インデックス / 過去ログ倉庫 / 掲示板

復讐は100倍に

1 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月18日(金)16時01分26秒
アンリアル、市×矢のつもりです。
拙い文ですが、よろしくお願いします。

2 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月18日(金)16時02分17秒


忘れたい、過去がある。

忘れたい、自分がいる。



そう、――――小学校5年の、あの夏。

3 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月18日(金)16時02分54秒


――――――

――――

――





セミが、思いっきり鳴いていた。
手が、思いっきり汗ばんでいた。

一生分の、勇気を使って。
一生分の、想いを胸に。

学校の、人目につかない体育館の裏で。
告白、しようと思ったんだ。(今考えるとダサいけど、靴箱に手紙いれて呼び出してね)


相手は、一つ年上。矢口真里っていう、可愛い名前。
歌の発表会の時、それぞれ学年の代表を決める時、一緒になった人。
並び順が、隣でさ。
人見知りしまくりで、あんま話さない自分に、思いっきり喋りかけて、笑わせてくれて。
こっちが笑うとさ、また、嬉しそうに笑うんだ。
それが、とっても魅力的で、可愛くて。
女同士、なんてのを忘れて、初めて味わうこの気持ちを、伝えることにしたのに――。

4 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月18日(金)16時03分39秒


「あああああのっ!!」
「ビックリしたぁ。で、なに?」
「あ、その………」
「?」

緊張しちゃって、上手く話せない。
緊張しちゃって、上手く顔を見れない。
話したいのに、見たいのに。
小心者の自分の身体は、どうもこうも、言う事を聞いてくれない。
それでも、なんとか。
この気持ち、少しでも無駄にしないよう、一生懸命、頑張る。

5 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月18日(金)16時04分54秒
「ず、ずっと、歌の発表会で隣になってからずっと、アナタが好きだったんですっっ!!!」


……い、言えた……言った………。
フラれたって、そりゃ仕方ない。
この恋は、あんまりにも幼いし、あまりにも危険だし。
第一、ほとんど、90%以上がフラれると思ってたし。
なのに、覚悟していたことなのに、そんなフラれ方は予想できなかった。


「……女の子から告白されたの、初めてだったり。
でもね、……っていうか………ごめん、誰?」
「――へ?」
「……いや、発表会で、隣になんかなった? なったとしたら、名前なんだった?」
「――――」

――こんなのって、アリなんだろうか。
小さい体と心ながら、淡い気持ちが物凄い音を立てていくのがわかった。
最初っからずっと、顔をあげて矢口さんの表情を確かめることが出来ない目から、涙がこぼれ始める。
それに、気のせいか勘違いかもしれないけど、声も口調も、いつも違う。
初めての人の急な告白に対する、警戒心なんだろうか。
……どうして、警戒なんかされなきゃいけないんだ。
6 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月18日(金)16時05分27秒
だって、だって。
寂しそうに1人立ってた自分を、寂しくないようにさせてくれたの、矢口さんだったのに。
だって、だって。
自分の名前、『イイ名前だね』って褒めてくれたの、矢口さんだったのに。

だって、だって。

2人は、友達じゃなかったんですか?



7 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月18日(金)16時06分07秒
『ねえ、何年生なの?』
『…あ、ご、五年生です』
『そっかー。じゃあヤグチの1コ下だ』

『他の代表の子は?』
『あ……まだ、来てないみたいです』
『一緒には来なかったのー?』
『………友達じゃ、ないんで。ていうか、友達いないんで……あはは…』
『…………』

『――名前は?』
『へ?』
『あなたの、お名前』
『い、市井紗耶香ですけど……』
『ほーぅ、イイ名前だね。ヤグチはぁ、矢口真里!』
『矢口さん…』
『そう、セクシーギャルになるべく、日々トレーニングしてる、矢口真里!
で、今日からヤグチと紗耶香は、お友達!』
『え……』
『って、ことで。友達、1人ゲッチューってことでヨロシクぅ、きゃはは!
友達はいいよー、作った方が、絶対にイイ!!
で、そんな友達いない紗耶香の友達、記念すべき1人目が、ヤグチね!』
『は、はあ…』
『紗耶香も、ヤグチみたく友達100人くらい出来るように、頑張れよ!』

8 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月18日(金)16時06分47秒
矢口さんが、そう言うから。
矢口さんが、そうやって笑うから。

頑張って、頑張って。
友達、ちょっとずつでも、増やしたよ?
それでも、矢口さんは、自分の友達の1人目だったのに――。


友達が――まあ、大袈裟だろうけど――100人もいる矢口さんには、
こんなちっぽけな存在なんか、忘れていたんだね。
……でもさ、それが、どんなに悲しいことか、知ってる?


一生分、勇気を使って。
一生分、気持ちを込めたのに。

フラれた、以前の問題。
彼女は、覚えていては、くれなかった。



その事実が、あまりにもショックで。

涙で見えなくなった視界で、それでもなんとか矢口真里の顔を見て、
誰にも向けたことのなかった鋭い視線を彼女、矢口真里へと向けてその場を走り去った――。



9 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月18日(金)16時07分52秒


――

――――

――――――



忘れたい、過去がある。

忘れたい、自分がいる。

だけど、そう簡単には忘れさせてはくれない。
それどころか、時間が経つにつれて、余計に憎くなり。

10 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月18日(金)16時08分38秒
ほら、よく、漫画とかであるじゃん。
いや、決して、市井がさ、マイナーな漫画を読んでるわけでもなく。
よく、目にするような、さ。

フラれた男を恨んで、可愛くなって仕返しにくるとかって漫画みたいな。

市井はさ、その反対で。
フラれた女を恨んで、カッコよくなって仕返しに来るんだよ。
昔の弱々しい気持ちなんかも、剣道を習って捨てて。
おかっぱだった髪も、高校あがる直前に切って。
ファッションだって、自分なりに研究して頑張ったつもり。
(自分が通う高校は、私服でもオッケーらしいから、そうそうカッコ悪い姿見せちゃ都合が悪いし)


でもさ、これだけは言いたい。いや、言わなくちゃいけない。


仕返しに来て、返り討ちに遭うのなんて、まっぴら。
少女漫画みたいに、また付き合うなんて、そんなこと。
どうして、こてんぱんに、立ち直れなくほどのフリ方をしたヤツと、また付き合える?
付き合えるワケ、ないでしょ。
今度は、こっちが思いっきり、フッてやるんだ。
惚れさすだけ惚れさしといて、立ち直れなくなるほど、フッてやるんだ。
11 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月18日(金)16時10分43秒
朝日奈女子高等学校の入学式を迎える前日の、市井紗耶香の決意。

矢口――もう矢口“さん”なんてつけるか!――と同じ高校に行くため、勉強しまくった中3!
この復讐のために、中学だって私立行って、告白してから1回も顔を合わさないように頑張った日々!
それでも、矢口がドコを受験するのか、矢口がどの道を通って帰るのか調べまくったあの日!
彼氏や彼女がいないか、冷や汗かきながらつけてた休みの日!
どれもこれも全部、この復讐を実行するため!

