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伝わりますか

1 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月21日(木)10時41分04秒
初めまして、ルパン4thと申します。
小説初挑戦なんで読みにくいとは思いますが、お付き合いいただけたら光栄です。

カップリングは「よしごま」でいきたいと思ってます。

また感想や指摘などそえてくれたら嬉しいなと思ってます。ではよろしくです。
2 名前:プロローグ 投稿日:2002年02月21日(木)10時53分26秒
「よーーーっすぃ〜!!」
「うっ……ぐるじぃ」

楽屋で雑誌を読んでいた吉澤ひとみに後藤真希は後ろからそ〜っと近づきガバッと抱きついた。
苦しがるひとみを無視してさらに首に回す腕に力を入れる。

「……もう!苦しいってば!!」

やっとのことで真希の羽交い締めから逃れるとひとみは軽い呼吸困難のため咳き込んだ。

「あは、ごめんね。だってよっすぃ〜の反応楽しいんだもん」

そう言いながら真希は咳き込むひとみを面白そうに見た。これっぽちも悪いなんて思ってないだろう。

「ごっちんは、ばか力なんだよー。もっと手加減してよね」

文句は言うもののひとみの顔に怒りの表情はない。
3 名前:プロローグ 投稿日:2002年02月21日(木)11時05分02秒
「まーたやってるの?よく飽きないわねー二人とも」
「あっ、圭ちゃん聞いてよ。よっすぃ〜たらねまたひっかかたんだよ」

呆れたような顔で二人の会話に入ってきた保田圭に真希は勝ち誇ったかの様に説明した。

「確かに毎朝同じことやられてるのにかわせない吉澤は学習能力ゼロね」
「あはは、さっすが圭ちゃん!いいこと言う!」
「そんな〜、ひどいですよ保田さん!」

保田の一言で調子に乗った真希とは反対にひとみの方はふてくされている。

「ほら本番始まるから行くよ!」

そんな二人の肩を気合を入れるようにポンと叩いて保田は二人を促した。

「は〜い!じゃ、よっすぃ〜お先!!」

と言って真希は足取り軽く楽屋から出ていった。
4 名前:プロローグ 投稿日:2002年02月21日(木)11時20分12秒
「ほんとにあんた達は仲いいわね」

真希の後姿を横目で追いながら保田はまた呆れたように言った。

「まぁ…同い年ですし、同じプッチですしね」

とひとみは曖昧に言葉を返した。

「あんがい本気かもね…後藤は」
「えっ!?どういう事ですか?」
「ん、何でもないわ。ほら吉澤も早くしなさいよ」

ひとみの問いには答えず保田は楽屋を出て行ってしまった。

「本気?ごっちんが?……まさかね」

ひとり残されたひとみは保田の言葉の意味を考えて呟いた。

『もしそうだとしても、私には…人を愛する資格なんて無いんだから…』

そう心の中で呟いて、ひとみも静かに楽屋を後にした。
5 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月21日(木)11時29分35秒
とりあえず、プロローグだけ書いてみました。読み返してて文章の下手さに恥ずかしくなりました。
とりあえず完結を目標にがんばって更新していこうと思います。
6 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月21日(木)12時55分59秒
うわお!よしごま!がんばって。
7 名前:とみこ 投稿日:2002年02月21日(木)13時42分01秒
よしごまラーブッ!!よしごまファイッ!!!
8 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月21日(木)21時30分10秒
おおお久しく見ぬよしごま新作だぁ…
かなり期待します!!
9 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月22日(金)00時47分21秒
>>6 ありがとうございます!がんばりまっす!

>>7 とみこさん!小説読ませてもらってます。とみこさんとは比べものにならないほどの駄文ですがよろしくお願いします。

>>8 そうですねぇ最近よしごま少ないですよね。期待にそえるようがんばりますね!
10 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月22日(金)00時50分50秒
「はぁ〜なーんで気づかないんだろ?けっこうアタックしてるのになぁ」

収録が終わって他局へ移動するためのロケバスの中、真希は溜息交じりに独り言を呟いた。

「何?なんか言った?」
「えっ?あっううん!何でもないよっ!!圭ちゃん」

隣に座っていた保田の声で現実に引き戻された真希は慌ててその場を取り繕った。

「今あんた……吉澤のこと考えてたでしょ?」
「えぇ!!や、やだなぁ〜圭ちゃん。なんでよっすぃ〜が出てくるわけ?あは、あははは」
「……あんたって子はほんとにすぐ顔に出るわね。もう顔に『図星です』って書いてあるわよ」
「えっ!?えぇぇ〜〜!!!」

もちろん本当に顔に書いてあるわけ無いが、無意識に顔に手をあててしまう。そして自分の手が冷たく感じることから顔が真っ赤になっていることに気づく。

『ええい!ここまでバレてるなら、いっそう圭ちゃんに相談しちゃえ!!』

なに事においても開き直りが早いのが真希の良い(?)ところである。
11 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月22日(金)00時58分00秒
「ねぇ圭ちゃん!どう思う?」
「どう思うって何がよ?」

涼しい顔して安田は冷静に答える。

『もーー分かってるくせに!!圭ちゃんの意地悪〜!』

と真希は心の中で叫びながら、それでもここは我慢しなければと思いとどまる。

「だーかーらー、ほら、その……よっすぃ〜のこと」
「吉澤がどうしたのよ?」

真希の照れる仕草が面白くて、なおも保田はしらを切る。
「もう!圭ちゃん!!」
「はいはい。落ちついて、ちゃんと一緒に考えるから」

食いついてくる真希を宥めて、保田は本腰に入るために座席に深く座りなおして腕組みをした。



12 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月22日(金)01時00分10秒
「確かに…後藤のアタックは第三者の私から見ても分かり易いわね」
「でしょ?じゃあどうして、よっすぃ〜は気づいてくれないのかな?」

保田の言うように真希はこれまで、できるだけひとみにアタックをしてきた。毎朝後ろから抱きつくこともすでに日課となっているし、さりげなく腕を絡めたり、今日は無理だったけどロケバスの中だって誰よりも多くひとみの隣に座ってる。
そんな風にひとみを追っかけているだけで幸せだけど、やっぱり一方的に想っている自分が惨めで空しくて時々落ち込んでしまう。しかしそんな真希に真っ先に気づいて心配して優しくしてくれるのは他でもないひとみで、真希のひとみへの想いと切なさは増すばかりだった。

『そう私が好きになった人はクールで、かっこ良くて、鈍感で、そして残酷なほど優しい人…』
13 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月22日(金)01時03分00秒
「ねぇ後藤。少しアタックするのを控えてみたら?」
「えーだってそれじゃ余計気づいてもらえないじゃん」
「まだまだ甘いわね。いい?男ってもんはね…吉澤は男じゃないけど…追いかけると逃げるけど、逃げると追っかけて来るもんなのよ」

保田は少し得意げに持論を説明した。

「ほんとにそうなの?」

真希は少々不満そうな声で言った。

「まあ、信じる信じないはあんたしだいだけど。ぼやぼやしてると他の人に取られるわよ」

真希の口調に少しだけ気を悪くした保田は、素っ気無くそう言って後ろを指差した。
真希はその指の方向を目で追って、思わず顔がこわばった。

そこにはひとみの肩によりりかって気持ちよさそうに寝ている石川梨香とそんな事お構いなしといった感じで頬杖をついて窓の景色を眺めているひとみの姿があった。

「……圭ちゃんの言うとおり……やってみよっかな」

真希は視線を反らせないまま隣の保田にポツリと言った。
14 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月22日(金)01時07分55秒
ちょこっと更新しました。次回あたりで吉澤をちゃんと書く予定です(^^;
それにしてもsageするのって忘れちゃうもんですねぇ。気を付けなければ!
15 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月22日(金)01時21分38秒
うっ…読み返していて誤字を発見しました。

安田→保田
肩によりりかって→肩に寄りかかって

です読みにくくしてしまって申し訳ありませんでした。
16 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月22日(金)18時01分40秒
『……おかしい。絶対おかしい』

ひとみは一人楽屋で最近の真希の行動について考えていた。

あれだけ自分の周りにまとわりついていた真希がパッタリと寄り付かなくなった。かといって自分から真希に話かければいつもの調子で会話もはずむ。

『という事は嫌われたわけではない……でもやっぱりおかしい』

ひとみはなおも考えに集中する。
真希の自分に対する気持ちは薄々気づいていた。用が無くても自分だけには話しかけてくる事や、やたらに腕を絡めてきたり抱きついたりする事、そして自分にしか見せない真希の最高の笑顔…

しかし一番おかしいのはそんな真希の行動が無くなったことではない、そう一番おかしいのは……そんな真希が気になってしょうがない自分だ。
17 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月22日(金)18時03分35秒
毎朝後ろから忍び寄ってくる真希の気配にわざと気づかないふりをして羽交い締めにあう。
そして真希のサラサラの髪の毛からフワリと香る甘い香水の香りが自分の鼻をくすぐり、耳元で本当に楽しそうに笑いを含んだ声で自分の名前を呼ぶ。
そんな時間にすればほんの3分くらいの日課となったじゃれあいを、待ち侘びて大切にしていたのは真希ではなく自分だったことにひとみは気づいた。

『ヤバイ……このままじゃ私ごっちんのこと本当に好きになる。』
『でもダメだ……自分の気持ちをごっちんに伝えることは許されない。そうしたら私はごっちんを傷つけてしまうだろう。私は……好きな人のそばにずっといてやる事ができないのだから』
『今ならまだ…諦められるでしょ』

そう自分に言い聞かせたが、どうしようもないくらい真希にはまってしまいそうなもう一人の自分の存在をひとみは否定しきることができなかった。
18 名前:とみこ 投稿日:2002年02月22日(金)18時34分42秒
>>13
梨香ではなく梨華ですよーん。

いやいや、こちらこそ駄作でっせ^^:
まぁそれはさておき、感想ですが・・・

ヨッスィーには過去があるのかな?
過去をあばいていく時の文も気になりけり。
作者サマ次第でごぜーます。でわ!ジュワッ
19 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月23日(土)01時54分02秒
>>18 そうなんですやっちまった!人の名前間違えるなんてどうしようもないですよねー。梨華ちゃんファンの方すいませんでした(^^;

吉澤の秘密をあばくのはまだもうちょい先にします。
ではちょっと続きを
20 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月23日(土)01時56分53秒
「っすぃ〜……よっすぃ〜てば!!」

ふいに隣で名前を呼ばれていることに気づき、顔をあげると梨華が立っていた。

「あっ梨華ちゃん…なに?」
「なにって、どうしたの一点見つめて。何かちょっと恐かったよ」
「あはは、ごめん寝不足かな?ボーッとしちゃた」
「大丈夫?あんまり無理しないでね」
「うん。ありがとう梨華ちゃん」

本当に心配そうな顔をしている梨華を見て、ひとみは『これがごっちんだったら』なんて考えてしまい『やっぱり重症だ』と苦笑した。
21 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月23日(土)02時00分00秒
「つんくさん遅いね」

そんなひとみの様子には全く気づかず梨華は隣に腰掛けながら、さらに話を進めた。

「えっ!?」
「もうどうしたのよっすぃ〜。今日はつんくさんから新曲の発表があるって言われたじゃない」

『そうだった……ヤバイなんか今日私、変。ごっちんの事考えてたこと以外あんまり記憶ない…』

「ね、次は誰がセンターかな?」
「う〜ん誰でもいいよ。私は与えられたパートをしっかり歌いこなすことが大事だと思うし」
「もうよっすぃ〜は相変わらずクールなんだから。」

そんな風になんだかんだと梨華と話しているうちに、つんくが楽屋に入って来た。みんなの視線が一斉につんくに集まる。
ひとみもつんくへ視線を移す途中真希の方をさりげなく見た。その時真希と一瞬チラリと視線が重なった気がした。
22 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月23日(土)02時04分33秒
「ほい、みんなお疲れさん。みんな疲れてると思うから、簡単に説明してデモテープ渡して解散にするから」

つんくは静まる楽屋を見渡しながら淡々と言った。

「えっと、次の新曲のタイトルは『Mr.Moonlight〜愛のビックバンド〜』で……センターは吉澤ひとみ!」

全員の視線が一斉につんくからひとみに移される。

『えっ!?私?……私がセンター?うそみたい』

さすがにクールなひとみも動揺を隠せない。

「やったね!よっすぃ〜」

隣にいた梨華が小声で囁いた。

「―――で、安倍と後藤にもメインはってもらうから、二人は吉澤をしっかりサポートしてくれ。練習は明日から始めるから、そのつもりで。特に吉澤がんばれよ期待してるから」
「はい、がんばります!ありがとうございました!」

まだ落ちつかず、声が思わず上ずってしまった。

「よし。じゃあ今日はこれで解散な。お疲れさん」

そう言ってつんくが楽屋を後にすると、楽屋の中は一気に騒がしくなった。
23 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月23日(土)02時08分14秒
「やったじゃん!よっすぃ〜」
「がんばりなさいよ〜吉澤!」
「ついによっすぃ〜の時代ってか」
メンバーが集まってきて色々な声をかけてくるのを、ひとみは「ありがとう」と返事をしながら目で真希の姿を探した。
ひとりで離れた所に座っていた真希と目が合うと、真希は最高の笑顔でガッツポーズをしてくれた。そんな真希にひとみも優しく微笑んで同じようにガッツポーズをしてみせた。

『本当は今すぐごっちんを抱きしめて、喜びを分かち合いたい。……でもそれは許されない。今私がやるべきことは、この大役を完璧にこなすこと。そう、この最初で最後のチャンスを―――』
24 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月23日(土)02時14分28秒
はいネタが古くてごめんなさい。なんせこの小説の構成練ってる時は「ミスムン」が新曲だったもので…
でもダラダラしてるうちに新曲が出ちゃいました(笑)みなさんどうかご了承下さいませ。
25 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月23日(土)16時08分17秒
それからのひとみは無我夢中で練習に励んだ。初のセンターを成功させたいという思いももちろんだったが、何よりもそうする事で真希への想いをふっきりたかった。

「はい!ちょっと休憩〜!」

練習が中断されるとみんなグッタリとしながら床に座り込んだ。

「で、どうなのよ最近。吉澤とは」

保田はいったん相談に乗った手前気になって真希に聞いてみた。かといって二人が進展していないのは保田から見ても明らかだった。

「ん〜、私が寄りつかないぶんよっすぃ〜から話しかけてくる事が多いかな」
「へぇー、それは進歩じゃない」
「…うん。でも……よっすぃ〜が何考えてるのか…私のことどう思ってるのか全然わからない」

そう言うと真希は自分の膝に額をつけるような格好で顔を伏せた。
26 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月23日(土)16時12分22秒
「後藤…辛い恋を知ってる人は強くなれるよ。……がんばれ」
「ん、ありがとう。圭ちゃん」

そう言って弱く微笑んだ真希の瞳はわずかに潤んでいた。
そんな真希を励ますように背中をポンポンと叩きながら保田は違う意味で吉澤のことを考えていた。

『最近、吉澤元気ないのよね。顔色もあんまり良くないし……今回は誰よりも練習に励んでいるけど、その割にはミスることも多い。』

何か嫌な胸騒ぎが保田の胸によぎった。
27 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月23日(土)16時14分46秒
「ねぇねぇ!圭ちゃんとごっちんもジャンケンに参加しようよ〜!!」

そんな保田と真希に矢口が話しかけてきた。

「何?なんのジャンケンなの?」
「負けた人がジュース買ってくるの。他にねなっちとかおりんとよっすぃ〜が参加するんだぁ。ね参加しない?」
「あは、面白そう!後藤参加する〜!!圭ちゃんも行こっ」

真希の顔からはついさっきの切ない表情は消えていて、いつもの顔に戻っていた。

『後藤、あんたは本当に強くなったね。』
28 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月23日(土)16時19分00秒
「「「「「「ジャ〜ンケ〜ン〜ポイッ!!!」」」」」」

パーを出したのは5人、グーを出したのは1人――――真希の一人負けだった。

「うぅ〜〜〜まじっすかぁ」

思わずまだグーの形をしたままの自分の手を恨めしそうに見つめた。

「私、ポカリねっ」
「あっ私も同じやつ」
「私はね〜紅茶、ストレートね」
「私ミルクティーね」
「ウーロン茶よろしくぅ〜」

「はいはい!行ってきますよぉ〜。もう覚えきれるかな」

真希はしぶしぶ立ちあがって。ドアの方へ歩き始めた。

「待って、私も一緒に行くよ。ごっちん」

その声に驚いて真希が振り向くと、自分の方へ歩み寄ってくるひとみが目に入った。

「…いいの?よっすぃ〜勝ったのに」
「いいも悪いも…ごっちん一人じゃ缶6本も持ちきれないでしょ」

本当は真希と二人になりたいだけなのに、こんなふうにしか言えない自分にひとみは嫌気がさす。

「あは!そう言われればそうだよねぇ!…よっすぃ〜ありがと」

そんな真希にひとみは優しく微笑んで、真希の隣に並んだ。
ドアを出る時に真希が保田の方を見ると、保田は笑顔で親指を立てるサインをした。
29 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月25日(月)07時13分47秒
保田の嫌な予感てのが気になる…
続き期待!
30 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月26日(火)01時47分42秒
>>29 感想ありがとうございます!感想もらえると「読んでくれてる人がいるんだぁ」て思えて嬉しいです。
保田の嫌な予感…じょじょに明かしていきますね
31 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月26日(火)01時54分57秒
「どう?初のセンターは?」
「ん…大変だけど、やってて楽しいよ」

自販機まではすぐなのに、どちらからともなく二人はわざとゆっくり歩いてた。でもなんとなく会話はギクシャクしてて、ろくに目も合わせられないまま目的地に着いてしまった。

―ガシャン―
「…これで全員分かな?」

ひとみは最後の1本を取りだしながら聞いた。

「うん、あとはうちらの分だけだよ。……後藤は何にしよっかな!」

真希は自販機と睨めっこしながら迷っていた。

「よしっ!ミルクティーにしよっと。――――あぁ〜〜〜!!」
「なに?どーしたの?ごっちん」

隣の自販機で真希と同様何を買おうか考えていたひとみは、いきなりの絶叫に驚いて真希の方を見た。

32 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月26日(火)01時57分00秒
「冷たいの買おうと思ったのに、間違えてホットの方押しちゃったよ〜」
「あははは、ドジだねぇ〜ごっちんは!」

