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地球防衛娘。
- 1 名前:矢口真太 投稿日:2002年01月20日(日)18時00分27秒
- 初めまして。
面白い小説がたくさんある中で、恐れ多くもここに書いてみようかな?と思い小説を書きます。
内容は、ウルトラマン、ウルトラセブン、帰ってきたウルトラマンをひっくるめた特撮モノですが、
ウルトラマンは出てきません。後々出そうかな、と考えてはいます。
よろしかったらおつきあいくださいm(__)m
- 2 名前:1.オープニング 投稿日:2002年01月20日(日)18時02分02秒
- 地球は狙われている。
この緑の美しい星に、今宇宙からの侵略者達の魔の手が伸びようとしている。
頻発する怪事件。出現する巨大生物。
これを危惧した国連は、地球の全平和を守る為に、地球防衛軍、通称TDFを結成する。
本部をパリに置き、ワシントン、モスクワ、北京、中東、アフリカ、極東の各地域に支部を持つ。
最も怪事件が起こりやすい極東地区は、TDFのエース部隊と二つの支援組織により構成されている。
科学特捜隊。
主に怪事件等の捜査を担当し、時には怪獣退治にも乗り出す、特殊部隊である。
MAT。
モンスター・アタック・チームの頭文字を取ったMATは、その名の通り怪獣退治専門の特殊部隊である。
そして、これらを統括するのが、ウルトラ警備隊。
TDFの中でも選りすぐりの人材を集めた最強の部隊である。
そして、何よりも特記すべき事は、これらの部隊は全て女性で編成されていると言う事であった。
人は彼女達の事をモーニング娘。隊と呼ぶ。
- 3 名前:メンバー表 科学特捜隊 投稿日:2002年01月20日(日)18時03分51秒
- 飯田圭織 (21歳)科特隊のキャップ。
普段はボーっとして、何かと交信をしている時があるが、どんな場面でも
冷静沈着に対応する。
安部なつみ(21歳)科特隊副キャップ格。
北海道出身なのに凄い寒がり。ちょっと子供っぽい所もあるが、
射撃、操縦に関してはTOPレベル。
松浦亜矢 (17歳)科特隊のムードメーカー。
明るい性格で隊員達からの評判もいい。
科特隊で安部と共にスパイダーショットの使い手。
紺野あさ美(14歳)科特隊の新人隊員。
いわゆる何でもそつなくこなすタイプ。新兵器開発担当。
新垣里沙 (14歳)科特隊の新人隊員。
主に通信、分析担当だが、アウトドア派でビートルの操縦を任される事が多い。
- 4 名前:メンバー表 MAT 投稿日:2002年01月20日(日)18時04分43秒
保田圭 (22歳)MAT隊長。
部下思いで行動派。TDF内で個性が最も強いMATを上手く取りまとめている。
温和な性格なのだが、彼女を怒らすと後が怖い。
矢口真理 (19歳)MATの副隊長格。
小さい体ながら、パワーは人一倍。仲間思いで隊員からの信頼も厚い。
加護、辻と共にミニモニ。班を作ってジープを駆ってバズーカ片手に怪獣に立ち向か うその姿は圧巻。別名バズーカトリオとも呼ばれる。
吉澤ひとみ(16歳)通称よっしぃ。
隊内1の男前、もとい男勝り。今までに女性から貰ったラブレターは数知れず。
運動神経抜群。射撃の名手。
加護亜衣 (14歳)通称あいぼん。
精神年齢が低く、まだまだ子供。主に通信を担当するが、バズーカトリオとして
日夜奮戦。
辻希美 (15歳)通称のの。
こちらも精神年齢が低く、お子様なのか舌が少し回らない。
しかし、以外にも兵器開発としての能力が抜群で彼女の新兵器で窮地を脱した場面
は数知れず。バズーカトリオの一人。
- 5 名前:メンバー表 ウルトラ警備隊 投稿日:2002年01月20日(日)18時05分37秒
- 中澤裕子 (29歳)ウルトラ警備隊隊長。
TDF内でも異彩を放つ人物で、それゆえか統括部隊のウルトラ警備隊隊長に
任命される。
信念を貫き通す性格で、間違った行為が行われようとすれば、例えそれが上層部
であろうが、真っ向から対立する。
隊員達の良きお姉さんとして、隊員達から尊敬されているが、彼女の愛情表現だけは
尊敬されていないようだ。
後藤真希 (17歳)ウルトラ警備隊の副隊長格。
クールな性格で、物事を冷静且つ正確に判断するTDF内のエリート。
射撃、操縦その他の能力はTOPレベル。
実はクールな性格になるように自分で作っている為、勤務作戦外では結構甘えん坊
石川梨華 (17歳)別の名をチャーミー石川。
兵器開発、作戦立案を担当し、TDF内でファンクラブが作られる程のかわいらしさ なのだが、あどけない笑顔でとんでもない作戦を練り上げる。名(迷?)策士。
高橋愛 (16歳)ウルトラ警備隊に配属されたばかりの新人。
新人ながら度胸と行動力は抜群。
小川麻琴 (15歳)こちらもウルトラ警備隊に配属されたばかりの新人。
元気一杯、気合充分、なのだが、時には空回りする事も。主に通信担当。
- 6 名前: 矢口真太 投稿日:2002年01月20日(日)18時07分50秒
- ちょっと改行を間違えてしまったようです・・・
以後気おつけますm(__)m
- 7 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月20日(日)18時14分45秒
「レーダーに多数の未確認飛行物体を確認!小笠原諸島から東京湾への飛行経路を取っています!」
「小川、正確な数は?」
「え、え〜と…10から15!」
「アホ!なんや!その曖昧な数は?!レーダーをよく見いや!」
「は、ハイ!え、え〜と…」
「数は丁度13機や!大きさは、F−2支援戦闘機にほぼ近い大きさや!」
「えぇ〜?!何でわかるんですかぁ?!」
「どアホ!2Dレーダーだけやなくて3Dレーダーも見いや!年下の加護に負けてどないすんねん!」
「す、すいませ〜ん!」
「敵機は13機。機体の大きさから見て、科特隊とMATの戦力で充分ですね」
「ほな、飯田キャップと保田隊長に出撃命令を出してや」
「は、ハイ!こちらTDF作戦司令室。科特隊とMATはただちに敵機の迎撃を行ってください!」
- 8 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月20日(日)18時15分16秒
- 「TDF作戦司令室より入電。敵機は小笠原諸島より東京湾に向う模様。ただちに迎撃に迎えとの事です」
「わかったわ。松浦!紺野!ジェットビートルで出撃!」
「「ハイ!!」」
「いよいよ始まったわねぇ!矢口!吉澤!マットアロー1号で科特隊の援護に向って!」
「「了解!!」」
「こちら松浦。ただ今東京湾南30kmを航行中。まもなく敵編隊と接触します」
『了解。慎重にね』
「あ!松浦さん!見えてきました!」
「いい?敵の数は13機。まともにぶつかったら勝ち目は無いわ。一撃離脱戦法でMATがくるまで持ちこたえるのよ!」
「ハイ!」
「お〜お〜、やってる!やってる!あの動きからして、亜矢ちゃんお得意の逃げまくり戦法ね!」
「矢口さん、一撃離脱、じゃないんですか?」
「ようは同じでしょ?逃げながら敵機を撃ち落とす!」
「まぁ、松浦さんは矢口さんとは違って、未だに撃墜された事は無いですからねぇ」
「何か言った?」
「い、いいえ!別に…」
『こらぁ!矢口!吉澤!私語してるな!作戦に集中しろ!」
「…ったくもう…圭ちゃんったらうるさいんだから」
『矢口…後で、私の部屋に来る?』
「吉澤隊員!松浦隊員達を援護するぞ!」
「やっぱ怖いですよね…保田さんのあれ…」
『吉澤ぁ!お前も来るかぁ!?」
「ただ今より松浦隊員達の援護をします!」
- 9 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月20日(日)18時16分00秒
- ここは、富士山麗に位置するTDF極東支部。
現在、極東支部内に置いて、ウルトラ警備隊、科特隊、MATによる合同訓練が行われていた。
- 10 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月20日(日)18時17分50秒
- 「う…気持ち悪っ…」
「どうしたぁ!よっしぃー!元気無いぞぉ!」
口元を手で抑えながら戦闘機シミュレーターコクピットから出てくる吉澤に、矢口がいつもの調子で話し掛ける。
「矢口さん…よく撃墜された時の大回転で酔わないっすね?」
吐き気を必死に堪える吉澤。
「あ〜んなの軽い軽い!まだ麓にある遊園地のジェットコースターの方が面白いって!」
吉澤の前を腕組みをしながら歩く矢口。
「あの〜…一応訓練ですんで、撃墜されるのはまずいかと…」
ようやく吐き気が治まってきたのか、それでも大回転の後遺症で足元がふらつきながらも矢口についていく吉澤。
「マットアローにはちゃんと脱出装置が付いているでしょ?パラシュート降下も面白いわよぉ!」
立ち止まって吉澤の方にくるりと体を向ける矢口。
「そう言う問題じゃないと思いますけど…」
「それにねぇ、MATは元々対地怪獣攻撃部隊として結成されてるのよ。その為に地上用兵器があんなにたくさんあるのよ!」
今度は両手を腰に当てて威張った感じの矢口。
- 11 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月20日(日)18時18分26秒
- 「でも、さっきの訓練みたいに、飛行する敵機や怪獣にはどう対処するんですか?」
「裕ちゃん達のウルトラホークに任せる!」
何故かガッツポーズの矢口。
「他人任せじゃないですか?」
「いいの!矢口達は地上からこのマットシュートで怪獣をやっつける!」
と、腰のガンベルトに挿してあるマットシュートを素早く取り出して、カッコよく構える矢口。
「いや…でもそりゃマズイんじゃないっすか?」
「よっしぃー、何の為にこのマットシュートと矢口達のバズーカがあると思ってるのぉ?」
「地上から怪獣の動きをかく乱する為…」
「そうでしょう!」
「じゃあ、マットアローは何の為にある?」
「そりゃぁ、便利な移動手段…へ?」
得意げに話していた矢口だったが、不意に後ろから聞こえた声に、彼女は凍りついた。
- 12 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月20日(日)18時19分09秒
- 「け、圭ちゃん?」
恐る恐る振り返ってみると、そこには仁王立ちになっている般若の様な形相の保田がいた。
「矢口!あんたは何回訓練を受ければ撃墜されないようになるの?!少しは新人の紺野を見習いなさい!」
紺野は新人ながらも中々いい操縦技術を持っていた。その為、今回の訓練では二発の被弾を受けただけである。
「だ、だってぇ、ジェットビートルはマットアローよりも耐弾性が高いじゃん。二三発喰らったって…」
「だってもこっても無い!これから訓練後のミーティングやるから、覚悟してなさい!」
「は〜い…」
般若の様な形相に保田にしゅんとなる矢口。
その後のミーティングで、矢口が保田にみっちりと叱られた事は言うまでもない。
- 13 名前: 矢口真太 投稿日:2002年01月20日(日)18時21分43秒
- 極東支部内にある、ウルトラ警備隊隊長中澤裕子の部屋。
彼女は、椅子にもたれながら先程の訓練報告を読み返していた。
「やっぱ、紺野の操縦センスはええモノがあるなぁ。亜矢やなっちと一緒にしといてよかったかもなぁ。
それに引き換え…」
彼女は大きく溜息をついた。
「矢口は相変わらずかぁ…あいつ、地上戦能力は高いんやけどなぁ…MATで戦闘機を扱えるのが保田とよっしぃだけっちゅうのは、やっぱ痛いなぁ…」
更に大きな溜息をつく中澤。
「配属を間違えたかぁ?」
一人頭を抱えて悩む中澤のビデオシーバーに通信が入った。
「こちら、中澤」
ビデオレシーバーの蓋を開けると、小さな画面に映し出されているのは金髪でサングラスを掛けた、
他人が見れば誰もが怪しいと思う男だった。
- 14 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月20日(日)18時22分52秒
- 「よ!裕ちゃん!元気かぁ!?つんくちゃんやでぇ!」
「・・・・・・・・・・・・」
突然の場違いな挨拶に目を細める中澤。
「なんや、暗い顔しとんなぁ!もっと、パッといこうや!パッと!」
「用がないんでしたら切ります」
はっきり言って、つんくと名乗る男の言動に腹が立った。こっちは航空戦力が部隊内で最も乏しい
MATをどうしようかと悩んでいた所であるからだ。
「そないな事ゆわんといてや!ちょいとしたニュースがあんねん」
紹介が遅れたが、このつんくと言う男。こんな軽そうに見えても、TDFの参謀長官なのである。
本名は寺田光男。まだ30代半ばにしてこの地位で、これでも超エリートなのである。
ウルトラ警備隊、科特隊、MATの編成をした本人でもあるが、一部の上層部からは邪険にされている。
「それよりも、長官。自分の事をつんくと言うの、やめはったらよろしいんちゃいます?」
「ま、ええやないか。俺とお前の中やろ?」
実は、つんくは昔あるバンドを大阪で組んでいた事があり、そのライブを当時高校生だった中澤が、
よく見に行っていたと言う事もあって、もうかれこれ十年の付き合いなのである。
- 15 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月20日(日)18時24分02秒
- 「それで、ニュースってなんです?」
「ようやくなぁ、お前等に休みが取れそうや。せやゆうても各部隊二名程度やけどな」
「休暇ですか?」
「そや。ここん所、おもだって事件は起きとらんし、今まで休みなんかとらした事、殆ど無かったからな」
「ありがたいんですけど、今はそんな事してる暇無いと思うんですけど」
「訓練の事やろ?」
「はい」
「ま、どうせMATの事で悩んどったんやろ?」
「そうなんです。MATだけ、航空戦力に不安があるんですよ。それをどうにかしない事には…」
「ま、どうにかなるやろ?」
「どうにかって…長官、そんな悠著な事言っててええんですか?最近、特に怪事件が少なくなって来てる
ゆうても、何かの前触れのような気がして心配なんです」
「せやけど、いざ怪獣やらなんやらが現れた時に、隊員達が疲れとったらしゃぁないやろ?」
「まぁ、それはそうですけど」
「そう言う訳で、休みを取らしたるとゆうとんのや」
「しかし…」
「一応、上司命令やからな。ま、休みを取らせるメンバーはそっちで決めてもええで」
「はい…まあ、わかりましたわ」
「ほなな」
「はい」
通信を終えた中澤はレシーバーの蓋を閉め、腕組みをしながら何かを考え始めた。
- 16 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月20日(日)18時24分34秒
- ウルトラ警備隊本部内にあるミーティングルーム。ここに、ウルトラ警備隊、科特隊、MATの全メンバー
が勢ぞろいしていた。
「…と言う訳で、寺田長官から休暇をもらえる事になったんやけど、全員が取れる訳が無いのはこの部隊の
特殊性を皆は充分に知っとると思うからわかると思うねんけど、とりあえず、各部隊二名まで休暇を取れる事に
なった」
中澤の口から発せられた休暇と言う二文字に、まず一番の反応を示した隊員がいた。
「よっしゃぁぁ!ようやく休暇が取れるぞぉ!うっれしぃ〜!」
矢口が小さな体で元気一杯に飛び跳ねながら喜びを表している。
「中澤隊長の話しを聞いてなかったの?二人まで、休暇が取れるのよ」
そんな矢口に横槍を入れたのは、MAT隊長の保田だった。
「だから、オイラとよっしぃで決まりっしょ!」
と言いながら隣の吉澤に抱きつく矢口。
- 17 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月20日(日)18時26分29秒
- 「勝手に決めないで欲しいのです!」
「そうなのれす!」
これに反論したのが、意外や意外、低精神年齢コンビの加護と辻だった。
「私達だって休みが欲しいのです!」
「欲しいのれす!」
「あのねぇ、オイラとよっしぃは日頃のキビシィー訓練で疲れてるの、だからぁ、よっしぃと一緒に温泉でゆ〜っくりと
疲れを取らなきゃいけないの。わかる?」
矢口と加護と辻は同じ様な身長なのだが、そこは年上をアピールしているのだろうか、大人ぶった説明をする。
「それは矢口さんの操縦がへたくそだから訓練が厳しいのです!」
「厳しいのれす!」
変わらず、オウム攻撃で反論する加護と辻。
「あによぉ?先輩の矢口に反抗する気ぃ?」
どこからどう見てもお子様どうしの喧嘩が始まった。
毎度の事ながら、この騒ぎを収める役はもう決まっている。
- 18 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月20日(日)18時27分45秒
- 「じゃかぁしいんじゃぁ!くぅらぁ!」
中澤裕子の男役の出番であった。
「あんたら、仮にもTDF対怪獣攻撃部隊MATの隊員やろ!いつもいつも節度ある行動とれゆうとんのを
忘れたんかぁ!」
中澤は右足を目の前にある椅子に乗っけながらタンカを切った。
絶対に過去にレディースでもやってたのでは?と思わせるようなキレっぷり。
「う…だ、だって…加護と辻が…」
流石の矢口もこれにはビビった。
「だってもこってもないんじゃぁ!休暇ぐらいでガタガタ騒ぐなぁ!」
バン!と思いっきり机を叩く中澤。
「ひぃぃぃぃ…」
中澤の目の前に座っている石川が悲鳴をあげながら涙をボロボロと流しだした。
「あぁよしよし、大丈夫?梨華ちゃん?」
胸元に抱き寄せてあやすのは彼女の右隣に座っている飯田。
「だ、だって…ヒック…きょ、今日の中澤さん…えぐ…いつもより怖いんですぅ…」
「あ〜あ、梨華ちゃん泣いちゃった」
他人事の様に言う矢口。
「誰の所為でこうなったん思っとんのや?!」
「…ハイ。矢口です…」
更なる一喝でしゅんとなる矢口。
「休暇取るモン決めるぐらい、クジで決めや」
中澤の提案により、休暇を取るメンバーはクジで決める事になった。
- 19 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月20日(日)18時29分12秒
- 「いっぞぉ、いっぞぉ!もっと飛ばせぇ!」
「…矢口さん。やっぱマズイっすよ」
「あにがよ?」
「いや…マットビハイクルを私用で使うのはやっぱ…」
「へ〜き!へ〜き!ちゃんと圭ちゃんに言っといたから!」
「よく許しましたね?」
「加護と辻に頼んどいたから」
「え?」
「お土産を二人には多めに買ってきてあげるから、圭ちゃんにちゃんと言っといてネ!って」
「・・・・・・・・・」
「いや〜、あの二人もやっぱ子供だねぇ。物です〜ぐ釣れちゃうんだから」
「大丈夫ですかね?」
「だ〜いじょうぶ!それより、もっと飛ばせよぉ!なっち達に追いつかないぞ!」
「は、ハァ…」
- 20 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月20日(日)18時29分59秒
- 結局、あのクジの結果、科特隊では新人は訓練課程がまだあると言う事で、紺野と新垣は辞退し、
飯田が二人の訓練の面倒を見ると言う事になって、安部と松浦が。
ウルトラ警備隊は新人の訓練で高橋と小川は辞退。中澤は立場上、石川は後少しで完成するポインターの
新機能設置の為、後藤は定期宇宙パトロールの為、それぞれ辞退。
そしてMATは保田を除いた四人でくじ引きの結果、見事に矢口と吉澤がアタリを引いた。
しかし、実の所、くじ引きは加護と辻によって仕組まれていたモノであったのだが、矢口が二人の
悪巧みを見抜き、それを巧みに利用して吉澤と共にあたりくじを引いたのである。
こう言う所にだけは妙に頭が働く矢口であった。
しかし、加護と辻は矢口にやられるだけではなかった。密かに矢口復讐計画を練っていたのである。
そんな事は微塵も知らず、MAT専用車のマットビハイクルを運転する吉澤の隣ではしゃぐ矢口であった。
- 21 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月20日(日)18時31分12秒
- 矢口達の乗るマットビハイクルは長野県に入ってから高速を降りて、目的地の草津を目指しているのだが、
どうも道を間違えたらしく、何故か森の中を走っていた。
「…やっぱ、あの道を左に行った方がよかったんじゃないっすか?」
一旦車を止める吉澤。
「おっかしぃなぁ…地図を見るとこっちが近道なんだけどなぁ」
地図を食い入るように見ている矢口。
「ほんとですかぁ?」
「ってかさぁ、何でカーナビが付いてないの?」
「そう言えば言ってましたよ?石川さん、それぞれの専用車にカーナビ付けるって」
「えぇ〜?!いつよぉ?」
「確か、出発するちょっと前・・・」
「かぁ〜!それ待てばよかったぁ〜」
「安部さん達、もうついてますかねぇ?」
「う〜ん。いいや、とりあえずここも道になっているから、真っ直ぐいきゃどっかに出るっしょ」
「はい。わかりました」
アクセルを踏んで車を発進させる吉澤。チラっと車内にある時計を見てみた。
19:22
確か、長野入りをしたのが四時頃だから・・・何時間迷っているのだろうか?
大きく溜息をつく吉澤。
- 22 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月20日(日)18時32分10秒
- 「あ!よっしぃ!見て!あれ!」
突然、矢口が叫んである所を指で指した。
吉澤は矢口の指が指す方を見てみると、木々の中から薄っすらと光がともっている場所があった。
「建物ですかね?」
「とにかく、あそこに行って道を聞いてみよう」
「はい」
車をその場所へと走らせる吉澤。
道なりに進んでいき、途中の二手に分かれた道をさっきの光源の方角であろうと思われる方に入り、
そのままクネクネした道を走っていくと、突然森が開けた。
「わぁ・・・すっげぇ・・・」
その開けた場所にはやや古びたとても大きな屋敷があった。
「矢口さん、あれ」
「ん?」
屋敷に見入っている矢口が、吉澤の言葉に彼女の方を向いてみると、彼女はある車を見ていた。
「科特隊の専用車?って事はなっち達もいるって事?」
「安部さん達も迷っていたんですかねぇ?」
「とにかく車止めて入ってみよう」
「はい」
- 23 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月20日(日)18時33分29秒
- 吉澤が車を科特隊専用車の隣に止めると、二人そろって車を出、屋敷の正面玄関であろうと思われる
一際大きいドアの前へと歩く。
その大きなドアにはインターホンみたいなのはついていないようで、変わりにドアの真中に相対して
付いている蜘蛛の紋章に、半円形のわっかの様な物がついていて、どうやらそれがインターホン代わりらしい。
「あれ叩けばいいのか」
呟いて手を伸ばす矢口。たが、手からわっかまでの距離は20cmもあった。
「よっ!このっ!ほっ!」
必死にジャンプしてわっかにつかまろうとする矢口。そんな矢口を見て、吉澤が思わず吹き出してしまった。
「こらぁ!笑う事かぁ!」
「い、いや・・・つ、つい・・・あ、僕がやりますよ」
吉澤が一歩歩み出て、少し手を伸ばすとわっかに手が届いた。
何回か、それで叩いてみる。
「ハァ〜。矢口もよっしぃみたいに背が高かったらなぁ・・・」
と、溜息をつきながら呟く矢口。
- 24 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月20日(日)18時34分37秒
- 「でも、矢口さんはその御蔭で狭い所とかスイスイいけるからイイじゃないっすか」
「それ、誉めてんの?けなしてんの?」
ギラっと吉澤を睨む矢口。
「い、いえ・・・別に」
何回か叩いてみると、ようやくそこの住人が扉の鍵を開けて出てきた。
「なんですかな?」
出てきたのは、白髪が混じった恰幅のいい男性だった。
「あの〜、車で草津まで行く予定だったんですけど、何か道に迷ってしまったらしくて・・・」
経緯を男性に話す吉澤。
「この森はよく迷いの森と呼ばれてましてね。よく旅行者がこの森の中で迷ってしまって、運が悪いと
行き倒れになってしまう事があるんですよ」
「何か、迷信的だなぁ」
呟く矢口。
「現に、先程も迷われたお二人の女性がおられましてな。後他に四名程、迷われてここに来た男性がおりましてね。
夜になると、この森を抜ける事は困難なので、今日はこちらで泊まる事になっているんですよ」
- 25 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月20日(日)18時35分07秒
- 「女性二人って事は、やっぱなっちと亜矢ちゃんか」
「どうしますか?矢口さん。これからもし街に出れて旅館に着いたとしても、結構遅くなってしまうと思うんですけど」
「う〜ん、なっちと亜矢ちゃんがいるんだから、そうだねぇ。私達も止めてもらえますか?」
「ああ、いいですよ。この広い屋敷、私と家内と手伝いが二人しかおらんのでね。退屈にはなりますまい」
「それじゃぁ、お願いします」
ペコリと矢口と吉澤が屋敷の主人に頭を下げると、一旦車の方に戻って荷物を取り、そして屋敷の中へと入っていった。
- 26 名前:矢口真太 投稿日:2002年01月20日(日)18時38分43秒
- 今日はこれまでです。
一週間を目処に更新できれば僕としては早い方だと思うので、
気長にお付き合いの程をよろしくお願いします。
感想などのレスをいただければ幸いです。
- 27 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月21日(月)09時22分50秒
- とりあえず小説書く前にメンバーの正しい名前を憶えましょう
- 28 名前:名無し読者 投稿日:2002年01月26日(土)18時01分51秒
- かなり面白いですよ。問題児っぽい矢口もサイコ−です。
- 29 名前:矢口真太 投稿日:2002年01月29日(火)06時11分23秒
- ども!作者です!
