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あの頃へ…

1 名前:ZIG 投稿日:2002年02月24日(日)23時49分06秒
いろいろな人に触発されまして、久々に小編を書いてみようと思います。
モー娘。自体にそれほど詳しくないのと、文才の無さが不安ですが、出来ればお付き合い下さい。

一応は、いしよし、よしごま…なのかな??
2 名前:ZIG 投稿日:2002年02月24日(日)23時53分26秒
夜。空からは季節外れの雪がひとひら、またひとひらと落ちてくる。
雪はゆっくりと落ちてきては、アスファルトの中に吸い込まれるように消えていく。
そのアスファルトを通行人がただ踏みつけていく。
そして、その風景をじっと見続ける人間が一人いた。
20の少し手前であろうか。美しい栗色の髪を肩までなびかせ、目鼻立ちはすっきりとしている。
まだ、幼さの色は多少残っているが、それ以上に彼女がまとっている雰囲気が大人びた感じを残す。
その無表情に見える顔立ちも、更に増す要因となっているのであろう。
「ごっちん。何してんの?」
少しハスキーな声がする。10代から20代への過渡期の少女特有の高さである。
ごっちんと呼ばれた少女は振り向く。振り向いた方向には、10代中ごろの少女の姿があった。
髪は短く、多少中性的な雰囲気を身にまとっている。
この少女も、また町に出れば多くの通行人を振り向かせるような美しさを見にまとっている。
3 名前:ZIG 投稿日:2002年02月24日(日)23時57分14秒
「あっ、よっしー。なんでもないの。ただね…」
「ただ、何?」
「この風景を見ることも当分無いのかな、って思って」
「確かにね。でもさ、この連中もノンキだよね、ホント」
あきれたように吉澤が言う。

「でもさ、この人たちは私たちが感じているようなリアルな感覚って一生味わえない
 んじゃないかな」
それに後藤が答える。瞳には強い意志がこめられており、揺らぎの色は全く見られない。

「かもね。でも、どっちがいいのかわかんないけどもね。」
「確かに。渋谷でクレープ食べて騒いだりなんて、もうできないしね」
「バカっぽい?」
二人が顔をあわせて笑う。その表情は明るい。

しかし、その笑いの中には他者の侵入を許さない確実な色が見える。
見る人が見れば異様にかんじることだろう。

と、吉澤が笑いを止める。
「あっ、そうだそうだ。かおりが呼んでるんだった。ごっちん、急がないと」
慌てるように吉澤が言う。それに対し、後藤はゆっくりとした動作で答える。
「そうなんだ。じゃ、行こう!」

二人は雑踏の中へと駆け出していった。その二人に優しく雪が降りていった。
4 名前:ZIG 投稿日:2002年02月24日(日)23時59分49秒
「後藤さんも吉澤さんも遅いよぉ」
「あぁ、高橋。ゴメンゴメン。で、かおりはどこ?」
 高橋は軽く肩をすぼめる。

「飯田さんは、今官邸に行ってますよ。保田さんも一緒です。後、加護さんは用があ
 るとかで出かけてますよ。飯田さんと保田さんはそろそろ戻ってくるはずなんです
 けれ ど」
 「何だ。じゃあ、遅れても良かったんじゃん」

「だからって。遅れてもいい理由にはならないよ」
後ろから声がする。みんなが振り向くと、そこには飯田の姿があった。

表情は硬く、多少怒っているようにも見える。
しかし、その姿からは心理を深くまで読み取ることはできない。
それを許そうとはしない様子が見られる。
5 名前:ZIG 投稿日:2002年02月25日(月)00時01分53秒
「さっ、今日のブリーフィング始めるよ」
「あれ、圭ちゃんと加護はいなくてもいいの?」
「うん。二人にはちょっと頼みごとしてるから。で、今回の任務。
 単刀直入に言うと中東に行けってさ」
飯田を除いた三人が顔を見合わせる。

「まぁた、中東ぉ〜」
吉澤が言う。その表情にはいらだちが見られる。
「しかたないっしょ。命令なんだから」
「もう、あそこは嫌なんだよね。あれって、まだなのぉ」

吉澤が不平そうに言う。と同時に飯田の顔色が変わった。
じっと、吉沢をにらみつける。にらまれた吉澤の顔色も青ざめる。
6 名前:ZIG 投稿日:2002年02月25日(月)00時05分38秒
「モーニング娘。のメンバー6人と松浦亜弥が飛行機事故で死亡!」
このショッキングがニュースが流れたのは、2年前のことであった。

 事故にあったモーニング娘。のメンバーは飯田、保田、後藤、吉澤、加護、高橋、
そして松浦。
 メンバーが二交代でTV撮影に出かけたハワイで事故はおこった。
 写真撮影のために、メンバーはセスナで離島に向かう。
 そのさいに突如エンジントラブルが発生したのである。

 その結果、セスナは海に墜落し、メンバー以下9名が行方不明となる。
 この事件は国際問題に発展した。
 日米でこの問題について三度話し合われ、アメリカ側も総力を挙げて捜索を行う。
 しかし、安否に関しては確認できなかった。1ヵ月後に行方不明のまま捜索は打ち切られる。
 これが、主な事件の詳細である。
7 名前:ZIG 投稿日:2002年02月25日(月)00時06分48秒
とりあえず今日はここまででございます。
書式とか難しいっすね。
何とか形になるようにしていきたいと思います。
8 名前:夜叉 投稿日:2002年02月25日(月)15時13分17秒
期待してます。頑張ってください。
9 名前:ZIG 投稿日:2002年02月27日(水)01時56分07秒
このモーニング娘。メンバーの突然の事故に日本中は悲しみにくれた。
当時はこのニュースを耳にしないものはいなかったといっても良い。

その後、日本武道館で行われた顕花式には2万人を超えるファンが訪れ、様子はニュースとして放映された。
ファンの中には、ハワイまで出かけ捜索活動を行い、逮捕されるものまであらわれたのである。
現在も、事故で行方不明になったメンバーを追悼するホームページは簡単に見つけることができる。

更に、悲しみの底に沈んだのは残されたメンバーである。
事故の直後、悲しむメンバーの姿はメディアの好奇の目にさらされた。
そこに、メンバーの死に合わせたような仕事が舞い込む。

一人で悲しむことも許されず、仕事では悲しむことを強制される日々。
その結果、メンバー全員の精神は、日々削られていく。
そして、石川と辻が入院。
それが遠因となって、モーニング娘。一時活動を休止においこまれる結果となる。
10 名前:ZIG 投稿日:2002年02月27日(水)02時19分46秒
モーニング娘。の最後のコンサート。
残されたメンバーは安倍、矢口、新垣、小川、そして紺野のわずかに5人。
ダンスや歌にも違和感が感じられる。

しかし、それを補って余りある、一人一人の気迫、そして集中力。
すぐに、ファンと一体となって渦の中に飲み込まれていく。

最初の、そして最後のMC。安倍が口を開く。
「みんな〜。今日は来てくれてありがとう。今日は…」

安倍の声が止まる。静寂が流れる。
観客たちが少しずつざわめきだす。
そこに、安倍の全てを押し殺すような嗚咽が流れた。
11 名前:ZIG 投稿日:2002年02月27日(水)02時20分35秒
「ご、ごめんね。何か、言い始めたら、言い始めたら」
安倍はそう言って、ステージに座り込んだ。

「なっちも悲しいん、だよ。でも、みんなの、にも頑張ろうよ」
矢口がそういいながら安倍を軽く抱きかかえる。
しかし、その矢口の声も音にはなっていない。

「りか、ゃんやつじも入院しちゃって…」
安倍も必死に声をつむぎだそうとするが、体がそして精神が許してはくれない。

新垣、小川、紺野はその様子をただ泣きながら見ていることしかできない。

ただ時間が過ぎていく中、ビジョンに13人でライブを行う映像が流れ始めた。
5人とも、もう声を出すことは出来なかった。
12 名前:ZIG 投稿日:2002年02月27日(水)02時22分39秒
少量ですが更新しました。
皆夢さんにはご迷惑をおかけしました。
すいません。

夜叉さん>
ありがとうございます。出来れば、読んでやって下さいね。
13 名前:夜叉 投稿日:2002年02月27日(水)11時29分05秒
がっつし読ませていただきますね。
続き楽しみにしてます。
14 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月27日(水)21時01分08秒
なかなかに面白そうで期待してます。
楽しみにしてていいですか。
15 名前:ZIG 投稿日:2002年02月28日(木)02時29分23秒
モーニング娘。が休止に追い込まれて一年半がたった。

自室で一冊の本を読んでいる少女がいる。
石川である。
「よっしぃ…」
石川は思わずつぶやく。

その本の名前は「モーニング娘。悲劇の事故 その真実」。
表紙には13人が笑顔で写っている写真がある。
その笑顔が、余計に石川の悲しみを増幅させる。

石川は、そのニュースを信じることが出来なかった。
「冗談でしょ?」最初はそう言って笑っていた。
しかし、全国的に新聞やTVでの報道が行われるにしたがって、石川も信じざるを得なくなった。

力が抜け、何も考えられなくなった。
16 名前:ZIG 投稿日:2002年02月28日(木)02時33分00秒
そして、1ヶ月。石川を取り巻く環境は熾烈を極めた。
日々行われる容赦の無い質問。事故を仕事の種とするような会社の態度。
石川を初めとしたモーニング娘。たちの心は日々削られていった。
その中でも、吉澤のいなくなった石川の疲労は人一倍大きかった。

当時、石川と吉澤はつきあっていた。
当初は、同期で年も近いことからの友情であった。
しかし、ある瞬間から友情は恋愛感情へと変わっていった。

他のメンバーへは秘密の付き合いであった。
実際はみんな分かっていたのだろう。
しかし、それは問題ではない。
吉澤がいないこと、それが問題なのだ。

そのときのことを思い出して、石川は泣く。
17 名前:ZIG 投稿日:2002年02月28日(木)02時33分44秒
よっしぃ…。
よっしぃが一緒にいるだけでよかった。
それ以外、何にも要らなかった。触れ合っているだけで楽しかった。
よっしぃもそうだったでしょ?

私は胸から一本のカギを取り出す。
よっしぃがいなくなってから、何度このカギを見たことだろう。

それは、ロケへの出発前。
よっしぃは、にっこり笑ってカギをくれたよね。
「そして、一緒に住もう」って言ってくれたでしょ!
なのに、なのに何でいきなり死んじゃうの?