ひとみは笑いながら自分の分のボタンを押した。

「よっすぃ〜ひどいよ。何もそこまで笑わなくても……」
「ごめんごめん――――ごっちん、はい。」

ふてくされてる真希にひとみはまだ笑いながら自分が買った冷たいミルクティーを手渡し、代わりに温かいミルクティーを真希の手から奪った。

「いいよ、よっすぃ〜!そんな悪いよ」
「べつにいいよ。……私これ飲みたっかたしね」

そう言って先に歩き出したひとみの顔はいつものクールな表情だった。
33 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月26日(火)02時00分04秒
『よっすぃ〜のウソツキ。……よっすぃ〜が好きなのは冷たいストレートティーじゃんかぁ。そんなに優しくされたら、ますます好きになっちゃうよぉ』

「よっすぃ〜!!ありがと」

真希は先を歩くひとみを追いかけて腕を絡めるとギュッと寄りそった。

「うわっ!いきなり危ないよ」

ひとみはバランスを崩して缶を落としそうになったが、久しぶりの真希の温もりと香水の香りで思わず顔が緩むのが自分でもおかしいくらい分かった。

「えへへ。なーんか久しぶりだねこうするの」
「…うん」

今度はしっかりと目を合わせてお互い微笑むことができた。
34 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月26日(火)02時05分36秒
「ね、ごっちんがつけてる香水って何?」
「へ?香水?ベビードールだけど……どうしたの急に?」
「いや…なんかいっつもごっちん良い香りするから…」
「えへへはあとはあとそう?」

真希は嬉しそうにフニャと笑って、なお一層ひとみに寄り添った。

『よっすぃ〜覚えてる?始めて一緒に買い物行った時、私が香水何にしようか迷ってたらよっすぃ〜がいい香りって言ったやつだよ』

真希にはあの頃と好みが変わっていないひとみが嬉しかった。気づかれないようにそっと見上げたひとみの顔は本当に整っていてキレイで、見惚れてしまいそうになった。
35 名前:ルパン4th 投稿日:2002年02月26日(火)02時08分08秒
「よっすぃ〜寂しかったんでしょ?最近私の香り感じれなくて」
「えー?ぜーんぜんっ!!」

おどけて聞いてきた真希にひとみも笑いながら答える。

『そんなに強く否定しないでよ〜悲しくなっちゃうじゃん』

真希が心の中でショックを受けているうちにスタジオにたどり着き、ひとみはそっと真希の腕をほどくと先にドアに手をかけた。しかし何かためらって入ろうとしない。

「?…よっすぃ〜?」
「…ほんとは……ちょっと、寂しかったよ」

真希の方を見ずに聞こえるか聞こえないくらいの小さな声で呟くとひとみはドアの向こうに消えて行った。

信じられない言葉に真希は立ち尽くしていたが、スローモーションで頭に焼きついたひとみの戸惑いの表情は恋の顔だった。
36 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月28日(木)22時01分30秒
ここ初めてきましたがマジでおもしろいです。
よしごま最高!
37 名前:とみこ 投稿日:2002年03月02日(土)12時28分34秒
素直なゴッツァンと素直になれないヨスコがかわいい!
保田がいい人に見えてきた・・・キラン。
さすがキャラ立ち大明神。(字あってる?)
38 名前:にゃん 投稿日:2002年03月02日(土)16時28分15秒
お初です!小説すっごい良いです。よしごま大好きなんですよ荘アきが気になるぅ〜ごっちんの気持ちが伝わるといいな。
39 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月03日(日)01時47分36秒
>36さん
始めまして、「マジでおもしろい」嬉しいですねぇ〜最高の誉め言葉です!これからもよろしくです。

>とみこさん
キャラ立ち人形ほしいっす!あれ見ながら書いたらいいネタ浮かぶかも(笑)

>にゃんさん
始めまして、よしごまいいですよねー私も大好きですよ。ごっちんの気持ち…伝わらせてあげたいなと思ってます。これからもよろしくです!
40 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月03日(日)01時49分49秒
時間を少し前に戻して――――
ひとみと真希がジュースを買いに行っている間、保田はトイレに行っていた。
用を済ましトイレを出ようとしたその時だった

「いいなぁ〜まこっちゃんは吉澤さんの台詞の相手で」
「いいでしょ〜。近くで見てもかーっこいいんだぁ」

声から察するにどうやら小川と紺野らしい。
別に盗み聞きをするつもりは無かったが、ひとみの名前を聞いてつい保田は動きを止めてしまった。
そうとも知らず二人の会話は続く。

「でもさぁ〜なんか吉澤さん最近おかしいんだよね」
「おかしいって何が?」
「なんか台詞の時さ目線合うのがワンテンポずれるんだよね」
「え?何それどーいう事?」
「うーん。なんか軽い目眩おこしたみたいな感じ……まっ、私の気のせいかな。」

そこで吉澤の話は終わり、他の話題をしながら二人は出ていった。
41 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月03日(日)01時52分15秒
『目線がずれる?軽い目眩?……』

先程の嫌な胸騒ぎが自分の中で増幅するのがはっきりと分かる。

『吉澤に話を聞いてみる必要がある』

それが真希の為なのか、かわいい後輩を思ってなのか自分でも分からなかったが、その時保田は強くそう思った。
それがひとみと真希の歯車を大きく狂わすとは――その時誰も気づいてなかった。
42 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月03日(日)01時54分31秒
「吉澤ちょっと話があるんだけど、この後いい?」

その日の練習が終わって楽屋で帰り支度をしているひとみに保田は切り出した。

「…いいですけど?」

以外な人の誘いにひとみは怪訝そうな顔をしたが素直に頷いた。

「まっ、大した事じゃないんだけどね」
「そうですか。私ちょっとトイレ行ってくるんで楽屋で待っててもらっていいですか?」
「OK。じゃ待ってるから」

ひとみがトイレに向かうのを見送って保田は誰もいなくなった楽屋で何から聞こうか考えていた。
その時だった、ガタン!!という凄い音が静まり返った部屋に響いた。ハッとして保田は反射的に音のした方へ向かった。その方向はトイレだった。
43 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月03日(日)01時58分59秒
―ひとみ視点―

トイレでひとみは手を洗っていた。水を止めて顔を上げたその瞬間、正面の鏡に映る自分の姿がグニャリと歪んだかと思うと目の前が真っ暗になり続いて頭に激痛が走った。痛さのあまりひとみはガタンという音と共にその場に崩れ落ちた。

「……っ!!…ごっ…ちん」

愛しい人の名前を呼ぶことで、消え行く意識をなんとか食い止めようとした。
44 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月03日(日)02時01分18秒
「吉澤!!!」

トイレに駆け込んだ保田の目にうずくまるひとみの姿が入った。状況は掴めなかったが、それが危険な状態である事は直感でわかった。

「吉澤!大丈夫!?今人呼んで来るから待ってて!!」

そう言って駆け出そうとした保田の腕をひとみは力なく掴んで止めた。

「ちょっと!吉澤!?」
「だい……じょうぶ……です……から」
「大丈夫って……顔真っ青じゃない!」
「すぐ…おちつき…ます…から。誰も……呼ばない…でくだ…さい」

声に力はなかったが、恐いくらい必死に訴えてくるひとみに保田は逆らうことができなかった。
45 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月03日(日)15時58分28秒
オォー、よっすぃーどうしたんだい?
よしごま大好きなので楽しみです。
ヤッスーのキューピットぶりにも期待!
46 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月06日(水)22時59分28秒
>45 名無し読者さん
レスありがとうございます。
ヤッスーには良いキューピットキャラでがんばってもらう予定です(笑)
これからも、よろしくです!
47 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月06日(水)23時02分04秒
「本当に大丈夫なの?」
「ええ、もう落ちつきました。大丈夫です」

あれからひとみの言うように様態は落ちついて、二人は楽屋の椅子に座っていた。

「吉澤…あんたどこか体悪いの?」
「……そんな事ないですよ」
「ウソね。……始めてじゃないからすぐ落ちつくって分かったんでしょ?」
「………」

ひとみはしばらくの間飲みかけの缶ジュースをジッと見つめていたが、決心したように小さく溜息をつくとポツリ、ポツリと話し始めた。
48 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月06日(水)23時04分46秒
「私……頭に腫瘍があるんですよね」
「頭っていっても脳の奥の方にできてて……悪性じゃないんですけど…最近それが大きくなり始めてて……」

ひとみは慎重に言葉を選びながらゆっくりと話す。

「私よく練習中に一人動きが遅れたり、目線が合わなくて怒られるでしょ?……あれもそっからきてるんですよね…普段は平気だけど、激しい運動してると軽い目眩起こすんです」
「……手術とかは…できないの?」

ひとみの口から出る信じられない言葉に、保田は震えた声で聞いた。

「できない事は無いけど……すごいリスクが大きくて…何の後遺症も残らない可能性は奇跡に近い確率だって……」
「…後遺症?」
「ええ…どういう形で出るかは分からないけど…麻痺とか記憶喪失とか……最悪の場合は…死だって」
「…う…そ」

今までどんな思いで一人死という恐怖感と戦ってきたのだろう?何でもっと早く気づいてやれなかったのだろう?自分の不甲斐なさに腹が立ち保田の頬に涙がつたった。
49 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月06日(水)23時08分17秒
「嫌だなぁ保田さん。…泣かないでくださいよ」

ひとみはわざと笑って明るく言ったが、すぐに真剣な顔になって保田に言った。

「今しかないんです。どうしても今の曲はやり遂げたいんです……だから黙ってて下さい皆には…特にごっちんには…」
「後藤?……後藤の気持ちに気づいてたの?…まさか吉澤も後藤のことを…」

ひとみは立ちあがって保田から少し離れると自嘲するように笑った

「…いつの間にか、ごっちんしか見えなくなってました……いつも気持ち押し殺して、好きと言えずにパントマイムばっかり…笑い話にもなりませんよね」

窓から差込む夕陽が逆光となりひとみの顔はよく見えなかったが、声を殺して泣いているのが分かった。
50 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月06日(水)23時12分20秒
「好きって言えばいいじゃない、病気のことも全部話して気持ち伝えればいいじゃない。…後藤がどれほどあんたのこと想ってるか分かる?」
「分かってます。だからこそ言えない……私はいつどうなるか分かりません。…そうしたら私は愛しい人を暖めてやることも、涙を拭ってやることも……もしかしたら愛した記憶も無くしてしまうかもしれません。……だったら最初から想いを伝えない方が、ごっちんを傷つけなくてすむ…」
「そんなのおかしいわよ!お互いそんなに想いあってるのに…おかしいじゃない」

保田は思わず感情的になって大きな声を出してしまった。そんな自分を落ちつかせるために一呼吸すると、ひとみと向き合い肩に手を置いて説得するように今度はゆっくりと言った。

「後藤はねあんたが思ってるほど弱くない……そんな風に後藤を強くしたのは吉澤あなたよ?」
「…私が、ごっちんを?」
「そう、後藤があんたを想ってどれほど一人で泣いたと思う?それでもあの娘はあんたを振り向かせようといつも笑顔を絶やさなかった……」
「………」
51 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月06日(水)23時15分31秒
ひとみの脳裏に真希の笑顔が流れた

毎朝羽交い締めをして見せる無邪気な笑顔
初センターが決まった時ガッツポーズしてくれた笑顔
腕を組んでくる時の照れたようなはにかんだ笑顔

ひとみが思い出す真希の顔はどれも笑顔だった。

「わかったでしょ?後藤には吉澤が必要なの。想いを伝えない方が傷つけないって言ったけど……後から本当は両想いだったって知る方が傷つけるんじゃないの?」
「……でも」
「吉澤、優しくしようとする事で誰かを傷つけてしまうこともあるのよ」

今まで自分が貫いてきた意志を崩されて、ひとみは困惑していた。

「今しかないから今の曲をやり遂げたいと思うなら、この恋を実らせるのも今しかないんじゃない?……時間が無いなら、今を精一杯生きて!」

揺れるひとみにとどめを刺すように保田はキッパリと言い切った。
ひとみはどうして良いか分からないといった顔をしている。
52 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月06日(水)23時19分49秒
「…とにかく、病気のことは黙ってるから……そのかわり何かあったらすぐに私に言うこと、あと病院はちゃんと行くこと。いい?」

保田の問いにひとみは小さく頷いた。

「じゃあ、私はこれで帰るけど…明日は新曲初披露の収録なんだから、吉澤も早く帰って休みなさいよ」

少し一人で考えたいだろうと思い、保田は先に楽屋を後にした。

薄暗い楽屋に一人取り残されたひとみは、真希のことを考えていた。
ひとみの頭によく知っている笑顔の真希と見た事のない泣き顔の真希が交互に浮かんでは消え、また浮かんでは消えた。
53 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月07日(木)17時43分44秒
うほほーい♪よしごまだ!!
切ない関係(?)の2人がいいっす!
作者さん、がむばってください。
54 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月07日(木)18時23分40秒
よしごま大好きなんですよ〜(^O^)よしこ〜ごっちんに想いを伝えるんだー頑張れ!
55 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月10日(日)22時58分31秒
「あれぇ〜圭ちゃん、よっすぃ〜知ってる?」

次の日、収録が終わった後真希は姿が見えないひとみを探していた。

「ん?あぁ吉澤なら、さっきダンスの確認で呼ばれてたわよ」

新曲の初収録はなんとかうまく行ったが、何度かひとみが小さなミスをした。もちろん保田以外はその理由を知るはずもなく――収録が終わった後ひとみは呼び出されていた。

「そっか〜、一緒に帰ろうと思ったのになぁ」

真希は残念そうにぼやいた。
そんな真希を見て保田は、やっぱりこの二人には幸せになってほしいと思った。

「待っててあげれば?怒られて帰ってきた時に後藤がいたら喜ぶんじゃない?」
「えっ?そーかな?…じゃあ、待っててみよっかな!」
「うん。ファイトだよ後藤」

そういって保田は楽屋に残っていた飯田と矢口と共に出ていった。
56 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月10日(日)23時01分28秒
真希は楽屋の窓から街を見下ろした。ネオンを着飾り夜の顔をした街のきらめきが、切なさを一層強くした。
真希は外気との温度差でくもったガラスに、愛しい人の名前を指でなぞってその上にそっと額をつけた。

「よっすぃ〜……貴方の瞳に私はどう映ってるの?」

そう呟きながら、真希は目を閉じてひとみの事を思い出した。


『始めまして、吉澤ひとみです。後藤さんよろしくね!』
『こちらこそよろしくね。吉澤さん』
―第一印象は目が大きくて綺麗な人だったかな―

『ねぇ、よっすぃ〜香水どれがいいと思う?』
『う〜ん。あっ、これいい香りじゃない?』
―あの時私、思わずそれ買ったんだよね。あの頃から惹かれてたんだ―

『よーーすぃ〜!!』
『…苦しいよ!ごっちん!』
―少しでもそばにいたくて、毎日抱きついたね―

『…ほんとは……ちょっと、寂しかったよ』
―ねぇ、あの時の言葉と表情はどういう意味?―


「よっすぃ〜……私の片想いはいつまで続くの?いいかげん気づいてよ…」

胸が熱くなって、濡れた瞳で見た街のネオンは星をちらばめた様だった。
57 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月10日(日)23時06分01秒
「ごっちん?」

ドアが開く音と同時に自分の名前を呼ばれて、真希はとっさに窓ガラスの名前を手で消し、涙を拭いて振り返った。

そこにはまだ白いスーツにネクタイ姿の衣装を着たままのひとみが立っていた。

「あは、よっすぃ〜と一緒に帰ろうと思って待ってたんだ!」

そう言って笑った真希の目は明らかに赤かった。

『後藤があんたを想ってどれほど一人で泣いたと思う?』

昨日の保田の言葉がひとみの頭に蘇った。

「そっか、ありがとう。今着替えるから待ってて」

それでも真希が必死で笑顔をつくるから、ひとみはわざと気づかないふりをして答えた。

「えへへ、よっすぃ〜似合うよ。その格好」
「ん、そう?」

ひとみはおどけた様に長い前髪を掻き揚げるしぐさをして、真希にウインクしてみせた。

「あはは!ホストみたーい!」
「えぇ〜!?ホストぉ〜?」

今度は二人同時に噴出して笑い合った。
58 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月10日(日)23時09分50秒
「ねぇ、台詞のところやってよ」
「えー?ごっちん相手に?」
「うん。1回でいいから〜」
「えー、恥ずかしいよ」
「いいじゃん!練習だと思ってさー、ね?」
「…分かったよぉ。1回だけだからね」

真希が言い出したら聞かないのはひとみもよく知っている。ただ嫌がったのは恥ずかしいからではなく、真希が相手だとこの台詞が冗談にならないからだった。

『Oh〜心が痛むと言うのかい?』
『うーんBabyそれは恋、恋煩いさ』
『きっと、僕と出会ったから君は恋をしたんだね』

ひとみは本番と同じ様に台詞を言いながら、嬉しそうに笑う真希の肩に手を置いて後ろに回りこんだ。

その時再び保田の言葉が蘇った。『後藤には吉澤が必要なの』

『さあ、もう大丈夫。僕はここに…』

台詞を続けようとしたが、保田の言葉が次から次へと蘇ってひとみは黙ってしまった。

「…?どうしたの?」

いきなり台詞を切ったひとみを変に思ったのか、真希がひとみの方を振り向いた。
それと同時にひとみは真希を抱き寄せた。
59 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月10日(日)23時12分30秒
ひとみはゆっくりと優しく真希の背中に手を回したが、抑えていた真希への愛おしさがこらえ切れないほどこみ上げてきて、「優しく包み込みたい」と思う気持ちとは裏腹に思わずきつく抱きしめた。

「っ!?…よっすぃ〜?」

真希はそんなひとみの行動に驚いたが、始めてひとみから伝えられた温もりが嬉しくて同じように抱きしめ返した。

どれくらいの時間そうしていただろう?長いようにも、短いようにもひとみには感じられた。

『このままこの時間に取り残されたい』

とひとみは思ったが「それは許さない」と言うように、恐いくらいの静けさの中まるで二人の間に割り込むように時計の針だけが音を刻み込んでいた。
60 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月10日(日)23時15分53秒
「…ねぇ」

