向日葵2
- 1 名前:501 投稿日:2002年02月16日(土)22時11分00秒
- 同じ緑板で書いておりました『向日葵』の続きです。
ラストまでわずかですが、引き続きよろしくお願い致します。
前回まではこちら↓
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi?dir=green&thp=1009907672
- 2 名前:夜叉 投稿日:2002年02月16日(土)22時39分03秒
- 付いてきてしまいましたがな(笑)。
こちらでもよろしくです。ペコリ
石川ぁ、おめー勘違いしちゃーいけねえずら!!!
作者様、身震いしながら更新をお待ちしております(笑)。
- 3 名前:名無しベーグル。 投稿日:2002年02月17日(日)14時58分13秒
- 早く、梨華ちゃんと吉澤を会わせてあげてください!!
ラスト1本お待ちしております。
新スレ立てたので、これで番外編とか書けますよね?( ̄ー ̄)ニヤリッ
- 4 名前:よすこ大好き読者 投稿日:2002年02月17日(日)16時46分16秒
- 新スレ立てたのですね!!もう終わってしまうと思うと切ないですね。
でも、早くハッピーーになってほしいし、びみょぉーです。
涙無しでは、見れなかった作品なので、期待しています!
↑激しく同意! 番外編。楽しみです(w
- 5 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年02月17日(日)17時16分10秒
- はじめまして。
遅れ馳せながら今日前スレから読ませていただいてます。
すれ違っていく2人とその周辺の人々との関わりにハラハラしつつ、
最終章の更新をお待ちしております。
番外編とのお話もあるようなので、これからも期待して読ませていただきます。
- 6 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月17日(日)19時09分30秒
- ふ〜、ネガってますな〜この少女は…困ったもんだ。
番外編あるのでしょうか。
もちろんひっそりお待ちしております。
- 7 名前:名無しバイク 投稿日:2002年02月18日(月)14時18分38秒
- こちらでは、初めまして(w
ちゃんと最初から読んでいたのですが(ニガワラ
新スレとの事なので、記念カキコ。でももうすぐラスト(爆
ラストスパートがんがって下さいね!。
楽しみにしております。
もちろん、番外編もね(ニヤリ
- 8 名前:kennji 投稿日:2002年02月18日(月)22時38分38秒
- このまま、突っ走ってください!!!応援してます!!!
- 9 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月18日(月)22時53分19秒
- >>8
sageようよ…
- 10 名前:最終話 〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月20日(水)02時36分20秒
- 「絶対五反田近辺だと思うんだ。」
そう言ってアタシは、電話帳を開いた。
品川区内のパチンコ屋は―――数える事64件。
その数の多さに少しだけ辟易するものの、根拠のない揺るぎない自信がアタシを奮い立たせた。
「ん、今はどんな可能性でもそれに賭けてみないとね。」
「アタシは上から順番に掛けていくから、ごっちんは下から電話掛けてってくれる?」
「オッケー。」
ごっちんとアタシは電話帳を片手に番号を押していった。
- 11 名前:最終話 〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月20日(水)02時37分37秒
- 『―――パチンコドンドンです。―――いえ、そのような名の従業員はおりませんが―――』
『―――はい、パーラーエジプトです。―――いや、石川って名前はいません―――』
『―――パチンコジャンボです。―――――いえ、おりません―――』
何軒かは定休日なのか、電話に出ない店もあったけど、電話帳のパチンコ店の欄に一軒、また一軒とラインを引いていくたびに、溜息が深くなる。
「よっすぃー・・・あと、一つだけだね。」
「うん・・・。」
これがドラマであるならば、最後の一軒で見つかるんだろうけど・・・。
そんな都合のいい話があるもんかと口端を歪めて自嘲気味に笑う。
それでも、なんの確証もないけれど、きっと彼女は見つかると無理矢理思い込んだ。
アタシはぎこちない指先で番号を押しながら、昨夜の保田さんの言葉を思い出した。
- 12 名前:最終話 〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月20日(水)02時38分51秒
- ・
・
・
結局梨華ちゃんに追いつく事が出来なかったアタシは、肩をガックリ落とし、バイト先のレンタルショップへ戻ってきた。
アタシが戻ってくるのをずっと待っていたらしい保田さんは、アタシに会うなり唐突に話し出した。
「その様子じゃ捕まんなかったみたいね。」
「・・・・・。」
「・・・石川、アンタの後姿を見ながら涙流してたわよ。」
「え・・・?」
「きっと、勘違いしたんでしょうね。」
「あの、それって・・?」
「・・・もう分かってるでしょ?あとは自分で考えなさいよ。」
彼女はアタシに背を向けて2、3歩足を進めた。
電信柱に括り付けられている立て看板を弄りながら、独り言のように呟いた。
- 13 名前:最終話 〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月20日(水)02時40分29秒
- 「心配なのよ・・・あの子、普段は明るいけど、落ち込むとどんどんネガティブモードに陥っちゃうから・・・。」
後姿で表情は見えないけれど、彼女の声音から、梨華ちゃんを深く心配していることが容易に分かる。
「大丈夫・・・絶対探し出すから。」
「・・・・・そう。アンタがそれだけ強くなれたんなら大丈夫ね。・・・石川のこと、頼んだわよ。」
そう言ってニッコリ笑った彼女の顔は、少し寂しげだった。
・
・
・
- 14 名前:最終話 〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月20日(水)02時41分39秒
- プルルルルとコール音が耳に響く。
ここに彼女がいなかったら・・・。
1回、2回と鳴らし続けるコール音は・・・アタシをまるで絞首台の階段にいざなっていくような、そんな気分にさせる。
・・・梨華ちゃん。
アナタがアタシのアパートまで来てくれた事。
あたしと市井さんの後姿を見て涙を流していた事。
同性愛者だって事を隠したがっていた事―――。
それは・・・アナタもアタシと同じ気持ちだった。
・・・そう、自惚れても良いよね?
今は、その自惚れだけがアタシの心の支え。
- 15 名前:最終話 〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月20日(水)02時45分23秒
- 『―――はい、パーラーエンジェルです。』
「・・・突然すみません。あの・・・そちらに、石川梨華という人は働いてないでしょうか?」
『はい、おりますが。』
アタシはその言葉を聞いた瞬間、まるで全速力で走ったかのように、鼓動がドクンドクンと早まるのを感じた。
ダメだ、喜ぶのはまだ早い。梨華ちゃんと同姓同名の可能性だってある。
冷静な自分が舞い上がりそうになる自分をそう諭す。
「本当ですかっ!?あ、あのっ、り、石川さんはそちらに入社したばかりですよね?18歳の石川梨華ですよね?」
『・・・はい、そうですが。・・・・・あの、失礼ですけど、どちら様でしょうか?』
「あ、すみません。あの、アタシ、吉澤と言います。石川さんの・・友達です。」
「そうでしたか。今日石川は休みなので店内にはおりませんが、寮の方にいると思うんで、そちらに繋ぎますね。」
「はい、お願いします!」
- 16 名前:最終話 〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月20日(水)02時47分01秒
- よくある保留音が耳に届く。興奮気味な自分に落ち着けと叱った。
この音が鳴り止んだ時、最愛の人の声を久し振りに聞くことができる。
彼女と話したら、まず何から話そう・・・。
心配したんだよと優しく叱ろうか。
それとも、会えない間、寂しくて胸が苦しかったと伝えようか。
話したい事は沢山あるけれど。
とにかく「会いたい」そう言おうと思った。
- 17 名前:最終話 〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月20日(水)02時48分04秒
- 数十秒という長い時を経て、ようやく保留音が鳴り止んだ。
だが、電話に出た相手は、アタシが最も聞きたい彼女の声ではなく、少し関西訛りのある女性の声。
「もしもし、お電話お待たせしてすみません。石川なんですけど、今近所に買い物行ってるんですよ。」
「あ・・・そうですか・・・。」
「何かご用件がありましたら言付けておきますが。」
「あ、いえ、結構です。・・・あの、り、石川さんは何時ごろ戻ってきますか?」
「すぐ戻ってくると思いますよ。」
「そうですか。・・・あの、これからそちらに行くんで、彼女が帰ってきたら、吉澤が会いたいと言っていたとお伝え願いますか?」
「・・分かりました。」
「それでは失礼します」と電話を切ったアタシは、隣で固唾を飲んで見守っていてくれたごっちんに微笑んだ。
「良かったね・・・ホントに良かったね。」
ごっちんは目を潤ませてそう言ってくれた。
彼女が心から喜んでくれているのが分かる。
そんな彼女の気持ちがとても嬉しかった。
「うん、ありがとう。・・・じゃあ、行ってくるから!」
アタシはごっちんにそう言うと、コートを片手にアパートを飛び出した。
- 18 名前:最終話 〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月20日(水)02時50分05秒
- 「ただいま戻りました。」
私は給仕のおばさんに帰ってきたことを告げて、自分の部屋に戻ろうとした。
その時、食堂の奥にある休憩室から声が掛かった。
「お帰り〜。さっきな、アンタに電話あったんよ。」
ソファに座っていた中澤さんが、ゆっくりと腰をあげてやって来た。
「え・・・私に、ですか?」
私は戸惑いを隠せなかった。
私宛に電話が来るわけがない。誰にも教えずにここへ来たんだから。
親友だと自分に思い込ませていた、最愛のあの人にさえも・・・。
「心当たりないのん?」
「・・・はい。」
「“吉澤が会いたいと言っていた”って伝えてくれって。これからこっちに向かう言うてたよ。」
「!?」
私は中澤さんの言葉にハッとして、俯いていた顔をあげた。
- 19 名前:最終話 〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月20日(水)02時51分42秒
- ひとみちゃんが・・・どうしてここを・・・?
なんで・・・諦めようと無理矢理気持ちを封印したのに。
まだ、アナタの幸せを祝福してあげれる余裕が私にはないんです。
お願いだから、私の心を掻き乱さないで。
お願いだから・・・。
「・・・・・アンタの宝物ちゃうんか?」
黙り込んでしまった私を訝しく思ったかもしれません。
けれど、中澤さんはそんな姿を微塵もみせずに、優しく私に聞いてきた。
「・・・・・宝物は・・もう無くなったんです。ひと・・・吉澤さんって人が来たら、いないって言ってください。お願いします。」
中澤さんは、まだ何かを言いたげだったけど、私はそれに構わず部屋に入った。
枯れたと思ったはずの涙が、まだポロポロと零れ落ちる。
お願い・・・もう少しだけ・・もう少しだけ時間を下さい。
もう少しだけ時間をくれれば、きっとアナタの前に笑顔で立てるから。
笑顔で、アナタの幸せを祝福してみせるから―――。
- 20 名前:501 投稿日:2002年02月20日(水)03時15分10秒
- 最終話、これでホントに残り4分の1になりました。
次回、ラストになります。
ちょっと仕事の方が忙しいので、更新が遅くなるやもしれませんが、
最後までお付き合いよろしくお願いします。
>夜叉さん
付いてきてくれてありがとう!(感涙)
すんません。石川さん、相変わらずズルズルと勘違いしまくってます(苦笑)
>名無しベーグル。さん
ホントにいまだに会わせてやらなくてすみません(^^;)
ウチの石川さんがこんなにネガティブになるとは思わなかったです(苦笑)
>新スレ立てたので、これで番外編とか書けますよね?( ̄ー ̄)ニヤリッ
う゛っ…中々スルドイところを(w)
一応番外編は何本か考えてます。需要があればエ○ありの意向で(爆)
>よすこ大好き読者さん
ラスト、ネガネガ石川さんを救ってくれるであろう吉に期待してやってください(^^)
番外編もがんがって書いてみます(^^)
- 21 名前:501 投稿日:2002年02月20日(水)03時32分16秒
- >M.ANZAIさん
はじめまして、レスありがとうございます!
長々としたネガティブ小説を一気に読んでくださってありがとうございました(w)
次回ラストになると思いますが、お付き合いいただけたら嬉しいです。
>6さん
自分でもこのネガティブ少女の扱いに困ってます(w)
番外編ではまた少しキャストを増やして書いてみようかと今思いつきました(w)
がんがります(^^)
>名無しバイクさん
はじめまして!(って白々しい?/w) レスありがとうございます(^^)
番外編のほかにも、温泉ネタやりますよ(w)
>kennjiさん
ありがとうございます!がんがります!p(^^)q
我侭で申し訳ありませんが、、出来ればひっそりと更新したいので、
9さんの仰るとおりsageでお願いします。
>9さん
ありがとうございます。
- 22 名前:名無し読者。。。 投稿日:2002年02月20日(水)10時03分09秒
- >需要があればエ○ありの意向で(爆)
ってマジですかぁ?是非是非お願いします♪
あ〜梨華ちゃんなんてネガティブなんだ〜(T_T)…最終話期待してます!
- 23 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年02月20日(水)10時37分51秒
- ネガティブな梨華ちゃん・・・でもそこに中澤さんが居てくれる。
そのことに最後の望みを!
- 24 名前:よすこ大好き読者 投稿日:2002年02月20日(水)17時12分30秒
- うーーん、最終話ですか・・・・。なんだか、涙無しでは読めなかった
作品なので、残念なような・・・・・・。
はっ!!私が、ネガティブモードに入ってしまった!!
ま、○ロ有りの番外編にも期待をかけて、マターリ待ってまっす!
- 25 名前:名無しベーグル。 投稿日:2002年02月20日(水)18時10分47秒
- パチンコと言えば「ヤスダ」を思い出して笑ってしまいました。
某線から看板が見えるので(w。
エ○有りの番外編も激しくキターイ!
- 26 名前:さまようよっすぃー 投稿日:2002年02月20日(水)19時20分58秒
- くぅっとなる気持ちをぐっとこらえて読みました。
残り4分の1、武者震いしながらお待ちしております。
もちろん、番外編もお待ちしてますよーん。
>名無しベーグル様。
「ヤスダ」に撃沈いたしました(笑)。
- 27 名前:夜叉 投稿日:2002年02月20日(水)19時33分27秒
- すいません、逝ってきます。
- 28 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月20日(水)23時10分59秒
- うむ、自惚れ…時には大事です。
その強い想いで石川さんに気づかせてあげて。
ついに最終話、胸の高鳴りをおさえつつ待機…。
- 29 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月21日(木)04時20分20秒
- 需要あります w
- 30 名前:吉胡麻系 投稿日:2002年02月21日(木)17時29分55秒
- 初めまして、吉胡麻系と申します!
いろんなウワサを聞きまして、一気に読ませていただきました。
なんか・・・、すごくもどかしいというか、
「頑張れ!」って2人に声をかけたくなりました。(w
あともう少しで完結という事で。頑張って下さい!
短編の方もちょっと楽しみにしてたりして。(w
- 31 名前:501 投稿日:2002年02月27日(水)03時12分08秒
- >22さん
石川さんがこんなにネガティブキャラに突っ走るとは思わなかったので、
最後まで大変でした。
番外編はまだ全く手をつけてないですが、頑張って書いてみます(^^)
>M.ANZAIさん
中澤さんが活躍してくれます(色んな意味で)
ぜひ期待してください(^^)
>よすこ大好き読者さん
最後、泣けるかどうかは分かりませんが、自分的には綺麗にまとまったと思います。
(や、無駄に長い文章にはなってしまいましたが/w)
最後まで、ぜひ読んでやってください♪
エ○あり話、がんがりますp(^^)q
- 32 名前:501 投稿日:2002年02月27日(水)03時12分50秒
- > 名無しベーグル。さん
わが町の近くには「パチンコ コンノ」がございました(w)
もう潰れてしまいましたが(爆)
エ○有り番外編は、やっぱりたどたどしい中学生みたいな
えっちになりそうな予感です。ま、それもまた萌え(w)
> さまようよっすぃーさん&夜叉さん
レスを見て、一発で夜叉さんだと分かりましたよ(愛だね♪)
無駄に長くなったラストですが、ぜひぜひ読んでやってください。
番外編もマターリ気長にお待ちくださいまし(^^)
>28さん
自惚れが功を奏すか、どうか。
無駄に長いですが、最後まで読んでやってくださいませm(_ _)m
>29さん
皆さん需要アリの意向なので、がんがります!p(^^)q
>吉胡麻系さん
初めまして、レスありがとうございます!
吉胡麻系さんのお話、拝見させて頂いておりましたので嬉しいです!
いろんなウワサ…とは、良いウワサだとイイんですが…(w)
ラストは長くはなったものの、綺麗にまとまったと思いますので、
最後まで読んでやってください。m(_ _)m
- 33 名前:501 投稿日:2002年02月27日(水)03時14分06秒
- 大変長らくお待たせいたしました(待ってた方がいたかはワカランが/w)
向日葵、ラストまでようやく書きあがりました。
撮って出しの某番組のような荒々しさです(爆)
これでもかと言うくらい、ウダウダグダグダ書いてます。
拙い文章ですが、最後まで読んでいただけたら、これ幸い。
- 34 名前:最終話 〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時16分25秒
- もうすぐ梨華ちゃんに会える。
その単純な嬉しさに、アタシは息苦しさも忘れながら走っていた。
早く着けば、早く彼女に会える。
そんな理屈。子供じみた自分に笑ってしまいそうになるけれど。
一秒でも早く会いたいんだから仕方がない。
彼女の苦しみを救ってやりたい。
彼女の柔らかい微笑を取り戻してやりたい。
・・・いや、そんな大層な事じゃなくて。
ただ、アタシ自身がこの苦しい胸の痛みを取りたいだけ。
彼女のためではなく、アタシのために。
- 35 名前:最終話 〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時17分50秒
- 梨華ちゃんの働いているパチンコ屋は、駅前のデパート脇から入った細い道の先にあった。
最近の深夜テレビで紹介されるような近代的で豪華な造りじゃなくて、どこか懐かしさを感じるレトロな・・・早い話が廃れた感じの店。
それでも駅前と言う事もあってか、お客の入りは良いみたい。
アタシは大きく深呼吸を繰り返し、慣れない雰囲気が漂う店内に入った。
辺りを物珍しげにキョロキョロと眺めていると、店員が訝しげにアタシを見た。
・・・やばっ、つまみ出される前に寮の場所聞かないと・・・。
さっき電話で話したときに寮の場所を聞いておけば良かったものの、梨華ちゃんを見つけたことに完璧舞い上がっていたアタシは、肝心な事を聞かないで電話を切っていた。
・・・はは、相変わらず間抜けだよね。
- 36 名前:最終話 〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時18分52秒
- 正面のカウンターに女性の店員がいたので、アタシはその女性に話し掛けた。
「あの、従業員の石川さんに会いたいんですけど、こちらの寮ってどちらにあるんですか・・・?」
あたしが恐る恐る尋ねると、おそらく30半ばぐらいの女性は、ちょっと気だるそうに、
「あー、寮ならそこの出入り口を出た脇に階段があるから、そこ登って。」
と、自分のちょっと長めの爪を弄りながら言う。
アタシは「ありがとうございます」と軽く会釈をして店を出た。
アタシは鉄の階段をカンカンと音を鳴らしながら登り、「パーラーエンジェル従業員専用」という張り紙が貼られたドアの前に立った。
・・・このドアの向こうに梨華ちゃんがいる。
やっと、彼女に会える。
そう思うと鼓動がドンドン早まっていくのが分かった。
- 37 名前:最終話 〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時20分39秒
- トントンとドアをノックして、恐る恐るドアを開けた。
目の前は長い廊下、左右に沢山のドアが並んでいる。廊下には誰もいなかった。
アタシは「すいませーん」と気持ち声を大きくして人を呼んだ。
「はーい。」
入り口すぐ脇の部屋から、体格の良い人の良さそうなおばさんが出てきた。
「私、吉澤と言います。あの、石川さんはいらっしゃいますか?」
「あ、今さっき帰ってきたばっかりよ。ちょっと待っててね。」
彼女は笑顔でそう言うと、トトトッと小走りして入り口から3つ目のドアの前に立った。
・・・あそこが梨華ちゃんの部屋なのかな。
・・・ヤバイ、すごいドキドキしてきた。落ち着け、アタシ。
- 38 名前:最終話 〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時21分21秒
- 「石川さーん、お客様がいらっしゃったわよー。・・・・・石川さーん。・・・・・あら?おかしいわねぇ、さっき帰ってきたはずなのに・・・お風呂かしら?」
おばさんは一番奥の部屋まで行って、ドアの奥を覗いた。
そこにも梨華ちゃんはいなかったらしく、彼女は不思議そうな顔をして、こちらに戻ってきた。
「ごめんなさい。石川さん、またどこかに出掛けちゃったみたいだわ。」
「・・・そうですか・・・。」
アタシは明らかに落胆の表情を見せたに違いない。
おばさんは申し訳なさそうな顔をしてアタシに謝る。
「ごめんなさいねぇ・・・・・あっ、ちょっと待っててね。」
突然何かを思い出したかのように、梨華ちゃんの部屋の隣に行って、ノックした。
「中澤さーん。ちょっと良いかしら?」
「はーい。なんですか?」
そう言って出てきたのは20代半ばぐらいの金髪の女性。
言葉のイントネーションが標準語とちょっと違う。アタシはさっき電話に出た人だろうと思った。
- 39 名前:最終話 〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時22分08秒
- おばさんに「石川さんどこに行ったか知らない?」と聞かれた彼女が、一瞬表情を曇らせたのをアタシは偶然にも見てしまった。
そして、入り口に立っているアタシを見据えた彼女は、「・・・ああ、あとはウチが。」とおばさんを部屋に戻るよう促した。
彼女は梨華ちゃんの部屋の前で一旦立ち止まると、トン・・とドアを小さくノックした。
哀しそうな、寂しそうな・・・何とも言い難い表情を浮かべた後、アタシの前に来た。
「さっき電話くれた・・吉澤さんやな?」
「あ、はい。あの・・石川さんは・・・?」
「・・・ちょっと表に出よか。」
そう言うと、彼女はだらしなく置かれていた突っ掛けを履いて、さっさと階段を降りていく。
アタシは彼女に慌ててついて行った。
- 40 名前:最終話 〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時23分08秒
- 昼間はとても暖かくて春の陽気そのものだったのに、陽が傾きかけると途端に寒くなる。
コートを着ててよかった・・なんて、どうでもいいことを考えながら、金髪の女性・・確か中澤さんと呼ばれていた、彼女の後をついて歩く。
梨華ちゃんにやっと会えると浮かれていた気分は、とうに脳の片隅に追いやられて、どこへ行くのか、梨華ちゃんはどうしたのか、そもそも彼女はアタシに何の用があるのか・・・何とも言いようのない不安が、アタシの心を蝕んでいた。
「・・・あの・・。」
ずっと無言で先を歩く彼女に、思い切って口を開いた。
それと同時に彼女が「こっちやで」とアタシを促し、児童公園に入っていく。
アタシもその後をついていった。
- 41 名前:最終話 〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時23分54秒
- 陽が傾きかけた公園内には、もう誰もいなかった。
寒さに震えた野良猫が、今日の寝床を探すとばかりに、キョロキョロと歩いていたのが寂しく感じる。
公園のど真ん中に、ポツンと一つベンチが置かれている。
彼女はそこへ座ると、アタシにも座れと促す。
アタシはベンチの端っこにスッと座り、彼女の次の言葉を待った。
フゥと一つ溜息をついた彼女が、ポツリポツリと話し出した。
「昨日な、あの子・・・ここで一人で泣いてたんよ。」
「・・・・・。」
「・・・大切な宝物をなくしたってな。」
「あの・・梨華ちゃんは・・どこに・・・?」
「寮におるよ。・・・アンタが来たら“いない”言うてくれって頼まれたわ。」
「どうして・・・アタシは梨華ちゃんに会いたいのに・・。」
・・・なんでなの・・梨華ちゃん。
自分勝手にいなくなって、自分勝手に勘違いして・・・。
アタシがいないところで、一人で悲しんで。
お願いだから・・・一人で泣かないで。
- 42 名前:最終話 〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時25分12秒
- 中澤さんは哀しげな眼差しで、微かな夕日の明かりに照らされたブランコを見つめながら言う。
「・・・きっと、アンタに会ったら諦めがつかなくなるって思うたんやろな。」
「梨華ちゃん・・・。」
「ウチがあれこれ言うんは筋違いなんかもしれん。・・ただ、あの子をあのままにしとったら駄目んなる気がすんねん。せやけど、誰も救ってやることはでけへん。あの子が勇気を持たへんかったら、なんも変われへん。」
今すぐ、あの頼りなげな華奢な体を思い切り抱きしめたかった。
アタシはいつまでも側にいると。
アナタの望む限り、ずっと側にいると伝えたかった。
「アタシが臆病じゃなかったら・・・彼女にこんな哀しい思いをさせる事はなかったんです。・・・彼女を救えるのはアタシだけなんです。・・・だから、彼女に伝えてもらえますか? どうしても伝えたい事があるから来てほしいと。梨華ちゃんがくるまで、ここでずっと待ってるって。」
- 43 名前:最終話〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時26分17秒
- 彼女はニコッと笑って言う。
「正直言うてな、あんなええ子を泣かしてんのはどんな奴や思うてたんよ。もしええ加減な奴やったら、ウチがシメたろって。・・・けど、アンタみたいな子で良かったよ。・・・哀しい勘違いを早う解いてやって。」
彼女はベンチから立ち上がり、
「アンタの伝言、ちゃんと預かったよ」
そう言って帰っていった。
- 44 名前:最終話〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時27分35秒
- ドアの向こうに彼女がいる―――。
そう思うだけで胸が締め付けられるように苦しかった。
何も考えず、あの優しい胸の中に飛び込んでいけたらどれだけ幸せか。
きっと、彼女は困りながらも優しげに抱きしめてくれるでしょう。
けれど、彼女の困った瞳を見つけてしまったら、二度と立ち直れない。
ひとみちゃん・・・折角来てくれたのにごめんなさい・・
アナタの幸せを祝福してあげることが出来なくてごめんなさい。
臆病でごめんなさい・・・。
止め処なく溢れていた涙はとうに乾き、ただ、壊れたレコードのように、繰り返し繰り返し心の中で呟いた。
- 45 名前:最終話〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時29分09秒
- どれくらい時が経ったでしょう。
窓の外を見ると、もう夕日が完全に傾いて、夜の帳が下りていた。
トントン―――
私はその音にビクッと体を震わせた。
「石川・・・ウチや。開けてくれるか?」
・・・中澤さん・・・。
そうであるはずがないのに、心のどこかで、ひとみちゃんであることを期待していた自分が確かにいた。
自らが彼女を撥ね付けたのに・・・なんて自分勝手なんだろうと思う。
ドアをゆっくりと静かに開けると、中澤さんが「お邪魔すんで」と入ってきた。
彼女が何のために部屋に来たか、その理由はもう分かっているから、正直な気持ち、中澤さんと話したくなかった。
- 46 名前:最終話〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時30分14秒
- 「もう分かっとるやろうけど、さっき吉澤って子が来たよ。」
「・・はい。」
ひとみちゃんはもう帰ったのかな・・・外寒いし、風邪引かないと良いけど・・。
そんなことを考えたって、もうどうしようもない事だけど。
中澤さんは窓の外を見つめていたのをクルリと振り向いて、無表情に話を続けた。
「正直に教えたったで。“石川はアンタと会いたくないから、いない言うてくれって頼まれた”ってな。」
「そんな言い方・・・酷い・・。」
「なんで? アンタ、あの子に会いたくなかったんやろ。二度とけーへんようにトドメ刺しといた方がええやん。」
・・・確かに、会いたくなかったけれど。
けど、それは、私の心は決まっているはずなのに・・・会ってしまったら自分の気持ちを再確認してしまうから。
あの大きな瞳に見つめられたら、押さえつけようとしている感情が一気に噴き出してしまうから。
だから、時間が欲しかっただけなのに・・・。
- 47 名前:最終話〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時31分22秒
- これで本当にもう二度と会えない―――。
そう思ったら、またポロポロと涙が零れた。
もう体中の水分が全て涙に変わった思ったのに・・・。
「何で泣くの。わざわざアンタの気持ちを言付けてやったのに・・・寧ろ感謝してほしいわ。」
中澤さんは口端を上げて笑いながら続けて言う。
「なぁ、アンタ、あの子のこと好きやったんやろ? で、あの子に告白したものの、見事玉砕。アンタの事を心配したあの子が尋ねてきてくれたけど、会いたくない―――ちゅうとこか。」
「・・・ちが・・。」
・・・違う?
