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モーニング娘。の醜聞
- 1 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月26日(火)22時01分33秒
- (0^〜^)<怒らないでね
- 2 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月26日(火)22時02分08秒
- 『十字架の奇跡』
- 3 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月26日(火)22時02分57秒
- 矢口真里の告白
わたしはもともと信心深いほうではなかったので、にわかには信じられませんでしたが、どうやら考えを改めなければいけないようです。
ことの発端は、よっすぃ〜が首にかけていた銀の十字架でした。もちろんよっすぃ〜が敬虔なクリスチャンであるとは寡聞にして聞いたことがありません。単なるおしゃれです。ただ、その十字架の放つ銀色の光沢が、わたしの心をとらえて離さなかったのは確かでした。
- 4 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月26日(火)22時03分47秒
- わたしはよっすぃ〜から聞いた店で早速買いました。けっこうな値段がしましたので、倹約家のよっすぃ〜がこれをぽんと買ったことに驚きました。
首にかけてみると、なんだか不思議な気持ちになりました。なんと言ったらいいのでしょうか、すさんだ心が洗われる、そんな感じがしました。コンプレックスの塊であったわたしですが、だんだんと小さなことには心を揺り動かされることがなくなっていきました。
- 5 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月26日(火)22時04分42秒
- HEY!^3に出演したときのことです。この日は大阪のUSJで収録が行われました。今年に入って初めての新曲を披露する場でもありましたので、いつになく気合が入っていました。そしてUSJにふさわしく、映画の一場面を見てタイトルをあてるクイズがありました。映画を見ることが大好きでしたし、ここのところ広がっている「モーニング娘。の頭の中はカラッポだ」との悪評を断つべく、わたしはなんとしてもこのゲームに勝ちたいと思いました。
しかし、気があせるばかりでうまくいきません。わたしはこっそりと十字架を握りしめました。するとどうでしょう。あせっていた気持ちがだんだんと和らいでいきました。そしてクイズでも正解を連発することがかないました。結局優勝こそは逃しましたが、わたしは自分の出した結果に満足することができました。そしてそれは、この銀の十字架のおかげだったのでした。
- 6 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月26日(火)22時05分31秒
- それからしばらくしてからのことです。わたしは仕事を終えた後、家路を急いでいました。久々に父と夕食をともにする約束をしていたからでした。夕焼けに照らされた歩道を急ぎ足で歩いていました。二車線の大きな道路でした。普段は交通量の多い道でしたが、そのときはどういうわけかほとんど車は少なく、静けさが広がっていました。
わたしは立ち止まって西の方角に目をやりました。赤い太陽がわたしをつつみこみました。こんな夕焼けを見たのはいつ以来のことだったのでしょうか。わたしはしばらくじっと見入っていました。
それが妨げられたのは、一台のトラックが粉塵を撒き散らしながら通り過ぎたからでした。太陽は灰色になりました。両手を振ってほこりをはらっていると、黒い円盤がわたしのほうに転がってきました。それはトラックから外れた大きなタイヤでした。
私はパニックに陥りました。そんなに簡単にタイヤが外れるわけがありません。しかし現実にはこうして私に向かってタイヤがやってくるのです。よけなければなりませんが、左に行ったらいいのか右に行ったらいいのかわかりませんでした。
- 7 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月26日(火)22時06分14秒
- 私は一歩も動けぬまま、とっさに胸の十字架を右手で握りました。
さっきとは逆方向からトラックがやってきました。タイヤはそのトラックにはじかれて、反対側へ転がっていき、ラーメン屋のガラス戸を割ったところで止まりました。
これもきっと十字架のおかげです。
わたしは翌日、みんなにこれまでの出来事を話しました。十字架が起こしてくれた奇跡を、熱をこめて話しました。
ところが、メンバーのほとんどは信じてくれませんでした。ただの偶然だろうというのです。わたしは必死に話しましたが、誰もまともにとりあってくれませんでした。ラジオでこのことを話そうとしても、スタッフに止められました。これまでの私のイメージにあわないからということでした。
でも、たった一人だけ、私のことを、十字架の奇跡を信じてくれた人がいたのです。
- 8 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月26日(火)22時06分52秒
- 辻希美の告白
私は、私ではありませんでした。
本当の私を認めてくれる人はいませんでした。大食いだとか、泣き虫だとか、力持ちだとか、そんな役割ばかり背負わされてきました。
それは本当の私ではありません。しかし、偽者の私でいることを強いられているうちに、自分を見失いそうになっていました。
自分が自分でなくなるということに、私は深い恐怖感をおぼえました。それはもしかしたら、死ぬことと同じくらい絶望的なことのように思ったからでした。どちらも体験したことがなかったので、どうしたらいいのかわかりませんでした。
- 9 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月26日(火)22時07分43秒
- そんなときに、矢口さんが不思議な十字架の話をしました。わたしはワラにもすがる思いでこの話にとびつきました。十字架でも数珠でも、何でも良かったのです。
矢口さんにお店を教えてもらいました。安い買い物ではありませんでしたが、なんとか私のお小遣いで買える金額でした。
その晩、私は熱にうなされました。こんな高熱にみまわれたのは生まれて初めてのことでした。私のこれまでの記憶が頭の中に浮かんでは消えていきました。どれもこれも思い出したくないことばかりでした。たった一つだけ、モーニング娘。になることができた日のこと、このことだけがわずかに私を慰めました。
朝起きると、汗だくになっていました。右手には、例の十字架がありました。もしかしたらこの十字架が、唯一嬉しかった記憶を思い出させてくれたのかも知れません。
- 10 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月26日(火)22時08分33秒
- 風邪だったのでしょう、まだセキが出ましたし、熱も完全には下がりきっていませんでした。大事をとってその日の収録はお休みしましたが、みんなが口々に「辻、やせたね」と言ってくれました。これもきっと十字架のおかげです。
私は矢口さんにそっとこのことを話しました。矢口さんは「そうだろ、そうだろ」と肩をたたきました。そうです、十字架のおかげです。
でも、私は不安に思うことがあります。もしこの十字架を失うことがあったら、どうなってしまうのでしょうか。また私は私でなくなってしまうのでしょうか。もう二度とそんな目にはあいたくありません。
私は例のお店に行ってみましたが、もうあの十字架は置いてありませんでした。わたしは十字架をそっと握りしめました。
- 11 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月26日(火)22時09分15秒
- 矢口真里の告白
辻が十字架の奇跡を体験したということを聞いて、私は確信しました。この十字架が私たちを守ってくれるということを。
でも、辻以外のみんなは、それでもとりあってくれませんでした。特になっちはあからさまに不機嫌な態度を見せました。
第一、辻によると銀の十字架はもうお店で売ってないとのことでした。それでは信じてくれる人がいても仕方がありません。私も辻も、自分の十字架を他人に譲る気はさらさらありませんでした。
- 12 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月26日(火)22時10分07秒
- 次の日、ダンスのレッスンがありました。新曲のダンスはまだまだ自分のモノにはなっていませんでした。私は真ん中ですので、ほんの少しの失敗でも目立ってしまいます。
世間の厳しい意見は否が応でも耳に入ってきます。あの雑誌のことも知っています。そんなことにくじけている暇はありません。仕事で見返すしかないのです。何より、私には十字架がついています。
それにしてもみんなの態度が気になります。なっちは終始不機嫌だったし、他のみんなは無関心でした。ごっちんとよっすぃ〜はあくびを噛み殺していました。
レッスンは終わりましたが、私はしばらく居残り練習をやるつもりでした。新曲の練習を始めてから、私が真ん中で踊ると知ってから、ずっと居残りで練習を続けています。他のみんなは汗を吹きながらドアから順に出て行こうとしていました。
- 13 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月26日(火)22時11分14秒
- このとき、私は再び奇跡を体験しました。
さすがに汗が止まってしまうほど動きすぎたので、水分を補給しようと自分のバッグのところまで駆けよりました。バッグはパイプ椅子にかけてありました。真上を見上げて時間を確認しました。夜9時を回っていました。
一口ミネラルウォーターをふくみ、十字架をそっと握ってから戻りました。その時でした。金属音とガラスの割れる音がしました。さっきの壁掛け時計が落下して、パイプ椅子に衝突して砕け散っていました。
みんながその音に気づいてこっちに振り向きました。そしてよっすぃ〜が大声をあげて私の上のほうを指差しました。
上のほうからカタンという軽い音が聞こえてきました。見上げると、大きく丸い電灯のカバーが半分外れてぶら下がっていました。やがてもう片方も外れて、私の横に落ちて、転がっていきました。プラスチックなので割れたりはしませんでした。
- 14 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月26日(火)22時12分27秒
- 今度はガチャンと、さっきより大きく思い音がしました。今度は円形の電灯そのものが私をめがけて降ってきました。
私は逃げることができませんでした。唯一できたことは、あの十字架を、奇跡の十字架に祈ることでした。
そして奇跡が起こりました。
わたしは輪っかをくぐり抜けました。そんな感じがしたのです。電灯は床にぶちかって粉々になりました。それから私はよろよろと後ずさり、床に崩れ落ちました。
みんなが私を囲みました。みんなの目から涙がこぼれ落ちています。特になっちはわたしの両肩をつかんで激しく揺さぶっていました。
「ほら、なっち。十字架のおかげで助かったよ」
私は十字架をなっちの目の前でぶらさげてみました。なっちは両手の上に乗った十字架を、じっと見つめていました。
- 15 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月26日(火)22時13分19秒
- 安倍なつみの告白
私は奇跡など信じていませんでした。
自分以外のものに頼ることなど、私には理解不可能でした。もし困難が目の前に立ち塞がるのだったら、それは自分の手で取り除かなければいけないのです。矢口が十字架を当てにしているのを見て、私はあきれてしまいました。
矢口や辻が直面している事態など、困難と呼ぶに値しません。ただ二人は逃げているだけです。脱落者が出ることに私は何の痛痒も感じませんが、悪い影響を周囲に及ぼすことだけは我慢なりませんでした。くじけるのなら勝手に一人でくじけていればいいのであって、他人を巻き込むことが許せなかったのです。
- 16 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月26日(火)22時14分20秒
- 私は矢口の目を覚まさなければならないと決心しました。
前日、私は矢口が居残り練習から帰るのを見計らって、レッスン室に入りました。そして壁掛け時計に細工をしました。赤外線のリモコンと、ちょっとしたモーターで壁のネジが外れるようにしたのです。ネジは外れやすくなるようゆるめておくのを忘れませんでした。
この計画を考えついたのは、夏先生の体験からでした。落ちてきた時計が頭にぶつかれば、奇跡なんて起こるはずがないんだということが、矢口にもわかるだろうと思ったからです。時計はそんなに重みがないものなので、大きなケガはしないだろうとふんでいました。
レッスンが終わって、私はチャンスがくるのを見計らっていました。矢口のカバンをかけた椅子を時計の真下に来るよう配置したのも私でした。そして案の定、喉の渇いた矢口はカバンの中のミネラルウォーターを取り出そうと、椅子のところにいきました。
- 17 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月26日(火)22時15分08秒
- ところが、リモコンのボタンを何度押しても、モーターが作動する様子はありませんでした。ようやく動いたと思ったら、矢口はすでに椅子を離れていました。計画は失敗に終わったのです。
ここで私の思いもよらぬことが起こりました。天井の電灯カバーが外れ、中の電灯が落ちてきたのです。これは私には覚えのないことでした。
そして、私は生まれて初めて奇跡というものを目の当たりにしました。
円い電灯は矢口の体を避けるように落ちていきました。その様子が、私にはスローモーションのようにひどくゆっくりしたものに見えました。
矢口の体には傷一つつけずに、電灯は床に落下してくだけました。私は急いで矢口のところに駆けつけました。言わば矢口を落としいれようとしていた自分が情けなくなり、私はわんわんと泣き出しました。
あれは、あの奇跡は、神様を試してみようした私に対する罰だったのでしょう。
- 18 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月26日(火)22時15分52秒
- 吉澤ひとみの告白
なんだか最近みんなの様子がおかしいのです。どうやら私が首にかけている何のへんてつもない銀の十字架が問題のようでした。
気がつくと、矢口さんは十字架の引き起こす奇跡というものをやたらと力説するようになりました。やがて辻も十字架を首にぶらさげはじめました。
聞くところによると、その十字架はいろいろな奇跡とやらを起こしたようですが、もちろんそんなことがあるはずがありません。もしあったとしたら奇跡の大安売りです。私の記憶では奇跡はここ2000年近く起こっていないはずなんですが。
奇跡というものは、必ずそれを欲しがっている人のところで起こります。私や、ごっちん、安倍さんのところではけして起こることはないでしょう。
- 19 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月26日(火)22時16分48秒
- 私たちの目の前で「奇跡」が起こった前日のことでした。私はレッスンが終わって早々に出て行った安倍さんの後をついていきました。ここのところ様子が変なので気になっていたのです。
安倍さんはタクシーに乗りました。わたしも慌ててタクシーをつかまえて、安倍さんの乗った車を追うように頼みました。運転手は嬉しそうに追っかけていきました。安倍さんは秋葉原でタクシーを降りました。あやしげな電気店で、赤外線リモコンと小型のモーター、ボタン電池などを買っていきました。面白そうなので私もこっそりいくつか買いました。
安倍さんは再びタクシーで元のところに戻りました。そして壁の時計をごそごそといじり始めました。このあたりでなんとなく安倍さんの魂胆がわかりました。くだらないことに心を奪われている矢口さんにいたずらしてやろうと思ったのでしょう。
- 20 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月26日(火)22時17分41秒
- 安倍さんが帰った後、わたしは安倍さんの取りつけた仕掛けを見ました。私の買ったリモコンでも動きそうです。さらに私は脚立を持ってきて、天井の電灯に細工をしました。細工は安倍さんのと同じものでした。そして、立ち位置を何度も確認してから家に帰りました。かなり夜中まで時間がかかってしまい、翌日は睡眠不足に陥りました。
翌日、安倍さんが矢口さんの椅子を動かしているのを見て、今日やる気だと気づきました。そこで私は気づかれないように安倍さんのバッグをあさり、リモコンの電池を抜いて置きました。
レッスン終了後、矢口さんが時計の真下まで来ました。安倍さんは懸命になってボタンを押していたようですが、当然ながら作動するはずがありません。矢口さんが離れるのを見計らって、私は時計に向けてボタンを押しました。モーターが作動し、ゆっくりと時計が落ちていきました。
- 21 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月26日(火)22時18分39秒
- 今度は電灯のほうです。私が昨晩印をつけておいたところに矢口さんが立ちました。ちょうど部屋の真ん中なので、矢口さんもそれを目印にダンスの練習をしていたようです。そこで私は矢口さんに気がつくように大声を出して天井を指差しました。矢口さんはその場に立ち止まって、天井を見上げました。
私はボタンを押しました。まずプラスチックの半透明のカバーが外れました。そしてもう一度ボタンを押すと、電灯を支えていたハガネが開きました。そして円形の電灯は水平を保ったまま、落下していきました。真ん中の穴のところに矢口さんが立っていたので、矢口さんがすり抜けるような形になりました。
電灯が割れ、みんなが矢口さんのところに行きました。わたしはそれとなくモーターを回収しました。安倍さんが動転していたので、仕方なく時計のほうも片づけました。
- 22 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月26日(火)22時19分15秒
- 私がやったことは何だったんでしょうか。これは矢口さんのためを思ってやったことなのでしょうか。自分のしでかしたことながら、自分でもどうしてか見当がつきません。
おそらく、矢口さんはますます十字架を信心していくことでしょう。クリスチャンになるかもしれません。辻もそうでしょう。もしかしたら安倍さんまでもが信じ始めるかもしれません。
その夜の帰り道、私は胸の十字架を鎖ごと引きちぎって、かすかに異臭のただようドブ川に投げ捨てました。私は神を冒涜したのでしょうか? 私はみんなの気持ちを踏みにじったのでしょうか?
神様、どうか教えてください。
- 23 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月26日(火)22時19分51秒
- おしまい
- 24 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月26日(火)22時20分21秒
- (〜^◇^)
- 25 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月26日(火)22時20分51秒
- (●´ー`)
- 26 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年02月26日(火)23時55分12秒
- なんとも不思議な気分になるお話ですね。
結局、吉澤さんは知っている、ということなんでしょうね。
これからも楽しみにしてます。
- 27 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月27日(水)20時44分02秒
- ついに森を抜け出しましたね(w
何所までもついていくYO!!!
- 28 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月27日(水)22時18分40秒
- >26,>27
ありがとね。見捨てないでね。
- 29 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月27日(水)22時19分17秒
- 『A Beautiful Star』
- 30 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月27日(水)22時19分58秒
- その日の朝、私は都内のホテルのロビーでみんなを待っていました。昨日は地方でモーニング娘。のコンサートがあったのですが、今日はハロモニの収録があったため、急いで東京に戻って来たのです。
私はちょっと早すぎたかな、と思いながらロビーをうろうろしていました。自動販売機の横にある観葉植物をいじっていると、エレベーターの開く音がしました。陰からそっとのぞいてみました。
「あー、また早起きしすぎだったかなあ」
「よっすぃ〜いつも早すぎるよ」
「そんなこと言ったって、梨華ちゃん、寝坊して遅刻したらたいへんでしょ」
二人はいちゃいちゃしながらホテルの喫茶店に入っていきました。
- 31 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月27日(水)22時20分30秒
- 「アイドルってやっぱりたいへんなんだね〜」
「でもやりがいあるよね」
小川と高橋です。けっこうのん気なことを言っています。
「おーい、こっちにいるよ〜」
呼ばれた二人は喫茶店に入っていきました。
「もー眠くてたまんないよ。睡眠不足はお肌によくないってのにさ、ねえ」
「朝から大声出さないでよ。頭にひびく」
「きゃははは。寝る前にワイン飲んでるからだろ」
「そんなにお酒っておいしんですか?」
「おう。相当うまいらしいぞ、飲んでみるか?」
「こら、矢口」
二人はつらそうな顔をしている一人をひきずりながら喫茶店のドアをあけました。
- 32 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月27日(水)22時21分13秒
- エレベーターではなく、その横の階段からバタバタと走り降りてくる音がしました。このやかましいのは、きっとあの二人でしょう。
「ふう、エレベーターに勝ったぞー」
「まったくトロいんだよね、あの二人は」
エレベーターが開くと、オリジナルメンバーの二人が出てきました。
「ほら、なっち、起きろ」
「だってさー、なっち朝弱いんだからさー、朝からの収録もうやめようよ」
「ほら、喫茶店で濃いコーヒー飲んで」
四人は喫茶店に入っていきました。
私は喫茶店の外で中の様子をうかがいました。私には、中に入っていく勇気も資格もありませんでした。
- 33 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月27日(水)22時21分46秒
- 「うー、このコーヒーおいしくない」
「辻、砂糖とミルク入れすぎだぞ」
「歯にしみるー」
「ほらなっち、起きなよ」
「そうそう、よっすぃ〜。このリボン似合う?」
「ほら、ちゃんと食べないと後にひびくよ」
「はい」
「よっすぃ〜、見てよー」
「あの、すいません。後藤さんがまだ着てないんですけど」
「ごっつぁん? あら、ほんとだ」
「きっとまだ寝てるんだよ、あいつ」
「後藤はなかなか起きないからなー」
「吉澤、起こしてきてよ」
「あたしがですか?」
「あたしらだとどんな目にあうかわからないから」
「よっすぃ〜なら大丈夫」
「えー」
- 34 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月27日(水)22時23分03秒
- 彼女は喫茶店を出てきました。私は思わず物陰に隠れてしまいました。私はいったい何をやってるんでしょうか。
やがてエレベーターから二人が出てきました。あいかわらず寝ぼけまなこです。
「で、何? 何がなくなってたの?」
「うーん、いろいろ……」
かっけー彼女は、意識がなくなりかけたところをペシペシと頬をたたいていました。確かにこんなことは他のメンバーではできそうにありません。
「セーターと、昨日つけてたブラと、靴下片方と、それから……」
「もういいや。とにかく中に入ろ」
二人は喫茶店に入りました。私はガラスの仕切りに手と頬と耳をべったりつけて、中の会話を聞き取ろうとしました。
- 35 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月27日(水)22時23分46秒
- 「つまり、ごっちんの部屋に泥棒が入ったわけだね」
「気がつかなかったの?」
「ぐっすり寝てたから」
「わかる」
「カギはかけてた?」
「オートロックだよ、ここ」
「じゃあ窓から?」
「窓もカギかかってた」
「じゃあどうやって泥棒が入ったっていうんだよ……ごめん」
「まあまあ。あやしい人がいたらホテルの人とか気がつくんじゃない?」
「そうだよね。このホテル厳重だもね。夜も警備員さんとか廊下歩いてるし」
「他に何か手がかりみたいなのはないんですか、後藤さん?」
- 36 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月27日(水)22時24分23秒
- 「えーとね……あたしセーター着たまま寝ちゃったんだ。でも暖房が効いてて暑かったら、脱いだんだけど、そのとき時計をみたら4時だった」
「じゃあ、泥棒は4時から7時の間に入ったんだ」
「7時じゃいくらなんでも朝だから、5時か6時くらいまでかな」
「そうですね。わたし朝6時に目が覚めて、自動販売機でジュース買いに廊下を出たんですけど、変な人は見ませんでした。ねえ、まこっちゃん?」
「うん」
実は私も6時前にはこのホテルのロビーにいたのですが、それらしい人は見かけませんでした。そしてこのときまで、娘。のメンバー以外誰一人としてエレベーターや階段から出てきた人はいませんでした。
- 37 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月27日(水)22時25分02秒
- 「まとめると、このホテルに入ることはできても、後藤さんの部屋に入ることと、後藤さんの部屋から出ることと、このホテルから出ることができた人は誰もいないということなんですね」
「おう、賢い」
「とりあえずさ、ホテルの人にはマネージャーさんに言ってもらうから。あたしたちは収録があるんだから、まずそっちに集中しよう」
さすがリーダーです。私は涙がこぼれそうになりました。
「仕事が終わったら、買い物に行こ、ごっちん」
「ありがとう、よっすぃ〜」
「よっすぃ〜、あたしは?」
「梨華ちゃんも一緒に行こ」
- 38 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月27日(水)22時25分56秒
- でも、このままにしてはいけません。許されません。許してはいけないことなのです。悲しい出来事ですが、正さなければいけないことなのです。
わたしは思い切って喫茶店に入りました。
「おはよ」
「あ、おはようございます」
たいへんつらいことです。つらいことなんですが、彼女たちを放っておくことができなかったのです。私は自分の考えをみんなに伝えました。この断腸の思いをどのように伝えることができるのでしょうか。
- 39 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月27日(水)22時26分31秒
- 「ちょ、ちょっと待ってよ。それって……」
「あ、バスの中にごっちんの荷物って何かあったっけ」
「んー、私物はないけど、コンサートの衣装がいくつかあったかな……」
私たちはホテルの玄関を飛び出して、横の駐車場に止めてあったバスに乗り込みました。そして奥には、蛍光色の衣装を身につけた彼女がいました。
「それ、ごっちんの衣装?」
彼女は真っ青な顔をしながら、こくんとうなずきました。そしてよろよろと座席に倒れこみました。
「紺野が……どうしてこんなことを?」
- 40 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月27日(水)22時27分25秒
- 私は説明しました。しかし、彼女たちには理解できたのでしょうか。動機は憧れの後藤のようになりたい、ただその一念が、彼女をこのような行動に走らせたのでしょう。まず形から入るという考え自体は間違っていません。ただその方法が逸脱しすぎていたのです。
紺野は後藤と同室だったのです。私は部屋割りのことは知りませんが、おそらくそうだったのでしょう。そうでなければ後藤の部屋に入り、出ることはできません。そして後藤が寝静まったのを見てから、憧れのあの人の身につけていたものをあさったことでしょう。
そして、今度はバスの中に後藤の衣装があることを思い出しました。そして部屋を出て、エレベーターに乗りました。エレベーターを出てきたのは6時を少し過ぎていました。私は彼女が出てくるのを、暗いロビーの奥から見ていました。
- 41 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月27日(水)22時28分13秒
- 「裕ちゃん、見てたんならなんで早く言ってくれないんだよ」
私は抱きついてきた矢口を振りほどきました。
「あんたらな。何紺野のこと忘れてるんや。確かに紺野は歌もダンスも、しゃべりも全然かもしれん。新曲でもただ一人パートがあらへん。補欠かもしれん。それでも、紺野かてモーニング娘。なんやで」
私には口出しする権利などもうありません。それでも言わずにはいられなかったのです。かつての私は、そして今の彼女たちは、彼女たちが高らかに歌う「美しい星」であるのでしょう。でも、もしかしたら、いつのまにか私たちの頭上には「転落の星」がぶらさがっているのかもしれません。そしていつか、私たちに向かって落ちてくるときが近づいているのではないでしょうか。
- 42 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月27日(水)22時28分49秒
- おしまい
- 43 名前:名無し読者 投稿日:2002年02月27日(水)22時29分25秒
- ( ^▽^)<ずるい?
- 44 名前:名無しさん 投稿日:2002年02月27日(水)22時30分00秒
- (0^〜^)<ずるい!
