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Find Your Way
- 1 名前:瑞希 投稿日:2002年02月17日(日)00時14分50秒
- 金板にて連載中なのですが、
息抜きのつもりで、個人的にも思い入れのあるこの雪板で、
思いつくままの短編を書きたいと思います。
ひとつの話を仕上げてから書き込むつもりなので、更新は不定期です(^^;
ちなみに、カップリングにも統一性は全然ないです(w
おヒマでしたら、読んでってください。
- 2 名前:瑞希 投稿日:2002年02月17日(日)00時15分40秒
- まずは、「やすいし」
- 3 名前:夢でもいいから 投稿日:2002年02月17日(日)00時18分18秒
- 好きなひとが、います。
何事に対しても真剣で、一生懸命で、
でもそれが時々カラ回りしたりして…、なんて言ったら、
『アンタにだけは言われたくない』って、言い返されそうだけど、
でも、目が離せなくて……。
気が付くと、いつもいつも、そのひとのこと、考えてるんです。
- 4 名前:夢でもいいから 投稿日:2002年02月17日(日)00時22分38秒
- ◇
「うわっ、寒っ」
スタジオの中は空調も効いて暖かだったから、
外に出た途端、吹き付けてきた北風は、刺さるように冷たくて。
半分以上は見えないくらいぐるぐる巻きにしたマフラーの中に顔を埋めて、
声をくぐもらせながら、保田さんはあたしの隣で肩を竦ませた。
「……風邪、引かないでくださいね」
言うと、きょとん、とした顔で振り向かれた。
「…何で?」
「え? あ…、だってさっき、クシャミしてたから」
……ヤバイ、見てたの、バレちゃったかも。
- 5 名前:夢でもいいから 投稿日:2002年02月17日(日)00時26分57秒
- 「……そうだっけ?」
「してましたよ」
顔の半分を覆ってたマフラーを指先でひょいって引っ掛けて首元まで下げ、
それから顎の辺りを指先でちょん、と突付く。
あ、今の仕草、可愛い。
……なんて、声に出して言ったら絶対に引かれそうだから言えないけど。
「…アンタこそ、今日はずいぶん薄着じゃない」
「……そう、ですか?」
自分の身なりを、その言葉でやっと確認したりして。
「いつもはもっと、どピンク、って感じの服じゃん。
今日はどっちかっていうと地味だし、薄着すぎない?」
- 6 名前:夢でもいいから 投稿日:2002年02月17日(日)00時30分39秒
- 言いながら、保田さんが巻いていた自分のマフラーをゆっくり外して、
そのままそれをあたしの首に巻いてくれた。
「えっ、あの、保田さん?」
「風邪、引かないでよ?」
ぐるぐると、さっきの保田さんみたいにマフラーを巻きつけられて、
戸惑ってるあたしの鼻先をちょんって、指で突く。
風は冷たいのに、触れてもらえた鼻のアタマだけ、何だか熱を持ったみたいになる。
「じゃね、おやすみ」
ぽん、て、頭にも手を置いて。
……ズルイですよ、保田さん。
どうしてそんなに優しくするんですか?
期待、しちゃうじゃないですか。
- 7 名前:夢でもいいから 投稿日:2002年02月17日(日)00時35分13秒
- 「…ん?」
背中を向けて歩き出そうとした保田さんのコートの袖を後ろから掴むと、
軽く後ろへ引かれたような態勢になりながらも、
少し驚いたように保田さんが振り返った。
「石川?」
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
「どしたの?」
好きです、好きです、好きです。
言ってしまえたら、いいのに。
今すぐ、この気持ちを。
でも、困らせるのは判ってるから。
だから、言えない。
あたしは、首を傾げる保田さんから目を逸らすように俯いた。
袖を掴んだ手は、まだ、離せなかったけど。
- 8 名前:夢でもいいから 投稿日:2002年02月17日(日)00時38分10秒
- 「あれ? 梨華ちゃんに…、圭ちゃん?」
そんなあたし達の後ろから、不意に聞こえてきた明るい声の持ち主は……。
「よっすぃー…」
「こんなとこでどーしたの? 帰んないの?」
まだ帰りたくない。
まだ保田さんと一緒にいたいよ。
でも、そんなこと言えない。
だけど、この手を離してしまうのも何だかすごく淋しい。
「よっ……」
「ううん、もう帰るよ」
あたしの声を遮って、保田さんはあっさり言った。
- 9 名前:夢でもいいから 投稿日:2002年02月17日(日)00時41分13秒
- 「そーなの? じゃあ一緒に帰ろうよ。
矢口さん、今日は友達と会うからって先に帰っちゃって、ひとりなんだぁ」
…ああ、羨ましい。
あたしも、保田さんとのこと、そんな風に言ってみたい。
夢でも、いいから。
「悪いけど」
ぴし、と聞こえるくらいハッキリした拒絶の言葉に、
よっすぃーの軽やかだった声がピタッ、と止まった。
「石川とあたし、約束してるんだ。だから、今日は吉澤、ひとりで帰って」
- 10 名前:夢でもいいから 投稿日:2002年02月17日(日)00時44分49秒
- すぐには事態が飲み込めなかった。
思わず保田さんの顔を見上げたけれど、
保田さんは、小さく笑いながらよっすぃーを見てて……。
「なーんだぁ、そっかぁ。じゃあ仕方ないねー」
「うん、ゴメン。また明日ね」
「はーい。じゃあねー、梨華ちゃん、また明日ー」
名前を呼ばれてハッとして、よっすぃーを見たらもう歩き出していた。
「ば、ばいばい、よっすぃーっ」
慌てて呼びかけたら、くるってカラダごと振り返って、
にこにこ笑いながら両手で大きく手を振ってくれた。
- 11 名前:夢でもいいから 投稿日:2002年02月17日(日)00時48分10秒
- 「……で?」
よっすぃーがまた前に向き直って歩き出すのを確かめてから、
保田さんがあたしの耳元で聞いた。
「えっ?」
「…何か言いたいこと、あるんでしょ?」
さっきまでの微笑みは、そこにはなかった。
「……また何か、つまんないことで悩んでるの?」
「つっ、つまんなくないですよっ」
「だったら言ってみな」
…しまった、つまんないことって言えばよかった。
目線を落として、あれこれ考えてみるけど、うまい言い訳なんて思いつかない。
恐る恐る上目遣いに保田さんを見たら、心配そうにあたしを見下ろしてた。
- 12 名前:夢でもいいから 投稿日:2002年02月17日(日)00時52分24秒
- 「…言いにくいこと?」
表情だけじゃなく、声まで心配そうに小さくなって、
あたしの胸は逆に高鳴っていく。
まだ保田さんのコートを掴んだままだったあたしの手にそっと手が重ねられて、
でも、あまりに突然のことだったせいで、思わずカラダは震えてしまった。
「言いたくないなら言わなくていいよ。
けど、何もかもひとりで抱え込もうとするのもよくないって、
前にも言ったこと、あるよね?」
優しく諭すような声色が耳の奥に響いてくる。
頷きながら重ねられた手を握り返すと、更にもう一方の手が重ねられて、
あたしの手が、保田さんの手の中に包み込まれた。
- 13 名前:夢でもいいから 投稿日:2002年02月17日(日)00時55分22秒
- 「……あーあ、冷たくなってるよ」
ぎゅって強めに握られて、体温が上がる、鼓動も早くなっていく。
「…保田、さん」
「うん?」
冷たくなったあたしの手を撫でさすってくれるその優しい手が、
あたしだけのものだったらいいのに。
俯き加減だった顔を上げて、保田さんを見た。
「どした?」
見つめるだけでこの気持ちが伝わればいいのに。
どうしても言葉には出来ないあたしの、この気持ちが……。
- 14 名前:夢でもいいから 投稿日:2002年02月17日(日)00時58分46秒
- 「……石川?」
あたしを見ていた保田さんが、呼ぶなり少し顎を引いた。
そのあと、ほんの少しだけ顔が赤くなったように見えたのは、
あたしの、都合のいい思い違いかな……。
「……あー、もう」
呆れたような、怒ったような口調に無意識にカラダが強張る。
何だか機嫌を損ねたようで、あたしは怖くなって俯いた。
「…言いなさい、ちゃんと」
「え?」
口調はやっぱり怒ってるけど、咄嗟に見上げたそこにあったのは、
何だか恥ずかしそうに頬を赤くしてる保田さんの顔で。
- 15 名前:夢でもいいから 投稿日:2002年02月17日(日)01時01分53秒
- 「アンタが言いたいって思ってること、今すぐ言いなさい」
手を離して、とん、と、あたしの胸の辺りを指差しながら軽く押す。
「怖がらないで、ちゃんと言ってみな」
どくん、と胸が鳴った。
気付いてる?