何が違うと言うんでしょう。
告白すら出来ずに振られてしまった事だけを除けば、ピッタリあってるのかもしれない。
「ま、恋の痛手は恋で治すのが一番やっちゅうことで・・・ウチが新しい恋のお相手になったるわ。」
そう言うと中澤さんは、私の腰をグッと掴み引き寄せてキスをした。
キスと言うにはあまりにもかけ離れた、乱暴なその動きは、私の恐怖心を煽るだけでしかありませんでした。
- 48 名前:最終話〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時33分46秒
- 「やっ・・・やめてくださいっ!」
無我夢中でイヤイヤと言うように首を振り抵抗をした。
けれど、彼女はそれに構わず、無理矢理唇を重ねてくる。
そして、私をベッドに押し倒し、パーカーの下から手を入れて、
「女とやるんは久し振りやけど・・・あの子のこと、忘れさせてやるくらいは出来るよ。」
冷たい瞳でそう言った。
中澤さん・・・どうして?
昨日のあの温もりは・・・嘘だったんですか・・?
公園で何も言わずに側にいてくれた中澤さんは・・・。
私は目の前にいる彼女の言葉が信じられなくて、何も言えず動けないでいた。
彼女は私のロングスカートをたくし上げて、太ももを撫でるように触る。
彼女のその動きに、恐怖を超えて嫌悪感しか襲ってこない。
- 49 名前:最終話〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時34分31秒
- 「いやっ!やめて!!」
――――怖い。
「離してっ!!」
――――助けて。
「いやっ!助けてっ!!」
私の言葉に構わず、彼女はその手を緩めない。
寧ろ、その言葉に後押しされるように、大胆な動きに変えていく。
彼女の右手が私の中心に伸びたその時―――。
「ひとみちゃん、助けて!!!」
私が咄嗟に叫んだ言葉は―――最愛の人の名前でした。
- 50 名前:最終話〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時36分05秒
- 「やっと、素直になったな。」
そう言うと中澤さんは立ち上がり、私の乱れた衣服を直して、頬に零れた涙を優しく拭き取ってくれました。
「なかざわ・・さん。」
「荒っぽいことしてごめんな。・・・けど、こうでもせえへんかったら、アンタ、いつまでも自分の気持ちを誤魔化しとったやろ。・・・でも、これでハッキリしたよな。アンタの心ん中におるんは・・誰?」
中澤さんは、いつもの優しい微笑で聞いてきた。
「・・・ひとみ・・ちゃん。」
・・・答えはとっくに決まっていました。
いつでも優しい笑顔と優しい仕草で私を包んでくれていた、思い出すだけで泣けるほど愛しい人。
- 51 名前:最終話〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時37分12秒
- 「・・・どうしても伝えたい事があるから、そこの児童公園に来てほしいって言うてたよ。アンタが来るまでずっと待ってるって。・・・行っておいで。」
「・・・・・。」
それでも動かないでいる私に業を煮やしたのか、ちょっと強い口調で彼女は言う。
「告白もせんと諦めるつもりやったんやろ? 諦めるつもりやったら、何でも出来るやろ。ドーンと告白してこい!・・・振られたときは、ウチがつきおうたるから、安心して行っておいで。」
「・・・中澤さん。」
「ほら、こんな寒い中、ずっとあっこで待ってるんやで。はよう行ってあげんとあの子凍えてまうよ。」
「ほら」とドアを開けて、私の背中を押し出す。
「・・・ありがとうございました!」
私は中澤さんに一礼をして、ひとみちゃんの待つ公園へと駆け出した。
- 52 名前:最終話〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時38分28秒
- 私は寮を出て、公園に向かって走った。
辺りは住宅街。駅前の明るさと比べたら、ポツリポツリと並んでいる外灯のか細い光は寂しげにも感じる。
・・・何から話せば良いんだろう。
まず、突然いなくなったことを謝らないと・・。
それから・・・それから、今度こそ打ち明けないと。
私の告白は優しい彼女にとって、すごく困る事だと思うけど。
それでも・・・勇気を出して。
昨日も訪れた公園に着いた。
・・・今日も来るとは思ってなかったな。
そんな事を考えながら、ハァハァと乱れた息を整えて、私はゆっくりと入り口に向かう。
まだ、ひとみちゃんに会いたくないと思う自分がいる。
けれど、心の奥底では会いたくて会いたくてどうしようもないと、本当の自分が叫んでいる。
まだ、心は揺れ動いているけれど、ここでまた逃げたら、きっと二度と恋なんて出来ないから。
だから、勇気を出して・・・公園に一歩、足を踏み入れた。
- 53 名前:最終話〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時39分33秒
- 真ん中に外灯がポツンと寂しく灯っているだけの公園内は、少し薄暗く、こんなところに彼女一人で待たせていることに申し訳ない気分になる。
けれど、外灯の下にあるベンチには誰もいない。
辺りを見回すも、彼女の姿は見当たらない。
「・・・ひとみちゃん?」
大きい声で呼んだつもりの声は思いの外掠れていて、冷たい木枯らしにかき消されてしまった。
・・・帰っちゃったのか・・な。
何度も何度も同じ過ちを繰り返す自分に呆れてしまい、涙さえ出てこない。
私は、昨日も座ったベンチにゆっくりと腰掛けた。
また私は、折角のチャンスを棒に振ってしまったのでしょうか。
彼女の優しさを、また踏みにじってしまったのでしょうか。
・・・私は何度同じ過ちを繰り返せばいいのでしょう?
- 54 名前:最終話〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時41分09秒
- 「ひとみちゃん・・・好き・・・・・。」
私のありったけの想いがこもっている、たった二文字の言葉を彼女に伝える事が出来ない歯痒さ。
「ひとみちゃんのこと・・・ずっとずっと好き。」
ずっと、隠していた想いを口にした瞬間、塞き止られていた水が勢いよく流れるように、彼女に届く事のない想いをはきだした。
「諦める事なんて出来ないよ・・・。」
吐く息が白い。
その息の白ささえも、彼女の白く透明な肌を思い出させてしまう。
「こんなに好きなんだもん・・・大好きなんだもん。」
- 55 名前:最終話〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時42分37秒
「―――――アタシも、梨華ちゃんのこと好きだよ。」
不意に後ろから声を掛けられて、私はビックリした。
この声は―――。
泣けるほど会いたくて、会いたくて、悲しいほど愛しい・・・大好きな人。
「ひとみ・・・ちゃん。」
ゆっくりと振り返ると、差込の植木越しに、いつもの変わらない優しい笑顔で彼女が立っていました。
私は、彼女がここにいる事が信じられなくて、彼女に謝ろうとしていた言葉を、全部失っていた。
- 56 名前:最終話〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時43分54秒
- 「・・・もう・・帰ったかと思って・・た。」
私の口から咄嗟に出た言葉は、そんな言葉で。
違うの、本当はもっともっと伝えたい事が一杯あるの。
「梨華ちゃんが来るまでず〜っと待ってるよ、アタシは。」
「どこにいた・・の?」
「ボーっと待ってるのもつまんないから、そこの砂場で遊んでた・・ヘヘッ。」
そう言ってひとみちゃんは砂場を指差して、いたずらっ子のように笑う。
けれど、表情を真剣な色に変えて、
「・・・来てくれてありがとう。」
彼女はそう言った。
突然いなくなった私を探して来てくれたのに、会うのが辛いからと、自分勝手に居留守までしたのに。
なのに、なんで私を怒らないの?
なんで、そんなに優しいの?
- 57 名前:最終話〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時44分51秒
- 「・・っ・・ごめんね・・・色々心配かけてごめんね・・・黙っていなくなってごめんね・・・。」
やっと、素直に謝れた。
こんな時に泣いてしまうのは卑怯な気がするから、だから必死で止めようとするけれど、やっぱり無理で。
頬に伝う涙を必死で拭い取ることしか出来なかった。
「大丈夫、梨華ちゃんの気持ち、全部分かってるから。」
―――苦しんでいた事も分かってるから、だから謝らないで。
そう優しくひとみちゃんは言う。
私は涙を止めようとするだけで精一杯で、何も言えない。
- 58 名前:最終話〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時46分04秒
- 私が泣き止むまで、ずっと彼女は黙っていた。
その沈黙になんだか落ち着かなくて、ふと顔をあげたそのとき、
「・・・吉澤ひとみは、石川梨華の事を愛してます。」
彼女の瞳は私を見据えて、そうはっきりと言った。
・・・嘘・・だってあの男の人は・・?
私が信じられないと言った表情をしていたのでしょう。
彼女は続けて話す。
「昨日、アタシのアパートの前で見た男の人は、友達の彼氏だよ。梨華ちゃんを探すの手伝ってくれてたんだ。・・・・・アタシに彼氏なんている訳ないじゃん。ずっと・・・初めて会ったときから、梨華ちゃんのことが好きだったのに。ずっと、梨華ちゃんのこと見てたんだから。」
「・・・ひとみちゃ・・ん。」
- 59 名前:最終話〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時47分09秒
- フゥと一つ大きく息をついて、彼女はまた話す。
「・・アタシね、同性愛者なの。」
「・・・・・。」
「・・・ちょっと前までは、そんな自分が嫌で嫌で仕方なかった。同性を好きになるのはいけない事だって、ずっと自分を否定してた。批難されて、後ろ指差されるのが怖かった。本当の自分を知られて嫌われるのが怖くて、必要以上に人と係わり合いになるのを避けてた。・・・梨華ちゃんに会って、梨華ちゃんを好きになって、でも、嫌われるのが怖くて、告白する事さえ出来なかった。このまま一生友達でいられれば良いって、自分の気持ちを誤魔化してた。・・・でも、自分に偽っていく事はもう出来ないよ。だって・・・大好きなんだもん。梨華ちゃんは・・・こんなアタシの事は・・・気持ち悪い?嫌い?」
答えを分かっていながら、そんな質問をするなんて・・・ずるいよ、ひとみちゃん。
「・・・嫌いな訳ないじゃない・・・こんなにひとみちゃんの事が好きなのに・・。好き、すごく好き。明るくて、優しくて、少しおっちょこちょいなところも、全部好き。」
- 60 名前:最終話〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時48分44秒
- だけど・・・思いは通じ合ったけれど・・。
一般社会では受け入れ難い、禁忌な関係であることは紛れもない事実。
どこまでも臆病な私は、素直に彼女の胸に飛び込む事が出来ませんでした。
けれど、彼女はそんな私の心の内を見透かしたかのように言う。
「梨華ちゃん・・・アタシ達が抱えている悩みは、きっと一生掛かっても解決できない問題なのかもしれない。世間の中傷や批判とか、色んな事が気になっちゃうけどさ、恋愛するのに一番大切なことは、アタシ達の気持ちじゃない?
確かにアタシは同性愛者だけど、だから梨華ちゃんを好きになった訳じゃない。石川梨華だから好きになったんだよ。梨華ちゃんだってそうでしょ?アタシだから、好きになってくれたんだよね?」
私は思い切り首を縦に振った。
同性愛者だから、ひとみちゃんを好きになったなんて、そんな単純な想いじゃない。
- 61 名前:最終話〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時50分46秒
- 「今、アタシ達の間にあるのはさ、・・・ちょうどこの垣根なんだよ。女同士だとか、同性愛に対する偏見とか、アタシ達が必要以上に気にする世間体とか、そういうのを乗り越えるのはやっぱり誰じゃない、アタシ達なんだよ。アタシは平気だよ? 梨華ちゃんさえ側にいてくれれば、絶対強くなれる。どんな障害だって乗り越えられるよ。・・・だから、アタシを信じて、ここを飛び越えておいでよ。」
そう言ってひとみちゃんは両手を広げた。
その姿が悔しいほど格好良くて、様になっていて。
改めて彼女が大好きだって確認させられる。
・・・どうして私が望む言葉を知ってるんだろう。
「梨華ちゃんが乗り越えてくるまで、アタシはいつまでも待つよ。」
- 62 名前:最終話〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時52分23秒
- いつだって、迷った私を正しい道に引き戻してくれたのは彼女。
まるで太陽のように明るくて、力強くて、優しい彼女。
彼女と会えなかった数週間。
それはまるで見つめる陽を見失った向日葵のように、萎れていた私。
何を迷う事があると言うんでしょう。
沢山、悲しい回り道をしてきたけれど、これからは彼女を信じていけば大丈夫。
何度、見失いそうになっても、きっと彼女が私を照らしてくれるはず。
「ひとみちゃんっ!!!」
私はベンチを踏み台に、これまでの臆病な自分と決別するために、垣根を飛び越えて、愛しい彼女の腕の中に飛び込んだ。
「うわっとぉ・・・ハハ、ホントに飛び越えてくるとは思わなかった。」
そう言って笑うけど、その腕はしっかりと力強く私を抱きしめてくれていた。
- 63 名前:最終話〜向日葵のように〜 投稿日:2002年02月27日(水)03時54分57秒
- 「ひとみちゃん・・・好き・・・大好きなの・・。」
「アタシも好きだよ。」
きつく抱きしめられる息苦しさと、押し付けるようにくっつけた、頬を伝う彼女の一筋の涙に、私はそれ以上何も言う事は出来ませんでした。
・・・いえ、言葉は要らない―――そう思いました。
しばしの静寂の後、どちらからともなく、瞳を閉じ合い―――キスをした。
それは、羽根のようにふわっと舞い降りてきた、軽い唇の感触。
触れるだけの軽いキス。
けれど、これほど満ち足りた想いのキスは初めてで。
唇が離れた後、何の気なしに瞳を開けたら、ひとみちゃんと思い切り目が合って、何だかほんの少しだけ照れくさくて、「エヘへ」なんて、二人で笑いあって、互いの存在と温もりを確めるように、今度は、深い深い口づけを交わしました。
- 64 名前:エピローグ 投稿日:2002年02月27日(水)03時57分10秒
- 暖かい春の息吹を感じ始める三月。
ひとみの部屋に、ほんの少し変化が訪れた。
流し台の上に白いコップがコトリと一つ。
そのコップにはピンクと青い歯ブラシが、仲良く二つ並んでいる。
狭い狭い六畳の部屋の中には、まだ片付けきれていない段ボール箱。
それと、綺麗にたたまれた二人分の洗濯物。
明るい日差しの入る窓際の壁には、一本の造花の向日葵。
「これは私なの、で、太陽はひとみちゃんなの」と一生懸命話す彼女が可愛くて、話の途中に思わず抱きしめて、キスをした事を思い出して笑ってしまう。
- 65 名前:エピローグ 投稿日:2002年02月27日(水)03時59分36秒
- 一年前・・・彼女と出会うほんの少し前まで。
こんなに満ち足りた時を過ごせるとは、ひとみは思っていなかった。
何の夢もなく、誰を愛する事もなく、たった独りで生きていくのだと、全てを諦めていた。
―――けれど今は違う。
真剣に自分達と向き合ってくれる、大切な親友達。
忘れかけていた夢を思い出し、そして、大切に守っていきたい最愛の彼女がいる。
それだけで人は強くなれるのだと、やっと気付いた。
全ては、彼女と出会えたからこそだと、ひとみは思う。
- 66 名前:エピローグ 投稿日:2002年02月27日(水)04時01分56秒
鼻歌が聞こえる。
キーの高い、少しだけ調子が外れてる、可愛い歌声。
その歌声の主を思い出して、ひとみはまた微笑んでしまう。
こんなにも、アタシの心を明るく色変えてくれる、太陽のようなアナタ。
いつだって、ずっとアナタを見つめてました。
きっと、これからも。
―――そう、向日葵の花のように。
「ひとみちゃん、ただいま。」
「おかえり、梨華ちゃん。」
〜 fin 〜
- 67 名前:501 投稿日:2002年02月27日(水)04時04分44秒
- ようやく、長い長いこの物語のラストを迎える事が出来て、
ホッと一安心しております。
娘さんのファンになって、こちらの掲示板に出会い、
沢山の素敵な作品に刺激され、思わず調子こいて始めた作品でしたが、
思いの外、沢山の方々にレスを頂いて、本当に嬉しかったです。
レスを下さった皆様、本当にありがとうございました。
折角新しいスレを立ててしまった事ですし、
近いうちに、番外編でお会いできるよう頑張りたいと思います。
今後とも宜しくお願いします。
最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございました。
- 68 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月27日(水)05時03分55秒
- すごい暖かい話、良かった〜
同性愛の偏見の問題も、いい意味で作品に深みを与えてたと思う。
番外編もあるんですか?
まだまだここのいしよしに付き合っていきたいと思ってたから嬉しいです
- 69 名前:名無し読者。。。 投稿日:2002年02月27日(水)07時11分53秒
- 作者様お疲れさまでした!
最初は甘甘かな?と思ってたんですけど、中盤からシリアスになってきましたね。
感動しました。番外編も楽しみにしています!!
- 70 名前:kennji 投稿日:2002年02月27日(水)09時32分40秒
- 完結おめでとうございます。
甘い進み方から一転しての一連の出来事、そして最後は、、、。
感動しました。思わずハンカチを使用しました、、。(笑
- 71 名前:よすこ大好き読者 投稿日:2002年02月27日(水)11時48分42秒
- 完結ご苦労様でした。
たくさんの切なさ、悲しさ、暖かさを味あわせていただきました。
やっぱり、最後の方は、涙無しでは、読めなかったですが・・・(T-T)
すごく感動しました。ありがとうございました。
吉、かっくいいっすーーーーーー(w
番外編めちゃめちゃ楽しみにしていますので・・・・・・。
- 72 名前:夜叉 投稿日:2002年02月27日(水)11時57分00秒
- 師匠、お疲れさまでした。
読み始めの頃、タイトルに思い入れがあるとレスしたのですが、その思い入れ通りの作品でした。
懐かしい頃のことを再確認させていただきました、有難うございました。合掌。
これからも必死になってしがみついていきますのでよろしくお願いします。
マターリ番外編お待ちしております。
本当に有難うございました。
- 73 名前:吉胡麻系 投稿日:2002年02月27日(水)17時43分55秒
- お疲れ様でした!
なんかマジで泣きそうになりましたよ〜・・・。
たくさんの大切な事を教えてくれたような気がします。
番外編の方も待ってます!
ありがとうございました!
- 74 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月27日(水)21時54分10秒
- ステキなお話ご苦労様でした。感謝しております。
いろんな人のいろんな想いがいろんな形となって伝わってきました。
横を見れば大事な人が居る。。。それはとてもとても幸せな事だと思います。
そんなふたりの番外編、お待ちしております。
- 75 名前:名無しバイク 投稿日:2002年02月27日(水)23時08分49秒
- (T▽T)<・・・
完結お疲れ様です。心の奥底に響く何かを感じました。
吉、カッケー!。
番外編楽しみにしてますよ(ニヤリ
- 76 名前:瑞希 投稿日:2002年02月28日(木)01時17分01秒
- 完結を待って、レスさせていただきます。
率直に、感動、という言葉では足りないくらい、胸に響くものがありました。
途中の石川さんの心の揺らぎとか、吉澤さんの素直で真っ直ぐなところとか、
読んでるこちら側がすんなり感情移入してしまうくらい切なくて、あたたかいお話でした。
何より、無理矢理ではない話の流れとイヤミのなさに、
同じ書き手として、見習うべき点の多い作品だったと思います。
同性愛者という言葉にもちゃんと向き合っていた内容で、
本当に、本当に、今は胸がいっぱいです。
長々とスミマセン。
完結、お疲れ様でした。
- 77 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年02月28日(木)03時03分49秒
- ラストまで読ませていただきました。
とてもステキなお話です。
心が締め付けられるような場面もありましたが、
最後には明るく暖かい日差しをいっぱいに浴びる向日葵を見ることができました。
すばらしい作品をありがとうございました。
番外編も楽しみにしております。
- 78 名前:名無し読人 投稿日:2002年02月28日(木)17時37分00秒
- 完結ご苦労様です〜〜。
すげ〜感動しました〜〜(涙)
番外編もメッチャ楽しみにしてます〜〜!
本当にお疲れ様でした。
- 79 名前:名無しベーグル。 投稿日:2002年03月01日(金)19時15分01秒
- 完結お疲れさまでした。毎回ハラハラしながら読ませて
いただきました。時には涙をしたり。
最後は吉がカッコ良く決めてくれましたね。
番外編も楽しみにしております。
- 80 名前:ハル 投稿日:2002年03月04日(月)00時54分44秒
- 一気に読ませていただきました。
娘。の作品としても、オリジナルとしても深みのある作品でよかったです。
思うことがありすぎてかえって感想が書けないのですが・・・。
- 81 名前:brett 投稿日:2002年03月08日(金)00時22分02秒
- 今まで読んできた小説で1番よかったです。小説投票スレでみつけて、
この向日葵を1位投票しました。(迷惑じゃなければいいんですが...)