最初に沈黙を破ったのは真希のほうだった。

「…ん?…なに?」
「聞かせて……よっすぃ〜の、気持ち」
「…こうしてるだけで、伝わらない?…私の気持ち」
「伝わるけど…けど、やっぱりよっすぃ〜の口から……聞きたいナ」

最後は消えてしまいそうなくらい小さい声だった。きっと恥ずかしい気持ちを振り絞ったにちがいない。その証拠に細い肩が小さく震えていた。
そんな真希がひとみにはむしょうに愛しく思えて、精一杯優しく震える肩を包み込みながら耳元で囁いた。

「…好き……ごっちんのことが…大好き」

こんな場面何度頭の中で描いてきたか分からない。イメージの中での自分はいつも優しくて甘い声で真希に想いを伝えるのだ、そう精一杯かっこをつけて……

しかし現実の今の声は、言葉にするのがやっとで途切れ途切れの掠れたものだった。『こんなはずじゃなかったのに』とひとみは思う反面、真希の前ではカッコ悪いくらい余裕が無くなってしまう程真希のことを想っている自分を知り苦笑してしまう。
61 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月10日(日)23時19分11秒
ひとみは真希の頬に手を添えて自分の方へ向かせ、その意味を理解した真希はそっと目を閉じた。
二人の熱い吐息が交じり、そっと唇が重なった。
触れるだけのキスなのに切ないくらい想いを伝えることも、痛いほど愛を感じることもできる甘いキスだった。

「…んっ……」

真希は頭の芯が解けていく感覚に襲われ、体の力が抜けていくのがわかった。
ひとみはそんな真希の腰にグッと力を入れ、崩れる真希を支えるとさらに強く抱き寄せ深いキスへと変えていった。

「…あっ……ん…」

そっと唇を離して見つめた真希の顔は、いつもの無邪気さはみじんも無く女を感じさせる表情だった。
そんな真希の揺れる髪が華麗なまでに甘い香りを運んできてひとみの心を酔わせた。

「もう……自分の気持ちに嘘はつかない…」

そう耳元で囁くとひとみは優しく自分の体重をかけながら、真希をソファに沈めた。
62 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月10日(日)23時33分56秒
>>55>>61更新しました。

>53 名無し読者様
レスありがとうございます。切ない関係と思ってもらえて嬉しいです。
期待にそえるようがむばりますんで、お付き合いお願いします。

>54 名無しさん様
レスありがとうございます。
やっと、よしこに想いを伝えさせることができました(^^;
これからも、お付き合いお願いします。
63 名前:とみこ 投稿日:2002年03月11日(月)08時14分49秒
レス遅れてすみません。
ヨッスィーちょっと痛いですね。
ごっつぁんが守ってやらんと!
64 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月11日(月)12時49分59秒
よしごま(・∀・)イイ!
プッチの絆マンセーって感じっすね。
文も読み易いです。
続き期待してます。
65 名前:にゃん 投稿日:2002年03月11日(月)21時47分24秒
おぉ〜!やっとよしこが行動に移しましたね。ごっちん良かったね(^O^)けど二人ともそこは楽屋ですよ〜
66 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月15日(金)18時44分01秒
甘い言葉と深いキスを絶え間無く与え続けながら、ひとみは真希の服を手際良く取り除き豊な形のいい胸を優しく揉みほぐした。

「うっ……んっ」

ひとみの手の動きと連動して真希は甘い吐息を洩らす。

「…よっ……すぃ〜…も」

吐息混じりでそう言いながら、真希はひとみのネクタイに手をかけ緩める仕草をした。どうやらひとみも服を脱いでという事らしい。
しかし完全に力が抜けている真希に、しっかり結ばれたネクタイはなかなか解けてはくれない。

そんな真希が可愛くてひとみはクスッと笑うと、「わかったから」と囁いて名残惜しそうに真希から体を離した。
ひとみもさすがに衣装のままで淫らな行為をするのは気がひけて、はやる気持ちを抑えて衣装を脱ぐと再び横たわる真希に視線を移した。
67 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月15日(金)18時47分24秒
「ごっちん……キレイ…」

銀色の月明かりに妖しく照らし出された真希の躰は本当に綺麗で、ひとみは思わずそう口にすると、熱っぽいキスを全身に落とした。

ひとみはじっくり時間をかけて真希を快楽へ導くと、そっとやんわり濡れた秘部へと優しく触れた。

「あぁ……っん!」

それと同時に真希が一層高い声を洩らした。

「やっ…ん……よっ…すぃ〜」

少し不安げな瞳で自分を見つめるから、「大丈夫だから」と言う代わりに優しく抱きしめてやると、安心したのか真希はひとみの背中にそっと手を回し体を愛しい人にゆだねた。

それを合図にひとみは一気に指で真希を貫いた。

「あぁ……ん!…はぁっ…ん」

それから…
真希は何度も押し寄せて来る甘い波に
ひとみは甘くて悩ましい愛しい声と温もりに
―――お互い溺れ合った。
68 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月15日(金)18時50分51秒
「うわ、寒〜〜いっ!!」

あれから温もりを恋しがる子猫の様にじゃれ合って、二人がスタジオを後にしたのは月が空高くに昇る頃だった。
冬を間近に控えた夜風が温まった体を容赦なく通り過ぎるから、真希は思わず肩を縮めて叫び、「クシュン」と小さなくしゃみを一つした。

「ごっちん、大丈夫?…ほら」

ひとみは真希の肩に手を回し自分の方へ抱き寄せた。

「えへ、暖か〜〜いっはあとはあと
「ごっちんのげんきん!」

そう言って幸せそうな顔をして自分に密着してくる真希の額にひとみは力を入れずにデコピンをしてやる。

「痛いよぉ〜」
「ウソだー。全然力入れてないもーん」
「あは…」

真希は少し俯いて小さく笑ったが、すぐにその笑い声が涙声になった。
69 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月15日(金)18時54分08秒
「えっ?ごっちん!?ごめん!ほんとに痛かった?」

慌ててひとみは真希の顔を覗き込んだ。

「ううん。違うの…なんか嬉しくて……ずっとこういうの夢見てたから…」

そう言って真希は涙ぐんだ瞳を指で抑えた。
ひとみは涙の理由にホッとして、泣き止む真希の肩に回す手に力を入れた。

「私ね…こんなに人好きになったの、よっすぃ〜が始めてだよ」
「うん。ありがとう」
「ね、よっすぃ〜の初恋は?」
「ん?私の?……私の初恋は…現在進行形かな!」

お互い照れ笑いをして、軽いキスを交わした。

「よっすぃ〜、ずーーっと一緒にいようね!」
「…うん。そうだね」

『ずっと一緒に…』

その言葉にチクリと心が痛むひとみとその言葉を信じて疑わない真希
――恋が始まったばかりの冬の帰り道だった。
70 名前:とみこ 投稿日:2002年03月15日(金)19時09分36秒
やはりよしこに過去アリ???
71 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月15日(金)19時19分43秒
>>66>>69更新しました。
とりあえず、ここまでで第1章となります。

>63とみこ様
いつもレスありがとうございます。
痛めのヨッスィ〜…書くのに苦労しています(^^;

>64名無し読者様
レスありがとうございます。
プッチを意識した訳ではないのですが、気づいたらプッチメンバーになってました(笑)
これからも、よろしくです。

>65にゃん様
いつもレスありがとうございます。
楽屋で……よしこ暴走させちゃいました(笑)
72 名前:にゃん 投稿日:2002年03月16日(土)20時25分17秒
第1章お疲れ様です(^O^)このままよしごまにはずっとこの幸せが続いて欲しいのですが...よしこの病気が気になりますね。頑張ってください。
73 名前:エンジェル 投稿日:2002年03月22日(金)08時02分25秒
いつも見てました。続きが早くみたいです。
このあといったいどうなっていくんだろう??
74 名前:第二章 投稿日:2002年03月23日(土)02時07分18秒
『幸せの絶頂』
『バラ色の生活』

今の自分にはそんなフレーズがぴったりだとひとみは最近よく思う。

あの日真希に想いを伝えてから1ヶ月が経とうとしていた。
クリスマスや年末年始の特番で目が回るような忙しさだが、新曲も順調だし最近は体調の方も落ちついている。
そして、真希との関係も――

「よっすぃ〜!!おはよっはあとはあと
「…くるしぃ…ごっちん」

――幸せそのものだった。
何も変わらないお決まりの羽交い締め、変わったとすればその後に小さなキスが加わったことだけ。

しかしひとみは知っている。絶頂は一点にしか過ぎない事も、バラが美しいのは一瞬である事も……そう、真希に病気の事を告げるまでの儚い時間でしかないと――
75 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月23日(土)02時12分31秒
「ねっ、今度のデートどこ行こっか?」

今度といっても次のオフの日までにはまだ10日もある。しかし真希は楽しみでしょうがないらしく、せかす様にひとみに尋ねた。

「うーん。映画でも観に行こうか?」

ひとみは今まで読んでいた雑誌の映画特集のページに目を落としながら言った。

「いいね〜だったらこれがいい!」
「ごっちん、これなんかどう?」

二人は見事に同時に言葉を発すると、
ひとみは今話題のアクション映画を
真希は泣けると評判のラブストーリー映画を
それぞれページの違う場所をこれまた同時に指さした。

「あは!見事に分かれたね」

真希は可笑しそうに笑いながらひとみを見た。そのあどけない笑顔につられてひとみにも笑顔がこぼれる。

「いいよ。こっち観に行こう」

そう言ってひとみは自分の指を真希が指す所に持っていった。
76 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月23日(土)02時15分37秒
「ほんと?やったぁ〜!!決まりねっ」

真希は子供の様にはしゃぎながらひとみに抱きついた。

「…でも本当にいいの?いっつもよっすぃ〜私に合わせてくれる」

真希は急に悪い気がしてきて、抱きついたまま上目づかいにひとみを見た。

「いいの、ごっちんはそんな事気にしなくても!」

ひとみは優しく微笑むと真希の髪を撫でてやりながら言った。
時間が無いのなら少しでも真希に楽しい思いをさせてやりたいとひとみは思っていた。

「あっ、よっすぃ〜明日仕事休むってほんと?」

思い出したかのように真希は再びひとみの胸からヒョコッと顔を上げて訊いた。

「うん。……たまには高校も行かなきゃね」
「そっか〜大変だね。でも会えないなんて寂しいよぉ」

そう言って大げさに泣き真似をしながらしがみついてくる真希をひとみは優しく抱きしめてやる。
77 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月23日(土)02時18分19秒
「…コホン!……えーっと、お取り込み中失礼…」
「うわぁ!」

急な声に真希が驚いて小さな悲鳴を上げパッとひとみから離れて、ドアの方を見ると『目のやり場に困る』といった感じでドアに寄りかかる保田の姿があった。

「け、圭ちゃん!い、いつからそこにいたの?」
「ん?『会えないなんて寂しいよぉ』ぐらいからよ」

保田はニヤニヤしながら真希の言い方を真似した。
保田のからかいに真希は顔を真っ赤にし、ひとみも照れた様に窓の外に視線を反らす。
そんな二人が可愛くて保田は微笑みを深くしたが、ここに来た用事を思い出して切り出した。

「そーだ後藤、マネージャーが探してたわよ?」
「え?あぁ〜ヤバっ!忘れてた!!」

そう叫ぶと真希はひとみと保田に手を振りながら慌ただしく楽屋を飛び出して行った。
78 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月23日(土)02時21分11秒
「吉澤、明日は学校行くんだ?」

真希が去った後、保田はひとみの隣に腰を下ろしながら訊いた。

「いえ…ほんとは病院行くんです。こないだの検査の結果聞きに…」
「…そう。後藤にはまだ話してないんだ」

保田の言葉にひとみは小さく頷いた。
ひとみはこれまでに何度も打ち明けようと思ったが真希の幸せそうな笑顔をみる度に切り出せないでいた。

「言い出しにくいよね。……でもいつかは吉澤の口からちゃんと説明しなきゃね」

そんなひとみを察した保田は背中を押すように言った。

「で、調子の方はどう?」

保田は話題を変えるように訊いた。

「最近すごい良いんですよ。目眩もほとんど無いし、たぶん明日の結果も大丈夫だと思います」
「そう良かったわ。でもちゃんと私には報告すること!」

明るく言うひとみにホッとして保田の声にも張りが出た。

最近プッチモニの絆が深まったと嬉しく感じる保田だった。
79 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月23日(土)02時24分21秒
「吉澤さん…思いきって手術してみませんか?」

次の日、病院の診察室で思いもよらない医師の言葉にひとみは面食らった。

「…手術……ですか?」

ひとみはやっとの事で声を絞り出す。

「えぇ、こないだの検査結果なんですが…やはり少しずつ腫瘍が大きくなっています。」

そう言いながら医師はデスクの前に貼られたひとみのCT検査のフィルムに映る黒い影をペンで指し示した。

「でも…最近は調子良いんですけど?」
「吉澤さん、あなたの病気は風邪などではないのです。悪化したからといってすぐに熱や頭痛などといった症状が出る訳ではありません。」

医師は事務的に淡々とひとみの言葉を否定した。
80 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月23日(土)02時27分19秒
「でも…手術すると……後遺症が出るかもって…」

ひとみは恐る恐る医師に尋ねた。

「そのことなんですが……いいですか?吉澤さん。脳と一言でいっても色々な役割ごとに分かれています。例えば――」

そう言いながら医師はメモ用紙に簡単な脳の図を慣れた仕草で素早く書いた。

「ここが記憶を司る場所です。そしてこっちが運動機能を司る場所――」

医師は説明しながら図の中に『記憶』『運動』と別の場所に書き込んでそれぞれを丸で囲んだ。

「そして、吉澤さんの腫瘍ができている場所はここです。」

そう言って医師は『記憶』の囲いのすぐ隣に小さな丸を書き黒く塗りつぶした。
81 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月23日(土)02時31分00秒
「つまりですね…吉澤さんの場合、一番後遺症として出易いと思われるのは記憶喪失です。」

その一言でひとみは頭が真っ白になった。

「だから運動機能に問題が出なければ、仕事にも戻れますから安心して下さい」

どうやら医師はひとみが一番心配しているのは、芸能活動が出来なくなる事だと思ったらしい。

しかし、ひとみが一番心配していた事は記憶を失う事だった。
真希を、真希を愛した事を忘れてしまう事がひとみは一番恐かった。

「もちろん絶対とは言い切れません。どんな形で出るかは分からないし、もちろん何も後遺症が出ない可能性だって十分考えられます。…一度ご両親ともお話したいのですが――」

ひとみの耳にはもう医師の言葉は届いてなかった。
ただ恋に吹き寄せた風が幸せをめくって逃げて行くのを、ひとみはボンヤリと感じていた。
82 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月23日(土)02時46分56秒
>>74->>81更新しました。

>70とみこ様
よしこにとりあえず過去は無いです(^^;
よしこの病気の事でと理解してもらえれば…
文が分かりにくくてすみません。

>72にゃん様
やっと第一章を終わらせる事ができました。
よしごまの幸せは長くは続かないようで…
引き続き第二章も読んでくれれば嬉しい限りです

>73エンジェル様
レスありがとうございます。
いつも読んでて下さったみたいで感謝です!
期待に添えるよう頑張りまっす





83 名前:エンジェル 投稿日:2002年03月23日(土)23時43分57秒
これからどうなるんだろう??
益々目がはなせません!
続きが見たい!!
84 名前:にゃん 投稿日:2002年03月24日(日)22時49分23秒
今の二人の幸せがこれからも続いて欲しいんですが...よしこの病気が(>_<)続き待ってます。
85 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月30日(土)01時16分04秒
「……けたよね?…っすぃ〜?よっすぃ〜てば!!」

ボンヤリと街の雑踏を見つめているひとみに気付き真希は少し声を大きくして呼んだ

「え?あっごめん聞いてなかった。何の話しだっけ?」
「もぉ〜だから今日の映画泣けたよねって話!」

今日はオフの日で約束していたとおり真希の観たがってた映画を観終え、二人は今コーヒーショップのカウンターに並んで座っていた。

しかしひとみの頭の中は先日の医者の言葉と、どうやってそれを真希に打ち明けるかでいっぱいだった。

「もぉなんかよっすぃ〜今日変だよ?ボーッとしちゃって」
「そんなことないって。…にしてもごっちんメッチャ泣いてたよねー」

ひとみは痛い所を指摘され慌てて話しを反らした。

86 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月30日(土)01時18分28秒
「だってぇ感動したんだもん。なんかいいよね、障害を乗り越えて深まる愛みたいなのも」

そう言って真希は映画のヒロインに自分を重ねて映画の余韻に浸る。

「へぇー、今の恋愛にはご不満ですか?お姫様?」
「違うよー。よっすぃ〜との恋愛に不満なんてあるわけないじゃん!」
「ホントかなぁ?障害が欲しいなら、距離置いてみます?」
「や、嫌だぁ。冗談でもそんな事言っちゃ嫌だよ…」
「ウソだよ、ごめん。ごめんね」

表情が一瞬にして曇り少し潤んだ瞳で見つめる真希に、ひとみは罪悪感を覚えた。

『冗談でもそんな顔しちゃうから……本当の事が言い出せない…』
87 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月30日(土)01時21分31秒
「あっ、ねぇクリスマスはやっぱ1日中仕事かな?」

ひとみの心中に気付くはずもなく、真希は早くも笑顔に戻って話題を切り替えた。
自分の前だけでは表情をコロコロ変える真希がひとみには可愛くてたまらない。

「うーん100%仕事でしょ。でもさ、ちゃんと二人の時間作ろうね」
「うん!よっすぃ〜だーーい好きっはあとはあと

甘える様にひとみの肩にもたれかかった真希はひとみの小さな溜息に気付かなかった。

「ごっちん!楽屋じゃないんだから、ヤバイって…ほらもう行くよ」

ひとみは気を取り直すように言うと、素早く周囲に目を配らせ誰も気付いてないことを確認し真希の手をとり店を後にした。
88 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月30日(土)01時23分43秒
『障害を乗り越えて深まる愛……か』

ひとみは人ごみを歩きながら先程の真希の言葉を思い出して、自分の病気の事を知ったら真希はどうなるだろうと考えた。

隠してた事を怒るだろうか?
作り笑いで「頑張って」と言うだろうか?
別れ話になるだろうか?