気付いてるの?
「保田さん…?」
「言いなさい」
強い命令口調だけど、さっきまでとは格段に違う、優しい声色。
必死になって押し隠していたはずの気持ちが、
その声の響きで、するりと口から出た。
- 16 名前:夢でもいいから 投稿日:2002年02月17日(日)01時04分30秒
- 「……好き、なんです」
もうずっと、ずっとずっと前から、
保田さんのことばかり、見てたんです。
言ってしまってから、やっぱり怖くなって俯いたあたしの耳に、
保田さんの深い溜め息が聞こえた。
「……よく出来ました」
そう聞こえてすぐ、あたしの頬に保田さんの手が触れてきた。
「やす…」
言葉が途切れたのは、
少し冷たくなっていた保田さんの指があたしの唇に押し付けられたから。
- 17 名前:夢でもいいから 投稿日:2002年02月17日(日)01時08分14秒
- 「……意地悪してゴメン。でも、迷惑だなんて、思ってないからね」
そう言って、あたしの唇に押し付けた指を自分の唇に押し当てる。
「あたしも好きだよ、石川のこと」
「…保田さん……」
「気付いてないフリなんかして、ゴメン」
唇に触れた指が、もう一度あたしの唇に押し当てられた。
気付いてないフリ、というからには、
つまり、とっくにあたしの気持ちは保田さんに知られていた、ということで。
「い…、いつから?」
責めるような口調になってしまったけれど、これぐらいは許してもらえるだろう。
- 18 名前:夢でもいいから 投稿日:2002年02月17日(日)01時13分42秒
- 「いつからかな…。でも、もうかなり前から、なんとなく」
「な…、何、でぇ? 何で判ったのぉ? あた、あたし…、
ずっと…、か、隠してたのにぃ…っ」
そんなつもりはなかったのに涙は出て、
しゃくりあげながら問い詰めるあたしに、保田さんは苦笑いしながら言った。
「……目は口ほどにモノを言う、ってね」
親指の腹があたしの涙を拭い取ったあと、
ゆっくりと、その腕の中に抱き込まれていく。
「アンタ見てたら、すぐ判ったよ」
髪を撫でる手の優しさは、あたしのよく知ってる、『教育係』の保田さんの手。
なかなか上手に出来ない振りや歌を、
一生懸命練習して、頑張って、うまく出来たときに、
ホメながら必ず頭を撫でてくれる、優しい手。
- 19 名前:夢でもいいから 投稿日:2002年02月17日(日)01時18分50秒
- 「や、保田さ…」
「ん?」
「好き、です…。ホントにホントに、保田さんのことが大好きなんですよぅ」
「はいはい、判ってるよ。だからもう泣かないの」
すいっと離れて、きゅって、あたしの鼻をつまんで。
「…ほら、帰ろ」
右手を差し出され、あたしはためらわずにその手を取って握り締めた。
するとすぐに保田さんも力を込めてきて、自分と違う別の人の体温が、
じんわりと、今の状況の幸福度を伝えてきた。
「……夢見たい」
「夢じゃないよ」
呟きを遮るように強く言い切って、また手に力を込めてくる。
「…でももしこれが夢だって言うんなら、明日も明後日も、
ずっとずーっと覚めない夢だから、安心しな」
言って微笑んだ保田さんの頬は、さっきよりも少しだけ、赤かった。
- 20 名前:夢でもいいから 投稿日:2002年02月17日(日)01時19分36秒
- ――― END ―――
- 21 名前:瑞希 投稿日:2002年02月17日(日)01時23分02秒
- はい、終了でーす(w
一度書いてみたかったふたりなんで、
甘いのを目指してみたんですが…、見事に玉砕した感じです(^^;
楽しんでもらえたら、というより、
ヒマ潰し程度になってくれたらいいな…、と思ってます。
- 22 名前:瑞希 投稿日:2002年02月17日(日)01時25分13秒
- えーと、前述した通り更新は不定期ですが、
次回の予定は……、
うーんと、そうですね、
「かおなち」あたりで…いかがでしょう? <本人も希望的観測
ではまた。
- 23 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年02月17日(日)01時39分51秒
- よかったです!!やすいし最高です。みてて癒されます。
自分はいしごま派ですけどやすいしも好きです。
これからも頑張ってください。
- 24 名前:名無し殺生 投稿日:2002年02月17日(日)13時06分58秒
- たまたま来たら始まってた・・・
黙ってるなんて人が悪いですな〜。人間って悲しいね...
いやいや、やすいしお腹いっぱいでございます。
自分から言わないで人に言わせるなんて、やっすーずるいぞ!