ぜひ、番外編、もしくは、新作楽しみにしています。
- 82 名前:501 投稿日:2002年03月08日(金)23時27分34秒
- 沢山のレスありがとうございます。めちゃ嬉しいです!
まだ、番外編のうpのメドがついておりませんが、気長にお待ち頂けたら幸いです。
>68さん
番外編と銘打ってみましたが、プロットを作っているうちに、
番外編と呼べなくなるくらいになってしまいました(苦笑)
向日葵パート2として、再開する事になるやもしれません(^^;)
うpはまだ先の話になりそうですが、良かったらお付き合いください。
>名無し読者。。。さん
ありがとうございました!
ちなみに番外編(エ●有りの意向)の方は、思いっきり駄文テイストで
うpしようかと思い始めてます。(^^;)ゞ
>kennjiさん
ありがとうございました!
ラストは自分でも気に入ってるので嬉しいです(^^)
>よすこ大好き読者さん
いえいえ、こちらこそ読んでくださってありがとうございました。
吉、かっけよかったでしょ?(w)
両手を広げて石を待つシーンは最初っから決めてたんす♪
実は番外編、思いっきり何度も書き直してるんですよ〜(汗)
もうちょっと時間が掛かってしまいそうですが、お待ち頂ければ幸いです(^^;)
- 83 名前:501 投稿日:2002年03月08日(金)23時30分45秒
- >夜叉さん
ずーっとお付き合いくださってありがとうございました(^^)
タイトル通りのラストに持っていけて、自分でも安心してます。
こちらこそ、死ぬ気で夜叉さんにしがみ付いて行かせていただきますので、
今後ともよろしくお願いします。(^^)
>吉胡麻系さん
ありがとうございます!
この話を書いていく上で、同性愛について色々知ることが出来ました。
自分の駄文で何かが伝わったなら、とても嬉しいです。
番外編、がんがります!吉胡麻系さんも頑張ってくださいね。p(^^)q
>74さん
読んでくださってありがとうございます!
このお話の中には、悪い人をどうしても作りたくなかったので、
上手くまとまって本当に一安心です。
番外編の方は駄文気味ですが、思いが通じ合った二人の話なので、
文章の拙さは見逃して頂きたい今日この頃(w)
>名無しバイクさん
ありがとうございました!
心の琴線に少しでも触れてもらえたなら、それだけで十分嬉しいです。
吉推しの自分としては、やはりラストで吉に決めてもらわねばと、
がんがってみました(w)
- 84 名前:501 投稿日:2002年03月08日(金)23時34分59秒
- >瑞希さん
感想、ありがとうございます。
テーマがテーマなだけに、二人の心の内を描くのが凄く大変だったので、
とても嬉しいです。
瑞希さんも書かれてるんですね。
もし差し支えがないようでしたら、こっそり教えて下さいませんか?(w)
>M.ANZAIさん
こちらこそ、読んでくださってありがとうございました。
この物語を書き始めた当初から、絶対に向日葵を枯らさないことだけを
目指して書いていたので、無事ラストを迎えて安心してます。
ちなみに番外編(パート2になってしまうかも…)は、
また問題を抱えてしまう展開になりそうです(^^;)ゞ
>名無し読人さん
ありがとうございます!番外編もがんがります!
良かったら、またお付き合いくださいませ。
- 85 名前:501 投稿日:2002年03月08日(金)23時37分43秒
- >名無しベーグル。さん
お付き合いいただいて、本当にありがとうございました!
カッケー吉のラストシーンだけは、自分の脳内スクリーンで
そぉとぉリピートさせました。
やばいくらい妄想力過多気味な自分です(w)
>ハルさん
いえいえ、読んでくださっただけでもありがたいです。
ちょっと時間が掛かってしまうと思いますが、番外編も書きますので、
良かったらお付き合いくださいね。
>brettさん
沢山の素敵な小説がある中で1位だなんて…嬉しいやら恥ずかしいやら(^^;)
気に入ってくださって、ありがとうございます。
番外編必ず書きますので、マターリお待ちいただけたら幸いです。
- 86 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月11日(月)19時20分16秒
当たり前のことを当たり前に振舞えない臆病な私。
臆病すぎて焦ってばかりのアタシ。
そんな二人だからこそ、相性が良いのかもね―――。
- 87 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月11日(月)19時22分03秒
彼女に嫌われたくない―――
ただそれだけの想いが空回りして、長い長い回り道をしてきたけれど、理解のある沢山の心優しい人達の支えもあって、紆余曲折の末、ひとみちゃんと気持ちが通じ合うことが出来ました。
今日は、想いが通じ合った私達の初めてのデート。
私は待ち合わせのメッカ、渋谷のハチ公前にいた。
「デートっつったら待ち合わせからしないと!」と、子供のようにはしゃいで言うひとみちゃんがとても可愛かったことを思い出しながら、彼女を待つ。
でも、正直言って渋谷は苦手。
ちょっと怖い感じの男の子がいっぱいいるし、こうやって立ってると声掛けられるし・・・ほら、また。
- 88 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月11日(月)19時23分26秒
- 「ねぇ、何してんの? 暇だったら俺らとカラオケに行かない?」
そう言って声を掛けてきたのは、ヒップホップ系ファッションに身を包んだ男の子二人組。
ゆったりとしたパーカーにジーンズを腰履きにしてる子と、やはり似たような格好で顎鬚を生やした男の子が、ちょっと落ち着きなく体をぶらぶら動かしながら私の前にくる。
「・・・あの・・人と待ち合わせしてるから・・」
「誰と?友達なら俺らと一緒に遊ぼうって。ね?」
やんわり断ろうとしても「いーじゃん、遊ぼうよ〜」としつこく付き纏う。
上手い断り文句が見出せず、私が黙ってしまうと、一人が私の肩に手を回して強引にどこかへ連れていこうとした。
- 89 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月11日(月)19時24分40秒
- 「やっ!離して!」
「いーからいーから、さっ、どこ行こうか?」
ヘラヘラ笑いながら、強引に私を連れて行こうとする男の子達に、嫌悪感を通り越して恐怖感に苛まれました。
体が強張ってしまうのが自分でも分かる。
怖い・・・駄目・・・やっぱり男の人怖い・・・。
ひとみちゃん・・助けて・・・。
泣き出しそうになったその瞬間、強い力がグイッと私の肩にかかり、私の体は温かい腕の中にすっぽりと収まっていた。
- 90 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月11日(月)19時25分50秒
- 「アンタ達、アタシの女に手ぇ出さないでくれる?」
私の頭上から発せられる声が、思いの外低くて、耳に重く響く。
一瞬、他の誰かと間違えてしまいそうになるほど、彼女の声は静かな迫力があった。
「可愛い顔してんのに怖い声出さないでよ。ま、ちょうど良いや。2対2だし、一緒に遊ぼうよ」
「こっちはアンタらみたいなのに興味はないから、他の子探してよ。じゃあね」
きっぱりと冷たく突き放し、彼女は私の肩を抱いたまま歩いていく。
意外にも男の子達はしつこく付いてくることはなかった。
「何がアタシの女だよ、気持ち悪いんだよ、ブス!」なんて、ナンパに失敗した男のお決まりな捨て台詞はしっかりと放っていったけど。
- 91 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月11日(月)19時27分51秒
- 何も言わずに駅前の横断歩道を渡る彼女。
いつもよりも歩くペースが速くて、私は早歩き気味になる。
「・・・ひ、ひとみちゃん、痛いよ」
しっかりと掴まれた肩が確かに痛かったけど、本当は黙ったままの彼女が気になった。私が抗議の声をあげると、ようやく彼女は歩みを止めた。
横にいる彼女を見上げると、ムッとした表情。明らかに怒っているのが分かる。
彼女のそんな表情を見る事自体初めてで、そんな顔も格好良いかもなんて、少しだけ不謹慎にも思いながら、恐る恐る彼女の反応を見た。
「・・・アイツらむかつく。梨華ちゃんにベタベタベタベタくっついて・・・」
ボソッと小さく「アタシの梨華ちゃんに…」なんて呟いたのまで聞こえてしまい、ちょっと恥ずかしかったけど嬉しかった。
- 92 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月11日(月)19時30分27秒
- 「ひとみちゃん・・」
「梨華ちゃん、大丈夫だった?怖かったよね?ごめんね、来るのが遅くなって。アタシが早く来てれば怖い思いもさせなかったのに・・・ホントごめんね」
怒った表情をやんわり優しく色変えて、矢継ぎ早に話し掛けてくる。
ごめんねと繰り返す、彼女の優しい気持ちが嬉しかった。
「ううん、ひとみちゃんのせいじゃないよ。私がボーっとしてたから声掛けられたんだろうし。それにひとみちゃんが助けてくれてすごく嬉しかった。格好良かったよ、ありがとう。」
「・・そっか、なら良いけどさ」
私を見つめる瞳がとても優しげなのは、もう自惚れじゃないはず。
その大きな瞳に吸い込まれてしまいそうな錯覚に陥って、私は気恥ずかしさを隠すために話を変えた。
- 93 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月11日(月)19時32分38秒
「ね、ねぇ、お腹空かない?」
「もう1時過ぎだもんね。うん、何か食べよう」
そう言って、ひとみちゃんは私の手をスッと繋いで歩き出した。
ひとみちゃんの何気ない仕草に、私の鼓動が早くなるのが分かってしまう。
街中を見回しながら「何が良いかなー」と呟く端正な横顔が、とても綺麗でドキッとした。
こういうところも好きなんだよね、なんて、今更ながらしみじみ思って、その照れくささに頬が赤らんでしまう。
・・・一人で馬鹿みたい。でも、幸せかも。
- 94 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月11日(月)19時33分51秒
- ちょうどその時、私達と同い年くらいの女の子3人とすれ違った。
私達を見て、顔を見合わせていた気がした。そして、通り過ぎて数メートル離れたところで大きな笑い声。
―――そんな些細な出来事でした。
『あの子達レズなんじゃない?』
『えー、気持ち悪い〜』
そう笑いあっているのではないか?
そう卑下しているのではないか?
そんな被害妄想がムクムクと私の中に沸きあがり、咄嗟に私は彼女の手を振り解いていた。
- 95 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月11日(月)19時34分25秒
- 「梨華ちゃん・・どうしたの?」
私の突然の行動に、戸惑った顔をするひとみちゃん。
「あ・・ごめん、ちょっと頭を掻こうとしただけなの」
「なんだ、ビックリしたー」
痒くもない頭をポリポリ掻いて、エヘへと笑って誤魔化す。
彼女はちょっと低めの穏やかな声音で「あそこの店で良い?」と、小さなこじゃれた洋食屋を指差した。
私も「うん、良いよ」と笑顔を返して、両手を後ろに組んだ。彼女が手を繋いでこれないようにと思わず取っていた、私の行動。
ひとみちゃんはそんな私を訝しむことなく、優しい笑顔を私に向けて歩き出した。
・・・胸が痛かった。
- 96 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月11日(月)19時35分38秒
- 恋人同士が手を繋いで街を歩く。
その行為は至極自然なはずなのに・・・。
そんな自然なことでさえ、私の意識が不自然に変えてしまっていた。
女の子なら友達同士で手を繋いだり腕を組んで歩いたりもする。
私達が手を繋いで歩いたからって、誰も気に留めやしないことも分かっているけれど。
けれど、気になってしまうのは、私自身が「同性愛者」だから。
・・・分かっているんです。
それが私の被害者意識の強い妄想だと言う事くらい。
批難や中傷される事を一番嫌いながらも、私が一番自分自身を蔑んでいたことに。
大切な彼女を傷つけていることに、この時の私は気がつかなかった。
- 97 名前:501 投稿日:2002年03月11日(月)19時43分09秒
- 短いですが、キリのいいところまでうpしました。
一応補足しておきますが、本編のラストからプロローグ間に起こった出来事です。
ええ、ツッコミどころは沢山あるとは思われます。
折角ハッピーエンドで終わったのに、なんで相変わらずの切なめティストで
はじまるんだというお声が聴こえてきそうな今日この頃(w)
短めなお話ではございますが、またお付き合いいただけたら嬉しいです。
- 98 名前:名無し読者。。。 投稿日:2002年03月11日(月)21時32分18秒
- 切ないですね・・・でもまた向日葵読めるなんてうれしいっす!
どこまでも付き合いますよ(^▽^)
- 99 名前:名無しベーグル。 投稿日:2002年03月11日(月)22時05分54秒
- 番外編楽しみにしてました! 頑張って下さいね。
- 100 名前:名無しバイク 投稿日:2002年03月11日(月)22時42分58秒
- 番外編ありがとうございます。
マターリがんがって下さい。
- 101 名前:brett 投稿日:2002年03月11日(月)22時53分11秒
- いやいや、番外編が読めるだけでも嬉しいのに、頑張ってください。
- 102 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年03月11日(月)23時42分05秒
- 続編、始まってましたね。
ようやく分かり合えた2人に、はたしてどんなことが待ちうけていたのか・・・。
ドキドキしながらお待ちしてます。
- 103 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月12日(火)22時13分17秒
- >折角ハッピーエンドで終わったのに、なんで相変わらずの切なめティストで
はじまるんだというお声が聴こえてきそうな今日この頃(w)
聞えました?
- 104 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月12日(火)22時21分54秒
洋食屋に入ったアタシたちは、メニューを片手に何を食べるか思案していた。
メニュー越しに梨華ちゃんの顔を覗き見る。
健康的な肌、少し潤んだような伏目がちな瞳。線の細い華奢な体は女の自分から見ても、守ってやらなくちゃと保護欲を駆らせる。
そんな事をふと感じ、ああ、私はこの人が好きなんだなぁと、改めて思った。
・・・けれど、アタシの心とは裏腹に、彼女の表情がどこか薄暗く感じた。
「ねぇ、梨華ちゃん。・・・梨華ちゃん」
「・・・あ、ご、ごめん。何?」
慌てて顔をあげた梨華ちゃんは、アタシに笑顔を向けた。
彼女の表情に微かな不安が過ぎったけれど、それはアタシの気のせいだと自分に思い込ませた。
- 105 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月12日(火)22時23分05秒
- 「何頼むか決まった?」
「あ・・・ええと・・・」
彼女は慌ててメニューに目をやる。
「あ、慌てなくても良いよ」
「ひとみちゃんは決まったの?」
「うん。オムライス」
「そっかぁ・・・ええと・・・じゃ、ハンバーグライスにしようかな」
店員を呼び、注文を頼む。
忙しいせいか、店員が少し遅れてお冷やを持ってきた。アタシはそれに口をつけ、フゥと一息つけて話をする。
「なんか元気ないみたいだけど・・・大丈夫?」
「え・・そんな事ないよ。元気だよー」
「そう?なら良いんだけど」
そうニッコリ笑う彼女にそれ以上言えなくて、アタシは仕方なく他の話題を探した。
「あ、そう言えば、中澤さん元気?・・・っつってもまだあれから一週間しか経ってないか、ハハ」
「うん、元気だよ。でも今朝は二日酔いでウンウン唸ってた。」
そんな他愛のない会話をしているうちに、注文の品がやってきた。
「美味しそうだねー」と、早速食べ始めた。
- 106 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月12日(火)22時24分05秒
- 「うん!美味しい!」
「オムライス美味しそうだね。私、ハンバーグとオムライス迷ったんだよねー」
「ホント美味しいよ。はい、梨華ちゃん」
そう言ってアタシは、スプーンにすくったオムライスを、彼女の口の前まで持っていった。
梨華ちゃんは周囲を見回し、ほんの一瞬戸惑った表情を見せたのをアタシは見逃さなかった。
けれど、それには気付かない振りをして「はい、あーん」とスプーンを差し出す。
彼女は困ったような照れたような表情を見せつつも、それを食べた。
「うん、美味しいね」
「でしょ?」
「あ、ひとみちゃんもハンバーグどうぞ。ハイ」
- 107 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月12日(火)22時25分14秒
- 梨華ちゃんはそう言うと、一切れをアタシのオムライスの皿に乗せてくれた。
この流れからだったら、「あーん」って口の前に持ってきてくれても良いはずなのに・・・。
付き合って初めてのデートだからって浮かれてるのは・・・アタシだけなのかなぁ。
何気ない二人の温度差を感じてしまい、少し寂しかった。
・・・って言うか、それ以前にハンバーグ食べれないし、アタシ。
でも、梨華ちゃんが折角くれたんだし・・・食べないと悪いよね。
アタシは彼女がくれたハンバーグを、意を決して口に入れる。
正直言って、涙が出そうになるくらい辛かったけれど、「美味しいね」と無理矢理ニッコリ笑って、水をがぶ飲みして誤魔化した。
- 108 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月12日(火)22時26分08秒
- 食事をした後、アタシ達はショッピングに向かった。その時にも何となく梨華ちゃんとの間に距離を感じた。
・・・なんて言うか、アタシに常に笑顔を向けてくれてはいるんだけど、どこか空気がよそよそしいと言うか・・・。
・・・会えなかった時間が二人の間に溝を作ってしまったのかと、そんな不安がふと脳裏に過ぎる。
いや、そんな事ない!
自分の中で必死に否定して、頭をブルブルと振った。
「ひとみちゃん、どうしたの?」
おそらくブツブツと独り言を言ってたのであろうアタシを心配して、梨華ちゃんがアタシの顔を覗き込んでいた。
「あ、いや、なんでもないよ」
「変なひとみちゃん」
そう笑う彼女はやっぱり可愛くて、穏やかな色を見せてくれる。先ほどの空気はアタシの気のせいだと思い込んだ。
- 109 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月12日(火)22時26分50秒
- 夕方になり、空には星が見え隠れしだす。
一通りショッピングを楽しんだアタシ達は、電車で帰路へ着く。
「今日は楽しかったね。また行こうね」
アタシがそう言うと、梨華ちゃんは「うん」と微笑を向けてくれた。
アタシだけに向けてくれる笑顔は誰よりも可愛いと思う。愛しい感情が湧きあがる。アタシはここが電車の中だという事も忘れて、思わず彼女の頬に軽くキスをした。
梨華ちゃんはビックリした表情で、キスをした頬を手で押さえる。辺りを見回して、ホッとした表情を一瞬見せた。
- 110 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月12日(火)22時27分37秒
- そんな彼女に不安を感じた。
電車がブレーキをかけ、ゆっくりとホームへ入っていく。もう五反田に着いてしまう。
このまま彼女と別れたくなかったアタシは、ゆっくり立ち上がろうとする彼女の腕を掴んだ。
「ひとみちゃん?」
「・・・もうちょっと・・一緒にいようよ」
彼女がほんの少し戸惑いの色を見せていたことに、気付かない振りをして、彼女を強引に座らせた。
発車音が鳴り響き、ドアがプシューと音を立てて閉まる。
「閉まっちゃった」とアタシがおどけたように言うと、彼女は安堵の色を浮かべた。彼女の些細な表情、仕草に、アタシの心がざわめくのが分かる。
「・・・今日・・さ、ウチに泊まりなよ」
乾いた唇から出た言葉は、何とも言いようのない不安と焦りが紡ぎだしたものだった。
- 111 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月12日(火)22時28分48秒
- 品川につき、当然のように梨華ちゃんの腕を引いてホームに下りる。彼女は少し俯いて後を歩く。
アタシ達は道すがら、何も話さなかった。
プリンスホテルの敷地内の道を抜けて、脇の細道に入る。
地元の人間にしか分からないような、ひっそりとした暗い細道は、夕刻を過ぎてしまえばほとんど誰も通らない。
アタシは無言で彼女の肩をそっと抱いた。
街灯もないこの道の中では、彼女の表情を窺い知る事は出来ないけれど、華奢な肩からは緊張を感じない。
抱いた肩に力を入れて、空いている左手をそっと彼女の右頬に触れた。人差し指と中指にそっと力を入れて、顔をこちらへ向くように促す。
微かに差し込む月の光によって、彼女の綺麗な瞳とぶつかった。その瞳に吸い込まれるように、彼女の唇とアタシのそれを重ねた。
アタシの背中にそっと彼女の手が置かれる。その手には拒否を感じない。
- 112 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月12日(火)22時29分22秒
- だからこそ、時折、彼女が戸惑いや寂しげな色を見せるのか分からなかった。
心が通じ合ったはずなのに、どこか不安定な彼女に、アタシは不安を隠せない。
不安な心は、体を重ねれば、きっと解消される。
アタシは、彼女との確かな繋がりが欲しかった。
子供じみた短絡的な思考が、彼女をイタズラに傷つけるという事さえも気付かないほど、アタシは焦っていた。
- 113 名前:501 投稿日:2002年03月12日(火)22時39分42秒
- 短めですが、キリのいいところまでうpしました。
え〜相変わらずですみません。
どうしてもこの「向日葵」のテーマに沿って考えていくと、
こういう感じになっちゃうんです(T-T)
あ、あと微妙な訂正ですが、
>97
>本編のラストからプロローグ間に起こった出来事
プロローグじゃなくて、エピローグですね。お恥ずかしい(^^;)
>名無し読者。。。さん
ありがとうございます!
数回の更新で終わりますが、最後までよろしくお願いします。
>名無しベーグル。さん
ありがとうございます!がんがります!
DMもありがとうございました!鼻血が出るほど萌えました(w)
>名無しバイクさん
ありがとうございます(^^)
また仕事が忙しくなってきたので、ちょっと更新が遅くなるかもしれませんが、
マターリお待ちいただければ嬉しいす。
- 114 名前:501 投稿日:2002年03月12日(火)22時43分40秒
- >brettさん
そう言っていただけると嬉しいです。
残り数回、最後までお付き合いして頂ければ幸いです。
>M.ANZAIさん
ほんの些細な出来事のはずなんですが…(^^;)ゞ
この話のいしよしは悩む星の元に生まれてきたらしいです(w)
>103さん
>聞えました?
