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悲しみの果て
- 1 名前:作者 投稿日:2002年02月13日(水)11時53分28秒
- 新しい話を書かせてもらいます。
実は今連載中の作品がありその中での新作になります。
ので名前はあるんですがあえて今は控えさせてもらいます。
主な登場人物は後藤、石川
よろしければお付き合いください。
それでは始めます。
- 2 名前:プロローグ 投稿日:2002年02月13日(水)11時56分38秒
『悲しみの果て』
ねぇ、いつからだろう・・・私達二人、こんな関係になっちゃったの・・・・・・
「・・ん・・・はぁ・・・・」
「・・・・・」
「・・待っ・・・んん・・・ねぇ、っ・・・」
私の問いかけはあなたには届いていないみたい。
こんなに近い距離から呼びかけているのに。
「ねぇっ!聞こえない、の・・・んっ・・・!」
聞こえてるはず。
ただ、心に届かないだけ。
「だめ・・人が来るってば・・・」
「大丈夫だよ、こんな所誰も来ないのは知ってるでしょ?」
「でも・・・」
明りもない、薄暗いそこには私達以外の人間はいない。
ただ存在するのは二人の少女とそこから繰り出される淫らな音。
「そろそろ楽屋に戻らないとみんなに怪しまれ・・る・・・っ!」
「平気・・・」
それだけ答えるとあなたは唇から首筋へと移動させる。
柔らかい、その形のいい唇が肌に触れるたびに、何度も感じたはずなのに
理性とは裏腹に私の体は跳ねてしまう。
- 3 名前:プロローグ 投稿日:2002年02月13日(水)11時58分41秒
- 「ねぇ、やだよ・・・ねぇ・・・・!」
私の声もただ静かに階段の踊り場に響くだけ。
それは形を成さないまま気味が悪いほどの静寂に呑まれていく。
「・・っ!」
既に前の肌蹴ているシャツの下からそのしなやかで細い手が滑り込む。
微かに冷えているその手が、それとは反対の熱く火照った私の体に触れる。
そして敏感な所に触れた。
「やぁっ・・・ん・・・ふっ・・・・!」
大きくなりだした高い喘ぎ声を塞ぐように唇が塞がれる。
もう片方の腕が私の首に絡んでくる。
しばらく濃厚な口付けを交わしていると、胸を弄んでいた手のひらもその動きを
忘れたように止まり、すぐにそれは同じように首に絡んできた。
- 4 名前:プロローグ 投稿日:2002年02月13日(水)11時59分30秒
- 「ん・・・ん・・・・!」
「・・・・・・」
身長が高い私に甘えるように抱きつきもっともっとと言わんばかりに
唇を貪っていく。
きついぐらいに抱きつかれ、微かな抵抗さえもすることもできない。
「はぁ、ねぇ・・・もう戻ろうよ・・・」
必死な懇願は全く意味を成さず、私の唇は再び深く奪われる。
隙間がないぐらいに体を重ねられて、それなのにもっと彼女は私に体を
絡ませてくる。
「ねぇ・・・・!」
意を決して大き目の声で呼びかけた時、
- 5 名前:プロローグ 投稿日:2002年02月13日(水)12時00分30秒
- 「後藤〜?石川〜?どこよ〜?もうすぐ出番だよ〜?」
廊下の向こうからこの場所の雰囲気とは正反対ののんびりした聞きなれた声が
聞こえてきた。
「!」
声が聞こえた途端にあなたはばっと私から離れる。
まるで何事もなかったかのように、そう言い訳するかのように、
一瞬のうちに・・・。
「二人とも〜?どこよ〜?」
「はぁい!今行きますよ〜。」
向こうから未だ聞こえてくるその声に彼女が何の屈託のない笑顔を見せ顔だけ
出し答える。
「・・・・・・」
ただ言葉を無くしたように、私はその姿を見つめる事しか出来ない。
何度もされたことなのに、この感覚に私の体は慣れる事はない。
二言三言話すと会話が終ったのか彼女は私に体の向きを変えた。
「行こう。」
「うん・・・・」
手が指し伸ばされる。
私は乱れた服を調え、その手を取る。
そしてその場所を後にする。
胸の中の矛盾だらけな気持ちを残しながら。
- 6 名前:作者 投稿日:2002年02月13日(水)12時06分07秒
- 長い連載物に対して浮気のような形の作品ですが
ストーリーはしっかり立ててあるのでがんばります。
よろしくお願いしますm(__)m
- 7 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月13日(水)18時13分17秒
- 今書けるかな? ここ。
読むほうはまた変みたいで、現時点で2と3が読めない。
なのに、ときめく。「今連載中の作品」が何なのか勘ぐってみたくなる。
それが何かわからなくても、この作品の続きが読みたい(2と3も読みたい)。
- 8 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月13日(水)21時34分44秒
- おぉ(w
最初から凄い展開(w
がんがってください
- 9 名前:7 投稿日:2002年02月13日(水)22時48分41秒
- 8が読めたということは、今の状態でも読む方法があるのだな。
そう思って探したら、あった。2と3も読めた。
(これから読む方、案内板へ行ってみましょう。)
思ったとおり、面白くなりそうだ。
- 10 名前:作者 投稿日:2002年02月14日(木)13時59分37秒
- 7,8:名無し読者さん
>ありがとうございます。
嬉しいお言葉たくさん感謝です。
連載中の作品とは少し文体が違うかもしれません。
休んでいたら書き方が変わってしまったみたいで(汗)
8:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
すごく励みになります。
続きもがんばります。
- 11 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月14日(木)17時49分35秒
楽屋に戻るとそこは既に全員レギュラー番組用への衣装に着替え準備万端だった。
「お?やっと帰って来たか。二人共どこ行ってたの?」
ドアを開いたままそこで立ち往生する二人に気付き矢口が話し掛ける。
矢口の声を合図に部屋に居た全員が二人へと視線を送った。
「ちょっとトイレに。」
送られてきた視線に怯むことなくにこっと完璧な笑顔で微笑み彼女が答える。
何の偽りのないかのような可愛くて純粋なその笑顔を誰も疑う事はしない。
「トイレにしては長くない〜?それにそれ。」
楽しそうにからかいまじりで矢口が聞き返す。
にやにやしながら追求する事をやめない。
『それ』と言いながら矢口が指差した先を当の二人と、そしてメンバーが見る。
その指差す先にはしっかりと繋がれる二つの手があった。
正確には握る手と握り締められる手。
- 12 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月14日(木)17時52分31秒
- 「手なんか繋いじゃってラブラブじゃ〜ん。そういえばさぁ近頃二人結構怪しいよね。」
「冗談。そんなことないですよ。」
矢口の冷やかしに彼女はさらっとすぐさま受け流す。
その微笑みと共に。
「こら、矢口!ダメでしょ変なこと言って。で、どうなのさ?」
安倍が矢口をたしなめるがこちらも興味津々と言った感じで聞き返してくる。
新メンバー達も恐れながらも興味深げにこちらに耳を傾けていた。
恋愛関係の話は年頃の女の子なら誰でも気になるらしい。
ほとんどのメンバーがそれぞれの事をしながらでも話に耳を傾けていた。
・・たった一人を除いては・・・。
その人物はまるで興味が全くないと言うかのように手元の雑誌をぱらぱらと
捲っている。
彼女はちらっとそちらを見たかと思うとすぐに前に向き直り、掛けられた質問に対し
再び微笑み何かを答えようとした。
・・・その時、私の手を握る彼女の手の力が強くなったのを感じる。
- 13 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月14日(木)17時54分43秒
- 「時間で〜す!」
しかしそれもスタッフの声によって中断されることになる。
楽屋のドアの向こうから時間を告げる声が聞こえてきた。
「は〜い!」
それにメンバーの全員が条件反射的に答える。
そして待ってましたとばかりにせまい楽屋をメンバーが飛び出すように後にし出した。
「ちぇっ、いい所だったのにぃ〜。」
立ち上がりぞろぞろと列をなし廊下に出て行く中、安倍が悔しそうに舌打ちする。
「なっちだって気になってるんじゃん。」
矢口がその隣で小さく言い、二人は和やかな雰囲気と共にいろいろと会話を咲かせる。
まるで学校での教室移動の時のように女の子達の華やかで和気藹々とした
空気が流れる。
- 14 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月14日(木)17時57分05秒
- 「・・・・・・・」
そんな中、私達の横を一番に通り過ぎる少女。
風を切り隣の彼女の髪がさらさらと流れる。
離れていくその後ろ姿をただ黙って彼女は前を向いたまま複雑な表情と共に感じ取
っているようだった。
何かを堪えるような、それとも切ないような、言葉では言い表せられない
複雑な表情と瞳。
私はただその横顔を見つめている事しか出来ない。
「それにしてもさ、近頃石川丈夫になってきたよね。」
その隣で矢口が思い出したように言った。
「そうですか?」
「そうだよ。前みたくおろおろしなくなったじゃない。」
その会話を最後に矢口は安倍と話をしながら楽屋を後にして行った。
- 15 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月14日(木)17時59分18秒
- 「・・・・・・」
隣の彼女は何かを考えるようにただ無言のままそこに立ち尽くしている。
瞳には何も映っていない。
その時の私にはその瞳が少なからずそう見えた。
「梨華ちゃん・・・そろそろ行かないと・・・」
「あ、・・うん。そうだね。」
呼びかけた声にはっと我を取り戻すようにすると彼女は誰もいなくなった楽屋を
後にした。
いつのまにか離れた手。
前を歩くあなたの後ろ姿はどこか寂しい物。
会話もなくなり、ただ目的の場所へと歩く。
今、あなたが何を想っているのか、それを知ることは出来ない。
- 16 名前:作者 投稿日:2002年02月14日(木)18時05分05秒
- >>11-15
更新しました。
- 17 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月14日(木)22時13分51秒
- 気になる関係。。けっこう引きこまれますね
期待してます
- 18 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月15日(金)11時53分12秒
収録もいつも通り何事もなく進みその合間の休憩時間。
「これ、どうぞ。」
「あ、ありがとう。」
新メンバーの高橋愛が控えめに恥ずかしそうに湯気の立つコップを
手渡す。
手渡された彼女、石川梨華がそれを笑顔で受け取った。
それ以降も楽しそうな他愛無い談笑は続き二人の笑顔は絶えることはない。
「・・・・・・」
屈託のない笑顔。
それは彼女が加入した時から、私が出会ったときから何も変わっていない。
何も変わらない笑顔。
だけど本当は何かが変わってしまった。
今だってそう、私があの時からずっと見つめていた笑顔とは違う。
心が、笑っていない。
- 19 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月15日(金)11時54分34秒
「・・・後藤?」
「え?」
掛けられた声にはっとして後ろに振り向く。
するとそこには顔をしかめる圭ちゃんの姿があった
「何ぼーっとしちゃって。ずっと呼んでたんだけど聞こえてなかった?」
「あぁ、ごめん。ちょっと考え事・・・」
すぐに後藤は保田から視線を外すように前に向き直った。
その胸の内は奇妙なぐらいに波打っている。
「吉澤知らない?もうすぐ休み終わるのに・・・」
「・・・知らない。それよりさ・・・」
ただそれだけ冷たくも取れる口調で答えると後藤は再び後ろに振り向いた。
「首にあざ付いてるよ。」
「え!?」
- 20 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月15日(金)11時55分43秒
私の言葉に驚いて目の前のあなたは慌てふためく。
本当は痕なんて付いてないのに。
当の彼女は心当たりがあるのか見えない場所を何とか見つけようと顔を
下に捻っている。
「・・・・・・・」
後ろであたふたする彼女を残し、私は再び前に向き直る。
未だ会話を続ける向こうの二人はまるで本当の姉妹のように仲良く微笑んでいた。
そして向こうからは何事もないように颯爽と歩いてくるあいつが一人。
こんなにも捩れた糸。
解くことはできるのだろうか。
- 21 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月15日(金)11時59分55秒
・・・・・・」
彼女の体が一瞬強張るのが目に入る。
高橋は、それには気付いていないようだった。
隣の彼女の異変よりも、自分のことだけで精一杯らしい。
幸せでしょうがないと言う表情で話しつづけている。
それよりも何よりあの人の体を強張らせた人物。
その人物が向こうからこちらに向かって、いや正しくは後ろの圭ちゃんに向かって
歩いて来るのが分かる。
黙ったまま私はそいつを睨んだ。
矛盾した気持ちの矛先を彼女に向けるのは、そもそもすじ違いなのかもしれないけど。
- 22 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月15日(金)12時04分16秒
「保田さ〜ん。」
距離が縮まり私のすぐ斜め前まで来た時、彼女が圭ちゃんの名前を呼んだ。
「あ、どこ行ってたの?」
「ちょっとトイレに・・・」
気付いたような声の圭ちゃんに答えるその人、吉澤ひとみ。
先にセットのベンチに座っていた圭ちゃんの横に並んで座りそれから何やら会話
をし出した。
後ろの他愛無い会話をどこか冷めた表情で聞き流しながら、私は再び
向こうへ視線を向けた。
「・・・・・・」
会話をしていた彼女の様子が明らかにおかしくなったのが分かる。
それは隣の高橋においても同じようだった。
加護と辻が話しながら二人の下へ近づいてきた。
これから四人で女の子の他愛無い立ち話が始まる、そんな所で彼女が
その場を離れた。
三人に謝るように、悪そうにしながら。
心配させないように今彼女ができる最大限の気を使っているのが分かる。
そして足早に逃げるようにしてスタジオを飛び出す彼女。
三人は首を傾げてその後ろ姿を見送っていたがしばらくすると再び談笑をし始めた。
- 23 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月15日(金)12時05分22秒
「・・・・・・」
消えていく後ろ姿。
何でかは知ってる。
何ともいえない気持ちになり私は無意識に近いほどに立ち上がると、その後ろ姿を
追いかけていた。
「ちょいごっつあん、どこ行くん?」
「ちょっと・・トイレに・・・」
スタジオの扉ですれ違った中澤に話し掛けられたが後藤はただそれだけ一言
答えるとスタジオを飛び出していった。
「何や?そっちトイレのある方向とちゃうやん。」
首を傾げ、中澤がその後ろ姿を見送る。
中澤の言葉は既に耳には入らず、後藤は無我夢中でたった一人の少女の姿を
探すために歩き出していた。
- 24 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月15日(金)12時06分56秒
彼女の消えて行った方向へ行き、心当たりのある場所をくまなく探す。
探し求めていた姿は思っていたよりもすぐに見つけることが出来た。
「・・・・梨華ちゃん?」
しばらく言葉もなくただ辺りを探していると、使われていないスタジオの
薄暗い廊下で扉に背を凭れさせ彼女は存在していた。
石川は不意の声にびくつくように反応し、恐る恐る顔を上げる。
「・・・ごっちん・・」
その姿に安心するように、石川は声を漏らした。
胸を撫で下ろす、そんな表現が今の石川によく似合う。
後藤はただ黙ったまま、その場で石川の言葉を待っていた。
「・・・はぁ、もうやだぁ・・・」
二人の距離を縮めないまま、石川が自嘲気味に言いながら額に手をやり俯いていた体を
仰いだ。
「もうやだよ・・こんなの・・・」
小さくため息混じりに口元を緩め、独り言をただただ口から漏らす。
後藤はそんな石川の姿に対し、既に黙って見てはいられない感情に囚われていた。
何にぶつけたらいいのか分からない感情が、ふつふつと胸の中に煮えたぎる。
- 25 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月15日(金)12時08分02秒
「っ・・・」
「ねぇ・・・・」
心を決め何か言葉を掛けようとした時、タイミングを合わしたかのように石川の声が
後藤の言葉を遮った。
「側に来て・・・」
「梨華ちゃん・・・」
石川の様子、態度に、後藤は一瞬にしてこれからの起こる事に察しがつき躊躇った。
だがそれでも今の石川の状態を放ることなど出来ず、ゆっくりと石川に向かって
歩を進めた。
すぐに二人の距離は0に等しくなる。
石川は仰いでいた顔を再び俯かせるとその華奢な体を、その肩を小さく振るわせた。
- 26 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月15日(金)12時09分15秒
「梨華ちゃ・・」
「ごっちん・・・っ・・!」
何か堪えていた物を吐き出すかのように、石川はすぐ目の前に近づいた後藤に
抱きついた。
「梨華ちゃん・・」
「つらい・・よぉ・・・」
抱きついた胸の中で詰まった声を出し石川が言葉通りに心を訴える。
その体は捨てられた子犬のように、何かに怯えるかのように絶えることなく
小さく震え続けていた。
後藤は何も言わずただその体を受け止めた。
「ひっく・・・お願・い・・・」
「・・・・・・」
涙を溢れ出せながらただ切なげに呟く石川の言葉に後藤は何も答えることが出来ず、
ただ困ったように言葉を失う。
- 27 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月15日(金)12時10分38秒
気の利いた言葉の一つも浮かばない。
どんなに器用な人でも、この状況下で腕の中の彼女に上手い言葉を掛けられる人
なんてどこにもいないと思う。
だけど、それでも後藤はそんな自分を恨まずにはいられない。
石川はただ後藤の胸の中で涙を流しつづける。
小さくすすり泣く声だけが暗い廊下に響き渡る。
何も抵抗しない、何も言葉も掛けてこない、そんな後藤にその胸の内を見抜くように
石川はそのまま後藤の首に腕を回すと唇に自分の唇を近づけた。
「・・・・・・」
近づいてくる唇。顔。
その瞳は演出でもされたかのように涙という潤いを秘めこの場には不似合いな
気持ちに後藤をさせる。
- 28 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月15日(金)12時12分32秒
「・・・ん・・・・」
かなしばりにあったように、後藤の体は抵抗するという事を忘れてしまった
かのように微塵も石川に対して何も行動を取ろうとしなかった。
深くて、きつすぎるぐらいの口付けに後藤はただ目を瞑り戸惑うように
声を漏らすことしか出来ない。
絡まる互いの舌。
幾度も口付けした彼女の唇。
それでも慣れる事なんてない。いつでも胸は跳ね、この感覚に自分が囚われる。
二人の繰り出すメロディが廊下に響き渡る。
薄く瞳を開く。
するとそこには涙を流したままただ悲しみを忘れようと自分の唇を味わうだけに
没頭した彼女がいた。
その表情は見ていてもつらくなるぐらいの切なくて悲しい物。
キスから生み出されるのはこれ以上ないぐらいの快感、気持ちよさ、だけどそれは
私の心の中までは満たしてはくれない。
ただ、今以上に冷たく、冷やさせるだけ。
- 29 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月15日(金)12時13分34秒
ただ夢中で絡めていた舌は唾液の糸と共に離され、そのまま彼女の唇は
飢えた獣かのように私の首筋にいくつもの痕を残していく。
何もかも知っている。
あなたの心の傷も、関わっている全ての人の気持ちも。
だけどそれら全て、決して交わらない想い。
今の私はこうしてあなたを慰める事しかできない。
「ふぁっ・・・!」
あなたが繰り出す快感を余所に、私の瞳からは熱い涙が溢れ出しそうになって来る。
何度も見ても、顔を背けたくなる。背けてきた。
私の大好きなその瞳。
いつだってそう、それには私が映らない。
溢れた涙が瞳から溢れ、頬を伝った。
こんなにも心とは裏腹に火照る体が嫉ましい。
- 30 名前:作者 投稿日:2002年02月15日(金)12時20分45秒
- ・・・21の一番最初、「 が抜けてますね・・。
すいません、これからはないように必ずチェックします。
17:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
登場人物達の関係は魅力的にというかこれからもっと
引き込まれるように書きたいと思ってます。
期待に答えられるか少し不安ですが(汗)
がんばります。
- 31 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月15日(金)17時57分16秒
- これは複雑ですな〜人間模様・・
- 32 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月16日(土)20時10分50秒
番組収録も終わり、雑誌の撮影、取材、今日の仕事は全て終わり、今はそれぞれ
帰宅準備中。
新メンバーは加護辻も含み帰宅の準備をしながら一つのグループに固まっている。
飯田は既に帰り安倍と矢口は今度のオフについて話していた。
そんな中、
「保田さ〜ん!」
一際大きく元気な声が楽屋に響く。
しかし楽屋にいるメンバー達はそれぞれ自分の事に忙しくその大きな声に振り向く事
はしない。
「何さ。」
呼ばれたその人は振り返りながら何でもないように答えた。
「今日、寄ってってもいいですかぁ?」
「別にいいけど・・・まさか夕食も取っていくつもり?」
「もちろん!」
小さくため息を付き、しかしどこか嬉しそうにする保田と子供のように
無邪気に喜ぶ吉澤。
愚痴を零す保田に吉澤が笑いながら誤魔化す。
そしてそのまま二人はメンバーに挨拶し、楽屋を後にして行った。
- 33 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月16日(土)20時13分27秒
- 「あの二人仲良いね。」
矢口が二人の消えて行った楽屋の扉を見ながらふと呟いた。
「どちらかと言うとよっすぃーが圭ちゃんに、って感じだけどね。」
独り言のようにして言った矢口の言葉にしっかり聞いていた安倍が答える。
「もしかして付き合ってたりして。んなわけないか、あの二人に限って。キャハハハ!」
最後に特有の高い笑い声を響かせ矢口は楽しそうに安倍と一緒に「お疲れさ〜ん。」と
残るメンバーに告げると楽屋を後にして行った。
「お疲れ様でしたぁ!」
新メンバーの四人が二人の背中にきっちり頭を下げ、一日の終わりの挨拶を掛ける。
加護と辻はその後ろで気楽に「お疲れさまでしたぁ〜。」と告げるとすぐに六人も
輪を作り立ち上がった。
- 34 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月16日(土)20時14分19秒
- 「それじゃうちらも帰ります。梨華ちゃんに後藤さんお疲れ様でしたぁ。」
加護の言葉を合図にメンバーが続いて挨拶をする。
後藤も石川も、それに対して軽く微笑み一言だけ同じように言葉を返した。
六人が楽屋から列を成して出て行く。
列の一番最後は高橋だった。
ちらっとまるで恋する女の子が好きな人を盗み見るように、石川の横顔を見るのが
後藤の目に入った。
高橋のどこか名残惜しそうな表情を残して最後にパタンと扉が閉まる。
- 35 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月16日(土)20時19分25秒
- あっという間に今さっきまでうるさく、せまかった楽屋がいきなり静寂と
どこか寂しさを漂わす広さに包まれる。
二人だけの楽屋、そこにすぐに会話は出てこなかった。
気まずい雰囲気の中、二人の背中は対面したまま。
後藤に今ここに流れる沈黙を破る気持ちは現れては来なかった。
ただ何かの変化を待つように、そのままの体勢のまま口を閉ざす。
「ごっちん・・・」
「・・・何?」
「・・・・・・」
開かれた口はそのまま自分を呼びかけたまま言葉を失う。
言葉を発するよりも、違う事が頭の中を占めているようだった。
「今日・・・家に、来ない・・・?」
「・・・・・・」
次に言葉を失うのは自分の番だった。
後藤は俯きながら今の石川の言葉を頭の中で何度も巡らせていた。
それと共にどう答えたらいいのかを必死に考える。
正しいのはどちらなのか、YESかNOか。
私の気持ちは・・・?
どちらなら正しい・・・。
答えなんて・・・あるの・・・?