でも、上手くいったからOK!さりげに優しいのがいいですな。
次回作も期待してます。
- 25 名前:瑞希 投稿日:2002年03月03日(日)00時02分46秒
- >23:いしごま防衛軍さん
ありがとうございます。
>いしごま派
ワタシも好きですよ〜(^−^)
>24:名無し殺生さん
やっすー受ばっか書いてると、たまにやっすー攻も書いてみたくなるのです(w
- 26 名前:瑞希 投稿日:2002年03月03日(日)00時04分23秒
- ではでは、予告どおりに、今回は
「かおなち」です。
- 27 名前:DON’T CRY… 投稿日:2002年03月03日(日)00時05分40秒
- はらはらと、つぶらな瞳から零れ落ちている滴にあたしは咄嗟に言葉に詰まる。
綺麗で。
汚れの見えないその滴はとても、とてもとても…、綺麗で。
ドアを開けたまま、その滴に見とれて立ち尽くすあたしに気付いて彼女が振り返る。
そしてにっこりと微笑む。
零れる涙を拭うことも、隠すこともしないで。
「カオリ」
呼ばれただけで胸が鳴るようになったのは、いつ頃からだろう。
初めて会ったときは、
こんな気持ちがあたしの中に生まれるなんて、思いもしなかった。
- 28 名前:DON’T CRY… 投稿日:2002年03月03日(日)00時07分11秒
- 「……何で、泣いてるの?」
「あー…、何か、このビデオ見てたら、いろんなこと思い出しちゃって」
彼女は泣くことを、涙を見られることを恥ずかしいとは思ってないのだろうか。
普通ならバツが悪そうに涙を拭ってもおかしくないのに、
彼女はまだ、頬を伝う涙をそのままに、テレビに向かっていた。
彼女が見ていたのは、去年の春のライブビデオ。
『娘。』の初代リーダー、中澤裕子の卒業ライブのものだ。
「……裕ちゃんって、ホント、スゴイひとだったよね」
涙混じりの彼女の笑顔があたしの胸を射抜く。
- 29 名前:DON’T CRY… 投稿日:2002年03月03日(日)00時08分18秒
- 他意なんてない。
何も、深い感情なんてない。
彼女にとっての中澤裕子がどれほど大きな支えであったか、
それは痛いくらい判ってるし、あたし自身にとってもそれは同じことで、
それを今更気にするのも、何だかバカげてるって、判ってるんだけど。
それでも、やっぱり、そんな風に笑われると、少し、切ない。
- 30 名前: DON’T CRY… 投稿日:2002年03月03日(日)00時09分29秒
- あたしはゆっくり彼女に近付いて、
画面から目を離さないでいるその隣に座り、頭に手をのばす。
短くなった髪が、また少し、胸を鳴らせる。
「こっち向いて」
言葉通りに振り向いた彼女の涙を指で拭い取ると、
そこでようやく苦笑いになる。
「あ、ゴメン」
「……じっとしてて」
きょとん、とした面持ちで見つめ返される。
あたしは、その目に見つめられて動けなくなる前に、行動を起こした。
- 31 名前:DON’T CRY… 投稿日:2002年03月03日(日)00時10分13秒
- 「…カオリ?」
涙を拭ったほうの手を顎に添えて顔を固定する。
戸惑い始めた瞳の色が逆に感情を煽った。
「カオ……」
声を、塞いだ。
いや、正確には唇を、なんだけど。
- 32 名前:DON’T CRY… 投稿日:2002年03月03日(日)00時10分49秒
- びくん、とカラダが揺れた。
閉じ込めるように、もう片方の手で肩を抱く。
小さな、その、カラダを。
「カオリ?」
もっと呼んで。
いつでも、どこでも…、その声で。
- 33 名前:DON’T CRY… 投稿日:2002年03月03日(日)00時11分31秒
- 「どーしたー?」
唇を離して、少し痩せた肩に額を押し付ける。
何となく、顔は見られたくなかった。
だって、きっと、イヤな顔してる。
「……なっちは、どこにも行かないでね」
「へ?」
「カオリのそばにいてね?」
少しして、彼女の指があたしの髪に絡められたのが判る。
「…それはなっちの台詞っしょ」
あたしの肩を掴んでゆっくり離れた彼女が、微笑みながら小さく呟く。
- 34 名前:DON’T CRY… 投稿日:2002年03月03日(日)00時12分15秒
- 「…なっち?」
ゆるりとあたしの頭のうしろへと腕をのばして、
しがみつくように抱きついてくる。
「…置いてかないでね」
耳元で聞こえた声が切なさを伴っていて、また、胸が痛くなる。
あたしは小さな彼女のカラダを力一杯抱きしめた。
「うん」
「ひとりにしないでね」
「うん」
「そばにいてね」
「うん」
- 35 名前:DON’T CRY… 投稿日:2002年03月03日(日)00時13分05秒
- あたしは、ただ、頷くことしか出来なかったけれど。
こうやって、抱きしめていてあげることは、出来るから。
―――だからもう、泣かないで。
- 36 名前:DON’T CRY… 投稿日:2002年03月03日(日)00時13分38秒
- ――― END ―――
- 37 名前:瑞希 投稿日:2002年03月03日(日)00時15分13秒
- ……ものの見事に玉砕(爆)
- 38 名前:瑞希 投稿日:2002年03月03日(日)00時17分02秒
- 次回は…「UK」で!
ではまたっ <逃
- 39 名前:名無し読人 投稿日:2002年03月14日(木)17時31分56秒
- UK楽しみに待ってます〜〜。
- 40 名前:瑞希 投稿日:2002年03月14日(木)23時42分24秒
- >39:名無し読人さん
ワタシみたいな駄文を楽しみにされるとは……(°Å)
ありがとうございますっ。
- 41 名前:瑞希 投稿日:2002年03月14日(木)23時44分43秒
- ではでは、予告通り「UK」で。
- 42 名前:HOLD ON・・・ 投稿日:2002年03月14日(木)23時45分52秒
- 「お疲れー」
「また明日ねー」
仕事を終えて着替えも済ませ、
メンバー達はそれぞれがそれぞれの挨拶をして楽屋を出て行く。
ひとり、またひとりと数が減っていく中で、
いつもならとっくに身支度を整えて帰途についている圭が、
何故だか今日に限って、ぽつん、と椅子に座ってケータイを見つめていた。
- 43 名前:HOLD ON・・・ 投稿日:2002年03月14日(木)23時46分46秒
- 「圭ちゃん? 帰んないの?」
きょとん、とした真希に不意に尋ねられ、
圭は少し焦った様子でケータイを背中に隠して振り向いた。
「あ、うん、もう帰るよ」
メールを読んでいたのは明白だったが、
真希はあえて深く追及しない。
「ばいばい、圭ちゃん、気をつけてね」
「アンタもね」
ひょい、と肩を竦めつつ、手を振って出て行く真希を見送ったら、
とうとうひとりきりになった。
- 44 名前:HOLD ON・・・ 投稿日:2002年03月14日(木)23時48分18秒
- 誰もいなくなった途端、ガランと静まり返る広い室内。
そのとき、圭のケータイが沈黙を嫌ったように唐突に鳴り響いて、
その文字通りに圭は跳び上がった。
ディスプレイを見て相手を確認した圭の口元がほんの少し和らぎ、
ゆっくりと通話ボタンを押す。
「……もう終わったんやろ? いつまで待たすねん」
電話の相手は、ひどく憤慨した様子の元リーダー、中澤裕子。
「待っててなんて、一度も言ってないよ」
負けじと圭もぶっきらぼうに答えながら、荷物を持って楽屋を出た。
- 45 名前:HOLD ON・・・ 投稿日:2002年03月14日(木)23時49分33秒
- 廊下に出て右を向いたとき、その通路の端に、電話の相手を見つける。
位置的には少し遠いけれど、表情は判る。
でも、声までは届きそうにない距離。
「……冷たいなあ」
ケータイを通した裕子の声と、
目の前の実物の口の動きがテレビ電話のようだった。
「…たまには一緒に帰ろうってメールしたやん。見てへんの?」
「見たよ。でも、いいよって返事はしてないじゃん」
- 46 名前:HOLD ON・・・ 投稿日:2002年03月14日(木)23時50分29秒
- お互いがお互いの距離を縮めないまま、
耳に当てた小さな機械を通して聞くその声。
「何でそんな言い方するん?」
「いつも通りです」