ええ、そりゃもうバッチシと(w)
- 115 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月14日(木)00時04分26秒
- 相変わらず切ないですね。。。
普通の恋人たちのように振る舞えることを願ってます。。。
- 116 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月14日(木)00時04分37秒
- 相変わらず切ないですね。。。
普通の恋人たちのように振る舞えることを願ってます。。。
- 117 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月14日(木)00時09分06秒
- >115-116
二重投稿すみませんでしたm(__)m
- 118 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年03月14日(木)15時50分27秒
- 食事ネタ・・・
いつの日にか、梨華ちゃんが箸を取って、自然と吉に食べさせているような景色が。
- 119 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月14日(木)22時36分45秒
ひとみちゃんに肩を抱かれた瞬間、何となく予感はしていました。
辺りを何となく確認してしまう自分が寂しい。こんな道端で・・・と躊躇する自分がいるのが分かる。
けれど、頬にそっと触れた指先が優しくて、私は彼女を受け入れた。
ひとみちゃんがくれるキスは、私を幸せにしてくれる。
そっと触れてくる唇に彼女の優しさを感じる。
深く激しく求めてくる唇に彼女の愛を感じる。
重ねた唇がそっと離れた。
「好きだよ、梨華ちゃん」
「私も・・・」
ひとみちゃんは私の腰に手を回し、ゆっくりと歩き出した。
- 120 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月14日(木)22時38分02秒
- 細道を抜けて商店街通りに出た。通りには、会社帰りのOLや部活帰りの学生達がパラパラと見受けられる。
私はひとみちゃんの腰に回していた手をそっとはずし、解けてもいない靴ひもを結び直す振りをした。
彼女に不信感を与えないように、極々自然を装って。
何故そこまで人目を気にしなければならないのかと、自分自身に嫌気がさす。
それが、過去に傷つけられたトラウマによるものだと気付いてはいました。
それが癒される事もなく、無理矢理心の奥底深くに閉じ込めていたのに、些細な出来事がそれを抉じ開けていた。
この世には男と女しかいなくて、男は女を、女は男に惹かれる。それが一般常識だから、常識から逸脱するものは爪弾きにされる事も分かってはいたけれど。
分かっている事にいちいち傷付くのはみっともないと思うけど。
だからと言って、傷付く事に慣れたくはない。傷付きたくもない。
けれど、そんな臆病すぎる私の心が、彼女を不安にさせてたことに気付かなかった。
- 121 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月14日(木)22時39分40秒
- 彼女のアパートに戻り、部屋に入ったのと同時、中に入るのももどかしいとばかりに、ひとみちゃんは私を後ろから抱きしめてきた。
荒々しく強引に求めてくる唇は、まるで彼女のものではないような錯覚に陥る。
彼女は私のコートを乱暴に脱がせ、トレーナーの裾から直に素肌をまさぐってくる。
「や・・ひとみちゃん待って」
私の言葉など聞こえないかのように、その手を上へと滑らせる。
ブラの隙間に手を入れて、胸の頂を指で摘んだ。
「・・・んっ・・いたい・・よ・・・」
掠れた声で抗議をあげた。
彼女は私を部屋の中へ上げて、床へ押し倒した。私の腰に跨って、またキスを繰り返す。
- 122 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月14日(木)22時41分11秒
「ひとみちゃ・・ん・・・」
彼女は私のトレーナーを捲り上げ、ブラジャーのホックを器用にはずし、右胸の頂に舌を這わしてきた。
「・・・お願いだからやめて・・」
搾り出すように出した声はどこまでも弱々しかった。頬に一筋の涙が伝う。
恋人同士が体を重ねあう行為は至極当然な事だし、私自身、ひとみちゃんと結ばれたいと思っています。
けれど、素直に身を任せられなかったのは、彼女の行為があまりにも性急過ぎたから。
思い切り彼女を拒絶出来ないのは、誰よりも大切な人だから。
「・・・あの・・・ごめん・・アタシ・・・」
ひとみちゃんは私の涙を見た途端、何か憑き物が取れたかのように行為を止めた。
はだけたトレーナーを直し、ごめんと言葉を繰り返している彼女の表情はすごく苦しげで切なげでした。
彼女にこんな表情をさせてしまった事がすごく悪い事のように思えて、気がつくと、私は涙をポロポロ零していた。
- 123 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月14日(木)22時42分57秒
- 「・・・ひとみちゃん・・ごめんなさい・・・」
「・・なんで・・梨華ちゃんが謝るの? 悪いのはアタシだよ? ・・・アタシ・・不安だったんだ。・・・今まで一人で生きてきたけど、二人でいることの大切さや楽しさを知っちゃったから。梨華ちゃんがいなくなったら・・・アタシは二度と立ち直れなくなるから・・・だから、梨華ちゃんが戸惑ったり困った表情をするたびに・・すごく不安で・・・体を重ねれば・・そんな不安もなくなる気がして・・・だから・・・」
ひとみちゃんは苦しげに言葉を吐いて、私を抱きしめた。
私の髪を撫でる仕草が切ないくらい優しくて・・・。だから余計に涙が止まらない。
「謝るから、もう泣かないで・・・梨華ちゃんの嫌がることはしないから・・」
「違うの・・・私が悪いの・・・」
- 124 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月14日(木)22時44分24秒
- ・・・そう、悪いのは私。
傷付く事を恐れて、勝手に人の目を気にし過ぎて、不自然な行動をとって、ひとみちゃんに不信感を与えてしまった結果がこうなっただけ。
ちゃんとひとみちゃんと向き合っていれば、彼女を傷つけることもなかったのに。
何も言わなくても全てを分かり合うことは不可能だから。
だから私達は、態度や言葉で、心を伝え合う。
闇雲に一人で悩むくらいならば、彼女に打ち明けたらいいだけのこと。
もう私は一人じゃないのだから。
そんな簡単な事に気付かなかった私が悪いんです。
「梨華ちゃん・・泣かないで・・・」
彼女は溢れた涙をすくうように、私の瞳に口付ける。
ごめんねと呪文のように繰り返す声音がとても優しい。
- 125 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月14日(木)22時46分13秒
「ううん、私が悪いの・・・私がちゃんと自分の気持ちを伝えてれば、ひとみちゃんを苦しめる事もなかったのに・・・ひとみちゃん・・・ごめんね」
私は濡れた頬を袖で拭って、続けて話す。
「傷付く事を怖がって、恋人同士が普通にやることを普通に出来ない私が悪いの」
「・・・え?」
「・・・昔ね・・・親友に自分が同性愛者だって打ち明けた事があるの。誰にも話せなくて、苦しくて・・・楽になりたかった。親友なら、本当の私を知った上で、向き合ってくれるはずって、そう信じてたの。・・・だけど、彼女から出てきた言葉は・・・気持ち悪い・・って・・・」
私を抱きしめるひとみちゃんの腕に、力が入ったのが分かった。
- 126 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月14日(木)22時47分42秒
- 「・・・私という人間をはっきりと否定されたのは・・初めてだったの・・・すごく惨めで・・悲しかった。世界中の人間が敵になったみたいな・・そんな錯覚さえおこして・・・。ひとみちゃんと手を繋いで歩いた時、すごく嬉しかったの・・・でも、他の人にレズだって思われて・・気持ち悪いって言われたらって・・・勝手に想像して、勝手に傷付いて」
「・・・そうか・・だからあの時・・・」
「ごめんね・・・だから、ひとみちゃんは悪くないの。いちいち傷付いてる私が悪いの」
「そんなことないよ! 傷付く心を持ってるのはいいことだと思うよ。傷付くことを忘れちゃったら、人を傷付けることに何とも思わなくなるもん。梨華ちゃんはそれだけ優しい人なんだよ。だから、自分を責めないで。・・・それに、アタシも悪かったんだよ。梨華ちゃんの気持ちも考えないで、一人で勝手に浮かれて、勝手に不安がって・・・。ごめんね」
- 127 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月14日(木)22時48分49秒
- 私をしっかりと抱きしめたまま、ひとみちゃんはそう言ってくれた。
私の目が潤んできているのが分かる。でも、それは嬉しくて。
「・・・私達・・二人とも臆病だったんだね・・」
「そうだね・・・でも・・臆病者同士で気が合うじゃん」
ひとみちゃんは抱きしめていた腕を解き、私の両肩に手を置いて、ニッコリと笑ってそう言った。
「フフ・・・そうだね」
「二人で・・・強くなっていこうよ」
少し低めの優しい声音で、そう囁くように話す彼女。
大きくて綺麗な瞳に見つめられて、私は、そっと、目を閉じた。
- 128 名前:501 投稿日:2002年03月14日(木)23時02分48秒
- キリのいいところまで…というより、ここで一応切ってみたり(w)
もっと甘々の話を書いてれば、こんな苦労はしなかったのに…と
今更後悔しても後のカーニバルだった、今回のシーン(w)
上手い具合に二人が上昇してくれてやっとこ安心です。
>115さん
相変わらずですみません(^^;)ゞ
次回は大丈夫でしょう、きっと(w)
>115-116
気にしないで下さいね(^^)
>M.ANZAIさん
いろんな苦難を乗り越えていく二人だからこそ、
その先に見えるのはきっと明るい未来だと。
- 129 名前:brett 投稿日:2002年03月14日(木)23時07分29秒
- リアルタイムで読めた。切なくていいです。これこそ純愛かと。
- 130 名前:ハル 投稿日:2002年03月14日(木)23時21分53秒
- 二人には心から幸せになってほしいですね。
あー・・・かなり感情移入しちゃいます。
- 131 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年03月15日(金)02時10分45秒
- >何も言わなくても全てを分かり合うことは不可能だから。
そうですね、そのとおりだと思いますよ。深い、深いッスよ。
- 132 名前:夜叉 投稿日:2002年03月15日(金)19時52分53秒
- 師匠、帰って参りました。こちらも帰ってきて頂けてうれしいです。
難産でしたか…、でもあのシーン、その分あってほのぼのした自分がいますが何か(笑)。
お食事ネタ、いただきました。水で流し込む吉、辛そうですね(苦笑)。
- 133 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月15日(金)23時31分16秒
- ほんとにいつもいつまでも二人で歩いていけるよう
強くなってもらいたいもんです。
- 134 名前:501 投稿日:2002年03月16日(土)03時40分22秒
- 番外編はエ●ありの意向というお約束でしたので、一応書いてみました(^^;)
ですが、やはりそういうのが苦手なお方もいるやもしれませんので、
お気をつけ下さいませ。
これからうpする文は、作者が萌える事も出来ない拙い駄文でございます。
- 135 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月16日(土)03時41分34秒
梨華ちゃんの瞳がゆっくりと、まるでスローモーションのように閉じていく。
アタシは彼女の唇に自分のそれを重ねた。
梨華ちゃんの右手をそっと握ると、彼女が指を絡めてきた。
唇を重ねたまま、手を、指を、お互いの存在を確かめるように絡ませる。
胸の鼓動が次第に早まるのが分かった。何度も彼女と唇を重ねあったはずなのに、アタシはすごく緊張していた。
そっと唇を離す。
アタシは彼女の肩に置いていた左手を背中に回し、彼女をしっかりと抱きしめた。
- 136 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月16日(土)03時43分54秒
- 「・・・梨華ちゃん・・良い・・・?」
彼女の耳元でそう囁いたアタシの声は、思いの外掠れていた。
梨華ちゃんは何も言わずに、アタシの首に両腕をまわした。
心なしか、彼女の体が震えているように感じる。
「・・・梨華ちゃんが嫌なら・・無理強いはしないよ・・」
アタシがそう言うと、彼女は小さいけれどしっかりとした声音で、
「ひとみちゃんが好きだから・・・」
だから良いよと、アタシの耳に囁いた。
- 137 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月16日(土)03時46分03秒
アタシは彼女と一瞬たりとも離れたくなくて、彼女を抱きしめたまま、押入れにしまわれた布団を乱暴に引っ張り出した。
バサッと無造作に広がった布団の上に、彼女をゆっくりと押し倒す。
どちらともなく瞳を閉じて、先ほどよりも深く、長い口付けを交わした。
梨華ちゃんの唇は、ふっくらと、とても柔らかい。アタシはその感触をしっかりと味わうように、何度も何度も口付ける。
アタシは彼女の口腔に恐る恐る舌を滑らせた。ほんの一瞬、彼女の体が揺れたけれど、彼女もそれに応えてくれた。
洋服の掠れあう音だけが聞こえていた暗闇に、小さな吐息が混ざり合う。
- 138 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月16日(土)03時48分30秒
- アタシは唇を離し、彼女のトレーナーを脱がせた。ブラジャーのホックをはずそうとしたけれど、焦っているのか指が震えて上手くはずせない。
アタシのそんな姿が滑稽だったのか、梨華ちゃんがフフッとイタズラっぽい笑みを浮かべて言う。
「さっきはあんなに素早かったのに」
「・・・それは言わないでよ」
アタシの顔はおそらく真っ赤に染まっていただろう。
暗くて良かったなんて思いながら、ようやくホックをはずし、彼女の形の良い大きな胸に柔らかく優しく触れた。
小さく膨らんでいる胸の頂を唇にそっと含んだ。硬く尖った彼女の蕾は、何故か甘く感じる。
舌を転がすと、堪らないとばかりにアタシの頭に腕をぎゅっと回した。
胸を顔に押し付けられて息苦しさを感じるも、アタシはそれに構わず蕾を吸う。
- 139 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月16日(土)03時50分21秒
「・・・ぁん・・・」
小さく漏れた吐息がいやらしく感じてゾクゾクする。
彼女のスカートに手をかけて脱がせると、彼女はそれに異論を唱えた。
「私だけは・・・嫌・・」
彼女の言わんとしている事が分かったアタシは、パーカーとジーンズを一気に脱いだ。
梨華ちゃんはアタシのブラジャーに手をかけて、ホックをはずす。お互いのパンティーを脱がしあうのが、やけにいやらしく感じた。
アタシ達は、一糸纏わぬ、生まれたままの姿になった。
窓から零れる月の明かりが彼女を照らす。
彼女の健康的で滑らかな素肌がとても綺麗で、アタシは彼女を抱きしめた。
- 140 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月16日(土)03時52分42秒
一年前のアタシは、好きな人と結ばれる事など一生望めないのだと、全てを諦めて生きていた。
誰を愛する事も、愛される事もなく一生を遂げるのだと。
だけど、今、アタシの腕の中には、愛しい大切な彼女がいる。
それがどれほど幸せなことか。
気がつけば、アタシは涙を零していた。
何故だろうとふと思い、そしてそれが感情が昂ぶったからなのだと気が付いた。
「梨華ちゃん・・・アタシ・・今、幸せだよ。もう死んでもいいくらい、すっげー幸せ」
「死んじゃ駄目!・・・ずっと、ずっと、私の側にいてくれなきゃ嫌」
「分かってる・・・ずっと側にいるから・・」
アタシは囁くようにそう言って、首筋から鎖骨、そしてまた唇へ、ありったけの想いをキスに変えて、彼女の身体中に降り注ぐ。
- 141 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月16日(土)03時54分44秒
- そして、彼女の太股に手をかけて、そっと開いた。
「あ・・・や・・・」
彼女の口から出た言葉は否定的なものだったけど、アタシはそれに構わず、内腿にそっと口付けた。
ちゅ・・と何回も口付けて、そっと下腹の茂みに顔を埋める。
尖った小さい膨らみに舌を這わすと、梨華ちゃんの体がビクンと跳ねた
「・・・ぁ・・ぁん・・・ひとみちゃ・ん・・・や・・」
梨華ちゃんは何かに堪えるような仕草を見せて、唇をきゅっと結ぶ。
アタシが更に彼女の秘部に舌を這わすと、彼女は手の甲で口を押えて、漏れる吐息を必死で抑えているようだった。
肩で息をする彼女の限界がもう近い事に気がついたアタシは、彼女の唇にちゅっとキスをして、彼女の秘部にそっと指を這わせた。
- 142 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月16日(土)03時59分26秒
- 「梨華ちゃん・・・良い?」
「うん・・・ひとみちゃん・・好き」
そう柔らかく微笑む彼女の言葉が合図とばかりに、アタシはゆっくりと指を彼女に埋め込んだ。
大きく揺れる彼女の体が、やけに頼りなくていとおしい。
「梨華ちゃん・・好き・・・愛してる・・」
アタシは熱に冒されたように、何度も何度も繰り返した。
「・・・ぁん・・ん・・ひと・・み・・ちゃ・・・わた・・し・・も・・すき・・」
「・・・梨華ちゃん・・」
「あっ・・・んっ・・ぁ・・・あっ・・・あ・・・・・!」
- 143 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月16日(土)04時01分44秒
・・・・・・・・
- 144 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月16日(土)04時03分35秒
そのままアタシ達は、体を重ねあったまま、朝を迎えた。
カーテンの隙間からは眩い光が漏れていたけれど、それでも、アタシは梨華ちゃんを離さなかった。
- 145 名前:501 投稿日:2002年03月16日(土)04時10分56秒
- キリのいいところまでうpしました。
>>135-142
ちなみに、ここは読まなくても話に影響はないように書いておきました(w)
先に書いておきましたが、オマケという名の作者の自己満足駄文です(^^;)
- 146 名前:501 投稿日:2002年03月16日(土)04時30分07秒
- >brettさん
ありがとうございます。
今回の更新は…なくても良いものだったのですが、
つい、書いちゃいました(^^;)
>ハルさん
一歩一歩、二人で幸せに向かっていると思います(^^)
拙い文で感情移入して頂けるのは、すごく嬉しいです。ありがとうございます。
>M.ANZAIさん
ご賛同ありがとうございます(^^)
言わなきゃ分からないことって沢山ありますよね。
何でも話し合えるような二人に成長していって欲しいものです。
>夜叉さん
夜叉さんのお帰りをお待ちしておりました!
いやはや、今回と前回はえらい悩みました(w)
でも、ほのぼのして頂けたなら、これほど喜ばしい事はないです(^^)
今度食事シーンを書くときは、ちゃんと甘々で書きますね(w)
>133さん
ここのいしよしは悩みたがりのネガティブ指向なので、
書いてる自分も困るんです(w)
ホントに強くなって欲しいモンです。
- 147 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年03月16日(土)16時48分27秒
- むふふ♪
- 148 名前:よすこ大好き読者 投稿日:2002年03月16日(土)16時48分30秒
- 私的には、今までが切なかったので、十分萌えでしたが・・・・(w
やっと、向き合った二人ですが、これからが心配なのです・・・。
- 149 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月16日(土)18時05分38秒
- ああ、やっと…
エロシーンなのに感動しちゃった…
- 150 名前:名無しベーグル。 投稿日:2002年03月16日(土)19時49分29秒
- エロをきぼんぬしておきながら、実際は、エロなくても、ここの2人は
良いかも、なんて思ったのに、エロシーン読んだら、やはり萌えた私は
エロ作者ですが何か? 吉、頑張ったね(謎)。
- 151 名前:夜叉 投稿日:2002年03月16日(土)20時24分14秒
- ヲマケだなんてとんでもない!!いいエロを有難うございました(何かおかしいかも(^^;;
読んだ後、あまりの切なさにため息が漏れてしまいました。さすが師匠です(敬礼)。
甘甘お願いしますね。>食事ネタ。がんがってください。
- 152 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月17日(日)23時08分44秒
- エロよかったです。はい。
やはり甘いこの2人は最高だと…。
- 153 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月19日(火)17時44分56秒
いつの間に眠ってしまったのか分からない。
チチチと鳴く鳥の声と小さな物音、そして部屋中に立ち込める味噌の匂いに、アタシは起こされた。
気がつけば、先ほどまで確かにアタシの腕の中にいたはずの彼女がいない。
それだけで不安を覚えるアタシは、まだ幸せに慣れていないのかもしれないと思い、少しだけ自嘲気味に笑った。
「・・梨華ちゃん」
愛しい人の名前を呼んでみる。その声は寝起きのせいか思いの外掠れていた。
- 154 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月19日(火)17時46分02秒
「あ、ひとみちゃんおはよう」
声のするほうへ顔を向けると、彼女は小さなキッチンの前でアタシに笑顔を向けていた。
照れたように少し俯いて、けれど穏やかで幸せそうな笑顔。
アタシは、この時の彼女の表情を一生忘れないだろう、そう思った。
「もうちょっとで朝ご飯出来るからね」
はにかみながらそう言って、クルリと背中を向ける。
彼女の立てる物音が、少しだけ大きくなったのが何だか嬉しい。
- 155 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月19日(火)17時48分36秒
まだ完全に覚めていない頭をブルンと振って、体をゆっくりと起こす。
肌寒さを感じたのは、アタシが裸だったから。
そうだ・・アタシ・・・。
昨夜の事を鮮明に思い出して、顔が真っ赤になった。梨華ちゃんがこちらを向く前に服を着てしまおうと、そばにあった部屋着に袖を通した。
斜めに引かれた布団を見下ろす。昨夜の焦り過ぎていた自分を思い出して苦笑してしまう。
アタシは布団を押入れにしまい、狭い部屋の端に追いやってあったテーブルを元の位置に戻した。
- 156 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月19日(火)17時49分41秒
気がつくと、彼女は鼻歌を口ずさんでいた。
流行の歌でもなんでない、どこか懐かしさを感じるフレーズ。それが、幼い頃よく母が歌ってくれた童謡だということに気付いた。
同じフレーズで必ず音が外れるのは、彼女の癖なのだろうか。そんな些細な事にさえ、いとおしさを感じて自然に頬が緩んでしまう。
アタシは彼女の奏でる優しいメロディを彼女の後姿を見つめながら聴いていた。
- 157 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月19日(火)17時50分43秒
なんとなく、予感した。
きっとこの穏やかな風景を、ずっと見続けるのだろうと。
二人でご飯を食べて、寝る前に他愛のない話をして。
また次の朝を迎える、何気ない、けれど幸せな日常を。
時には些細な事で不安になったり、喧嘩をしたり、泣いたりするかもしれない。
けれど、アタシ達はそれを乗り越えていく。
それはアタシの希望的観測でもなんでもなく。
ごくごく自然に、そう予感した。
- 158 名前:向日葵 番外編 投稿日:2002年03月19日(火)17時52分38秒
やっと手に入れた宝物を失うのが怖くて、ただ闇雲に不安がっていた昨日のアタシはもういない。
大切なのは分かち合う努力。
ゆっくりで構わない。
一つずつ、二人で分かり合えばいい。
心を伝える事の大切さに、ちゃんと気付いたから。
だから、まず初めに、彼女が振り向いたらこう言おう。
愛してるよ――――――と。
- 159 名前:501 投稿日:2002年03月19日(火)17時57分36秒
- 短めですが、ラスト部分をうpしました。
お付き合い下さった皆様、本当にありがとうございました。
また思い出した頃に突然番外編をうpしたいと思ってます。
その時には、またお付き合い頂けたら嬉しいです。
- 160 名前:501 投稿日:2002年03月19日(火)18時08分28秒
- >M.ANZAIさん
自分もあのシーンを書きながら、何度月になりたいと思ったか(w)
>よすこ大好き読者さん
萌えていただけたようで一安心です(w)
こんな感じのラストでしたが、どうでしょうか?
よすこ大好き読者さんもお忙しそうですね。
お体に気をつけてがんがってください。(^^)
>149さん
ありがとうございます!
書いている本人が一番不安だったんで嬉しいです(^^)
>名無しベーグル。さん
自分もエロ無しで良いだろうとずっと思ってたんですが、
そう言っていただけて、嬉しいっす♪(^^)
吉はもう少し不慣れな感じを出したかったんですが、
難しかったです(w)
>夜叉さん
そう言っていただけると本当に嬉しいです。ありがとうございます。
食事ネタはまた別の番外編で書きますね(^^)
夜叉さんもがんがってください♪
>152さん
ありがとうございます(^^)
辛い事が多かった二人だからこそ、その分喜びもひとしおです。
- 161 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月19日(火)20時45分55秒
- いつまでもお幸せに…
終わり方が穏やかで暖かで良かったです
- 162 名前:よすこ大好き読者 投稿日:2002年03月20日(水)05時17分06秒
- 最後、すごく穏やかな気持ちになれました。
本当に、つらく切ない話だったので、安心しました。
なんか、感情移入しちゃって途中ドキドキハラハラしっぱなしの作品だったので・・・・。
吉と、石が幸せでよかった×2!!
ありがとうございました。
あっちのほう(?も、がんがってください。
- 163 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年03月20日(水)11時44分45秒
- ようやく2人はスタートラインに立った、という感じのシーンですね。
もうその手を離さず握って行こうよ、吉。
その手の温もりをいつまでも信じていてね、梨華ちゃん。
ステキな作品、そして番外編と読ませていただき、ありがとうございました。
そしてまたの機会も楽しみにしております。
- 164 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月21日(木)00時58分41秒
- 暖かい素敵なお話をありがとうございました。
毎回読むたびに大切な事を教えられます。
また番外編あるんですか?楽しみにしてます!
- 165 名前:brett 投稿日:2002年03月21日(木)20時15分22秒
- こんないい作品に出会えて嬉しいです。番外編楽しみにしてます。
おつかれさまでした。
- 166 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月21日(木)21時49分48秒
- 強い想いさえあれば2人の絆ゆっくりにしっかりとふとく確かなものに
きっとなることでしょう。
番外編おつかれさまでした。とっても良かったです。
再び出会えること楽しみにしております。
- 167 名前:夜叉 投稿日:2002年03月22日(金)11時42分28秒
- 番外編お疲れさまでした。
読み始めに吉の焦りにびくびくしながら読んでいたのですが、自分の一人ずもうでした(^^;;。
二人に優しく明るい日差しが見えてきたことに感謝(合掌)。
また、番外編を書いていただけるということ、楽しみにお待ちしております。
密かにいろいろと期待しておりますので(謎。w
有難うございました。
- 168 名前:501 投稿日:2002年03月25日(月)13時50分37秒
- 皆さん沢山のレスをありがとうございました(^^)
>161さん
読んで下さってありがとうございました。
自分も二人の幸せを願ってやみません。
>よすこ大好き読者さん
ありがとうございました(^^)
確かにラスト間際まで二人が悩み苦しんでいたお話でしたからねぇ(苦笑)
せめてものお詫びっつー事でこんな感じに(^^;)
あっちのほうもどうにかがんがります!