「待ってろよ矢口! 仕返しはお前の友達と同じ“100”倍にして返してやるからな!!!」

勉強机に足をのっけて。
太筆でおっきく半紙に書いた【打倒矢口真里!】の文字に、決意を表す。
12 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月18日(金)16時11分15秒


だけど、高校が家から遠かったため、下宿させてもらうことになった母親の妹の家の
保田さんの1人娘(市井からしてみれば従姉)の圭ちゃんに、

「紗耶香うるさい!」

と、一喝される。
すると、居候の市井さんは、へコヘコ頭を下げることしかできなくて。
うすい壁で仕切ってる隣の、怒らせたら怖い従姉に向かって、「すいませ〜ん…」と返す。
そして、今度は小さく。

「………矢口、待ってろよ!!」




――決意を、胸に。復讐劇の、始まり始まり。



13 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月18日(金)16時12分38秒
文字制限にひっかかりまくり、区切りがめちゃくちゃで、
読みにくいことこの上ないかと思いますが、すいません。
それほど長くないかとは思いますので、よろしくお願いします。
14 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月18日(金)17時32分56秒
いいっすね、かなり面白そうっす。
市×矢は好きなんで色んな意味で期待してます(w
後自分は読みにくくはないっす!
15 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月18日(金)21時17分28秒
面白そう!
すっげー楽しみです。
文字制限・・・自分も大分苦労してます・・(w
がんばってくださいね。
16 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月19日(土)08時46分21秒
赤板に久々に面白そうなのが!!
期待してます
17 名前: 投稿日:2002年01月19日(土)11時53分58秒
「なあなあ圭ちゃんっ、やっぱさ、入学式は制服の方がいい!?」
「えー、どっちでもいいじゃん」
「いや、やっぱそれかさ、いっそのことタキシードとかどう!? 目立つでしょ!!」
「紗耶香、高校に何しに行くの……結婚式でもあげるつもり?」
「じゃあ、どんなのがいいんだよ〜!!」

あわわわ、と口に出した通り、慌てちゃって。
さんざん決意を表明した昨日のうちに、どの服で行くか、決めるのを忘れてて。
入学式の直前になって、従姉であり、朝女――高校の通称ね、ありがちだけどさ――の先輩でもある圭ちゃんに尋ねる。

「っていうかさ、あんまりにも目立つ格好したら、校門で止められたりするよ?
まあ、タキシードで着たことあるコなんていなかったから、止められるかどうかわかんないけど……」
「じゃあさ、マント羽織ったりとかどう? 目立たないでしょ、それだったら」
「いや、目立ちすぎでしょ」

18 名前: 投稿日:2002年01月19日(土)11時54分35秒
っていうか、マントなんて着て行ったら、惚れさすどころか、呆れられる可能性が大。
やっぱ、制服が無難か……。

「よし、圭ちゃん! 制服に決めたよ」
「はいはい。じゃあそろそろ着替えなきゃ、マジ遅刻」
「うおっとと……じゃあ着替えますか、ってええええええ!?」
「な、何よ。どうした?」

………忘れてた。


「制服取りに行くの忘れてたーーー!!!」


学校で、受け渡し期間ってのを、聞いてたハズなのに。
ついつい、忘れてしまっていて。
朝早い時間じゃ、制服専門店も、開いてるわけがなく。

19 名前: 投稿日:2002年01月19日(土)11時55分08秒
「アンタほんとに馬鹿ね! こんなのが従妹だと思うと泣けてくるわ!」
「いいから、喋らずに速くこいで!!」
「こいでもらってるくせに命令しないでよ!!!」

そう、圭ちゃんに、送ってもらってるんです。
え? 服装は?
普段着の、そこら辺に散らばってあった、ポロシャツとジーンズで……。
本来の計画なら、入学式で目立って矢口に惚れてもらって、
さっさとコクってもらってフラれてもらおうって作戦だったんだけど。
計画、変更。
こんな、ダッサイ姿で、逢うわけにはいかない。
そんなの、プライドが意外と高い市井さん、許しません。

…やっぱさ、カッコよくいたいじゃん?
いやいや、決して矢口に逢うからとかじゃないよ!?
最近、“美意識”?とかってやつに目覚めてきたばっかだし。

20 名前: 投稿日:2002年01月19日(土)11時55分41秒
「はっ、何が美意識よ。生意気なこと言っちゃって」
「って、心の中読んだ!?」
「その心の中の声を、思いっきりあんたは口に出してたけど?」
「げ………」

失敗失敗。
これは、気をつけよう。
矢口の目の前で言っちゃったら、それこそ100倍にして返す復讐が台無しだ。

「でも、なんでそんなに矢口にこだわるかね。そんなにいいかなぁ、あのコ」
「………よくないよ、全然」

っていうか、最低だよ。マジで。
だけど、小5事件の事情を知らない圭ちゃんは、どうして市井がそこまで矢口にこだわるのか知らない。
っていうか、そんな情けない過去は、知られたくないし。
ただ、「どうしてそんな朝女がいいの」と聞かれて、「矢口に逢いたいから」とだけ答えただけ。
うん、逢いたいのは、間違いじゃないしね。

「それより、学校着いたけど?」
「お、ありがとさんっ♪」

バッと後ろの荷台から、飛び降りるってほどじゃないけど、降りる。

21 名前: 投稿日:2002年01月19日(土)11時56分14秒
「1年の教室は、その渡り廊下通って上がったトコだからね」
「圭ちゃんは行かないの?」
「だって入学式、3年のあたしが行っても、意味ないもん」
「んだよ、ズルいなぁ」
「そんなこと言ってる間に、時間」

りょーかい、とビシッと姿勢をよくして。
自転車乗って帰ってく圭ちゃんを見送る。
……って、ちょっと待って。


「圭ちゃん、いちー帰りどうやって帰んのさぁ!」


自転車、乗って帰られちゃうと。
圭ちゃん、帰られちゃうと。
矢口のことばっかり夢中になって、学校から家までの道順すら覚えてなかった市井は絶望。

「矢口にでも送ってもらいなさい!」
「初日から、いくらなんでも無理だぁ!!!」

叫んでは見たものの、ダッシュで、逃げるようにペダルをこぎ始めた圭ちゃんには聞こえない。
っていうか、よく考えてみてよ。
もしも矢口をオトして――んなこと、初日じゃ絶対無理だけど――送ってもらっても、矢口、道知らないじゃん。
……こりゃあもう、迷いながら帰るのを、覚悟するしかない。

22 名前: 投稿日:2002年01月19日(土)11時56分47秒
そもそも、普通、体育館までついていってくれてもいいのに――。
なんだか立派な建物は、剣道で鍛えてくれた気持ちまでも、弱くさせる。
それとも、それは建物のせいじゃなく、ここに矢口がいるから?
昔の、あの自分が、甦る。

――ヤダ。ヤダ。
もう、忘れたいんだ。
その昔の自分を忘れるために、こうやってやって来たんだ。

…大きく、深呼吸をして。
クラス分けが貼ってある下駄箱の通りに、靴を突っ込む。
どうやら、ワタクシ市井紗耶香は、1年1組、1番らしい。うむ、いい数字。
で、ちょっと気になって。
ついでに、2年のクラス分けで矢口の名前も探してみる。
そうやって、キョロキョロと探していた時――


「あれっ? 初めて見る顔だね〜」



23 名前: 投稿日:2002年01月19日(土)11時57分48秒
――ドクン。
心臓が、大きく高鳴る。

いつも、陰からこっそり覗いて聞いてた、他の人に喋っていた声じゃなく。
明らかに、自分に向けて発せられている、声。
告白の時と違って、警戒心がまったくない、発表会の練習の時に聞き慣れた、その声。
大好きだった――あくまで過去形“だった”――その声。
そして、振り向くとそこには。