- 36 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月16日(土)20時22分15秒
「・・・来て・・・」
「・・・!」
視線を感じ、後藤は顔を上げた。
するとそこには正面の鏡の向こうから切なそうに、ただ懇願するような表情の石川がいた。
後藤は楽屋に戻ってきてからずっとこの鏡の前にいた。
石川の言葉に対して考えていた時を含む今までも、そして今もずっと見られていたらしい。
なぜだか顔が微かに熱くなるのを感じた。
「お願い・・・」
近づいた石川が後ろから後藤の手を上から握り肩に顔を乗せる。
「・・・・・・」
考えるよりも、胸の中では鼓動が大きく響く。
体は何よりも気持ちに正直らしい。
「うん・・・」
握られる手を小さく微かに握り返しながら、後藤が顔だけ石川の方へ微かに向けて
ただ一言それだけ答えた。
握り返した手が震えそうになるのを必死に押さえつけながら。
自分の出した答えはどんな時でも矛盾している。
していない時なんか・・・ない・・・。
- 37 名前:作者 投稿日:2002年02月16日(土)20時30分45秒
- 31:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
何より励みになります。
複雑に絡み合った関係・・・これからの進んでいく展開、
見守っていただければ感謝です。
- 38 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月16日(土)22時14分48秒
- うぅ〜…
どんどん気になっていきます
頑張ってください
- 39 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月17日(日)22時58分55秒
そのまま二人は石川のマンションへと向かった。
買って来た食材で夕食を作るのは他でもないキッチンを借りてその場に立つ
後藤真希、彼女だった。
作ると言い出した石川を後藤が半ば強引に遮ったのだ。
自分の方が上手だからと言い訳をつけて。
石川はそれに対しいつものように笑って言葉を返していたが、それも
全て後藤は制した。
1DKの部屋に包丁の小気味いい音が小さく響く。
石川は言われた通り部屋の真ん中でテレビを付け、適当に眺めている。
その後ろ姿を後藤が部屋のすぐ隣にあるダイニングからちらっと覗く。
平静を装っているが、石川の心の中は外からでは分からないぐらいに
ひどく疲れていることを後藤は知っていた。
沈んだ気持ちを癒す間もなく仕事だらけの毎日。
その結果、彼女の中に刻まれた極限の心の傷、それが生み出したものは
彼女の作られた笑顔。
- 40 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月17日(日)23時00分51秒
「・・・・・・」
いつのまにか後藤の目には何も映っていなかった。
すっかり自分の世界に視点が向けられていた事に気付く。
そしてそれと共にぼんやりと瞳に映し出されていく物は包丁が切っていた野菜の数々。
包丁も既にその動きを忘れ、握られたままの形で止まっている。
しかしすぐにその動作を再生する気は起こらずまだその体勢のまま
考えを頭に巡らす。
(そう、あの時から・・・梨華ちゃんとの関係がおかしくなったのも・・・)
- 41 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月17日(日)23時01分38秒
- 「ごっちん?」
「!」
突然掛けられた言葉に体をびくつきさせ反応する。
胸の中で高鳴る鼓動をなんとか落ち着かせようとしながら平静を装って
声の聞こえた方に静かに顔を振り向かせた。
「どうしたの?なんか変だよ?」
「・・・・・・」
いつのまにか目の前まで来た彼女の姿にしばらくの間何も言葉を返せず
ただ呆然としたままその場に立ち尽くす。
そしてなぜか一瞬目の前の部屋を見た。
今自分の隣に居る彼女が本当にその人かどうかなぜか不安になった。
「ごっちん・・・?」
「・・・ごめん、何でもないの・・・。」
隣で顔を覗き込みながら首を傾げる石川に後藤はそれだけ一言答える。
- 42 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月17日(日)23時02分52秒
「?」
明らかに様子のおかしい後藤に石川は首を傾げつづける。
隣の石川の視線と疑問を感じながら、後藤は再び止まっていた体を無理やり
動かさせた。
(・・・問題なのは・・・)
心の中で小さく呟く。
気付かれないように、微かな声で。
(気付いていない・・・ということ・・・)
最後の言葉を胸の中で小さく呟いた時ちょうど、
頬に柔らかく暖かい感触を受けてそちらに目を向けた。
「・・・!」
何か分かる前に、感じたものは唇の感触だった。
瞼を閉じた彼女の顔が目の前にあった。
一瞬のそれはゆっくりと離される。
- 43 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月17日(日)23時04分16秒
「ごっちん・・・」
ほんの数秒戸惑うようにただ言葉を発しないまま彼女の顔を見つめていると、
何かを誘うような瞳と声で横から体をきつく抱きしめられた。
一瞬にしてこの場に流れる空気が妖しい物に変化するのを感じる。
彼女のその腕は細く華奢な体にも関わらず自分を力強く抱きしめる。
同時に腕に感じる感触に後藤はかぁっと顔を赤らめると重なる体を離すように、
そしてこの流れ出した空気を中断させるように、間に手を差し入れた。
「・・・ダメだよ・・・」
「・・・!」
胸の中で高鳴る鼓動と、震える体を必死に押さえつけながら後藤が石川を
前に押し出す。
後藤の態度に戸惑いながら石川はただ黙ったまま悲しげな表情で後藤を見つめた。
「夕食・・・作るから・・・・」
自分に向けられるその憂いを秘め、どこか色気さえも含み潤うその瞳を直視することが出来ず、
後藤は向こうへ顔を無造作に背けて目を合わせないようしながら小さく呟く。
- 44 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月17日(日)23時06分20秒
「・・・うん・・」
石川はただ寂しげな表情のまま一言だけ答えるとそのまま沈んだ様子のまま向こう
の部屋へと戻って行った。
小さくなるその寂しげな背中をしばらく見つめながら、後藤は思い出したように
切った野菜をフライパンへと入れた。
食欲を誘うような音を立て、それらがフライパンの中で躍る。
「・・・・・・」
手際の良い手つきで野菜を炒めながら再び後藤は自分にだけに小さく問い掛けた。
(どうして・・・・)
その答えは闇の中に静かに物音立てず消えてなくなり、
答えはそこからは返っては来なかった。
- 45 名前:作者 投稿日:2002年02月17日(日)23時08分27秒
- 38:名無し読者さん
>嬉しいお言葉ありがとうございます。
期待を裏切らないよう、がんばりたいと思います。
- 46 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年02月18日(月)01時09分13秒
- なんとも切ない話ですなあ。
いったい梨華ちゃんとごっちんとよしこの間で何があったのでしょうか。
気になります。更新楽しみにしています。
頑張ってください。
- 47 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月18日(月)03時17分15秒
- これからの展開に
不安なドキドキを感じてます 続きがかなり気になる
- 48 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月18日(月)21時12分50秒
中華風野菜炒めとご飯、お味噌汁、そして焼き魚と和風では定番の食卓で
テーブルが賑わう。
湯気を立て視覚からも食欲をそそるそれらに石川は嬉しそうに顔を綻ばせながら
向こうから最後の片づけを済ませエプロンを外す後藤を待つ。
後藤が戻ってくると石川は笑顔と共に「いただきます」と手を合わせ頭を下げると
さっそく箸を持ちどこから食べようか迷っているようだった。
絶える事のないその笑顔を前にしながら後藤にも自然と笑顔が浮かぶ。
久しぶりに、本当に久しぶりに彼女の自然な笑顔が見れた気がした。
飾らないままのただ純粋なその笑顔。
小さな子供のように無垢で何よりも愛しい。
好きな人のために料理を作る。
忘れかけていた気持ちが後藤の中にも蘇ってくるのを感じていた。
しかし幸せをかみ締める中、同時にこのほんの瞬間にでしか過ぎない幸せに
何か悲しさを覚える。
- 49 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月18日(月)21時13分51秒
- 「・・・・・・」
箸を持っていた手が力を無くし、静かに止まる。
同時に熱い涙が目じりから零れ落ちた。
「・・・ごっちん?どうしたの?・・・泣いてるの・・・?」
俯き、箸の止まった後藤の顔を石川が覗く。
目に映った後藤の瞳が潤っている事に気付き石川は自分の事のように同じように
悲しい表情をした。
「・・・ううん、大丈夫。ちょっと・・・今さっき玉ねぎ切ったから・・・」
べたな言い訳と共に涙が一粒流れ落ちたその瞳を指で拭った。
「大丈夫・・・?」
まだ心配そうにする石川に後藤はわざと元気良く俯いていた顔を上げた。
「大丈夫だよっ。もう平気だから・・・」
笑顔で話す後藤に石川も自然と笑みを零す。
- 50 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月18日(月)21時14分35秒
中断していた食事が再開され他愛無い会話と共に皿の上の料理は確実に
減っていく。
(気付いてない・・・)
静かに瞳を閉じ、後藤は再び胸の中で小さく呟いた。
誰も悪くない。
だからたちが悪い。
誰も悪くないから・・・。
閉じた瞳を開くと共に、再び胸の中が熱くなるのを感じた。
- 51 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月18日(月)21時15分19秒
- 「それじゃもう少ししたら帰るね。」
食べ終わった皿を全て洗い終わりエピロンも畳みキッチンの台へと置くと
後藤は一緒に皿洗いをし、先にリビングに戻っていた石川の元へ行き、隣に
腰を掛けながら言った。
「え・・・?」
突然の言葉に石川は意味が分からないかのように後藤の方へ振り向き戸惑うように
首を傾げる。
不安そうな瞳、訴えかけてくる気持ち。
それだけで後藤には石川の真意は伝わっていた。
「明日も仕事あるし・・・」
悲しむような表情に後藤は胸を痛ませながらそれだけ答えることしか出来ない。
本当は一緒に居てあげたい、けれど・・・。
「・・・帰っちゃうの・・・?」
確かめるような言葉に後藤はただ黙ったまま静かに頷く。
- 52 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月18日(月)21時16分10秒
- 「どうしても・・・?」
「うん・・・」
繰り返される言葉はただ健気に今とは反対の言葉をひたすら待つかのように
掛けられる。
だけど私は答えを変えるわけにはいかない。
「・・・やだよ・・・・・・」
「!」
しばらくの沈黙の後、彼女の意思の言葉と共にきつく抱きしめられた。
「梨華ちゃ・・・っ・・・!」
「・・・・・・」
何か言葉を発する前に、その開きかけられた唇を塞がれてしまう。
もう何も聞きたくないと訴えるかのように。
- 53 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月18日(月)21時17分12秒
- 「・・・むぅ・・・ぅん・・・っ・・・」
巧みな動きに微かな抵抗さえもすることもできない。
少しでも体を離そうと唇が重なったまま体を後ろにずらすが、背中に回されていた
腕はきつく首に回される。
しばらくすると後藤はその甘くとろけるような感覚に頭の中は真っ白にただ
ぼーっと口付けに酔いしれていた。
閉じることを忘れていた瞳を静かに閉じる。
全ての感覚を彼女と絡まる舌に集中させ、彼女の繰り出す甘い快感だけをただ
味わうように、目の前の服をぎゅっと掴む。
この瞬間だけは、後藤はいつもとは異なり自分からも積極的に石川を求めていた。
石川もそれに戸惑うことなく自分に向けられるそれを全て受け止め返していた。
いつもの一方的なキスとは異なるそれは長い間続けられた。
- 54 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月18日(月)21時18分27秒
- 「はぁ・・・はぁ・・・・・・」
石川の前ではしたこともないぐらいに後藤は息を荒くさせると虚ろな瞳を微かに
節目がちに開く。
「・・・ねぇ、ごっちん・・・私の事嫌い・・・?」
少しの間を置いた後、同じく息を荒くした石川がそれを落ち着かせてから言った
その言葉に後藤は強く首を左右に振った。
絶対に違うって、否定するように。
「それじゃぁ、好き?」
「・・・うん」
どこかに恥ずかしさという物を含んでいるのか、それに対してはただ静かに頷いた。
「だったら・・・・・・」
言い訳するように囁きながら石川は後藤のその既に力の失われ床にただ無造作に置かれる手を取った。
「っ!」
「しようよ・・・・・・」
感覚の失われたその手を石川は自分の胸に当てた。
- 55 名前:作者 投稿日:2002年02月18日(月)21時29分08秒
- すいません、変な所で切っちゃいました。
ここで切らないと結構きつくなってきてしまうので…。
46:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
切なさはこれからもまだ続きそうです。
がんばります。
47:名無し読者さん
>どうも私のは展開の進み具合が遅いみたいですが、
ゆっくりとがんばりたいと思います。
レスありがとうございます。
- 56 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月19日(火)13時33分02秒
- 好きです。更新楽しみにしてます
- 57 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年02月19日(火)14時22分41秒
- すんごくこの話が好きです。どんどん切なくなってください。
更新楽しみに待っています。頑張ってください。
- 58 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月19日(火)20時26分25秒
優しく掴まれた手の行き着く先は自分でも予想もしなかった所だった。
「あ・・・・・・」
突然のことに私はただ戸惑うような声を漏らす事しか出来ない。
力の抜けきった自分の手からは自分の意志とは関係なく彼女のぬくもりが伝わってくる。
暖かくて優しいぬくもり。
どんな人の温度よりも・・・自分を誘う・・・。
「ね・・・?」
胸に当てた手の上に彼女は自分のを重ねると徐々に溢れていく意思を強くさせるかの
ように自分に小さく呼びかける。
目の前のその甘く潤んだ節目がちの瞳は、私を誘うように真っ直ぐ向けられる。
優しい胸の音が、手を通して私に届き交じる。
無意識に、自分の手の力が微かに強くなるのを感じた。
- 59 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月19日(火)20時42分35秒
「だっ・・・」
「私もごっちんのこと、好きだよ・・・?」
今にも崩れそうになる脆く儚い理性を必死に奮い立たせ言おうとする抵抗の言葉を
彼女は何よりもずるい言葉で遮る。
そして重なる私の手を優しく撫でた。
掛けられた言葉に後藤は全ての言葉を失った。
魅力的な言葉、それは理性を取り払い今にも自分を爆発させようとする。
嬉しさと、怖いぐらいに生まれてくる彼女を求める気持ち。
だけど、それを遥かに上回る悲しさと切なさ。
「違う・・・」
つい取って出た自分の飾らないままの真意。
私の欲しい「好き」はそれじゃない・・・。
- 60 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月19日(火)20時43分42秒
- 「ごっちん・・・?」
「ダメだよ・・・こんなの・・・ダメ・・・・・・」
既に何も映さなくなった自分の瞳は虚ろにただ力をなくす。
自分の心を映し出すかのように、ただそれは言葉ないまま中を泳ぐ。
無意識に強くなっていた自分の手の力も静かに音を立てず抜けていくのを感じた。
「・・・・・・」
返って来た言葉に石川は呆然とし、ただ無言のまま掴んでいた手を力なくしたように
静かに離すと重力に従い床にぶらんと落とした。
「梨華ちゃ・・・んっ・・・!」
俯く先の表情が掴めず、不安で揺れる心を必死に落ち着かせながら顔を覗こうとした。
しかし気付いた先には自分の両手首は捉まれ、体は床に強引に押し倒されていた。
「梨華ちゃん!?」
不意の行動に後藤は戸惑いと驚きを含み石川を呼んだ。
しかしすぐにその開いた口は言葉を失う事になる。
- 61 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月19日(火)20時44分49秒
- 「っ・・・!」
「どうして・・・・・・」
頬に感じる熱い何か。
その感触を感じる間もなく、後藤の瞳に映った物は上からただ言葉と共に
涙を流す石川の姿だった。
次から次へと頬に落ちる涙の感触。
石川はただ言葉では言い表せないほどの悲しい表情で後藤を見下ろす。
そんな石川の姿に、後藤は何も言葉を返す事が出来ない。
「楽に・・・なれるのに・・・どうしてしてくれないの・・・・・・?」
疑問を最大に含む言葉は悲しく私に向けられる。
同時に捉まれる手首を更に強く握り締められた。
「・・・・・・」
返す言葉は何より、頭の中は何も考える事ができない。
悲しさと切なさだけが自分を占める。
- 62 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月19日(火)20時48分14秒
「・・・ごっちん・・・・・・」
自分を呼ぶ、囁くような切ない声と、その不思議なくらいに何か色気を含む
節目がちの瞳と共に、押さえつけられ成す術のない自分の唇に彼女の細く長い綺麗な
指が触れる。
一瞬でぞくぞくする感覚に囚われた。
愛しむように、何か大切な物に触れるその手つきが彼女との屈折した関係とは裏腹に
心の中まで熱くさせる。
指は静かに優しく唇を伝って頬に触れる。
そしてゆっくりと彼女の顔が近づいた。
近づいてくる彼女の悲しげな顔を、私はただ何も抵抗せず瞼を落とすと静かに待った。
暖かく、だけど冷たい唇が触れる――――そんな時だった。
- 63 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月19日(火)20時49分10秒
- ♪♪♪♪♪
この場には不似合いの携帯の着信音がけたたましく部屋に木霊した。
「!」
突然の第三者の登場に、動揺するように私は体を跳ねさせた。
「・・・・・・」
体を押さえつける彼女の力も、微かに失われたのを感じる。
しばらく頭の思考回路が働かず、胸の中でこれでもかというくらいに跳ねる音に
戸惑っていたが、その音を鳴らす正体が自分の物だと気付く。
「ご、ごめん・・・」
なぜか謝りながら、私はそれから静かに体を解放させると、バッグの中を急いで漁った。
向こうでは床にぺたんとただ呆然と座り尽くし、何も映さない瞳を正面にただ向ける
彼女の姿があった。
「・・・っ!」
未だ鳴り続ける携帯を探し出し、やっと画面に目を向けた時、一瞬時が止まったかのような感覚に陥った。
- 64 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月19日(火)20時49分45秒
- 『圭ちゃん』
携帯の画面にはただ冷たくその人の名前が表示されていた。
携帯を持つ手が徐々に震えてくるのが分かる。
何かが、今の私の状況に示し合わしたかのような怖いぐらいの偶然。
それに反応するかのように。
「・・・・・・誰?」
ただ唖然とし、携帯を見つめたまま出ようとしない私に彼女は気付いたのか
感情のない、冷たい言葉を掛けて来た。
「え!?あ、その・・・・・・」
不意に掛けられた言葉に私はこれでもかと言うくらいに動揺し、声を上ずらせる。
こんなにも自分は嘘を付くのが下手なのかと思い知らされた。
- 65 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月19日(火)20時51分03秒
- 「誰なの?」
明らかにおかしくなった後藤の様子に石川はいかがわしい物でも見るような表情で
近づく。
「・・・・・・」
後藤は体を寄せ近づいてくる石川に何も言葉を返す事が出来ず、ただ微かに後ろに
たじろいだ。
「ごっちん・・・!?」
「っ!」
携帯を持ったまま、後藤の体が再び強い力で床に押し倒される。
今さっきよりも、比較できないほど簡単に後藤は体のバランスを崩した。
それと同時に今の今までずっと鳴り響いていた携帯の着信音は一旦止み、そして再び
気を取り直したかのようにこの場には無情なぐらいに元気良く鳴り響く。
「あっ・・・!」
押し倒され、抵抗する力が弱くなった後藤の手から石川は携帯を奪った。
- 66 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月19日(火)20時52分01秒
- 「・・・・・・」
自分を押し倒したまま、携帯の画面を確かめる石川の体が一瞬強張るのを
後藤の目に映る。
自分と同様、心の中は一瞬にして冷たく凍ったように動揺したようだった。
携帯を持つ手が微かに震え出す。
「り、梨華ちゃん・・・」
肘を付き、どんな言葉を掛けようと考える前に後藤は上半身を起こそうとした。
しかし全てその行動が取られる前に、ずっと携帯を見つめていた石川の口が
静かに開かれた。
「この人は・・・」
それは何の感情を秘めないような口調。
しかし本当は必死に露になろうとする感情を押し留めようとしているようだった。
「この人は何もかも・・・私の邪魔をするのね・・・・・・」
言いながら強く携帯を握り締めたかと思うと、鳴り響いていた携帯を静かに切った。
そして携帯の電源を、もう二度と着信音を鳴らさないように切ると、石川は
それは向こうへ放り投げた。
- 67 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月19日(火)20時54分08秒
「梨華ちゃ・・・・・・っ!」
胸に沸き起こってくる痛いほどの何かの感情に、後藤は石川に手を指し伸ばそうとした。
しかしその手が行き着く前に、強く握り締められたかと思うと次に後藤の唇は乱暴に
石川によって奪われていた。
「ん・・・!」
今さっきとは比べ物にならないぐらいに冷たくて強引なキスに後藤は戸惑いを隠せない。
「・・・めん・・・ごめんね・・・・・・」
「・・・え・・・?」
唇が離れ、とろんとした瞳と紅潮する頬の後藤は、その直後に何か言葉を聞いた気がした。
しかしそれ以上彼女の言葉を聞くことなく、後藤は最後まで果てることになる。
悲しくも、最高の快感に――――
- 68 名前:作者 投稿日:2002年02月19日(火)20時57分30秒
- 56:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
とても励みになります。がんばります。
57:いしごま防衛軍さん
>有難いお言葉いくつもありがとうございます。
ゆっくり、無理せず頑張りたいと思います。
- 69 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年02月20日(水)00時01分54秒
- いったいこの4人の間には何があったのでしょうか。
すんごく気になります。でも、ごっちんと梨華ちゃんの関係は
切な過ぎる。自分を引き付けて離しませんねえ。
更新楽しみに待っています。頑張ってください。
- 70 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月20日(水)02時04分43秒
- 強引な石川攻めも新鮮でぃぃですね
- 71 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月20日(水)02時07分13秒
- 切ないけどマジ面白いっす!
続き楽しみです。
>ゆっくり、無理せず頑張りたいと思います。
ホントに無理せずお願いしますね。
マターリと頑張ってください。
- 72 名前:作者 投稿日:2002年02月20日(水)22時59分28秒
- 69:いしごま防衛軍さん
>ありがとうございます。
切なさが伝わっているみたいで嬉しいです。
引き付けて離さない…感謝ですm(__)m
70:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
実はいしごまでどちらかが黒く書きたかったんです。
黒い後藤も迷いましたがせっかくなら新しい石川にと…。
新しい事は受け入れられないことや不発することが多いですが
良い感じに受け取って貰っているみたいで感謝です。
71:名無し読者さん
>おぉ!?もうばれちゃったんでしょうか?
書いてても自分が出てるなとは思ってたんですが…。
矛盾してますが嬉しいです(w
気遣いありがとうございますm(__)m
がんばります。
- 73 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月21日(木)21時00分53秒
翌日。
早朝、後藤は先に目を覚ますと隣で安らかに眠る石川に書置きを残し一人自宅へと
向かった。
熱いシャワーを浴び、服を着替えた後、軽い朝食を食べ再び仕事場へと向かう。
思った通りそこには誰も姿はなく、自分が一番始めだった。
「ふぅ・・・・・・」
ソファに腰を掛け、一人だけの空間から窓の向こうを所在無さげに見る。
青い空に白い雲が綺麗だった。
もし今、空が今みたく綺麗に澄み渡っていない灰色の雲で覆われる天気だったら、
自分の気持ちは果てしなく暗く沈んでいただろう。
胸の中で密かに今の空のご機嫌に感謝しながら、後藤はふと思いを巡らした。
(あれ・・・いつだっけ・・・・・・)
遠い昔の思い出を振り返るように、後藤は瞳を過去へと向けた。
- 74 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月21日(木)21時05分28秒
ずっと私はあなたのことを見つめていた。
あなたが加入した時から、出会った時からずっと。
だけど最初は触れ合う機会など0に等しく、言葉通りただ見つめるだけの想いを
胸に秘めていた。
可愛い笑顔と今まで自分が付き合ってきた同性の友達ではいないほど女の子らしい
性格。
出会った時に芽生えた感情が、時が経つに連れて益々膨らんでくるのを感じていた。
見ているだけで良いなんておしとやかな性格ではない自分は、彼女を知ってから
日に日に関係を深くしたいと思う感情に囚われていった。
だけど現実は冷たく、私の想いは募るばかりで彼女と言葉さえも交わさせてはくれない。
そして悲しくも見つめていれば分かり始めるいろんな事。
たぶん、彼女自身が自分の気持ちに気付く前に、私は彼女の心の奥底に存在する
その気持ちを知っていたと思う。
- 75 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月21日(木)21時10分52秒
私の瞳に映る彼女はいつだって違う人を見つめていた。
不思議と最初は、戸惑いは溢れなかった。
だって納得できるから。
全く同じ境遇で出会った二人は私が入り込めないぐらいにいろんな困難を
乗り越えてきたんだと思う。
つらい時も、悲しい時も、そして嬉しい時も二人は二人でしか共有できない同じ物を
かみ締めてきたんだろう。
そんなの見ていたらすぐに分かる。
だからすぐに納得できた。だけど涙は自然と溢れて来ていた。
それからやっと、新メンバー加入からしばらく月日が経ち、やっと仕事にも慣れ
彼女達の活躍が軌道に乗ってきた頃、私も離れていた距離を縮めることが出来た。
初めて名前で呼んでくれた時、すごく嬉しかった事覚えてる。
初めてあなたがセンターを取り、隣同士で踊れた時、やっぱり嬉しかった。
悲しみは日々の楽しい出来事により胸から溢れてくる事はなくなったが
彼女への気持ちは自分の中から失われる事はなかった。
そんなある日・・・・・・
- 76 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月21日(木)21時16分34秒
その日の全ての仕事が終わり、夕日が沈み始め紅い光で廊下が照らし出される
そんな時。
上の方から何やら人の話し声と気配に気付き廊下をただのんびり歩いていた私は
そちらに向かい、顔を仰がせた。
するとすぐにその人通りの少ないスタジオ近くの屋上手前にある階段の踊り場で
二人を見かけることになる。
何やら張り詰めた空気の中、私はいつもの要領で二人に声を掛ける事が出来ず
ただそのまま開きかけた口を急いで閉じ、とっさに近くの壁に隠れた。
- 77 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月21日(木)21時18分19秒
「好き・・・なの、よっすぃーのこと・・・」
「!」
聞こえてきた声はいつもの可愛く甘い私の大好きな声。
だけどその言葉の内容は私が予期もしない物だった。
何の準備も出来ずに出くわした彼女の気持ちの言葉を耳にした事に、私は身を隠したまま
深く動揺する。
それからしばらくの沈黙があった。
まさか今さっき聞こえた声は幻聴だったのかななんて自分に都合よく考えてみたりもして
暗い踊り場に顔を密かに向けてみる。
しかし確かにそこには二つの影があった。
密かな期待は無残にも裏切られ、今の現状を目のあたりにした後藤はただ静かに
顔を戻し壁に寄りかかった。
自分の想いは伝わらないままこの片思いは空しくも終っちゃうのかな?そんな考えが
頭によぎった時だった。思ってもいなかった次の言葉が発せられたのは。
- 78 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月21日(木)21時23分02秒
「・・・ごめん、私梨華ちゃんのこと親友以上には見れない。」
不意の言葉に私は目を見開いた。
どういう意味なのか分からず、しかも動揺する心はもはや止めることが出来ない
ため今にも口からは戸惑いの言葉が出てきそうだった。
そしてどうしてなのかその場に飛び出しよしこに対し問い詰めたいと思う気持ち。
だけど自分はここには本来登場しないはずの人間。
咄嗟に働いた理性が今にも飛び出そうとする自分の体を必死に押さえつける。
- 79 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月21日(木)21時24分54秒
「え・・・?」
「それに・・・私好きな人がいるから・・・・・・」
思ってもいなかった気持ちは彼女も自分同様だったらしい。
悲しすぎるぐらいに今にも消えいりそうなほどの小さい声が微かに震えながら聞き返す。
しかしそれに答えたのは無情なほどの答え。
「付き合ってるんだ。保田さんと」
次々に発せられていく新しい事実に同じ仲間としても親友としても私は
すぐに理解する事が出来なかった。
確かにプッチモニの時とか仲良かったし一緒にいる時間も多くて近頃仲良かった
みたいだけど・・・。
- 80 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月21日(木)21時26分26秒
「そう、なんだ・・・・・・」
「だからごめんね・・・・・・今までどおり、これからも友達のままでいて」
悪気はなかったんだと思う。
よしこの性格はよく知ってるから。
ぶっきらぼうでクールな性格から発せられた言葉は、それを言葉にした本人でも
気付かないぐらいに無情で悲しい物だった。
この状況にこの言葉。
よしこはもう何も話すことはないと言うかのようにその場を後にする。
「・・・・・・・・・」
私はずっと壁に背を凭れさせ、その後ろ姿が遠くなるのを見つめていた。
そしてその時、今まで感じたこともないぐらいに胸が痛くなったのを覚えてる。
今の梨華ちゃんの気持ちを、今までのよしこを見つめていたその瞳を思い出すと、
同じぐらいに胸が悲しくなる。
不思議と、この時梨華ちゃんを振ったよしこにも、振られた梨華ちゃんにも
個々の感情を自分の体は生み出すことはなかった。
- 81 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月21日(木)21時28分58秒
「・・・うっ・・・うぅ・・・・・・」
しばらくして、徐々に聞こえてくる彼女のすすり泣く声。
時に息を吸い込むしぐさが何より切なかった。
確実に大きくなっていく彼女の悲しすぎるほどの嗚咽。
私はずっとそれを壁の向こうで聞いていた。
胸の中では絶え間なく衝撃に近い痛みが無数に走る。
波打つ自分の心は同じぐらいに悲しくて、計り知れないほどやるせなくて。
泣いてる彼女がそこにいるのに何もできない自分が歯がゆかった。
そう感じた時だった。
自分でも気付かないうちに、私の体は物音立てずただ静かに動き出していた。
気付いた時には自分の体は彼女の目の前に、今さっき二人が存在していた踊り場に
私は存在していた。
- 82 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月21日(木)21時33分50秒
「ごっ・・・ちん・・・?」
瞳に映った物は、目の前にいた彼女は、もう立っていることも叶わないかの
ように体を小さく屈ませ、押し寄せてくる悲しみにただ一人涙を流していた。
突然現れた誰かに目の前の彼女は怯えながらゆっくりと顔を起こす。
「・・・・・・・・・」
そして私の存在を一瞬疑問に感じたようだったが、自然と表に出ていた悲しみの
表情の私に全てを察したように、静かに体を起こすとおぼつかない足取りで近づいた。
「ごっちんっ・・・!」
「・・・梨華ちゃん・・・」
静かに目の前まで来た時、流れる涙がはっきり目に映った時、彼女は倒れ込むように
私の体に抱きついてきた。
しがみ付くようにして、それでも堪えていた涙を全て溢れさすように胸の中で泣き出す。
- 83 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月21日(木)21時35分08秒
「どう・・・して・・・・?どうして・・・!?」
悲しすぎる何かに訴えるその声はただ空しく暗い階段の頂上へと吸い込まれていく。
私はただその肩を微かに抱きしめる事しか出来なかった。
廊下に響き渡る声は私の胸の中にある感情も溢れさせていく。
自然と私の頬にも涙は伝っていた。
- 84 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月21日(木)21時38分14秒
それからというもの、絶えることのないペースで私達の屈折した関係が始まりを
告げることになる。
事情を知っている私の前だけでは彼女は自分に無理をせず全てをさらけ出した。
それは中の中まで。
言葉なく交わされる口付け。
最初にキスして、最後までいった時は悲しさも感情として生まれたが、それ以上に
矛盾するぐらいに自分の体は大きな嬉しさに囚われていた。
たとえあなたが体しか見ていないんだとしても、嬉しかった。
だけどそれも時間の流れと共に空しさだけの行為になっていく。
今日のこの日までこんな想いを抱えながら彼女との関係は続いている―――
誰も悪くない。
梨華ちゃんを好きな私も、振ったよしこも、梨華ちゃんも……。
ただ悲しみと矛盾した感情は全ての関係の中で空回りするだけ。
そして絡まっていく…。
- 85 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月21日(木)21時40分48秒
「…とう……後藤っ!」
「え…?」
聞こえてきた声に後藤は何かとそちらに顔を起こした。
「あんたいつまで寝てんの。せっかく早く来てもこれじゃ寝坊するのと一緒じゃない。」
「私…寝てたの…?」
目の前で自分を睨むしかめっ面の保田とその言葉に後藤はやっと今までの自分の
状況に気付く。
どうやら気付かないうちに寝てしまっていたらしい。
瞳を開いた事に気付くと、そこから不思議と熱い物が込み上げてきそうになった。
「今…何時…?」
「もうとっくにみんな揃ってるわよ。ほらさっさと起きた。」
ぼんやりする感覚の中壁に掛けられる時計を見ようとするがその前に保田によって
右腕を取られ体を起こされる。
後藤は未だぼーっとし、今見た夢の余韻に浸りながらとりあえず保田の言葉に従った。
- 86 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月21日(木)21時43分36秒
楽屋に着くとそこは既に溢れんばかりのメンバー達で賑わっていた。
衣装にそれぞれの荷物に当の本人達、ほとんど歩く隙間もないぐらいの楽屋は
保田の言葉通り自分以外全員揃っていた。
「あ、ごっつあん遅いよ!早く着替えないと……」
ドア付近で未だぼーっとする後藤に気付いた矢口が本人以上に慌てて声を掛ける。
しかし悪いが後藤の耳に矢口の声はほとんど届いていなかった。
楽屋の向こうの方で珍しく飯田と談笑する彼女の姿。
それが瞳の中を映り、思考回路を全て奪ってしまう。
楽しそうに会話している。昨日のことはまるでなかったかのように。
「ごっつあん!?」
「…ごめん。今着替える。」
しびれを切らした矢口に後藤は顔の向きを変えないまま答えた。
瞳に映る物は彼女の姿と、近づいた保田に楽しそうに声を掛ける吉澤の姿。
このままじゃいけない……。
後藤は衣装を手に取りながら密かに胸の中で呟いた。
このままでいいわけない…。
それは自分のため、そして何よりあなたのため。
何か…変えないと……。
後藤が衣装に着替え終わった時ほぼ同時に、スタッフの声が楽屋に届いてきた。
- 87 名前:作者 投稿日:2002年02月21日(木)21時44分45秒
- 更新しました。
- 88 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年02月21日(木)23時38分33秒
- 梨華ちゃんはごっちんのことが本当に好きではないのだろうか。
まだ、よっすぃーのことが忘れられないのか。なんかごっちんが
可哀想だ。ごっちんは誰よりも梨華ちゃんのことを思っているのに
梨華ちゃんにはごっちんだけを見てほしいですなあ。
まあ、確かに誰も悪くはないんですがこうなってしまったら何か
変えなければいけないのはわかります。
更新楽しみに待っています。頑張ってください。
- 89 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月22日(金)06時16分51秒
- 内省的なごっちん
- 90 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月24日(日)02時23分06秒
新曲の収録のためのリハーサルが終わり、それから最終チェックも済み、
後は本番の収録を待つのみとなったその間の休み、一時間を後藤は決心した
ある事を胸に秘めていた。
他のメンバーとは違い個人の事で思い悩む後藤はほのかに体を固く緊張させながら
楽屋に一番最後に戻る。
するとそこは既に二回のリハーサルで自分とは対照的に和らいだ緊張の中、
和んだ空気と共にメンバーが楽しそうに声を上げ笑いあっていた。
「今さぁ、辻のお腹が音立てて鳴ったんだよ〜。超楽しい〜!!」
矢口がお腹を抱えて後藤に気づき辻を見ながら話す。
「だってぇ…お腹空いちゃったんだも〜ん。」
「本番で鳴らないようにしないとね。」
安倍も楽しそうに笑いながら恥ずかしそうにする辻の肩を軽く叩いた。
「昼ごはんはこれの後だし。それまでがんばれ辻!」
「ふぁ〜い!」
最後の飯田の掛け声に辻は俯いていた顔を上げると片手を挙げて答えた。
同時に本番の時間になる。
最終チェックに忙しいスタッフたちを気遣い、メンバーは予定の時間よりも
少し早く楽屋を後にする準備を始める。
- 91 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月24日(日)02時27分13秒
- 考え事に頭を使わせ休みという休みを取る前に過ぎ去ってしまった時間があまりにも
早く流れた事に後藤は戸惑いを隠せない。
「………」
あっという間に休みの終わりが来てしまい後藤は困ったように石川の方を見た。
しかしそこには後藤の心の中など微塵も知ることのない石川が小さくため息を漏らす
辻と楽しそうに会話をしている。
結局この時は何も言葉を掛けられずに本番に挑むことになるか、そんな考えが
頭に過ぎった時後藤は意を結して石川を呼び止めた。
「梨華ちゃん」
「ごっちん?」
立ち上がり、一番に辻と共に楽屋を後にしようとした石川の肩を後藤の手が触れる。
その隣にいる辻と、同じく石川がどこかいつもとは違う様子の後藤に首を傾げた。
- 92 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月24日(日)02時34分20秒
…ずるいよ、そんな何も知らないような顔するの…。
この胸の中に最大に膨らむ緊張は他でもないあなたの事からなのに…。
「後で…話があるんだけど……」
「……」
前を向いたまま視線を通わすことなく呟くようにして言った後藤の言葉に石川も
何かを察してかすぐに答えを返せずただ黙ってしまう。
「おぉ?何々?何の話?」
そんな二人だけの間に流れる張り詰めた空気の中何も知らない矢口が横から
顔を出した。
「やっぱり近頃後藤さんと梨華ちゃん妖しいですねぇ」
冗談めいて加護が小さく出来た輪の中に向かって声を掛ける。
- 93 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月24日(日)02時35分04秒
- 「だよね?やっぱり加護もそう思うか!」
矢口は話が合ったように加護の肩を抱きそのまま本人二人がいることを
お構いなしに二人について他愛無い会話をし始める。
「ほらぁ!そんなこと話してないでみんな行くよぉ!」
あまり進まない作業にしびれを切らした飯田の声が楽屋に響く。
その声を合図に次第に全員の意識も会話やふざけあいから仕事へと転換されていく。
それからほとんど時間を要さないまま、メンバー達はすぐに本格的にスタジオへと
向かい始めた。
石川の隣にいた辻はいつのまにか飯田の横にさりげなく向かうと嬉しそうに手を繋ぎ
一緒にスタジオへと向かっていった。
- 94 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月24日(日)02時36分57秒
- 「………」
一人、また一人といなくなっていくそんな中、高橋が未だ黙ったままの二人を複雑
な表情で見つめていた。
「愛ちゃん。そろそろ行かないと……愛ちゃん?」
「あ、ごめん…」
小川に呼びかけられ高橋は気づいたようにはっとすると紺野や新垣と共に
いつものグループを作り二人を最後まで見ながらスタジオへと向かって行った。
誰もいなくなった楽屋にほんのわずかな時間が流れる。
後藤はただ石川の返事を待っていた。
「昼休みで…いいの…?」
静かに口を開き石川が途切れ途切れにやっと聞き返す。
まるで何かに不安を感じているように。
「うん…」
独り言のように呟くようなその問いかけに後藤は同じようにそれだけ一言答えた。
それから一緒に楽屋を後にすることなく、後藤に瞳に映るその消えていく後ろ姿は
どこか不安を隠していた。
そんな背中に後藤の中の決心が揺らぐ。
しかしすぐに頭を左右に振り、くじけそうになる決心を再び奮い立たせると
自分もスタジオへと足早に向かっていった。
- 95 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月24日(日)02時37分45秒
- 「あの二人なんか会ったの?」
スタジオへ向かう途中の廊下で保田が首を傾げながら隣の吉澤に尋ねた。
「さぁ、私は何にも知りませんよ」
わざとなのか、それとも本心なのか、吉澤はそれだけ素っ気無く答えるとスタジオの
重い扉を開き保田が入るのを待つ。
そしてそれから自分もスタジオに入って行った。
- 96 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月24日(日)02時42分47秒
- 「ねぇ、麻琴ちゃん」
「ん?なぁに?」
吉澤たちの一グループ後ろ、その塊で四人並ぶ列の一番端から高橋は何か
不安事を胸に秘めるような表情で隣の小川に話しかけた。
話し掛けられた小川はそんな高橋の様子など気付かずいつものようにただ
のんびりと何か聞き返す。
「あの二人…石川さんと後藤さんって……」
そこで止まった言葉に小川が今さっきの事もふと思い出し、益々首を傾げながら
今度は高橋の顔を覗き込むようにした。
しかし当の高橋は何か考え事が頭の中を占めるのか開いた口からは言葉が出てこよう
としない。?を頭の上に浮かべ小川が自分の事を見ているのも気付いていないようだった。
「石川さんと後藤さんが?何?どしたの?」
いつまで経っても出てこない次の言葉に小川が催すように聞き返す。
「……」
しかし高橋の口からは次の疑問の言葉は出てこない。
「お〜い、愛ちゃ〜ん?」
「……」
小川の声を遠くに聞きながら、高橋の疑問は完全に自分の中に向けられていた。
- 97 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月24日(日)02時45分34秒
不意に見せるどこか周りの空気とは明らかに違う、張り詰めた雰囲気…。
あの人と話すときだけあなたの雰囲気が変わる。
近頃気づき始めてからそれはずっと目に付いている。
どうして…何だろう…。
「愛ちゃんや〜い!」
口に手を添えまだ高橋を振り向かせようと呼びかける小川に隣にいた紺野や新垣も
首を傾げ始めた。
「麻琴ちゃん何してるのぉ?」
「いや愛ちゃんがね…」
紺野に呼びかけられ小川もお手上げするように困ったように隣の高橋の異変を
話す。
そして小川に話を聞くとやっと紺野と新垣もうつろな瞳の高橋を見出した。
しかしその間も高橋の頭からは今さっきの二人の姿が離れない。
「どういう関係なの……?」
「「へ?」」
突然飛び出した高橋の独り言に紺野と小川が同時に首を傾げ聞き返した。
口から発せられた言葉に高橋本人も気づかず、そのまま?の嵐を頭の上に浮かべる
三人を残し当の本人はさっさとスタジオへと入っていってしまった。
- 98 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月24日(日)02時50分51秒
- 「あ、ちょ、ちょっと待ってよ〜!」
首を傾げる三人を置いてさっさとスタジオに入っていってしまった高橋に小川は
急いで後ろからその姿を追いかけた。
その声には疑問と不思議と微かに高橋の不可解な様子に口を尖らしているようだった。
「愛ちゃん、どうしたんだろうね?」
「さぁ?」
紺野と新垣のクエスチョンマークもすぐには消えることなく、扉の向こうに
吸い込まれていく小川の後ろ姿を見つめながら二人も首を傾げていた。
見た目では至っていつも通りだが。
- 99 名前:作者 投稿日:2002年02月24日(日)03時01分52秒
- こんな時間に更新です。
なぜ今更新してるのか自分でも分からない…。
88:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
梨華ちゃんの気持ちがまだ不透明ですね。
これからはその辺に関しても考えて書かないと…(汗
がんばります。
89:名無し読者さん
>内省的なごっちんってどんなもんでしょうか?