たぶんそのどれでも無いだろう――きっと、何も言わずに泣いて傷つくんだろう。
そして、二人どこに墜ちるのか……
89 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月30日(土)01時26分46秒
「よっすぃ〜プリクラ撮ろうよっ!」

そんなひとみの考えを吹き飛ばすように真希はひとみの袖を掴んでゲームセンターに引っ張り込んだ。


「なーんか気にいらない。よっすぃ〜もう1回撮りなおそう?」
「えぇ〜!いいじゃんこれで、可愛いく写ってるって」
「いいから、ほらよっすぃ〜これが最後なんだから笑って」

真希はキャンセルボタンを押すともう一度カメラに向かってポーズをとった。

その時ひとみにある考えが浮かんだ。

「ねっごっちん、こっち向いて」
「へ?何?」

そう言って自分の方を振り向く真希をひとみは素早く抱きしめて唇を重ねると、空いている方の手で撮影ボタンを押した。
90 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月30日(土)01時28分57秒
「…っ、よっすぃ〜急に何するの!?あぁばっちり写ってるじゃん!」

真希は出来あがったプリクラを見て赤面した。

「たまには良いでしょ?こーいうのも?」
「もぉー今日のよっすぃ〜やっぱり変!」

いたずらっぽく笑うひとみに真希は怒った様に頬を膨らませる。

「ねごっちん、このプリクラ人が見たらどう思うかな?」
「どうって……そりゃ…恋人同士に見えるんじゃない?」

そんな真希に目を細めながらひとみが訊くと、真希は照れた様に小さな声で答えた。

「そうだよね、そう見えるよね。……行こうかごっちん」

『ねぇごっちん、もし記憶失ってもこれ見たら恋人同士だった事思い出せるかな?』

ひとみは心の中でそう呟くと、コートのポケットの中で繋いだ愛しい手を強く握り締めた。
91 名前:ルパン4th 投稿日:2002年03月30日(土)01時50分31秒
>>85-90更新しました。

>83エンジェル様
続き待ってもらてるのに、すみません更新が遅くて。
気長に待って、目を離さないでやって下さい(笑)

>84にゃん様
自分も、もう少し二人を幸せにしてやりたくて今回はちょい甘にしてみました。
でも次回あたりで…ごっちん泣いちゃうかな?って感じです。
92 名前:とみこ 投稿日:2002年03月30日(土)08時49分24秒
よっすぃー切ない。。。
痛めのよしこ、書くの上手ですね。
93 名前:名無し作者 投稿日:2002年03月30日(土)22時40分05秒

黄板でよしごま駄文を書いている者です。レスありがとうございました。
お互いに小説初挑戦ですが無事完結できるようにがんばりましょうね。
そして一緒によしごまを普及していきましょう!

これからどのような展開になるのか続きがかなり気になります。
がんばってください。
94 名前:エンジェル 投稿日:2002年03月31日(日)00時05分39秒
続きは気長に待っています。
でも早く見たくて毎日みてますよ。
次回あたりで告白なのかな??
95 名前:にゃん 投稿日:2002年03月31日(日)05時16分54秒
平行線なふたり..でも会話が恋人同士の会話みたい(^-^)『メンバーの中で彼女にしたいのは?』の質問に吉後は相思相愛だったんですか?チョコのは見たんですけど..他のメンバーは誰にあげたのか知りたいんで教えてくださ〜いm(__)m
96 名前:にゃん 投稿日:2002年03月31日(日)12時51分40秒
すいませーん間違えちゃいましたm(__)mごめんなさい!愛する人の記憶がなくなる&愛してくれた人が自分の事を忘れるって事は一番辛いですね。プリクラが良いです..これがあれば。。。次回は病気の事を話すんでしょうか?
97 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月05日(金)01時42分40秒
「…本当…なの?…それ……」

保田はひとみの話しが終わっても、半信半疑といった感じだった。いや、むしろ無意識に信じる事を拒絶したのかもしれない。

「こないだ、両親とも話し合って……病状が悪化してるなら、少しの可能性に賭けて手術しようって…」

ひとみは俯き、床を見つめながら話していた。遠くに聞こえる救急車のサイレンが、信じたくない会話にリアルさを添える。

「…つんくさんや事務所には……話したの?」
「はい、こないだ全部話して…」
「それで……辞めるの?…モーニング娘。…」

一番言いたくない言葉だけに、保田の声が掠れた。

「一応…復帰の可能性もあるなら……休業って形にしようって…言ってくれました」
「そう……メンバーにはいつ話すの?」
「年が明けて、少し仕事が落ちついたらって……」

『今が12月の始めだから、あと1ヶ月半くらい…』

保田は動揺する頭でなんとか数字を割り出した。

「…後藤にも……その時一緒に言うつもり?」

保田の問いに、ひとみの体がピクリと反応した。
98 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月05日(金)01時45分05秒
「ごっちんには…その前にちゃんと話します……でもクリスマスまでは…言えなくて」
「クリスマスか……そうね、その方がいいかもね」

真希がひとみと過ごすクリスマスをどんなに楽しみにしているのかが、保田にも手に取る様に解かる。

「保田さん……すみません。いつも相談のってもらって…」
「な、何よ急に改まって…やめてよ……最後みたいなのは…」

今までに娘。を去っていく仲間を何度も見送った保田だったが、その仲間達はいずれも夢に向かっての引退だった。
しかしひとみの場合は違う、ひとみは絶望に向かって去るのだ。
それを何もしてやれず、ただ見送るだけの自分に保田はひどく苛立ちを感じた。

「吉澤、今度娘。に帰って来た時は『保田さん』じゃなく『圭ちゃん』て呼びなさいよね」

保田なりの精一杯の言葉を、ひとみは察すると微笑みながら頷いた。

「でも寂しくなるわね、あんたが娘。からいなくなる――」

途中で言葉を切ったのはドアに人の気配を感じたからで、保田とひとみはハッとして反射的にドアに目をやった。

そこには呆然と立ちすくむ真希の姿があった。
99 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月05日(金)01時47分32秒
「…携帯……わす…れて、二人とも……何の…話……して…るの?」

震える声で途切れ途切れに話す真希の様子から見て、どこからかは分からないが話を聞かれた事は明らかだった。

「後藤違うの、これは……」

保田は咄嗟に何か言おうと口を開いたが、言葉が続かない。

「嫌っ!……」

真希はそんな保田の言葉を拒絶するように耳を両手で塞ぎ一歩退くと、次の瞬間逃げるように駆け出した。

「ごっちん!!」

ひとみが追いかけるように廊下に出ると、エレベータホールへ続く角を曲がる真希の背中がかろうじで見えた。

「…吉澤、ごめん私……どうしよう」

保田も完全に動揺し、青ざめている。

「保田さん、大丈夫ですから!とにかく私ごっちんを追います!」

ひとみは保田にそう言い残すと、真希が去った方へ駆け出した。
100 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月05日(金)01時49分24秒
エレベータホールに着くと、2台あるうちの1台の階数表示が上へあがって行くのをひとみは素早く確認した。

『どうする?階段で追いかける?…でも目眩を起こしたら?……それに何階に行く?』

ひとみは瞬時に頭をフル回転させ、真希の行動を読もうとした。
そして軽く舌打をすると残りのエレベータのボタンを連打した。じれったい程ゆっくりエレベータは下から上がって来る。

『チン』という間の抜けた音と共にのんびり開くエレベータにひとみは滑り込むと階数ボタンの前で一瞬躊躇した。

そしてひとみは祈るような気持ちで最上階のボタンを押した
きっと自分が真希だったら一番上に行くと思うから……

ひとみは真希との相性の良さに全てを賭けた。
101 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月05日(金)01時52分25秒
もどかしいスピードで最上階を目指すエレベータの中でひとみは目を閉じて動転している気を落ち着かせた。

果たして真希はいるだろうか?
いなかったらどこを探そうか?
会ったら何から真希に話そうか?
ちゃんと伝えられるだろうか?
――そして真希は何と言うだろうか?

最上階に着くとひとみは真希の姿を見つけるため、静まり返ったあたりを見回した。

今人気のデートスポットに建てられたこのテレビ局の最上階は眺めがすばらしい。
その皮肉なまでに美しい夜景に向かって肩を震わせている背中を見つけて、ひとみはひとまずホッとした。
102 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月05日(金)01時55分07秒
「ごっちん……」

ひとみはなるべく平然を装って声をかけた。

「…よっ……すぃ〜」

ひとみの声に振り返った真希の顔はすでに涙でクシャクシャになっている。

「ふぇ…ぐっ……ウソ…だよ…ね?…うっ…ぐ……辞めない…よね?」
「もう…わがまま…えっ…ぐ……言わないからぁ…ひっ…っく……いなくなっちゃ…やだよぉ」

パニックに陥りながら、必死に訴えかけてくる真希をひとみはギュッと強く抱きしめた。

「落ちついて、ごっちん。ちゃんと最初から全部話すから……ね?」

宥めるように優しく髪を撫でながらひとみは真希をソファに座らせ、震える真希を抱きしめながらゆっくり口を開いた。

「…あのねごっちん、私ね―――」


それから途中何度も「もう聞きたくない」と泣き出す真希を、その度に「最後まで聞いて」と優しく宥めながら、ひとみは物語を聞かせる母親の様に時間をかけて全てを話した。
103 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月05日(金)01時57分59秒
「――ごっちん、これで全部だよ……ごめんね、隠すつもりは無かったんだけど…言い出せなくて…」

こんな形になるのなら、もっと早く言えばよかったとひとみは後悔し下唇を噛み締めた。
真希はまだ少し嗚咽を洩らしながら、ひとみの胸に顔を埋めたままだった。

「……よっすぃ〜…私達どうなっちゃうの?」

呟くように言った真希の問いはひとみが最近ずっと考えていた事だった。
そして、ひとみが行きつく結果はいつも……

「…ごっちん、私ね……別れた方が…ごっちんのためかなって…思う」

ひとみの言葉に真希はビクッと震えると、顔を上げ涙を溜めた瞳でまっすぐひとみを見つめた。

「やっ!……なんで?…なんで、そんな事…言うの!?」
104 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月05日(金)02時01分46秒
「だって……私ごっちんの事忘れちゃうかもしれないんだよ?」
「そしたら、ごっちんはどうするの?」
「いつ記憶が戻るか分からない私を待って、次の恋も見つけずに一人で泣いてるの?」
「私……ごっちんには幸せになって欲しい」
「ほんとは私が幸せにしてあげたいけど……こんな私待ってたら、ごっちんいつまでも幸せになれないじゃんか…」

考えるより先に感情が口をついて出る。
今言わないと真希の未来を傷つけてしまう気がして、どうせ終わってしまう恋なら自分の意思で幕を閉じたくて……

「嫌だぁ……ずっと一緒にいようって言ったじゃん…よっすぃ〜のバカァ……」

それまでじっとひとみの言葉を聞いていた真希の瞳から再び大粒の滴が落ちた。

「だから……私のせいで、そうやってごっちんを泣かせたくないんだよぉ……」

ひとみは泣きそうになるのを堪える様に真希を抱きしめた。

しかしこれ以上はどんなに優しい言葉でも罪な言葉にすりかわってしまう気がして、何も言えずにただ真希が落とす涙の温もりを感じることしかひとみにはできなかった。
105 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月05日(金)02時22分29秒
>>97-104更新しました。

>92とみこ様
よっすぃ〜痛いです。(><)
自分で書いててよっすぃ〜に悪い気がしてきますよ(笑)

>93名無し作者様
レスありがとうございました。
ほんとにお互い完結目指してがんばりましょう!
よしごま普及させたいですね、やっぱりいしよしの方が普及してるのかな?

>94エンジェル様
やっと告白までたどり着けました。
できるだけ早く更新できるようがんばります。

>97にゃん様
レスのつけ間違えは全然気にしないで下さい。これだけ作品があると間違えるのも分かります(笑)
プリクラを見て……よっすぃ〜思い出せるのか?





106 名前:すなふきん 投稿日:2002年04月05日(金)23時53分22秒
痛い、痛い(w
すっごい、この作品好きです。
頑張ってください。
107 名前:エンジェル 投稿日:2002年04月06日(土)00時30分04秒
このまま2人にはお互いに助け合って病気乗り越えてほしいなぁ・・
更新大変だとは思いますががんばってくださいね。
108 名前:とみこ 投稿日:2002年04月07日(日)16時55分18秒
痛い!!イタタタタ・・・(?
記憶喪失になってしまっても、よしこを愛してくださいね
109 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月12日(金)00時30分35秒
あれから二週間が過ぎ、クリスマスも終わり街は新しい年に向けて活気付いていた。
あの日以来、真希に別れを告げた場所で一人時間を潰すのがひとみの習慣となっていた。

「結局渡せなかった……」

ひとみは渡し損ねた真希へのクリスマスプレゼントを眺めながら呟いた。
常に自分の隣にいる真希の目を盗んで買いに行ったのがずいぶんと遠い昔に感じられる。

「未練って言うのかな……こういうの」

自分から別れ話を切り出したくせに、いつか渡せるんじゃないかとプレゼントを持ち歩いている自分が本当に嫌になる。
110 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月12日(金)00時35分25秒
「ごっちん…これで良かったんだよね?」

自分の手を離れて自由になった真希は、これからどう生きていくんだろう

きっと素敵な恋を見つけて
いずれは結婚して、子供を産んで
幸せな家庭を築いて

その時、真希の中で自分との恋はどんなカタチで残るのか

「そんな事もあった」と懐かしめる古い写真のような恋?
それとも、白と黒で固められたフィルムネガのような恋?

そして、自分の中では真希との恋は何も残らないのか……

「…ごっちん」

悔しさと寂しさでひとみの目から溢れた涙が、赤と緑で綺麗にラッピングされた箱に落ちてインクの様にそっと滲んだ。
111 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月12日(金)00時38分57秒
その頃保田は真希かひとみのどちらかを探していた。
二人が何を話し合ったのかは知らないが、二人の仲をこじらせてしまったのは自分にも責任があると思って、保田はじっとしていられなかった。

「もう……どこ行っちゃったのよ」

独り言を言いながら考えられる所を探していると、人気の無い階段から泣き声が聞こえた。
そっと覗きこむと階段に座って膝をかかえて泣いている真希がいた。

「…後藤」

その声に真希は顔を上げ保田を確認すると、保田に泣きついた。

「圭ちゃん!…もう……どうしていいか分からないよぉ」
「後藤、吉澤と何があったの?」
「私……よっすぃ〜に…ふられちゃった」
「…え?」

そこまでひとみが思いつめた話をしたとは予想していなかったので、保田は面食らった。

「でも、吉澤から病気の話は聞いたでしょ?」
「うん、だから…別れようって。その方が私のためだって…」

ひとみと真希両方の痛みが分かる気がして、保田は言葉を探していた。

112 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月12日(金)00時42分15秒
「よっすぃ〜もとから私のことそんなに好きじゃなかったのかな?」
「後藤それは違うわ…」
「だって、泣きもしないで普通の顔で『別れよう』って!…きっと愛するくらい愛されたいって思う気持ちが重荷だったんだよ」

混乱して感情的になる真希が落ちつくのを待って保田は口を開いた。

「後藤、私ねいつだったか吉澤に『後藤のどこにそんなに惚れたの?』って訊いたことがあるのよ」
「ふぇ?」

保田の以外な話に驚く真希を尻目に保田は話を続けた。

「そしたらね吉澤こう答えたの。…『ごっちんは人前でも悲しい時は泣くし、嫌な時は本気で怒る。自分はそんな風にできないから、ごっちんのそんな素直な所が大好きだ』って」
「………」

初めて聞くひとみの本音を真希は噛み締めていた。
113 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月12日(金)00時44分34秒
「後藤が一番よく知ってると思うけど吉澤ってすごく優しいでしょ?…だからきっと吉澤はさ、ほんとは辛いのに相手の気持ち思いやって気持ちとは反対のこと言っちゃうんじゃないかしら?」
「反対の気持ち?……あっ」
「ね?」
「よっすぃ〜いつも笑ってた……いつも平気そうな顔してた…」
「うん」
「ほんとはよっすぃ〜、泣きたかったんだ…苦しかったんだ……それなのに、私…」

『ごっちん……別れよう…』

「よっすぃ〜が……別れたくないって言ってる!」
「まだ間に合うよ行ってあげな…ね?」
「うん!圭ちゃんありがとう!!」
「あっ、吉澤どこにいるか知ってるの?」
「知らないけど分かるよ!だってうちら相性抜群だもん!!」

そう言って駆け出す真希を保田は苦笑しながら見送った。

「相性抜群……か」

自分はひとみの居る場所なんて見当もつかなかったのに、分かってしまう真希が――解かり合っている二人が保田には羨ましく思えた。
114 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月12日(金)01時01分23秒
よっすぃ〜の誕生日ということで>>109-113更新しました。(笑)

>106すなふきん様
オォーすなふきんさんからレス貰えるなんて嬉しいです
すなふきんさんが書くよしごま最高です!
痛いよしごまですが読んでくれれば嬉しいです。

>107エンジェル様
どうやら、真希はひとみと病気を乗り越える決意をしたようです(^^)
いつもレスもらって励みになります。がんばって更新しますよ〜!

>108とみこ様
なんとか痛い場面も切り抜けられました〜(笑)
お互いよしごま小説がんばりましょう!