「わかった! 新入生だ!!」


――やっぱり。
大好きな、笑顔。


「ん……? どっかで逢った事ある……?」
「…………いや、すいません」

じっと、見てしまったからか。
首を傾げて、訊ねられる。

……喉が、カラカラだ。
頭の中じゃ、色々考えてたのに。
本人をこうやって前にしたら、どうしてかまた身体が言うこと聞いてくれない。
だけど、今度は、告白の時は一度もちゃんと見れなかった、顔はしっかり見てる。
ずっと、反らさずに顔だけは。

24 名前: 投稿日:2002年01月19日(土)11時58分22秒
大好きだったんだ、本当に。
それなのに、その気持ちを踏みにじった、裏切ったこの人。
そう思ったら、少しずつ身体が言うことを聞き始める。

……そうだよ。
自分は、仕返しに来たんだ。復讐しに来たんだ。
100倍にして返すって、決意をして乗り込んだんだ。
それなのに、緊張してる場合じゃない。


「……名前、なんて言うの?」
「――市井、市井紗耶香です」
「そっか。イイ名前だね」
「…ありがとうございます」

不思議と、小5の時みたいな、褒められて嬉しい気持ちがする。
だけどもう、胸を焦がすような喜びは感じられない。

「あと、本当に申し訳ないんですけど…」
「ん?」
「1年1組まで、案内してもらえませんか? ――場所、わかんなくて」

そうやって、照れくさそうに言うと。
――狙い通り。
何人にも予行練習して、練習した甲斐ってもんがある。
矢口の顔は、少し紅くなった。

「しょ、しょうがないな……先輩が案内してあげよう!」
「…ありがとうございます!」




復讐劇の幕が、開く――。




25 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月19日(土)11時59分47秒
次ら辺からだんだんと市井が変わっていっちゃいますが、話の都合という事でお許しください。
今日は、この辺で。
あと、名前欄の「2」というのは、第2話目と考えてくだされば、
少しは話の繋がりが見やすいかと思われますので。

>14
レスありがとうございます。
色んな意味で、頑張りたいです。

>15
レスありがとうございます。
文字制限、お互い頑張りましょう(w

>16
レスありがとうございます。
赤の他の作者さんたちのお邪魔にならないように頑張りたいです。
26 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月19日(土)23時32分42秒
おもしろそうですね。
さやまりが増えて嬉しいです。
期待して待ってます!
27 名前:3 投稿日:2002年01月20日(日)12時31分34秒



掴みは、ばっちり。
後は、計画通りに行動するだけ。
……大丈夫、大丈夫。簡単だよ。



28 名前:3 投稿日:2002年01月20日(日)12時32分20秒
「でもさ、みんな大抵入学式は制服で来るんだけどさ、市井さんは――」
「紗耶香で、いいっす。みんなにそう呼ばれてるんで」
「あ、そ、そう? じゃあ『紗耶香』で……」
「……はい」

あ、なんか今、すごい懐かしい感じした。
その、どこか甘い声で、「紗耶香」と呼んでくれたこと。
……別に、「市井さん」でもよかったんだけど……。
や、でも、惚れてもらうのに、他人行儀ってのも、なんだかだし。
そう自分自身に言い訳して、話を続ける。

29 名前:3 投稿日:2002年01月20日(日)12時32分57秒
「制服ね、取りに行くの忘れたんですよ、で、遅刻寸前だったから、手近にあったこの服を…」
「あ、そうなんだー」
「ええ。………っていうか、このカッコ、やっぱ変ですか?」
「えっ?」
「やっぱ、似合わないですよね……」
「いや、そんなことないよ! 似合ってるし、カッコいいと思う!!」
「…ありがとうございます」
「い、いや……れ、礼を言われる程では……」

ゴニョゴニョと、はっきりしない喋り方。
だけど、顔の反応ははっきりしてて。ほっぺが、なぜか紅い。
だがしかし。
そこで「可愛いなぁ」なんか、思っちゃいけない。
そう思ってしまったら、小5の夏を、また繰り返すことになるんだから――。


あくまで、冷静に。クールでドライに。
そして、常にカッコよく、矢口の前では弱気や甘えを見せてみて。
だけど、少年みたいな心は忘れずに――。

矢口を、オトすコツ。


30 名前:3 投稿日:2002年01月20日(日)12時33分29秒
矢口をオトして、そしてフるためだったら、何日だって何年だって耐えてやる。
だけど、意外にもこれは計算外。
予想より早く、矢口はハマってくれそうな予感。

「ココが、1年1組」
「おおっ、ありがとうございますっ。もう説明は……」
「――始まってる、みたいだね」
「やっぱり?」

まあ、別に、始まっていたとしても、どうせ意味のない説明だし。
適当に聞いておいて、大事なトコは先生が何度も言うから大丈夫だろうと、考える。

「じゃ、ありがとうございました。ほんとに」

わざわざ、連れて行ってくれて。
一応礼儀だから、頭を下げてお礼を言う。
そして、入って行こうとしたのだけれど――


「……どうせもう始まってんだから、終わるまで、どっかサボらない…?」


――予想より幾分と早い、矢口のお誘い。



31 名前:3 投稿日:2002年01月20日(日)12時34分07秒
そして、そのお誘いの返事。
誰が、断わると思う?
だって、チャンスを向こうから与えてくれてるわけってことじゃんか。

「…でも、矢口さんは大丈夫なんですか?」
「んー?」
「いや、教室行かなくて」
「つうかさ、元々授業なんかないのよ、新入生以外。
じゃあ、んじゃなんでここにいるんだよって感じだけどさ、今日は、
この前遅刻しちゃったから、色んな雑用やらされに来たワケ。
んで、さっきで終了したし、今から帰るトコ」
「へぇ」
「…あ、それと」
「はい?」
「……矢口さんって、やめない? 呼び捨てでいーよ。敬語もやめてさ。下駄箱で逢ったのも何かの縁だし。
それに、先輩後輩とかの上下関係?とかって嫌いなんだよねー」
「……はぁ」

32 名前:3 投稿日:2002年01月20日(日)12時34分41秒
……そういや、そうだったよね。
昔から、市井だけにじゃなく、誰でも気さくに、学年問わず話し掛けてたもんね。
……そーゆートコは、変わってないんだ。
………なんだか、胸が痛む。

だ、だけど、何事もそっちへ考えないように考えないように、意識して。
矢口って呼び捨てに出来るってことは、もし口が滑っていつものように「矢口」って言っても、
全然怪しまれないわけで。
そういう風に、なるべく考えの意識を、そっちへ変える。

「じゃあ、どっかいいサボり場所教えてよ、矢口」



33 名前:3 投稿日:2002年01月20日(日)12時35分14秒
そして、連れてかれた、朝女の屋上。

「へっへ〜、今は新入生しかいないから、屋上貸切〜♪」
「広いねぇ」
「でしょ。だから昼休みとかは、2、3年ばっかうじゃうじゃしてるけどね。今いないから」
「へ〜」

貸切がそんなに嬉しいのか、この屋上から見える景色やらの自慢を散々しまくる矢口。
多分、自慢してるのが矢口じゃなかったら、「うぜぇ」の一言なんだけど。
なんでかな、やっぱ「可愛い」なんて思ってしまう。

……いやいや。
確かにそりゃ、可愛いかもしんない。
だって、この市井が惚れた人だし?
ただ、可愛いのは、顔だけで。
中身はサイアク。それはもう小5の時に、立証済み。