>27番さん
スイマセン・・・ちょっと情報収集不足でして・・・以後気おつけますので、
何か気になる事がまたございましたらお願いしますm(__)m
>28番さん
ご感想ありがとうございます。
矢口好きなんで・・・この先しばらくは矢口と吉澤の絡みタップリです。
と言う訳で、約一週間ぶりの更新です。
- 30 名前:矢口真太 投稿日:2002年01月29日(火)06時12分19秒
- 屋敷の主人に、中に通された二人は、まず内装を見て立ち止まった。
外観は築何十年も経っている様な、本当に古ぼけた屋敷だったのだが、中は先程までの印象を払拭するにはもってこいと言う程の豪華絢爛で、白を基調として内装を整えている様で、一際目立ったのが、
正面の大きな階段からスッと玄関まで伸びている赤い絨毯が何よりも印象的だった。
「かぁぁぁぁぁ〜・・・」
「・・・凄いっすね」
頭に浮かんだ感動の意をそのまま口に出してみた。最も、二人にとってはこれが限度なのだけど。
「部屋は二階にたくさんあるから、好きな部屋を使いなさい」
呆気に取られている矢口達の後ろから主人が声を掛けるが、二人には聞こえていないようだ。
「今手伝いの者に荷物を運ばせよう。おい」
主人が少し大きな声で階段向かって左側の扉の方に声を掛けた。
すると、両開きのこれも玄関と同じくらいに大きいドアが開き、そこから背は吉澤より少し低めで
ちょっと幼い顔立ちのメイドが出てきた。
「この人達の荷物を部屋まで運んでくれ」
「はい。かしこまりました」
そう答えたメイドは矢口達の前に立つ。
「お荷物をお持ちします」
その言葉で二人はようやく我に返る。
「え?あ、ああ、いいっす。そんなに重い物ではないんで」
「矢口もいいや」
「左様でございますか?それでは、お部屋の方までご案内させて頂きます」
そう言って、メイドは正面の階段の方へ二人を案内するように歩いていき、矢口と吉澤はそれについ
ていく。
- 31 名前:矢口真太 投稿日:2002年01月29日(火)06時13分05秒
- 階段を上りきり、左右に分かれている廊下を右に行き、その先の観音開きの扉を抜けると、また長い
廊下が続いていて、幾つもの扉が左右にあった。
その内の一つの扉をメイドが開け、矢口達の方に向いて一礼した。
「こちらのお部屋をお使い下さい」
メイドに促されて、部屋の中に入る二人。
「うっわぁぁぁぁ」
「へぇ〜」
室内はまるで中世のヨーロッパを思わせるような内装で、入り口入ってすぐに広いリビングになって
いる様で、木製の長机が置かれており、その両側に三人ぐらいが座れるソファが置いてある。
そして、その先にはこれも中世のお姫様が寝るようなダブルベット。
「ダブルベット?」
「今日は、よっすぃと同じベットかぁ・・・」
矢口がちょっと顔を上に上げて何かを想像している。
「キャ!恥ずかしい!」
何故か顔を隠して照れる矢口。
「・・・矢口さん。何が恥ずかしいんですか?」
「やぁねぇ!二人でベットで寝るって言ったら、アレしかないっしょ!」
「アレって・・・なんすか?」
「キャハ!矢口、今日は寝れなそぉ!」
矢口は矢口にとっては絶対にカワイイと思うポーズをして、妙にはしゃいでいる。
「・・・矢口さん。何かキャラ変わってません?」
吉澤のつっこみが入った所で、再びメイドが二人に話し掛ける。
「ただいまお食事の準備をさせて頂いております。準備が出来ましたらお呼び致しますので、それまで
ごっゆくりとお寛ぎ下さい」
もう一度二人に一礼したメイドは、ドアを閉めてどこかに歩き去っていった。
- 32 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月29日(火)06時13分59秒
- 「きゃっほぉぉ!」
メイドが去ったのと同時に、矢口がベットにダイブする。
「あ、矢口さん!」
吉澤がベッドで伸びをしている矢口の元へと歩く。
「はぁぁぁ〜・・・きぃっもっちぃぃ!」
「矢口さん。安倍さんと松浦さんの事聞くのを忘れてましたね」
「まぁ、いいんじゃないの?後であえるんじゃない?」
「それにしても、凄いですね。こんな所が日本にあったんですね」
「ある所にはあるからねぇ。大方、どっかの金持ちの別荘地か何かじゃないの?」
そんな雑談を二人で交わしていると、やがてドアがノックされた。
「お食事のご用意が出来ました」
さっきのメイドの声だ。
「よし!じゃぁ行こう!腹へったぁ〜」
ベットから飛び起きた矢口はいの一番にドアの方へと駆けて行く。
「あ、待ってくださいよ!」
吉澤もそれについていく。
- 33 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月29日(火)06時15分04秒
- 二人はメイドに連れられて、さっき歩いてきた道を戻り、正面玄関前まで来ると、玄関向かって左側
にあるドアの中へと招かれた。
そこは一階のホールと同じくらいの広さで、矢口達が入ってきたドアから少し離れた所から、部屋の
奥の方まで伸びているダイニングテーブルが置かれており、その奥の席では何人かが食事をしていた。
「あ、なっち!亜弥ちゃん!」
矢口がその何人かの二人に見覚えのある人物を見つけ、その名を呼んだ。
「矢口!」
「矢口さん!」
安倍と松浦が矢口に反応すると、矢口が彼女の方に走り出す。
「矢口さん達も迷ってここにきちゃったんですか?」
「なっち達と一緒だべか?」
二人は席を立って、矢口を迎える。
「うん!何か道間違えちゃったみたいでさ。なっち達も?」
「そうなんですよ。ここ着いたのは一時間ぐらい前なんですけど、夜はここら辺は車でも迷うからって
事でここに宿泊する事になったんですよ」
「あれ?二人ともその服・・・」
と、矢口が二人の服装に少し疑問を抱いた所で吉澤が来た。
「科特隊の通常制服ですね?」
「うん。規則だから、こっちの方が何かと便利だからね」
安倍と松浦の着ている服、それは青のブレザーと同色のスラッツ、白いワイシャツとネクタイ。
これは、科特隊の通常時の制服で、科特隊員は非勤務時でもこれを着用する事が義務づけられている。
そして、このブレザーの中には科特隊の戦闘服を着用しており、非常時はこちらにすぐさま変わる事
が出来る。
- 34 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月29日(火)06時15分47秒
- 「真面目だねぇ〜。矢口達は休みの時は私服だからねぇ」
矢口は愛用の青のジャンバーにチェックのミニスカート、吉沢は今日は黒のレザーで上下を決めている。
そんな雑談を四人で交わしていると、安倍達の正面に座っていた男二人が、食事が終わったのか席を
離れ、ホールへのドアを抜けると同時に、矢口達の料理が運ばれてきた。
「うっわぁ!うっまそぉ!」
彼女達の前に豪華な料理が並び、雑談を中断して、食事をする事にした。
- 35 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月29日(火)06時16分19秒
- 食事を終えた矢口と吉澤は、一旦安倍と松浦と別れて自分達の部屋へと戻った。
「ねぇ、よっすぃ。ここっておっきいお風呂があるんだって。一緒に入りに行かない?」
と、部屋に戻ってから自分のバックから何かを取り出している吉澤に声を掛ける。
「いえ、僕はその前にやっておきたい事があるんで」
バックから取り出したのは、レーザーガンタイプのマットシュートだった。
「これの調整をやっておきたいんですよ」
「えぇ〜!休暇中なのに仕事を持ち込むのぉ?!」
「最近、事件が少ないんで使ってなかった物で。これの調整が終わりましたら入りますんで、矢口さん
先にどうぞ」
「こんな所まで仕事持ち出すなんて・・・よっすぃいい旦那さんになれないぞ!」
口を尖らせる矢口。
「旦那さんって・・・僕、結婚願望みたいなのないですから」
調整に必要な道具をテーブルに置く吉澤。
「冷たいなぁ。よっすぃ、一緒に洗いっこしようよ!」
と、吉澤に抱きつく矢口。
「いえ、これだけは今やっておきたいんで」
と、冷静に返す吉澤。
「ちぇ、いいよ。先に入る」
すごすごと吉澤から離れた矢口は準備してあったお風呂道具一式を持って部屋からでようとした。
「スイマセン、終わったらすぐに行きますんで」
ドアを開けようとした時に聞こえた吉澤の言葉に、矢口はちょっと口元が緩み、吉澤の方に振り返っ
て一言。
「待ってるぞぉ!」
- 36 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月29日(火)06時17分27秒
- 「でかっ!」
全裸でタオルとシャンプーとリンスとボディソープを持って大浴場に入った矢口の第一声だった。
「まるで銭湯だな、こりゃ。う〜ん、何か解放感があるなぁ」
一人呟く矢口は、大浴場内に大きな鏡を見つけた。
「あは!これなら全身が写っちゃうなぁ」
鏡を前にして、自分の体を見てみる。
「う〜・・・この胸だけはやっぱどうにかなんないかなぁ・・・」
と、自分の胸を触ってみる。
「小さいよなぁ・・・よっすぃに比べると・・・ハァ〜」
溜息をつく矢口。
そして、何故か鏡の前で色々なポーズを取ってみる。
ちょっとカッコよくしたポーズ、挑発する様なポーズ。
「セクシ〜ビ〜ム!」
そしてお約束のセクシービームのポーズ。
「だっちゅう・・・」
と、ポーズをする途中でやめた。
「寄せる程無い・・・ハァ〜」
また溜息をつく。
「いいや、体洗って、よっすぃが来るまで湯船に浸かってよう・・・」
虚しくなったのか、鏡の前から離れて、固定式のシャワーの所へと歩いて行く。
シャンプー等を一旦下に置くと、蛇口を捻ってお湯をだした。
そして、まずはブリーチで金髪にして痛んだ髪を丁寧に洗い上げ、一旦シャワーを止めて今度はボディ
ソープで体の隅々まで洗う。
- 37 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月29日(火)06時18分24秒
- また蛇口を捻ってお湯をだして、泡を流し落とすと、タオルをギュっと搾って湯船の方へと向う。
湯船の中は三段の段差になっていて、矢口は二段目に腰掛けた。
これ以上行くと、立っていないと顔がお湯の中に入ってしまうからである。
「う〜ん、やっぱ足が伸ばせるっていいなぁ・・・」
バシャバシャとバタ足で水を蹴ってみる。
「こんなに広いと・・・やっぱやりたくなるわよねぇ」
頭に乗せていたタオルを湯船の縁に置くと、矢口は平泳ぎで中を泳ぎだした。
距離にして10m程ある湯船の中を、優雅に泳ぐ矢口。
時には背泳ぎ、時にはクロール、たまに犬掻きをしてみる。
「やっぱ、気持ちいいわぁ・・・」
犬掻きをして湯船の中で遊ぶ子供矢口。
「矢口さぁぁん!いますぅぅ?!」
大浴場の外から吉澤の声が聞こえてきた。
「お!よっすぃ!早く入ってきなよ!気持ちいいぞぉ!」
矢口が吉澤に声を掛けたその時だった。
黒い拳程の物体が、矢口の頭に降りてきた。
「ん?何だ?」
頭にちょっとした違和感を感じた矢口は、手を頭の方にやってみる。
「何か・・・モソモソしてる?」
その物体を掴んだようだ。
「ちょっとフサフサ?」
掴んだ物を自分の目の前に持ってくる。
「へ?」
手に掴んだ物は、自分の手と同じくらいの大きさの、八本の足を持つ俗に言う蜘蛛だった。
- 38 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月29日(火)06時18分58秒
- 「いやぁ!」
悲鳴をあげた矢口は慌ててその蜘蛛を投げる。
それを合図にしたのかどうか、さっきの蜘蛛と同じ大きさの蜘蛛数匹が矢口の周りに落ちてきた。
「きゃぁ!」
驚いた矢口は、湯船の中から慌てて出る。
「どうしたんすかぁ!矢口さん!」
吉澤が大浴場の中に入ってきた。服を脱ぐ途中だったのか、タンクトップにトランクスの姿だ。
「よ、よっすぃ!く、蜘蛛!」
吉澤を見た矢口が湯船の方を指差す。
「蜘蛛?」
吉澤が矢口の指差す方を見てみる。すると、そこには大きな数匹の蜘蛛が。
「あれって・・・まさか!」
矢口の方に走る吉澤。
「矢口さん!大丈夫っすか!?」
「よ、よっすぃ・・・」
恐怖のあまりか、吉澤に抱きつく矢口。
「早く出ましょう!あの蜘蛛、毒蜘蛛です!」
「え?」
吉澤の見解は正しかった。確かにその蜘蛛はタランチュラと呼ばれる猛毒を持った蜘蛛だった。
「どこか刺されてませんか?」
「う、うん・・・多分大丈夫」
吉澤が矢口を抱き起こすと、浴場の外へと走り、そこを出ると浴場への出入り口である引き戸を閉めた。
「何で、タランチュラなんか・・・」
「うぅ・・・ひっく・・・怖かったぁ・・・」
恐怖感からの解放か、涙を流す矢口。
- 39 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月29日(火)06時19分39秒
- 「大丈夫ですよ、矢口さん。さ、服着て」
「う、うん・・・」
吉澤は矢口の体を拭いてから、まだ行動する事がおぼつかない様の矢口の服を着させる。
「矢口さんも、かわいらしい所あるんすね」
ちょっと意地悪っぽく言ってみる吉澤。
「う、うん・・・ってバカァ!あんなデカイ蜘蛛見たら裕ちゃんや圭ちゃんだって悲鳴上げるわよ!」
涙を必死で拭く矢口。
「・・・ところで、あの蜘蛛、タランチュラって本当?」
ようやく落ち着きを取り戻した矢口は吉澤に問い掛ける。
「ええ、前に図鑑か何かで見たんですけど、日本には生息していなくて、ペットとして買うにも結構な
値段になるんですよ。それがあんなに沢山いるなんて」
「ここの主人のペットか何かで、それが逃げ出した・・・ってとこかな?」
「確かに、それも考えられますね。玄関に蜘蛛の紋章がありましたからね」
「主人に文句言ってやる!」
服を着おえた矢口は、吉澤と一緒に脱衣所を出て、二階へと向った。
- 40 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月29日(火)06時20分17秒
- 二階の無数の部屋への扉がある廊下。
主人の部屋を探そうとした矢口達は、少し奥の扉の前でここのメイドと客であろうと思われる男性が
何か揉めている様な光景を目にした。
ちょっと気になってその近くまで行ってみると、どうやら男はメイドを部屋に連れ込もうとしている
らしい。
「やめてください!」
メイドはさっき、矢口達を部屋まで案内してくれた人だった。
「別にいいじゃんかよぉ。そのメイドの格好、そそられるんだよぉ」
男は茶髪に耳と唇にピアスをした、渋谷辺りにいそうでいなさそうな頭の悪そうな軟派野郎だ。
「よっすぃ・・・とりあえず、さっきのストレスを少し晴らしたいから、ちょっと付き合って」
と、矢口は両手を胸の前に持ってきて、左の手のひらを右の拳で叩く。
「あ、ハイ」
矢口達は、揉めている二人の所へと歩いて行く。
「いいじゃんかよぉ。別にへるもんじゃねぇだろ?」
「本当に、やめてください」
メイドは今にも泣き出しそうな表情だ。
「おいコラ!嫌がってるじゃんかよ!やめてやれよ!」
二人の所へ辿り付く矢口と吉澤。
「あんだコラ?ガキは黙ってろ!」
悪態のついた言葉で矢口を睨む男。
「が・・・ガキ?」
男の言葉に矢口の第一リミッターが解除された。
「ちょっと、やめてくださいよ。彼女嫌がってるじゃないっすか」
「あぁ?やんのか?コラ?」
吉澤には喧嘩腰の男。
- 41 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月29日(火)06時20分52秒
- 「僕はあまり喧嘩は好きじゃないんで」
「だったら黙ってな!」
「黙るのはアンタだ!さっさと彼女を掴んでる手を離しな!」
男との身長差が30cmある矢口が食って掛かる。
「うっせぇなぁ!このチビ!」
「ち・・・チビ?」
矢口の第二リミッターが解除され、彼女の体がワナワナと震える。
「うぜぇんだよ!てめぇら!」
更に矢口と吉澤に悪態をつく男。
「うぜぇのは、てめぇの方だろ!」
一旦顔を下に向けた矢口だったが、急に男の方に顔を向けて睨む。
「あ・・・矢口さんがキレた」
吉澤は二三歩後ずさりをした。
「てめぇみてぇなブサイクな男になんかなぁ!誰もナンパなんかされたくねぇんだよ!」
完全に喧嘩腰の矢口。
「あんだとコラぁ!やんのか!」
どう考えても矢口をなめている男。
「うるせぇ!」
- 42 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月29日(火)06時21分29秒
- 矢口がジャンプして、体を捻り、回し蹴りがメイドを掴んでいる男の腕にヒットする。
「ぐわぁ!」
男は予想だにしなかった痛みでメイドを掴んでいた手を離した。
それを見た吉澤が、メイドの方に素早く寄り、男との距離を離す。
「セイヤっ!」
ドアの縁を上手く使って、三角ジャンプでキックを男にお見舞いする。
「がふっ!」
男の左頬に見事にクリーンヒットし、男はそのまま吹っ飛ぶ。
矢口は空中で一回転して、綺麗に床に着地した。
「ふん!物を言う時は相手を考えな!」
そして思いっきりドアを閉める矢口。
「さすが矢口さんですね」
手を払う矢口に吉澤が声を掛ける。
「あんな軟派者に負ける訳ないっしょ!」
クルリと吉澤達の方に振り向く矢口。
「大丈夫だった?」
メイドに先程とは打って変わって優しく問い掛ける矢口。
「あ・・・は、ハイ」
矢口の活躍ぶりに少し呆気に取られている様子だが、すぐに気持ちを取り直して矢口達に一礼する。
「あ、ありがとうございました!」
「いいって。ちょっとムシャクシャしてた所だったし」
「本当に、ありがとうございました!」
もう一度深く礼をしたメイドは足早にその場を去っていった。
- 43 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年01月29日(火)06時22分05秒
- 「あ、ちょっと・・・」
吉澤がメイドに何かを聞こうとしたが、メイドは聞こえなかったのか、階段へのドアを開けてその奥
に消えていった。
「主人の部屋を聞こうとしたんだけどなぁ」
「まぁ、いいよ。とりあえず探そう」
「そうですね」
そして、二人は主人の部屋を探しに、屋敷内を探索し始めた。
- 44 名前:矢口真太 投稿日:2002年01月29日(火)06時23分48秒
- 今日の更新はこれまでです。
次回は出来れば来週までに・・・出来るかな?
- 45 名前:矢口真太 投稿日:2002年02月12日(火)07時00分11秒
- ようやくここにカキコする事が出来たぁ・・・
総合管理人様。ご苦労様です!
ってな訳で、続きをUPしていきま〜す!
- 46 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年02月12日(火)07時01分59秒
- 一体何部屋探索しているのだろうか。
つくづく矢口と吉澤の二人はこの屋敷の広さに驚いていた。
「ハァ〜・・・中々見つかんないなぁ」
「ホント広いっすよね」
とりあえず、二人は手当たり次第に片っ端からドアを開けて、主人の部屋を探していた。
「これで何部屋目だぁ?」
確実に三十部屋目は超えているドアを開けてみると、薄暗い部屋の中に幾つ物水槽みたいなのが並ん
でいた。
「水槽?にしちゃ水入ってないなぁ」
矢口が部屋の中に入って、水槽の中をよく見ようと近づく。
その後ろから入ってきた吉澤は、ドアの近くを手探りでこの部屋の電気のスイッチを探している。
「あ、あった。矢口さ〜ん!明かりつけますよぉ!」
スイッチを探し当てた吉澤が矢口に声をかける。
「うん!つけて!」
先程から水槽の中を凝視している矢口が、そのまま吉澤に声をかける。
カチャ、と音がすると、ゆっくりと天井のライトがつき始めた。
少し上を向いて、光がつき始めたのを確認した矢口は、再び水槽の中を見てみる。
「へ?」
その水槽の中には、先程のよりはやや小さめだが、間違いなく毒蜘蛛のタランチュラがモソモソと動
いていた。
「いやぁぁぁぁぁ!」
と悲鳴をあげながら後ずさる矢口。
「矢口さん!」
吉澤が慌てて矢口の元へと行く。
- 47 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年02月12日(火)07時04分38秒
- 「ク、クモぉ〜!」
腰を抜かしている矢口が、水槽の方を指差す。
「これは・・・矢口さん!周り見てください!」
吉澤に言われ、周りを見回す矢口。
「な、なんなの!ここ!」
その部屋には、所狭しと水槽が置かれており、そして、そのどれもの中に様々な種類の蜘蛛がいた。
「ここの主人、相当な蜘蛛マニアかなんかですかねぇ?」
「な、なんでよっすぃはそんな冷静なのよ?!」
「あれ?矢口さん・・・もしかして・・・」
ちょっと吉澤の顔がにやける。
「蜘蛛とか苦手なんすか?」
「うっさいわよぉ!蜘蛛とかゴキブリとか、気色悪いのはダメなのよぉ!」
矢口がちょっと半泣きになってきた。
「へぇ〜、意外っすねぇ」
「黙れ〜!いいから主人の部屋探す!」
「は〜い」
四つんばいになって、やっとの思いで部屋の外に出た矢口を見ると、とりあえず吉澤はその部屋の中
を探索してみる事にした。
- 48 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年02月12日(火)07時05分21秒
- 部屋の中は水槽が置かれているだけでは無く、部屋の奥には木製の古風なデスクが置いてあった。
「ここって、もしかして主人の書斎か何か?」
自問する吉澤はとりあえずデスクを調べてみた。
「悪いとは思うんですけど・・・ん?」
デスクの引き出しを開けようとして椅子を引いた時だった。
「これは・・・」
薄暗くてよくは見えないが、薄っすらと白い物がある。
吉澤はそれを手にとって、光に照らそうとそこから出してみた。
「しゃ、しゃれこうべ?!」
何故しゃれこうべと言う単語が出てきたのは彼女自身もわからないが、とにかくそれは髑髏、人間の
頭蓋骨だった。
「この大きさ・・・結構小柄な人みたいだけど・・・歯は永久歯みたいだから大人、少なくとも中学生
以上」
彼女は、頭蓋骨をまじまじと観察して、それをデスクの上に置く。
「何でこんな所にあるんだろう?」
右手を顎に添えて考えるポーズをする吉澤。
と、その時、部屋の外から矢口の今日三回目の悲鳴が聞こえてきた。
- 49 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年02月12日(火)07時07分12秒
- 「もういやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
矢口の悲鳴と同時に、何かが割れる音がしたのを聞いた吉澤は、急いで部屋の外へと向う。
「矢口さん!」
部屋を飛び出した吉澤は尻餅をついていて後ずさりをしている矢口を発見する。
「ここ、どうなってるのよぉ!」
「え?」
矢口の目線の先を追っていくと、それは自分の後ろに向っており、そして、そこには、吉澤の二倍も
ありそうな巨大な蜘蛛がうごめいている。
「ウソ・・・」
蜘蛛の足の下には、先程の割れた音の物であろう、割れた花瓶とそれに添えられていたらしい花が散乱
していた。
巨大な蜘蛛は、どうやら標的を吉澤にしているらしい。口を動かして彼女を威嚇しているようだ。
「クっ・・・」
咄嗟に腰に手をやるが、何かを思い出した。
「しまった!マットシュートは部屋に置いたままだった」
じわりじわりと迫ってくる巨大蜘蛛。
「矢口さん!ここは僕がこいつの注意を引きつけておきますから、部屋に戻ってマットシュートを!