- 45 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年02月27日(水)23時45分09秒
- おっ、なんだかサスペンス風味だな、と読んでて・・・
う〜ん・・・、そうきましたかぁ。
- 46 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月02日(土)14時11分34秒
- 『機嫌を直して』
- 47 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月02日(土)14時12分27秒
- 辻ちゃんはむくれていました。楽屋のすみっこで、壁のほうを向いてむっつりしながら座っています。誰が呼びかけても返事をしません。
きっかけは何でもないことだったのです。
いつものように、辻ちゃんは、加護ちゃん、新垣、紺野と騒いでいました。主犯はもちろんはじめの二人です。ただ今回は少々度が過ぎたようでした。奇声をあげて走り回る(なんとあのよっすぃ〜ですらしかめっ面をしてしまうほどでした)、お菓子をテーブルの上にぶちまける、人のひざの上に座って暴れる等々。
とうとう矢口さんが切れてしまいました。私や保田さんだったら二人はそんなことなどお構いなしだったのでしょうが、矢口さんでは相手が悪すぎます。新垣と紺野は起訴猶予となり、辻ちゃんと加護ちゃんがその矢面に立たされました。
- 48 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月02日(土)14時12分57秒
- 矢口さんの説教は苛烈なものでした。みるみるうちに二人はしぼんでいきました。あまりの激しさに私は矢口さんをなだめようとしましたが、なぜか矛先が私にも向けられそうな勢いでしたので、私はひかざるをえませんでした。
永遠に続くかと思われた説教もようやく終焉し、矢口さんはそれでも頭から湯気を出しながら楽屋を出ていきました。おそらくトイレで化粧が崩れてないかどうか、確認しにいったのでしょう。
加護はしばらくすると、叱られたことなど忘れたかのようにふるまっていましたが、辻ちゃんはずっとふくれっ面のままでした。矢口さんに「そんなにお菓子ばっか食べてるから、ぶくぶくになっちゃうんだ」と言われたことが心外だったようです。
- 49 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月02日(土)14時13分32秒
- しばらくしたら、いつものように元気を取り戻すだろうとみんな思ったのですが、気がつくと、辻ちゃんは壁を向いてじっと座っていました。
「加護ちゃん、声かけてあげたら」
「だめ。ののは意地っぱりだから、ああなったらてこでも動かない」
このままでは悪い雰囲気で本番を迎えることになってしまいます。そこで私は年長者として、辻ちゃんをなんとかしなければならないと思いました。
「ねえ、辻ちゃん。矢口さんも悪気があってあんなこと言ったわけじゃないんだから、機嫌直そうよ」
ごくありふれた慰めの言葉しか出ませんでした。辻ちゃんは返事をしません。辻ちゃんの肩に手をやると、体を振ってふりほどきました。
- 50 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月02日(土)14時14分03秒
- すごすごと引き下がると、「やっぱり梨華ちゃんじゃだめか」という小さな声が聞こえてきました。私の顔は多分真っ赤になっていたと思います。
仕方がない、といった雰囲気で飯田さんがやってきました。ここはリーダーらしくびしっと決めてくれるのでしょう。
「辻、機嫌直せよ。帰りに八段アイスおごってあげるから」
どこからか「結局食べ物で釣るのか」という声が聞こえてきました。安易な方法ではありますが、辻ちゃんに対してはかなり有効な方法であることに間違いはありません。実際辻ちゃんはほんの一瞬だけ顔が明るくなったのですが、すぐにもとのふくれっ面に戻ってしまいました。
- 51 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月02日(土)14時14分36秒
- 「のの相当怒ってるね」
「これはただじゃすまないね」
よっすぃ〜とごっちんは他人事のような態度です。あそこの二人だけまわりの空気と違っています。
「八段じゃなくて十六段とか」
「アイスじゃなくて焼肉とか」
のん気な二人の言葉ではありますが、これは傾聴に値する意見だとは思います。将来に手に入れるだろうという不確定的なエサでは不十分であることは私にもわかりました。それならそのエサを大きくしてやろうというのが二人の考えのようです。
- 52 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月02日(土)14時15分14秒
- しかし、辻ちゃんの体のことを考えると、過度のカロリーを与えることは避けたほうがいいのでしょう。そこで飯田さんはエサの給付を将来から現在に変更しました。
「ほら、辻、クッキー食べるか?」
その様子はまるで動物園のサルにエサを与える観光客のようでした。しかし辻ちゃんの様子に変化はありません。うらめしそうな顔で首を振るばかりでした。
「今あげられるモノで、辻ちゃんの大好物はというと……」
「アメ玉かな」
しかし、そんなモノは誰も持っていませんでした。加護ちゃんも、辻ちゃんと持ち寄ってくるお菓子が重ならないようにしていたので、手元には持っていませんでした。
- 53 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月02日(土)14時15分54秒
- 「それならののが持ってるんじゃない」
さすがはよっすぃ〜です。自分の懐が痛まなくてすむ、一番の解決策を出してくれました。そこで私たちは勝手に辻ちゃんのバッグの中身を広げました。辻ちゃんは相変わらず壁を向いたっきりです。いろんなモノが詰め込まれていましたが、目当てのものが見当たりませんでした。
「おかしいな。持ってきてないのか?」
「でもさっきは食べてたよ」
加護ちゃんによると、矢口さんに怒られる前にいっぱい口にしていたそうです。それでも全部は食べてしまわず、十個くらいは袋の中に残していたというのです。
- 54 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月02日(土)14時16分27秒
- 「ん? みんな、どうしたの?」
そこに矢口さんが戻ってきました。先ほどより化粧が整っています。そこで私はいきさつを矢口さんに話しました。矢口さんはポリポリと頭をかいて顔をゆがめていましたが、「しょうがないなあ」といっしょにアメの袋を探し始めました。
しかしいくら探しても見つかりません。矢口さんの頭からまた湯気が出てきました。
「どこに隠したんだよ。辻、知ってるんだろ?」
「やめなよ、矢口。辻が自分で隠すわけないだろ」
辻ちゃんはというと、相変わらずみんなに背中を向けていますが、アメがなくなったと聞いてしょんぼりとしているようにも見えました。
- 55 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月02日(土)14時16分57秒
- 「じゃあ、誰が隠したって言うんだ?」
矢口さんが私をにらみつけてきました。とんでもないことです。濡れ衣です。私は首を振って懸命に否定しました。
「辻のアメ隠してどうするんだよ、やぐっつぁん」
「そうですよ、矢口さん」
のほほんとした二人の言葉で私は救われました。
「もし誰かが隠したんなら、動機があるのは誰だろ?」
「そりゃー、ごっちん、ののに食べられたら困る人でしょ」
「おー、いいとこついてるじゃん、よっすぃ〜」
「でしょ、でしょ。それに当てはまるのは……」
- 56 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月02日(土)14時17分31秒
- みんなの視線がいっせいに矢口さんに注がれました。矢口さんが狼狽しているのがはっきり見て取れました。
「ちょっと、待ってよ。よっすぃ〜。あたしそんなことしないよ」
よっすぃ〜とごっちんは目を合わせてクスリと笑いました。
「わかってますよ。だから、もし誰かが隠したとしたら、ってごっちん言ったでしょ。誰も隠したりなんかしてないんですよ、矢口さん」
「へ?」
「じゃあ、どこにあるの、よっすぃ〜?」
「それはー、まだみんなが探していないところだよ、きっと」
「それしか考えらんないもんねー」
二人は立ち上がってその場をぐるぐると歩き始めました。よっすぃ〜はコントに使うカウボーイハットをかぶりました。
- 57 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月02日(土)14時18分27秒
- 「どこなんだよ、隠し場所は」
「僕にはわかる……そう、そこは最初大きな空間だったのに、だんだんと少しずつしぼんできているその様子が、僕にはわかる」
よっすぃ〜が辻ちゃんの肩をつかみました。辻ちゃんは体をゆすって暴れましたが、よっすぃ〜の力は辻ちゃんに負けないくらいあったのです。よっすぃ〜は無理やり辻ちゃんを私たちのほうに向けました。ごっちんがおもむろに、辻ちゃんのあごをつかみ、もう片方の手で頬をつかみました。少しずつ辻ちゃんの口が開いていき、中から少し小さくなったアメ玉がいくつもぽろぽろとこぼれ落ちてきました。
そして、その日二度目となる矢口さんの大噴火が楽屋に轟いたのでした。
- 58 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月02日(土)14時18分59秒
- おしまい
- 59 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月02日(土)14時19分38秒
- ( ´D`)
- 60 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月02日(土)14時20分15秒
- (〜^◇^)
- 61 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年03月03日(日)03時25分52秒
- 顔を真っ赤にして辻を怒っている矢口っつぁんがとてもリアルに思い浮かべられます。
・・・やっぱり梨華ちゃんじゃだめか・・・
- 62 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月06日(水)20時15分27秒
- 御祓い師3級吉澤ひとみ
『通信販売ノススメ』
- 63 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月06日(水)20時16分01秒
- わたくし、吉澤ひとみの趣味はケイタイと通信販売なのです。
家にはいろんな種類の通販カタログが転がっています。雑貨や事務用品、引出物、ブライダル商品、新聞や雑誌で見かけたらすぐに資料請求をします。カタログが届くと、これをじっと眺めます。モノはなんだってかまわないのです。
例えば、オフィス家具のカタログ。ぱっとめくると木製シェルフコーナーという商品が目につきました。これはメタルラックパーツです。メタルラックというのは、簡単にいうと金属のパイプを組み合わせた棚のことです。一式のものを買うこともできれば、パーツをばらばらに買って、自分の好きなように組み合わせることもできます。すごい商品ではないでしょうか。
さらに、これはコーナー用の板です。長方形の板の角を切り取って五角形にしてあります。これはなぜかといえば、テレビを乗せることを念頭においてあるからです。部屋の隅に置けば、ぴったりです。なんと頭のいい人がいるのでしょう。
- 64 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月06日(水)20時16分31秒
- 材質がMDFスチールというのもすごいと思います。さらにパイプを通す輪っかにはクロームメッキがしてあるのもすごいです。何がすごいのかわかりませんが、とにかくすごいのです。大きさを見ると、36型ワイドテレビを乗せることができます。豪華な作りです。
値段を見ると、\7,980とあります。安い。通販なのだからたぶん安いのでしょう。もうわたしは興奮状態です。完成予想図を頭に思い浮かべました。大きなテレビを乗せて、ソファでくつろぎ、リモコンで恋愛ドラマを見ます。かたわらには、涙を流したときのためにティッシュ箱が置いてあります。なんと優雅な生活なのでしょう。
そしてわたしは、カタログの後ろについているオーダーシートをハサミで切り取ります。ここに商品番号を書いてFAXすれば、早ければ明日にでも届くのです。現代人は時間が何より大切なのです。このシェルフコーナー二つと、スチールポールを三セット注文しました。このポールは一組二本セットで\1,380です。シェルフは五角形なので五本でじゅうぶんですから、一本あまってしまいます。まあ、何かで使うときがくるでしょう。
- 65 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月06日(水)20時17分02秒
- 全部で\20,100です。これに消費税が\1,005かかります。お金は月末に銀行口座から引き落とされます。わざわざ銀行や郵便局に行って、振り込む必要はないのです。手数料分オトクとなります。なんと親切な会社なのでしょう。
どきどきしながら届くのを待ちます。宅配便のお兄ちゃんがやってきました。笑顔と白く光る歯がまぶしくて、目がくらみそうです。早速、ダンボールを開けてみます。もちろん注文した商品が入っています。ビニールを破ってゴミ箱に押し込みます。板に頬ずりします。木のにおいがなんともいえなく心地いいです。
プラスのドライバーを片手に、組み立てを開始します。ちゃんと説明書がついているので、わたしでも簡単にできます。難しい漢字も使っていません。作った人はとても優しい人です。
- 66 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月06日(水)20時17分36秒
- できあがりました。ここでいつも首をひねることになります。完成予想図と違います。女の手だからネジがしっかりしまっていません。がたがたに揺れます。もう一度ネジを外そうとしても、ななめにしめこんでいるため、力をいれてもネジは回りません。そのうちネジの頭がえぐられて、ダメになってしまいます。
しょうがないとここはあきらめ、部屋の隅に持っていきます。そんなにいじるものじゃないから、多少の不出来は気にすることもありません。テレビを乗せます。なんか妙です。アンバランスです。よく考えますと、わたしのテレビは14型の小さいやつだったのです。二つならべてちょうどいいぐらいです。これではとても不格好に見えます。この前電器屋で見た、36型ワイドテレビの値段を思い出しました。高くてとても買う気がしません。
わたしはため息をつきました。こうしていつも失敗するのです。だが、通販の魅力にわたしはいつも敗れてしまうのです。
- 67 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月06日(水)20時18分14秒
-
∧_∧
(0^〜^)カッケー
(つl⌒l⌒l
(⌒)(⌒)
(吉澤ひとみ 通販カタログを眺めてご満悦の図)
- 68 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月09日(土)01時09分34秒
- 御祓い師3級吉澤ひとみ
『資格を取ろう』
- 69 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月09日(土)01時10分05秒
- 話がそれました。
その通販です。家にあるカタログは全部読みとおして、ボロボロになってしまいました。そこで新しい通販がないかと、新聞をめくっていました。目線はいつも新聞の下三分の一です。上になんて書いてあるか見たこともありません。だいいち読めません。
映画の宣伝やら、雑誌の広告ばかりで目当てのものが見つかりません。世の中不景気だなあとめくっていますと、通信教育の宣伝が目につきましたた。日ペンの美子ちゃんやら水墨画の講座やら、あんなのです。その習える内容が一風変わっていました。
「これであなたも一流の御祓い師になれる!」
御祓いというのは、たぶん白い紙がひらひらついた棒をふりまわす、あれのことでしょう。わたしは烏帽子をかぶった平安時代の神主を想像しました。
- 70 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月09日(土)01時10分37秒
- 「わたしでもできるのかなと、最初は不安だったのですが、たいへん易しいテキストのおかげで一人前の御祓い師になることができました(鈴木一郎さん・22才)」
「細かいステップをこなしていくことで、みるみるうちに腕が上達していくことがわかりました。おかげで月二十万円の副収入があります(田中愛子さん・31才)」
いや、別にお金に目にくらんだわけではありません。これでもアイドルのはしくれです。多少なりとも自由にできるお金くらい持っています。たぶん。銀行の通帳はお母さんがしっかり保管してくれています。わたしに見せてくれないくらい厳重にです。ひとたび見れば目が¥マークになってしまうくらい入っているはずです。きっと。
それよりも御祓いです。御祓いというと、モノノケに取り憑かれた人たちを助けるあれです。呪文をとなえると、悪いやつが煙のように消えてしまうあれです。人助けです。慈善活動です。それはもちろん多少なりとも経費がかかるでしょうから、その分はいただかないといけないでしょう。いいことをするのですから、それにいくらか色つけてもバチは当らないでしょう。
- 71 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月09日(土)01時11分11秒
- わたしは資料請求のハガキをポストに投げ入れました。数日後、見本のテキストが送られてきました。見本だから最初の数ページだけ印刷されていて、後は白紙です。テキストは二冊あります。一冊はたいへん厚い専門書のようです。字も小さく、難しい漢字も多いのですが、ルビがあるからなんとか読めそうです。もう一冊はその解説書らしいです。こちらはやさしい言葉で書かれてあります。
講座は全部で八回あり、最後に認定試験があります。この試験に合格すれば、御祓い師3級の免状がもらえるようです。二ヶ月と短期間で取得できるのはお手軽です。
わたしは早速正式に申し込みました。最初に八回分の金額を振り込みました。一回二万円、全部で十六万円です。最後の試験は別途で二万円かかります。合わせて十八万円ですが、田中愛子さんによれば一月で二十万円かせげるのですから、すぐに元はとれるはずです。
- 72 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月09日(土)01時11分45秒
- 初回のテキストが送られてきました。題名が読めません。「……の夏」だけ読めました。まあたいした問題ではないでしょう。解説書と二つならべながら御祓いの勉強を始めました。どうやらこの厚い専門書は昔(といっても昭和時代ですが)の実話モノのようです。その中に御祓い師が出てきており、この人の行動をもう一つのテキストで解説していました。
解説書の最後には練習問題がついています。空欄に言葉を埋めていくやつです。問題は簡単で、テキストにでてきたことばかりです。これを切り取って、封筒に入れて送り返しました。
一週間後、練習問題の答えと次のテキストが送られてきました。赤ペンで添削してあり、「この調子でがんばれば一流の御祓い師になれますよ」とコメントがついていました。
ほめられればやる気が出ます。次のテキストは「……の……」だった。「の」しか読めませんでした。まあいいでしょう。たいへんだったのは、テキストの厚さが二倍になったことでした。当然解説書も内容が二倍になります。それでもなんとかこなしていきました。なにせ一月二十万円が待っているのです。
- 73 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月09日(土)01時12分21秒
- 次のテキストは「……の夢」でした。「鉄…の……」「……の理(り)」と続きました。だんだん厚くなっていきました。徹夜でかかりっきりとなり、枕にして寝ていたこともありました。次はなんと上下二冊にわかれていました。この「……の……」の練習問題を送り返すと、次回は答えだけ送られてきて、次の分のテキストが入っていませんでした。
「諸事情により講座は前回でおしまいです。認定試験を受けられる方は、同封の応募用紙にて申し込みください」
二週間ほど早く試験を受けられることになりました。もちろん望むところです。ついでに言えば、この残り二回分のお金は返ってきませんでした。
試験は簡単な筆記試験でした。今までのテキストをひっぱりだして、確か「……の夏」の何ページかに載っていたはずだと、こんな調子で解いていきました。おかげで試験に合格し、わたしは御祓い師3級を取得することができました。その免状は額縁に入れて壁に飾ってあります。
- 74 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月09日(土)01時13分02秒
∧_∧
(^〜^0)
_φ___⊂)__
/旦/三/ /|
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| |
|熊本みかん|/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(吉澤ひとみ 懸命に勉強に励むの図)
- 75 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月10日(日)15時38分37秒
- 御祓い師3級吉澤ひとみ
『ほげの宴』
- 76 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月10日(日)15時39分08秒
- 「世の中、不思議なできごとってあるんだね」
「ほんとにねえ」
梨華ちゃんと加護が首をひねりながら何か相談していました。
「世の中に不思議なできごとなんてないんだよ」
わたしはかっこよく決めたつもりでしたが、二人には通じませんでした。
「何言ってるの、よっすぃ〜?」
「よっすぃ〜のほうが不思議だよ」
わたしは気を取り直して、テキストに書いてあったことを思い出しました。まず、御祓い師は信用をえないといけません。自分の言葉を信じてもらうには、相手より心理的に上の立場に立たなければなりません。そのためには相手を自分の土俵にひきずりこみ、煙に巻くのが一番だ、と書いてありました。
- 77 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月10日(日)15時39分44秒
- 「不思議なことってのは、ふたを開けてみればなんでもないことばかりだよ。例えば、あそこの辻が持っている袋、お菓子が入っているんだろうけど、それを知らない人は中にとんでもないものを隠してるかもしれないと考えるかもしれないでしょ。開けて中を見るまでは何が入っていたって不思議はないんだから。袋を開けないかぎりは、中に何が入っていてもかまわないし、はっきりさせることもないし。だから袋を開けても開けなくても、不思議なことは何もないんだよ」
長々としゃべりましたが、二人はろくに聞いていませんでした。
「やっぱりよっすぃ〜は不思議だよ」
「不思議っていうか変だよ」
「辻ちゃんの持ってる袋透明だから中丸見えだし」
- 78 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月10日(日)15時40分19秒
- 加護がどこからか箱を持ってきました。
「じゃあさ、この箱の中身も不思議じゃないんだ」
「不思議なことはないよ。ふたを開けないかぎりは無限の可能性があって、はっきりさせたければふたを開ければいいんだから。ケーキかな」
ふたを開けると緑色の長いものが勢いよく飛び出して、わたしの顔に命中しました。蛇のおもちゃだと気づいて、わたしは大声をあげて走り回りました。腰が抜けて床にへたりこみました。梨華ちゃんが笑いながら介抱してくれました。
「やっぱりよっすぃ〜って不思議だね」
五期メンバーが遠目でわたしのほうを見ていました。また奇声をあげて騒いでいると思っているにちがいありません。加護が蛇のおもちゃでわたしをつつきましたが、わたしは動きませんでした。箱の中を見てしまえば、不思議なことなど何もないのです。腰が抜けていたのではない、と思いたいです。
- 79 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月10日(日)15時40分50秒
- 「で、で、何が不思議なわけ?」
声が震えています。二人に抱えられてようやく立つことができました。
「こんなのが落ちてたんだ」
手渡されたものは珍妙な物体でした。硬式テニスボールにフォークが突き刺さっていました。
「どこで拾ったの?」
「朝きたら、ここの床に落ちてたの」
「お〜い、梨華ちゃん。カオリが呼んでるよ〜」
ここで梨華ちゃんは席を外しました。代わりにといってはなんですが、矢口さんがニコニコしながら近寄ってきました。
「なんだこりゃ。変なもん持ってるじゃん」
「そうなんですよ、矢口さん。こんなものが楽屋に落ちたんですよ」
- 80 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月10日(日)15時41分29秒
- 矢口さんはフォークをテニスボールから引っこ抜いた。矢口さんの指に力が加わり、テニスボールは空気を吐き出してへこんでしまった。
「ああ、いけません、矢口さん」
わたしは大げさに天を仰ぎました。矢口さんは不思議そうにわたしを見上げました。
「どうしたんだよ、よっすぃ〜」
ここが御祓い師としての腕の見せ所です。
「矢口さん、おまじないって知ってるでしょう」
「おまじない? 知ってるよ。何か一通りすませれば願い事がかなうってやつだろ」
「そうです。腕にゴムひも巻いて、それが自然に切れれば願い事がかなうとか、そういうやつです」
「そんなのただの迷信だろ」
「中にはそういうでたらめなものもありますが、長年信じられてきたおまじないというのは、何かの根拠がないと続かないものなんですよ。このフォークとテニスボールのおまじないは歴史があります。古いです」
- 81 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月10日(日)15時45分22秒
- 「古いって、どのくらい?」
「かのありがたい鑑真和尚が奈良の都に持ち込んだのが起源と言われています。その後真言宗や天台宗によって邪まな法として退けられましたが、鎌倉時代に日蓮上人が密かにこれを復活させました」
「そんな大昔にフォークとテニスボールなんかないだろ」
わたしは少々動揺しましたが、そんな気配はおくびにも出さず、矢口さんのつっこみに対処しました。
「もちろんそうです。大昔にはこのような道具はありません。時間が経つにつれて変化していく風習は珍しくありませんよ。隠れキリシタンが地下で密かに拝んでいたマリア像は次第に観音様そっくりになっていったという例もあります」
そうなんだ、と矢口さんはうなずきました。どうやら納得してくれたようです。
「で、このおまじないをするとどんな効果があるんだ?」
「これは狙った相手に呪いをかけることができます」
「呪い……まじかよ」
- 82 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月10日(日)15時46分01秒
- 「まじです。本来はフォークじゃなくて小刀、テニスボールじゃなくて木魚が使われていました。でもフォークとボールのほうが感じが出ていますね。これは丸々と太ったカエルを飲み込もうとするヘビの姿をイメージしてるんです。ヘビが呪いをかけている本人、カエルが呪われる相手を意味します」
「どんな呪いがかかるんだ?」
「室町時代の初め、まだ南朝の残党が近畿の山中に潜んでいた頃ですが、この南朝方の武士が北朝方に寝返った親族を呪うために、これを密かに神社に奉納したという記録が残っています。その寝返った武士は時の将軍足利義満に謀反の疑いをかけられ滅亡しました。また戦国時代には京都の法華宗がなんと延暦寺相手に集団でこの呪いをかけたそうです。法華一揆では延暦寺は法華宗徒に攻撃をしかけていた仕返しにです。その結果、延暦寺は魔王織田信長によって焼かれました。老若男女とわず生きたまま焼け死んだそうです」
矢口さんは顔をゆがめて、おえーと吐くまねをしました。加護もなんだか唇がゆがんでいます。もう一息です。
- 83 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月10日(日)15時47分20秒
- 「さらには、これ自体が生きて動いているのが目撃されています」
「これって、フォークが突き刺さったテニスボールが?」
「ここでは人の頭に三叉が突き刺さっています。これは江戸時代に石燕という人が絵に残しています。こんな感じです」
ヨッスィ ((( )))
−−∈( ^▽^) Σ(^〜^0;) ヒイィ
⊂ ._.つ
人 Y
し'(_)
(もののけに追いかけられる町民の図)
- 84 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月10日(日)15時48分34秒
- 矢口さんと加護はなんともいえないため息をついた。
「夜な夜な江戸の町を徘徊しては野犬やカラスを食べていたそうです。妖怪ですね。『ほげ』と呼びます」
「ほげ?」
「ほげです。漢字では『顎』と書きます」
「あごじゃなくて?」
「断じて『あご』ではありません。『ほげ』なんです。この妖怪は呪いをかけ損なって自分自身に呪いがふりかかってしまった武家の三男坊です。家は長男が継ぎ、次男は他家へ養子にもらわれていったのですが、この三男だけはどこにも行くあてがなくて長男のところに居候をしていたようです。ずっと自室にひきこもっていたのですが、ある日ふいと町に出たところ、町人の娘にひとめぼれしてしつこく言い寄ったのですが、けんもほろろにふられてしまい、逆恨みに呪いをかけたのだそうです。このおまじないは正当な理由がないと自分の身にふりかかってしまう恐ろしいものなのです」
「じゃ、このテニスボールも誰かが呪いをかけてたんだ」
- 85 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月10日(日)15時49分09秒
- 「そうなんです。この呪いの恐ろしさは、周りの人間にも容赦なく襲いかかります。それを邪魔した人間にも」
「お、おいら?」
わたしは目を閉じ腕を組みました。額にしわをよせて難しい顔をしました。
「そうです。呪いは矢口さんにかかってきます。やはり江戸時代の初期の話ですが、大阪の陣で滅ぼされた武家の一人が、これをうらんで幕府の重臣にこの呪いをかけてから自刃しました。これに気がついた家臣が呪いを外そうと、ほこらにあった木魚を燃やしたのですが、この家臣はやがて頭がおかしくなり、自分の殿様を切り殺して自分も切腹してしまいました」
「おいおい、おどかすのはやめてくれよー」
わたしは黙ったまま首を振りました。それでも矢口さんは強気でした。
「そ、そんなのただの作り話だろ。そうに決まってる」
- 86 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月10日(日)15時49分47秒
- そのとき、小さく丸いものが凄い勢いで矢口さんの後頭部を直撃しました。鈍い音がしたあと、ボールは大きく弾みながらどこかに行ってしまいました。
「呪いです」
わたしは矢口さんのために念仏を唱えてあげました。
==●☆(;〜゚◇゚)
/ つ つ
/ / /
(._.ノLノ
(矢口真里 飛んできたスーパーボールが後頭部を直撃するの図)
- 87 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月10日(日)15時50分44秒
- 「よよよよっすぃ〜、なんとかしてくれよー」
「……わたしにどこまでできるかわかりませんが、できるかぎりのことはやってみましょう」
矢口さんはわたしにすがりついてきました。道具を揃えないといけないので多少お金がかかりますよ、と確認したところ金ならいくらでも出すとの返事が返ってきました。交渉の結果、10万円で妥結しました。初回ならこれで満足するべきでしょう。一度信用を得ることができたらリピート発注が期待でき、口コミで顧客が増える可能性もあります。
わたしはテーブルに目録、長熨斗(ながのし、あわびののし、不老長寿を願う)、金包(きんぽう、紙幣)、末広(すえひろ、白無地の扇子、末広がりに繁栄する)、友志良賀(ともしらが、麻糸、長寿健康を祈る)、子生婦(こんぶ、昆布、子孫の繁栄を願う)、寿留女(するめ、保存食品として備える)、勝男武士(かつおぶし、鰹節、剛毅の象徴)、家内喜多留(やなぎだる、酒を入れる柳樽、清酒のかわりに御酒料をつつむ)を並べました。通販で買った結納品9点セットです。儀式っぽくなればなんでもよかったのです。
- 88 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月10日(日)15時53分25秒
- 手に黒い手甲をつけると、わたしはむにゃむにゃと呪文を唱え始めました。
「……はらぎゃてい……しふるふる……」
最後に思いきりテーブルをこぶしでたたきました。矢口さんと加護はぎょっとして少し飛び上がりました。
「これでおしましです」
「だ、大丈夫なのか? おいらの身は大丈夫なのか?」
「おそらく。ただ、怨念のこもった強い呪いは熟練した御祓い師でも完全に消し去ることはできません。そこでわたしは呪いの力を弱めるとともに、呪いの向かう方向をすこしそらしてみました」
「どこに行ったんですか?」
「わかりません。そんなに遠くには行かないと思います」
- 89 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月10日(日)15時54分45秒
- わたしたちは収録のためスタジオに向かいました。安倍さんや飯田さんたちはすでに先に向かっていました。スタジオでわたしたちは異様なものを見せつけられました。
「ぼいんぼいんぼいーん、梨華で〜す梨華で〜す」
梨華ちゃんが珍妙な振り付けとはしたない言葉を叫びながら踊り狂っていました。おそらくコントに使うギャグの練習をしていたのでしょうが、わたしはこのチャンスを逃しませんでした。
「ああ、矢口さん。呪いは梨華ちゃんを襲ったみたいです」
「……恐ろしい呪いだ」
\\ ボインボイン!! //
\\ ボインボイン!!/
+ +
+ ∧_∧ +
__∧_∧__ (^▽^∩)__ +
| (´D`; ) (つ 丿 )) |
| ( )(( ( ヽノ .|
/ ̄( ( (  ̄ ̄し(_) ̄ ̄/|
|| ̄ (_(_)  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||
∧
/ ̄ ̄  ̄ ̄\
| ・・・・・・・・・ |
(石川梨華 呪いを受け踊り狂うの図)
- 90 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月10日(日)15時55分27秒
- 矢口さんは約束の謝礼に色をつけてくれました。そして5期メンバーをつかまえては、わたしの腕前を宣伝してくれているみたいです。いずれ彼女たちにも妖怪に遭遇する機会があることでしょう。そのときにはリーズナブルな値段で御祓いしてあげましょう。
それにしても、辻の食い意地だけは御祓いのしようがありませんでした。昨日わたしは辻にたべさせてあげようと夏みかんを持ってきました。そしてちょっと辻をからかってやろうと思い、「夏みかんあげるよ」と黄色いテニスボールを辻に投げ渡しました。辻はフォークを右手に握って待ち受けていて、勢いよくフォークをボールに突き刺したのでした。辻は少しむくれましたが、すぐに夏みかんをあげるとおいしそうに平らげました。
矢口さんには妖怪『ほげ』がとり憑ついていたのですが、辻にはどのような妖怪が憑依しているのでしょうか。御祓い師3級程度の腕前では無理そうなので、2級取得に向けて精進を重ねているところです。
- 91 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月10日(日)15時56分24秒
- いちおうおしまい
- 92 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月11日(月)19時51分34秒
- 『不思議の国のチャーミー』
- 93 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月11日(月)20時36分16秒
- ボツ
- 94 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月11日(月)21時08分09秒
- ( T▽T)
- 95 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月12日(火)15時48分13秒
- ↑マジッスカ(w
個人的には『御祓い師〜』の続編熱望。
インチキ臭くて最高(w
あとAAも最高です!!