違和感が無ければいいですが…。
- 100 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月24日(日)16時22分47秒
- 初めてレスさせてもらいます。
最初の作品から全部読んでます!
あっちも、こっちも楽しみにしてますっ。
- 101 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年02月26日(火)19時27分30秒
- 高橋も参戦の予感がする。更新楽しみに待っています。
がんばってください。
- 102 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月27日(水)21時51分32秒
あの後何の問題もなく本番も順調にこなし、今はつかの間の昼休み。
次の仕事まで結構時間が空く今、後藤にとって石川と何か話をするのにはちょうどいい
時だった。
小さな覚悟を決めて、楽屋のドアを前に押し開く。
「あ…れ…?」
しかしそこには誰の姿もなかった。
いつもの騒がしい昼休みの光景が頭の中に浮かんでいただけに何か果てしなく気抜け
してしまった。
目の前に映るのはただ殺風景な誰もいない楽屋の中。
後藤は訳が分からずしばらくドアの前で楽屋の中をきょろきょろ見渡してしまった。
「みんないないよ」
突然した声に後藤は驚き微かに動揺しながら首を後ろに振り向かせた。
するとすぐ自分の後ろに、いつのまにか立っていたその人が自分に対して
言ったものだった。
- 103 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月27日(水)21時58分12秒
- 「どうして…?」
「中学生のみんなは天気が良いから屋上でお昼食べるって言ってたし、矢口さんと
安倍さんは向こうのホール、飯田さんはスタッフの人と何か話してたし、保田さんは
……よっすぃーと…」
語尾を弱くし聞こえるか聞こえないほどの今にも消え入りそうな声で彼女は
混乱した私に話した。
すぐにそれから私は後悔する事になる。
聞かなければ良かったって。どうしてこう気が利かないんだろう。
「そっか…」
「それより、ごっちん何か話があるんでしょ?私に」
思いがけないところで話は彼女の方から切り出された。
心の準備もまだ全て終ってない今、突然のその言葉は後藤を密かに今に増して
大きく動揺させる。
- 104 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月27日(水)21時59分39秒
- 「う、うん。あ、でも…今はまだ……」
「………」
言葉を濁す後藤の戸惑った顔を石川は黙ったまま目の前で真っ直ぐ見据えていた。
それからしばらくの間微かな沈黙が流れ、後藤はただ困ったように俯き、そんな
後藤を石川はただ無言のまま見つめていた。
そんな中沈黙を破る行動は石川が起こすことになる。
「え?」
不意に腕を引っ張られ後藤は体のバランスを崩しながら何とか足を前に着かせる。
「り、梨華ちゃん?」
「トイレ…行こう…」
「う、うん…?」
冷たく無感情なその声に戸惑いながら後藤は石川の後に着いた。
どこかにこれからのことに対して不安を感じながら―――
- 105 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月27日(水)22時03分20秒
- ―――――――
鏡に映る自分の顔をじっと見つめる。
所在無い様子で前髪を触ってみたりしているとトイレの個室から水の流れる音がしてきた。
それとすぐにドアがガチャと音を立てて開く。
「………」
鏡越しに目が合ったのは彼女の瞳。
可愛くて、綺麗に整っている上品で女の子らしい顔立ち。
自分の一番好きな…人…。
「話って何?」
「え?あ、うん…」
石川は静かに後藤の横を微かに風を起こしながら通ると目の前の洗面台に
水を流した。
泡を出し、手を洗う、そんな彼女の行動をぼんやりと瞳に映しながら後藤は応答に
困っていた。
決心したつもりなのに、どうしても彼女と話していくうちに形ない「決心」は
脆くも崩れ去っていくようだった。
何か切り出さないと、そう思うのにどうしても開きかけた口は言葉という音を発しよう
としない。
- 106 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月27日(水)22時04分50秒
- 「あの…ね…」
横でハンカチを取り出し、手を拭く仕草をもはや呆然と見つめながら、後藤は
何とか固まる自分の体を奮い起こそうとした。
「…足綺麗だねぇ」
早鐘のように鳴り響く胸の鼓動に体の全ての感覚を奪われながらも、何とか
後藤が言葉を発しようとしていた時、思ってもいない時に彼女の言葉が遮った。
「え?」
意味が分からず思わず聞き返す。
「すごくよく似合ってるよ、そのミニの短パン」
鏡越しの向けられる視線と、言葉に後藤はやっと気付き自分の足元に目を移す。
「細くてすごく綺麗……」
「そ、そっかな?」
見惚れるようにして言う言葉と瞳に後藤はこんな状況でも素直に喜ばずにはいられない。
- 107 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月27日(水)22時15分41秒
- 恥ずかしさも交じりながら顔を微かに紅くさせ答えた。
「でもさ、本当は嫌なんだ」
「っ!」
言葉を聞いたかと思ったその瞬間、後藤は強い力によって腕を捉まれ、後ろに
引っ張られていた。
「梨華ちゃん!?」
「嫌なの、本当は……こんな綺麗な足…私以外の人の目に晒すの…」
後藤をトイレの個室に押しやり、自分も同じ狭い空間の中に入ると石川はドアを
後ろ手に閉め、言いながらカギを掛けた。
「ん!梨華ちゃ…っ…」
乱暴なぐらいに強引に体を押され、壁にぶつかりバランスを崩し倒れそうになる
後藤の体を石川が間を空けることなく流れるように前からきつく抱きついた。
「近頃さぁ、ごっちんも私も…露出高い服ばかりじゃない?」
「っ…!」
耳元でそっと吐息を吹きかけるように囁く声はこんな状況にも関わらず理性とは
裏腹に後藤を未知なる快感へと誘う(いざなう)かのようにぞくっと背すじを震わせる。
そしてそのまま戸惑う暇もなく、石川の手が優しい手つきで後藤の太股に触れる。
後藤は触れるか触れないかのその感触に体を跳ねさせた。
- 108 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月27日(水)22時22分13秒
- 「特にごっちんは近頃……多いよね…」
「っ……」
いつも通りの普通の話し方だが、平静を保っているがどうしても隠し切れない
やり場のない感情を何かにぶつけるような声―――そのためかいつもより更に
冷たい口調と瞳の石川に後藤は何も言葉を掛けられない。
「寒くない?暖めてあげようか…?」
「やっ……」
優しく撫でまわすその手に何か抵抗する前に、石川の姿が後藤の視界から消えた。
「あっ…!」
敏感な部分に不意に触れた唇の感触に、後藤が体を震わす。
その唇は徐々に触れる時間を長くし、厭らしくその細く綺麗な太股を味わうように
這い始めた。
- 109 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月27日(水)22時31分06秒
- 「や…だ……」
繰り出されるとろけそうになるぐらいの甘い感覚に力の失われた体を壁にだるく
もたれさせ、後藤は息を荒くしながら瞳をぎゅっと瞑り体を反り上に仰がせる。
「感度良いよね…絶対…」
「ふぁ…!んん……」
撫でまわす手と、唇に後藤の体はどんどん本当にとけていってしまいそうな
甘い快感にだけ囚われていってしまう。
そんな後藤の様子は愛しむように体の至る所に無数に口付けする石川にも唇を
通して伝わる。
「可愛いよ…ごっちん…」
「もう…やだぁ……」
瞳に涙を浮かばせ、後藤が今ある理性の中から必死に抵抗の言葉を示そうとした時―――
- 110 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月27日(水)22時32分22秒
「それじゃぁ、愛ちゃんてば今さっき何も聞こえてなかったの?」
「うん、ちょっと考え事してて…ごめんね」
「別にいいけどさぁ、一体どうしたの?」
「!」
突然の声に二人は息が止まるほどに体をびくつかせ同時に大きく反応した。
「仕事で悩み事?それともプライベート?」
「ちょっと…ね…」
曖昧に答えるその声、すぐに分かるその上品でなおかつ可愛い声は高橋だ。
あまり元気のない沈んだ彼女に話し掛けているのはどうやら小川らしい。
- 111 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月27日(水)22時37分33秒
「り、梨華ちゃん…」
「………」
突然の二人の登場に後藤は動揺しながら不安に声を震わせなんとか小さな声で石川に
呼びかける。
立ち上がった石川も驚きを隠せないのかしばらくは忘れたかのように何も行動を
起こさなかった。
二人の会話は依然として続いている。
後藤は息を殺して二人がトイレを一刻も早く後にすることを願っていた。
「……」
石川はただ無言のままそこに立ちすくんでいた。
しかし次の瞬間、後藤が思ってもいない行動を取る事になる。
- 112 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月27日(水)22時50分37秒
- 「ごっちん…」
「…?」
小さく呼びかけたその声に後藤は不安げな表情のまま顔を石川に戻す。
するとそこには唇に指一本を縦に添え、この状況とは不似合いなぐらいに慈愛に満ちた
温かく優しい、一見天使を思わせるような純粋な微笑みを浮かべる表情の石川の姿が
あった。
この場にはいくら考えても不可解でミスマッチな表情に後藤は当然戸惑うように
顔をしかめ首を傾げる。
「梨華ちゃん?」
「声出しちゃダメだよ?」
「え?…あっ…!」
ウィンクまじりにそう優しく掛けられた声の後にすぐ石川は後藤の胸元に顔を埋めた。
- 113 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月27日(水)22時57分32秒
- 「ちょ、ちょっと待って…ん…!」
突然の行動に後藤はできるだけ声を落としながら体を動かさせたが狭いトイレの個室では
それも上手く行うことはできない。
必死に抵抗しようとする後藤を余所に、石川は狭い空間を利用しながらじたばた暴れる
体に自分のをぴたっと合わし押さえつけながら耳元に熱い吐息を掛ける。
「ふぁ……!」
抵抗していた微かな力さえも全てそれによって成す術なく奪われていくを感じ、
つい後藤はこの状況では大き目の声を上げてしまった。
しかし微かに残る理性によりすぐに苦しそうに歯をかみ締め、今にもこの感覚に
甘い声の漏れてしまいそうになっている口を必死に押さえつけるように閉ざす。
「そう、頑張ってね…」
口の端を微かにいたずらそうに上げると、石川は首筋に痕を残しながら服の下に
手を滑り込ませた。
- 114 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月27日(水)23時04分54秒
- 「っぁん…はぁ…だめぇ……」
強引に進む行為を後藤は体を仰がせ反らし、頬を紅潮させながら微かな抵抗を続ける。
しかし行為は止まる事をしらない。
「あぁ…ん…っやぁ……」
次第に後藤の喘ぐ声が強くなり始めた時、洗面台近くにいた二人が今いる同じトイレの
奥の個室でまさか同じメンバーの、しかも憧れの的である先輩の二人がこの場にはそぐわ
ない行為をしているともいと知らず、やっと何事もなく過ぎ去ろうとする足音が微かに
耳に届いた。
そしてそれは石川の耳にもしっかり聞こえていた。
「………」
「…梨華…ちゃん…?」
突然止まった彼女の行為に後藤は今さっきまでの抵抗も空しく頬を紅潮させ
体を快感に上下させながら疑問を最大に首を傾げる。
その表情は既に快楽に身を委ね続きを待っているかのようだった。
- 115 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月27日(水)23時10分29秒
- 後藤の問いかけに答えることなく石川は肩に埋めていた顔を静かに上げると、
後藤の顔を見て言った。
「それじゃ行こうか」
微笑みと共に発せられた言葉に後藤はすぐにその言葉の意味を理解する事が出来ない。
「え……?」
昂ぶる熱い体を、ただ困ったように持て余す。
そんな後藤の様子に石川は満足そうに微笑むと後藤の手を取りトイレのノブに手を掛けた。
「お昼食べに行かなくちゃ。ね?」
「………」
開かれた向こうの空間への扉に、後藤は戸惑いながら見つめる事しか出来ない。
甘すぎる快感に酔いしれ熱く火照った体はまだ当分納まりそうにない。
「ほら!」
石川は後藤のそんな胸の内を全て見透かすように後藤の手を強く引っ張った。
「…う…ん……」
今さっきまで抱えていた決心も覚悟も、全て頭の中から消え去ったことさえも
気付かない後藤は乱れた服の前を押さえながら石川の手に体を任す。
力を失いおぼつかない足取りのまま、後藤は石川によってトイレを後にした。
そして二人はその形のまま―――頬を赤らめ複雑な表情の後藤を石川が手を取り前を
歩く―――という格好のまま、二人は昼食の待つ楽屋へと戻っていった。
- 116 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年02月27日(水)23時11分13秒
「……あらあら…」
そんな二人を遠く後ろで眺める人、一人。
「仲が良い事……」
消え行く二人の背中に彼女は小さく笑みを零す。
小悪魔のように満足そうに微笑むその人の笑顔が、真意からか冗談からは分からない。
- 117 名前:作者 投稿日:2002年02月27日(水)23時16分25秒
- あ゛〜、今日はかなりしんどかった…。
こんなに神経使って文直して更新したの、久しぶり…。
100:名無し読者さん
>初めてのレスありがとうございます^^
あららら、何かもうばればれみたいですね(w
嬉しいお言葉本当にありがとうございますm(__)m
がんばります。
101:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
密かに本人は気づいていませんがこの場面でも参戦…してますね(w
これからもっと…関わってくるかもしれません。
がんばります。
- 118 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月28日(木)03時58分14秒
- ラストの人物はだれかしら
- 119 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年02月28日(木)13時18分02秒
- 高橋は要注意人物だな。最後の人物誰なんだろう。
そして、ごっちんの決意とはいったい!!
どんどん深くなっていきますねー。梨華ちゃんの真意もわからん。
更新楽しみにしています。頑張ってください。
- 120 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月02日(土)21時09分09秒
それから二人は楽屋へと戻っていった。
後藤は石川に腕を引っ張れられ、成す術なくその後についていた。
ふと思い出した今さっきまでの決意、それが完全に彼女のペースで崩されているのに
気付く。
楽屋に戻るとそこは今さっき同様誰の姿もなくただメンバーの荷物だけが殺伐と置かれていた。
既に二人分以外の箱がなくなった昼食のお弁当を袋から取り出すと無駄の会話の
ない中二人は昼食を取り始めた。
石川はぼーっと前を向きながら何も考えていないようだが何かを胸の中に仕舞いこんで
いるかのような表情で昼食を口にしている。
後藤はその隣でどこか気まずい雰囲気を感じながら黙々と食事を口に運んでいた。
(どうしよう……)
立て直しては崩れてしまう胸の中の脆い決意に後藤は考えを巡らしていた。
(もうこんな関係……)
一人、胸の中で呟きながらただ事務的に昼食を口に運んでいく。
「………」
そんな後藤の横顔を石川は隣で所在無さげに見つめていた。
- 121 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月02日(土)21時11分22秒
ほんの少し時間が流れる。
石川は最後のご飯を口にし、お弁当を殻にするとそれを静かに机に戻した。
後藤は考え事に忙しいのかいつもの倍近く時間を掛け遅いペースで食事をしている。
そのためまだ半分程度しか昼食をお腹に納めていなかった。
そんな後藤の背中から石川は楽屋のドアに目を向けた。
しっかりと閉まっている。
向こうに人の気配も感じない。
廊下はお昼のため静かにただずんでいるようだった。
- 122 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月02日(土)21時12分26秒
- 「…ごっちん」
「え?」
長く続いていた沈黙を破る不意の言葉に後藤は慌てて後ろに振り向く。
するとそこには目が合うと同時に優しく微笑む石川がいた。
「どうしたの?食事進んでないみたいだけど…」
心配そうな口調と共に石川が後藤の前へ顔を覗かせた。
その視線にはまだ半分しか減っていないお弁当の中身が映る。
「ちょっと…食欲なくて……」
後藤は曖昧な笑顔を浮かべて石川に答える。
その胸の中はなぜか不自然にどぎまぎしていた。
「ふーん……」
そんな後藤の返事に石川はいつもより低い冷たくも取れる声でただ一言
適当に答えた。
- 123 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月02日(土)21時15分22秒
- 「っ……」
何か他に言葉を掛けようかと思ったが、後藤は今の石川が何を思い何を考えているのか
全く知ることが出来ず音を発しようとした口を咄嗟に閉ざしてしまう。
「心配なの……」
「え?…っあ…!」
ひんやりと冷えた指先が突然上品な手つきで露になっていた首筋に微妙な感覚で
触れたのに、つい後藤は体を上に震わせてしまう。
「ふふ、可愛いね」
「梨華ちゃ……んぁっ…!」
首筋から肩に這うその手と、不意に反対の首筋に触れた柔らかい唇の感触に
再び後藤は体を跳ねさせる。
握られていた箸もただゆっくりと手からすべり落ちていく。
- 124 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月02日(土)21時16分54秒
- 「不安なの…今さっきからずっと……」
「ど、どうして?」
必死に熱くなってくる体を押さえつけ震える声を何とか疑問の言葉に変える。
「だってごっちんが…いつもと違うから……」
「っ!」
不安そうな声が囁くように耳元で吐息と共に掛けられ、着ているトレーナーは
肩を張っていた手に肌を露にしながら横にずらされてしまう。
「梨華ちゃん…」
「お願い…違うって、そんなことないって言って……」
服の下から滑り込んでいくその手は胸に当てられる。
後藤は体に触れる全ての感覚と、弄っていく手に成す統べなくただ昂ぶりを
感じながら呆然としていた。
何と言葉を返してたらいいのか分からない。
どう答えたらいいのかわからない。
だって違うとは…言えないから……。
でも…。
- 125 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月02日(土)21時18分27秒
「ごっちん……」
消えてしまいそうな不安そうな声は、表情を見なくてもその胸の内と
悲しそうな顔ぐらい勝手に頭に思い浮かべさせてしまう。
「………」
後藤はやるせない表情で瞼を静かに閉じると、顔を俯かせ言った。
「違うよ…梨華ちゃん……」
「ごっちん?」
体を弄るその手を一旦止めるように押さえ、後藤は石川に振り向き続けて言った。
「違うから。いつもと一緒だから。大丈夫だよ」
今出来る最大の笑顔を体の底から引き出し、後藤は不安そうにする石川に答えた。
思った通り、今自分を見る彼女の表情は今にも泣きそうな顔をしていた。
「本当?」
「うん…」
自分でもどこか不安そうに後藤は答える。
しかし石川はそれでも否定した後藤の言葉に安心したようだった。
- 126 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月02日(土)21時20分34秒
- 「良かったぁ…いつものごっちんだぁ…」
石川はほっと胸を撫で下ろすように後藤の腰に腕を回し前から抱きついた。
「……」
顔をくすぐる彼女のストレートの髪。
鼻に届く綺麗で甘い匂いが、感じる暖かいぬくもりが、やるせない心の後藤を
微かに潤し癒す。
矛盾してる気持ちとは分かりつつも、あなたのぬくもりは他の誰よりも気持ちが良い。
でも……。
また今日もこれでうやむやになる?
これからもずっとそう…?
決心したのに…何か変えるって…したはずなのに……。
また今までと同じ時が流れていく…そんな時にいつもでは沸き起こらない感情が
後藤の中に生まれていた。
目に見えない微かな決意、だけどそれは大きい決心。
- 127 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月02日(土)21時24分48秒
「何も違わない…何も変わらない…でも……」
「ごっちん?」
抱き合っていた後藤の体から不意に声が届き石川はぴくっと反応し体を強張らせた。
不安を過ぎらせながら、必死にその不安がただの思い過ごしかと願うように、
ただ首を傾げて顔を上げる。
「大丈夫だよ……。何も不安にならなくて大丈夫。でもね、梨華ちゃん。やっぱり…
このままじゃいけないと思う……」
「……」
必死に優しい微笑みを作り言葉を掛けてくる後藤に、石川は一瞬にして表情を
固い物に直した。
「お願いだから…もうこんなこと……」
「嫌っ!聞きたくない!」
心に呼びかけるような声に石川は瞳を瞑り咄嗟に耳を塞いだ。
- 128 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月02日(土)21時27分53秒
- 「梨華ちゃん…」
「お願い…?どうしてよ…ごっちん大丈夫だって今言ったじゃない…!」
「……」
石川の疑問に後藤は何も言葉を返す事が出来ない。
ただ困ったように顔を逸らした。
「どうしてそんな顔するの…!?どうしてよ……」
叫ぶような悲痛な声に後藤は何も答えられない。
胸が、これでもかというくらいに打ってる…それにとてつもなく痛い…。
「お願い…なら私にもお願いさせてよ…!」
「っ!梨華ちゃん…!」
何も応答しない後藤に石川はしびれを切らしたようにその体を乱暴に押し倒した。
- 129 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月02日(土)21時29分31秒
- 「何度も頼んだのに…何度も頼んでるのに…どうして抱いてくれないの…!?」
「!ごとーだって…ごとーだって何度も梨華ちゃんのこと欲しいって思ったよっ!」
ついに放たれた感情。
後藤は不意の石川の言葉に、自分でも気付く前に言い返していた。
初めて言った本当の気持ち、それはやるせないような怒っているような、だけど本当は
悲しみを最大に込めたような口調で言葉に変わる。
「それじゃぁ、どうして……」
「…だって、梨華ちゃん……ごとーと一緒にいるときの梨華ちゃんはいつも……」
胸に溜め込んでいたたくさんの想い。
後藤はついに瞳に涙を浮かべその想いを石川に対して今、この瞬間に解き放とうとした。
しかし――――
- 130 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月02日(土)21時30分21秒
「後藤さん…石川…さ、ん………」
「!?」
突然した声に二人は驚いて顔を向けた。
…そこにはただ唖然とし、それ以外の行動を忘れてしまったかのようにその場に
立ちすくむ高橋の姿があった―――
- 131 名前:作者 投稿日:2002年03月02日(土)21時32分39秒
- 118:名無し読者さん
>ラストのその人は、次の更新で明らかに…たぶんなると思います。
レスありがとうございます。
119:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
ますます深みを増す…というかどろどろ状態に…(w
がんばります。
- 132 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月02日(土)23時02分37秒
- 最近はこれを読むのが楽しみで楽しみで。^^
いつもドキドキしながら拝見させて頂いてます。
いしごま好きに拍車がかかってます。
- 133 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年03月03日(日)22時40分31秒
- なっなんということに!!これは見ものですねえ。
続きがすんごく楽しみです。更新楽しみに待っています。
頑張ってください。
- 134 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月05日(火)02時59分28秒
時が止まってしまえばいい…そんな感覚に今三人が同時に陥っていた。
――――――
ちょうどその時私はみんなと屋上で良い天気の下で楽しくお昼を食べた後、
みんなが屋上でそれぞれ楽しそうに遊ぶ中私だけ屋内に戻って来た。
それは今愛読中の本を取りに行くため。
休みもまだ当分あるし、次の仕事も雑誌の撮影のため台本を読んで置く必要も
ない。
だからこの天気の良い今日みたいな日に、みんなが傍らで遊ぶ横で気持ちよく外で
本が読みたかった。
今読んでいるという本、それはあの有名なハリーポッターの第一巻。
そもそも本を読むのは嫌いではなく好きだった。
これ以外にも、モーニング娘。にはいる以前にはたくさんの本を読んでいた。
だけどこの本は…この本を読むきっかけになったのは…まぎれもないあの人からだった。
- 135 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月05日(火)03時00分54秒
「愛ちゃんってよく本読んでるけど…すごいねぇ、何か知的な感じがするよ」
「今話題になってるハリーポッターのお話もう読んだ?今映画でやってるよね―――」
「映画見る前に読んでみたいなって思うんだけど―――長くて大変そうだからなぁ…」
「え?今読んでるの?そうなんだぁ!それじゃ今度私も読んだら一緒に映画見に行こうか!」
「いつになるか分からないけどね(笑)」
- 136 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月05日(火)03時02分09秒
あの人との会話、思い出すと同時にあの人の笑顔も脳裏に過ぎる。
本当は、私もまだあの時は読み始めていなかった。
あんなに長くて厚い本は読んだ事がなかったからずっと躊躇ってた。
だけど、不意に出た話題に楽しそうに話すあの人を見ていたら、自然と口からそんな言葉がとって出てたんだ。
もっと笑顔が見たいって、そう思った。
だから読み始めた。
あの後速攻で本屋さんに行って、それからずっと熱中して読んでる。
噂になるのが分かるぐらい、内容もおもしろくて、はまっていった。
そしてそれは読んでいくうちにどんどんあの人にも伝えたいって気持ちに変わっていく。
だから合間があれば早く読みたかった。
屋上は、ぽかぽかの陽気で本を読むのには適してる。
それに……廊下でもしかしたらあの人にすれ違うかもしれないから…そんな淡い
期待も胸に過ぎっていた。
- 137 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月05日(火)03時04分29秒
屋上を隔てるドアの窓から階段に空からの眩しい光が漏れてくる。
だけど電気は付いていないため薄暗い階段を下り、人気の全く無い廊下に出た。
ちょうど楽屋のある階まで降りて、角を曲がるとそこのすぐ近くにあるトイレの前に
誰かが立っていた。
「……?」
誰かなって思って目を凝らしてそっちに視線を集中させると、それは手を組んだ
吉澤さんの後ろ姿だった。
話し掛けようかと迷ったが、何かいつもと違う雰囲気と不思議な空気に
躊躇ったまま何も出来ずそこに困ったように立ちすくんでしまった。
そのままわずかに時計の秒針が時を刻み時間が過ぎる。
そんな後ろで困っている私の存在に気付くことなく、彼女は何かに意識が囚われる
ように、ただそこに立ち尽くしていた。
- 138 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月05日(火)03時05分14秒
- 「!」
不意に彼女がそこを動き出し、こちらに向かって歩いてきた。
私は間一髪で彼女が完全にこちらに振り向く直前に壁に体を隠す事に成功する。
そのまま彼女は息を殺して壁に隠れる私に気付かないまま、すぐそこを通って
行ってしまった。
「…あれ…?」
なんで私隠れてるんだ?
咄嗟に何か悪いことをしてるみたいな気持ちになって隠れてしまった。
たぶん、何もまずいこともいけないところも見てないはずなのに。
…変なの……。
我ながら自分のことに不思議を感じ、首を傾げながら、そこから体を出し
廊下に戻る。
そして楽屋へと向かって行った。
- 139 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月05日(火)03時06分22秒
「…ん…?」
楽屋のドア近くまで来た時、ちょうどまさにドアノブを手に掛けた時、誰かの
声が聞こえた気がした。
しかも一人じゃない。
誰かと誰かが、何やら話しているような、そしてまぎれもない人の気配。
辺りをきょろきょろ見渡してみる。
当然自分以外の姿はこの廊下には向こうの端からあっちの端までどこにもいない。
ってことは、楽屋になる。
考えながら高橋はドアに顔を戻した。
楽屋なんだから誰が居ても不思議じゃない…けど。
だけど、何か不審な、不思議で普通ではないような、何だか開いてはいけないみたいな
雰囲気がドア越しにでも伝わってくる。
そう、今さっきの吉澤さんみたいな感じ。
- 140 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月05日(火)03時08分41秒
- 誰だろう?
ここは『モーニング娘。』の楽屋だからメンバーの誰かだとは思うけど…。
小さな声。
明るく会話を楽しんでいるような、そんな空気なんかじゃない。
何か、ひそひそ声で、しかも途切れ途切れの会話。
人に聞かれるのを拒むように…。
聞かれてはいけない会話のようだ。
普通、ではない。
「………」
ドア越しにびんびん伝わってくる向こうの雰囲気。
自然と高橋の気持ちが体に伝わってかドアに近づき握ろうとして踏みとどまっていた手が
突然意に反し流れるように前に進み、微かに触れてしまった―――
- 141 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月05日(火)03時09分22秒
それから遅れて本当に微かな音、いやほとんど音を立てずにドアが薄く開く。
「!」
故意にしたわけではないが自分のしてしまった事に高橋はびくっと動揺するように
反応した。
- 142 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月05日(火)03時10分38秒
「…でも……」
その薄く開いた隙間から今さっきよりも明確に漏れてくる声。
高橋はそれに気付き胸の中で密かにうるさく鳴り響く胸の高鳴りをより一層
強い物にした。
(誰?確か…この声は……)
記憶の糸を辿ってみる。
毎日一緒に時間を共にしているが、決して少ないとは言えないメンバーの
顔を一つ一つ思い浮かべてみる。
この場に居合わせた事、それを今の高橋はまだ混乱を覚えることなく、今はそれさえも
気付かずただ知りたい気持ちが増さっていた。
- 143 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月05日(火)03時12分10秒
「…やっぱり…このままじゃいけないと思う……」
(この声……確か…確か、そう…この声は後藤さん!)