調整はもう終わってます!」
「よっすぃ!」
矢口が呼ぶのを聞かずに、吉澤は巨大蜘蛛の方に駆けて行く。
巨大蜘蛛が吉澤を捕らえようと糸を吐き出すが、そのタイミングを見計らってか、思いっきりジャンプ
して、巨大蜘蛛の後方へと跳ぶ。
前受け身で綺麗に着地した吉澤は、落ちている花瓶の破片を取って巨大蜘蛛に投げつける。
変な声を上げた蜘蛛がクルリと方向を変え、再び吉澤に向っていく。
「よっすぃ!どうにか持ちこたえてろよ!」
ようやく立ち上がった矢口は吉澤にそう言うと、自分達の部屋へと走っていった。
- 50 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年02月12日(火)07時10分07秒
- 「うわっ!」
懸命に走っていた吉澤だが、遂に巨大蜘蛛の糸に捕まった。
「こ、この!」
足をばたつかせて糸から逃れようとしたが、逆に糸が絡み付いてくる。
獲物を捕らえた巨大蜘蛛は、ゆっくりと吉澤の所へと進んでいく。
「くっそぉ!」
周りを見渡して、使えそうな物がないかを探す吉澤。そして、一つの物に目が止まった。
中世の甲冑のようだが、手に持っているのは恐らく模造品であろう槍だった。
「使えるかも!」
その甲冑とは距離が離れていたが、まだ自由に使える両手を使って、匍匐全身をし始めた。
「うっ・・・クッ!」
匍匐全身をする吉澤だが、それ以上の力で糸が蜘蛛の方へと引っ張られていく。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
気合をいれた叫びと共に、吉澤はゆっくりだが確実に甲冑の所へと近づいていく。
糸を引く力はかなりの物だが、TDF内でも怪力自慢の吉澤は、その持てる力を全て使ってそれに
対抗している。
そして、ようやく甲冑の所に辿り付いた吉澤は、槍の柄を掴み、力任せに引っ張ると、意外にも簡単
に槍は外れ、鉄製の為かかなりの重さを感じたが、吉澤には許容範囲だった。
槍を持ち直したのと同時に、吉澤の体は蜘蛛の方へと引っ張られていった。
- 51 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年02月12日(火)07時12分22秒
- 「このぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
槍の先端を蜘蛛の方へ向ける吉澤。蜘蛛との距離が縮まった所で、槍を振りかぶって蜘蛛に突き立てた。
またもや奇妙な奇声を発する蜘蛛に対して、吉澤は槍を握っている手に更に力をいれる。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
一瞬女性の悲鳴が聞こえた気がしたが、それと共に巨大蜘蛛は体を反転させて絶命した。
「ハァ、ハァ、ハァ、なんだったんだ?今の悲鳴は?」
槍から手を離し、足に絡み付いている糸を強引に毟り取ると、ゆっくりと吉澤は立ち上がる。
「矢口さんと合流しないと・・・」
絶命している巨大蜘蛛の脇を通り過ぎると、自分達の部屋へと駆け出す吉澤だったが、途中で
その足を止めた。
「この屋敷・・・本当に蜘蛛屋敷なの?!」
彼女の前には、先程の蜘蛛と同じ巨大蜘蛛が二体も現れていた。
「矢口さん!」
二体の蜘蛛から吐き出される糸を見た吉澤は、思わず矢口の名前を叫んで目をつぶってしまった。
- 52 名前:矢口真太 投稿日:2002年02月12日(火)07時15分03秒
- 今日はここまでです。
ご意見ご感想レスがありましたら、お願い致しますm(__)m
次回も来週までには・・・
- 53 名前:矢口真太 投稿日:2002年02月19日(火)18時58分15秒
- 一週間ぶり更新・・・どうにか続けられそう・・・
- 54 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年02月19日(火)18時59分48秒
- 吉澤は自分の最後を悟った。そして心の中で思った。
(矢口さんとちゃんと一緒にお風呂に入ってあげればよかったかな?)
そして、来るであろう死の瞬間を待った。
だが、バンと言う火薬が爆発する連続音と、ビーと言う光線音が変わりに聞こえてきた。
「え?」
目を開けてみる吉澤。目の前には、光線で焼かれた蜘蛛と、大きな穴が体に開いている蜘蛛が反転し
て倒れていた。
「よっすぃ!」
その二体の蜘蛛の後ろから矢口の声が聞こえた。
「矢口さん?!」
吉澤は、もう聞く事は無いと思っていた矢口の声を聞くと、すぐさま彼女の元へと駆け出した。
二体の蜘蛛の死骸を踏み台にして。
「ゴメン!ちょっと遅くなった!」
と吉澤に謝りながら、彼女にマットシュートを投げ渡す矢口。
「大丈夫っすよ!」
受け取り、矢口の近くに行く吉澤。
「さっきよっすぃを追っかけてのは?」
「あれは僕が倒しました」
「さっすがぁ!」
「早くここから出ましょう!安倍さんと松浦さんにも知らせないと」
「うん。無線機持ってきたから」
そう言うと、矢口はジャケットの内側から小型の無線機を取り出し、アンテナを伸ばす。
「こちら矢口。なっち応答して」
- 55 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年02月19日(火)19時00分38秒
- 無線機に話す矢口。しかし、反応が返ってこない。
「なっち!亜弥ちゃん!応答して!」
だが、無線機からはザーと言う音しか返ってこなかった。
「なっち!亜弥ちゃん!」
「ちょっと貸して下さい」
吉澤が矢口から無線機を受け取ると、無線機の上部に着いているつまみを回してみる。
「こちら吉澤。安倍さん、松浦さん、応答してください」
相変わらず、無線機からは雑音しか入ってこなかった。
「もしかして、ここ等辺一帯に妨害電波か何かが出てるんじゃないっすかね?」
「そうにしても、何でそんな事を・・・とにかく、なっち達の部屋に行くわよ」
「ハイ!」
無線機をジャケットの中に入れた矢口は、吉澤と共に安倍達の部屋へと向った。
- 56 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年02月19日(火)19時01分15秒
- 幸運にも巨大蜘蛛に出会わずに安倍達の部屋に辿り付いた二人。
「なっち!亜弥ちゃん!」
矢口が二人の名前を呼びながらドアを勢いよく開ける。
しかし、そこには二人の姿はなく、その代わりに科特隊の装備の一つ、スーパーガンが床に一つ落ちていた。
「矢口さん。このスーパーガン、まだエネルギーがたくさん残ってますよ」
「くっそぉ!よっすぃはマットビハイクルの無線機で本部と連絡を取って!オイラは生存者を探してくる!」
「安倍さん達大丈夫でしょうか?」
「今はなっち達よりも、民間人の救出が優先よ!あの二人だって、TDF外郭支援部隊、科学特捜隊のメンバーよ。
今の矢口達の任務は民間人の救出!それぐらいは理解しなさい!」
「は、ハイ・・・ですけど・・・」
反論しようとする吉澤を矢口が有無をいわせない目で、彼女を見ている。
「・・・わかりました」
そう答えて吉澤はスーパーガンを持って立ち上がり、矢口の方を再び見てみると、彼女は視線を床に落とし、
唇をキュっと堅く結んでいた。
「矢口さん・・・」
- 57 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年02月19日(火)19時02分09秒
- 吉澤と矢口は、そのキャリアの差が大きい。
矢口は元々、少年工科学校、つまり自衛隊の訓練校に在籍し、常日頃から専守防衛、国民保護の倫理を受けていた。
そして、一時期、国連PKO派遣部隊として、海外派遣の任に着いていた時期もあり、例えどの様な状況に置かれても、
非武装民の救助優先に基づき、行動をしていた。
一方の吉澤は、TDF設立時にTDF警備班訓練生として入隊し、まだ余り実戦経験は無く、MAT入隊後も、
それ程任務をこなして気はいない。
まだ吉澤は、矢口程任務を冷徹に行う事は出来る訳が無かった。
それゆえ、つい、民間人の事よりも、安倍達の安否を心配した事を口にだした。
しかし、矢口も冷静に任務を行う事は心がけているが、安倍達の心配をしていない訳ではない。
もし、矢口自身がその事を言ってしまえば、彼女は地球防衛を任務とする、対怪獣攻撃部隊MATのメンバーとして、
任務放棄をしてしまいかねないと思っているのだ。
「矢口さん!僕のマットシュートを持っていってください!」
彼女の所に駆け寄った吉澤は、矢口に自分のマットシュートを差し出す。
「よっすぃ・・・いいよ。オイラはこれで充分だからさ」
「いえ、矢口さんの実弾タイプのマットシュートAタイプは非番だったからそんなに弾数が残っていないハズですし、
僕にはこれで充分です」
そう言って、右手にスーパーガンを持ち替えた吉澤は、左手で自分のマットシュートを手渡す。
- 58 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年02月19日(火)19時02分57秒
- 「僕のBタイプはエネルギーをしっかり充填していますから。スーパーガンの方は警備班時代に講習を受けてますので」
「ありがと。そんじゃ!吉澤隊員!行動開始!」
「了解!」
二人で敬礼を交わし、部屋から出ようとすると、背後にガタっと物音がした。
反射的に、その物音へ銃口を向ける二人。
その先には、大きなクローゼットが置いてある。
「よっすぃ」
吉澤に目で合図をする矢口。
それを了解した吉澤は、クローゼットの端に素早く駆け寄り、その観音開きのとってに手をかける。
チラッと矢口の方に目をやる吉澤。
コクリと小さく頷く矢口。
そして、吉澤がクローゼットのドアを思いっきりあける。
ドサっと青い物体が中から前に倒れこんできた。
「亜弥ちゃん?」
青い物体は、科特隊制服を着用している松浦だった。
「松浦さん!大丈夫っすか?!」
- 59 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年02月19日(火)19時03分32秒
- 吉澤が松浦を抱き起こす。
「う・・・うん・・・よ、吉澤さん?」
目を開ける松浦。
「大丈夫っすか?松浦さん」
「う、うん」
吉澤の肩を貸してもらい、立ち上がる松浦。
「安倍さんはどうしたんすか?」
「・・・突然、巨大な蜘蛛が襲ってきて・・・安倍さんが・・・安倍さんが!」
目に涙を浮かべる松浦。
「ご、ごめんなさい!あたし、安倍さんに助けられて・・・何も出来なくて・・・この中に隠れていて・・・」
ポロポロと涙を零す松浦。
「・・・わかった。なっちは多分どこかに居るだろうから。二人で本部に連絡を取って来て。オイラは
生存者の救出に行って来る。松浦、武装は?」
「は、ハイ・・・スーパーガンが・・・」
そう言うと、松浦は制服の下からスーパーガンを取り出す。
- 60 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年02月19日(火)19時04分06秒
- 「よし。早速行動に移ろう」
矢口が二人を促して外に出た時だった。
「くっそぉ!」
部屋を出た左側には三体の巨大蜘蛛。そして右側にも二体の巨大蜘蛛。
「よっすぃ!松浦!援護!」
矢口の言葉に急いで部屋の外に出る二人。
「左のヤツらに牽制攻撃!オイラが突破口を開く!」
「「ハイ!」」
吉澤と松浦がスーパーガンで三体の内真中の蜘蛛に攻撃を加える。
一方、矢口は反対側の二体に先程吉澤を助ける時に見せた二丁拳銃の腕さばきをいかんなく発揮させる。
しかし、スーパーガンの威力が低いのか、吉澤達が相手にしている蜘蛛には一向にダメージの蓄積が見られない。
「矢口さん!スーパーガンが利きません!」
焦る吉澤。
「焦るな!よっすぃ!牽制だけでいいんだよ!全部相手にしていたら、こっちがやられるぞ!」
残る一体に止めのレーザーを打ち込む矢口。
「こっちは片付けた!二人は速く行って!」
矢口が吉澤達の方に向き、マットシュートBタイプで巨大蜘蛛に攻撃を加える。
「「ハイ!」」
- 61 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年02月19日(火)19時05分23秒
- 迫る巨大蜘蛛とは反対側の方へと駆け出す吉澤と松浦。
「後であんた達の相手をしてあげるよ!」
Aタイプで真中の一体に止めをさす矢口は、すぐさま吉澤達が走っていった方に振り向き、二人を追って走り出した。
- 62 名前:矢口真太 投稿日:2002年02月19日(火)19時08分36秒
- 今日はここまでと言う事で・・・
って・・・最後の「止めをさす矢口は」じゃなくて「止めをさした矢口は」の間違いです・・・
- 63 名前:裕ちゃん防衛総省やぐちゅ〜推進特別委員会委員長 投稿日:2002年02月20日(水)00時38分49秒
- どうも〜、N,S,A書いてる裕ちゃん防衛総省次官です〜。
矢口達〜大丈夫か〜!?苦しいようだったら苦しいようなら裕ちゃん防衛軍を援護に送るぞ〜!!
それはそうと、こちらの矢口は本当にガトリングガンを撃ちそうですな(^〜^)
真太さんはSF兵器趣向ですな〜、残念ながら私は現実兵器主義でして、
あまりSF兵器には関心が無くて・・・すいません。
けど、これからもおもしろく拝見させてもらいます
- 64 名前:矢口真太 投稿日:2002年02月20日(水)04時51分28秒
- >63番さん
ども!
矢口はガトリングガンは撃ちません。ただ、バズーカ砲をぶっ放すだけです(笑)
僕は、特撮物が好きなんで、SF兵器趣向と言うか、まぁ、今回はこう言う作品を書きたいなと、
思った訳で、現用兵器も出ない事はないです。
現に、よっすぃが所属していた警備班の装備は全て現用兵器ですんで。
これからもよろしくお願いします!
- 65 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月24日(日)17時57分13秒
- 7は、2D、3Dレーダーより2次元、3次元レーダーの方が理解しやすいです。
- 66 名前:矢口真太 投稿日:2002年03月02日(土)01時02分23秒
- 最近仕事が忙しくて中々更新が出来ませんでしたので、今回は少し多目に更新しようと
思います。
>65番さん
2次元、3次元・・・あ・・・そっちの方が確かに理解しやすいっすね・・・
ちょっとカッコよくしよっかなぁ〜・・・って考えて2D、3Dと表記した訳で・・・
これからも、ご指摘等がございましたらお願いします。
- 67 名前:: 第一話「森の中の館」 投稿日:2002年03月02日(土)01時03分35秒
- 「キャ!」
走っていた松浦が何かにつまずいたのか、転んでしまった。
「松浦さん!」
吉澤が急いで助け起こす。
「急げ!よっすぃ!」
「ハイ!」
立ち上がる吉澤と松浦。その後方から、あの巨大蜘蛛が追ってきている。
「このっ!」
巨大蜘蛛にスーパーガンのレーザーを浴びせる吉澤。
波を打つスーパーガンのレーザーは巨大蜘蛛に命中するが、相手が怯む程度の攻撃にしかなっていなかった。
「あそこにドアがある!あそこまで退避!」
矢口が指を指す部屋は、丁度通路の奥にある、両開きのドアだった。
「「ハイ!」」
吉澤と松浦はダッシュでドアの方へと向う。
矢口は、巨大蜘蛛にレーザーを浴びせる。
「矢口さん!早く!」
吉澤がドアを開けて矢口を呼ぶ。
「おっけいっ!」
巨大蜘蛛を尻目にして、駆け出す矢口。ドアの中に入った。
それを見た吉澤は、ドアを閉める。
「よっすぃ、バリケードを作って。松浦はここ以外の脱出路の確認」
矢口が二人に指示を出すと、その場に座り込んだ。
「ふぅ〜、ひっさびさに走ったかなぁ〜」
とは言いながらも、汗はかいているが、息は乱れてない。日頃の訓練の賜物だろう。
- 68 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年03月02日(土)01時04分48秒
- 「あの、矢口さん」
「何だ?松浦」
「何か、変な音が聞こえません?」
言われて、耳を澄ます矢口と吉澤。
「なんて言うか・・・その、何かを食べる様な・・・」
よく耳を澄ましてみる二人。
「うん・・・モシャモシャと食べてる音だね」
「そうっすね。確かに食べる音が・・・」
そこはまた薄暗い所で、近くまで寄らなければお互いの顔が認識できない程だった。
「よっすぃ。ここの電気のスイッチを探して」
「はい」
入ってきたドア付近の壁をペタペタと触ってスイッチを探す吉澤。そして、スイッチらしい感触を手にする。
「ありました。今つけます」
カチッと言う音と共に、天井のライトが点き始める。
すると、部屋の中がゆっくりと明るくなっていって、室内の全てをようやく確認できるようになった。
どうやら、ここは書斎らしく、たくさんの本棚が並べられていて、その部屋の奥には高そうなロッキングチェアが
置かれていた。
- 69 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年03月02日(土)01時05分20秒
- 「音の出所は・・・」
松浦が耳を澄ましながら先程から続いている音の出所を探してみる。
「あれ?あそこに誰かいる・・・」
目が止まったのは、部屋の奥にあるロッキングチェア。
「そこにいるのは誰ですか!」
奥にいるであろう人物に聞こえるぐらいの大きさで、松浦が声をかけてみる。
すると、ロッキングチェアの後ろからスッと人が現れた。
「あ・・・メイドさん」
吉澤の言う通り、先程、矢口達が変な不良から助けたメイドだった。
「メイドさん!無事だったんですね!」
吉澤が彼女に駆け寄る。
「他の人とか・・・」
と、途中で吉澤の言葉が止まった。
そのメイドをよく見てみると、白いメイドの服には所々に赤い斑点がついており、口元から赤い線の様な物が、
顎に向って伸びている。
ふと、彼女の足元を見てみる吉澤。
「うわぁぁぁぁ!」
思わず叫びながら尻餅をついてしまう吉澤。
「よっすぃ!」
「吉澤さん!」
慌てて二人が吉澤に駆け寄る。
「うっ・・・」
「いやぁぁぁぁぁ!」
- 70 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年03月02日(土)01時05分57秒
- 矢口は口元を思わず抑え、松浦はそこから目をそむけながら叫んだ。
そこには、先程、矢口の回し蹴りをくらっていたあの軟派野郎がいたのだが、殆どが骨と化していて、
顔の頬の皮が少し毟り取られていた。
「この人の味、そんなに悪くないですよ」
メイドがボソッと呟いた。
「あ、味って・・・」
矢口の声が思わず上ずる。
「あなた達も食べてみますか?」
と言ってメイドが、右手を矢口達の方に突き出す。
その右手には、男の物であろう、内臓、形からして心臓が握られていた。
「た、食べてみるって・・・に、人間の肉って、しょ、しょっぱいって・・・」
と、何故か変な雑学を思い出して口に出す吉澤。
「違うでしょ!よっすぃ!」
すかさず矢口のツッコミが入った。こんな場面でツッコむ矢口も矢口であるが。
「あんた!何してんのよ!」
マットシュートの銃口は下ろしているが、矢口はいつでもメイドに狙いをつけて発射出来る準備になっている。
「何って?お食事をしているの」
「お、お食事?」
「でも、残飯なんだけどね」
と、言いながら手に持っている心臓にガブリと噛み付き、歯で食いちぎるメイド。
「うっ・・・」
松浦が思わず口を手で抑えながら蹲った。
- 71 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年03月02日(土)01時06分36秒
- 「心臓って、歯ごたえがいいのよねぇ」
クチャクチャと音をたてながら、人間の心臓を食べているメイドに対して、矢口が銃口を彼女に向けた。
「あんた!何者なの?!」
「フフフ・・・私の好きな少女の肉はご主人様に取られてしまったけど、三人も少女がいれば・・・」
言いかけてメイドが口を閉じたと思ったら、今度は何かを吐き出してきた。
「横に跳べぇ!」
矢口の怒号に、反射的に吉澤は左、松浦は右に跳び、そして矢口は松浦と同じく右に跳んだ。
メイドが吐き出したのは、白い糸の様な物。間一髪で矢口達はその糸から逃れた。
「このぉ!」
矢口がBタイプをメイドに向けて発射する。
マットシュートから放たれた対怪獣用炸裂弾は、メイドの顔面に辺り、メイドの首は跡形も無く吹き飛んだ。
そして、体だけとなったメイドはそのまま前のめりに倒れた。
銃口を倒れたメイドに向けながら、矢口がその場所に近づく。
「矢口さん。彼女は・・・」
吉澤が矢口に声をかけると、彼女はAタイプのレーザーをメイドの体に照射した。
「念の為の処置。頭を吹き飛ばしたぐらいじゃ安心できないから」
「さっきの骸骨といい、これといい、ここは、もしかして森に迷った人をここに誘いこんでから食しているかも」
「この分じゃ、他の生存者は絶望的かもね」
照射し終わった矢口は、ようやく銃口を下げる。
- 72 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年03月02日(土)01時07分08秒
- 「さっきメイドが言っていた少女って、安倍さんの事じゃないっすか?」
「だとしたら、なっちはまだ大丈夫かも」
その時、後ろの扉の方からドーンと言う大きい音が聞こえた
「きゃぁ!」
矢口と吉澤が振り向いた先には、巨大蜘蛛と壊されたドアの下敷きになっている松浦。
「松浦さん!」
「よっすぃ!松浦を助けろ!」
「ハイ!」
吉澤が急いで松浦の所に走り、矢口はBタイプの炸裂弾を巨大蜘蛛にお見舞いする。
体の半分が吹き飛ぶ巨大蜘蛛。しかし、その後ろから新たな巨大蜘蛛が現れた。
「このぉ!」
今度はAタイプで巨大蜘蛛に攻撃を仕掛ける矢口。
「松浦さん!大丈夫っすか?!」
吉澤が松浦に覆い被さっていたドアをどけ、彼女を助け出す。
「す、スイマセン・・・」
「よっすぃ!こっちだ!まだ先に扉がある!」
「ハイ!」
矢口の指示通り、吉澤が入ってきた方とは反対側の方の扉へ、松浦に肩を貸しながら行く。
「くっそぉ。Bタイプは弾丸少ないし、Aタイプもエネルギーが・・・」
迫る巨大蜘蛛に応戦する矢口。しかし、いくら倒しても、巨大蜘蛛は現れる。
「矢口さん!」
扉を開けた吉澤が叫ぶ。
「今行く!」
一旦巨大蜘蛛への攻撃をやめ、吉澤達の下へと走る矢口。
三人が扉の中へ入ると、吉澤が扉を閉め、自分の体で扉を押さえつける。
「マジでヤバイな。こりゃ」
一息ついた矢口が呟く。
- 73 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年03月02日(土)01時07分38秒
- 「矢口さん。マットシュートは?」
「もう弾丸もエネルギーも少ない」
「スーパーガンも対して効果はありませんでしたし・・・」
危機的な状況に、三人の間にしばしの沈黙が流れる。
「仕方ない。あんまし使いたくなかったけど、あれを使うか」
沈黙を破ったのは、妙に明るい声を出した矢口だった。
「あれって・・・なんすか?」
「これ」
と言って矢口がジャケットの中から取り出したのは、百円ライター程度の長さの棒だった。
「それって・・・小型ナパームじゃないっすか?!」
「うん。一応持ってきていたんだけどね。まさか、ここで使う事になるとはねぇ」
矢口が取り出したのは、小型のナパーム手榴弾だった。
これは本来は投下爆弾であるナパームを超小型化した物で、この大きさでも半径10m以内を焼き尽くす程の
威力を持っている。
「一応って・・・それって作戦行動時以外は持ち出し禁止じゃ・・・」
「ん、細かい事は気にしない。とりあえずマットビハイクルまで行ければ武器はあるんだから」
ここで吉澤は思った。
もし本部に帰れたとしても、矢口さん、保田隊長の部屋から生きて帰ってこられないかも・・・
「さぁ〜て、どうっすかなぁ?」
そんな吉澤の心配をよそに、腕を組みながらこれからの事を考える矢口。
「ほぉ、また美味しそうなディナーが来たな」
暗闇から突然聞こえた声。
「誰っ?!」
いの一番に反応したのは松浦だ。彼女は何故か耳がいい。
勿論、矢口と吉澤も聞こえていた。
- 74 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年03月02日(土)01時09分21秒
- 「やっとお出ましね。館の主が」
意外にも冷静な口調の矢口。
「今日は少女の肉が四つか。久々に豪勢な物を食せる」
「きゃは☆少女だって!聞いたぁ?よっすぃ!」
急に性格が一変した矢口。
だが、吉澤は知っていた。
矢口が作戦行動中、こう言う行動を取り始めた時が一番怖いと。
(松浦さん!松浦さん!)
