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lead to the future
- 1 名前:takatomo 投稿日:2002年03月02日(土)01時30分32秒
- ちょっと長めの話を書いてみようと思います。
主人公は吉澤で。
まだまだ二作目で文章が下手だと思いますが、なんとか完結させますので、
よろしくお願いします。
- 2 名前:takatomo 投稿日:2002年03月02日(土)01時33分10秒
- <プロローグ>
小さな女の子が泣いている・・・・
公園の隅っこで泣いている・・・・
みんな気づいてない振りをして通り過ぎていく・・・・
ふと、若い女の人の足が止まった・・・・
女の人はやさしく女の子を抱きしめた・・・・
女の子は泣くのをやめ、女の人に連れられて歩いていった・・・・
- 3 名前:takatomo 投稿日:2002年03月02日(土)01時34分16秒
- <1>
ハァハァハァ・・・・
(何でこんなことになったの?何が起こってるの?)
階段を駆け下りながら、私は何とか考えをまとめようとした。
(みんな大丈夫かな?)
しかし、人の心配をしている余裕はなかった。
「彼女」が追いついてきたからだ。
「もーなんなのよ!私の平穏な毎日を返してよ!」
時間は30分前にさかのぼる。
私は吉澤ひとみ。16歳の高校生。
現在お父さんと二人暮し。
お母さんは、私が小さい頃になくなったとお父さんから聞いている。
今日もいつも通り退屈な毎日になるはずだった・・・・・
「彼女」たちがくるまでは・・・・
- 4 名前:takatomo 投稿日:2002年03月02日(土)01時36分13秒
- 二時間目、数学の時間にそれは起こった。
いきなりドアを開けて三人の女の子が入ってきた。
一人は小学生くらいの子だった。
もう一人は私と同じくらいの茶髪の子、そして最後は目の大きい人。
「なんだ?君達は?今は授業中だぞ!」
先生が三人に怒鳴りつけた。
「うっさいな〜あんたには用はないの」
そう茶髪の子が言った。
「私らはあんたに用があんねん。吉澤ひとみさん、あんたにな」
横から続けて小さい子がそう言った。
「おい、おまえら、何なんだ、授業中に・・・」
「あんたは黙ってな!」
大きな目の人がそう言うと、先生は急にその場に倒れた。
たちまち教室中がパニックになった。
- 5 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月02日(土)17時58分27秒
- どういう展開になるんだろう・・
- 6 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月02日(土)18時37分04秒
- なんか凄く気になります…
頑張ってください
- 7 名前:takatomo 投稿日:2002年03月03日(日)02時29分36秒
- 「あーあ。オバちゃんが力使うから・・・めんどくさくなったやん」
「うるさい。オバちゃんって言うな。私はうるさいのキライなの」
「二人とも、言い争ってる場合じゃないよ。早く仕事終わらせて帰ろ」
三人はバラバラに教室から出て、私を探し出した。
- 8 名前:takatomo 投稿日:2002年03月03日(日)02時32分40秒
- 再び現在・・・・
「みーつけた。私が一番や」
上から声が聞こえた。
(うそ・・・浮いてる・・・)
小さな女の子の頭は私より高いところにあった。
「さあ、おとなしく一緒に来てもらおか」
そう言って、私に手を伸ばしてきた。
「いやだ、何で私が・・・」
反射的に手に持ってたペンを女の子に投げつけた。
しかしペンは彼女にあたる前に何かにはじかれた。
いや、私は彼女の周りに薄い膜が張っていることに気づいた。
「乱暴やな〜なんであんたなんか、私は知らん。でも、あんた連れてきたら中澤さんがご褒美くれるんや」
(中澤?誰だ?)
「ほな、ちょっと手荒になるけど行くで」
女の子が手をかざした。
私の頭の中に何かが入ってくる・・・意識が遠のきだした・・・
(嫌だ、嫌だ、嫌だ、助けて、誰か、助けて!助けて――――!!)
光が私を包み込み、急に頭が軽くなった。
- 9 名前:takatomo 投稿日:2002年03月03日(日)02時34分40秒
- >5、6 レスありがとうございます。
期待にこたえられるように頑張りますので、よろしくお願いします。
- 10 名前:takatomo 投稿日:2002年03月04日(月)23時18分33秒
- 光が私を包み込み、急に頭が軽くなった。
気がつくと女の子が倒れていた。
「なんで、私の力が?なんで?後藤さん・・・」
(え、何が起こったの)
私はしばらく呆然としていた。
そしてもう一度、女の子が言った言葉の意味を考え始めた。
(力?力って何?この子が飛んでたのもその力なの・・・)
- 11 名前:takatomo 投稿日:2002年03月04日(月)23時19分21秒
- 「加護!」
向こうから茶髪の女の子が走ってくる。
私はとりあえずその場から逃げようとした。
しかし、反対側には大きな目をした女の人がいた。
そして、その大きな目を見た瞬間、体が金縛りにあったみたいに動かなくなった。
「おとなしくしてくれる。別に危害を加えるつもりはないのよ。
あなたは私たちにとって、必要だからね」
そう言いながら、女の人は私のほうに歩いてきた。
私は声をだすこともできなかった。
- 12 名前:名無し読者(^▽^) 投稿日:2002年03月07日(木)19時29分48秒
- (;^▽^)<ドキドキドキドキ。。
( ^▽^)<続き気になります。がんがれ
- 13 名前:takatomo 投稿日:2002年03月07日(木)22時25分51秒
- 「ごっちん、加護は大丈夫?」
私を通り越して、彼女達は会話を始めた。
「うん、なんか力使いすぎて、オーバーヒートしてるみたい。すぐに気がつくんじゃない」
「全く、何をそんなにはりきってるんだよ、加護は」
「ハハハ、圭ちゃんひどいな〜さあ、その子連れて早く帰ろ」
(その子・・・嫌だ、嫌だ、何で私がこんな目にあわなきゃいけないの)
ごっちんと呼ばれた子が近づいてくる。
(嫌だ、何なのこの人達。なんで私なの、なんで、なんで私だけ・・・・)
彼女が私に触れたとき、再び頭の中が光が包まれた。
- 14 名前:takatomo 投稿日:2002年03月07日(木)22時27分46秒
- それと同時に体が動きだした。急に自由になったので、私はバランスを崩し、その場に倒れそうになった。
「うそ?なんで私の力が・・・・これが裕ちゃんが言ってた『私たちに必要な力』なの」
彼女達に動揺が走る。
その一瞬のスキを、私は見逃さなかった。
後藤の手を振り払い、私は逃げ出した。
- 15 名前:takatomo 投稿日:2002年03月07日(木)22時29分28秒
- 「くそ」
そう言って後藤は意識を集中し始めた。
後藤の手に光が集まってくる・・・・
「ごっちん!あんたがここで力を使ったら、どうなるかわからないの!」
後藤の手は保田によってはじかれた。
後藤はあからさまに不満そうな顔で保田を見た。
「圭ちゃん達もドジってばっかのくせに」
後藤は保田に背を向け、加護の元にいった。
- 16 名前:takatomo 投稿日:2002年03月07日(木)22時30分23秒
- >12 レスありがとうございます。がんばります。
- 17 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年03月09日(土)03時32分10秒
- 新連載、おめでとうございます。
なんだかハラハラする始まりで、
ドキドキしながら続きを読ませていただきます。
- 18 名前:takatomo 投稿日:2002年03月11日(月)19時06分13秒
- 「さてどうしよう・・・やっぱりあの方法が一番か・・・」
(あの子の能力がよくわからないし・・・私の力を消すくらいだから、下手に力を使われたらやっかいだし・・)
後藤と加護の様子を見ながら、保田は考えていた。
――「未熟」――
力を持つものにとって、それは一番危険なことだった。
自分の力が制御出来ず、力が出せないなら問題は無い。
しかし、加減できない場合、それが最悪のパターンだった。
力が暴走し、周りだけでなく、本人にまで危険が伴う。
彼女達の仕事は、そんな能力者を救うことだ。
能力をもつ人間を見つけ、能力を封印、もしくは制御できる力を与える。
もっとも大半は封印し、普通の生活を送ることになるが、
保田たちのように、制御する術を覚え、能力者を救う側に立つ者もいる。
- 19 名前:takatomo 投稿日:2002年03月11日(月)19時06分47秒
- だが、今回の任務はいつもと違っていた。
一般人には危害を加えない。それは能力者としての最低のルールとして教育されてきた。
だから、今回のように学校に入るなんてことは決してしなかった。
だから、裕ちゃんがどんな方法でもいいから、すぐに連れてきて欲しいと言ったとき、正直驚いた。
今はそんなことを考えている場合じゃない。
裕ちゃんがこんなことを、何の考えもなしに言うはずはない
- 20 名前:takatomo 投稿日:2002年03月11日(月)19時07分28秒
- 保田は改めて考え出した。
しかし、彼女が思いつく案は一つしかなかった・・・・
その方法しかないと思う自分に吐き気がした。
能力者にとって最も残酷な方法・・・・
保田の頭の中にある考えはそれだった。
- 21 名前:takatomo 投稿日:2002年03月11日(月)19時10分58秒
- >17 またまたお付合いくださいありがとうございます。
少し更新が遅いですが、最後までよろしくお願いします。
- 22 名前:takatomo 投稿日:2002年03月13日(水)15時40分31秒
- 一体どれくらい走っただろう、私の心臓は破裂しそうだった。
「もっと運動しとくべきだったよ」
とりあえず理科室に入り、隅に隠れていた。
(あゆみは大丈夫かな)
不意に一番の親友である柴田あゆみのことが気にかかったが、その場から動くことはできなかった。
その時、やけに明るい音楽とともに、校内放送が流れた。
「あー、あー、圭ちゃん、もうマイク入ってる?
えっとね、大至急中庭に来て欲しいんだ。吉澤ひとみさん。でないとあなたのクラスメイトが危ないかもね〜」
淡々と話すその声に、吉澤はぞっとした。
(行かなきゃ・・・・・私が・・・・・)
さっきまでの恐怖が嘘のように消えた。
私はは立ち上がり、走り出した。
- 23 名前:takatomo 投稿日:2002年03月13日(水)15時44分47秒
- 中庭に着いたが、そこにはあの三人以外誰もいなかった。
「みんなはどうしたの?」
三人の前に駆け寄り尋ねた。
「さーね」
素っ気無く言った後藤に吉澤は殴りかかったが、スッとにかわされた。
「くそっ」
吉澤が再度殴りかかろうとした時、中庭の木が吹き飛んだ。
「私とやりあう気?」
後藤の目は冷たかった。まるで物を見ているような目だった。
吉澤は動けなかった。その場に立っていることが精一杯だった。
- 24 名前:value 投稿日:2002年03月14日(木)02時17分44秒
- 導かれし娘?
- 25 名前:takatomo 投稿日:2002年03月14日(木)16時00分02秒
- >>24 導かれし娘。を読んでみましたけど、確かに似てるかも・・・・
どーしよっかな?続き書いたほうがいいですかね?
今、自分の中で考えてる流れだと、全く違うものになるんですけど、
設定とかかぶってくるかもしれないし。
それに、導かれし娘。って超有名作みたいだし・・・
それでも続きが読みたいという方がいれば書きますけど。
- 26 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年03月14日(木)16時42分54秒
- いつもは用いない手段を、と言うことはそれだけ吉澤の力が大きいのか?
はたして彼女が狙われた理由とは!?
takatomoさんが描く彼女達の世界、とても楽しみです。
これからも期待しておりますので。
- 27 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月14日(木)17時01分08秒
- これだけの短いスレで判断するのは早計かと。
少なくとも俺は続きが読みたいですけどね。
- 28 名前:takatomo 投稿日:2002年03月15日(金)15時00分51秒
- >>26-27レスありがとうございます。実際ちょっとへこんでたんで、励まされました。
せっかくスレ立てたことだし、期待してくれる方がおられる以上、
作者としては書き続けるのは礼儀ですね。
ただ、一つ言っておきたいのは、決して導かれし娘。を元にしているということはありません。
また、導かれし娘。を読んで、ある程度かぶってくる点がありましたが、特に変更する気はありません。
こちらが考えているプロットが狂ってくるので。もういくつか伏線はっちゃったし・・・
それでも導かれし娘。に似ているとか思う人がおられたら仕方ないです。
そう思われた方は読むのをやめていただければ。でも、指摘とかしないで下さい。
どこがかぶっているかは私自身が一番わかってますので。
というわけで、すみません、こっちのことでごたごたしてしまって。
おわびの印に大目更新でm(_ _)m
- 29 名前:takatomo 投稿日:2002年03月15日(金)15時13分20秒
- そのとき、保田が加護に何かささやいた後、後藤に合図した。
後藤は頷き、手を吉澤にかざした。
「あんたも『力』使わないと、死ぬよ。あんたも、教室の友達も」
後藤は意識を集中させる。
その言葉にドキッとした。私の後ろには、教室のある校舎がある。
しかし同時にホッとした。みんなが教室にいることがわかったから・・・
(力ってなんなのよ。わかんないよ)
その時、吉澤の頭の中に声が響いてきた。
「意識を集中して、『助かりたい』って強く願うねん」
(助かりたい、助かりたい、助かりたい)
吉澤は心の中で何度も叫んだ。
「じゃ、いくよ」
後藤の手から光が放たれ、一瞬のうちに衝撃が吉澤を包み込む。
吉澤は薄れゆく意識の中で懸命に祈った。
(助けて!助けて、誰か、助けて―――!!)
その瞬間、吉澤を包み込んだ光は、消えてしまった。
「へーさすがだね。んじゃ一旦帰ろうか。またね。
あ、そうそう、クラスメイトには何もしてないよ」
そう言って後藤たちは去っていった。
三人が去った後、吉澤は緊張が切れ、その場に座り込んだ。
彼女はこの時気づいていなかった。
他の生徒が、窓から中庭の出来事を一部始終見ていたことを・・・・
- 30 名前:takatomo 投稿日:2002年03月15日(金)15時17分21秒
- 「私があの人に侵入したときにみたんやけど、あの人って過去が二つあったで・・・それにあの力、ただもんやないで。
私がちょっとアドバイスしただけで、あれだけの力使えたんやから。
中澤さんが私ら行かすのも納得やな」
加護たち三人は、校門の外で話していた。
「まあね・・・・私も一応手加減してたんだけどね。でもさ、圭ちゃん、あんなやり方は汚くない?」
(私たちはこの能力に目覚めたとき、周りの反応はいつも一緒だった。
「悪魔」その言葉を何度聞いただろう・・・能力者である誰もが経験しているはすだ。
市井ちゃんがあの時来てくれなかったら、私は、私は・・・・・殺されてた)
「確かにね、だからこそあの方法が一番なのよ」
そういった保田の目には涙が浮かんでいた。
- 31 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年03月15日(金)22時29分58秒
- えっ!?二つの過去??それはいったい・・・?
保田ができれば使いたくない手段、吉澤には酷なことに。
このあとの彼女の動きに目が離せませんね。
- 32 名前:takatomo 投稿日:2002年03月17日(日)23時45分07秒
- 「でもさ、あんたの能力って人の過去なんか見れたっけ?」
気まずい雰囲気を何とかしようと、後藤が話題を変えた。
「いーや。こんなん始めてや。だから私、オーバーヒートしたんや。
んでな、さっきからそのへんの人で試してんねんけど、そんなことできへん。」
「加護!むやみに普通の人に力使っちゃダメって、いつも言ってるでしょ」
「でもオバちゃんも、つかったやんか」
保田に怒られた加護は、後藤の後ろに逃げ込んで言い返した。
「あれは仕方ないの。ああするしかなかったの」
「圭ちゃん、それ無茶苦茶だよ。まあ、加護も気をつけるんだよ」
後藤が加護を諭す。
「わかってます。もうしません。でもあの人、ほんまに来るかな」
後藤には素直な加護。
「来るさ・・・来て欲しい」
保田はそう呟き、後藤と加護はうなづいた。
- 33 名前:takatomo 投稿日:2002年03月17日(日)23時53分27秒
- >>31 いつもレスありがとうございます。
ちょっと伏線はりすぎで、わかりにくいかも知れませんが、
もう少し進んだらある程度解けていきます(予定)ので・・・
更新も遅いですが、よろしくおねがいします。
- 34 名前:takatomo 投稿日:2002年03月20日(水)22時04分06秒
- 数分後、教室に戻った彼女を待っていたもの・・・それは、クラスメイト達の恐怖を帯びた視線だった。
ついさっきまで一緒に笑っていた友達がおびえた目で吉澤を見ている。
「木を吹き飛ばしてたんだぜ」
「あいつは人間じゃない」「化け物だ」
そんなささやき声が聞こえてくる。
話している人に吉澤が視線を向けると、急に黙り込み、吉澤から視線を外す。
一番の親友であるあゆみの態度も一緒だった。
そんなクラスメイトの態度に耐えられず、吉澤は教室を後にした。
(もう・・・嫌だ・・・・)
廊下を歩いてきた先生が、吉澤の姿を見て慌てて逃げ出したが、彼女は気づかなかった。
「化け物」、その言葉が頭の中を巡リ続けていた。
(これからどうすればいいんだろう・・・もう学校には来れないのかな・・・)
そう考えたとき、今までこらえていた涙が一気に溢れ出してきた。
- 35 名前:takatomo 投稿日:2002年03月20日(水)22時04分47秒
- 「私らと一緒に来てくれへんか?」
玄関を出たところで、誰かが私に語りかけてきた。いや、その声は頭の中に直接響いていた。
そして、それは中庭の時と同じ声だった。
「だ、誰?」
あたりを見回すが誰もいない。
「門のところまで来てくれへんか」
再び声が聞こえた。
私は門へと走っていった。
しかし、そこで待っていたのはあの三人だった・・・
- 36 名前:takatomo 投稿日:2002年03月23日(土)22時34分48秒
- 「今度は何の用なの」
私は三人をにらみつけた。
「まあまあ、そんなに怒らんといて。あんたには悪いことしたと思ってんねん」
私は気づいた。その声が、頭の中に聞こえてきた声と同じということに。
私の表情から察したのか、彼女たちが話し出した。
「そうや、私があんたに話し掛けてんねん。これが私の力や」
- 37 名前:takatomo 投稿日:2002年03月23日(土)22時35分40秒
- 力・・・
それが何のことか、ついさっきわかった。
私もその力をもっている。
そのせいで、もう学校にはいけないだろう・・・もう普通に生活できないだろう・・・
さっきの教室で起きた出来事が、私の脳裏をよぎっていた。
「私らと一緒に来て欲しいねん」
私はその言葉にカチンときた。
(あんた達が来なかったら、あんた達のせいでこんなことに。
それなのに、それなのに、「一緒に来て欲しい」って・・・・
そんな勝手なこと)
しかし、私は着いて行くしかなかった。私に選択の余地はなかった。
断っても、何度も来るだろう。そして無関係な人に迷惑がかかってしまうだけだ。
私は彼女達に連れられ、車に乗った。
- 38 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年03月23日(土)23時18分50秒
- もう戻ることのできない吉澤、これからいったいどこへ連れて行かれてしまうのだろうか?
そしてその前途にはどんな運命が?
- 39 名前:takatomo 投稿日:2002年03月25日(月)00時12分39秒
- あるビルの地下室。
一人の女性が一枚のメモをもっていた。
吉澤ひとみ・・・・・16歳・・・・
埼玉県入間郡・・・・
ブースター・・・・
メモにはそう書かれていた。
「これが全てのはじまりやったんやな・・・・」
部屋にノックの音が響き渡る。
彼女は急いでメモをポケットにしまった。
「裕ちゃん入るよ」
そう言って一人の女の子が入ってきた。
「なっち・・・どうしたん?」
裕ちゃんと呼ばれた女性―中澤裕子―は言った。
「うん、圭ちゃんたちから連絡あって、今から戻るって」
なっち―安倍なつみ―は言った。
「そう、ありがとう」
中澤はため息をつき、立ち上がった。
(これで役者はそろったっちゅうわけや・・・・後は・・・・)
- 40 名前:takatomo 投稿日:2002年03月25日(月)15時39分56秒
- <2>
彼女達の車に乗っている間、私は話を聞かされていた。
三人の自己紹介から始まり、彼女達が言う「力」というものについて、彼女達の目的・・・
しかし私の耳にはほとんど入ってなかった。
車に乗る前に、お父さんに電話した時、お父さんはまるでこうなるのを知ってたような感じだった。
「やっぱり母さんの子だな」
最後に言ったその言葉で私の頭はいっぱいだった。
急に車が止まった。どうやら着いたようだ。
ドアが開けられ、私は車から降りた。
まだ明るかったが、人の気配は全くしなかった。
廃ビル。その言葉がぴったりくるような、ぼろぼろのビルが幾つも立っていた。
その中の一つに私達は入っていった。
ビルの内部は、電気が通ってないらしく、隙間から漏れてくる外の光により、薄暗かった。
不意に三人が立ち止った。
- 41 名前:takatomo 投稿日:2002年03月25日(月)15時41分55秒
- その前には一つだけきれいなドアがあった。
「ここから先はあんた一人でいって欲しい。そこであんたを待ってる人がいるから」
保田さんはそう言って、道をあけた。
私は一瞬躊躇したが、思い切ってドアを開けた。
「がんばるんやで〜」という加護の声が聞こえたが、私は振り返らなかった。
そのドアから奥は明かりがついており、地下に続く階段があった。
意を決して私は降りて行った。
- 42 名前:takatomo 投稿日:2002年03月25日(月)15時42分56秒
- 階段の先には大きなドアがあった。
「どうぞ、入ってや」
ドアの前に立つと同時に、中から女の人の声が聞こえた。
(これも「力」なのかな?それとも監視カメラか何かついてるのかな?)
そんなくだらないことを考えながら、私はドアを開けた。
そこはホテルのロビーを思わせるような、大きく綺麗な部屋だった。
部屋の真ん中に一人の女の人が立っていた。
- 43 名前:takatomo 投稿日:2002年03月25日(月)15時54分20秒
- >>38 いつもリアルタイムのレスありがとうございます。
やっと話が軌道にのってきたので、更新ペースを上げようと計画中です。
よろしくお願いします。
- 44 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年03月26日(火)00時15分35秒
- >「やっぱり母さんの子だな」
この言葉が持つ意味とは!?
そしていよいよ中澤と対面する吉澤、そこにはいったい何が?
ドキドキしながら話の展開を見守っています。
- 45 名前:takatomo 投稿日:2002年03月27日(水)01時43分55秒
- 「あなたですか?私に用があるって」
私は叫んだ。もう自分の感情を殺しておくことはできなかった。
「いったい何なんですか!いきなり学校にきて!力がどーとか、能力者がどーとか。学校には行けなくなるし・・・どうしてくれるんですか!私に何をやらせたいんですか!」
返事を待たずに、私は続けた。
「それはほんまにすまんかった」
女の人がいきなり謝りだしたので、私は拍子抜けした。
「でもな、そうせんかったら・・・そうせんかったらあんたは、アップフロントに連れていかれてまうとこやってん」
(アップフロント・・・なんだっけ?保田さんがいってたような・・・そうだ、保田さんたちの組織の名前だったような・・・)
私の困惑した表情を悟ってか、女の人はゆっくり話し出した。
- 46 名前:takatomo 投稿日:2002年03月28日(木)15時05分07秒
- 「私の名前は中澤裕子や。裕ちゃんってよんでくれたらええ」
そう言ってから、中澤さんは組織のこと、私を呼んだ理由を話し出した・・・
コンコン
「おう、入れや。平家」
部屋の真ん中の椅子に腰掛けた男、つんくは言った。
「失礼します」
ドアが開き、平家みちよが入ってきた。
「どういうご用件でしょうか?」
平家が口を開いた。
タバコをくわえ、火を付けながらつんくは答えた。
「ハロープロジェクトは上手く進んどるんか?」
「ハロープロジェクト?それはなんですか?」
私は尋ねた。
「人間の脳ってほんの数十%しか使われてないってしっとる?」
私は首を振ったのを確認し、中澤さんは続けた。
「普通の人間は、自分の脳の30%くらいしか使っとらんねん。
でもな、私らみたいな能力者は脳の50%くらい使ってるらしいねん。
だから「力」を使うことができるらしいんや。
それでな、脳細胞っていうのはな、成人になってから死亡するばっかりで増えへんっていうのはしっとる?」
私は再び首を振った。
- 47 名前:takatomo 投稿日:2002年03月28日(木)15時06分05秒
- 「脳細胞っていうのはな、成人になってから死亡するばっかりで増えへん。
そこでつんくが考え出したのがハロープロジェクトや」
そこで中澤さんは一息ついた。
「圭ちゃんから聞いてるかもしれんが、アップフロントの目的は、能力者救済や。
でもな、それは表向きの目的で、実際は能力者の脳を集めてるんや」
私は呆然としていた。何を言えばいいかわからなかった。
- 48 名前:takatomo 投稿日:2002年03月28日(木)15時18分46秒
- ちょとの間、長い会話文になるので、読みにくいかも・・・・
>>44 いつもレスありがとうございます。ほんとに。マジ感謝です。
- 49 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年03月29日(金)02時03分24秒
- アップフロント… ハロープロジェクト…
何処かで聞いたようなことが、この世界では別の組織として動いているようだ。
“裕ちゃん”と名乗る女は何処まで知っているのか?何故吉澤に話すのか?
更新お疲れ様です。会話形式でも話が繋がっているので充分読めています。
場面展開のところに改行を多くするか、“―――”を入れればさらに読みやすくなることでしょう。
- 50 名前:takatomo 投稿日:2002年03月29日(金)20時05分07秒
- 「はい。新たな能力者のリストを配布し、順調にいっています」
「ハハハ、あいつらも自分がええことしてるとおもてんのやろな。
まさか、自分達が助けるために連れてきた奴らが、死ぬために連れて来られてるなんて思ってないやろな」
つんくの笑い声が部屋に響いた。
「でもそんなことして何になるんですか?」
やっとのことで出した言葉がそれだった。
「永遠の命のためや。自分が死にたくないから、他人を殺してるんや。あいつは」
声を震わせながら中澤さんは話した。
「治癒能力っちゅうんは、なんでも直る力と勘違いされてるけど、実際そやないねん。
あの力は確かに傷を治すよ。でもな、あの力は体の治癒能力を一時的に高めることで、傷を直すねん。だから、限界があるんや。
自然に治る状態までは治るけど、それ以上は治らへん」
中澤さんの話を、私は半分くらいしか理解できなかった。
- 51 名前:takatomo 投稿日:2002年03月29日(金)20時05分47秒
- 「自分、わかってないやろ?勉強しときや、ちゃんと」
(高校入ったばっかなのにわかるわけ無いよ。それに・・・誰のせいで学校いけなくなったのよ)
私はそのことを口に出さなかった。
今までの話をきいて、彼女が嘘をいっているようには思えなかったから。
過程はどうあれ、私を助けてくれたことに間違いは無いのだから。
「そやな・・・例えば、深い切り傷や刺し傷やったら、病院いって治療してもろたら少々痕は残るけど、ちゃんと直るやん。
でも、手や足を切断した場合、病院いっても傷口はふさいでくれるけど、手や足を引っ付けてくれんやろ?治癒能力もそれと一緒やと思えばええ。
傷はふさがるけど、手足は生えてこうへんねん。
この理由を説明すんのは、また難しいからやめとくわ。ここまではわかる?」
「はい、なんとなく。それで、それがどう関係あるんですか?」
本当になんとなくしかわかってないので、とりあえず話を次に進めたかった。
- 52 名前:takatomo 投稿日:2002年03月29日(金)20時07分58秒
- >>49 レスありがとうございます。
いただいたアドバイスも参考にさせていただきます。ありがとうございます。
- 53 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年03月30日(土)05時38分25秒
- 治癒能力・・・吉澤といったいどのような関連があるのだろうか?
そして中澤の目的とは!?
アドバイスだなんて・・・、出すぎたマネをしてみました。
- 54 名前:takatomo 投稿日:2002年03月31日(日)22時54分53秒
- 「ほんまにわかっとんのかいな?まあええわ、次いこ。
さっきの話と同じ理由で、脳細胞も治癒能力で直らへん。
でも、体細胞の老化は、治癒能力で防ぐことができる。
生物の極限の寿命は、全脳細胞が死ぬまでや。ここまで言えばわかるやろ?」
私はわけもわからず、ただ中澤さんの話に相づちをうっていた。
脳と治癒能力の話、どちらもよくわかっていない。
そんな私に二つの話のつながりがわかるはずもなかった。
ため息をつき、髪をかき上げながら、中澤さんは言った
「つまりな―――
――― やつらの脳の一部を俺に移すことで、俺は永遠の命をもつことができてる。やつらも本望やろ、俺のために死ねるんやから」
そう言って、つんくはタバコをふかした。
「さて、ご苦労やったな平家。これからもよろしく頼むで」
つんくは立ち上がり、平家の肩に手をかけた。
平家は深々と頭を下げ、部屋から出て行った。
「せいぜいがんばれや、平家」
一人になった部屋で、つんくは笑みを浮かべ呟いた。
- 55 名前:takatomo 投稿日:2002年03月31日(日)23時15分27秒
- 私はやっと話を理解していた。
つまり、つんくは体の老化を治癒能力で妨げ、脳の老化を他人の脳によって妨げることにより、永遠の命を手に入れてるってことだ。
しかし、それと同時に、一つの疑問が浮かんできた。
「なぜ、能力者の脳が必要なんですか?」
だが、私の疑問は「何言ってんねん!」の一言で切り捨てられた。
思わず反論しようとする私に、マシンガンのような悪口雑言が浴びせられた。
- 56 名前:takatomo 投稿日:2002年03月31日(日)23時16分20秒
- 「あんた何聞いてたん?人の話はちゃんと聞きや!そんなん小学生でもしっとんで!
最初に言ったやろ。能力者は脳の50%使うことができるて。
つまり、能力者の脳でないと、力を使うことができへんやろ?
あんたは鳥か?三歩歩いたら全部忘れるんか?」
「え・・・と・・・それは覚えてますけど・・・どう関係が・・・」
恐る恐るそう言ったが、更に火に油を注ぐ形になってしまった。
「あんたの頭は飾りか?帽子を置く台なんか?