幾らか強めの口調で告げると、圭の目に、戸惑う裕子の表情が映った。
「……怒ってんの?」
「怒ってるよ」
視線もほんの少し強めて見つめると、
裕子はますます申し訳なさげに眉尻を下げる。
- 47 名前:HOLD ON・・・ 投稿日:2002年03月14日(木)23時51分33秒
- 「今日の収録のこと?」
「……いい加減、慣れたつもりだったけどね」
「…ゴメン」
「そろそろ…、ガマンの限界っていうかさ」
圭の声に、少なからず怯えたように頭も下がった。
「……あたしだって嫉妬とかするんだよ。判ってる?」
「ゴメン、なさい」
しゅーん、という音まで聞こえそうなくらい、覇気のない声と姿。
「…なっちや矢口のことはあたしだって好きだから今まで何も言わないでいたけど、
でも、それじゃああたしは裕ちゃんの何? とか、考えたりしちゃうんだよ」
言った途端、下げられていた頭が勢いよく上がる。
- 48 名前:HOLD ON・・・ 投稿日:2002年03月14日(木)23時52分42秒
- 「恋人やん! 圭坊はなっちや矢口とは違う」
その目は、いや、目だけでなく声も真剣なのは圭にもよく判った。
「……キスしかしないのに?」
「そ、それは…」
言い淀み、再び俯いてしまった裕子に、
それまで強気に振る舞っていた圭もさすがに傷ついた。
「キスなんか他のみんなにだってしてるじゃん。
今日だって矢口にばっかベタベタしてさ、
なのにあたしには触りすらしなかったじゃん」
言いながら、自分の許容の狭さにひどく苛立ちを覚える。
- 49 名前:HOLD ON・・・ 投稿日:2002年03月14日(木)23時53分25秒
- 「あたしが恋人だって言うなら、もっと特別扱いしてよ」
ただのくだらない嫉妬やヤキモチだと言われたくない。
けれど、これがただのくだらない嫉妬やヤキモチでしかない、
ということも承知している。
「……あたし、そういう意味で裕ちゃんか好きなんだよ?」
目線を床に落としたままの裕子を見ていると、
何だか自分のほうが彼女を傷つけているような気分になって、
圭はくるりと裕子に背を向けて歩き出した。
- 50 名前:HOLD ON・・・ 投稿日:2002年03月14日(木)23時54分15秒
- 「圭坊」
呼ばれても振り返らない。
振り返って裕子を見てしまったら、きっと泣いてしまう。
許してしまう。
「……もう帰る」
裕子の視界から逃げるように通路を曲がり、
言い訳がましくそう告げたとき、耳元には、困惑した裕子の声だけが響いた。
「じゃあね」
「待って」
- 51 名前:HOLD ON・・・ 投稿日:2002年03月14日(木)23時55分04秒
- 後ろ髪を引かれそうな思いを必死に堪えて電話を切ろうとしたのに、
切なげな裕子の声に、動きが止まってしまう。
「……ええの?」
姿が見えないぶん、耳に響く裕子の声が甘く聞こえた。
「あたしで、ええの?」
声だけで、体温が上がる。
「……なあ、圭坊?」
「…初めに、そう、言ったじゃん」
- 52 名前:HOLD ON・・・ 投稿日:2002年03月14日(木)23時55分41秒
- 甘く、優しく、柔らかに耳に残る裕子の声と、
上昇した体温が圭のカラダに心地好い痺れを呼び起こす。
「けど…、7つも年上やし」
「…そんなの、会う前から知ってるよ」
「…結構、自分勝手やし」
「知ってる」
「好き嫌いも多いし」
「知ってるってば」
何を言わせたいのか判るけれど、今は、判らないフリをしたい。
「……これからも、圭坊に、イヤな思いさせるかも知れんで?」
「だったら、そんなふうに思わせないぐらいの自信をちょうだいよ」
- 53 名前:HOLD ON・・・ 投稿日:2002年03月14日(木)23時56分17秒
- くだらない嫉妬やヤキモチなんて、目に見えない不安なんて、
笑って吹き飛ばせるくらいの、自信を。
これはワガママだろうか。
それとも、相手には重荷に感じられてしまうくらいの想いの丈なんだろうか。
裕子の視線が他の誰かに向くのがイヤだ。
裕子の手が他の誰かに触れるのがイヤだ。
それに気付くたび、それを見せ付けられるたび、
自分ばかりが裕子を強く想っているようで。
こんなにも好きだったのかと、思い知らされるばかりで。
- 54 名前:HOLD ON・・・ 投稿日:2002年03月14日(木)23時57分01秒
- 「…じゃあ、圭坊は何くれる?」
声が聞こえてすぐ、真後ろに人の立つ気配がした。
耳元に聞こえた声も、ずっと近い。
けれど圭は振り返らなかった。
こんなときにまで駆け引きしようとする裕子が憎らしくさえ思う。
「……これ以上、何が欲しいのよ」
しかし、強がっていられるのももう限界だった。
そんな圭の心の動揺を悟ったように、
圭の背後から裕子の腕がゆっくりと腰に回されてくる。
- 55 名前:HOLD ON・・・ 投稿日:2002年03月14日(木)23時57分38秒
- 圭の耳の裏に吐息が触れ、
それにカラダを震わせた圭を、裕子の腕が力強く抱きしめた。
「……帰ろか」
裕子の唇に耳の淵を滑られながら問われて、
今までにない態度に戸惑いつつ、腰に回る裕子の手を掴む。
結局、許してしまう自分に呆れながら。
「……なあ、明日の仕事、圭坊の家からのほうが近いよな?」
「? 何で?」
- 56 名前:HOLD ON・・・ 投稿日:2002年03月14日(木)23時58分18秒
- 腰に回した手を圭の顎にのばし、そっと振り向かせて唇を奪う。
「明日の仕事に響かんように心掛けるけど、約束出来へんから」
目に映ったのは悪戯っぽい微笑みなのに、
子供みたいなそれが圭の心に根付こうとする不安の芽を摘んでいく。
裕子の言葉の意味が判って一瞬で頬を朱に染めた圭を、
今度は正面から抱きしめる。
「……圭坊にだけの、特別扱い、やで?」
少し頼りなさげな裕子の腕の中に抱きとめられながら、圭は小さく、頷き返した。
- 57 名前:HOLD ON・・・ 投稿日:2002年03月14日(木)23時58分56秒
- ――― END ―――
- 58 名前:瑞希 投稿日:2002年03月15日(金)00時01分32秒
- はいはい、終了ーっ(爆)
3作連続で玉砕か、自分…(^^;)
でもUKって、以前どっかで誰かにリクされた気もするんで、
これで許してもらおう <何
- 59 名前:瑞希 投稿日:2002年03月15日(金)00時04分10秒
- んと、次回は……、そーだなあ、
自分を追い込むつもりで「ごまなち」あたり……。
よしっ、いってみよーっっ!! <逃走
- 60 名前:圭ちゃん大好き 投稿日:2002年03月15日(金)10時35分06秒
- 瑞希さんの小説のファンです。
雪の過去ログにあるやすよしも見ましたし(あれよしやすだっけか??(^^;)
金のKU+やすよし(?)も楽しませて頂いてました。
駄文だなんて…全然!!いつもいつも引き込まれてますよ!!
自分は圭ちゃん大好きなので、ホントに嬉しい限りです。
圭ちゃんがらみは結構なんでもOKなのですが、最近はKUにはまってます。
でもなかなかKUってないんですよね…。
私的に結構いいコンビだと思うんですけど、やっぱりやぐちゅ〜が主流なんでしょうか…
作者さん、これからも頑張って下さい。楽しみにしてます!!
最後に…リクしてもいいですか??
で、できれば、KUの長編なんか……。
できたらでいいんでお願いします!!
- 61 名前:酔っ払い読者。 投稿日:2002年03月21日(木)00時32分47秒
- 細やかな心境や、それに伴う態度がすごく巧みに表現されてて
何と言うか、物語の現場に居合わせているような感じを受けました
とても良かったです。
新作、楽しみに待ってます。
- 62 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月28日(木)01時04分45秒
- みちごま読みて〜〜〜〜〜
- 63 名前:瑞希 投稿日:2002年03月28日(木)01時37分19秒
- >60:圭ちゃん大好きさん
ありがとうございます。
「雪」も「金」も読んでいただいてたのですね・・・感激っす。
で、KUのリク? しかも長編ですか・・・?