普段ではあまり気にしない事を必死に思い出し、高橋はやっとその答えに辿り着く事が
出来た。
そのため会話の内容まで意識をもっていく事は不可能だった。
やっと誰の声かという事に気付き、その後には順序良くその声の主、後藤が誰と
話しているのかという事に疑問が向く。
ドアの隙間からやっとそのドアの向こう、楽屋の中の様子を覗いてみようかと
頭に案が浮かび顔を近づけようとした時、突然高橋のその行動は驚きによって
動きを失う事になる。
- 144 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月05日(火)03時13分12秒
「嫌っ!聞きたくない!」
「!?」
突然の大きな声に高橋は咄嗟にドアから体を微かに後ろに引いてしまう。
そしてそれとほぼ同時に胸の中で高鳴る鼓動は不安と動揺も交えて更に激しく
打ち始めた。
(…この声は…高くて、女の子らしい、独特の声は……)
既に高橋の頭の中にはその人物の名前は出ていた。
しかしすぐに頭の中に今の声の内容が浮かび自然と体がその人物の顔と頭に浮かぶ名前に
否定するかのように白い霧のようなもやを掛ける。
信じたくない、そんな気持ちに近いかもしれない。
高橋はいてもいたっても居られずこの目で確かめたいという勢いに押され、
胸に生まれた不安をかき消したい思いでドアの隙間に思い切って顔を近づけた。
- 145 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月05日(火)03時14分16秒
「お願い…?どうしてよ…ごっちん大丈夫だって今言ったじゃない…!」
しかし淡い期待は無残にも裏切られる事になる。
そこにいたのは、そこで後藤と会話をしていた、そして今声を荒げているのは、
まじれもない高橋の意中の人、彼女だった。
- 146 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月05日(火)03時15分16秒
「どうしてそんな顔するの…!?どうしてよ……」
「………」
高橋はただ黙ったまま目を見開いた。
開きかけた口はそのままの形で言葉を失う。
(…石川…さん……?)
目の前で悲痛な叫びをただ悲しげに叫ぶ彼女は本当にいつも自分が接していた彼女なのか
どうか分からなくなった。
むしろ、夢なら夢で幻なら幻であってほしい。
しかし、現実はそんな私の願いを聞き入れてくれるほどそう甘くはないらしい。
内容は分からず、ただ二人が声を荒げて言い合っていることしか知ることが出来ない
高橋はそれに戸惑う事しか出来ない。
口が開いたまま、閉じる事も自分の体は忘れてしまっている。
ドアノブに掛けた手は微かに震えていた。
- 147 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月05日(火)03時18分09秒
(私…私……)
だんだんどうして今自分がこの場にいるのか、どうしてこんな二人のやり取りを
目にしているのかさえも分からなくなってくる。
混乱してパニック状態に陥りそうになる自分を自分でも分からない何かが必死に押さえ
つけていた。
自然と無意識に微かに一歩後ろに下がる自分の右足。
体が徐々に全員で小さく震えるのが分かる。
その大きくつぶらな瞳は、信じられない物でも見るかのように不安に色を染めていた。
今にでも叫んで、何かに謝って、この場から逃げ出したい気持ち。
- 148 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月05日(火)03時18分52秒
「お願い…なら私にもお願いさせてよ…!」
「!」
しばらくの沈黙の後、その人がその沈黙を破る。
当然それによって自分の静寂も消し去られた。
驚きをなだめることなく言い放たれた声に理性と不安とは裏腹に顔がただ声に反応する
ようにそっちに向いた。
- 149 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月05日(火)03時19分59秒
「っ!梨華ちゃん…!」
「…!」
突然の出来事とは、思ってもいない時に雪崩のように不意に人の身に
重なって降り注いでくる物らしい。
目に映るその人は言葉と共に彼女を床に押し倒していた。
押し倒された彼女、後藤はただ成す統べなく腕を捉まれ乱暴に床に押し付けられる。
あまりにも非現実的な目の前の現実。
もう高橋の瞳はそれから目を背けることも忘れてしまったかのようにただ呆然と
理解不能なそれをその綺麗な黒い瞳に映し出していた。
- 150 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月05日(火)03時21分53秒
「何度も頼んだのに…何度も頼んでるのに…どうして抱いてくれないの…!?」
「!ごとーだって…ごとーだって何度も梨華ちゃんのこと欲しいって思ったよっ!」
(一体……)
「それじゃぁ、どうして……」
「…だって、梨華ちゃん……ごとーと一緒にいるときの梨華ちゃんはいつも……」
(一体どういう会話をしてるの……?)
分からない。
何を二人が話しているのか分からない。
ただ、何かのシーンのように、目の前の光景は瞳に映り、過ぎていく。
瞳はただその役目を果たすかのように、困惑する意識とは反対にぼんやりと目の前の
光景を冷静にただありのまま映し出していた。
- 151 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月05日(火)03時24分17秒
「わ…たし……」
自然と口から漏れる震える声。
それは何を表そうとも考えられずにただ無意識に溢れた物。
頭の中は真っ白、もう何も考えられない。
そんな時、誰かが示し合わせたものなのか、それとも目に見えない力の影響か。
いたずらにも向こうとこちらを隔てていた薄く厚い壁は、音も立てずに
静かに開いていった。
「………」
高橋にはそれが一種のスローモーションのようにさえ思えた。
「後藤さん…石川…さ、ん………」
その時自分がどういう感情から言葉を発したのか、いやどうして二人の名前を
読んだのかさえも覚えていない。
ただ気付いたら、私は二人を呆然と見ながら声を力なく漏らしていた。
そして、目の前には驚いた表情で突然の第三者の登場に動揺を隠せない二人の様子を、
ただありありと不思議なくらいに冷静に自分の瞳は静かに映し出していた。
- 152 名前:作者 投稿日:2002年03月05日(火)03時30分06秒
- 132:名無し読者さん
>ありがとうございます(T_T)
とっても励みになります。私にとってもいしごま好きな方が増える事はすごく
嬉しいです(w
ゆっくりがんばります。
133:いしごま防衛軍さん
>ありがとうございます。
かなりやばい状況ですね。一番どきどきする場所とも取れますが(w
- 153 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月05日(火)07時49分26秒
- 家政婦は見た、状態ですな。高橋はびっくりする役が似合います(w
- 154 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月05日(火)20時35分11秒
- 高橋も絡んでくるんですねぇ。
そして、よっすぃーが気になる。めっちゃ気になる。
気になる展開、気になる関係だらけ。(w
頑張ってください。
- 155 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月07日(木)01時24分58秒
- 高橋も絡むのですかぁ
よっすぃ〜のことも気になりますし、
作者さんには毎回気になることばかり(w
- 156 名前:作者 投稿日:2002年03月08日(金)21時31分17秒
- 153:名無し読者さん
>前回の更新は高橋の衝撃のシーン(謎)になりましたが…
違和感なくマッチしたようで嬉しいです(w
154:名無し読者さん
>気になるような事をもやもやしながら書くのは結構楽しかったりします(w
高橋と吉澤の二人は…大きく話には絡んでこないかも…そう感じてるのが
自分だけでもしかしたら違うかもしれないんですが…(汗)
ありがとうございます。がんばります。
155:名無し読者さん
>高橋と吉澤に注目が皆さん向いてますね。
どうなるのか…どうなるんでしょう…(爆)
気に掛かってくれて嬉しい限りです。がんばりますっ。
- 157 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月08日(金)21時36分49秒
「愛ちゃん…」
まるで永遠に続くかと思うぐらいの沈黙を破ったのは意外にも彼女の声だった。
しかしその声はうつろ、感情を全く秘めていないような呆然とした声。
私はただ彼女に床に押し倒されながら上から発せられた声と目の前の光景を
成す統べなく目にしていた。
「………」
しかしドアの前でただ呆然と立ち尽くす彼女は、呼ばれた事にも気付いていないようで
ただ力なくその場に固まっているように動かない。
名前を呼んだあなたもそのまま言葉を失い何も行動を起こさない。――起こせない。
私も何も言葉を発することが出来なかった。
この嫌な空気を変える術を知らないままただ変わらない雰囲気に息を詰まらせるだけ。
- 158 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月08日(金)21時41分04秒
「わ、私……」
しばらくして思いついたように彼女が戸惑う声を出す。
その声は胸の内を現すように微かに体と共に小さく震えているようだった。
「り、梨華ちゃん。…愛ちゃん違うのこれは……」
呆然としてまるで他に何か行動を取る事を忘れてしまったような梨華ちゃんの下
から上半身を起こしその体を彼女から解放させて考える前に口から言い訳の言葉を
発していく。
この場に居合わせる三人の中で、大きな動揺の中微かにでも理性を保てているのは
自分だけのようだった。
でも私の中からは疑問が絶え間なく響いてる。
違う?
何が違うんだろう。
これは…誤解でも何でもないただの現実なのに…。
- 159 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月08日(金)21時44分00秒
「ご、とう…さん……」
掛けた言葉に向けられた物は何かに救いを求めるような縋るような眼差し。
その憂いを秘める瞳に胸を痛ませながら後藤は真っ直ぐ必死にその瞳と向き合った。
本当は知ってた。
あなたが彼女を好きな事。
その瞳、見ていれば遠くからでもすぐに分かる。
「っ……」
言い訳を続けようとする口はそのまま開いたまま動かなくなり言葉をなくす。
真っ直ぐなその瞳を見つめながら、偽りの言葉を吐くなんて事、到底出来そうにも
なかった。
何か話さなきゃ。
だけど何も言葉が出てこない。
歯がゆい気持ちは自分に唇を噛ませ、やるせない気持ちで一杯にさせる。
また、この場に招かれざる沈黙が流れ出してしまった。
そんな時だった――
- 160 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月08日(金)21時49分44秒
「愛ちゃん。どうしたの?一体」
「!」
突然した声に後藤と高橋も驚いてそちらに振り向く。
そこにはまだその場に座り込んだまま、ただ口だけ開き言葉を発した石川の姿があった。
「あ……」
三人が一緒になり初めて発せられた彼女の言葉に高橋は困ったように言葉を漏らす。
どうしていいのか全く分からないかのように、その声は戸惑いと不安と、そして
まるで母親に怒られ怯える子供のような声。
「確かみんな屋上でお昼取ったんだよね?何か忘れ物でもしたの?」
「………」
困ったように俯く高橋を見やりながら、後藤は石川に顔を向けた。
するとそこにはいつものように汚れを知らないかのような微笑みを浮かべる石川の
姿があった。
- 161 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月08日(金)21時51分02秒
一瞬にして忘れていた物を思い出したかのように。
我に戻ったように石川はいつもの自分へと心を変化させる。
それはいつも高橋の見ている笑顔、見ていた笑顔。
幾分、それはいつものよりもやけに明るく取り繕っているかのようだった。
だけど…
(もう遅い…遅いんだよ梨華ちゃん……)
今更作られた仮面を被っても、もう遅い―――
- 162 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月08日(金)21時54分10秒
「ご、ごめんなさい…私…本を取りに来ただけで…その……」
俯きながら高橋はその石川の微笑みに顔を合わさない。
そして上ずった声は治らない。
今の高橋には目の前の石川の顔を直視することも不可能のようだった。
「愛ちゃん…」
「すいません、やっぱり…いいです。ごめんなさい…私…すぐに…行きますから……」
何も声を掛けられない。
何も言葉が思いつかない。
だけど、彼女のショックが何でか手に取るように分かる気がして名前を呼んだ。
しかし当の彼女は困惑や混乱によって何しにここに来たのかも忘れてしまったかのように
うつろな声で言うとそのまま狼狽するように足を後ろに下げる。
- 163 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月08日(金)22時01分16秒
「愛ちゃん…」
「ごめんなさいっ!!」
最後に謝罪の言葉を残し、高橋は石川の声を遮りながら楽屋を飛び出していった。
「………」
石川はただ呆然としてその高橋の消えていったドアをうつろな瞳で見やる。
高橋が廊下を全速力で駆けていく音が楽屋に響いた。
後藤もただ、呆然としてそんな石川と共にドアの向こうを見つめていた。
もう遅い。もう遅いんだよ…。
彼女の浮かべた微笑みに、高橋の消えていったドアの向こうに、胸の中で無意識に近い
ぐらいに自分に問い掛けるようにして小さく呟きながら後藤はすっと立ち上がった。
「ごっちん…?」
「ごめん、梨華ちゃん…ちょっと…追いかけてくる」
不安そうに顔を覗くその姿に、後藤はにこっと優しく微笑むと楽屋を後にした。
その笑顔はどこか切なくて悲しくて、痛々しい物。
唖然として、引き止める力もなくただその場に座り込んだ石川を残しながら―――
- 164 名前:作者 投稿日:2002年03月08日(金)22時22分33秒
- 更新しました。
- 165 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月09日(土)04時54分38秒
- 高橋の動き次第で色々展開しそうですね。期待
- 166 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月09日(土)13時03分34秒
- 高橋を追った後藤…
それでどうなるのか(w
期待ですねぇ
- 167 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月09日(土)19時42分50秒
「愛ちゃん……愛ちゃんっ!」
「!」
消えていった彼女の姿は意外にもすぐに見つかる事になる。
まだ彼女は走る力も湧いてこないのか向こうの角のところでだるそうに壁に
体を凭れさせていた。
そんな時掛けられた声に驚きを隠せないまま怯えに似た表情で後ろに振り返る。
「後藤さん……」
「愛ちゃんっ!…待って!」
逃げていこうとする彼女に全速力で駆け寄る。
そして角の向こうに消えていこうとするその腕を、掴んだ。
- 168 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月09日(土)19時44分02秒
- 「やっ…」
「お願い、待って……」
逃げ出そうと振りほどこうとして暴れる体をいささか乱暴に押さえつける。
そして同時に今出来る一番優しい口調で掛けた声に、高橋も混乱する頭を
微かにでも沈めることが出来たようだった。
「後藤…さん……」
荒かった息と口調がやっと静まり始める。
高橋は気付いたように後藤に静かに向き直った。
「あの、さ……今のは…ね……」
「っ…!」
しかしすぐに後藤の言葉に動揺を露にし始める。
高橋の中で既に太くは無い神経は切れてしまっているようだった。
- 169 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月09日(土)19時49分30秒
「あのね……」
「……訳がわかんないです…もう全部が…」
訴えるような、だけど自虐的な声に後藤は俯きがちだった顔を上げた。
するとそこには口調どおりの表情を思わせる高橋が後藤とは顔を合わせないまま
存在していた。
「ごめん、なさい…二人が話してること…あの時以前に少し前から聞いてたんです…」
「………」
高橋の言葉に後藤は言葉を失う。
自然とその頭の中は不思議なくらいにクリアになっていて、静かに高橋の次の
言葉を待っていた。
- 170 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月09日(土)19時50分18秒
「前から思ってた…。一体後藤さんと石川さんは…どういう関係なんですか…」
一番中枢を付く質問。
それに当然後藤は答える事が出来ない。
どういう関係って…。
一体どこから話したら良い?
誰が当事者で部外者なのかの違いも分からないのに…。
想いはいつしか膨らんでいき輪を広げていく。
いつのまにかつい最近までテレビの向こうで普通に生活していた彼女が今では
もう関係している。
どういう関係なのか…なんて私にも分からない。
- 171 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月09日(土)19時54分03秒
「…言えない事なんですか…?」
負けず嫌いな、少々きつめな性格の彼女の本質が出ているような口調だった。
問い詰めるような声、言葉。後藤にはただそれを耳に通し受け取る事しか出来ない。
「もう…訳分からない……。どうしてこんな…ことに……」
ただ胸に秘めていた純粋な想い。
それがこの矛盾だらけな輪に触れた瞬間抜け出せなくなった事に高橋も気付いたんだろう。
そう思った。
「愛ちゃん…」
「…ただ、好きになっただけなのに……」
ふと小さく呟いた高橋の言葉が、後藤は深く胸に刻まれ自分に対しても問いかけて
くるのを感じる。
私も、同じだよ。
ただ…ただ好きになっただけで…望むべき物はこんな物ではなかった…。
夢見ていた物は、過酷なぐらいの非情な現実に裏切られる。
乗り越えて、立ち向かう勇気はそれを知ったときから深く取り除かれてしまった。
絡まり合った想いの行く先は、ただ向かう先をなくして力なくす。
空回りする気持ちはいくつも交差しきつく、強く絡まっていく。
ほどく術は、悲しくも思いつかなかった―――
- 172 名前:作者 投稿日:2002年03月09日(土)20時07分45秒
- ちょこっと更新です。
165:名無し読者さん
>ですね。結構思ってもいなかったぐらいに高橋が重要な役柄
になってきてます。
期待に答えられればいいんですが…、がんばります。
166:名無し読者さん
>これからの展開に、高橋の性格が結構深く関わってきそうです。
高橋を追った後藤ですが…こんな感じになりました。
ここの後藤さん何だか優しすぎるのか後輩に対しても……(汗)
- 173 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月10日(日)16時00分46秒
- ごっちん…。
- 174 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月10日(日)21時52分28秒
- むぅ〜ますます気になる展開になってきましたね
続き期待(w
- 175 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月11日(月)20時05分04秒
それから仕事、そして夜が明けて翌日。
複雑な想いは答えが出ないままいつもと同じ仕事の日常が流れていく。
高橋は後藤と石川を避けた。
そうすることしか答えが出せなかったのだ。
新メンバーのためそうそうカメラの前では二人と隣同士になる事はまだない。
後藤はずっとそんな高橋を遠くから見つめていた。
「………」
向こうで他の新メンバーと共に一緒に話をする彼女。
いつもと変わらない笑顔で接している。
まるで、それは彼女が想いを寄せていたあの人のようだ。
- 176 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月11日(月)20時07分22秒
「っ…」
後藤の胸にとげが刺さるように痛みが走る。
重い衝撃。何よりも重く圧し掛かってくるそれは息することさえも
つらいものにする。
「ん?後藤?大丈夫?」
そんな時後ろから飯田が後藤に声を掛けた。
自然とうずくまっていた姿勢に飯田は心配そうな顔をしている。
「ごめん、大丈夫だから…」
「…そう?」
まだ納得していないようだったが、飯田はそれだけ言葉を返し再び向こうに顔を向けて
しまう後藤にそれ以上何も言えない。
「…ねぇ、次の仕事は……」
「ん?」
「まだ時間あるよね?」
「う、うん。まだ当分平気だと思うけど…あ、ちょっと…」
やけに真剣な横顔の後藤に飯田は複雑な表情で答える。
後藤は腑に落ちない飯田に「ありがと」と言い残すと、高橋に近づいていった。
- 177 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月11日(月)20時08分55秒
「…ちょっと……」
「?」
不意に後ろから掛けられた声に何かと高橋が振り向く。
しかし自分を呼んだその人が誰かと分かると、すぐにその表情は険しい、きつい物
になった。
「ちょっと、良い?」
「私…あ、後藤さん…っ!」
後藤はいささか強引に高橋の腕を取ると高橋が何か言いかけたことなど全く無視で
スタジオを一緒に出て行った。
「………」
そんな二人の背中を見つめるのは二人。
一人はただ静かに、その姿が消えていくのを見守るようにして。
もう一人は何かを察したような鋭い眼差しで…。
- 178 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月11日(月)20時12分45秒
「離して下さいっ、後藤さん!」
高橋の言葉に後藤はすぐに掴んでいた腕を離す。
あまりに簡単に開放された事に高橋は微かに気まずそうに表情を沈ませた。
「ごめん、強引に連れてきちゃって。…でも、話がしたくて……」
「…話って、昨日の事ですか?」
「……」
鋭い射抜くような視線に後藤は言葉を失う。
高橋はしばらく経っても声を発しようとしない後藤にしびれを切らすように
しながら、それでもひたすら次の言葉を待った。
「あのね、昨日のは……」
「…昨日のは、何ですか?」
俯く後藤に高橋が視線を投げかける。
まるで問い詰めるような瞳。
やっと話を切り出し、始めとなる言葉を発したが、開きかけた口をすぐに紡がされる
かのように間髪入れずたたみ掛けるようなきつい口調で聞き返した。
- 179 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月11日(月)20時14分02秒
- 「昨日のは…違うの。何でもないから……」
「…何でもないわけないじゃないですか…」
後藤の否定する言葉に高橋が幾分自嘲するように言葉を遮った。
「……」
当然後藤は遮られた言葉に何も言い返せない。
「二人が話していた事も何の事か分からない。二人がどういう関係なのかも
分からない。それに…二人の本当の気持ちだって分からないっ…!」
最後は叫ぶようにして高橋が顔を上げた。
その瞳は幾分潤んでいるようにも見える。
「愛ちゃん…」
「だけどそんな私に分かる事はたった一つだけ…それは石川さんが後藤さんを
押し倒してたってこと…!!」
向けられる瞳に今にも背けたくなる衝動に駆られる。
だってその瞳は炎が宿るぐらいに熱くて鋭くて、真剣な物だったから。
だけど視線を下に落とす事も許されない気迫に追いやられる。
次に繋がる言葉が、全く想像できなかった。
そしてどこかで感じていた通り、思ってもいなかった事を耳にすることになる。
- 180 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月11日(月)20時15分17秒
「目で見たそれ以外私には知る力が無い……けど…」
「………」
高橋の中で様々な複雑な感情が入り組む。
それはどれも言葉では簡単に表現できそうにない感情達。
そんな中で、一つの答えに近い言葉が、口から零れるように飛び出した。
「私はそれに嫉妬している」
あまりにも単純すぎるぐらいの答えは、矛盾する入り組んだ感情から溢れた。
- 181 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月11日(月)20時18分46秒
「……!」
目の前の後藤さんも思ってもいなかったであろう私の言葉に驚きを隠せないのか
目を見開いている。
昨日の事に遭遇してから、
いろんなことを考えたし疑問が浮かんだけど答えはどれも出てこなかった。
だけど私のことなどお構いなしに明日と言う時間が流れてくる。
どうしよう。
どうしたらいいんだろう。
その行き着いた先は二人との接触を避ける、ってことだった。
それしか思いつかなかった。
そして今後藤さんに連れられ、思わず飛び出た感情の言葉。
そうだ……あの時二人を見て、咄嗟に思った素直な気持ち。
その場にそぐわないかもしれないけど、自分の大好きなあの人に、
押し倒されているあなたが何よりも羨ましくて嫉ましかった。
- 182 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月11日(月)20時19分42秒
「…愛ちゃん……」
動揺と困惑、戸惑いを隠せないまま後藤は高橋の名前を呆然と呟いた。
高橋はただ拳を強く握り締めたまま後藤の前で俯き加減に立ち尽くす。
その体は小さく震えていた。
嫉妬という形の感情。
まさかそんな物が向けられるとは思ってもいなかった。
だけど心のどこかでは安心してる。
良かった…。
軽蔑、失望、そんな物ではなくて…。
まただ、おかしいのかな私…。誤解が解けた訳でも問題が解決したわけでもないのに。
- 183 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月11日(月)20時20分29秒
- 何も知らない人間でも、あの状況と会話を微かにでも聞けば二人の関係が
周りが羨むような理想の物だとは思わないだろう。
だけど目の前の彼女はそんな私に嫉妬している。
たとえ梨華ちゃんが『私』を見てないと知ってもそれは変わらないのかもしれない。
それだけ、好きなんだ…あの人のこと…。
- 184 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月11日(月)20時22分10秒
「二人の関係は知らないけど…悔しい…それにずるい…」
「………」
「私…諦めませんからっ!石川さんのこと…!」
それだけ言い放つと高橋は後藤を置いてその場を駆け出し、元来た道を走って
そのままスタジオへと消えていった。
「………」
高橋がいなくなり一人だけの廊下で後藤は無言のまま拳を強く握る。
誰も悪くない、けど。
嫉妬されるような関係…な訳でもないのに…。
想いは募っても全ての人間にそれは返って来ない。
見返りを求めない…なんて結局無理で…。
高橋の真剣な表情、真摯な眼差し。
自分の体を求める彼女とその温かい微笑み、そしてそれとは対照的な二人だけの時に
露になる切な過ぎるほどの冷たく悲しい瞳。
私は一体…どう、したらいいんだろう…。
- 185 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月11日(月)20時23分05秒
「っ…」
後藤はその場に静かに沈み、しゃがみこんだ。
小さく震える体を抱きしめて、小さく屈む。
そして腕の中に自分の頭を沈めた。
溢れてくる涙を誰にも見られないように。
「うっ…うぅ…」
自分だけの世界で、誰とも関わりを持たないその場所で、後藤は
一人涙を流した。
「………」
向こうから聞こえてくるのは少女のすすり泣く声。
嗚咽が含まれるそれとたまに息を強く吸い込んでは吐き、涙を流すその姿が
見なくても目に映る。
石川は、後藤がいる廊下のすぐ近く、そちらからは見えないもう一つの廊下の壁に
背をもたれさせ響いてくる声を一人静かな表情で聞き取っていた―――
「…ごめんね……」
- 186 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月11日(月)20時25分14秒
「…どう、しよう……」
高橋はスタジオに向かうまでの廊下を全速力で風を切るように走りながら一人呟いた。
嫉妬、したのは本当だけど。
あんなこと言うつもりはなかった。
ただ、何も言い返さない彼女を見ていたら自然と口から言葉は溢れていた。
目の前にスタジオの扉が現れる。
しかし高橋はそのまま向こうの廊下に走り抜けスタジオを避けた。
「どう、したらいいんだろう…」
どんどん絡まっていく。
意思とは裏腹に…。
高橋は静かに薄暗い廊下の冷たい壁に体を預けた。
「もう…引き返せないの…?」
不安そうに呟き、高橋は静かに涙を瞳から溢れさせた。
果てしない不安と、怯え、そして無意識なほど微かな、後悔―――
- 187 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月11日(月)20時29分20秒
「………」
下では二人の少女が言い合うのが目に映る。
そしてその向こうの壁には小さな人影が出来ていた。
姿が見えなくても、動かないその人影に誰かなどはすぐに察しがつく。
ここは屋上手前の階段の踊り場。
窓を通し差してくる温かい日差しを背中に浴びて、下の様子を手すりに
頬杖をつき所在無さげに眺める。
「…ったく…」
小さくため息をつき、舌打ち交じりに呟いた後、体をくるっと反対に回転させ向きを
変えると手すりに背中と肘を寄りかかせた。
向こうからは次第に小さな嗚咽と泣き声が聞こえてくる。
「みんな…バカなんだから…」
言葉と共に目の前の屋上のドアを思いっきり力いっぱい蹴飛ばす。
外とこちらを隔てる屋上の扉は、それに勢いよく反動を付け貫けるような大きな音と
共に弾けるように前に開け放った。
「………」
ドアぶちの小さな型に収まる青い空の景色と共に、目を細めるぐらいの
風が一気に押し寄せてくる。
髪が一斉に後ろに流れた―――
- 188 名前:作者 投稿日:2002年03月11日(月)20時34分57秒
- 更新終了
173:名無し読者さん
>書いてるとあまり多く感じませんが読んでくださる読者さんにとって
後藤の立場は本当につらい物になってると思います。
すいません(+_+)それしか言えないです…。
174:名無し読者さん
>「気になる」がこれからどんどん続いていくかも…。
そうなるように書きたいです(w
がんばります。
- 189 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月12日(火)04時34分31秒
- 読みごたえがあって良いです
すごい人物相関図…
- 190 名前:173 投稿日:2002年03月12日(火)08時08分30秒
- こう言うのがツボなんでこの作品大好きなんです。(w
最後に出て来たのって…もしや??