ええかげんにしーや、なんで一から十まで全部説明せなあかんの!
ちっとは考えや!若いもんがそんなんやから、今の世の中こんなんやねん!」
(今の世の中は大人が作ってるような・・・)
そんなつっこみを入れようものなら、もっと事態が悪化すると思い、私は黙っていた。
しかし、延々と中澤さんの説教は続いていく。まさか初対面の人から説教をされるとは思っても無かった。
初めの優しさは猫をかぶってたんだな。
(なんで私こんな目にあってるんだろ・・・)
もう考えるのがむなしくなってきた。
- 57 名前:takatomo 投稿日:2002年03月31日(日)23時26分22秒
- >>56 ミスしてました。飛ばしてください。正しい文は>58です。
すみません。
- 58 名前:takatomo 投稿日:2002年03月31日(日)23時27分29秒
- 「あんた何聞いてたん?人の話はちゃんと聞きや!そんなん小学生でもしっとんで!
最初に言ったやろ。能力者は脳の50%使うことができるて。
あんたは鳥か?三歩歩いたら全部忘れるんか?」
「え・・・と・・・それは覚えてますけど・・・どう関係が・・・」
恐る恐るそう言ったが、更に火に油を注ぐ形になってしまった。
「あんたの頭は飾りか?帽子を置く台なんか?
ええかげんにしーや、なんで一から十まで全部説明せなあかんの!
ちっとは考えや!若いもんがそんなんやから、今の世の中こんなんやねん!」
(今の世の中は大人が作ってるような・・・)
そんなつっこみを入れようものなら、もっと事態が悪化すると思い、私は黙っていた。
しかし、延々と中澤さんの説教は続いていく。
まさか初対面の人から説教をされるとは思っても無かった。初めの優しさは猫をかぶってたんだな。
(なんで私こんな目にあってるんだろ・・・)
もう考えるのがむなしくなってきた。
- 59 名前:takatomo 投稿日:2002年03月31日(日)23時33分16秒
- >>53 レスありがとうございます。
先はまだまだ長いですが、よろしくお願いします。
(私の更新が遅いから、1月経ってもまだ序論なだけですが・・・)
- 60 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月01日(月)01時03分26秒
- 超能力よっすぃ〜〜。マジじゃん。ワラ
- 61 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月01日(月)02時13分34秒
- 脳を入れ替えるよりクローンのほうが速いと思われ
- 62 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月02日(火)00時22分18秒
- 面白いです。
自分が今某スレで書いてるのより数倍面白い(w
これからも頑張って下さい。
- 63 名前:takatomo 投稿日:2002年04月02日(火)00時56分24秒
- 「裕ちゃん、もうそのへんでやめてあげなよ」
中澤さんの説教を聞かされること数十分(実際は数分だったかもしれないが、私にはそう感じた)
やっと私に救世主が現れた。
「矢口〜よくきてくれたな」
さっきまでの剣幕はなんだったんだろう、急に猫撫で声で私を押しのけ、ドアのところに立っている、声の主に抱きついた。
「やめろよ、裕子〜ひっつくなよ」
矢口は必死に抵抗している。
「冷たいな〜せっかく会ったのに。まあ、そんな所もかわいいんやけど」
「はいはい。もういいから、後は私に任せて、早く行って。なっちが表で待ってるよ」
中澤を部屋から追い出し、ドアを閉めながら矢口は言った。
- 64 名前:takatomo 投稿日:2002年04月02日(火)01時14分51秒
>>60 レスありがとうございます。
微妙にこの分野(医療系ね)は専門に近いんで、無駄にフィクションと現実が混じってますけど・・・
>>61 初めはクローンで考えてました。
でも、それではつんくの生に対して固執する意味がないので。
クローン作ってもオリジナルは死んでしまいますから。
まあ、つんくの脳のクローンを作って移植すれば一番いいんですけどね。
でもあえて他人の脳を移植するメリットも考えています。(後々書きますが)
まあ一番の理由は、クローン使ったら、つんくの悪役度(?)が下がっちゃうんで(
>>62 レスありがとうございます。がんばっていきます。
- 65 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年04月02日(火)18時14分21秒
- 饒舌な裕ちゃん・・・。
- 66 名前:takatomo 投稿日:2002年04月03日(水)23時50分25秒
- 「さてと、あなたが吉澤ひとみさんね?私は矢口真里。よろしく」
そう言って手を差し出した。
私も手を差し出し、握手しながら、矢口さんを観察した。
しかし、本当に小さい。私は背が高い方だけど、私よりはるかに小さい。
握手している手も小さく、中澤さんがかわいいと言うのもわかる気がする。
金髪に派手な服装。小さいけれども存在感バツグンっといった感じだった。
「よっすぃー」
不意にそう呼ばれた。
「よっすぃー、うん。よっすぃーっていいね。ね、よっすぃーもそう思うでしょ?」
どうやら、よっすぃーというのは私のことらしい。
「ええ、まあ」
苦笑いで答えると
「そうだよね。うん。よっすぃーに決定」
矢口さんは笑いながら、そう言った。
(ま、いっか・・・)
「ところで、よっすぃーはなんで裕ちゃんに怒られてたの?」
私はことのいきさつを全て話した。
- 67 名前:takatomo 投稿日:2002年04月03日(水)23時53分33秒
- >>65 レスありがとうございます。
確かにしゃべりすぎかも・・・
現時点で吉澤よりしゃべってる気がします(w
- 68 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年04月04日(木)14時12分29秒
- 目線がずーっと上のやぐっつぁんもカワイイ・・・
- 69 名前:takatomo 投稿日:2002年04月05日(金)00時45分32秒
- 「大変だったね。裕ちゃん怒ると手がつけられないから」
「はあ、ほんとにそうですね」
私達は顔を見合わせて笑った。
「でも肝心なことを言わないまま、裕ちゃんは行っちゃったのか・・・」
矢口さんはそう言って深くため息をつき、
「いつもいつもそうなんだから・・・」などとぶつぶつ文句を言い出した。
そんな矢口さんに話し掛けていいものかと迷っていると私に、矢口さんは気づいたようだ。
「あ、ごめんごめん。じゃあ、とりあえず状況を簡単に説明するね」
そう言って部屋の隅に置いてある椅子を持ってきた。
「ちょっと長くなるから、まあ座ってよ」
差し出された椅子に私は腰掛けた。
- 70 名前:takatomo 投稿日:2002年04月06日(土)00時09分41秒
- 「あー疲れた」
矢口さんの話は2時間近く続いた。
私はベットに倒れこんだ。
私の部屋として、あてがわれたこの部屋には、ベット以外何もなかった。
「いるものがあったら何でも言ってね」とは言われたけど・・・
ここまで何もないと、何がいるのかわからなかった。
ベットの上で仰向けになり、私は今日の出来事を整理していた。
- 71 名前:takatomo 投稿日:2002年04月06日(土)00時10分11秒
- アップフロントっていう組織があって、そのトップのつんくが能力者を利用してるんだ。
(能力者の脳の一部でないと移植しても力を使えないかららしい)
この事実を知っているのは中澤さん、矢口さん、それに安倍なつみさんという人だけらしい。
それで、中澤さんたちはそこの組織に所属してるんだけど、つんくの企みを知ってて、それを阻止しようとしている。
それには私の「力」が必要らしいんだけど・・・・
- 72 名前:takatomo 投稿日:2002年04月06日(土)00時12分13秒
- 私の力って何なんだろう?
私が力を自在に使いこなせるように訓練するために、矢口さんはここにきたらしいけど・・・・
どんな力なのか聞いても教えてくれない。
「よっすぃーの力は特別な力なんだよ」
それだけしか教えてくれなかった。
一体何なんだろな・・・・
- 73 名前:takatomo 投稿日:2002年04月06日(土)00時14分55秒
- そう考えるのと同時に、不意にあゆみのことが頭をよぎった。
あゆみはどうしてるんだろな・・・
クラスのみんなどうしてるんだろな・・・・
もう普通の生活には戻れないのかな・・・・
- 74 名前:takatomo 投稿日:2002年04月06日(土)00時22分40秒
- 頬をつたわる涙をぬぐい、布団をかぶった。
布団の中で、必死に涙をこらえようとするが、こらえようとすればするほど涙は溢れ出した。
私は泣きながら、いつの間にか眠ってしまった。
- 75 名前:takatomo 投稿日:2002年04月06日(土)00時28分32秒
- 更新終了。今回結構量多いかな?書きためてた分全部使ったので。
ああ、明日からどうしよう・・・・
>>68 レス遅れてすいません。
私の中の矢口のイメージってこうなのかな?
私が書くといつもこういうキャラになります(w
- 76 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年04月06日(土)03時13分49秒
- そこに気付き目覚めても、友達を想う優しい心を失いませんように。
- 77 名前:takatomo 投稿日:2002年04月06日(土)23時59分07秒
- <3>
「おーい!起きろ〜よっすぃー!朝だぞ〜」
目を覚ますと、私の目の前に矢口さんの顔があった。
「わ、や、矢口さん」
私は驚いて飛び起きた。
「なによ、失礼ね。こんな美少女の顔を見て、大声をだすなんて」
(美少女?)
「なによその顔は?なんか文句あるの?」
怖い顔をして矢口さんが詰め寄ってくる。
私は目をそらし「何もないです」と答えると、矢口さんは急に笑い出し、
「なんてね、冗談よ、冗談。さあ朝ご飯食べよ。先行ってるよ」
といって出て行った。
(朝から元気な人だな)
ふと見ると、ドアの横に着替えが置いてあった。
- 78 名前:takatomo 投稿日:2002年04月07日(日)00時16分55秒
- 矢口さんを待たせては悪いと思い、急いで着替えようとした。
しかし、一つの大きな問題があった。
それは・・・・・スカートだった。
私は本当にスカートが嫌いだった。
スカートを持っていなかった。
中学校の時の制服で、初めてスカートをはいた。
そして、それから三年間は苦痛の毎日だった。
あの足元のスース―感が本当に苦痛だった。
そしてそのことが、制服のない、今の高校を選んだ理由の一つとなった。
- 79 名前:takatomo 投稿日:2002年04月07日(日)00時20分27秒
- 高校に入り、二度とはくことがないと思っていた。
しかし、スカートは私の前に再び現れた。
これ以外に着るものはない・・・・
選択の余地はなかった・・・
覚悟を決め、大きく深呼吸をした後、私はスカートをはいた。
- 80 名前:takatomo 投稿日:2002年04月07日(日)00時31分45秒
- なんとかぎりぎり更新できた・・・・よかったよかった。
今日と明日は更新無しで。ちょっと用がありまして。
>>76 レスありがとうございます。
吉澤にはこのままでいて欲しいけど・・・
どうなるでしょうね・・まだわからない(汗)
- 81 名前:takatomo 投稿日:2002年04月14日(日)20時34分23秒
- 更新できなくてすいません。
ちょっと忙しすぎて、いっぱいいっぱいです。
待って下さってる方がおられたら、本当に申し訳ございません。
水曜には続きを書きたいと思います。
- 82 名前:takatomo 投稿日:2002年04月17日(水)23時18分48秒
- 「おー!よっすぃー似合ってるじゃん。いけてるいけてる」
矢口さんはうれしそうに手を叩いて言った。
すごい複雑な気分だった。
褒められて悪い気はしないが、私は苦笑いをしていた。
そんな私を見て、矢口さんは心配そうな顔をしたが、何も言わずにパンを渡してくれた。
(きっと私が寂しい思いをしていると思っているのかな?それは違うんだけど・・・)
そう思いながら、私は手渡されたパンを食べ出した。
- 83 名前:takatomo 投稿日:2002年04月17日(水)23時19分21秒
- 私達は黙々とパンを食べていた。
私に気をつかってか、矢口さんは何か言い出すのをためらっている様だった。
聞きたいことはたくさんあった。
しかし、明るい矢口さんがそんな態度なので、こちらから話し出しにくかった。
そして気まずい雰囲気のまま朝食は終わった。
- 84 名前:takatomo 投稿日:2002年04月17日(水)23時57分02秒
- 「さあ、そろそろ始めようか」
やっと矢口さんが口を開いた。
「はい。で、どんなことをするんですか?」
「えっと、マラソンでしょ、それから筋トレ、座禅して・・・・
矢口さんの言葉はえんえんと続いていく。
私は途中から聞こえていなかった。
(死、死ぬ・・・・)
・・・・っていうのは嘘で・・・」
(は・・・嘘か。嘘?)
驚く私に向かって
「当たり前じゃん。そんなことしないよ」
笑いながらそう言った。そして続けて
「まあ、難しいことじゃないから。隣の部屋でやろう」
そう言って矢口さんは歩き出した。
私は矢口さんを引きとめ、ずっと気になっていたことを尋ねた。
「ちょっと待ってくださいよ。私の能力ってなんなんですか?
もういい加減、教えてくれたっていいじゃないですか」
矢口さんはゆっくり振り返った。
その顔は今まで見たことないくらい真剣だった。
そして、ゆっくり口を開いて言った。
「よっすぃーの能力はね・・・・ブースターなんだよ」
- 85 名前:takatomo 投稿日:2002年04月17日(水)23時57分37秒
「ブースターや」
中澤はゆっくり口を開いて言った。
「ブースター?なにそれ?」
安倍の問いに、中澤は答えず、机の上の辞書を指差した。
「教えてくれたっていいじゃん」
ブツブツ文句を言いながら、安倍は辞書をめくっていった。
「あった、あった。えっと・・・増幅器か。
ふんふん、つまり、力を増幅させるのね」
中澤は頷き、さらに付け加えた。
「あの子の能力はな、10の力を0にも100にもできるんや」
安倍は驚きを隠せなかった・
今まで何人もの能力者を見てきた。
そして、安倍自身もかなり特殊な能力だった。
しかし、吉澤の能力は極めて特殊だった。
「加護の力を、過去を見る力にまで引き上げたんも、ごっちんや圭ちゃんの力をかき消したんも、そのせいや。
そして、それが私らに必要な理由や。
後はあの子がどれだけ使いこなせるようになるかや」
中澤は髪をかき上げた。
(頼むで、矢口・・・)
- 86 名前:takatomo 投稿日:2002年04月18日(木)00時01分07秒
- 以上更新終了。
「これだけ一気に更新するなら、ちょっとずつでいいから毎日更新しろ」
っていう突っ込みは、無しの方向でお願いします。
これからは気をつけます。
せめて週2,3更新をめどに頑張っていきたいと思います。
- 87 名前:takatomo 投稿日:2002年05月12日(日)20時33分51秒
- 隣の部屋に入り、私は矢口さんと向き合った。
「あのースカートなんかはいてて、いいんですか?」
申し訳なさそうに切り出すしたが、矢口さんは何も言わなかった。
ただ、私を指差しただけだった。
(・・・?)
それと同時に、下から風が吹き、スカートがめくれ上がった。
慌ててスカートをおさえる私に、
「くそーもう少しだったのに・・・」
本気で悔しそうに、矢口さんは言った。
その時、私は気付いた。
ここは地下で、窓は一つも無い。
その上、ドアも閉まっている。
なのに風が急に吹いたんだ。
このことから導かれる結論は一つしかなかった。
- 88 名前:takatomo 投稿日:2002年05月12日(日)20時34分38秒
- 「わかったみたいだね。これが私の力。風を起こす力よ。
それで、これが一つ目の訓練」
私はあっけにとられていた。
「力を0にする方が簡単なんだ。負の力って、それだけで大きな力をもってるから。
最終的には私の全力くらいは0にしてもらわないと」
淡々と矢口さんは続けていく。
「でも、どうやって力を使うんですか?」
「集中して、強く願うの。ごっつあん時みたいに」
(強く願うか・・・よし)
再び矢口さんが指をさした。
しかし、スカートがゆれる程度の風しか起こらなかった。
「お、いい調子じゃん。そんな感じでいくんだよ」
こうして、私と矢口さんの特訓は始まった。
- 89 名前:takatomo 投稿日:2002年05月12日(日)20時35分31秒
<4>
とうとうこの日がやってきた。
中澤はどれほど
この日を待ち望んだことだろう。
つんくの策略を知っていながら、何人もの能力者を、つんくの元に送ることしか出来なかった。
その度に自分の無力さを悔やんだ。
吉澤と会ってから一ヶ月、ついにこの日がやってきた。
今日は、吉澤が訓練を終える日だった。
すでに、矢口、安倍、吉澤を除くメンバーは揃っていた。
彼女達は、つんくの目的や、吉澤の力について全く知らない。
ただ、新しくメンバーが増えるとしか言っていない。
- 90 名前:takatomo 投稿日:2002年05月12日(日)20時36分23秒
- 吉澤達が合流してから、彼女達には全てを話さなければいけない。
それが、彼女達にとって、どれほどつらいことであるか、中澤はよくわかっている。
実際、彼女が知ったときのショックは大きすぎた。
そして、一人で受け止めておくには、その事実は大きすぎた。
安倍、矢口といった人間が、知っているのはそういうわけだ。
そして・・・・・
あの子には、本当にかわいそうな思いをしてもらわなければならない。
事実を伝えるためには、そうするしかないのだ。
中澤の胸はずっと痛んでいた。
- 91 名前:takatomo 投稿日:2002年05月12日(日)20時37分10秒
- コンコン
ドアがノックされ、保田が入ってきた。
「裕ちゃん、なっちたちが来たよ」
保田はそれだけ言って出て行こうとしたが、中澤は引きとめた。
「圭ちゃん・・・何があっても私についてきてくれるか?」
中澤自身、その答えはわかっていた。
保田なら、絶対「うん、もちろん」と言うであろうということを。
でも、確かめずにはいれなかった。
「うん、もちろんだよ。どうしたの急に?」
不思議そうな顔をする保田に、中澤は
「なんでもないよ。ありがとな、圭ちゃん」
そう言って、二人は広間に向かった。
- 92 名前:takatomo 投稿日:2002年05月12日(日)20時37分57秒
- 「中澤さん、おそいわ〜みんなとっくにおんねんで」
入るなり加護の声が聞こえてくる。
隣では、辻が「そうだ、そうだー」と言っている。
「あーもう!うるさい!あんたら、ちょっと静かできへんの?」
そう言いながら、心は痛んでいた。
このちび二人に、これから起こることを考えると・・・特に加護には・・・
「えっとな・・・みんなには、これから、大事なことを伝えなあかん」
全員の顔を見渡し、中澤は大きく息を吸ってから言った。
「まず一つは・・・・言ったとおり、一人、新しく加わることになった。
吉澤、入っといで」
矢口と安倍に連れられ、吉澤は入ってきた。
保田、後藤、加護は、やっぱりといった表情をしている。
「えっと、彼女は、吉澤ひとみさん。よっすぃーって呼んだってな」
吉澤はぺこりとお辞儀した。
「裕ちゃーん、彼女の能力は何なの?」
飯田がすかさず質問した。
- 93 名前:takatomo 投稿日:2002年05月12日(日)20時38分36秒
- 「こういうことよ、圭織」
そう言って矢口は、吉澤に向かって力を使う。
一瞬部屋中に突風が吹いたかと思うと、すぐにやんだ。
「おーすごいのれす」
辻はただただ感心している。
みんな納得顔をしていた・・・加護を除いては・・・
しかし、加護は何も言わなかった。
- 94 名前:takatomo 投稿日:2002年05月16日(木)21時55分38秒
- 「後藤さんにはかなわへんな・・・あの子の力はあれだけやないで。
中澤さんは何を企んでんねや?」
「さあね。でも今日の裕ちゃんは何か変だね」
二人が話していると、中澤は再び話し出した。
「二つ目は・・・・私は、みんなにあやまらなあかんねん」
中澤の真剣な表情に、一瞬にして、部屋中に緊張感が漂った。
「矢口となっちには、ずっと前にいってるんやけど・・・・
みんな、今日までたくさんの人をアップフロントに連れていったやろ?」
誰も何も言わなかった。全員が頷くだけだった。
- 95 名前:takatomo 投稿日:2002年05月16日(木)21時56分17秒
- 「彼らは・・・・殺されてたんや」
全員の表情が一瞬にして凍りついた。
数秒の沈黙があった。
実際、彼女らにとっては、大変長く感じていただろう。
誰もが、中澤のいったことを理解するためには、時間が必要だった。
「う・・・うそですよね?そんな・・・ね、うそですよね?」
沈黙を最初に破ったのは、石川だった。
しかし、その声は震えていた。
「加護ちゃん・・ちょっとおいで」
急に名前を呼ばれた加護は、驚いた様子で、中澤の元へいった。
- 96 名前:takatomo 投稿日:2002年05月16日(木)21時56分59秒
- 中澤は、加護を抱きしめると、小声でささやいた。
「ごめんな、加護ちゃん。あんたしかおらへんねん。
あんたにこんなことをさせるのは、ほんまにつらいけど、あんたの力が必要やねん。やってくれるか?」
こんな中澤を見るのは、加護は初めてだった。
しかし、自分の力が必要とされることが、加護にとってはうれしかった。
加護は自分の力にコンプレックスを持っていたからだ。
- 97 名前:takatomo 投稿日:2002年05月16日(木)21時57分41秒
- 能力者は、力の違いこそあれ、限界値が決まっている。
限界値を仮に100とすると、矢口のように、一つだけの力を持っている人間は、その力を最大100まで使うことができる。
大抵の場合、力は一つしか発現しないので、限界値は問題にならない。
しかし、加護は違った。
加護の場合、3つの力が発現しているのだ。
1つは精神感応。もう一つは浮遊能力。最後にシールド能力だ。
一見、多くの力を持つことは、有利に思える。
だが、それら3つの力の和が、限界値である100を超えることはない。
つまり、それぞれの能力が最大30ぐらいしか発揮できないのだ。
このことは、能力者を相手するには、極めて不利だった。
たった一つでも、大きな力を持っている相手に対して、一般人に毛がはえた程度の力しかないということは、致命的だった。
実際、加護の精神感応能力は、相手に自分の声を聞かせる程度のものだった。
そんな加護の思いを、中澤は知っていた。
だから、加護に対して、多くの任務を与え、自信をつけさせようとした。
そして、そんな中澤の思いを、加護も知っていた。
- 98 名前:takatomo 投稿日:2002年05月19日(日)15時39分36秒
- 「で、何をすればええの?」
加護はわざと明るい声で言った。
「今から、吉澤の力をかりて、私の頭の中の映像を見て欲しい。
それで、それをみんなの頭の中に伝えて欲しいんや」
「中澤さん・・・やっぱり吉澤さんの力は、あれだけやなかったんやな」
そう言って、加護は吉澤の方に振り返った。
「加護さんの力って、精神感応ですよね?普通に使ってみてください。
後は私がやりますから」
吉澤のそっけない言い方に、少々腹が立った。
と同時に以前と雰囲気が全く違うことにも気付いた。
- 99 名前:takatomo 投稿日:2002年05月19日(日)15時40分53秒
- 「わかったわ。ほな、いくで」
加護は力を使い始めた。
すると、体が引っ張り上げられるような感覚とともに、中澤の頭の中が、はっきり見えるようになった。
そこは、謝罪の念でいっぱいだった。
次第に、上手くコントロールできるようになった加護は、奥深くに入っていった・・・・・
- 100 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月19日(日)18時08分05秒
- 復活&100age
- 101 名前:takatomo 投稿日:2002年05月25日(土)23時10分05秒
- 「な、なんなん?これ・・・」
急に加護が呟いた。しかし、その後に言葉は続かなかった。
加護は、いつのまにか力を使うことをやめていた。
「加護ちゃん、ごめんな」
中澤は再び呟いた。
「大丈夫やで、私は。吉澤さん・・・みんなに伝えるの、手伝ってな」
心配をかけまいと、気丈にふるまっているが、顔は真っ青だった。
- 102 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月25日(土)23時10分35秒
- 加護が見た映像・・・・
それは、人間の脳を一部を取り出し、自分の脳に埋め込むつんくの姿だった。
これをみんなに伝えるのはつらかった。
加護自身、みんなの頭の中に投影するために、その映像を思い浮かべるのもつらかった。
中澤がなぜ、あんなにためらっていたか、よくわかった。
加護は、辻だけには映像を見せなかった。
自分と同じ思いを、辻だけにはさせたくなかった。
- 103 名前:takatomo 投稿日:2002年05月25日(土)23時11分17秒
- 全員が全ての事実を知った後、中澤は言った。
「今日は、もう休んでくれ。明日、今後のことを話すわ」
みんなうつろな目で、それぞれの部屋に帰っていった。
「あいぼん、どうしてののにみせなかったんれすか?」
部屋に入る前、辻が口を開いた。
加護は口をつぐんだままだった。
「あいぼん!」
辻が大声を上げたが、加護は黙っていた。
「あいぼんのバカ!!」
そう言い残して、辻は自分の部屋に入っていった。
「バカはあんたや・・・・でもな、そんなあんたが好きなんや」
ポツリと加護は呟いて、自分の部屋に入っていった。
- 104 名前:takatomo 投稿日:2002年05月25日(土)23時12分01秒
- 小さな女の子が泣いている・・・・
公園の隅っこで泣いている・・・・
みんな気づいてない振りをして通り過ぎていく・・・・
ふと、若い女の人の足が止まった・・・・
女の人はやさしく女の子を抱きしめた・・・・
女の子は泣くのをやめ、女の人に連れられて歩いていった・・・・
吉澤は気付いた。あの女の子が自分であるということに
。
しかし、それ以上何も思い出せなかった。
なぜ自分が泣いているのか、そしてあの女の人が誰なのか?
全くわからなかった。
- 105 名前:takatomo 投稿日:2002年05月25日(土)23時12分45秒
- 殺気を感じ、吉澤はベットから飛び降りた。
吉澤と入れ違いに、ベットに何かが飛び込んできた。
ミシミシと、ベットが音を立ててきしんだ。
「ち、おしかったのれす」
ベットに飛び込んできた物体は、そう言ってベットから降りた。
「いきなり何なんですか?えっと・・・」
「辻希美れす。ののって呼んれくらさい」
笑顔で答える辻を見ると、なぜか怒る気が失せた。
「で、何の用ですか?」
「えっと・・・みんなもう集まっているのれす。後はよっすぃーだけなのれす」
しばらく考えてから、辻はそう答えた。
- 106 名前:takatomo 投稿日:2002年05月25日(土)23時13分23秒
- 急いで着替えて、広間に入ると、辻の言うとおり、みんなそろっていた。
軽くみんなにあいさつして、吉澤が椅子に腰掛けると、中澤は話し出した。
「えっと、みんなには、これから3人の能力者の子を助けて欲しいねん」
「え、何言ってんの、裕ちゃん?そっこーつんくのとこ行った方が、早いじゃん」
後藤が素っ気無く言った。
みんな、その意見に頷いている。
今さらそんなことをするより、つんくの所に行った方が早くカタがつくのは、自明の理である。
中澤もそれはわかっている。しかし、そうせざるを得ない理由が、彼女にはあった。
- 107 名前:takatomo 投稿日:2002年05月25日(土)23時14分05秒
- 「ごっちんの言っていることは合ってるよ。でもな、今アップフロントに狙われている人を、見捨てられんねん。
私は、今まで何人もの能力者を救ってやれんかった。つんくの計画を知っておりながらや!