う〜〜ん(^^;) が、頑張ってみます(^^;)
>61:酔っ払い読者。さん
ありがとうございます。
>物語の現場に…
その感想のお言葉は、ワタシにとっては嬉しい限りです(照
>61さん
あっ、それは、近いうちに、ここではない、別の板で・・・(モゴモゴ
- 64 名前:瑞希 投稿日:2002年03月28日(木)01時39分43秒
- 予告通り、「ごまなち」です。
毎度ながらに、拙い文章ですが…。
では、どうぞ。
- 65 名前:幸せな言葉。 投稿日:2002年03月28日(木)01時40分36秒
- 「なっち……」
聞き慣れたはずの声からひどく頼りなさげに呼ばれて、
なつみはびくりと肩を揺らせたあと、恐る恐る振り向いた。
「ど、どした?」
例えるなら、叱られた子犬が反省して耳を下げてるような。
「今日、そっちの部屋行っていい?」
「…はいぃ?」
なつみよりも幾らか大きいはずのカラダを小さくさせて、
頭は俯き加減で上目遣い。
可愛さに拍車がかかって、なつみの心臓もかなりのスピードで早鐘を打ち始める。
- 66 名前:幸せな言葉。 投稿日:2002年03月28日(木)01時41分22秒
- 「何? 何で?」
今はツアー中で。
しかも地方だから泊まりこみで。
メンバー以外にも、スタッフやら関係者やらで大人数のため、
ホテルの1フロアを貸し切っても部屋数は足りなくて。
相部屋になるのはもう慣れっこなのだけれど、
なつみの同室相手は、目の前の少女ではないはずで。
「ごっちんはよっすぃーとでしょ?」
なつみが嗜めるように聞き返すと、真希の表情は俄かに曇ってしまった。
「なっちは矢口と……」
そこまで言って、合点がいく。
- 67 名前:幸せな言葉。 投稿日:2002年03月28日(木)01時41分52秒
- 「……部屋、代わってって」
元気なく続ける真希に、なつみは深々と溜め息を吐き出した。
「どっちが言ったの、もぉ」
どっちだって同じだろう、と思いつつ、呆れ口調で言った。
言い出したのがひとみでも真里でも、真希は断らない。
いや、断れない。
ふたりの仲を知っているなら、断れるワケがないのだ。
なつみにしても、もしひとみと同室になって(まず有り得ないが)、
真里から部屋を代わってくれと頼まれたら断りきれないと判るから、
友達思いの真希の気持ちも、また痛いくらいに判るワケで。
- 68 名前:幸せな言葉。 投稿日:2002年03月28日(木)01時42分36秒
- 「…しょーがないなあ」
俯く真希の頭を、なつみは手をのばしてぽすぽすと軽く撫でてやる。
すると、少しためらいながらも真希はゆっくり頭を上げた。
「……いいよ、おいで」
「ご、ごめんね」
「どして謝るかな? ごっちんは何も悪くないっしょ? ホラ、おいで」
自分の部屋の前まで来て、ドアを開けて真希を先に促す。
恐縮しながらも、真希はなつみの前を通り過ぎて部屋の中に入った。
- 69 名前:幸せな言葉。 投稿日:2002年03月28日(木)01時43分07秒
- 「……ごっちん?」
ベッドに腰掛けてくつろいでいるように見えても、
何だか緊張感が漂っているように思われて、なつみは思わず真希を呼んでいた。
「えっ、何?」
呼ばれて振り向いた真希はやっぱり緊張しているようで、
なつみも居心地が悪くなる。
やっぱり、苦手に思われてるのかな、と思う。
キラわれてはいないんだろうけど、とも。
- 70 名前:幸せな言葉。 投稿日:2002年03月28日(木)01時44分01秒
- そうは思うけれど、
『キライ』と『苦手』は、似ているようでかなり違う意味を持つ。
前者なら無視すればいい。
キラわれている相手に、わざわざ媚びへつらうつもりは毛頭ない。
でも、後者の場合はそうはいかないのだ。
キライじゃないけれど、出来ればあんまりかかわりたくない、ってことで。
でもってそれは、なつみにしてみればかなり切ない事態で。
いっそのこと、キラわれてるほうがラクなんじゃないかって、思うワケで。
- 71 名前:幸せな言葉。 投稿日:2002年03月28日(木)01時44分46秒
- 最初の頃に比べたら今はずいぶんと表情も柔らかくなって、
マイペースながらも、
彼女の頑張りはなつみにも刺激を与えてくれる。
なつみは、そんな真希に対して、胸を高鳴らせたりしているのだ。
誰にも気付かれないように、
こっそりと、
目でその姿を追いかけたりしているのだ。
もちろん、今はまだ誰にも言わないで、なつみだけの秘密にしているけれど。
- 72 名前:幸せな言葉。 投稿日:2002年03月28日(木)01時45分44秒
- 「あ、いや…、あの、えと」
呼んではみたものの、続ける言葉を考えてなかった。
「そ、そろそろ寝るべ!」
「ええっ? もう?」
驚いた真希の声がなつみをますます慌てさせる。
「あ、明日も早いし」
「えー、小学生だってこんなに早くは寝ないよー?」
面白そうに笑った真希に、なつみの心臓はまた跳ね上がる。
「あ、でも、疲れてんだったら、あたしに構わないで寝てね?」
「そ、そーゆーワケじゃ……」
真希が隣のベッドにいる、と考えるだけで、安眠なんて、もう無理っぽいけれど。
- 73 名前:幸せな言葉。 投稿日:2002年03月28日(木)01時46分21秒
- 「……ごっちんはまだ寝ないの?」
「なっちの寝顔見たいから起きてる」
にかっ、と笑ってさらりと恥ずかしいことを言われ、
なつみの頬が朱色に染まる。
「なっ、なっ、何言うべさ!」
「えへへー」
ほわん、としたあったかいイメージの笑顔に途端に骨抜きになり、
思わずなつみはベッドに突っ伏した。
―――し、心臓に悪いよぅ。
「なっちは寝顔も可愛いんだろーなー」
そんなこと、冗談でも言わないでほしい。
嬉しくて、嬉しくて、その先を期待してしまいそうになる。
- 74 名前:幸せな言葉。 投稿日:2002年03月28日(木)01時46分59秒
- 「とっ、年上をからかうんじゃありませんっ」
出来るだけ平静を装って、頭を上げて小さく怒鳴ってみる。
効果がないのは、承知しているけれど。
「からかってなんかないよぅ。ホントにそう思ったんだもん」
そんなこと言うな、なんて言えない。
でも、期待もしちゃいけない。
「ごっちーーーーん」
なつみは頬を膨らませながらそう叫び、
自分のベッドから、真希の座るベッドに飛び移った。
「わっわっ、ごめんっ、なっち、ごめんなさいっ」
「ダメ! からかった罰だべさっ」
- 75 名前:幸せな言葉。 投稿日:2002年03月28日(木)01時47分34秒
- なつみは、腕を交差させて防御態勢をとった真希の、
無防備になった脇をくすぐった。
「やーっ、な…、なっちっ、にゃははっ、ご、ごめ…、ひゃははーっ」
悲鳴なんだか、笑い声なんだか。
ベッドにうつ伏せた真希の背中に馬乗りになり、
脇をしめようとする彼女の抵抗も無視して、なつみは指を動かした。
いざカメラが向けられると、
マイペースながらも高校生らしくない大人びた表情を見せたりもするけれど、
こんなときは、やっぱり年相応な反応で、なつみも少し嬉しくなる。
苦手に思われているだろうけれど、
これぐらいのスキンシップは、許してくれるんだな、と。
- 76 名前:幸せな言葉。 投稿日:2002年03月28日(木)01時48分15秒
- 「…ご…、ごめんなさぁい」
声のトーンが下がって、ようやくなつみも真希から離れた。
「…反省した?」
涙の滲む目尻を拭いながらこくこくと頷き、
なつみに続いて真希もカラダを起こす。
耳を垂れて反省を表す子犬、というと語弊があるかも知れないが、
なつみには、今の真希がそんなふうに見えた。
「よろしい」
腕組みして、うんうんと頷き返しながら、年上ぶって言ってみる。
けれど、これ以上踏み込んではいけないということも承知しているので、
真希に不愉快さを与えてしまう前に、と、
なつみはゆっくり真希のベッドから降りた。