>M.ANZAIさん
そうですね。二人はこれから、ですね。
まだまだ幾多の試練が待ち受けているでしょうが、
それらの障害を必ず二人は乗り越えていけると信じてます。
ええと…メール欄をご参照ください(^^)
>164さん
ありがとうございます(^^)
番外編もあと2本ほど考えているのがありますので、
いずれ書きたいと思います。その時には読んでやってください。
- 169 名前:501 投稿日:2002年03月25日(月)13時51分29秒
>brettさん
そう言って頂けて嬉しいです。
こちらこそ、読んで下さってありがとうございました(^^)
>166さん
ありがとうございました。
上にも書きましたが、番外編2本の他に続編も考えてます。
まだまだ先の話になるとは思いますが、その時にはぜひお付き合いください。
>夜叉さん
こちらこそ、読んで下さってありがとうございました。
ここのいしよしはとことんネガティブ思考なので、
作者もかなりビクビクしながら書いてました(苦笑)
上手くまとまってくれて、ホッとしてます。
夜叉さんも完結お疲れ様でした。次回作もマターリお待ちしております(^^)
- 170 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月07日(日)00時16分13秒
- よすこの誕生日に番外編あったりするのかなー
なんて言ってみたり。
- 171 名前:501 投稿日:2002年04月09日(火)21時51分07秒
- >170さん
番外編を書くといいながら、全く音沙汰ナシでスミマセン(^^;)
番外編はいしよしがメインと言うよりは、
後藤さん視点な感じになるかも知れません。
や、まだホンのさわりしか書いてないんで何とも言えませんが。
それと、続編を書き始めました。
今回は脱稿してからうpしようと考えてるので、まだ先になりそうです(^^;)
ハッキリした日にちはお約束できませんが、お待ち頂けたら嬉しいなと。
ちなみにまた長くなりそうです。
それと、相変わらずのお話になることだけはお約束します(w)
- 172 名前:名無し読人 投稿日:2002年04月13日(土)18時15分36秒
- 今日、休みだったので読み返してみました。
何度読んでも感動〜〜〜!
番外編、続編、めちゃ楽しみです〜。
がんばってください〜〜〜!
- 173 名前:たんぽぽ。 投稿日:2002年04月14日(日)20時52分18秒
- はじめまして!噂の名作が読めてうれしいですv
舞台が地元に近くてなんか親近感がわいちゃいました!
これからも頑張ってくださいね!応援してますvvv
- 174 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月28日(日)11時08分39秒
- まだかなぁ…と言ってみるテスト(w
番外編、心待ちしてます
- 175 名前:501 投稿日:2002年05月02日(木)00時43分23秒
- >名無し読人さん
2度も読み返してくださってありがとうございます。すごく嬉しいです(^^)
ちなみに番外編はいちごま風味のよしごま友情物語になると思います。
どんな感じに仕上がるかはまだ自分にもわかっておりません(爆)
>たんぽぽ。さん
こちらこそ読んでくださってとても嬉しいです。ありがとうございます。
舞台の近くにお住まいですか〜。自分も以前住んでいたんですよ。
もしかしたら、お会いしてたかもしれませんね(^^)
>174さん
番外編・続編、かなり遅くなってしまってすみません(^^;)
番外編に関しては、前中後編の三話構成で考えているのですが、
中編が出来上がり次第、うpしようと思ってますので、
良かったら読んでやって下さい。よろしくお願いします。
- 176 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月08日(水)18時44分02秒
- 各所でたびたび話題にあがるので、どんな話なのかと読み始めたら、しっかりはまってしまいました!
番外編、続編楽しみにしてます!頑張って下さい。
- 177 名前:501 投稿日:2002年06月01日(土)00時06分02秒
- >176さん
読んで下さって、ありがとうございます♪
言い訳なのですが、番外編、納得できる文が書けず、
何度も何度も書き直しておりまして…(^^;)
ですが、ホントに近いウチに更新できるようにしたいと思ってます。
良かったら、読んでみてやってください。
- 178 名前:いしよしサイコ〜 投稿日:2002年06月09日(日)00時59分47秒
- おぉ!番外編が完成したんですか!?
チョコチョコ見に来てた甲斐がありました!
501さんのHPは、お気に入りに登録させてもらってますよ〜
この話、大好きなので楽しみです。がんばってくださいね!!
- 179 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月10日(月)16時33分13秒
- 期待してます!
マターリ待ちます、名作がまた読めるなら。
- 180 名前:なっつぁん 投稿日:2002年07月02日(火)01時09分01秒
- 作者さん、初めまして。
向日葵の初期から読んでおりました!!
番外編の方が完成したとの事ですが・・・
アップされる日を心待ちにしておりますよー
- 181 名前:501 投稿日:2002年07月11日(木)01時42分06秒
- こんな駄文をいまだに楽しみにしてくださってる方がいらっしゃること、
本当に嬉しいです。ありがとうございます!
別スレのほうが終了次第、こちらに取り掛かりますので、
もう暫し、お待ちいただけたら幸いです。
レスはまた後日改めて。m(_ _)m
- 182 名前:なっつぁん 投稿日:2002年07月13日(土)19時50分17秒
- 良かった!! 作者さん、放置されてた訳じゃなかったんですね!
更新されるの、ずっと楽しみにお待ちしてますよー
見に来た甲斐がありました!
続きが読める希望が持てて良かったです。
- 183 名前:名無しさん 投稿日:2002年08月07日(水)17時20分31秒
こちらの作品を初めて読ませていただきました!
すごく感動しました!涙なしでは読めませんでした!
番外編がまだあるんですね?楽しみに待ってます!
- 184 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月07日(水)21時15分54秒
- あげないでね。
- 185 名前:『どうしたらいいですか? ―向日葵番外編―』 投稿日:2002年08月21日(水)17時38分02秒
あたしは、大切な友達のことで悩んでいた。
- 186 名前:前編―トモダチ― 投稿日:2002年08月21日(水)17時40分13秒
彼女と初めて会ったのは、15の夏。
あたしは都立高校に入学したものの、元来のマイペースな性格と勉強嫌いが祟って、わずか2ヶ月で高校を辞めていた。
何をしてもやる気が起きない。
何をしてもつまんない。
この頃のあたしは世間でよく言う無気力で無感動な15歳だった。
- 187 名前:前編―トモダチ― 投稿日:2002年08月21日(水)17時41分09秒
高校を辞めてからちょうど1ヶ月。
学校にも行かず、働きもしないあたしに業を煮やした母親がとうとう切れた。
「真希! アンタは一体何考えてるの!? 突然学校を辞めたり。他に何かやりたい事があるんならまだしも、毎日毎日家でゴロゴロして……お母さん情けないわよ!」
「…………」
「とにかく、学校を辞めちゃった以上、働かない子を家に置いておくつもりはないからね! バイトなりなんなり、何かしなさい!」
怒鳴るだけ怒鳴った母親は、そのままあたしの部屋を出て行った。
「んぁ〜、しょうがない、バイト探すかぁ」
本当に渋々、だった。
母親は有言実行な人で、本当にあたしを追い出すような人だから、さすがにそれは困ると思い、重たい腰を漸くあげた。
- 188 名前:前編―トモダチ― 投稿日:2002年08月21日(水)17時41分58秒
あたしの住んでいるところは駅から緩い坂道を上がった先の密集した住宅街。港区内とは言え、どこか下町情緒溢れる場所。
近所のおばちゃん達もあたしが高校を辞めてブラブラしてることを知っているから、顔を合わすなり、「お母さんを困らせちゃダメよ」なんて言ってきて、少し煩く感じてしまう。東京は隣人に無関心だなんて、ここの土地に限っちゃ無関係みたい。
あたしはおばちゃん達に曖昧な笑顔で挨拶してやり過ごし、とりあえずアルバイト誌でも買おうと、近所の商店街にあるコンビニに向かった。
商店街通りはもう一本先の国道とは打って変わり、時間の流れが全く違うような錯覚に陥ってしまうほど、穏やかでのんびりしている。
あたしは何となしに空を見上げた。昨日までシトシト降っていた雨も止んで、梅雨晴れの空は綺麗な青だった。
こういう日はあたしにも良いことあるかも…なんて、自堕落な自分の生活態度を棚上げて、都合の良いことを考えながら歩いていた。
- 189 名前:前編―トモダチ― 投稿日:2002年08月21日(水)17時43分12秒
コンビニの看板が見えてきた。あと数十メートルで着くといったところで、プーさんのイラスト入りで綺麗にPOPされた手書きの張り紙が目に付いた。
『アルバイト募集 詳しくは店員まで』
そこは半年程前にオープンされた、小さい小さいレンタルビデオ屋。
「ふーん、ビデオ屋かぁ…ここなら家から近いし通うのも楽だねぇ」
別にバイト代が安かろうと高かろうと、あたしには関係ない。母親への体裁で、一応働かなくちゃ…みたいな、すごくお気楽なものだし。
どんな感じだろうと店内に入ると「いらっしゃいませ!」と明るく元気な挨拶を掛けられた。
- 190 名前:前編―トモダチ― 投稿日:2002年08月21日(水)17時44分26秒
んー、あたしはこういうの苦手だなぁ…働くの無理かも…。
早々と消極的なことばかり考えながら店内を見渡した。見たところ20畳くらいしかない店内に、所狭しとビデオが並んでいる。レジの中では学生と思しき二人の店員が椅子に座っている。
立ちっぱなしじゃなくてもいいなら楽だなぁ…なんて、どこまでも楽をしたいやる気のないあたしは、ここなら良いかと、レジに向かって歩き出した。
「「すいません、表の張り紙を見たんですけど…」」
あたしがレジの店員に向かって喋ったと同時、低いトーンの声があたしの真横でモノの見事にハモった。
思わずビックリして声のする方へ向いてみたら、年はあたしと変わらないくらいの、ショートヘアーで背の高い女の子が、やはり驚いた顔であたしを見ていた。
それが、よっすぃーこと、吉澤ひとみとの出会いだった。
- 191 名前:前編―トモダチ― 投稿日:2002年08月21日(水)17時45分59秒
バイトの学生が突然2人も辞めたらしく、あたしと吉澤さんは面接らしい面接もせずにバイトが決まった。
同時期に入ったあたし達は、なるだけ同じシフトに入れさせられる事が多かった。他のバイトの人たちの手間が掛からないように、なるだけ効率よく仕事を覚えてもらうためにとのことらしい。
慣れていないせいもあると思うけど、あたし達は喋る事があまりない。朝の挨拶と帰る時、あとは仕事の事でちょこっと話をするくらい。
吉澤さんはあたしと同い年で一人暮らし。それだけしか知らない。
あたし自身、同い年の友達がいなかったから、何を話せば良いのか分からないって言うのもあったけど、彼女の持つ独特の雰囲気……ん〜なんて言えばいいんだろう…世捨て人みたいな感じがあって、なんとなく話し辛かった。
- 192 名前:前編―トモダチ― 投稿日:2002年08月21日(水)17時47分57秒
ちなみに、あたし達がバイトに入るとき、いつも同じシフトに入ってくれているのが、矢口さん。
矢口さんは一瞬小学生に間違えられちゃうくらい背の低い人で、見た目は金髪でコギャル衣装に身を包んでハデハデなんだけど、性格はいたって真面目、尚且つ心配りの人。
早くバイトに馴染めるようにってあたし達に対して気を使ってくれているのが良く分かる。
矢口さんは近くの定時制高校の4年生。学校に通いながらバイトをしている苦労人。
働きながら学校に行くなんて、あたしには真似できないよ。世の中にはこんな出来た人も居るんだねぇと、つくづく世間知らずな自分に呆れた。
相変わらずやる気はあまりなかったあたしだけど、こういう人たちもいるんだなぁって分かっただけでも成長したよね、うん。
- 193 名前:前編―トモダチ― 投稿日:2002年08月21日(水)17時48分50秒
そうそう、余談だけど、吉澤さんのことをよっすぃーって呼び出したのは矢口さん。
あたし達が初めてバイトに入った日、突然何かを思いついたように「よし、今日からキミはよっすぃーだ!」なんて言い出して、店長に「相変わらず矢口は唐突だなぁ」と呆れられてたっけ。
突然言われてビックリしながらも、すごくあどけない笑顔で「よろしくお願いします」って答えていた吉澤さんがすごく可愛くて、印象的だったことを覚えてる。
- 194 名前:前編―トモダチ― 投稿日:2002年08月21日(水)17時50分01秒
一ヶ月ほど経って、ようやく仕事を覚え出したあたしは、バイトに行くのが少しだけ楽しくなっていた。
バイトの先輩達が優しくて、面白くて、すごく居心地がいいんだよね。
特に矢口さんなんて、あの小さい体のどこにあれだけのエネルギーがあるのかって思うくらい、バイタリティーの持ち主だし。
それでも、吉澤さんとは何となくぎこちないままだった。
なんか彼女ってどこか人と一線引いてるような感じがする。
- 195 名前:前編―トモダチ― 投稿日:2002年08月21日(水)17時51分25秒
8月に入って、熱帯夜が続いたある日の事、どうしても寝つけられなかったあたしは深夜の散歩に出た。
真っ暗な人気のない商店街を歩くよりは国道の方が明るくて良いかなぁと、何の気なしに歩いていたら、思いがけない人に声を掛けられた。
「……あれ、後藤さん?」
「え?」と、声のする方へ振り向いてみたら、黄色い工事現場のヘルメットをかぶって、綺麗な白い肌の顔を真っ黒にさせた吉澤さんが立っていた。
「吉澤さん、どうしたの? そんな格好して」
「アタシ、そこの道路工事の現場でバイトしてるの。ちょうど今終わったとこなんだ」
「え? 明日も朝からバイトじゃん、体疲れない?」
あたしはビックリした。彼女はビデオ屋のバイトも朝から夕方までほとんど休みなく入っている。それから工事現場のバイトをしているということは、寝る暇なんてほとんどないはず。
けれど、驚いたあたしに対し、彼女は事も無げに答えた。
- 196 名前:前編―トモダチ― 投稿日:2002年08月21日(水)17時52分52秒
「んー、確かに疲れるけど、生きてくには働かなくちゃしょうがないしねぇ」
あたしは彼女のその言葉を聞いた時、なんだかすごい衝撃を覚えた。なんか、思い切り脳天をバシンと引っ叩かれたような感じがした。
あたしがバイトを始めた理由は家を追い出されたら困るから。だから適当に週3日のペースでのんびりバイトをして母親の体裁を取り繕ってる。
今も続けている理由は人間関係が楽だから。
初めて稼いだバイト代は、洋服代に消えちゃった。
あたし自身が、すごく恥ずかしい人間のように思えてきた。
そして、同い年なのに頑張って働いている吉澤さんがすごく格好良いと思った。
「……すごい、すごいよ、吉澤さん!」
「…はぁ?」
興奮して話すあたしを、吉澤さんは少し訝しげに見つめていたけど、あたしはそれに構わず話し続けた。
- 197 名前:前編―トモダチ― 投稿日:2002年08月21日(水)17時54分19秒
「吉澤さん、すごく格好良い! んー、なんて言えばいいのかな…、目から鱗がポロポロ落ちたって言うか、なんかさ、ごとーも頑張らなくちゃって気になった! ありがとう、吉澤さん」
こんな真夜中に早口で捲くし立てて喋るあたしの姿は、傍から見たら相当滑稽だったらしい。
吉澤さんは呆気に取られたようなぽけっとした表情で、しばらくの間、あたしを見つめていたと思ったら、突然何かのタガが外れたかのように、思いっきり笑い出した。
「……あっはっはっはっは、後藤さんすっげー面白い! あははははは……ダメだ、笑いが止まんない」
何で笑われたのか分からないあたしは、異論を唱えた。
「吉澤さん、何で笑うの? ごとーは真面目に言ってるんだよ」
「ごめんごめん。こんな夜中にそんなに興奮して喋ってる人なんて始めて見たから、つい」
彼女は謝りながらも、尚も笑い続ける。あたしはそんなに可笑しい事を言ったのかと恥ずかしくなってしまった。
- 198 名前:前編―トモダチ― 投稿日:2002年08月21日(水)17時56分59秒
「もーいいよ、また明日ねっ」
そう言って帰ろうとしたとき、「ねぇ、後藤さん」と声を掛けられた。
不意に声を掛けられたせいで「んぁ?」と気の抜けた返事をすると、それにも彼女は笑いのツボにはまったらしく、アハハと笑った。
「もー、なによ!」
「なんかさ、このまま別れがたいなぁって」
「は?」
「後藤さん、もう眠い?」
「……? ううん」
「じゃあさ、一緒に散歩しない?」
後から思えば、そんな誘い方だって相当可笑しいと思うけど。
その時の彼女のニコッと笑った笑顔がすごく人懐っこくて、本当の彼女はこういう子なんだぁって気付けた事が何だか嬉しくて、あたしは「いーよ」って答えてた。
- 199 名前:前編―トモダチ― 投稿日:2002年08月21日(水)17時57分55秒
あたし達は歩きながら色んな話をした。
彼女は親と色々諍いがあって家出同然で飛び出したとか、アパートが見つからなかった間、サウナで寝泊りしてたとか、日雇いの工事現場のバイトに飛び込みで行って無理矢理働かせてもらったとか。
彼女はそれを愚痴るわけでもなく、日常生活の内の一つのように淡々と話してくれた。
十五年とちょっと、のほほんと生きてきたあたしにとって、彼女の体験談一つ一つが衝撃的だった。
それでも、吉澤さんは事も無げに言う。
「一人で生きてくにはしょうがないから」と。
それは諦めにも似た悟りの表情で、とても印象的だった。
仕方のないことに対して決して卑屈にならず、当たり前のように生きている彼女がとても格好良いと思った。
彼女と友達になりたい。そう純粋に思った。
- 200 名前:前編―トモダチ― 投稿日:2002年08月21日(水)17時58分50秒
その夜、朝日が昇るまで、あたし達は当てもなくプラプラと歩いた。
途中歩きながら寝てしまいそうになったけど、二人で歩いた。
腹の立つこと嬉しいこと、大事なことくだらないこと、とりとめなく、いつまでもいつまでも話しながら。
あたしにとって、初めての『親友』が出来た夜だった。
- 201 名前:501 投稿日:2002年08月21日(水)18時06分37秒
- ようやく番外編の見通しがついたので、前編をアップしました。
自分の駄文を待っててくださった奇特な皆様、
お待たせして本当に申し訳ございませんでしたm(_ _)m
4,5回ほどの更新で終わると思いますが、お付き合い頂けたら幸いです。
ええと、ちなみに今回の話は後藤さん視点のお話です。
大まかに言えば、よしごま友情物語です。
いしよしは後編で登場予定です。(^^;)ゞ
- 202 名前:501 投稿日:2002年08月21日(水)18時24分54秒
- >いしよしサイコ〜さん
大変お待たせてしまい、本当に申し訳ありませんでしたm(_ _)m
HPまでお気に入りに入れてくださってるなんて…すごく嬉しいです♪
宜しければ、またお付き合いください♪
>ごまべーぐるさん
大変お待たせしてしまい、本当にスミマセンでしたm(_ _)m
期待なんて…ぷ、プレッシャーが(w
相変わらずの駄文ですが、お付き合い頂けたら嬉しいです♪
>なっつぁんさん
お待たせして本当にスミマセンでしたm(_ _)m
書き始めたモノやお約束したモノは、絶対放置しませんので。
今後ものんびりな更新になると思いますが、
マターリお待ち頂けたら幸いです(^^;)ゞ
>183さん
数ある小説の中から自分の駄文を読んでくださって、
本当にありがとうございました♪
ずいぶん時間が掛かってしまいましたが、漸く更新する事が出来ました。
お暇なときにでも読んでくださればと思います♪
あと自分の小説は駄文なので、ぜひともsageでお願いします。
>184さん
お気遣い、ありがとうございました♪
- 203 名前:yosiisi 投稿日:2002年08月21日(水)19時19分19秒
- 嬉しい〜〜〜よぉ〜〜〜
又読めるんですね。
待ってたかいがありました〜〜
続き楽しみにしてます。。
- 204 名前:よしいし読者。 投稿日:2002年08月21日(水)19時19分56秒
- 嬉しい〜〜〜よぉ〜〜〜
又読めるんですね。
待ってたかいがありました〜〜
続き楽しみにしてます。。
- 205 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月22日(木)00時03分01秒
- 待ってました!(^^)
すごくわくわくしてます。がんばってください!
- 206 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月22日(木)02時56分06秒
- そりゃ〜もう、待ちますとも。
番外編、がんばってください。
- 207 名前:あにき。 投稿日:2002年08月23日(金)20時50分23秒
- 番外編、楽しみにしておりました。始まっててうれしい限りです。
タ(ry)の為ならマターリ待つです。無理のない程度でおながいします。
- 208 名前:中編 投稿日:2002年08月30日(金)02時26分03秒
- あたしとよっすぃーが仲良くなるのに、そんなに時間は掛からなかった。
よっすぃー曰く、あたしが「懐いてくるから仲良くしてる」らしい。
そんな人のこと犬みたいに言っちゃって、かなり失礼だよね。自分だって、相当バカなことを言ったりやったりしてくるくせに。
まぁ、そんな軽口が叩けあえるほど、あたし達は仲良くなっていた。
とにかくあたし達はうまが合う。
服の趣味、笑う瞬間、お腹のすくタイミング。
あたし達が男と女なら絶対付き合ってるよねと思うくらい気が合った。
あたしがそう言ったとき、彼女はほんの一瞬、翳りのある切なそうな瞳を見せたけど、その時のあたしは気がつかなかった。
よっすぃーが抱えていた大きな悩み。
それは、あたしにとって一生関係ないもので、この頃のあたしは何も知らない無知で残酷な人間だった。
- 209 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年08月30日(金)02時28分09秒
季節は進み、秋晴れの穏やかな昼下がりのある日。
あたしは母親に突然呼ばれた。
「ここね、お母さん願書出しといたから、来週から授業行ってらっしゃい」
「はぁ?」
そう言って差し出されたのは一通の大きい青い封筒。
表にはアップフロントカレッジと今風のロゴが打たれている。
「バイトだけじゃ世の中生きていけるわけないんだから、今のうちにスキルってヤツを身に付けなさい」
スキルって言葉の意味をどこまで理解しているのか、微妙な顔で母は言う。
「ちょっと待ってよ、お母さん! 突然授業行けとか言われたって、あたしにだって都合ってものがあるんだからね!」
寝耳に水もいいところだ。
あたしの都合も気持ちも無視して、勝手に話を進めてたってどういうこと?