だから・・・この子らだけでも助けたいねん。みんな、力を貸してくれるか?」
中澤は頭を下げた。
彼女が頭を下げるということは、今まで無かった。
それだけに、みんなを説得するには十分だった。
それだけに、中澤自身胸が痛んだ。
みんなの思いにつけこんでいる自分が嫌だった。
- 108 名前:takatomo 投稿日:2002年05月25日(土)23時14分38秒
- 「わかったよ、裕ちゃん。ごっちんもいいでしょ?」
安倍がなだめるように言ったが、後藤は不満顔で頷くだけだった。
「すまんな、みんな・・・なんか昨日から謝ってばっかやな」
苦笑しながら、中澤は続けた。
「じゃあ、今から三つに分かれて、それぞれのとこに向かってくれるか?」
- 109 名前:takatomo 投稿日:2002年05月25日(土)23時15分42秒
「おう、俺や。例の奴らはどうなっとる?」
「はい。十分使えますが・・・」
「さすが和田やな・・・・ほな、明日俺のとこに持ってきてくれんか?」
「全員ですか?」
「おう、そやな。あの4人と、一番新しい奴や、柴田やったかな?」
「はい。明日中には・・・」
- 110 名前:takatomo 投稿日:2002年07月06日(土)15時29分44秒
- 告知ずっと忘れてた。
この続きはこちら。
http://members.tripod.co.jp/pmtakatomo/index.html
lead to the futureの5からが続きになります。
- 111 名前:takatomo 投稿日:2002年08月08日(木)14時32分35秒
- 今回の発表について、9/23までに短編を書いてみたい。
全部で13〜15本くらい。
各メンバーごとに一つずつ。
ただ、全部のことをからめるのは長くなってしまうので、
今回の発表のどれか一つの要素だけについて書いていきたいと思います。
リクあればできるだけ答えていきたいです。
「加護の後藤脱退について」
とかいう風に書いてくれればうれしいえす
- 112 名前:takatomo 投稿日:2002年08月08日(木)14時36分08秒
- 1つ1つはそんなに長くないです。
ほんとにワンエピソードといった形で。
別にsage進行ってわけでないので上げてもらってもかまいません
- 113 名前:Episode 1:Ai Kago 投稿日:2002年08月08日(木)14時37分15秒
- それは突然の出来事でした。
コンサート後、マネージャーが控え室に来て告げたこと。
そのことは今でも忘れられません。
「なんで?なんで後藤さんやめるの?」
私の問いに後藤さんは目をそらしました。
「ねえ?なんでですか?後藤さん、なんでやめるんですか?」
なおも執拗に尋ねる私に後藤さんはうつむいたまま、震えていました。
「ねえ?」
三度目の私の問いかけに対して、答えてくれたのは安倍さんでした。
「加護ちゃん」
じっと私の手を握り、見つめてくれました。
その目に涙が浮かんでいたことは忘れません。
- 114 名前:Episode 1:Ai Kago 投稿日:2002年08月08日(木)14時37分48秒
- 私はわかってました。
後藤さんの気持ちが。
気付かないわけもありません。
教育係として加入した時から、私の”お姉さん”だった後藤さん。
ののとは違う意味で、私はこの人のことをよくわかっているつもりでした。
だから、頭ではちゃんと理解しています。
後藤さんがどんな気持ちで脱退を決めたか、そして私が何をすべきか。
でも…それを実行できるほど私も大人ではありませんでした。
- 115 名前:Episode 1:Ai Kago 投稿日:2002年08月08日(木)14時38分39秒
- 安倍さんの手を振り払い、私は控え室を飛び出しました。
とにかくどこかで一人で泣きたかった。
私はトイレに駆け込み、一人で泣きました。
ずっと、ずっと一人で泣いていました。
中澤さんの時も泣きましたが、その時とは大きく違いました。
泣けば泣くほどつらく、寂しくなっていきました。
- 116 名前:Episode 1:Ai Kago 投稿日:2002年08月08日(木)14時39分32秒
- その時でした。
後藤さんが来てくれたのは。
ドアの前に立ち、後藤さんは静かに言ってくれました。
「ごめんね。加護ちゃん。でもね、もう決まったことなんだよ」
いつもの調子で、ゆっくりと言ってくれました。
私はゆっくりドアを開けました。
ドアの向こうに立っていた後藤さんの目は、中澤さんと、そして市井さんと同じ目をしていました。
後藤さんはゆっくり私に近づき、やさしく抱きしめてくれました。
- 117 名前:Episode 1:Ai Kago 投稿日:2002年08月08日(木)14時40分18秒
- やさしく、やさしく抱きしめてくれました。
私はそのまま泣き続けました。
後藤さんの胸でずっと、ずっと泣き続けました。
- 118 名前:Episode 1:Ai Kago 投稿日:2002年08月08日(木)14時41分05秒
- 後から保田さん聞いた話なんですが、2年前の市井さんの脱退発表の時、同じことがあったらしいです。
16歳の市井さんが脱退を告げたときの14歳の後藤さんの反応と、
16歳の後藤さんが脱退を告げたときの14歳の私の反応が。
あの後藤さんが、やっぱり私と同じ14歳の時はこんなだったんだなと、
ちょっと安心しました。
- 119 名前:Episode 1:Ai Kago 投稿日:2002年08月08日(木)14時41分37秒
- 「加護ちゃんどうしたの?ボーっとしてて」
急に後藤さんが視界に現れ、ちょっとびっくりしました。
「いや、何でもないですよ。ただ…」
「ただ?」
「後藤さんとこうしているのもあと少しなんだなと」
自分で言ってて涙が出そうになったので、慌てて後ろを向きました。
そんな私を後ろから抱いて後藤さんは言ってくれました。
- 120 名前:Episode 1:Ai Kago 投稿日:2002年08月08日(木)14時42分11秒
- 「加護ちゃんは、いつまでも私の”妹”だよ」
うれしくて涙がこぼれました。
Episode 1:Ai Kago FIN
- 121 名前:あとがきみたいなもの 投稿日:2002年08月08日(木)14時45分27秒
- とりあえず、一つ書きました。
私の最初の作品を読んで頂いていた人なら、お気づきになられていると思います。
丁度年齢が一致していたので、こういう形にしてみました。
次は・・・何時になるか未定です。
ふと書きたくなった時に書いてますので。
- 122 名前:Episode 2:Hitomi Yosizawa 投稿日:2002年08月10日(土)02時46分36秒
- 「この度プッチモニに新しく入ることになった、吉澤ひとみです。
よろしくお願いします」
そう言って私が入ったのはついこの前だった気がする。
あれから2年経ったのか…
私はため息をついた。
- 123 名前:Episode 2:Hitomi Yosizawa 投稿日:2002年08月10日(土)02時47分18秒
- 「プッチモニは私の中で、一度終わってる」
あの時そう言ったのは保田さんだった。
確かに、プッチモニのセンターを務めていた、そして保田さんの1番のライバルであり、親友の市井さんの代わりに私が入ったんだから当たり前だ。
ごっちんも、武道館でのコンサートで、市井さんをどれだけ思っていたか嫌というほど思い知らされた。
だから…だから私は、必死に努力した。
ごっちんにも、保田さんにも、そしてファンのみんなにも認めてもらいたかったから。
私が「プッチモニの吉澤ひとみ」であることを、認めてもらいたかったから。
- 124 名前:Episode 2:Hitomi Yosizawa 投稿日:2002年08月10日(土)02時48分00秒
- だから保田さんが
「この曲は吉澤ひとみがいるから歌える曲」
と言ってくれた時はうれしかった。
やっと自分の居場所が見つかった気がした。
- 125 名前:Episode 2:Hitomi Yosizawa 投稿日:2002年08月10日(土)02時48分46秒
- なのに…なのにこれはなんだよ。
ごっちん、保田さんが卒業。プッチモニは小川とアヤカさんとって。
正直もうどうでもよくなってた。
私が必死になって求めてきた「プッチモニの吉澤ひとみ」という看板が奇しくも転がり込んでくる形となった。
こうやって手に入れるものじゃないのに…
- 126 名前:Episode 2:Hitomi Yosizawa 投稿日:2002年08月10日(土)02時49分30秒
- ごっちんがいて、保田さんがいて、だからこそプッチモニなんだよ。
二人がいないと「プッチモニの吉澤ひとみ」は「プッチモニの吉澤ひとみ」じゃないんだ。
私も一緒に辞めれたらどんなに楽だろうと思った。
でも、こんなことを保田さんに話したとき、こう言われたんだ。
- 127 名前:Episode 2:Hitomi Yosizawa 投稿日:2002年08月10日(土)02時50分35秒
- 「あんたが辞めてどうするの。プッチモニの精神を、プッチモニの形を伝えていけるのはあんただけなんだよ!」
「ここであんたが辞めたら、プッチモニは終わっちゃうんだ。
私たちの為にも、あんたがプッチモニを伝えていかなきゃいけないんだ」
うれしかった。
保田さんが、私をプッチモニの一員として認めてくれてたのが。
わかっていたよ。保田さんが私のこと認めてくれてるってことは。
でもね、やっぱり言葉が欲しかった。何かで表して欲しかった。
この時、やっと私は本当の意味で「プッチモニの吉澤ひとみ」になれた気がする。
そして、これから「プッチモニ」を「プッチモニ」として続けていかないといけない。
それが出来るのは私だけだって。
- 128 名前:Episode 2:Hitomi Yosizawa 投稿日:2002年08月10日(土)02時51分14秒
- でもね、やっぱり「プッチモニの吉澤ひとみ」は9月23日でもう終わりなんだ。
2人のいるプッチモニ、その中での「プッチモニの吉澤ひとみ」は終わらせなきゃいけない。
- 129 名前:Episode 2:Hitomi Yosizawa 投稿日:2002年08月10日(土)02時51分44秒
- そして、その後は「プッチモニのリーダー吉澤ひとみ」にならないといけないんだ。
保田さんやごっちん、そして市井さんのためにも。
そして何より、「プッチモニ」が「プッチモニ」であるためにも…
Episode 2:Hitomi Yosizawa FIN
- 130 名前:あとがきみたいなもの 投稿日:2002年08月10日(土)02時53分03秒
- 私は彼女をずっとこういうイメージでみてきたのかもしれない。
プッチモニの中で見る、加入当時の彼女は、本当に自分の居場所を探していたように思う。
そのせいで、何時になってもそのイメージが私に残ってると思う。
だから、彼女からそれを開放したかった。
また途中で今回のことに対する私の意見も代弁してもらってます。
プッチモニファンなんで、これだけは言っておきたかった。
他に彼女に関しては何通りか案があったんですが、これが一番今の私に必要なのかなと思ったのを書きました。
彼女に関しては、完璧に私のために書いたような感があります。
この調子で次々行きたいな。
次は…誰になるかな?4期メンが続いただけに5期メンの誰かをかこうかな
- 131 名前:吉澤ひと休み 投稿日:2002年08月10日(土)16時18分00秒
- 泣かせて頂きました・・・
ごっちん&圭ちゃんのソロ活動とともに
三代目プッチのリーダー吉澤ひとみに大いに期待しています。
作者さんがんがって!
- 132 名前:takatomo 投稿日:2002年08月11日(日)22時56分30秒
- >>131
ありがとうございます。
吉澤編は自分を慰めるために書いたようなものですが、そう思っていただいて光栄です。
吉澤ひとみには、私の期待をいい意味で裏切るくらい、がんばっていって欲しいですね。
- 133 名前:Episode3:Asami Konno 投稿日:2002年08月13日(火)01時22分26秒
- 「紺野?緊張してるの?」
ステージに出る直前、後藤さんが声をかけてくれました。
今日は新曲初披露の日です。
前回はソロパートも無かった私ですが、今回は多くのパートをもらっています。
特に、後藤さんと歌うことが多く、レコーディング時から、よくアドバイスをしてもらっていました。
- 134 名前:Episode3:Asami Konno 投稿日:2002年08月13日(火)01時23分23秒
- 「え、そんなことないですよ」
本当は緊張していましたが、笑顔を作って答えました。
「嘘、震えてたじゃん。ねえ、紺野。緊張するって悪いことじゃないんだよ」
「?」
「緊張してるからこそ、いい歌が歌えるんだよ。私も、いつも緊張してるよ。
モーニング娘。に入ってからずっと、いい意味で緊張してる。
特に、これから一人で歌うことが多いから、よけいに緊張するだろうね」
「え、どういうことですか?」
私の問いに、後藤さんは、思わず口を押さえました。
「え…いや…8月にソロシングルでるからね。だから、ソロで歌うから。うん、そういうこと。じゃ、がんばろうね」
」
そう言いながら向こうの方へ行ってしまいました。
- 135 名前:Episode3:Asami Konno 投稿日:2002年08月13日(火)01時23分59秒
- 思えばこの時、気付くべきだったんですね。
私はその後のステージのことで頭がいっぱいで、そのことを深く考えませんでした。
- 136 名前:Episode3:Asami Konno 投稿日:2002年08月13日(火)01時25分13秒
- そして、2週間後、私たちは真実を知ることとなりました。
後藤さん、そして保田さんの脱退。
そして、ユニットの再編成…
私は自分がたんぽぽに入ることなんて、その時は頭に入りませんでした。
後藤さんが、そして保田さんがいなくなる。
そのことが頭の中を支配していました。
特に、後藤さんとのあの出来事が 私の頭に中をぐるぐる回っていました。
- 137 名前:Episode3:Asami Konno 投稿日:2002年08月13日(火)01時25分54秒
- ミュージカルの最後のシーン。
私と後藤さん、二人だけのシーンでした。
後藤さんはできていますが、できていない私のために、練習に付き合ってくれました。
何度も何度も失敗する私を励ましてくれました。
後藤さん自身、他に未完成なシーンがありました。
でも、自分の練習をやらずに、私の練習に時間を割いてくれました。
そして、私との練習の後に、自分の練習をしていました。
私と居残り練習をした後なのに。
- 138 名前:Episode3:Asami Konno 投稿日:2002年08月13日(火)01時26分27秒
- 私がミュージカルを無事乗り切れたのは、後藤さんのおかげです。
私と後藤さんは劇中で恋をしますが、私は実世界でも、後藤真希という女性に惹かれていきました。
そして、いつかこんな女性になりたいと思いました。
- 139 名前:Episode3:Asami Konno 投稿日:2002年08月13日(火)01時27分09秒
- でも、当面の私の目標は、みんなみたいに「ごっちん」と呼ぶことです。
今の私にはそんな資格はありませんが、いつか、みんなに認めてもらえるくらい歌やダンスが上手くなった時には、後藤さんのことを「ごっちん」と呼びたいです。
後藤さんと一緒にいるのはあと少しなので、後藤さんがいなくなるまでには、ごっちんって呼べないかもしれません。
でも、いつかきっと、言ってみたい。
大好きなあなたのことを。
「ごっちん」って。
Episode3:Asami Konno FIN
- 140 名前:あとがきみたいなもの 投稿日:2002年08月13日(火)01時28分02秒
- 彼女をこういう役として書くのは初めてなので、難しかった。
(そもそも新メン書くのが、1年経っても難しいわけですが)
彼女の会見の言葉をもとに考えてみました。
彼女も吉澤と同じく、これから期待しています。
石川や紗耶香みたいに明るく化けてくれるといいのですが…
まあ今のままでもいいキャラだしてますけど。
- 141 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月13日(火)22時22分30秒
- こんごま、良かったです。
こう言ったらただのわがままなんですが、是非作者さんの「こんごま」、
続きでも別物でもいいのでまた読みたいです。
そう思わせられるような、紺野の語り口が最高でした。。。ごま。。。
- 142 名前:takatomo 投稿日:2002年08月14日(水)01時11分55秒
- >>141
ありがとうございます。
こんごまですか…書いてみましょうか。
せっかくリクして頂いていることですし。
何か設定のリクエストありますか?
リアルかアンリアルかだけでも言ってくだされば、かなり書きやすくなるので、お願いします。
- 143 名前:Episode4:Kaori Iida 投稿日:2002年08月17日(土)01時16分02秒
- どこにだって ある花だけど
風が吹いても負けないのよ
どこにだって 咲く花みたく
強い雨が降っても 大丈夫
ちょっぴり「弱気」だって あるかもしれないけど
たんぽぽの様に 光れ
- 144 名前:Episode4:Kaori Iida 投稿日:2002年08月17日(土)01時17分16秒
- ふと、CDからその言葉が流れてきた。
私は目を閉じて考え始めた。
タンポポは、私にとって、まさしくたんぽぽのような存在だった。
私が私でいられる場所。それがタンポポだった。
でも、その場所がなくなったなら…
飯田圭織って何なんだろう?
- 145 名前:Episode4:Kaori Iida 投稿日:2002年08月17日(土)01時18分08秒
- タンポポの飯田圭織が本当の飯田圭織なら…
タンポポの飯田圭織がいなくなったら、飯田圭織は何なんだろう?
本当の飯田圭織はいないのに、飯田圭織はここにいる。
私は一体何なんだろう?
- 146 名前:Episode4:Kaori Iida 投稿日:2002年08月17日(土)01時19分01秒
- 私が、その発表を聞いたのは、メンバーより2日ほど早かった。
私だけマネージャーさんに呼び出され、そのことを告げられた。
ごっちんのこと、圭ちゃんのこと、そして…タンポポのこと。
悲しくなかったと言えば、嘘になる。
でも、明日のコンサートのことを、そして、この事実を知らないメンバーのことを考え、平静さを取り戻そうとすることで精一杯だった。
それは、私がモーニング娘。リーダー飯田圭織だから。
私の中のタンポポの飯田圭織は、きっと泣いていた…
でも、モーニング娘。リーダー飯田圭織は…決して泣かなかった。
泣くことを許されなかった。
- 147 名前:Episode4:Kaori Iida 投稿日:2002年08月17日(土)01時21分08秒
- そして、みんなにそのことが告げられる。
みんな泣いていた。私も、その時になって、泣くことが出来た。
それは、私がタンポポの飯田圭織だったから。
自分の愛するグループを抜けること、そして大事な仲間が抜けること。
そのことに対して泣いていた。
- 148 名前:Episode4:Kaori Iida 投稿日:2002年08月17日(土)01時21分52秒
- でも…
記者会見の時、私はモーニング娘。リーダー飯田圭織にならなければいけなかった。
「えっとですね、あたしもすごく実感がないんですけども・・・」
笑みを浮かべながら、モーニング娘。リーダー飯田圭織がコメントしていた。
本当は、ごっちん辞めないでって泣きつきたかった。
タンポポやめたくないって叫びたかった。
泣いているメンバーがうらやましかった。
モーニング娘。リーダーとしてでなく、飯田圭織としてコメントしたかった。
でも、私はそれを決して許されなかった。
タンポポについて話すことさえ許されなかった。
- 149 名前:Episode4:Kaori Iida 投稿日:2002年08月17日(土)01時22分58秒
- これから私はどうすればいいのだろう?
ずっとモーニング娘。リーダー飯田圭織を演じなきゃいけないのかな?
それで、そのうち、モーニング娘。飯田圭織が本当の飯田圭織になっちゃうのかな?
じゃあ、今までの私はどうなっちゃうんだろう?
今までの私を、モーニング娘。リーダー飯田圭織が演じるのかな?
もうわかんないよ。なにがなんだか。
自然に溢れてきた涙を拭く私の耳に、再びCDの音が聞こえ始めた。
- 150 名前:Episode4:Kaori Iida 投稿日:2002年08月17日(土)01時23分41秒
- どこにだって ある花だけど
世界中に 夢を運ぶわ
どこにだって 咲く花みたく
たとえ悲しくたって 大丈夫
信じ合い支え合って
希望に変えていくわ
たんぽぽの様に 強く
Episode4:Kaori Iida FIN
- 151 名前:あとがきみたいなもの 投稿日:2002年08月17日(土)01時24分41秒
- かなり救いようのないものになってしまいました。
タンポポの飯田さんと娘。の飯田さんが違いすぎるので…
特にオソロで加護とじゃれあう飯田さん見てるとね。
最後の歌詞が救いとなるようには書いてるんですが…
ちょっと言葉たりなすぎかもしれない。
でも、こういう話を書くならそれくらいのほうがいいかなと。
- 152 名前:141です 投稿日:2002年08月17日(土)09時38分32秒
- 飯田さんのタンポポ卒業については、本当に自分も心を痛めていました。
作者さんのようにちゃんと書いてくださる方がいて嬉しいです。
必ずしも救いを書かなきゃいけないわけじゃないと思いますよ。憤りを
ストレートに書いてもらうのも、心に響きますから。
で、おこがましくもリクエストを受け付けてくださると……作者さんは
優しいですね……(涙
出来ればで結構です。HPの更新もあるでしょうし。こんごまの学園物って
あまり見ないので、そちらの方向を希望します。(ポソッ
長文すみません。ここの文章に惚れましたので。
- 153 名前:takatomo 投稿日:2002年08月18日(日)02時29分25秒
- >>152
了解しました。
ちょうど学園ものって書いたこと無かったジャンルなので、書いてみたいです。
一応こっちには今の短編が続いているので、できたらHPの方にUPします。
ちょっと時間かかるかもしれませんが、ご了承ください。
できましたら、こちらの方でも告知しますので
- 154 名前:Episode5:Makoto Ogawa 投稿日:2002年08月21日(水)01時10分18秒
- 「プッチモニは吉澤、小川、アヤカ」
私は一瞬耳を疑った。
後藤さんが脱退するから、プッチモニに一人枠ができるのは当然である。
そして、私はそこに入るものだと思っていた。
これは自惚れでもなんでもない。
愛ちゃんはタンポポに入りたいって言ってたし、理沙ちゃんはミニモニ。に入りたいって言ってた。
あさ美ちゃんは…ちょっとわからないけど…
だから、私が希望していたし、私が入るものと思い込んでいた。
- 155 名前:Episode5:Makoto Ogawa 投稿日:2002年08月21日(水)01時11分14秒
- でも、いざ入ることを告げられると、私には自信がまったくなかった。
後藤さん、保田さん、吉澤さん。娘。の中で3人いる時とは大違い。
プッチモニだからこそ、3人の良いところを存分に出していた。
私もそんな3人にあこがれ、プッチモニに入りたいと思っていたけど…
実際、私にこれをやれと言われたら不可能に違いない。
- 156 名前: Episode5:Makoto Ogawa 投稿日:2002年08月21日(水)01時11分45秒
- だからといって、私が入ったからプッチモニが駄目になったとは絶対言われたくなかった。
市井さん、後藤さん、保田さん、そして吉澤さんが作ってきたプッチモニ。
その看板にあぐらをかいて座っていることはできない。
私が後藤さんや保田さんになるなんて決して出来ない。
なら、どうしたらいいんだろう?
- 157 名前:Episode5:Makoto Ogawa 投稿日:2002年08月21日(水)01時12分26秒
- その答えは吉澤さんがとっくに出していた。
市井さんの代わりに入った吉澤さん。
でも、決して市井さんになろうとしていなかった。
自分の個性を出して、新しいプッチモニの道ができている。
だから、私も自分の個性を出すことしか出来ない。
私だからできることで勝負していくしかない。
後藤さんや保田さんの真似事をしても、絶対二人みたいになれないんだから。
今のプッチモニが保田さんの言っていたように、プッチモニ2なら、私たちでプッチモニ3を作っていきたい。
そして…いつか保田さんや後藤さんに褒められたいな。
Episode5:Makoto Ogawa FIN
- 158 名前:あとがきみたいなもの 投稿日:2002年08月21日(水)01時13分04秒
- 難しい。ベタベタで、模範回答な内容になってしまいました。
しかも短すぎ!!
この人難しいです。
紺野でも書いたけど、五期メンはほとんど書いたこと無いから難しいです。
以上いいわけでした。
プッチモニアルバム発売記念で保田さんも合わせてかきます。
- 159 名前:Episode6:Kei Yasuda 投稿日:2002年08月21日(水)01時14分42秒
- あの時の紗耶香もこんな気持ちだったのかな。
新聞をみると、ごっちんの脱退の横に私のことが書いてある。
まだまだ先のことだ。あと1年近くある。
わざわざ今発表することではないと思ったが、事務所の考えに逆らうことは出来ない。
「とうとう踏み出しちゃったんだ」
新ためて実感した。
もう後戻りはできない。
卒業後のことも覚悟が出来ていた。
- 160 名前:Episode6:Kei Yasuda 投稿日:2002年08月21日(水)01時15分50秒
- しかし、何か妙に中途半端な気分だった。
自分が卒業まで何を、どんな役割を担えばいいのか、よくわからなかった。
卒業の話を始めた時、私の気持ちは固まっていた。
なぜなら、中澤裕子という存在を見てきたから。
卒業する最後の最後まで、モーニング娘。のために尽くしていた裕ちゃん。
だから、私もそうすることは当然だと思ってきた。
モーニング娘。、プッチモニがいいものになるために尽くしていくつもりだった。
- 161 名前:Episode6:Kei Yasuda 投稿日:2002年08月21日(水)01時16分41秒
- でも…早期の卒業発表は私の気持ちを惑わせた。
これから1年間、私には常に卒業ということがついて回る。
考えないようにはしていても、どこかで遠慮というものが私とメンバーの間で生まれてしまうだろう。
そして何をやるにしても「最後の」という言葉がついてくる
- 162 名前:Episode6:Kei Yasuda 投稿日:2002年08月21日(水)01時17分13秒
- クリスマスがきても、最後のクリスマス…
紅白にでても、最後の紅白…
お正月を迎えても、最後のお正月…
あるイベント毎に自分が卒業することを意識し、周りも私に気を使う。
そうなるのがたまらなく嫌だった。
楽しいイベントのはずなのに、みんなで盛り上げようとしているのに、私がどこかで水を差す形になってしまう。
私がモーニング娘。をつまんなくしちゃうんじゃないのか?
そんな考えがずっと頭の中をぐるぐる巡っていた。
- 163 名前:Episode6:Kei Yasuda 投稿日:2002年08月21日(水)01時17分47秒
- でも、もう発表してしまっている。
もう踏み出してしまったんだ。
後戻りはできない。
そんな状況で私に何が出来るんだろう?
私はどうするべきなんだろう?
その答えを今の私には出すことが出来ない。
今まで脱退してきたメンバーの誰もが経験していないことだ。
裕ちゃんや紗耶香に頼ることはできない。
自分で、自分の力で考えないと。
- 164 名前:Episode6:Kei 投稿日:2002年08月21日(水)01時18分43秒
これから私は一人でやらなくちゃいけないんだ。
だれも助けてはくれないし、助けてもらってもいけない。
自分で、自分の力で何とかしていかなくちゃいけないんだ。
大きくため息をつき、新聞を置く。
ふと、ある歌詞が頭をよぎり、私は歌い始めた。
- 165 名前:Episode6:Kei Yasuda 投稿日:2002年08月21日(水)01時19分37秒
- アヒルの夢 アヒルの未来
誰もわからない
でも きっと Ah
誰かみてるよ
君の努力を
たまにはサボりたい
そんな日もあるだろう
楽しい唄歌おう!
これは最後のラジオで流した曲だ。
口ずさんでいて涙がこみ上げてきた。
- 166 名前:Episode6:Kei Yasuda 投稿日:2002年08月21日(水)01時20分35秒
- 誰かみてるよ
君の笑顔を
先が少し長い冒険の旅の途中
気長に あぁ行こう
ほんの少し肩の力が抜けた気がする。
案外自分が心配してるほどじゃないかもね。
大丈夫、きっと大丈夫だよ。
自分にそう言い聞かせた。
Episode6:Kei Yasuda FIN
- 167 名前:あとがきみたいなもの 投稿日:2002年08月21日(水)01時21分38秒
- えっと…24時間テレビ見てて気になったことです。
圭ちゃんまで「最後」、「最後」っていう文字がついてるのを見て思った。
実際どうなんだろう?やっぱりメンバーは意識するのかな?
こんなに発表との間隔が空いているだけに、すごい心配。
まあ、これからも保田圭には大注目なわけですが…
あと、文章中に歌詞を引用している部分がちょこちょこあります。
近い内容の言い回しになったので、合わせてみました。
- 168 名前:takatomo 投稿日:2002年08月24日(土)20時48分53秒
- >>152
141さん、一応HPの方に書きました。
ちょっと短編で書くのは難しいので、中篇くらいになると思います。
だから、とりあえず出だしだけ書いてますので、こんな感じでもいいか御覧下さい。
- 169 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年08月29日(木)09時58分32秒
- 御無沙汰してます。
久々に来たら気になる短編が並んでいました。
9月23日まで頑張ってください。(なんの励ましにもなってませんが。)
そして、そこに新たなスタートを見出せることをお祈りしております。
- 170 名前:Episode7:Natsumi abe 投稿日:2002年09月03日(火)02時48分27秒
それは私の目の前で起こった。
人が倒れる音に、なぜバタッという言葉を用いるかよくわかった。
まさしく彼女はバタッとその場に倒れた。
日差しのきつい夏の午後。
コンサート中に起こった出来事だった。
- 171 名前:Episode7:Natsumi abe 投稿日:2002年09月03日(火)02時50分02秒
- 「矢口!」
アンコールを終え、ステージからはけるとすぐに、私は彼女のもとに行った。
「ごめんね、ちょっと無理しちゃったよ。でももう大丈夫だから」
無理に笑顔を作ってるということは、真っ青な顔からすぐにわかった。
「バカ!心配したんだから!」
大声を出して泣き始める私を見て。彼女は目を丸くしていた。
「なっち…ごめんね。心配かけて…ありがとう」
そう言って彼女は大事をとって病院に向かった。
その小さな後姿はさらに小さく見えた。
しかし、矢口は夜には戻ってきた。
必死にコンサートをやる矢口の姿が痛々しかった。
- 172 名前:Episode7:Natsumi abe 投稿日:2002年09月03日(火)02時50分34秒
- どうして矢口がこんなにつらい思いしなきゃいけないの?
私がコンサート終了後に尋ねたことだった。
「どうしてって…仕事だからじゃない?」
事も無げに言った。その言葉に感情はこめられていなかった。
その時、私は矢口のことを誤解していたことに気付いた。
あの発表の時、タンポポとミニモニ。の卒業がこたえているのは、誰の目にも明らかだった。
でも、矢口は次の日から何事も無かったかのように振舞った。
私は矢口をすごいなと思っていた。
だけど、それは違っていたんだ。
- 173 名前:Episode7:Natsumi abe 投稿日:2002年09月03日(火)02時51分10秒
- 「我慢しなくていいんだよ?みんなに気を使わなくてもいいんだよ?」
矢口は驚いた顔をした。
私はかまわず続けた。
「私たちは仲間でしょ?泣きたいときは泣いてもいいんだよ。
今までずっとそうだったじゃない」
ようやく矢口は私の言っていることが解かったようだ。
でも、彼女はこう言った。
「ダメだよ」
「どうして?私たちじゃダメなの?矢口、つらいんでしょ?」
「ダメなの」
「どうして?」
私の頑なな態度にようやく矢口が語り始めた。
- 174 名前:Episode7:Natsumi abe 投稿日:2002年09月03日(火)02時51分49秒
- 「私が泣くと、紺野や新垣、なにより高橋がかわいそうだ。
あの子らは、これからユニットを頑張ろうとしてるんだよ。
なのに、私が辞めたくないって泣き叫んだらどうなると思う?