- 77 名前:幸せな言葉。 投稿日:2002年03月28日(木)01時48分48秒
- 「…スキありっ」
なのに、そんな言葉のあと、
小さななつみのカラダは、
背後からのびてきた真希の腕にひょいっと抱き上げられてしまった。
「うひゃあっ」
予期してなかった事態に対して出た声は、あまりにも情けない声。
「…なっち、意外と軽い」
いつのまにかベッドを降りていた真希の腕がなつみの腰にまわされ、
そのまま抱き上げられている。
「ごっ、ごっ、ごっちん?」
足が宙に浮いた状態でジタバタしながら、
今の態勢を冷静に考え直したなつみの頭に血が昇る。
- 78 名前:幸せな言葉。 投稿日:2002年03月28日(木)01時49分24秒
- 「いた、痛いよ、なっち」
そうは言いながらも一向に離してくれる気配はなくて、
だんだんとなつみの思考がパニックしてくる。
「お、お、降ろしてょう」
泣きそうになる。
冷静でなんていられない。
腰にまわる腕が真希のものだと思うだけで、
全身に火がついたみたいな感覚が襲う。
どこもかしこも、敏感になってしまう。
- 79 名前:幸せな言葉。 投稿日:2002年03月28日(木)01時49分57秒
- 「なっち?」
きょん、とした声とともに漏れた吐息がなつみの二の腕に触れて、
自分を抱き上げている真希の腕を解こうと、
その腕を掴んでいたなつみの指先に不必要な力が入る。
声が出そうで、小刻みにカラダを震わせながら唇を噛む。
「……ろし、て…」
声が掠れる。
息が出来なくなる。
なつみの様子の異変に気付き、
真希は慌てたように力を弱めてなつみを降ろし、腕も解いた。
- 80 名前:幸せな言葉。 投稿日:2002年03月28日(木)01時50分41秒
- 「なっち……」
顔を覗き込まれそうになって、
なつみはその視線から逃げるように真希から離れる。
ダメだ。
今、顔を見られたら気付かれる。
けれど何か言わなければ真希がもっと不思議に思うし、
きっともっと気を遣わせてしまうことになる。
何か、何か言わなければ……。
「……ゴメ…」
それでも何を言えばいいのか判らず、
当り障りのない言葉を継げようとしたなつみのカラダが、
ふわり、とあたたかな腕の中に抱き込まれた。
- 81 名前:幸せな言葉。 投稿日:2002年03月28日(木)01時51分22秒
- 「…ごっ、ごっちん…っ?」
「……えーとね」
「え?」
「あたしも、なっちが、好き、デス」
「え、え…? ええっ?」
なつみの驚きの声は、真希の腕の力が強まったせいか、
不自然な音となって部屋に響いた。
「いっ、いまっ、なん…」
「なっちが、好きデス」
ちゅ、と、真希の唇がなつみの頬に触れてくる。
それに続けて、抱きしめる腕の力もまた少し強くなった。
- 82 名前:幸せな言葉。 投稿日:2002年03月28日(木)01時51分52秒
- 「からかったりしてゴメンね。でもホントだよ?
ホントにあたしもなっちのことが好きだよ?」
「な、何? なん…」
もがいて真希の腕を解き、振り向いて見上げたそこには、
テレたように、けれど嬉しそうに微笑む真希がいた。
「……も、も、って何? も、って」
「だから、あたしも」
満面で笑う真希は、心臓を鷲掴みされるような、
殺人的にも思えるくらいの可愛さで。
「い、い、いつ、なっちがごっちんのこと好きって言ったべさっ」
そんな口調が既に肯定していると、なつみ本人が気付かない。
- 83 名前:幸せな言葉。 投稿日:2002年03月28日(木)01時52分26秒
- 「…あれ? そういえば言われてなかったっけかな」
「言ってないっ」
気付かれないようにと、どれほど必死になって隠してたと思うのだ。
「……でも、違わないでしょ?」
「ち…っ」
違う、と即座に答えられないのは、それが嘘になるからだ。
否定するのは簡単だけれど、真希の言葉を訂正してしまうことで、
自分の気持ちにも嘘をつくことになってしまう気がしたからだ。
- 84 名前:幸せな言葉。 投稿日:2002年03月28日(木)01時52分58秒
- 「…なっち?」
これは、チャンスなのだろうか。
「……何で? 何で知ってるのぉ?」
恥ずかしくて。
けれど、真希の言葉がとてもとても嬉しくて。
「だってなっち、あたしに優しいもん。
みんなにももちろん優しいけど、でもあたしには特別優しいもん」
「…そ、それだけ、で?」
なつみの視界が、昂ぶる感情で溢れ出した涙でぼやける。
そんななつみに真希は少し慌てながらも、
なつみの目の高さに合わせるように膝を屈め、
そっとその涙を指先で拭い取った。
- 85 名前:幸せな言葉。 投稿日:2002年03月28日(木)01時53分42秒
- 「…っていうか、他にもいろいろあるんだけど…」
困ったように頭をかきながら、
手をのばして、もう一度、
今度は正面からそっとそっと、なつみを抱きしめる。
「なっち、いつもちゃんとあたしのこと見てくれてるし、
あたしもなっちが見てくれてるって思うと、すごく安心するんだ。
…でね、何でかなって、自分でも考えてみたの」
なつみの鼻先をくすぐる真希の甘い匂いに、
気絶しそうなくらいの幸せが襲いかかる。
「あたし、なっちが好きなんだなあって。
で、そう思ったら、なっちが優しいワケも何となく判って…、
けどやっぱ、自信とかは全然なかったんだけど」
- 86 名前:幸せな言葉。 投稿日:2002年03月28日(木)01時54分12秒
- 日頃は、どちらかと言えば口数の少ない真希が一生懸命喋っている。
それが自分のためなのだと判って、
なつみの胸の奥では、ますます幸せと嬉しさが満ち溢れていく。
「…ふぇ」
何か言いたいのだけれど、ちゃんとした声にはならなくて、
情けない声だけが音として空間に響く。
「…き、キラわれてるって、思ってたのにぃ」
「キラってなんかないよ、好きだよ?」
なつみを抱きしめる腕の力はどんどん強くなるのに、
息苦しさだって感じるのに、
それを軽く通り越えてしまうくらいの、幸せな言葉。
- 87 名前:幸せな言葉。 投稿日:2002年03月28日(木)01時54分55秒
- 「もし、やぐっつぁんが部屋代わってって言ってこなくても、
今回はあたしから代わってって言ってたよ。
今日こそ言おうって、もう、これはチャンスとしか思えなかったもん」
今回のように地方での泊まり込みの場合、真希はひとみと同室になることが多いが、
同時になつみも真里と同室かというとそうでもなく、
圭織だとか圭だとか、ちゃんとした理由らしい理由がなければ、
絶対に代わってくれそうにない相手だった、と真希は続けた。
- 88 名前:幸せな言葉。 投稿日:2002年03月28日(木)01時55分31秒
- 「……ばかぁ」
幸せで、嬉しくて仕方ないのだけれど、
どう答えていいのかも、もう判らないぐらいで。
「大好き、なっち」
抱きしめてくる真希の腕の中で、
なつみは気恥ずかしさを紛らわすかのように、
真希のその肩先にぐりぐりと額を押し付けた。
なつみのそんな行動をますます可愛く思った真希が腕の力を強める。
突然訪れた至福の時間を、なつみは、じっくりと噛み締めることにした。
- 89 名前:幸せな言葉。 投稿日:2002年03月28日(木)01時56分07秒
- ――― END ―――
- 90 名前:瑞希 投稿日:2002年03月28日(木)01時57分24秒
- ……玉砕、それはワタシに課せられた使命…<違
- 91 名前:瑞希 投稿日:2002年03月28日(木)01時58分26秒
- 次は……、すんませんっ、
予告もできませんっ。
ではまた、いずれ……っ <真剣に逃走…
- 92 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月28日(木)03時11分10秒
- ごまなちぃぃぃぃぃ!!!