- 96 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月13日(水)21時04分02秒
- >>95
これ読んですごく赤面してしまった
耳まで真っ赤
- 97 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月13日(水)21時05分09秒
- 『不思議の国のチャーミー』
- 98 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月13日(水)21時05分44秒
- 石川梨華は女の子です。
女の子ですから夢を見ます。
梨華は歌手になることを夢見ました。
たくさんのお客さんの前で歌うことを夢見ました。
そしてその夢はかないました。
彼女はモーニング娘。になることができたのです。
それでも梨華は夢を見つづけました。
石川梨華は女の子だからです。
- 99 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月13日(水)21時06分35秒
- 今日も大好きなコンサートの日です。
たくさんの人が集まっています。
みんな石川梨華を待っているのです。
梨華は楽屋で時間が来るのを待っていました。
ときどき眼をこすります。
昨日はちょっと夜更かししてしまったからです。
ちょっとぐらいいいでしょう。
眠らせてください。
コンサートではちゃんと歌って踊るから。
だからほんの少しだけ。
みんなが待ってるよ。
みんなが梨華を待っているよ。
みんなが……。
- 100 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月13日(水)21時07分13秒
- 梨華は顔をあげました。
もうみんなの姿がありません。
梨華は楽屋を飛び出しました。
起こしてくれないなんてひどいじゃない。
梨華は走りつづけました。
いくつ扉を開いたことでしょう。
最後の扉を開いたとき、梨華は見渡すかぎり草原の中にいました。
ここはどこだろう。
きょろきょろと周りを見まわすと、白い燕尾服に大きな時計をぶらさげた、ぱっちりと眼を開いた女の子が走っていました。
「やばー、遅刻しちゃうよ」
女の子は大声をあげながら草むらを走っていきました。
「ちょっと待ってよ、よっすぃ〜」
梨華は声をかけました。
- 101 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月13日(水)21時08分15秒
- 女の子は同じモーニング娘。の吉澤ひとみだったからです。
ところが声がとどかないのか、女の子は呼びかけを無視して走りつづけます。
何度呼んでも振り向いてくれないので、梨華はあとを追いかけました。
どのくらい走りつづけたのでしょうか。
梨華は草に足をとられて転んでしまいました。
見上げると、女の子は大きな木の下に立っていました。
「早く行かないと間に合わないよ」
女の子は木の根元に吸いこまれて消えてしまいました。
梨華は立ちあがると、そこに行って様子をみました。
地面に大きな穴があいていました。
女の子はそこに飛びこんでいったのでしょう。
梨華は思いきってその穴に飛びこんでみました。
- 102 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月13日(水)21時09分12秒
- 「大丈夫? 生きてる?」
梨華は眼を覚ましました。
さっきの女の子が横にいました。
「よっすぃ〜、なんで置いていくの」
「あれ、どうしてわたしの名前を知ってるの?」
どうやらこのよっすぃ〜は梨華の知ってるよっすぃ〜ではないようです。
そういうこともあるのだろうと梨華は納得しました。
「そういえば遅れるとかいってたけど、なんだかわからないけど間に合ったの?」
「それね、よーく考えたら時計の針を少し戻しておけばよかったんだよね。もうすぐ3時だったけど、2時に針を合わせたからもう大丈夫」
「そういう問題なの?」
梨華は首をかしげました。
よっすぃ〜は得意そうにうなずきました。
- 103 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月13日(水)21時10分31秒
- 「そうだよ。大昔には時間を持っていた人って少なかったんだよね。殿様とか偉い人しか時計を持っていなかったから。江戸時代ではお城から太鼓の音で知らせていたみたいだけど、聞こえる範囲なんて知れてるし。お百姓さんは太陽が昇ると眼を覚まして、太陽が沈むとふとんに入っていたみたいだよ。時計がなければ時間なんてどうでもよくなるんだ。人が時間を気にするようになったのは蒸気機関車が発明されてから。鉄道のおかげでたくさんの荷物や人間を運ぶことができるようになったら、商売の規模がぐんと大きくなったんだ。そうなってくると品物がいつとどくのか気になってくるんだよね。時間がたてば値打ちの下がってしまう商品とかあるから。『時は金なり』って言ったのはアメリカのフランクリンだったっけ。避雷針を発明した人。雷のなる日にタコをあげて、雷は電気だってことを証明した人。よい子はまねをしないでね。ちょうどそのころ時計の技術も進歩したんだよね。フランスのボーマルシェっていたでしょ。『フィガロの結婚』ってお芝居を書いた人。ちょうどフランス革命が起きる前のだから、フランクリンと同じ時代の人だね。
- 104 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月13日(水)21時11分08秒
- その人もともと時計職人で、かなりの腕前があったおかげで宮廷に出入りすることができたんだ。『フィガロの結婚』っていうのは古い風習にとらわれた貴族をバカにしたお芝居なんだけど、なぜか貴族たちに大受けで本人も首をひねっていたんだ。革命が起こるのもむりはないよね。そうそう、フランクリンはアメリカの政治家でもあって、ちょうど独立戦争が起きたときフランスに来たんだ。イギリスと仲の悪いフランスなら手を貸してくれるかもしれないってね。時間に関係のある二人は面識があったかもしれないね。そしてこの頃にイギリスで蒸気機関車が発明されてたんだ。それでね、時計がふつうの人にも簡単に手が入るようになると、生活習慣が大きく変わったんだ。朝6時に起きて8時に学校行って5時に帰って7時に晩ご飯食べて12時に寝るって。するとね、時間を知るためには時計を見なければいけないんだけど、はじめに言ったように時間なんてもともとなかったものだからさ、時計の針が時間を決めるしかないんだよね。ということはさ、時計の針をいじくっちゃえば時間もそれに合わせてくれるってわけさ。わかった?」
- 105 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月13日(水)21時11分38秒
- 梨華はなんだかくたびれてしまい、思わずうなずいてしまいました。
「そういえばさあ、誰かに似てるなあと思ったらチャーミーじゃん」
「チャーミー? あたし?」
よっすぃ〜はうんうんとうなずきました。
よっすぃ〜がいうのならきっとわたしはチャーミーなんだろうと梨華は思いました。
「チャーミーもこんなところで何してるの? 矢口さんが呼んでるよ」
「えっ、矢口さんが」
口うるさい矢口さんに何をいわれるかわからないので、梨華はよっすぃ〜に居場所を聞くと走り始めました。
- 106 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月14日(木)02時59分35秒
- フィガロの結婚・・・なつかしい。
そんなことよりおもしろいっす。
- 107 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月14日(木)20時01分12秒
- >>106
『フィガロ』読んだことも観たこともないですけどね
- 108 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月14日(木)20時01分42秒
- 梨華は教えられたところにいきました。
そこは大きな広場で、中央には噴水と騎馬の石像がありました。
石像の前で梨華は大声で叫びました。
「矢口さーん、矢口さーん」
「ここにいるよ」
梨華がふりむくと、むっつりとした表情の矢口さんが石像にまたがっていました。
- 109 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月14日(木)20時02分18秒
- 「何してるんですか、矢口さん?」
「見りゃわかるだろ。石像にまたがってるんだよ」
「ですから」
「おまえ、ちゃんとわかれよ。地の文に『むっつりとした表情の矢口さんが石像にまたがっていました』って書いてあるだろ? それ以上でもそれ以下でもないんだよ」
「どうして石像にまたがってるんですか?」と言えばよかったと、梨華はすこし後悔しました。
「でも矢口さん、どうしてそんなむっつりとしてるんですか?」
「知るかよ。『むっつりとした表情の矢口さんが石像にまたがっていました』って書いてあるからむっつりするしかないんだよ」
- 110 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月14日(木)20時02分59秒
- これはどうもらちがありません。
梨華はよっすぃ〜の言葉を思い出そうとしました。
最初の2行しか読んでいなくて、あとはさらっと流していたのですが、どうやら「時間は時計が決める」ということを言っていたようです。
これだけですむ話だったんですね。
梨華は矢口にたずねました。
「ちょっとお聞きしてよろしいですか?」
「なんだよ」
「大昔から言葉ってあったんですよね」
「おそらくな」
「どれくらい昔からなんですか?」
「知らないのかよ。人間がサルと違うのは『二本足で歩く』『火を使う』『言葉を話す』からだろう。学校の授業聞かなかったのか? お前中卒か?」
梨華は激しく傷つきましたが、かさねてたずねました。
- 111 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月14日(木)20時04分46秒
- 「d、ではですね、言葉は人間が人間になったときからあったとして、文字はいつころからあったんですか?」
ここで矢口は腕組みして考えはじめました。
「メソポタミア文明のくさび型文字とか、中国の甲骨文字とかだから5千年くらい前かな」
「言葉よりずっと後にできたんですよね」
「そういうことになるな」
「ということはですね、人間にとって文字ははじめからあったものじゃなかったんですよ。それまでは文字がなくてもマンモスとか木の実とか食べていれば生きていけたんですから。ところがですね、えーと、たぶんそれだけじゃ満足いかなくなって、自分の持っている魚とあの人の持っている米を交換しようとなったとするじゃないですか。そうしたらずるい人なんかがいて、渡した渡さないでもめることもでてきたと思うんですよ。じゃあ何か証拠残しておこうってなって文字が使われはじめたんですよ、きっと。で、文字が発明されてこれは便利だと広まったのはいいんですが、そのうち人間は文字にしばられるようになっていったんですよ。『アメリカは契約社会だ』ってよくいわれるじゃないですか。文字に書かれているようにしていないといけない、っていうふうになってしまってるんです」
- 112 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月14日(木)20時05分23秒
- 「……で?」
梨華はよっすぃ〜のまねをしてみたのですが、半分にも足りませんでした。
まだまだ修行が足らないようです。
「で、ですから、こうしちゃえばいいんですよ」
梨華は修正液で『むっつり』という文字を消して、その上にボールペンで「にっこり」と書きました。
とたんに矢口は笑顔になりました。
「『にっこりとした表情の矢口さんが石像にまたがっていました』って書いてあるからな。にっこりしないとな」
「やっぱり矢口さんは笑顔がいちばんですよ」
梨華のお世辞に矢口は照れて頭をかきました。
- 113 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月14日(木)20時06分00秒
- 「で、矢口さん、わたしに何かご用ですか?」
「そう、そう。すっかり忘れていた。チャーミーはわたしたちと同じ傭兵部隊『タンポポ』の一員だから聞いているだろうけど、ゲリラ組織『プッチモニ』の掃討作戦を陛下から命じられた。他の隊員に連絡に行くから、チャーミーは先にお城に行ってくれ」
どうやら梨華は傭兵らしいです。
でも傭兵の姿にならないのは、梨華とチャーミーの違いがあるからでしょう。
「さっさといってこいよ」
梨華はちょっと腹がたってきました。
そこで『にっこりとした表情の矢口さんが石像にまたがっていました』の『矢口さん』の部分を修正液で真っ白にぬりました。
矢口さんの姿が消え、『にっこり』だけが石像の上に残りました。
梨華はスキップしながらお城に向かいました。
- 114 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月15日(金)00時29分46秒
- 『不思議の国のチャーミー』 、つぼです(w
不思議な雰囲気、独特の文体、ほのぼのとした空気、
まさにつぼです(w
応援しております。
- 115 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月15日(金)00時50分59秒
- >>114
よろしくね
今夜はなんだか眠れないよ
- 116 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月15日(金)00時51分42秒
- お城に入ると兵隊がいっぱいいました。
みんなの梨華を見る目が変です。
あまり好意を持たれていないようです。
汚いことでも平気でやる傭兵だからでしょう。
しかし傭兵がいないとこの国は戦争ができないので、面と向かって文句をいうものはいませんでした。
梨華は背が高くて髪の長い女兵士を見つけました。
『タンポポ』傭兵隊長の飯田さんでした。
「おお、チャーミー。早速きたか。なんだその格好は。ゲリラは田園地帯に縄張りを持ってるんだから、軍船には乗らんぞ」
梨華は水兵の服を着ていました。
『ザ☆ピース!』からコンサートが始まるからでした。
- 117 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月15日(金)00時52分25秒
- 「まあいい。陛下がお呼びだ」
玉座にいく途中で、加護ちゃん、矢口さんも合流しました。
泣く子も黙る傭兵部隊『タンポポ』が勢ぞろいしたのです。
真っ赤なじゅうたんがしかれた部屋に通されました。
王様が昼間からお酒をあびるように飲んでいました。
「中澤陛下、『タンポポ』参上しました」
「……ごくろう」
お酒のにおいが充満して、梨華は思わず顔をしかめました。
それが中澤陛下のお気に召さなかったようです。
「なんや、へんなやつが一人おるんかい」
- 118 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月15日(金)00時53分15秒
- 「はっ。こんなやつですが、ひとたび戦闘となると鬼ように働きます。この前のコンゴ動乱のときには村をナパーム弾で焼き払い一人も生かしませんでした。イエメン内戦では、金目のものを奪うと男は皆殺し、女子供は人買いに売り払いました」
「ほう。かわいい顔してやることやってんじゃん」
もちろん梨華には覚えがないことです。
チャーミーのしわざでしょう。
梨華は抗議しました。
「わたしは石川梨華です。チャーミーなんかじゃありません」
「おまえはチャーミーだろう」
飯田さんが手でおさえようとしましたが、梨華はそれをはらいのけました。
「チャーミーじゃありません。梨華は梨華です」
- 119 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月15日(金)00時54分25秒
- 「……ようわからんが、確かめてみようやないか」
侍従の平家さんが大きな鏡を持ってきて、梨華の前に立てました。
「よう見てみい。鏡には何が写ってる?」
「わたしです。梨華です」
中澤陛下は腹の底からしぼるように笑いました。
「違うて。そこに写ってるのはお前じゃない。よう似とるがな」
「どういうことですか?」
「手あげてみい」
梨華は右手をあげました。
「どや。おまえは右手をあげた。鏡の中のそいつは左手あげてるやろ。ほら、別人だ」
「でも、鏡が左右逆に写るなんてあたりまえじゃないですか」
- 120 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月15日(金)00時55分03秒
- 中澤陛下は突然立ち上がりました。
怒りで真っ赤に燃え上がっているようです。
「あたりまえ? 何の根拠があっておまえはあたりまえ言うんや。他人があたりまえ言うたかって、自分でちっとは考えたことがあるんか。脳みそあるんなら使わな親が泣くで」
梨華は恐くて涙が出そうになりました。
「第一ほんとに左右逆になるんか? 鏡の上に立ってみい!」
平家さんが鏡をじゅうたんの上に置きました。
梨華はおそるおそるその上に乗りました。
「どうや。下見て、どう写っとる?」
「やっぱり左右逆ですぅ」
- 121 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月15日(金)00時55分48秒
- 中澤陛下はつかつかと梨華に近づいて、胸倉をつかみました。
「むかつくやっちゃなあ。理由言ってみい」
「ですからあ、写ってるわたしを180度回転して並べてみると逆になるじゃないですかあ」
「ばかたれ!」
梨華は頬をたたかれ床に倒れました。
「なんで回転させなあかんのや。誰が勝手にそんなことせえ言うたんや。おまえの頭は天井に向かっておって、あっちの頭は地下に向いているやろ。上下がさかさまになっとるんや。さっきのも同じや。左右が逆になってるんやない。おまえらのツラが向かいあっておったやろ。今度は前後が逆になっとったんや。わかったかボケ」
梨華は頬がひりひりして、それどころではありませんでした。
- 122 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月15日(金)00時56分40秒
- 飯田さんが間に入りました。
「陛下、部下の非礼は隊長たるわたしの教育不足によるものです。お許しください」
「カオリがそういうのなら、今回のことは不問にしといたる」
加護ちゃんが納得したようにうなずいた。
「そっか、そっかあ。梨華とかチャーミーとかよくわからなかったけど、鏡に写っているのが梨華ちゃんで、ここにいるのがチャーミーってことなんだね」
「加護、頭いいじゃん」
それはちょっと違います、という梨華の声は弱々しくてみんなに聞こえませんでした。
- 123 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月15日(金)00時57分10秒
- 「それでな、カオリ。『プッチモニ』とかいうむかつくゲリラがおってな。反抗的でどないにもならん。収穫祭も近いし、ジャマいれられたらたまらん。あんたらの力で全滅させい」
「わかりました、陛下。必ずや『プッチモニ』の首を取ってまいります。チャーミー、早速だが敵の動向をつかんでこい」
「わたしがですか?」
「隊長命令だ。さっさと行ってこい!」
梨華はバタバタと走り出しました。
残った3人と中澤陛下は、ゲリラ殲滅の前祝とばかりに宴をはじめました。
- 124 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月16日(土)01時10分39秒
- ( ^▽^)
- 125 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月16日(土)01時12分37秒
- ゲリラ『プッチモニ』が田園地帯にいると聞いた梨華は、城外に広がる農村をめざして走っていました。
途中で2人の女の子がもめているのを見つけました。
1人は婦人警官で、もう1人に詰めよっていました。
「このミニパトの傷どうしてくれるの?」
「辻のせいじゃないです」
警官は安倍さんで、因縁をつけられているのは辻ちゃんです。
「辻はただ石ころを蹴っただけです」
「そのせいで車に傷がついたんでしょ」
梨華は気になって事情を聞くことにしました。
「辻ちゃんの蹴った石ころが車にぶつかったんですか?」
「そうじゃないよ」
- 126 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月16日(土)01時14分05秒
- 梨華が首をかしげると、辻ちゃんがくわしく話してくれました。
「辻が石ころを蹴ったら、それが空き缶にぶつかって、空き缶がころころ坂道を転がりだして、空き缶が寝ていた猫にぶつかって、びっくりした猫が興奮して走りだして、魚屋でサンマを盗んで、魚屋さんがそれを追いかけて、猫に向かって棒を投げて、棒が普請中の家屋に飛んでいって、驚いた大工さんが道具箱を落として、中の釘がいっぱい落ちてきて、通りかかったパトカーに降りかかって、それで車に傷がついたのです」
「それじゃあ、辻ちゃんのせいじゃないよねえ」
「そうです。辻のせいじゃないのです」
安倍さんは警棒で自分の肩をトントンとたたきました。
「あのねえ。この子の行為からすべてが始まってるんだから、この子のせいに決まってるでしょ」
- 127 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月16日(土)01時14分49秒
- 「魚屋さんや大工さんはどうなんですか?」
「だから、辻が石ころを蹴飛ばさなきゃ、魚屋さんが棒を投げることもなかったし、大工さんが道具箱を落とすこともなかったの。犯罪を構成するのは実行行為と法益侵害の結果なの。この場合実行行為は辻が石を蹴ったこと、法益侵害は国家の財産たるパトカーを傷つけたこと」
「でも、辻ちゃんのしたこととパトカーが傷ついたことを結びつけるのは無理があります」
「いいえ、関係あります。行為と結果の間に因果関係があるかどうかは、その行為がなかったらその結果は起こらなかったかどうかで判断するの。もし辻が石を蹴らなかったら、釘が降ってくることはなかったのは確かなんだから、辻のせいであたしの車が傷だらけになったことはおおいに関係があるのよ」
- 128 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月16日(土)01時15分36秒
- 「そ、そうです。辻は14才なのです。刑事責任はないのです」
「14才になってない子はね。14才は責任あるのよ。まあ少年法の適用があるから地裁じゃなくて家裁で審判されるのは間違いないけど」
辻ちゃんはこれからの自分の運命を頭に描いたのでしょうか、涙をぽろぽろと流し始めました。
「いやです。そんなのは絶対いやです」
「しょうがないでしょ。悪いことしたんだから。悪いことしたら必ず罰を受けないとやっていけないのよ」
安倍さんは辻ちゃんの手首に手錠をかけました。
それから黒いジャンパーを辻ちゃんの頭にかぶせ、タオルを手首にぐるぐると巻きました。
さすが安倍さんは人権感覚が優れています。
- 129 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月16日(土)01時16分11秒
- 「ちょっと待ってください。そんなのやっぱりおかしいです」
「かわいそうだけどこれが法治国家の定めなんだよ」
「そうだ、辻ちゃん、パトカーを傷つけようと思ったの?」
ジャンパーが左右に動きました。
「つまりこれは過失です。器物損壊に過失の規定はありませんから無罪です」
安倍さんは梨華をじっと見つめました。
ぽんと手をたたき、ジャンパーとタオルを投げ捨て、手錠を外しました。
「梨華ちゃーん」
辻ちゃんは梨華に飛びつきました。
「それじゃあ、民事で争うことにする。修理代と逸失利益を請求する訴訟を裁判所に出すよ。もちろん金利は短期プライムレートで」
安倍さんはパトカーに乗って行ってしまいました。
辻ちゃんが梨華をみつめます。
「いい弁護士を探してね」
大事な任務を思い出した梨華は、すがりつく辻ちゃんをふりほどいて走り出しました。
- 130 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月16日(土)01時36分28秒
- ( ^▽^)
- 131 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月18日(月)22時49分12秒
- にっくきゲリラの家が見えてきました。
垣根からそっとうかがうと、3人の女の子が庭にいました。
丸いテーブルを囲んで、優雅に紅茶をたしなんでいました。
「ミルクはどれくらいいれます?」
「あたしにはたっぷり入れてね、よっすぃ〜」
白い燕尾服に大きな時計をぶらさげた女の子がいました。
よっすぃ〜です。
「ベーグルもありますよ、保田さん」
「あんたも好きねえ」
梨華は注意深く観察しました。
3人は武器らしいものは持っていません。
しかし油断してはいけません。
弱兵相手とはいえ、数千人の国王の軍隊を追い払った面々です。
そこで世に恐れられている傭兵部隊『タンポポ』が召集されたのです。
- 132 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月18日(月)22時50分03秒
- 偵察の役割ははたしたので、ここはいったんお城に戻るべきだと梨華は判断しました。
そこで匍匐前進で引き返そうとすると、声がかかりました。
「あ、チャーミー。何してるの? こっちにきてお茶しようよ」
梨華がゆっくり振り向くと、よっすぃ〜が笑顔で手招きしていました。
梨華はどうしようかと思いましたが、結局お呼ばれされることになりました。
「チャーミー、お城のほうはどうなってるの?」
「え、えっとお……」
敵に自軍の情報を教えるわけにはいけません。
「よっすぃ〜、チャーミーをいじめちゃだめだよ。チャーミーは『タンポポ』所属なんだからさあ」
ごっちんが助けてくれました。
「そっかー。そういえばそうだったね。ごめんね」
- 133 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月18日(月)22時50分45秒
- 「聞きたいことがあるんですけど、どうしてみんなはゲリラやってるんですか?」
よっすぃ〜はきょとんとした眼をしました。
保田さんは足を組んで眼をとじました。
ごっちんはくすくす笑っています。
「わたし何か変なこと言った?」
「チャーミー。わたしたちはゲリラでもなんでもないよ。この小さな家で仲良く暮らしているだけだよ」
「でも、お城でも農村でも、ここでゲリラが活動してるって」
「まず、ゲリラとは何かってところから始めないとだめだね。ゲリラとは、政権奪取を目指しているけれど、現政府の弾圧とか何かで普通の方法ではそれが望めず、かといって正面から戦争をする力もなく、神出鬼没に抵抗しながら支持者を増やしていく組織ってところかな」
「それはちょっと違うんじゃないかなあ。あらかじめ支持者がある程度いないとだめなんじゃないかなあ。そうじゃないと補給がすぐ切れちゃうもん」
「お、ごっちん頭いいねえ。でもなかなか定義するのは難しいよ」
「それで、わたしたちは政権を握ろうとも思ってないし、支持者もいないから、ゲリラじゃないんだよ」
- 134 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月18日(月)22時51分29秒
- 梨華は少し混乱しました。
今まで聞いてきた話と違っているからです。
「それはね。王がわたしたちをゲリラとするのは、兵隊を持つ方便にすぎないからだよ。この国は敵対する国もないし、農村の人たちもおとなしいから軍隊を持つ理由がない。だからわたしたちをゲリラと決めつけることで軍隊を持つ正統性を主張しているんだ」
「どうして王様は軍隊を持ちたがるんですか?」
保田さんの言葉でうかんできた梨華の疑問は当然のものでした。
「それはね、あの人が王で、ここが王国だからだよ」
「さすが圭ちゃん、うまいこと言うねえ」
ごっちんは保田さんの肩をぽんとたたきました。
「近代的な王国において王が王となりうるためには、常備軍と官僚制度が必要なんだ。王が王である先天的な理由はどこにもない。となると反対者をだまらせるために作りあげられたのが、この2つの組織なんだ」
- 135 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月18日(月)22時52分10秒
- 「保田さん、でも王国でない国も軍隊がありますよ」
よっすぃ〜が2つめのベーグルを手にして言いました。
「それは論理関係をごっちゃにしているぞ、よっすぃ〜。王国でない国は軍隊を持つか、持たないかのどちらかだ。王国は必ず軍隊を持つんだ」
「『王国は軍隊を持つ』、これの対偶は『軍隊を持たない国は王国ではない』だからだね、圭ちゃん。逆や裏は必ずしも真ではないと」
「ちょ、ちょっと待ってください。軍隊を持たない王国でない国ってあるんですか?」
「さあ、知らないね」
保田さんは残った紅茶を飲みほしました。
「よし、じゃあ席替えだよ」
4人はカップを持つと、それぞれ右の席に移りました。
よっすぃ〜は4つのカップに紅茶を注ぎ始めました。
- 136 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月18日(月)22時52分48秒
- 「あなたたちはほんとうにゲリラじゃないんですか?」
「どうだろうね。よっすぃ〜はどう思う?」
よっすぃ〜はコホンとせきばらいをしました。
「さっきは定義から入ったけど、定義なんて都合でどうとでも変わっちゃうからあてにしないほうがいいと思うんだ。言葉はうつろいやすいし」
「そうかもねえ。じゃあやっぱあたしたちってゲリラ?」
「それいいねえ。ゲリラだって呼ばれるから、わたしたちはゲリラなんだよ、きっと」
よっすぃ〜とごっちんは楽しそうに笑い声をあげました。
「そうか。抵抗活動をしないゲリラがあってもいいかもね」
保田さんはうなずきました。
「そうそう」
「保田さんがゲリラの親分」
「あたしたちはその手下」
「そ、それでいいんですか?」
梨華ちゃんの疑問に3人は同時にこたえました。
「いいの」
- 137 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月18日(月)22時53分40秒
- ここでまた席替えがありました。
「さて、わたしたちはやっぱりゲリラだと決まったわけですが、保田さん」
「ん?」
「このあとどうなりますかね」
「そうだね。王としてはやっぱり放ってはおけないだろう」
「攻める?」
「攻めるだろうね。攻めなきゃ王じゃない」
「攻める前にやっぱり偵察するよね、圭ちゃん」
「もちろん。『敵を知り己を知れば百戦危うからず』っていうからね」
「保田さん、頭いい」
ここに斥候がいることを3人は忘れているようです。
「その後どうします?」
「その情報を得てから作戦をたてる。ここは後ろが山だから背後をつくことはできない。となると真正面から力攻めしかないだろうな。飛行機があれば爆撃してわたしたちの武器を破壊するだろうが、貧しいこの国にはそんなものないしねえ」
- 138 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月18日(月)22時54分39秒
- 「すると数千人の兵隊がアリのようにやってくるわけですね」
「いや、今度こそという気持ちが国王にはあるだろうから、全兵力を投入するだろうね。100石で2人として2万人くらいかな」
「すげー。2万人かー」
よっすぃ〜はなんだか楽しそうです。
「3人と2万人じゃあねえ。どうしよう、圭ちゃん」
「敵のことはじゅうぶん知ってるよ。指揮は『タンポポ』の隊長が執るだろう。あそこの司令官は無能じゃないけど融通がきかないのが欠点だ。まず2手に軍をわけるだろ。1つは城からまっすぐこっちに向かう。もう1つは沼を迂回して側面をつくんじゃない」
「直進する軍が飯田隊長で、側面軍は矢口さん?」
「いや、隊長は小心者だから腹心の矢口を手放したりはしない。側面軍は加護が率いてくるだろう。そこにつけいる隙があるはず」
- 139 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月18日(月)22時55分21秒
- 「いつごろ動きますか」
「偵察が帰り次第すぐにだろうね」
ここではじめて3人は梨華のほうを見ました。
「なんだ。チャーミーは斥候だったんだね」
「そっかそっか、じゃあここにひきとめておけば当分来ないかな」
保田さんは難しい顔をしました。
「チャーミーは『タンポポ』だけど、下っ端だからねえ。なかなか戻らなかったら飯田隊長は裏切ったとみなすかも……」
ここで保田さんの声がとぎれました。
よっすぃ〜が梨華ちゃんを抱えてテーブルから跳びのきました。
白いテーブルが爆音とともにバラバラになりました。
- 140 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月18日(月)22時55分53秒
- ( T▽T)
- 141 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月19日(火)22時11分56秒
- 梨華には何が起こったのかすぐにはわかりませんでした。
小高い丘にあるこの家から、白馬にまたがった飯田さんの姿が見えました。
その気高さはまるでジャンヌ・ダルクのようでした。
梨華は自分が捨てられたことに気づきました。
「チャーミー、ぼけっとしてないで、武器を持つんだよ」
「あたし……」
「だってチャーミーもゲリラにされたみたいだし」
保田さんはすでに機関銃を国王軍に向けています。
ごっちんはロケットランチャーを肩にかついでいます。
よっすぃ〜は梨華を下ろすと、得意の遠投で手榴弾を敵陣に投げつけていました。
「ほらほら」
梨華は保田さんに機関銃を手渡されました。
映画で見たことはありましたが、実物を手にするのはもちろん初めてのことです。
- 142 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月19日(火)22時12分29秒
- 「国王軍の装備は?」
「見た目は派手ですが、装備は旧ソ連のお下がりがほとんどです。戦車が10台ほど後方に見えます」
「いざというときに投入するつもりね。後藤、右手のほうは?」
「まだ何も見えないよー」
「輸送手段がないから当分来ないわね」
丘の斜面を国王軍の兵士が登ってきました。
「圭ちゃん、来たよー」
「ぎりぎりまでひきつけて……今よ」
いつのまにか鉄の壁にかわっていた生垣の隙間からごっちんとよっすぃ〜は機関銃を斉射しました。
手前の兵士たちが斜面を転がっていきました。
「ほら、チャーミーも」
梨華はわけもわからず2人にならいました。
快感に打ち震える余裕などありません。
- 143 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月19日(火)22時13分09秒
- 「左からよじ登ってくるよー」
よっすぃ〜の手榴弾は的確に敵兵をとらえました。
「ん……敵が退いていく」
「圭ちゃん、ミサイルが飛んでくるよー」
「ふーん」
保田さんが携帯パソコンをパチパチとはじくと、家の裏手から迎撃ミサイルが飛んでいきました。
2つのミサイルがぶつかり、ミサイルの弾頭が国王軍の兵士たちの頭上に落ちていきました。
「パトリオットかっけー」
「なんでそんなものまであるんですか?」
「そりゃゲリラだから」
梨華が草原で燕尾服のよっすぃ〜を見つけたとき、よっすぃ〜は武器の買い出しに行っていたのでした。
資金源は3人の写真集の売上です。
傭兵部隊『タンポポ』は2人しか写真集が出ていませんので、資金力の差がそのまま装備の違いとなったようです。
- 144 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月19日(火)22時13分46秒
- 「保田さん、加護軍が見えてきました」
「装備は……貧弱ね。飯田隊長らしいね」
先ほどのミサイルで混乱している正面軍を放置して、3人と梨華は側面軍に当たりました。
加護ちゃんの叱咤もむなしく、火力に劣る側面軍はゲリラの苛烈な攻撃に散り散りになってしまいました。
国王軍の攻撃が止みました。
「隊列を整えるみたいですよ」
「圭ちゃん、どうするー。やっつける?」
「といきたいけど、こっちは4人だし。積極策は難しいわね」
梨華は鉄の生垣からおそるおそる顔を出しました。
国王軍は数キロほど後退しています。
丘の家と国王軍の間には、かつては人間の形をしていたモノが転がっていました。
目をそむけたいのに、そうすることができませんでした。
中には見覚えのある顔がいくつかありました。
いっしょにオーディションを受けた女の子たちでした。
娘。になりたくてもなれなかった女の子たちでした。
梨華は声にならない叫び声をあげました。
- 145 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月19日(火)22時14分36秒
- 「保田さん、戦車が来ました」
10台の戦車が歩兵を従えるようにゆっくりと前進してきました。
ごっちんがロケットランチャーを構えました。
轟音とともに兵士が宙を舞いましたが、戦車は平然とキャタピラを動かしています。
「圭ちゃん」
「とりあえず数発撃ちこめ。じゃまな歩兵はそれで逃げ出すだろう。よっすぃ〜はあれを用意して」
保田さんの思惑通り、国王軍の兵士はわれ先に逃げ始めました。
しかし戦車は死骸を踏み潰しながらゆっくりと丘の斜面を登り始めました。
「準備できましたあ」
「じゃあ、後藤、爆弾かかえたら行くよ」
「おーけい」
「よっすぃ〜はチャーミーを連れて家の中に」
「……はい」
梨華はよっすぃ〜に手を取られて、小さな家に走りこみました。
「どうしてこんなことに……」
「どうして? それはこっちがゲリラで、あっちが国王軍だからだよ」
- 146 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月19日(火)22時15分11秒
- よっすぃ〜が台所のじゅうたんをめくると、地下室への階段が現れました。
「地下室の奥は洞窟になっていて、進んでいくとはしごがあるからそれを登って。そうしたらもとの世界に戻れるよ」
「よっすぃ〜……」
「どうもわたしたちが知っているチャーミーじゃないみたいだね。チャーミーだったら鬼のような顔して撃ちまくるのに」
「わたしは石川梨華だよー」
「そう。じゃ、梨華ちゃん。バイバイ」
梨華がはしごを降りると、よっすぃ〜はじゅうたんをかけました。
梨華は走りました。
「ハリアーかっけー」という叫び声が梨華の耳にとどきました。
そこから先は戦闘機の爆音しか聞こえません。
梨華は涙を流しながらはしごを登りました。
光が見えてきました。
外に出ると、そこははじめの草原でした。
梨華はくたくたになって、寝っころがりました。
そしてゆっくりと目を閉じました。
- 147 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月19日(火)22時15分52秒
- 「……ちゃん、梨華ちゃん」
梨華が目を開けると、よっすぃ〜が梨華をゆすっていました。
「もうすぐ始まるよ」
石川梨華は夢を見続けなければなりません。
それがどんなにつらい夢であっても、それが梨華の使命なのです。
梨華はよろよろと立ち上がりました。
みんなが円陣を作って梨華を待っています。
手を合わせて、いつもの気合入れをしました。
そして舞台に向かって歩き始めます。
夢の舞台へ。
- 148 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月19日(火)22時16分32秒
- おしまい
- 149 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月19日(火)22時17分36秒
ノノノノヽヽ //
( O^〜)_____n
/ __つ_,=-ッ'’  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ~
_) .,彡、 ゙i \
vy),,vWy(___ノ....(___) wvy)、vWy)w.wvy)、vw
.