よっしぃ、わがままだよ。ばかだよ、ひどいよ。
また一緒にいたいよ…。もう誰も好きになれないよ……。

いつもは、そう言っていると「そんなにネガティブになっちゃだめだ」って言われた。
でも、今はそう言って抱きしめてくれるよっしぃはいない。
よっしぃがいないのに、ポジティブになんてなれないよ…。
18 名前:ZIG 投稿日:2002年02月28日(木)02時35分16秒
石川は、吉澤の写真を取り出す。
石川と吉澤が、二人寄り添って楽しそうに笑っている。
「よっしぃ…」
石川はその写真をじっと見つめる。
自然と手が下腹部に伸びる。


石川は枕に顔をうずめていた。
早く涙が枯れないかな。そうすれば、もう泣かなくて済むのに。
かすかに薄れる意識の中で、石川はぼんやりと考えていた。
19 名前:ZIG 投稿日:2002年02月28日(木)02時41分09秒
今のトコは、すこ〜しづつ更新って感じですね。
中々、仕事の都合上、中々更新は出来ないと思いますが(今はめちゃ早いっす)、
よろしくお願いします。

夜叉さん>
そう言っていただけるとうれしいですね。
何か間違いがあったら、お願いします。

115さん>
楽しみにしてくれるなら、喜んで。
そう言ってくれる方がいる限り、頑張って書こうと思います。
20 名前:夜叉 投稿日:2002年02月28日(木)18時18分13秒
作者様のペースでいいですよ、こちらは読ませてもらってる身なので。
楽しみにしてます。
21 名前:よすこ大好き読者 投稿日:2002年02月28日(木)19時52分50秒
なんか、続きが楽しみですね。
マターリ読まさせていただきます!がんばってください!!
22 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月28日(木)21時52分12秒
変わった設定でおもしろいです。よしごまに期待!
23 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月28日(木)22時49分48秒
気にせずいきましょう。
おまちしてますから。
24 名前:ZIG 投稿日:2002年03月02日(土)02時04分10秒
「ゴメン。文句言っちゃいけないよね」
ブリーフィングは続く。
飯田の表情に、吉澤は頭を下げた。

「うんうん。でね、出発は明日。一応、最初の行き先はイランらしいよ。で、イランに
 着いたら、そこからは現地のガイドに指示に従えってさ」

「おっけー。で、後の情報は?」
「一応、イランに関しては、このファイルにまとめてあるから。みんなに一部ずつ配る
 から見といてね。まぁ、知ってることがほとんどだと思うけど」

「おっけー」
飯田の言葉に三人が答える。そして、飯田の周りに後藤、吉澤、高橋が集まる。

「じゃ、今回もがんばっていきま」
「っしょい!」
声賭けをしてブリーフィングは終了し、各人が部屋を出て行った。
25 名前:ZIG 投稿日:2002年03月02日(土)02時04分47秒
ブリーフィング終了後。
「よっしー、今日行っていい?」
「うん、いいよ」
後藤と吉澤が、にこやかに会話を交わす。
そして、お互いに部屋に戻る。

吉澤の部屋。無機質な部屋である。
あるのはベッドと机、そして一冊の本だけ。
それ以外に必要なものは全く無い。
いや置く必要が無いといったほうがいいのかもしれない。

ベッドに吉澤が倒れこむ。その頭の横には一冊の本がある。
タイトルは「モーニング娘。悲劇の事故 その真実」。
石川が読んでいた本と同じ本である。
吉澤は本を手にとる。
26 名前:ZIG 投稿日:2002年03月02日(土)02時08分04秒
本を一枚一枚ゆっくりとめくる。
その本の中には、事件の詳細と悲しむ人々の姿が写っている。

と、吉澤の目が止まる。
そこには、石川の下を向いた姿、泣いている姿、そして憔悴しきった姿が、無遠慮に
載せられていた。

「りかちゃん…」
思わず吉澤が石川の名を口にする。

吉澤は、その写真を一枚一枚ていねいに見つめる。
その本の端は、軽く削れている。
何度も、何度も読み返しているのであろう。

石川の写真を見つめる吉澤の顔は涙にぬれていた。
27 名前:ZIG 投稿日:2002年03月02日(土)02時17分43秒
少量ずつの更新です。
でも、読んでくれている人がいると分かると、書く意欲も沸きますね。
ここで、書いている人たちの気持ちが分かりました。
私も、作品を読ませてもらった時はカキコするようにしよう(w

夜叉さん>
お気遣いありがとうございます。

よすこ大好き読者さん>
マターリ読んでやって下さい。
こちらもマターリ行く予定です(w

22さん>
設定倒れにならないように頑張りますね。
良ければこれからも読んでくださいね。

24さん>
待たずにうpできるように頑張ります。

最初で中々に展開もつかみづらいとは思いますが、しばしお付き合いのほどを
お願いします!
28 名前:夜叉 投稿日:2002年03月03日(日)19時55分29秒
行方不明になったはずのメンバーの詳細が気になりますね。
頑張ってください。
29 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月03日(日)20時35分59秒
どうなっていくのかかなり楽しみです。

読みつづけますよ〜。
30 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月04日(月)17時36分49秒
セスナは、撃墜されたのですか?
大韓航空007便のように。
31 名前:よすこ大好き読者 投稿日:2002年03月06日(水)18時58分35秒
なんか、色々考えてしまう作品で、これからの展開が
すごく、楽しみです。(w
32 名前:ZIG 投稿日:2002年03月06日(水)23時47分20秒
吉澤がベッドに横になっていると、扉をノックする音が聞こえた。
コンコン、コンコン、ゴンゴンゴン!
最初は小さくなっていたドアが、その直後に悲鳴をあげる。

「よっしー。よっしー。よぃしぃこぉ!! こぉらー。早く開けろぉ!!」

吉澤が慌てて涙を拭く。
そして、本をベッドの下に隠す。

「わかった、わかった。今開けるからおとなしくしててね」
声を抑えて言いながら、吉澤がドアをあわただしく開ける。

そして、ドアが開いた瞬間。
「よぉしぃこぉ!」
後藤が吉澤の胸に飛び込む。
吉澤は、驚いた様子を見せながらも、後藤の体をしっかりと受け止めた。
33 名前:ZIG 投稿日:2002年03月06日(水)23時47分58秒
「んもぉ、そんなにあせらなくても…」
吉澤があきれた表情を見せる。
「だってさぁ、二人になりたくてしょうがなかったんだもん」
後藤は上目遣いで吉澤を見上げる。
その姿に、モーニング娘。にいた時のクールな表情は全く見られない。

「だから、ごっちん。ドアは静かに叩きなさいって言ってるでしょ。
 みんなに後で文句言われるでしょ」
「いいじゃんいいじゃん。別にぃ。怒られてもぉ。それよりもすぐに
 出てこないよしこが悪いんだからね!」
「はぁ…、はいはい。私が悪いのね。りょ〜かい」
「分かればよろしい」
34 名前:ZIG 投稿日:2002年03月06日(水)23時48分45秒
後藤がにっこりと笑う。
それを見て吉澤は大きくため息をつく。
「あぁ、まぁた『やれやれ』とかおもってるんでしょ?」
「いやいや、そんなこと思ってないって」

「い〜や、絶対思ってる。もう信じらんない」
後藤は吉澤を見上げながら言う。

吉澤は、それを困った表情で見る。
しかし、その表情は笑っているようにも見える。

「だから、思ってないって」
「い〜や、絶対許さない。悪いのはよしこの方なんだからね」

「わかったわかった。どうすれば許してくれるの?」
「うーんとねぇ…」
後藤が考え込む。

「決めた」
後藤の顔が吉澤に近づく。そして、唇が重なる。
「これで許してあげる」
そう言って後藤は吉澤の頬をなめた。
35 名前:ZIG 投稿日:2002年03月07日(木)00時02分41秒
またも少量の更新です。申し訳ないです。

夜叉さん>
事故については、もう少しお待ちください。
詳細がかける…はずです(w

29さん>
楽しみにしていただけるならうれしいですね。

30さん>
さぁ、どうでしょう?(w
先のお楽しみということで。

31さん>
吉澤の露出が増えてきましたがどうですか?
後、個人的にですが最後の(wが気になりました。どうしてですかね?
まぁ、たいしたことは無いと思うんですけど。
36 名前:よすこ大好き読者 投稿日:2002年03月07日(木)19時56分17秒
最後の(wは、特に意味はないですよ。
誤解(?)させてしまったら、ごめんなさい。
これからの展開に期待しています。がんばってください。
37 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月08日(金)03時39分15秒
すごくこの作品いいです。
でも一つだけ言わせてもらうと
「よっしぃ」ではなく、「よっすぃ」もしくは「よっすぃ〜」です。
水を差してすいませんm(__)m
38 名前:夜叉 投稿日:2002年03月08日(金)16時30分11秒
マターリヒソーリ更新お待ちしております。
39 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月08日(金)23時17分08秒
なんだなんだこの二人の関係は…ムムム。
40 名前:ZIG 投稿日:2002年03月11日(月)02時41分38秒
「いやっ!」
石川がベッドから跳ね起きる。
その顔は青ざめ、額は汗でびっしょりとぬれている。
「夢か…」
石川が手を見つめながらいう。
その手は、何かをつかんでいるかのようにしっかりと握られていた。

「りかぁ。お客さんよぉ」
石川が母親に呼ばれたのは、普段着に着替えた後のことであった。
「はぁい」
石川は少しけだるげに応える。
そして、階段を下りていくと、そこには矢口の姿があった。

ニットのセーターと短めのスカートをはき、サングラスをかけている。
一年半前と、矢口の姿はほとんど変わっていなかった。
その表情や雰囲気にも、年齢を重ねた様子は感じられない。
まるで、そこだけ時が止まっているかのように感じられる。

石川と矢口はメールのやりとりなどは時々行っていたが、実際に会うのは半年振り
のことであった。
「矢口さんじゃないですか。本当に久しぶりですね。どうしたんですか」
石川の問いに、矢口は笑顔で応えた。
「久しぶり。ちょっといいかな?」
41 名前:ZIG 投稿日:2002年03月11日(月)02時44分46秒
30分後。
「でさぁ、この前なっちと電話したんだけど…」
矢口は石川の部屋に入り、自らの近況について話し続けていた。
持参したポッキーを食べることも忘れない。

「りかちゃん、りーかーちゃん」
矢口が石川の顔を覗き込む。
「へっ!?」
石川が矢口の行動に気づき、我に帰る。
矢口はそれを見て、石川の目の前で手を振った。
「『へっ』じゃないよ。ちゃんと聞いてた?」
「…ごめんなさい」

「これじゃあ前振りの意味無いじゃん」
矢口が苦笑を浮かべる。それを聞いて石川の様子も変わる。
「じゃあ、何か本題があるんですか?」
それを聞いた矢口は笑い出す。石川は不思議そうに見る。

石川の表情を見て取った、矢口が笑いを止める。
「あぁ、ゴメンゴメン。でもさ、りかちゃん。私もこんな話だけで、りかちゃんのト
 コまで来ないと思わない? で、本題。今日はつんくさんに来るように言われてき
 たの」
「えっ、つんくさん。ですか?」

「そう、本題からいくね」
石川は矢口の顔をじっと見つめる。
「りかちゃんと辻さえ良ければ、モーニング娘。の活動を再開したいと思っているの。
 どうかな」
石川の視線は固まっていた。
42 名前:ZIG 投稿日:2002年03月11日(月)02時53分48秒
本当に少しずつですか勘弁してください。
ヒソーリマターリいかせていただきます。

36さん>
そうですよね。勝手に色々考えてしまいました。
もうしわけないです。

37さん>
了解いたしました。
こういうツッコミは大歓迎なんで、どんどんしてください。
ツッコマれないにこしたことは無いんでしょうが、まだまだツッコマれる自信は
ありますので(w

夜叉さん>
望む望まざるに関わらずヒソーリマターリいかせていただきます。
今回の更新の少なさが、それをあらわしてますね(w

39さん>
それは、すぐにわかりますよ。
出来れば期待しておいてくださいな。

石川編の続きは早めに更新します。しばしお待ちのことを。
43 名前:ななし 投稿日:2002年03月12日(火)20時50分13秒
いいな〜こういうよしごまも。
44 名前:夜叉 投稿日:2002年03月15日(金)16時19分37秒
何かが起こる予感…、むむむ。
45 名前:ZIG 投稿日:2002年03月18日(月)02時19分26秒
「モーニングの活動の再開、ですか?」
「そう。なっちと5期メンのみんなには了解を取ってあるんだ」
石川の目を見つめながら、矢口は言う。