自分の大好物です!!!
玉砕?なにをおっしゃるうさぎさん!(意味不明)
めっちゃ良かったですよ!早く戻ってきてください!!
- 93 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月16日(火)02時47分10秒
- 向こうの板の裕子救済編まだかな〜(w
なかよしリクしたものです。出来れば・・・よし→なかがいいのですが・・・(w
気が向いたらお願いします。
- 94 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月04日(土)16時06分58秒
- みっちゃん絡んでるの読みたいです・・・。
よっすぃーとか加護とか・・・。
- 95 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月09日(木)16時28分18秒
- KU良かったっす〜。
久々に弱弱裕ちゃん見た感じです。
圭ちゃんも裕ちゃんの前だと甘えてしまう…。
かわいい〜!!
その後裕ちゃんはどうなったのか、ちと気になります……。
余裕があったらでいいんで、その後のKU書いてもらえませんか??
ゆっくりでもいいんで、よろしくお願いしますです。
- 96 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月13日(月)02時04分30秒
- 読むの遅くなったけど良かったよ〜!
ごまなちいいっすねぇ!!
早く戻ってきてくれ〜(w
- 97 名前:瑞希 投稿日:2002年05月25日(土)23時11分04秒
- >92さん
ありがとうございます。
私も「ごまなち」、結構スキなんですけどねえ、
少ないですよねえ……(TдT)
>93さん
気が向いたので、今回、善処してみました!(w
でも、これが精一杯でした…(玉砕)
>94さん
ごめんなさいっ、それ、今の私には、ちょっと無理です(w
>95さん
>その後のKU…
ごめんなさい、それも無理っす。というか、余裕があってもそれは書けません。
ちなみに、ウチのは、KUではなく、UKだったんですけどね…(^^;)
>96さん
ありがとうございます。
気に入っていただけたのなら、嬉しいです(照
- 98 名前:瑞希 投稿日:2002年05月25日(土)23時11分48秒
- 長らくお待たせ、いたしましたが(苦笑
今回は、「よしなか」です。
では、どうぞ。
- 99 名前:優しい手。 投稿日:2002年05月25日(土)23時12分27秒
細い肩や腕は、頼りなさげな儚さを思わせるのに、
どうしてか、強いイメージを持つ、年上の…、ひと。
- 100 名前:優しい手。 投稿日:2002年05月25日(土)23時13分54秒
- 「よっさん」
呼ばれると同時に、ごつん、てゲンコツを頭のてっぺんに喰らう。
こんな呼び方、あとにも先にも、きっと、このひとだけだ。
「なんですか、中澤さん」
殴られた頭を撫でることもせず、ゆっくり頭だけで振り向く。
勿論、痛くなかったからってのもあるけど、
あんまり、心のこの動揺ってやつを、気付かれたくなくて、
ちょっと無理して、冷静を装ってみた。
- 101 名前:優しい手。 投稿日:2002年05月25日(土)23時15分08秒
- 身長差があるのに、頭のてっぺんにゲンコツを喰らったワケは、
あたしが椅子に座ってたから。
だから、振り向いた真正面はちょうど相手の胸元あたり。
あたしは、ゆっくり、視線を上へ向けた。
「………」
呼んだくせに、中澤さんは、ほんの少し困ったようにあたしを見下ろしている。
それから、申し訳なさそうに眉をハの字にして、
ゲンコツで殴ったあたしの頭を優しく撫でてくれた。
- 102 名前:優しい手。 投稿日:2002年05月25日(土)23時15分54秒
- 「なんですか?」
慣れない行動に何だかテレくさくてぶっきらぼうに言い放つと、
撫でる手を止めて、そのままあたしの髪をぐしゃぐしゃにかき混ぜる。
「なっ、中澤さん?」
「……何でもあらへん」
そう言いながら、あたしの髪を両手の指先だけでつまんで、
左右に広げたり、指に絡ませたり。
……何がしたいんだろう、って、きっと、顔に出たんだろうな。
- 103 名前:優しい手。 投稿日:2002年05月25日(土)23時16分45秒
- 「……元気か?」
「は?」
あんまり唐突に聞くもんだから、答える声もかなり間抜けなものだったと思う。
「……何か知らんけど、えらいムズカシイ顔しとるんやもん。
よっさんは笑とるほうが可愛いで?」
……それ、誰にでも言ってるでしょ。知ってますよ、もう。
やっぱり、タラシだなあ、このひと。
「そんなことないです」
でも、そう言うなら、笑ってみようかな。
- 104 名前:優しい手。 投稿日:2002年05月25日(土)23時17分17秒
- 「元気ですよ?」
答えてから、微笑んでみる。
自分でも最近知った。
あたしの『笑顔』は、意外と小悪魔的らしい。
―――それ、よっすぃーの必殺だなあ。
って、矢口さんに言われて、やっと自覚したんだけど。
どうやらそれは、一回り年上の元リーダーにも、通用したみたいだ。
ちょっと、うろたえたみたいに顎を引いたのが判った。
- 105 名前:優しい手。 投稿日:2002年05月25日(土)23時17分49秒
- 「…そか。ならええねん。ちょっと、気になってな」
あたしの髪に絡ませていた手をゆっくり解いて、
今度は自分の前髪をかきあげる。
隠れていた額が見えて、ちょっとだけ、幼く見えた。
「……なんや?」
言葉と一緒に、明後日のほうを見ていたはずの視線が戻ってきてハッとする。
…いけね、見つめちゃってたよ。
- 106 名前:優しい手。 投稿日:2002年05月25日(土)23時18分22秒
- 「いえ別に、何でも」
さっきのままの笑顔で返す。
たいていの人間は、ここでそれ以上の追及はしてこなくなるけど、
中澤さんには、誤魔化したって、バレちゃうんだろうな。
「……なんや、見とれとったんか?」
ニヤリ、と聞こえそうな笑顔が向けられて、
あたしの心音がちょっとだけ跳ねた。
まさに、その言葉通りだったからね。
- 107 名前:優しい手。 投稿日:2002年05月25日(土)23時19分04秒
- 「…中澤さん」
「ん?」
きょん、って首を傾げて、悪戯っぽい幼い瞳で見つめ返される。
その目を、真っ直ぐ見つめ返せるひとなんて、いるのかな。
「……ちょっと、お願いがあるんですけど」
「なんや? よっさんがあたしに、なんて、珍しいな」
驚いてはいたけれど、満更じゃないって顔してる。
- 108 名前:優しい手。 投稿日:2002年05月25日(土)23時19分47秒
- 「あの、ですね……、えーと、そのぅ…、…もっかい…、してもらえません?」
「は?」
今度は、中澤さんが間抜けた声を出した。
「……頭、撫でてください」
言ってしまってから、顔から火を噴きそうな気分になった。
あたしってバカかも。
突然こんなこと言われたら、誰だって引いちゃうよなあ。
「あ…、いや、あの、やっぱりいいです、ごめんなさい。
聞かなかったことにしてください」
ぶるぶるっ、て音が聞こえそうなくらい、
頭を振ってから中澤さんから逃げるように椅子から立った。
- 109 名前:優しい手。 投稿日:2002年05月25日(土)23時20分21秒
- なのに中澤さんは、立ち上がろうとしたあたしの両肩をがっしり掴んで、