- 191 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月15日(金)21時18分36秒
- うーむ
どんどんどーなっていくのか(w
- 192 名前:作者 投稿日:2002年03月15日(金)21時42分58秒
- 189:名無し読者さん
>ありがとうございます。
いろんな方向に矢印が指してますね。
果たしてどうなってしまうのでしょうか…。
190:173さん
>そうですか、良かったです^^
最後に出て来たのは…話にあまり出てきてなさそうで結構
重要なキャラだったりする…あの人かと…。
191:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
進むにつれて益々ごっちゃになってきてますが…
案外結末はそう遠くはないかも…。
すいません、もしかしたらこれからの更新が遅くなってきてしまう
しれません(+_+)
書き始めた頃からラストもストーリーも大体決まってるので
出来るだけがんばって早く更新していきたいとは思ってるんですが…。
最後までお付き合い下されば幸いです。
- 193 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月16日(土)00時39分34秒
- 作者さんのペースでどうぞ
完結してくださるならマータリお待ちしております(w
- 194 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月17日(日)18時22分22秒
それから五日の月日が経つ。
高橋は依然として二人と接触を避け、一言も言葉を交わさなかった。
石川も、後藤とも高橋とも自分から言葉を掛けることはせずただ静かな表情で
この五日を過ごしていた。
絡まりすぎた関係、膨らむ問題。
後藤も既にそれについて考える気力など湧いてくるはずもなくただぼーっとこの
五日間を仕事で過ごした。
そして問題のその日が起きてからその一週間が過ぎ去り今日は土曜日。
いつものようにコンサートツアーのため全国へ飛び回る。
目的地の九州へ朝から飛行機を使い、メンバーは東京を発った。
- 195 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月17日(日)18時24分10秒
- 九州へ向かう飛行機の中。
「……」
後藤は毛布を貰いそれを体に包ませると微かに体を横にさせ、窓から
青い空と雲を所在無さげに眺めていた。
機械音が静かに鳴り響く機内。
誰も、何も話さなかった。
会話は何もない。
それぞれがそれぞれの事をし、のんびりと時間を過ごしている。
不意に襲って来た睡魔。
重く圧し掛かってくるそれに途中まで瞼をどうにか開き睡魔と闘っていたが、
ついに後藤は静かに瞳を閉じた。
- 196 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月17日(日)18時25分34秒
- 東京から約1時間半。
つかの間の空の旅は終わりそのままホテルに直行。
部屋割りは幸か不幸か、後藤は石川と同じ部屋に分けられる事になる。
二人ともそれに対して何も言わなかった。
複雑な鼓動を胸に響かせながら荷物と共に部屋に向かう。
「じゃぁまたね〜」
廊下でメンバーと別れていく。
後藤と石川の部屋はホテルの廊下の一番エレベーターから遠い端の部屋だった。
何事もなくいつも通りの様子の矢口と安倍に自分達の部屋の一つ手前で
別れ、ついに二人だけの時間、空間となる。
「……」
気まずい雰囲気を漂わせながら、それでも二人は何も自分からは話し掛けなかった。
- 197 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月17日(日)18時27分40秒
- ドアを開き、後藤は後ろに石川がいることを確認しながら先に部屋の中へ入っていく。
部屋に入ると荷物を適当に置いてそのまま依然として変わらない雰囲気の中、
ベッドに座った。
「……」
遅れて石川も荷物をその隣に置く。
会話は今さっきから変わらずない。
後藤はただ目の前のその石川の動作をぼんやりと眺めていた。
当の石川もすべき行動がなくなりどこか困ったようにしてその場にしばらく
立ち尽くした後、すぐにベッドに向かい腰を掛けた。
どことなく薄暗い部屋に、嫌な沈黙が流れる。
後藤にはこの沈黙を破る力はなかった。
何を話したらいいのかも分からない。
逆に、続いていくのならこのまま沈黙のままでも悪くないかもしれない。
そう思った時、このまま長く続くかと思われた沈黙は意外にも彼女の方から
破られた。
- 198 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月17日(日)18時29分17秒
- 「…ごっちん……」
「何?」
考え込んだ風の声に後藤はすぐさま答えてしまう。
まるで何か話し掛けられるのを今にも望んでいたみたいで少し恥ずかしさを感じた。
「そっち…行ってもいい?」
「え?あ、うん……」
言いながら返事を待たずベッドから立ち上がった石川に後藤は戸惑いながら、
訳が分からないまま答える。
するとすぐに石川は隣の後藤の腰掛けるベッドに静かに腰を下ろした。
「……」
自分でも良く分からない大きく波打つように響く鼓動が、胸を、体全体を
襲ってくる。
それはまるで部屋全体に響き渡るかと思わせるほど。
- 199 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月17日(日)18時31分21秒
- 「ねえ、ごっちん…」
「な、に……!」
ベッドに置いていた手に咄嗟に温かいぬくもりを感じ、今まで以上により一層
胸を飛び上がらせ石川の方へ振り向く。
するとその動作が終る前に後藤は石川に手を握り締められ、肩に頭を預けられていた。
「あ……」
手から伝わってくる彼女のぬくもり。
優しくて、きめの細かい綺麗な細い手。
寄りかかってくる彼女の重さは何よりもほっとして居心地が良くて、今まで抱いていた
戸惑いや不安など一瞬で消し去り自分を嬉しさで一杯にさせる。
すぐ側に感じる彼女の吐息は優しくて温かかった。
- 200 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月17日(日)18時37分18秒
- 「寂しかった…この一週間……」
「…!」
後藤の気持ちが心臓の音から伝わってか、石川はそのまま後藤の腰に手を回していく。
そして前からぎゅっと抱きついた。
この一週間、後藤も少なからず何か胸がぽっかり空いた感覚を覚えていた。
それはもしかしたら今の石川の気持ちと同じ物なのかもしれない。
だけどそんな感じていた気持ちもすぐに彼女の行動によって寂しさに空いた胸の
穴は何よりも温かい気持ちで埋められていく。
突然の事に――果てしなく長く感じた一週間、ずっと感じていなかった久しぶりに
感じる彼女の温もりに――後藤は戸惑い、密かに嬉しさも含ませながら何も行動が
取れなくなる。
- 201 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月17日(日)18時39分02秒
- 「ごっちんも…だよね…?」
「……」
同意を求めかけるその瞳は何よりも熱くて情熱的だった。
訴えかけるような、切なさも含みどこか色気も最大源に含むそれは後藤を
一瞬にして体の奥から火照らせる。
スッと瞳を閉じ近づいてくる彼女の愛しい顔に、後藤は瞳を閉じないまま唇に
柔らかい感触を受けるまでずっと彼女の顔を見つめていた。
女の子らしい端正な顔立ち。
今まで自分が出会ったこともないぐらいにおしとやかで可愛い性格。
初めて誰かを好きになるという事を教えてくれた人。
こんなにも、自分を溺れさせた人。
後藤はより一層胸の中の鼓動を熱く早めながら石川の唇を待った。
- 202 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月17日(日)18時40分40秒
- 「…ん……」
唇に彼女を感じ、そこから広がっていく甘い感覚に思わず声が漏れる。
途中まで唇を合わしながら後藤は石川の顔を見つめていた。
瞳を閉じただ自分の唇を味わうかのように求めるその表情が薄く開いた瞳に映る。
そんな表情は、後藤の体をより強く熱くし、とろけそうなぐらいのキスの感覚も
重なりついに後藤も石川とのキスだけを味わうように瞳を静かに閉じた。
あとは体の、本能の赴くままだった。
石川はこの一週間絶えていたものを全て吐き出すように激しく口付けを交わし
後藤を乱暴なほどに強く強引にベッドに押し倒す。
後藤も何も抵抗しないまま石川の行動に従った。
- 203 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月17日(日)18時43分15秒
- 「……」
不意に合う互いの視線。
石川は押し倒し、自分の下でベッドに寝かされる後藤の体に跨ったまま
ただ静かに見つめる。
後藤も何も言わないままただ石川を見つめた。
長くも短くも感じる二人の見つめあう時間。
なぜだか、この時二人には「言葉」と言う物が必要なかった。
今のこの時間に、通じ合うために言葉は要らない。
その表情と瞳が彼女の何かを語る。
――偽りのない全てを。
石川は視線を合わしたまま後藤の肩に両手を添え再び唇を合わす。
再び絡まった互いの一部を二人は夢中で絡めた。
- 204 名前:作者 投稿日:2002年03月17日(日)18時47分42秒
- 短いですが更新しました。
もう200ですね…いつもそうなんですけど頭の中で考えていた物は結構短いと
思っていても実際書くと長くなりますね。
193:名無し読者さん
>ありがとうございますm(__)m
すごく励みになります。ありがたいお言葉嬉しい限りです。
- 205 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年03月18日(月)00時29分55秒
- どんどん複雑になっていくけどこの二人の熱い行為に
いつも引き寄せられます。読まずにはいられません。
更新どきどきしながら待っています。頑張ってください。
- 206 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月24日(日)23時02分39秒
- やっぱりいしごま良い。高橋も良い。
石後愛この3人は自分の中で最強ですから、
非常にこの小説は萌えです。ROMってます、頑張って下さい。
- 207 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月25日(月)21時08分29秒
「…あんっ…っやぁ……はぁ……」
「……」
熱い吐息と共に溢れ出すのは快楽に身を委ねるその高い声。
汗ばむ体を合わし、ただ時間は快感と共に流れていく。
「はぁ…ん…もう…だめ……」
「ごっちん…可愛いよ…」
眉を寄せ、瞳をぎゅっと閉じ体を仰け反らせて強い快楽に必死に耐えようとする
後藤に石川は魅了されるような口調で今にも意識を飛ばしそうになっている後藤に
話し掛ける。
自分ではその気はないのに、自分の動作やしぐさが彼女を欲情させ劣情させている
ことに思わず後藤は恥ずかしさに囚われ今さっきまでとは違う様子で瞳をぎゅっと
閉じ顔を赤らめる。
- 208 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月25日(月)21時10分28秒
「恥ずかしがらないで…」
「やぁん……あぁ…もう…」
後藤の様子から気持ちを感じ取ってか、石川がより強く快感を後藤の体に
与える。
恥ずかしさを感じているのに、口は勝手に甘い声を出しなんとか快楽から
体を保とうとしてしまう。
「真希…」
「…!」
不意に呼ばれたその声に、後藤は思わず体をびくつかせ反応する。
熱い…体がすごく熱いよ…。
薄く瞳を開き彼女の姿を見つめる。
そこには今自分を呼んだ彼女の姿があった。
自分とは正反対で、全く息も乱さない彼女はただ私を愛すことだけに
専念している。
あなたに名前を呼ばれるだけで…私は…。
あなたの発する言葉は私に対して最高の愛の媚薬へと変化する―――
- 209 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月25日(月)21時12分28秒
目の前にあるのはいつもと変わらないその表情、自分が一番好きな横顔。
普段通りの彼女の前でこんな淫らな自分を露にしていることが恥ずかしくなった。
しかしそれは自分の意志とは反対に体が溢れさせる。
彼女にはそれが伝わっている。
また、わずかに残った理性から恥ずかしさが生まれ、体が熱くなった。
「あ……っ!」
不意に彼女の姿が目の前から消える。
そしてそれと共にすぐに触れたその感触に体を震わす。
「あ…もう…あんっ…あぁ…!」
それからどれくらいの時間が経ったんだろう。
これ以上ないぐらいの快楽に身を委ね、時間も感じられないぐらいになって。
いつのまにか私は自分の発する淫らな高い声に最後まで恥ずかしさを感じながら、
揺れるベッドの中絶頂まで上りつめてしまった。
- 210 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月25日(月)21時16分00秒
「……」
途切れた意識。
後藤は自然に近いほどにすっと閉じていた瞳を開いた。
だるい体を横にさせたまま、ただ瞳を開きそのままの格好でそこから見える
景色を眺める。
徐々に瞳に光が届いてくる。色彩を映し出しやっと物が分かるようになる。
瞳に映る物はただ部屋の大きなベランダ越しの窓と、おぼろげなその窓の向こうの景色、
そして脇に置かれるのっぽな照明だけだった。
「…私……」
だんだん意識がはっきりし始めて肘を尽きうつ伏せのまま一人だけのベッドに
体を起こそうとする。
「…梨華ちゃん…?」
なぜか不安になって、彼女の名前を呼んだ。
- 211 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月25日(月)21時20分46秒
「ごっちん?目が覚めたの?」
返事は不安を消し去るようにすぐに返ってきてくれた。
後藤は静かに声を聞こえた方に顔を向け、体を起こした。
「梨華ちゃん…」
溢れたのは安心するような声。
後藤はタオルを体に巻いただけの石川の姿にほっと胸を撫で下ろすように小さく息をつく。
「どうしたの?…ごめんね、近くに居なくて…」
石川は後藤の表情にすぐに察するように声を掛けながら静かに後藤の側にやって来る。
「……」
後藤はただベッドの上に体を座るように起こし石川の姿を見つめていた。
石川は後藤のいるベッドに静かに腰を掛け後藤のすぐ隣に座った。
「梨華ちゃん…」
「ごっちん…」
そしてぎゅっと後藤の体を抱きしめる。
その華奢な体と細い腕は強く、それでも優しく自分を抱きしめた。
- 212 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月25日(月)21時21分56秒
「……」
そのまま石川の手は後藤の髪を撫でるようにして掬うように通し、流れるように
後藤の頬、唇を撫でていく。
後藤はただぼーっと魅入られるように成す術になっていた。
(何で…こんなに……)
優しいんだろう。
あなたの真意が分からない。
どうしても知ることが出来ない。
何で…どうしてこんなに…優しくしてくれるの…?
「ごっちん…」
ただぽーっとしていた後藤に石川が今までとは違った口調で話し掛けた。
「梨華ちゃん…?」
しばらく経っても言葉を続けようとしない石川に後藤は顔を覗き込みながら何か聞き返す。
しかし石川は俯いていて、どういう表情をしているのか分からなかった。
- 213 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月25日(月)21時23分50秒
「梨華ちゃん?」
もう一度彼女の名前を読んだ時、
「ごっちん…」
何かを心に決めたように石川が再び口を開いた。
「?」
なにやら真剣な表情の石川に後藤は首を傾げる。
どうしてか、この時は嫌な予感はしなかった。
「一人に…しないでね…」
石川は小さく今にも消え入りそうな声でそう呟くと後藤を前から抱きしめた。
「……」
その言葉を現すように、石川は後藤と離れないように、微かな距離も作らないように
体を密着させ確かめるようにきつく抱きつく。
タオル越しだけど、それ以外には何の隔たりもなくただ感じる彼女の直の感触に
後藤は体を優しく熱くさせた。
「…うん……」
小さく震える彼女の体を、後藤はただ静かに背中に手を回すと優しく抱き返した。
- 214 名前:作者 投稿日:2002年03月25日(月)21時33分27秒
- 少し更新しました。すいません、遅くなってしまって。
しかも久しぶりの更新は少しだし…(汗)
集中する時に書くようにしてるんですがそれがあまり上手く行かなくて…。
205:いしごま防衛軍さん
>ありがとうございます。
嬉しいです。何より励みになります。
がんばります。
206:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
私も娘の中でも特に女の子な感じが強い三人が好きです。
できるだけ間を空けず更新できるようがんばります。
- 215 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年03月25日(月)21時46分51秒
- うおー梨華ちゃんとごっちんの熱い行為は最高です。
でも、梨華ちゃんの一人にしないでという言葉が切ないですなあ。
- 216 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月26日(火)21時34分21秒
――――――――
それからメンバー一向はコンサート会場へと向かった。
お昼からの公演のために何回かのリハーサルを行い、いつも通り何事もなく
忙しく時間は流れていく。
目まぐるしくすぎたリハーサルを終え、今はつかの間のお昼休み。
これからあと約2時間弱で会場に客が入り出しすぐに熱気と興奮の渦巻く
長くも短い時間がやって来る。
「………」
石川は本番を控える今の時間をお昼も食べ終わり、ただ節目がちの瞳で
窓からすぐそこにある大きな川を見つめていた。
大きく開いた窓の向こうには水のせせらぐ音さえも聞こえてくるのではないかと
いうぐらいに澄んだ川がある。
周りは川原になっていて季節もよくなり始めたこんなお昼のひと時を、家族で
過ごすためや恋人や仲間達と楽しい時間を過ごすために訪れた人で微かに賑わっていた。
彼らの目的はただ一つ。
- 217 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月26日(火)21時35分57秒
- 「綺麗な桜…」
川の周りには幾つもの綺麗で目に鮮やかな桜の木が植えられていた。
それは全てが満開で今日という天気に恵まれた晴天の下でこの上ないほどに
美しく咲き綻んでいた。
それは目に付く川の向こうから先までずっと続いている。
川にかかる橋から桜を見物に訪れている人々の姿も目に付いた。
今日は、桜見物には絶好の日に違いなかった。
自然と石川の表情も無に近かった物が優しく柔らかい物へと変わっていく。
それは桜に魅入られ、同時に桜が一番似合うかのような物。
「………」
後藤には石川の呟きがしっかり聞こえていた。
しかし何も言葉を返す事はしない。
ただ、その桜を見つめるその優しくも儚げで綺麗な横顔を見つめていたかった。
しかしそんな想いも悲しく、現実の流れには変化が訪れる。
いつまでも、ずっと見つめていたいとさえ思うその横顔。
だけどそれはすぐに誰かのために表情を変えた。
- 218 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月26日(火)21時40分00秒
「石川さん!あの…」
元気良く彼女に話し掛けるその人。
彼女もまた桜がよく似合うと思わせる和の正統派な美人を感じさせる顔立ちをした
高橋愛。
黒髪とその澄んだ黒い瞳をこれ以上ないというぐらいに潤わせ、彼女は
窓の向こうを見つめていた彼女に話し掛けていた。
それはなんも他愛ない会話。
だけど彼女は一生懸命に話し掛け、目の前のその人の顔を直視できずただ俯きながら
コンサート前の緊張を彼女に語っているようだった。
桜に魅入られていた彼女もまた、そんな高橋の心の奥底の気持ちなど気付きもせず
ただその罪深いとも思える純粋無垢な笑顔で答えていた。
憧れる後輩と良い先輩。
後藤は二人とは遠いとも取れるほどの距離から今さっきまでの石川と同じように
窓の向こうを見つめながら二人を見ていた。
- 219 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月26日(火)21時42分22秒
「大丈夫だよ、私もそうだったから…今もだけど……」
途切れ途切れに聞こえてくる会話。
耳が塞ぎたくもなるし同時に何の妨害もなく全てを聞きたいと私に思わせる。
「何か良い緊張のほぐしかたってありますか…」
聞きたい、聞きたくない、聞きたい、聞きたくない…
「そうだなぁ…深呼吸したりするけど…でも本番になるとたぶん高橋も緊張
取れると思うよ」
彼女が呼ぶ他の誰かの名前、聞きたくない…。
「…がんばります、あの…」
「何?」
聞きたくないのなら、耳ふさいじゃいなよ…全部、壊しちゃえばいいんだ。
だってそうでしょ?もう全部壊れちゃってるんだから…。
「がんばりましょうね…!」
…全部無理だよ…そんなの私が一番知ってる…。
- 220 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月26日(火)21時51分59秒
目に映る川のほとりの桜の花びらが微かに強く吹いた風に静かに舞った。
聞かなくても、耳に作り出される風のそよぐ音は、
虚構の音だけを脳に作り出し耳には伝えてくれない。
それが聞こえたなら、私の心は少しでも潤されていたかもしれないのに。
「そうだね」
耳に聞こえてくるのはただ自分の胸の中で嫌に居心地の悪く打つ鼓動だけ。
全身に、特有の嫌な感覚が頭の先から爪の先まで流れていく感じがした。
二人は私の存在に気付いていないようだった。
他愛無い会話を終らせ、私の心とは正反対の気持ちで彼女達二人はそこを後にしだす。
同時にスタッフが忙しく駆け回る足音が徐々に聞こえ始めてきた。
桜のトンネルは、まだそよぐ風によって左右に優しく木を震わせている。
花びらは舞い、川に舞い落ち、どこかへと向かい流れていく。
- 221 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月26日(火)21時55分23秒
後藤は無言のまま、目の前の窓を大きく開け放った。
太陽が空を照らし出し雲はゆっくりと空を流れている。
私の胸の内とは裏腹に…。
肌に心地よい風が、私の髪をなびかせながら一瞬にして体を包み込んだ。
「……」
お願い、神様
桜の花びらを私の元まで運び込んで来て、
そしてそれと共に、私に勇気を下さい…。
窓の向こうを眺めるその少女の儚げな瞳には、風に舞い空を泳ぐ桜の花びらが一枚、
確かに円を描きながら自分の元へと舞い降りたのを、しっかりと映し出していた。
- 222 名前:作者 投稿日:2002年03月26日(火)22時01分12秒
- 短いですが更新終了です。
意外ともう少しで結末はやって来そうです。
215:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
そう思ってくれるように書けて良かったです。
がんばります。
- 223 名前:梨華っちは文麿の応援団 投稿日:2002年03月26日(火)23時49分13秒
- 初めまして〜♪いしごま防衛軍さんと同じくいしごま推しです。^^
毎回見てますよぉ♪
更新楽しみにしてます。
- 224 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年03月27日(水)04時21分47秒
- うむむ、確かに梨華ちゃんと桜は似合いますねー。
ごっちんが切ないでー。ごっちん頑張れ!!
- 225 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月27日(水)08時47分02秒
- 超受けキャラである石川が攻めというのは珍しい。。
それはそうと、情景描写がとてもきれいですね
引き込まれる
- 226 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月28日(木)01時19分55秒
- 後藤が切なくて目が潤む…高橋にも頑張ってほしいし…あ〜 もどかしい
- 227 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月28日(木)21時53分08秒
それからメンバーは本番を後少しに控えどこか緊張感を漂わせつつ
楽屋前へ集合。
「みんな〜?揃ってる〜?後で慌ただしくなるの嫌だからちゃんと今集まって
おいてよ〜?」
リーダーの叫ばんばかりの大きな声が通路にそれでも何とか通り、既に全員揃って
いたメンバー達がその声に一人づつそれぞれ答える。
中学生グループは元気良く返事し、矢口や安倍、保田達は他愛無い会話に
花を咲かせ今の時間を過ごしていた。
「……」
石川はただ片手で自分の肘辺りを持つようにし、メンバー達の輪とは
微かに背を向ける形で桜の綺麗なあの川を眺めていた。
後藤はそんな石川の様子に、ずっと黙って見つめていたが思わず声を掛けた。
それは、桜の花びらの舞う情景の中、彼女自身もそのまま消えていってしまいそうな
ぐらいに儚く頼りない物だったから。
- 228 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月28日(木)21時55分06秒
「梨華ちゃん」
「?…」
掛けられた声に石川が誰かと振り向く。
しかしその先にいた人物に思わずありのままの、素の彼女が見え隠れした。
後藤が感じた物と同じように、その存在は後藤の姿に一瞬、本来の儚い悲しい姿を露にした。
「どうしたの?ごっちん」
メンバー達のいる中、いつも後藤といる時の自分を出すわけにはいかず石川は
無理やり取り繕った笑顔で後藤に向き直る。
そんな石川の姿に後藤はすぐに返事をする事が出来なかった。
騒がしい本番前のさなか、微かな沈黙が二人の間に流れる。
嫌な、だけどどこか悪くもない時間が流れていた。
「二人とも桜を見てるの〜?」
そんな中のんびりとした口調の声が向こうの話の余韻を引き継ぎ二人の間に
割って入った。
- 229 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月28日(木)21時56分56秒
「綺麗だよねぇ、桜も川も…。何でもそこの川、地元じゃ澄んでて綺麗ってことで
有名らしいよ。夏も花火大会の時とかに毎年使われてたくさんの人が訪れるらしいし…」
何も知らず沈黙を破ったのは意外な人、保田の存在だった。
「そうなんですか…」
石川は後藤に向き直っていた顔を再び窓の向こうへ戻すと感情の含まれていない
適当な声で返事する。
後藤と今微かにでも一緒にいたせいだろう、いつもよりもあからさまな態度の
石川に後藤の方がドキドキと嫌に緊張した。
「今日なんか花見に良い日だよね。いいなぁ、あたしなんかここ何年も花見
なんてしてないよ」
石川の横から顔を覗かせ同じようにして保田は窓の向こうの桜に目をやる。
保田の存在がすぐ隣に来た時、石川の体がびくっと反応したのが後藤の目に入った。
- 230 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月28日(木)21時58分23秒
「ごとーだってずっとしてないよ。小学生の時家族と一緒にちょっと近所の桜を
見に行ったぐらい」
後藤は何とか場が変な空気に包まれないように、なるだけいつもののんびりとした
マイペースな口調で答えた。
胸の中では今発した言葉とは正反対に痛いほどに鼓動が胸を打っている。
「後藤が加入したのは中学生の頃だからね…」
保田もその美しい桜に目を奪われてか後藤の言葉にぼんやりとした口調で答えた。
「!」
後藤が感じる嫌な空気、それが一刻も早く終らないかと願うこの瞬間、
想いとは悲しくもう一人の関係人物と目を合わすことになる。
- 231 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月28日(木)21時59分22秒
「……」
高橋だった。
彼女は小学生グループから会話を外れ、輪に入ったままの状態でこちらを
静かに見つめていた。
気になっている、そんな気持ちが見ているだけでも伝わってくるぐらいの瞳。
溢れ返っているその彼女の気持ちと目が合ってしまい、後藤はとっさに目を
離す事が出来なくなってしまった。
今自分のすぐ隣にいる彼女を熱い想いで見つめるその瞳。
何よりも純粋で、穢れない情熱的な眼差し。
それは後藤にとってただ罪悪感を生み出し、居心地の悪さを感じさせ、
悲しく切なくさせる。
今すぐにでも目を反らしたい、だけど反らす勇気は私にはない。
「……」
後藤はしばらくその高橋の瞳に魅入られるようにずっと見つめつづけていた。
- 232 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月28日(木)22時02分12秒
何とかいつもの自分を取り戻し、石川が二言三言保田と話しながら桜を眺めている
所だった。
時間も近づき隣で桜から今度は町並みを見始めた保田に構うことなく石川が
メンバー達の方へ向き直った時だった。
「!…」
そこにいたのは一人の少女をただ心奪われるかのような表情と様子で見つめる
後藤の姿だった。
その横顔は真っ直ぐ彼女に向いていて瞳は彼女しか写っていない。
自分は、微かにも映っていない。
嫌な鼓動が胸を打ち始める。
「……」
石川は思わず胸をぎゅっと押さえ、服を掴んだ。
- 233 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月28日(木)22時04分17秒
俯くような姿勢で、何か様子のおかしいその人の姿が目に映り高橋は
思わずそちらに目を向けた。
「あ……」
髪が下に垂れ顔に掛かり表情が分からない。
だけどどう見ても具合の悪そうな石川の姿に高橋は思わず声を漏らした。
考える前に体が動いた。
『どうかしたんですか!?』
そう口が同時に言葉を発しようとした時だった。
「あ、もうそろそろ移動するみたい。愛ちゃん一緒だったよね?行こう!」
「あ!ちょ、ちょっと待っ…!」
動き出した体はその予測した方向とは反対の後ろへと小川に腕を捉まれながら
引かれていく。
前に踏み出すはずだった足はとっさに後ろに着き、そのまま同じ同期のメンバー達と
共に連れられていってしまった。
- 234 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月28日(木)22時07分02秒
「……」
後藤は高橋の視線が外れた事にほっと胸を撫で下ろす。
胸の中で鳴り響いていた嫌な音も静かに止み始めた。
「ん?あ、そろそろ行くみたいね。それじゃ後藤!プッチの時は特に気合入れんのよ!」
保田は動き出したメンバー達に窓から目を外し後藤にそう声を掛けると
列の後ろ辺りにいた矢口や安倍達と共に一緒にその場を後にして行った。
後藤は曖昧に頷きとりあえず笑顔でその後ろ姿を送り出す。
「梨華ちゃん、そろそろ私達も行かないと…」
後藤は高橋から開放された事に胸を撫で下ろすあまり石川の様子に気付いていなかった。
やっと振り向きまじりに石川にそう声を掛ける。
そしてその時になって遅いぐらいに石川の様子に気付いた。
「梨華ちゃん…?」
後藤は様子のおかしい石川に顔を覗き込むようにしてどうしたのか再び呼びかけた。
しかし表情は分からない。
- 235 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月28日(木)22時09分35秒
「ごっちん…」
小さく発せられたそのか弱い声に後藤はただ分からずその場に立ち、次ぎの言葉を待つ。
「!」
しかし平静を保ちつつあった心はすぐに動揺し始めた。
石川は不意に後藤に前から倒れこむようにして抱きつくとその体をぎゅっと抱きしめた。
「梨華ちゃん!?」
「お願い…お願いだから…」
後藤は感じるきつい彼女のぬくもりにただ心を震わす。
「お願いだから…一人にしないでね……。ごっちんがいなくなったら…私は……」
石川は体を小さく震わせただ後藤にしがみ付く。
「……」
石川の言葉に、後藤はしばらくした後ただその肩に静かに手を置いた。
体に伝わってくるのは、彼女の存在を表すかのような小さな震えだけ。
まるで今にも壊れてしまいそうな壊れかけたつり橋。
それを渡る私は今にも踏み外してしまいそうで、
踏み外してしまったら最後、何もかもが壊れていってしまう気がする。
いつだってそう、私の心はそんな不安の中で心、震わせている。
- 236 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月28日(木)22時14分07秒
「…私だって……」
後藤は誰もいなくなった楽屋前の通路で石川の体を静かに抱きしめた。
「私だって…不安なんだよ……?」
問い掛けるような口調で、後藤は腕の中の石川に静かに囁く。
石川には見ることの出来ない後藤の表情。
それは何かを堪えるような切ないような、やるせない表情。
「ごっちん…?」
「一人が不安なのは…梨華ちゃんだけじゃない」
石川は後藤の発した苦しむような声に顔を上げる。
するとそこには声と同様悲しみを必死に堪えるかのような後藤の姿があった。
「私だって…不安なの…」
「ごっちん…っ!」
意味を表す単語のないその言葉に、石川は聞き返そうとした。
しかし後藤はスっと石川から静かに体を離しそれ以上何も言わないまま
本番のステージへと歩いていってしまった。
その後ろ姿をただ見つめる、石川を残して―――
- 237 名前:作者 投稿日:2002年03月28日(木)22時25分08秒
- ちょっと更新しました。
223:梨華っちは文麿の応援団さん
>初めまして^^ レスありがとうございます。
見てもらえてるんですね。安心です。
がんばります。
224:いしごま防衛軍さん
>切ない雰囲気はもしかしたら最後まで続くかも…。
桜の花言葉は石川さんにぴったりですよ。
がんばります。
225:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
今回はあえて石川さんの攻め、にチャレンジしてみました。
この反対も最初は予定に出てたんですが。
萌えるってことで考えたら…石川が受けになるのかもしれませんね…。
情景描写、ありがとうございますm(__)m
嬉しいの一言です。
226:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
何故でしょう、携帯からこのレスを見た時マイナスだったやる気が
不思議と出てきて書く状態も最善になり結構続きが書き溜められました。
感謝です。
後藤さん、高橋さん、それと石川さん、みんな本気の気持ちのぶつかり合い
ですね。切なさはこれからもっと増してくる…かな…。
- 238 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年03月29日(金)00時42分22秒
- なんと切ない雰囲気は最後までつづくんですか。
でもそれもいいかもしんないなあ。更新楽しみに待ってますよ。
頑張ってください。
- 239 名前:梨華っちは文麿の応援団 投稿日:2002年03月29日(金)14時43分24秒
- ほほぉ〜なるほど…。
いしごまに邪魔は、付き物ですね。
ライブのあとの展開、カナーリ気になります。作者さん、Fightです。
ちなみに明日は、梨華っちを見に石川へ行ってきます。^^;
- 240 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月30日(土)01時23分01秒
本番もリハーサルどおり何事もなく過ぎた。
「ありがとうございましたー!」
全員の揃えたその声でコンサートは終わりを告げ、観客の全てはコンサートの熱気と
興奮が冷めることなく余韻を浸りながら帰路へと着いて行く。
「お疲れさ〜ん!」
ペットボトルの水を飲み干しながら、矢口が全員に聞こえるように声を張り上げた。
全員興奮が当分は冷める様子はなく、今さっきのコンサートホール並に楽屋は
喧騒と笑い声で満ち溢れていた。
「矢口あの振り、間違えたっしょ?」
「あ、やっぱりばれてた?」
舌をぺロッと出し言う矢口に安倍は「ばればれ」といつもの様子で笑いながら
答える。
「圭織、そこのタオル取ってくれない?」
「あい。圭ちゃんお疲れ」
額に汗が流れ、保田は近くの飯田にテーブルの上のタオルを要求する。
飯田はすぐにそのタオルを手に取ると渡しながらスポーツドリンクを飲み干しながら
明るく言った。
中学生グループの全員も息を弾ませすっかり高くなったテンションと共に日頃では
出さないぐらいの大きさで新メンバーも話をしている。
- 241 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月30日(土)01時28分05秒
後藤も汗をタオルで拭いながら、コンサートの余韻から高揚する頬を、体の熱を、
冷ますように用意されたペットボトルの水を一気に、貪るように飲み干していた。
小さく「ぷはっ」と音を立てて空になったペットボトルから口を離す。
そして勢い余って口から微かに溢れた液体を手の甲で拭いながら、自分と後一人、
この騒がしい楽屋の中で静かな表情を保っているその人を見た。
彼女も自分同様、誰かと会話を交わすことなく一人体にこもった熱を取り払っていた。
「……」
後藤はそちらを軽く一瞥した後、すぐに顔を正面に向けた。
目の前に映るのはそう、本番直前まで一緒にいたその人。
加護や矢口達と楽しそうに話をしている。
後藤はそちらにただぼんやりと見つめるように瞳を向けたまま、テーブルの上に
置いておいた携帯を手に取った。
- 242 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月30日(土)01時28分35秒
ぱかっと小さな音を立てて二つ折りのそれを開く。
白黒の、光の着いていなかった携帯の窓やボタンが一斉に眩しい光を放ち始めた。
その中でその光を後ろから浴び、かつ薄く光を通し、どこか神秘的に光る本来携帯には
持ち合わされることのない一つの物体。
後藤をしばらくの間それを見つめると、静かにそれをまた一つへ折りたたんだ。
それは彼女の好きな色を薄く輝かす一枚の花びら―――
- 243 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月30日(土)01時30分50秒
「梨華ちゃん」
輪を描いて他愛無い話にコンサートの余韻からハイテンションで花を咲かせる
中へ後藤は彼女を呼ぶために割り込んだ。
呼ばれた当の石川が特に、そして他のメンバーが軽く声のした方に振り返る。
「ごっちん」
「ちょっと、いい?」
「あ…うん」
石川は後藤の表情に、すぐに何かを察するようにすると高まっていた興奮を一瞬で
落ち着かせて後藤に向き直った。
少しだけ戸惑うようにして、今さっきまで話していたメンバー達をちらっと見た後
後藤に答える。
「いいよー、石川気にしないで。なんならそのまま二人戻ってこないってのもありだしぃ」
「愛の逃避行だぁっ!」
矢口がからかい半分楽しそうに石川に気を使わせないようにして手を後藤の方へ
ひらひら振った。
それについで加護と辻が楽しそうに笑いながらふざけ合う。
- 244 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月30日(土)01時31分37秒
- 石川は一瞬矢口の言葉にぴくっと反応したが、
「そんなんじゃないですよー」
とすぐに笑いながら言葉を返した。
後藤も矢口の言葉が聞こえていたし気にもなったが何も言い返さなかった。
「それじゃ、梨華ちゃんちょっと…」
「うん」
後藤は石川の手を取りその場を後にして行った。
- 245 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年03月30日(土)01時33分10秒
二人の後ろ姿がドアの向こうへ消えていく。
まるでそれは光の差す場所から、暗い闇夜へと消えていってしまうかのような
不思議な雰囲気を漂わせていた。
彼女の瞳には、こう映る。
『愛しい彼女を連れ出していってしまう切なくも悔しい恋の妨害者』
そう、それは時にまるで誰しも小さい頃に一回は読んだ事のある
定番の絵本に出てくるお姫様と王子様を思わせる。
恋に付き物の幾多の困難に立ち向かい互いの愛を深めていく、ような。
眠り姫、シンデレラ、白雪姫……
それか、ロミオとジュリエットかな。
私はそんな二人の深まる愛をただ見つめる事しかできない切ない想いを胸に秘める
だけの無力な脇役。
高橋は黙ったまま二人の消えた扉の向こうを見つめていたが、持っていた
ペットボトルを近くのテーブルに置くと自分もその扉をくぐり抜け
彼女達、話の主人公達が消えて行った向こうへ自分も姿を消して行った。
- 246 名前:作者 投稿日:2002年03月30日(土)01時41分39秒
- 少し更新です。
それにしてもこの話は書く時を選ぶ…。もしあればこの次の作品はもう少し
気ままに書ける話にしたいなぁ…。
238:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
出来るだけ切なさを最大に感じられるように書きたいです。がんばりますっ。
239:梨華っちは文麿の応援団さん
>レスありがとうございます。
最初この話は石川と後藤中心だったんですがだんだん高橋も出てきました。
お邪魔虫にする予定もなかったんですが、高橋も高橋なりに真剣に
石川に想いを寄せてる感じです。
これから話がどんどん進んでくると思います。
ちなみに明日は、梨華っちを見に石川へ行ってきます>おぉ、そうなんですか。
いいですね、羨ましいです。書いてるくせにコンサート行った事ないので…(汗)
- 247 名前:梨華っちは文麿の応援団 投稿日:2002年03月31日(日)01時42分11秒
- 更新&レスありがとうございます♪
悪役も多少いないとまぁ、話が膨らみませんからね(w
一体、ごっちん…梨華っち呼び出して何をする気でしょうか?