吉澤が小声で松浦を呼ぶ。
(松浦さん。矢口さんが主の気を引いている内に戦闘服に変わってください)
(え?どうしてですか?)
(なるべく静かにお願いします。絶対にこの後危険なんで)
吉澤に言われ、松浦がゆっくりと青いブレザーを脱ぎ、スラッツもゆっくりと脱ぎ始める。
「ねぇ!ところで、もう一人の少女はどこ?」
矢口が相変わらずの声で主に質問をする。
「これから料理をしようと思ったところだ」
主がそう言うと、部屋の真中がボワッと明るくなり、そこに両手を鎖で縛られ、上から吊るされている安倍がいた。
- 75 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年03月02日(土)01時09分58秒
- 「あ・・・」
松浦が安倍の名前を呼ぼうとした。が、それを吉澤が彼女の口を塞いで制する。
「うっわぁ〜!なっちいきなり緊縛プレイ?ハードねぇ」
といいながら、両手を後ろに持っていく矢口。
そこには、小型ナパームとマットシュートBタイプが握られていて、吉澤に向けてマットシュートを
三回横に振った。
「ま、とりあえず、なっちを見つけたから。あんたとはおさらばっ!」
刹那、ナパームのスイッチを入れ、同時にマットシュートを吉澤に、後ろ手のまま投げた。
それを受け取った吉澤は、素早く照準を安倍が吊るされている鎖の上部に合わせ、引き金を引いた。
同時に、矢口はナパームを主に向って投げつける。
鎖が炸裂弾で破壊されるのと、ナパームが主の所で爆発するのがほぼ同時だったが、その僅かな隙に、
ジャンプして安倍を掴み、自分が下になるように倒れた。
- 76 名前:矢口真太 投稿日:2002年03月02日(土)01時11分08秒
- 今回はこんな所で・・・次回更新は・・・来週まで・・・出来ると思う・・・かな?
- 77 名前:矢口真太 投稿日:2002年03月09日(土)23時10分21秒
- 一週間毎の更新・・・どうにか出来てます。
と言う訳で更新です。
- 78 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年03月09日(土)23時11分29秒
- 爆音と共に、紅蓮の炎が爆発地点を中心に上がる。
「矢口さん!」
吉澤が叫ぶ。戦闘服に変わっている松浦も、矢口と安倍の姿を探す。
「グォォォォォ・・・」
主の声らしき物が響く。
「ウソ・・・」
ポツリと呟く松浦の目線の先には、炎の衣を纏った、今までに遭遇したどの蜘蛛よりも巨大な蜘蛛だった。
「矢口さん!無事ですか?!」
室内は小型ナパームから発せられた炎で包まれている。まだ、矢口と安倍の姿は見つける事は出来ない。
「おーい!こっちだぁ!」
矢口の声が聞こえた。
「矢口さん!」
吉澤が答え、声のした方を見てみる。
炎の壁を隔てて、矢口と倒れている安倍を見つけた。
「私が矢口さん達を助けに行きます!」
「あ、ちょっと!」
吉澤の静止を振り切って、松浦が炎の壁へと走る。
「松浦さん!うわっ!」
吉澤が後を追おうとするが、火の手が強く、私服の彼女では炎に包まれる事は明らかだ。
「っ!」
炎の壁をジャンプして飛び越える松浦。そして、ようやく矢口達の元へ辿り付いた。
- 79 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年03月09日(土)23時12分05秒
- 「矢口さん!安倍さん!大丈夫ですか?!」
「亜弥ちゃん!オイラよりなっちを見て!」
「ハイ!」
矢口の言うとおりに、松浦が安倍の下へと駆け寄る。
「安倍さん!安倍さん!」
彼女を揺り動かす松浦。
「う・・・うん・・・」
安倍がゆっくりと目を開けた。
「安倍さん!大丈夫ですか?」
「・・・亜弥ちゃん?」
「安倍さん・・・ごめんなさい!」
そう言った松浦は、安倍の胸元に頭をうずめる。
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
「あ・・・亜弥ちゃん・・・そっか、まだなっち生きてて・・・無事だったべか?亜弥ちゃん」
「そ、そんな・・・私、安倍さんに・・・」
「仕方ないべさ。あの時は二人ともやられちゃ、矢口達に知らせる役目がいなくなるし。よくやった」
「おーい、二人とも。とりあえず感激の再開は後にして、まずはここから逃げる事を考えなきゃね」
と、抱き合っている安倍と松浦に声をかけてウインクする矢口。
「そ、そうだったべさ。まずは、ここから逃げる事を考えるべ!」
「ハイ!」
- 80 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年03月09日(土)23時12分54秒
- 「とは言っても、どうやってここから?」
矢口の言うとおり、彼女達の周りは炎に包まれており、潜り抜ける事は出来そうにない。
「大丈夫だべ!」
安倍がブレザーを脱ぎ始め、中からオレンジ色の戦闘服が顔を見せる。
「これを使うべさ!」
戦闘服に変わった安倍が取り出した物は、先程矢口が持っていた小型ナパームと同じぐらいの大きさの筒。
「あ!冷凍爆弾!」
「そ!ちょっと前に紺野が開発した試作兵器だべさ!これならこの火を消せる事が出来るべ!」
安倍がその冷凍爆弾の上部についているスイッチを押し、そして炎の壁に投げつける。
「伏せるべさ!」
三人が伏せると、炎の中に投げ入れられた冷凍爆弾が爆発し、爆音と共に白い煙が放出される。
そして、壁の一部分が水蒸気と共に消えていた。
「よっし!行くぞ!」
矢口の声と共にそこに走りだす三人。
「うわっ!」
突然、矢口が宙に舞っていた。そして、床に叩きつけられ、小さな矢口の体の上に、毛むくじゃらの大きな蜘蛛の足がのっかっていた。
「矢口!」
「矢口さん!」
二人が叫ぶ。
「くっそ・・・いいから二人共行け!」
何とかそこから逃げようとする矢口だが、強烈な力で抑えられ逃げ出す事が出来ない。
- 81 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年03月09日(土)23時13分41秒
- 「このぉ!」
松浦がスーパーガンのレーザーを巨大蜘蛛に浴びせる。しかし、巨大蜘蛛はビクともしない。
「亜弥ちゃん!なっちのスーパーガンは?!」
「あ・・・吉澤さんが持っています!って・・・」
吉澤の姿を探す松浦。しかし、燃え盛る室内には吉澤の姿は見当たらない。
「吉澤さん!何所ですか?!」
「よっすぃ!」
吉澤を探す二人。しかし、見当たらない。
矢口が徐々に巨大蜘蛛の方へと引きづられていく。
「二人共!どいて!」
声のした方を見る安倍と松浦。そこには、何所からか持ってきた手斧を持ってこちらに走ってくる吉澤。
「うおおぉぉおりゃぁぁぁ!」
渾身の力で手斧を巨大蜘蛛に投げる吉澤。
慌てて伏せる安倍と松浦。
ザクッと言う音がすると、矢口の体に掛かっていた重圧がフッと消えた。
「グオアァァァァァァァ!!!」
主の咆哮。手斧が見事に巨大蜘蛛の頭の部分に突き刺さっていた。
「出かした!よっすぃ!」
ようやく自由になれた矢口は、飛び上がって吉澤の方へ走り、起き上がった安倍と松浦もそれに続く。
「安倍さん!スーパーガンを!」
「サンキュだべ!よっすぃ!」
吉澤からスーパーガンを受け取る安倍。
「さ!行こ!」
矢口が吉澤からマットシュートBタイプを受け取ると、四人は出口へと走り出す。
- 82 名前:矢口真太 投稿日:2002年03月09日(土)23時17分31秒
- 今回はちょっと少なめの更新かな?
やっぱり、先週のうたばんを見逃しのが響いたのか・・・
- 83 名前:矢口真太 投稿日:2002年03月16日(土)06時51分02秒
- レスがない・・・ちょっと寂しい・・・でも更新はちゃんとやろうっと・・・
- 84 名前: 第一話「森の中の館」 投稿日:2002年03月16日(土)06時52分10秒
出口へと走る矢口達。
しかし、この屋敷からの脱出をここの住人達が易々と許してはくれなかった。
次から次へと巨大蜘蛛が矢口達を追ってくる。
辛うじて撃退する彼女達だが、マットシュートのエネルギーは残り少ない。
「よっすぃ!何か持ってきてないの?!」
走りながら後ろにいる吉澤に声をかける矢口。
「ないっすよ!今日は休暇だったんすから!」
マットシュートで追ってくる巨大蜘蛛に攻撃をしながら走る吉澤。
「なっちと亜弥ちゃんは?!」
今度は前と横で走っている安倍と松浦に問う。
「科特隊はMATと違って戦闘を主とした部隊じゃないんで・・・」
横にいる松浦が申し訳なさそうに矢口に返す。
「使えねぇ・・・いいや!とにかく出口まで走る!」
屋敷内を出口へと走る矢口達。
ようやく、屋敷の正面玄関がある大階段まで辿り付く事が出来た。
「出口は後少し!」
安倍が階段を駆け下りようととしたその時、巨大蜘蛛が天井から降ってきた。
「わっ!」
慌てて止まる安倍。
- 85 名前: 第一話「森の中の館」 投稿日:2002年03月16日(土)06時52分45秒
- 「こいつ!」
そしてスーパーガンを照射する安倍。しかし、やはり巨大蜘蛛には通用しない。
「なっち!どいて!」
上の踊り場から矢口がマットシュートの炸裂弾を巨大蜘蛛に向けて発射する。
四散する巨大蜘蛛。
「あ・・・安倍さん!矢口さん!上!」
叫ぶ松浦の声を聞いた安倍と矢口は天井を見上げる。
そこには、無数の巨大蜘蛛が天井をモソモソと動いている。
「み、見るんじゃなかった・・・」
矢口は急に気持ちが悪くなってきた。
それはそうだ。彼女は蜘蛛やゴキブリ等の気色悪い物が嫌いである。
今までは現れても一匹や二匹であって、それはどうにか持ちこたえる事が出来たのであるが、これほどの数ともなると、流石の矢口も気が滅入ってしまう。
「と、とにかく!あの玄関から出ればここから逃げられる!」
気丈を装う矢口。しかし、内心はメチャクチャ叫びたい気持ちで一心であったが、生きるか死ぬかの瀬戸際で
そんな事はしていられない。
そして玄関を目指す四人。しかし、天井から次々と巨大蜘蛛が落ちてきて彼女達の行く手を阻む。
「矢口さん!」
「どうした!よっすぃ!」
「マットシュートのエネルギーが無くなりました!」
「構うな!とにかく出口まで走れ!」
- 86 名前: 第一話「森の中の館」 投稿日:2002年03月16日(土)06時53分21秒
- しかし、その出口の前に三体の巨大蜘蛛が立ちはだかる。
「この!」
安倍と松浦がスーパーガンで攻撃する。しかし、巨大蜘蛛は少し怯むだけ。
「スーパーガンじゃ威力が無さ過ぎるべさ・・・せめて、スーパーガンの威力がもう少しあれば・・・ん?」
何かに気づいた安倍。
「そうだ!これがあったんだべさ!」
そして、戦闘服の内ポケットからわっかに細長い棒がついている物を取り出す。
「亜弥ちゃん!スーパーガン貸して!」
「え?あ、ハイ!」
松浦のスーパーガンを受け取り、その長い棒にスーパーガンの上部を当てて、そのままわっかの方へと通す。
そして自分のスーパーガンもそのナナメ右に差し込む。
「ほんとはこれ、トリプルショットって言って、三つのスーパーガンを使う強化装備なんだけど、二つでも使えるって
紺野が言ってたのを思いだしたべさ!」
そして、スーパーガン、いやダブルショットの照準を玄関前の巨大蜘蛛に合わせる。
「くらえ!」
ダブルショットから放たれるレーザーは、スーパーガンのそれとは段違いで、一直線に巨大蜘蛛に向っていく。
レーザーを照射された蜘蛛は、あっという間に炎に包まれる。
- 87 名前: 第一話「森の中の館」 投稿日:2002年03月16日(土)06時53分54秒
- 「よっし!行けるべさ!」
他の二体を倒し、玄関の前へようやく辿り着く安倍と松浦。そして、吉澤もそこに到達する。
「矢口さん!早く!」
吉澤が矢口を呼ぶ。彼女は無数の巨大蜘蛛相手に奮戦している。
「わかった!今行く!」
「なっちが援護するべさ!」
安倍の援護の下、矢口もようやく玄関へと辿り着けた。
「よっすぃ!早くドア開けて!」
ドアを開けようとする吉澤。しかし、ドアは押せども引けども開かない。
「鍵が掛かっているようです!」
今度はドアに体当たりする吉澤。だが、頑丈なドアはビクともしない。
「よっすぃ!どいて!」
吉澤をどかせた矢口は、マットシュートの銃口をドアに向け、引き金を引く。
ドアノブが炸裂弾によって破壊され、そのドアを蹴破る矢口。
外の景色が見えた。外には巨大蜘蛛はいない。
「よし!行くぞ!」
矢口の声を合図に走り出す三人。
「よっすぃ!蜘蛛を中から出すなよ!」
そう言って、矢口は自分のマットシュートを吉澤に投げ渡す。
「え?どうするんすか?!」
受け止める吉澤。
- 88 名前: 第一話「森の中の館」 投稿日:2002年03月16日(土)06時54分34秒
- 「あいつらを逃がす訳にはいかないだろ?ここで殲滅する!」
矢口はマットビハイクルの方へと走っている。
「や、矢口さん!ま、まさか・・・」
マットビハイクルに乗る矢口はエンジンを掛け、ダッシュボードの右にあるスイッチ類をいじる。
「オイラを怒らせた罰!」
マットビハイクルの上部から八連ロケット砲がせり上がり、車を屋敷の前へと移動させる矢口。
「ヤッバっ!」
吉澤は慌てて安倍達が向った科特隊専用車の方へと駆け出す。
「安倍さん!松浦さん!伏せて!」
「「え?」」
吉澤が安倍達の方に転がり込む。
「早く!」
強引に二人を伏せさせる吉澤。
「じゃぁねぇ!」
ポチっと矢口がスイッチを押すと、八連ロケット砲から一斉にロケット弾が屋敷へと放たれた。
- 89 名前:矢口真太 投稿日:2002年03月16日(土)06時55分24秒
- 次回更新で第一話が終わりま〜す。
また来週!
- 90 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月18日(月)08時50分07秒
- 円谷ネタ(ウルトラネタ)はいくつかありましたが、警備隊の方に光を当てた
ストーリーというのは初めてなので楽しみにしてます。館内の場面はちょっと
「怪奇大作戦」っぽくて、ソレもまた良いですね。
- 91 名前:矢口真太 投稿日:2002年03月23日(土)23時29分53秒
- 作者です。
>90番さん
どうも感想をありがとうございます。
怪奇大作戦・・・実は話の中に入れようとは思っているのですが、
何分、あの話はこの作品の中には入れにくくて・・・
因みに、第一話のモチーフは「ウルトラQ」のとある話です。
でも、設定その他が全然違う風になっているんですけどね・・・
これからもよろしくお願いします!
それでは第一話の最終更新です!
- 92 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年03月23日(土)23時30分51秒
- 「あぁ〜、つっかれたぁ〜・・・」
「そうっすねぇ・・・休暇だったのに、あんな事がありましたからねぇ・・・」
「部屋に戻ったらベットにダイブしたいわ・・・」
あの屋敷を爆破した後、無線がようやく通じるようになり、安倍の連絡によって飯田達がジェットビートルにて
現場に駆けつけた。
安倍と松浦はそのまま飯田達と屋敷の調査を行う為に残り、矢口と吉澤は新垣の操縦するジェットビートルにて
東京湾海底にあるMAT基地へと帰る事にした。
因みに、マットビハイクルは矢口達と一緒にジェットビートルで輸送してもらった。
「でも、なんか忘れている気がするんですけど?」
「ん?何を?」
「いや、すっごく重大な事だったと思うんですけど・・・」
「忘れるぐらいのだったら重大でもないんじゃないの?」
「そうですかねぇ・・・なんか、矢口さんに関する事だったと思うんですけど・・・」
二人が、MAT格納庫を歩いていると、格納庫からメインルームへと繋がる通路に一人の女性が立っていた。
「あれ?保田隊長じゃないっすか?」
「え?あ、ホントだ。圭ちゃ〜ん!ただいま〜!」
保田の下へと駆けて行く矢口だったが、保田の表情がただならぬ物である事に気づき、慌てて立ち止まった。
- 93 名前:矢口真太 投稿日:2002年03月23日(土)23時31分23秒
- 「あ、あれ〜?圭ちゃん、顔怖いよ〜?」
「矢口、いい休暇を過ごしたそうねぇ」
と、言葉は優しそうなのだが、保田の顔はまるで般若の様だった。
「あんた、非番なのに勝手にマットビハイクルを使用したそうだわね?」
「へ?加護と辻から聞いてなかったの?」
「加護と辻?ああ、言ってたわね。矢口が二人の制止を跳ね除けてマットビハイクルに乗っていったって」
「・・・あの二人〜!」
わなわなと震える矢口。
そして、実は遠くの物影からこの光景を面白そうに見ている二人、加護と辻がニンマリとした表情で事の成り行きを
見ている。
「矢口はちゃんと加護と辻に圭ちゃんに言っといてね!って言ったわよ!」
「それに、小型ナパームまで持ち出していたそうね?」
「な、何でそれを・・・」
「亜弥ちゃんから連絡があった」
「う・・・そ、それは・・・で、でもあれがあったから今回は四人とも助かったのよ!ねぇ!よっすぃ!」
振り返って吉澤に同意を求めようとする矢口だが、そこに吉澤の姿はなかった。
「あれ?よっすぃ?・・・逃げたな」
「矢口ぃ!」
- 94 名前:矢口真太 投稿日:2002年03月23日(土)23時31分57秒
- 恐る恐る振り返ってみる矢口。
「二か月給料減俸!それと始末書!それが終わったらかおりん達の手伝い!」
「えぇ〜!そんなぁ〜!」
「ついでに、今回使った小型ナパームとロケット弾の費用を矢口の給料から引くか?」
「ゲッ!それだけは勘弁して!今月もうヤバイのに・・・」
「だったらとっとと始末書書いてかおりん達の手伝いに行きなさい!」
「は、ハイ!」
大慌てで保田の横を通って通路を自室へと走る矢口。
しかし、通路の角を曲がろうとした時に、何かを踏んづけて滑って転んでしまった。
「あイタタタ・・・何でこんな所で・・・」
と足の方を見てみると、そこには何故かバナナの皮が落ちている。
「まさか・・・加護と辻?こんな事するのはあの二人しかいない!」
立ち上がる矢口の頭の上に、ボトッと前にも感じたような感触を感じた。
「へ?これって・・・」
頭の上にあるであろう物に手で触ってみる。
「フサフサ・・・まさか・・・」
恐々とそれを掴んで目の前に持ってくる。
- 95 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年03月23日(土)23時32分48秒
- 「やっぱりぃ!いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
案の定、それはタランチュラだった。勿論、矢口はそれを投げつけるのだが、投げたタランチュラはブーメランの様に
何故か自分の方へと戻ってきて、矢口の顔に直撃する。
「あうっ!」
思いもしなかった事態に腰が抜ける矢口。
「よっしゃぁ!」
「大成功なのれす!」
聞き覚えのある声。その声の方に振り向く矢口。
「加護!辻!あんたら・・・」
と、いつもなら反撃する矢口の言葉が止まった。
「フッフッフッ」
「クックックッ」
加護と辻がニタニタとしながら、矢口に歩み寄る。
「な、なによ?」
「「えい!」」
掛け声と同時に、加護と辻は手に持っていた物を矢口に投げた。
「え?え?え?」
自分の体にピトっとついた幾つ物黒い物体を凝視する矢口。
- 96 名前:第一話「森の中の館」 投稿日:2002年03月23日(土)23時33分58秒
- 「いやぁ!!!」
それは、小さな蜘蛛の玩具だった。
「加護ちゃんとののちゃんを怒らせた罰や!」
「罰れす!」
勿論、さっきのタランチュラも玩具で、投げて戻ってきたのは、その玩具に糸を括りつけてあって、
加護が操っていたのである。
「もう蜘蛛はいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
東京湾海底のMAT基地に、矢口の悲鳴がこだましていた。
- 97 名前:矢口真太 投稿日:2002年03月23日(土)23時35分12秒
- 第一話終了で〜す。
次回第二話は・・・
ヤバ・・・まだ考えてない・・・でも来週までにはどうにか頑張るぞ・・・
- 98 名前:裕ちゃん防衛総省次官 投稿日:2002年04月04日(木)23時12分29秒
- 更新お疲れさんです。
矢口は、蛇も嫌いですからね〜、ましてや蜘蛛なんて。。。
私の考えですが、裕ちゃんとみっちゃんがF-15Eストライク・イーグルで出撃する!なんての出来ませんかね?
私もやっと、更新できるようになりました。
悪い子矢口?いえいえ、そんなことはございません。
いよいよ裕ちゃん達は銃撃戦に突入します!
- 99 名前:裕ちゃん防衛総省次官 投稿日:2002年04月07日(日)00時35分39秒
- えー・・・皆さん。皆さんに、頼みがあります。
こちらにくれば詳細は分かりますが、現在、
青少年有害社会環境対策基本法という恐ろしい法案が、
春の国会にて提出されようとしています。
マンガ、アニメ等の創作物を規制するような法案で、
この法案が可決されると間違いなく同人系サイトは閉鎖に追い込まれると同時に、
あらゆるマンガやアニメ、小説、ドラマ等の創作物が日本から消えます。
皆さんの力を貸してください!
あなたのサイトに、このことをとりあげてください!
お願いします!!
詳細は、こちらです。
http://www46.tok2.com/home/snowwing/top/houan.html
- 100 名前:矢口真太 投稿日:2002年04月30日(火)01時56分30秒
- 約一ヶ月ぶりに更新いたします。
待ってた御方、お待たせしました!
その他の御方も読んでみて感想レスでもつけて欲しいなぁ・・・
>裕ちゃん防衛総省次官さん
どもです。とりあえず、自分はその法案には反対の立場なんですけど、
今はまだ殆ど知られてない法案だから静かですよね。
でも、成立現実化が近づくにつれて、反対意見が多くなってくると思います。
今後、大規模なデモが起こらないとも限りませんしね。
これからもお互い、色んな事で頑張っていきましょう!