34 名前:3 投稿日:2002年01月20日(日)12時35分45秒
「ねねね、紗耶香」
「ん?」
「彼氏とか、いたりすんの?」
「彼氏?」

いたずらっぽい瞳で、そう訊ねてくる。
彼氏ね、彼氏。

「いないよ」
「じゃあ、好きな人は?」
「――前に、いたけど」
「何々? 過去形?」
「そう。今は――大っ嫌い」

握り締めた拳を見ながら呟く市井を、矢口はちょっと怯えた模様。
しまった、まだ知り合って間もないのに、ちょっとやり過ぎたな。
そう思い直して、静まってしまった場を、軽く戻す。

35 名前:3 投稿日:2002年01月20日(日)12時36分15秒
「ってかさ、こっちのことはいいからさ。もっと明るく楽しい話を…」
「えー、でも、紗耶香の話聞きたいよ」
「……なんで?」
「…………いや、別に」

そう言って、紅くなる。
…なんかもう、思い通りじゃん? これって。

「あっれ〜? 矢口さん、この市井さんに惚れちゃいましたか〜?」
「…何いってんだ、ばーか」
「いやいや、市井はいつでもオッケーっすよ」

からかい半分、マジ半分。
少し、反応を窺ってみる。

「女なんかに惚れられても、嬉しくなんかないでしょ」
「なんで? 自分は、男より女が好きだけど?」
「え、そ、そーなんだ……」

………ふむ。
びっみょ〜な、反応。
だけど、思いっきり引いたりしないところを見ると。

36 名前:3 投稿日:2002年01月20日(日)12時36分57秒
「……この学校、そーいう人多いし。最初はビックリしたけどさ」
「…じゃあ矢口は、女より男? …って、当たり前のことだろうけどさ」
「……でも、昔、女の子好きカモって思った時、あった。初恋のコ、女の子だし」
「へえ……誰なんだろう、矢口にそう思わせることが出来る子って」
「ちょっと、紗耶香に似てるよ。名前残念ながら忘れちゃったんだけどさ、
紗耶香を下駄箱で見た時、すっごい懐かしい気がしたし」
「それはそれは、光栄です」

そう、光栄なんだけど……胸の奥が、なんかギリギリ痛む。
認めたくないけど、認めるしかない。
市井に似た矢口の初恋のコに、市井は嫉妬してるんだ。

やっぱ、大好き“だった”人だからさ。
ま、まあ、嫉妬するのも仕方ないかな、なんて。
そうやって、自分に言い聞かせる。
そして言い聞かせてから、最後の、反応の窺い。

37 名前:3 投稿日:2002年01月20日(日)12時37分31秒
「でもさー、矢口可愛いしさ、しかもこの学校、市井みたいな女の人が好きって人多いんでしょ?
だったら、誰かに告白されたりとかって、ないの?」
「ないよー! 男にも女にも、生まれてこのかた、1回もない。
自分からコクったりとかは、中学の頃あったけどさ」
「は? ウソでしょ」
「初対面の人に、ウソついてどーすんの」
「…………」

いや、ウソでしょ。
市井、コクったじゃん。
小5の夏、めっちゃ勇気出して、コクったんだけど。

……あ、そうか。
また、忘れてるのか。
発表会で隣になったことも忘れて、名前までも忘れて、今度はコクられたことも忘れちゃったんですか。
どうしてこの人はこんな、忘れ性なんでしょうか。
コクったのだって、発表会が終わってから、1ヶ月も経ってなかったのにだよ?
それなのに、隣になったことまで忘れて、名前まで忘れて。
コクられたのを忘れてるのは、そりゃ、今にしてみれば大分経ってるからしょうがないのかもしれないけど…。

38 名前:3 投稿日:2002年01月20日(日)12時38分02秒
……っていうか、あれか。
そうか。そうか。

よく、またたとえ話するようで悪いけど、
いじめてた人はその人にしてきたことを忘れてしまうとかって言うけど、いじめられた人は忘れないとか。
それと、一緒のようなものと考えていいのかな?

こっちは、一生分使い果たしてした告白なのに。
彼女にしてみたら、なんでもない告白だったんだ。
所詮、そんなもん。
気持ちなんか、伝わらない。


「……紗耶香、紗耶香! どしたの?」

黙って考え事をしてしまった市井に気付いて、声をかける。
大丈夫、どうもしてない。
気持ちを、再確認しただけ。


小5の時に受けたショックは、絶対に100倍にして返してやる――。




憎しみを更にアップさせ、復讐という劇のキャストが、ついに動きだす。





39 名前:3 投稿日:2002年01月20日(日)12時38分52秒
今日の更新終了です。
今日は全部文字制限にひっからなくて一安心。(w

>26
レスありがとうございます。
市×矢、いいですよね。
頑張ります。
40 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月20日(日)13時18分03秒
スリアスつぽい展開なのになぜかにやけてしまう(w
41 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月20日(日)14時23分31秒
この先どうなってゆくのか気になります
楽しみにしてます〜
42 名前:4 投稿日:2002年01月21日(月)13時48分22秒
屋上で2人サボってから、もう早1週間。
今、自分の前には、復讐の標的の矢口はいなく、数学の先生。
そう、今はれっきとした授業中。
さすがにまだ入学して1週間めじゃ、サボるのも難しく。

つうかね、そもそも、さ。
この朝女に受かったのなんか、自分の執念だと思うんだよ。
普通に勉強してたら、絶対に受からないトコだし。
元々、矢口は中学の時塾行ってたから――ちゃんとつけて調べましたよ――こんな学校通えるわけで。
テストを執念で合格した市井は、こんな学校、通えるのだろうか。
ふと、心配になったりしてる、さっぱり分からないのに、どんどん進んでく数学の授業中。

……まあ、だけど、大丈夫。
市井にはほら、中学3年間で鍛えた強い気持ちと、カッコよさってのがあるから?
そんな心配は、ご無用だったわけなのさ。

43 名前:4 投稿日:2002年01月21日(月)13時48分56秒
チャイムが鳴って、わけわからん授業タイムは終わり。
みなさん待ってましたの、休み時間。
すると、どういうことだろう。
みなさん、ノート片手に、市井の元へと近寄ってくる。

「紗耶香、今の問4のとこ、わかった?」
「いやー、ぜんっぜんわっかんない」

机にへばりついて、白旗降参ってことをアピールする。
したら、そのクラスメイトの友達のコが、ぱぁっと顔を輝かせて。

「じゃ、じゃああたし、教えてあげる!」
「うっそ、ありがとう!」

そしてそして、先生よりゆっくりなペースで、非常に分かり易い解説が始まる。
この解説者は、日によって変わってくるんだけど。
誰にしてもどの問題にしても、非常に分かり易い解説をしてくれるのだ。
そして、その解説でどうも分からなければ、最終的に圭ちゃんに聞く。
これで、なんとか三年間は過ごせそうな予感。

44 名前:4 投稿日:2002年01月21日(月)13時49分33秒
モテるってのは、非常に気持ちがいい。
昔は見向きもしてくれなかったクラスメイト達が、見てくれる。
だけど、そのためにモテるやつになったんじゃなくて。
ただ、矢口の理想に少しでも近付こうと努力したら、モテるようになったってわけ。
でもさ、肝心の矢口にモテないと、それこそ意味がない。