逝って来ましたよ、石川♪
とにかくいしごまの2人しか基本的に見てなかったです。(爆)
というか梨華っちの声に何回壊されそうになったことやらみたいな…。
やっぱり生声は…
ごっちんもヒサブリに愛バカ唄ったんで感激です♪
- 248 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月01日(月)01時24分44秒
- 交信お疲れ様です。
しかも久しぶりに来たら大量に嬉しいです(w
後藤は石川を呼んで何をするのか、
高橋の存在も気になりますし(w
頑張ってください
- 249 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年04月01日(月)01時42分43秒
- いったいこの後ごっちんは梨華ちゃんになにを言うのか気になる。
高橋も切ないですなあ。更新ドキドキしながら待っています。
- 250 名前:no-no- 投稿日:2002年04月03日(水)19時00分05秒
- 初めまして。
携帯で読んでたのでずっとROMだけだったんですが、、、
いつも読みながら切なくなってしまいます。
マッタリマターリ更新
お待ちしてます。
- 251 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月03日(水)22時55分31秒
まるでどこかパーティを抜け出すような気分だった。
まだ余韻を味わっていたい、だけどどこかに寂しさは纏わりついていて。
抜け出す感覚はその寂しさがより一層深く感じられる。
建物一体がまだ今さっきまでの興奮に冷め止まらない。
熱い熱気がこもる中を抜け出し、二人は後藤の誘導で人気のない廊下をくぐり
今さっきまでいた場所からは少し離れた微かに高級感を漂わす部屋へ移動していた。
全体的に落ち着いた色でまとめられ、部屋の隅には上品な観葉植物、そして真ん中には
よく会議室にあるような木の立派な机、周りには大きなソファが置かれてあった。
部屋の前の廊下は静かに佇み、ひっそりと不気味なぐらいに静まり返っている。
後藤は二人以外誰もいない部屋の大きな窓を開け放った。
「気持ちいいー…!」
開け放った窓からは、肌に心地よいこの季節ならではの柔らかく冷えた風が
部屋のカーテンを躍らせながら舞い込んできた。
どこか辛気臭かった部屋が一気に浄化されるようにさわやかな物になる。
「…うわぁ、綺麗だねぇ…」
思わず石川もいつもの関係を表に出すことなく、目の前の光景に瞳を輝かせた。
- 252 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月03日(水)23時01分43秒
「うん…」
目の前には一面の町のネオンが広がっていた。
金や銀のネオンに所々光ったり消えたりする赤や青の眩しい光。
真っ暗闇の地上にそれは美しく映え渡っていた。
まるで海に映る空の星達のように…。
顔を上げればそこにも無数の星達が無限にも感じるかぐらいに夜の闇を明るく輝かせ
ている。
「あ、見て。夜桜見物してるよ、みんな」
「…本当だ…」
石川の指差した方へ後藤も静かに顔を向けた。
するとそこには昼間見ていた川原付近でシートを引き、恵まれた天候の中、独特の
温かい紅い光を発するぼんぼりに照らされた桜の下で夜にしか見ることの出来ない
どこか不思議で優しく温かいその日本の伝統の木々達の美しさを見物に来ている
たくさんの地元の人で賑わっていた。
賑やかに、桜の木の下で人々は騒ぎ楽しい時間を過ごしている。
笑い声に満ちているその情景が目の前に浮かんでくるようだった。
- 253 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月03日(水)23時04分13秒
「楽しそうだね…」
「うん…」
心に微かに生まれていた物がまた微かに大きくなるのを感じて、石川は後藤に、
後藤は石川に返事する。
不思議だね…こういうのが「切ない」って言うんだろうね…。
「それで…ごっちんどうかしたの?」
しばらく目の前の昼間と同様、いやそれ以上に優しい表情で桜を見つめていた
石川だったが思い出したように、逆にずっと忘れていなかったかのように後藤に
改めて聞き返した。
「……」
向き直った彼女の姿。
その表情はとても優しくて慈愛に満ちていて。
それはいつもの偽りの笑顔なんかじゃなかった。
私の一番…好きな笑顔。
後藤はここに石川を連れて来た事も、返事する事も、そして今この場に流れる時間
さえも忘れてしまったようにそんな石川の表情に見惚れていた。
- 254 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月03日(水)23時05分12秒
「ごっちん?」
「あ…ごめん…」
不思議そうに顔を覗き込む石川に後藤は恥ずかしそうに顔を背けながら答える。
微かに頬が紅くなってしまっていることぐらい自分でも分かっていた。
そんな照れを隠しながら。
「あの…ね…」
言わなきゃ。
永遠なんてないって事を、今のこの時間に「変化」として作らなきゃ。
そう、自分の手で。
だけど…だけどね…。
今、この時間だけは…
あなたのその横顔だけを見つめていたい、そう願ってしまう。
今は、いいかなって…そう思っちゃう。
あなたのその笑顔が見ていられるのなら…。
頭に、心に過ぎる誘惑に後藤に軽く頭を左右に振った。
偽りの甘い誘惑に、流されちゃダメだよ…。
- 255 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月03日(水)23時06分18秒
「梨華ちゃん、あのね…」
後藤は石川の目を見つめた。
真っ直ぐ、正面から瞳反らすことなく。
伝えたい事があるんだ。
それは伝えないといけない事。
本当はもっと、ずっと前に伝えて置かなければいけなかったのかもしれない。
胸にずっと秘めていた気持ち、
今言葉にしたいから、あなたに伝えたいから、私は勇気を出して言います。
―――それは今までずっと私になかった強い気持ち。
- 256 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月03日(水)23時09分41秒
「私…ずっと前から梨華ちゃんのこと…」
石川は真剣な眼差しの後藤に瞳を反らすことも叶わずただ魅入られるように
見つめ返していた。
こんなに熱い、真摯な瞳を今まで自分は見たことがない。
これから言葉に変換される事、それはきっと彼女の気持ち。
たぶん、何よりも大切な事。
私はこれを、聞かなくてはいけない。
もしかしたらずっと無意識のうちに瞳を反らしていた、
どこか意識的に見ないようにしてた。
そんな大切な彼女の気持ちを…。
途切れた言葉を、石川はただ待つように、
何も言わないまま後藤が言葉を続けるのを待っていた。
緊張していると分かる彼女の気持ちを、
私も出来るだけ同じように感じるために。
同じ時間を過ごすように―――
- 257 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月03日(水)23時11分16秒
そんな時、何故かな、運命というのは時に過酷で非情な物らしい。
今しかない、「今」しか訪れないであろうこの瞬間を、
それは無残にも偶然とも必然とも取れる一瞬でかき消される。
勇気をくれたのもあなた、ここまで私を踏み出させてくれたのもあなた、
なら…妨害の瞬間を作り出すのも、神様、あなたなのですか…?
- 258 名前:作者 投稿日:2002年04月03日(水)23時25分13秒
- 更新終了です。
短くてすいません(+_+)
この先更新してしまうと、場面なだけに止まらなくなってしまうので…。
247:梨華っちは文麿の応援団さん
>高橋の事を悪役にするつもりはなく書いてますがやっぱり
話の定番の悪役になってしまうんでしょうかね…。
コンサート、自分もいつか行ってみたいです。いつか…(汗)
248:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
後藤が石川を呼び、そして…。
これからストーリーがかなり止まらないぐらいにどんどん進んで行きそうです。
一気に関わる人間が一つに絡んでいきます。
これからもよろしくお願いします。
249:いしごま防衛軍さん
>思惑通り、上手く行かないのが物語の嫌な所…。
後藤さんは、石川さんに言いたい事を果てして言えるのでしょうか…。
こう書くとこれから次の更新が予想つきそうですが(爆)
250:no-no-さん
>レスありがとうございます。
嬉しいです。私もロムが多いのですがやっぱりレスはもらえると嬉しい(w
これから先も切なさは続きそうですが最後までお付き合いくれれば嬉しいです。
- 259 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年04月04日(木)03時32分00秒
- ごっちんがなんか可哀想になってきた。神様あんたはもてあそびすぎだよ
といいたい。頑張れごっちん!!妨害に屈するな。
更新が気になります。わしは石川県金沢市民なんで30日にコンサート
に行ってきました。作者さんが書くコンサート会場の風景が30日の
娘。のコンサート会場であった金沢市産業展示館の風景にものすごく
似てたのでびっくりしました。
- 260 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月04日(木)10時10分51秒
- はたしてどんな邪魔が…
- 261 名前:梨華っちは文麿の応援団 投稿日:2002年04月05日(金)13時39分30秒
- ごっちん、何を言うんだ??気になる。
>いしごま防衛軍さん
石川逝ってたんですか?確かに様子似てますね♪
- 262 名前:no-no- 投稿日:2002年04月06日(土)20時17分45秒
- レスありがとうございます。
携帯からレスできれば、リアルタイムで返事できるんですが、、、(泣)
一体誰が(モノ?)が邪魔を、、、
続き待ってます。
- 263 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月07日(日)00時37分46秒
- 読む度に、切なさに胸が締めつけられます。更新が待ち遠しい‥
- 264 名前:作者 投稿日:2002年04月07日(日)01時23分50秒
- 259:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
コンサートの風景似てますか、良かったです。
まぁ、みんなそれぞれ本気の気持ちなので…偶然や神様な形で
描いてますが本気のぶつかり合いってことで…。がんばります。
260:名無し読者さん
>次の更新で確かになります。
なるべく早く、がんばりますっ。
261:梨華っちは文麿の応援団さん
>後藤さんも、みんなこれから必死にがんばります。
ゆっくりですが最後まで私もがんばります。
262:no-no-さん
>邪魔することになってしまう、のは…。
次の更新なるべく早く出来るようがんばります。
263:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
切なさも実際にそう感じられるようにを目指しているのでとても
嬉しいです。更新もうしばらくお待ちください。
- 265 名前:作者 投稿日:2002年04月07日(日)01時28分35秒
それと、
実は名前と、もう一つの作品を近々カミングアウトしようかと…思ってます。
ただ当初こっちの作品は向こうからしたら浮気みたいな息抜きみたいな
作品のつもりだったので、更新がどちらとも遅れてるのがちょっと名前出すのに
躊躇ってます。
それとどちらにも書いた後、結構二つともごちゃごちゃしちゃうかなぁ…と。
ただ全て書き終わった後読むよりもリアルの方が良い人もいるのかなぁとも
思ったので迷ってます。
とにかくもう少しこちらがラストに近づいてきたらしようと考えてます。
今後ともよろしくお願いしますm(__)m
- 266 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月07日(日)20時40分39秒
「!」
小さく部屋に響いた乾いた音に二人が同時にそちらに振り向いた。
そこには既に今さっきまでの時間、空間は流れてはいずドアの向こうの気配に
全てが奪われていた。
「…誰?」
後藤は心の中で小さく落胆のため息を気持ち付きながら小さく開いたドアに声を掛ける。
気だるそうに発した口調にドアの向こうの気配がびくっとしたのが分かった。
「誰かいるんでしょ?誰なの?」
後藤は微かに石川から距離を離しドアの方へ向き直る。
「……」
石川もまた、どこかに悲しげな気持ちを溢れさせ後藤が声を掛けるドアをただ変化が
訪れるのを見つめていた。
しばらくの沈黙。
「……」
ドアの向こうの人物はただ息を殺し何か二人の誤解のような気持ちの変化が訪れるのを
ただ待っていたが、それも既に無理な事と分かり覚悟を決めて静かに扉の向こうから
姿を現す事にした。
- 267 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月07日(日)20時42分24秒
「!」
扉の向こうから小さな黒い影を足元に作りながら現れたのは他でもない高橋だった。
呆然とした様子でまるで実体のない物体のように静かにそこに現れる。
「高橋…」
高橋の姿に一番に反応したのは石川だった。
どこかため息混じりに困ったようにしながら彼女の名前を呼ぶ。
途端に、呼ばれた彼女の体がびくっとしたのが目に入った。
「ご、ごめんなさい…私…」
俯きながら今にも泣きそうな声色でそう懺悔する高橋に石川は不満の色を隠せない。
「どうしてこんな所に来たの?メンバー達のいる楽屋とは離れてるのに…もう…」
あえて後をつけてきたのかは口に出さなかったがそれでも今の高橋にはこれ以上ないぐらいにつらい。
「……」
後藤はそんな高橋の姿をもはや怒りや悔しい気持ちは微塵もなく、手に取るように分かる
彼女の気持ちに憐れみ同情していた。
- 268 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月07日(日)20時43分37秒
「今からちょっとごっちんと…大切な話があるの。悪いけど高橋には席を外し…」
「梨華ちゃん」
外してもらいたい。
そう最後に付け終る前に、後藤が石川の言葉を遮った。
「…?」
石川は不意に後ろから発せられた後藤の声に何かと振り向く。
石川の姿の向こうに映る、高橋の姿がびくっとしたのが目に入った。
「その…もういいよ。愛ちゃんだって…悪気があってしたんじゃないだろうし…」
高橋を弁護する後藤の姿に石川は顔をしかめる。
その途切れ途切れの様子ややけに自分の事のように必死になって弁護する姿は
あまりにも不可解だった。
後藤は何とか途切れながらも下手な様子で高橋を弁護した後、ちらっと高橋を見た。
そこには何か複雑な感情からだろう、体を小さく震わしている高橋がいる。
- 269 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月07日(日)20時45分07秒
「……」
石川はそんな高橋を見つめる後藤をやっぱり顔をしかめながら、さっぱり理解できず
不思議そうに見つめていた。
「ごめん、愛ちゃん…ちょっと、席外してもらえるかな…」
あくまで柔らかい口調で出来るだけ気を使い後藤はその場に立ち尽くす高橋に声を掛ける。
高橋はその後藤の言葉に小さく頷くと戸惑いながらおぼつかない足取りで部屋を
出て行った。
しばらくすると、部屋に高橋の廊下を歩いていっている音であろう、静かな廊下にやけに
響く足音が聞こえてきた。
彼女の気配も、それと共に向こうへ消えて行ったのがわかった。
「……」
(ごめん、愛ちゃん…)
消えて行った後ろ姿を、消えた扉の向こうを、後藤は心奪われるようにただ呆然と
見つめていた。
- 270 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月07日(日)20時46分27秒
「……」
そんな後藤のぼんやりとした表情は、言うならば恍惚とした表情とも取れなくはない。
逆に一旦そう思うとそうとしか取れなくなってくる。
石川は胸に浮かんだ考えを、自分の中で確信へと変え後藤に詰め寄った。
「ごっちん!まさか…ごっちん、高橋の事が好きなの…!?」
「え…?」
「何で…高橋のことかばうのよ。邪魔されたのは私もごっちんも一緒でしょ!?」
全く理解できないといったように、石川は感情を荒げ後藤に疑問をぶつける。
「それは…」
「分かんないよ…分からない…。ごっちん、本番前の楽屋の時だってそうだったじゃない。
私の隣で何かを呆然と見てるから何を見てるのかと思ったら…」
「!」
後藤は石川の言葉にすぐに気付く。
あの時、高橋から視線を外せなかった所…見られてたんだ…。
- 271 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月07日(日)20時47分55秒
「今だってそうじゃない!高橋がいなくなるまでずっと…見つめてた!いなくなった今も!」
「違うの…梨華ちゃん違うの、それは…」
「何が違うの!?…本番直前の時だって、何か様子おかしかったし…ごっちん約束して
くれたじゃない。一人にしないって…」
石川は微かに瞳に涙を浮かべ、後藤に確かめるように無我夢中で抱きついた。
「違うんだってばぁ…今のは…それに愛ちゃんが好きなのは…」
後藤は言いかけた口をとっさにそこで閉ざしてしまう。
「…高橋が好きなのは…何…?」
石川は消え入りそうだった後藤の最後の言葉にもしっかりと聞き返す。
後藤は何もそれに答える事が出来ず、微かに顔を石川から背け口を閉ざしてしまう。
- 272 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月07日(日)20時49分12秒
「ねぇ、何なの…?ごっちんどうして顔を反らすのよ!」
「……」
服を前から捉まれ、答えを要求するように上下に揺すられるが、後藤にはもう
何も答えられない。
答える気力も、既に失われていた。
疲れきった表情。
瞳は石川同様微かに涙を浮かべ頬に落ちるのを必死に堪えている。
そんな瞳にはもはや何も映っていなかった。
後藤のそんな表情に石川は果てしない不安を覚え、暗闇へと囚われていく。
- 273 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月07日(日)20時51分15秒
「この前だって…ごっちん高橋の事追いかけてた…。その後だって高橋の事
呼び出してた…」
石川は記憶の片隅にあった物を呼び覚ますようにうつろな声で並べていく。
「結局…私だけが一人なんだ…」
「違う!!」
石川の自虐めいた口調に後藤は勢い良く振り向き言葉を遮るように、完全に否定する
ように叫んだ。
「!?」
「梨華ちゃんは一人じゃない!!一人なんかじゃないよ…一人なのは…」
石川に向き直った後藤の顔は涙で濡れていた。
今も、止め処なく涙はその瞳から流れつづける。
「ごっちん…」
「すぐに分かるよ…。不安なのは…一人に怯えてるのは…梨華ちゃんじゃなくて私なの…」
それだけ言うと後藤は部屋から飛び出していった。
「ごっちん!?」
廊下を駆け抜けていくその足音に石川も急いで部屋から顔を出す。
しかし彼女の姿は既に廊下の向こうへ消えて行った後だった。
「どういう…こと……?」
石川はただ扉の前で後藤の消えて行った、走り抜けて行った廊下を呆然と見つめる。
後藤の涙。
思い返せば彼女のあんな姿、初めて見たのかもしれない…。
- 274 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月07日(日)20時52分46秒
「……」
廊下を駆け抜けていくその人の姿。
聞こえてくる足音。
間に微かに聞こえた涙を拭う音。
高橋は後藤が出て行った部屋の扉とは離れたもう一つの部屋の隅にあたるドアの後ろの、
後藤達からでは分からない場所へ身を隠していた。
涙を頬に伝わせ、既に幾つも濡れた後の残る顔を俯かせながら彼女達の声と姿を
耳にただぼんやりと通す。
『シンデレラは消えていきました。ガラスの靴を置いて』
ただ一人部屋に呆然と立ち尽くす彼女はただ何も分からず唖然として彼女の残した
気持ちの破片を、ガラスの靴を胸に抱きながらその場に佇むのです。
彼女が、王子様はただ疑問の言葉を口にする。
その魔法を、二人がすれ違っていく発端の魔法を掛けたのは私なのかもしれない。
「……」
高橋は涙を拭わないままその場を静かに消えて行った。
- 275 名前:作者 投稿日:2002年04月07日(日)20時53分22秒
- 更新しました。
271は、少し改行した方が良かったかな…。
- 276 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年04月07日(日)22時06分51秒
- なっなんてことになってしまったんだ。
すんげー切ない!!なんともいえませんなあこの雰囲気。
切なすぎる。
- 277 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月08日(月)07時22分15秒
- 石川さんの恐ろしいまでの鈍さが…
- 278 名前:梨華っちは文麿の応援団 投稿日:2002年04月08日(月)23時58分53秒
- 梨華っち、気付けよ…って伝えて下さい。^^;
セツナイなんてもんじゃない程なんか悲しいです。
てかごっちんイイ
- 279 名前:梨華っちは文麿の応援団 投稿日:2002年04月09日(火)00時00分47秒
- うわぁ、ageちゃいました。ゴメンなさい。
- 280 名前:no-no- 投稿日:2002年04月09日(火)13時49分22秒
- ごまがすんごい切なくて,ちょっと泣けてきました。
梨花ちゃん鈍すぎですよ。
続きまっとるです。
- 281 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月10日(水)01時54分49秒
- 高橋に逆転はあるのでしょうか?
- 282 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月10日(水)22時16分23秒
- 高橋 可哀相‥‥
石川に疑われても多くを語らない、語れない後藤の苦しさに再び涙
石川さん‥気付きなさい。
- 283 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月14日(日)21時57分02秒
「はぁ…はぁ……!」
後藤はとうとう涙を瞳から溢れさせそれを拭わないまま廊下を全速力で
突っ切った。
スタッフ達やメンバーのいる所から少し離れたこの場所は、廊下は薄暗く照明は
ほとんど付けられていない。
人気も全くなくて不気味なぐらいに静まり返っていた。
そんな薄暗い廊下に後藤の繰り出す足音は静かに、反響しながら気味悪く
響いていた。
「……」
涙で前がよく見えない。
だけど拭う気にもならない。
止まらない、流れ続ける涙にふとどうして自分はこんなに涙を流してるのか
不思議になる。
しかし答えはすぐに見つかりそれは心に巣食う怖いぐらいの不安だと気付く。
後藤はただ息を荒げ体を上下し廊下を走りぬけた。
この先の向こうにいる、メンバー達にこの顔を見られたらなどと考えも
過ぎらせないまま。
- 284 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月14日(日)21時59分07秒
「…わっ!?」
角を曲がった時、誰かとぶつかった。
だけどこの顔を見られたくなくて、無意識に顔を俯かせていたから後藤には
足元に映る黒い人影しか分からない。
「ごっちん…!?」
「…よしこ…」
聞き覚えのある声にぴくっと反応し、後藤は声のした方に恐る恐るゆっくりと顔を
上げてみた。
するとそこには驚いて目を見開いている吉澤の姿があった。
「どうしたのその顔…一体何が…」
「うっ…よしこぉ…!」
吉澤は涙でくしゃくしゃの顔の後藤に胸に浮かんだ全ての疑問を並べていた。
しかし戸惑う吉澤に後藤は何も答えないまま堪えていた物を吐き出すように
吉澤の体にぎゅっと前から抱きついた。
- 285 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月14日(日)22時00分40秒
「ちょっと、ごっちん…?」
「うっ…うぅ…」
後藤は吉澤の胸の中に顔を埋めた。
しがみ付くように抱きつき、涙と嗚咽を漏らす。
「よしこがいけないんだ…よしこが梨華ちゃんを振ったりするから…」
後藤は熱い息を苦しそうに吐きながら時に強く吸い込み、吉澤の胸を強く訴えるように
叩いた。
しかし、涙と胸の中で入り組む感情から強く叩いてるはずの手には力がこもらない。
「……」
吉澤は後藤のその言葉にすぐに何か察した。
それがこの涙の原因とも。
瞬時に吉澤の表情が微かにいつもの物とは明らかに違う静かな物になる。
胸の中で泣き崩れる後藤に吉澤はしばらく何もせず、言わないまま後藤の肩に手を置き
涙を溢れさす後藤を上から見つめていた。
- 286 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月14日(日)22時03分42秒
「…っ…」
後藤はただ吉澤の胸の中で何かを叫ぶように涙を流し続けた。
いろんな感情や気持ちが体の中を廻っていく。
それは言葉には一言で表せないような複雑な感情から、悲しさ、切なさ、悔しさ、やるせなさ…まで…。
「…それじゃぁ…私が梨華ちゃんの告白を受ければ良かったの?」
「え…?」
突然した声に後藤は思わず涙を拭わないまま顔を上げる。
「私が梨華ちゃんの気持ちを受け取っていれば良かったの?」
「……」
後藤には吉澤が何を言っているのか意味が分からなかった。
だけど、その表情は冗談を言っているようにも見えない。
「どうなの?答えてよ」
戸惑う後藤に、吉澤は構うことなく質問を投げかける。
今の後藤には、この突然の吉澤の疑問に答える力がなかった。
何を、言ってるのか。
何が言いたいのか、言葉の真意が分からない。
- 287 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月14日(日)22時08分48秒
「ごっちんはその方が良かったの?嫌なの?」
後藤の表情に吉澤は後藤の胸の内を察し再び意味を分からせようと言葉を置き変え
聞き直す。
「何言って…」
「結局は嫌なんでしょ?もしあたしが梨華ちゃんと付き合ってたとしてもごっちんは
嫌なんだよ」
「……」
吉澤は訳がわからないといった表情の後藤に最後は言い聞かせるようにして言う。
「良かったじゃない。梨華ちゃんと一緒になれて。ごっちんと梨華ちゃんがどういう
関係なのかは知らないけどさ」
「っ!ふざけないで!!」
まるで人事のような言い方の吉澤に後藤は襟元を掴み前から吉澤に掴みかかる。
「それならあたしと梨華ちゃんが付き合ってれば良かった?失恋の痛手を胸に
刻ませてあたし達二人の姿を切なさで妬んでいたかった?」
吉澤は後藤に掴みかかられたことなど全く何でもないという風に平静を崩さないで
話し続ける。
- 288 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月14日(日)22時12分25秒
「…ふざけないでよ…もう、やめ…」
「結果的に梨華ちゃんはあたしとくっ付かなかった。ごっちんはそれに安心して
胸を撫で下ろす。だけどその一直線上にあった物にごっちんはまた不満を言うの?」
「不満なんて…そんな…」
「あたしが梨華ちゃんとくっ付いても嫌だし、あたしが梨華ちゃんを振って梨華ちゃんを
傷つけるのも嫌だ何てそんなの…」
自分の襟元を掴んでいた後藤の手の力が弱まったのに吉澤は言葉を一旦止めた。
後藤は次第に体の中から全ての力が抜けていくのを感じていた。
立っているのも、言葉を聞いているのも無理になって来る。
徐々に俯き追い詰められていく後藤を吉澤は上から見ていた後、静かに口を開いた。
「結局矛盾してるんだよ。ごっちんは」
「っ!うるさい!!」
後藤は吉澤が全て言い終わる前に、いや本当は最後の言葉まで静かに耳にし、
だけど遮るようにして叫んだ。
- 289 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月14日(日)22時15分20秒
「ばか…よしこのばか…!」
「ごっちん!!」
後藤は吉澤の体から飛び出すように離れると、後ろで呼び止める吉澤の声を無視し
ただ逃げ出すように廊下を走り抜けて行った。
「……」
吉澤は後藤の姿がすぐそこの角から向こうへ消えていくまでただ静かに黙ったまま
見つめていた。
(本当は…本当は分かってるんでしょ?ごっちん…)
静かだが、どこか悲しさを含む表情のまま、吉澤は向こうのメンバー達のいる場所へ
静かに消えて行った。
- 290 名前:作者 投稿日:2002年04月14日(日)22時49分34秒
- 更新しました。
少し改行した方が良かったでしょうか。読みにくかったらすいません。
276:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
ほとんどのシーンがそうかもしれないですが今の所は特に
話の流れが変わってくる場所ですね。頑張って書きました。
277:名無し読者さん
>悲しみに深く落ちているせいで自分のこともおろか、自分の身のまわりまで
目が行ってないんだと思います。すいません(汗)
278:梨華っちは文麿の応援団さん
>すいません(汗)気付かせたいのは山々なんですが…。
その役目は次の彼女に全て託されてます。
ここの後藤さんいい意味でも悪い意味でもすごく優しいですね。
でも私も嫌いじゃないです。
age、sageは気にしなくて大丈夫ですよ。ありがとうございます。
- 291 名前:作者 投稿日:2002年04月14日(日)22時50分32秒
- 280:no-no-さん
>レスありがとうございます。
すいません(汗)
自分で書いてるよりもはるかに石川さんの鈍感さが大きくなっている
みたいで私自身もたくさんのレスに戸惑ってます。
281:名無し読者さん
>どうなるでしょうか…。
ただ高橋さんの出番はまだ終ってない、ですけど…。
どうなるかは石川さんの取る行動のみ…だと思います。
282:名無し読者さん
>すいません…(汗)
あまりの前回の更新での反響に私自身驚いてます。
上同様、今の石川は身のまわりまで目が行かないというか…。
一応弁護してますが自分でも少し唸っちゃう所は微かにあります。
鈍感すぎるのは悪気がない分一番周りの人間を傷つけるのかも
しれないですね…。
- 292 名前:梨華っちは文麿の応援団 投稿日:2002年04月15日(月)00時36分34秒
- 更新ありがとうございます。m(__)m
突然のよしこ登場でビックリです。^^;
なんか難しい関係ですね、85sトリオは…。
次から登場ですか?梨華姫は?
- 293 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年04月15日(月)01時15分57秒
- いったいどうなるんだ。よっすぃーも苦しいんだろうなー。
ごっちんも大切だし梨華たんのことも大切なんだろう。
梨華たんをふったのはごっちんの気持ちを知っていてかもしれないし
そうでないかもしれない。でも梨華たんをふるのはよっすぃーとしても
苦渋の決断であったのだろう。更新待っています。
これから流れがすごく変わっていきそうですな。頑張ってください。
- 294 名前:no-no- 投稿日:2002年04月15日(月)15時01分35秒
- なんか訳がわからなくなってきた。
よしこはいったい何が言いたいんだー
続きが気になります。
更新お待ちしてます。頑張って下さい。
- 295 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月20日(土)23時00分48秒
「うっ…」
廊下は薄暗い上に日も既に沈んだため嫌に寒く冷えて静まり返っている。
その中、風を切って走るのは肌が切り裂かれるようだった。
「ばか…よしこのばかぁ…」
後藤はただ当てもなく永遠に続くかと思うような闇の廊下を突っ切っていた。
『矛盾してるんだよ、ごっちんは』
「……」
本当は感じてた。
綺麗事ばかり口にして、だけど本当は、自分が一番矛盾の気持ちを抱えてるって。
よしこは感じてたことを言葉にしただけだ。
そもそも、私がよしこに梨華ちゃんの事で気持ちをぶつける方が矛盾してる。
どんな時だってそうだった。
私の行動はいつも周りから見たら順応していない物なんだろう。
いつだって感じてた。
梨華ちゃんといる時はずっと…。
だけど…だけど…!