あの子らは自分達に責任を感じちゃうよ」
矢口はいつもそうだ。
自分が損してもいいから、みんなに迷惑をかけたくない。
みんながつらい思いをするくらいなら、自分がやる。
いつも、いつもそうだった。
- 175 名前:Episode7:Natsumi abe 投稿日:2002年09月03日(火)02時54分11秒
- 「バカ…やさしすぎるんだよ。私の前くらい泣いてもいいんだよ」
「ありがとね。でも、もう決めたんだ」
「何を?」
「過ぎてしまったことは戻らないんだ。だから、過去を振り返って立ち止るより、今の状況が少しでもよくなるようにがんばろうって」
でも、彼女の目は、言っていることと逆に涙を浮かべていた。
「でも、今だけは泣かせてくれるかな?」
彼女はボソッと言った。
- 176 名前:Episode7:Natsumi abe 投稿日:2002年09月03日(火)02時54分49秒
- 「うん、ほら」
私は、小さな彼女を包み込む。
まるで雛鳥を親鳥が包むように…
いつまでもいつまでも泣く彼女を抱きしめていた。
Episode7:Natsumi Abe FIN
- 177 名前:あとがきみたいなもの 投稿日:2002年09月03日(火)02時58分37秒
- 半月前のネタです。
当時は結構ショックで使う気は無かったんですが、落ち着いた今なら使えました。
どうしても使うイベントがワンパターンになってしまってたので、ちょっと違ったものを使ってみたかった。
今で折り返し地点なので、残りもなんとかがんばりたいです。
- 178 名前:takatomo 投稿日:2002年09月03日(火)03時02分20秒
- >>169
お久しぶりです。
9/23を迎えて自分がどうなるかはちょっと心配です。
全く予想できないので。
それまでは文体なども含めて、変わらないと思いますので、お付合いいただけるとうれしいです。
- 179 名前:Episode8:Nozomi Tsuji 投稿日:2002年09月08日(日)14時40分20秒
- 「辻!あんたまた遅刻したでしょ?」
楽屋に入るなり、矢口さんがこっちにきた。
「あんた、最近どうしたの?たるんでるんじゃない?」
「なんでもないです」
それだけ言うと、私は立ち上がり、その場を離れた。
「ちょっと圭織、何とか言ってやってよ」
後ろから矢口さんの声が聞こえてきた。
(関係ないんです。怒られてもいいんです)
それから、私はわざと何度も遅刻やミスを繰り返した。
でも私はそれでよかった。
私の頭の中にはあの言葉がずっと残っていたから。
- 180 名前:Episode8:Nozomi Tsuji 投稿日:2002年09月08日(日)14時41分05秒
- それは、矢口さんのミニモニ。脱退が告げられた、数日後だった。
いつも通りあいぼんと騒いでいると、矢口さんは私たちに言った。
「あんたたちがもっとしっかりしてくれないと、私も安心して卒業できないよ」
「そうですか?私たちはしっかりしてますよ。なあ、のの?」
「そうだ、そうだ。任せてください」
嘘だ。任せて欲しくない。矢口さんと一緒にいたい。
私はこの時悟ったんだ。
私がしっかりしないなら、矢口さんはミニモニ。を卒業できないんじゃないかって…
そして、それから私はこんなことを続けている。
朝起きてないわけじゃない。準備もきちんとしてる。
途中、わざとコンビニで時間を潰しているだけ。
私にはこれくらいしかできないから…
- 181 名前:Episode8:Nozomi Tsuji 投稿日:2002年09月08日(日)14時41分42秒
- でも、さすがにやりすぎたみたいだ。
飯田さんに収録後、呼び出された。
恐る恐る行ってみる。
「のの、どうしてみんなに迷惑かけてるの?」
もっときつく怒られるかと思っていただけに、拍子抜けした。
でも、私は黙って下を向いていた。
「私はののがみんなに迷惑をかけるのは、何か理由があるって思ってるんだ。
ののは初めは本当に手が付けられなかったけど、今は違うもんね。
新メンバーが入ってから、ののはきちんと出来てた。えらかったよ」
思わず涙がこぼれそうになった。
でも、私は一言だけ言った。
- 182 名前:Episode8:Nozomi Tsuji 投稿日:2002年09月08日(日)14時42分14秒
- 「だめなんです。やめないのです」
それが答えになっていないこともよくわかっていた。
でも、それが私の今の気持ちだった。
飯田さんは何か考え込んだ後、私の肩に手をかけて言った。
「矢口もね、つらいんだよ。あんなに明るく振舞ってるけどね。
だから、ののまで矢口に迷惑かけちゃダメでしょ。
ののが寂しいのはよくわかるよ。でも、こんな方法じゃ駄目なんだよ」
飯田さんは私の顔を覗き込む。
私は飯田さんに抱きついて泣いた。声をあげて思いっきり泣いた。
- 183 名前:Episode8:Nozomi Tsuji 投稿日:2002年09月08日(日)14時42分49秒
- 次の日、今日は野外コンサートだった。
朝から何度も顔をあわせているが、言い出すタイミングが無く、コンサートが始まってしまった。
これが終わったら言おう。
そう決めていた矢先のことだった。
矢口さんが崩れ落ちた。
「矢口さん!」
思わず叫びそうになるのをグッとこらえた。
今はコンサート中だ。
もうみんなに迷惑かけられない。
運ばれていく矢口さんを横目に最後まで歌った。
- 184 名前:Episode8:Nozomi Tsuji 投稿日:2002年09月08日(日)14時43分39秒
- 私の頭には昨日の飯田さんの言葉が繰り返された。
―――矢口もね、つらいんだよ―――
矢口さん、ごめんなさい。
私が心配かけたから。
ごめんなさい。
だから死なないで。
これからちゃんとするから。
コンサート終了後、私は矢口さんの元にいち早く行った。
- 185 名前:Episode8:Nozomi Tsuji 投稿日:2002年09月08日(日)14時44分11秒
- 「ごめんなさい。私が悪いことしたから…ごめんなさい」
涙で最後は声にならなかった。
矢口さんは不思議そうな顔をしていた。
それでも、私はただただ「ごめんなさい」を連呼していた。
矢口さんは飯田さんの顔をチラッとみた後、状況がわかったのか、こう言った。
「あんたのせいじゃないよ。ほら、もう泣かないの」
立ち上がり、私を抱きしめてくれた。
「辻ちゃんが私を大事に思ってくれてるのはすごいうれしいよ。ありがとう」
「矢口さん」
もう声になっていなかった。
「まだまだ先のことなんだから。それに私はモーニングをやめるわけじゃないんだから」
やさしく背中を叩いてくれる。
- 186 名前:Episode8:Nozomi Tsuji 投稿日:2002年09月08日(日)14時45分14秒
- 私はこの時、再び悟ったんだ。
矢口さんがミニモニ。にいる間、いっぱいいっぱい甘えてやる。
矢口さんが私と離れるのが寂しくてミニモニ。卒業を撤回するくらい。
やってやるんだ。
Episode8:Nozomi Tsuji FIN
- 187 名前:あとがきみたいなもの 投稿日:2002年09月08日(日)14時48分48秒
- ひさびさの普通の辻ちゃん。
この子を主人公にするのは難しいです。
脇役としてはすごい書き易いのにね。
えっと、あと5つです。23日まで、間に合うかな…ちょっと心配。
- 188 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月14日(土)00時13分48秒
- 短編ってあまり読まないのですが、リアルなこの話にはすごく惹かれます。
23日まであと10日間切りましたが、頑張ってくださいね。応援してます!
- 189 名前:Episode9:Risa Niigaki 投稿日:2002年09月16日(月)22時46分02秒
- 「あさ美ちゃん、どうして私達、タンポポなんだろ?」
「わかんないよ。そんなこと」
あさ美ちゃんは向こうに行ってしまった。
(もう、少しくらい聞いてくれてもいいじゃない)
今度は私は愛ちゃんの元に行きました。
「ねえ、どうして愛ちゃんがミニモニ。で、私はタンポポなんだろうね」
「知らないよ。ごめん、私、用があるから」
また向こうに行ってしまった。
(なんで?みんな怒ってるの?)
- 190 名前:Episode9:Risa Niigaki 投稿日:2002年09月16日(月)22時46分58秒
- 「ねえ、麻琴ちゃん…」
「理沙ちゃん、ちょっとは空気よんだ方がいいよ」
「へ?どういうこと?」
「みんな、昨日のことでショックとか受けてるのよ。みんな一切話題に出さないでしょ?」
そういえば、朝からみんな、昨日のことが無かったかのように振舞ってる…
「なのに、みんなの気持ちを考えずに、そんなこと聞いちゃだめだよ」
麻琴ちゃんはきつい調子で言った。
「私も、何も考えて無いわけじゃないもん」
「え?」
突然、大きな声で私が叫ぶと、麻琴ちゃんは驚いた。
私はいつの間にか涙を浮かべていた。
「私だって…私だって…つらいんだよ。だって、ずっとミニモニ。に入りたかったのに…なのに…なのに…」
泣き出す私に、麻琴ちゃんはうろたえ始めた。
「どうしたらいいかわかんないんだもん!勝手に色々言われて、勝手に決められて…もうぐちゃぐちゃだよ〜」
大声でわめいた。
いつの間にかみんな集まってきていたが、私はかまわず泣き続けた。
- 191 名前:Episode9:Risa Niigaki 投稿日:2002年09月16日(月)22時48分13秒
- 「あ〜あ、ちょっとどうしよう…」
飯田さんもうろたえていた。
「圭織、あんた、リーダーなんでしょ。しっかりしてよ」
安倍さんがそう言いながら、私に話し掛ける。
「新垣、ちょっとあっち行って、二人で話そうか?」
安倍さんに連れられるように私は外にでた。
- 192 名前:Episode9:Risa Niigaki 投稿日:2002年09月16日(月)22時50分12秒
- 「あのさ、新垣の気持ちはよくわかるよ。なっちもなんで?って思ったもん」
私は涙を拭きながら頷いた。
「新垣は小さいから、どうしたらいいかわかんなくなっちゃんだよね。初めてのことだし…」
安倍さんのやさしい話し方に、私の涙も収まってきた。
「でも、ちょっとなっちうれしかったんだ。新垣がそんな面を見せてくれるって。いつも無理して大人ぶってる感じがしてたから」
「安倍さん…」
「今回のことは、みんなそれぞれ乗り越えなくちゃいけないことがあるんだよ。
なっちにしたって、いろいろ乗り越えなくちゃいけない。
でもね、これは誰かに頼ってたら駄目なんだよ。
みんな、自分のことで精一杯だからね」
「でも…」
どうしたらいいんですか?
そう言おうとして思いとどまった。
誰かに頼ってちゃ駄目なんだ。さっき言われたばかりだ。
- 193 名前:Episode9:Risa Niigaki 投稿日:2002年09月16日(月)22時50分50秒
- 「うん。わかってくれてうれしい。
ゆっくりでもいいから、新垣が自分で答え見つけてね」
「はい」
「じゃあ、戻ろうか」
二人で手をつないで部屋に戻った。
一歩一歩、ゆっくりでもいいから自分で進んでいこう。
安倍さんの手のぬくもりを感じながら、私はそう思った。
Episode9:Risa Niigaki FIN
- 194 名前:あとがきみたいなもの 投稿日:2002年09月16日(月)22時51分40秒
- この子をちゃんと書くのは初めてです。
最年少らしい役回りにしてみました。
同じ最年少でも、昔の加護とはなにか違う感じですね…
- 195 名前:Episode10:Rika Ishikawa 投稿日:2002年09月16日(月)22時52分43秒
- 「ねえ、よっすぃー」
「ん?何?」
「これからどうなっちゃうんだろうね?」
「さあね」
素っ気無く、そのままご飯を口に運び続けるよっすぃー。
私たちは2人で仕事帰りにご飯を食べていた。
「もう、真剣に聞いてよ」
「聞いてるよ。タンポポやプッチのリーダーになるわけだし、今まで以上に頑張らなきゃいけないんだ」
そう言ったよっすぃーはかなり苛立っていた。
「それに、ごっちんのこともあるし…」
最後のほうは消えそうな声だった。
それから、二人とも黙々と食事を続けてた。
気まずい雰囲気に包まれていた。
- 196 名前:Episode10:Rika Ishikawa 投稿日:2002年09月16日(月)22時53分50秒
- 「ねえ、ごっちんがいなくなって寂しい?」
思い切って沈黙を破る。
「当たり前だよ。何言ってるの?」
よっすぃーは顔を上げずに答えた。
「じゃあ…」
言いかけて私は言葉をのみ込んだ。
「何?」
よっすぃーが尋ねる。
「ううん。何にも無い」
うつむきながら私は答えた。
「私がいなくなるのとどっちが寂しい?」
そんなことが聞けるはずも無かった。
同じような質問を投げかけられても、私は答えを出せないと思う。
それに、その答えを聞いてもたいした意味はないこともわかっている。
- 197 名前:Episode10:Rika Ishikawa 投稿日:2002年09月16日(月)22時54分38秒
- 「ねえ、梨華ちゃんはやめないよね」
突然よっすぃーはそう言った。
「これで梨華ちゃんまでいなくなったら、私どうしていいかわからない」
よっすぃーの目は、まるで幼い子のようだった。
こんな彼女をみるのは初めてかもしれない。
「うん」
気休めにしかならないかもしれないが、私はそう答えた。
よっすぃーもその答えで満足だったらしく、笑みを浮かべた。
- 198 名前:Episode10:Rika Ishikawa 投稿日:2002年09月16日(月)22時57分42秒
- ねえよっすぃー、私もあの日に一つだけ決めたことがあるんだ。
もしよっすぃーが脱退することになったなら…
その時は私も…
寂しそうな笑みを浮かべるよっすぃーに、心の中で語りかける。
だって、口に出しても意味の無いことなんだから…
Episode10:Rika Ishikawa FIN
- 199 名前:あとがきみたいなもの 投稿日:2002年09月16日(月)22時58分46秒
- これからの私のモーニング娘。の楽しみがいしよしだけか…
って思いながら書いてたらこうなりました。
1番アンリアルに近いものになっているのかもしれません。
- 200 名前:Episode11:Ai Takahashi 投稿日:2002年09月16日(月)22時59分53秒
- あれは1年半前のことでした。
私が初めてミニモニ。の曲を聞いた時、衝撃をうけました。
まさか、いくらモーニング娘。といっても、こんな曲を歌うなんて…
そして、自分がそれを歌うことになるなんて、夢にも思っていませんでした。
- 201 名前:Episode11:Ai Takahashi 投稿日:2002年09月16日(月)23時00分24秒
- 「タンポポは石川、紺野、新垣、そして柴田」
この発表の後、私は麻琴ちゃんと、プッチモニに入るものだと思い込んでいました。
しかし、その後に続けられた言葉は
「プッチモニは吉澤、小川、そしてアヤカ」
一瞬、返事をしそうになりました。自分の名前が呼ばれるものと思っていましたから。
でも、私の名前は呼ばれませんでした。
- 202 名前:Episode11:Ai Takahashi 投稿日:2002年09月16日(月)23時00分56秒
- じゃあ…私は…
私の頭の中には2つの考えが浮かびました。
一つは安倍さんのようにユニットを組まない。
もう一つは新しいユニットを組む。
この二つでした。
しかし、私の耳には信じられない言葉が飛び込んできました。
「ミニモニ。はミカ、加護、辻、そして高橋」
私は声が出ませんでした。その言葉の意味を理解するのに必死でした。
- 203 名前:Episode11:Ai Takahashi 投稿日:2002年09月16日(月)23時01分41秒
- ミニモニ。に高橋が入る…
高橋って私しかいないし…
え?私がミニモニ。に入るの?
あれから一夜明けても、まだ信じられません。
きっと昨日のことは夢だと自分に言い聞かせていました。
でも、それは現実なのです。
後藤さんは脱退するし、私はミニモニ。に入る。
あらゆるところでその文章を目にしました。
やっぱりほんとうなんだ…
ショックをこらえきれない私は、魂の抜けたように、ボーっと楽屋で座っていました。
- 204 名前:Episode11:Ai Takahashi 投稿日:2002年09月16日(月)23時02分52秒
- その時でした。私の心を見透かしたかのように、矢口さんが声をかけてくれたのは。
「ミニモニ。入りたくないでしょ?あんなこと、恥ずかしいと思ってるでしょ?」
「え…いや…そんなことは」
「わかってるって。矢口も初め、めちゃめちゃ悩んだんだから」
「あ…はい…」
「本当に恥ずかしかった。18にもなって、何でこんなことしなきゃいけないのって」
矢口さんは昔を懐かしんでいるように目を細めていました。
- 205 名前:Episode11:Ai Takahashi 投稿日:2002年09月16日(月)23時03分38秒
- 「でもね、CD発売して、ちっちゃな子が必死に歌ってくれたり、踊ってくれてるのを見るとね、すごいうれしかった。
すごいちっちゃな子が、ミニモニ。を見て喜んでくれてる。
これは、モーニング娘。じゃできないことかもしれない。ミニモニ。だからできることなんだ。
そう思うとね、すごくやりがいがあるユニットなんだなって思い始めてたんだ」
そう話す矢口さんの目には涙が浮かんでいた。
「矢口さん…」
「アハハ…なんで泣いてるんだろ」
矢口さんのミニモニ。に対する思いが痛いほどわかった。
こんなに矢口さんが大事にしてるユニット、ミニモニ。
私も同じように愛していきたい。
- 206 名前:Episode11:Ai Takahashi 投稿日:2002年09月16日(月)23時04分09秒
- 「ありがとうございます。私、頑張ります」
「うん。頑張って。ミニモニ。をもっといいものにしていってよ」
涙を拭きながら矢口さんは向こうに行った。
(本当にありがとうございました)
その後姿に、私は黙って頭を下げた。
Episode11:Ai Takahashi FIN
- 207 名前:あとがきみたいなもの 投稿日:2002年09月16日(月)23時04分50秒
- 今回の編成の大きなポイントのミニモニ。についてです。
今さらなんですが、身長制限撤廃してまで入れる必要があったのかな…
かなり好きな子だけに、複雑でした。
- 208 名前:Episode12:Mari Yaguchi 投稿日:2002年09月16日(月)23時14分39秒
- 翼のない天使。
それは天使なのかな?
縞のないシマウマ。
それはシマウマなのかな?
目盛りのついていない定規。
それは定規なのかな?
- 209 名前:Episode12:Mari Yaguchi 投稿日:2002年09月16日(月)23時15分13秒
- 私にとって翼や縞や目盛りがタンポポでありミニモニ。だった。
それがなくなった私は、矢口真里でいられるのかな?
その答えを私はずっと探していた。
いや、それは違うのかもしれない。
答えは最初からわかっていた。
ただ、それを認めたくなかったのかもしれない。
- 210 名前:Episode12:Mari Yaguchi 投稿日:2002年09月16日(月)23時15分54秒
- だから…だから私は、矢口真里をいうものを維持しようと、必死になっていたのかもしれない。
コンサートで倒れた時もそうだった。
やる前から体調がわるく、夏の日差しの中、できるわけが無いということはわかっていた。
でも、やめることはできなかった。
これ以上、自分の居場所がなくなるのが怖かった。
その時、私はある種の脅迫観念にとらわれていたのかもしれない。
そして私は、昼公演に倒れたにもかかわらず、その日の夜公演を行うことになる。
ほんの少しでも休むのが怖かったから。
私が今まで築いてきた「矢口真里」を失うのが怖かったから
- 211 名前:Episode12:Mari Yaguchi 投稿日:2002年09月16日(月)23時16分32秒
- でも、こんな姿をみんなにみせることはできない。
私が泣きついて、タンポポやミニモニ。に残りたいって言えたら、どんなに楽だろう。
でも、それはできない。
それができるほど私の立場は子どもでもないし、それをやればどうなるかわからないほどバカでもないから…
自分で何とかしなければ…
しかし、その気持ちとは裏腹に、私はそのことを考える度に泣き続けていた。
- 212 名前:Episode12:Mari Yaguchi 投稿日:2002年09月16日(月)23時17分06秒
- だけど、私はちょっとホッとしてる。
いくら頭でわかっていても、いくら我慢しようとしても泣き出すほど、私はタンポポやミニモニ。を大事に思ってたということを最後の最後で、確認することができたから。
それはごっつあんや圭ちゃんに対しても同じこと。
いつの間にか「いる」のが当たり前で、「いる」ことに何も感じなくなっていた。むしろ、たまには離れたいと思ったこともあった。
でも、今となっては「いる」ということがとてもうれしい。
少しでも長い時間一緒にいたいと思う。
- 213 名前:Episode12:Mari Yaguchi 投稿日:2002年09月16日(月)23時17分44秒
- だけど、あと少しで全てが終わってしまう。
その後、私がどうなるのかわからない。
ただ一つわかることは、私がどんなに矢口真里でいようと思っても、それは偽者でしかないということ。
だからこそ私は、新しい矢口真里を築いていかなければならない。
今の矢口真里にこだわっていては、一歩も前に進めないのだ。
でも…私は今の矢口真里を少しでも長く続けていたい。
モーニング娘。に入ってから築き上げてきた矢口真里を少しでも長く…
そう、全てが終わるまでは、続けていたいと思う。
Episode12:Mari Yaguchi FIN
- 214 名前:あとがきみたいなもの 投稿日:2002年09月16日(月)23時18分37秒
- 今までのまとめ的になりました。
頭の中のことだけを書いていくっていう形です。
今回、いろいろな書き方やキャラを試してみましたが、あらためて会話文に自分が依存しているなということがよくわかりました。
- 215 名前:Episode13:Maki Goto 投稿日:2002年09月16日(月)23時22分07秒
- ”Episode13:Maki Goto”
これに関しましては、書くつもりはありません。
今までのエピソード、そして現実の後藤真希を見て、みなさんが自分なりに思ったことをEpisode13として下さい。
実際、私自身、いくつものエピソードが思い浮かびました。
そして、それらを書いてみなさんにお見せすることは簡単です。
でも、みなさんが描いているモーニング娘。での後藤真希というものを、私の描く後藤真希に置き換えたくありません。
どうかご了承ください。
- 216 名前:takatomo 投稿日:2002年09月16日(月)23時28分10秒
- >>113-121 加護編 >>122-130 吉澤編
>>133-140 紺野編 >>143-151 飯田編
>>154-158 小川編 >>158-167 保田編
>>170-177 安倍編 >>179-187 辻編
>>189-194 新垣編 >>195-199 石川編
>>200-207 高橋編 >>208-214 矢口編
>>215 (一応)後藤編
- 217 名前:あとがき 投稿日:2002年09月16日(月)23時31分38秒
- もうあれから1月半が経とうとしています。
初めてそれを知ったとき、頭が真っ白になりました。
もうなにも考えられない状態で、数時間ボーっとしていたと思います。
その時のことはほとんど覚えてません。
実際、小説を書き続けるか迷いました。
でも、とあるサイトにかかれていた言葉で、
「こんな状況だから書ける文があるし、それを書いていかないといけない」
というのを見て、書くことを決めました。
色々新しいことを試したりしたので、いい経験になりました。
次作に生かしたいと思います。
最後に、全部読んでいただいた方、ありがとうございました。
- 218 名前:takatomo 投稿日:2002年09月16日(月)23時35分55秒
- >>188
感想ありがとうございます。
おかげで一気に書いちゃいました。
感情入りやすいように、23日付近にまとめて上げたほうがよかったですかね…
- 219 名前:takatomo 投稿日:2002年09月16日(月)23時39分39秒
- 〜ここでお知らせ〜
次作なんですが、とりあえず9/23がすぎて、気持ちの整理もついてからここで書き始めようと思います。
おそらく9月末か10月初めになるかと思います。
1年前に考えていたものなので、ネタ的には古いですが…
よろしければそちらの方もよろしくお願いします。
内容は娘。オールキャスト(後藤あり)で、アンリアル(ある意味リアル)です。
あとは秘密で(w
ちなみにCPはいくつかありますが、確定は「いしよし」くらいですかね。
あとは特に決めてません。
- 220 名前:takatomo 投稿日:2002年10月01日(火)00時06分40秒
- 予告どおり始めたいと思います。
お付合いいただけるとうれしいです。
過去の作品&lead to the futureの続きはこちら
http://members.tripod.co.jp/pmtakatomo/index.html
では、どうぞ
- 221 名前:takatomo 投稿日:2002年10月01日(火)00時08分26秒
LOVEセンチュリー2 〜夢の続きは終わらない〜
- 222 名前:takatomo 投稿日:2002年10月01日(火)00時09分29秒
- CAST
*年齢設定を原作と少し変えています。(1〜2歳程度)
なつみ(安倍なつみ):23歳 父の病院で働くインターン。
圭織 (飯田圭織) :23歳 イラストレーター
圭 (保田圭) :24歳 ハンバーガーショップ店長
真里 (矢口真里) :21歳 アイドル
真希 (後藤真希) :19歳 アメリカにダンス留学中
ひとみ(吉澤ひとみ):20歳 大学生
梨華 (石川梨華) :20歳 大学生、ハンバーガーショップでアルバイト
希美 (辻希美) :18歳 高校生
亜依 (加護亜依) :17歳 高校生
愛 (高橋愛) :18歳 大学生
あさ美(紺野あさ美):18歳 高校生 圭織の妹
真琴 (小川真琴) :17歳 高校生
里沙 (新垣里沙) :17歳 高校生
裕子 (中澤裕子) :なつみの父の病院で働く看護婦
- 223 名前:<プロローグ> 投稿日:2002年10月01日(火)00時10分37秒
――――――――
私ね、こうして10人が出会えたことって偶然じゃない気がしてるんだ。
ファイナルショーで踊れたことも
手術がうまくいったのも
ATSUKOさんに出会えたのも
ファイナルショーでいっぱいお客さんが来てくれたのも
きっと一人でも欠けてたらそれは起こらなかった。
でも、それは起こった。
それはきっと何か他の意味がある出会いだったのかもしれない。
もしかしたらね、この出会いを通してそれぞれがそれぞれの夢をかなえていき
なさいっていう、神様からのメッセージだったのかなって。
私はそう思うんだ。
―――――だからさ、真希。ニューヨークにいって夢叶えてきてよ―――――
- 224 名前:<プロローグ> 投稿日:2002年10月01日(火)00時11分19秒
- 「夢か・・・・」
真希が目を覚ました時、飛行機は徐々に高度を下げていった。
そして、真希は4年振りに日本の地に降り立った。
- 225 名前:1 いいことある記念の瞬間 投稿日:2002年10月01日(火)00時12分53秒
- 「なつみ先生〜」
病室に元気な声が響いた。声の主は亜依だった。
「ちょっと亜依、病院なんだから、静かにしなさい」
そう言いながらも、なつみは笑顔で亜依のベットにやってきた。
「ホントに、マジでびっくりしたのよ。亜依が救急車で運ばれて来た時は・・・」
亜依は4年前、心臓の病気を患わっていた。
心内膜炎。
心臓の内側の膜や心臓の弁膜の表面に細菌が感染する病気である。
とくに亜依の場合は、弁膜症も併発し、大変危険な状況だった。
高度な手術を必要とする亜依を救いたいと、4年前、センチュリーランドでショーのアルバイトをしていたなつみたちは、ファイナルステージをチャリティーとして行った。
ニューヨ−クで活躍する、ダンサーのATSUKOの参加もあり、ショーは大成功となった。そして、同時刻に行われた手術も無事成功し、亜依は元気になった。
- 226 名前:1 いいことある記念の瞬間 投稿日:2002年10月01日(火)00時14分01秒
- 「まあよかったね、虫垂炎で」
「ちゅうすいえん?」
亜依が不思議そうな顔をした。
「あ、ごめん。盲腸のことよ」
「ふーん。ねえ、私ってどれくらいで退院できるの?」
「そうだね・・・あと4日くらいかな」
二人が話していると、再び病室に声が響いた。
「亜依ちゃーん!!」
希美が亜依のベットに駆け寄ってきた。
希美と亜依は、4年前、病院で知り合った友人だ。
今では二人とも、同じ高校に通っている、大の仲好しだ。
「こら、希美ちゃん、ここは病院なんだから、静かにしなさい」
なつみが叱るが、希美は特に反省した様子も無く
「そんなに怒ると、裕ちゃんみたいにしわしわになっちゃうよ」
と言った。
「もー相変わらず口達者なんだから・・・
あ!!私、回診中だったんだ。ごめんね、またあとでね」
「はーい。お仕事がんばってね」
なつみは手を振って、病室から出て行った。
- 227 名前:1 いいことある記念の瞬間 投稿日:2002年10月01日(火)00時15分23秒
- 「なつみ先生、やさしいよね〜」
「うん。あ、そうだ亜依ちゃん、今日はプリント届けに来たの」
希美はカバンを開け、プリントをベットの上に並べ始めた。
数字や図形の書かれたプリントが次から次へと出てくる。
「これって…数学の宿題?」
「うん。でさ、一緒にやらない?」
一緒にやらない?