- 150 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月19日(火)22時24分51秒
- . Σ≧oノハo≦ ツジカゴ
⊂(◇^ ) フセナ
━━、─0⊇∪⌒`つ
Μ  ̄ ̄,`````````````
- 151 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月20日(水)23時01分40秒
- 『マニア』
- 152 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月20日(水)23時02分10秒
- 「うむむむ」
わたしはトイレの鏡の前でうなっていた。ジーンズのポケットに入れておいたはずのハンカチがない。両手はぐしょぐしょに濡れている。
もし自分が男だったら豪快にジーンズでぬぐって素知らぬそぶりでトイレを出て行くのだが、まがりなりにもわたしは女の子であり、一応アイドルである。もしおしゃべりなスタッフにでも見つかったら、インターネットや暴露雑誌でわたしの恥ずかしい所業がばらされてしまう。
「よっすぃ〜、何やってんの?」
加護が扉を開けて入ってきた。地獄に仏とはこのことである。無事、加護からハンカチを借りることによってわたしの尊厳は守られることになった。
「ハンカチ持ってないの? よっすぃ〜不潔だあ」
「違うって。ちゃんと持ってきてたけど、どこかにいっちゃったんだよ」
朝には確かにあった。着替えて、レッスンが終わって、着替えなおしてさあ帰ろうというときになくなってるのに気づいたのだった。
- 153 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月20日(水)23時02分42秒
- 「どこかに落としちゃったんじゃない?」
「最近よく物をなくすんだよなー。気をつけないと」
愛用のシャープペンシル、三文判、ギザギザつきの十円玉、わたしの汗がしみこんだタオル、おこづかい帳、MD、小さい団扇、等々。
「加護も最近よくなくすよー。この間携帯のストラップなくしちゃった」
「ストラップ?」
それはおかしい。携帯に結んである紐をどうやってなくすというのだ。つまりこれらの物はなくなったのではなく、盗まれたと考えるのが正しい。
「ギザギザの十円玉盗んでどうするの?」
「いや、全部が全部盗まれたんじゃなくて、中にはほんとうにうっかりでなくしたものがあるかもしれないけど」
- 154 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月20日(水)23時03分12秒
- もし盗まれたのなら、他のメンバーにも同じ目にあっている人がいるはずだ。そう結論づけたわたしたちはそれとなくみんなに聞いてみることにした。
飯田さんはクレヨンと目薬を失っていた。安倍さんは24時間テレビのときにしていた眼帯。矢口さんは浜崎あゆみがしていそうなサングラスと飲みさしのペットボトル(きりり)、保田さんはうたばんに出たときにもらった保田像。
「小川が『そうだ!』で手にしていたグローブ片方、高橋が田舎から送られてきた水ようかん、新垣が髪飾り、紺野が足に巻いていた包帯と」
「かなりマニアックな物がなくなってますね」
「みんなつい最近なくしてるし、やっぱりこれは盗まれたと考えてよさそうだね」
ごっちんにさりげなく近づいて、さりげなく最近物をよくなくすことを告げた。ごっちんはうんうんとうなずいた。
「あたしもそうなんだ。よっすぃ〜といっしょに買った指輪なくしちゃった。ごめんね」
向こうでは辻がアメがないと騒いでいた。これは毎度のことだから関係ないかもしれない。
- 155 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月20日(水)23時03分51秒
- 娘。の個人的なものが次々となくなっている。まず考えられるのは、熱烈なファンに売りつけるために盗んだということだ。わたしは保田さんに頼んで、インターネットオークションに流れてないかどうか探してもらったが、そのようなものは見つからなかった。
「ということは、蒐集自体が目的ということだね」
「どんな使われ方してるか想像すると気色悪いね」
それもかなり身近にいる。そうでなければ盗めない。わたしのハンカチはレッスンの間に盗られているのだ。
「よっすぃ〜、梨華ちゃんは何も盗られてないよ」
「へ?」
確かに梨華ちゃんに聞いたらそんな返事が返ってきた。他の十二人がずぼらで梨華ちゃんだけがしっかりしているとは考えにくい。ということは。
「梨華ちゃんがその気色悪い泥棒ってこと?」
「そうとしか考えられないけど……」
- 156 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月20日(水)23時04分22秒
- しかし証拠がない。そこで梨華ちゃんの住むマンションに確かめに行くことにした。梨華ちゃんはわたしたちのもくろみを知ってか知らずか快諾した。
わたしたちは梨華ちゃんの部屋をじろじろと眺めたが、かつてわたしたちの所有していた物はなかった。盗んだとしたのなら、もちろんどこかに隠してあるのだろう。梨華ちゃんがコーヒーを入れにいったすきに、二人でタンスやベッドを物色してみたが、梨華ちゃんの私物以外は何もなかった。
梨華ちゃんはわたしたちが訪ねてきたことを素直に喜んでいるようだった。いろいろともてなしてくれる様子を見ていると、罪悪感がふつふつとわきあがってきた。
「梨華ちゃん、トイレ借りるよ」
トイレは別に芳香剤くさくはなかった。部屋に戻る途中、わたしはあることに気づいた。
- 157 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月20日(水)23時04分54秒
- 梨華ちゃん宅を辞去することにした。エレベーターに乗るまで梨華ちゃんは見送ってくれた。わたしたちは一階に降りて、マンションを出て上を見上げた。梨華ちゃんが手を振っていたのでこっちも手を振って返した。梨華ちゃんの姿が視界から消えるのを待ってから、わたしは加護の手をひっぱってマンションに戻った。
「どうしたの?」
「さっきトイレにいったとき、なんだか変な感じがしたんだ。それでよく見てみたら、梨華ちゃんの部屋の大きさがなんだか変だったんだ」
「変て?」
「部屋の外から見た感じと、中から見た感じがくい違ってた。外からだと大きい部屋に見えるのに、中だとそれほどでもなかった。きっと隣が隠し部屋になってるんだよ」
「じゃあ、そこに盗まれた物が隠してあるんだ」
「おそらくね。でもその場所を見ても、どうやって隠し部屋に入るのかわからなかった。梨華ちゃんしかいじれない細工がしてあるのかもしれない」
- 158 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月20日(水)23時06分00秒
- わたしたちは梨華ちゃんの部屋の前に戻った。
「どうするの?」
「こうするんだよ」
わたしは左右の部屋が留守であることを確認してから、大声で叫んだ。
「火事だ!」
勘のいい加護もいっしょになって叫んだ。
「火事だよ!」
すると、部屋の中からどたばたする音が聞こえてきた。わたしたちは隣の部屋の玄関前
に隠れた。やがて梨華ちゃんが裸足で玄関を飛び出してきた。
「あ……」
わたしは加護の口元を両手でふさいだ。人は天災が起こると、まっさきに自分の大切な
物を持ち出そうとするはずだ。梨華ちゃんは、モーニング娘。グッズをいくつかかかえて
いた。その中にはわたしたちが最近なくした物もまじっていた。
- 159 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月20日(水)23時07分22秒
- 梨華ちゃんは左右を見回し、火事などどこにも起こっていないことを確認すると、ほっと一息ついてから部屋の中に消えた。わたしは加護と手をつないでエレベーターに乗りこんだ。
「梨華ちゃんて娘。マニアだったんだね。自分が娘。のくせに」
わたしが返事しないでいると、加護は重ねて聞いてきた。
「よっすぃ〜やっぱり怒ってるの? どうする?」
「どうもしないよ」
実際、わたしは怒っていなかったし、梨華ちゃんを問い詰める気も起こらなかった。あの隠し部屋があるらしいと感づいたとき、わたしは少し腹がたったのは事実だ。でも、梨華ちゃんが火事だと思って部屋を飛び出したとき、裸足で飛び出したとき、そんな気持ちはどこかに吹き飛んでしまった。写真集『よっすぃー』を胸にかかえていた彼女を見たときに。
- 160 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月20日(水)23時07分55秒
- おしまい
- 161 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月20日(水)23時08分29秒
- (〜^◇^)<またパクリかよ!
- 162 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月20日(水)23時09分03秒
- (0^〜^)<えへへ
- 163 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年03月25日(月)03時59分44秒
- 隠し部屋に陳列された品々とそれに囲まれて至福のときを迎えている梨華ちゃん・・・。
(ちなみに私は隠し戸棚しか持ち合わせていない・・・)
- 164 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月25日(月)23時25分38秒
- (0^〜^)<さんきゅーべいべー
- 165 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月28日(木)21時18分32秒
- 『窓際アイドル吉澤ひとみ』
- 166 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月28日(木)21時19分06秒
- こんなことになるとは夢にも思っていなかった。多くの人が注目している、その視線の先はまぎれもなくこのわたしだった。どうしてこんなことになってしまったのだろうか、首をひねりたい気分だが、今それをすることはできない。新曲お披露目の真っ最中なのだから。
- 167 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月28日(木)21時19分43秒
- 自分の中の異変に気がついたのは、もう一年以上前のことだ。それはオーディションのときの寺合宿でのことだったから、最初から始まっていたことになる。
わたしは合宿の最中、猛烈な腹痛に襲われた。その原因はプレッシャーに負けたことにあった。モーニング娘。になりたい。この強い気持ちに体のほうが耐えられなかった。まだ合格していない時点でこの有様なのに、アイドルになったら受けるであろう様々な抑圧に打ち勝つことなど不可能だった。
そのことはオーディションの主催者にも自明だったのだろうが、どういうわけかわたしは合格してしまった。歌もダンスも、わたしよりはるかに上手な人がいたにもかかわらずだ。
- 168 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月28日(木)21時20分15秒
- どのような思惑があったのかはわからないが、わたしの取るべき手段としてまず思いついたのは、合格を辞退することだった。今までそのようなことをした人間はいない。切り出し方次第では、主催者、特にTV局にとっては格好の話題作りになったには違いない。ところがわたしの心はそれを否定した。どうしてもアイドルに、モーニング娘。になりたいという気持ちだけは消すことができなかったのだ。
心と体が相反する主張をしている。どちらの道を選んでも、心と体のどちらかがボロボロになってしまう。両者を制御すべき脳は混乱し始めてきた。わたしは双方が納得のいく解決策を見出さなければならなくなった。アイドルでありながらアイドルではないということが可能なのだろうか。
- 169 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月28日(木)21時20分46秒
- 誰にも相談することができず思い悩んでいた。そしてある日、なんとなく眺めていたTV番組でヒントを見つけた。会社で働くおじさん向けの番組で、「窓際族にならないために」というものだった。発送の転換である。「窓際アイドル」になることができるならば、体への負担も小さいだろうし、一応アイドルということになるのだから心も納得できるだろう。
わたしは食い入るようにTVを見入った。窓際族とは、会社で何の仕事も与えられず、他人の邪魔にならないよう部屋のすみっこに追いやられたサラリーマンのことらしい。クビにすると労働組合がうるさいから、飼い殺しにするということだ。ただし今のような不況だと、いきなり解雇されることもありうるから窓際族でいることも難しくなっているようだ。
では窓際アイドルになるにはどうしたらいいのか。何も働きがなかったらすぐに消えてしまうのがこの業界だ。だからそこそこ仕事をこなしつつ、それでいてなるべくそれを最小限にとどめなければならない。わたしはただその一点のみに集中することにした。
- 170 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月28日(木)21時21分24秒
- 着々とわたしの計画は進んでいった。
最初に自分の名前を売り出すことについてはどうしようもない。アイドルとしては最低限必要なことである。それも加護の名前ががまず売れ始め、やがて起こった梨華ちゃんの盗聴騒動などでわたしの名前はうまい具合に薄れていった。
事務所がなんとかしてわたしたち新メンバーを売り出そうと四苦八苦していたが、娘。の人気は現時点では先輩方に負うところがほとんどである。特に安倍さんとごっちんの功績は大である。そこでわたしは「ライバルは後藤真希」宣言をした。これによりごっちんはわたしのことを警戒しはじめた。安倍さんははじめからわたしに興味がないようだった。二枚看板から離れたところにいることが重要である。とばっちりで売れ出すことは避けなければならない。
- 171 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月28日(木)21時21分58秒
- それから寡黙なキャラでいることを忘れてはならない。何かしゃべればカメラがこっちを映すからである。後ろでニコニコするくらいでちょうどよい。ただ隣で梨華ちゃんが、一生懸命TVに映ろうと発言するので、こっちとしてはいい迷惑だったのだが、やがて梨華ちゃんは「発言が寒い」ということになったのでとりあえず一安心した。
派生ユニットではプッチモニに入った。本当はタンポポのほうがよかった。三分の一より四分の一のほうが目立たない。どこにも入れなかった辻がうらめしそうな顔をしていたが、それはそれで目立つことになる。プッチモニは保田さん、市井さん、ごっちんの三人でミリオンを生み出した大人気ユニットである。市井さんが抜けてわたしが入ったことに釈然としないメンバーやファンもいることだろう。敵意はさらりと流して、かといって絶大な支持を受けるにはいたらない、その加減が難しいところだ。
- 172 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月28日(木)21時23分03秒
- プッチの新曲はわたしのイメージを利用した曲ということだった。つんくさんも余計なことをしてくれる。だいたいわたしはクールな性格ではない。人一倍小心者なのだ。そんな曲を歌うアイドルなんかいないだろうが。プッチの活動をしていくうちにごっちんと仲良くなってしまった。しかし実は取り越し苦労だったことがわかった。ごっちんはトークや反応が鈍いのでバラエティ向きではなかったからだ。カメラも十分承知しているので、他の誰かが面白いことを言ってもごっちんの表情を抜くことは少なかった。わたしは安心してごっちんとまったりとすることができた。それは唯一気の休まる時間だった。
- 173 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月28日(木)21時23分34秒
- 先輩方との関係もまずまずだった。中澤さんは梨華ちゃん、飯田さんは辻、矢口さんは小さい二人をかわいがった。安倍さんは孤高、保田さんは不干渉主義だった。矢口さんは一応わたしの教育係だったので、何かとわたしに目をかけてくれたが、わたしのほうで適当にあしらっていた。ただ中澤さんへの対処が困った。窓際アイドルというわたしの血のにじむような努力が、あの人には手を抜いているかのように見えたらしい。しかし事情を話せばぶっ飛ばされることは目に見えている。自然とわたしと中澤さんは疎遠な関係となった。
- 174 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月28日(木)21時24分08秒
- 辻加護がミニモニ、梨華ちゃんがカントリー娘。と、着実にアイドル活動をこなしている一方で、わたしはこれといったものがなかった。娘。のレギュラー番組でも話をふられることはほとんどなく、唯一目立てるコーナー「よっすぃ〜の要ちぇっけらちょー」でも後ろでごっちんが遊んでいる姿のほうがよっぽど目立つという始末になっていた。「放置キャラ」と世間では蔑まれていたようだが、これこそがわたしの追い求めていた「窓際アイドル」なのである。
その頂点は中澤さんが卒業した頃である。世間は中澤さんの話題で持ちきりなのに対し、わたしはプッチモニでパンチラやっても大騒ぎされることはなかった。人気では当然上のほうではなく、かといってそんなに下でもない中途半端なところをキープしていた。
- 175 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月28日(木)21時24分39秒
- ほっとしたのがいけなかったのだろう。ミュージカルの頃太ってしまった。これはいけないとなんとか元の状態に戻すのに数ヶ月かかった。中澤さんの卒業で娘。は九人になった。わたしは軽く考えていたが、十分の一が九分の一になったのである。中澤さんの歌っていたパートのいくつかが自分に割り振られることになってしまった。
それでもわたしは楽観していた。梨華ちゃんは写真集を出版し、「ザ☆ピース!」でセンターとなった。梨華ちゃんが持ち上げられる分、こちらへの視線は少なくなる。シャッフルユニットでも一番人数の多いところにまわされた。24時間テレビでも、安倍さんたちがドラマなのに対し、こっちはガッツさんである。わたしの期待通りの展開だった。
- 176 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月28日(木)21時25分15秒
- 秋になり、恒例のオーディションが開かれることになった。人数が増えるのは大歓迎である。他のメンバーが少々複雑な感想をもらしていたが、わたしは違った。しかも望外の四人の増員だった。十三分の一である。新曲も新メンバーを前面に押し出すものと思っていた。
ところが、なんとわたしがメインとなることに決まってしまった。ボーカルは安倍さん、ごっちん、そしてわたしのたった三人である。三分の一である。これはなんとも困ってしまった。
- 177 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月28日(木)21時25分50秒
- みんながわたしを注目している。わたしだけ黄色いジャケットを着させられている。誰がわたしをこんな目にあわせるのだろう。わたしはただ、ひっそりとアイドルをしたいだけなのに。
わたしはやけになった。雨ですべって転んだが、知ったことではない。梨華ちゃんの顔にぐっとせまり、小川の肩をそっと抱く。少々調子を外しても、臆することなく声をあげた。
すると、なんだかだんだん楽しくなってきた。わたしは今、まがい物じゃない、本物のアイドルになったのだ。
窓際アイドルはもうやめよう、と決心した。
- 178 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月28日(木)21時26分24秒
- だが、やはり体のほうが耐えられなかったようだ。体調不良で何度か倒れた。体が衰弱する一方で、心の充実感は否定しようがなかった。そもそもわたしがどうして娘。のオーディションを受けようと思いついたのか、自分でもよくわかっていなかった。アイドルをやってみて初めてそれがわかったような気がした。
年があけ、新曲が発表された。わたしはまたもとの位置に戻っていた。
- 179 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月28日(木)21時27分03秒
- おしまい
- 180 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月28日(木)21時27分39秒
- ( ^▽^)<読みづらいね
- 181 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月28日(木)21時28分09秒
- (0^〜^)<男になりて〜
- 182 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月28日(木)23時51分14秒
- 『十字架の奇跡』・・・チェスタトン「ブラウン神父の復活」
『A Beautiful Star』・・・チェスタトン「見えない人」
『御祓い師』・・・京極堂
『不思議の国』・・・ルイス・キャロル
『マニア』・・・ドイル「ボヘミアの醜聞」「ノーウッドの建築師」
『窓際アイドル』・・・O・ヘンリ「警官と賛美歌」
- 183 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年03月29日(金)02時19分27秒
- 目立ちたくないアイドル・・・
そう考えれば、よっすぃーの佇まいは長めの良い風景のようだ。
- 184 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月29日(金)23時13分21秒
- なんか調子が出ない
- 185 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月29日(金)23時15分10秒
- 『さよなら、天使』
- 186 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月29日(金)23時15分46秒
- 「生は暗く、死もまた暗い……」
消え入りそうな陰気な声が、わたしの耳にかすかに届いた。この声を耳にしたのはどうやらわたしだけのようだ。他のみんなはそれどころではなく、床に転がっている物体に釘づけになっていた。
「いったい誰がこんなことを……」
安倍さんの当然の問いかけに答えたものは誰もいなかった。ここにいる以外の人間の仕業とは考えられなかったからだ。メンバーの中に犯人がいる。この紛れもない事実に、彼女たちの正常な思考回路を狂わせていた。その証拠に、誰もマネージャーなり誰かなりを連れてこようとしなかった。
- 187 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月29日(金)23時16分17秒
- 「動機は……うらみ?」
「うらみとか、嫉妬とか、理由はいくらでもつきそうだね」
ごっちんと矢口さんは冷静だ。ただその冷静さも今度ばかりは常軌を逸している。そんなことは専門家に任せておけばいいことだ。だが、彼女たちは何か得たいの知れないものに背中を押されていた。自分たちがすべてを明らかにしなければならないと。
「初めから検討してみよう……最初に楽屋を出て行ったのは五期メンバーの四人だね」
今日の収録では、加入時期に分けてトークを楽しむというものだった。もはや全員でトークを行うことは不可能に近かったからだ。
「四人はそろってスタジオに入ったのは間違いないね?」
高橋たちは無言でうなずいた。これで、四人が口裏を合わせていない限り、彼女たちはスタジオ入りするまでのアリバイがあることになる。
- 188 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月29日(金)23時17分34秒
- 「その後が、カオリとなっち」
「あたしは途中で知り合いとおしゃべりをしてたから、カオリとは途中で離れ離れになっちゃった」
飯田さんが先に来たと小川が証言した。ただ時間的にかなり遅れてのことだ。安倍さんのおしゃべりが終わるのを飯田さんは待っていたのだが、待ちきれなくなって安倍さんを置いてきたということらしい。安倍さんはさらに遅れて入ってきた。
安倍さんと飯田さんの後に楽屋を出たのはごっちんだという。ごっちんは、夢中で言葉を浪費している安倍さんを捕まえて、いっしょにスタジオ入りしたのだ。
「カオリはなっちと別れてから、ごっつぁんは安倍さんに会うまで、厳密に考えるとアリバイがないことになるね」
「そういうことだね」
ごっちんはうすら笑いを浮かべた。まるで他人事のようなその言葉は凄惨なイメージをみんなに植えつけた。飯田さんはあいかわらずぶつぶつつぶやいているが、何を言っているかは、今はわたしの耳にもとどかない。
- 189 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月29日(金)23時18分15秒
- 「その後、おいらと圭ちゃんが楽屋を出た」
「わたしたちもアリバイないね。わたしは途中トイレに行って離れ離れになったから」
「うん。しかもおいら迷っちゃって、いろんなところをうろうろしてたから」
先にスタジオに入っていたメンバーも、矢口さんが遅れてやってきたことを認めた。
「最後が四期メンバーか。梨華ちゃん?」
「……はい。四人で仲良く向かったんですが、『忘れ物したから、先に行ってて』って」
「じゃあ、三人はいっしょにスタジオに入ったんだね」
梨華ちゃんは無言で肯定した。
「で、なかなか来ないから、様子を見に行った梨華ちゃんがこれを発見したと……」
「それなら梨華ちゃんも、その時はアリバイがないんだね」
矢口さんとごっちんは、ただアリバイを確認しているだけである。アリバイがないからといって即犯人と決めつける様子はみじんもない。だがその淡々とした調子は、かえって雰囲気を重苦しくしていった。
- 190 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月29日(金)23時18分57秒
- 「忘れ物をして戻ったときが何時だったかわかる?」
梨華ちゃんは眉をひそめて首をふった。
「そうか……つまりさ、カオリやごっちんのアリバイがないってのはさ、そのときに犯行が可能かどうかということに直接つながってないんだ。カオリが一人でいたとき、四人がいっしょにいたのなら、カオリにはアリバイがあることになる」
そう、その時間が問題だが、わたしもそれが何時だったかわからなかった。問題を複雑にしているのは楽屋とスタジオまでの経路だった。二通りの行き方があるのだが、四期メンバーだけどうやら違う通路を通っていったようだ。矢口さんはいずれでもないところをさまよっていたそうだが。わたしたちが通った通路のほうが近道である。ということは先に出て行ったメンバーたちはアリバイのない時間が長かったのだ。
梨華ちゃんが探しに来たとき、カギがかかっていた。つまりカギを持っていない、メンバー以外の人間は事実上誰も出入りすることはできなかったのだ。
- 191 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月29日(金)23時19分29秒
- 「何かてがかりは……なんでもいい、何かあるはず」
ごっちんはいったい誰に向けて言ったのだろうか。この声を聞くとまるで自分に向けて発せられたような感じがする。みんなも同じらしい。いろいろな発言が飛び交ったが、二人の探偵の興味を惹いたものがあった。
「辻が風邪をひいて高熱があったんだね」
「いつもどおり暴れていたから気がつかなかったな」
これは何を意味するのか。辻の体がぐったりと横たわっている。ぴくりとも動かない。体調不良の辻になら襲っても抵抗はいつもより少ないだろう。だが、やはりわたしにはわからない。
「凶器はこのゴルフクラブか」
ゴルフクラブはわたしたちが楽屋入りしたときから転がっていた。誰かが忘れていった物らしい。
- 192 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月29日(金)23時20分12秒
- 「やっぱりわかんないよ。動機だよ。そんなに恨みを買うような性格だったか?」
「すごくいい子だったよ。だから信じられないんだ」
過去形がものすごく気になる。ワイドショーでマイクをつきつけられて嬉しそうな様子を見せる近所のおばさんを思い出した。
「……生は暗く、死もまた暗い……」
今度はみんなにも聞こえたらしい。おびえた視線が飯田さんに集中した。
「そう、あの子の性格はわたしたちがよく知っている。開けっぴろげな子だからわたしたちに隠し事をしていたとは考えられないし、そんな様子はみじんもなかった。すると恨みとか、色恋沙汰とかが理由ではない。もちろん金銭でもない」
矢口さんもごっちんも黙ってリーダーの言うことを聞いていた。春だというのに冷たい。冷たい水に手を濡らしたかのように、じんじんとしてきた。
- 193 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月29日(金)23時21分10秒
- 「すると人間的ではない、もっと高度な動機があったことになる。政治的な、宗教的な、観念的な何かが」
「カオリ、それって」
「被害者も犯人もモーニング娘。のメンバーなのは間違いない。だからモーニング娘。という事実、現象がこの事件に大きくかかわっているはず」
この人はいったい何を言い出すつもりなのだろうか。
「私たちは歌を聴衆の前で歌うことが仕事。モーニング娘。とファンをつないでいるのが私たちの歌う歌ということ。歌って何だろう?」
疑問形にされても困ってしまう。
「私たちは『私』のことを歌う。歌わざるをえない。一見『私』に関係のない、景色を歌った歌もあるかもしれないけど、それは『私』というフィルターを通して歌われている。結局すべての歌は『私』のことを歌っていることになる」
「でも、詞を書いたのはつんくさんだよ」
矢口さんの意見は当然のものだった。わたしたちが作詞していないのに、それでもわたしたちは娘。の『私』を歌っていることになるのだろうか。
- 194 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月29日(金)23時22分47秒