屋上で会話を咲かせてから、早1週間。
ちゃんと、矢口が惚れてくれるように、努力は欠かさずやっている。

まず、努力その1。
偶然を装って休み時間、矢口に逢う。

努力その2。
屋上で教えてもらった携帯番号。
メールは、欠かさず毎日数回。
(でも、欠かさずって言っても、向こうから送られてくるメールを返信するだけなんだけど)

そして最後、努力その3。
毎日学食の矢口に合わせて、自分も学食。
(まあ、下宿してる圭ちゃんのお母さん、おばちゃんに手間かけるのもなんだしさ)

45 名前:4 投稿日:2002年01月21日(月)13時50分08秒
そして今日も、メールを打ちながら、弁当派の友達の誘いを断わって食堂に。
いつ来ても、いっぱいいっぱいな食堂。
こりゃ食堂のオバチャン達も大変だよなぁと思いつつ、メールを待つ。
なんでメールを待つかというと。
矢口が場所を取ってくれてて、今ドコにいるのかというメールをくれるからだ。

この学校のほとんどの生徒は、市井を始め、私服のコがほとんど。
だから、比較的、みんな一緒な制服を探すより見つけやすいかと思うのだけれど。
これがまた、難しいんだよね。

食堂にいるだけでも、女の子の数は200人近い。
で、みんな流行り物好きな女の子達ばかりだから、似たような服とか髪型とか色と多くて。
しかも、矢口はちっちゃいと来た。
みーんな厚ゾコ履いてるから、また見つけにくくて。
こうやって、メール待ち。

…なんて、1人でグチグチ言ってたら、メール到着。

{1番右奥}

そのメールを見て、確認。
……いた、こっち見て、手を振ってる。
その手を軽く振り返して、こっちも頼んだメニューをおぼんに乗せて、矢口の元へ向かう。
そして、到着。

46 名前:4 投稿日:2002年01月21日(月)13時50分41秒
「今日ちょっと遅かったねー」
「うん。数学でわかんないとこ、友達に教えてもらっててさ」
「……ふーん。ヤグチ、数学得意だから教えてあげれるよ?」
「じゃあ、今度お願いします」

なんだかちょっと拗ねてしまった矢口。
…やっぱさ、矢口、絶対もう市井のこと気になってると思うんだけど。
だって、わかんないとこ友達に教えてもらってたって言ったら、ちょっと口尖らせたりとかさ。
なんかさ、すっごいこういうのって嬉しくないか?

それは決して、ヤキモチを妬いてくれてるのかもっていう、想いからじゃない。
小5の時に自分が感じた気持ちを、矢口も味わってくれてるから。

元々矢口は、何度も言った通り、誰にでも気さくに喋りかけることが出来る人で。
市井と仲良くなってからも、よくみんなと喋ってたりしてたんだよね。
んで、よく笑顔を見せてさ。
そしてそれを1人で見てた市井は、勝手にその友達とかに嫉妬したりして。
もちろん矢口はそんなこと、気づいてなかった。
だけど、市井は今それに気付いてる。

じゃあやっぱ、復讐しちゃうでしょう。

47 名前:4 投稿日:2002年01月21日(月)13時51分33秒
「でもさ、矢口」
「ん?」
「いっつも2人で食べてるけどさ、他の友達とかはいいの?」

唇にオムライスのケチャップがつかないように、気をつけて食べている矢口に訊ねる。
2人で食べてる理由なんかは、もちろん知ってるんだけど。
あえて、こんな質問をしてみるんだ。

「他の友達は、弁当だから…」
「でも、何回か、食堂で友達と喋ってたりしてたじゃん」
「そ、それはぁっ、い、いつも食べてる友達じゃないから……」
「ふーん?」

しどろもどろになっちゃって。
あぁ、可愛いね。可愛い。
だけど、外見だけね。外見“だけ”。

「そ、そーいう紗耶香はいいの? 矢口となんか食べててさっ。
入学したばっかなのに、友達と食べなくて……」
「友達?」
「うん」

48 名前:4 投稿日:2002年01月21日(月)13時52分07秒
………よく、言うよ。
――友達第一号は、アンタじゃないか。
アンタ、だったじゃないか。

友達100人もいるアンタは、そんなちっぽけな存在、忘れているかもしれないけど。
市井にとっては、記念すべき1人目だったのに。

忘れてたのは、誰だよ。
裏切ったのは、誰だよ。


――復讐は、“100”倍にして、返してやる。絶対に。



49 名前:4 投稿日:2002年01月21日(月)13時52分47秒
「――じゃあ、友達のトコで食べてくるよ」
「って、え、ちょっと!?」
「じゃ」

あんまりにも、むかついて。
勝手に、怒っちゃって。

これじゃ、計画が台無しだ。
そんなの、わかってはいるんだけど。


計画は、やり直せばいい。
メールか何かで、今とってしまった行動を、謝ればいい。
だけど、その前に、この怒りを、抑えなきゃいけない。



あくまで、冷静に。クールでドライに。
そして、常にカッコよく、矢口の前では弱気や甘えを見せてみて。
だけど、少年みたいな心は忘れずに――。

矢口を、オトすコツ。


そう、オトさなきゃ、復讐劇は何も始まらないんだから――。





50 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月21日(月)13時53分23秒
今日の更新終了です。あと3回で終わります。

>40
レスありがとうございます。
なかなか真面目に書ききれなくて、つい自分もにやけてしまいます(w

>41
レスありがとうございます。
ご期待に応えれるように、頑張ります。
51 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月21日(月)14時26分08秒
作者さんあんた一体何者なんだー!!(w
話の構成が抜群にうまいっす
52 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月21日(月)21時07分19秒
おもしろすぎ!!
拙い文じゃないじゃん!!
あと3回で終わってしまうのがおしい・・・。
できたら、続編とかでこの作者さんの話を
もっと読みたいなー。
53 名前:5 投稿日:2002年01月22日(火)11時51分17秒
「やっぱりまだ、忘れられないのか」

大きく息を吐いて、呟く。


自分の気持ちを抑えられなくなって、食堂から逃げ出したのはいい。
だけど、矢口には友達のトコに戻ると言っておきながら、今自分がいるのは屋上。
でも、矢口が入学式の時に言った、「昼休みとかは2、3年でうじゃうじゃ」ってのはない。
もうすぐ、昼休み終了のチャイムが鳴るからだと、思う。
だけど自分は、動かない。
もう少し、まだもう少し、抑えるのに時間がかかるから。

まだまだ、忘れられない。
まだまだ、演じきれない。
まだまだ、子ども。

でもそれを、全部抑え込んで。
息を思い切り吸って、なんとか飲み込む。

54 名前:5 投稿日:2002年01月22日(火)11時51分53秒
それから数分後、昼休み終了の鐘が鳴って。
他の生徒達が、キャッキャッと騒ぎながら、帰ってく。
授業が終わるまで、あと約2時間。
そのあとの放課後に向けて、みんな頑張るんだろうな、なんて。
だけどどうやら今日は、自分は頑張れそうもない。

だーれもいなくなった屋上。
ざらついてる屋上の床に、背中、身体を預ける。
服が汚れるのは、別段気にしなかった。
まあちょっとは気にしろって感じなんだけど。

「きーもちいいねぇ」

なんだか、解放感。
無理やり抑え込んでた気持ちが、すっきりと気持ち悪さをなくす。
それをもっと味わうために、目をちゃんと開けて、上の、空と雲の景色を眺める。

55 名前:5 投稿日:2002年01月22日(火)11時52分30秒
それから数分後、昼休み終了の鐘が鳴って。
他の生徒達が、キャッキャッと騒ぎながら、帰ってく。
授業が終わるまで、あと約2時間。
そのあとの放課後に向けて、みんな頑張るんだろうな、なんて。
だけどどうやら今日は、自分は頑張れそうもない。