「…あの事故が原因で活動休止になっちゃったけど、このまんまだとさ。良くない
と思うんだよね」
矢口が石川に言う。その表情は今までになく真剣さを帯びている。

「あのままだと、みんなに申し訳ないと思うんだ」
「どういうことですか?」
「あのまんまだと、事故にあったせいでモーニングは解散したと思われちゃうで
 しょ。それだけは、耐えられなくない?」

「りかちゃん。りかちゃんは、それでいい? よっすい達のせいでモーニングが終
 わっちゃったって思われてもいいの?」
矢口の言葉に石川の表情が固まる。
「そ、そんなこと!」
思わず立ち上がり叫ぶ。それを見て、矢口は軽くうなずく。

「そう。だから、私たちはモーニングをもう一回再開しなきゃいけないと思うの」
矢口の言葉に沈黙が流れる。
どれだけの時が経ったのか。その重々しい空気を石川が破った。
「…そう、ですね。やりましょう!」
石川の返事を聞いて、矢口は微笑んだ。
46 名前:ZIG 投稿日:2002年03月18日(月)02時24分26秒
「後は辻ちゃんだけ、ですよね」
「うん。いま、なっちに行ってもらってるんだけど…」


現在、モーニング娘。のメンバーで活動を行っているのは、矢口と安倍、そして高
橋を除いた5期メンバーの3人である。
辻と石川が芸能活動を辞めたのは心労からであった。

特に辻の状態はひどかった。
加護を突然失ったことに対するショック。
今まで二人で行っていたことを一人で行わなくてはならない重圧。
そして、加護を失ったことでの孤独感。
全てが辻を狂わせていた。

辻の体調は日々悪化していく。
食べ物を食べれば吐き、夜も耳鳴りに悩まされる。
休止前の末期には、立って歩くのも大変な状況であった。
そして、活動休止のコンサートの後、辻は入院していた。


「なっちは『大丈夫』って言ってたけど」
と、その時、矢口の携帯電話の音が鳴った。
47 名前:ZIG 投稿日:2002年03月18日(月)02時25分21秒
「もしもし。あっ、なっち。うんうん。分かった」
電話を手に持っている矢口の表情が険しくなる。
それを石川が不安そうにのぞき込む。

「うんうん。じゃあ、これからソッコーで行くよ」
矢口が電話を切る。
「りかちゃん。辻ちゃんのトコに行こう」
「はい」

辻の入院している病院に着くと、そこには安倍が待っていた。
「あっ、矢口、りかちゃん」
安倍が石川と矢口を招く。
「あのね、私が行くまでは何ともなかったらしいんだけど…」
安倍は明らかにうろたえている。

「あのねあのね…」
「ストップ!」
矢口が安倍の肩を強く叩く。
「い〜い、なっち。落ち着いて、ね?」
安倍は、一度、二度と頷く。
「さっ、行きましょう」
48 名前:ZIG 投稿日:2002年03月18日(月)02時26分37秒
中東のイラン。一機の飛行機が軍用の空港に到着していた。
「あぁ〜あ」
「ようやく着いたね〜」

そこから降りてくる明らかに場違いの女性たち。
普通に見れば、慰安の為に来たのかと思われるだろう。
しかし、彼女たちを出迎える人々はほとんどいない。

「相変わらずさびしいよね」
「何かさ、もうちょっとあってもいいと思わない?」
吉沢と後藤が愚痴をこぼす。
「ほらほら、出迎えだよ」
その言葉をさえぎるかのように保田が言った。

保田の視線の先には、初老の男性がいた。
目が合うと、その男性は頭を下げ、近づいてくる。

「ようこそ、イランヘ。私、アドベルと申します」
アドベルが流暢な日本語で言う。

「すご〜い、めちゃめちゃ上手くない?」
飯田が素直に驚く。
「いえいえ、どういたしまして」
そう言いながら、アドベルが頭を垂れる。
その姿には優雅さが感じられる。

「それでは、ご案内いたします」
アドベルは、飯田たちを案内しようと軽く手を差し出した。
49 名前:ZIG 投稿日:2002年03月18日(月)02時30分40秒
早めの更新といってはや…。
中々に厳しいっすね。申し訳ありません。
今回は、最後だけ浮いていますが気にしないで下さい(w

43さん>
楽しんでいただければ。まぁ、暇なときにでも読んでやって下さい。

夜叉さん>
いかがですか? 正直、今回は何も起きませんでしたが(w
でも、これから、徐々に動きがあると思います。楽しみにしててください。
50 名前:夜叉 投稿日:2002年03月18日(月)13時18分24秒
辻の状態も気になりますね、かなり深刻そう…。
しかし、なぜイラン?(^^;;。続き、楽しみに待ってますね。
51 名前:ZIG 投稿日:2002年03月19日(火)02時27分16秒
ホテルの一室。後藤と吉澤はくつろいでいた。
そこに飯田が入ってくる。
「アドベルさんが今日はゆっくり休んでくれってさ。高橋は寝ちゃった」
「マジ? やったね」
吉澤が嬉しそうに言う。

「あれ? 加護と圭ちゃんは?」
「あぁ、ちょっと頼みごとしてるんだ」
吉澤の問いに、飯田が答える。
「ふーん。そっか」
「それよぉりぃも! よっすぃ、出かけよ!」
吉澤の言葉を待たずに、後藤が袖を引っ張る。
それに引きずられるように、吉澤も部屋の外に出ていく。
「じゃ、じゃぁ行ってきま〜す」
「お〜い、ちゃんと顔を隠していくんだよ」
飯田は苦笑いで見つめていた。
52 名前:ZIG 投稿日:2002年03月19日(火)02時30分30秒
イランの町並み。露天が並んでいる。
活気あふれる様子である。そこを後藤と吉澤が歩く。
と、後藤が立ち止まり、しゃがみこんだ。
後藤が露天に並んだ品物を興味深げに見る。
そして、一つの指輪を手にした。

「ねぇねぇ、これかわいくない?」
後藤が吉澤に言う。シルバーに文様の描かれた意匠の凝っている指輪である。
その文様は、炎が燃え盛っているかのようにも見える。
「うんうん、かわいいね」
吉澤もその指輪を覗きこむ。
「じゃあ買おう。よっしぃ、まけてもらって」
後藤が簡単に言う。そして、後藤が吉澤を下から見上げた。
「…はいはい」
53 名前:ZIG 投稿日:2002年03月19日(火)02時32分34秒
後藤の指に指輪が光る。そして吉澤の指にも。
「ごっちん。私の分まで買わなくても良かったのに」
「いーの!」
後藤が少し怒ったように言う。
「それとも欲しくなかったの?」
「いやぁ、そういうわけじゃないけれど…」
吉澤が困った口調で言う。それを聞いて、後藤が満足そうに頷いた。
「でしょ!」
54 名前:ZIG 投稿日:2002年03月19日(火)02時33分17秒
「でもさ、ごっちん変わったよね」
話題を変えるかのように、吉澤が後藤に言う。
「変わってないよぉ。よっすぃは、りかちゃんに夢中だったから気づかなかっただけだよ」
吉澤の歩みが固くなる。
「最初っから、私はこうだったんだよ。ただ、周囲が私はクールだって思ってただけ」
「そ、そうかな?」
「そうそう。まぁ、確かに途中からは、私自身も『そうしなきゃ』って思ってたトコはあったけど」
吉澤の口調までもが固くなっているのに、後藤は気づいた様子は無い。

「でもね、今はいいんだ。だって」
そう言って、後藤が吉澤の腕に自分の腕を絡ませる。
「ち、ちょっと、ごっちん。みんな見てるじゃん」
ここは、イラン。当然周囲の目を引く。
吉澤の表情は布に隠されていて見ることは出来ないが、慌てているのは確かであろう。
「まぁ、いいじゃん!」
後藤は、そのまま吉澤を引っ張りながら駆け出していくのであった。
55 名前:ZIG 投稿日:2002年03月19日(火)02時37分16秒
少し反省、早めの更新です。まぁ、量は相変わらずですが(w

夜叉さん>
イランですか。何故なんでしょう??(w
でも、想像すると結構ハマりませんか。私だけか?
56 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月21日(木)23時02分28秒
積極的な後藤さんがちょっぴりいい感じ。
続き楽しみにしております。
57 名前:にゃん 投稿日:2002年03月24日(日)22時55分11秒
よしごまの会話が良いですね。続き待ってます!
58 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月29日(金)15時25分28秒
マターリと待っております。
59 名前:ZIG 投稿日:2002年04月08日(月)00時47分13秒
「辻!」
「あっ、矢口さんとりかちゃんも来てくれたんですか」
病室に駆け込んだ三人に辻が笑顔で言う。その様子に、矢口と石川は拍子抜けする。
その腕には包帯が巻かれているが、痛がっている様子は無い。
「えっ、うん。で、辻。大丈夫なの」
「何がですか。ののは平気です」

困惑した表情で尋ねる矢口に、辻は不思議そうに答える。
その答えを聞いて、矢口と石川の体の力が抜ける。
「もぉ、なっちぃ。変なこというから心配したじゃん」
笑顔で安倍の肩を叩きながら、矢口が言う。
「そうですよぉ。辻ちゃん、全然おかしくないじゃないですかぁ」
石川も安倍に笑いかける。
しかし、安倍は人差し指を唇に当てたまま、じっと辻を見つめている。
「なっち、どうしたの」
矢口の問いに、安倍は答えなかった。
60 名前:ZIG 投稿日:2002年04月08日(月)00時48分55秒
「それで、二人ともあいぼんに会いに来たのれすか?」
「えっ」
その言葉に、二人が顔を見合わせる。と、それを見た安倍が、ただ頷く。

「あいぼんは、今いないのです。でも、どうして、あいぼんのことを分かったのですか。
 あぁ、安倍さんから聞いたんですね」
辻が不思議そうに聞く。
「あいぼんも『みんなに会いたい会いたい』って言ってました。
 でも、あいぼんが来てるってことは、ナイショにしてなきゃだめだって言っていたのです。でも、安倍さんになら言ってもいいのです」
辻は、せきをきったように話す。身振り手振りを交えた話しだす辻。その様子に、石川たちは顔を見合わせる。