- 「つんくさんが『LOVEマシーン』を歌っても、そこで表されるのはつんくさんの『私』にすぎない。私たちが歌うからこそモーニング娘。の『LOVEマシーン』となりうる。そこに表れる『私』はまぎれもない、娘。の『私』だ。じゃあ、『私』って何だろう?」
飯田さんの長い長い話が続いた。『私』が発見されたのはつい最近、せいぜい百数十年ほど前のことである。『私』の内面を描いた小説や詩がたくさん発表され始めた。そしてそれを人々が受け入れたのだ。歌の世界も例外ではなかった。
「ファンが求めているのは私たちの歌じゃない。『私』なんだ。その証拠に、多くのファンは私たちがTV番組に出て、私たちがふだんどのようなことをしているのか、私生活はどうなっているのかに大きな興味を持って見ている。こうなってくると歌自体はどうでもよくなってくる。歌がなくても『私』を知ることができるのだから」
モーニング娘。の新曲の出るインターバルがだんだん長くなってきている。昨年はたった二曲だ。それでも歌番組にはひっきりなしに出続けた。
- 195 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月29日(金)23時23分37秒
- 「ここまで歌が貶められるようになると、かつての栄光を取り戻そうとする人間が出てきてもおかしくない。彼女は憎んだ。『私』至上主義を。歌ではなく『私』を売り物にする人間を。そのためにキャラクターを追い求める人間を」
ここで飯田さんは言葉を切った。沈黙を嫌がるかのように矢口さんが口を開いた。
「なんとなくだけど、動機はわかったよ。じゃあ誰なんだ?」
「アリバイがないのは、カオリ、やぐっつぁん、圭ちゃん、あたし、梨華ちゃんの五人だけど」
「……私はジョンソンというキャラで目立つことができた。圭ちゃん、石川も同じ。矢口は『私』と歌の間をさまよっている」
「じゃあ、あたし?」
ごっつぁんが自分を指差した。ここで初めて飯田さんは微笑をもらした。
「後藤はね、そんなところからはるか離れたところにいるから」
「犯人いないってこと?」
- 196 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月29日(金)23時24分16秒
- 「違う。もう一人アリバイがはっきりしない人がいる。彼女のアリバイを証明する人物が問題。私が見たその人と、後藤が見たその人は、果たして同一人物なんだろうか? その間に彼女は何をしていたんだろうか?」
確かにその人は、キャラを持つことを拒んでいるように見える。そしてモーニング娘。を歌で体現している人だ。
安倍さんは口を結んだままだった。
それにしても嫌な気分だ。歌ではなくキャラで自分を売ろうとしていると蔑まれているようなものだ。頬がひんやりと冷たい。血が固まってきた。
- 197 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月29日(金)23時25分10秒
- 飯田さんの主張には忘れられているものがいる。被害者だ。そんなに難しい話でない。観念的なことではなく、もっと即物的なことでだ。
わたしは頭をおさえながらよろよろと立ち上がった。頭がガンガンする。
「違いますよ、飯田さん……わたしは、楽屋に戻って、カギをかけて、着替えようとして、すべって、転んで、ゴルフクラブに頭を打って、倒れて、それで、……」
「よっすぃ〜?」
みんなは、幽霊でも見たかのようにわたしを見つめた。勝手に人を殺さないでほしい。無視しないでほしい。キャラとか『私』とかじゃなく、わたしを見てほしい。
目の前が文字通り真っ暗になった。そこから先のことは何も知らない。
- 198 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月29日(金)23時25分42秒
- おしまい
- 199 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月29日(金)23時26分44秒
- ( ^▽^)<バイバイ、
- 200 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月29日(金)23時27分41秒
- ( ´ Д `)<なっち
- 201 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年03月30日(土)05時00分17秒
- 重く湿った空気に支配された楽屋での、なんとも意味深な会話だ。
しかし早とちりだ。だいたい生きてるのか死んでるのか先に確かめるだろうに。
- 202 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月30日(土)15時37分03秒
- 笠井か。
面白いね。
- 203 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月30日(土)20時28分44秒
- >>201
ネタバレいやーん
>>202
もろばれですね
- 204 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月01日(月)21時10分06秒
- 『赤の誘惑』 〜かごのかじ〜
- 205 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月01日(月)21時10分59秒
- かごのかじ
加護の家が火事にあった。
マネージャーが駆けつけた時、加護は火事を見つめていたという。
「ま、犯人はウチやねんけどな」
一方その頃、
- 206 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月01日(月)21時11分33秒
- 吉澤ひとみは数葉の写真を眺めていた。
「みんな凝ってるなあ」
一枚の紅葉を大写しにしたもの。きれいな夕陽。博物館に飾ってある古い郵便ポスト。
保田さんの写真好きはけっこう有名になったが、多くの娘。たちにもその趣味が広がっていった。高価な一眼レフカメラを操る人もいれば、レンズ付きフィルムですませる人もいる。機械と腕前が比例しているわけではないところがおもしろい。
- 207 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月01日(月)21時12分07秒
- それぞれが思い思いの写真を撮ってきて見せ合っているうちに、それでは何かテーマを決めてみようということになった。審査員は保田さんで、何か賞品をくれるという。テーマは「赤」ということになった。
赤いものを撮ればいいのだが、その選択にみんなの特徴がよく表れている。紅葉を撮ったのは安倍さんだが、この写真をよく見ると、葉脈のところがひからびて、枯れかかっている。夕陽の写真はごっちんのだ。黒くつぶれている地平のビルに半分隠されている。もう一時間もたてば沈みきるところだろう。郵便ポストのは飯田さんで、まるでポストに飲み込まれそうな気分になってくる。
- 208 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月01日(月)21時12分38秒
- 写真は「真を写す」と書く。もちろんそんなことは不可能だ。どんなに良い機械だろうと、どんなに凄い腕があろうと、写真は被写体そのものを過不足なく表すことはできない。風景を切り取ること自体にすでに人の手が入っている。あるいは、自分にとってカメラで写す価値のある風景、価値のない風景と切り分けることが、すでに「真」からかけ離れている。
つまり写真に写っているのは自分なのだ。自分を写して自分を見せているにすぎない。それならば逆に自分を強く主張する写真こそが、もっとも写真らしいということになる。
- 209 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月01日(月)21時13分10秒
- では、自分とはなんだろう。梨華ちゃんの撮った写真にはピンクのプーさんが写っていた。ピンクが赤かどうかは意見が分かれるところだろうが、とりあえず梨華ちゃんらしさがよく伝わってくる。
ところが、わたしにはそれがない。哀しいくらいに何もない。写真を一目見て、「これは吉澤ひとみが撮った写真だ」とわかるようなものが何一つなかった。何もないのがわたしなのだ。
これは一つのテストである。芸能人は自分を売らなければならない。他に置きかえがたい何かを持っていなければ、生き残ることができない。売るものがあるのかどうか試されている。保田さんの顔が悪魔に見えてきた。
この残酷な試験を、みんなはどう感じたのだろうか。売るものがある人はそれほど考えなかったに違いない。まだ写真を出していない、五期メンバーや矢口さんなどはこの意図に気づいて悩んでいるのだろう。
- 210 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月01日(月)21時13分43秒
- 矢口さんに相談してみようと携帯電話に手をのばしたとき、ノートパソコンから音が鳴った。見るとメールが届いていた。加護からだった。
添付ファイルを開くと、真っ赤に燃え上がる民家が写っていた。
これが加護の出した結論だったのだろう。一人で悩んで、そしてようやくたどりついた結論だったのだろう。
それでは、わたしも結論を出さなければならない。いや、結論はこの企みが始まったときから決まっていた。わたしの持っている赤は一つしかない。
- 211 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月01日(月)21時14分17秒
- わたしはカメラを三脚に取り付けた。ピントをマニュアルフォーカスで固定し、タイマーを三分後に設定した。そしてカメラレンズが捉えるはずの場所に座った。
タイマー音の間隔ががだんだん短くなっていった。わたしはカッターナイフを首筋にあてた。
鑑識の話によると、レンズには赤黒い血がこびりつき、そのためフィルムには黒い陰しか写っていなかったということである。
- 212 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月01日(月)21時15分18秒
- おしまい
- 213 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月01日(月)21時15分48秒
- 大失敗
- 214 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月01日(月)21時17分11秒
- 悩むところですが
「わたし」→「吉澤ひとみ」
に変換してください。
- 215 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年04月02日(火)02時17分16秒
- う〜む、彼女が選んだのが、これが自分だ、という写真を撮るためであって
決して命を絶つことが目的でないことが救いだ。できれば生き続けて次の話も
聞かせて欲しい。
- 216 名前:not203 投稿日:2002年04月02日(火)12時38分20秒
- >>215
だからネタばれ感想は後から読む人がいや〜んな気分。
- 217 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月02日(火)20時14分58秒
- 番外編というか。
オムニバス短編集に対する態度表明ということです。
- 218 名前:名無し厨房 投稿日:2002年04月02日(火)21時42分39秒
- あっちにあっても氏の作品と判る自信がある(w
- 219 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月04日(木)21時29分06秒
- 『ガラスの花びん』
- 220 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月04日(木)21時29分37秒
- 「……生は暗く、死もまた暗い……」
また始まった。この陰気な声は部屋の光をすべて殺してしまう。
- 221 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月04日(木)21時30分09秒
- 楽屋にいたのは飯田さん、矢口さん、圭ちゃん、ごっちん、梨華ちゃん、わたし、加護の七人だった。プッチモニとタンポポの面々である。
タンポポの四人は大好きなおしゃべりにいそしんでいた。わたしたち三人はぼーっと無言で座っていた。何も話すことがなければ、一言も口をきかないのがプッチモニの流儀だ。圭ちゃんの視線は宙をさまよっている。ごっちんはテーブルに突っ伏して眠っている。
わたしはテーブルの花びんを眺めていた。クリスタルガラス製で、派手なカットが施されている。花を挿していないのが不思議である。
- 222 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月04日(木)21時30分40秒
- クリスタルガラスは普通のガラスと違って、澄んだ音が鳴るという。わたしは中指で弾いてみた。
心地よい音の代わりに、不愉快な世界の崩れる音が大きく響いた。花びんはいくつかの大きな破片になってテーブルの上に散らばった。わたしは尻もちをついた。
破片の一つが白いテーブルをすべっていき、うつ伏せになっているごっちんの顔の手前で止まった。ごっちんはゆっくり眼をあけ、破片をつまむと「んあー」と鳴いた。
- 223 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月04日(木)21時31分14秒
- タンポポの四人も何事かと振り向いた。わたしはゆっくり立ち上がって、素手で破片を集めようとしたところをみんなに止められた。TV局の人がきて、きれいに片づけていった。
「よっすぃ〜、何があったの?」
「いきなり花びんが……」
「危ないねー」
「もしかして、ポルターガイストってやつ?」
わたしの言葉はさえぎられた。わたしが指で弾いたという事実を告げるいとまもなかった。またそれくらいでガラスが割れることが信じられなかった。
「へへん、このチャーミーにまかせなさい!」
梨華ちゃんが胸をはった。また話をややこしくするつもりらしい。
- 224 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月04日(木)21時31分50秒
- 「これはトリックですよ。超常現象なんて信じちゃいけません」
「どういうトリック?」
「それはわかりません」
「なんだよ、それ」
「例えばですね、よく二時間ドラマとかで密室殺人事件とかあるじゃないですか。どんなに不可能と思われても、何らかのしかけがあって、『これは宇宙人のしわざでした』なんてことはないでしょ。今のままじゃ、手がかりがほとんどないですからどんなトリックかはわかりませんが、それでもトリックがあることだけは確かなんですよ」
「わけわかんねー」
確かにわけがわからない。だが、梨華ちゃんの直観が、これが人為的なものだと告げているのだろう。そしてどんなトリックか明言をさけたのも正しい。可能性だけなら無限にあるのだ。
- 225 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月04日(木)21時32分28秒
- 「……生は暗く、死もまた暗い……」
飯田さんの様子が一変した。聞くだけで鬱になりそうな歌声がわたしたちを支配した。
「どうしたんだよ、カオリ」
「……私たちに与えられた手がかりはたった一つ、ガラスの花びんが割れたという事実だけ。しかしそれがすべてを物語ることもできる」
「わかったの?」
「余計なものは取りのぞいて考えれば、すべてはおのずと明らかになる……。私が注意したのはガラスということ。ガラスとは、化学式で表すことのできる物質。しかし、果たしてガラスというものはあるのだろうか?」
「あるだろ。いくらでもあるだろ」
「そう? 私たちが見たり、手で触ったりするのは窓ガラスであり、ジョッキであり、灰皿であって、けっしてガラスそのものではない。ガラスとは物質というよりに性質に近い」
そして今回の主役は花びんだった。
- 226 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月04日(木)21時33分00秒
- 「ガラスは、高温の窯の中でその姿かたちをいくらでも変えることができる。私たちはガラスそのものの姿をとらえることはできない。そう、それはまるで私たちモーニング娘。のように。あるときはモーニング娘。だったり、プッチモニだったり、タンポポだったり、ミニモニだったり。世間の人間は私たちそのものをつかまえることはできない」
「……それから?」
飯田さんの意図がよくわからなくなってきた。ガラスとモーニング娘。の相似と、今回のこととどのような関係があるのだろう。
「……ただしガラスそのものに近づくことはできる。できたと錯覚することはできる」
「どんな方法で?」
「窯の中のガラスを直接つまめば」
「むちゃだよ」
「もちろんむちゃ。でも、かつて花びんだったガラスの破片はどうだろう? これはガラスそのものと考えてもいいのではないか、と考えたのかもしれない。花びんを割った人間は、娘。に未だなりきることができず、私たち娘。そのものをつかみとりたいと考える人間と同じメンタリティの人間なんだ」
- 227 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月04日(木)21時33分30秒
- 花びんを割ることのできた人間はここにしかいない。とすると、モーニング娘。という性質を欲してやまない人間が、そのまま犯人ということになる。
ここでみんながわたしのほうを見ていることに気づいた。
「ちょっと待ってくださいよ。わたしじゃないですよ。わたしはただ、指でピン、と弾いただけです。そしたら勝手に割れたんです」
「やっぱりよっすぃ〜のせいじゃん」
「指だけで割るなんて凄い力だよね」
わたしのせいにされそうだ。誰もケガ人は出なかったし、誰もわたしを責めているような雰囲気でもないので、それでも別にかまわないかな、と思った。しかし飯田さんだけは別だった。
- 228 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月04日(木)21時35分14秒
- 「……指……。よっすぃ〜、最初にそれ言わないとだめでしょ」
飯田さんはいきなり不機嫌になった。額に指をあててぶつぶつつぶやきだした。
「……指の本質……それは道具として……ガラスの本質とは無関係に……」
飯田さんは立ち止まって、わたしたちのほうを見た。眼の焦点はわたしたちに合っていなかった。きっと飯田さんには人外の何かが憑依したのだろう。
「……ガラスの本質から始めたのが間違いだった。花びんの本質を考えないといけない」
「花びんの本質?」
「そう。花びんは花を飾る道具なのに肝腎の花が挿してなかった。ガラスの花びんは壊れたから、それはもう花びんではなくなったのだろうか? 違う。花を挿す道具として使われていない時点で、それはもう花びんではなくなっていたんだ」
わたしの眼の前にいる人物は飯田さんと呼んでいいのだろうか。もしかしたらわたしの知っているリーダーではなくなっているのではないだろうか。
- 229 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月04日(木)21時35分50秒
- 「よっすぃ〜が指で弾いて壊したのは、それを露わにしたに過ぎない。なぜならそれはもはや花びんではなくなっていたのだから。犯人は、花びんではないくせに花びんのふりをさせていた。そう、娘。ではないくせに、娘。のふりをしているもの……」
「そんな人いるんですか?」
「……それは人じゃない。あるじゃない。正規のユニットじゃなかったのに、今や娘。を代表するユニットとして我が物顔で闊歩している集団……」
矢口さんと加護がきょとんとした顔をした。
「……昨日この楽屋使わなかった? そのとき何かしなかった? 辻か加護が暴れて割ってしまって、接着剤でくっつけたんじゃない? でも接着剤が弱くて、ちょっと衝撃を与えただけで崩れてしまうようになっちゃったんじゃない?」
「確かに昨日ここに来たよ。でもそのときには、花びんには花は挿してなかったよ。ほんとだよ、カオリ」
矢口さんは懸命に弁解を続けた。第三者は誰も見ていないし、物的証拠もない。ミニモニの誰かが壊したという証拠はないが、逆にいえば壊さなかったという証拠もない。可能性は無限にある。
- 230 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月04日(木)21時36分22秒
- 「……さ、もうすぐ本番だから準備しよ」
気まずい雰囲気のまま、わたしたちは私物を自分のバッグにしまい始めた。そこに安倍さんがひょっこりと顔を出した。
「へへ、来ちゃった」
「もう終わったの?」
「うん。時間が余ったから遊びに来た」
安倍さんは、ごっちんが右手でつまんで見つめているガラスの欠けらを指差した。
「あ、それ」
「うん? ガラスの花びんが割れちゃったんだ」
「アロンアルファにしとけばよかった」
「へ?」
- 231 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月04日(木)21時36分52秒
- 安倍さんは無邪気に白状した。おととい、安倍さんがこの楽屋にいたとき割ってしまった。花と水は始末したが、ガラスのほうはボンドで貼り合わせて元の形に戻したのだそうだ。本人が言っているだけで証拠はない。
タンポポのメンバーと安倍さんが先に楽屋を出て行った。廊下でどんな会話をしているのだろうか、聞きたい気持ちと聞きたくない気持ちが半々だ。
矢口さんと安倍さんの言葉がほんとうだとすると、飯田さんの推理は全くの見当違いだったのだろうか。娘。でないのに娘。のふりをしているもの。ミニモニはそれに当たらなかったわけだ。それでは安倍さんはどうだろう。娘。の看板なしに活躍できそうなのは安倍さんくらいではないだろうか。娘。でない、というより、娘。でなくてもかまわない存在。
「よっすぃ〜行くよー」
ごっちんに呼ばれてわたしは楽屋を出た。現時点では、わたしにとってはどうでもいいことだ。わたしは娘。であり続けるしかないのだから。
- 232 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月04日(木)21時37分28秒
- おしまい
- 233 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月04日(木)21時39分00秒
- 川‘〜‘)||<ここにないものはどこにもない
- 234 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月04日(木)21時40分05秒
- 川‘〜‘)||<いもしない神に祈りましょう
- 235 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月09日(火)00時14分35秒
- 窓際でなくなってしまった
どうしようか
- 236 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月09日(火)21時57分51秒
- 『鬼武者よっすぃ〜』
- 237 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月09日(火)22時01分15秒
- やっぱボツ
- 238 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月11日(木)21時46分08秒
- 『相談相手』
- 239 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月11日(木)21時46分40秒
- 私にとってよっすぃ〜は最良の相談相手でした。同期で年齢も一つしか違わず、どんな間の抜けた相談でもバカにすることなく話を聞いてくれたからです。いつもニコニコと微笑んでいる彼女は、深刻な問題でも何とかなるだろうという気持ちにさせてくれます。
だから私はどんな些細なことでもよっすぃ〜に話をしました。たとえ適切なアドバイスが返ってこなくても、彼女に話をするだけで私の気分が晴れていったものでした。
- 240 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月11日(木)21時47分19秒
- その日、私たちはロケバスに乗って移動中でした。いつものように、みんなは台本を読んだり、メイクを確認したり、仮眠を取ったりしていました。
私の隣ではよっすぃ〜が頬づえをついて窓の外をぼおっと眺めていました。私はその頬をつついてみました。
「何考えてるの?」
よっすぃ〜はゆっくりとこちらに振り向きました。そしていつもの笑顔を私に投げかけました。
「いろんなこと。ロケのこと。お昼の弁当のこと。いつも見ているドラマのこと」
「もっと教えてよ」
「そう……たとえばこれ」
- 241 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月11日(木)21時47分51秒
- そう言ってよっすぃ〜は一本の鉛筆を取り出しました。長さが半分くらいまで削られていて、ところどころ塗料がはげて木の部分が見えています。そして真ん中のところで折れていました。
「この鉛筆ね、今朝私が持ってきたんだ。昨日の晩に買ったばかりで、電動の鉛筆削りで削ってきたの。控え室のテーブルに置きっぱなしにしてたらこんな姿で返ってきた」
「怒ってるの?」
よっすぃ〜は首を振りました。
「そんなことで怒ったりはしないよ。ただいろんなことを考えたんだ」
「いろんな?」
「聞きたい?」
「うん、聞きたい」
私は犬のように首を縦に振ってうなづきました。よっすぃ〜はちょっと困ったような顔をしながらも話してくれました。
- 242 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月11日(木)21時48分23秒
- 「電動の鉛筆削りで削ったはずなんだけど、これを見るとカッターかナイフで削ってあるよね。数時間で長さが半分になってるし、誰かが削ったんだろうね」
「誰が?」
「この芯のところを見ると、やたら丁寧に尖らせてあるでしょ。これでどうしてこんなに削ったかわかるような気がする。その人はテーブルにティッシュを敷いて、その上に鉛筆をあてて芯のところを削っていった。だけどちょっと力の加減を間違えると芯は折れちゃう。するともう一度初めからやり直し。木のところを削って、芯を尖らせて、失敗して。これを何回もくりかえしてこんな長さになっちゃった。そういうパラノイアっぽいところのある人」
「飯田さん?」
よっすぃ〜はただ微笑むだけで答えてはくれませんでした。
- 243 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月11日(木)21時48分56秒
- 「じゃあ、真ん中で折ったのも?」
「それは違う人だよ。その人はようやく満足のいく出来ばえに満足して、鉛筆を置いていったんだろうね。別の人がこれを見つけて折ったんだと思う」
「誰?」
「これが折れる音は聞こえてきたんだよね。そっちを見ると、もうテーブルの上にこれが転がっていたんだ。気になったのは、そのときごっちんが鏡を見ながら頬をつねったり、頬にこぶしを押しつけたりしてたこと。それでなんとなくわかった」
「何が?」
「ごっちんは昨日ユウキ君とケンカしたんだなあって。鏡で自分の顔を見てるうちに、それがユウキ君とダブって見えてきたんだろうね。それでだんだんむかついてきて、ユウキのバカやろうって感じで頬をつねったりしているうちに、無意識のうちに鉛筆を握ってへし折っちゃったんだよ」
- 244 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月11日(木)21時49分32秒
- 私はよっすぃ〜から鉛筆を渡されました。横にしてみると、芯の先の部分がバスの床に落ちてしまいました。慌てて拾って当てはめました。
「それはその後のことだね。ごっちんが折ったときじゃないよ。もし先の二人だったとしたら、律儀にもとの状態に戻すことはしないだろうからね」
「じゃあ誰?」
「何かの拍子で床に落としちゃったんだろうね。木の外のところはなんともなかったけど、中に隠れているところが折れちゃった。それでそのまま芯を押し込んで知らないふりして置いていった。そんなふうに形だけ取り繕って、根本的な解決には目をつぶる人だよ」
「矢口さん?」
「さあね」
- 245 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月11日(木)21時50分06秒
- よっすぃ〜はポケットから、今度は白い消しゴムを取り出しました。見るとはしっこがギザギザに削られ、黒く細かいカスがわずかについていました。
「このはしっこのは?」
「辻だろうね。杏仁豆腐とでも間違ってかじったのかな」
このあと私が黙っていると、よっすぃ〜はじろじろと私を見つめ始めました。
「ど、どうしたの、よっすぃ〜?」
「この先はどうして聞かないの?」
「別に、なんとなく……」
- 246 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月11日(木)21時50分45秒
- 「この消しゴムはね、ケースの紙をなくしちゃったから、ずっとむきだしのままだったんだ。だから使っていくうちにだんだん黒っぽくなっていった。それがさ、昨日さっきの鉛筆といっしょに置いておいたら、わずかに黒いのが残っているけどきれいになってたんだ」
「……」
「誰がきれいにしてくれたのかなあ、ってずっと考えてたんだ。多分ね、その子は浅黒く汚れた消しゴムを見てがまんができなくなったんだろうね。それを見ると自分の黒い肌を思い出して、そんなの見たくない一心で、いっしょうけんめいこすり続けた姿が目に浮かぶんだ」
- 247 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月11日(木)21時52分25秒
- バスの中に形容しがたい雰囲気が立ち込めていることに気がつきました。わずかな痕跡から自分の心の中をのぞかれたと思うと、この日以来よっすぃ〜に相談するということはなくなりました。
- 248 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月11日(木)21時53分14秒
- おしまい
- 249 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月11日(木)21時53分45秒
- ( T▽T)
- 250 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月11日(木)21時54分17秒
- (0^〜^)<?