それでは第二話の更新で〜す!
- 101 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年04月30日(火)02時28分43秒
- 無限に広がる大宇宙。
人類は、この宇宙に夢と希望を抱いている。
かつてのアメリカと旧ソ連による宇宙開発競争に始まり、現在では、
国連とTDFが管理をする宇宙ステーションが衛星軌道を回り、宇宙開発を進め、
今ようやく月面に探査基地を設置するまでに至った。
ある日、TDF宇宙ステーションV3が地球に向けて進む、ある物体を確認した。
軌道から計算して、その物体は伊豆諸島御蔵島南約10kmの地点に落下する事が判明した。
そして、その物体が落下した直後、御蔵島近くの海底火山が噴火、これに対して、
科学特捜隊が現地に調査に向った。
- 102 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年04月30日(火)02時30分03秒
- 伊豆諸島御蔵島南10km地点。
科学特捜隊のメンバーは、ジェットビートルにて特殊潜航艇S号を空輸し、松浦と紺野がS号にて
海底調査を行っていた。
「どう?落下した物体は見つかった?」
飯田キャップの声が、無線を通じて松浦達のヘルメットの受信機に流れ込む。
「まだちょっとかかりそうですね。何しろ噴火のせいで泥が辺りに散っていて・・・」
操縦桿を握っている松浦が答える。
「ねぇ、紺野ちゃん。何か反応あった?」
「う〜ん・・・こう泥が多いとソナーの反応が鈍くて・・・」
ソナーの画面とにらめっこしている紺野が答えた刹那、画面に一つの光点が浮かび上がった。
「あ!反応ありました!」
「方角は?」
「3時の方向です。約300mの辺りですね」
「了解!」
松浦はS号を紺野が報告した場所へと進路を変える。
「反応が近くなってきています。後50mぐらいですね」
「でも、こんなに視界が悪くちゃ、見つける事は難しいよ?」
「大丈夫ですよ。S号の装備の中に、質量反射探査機がついていますから」
「質量反射探査機?」
「超音波を飛ばして、その反射してきた音波をコンピューター解析し、それを立体的に映像として
出す事が出来る装置です」
簡単な説明をしながら、紺野がソナーの近くの装置をいじる。
- 103 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年04月30日(火)02時30分37秒
- 「今画像を出しますね」
すると、操縦席前の窓に、コンピューターで描かれた画像が現れた。
「これが落下した物体?何かのカプセルかな?」
松浦の言う通り、その物体は大きい円筒形の物体だった。推定で長さは5mはあるだろう。
「これは・・・宇宙船の貨物用カプセルですね」
「貨物用?」
「ええ。でもだいぶ古い形ですよ。そうですね。よく調査してみないとわかりませんが、恐らく
旧ソ連製の物だと思います」
「ふ〜ん。とりあえずキャップに連絡」
「了解」
紺野は松浦の言う通りに、無線を使って飯田達に報告をした
- 104 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年04月30日(火)02時31分10秒
- 「カプセルねぇ・・・紺野、引上げる事は出来る?」
「出動前にS号には作業アームを取り付けておきましたから。ただ、調査にはS号ではちょっと無理が
ありますね。調査機材はビートルに積んでますし」
「わかったわ。船をこちらでチャーターしてくる。それまでに引上げをお願いね」
「了解しました」
「かおりん。どこで船をチャーターするべさ?」
紺野達と通信を終えた飯田に、安倍が操縦席の後ろの座席から話し掛ける。
因みに、科特隊の万能戦闘機ジェットビートルは、旅客機を小型にしたタイプでVTOL機能を持ち、
主な武装は両翼の先端についているロケット砲。
操縦席と副操縦席の後ろに三人掛けの椅子が対面で置かれていて、勿論、その全てにはシートベルト
はついていて、居住性はかなりいい。
設計者は、ウルトラ警備隊の石川梨華で、彼女は科特隊、ウルトラ警備隊、MATの全ての航空兵器の
開発者である。
松浦達が今操縦している、特殊潜航艇S号は紺野の開発によるものだ。
TDF三部隊の装備の殆どはこの二人と、MATの辻希美が開発を担当している。
「近くにある御蔵島で漁船を借りる。あそこは漁村だからね」
「ま、なんにしても、なんも起こらなきゃいいべさ」
- 105 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年04月30日(火)02時31分46秒
- 約二時間後、安倍をビートルに残し、飯田と新垣が御蔵島にて漁船をチャーターし、松浦達の所へと向っていた。
合流地点に到着すると、既にS号がカプセルを引上げ、松浦と紺野がS号のハッチ上部に座って飯田達を待っていた。
「あ、紺野ちゃん。キャップ達来たよ」
「はい?」
ノートパソコンとにらめっこしていた紺野が顔を上げる。
「それで、どうやってキャップ達の船に移るんですか?」
「え?」
紺野の疑問、それは、彼女達がいるS号からどうやって飯田達の乗る船に移るかと言う事だった。
「そりゃ・・・タラップとか・・・」
「普通、漁船にはタラップはついてないですよ」
「・・・紺野ちゃん、考えてたんじゃないの?」
「いえ・・・ただ、S号のハッチからよりも、船上の方がいいかなぁ・・・って思っただけですから」
「・・・」
その時、松浦達の胸につけている、科特隊のシンボルマークでもある流星バッチから飯田の声が聞こえてきた。
「もうそっちからも確認できてると思うけど、もうすぐで到着するよ。でさ、どうやってこっちに移る?」
「・・・スイマセン、キャップ。そこまで考えてなかったです・・・」
申し訳なさそうな松浦。
- 106 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年04月30日(火)02時33分20秒
- 「へ?」
帰ってきたのは、飯田の素っ頓狂な声。
「近くまで船をよせて、飛び移ればいいんじゃないですか?」
答えを出したのは新垣だった。
「飛び移るって・・・」
「まぁ、タラップみたいな物もこの船は積んでないみたいだから、そうしてもらえる?なるべく船は近づけるように
言っておくから」
「・・・キャップ、そんな簡単な事を言わないで下さいよ・・・」
松浦の愚痴を聞かず、飯田達の乗る船はS号へと接近する。
「お〜い!ここまでが限界だから飛び移れ〜!」
飯田が船の上から手を振っている。
松浦達のいるS号から船までの間は、約1.5m。飛べない距離ではない。
「はぁ〜・・・仕方ない。紺野ちゃん行くよ?」
「え?ホントに飛び移るんですか?」
「仕方ないじゃん。キャップ達、ここまで来ちゃったんだし」
S号の甲盤に降りた松浦は、屈伸運動を始める。
「甲盤からだったら少し助走はつけられるでしょ?ついてきてね」
そう紺野に言った松浦は、少しの助走をつけて思いっきりジャンプ。
「ほっ!っとぉ」
- 107 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年04月30日(火)02時33分53秒
- 見事、彼女は飯田達の待つ船上へと飛び移る事に成功した。
「おおぉ〜!」
体操選手のようにポーズを決めている松浦に、飯田と新垣が拍手を送る。
「あ、あの〜・・・」
S号のハッチから紺野が寂しそうに飯田達に声を掛ける。
「や、やっぱり、S号のアームで船にこのカプセルを乗せます」
そう言った松浦は、S号の中に入り、ハッチを閉めてしまった。
「やっぱりって・・・初めからそうすればよかったんじゃ・・・」
ボソっと新垣が呟く。
「えぇ〜!それじゃ、私がここを飛んだ意味は?」
嘆く松浦の目の前で、紺野が操縦するS号は、アームにカプセルを挟み、船上へ乗せる作業を始めていた。
- 108 名前:矢口真太 投稿日:2002年04月30日(火)02時35分31秒
- 今回はここまでです。
これからは不定期更新になっていくと思いますが、末永いお付き合いを
よろしくお願いします。
- 109 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月01日(水)22時40分32秒
- 変身ヒーローの存在抜きでココまで話が展開するとは。ホント良いですね。
- 110 名前:矢口真太 投稿日:2002年05月08日(水)01時47分18秒
- 作者で〜す。
>109番さん
ヒーロー抜き・・・とはいっても、単に昔の特撮番組の設定をパクっただけなんで・・・
これからもよろしくお願いしますね。
と言う訳で、更新しま〜す。
- 111 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年05月08日(水)01時48分51秒
- 結局、あのカプセルは飯田達の乗る船に、紺野がS号のアームを使って載せようとしたが、カプセルが
大きすぎた為、船には載せる事が出来ず、御倉島の港まで牽引する事になった。
紺野は、海底火山の調査の為、そのままS号にて再び海中へと潜っていった。
港に着くと、停泊中の漁船に人だかりが出来ていた。その中には安倍の姿もあった。
船から降りた飯田達は、松浦と新垣にカプセルの引上げを命じて、安倍の所へと向った。
「あ、かおり〜ん!」
漁船の上から飯田を見つけた安倍が手を振っている。
人垣を掻き分け、飯田が彼女の元へと向うと、安倍の前に緑色の丸い物体が置かれていた。
「なっち、この騒ぎはなんなの?」
「なんかさぁ、この漁船が妙なモノを引上げたって事で、ちょっとした騒ぎになっちゃったみたい」
「その妙な物って?」
「これだべさ」
と、安倍が目の前の緑色の物体を指差す。
「丸っこくて、なんだが卵みたい」
「でもさぁ、これって結構硬いんだ」
「ふ〜ん」
飯田が物体を軽く叩いてみる。コンコンと言う、硬い感触と音が跳ね返ってきた。
「確かに硬い物みたい。でも、これって海から引上げられた物なんでしょう?」
「そうなんだべさ。魚介類でもこんな硬い卵を産む生物なんていないし。鳥類の卵に近いと思うんだけど・・・」
と、考えるポーズの安倍。
- 112 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年05月08日(水)01時59分44秒
- 「ところで、この漁船の船長は?」
「俺だ」
飯田の言葉に反応するかのように、船倉から男が出てきた。
Tシャツにジーパンで、体は日に焼けて黒く、引き締められた筋肉は海の男を容易に連想させてくれる。
「科学特捜隊の飯田です。この緑色の物体は何所で引上げられた物ですか?」
飯田は簡単な自己紹介をすると、男に質問をした。
「漁に出ている途中でだ。海底火山の噴火とやらで、魚が前よりも取れなくなってな。今日も取れたのは、
この変な物だけだ」
「そうですか。これ、私達がお預かりしてもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わんさ。こっちは魚が取れなきゃ意味がないからな」
「ありがとうございます」
軽く礼を言った飯田は、安倍と共にあの物体を一度ジェットビートルまで運んだ。
そして、再び漁港に戻ってくると、帰還してきた紺野が松浦達とカプセルの調査を開始していた。
「どう?紺野。何か判った?」
「やっぱり、旧ソ連製の火星探査ロケットの貨物カプセルですね」
ノートパソコンとまたにらめっこしている紺野が結果を飯田達に言う。
- 113 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年05月08日(水)02時01分03秒
- 「確か、ソ連が火星探査機を打ち上げたのは、20年も前の事よね?」
飯田が頭の片隅にある記憶を確認しながら言う。
「ですけど、ロケット自体は火星付近で突然分解してしまって、観測の結果、残骸の殆どは火星の重力に引かれて、
火星の地表に墜落との報告が出されていたんです。ですけど・・・」
そこで黙ってまた考え始める紺野。
「どうしたべさ?」
考えている紺野に今度は安倍が話し掛ける。
「20年もたって、この貨物カプセルだけが地球に戻ってくるなんて、普通じゃ考えられないんですよ」
安倍の方に向いて話す紺野。
「普通じゃ考えられないって?」
今度は飯田だ。
「火星に墜落したはずのこのカプセルが、推進力も無いのにどうやって地球までに辿り着いたかがです」
と、飯田の方を向いて話す紺野。
「確かにそう言えばそうね。それに、大気圏突入の際に出来るはずの摩擦熱後とか無いしね」
そう言いながら、飯田がカプセルを見つめる。
「それに関してなんですけど、変な物が海底から見つかったんです」
「変な物?」
「ええ。里沙ちゃん、あれの解析は終わってる?」
「終わってますよ。放射能反応は特になかったんで、危険はないと思います」
そういって新垣が出してきたのは金色が掛かった半球隊のパラシュートの様な物だった。
- 114 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年05月08日(水)02時02分00秒
- 「これは?」
そう言いながら、飯田が金色の物体を触ってみる。
「このカプセルのパラシュートみたいですね。カプセルの塗料が僅かに付着してましたし」
と飯田の問いには新垣が答えた。
「それもただのパラシュートじゃないんですよ。これはカプセルを包み込むように作られているんです。
寸法としては、カプセルよりもパラシュートの方が大きいですし」
言いながら、ノートパソコンにカプセルとパラシュートのCG画像を出す紺野。
「包み込む?普通、パラシュートって落下傘じゃないの?」
「そうなんですけど、キャップ、機動戦士Zガンダムって見た事あります?」
「・・・いつの番組よ」
怪訝な顔の飯田。
「多分、キャップが5,6歳の頃のアニメだと思うんですけど、それに出てくるバリュードって言うシステムがあるんですけど、
それと使用方法が同じなんですよ」
さらりと言う紺野。
- 115 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年05月08日(水)02時02分31秒
- 「ちょっとまって!紺野、その時あんた生まれてないんじゃ?」
と、安倍が突っ込みをいれる。
「え?そうですけど・・・再放送で見たんで・・・それと、このパラシュートの繊維、地球上の物質じゃないんです」
安倍の突っ込みを上手く交わして、結果報告を続ける紺野。
「地球上の物質じゃない?」
「ええ、少なくとも、地球や月面で発見されている物質じゃないですね」
「どういう事かしら?」
「さぁ・・・」
とここで、紺野が首をかしげてしまった。
「さぁって・・・そこまではわかってないの?」
ちょっとした期待を裏切られた感じの飯田。
「さすがにそこまではちょっと・・・とりあえず、カプセルの中を見てみます?」
「そうね。開けられる?」
「ええ。ちょっと待ってくださいね」
そう言った紺野は、ノートパソコンを下に置いてカプセルに近づき、表面のある部分に手をあててそのままスライドさせる。
すると、ボタンが現れて、それを押すと機械音と共に、カプセルが上の部分から左右に開く。
「これは・・・」
真っ二つに割れたように開いたカプセルの中には、金色の玉みたいな物が二つ置かれていた。
大きさはサッカーボール程度だった。
「金塊か何かかしら?」
飯田が見たままの考えを述べる。
「さぁ・・・よく調査してみないと・・・」
「とりあえず、ビートルに運びましょう。紺野にはもう一つ見てもらわなきゃいけない物があるし」
「あ、はい。わかりました」
飯田の指図で科特隊は調査対象物を一旦ジェットビートルへと運ぶ事になった。
だが、この時、彼女達は遠くの物陰から不審な人物に見張られている事には気が付いていなかった。
- 116 名前:矢口真太 投稿日:2002年05月08日(水)02時04分42秒
- 今回の更新はここまでです。
次はいつ出来るんだろう・・・
- 117 名前:矢口真太 投稿日:2002年05月18日(土)01時34分02秒
- 作者です。
更新しま〜す。
- 118 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年05月18日(土)01時34分43秒
- その日の夜。
科学特捜隊は、御蔵島の村役場に近い広場にて、キャンプをし、カプセルと緑色の物体の調査をしていた。
松浦と紺野と新垣が調査をしていて、飯田と安倍で夕食用のバーベキューの準備をしていた。
このバーベキューセットは安倍が用意していたもので、この前の休暇が事件の為に台無しになってしまったから準備をしたのだと言う。
「にしてもさぁ、なっちも準備がよすぎだよね」
科特隊の戦闘服のまま材料の準備をしている飯田。
「だって、あの休暇の時にクモ騒ぎが起きたべさ?たまには息抜きも必要だべ?新人隊員にとっても」
これまた戦闘服のままの安倍が、焚き火の準備をしている。
「まぁ、それはそうだけどさぁ。裕ちゃんには何て報告しておく?」
「別にいいべさ。カプセルをビートルで運ぶ事が困難だったって事にすれば」
「確かに実際に運搬は無理だしね。紺野と新垣も入隊以来頑張ってた事だし、少しは息抜きも必要かな?」
「だべ?あ、かおりん。火ある?」
「え?持ってないわよ。なっち持ってきてないの?」
「いやぁ〜、何故か火だけ忘れてきちゃったんだなぁ〜これが」
「松浦達も持っていなさそうだし・・・村の人達から借りるか」
「んじゃ、なっちが行ってくるべさ」
そう言って、安倍が村の方へと歩き出した。
「なるべく早くね。こっちは殆ど終わったし、松浦達もお腹空いていると思うから」
「おっけー!」
- 119 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年05月18日(土)01時35分15秒
- と、その時、悲鳴をあげながら飯田達の方に向ってくる人影が見えた。
「助けてくれー!」
それにただならぬ物を感じた飯田と安倍は、急いでその人影に向って走り出した。
「どうしたんですか?!」
駆け寄った飯田が声を掛ける。その人は中年の漁師の様な男で、大慌てで走ってきたのか、かなり息を切らしながら、汗だくになっている。
「か、怪物だ!怪物が出たぁ!」
「怪物?!」
飯田と安倍が顔を見合わせる。
「暗くてよく見えんかったが、緑色っぽい怪物だ!」
「それで、その怪物は何所に?」
飯田が問い掛ける。
「村の男達で捕まえようとしたが、ありゃ馬鹿力じゃ!男達が何人も投げられた!今は村の東側だぁ!」
「なっち!松浦達を呼んできて!あたしはその怪物を追う!」
飯田がすかさず安倍に指示を出す。
「わかったべさ!」
それを受けて、安倍が松浦達のいる所へと走っていく。
「その怪物がいる場所へ案内してください!」
「わ、わかったぁ!こっちじゃ!」
飯田は男の案内の元に、村の東側へと急いで向った。
- 120 名前:矢口真太 投稿日:2002年05月18日(土)01時36分12秒
- 今回はここまでと言う事で・・・
- 121 名前:矢口真太 投稿日:2002年05月30日(木)02時29分41秒
- 約二週間ぶりの更新をしま〜す。
- 122 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年05月30日(木)02時30分43秒
- 村の東側に辿り着いた飯田。
民家の壁が所々壊され、その近くには村の男達が倒れている。
「他の住人達は?」
飯田が案内をしてくれた男に問う。
「女子供は役場に非難させただ」
その時、一発の銃声が鳴り響いた。
「あれは・・・」
「駐在さんが追ってるんだ!」
「あなたはここで怪我人を診ててください!」
そう言って、飯田はガンベルトからスーパーガンを抜き取り、銃声の方向へと走った。
「うわぁぁぁぁぁ!」
一軒の民家を通り過ぎようとした時、民家の壁を突き破って駐在の警官が飛んできた。
「きゃ!」
飯田は警官とぶつかり、吹っ飛ばされてしまうが、すぐに態勢を立て直して警官の所に向う。
「大丈夫ですか?!」
「ば、ばけもん・・・」
警官の意識がなくなった。壁にぶつかった衝撃からだろう。
「しっかり!しっかりして!」
声を掛ける飯田。その時、今度は力強い唸り声が聞こえた。
その声の元へと走る飯田。
- 123 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年05月30日(木)02時31分18秒
- 途中、ガン!と言う音と共に、また民家の壁を突き破って男が現れ、地面にたたきつけられた。
「大丈夫ですか?!」
男は、昼間の漁船の漁師だった。
「か、科学特捜隊の人かい。ヤツは、ヤツは羅厳だ・・・」
「ラゴン?」
「あぁ。御蔵島に伝わる、伝説の海底原人だ・・・まさか、本当にいたとは・・・」
そこまで言って、男も気絶した。
「海底原人、ラゴン・・・はっ!」
飯田は近づいて来る気配を感じた。
ガシッ、ガシッ、と言う重く、力強い足音が民家の中から聞こえてくる。
その方向にスーパーガンの銃口を向ける飯田。
「えい!」
威嚇射撃として、一撃民家の壁にレーザーを照射する。
火花を散らす壁の近くに、その光で緑色の平べったい顔が映し出された。
- 124 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年05月30日(木)02時31分54秒
- 「あれが・・・ラゴン?」
身長約2mもある、全身が緑色の怪物ラゴンがそこにいた。
ラゴンは飯田を見つけると、彼女に近づくように歩き出した。
「止まれ!って言っても止まる訳ないよね」
自問自答する飯田は、照準をラゴンに定める。
「かおり〜ん!」
安倍達が飯田の元に到着した。
「なっち!気よつけて!あいつはラゴンはかなりの怪力の持ち主よ!」
「ラゴン・・・海底原人ラゴンですか?!」
突然、紺野が飯田に問う。
「この御蔵島に伝わる伝説・・・って何で紺野が知っているの?」
予想だにしなかった紺野の答えに驚き、彼女の方を向く飯田。
「ラゴンは伝説じゃないですよ!実際に数万年前までは生存している事が確認されているんです!」
「何ですって?!」
「少し前に沖縄の海中で発見された海底遺跡で、実は遺跡以外にもラゴンの化石が発見されているんです!」
「そんな事聞いた事ないべさ?!」
今度は安倍が驚きの声を上げる。
- 125 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年05月30日(木)02時32分30秒
- 「私もつい最近知った事なんですよ。あれがラゴンだと、スーパーガンじゃ太刀打ちできません!」
「え?」
紺野以外の全員が固まった。ラゴンはスーパーガンでは倒せない事に。
「スーパーガンは一種の電熱波なんですけど、それが水中だと威力が半減する事は知ってますよね?