その言葉が正確でないことは亜依はわかっている。
希美は数学が苦手だから(数学だけでもないが)亜依に教えてもらいに来たのだ。
「いいよ」
そのことがわかっていて、亜依は快く承諾する。
棚から筆箱をだすと、亜依と希美は問題を解きはじめた。
- 228 名前:1 いいことある記念の瞬間 投稿日:2002年10月01日(火)00時17分06秒
- どれくらい経っただろう。
ほとんど宿題を終わらせた時には、夏だというのに、外はもう真っ暗だった
「あれ?希美ちゃん、まだいたの?もう外真っ暗だよ」
なつみが再び病室にやってきた。
「え、今何時?」
希美はなつみを見上げる。
「もう8時前だよ。ほら、もう帰りなさい」
「やばい〜今日はドラマあったんだ!」
なつみの言葉が終わる前に、希美は声を上げ、急いで荷物を片付け始めた。
- 229 名前:1 いいことある記念の瞬間 投稿日:2002年10月01日(火)00時17分55秒
- 「あ、そうそう。お圭さんから電話あって、真希ね、日本に帰ってくるって」
なつみの言葉に希美の手が止まる。
それは亜依も同じだった。
「「え〜ホント?」」
同時に声をあげた二人に、なつみは思わず吹き出してしまった。
「うん。今度の日曜日に、みんなでパーティーしようか?だって」
亜依と希美は、顔を見合わせて笑いあった。
しかし、亜依が急に心配そうな顔で言った。
「ねえ、なつみ先生。私もいける?退院できる?」
なつみは少し考えたが、OKを出した。
亜依の顔に笑顔が戻る。
亜依の担当の先生には渋い顔をされそうだが、虫垂炎なら2日くらい退院を早めたって大丈夫だろう。
自分も行くわけだし、もし何かあっても大丈夫だろう。
なにより、なつみは亜依を落胆させたくなかったし、みんなに亜依の心配をさせたくなかった。
- 230 名前:1 いいことある記念の瞬間 投稿日:2002年10月01日(火)00時18分34秒
- 「希美ちゃん、早く帰らなくていいの?」
希美は、亜依と話し込んでいたが、なつみの一声で思い出し、二人に別れを告げ、病院を後にした。
日曜日まであと二日。
亜依はその夜、なかなか寝付けなかった。
- 231 名前:takatomo 投稿日:2002年10月01日(火)00時21分52秒
- >>221-224 プロローグ
>>225-230 1いいことある記念の瞬間
こんな感じで進めていきます。
ある程度話は書いていますので、ちょっと多めに書いてみました。
更新は週末1回1章を基本にしていきたいと思っています。
- 232 名前:2 電車の二人 投稿日:2002年10月07日(月)21時34分27秒
- <2 電車の二人 >
「いらっしゃいませ」
自動ドアが開き、中に入ると元気な声が聞こえてくる。
ひとみはその声を聞いただけで、うれしくなっている自分がいることにずっと前から気付いていた。
「ご注文をどうぞ」
カウンターの前でひとみは思わず笑ってしまった。
「ひどーい、笑わないでよ。結構恥ずかしいのよ」
カウンター越しに梨華がささやく。
「ごめん、ごめん。どこからそんな声が出てるのかなって思ってね」
「ご注文をどうぞ!」
笑い続けるひとみに梨華は怒った調子で言った。
「あ、怒った?ごめん、ごめん。えっと、今日は何時終わるの?」
「んーと、8時かな?」
「じゃあ、待ってるね。いつものお願いね」
梨華はコーヒーとハンバーガーを取り出すと、トレイに置いた。
「はい、いつものね」
「ありがとう。じゃ、後で」
ひとみは奥のテーブルに座った。
ここは圭が店長をしているハンバーガーショップだ。
- 233 名前:2 電車の二人 投稿日:2002年10月07日(月)21時35分45秒
- 4年前、センチュリーランドのショーの担当をしていた圭。
その時、ショーのアルバイトをしていたなつみたちと知り合った。
センチュリーランドが潰れたあとは、このハンバーガーショップの店長をやっている。
社長令嬢の圭は、父から他の系列会社への就職を勧められたが、圭は拒んだ。
肩書きを捨て、自分の力を試したかった。
以前の圭なら父の言うとおりにしていたかもしれないが、ファイナルショーをやってみて、圭は変わった。
何か新しい道を、自分の力で進みたくなった。
そう決意して就職した圭は、半年で店長を任されるほどになった。
- 234 名前:2 電車の二人 投稿日:2002年10月07日(月)21時36分36秒
- だから、梨華もここでアルバイトさせてもらってるし、ひとみもこうやって食事をタダでもらっている。
最初、梨華から一緒にバイトしないかと誘われた。
確かに、梨華と一緒にいられるのはうれしかったが、ひとみは断った。
アイドル。
それがひとみの夢だった。
ファイナルショーの後、真里はスカウトされて、芸能界入りした。
真希もスカウトされたが、彼女はあっさり断ってアメリカに行った。
正直、むかついた。
でも、どうしようもないことだった。
そして、ひとみはそれからいくつかオーディションを受けたが、結果はどれも同じだった。
- 235 名前:2 電車の二人 投稿日:2002年10月07日(月)21時38分21秒
- さすがに大学に入ってから、そんなこともしていられなかった。
だが、ひとみは他にやりたいことも見つからず、ただぶらっと大学に行っていた。
そんなことを考えながら、ひとみはハンバーガーを口に運んでいた。
梨華のバイトが終わるまであと2時間。
ハンバーガーを食べ終えたあと、ひとみはずっと梨華のしぐさを観察していた。
「お待たせ」
着替えを終えた梨華がこっちにやってきた。
「あれ、早かったね」
時計はまだ7時半を回ったところだった。
「お圭さんに、ひとみちゃんに早く教えてあげてって言われて」
「何?」
「真希ちゃんが帰ってくるって」
「え?真希ってあの真希?」
「そうだよ。だから、今週の日曜日空けといてね。パーティーやるから」
「う、うん。じゃあ帰ろうか」
- 236 名前:2 電車の二人 投稿日:2002年10月07日(月)21時38分58秒
- 二人は手をつないで帰路に着く。
ひとみはショートカットで背の高い上に、ズボンをはいている。
それに対して梨華はピンクのスカートをはき、ひとみの横にぴったり引っ付いている。
二人は、カップルによく間違われた。
ひとみは間違えられることが嫌ではなかった。
梨華はそんなひとみの気持ちを察してないようで、「ひとみちゃんは女の子です」といつも訂正していた。
(やっぱりこれって片思いなのかな…)
電車を待つ間、ため息をつくひとみ。
いつからだろう、梨華をそんな風に見始めたのは…
だが、やはり梨華はそんなひとみの気持ちを察するわけでなく、
「ごめんね。いつも待たせて、退屈だったでしょ」
と謝った。
(ずっと梨華ちゃんを見てたから、何とも無いよ。なんて言えるわけないよね…)
「ん、そんなことないよ」
ひとみは顔を真っ赤にして、それだけしか言えなかった。
そして丁度電車がやってきたので、乗り込んだ。
- 237 名前:takatomo 投稿日:2002年10月07日(月)21時41分41秒
- 以上更新終了
感想なんぞをいただけるとうれしいです。
- 238 名前: 2 電車の二人 投稿日:2002年10月15日(火)20時00分13秒
- 帰宅ラッシュもひと息ついたころだったが、座れるというほど空いているわけでもなかった。
でも、ひとみはいち早く空いている席を一つ見つけ、梨華を座らせた。
「え、いいよ。ひとみちゃん座りなよ」
「いいって。梨華ちゃんはバイトで立ちっぱなしだったでしょ」
「…私、いつもひとみちゃんに何かしてもらってばっかりだね」
「そんなことないよ。私は好きでやってるんだよ」
「でも…」
「梨華ちゃんの笑顔がみれるなら、私はそれで…って私何言ってるんだろ…
ごめん。別に深い意味とかは無いんだ。ただ、ただ…」
自分の言っていることを理解したひとみは真っ赤になった。
- 239 名前:2 電車の二人 投稿日:2002年10月15日(火)20時01分05秒
- そんなひとみの顔を覗き込むように、梨華は見上げて言った。
「ただ?何?」
「り、梨華ちゃんの疲れてる顔は、人に見せれたものじゃないからね」
「ひどーい」
梨華とひとみは笑いあうが、すぐに二人とも目線を外し、俯いた。
(ああ、私何言ってるんだろ…)
(ひとみちゃん…ちょっと期待したのに…いつもそうなんだから…)
それから、電車を降りるまで、二人は一言も話さなかった。
- 240 名前:takatomo 投稿日:2002年10月15日(火)20時04分08秒
- >>232-239 2 電車の二人
更新終了。
少なすぎです。
ストックはあるけどまあまったりと。
孤独に書くのはモチベーション上がらないので…
一回ageてみようかな…
- 241 名前:3 A Rainy Day 投稿日:2002年10月21日(月)23時47分15秒
- ―――日曜日―――
せっかくの日曜日なのに、朝からどんよりとした雲が空を覆っていた。
折りたたみ傘をカバンに入れ、なつみは亜依を迎えに病院へ行った。
私服で病院内を歩き回るのは久しぶりだった。
いつもと変わっていないはずなのに、白衣を着ていないと、どこか違った感じがした。
病室のドアをあけると、亜依はもう用意を終えていた。
隣には希美も座っていた。
「おそーい」
なつみを見ての一言がそれだった。
「ごめんごめん。さあ、行こうか」
亜依と希美の顔を見た後、亜依の担当の先生に軽く会釈をして出て行った。
- 242 名前::3 A Rainy Day 投稿日:2002年10月21日(月)23時48分06秒
- 病院を出たところで、3人の前に1台の車が止まった。
窓があき、裕子の顔が見える。
「おーい、送っていってあげるよ。雨降りそうだし」
「あれ、裕子さん、今日は日勤じゃないの?」
「ちょっとシフト変えてたの。パーティーには出れないけど、久しぶりにみんなの顔を見たいしね」
「じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな」
3人は車に乗り込んだ。
パーティー会場である圭の家に着くまで、なつみはちょっと考え事をしていた。
(なんか不思議だな。上は裕子さんから、下は亜依まで…いろんな年の子が、一緒にいられるなんて)
車が国道に差し掛かると、雨が降ってきた。
最初は小雨だったが、5分もしないうちにざっと降り始めた。
- 243 名前:3 A Rainy Day 投稿日:2002年10月21日(月)23時48分54秒
- 「雨か…」
梨華との待ち合わせ場所に、早く着きすぎたひとみは、近くのコンビニで立ち読みして時間を潰していた。
そのうち、雨の中を走ってくる梨華の姿を発見した。
ひとみはすぐに傘とコーヒーを買い、コンビニを出た。
「梨華ちゃん」
コンビニの傍で梨華に呼びかける。
「ひとみちゃん…もしかして、とっくに着いてた?」
「いや、さっき着いたところだよ。はい、走ってきて疲れたでしょ?」
そう言って梨華にコーヒーを差し出す。
梨華は礼をいって受け取ったが、ひとみが全く濡れてないことに気付いた。
- 244 名前:3 A Rainy Day 投稿日:2002年10月21日(月)23時49分32秒
- 「ごめんね、ひとみちゃん」
「え、何か言った?」
「ううん。何でもないよ。行こうか?」
二人は手をつないで一つの傘に入り、歩き始めた。
- 245 名前:takatomo 投稿日:2002年10月21日(月)23時52分01秒
- 更新終了
今までのまとめ
>>221-224 プロローグ
>>225-230 1いいことある記念の瞬間
>>232-239 2 電車の二人
>>241- 3 A Rainy Day
感想などいただけるとありがたいです。
- 246 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月22日(火)01時00分19秒
- 買ったまま1年間放置してあるLOVEセンDVDを見てみようという
気持ちにになってきました。
更新楽しみにしています。
- 247 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月22日(火)01時26分03秒
- その後の様子って感じで凄くいいです
続き楽しみにしています
- 248 名前:takatomo 投稿日:2002年10月22日(火)23時15分54秒
- >>246
>>247
ありがとうございます。
本当に今さらって感じなんですが、今さらだからこそのものを書いていきたいと思ってます。
更新は遅いですが、まったり待っていただけるとうれしいです。
久々に感想いただけてよかった…
やっぱageとかなきゃ駄目ですね。
- 249 名前:3 A Rainy Day 投稿日:2002年10月26日(土)23時04分38秒
- 「雨か…」
真希もまた、圭の家に行く途中だった。
小雨だった雨が本降りになるのにさして時間はかからず、真希は慌ててカバンから傘を取り出した。
「あの、真希さんですよね?」
急に名前を呼ばれ、真希は振り返った。
彼女の目の前にはショートカットの女の子が立っていた。
「あんた誰?」
さして驚いた様子もみせず、真希はぶっきらぼうに言った。
「えっと、小川麻琴っていいます」
「で、何の用?」
「いや、えっと、その…」
「何も無いんなら行くよ。急いでるんだ」
傘を差し、真希は歩き始める。
「待ってください。えっと、私、ダンスが上手くなりたいんです。
この前関東新聞で、真希さんのインタビュー載ってて…
真希さんみたいになれたらいいなって、そう思い始めて…」
- 250 名前:3 A Rainy Day 投稿日:2002年10月26日(土)23時05分28秒
- インタビュー?
真希は数ヶ月前に、ニューヨークでプロ契約が決まった時、みちよから受けたインタビューを思い出した。
インタビューとか嫌いな性質だったが、圭織の姉であるみちよの頼みなので、断るわけにもいかなかった。
電話で1時間ほどの簡単なインタビュー。
(へ〜あれがね…)
麻琴に向き直って、真希は一言だけ言った。
「あきらめな!」
「え?」
思いがけない真希の言葉に小川は絶句する。
「私なんか目標にしたって、一流にはなれないよ。目標にするなら、もっとすごい人を目標にしな」
そう言って後藤はさっさと歩いていった。
- 251 名前:3 A Rainy Day 投稿日:2002年10月26日(土)23時06分23秒
- 「あ、待ってください」
しばらく呆然としていた麻琴だが、後藤の後を追う。
「もう用は済んだんで――――」
振り返り、そう言おうとした真希の目に、1台のトラックが飛び込んできた。
麻琴は気付いた様子も無く、そのまま道路を渡ろうとする。
後藤の体はとっさに動いていた。
なんでだろ?
尊敬してるって言われたのが、やっぱりうれしかったから?
そんなんじゃないよね。
この気持ち…亜依のために踊ったファイナルステージの時と同じ気持ち。
あれからずっと忘れてたな。この気持ち…
- 252 名前:3 A Rainy Day 投稿日:2002年10月26日(土)23時07分01秒
通りにブレーキ音と悲鳴が交錯した。
そして、一時の沈黙が流れる。
雨だけが変わらず降り続いていた。
- 253 名前:takatomo 投稿日:2002年10月26日(土)23時09分47秒
- >>241-244 >>249-252 3 A Rainy Day
次からはもう少し更新量増やせたらいいんですが、まだちょっと微妙です。
次は<4 会えない長い日曜日>です。
- 254 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年10月27日(日)09時00分21秒
- スレ題の続きの方へ行っていて、気が付きませんでした。
読み出して、慌ててラブせんのDVD見直してから呼んでます。
すごく続きが楽しみです、がんがってくらはい。
- 255 名前:takatomo 投稿日:2002年10月27日(日)22時35分34秒
- >>254
あっちでもこっちでも書いてて申し訳ない。
これからはもっとわかるように告知だします。
でも、この作品のためにラブセンDVDを見返してくれる方が多くて、ちょっと感激です。
ありがたやありがたや〜
- 256 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月31日(木)17時07分29秒
- あうわああああ〜後藤〜!!
続きが気になって夜は眠れるけど朝は起きれません!
- 257 名前:takatomo 投稿日:2002年11月02日(土)13時54分39秒
- >>256
ありがとうございます。
更新が遅いせいで起きれない朝が続いてごめんなさい。
明日からちゃんと起きられるように今から更新します(w
- 258 名前:4 会えない長い日曜日 投稿日:2002年11月02日(土)13時55分37秒
- 「真希遅いね…」
圭の家には裕子と真希を除く全員が集まっていた。
ただし、仕事のある真里と北海道に住んでいる圭織は元々来る予定はないが。
「道迷ったとか?」
「まさか真希はそんなことしないでしょ。ひとみちゃんじゃないんだから」
「よく言うよ。来る時道間違えたのは梨華ちゃんでしょ」
ひとみと梨華がそんな冗談を言っていられるのも、約束の時間になるまでだった。
さすがに約束の時間が過ぎると、みんな落ち着かなくなった。
雨は相変わらず降り続いている。
- 259 名前:4 会えない長い日曜日 投稿日:2002年11月02日(土)13時56分11秒
- 「私ちょっと見てくるよ」
圭が部屋を出て行こうとした時、なつみの携帯が鳴った。
「もしもし。あ、裕子さん?どうしたの?」
「なつみちゃん、落ち着いて聞いてね。真希が事故にあったの。今、うちの病院運ばれてきて…」
「は?何?どういうこと?」
なつみの口調が急に変わり、みんな息をのんだ。
「女の子を助けようとして、代わりにトラックにはねられたって…
運び込まれてきた時、意識はなかった。今、院長先生が手術してる…」
嗚咽交じりに裕子は話す。
「お父さんが…わかった。すぐ向かうよ」
電話を切り、混乱する頭で状況を飲み込もうとするなつみ。
でも、頭の隅にやけに冷静な自分がいることも気付いていた。
- 260 名前:4 会えない長い日曜日 投稿日:2002年11月02日(土)13時56分54秒
- なつみの頭に、交通事故で運び込まれてきた患者の様子が思い浮かぶ。
年間の交通事故による死亡者は約4万人。
時間にすると、13分に1人が死んでいることになる。
真希がそのうちの一人に入らないなんて保障できるだろうか…
自分は何を考えているのだろう。なつみは頭を振った。
真希は死ぬと決まったわけじゃない。
みんなの視線が自分に集まっていることに気付く。
「真希が、事故にあったみたい。様子はわからないけど、私の病院に運ばれたって」
それだけ言った。それ以上は言わなかった。
- 261 名前:4 会えない長い日曜日 投稿日:2002年11月02日(土)13時57分36秒
- 亜依と希美の目からは涙があふれている。
梨華が泣きそうな目でひとみをみる。
ひとみはギュッと梨華の震える手を握ることしか出来なかった。
圭はしばし呆然としていたが、車の鍵を取り出した。
「行こう。なつみの病院に」
亜依と希美をひざに乗せ、6人無理矢理乗り込んだ。
どんな道を通ったのか全く覚えていない。
なつみは亜依の重みすら感じていなかった。
- 262 名前:4 会えない長い日曜日 投稿日:2002年11月02日(土)13時58分33秒
- 「裕子さん!真希は?」
手術室の前に座っている裕子に駆け寄る。
「まだ手術してる」
裕子はそれだけ言った。
裕子の表情からひとみ達も、真希の状況を理解した。
みんな黙って椅子に腰掛けた。
なつみと圭は震える希美と亜依をぎゅっと抱きしめていた
ふとなつみは、裕子の奥に座っている一人の子に気がついた。
右足に包帯をまかれたその少女は、声を殺して泣いていた。
「あの子が?」
なつみの問いを察して裕子が頷く。
「足をちょっとひねってるだけ。大丈夫」
裕子はなつみに囁いた。
なつみは安堵した。真希が命をかけて救った子が、大怪我をしてたら真希も報われない。
- 263 名前:4 会えない長い日曜日 投稿日:2002年11月02日(土)13時59分06秒
- え?私は何を考えてるんだ?真希は死んじゃいない。
私たちが信じなくてどうするんだ!
それから誰も口を開かなかった。
手術中という明かりをずっと見つめていた。
どれくらい時間が経っただろう。
時計をみるとまだ1時間も経ってなかったが、すでに何時間も経っている気がした。
さすがにみんな、張り詰めていた緊張が疲労へと変わろうとしていた。
その時、手術室のドアが開いた。
- 264 名前:4 会えない長い日曜日 投稿日:2002年11月02日(土)13時59分57秒
- 「お父さん!真希は?」
すぐに駆け寄るなつみと裕子。
「大丈夫だ。今は麻酔が効いて眠ってるよ」
「よかった…ありがとう。みんな、真希は大丈夫だって」
みんなの顔に笑みが戻る。
麻琴は今度は声に出して泣き始めた。
だが、喜ぶみんなの横で裕子は険しい顔をしていた。
何度も院長の手術を手伝っていたし、手術後の院長を見てきた。
今回の院長の表情から、ある感じを受けた。
患者の予後が思わしくないであろう時、決まって受ける感じである。
裕子は経験的にそれを感じ取っていた。
でも、口に出さなかった。
みんなの喜びに水を差したくなかったし、自分の思い過ごしであることを願いたかったから。
- 265 名前:4 会えない長い日曜日 投稿日:2002年11月02日(土)14時01分09秒
- 「とにかく、意識が戻るまでは面会は控えたほうがいい」
なつみにそれだけ告げると、院長は去っていった。
「今日は帰ろうか…」
ぽつりと圭が言う。
不満げな表情を見せる希美と亜依。
「しょうがないよ。真希が無事ってわかっただけでも十分だよ」
ひとみが言い聞かせるように言う。
隣で梨華も頷いた。
希美と亜依はしぶしぶ納得し、圭について病院を後にする。
雨はいつのまにか止んでおり、太陽が濡れた地面を照らしていた。
- 266 名前:4 会えない長い日曜日 投稿日:2002年11月02日(土)14時01分52秒
- 「ごめんね。せっかく準備してくれてたのに」
車に乗り込む圭になつみは声をかける。
「いやいや、いいって。それより、真希のことお願いね」
「うん。また連絡するよ」
「よし、もうみんな乗った?」
助手席にのった希美が後ろのひとみと梨華を確認し、OKサインを出す。
「亜依ちゃん、また明日ね」
「うん。じゃあね」
エンジン音が遠くなっていく。
亜依となつみは車が角を曲がるのを確認すると、手をつないで病院に戻る。
- 267 名前:4 会えない長い日曜日 投稿日:2002年11月02日(土)14時02分24秒
- 「真希ちゃん、もう目を覚ましてるかな?」
「う〜ん、どうだろう?でも夜には目を覚ますんじゃないかな?」
「真希ちゃん早くよくなるといいね」
自分の顔を覗き込む亜依に、なつみはにっこり笑って頷いた。
- 268 名前:4 会えない長い日曜日 投稿日:2002年11月02日(土)14時03分56秒
- 「真希、大丈夫ですよね?」
「当たり前じゃん。なつみさんのお父さんが大丈夫って言ってるんだから」
梨華の問いにひとみはわざと明るく答える。
「そうだよね。大丈夫だよね」
自分に言い聞かせるように梨華は呟く。
希美も「大丈夫」と白い歯を見せていた。
「あの子は大丈夫だよ。梨華ちゃん、明日バイト休みだったよね」
信号が赤に変わったところで圭は言う。
「は、はい」
「私の代わりに真希のお見舞い行ってくれない?
明日は私、新しいバイトの面接があるから遅くなるから」
「え?新しく入るんですか?」
「うん。まだ決まったわけじゃないけどね」
それだけ言うと、信号は青に変わったので、圭は再び運転に戻った。
- 269 名前:4 会えない長い日曜日 投稿日:2002年11月02日(土)14時04分30秒
- 「新しい子か…どんな子だろ?」
ひとみに問い掛けるが、さっきまでと打って変わってひとみは「さあね」とだけ言って窓の外を見た。
(もう、ちゃんと聞いてくれたっていいじゃん)
不貞腐れて梨華も窓の外を見始めた。
(かっこいい男の子だけはやめてくださいよ、圭さん)
ひとみは流れる景色を見ながらそう願っていた。
- 270 名前:4 会えない長い日曜日 投稿日:2002年11月02日(土)14時05分05秒
結局、真希が目を覚ましたのはその夜遅くだった。
病院中に響き渡るような悲鳴。
亜依も希美も圭も梨華もひとみも、そして裕子もなつみも寝ていたとき、それは起こった。
そして、彼女達がそれを知るのは次の日の朝だった…
- 271 名前:takatomo 投稿日:2002年11月02日(土)14時07分39秒
- >>258-270 4 会えない長い日曜日
更新終了。
長かった…疲れた…
次の週末は家を空けますので、ちょっと更新遅れるかもしれません。
ご了承下さい。
- 272 名前:5 さみしい日 投稿日:2002年11月10日(日)18時29分25秒
- 「おはようございます」
いつも通り出勤したなつみ。
だが、周りが自分を見る目がいつもと違うことに気付いた。
「なつみ、ちょっと」
「?」
黙って父のもとに向かう。
その表情から嫌な予感がした。
(まさか、真希が?)
その予感は的中した。
父から告げられる一言一言が、なつみから平常心を奪っていく。
「わかったな、なつみ。もう行っていいぞ」
両肩を叩き、なつみに言い聞かせる。
「でも…お父さん…」
涙を浮かべてなつみは父を見た。
「何て顔してるんだ。医者がそんな顔してると、患者が安心できないぞ。
つらいだろうが、それは別だ。気持ちを切り替えろ!」
そう言った父の顔は、もう父の顔ではなく、医者の顔だった。
なつみは「はい」と答えることが出来ないまま、院長室を後にした。
- 273 名前: 5 さみしい日 投稿日:2002年11月10日(日)18時30分11秒
- なつみは廊下ですぐに裕子に会った。
「裕子さん…」
「なつみちゃん、白衣を着てるときはそんな顔してちゃ駄目よ」
父と全く同じことを言われた。
「裕子さんは知ってるんですか?」
「うん。さっき聞いたよ」
裕子の表情に影が差す。
「でもね、まだ可能性はあるって院長先生もおっしゃってたでしょ?
私たちがあきらめてどうするの?」
「うん…」
なつみの表情はまだ晴れなかった。
- 274 名前:5 さみしい日 投稿日:2002年11月10日(日)18時31分00秒
- 午前中の診察も終わり、午後の回診を始めるなつみ。
父と裕子の言葉を反芻するが、どうしてもできなかった。
ずっと真希のことが頭の隅から離れなかい。
頭を切り替えようとすればするほど、真希のことが心配になり、なつみは頭を振った。
「なつみ先生?」
なつみ前にはいつの間にか亜依がいた。
「どうしたの?」
「あ、ごめんごめん。亜依ちゃんこそどうしたの?」
「んとね、真希ちゃんは目を覚ました?」
なつみの表情が一瞬固まる。
だが、すぐに笑みを浮かべて言う。
「うん。でもね、もうちょっと会えないって」
「そうか〜私、明日退院なんだよね?それまでに会えるかな?」
「うん。大丈夫、会えるよ」
心がチクッと痛む。
でも亜依にはまだ知らせたくなかった。
すぐにわかることだが、自分がその役を担いたくなかった。
亜依の笑顔が涙に変わる瞬間を見るのは耐えられなかった。
(医者失格だな…)
心の中でそっと呟いた。
「じゃあ、私はまだ仕事中だから。ごめんね」
そう言って逃げるようにその場を去った。
- 275 名前:5 さみしい日 投稿日:2002年11月10日(日)18時31分51秒
- なつみが亜依の元を去った頃、梨華は丁度花束を持って病院の自動ドアを通り抜けていた。
真希に花束を持っていってもさして喜ばないだろうと思っとたが、何も持たないわけにもいかなかった。
ひとみは今日はいない。
どうしても抜けられない用があるとか言って授業の途中で帰ってしまった。
一体何があるんだろう?
サークルにも入っているわけでもなく、バイトをしているわけでもない。
ただ、ひとみたまにふらっといなくなる時がある。
もちろん、心配でないわけがないが、ひとみが自分に言わないのはそれなりの理由があるのだろうと梨華は無理に納得していた。
(まさか、彼氏なんてことはないと思うんだけど…)
考えながら受付の看護婦に真希の病室を尋ねる。
「510号室になります」
若い看護婦は笑顔でそう答えた。
梨華は軽く会釈をし、エレベーターに向かう。
- 276 名前:5 さみしい日 投稿日:2002年11月10日(日)18時32分47秒
- このとき、梨華はタイミングが悪すぎた。
なつみも裕子も仕事中で、梨華がきたことは知らない。
真希の病状について知る機会を完全に逃してしまっていた。
まだ、梨華一人でなく、圭やひとみ、いや希美か亜依でもいれば少しは変わっていたかもしれない。
だが、誰もいなかった。
そして、梨華は一人でエレベーターを降りて、510号室の前に立った。
- 277 名前:5 さみしい日 投稿日:2002年11月10日(日)18時33分42秒
- コンコン
ノックをするが返事が無い。
もう一度ノックをするが、同じだった。
(別に面会謝絶ってわけじゃないからいいよね)
ゆっくりと扉を開けて中に入る。
真希は起きていた。
「真希、大丈夫?」
恐る恐る話し掛ける梨華。
真希は振り向くと
「なんだ、あんたか」
とだけ言った。
「本当はひとみちゃんや圭さんもこれたらよかったんだけど、二人とも用事があってね」
「ふーん」
さして梨華の話に関心を示さない真希。
- 278 名前:5 さみしい日 投稿日:2002年11月10日(日)18時34分22秒
- 気まずい雰囲気を察し、梨華は花瓶に花を差しながら言った。
「早くよくなるといいね。そうなったらまたダンス見せてね」
ビクッと真希の体が動いたのに気付かないまま梨華は続ける。
「真希のダンス、めっちゃかっこいいもんね。輝いてるっていう…」
「ふざけないで!」
自分の言葉を遮るように出された大声に梨華は驚いた。
顔を上げると、真希が自分のことをにらんでいた。
状況が全く理解できず混乱する梨華。
自分が何か気に触ることを言ったのか、必死で考えるが、思い当たることはない。
「真希?どうしたの?」
覚悟を決めて梨華は尋ねた。
- 279 名前:5 さみしい日 投稿日:2002年11月10日(日)18時34分53秒
- 「あんた、私をバカにしてるでしょ?」
思いがけない真希の言葉に、梨華は反応に困った。
「ダンス、どうせ私の取り柄はそれだけだよ。そうだよ、私はそれにかけてきたんだ」
梨華は真希の意図することがわからないまま、黙って話を聞き続けた。
「アメリカにも言った。ATSUKOさんのところでがんばった。そしてやっとプロ契約できたんだ。
そうだよ、私の人生はこれからだったんだよ。夢が叶おうとしてたんだよ」
真希はそこで言葉を切った。
彼女は泣いていた。
「どうして、どうして今なの?どうして今事故にあったの?ねえ?」
梨華は何も言えなかった。真希の状況をやっと理解しつつあった。
「右足さ、複雑骨折だってさ…神経も何本か切れてて…
ハハハハ…もう、ちゃんと動かないってさ。
なつみのお父さんが言うんだから間違いないよ。もう、私の人生は終わったんだ」
自嘲の笑いを浮かべ、真希はさらりと言ってのけた。
- 280 名前:5 さみしい日 投稿日:2002年11月10日(日)18時38分07秒
- 麻琴をかばった時、トラックは真希の足を巻き込んだ。
足の上をトラックは通り抜けていた。
それが幸か不幸かわからない。
ただ、そのせいで跳ね飛ばされて頭を強打することも無かった。
内臓が傷つくことさえなかった。
右足以外には全く怪我は無かった。
そう、右足以外は…
- 281 名前:5 さみしい日 投稿日:2002年11月10日(日)18時38分37秒
- 「すいません」
真希と梨華の視線が扉の方に向いた。
そこには麻琴の姿があった。
「すいません。私がボーっとしてたから。そのせいで、そのせいで…」
途中から涙で言葉が続いていなかった。
「あんたのせいじゃないよ。私が勝手にやったことだ。
あんたが助けてくれって頼んだわけじゃない」
「でも、でも、私が…」
部屋には麻琴の泣き声だけが響いていた。
「ごめん。出てってくれないかな?一人がいいんだ」
梨華の方を見て真希は言う。
その顔は今にも泣き出しそうな顔だった。
梨華は頷き、麻琴を支えながら部屋を後にする。
一人になった部屋で、真希は声を出さずに涙だけ流し続けていた。
- 282 名前:takatomo 投稿日:2002年11月10日(日)18時41分41秒
- >>272-281 5 さみしい日
更新終了です。
思ってたより早く帰ってこれてよかった。
今後は更新量もペースもこれくらいを目安にして下さい。
感想とかよろしくお願いします。
- 283 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月14日(木)22時32分45秒
- 右足を轢かれてしまった………ということは、ああごっちん…(涙)
辛い展開ですが、続きが気になって仕方ありません。
- 284 名前:takatomo 投稿日:2002年11月17日(日)16時22分50秒
- >>283
ありがとうございます。
今後の後藤についてはネタバレになるので、あまり言えませんが、ベタな最後にはしないつもりです。
更新遅いですが、気長に待っていただけたらと思います。
- 285 名前:6 Memory青春の光 投稿日:2002年11月17日(日)16時26分59秒
- 「…ってわけなの」
話し終えると梨華はコップを手に取り、ジュースを飲む。
ひとみはひじをついたまま黙っていた。
その日の夜遅く、梨華に呼ばれたひとみは、初めて真希のことを聞いたところだった。
「ねえ、どうしたらいいんだろう?」
泣きそうな声でひとみに問い掛ける。
「少しの間、会いに行かないほうがいいのかもしれないね。
真希の気持ちが整理されるまで」
「でも…」
ひとみの答えに梨華は消え入りそうな声で何かを言いかけた。
「でも?何?」
「一人でいたら、余計に落ち込まないかな?」
「梨華ちゃんはやさしいね。大丈夫だよ、真希は強い子だし、それになつみさんや裕子さんもいるんだから」
梨華を安心させるように、しっかり梨華の目を見てひとみは微笑む。
梨華はそのひとみの笑みをみると、いつも安心できた。
大学受験の合格発表の時も、バイトで失敗して落ち込んでいる時も、ひとみのその笑みに、梨華は理屈抜きで安心させられた。
だから、梨華はひとみのこの顔がとても好きだった。
- 286 名前: 6 Memory青春の光 投稿日:2002年11月17日(日)16時27分34秒
- 「そうだよね。うん。ごめんね、こんなに遅くに来てもらって」
「いいよ。梨華ちゃんの頼みならいつでもどこでも駆けつけますよ」
幾分元気の出てきた梨華の声にひとみもまた元気が出てくる。
「だって、梨華ちゃんは…」
うれしくなってつい口を滑らしたひとみ。
そんなひとみの言葉を梨華は聞き逃さなかった。
「私は?ねえ、何?」
顔を覗き込んでくる梨華に、ひとみは言葉に詰まる。
二人の間に沈黙が流れる。
そして、ひとみの唇が動き始めたのを、梨華は息をのんで見守った。
- 287 名前:6 Memory青春の光 投稿日:2002年11月17日(日)16時28分14秒
- 「だ、だって、梨華ちゃんは、親友だもん」
ひとみは上ずった声でそう言ったが、言った後にすごく後悔していた。
でも、本当のことは決して言えなかった。
「そ、そうだよね。私たちは親友だよね。そうだよ」
梨華も上ずった声でそう言う。
そして、お互い背中を向け、深くため息をついた。
(言えるわけ無いよ…)
(せっかく期待したのに…)
お互いの思いが交錯する中、ひとみは梨華の部屋を後にした。
- 288 名前:6 Memory青春の光 投稿日:2002年11月17日(日)16時29分15秒
- 「じゃあね。気をつけてね」
「うん。また明日、おやすみ」
ひとみを見送った後、部屋に戻った梨華はテーブルに置きっぱなしの携帯に気付いた。
ひとみが忘れていったものだった。
汚れたストラップがまだ新しい携帯と不釣合いだった。
(こんなになってもつけてくれてるんだ)
梨華は喜んだ。
それはずいぶん前に梨華と2人で買ったおそろいのストラップだった。
もちろん梨華の携帯にもまだついていた。
(また新しいの買いに行かなくちゃね)
携帯を2つ並べ梨華は微笑んだ。
- 289 名前:6 Memory青春の光 投稿日:2002年11月17日(日)16時31分15秒
- その時、携帯が鳴った。
ひとみが気付いてかけてきたに違いない。
慌てて梨華が携帯を開く。
高橋愛
ディスプレイには見たことのない名前が映し出されていた。
確かに、梨華にだってひとみの知らない友人はいる。
もう大人なんだから、それぞれの付き合いがあるということもわかっている。
でも、梨華は自分を抑えられなかった。
不安、独占欲といった感情が梨華の中でうごめいていた。
それは嫉妬というものだったに違いない。
梨華は受話ボタンを押した。
- 290 名前:6 Memory青春の光 投稿日:2002年11月17日(日)16時32分04秒
- 「もしもし、ひとみさんですか?今日はありがとうございました」
(今日?)