- 296 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月20日(土)23時10分14秒
「梨華ちゃんと…いる時だけは…」
二人の関係とは裏腹に、素直に嬉しかった。
楽しかった。
だから、いつもあやふやにしてしまっていたんだ。
本当は、自分が一番我侭で、自分勝手な事言ってるに違いなかったはずなのに…。
後藤は涙と共に荒れる息のまま、力の抜けた体を冷たい壁に乱暴に預けた。
状態を無視し、意思だけで走るのはもう限界だ…。
壁を伝ったままうつろな足取りでそのまま微かに光が漏れている部屋を目指す。
何故かは、分からなかった。
前も、後ろも、闇で閉ざされる中、たった一つ光指す場所へ救いを求めたのかもしれない。
だけど…
「っ!」
目に映ったのはこれ以上内最悪な状況。
自分を更に暗闇に陥れる最大のシーンだった。
- 297 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月20日(土)23時15分05秒
「私…好きなんです!石川さんの事…」
そこにいたのは彼女の体に必死に想いを伝えるように抱きついている高橋だった。
切なそうに、顔を彼女の胸に埋めている。
「……」
当の彼女は、自分が今この状況を見ているなんて夢にも思わず、もはや呆然とした
表情で高橋の言葉とぬくもりを感じ取っていた。
「愛…ちゃん…?」
「本気…なんです!冗談なんかじゃないんです…。私は本当に…石川さんの事が…」
最後の言葉は既に消えかかり、途切れさせながら高橋は呆然と自分を見つめる石川の
顔を下から見つめる。
そして、しばらくそうしていた後、静かに顔を近づけた。
「!」
唇が触れる。
体を覆う緊張からか、高橋は微かに唇を付けただけですぐに静かに顔を離した。
だけど完全には距離を離さず、本当に今すぐにでも唇が触れてしまいそうなぐらいの
距離で二人は見つめあっていた。
「高橋…」
意を決し、強い気持ちを秘めた高橋の表情に石川はただ唖然として見つめ返す事しか
出来なかった。
- 298 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月20日(土)23時19分15秒
後藤は二人の姿をもはや呆然と見つめていた。
その瞳は灰色を思わせ、力なく情景を映していない。
朦朧としていた意識が微かに戻り、後藤ははっと我に返って二人を見つめ返す。
そこにはやっぱり抱き合ったままの二人がいた。
忘れていた嫌な感覚が今更のように体に戻ってくる。
胸には不安で一杯の鼓動が打ち始める。
「…っ…」
堪えきれなくなって後藤はその場を逃げるように飛び出した。
- 299 名前:作者 投稿日:2002年04月20日(土)23時30分47秒
- 短いですが更新しました。
292:梨華っちは文麿の応援団さん
>登場しました石川さん。こんな形ですが…。
いいですねぇ、コンサート。私も生で見たい…。
293:いしごま防衛軍さん
>吉澤さんの真意はあえて述べておきません。
もしかしたらただいつもの自然体のまま振ったのかもしれないし
そう見えていろいろ考えてるのか…私にも分からないです(爆)
がんばります。
294:no-no-さん
>実は謎が多いままよく分からないまま書こうとしてる(していた?)
のも事実です(汗)
あまり固定せずに書いてるつもりなのでそれが原因ですね。
それぞれ読んでくださる読者さんの想像や考えにある程度は任せたいと
思ってます。
できればもう少し、早く更新できるといいんですが
ストーリーが浮かびつつも文章にする良いタイミングと時間が中々
なくて困ってます(汗)
のんびりですが最後までお付き合いくださると嬉しいです。
- 300 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年04月21日(日)10時24分07秒
- ああごっちん切ないです。
高橋なかなかやりますなあ。
ごっちんの不安は梨華たんの愛しているという言葉でなくなるのではないでしょうか。
- 301 名前:梨華っちは文麿の応援団 投稿日:2002年04月21日(日)22時30分21秒
- 更新お疲れ様です。
かなり痛いシーンですね、ごっちん的には…。
梨華っちは、お願いだからごっちんと幸せになってほしいです。
- 302 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月23日(火)02時57分06秒
- 後藤、気苦労の多い役回りですな。大変だ…
- 303 名前:no-no- 投稿日:2002年04月24日(水)19時11分15秒
- 吉の意図もまだワカンナイのに、高橋が告って
問題勃発どうなるんだー。
- 304 名前:作者 投稿日:2002年04月27日(土)21時48分38秒
- 300:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
絡んで絡んで絡みまくって、いつかそれが交わり一つの線に今なろうと
している所だと思います。たぶん…(汗)
301:梨華っちは文麿の応援団さん
>全ては石川さん次第ですね。
どう転ぶかも石川さんに行動にかかってます。
302:名無し読者さん
>ですね。
今回かなり後藤さんつらい役になってしまいましたが…、だんだん題名と
リンクしていく場所になってくる…はず…。
結局はキャラクター全員に題名のことは言えることなのかもしれませんが…。
上手く意図が浮き彫りになってくると…いいなぁ…(汗)
303:: no-no-さん
>この話の中での吉澤さんの行動は全て謎を含んでますね。
あえてどれも一つに固定しないつもりなのでおぼろげに想像してもらえると
嬉しいです。これから先たぶん吉澤さんの行動に関しての文章が出ないと
思うので…。高橋の行動で問題勃発、&何か追い詰められて答えが出てくるかも…。
- 305 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月27日(土)21時50分19秒
「……」
微かにした物音に石川はドアの方へ顔を向かせる。
その音を聞いたのは高橋も一緒だった。
「…ごっちん…?」
石川はどこか救いを求めるようにドアの向こうを見つめた。
そして彼女の名前を呼ぶ。
「石川さん」
だけど目の前の彼女にそれも遮られる。
石川は静かに顔を戻した。
「答え、聞かせてください。石川さんの答えを…」
真っ直ぐ見つめてくるその瞳に石川はもう逃げることは出来ないという事を
知った。
目の前の彼女は、ありのままの飾らない本当の気持ちを求めてる。
- 306 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月27日(土)21時51分36秒
「……」
だけど、何かを言いかけるその開きかけた口は言葉を失ってしまう。
だって、どう答えていいのかわからなかった。
既に心の奥深くヘ埋もれてしまったその答え。
それを掘り返し、探して見つける力が私にはない。
ずっと見つけることを拒んでいたから…。
- 307 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月27日(土)21時57分48秒
―――――――
午後8時。
日もとっくに水平線の向こうへと消えていき夜の静寂が辺りに経ちこみはじめた頃。
「……」
石川はホテルの自室で一人ベッドに横になり真っ白の頭をそのまま
無理に動かせることなくただぼんやり体を横たわらせていた。
枕の下に両手を組み頭を乗せ、ただ静かに何もない白い天井を眺める。
テレビも消され「音」が存在しないこの静まり返った部屋は、時間が
流れている事さえも忘れさせるような、まるでこの部屋一体がこの世から隔離されて
いる別世界のようだった。
窓の向こうの町のネオンも今では遠く手の届かない砂漠で見る錯覚のよう。
言葉を発しないまま静かに顔を横に向ける。
そこには綺麗に整頓されている殻のベッド。
空しいほどにそこは大きな空間を寂しく飾る。
しばらくの間、呆然とした瞳でそこを見つめた後、静かに顔を戻す。
そして瞳を閉じた。
- 308 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月27日(土)22時00分06秒
『梨華ちゃんは一人じゃない!』
あの時の彼女の叫びと表情が瞼の裏に蘇る。
ごっちん…
あの時言ってた事は…この事だったの……?
それじゃぁ、ごっちんはずっと今の今まで高橋の気持ちを知ってたの……
『不安なのは…一人に怯えてるのは…梨華ちゃんじゃなくて私なの…』
ごっちんは…一人じゃない…
それに私も独りじゃなかった
気付けばずっとあなたが側にいてくれた
不安な夜もあなたは何も言わず私の我侭に付き合って…くれ、た…
- 309 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月27日(土)22時01分55秒
『梨華ちゃんっ』
ごっちん…
『大丈夫側にいるから…』
『ずっと私が側にいるから…』
私も、だよ…
私もずっとごっちんの側にいる…
『梨華ちゃん…!』
あなたの声が、いますぐ聞きたい…
- 310 名前:作者 投稿日:2002年04月27日(土)22時03分50秒
- 中途半端ですがここまで、。
さすがにこれ以上は、きつい…。
しかもこれ以降書いた物があんまり集中できていなかった物なので…。
- 311 名前:梨華っちは文麿の応援団 投稿日:2002年04月27日(土)22時19分51秒
- 更新お疲れさまです♪
やっと、梨華姫気づきましたね。
今は夜ですよね?じゃあ、今からごっちんの所へ行くんでしょうか?
展開期待してます。^^
- 312 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月27日(土)22時56分44秒
高橋の告白によって石川さんが後藤の大切さに気付いて‥‥良かったような、じゃないような。
そして、石高を見て後藤がこの後どう動くのか‥。
続きマターリお待ちしてます。
- 313 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年04月28日(日)10時22分54秒
- やっと梨華たんは自分の気持ちに気づいたんですな。
はやくごっちんに伝えてほしいです。
高橋はどうなったんでしょうか?
更新待っています。
- 314 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月28日(日)18時42分07秒
「……!」
「…!?…」
瞼の向こうの彼女と、耳に焼き付いている記憶だけのその声に石川が
耳を澄ましていた時、ドアの向こうからなにやら騒がしい喧騒が部屋の中に
伝わってきた。
「…?」
廊下をなにやら慌ただしく行き交う複数の足音と自然と大きくなる声を
必死に静めようとして逆に余計に怪しくなっているその会話達に石川は静かに
体をベッドに起こした。
「石川っ!ちょっと石川いる!?」
不思議に思いちょうどベッドに上半身を起こしたと同時に、ドアが荒々しく叩かれ
それと共に聞き覚えのある声がやけに大きな声で叫んできた。
「…保田さん。どうしたんですか?」
すぐにドアまで歩いていきそれを開く。
するとそこにはただ事ではないかのような表情の保田の姿があった。
- 315 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月28日(日)18時43分06秒
「後藤!後藤いる!?」
ドアから石川の姿が出てくるやいなや保田は石川の向こうへ目を向け後藤の姿を
確認しようとした。
その声は心配と微かな怒りに息を荒くしているようだった。
「ごっちんは…まだ帰って来てませんよ。一体どうかしたんですか…?」
「……圭織、後藤部屋に居ないって…」
石川の疑問には答えず保田はそのまま後ろを向きそのすぐ側にいた飯田に
向かって言った。
「…後藤さん!!見つかった!?」
「いえ…部屋にも居ないみたいです…」
向こうから廊下をマネージャーが駆けてこちらにやって来る。
同じく彼女の表情も曇り尋常ではなく焦っている様子だった。
「ごっちんが…ごっちんがどうかしたんですか!?」
三人の只ならぬ様子と表情に石川は嫌な物を感じ三人に詰め寄る。
- 316 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月28日(日)18時45分36秒
「…石川…っ!」
「保田さん!ごっちんが…どうしたんですか!?教えて下さいっ!!」
石川は保田に前から詰め寄り必死の表情で問い詰める。
保田はしばし石川の姿に言葉なくただ見つめ返していたが、飯田の方へ顔をやり
目配せすると改まって石川の方へ向き直り口を開いた。
「実は…後藤が帰って来てないのよ…」
「…え…?」
「コンサートが終ってみんな二つのワンボックスカーを使ってホテルに戻って
来たでしょ?でもどうやら後藤はそのどちらにも乗ってなかったみたいなのよ…。
今回みんなばらばらに乗り込んでろくに確認もしなかったから…そのせいだと思うん
だけど…。それで今さっきコンサートスタッフの人から電話があって…どうやら
あたし達が会場を後にした以降にも後藤を見かけた人がいるらしいのよ」
- 317 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月28日(日)18時48分13秒
「そ、それじゃぁ…ごっちんは今どこに…」
「だから今それを探してるんでしょ」
飯田が保田の後ろから割り込んで今更唖然とした口調で言う石川にどこか
いらだちながら答える。
「…まずいわね…。近頃スキャンダルが出てばっかりだから…。これ以上何か
あったらいい加減全体にダメージ出ちゃうわよ…」
「ですよね…」
マネージャーの渋い顔に飯田も申し訳なさそうに答え向き直る。
「……」
石川は何も出来ずものすごく早く感じるこの状況の流れをただ呆然と眺めていた。
「コンサートが終ってから約一時間半。後藤の奴何かまずいことになってなきゃ
いいけど…」
スキャンダルやグループの評判なんかよりも、
もはや知らない人の方がいないと思われるほどの知名度を持つ後藤が、右も左も
分からない、見知らぬ土地で何かないかという方が心配だ。
ましてや今日と言う日は花見には最高の天気に恵まれた日。
夜も夜桜見物や休日のために若い男や酒に酔っているだろう性質の悪い男が
街をうろついている可能性がある。
- 318 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月28日(日)18時49分27秒
- そんなことが脳裏をかすめた瞬間、石川は心臓が胸の中で一度ドクンッと嫌な
風に大きく跳ねたのを感じた。
(ごっちん…)
「?どうしたの?みんなー」
廊下のざわめきに気がつき矢口や安倍達も部屋の向こうから顔を出す。
しばし経つとあっという間にメンバー達がドアから顔を出したりこちらに向かって
来たりしていた。
しかし石川の瞳にはどれも映らない。
「わ、私探してきますっ!」
とうとう居ても経っても居られず、胸の中で鳴り響く嫌な鼓動をかき消すように
石川は行動と共に声を上げた。
「ちょ、ちょっと石川っ!」
駆け出そうとした石川の腕をすんでのところで保田が掴む。
- 319 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月28日(日)18時50分45秒
「あんた探すったって一体どこにいくつもりなの!?後藤がどこに行ったのか
目星はついてるの?何も分かりもしないのに街を探す回るなんて無茶よ。…お願い
だからこれ以上問題増やさないでよ…」
「でもっ!ここで待ってるだけなんて出来ませんっ!それに…私…心当たりが
あるんです…。ごっちんが姿を眩ました心当たりが…」
「え…?」
「…すいませんっ!!」
石川は保田の手を乱暴に振り解くとエレベーターのある向こうへ廊下を駆け出した。
「石川っ!」
保田の叫ぶ声と、その後の自分を止める声、そしてまだ事情を知らないメンバー達の
微かな喧騒を背中に感じながら、石川は廊下を走った―――
- 320 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月28日(日)18時53分35秒
「ごっちん…」
石川はエレベーターの前に立ち後藤を不安げに呼びながら中々来ないエレベーターに
いらだちながら何度もボタンを押す。
「もうっ!お願いだから早く来てよ…」
(こうしてる間にもごっちんは…)
石川は今までのんびりベッドの上で気だるい感覚に身を任せていた事を悔いた。
そして意識しなくてもどうしても脳裏を過ぎる嫌な想像に首を振る。
(早く…っ!)
この瞬間、一秒でも早くエレベーターが訪れるのを心の中で願った時、その時だった。
「石川さんっ!」
「!」
突然した声に石川はびくっと体を跳ねさせ反応する。
そして聞き覚えのある声に恐る恐る後ろに振り向いた。
「石川さん…」
するとそこには息を切らせ――たぶん自分を追いかけてきたのだろう――膝に手を
つき荒くなっている息を整えようとしている高橋の姿があった。
- 321 名前:aki 投稿日:2002年04月28日(日)18時58分33秒
- 更新終了。
311:梨華っちは文麿の応援団さん
>レスありがとうございます。
最後まで展開には頑張っていきます。
312:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
そうですね、後藤さんの動きも、気になるところです。
ちょっと更新速度?が早くなりました(w
313:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
後藤も、石川も高橋も、全員の描写はきちんと書きたいと思ってますので
しばしお待ちを。がんばります。
- 322 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年04月28日(日)19時19分07秒
- ごっちんはどこにいったんだろうか。
高橋が梨華たんに告白しているところを目撃してしまったごっちんの
気持ちはわからんでもない。はやく梨華たんとごっちんが幸せになる時
がきてほしいです。今の高橋の気持ちは複雑でしょうな。
akiさん、更新楽しみに待っていますよ。
- 323 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月28日(日)23時56分55秒
- 更新されているっ!
と思ったら、後藤が行方不明‥
そして、また高橋が‥ドキドキしております画面に食い入って読んでおります
作者さんは=akiさんだったのですか
(;^▽^)<気付かなかったよほ‥
- 324 名前:梨華っちは文麿の応援団 投稿日:2002年04月29日(月)15時41分45秒
- 梨華姫、ごっちんを早く見つけてあげて下さい!!
ウチも探しに行くんで(爆)
またもや高橋…いい味出してるんですね。。。
ヤパーリ、作者たんはakiさんでしたか。更新楽しみなのれす
- 325 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月30日(火)22時31分33秒
- 「高橋…」
目に入った彼女の姿に石川は小さく無意識に声を漏らす。
「どこに…いくつもりですか…?」
息をとりあえず整え、高橋は改めて顔をゆっくりと上に上げた。
真っ直ぐな瞳が石川を見つめる。
「ごっちんを…探しに行くの…」
「どこか行く当てはあるんですか?」
「ない…けどっ!…居ても経っても居られないの…。ごっちんがこうなったのは…
たぶん私のせいだから…」
石川は言葉を現すように幾分顔を下に落とした。
それ以上言葉が続かない。
高橋はそんな石川の様子をただ見つめていたが、思わず口を開いた。
- 326 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月30日(火)22時35分32秒
- 「無茶ですよ!」
「無茶でも行かないといけないの!!それが今の私に唯一残されたごっちんへの
してあげられる事…そしてしなくちゃいけないこと…」
「石川さん…」
ちょうどその時会話が一瞬落ち着いた時、エレベーターの向こうで小さな機械音が鳴り
ドアが左右に開かれ目の前に空間が開いた。
「探しに…行かなくちゃ…」
「待って下さいっ!」
石川がエレベータに乗り込もうとした瞬間、高橋が後ろから石川の腕を掴んだ。
「愛ちゃん!?」
「待って下さい…私…まだ聞いてません。石川さんの答え…」
高橋は振り向いた石川の瞳を、真っ直ぐ目の前から捕らえ、最後の質問を発した。
「……」
石川は高橋の言葉に自然と口を閉ざした。
今さっきまで荒ぶっていた感情も、体さえも、その行動を忘れたように中断する。
- 327 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月30日(火)22時42分58秒
『好きなんです!石川さんの事…』
そう、今さっき答えなかった…彼女に対しての気持ち…。
動転から頭の中は真っ白になりすぐには何も考えられなかった。
そして…ずっと私自身分からなかったんだ…「今」の自分が誰を好きなのか…。
本当の気持ちが…。
「聞かせてください、石川さんの答え…」
私の…答え…
石川は、考えるようにして微かに俯いたまま微かな時間を流れた。
まるで時間が止まったように、石川はその一瞬の時間が真っ直ぐ自分と向き直った。
考えた。問い掛けた。見つめた。
そして…ゆっくりと顔を上げた。
ずっとその瞬間を見つめていてくれた高橋に向き直り、その真っ直ぐな瞳を
見つめ返し、そして言った。
- 328 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月30日(火)22時44分21秒
- 「ごめんね…私には、好きな人がいるの…」
「……」
「やっと…気付いたの…。それは今までずっと私が傷つけてしまっていた人…」
「…後藤さん…ですか…?」
「うん。私は…ごっちんが好き」
高橋にそれだけ言うと、石川は自分の腕を掴む高橋の手を優しく解いた。
「ごめんね…高橋…」
悪そうにして謝った石川に、高橋はワンテンポ遅れてからふっと息をついた。
「いいんです。大丈夫ですから。それに分かってましたから…ある程度は…石川さんの
気持ちは…」
「……」
「ただ、あなたの口からあなたの答えが聞きたかった。そして早くあなたに自分の
気持ちを気付いて欲しかった」
「高橋…?」
「どちらにせよ、それで私は満足です。あなたの答えが聞けてよかった」
高橋はずっと今の今まで開いていたエレベーターの扉に、石川の背を軽く押すと
そこへ入れさせた。
- 329 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年04月30日(火)22時47分35秒
「高橋…」
「後藤さんを…助けてあげてください…」
石川がちょうどエレベータに入った時、同時にエレベーターが動き出した。
ゆっくりと扉が閉め始める。
「高橋っ!」
「……」
「!」
左右から扉が動き、向こうとこちらの空間が隔てられ別になろうとした瞬間、
高橋は言葉を発さないまま口だけ動かし言った。
「…ありがとう…」
高橋の姿が消え、目の前には扉が映り自分だけの空間となったエレベーターが
下に動き出した時、石川は高橋の言ってくれた言葉に小さく自分も
その言葉を発した。
- 330 名前:作者 投稿日:2002年04月30日(火)22時58分25秒
- 更新終了しました〜…。
はぁ…、この前更新した時投稿した後すぐに名前のところに気付いて
やっちゃったなぁと思いました(爆)
でもほとんどばれてたみたいですね^^;
いつかはやるんじゃないかと思ってましたが見事に墓穴掘っちゃいました。
とにかく追々向こうでも書こうと思ってます。
322:いしごま防衛軍さん
>やっぱりばれてましたか…?(汗)
後もう少しでラストに近づいてきますね、がんばります。
323:名無し読者さん
>ありがとうございますm(__)m嬉しいお言葉本当に嬉しいです。感謝です。
実は私でした^^;
324:梨華っちは文麿の応援団さん
>ばればれですね^^;隠してた意味ほとんどないに近い…?
ラストまでもう少し、最後までがんばりますっ。
- 331 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年04月30日(火)23時35分38秒
- なんかakiさんの作品と似ていたのでもしかしてと思っていたんですが、
この前ので確信しました。akiさんの小説はどんなに切なくてつらい話
でも癒されるのでわかりますよ。
高橋は梨華たんの本当の気持ちが聞きたかったんですな。
そして、ごっりんを愛していることに気づいた梨華たんはごっちんを
見つけることができるのだろうか。気になります。
- 332 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月01日(水)06時28分11秒
- うーん、いい感じに盛り上がってきましたねぇ
- 333 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月02日(木)03時14分10秒
- もうラストが近いのでしょうか‥
終わってほしくない。それでいて、後藤と石川、そして高橋にハッピーエンドが訪れてほしい。
- 334 名前:梨華っちは文麿の応援団 投稿日:2002年05月02日(木)17時02分23秒
- akiさん=いしごまですから♪てか旅館のヤツが大好きでした♪
これからも期待します。^^
梨華姫、優しすぎる!!ような…。
ごっちん、生きてますかね?
- 335 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月05日(日)00時30分32秒
さっきまで空間が存在していた、今は冷たい壁の佇む目の前の扉に高橋は
彼女の姿が見えなくなった以降、片手をぼんやりと肩より上に上げひらひらと
所在無さげに振っていた。
それは彼女自身にではなく自分の気持ちをまるで断ち切るように。
『さようなら』
高橋は心の中で小さく呟くと振っていた片手をゆっくりと下に下ろした。
「……」
同時に顔もゆっくりと下に俯いていく。
それからすぐに、足元の床に涙の欠片が二粒、三粒、零れ落ち染みを作った。
くさい言葉吐いて、ありきたりな台詞口にして、
自分らしくない。
理想の女気取って彼女を送り出してしまった。
誰よりも愛しいあなたを。
誰にも負けない自分の気持ちには小さいけど大きな自信があった。
だけど…
- 336 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月05日(日)00時33分01秒
「…うっ…」
自分のは一方的な気持ち。
矢印はただ切なく相手に向かうだけ。
空回りする感情をそれでも溢れるほどの気持ちがカバーしてた。
そしてあの人と、いつか…幸せになれたら良かった…。
だけどね…
「うぅ…っ…」
二人の気持ちは互いに向けられている。
矢印はお互いに指している。
彼女はその人を、その人は彼女を求めてる…。
自分には入り込めない。
だから、いいんだ…。
まだ当分…あなたが幸せになってくれればいいの、なんて言えそうにないけど…。
――シンデレラ、眠り姫、白雪姫。全ての悲しみの始まりは、すれ違いの生じるその
瞬間は目に見えない魔法のせいなのかもしれない。だけど…最後はその魔法が二人を
結び合わせる大事な事柄へと…変わっていく…。
物語の一番大事な1シーンへと…―――
高橋は涙を仰ぐように顔を上へと上げた。
『ばいばい…私の大好きな人…』
小さく微笑みを最後に残すと、高橋は廊下の向こうへと消えて行った。
- 337 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月05日(日)00時37分56秒
- 高橋・・・。
あぁ・・・切ない・・・。
梨華ちゃん高橋のためにもごっちんに自分の正直な気持ちを
伝えておくれ・・・。
- 338 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月05日(日)00時39分50秒
- 高橋・・・(泣
梨華ちゃんごっちんと上手く行くことを祈って
高橋にも幸せが来ますように・・・
- 339 名前:作者 投稿日:2002年05月05日(日)00時50分01秒
- 短いですが更新終了。
331:いしごま防衛軍さん
>ありがとうございます。すごく嬉しいです。
次の更新、書くの苦しんでます。自分の方で気ままに書いてる話の影響か、
上手く文章が書けない…。
332:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
だんだんラスト近いですね。盛り上がったままいけるといいんですが…。
333:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
ラスト近づいてますね。ありがとうございますm(__)m
ここから最後まで、上手く書けるといいです。
334:梨華っちは文麿の応援団さん
>やっぱりばれてましたか^^;旅館の話は私も好きでした。
ただ近頃本当に最初書き始めた頃よりかなりきつくなってきてます(汗)
話は浮かぶんですがそれを書く時間と気力が…。
- 340 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年05月05日(日)10時13分14秒
- ああ高橋切ないです。梨華たん、高橋のためにもはやくごっちんを見つけるんだ。
高橋にも幸せが訪れることを願っています。
akiさん、無理せず頑張ってください。マターリして待っていますよ。
- 341 名前:梨華っちは文麿の応援団 投稿日:2002年05月05日(日)11時06分14秒
- 高橋…うわぁ〜ん。。。あなたに感動。
切ない…この思いを梨華姫も充分に理解して欲しい。
そしてごっちんを見つけて…と。
小説書くのは、ヤパーリ大変なんですよね。
いしごまの為にも(謎)頑張って下さい!!ファイ♪
- 342 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月08日(水)21時27分11秒
機械音が低く小さく響き、それからいらだつぐらいにゆっくりとドアが開いた。
「…早くっ!」
半ば強引にゆっくりと開いていくドアを両手でこじあける。
「ごっちんっ!」
ホテルのフロント前を横切り、何の躊躇うことなく外へ飛び出した。
ホテルの前は一つの道路が敷かれ、目の前は同じようなビル街の後ろ姿だった。
左か右しか方向のない選択を石川は立ち止まることなく車が自分達をコンサート会場から
運んできた道をそのまま駆け抜けていった。
通りから外れた暗くあまり目の付かない路地の左右はどちらとも高いビルで
立ちふさがっていた。
まるで迷宮のように暗い影が自分を覆い、確かなのは目の前遠くに小さく広がる
額縁のような町のネオンだけ。
- 343 名前:作者 投稿日:2002年05月08日(水)21時29分20秒
- 一刻も早くごっちんを見つけ出さなきゃいけない。
石川は再び胸の中で自分にきつく言い聞かせるとホテルのある路地を抜けた。
自分を途端に覆ったのはまばゆい光だけだった。
そこはホテル前とは全く正反対で赤やオレンジの輝きが煩いほどに解き放たれていた。
空から町を眺めるのはネオンを放つビル。
人の存在が全く感じられないただの石の塊のようなビル。
うるさいほどにたくさんのタクシーや車のクラクションが通りに響き渡るのに
それはどれも耳には入らない。
まるで、遠く彼方からそれを聞くかのように、全ての騒音と光がただの「景色」と
してしか瞳に映らなかった。
「……」
コンサート会場からホテルまで車で約10分。
石川は頭で何か考える前に体の赴くままに従った。
- 344 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月08日(水)21時31分17秒
「ごっちん…」
お願いだから、無事でいて…。
今まで私があなたにしてきたことを思うと、本当に今の私の気持ちは矛盾してるけど…。
たくさん傷つけた。
涙を流させた。
その事実はいくら今更自分の気持ちに気付いたとしたって拭い去れない私の罪。
ごめんね…。
今更謝るのも遅すぎるのかもしれない。
無事でいて…。
矛盾してる。
分かってるそんなことは。
だけど…だけど私には…
矛盾してるしてないとか、そんなの関係なしでしなくちゃいけないことがある。
あなたを、追いかけないといけない。
救わなければならない。
私には、あなたが必要なの…。
- 345 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月08日(水)21時34分08秒
「高橋…」
こんなあたしを好きになってくれたのに。
本気で気持ちを向けてくれたのに。
ごめん…。
それしか言えない。
最後の最後まで気付かなかった。
それまでずっと自分に対して私の目は向けられてなかった。
あなたが私の事、好きだって言ってくれた時やっと気付いたの。
忘れかけていた「私」の存在に。
そしてやっと気付く事が出来た。
私の大切な、人の存在の事に。
ごめん…。
それでも背中を押してくれた。
気付いた気持ちを後押ししてくれた。
ありがとう…。
本当にそう思ったときって、そんないつも使うような一言の言葉しか
思いつかないんだね…。
…君がいてくれて良かった…。
- 346 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月08日(水)21時38分53秒
――――――
「……」
もう、だめだ…。
頭の中が真っ白で何も考えられない。
自分がどこに向かってるのかも分からなかった。
ただ自分は俯いて息を切らしてどこかに向かっている。
瞳には辺りの景色が映ってるはずなのに、それは心まで届いていなかった。
どこかに向かいながら、不意に頭の中をある光景が過ぎった。
- 347 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月08日(水)21時41分15秒
………
ゆっくりと離される唇。
『好きなんです!石川さんのこと…』
彼女の告白。
呆然と彼女を見つめるその人。
「……」
触れた唇。
現実は冷たく瞳に映る。
その唇は、私が何度も触れた柔らかくて甘くて愛しいたった一人の人の物。
だけどいつだって冷たくほろ苦い。
でも、それでも私をいつもこれ以上ない気持ちに昂ぶらせてくれた。
だめ…だめだよ…。
やだ…触れちゃやだよ…。
だってその人は私の好きな人、大好きな人、愛しい人。
どんなに傷ついたって、傷つけられたって手に入れたかった、その人の存在。
触れたら…やだ…。
いつだってその瞳には、たとえ映っていなくても私しか見ていて欲しくないの…。
- 348 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月08日(水)21時43分29秒
「梨華…ちゃ、ん…」
自分の足は勝手に前に進み止まらない。
まるで腰から下は別の物みたい。
頭で止まれって必死に命令してるのに、自分の一部であるはずの足は全く
聞いてくれない。
怖いよ…。
私…どこに行っちゃうの…?