だーれもいなくなった屋上。
ざらついてる屋上の床に、背中、身体を預ける。
服が汚れるのは、別段気にしなかった。
まあちょっとは気にしろって感じなんだけど。

「きーもちいいねぇ」

なんだか、解放感。
無理やり抑え込んでた気持ちが、すっきりと気持ち悪さをなくす。
それをもっと味わうために、目をちゃんと開けて、上の、空と雲の景色を眺める。

56 名前:5 投稿日:2002年01月22日(火)11時53分11秒
その時、不意にジーンズのポケットから、短い音と共に振動が伝わる。
……メールだ。

{今、ドコにいんの?さっきあたし、何か変なこと言ったんならゴメン}

送信者の名前確認するのを忘れたけど、メールの内容でわかった。
こんなメール送るの、矢口しかいないでしょ。

無視しようか――。
そんなことが、頭の中を回る。
だけど無視なんかしたら、それこそ終わりかもしれない。矢口が近付いて来ないかもしらない。
それはそれで、よかったのかも知れないけれど。
こっちは、復讐するためにこの学校に来て、矢口と逢ったんだ。
早々、壊してたまるものか。

{屋上}

たったその一言だけ、返信。
送ったところで、授業も始まったみたいだし、何にも変わらないのかもしれないけど。
無視するより、いくらかマシだ。

57 名前:5 投稿日:2002年01月22日(火)11時53分48秒
だけどうやら、これまた予想が外れたらしい。
――矢口は来た。

「――っていうかさ、なんで来たの? もう授業始まってんじゃん」
「…………だって」
「だって、じゃないだろ。何そんな泣きそうになって、必死になってんの?」

予想してなくて、つい思ったことを口に出してしまう。
予想をしていたら、まずは謝って、いつも通り接しようと色々考えていただろうに。
どうも自分は、予想屋には絶対になれないらしい。

馬鹿みたいだ――。
勝手に怒って、どっか行ったのに。
泣きそうになって、必死になってやってくる。
――ほんと、バッカじゃないの?

こんなもんじゃ、ないんだ。
自分が受けたショック、屈辱はこんなもんじゃないんだ。

58 名前:5 投稿日:2002年01月22日(火)11時54分21秒
「…ねぇ、なんで泣きそうなの? ねぇ」
「だ、だって……っ、さやっ……か、怒って……ぅ」
「じゃあ、なんでそんな必死になってんの?」
「それはっ……」

言えよ、好きだって。
言ったら、やっと復讐できるから。


「――それは、何?」
「…それはっ………」
「――じゃあ、当ててあげるよ」
「へっ? んぐっ……ンッ」


強引に、顎を掴んで上を向かせて。
舌で、思い切り唇を湿らせて。
――極上の、甘い甘ーいキス。


「……必死になってんのは、市井のことが好きだから――だよね?」
「…………」

顔から耳から、何から何まで真っ赤にさせて。
……コクン、と頷く。

「…じゃあ、『好き』って言ってよ。ちゃんと」
「…………」

この復讐を、やっと叶えられる。
矢口がその言葉を、言ってくれると。

59 名前:5 投稿日:2002年01月22日(火)11時56分07秒
「………紗耶香が、好き」

なんで逢って1週間しか経ってないのに、こんな気持ちになるのか。
そんなこと、わかんないけど。
矢口は言う。

「…こんな気持ちになったのは、初恋の人に似てたからとか?」
「それもある、カモ、知れないけど……」
「知れない『けど』、って何だよ」
「紗耶香、目が寂しそうで………なんとかしてあげたい、そう思ったからかも…」
「ハァ?」

何言ってんだ、このチビ。
目が寂しそう? 寂しそうにしたのは、自分じゃん。
なんとかしてあげたい? 出来るワケないでしょ。
――こんな嫌なやつにしたのは、他でもない矢口なんだから。
そして、顔真っ赤にさせてる矢口の顔を、真っ青にするのが、嫌なやつ市井の目的。

60 名前:5 投稿日:2002年01月22日(火)11時56分44秒
「好きになってくれて、ありがとう。でも残念。こっちは矢口のこと、大っ嫌いなんだよね」
「――へ?」

背が小さい矢口を、上から見下ろして。
薄く、笑ってみせる。

初恋の人似の効果か、予想より早く効いてくれた、惚れろ作戦。
そして、予想より早く効いてコクって――正確にはコクらせただけど――くれたから。
予想より幾分と早い、復讐の始まり。

これで、ちょっとは。
あの時のこと、思い出してくれた――?

これで、ちょっとは。
あの時の市井の気持ち、わかってくれた――?


100倍は、まだまだこんなもんじゃない。

受けたショック、屈辱は、まだまだこんなもんじゃない。



61 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月22日(火)11時57分21秒
更新終了です。
展開がいきなりすぎなのは、実力不足です。。(ペコリ

>51
レスありがとうございます。
な、何者ですか(w
頑張ります。

>52
レスありがとうございます。
もっともっと上手くなりたいのですが、褒めていただきとても嬉しいです。
続編は……今のトコ、案が出てないです(ニガw

62 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月23日(水)02時21分38秒
もしや前にここでさやまりのシリーズもの(?)書かれてたあの方では…
63 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月23日(水)08時54分21秒
出来れば長く続いてほしい・・・
64 名前:名無し娘。 投稿日:2002年01月23日(水)12時35分55秒
>64
禿同
65 名前:6 投稿日:2002年01月23日(水)12時50分24秒
目の前で、呆然としている矢口。
だって、そりゃそうだ。
自分からコクらせといて、大っ嫌いと言い放たれたのだから――。

「な、なに…? ワケわかんないよ…」
「わかんなかったら、別にいいよ。ただ、市井はアンタのこと嫌いだから」
「――なんでっ? あ、あたし嫌われることした? しょ、食堂のことだったら、もっと謝るからっ…」
「……食堂のことは、覚えてんだね。――まあ、そりゃそうか」

だって、ついさっきだし。
これで忘れてたら、忘れ性どころか、矢口がアルツハイマーだって可能性も。

「だってだって…仲良かったじゃん! い、一方的にヤグチが喋るだけだったけど…」
「そうだよ、仲良かったよ」

あくまで過去形に拘る市井。
仲は、良かった。
少なくとも、告白する前までは――。

66 名前:6 投稿日:2002年01月23日(水)12時50分57秒
「――まだ、思い出せないの?」
「えっ…」
「ここまでされといて、まだ気付かないの?」
「……?」
「先に、『大っ嫌い』よりひどい言葉言ったの、自分の方じゃん!」
「――へ?」

もう、忘れた、なんてので済ますもんか。
泣いて、謝らせてやる。
あの時、市井がどんな気持ちだったのか。

「ちょ、ちょっと待ってよ…ひどい言葉ってなに? しょ、食堂でそんなことほんとに言った…?」
「食堂じゃない! 体育館裏でだ!!」
「た、体育館裏って……この学校、体育館横はあるけど、裏ない…」
「この学校じゃないよ!!」

これだけ言っても、思い出さない。
何なの? 何よ!(……ごめん)