携帯を持つ梨華の手は震え始めた。
「ごめん。ちょっと用があるから」
「梨華ちゃん、一緒に帰れないや。行かなきゃいけないとこあるんだ」
「今日はバイトだよね?私も用事あるから、また後でね」
今までのひとみの言葉が次々と頭をよぎる。
(全てこの子に会うためだったんだね。
今日、真希ちゃんのお見舞いに来なかったのも…みんな、みんなこの子に会うためだったんだね)
先ほどひとみから聞いた親友いう言葉が、梨華の頭に響き渡る。
「ひとみさん?もしもし?」
携帯から聞こえてくる声。
梨華はその声を聞くのに耐えられなくなり、携帯を切った。
そして、梨華は愛のメモリを着信拒否設定にした。
もちろん着信履歴も削除していた。
こんなことをして、どうなるかわからない梨華ではない。
でも、梨華は自分を抑える事が出来なかった。
- 291 名前:6 Memory青春の光 投稿日:2002年11月17日(日)16時34分27秒
- そしてすぐにまた携帯が鳴った。
今度は自分の携帯だった。
流行のラブソングが部屋に流れる。
今度こそ、相手は誰だか予想はつく。
いつもなら喜んでとっていただろう。
だが、今の梨華には胸を締め付けるだけの音だった。
「もしもし」
「あ、梨華ちゃん?ごめんね、そっちに携帯忘れてきたみたいなんだけど…」
もちろん、電話の相手はひとみだった。
さっきまでのひとみの声と違って聞こえるのは、決して電話のせいじゃなかった。
「そうなの?じゃあ探して明日持っていってあげるよ」
わざと明るい声で梨華は言う。しかし、涙は頬をつたっていた。
「ごめんね、ありがとう。じゃ、おやすみ」
電話が終わる。
部屋が静まり返る。
手に握り締めた2つ携帯。
おそろいの汚れたストラップ。
梨華は自分のそれを外し、ゴミ箱に投げ捨てた。
- 292 名前:6 Memory青春の光 投稿日:2002年11月17日(日)16時36分44秒
- そして、携帯を乱暴にテーブルに置き、ベットに入る。
梨華はベットの中で泣いた。
ずっと、ずっと泣き続けた。
泣けば泣くほど心は締め付けられたが、梨華は泣くのをやめなかった。
- 293 名前:takatomo 投稿日:2002年11月17日(日)16時42分39秒
- >>285-292 6 Memory青春の光
更新完了です。
感想などお願いします。
ところで、この話はおそらくこのスレじゃギリギリ足りるか足りないかという状況なんです。
だから、500まで使ってから新スレ立てて、ちょっとだけ使って終わりってなるよりも、
早いうちに新しいスレ立てた方がいいんですかね?
案内板で聞けよっていう内容ですが、別にどっちでもスレ数は変わらないんで、読者としてはどっちが読みやすいか教えていただければと思います。
- 294 名前:読者 投稿日:2002年11月22日(金)15時40分57秒
- >大丈夫だよ、真希は強い子だし
吉澤さんのこの台詞に殺意が沸きました。
何考えてんだー!!てめえー!!……すみません、取り乱しまして…
なんつーか、吉澤さんが心配するのは石川さんだけなんすかね?
ちょっと釈然としません…
- 295 名前:takatomo 投稿日:2002年11月24日(日)16時27分37秒
- >>294
>大丈夫だよ、真希は強い子だし
は、なんて言うんですかね…安心させるために言ったというか、
「大丈夫、大丈夫」みたいな感じのニュアンスの言葉で使ったんですが、
どうも書き方が悪かったようで、誤解を与えてすいません。
吉澤については、もう2.3回後に彼女にスポットを当てた話を書くのであんまり言えないんですが、
そこで少しはわかってもらえるかと。
今は石川から見た感じで書いてるので。
- 296 名前:takatomo 投稿日:2002年11月24日(日)16時29分05秒
- あ、もう一つ忘れてた。
とりあえずこのスレ最後まで使い切ってから新しいの立てます。
それだけです。
それでは今週分をどうぞ。
- 297 名前:7 WHY 投稿日:2002年11月24日(日)16時29分50秒
- 「もう朝なんだ…」
やけにまぶしい太陽の光で梨華は目を覚ました。
テーブルの上に置いてある携帯を見て涙が出そうになるのをぐっとこらえる。
そして、泣きはらした目を母に隠すように、急いで朝食をとって家を出る。
いつもの道、いつもの駅、いつもの電車。
ただいつもと違うのは、ひとみに会いたくないと思っている自分がいること。
でもそんな彼女の思いは叶わないわけで。
いつも通り、ひとみはホームに上がってきた。
- 298 名前: 7 WHY 投稿日:2002年11月24日(日)16時30分51秒
- 気付かない振りをして、背を向ける梨華。
しかし、ひとみはすぐに梨華を見つけてやってくる。
「おはよう」
「お、おはよう」
振り返り、それだけ言うと梨華は黙り込んだ。
もちろん、梨華の様子がいつもと違うことにひとみが気付かないわけが無い。
だが、ひとみは気付かないふりをして言った。
「あ、そうだ。携帯返してくれる?」
梨華は一瞬ビクッとして、慌ててカバンから携帯を取り出す。
「ありがとう」
携帯を受け取ったひとみの笑顔。
何も知らないひとみの笑顔。
それは梨華の胸に突き刺さる。
- 299 名前:7 WHY 投稿日:2002年11月24日(日)16時32分02秒
- 丁度その時、電車がホームに着いたので、急いで二人は電車に乗り込んだ。
いつも通りの通勤ラッシュで、押しつぶされそうになる。
そんな梨華をひとみはしっかり支えていた。
だが、梨華はひとみに目すら合わせずうつむいていた。
そして、無言の二人を乗せたまま、電車は走っていった。
- 300 名前:7 WHY 投稿日:2002年11月24日(日)16時33分34秒
- その日の昼下がり。
なつみと父は院長室で声を張り上げていた。
「駄目だ。おまえはインターンなんだぞ」
「わかってる。でも、もう1年この病院でたくさんの患者さんを診てきたんだよ。だから…」
「だから、何だって言うんだ!自惚れすぎだぞ!」
父の厳しい言葉がなつみに浴びせられる。
だが、なつみも一歩も引かなかった。
「お父さん、いえ、院長先生、お願いです。インターンの最後の締めくくりとして、真希の担当を私にして下さい」
父はふーっと息を吐いた後、こう言った。
「もし、患者に何かあったらどうするつもりだ?」
「辞めます。その時は、私は医者を辞めます」
間髪いれずなつみは答える。
そして、父はなつみの真剣な目をじっと見た。
だが、次に父の口から出た言葉はなつみが予想だにしなかった言葉だった
- 301 名前:7 WHY 投稿日:2002年11月24日(日)16時34分46秒
- 「だめだ。なおさらお前には任せられん」
「どうして、どうして駄目なの?」
「お前は患者を何だと思ってるんだ?
患者の命がかかってるんだぞ?『何かあったら』じゃ駄目なんだ。
何かあったら医者を辞めるってお前は言ったが、お前が医者をやめたところで患者の命は助かるのか?
患者の怪我が治るのか?
勘違いするな!医者は何かあったらの時にいるんじゃないぞ!
患者が何事もなく、無事回復するために医者はいるんだ。
そんなこともわからないお前が一人前の口を叩くな!」
「…」
なつみは何も言えなかった。
父の言っていることは全て正しいと思う。
でも、どこかで納得していない自分がいた。
けれども、その考えは頭の中で上手くまとまらず、言葉に出来なかった。
「もう行っていいぞ」
そんななつみの様子を見て父は言った。
なつみは促されるまま、部屋を後にした。
- 302 名前:7 WHY 投稿日:2002年11月24日(日)16時36分41秒
どうして私は真希を助けられないの?
私は医者なのに。
目の前で苦しんでいる人、ましてや友人を助けられない。
私は何のために医者になったの?
なつみは自問自答を繰り返す。
気がついた時には、いつの間にか真希の部屋の前に来ていた。
中に入るのが怖かった。
真希の顔を見るのが怖かった。
そして何より、真希を前に何もできない自分を見るのが怖かった。
- 303 名前:7 WHY 投稿日:2002年11月24日(日)16時37分45秒
- 結局なつみは部屋に入ることなく通り抜けようとした。
けれども、なつみの目に映ったのは、ピンクの服に小さなカバンを持った亜依の姿だった。
そういえば、今日は亜依の退院の日だったことをなつみは思い出す。
亜依はすぐになつみに気付いたらしく、手を振りながら走ってやってきた。
「なつみ先生、私今日退院するんだ」
「うん。そうだったね。もう入院しちゃだめだよ」
「でね、最後に真希ちゃんに会っておこうかなと思ってきたの」
「会わない方がいい」
その声は自分でも信じられないくらい乾いた声だった。
亜依がビクッとしたのを見てなければ、なつみは自分が言ったという事さえわからなかったかもしれない。
それほどまでに無機質な声だった。
- 304 名前:7 WHY 投稿日:2002年11月24日(日)16時39分03秒
- 「それは真希ちゃんの足が動かないから?」
しかし、それ以上になつみを驚かせたのはこの亜依の言葉だった。
亜依の耳に入らないように、みんなにはお願いしておいたはずだった。
そう考えた時、1人の人物が思い当たった。
「裕ちゃんに今朝教えてもらったよ」
そしてなつみの予想通りの答えが亜依の口から出た。
「ねえ、どうして教えてくれなかったの?どうして隠してたの?
私が悲しむと思って?私が心配だから?私が子どもだから?」
亜依から投げかけられる質問になつみは黙っていた。
- 305 名前::7 WHY 投稿日:2002年11月24日(日)16時40分00秒
- 亜依はもう17歳なんだ。
自分が亜依をあまりに子どもに見過ぎていたことを、なつみは感じていた。
「何とか言ってよ、先生!黙ってちゃわかんないよ」
つめよる亜依に、なつみは小さな声で「ごめんね」とだけ言ってその場を離れた。
後ろから叫び続ける亜依の声は、なつみの耳には入ってこなかった。
私はなんで医者になったんだろう?
いや、違う。
どうして私が医者なんだろう?
真希も助けられない。
亜依の気持ちも考えず、自分の考えを押し付けて傷つけて…
私って、何なんだろ?
- 306 名前:takatomo 投稿日:2002年11月24日(日)16時44分53秒
- >>297-305 7 WHY
更新終了です。
次は…内容は未定。
どっちにするか迷い中です。
- 307 名前:8 時間よ止まれ 投稿日:2002年12月01日(日)23時02分10秒
- 学校も終わり、一人で電車に揺られながら、梨華は考えていた。
今朝、ひとみは用があるからバイト終わった後にいけないと言ってきた。
またあの子と会うのかなと考えると胸が痛むが、ひとみと次に会うまでの猶予がもてたことにちょっとほっとしていた。
結局、朝からひとみとはほとんど話していない。
授業も別だったし、昼も別の友達と一緒だったから。
次に会う時はどんな顔をすればいいんだろう?
梨華はずっとそんなことを考えていた。
昨日はあんなことをしてしまったが、すぐにバレるに決まっている。
ひょっとすると、今あの子に会っていて、昨日の電話のことを話しているかもしれない。
- 308 名前:8 時間よ止まれ 投稿日:2002年12月01日(日)23時02分56秒
- そんなことを考えていると、電車が夢が丘駅に着いた。
いつもどおり、この時間は大勢の人でにぎわっていた。
駅の南口の前にある、誰もが目にする大きな建物がミライ百貨店。
梨華がバイトしているキッチンズバーガーはここにある。
店内を少し覗いて、お客の数を確認する。
お客はいつも通りだったが、レジの前に出来ている列をみて、梨華は急いで中に入って用意を始める。
(今日は人いるはずなんだけど)
こんな時間に、人手不足でもない限り列が発生するわけがない。
シフト表をみると、ちゃんと人数はいた。
何かあったのかと、梨華は心配しながらタイムカードを押した。
- 309 名前:8 時間よ止まれ 投稿日:2002年12月01日(日)23時04分19秒
- 「おはよーございます」
笑顔であいさつしてバイトを始める。
キッチンズバーガーの基本はスマイル。
さっきまでの憂鬱な気持ちもレジの前に立つとどこかに吹き飛んでしまった。
すると、レジではなにやら見慣れない人があたふたしていた。
「ごめん、梨華ちゃん。あの子が昨日言った新しい子なのよ」
厨房から圭の声が聞こえる。
その声を聞いて梨華は理解した。
自分も入ったばかりのころはよく打ち間違えて、列を発生させたことがあった。
しかも最近は、セットメニューが細かく選択出来るようになったため、よけいに複雑になっている。
「ちょっと、どうしたの?」
後ろから梨華が声をかける。
女の子はビクッとして梨華を見た。
大きな目。
それが梨華の第一印象だった。
(高校生くらいかな?)
だが、そんなことよりこの状況を解決するのが先だ。
手早く注文を取り直し、オーダーを打ち込む。
パッパッパッと手馴れた動作でお客を消費していく梨華。
女の子はじっとその様子を隣で見ていた。
- 310 名前:8 時間よ止まれ 投稿日:2002年12月01日(日)23時05分10秒
- 「ありがとうございました」
20分後、全てのお客が処理し終わり、店内はいつも通りの流れになった。
いつもの倍以上働いている梨華はさすがに疲れていた。
「ご苦労様」
圭が奥からやってくる。
「紹介するね。今日からバイトを始めることになった、紺野あさ美ちゃん。高校3年生よ」
圭の言葉に合わせ、あさ美はぺこりと頭を下げた。
「じゃあ、梨華ちゃん、この子のことはお願いね」
「任せてくださいよ。よろしくね、あさ美ちゃん」
(高3ってことは亜依や希美ちゃんと一緒なのか…)
あの二人を世間一般の高校3年生として考えるのは、少し問題があるが、あさ美も二人と比べて遜色なかった。
「えっと、どこまで教えてもらったの?」
「え、あ、あの、一通り教わったんですけど、でも、ミスが多くて」
「ふーん。やり方は覚えてるんだよね」
あさ美はコクコクと頷く。
「じゃあ、後は慣れるだけだよ。ほら、丁度お客さん入ってきたし、落ち着いてやってみて」
あさ美をレジに立たせ、梨華は後ろから様子をうかがっていた。
- 311 名前:8 時間よ止まれ 投稿日:2002年12月01日(日)23時06分00秒
- 結局、初めは梨華が何度か助ける場面はあったが、しだいにあさ美は無難にこなしていった。
そして、梨華は一つのことに気付いた。
(この子、覚えがすごいいい)
梨華が初めてのときは3日くらいかかって、やっと打ち方を覚えたのに、あさ美はほんの数時間でマスターしていた。
まだ、言葉がぎこちなかったり、笑顔が引きつっていたりするのだが、初日にしては十分すぎるくらいだった。
- 312 名前:8 時間よ止まれ 投稿日:2002年12月01日(日)23時07分33秒
- 「ねえ、どうしてバイトなんか始めたの?高3になって始めるって珍しくない?」
バイトが終わった後、着替えながら梨華は尋ねた。
「私、獣医になりたいんですよ。でも、大学行くのにお金かかるし…
それにどうしても北海道の大学に行きたいんで」
「へーえ、獣医さんか…でもなんで北海道なの?」
あさ美が頭いいことを少し納得しながら梨華は尋ねた。
「私、北海道出身なんです。小さい頃こっちに来たんですけど、やっぱり北海道大好きで」
「北海道生まれなんだ?でも全然訛ってないね。
私の知り合いの人、全然直ってなかったよ」
「そうなんですか?私の姉も訛ってるんですけど、私は小さい頃こっちに来たせいか、訛ってないんですよ」
「ふーん。じゃあ、お疲れ様、気をつけて帰りなさいよ」
まだ着替えているあさ美に声をかけ、梨華は店を出た。
- 313 名前:8 時間よ止まれ 投稿日:2002年12月01日(日)23時10分37秒
- 一人で電車に乗ると、さっきまで忘れていたことが再び思い出される。
(こんな時にひとみちゃんがいれば相談にのってくれるのにな)
そう考えた自分を梨華はおかしく思った。
(ひとみちゃんのことをひとみちゃんに相談できるわけないてないのに、何を考えてるんだろ?)
けれども、そこまでひとみに依存している自分の存在がとても悲しかった。
あんなことをしなければ、今の関係が続いてたのかな?
今以上の関係を求めようとした私が悪かったの?
そして、その答えを出せないまま、電車を降りて改札をくぐった。
だが、そこで梨華の足が止まった。
自分の考えていることの答えを出してくれる唯一の人物の姿がそこにあった。
- 314 名前:8 時間よ止まれ 投稿日:2002年12月01日(日)23時11分40秒
- 「…ひとみちゃん」
絞りだすような声で梨華は言った。
階段でこっちを向いて座っている人物。
それは他ならぬひとみだった。
ひとみは立ち上がり、こっちにやってくる。
そして、じっとお互いを見つめ合う。
先に口を開いたのはひとみだった。
「聞きたいことがあるんだ。家、行っていいかな」
ひとみの放つ一音一音が梨華の頭に響き渡る。
頷いて無言で歩き出す梨華。
同じく、うつむいたまま後ろを歩くひとみ。
駅から家までのそれが、ひとみとの最後のデートになることを、梨華は覚悟していた。
- 315 名前:takatomo 投稿日:2002年12月01日(日)23時12分53秒
- >>307-314 8 時間よ止まれ
更新終了です。
できれば感想なんかをよろしくお願いします。
来週はちょっと更新できないかもしれません。
そうなったらすいません。
- 316 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月01日(日)23時28分20秒
- いいとこで、くぅ〜。
梨華ちゃんとよっすぃー、お互いに気持ちをぶちまけて
分かり合えるといいんだけども・・・
娘。ミュを両方見てるんで、その後ってのがとても面白いです。
更新楽しみにしてます。
- 317 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年12月02日(月)00時42分14秒
- チャミさま、最後なんて言ってはいけません!
いしよしオタとしては何とかうまく行って欲しいで〜す。
作者さんお願い!!!!!
- 318 名前:名無し 投稿日:2002年12月02日(月)02時53分36秒
- ミュつながりでいくと、後藤と紺野に何らかの絡みとかあるのかな?
ごっちんの状況が可哀想でならないので、救いが欲しい・・・
- 319 名前:takatamo 投稿日:2002年12月14日(土)17時49分54秒
- 久しぶりに見てみると、たくさんのレスを頂いており、感激です。
どうもありがとうございます。
では、レス返し&更新します。
- 320 名前:takatomo 投稿日:2002年12月14日(土)17時57分47秒
- >>316 期間空いてすいません。そして、今回でも更に引っ張ってます。
この次こそその辺りを書くことになりますので、もうしばらくお楽しみにしてください。
>>317 この二人はどうなるのか、まだまだ未定です。全ては吉澤さんの頑張り次第と言うことで…
>>318 こんごまは…ネタバレになるのでノーコメントです。
確かに今の後藤さんは不幸すぎます…でもちゃんと救いを用意したますので。
- 321 名前:9 乙女の心理学 投稿日:2002年12月14日(土)17時59分07秒
「石川梨華です。よろしくお願いします」
初めて会った時の梨華の言葉。
教室中に響いた甲高い声をひとみは今でも忘れない。
そして、どちらが先に声をかけたかなんて覚えてない。
いつの間にか友達になり、いつの間にか隣に梨華がいるのが当たり前になり、
そして…
いつの間にか愛しく思っていた。
前を歩く梨華の後姿を見て、ふとそう思った。
だから、梨華の口から真実を聞きたかった。
今日聞いたことが、全て彼女がやったことなのかどうか。
- 322 名前:9 乙女の心理学 投稿日:2002年12月14日(土)18時00分33秒
- 今日、ひとみは学校が終わると、一人で病院を訪れていた。
梨華にはあんなことを言ったが、ひとみはそれ以上に、嘘であって欲しいという思いが強かったのかもしれない。
「裕子さん」
真希のところに行く前に、ひとみは裕子の元を訪れた。
「どうしたの?今日は一人じゃない?」
「はい。梨華ちゃんは今日はバイトなんです」
そう言った後、ひとみは昨日梨華から聞いたことを全て話した。
そして、話を聞く裕子の表情から、そのことが事実であることをひとみは気付いた。
- 323 名前:9 乙女の心理学 投稿日:2002年12月14日(土)18時01分13秒
- 「でも、治らないわけじゃないのよ。手術して神経自体はつながってる。
後は複雑骨折の治療と、リハビリだけ…」
「じゃあ、治るんですね?真希の足は動くんですね?」
だが、裕子はうつむいて答えた。
「神経がつながってても損傷を受けてることには変わりない。
それに、複雑骨折が治るまで足は動かせないの。
だから…」
そこで裕子は一旦言葉を切った。
「骨折が治るまで動かさなかった神経が、先に駄目になってしまうかもしれない」
「つまり…駄目ってことですか?」
裕子は答えなかった。ひとみから目をそらすだけだった。
「そうですか…」
消えそうな声でそう言ったひとみ。
そして、しばらく考え込んだ後、ひとみは尋ねた。
「じゃあ、真希には会えますか?」
- 324 名前:9 乙女の心理学 投稿日:2002年12月14日(土)18時02分05秒
- 裕子に教えられた真希の病室。
ノックをしても返事が無い。
ひとみは2.3度躊躇した後、思い切って扉を開けた。
「真希、久しぶりだね」
真希は窓の方を向いていた。
ブラインドの隙間からの夕日に真希の顔が赤く照らされていた。
その顔はステージで光を浴びていた真希の顔とは別人のようだった。
ひとみの声に真希は答える様子はなく、振り返りさえしなかった。
「会えなくは無いよ。今日も亜依ちゃんが会った。
でもね、話し掛けても答えなかったって。心ここにあらずって感じで…」
ひとみは裕子が言った事を思い出した。
でも、まさかここまでひどいとは思っていなかった。
自分の目の前にいる彼女は、まるで蝋人形のようだった。
- 325 名前:9 乙女の心理学 投稿日:2002年12月14日(土)18時02分55秒
- 何を言っても全く反応しない。
動くことさえしない。
そんな真希の姿をみて、ひとみは泣くのを必死でこらえていた。
そして、この時ようやく、自分は心のどこかでずっと、真希のようになりたいと思っていたことに気付いた。
そう、ひとみの悲しみは、決して真希に対する同情からではなく、自分の理想が崩れることに対する悲しみだった。
これ以上真希の姿をみることに耐えられなくなり、ひとみは病室を後にした。
- 326 名前:9 乙女の心理学 投稿日:2002年12月14日(土)18時04分13秒
- そして、その帰り道のことだった。
ひとみの携帯が鳴った。
相手は公衆電話。
「もしもし…誰ですか?」
不機嫌そうにひとみは答えた。
「もしもし、高橋です。高橋愛です」
少しおびえたような声で彼女はそう言った。
「あ、ごめん。どうしたの?」
「あの・・・・
- 327 名前:9 乙女の心理学 投稿日:2002年12月14日(土)18時05分07秒
- 梨華の部屋に入ってからどれくらい時間が経っただろう。
梨華が持ってきたジュースの入ったコップにはびっしり水滴がついていた。
お互い目線すらあわさないまま黙り込んでいた。
「ひとみちゃん、話って何?」
意を決したかのように、梨華は切り出した。
彼女の手は震えていたが、彼女の方を見ようとしないひとみはそのことに気付かなかった。
「梨華ちゃん、高橋愛って子を知ってる?」
ひとみは搾り出すようにそう言った。
電話があってから、どう切り出そうかずっと考えていた。
だが、結局ひとみが言った言葉は最も不器用な問いかけだった。
「誰?知らないよ」
自分の心臓の拍動を聞きながら、梨華はゆっくりそう言った。
彼女もまた不器用な人間だった。
- 328 名前:takatomo 投稿日:2002年12月14日(土)18時08分47秒
- >>321-327 9 乙女の心理学
更新終了です。
感想等いただけるとうれしいです。
次回は…早ければ木曜日。遅ければクリスマス。
今年の更新は後2回の予定です。
- 329 名前:10 サマーナイトタウン 投稿日:2002年12月19日(木)23時31分15秒
ドクドクドクドクドク
ドクドクドクドクドク
まるで部屋中に響いているのではないかと錯覚するほどの自分の心臓の音。
梨華はじっとひとみの次の言葉を待っていた。
「そっか」
短くそう言葉を切った。
ひとみは悲しそうな目で梨華を見ていた。
そして、続けた。
「昨日さ、私に電話があったらしいんだ。その高橋から」
明るく、しかし、どかか投げやりな言葉だった。
高橋という言葉がでるたびに、梨華の心臓の音が大きくなっていく。
だが、梨華の反応を見ずにひとみは更に続ける。
「それでさ、誰か電話に出たらしいんだ。
でも、すぐに切れたって…
それが昨日の夜。丁度私が梨華ちゃんの家から帰る途中だった」
「違う、違うの…」
梨華はそう呟きながら、首を何度も左右に振った。
だが、ひとみはやめなかった。
- 330 名前:10 サマーナイトタウン 投稿日:2002年12月19日(木)23時32分31秒
- 「高橋も変に思って、それから何度もかけなおしたんだって…
でも、電話はかからなかった。
着信が拒否されています。って言葉が流れるだけでね…
それで、今日、公衆電話からかけたんだ。私の携帯に」
梨華はもう何も言わなかった。
ただ、首を左右に振り続けていた。
そんな梨華を見て、ひとみはゆっくりと言った。
「梨華ちゃん、何でこんなことしたの?」
優しい言葉とは裏腹に責めるような強い口調で。
梨華は首を振るのを止めた。
その肩は小刻みに震えていた。
- 331 名前:10 サマーナイトタウン 投稿日:2002年12月19日(木)23時35分15秒
「好きなの…ずっとひとみちゃんが…」
小さな声…しかし、はっきりした声がひとみの耳に届いた。
ひとみは一瞬耳を疑った。
決して予想していなかったわけではない。
もしかしたらぐらいには思っていた。
でも、ひとみは黙り込んだ。
もっとも聞きたかった言葉を、もっとも聞きたくない時に聞いたひとみ。
もっとも言いたかった言葉を、もっとも言ってはならない時に言ってしまった梨華。
そして、ひとみは吐き捨てるようにこう言った。
「私も梨華ちゃんが好きだよ…
でも、こんなことをする梨華ちゃんは……ダイキライだ…」
- 332 名前:10 サマーナイトタウン 投稿日:2002年12月19日(木)23時36分29秒
その後のことはお互い覚えていない。
ひとみがいつ帰ったのか…
自分がどうやって帰ったのか…
そして、自分がいつまで泣いていたのか…
好きな人を責め続けなければいけなかったひとみ。
好きな人に偽り続けなければいけなかった梨華。
お互いの言葉がお互いを傷つける、そんな長い夜はこうして幕を閉じた。
- 333 名前:takatomo 投稿日:2002年12月19日(木)23時39分18秒
- >>329-332 10 サマーナイトタウン
短めの更新です。
やっといしよしが一区切り…
次は別の視点になります。
感想等、よろしくお願いします。
- 334 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月20日(金)02時49分50秒
- うぅ〜、いしよし、どうなっちゃうんですか・・
このままでは悲しすぎる・・
- 335 名前:takatamo 投稿日:2003年01月08日(水)20時23分03秒
- >>334
レスが遅くなって申し訳ないです。
更新と同時にしようと思ってたら、更新できずに書けなかったです。
更新の方ももう少しお待ちください。
ちょっと自分の中で、一旦話の流れをまとめたいんです。
申し訳ないです。
- 336 名前:11 わかってないじゃない 投稿日:2003年01月13日(月)21時34分27秒
- なつみは、あれから、ずっと真希の所には行っていない。
回診の際にも、真希の病室を避けて通るようにしていた。
裕子を通して、真希の様子は耳に入ってくる。
しかし、状況が良くなっているわけでもない。
それどころか、一向に食事を取ろうとしない真希はどんどん衰弱していた。
昨日から点滴に切り替えたというが、少し目を離すとすぐにチューブを抜くらしい。
正直、みんなお手上げの状態だった。
だからといって、なつみは自分が何かできるとも、何かしようとも考えなくなっていた。
「どうせ何も出来ないんだから」
その言葉がずっと頭の中を回っていた。
- 337 名前:11 わかってないじゃない 投稿日:2003年01月13日(月)21時35分10秒
- そんなある日、なつみの元を圭織が尋ねてきた。
イラストレーターになった彼女は、ずっと故郷の北海道に帰っていたが、今度の仕事で東京に用があり、そのついでに寄ったのだった。
「真希のこと、聞いたよ。大変だったっしょ」
「うん…」
真希という名前になつみの表情は曇る。
「私もさ、昼に行ってきたのさ。でもさ、あの子何にもしゃべんないんだ」
「らしいね」
ボソッとそう言うなつみに、圭織は
「ちょっとあんた、らしいねって!あんた医者だべ?