- 251 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月12日(金)00時01分46秒
- (0^〜^)<17才だヨ
記念に短編書こう
- 252 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月12日(金)21時42分44秒
- 『ある一日』
- 253 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月12日(金)21時43分24秒
| よ っ す ぃ ー 誕 生 日 お め で と う ♪ ♪ |
\_____ ___ ___ ___ ______ _/
∨ ∨ ∨ ∨ ∨
ノハヽヽ.o゜*。o ノハハヽ ノノハヽ ノノ人ヽ ノノノノノヽヽ
(0^〜^)⌒ヽ*゜* (`.∀´川(´ Д ` )(´―`●)从^▽^ 从∋oノハヽo∈
( つ/ヽ )。*o ( )( ) ( ) ( ) (´D` )
| ○――' ゜ │ │ │.│ │ │ │ │ │ │ │ │ ( )
(__)_) (_(__)(_(__)(_(__) (_(__) (__(__)
- 254 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月12日(金)21時44分12秒
- それはコンサートに向けてのレッスン中の出来事でした。
13人では『恋愛レボリューション21』のフォーメーションも大きく変わるので、入念にチェックされていきました。
そしてこの歌の山場である梨華ちゃんの見せ場がやってきました。
「ラブレボリューション21♪」
「……」
あの間の抜けた「ほいっ」の声が聞こえなかったので、みんなは歌をやめて梨華ちゃんのほうを向きました。
「あれ、おかしいな……」
梨華ちゃんは頭をかきながらみんなに謝りました。
- 255 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月12日(金)21時44分42秒
- もう一度、そこのパートからやり直しとなりました。
「ラブレボリューション21♪」
「……」
見ると、梨華ちゃんは確かに右腕を前に曲げてポーズをとっているのですが、「ほいっ」の声だけは聞こえてきませんでした。
今度はみんなは歌だけで、梨華ちゃんだけポーズつきでやってみることにしました。
唇は動いているのですが、「ほいっ」という声が出ていませんでした。
「梨華ちゃん、ふざけてる?」
「違いますぅ。ここだけ声が出ないんですぅ」
梨華ちゃんはやけになってホイホイやりはじめましたが、何回やっても声が出てきませんでした。
日が暮れるまで梨華ちゃんは続けました。
- 256 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月12日(金)21時45分16秒
- 一方その頃、インターネット上のとある掲示板では。
- 257 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月12日(金)21時45分59秒
396 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月12日(金)17時46分15秒
( ^▽^)<ほいっ♪
397 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月12日(金)17時46分16秒
( ^▽^)<ほいっ♪
398 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月12日(金)17時46分17秒
( ^▽^)<ほいっ♪
399 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月12日(金)17時46分18秒
( ^▽^)<ほいっ♪
400 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月12日(金)17時46分19秒
( ^▽^)<ほいっ♪
401 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月12日(金)17時46分20秒
( ^▽^)<ほいっ♪
402 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月12日(金)17時46分21秒
( ^▽^)<ほいっ♪
403 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月12日(金)17時46分22秒
( ^▽^)<ほいっ♪
- 258 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月12日(金)21時46分32秒
- 転送量オーバーのため、この掲示板のサーバーが落ちたということです。
- 259 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月12日(金)21時47分03秒
- おしまい
- 260 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月12日(金)21時47分37秒
- ( T▽T)<……
- 261 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月12日(金)21時48分07秒
- (0^〜^)<かっけ〜
- 262 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月13日(土)21時51分18秒
- 爆笑
- 263 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月16日(火)19時48分17秒
- >>262
笑ってもらえてなによりです
- 264 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月16日(火)19時49分12秒
- 『幸せを求めて』
- 265 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月16日(火)19時49分42秒
- 石川梨華は打ちひしがれていた。
かつてこれほどまでネガティブになったことがあっただろうか。
どんなに挫けるできごとがあっても、彼女は逆にそれをバネにして成長してきた。
どんなにバカにされようとも、彼女は自分の信じる道を歩んできた。
しかし、彼女は立ち上がることができないほどのショックを受けていた。
- 266 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月16日(火)19時50分20秒
- 彼女はいつでも「ハッピー」だった。
不幸なできごとが彼女を襲っても、彼女は「ハッピー」だった。
彼女は両腕を交差させ、前に投げ出して「ハッピー」と叫んだ。
石川梨華の専売特許だった。
しかし流行語大賞を狙ったのがいけなかったのか、それは石川だけのものではなくなってしまった。
メンバーのみならず、赤の他人のキモいヲタにまで奪われてしまった。
彼女は「ハッピー」でなくなってしまった。
- 267 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月16日(火)19時51分52秒
- 石川梨華は考えた。
みんなはどうして人のものを奪うのだろう。
なぜ「ハッピー」を奪うのだろう。
石川はもっと考えた。
きっとみんな「ハッピー」をやりたがるからにちがいない。
ではなぜ「ハッピー」をやりたがるのだろう。
きっとみんなが「ハッピー」だからにちがいない。
それならば。
それならばみんなを「ハッピー」にさせなければいい。
- 268 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月16日(火)19時54分22秒
- こうして石川梨華はこの世の悪を体現する存在となり、地球は闇に支配されることになった。
(どんなことをしたのかは、ここには恐ろしくてとても書けない)
全世界の人間が不幸に見舞われる中、彼女は得意げに両腕を前に投げ出した。
「ハッピー」
- 269 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月16日(火)19時56分03秒
- おしまい
- 270 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月16日(火)19時58分37秒
- ( ^▽^)<ハッ
- 271 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月16日(火)19時59分08秒
- ( T▽T)<ピー
- 272 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月17日(水)11時45分51秒
- HEY*3ネタですか(w
- 273 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月18日(木)20時00分33秒
- 『天気』
- 274 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月18日(木)20時01分07秒
- 吉澤と後藤は、窓際のパイプ椅子に座ってみんなが戻ってくるのを待っていた。
「なんだか空が暗くなってきたよ」
「ほんとだ。さっきまでいい天気だったのに」
- 275 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月18日(木)20時05分03秒
- そこに他のメンバーがやってきた。たった一人、辻をのぞいてみんな笑顔だった。
「おいしかったね、パフェ」
「うん、お口がとろけそう」
安倍と矢口がお互い顔を見合わせて、ゆっくりと辻のほうをふりかえった。
「残念だったね、辻ちゃん」
「ゲームで負けたんだからしょうがないよね」
辻はぽろぽろと大粒の涙を流し始めた。
- 276 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月18日(木)20時05分42秒
- 「ごっちん、雨が降ってきたよ」
「今日カサ持ってこなかったんだよね。かなり強いみたい」
- 277 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月18日(木)20時06分17秒
- 「ほら、辻、泣くなよ。ちゃんと辻の分もらってきたから」
飯田が器を手渡すと、とたんに辻は満面の笑みをもらした。
「急に陽射しが戻ってきたね」
「なんだか変な天気だね」
- 278 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月18日(木)20時07分11秒
- スプーンをつかんだ辻が手をすべらせて、器を床に落としてしまった。台無しになったパフェの姿を見て、辻は声を上げて泣き始めた。
「慌てるなよ、辻。心配するな。いくらでも用意してあるから」
「わ、また降ってきた。と思ったらすぐやんだ」
「よっすぃ〜、今日はタクシーで帰ろうよ」
- 279 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月18日(木)20時07分51秒
- 辻の前にパフェがいくつも並べられた。辻はあっというまに全てたいらげた。満足した面持ちでお腹をさすっていたが、突然部屋を飛び出した。
「いきなりあんなに食べたから、お腹壊したのかな」
「ほんとうにしょうがないなあ」
「空がゴロゴロ鳴り出したよ」
「よっすぃ〜、もう帰ろうよ」
- 280 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月18日(木)20時08分37秒
- やがて空から降ってきたもので、外は地獄と化した。
- 281 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月18日(木)20時09分08秒
- おしまい
- 282 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月18日(木)20時09分46秒
- ( ´D`)<するのれす
- 283 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月18日(木)20時10分18秒
- ( ^▽^)<しないよ
- 284 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月18日(木)20時46分09秒
- ののたんはするんだね(w
- 285 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月22日(月)00時03分52秒
- (0^〜^)<どうしようかなー
- 286 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月23日(火)22時36分21秒
- 来ましたね・・・ふふふ(怪
- 287 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月24日(水)21時36分56秒
- (0^〜^)<?
- 288 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月24日(水)21時37分47秒
- 御祓い師2級吉澤ひとみ
『ガキの檻』
- 289 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月24日(水)21時38分25秒
- さて、念願の御祓い師にはなったものの、思ったようにホイホイと依頼がやってきたわけではありませんでした。矢口さんのあやしげなお友達などの依頼人はいましたが、それでも数の限りはあります。とりあえず矢口さんを脅かして定期的に御祓いを受けるようにはしむけましたが、もっと大口の顧客を獲得しなければなりません。
まずは肩書きをどうにかしなければなりません。「御祓い師」にケチをつけるのではありません。「3級」というのが問題なのです。世に資格は山ほどありますが、「3級」ほどありがたみのないものはありません。英検3級、簿記3級、珠算3級、書道3級。こう並べてみると小学生がとるような資格に見えてしまいます。
そこから「2級」にステップアップすると、様相はがらりと一変します。たいていこの上には「1級」しかありません。「1級」ならば文句なしですが、「2級」でも下位の人間の中から選ばれた人間しかなれないような響きを持ちます。
- 290 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月24日(水)21時39分03秒
- 資格というものを一度とってしまえば、人間はそこでほっとしてしまいます。「3級」でも世の中に十分通じるのであれば、苦労してその上の「2級」を目指そうという人間は少ないでしょう。そこで必然的に「2級」取得者の数が減り、相対的に地位が上昇するのです。
そういうわけでわたしは御祓い師2級をとることに決めました。以前3級をとったときに送られてきた封筒をひっぱりだして、そこに書いてあった連絡先に電話しましたがつながりませんでした。どうやらつぶれたようです。しかしこれくらいではへこたれません。こういうおいしい商売を放っておくわけがありません。住所を変え名前を変え、どこかしらで続けているはずです。
- 291 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月24日(水)21時39分35秒
- これまでの通販生活で得た人脈をたよっていろいろと調べてみると、ありました。女性週刊誌のすみっこに載っていました。隣の「真珠パワー」とかいう広告が目立ちすぎて初めは気がつきませんでした。早速電話で申し込みました。思わず「うへへへ」という笑い声がもれてしまいました。
受講料は前回より高いのに、送られてきたテキストはわりと薄いように思えました。「百……」とかまた読めない題名でしたが、どうってことはありません。歌やダンスに費やしたほうがいい努力をわたしは一心に注ぎ込み、ついに御祓い師2級の資格をとることができたのでした。
- 292 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月24日(水)21時40分11秒
- せっかくステップアップしても、顧客がいなければこれまでに要した資金を回収することができません。実はわたしには目をつけていた人物がいました。その人物はむしゃむしゃと何かにとりつかれたかのように大きなボウルに顔をつっこんでいます。
もはやアイドルと呼ぶには辞書を書きかえなければならないほど、そぐわない体型となったその人物こそが、金の卵を産むニワトリなのです。
「おい、辻、また食ってんのかよ」
「矢口さんには関係ないことです。放っておいてください」
タモリさんに指摘されるまでもなく、辻の過食は娘。内の最大の問題でした。ユウキ君のキャバクラ豪遊など、この問題の前ではかすんでしまいます(実際ごっちんがユウキ君のことをほったらかしにしていたのは、これのせいで心を痛めていたからでした)。
- 293 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月24日(水)21時40分44秒
- 先ほど「何かにとりつかれたかのように」と申しましたが、これはけして比喩ではありません。間違いなく辻には何かが、言わばモノノケがとりついているのです。彼女にとりついているものを御祓いによって取り除く必要がありますし、わたしにはそれが可能なのです。それによって得られる報酬はかなり期待できますが、それはおまけにすぎません。本当です。
辻にはそんな報酬を支払う資力はありませんし、もちろんわたしも期待はしていません。辻自体、御祓いを嫌がるでしょう。しかし辻を何とかしたいと思う人間がたくさんいるのです。娘。の年長のメンバーたち、つんくさん、マネージャー、事務所社長はきっとそれを望んでいることでしょう。そして彼ら、彼女たちなら、こちらの言い値を飲むに違いなかったのです。
- 294 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月24日(水)21時41分17秒
- しかしことらから売り込むなんて意地汚い真似はできません。御祓い師は俗な世事から程遠いところにいるからこそ、その力を世間に認識させることができるからです。幸いわたしには矢口さんという格好のスポークスマンがいました。
「なんだか憑き物がついてるみたいですね」
わたしはぼそっと矢口さんにささやきました。矢口さんはうんうんとうなずいたあと、自分の役目にようやく気がつきました。
「ほんとだ。こりゃたち悪いのが憑いてるみたいだ。そうだ、カオリさあ、辻を御祓いしてもらおうよ」
「御祓いねえ。効き目あんの?」
「バリバリあるよ。辻をなんとかしないといけないんだからさあ。やってみようよ」
- 295 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月24日(水)21時41分50秒
- 飯田さんは少し悩んでいましたが、ワラにもすがるような気持ちでこの提案に乗りました。
「そうね。じゃあ知り合いの『新宿の狒々婆』にでも頼もうかしら」
これはいけません。どんな人かは知りませんがわたしより年季の入った御祓い師のようですが、自分の市場を他人に荒らされるわけにはいきません。わたしは矢口さんをヒジでつつきました。
「いや……まずいよ、カオリ。辻のこんな状態を他人に見せるわけにはいかないよ。ただでさえ私たちのスキャンダルを狙っているマスコミがいるんだからさ」
辻の醜態は、もはやスキャンダルではなく世間に認知された一種のギャグと化しているのですが、飯田さんには説得力を持ったようです。そこでわたしは10cm/秒の速度で前に出ました。
- 296 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月24日(水)21時42分26秒
- 「そうだ、カオリ。よっすぃ〜御祓いできるんだよ。やってもらおうよ」
「ほんとに?」
「ほんと、ほんと。プロ級の腕前なんだから」
ちょっと棒読みなのが気になりましたが、飯田さんはわたしにやらせる気になったようです。あとで矢口さんには因果を含めておきましょう。
「じゃあ、よっすぃ〜にお願いしてみようかな」
「え〜、でもー、うまくやれるかどうかー」
わたしは嫌がるそぶりを見せました。まだ肝腎の話が出てきてません。無償奉仕するほど人間はできていません。わたしはふたたび矢口さんをつつきました。
「もちろんお礼ははずむから、よっすぃ〜やってくれよ。ね、カオリ?」
「そ、そうだね。あとでマネージャーに話してみるから、よっすぃ〜頼むよ」
- 297 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月24日(水)21時42分58秒
- 具体的な金額が出てこなかったのが少々不満でしたが、マネージャーに話すということは事務所を巻き込んだことになるので、それなりの金額を呈示できそうです。矢口さんにはご褒美の手数料を考えておきましょう。
わたしは辻の様子を観察しました。一声かけると辻は手を休めました。右腕をとって脈をはかり、目を開いて瞳孔の大きさを確認します。「あーん」と口を大きく開かせ、扁桃腺の具合を見ます。背中をトントンとたたいて異常な音がしないか確かめます。爪に白い雲はありません。髪の毛の太さを見ます。
「どう、よっすぃ〜。いけそう?」
「体は健康そのものです。間違いなく県に表彰されます」
「ほんとに何かとり憑いてるの?」
「過食の原因はストレスと言われていますが、どうしてストレスがたまるとこのようなことになるのでしょうか? ストレスがたまるから過食に走るのではありません。それは因果関係と相関関係を取り違えています。『共産党支持者が多いと野犬が増える』という説くらいのトンデモです。ストレスがたまるということは心が弱っているということにすぎません。モノノケはその弱った心をいつも狙っているのです」
- 298 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月24日(水)21時43分33秒
- 「どんなモノノケかわかる?」
「おそらく『餓鬼』と思われます」
「新垣?」
矢口さんのベタなギャグは黙殺しました。手数料はやめて御祓い回数券(11枚つづりで金額は10回分)にしましょう。
「『餓鬼』というとアバラが浮き出てお腹がぽっこりと出ているモノノケです。大昔、飢饉が起こると飢えた子供がたくさん出ました。飢えとは無縁の貴族や僧侶にはそんな子供たちが化け物に見えたんでしょうね。裕福な貴族たちに痩せ細った腕を伸ばして食料を求める姿を思い浮かべてください」
そう言いながら、わたしも想像してみたが、どうやっても辻の顔とはマッチしませんでした。
- 299 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月24日(水)21時44分10秒
- 「すると、食べ物が食べられなかった子供たちの怨念がモノノケとなって辻に憑いて、無念をはらすかのように食べあさってるというわけ?」
「飯田さんの言うとおりです。現代日本は飽食の時代と言われていますが、これもモノノケの仕業なのです」
「ああ、白川さんとかね」
回数券は5枚つづり(おまけ値引きは一切なし)に変更です。
辻はわたしたちの話に飽きたのか、再び黙々と食べ始めました。この姿を浅ましいと見るか、人間本来の姿と見るか、意見が分かれるところではないでしょうか。
「じゃあ、よっすぃ〜。さっさと御祓いしてよ」
「そうは簡単には、いかないのです」
「なんで?」
- 300 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月24日(水)21時44分40秒
- 「辻に憑いた『餓鬼』を取り除くことは雑作もありません。でも、辻の弱った心を癒すことはできないのです。そうなるとたとえ『餓鬼』を追っ払ったとしても、別のモノノケが辻にとり憑くのは目に見えてます」
事務所やわたしたちは辻の太った姿さえなんとかなれば、と考えていました。しかしそれでは辻にとって何もかわりがありません。わたしは、御祓いをすることはできても、人を幸せにすることはできないのです。
「とにかく、やってみましょう」
辻をつつくと、辻は食べるのをやめてこっちを向きました。どういうわけかわたしの言うことは素直に聞きます。
数本の線香に火をつけて、辻を囲むように配置しました。裏原で買ったあやしげなお香を焚くと、妙なにおいが部屋に充満しました。学校の理科室で盗んできた白い粉にオキシドールをかけると、ぶつぶつと泡がたって酸素が発生しました。
- 301 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月24日(水)21時45分16秒
- こんなやり方で果たしてモノノケを御祓いできるのかどうか、わたしにもわかりません。実際にモノノケを追っ払うことが重要なのではありません。追っ払ったとみんなが認識することが大切なことなのです。
調子に乗ったわたしは硫化亜鉛に塩酸をぶっかけました。小さな玉から得も知れぬにおいを持つ気体が沸き立ちました。あまりのことに矢口さんは部屋の窓を開けようとしたとき、いったい何と何が反応したのか、天井のほうで小さなな爆発音が続きました。
最後にひときわ大きな爆発が起こりました。白い煙幕がようやくおさまったころ、矢口さんが辻のほうを指差しました。
「よっすぃ〜、出た!」
辻の頭上に、もやもやとした影が伸びていました。だんだん輪郭がはっきりしていき、それは妖怪と呼ぶにふさわしい姿かたちになりました。
- 302 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月24日(水)21時45分46秒
- つづく?
- 303 名前:こんな感じ? 投稿日:2002年04月24日(水)22時57分27秒
- /|/|/|
/| .//|
/// / |
ヽ─0─//
______ |´D`||] ____ののののの
\@ /ヽ ̄ ̄ /\@ /
/ ̄_| ̄| ̄ ̄|  ̄\
| _ュ ) | /\__ |
\_ノ _|___| (_/
ヽ_|_/
ヽ┴/
∋8ノハヽ8∈/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(´D` )<やれやれなのれす
( ̄| | ̄) \_____
|___| |___|
(_(_)
- 304 名前:Coffee Break 投稿日:2002年04月26日(金)22時41分21秒
- (0^〜^)旦
- 305 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月27日(土)21時20分13秒
- 『唯一無二のいしよし物語』
- 306 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月27日(土)21時22分14秒
- ( )
↑あなたの想像した物語を埋めてください
- 307 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月27日(土)21時22分47秒
- おしまい
- 308 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月27日(土)21時23分29秒
- ( ^▽^)人(^〜^0)
- 309 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月27日(土)21時23分59秒
- (〜^◇^)<手抜きかよ
- 310 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月28日(日)15時34分55秒
- ヲイヲイ(w
なんじゃそりゃ〜
- 311 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月29日(月)19時22分42秒
- >>306
ハァハァ
- 312 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月30日(火)19時47分20秒
- >>311
(0^〜^)<作者と読者の垣根など取っ払っちゃったよ
( ^▽^)<ルビコンを渡ろう!
- 313 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月30日(火)20時56分50秒
- 御祓い師2級吉澤ひとみ
『ガキの檻』(つづき)
- 314 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月30日(火)20時57分28秒
- まさか本当にモノノケが辻に憑いていたとは思ってもいなかったのですが、御祓い師たるものそれくらいで気が動転しているところを人に見せてはいけません。動転するどころか思わず私の口からもれた言葉は「かっけー」でした。
矢口さんは指をさしたまま固まっていました。飯田さんはしりもちをついています。辻はいつもどおり、自分の作業に没頭しています。
「よっすぃ〜、ほら、早く、なんとか、して、くれ、よ」
「そーですねー」
わたしがじらすと、予想通り飯田さんは報酬アップを約束してくれました。
懸念材料がなくなったところで、わたしはモノノケと対峙しました。薄い胸板にぽっこりと膨らんだ腹。異様に細い手足。まさしくこれは『餓鬼』でした。
- 315 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月30日(火)20時58分03秒
- 「この世には、不思議なことなど何もないのです」
とりえあず言ってみました。だからといって何がどうなるということもありませんが。だいたいこれは本当にモノノケなのでしょうか? モノノケだとして、本当に辻にとり憑いているのでしょうか? 先ほどの怪しげな薬品が交じり合ってできたものではないでしょうか? あるいはその薬品のせいでわたしたちは幻覚でも見ているのでしょうか?
モノノケはわたしたちには関心を示さず、じっと辻のほうを見ています。辻もモノノケをまったく無視してお腹を膨らませています。
どうやら危害を加えるふうでもなさそうです。わたしは近寄ってつついてみました。人間の肌の感触がしました。物質化しています。ということは先ほどの薬品で合成されたものなのでしょうか。
「もしもし」
返事はありませんでした。生き物ではないのでしょうか。しかし辻を見つめる目はときおり動くので、単なる無機物ではありません。手足も動いています。あるいは日本語を解さないのかもしれません。もう少し観察する必要があります。
- 316 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月30日(火)20時58分44秒
- 「吉澤ひとみの世界のジョーク! 今週は、イギリスのジョークです。
『ハロー、ウィリー』
『なんだい、ジョン』
『イギリスで流行っているニホンのヨウカイ知ってる?』
『知らないよ、ジョン。教えてくれよ』
『イギリスで流行っているニホンのヨウカイ……それは「イッタンオーウェン」』
『……』
『イッタンモメン、イッタンモーメン、イッタンオーウェン……ハッハッハッ』
『凄いよ、ジョン。「モメン」と「オーウェン」をかけてるんだね』
『そうだよ、ウィリー』
……また来週!」
- 317 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月30日(火)20時59分24秒
- 「……いきなり何やってんだ?」
「……オーウェンってサッカー選手かよ」
わたしのハイブロウなギャグは、モノノケどころか同じ人間界の仲間たちにも通じなかったようです。どうやらこのモノノケは外来のものでもないということがわかりました。
わたしは現実的な人間です。この場合の現実的とは、けして合理的という意味ではありません。どんな不合理なものごとでも、それをありのまますべてを受け入れるという意味です。わたしはこのものをモノノケとして受け入れることにしました。
それならば、わたしは依頼人の希望にそってこのモノノケを御祓いによって消し去らなければなりません。これが契約社会の掟です。
問題はその手段です。わたしは御祓い師2級の資格を持っていますが、持っているだけです。資格があることと能力があることの間に、論理的な関係はいっさいありません。すなわち、わたしにはそんなことができるわけがないということです。
- 318 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月30日(火)20時59分58秒
- とりあえず、テキストに書いてあった祝詞みたいな呪文を唱えてみました。もちろん呪文とは、御祓いの形式に過ぎません。たかが言葉に実効性を求めるのは酷というものでしょう。ただ、それを依頼人に悟られてはいけません。わたしは効き目のないことを確認すると、それがさも御祓いの単なる前ふりにすぎないふりをしました。
飯田さんと矢口さんは固唾を飲んでわたしを見守っています。わたしは呪文をぶつぶつつぶやきながら、頭を働かせていました。
このモノノケが日本生まれならば、ワビサビとかマスラオとかタオヤメとかを理解するはずです。わたしは情に訴えることにしました。
わたしは辻から少し離れてただよっているモノノケにゆっくりと近づきました。
「おい、よっすぃ〜」
意を決してこの異形のものをそっと抱きしめました。「もう大丈夫だよ」とかなんとか言いながら。何が大丈夫なのか自分でもよくわかりませんが、言葉は通じなくても心なら通じるとか。まあそれほど期待していたわけではありません。スポンサーに見せつけることが重要だったのです。
- 319 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月30日(火)21時00分34秒
- モノノケは完全にわたしを無視しました。ただ、モノノケと同じ視線に立ったことで発見がありました。彼、あるいは彼女は、辻を見ているのではありません。辻の抱えているボウル、そしてその中身を凝視しているのでした。
「のの?」
「……なに、よっすぃ〜?」
「わたしにも分けてくれないかな、それ」
辻はわたしの言うことはきくのです。辻はボウルをわたしに手渡しました。中はアンミツでした。モノノケの視線はわたしに移りました。
「どうぞ」
モノノケは震える手でボウルを受け取ると、顔をつっこんで無心に食べ始めた。その様子は辻のそれと何ら変わるところがありませんでした。
モノノケはボウルを離しました。ボウルが音を立てて床に転がりました。モノノケは息を吐くと、天井に向かって浮かび始めました。だんだん色が薄くなっていき、やがて消えてしまいました。
- 320 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月30日(火)21時01分11秒
- 「はあ」
「もしかして、成仏ってやつ?」
ぽかんとしている辻のもとに飯田さんと矢口さんがかけよりました。
「どう、辻? 気分とか悪くない?」
「食欲ある?」
辻は勢いよく「うん!」とうなずきました。そうして食べ物を求めてさまよい歩こうとするのを二人が押しとどめました。
「よっすぃ〜、モノノケは辻から離れたんじゃないの?」
「御祓い失敗した?」
これは聞き捨てなりません。成功失敗の事実はともかく、失敗と思われることはがまんなりません。じゃないともらえるものがもらえません。
- 321 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月30日(火)21時01分45秒
- 「それは違います。あのモノノケが『餓鬼』だとすると、とり憑かれた辻に『餓鬼』の空腹感が移ります。多少のことでは『餓鬼』の空腹感は満たされず、とり憑かれた人間は死ぬまで食べつづけることになります。ところが、それではあのモノノケのうらめしそうな視線が説明できません。最後に自らアンミツを食べて消えたのはなぜでしょうか」
二人は黙ってしまいました。少々語気が荒かったのかもしれません。
「心の弱っていた辻にモノノケがとり憑いたのではないのです。逆に、人間離れした辻の精神力があのモノノケをつかんで離さず、モノノケの持つ空腹感を自分のものにしてしまったのです。辻は自分の空腹感にさそわれて食べているだけですから、モノノケは食べている実感がわかなかったことでしょう。だからうらめしそうに食べ物を見つめていたのです」
「それって、モノノケが憑いていたんじゃないってことなの?」
「そうです。どちらかというと、辻がモノノケにとり憑いていたというのが正しいです」
- 322 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月30日(火)21時02分16秒
- だから、わたしが御祓いをしたのは、辻になのか、モノノケになのかわかりませんでした。言えることは、モノノケの魂がようやく救われたということです。ただし、辻の魂を救ったわけではありません。モノノケの魂を救っただけでは報酬にさしさわりがあるので、このことを気づかせてはなりません。
「とりあえず、御祓いはこれで終わりだね」
飯田さんの言葉にわたしは首をふりました。
「いいえ、まだ憑き物は落ちていません。わたしたちにとり憑いているタチの悪い憑き物が」
「何それ」
「わたしたちは今、ある観念に陥っています。『辻はアイドルである』『よって過食で太ってはならない』この論理をわたしたちは当然のこととして考えていますが、はたして本当にそうなんでしょうか? わたしたちはアイドルです。わたしたちがアイドルであるのは、実は理由はありません。アイドルになるのではなく、ただアイドルであるだけなのです。何をしようと、どうなろうと、わたしたちはアイドルであるだけです」
- 323 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月30日(火)21時02分52秒
- 「でも、太ったり何かやらかしたりしたら、人気なくなっちゃうでしょ」
「いいえ。アイドルでなくなるとき、その日はなんの前触れもなく突然やってくるんです。理由はなんでもいいのです。突然アイドルになり、突然アイドルでなくなる。アイドルとはそういう存在である以上、何かをしたからアイドルになるとか、アイドルでなくなるとかは一切ありえないんです」
だから、辻がいくら過食で太ろうが、わたしたちがアイドルであることには違いない、無理やりやせさせたって、それはわたしたちの自己満足に過ぎない、ということをしつこいくらいわたしは繰り返しました。
なぜこのようなわけのわからない論をとうとうと述べたのかというと、モノノケが辻にとり憑いたのではなく、辻がモノノケにとり憑いていたというわたしの推論をごまかすためでした。モノノケのせいで辻が太ったことにしなければ、わたしのこれまでの努力が無駄になってしまうのです。
「でも……」
「でも、何ですか?」
わたしは二人にに一言もしゃべらせるつもりはありませんでした。早いところ二人を納得させる必要があります。
- 324 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月30日(火)21時03分26秒
- わたしはまず飯田さんに近より、耳元でささやきました。
「噂の……」
飯田さんはがっくりとひざをつきました。次は矢口さんです。
「ブブ……」
矢口さんは両手両足を床に投げ出してしまいました。二人ともわずかに震えています。どうやら憑き物落とし(脅迫ともいう)は成功したようです。
「請求書はあとでマネージャーに渡します」と言うと、飯田さんは力なくうなずきました。わたしは辻の手をひっぱって部屋をあとにしました。ぐずぐずしてると二人が正気に戻るかもしれませんし、ほこりの舞い散る部屋を掃除したくもなかったからです。
「のの、おなかすいた?」
「うん」
「じゃあ、ご飯食べに行こうか。おごってあげるよ」
請求書の数字に0をいくつつけようかと、わたしはしばらく悩むことになりました。
- 325 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月30日(火)21時04分01秒
- おしまい
- 326 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月30日(火)21時04分44秒
- (0^〜^)
- 327 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月30日(火)21時05分14秒
- ( ´D`)
- 328 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月04日(土)00時37分00秒
- (0^〜^)<迷走したこのスレですが終わりとします
( ^▽^)<またね〜
- 329 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月04日(土)17時22分07秒
- 次はどこでやるの?