「…いいかげんすっとぼけるのやめろよ。犯すゾ」
「え、ちょ…きゃあっ!」

汚い屋上の床に、押し倒す。
だけど、それは押し倒しただけ。

67 名前:6 投稿日:2002年01月23日(水)12時51分35秒
犯す勇気なんか、ない。
犯して平気な勇気なんか、剣道では鍛えちゃいない。
…そう、本当は、強い気持ちなんか、一つも持っちゃいない。
持っていたら、こんな復讐なんかしない。
弱いから、弱い気持ちだから、こんなことをするんだ――。


「好き、好きだったんだ、ずっと。大好きだったのに……」
「紗耶香…?」
「だけど所詮、自分はすぐ忘れられるような、そんな存在っ……。
だけどだけどっ、自分にとっては初めて出来た友達、初めて出来た好きな人だったのにっ…」

矢口を地面に押し倒して押さえつけたまま、ポロポロと涙が零れる。
だけど、その涙を拭き取ったら、矢口が逃げてしまいそうで。
ただただ、自分の想いをそのまま涙と共に吐き出す。

68 名前:6 投稿日:2002年01月23日(水)12時52分06秒
「どれだけ自分が苦労したかわかるか!? あの時受けたショックで、あれからどう過ごしてたかわかるっ!?
……わかるワケないよな、だってアンタは、市井の名前さえ忘れてるんだから」
「忘れてる……?」
「そぉだよっ! 自分は、1回聞いて、絶対に忘れなかった、『矢口真里』って名前!!
矢口だって、『イイ名前だね』って……高校で逢った時と同じ、そう、言ってくれたのに……」

自分の名前は、市井紗耶香なんだ。
市井紗耶香なんだ。
何度も何度も、そう繰り返す。

小5のあの夏の時も、涙でゆがみまくった視界の中で、ずっと呟いていた名前。


『名前、なんだったっけ?』


「――っ、市井紗耶香だよ! なんで忘れるんだ!!!」



69 名前:6 投稿日:2002年01月23日(水)12時52分37秒
拳にありったけの力を込めて、地面に叩きつける。
…もちろん、矢口に当たらないように、気をつけて。

現在(今)と過去が、なんかごっちゃになってる。
それこそ忘れたい過去なのに、思い出しちゃって暴走する。
その過去を忘れるように、拳を思いっきり叩きつけるんだけど。
血が飛び散って手の感覚がなくなればなくなるほど、余計に思い出してくる。

「もうヤなんだっ――! 忘れたいんだっ……復讐するんだ!!」
「……さやか、紗耶香っ」

何度も叩きつける拳を守るように、矢口が止めに入る。

「……わかったよ、わかったから……。だから、自分を痛めるのはやめてよ…」
「何をわかったっていう…」
「――あたしの初恋の人は、やっぱり紗耶香だったんだってこと」
「え………」

70 名前:6 投稿日:2002年01月23日(水)12時53分12秒
懐かしい気がした。
前、矢口はそう言ってた気がする。
だけど、だけど。

「名前忘れてたのは、本当にごめん…。名前を呼んだ時も、なんか懐かしい気がしたんだけど……」
「……………」
「小学校の時、逢ってたんだね。ウチら。発表会の時、隣だったよね。
紗耶香の友達の、最初の1人目だったんだよねヤグチ……」

だから、友達と食べなくていいのって言った時、怒ったの?
そう訊ねる矢口を、無視する。
気付いてくれたことは、嬉しい。思い出してくれたことは、嬉しい。
だけど、だけど。
大きな大きな矛盾してることが、ある。

「…初恋の人って、なんだよ。誰かと、間違ってんじゃないの?」
「はっ? なんで? 紗耶香だよっ、発表会で隣になった紗耶香だよ!」
「……この期に及んで、ご機嫌取るのはもういいよ。何が、初恋の人だ」
「機嫌なんか取ってない、初恋の人はさや――」

「じゃあなんでフッたりしたんだよ!!!!」


71 名前:6 投稿日:2002年01月23日(水)12時53分45秒
これ以上、もう大声は出ない。
それくらい大きな声で、叫んだ。

「発表会で、隣になったっけ? 名前なんだっけ? そう言ったの、誰?」
「な、何言ってんの紗耶香…?」
「小5のあの夏のことだよ!!」

靴箱に、ダッサイけどラブレター入れて、体育館裏に呼び出して。
ずっと好きだったんですってコクって。
そう、矢口に言葉荒々しく伝える。
だけど、矢口の反応は……


「――――ごめん、全然心当たりないんだけども」
「…………は、はあ?」



――予想外すぎる展開に、復讐劇は一時中断。





72 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月23日(水)12時54分44秒
今日の更新終了です。明日でラストになります。

>62
レスありがとうございます。
さやまりシリーズもの?
……シリーズには覚えはありませんが……ゲホゲホ

>63
レスありがとうございます。
すいません、明日でラストなんです(汗

>64
レスありがとうございます。
明日でラストなんです、ごめんなさい(汗

73 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月23日(水)15時32分08秒
たまらん展開だ
明日で最後ですか、楽しみに待ってます。
74 名前:名無し娘。 投稿日:2002年01月24日(木)00時01分56秒
続き楽しみ。
75 名前:7 投稿日:2002年01月25日(金)09時07分16秒
ほんと、意味がわからん。
何だ何だ? 一体、どうなってる?

「…矢口、ほんとはアルツハイマーっていう病気なんじゃないの?
だとしたら、すぐ病院で見てもらった方が…」
「失礼なっ。なんでまだ16でボケなきゃ…」
「や、真剣に心配してんだけどさ」

だって、だって。
これだけ、真剣に訴えてもだよ?
少しくらい、思い出してくれてもいいじゃん。
それとも、思い出す価値もない出来事だったのか?

「紗耶香こそ、それ絶対誰かと勘違いしてるよ!
だってヤグチ、紗耶香のこと好きだったのに断わるハズないもん!」
「よく言うよ、断わったクセに!」
「だから、知らないって言ってんじゃん!」

76 名前:7 投稿日:2002年01月25日(金)09時07分52秒
ウソつけ、ウソじゃない!
そんなくだらない言い合いが、屋上全体に響く。
…これが、昼休みじゃなくてよかった。
昼休みだったら、みんなの注目の的だ。

だけど、さっきまで泣きそうになってた矢口が、いつの間にか眉間に皺寄せて「ウソじゃない!」って叫んでる。
な、なんだよ。
ちょっと、怖いじゃんかよ。
だ、だけど負けないぞ。

「そ、そもそもなんでそんないきなり強気なんだよ! 意味わかんない!!」
「こっちとしてみれば、紗耶香の方が意味わかんないよ!!」
「意味わかんなくないでしょうが! 出来事そのまま言ってるのに!」
「だーかーらぁ、知らないっての!!」
「……………」

元々、可愛らしい外見に騙されがちだけど、矢口には凄みがあって。
で、また、そのくりっとした瞳で睨らまれるのが、怖いのなんのって。

……これじゃ、復讐しに来たのに、返り討ちにあってんじゃん。
やっぱり自分は、まだまだ弱い気持ちってことで…。
で、でも、市井頑張る!!(……ごめん)

77 名前:7 投稿日:2002年01月25日(金)09時08分28秒
「いいか、矢口? もう一回、丁寧に言うよ。冷静にね。だから、よーく思い出して」
「思い出すも何も……」
「いーから!」

このままの勢いでいくと、矢口に飲み込まれちゃいそうだったから。
なんとかして、自分のペースへと持っていく。

「……まず、発表会で隣になったことは思い出してくれたワケだよね?」
「うん」
「じゃあ市井が、その隣の子だったってことも、わかったんだよね?」
「…うん。初恋の人だってことも、わかったよ」
「じゃあ、市井が矢口にコクったことは?」
「………残念ながら」
「………………あー、もう!」

なんだか、ラチがあかん。
復讐するつもりなのに、本人がここまで覚えてないと、なんだか復讐してる感じにならないのはどういうこと?