何とかしようって気にはならないの?」
と、机を叩いていった。
その振動でコーヒーの液面が激しくゆれる。
なつみは返事もせず、その液面をじっと見ていた。
- 338 名前:11 わかってないじゃない 投稿日:2003年01月13日(月)21時35分47秒
- 「何とか言いな?ねえ、いつものなつみはそんなんじゃなかったっしょ?」
圭織の大きな瞳がなつみを覗き込む。
「いつもの私?知ってるようなこと言わないでよ。あんたに何がわかるの?」
圭織を睨みつけてなつみは続ける。
「何?いつもがんばれがんばれって、みんなを元気付けないといけないの?
バカみたいに一人真面目に?がんばれ、がんばれって言ってればいいの?」
「何も、そんなこと…」
「そうでしょ?みんなそうよ。
私に何を期待してるの?真希の怪我が治せる?
治せるならとっくにやってるわよ!
でもね、私はできないの。治せる治せないなんてそんな問題じゃないのよ!
治療さえさせてもらえないのよ!医者なのに!私は医者なのに!」
なつみは溢れる涙を袖でぬぐった。
- 339 名前:11 わかってないじゃない 投稿日:2003年01月13日(月)21時38分04秒
「ごめん。私こそなつみのこと考えてなかった。
でもさ、あんたにしかできないことなのに、やってないことがあるんだ」
「何さ?」
「真希の心を治すこと。それはあんたにしかできない。
真希はきっと、足が治らないって絶望して、あんなになってるんだ」
「うん…」
「でも、真希の足は治るっしょ?」
「可能性は無いことも無いけど…」
「だったら、あんたがそれを真希に伝えないといけないべ」
「そんなこと、お父さんや裕子さんが何度も言ってるよ」
「違う!あんたが言わないといけないんだ。
あんたが真希に今の状況を全部説明する。
それが真希の心を少しでも治す1番の方法」
なつみは初め、圭織の言っている意味がわからなかった。
何度か頭の中で彼女の言ったことを反復する。
- 340 名前:11 わかってないじゃない 投稿日:2003年01月13日(月)21時38分45秒
- 「でもさ…」
「『でも』じゃねえ、やってみれ。あんたの口から聞くことに意味があるんだよ」
そう言って圭織は優しく微笑んだ。
その笑顔には妙な説得力があり、なつみの心は少し楽になったような気がした。
「わかった。やってみる」
なつみの言葉に圭織は頷き、そして、用事があるからと言って、なつみの家を後にした。
「さて、次はかわいい妹の様子でも拝みに行くべ」
圭織はタクシーの中でそう呟き、運転手に行き先を告げた。
- 341 名前:takatomo 投稿日:2003年01月13日(月)21時43分00秒
- >>336-340 11 わかってないじゃない
かなり間が空きましたが、更新。
今までの話は>>223-335 です。
ちょっと長編にしようかと思っていたこの話を短くし始めています。
それに伴い必要なエピソードの絞込み、再検討をしてたため遅くなりました。
- 342 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月14日(火)01時04分43秒
- 圭織、いいやつだなぁ…
やっぱりなっちとごっちんの絡みが1番気になるところであり、1番好きであり。
単なる恋愛話ではない展開がとても好きなので、どんなエピソードがこれから
待ち受けているのか、期待しています!
- 343 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月17日(金)19時27分47秒
- 早く続きが読みたいです
まってます!!!!!!!!
- 344 名前:takatomo 投稿日:2003年01月19日(日)22時16分01秒
- >>342
感想ありがとうございます。
なっちとごっちんについては、いしよしと対をなすもう一つのテーマなので、
今まで少なかった分、これからどんどん書いていきたいです
>>343
更新遅くてすいません。3月に入ると週1以上のペースでいけると思うんですが…
当面はゆっくり待っていていただけるとうれしいです。
- 345 名前:12 私のすごい方法 投稿日:2003年01月19日(日)22時17分06秒
- 「ちょっと、梨華ちゃん!あんた何度目?」
「8回目です…」
カウンターの奥で圭の声が響く。
そのまた奥でうつむいているのは梨華。
あの夜から2日が経っていた。
もちろん、ひとみとはあれから一言も話していないし、会ってさえいない。
そして、8という数字。
この2日間で梨華がバイトでミスした数だった。
遅刻に始まり、オーダー間違い、勘定間違い、品物を落とす…etc
初めは体調が悪いのかと思い、黙認してきた圭も、いい加減我慢の限界だった。
- 346 名前:12 私のすごい方法 投稿日:2003年01月19日(日)22時18分25秒
- 「どうしたの?最近変だよ?何かあったの?」
「いいえ。何もないです。すいません」
うつむいたまま梨華は言った。
「もしかして、ひとみが原因?」
「違います。ひとみちゃんは何の関係もありません」
ひとみという名前にドキッとしながら、梨華は慌てて否定した。
「嘘?あの子も最近こないし…喧嘩したの?」
「違います」
梨華は顔をあげてはっきりとそう言った。
「梨華ちゃん、バイトの上司として言ってるんじゃないんだよ。
ここんとこ、あんたが悲しそうな顔ばっかりしてるから、あんたの友達として心配してるんだ」
やさしく梨華の頭をさすりながら、圭はそう言った。
「保田さん…」
化粧が落ちないよう、泣くのを必死にこらえながら、梨華は言った。
「ちょっとみんな、お願いね」
圭はそう言って梨華と共に、店を離れた。
- 347 名前:12 私のすごい方法 投稿日:2003年01月19日(日)22時20分31秒
- 「ふーん、そうか…」
梨華の話を一通り聞いた圭は腕を組み直した。
「ひとみが怒るのも無理ないわね」
「そうですよね…私もなんであんなことしたのかわからない…
ただ、ひとみちゃんを取られたくなくて…」
「梨華ちゃんの気持ちもわかるよ。ひとみの気持ちもわかる」
「どうすればいいんでしょう?」
梨華は目に涙を浮かべて圭を見た。
「うーん…とにかく、謝ってみなさい。ちゃんと。
お互いこのまま壊れちゃうの嫌でしょ?」
梨華は納得いかない様子のまま頷いた。
「だったら謝んなさい。悪いのは梨華ちゃんなんだから、あんたからちゃんと謝んなさい」
「そんなんで許してもらえますか?」
「そんなのわからないわ。でも、それしかないでしょ。
とにかく明日会ったら、謝っときなさい」
肩をポンと叩かれた梨華。
本当にそんなことで仲直りできるか不安だったが、他に方法が思いつかない以上、素直に圭に言われたとおりにしようと決めた。
- 348 名前:12 私のすごい方法 投稿日:2003年01月19日(日)22時21分39秒
- 「どうする?今日はもう帰る?」
「いえ、大丈夫です」
「そう、じゃあ戻ろうか」
二人が店内に戻った時、カウンターの方から声がした。
「ちょっと、どうしたの?」
慌てて圭が行く。
彼女の目に映ったのは、カウンターの前で客を指差すあさ美の姿だった。
「あさ美ちゃん、何でお客様を指差してるの!
すいません、失礼しました」
あさ美を横によせ、客に頭を下げる。
「圭ちゃん、私、私」
頭の上から聞こえてきた声に、圭ははっとして頭を上げる。
「圭織?」
「久しぶり、いつも妹がお世話になってます」
突然の圭織の登場に驚いた圭だったが、もっと驚いたのは、隅から見ていた梨華だった。
- 349 名前:12 私のすごい方法 投稿日:2003年01月19日(日)22時23分23秒
- 「いつの間に帰ってきてたの?」
「ん、今日の朝。さっきまでなつみのとこ行ってたのさ」
「連絡くらいくれればよかったのに」
混乱する梨華をよそに二人は話をどんどん進めていく。
「でもさ、あさ美をびっくりさせたかったんだ」
「あんた、妹にも言ってなかったの?」
「だから、びっくりさせたかったんだって。
あ、今仕事中っしょ?また後で来るわ」
そう言って圭織は店を出て行った。
「ちょっと、どうして私には教えてくれなかったんですか?」
カウンターから戻ってくる圭を捕まえて、梨華は言った。
「あれ?言ってなかったけ?」
「聞いてません」
「ごめんごめん。あ、あさ美ちゃんを早く上がらせるから、梨華ちゃんがんばってね」
圭は手をあわせ、軽くウインクをした。
「わかりました。がんばりまーす」
そう言いながらも、梨華はさっき帰っていればよかったとちょっと後悔した。
- 350 名前:12 私のすごい方法 投稿日:2003年01月19日(日)22時23分58秒
その同時刻、ひとみもある人物と一緒に食事していた。
茶髪の小さな女の子。
店の人は気付かない。
彼女が自分達がいつも乗っている電車の、吊り広告の中の人物だということを…
- 351 名前:takatomo 投稿日:2003年01月19日(日)22時26分37秒
- >>345-350 12 私のすごい方法
更新終了。やっとあの人登場です。
- 352 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月20日(月)18時26分39秒
- ついに登場ですね。待ってました!!
- 353 名前:takatomo 投稿日:2003年01月25日(土)17時06分48秒
- >>352
まさにやっとです。
既に話の半分が終わってるのに、CASTが全員揃ってないのもどうかと思いますね。
残り、出てないのは新垣だけかな…
- 354 名前:13 センチメンタル南向き 投稿日:2003年01月25日(土)17時08分23秒
- 「どうしたの?気にしなくていいよ。私のおごりなんだから」
メニューを手に持ったまま、ボーっとしているひとみに、茶髪の小さな彼女ー真里はそう言った。
彼女は今売り出し中の新人アイドル。
去年出した写真集は年間写真集売上2位、CMも数本、そして秋からのCDデビューも決まっている。
そんな多忙な彼女がひょっこり自分の前に現れた時、ひとみは驚いた。
「おっす、久しぶり〜」
サングラスを少しずらしてそう言った彼女。
4年前と全く変わらない彼女は、ブラウン管の中の彼女とは別人だった。
- 355 名前:13 センチメンタル南向き 投稿日:2003年01月25日(土)17時09分09秒
- 「ねえ、ひとみ?聞いてる?」
「…」
「ひとみ!」
「へ?あ、はい。ちょっと待ってください」
慌ててメニューを開き始めるひとみ。
けれども、ひとみの目はすでに心ここにあらずといった感じだった。
真里はそんなひとみに気付き、店員を呼び、メニューを手に2人分注文をした。
「ねえ、どうしたの?何かあったの?」
注文を待つ間、真里は思い切って尋ねたが、ひとみは黙ったままだった。
「そりゃね、好きでもない私が、いきなり食事しようなんて言って連れ込んだら、嫌だと思うけどさ。
人と食事する時は、もう少し楽しそうにしてもいいんじゃない?」
「いえ、別にそんな嫌いなんて…」
「冗談よ、冗談」
そう言って笑う真里だが、ひとみの表情が冴えないのを見ると、すぐに笑うのをやめた。
「ねえ、本当にどうしたの?」
「好きな人がいたんです…」
ひとみはポツリとそう言った。
過去形なのが気になった真里だが、何もいわずに次の言葉を待った。
- 356 名前:13 センチメンタル南向き 投稿日:2003年01月25日(土)17時09分49秒
- 「でも、その人は私の友人を…」
梨華と愛の名前を伏せたまま、ひとみはゆっくりと全てを話した。
「ふーん、思わず言っちゃったわけだ」
運ばれてきた石焼ビビンバを口に運びながら言った。
「あ、食べてよ。嫌いなもの入ってないでしょ?」
真里は割り箸をひとみに渡す。
目の前に置かれたハンバーグ定食に、少しためらいながらも、ひとみは食べ始めた。
そして、食事をしている間、会話は交わされなかった。
ひとみだけでなく、真里も何か考え事をしていた。
- 357 名前:13 センチメンタル南向き 投稿日:2003年01月25日(土)17時10分35秒
「ありがとうございました」
店員の声を背に店を出る二人。
ゆっくりと無言のまま駅の方に歩いていく。
だが、さすがの気まずい雰囲気に、ひとみは口を開いた。
「あ、ありがとうございました。ご馳走になって…」
「いいのよ。ひとみとならいつでもオッケーよ」
「え?」
「何でもない」
再び会話がそこで途切れた。
自分の横を歩く真里をじっと見るひとみ。
身長差から、並んで歩いていてもお互いの顔が見えないことが、ひとみを少し安心させた。
- 358 名前:13 センチメンタル南向き 投稿日:2003年01月25日(土)17時11分41秒
ようやく次に真里が口を開いたのは、ホームで電車を待っている時だった。
「でもさ、まだ好きなんでしょ?」
いきなりの言葉にひとみは驚いたが、すぐに真里の意図を察した。
「たぶん…そうです」
「そっか」
短くそう言って真里はひとみに背中を向ける。
「ならさ、つまんない意地張ってないで素直になりな。
梨華ちゃんが謝ってきたらちゃんと許してあげるんだよ」
「どうしてそれを…」
「わかるよ。ひとみのことだもん」
背中越しに聞こえるその声は、少し震えていた。
「どういうことですか?」
「にぶちんだなぁ。あ〜あ、梨華ちゃん相手じゃしょうがないよな〜」
真里のその言葉は、ホームに入ってくる電車の音でひとみには届かなかった。
- 359 名前:13 センチメンタル南向き 投稿日:2003年01月25日(土)17時13分28秒
- 「え?何ですか?」
「何でもないよ。じゃ、私はこれに乗るから」
振り返って電車に乗ろうとする真里の目から、一粒の涙がこぼれた。
「これって、真里さん、これは快速だから、止まんないですよ?」
真里からの返事が帰ってくることなく、扉は閉まった。
真里はガラス越しにそっと手を振った。
「さよなら、ひとみ…」
速度をあげ、小さくなっていくひとみ。
しかし、それより早く、溢れる涙で、真里はひとみの姿が見えなくなった。
- 360 名前:13 センチメンタル南向き 投稿日:2003年01月25日(土)17時14分29秒
ねえ、仕事帰りのタクシーからひとみの姿が見えてさ、すぐに降りたんだよ。
でもさ、気付かれるのが嫌だから、路地からそっとひとみを見てタイミング図ってたんだよ。
ひとみがあの角を曲がると思って、先回りしてたんだよ。
ねえ、ひとみ…
- 361 名前:takatomo 投稿日:2003年01月25日(土)17時16分49秒
- >>354-360 13 センチメンタル南向き
題名通り矢口さんの話。
一応全20話構成の予定なので、あと少しです。
最後までお付合いいただけたらうれしいです。
- 362 名前:名無しさん 投稿日:2003年01月31日(金)18時08分11秒
- この続きすっごい楽しみです
早くごっちんが出てきてほし〜!
- 363 名前:takatomo 投稿日:2003年02月02日(日)17時03分58秒
- >>362
次でやっと登場です。
いつの間にかいしよしばかり進んでいってますが、こっちもちゃんと進んでいきますので。
それでは、9話以来の後藤さんの話をどうぞ。
- 364 名前:14 T WISH 投稿日:2003年02月02日(日)17時04分38秒
「やってみれ。あんたの口から聞くことに意味があるんだよ」
次の日、圭織のその言葉を何度も思い返し、なつみは回診を終えた。
しかし、その思いとは裏腹に、回診中も真希の部屋の前を通ることをまだ避けていた。
(よし、行くぞ…)
そう決意して真希の部屋へと廊下を、一歩一歩踏み出す度に、いろいろな思いが頭をよぎる。
真希になんて言えばいいんだろう?
真希に責められたらどうしよう?
圭織が言ったように本当に私でいいのかな?
考えれば考えるほど、自信がなくなっていく。
しかし、とうとう真希の部屋の前に着いた。
- 365 名前:14 T WISH 投稿日:2003年02月02日(日)17時05分08秒
「やってみれ。あんたの口から聞くことに意味があるんだよ」
再度その言葉を思い返して、ノブに手をかけた時、中から声が聞こえた。
「ねえ、真希ちゃん、どうしてこんなことするの?」
中から聞こえてきたのは、亜依の声だった。
なつみは反射的にドアを開ける手を止めた。
そして、少しだけ扉を開けたまま、中の様子をうかがった。
「何とか言ってよ?ねえ、ねえ?」
真希の体を揺する亜依。その足元では輸液が流れ出していた。
「すいません。針が抜けたんですけど」
奥から聞きなれない声がした。
一瞬誰かわからなかったが、裕子から麻琴が毎日のように来ていることを聞いていたので、なつみはそう推測した。
「わかりました。すぐ行きます」
インターホン越しの声は裕子だった。
その声は少し怒っている時の声だった。
- 366 名前:14 T WISH 投稿日:2003年02月02日(日)17時05分46秒
- 「こんなことしたらどうなるか、わかってる?」
亜依は更に声を荒げたが、真希は表情一つ変えなかった。
ろくに食事も点滴もとっていない彼女は、頬がこけ、顔色も悪かった。
「ひょっとして、死にたいの?」
さっきまでとはうってかわっての亜依の声。
「そうかもね」
亜依が4年ぶりに聞いた言葉がそれだった。
抑揚さえない、冷たい声。
亜依はそれが真希の声とは信じらず、麻琴の方を向き、彼女が言ったのではないことを確認した。
「どうして?どうしてなの?私を救ってくれたのは、真希ちゃんたちでしょ?
真希ちゃんたちが私のために踊ってくれてる。
私のためにそこまでしてくれるって…だから、私もがんばらなきゃって…
生きなきゃって…だから…」
亜依はそのまま泣き崩れた。
「足が動かないんだ。踊れないなら…命かけてたことが出来なくなるなら、生きてる意味はない」
さっきと同じ冷たい声で、真希は言った。
- 367 名前:14 T WISH 投稿日:2003年02月02日(日)17時06分34秒
なつみはふと、昔聞いたことを思い出した。
それは、ネズミの話。
ネズミは、2,3日起きていても死なない。
でも、ネズミが眠たいと思ってる時に寝させないと、2.3日で死んでしまうんだ。
やりたいことができないということは、動物にとってそれほどのストレスになる。
でも、真希は違う。真希はネズミじゃない。
- 368 名前:14 T WISH 投稿日:2003年02月02日(日)17時07分19秒
「違う。違うよ真希」
なつみはドアを開け、中に入った。
みんなの視線が一斉になつみの方を向いた。
「真希、あんたの足は治るんだよ。動かないって決まったわけじゃないよ」
「気休めはいいよ。何度も聞いた」
「嘘じゃない!でもね、今のままじゃ治らない。絶対に治らないよ!」
「治らないんじゃない!いい加減なこと言わないでよ」
初めて真希が声を荒げた。さっきまでとは違う、血の通った声だった。
パチン
その音が部屋に響き渡った。
真希の頬をなつみが叩いた音だった。
「ちょっと…何すんのよ」
その真希の言葉を遮るように、なつみは叫んだ。
「あんたがそんなだから治らないのよ!
死にたいと思ってる患者なんて、どんな名医でも治せないよ!
あんたの足は動くんだ!可能性は0に近いよ!
でもね、0じゃないんだ。治るんだよ」
なつみはじっと真希を見つめる。
真希もなつみをじっとみつめ、お互い視線を外そうとはしなかった。
- 369 名前:14 T WISH 投稿日:2003年02月02日(日)17時08分02秒
「本当に治るの?」
そう言った真希の目には、光が戻っているように感じた。
「絶対治るなんて、無責任なことはいえない。
でもさ、医者として言わせてもらうと、今の真希は自分で治る可能性を消しているだけなんだ」
頬をつたう涙をぬぐおうともせず、真希を見続けるなつみ。
「まさか、4年前の借りを今返されるなんてね…」
「真希…」
「あんたのそういうバカみたいに真っ直ぐなとこ、結構好きだよ。
ま、だまされたと思ってやってみるよ。お願いね、なつみ先生」
真希はそっと手を差し出した。
先生と言われて少し照れたなつみ。
しかし、それと同時に、何か答えを見つけられたような気がした。
笑顔で握手するなつみ。
そこに、亜依と麻琴も手を添える。
- 370 名前:14 T WISH 投稿日:2003年02月02日(日)17時08分35秒
「じゃあ、明日からビシビシいくよ」
後ろからの声に、みんな、ドアの方を向く。
「裕子さん、いつの間に?」
「ずっと前からいたんだけどね。なんか入るタイミングがなくって」
そう言って、針を取り出し、真希に点滴をつけ始める。
「今までごめんなさい」
裕子の耳元で真希が呟いた。
「いいのよ。昔の希美ちゃんに比べたら、まだましだったわ」
笑いながら、手早く点滴を刺し終え、床にこぼれた輸液をふき始める。
なつみも亜依も麻琴も、ティッシュを手に手伝い始めた。
- 371 名前:14 T WISH 投稿日:2003年02月02日(日)17時09分18秒
そして、その夜。
なつみは夕食時、父に今日のことを話した。
父は話を聞いている間、何も言わなかったが、最後にこう言った。
「確か担当は竹内先生だったね…明日彼に言っておくよ。
お前も一緒に彼女の担当としてつけることを」
「ありがとう…お父さん」
父は何も言わず、部屋に戻っていった。
なつみはそんな父の後姿をじっと見ていた。
- 372 名前:takatomo 投稿日:2003年02月02日(日)17時11分18秒
- >>364-371 14 T WISH
更新終了
今週からテストで忙しいので、次の更新は2月末になります。
そこからは更新ペースを上げていきたいと思いますので、すみませんが、よろしくお願いします。
- 373 名前:名無しさん 投稿日:2003年02月06日(木)21時48分14秒
- 期待してるよ。
- 374 名前:takatomo 投稿日:2003年02月17日(月)23時34分46秒
- >>373
長い間お待たせしてすいません。
今日からペースアップして更新しますので、よろしくお願いします
- 375 名前:15 好きな先輩 投稿日:2003年02月17日(月)23時35分52秒
- その日も梨華とひとみはお互いすれ違ったままだった。
梨華はひとみに謝るつもりでいたし、ひとみも梨華を許すつもりでいた。
でもお互い、昨日までのようにわざと避けていた。
大学であったら話そう。
そう思っていても、踏ん切りがつかない。
何度も携帯を開けては閉じる梨華。
何度もセンターにの問い合わせをするひとみ。
だが、メールがやり取りされることはなかった。
そうこうしているうちに、授業も終わってしまい、何も話さないまま、それぞれの帰路についた。
今日は梨華はバイトが休みの日である。
帰る途中、梨華はひとみに謝ろうと思い、駅で待ち続けた。
けれども、ひとみはすぐには来なかった。
- 376 名前:15 好きな先輩 投稿日:2003年02月17日(月)23時36分28秒
「ひとみさん、この先にあんブランって、知り合いのお店があるんですよ」
自分の手を引っ張る彼女に黙って着いていくひとみ。
高橋愛
私が高2になるまで近所に住んでいた後輩。
中学卒業後、学校一のサックス奏者だった彼女は、全寮制の高校に推薦入学。
そこで私と彼女は別れた。
そして、彼女は高校卒業後、音大へ進学。
去年の冬に再会し、それから何度か会ううちに今にいたる。
前を歩く彼女のことをひとみは少し思い返してみる。
私は彼女のことをどう思ってるんだろう?
彼女は私のことをどう思ってるんだろう?