- 330 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月04日(土)22時37分14秒
- (0^〜^0)やっぱり女神でした
どこかで、たぶん、きっと
- 331 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月04日(土)22時52分47秒
- おつかれさん
新スレ立てたら告知よろしく
- 332 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月06日(月)14時27分10秒
- 黄板で始めました
- 333 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月11日(木)20時55分22秒
- ( ´ Д `)んあああ
- 334 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月12日(金)20時31分41秒
- 必然性とパクリと
( 0´〜`)
初めに読んだ娘。小説はlogさんのいしよし物だったと思います。わたしが娘。にはまったのが中澤さんが卒業する寸前でして、2chでふと見かけたんです。
これは面白いものがあるといろいろ探し回り、m-seekとかmeicosとかにぶつかりました。気になったものを読みふけりました。
ところが、なんだか自分には物足りないところがあったのです。萌え話も嫌いではありませんし、深刻な話もそれなりに好きです。しかし、何かが足りない。何だろう。
( 0´〜`)
それは登場人物が娘。たちである必然性の問題でした。たとえば石川と吉澤の萌え話があったとします。これはいつでも後藤と市井に変換しても違和感がありません。極端な話ですよ。萌え話で萌えられるのは登場人物が娘。たちだからです。だから萌え話に娘。が出てくる必然性は当然あります。
エスパー真希とか、differenceとか、導かれし娘。とか、ストーリー・描写ともに優れた小説であることに間違いありません。でも……とわたしは思ってしまうのです。小説として優れていても、それが娘。小説である理由はあるのだろうかと。
- 335 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月12日(金)20時32分44秒
- ( 0´〜`)
萌え話以外で必然性のある話。そんなことが可能なんでしょうか。萌え話に限らず、シチュエーションを追求した物語、娘。たちがこんな設定でこんなんだったらいいな、というのが娘。小説です。その意味では登場人物が娘。である必然性はあります。
ところが、娘。自体の存在も含めて、交換が可能なんです。わたしたちが娘。を好きである理由はありません。ただ、たまたま娘。が好きになっただけです。娘。に飽きたら別の消費財を求めればいい。
ここで意味が変わります。必然性のある物語はいくらでもあります。需要がある限り、必然性は必ず伴うからです。しかし、それなら交換不可能な話は可能でしょうか? 主人公が後藤である理由、吉澤でない理由、石川でない理由。
- 336 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月12日(金)20時33分19秒
- ( 0´〜`)
ここから需要側の問題ではなく、供給側の一方的な問題となります。だからこの議論はわたしだけが勝手にかかえている問題にすぎません。
娘。十夜という物語がありました。後藤が見た夢の話。気が狂いそうな夢の中で娘。の各メンバーと対決し、最後には市井に救われるという話。今でこそ陳腐な話に感じられますが、予定調和は大事な要素です。対安倍でどん底に落とされて、対市井で救われる。これが逆だったら最後のカタルシスは得られなかったでしょう。つまり、娘。のメンバーが11人であるという状況において、この話における後藤、安倍、市井の地位はそれぞれ交換が不可能といえます。
どうも必然性という言葉は、必要性と交換不可能性という二つの意味を持っているようです。
- 337 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月12日(金)20時33分52秒
- ( 0´〜`)
娘。十夜のような話が書きたい。そう思ったわたしは昨年の盆休みに「晴れやかな舞台」というのを書き上げました。わたしは吉澤が大好きなので、彼女を主人公にしました。出来の良し悪しは置いといて、吉澤と中澤の微妙な関係を背景にしたので、一応交換不可能な物語になったと考えています。
ところが、また別の問題が浮かび上がってきました。
この話は、形式上ミステリーです。謎があって一応の解決がある。ここで使われている他愛のないトリックは、クリスティが使った有名なものです。つまりパクリです。もちろんわたしは「すげートリックだろ」というつもりで書いたわけではありません。ミステリーなのはあくまでも形の上です。書きたかったところは別にあります。
(もしこれまでにない、新しいトリックが見つかって、それを使って娘。ミステリーを書いたとしましょう。するとそれほど素晴らしいトリックなら、娘。が出てくる必然性がないというジレンマが生まれることでしょう)
- 338 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月12日(金)20時34分24秒
- ( 0´〜`)
しかし、パクリはパクリです。一言一句オリジナルと同じだったらさすがにそれは問題です。しかし、トリックに限らず、ストーリーやプロットのパクリはどうなんでしょう。
もうオリジナルの物語は、どこにも存在しません。あるのはコピーの山ばかり。そんな状況で、どこまでパクリが認められるのか。
わからない。わからないまま、わたしは古今東西の物語をパクり続けています。
- 339 名前:名無し娘。 投稿日:2002年07月13日(土)04時36分34秒
- これほど立派なパクリの理由は無い(納得)
- 340 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月14日(日)00時14分10秒
- ( 0´〜`)<まあ、単なる自己正当化なんですが
- 341 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月14日(日)00時14分58秒
- 乖離(現実と虚構、作者と読者)
( 0´〜`)
わたしは吉澤ひとみが大好きなので、ほとんどの話で彼女を主人公にしています。
そんなことをしていいんでしょうか?
- 342 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月14日(日)00時15分37秒
- ( 0´〜`)
わたしは彼女の外面のごく一部しか知りません。書いている内容は名誉毀損に近いです。
まあ、わたしは自分自身の内面すらよく把握してませんし、どうこう言っても仕方ないですね。
「晴れやかな舞台」がみじめに失敗してしばらくしてから、「吉澤ひとみの妄想」というのを始めました。この主人公はひどく内向的な性格でした。それはわたしが、彼女はそういう性格だろうと思ったからです。
ところが昨年秋頃のうたばんに出てきた彼女は、いわばアフォでした。もちろんわたしはそんな彼女も大好きです。しかし、娘。小説書きとしては混乱してしまいました。小説は作り物だからなんでもありなんですが、この話はできるだけリアルにしようと思っていました。しかし今の彼女とはあまりにも違いすぎる。
( 0´〜`)
いやー、まいった。
- 343 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月14日(日)00時16分32秒
- ( 0´〜`)
しかし、アフォなところも彼女の一面であり、一面でしかありません。内向的というのはある意味間違ってはいないと今でも思います。
あと、この話の彼女は、おそらく本人は知らない言葉を使いますが、それは内面を表現したときのみに限ります。自分の内面を表現することくらい難しいことはないからです。
( 0´〜`)
物語の裏を読むというのは難しいことです。エスパー真希の最終話はくりかえし読んでもなかなか理解できませんでした。
わたしは辛抱のできない性格なので長いものが書けません。そこで短編ばかり書いています。短編ですからあまり冗長な描写は好まれません。するとどこかを端折らなければならないんですが、どこまで削ったらいいのかわかりません。
- 344 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月14日(日)00時17分23秒
- ( 0´〜`)
どうやったら作者の意図を伝えられるか。露骨なのはいけません。そこで裏を読み取ってくれることを読者に期待するのですが、それは妥当なのかどうか。
読者が裏を読んだとしても、読者にはその読みが正しいのかどうか確認するすべがありません。作者に聞くものヤボでしょう。
「晴れやかな舞台」という話では、主人公は他のメンバーの意図を読み取って、それに逆らう行動を最後にとります。しかし、主人公がその意図を正しく読み取ったのかどうか保証はどこにもありません。正しいのかどうかを書きませんでした。
だから、主人公が一人相撲をとった可能性もあるわけです。すると最後の場面での、他のメンバーの主人公に対する視線は変わったものになるでしょう。
と、二通りの読み方ができるように書いたのですが、読者に伝わっているのかどうか、わたしに確認するすべはありません。ヤボですね。
- 345 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月14日(日)00時18分01秒
- ( 0´〜`)
もちろん裏を読んでもらえなかったら、それは作者の責任です。
「妖精」という短編。加護の話す童話という形をとっています。この加護をレベル1としましょう。 加護の話の中に吉澤一家がでてきて、吉澤お父さんが娘たちに童話を話します。吉澤お父さんをレベル2とします。
この童話の中に妖精であるなっちとかおりんがでてきます。これをレベル3。
妖精の思い出話に中澤長老がでてきます。レベル4。
中澤の話の中にみっちゃんがでてきます。レベル5。
みっちゃんの体験談の中に矢口らアイドルグループがでてきます。レベル6。
厳密にはレベル3から6は同一の次元にあります。ただレベル6を出したいがためにややこしいことをしています。
そして最後の一文で、レベル1=レベル3(=レベル6)、であるかもしれないことを暗示して終わります。
はてさて……。
- 346 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月14日(日)00時18分52秒
- ( 0^〜^)
- 347 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月14日(日)00時19分22秒
- ( ^▽^)
- 348 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月14日(日)00時19分57秒
- ( ´ Д `)
- 349 名前:名無し娘。 投稿日:2002年07月14日(日)03時11分58秒
- でも、ここの吉澤も案外と「本当」の一面を突いてると思うっす
あのキレ振りは内向的な人が無理して明るく振舞うのにも似ている
・・・あれが本性というのも否定し切れませんが(w
- 350 名前:名無し娘。 投稿日:2002年07月14日(日)03時17分24秒
- 書き上げた作品は作者の手を離れ一人歩きをするもの・・・
一つの事実に対して、関った人の数だけ真実があるように、読者の数だけ
受け取り方も在るのかもしれません・・・まるで人と付き合ってるみたいですね(笑)
- 351 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月15日(月)15時57分56秒
- 黄板見てからこっち見たらあがってるからビックリした。
モー娘。に対して、僕らはテレビやラジオやマスコミを通しての
彼女達しか知らないのであって、その向こう側の彼女達の事については誰もが同じライン上にいると思う。
なので素晴らしい作品を書き上げた作者がこれが正解だ。と言っても僕は全て賛成することはできない。
だからこそ色々な可能性があって沢山の素晴らしい作品がありそれを読む読者がいるのだと思う。
でもその作品を読む読者と作品を書く作者の意志が必ずしも一致する事もない(笑
- 352 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月15日(月)21時49分50秒
- ( 0´〜`)
>>349
そうかもしれませんね。
ただ、わたしの書いた吉澤は吉澤じゃないんです。
わたしなんです。
>>350,>>351
それは覚悟しています。
ただ、悲しくなるときがあるんです。
- 353 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月15日(月)21時51分00秒
- ミステリー
( 0´〜`)
わたしはミステリーの形式をとった短編を書いています。なぜミステリーかというと、謎と解決という形式は読者の注意をひきつけやすく、主題をまぎれこませることが容易だからです。
もちろん、ありきたりの謎と解決ではすぐに飽きられます。では、複雑でトリッキーな謎であればいいのかといえば、それでは娘。を出す必然性がありません。
そこで、北村薫、若竹七海などが採用している「日常の謎」でいくことにしました。娘。たちが死んだりすると、その一作で終わるならそれでいいのかもしれませんが、立て続けに死んだり殺したりすると、リアルでなくなってしまいます。
( 0´〜`)
わたしはリアルを求めます。当然完璧なリアルなんか存在しません。読者が冷めて「これは作り物だ」という思いから少しでも離れさせうる程度のリアルです。
娘。たちが普通に遭遇しても不思議ではない謎。辻のアメが盗まれたとか、物が壊されたとか、騙したとか。刑法にかかりそうなのは窃盗、器物損壊、詐欺くらい。
- 354 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月15日(月)21時51分31秒
- ( 0´〜`)
吉澤ひとみ三部作は、「モーニング娘。を終わらせないために謎を作るんだ」と結論づけて終わりました。続いて石川主役5篇、後藤主役3編のミステリー形式の話を書きました。
そして、総決算とするべく、「モーニング娘。の醜聞」を始めました。このスレ名はチェスタトンを意識しました。そして始めの二つはチェスタトンからパクりました。
ところが、ここでわたしは袋小路にさまよってしまいました。
( 0´〜`)
「娘。という物語を終わらせたくないから謎を作る」というのは矛盾をかかえているのに気づきました。謎があればその解決があります。解決してしまえば多くの物語はそこで終わってしまいます。
ここで「多くの」と書いたのは、そうでない物語があるからです。謎が解決したのに、かえって不安がわきあがってしまうミステリー。「Yの悲劇」とか「モルグ街の殺人」とか。しかしそんなミステリーはほんのわずかしかありません。
( 0´〜`)
困った……
- 355 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月15日(月)21時52分49秒
- 短編を書こう
( 0´〜`)
第8回の短編集には47篇もの投稿がありました。すごい数ですね。これだけ盛況ということは、長編の多いm-seekでも短編の需要が多いということでしょう。
それなのに、各板で短編を主体に書いている人は少ない。何で?
わたしが短編を書くのは、長編が書けないからです。長編を書くには壮大な構想力と、それを支える文章力が必要です。特に時間軸の平板なストーリーより、物語にメリハリをつけるプロットが重要です。
( 0´〜`)
だから長編を書くのはたいへんなことです。途中で挫折したり飽きたりして放置された物語が多いのも当然です。1レス300文字で500レスというと400字詰め原稿用紙で375枚。本1冊分じゃないですか。
放置された作品は何の価値もありません。と書くと怒られそうですね。でも書き始めたら終わらせるのが作者の義務だと思います。
その点、短編(集)には未完はありません。当たり前です。5つくらい並べて終わりにしても、放置にはなりません。読者も安心。
- 356 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月15日(月)21時53分23秒
- ( 0´〜`)
なのに、短編は少ない。
おそらくネタ切れの不安が大きいからでしょう。あるいは、数をそろえると中にはパクリじゃないかと指摘されるかもしれない。ストーリーなんて有限のものだから。
短編集の投稿者の多くは長編書きの人みたいです。息抜きの意味もあるのでしょう。わたしのような萌え話を書かない短編プロパーの人は少ない。
( 0´〜`)
わたしがm-seekで短編を書き始めたのは、自分が読みたいと思う種類のものが少なかったからです。
自分で書いて自分で読む。
むなしい。
( 0´〜`)
仲間がほしい……。
- 357 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月16日(火)23時00分25秒
- 短編を書こう2
( 0´〜`)
短編を続けて書く上で障害になるのがネタの枯渇です。
ネタはうんうんうなってもけして浮かんだりしません。
自分の頭の片隅に隠れているものを引っぱり出すしかないのです。
あとはどうやってそれを引っぱり出すかです。
( 0´〜`)
まず題名を決めてしまう手があります。
なんでもいいのです。「ののの奇妙な冒険」でも「しないよ」でも。
短編集の「とっかえっこ」。
もちろんあの映画のタイトルが元です。
このタイトルに合わせるためには、石川と吉澤が交換しなければなりません。
それで全てを交換させました。
自然にオチました。
- 358 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月16日(火)23時01分05秒
- ( 0´〜`)
次には、いきなり書き始めてしまうのも手です。
単なる風景描写でもいいでしょう。あとは成り行きにまかせます。
『それは私の足元にひらひらと落ちていきました。拾ってみると、それは孔雀の羽でした。テレビで何回か見たことがありましたが、そこで見たようなきらびやかな模様はついてなく、いくつかの毛はぼろぼろで、模様もなんだか変な風に崩れていました。
ここはTV局のスタジオです。孔雀がいるはずがありません。このような小道具を使うという話も聞いていません。上を見上げてみましたが、まぶしい光を放っている照明と配線くらいしか目に入ってきませんでした。』
このあと数十行書いてボツ。
- 359 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月16日(火)23時01分39秒
- ( 0´〜`)
てっとり早いのは、「もし娘。がこういうシチュエーションにいたら」という話です。というか全ての物語がそうなんですが、短編の場合オチが決まらないと悲惨です。それでもとりあえず書き進めましょう。案外なんとかなるものです。
*もし辻のアメが盗まれたら
*もし安倍が不治の病にかかったら
*もし石川が記憶喪失になったら
*もし……
どこかで見たことのあるシチュエーションばかりですが、書かれていないシチュエーションなどありませんからそれでいいのです。
飯田ロボの笑い話はよく目にしますが、わたしはこれを「もし吉澤がロボットだったら」というふうに変換して「作品」というのを書きました。矢口が作ったロボットという設定です。時間の推移が長いので冗長にならないように日記の形式に。
これ非常に楽です。だって実際にあった出来事を並べればいいのですから。おまけに娘。小説としての必然性も高まって一石二鳥。オチは偶然見つかりました。そんなものです。
- 360 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月16日(火)23時02分16秒
- ( 0´〜`)
最後の手段はパクリです。
これは相当の覚悟が必要です。ばれたら追放されます。
しかもちょうどいいネタは少ないでしょう。金色夜叉の貫一お宮を吉澤石川におきかえたって、なんにも面白くありません。
また、多少のアレンジを加えないといけません。
『こうして石川梨華はこの世の悪を体現する存在となり、地球は闇に支配されることになった。
(どんなことをしたのかは、ここには恐ろしくてとても書けない)
全世界の人間が不幸に見舞われる中、彼女は得意げに両腕を前に投げ出した。
「ハッピー」』
これの元ネタはアダムスファミリーの「あなた不幸せ?」「ああ、不幸せだとも!」です。これくらいひねっておけば言い逃れはいくでもできます。また、アダムスファミリーが掲載されていた漫画読本なんて若い人では知らない人が多数でしょう。
古典はいっぱい読んでおきましょう。
- 361 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月16日(火)23時02分47秒
- ( 0´〜`)
どうでしょう。
簡単に書けそうでしょ。
迷うことはありません。メモ帳にでも打って、コピペして、書き込むボタンを押すだけです。
さあ、ほら。
- 362 名前:名無し娘。 投稿日:2002年07月16日(火)23時51分03秒
- 能力啓発スレだったのか・・・ていうか
・・・仲間が欲しいんですね(w
- 363 名前:名無し娘。 投稿日:2002年07月16日(火)23時55分32秒
- 僕はかつてこのシリーズと「Dear Friends」はseekでの「笑い」の双璧であると
説いた事がありますが・・・間違っては居なかったようです。
- 364 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月17日(水)21時17分13秒
- ( 0´〜`)
>>362
ウサギはさみしいと死んでしまうんです
>>363
それはステップさんに失礼でしょう
それより、短編書きませんか?
- 365 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月17日(水)21時20分47秒
- ( 0´〜`)
案内板の質問スレでなんだかデジャブー。
必然性は必要性と交換不可能性の二種類があります。
娘。小説なんだから娘。が出てくるのは当然。これが前者。
後者を求めるのはなかなかできません。
- 366 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月17日(水)21時21分32秒
- 小説世界の吉澤ひとみ
( 0´〜`)
CDTVの「恋人にしたいどうのこうの」で娘。が上位を占めました。安倍、石川、後藤と順当な結果でしょう。多分6位が保田で7位が平家だったのでしょう。
吉澤ひとみはこの3人+加護、矢口の後塵を拝してます。あまり考えたくないんですが、今はもっと下かもしれません。
ところが娘。小説となると話が大きく変わります。ほとんどの小説に吉澤が登場し、その半分くらいは吉澤が主役、準主役なんじゃないでしょうか。
これはどういうことなんでしょう。
- 367 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月17日(水)21時22分09秒
- ( 0´〜`)
答えは一つ。吉澤ひとみは何でもできる(何でもさせやすい)からです。
4期までの他のメンバーはあらかたキャラクターが固まっています。石川はけなげだが空気が読めないとか、後藤は何考えているかわからないとか、保田は見守るだけとか、矢口はうるさいとか、飯田は電波とか、安倍は病人だとか、加護は腹黒いとか、辻は白痴だとか。
ところが吉澤は書く人によって千差万別です。かっけーキャラとか、かわいいキャラとか、アフォなキャラとか、スケベなキャラとか。
( 0´〜`)
よく言われているようにキャラがないわけです。だからどうとでもできる。
本人には気の毒ですが、彼女は何者でもないのです。ただ、「吉澤ひとみ」という名前を持つためだけの存在なんです。飯田じゃない、安倍じゃない、矢口じゃない、保田じゃない、後藤じゃない、石川じゃない、加護じゃない、辻じゃない誰か。
「これがお前だよ」とキャラを与えられ、無言でそれを引き受ける。
- 368 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月17日(水)21時22分41秒
- ( 0´〜`)
しかし、何者でもないということは何者でもあるということです。変幻自在に姿かたちを変え、捕まえようと手を伸ばしても、すりぬけて逃げていってしまう。
吉澤には可能性しかない、とよく揶揄されます。これは真実をついています。どんな可能性か誰もわかりません。
人間は常に死という不可能性におびやかされています。何事かをなしとげても、いつかは全てが無に帰ってしまう。それでも人間はあがき続けなければならない。これをつきつめると虚無主義にたどりつくのですが、いつかは無に帰るときがくるとしても、今という段階では可能性に満ちています。可能性しかないのです。
とすると、「可能性だけ」と言われる吉澤ひとみこそが、もっとも人間らしい存在じゃないでしょうか。おや、先ほどと異なる結論が出てしまいました。
- 369 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月17日(水)21時24分17秒
- (0´〜`)
以上、わたしの妄想です。
現実の吉澤と虚構の吉澤をごっちゃにしてしまいました。
妄想は現実と虚構のはざ間から生れ落ちる鬼子です。
そういえば、夢と現実がまじりあった夢を見た娘。がいたなあ……。
- 370 名前:ののぼん 投稿日:2002年07月17日(水)21時53分16秒
- ( ´D`)・……………よっすぃ〜がうらやましいれす…
- 371 名前:名無し娘。 投稿日:2002年07月18日(木)02時01分18秒
- ところがキャラの方向性が固まっている筈の後藤の主役率は結構高い。
過去における市井の地位を継承するのが吉澤ではないか、と思ったりします。
彼女は実績を残しましたが、その後の可能性の方に期待を寄せられていた点
が吉澤とよく似ていますね。(改めて言う事でもないかもしれません)
- 372 名前:名無し娘。 投稿日:2002年07月18日(木)02時15分41秒
- 吉澤や市井というキャラは、自己同一化をしやすい故に主役率が高いのでは
ないかと考えています。それがキャラが無い、という事なのかは判りませんが
軌道を外れない程度に常識家で、物語を動かせるくらい行動的・・・これは
主役向きではないでしょうか。
- 373 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月19日(金)20時55分58秒
- (0´〜`)
>>371
しかしもはや市井を主人公にする人は少ないです。
そして、吉澤の肥満ネタを書く人はいない。
ここに何かあるのかもしれません。
(オイラはネタにしたぞ)
>>372
吉澤は稀代の非常識家です。
吉澤は存在しないんです、
>>370
ののがうらやましい。
- 374 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月20日(土)16時58分51秒
- 妄想です。といいきりやがったな。
吉澤は非常識家じゃない、常識を知ってるからこそ、
それに反逆してるんだ。
まぁ妄想だけど・・・
- 375 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月21日(日)18時32分19秒
- (0´〜`)
>>374
すばらしい妄想です
いっしょに短編を書いていきましょう
(0´〜`)
だーれも非萌え短編書かないのね……
- 376 名前:名無し娘。 投稿日:2002年07月21日(日)23時11分25秒
- 森板の「ぱちものふぁんたじぃ」辺りが育ってくれると
良かったのに・・・
あ、でもパチものか(w
元ネタわかんなかったですが
- 377 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月22日(月)22時48分06秒
- (0´〜`)
>>376
面白かったのに残念です
☆★☆ ショマキキングダムへようこそ! ☆★☆
・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*
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∧ △|....:|
△田.lΠl l.△
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ii_______〔ニニ〕 ||⌒|| 〔ニニ〕_____ii
______| | || 丗 || | |_____|
^~~ ~~ ~~
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∧М∧
∂/ハ)ヽヽ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
. |ハ´ Д `)< 夢と魔法の絶対王政だよ
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ノ∪lノ .ヽ∪
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`^〜〜-〜'^
゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*
- 378 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月22日(月)22時49分12秒
- 短編集という罠
( 0´〜`)
第8回短編集は未曽有の投稿ラッシュで、全部で50編近くありました。中には投稿しないで自スレ進めろといわれそうな人もいるようです。
( 0´〜`)
わたしも第7回と第8回に投稿しました。予想通り、もらった感想は「わけわからん」でした。シュールと受け取られる話(本人はきわめてリアルなインナースペースを描いているつもりなんですが)は、1編単独ではおもしろくありません。いくつか並べてようやく味が出るんでしょう。
第8回の「とっかえっこ」なんかは評価されていいものではありません。あれは小説ではありません。自スレに載せるべきでした。
第7回は「桜の花」。確か案内板でテーマを「雨」とか「お約束」とかなんやら議論していました。この2つならよかったのに。しょうがないので自スレに載せました。それが外から○○○が降ってくる話と、石川が「ほい」できなくなる話。
- 379 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月22日(月)22時50分07秒
- ( 0´〜`)
マルチ短編集「かごのかじ」。書いたのですが、時間的にぎりぎりだったことと、内容のいびつさから投稿はやめて自スレに載せました。
投稿しなくてよかった、その理由。
一つ。人称が途中で変わっていた。吉澤が死んじゃうのでオチを語るために三人称を選んだのですが、吉澤の内面を書いてるうちに一人称になってしまいました。吉澤が好きなんだなあ(キショ)。
( 0´〜`)
一つ。わたしの書いた話は、保田主催の写真コンテスト(テーマは赤)に吉澤が自分らしい写真を撮ることができず、自分の血まみまれとなった写真を写すことを選ぶという筋です。書いている途中は意識してなかったのですが、よく考えると短編集のことを暗示しています。
わたしにはみなさんに見せるようなものは何も持っていません、などという内容を投稿するのは問題です。そして逆に「みなさんにはそういうものがあるんですか?」と問いかけることにもなってしまう。嫌味です。こんなふうに受け取られたら困ってしまいます。
まあ、自スレに載せたのはもっと問題だったのかもしれませんが。
- 380 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月22日(月)22時51分31秒
- ( 0´〜`)
短編集は長編作者の息ぬきの場でもあります。「あの作者がこんなものを」という驚きもあります。
そんな中に短編書きがまぎれこんでいったのが間違いだったのでしょう。(とすると、長編集なるものができたら、息ぬきに参加するべきなんだろうか?)