大体、学校生活ってやつが苦手で高校だって結局辞めたのに。今更学校なんて…。
- 210 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年08月30日(金)02時30分00秒
あたしが鼻息も荒くそう言うと、母は今まで溜めていた鬱憤を晴らすかのごとく、矢継ぎ早にまくし立てた。
「都合って何? ショッピング? 昼寝? お友達と無駄話? なんにせよ、あんたの都合はいつだって出来ることよね? でもね、勉強は若いうちしか出来ないの。今のうちに沢山知識なり手に職なりを身に付けておかなくちゃ、いつか困るのは誰じゃない、あんたなのよ」
「……お母さんが困るわけじゃないなら良いでしょうよ…」
言い返す言葉も見つからず、それでも何か憎まれ口を叩きたくて、小さくそう呟いた。
地獄耳とはよく言ったもの。母はあたしの小さいボヤキを聞き逃さず、顔を真っ赤にさせながら、お決まりの台詞を吐いた。
「……何? 言いたいことがあるんだったらはっきり言いなさいよ。自分の人生なんだからどう送ったって良いだろうですって? 冗談じゃないわよ、そういう台詞を吐くのは自分で何でも出来るようになってから言いなさいよ。一人じゃ何も出来ない子にどうこう言う資格はない! …いいわね、来週の土曜から授業だからね。行かなかったら、家追い出すからね」
母親はそう言い放つと、洗濯物を仕舞わなくちゃと席を立った。
- 211 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年08月30日(金)02時31分48秒
「……なによ! お母さんはいっつもそう! 二言めには家を追い出すって…あたしが出て行かないと思って言ってんでしょ! いいもん! ホントに出てってやんだかんね!」
あたしは心持ち大きな声でそう怒鳴ると、勝手に決められた腹立たしさからか、目の前に転がっていた小さいクッションを思いっきり蹴った。
壁に向かって蹴ったつもりが足元が狂って、テレビの上の一輪挿しにぶつかった。
幸い、一輪挿しは割れなかったけれど、床が水浸しになっちゃって、慌てて雑巾で拭いた。
あたしには目標も夢も何ひとつない。
よっすぃーと出会って、何か変わらなきゃと思うようにはなったけれど、ただそう思うだけで、結局行動には移せてなかった。
週3日、真面目にバイトに行くようにはなったけれど、ただ、それだけのこと。
何の目的もない人生は、ただイタズラに時を過ごすだけの自堕落な生活と大差変わりないと、自分でも気づいていた。
必死に床を拭いてるのも情けない。
母親に言われたことに対して何も言い返せない自分はもっと情けない。
情けない気分で一杯になったあたしは、思わず家を飛び出していた。
- 212 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年08月30日(金)02時33分53秒
「……で、結局ごっちんはどうしたいのさ?」
無計画に家を飛び出たあたしが行く場所なんて限られている。
あたしはよっすぃーのアパートに来ていた。
よっすぃーのアパートには何回か来たけど、いつ見ても女の子らしい部屋じゃない…というか、殺風景というか…。
必要最低限の荷物しか置かれてない、生活観がなんとなく感じられない部屋だよねぇ。
「…っちん…ねえ、ごっちん、聞いてる?」
「んあ、ごめんごめん。…で、なに?」
「やっぱり、人の話聞いてないし。だからさ、ごっちんはどうしたいの? 学校には絶対行きたくないの?」
- 213 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年08月30日(金)02時35分00秒
「んー、絶対、とかじゃないんだけどね。……何か変わらなくちゃとか、何かやらなきゃとかって自分でも分かってるんだけど。…ほら、よくあるじゃん。片付けようって思ってた矢先に「片付けなさい!」って怒られて、「今やろうと思ってたのに!」みたいな。今回のもそんな感じ? 自分で何かやらなくちゃって思っていただけに、つい、反発しちゃったのかな。…でもね、じゃあ実際、何をすればいいんだろうって考えたら、何も思いつかないんだ。自分でもさ、何をしたいか分からないんだよね。だから、お母さんに言い返せない自分が余計悔しくてさ。…ごめんね、ごとーみたいな中途半端なやつ、よっすぃーにとっちゃ腹立たしいだけだと思うんだけど……こういう話が出来る相手、よっすぃーしかいないんだ」
「いや、良いよ。相談しに来てくれて嬉しいよ」
優しい瞳でよっすぃーはそう言ってくれた。
- 214 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年08月30日(金)02時37分10秒
「…アタシもさ、ごっちんと一緒だから、気持ち、よく分かるよ」
「よっすぃーが…ごとーと一緒?」
「…ん、アタシは何の考えもなく家を出てきたし、夢とか希望なんてまったくないもん。きっと、これからも…」
そう呟くよっすぃーの声は寂しげで切なげで。
彼女の内に秘められた悩みは、あたしなんかの悩みより、もっともっと根深いものなのかもしれないと思った。
「……よっすぃー、ごとーで良ければさ、いつでも相談に乗るから。なんかあったら、いつでも話してね」
あたしがそう言うと、よっすぃーはちょっとだけビックリした表情を見せた。けれど、すぐに穏やかな色に変えた。
あたしが言うのもなんだけど、よっすぃーはすごく嬉しそうだった。
- 215 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年08月30日(金)02時38分23秒
「ありがとう、ごっちん。でもさ、今はごっちんのことでしょ?」
「まぁ、そうだけど…でもさぁ…」
「アタシのことは大丈夫。なんかあったら一番にごっちんに話聞いてもらうから、その時はよろしくね」
「うんっ、任せてよ!」
あたしはそう言うと、胸を張って手のひらをバンと叩いた。
よっすぃーはそんなあたしを見て破顔して言う。
「ハハッ、どっちが相談に乗ってもらってんだか分かんないね」
「あはっ、ホントだ」
そう言って、あたしたちは笑い合った。
- 216 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年08月30日(金)02時40分13秒
その日、あたしはよっすぃーのアパートに泊まった。
「今日はアタシもバイト休みだし、家に泊まっていきなよ」そう言ってくれたから、あたしはよっすぃーの言葉に素直に甘えた。
でも、後から知ったことだけど、よっすぃーは突然やってきたあたしを心配して、バイトを休んでしまったらしい。
休ませるようなたいそうな相談じゃなかったのに…すごく申し訳ない気分。
迷惑そうな顔をおくびにも出さないから気付かなかったよ…。
よっすぃーだって自分の生活が懸かってるって言うのに…。
そういう人の良いところも、よっすぃーらしいって言えば、確かにそうなんだけど。
人のことを気遣えない自分に、ちょっと自己嫌悪に陥るのは少し後の話。
- 217 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年08月30日(金)02時42分06秒
母親の勝手な言い分に腹を立てて家を飛び出てきたあたしだけど、よっすぃーに話してたら、どうでもよくなっていた。
友達に悩みを話すだけで気持ちが晴れるなんて、今までのあたしには知らなかったこと。
まぁ、それは今まで本当の友達がいなかったってことなんだけど…。
人との出会いは大事にしなさいってお父さんが言ってたこと、今ならよく分かる。
よっすぃーに出会えたお陰で、あたしは色んなことを発見してる。
それって、すごい事だと純粋に嬉しかった。
- 218 名前:501 投稿日:2002年08月30日(金)02時56分12秒
- ちょっと短めですが、キリのいいところまで更新しました。
作者の思惑とちょいとズレてしまい、すこーしだけ長めのお話に
なるやも知れませんが、お付き合い頂けたら幸いです(苦笑
>203&204 よしいし読者。さん
自分の駄文をお待ちくださって、本当にありがとうございました!
前回のお話とは切り口が若干違いますが、
最後までお付き合い頂けたらと思います。
>205さん
ああ、こちらにもお待ちくださってた奇特なお方が。
本当にありがとうございます。
最後まで、がんばります。お付き合いよろしくお願いします。
>206さん
温かいお言葉、ありがとうございます(涙
以前よりかなり遅い更新になると思いますが、
ラストまで必ず仕上げますので、
気長にお付き合い頂けたら嬉しいです♪
>あにき。さん
おお、あにき。まで!(w
温かいお言葉、本当にありがとうございます。
出来ることなら横アリまでに仕上げたいのですが…。
ちょっと無謀な計画みたいです(苦笑
- 219 名前:ななっすぃ〜 投稿日:2002年09月06日(金)02時09分19秒
- 初めまして 私も同姓愛者です
この小説を読んで泣きました 読んでいて自分で納得する場面が多かったです
すごく良い作品だと思います!
作者さんの作品をこれからも期待したいと思います
- 220 名前:ほげ? 投稿日:2002年09月07日(土)17時11分46秒
- あの名作の続編をリアルタイムで読めるとはあっしは幸せモンです
また読める愉しみが増えました
- 221 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年09月19日(木)20時30分51秒
- それから一週間後。
あたしは、渋谷へ向かうために品川駅に向かっていた。
一本先の国道にある、渋谷駅行きのバス停のほうが家から近いし、乗客も少ないから楽なんだけど、渋谷駅近辺で絶対渋滞するから今日はパス。
入学式に遅刻するのだけは、さすがのあたしでもごめんだもんね。
そう、結局あたしは、母親が申し込んだ専門学校に行くことにした。
「学校に行ってみるのも良いんじゃない? やりたいことが見つかるかもしれないよ」とよっすぃーが勧めてくれたのも、行こうって気になった理由の一つ。
本当は、自分が変わるきっかけが欲しかったんだ。
でも、新しい世界へ進む勇気がなかった。
よっすぃーが背中を後押ししてくれなかったら、きっとあたしは動けなかったはず。
でも、どうしても母に対しては素直になりきれなくて「入学金まで払っちゃってるんなら仕方ない」と、かなり可愛くない態度を取ってしまったけど。
- 222 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年09月19日(木)20時32分23秒
昨夜、あたしが入学するコースをようやく知った。
DTPデザインコースという、パソコンを使って広告とかを作成する勉強らしい。…って、あまり理解していないけど。
それをよっすぃーに話したら「ごっちんらしいよ」って呆れてたっけ。
まぁ、入学願書を出した母親だって、実際のところはどんなコースなのか理解しているかどうか、甚だ疑問。
あたしは品川駅に着くと、渋谷までの切符を買って山手線のホームへ向かった。
時間は午前10時とあって、ホームは人がまばら。
あたしが通う専門学校のコースは、社会人を主に対象としたもので、週に2日、土日に授業が行われる。時間は午後から。
これが通勤通学ラッシュの時間帯なら、学校に通うのもやめてたかもしれない。
あたしの心意気なんてそんなモンかと思うと、我ながら情けない気になるけれど。
- 223 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年09月19日(木)20時34分02秒
しかし、あたしがパソコンねぇ。
お母さんもどうせなら、別のコースを選んでくれれば良かったのに…。
とは言っても、勉強自体嫌いだからなぁ…。
今更ながら、ブツブツと文句を言ってみる。
ちょうどその時、ホームに電車が入ってきた。
プシューと音を立ててドアが開く。
あたしはドア近くの端の席が空いているのを目敏く見つけ、すかさず座った。
品川から渋谷までは5駅。10分ちょいで着く。
何をするにも中途半端な時間だし、何よりカバンの中には学校に持っていく必要書類と筆記用具だけ。
あたしは、大して代わり映えもしない窓の外を眺めて、暇な時間を潰すことにした。
向かい側を見ようと、ふと見やったその時、見覚えのある青い大きな封筒が目に付いた。表にはアップフロントカレッジのロゴ。
- 224 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年09月19日(木)20時35分02秒
あ、あたしと同じ学校の封筒だ。
…同じ学校の人かな?
少しだけ好奇心が沸いて、あたしはその人物をチラリと見やった。
封筒の持ち主は、あたしより1つ2つ年上に見える、ちょっと小柄な男性だった。
中世的な顔立ちは、格好良いし、可愛らしくも見える。
その人は、参考書らしき本とノートを膝の上に乗せて、真剣な表情で勉強していた。
線の細い印象とは打って変わった真摯な表情は、あたしの琴線に何かが触れた気がする。
あたしのやる気があるのかないのか分からない曖昧な姿勢は、真剣に勉強しようとしている人達に対して失礼な気がして、なんとなく恥ずかしくなってしまった。
行くと決めたんだから、少し頑張ってみようかな…。
そんな風に前向きに思えるようになったのは、同い年なのに、人一倍苦労をしているよっすぃーに触発されたから。
…それと、あの男の人がちょっと自分のタイプだったから…ってのは、内緒の話。
- 225 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年09月19日(木)20時36分20秒
10月も下旬を向かえ、日中でも肌寒さを感ぜずにはいられない日が続いていた、ある日の昼下がり。
久しぶりに秋の柔らかい日差しが街中を降り注いでいた。
ぽかぽかとほんのり暖かい陽気は、心も知らず知らずに弾む。
あたしとよっすぃーは、バイトまで時間があるからと、コンビニの前で季節外れのアイスを食べながら、お喋りに興じていた。
「んで、その後の学校生活はどう? もう慣れた?」
棒状のアイスキャンディを食べながら、よっすぃーが聞いてきた。
ここ最近、お互いに忙しくて連絡も取れずにいたから、心配してくれてたみたい。
「あのね、同じ時間の電車に乗る人がいてね、」
あたしは、よっすぃーに会わなかった間に起こった出来事を、事細かに話し始めた。
- 226 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年09月19日(木)20時37分41秒
あたしはなんとなくあの小柄な男性が気になって、渋谷駅に着くまでチラチラと眺めていた。
何を真剣に読んでいるんだろうと、目を凝らして見てみる。
どうやら写真の専門書みたい。調光補正がなんたらと、難しい漢字が書かれている。
彼はあたしの視線に気付くことのないまま、駅に着くまで、真剣に専門書を読み耽っていた。
電車がブレーキをかけ、ゆっくりと渋谷駅のホームへ入っていく。
あたしはゆっくりとドアの前に立った。けれど、彼は席を立つどころか、資料を片付けようともしない。
…同じ学校の人じゃないのかな?
ちぇっ、つまんないの。
- 227 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年09月19日(木)20時38分21秒
ほんの少し心の張り合いが抜けた気がして、あたしはハァと溜息をついた。
慌しくホームへ降りるサラリーマンを尻目に、あたしはのんびりとホームに降りる。
南口の改札はどっちかキョロキョロ見ていると、発車ベルがホームに鳴り響いた。
その音でようやく自分の降りるべき駅と認識したらしい彼は「やべっ! 降りる、降ります」と、相当慌てた様子で電車を飛び降りた。
その様子がなんだか可笑しくて、あたしはちょっと笑ってしまった。
クールそうな人が間抜けな行動をとると、ちょっと可愛らしくて微笑んでしまう。
彼は気恥ずかしいのか、そそくさと南口へと足を向けた。
やっぱり同じ学校の人なのかな…。
あたしは再び沸きあがった嬉しい感情を抑えて、改札口へと歩き始めた。
- 228 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年09月19日(木)20時39分56秒
学校はあたしが思ったよりも、真新しい、綺麗なところだった。
この学校は、デザイン業界や写真業界、広告、出版業界への人材を輩出している、いわゆる総合専門学校。
フォトクリエイティブ、DTPデザイン、Webデザインなどと、全部で大まかに9コースに分かれていて、生徒数は結構多い。
渋谷という土地柄もあるかもしれない。
学校内はポップな服装に身を包んだ生徒達が大勢いた。
ちなみにあたしが属するDTPデザインコースは、概ね社会人風の人達が過半数を占めている。
あたしと同年代の女の子は、あたしを含めて4人しかいない。
よっすぃーのような「親友」と呼べるほどの付き合いでもないけれど、まぁ適当に仲良くして貰ってる。
彼女達は別コースの人達と合コンするのが楽しいらしく、今日はWebデザインコース、明日は出版コースと、精力的に遊んでいる。
あたしも一回誘われたんだけど、バイトもあったし、さほど興味がないので断った。
- 229 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年09月19日(木)20時41分42秒
肝心の勉強の方はというと…まったく未知の分野だったものを、一から勉強している訳だから、正直言ってすごく大変。
それでも「自分のアイディアで広告を作る」なんて授業は、微分積分なんかよりは遥かに面白かった。
まぁ、それなりに楽しんでやっていると思う。
やってみなくちゃ分からないって、本当だね、よっすぃー。
これが本当にあたしのやりたいことなのか、まだ分からないけれど、もう少し頑張れそうな気がした。
- 230 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年09月19日(木)20時43分18秒
それと、電車の彼はやはり同じ学校の人だった。
彼はフォトグラフィックコースの生徒で、友達らしき人に「いちー」って呼ばれているのを、2度目の授業の時に偶然見かけて、なんとなく嬉しくなったのを覚えてる。
これも偶然だけど、あたしがいつも乗る12時30分山手線7両目に、必ず彼も乗っていた。
10分強の乗車時間。あたしは、彼を眺めることが、いつしか日課になっていた。
それは、彼がいつだって、あたしに力を与えてくれていたからに他ならない。
学校に行くのがかったるいなぁなんて思って電車に乗れば、彼は教材を開いて真剣に勉強をしていて。
バイトに行くのが億劫だなぁと思っていれば、真剣に求人誌を見ながらバイトを探していて。
いつだって、彼は何にでも真剣に取り組んでいて、その度にあたしは彼から勝手にパワーを貰った。
- 231 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年09月19日(木)20時44分16秒
彼は、初めて会ったときから気になる存在だった。
それは、彼が自分の好きなタイプの顔だから、って訳だけじゃない。
常に勉強なり何なりに取り組んでいる彼の姿勢が、やりたいことも分からないでいるあたしには、とても眩しく感じたから。
太陽のような眩く力強い光を放つ彼が、とても格好良いと思った。
この感情が憧れなのか、恋なのか。
あたしにはまだ分からなかった。
確かなのは、電車に乗るたび、彼の教室前を通り過ぎるたびに、彼の姿を無意識に探すようになった、ただそれだけ。
- 232 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年09月19日(木)20時45分34秒
「ふーん、なるほどねぇ……ごっちんは、ちゃんと恋も勉強もしてるんだねぇ…」
あたしが一通り話し終えると、よっすぃーは少し寂しげな表情でポツリと呟いた。
よっすぃーのその表情には、何かに取り残されたような不安な色を見せていた。
けれど、あたしはそれに気付いてあげる事が出来なかった。
「やっぱり、ごとーは「いちー」さんのこと好きなのかな?」
「や、ごっちんの気持ちはごっちんにしか分からないけどさ。…でも、その「いちー」さんの話をしている時のごっちん、すっげーニコニコしてたよ。見てて微笑ましくなる」
「そう言うのって羨ましいよ」よっすぃーはいつもと変わらぬ穏やかな声音でそう話す。
- 233 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年09月19日(木)20時46分32秒
だから、気付いてあげる事が出来なかった。
…いや、違う。
きっと、あたしは浮かれていたんだ。
新しい環境に少しずつでも慣れ始めていて、新しい出会いに胸をときめかせて。
自分の中で初めて生まれた感情に、戸惑いと喜びを感じていて、よっすぃーの事まで考える余裕がなかったと言うのは、あたしの言い訳に過ぎないのだろうか。
よっすぃーの優しい眼差しの奥で静かに揺れていた、哀しい心情に気付かなかった。
よっすぃーの寂然となった心の底に封印されていた、深く、絶望にも似た悩みに。
この時のあたしは、まだ気付いていなかった。
無知が人を傷付けるってことを―――。
- 234 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年09月19日(木)21時00分14秒
- かなり遅れましたが、更新しました。
まだまだ、自分の書きたいシーンまで辿り着けておりません(苦笑
>ななっすぃ〜さん
自分の駄文を涙まで流して読んで下さったとは…とても嬉しいです。
このお話を書いていて、一番不安だったのは、
同性愛者の方が気分を害されたらどうしよう?でした。
ななっすぃ〜さんにこうやってレスをいただけた事、
本当に嬉しいです。ありがとうございます。
更新速度はかなり遅めですが、必ず完結させますので、
宜しければお付き合いください。
>ほげ?さん
もったいないお言葉をありがとうございます。
作者の思惑とちょっと狂い、短編が中編程度の話に変わりそうですが、
良かったら、最後までお付き合いくださいませ。
- 235 名前:読者 投稿日:2002年09月19日(木)23時47分03秒
- >無知が人を傷付ける
私の大好きな本にこれと同じ言葉がありました。
「学校の勉強なんてしなくても生きていける」という主人公に
「勉強できるのならした方がいい。無知は人を傷つける」
と、ある男性が諭す場面があるのです。
このセリフが好きで、愛読書になりました。
因みにマンガなんですけどね(w
とても色んな事を考えさせてくれる小説で、
何度も繰り返し読ませて頂いてます。
これからも頑張って下さい。
- 236 名前:ほげ? 投稿日:2002年09月21日(土)20時24分12秒
- >無知が人を傷付ける
重い言葉ですよね
自分が幸せで浮かれてると周りには見えなくなるものです
読者さんの言うとおり、いろんなことを考えさせてくれる作品です
- 237 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月21日(土)20時55分36秒
- 1の方もずっと読ませていただいていたのですが、
いちごまになる過程ってどんなんだったんだろうと密かに思ってたので、
今回のお話にサブでも入っていて嬉しかったです。
がんばってください!
- 238 名前:501 投稿日:2002年10月02日(水)23時05分48秒
- 更新が激遅で本当に申し訳ありません(T〜T0;)
放置だけは絶対にしませんので、
もうしばらくお待ちくださいませm(_ _)m
レスの方はまた後日改めて……(汗
- 239 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年10月07日(月)18時02分19秒
- また〜り、やってください、待ってま〜す。
- 240 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年10月12日(土)23時52分44秒
- 12月を迎え、新宿駅周辺もクリスマスカラーに包まれて賑やかしくなった。
浮かれ気分の街並みは、薄ら寒い夕風も温かく感じさせるパワーがあるような気がする。
今は学校の帰り道。
あたしは、同じクラスの斉藤さんと村田さんと大谷さんの4人で、歌舞伎町の居酒屋へ向かおうとしていた。
何故あたしがこのメンバーで居酒屋に向かっているのかというと、そもそもの発端は今日の授業開始15分前のことだった。
授業が始まるまで…と一眠りをしていたら、同じコースの斉藤さんが「困った困った」と携帯片手に教室へ駆け込んできた。
「参ったよー。柴田、今日来れないってー」
あたふたと携帯を掛けては切ってを繰り返している。
「今日に限って誰も捕まらないよー」と、かなり焦っている様子。
- 241 名前:501 投稿日:2002年10月12日(土)23時53分16秒
- 「えー、ヤバイじゃん、数足んないよ」
それまでのんびりお菓子を食べていた村田さんも、慌てたように答える。
大谷さんも慌てて電話を掛けだしたけれど、しばらくすると「駄目だ、誰も出ない」と両手を挙げた。
「他に誰かいないの?」
「いないよー。…どうする?」
「4対3じゃマズイよねぇ…」
彼女達は「どうするどうする」と思案顔。
あたしは何があったのだろうとボーっと彼女達を見ていたら、思わず斉藤さんと目が合った。
- 242 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年10月12日(土)23時54分19秒
- 「……あ、いい人がいるじゃなーい」
ニコニコと近付いてくる斉藤さんの笑顔の奥には、怖いくらいの気迫が見え隠れして、ちょっとばかり怖かった。
「なんか慌ててたみたいだけど、なんかあったの?」
内心何を言われるのだろうと、ちょっと不安になりながら理由を聞く。
彼女は「よくぞ聞いてくれました!」とパンと手を叩いて話し始めた。
- 243 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年10月12日(土)23時54分56秒
- …で、まぁ、とどのつまりは「合コンに行こう」のお誘いで。
約束していたはずの友達が、土壇場でキャンセルをしてしまったらしく、どうしても面子が足りないらしい。
「お願い、後藤さんっ! 一生のお願いだから!」
3人は顔の前で両手を合わせてあたしを拝む。
けれど、そう言うのに興味がない…というか、どちらかといえば苦手なあたしは「ちょっとなぁ…」と言葉を濁した。
「後藤さん、前に誘った時も逃げたよね。たまにはパーっとはじけようよー」
斉藤さんがそう言うと、2人も「そうだそうだ」と頷く。
- 244 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年10月12日(土)23時55分32秒
- 「…だってさぁ、知らない人達と遊ぶんでしょ? ごとー、人見知りするから場が白けちゃうかもよ?」
「後藤さん可愛いから大丈夫だよ。男の子達もみんな気をつかってくれるって」
大谷さんはそう言うけれど、気を使って貰おうと貰うまいと、苦手なものは苦手なわけで。
あたしが「でもなぁ」と難色を示していると、斉藤さんが口を開いた。
「人と出会う機会って、私達が思うよりかは少ないと思わない?」
「はぁ…まぁ、そうかな」
「人の出会いは一期一会、大事にしなくちゃいけないのに、出会う機会が少ないのってもったいないでしょう?」
「…そう、なのかなぁ?」
「そうなんだって! 合コンって学生のお遊びみたいに思われがちだけど、色んな人との出会いがもてる、いいきっかけなんだよ?」
斉藤さんはどこかの勧誘のように、立て板に水の如く、あたしを誘う。
まぁ、確かに…人の出会いは大切だよね。
あたしがよっすぃーっていう大切な友達と出会えたように。
- 245 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年10月12日(土)23時56分17秒
- 「それに、今回はフォトクリエイティブコースの美男子が揃ってるって話だし、行って損はないと思うんだけどなぁ」
「…フォトクリエイティブ?」
「おっ、ちょっと話に乗ってきたね?」
ニヤリと斉藤さんは笑って言う。
村田さんは「ちょっと待ってね」と、授業のノートの隅に走り書きした文字を読んだ。
「えっとね……今日の参加者は、寺田君と大島君と中野君、それと、市井君。私も話したことはないからよく分からないけど、みんなカッコイイ男の子達だよ」
「いちー」さんも参加するんだ。そっか…。
……どんな人なんだろう?
電車とか学校で見た感じでは真面目そうな雰囲気だったけど、意外にさばけた人だったりして。
それとも、やっぱり印象通りの人なのかなぁ。
友達と話してた時の、あの思いっきり破顔した笑顔、また、見れるかな?
あどけない笑顔で、すごく可愛かったんだよね。
- 246 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年10月12日(土)23時56分48秒
- ぐるぐると、まだ一言さえも言葉を交わしていない彼を想像する。
彼のことを考えるととても楽しくて、自然と微笑むあたしがいる。
でも、ほんの少しだけドキドキもして。
それがすごく不思議な感じ。
よっすぃーが言ってた通り、やっぱりあたしは恋をしてるのかなぁ?