「どうしたのですか」
様子に気づいた辻が三人の顔を不思議そうに覗きこむ。
「あのね、辻…」
「だめっ!」
言いかけた矢口の声をさえぎって安倍が叫ぶ。
「辻、ゴメンね。ちょっと、買い物してくるね。お菓子買ってくるから」
そう言って、安倍は矢口と石川を外に連れ出した。
61 名前:ZIG 投稿日:2002年04月08日(月)00時50分14秒
「なっち、どしたの?」
「矢口が辻に、言おうとしたからさ。ビックリしたぁ」
安倍は明らかに動揺している。
「まぁ、いわなかった私も悪いんだけど。気が動転してたから」
「で、なんで言っちゃいけなかったの」
「いや、実は私も言っちゃったんだよね。それで…」
62 名前:ZIG 投稿日:2002年04月08日(月)00時55分00秒
「辻。しっかり聞いてね」
「はい。安倍さん、真剣な顔してどうしたんですか」
「うん。辻、加護はね。もういないんだよ」
「安倍さん、何を言ってるのですか。あいぼんは、時々遊びにきてくれるのれす」
「いや、辻。加護は事故でね」
と、事故という言葉を聞いた瞬間、辻の様子が変わる。
「あいぼんは、あいぼんは生きているのれす」
そう言って、近くにあったボールペンを手にする。
「ちょ、ちょっと辻。何しようとしてるの」
安倍が慌てて、つじの手をつかもうとする。
しかし、つじは、ボールペンを自分の手に振り下ろした。
安倍の手が赤く染まる。その赤を安倍は、この世に無い物であるかのように見た。
「辻! 辻!」
安倍は辻の腕を必死につかむ。
しかし、それを無視するかのように、辻は二度、三度をボールペンを振り下ろした。
63 名前:ZIG 投稿日:2002年04月08日(月)00時55分38秒
「精神的な病気なんだって」
安倍がつぶやくように話し出す。
「自分が必要なものがなくなったときにそうなるんだって。本人は、最初から無くなっていないと思い込むらしいの。
 そして、それを指摘されると自傷行為を始めるんだって。お医者さんが言ってた。」
安倍は言いながら目をそむける。
「そんな…」
両腕で自らを抱きしめながら矢口は下を向いた。
64 名前:ZIG 投稿日:2002年04月08日(月)01時00分45秒
久々の更新です。仕事が忙しくて…。
イヤイヤ言い訳はしたらいけませんな(w
しかも、久々の更新だから改行もおかしくなってるし。
なんか、謝ってばかりのような気も。なんだかなぁ。

56さん>
個人的には、クールな後藤さんよりも、こっちの方が良いと思うんですけれどもね。
年齢的にも。多分、素もそっちのほうにあるんじゃないかな?と。

にゃんさん>
ありがとうございます。これからも期待していただければ。

58さん>
本当にマターリ更新になってしまいました(苦笑
もちっと早めの更新をしたいと思う今日この頃ですね。
65 名前:ZIG 投稿日:2002年04月15日(月)02時34分01秒
ベランダから空を見上げる。
そこに見えるのは、ただ蒼白い月。

「よっすぃ…」
月を見上げた石川の口から漏れる。

今、よっすぃは、この月を見ているんだろうか?
あるはずのない想像が頭をよぎる。
あるはずはない。そう、あるはずは…、ない。
そう思いながらも、辻の言動が頭をちらついて離れない。

よっすぃ…。あの姿。あの声。あの表情。
よっすぃのすべてが愛しい。
でも、私の叫びは届かない。この想いは届かない。

もし、生きているのなら。また、昔に戻せなんていわない。
ただ、この蒼白い月の下で笑っていてほしい。
起こるはずのない奇跡を願いながら、石川は月を眺めていた。
66 名前:ZIG 投稿日:2002年04月15日(月)02時38分25秒
イランで、吉澤と後藤が買い物に出かけた翌日に、吉澤たちはアドベルに連れられ、
ホテルを出た。着いた先は巨大な邸宅であった。

「またかぁ…」
少し辟易した表情で、後藤が言う。
「本当にね」
吉澤もうんざりした様子で答える。
「はいはい。文句言わない!」
二人に飯田が言う。その言葉に二人は不満そうな表情を見せながらも従う。

「こちらです」
邸宅の中に入った吉澤たちが見たのは、中東の人間たちであった。
「こんにちは」
一行が、そう言いながら入っていく。
そして、幾多の視線を浴びながら、礼をする。
彼女たちがしたのはそれだけでる。
「ありがとうございました」
しかし、アドベルは言って退室を促した。

「ホント、何なんだろうね」
ホテルに帰った後、吉澤が後藤に言う。
「そうそう。かおり、何か知らないの」
「いんや。知ってたら教えるさ」
後藤の質問に飯田が答える。
しかし、その声が僅かに震えていたのに、二人は気づかなかった。
「まぁまぁ、何もなかったんだから良しとしましょうよ」
その高橋の声で解散となった。
67 名前:ZIG 投稿日:2002年04月15日(月)02時41分39秒
その夜。
ホテルの窓際で、吉澤は月を眺めていた。

…月を眺めるのなんて久しぶりだな。
そうそう、あの時以来。クスリと笑みがもれる。
あれは、りかちゃんたちと一緒に、モー娘。に入った時の頃だった。

「どしたん?」
当時、りかちゃんは正直言って、モー娘。の中でも浮いてた。
そのりかちゃんが、楽屋のはじっこで体育座りしてたんだよね。
「ううん、なんでもない」
思わず笑っちゃった。
そんな表情でなんでもないって言われても、ね。
不思議そうに見つめるりかちゃんに、私は言った。
「明日、オフだよね。遊び行こうよ!」

横浜の桜木町。ワールドポーターズに行って、観覧車に乗って。
そして、スタバでどうでもいい話をして。
最初は、こっちが驚くくらい固かったりかちゃんの表情も、柔らかくなったんだよね。
笑ってくれるようになった。
それを見て可愛いな、って思うようになったんだよ。知ってた?

その後、りかちゃんから初めて話しかけてくれた。
「もう一回、観覧車に乗らない?」
正直、どうしてって思ったんだけどね。
りかちゃんの顔を見たら、そんな言葉は出てきようがなかったんだ。
あんまりりかちゃんが、可愛かったら。
68 名前:ZIG 投稿日:2002年04月15日(月)02時43分57秒
二人で乗った二回目の観覧車は、忘れていないよ。
いや、忘れられないって言った方がいいかもね。

「きれい…」
私も思わず窓に張り付いちゃった。
昼に乗る観覧車と、夜に乗る観覧車。全然違った。
そんな私の様子を見て、りかちゃんが嬉しそうにしてる。
実はそれが一番嬉しかったんだけどね。それはナイショ。

「よっすぃ。本当は夜景を見せたいんじゃないんだ」
「何?」
「上。見てみて」
そう言って、りかちゃんは月を指差したよね。
その月は、黄金色に輝いてて、メチャメチャきれいだった。
「こうやって見ると、月の近くに来たような気がするんだ」
そう言って、月を眺めているりかちゃん。
その姿が、可愛くて、奇麗で、そして愛しくて。
思わずキスしちゃんたんだよね。
りかちゃんは、顔を真っ赤にしちゃって黙っちゃうし。
観覧車が降りるまで凄く恥ずかしかったんだよ。


…今、ここにりかちゃんはいない。月も蒼白い。
でも、一緒にいれなくてもいい。同じ月の下でいてくれたなら。
そして、できれば同じ月を見ていて欲しい。
この蒼白い月を。
69 名前:ZIG 投稿日:2002年04月15日(月)02時49分29秒
マタ〜リ更新っすね。
今まで、展開は弱いですが、これから話は展開する予定です。
まぁ、予定は未定ですが(w
70 名前:AIM−7 投稿日:2002年04月16日(火)00時29分12秒
この中で誰か対人地雷踏みそうな予感。
71 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月21日(日)20時54分10秒
違う場所で同じ月を見てる2人が
同じ場所で笑っていられる2人に…
こんな日は訪れるのでしょうか…。
72 名前:ZIG 投稿日:2002年04月22日(月)02時33分55秒
吉澤が日本に戻った後の事である。
吉澤の部屋のベルが鳴る。
「うぅぅ…」
吉澤は布団をかぶりながら電話を取る。
「だぁれ。もちっと寝させてぇぇ」
「誰じゃないですよ」
声の主は高橋であった。その声は上ずっている。
「吉澤さん。テレビ付けて! 4チャンです」
そう言われて、吉澤がリモコンを探す。
「なんなのぉ。そんなに慌ててぇ」
「いいから、早く付けてくださいよ!」
「ちょっと、待ってて。リモコンって、すぐにどっかいっちゃうんだよね」
吉澤はベッドから、はいだしてリモコンを探す。
「ここかな。あぁあったあった。今付けるからね」
「早く早く!」
吉澤は受話器を肩ではさみながらテレビをつけた。
そこには、画面に大きく映し出されるメンバーの姿があった。
73 名前:ZIG 投稿日:2002年04月22日(月)02時35分17秒
「モーニング娘。が長い冷却期間をを経て復活という事ですが」
「そうですね。ここにはいないメンバーの分も頑張りたいと思っています」
「あの事故を乗り越えて、ということですね」
「……はい」
「辻さんの姿がありませんが」
「それはですね…」

吉澤は、その様子をじっと見つめていた。
「よしざわさん。よぉしぃざぁわさん」
「えぇ、うん」
気の抜けた返事。吉澤はテレビから視線を外せなかった。
否、正確にはテレビからではない。石川からであった。

りかちゃん。
あれからりかちゃんはどうしてたんだろう。
表情は、少しやつれているようにも見える。
ご飯はちゃんと食べれてるかな。
ちゃんと眠れているのかな。
私のこと、想ってくれてるのかな。
吉澤の頭が石川で一杯になる。
74 名前:ZIG 投稿日:2002年04月22日(月)02時36分15秒
「もぉ、全然聞いてないでしょ」
「へ」
「『へ?』じゃないですよ。もぉ」
高橋があきれたように言う。
「で、何て言ってたの」
「やっぱ、きいてなかった。懐かしいですね、って言ってたんですよ」
「うん、確かにね」
「あのライトの下には、戻れないんですよね」
高橋が寂しそうに言う。
「もぉ、何言ってるの。そんな事言ってたら、絶対無理だよ」
「でも」
「大丈夫。絶対にあそこに戻ってみせる。可能性がメチャメチャ低いとしても、
諦めたらそこで負けだよ」
「…はい。そうですね。じゃ、ちょっとこれから飯田さんに呼ばれてるんで切
りますね」
強めに言う吉澤に、高橋は答えた。
「じゃあね」

電話を切った後、吉澤は電話を見つめる。
そして、何かに魅入られたかのように電話をかけ始めた。
75 名前:ZIG 投稿日:2002年04月22日(月)02時37分47秒
「ふぅ」
「りかちゃん、ちょっと疲れちゃった?」
ため息をついた石川に、安倍が声をかける。
「まぁ、久々だから疲れてもしょうがないっしょ」
「すぐになれると思うんですけどもね」
石川が生気の無い声で答える。
「徐々に慣れるだろうからね」
安倍はそう言って控え室へと戻った。

正直、石川は疲れていた。
モーニング娘。としての活動は勿論肉体的に忙しいが、それが原因ではない。
あの事故について触れられるのが、精神的負担となっていたからだ。
芸能記者と会うたびに、あの事故のことを聞かれる。
そして、その度によっすぃを思い出す。
それが、悲しみを呼び、疲れを感じさせる。
でも。よっすぃがいなかったら、今の私は絶対にいないだろう。

よっすぃがいてくれたら。よっすぃの分まで。
この二つの想いがせめぎあう。
そう思いながら過ごす事が、少しうれしくて、すごく悲しい。

その時、鳴るはずの無い電話が鳴った。
76 名前:ZIG 投稿日:2002年04月22日(月)02時39分49秒
着信音は「Mr. Moonlight 〜愛のビッグバンド〜」。
吉澤がセンターを務めた曲である。
その前の曲は、石川がセンターを務めた「ザ☆ピ〜ス!」。
二人がセンターを務めたのを期に、二人は決め事をした。
それは、二人しか番号を知らない携帯電話をお互いに持ち、「ザ☆ピ〜ス!」と
「Mr. Moonlight 〜愛のビッグバンド〜」をお互いに着信音に設定することで
あった。
石川も吉澤もその携帯を手放すことは無かった。