ラゴンは海底で生きられる様に進化した爬虫類なんです。恐らく、皮膚は水分でぬるぬるした状態だと考えられます!」
「それじゃ、スーパーガンじゃ・・・」
安倍が語尾を飲み込んだ。
「倒す事は無理だと思います」
その後を補足するかの様に紺野が続けた。
「それでも、五人で一斉射撃をすればどうにかなるかもしれない!いくわよ!皆!」
暗くなりかけた空気を飯田が払拭するかのように大声で皆に叫ぶ。
「「「「ハイ!」」」」
それに奮い立たせられ、スーパーガンをガンベルトから抜き取る四人。
「撃て!」
号令と共に照射される五つの光波。
その内の三つがラゴンに当たった。紺野と新垣の光波が的を外れ、民家の壁に照射され爆発する。
「紺野!新垣!波の感覚を上手く掴め!」
一旦射撃をやめ、飯田が二人に言う。
「「ハイ!」」
- 126 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年05月30日(木)02時33分15秒
- TDF三部隊の携帯兵器中、最も扱いにくいと言われているのがスーパーガンである。
銃口から放たれる光波は、距離によって波の上下が大きくなっていく。
それ故に近距離戦では、それなりの距離感覚が必要になってくるのである。
因みに、前の事件で安倍が使用したアタッチメントを装着すると、レーザーは光線になる。
三つの光波がラゴンに命中しているのだが、紺野の推測通り大して効果は現れていないようだ。
「もう一度!紺野!新垣!落ち着いて行け!」
仕切りなおす飯田。
「撃て!」
再度の号令。五つの光波はラゴンに命中。今度は紺野と新垣のも命中している。
しかし、ラゴンは怯むだけで、ダメージとして蓄積はされているのかも判明が出来ない。
「かおりん!スパイダーを使う?」
安倍が言う。
「スーパーガンが効かないんじゃスパイダーか・・・一旦下がって態勢を立て直すわ!」
そう言って飯田は皆を下がらせる。
- 127 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年05月30日(木)02時33分58秒
- それを受けたのか、ラゴンが飯田達を追う様に歩き出す。
「このぉ!」
それを見た安倍がスーパーガンでラゴンを攻撃する。だが、やはり光波は命中しても効果は現れてない。
「なっち!あんたは早くスパイダーを持ってきて!松浦!紺野!新垣!ラゴンの足止めをするんだ!」
素早く各自に命令をする飯田。それを受けて行動をする科特隊の面々。
「あ・・・キャップ!」
何かに気づいた紺野が飯田に駆け寄る。
「どうした?紺野」
「ラゴンの様子がおかしいです」
「え?」
紺野に言われ、飯田はラゴンの方をよく見てみる。
「ほんとだ・・・」
ラゴンは立ち止まっていた。それに、微かだが音楽も聞こえてくる。
「これは・・・クラシック?」
確かに、曲名はわからないが聞こえてくる曲は、クラシック系の音楽だ。
「もしかして・・・ラゴンは音楽を聴くとそれに聞き入ってしまう習性を持っているとか・・・」
推測を言う紺野。
- 128 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年05月30日(木)02時34分39秒
- 「紺野の言う通りだったら、ラゴンを止めるいい方法かも」
飯田が頷き言う。
「それじゃ、スパイダーよりラジカセを持ってきた方がいいべ?」
「え?ラジカセまで持ってきてたの?」
安倍の余りにもいい用意に驚く飯田。
「まぁ、皆でなんか歌おうかなぁ・・・な〜んて」
彼女は今回の調査にどうやら遊びで来ていたようだ。
「とりあえず持ってきてくれる?いつまでもラゴンをここに止めておく事も出来ないし」
「わかったべさ。新垣、ついて来て」
「はい!」
安倍は新垣を伴ってキャンプ地へと向う。
「あの、キャップ」
安倍と新垣がいなくなってから紺野が飯田に話し掛ける。
「ん?どうした?」
「いや、これも推測なんですけど・・・」
少し自信が無さそうな紺野。
- 129 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年05月30日(木)02時35分16秒
- 「もしかすると、昼間に漁船が引上げた緑色の物体。あれって、ラゴンの卵なんじゃ・・・」
「え?」
「ラゴンは爬虫類の進化した生物なんです。繁殖方法も爬虫類に似ていると考えられています。ですから・・・」
「確かに、ラゴンの卵かもしれない。だとすると、ラゴンは自分の卵を探しに来たのかも」
少しモジモジしながら喋る紺野に少しだけイラついたのか、飯田が紺野の言おうとしていたセリフを取った。
「その可能性は高いと思います」
ちょっぴり残念そうな紺野だったが、とりあえず付け加えておくべきセリフは言っておく。
「なっちに緑色の物体も持ってきてもらうように言っておこう」
そういって、飯田は胸の流星バッチのアンテナを上げた。
- 130 名前:矢口真太 投稿日:2002年05月30日(木)02時36分23秒
- 今回はここまで。だはまた〜・・・(次は僕いつ更新できるんだろう・・・)
- 131 名前:矢口真太 投稿日:2002年07月02日(火)01時49分42秒
- 更新で〜す。(あ・・・一ヶ月以上経ってる)
- 132 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月02日(火)01時50分59秒
- 「ん、わかったべさ」
ジェットビートルに到着した安倍が、飯田との通信を終えた。
「新垣!緑色の物体も持ってきて!」
既にビートルからラジカセを持ち出した安倍が、ビートルの中にいる新垣に声を掛ける。
「はい!わかりました!」
返事を返して、ラジカセ用のバッテリーを一旦外に置き、ビートルの中で保管している緑色の物体を取りにもう一度中に入る。
「あ、そう言えば、あの金色のパラシュートって外に置きっぱなしだったべ?」
呟いた安倍は、調査機材がたくさん置かれている場所へと移動する。
「あれ?」
様々な調査機械が置かれている中、そこにあるはずのパラシュートがなかった。
「紺野達、ビートルの中にもう保管してあるのかな?でも、そんな時間無かったような・・・」
その時、新垣がビートルの中から戻ってきた。
「安倍さん。緑色の卵が見つからないんですけど・・・」
「うん、そう見つから・・・って、えぇ?!」
「保管用のジェラルミンケースの中に入っているはずですよね?」
「うん。かおりんと一緒にケースの中に入れたはずだべさ。よく探した?」
「えぇ。探したんですけど・・・それに、ケースが空いていたんですけど・・・」
「へ?えぇ〜!」
- 133 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月02日(火)01時51分31秒
- 慌ててビートルの中へと向う安倍。その後に新垣もついていく。
「ホントだべ・・・ケースが空いてるべさ・・・新垣は開けてないよね?」
「ええ。紺野さんも松浦さんも開けてないです」
「って事は、誰かがビートルの中に侵入した?」
と、その時、新垣がビートルの操縦席の窓の先に人影を発見した。
「あれ?安倍さん!あれ!」
そう言って指差す新垣。その方向を見てみる安倍。
「・・・あぁぁぁ!あいつ、ラゴンの卵持ってるべさ!」
「あ、逃げる!」
人影はそのまま林の中へと消えていく。
「追っかけるべさ!」
「はい!」
安倍と新垣の二人は急いでその人影を追いかけた。
- 134 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月02日(火)01時52分13秒
- 御蔵島にて、科学特捜隊が怪物騒ぎに奔走している頃、TDF極東支部、ウルトラ警備隊本部にて、
新たなる、宇宙から地球に向ってくる物体をキャッチしていた。
「どうや?高橋。なんかわかったか?」
メインルーム内にて、隊長の中澤が本部の分析席に座っている高橋に声を掛ける。
「物体は直径約20m。数は3つですね」
パネルに浮かび上がったデータを正確に伝える高橋。
「進路は?」
高橋の隣に立ち、食い入るようにパネルを見る中澤。
「やはり、地球に向っていますね。後10分程でステーションV3のエリア内に入ります」
「よし、V3に探査要請を出せ」
中澤は、今度は通信席に座る小川に命令をする。
「了解」
命令を受け、宇宙ステーションV3との交信を開始する小川。
「後藤、石川、念の為ウルトラホーク2号で待機してくれへんか?」
今度は隊員席にてウルトラガンを磨く後藤と、今までに得たデータを再分析している石川に声を掛けた。
「え?でもV3には平家さんがいるから大丈夫だと思いますけど?」
返答したのは部隊内でもアニメ声と、ある種の評判のある石川だ。
「まぁ、念のためや。みっちゃんのステーションホーク隊なら、もし例の編隊だとしても大丈夫やと思うねんけど」
宇宙ステーションV3には、中澤と同期の平家みちよ率いるステーションホーク隊が配備されている。
平家を始め、各隊員は全員エース級の腕前の持ち主だ。
- 135 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月02日(火)01時52分45秒
- 「了解しました。ホーク2号にて待機します」
中澤の言葉を受け、後藤が隊員席に置いてある警備隊のヘルメットを片手に、メインルームを後にした。
「あ、後藤さん!待ってくださいよ!」
取り残されそうになった石川が慌てて後藤の後を追う。
「あれ?え〜と・・・あぁ!」
突然、高橋が声を上げた。
「どないした?!」
「大変です!3つの物体の他に、急に15もの反応が!」
「なんやて?!」
「進路は・・・地球とは少しずれるコース・・・V3に向ってます!」
「まさか・・・奴ら、本腰を入れてきたんか?」
「出現の仕方からして、残りの15はワープ等によるものだと思われます!」
「小川!V3に第一種警戒態勢をとらせや!それと、MATに第二種警戒態勢をとらせ!」
「はい!」
矢継ぎ早に下される中澤の命令に、小川は焦りながらも関係各所に通信をとる。
「後藤!至急発進しいや!あたしらもすぐに出動する!」
通信席の予備の通信機を使って後藤に出動命令を下す中澤。
- 136 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月02日(火)01時53分23秒
- 「了解。ウルトラホーク2号、発進します」
相変わらず、冷静に答える後藤。
「高橋!小川!ホーク1号で出動や!」
「「ハイ!」」
自分のヘルメットを手にとった中澤は、高橋と小川にそれだけ言うと、駆け足で格納庫へと向った。
- 137 名前:矢口真太 投稿日:2002年07月02日(火)01時55分16秒
- 更新終わり。あぁ・・・日にちおきすぎた所為なのかどうかはわからないけど、
かなりへたくそに書いている・・・(元々だけど・・・)
- 138 名前:矢口真太 投稿日:2002年07月27日(土)03時13分00秒
- 作者です。久々の更新しま〜す。
今回はちょっと多めに。
- 139 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月27日(土)03時13分46秒
- 丁度、地球軌道と火星軌道の中間地点に、TDFの宇宙ステーションV3がある。
宇宙開拓への足がかりとして、また外宇宙からの侵略防衛の拠点として、今から5年前に打ち上げら
れた、宇宙ステーション3基の内の一つがこのV3である。
そして、このV3に配備されているのが宇宙用戦闘機ステーションホークである。
配備数は12機で三編隊を組む。
そのステーションホーク隊の隊長が中澤と同期の平家みちよである。
「敵編隊は我が方に接近中。数18。ステーションホーク隊は直ちに出撃せよ」
オペレーターからの通信が、ステーションホーク内の平家のヘルメットに流れてくる。
「了解!α1、スタンディングバイ!・・・テイクオフ!」
平家の掛け声を皮切りに、ステーションホーク隊がカタパルトから次々と発進していく。
「βチームは敵編隊の左舷、γチームは右舷から攻撃を開始せよ!αチームはこのまま正面から突撃や!」
散開する各編隊。平家率いるαチームの進路はそのままだ。
「ん?やっぱり、敵はあいつらか!」
平家が接近する敵編隊を確認した。
それは、鳥のような形をした大型ロボットだった。
「こちらα1!敵編隊を確認!やっぱりケルバーンや!」
ケルバーン。それは5年前より度々地球に飛来し、攻撃をしかけてきた侵略ロボットである。
TDF科学班の分析によれば、自己行動型の戦闘偵察ロボットで、空間戦闘及び空中戦を行う兵器らしい。
しかし、未だにこのケルバーンが何所からやってくるのか、そしてそれらを操るのは誰なのかは判明していない。
- 140 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月27日(土)03時14分16秒
- 「ケルバーンの耐久力はかなりのものや!確実に一機づつ叩く!」
距離が縮まるαチームとケルバーンの群れ。
最初に攻撃をしかけたのは、ケルバーン群だった。
「くっそぉ!やっぱり、あいつらの方が射程は上か!」
まだステーションホークの射程内にケルバーンは入っていない。
平家達は敵の攻撃をかわしながら敵陣へと突入する。
「射程内に入ったら、2機同時攻撃で一体づつ攻撃せい!」
ケルバーンから発射されるレーザー波をかわしながら、ようやく、平家達は射程内に敵軍を捕らえた。
「よく狙うんや!」
ステーションホーク隊の攻撃。
2機で1体のケルバーンに主力武装のレーザーを浴びせる。
しかし、同時攻撃でも一撃ではケルバーンは倒れない。それ程、敵の装甲は厚いのである。
「焦るなや!シミュレーション通りなら、30秒の照射でケルバーンを破壊できる!根気ようレーザー
を当ててけ!」
平家の檄が各隊員に飛ぶ。
それが幸を奏したのか、遂に6機のケルバーンを撃墜する事が出来た。
残りのケルバーンは後12機。
「よっしゃ!残り12機や!気合入れてけ!」
一旦、敵編隊から後退して旋回し、再び機首をケルバーンの群れに向ける。
士気は充分。確実に平家達の方が優勢だったが、それが、一瞬にして崩れ去った。
βチームの一機が撃墜された。
態勢を立て直そうとするβチームだったが、その隙をつかれケルバーンが一斉攻撃をしかけた。
- 141 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月27日(土)03時14分47秒
- 「βチーム!後退せぃ!」
それを見た平家が、βチームに後退指示を飛ばす。だが、それも虚しく、あっという間に残り三機が
撃墜された。
「くそぉ!」
すぐさまβチームの仇討ちをしたかった平家だが、ここで編隊を崩しては逆に敵にやられる可能性が
高かった。
息つく暇もなく、ケルバーンはまたもや平家達に向ってくる。
「一旦離脱!」
正面から迫るケルバーン群を交わす様に、上昇するαチーム。しかし、その途中、味方機一機が撃墜された。
「γチーム!こっちに合流できるか?!」
敵のレーザー波の雨を掻い潜りながら、交信する平家。
「やってみます!」
返信が来る。それと同時に、平家はレーダーを見てみた。
真中の自機を中心に下に一機、右に一機の味方機がついてきている。
その後ろから、六機のケルバーンが追ってきている。
「α2!α3!反転して敵機を叩く!三機同時攻撃や!」
平家の通信と同時に、反転するステーションホーク三機。
まずは、先頭のケルバーンに一斉射撃を加える。
二機の時よりも、はるかに短い時間で撃墜。続いて、その右隣のケルバーンにも攻撃。
「こちらγ1!γ2とγ4が撃墜されました!」
「もう少しでそっちに行く!それまで持ちこたえや!」
更なる戦況の悪化に、平家は少し焦ってきた。
- 142 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月27日(土)03時15分26秒
- そして、その焦りがミスを呼び込んでしまった。
α1の放つレーザーが、標的を外れたのである。
「しまったぁ!」
まだ稼動可能なケルバーンは、レーザー波をαチームに向って放つ。
「回避ぃ!」
操縦桿を思いっきり引いて、上昇行動を取る平家。
続いてα2、α3が上昇行動を取るが、右舷から迫ってきていたケルバーンのレーザー波によって、
二機が撃墜されてしまった。
「くそぉ!γチーム!後退や!このままでは・・・おい!γチーム!どないした?!」
通信は帰ってこない。γチームは既に全機撃墜されていたのだった。
「嘘やろ・・・うちらがこないにやられるなんて・・・」
消沈する平家。しかし、そんな事はお構いなしに、ケルバーンは攻撃を続ける。
「くっ!」
操縦桿を巧みに操り、回避行動を取る平家。
「一旦、V3まで戻るか・・・でも、そないな事したら、V3はおろか、地球への侵入を許してしまう・・・」
考えた末、平家は、一回大きく深呼吸をする。
「こないなったら、一機でも多く落としたる!ゆうちゃん、地球は任したで・・・」
フルスロットルで再び上昇行動を取るステーションホーク。そのスピードにはケルバーンはついてい
く事が出来ないようだ。
「うおぉぉぉぉぉぉ!」
反転し、叫びながらレーザーの発射ボタンを押す平家。
一体のケルバーンにレーザーが照射される。しかし、一機だけではやはりケルバーンは中々倒れない。
- 143 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月27日(土)03時16分04秒
- 砲門が焼ききれそうなぐらい、レーザーを発射するステーションホーク。
しかし、このまま行くと、ケルバーンと激突してしまうのだが、そんな事は彼女は百も承知だ。
落とせればそれでよし。落とせなくても、自爆して他のケルバーンも落とせればそれもよし。
平家の命をかけた攻撃は、後少しでケルバーンに激突する所で、敵機が爆破した。
爆発の中を突っ切るステーションホーク。破片で多少のダメージは受けたが、航行には問題は無かった。
「今のは?」
レーダーを見てみる。丸い画面の端には、味方機の反応を示す光点が二つあった。
「こちら、ウルトラ警備隊の石川です!平家さん!大丈夫ですか?!」
「ウルトラ・・・警備隊?」
レーダーの反応を示す地点を目視する。
そこには、ロケット型のウルトラ警備隊の誇る、銀色の宇宙戦闘機、ウルトラホーク2号がケルバー
ンの群れに攻撃をしかけていた。
「みっちゃん!無事かぁ?!」
今度は聞き覚えのある声。そう、ウルトラ警備隊隊長の中澤だ。
「ゆうちゃん!来てくれたんか!」
平家の通信に答えるように、中澤の操縦する多目的大型戦闘機、ウルトラホーク1号がステーション
ホークの右舷に並行しながら近づいてきた。
「当たり前やろ!みっちゃんはちょい休んどき!後はうちらが片付ける!」
そして、ステーションホークから離れるウルトラホーク1号。
「高橋!小川!敵編隊の動きに注意せぃ!もしかしたら、増援が来るかもしれへん!」
コクピット部分の操縦席に座る中澤が、後ろの壁についているコンピューターを操作している二人に
声をかける。
- 144 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月27日(土)03時16分35秒
- 「後藤!そのまま敵編隊を引き付けとき!左右から挟み撃ちに攻撃する!」
「了解」
通信を終えた中澤は、フルスロットルでケルバーン群に向っていく。
後藤と石川の乗るウルトラホーク2号は、一旦攻撃をやめると反転し、敵編隊を引っ張っていく。
「攻撃開始!」
中澤の号令と共に、ウルトラホーク1号から発射される、レーザー光線。
後藤の操縦するウルトラホーク2号も、再び反転してケルバーンに攻撃レーザーを浴びせる。
さすがは地球防衛軍のエリート、ウルトラ警備隊の誇る戦闘機である。
レーザーの威力はステーションホークとは段違いで、あっという間にケルバーンが撃破されていく。
「さすがはウルトラホークや。でも、うちも負けてへんで!」
操縦桿を再び強く握る平家は、スロットルを上げ、劣勢になりつつあるケルバーン群に機首を向ける。
「隊長!平家さんのホークがこっちに向ってきます!」
レーダーの光点を確認した高橋が報告する。
「みっちゃん・・・もう!みっちゃん!休んどきってゆうたやろ!?」
通信機を片手に、そこに怒鳴る中澤。
「ドアホ!ゆうちゃん達ばっかにええとこ持ってかれてたまるかっちゅうねん!」
中澤に負けずとも劣らない平家の怒鳴り声が通信機に返ってきた。
「誰がドアホじゃ!ボケェ!こっちは地球からわざわざ助けに来たんやで!」
平家のステーションホークを見つけて睨みつける中澤。
「た、隊長!前!前!」
「え?」
- 145 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月27日(土)03時17分10秒
- 高橋の言葉にふと前を見てみると、真正面にはあのケルバーンが眼前に迫っていた。
「わわわっ!」
慌ててホーク1号を急降下させ、間一髪のところでケルバーンをかわした。
「アホ!戦闘中に余所見するドアホがどこにおんねん!」
「うっさいわ!あんたがしゃしゃりでな、こんな危ない目に遭わへんかったんやで!」
「隊長。そんな事よりも敵編隊殲滅任務を優先させましょう」
と、二人の痴話喧嘩の間に入ってきたのは、意外にも後藤だった。
因みに、彼女の隣の石川はまた泣きそうな顔をしている。
「ほぉ〜、ウルトラ警備隊は隊長よりも、隊員の方がしっかりしとんねんなぁ」
「うっさいわ!ボケェ!」
「ま、今は目の前の敵を倒す事だけ考えよか?」
「終わった後、覚悟しとき!みっちゃん!」
「それはこっちのセリフや!」
痴話喧嘩を一旦終了させた中澤と平家。
残りのケルバーンは6機。
平行に航行をする中澤のウルトラホークと平家のステーションホーク。
「後藤!敵編隊を一手にひきつけられる?出来れば密集形態にさせて!」
「ちょ、ちょっと中澤隊長!一手にって、そんな事出来るわけないじゃないですかぁ?!」
答えたのは石川だった。
「石川は隣で座っとるだけやろ?後藤、出来るか?」
「了解」
「後藤さ〜ん!」
また涙が溢れ出しそうな石川を気にもせずに、後藤は機首をケルバーン群に向ける。
そして、スロットルを上げると共に、コクピット上部の武器管制スイッチを押す。
- 146 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月27日(土)03時17分47秒
- 「石川隊員。しばらく操縦に専念しますから、適度に攻撃をしてください」
しっかりと操縦桿を持って、目の前に展開しているケルバーン群を凝視する後藤。
「え?え?て、適度にって?」
少しパニクル石川。
「行きます!」
「わ、私、まだ心の準備が・・・」
石川の有無を聞かずに、スピードMAX近いホーク2号を敵編隊のど真ん中へと突進させる後藤。
勿論、ケルバーンはその後藤の乗るホーク2号に攻撃をしかける。
「き、来たぁ!」
何故かヘルメットのバイザーを下げて、頭を抱える石川。
「石川隊員!攻撃してください!」
石川の耳に入る後藤の声。
的としては大きいであろうホーク2号は、ケルバーンのレーザー波をギリギリながらも全て回避している。
そして、確実にケルバーン群の中心に向けて進んでいる。
「こ、この!この!」
石川は副操縦桿をやっと握り、上部の発射ボタンを連打した。
先程の後藤の操作で、パルスレーザーに切り替わっており、それがケルバーンに向って照射される。
それがケルバーンに命中し、ちょっとした爆発が起きる。
しかし、それは撃破とまではいかないが、敵を退けるには充分な威力だ。
攻撃をしながらケルバーン群から抜け出すホーク2号。
そして、ホーク2号を追うように旋回するケルバーン。
後藤はスロットルのレバーを力一杯引き、ホーク2号を加速させる。
6機のケルバーンは、編隊を崩し、正に密集形態になった。
「よっしゃ!高橋!零弐式ミサイル発射準備!」
敵軍の真正面にホーク1号の機首を向ける中澤。
「了解!」
- 147 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月27日(土)03時18分18秒
- 高橋の操作で、中澤の座る操縦席のパネルに照準が出、その真中にはケルバーン群がいる。
そして、照準をケルバーンに合わせると、パネルの緑のマルが赤になって点滅する。ロックオンした証拠だ。
「これでお終いや!」
発射ボタンを押す中澤。
ホーク1号の下部に装備されていた零弐式ミサイルは、勢いよく飛び出し、ケルバーン群に迫る。
そして、それが敵軍に突入すると、その真中で大爆発を起こした。
無論、周りのケルバーンもろとも。
「よっしゃ!命中!」
ガッツポーズをする中澤。
「予想以上の威力ですよ。ケルバーン群、反応なしです」
高橋も感嘆の声を上げた。
「よし!敵編隊も退治した事やし、小川、MATに第二種警戒態勢を解除させぇ」
「了解しました」
返答した小川は、早速通信を開始する。
「ひっどいなぁ、ゆうちゃん。おいしいとこ全部持っていきよって」
平家の声が聞こえ、中澤が周りを探してみると、ホーク1号の左舷に平行航行してるステーションホークがあった。
「はよ終わらせたかっただけや。みっちゃん、ちょっとV3によらせてもらえる?」
「なんでや?」
「久々の宇宙やでぇ?もうちょっと宇宙の景色を見たいんやわ」
「ま、ええで。さっきの決着もつけたいし、ついてきな」
平家のステーションホークを先頭に、中澤達は宇宙ステーションV3に向っていった。