( 0´〜`)
うむむ。
短編集はいけない。長編作者に短編の発表の場を与え、適度にガス抜きさせています。満足した作者さんは、短編スレを立てようなどとは思わなくなってしまうでしょう。まるでJリーグに良質の素材を取られたプロ野球ではないですか。
わたしは一人で叫びましょう。
( 0`〜´)/
短編集反対! 短編作者を保護せよ!
- 381 名前:nonobon 投稿日:2002年07月23日(火)01時45分45秒
- (# `D´)ののも短編集反対れす!
自スレ更新しろよと…
アト タンペンバッカリノノヲダスナト…
- 382 名前:名無し娘。 投稿日:2002年07月23日(火)01時51分53秒
- こうして短編作家はレッドデータに登録された。
そして2002年7月22日「女神H」・・・また一つの短編スレッドが終わりを告げた。
(゜〜゜0)\(- Д - )(ぉぃ!
- 383 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月24日(水)22時07分21秒
- ( 0´〜`)
>>381
「なしのはな」はいつも楽しみにしてました。
そういえばわたしも辻の扱い悪いですね。
それでいいんですか?
>>382
いつかは終わりが来るんです。
でも終わらせたくないんです。
- 384 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月24日(水)22時07分54秒
- 「いしよし」なんて
( 0´〜`)
例えば「カップリング希望受けつけます」なんてあって「いしよし希望」という言葉が返ってきます。そんなに「いしよし」がいいのかと小一時間(略)。いいんでしょうなあ。
( 0´〜`)
googleで「いしよし」を検索すると「おおいしよしお」なんてのが引っかかったりして、それでもハァハァ。
非萌え短編作者としては「いしよし」は不倶戴天の敵です。圧倒的な需要と供給の前に、雌伏を強いられる。町中のおばあちゃんがひっそりやっている駄菓子屋の気分。
( 0´〜`)
案内板などで「いしよしのいい話ありませんか?」などと書かれると、「唯一無二のいしよし物語」へのリンクを貼ってしまいたくなる誘惑にかられます。
と思ったら、「嫌になるくらいいしよし物語」が桃板の紹介スレに載っていました。彼ら彼女らはなんでもいいのね……。
- 385 名前:nonobon 投稿日:2002年07月26日(金)16時39分53秒
- ( ´D`)さくしゃたんのばあいきほんてきにみんなあつかいわりーのでいいれす。
ところれ「作者フリー 短編用スレ 一集目」
なるものがれきましたね…ろおなんれしょう…
- 386 名前:名無し娘。 投稿日:2002年07月27日(土)07時22分21秒
- ところで短編集スレは「短編書きたいけど1スレ埋めるほどネタが無い」人に
とってはチャンスかもしれません。
愛の形はさまざまで、恋の行方は作家次第です・・・おそまつ。
- 387 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月27日(土)22時25分29秒
- ( 0´〜`)
短編が増えること自体は(わたしにとって)望ましいことです。
しかし、短編集スレと同じく、長編作家の息ぬきの場になってしまっては。
短編書きたいなーという勇気ある人へ。
とにかくスレたててしまいなさい。
放置してはいけないという良心があるならば案外続くものです。
だから、ほら。
( 0´〜`)
といいつつも、ネタがなくて困っているところです。
>>385
いしよし物のうらやましいところ。
それは物語が終わらないところ。
- 388 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月28日(日)20時18分04秒
- 短編の作品が続いて一つの形になってしまった場合それを長編と呼ぶのだろうか?
そうなると作者さんの作品は?
- 389 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月28日(日)23時21分01秒
- ( 0´〜`)
>>388
連作短編ですね。その1話単独でも話になっているのなら短編でしょう。
わたしの場合、「妄想」で一つの連作のつもりで、その後の「冒涜」では「妄想」との関連性を持たせるつもりはありませんでした。
ところが「慢心」を書き終えるとこの三つがつながっているという状態になってしまいました。
つまりたまたまです。
連作であることを意識したのは「名探偵チャーミー」です。
山田風太郎「明治断頭台」をパクりました。
(〜^◇^)<またパクリかよ!
- 390 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月29日(月)17時41分40秒
- なぜ作者さんがこれほどまでに短編を強調するのか考えてみた。
実は作者さんはエラリィーやドルリー・レーンの様に複数いて、それを悟られないために
この様なことを言っているのではないか、とか言ってみる。
- 391 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月29日(月)22時59分13秒
- ( 0´〜`)
ワトスン君。その推理には穴がある。複数であることを隠すなら、名無しで書かずに一つのハンドルネームで読者を騙すでしょう。
単に天邪鬼なんでしょう。
敢えて言うなら、短編には美があるのです。
- 392 名前:名無し娘。 投稿日:2002年07月30日(火)00時12分16秒
- このやりとり自体は自問自答に見えるのですがね(笑)
- 393 名前:nonobon 投稿日:2002年07月30日(火)21時44分33秒
- ( ´D`)つttp://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi/purple/1027999236/
こんなんはじまりましたれす
- 394 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月30日(火)23時14分56秒
- ( 0´〜`)
>>392
石岡君。残念ながらその日の17:41:40にわたしはダニ退治にいそしんでいたのだよ。
噴霧を吸いすぎてラリったところを目撃した人間が複数(以下略)。
>>393
ようやく待望の作者さんが!
超短編ってわたしのよりずっと長いけど。
- 395 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月31日(水)21時48分37秒
- 誰?
( 0´〜`)
( ^▽^)←これは誰なんでしょう?
( 0´〜`)
テレビ画面に映っている石川梨華と、娘。小説に出てくる石川梨華がイコールで結ばれている保証は何もありません。わたしたちが勝手にそう思い込んでいるだけです。
そんなことは承知の上でわたしたちは楽しんでいます。だからといって、本人に似せる努力を怠ってはいけません。石川梨華の歌が上手だったり、後藤が「てへてへ」言ってたら、違和感が生じます。感情移入がしづらくなります。
- 396 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月31日(水)21時49分32秒
- ( 0´〜`)
読者と作者の間にある了解事項が問題になります。いったいそれはいつできたのでしょうか。了解されていれば、それでいいのでしょうか。
( ´D`)が「てへてへ」言っているとします。しかし実際に辻希美が「てへてへ」言っているのを、わたしは聞いたことがありません(わたしが知らないだけかもしれません)。すると、わたしは辻に「てへてへ」言わせるべきなのでしょうか。
いっとき、辻のセリフをですます調にしたことがありました。「……なのれす」としたほうがいいのか、「……だよー」としたほうがいいのか、迷ってしまいました。そこで間をとって「……なのです」としたのですが、こっちのほうがよっぽどおかしい。
( 0´〜`)
わたしは人間の内面のゆがんだところを書くのが好きなので一人称を多用するのですが、そのときの言葉使いもどうしたらいいのかわかりません。上のほうにあるとおり、人間の内面を小学生の言葉では
書くことができません。だから吉澤が知らなさそうな言葉も使いました。
でも、辻の一人称が難しい。違和感が生まれます。どこまで漢字を使えばいいのか。
はてさて。
- 397 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月31日(水)21時50分09秒
- ( 0´〜`)
虚構ですから何でもいいのでしょうが。
- 398 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月31日(水)21時50分53秒
- 登場人物
( 0´〜`)
あまり受けがよろしくないのが「娘。とオレ」小説です。かなり根強いアンチがいます。
ただ「娘。とオレ」はダメだが「娘。と男」になると抵抗が多少薄まるようです。前者は作者の妄想全開なところが嫌われてしまうのでしょう。全ての娘。小説は妄想なんですけどね。
( 0´〜`)
総じて娘。以外の登場人物は少ないです。娘。同士があれこれ絡むのが楽しいからです。不純物はなるべく少ないほうが好ましい。どこの誰とも知らない人物はいらない。当然です。
- 399 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月31日(水)21時51分45秒
- ( 0´〜`)
ミステリーを書こうとして壁にぶつかったのがこの点です。娘。だけですまそうとすると、扱える謎の範囲がせばまります。殺人とか誘拐なんかに遭遇することはまずないからです。
仮にあったとして(虚構なんだから当たり前ですが)、長編ならいいでしょう。それっきりでおしまいですから。ところがこれで連作短編にしようとするとムリが出てきます。13人死んだらそこでおしまいです。
ならば、娘。以外の人物を出さなければなりません。というわけで「私(男)がパン屋で体験した不思議なできごとを娘。の一人が解決する」という話を書いたのですが、これが大失敗でした。謎そのものがしょぼかったのもありますが、一番の失敗は私(男)の視点で書いたからです。「娘。とオレ」小説と同じあやまちを犯したのです。
( 0´〜`)
それを避けるには、娘。以外の登場人物を希薄にしなければなりません。空気のような、薄っぺらい、いるのかいないのかわからない程度の存在に。
(そしてそれこそがミステリーのもっとも得意な分野なんですが)
- 400 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月04日(日)19時36分35秒
- 「娘。と男」結構スキなんだけどな〜
娘。以外の登場人物を通してみる視点だから感情移入しやすいと思うんだけどな〜
オレ娘。ファンじゃないのかな〜
- 401 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月04日(日)22時00分18秒
- ( 0´〜`)
>>400
そう。感情移入できるかどうかが問題となります。
「これは作り物だ」と読者に思わせてはなりません。
登場人物の問題ではないのかもしれません。
作者の影を見せてはならない。
だから作者を隠さなければならない。
もっと、作者から物語を遠くへ、遠くへと。
(ということで「Nevermore」ケメコ主人公の連作短編始めました)
- 402 名前:名無し娘。 投稿日:2002年08月05日(月)01時01分31秒
- | ´ Д `)作家が創作意欲を失う時〜
| `.∀´)現実が想像を超えちゃった時〜
|´ Д `;)`.∀´;)(・・・リアルがフィクション超えちゃあね)
- 403 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月06日(火)22時53分39秒
- 書くということ
( 0´〜`)
今回の騒動で書く人も読む人も、一時的でしょうが減っていますね。
消化しないといけませんからね。食べた後すぐ運動したら体に悪いです。
では、消化して、書くとはどういうことでしょうか?
それは、物語を終わらせることなんでしょうか?
( 0´〜`)
どこかで書きましたが、フクロウは黄昏に飛び立ちます。
事のすべてが終わってからじゃないと、いったい何が起こったのか、まとめあげることはできません。祭りの最中に冷めることはできないのです。
- 404 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月06日(火)22時54分10秒
- ( 0´〜`)
リアルが想像を超えることはありません。人間は自分たちの想像を超えたことなんかできやしません。想像したことを実際に行動にうつすことができるかどうか、ただそれだけです。
物語はいくつかの要素の組み合わせから成り立ちます。人間の思いついたストーリーなんてもう出つくしてしまいました。
じゃあ、わたしはなんで書くんだろう?
( 0´〜`)
もはやストーリーの面白さ(オリジナルかどうか)だけでは書くことはできません。そんなものはもうないから。ASAYANがなくなったのもそうなんでしょう。
みんなの叫び声が聞こえてきます。
地面をかきむしって、喉をからして、息もたえだえに、消えてしまいそうな小さな叫び声が。
それをわたしは拾います。それを書く(書きたい)のです。それしかないのです。
- 405 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月06日(火)22時54分42秒
- ( 0´〜`)
まあ妄想なんですが。
- 406 名前:名無し娘。 投稿日:2002年08月06日(火)23時45分10秒
- 創作は血を吐きながら続けるマラソンですか・・・
娘。の活動もそれに近いものがありますねぇ
- 407 名前:名無し娘。 投稿日:2002年08月06日(火)23時53分29秒
- リアルを超える想像は無い・・・そうかもしれません
今回の事も予想より早かったと言うだけで
まるで想像してなかった事態なんかではなかった訳ですし・・・
「虚を衝かれた」という一点においてUFAのシナリオは成功だったのでしょうか?
物語としては最悪だったとしても
- 408 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月09日(金)20時37分14秒
- ( 0´〜`)
>>406
いえいえ、ウソです。
もっと気楽なものなので、短編書きませんか?
>>407
ちゃいます。
「リアルが想像を超えることはありません」ですね。
成功か失敗かはすべてが終わったときにわかります。
そしてわたしたちはそれをなるべく先送りにしたいのです。
- 409 名前:名無し娘。 投稿日:2002年08月10日(土)08時06分26秒
- ・・・間違えました
リアルは想像を超えない、と追確認したかったのです(恥
( ^▽^)短編は勘弁っ♪
(;^▽^)・・・
- 410 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月12日(月)17時29分43秒
- 色々な作者さんが試合に出ない人が多い中、ここの作者さんは衣笠並に試合に出る。
鉄人。尊敬。
- 411 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月12日(月)22時01分05秒
- 時間を作る
( 0´〜`)
このところ更新ができないでいます。仕事が何やら忙しくて、書いている時間がないからです。
( 0´〜`)
他の作者さんはいつ書くんでしょうか。
- 412 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月12日(月)22時01分38秒
- ( 0´〜`)
わたしの場合、家に帰ってからでは何もできません。ネタも浮かばないし、雑事に追われてしまいます。じゃあいつ書いているんだと問われればもごもご。一応社会人ですしもごもご。
( 0´〜`)
故あって窓際みたいな立場になりました。この若い身空でとかどうとかいろいろありますが、ほんとに窓際というわけではなく、仕事の都合上エアポケットが生じました。その時間を利用してもごもご。
ところが時代はそれを許してくれません。今や窓際族なんていません。そうなる前にクビにしてくれます。
- 413 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月12日(月)22時02分16秒
- ( 0´〜`)
それでも窓際やってみたいという方は「窓際アイドル吉澤ひとみ」をご参照ください。
どうなっても責任は持てませんが。
- 414 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月14日(水)15時23分57秒
- てっきり作者さんは山口雅也のファンだと思ってましたが違うんでしょうか?
吉澤ひとみ三部作は「キッド・ピストルズ」で、nevermoreもミステリーズにありましたし。
他にもあるのかもしれませんが。
あとオイラが短編を書くときは、妄想をストレートにぶつけます。
オブラートにくるめません。
だから長いのが書けないんだ、と最近やっと自覚しましたが、それはまた別のお話。
不純かもしれませんが、自分が小説を書く理由は妄想の発散だと思ってます。
自分はこんなこと考えてるんだ、と。
それについて反応があるのが嬉しくて書いてるのかもしれません。
応援してます、がんがってくらさい。
長文スマソ。
- 415 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月14日(水)23時20分49秒
- ( 0´〜`)
>>414
山口も法月も笠井も京極も大好きです。
今「13人目の探偵士」読んでます。
妄想とは何でしょうかね?
- 416 名前:414 投稿日:2002年08月17日(土)09時59分26秒
- 妄想とは、自分の考えていること全てを指すのではないでしょうか。
作者さんとは根本から違うと思いますが、僕の頭の中にはなかよしの二人が同居しています。
その二人の関係を描くというのは、頭の中で起こったことを書き出しているだけだということです。
つまり、自分の中での真実といいますか。
- 417 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月18日(日)17時49分57秒
- 亡き女を想う by坂本金八
- 418 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月19日(月)13時12分05秒
- ( 0´〜`)
- 419 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月19日(月)13時13分37秒
- ( 0´〜`)
>>416
根本から違うと思います。
「13人目の〜」は最近講談社ノベルズから出ました。
>>417
亡き女の想い
- 420 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月20日(火)20時49分33秒
- 世界を作る
( 0´〜`)
小説世界も世界の一つですから、作者は神にも等しい存在です。だからちゃんとした世界を作り上げなければなりません。どんな世界かわからなければ、読者は感情移入もできず、ただとまどうだけになってしまいます。
ところがここをがんばりすぎてしまうと、現実の娘。たちから遠くかけ離れた世界ができあがってしまいます。これも何を読まされているのか読者は首をひねることでしょう。
( 0´〜`)
ということで、娘。のキャラクターを損なわないで世界を作リ上げることが必須となります。最も手軽なやり方が、2ちゃんねるの掲示板です。作者も読者も多くはあそこを覗いているでしょうから、あそこでアスキーアートのキャラクターを借りてくればいいのです。
作者の思っている娘。のキャラクターと読者のそれが一致すればそれで終わりです。必ずしも本物のキャラクターと一致させる必要はありません。
(すべての小説がそうだと言ってるわけではありません)
- 421 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月20日(火)20時50分14秒
- ( 0´〜`)
2ちゃんねるの名前を出しましたが、作者と読者が共通理解を得られれば、そこに限る必要はありません。なっちが天使であり、よっすぃ〜がかっけーであれば、だいたいのところは通じるからそれでいいのです。
後は好みの世界にあてはめるだけです。現実の世界によく似た芸能界でも、学園ものでも、サイコスリラーでも、何をやっても作者の自由です。そしてストーリー通りに動かしましょう。
( 0´〜`)
こうしてどこかで読んだり見たりしたことがある小説が量産されます。
書いてて、読んでて、楽しいのでしょうか?
- 422 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月20日(火)20時50分47秒
- ( 0´〜`)
超能力者となった娘。を書いたって、「導かれし娘。」がもうすでにある。サッカーさせたって、「狂気の145cm」がもうすでにある。F1させたって、剣道させたって……。
( 0´〜`)
m-seekの多くの小説が放置されてしまうのもわかります。だってもうどこかにある物語なんだから、書きつづけても面白くもなんともない。結末がわかりきった小説書いたってしょうがない。
こうして残るのは、楽しむ主眼がストーリーにはない、萌え話とかエロ話となりました。
- 423 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月20日(火)20時51分17秒
- ( 0´〜`)
お前はどうなのだと言われたら、困ってしまいますが。
- 424 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月22日(木)19時20分09秒
- ( 0´〜`)
- 425 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月22日(木)19時20分49秒
- ( 0´〜`)
ということで、書けなくなってしまった……
- 426 名前:名無し娘。 投稿日:2002年08月22日(木)23時03分31秒
- ( ´ Д `)
Never say 'never again'・・・
- 427 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月23日(金)22時18分11秒
- ( `▽´)
Never say die!
- 428 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月25日(日)18時28分26秒
- 作者さんはマゾなんですか、それとも書き手を脅しているサゾなんですか、
いや、作者さんはパクリを恐れるなと言っているのか・・・
- 429 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月26日(月)00時39分40秒
- ( 0´〜`)
>>428
どうしたもんかなぁと悩んでいるだけです。
青板「Nevermore」でケメコ短編を書いていたのですが、
どうにもこうにも行き詰ってしまいまして。
全5編の予定ですがうまくいきません。
書いててどうにも面白くない。
多分読者も。
ということでリハビリのために別の話を始めました。
- 430 名前:名無し娘。 投稿日:2002年08月30日(金)00時38分46秒
- 作者さんを見習って何か書こうと思ったんですが
思うだけで全然キーが進みません・・・。
レスなら書けるのですが・・・。
( ´ Д `)ノ いっそレス作家にっ!
- 431 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月30日(金)22時31分01秒
- ( 0^〜^)
>>430
がん ばれ がん ばれ
- 432 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月30日(金)22時35分24秒
- 題名・冒頭・結末
( 0´〜`)
デイヴィッド・ロッジという人が「小説の技巧」という本を書きました。「冒頭」から「結末」までいろんな小説のファクターをわかりやすく解説しています。
それによると、冒頭の第一の使命は、読者を自然に物語世界にひきずりこむことです。町並みの情景から始まったり、夫婦の会話から始まったりと、作者はいろいろ苦心します。
( 0´〜`)
短編ならそのまま本筋に入ってしまえるのですが、長編の場合、それではちょっと芸がありません。せっかく長いんですから、急ぐことはないでしょう。あとから読み返すとどうにもバランスが悪い。
長編作家さんはたいへんですね。
- 433 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月30日(金)22時36分17秒
- ( 0´〜`)
結末を迎え物語が終わると、読者は現実の世界に戻ります。ここで余韻にひたれれば、その物語は良い物語ということなんでしょう。
妄想主義者としては、それは耐えがたい。
( 0´〜`)
彼女はインタビューでこう言いました。
「現実と夢がまざりあった夢を見ました」
現実か虚構か、どちらかはっきりしない世界。わたしはそれを「妄想」と呼びます。
その妄想をもっと楽しみたい。
ところが、題名や、冒頭・結末は、現実と虚構の境界線の役割を果たしています。世界は分断されてしまった。自由に行き来することができません。高い壁が築かれ、警備兵が銃を構えて立っています。
- 434 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月30日(金)22時37分21秒
- ( 0´〜`)
物語を終わらせるには、物語が始まらなければなりません。わたしは物語を終わらせたくない。ならば、物語を始めなきゃいいのでしょうか?
( 0´〜`)
というわけで、実験実験。
- 435 名前:名無し娘。 投稿日:2002年08月31日(土)23時45分54秒
- そこに入ったときは確かに虚構だった。
だけど、今ドッチに居るのかは判らない・・・。
私にとっての妄想世界とはそういったもののようです。
妄想ですら始めなければ始まらない。
終わらせないために始めなかったら、そこに物語はあるのでしょうか?
( ´ Д `)・・・わかんないよ
- 436 名前:名無し娘。 投稿日:2002年09月01日(日)00時17分15秒
- ( ´ Д `)(^〜^0)
これだと始めなくても良い訳で・・・あわわ
- 437 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月03日(火)00時14分03秒
- ( 0´〜`)
そこで、何が終わったんだかわからない物語にしたんですが
いかがでしたか?
「話そのものがわけわかんねー」は無し。
- 438 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月03日(火)20時08分50秒
- 批評って何?
( 0´〜`)
森板の短編「baby blue」を批評してみましょう。
当然ネタバレするので、その前にここを読んでください。
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi/wood/1030418133/
- 439 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月03日(火)20時09分52秒
- ( 0´〜`)
あらすじ
吉澤が突然の失踪。石川の携帯に「北へ行く」との吉澤の返事が来る。
石川は吉澤を追って電車に乗る。しかし見つからない。
石川は矢口の携帯に「北へ行く」と電話する。
( 0´〜`)
最悪な比較論
この話ように、登場人物たちが操られるように同じ行動パターンを取る物語は、過去にもいくつか見受けられます。
例えばパッと思いつくだけで小林恭二、ウェストレイク、等々。
このパターンは不条理劇としてはポピュラーなタイプのため、どのように処理するかが作者の腕の見せ所になる。
ところがこの作品の場合、例えば小林恭二の……(以下延々と比較論が続く)
- 440 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月03日(火)20時11分08秒
- ( 0´〜`)
隠喩に注目(一点集中型)
まずいきなり「歯車」という言葉が出てきて、機械のように働かされているアイドルグループという印象を植えつける。この後の逃避行の動機を表している。
トイレの中で電話をする様子は、石川の逼塞感を助長させる。
次の「イノシシのような」という比喩はちょっとわかりがたい。赤い布に突進するならばウシである。
また「50メートルを走りきるくらい」という比喩の効果は不明。
そして石川は「北」へ向かう。東北とか北海道とか、開発の進んでいないさびしい土地に向かわせることで、彼女たちの寂寥感を表している。
これが南だったら楽園であるし、西へだったら希望の未来、東だったら征夷大将軍のイメージとなってしまう。
ただし、これは北半球の国の話で、南半球だったら南に向かうべきなんだろうか。
その後の田園やら稲やらで、アイドルグループと自然を対置している。カントリー娘。だったら話にならない。
矢口に電話をし、「北へ向かっている」という言葉で矢口を誘っている。いずれ全メンバーが北に向かうことになるだろう。最後の人は誰に電話するのだろうか。
- 441 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月03日(火)20時11分49秒
- ( 0´〜`)
疑り深い批評(雰囲気が読めない)
まず吉澤がいつ失踪したかが問題である。
例えば前日だとしよう。丸一日たてば鈍行を乗り継いだとしても北海道まで行けてしまう。
石川が矢口に電話したのは、石川が飛び出してから半日も経ってないだろう。
すると吉澤もその日にいなくなったのだろうか。
そうすると週刊誌の記者がかぎつけるのが早い気もする。
しかし吉澤が週刊誌にリークしたと考えればつじつまがあう。
なぜ吉澤は自分の失踪をリークしたのか?
これは愉快犯である。
吉澤は北へは行っていない。
この騒動を近くで見守っているはずである。
事務所のトイレの中に潜んでいたのだ。
隣の個室に石川が入ってきて、さぞや吉澤はびっくりしたことだろう。
壁一枚をへだてているだけなのだから。
- 442 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月03日(火)20時12分52秒
- ( 0´〜`)
誉めてるんだか貶してるんだか(週刊誌風)
今週のオススメは森板のホープから。この「baby blue」はおかしくも悲しいショートストーリーだ。突然の吉澤の失踪、そして一本の電話から石川の運命が急展開していく。
注目したいのは作者の色遣いである。白い便座、赤い布、黄金色の稲、黒い闇。電車の色は書いていないが、きっと緑だろう。なんとなく。
主人公の心の動きも興味深い。ただし実際にこんな女の子はいないだろう。いたらぜひお目にかかりたい。
今後の期待もこめて星は四つ(満点は五つ)。
( 0´〜`)
原点に帰る(読書感想文)
三年一組 吉ざわひとみ
八月二十七日、「baby blue」という物語を読みました。
(稚拙なあらすじが続く)
さいしょの女の子が北のほうに行ったのはなんでかあと思いました。
わたしだったらいっしょに電車にのったと思います。
けいたい電話を使いすぎると、お母さんにおこられてしまうので、ほどほどにしたほうがいいと思いました。
とてもおもしろかったです。
- 443 名前:LVR 投稿日:2002年09月04日(水)15時14分04秒
- 批評参考になりました。
パッと読み直しただけだと気付かないミスが多々ありますね。
次は南に行く話でも書いてみようかなっと。
- 444 名前:名無し娘。 投稿日:2002年09月04日(水)19時10分27秒
- (´ Д `)
こういう批評は本質的では無いって例だと思うので
ミスを指摘してるのでは無いのですよね・・・多分。
「baby blue」は「終わらない物語」の一つの形だと
思いましたが・・・これも多分ですが。
- 445 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月04日(水)21時08分47秒
- ( ゜皿 ゜)
もしかしたら作品晒したら批評してもらえるのですか?
なんて冗談はともかく(出来るならやってもらいたいですが)。
他の作者さんの作品の批評を読むというのもすごく勉強になります。
何気ない一文でも、読者は色々なことを想像しますからね。
京極夏彦の言葉を思い出しました。
- 446 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月04日(水)22時06分28秒
- ( 0´〜`)
>>443
まじめに受け取っちゃいやん
>>444
娘。は13人なのでそこで終わっちゃいますね
>>445
どうぞ思う存分さらしてください
短編ですか?
- 447 名前:443 投稿日:2002年09月04日(水)23時28分54秒
- ネタだと知りつつも納得できたもので。
マジレススマソ
レス不要です。
- 448 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月05日(木)21時25分24秒
- ( ゜皿 ゜)
それではお言葉に甘えて。
http://www.metroports.com/test/read.cgi/morning/1019895988/l15
これの102から107をお願いします。
切れ味の悪い日本刀みたいなオチの鈍さですので、遠慮なく一刀両断してください。
- 449 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月05日(木)22時36分49秒
- ( 0´〜`)
そうですね。
じゃあ次のスレに移動します。
- 450 名前:名無し娘。 投稿日:2002年09月07日(土)14時45分51秒
- 煤i ´ Д `)
移動なのっ!
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