しかし、あの悪夢が起きる。携帯が鳴ることは無くなった。
それでも、石川は携帯を処分することが出来なかった。
その携帯が鳴っている。事故以来、初めてのことだ。
石川は自分でも驚くくらい手が震えているのに気づいていた。
77 名前:ZIG 投稿日:2002年04月22日(月)02時41分10秒
「もしもし」
声も震えている。
「もしもし」
もう一度言う。受話器の向こうから声は聞こえない。
「もしもし、どなたですか」
その声には期待の色が混じる。
決して叶えられるはずはない期待の色が。
「よっすぃ?」
その期待を口にした瞬間、電話が切れた。

間違い電話だろうか。
でも、でも。ありえないけれど。
石川は混乱していた。
吉澤は確かに死んでしまっている。
でも、吉澤以外にかけられる人間はいない。
唯の間違い電話だとは片付けてしまうのは簡単である。
しかし、そう片付けられない、片付けてはいけない。石川の直感がそう言っていた。
そして、直感を信じたい。石川はすがるような思いであった。
78 名前:ZIG 投稿日:2002年04月22日(月)02時49分38秒
日曜更新の今日この頃です。

AIM-7さん>
う〜ん、どうでしょう?
キャラクターが勝手に動き始めれば、そうなる可能性は大かも(w

71さん>
そう思っていただければ幸いっすね。ありがとうございます。
79 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月27日(土)22時13分00秒
石川さんに希望の光がさしてきましたね。。。
80 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年04月29日(月)20時07分51秒
時間をかけてじっくり読み直しました。
やっぱイイ!!ですね。(この一言にすべて・・・略)
これからの展開に期待です。
マターリ待っています。がんがってください。
81 名前:ZIG 投稿日:2002年05月02日(木)02時55分09秒
「ハッピー!」
「こら、紺野。私のとらないでよ!」
石川と紺野の懐かしいやりとり。吉澤はそれを見つめていた。
その瞳には優しさがあふれている。
「なつかしいなぁ」
吉澤は誰に言うわけでもなくしみじみと言う。
吉澤はモーニング娘。の頃を思い出していた。

と、その声が聞こえたかのように、声が聞こえる。
「よぉっすい〜!」
その声を聞いて、吉澤が苦笑いを浮かべる。
「もぉ、そんなに大声出さなくても分かってますよ」
ドンドンドン。返事をするようにドアが三度叩かれる。
「はいはい、ドア壊さないでね」
吉澤はやれやれという表情を見せながらドアに向かう。
しかし、ドアを叩く音は止まらない。
それどころか勢いは更に増してきている。
「はぁやくぅ」
「そんなに慌てない、慌てない」
あきれたように言いながらドアを開ける。
そこには目を輝かせている後藤がいた。
82 名前:ZIG 投稿日:2002年05月02日(木)02時57分45秒
「よぉっすぃ〜。久しぶりだったよぉ」
そう言って満面の笑みを浮かべ、後藤が部屋に入る。
そして、懐かしそうに部屋を見回す。
「う〜ん、懐かしいよっすぃの部屋だぁ」
そういって、子猫のような目で後藤は吉澤を見る。
「もぉ、懐かしいって。たった3日だけじゃん」
そっけなく吉澤が言う。その瞬間、後藤の表情が変わった。
「『たった』って、どれだけ会いたかったと思ってるの。
 よぉっすいのバカ、アホ、鬼、悪魔、色男!」
「さ、さいごのは違うと思うな…」
勢い込む後藤に、一歩後ずさりながら吉澤が答える。
「とにかく。私はよっしぃに会いたくて仕方なかったんだからね」
「はいはい。で、この3日間どこに行ってたの」
「それは、ないしょぉ♪」
そう言って、後藤が目をテレビにふと向ける。そして、その目が止まった。
83 名前:ZIG 投稿日:2002年05月02日(木)02時59分21秒
「テレビ」
吉澤に聞こえるかどうかの小さい声で後藤が言う。
「あぁ、そうそう。活動再開だっていうからさ。ちょっと見てたんだ」
「ふーん、そうなんだ」
「かなり、懐かしくない?」
「確かに懐かしいね」
「でしょぉ。一緒に見ない」
「うーん、まぁいいや」
後藤が、テレビをじっと見つめながら答える。
「でさ、あれから何かあったりしたの?」
後藤が吉澤に尋ねる。それに対して吉澤は黙って首を横に振る。
「そっか。あぁ、そうそう。カオリがよっすぃの事呼んでるよ」
「えっ、あぁうん。じゃあ行ってくるね」
「はいはい〜。行ってらっしゃぁい」
吉澤は部屋を後にする。
後藤が一人部屋に残る。

「もぉ、ハッピー。さぁ、一緒に…」
テレビの画面上では、石川が両手を前に差し出している。
後藤はリモコンを手にとり、テレビの電源を消した。
84 名前:ZIG 投稿日:2002年05月02日(木)03時02分15秒
「よっすぃ!」
吉澤が入るや否や、飯田が叫ぶ。
「まず座って。カオリ、よっすぃに言わなきゃいけないことがあるの」
飯田が吉澤をじっと見つめる。
それを見て、吉澤は何かを思い出したかのように目を見開く。
そして、バツが悪そうに飯田を見る。
「もしかして…、バレた?」
「バレた!」
飯田は顔を吉澤の眼前に出す。その表情は怒りにあふれている。
「もぉ! あれほど言ったでしょ!」
「いや、でもさ…。非通知だったし〜。ちょっと位ならいっかなーって」
飯田の怒りを何とか静めようと、吉澤が言い訳を始める。
しかし、その言い訳もしどろもどろで、言い訳になっていない。
飯田もその言い訳を聞くわけは無かった。
「いいわけないっしょ!」
「…すいません」
諦めたように吉澤は言った。
85 名前:ZIG 投稿日:2002年05月02日(木)03時03分21秒
「もぉ、よっすぃが軽率な行動したら、みんなが迷惑するんだからね」
少し表情を緩めて飯田が言う。
「気持ちはすっごい良くわかるけどさ。皆、そうなんだよ。
 よっすぃだけじゃないんだから」
「…うん、そだよね。ごめんなさい」
改めて吉澤が言う。その表情には、確かに反省の色が見える。
飯田が満足そうに頷く。それを見て、吉澤が上目遣いで飯田を見た。
「でもさ、ちょっとくらいならダメ?」
「ダ〜メ!!」
呆れている飯田を、いたずらっぽい笑みを浮かべながら見る吉澤であった。
86 名前:ZIG 投稿日:2002年05月02日(木)03時12分16秒
毎度ながら遅い更新で(以下略)。
ただ、ようやく形は見え始めてきたかな、と思う今日この頃です。

>>79 名無し読者さん
そうっすね。それが次回へとつながっていく予定っす。

>>80 よすこ大好き読者さん
読み直してもらえるっていうのは、かなーり嬉しいですね。
ありがとうございます。マターリ待たなくてもいいように、頑張りたいなぁ。
87 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月02日(木)17時33分05秒
まだまだ謎だらけですが、引き込まれてしまいます。
なぜか、あややの存在が気になる今日この頃です。
がんがってくださいね。
88 名前:ZIG 投稿日:2002年05月07日(火)02時59分14秒
飯田と別れた吉澤が部屋に戻る。そこに後藤はいない。
ふと机に目を向ける。そこには一枚の紙が置かれている。
吉澤は紙を取り、目を向ける。
そこには、「遅いから、もう帰るね〜。いなかったからって浮気とかしないよ〜に!」
という書置きが、丸文字で書かれていた。
また、舌を出す後藤らしき絵も描かれている。
「似てねぇ〜」
そう言いながら、机に書置きを戻しベッドに腰掛ける。
リモコンに手を伸ばし、忙しくリモコンを操作する。
しかし、それもすぐに戻し、体をベットに預けた。
その枕もとには、携帯電話が置いてある。
吉澤は携帯をじっと見つめていた。
89 名前:ZIG 投稿日:2002年05月07日(火)03時00分13秒
正直、無理っぽいな…。電話なんてかけなきゃ良かった。
吉澤は苦しんでいた。

本当に久しぶりのりかちゃんの声。
今までの出来事が嘘のような錯覚を感じたんだよね。
一瞬にして縮まった距離。
でも、それは私の心の中だけ。

あれから、私の胸には小さな小さな種火がある。
決して消さないように。
決して絶やさないように。
でも、決して劫火にならないように。
そう思っていたのに。
少しずつ、少しずつ炎が大きくなっていくのが分かる。

そう思いながら、テレビを見る。
すると、りかちゃんの姿が現れた。
思わず、身を乗り出して見てしまう。
りかちゃんは司会の人と楽しそうに話している。
りかちゃん、思ったよりも元気そうだな。
そう思うと、嬉しいけれど、ちょっと悲しくなる。
と、そこで私はあることに気づいた。
あの胸にかけているペンダント…。
思わず私は画面に顔をつけて、テレビに魅入っていた。
90 名前:ZIG 投稿日:2002年05月07日(火)03時01分23秒
「最近、りかちゃん明るくなったよね」
収録の合間に安倍が石川に声をかける。その表情もまた明るい。
石川に明るさが戻ったことに嬉しさを隠せないのだろう。
「いや、そんなことないですよ」
「またまたぁ。なに、かっこいい男の子でも見つけたのぉ」
と、その瞬間、石川の表情が曇る。
それを、しまったという表情を安倍がする。
「いや、ほら。私もそういう人が見つかるといいなーなんて」
言いながら、安倍は石川の顔を見上げる。
しかし、安倍に対し石川は明るい表情を見せた。
「そうですよ。人のこと心配する前に安倍さんは自分のこと心配しないと〜」
「あっ、言ったな」
安倍が石川を軽く叩く。石川はおおげさに逃げ回る。
現場は笑いに包まれた。
91 名前:ZIG 投稿日:2002年05月07日(火)03時04分26秒
「お疲れ様でしたー」
収録後、石川は控え室に戻ろうとスタジオを出る。
ゆっくりと石川はスタジオを出る。
しかし、廊下に出た瞬間、石川は歩みを急激に速め駆け出す。
そして、控え室の銀色のドアを乱暴に開け、中に入った。
バッグを開け携帯を取り出す。
携帯の画面を見る石川。着信は無い。
「やっぱね…」
じっと携帯の画面を見ながら石川が言う。
「りかちゃん、何やってるの?」
その時後ろから声がする。その声に、驚いたかのように石川が振り向く。
そこには、矢口の姿があった。
「何やってるの?」
「いや、何でもないです」
「携帯の画面をジッと見つめて、『何でもない』は無いんじゃない」
「そ、そうですかね」
矢口がニコニコしながら石川に近づく。
「ほ〜ら、りかちゃん。白状しなさい」
「い、いや。白状することなんて」
「あるでしょ〜」
さらに矢口は石川に近づいていく。
「…はい」
92 名前:ZIG 投稿日:2002年05月07日(火)03時05分15秒
「……ということなんですよ」
「う〜ん」
石川の話を聞いた矢口は顔を曇らせる。
無理も無い。
吉澤が生きているなど、到底信じられる話ではないからだ。
矢口は石川をじっとみつめる。
それに対し、石川も矢口をじっと見返す。
「まぁ、いっか。りかちゃんが信じてるなら」
矢口は石川の目を見ながら言った。
「えっ?」
石川が逆に驚き、矢口を不思議そうにみつめる。
「そんな顔してみなくても。ほら、よっすぃが生きてるなんて、ぶっちゃけ信じられ
 ないけどさ。りかちゃんは、それを信じてるわけでしょ」
「う、うん」
「なら、いいじゃん」
そう言って、石川に微笑みかけた。石川は下を向く。
「どしたの、りかちゃん」
矢口が心配そうに石川を見つめる。石川は泣きじゃくっていた。
「ほらぁ。もぉ、泣かなくたって良いじゃん」
「でも、でも。誰もこんなこと信じてくれるなんて…」
「だから、信じてないって」
「でもでも」
石川は泣きながら矢口に訴えかけようとする。
それを矢口が苦笑いで見つめる。
「もぉ、いいや。ちょっと泣いてな」
そう言って矢口は石川の頭に手を軽く乗せた。
93 名前:ZIG 投稿日:2002年05月07日(火)03時15分26秒
ノターリ、マターリ更新っすね。終わるのはいつになることやら(苦笑)
しかしながら、絶対に終わらせるつもりです。