「梨華ちゃん…」
どれほど流しただろうか。
もう枯れ果てるほど流したはずの涙がまた溢れた。
お願い…助けて…。
暴走した感情が、私を壊そうとしてる。
誘導してる。その場所へ…。
止まらない…。
―――耳に小さく聞こえてきた音に、微かに顔を上げた。
近いはずなのに、遠く聞こえる。
耳には微かな水の流れる音と、草木の風に揺れる音。
そして、おぼろげに遠くで人の喧騒が聞こえた―――
- 349 名前:作者 投稿日:2002年05月08日(水)21時56分42秒
- 更新しました。
337:名無し読者さん
>即レスありがとうございます。嬉しかったです。
高橋の最後、切なくなりましたが上手く伝わってくれたみたいで
書いてる方は嬉しいです。
338:名無し読者さん
>即レスありがとうございます。
高橋は書き始める前の段階で、実際書いてる途中では物語の
変化を起こさせるきっかけの役として考えていたのでそれ以降の高橋に
ついて全く考えてませんでした。なので高橋の幸せ…少し考えました。
期待に答えられるか分かりませんが…。
340:いしごま防衛軍さん
>ありがとうございます。
どうしても更新のこと焦ってしまって。がんばりますっ。
341:梨華っちは文麿の応援団さん
>レスありがとうございます。
高橋の気持ちも初め思っていたよりもちゃんと書きました。
頑張りますっ。いしごまのために…(w
- 350 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年05月08日(水)23時59分16秒
- ああごっちん。切ないです。でもあともう少しで二人が幸せになれると
信じています。マターリ待ってますから焦らなくていいですよ。
やっぱり、どんなに切なくても癒される。大学から疲れて帰ってきて
akiさんの小説を読むと疲れが吹っ飛びますよ。頑張ってください。
- 351 名前:rika-mode 投稿日:2002年05月09日(木)11時40分53秒
- おひさしぶりです!やってきました〜。
一気に読みました。
某板を見たらここで書いてると書いてあったので・・・。
う〜ん、ここもせつないですねぇ。
早く、二人が会えるといいんですが・・・。(何事も無く、です)
あと、りかたか、最近けっこう好きなので、高橋がちょっとかわいそうだったけど
嬉しい展開でした。
がんばってくださいね〜。
- 352 名前:梨華っちは文麿の応援団 投稿日:2002年05月09日(木)17時49分46秒
- 更新お疲れ様です♪
やっと、ごっちんも登場しましたね。
それにしてもタイトル通り、せつねぇ〜(泣)です。
梨華ちゃん待ってます。by.ごっちん
- 353 名前:作者 投稿日:2002年05月09日(木)21時39分41秒
- レスありがとうございますm(__)m
350:いしごま防衛軍さん
>本当ですか、嬉しいです。
書いてる意味が感じられます。私なんかの話で疲れが取れれば幸いです。
351:rika-modeさん
>お久しぶりです^^レスありがとうございます。
終わる前に読んでくださって書いて良かったです。
私も近頃石高や高紺が好きですね(w
どうしても、私の話は切なくなっちゃう傾向があって…。
今後書くとしたらもう少し安心して読める一直線な話にしたいです。できれば…。
がんばります。
352:梨華っちは文麿の応援団さん
>ありがとうございます。
梨華ちゃんこれからがんばります。
切なくなってくれてるのは書いてる方は嬉しいです(w
がんばります。
実は、今日集中して書いたため最後まで書き終わりました。
のでもしかしたら今日で終わるかも…。
ただ直しながら載せていくので途中で私の方が力尽きちゃうかも、しれません。
その時はすいません。
それとも一気に終わりまで行かない方がいいのかな…。
とりあえず更新します。
- 354 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)21時42分08秒
「はぁ…はぁ…」
普段走ることも少なくなった体に悲鳴を上げさせて、やっとコンサート会場に
たどり着く事が出来た。
真っ直ぐそのまま会場に入り、微かにそこに残っていたコンサートスタッフに話を
聞く。
分かった事はコンサートが終わり「モーニング娘。」がホテルに向かったはずの後も、
ごっちんを会場で見かけた人がいた、って事実だけだった。
それは私たちがホテルに向かう車に乗り込み、発進した直後に当たるぐらいの時刻。
ホテルでスタッフやメンバーが伝えられた事のように、それだけしかまだ情報が
集まっていないようだった。
大事になるのを避けるため警察や東京の私たちが所属する会社にはまだ報告されてない。
今必死になってスタッフがごっちんの姿を探そうと街中を探し回ってる所だった。
- 355 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)21時44分27秒
「……ごっちん…」
私は一応会場を一通り確かめてみた。
楽屋、ホール、そして…あの時の部屋…。
だけどどこにもいない。
ごっちん…どこに行っちゃったの…?
また胸の中で不安が大きくなる。
必死にそれに取り込まれないように自分をきつく奮い起こさせた。
こんな所で、こんな時にへこたれてる場合じゃない。
大切な人を、一刻も早く救わなければならない。
見つけ出さないといけない。
あなたの姿が、声が、存在が…。
…あなたを、今すぐこの目で映し出したい。…触れたい。
存在を、確かめたい―――
- 356 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)21時47分50秒
必死になって考えた。
不安と焦りで上手く働かない頭を無理やり動かせた。
ごっちん…ごっちん、どこに行っちゃったの…?
瞼の向こうにあなたの姿が映る。
私が見たいのはあなたの姿。
だけどこのあなたじゃない。
「今」の、
今までとは違うあなたの存在を…。
遠く、当てもつかないこの見知らぬ土地で、
ごっちんがどこに行ったのか考える。
だけど検討もつかない。
必死になって私は祈った。
ごっちん…お願い…ごっちんっ…!
祈るだけじゃもう届かない、この気持ち。
神様じゃない、私があなたを救い出してみせる…。
- 357 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)21時49分45秒
「!」
不意に石川の頭にある光景が映った。
風に揺らぐ木、美しい溢れんばかりのピンク…それは目の届く限界まで続いている。
人々に幸せを与えるように、咲き綻んでいる。
躍る花びら、舞い落ちる場所は…美しく澄み切った大きな…川…。
「ごっちん…まさか…」
考えが過ぎったと同時に、私は飛び出していた。
もしもあなたが微かにでも私のことをまだ好きでいてくれるのならば…、
もしも私たちがどこかでまだ繋がっているのなら…、
今私の頭に過ぎった予想は当たっているかもしれない。
だけど…そしたら…。
- 358 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)21時51分25秒
「ごっちん…」
まさか…まさか……。
嘘、だよね…?
大丈夫だよね…
私まだごっちんに気持ち伝えてない…!
まだごっちんの気持ち聞いてない…。
本当の気持ちを…大切な事を伝えないままなんて…ないよね…?
走り慣れない体。
道路の出っ張りに転びそうになる。
走ったまま微かに手を付いた。
ごっちん…!
瞳の向こうで、彼女が優しく微笑んだ―――
- 359 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)21時53分08秒
…冷たい…。
気付いた時にはあたしの両足は冷たい水に浸かっていた。
まだ肌寒いこの季節の気温にそれは突き刺さるようにあたしの足を貫く。
鋭すぎるその冷たさに、足の感覚は失われかけまるで蝕まれていくよう。
「……」
向こうには無数の桜並木。
赤やオレンジのぼんぼりにそれは美しく照らし出されている。
桜の近くには何本かの柳の木があり二つの共演は完璧すぎるほどに上手く
演出されていた。
――風が辺りに優しく強く吹いた。
サーッという透明感のある音と共に桜も柳も向こうで小さく揺れる。
花びらが微かに舞った。
向こうより手前、すぐそこの草木が風になびく。
あたしも髪も、横に流れた。
- 360 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)21時56分32秒
私はいつのまにかあの時上から眺めていた桜の綺麗な川に来ていた。
あの時離れた会場から見ていても感じていた通り間近に目にすると
それは更に大きく立派なものだった。
水はとても澄んでいて綺麗。
光のない夜でもそれはすぐに分かる。
三日月の光がそのまま川の水面に映し出されていてとても美しい。
風が吹き、川が揺れるたびにそれは左右に形を揺らし不思議に躍った。
…すごく大きい。
向こうの岸までどれくらいあるか検討もつかない。
流れも思っていたよりも速かった。
足の間をすり抜ける水の速さは気を抜けば躓いてしまうかもしれない。
「……」
私は私服の肌寒さに体を抱きしめるようにして堪えている。
――水に足が浸かっているのに、体をうずくませている自分の行動が分からない。
さっきまでほとんどなかった風が、今さっきの風をきっかけにするように
徐々に強く吹きつづける。
ぎゅっと、再び強く体を抱きしめると、私は足を一歩一歩進ませた。
- 361 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)21時59分02秒
「……」
…もういい…疲れたよ…。
疲れちゃった…。
これなら傷つけられてもその方が良かった。
悲しみも、所詮孤独には勝てない。
愛しい人も傍らにいなくなった今、私はもうあの人を自分に
繋いでおく方法がわからない。
悲しみに涙を流すのも、それももう出来ない。
だけどこの孤独に一人で堪える事なんて出来るわけない…。
苦しみしかない、孤独には…。
- 362 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)22時00分11秒
水を掻き分けて進むごとに足が濡れる面積が増えていく。
一歩、また一歩…。
もう水が膝の辺りまで感じられる。
私は、独り…。
怖い…一人はやだよ…。
それならみんなのいる場所に戻ればいい。
今ならまだ間に合う。
今なら取り返しがつく。
…だけど…。
人といるのに孤独を感じるなんて…、
あの二人を遠くに見つめながら一人孤独を感じるなんて…。
そんなの堪えられない…。
疲れた…疲れたのもう…。
後藤はふっと顔を上に上げた。
…あそこに行けば、楽になれるかな…――――
さよなら梨華ちゃん…。
さよなら…。
- 363 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)22時02分11秒
「ごっちーん!!」
あたしは喉のことも気にせず限界までの大きな声を張り上げ川伝いの
道を走っていた。
「どこなのー!?いるなら返事してー!!」
今さっきから何度もあたりに向かって呼びかけるけど、返事は返って来ない。
辺りは既に明りもなく真っ暗闇だった。
すすきが風に揺れ真っ暗の川と唯一光の輝く向こうの桜並木しか
上手く目に映らない。
「ごっちーん!!」
…ごっちん…どこに行っちゃったの…?
あの時会場から見た桜並木…それをあなたも見ていたはず…。
確かにあの時ごっちんの気持ちもあたしの気持ちもここに注がれていた。
「ごっちん…」
絶望が心に過ぎり、頭を左右に振る。
バカっ!
あたしがこんなんでどうすんのよ…。
ごっちんは…。
ごっちん…。
- 364 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)22時04分27秒
止まりかけ歩くほどになった足を必死になって走らせる。
「ごっちん…どこ…」
土手の上から川原を見渡す。
どこ…どこにいるの…。
見える範囲の隅から隅まで一つも見逃すまいと目を凝らした。
…だけどどこにも彼女の姿が見当たらない。
ただ何の変化のない闇の景色だけ。
「……っ!?」
ここを諦めて向こうを探そうと駆け出そうとしたとき、一瞬流れる視界に
何かが映った。
そのまますぐに目線を戻す。
高さと、角度を変えないように気をつけながら。
胸の中が痛いほど波打ってる。
「…ごっちん!」
夜の川。
真っ暗闇で何の変化のない水面に、月の光が届くその付近に何か小さな
影が出来ていた。
誰かがその場所に立っている。
月明かりに映えるその茶髪、さらさらのストレートのその髪は…。
石川は夢中でその場所に駆け出していた。
- 365 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)22時05分23秒
…ごめんね梨華ちゃん…。
冷たい感覚と途切れそうな儚い意識の中で浮かんだ彼女の姿に
あたしは呟いた。
…泣かないで…そんな悲しそうな顔をしないで…。
目の前には今にも泣き出しそうな彼女の姿がある。
手を伸ばせば届くほどの距離のはずなのに、その手は届かない。
大丈夫、梨華ちゃんは独りじゃないから…。
だけど…ごめんね、あたしにはもう…頑張れる力がなくなっちゃった…。
ごめんね…梨華ちゃん…。
- 366 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)22時08分07秒
「ごっちーんっ!!」
あれ?どうしてだろう…梨華ちゃんの声がする…。
「ごっちん!ごっちんっ!!」
必死な梨華ちゃんの声…。
夢にしてはリアルすぎる。
だけどあたしの大好きだった声だ…。
「お願いごっちん…。死んじゃやだよ…」
死ぬ?あたしが…?
そうか…あたし楽になる道を選んだった…。
何の苦しみのない、悲しみのない世界へ…。
「あたしのせいだ…あたしがごっちんのこと…」
揺れる景色のなかおぼろげに梨華ちゃんの姿が見える。
…泣いてるの…?
でもその表情はすごく真剣で必死だった。
「ごっちん…!」
梨華ちゃん…お願い…あたしを見つけて…。
- 367 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)22時11分13秒
あたしがその場所についた時には周りには今さっきの人影はどこにも
存在していなかった。
水が肩の近くまで近づいてきてる。
空を仰いで月を見ても今さっき人影のあった場所はここだ。
だけど…どんなに探しても見当たらない…。
「う…うぐっ…ご、っちん…」
涙が溢れ出した。
こんな時にって自分を叱るけど、止まらない。
「ご、っちん…ごめ…ん…ごめんなさい…あたしの…あたしのせいだ…」
涙は川の水に吸い込まれていく。
体を締め付ける水の冷たさ。こんな場所で…ごっちんを…。
「やだ、よ…あた、し…。まだごっちんに言ってないっ!!言ってないのぉ!!」
意思では止められない涙が堰を切ったように溢れ出す。
喉を鳴らし、嗚咽を吐きながらあたしは川の真ん中で佇んでしまった。
- 368 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)22時13分02秒
「お願いだから…っ…返事、してよ…あたし…ごっちんがいないと…うっ…あたし…」
冷たい川のせせらぎに叫ぶ声もかき消されてしまう。
「ごっ、ちん…」
『梨華…ちゃん…』
「!!」
不意にごっちんの声があたしの耳に飛び込んだ。
「ごっちん!?」
『梨華ちゃん…』
「どこ!?どこにいるの!?」
『梨華…ちゃん…』
空耳じゃないその確かな声にあたしは夢中で辺りを見渡した。
だけどどこにもごっちんの姿は見当たらない。
『梨華ちゃん…お願い…』
「ごっちん…っ!」
『助、けて…』
「!」
その声があたしの中で突き抜けるように響いた時、あたしは無意識に川の
中に飛び込んでいた。
- 369 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)22時15分00秒
「……」
中は真っ暗闇だった。
すぐ近くの物が何も見えない。
一面の暗闇。まるで悪夢を見ているようだった。
『ごっちん…!』
服が水を吸ってこれ以上にないほど重い。
だけど必死になって川の底、奥深くへと向かって手足を動かした。
月明かりが微かに届くだけの水中は不気味に静まり返っていた。
「…ごっちんっ!」
水の中にいるにも関わらずあたしは声を出していた。
それは当然声にならず泡となって水面へと向かっていく。
- 370 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)22時16分58秒
「ごっ、ちん……ごっちん!」
ごっちんは深く一番静かな川の底で静かに体を横たわらせていた。
水中で微かに体が浮き上の流れとは正反対のおだやかな川底で静かに体を
流れに任せている。
あたしは水の重さと流れに逆らって川底へと手足を動かした。
思い通りに動かないそれを必死になって動かせる。
「ごっちん!」
髪が水中に泳ぐ。
不意に見えた横顔は苦しそうに目を瞑っていて、今にも張り裂けそうだった。
「っ…!」
手を指し伸ばす。
だけどあとほんの少しの距離が遠く果てしない。
すぐそこのごっちんにあたしの手は届かない。
- 371 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)22時18分43秒
「ん…!」
苦しい…。限界に近づいてきてる…。
必死に手を指し伸ばすけど無情にも届かない。
それよりもどんどん流されていって距離が広がっていく。
『ごっちん…』
これがあたし達の最期なの?
これが二人の結末なの…?
やっと、やっと気付く事が出来たのに…。
やっと悲しみから解放されるのに…。
何であとほんの少しの距離が届かないの…?
水中であたしは涙を流した。
熱くてまるで体の底から流れていくみたい。
あたし達は…最期までこのままなの…?
やるせない気持ちが涙を止め処なく溢れさせた。
その時、
- 372 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)22時20分43秒
「!」
ごっちんの腕が動いた。
それは流れに沿ってじゃなく確かに逆らってあたしの方へ向かって動いている。
「ご…っちん…!」
指し伸ばされた手をあたしは必死に掴もうと自分の手を伸ばした。
ごっちん…ごっちん…!
もう離さない…。この手…掴んでみせる…っ!
指先が微かに触れ、気付いた時には二つの手は強く握り締められていた。
「…!」
石川はその手の感触を確かに感じるとぐいっとありったけの力を出し後藤を
引き寄せた。
そしてそのままきつく唇を合わした。
後藤の体を強く抱きしめ、溢れる気持ちを止められずきつく唇を奪った。
「……」
「!」
後藤の腕が微かに動く。
それは限界を超え力を失いながらも確かに自分を抱きしめ返していた。
石川は後藤の体を確かに抱きしめ、夢中で上に見える揺れる水面へと向かって
手足を動かした。
- 373 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)22時22分28秒
「…ぷはっ!!」
「……ごほっ…!」
解き放たれるように二人は水の上へと戻って来た。
あまりにも早いスピードで水面へと戻って来たためどうやってここまで
たどり着いたのかも覚えていない。
「…はぁ…はぁ…ごっ…ちん…!」
「ごほっ…ごほ…っ…はぁ…はぁ…っ…」
腕の中で苦しそうに水を吐く後藤を自分の状態は構わず石川は存在を確かめる。
「ごっちん…良かったぁ…」
確かにすぐ目の前で苦しそうに呼吸する後藤の姿に石川は安堵の息を吐く。
無意識に涙が溢れていた。
「はぁ…はぁ…梨華…ちゃん…?」
「良かったよぉ…!」
自分を捕らえたその瞳に石川は夢中で後藤を抱きしめた。
- 374 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)22時24分33秒
「良かったよぉ…ごっちん…。良かったぁ…」
「……」
意識がしっかりし始めた後藤に石川は今までずっと張り詰めていた緊張の糸も
切れ安心から一気に押し寄せてきた感情を溢れさせた。
堪えた物が、今になって止め処なく溢れてくる。
「ごっちん…!」
「梨華ちゃん…」
小さな子供のように、夢中で胸の中で泣き続ける石川に後藤も自然と小さく名前を呼ぶ。
「ごめんね…梨華ちゃん…」
「…違う、のぉ…。っ…ごっちんが悪いんじゃない…、あたしが…あたしのせいで…
こんな…」
必死に言葉を紡ごうとする石川に後藤は力ないその腕を必死に背中に回した。
「ありがとう…梨華ちゃん…」
「ごっちん…」
「ありがとう…」
後藤はそう言うと優しく石川に微笑みかけた。
「嬉しかったよ…」
青ざめた顔で後藤は必死に言葉を発した。
そんな後藤の姿に石川は伝えなければいけない気持ちにはっと気付く。
- 375 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)22時27分07秒
「ううん。いいの…。だってあたしはごっちんを追いかけなくちゃいけなかったんだもん。
助けなきゃいけなかった…。ごっちんに今までした事に比べれば…あたしなんて…」
「…梨華ちゃん…」
「やっと気付いたの、本当の気持ち…。ずっと目を背けていたけどやっと気付くことが
出来た。今だって…しなきゃいけないからじゃなくてね…。ごっちんを失いたくなかったの。それは今までの気持ちじゃなくてね…」
「…うん」
「あたしが今までして来た事…いくら自分の気持ちに今気付いても消えない事は
分かってる…」
「……」
石川はそこで言葉を止めた。
後藤もただ石川の次の言葉が発せられるのを黙って待つ。
「でもごっちんがまだあたしの事を好きでいてくれるのなら…。今まであたしがして
きた事を許してくれるのなら…ううん、許してくれなくてもいい。ただ、一緒に居て
くれるのなら…。あたしはごっちんの側にいたい。…ごっちんに…側にいて欲しい…」
「梨華ちゃん…」
石川は顔を上げると後藤の目を真っ直ぐ見つめ言った。
- 376 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)22時29分02秒
「…あなたのことが好きです。側に…いて下さい…」
「梨華ちゃんっ…!」
後藤は堪えきれず石川に抱きついた。
涙がもう頬を伝い、彼女の言葉を聞いているのが限界だった。
「助けてくれたね…。追いかけてきてくれた…。ありがとう、ありがとう…」
「ごっ、ちん…」
「それだけで嬉しかったんだよ…。ごとーは梨華ちゃんの側にいられるだけで
幸せなんだよ…。…好き…大好きっ!!」
「ごっちんっ!」
肩に顔を埋め涙を零しながら言葉を必死に紡ぐ後藤に石川はきつく抱きしめ返し、
きつく唇を合わした。
「ん…っ…」
風も止み、穏やかな川の流れの中、温かい月の光と桜の花びらが舞う情景に
見守られながら、二人はその夜始めて想いの通った口付けを交わした。
幸せが溢れる優しくて甘い唇。
月の光に、照らし出されながら、二人はずっと唇を交わしあっていた―――
- 377 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)22時30分20秒
―――――――
「ごっちん…」
「梨華ちゃん…」
「…愛してる」
「うん…」
囁いてくれるたくさんの愛の言葉に、後藤は恥ずかしそうに顔を赤くさせ
照れながら小さく頷いた。
「好きだよ…」
「…ん…っ…」
その日二人にとって始めての愛に満ち溢れた、愛に包まれた夜となった。
何度も何度も、二人は体を重ねた。
終らない行為は永遠を思わせ二人を幸せで包み込んでいく。
優しく、力強く、そして時に激しく。
今までの空っぽで無機質な時間を取り戻すように、埋め尽くすように。
二人はずっと互いのぬくもりと吐息を感じ合いながら長い夜を
共に超えた―――
- 378 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)22時31分30秒
―――――――
「後藤!あんた昨日一体どこに行ってたのよ〜!!」
「…あはは…ごめんなさい」
怒りの形相の保田、飯田、マネージャーの姿に後藤は素直に小さく縮こまると
謝った。
「ったく、無事だったからいいもののっ。石川も石川よ!後藤が見つかったからいいもののもし万が一のことがあったらどうするつもりだったのよ!」
安心しているがどうしてもそれと共にそれを上まるほどの気持ちに保田はとうとう
大きくため息をこぼす。
それも全て自分達を思ってのことだと思うと石川も後藤も何も言えなかった。
- 379 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)22時34分46秒
長い夜が明け、日が昇り訪れた翌日。
昨夜は後藤が見つかったという事実だけに全ての人間が安心し、二人がなぜ
全身びしょぬれなのかと言う事もほとんど触れず体調優先でそのまますぐに
解散することになった。
しかし夜の空けた翌日。
心配から来るため息や愚痴に二人は何も言わないままずっと小さくなっていた。
「まぁ、無事だったからいいけどさ。あんた達に何かあったら…。もうちょっとは
周りのことも考えなさいよ?…あんた達はもう、一人じゃないんだからね」
保田は最後に「みんなに必要とされて生きてるんだから」そう付け加えた。
「そうだよ〜!もし二人に何かあったらどうしてくれるのよ〜!裕ちゃんに
何て言ったらいいのか…」
飯田が後ろから半泣きの状態で声を詰まらせる。
そのままあうあうと泣き出してしまった飯田に保田が慌てて背中を叩いてあげた。
- 380 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)22時36分29秒
「んじゃほらっ!次はマネージャーの所行ってきなさいっ。それからスタッフの人全員!」
「「はーい…」」
心配されてのことに本当は感謝の意を示さなければいけないのだが、
実際本当に感謝してるし言ってくれる言葉は嬉しい以外何者でもないのだが、
朝からずっとこの調子の二人に後藤と石川も終いには困ったようにしてしまう。
不意に二人が互いを見ようとしたのが重なり目が合う。
「……」
一瞬そのまま目を合わせたまま黙っていたが不意に笑みを零した。
幸せ一杯の笑顔と笑い声が辺りに響く。
飯田は保田に宥められながら、保田は飯田を何とか宥めながら、
突然笑い出した二人に「何なのよ一体〜?」と首を傾げた。
近くにいた矢口や安倍も、他のメンバー達も首を傾げあう。
しかし二人の幸せそうな表情と笑い声にその場にいる全員も自然と表情を
綻ばせていた。
- 381 名前:悲しみの果て 投稿日:2002年05月09日(木)22時39分22秒
「…好きだよ」
「うん。あたしも」
石川はメンバー達全員がいる廊下にも関わらず後藤の首に両腕を回すとそのまま
距離を縮め微かにつま先立ちをすると、優しくキスをした。
「なっ!?」
周りのみんなが驚いて声を上げる。
だけど二人には関係ない。
触れるだけのキスの後、二人は離れずそのままの格好で再び笑みを零した。
そんな二人に吉澤は腕を組みながら小さくため息をこぼす。
やれやれと、祝福するように、だけど呆れるように。
それは高橋も同じだった。
幸せそうな二人に、小さく吉澤とは違った安堵に似たため息をこぼす。
温かく見守るように。
出来れば祝福できるように。
目の前に好きな人しか入らない距離で、二人は幸せをかみ締めるように
ずっと笑みを零していた――――
〜fin〜
- 382 名前:作者 投稿日:2002年05月09日(木)22時42分00秒
- 終わりましたぁ。
もう少し行くかと思ったら結構ちょうどよく終わりました。
最後までのこの部分、今日午後から集中して一気に仕上げた物ですが、
少し風邪で頭がぼんやりしていたので上手く書けたか微かに心配です(汗)
- 383 名前:作者 投稿日:2002年05月09日(木)22時51分40秒
- 書き始める前から話の筋は出来上がっていてそれを話にしていったんですが、
結構思っているよりも長くなってしまって息抜きの短編にはなりませんでした(爆)
内容も内容なので気楽には書けないし…。
それと、すいません、前回のレスの時高橋に幸せを…と書いたのですが
すいません、書いていくと考えていたものが上手く話に入れられなくて
結局入れられませんでした。安易な約束書いてしまって申し訳ないです。
それと、H.Nを伏せて書いてたせいか、結構暴走した所とかありました^^;
その分自由に書きたいものが書けたというのもあるんですが…。
それよりもどの話もそうですが最後まで書き終えることが出来たのはレスをくれる
皆さんの存在でした。
マイペースに更新していた話に最後までお付き合いくださり本当にありがとうございます。
向こうもあるのでまだ分かりませんが…新しい話、いろいろ考えてはいます。
ただちょっと…。
突然何かし始めるかもしれないし、しないかもしれませんが
その時はほんの少し目を通すだけでも気にかけてくれれば嬉しいです。
では、ここまで本当にご愛読ありがとうございましたm(__)m
- 384 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月09日(木)23時19分58秒
- お疲れ様でした。
そして、良い作品をありがとうございます。更新される度に泣く日々も終わりか‥。
桜を眺める石川に話しかける高橋、それを見つめる後藤の場面が印章に残ってます。
(#´д`)<ハッピー♪エンドで良かったね>(^▽^#)
- 385 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年05月10日(金)01時31分34秒
- akiさんお疲れさまでした。そしてありがとうございました。
なんとも感動の渦に巻き込まれてしまいました。
最後はウルウルときました。この最後の梨華たんとごっちんのやりとり
が最高でした。とても切なくてつらい話でしたが、ハッピーエンドに
なってよかったし、どんなに切なくても癒されました。
これからもいしごま防衛条約機構はakiさんについていってよろしいでしょうか?
いやついていきます。マターリ頑張っていきましょう。
- 386 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月10日(金)04時40分06秒
- 悲しみの果てには幸せがありましたか
無事それを見つけられて良かった
- 387 名前:rika-mode 投稿日:2002年05月10日(金)08時43分35秒
- もう、最後の方なんてうるうるしっぱなしでしたー。
ほんと、終わる前に見つけることができてよかった!
二人が幸せになれて、よかった(^^)
やっぱ、最後の最後はこうでないとね〜。
また、いろんな作品楽しませてくださいねー。
(あ、プレッシャーに感じない程度に、です。もちろん)
- 388 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月10日(金)13時37分21秒
- 完結おめでとうございます。
ずっとROMってました。
うーん、貧困な言葉しか出てこなくて恐縮ですが、儚い感じの漂うこの作品、
ツボでした。 これからも頑張ってください。
- 389 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月10日(金)17時57分26秒
- 完結お疲れ様です
最後どうなるのだろうと思っていましたが
無事幸せになってよかったです。
高橋も恋は実らなかったけど安心してることでしょうし。
凄くよかったです。
他の作品も楽しみにしています
- 390 名前:梨華っちは文麿の応援団 投稿日:2002年05月10日(金)20時50分56秒
- 完結、お疲れさまでした。^^
最後はハッピ〜♪エンドで大満足でした♪
そしてカナーリ感動しました。素晴らしいです、この小説。
やはりいしごま小説=akiさんですね♪(^▽^)
番外編orに大いに期待します!!
- 391 名前:作者 投稿日:2002年05月11日(土)20時10分22秒
- たくさんのレス本当にありがとうございますm(__)m
384:名無し読者さん
>ありがとうございます。
それだけで書き終わった実感と書いた意味が感じられます。
私もそのシーンがよく印象に残ってます。そんなシーンが書けて良かったです。
385:いしごま防衛軍さん
>ありがとうございます。
書きたかったことを全て書ききれたかどうか分かりませんが、
書いて良かったです。最後まで来るのは本当に大変ですが読んでくださる方が
感想をくれるだけで嬉しいです。
こんな自分でよければこれからもよろしくお願いします。
386:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
そうですね。悲しみの果てには、後藤の選んだ選択があり、そしてその延長線上に
二人の幸せがありました。
人が心の臨界点を迎えた時、どうなってしまうかを書きたかったんですが
吉澤も高橋もそんな後藤を追い詰める役として最後は書いてました。
最後まで読んでくださって嬉しい限りです。
- 392 名前:作者 投稿日:2002年05月11日(土)20時18分21秒
- 388:rika-modeさん
>ありがとうございます^^
書いてよかったです。その一言だけで書いた意味も疲れも吹っ飛びます。
バッドエンドはある意味心に強く残るんでしょうが…どうしても読み終わった後
後味が悪い物は読むのも苦手で…^^;
何か、バッドエンドでも読み終わった後に感銘を受けるような物なら素敵なんだろう
けど…。
書いた「最後」に嬉しい感想頂けて私も嬉しいです。
これからもがんばりますっ。
388:名無し読者さん
>ありがとうございます。
最後まで読んで下さったことが嬉しいです。
ツボな作品書けて良かったです。
がんばりますっ。
389:名無し読者さん
>ありがとうございます。
最後は書き始めた時から決めていたんですが、もし決めていなかったら
たくさんの終わり方で迷っていたかもしれまんね。
高橋の最後も、考えたんですがあえて二人が主の話なのですっきり最後は
終わらせました。ありがとうございます。これからもがんばります。
- 393 名前:作者 投稿日:2002年05月11日(土)20時26分59秒
- 340:梨華っちは文麿の応援団さん
>ありがとうございます。
ハッピーエンドは書く私も読んでいてもみんなが満足することが出来ますね。
良かったです。
何かこの話に感じていただければそれだけで嬉しいです。
それと…実はこのスレの残りぐらいで今度こそは本当に短い短編を書こうと
思い書いたんですが、私のロムってるだけの某HPの作品にかなり
酷似してしまったので止めます(爆)
結構良い感じに書けたので私もやるせないんですが(泣)
ので、何かしらいいのが出来ましたらいつか載せますね^^;
それでは、たくさんのレス本当にありがとうございましたm(__)m
- 394 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年05月13日(月)01時01分23秒
- のせてほしかったです。うーん、でもマターリ待ちますよ。
わしはakiさんについていきます。
これからもよろしくお願いします。
- 395 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月14日(火)22時02分52秒
- HPのアド教えて?
- 396 名前:作者 投稿日:2002年05月14日(火)23時18分36秒
- 394:いしごま防衛軍さん
>すいません、私も残念です。
ありがとうございます。がんばります。
395:名無し読者さん
>なにしろそこの管理人さんと接触すらもしたことがないので…。
ゲームなどの二次小説を書かれている場所なんですが
私の勝手な判断でそのHPに迷惑を掛けかねないので…すいません、
アドレスは控えさせてもらいます。申し訳ないです。
- 397 名前:JAM 投稿日:2002年05月19日(日)20時56分40秒
- 実はついさっき読み終えました。スミマセン。
読んでる内にボロボロ涙が出ました。
「本当に大切なものって失ってから気づく」って言葉が
ありますが、失わずに気づいて良かったです。
つか、目が真っ赤に腫れちゃってるんですが
明日学校に行けるのか不安になってきました(w
- 398 名前:作者 投稿日:2002年05月19日(日)22時23分33秒
- 397:JAMさん
>ありがとうございます…(T_T)
こんなに感謝込めて言ったお礼も数少ないです^^;
結構時間掛かりましたが最後まで書いて良かったと実感します。
読んで下さり本当に感謝です。
まだまだ言い尽くせない言葉ばかりですが本当にありがとうございます。
明日までに目の腫れが治っている事を心から願ってます(w
中間考査、がんばってくださいね。
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