「……や、矢口にまったく覚えがなくても、市井は手紙出したのだよ。体育館裏に来てくださいって。
そして、矢口は来たんだよね」

思い切り顔を引きつらせながら、言う。
なんだか、ものすごく馬鹿らしい。

78 名前:7 投稿日:2002年01月25日(金)09時09分10秒
なんか、1人で盛り上がってない?
頭の中が、グルグル回る。

「絶対、間違えたんだって。だってヤグチ、ほんとに覚えてないもん」
「……あのね、いくら小5って言ったって、好きな人の顔は、間違えません」

…つっても、あまりに緊張しすぎて、最後の1回だけしか顔見れなかったけどさ。
(……体育館裏に矢口がやって来た時は、ずっと俯いて足元が目の前に確認したからわかったんだけど)

「靴箱の中、ちゃんと調べたのかよ!」
「調べるも何も、入ってるなんて知らないじゃん! それになんもなかったよ!」
「ウソだ! ちゃんと入れた! それぞれの靴箱の上に貼ってある名前のトコ見て、『矢口真里』にちゃんと入れた!」
「へ……?」
「な、なんだよ。思い出したか」
「いや……

ちょっと待って。ちょっと待ってよ。


小学校の靴箱の名前シールは、自分の靴が入ってるトコの“下”に貼るんじゃなかった――?」



「――――え」





79 名前:7 投稿日:2002年01月25日(金)09時09分51秒
…………………そ、そういえば。
そうだったような、気がしないでもない。
じゃ、じゃあなに?


市井は、ラブレターを矢口の靴箱の一つ下に入れてたってこと……?



――え? じゃあ、なに?

矢口は、体育館裏に来てないの?


……いやいやいや。
来たよ、来たじゃん。
市井、最後、見たじゃん。


そう、涙で見えなくなった視界で――――。




80 名前:7 投稿日:2002年01月25日(金)09時10分30秒
「………まさか」
「――その、まさかだと思うけどヤグチは……」

そう、そのまさか。
顔なんて、はっきり見ちゃいない。
そもそも、見るどころか、見えなかったんだから。

「ちょ、ちょっと待ってよっ、それじゃ、復讐どうなるんだよっ。
市井、なんのために今まで、なんのためにこの学校に……」
「…ヤグチに逢いにきたんじゃないの?」
「そうだよ、逢いにきたよ………逢いにきたけど…」

それは、復讐するためで。
まさか、こんな大ドンデン返しがあったとは――。
脚本を書き直すどころか、劇が潰れてしまったじゃないか。

81 名前:7 投稿日:2002年01月25日(金)09時11分15秒
「紗耶香は、復讐のためじゃなきゃヤグチに逢ってくれないの?
紗耶香は、もう、ヤグチのこと好きじゃないの?」
「………………」

さっきまでの、眉間に皺寄せて怒鳴る矢口は、どこ行ったのか。
また泣きそうな目で、市井を見つめる。
…そうだよ、この復讐のために、頑張ってきたんだ。
…そうだよ、好きなんかじゃない。大っ嫌いだ。


なのに。なのに。


「―――これじゃ、市井1人、馬鹿みたいじゃんかぁ…」


82 名前:7 投稿日:2002年01月25日(金)09時12分09秒
今までずっと、そう思って抑えてきた感情。
今までずっと、それを支えにやってきた想い。

それが、ここに来て、ガラガラと音を立てて崩れてく。


――馬鹿みたいだ。違うよ、馬鹿だ。
正真正銘、大馬鹿者だ。


「…でもヤグチは、好きだよ。そんな、馬鹿みたいな紗耶香」
「……っ、ぅ……」
「今回のはさ、色々と痛かったけどさ、そんで、申し訳なかったけどさ。
……もっかい、最初からやり直そ? もっかい、一からやり直そ?」
「矢口はっ、いいの…? こんな、嫌なヤツだよ……?
勝手に勘違いして、復讐しようとした嫌なヤツ……」
「でも、嫌なヤツでも、好きなんだからしょーがないじゃん」
「矢口……」

83 名前:7 投稿日:2002年01月25日(金)09時12分57秒
そうだよ、市井は大馬鹿者。
自ら、馬鹿な方向に足を持ってって。
自ら作った復讐劇の幕を、自ら閉じちゃって。

だから、こんなの、罪滅ぼしっていうのも、おこがましいかもしれないけれど。


「矢口への愛情は、100倍にして返すから!! 絶対に、絶対に返すから!!!」
「ええっ、な、なに急に…」
「だから、だからっ………本当にごめん! 謝って済む問題じゃないってわかってるけど…」
「……いいよ、もう」


小5の時、初めて見た時みたいな、笑顔を見せて。


「――愛情、ちゃんと100倍にして返してよね」
「う、うんっ!」


そして、矢口の市井への愛情、唇に軽いキスをしてくれた。


84 名前:7 投稿日:2002年01月25日(金)09時13分43秒
……潰れたんなら、最初からやり直せばいい。

本当に、その通りで。
今度こそ、今度こそ。
潰れないように、頑張りたいと思う。


「じゃ、じゃあ、早速100倍にして…」
「って、ちょ、何してんのっ」
「…いや、さっきの愛情篭もったキスを、100倍にして返そうかなって」
「そ、そーいう返し方なのかよ!!」




復讐劇なんて、物騒な劇じゃなく。


新しい劇、愛情劇の脚本は、コツコツと準備中――。








85 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月25日(金)09時14分16秒
一応。一応。
86 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月25日(金)09時14分48秒
ラスト。隠し。
87 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月25日(金)09時15分51秒
これにて全更新終了。読んでくれていた方、この作品の場を提供してくれた管理人さん、
ありがとうございました。

どうしてもこの板で、どうしてもこの2人で書きたかったんです。
最後まで読んでくれた方、こんなダメなヤツのお付き合い、ありがとうございました。

途中、PCでトラブって繋げなかったため、明日で最後と言っておきながら、明後日になってしまいましたが(汗
ありがとうございました。

>73
レスありがとうございます。
明日で最後と言っておきながら、遅れて本当に申し訳ないです(ペコペコ
予想は多分、合ってたかと思われます(w

>74
レスありがとうございます。
遅くなり、ごめんなさい。
88 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月25日(金)15時49分11秒
最高でした!
ホントに何度も泣いたし、最後には萌えたし・・・・。
さやまり推しとしては、ホントに良かったです!

完結、おつかれさまでした。
そして、素晴らしい作品をありがとうございました。
89 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月25日(金)16時33分52秒
いや〜マジでおもろかったっす。お疲れ様でした。
そして、おかえりなさい(w
90 名前:名無し娘。 投稿日:2002年01月26日(土)01時09分15秒
いや〜、おもしろかった。
最後、どうすんのかなと思ってたけど、そういう落ちだったんだ(w
91 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月28日(月)21時02分16秒
テンポよく読めてヨカッタ。
久々に自分的ヒットでした。またいつでも待ってます。
お疲れ様っしたー。
92 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月17日(日)01時25分06秒
おもしろかったヨ!

Converted by dat2html.pl 1.0