>>87 よすこ大好き読者さん
松浦…、まぁ書いている以上は出てくるという事で(w
期待に添えるように頑張ります。

いっつも思うんですけれども、どれくらいの人が読んでくれてるんでしょうね?
素朴な疑問。
94 名前:くわばら。 投稿日:2002年05月07日(火)17時17分59秒
私は拝見させて頂いてます。面白いです。
95 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月11日(土)16時58分20秒
私も読ませて頂いてます。
いったい何がどうしてこうなったのか、とても気になります。
続き楽しみにしてますよ。
96 名前:ZIG 投稿日:2002年05月13日(月)01時36分28秒
数日後。矢口と石川がネックレスを見つめる。
「矢口さん、よくこういうお店知ってますね」
「まぁねー」
石川の言葉に矢口が笑顔で答える。
二人が見つめるネックレス。
そのネックレスは、一本のカギを加工してできていた。
元は銀色だったカギが、カラフルに色を施されている。
胸に下げて歩いていても、決して不思議には思われないであろう。
「これを、下げて番組とかに出てみれば」
「気付いてくれるかもしれませんよね!」
矢口の声に石川が数倍の声の大きさで答える。
勢い込んで、という表現がピッタリとくるだろう。
「もぉ、そこまで顔を近づけなくてもいいよ」
矢口が苦笑いを浮かべながら言う。
「でも、これで少しでも気付いてくれるかもって思ったら」
力のこもった声で石川が言う。
そして、ネックレスを大事そうに握りしめ、その手の隙間からネックレスを見る。
まるで、扉の隙間から見える光を見るかのように。
その様子を矢口は穏やかに見つめていた。
97 名前:ZIG 投稿日:2002年05月13日(月)01時40分32秒
スタジオ収録前。
「おはようございまーす」
「おっ、してきたねー」
スタジオ内に入ってきた石川に矢口が言う。
石川の胸には、ペンダントが下げられている。
ペンダントは石川の胸を頼りなげに揺れていた。
黙って二人はペンダントを見つめる。静かに時が流れる。
「…頑張ります」
「うん。頑張ってね」
視線を合わせ、二人が頷く。
「なーに二人でやってるの? 私にも教えてよ」
すると、様子を見ていた安倍が二人に近づいてきた。
そんな安倍を見て、矢口がいたずらっぽく笑った。
「な〜いしょ。ねっ、りかちゃん」
「あ、うん」
「えぇ〜、何それ? 教えてよぉ、りかちゃん」
安倍が不満そうに言いながら、石川の肩を揺さぶる。
石川の上半身が揺れる。
その胸にあるペンダントも、時々光を発しながら揺れていた。
98 名前:ZIG 投稿日:2002年05月13日(月)01時41分45秒
安倍に石川が揺さぶられる。
「ナイショです。よね?」
石川は矢口を見ながらそう言って笑った。
そのやり取りを見ていた、紺野と小川も近づいてくる。
「えっ、どうしたんですか? 教えてくださいよ」
「何がないしょなんですかぁ」
「な〜いしょ。ねっ。じゃ、りかちゃん、逃げよぉ!」
そう言って、矢口が石川の腕を取り、駆け出す。
「あっ、逃げた。追え〜!」
「はい、隊長!」
それに対し、号令をかける安倍と、それに対して敬礼で答える紺野と小川。
しかし、その間に矢口と石川の姿は消えていた。
「隊長、いないです…」
「…そだね」
99 名前:ZIG 投稿日:2002年05月13日(月)01時43分42秒
スタジオ収録終了後。
「お疲れ様でーす」
「お疲れ様〜」
モーニング娘。のメンバーが挨拶をしながらスタジオを出て行く。
「で、さっきは何を隠してたの?」
「何を隠してたんですかぁ」
安倍と紺野、小川の三人がしつこく問い詰める。
「だから、ナイショだって」
少し閉口した様子で矢口が答える。
しかし、三人は諦めない。石川にまとわりつくように歩く。
石川も少し困った様子で見つめている。
「おーしーえーて!」
「いや、本当になんでもないんですって…」
石川が『助けて』という視線で矢口を見る。
矢口は静かに首を横に振る。
なおも、石川は矢口に視線をぶつける。
しかし、矢口はただ困った表情を石川を見つめるだけである。
「そんなぁ…」
思わず石川が小声でつぶやく。
それを聞いて、矢口が思わず表情を緩め、肩を二回叩く。
矢口に石川の視線が突き刺さる。
矢口の視線が逃げるように石川から外れる。
と、その視線が止まった。その表情が変わる。
「どうしたんですか?」
その様子に気付いた石川が、声をかけながら向き直る。
瞬間、石川の表情も変わった。
「……つ、つじぃ」
二人の視線のたどり着いた先。そこには辻の姿があった。
100 名前:ZIG 投稿日:2002年05月13日(月)01時51分51秒
一週間更新しなかったら、ここまで落ちるとは。
結構、動きがありますね。いいことです。
私も頑張らなくてはいけないですね。

>>くわばらさん
ありがとうございます。
誰もレスつけてくれないかと思ってたので、ありがたいです。

>>95 ななし読者さん
ありがとうございます。
一応、これからの流れ的には決まってるんですよ。
後は、暇があるか否かだけですなんですよね。
101 名前:ぶらぅ 投稿日:2002年05月13日(月)14時18分02秒
ネックレスに何かあるのか?(w
凄く続きが気になります。
辻もどうしたのか。。。
102 名前:くわばら。 投稿日:2002年05月14日(火)00時58分22秒
んおぉ。辻もカムバックか?!
103 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月15日(水)20時58分39秒
続きが気になります。
作者さんのペースマターリ待っています。
104 名前:ZIG 投稿日:2002年05月20日(月)02時42分15秒
「ひさしぶりです」
つじが明るい笑顔で言う。
黒いシャツに灰色のやや細身がかったパンツ。
一時期に較べると、全体的にやせたように見える。
「おひさしぶりです。テレビ見てました」
辻が明るく声をかける。
それは、モーニング娘。にいるときと変わらない、いつもの辻の姿だった。
しかし、それを聞いているメンバーにとってはそうではない。
辻はもういない。そう心に整理をつけた直後の出来事である。
石川たちは、その姿に言い知れぬ違和感を抱いていた。
「つ、つじ。病院はどうしたの」
「退院しました」
様子をうかがうように、矢口が辻の目をじっと見つめながら言う。
その問いに辻が何も無かったかのように笑顔で答える。
「大丈夫なの」
なおも安倍が心配そうに尋ねる。
「大丈夫です。ののも早く戻りたかったので頑張りました」
辻は強い瞳の色を見せながら言った。
105 名前:ZIG 投稿日:2002年05月20日(月)02時42分48秒
辻の復帰宣言に、他のメンバーは顔を見あわせる。
「のの…。戻ってくるつもりなの?」
「もちろんです」
安倍の問いに当たり前といった表情で辻が答える。
安倍が少し視線をずらす。その視線の先には矢口がいた。
「でもさ…、お医者さんは大丈夫って言ってたの?」
「ののはモーニング娘。に戻ったらいけないんですか」
矢口の問いに、辻も気付いたのであろう。その表情に悲しみの色が加わる。
が、しっかりと顎を上げ正面を向く。
「ののもモーニング娘。に戻りたいです。絶対戻ります」
何かに耐えているかのような表情で必死に訴える辻。
他のメンバーはそれを見つめることしかできなかった。
106 名前:ZIG 投稿日:2002年05月20日(月)02時44分23秒
「でさ、どうする?」
辻をなだめすかし帰らせた直後、メンバーは控え室に集まっていた。
皆、うつむき加減で視線も違った方向を向いている。
誰もが言いようのない重い塊を抱えているかのようであった。
「やっぱり、難しいんじゃないでしょうか」
うつむきながら小川が安倍の言葉に答える。
「うーん、そうだよね」
安倍が頷く。その表情には苦悩の色が刻まれている。
安倍の後に言葉を発するものはいない。沈黙が落ちる。
やはり辻はモーニング娘。に戻すことは出来ないんだろう。
沈黙が雄弁に語っていた。
「あのー」
沈黙を壊す声が起きた。紺野である。
「何で辻さんをモーニング娘。に戻しちゃいけないんですか」
あたかも今日の昼ご飯を決めるかのように紺野が言った。
107 名前:ZIG 投稿日:2002年05月20日(月)02時48分34秒
「いや、紺野。話は聞いてるでしょ」
安倍が紺野に言う。しかし、紺野は表情を変えない。
「知ってますよ」
のほほんとした様子で言う。
明らかに場違いな雰囲気が流れる。
「いやね…」
「でも、それでも一緒に頑張るのがモーニング娘。なんじゃないですか」
安倍の語尾を打ち消すように紺野が言う。
その言葉に安倍が表情を変える。
安倍の顎が下がる。少し上目遣いになりながら紺野を見つめる。
「それでもやっぱり辻を戻すのは無理なんじゃないかな」
「どうしてですか?」
「どうしてって…」
紺野の問いに安倍が考え込み、またも沈黙が落ちる。
しかし、雰囲気は明らかに変わっていた。
108 名前:ZIG 投稿日:2002年05月20日(月)02時51分00秒
「確かに紺野の言うとおり、やってみないと分からないよね」
矢口が重い口を開いた。
「やりもしないで無理って言ったら辻がかわいそうじゃん。わたしたちで
 つじをカバーすればきっと何とかなるよ」
「そうですよ。私も頑張ります!!」
ずっと考え込んでいた石川もそれに答える。
安倍が指を鼻に当て考え込む。それを見つめる石川と矢口。
紺野と小川もじっと様子をうかがっている。
少しして、安倍が何かを決意したかのように顔を上げた。
他のメンバーは上半身を安倍に傾け、安倍の言葉を待つ。
「そう、そうだね。がんばろう」
その言葉に全員の表情が明るくなる。
紺野と矢口が軽く手を合わせて喜びをあらわす。
「じゃあさ、早速つんくさんトコに行こうよ!」
そう言って、石川が控え室を飛び出していく。
「…つんくさんって、現場に来てないよね」
「どこ行くの。おぉい、りかちゃぁん」
石川を追いかけて他のメンバーが飛び出していく。
不安は、全て控え室に置いていこうとするかのように。
109 名前:ZIG 投稿日:2002年05月20日(月)02時57分28秒
日曜の自転車操業ですね。こりゃ(苦笑)