- 148 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月27日(土)03時18分53秒
- 時間は少し前に遡る。
安倍と新垣が、ラゴンの卵を奪った人物を追いかけていた。
林の中を抜けて、御蔵島の丁度中央に位置する、御山に入った時だった。
「こらぁ〜!待てぇ〜!」
かれこれ追いかけ初めて約10分。
安倍はまだ走れそうだが、新垣の方はちょっと辛そうだ。
そして逃げてる人物の方は、まだ疲れの様な素振りは無さそうだ。
「きゃ!」
新垣がすっ転んだ。しかも、見事に前のめりに。
「あ、新垣!」
慌てて立ち止まって新垣を見る安倍。
「いたた・・・だ、大丈夫です。なんとか・・・」
「もう!このままじゃ埒があきそうにないべさ!あんまりこれは人には使いたくなかったんだけど」
そう言って、ガンベルトの左側につけていた筒を取って、それをスーパーガンの銃口に取り付けた。
これはゴム弾を発射する事が出来るスーパーガンのアタッチメントの一つなのだが、ゴム弾とは言え
威力は凄まじいもので、射程50m以内なら、人間なら骨の一つや二つは軽く折る事が出来るぐらいの
威力を持っている。
故に当たり所が悪ければ死んでしまう可能性がある為、所持しているのは科特隊内でも射撃のエース
である安倍しか持っていない。
「逃げるあんたが悪いんだからね!」
一言断りをいれたのかどうかはわからないが、照準を逃げてる人物にあわせる。
そして引き金を引くと、まるで拳銃弾の様に発射されたゴム弾が相手に食いかからんばかりに飛んでいく。
ドカっっと言う音と共に、その人物が後ろにドサっと倒れた。
- 149 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月27日(土)03時19分30秒
- 「一応足を狙ってあげたんだからね」
アタッチメントを外し、スーパーガンをガンベルトに戻した安倍は、その人物の所に走っていく。
新垣は少し足をくじいたのか、足を引きづりながら安倍についていく。
「さぁ〜て、卵を返してもらおうか?」
と、近づこうとした安倍。しかし、突然その人物が起き上がり、右手にはさっきは確認できなかった
銀色の物体を握っている。
「わわっ!」
咄嗟に横に飛ぶ安倍。そして、安倍のいた場所には何かが着弾したような爆発が起きていた。
「な、なんだべさ!?今のは・・・」
続いてくる第2撃。今度は、安倍の前の木にあたり、その木が吹っ飛んだ。
「安倍さん!大丈夫ですかぁ!」
「新垣!気おつけて!今までに見た事も無い武器だべさ!」
三度目の敵の攻撃。辛うじてそれをかわす安倍。
「この!」
素早くスーパーガンを抜き取って反撃に転じる安倍。
発射された光波は見事に敵に命中した。
「やったぁ!って、やっばぁ!」
スーパーガンの光波は電熱波である。それは電子レンジのマイクロ波以上の熱源を持つ物なのだ。
故に、それを人間に使用すると、照射された人間はあっという間に黒焦げになってしまう。
「安倍さん!大丈夫ですか!」
ようやく新垣が安倍の下に辿り着いた。
「うわぁ・・・やっちゃったぁ・・・」
少し放心状態の安倍。
- 150 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月27日(土)03時20分02秒
- 「安倍さん!安倍さん!」
「どうしよう〜・・・新垣・・・」
「あ、あれ!」
「そりゃ、スーパーガンのエネルギーだったら黒焦げになってるべなぁ・・・」
「確かに、黒い事は黒いんですけど・・・」
「とりあえず、かおりんに報告しとくべや」
「ですから安倍さん!」
「もうなんだべや!」
「あれ!」
ちらりと新垣の指差す方向を見てみる。
確かに安倍が撃った人物は黒かった。焦げた感じもあった。ただ奇妙な事は、その人物が直立不動で
こちらに向いていた事。
それと、その顔には口も鼻もなく、縦長の顔の上辺りに目のような白い物体があり、頭の上からは触
覚のような物が一本でている。
あえて言うならば、それは宇宙人とでも呼んでもいいような人であった。
「どう考えても人間・・・じゃないべさ?」
「はい・・・多分、宇宙人かな?と思うんですけど・・・」
そんな話をしている途中、その宇宙人の触覚らしき物が光りだす。
「・・・何かイヤな予感」
その安倍の予感は見事に的中する。
触覚はピカッ!と強く光ったかと思うと、安倍の近くにある木が一気に炎に包まれた。
「まずい!」
慌てて後退する安倍と新垣。
- 151 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月27日(土)03時20分37秒
- 「新垣!遠慮せずに攻撃!」
「ハイ!」
反撃する二人。
スーパーガンから発射される光波。
命中。
2つの光波を受けた宇宙人は、両手を高く上げながら、奇妙な言葉を発し、その場に倒れ崩れた。
「・・・やっつけた?」
「・・・みたいですね」
まだ警戒を解いていない安倍と新垣は、スーパーガンの銃口を宇宙人に向けながら近づく。
「・・・どうやら死んだみたいべさ」
「ですね」
安倍が宇宙人を軽く蹴ってみても反応はない。
「でも、いつの間に地球に宇宙人が来たんだべか?」
スーパーガンをガンベルトに戻す安倍。
「あ、安倍さん。ありましたよ。卵」
そう言って、落ちていた緑色のラゴンの卵と思われる物体を、新垣が持ってきた。
「この宇宙人の事も気になるけど、今はラゴンの方が優先だべさ。とりあえず、かおりんには連絡しとくべ」
そして、安倍は流星バッチ型小型通信機のアンテナを上げる。
「こちらなっち。かおりん、そっちはどう?」
「なっち?何してんのよ?今、亜弥ちゃんと紺野をビートルに向わせたのよ」
「ゴメン、ゴメン。いやさぁ、宇宙人にラゴンの卵を奪われちゃって・・・」
- 152 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月27日(土)03時21分12秒
- 「はぁ!?奪われたぁ?!」
「もう取り返したけどね」
「宇宙人ってどんなヤツ?」
「全身真っ黒で、顔が細長で、小さい目が一つ。あ、それと触覚みたいなのがついてるべさ」
「安倍さん!それ多分ケムール人ですよ!」
いきなり紺野が通信に割り込んできた。
「ケムール人って、確か二年前に地球人を拉致しようとした宇宙人でしょ?」
「そうです、キャップ。でも、その時は、TDFがXチャンネンル波を使って、ケムール人を倒したはずです」
「そのケムールが何で今・・・それで、なっち。そのケムールは?」
「スーパーガンでやっつけたべさ」
「ほんとですか?」
「ほんともなにも、なっちの腕を信用してないの?紺野」
「いえ、そういうわけじゃないんですけど・・・」
「とりあえず、なっちは戻ってきて。卵も忘れずにね」
「了解」
そして、通信を終えた安倍は、倒れているケムール人を残し、新垣と共に卵を持って飯田達の所へと
向った。
- 153 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月27日(土)03時21分47秒
- 安倍が飯田の所へ戻った時、丁度、松浦と紺野もラジカセとバッテリーを持って戻っていた。
そして、音楽を使って、ラゴンを大人しくさせて、ようやく卵を渡す事が出来た。
音楽を切っても、ラゴンは暴れる様子はなく、大事に卵を抱えながらまた海へと戻っていった。
「いや〜、よかった、よかった。ね、かおりん」
「まだ仕事は残ってるよ。ケムール人の事」
「とりあえず、ケムール人のいる所までいってみましょう。あ、安倍さん、一応スパイダーもって来ま
したんで」
「サンキュ、亜弥ちゃん」
安倍は松浦からスパイダーを受け取り、そして科特隊は安倍達が倒したケムール人の所へと向おうと
したその時。
突如の爆発が五人を襲った。
「うわ!」
「きゃ!」
散り散りになる五人。
「皆!大丈夫?!」
身を低くしながら、他の四人を探す飯田。
「いたた・・・とりあえずね。スパイダーも無事」
スパイダーショットを大事そうに抱えている安倍。
「いった〜い・・・」
どうやら腰を打ったらしく、そこをさすっている松浦。
「ケホケホ・・・なんなんですかぁ?」
咳き込んでいる紺野。
「あ!キャップ!あれ!」
そして、新垣の指差す方向を見てみる他の四人。
- 154 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月27日(土)03時22分20秒
- そこには、一隻の平べったいいわゆる円盤が上空で静止していた。
「ウソ・・・」
ぽかんとその円盤を見つめる安倍。
「もしかして、ケムール人の円盤?」
円盤の下部についている、砲塔らしき所が光を帯びてくる。
そして、飯田の半円球状のネクタイピンが点滅と音を鳴らし始めた。
「やばい!皆、散開!」
飯田の声と同時に、何かが円盤から照射される。そして爆発。
急いで物陰に隠れた五人は、辛うじてその爆風から免れた。
科特隊の戦闘服についているネクタイピンは、一種の危機関知装置である。
まだ実験段階の為、今のところは有害な物質、放射線を関知する以外に、高エネルギー反応を関知す
る事も出来る。
「かおりん!どうするべさ?!ビートルで応戦する?!」
隣の安倍が飯田に問う。
「今ビートルの所に行っても、離陸前に撃墜されるわよ!」
円盤を睨みながら言う飯田。
「それじゃ、どうするんだべ?!」
「ここには民間人もたくさんいるのよ!ここで食い止める!」
そう言うと、飯田はスーパーガンをガンベルトから抜き取る。
「食い止めるって・・・」
「紺野と新垣で住民の避難誘導!なっちと亜弥ちゃんは私と一緒にあれを食い止めるわよ!」
飯田達とは反対側にいる紺野達に声をかける飯田。
- 155 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月27日(土)03時22分52秒
- 「そんなの無茶ですよ!」
「無茶でもやるの!」
また爆発が起きた。飯田達の目の前でだ。
「紺野!新垣!急いで!」
「わ、わかりました!」
飯田の怒鳴り声で、急ぎ住民達のいる役場へと向う二人。
「出来るだけあれを役場の反対側にひきつけるわよ!」
「わかったべ!」
「はい!」
スーパーガンの照準を円盤に向け、飯田が光波を発射する。続いて松浦も。
安倍は、スパイダーショットのつまみを調整し、円盤に向け攻撃を開始する。
このスパイダーショットは、八種類の光線を発射する事が可能な科特隊の唯一の重火器だが、かなり
の重量がある為、科特隊内では安倍と松浦しか使いこなせる隊員がいない。
各々の攻撃は円盤に命中する。しかし、効果は余りなく、安倍のスパイダーだけが多少のダメージを
与えていた。
「やっぱり、なっちにはスパイダーだべさ!」
「なっち!喜んでいないで走るわよ!」
そして、飯田達は円盤をおびき寄せる為、島の南へと走り出す。
- 156 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月27日(土)03時23分23秒
- 一方、その頃。
東京湾海底にある、MAT基地。
ここでは、ようやく第二種警戒態勢を解かれ、ピリピリとした緊張感から解放され、それぞれが一時
の休息をしていた。
最も、矢口だけは第二種警戒態勢時もいつもと変わらない様子だったのだが。
「かぁ〜!結局オイラ達の出番なしぃ?!」
メインルームの隊員席に仰け反り返る矢口。
「まぁ、いいじゃないですか?僕達の出動が無いという事は、それだけ平和だって事なんですから」
コーヒーを片手に吉澤が真正面の矢口に話す。
「なっち達も、今ごろ海で遊んでるっしょ?」
「今、科学特捜隊は海底火山の調査中よ。遊ぶ暇なんかあるわけないでしょ?」
と、横から水を差したのは隊長席で資料を読んでいる保田。
「あ、そうだ。加護、なっち達の通信回線を開いて」
「えぇ〜?自分でやってくださいよぉ」
本当に嫌そうに言う加護。
「つべこべ言うな。とっととやる」
ちょっとムッときた矢口。
「やです」
あくまでも拒否する加護。
「いいですよ。僕がやりますよ」
ちょっと喧嘩ムードが漂う二人の間に入るように、吉澤がコーヒー片手に加護の座る通信席に向う。
「えっと、科特隊の通信回路は・・・と、これか」
吉澤がスイッチを入れると、ザーと言う音の後、声が聞こえてきた
- 157 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月27日(土)03時24分18秒
- 「飯田よ!今度は何?!」
彼女の声は、かなり焦っているように聞こえた。
「こちら吉澤。今、MATの第二種警戒態勢が解除になった所なんですけど・・・」
と、コーヒーを一口飲みながら話す吉澤。
「こっちはそれどころじゃないの!ねぇ!MATのレーダーになんか反応ない?!」
やはり焦っている声だ。
「反応・・・ですか?」
「場所は伊豆諸島沖の御蔵島付近!」
飯田の言葉を受け、吉澤はレーダーのスイッチ類を操って御蔵島付近のレーダー図を出す。
「いえ、特にこれと言った物は・・・」
コーヒーを置いて、御蔵島近辺のレーダー図を観察する吉澤。
「嘘でしょ?!こっちは・・・なっち!亜弥ちゃん下がって!」
刹那、爆音が通信機から聞こえてきた。
「どうしたの!?」
隊長席から保田が飛んできた。
「わかりません!飯田さん!飯田さん!」
「こちら飯田!なっちと亜弥ちゃんが負傷!敵は円盤一隻・・・」
- 158 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月27日(土)03時24分53秒
- また爆音が聞こえた。
「飯田さん!飯田さん!」
反応が無い。無線は切れていた。
「円盤・・・吉澤、御蔵島付近に反応は?」
「さっき確認しましたが、異常無しです」
そう言って吉澤は、もう一度、レーダー図を見る
「よし、加護、辻はマットジャイロ。吉澤はあたしと一緒にマットアロー1号」
「オイラは?」
いつのまにか保田達の後ろに立っていた矢口。
「あんたは居残り。まだ片付けて無い書類が山ほどあるでしょ?」
「えぇ〜!そんなぁ!」
「矢口以外全員出動!」
「「「ハイ!」」」
保田の号令と共に、吉澤、加護、辻がヘルメットを片手に格納庫へと走り出した。
一人残された矢口は、自分の机に山積みになっている書類を見て大きな溜息をついていた。
- 159 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月27日(土)03時26分02秒
- 爆音と燃え上がる炎によって、安倍と松浦、そして飯田も吹き飛ばされた。
「いったぁ・・・なっち!亜弥ちゃん!何所?!」
態勢を整えながらも、安倍と松浦を探す飯田。
「こ、ここにいるべさ・・・」
安倍の声が聞こえた。
声のする所を探すと、安倍が倒れている。
「なっち!」
彼女に駆け寄る飯田。
「大丈夫?!なっち!」
「だ、大丈夫。って言いたいとこだけど、あ、足が・・・」
安倍の足は、先程の爆発の所為か、戦闘服が破れ、そこから真っ赤な血がオレンジの戦闘服を隠す様
に流れ出ていた。
「この戦闘服が無かったら、死んでたべさ・・・」
次のウッ、と言ううめき声で、安倍は足を庇う様に抑えた。
「亜弥ちゃんは?!」
そして、松浦を探す飯田。
「亜弥ちゃん!」
見つけた。
飯田達からやや離れた所。彼女は、うつ伏せになって倒れている。
すぐさま松浦の所に向おうとした飯田だったが。
「かおりん・・・」
と、安倍が飯田を引きとめた。
- 160 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月27日(土)03時26分39秒
- 「亜弥ちゃんは、なっちが見るから、かおりんはスパイダーであの円盤を・・・」
そう言って、スパイダーショットを飯田に差し出す安倍。
「何言ってるの?!なっちだって怪我してんのに・・・」
「かおりんは科特隊のキャップでしょ?今は任務を優先して」
「だけど・・・」
爆発。
二人の目の前での爆発だ。
「速く!このままじゃ、皆やられるべさ!」
「・・・わかった」
そして、スパイダーを手にし、走る飯田。
一旦立ち止まり、スパイダーの銃口を円盤に向ける。
引き金を引くと、スーパーガンの五倍の威力を持つ電熱波が円盤に向けて照射される。
だがしかし、スパイダーから発射された光線は円盤を掠めていく。
「もっと練習しとけばよかったこも・・・」
そう呟く飯田。もう一度スパイダーのグリップを握りなおし、再び狙いを円盤に定める。
しかし、それと同時に円盤の砲塔も光を帯びてくる。
「くっ!」
そして走り始める飯田。
彼女の後方で耳を劈く様な爆音が鳴り響いた。
「なっち・・・」
足を止めて置いてきた安倍達の事が心配になったが、彼女に言われた言葉を思い出し、また走り出した。
- 161 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月27日(土)03時27分25秒
- 走る飯田。それを追うかの様に爆音が聞こえる。
懸命にスパイダーで応戦をするが、その命中精度は低い。
「くそ!このままじゃ・・・」
不意に、飯田の体が宙に浮いた。背中には激しい痛みが伴っている。
爆音と共に発生した爆風によって、飯田は吹き飛ばされたのである。
そして、木に激突し、倒れ崩れる。
「うぅ・・・紺野、新垣」
流星バッチのアンテナを上げて紺野と新垣を呼ぶ飯田。しかし、ザーと言う雑音しか帰ってこない。
「無線が壊れたの?このままじゃ・・・」
体を持ち上げようとする飯田だっだたが、全身に走る激痛でそれをする事はかなわなかった。
円盤の砲塔が光を帯びているのが飯田には辛うじて確認する事が出来た。
「なっち・・・ゴメン」
目を瞑った。
そして、刹那の爆音。
しかし、彼女の体には何も変化は無い。先程から全身が痛いのは同じなのだが。
目を開けて見る。木々の生い茂る葉の間から、円盤と、そして見覚えのある赤と銀のカラーリングの
戦闘機が空中戦を展開していた。
「あれは・・・マットアロー?」
呟く飯田の耳に、遠くから声が聞こえてきた。
「キャップぅ!」
「キャップ!何所ですかぁ!」
ちょっと間延びした感じの声と、元気そうな活発な声、紺野と新垣の声だ。
「紺野・・・新垣・・・」
少し安心でもしたのか、飯田はちょっと笑みを浮かべた。
- 162 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年07月27日(土)03時28分01秒
- 「あ、キャップ!」
飯田を見つけた二人。
「キャップ!大丈夫ですか?!」
駆け寄った二人はしゃがんで、飯田に肩を貸して立ち上がる。
「・・・なっちと亜弥ちゃんは?」
足が縺れそうになりながらも、二人の肩を借りてどうにか歩いている飯田。
「大丈夫です。治療して、今はビートルにいます」
飯田の右にいる紺野が答える。
「そう・・・あれに乗っているのは?」
「保田隊長と吉澤さんです」
今度は左の新垣だ。
「あの二人なら大丈夫そうね。うぅ・・・」
ガクっと飯田の頭が落ちる。
「キャップ!」
「キャップぅ!」
紺野が慌てて飯田の脈を確認してみる。
「・・・まだ大丈夫そうだけど・・・危険かも」
「速くキャップをビートルに!」
「うん!」
紺野が新垣の言葉に大きく頷くと、二人は懸命に飯田をビートルまで運んで行く。
- 163 名前:矢口真太 投稿日:2002年07月27日(土)03時29分25秒
- 今回の更新終わり〜。
この前のうたばん、矢口が寝る時はまっぱに萌え〜
- 164 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月27日(火)15時58分42秒
- 完結しないのにスレッドをたくさん立てる人にはお仕置き。
- 165 名前:ヤグヤグ 投稿日:2002年09月02日(月)23時52分40秒
- 矢口真太さ〜ん、待ってますよ〜
- 166 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月04日(金)09時06分24秒
- 完結しないのにスレッドを立てる人にはお仕置き。
- 167 名前:矢口真太 投稿日:2002年10月30日(水)01時40分28秒
- ご無沙汰しておりました。作者です。
ようやく再開の目処がたちましたので更新します。
でも、まだ不定期更新になりそうだけど・・・
>165さん
どうもお待たせしました。四ヶ月もお待たせしちゃって申し訳ないっす。
これからも頑張って書いていこうと思いますのでよろしくお願いします。
それでは四ヶ月ぶりの更新で〜す。
- 168 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年10月30日(水)01時42分04秒
- 御蔵島上空200mで、ケムール人の円盤と、MATの主力戦闘機、マットアロー1号が空中戦を展
開していた。
このマットアロー1号機は、TDF主力部隊内では最も量産性に優れた機体で、一時期はTDFの次
期主力戦闘機に名をあげていたのだが、現行機である、F−15ストライクイーグルやF−2支援戦闘
機に比べ、空中戦に置ける対空装備等にかなりの疑問視が持たれ、また、その操縦性が現在の主力戦闘
機とは大幅に変わっており、ジェットビートルやウルトラホーク1号と同様、旅客機タイプの操縦なの
である。
熟練のパイロット達は、まずこの操縦法を覚えなければならず、そのパイロット育成にも莫大な費用
と時間が掛かるのが何よりの欠点だった。
しかし、MAT隊長の保田は、TDF内でも五本の指に入る程のパイロットで、且つ順応性が高かっ
た為、このマットアローの操縦には直ぐ慣れたのである。
一方の吉澤は、TDF訓練校時代に初めて操縦桿を握ったのが、このアロータイプの練習機だった為
難なくこのタイプの戦闘機を操縦する事が出来た。
「隊長、一気にミサイルで片付けましょう!」
狭いコクピット内に並んでいる座席、その正面向って左側、武器管制やレーダー類を操る座席に座る
吉澤が、保田に提言する。
「まだ紺野達からの連絡は無いでしょ?飯田キャップがまだこの下にいるはずよ。彼女の無事が確認さ
れるまで、攻撃は最小限に」
「ですけど・・・」
- 169 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年10月30日(水)01時42分43秒
- 「わかってるわよ。35_機関砲だけじゃあの円盤には通用しないって事・・・だからあなたがいるん
でしょ?」
マットアロー1号の主力武装は35_機関砲と、対地ミサイル、それと、換装可能な対空ミサイル、
サイドワインダーのみである。
35_機関砲は、吉澤の座る座席でレーダーと連動して弾道を多少誘導する事ができるのだが、それ
でも、意外にも動きの素早い敵円盤には最初の奇襲攻撃以来、命中はしていない。
殆どが威嚇射撃程度に収まっているのである。
一方の円盤からは、先程、科特隊の面々に攻撃していた、大出力の火器では無く、対空用と思われる
レーザーがマットアロー1号に向けて放たれている。
これをかわしながら、円盤との距離を縮め、35_機関砲で攻撃をしかけるのだが、後一歩の所で、
避けられてしまう。
保田は手を抜いている訳ではない。それは、副座に座る吉澤も同じだ。
それだけ、敵円盤の回避能力が高いと言う事なのだろう。
「こちら紺野です。MAT保田隊長!」
幾度目かの円盤への攻撃の最中、マットアローの通信機に紺野からの無線が入った。
「飯田キャップを救助しました!今、ビートルで治療中です!」
すぐさま、ヘルメットの通信機のマイクを伸ばす保田。
「よし!わかった!円盤を退治するまで、ビートルで待機してて!吉澤!そろそろ決めるよ!」
「ハイ!」
保田の声と共に、吉澤は目の前の武器管制盤を操って、マットアローの唯一の対空武装サイドワイン
ダーのロックを外す。
- 170 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年10月30日(水)01時43分18秒
- そして、その上部に取り付けてあるパネルに、緑色の十字のラインと敵の機影らしき物が浮かび上が
った。
「サイドワインダー、いつでも発射可能です!」
「よし!」
保田はスロットルレバーを引いてマットアローを加速させ、ある程度円盤との距離を持つと、左旋回
をし、円盤と対峙する空路を取った。
「ロックオン完了!」
機内には、ミサイルが敵機を捕らえた事を知らせるアラームがなっている。
「撃て!」
保田の号令で発射ボタンを押す吉澤。
マットアローから放たれたミサイルは、そのまま敵円盤に向って突っ走っていく。
だが、後少しで円盤に直撃すると思われた瞬間、突如ミサイルが爆発した。
「え?」
それと同時に、金色のレーザー光線がマットアローに向けて照射された。
「クッ!」
思いっきり操縦桿を引く保田。
間一髪、レーザーはマットアローの下部ぎりぎりの所を通り抜けていった。
「敵のダメージは?」
機体を平行に戻す保田。
「ダメです!見受けられません!」
パネルに写る、敵円盤の状態を見て叫ぶ吉澤。
「吉澤。敵機を捕らえる事出来る?」
「え?」
「あくまでも推測だけど」
保田の言葉を理解できぬまま、吉澤は再び目の前の計器類を操作して敵機に照準をつけようとする。
- 171 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年10月30日(水)01時44分07秒
- 「あれ?ロックオンできない?」
パネルには、敵機の画像が出ているが、ロックオンの証拠である確認音は出ていない。
「やっぱりね」
「どういう事っすか?」
「サイドワインダーは熱源探知の誘導ミサイルでしょ?相手はそれを出来なくしたの」