115 名前:エンジェル 投稿日:2002年04月12日(金)01時34分57秒
2人で病気を乗り越える事になるんですね!!よかった!!
どんな事になっても負けないで闘ってほしいですね!!
これからも更新楽しみにしてます。
116 名前:とみこ 投稿日:2002年04月15日(月)17時27分53秒
ごっちん走れ〜!走るのじゃ〜!!
117 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月21日(日)20時21分38秒
涙を拭うこともせずひとみはガラス越しに見える観覧車が時計の秒針の様にイルミネーションを変えていくのをボンヤリと見ていた。
こんな風に泣いたのはいつ以来だろうかと記憶を辿ってみるが思い出せない。

いつまでもこんな所で突っ立ていてもしかたないと思いひとみが小さく溜息をつきエレベータの方へ足を向けようとしたその時だった。

「よっすぃ〜!!」

ずっと聞きたかった愛しい声で名前を呼ばれてひとみが自分の耳を疑いながら振り返えると、駆け寄ってくる真希が目に入った。

「…ごっちん……?」

ひとみは泣き顔を見られたくなくて、急いで涙を拭おうとした。
118 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月21日(日)20時23分52秒

「よっすぃ〜いいよ」
「えっ?」
「いいよ、泣きたい時は泣いて」
「ごっちん…」
「……よっすぃ〜ごめんね。本当は泣きたかったんだよね?辛かったんだよね?…それなのに私自分の事ばっかり考えて、よっすぃ〜のこと見ようとしてなかった」

まっすぐ自分を見つめる真希の瞳は今にも涙が溢れそうだがどこか情熱を帯びていて、ひとみは視線を反らすことができなかった。

「これからは泣きたかったから泣いていいし、辛かったら愚痴こぼしてよ。……だから、…だからもう一度、よっすぃ〜の彼女に…して下さい」
「…ごっちん、でも私――」

ひとみが言い終わる前に真希はふわりと抱きつき、いつもひとみが自分にしてくれた様に囁いた。

「記憶失おうがどうしようが、よっすぃ〜が好き……それに、こんなワガママな私の恋人になれるのはよっすぃ〜しかいないよ…」
119 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月21日(日)20時26分54秒
その言葉を聞いた瞬間、自分の心の奥底で張り詰めていた何かが打ち砕かれたのを感じるのと同時にひとみの目に涙が溢れた。

「…ごっちん……ほんとは私恐い……ごんっちんの事忘れちゃうのかと思うと…恐くてたまらないよ……」
「うん。……うん大丈夫だよ。ずっと傍にいるから。」

自分でも何が大丈夫なのか分からないが、真希は自分の肩に顔を埋めて泣くひとみの背中を優しく擦りながら何度もそう呟いた。

そして泣き止むひとみが顔を上げると、二人は止まった恋をもう一度動かすためにそっと唇を重ねた。

いつもより少し強引だったのは言葉にならない想いを伝えたかったからで…
いつもより熱っぽかったのは愛しい人の唇に溺れたかったからで…
いつもより長かったのは涙の味を甘い味に変えたかったからで…

夢中でキスを交わした後二人はそっと唇を離すと、額をくっ付けて照れくさそうに笑い合った。
120 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月21日(日)20時29分33秒
「そうだ…これ」

照れくさいムードを切り替えたくてひとみはあたかも今思い出したかのように真希の手の中に小さな箱を握らせた。

「なに?」
「遅くなっちゃったけど、クリスマスプレゼント…」
「あは、ありがとう!開けていい?」
「ん、もちろん」
 
初めて貰ったプレゼントを開ける子供の様に瞳を輝かせながら真希は包みを開けた。

「あっ、香水だ!」

小さな箱から出てきたのは綺麗に細工の施されたボトルのオー・ドゥ・トワレだった。
121 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月21日(日)20時31分52秒
「ねぇよっすぃ〜嬉しいけど、私がつけてるのはベビードールだよぉ」

多少不満そうに自分を見つめる真希にひとみは目を細めると真希を抱き寄せ言った。

「いいのそれで。…その香水ねトレゾァって言うんだ」
「ト、トレ…?」
「トレゾァ……トレゾァってね『宝物』って意味なんだ…」
「宝物?」
「うん。私にとってごっちんはトレゾァだから…」
「…よっすぃ〜」

ジンときて瞳が熱くなるのを隠すように真希はひとみの胸に顔を埋めた。

「もぉ…よっすぃ〜カッコつけ過ぎだよ」
「はは、気に入らなかった?」
「なわけないじゃん、すごく嬉しかったよ…ありがと」

一層強くひとみにしがみつく真希をひとみはありったけの優しさで包んでやった。
122 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月21日(日)20時35分34秒
「よっすぃ〜へのクリスマスプレゼント家にあるんだ……これから取りに来ない?」
「私のもあるの?嬉しい〜な。…でももう遅い時間だから……」
「今夜家に誰もいないんだ……だから…泊まってても…平気だよ」

恥ずかしそうに小さな声で言う真希にひとみは微笑みを深くした。

「じゃあ、お言葉に甘えよっかな」


その夜真希はひとみに甘く抱かれながら何度も覚えたての言葉を反芻した

『宝物――TRESOR』

恋が愛に変わろうとしているみぞれ混じりの二人がそこにいた。
123 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月21日(日)20時49分23秒
>>117-122更新しました。
ここまでで第二章となります。

>115エンジェル様
こんな感じになりましたがいかがでしょうか?
第三章は病気を乗り越える二人を中心に書く予定です

>116とみこ様
ごっちん走ったぜ〜!でも呼吸が乱れてないって?
そんな突っ込みはよして、よして(笑)

余談ですが、トレゾァは平家さんお気に入りの香水だとラジオで言ってたようで・・・これがよっすぃ〜だったらなぁ。うーん残念!!(笑)
124 名前:エンジェル 投稿日:2002年04月23日(火)00時00分48秒
病気は辛いけど2人で乗り越えてほしいですね。
まずはつかの間の甘い2人も見たいなぁ〜
125 名前:第三章 投稿日:2002年04月30日(火)23時27分57秒
まだ実感が湧かない……

汗を拭うことなく踊ったレッスンスタジオ
真剣に歌ったレコーディングルーム
プロの顔になる収録スタジオ
些細な事で笑い合った楽屋
肩寄せて眠ったロケバス

こんなにも貴方で溢れた日常から、貴方がいなくなるなんて―――
126 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月30日(火)23時30分40秒

「それでは…よっすぃ〜の復帰を願って乾杯!!」

リーダー、飯田圭織の音頭に合わせてグラスが騒々しく音を立てた

今日がひとみの入院前最後の仕事だった。ひとみの病気の事を知り戸惑いを隠せないメンバーだったが、少しでも明るく送り出してやろうとちょっとしたパーティーを開いたのだった。

「よっすぃ〜!早く帰って来てね」
「吉澤、ミスムンのあの役はあんたしかできないんだから責任持って帰ってきなさいよ」
「吉澤さん、待ってますね」

「みんなサンキュー!絶対帰ってくるから!!」

誰もがひとみの後遺症の事には触れず明るく振舞っていた。しかしそんな中一番明るく振舞っていたのがひとみであることは真希だけが気付いていた。
127 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月30日(火)23時32分47秒

「よかった…吉澤嬉しそうな顔してくれて」
「…うん」

少し離れた所で一人、主役の人気者を眺めていた真希に保田が近寄って来た。

「どう?うまくいってる吉澤と」
「うん。最近ねよっすぃ〜の優しさが少し変わった気がするんだ」
「変わったって?」
「私を甘やかすんじゃなくて、大切にしてくれてるのが…すごくわかる」
「そう」

遠くで加護や辻達の声に混じってはしゃぐハスキーボイスが真希の耳に届く。

「きっと…自分がいなくなってからの強さも教えてくれてるんだと思う」
「…なんかすごいね、あんた達。…信じあってるって気がする」

保田の言葉に答える変わりに少し微笑む真希の表情は保田から見ても大人っぽい
128 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月30日(火)23時35分09秒
「ねっ!圭ちゃんは好きな人いないの?」
「えっ!?い、いないわよ〜そんなの…」
「ほんとにぃ〜?できたら教えてよね、絶対応援するから!」
「もぉ〜私のことはいいから!」

急に話を振られて珍しく動揺する保田を真希は楽しそうにからかう。
そこへひとみがやって来た。

「そろそろお開きだって。帰ろう?」
「うん。じゃあ行こっか!」
「ごっちん見て、こんなにたくさん花束もらっちゃった」
「ほんとだ〜半分持ってあげる」

雑談しながら帰っていく二人の後姿は儚げだがどこか強そうで、アスファルトに咲くタンポポを連想させた。
129 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月30日(火)23時37分49秒

「おじゃましま〜す」
「どうぞって言っても誰もいないけど」

真希の家は誰もいない日が多い。そんな時は決まって真希はひとみを誘うのだった。

「あっ、花束生けちゃうからソファにでも座ってて」

真希に言われた通りひとみはソファに腰を下ろす。

「よっすぃ〜平気なの?明日から入院なのに私ん家泊まって」

真希はひとみを見ずに流しで花束を花瓶に移しながら訊いた。

「うん。親にね『最後くらいメンバーと過ごしたい!』ってちょっと喧嘩しちゃった」
「あは、よっすぃ〜らしい…」
「ハハ、そっかな?…」

二人の笑い声が冷え切った部屋に空しく響く。
『最後の夜』になるかもしれないという思いが会話を空回りさせていることに二人とも気付いていたが、あえて口に出さないのが今日のルールに思えた。
130 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月30日(火)23時40分01秒
「はい、よっすぃ〜紅茶」
「おっ、サンキュ」

熱いマグカップを渡しながら真希はひとみと並んで腰を下ろした。

「ん〜美味しいな!ごっちんの入れる紅茶は」
「あは、よっすぃ〜大袈裟だって…」

やっぱり会話は上手く続かない。ひとみは真希と出逢った頃もこんなだったと思った。

「ね、覚えてる?」
「え?」
「私とごっちんが初めて会った頃のこと…」
「あは、覚えてるよ」
「私の第一印象はどんな感じだった?」
「そうねぇ…瞳が澄んでいてキレイな人!じゃあ私の第一印象は?」
「ん〜〜〜…忘れた!」
「あーっ!よっすぃ〜ずるい!私にだけに言わせて!!」
「あはははは」
131 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月30日(火)23時42分46秒
頬を膨らませて拗ねる真希の頭をひとみは自分の肩に引き寄せた。

「…ごっちん」

ひとみのこの仕草が「キスしよう」って誘う時の癖であることを真希は知っている。

そして、ひとみを見つめ返すのと同時にひとみの唇に捕まる
その後は……柔らかさを確かめるような数え切れない程の軽いキスのあらし

いつもひとみが仕掛ける罠はSweet in the Mood

「…ふぁ…っん…よっ……すぃ〜」

力が抜けそうになって恋人の名を呼べば、唇をそっと離して今度はしっかりと体ごと抱き締めてくれる。
そして次の台詞は……

「…ベッド行こうか?」

耳元で甘く囁かれるこの一言は魔法の一夜にする呪文
132 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月30日(火)23時45分15秒

「…やっ…ん」

唇、うなじ、胸へと迷うことなくひとみは真希のラインへと触れていく
真希を何度も抱くことで覚えた手順

「あっ…ん…よっ……すぃ〜」

艶やかな唇から熱い吐息に混じって洩れる自分の名前を聞く度に愛おしさと独占欲が膨れ上がる

そして二人の体温が溶け合ったのを見計らって、真希のビロードの様に柔らかい薄い茂みを愛撫し優しく貫き、その指で全ての想いを刻み込む


「…はぁぁ…っ…だ……めっ」
「…真…希……愛してる…」

ひとみは自分の腕の中で優しく崩れ果てる愛しい躰を抱きとめながら、ずっと呼びたかった呼び方で一番伝えたい言葉を囁いた――
133 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月30日(火)23時47分29秒


まだ乱れた呼吸をしている火照った躰を腕に抱きながら、ひとみは早いビートを刻む二人の鼓動が一つになっていくのを心地よく感じていた。

何気なくナイトテーブルに置かれた時計にひとみが目をやると、ちょうど針が午前0時を指したところだった。

日付が変わった今日、ファックスで自分の一時休業が一斉にマスコミに流れる。それを知ったマスコミが血眼になって自分を探す頃には既に自分は病院に雲隠れ――
それが事務所から言われた最後のスケジュールだった。
134 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月30日(火)23時50分23秒

じっと時計を見つめているひとみに気付いて真希も時計に目をやった。

「12時の鐘の音を聞いたシンデレラって……こんな気持だったのかな?」
「ん?」

ポツリとそう呟いた真希にひとみはもう一度真希に視線を移した。
月明かりだけの部屋の中で真希の顔が少し蒼ざめて見える。

「王子様の手を振り払って階段駆け下りたシンデレラは『もう二度と逢えないかも』って思ったのかな…」
「ああ……でも探しに来てくれたじゃない」
「…うん」
「ごっちん……私絶対ごっちんの事忘れないよ」

そう言うとひとみは真希を抱き締めた。

「ごっちんの唇も香りも温もりも、全部全部忘れない!…忘れられる訳ないよこんなに……こんなに愛してるんだから…」
「……よっすぃ〜」

抑えていた涙が真希の頬を伝った。
135 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月30日(火)23時53分00秒
「ごっちん泣かないで…こっちまで悲しくなっちゃうよ」
「…うん……ごめん」

指で優しく涙を拭ってくれるひとみに真希は無理に笑ってみせる

「ごっちん、私ね最近記憶喪失にならない様な気がするんだ…だって」
「だってさ私達、何万人って中からお互い選ばれてめぐり逢って両想いになれたんだもん。これってさ、私が後遺症残らないっていう確率よりずっとずっと低い奇跡に近いよね?…だから大丈夫だと思う。きっと強運だよ私…」

最後の方は真希を宥めているより自分に言い聞かせていたかもしれない。

「私も信じてるよ。よっすぃ〜」

やっと泣き止んで笑顔になった真希をひとみはもう一度抱き締めた。
136 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月30日(火)23時55分41秒

「そうだ、ごっちん…これごっちんが持っててよ」

そう言ってひとみは自分の耳からピアスを外すと真希の耳に付けた。

「よっすぃ〜…これ」

それはひとみがいつも付けている小さなシルバーリングのピアスだった。表にひとみの誕生石でもある小さなダイヤが埋め込んであってひとみのお気に入りだった。

「手術の時ね外さなくちゃいけないんだって。だから、ごっちんが預かってて」
「でも…いいの?」
「うん。ガラスの靴がわり…それに、あげるとは言ってないぞ」
「あは!わかった。よっすぃ〜が帰って来るまでちゃんと持ってるね」

それから他愛もない話をしたりじゃれ合ったりして、真希はようやく眠った。
137 名前:ルパン4th 投稿日:2002年04月30日(火)23時57分15秒
ひとみは起こさないようにそっと真希の頬についた涙の跡に触れた。

「…ごめんね」

『涙ばかり目立つ恋で』

それからしばらく、ひとみは真希のあどけない寝顔を見つめて眠りについたのは明け方近くだった。

夢の中でひとみはずっと真希のトレゾァの香りを感じていた。
138 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月01日(水)00時01分10秒
>>125-137更新しました

>124エンジェル様
甘い二人を書きたかったんですが、また痛めになっちゃいました(^^;
期待に応えられずごめんなさい!
139 名前:エンジェル 投稿日:2002年05月02日(木)00時05分50秒
いよいよ入院そして手術なんですね
こらから辛いけど2人で乗りきってほしいです
140 名前:とみこ 投稿日:2002年05月14日(火)13時19分52秒
よっすぃーカッコイイこと言い過ぎっ!!
マジいいっすねぇ。続き気になります。
141 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月17日(金)00時46分33秒
「………ん」

カーテン越しに射し込む朝の光がくすぐったくて、ひとみは寝返りをうつと無意識に真希の温もりを探した。

「……?……??」

だが隣にあるはずの温もりは見つからない。
まだ起きるには早過ぎる時間である。

「?…ごっちん?」

やっと真希がいないことを理解して上半身を起こしたその時……
142 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月17日(金)00時49分49秒
「こら〜起きろ!!寝ぼすけよっすぃ〜〜〜!!!」
「うわっ!」

元気のいい声と共に真希はひとみに抱きつくと、チュッと小さなキスをした

その感触はひとみの体から眠気と夢の余韻を取り除いていく

「…目、覚めた?」

コツンと額をつけたまま真希は訊く

「ん…もっかいしてくれたらもっと覚めるかも……」
「あは!ダメだよ〜だ!それより気分はどう?具合悪くない?」
「ん〜〜気分?気分は……最高はあとはあと

そう言うと今度はひとみの方からキスをする。こんな風にじゃれ合っていると病気で入院するなんて夢で今日も当たり前の様に二人一緒に仕事に行くような錯覚にひとみは陥る
143 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月17日(金)00時54分45秒
「えへ、そーだ朝食作ったんだ。早く来て!」

せかすように真希の手に引かれてダイニングに行くと、良い匂いがひとみの鼻に届いた

「すごい…これ全部ごっちんが作ったの?」

テーブルの上にはベーグルにゆで卵、オムライス…ひとみが好きな物ばかりが食べ切れないほど並べらている。

「えへへ、一度こんな風に朝食作ってみたかったんだ」

朝が弱い真希が早起きして一生懸命作っているのを想像してひとみは瞼の裏が痛んだ。

「もうなんでこんな日に限ってこんなこと……」

思わずひとみは真希を抱き締める

「よっすぃ〜…怒った?」
「バカ……めちゃめちゃ嬉しいよ」
「よかったぁ…早く食べよ?」
「うん」

それから二人はやっぱりこれからの事には触れずに他愛もない話で大袈裟に笑いながら食事をとった。
144 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月17日(金)00時56分46秒


「ねぇ、ごっちん」

食事を終えて身支度を整えている真希をソファに座って眺めながらひとみは切り出した。

「ん〜?何?」

また冗談かと真希は鏡越しにひとみを見たが、鏡に映っている表情は真剣でこれからひとみが核心に触れる話をするのが分かった

「私、ごっちんの笑顔が一番好きだよ。…だからどんな時でも笑ってて」
「…うん」

ひとみの言葉の裏側に隠された意味がたまらなく哀しい

「それから、仕事がんばってね」
「うん…よっすぃ〜も頑張って…手術」
「…うん」

あと15分もすれば真希を迎えにマネージャーの車が来るだろう。その間に話したい事は山ほどあるのに言葉にならない
145 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月17日(金)00時59分19秒
「よっすぃ〜…」
「ん?」
「……キス…して」
「ん…おいで」

ひとみのいるソファに辿りつくのと同時に二人はどちらからとも無く唇を重ねた

真希にとってひとみの唇はキス以上に特別な場所だった。

優しさも、愛情も、温もりも全て感じられる場所
言葉にならない想いが伝えられる場所
恋の始まりも、喧嘩の仲直りもいつもこの場所からだった。

ひとみが入院した後はマスコミの混乱を避けるため手術が終わり落ちつくまでメンバーですらお見舞いを禁止された。つまり、次ひとみの顔を見れるのは手術後になる。その時ひとみの唇から自分の名前は出るのだろうかと考えると不安で押し潰されそうになる。

涙が滲みそうになって自分から唇を離すと真希は涙を気付かれないようにひとみの肩に顔を埋めた。
146 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月17日(金)01時00分46秒
「よっすぃ〜が退院したら……二人でいろんな所行きたい」
「うん…どこ行きたい?」

