楽綾稀 -妖精の贈り物- 投稿日:2002年01月20日(日)22時05分27秒
突然意味がわからないことを言い出すなつみ。
はじめは冗談のように聞えたが…

「私、魔法が使えるんだ」
「はは、まさか。」
「だってほらこの通り」

目の前に繰り広げられた光景はまさに魔法…

そんなのって…

「…ほ、ほんとかよ」
「うん」
「うんって…」

「だって…」



───私、妖精なんだ
118 名前:神楽綾稀 -妖精の贈り物- 投稿日:2002年01月20日(日)22時06分23秒
「…はぁ?なに言ってんだよおまえ。冗談はもう…」

「冗談じゃないよ。唯人の前で嘘つくわけ…ないよ。
 私は妖精。」

信じられない…

「…」

「妖精ってね、一人前の大人になるための最後の課題として『人間観察』っていうのがあるんだ」

「…」

「そのためにこの世界に来たんだよ。で、ターゲットが唯人なわけ。」

「…」

「本当は私情をいれちゃいけないんだけど…好きになっちゃった、これが唯一の誤算かな?
 たぶん怒られちゃうよ。ははは」

「…」
119 名前:神楽綾稀 -妖精の贈り物- 投稿日:2002年01月20日(日)22時06分55秒
ドクッ

「それでね、今日が最後なんだ」

…最後

ドクッ

ドクッ

「今日が課題提出期限の最終日。だから…」

…だから

ドクッ

ドクッ


「だから…唯人と会えるのもこれが…」



ドクッ


「最後なんだ…」
120 名前:神楽綾稀 -妖精の贈り物- 投稿日:2002年01月20日(日)22時08分49秒
無理をして笑顔を取り繕っていたんだろう。
すぐわかる。
でもそんなことはどうでもよかった。


「待てよ…」

「…」

「そんなの意味わかんねぇよ!!なんでだよ!!ちゃんと説明しろよ!!
 …ちゃんと説明してくれよ…」

「だから…」

「わかんねぇよ!俺の気持ちは無視かよ!やっとひとつになれたじゃねぇか!
 それなのに…それなのにどうして離れなきゃいけないんだよ!!」

今まで身勝手だったのは俺の方だ。
だから我侭というのはわかっていた。
でも、言わずにはいられなかった。

「…ごめんなさい…グスッ」
「…なんでだよ…」
「ふぇ〜ん、私だって離れたくないよ〜」

寄り掛かってくるなつみを

俺は再び抱きとめた…
121 名前:神楽綾稀 -妖精の贈り物- 投稿日:2002年01月20日(日)22時10分59秒

「…」
「…」


「…どうしようもないのか」
「…うん…ごめんね…」


───23:58


なつみのカラダが心なしか透けて見える

そして頬を流れる妖精の涙…

「おい、これって」
「そろそろ…時間みたいだね…」
「…くそ」
「…このまま、抱きしめていてほしいな…」
「当たり前だろ」

妖精の涙はとまらない…

俺はそれを拭ってやる

「…唯人…好きだよ…」
「俺もだ…」
122 名前:神楽綾稀 -妖精の贈り物- 投稿日:2002年01月20日(日)22時11分31秒
儚い冬の恋物語

その秒針は

時を刻むことを止めない

無情にも

その秒針は

12の文字を

今…

刻んだ───
123 名前:神楽綾稀 -妖精の贈り物- 投稿日:2002年01月20日(日)22時12分11秒
その時、抱き合う2人に空から1本の光が

これで…

「…ありがとう、なつみ」

「…ありがとう、唯人」

最後の最後にいつものなつみスマイルが…

そして降り注いだその光は

やがてなつみだけを包み込み

俺の前から…






124 名前:神楽綾稀 -妖精の贈り物- 投稿日:2002年01月20日(日)22時12分41秒
「…なつみ」

空を見上げる

するといつしかと同じ雪が降ってきた

あたたかい…雪

それは

妖精がくれた




最後のプレゼントだった───


-END-
125 名前:神楽綾稀  投稿日:2002年01月20日(日)22時14分33秒
■冬の訪れ>>1-6
■Confession>>7-13 >>15-21
■過ぎ去る時間と感情の変化>>24-27
■スレチガウカンジョウ>>30-40
■もうひとつの…>>78-95
■妖精の贈り物>>99-124
126 名前:神楽綾稀  投稿日:2002年01月20日(日)22時15分53秒
完結させました。

ご迷惑をおかけした管理人様、申し訳ございませんでしたm(_ _)m
そして、最後までこの作品を読むと言ってくれた読者の方々
ありがとうございましたm(_ _)m
127 名前:神楽綾稀 投稿日:2002年01月20日(日)22時21分20秒
これで俺の仕事はこれで最後になるかもしれません。
ポップコーンも完結させたかったんですが
今の状況では…ですね。

俺の文章が受け入れられなかったことは残念でしたが
現実は仕方ないですね。
ぶっちゃけた話、影武者という方の言うことが未だにハッキリわからず
俺自身もムカツキましたが、ここは少し大人になってみます。
文才がまったくない。
これはこなしてきた小説が少ないのと
あとは俺が向いてないからかもしれません。
同じ意見の方も多くみられるようですし。
言ってしまえば俺は場違いだったのかなと。

しばらく頭を冷やしてこようと思います。
128 名前:邑雲 投稿日:2002年01月20日(日)22時28分05秒
ぬあ〜!!(壊) なんか感動〜!(TOT)

もう、素晴らしいの一言に尽きるって感じですね。

ポップコーンラブとは違ったおもしろさが良かったです。(?)

第二弾にも期待れす。
129 名前:take 投稿日:2002年01月20日(日)23時14分59秒
神楽さん>見るかはわからないですけど、一応書いておきます。

ときめき!モーニング娘。、ポップコーンラブ、雪の妖精-15分間の恋人-みたいな
主人公+娘。小説は一般的にあまり好まれてないようです。
他の作者さんが娘。+娘。で書いてるので、ここまでは検討はついたかもしれません。
あと影武者さんが気に入らなかったのはコテハンのレスが多いことだったそうです。
(俺や邑雲さんなどが当てはまりますね)
飼育でもどうやら馴れ合いは好まれてないようです・・・。

なので神楽さんの文章力は全然問題ないと思いますよ。
文才がなければみんな集まらなかったわけだし(コテハン含めて)
html化などもなかったと思います。

今後、神楽さんが書く書かないは神楽さんの心の問題ですので、何も言えませんが
ポップコーンを破棄するのでしたら、一度ポップコーンスレに顔を出していただけると幸いです。

では、マジレスでした。
130 名前:名無し 投稿日:2002年01月21日(月)01時24分06秒
↑こういうレスが作家を潰し、作品を汚し、板の雰囲気をぶっ壊す
善意のつもりで書いたのかもしれんが、あんたのレスはただの煽り
作家は今回の事件の経緯についてのレスなど求めちゃいない
131 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月21日(月)07時15分56秒
別に問題なくおもしろかったすよ。
勝手にキレられただけで
気にする事ないんじゃないですか。
132 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月21日(月)16時24分27秒
>130
板の雰囲気をぶっ壊す・・・、
まずご自分の言葉遣いに目をやってみてはいかがですか?
133 名前:名無しさん 投稿日:2002年01月21日(月)19時10分26秒
>>132
また単純な煽りにひっかかる(w

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