「と言う事は、敵は瞬時にエンジンを切った?」
「いや、それは違うわね。それだったら、瞬時にこちらに攻撃なんて出来やしない。理由はわからない
けど、なんせ相手は地球人じゃないんだからね。何をやっても不思議じゃないでしょ?」
「じゃ。どうやって攻撃すれば・・・」
「あたしに考えがある。武装を対地ミサイルと機関砲にセットして」
「え?でも、対地ミサイルじゃ・・・」
「その二つをレーダー誘導で敵機を追って。後は技能と度胸の勝負よ!」
「あ・・・はい。了解です」
まだ少し理解をしていない吉澤だったが、保田の言う通りに、対地ミサイルと機関砲に武装をチェン
ジさせる。
「これからの攻撃は吉澤に任せる」
「え?」
「あんたの射撃の勘は抜群にイイからね。マットアローをなるべく敵機に接近させるから、行けると思
ったら撃って」
「は、ハイ!」
急にいつもよりも緊張感に襲われる吉澤。保田の言葉がプレッシャーとなっているのだろう。
それはそうだ。
マットアローは敵に常に最接近の行動を行う。こちらの攻撃が外れた場合、反撃を受けて撃墜される
可能性は充分高い。
吉澤は、自分の座る副座の前にある敵機と十文字の照準が映し出されているパネルを見つめ、そして
発射ボタンに指を掛ける。その指は多少震えていた。
- 172 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年10月30日(水)01時44分41秒
- (もし、攻撃のタイミングを逃したら・・・)
プレッシャーの所為か、吉澤の肩が微かに震えだし、一滴の汗が額から頬に伝って流れ落ち、心臓の
鼓動はいつもよりも大きく、速くなっている。
「吉澤。数撃ちゃ当たる。敵の反撃なんか気にするな。あたしは一時期、曲芸飛行をやってたんだぞ?」
「え?」
保田に声を掛けられた事に驚く吉澤。
「前にブルーインパルスにいた事、言わなかったっけ?」
ブルーインパルスは、主に曲芸飛行を行う非戦闘部隊であり、そのメンバーに選ばれるのは、航空自
衛隊でも、極僅かのエースのみ。
そんな保田の経歴を知った事よりも、吉澤は保田が作戦中にこう言う会話をしてきた事に驚いた。
普段も、彼女は任務に関係の無い話は隊員達とは殆どした事は無い。それは同期でもある矢口にもだ。
「あたしが操縦する飛行機の被弾確率は10%未満だから。あ、これはちゃんと計算した数字よ」
「隊長・・・」
「少しは体の力が抜けた?」
「え?」
言われてみれば、先程よりも肩に力が入っていない。それに、心臓の鼓動も落ち着きを取り戻しつつ
あるようだ。
「変に力をいれていたら、当たるモノも当たらなくなるわよ」
そう言って、吉澤にウインクする保田。
(か、カワイイ・・・)
保田は吉澤よりも年上だが、彼女は保田のその行動を見て、本当にそう思った。
これがプライベートだったら、吉澤は保田の事を放っておいてはいないだろう。
- 173 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年10月30日(水)01時45分16秒
- 「さぁ、行くよ!」
目線を前方に戻した保田は、スロットルレバーを上げ、操縦桿を左に傾けた。
左旋回をするマットアロー。対する敵機は、マットアローを待ち受けているかの様に、上空で静止し
ていた。
そして、マットアローの進行方向に敵機の円盤が入った。
すると、敵の円盤は、進行方向をマットアローの方へと変更したようだ。
「へぇ〜。戦闘機同士でチキンレースねぇ。なかなかあっちも面白い事するじゃん」
「隊長・・・」
「進路このままで突っ込む!吉澤!とにかく撃ちまくれ!」
「は・・・ハイ!」
徐々に加速を始めるマットアロー。敵機との距離は約15kmといったところか。
十文字の照準には、既に敵円盤へとつけている。
しかし、対地ミサイル、機関砲と共に射程距離が極端に短く、音速で正面から対峙するこの場面では、
正に射撃のタイミングが重要なのである。
吉澤の指は発射ボタンに置かれている。しかし、まだそれを押す事は出来ない。
パネルに表示されている、敵機との距離のメーターが物凄い速さで少なくなっていく。
マットアローは、既に最高速度のマッハ3.5に到達している。
保田は、操縦桿をそのまま握り締めたままだ。勝負は後数秒でつくだろう。
彼女は真っ直ぐ、敵円盤を見つめる。航行コースはこのままでいい。
そう、保田の直感は言っている。
- 174 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年10月30日(水)01時45分46秒
- また、吉澤もパネルから目を離し、敵円盤に目線を移す。
まだ早い。
まだ・・・
敵との距離はもう僅かだ。
その刹那。
マットアローの下部に装備されているミサイル砲門から、無数の対地ミサイルが発射された。
それと同時に、両翼の機関砲も火を噴いた。
吉澤が発射ボタンを押したのだ。
圧倒的な火力が、円盤に吸い込まれる様に飛んで行く。
そして、爆発が起きた。
残り数mと言うところで、保田は操縦桿を引いた。
上昇して爆風を避けようとした。
が、しかし、突如上昇中に、警告音が機内に鳴り響いた。
「隊長!弾倉とエンジン部分に以上が!」
「くっそぉ!避けきれなかったか?!」
「このままだと危険です!」
「仕方ない、脱出だ!」
そう叫んだ保田は、目の前の計器類の端にある、ガラスで覆われた赤いボタンを思いっきり叩いた。
すると、コクピット上部の鉄板の一部分が小さな爆発と共に吹き飛び、そこからは突風が吹き荒れてくる。
更に操縦席の足元から出てきたレバーを保田が力強く引くと、二つの座席は、ボンっ、と言う音と共
に勢いよく機外に射出された。
- 175 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年10月30日(水)01時46分17秒
- そして、空中で爆発を起こしたマットアロー1号。
後一歩、脱出が遅れていたら、保田達は、あのマットアローと共に粉々になっていただろう。
空中に飛び出した、保田と吉澤。
ある程度座席と共に、空中飛行をしていたが、やがて、パラシュートが開き、座席のベルトは外れ、
それは漆黒の闇へと落ちていった。
「吉澤、生きてる?」
パラシュート降下中の保田が、マイクを伸ばし吉澤へ無線を飛ばす。
「はい、間一髪でしたね」
返信する吉澤。彼女達の距離は余り離れてはいなかった。
「ここって、太平洋だよな?」
上空七千メートルから下界を見下ろす保田。しかし、下は辺り一面海ばかりだった。
「そうですね。少なくとも、御蔵島からは東の方角へかなり行ったところだと思いますけど」
「とりあえず、加護達に救援にきてもらおう。もともと、あいつらには救援部隊で動いてもらおうと思っ
てたしね」
「了解しました。それじゃ、連絡を取りますね」
そして、加護達に救援要請をした保田と吉澤は、そのまま海面に着水し、そのまま救助を待つ事にした。
しかし、彼女達は見逃していた。
敵円盤が爆発する直前、二つの物体が、円盤から射出されていた事を。
- 176 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年10月30日(水)01時46分49秒
- 場所は再び、東京湾海底MAT本部。
時刻は、夜の十一時を回ろうとしていた。
お留守番の矢口真理は、保田隊長に言われた書類整理を、しっかりとやらずに、自分の隊員席に、や
や浅く座り、その前のテーブルに足を乗っけて気持ちよさそうに寝ていた。
だが、しかし、そんな彼女の安眠を妨げる事態が起きた。
通信ブースから入電した事を知らせる電子音が鳴り響いたのだ。
最初はそんな事は気にせずに寝ていた矢口だったが、音が大きい事と中々鳴り止まない事に根負けを
したのか、ようやく目を覚ましたようだ。
「もぉ〜、何よ〜。いきなり・・・今、圭ちゃんがいないからゆっくり寝てられるのに・・・」
眠い目を擦りながら、通信席の所に歩いて行く。
「はいはい。こちらMAT本部」
通信ボタンを押して応答する矢口だが、まだやはり眠いのか大きな欠伸をしている。
「こちら、TDF警備班の藤本です」
「警備班?警備班がMATに何の用?」
今度は大きな伸びをする矢口。
「先程、熱海市の伊豆山温泉の近くに飛行物体が落下したそうなんです。それの調査で私達がここに来
たんですけど、妙な物が見つかりまして」
「妙な物?」
そして、通信席に座る。
- 177 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年10月30日(水)01時47分21秒
- 「ええ、御蔵島にて科学特捜隊が調査をしていた金色の物体に酷似している物が発見されたんです」
「え?どう言う事?」
「詳しい事はまだ調査中ですけど、報告までと思いまして」
「だったら、カオリ・・・じゃなくて、科特隊の飯田キャップに連絡すれば?」
「一時間ほど前にしましたけど、通信不能なんですよ」
(その時って、確かカオリンの無線が切れた後ぐらいだな)
「ウルトラ警備隊も今は、皆さん出払ってるみたいですんで、とりあえずMATに連絡をと思いまして」
「ん、連絡ありがと。えと、とりあえず、どうしようかな?裕ちゃん達は今宇宙だし、ここにはオイラ
しかいないし・・・ん?」
と、ここで、矢口の頭の中にとある考えが浮かんだ。
「よし!オイラがそこに行くよ!」
「え?」
「ここから熱海だったら、一時間ぐらいでつくから。それまでその金色の物体は保管しておいて!」
「え?あの・・・」
通信相手の藤本の返答を待たずに、一方的に捲くし立てて通信を切った矢口。
「さてと・・・ホントはよっすぃ〜がいればなぁ・・・ま、いいか」
そう呟いた矢口は、急いで自分の部屋に向うと、なにやら身支度を整え、格納庫へと向っていった。
- 178 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年10月30日(水)01時48分16秒
- それから一時間後。
マットビハイクルに乗った矢口は、目的地の熱海市伊豆山に到着した。
飛行物体の落下場所は伊豆山温泉から100mも離れていない所だった。
そこには、警備班の調査部隊20人が落下場所付近を調査していた。
落下地点からやや離れたところで、テントを張っており、その後方には、89式装甲戦闘車と82式
指揮通信車が並んで停まっており、そこからやや離れた所に、96式装輪装甲車と軽装甲機動車、73
式小型トラックと大型輸送車も停まっている。
今回の警備班の任務は、戦闘では無く調査だ。充分過ぎる程の部隊編成である。
矢口がその73式小型トラックの横にマットビハイクルを停めて車を降りると、調査をしていた一人
が矢口の下に駆けて来た。
「お疲れ様です。この調査部隊の指揮を取っています、藤本美貴三尉です」
矢口よりも10cm程背の高い迷彩服とベレー帽を被った藤本が、彼女に向けて敬礼をする。
「オイラはMATの矢口真理。あ、これでも、MATの副隊長やってるから」
「はぁ・・・」
そこで、藤本は矢口の全身を下からなめる様に見た。
(こんなちっちゃくてカワイイ人が、あの猛者揃いと言われるMATの副隊長なの?)
「あ、みっきーさぁ、とりあえず、今思った事は口には出さないでね☆」
「え?」
不意に矢口の口から出た言葉に、動揺する藤本。
- 179 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年10月30日(水)01時48分47秒
- 「オイラの事チビとか思ったっしょ?ま、最初だし、みっきーカワイイから許すけど」
「え?え?」
彼女は考えていた事を見抜かれ、やや混乱気味になった。
「顔に出てたよ。大体わかるんだよねぇ。もう何十人もそんな事思ってる人見てきたから」
「は、はぁ・・・」
既に矢口にペースを狂わせられた藤本は、最初に言おうと思ってた言葉を忘れたのか、やや呆然とし
ていた。
「で、例の金色の物体ってのは?」
その様子を悟った矢口は、当初の目的を済ませる為に藤本に質問した。
「あ、はい、こちらです」
しどろもどろになりながらも、何とか矢口を案内する藤本。
「あ、あの〜」
その途中で、藤本が何とか矢口に声をかけた。
「ん?何?」
「何で、私はみっきーなんですか?」
「だって美貴ちゃんでしょ?だからみっきー」
満面の笑顔を浮かべている矢口。
そんな矢口の表情に、藤本は少しドキマギしてしまった。
「そうだ。みっきー、オイラも前に警備班にいた事があるんだ」
「そうなんですか?」
「オイラ、陸自上がりなんだけど、MATに配属される前、少しだけ警備班にいた時があったんだよ。
でも、一ヶ月ぐらいしかいなかったけどね。殆ど、MATに配属される前の実習に近い物だったから」
「そう言えば、科特隊とウルトラ警備隊とMATって、警備班からの選抜メンバーに近いんですよね?」
- 180 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年10月30日(水)01時49分58秒
- 「う〜ん、科特隊は、MATとは元々の組織形体が違うんだけど、基本的にはそうだね。選抜メンバー
に近いな。MATは少数精鋭主義だしね。
そうそう、去年、関東圏に大寒波が襲った時があったでしょ?」
「ええ、確か、ペギラと言う南極で発見された怪獣が引き起こしたものだったんですよね?」
「そう。オイラさぁ、そのペギラとやりあったからね」
「え?」
「そん時、オイラと今のMAT隊長の圭ちゃん・・・って言ってもわからないか、保田隊長と一緒に戦ったんだ」
「へぇ」
「あん時は寒かったなぁ。だって零下20度だよ?北海道の真冬並の寒さだからね」
「確か、ペギラはペギミンHと言うエネルギー物質で倒す事ができたんですよね?」
「そ。それをペギラに撃ち込んだのが、オイラ」
「そうなんですか?」
「積雪80cmもある中、車は使えないし、ヘリも吹雪で飛ばす事が出来ないで、結局自力でペギラに
近づいて、圭ちゃんと裕ちゃん・・・ああ、裕ちゃんってウルトラ警備隊の中澤隊長の事だからね。
それで、二人の援護で、ペギラが怯んだ隙に、ペギミンHを撃ち込んだってわけ」
「あぁ!思い出しましたよ!当時のニュースで、警備班の女性三人だけで、ペギラを退治したって!
矢口さんの事だったんですね!私、そのニュースを見て、警備班に入ろうと思ったんです!」
「え?そうなの?!いっやぁ〜、嬉しいなぁ!そんな事言われると・・・」
ふと、ここで矢口はある事に気がついた。
「ん?って事は、みっきーてまだ入隊して一年?」
「いえ、まだ九ヶ月ですけど」
- 181 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年10月30日(水)01時50分32秒
- 「それで、もう部隊指揮官クラス・・・って事はあの噂の人ってみっきーだったんだ」
「どう言う噂ですか?」
「警備班に第二の市井紗耶香がいるってね。今、いちーちゃんはアメリカに行ってるけど」
「誰ですか?市井さんて?」
「オイラの同期で、陸自上りなんだけど、一年かかる警備班の訓練課程を僅か二ヶ月で達成した伝説を
持ってるんだ。で、みっきーはそれに近い期間で達成したっしょ?」
「え?いや〜、たまたまですよ・・・」
「またまた〜、でもそんなトコがかわいいな」
「え?いや、そんな・・・あ、ここです。落下地点は」
藤本の指差す先には、地面に約20cm程の穴が空いており、その中には金色に光る物体があった。
「へぇ。これが?」
しゃがみこんでそれを見る矢口。
「そうです。放射能反応等は出ませんでしたから、特に危険は無いと思いますけど」
「う〜ん。でも、これを調査しにいったカオリン達の無線が途絶えたままだからねぇ」
「そうなんですよ。科特隊との通信が取れなかったんで・・・」
「まだ、警備班は知らないと思うけど、カオリン達、UFOに襲撃されたみたい」
「え?!襲撃ですか?!」
「うん。詳しい事はまだこっちも把握できてないけど、とりあえず、今圭ちゃん達が救援に向ってるか
ら、その内何かわかると思う」
- 182 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年10月30日(水)01時51分02秒
- 「それじゃ、この物体はどうしますか?」
「そうだな、とりあえず、警護の人間をつけて今日はここで様子見。朝になったら、TDF本部の研究
所に輸送しよう」
「わかりました。ここに置きっ放しもなんですから、あのテントに保管しておきます」
と言って、警備班の隊員達が待機しているテントを指差す藤本。
「いいよ、それで」
矢口に了承を得た藤本は、近くにいた若い男性隊員二人を呼び寄せる。
「この金色の物体をテントの中にまで持っていって。それから、交代で警護をお願い」
「了解しました」
隊員の片方がそう答えると、二人でその物体を持ち上げ、そのままテントの方へと歩いていった。
「さぁて、温泉♪温泉♪」
「え?」
「一時任務終了したし、この前の休暇の時に温泉に入りそびれたしね!」
「で、ですけど・・・」
「みっきーも一緒に入る?」
「わ、私は、警護の任務がありますんで・・・」
「それぐらい、警備班の隊員達に任せなよ」
「いや・・・そうは言われましても・・・」
と、テントの方に目線を外す藤本。
「あれ?」
「どした?」
何かに気づいた藤本。何かを探しているようだ。
- 183 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年10月30日(水)01時51分34秒
- 「いや、さっきのあの二人・・・」
「金色の物体を運んでいった二人?そういや・・・あそこにいるよ?」
と、矢口が指差す方向には、テントとは違う方向に歩いている二人の警備班の隊員。
「ちょっと!何所行くの?!」
慌てて走り出す藤本。
「あ、待ってよ!みっきー!」
それを追って矢口も駆け出す。
二人の隊員は、段々テントから離れる方向へと歩いて行く。
「ちょっと!待ちなさい!」
その二人に追いついた藤本。
「名前と階級は?」
藤本の質問に、答えずに黙々と歩く二人。
「どうしたんだよ?」
矢口が追いついてきた。
「私、この部隊の全隊員の名前と顔を記憶してるんです。でも、この二人は今まで見た事も無い二人」
藤本の言葉に、ピタッと立ち止まる二人の隊員。
「あなた達は誰?!」
彼女達の前にいる二人は、微動だにしない。
- 184 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年10月30日(水)01時52分11秒
- 「危ない!みっきー!」
突然、藤本の耳に矢口の声が聞こえたかと思うと、彼女は体に強い衝撃を受けた。
矢口が、藤本の方に飛んで彼女を突き飛ばしたのだ。
そして、二人がいた場所に起きた爆発。
藤本は態勢を崩して地面を転がる。
一方の矢口は、軽快な動きで態勢を立て直し、既に右手には実弾タイプのマットシュートが握られ、
それは、攻撃をしてきたであろう二人の隊員に向けられている。
「矢口さん!」
何とか立ち上がった藤本も、ヒップホルスターに下げてあるベレッタM92Fを抜き取り、スライド
を引く。
そして、発砲音。
先に撃ったのは、既に狙いをつけていた矢口だ。
対怪獣用炸裂弾は、左の男の足に命中。火花がその辺りに散った。
撃たれた男の手が、金色の物体から離れ、それが落ちそうになるが、もう一人の男がそれをしっかり
と持ち直した。撃たれた方は、後ろに倒れていた。
「あんた達、少なくとも地球人じゃないわね?」
照準を右の男に変更する矢口。藤本もようやく矢口の下へ来て、ベレッタの照準を矢口と同じ標的に
定めた。
- 185 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年10月30日(水)01時52分43秒
- 「矢口さん、あの二人は?」
「多分、宇宙人。マットシュートAタイプの炸裂弾は、人間なら足に当たっただけでも、下半身の殆ど
は粉砕されるからね」
彼女の説明通り、Aタイプの炸裂弾はかなりの威力がある。それは前に巨大蜘蛛と対峙した時に、既
に立証済みである。
しかし、撃たれた男の下半身どころか、足にも別に砕けた様な様子はない。
「でも、ダメージは受けてるハズ。だからと言って油断するなよ?みっきー」
「はい!心得てます!」
「さて、そこのお二人さん。大人しくしてもらおうか?」
と言う矢口の言葉に反対する様に、左の倒れてる男が起き上がり、銃の様な物を矢口達の方に向けた。
刹那、藤本のベレッタからフルメタルジャケットの9_パラベラム弾が発射された。
彼女は素早く照準を倒れている男の銃に変えていたのだ。弾丸は見事にその銃を弾いた。
「お!やるじゃん!」
「さぁ!今度こそ大人しくして頂戴!」
緊張感の感じられない矢口と対照的に真剣な表情の藤本。二人の性格がハッキリと現れている証拠だ。
藤本の言葉に観念したのかどうかはわからないが、左の男はゆっくりと立ち上がり、彼女達の方を見た。
- 186 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年10月30日(水)01時53分16秒
- 「さぁて、なんでそれを持ってこうとしたのか、わけを聞かせてもらおうか?」
銃口はまだ向けたままの二人。
すると、急に男達の体全身が青白く光だしたと思ったら、その光が爆発する様に大きくなった。
「わっ!」
「う!」
余りの眩しさに、目をそむける二人。
光が収まり、再びそこを見てみると、そこには男二人では無く服は迷彩服だが、顔が真っ黒で細長い
正に宇宙人が立っていた。
「あんた達・・・ケムール人!」
「ケムール?」
「ったく!ま〜た性懲りも無くやられに来たの?!」
「矢口さん!知っているんですか?!」
「ああ!二年前に一度ね。あんときコテンパンにやっつけたってのに、まぁた何か企んでいるな?」
その時、ケムール人の触覚と思しき所が光を帯び始めた。
「マズイ!逃げろ!」
「え?」
「いいから!」
また矢口に突き飛ばされる藤本。そして、またもや二人のいた場所に爆発が起きる。
- 187 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年10月30日(水)01時53分59秒
- 「今のは?」
「一種の衝撃波だよ。あれで陸自の同僚が何人もやられたからね!気おつけて!」
そして続けざまに第二撃を放つケムール人。
今度はある程度の予測が出来た藤本は、それを辛うじてかわす事が出来た。
「みっきー!大丈夫?!」
「ええ!なんとか!それよりも矢口さん!もう一人のケムール人が逃げます!」
「何?!」
ケムール人の第三撃。立て続けの攻撃で、反撃が出来ない二人。
「みっきー!こいつの相手をしておくから、あの物件を取り返して来い!」
「でも、矢口さん一人じゃ・・・」
「大丈夫だって!こいつとは前にも一度やりあってるから!」
そう言った矢口は、左のガンベルトに差してあるもう一つのマットシュートを抜き取る。
本来の彼女は、二丁拳銃なのだ。
「速く行けよ!奴らの足はかなり速いから、追いつかなくなるぞ!」
「は、ハイ!わかりました!」
もう一人のケムール人を追う為に走り出す藤本。それを阻止せんとばかりに狙いを藤本に変える敵。
「あんたの相手はこの矢口!」
- 188 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年10月30日(水)01時54分33秒
- 素早く、マットシュートのトリガーを絞る矢口。
二つの銃口から、それぞれ炸裂弾が発射される。
それがケムール人に命中する。
着弾し、爆発が起きるが、相手はよろける程度だ。
「今回も、前使ったモノと同じバリアーを使ってるな?でも、このマットシュートを甘く見るなよ!」
そして、今度は素早く何度も引き金を引く矢口。
装填されている20発の炸裂弾が、次々とケムール人に向けて発射されていく。
何度も爆発が起こり、煙が辺りに舞い上がった。
そして、マットシュートのマガジン内の弾丸がなくなると、イジェクションボタンを押して、素早く
マガジンチェンジを行う。
再び、煙の舞うケムール人がいる方向へと、銃口を向ける矢口。
海からの風が少しだけ吹いたかと思うと、辺りに漂っていた煙が晴れ、敵はうつ伏せになって倒れて
いて、全身が痙攣していた。
- 189 名前:第二話「宇宙からの贈り物」 投稿日:2002年10月30日(水)01時55分09秒
- その痙攣が止まったかと思うと、今度はゆっくりとケムール人の全身が、地面に溶け込むかのように
消えていった。
「ふぅ〜。ようやく倒したか」
一息ついた矢口は、マットシュートをガンベルトに収めると、ケムール人が消えた辺りに向って歩く。
そこにあるのは、ボロボロになった、ケムール人が変装用に着ていた迷彩服だけ。
「まさか、カオリン達を襲った円盤って、ケムール人のじゃないだろうな。だとしたら、あの金色の物
体の中って・・・とにかくみっきーを追っかけないと」
そして、矢口はマットシュートを手にしながら、藤本の後を追った。
- 190 名前:矢口真太 投稿日:2002年10月30日(水)01時57分29秒
- 今回の更新はここまでです。
次回更新は出来れば速い内に出来ればなと思っているんですけど・・・
出来れば・・・一ヶ月以内に・・・出来たらいいな・・・
- 191 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月03日(日)01時29分43秒
- ヤグの活躍期待してます。
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