ひとみは真希の髪を指で梳きながら訊いた。指に絡み付く柔らかな髪一本一本までが愛しくてたまらない

「春は散歩して、夏は海行って花火して、秋は紅葉見て、冬はスノボーして……それから、それから……」
「うん…行こう約束する。だから…待ってて」
「うん…待ってる、ずっと待ってるよ」
147 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月17日(金)01時03分22秒


ピンポ〜ン

何かの終わりを告げるように玄関のチャイムが鳴った。

「マネージャーさん…来たよ」
「うん…行かなきゃ」

しかし言葉とは裏腹にお互い腕をほどくことができない。その間も急かす様にチャイムは鳴り続けている。


「ごっちん…もう行こう」
「……うん」

やっとの思いで体を離してできた空間に風が通りぬけたような気がした。
148 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月17日(金)01時04分37秒

やっと出てきた真希にマネージャーは不満を言いたそうに口を開きかけたが、すぐ後から出てきたひとみを見ると口をつぐんで運転席に乗り込んだ。

「じゃあまたねっ!」

真希はいつもと変わらない別れ際の言葉を、自分が最高だと思う笑顔でひとみに言った。

「おう!またねっ」

少しの間見つめ合ったあと真希は振り返らずに助手席に乗りドアが閉められると車はゆっくりと走り出した。
149 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月17日(金)01時06分42秒

ひとみは車が角を曲がり見えなくなるまで見送ったあと、涙が零れないように空を仰ぎ澄み切った高い天をしばらく見つめていたが、やがて決心した様にフーッと溜息を一つつくといったん家に帰るため反対の方向へと歩き出した。

出勤前の静かな住宅街にひとみの足音だけが冬の乾燥した空中にやけに大きく虚しく響いていた。

150 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月17日(金)01時08分50秒

一方、真希は車が角を曲がると同時に泣き崩れた。

いつもは泣くと「目が腫れる」だの「メイクがのらない」だの言うマネージャーだったが、今日だけは何も言わずにハンドルをきっていた。

「…ぅえっぐ……よっすぃ〜……よっ…すぃ〜…」

嗚咽を洩らす度にひとみから預かったピアスが揺れ『泣かないで』とひとみが囁いているように思えたが、真希は溢れ出す涙を止めることができなかった。
151 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月17日(金)01時25分10秒
>>141-150更新しました。
久しぶりの更新なんで忘れられちゃったかなと、ちょい不安(w

>139エンジェル様
次回はいよいよ入院&手術です。

>140とみこ様
>よっすぃーカッコイイこと言い過ぎっ!!
確かに…こんな事サラサラ言う17歳いないよなぁ(w

最近忙しくていつ更新できるか分かりません。でも放置はしないんで待ってて下さい(その前に読んでる方がいればの話ですけど…)
152 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2002年05月17日(金)05時30分47秒
あああ!読んでて胸が苦しいっす。
続きが気になって気になって。。
いつまでも待ってますのでマターリと更新がんがって下さい!
153 名前:ROM 投稿日:2002年05月18日(土)08時58分34秒
思いっきりもらい泣きして周りから白い目で見られてマス。
後で小一時間程問い詰められそう・・
154 名前:エンジェル 投稿日:2002年05月18日(土)17時28分08秒
入院手術かぁ・・・・よっすぃ〜の記憶はいったいどうなるんでしょう??
そして2人にはどんな苦難があるんでしょう?ますます目が離せませんね
155 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月30日(木)01時37分30秒
入院してから1週間、ベッドにテレビと小さなラックがあるだけの白一色の殺風景な病室でひとみは検査以外何をするでも無く長い1日を過ごしていた。

しかしそんな生活も今日までで、手術は明日に迫っていた。

テレビから流れる芸能情報は連日自分の話題で盛り上がっている。
自分の病気について詳しく解説をするチャンネルもあれば、自分のオーディションから最近までの映像を編集して流すチャンネル、手術後の自分の方向性を予想するチャンネルなど各局趣向をこらしている。

しかしひとみから見れば、どれも視聴率を得るためのエサにされてるにすぎない。1日こうした番組を見ていると、ブラウン管に写る「吉澤ひとみ」と今こうしてベッドで寝ている「吉澤ひとみ」が本当に同一人物なのかと思えてくる。

もっともらしい事を真顔で語るコメンテーターに嫌気がさしてテレビの電源を切ると、ひとみは所々にシミのついた天井をボンヤリ眺めながら回想にふけた。
156 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月30日(木)01時39分00秒

バレーボールに夢中な普通の中学生がひょんな事からトップアイドルの仲間入りをし、健康だけが取り柄だったくせに後遺症が出るかもという病気になり今度は闘病生活……
我ながらなんて波乱万丈な17年間だろうと苦笑してしまう。

でも最近の自分を動かし支えていたのは、そのどれでもなくてやっぱり真希という存在だったと離れてから実感する。

「……ごっちん」

かすかに呟いてみたが、その言葉は誰に届くでもなく消毒臭い病室に溶けこみ消えた。
157 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月30日(木)01時41分36秒


「あら、起きてたの?」

ガチャリと病室が開いてひとみの母親が入ってきた。手にはひとみが頼んだ雑誌や着替えなどが入った大きな荷物を持っている。

「…うん」

真希のことを考えていた時に思考を中断されて、ひとみは素直に母親の方を見れずにソッポを向いて返事をした。

そんな娘の態度を手術のことを考えているからだと勝手に母親は解釈して、務めて明るく話しかけた。

「ほら、ひとみが言ってたテレビ情報誌買ってきたわよ」

母親はガサガサと荷物から雑誌を取り出すとひとみに手渡した。
158 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月30日(木)01時42分59秒
「ありがと」

ひとみは受け取るとテレ番をチェックし始めた。これは入院しからのひとみの日課になっていた。
あんなに側にいたのに、今ではブラウン管越しでしか真希に会えない。それでも、テレビの中で笑う真希を見るとホッとする。例えそれが仕事用の作り笑いだと分かっていても…

「今日は生番組にでるみたいよ」

病院に来る前に新聞のテレビ欄を見てきた母親は娘の行動を察知して言った。

「そうなんだ」

確かに生の音楽番組の出演者欄に『モーニング娘。』の文字が見える。

「ほら、そろそろ始まる時間じゃない?テレビつけたら?」
「うん」

今度は素直に返事して電源を入れると丁度番組が始まった所だった。
159 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月30日(木)01時44分25秒
司会の紹介で次々に今夜の出演者が登場する。

懐かしい……
ほんの1週間前まで自分もあっち側にいたのだ
ステージのバックで出番を待つあの独特の緊張感を今でも心臓が憶えている。

娘のテレビを見つめる虚ろげな視線に気付き母親は話題を切り出した。

「お父さんなんてね、あんたが出る日だけは飲まずに帰ってきてテレビの前で座ってるのよ」
「へぇ、そーだったんだ」
「それでねあんたがアップで映ろうもんなら、もうすごい喜んじゃってね『このカメラマンは良い腕してるぞ』なんて言うのよ」
「はは、お父さんらしい」

ひとみは父親の気持が分かるような気がした。自分だって今、真希が出る番組を欠かさず見ている。ただそれは会えない恋人に対する愛情だから、娘を見守る父親の心境とは少し違うのかもしれないが根本的な所は変わらない様に思えた。
160 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月30日(木)01時46分22秒
母親とそんな事を話しているうちにメンバーの番が来た。

『次はモーニング娘。です』
『こんばんは〜!!』
『急に吉澤が休業だって?大変だったなぁ?』
『そうなんですよ、本当に早く治って帰って来てほしいですね』

リーダーの飯田が司会者と無難なやり取りを交わす

『でもさ13人もいるんだから、1人ぐらい減っても変わらないんじゃないかぁ?』
『そんな事無いですよ〜!!もうなんて事言うんですか!』

司会者の茶々に矢口がムキになって答え、スタジオに笑いがもれる。

『そろそろ歌の準備もできたみたいなんで、最後に吉澤さんに誰かメッセージをどうぞ』
『じゃあ…後藤言ってあげなよ』

そう言って真希に振ったのは保田だった。
161 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月30日(木)01時48分04秒
それまで無表情で座っていた真希にカメラが引き寄せられる

『えっと……』

急に話を振られてトークの苦手な真希は戸惑っている。
ひとみも自然と手に汗を握ってしまう。

『よっすぃ〜…頑張ってね。みんなでよっすぃ〜が帰って来るの待ってるから!』

手を振りながらそう言うと真希は何気なく髪を耳の後ろにかける仕草をした。

その仕草にひとみはハッとした。

アップで映されているため真希が出した耳に付けられたピアスがはっきり確認できる。
それは紛れもなく最後の夜にひとみが付けてあげたピアスだった。
162 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月30日(木)01時49分19秒

「ごっちん…」

ひとみは真希がわざと髪を耳にかける仕草をしたのが直感で分かった。
それはひとみだけが分かるメッセージだった。

全国放送で言える事なんて通り一遍のことしか言えない。だから真希はその全国放送を逆に利用することを咄嗟に思いついたのだった。これなら何千人、何万人見てようが気付くのはひとみただ一人だけだから…

『ごっちん、ありがとう。ちゃんと受け取ったよ』


『離れててもいつも一緒』


『ごっちんの本当のメッセージはこれだよね?』
163 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月30日(木)01時51分16秒

その夜、消灯時間を過ぎてもひとみはなかなか寝つけなかった。

真希のことを忘れまいと何度も真希の感覚を思い出していた。

いつも見つめ続けてきた瞳
愛しい声を聞いてきた耳
何度も名前を呼んでは口付けた唇
温もりを伝えてきた指

こんなにも体中で覚えてきた愛しい感覚なのに、次真希に会った時は名前すら思い出せないのか?
そのやり場の無い悔しさを抑えるようにひとみは先程の真希のワンシーンを頭の中で思い起こしては、瞼の裏に焼き付け眠りについた――
164 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月30日(木)01時53分07秒


ゴロリ、真希は今夜何度目かの寝返りをうった。

眠れない……

一日中仕事で体は疲れているはずなのに頭だけは妙に冴えていて、先程から目を瞑ったり暗いホテルの部屋に視線を漂わせてみたりを繰り返していた。

こんな夜は決まってひとみの温もりを恋しく思ってしまう。
ひとみの腕の中でぐっすりと眠ったり、寝そびれて二人でくだらない話で盛り上がった夜が恋しくてたまらない。
165 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月30日(木)01時54分24秒
『せめて夢の中で逢えたら』

そんな昔から詩人達がこぞって使ってきた台詞が頭をよぎるが、眠らないことには幻影のひとみに逢うこともできない。

明日の手術を考えてひとみも眠れない夜を過ごしているだろうか?
今日の生番組でのピアスにひとみは気づいてくれただろうか?

そんなとりとめの無いことを考えながらもう一度寝返りをうった時、ベッドの横に設置されたホテルの電話が静寂を切り裂く様に鳴った。
166 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月30日(木)01時57分16秒
こんな夜中に誰だろうかと真希は半ば警戒しながら受話器を取った。

「もしもし?」
『あ、後藤?…やっぱり起きてたんだ』

電話の主は保田だった。

「うん。なんか眠れなくて…どうしたの?」
『ん?うん、まあ……あんたのことだから色々考え込んで眠れないんじゃなかと…』
「圭ちゃん…それでわざわざかけて来てくれたの?」
『うん。迷惑かなとは思ったんだけど』
「迷惑じゃないよ…すごい嬉しい、ありがとう」
『そ、良かった。どうせ眠れないならうちの部屋来ない?』
「いいの?」
『うん。まあ、多少の気晴らしにはなるでしょ?』
「じゃあ、今から行くね」

そう言って電話を切ると真希はパジャマの上から上着をはおり、静かな廊下を音を立てないように歩きながら保田の部屋へと向かった。

167 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月30日(木)01時58分54秒

「おう、入りなよ」

暗がりに目が慣れていたため、ドアから洩れる光に一瞬目眩がする。

「圭ちゃんって毎日こんな時間まで起きてるの?」
「ん?まあね」

ベットに腰掛けながら訊く真希に曖昧な返事をしながら、保田は冷蔵庫からビールを一缶取り出すと備え付けの二つのグラスに均等に注ぎ一つを真希に手渡した。

「いいの?いつも『未成年はダメ』って怒るのに」
「まぁ今日は特別という事で…それに睡眠薬飲むよりは体にいいでしょ?」

そんな事を言いながら保田は『乾杯』とばかりに自分のグラスを真希のグラスにカチリと合わし、隣に腰掛けた。
168 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月30日(木)02時00分49秒
「吉澤……明日手術だね」
「…うん」
「大丈夫、成功するよ」
「うん。…でもね圭ちゃん」
「ん?でも?」
「…私の方がダメになりそう」

そう言うと真希はグラスをベッドの脇に置いて、ベッドに仰向けに倒れ込んだ。

「…後藤」
「ほんとは寂しくてしょうがないの。何しててもよっすぃ〜の事考えちゃう、収録中ですら……プロ失格だよね」

生気の無い瞳でそう呟く真希に保田は言葉を探しているのか、しばしの沈黙が流れた。
その間真希はグラスの中で底から浮かんできては儚く弾けて消えるビールの気泡を眺めながら、それを今の自分に重ね合わせていた。
169 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月30日(木)02時02分48秒
「後藤…今その苦しみを乗り越えたらきっとすごい成長できると思うよ」
「…そうかな?」

真希は相変わらずグラスから目を離さず答えた。

「うん。吉澤との絆だけじゃ無くて人間としてさ」
「…うん」
「それに遠く無い将来、娘。を引っ張って行くのは後藤や吉澤や石川になるよ。その時今悩んだ事がきっと役に立つと思うよ」
「えっ?」

真希は思わず体を起こし保田の方を振り向いた。
『辞めちゃうの?』と言いたげな真希の表情を見て、保田は少し微笑むと話を続けた。
170 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月30日(木)02時04分20秒

「今すぐどうこうって訳じゃないよ。たださよくこうやって飲みながら話すんだよね」
「なっちや圭織とかと?」
「うん。みんなもっと自分の力を試してみたいって思ってる」
「…圭ちゃんも?」
「うん…最近ねミュージカルの面白さが分かってきたっていうかさ」
「圭ちゃん、女優になりたいの?」
「んー、まだ本当に夢物語だけどね。でも、いつか舞台演技を勉強したいって思ってる。」
「…そっかー、みんな色々考えてるんだ」

真希は保田の隣に座り直すと覚えたての苦いビールをごくりと飲んだ。
171 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月30日(木)02時05分19秒
「後藤は将来どうしたいの?」
「う〜ん私は歌をずっとやっていきたいかな。…でも」
「でも?」
「でも、やっぱりよっすぃ〜の隣にずっといたい……あは、皆から比べたら幼稚な夢だね」
「そんなことないよ。すごいと思うよ」
「すごい?」
「うん。そんな風に思える人に出会えるなんて一生に一度あるかないかだよ。それを後藤は16歳でその人と出逢えたんだもん。すごい事だと思うよ」
「そうだね……こんなに好きなれる人はよっすぃ〜以外いない…」
「ん…だから今は『寂しい』を全部『がんばれ』に変えて吉澤を応援してあげなきゃね」
「うん……圭ちゃんありがとう」
172 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月30日(木)02時07分41秒
ビールが丁度いい具合に体にまわったのか、保田に話を聞いてもらって安心したからなのか真希に睡魔が襲い始めた。

「そろそろ部屋に戻ろっかな」
「うん、そうしな。おやすみ」
「おやすみぃ〜」

「ねぇ、後藤」

ドアに手をかけた真希の背中に保田は言葉を投げた。

「ん?なーに?」

振り返ると保田は真希の方を見ずに空になったグラスを見つめながら、独り言のように呟いた。

「いつかさ……後藤や吉澤が二十歳になった頃、今日の事を笑い話にしながら3人で飲めるといいね」

保田は言い終わってから「少し酔ったかな」なんて微笑した。
173 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月30日(木)02時09分03秒
真希はこれまで知らなかった保田を垣間見た気がして、もしかしたら保田は優しさを表現するのが不器用なのかもしれないと思った。

「…うん。いつか話そうね、3人で」

それからもう一度「おやすみ」と言って真希は保田の部屋を後にした。

自分のベッドにもぐってから真希は眠い頭でボンヤリと今日の長い夜を思い出していた。

会えない切なさを知った夜
寂しい傷を涙で洗い流した夜
仲間の夢を知った夜
色々な優しさがある事を知った夜

なぜか真希は今夜の事は一生覚えておこうと胸に刻みながら眠りに墜ちた。
174 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月30日(木)02時10分13秒

ひとみと真希、それぞれの想いを抱えながら夜は静かに更けていく。

ひとみの手術まであと数時間後に迫っていた――

175 名前:ルパン4th 投稿日:2002年05月30日(木)02時25分36秒
>>155-174更新しました。
今回はちょい多めの更新です(w

>152名無し募集中。。。様
>あああ!読んでて胸が苦しいっす。
そう思ってくれるとありがたいです(w
痛い系の作品ですがお付き合い頂けたら嬉しいです。

>153ROM様
>思いっきりもらい泣きして周りから白い目で見られてマス。
もらい泣きしてくれるなんて嬉しいです。
でも白い目で見られないようコソーリ読んで下さいな(w

>154エンジェル様
いつもレスありがとうございます。毎回励みになっています。

>よっすぃ〜の記憶はいったいどうなるんでしょう??
ホントにいったいどうなるんでしょう?次回は手術偏です

相変わらず忙しくてなかなか更新できませんが、こんな暗い作品なんでジメジメする梅雨入りまでには完結させたいなと思う今日この頃……(w
176 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月06日(木)00時53分34秒
バンという鈍い音と共に頭上の大きなライトが強い光を放った。それはコンサートの舞台を照らす照明を連想させる。
ただここはステージでもスタジオでもなく、異様なほど衛生さが保たれ医療器具が所狭しと並べられた手術室だが…

何を考えるでもなくひとみは、ライトの強い光の中を一心に見つめていた。いまさら手術に対する不安や恐れは無かった。手術着を着せられ固く狭いベッドに寝かされたひとみはまさに『まな板の鯉』状態だった。
177 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月06日(木)00時55分25秒