ぶらぅさん>
ネックレスに関しては、過去ログを見てくれれば分かります。
…いや、分かるはずです(w

くわばら。さん>
辻カムバックっすね。
吉澤たちは…、もう少しすれば徐々に分かってくるはずです。
はず、ですけど(w

よすこ大好き読者さん>
最近は吉澤が出てきてないですけれど大丈夫でしょうか??(w
仕事持ちなんでマタ−リ更新になりますが、お付き合いくださいね。
110 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月22日(水)20時28分53秒
吉が出ていなくとも、このお話好きなんでゼンゼンOKですよ!
仕事、お忙しいですか?
マターリ待っています。がんがってください。
111 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月29日(土)16時31分18秒
保全っす
112 名前:ZIG 投稿日:2002年07月08日(月)01時12分07秒
辻がモーニング娘。に復帰し、その姿はブラウン管にも当然映し出された。
そして今も、ブラウン管にはモーニング娘。の姿がある。
「ようやく辻も復帰して、これでモーニング娘。が全員復帰しました」
嬉しそうに安倍が言う。笑顔が輝く。
しかし、その笑顔に、ほんの少しの哀しみが混ざっていることは、ほとんどの人は知らないのであろう。
いや、もしかしたら誰も知らないと思っているのは阿部だけで、本当は皆知っているのかもしれない。
「これで、もっと頑張っていこうという気が起きてきました」
「辻もモーニング娘。であいぼんの分も頑張ります」
阿部の後に、矢口と辻の言葉が続く。
二人の表情を見れば、その言葉にそれだけの重みがこもっているのが容易に読み取れるであろう。
二人は、色々な番組で都合4回同じ内容の発言をしている。
それでも、二人の表情は変わらない。
逆に、その言葉を口に出すたびに悲壮感が増してきているようにも見える。
113 名前:ZIG 投稿日:2002年07月08日(月)01時12分42秒
「皆さん、頑張ってくださいね。では、曲をお願いしましょう…」
しかし、その様子を知ってか知らずか、アナウンサーは淡々と進行を進めていく。
そして、メンバーたちは、その声に押し出されるかのように画面から消えていった。

薄暗い部屋にそのテレビ番組を眺める男がいる。
男はメンバーたちの姿をじっと眺める。
ブラウン管の中で、会話を交わすメンバーたち。
それだけを見ていると夢現といった感がある。
しかし、夢から覚めたとき、そこにあるのはどんな風景なのか。
それは誰にも分からない。
114 名前:ZIG 投稿日:2002年07月08日(月)01時13分46秒
「モーニング娘。の皆さんでした〜」
「ありがとうございました」
その声が終わると同時に、テレビが軽い音を立てて消えた。
「つんくさん。こんなトコにいたんすか」
「あぁ、悪い悪い。で、なんや?」
「なんやじゃないっすよ。皆が呼んでますよ」
「マジで? 怒ってる?」
「…微妙に」
つんくが苦笑いを浮かべる。
「そかそか。分かったわ。じゃあ、すぐ向かうから」
その瞬間、電子音が鳴った。携帯電話の着信音ではあるが、着メロではない。
逆に、それが奇異に聞こえる。
「あぁ、悪い。先に行っといてんか」
穏やかに微笑を浮かべながら言う。
「まじっすかぁ。早く来てくださいよ」
呼びにきた男は、言いながら部屋を出て行った。
そして、何かを感じたかのように後ろを振り向く。
そこには、背中を丸めながら話すつんくの姿があった。
115 名前:ZIG 投稿日:2002年07月08日(月)01時14分47秒
「あぁ、わことる。わことるて。約束はちゃんと守る」
つんくが電話を相手に、早口で話す。
その様子は、まるで何かにおいたてられているようにも見える。
「えっ、あぁあぁ。でも今は無理や」
つんくの顔が軽くこわばっているかのように見える。
耳に添えられるように、携帯電話を握りしめた手も鎖に縛られているように動くことは無い。
「うん、わかった。今は無理やけど、夜なら何とか予定を空けられるから」
そう言って、つんくは電話を切る。
立ち上がって部屋の外に出て行くつんく。
その姿は、電話の前よりも年をとっているかのように見えた。
116 名前:ZIG 投稿日:2002年07月08日(月)01時15分20秒
ミーティングルーム。そこで、つんくが話している。
「うんうん。そうや。その方向でいこか」
「でも、それはちょっとバクチ入ってるんじゃないですか?」
「いいや、これでええの。ちょっと位の起爆剤が無きゃ、今の娘。は上がっていかれへんて」
「う〜ん」
「う〜んじゃないて。ここだけは譲れへんから」
「…分かりました。じゃ、その線でいきましょうか」
「サンキュ。分かってもらって助かったわ」
そこで、つんくは腕時計を見た。
「おぉ、やばいやばい。じゃ今日は帰るわ」
「あれ。今日は行かないんすか?」
話していた男が軽く杯をあおる真似をする。
「行くつもりやったんだけれどもな。ちょっと用が入っちゃったんや」
「コレすか?」
「あほか」
つんくが軽く相手を蹴る振りを入れる。
男も大げさにのけぞる真似をする。
「それじゃ、また明日」
「お疲れ〜っす」
つんくは、気ぜわしげに部屋を出て行った。
117 名前:ZIG 投稿日:2002年07月08日(月)01時15分54秒
タクシーの中、つんくが雑誌を読む。
斜め読みをして、次の雑誌をまた手にとる。
そして、次の雑誌を手にとる。
運転手も不思議そうにバックミラーを見ていた。
「お客さん。忙しそうですねぇ」
「いやいや、そうでもないよ」
そう言いながらも、視線は上げようともしない。
運転手は、自分の職務に専念し始めた。
5冊目、6冊目、7冊目。後部座席に雑誌が積み上げられていく。
車内には、雑誌が置かれる音だけが等間隔で響く。
その音が12回目を数えたとき、車が止まった。
つんくが車を降りる。そこは、人気の無い公園。
つんくは、辺りを見回しながら、公園の中に入っていく。
車のエンジン音が聞こえなくなった時、つんくの視線がとまる。
そこには、ジャングルジムのシルエットが見える。
太陽が昇っているときには、ここで子供たちが遊んでいるのであろう。
そして、そのジャングルジムに、ぶらさがっている人影が見える。
その脇にも人影が一人。
「久しぶりやな、でええんかな」
そう言いながら、つんくは近づいていった。
118 名前:ZIG 投稿日:2002年07月08日(月)01時20分21秒
本当にすいません、としか言いようがないっすね。
色々とあったのですが、言い訳にはなんないっす。
また、お付き合いしてくれる人、いるんかなぁ…。

110さん>
本当、すいません(汗
宜しければ、またよんでくださいませ。

111さん>
保全ありがとうございます。落ちる可能性もありますよね。
ありがとうございました。
119 名前:ZIG 投稿日:2002年07月31日(水)00時17分33秒
「でさー、昨日の見た?」
「見た見た。ちょっと太ってなかった?」
「えっ、誰?」
「分かってるくせに〜」
無機質な部屋の一室で、後藤と吉澤、高橋の3人が話をしている。
部屋にあるのはベットと机、そしてテレビだけで、それ以外には目に付くものはない。
しかし、三人はさして不思議に思うこともなく会話をしている。
「えっ、誰。辻ちゃん?」
「辻ちゃんは元からじゃん」
三人が笑う。その様子に、ひときわ違和感を持つ人間は多いだろう。
120 名前:ZIG 投稿日:2002年07月31日(水)00時18分20秒
「たっだいま〜」
その中に、加護と保田が入ってきた。
「あ、お帰りなさい」
高橋が立ち上がって二人を迎える。
「あっ、高橋。これお土産。みんなで食べよ」
「はい、分かりました。コーヒーいれてきます」
高橋は保田から箱を受け取り、奥の部屋へと歩いていく。
「な〜んか、最近帰ってこなかったじゃない、二人とも」
「まぁ、ね」
「なになになに〜、今の笑い。よっすぃ〜、今の見た?」
「うん、どこ行ってたの?」
「内緒」
そっけなく言う保田に、二人は明らかに不満そうな様子を見せる。
「加護ちゃん。教えてよぉ」
「もうちょっとしたら分かるから」
そう言って加護も答えをはぐらかせる。
しかし、その表情は明るい。それを見れば悪い事では無いとすぐにわかるであろう。
そして、それが二人の好奇心を余計にくすぐっているようである。
「教えてくんないと…」
そう言って、吉澤が加護の後ろに回る。
何かを感じ取ったのか、加護が立ち上がろうとする。
しかし、一瞬遅く加護は吉澤に後ろから捕まえられてしまった。
121 名前:ZIG 投稿日:2002年07月31日(水)00時19分01秒
「こうだ!」
と、同時に加護の笑い声が部屋に響き渡る。
「い、いや、やめて、やめて〜」
「い〜や、止めない。さぁ白状しろ!」
そういって、吉澤は加護をくすぐり続ける。
「ほ〜ら、止めなさい」
呆れた声で保田が言う。しかし、吉澤は止めるそぶりも見せない。
「ほらほらほら〜、早くしないと笑い死にするよぉ」
「いや、いえないんやて。本当」
「あっ、何やってるんですか。コーヒー入りましたよ。ケーキ食べましょうよ〜」
「ちぇ…」
高橋の声を聞いて、吉澤が残念そうな顔色で加護を開放する。
加護は、両手両足をバタバタさせながら、吉澤との距離を必死でとる。
そして、軽く息をつぎ、ホッとした表情を見せた。
「もぉ、ホンマに容赦ないんやから」
少し抗議するように吉澤に言う。
しかし、吉澤は悪びれる様子も無く、ケーキを選んでいる。
その様子は、さっきまでのことを忘れてしまっているかのようである。
「これとこれ、どっちが美味しいかな?」
「おい、聞こえてる?」
「こっちのチーズケーキ美味しそうじゃない」
「聞いてへんやろ」
「あぁ、こっちに決めた!!」
「…もぉええわ」
122 名前:ZIG 投稿日:2002年07月31日(水)00時19分31秒
「さってと、散歩行ってくるね」
ケーキを食べ終わった吉澤が席を立つ。
「あっ、一緒に行くよ」
「ゴメン。ちょっと一人で歩きたいんだ」
「そっか」
軽く腰をあげた後藤が再び座りなおす。
「ゴメンね」
「いいよん、いってらっさい〜」
後藤が軽く手を振る。
それを、少し申し訳なさそうに見てから、吉澤は部屋の外に出て行った。