うーん…まだ、分かんないや。でも…。
「……どう? 参加する気になった?」
ぼぉっとそんな事を考えていたら、斉藤さんが窺うように聞いてきた。
大谷さんと村田さんも「後藤さんに断られたら、他の女の子探すしかないんだ。助けると思って、お願い」と、必死な目をしてあたしに言う。
「うん…じゃあ、参加する」
あたしは現金にも、市井さんと会う事だけを楽しみに、首を縦に振った。
- 247 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年10月12日(土)23時57分52秒
あたし達は新宿コマ劇場近くにある大衆居酒屋に着くと、もうすでに来ている男の子達の姿を探した。
「あ、いたいた〜」
斉藤さんが目敏く見つけ、指を指す。
40畳ほどある座敷の一番奥に、4人用のテーブルをふたつくっつけて、男の子達が横一列に座っていた。
そして、市井さんはやっぱりあのいちーさんで。
彼の姿が見えたとき、あたしは内心嬉しくて、踊りたくなるほどだったんだ。
「待たせちゃってゴメンネ」と斉藤さん。
「や、俺らもさっきついたばっかなんだ」
一番左の眼鏡を掛けた人がそう言う。
隣に座っている体育会系風の人が「まぁ座って」とあたし達を促した。
あたし達は挨拶もそこそこに席へ着く。村田さん、大谷さん、斉藤さんが順に奥の席へと収まっていった。
一番最後をノロノロ歩いていたあたしは、必然的に一番右端の、市井さんの目の前に座った。
やった、ラッキー。
- 248 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年10月12日(土)23時58分30秒
- 「まずはとりあえず注文して、それから自己紹介しようか」
そう言って場を仕切るのは、眼鏡の人。合コンし慣れてる、ちょっと軽薄そうな感じ。
あたしは渡されたメニューを眺めながら、チラチラと市井さんを見た。
いつもの真剣な表情とはまた違う、ちょっと顰めた感じの表情。何だかすごく不機嫌そう。
なにか、あったのかな?
それからほどなくして店員がやってきた。
みんな、生ビールだのサワーだの唐揚げだのサラダだのと、次々に注文をする。
- 249 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年10月12日(土)23時59分11秒
- 「あと注文してないのは…市井と彼女だけか、何頼むか決まった?」
「俺、烏龍茶」
「みんな乾杯するのに一人だけ烏龍茶はないでしょう。パーっとやろうよ」と、斉藤さんは場を盛り上げるように明るく話す。
「烏龍茶でいい」
それでも、いちーさんはぶっきらぼうにそう言って、ぱさっとメニューを下に置いた。
「市井は酒弱いから、まぁいいや。…えっと、彼女は何にする?」
「あ、ごとーは……うん、じゃあジンフィズでいいや」
注文を終えると、なんとなく微妙な雰囲気に包まれたこの空気を散らそうと、眼鏡の人が気持ち高めにテンションをあげて話し出した。
- 250 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年10月12日(土)23時59分50秒
- 「さ、じゃあ、改めて自己紹介しようか! 俺はフォトクリエイティブコースの寺田です。撮影スタジオでバイトをしながらフォトグラファーを夢見ているピチピチの20歳です。よろしく!」
寺田君、大島君、中野君と、ノリとテンポで自己紹介していく。
合コン慣れしているらしい彼らのトークは確かに小気味良いし、面白い。
けれど、正直なことを言ってしまえば、あたしは彼らにさほど興味はない。ごめんなさい。
あたしは、出された小鉢の中身を突付いている、目の前で仏頂面している彼のことが気になってしょうがなかった。
漸くいちーさんの順になり、どんな自己紹介をするのか興味津々。
けれど、彼は相変わらず仏頂面のまま「市井です」と、めちゃくちゃシンプルな自己紹介で済ませた。
- 251 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年10月13日(日)00時00分41秒
- すごくシンプルな人なんだね…って、そういうことじゃなくて。
なんで彼がこんなにも不機嫌なのか、すごく気になる。
でも、だからって、この場で「なんでそんなに不機嫌なんですか?」なんて、さすがのあたしでも聞けるわけない。
そりゃ、あたしだって、こういう場ってあんまり好きじゃないし、いちーさんがいるかもしれないって思って参加したような不届き者だけど…。でも、参加するからにはちゃんとしようって決めてきたのにな…って、まぁ合コンでちゃんとするってのもなんか変だけどさ。
あーあ、いちーさんって、こういう人だったのかなぁ…ちょっと、ショック、かな。
あたしはそんな事を考えながら、勧められるまま、カクテルを1杯、また1杯と飲んでいった。
- 252 名前:501 投稿日:2002年10月13日(日)00時09分50秒
- キリがいいのか悪いのか…ひとまず更新致しました。
かなりの日を空けてしまったこと、お詫び申し上げますm(_ _)m
何度も書いてはいますが、最後まで仕上げますので、
マターリお待ちいただけたら幸いです(汗
>読者さん
知らなかったから、人を傷つけてしまったとしても仕方がないって言うのは、
言い訳に過ぎないですよね。
分からないなら分かろうとする努力が大切だと、最近富に思うようになりました。
この駄文を何度も読んでくださって、本当にありがとうございます。
更新かなり遅くなりがちですが、最後までお付き合い頂けたらと思います。
- 253 名前:501 投稿日:2002年10月13日(日)04時12分22秒
- >ほげ?さん
>自分が幸せで浮かれてると周りには見えなくなるものです
全くもってその通りですね。
本人の幸せが他人にも伝染すればいいのですが、
人生はなかなか思うようにいかないですしね。
>237さん
番外編を書こうと初めに思ったとき、いちごまになる過程は
ぜったいに欠かせないと思っていたんです。
ところがいざ書いてみれば、ここの市井さんは男の設定だし…と、
いろいろ悩むところが多くて…(^^;)ゞ
ですが、最後まで書き上げますので、お付き合いよろしくお願いします。
>ひとみんこさん
温かいお言葉、ありがとうございます。
今後はなるべく早め早めに更新できるように頑張りますので…(^^;)ゞ
- 254 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月21日(月)13時54分40秒
- 某スレでこの小説を知ってはじめて読みました
すごく泣いたし感動しました!
ごっつぁんの恋も気になります
作者さんがんばってください!
- 255 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年10月24日(木)22時45分25秒
- ……んぁ、なんか、寒い…。
「あれ? …ここ、どこ?」
あまりの寒さに目を覚ましたあたしは、気がつけば駅のホームのベンチに座っていた。
ホーム内には冷たい北の風が吹き入る。昼間と比べ物にならないほど急激に冷え込んだ夜の空気は、コートの上からも遠慮なしに寒さを差し込ませてきた。
あたしはブルブルっと体を震わし、辺りを見回した。
ホーム内には会社帰りらしきサラリーマンが数人ほどいて、次発の列車を待っている。
…ここは、品川駅…だよね。
確か、あたし…合コンに参加してたはずなのに…なんで?
- 256 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年10月24日(木)22時45分58秒
- お酒臭い白い息を吐きながら、あまり回転しない頭を無理矢理フル稼働させて思い出してみた。
市井さんの態度に少しばかりショックを受けたのと、雰囲気が盛り下がるのもなんだと思い、勧められるままにカクテルをバンバン飲んだのは覚えてる。
…で、結構いい気分になってきて、それで、誘われるままカラオケボックスに行って、歌って、お酒を飲んで、そして………その後がどうしても思い出せない。
みんなにちゃんと挨拶して帰ってきたのかな?
それより、あたしは、どうやってここまで来たんだろう?
…って言うか、このコート…あたしのじゃないよね……誰のだろ?
肩掛けしているコートは見覚えがないものだった。酔っ払って誰かのを勝手に持って来てしまったのかもしれない。
必死で抜け落ちた時間を思い出そうとしてみるけれど、カラオケボックス以降の記憶がどうしても思い出せなかった。
- 257 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年10月24日(木)22時46分35秒
- 「ダメだぁ、思い出せないや…」
もしかしたら、みんなの…市井さんの前で、なにか失態をしてしまったのではないかと不安になった。
頭の痛みは無いけれど、胸の辺りがムカムカしてくる。ほんの少しの自己嫌悪も襲ってきた。
思い出せないものは仕方がないと、いつものあたしなら、さほど気にすることもないんだけど…、さすがにちょっと落ち込んでしまう。
はぁ…記憶が抜けるようなお酒の飲み方しちゃダメじゃんよ…。
でも、市井さんがあんな態度を取らなければ、あたしだってそんなに飲む気にはならなかったはず。
そうだ、絶対そう。全部市井さんのせいだ、うん。
確かにあたしの中で、市井さんのイメージを大きく膨らまし過ぎてたのかもしれないけど…ちょっと、ショックだったんだよね。
- 258 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年10月24日(木)22時47分13秒
- あたしはフゥと大きく溜息をついて、空を見上げた。
冬の澄んだ空気のおかげか、ビルの隙間から星々が煌めいていた。
「こんなに綺麗な夜なのになぁ……」
すっきりとしない胸の内は飲み過ぎたせいばかりじゃない。
やっぱりあたしは市井さんのことが好きなんだろうな…。
「目、覚ましたか?」
釈然としない想いを抱えながら空を眺めていると、背後からふいに声を掛けられた。
突然声を掛けられてビックリしたあたしは、ゆっくりと後ろを振り向いた。
そこには、500ミリペットボトルを両手に抱えた市井さんがいた。
いるとは思ってもみなかった彼が目の前にいて、尚且つあたしに話し掛けている。
少なくとも、あたしの記憶の中ではありえないこのシチュエーションに、一瞬頭が混乱した。
- 259 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年10月24日(木)22時47分54秒
- 「え、なんで?」
「なんで市井さんがいるの?」思わず出た言葉はそんな陳腐で失礼な質問で。
市井さんは、きまりの悪そうな、恥ずかしそうな、どこか曖昧な表情で、あたしの質問に短く答える。
「帰る方向が一緒みたいだったから…」
「…あ、そっか」
それで、ここまで連れてきてくれたんだ…って、あたしんち教えてないよね?
斉藤さん達に聞いたのかな?
そんな事を考えながら、ぼぉっと市井さんを見つめていたら、彼はちょっと慌てたようにペットボトルを差し出した。
「あ、飲みすぎて気持ち悪いだろ? 飲めよ」
「あ…どうも、ありがと…」
あたしはミネラルウォーターのペットボトルを受けとった。
ボトルキャップをかじかんだ手で開け、一口、また一口と飲んでいく。
喉の辺りにとどまっていた苦々しいものが、ミネラルウォーターのおかげですぅっと流れていく感じがした。
- 260 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年10月24日(木)22時52分43秒
- あたしも市井さんも、何も喋らない。ただ、悪戯に時間だけが過ぎていく。
市井さんは、カイロ代わりにしていたお茶をごくりと飲んだ。間が持たないのか気まずいのか、小さな声で「あちー…」と呟く。
どうしよう…なんか、話したほうがいいよね。
でも、なにも話すことがないっていうか…、さっきの合コンで全然喋ってないから、何を話せばいいのか分かんないよ。
この沈黙が何とも気まずくて、あたしは必死で会話を見つけようとした。でも、やっぱり見つからない。
隣に座った市井さんは手持ち無沙汰にお茶のボトルを手でコロコロ転がして、意味もなさげに線路を眺めている。
…ったく、少しは気を使ってそっちから話してよ。
そんな市井さんに腹を立て、逆恨みな気持ちも薄っすらと、気がつけばとんでもない事を口走っていた。
- 261 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年10月24日(木)22時53分32秒
- 「市井さんって、女の人に興味ないの?」
あたしの口から出た言葉は、ある意味八つ当たり的な暴言。
こんなこと、酔っ払ってなきゃ言えないよね。…や、お酒のせいにして、つっかえている胸のもやもやだとかムカムカを取り除きたかったのかもしれない。
「はぁ?」
市井さんは、あたしの突拍子もない質問に怪訝な顔を隠さない。
「…だって、合コンの間、ずっとつまらなさそうにしてたから」
「……合コンとかして、チャラチャラしてる女が好きじゃないだけだ」
「そんな、好きじゃないなら来なきゃ良いのに」
あたしは、ズバズバと物を言う自分自身にビックリしていた。
今までのあたしなら、絶対にこんなこと言わない。
…でも、あたしの言うこと、間違ってないと思うけどな。つまんないまま参加するのはよくないもん。あたしだって人見知りするタイプだけど、参加するならちゃんとしようって、結構頑張ったと思うよ。…ま、その結果がこれだけど。
- 262 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年10月24日(木)22時54分35秒
- 「……どうしてもって頼まれたから仕方なく来たんだ。別に本意じゃない…なのに…」
「なのにアンタがいたから…」と、市井さんは拗ねた子供のような表情で言う。
その時、ちょうど電車がホームに滑り込み、最後の言葉がかき消された。
「えっ? ごとーがなに?」
「なんでもない」
「え、気になるじゃん。ごとーがいたから、なんなの?」
市井さんは答えようとしない。あたしはそれでもしつこく食い下がった。
「……だから…その、気乗りのしない合コンに無理矢理連れてこられて、そこにアンタが現れたからビックリしたんだよ!」
市井さんはぶっきらぼうにそう答える。
彼の耳が、頬が、真っ赤に染まる。
だけど、お酒の残っている、元々鈍感なあたしが、そんな些細な変化に気付くわけもない。
- 263 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年10月24日(木)22時55分22秒
- あたしが来ただけで不機嫌になられるほど嫌われているのかと思ったら、何だか無性に悲しくなった。
あたしはただ、電車の中で偶然見かけて、頑張っている姿に惹かれただけなのに…。
「ごとーがいたらなんで不機嫌になるの? ヒドイよっ、ごとーは楽しみにして来たのに!」
「や、ちが…」
「ごとーは市井さんが来ると思ったから…だから合コンに行ったのに!」
「…ちがう…………え?」
「話もしたことないのに、嫌われるなんて…」
あ、ダメ…泣きそうになってきた。
でも、ここで泣くのは反則だと、あたしは涙を必死で堪えた。
- 264 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年10月24日(木)22時56分25秒
- 「ちがっ、違うんだよ!」
市井さんはあたしが泣きそうなのを察知したのか、おろおろしながら言葉に詰まる。
ちょっぴり悲しい時なのに、市井さんの慌てた姿を見るのは2度目かなぁ、なんて、何故か冷静に思った。
「市井の言い方が悪かった。あの…その…、後藤さんのことを、嫌ってるわけじゃない」
「………じゃあ何で?」
「前から、後藤さんのこと知ってたんだ。…だから、合コンに来たのを見てビックリしたって言うか…」
「……知ってた…て?」
市井さんは困ったような表情で、頭をガシガシと乱暴に掻きながら「ああ、もう…くそっ」と、ほんの少し投げやりに呟いた。
- 265 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年10月24日(木)22時57分00秒
- 「…いつだったか、電車の…山手線の中で、子供が転んで泣いているのを見たんだ」
「………は?」
突然彼は何を話し出すのだろう? あたしはちょっと戸惑った。けれど、市井さんは構わず話し続けた。
「…市井はその子供からかなり離れたところにいたし、市井を含めた他の乗客達は「近くに親がいるだろう」って、ただ傍観してたんだ。すると、市井の斜め前にいた女の子が、スッと立ち上がって、その子供のところまで行くと、転んだ子供を起こしてやった。散らばったオモチャを拾ってやると、子供の目線にスッとしゃがんで、彼女は何も言わずににっこり微笑んで、子供にオモチャを手渡した。……さり気無い彼女の行動が、市井はすごく感動したんだ」
彼が何を話しているのか、あたしは漸く気付いてハッとした。
市井さんは続けて話す。
- 266 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年10月24日(木)22時57分41秒
- 「それから、ずっとその子のことが気になってた…でも、だからって、話し掛けることも出来ないじゃん。…チラチラ眺めるぐらいしか、市井には出来なかった。……嫌々駆り出された合コンにその子が現れた時には、ビックリしたけど、すごく嬉しかった。でも、その反面、なんかイライラしてさ。「この子も遊んでる子なのか」って。人のことを自分の物差しだけで判断しちゃいけないことも分かってる。だけど、頭で分かってても、心がそれに追いつかない感じ? 気がついたら、あんな態度取ってた。……他の子達にも悪い事をした。ごめん」
市井さんは照れ臭そうに、頭を下げた。
あたしは安堵感に包まれて、独り言のように呟いた。
「そっか…じゃあ、ごとーは嫌われてた訳じゃないんだ」
- 267 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年10月24日(木)22時58分46秒
- 「嫌ってるなんて…あの、合コンってイメージが悪かっただけで………後藤さんのことはむしろ……や、その……だから、気になってたっつーか…」
ひどく照れ臭そうにそう話す市井さんは、やっぱり可愛い…なんて思ったり。
こんな風に市井さんに言われたから、ちょっと舞い上がってるのかもしれない。
もやもやなんて、知らない内にどっかに吹っ飛んじゃったみたい。
やっぱり、市井さんのことが好きなんだ。
今、あたしの心は、ちょっと、結構、相当、嬉しい。
あたしはこみ上げる嬉しい感情をちょっとだけ抑えて、「ごとーも、市井さんのこと…ずっと知ってたよ」ニッコリとそう微笑んだ。
- 268 名前:501 投稿日:2002年10月24日(木)23時05分41秒
- 相変わらず更新が遅くて本当にすみません。
週1くらいのペースで出来るように頑張りたいです(汗
>254さん
駄文を読んでくださってありがとうございます(喜
某スレとは…どこでしょう?ちょっと気になる。
恋の行方はある意味おまけ的なモノだったんですが、
これが作者には相当クセモノで、かなり悩まされました(w
- 269 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月25日(金)09時23分35秒
- どうなるかと思ったけど、いちごまもまとまりそうでよかったです。
名作をまた読ませてもらえるだけで幸せなんで、501さんのペースで頑張ってください。
- 270 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月30日(水)23時48分28秒
- 週1……そろそろかな、期待sage
- 271 名前:ほげ? 投稿日:2002年11月01日(金)12時36分19秒
- 二人はこんな風にはじまったんですね
誤解が解けてめでたしめでたし
- 272 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年11月02日(土)00時06分30秒
気付かぬ内に、お互い気になる存在だったあたしと市井さんは、合コンのあの夜をきっかけに、食事をしたり、遊んだりするようになっていた。
市井さんは、やはり想像通りというか、自分の夢を熱く語り上げる熱血漢な人で、
「ごとー、見てろな! いつかいちーは世界をまたにかけるフォトグラファーになってやる!」…なんて、まるで子供みたいに一生懸命夢を語る姿は、「やる気」って単語と無縁な生き方をしていたあたしにとって、とても新鮮だったし触発もされた。
イマドキ、夢だなんだと語ること自体、格好悪いって思う風潮があるし、以前のあたしなら確かにそう思っていたかもしれない。
けれど、今は違う。
フォトグラファーになりたい一心で、親の反対を押し切って家まで飛び出してしまう、ちょっと無鉄砲で考えなしなところさえ、魅力的に思えてしまうのは、恋する女の欲目なのかもしれないけれど。
それでも、市井さんは格好良いと思う。
市井さんの撮った写真をあたしが広告デザインする…そんな将来も悪くないと、漠然と思うようになっていた。
- 273 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年11月02日(土)00時08分06秒
- 年の瀬も迫り、誰も彼もが慌しく過ごしている。
いつもならば、閑散としている商店街も、買い物客で少々賑わいを見せている。
目の前の通りは車が詰まっている。どうやら国道から抜けようと紛れてきて、渋滞につかまったみたい。
…毎年思うことだけど、何で年末になると、これでもかってくらい車で溢れるんだろう? 不思議だよねぇ。
あたしはそんなことをぼんやり思いながら、流れがまったく進まずにイラついているドライバー達を横目に、バイト先へと足を速めた。
- 274 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年11月02日(土)00時09分07秒
- ビデオ屋に着くと、ちょうどよっすぃーが店を開けようとしているところだった。
「おはよう、よっすぃー」
「あ、おはよう。参ったよー、ボロシャッターが開いてくんなくてさぁ」
そう言って、バンとシャッターを叩く。よっすぃーの頬がほんのり赤くなっていて、必死に開けようとしていたことを窺わせた。
「ごとーも手伝うよ」
古くなったシャッターは、開けるときにほんの少しコツがいる。あたしは斜め掛けしていたショルダーバッグを下に置き、よっすぃーとせえのでシャッターを一気に押し上げた。
「サンキュー、ごっちん。早くしないと遅刻になっちゃうね」
よっすぃーは自動ドアの鍵を開けると、すかさず店内に入り、奥のロッカールームに設置されている防犯システムに解除キーを差し込んだ。
これ、店の鍵を開けてから3分以内に解除しないと大変な事になるんだよねぇ。
あたしとよっすぃーが初めて開店準備を任されたとき、二人とも解除の仕方を思いっきりど忘れしちゃって、セコムのガードマンはおろか、滅多に来ない社長まで慌てて来て、大騒ぎになったことあったっけなぁ。
- 275 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年11月02日(土)00時10分08秒
- あたしはそんな思い出に身を馳せながら、のんびり店内に入っていくと、よっすぃーは「タイムカード押しといたよ」と人の良い笑みを浮かべながら、開店の準備をし始めた。
あたしは「ありがとう」と礼を言い、ロッカーに荷物を押し込んで、急いで開店の準備に取り掛かる。
よっすぃーが貸出管理システムを立ち上げているので、あたしは裏口からほうきを取り出し掃除を始めた。ここは他のビデオ屋と違って、店内が小さいだけ掃除も楽だから良い。
適当に掃除を終わらせて、立て看板を表に出していると、ビデオの返却をしに中学生の女の子が来た。
「すみません、もう、大丈夫ですか?」
「あ、はい、今開けたところです。どうぞ」
そう言って店内へと促す。
- 276 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年11月02日(土)00時10分55秒
- 女の子はありがとうございますと丁寧に頭を下げると、一目散にカウンターへと向かった。
返却確認を終えても、女の子はカウンター前から動こうとしない。どうしたんだろうと思っていると、思い切ったように口を開いた。
「…あのっ、店員さんのお勧めビデオってありますか?」
「へっ? あたしの、ですか?」
突然訊ねられたよっすぃーは、いささかビックリした様子だったけれど、すぐにいつもの優しい笑みを浮かべながら、「ベタだけど、アルマゲドンとか面白いですよ」と女の子に答えた。
女の子は「じゃあ、それ貸してください」とパァっと表情を明るくさせて言った。
ふふーん……あの子、よっすぃーのことが好きなのかなぁ? …ま、よっすぃーってボーイッシュで格好良いし、学校の先輩に憧れてるって感じなんだろうけど。いいねぇ、青春だねぇ。
- 277 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年11月02日(土)00時12分21秒
- 女の子はよっすぃーに渡されたビデオを胸に抱え、頬をほんのり染めて嬉しそうに店を出た。
「若いっていいねぇ」なんて、年寄りじみた台詞を吐きながらカウンターに戻ると、よっすぃーは「何が?」とはてな顔であたしを見る。
あたしも大概鈍感だけど、よっすぃーもかなりのニブチンだよねぇ。
「んーん、なんでもなーい」
「何だよー、気になるじゃん」
「そんなに鈍感だと、女の子にもてないぞ」
アハハと笑いながら、よっすぃーのおでこを人差し指でツンとつつく。
それは、いつも遊びで交し合う、ほんの軽口のつもりだった。
「何言ってんの」なんて、笑いながら言い返してくると思っていた。
- 278 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年11月02日(土)00時13分44秒
- けれど、よっすぃーは、その大きく澄んだ瞳に陰を落とした。
それは、怖いとも悲しいとも言いようのない、曖昧な表情。
でも、それはほんの一瞬のこと。
すぐに、唇を横に引っ張りニッとする人好きする笑顔を浮かべ、「あたしはいつだってモテモテだぜぇ」とおどけて言った。
だから、あたしはまだ気付けずにいた。
分かっていたら、こんな事を言えるはずもなかった。
自分の無神経さに胸を痛めるのは、まだ、もう少し先の話。
- 279 名前:501 投稿日:2002年11月02日(土)00時27分55秒
- キリのいいところまでアップします。
更新量が少なくてすみません…(T▽T;)
>269さん
温かいお言葉をありがとうございます(感涙)
いちごまもどうにかなりそうなので、やっと安心しております(^^;)
相変わらずののんびりペースではありますが、お付き合いよろしくお願いします。
>270さん
ああ…、すみませんすみません(T▽T;)
週1と自分に課題を上げたのに、初っ端から遅れてすみません。
(自分の中での)ヤマ場を越せたので、どうにかなるとは思うんですが…。
マターリお付き合い、よろしくお願いします(;0^〜^)
>ほげ?さん
二人の出会いはあまりドラマチックにさせたくなかったので(w)、
どこか穏やかでゆるい空気のお話になってしまってますが…(^^;)ゞ
どうにかいちごまサイドストーリーがまとまって一安心です(苦笑
- 280 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月02日(土)08時05分21秒
- ひーさま、切ない・・・?