強く椅子へと押し戻して再び座らせた。
「…じっとしとき」
真顔で、真面目な声。
ドキドキと、胸が鳴り始める。
あたしを座らせたときは、まだ少し強張って見えた中澤さんの表情が、
だんだんとやわらいでいくのが判る。
- 110 名前:優しい手。 投稿日:2002年05月25日(土)23時20分57秒
- 「……ひとみ?」
びくんっ、て大きく肩が揺れてしまった。
勿論、心臓だって跳び上がった。
このひとにそんなふうに呼ばれたことは、一度だってなかったから。
そしてその次の瞬間には、
ふわ、って、まさにそんな感じで、空気が、動いた。
- 111 名前:優しい手。 投稿日:2002年05月25日(土)23時21分28秒
- 細い、華奢な手が、あたしの頭にのびてくる。
ゆっくりと、確認するみたいに、あたしの髪の中に、指が差し込まれてくる。
「……さっきも思うたけど」
何度か撫でる仕草を繰り返したあと、中澤さんがぽつりと呟いた。
「……アンタの髪、柔らかぁて、気持ちええなぁ」
その言葉が耳に届いて理解する前に、中澤さんの手が離れる。
そしてその一瞬で、
甘い熱にうかされていたような気分から覚醒させられる。
逃げていくような甘い熱を追って頭を上げたとき、
今度はさっきと違う熱が、あたしを覆い尽くそうとしていた。
- 112 名前:優しい手。 投稿日:2002年05月25日(土)23時22分08秒
- 「なっ、中澤さ…っ?」
細い、細い腕。
頼りなく思えたその腕の、おそらく、精一杯の、気持ちの強さ。
腕の中に抱き込まれているのは、あたしの頭。
ちょうど自分の口元のあたりが、このひとの胸のあたりで。
……ナイって、こと、ないじゃん、全然、柔らかい。
……ぜってぇ、声に出して言えないけど。
- 113 名前:優しい手。 投稿日:2002年05月25日(土)23時22分41秒
- 頭のてっぺんに、唇が寄せられているのも、感じる。
……このまま、このひとの腰に腕をまわしても、いいのかな。
「…ええ匂い」
理性の糸を、切ろうとしているんだろうか?
それとも、試してるの?
「中澤、さん?」
おそるおそる、でも、拒否されても、傷付かないように、
ゆっくりと、腰に腕をまわして、抱き寄せるように。
- 114 名前:優しい手。 投稿日:2002年05月25日(土)23時23分11秒
- 「……ちゃう」
ドキッ、として腕を離しかけたあたしを、
中澤さんが軽く戒めるように、そっと頭を上げて、ちょっとだけ睨んできた。
「……?」
「…そろそろアンタも、名前で呼びなさい」
微笑むその口元の、なんてキレイな……。
「……裕、ちゃん」
「よろしい」
もう一度、中澤さんの手が、あたしの頭の上に戻ってきた。
- 115 名前:優しい手。 投稿日:2002年05月25日(土)23時23分45秒
- 「アンタは背ぇも高いし、『男前』キャラも確立してしもうたもんな。
頭なんて、そう簡単に『撫でて』、なんて、言われへんよなあ」
……いや、あの、違うんだけど、な。
『撫でてほしかった』のは、あなただからで。
別に、そんなこと、他の誰にも、思ったりしないんだけど。
「頭ぐらい、なーんぼでも撫でたるし。
そんぐらいは、甘えても全然、構わへんねんで?」
…そう言えば、自分への好意には鈍いひと、って、聞いたことあるな。
でもまあ、誤解させたままでも、別にいっか。
今までの、曖昧で、微妙に近い距離が、広がったワケでもなさそうだし?
- 116 名前:優しい手。 投稿日:2002年05月25日(土)23時24分19秒
- 「……でも、そんなこと、いちいち言うの、恥ずかしいっす」
それは本音。
いくらなんでも、それじゃ、あんまり、子供過ぎる。
ただでさえ、このひとに比べたら、
あたしなんて、ずっとずっと、子供だっていうのに。
「じゃあ、そのときは『裕ちゃん』て、呼んだらええやん。
それを合図にしよ」
「……いいですね」
ホントは、ずっと、そんなふうに、呼んでみたかったんだ。
- 117 名前:優しい手。 投稿日:2002年05月25日(土)23時24分53秒
- 「でも、他のみんなには、秘密にしててくださいよ?」
「よっしゃ、まかしとき」
満足そうに笑う口元が、やっぱりちょっと、悪戯っぽくて、
その言葉を素直に信じていいものか、考えもしたけど。
でもまあ、とりあえず、そこから、始めますか。
このひとを好きになったときから、長期戦になるのは判ってたし。
ねえ?
- 118 名前:優しい手。 投稿日:2002年05月25日(土)23時25分24秒
- 「……裕、ちゃん?」
こっちも悪戯っぽく笑って見せると、
中澤さんはちょっとだけ目を見開いて、
でもすぐに判った、というふうに頷いて微笑んで。
ゆっくりと、華奢で細い、優しい手が。
あたしの、髪の中に、差し込まれてきた。
- 119 名前:優しい手。 投稿日:2002年05月25日(土)23時25分56秒
- ――― END ―――
- 120 名前:瑞希 投稿日:2002年05月25日(土)23時26分42秒
- はーい、終了でーす。
今回も、やっぱり、ツメが甘かったように思われますが……。
いかがでしたか?
それにしても、すっごいですねえ。
このスレ、2ヶ月も放置状態だったのに、
倉庫逝きにもならずに、まだ板にちゃんと残ってるなんて…(驚
それもこれも、
読んでくださってる皆様のおかげです…(°Å)ホロリ
本当にありがとうございますm(_ _)m
- 121 名前:瑞希 投稿日:2002年05月25日(土)23時27分30秒
- えーとですね、
実は今まで一度も書かずにいたんですが、
ちょっと、自分的にご立腹、なこともありまして。 <エラそうに…
一度、きちんとお断りの意味も兼ねて書いておこうと思います。
私、基本的には、リク、受け付けておりません、ので。
板を借りて駄文を公表させてもらってますし、
できれば何事も穏便に済ませたいのですが、
たとえ「エラそうにっ」、と言われても、読者様あっての書き手という立場でも、
この気持ちは変わりませんので。
- 122 名前:瑞希 投稿日:2002年05月25日(土)23時28分19秒
- これからも、私は、書きたいものを書きたいように書くつもりです。
(更新、滞りっぱなしですが…<氏)
ですから、
たとえば「〇〇書いてください」というレスをいただいても、
それが自分にとって書きたいと思うモノでなければ、
いくら待っていただいても、書くことはまず有り得ません。
ので、そういったレスは、控えていただければ、と思います。
- 123 名前:瑞希 投稿日:2002年05月25日(土)23時28分53秒
- それから、このスレだけでなく、
花板も、金板も、無闇にageないでください。
よろしくお願いします。
では、また近いうち、この板のこのスレでお会いできますように。
長々と、愚痴ってしまって、スイマセンでした。
- 124 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月27日(月)18時58分01秒
瑞希さんの小説が大好きな読者の1人です。
カップリングに関係なく、瑞希さんの書かれる小説の世界の
切なくてそれでいて暖かい雰囲気がとても好きなので、これからも
瑞希さんの書きたいものを書きたいように書いていただければと思います。
また、お会いできるのを楽しみにお待ちしています。
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