「あっつ」
吉澤が空を見上げながら言う。
ノースリーブの紺色のシャツに、ローライズのジーンズ。
涼しそうな服装ではあるのだが、やはり暑いらしい。
しかし、それも仕方ないであろう。
30℃を超える真夏日。日中は35℃を越えた。
今は、夕方で日も落ちてはいるが、暑さに変わりは無い。
吉澤の周りを歩いている通行人の足取りも重いように見える。
「あーあ、やっぱ外に出るんじゃなかったかな」
独り言を言いながら、道を一人歩いている。
「あっ、そうだ」
何かに気づいたように、吉澤はクルリと歩く方向を変えた。
123 名前:ZIG 投稿日:2002年07月31日(水)00時20分01秒
「カップルばっかじゃん」
少し不服そうに独りごちながら、吉澤がせわしなさそうに周囲を見ている。
目の前には一目でわかるフジテレビのビルが見える。
周りには、カップルの姿が数多く見える。
その中を何かを探すように歩く吉澤。その姿は、観光客のようにも見える。
「…っと。やっぱりいないか」
30分ほど歩き回り、海岸沿いに座る。
吉澤は、ここ1年ほど、暇があるときはテレビ局周辺を散歩するのが日課になっていた。
どこかで、石川に会えるかもしれない。
そういう、蜘蛛の糸のような望みを持っていたからである。
会ったらどうするのか。声をかけるのか。
それは考えなかった。姿を見かけたらと考えることは無かった。

…帰ろっかな。
そう思って、立ち上がった瞬間。
「あっちに、モーニング娘がいるよ!」
小さい声が新幹線のように耳に入ってきた。
吉澤が声の方向を振り向く。
それは、周囲の人が驚いて見つめてしまうほどの早さであった。
…りかちゃんが!
そう思った瞬間、吉澤は声のした方向へかけだしていた。
124 名前:ZIG 投稿日:2002年07月31日(水)00時21分54秒
ペース遅すぎ…。
今度は何とか早く更新できるように頑張りまーす。
125 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月20日(火)00時16分21秒
ドキドキ
126 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月17日(火)02時24分06秒
ワクワク
127 名前:ZIG 投稿日:2002年09月22日(日)05時16分11秒
「はぃ、お疲れ様で〜す。いったん休憩に入ります」

ふぅ。
軽くため息をつきながら、石川が置いてあった椅子に座る。
両膝に軽くひじを乗せ、手を組んでその上に頭を乗せる。
何かに対して祈っているかのようにも見える。
そんな体勢で石川はじっとしていた。
「なになに。お疲れじゃん?」
石川に対して、矢口が声をかける。
「矢口さん」
石川が疲れた声を上げながら矢口のほうを向く。
その表情には疲れの色が色濃く見える。
「りかちゃん、ホントにだいじょぶ? かなりヤバイよ、その顔」
「ホントですか?」
「ホントホント。そんな顔を彼氏が見たら、絶対振られるね」
「そうですよね…」
矢口の言葉を聞いて、石川がうつむく。
それを見て、しまったという表情を見せる矢口。
「い、いや。ほらさ…。なんでもない」
矢口が軽く肩を落とした。
128 名前:ZIG 投稿日:2002年09月22日(日)05時17分47秒
と、その瞬間。
「はぁぃ、本番は入りま〜す。石川さん、矢口さん、お願いしまぁす!」
ADの声が響く。
「ほら、本番だよ。元気な顔、元気な顔!」
矢口が石川の背中を一回、二回と叩く。
「そ、そうですよね。でも…、結構いますね〜」
立ち上がりながら前を見る。そこには、多くのやじ馬たちが集まっていた。
「まぁ、解散しても人気があったってことじゃない」
「そうですね。もしかして私たちって…、スーパーアイドル?」
「何言っちゃってるの!」
そう言って二人は笑いあう。笑い終わった後、石川は「ウン」と軽くうなづく。
その様子を見て、矢口は軽く笑った。
「じゃ、行こうか」
「はい」
矢口と石川は、スタッフが集まる中へと入っていった。
129 名前:ZIG 投稿日:2002年09月22日(日)05時19分09秒
「さぁ、エメトゥットサーカスの会場、お台場にやってきました」
「ここで、行われるサーカス。楽しみですね〜」
カメラが回る中、石川と矢口がリポートをはじめた。

その周りには、大勢のスタッフとやじ馬が、文字通り取り囲んでいる。
「さぁ、会場に行ってみましょう!」
そう言いながら二人が歩き出す。その中心が動くと、その円も同時に動いていく。
その中に、一つの人影が加わろうとしていた。
130 名前:ZIG 投稿日:2002年09月22日(日)05時19分58秒
「さぁ、ここが会場になります」
矢口がそう言いながら、石川を見る。
「へぇ〜、可愛いテントですねぇ」
「でしょぉ〜」
「でも、チャーミーの方が。でもダメダメ。そんな…、可愛すぎるって罪」
得意げに言った矢口に背を向けて石川が言う。

「な〜に、言ってるの!」
軽く石川を矢口が殴る。そして、大げさに倒れこむ石川。
「あぁ、こうやって美人はいじめられるのね…。チャーミーって罪な女」
大げさに身振り手振りを加えながら石川が言う。
周囲には、軽い笑いがおきた。
「だぁっ! 今回の主役は、このサァカスッ!」
「はいっ、そうですね。じゃあ私、チャーミー石川が案内しましょう!」
矢口の言葉に、言いながら勢いよく石川が立ち上がる。
軽くコケル矢口に、また笑いが起きた。
131 名前:ZIG 投稿日:2002年09月22日(日)05時21分12秒
「り、りかちゃん…」
吉澤の目の前には、文字通りの黒山の人だかり。
その奥からは、声が聞こえる。

長い間、吉澤がテレビでしか聞けなかった声が。
そして、長い間、吉澤が聞きたかった声が。
「すいません、すいません」
小さい声でささやくように言いながら、輪の中に入っていく吉澤。
幾層にも重なっている人の輪を、一つ、そしてまた一つと進入していく。
その度に大きくなってくる声。
間違いなく、矢口、そして石川の声である。
その声に呼ばれているかのように、吉澤の体は前に向かう。

と、人と人のあいだから、誰かの足のようなものが見えた。
今度は、手が見える。
「りかちゃん、りかちゃん、りかちゃん、りかちゃん…」
吉澤は、繰り返し繰り返し、石川の名前を呼んでいた。
132 名前:ZIG 投稿日:2002年09月22日(日)05時22分55秒
とりあえず、簡単に。
次は早い予定(未定?)です。
133 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月23日(月)21時40分13秒
待ってて良かったです。
これからも頑張って。
134 名前:セプリカ 投稿日:2002年09月28日(土)20時35分47秒
はじめて読ませてもらいました。
メチャクチャおもろいです!
謎が多くてきになるなー。
135 名前:ZIG 投稿日:2002年09月30日(月)01時36分32秒
「では、このエメトゥットサーカスの団長であるオフトさんに来ていただきました」
「こんにちはー」
石川と矢口の声が響いている。
その声に導かれるかのように、進む吉澤。
石川の服がわずかに見える。
その姿に、吉澤は立ち止まってしまった。
足を誰かにつかまれているかのように、吉澤の足が止まる。

とその瞬間。吉澤の目に石川の姿が映った。
一瞬、本当に一瞬だった。
吉澤は、人波を再び押しのけ始めた。
彼女の動きは今までよりも強く、そして早くなっていた。
そして、石川の姿はもう間近に近づいている。
吉澤は、何か暖かいものを胸に感じ始めていた。
136 名前:ZIG 投稿日:2002年09月30日(月)01時37分44秒
「すいません」
そう言って、人の波をかきわける。
もう何度目だろうか。
そう頭の片隅で思ったのとほぼ同時に、吉澤の目の前に今までとは違う視界が広がった。
目にしたのは、懐かしいテレビ撮影の様子。
そして、夢に何度も見た人の姿。
じっと、その風景を見る。夢じゃない。
吉澤は、軽く自分の手を見つめる。
軽くそのこぶしを握りしめ、視線を石川に移す。
そこに、石川がいる。
それだけで、吉澤には一瞬が永遠にも感じられていた。
137 名前:ZIG 投稿日:2002年09月30日(月)01時41分07秒
どれだけ、石川を見ていたのだろう。
「りか…」
吉澤は不意に叫ぼうとした。
と、その叫びは途中でさえぎられる。
吉澤の腕が引かれたのだ。
驚いて、吉澤はそちらのほうを向く。
そこには、見たことのない男の姿があった。
見た感じでは20代後半といった所か。
身長は170pていどで、少しやせている。
しかし、付くべきところに、しっかりと筋肉はついており、貧相な感じはまったく感じられない。
むしろ、屈強ささえも感じる。
スーツに身を包んだ男に吉澤は奇妙な不気味さを感じていた。
「こちらに来てくださいませんか」
穏やかな笑みを浮かべながら、その男が言う。
吉澤は上体を後ろに引きながら首を振る。
「まぁまぁ。そういわずに来てくださいよ」
笑顔を浮かべながら男が言う。
その言葉には、何故か抗えないような強制力があった。
138 名前:ZIG 投稿日:2002年09月30日(月)01時42分12秒
吉澤は、諦めたかのようにその男についていく。
「さぁ、急いで」
そういいながら、男は流れるように人ごみの中を進んでいった。
吉澤はそれに引きずられるように歩いていく。
輪を抜けながら、吉澤は石川のいるであろう方向を何度も振り向く。
何度繰り返したのであろう。
もう、輪も抜けてしまおうというその時、石川の顔が吉澤の瞳に映る。

石川の視線がこちらを向いている。
視線が絡み合っている。そんな気が、吉澤はした。
139 名前:ZIG 投稿日:2002年09月30日(月)01時42分52秒
「さて、吉澤さん」
笑顔を向けながら男が言う。
その言葉を聞いた吉澤の顔色が青くなる。
仕方ないであろう。彼女が生きているというのは誰も知らないはずなのである。
吉澤が生きているのを知っている人間に、最悪の状況で会ってしまった。
顔色が悪くならないはずはない。
「あぁ、そんなに気にしないでいいですよ」
男がその様子を察したように言った。
しかし、吉澤は感じていた。…この人の言葉は信じちゃいけない。
「へぇ、信用ないんですねぇ。悲しいなぁ」
男が見透かしたかのように言う。
その言葉を聞いて、吉澤の顔色がさらに青くなった。

「まぁ、青くなる気持ちも分かりますけどもね。
一番会ってはいけない状況ですからねぇ」
緊張感のかけらもない様子で男が言う。
飄々としたという表現がぴったりくるだろう。
吉澤は下を向き、その言葉に答えることはない。
「心配しなくてもいいですって」
そう言って、男はまた吉澤の腕をとった。
「どうしたの?」
「いや、あわせなきゃいけない人がいるんですよ」
訝しがる吉澤にそう言って、男は返事も聞かずに歩き出した。
140 名前:ZIG 投稿日:2002年09月30日(月)01時43分40秒
男は一台の車に吉澤を連れ出した。
黒塗りの車で、窓にはスモッグがはられている。
車の車種は分からないが高そうな車だな、吉沢は思った。
「さぁ、吉澤さんをお連れしましたよ。お姫様」
男がドアを開けながら、中に座っている女性に言う。
「ありがとぉ」
えっ!?、吉澤には聞き覚えのある声。
その声を聞いた吉澤は慌てて車に乗り込む。
「…やっぱり」
そこには、松浦の姿があった。
141 名前:ZIG 投稿日:2002年09月30日(月)01時46分40秒
ちょと更新です。
これは早いというんでしょうか?(苦笑)

>>133さん
本当に、ご迷惑をおかけします。
遅い思ったら「遅いぞゴルゥァ!」とでも、書き込んでおいてください(w

>>セプリカさん
ありがとうございます。
見ての通り、マターリを通り越した更新の遅さですが、付き合っていただければ幸いです。

次の更新もこれくらいのペースいけるようにがんばります。
142 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月12日(火)08時38分46秒
作者も読者もマイペースでばっちこーい!

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