作者さん、ひーさまにも幸せを!
- 281 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年11月02日(土)08時10分09秒
- 連続かきこスマソ。
番外編と言うのを忘れてますた。(汗
- 282 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月11日(月)22時57分13秒
- 期待sage
- 283 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年11月17日(日)20時13分53秒
- テレビの中も街並みもクリスマス一色。
今日はクリスマスだってのに、すごくつまんない。
…と言うのも、あたしは家に一人でお留守番。
姉は昨日の晩からイソイソと出掛けたし、弟も「姉ちゃん、今年も一人かよ」と憎まれ口を叩きながら出て行った。両親も歌舞伎のチケットが手に入ったからと、いつもよりちょっとおめかしして今さっき家を出た。
よっすぃーを誘ってカラオケにでも遊びに行こうかと思ったけど、彼女は相変わらずバイトに明け暮れてるし。
…そんな訳で、あたしは今一人ぼっち。
- 284 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年11月17日(日)20時15分06秒
- 「つまんないよぉー」
こんな独り言、今日に限っては、やたら寂しい。
あたしはつけていたテレビを消すと、ゴロンと寝っ転がった。
つい先日買ったばかりの真新しい携帯に手を伸ばし、まだ数件しか入っていない電話帳のメモリーを開く。一番最初にある名前を見て、思わず溜息を吐いた。
今日と言う日を、一緒に過ごしたい相手…市井さんからはまったくナシのつぶて。
あたしが思う限り、市井さんとはいい感じの雰囲気になってきていた…と思うんだけど……でも、市井さんから告白めいたものがまったくないし…。
やっぱりここは女のあたしから、告白をどーんとすればいいのかなぁ。うーん、でもなぁ…。
市井さんもあたしに好意を持ってくれていると思ったのは、あたしの自意識過剰な思い過ごしだったのかな…と、本日5回目の溜息をした。
- 285 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年11月17日(日)20時16分30秒
- 携帯の着信メロディが突然鳴り響き、あたしはそれに驚いて目を覚ました。
どうやらあのまま眠っちゃってたみたい。
部屋の中も窓の外ももう真っ暗なことから、あれからかなり時間が経ったと分かる。隣の家の窓から漏れて入る電灯の明かりがやけに明るくて、ちょっと寂しく感じた。
あたしの手のひらの中では「クリスマスイブ」のメロディが粘っこく鳴っている。
誰だろうとディスプレイを見てみると、そこには「市井さん」の文字。
あたしは脳に考える間も与えないまま、急いで通話ボタンを押していた。
「はいっもしもしっ、ごとーですっ」
『ずいぶん元気良いなぁ』
勢いのまま電話に出たあたしが面白かったのか、開口一番、ハハハと笑う。その笑い声にどこかホッと安堵したような色が含まれていた気がした。
電話の向こうは何やら華やかに賑やかしい。暗い室内の中に一人ぼっちでいるせいか、寂しさと悔しさが相まって、無性に腹立たしく感じた。
あたしは八つ当たり気味に、ぶっきらぼうな返事をした。
- 286 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年11月17日(日)20時17分46秒
- 「いちーさん、何か用?」
『あ、うん、用があるっつーかさ、まぁその、なんだ…』
市井さんは言葉も曖昧に、全く要領の得ない話っぷり。
あたしは怪訝な声を露わにした。
「……いちーさん、どうしたの?」
『や、だからね…今日はその…寒いなぁ』
「雪が降るかもしれないって天気予報で言ってたよ」
『だからこんなに寒いのか、そっかそっか』
「…で、いちーさんどうしたの? 用がないなら切るよ?」
『あ、ちょっと待った待った! 今、ヒマ?』
- 287 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年11月17日(日)20時18分55秒
- 暇もヒマヒマ。さっきまで居眠りこいてたから、顔にホットカーペットの痕がついてるくらい暇。
でも、それなのに。
「暇じゃない……けど……まぁ、忙しくもないよ」
あたしの口から出た言葉はそんな可愛げのないもので。
本当は市井さんから掛かってきて嬉しいくせに。…こんな自分が嫌になるよ、もう。
ちょっぴり自己嫌悪に陥っていると、市井さんはクスッと笑って聞いてきた。
『じゃあさ、あの、少しだけでいいから、いちーに時間くれない?』
- 288 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年11月17日(日)20時20分01秒
- ドキンと胸が高鳴った。
何となく。
そう、何となくだけど。
鈍感なあたしでも、このシチュエーションは、きっと、そう、だろうと思う。
クリスマスの夜にちょっと意味ありげに「時間をくれないか」と言われれば、ドキドキしてしまうに決まってる。
あたしがもうちょっと大人で恋愛巧者なら、こういう時さらりと上手に駆け引きすることも出来るんだろうけど、こちとらまだまだ16歳のお子ちゃまなので、真っ向から受け止めることしか出来ないんです。
「…うん、いいよ」
『ありがとう! あの、品川駅の山手線ホームで待ってるから、ごとー来てくれるか?』
- 289 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年11月17日(日)20時20分50秒
- あたしがオッケーすると、市井さんは嬉しそうに弾んだ声色でそう言う。
山手線…って、そんなとこでどうするの…?
「山手線ホーム?」あたしはちょっと訝しげに聞き返した。
『うん、待ってるからな』
「…家を出る支度してないから…少し遅れるかも」
ああ、だからそんな可愛げのないこと言っちゃ駄目じゃん、あたしってば!
けれど市井さんは「待ってるから大丈夫」と電話を切った。
しばらくの間、無機質にツーツーと流れる電話を眺めた後、
「…………大変だぁっ! どうしよう、何着て行こう!?」
あたしが慌てて支度に取り掛かったのは、もちろん言うまでもなかった。
- 290 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年11月17日(日)20時21分58秒
- それから超特急で身支度を整えて、家を出たのが20分後。
あたしは待たせちゃマズイと焦る気持ちを抑えながら、駅前の緩い坂道を急いで駆け下りた。
何でこんなに焦ってるのか、自分でもよく分からない。
早く会いたいと願う気持ちが、あたしをこんなに焦らせてることに気付かない振りをしているだけかもしれないけれど。
冷たい冬の風も、今はあたしの味方らしい。追い風となってあたしを後押ししてくれる。
疾風の如く走るあたしのあとを、乾いた枯葉が舞い上がった。
我ながら、このパワーはすごいと思う。お母さんに見られたら「そのパワーを別のところに使えば良いのに…」って溜息吐かれるに違いない。
- 291 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年11月17日(日)20時23分08秒
- 駅まで、あとわずか200メートル。
目の前に見える国道15号線の横断歩道を渡れば、もうそこは品川駅。
信号がチカチカと点滅する。
あたしが渡り終わるまで信号変わるなと願ったけれど、その思いも虚しく、5メートル手前で赤に変わった。息も切れ切れに立ち止まり、苦しい息を整える。
あたしは走って乱れたはずの髪を手ぐしで直しながら、青に変わるのを待った。
…ここの信号はいつも変わるのが遅くてイライラすんだよね。
ちょっとイラつきながら待っていると、後方から少し低めの間延びした声を掛けられた。
振り向くと、トナカイの着ぐるみを着たよっすぃーが、手を振りながらショッピングモールから出てくるところだった。
- 292 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年11月17日(日)20時23分48秒
- そっか、今日はクリスマスケーキの売り子をするって言ってたっけ。
…しかし、よっすぃーはよく働くよねぇ。確か、昨夜は工事現場で臨時のバイトだって言ってなかったっけ? …あんまり無茶するなって言ってんのに聞かないし。
「よっすぃー、お疲れ。それ、暖かそうだねぇ」
「いやぁそれがさぁ、ケーキ売り切る為に外でワゴンセールやらされちゃって。着ぐるみって、縫い目から風が入ってきて意外に寒いってこと、初めて知ったよ」
両手で自分の体を擦るようなリアクションをして、アハハと人好きのする柔らかい笑顔を向ける。
そんな彼女を見て、あたしは慌てていた気持ちがほんの少し落ち着いた。
- 293 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年11月17日(日)20時24分52秒
- 「ごっちん、これからお出掛け?」
「うん、いちーさんに呼ばれてさっ…あはっ」
「おお! そっかぁ! 良かったねぇ」
よっすぃーには色々と愚痴を言ったり相談に乗ってもらったりしていたから、ずっと気に掛けてくれていたらしい。
良かった良かったと自分の事のように、心底嬉しそうに言ってくれる彼女の気持ちが、すごく温かくて嬉しかった。
- 294 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2002年11月17日(日)20時27分29秒
- 「や、まだ何も言われてないしさ、ただ呼ばれただけだから」
「いや〜クリスマスに呼ばれたら、ねぇ? ……ま、報告待ってるよ」
よっすぃーがニヤリと笑ったその時、店長らしき人が「吉澤、早く売り場に戻れ!」と怒鳴りながら呼びに来た。
「…あ、やっべー! アタシ売り場に戻るわ。ごっちん、頑張ってね!」
よっすぃーはあたしの肩をポンと叩き、急ぎ足で売り場へと戻っていった。
あたしはいつの間にか青に変わっていた信号を慌てて渡り、待ち合わせの場所へと向かった。
- 295 名前:501 投稿日:2002年11月17日(日)20時39分25秒
- 短めですが、中編更新しました。
…しかし、いつまでいちごまサイドストーリーが続くのか小一時間(苦笑
桃板で紹介して頂いているのが申し訳ない気分になります(汗
後編がこのお話の主となるところなんですけども…(;0^〜^)
>280-281 ひとみんこさん
レスありがとうございます♪
お気になさらないでくださいね。
いちごま番外編はおまけ的に書いたものだったんですが、
こんなに長くなるとは思いもよらず(苦笑
ひーちゃんが微妙に絡んでくるのは後編からとなりますが、
微妙に切ない感じになる…かもしれません(^^;)ゞ
>282さん
私のような遅筆駄文作者に期待をしてくださるとは…ありがとうございます(つ〜T)
完結を迎えるまで、かなり時間が掛かってしまいそうですが、
最後までお付き合い頂けたら幸いですm(_ _)m
- 296 名前:501 投稿日:2002年11月17日(日)20時51分55秒
- 私のような駄文の更新をお待ち下さっている、奇特な読者様方と、
こちらのスペースをお貸し下さっているサザエ様には大変申し訳ない事なのですが…、
ちょっと体調を崩してしまい、明日から入院することになってしまいました。
退院の目処は当然の事ながら、全く付いておりませんので、
いつ次回更新が出来るかはっきりと申し上げられないのですが、
書き始めたものは、必ず最後まで完結させますので、
どうか、まったりのんびりとお待ち頂けたら幸いです。
もし万が一、私が戻ってくる前に、こちらのスレが倉庫行きになった場合は、
自サイトにて続きを更新致しますので、お暇な時にでも覗いてみてやって下さい。
ttp://www.geocities.co.jp/Bookend-Ryunosuke/9771/n_rest.html
- 297 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月17日(日)23時54分03秒
- 初レスさせていただきます。
作者さま、体調を崩されたようで・・・。
お大事になさってください。
応援しています。
- 298 名前:名無しさん 投稿日:2002年12月01日(日)22時56分53秒
- 作者さんが復活するその日をずっと待ってます。
- 299 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月01日(日)23時01分09秒
- 間違ってageてしまった…すみません。
- 300 名前:ほげ? 投稿日:2002年12月12日(木)12時30分39秒
- 保全中。。。
- 301 名前:読み人 投稿日:2002年12月20日(金)17時18分16秒
- 倉庫行きは2ヶ月くらいは大丈夫とか聞くけど・・・
戻ってこられる日を願いつつ保全。
- 302 名前:ほげ? 投稿日:2002年12月29日(日)09時56分34秒
- 保全だよ〜
- 303 名前:ほげ? 投稿日:2003年01月06日(月)08時23分28秒
- あけおめ保全です
- 304 名前:JOY 投稿日:2003年01月08日(水)23時32分54秒
- 久しぶりに読み返しました。やっぱり泣けます。名作です!
作者さんのお帰りをマターリお待ちしてます。
- 305 名前:ほげ? 投稿日:2003年01月16日(木)12時20分54秒
- 今年もいろいろありまくりです
- 306 名前:501 投稿日:2003年01月19日(日)00時58分34秒
- 大変ご無沙汰しております。
長い間、放置してしまって、本当に申し訳ございませんでした。
そしてまた、もうしばらく、放置することをお許しください。
自サイトにて、言い訳諸々書いておりますが…、
実は、まだ退院の目処が立っておらず、完全復帰はまだ先になりそうです。
ですが、何度も言っておりますとおり、必ず、最後まで書き上げますので、
のんびりまったりとお待ち頂けたら幸いです。
>297さん
温かいお言葉、本当にありがとうございました(涙
どうにか、生きております(w
上にも書きましたが、もうしばらく、お待ち頂けたら幸いです。
>298さん
こちらにも心優しいお方が…本当にありがとうございます(涙
早く復活できるよう頑張ります。
- 307 名前:501 投稿日:2003年01月19日(日)00時59分45秒
- >ほげ?さん
保全作業、ありがとうございます!
もしかしたら、倉庫に逝ってしまったかと思っていただけに、
本当に嬉しいです。
今年も色々ありまくりですが、まだまだ娘。ヲタを辞めれません。
頑張って続きを書きます!
>読み人さん
保全作業、本当にありがとうございます!
必ず、戻ってまいりますので、もうしばらく、お待ち頂けたらと思います。
>JOYさん
駄文を読み返して頂けたとは…本当に嬉しいです。ありがとうございます。
必ず、復活いたします。のんびりまったり、お待ち頂けたら幸いです。
- 308 名前:ほげ? 投稿日:2003年01月20日(月)12時29分22秒
- 保全は続くよいつまでも
- 309 名前:ほげ? 投稿日:2003年01月29日(水)12時37分00秒
- 保全だよ〜
- 310 名前:ほげ? 投稿日:2003年02月07日(金)12時17分11秒
- ひょっこりひょうたん島
- 311 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2003年02月14日(金)16時40分23秒
品川駅構内は、思いのほか人が少なかった。見受けられるのは、会社帰りのサラリーマンぐらい。
品川はあんまり遊べるところもないし仕方ないのかな。特に今日みたいな日は、みんな恵比寿やお台場だとかに行っちゃうだろうし。
約束のプラットホームへと早歩き気味に降りた。備え付けの時計へ目をやると、短針はちょうど八時を差すところ。
七時半ごろに電話を貰って、三十分弱で着いたんだ…。
まったく支度をしていない状態から来たんだから、我ながらたいしたもんだと感心してしまう。普段のあたしなら、これだけのパワーとやる気は絶対出ないはず。恋のパワーってすごいね。
- 312 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2003年02月14日(金)16時42分51秒
あたしは、売店のガラス窓に映る自分の身なりを再度確認した。
…うん、大丈夫。可愛いぞ、ごとー。
自分にそう言い聞かせて、ドキドキと高鳴る胸の鼓動を落ち着かせる。
…よし、行こう!
あたしは、いつも乗る七両目のスペースへと足を進めた。
ベンチの陰に市井さんの背中を見つけた。
誘われて嬉しい気持ちを悟られるのが何となく気恥ずかしくて、つい、慌てた素振りを見せないように歩く速度を緩めてしまった。
落ち着きなさげにキョロキョロと辺りを見回していた市井さんは、あたしの姿に気がつくと、立ち上がって緊張気味に手をあげた。
「来てくれてありがとうな」
「…うん」
- 313 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2003年02月14日(金)16時43分56秒
- 少し照れ臭くて、あたしは小さくそう答えた。
市井さんはそんなあたしよりも照れ臭そうに、鼻の頭をポリポリ掻いて、落ち着きなく所在なげにしている。
「話ってのはさ…まぁ、何となく分ってると思うけど…」
この雰囲気は、そうだ、間違いない。
ドキドキと鳴る鼓動の反面、クリスマスの夜に告白をしてくれるだなんて、市井さんって結構ロマンチストなんだね…なんて、この状況を楽しんでいる自分がいたりもする。
あの、合コンの日、お互いに好意を持っていたことを知って以来。きっと、遅かれ早かれこうなると予想していた自分がいたからこその余裕なのかもしれない。
市井さんは軽く一回深呼吸をすると、ゆっくりと口を開いた。
- 314 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2003年02月14日(金)16時46分16秒
- 「…好きです。いちーと付き合ってください」
「……」
直球ど真ん中な市井さんの台詞は、予想していたとは言え、やっぱり、めちゃくちゃ嬉しくて。あたしは返事をするのも忘れて、何度も何度も反芻していた。
「…あのさ、駄目なら駄目ってはっきり言ってくれな。布団かぶって泣いて諦めるから」
市井さんは、恐々と窺うように言った。
いつまでも返事をしないあたしを見て、ネガティブに勘違いをしている市井さんは「やっぱり最初の印象が悪かったのかな…」なんて、早速ひとり反省会。
- 315 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2003年02月14日(金)16時47分06秒
- 「駄目な訳ない! ずっと、その言葉を待ってたんだから」
「えっ? あの、それってつまり…?」
「あたしも、いちーさんが好きだよ。きっと、初めて見たときから、ずっと、好きだった」
「………ホントに?」
「ホントに」
「マジで?」
「大マジ」
あたしは彼の一言一言に真顔で答えていく。市井さんの耳や頬が次第に紅潮していくのが分った。
「………やった―――!! すげー嬉しい!!」
市井さんはガッツポーズでクルクルウロウロ。言葉通り、嬉しそうに喜んでいる。
ホームにはまばらとは言え、サラリーマンと思しきおじさんたちが数名。向こう側のホームにだって、カップルらしき二人組がこちらを眺めて笑っている。
あまりにも素直な反応と恥ずかしさで、あたしの方まで赤くなりそう。
でも、そんな市井さんを見るのも初めてで、とても可愛いと思ったり。
- 316 名前:中編―やりたいことって何ですか?― 投稿日:2003年02月14日(金)16時48分08秒
- 市井さんは、ひとしきり喜び終えると「こんないちーですが、よろしくお願いします」と、あたしの手をギュッと握った。
吐く息さえ白くなるほど寒いのに、市井さんの手はほんの少し汗ばんでいて、緊張していたことが良く分かる。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
鏡を見なくたって分かるほど、あたしは満面の笑顔でそう答えた。
あたしは、すごく、運が良い。
信頼の置ける友達がいて、好きな人とこうして両想いになれて。
悩む暇も与えられないほど、それはスムーズに、幸せが舞い込んで来た。
だから、恋愛が辛く切ないものだなんて、この時のあたしにはまったく理解出来なかった。
- 317 名前:501 投稿日:2003年02月14日(金)16時57分51秒
- ほんの僅かではございますが、更新しました。
長らくお待たせして本当に申し訳ございませんでした。
まだ、完全復帰ではないのですが、区切りの良いところまでは…と思い、
更新した次第です。
今回にて、中編が終了です。次回更新から、後編となります。
やっと、一番書きたい部分に突入できます(苦笑)
完結まで時間が掛かってしまうかと思いますが、
お付き合い頂けたら幸いです。
>ほげ?さん
保全作業、本当に本当に、ありがとうございました!
完全復帰まで、もうしばらくお待ち頂けたらと思います。
遅筆駄文作者で本当に申し訳ございません。
- 318 名前:名無し417 投稿日:2003年02月14日(金)20時13分14秒
- 待ってました…
いつまででも待ちますよ。
ホント好きな作品なので完結していただけるなら
いつまででも待ちまする。
お体に気をつけて更新頑張ってください。
ってなんか間違ってますね^^;
- 319 名前:ほげ? 投稿日:2003年02月15日(土)12時18分05秒
- 更新乙です
いやぁ名作の続きが読めるだけで幸せですよ
オレが出来ることと言ったら保全と駄レスくらいしかありませんが
- 320 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月16日(日)15時15分42秒
- 久しぶりにきてみたら…更新されてる!嬉しい!
作者様、お待ちしておりました!
これからいしよしがどうでてくるのか…すごく楽しみです。
マターリお待ちしております。がんばってください。
- 321 名前:ほげ? 投稿日:2003年02月26日(水)08時03分25秒
- 保全でーす
- 322 名前:ほげ? 投稿日:2003年03月05日(水)12時28分42秒
- 定期保全なのだ
- 323 名前:ほげ? 投稿日:2003年03月15日(土)14時53分38秒
- 保全するのだ
- 324 名前:ほげ? 投稿日:2003年03月23日(日)21時37分43秒
- もう春ですね
- 325 名前:ほげ? 投稿日:2003年04月03日(木)12時18分48秒
- 桜も綺麗です
- 326 名前:京 投稿日:2003年04月04日(金)11時40分53秒
- 感動です!いつまでも待ってます!
- 327 名前:ほげ? 投稿日:2003年04月17日(木)08時26分54秒
- 別れと出会いの季節
もう時期ですね
- 328 名前:レーフ 投稿日:2003年04月28日(月)11時44分22秒
- お待ちしてます(^^)
- 329 名前:501 投稿日:2003年04月30日(水)00時32分00秒
- このような駄文をお待ち下さっている奇特な読者様、
長らくお待たせしてしまい、本当に申し訳ございません。
言い訳にもなりませんが、入院中に書き溜めた続きを
PC故障によりデータを吹っ飛ばしてしまいました(汗
身勝手とは思いますが、あともうしばし、お待ちいただけたら幸いです。
まずは取り急ぎ、生存報告まで。
感謝のレスはまた後日にさせて頂きます。
追伸
サザエ様、お借りしているスペースを長期にわたって
放置状態にしてしまったことをお詫び申し上げます。
- 330 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月09日(金)08時08分04秒
- hozen
- 331 名前:ほげ? 投稿日:2003年05月14日(水)22時15分04秒
- お待ち申し上げております
- 332 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月04日(水)18時29分17秒
- はい待ちますとも
- 333 名前:京 投稿日:2003年06月10日(火)18時57分19秒
- 待ってるよ。
- 334 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月25日(水)11時58分23秒
- 待ってるよ、頑張ってね。
- 335 名前:501 投稿日:2003年06月26日(木)00時57分27秒
- このような駄文をお待ち下さっている奇特な読者様、
本当にありがとうございます。
大変申し訳ございませんが、後編はもうしばしお待ちいただけたら幸いです。
>名無し417さん
温かいお言葉、本当にありがとうございます!(感涙)
必ず最後まで仕上げますので、よろしければ最後までお付き合いください。
>ほげ?さん
保全、本当にありがとうございます。
最後まで頑張りますので、よろしくお願いいたしますm(_ _)m
>320さん
ありがとうございます。
おそらくいしよしはほんの少ししか出てこないと思うのですが、
ある意味重要なシーンで登場させたいと思っております。
- 336 名前:501 投稿日:2003年06月26日(木)00時58分23秒
- >京さん
お待たせしてしまって、本当に申し訳ございませんm(_ _)m
最後まで頑張りますので、お付き合いよろしくお願いします。
>レーフさん
お待たせしてしまって、本当にごめんなさい。
あともう少しでアップできると思いますので…(汗
>330さん
保全作業、本当にありがとうございます!(涙
>332さん
お待たせしていて本当に申し訳ございません(;0^〜^)
>334さん
ありがとうございます。頑張ります!
- 337 名前:名無しさん 投稿日:2003年06月29日(日)23時17分25秒
- 待ちます
- 338 名前:むぁまぁ 投稿日:2003年07月11日(金)12時33分50秒
- ノ
- 339 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月05日(火)14時17分00秒
- hozen
- 340 名前:梨華ちゃんっ子! 投稿日:2003年08月28日(木)09時18分09秒
- 読まさせていただきました!
とても面白く、意外な展開があるところも好きでした!
最後も楽しみにしていますので、頑張ってください。
- 341 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月28日(木)10時35分00秒
- レスする時は落としましょう。
- 342 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/11(木) 17:24
- 保全
- 343 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/02(木) 00:18
- ほぜn
- 344 名前:名無しさん 投稿日:2003/11/04(火) 03:52
- hozen
- 345 名前:名無し 投稿日:2003/12/02(火) 23:43
- hozen
- 346 名前:名無し読者 投稿日:2003/12/20(土) 22:10
- 保全
- 347 名前:名無し読者 投稿日:2004/01/04(日) 22:45
- あけおめ〜
保全
- 348 名前:名無飼育さん 投稿日:2004/02/13(金) 16:52
- 保全
Converted by dat2html.pl 0.1