「吉澤さん、気分の方は大丈夫ですか?」

いつからそこにいたのか、話しかけられひとみはゆっくりと医師の方を見た。

患者をリラックスさせようと優しい声で話しかけているようだが、大きなマスクをしているためくぐもった声に聞える。その上、全身手術着から唯一露出している銀縁のメガネが妙に冷たい印象を与えた。

真上から覗きこむ医師の問いにひとみは頷いてみせた。

「それでは、これから麻酔を打ちますね。目を閉じて吉澤さんの一番楽しい事を考えてください。そうすれば楽しい夢を見ている間に手術は終わってしましますからね」
178 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月06日(木)00時56分34秒

『楽しい事?』

そんなの真希の事を考える以外思いつかない。

麻酔薬の入った注射器がチクリとひとみの肌を刺した。じょじょに麻酔が体中を麻痺させていくのが分かる。薄れゆく意識のなかでひとみは真希の言葉を思い出していた。

『よっすぃ〜、ずーっと一緒にいようね!』
『…よっすぃ〜、だーい好き!』
『……よっすぃ〜…あったかい』
『……よっ…すぃ〜……』
『………よっ……す…ぃ〜……』
『………………』

「それでは、これより吉澤ひとみさんの頭部腫瘍除去手術を始めます。」

完全に眠りに落ちたひとみを何人もの医師と看護婦が囲み手術が開始した―――
179 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月06日(木)00時57分48秒



寝起きが悪く、いつも遅刻ギリギリに家を出る真希だが、今日は朝早くから事務所に向かっていた。

昨日のひとみの手術の結果が事務所に連絡されているはずだと考え、いてもたってもいられなかったのだ。

『無事、手術は成功したそうだ』
『記憶が戻らないらしい』
『後遺症が運動機能に出たらしい』

昨夜一睡もできず、どんな結果を言われても大丈夫なようにベッドの中でありとあらゆる結果を想定した。
180 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月06日(木)00時59分04秒

『大丈夫、必ず良い結果が聞けるはず…』

社長室に向かう事務所のエレベーターの中で真希は何度も何度も自分に言い聞かせる。

『結果を聞くのが恐い』と強張る体を奮い立たせ、社長室のドアをノックしようと腕を上げたその時、ドアが開き中から出てきた飯田と保田と鉢合わせになった。

「うわっ!…ご、後藤?」
「えっ?どうして…ここに?」

いるはずの無い真希とぶつかりそうになって二人とも状況が掴めないといった感じだ。

「ね、よっすぃ〜は?手術は成功したの?二人ともそれで呼ばれたんでしょ?」

そんな二人を無視して真希は食いつく様に質問を浴びせた。

飯田と保田は『どうしようか』と困惑した顔つきでアイコンタクトを取っていたが、保田が軽く溜息をつくと「とりあえず、ここじゃなんだから」と真希をロビーまで促した。
181 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月06日(木)01時00分56秒

「ねぇ、教えてよ!」

ロビーまで焦らされて真希は少し苛立ちを感じながら二人を問い詰めた。
先程から暗い顔つきで視線を泳がせている二人を見て、最良の結果は聞けないと覚悟は決めていた。

「圭ちゃん!よっすぃ〜の手術結果知ってるんでしょ?」
「…ん、…まぁね。私達も…今聞いてきたとこだけど…ね?」

助けを求めるように保田が飯田の方を見ると飯田は頷き、決心したように口を開いた。

「…後藤、落ちついて聞いてね」

真希は真っ直ぐ飯田を見つめながらコクリと頷いた。手の平にじんわりと汗が滲んでいく。

「吉澤……まだ麻酔から覚めないらしいの」
182 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月06日(木)01時02分20秒

予測していたどの結果とも違う答えで真希はすぐに意味を理解できなかった。

手術が終わってからすでにかなりの時間が経っている、それでも目が覚めない?

「…どういう……こと?」

頭は混乱しているが、それが正常な経過でないことはなんとなく分かった。

「つまり……昏睡状態…ってこと」

すでに涙ぐんでしまっている飯田に代わって保田が答えた。

「昏睡…状態?……いつ覚めるの?」

やっと今のひとみの状態を把握して、真希の声が自然と震える。
183 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月06日(木)01時03分52秒

「分からない…明日覚めるかもしれないし、このまま…覚めないことも……」
「…そんな…それって……」

『植物状態』

最後の単語は恐ろしくて声に出すことができなかった。

「あとは…吉澤の生命力にかかってるって――」

話を続ける保田の言葉は、すでに真希の耳には届いていなかった。

つきつけられた結果は、自分を忘れてしまわれる事より残酷な――最悪の結果

人間、本当のどん底に突き落とされた時は声も涙もでないのかもしれない。真希はそのまま気を失った。
184 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月06日(木)01時04分39秒
>>176-183更新しました。
185 名前:名無し募集中。。。 投稿日:2002年06月06日(木)02時54分41秒
ヲヲヲ更新されてる♪
続きが…続きが気になりすぎです。
更新頑張って下さい。
186 名前:エンジェル 投稿日:2002年06月06日(木)23時59分38秒
更新お疲れ様です。ますます目が離せなくなってきてる・・・
続きか楽しみのような・・・せつないような・・・・
更新がんばってください。
187 名前:にゃん 投稿日:2002年06月11日(火)17時35分18秒
わーん(>_<)吉子が植物状態に..目を覚ましてくれー!ごっちんの為にも
188 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月11日(火)23時22分44秒
「ん……」

重い瞼を開くとボンヤリと白い天井が見えた。

「あっ、後藤気がついた?」

声の方向に顔を向けると心配そうに真希を覗き込む保田いた。

「……圭ちゃん、私…」
「覚えてない?事務所で倒れて、救急車で運ばれたのよ」

保田の言葉で、ひとみの様態を聞いて倒れた事を思い出した。

「疲れとストレスから来る軽い貧血だって、その点滴が終わったら帰っていいそうよ」

そういえば腕に点滴の針が付けられ、その容器は残り僅かになっている。どうやらかなりの間、眠っていたらしい。
189 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月11日(火)23時24分11秒

「圭ちゃん、よっすぃ〜は?意識戻った?」

だいぶ頭が回転してきた真希は保田に慌てて聞いた。
しかし真希の期待を裏切るように、保田はそっと首を横に振った。

「…そっか、よっすぃ〜が覚めないなら私も覚めなきゃよかったのに…」
「後藤!冗談でもそんな事言うもんじゃ無いよ」

吐き捨てるように言う真希に保田は少し怒ったように言った。

「……ごめん」

保田に言われて軽率な言葉を言ったことを後悔し、真希は素直に謝った。

「吉澤も今必死で頑張ってるんだから…ね?」
「うん」

今度は子供を宥める様に保田は優しく話しかけた。
190 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月11日(火)23時25分26秒


「後藤さん気がつきましたか?点滴終わったんで外しますね」

点滴の終わる時間を見計らって看護婦が入ってきた。慣れた手つきで真希の腕から針を抜いていく。

「はい、じゃあお家に帰って結構ですよ。お仕事忙しいと思いますが、あまり体を痛めつけないで下さいね」

看護婦は笑顔で気さくにそう言うと病室を出っていった。

「じゃあ帰りますか、今日は仕事休んでいいってさ。…大丈夫立てる?」
「うん、平気」

ずっと寝ていた為、立ち上がった瞬間フラついたが保田に余計な心配をかけたくなかったので、そう返事した。
191 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月11日(火)23時26分56秒

エレベータに乗ると保田は1階を押さずに上の階を押した。

「圭ちゃん?帰るんじゃないの?」

保田の行動が理解できず真希が怪訝な顔で訊くと、保田は意味深に微笑み答えた。

「アンタが運ばれたこの病院ね、吉澤が入院してる病院なのよ」
「…う…そ」
「本当よ。ほんとは、ご家族以外面会できないんだけど、さっき吉澤のお母さんに会って話したらね『是非会って話し掛けてくれ』って快く言って下さったわ」

急にひとみに会えると分かって、真希の鼓動は高鳴りを抑えられなかった。
192 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月11日(火)23時28分25秒

ナースステーションに一番近い個室――そこが、ひとみの病室だった。

「じゃあ、私はここで待ってるから」
「えっ?圭ちゃんよっすぃ〜に会わないの?」
「私は、アンタが寝てる間に会ってきたのよ」

そう言って保田は真希の荷物を預かると、真希に入るよう促した。
193 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月11日(火)23時30分04秒

真希がそっと病室に入ると機械的な人工呼吸の音が室内に響いていた。
そんな病室を見守るような午後の暖かい陽射しを浴びて、ひとみは静かに眠っていた。

頭には包帯
口には人工呼吸器
腕には点滴

真希の知っているひとみとは別人のひとみがそこにいた。

「……よっ…すぃ〜」

思わず手を握り締めたが、その手は冷たく透けそうなほど白い。

こんなに近くにいるのに見つめ合って笑う事も、抱きしめることもできないのかと思うと涙が出そうになる。
194 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月11日(火)23時31分38秒

「そうだ…よっすぃ〜これ返すね。手術が終わるまでの約束だもんね」

思い出したかのように真希は自分の耳からピアスを片方外すとひとみの耳元につけてやった。

「もう片方はよっすぃ〜が目覚めた時に返してあげる……それまで持っててもいいでしょう?」
「返してほしかったら…目開けてよ……ねぇ、よっすぃ〜」

何を言っても返ってくるのは、規則正しい人工呼吸の音だけ。
195 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月11日(火)23時32分37秒

「よっすぃ〜のいない間にね、いろんな事があったよ」

「私ね3枚目のソロシングル決まったよ。『手を握って歩こう』ってタイトルなんだ。うちらもよく手つないで歩いたよね、よっすぃ〜は照れ屋だからいつもポケットの中だったけど……」

「そうそう、圭ちゃんね舞台演技を勉強したいんだって。圭ちゃんミュージカルも頑張ってるし上手いもん、案外女優に向いてるのかもね…それでね、うちらが二十歳になったら三人で飲もうって約束したんだよ。よっすぃ〜はお酒強そう、私は弱いみたいだけど……」

「そうだこないださ、笑っちゃうの。辻がさお昼にヤキソバ食べ過ぎて、衣装のボタンがしまんなくなっちゃってさー、なんとか止めたんだけど結局本番中に弾けてもうメンバー全員大爆笑!アハ……」

一人まくし立てるように喋っても、ひとみは何の反応も示さずその瞳は固く閉じられたままだ。
ついこないだまでの優しい眼差しで話を聞いてくれて、話のオチでは二人でお腹を抱えて笑い合った日々が随分と遠い昔に感じられる。
196 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月11日(火)23時33分47秒

「よっすぃ〜…そんな所で寝てないで帰ろう?一緒に帰ろうよぉ……ねぇ、よっすぃ〜!」

思わずひとみの頭を抱きかかえるようにして真希は泣き出してしまった。
しかし自分の涙だけが虚しくひとみの頬を濡らす。

「後藤、だめよ!吉澤は安静にしてなきゃダメなんだから」

泣き声に気づいて入ってきた保田が慌てて、ひとみから真希を引き離した。

「圭ちゃん…ぇっぐ……どうして?…うっぐ…どうしてよっすぃ〜がこんな目に…」
「うん。分かったから落ち着いて…ね?」
「もうヤダぁ……私のこと忘れてもいいから…うぇぐ…目開けてほしいよぉ」
「大丈夫、ちゃんと後藤の気持ち吉澤に伝わってるから。ほらもう行こう?」

泣きじゃくる真希を抱えるようにして保田は病室をあとにした。

『吉澤、後藤のために戻ってきなさいよ。あんたの大事な後藤のために…』

病室を出る時に保田は心の中でひとみに問いかけたが、ひとみの周りだけ時が止まったようにひとみは身動き一つしなかった。
197 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月11日(火)23時49分36秒
>>188-196更新しました。

>185名無し募集中。。。様
続きを待っていてくれるなんて嬉しいです。
頑張って更新しますよ〜!

>186エンジェル様
せつないと思ってくれてよかったです。
でもずっと暗いの書いてるので、甘いよしごまを書きたい!(w

>187にゃん様
おっ!久しぶりのレス嬉しいです
吉子ごっちんのために、目覚めるのか…?
198 名前:にゃん 投稿日:2002年06月13日(木)12時49分19秒
レスはヒサブリですけどずっーと、読んでましたYO!この吉後大好きなんで。ほんとせつない(T_T)更新まってます。
199 名前:エンジェル 投稿日:2002年06月13日(木)23時57分24秒
作者さんの甘いよしごまも見たいです!!
これが終わった後に期待してますね(笑)

これから吉子はどうなるのか??早く目をさまして
ごっちんを安心あせてあげてほしいです。
200 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月28日(金)00時40分01秒

気づけば薄闇の中、ひとみは一人たたずんでいた。

ここが何処なのか、なぜ自分がここにいるのか分からない。
誰かを呼んでみようと思うが、誰の名前も思い出せない。

しかたなく当ても無しに歩き始めてみたが、左足がまるで鉛の枷でもはめられているかのように重い。それでもこの孤独な世界から抜け出したくて、左足を引きずるようにして歩き続けると前方に少女の姿が見えた。
201 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月28日(金)00時40分57秒
自分と同い年くらいだろうか?まっすぐな茶色い髪を背中までなびかせ、整った輪郭に大きな瞳が印象的だ。

しかし彼女の瞳の色は深い哀しみを帯びていて、とめどなく涙が溢れ出している。

『ねぇ、どうして泣いているの?』

ひとみが話しかけてみても彼女はただ泣いているばかり。
何故かひとみは彼女の涙を見て胸が痛んだ。まるで自分が泣かせたような――そんな胸の痛み。
202 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月28日(金)00時42分08秒

以前にもこんな事があったような……とても大事にしている人なのにいつも悲しませてしまって、何もできない自分がもどかしくてもどかしくて…

誰だったろう?その人は
…思い出せない。
顔も名前もまったく……思い出せない。

その人は今何処にいるのか?
また一人で泣いていないだろうか?
今、目の前で泣いている彼女のように……
203 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月28日(金)00時43分05秒

『ね、泣かないで。なんか貴方が泣いてるの見ると胸が痛いんだ』

そう言ってひとみは目の前の少女をそっと抱きしめた。
憶えていないけれど、大切な人が泣いていた時いつもこうしてきたような気がしたから…

抱きしめた腕の中で彼女が肩を震わす度に髪が揺れて、彼女の香りがひとみの鼻をくすぐった。

この香り……知ってる
とても大事な香り
まるで宝物のような…
…宝物?

『宝物』という言葉が妙に頭にひっかかったが、それと同時に頭痛がひとみを襲い意識が薄れていった……

…………
………
……
204 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月28日(金)00時44分19秒


看護婦は手際良く終わった点滴を新しいものに変えていた。

「吉澤さん、脈取りますね」

たとえ患者が植物状態でも必ず話しかけるのは鉄則である。
蒼白に近い手首をに指を添え、腕時計を見ながら脈を数える。

「…!?」

僅かに患者の手が動いた気がして看護婦は腕時計から目を離し患者を見た。
しかし、何も変わらず患者は静かに人工呼吸の音を響かせながら目を閉じている。
思い違いかと看護婦は再び脈を取り始めた。
205 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月28日(金)00時46分18秒
「……ぅ」

今度ははっきりと手が動き、呼吸に紛れて声が洩れた。

「吉澤さん!?聞こえますか?吉澤さん!!」

看護婦は耳元で大声で患者の名前を呼びながらナースコールを押した。すぐにナースステーションにいる同僚が出る。

『どうしました?』
「吉澤さんの意識が戻ったみたいなの!早く先生を呼んで!!」
『わ、わかった。すぐ呼ぶわ!』

それから医師が駆けつけるまで、看護婦はずっと患者の名前を呼び続けた。
206 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月28日(金)00時49分13秒


「だからさぁ困るんだよ。最近NGばかりじゃないか…おい聞いてるのか?」

プロデューサーは溜まりに溜まっていた文句を吐き出したが、目の前にいる当の本人は俯いたまま聞いてるのか聞いてないのか分からない反応。

「おい返事くらいしろよ!後藤!!」

堪忍袋の緒が切れてプロデューサーは怒鳴ってしまった。その大声にスタッフ全員がこちらを向いたと同時に真希に同情の視線が注がれた。

『はぁ〜これだから嫌なんだよ小娘アイドルは…同情されたいのはこっちの方だぜ』

プロデューサーは心の中で愚痴をこぼした。もともと鬼プロデューサーで名が通っている自分である。16才そこらのアイドルを相手しているより、若手のお笑い芸人をビシバシ育てる方が性にあっている。
207 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月28日(金)00時53分18秒
「悪かった怒鳴って…」

しかたなく慣れない優しい声で話しかけるが、相変わらず真希は反応しない。

「聞いたよマネージャーから吉澤のことで一番ショックを受けてるのが後藤だってことは…」

タバコに火を点けながらプロデューサーは切り口を変えてみた。

『吉澤』の一言に真希が僅かにピクリと反応する。

『やっぱり原因はそれか』

「後藤、吉澤の事がショックなのは分かるよ。でもなおまえもプロだ、いちいち公私混同しているようじゃこの先この世界でやってけないぞ」
「……はい」
208 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月28日(金)00時54分15秒
真希は小さく返事をした。そんな事言われなくても分かっている。NGを連発して周りに迷惑をかけている事も、ひとみの事から立ち直らなくてはいけないことも……全部全部頭では分かっているけど、体がついてこない。

正直あれから何度も真希は仕事を辞めてしまおうかと悩んだ。それでもなんとか辞めずに今の自分を繋ぎとめているのは、入院当日にひとみが言った言葉…

『仕事がんばってね』

その一言だった。

あの時ひとみは自分の笑顔が一番好きだとも言ってくれた。けれども、もう真希は作り笑いすらできなかった。

『よっすぃ〜もう一度私の前で笑ってよ…じゃないと私何もできないよぉ』
209 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月28日(金)00時55分14秒

「…だろ。後藤?おいっ!」

どうやらまた、ひとみの事を考えていてプロデュサーの話を聞いてなかったようだ。

「いいかげんにし――」
「ちょっと、すみません。」

再びプロデュサーが怒鳴った時、保田が顔を出した。

「保田か、なんだよ」

言葉を遮られて明らかに不機嫌そうにプロデューサーは保田の方を向いた。

「つんくさんが後藤に話しがあるみたいなんです。ですから後藤借りてもいいですか?」
「つんくさんが?」

つんくの名前を出されたら嫌だと言う訳にはいかない。しかたなくプロデューサーは真希を解放した。
210 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月28日(金)00時56分37秒

「何?話って?」

保田に連れられて廊下に出ると真希はぶっきらぼうに言った。どうせ相手が変わるだけでまたお説教だろうと思ったからだ。

「後藤!早く病院に行って!!」

そんな真希を無視して、保田は先ほどの冷静さがウソのような勢いで言った。

「び、病院?何よく分からないんだけど…」

保田の勢いに圧倒されながら真希は訊いた

「今事務所に連絡が入ったの。吉澤の意識が戻ったって!!」
「う…そ」

保田の信じられない言葉に真希の頭は一瞬真っ白になる

「本当よ。下にタクシー呼んであるから早く!」

そう言って保田は真希の背中を押した。

「圭ちゃん、ありがとう!!」

保田に礼を言うと真希は全力疾走でタクシーまで駆け出した。
211 名前:ルパン4th 投稿日:2002年06月28日(金)01時08分17秒
>>200-210更新しました。

>198にゃん様
ずーっと読んでてくれて嬉しいです。
クライマックスに向けてがんばりまっす!!

>199エンジェル様
やっとよしこが目覚めました!(w
でも記憶は戻っているのか??

さてここで【お詫び】です
前回の更新で、ごっちんの新曲のタイトルを「手を握って歩こう」と書いてしまいました。本当は「手を握って歩きたい」ですよねっ(汗)ごっちんごめんよぉ〜〜 m(_ _)m

あとですね次回あたりでラストになりますので、なるべく早く更新できるよう頑張ります。
212 名前:ROM 投稿日:2002年06月28日(金)01時30分36秒
ごっちんは、あの香水をつけてるのかナ。お願いだから
思い出してよっすぃ−!(また泣けてきた・・)
213 名前:今読んだ人。 投稿日:2002年06月28日(金)12時04分01秒
あれ… 可笑しいな? モニターが壊れたのかな…? 上手く画面が見えない……
214 名前:エンジェル 投稿日:2002年06月30日(日)00時20分17秒
次回がラストですか・・・
ハッピエンドになるようにお祈りしてます(笑)
でも終わってしまうと少し寂しいような・・・・・・・・・・・・
でも続きが見たい!!ゆっくりまったり更新待っています。
215 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月08日(月)22時25分11秒
>212ROM様
 >お願いだから思い出してよっすぃ−!
さてよっすぃ〜思い出せたのか?
よろしければラストを見届けてやって下さい(笑)

>213今読んだ人。様
 >上手く画面が見えない……
マジっすか?自分のPCでは平気なんですけどねぇ…
せっかく読んでくれたのに、なんか申し訳ないなぁ

>214エンジェル様
 >次回がラストですか・・・
はい、今回がラストになりました。
エンジェル様には毎回毎回レスを頂いて、本当にありがとうございました。
216 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月08日(月)22時27分09秒
「K大学病院まで!」

真希はタクシーに飛び込むと早口で運転手に行き先を告げた。

「お客さん、今日は雨だから道混むよ。急ぎかい?」

運転手に言われて窓の外に目をやると、雨で滲んだ車のテールランプが限りなく続いている。

「急いでるんです。近道あったらお願いします!」
「あいよ!」

真希の要求に運転手は、腕の見せ所とばかりに威勢良くハンドルをきり狭い路地裏に入っていった。
真希は気持ちを落ち着かせるようにシートに深くもたれ掛かると、勢いを増した雨の街を眺めた。

『雨か……』

ひとみと付き合い出して確かに自分は変わったと思う。嫌いだった雨が好きになったのもその一つ……
217 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月08日(月)22時28分32秒

『もぉまーた雨!!ごっちん雨女でしょ?』
『ひど〜い!雨女はよっすぃ〜の方でしょ。よっすぃ〜とのデートの時いっつも雨だもん!』
『いーえ!私は晴れ女です』
『私だって晴れ女ですぅ』
―いっつもどっちが雨女か言い合ったけ―

『あぁ!ごっちん雨降ってきたよ』
『大丈夫、私カサ持ってきたから』
『へへっ、ごっちんと相合傘できるなんて雨に感謝だね!』
―あの時自分は半分濡れてるくせに私が濡れないように肩抱き寄せてくれたね―

『ん…ごっちんおはよ』
『おはよ、よっすぃ〜今日雨だよ』
『じゃあ今日はどこも行かないで、もうちょっと寝よっか?』
―貴方の温もりに包まれながら雨の音で目覚める朝好きだった―

『よっすぃ〜私全部全部憶えてるよ。だからもしよっすぃ〜が記憶失くしてても、一つ一つ聞かせてあげるね。二人でつくった物語』
218 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月08日(月)22時29分52秒


「お客さん、着いたよ」

運転手の声にハッと真希は我に返った。

「ありがとう!!」

真希は財布から数枚のお札を取り出すと、運転手の手に押し付けるように渡してタクシーを飛び出した。

「あっ、お客さん!おつり、おつり!!」

運転手は必死に呼んだが、その声は真希には届いていなかった。
219 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月08日(月)22時31分00秒

まるで出産の知らせを聞いた父親の様に、真希は途中何度も人とぶつかりそうになりながら病院の廊下をひとみの病室を目指して走った。

「よっすぃ〜!!」

愛しい名前を祈るような気持ちで叫びながら病室のドアを開けると、ひとみの両親に医者と看護婦が一斉にこちらを振り返った。
ベッドを囲むようにして彼らが立っているため、ひとみの姿はまだ見えない。

真希と入れ違うようにして、医者は「では今後のお話を…」とひとみの両親に切り出し、ひとみと真希を残して連れ立って病室を後にした。
病室を出る時ひとみの母親が「ひとみをよろしくね」と真希に囁いたが、その言葉の真意を考える余裕は真希には無かった。
220 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月08日(月)22時33分36秒

さっきまでの勢いを失って真希は恐る恐るベッドに歩みよっていく。

そして真希の目に映ったひとみは人工呼吸も包帯も点滴もしておらず、ベッドの上に上半身を起こすようにして座っていた。

少しクセのある髪
大きな澄んだ瞳
雪のように白い肌

何もかもがあの時のままのひとみだった。外見だけは……

「よっ…すぃ〜…」

色々な感情が一気にこみ上げてきて、名前を呼ぶ声が震えてしまう。

しかしひとみはジッと真希を見つめているだけ。
その表情は無表情のようにも、僅かに微笑んでいるようにも見えた。

『やっぱり憶えてないの?』

一瞬にして不安が真希の心を支配していく。
ひとみの口から出る言葉を聞くのが怖くて真希は俯き目を瞑った。
221 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月08日(月)22時35分05秒



「もっとこっち来て顔よく見せてよ……ごっちん」

目を閉じて出来た暗闇を照らす様に、自分の名前を呼ぶ声が届いた。

耳に焼き付いて離れない、懐かしいハスキーボイス…

顔を上げて目に入ったひとみは、今度ははっきりと自分に微笑んでいた。
その微笑に引き寄せられるように、真希はフラフラとひとみの傍まで歩いていく。
もう、涙が溢れてひとみをしっかり見ることができない。

「ほら、泣かないで。ごっちんの笑顔が一番好きって言ったでしょ」

そう言ってひとみは真希の涙を指で拭うと抱きしめた。

「よっすぃ〜…私のこと憶えてるの?」
「うん。…憶えてるよ」
「ほんとに…っえぐ…ほんと?」
「ほんとにほんと」

久しぶりに感じるひとみの腕の強さと温もりが嬉しくて、涙がとめどなく頬を伝う。
222 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月08日(月)22時36分54秒

「じゃあ…っぅぐ…始めてキスした場所は?」
「誰もいない楽屋」
「始めて…ぇっぐ…デートした場所は?」
「渋谷の映画館」
「…よっすぃ〜がクリスマスにくれた物は?」
「トレゾァの香水」
「じゃあ…よっすぃ〜が治ったら行こうって約束した場所は?」
「春は散歩、夏は海、秋は紅葉見て、冬はスノボーでしょ?」
「違うよ…夏は海行って花火だよ」
「ハハ、それは――後遺症のせいじゃないよ」

最後の言葉は真希の瞳をしかっりと見つめながら言った。
その言葉を聞いてやっと真希の顔に笑顔が戻った。
223 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月08日(月)22時38分37秒

「他にも…後遺症出なかったの?」
「……左足が少し痛いんだ」
「だい…じょうぶなの?」
「まだ分からない、これからのリハビリ次第だって…でも」
「…でも?」
「全然気にしてない。だって…ごっちんとの記憶、失くさなかったもん。それだけあれば、もう何もいらない」
「ふぇっぐ…よっすぃ〜!!」
「あーあせっかく泣き止んだのに、また泣く」

ひとみは腕の中で泣きじゃくる真希をギュッと抱きしめた。

「もういなくなっちゃイヤ…ぅっぐ…ずっと傍にいてくれなきゃ……うぇっぐ…やだぁ」
「ん、もう二度と離さない。それにもう二度とこんなに泣かさない、約束するよ。……真希」
224 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月08日(月)22時39分53秒

それから、二人はそっと唇を重ねた。

もう二度と離れない事を誓う様な――


長い長いキスだった。

225 名前:エピローグ 投稿日:2002年07月08日(月)22時42分07秒
『後藤&吉澤へ
 元気ですか?早いものでアメリカへ来て2年になりました。
 ようやく演劇学校を卒業することができ、オーディションに
 合格し凱旋帰国できる事になりました。来週、日本へ帰るの
 で二人とも忙しいとは思いますが、三人で会えるのを楽しみ
 にしています。                
                        保田 圭』
226 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月08日(月)22時43分46秒

―3年後―

「やぐっつぁん!!ごめん今日、先あがらせて!」 
「何?サブリーダーがそんなんでいいと思ってるのかぁ〜」

3代目リーダーの矢口が真希に冗談っぽく笑いながら言う。

「あはは、ごめん!今日よっすぃ〜と一緒に空港まで圭ちゃん迎えに行くんだ」
「マジで!?懐かしい〜オイラにも連絡するよう言っといてよ」
「うん、オッケー!」

あれから、本当に色々な事があった。飯田は絵の勉強をしにパリへ留学、保田は演劇の勉強をしにアメリカへ、安倍も娘。を卒業し今ではドラマに引っ張り凧だ。

そしてひとみも――あれから、日常生活に問題ないまでに左足も回復したが、やはり過激な運動は控えたほうがいいという理由から娘。を引退しモデルの道を選んだ。
227 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月08日(月)22時44分32秒

「うわ〜後藤さん、吉澤さん元気ですか?」

真希と矢口の話に高橋と小川が入ってきた。あの頃は新人だった彼女達も今では娘。になくてはならないメンバーに成長した。

「うん元気だよ。ところで、その『後藤さん』ってのいい加減やめてよ。『ごっちん』でいいからさ」

昔、保田が同じことをひとみに言っていたのを思い出し自然に笑みがこぼれる。
最近、あの頃の保田の様にサブリーダーとして後輩を支えてやることができてるだろうかと真希はよく考える。
228 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月08日(月)22時45分40秒

昔話に花が咲き、少し遅れた真希はひとみとの待ち合わせ場所へと急いだ。

ベンチに座っている見慣れた背中を見つけると真希は何故だかホッとする。
久しぶりにあの頃の挨拶をしてみようか……

「よーーっすぃ〜!!」
「うっ……ぐる…じぃ…」

後ろから抱きつかれてもがくひとみの表情は、少し大人っぽくなったが笑顔は少しも変わっていない。
229 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月08日(月)22時46分39秒

「もう…遅いよ、真希」
「ごめんね。みんなでよっすぃ〜のこと話してたんだよ」
「私の?」
「うん。みんな懐かしいって、会いたいって言ってたよ」
「へぇ〜じゃあ今度コンサートの楽屋にでも顔出しますか」
「うん!来てよ、みんな喜ぶよ!」
「一番喜ぶのは真希だろぉ〜がぁ〜!」

そう言うとひとみは真希を抱き寄せデコピンをしてやる

「あはは痛いよ〜、ほら早く行こう?よっすぃ〜車は?」
「あっ、ちょっと離れた所に置いたんだ」

二人で手を繋ぎながら、車を置いた場所までプラプラ歩いて行く
230 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月08日(月)22時47分34秒

「そうだ、圭ちゃんと会ったら三人でお酒飲もうね?」
「え?だって真希お酒弱いじゃん」
「えへ、だーって圭ちゃんと約束したんだもん。二十歳になったら、あの話しながら飲もうって」
「あの話って?」
「ひ・み・つ」
「こらぁ〜気になるじゃんかー」

笑い合いながらひとみの羽交い締めを必死によける真希の目にある光景が止まった。

「あっ!ね、よっすぃ〜あそこ見て」
「ん?何?」

真希が指差す方向には小さな教会があり、たった今式を挙げ終わった二人がフラワーシャワーのなか暖かな拍手と共に出てくるところだった。
231 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月08日(月)22時48分35秒

「ねっもうちょっと近くに行ってみようよ!」

そう言うが早いか真希はひとみの手を取って走り出した。

近くで見る新婦の純白のウエディングドレスは眩しいくらいに輝いていて、これ以上ないというくらい幸せな空気が二人を包み込んでいる。

「……キレイ」
「…うん」

真希は子供のように目を輝かせながら見とれている。
そんな真希の手をひとみはしっかりと握って、少し咳払いするとそっと囁いた。
232 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月08日(月)22時49分45秒

「私、吉澤ひとみは病める時も健やかなる時も後藤真希を愛し続ける事を誓います」

最初冗談かと思った真希だったが、ひとみの真剣な表情を見てひとみのあとに続いた。

「私も――後藤真希も生涯吉澤ひとみを愛し続けることを誓います」

その後ふたりは照れくさそうにフフッと笑いあって、ひとみはベールを上げるかわりに真希をそっと抱き寄せて誓いの口付けをした。
233 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月08日(月)22時50分45秒

言葉、温もり、時には涙、その全ての中に愛を見つけてはそれを伝え合って来た二人だから、これからも信じていける。いつもどんな時でも二人は一緒だと。

きっとこれが、最初で最後の恋……
だから――溺れてみるならこの愛の中がいい

『真希、私の溢れる気持ちちゃんと伝わりますか?』

ひとみの心の問いに答えるように、真希の耳につけられたいつかのピアスが陽の光に反射してキラリと光った―――

―Fin―
234 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月08日(月)23時03分21秒
>>215-233更新しました。

以上で『伝わりますか』完結です。
数多くある作品の中からこの小説に目を止め、読んで下さってどうもありがとうございました。

思い返してみると、更新毎にごっちんは泣いていたような…(笑)
次回はもっと笑顔がいっぱいのごっちんを書きたいなぁ

さて次回と書きましたが、実はもう少し書き始めているので少ししたらまた載せようかなと考えています。(笑)
また、どこかで見かけたらよろしくお願いします。

Special Thanks: 感想や励ましのレスをくれた皆さん。
235 名前:ROM 投稿日:2002年07月09日(火)01時02分24秒
完結お疲れ様でした。いいベクトルの展開だったので
内心ホッとしてます。更新毎に泣いていたのはごっちん
だけじゃないですよ。もらい泣きしまくりでした。
次の作品も頑張ってください。
236 名前:ウェス 投稿日:2002年07月09日(火)08時04分25秒
最初から読ませていただいてました。
ずっと、展開が気になって気になって、だったので、
2人が幸せになるラストに胸をなで下ろしてます。
とっても、素敵な作品をありがとうございました。
次回作も期待してます。がんばってください。
237 名前:にゃん 投稿日:2002年07月09日(火)12時50分44秒
お疲れさまでした。最後良かったです。ほっとしました。やっぱり二人には笑顔が似合いますね!次回作も期待してます!またよしごまだったら嬉しいです。吉後LOVE
238 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月10日(水)13時40分43秒
完結おめでとうございます。そして、お疲れさまでした。
しかし、またひとつ優良なよしごまが終わってしまって悲しいです。
よければ、外伝的な話も読んでみたいなあ、とさりげなくリクエスト。
239 名前:エンジェル 投稿日:2002年07月11日(木)01時54分35秒
完結お疲れ様でした!!2人が幸せになって本当によかった
次回作も必ず教えてくださいね。甘い二人も見てみたいなぁ・・・・
240 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月14日(日)07時46分28秒
完結お疲れさまでした。楽しみに読んでました。
次回作も楽しみにしてます。
やっと、パソコンも直ったしまた書きたくなりました。 By Jマイルド。
241 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月20日(土)01時38分22秒
>235ROM様
>もらい泣きしまくりでした。
こんな駄文で、もらい泣きをして下さってありがとうございました。
自分も完結することができて、内心ホッとしています(w

>236ウェス様
>2人が幸せになるラストに胸をなで下ろしてます。
ラストはハッピーエンドと最初から決めていたのですが、どういうハッピーにしようか悩みました(w
始めから読んで下さっててありがとうございました。

>237にゃん様
>最後良かったです。
実はエピローグの部分は書こうかどうしようか悩んだ所だったので、良かったと言ってもらえるとすごく嬉しいです。
初期の頃からレスを頂きありがとうございました。
242 名前:ルパン4th 投稿日:2002年07月20日(土)01時55分19秒
>238名無しさん様
>外伝的な話も読んでみたいなあ
書いてみようかと考えたのですが、うまくまとまりそうになかったので断念しました。
期待に応えられず申し訳ありません。
「優良なよしごま」なんて最高の誉め言葉です!長い間お付き合いありがとうございました。

>239エンジェル様
>甘い二人も見てみたいなぁ・・・・
自分も甘いよしごまを書いてみたいのですが、やはり切ない系の方がネタにしやすくて…(^^)ゞ
でもいつか挑戦してみたいです!
更新毎にレスを頂きありがとうございました。本当に励みになりました。

>240名無しさん(Jマイルド)様
おぉ〜読んでいてくれてたのですね、嬉しいですありがとうございました。
>パソコンも直ったしまた書きたくなりました。 
是非書いて下さい!Jマイルドさんのよしごま大好きなんで、楽しみにしています。


本当にたくさんのレスありがとうございました!
こんなに大勢の人に読んでもらえて、とても嬉しいです。

さて少し宣伝になってしまいますが、銀板に新作を立てました。
お暇な時に覗いてくれれば幸いです。

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