ひとみの考えがそこまでおよんだ時、自然と足を止めていた。
手を引いていた愛は、それに気付いて立ち止る。
- 377 名前:15 好きな先輩 投稿日:2003年02月17日(月)23時37分15秒
- 「どうしたんですか?」
不思議そうな顔で尋ねる愛に、ひとみは「何でもないよ」とだけ言った。
再び歩きだそうとすると、ひとみのポケットが震えた。
「ちょっとごめんね」
ポケットから携帯を取り出し、メールを読む。
その時、ひとみの顔色が変わったことを愛は見逃さなかった。
「どうしたんですか?」
再び尋ねた愛に答えたのか、独り言だったのかわからない。
「行かなきゃ…」
ひとみはただそれだけ言った。
突然のひとみの言葉に驚く愛に、ひとみは
「ごめん、ちゃんとケジメつけなきゃいけないんだ」
それだけ言って走り出そうとする。
- 378 名前:15 好きな先輩 投稿日:2003年02月17日(月)23時38分05秒
「嫌だ!行かないで!」
ひとみの手をしっかり握って愛は叫んだ。
「愛…」
「どうして、どうして私じゃダメなんですか?」
「ごめん、愛の気持ちはうれしいよ。
でもね、私にもそれくらい大事に思ってる人がいるんだ」
ひとみの一言ごとに愛の手から力は抜けていくのがわかった。
「私、わかってた…映画に行っても、食事をしても、ひとみさんは私じゃ無い人を見てたってこと…
でも、私はなりたかった。その人になりたかった」
泣き始める愛をひとみは抱きしめて、慰めてやりたい衝動に駆られたが、思いとどまった。
残酷なようだったが、ひとみはゆっくり後ろに下がり、「ごめん」と言って反転して走り出した。
- 379 名前:15 好きな先輩 投稿日:2003年02月17日(月)23時38分38秒
- 商店街を抜け、駅の階段を駆け上がり、電車に飛び乗る。
ひとみの頭には愛の泣き顔と、梨華の泣き顔が交互に映し出された。
確信はなかった。
梨華ちゃんが私を待っていてくれていると。
でも、自信はあった。
梨華ちゃんなら私を待っていてくれるに違いないと。
「会いたい」
ただそれだけのメール。
他に何もない。飾らない梨華ちゃんの思い。
それは私も同じだ。
ドアが完全に開くのを待たずに、電車から降りる。
- 380 名前:15 好きな先輩 投稿日:2003年02月17日(月)23時39分26秒
笑っている梨華
怒っている梨華
泣いている梨華
いろんな表情の梨華がひとみの頭に浮かんでは消えていく。
(南、北、どっちだ…)
駅の南口は梨華の家。
北口にはひとみの家。
「南だ!」
あの日、ひとみが梨華を待っていたのは南口だった。
(もう一度あの場所からやり直さなきゃ…)
勢いよく階段を下りていくひとみの足が、不意に止まった。
- 381 名前:15 好きな先輩 投稿日:2003年02月17日(月)23時40分02秒
「梨華ちゃん」
階段の下に座って上を見上げている梨華。
ひとみはゆっくり階段を下りていった。
梨華はゆっくり立ち上がった。
「あのさ…」
「あのね、センター試験のこと覚えてる?」
ひとみの言葉を遮るように梨華は言った。
思いもよらぬ言葉に、ひとみは一瞬耳を疑った。
「あの時さ、私、駄目だったでしょ。
先生からも、ランクを下げたほうがいいって言われてたし」
3年前のことがもうずいぶん昔に思えた。
「あ、うん、そうだったね」
梨華の意図がわからぬまま、ひとみは相づちを打つ。
- 382 名前:15 好きな先輩 投稿日:2003年02月17日(月)23時40分40秒
- 「でもね、私はなんとか今の大学に…ひとみちゃんと同じ大学に入れた」
「うん、梨華ちゃんはがんばってたもんね」
「違うの!」
「え?」
突然の梨華の言葉にひとみは驚いた。
「私が頑張れたのは、ひとみちゃんがいたから。
ひとみちゃんと同じ大学に行きたかったからなのよ」
ひとみは黙って梨華の言葉を聞いていた。
「そう、いつもひとみちゃんのおかげ。
センチュリーランドでアルバイトしてた時もそう…
ひとみちゃんがいてくれるから、私は頑張れた。
ひとみちゃんがいてくれるなら、私は何でもできるような気がしてた…」
- 383 名前:15 好きな先輩 投稿日:2003年02月17日(月)23時41分24秒
- 「梨華ちゃん…」
「私はいつもひとみちゃんに助けてもらってる。
でも、私はひとみちゃんに迷惑ばかりかけちゃってる。
この前のもそうよ。
私がひとみちゃんと一緒にいたいっていう勝手な思いだけで、あんなことした…」
そこで梨華は一度、涙をぬぐい
「ごめんなさい」
とひとみをしっかり見つめて言った。
ひとみは優しく梨華を抱きしめた。
「あのね、梨華ちゃん…私も梨華ちゃんに言っておかなきゃいけないことがあるんだ」
- 384 名前:15 投稿日:2003年02月17日(月)23時42分43秒
- >>375-383 15 好きな先輩
更新終了です。
次は水曜日更新です。
- 385 名前:名無しさん 投稿日:2003年02月19日(水)20時09分53秒
- 今日水曜日ですよ
- 386 名前:takatomo 投稿日:2003年02月19日(水)23時24分46秒
- >>385
はい。今から更新します。
- 387 名前:16「、、、好きだよ」 投稿日:2003年02月19日(水)23時25分58秒
「あのね、梨華ちゃん…私も梨華ちゃんに言っておかなきゃいけないことがあるんだ」
ひとみの言葉が梨華の耳を通過した時、梨華の体から自然と力が抜けた。
「私もだよ」
「え?」
「私も梨華ちゃんがいるから頑張れた。
私も梨華ちゃんにいつも助けられてるんだよ」
「好きだよ、梨華ちゃん。ずっと、ずっと好きだった…」
- 388 名前:16「、、、好きだよ」 投稿日:2003年02月19日(水)23時26分29秒
「梨華ちゃん、起きろ〜朝だぞ〜」
いきなり布団をめくられて、梨華は慌てる。
寝ぼけた目に飛び込んできたのはひとみの顔だった。
「ふぇ?どうして?」
状況がイマイチつかめない梨華。
「どうしてって、昨日言ったじゃん。明日からまた一緒に行こうねって」
笑顔でそう言い放つひとみに、梨華は昨日の会話を思い返してみる。
「じゃあ、明日から今まで通り、一緒に行こうね」
「もちろんだよ」
(今まで通りって…そういう意味じゃないんだけどな…)
そう思ったが、ひとみの笑顔を見ていると、そんなことはどうでもよくなった。
「ちょっと待ってて、着替えるから」
「はーい」
返事はしたものの、ひとみはその場を動こうとはしない。
- 389 名前:16「、、、好きだよ」 投稿日:2003年02月19日(水)23時27分18秒
「ちょっと、着替えるんだから出てってよ」
「え〜いいじゃん、見ててあげるよ」
椅子に座り込むひとみを、梨華は捕まえて部屋の外に出した。
「何で〜いいじゃん〜」
ドアの外からの声を無視して梨華はさっさと着替え始める。
(ったく、すぐ調子のるんだから…)
着替えを終え、下に降りてパンをくわえる。
そしてそのまま玄関を出ると、自転車に乗ったひとみの姿があった。
「ありがと」
それだけ言って後ろに飛び乗る。
梨華の家から駅まで、自転車で行くほどの距離でもない。
いつも梨華は自転車をとめるのが面倒だから、歩いていっている。
だけど、そんなことはどうでもいい。
ひとみの背中にもたれながら、梨華は幸せに浸っていた。
そして、駅までついたとき、梨華はふと何かが足りないことに気がついた。
「カバン持ってくるの忘れた…」
- 390 名前:16「、、、好きだよ」 投稿日:2003年02月19日(水)23時27分50秒
「で、上手くいったわけだ…」
「はい。おかげさまで」
「全く…昨日まではこ〜んな死にそうな顔してたのに…」
圭は手で顔をゆがめて言う。
「そんな顔してないですよー」
二人は笑いながら、仕事に戻る。
カウンターに行くと、あさ美の姿が目に付き、梨華は声をかけた。
「あれから圭織さんとどうだった?」
「あ、おはようございます」
梨華に気付き、挨拶をする。
「あれから、色々話してたんですけど、春からお姉ちゃんの所に行くことになりました」
「圭織さんのとこって、北海道に?」
「はい。大学に合格したらですけど」
「そっか、じゃあがんばんないとね」
そう言ったとき、梨華はふとあの二人のことを考えた。
(亜依と希美はどうするつもりなんだろう?)
- 391 名前:16「、、、好きだよ」 投稿日:2003年02月19日(水)23時28分25秒
- 「ねえねえ、亜依ちゃん、もう書いた?」
さっきプリントとペンを手に、亜依の元にやってくる。
「うん。一応書いたよ」
亜依から渡されたプリントを希美は眺める。
医学部医学科という文字が目に映った。
「亜依ちゃん、お医者さんになりたいんだ…」
「うん。希美ちゃんは?」
亜依の問いに、希美は自分の白紙のプリントをそっと隠した。
「え、うん、いろいろと考えてるんだけど…」
(嘘だ。何も考えてない)
進路希望調査と言われて、何も書けなかった自分に、希美は少しショックを受けた。
- 392 名前:16「、、、好きだよ」 投稿日:2003年02月19日(水)23時29分47秒
みんなそうだと思ってた。
みんなまだ何も決めていないものだと思ってた。
将来なんてみんなと話をしたことさえなかった。
ましてや、亜依が、そんなことを口に出したことがなかった亜依が、しっかり考えていたことがショックだった。
希美がこの高校に入ったのも、家から近かったのと、亜依が行くということを知ったからであり、大した理由は無かった。
自分の将来なんて、特に考えたことは無かった。
希美は他の友達を見回し、適当に書いて提出した。
- 393 名前:takatomo 投稿日:2003年02月19日(水)23時30分55秒
- >>387-392 16 「、、、好きだよ」
短っ!もう1章分更新しますです。
- 394 名前:17 やる気!It's EASY! 投稿日:2003年02月19日(水)23時32分00秒
- あれから1月が過ぎた。
ひとみと梨華は相変わらず仲が良く、亜依と希美も夏休みに突入していた。
ただ、今度は亜依と希美の仲がギクシャクしていた。
というより、希美がなんとなく亜依を避ける雰囲気を出していた。
真希も徐々に回復し、リハビリを進め始めていた。
そして、真希は、自身のリハビリとともにもう一つのことを行っていた。
- 395 名前: 17 やる気!It's EASY! 投稿日:2003年02月19日(水)23時32分31秒
- 「1、2、3、そこでもっと足を上げて」
車椅子に座った真希から大きな声が飛ぶ。
病院の中庭。
芝生の真ん中で麻琴が再び踊り始める。
「1、2…違うってば。左の次に右をもっと開くんだって」
「はい」
夏の日差しの中、滴る汗をぬぐおうともせずに、麻琴は再び最初から踊り始める。
だが、何度やり直しても真希の思い描いていたものは実現されない。
(私の体が動いたら…)
麻琴から、ダンスを教えて欲しいと言われた時から、このことはずっと心の中にあった。
口で言っても、それだけで伝わるはずがない。
でも、真希が麻琴の頼みを受けたのは、ダンスに触れていたかったことと、その悔しさをバネにしたかったからだ。
- 396 名前:17 やる気!It's EASY! 投稿日:2003年02月19日(水)23時33分04秒
- 「もっとこう、大きく回すようにさ」
手を大きく振って真希はなんとか伝えようとする。
「こうですか?」
「いや、もうちょっと足を曲げる感じ」
こんな調子で続いていくが、なかなか進まない。
「真希ー時間だよ」
窓からなつみの声が聞こえてくる。
「はーい。すぐ行きます」
真希の代わりに返事をして、麻琴はそっと真希の後ろに行き、車椅子を押し始めた。
真希の足はまだ完全には治りきっていない。
でも、治るまで待っていたら傷ついている神経が死んでしまう。
骨の治りが遅くなってもいい。足が動けばいい。
なつみの説明を受け、真希はそう決断した。
もちろん、治りきっていない骨を動かすのだから、激痛が伴う。
そのことも聞いた上で、真希は決断していた。
- 397 名前:17 やる気!It's EASY! 投稿日:2003年02月19日(水)23時33分42秒
- 「真希、もっと曲げれない?」
真希がどれだけつらい思いをしているか、なつみはよくわかっている。
でも、優しい言葉は一切かけずに、きつく当たった。
真希の負けず嫌いな性格を知ってのことだ。
「わかってるわよ。こんなの簡単に出来るんだから」
右足を懸命に曲げようとするが、足先が震えるだけで曲がらない。
なんとか手を使ってゆっくり曲げていくが、曲げるごとに激痛が襲い、また、伸ばす時も同様だった。
しかし、痛みを感じることは神経が生きている証拠というなつみの言葉から、真希はずっと胸に抱き続けていた。
きっと足は動く。きっと前みたいに踊れる。
きっともう一度ステージに立てる。
その思いが真希の支えとなっていた。
毎日、1時間程の時間。
真希は決して涙を見せることはなかった。
また、同時になつみ、裕子以外にはリハビリを決して見せなかった。
それが真希のプライドであったし、そのことを理解している裕子は、ひとみや梨華たちがやってきても、病室で待たせていた。
- 398 名前:17 やる気!It's EASY! 投稿日:2003年02月19日(水)23時34分16秒
- 「今日はこの辺でやめとこう」
車椅子を押して裕子がやってくる。
「ねえ、私の足は動くよね?」
毎日のように真希はリハビリ後に言う。
「大丈夫。治るよ」
裕子も毎日そう言った。
なつみからどんな報告を受けていても、可能性がある間はあきらめちゃいけない。
そう、たとえどんな報告を聞いていても…
- 399 名前:17 やる気!It's EASY! 投稿日:2003年02月19日(水)23時34分50秒
- 「あ、真希だ。今終わったところ?」
丁度病室の前でひとみと梨華に会った。
「うん。ナイスタイミングだね」
真希に代わって裕子が答える。
「今日はさ、梨華ちゃんと二人でクッキー作ってたんだ」
「クッキー?」
二人の後ろから声が聞こえた。
「あら?あんたたちも来たの?」
梨華の後ろには亜依と希美がいた。
「じゃ、後はお願いね。私はまだ仕事中だから」
「あ、ちょっと待って」
手に持った袋のリボンを解き、梨華はクッキーを取り出す。
「手、汚れてるでしょ?あーんして」
そう言って、裕子の口にクッキーを運んだ。
「ありがと、おいしいよ」
「で、ひとみちゃんは何してるの?」
亜依の言葉に慌ててポカンと空いた口を閉じる。
「いつもそんなことしてるんだ」
ボソッと真希が言う。
「いつもじゃないよ!」
真っ赤になって大声で梨華は反論する。
「コラコラ、こんなところで大声出さない」
裕子に諌められ、5人はさっさと病室に入っていった。
- 400 名前:17 やる気!It's EASY! 投稿日:2003年02月19日(水)23時35分22秒
「こんにちは。みなさん、いらしてたんですか?」
部屋では麻琴が一人で本を読んでいた。
「さっきそこで会ったのよ」
それだけ言って、真希は車椅子から立ち上がろうとする。
左足だけで立とうとする姿は、あまりにも不安定に見え、ひとみたちは手を貸そうとするが、
「触らないで!」
という鋭い声に動きが止まる。
「これくらい、一人で出来る」
ベットに右手をかけ、手の力だけで立ち上がり、ベットに腰をおろす。
それを見て、そっと麻琴はベットの上に右足を上げる。
「ありがと」
「いえ…」
二人の動きをただただ見ているだけだった4人。
それっきり部屋に沈黙が流れる。
- 401 名前:17 やる気!It's EASY! 投稿日:2003年02月19日(水)23時36分06秒
「あ、クッキー焼いてきたんだ。みんなで食べようよ」
パンッと手を鳴らし、気まずい空気を破ろうと、梨華は先ほどの袋を再び開く。
「じゃあ、私は何か飲む物買ってくるよ。みんな何がいい?」
みんなそれぞれに好きな飲み物を言っていく。
ひとみはカバンから財布を取り出して、ポケットにしまう。
「えっと、コーヒー2本に、ポカリ、ミルクティー…真希は?」
「コーラ」
真希の口から出た言葉はそれだった。
「駄目だよ。炭酸なんて。真希は牛乳しか駄目」
ひとみは意地悪く笑って部屋を出て行く。
「そういえばさ、亜依ちゃんと希美ちゃん、麻琴ちゃんもか、大学とか決めた?」
「一応決めてます」
亜依がすぐに答える。
「私は大学には行きません」
一歩遅れて麻琴は言った。
「そうなんだ?どうするの?」
梨華の問いかけに、麻琴はそっと真希のほうを見る。
「いいよ」
真希は頷く。
- 402 名前:17 やる気!It's EASY! 投稿日:2003年02月19日(水)23時36分39秒
- 「私、高校卒業したら、アメリカに行こうと思ってるんです」
いきなりの告白に、真希を除く3人は驚いた。
「真希さんに頼んでもらって、ATSUKOさんに一度私のダンスを見てもらうことになりました。
それで、もしOKなら、行くつもりです」
みんなが話す中、希美は一人疎外感を覚えていた。
「希美ちゃんは?」
梨華の言葉に希美はビクッとし、
「一応…考えてます」
目を合わさずにそれだけ言った。
「そっか〜みんな考えてるんだね。圭さんのところにさ、圭織さんの妹もバイトしてるんだけど、その子は獣医になりたいから北海道に行くって、がんばってるのよ」
「圭織さんに妹いたの?」
同じ医者だからなのか、亜依が興味津々といった様子だ。
「うん。あさ美ちゃんて言ってね…」
梨華がそこまで言った時、ひとみが戻ってきた。
- 403 名前:17 やる気!It's EASY! 投稿日:2003年02月19日(水)23時37分06秒
- 「ごめんごめん、万札しかなくて、くずすのに時間くっちゃった」
そう言ってみんなにジュースを渡していく。
「あれ?希美ちゃん、どうしたの?」
希美が帰ってくる前と違って、元気が無いことにひとみは気付いた。
「なんでもないです」
笑顔を作り、ひとみからジュースを受け取る。
「あ、牛乳は売り切れてたから、飲むヨーグルトにしといた」
ひとみから渡された紙パックをしげしげと見ている真希に、声をかける。
「これってさ、飲んだら余計に喉かわかない?」
「気にしない気にしない。カルシウムいっぱいだよ」
早速クッキーをつまみながら、ひとみは答える。
真希は、なおも不満そうな顔だったが、仕方なくストローを刺して飲み始めた。
- 404 名前:17 やる気!It's EASY! 投稿日:2003年02月19日(水)23時37分36秒
- 「それじゃ、真希、またくるね」
1時間ほど経っただろうか、クッキーも綺麗に処理され、日が傾きかけたところでひとみ達は真希の部屋を出た。
「あ、私バイトだから、ひとみちゃん、この子達を送っていってあげて」
「りょーかい。また後でね」
「うん」
病院を出たところで、梨華と別れ、ひとみは2人を連れて行く。
そして、亜依を送り、希美と二人きりになった時、希美は口を開いた。
- 405 名前:17 やる気!It's EASY! 投稿日:2003年02月19日(水)23時38分15秒
- 「ひとみちゃんって、梨華ちゃんがいるから、今の大学受けたの?」
ひとみはしばらく考え込んでから
「それもあるけど、それだけじゃないよ。たぶん、梨華ちゃんもそうじゃないのかな?」
「他の理由って?」
「自分が何をやりたいのかはっきりわからないから、何でもできるように今の大学にした」
「どういうこと?」
「梨華ちゃんは先生になりたいって夢があるからいいんだけど、私はまだ自分がはっきり何やりたいかわからない。
でもさ、もし、今後自分がやりたいことが見つかった時に、それができるように、大学に行ってるんだよ。
やりたいことがみつかっても、それが出来ない場合だってあるじゃん。
それはもう嫌だから。だから、勉強して今の大学に入った」
ひとみの言葉に、希美はふと思い出した。
ひとみがアイドルになりたくてなれなかったことを。
- 406 名前:17 やる気!It's EASY! 投稿日:2003年02月19日(水)23時39分16秒
- 「よくわかんない」
「ハハ、希美ちゃんも進路前で悩んでるんだね。
でもね、一つだけ覚えておいて欲しいんだ。
自分の選択は否定しちゃいけないよ。
自分が苦しんで出した選択を否定するのは、自分を否定することになるんだから」
「それもよくわかんないよ…」
「いいよ。大人になればわかるよ。きっと」
希美の頭をポンポンと叩く。
そこで、二人はその話を終えた。
残りは他愛も無い話をしながら、希美の家まで二人はゆっくり歩いていった。
- 407 名前:takatomo 投稿日:2003年02月19日(水)23時40分56秒
- >>387-392 16 「、、、好きだよ」
>>394-406 17 やる気!It's EASY!
更新終了です。疲れた…
- 408 名前:U 投稿日:2003年02月23日(日)04時34分45秒
- はじめまして作者さん
一気に読みました
続き期待してます。
がんばってください。
- 409 名前:takatomo 投稿日:2003年02月24日(月)02時52分22秒
- >>408
ありがとうございます。
あと少しですけれども、最後までお付合いいただけるとうれしいです。
- 410 名前:18 未来の扉 投稿日:2003年02月24日(月)02時53分31秒
- 楽しい一夏休みはすぐに過ぎ去り、いつの間にか風も冷たくなっていき、
季節は秋へと移っていった。
相変わらずひとみと梨華の仲はいい。
真希のリハビリも進み、麻琴のダンスも少しずつだが、上達していった。
そんな時だった。
先日行われた模試の結果を受け取り、希美は席についた。
亜依の方をチラッと見る。
周りにはたくさんのクラスメイトが集まっていた。
時折聞こえる喚声から、亜依の結果をおのずと知る。
ほんの少し前までは、希美もその輪の中に入って、一緒に騒いでいた。
希美が自分の結果に目を戻すと、自分の前に人が立っていることに気付いた。
- 411 名前:18 未来の扉 投稿日:2003年02月24日(月)02時54分07秒
「辻さん、テストの結果どう?」
声をかけられ、顔を上げる。
希美が自分の前に立っている人物の名前を思い出すのに、少し時間を要した。
「あ、里沙ちゃん、どうしたの?」
ようやく名前を思い出し、口に出す。
ただのクラスメイトという関係だけで、特に話した事がない彼女。
希美は少し驚いていた。
「こないださ、聞いたんだけど、私と志望校一緒だったから…」
志望校?
希美は紙を見る。
周りの人を見て適当に書いた大学。
何をやってるのか、どこにあるかさえわからない大学名が並んでいるが、希美はそのことは言わなかった。
「そうなの?私は、微妙だな〜」
DとかEとか書かれた用紙を里沙に見えるように反対に向ける。
「そっか。私も同じようなもんだよ」
里沙は、手にした紙を希美に見せる。
そこにも希美と同じく、DとかEとかいう文字が並んでいた。
- 412 名前: 18 未来の扉 投稿日:2003年02月24日(月)02時54分52秒
- 「ねえ、辻さんって加護さんと仲いいでしょ?」
「え、うん。そうだけど…」
「加護さんって頭いいよね。勉強の仕方とか聞いたことある?」
亜依の方を見て里沙は言う。
「ん〜無いなぁ。亜依ちゃんもいつ勉強してるかわかんないんだよね。
いつも私と遊んでるのに…」
希美も亜依の方に視線を向けると、亜依はそれに気付いたらしく、こっちにやってきた。
「希美ちゃん、どうかした?里沙ちゃんと一緒にこっち見て」
「何でもないよ。亜依ちゃんは頭いいなって話をしてただけ」
「そう?」
「そうだよ。ね、里沙ちゃん?」
「そうそう」
里沙がそう言ったとき、希美はさっと亜依の手から結果の用紙を抜き取った。
「ほら〜数学なんて満点近いじゃん!」
「あ、返してよ〜」
「いいじゃん、ちょっとくらい…」
亜依を制し、ふと下の方に目をやってみると、希美と同じくDやEといった数字が並んでいた。
(え?どうして?)
希美がそれに気を取られている隙に、亜依は用紙を取り返した。
- 413 名前:18 未来の扉 投稿日:2003年02月24日(月)02時55分29秒
- 「亜依ちゃん、どうして?」
いきなりの希美の質問に、亜依はきょとんとした様子だった。
「どうして亜依ちゃん、DとかEなの?」
「ああ、私、国語とか社会とか苦手なんだ…だから…」
「私も社会苦手です」
横からそう言った里沙。
その時、二人の頭には里沙が日本史の授業で当てられた時に発した「ピンチャポー」という単語がよぎっていた。
「あ、希美ちゃん、今日さ、梨華ちゃんの所に行くんだけどさ、その時に梨華ちゃんに聞いてみようか?」
「何か用あるの?」
「うん。こないださ、バイト代入ったら奢ってくれるって約束したんだ。
確か、今日は給料日だからさ」
「そうなの?じゃあ行く行く」
こうして放課後、二人は電車に乗り、キッチンズバーガーに向かった。
- 414 名前:18 未来の扉 投稿日:2003年02月24日(月)02時56分10秒
- 「いらっしゃいませ。どうしたの?二人そろって?」
カウンターにいる梨華が声をかける。
丁度ご飯前の時間だったため、店内にも人がまばらだった。
「この前の約束覚えてないの?」
亜依は不満そうに言った。
梨華はしばし宙を見据えて考え込んで、
「あ、奢るって約束か。バイト終わるまで待ってくれない?」
と言った。
二人は頷き、店内のテーブルに腰をかけた。
そして、しばらくすると、梨華が二人にハンバーガーとジュースを運んできた。
「これは奢りとは別ですよね?」
すかさず希美が言う。
「わかった。わかったから。後でひとみちゃんも来ると思うから、バイト終わるまで待ってて。
それと、ちゃんと家の人には電話しときなさいよ」
それだけ言い残して、梨華は行ってしまった。
- 415 名前:18 未来の扉 投稿日:2003年02月24日(月)02時56分41秒
- 二人はさっそくハンバーガーを口に運ぶ。
「あ、あれがあさ美ちゃんなのかな?」
亜依が注文をテーブルに運ぶあんなの子を指差す。
「どれどれ?」
振り返って亜依の指先を見る。
「圭織さんとあんまり似てないね。梨華ちゃんがわからないのも無理ないかも」
「そうかな〜雰囲気がなんとなくそんな感じがするけどな」
希美の感想に反論するように亜依は言う。
そして、あさ美が再びカウンターに戻っていくと、二人はまた、黙々と食事を続けた。
「おっす。珍しいじゃん、あんた達が来るなんてさ」
二人がここに来て1時間ほど経っただろうか、ようやくひとみがやってきた。
「今日は梨華ちゃんに奢ってもらうんだ〜」
はしゃいで言う二人。
「らしいね。私もついでに奢ってくれないかな…」
「ひとみちゃん、ヒモになっちゃ駄目だよ」
ひとみのぼやきにすかさず亜依がつっこんだ。
「そんな言葉どこでおぼえくんのさ。失礼な」
そうやって話しているうちに、バイトが終わったらしく、着替えた梨華がやってきた。
- 416 名前:18 未来の扉 投稿日:2003年02月24日(月)02時57分11秒
- 「ごめーん。お待たせ」
梨華を拍手で迎える亜依と希美。
「あのさ、あさ美ちゃんも一緒に行ってもいいかな?」
「もちろん」
三人の声が揃った。
「じゃあ、行こうか」
そう言ってみんな、梨華について店を出る。
ミライ百貨店を出て、駅を通り抜け、商店街に出た。
「ねえ、どこに行くの?」
何も言わず先頭を歩いている梨華に、希美は尋ねた。
「もうすぐ、つくよ。ほら、見えた」
梨華の指す方向には「あんブラン」と書かれた看板がみえた。
(あんブラン…)
「ひとみさん、この先にあんブランって、知り合いのお店があるんですよ」
愛のことがひとみによぎった。
あれから一度も会っていない。
心配じゃないわけが無いが、あんな別れ方をした以上、ひとみから連絡をとるわけにはいかなかった。
- 417 名前:18 未来の扉 投稿日:2003年02月24日(月)02時57分45秒
- 「どうかしたの?」
梨華がそっと尋ねてきた。
「ん…何でもないよ」
笑顔を作り、ひとみは答えた。
梨華はまだ疑っているように見えたが、それ以上何も言わなかった。
梨華が一人で買っている間、他のみんなは店の前に並べられたテーブルに座って待つ。
「ねえ、あさ美ちゃんって国語とか社会は得意?」
「そうでもないですよ。普通くらいです」
「あのさ、勉強の方法教えてくんない?」
亜依たちが3人で話している時、ひとみは不意に通りの向こうにいるカップルが目にとまった。
(あれは…愛?)
白い服にスカート。手に持っている黒い皮のケースはサックスに違いない。
こっちに気付いて欲しい気持ちと、そのまま通り過ぎ去って欲しい気持ちが同時に起こる。
チラッとひとみは梨華の方を見た。
まだ、梨華は会計を済ませていなかった。
愛はこちらに向かって歩いてくる。
ひとみに気付いた様子もなく、楽しそうに話をしている。
- 418 名前:18 未来の扉 投稿日:2003年02月24日(月)02時58分17秒
- 再び梨華の方を見る。梨華は財布を取り出したところだった。
愛はどんどん近づいてきた。
そして、
「あ、ひとみさん、こんばんは」
たとえ気付いていたとしても、無視されると思っていたひとみ。
「ひ、久しぶり」
そう返すのがやっとだった。
「知り合い?」
「うん。先輩」
二人の会話が聞こえてくる。
そして、二人は軽く会釈をして行ってしまった。
「ひとみちゃん、知り合い?」
急に聞こえてきた梨華の声に、ひとみはビクッとした。
「うん、まあ、そんなとこ…」
あいまいな返事をする。
もっと追求されるかと思っていたが、希美達がすぐに梨華のトレイからアンブランを取り始めたため、そのことについては流れてしまった。
ホッと胸を撫で下ろすひとみだが、それは、愛が元気にやっているということがわかったことの安堵も含まれていた。
- 419 名前:18 未来の扉 投稿日:2003年02月24日(月)02時59分52秒
- ちょうどその頃だった。
なつみが家に着いたのは。
ドアを開け「ただいま」と声をかけても返事は無かった。
TVの声が漏れているリビングをのぞくが誰もいない。
父が消し忘れて寝ているのかと思い、TVを消して、キッチンに向かう。
キッチンも電気がつけっぱなしだった。
「もう、ちゃんと消してよね」
あきれたように言うなつみの視界の隅に、黒い物体があった。
視線を慌ててそちらに向ける。
なつみはその黒い物体が自分の父ということを理解するのに、数秒を有した。
そして、何か行動に移すのにさらに数秒を有した。
「お父さん!」
静寂の中、なつみの言葉だけが響いていた。
- 420 名前:takatomo 投稿日:2003年02月24日(月)03時01分01秒
- >>410-419 18 未来の扉
更新終了です。
あと更新は3回です。よろしくお願いします。
- 421 名前:19 Do It! NOW 投稿日:2003年02月26日(水)00時03分34秒
フローリングに広げられた赤い液体と、その横で倒れている父の姿。
なつみは救急車の中で何度もその光景を思い返していた。
簡単な検査の後、手術はすぐに始められた。
詳しいことは検査待ちだが、消化管の出血を止めることが第一だった。
数人の医者が慌しく動く中、なつみは壁に寄りかかるようにして椅子に腰掛けていた。
周りの喧騒がまるで別世界のように感じられた。
医者だからわかることがある。
治る病気と治らない病気。
この場合は完全に後者に違いない。
検査の結果が出る前から、なつみはなぜか確信していた。
治らなければ死ぬのに、治らない病気。
治さなければいけないのに、治せない自分。
「これじゃ、真希の時と一緒じゃない!」
頭をかきむしって叫ぶ。
- 422 名前:19 Do It! NOW 投稿日:2003年02月26日(水)00時05分48秒
「なつみちゃん、お父さんの意識戻ったよ」
手術室の扉が開き、裕子が顔を出した。
黙って立ち上がり、なつみは手術室から運び出される父のところへいく。
「お父さん…」
「すまんな、お前に心配かけて」
「ううん。そんなことない」
父は検査の結果が出るまで入院することになっている。
もちろん、なつみもその夜はそのまま付き添って病院に泊まった。
翌日、なつみは一人で裕子に呼ばれた。
検査の結果が出たのだった。
「昨日、内視鏡手術を行なった際、組織採取し、検査したところ…」
医師は言い出しにくそうに、なつみの方を見る。
「言ってください。私も医者ですから、覚悟は出来ています」
医師は間をおくと、はっきりした声で口にした。
「悪性の腫瘍が認められました」
「そうですか」
医師の言葉が終わらないうちになつみはそう言った。
まるで準備していたかのように…
吐血を見た際に、なつみは幾つかの病名を想定していた。
そして、思い描いていたものの中で最悪のもの。
胃の悪性腫瘍。
つまり、胃癌だった。
「父には、私の口から伝えます」
平板な声で言い、その場を離れた。
- 423 名前:19 Do It! NOW 投稿日:2003年02月26日(水)00時06分28秒
- 病室にどの道を通って戻ったのか覚えていない。
「どうした?顔色が悪いぞ」
父のその声で、なつみは自分が病室に帰ってきたことに気付いた。
「お前まで倒れられたら大変なんだぞ。私のことはいいから、お前はちゃんと休め」
「お父さん」
なつみは父の布団に顔を伏せた。
泣いている顔を見られたくはなかった。
父はそっとなつみの頭を撫でた。
「わかってるさ。自分の体なんだ」
「そんなこと言わないでよ。きっと、治るって」
自分がどれだけ無責任なことを言っているかよくわかっている。
ましてや、自分よりはるかに優れた医者である父を前にしているのだ。
けれども、なつみは言わずにはいられなかった。
「泣くんじゃない。まだ助からないわけじゃない。
腫瘍が小さいなら、転移が起こってないなら十分助かるんだ」
「でも…」
「今からきちんと検査するから、その結果が出るまでわからないんだ。
それとも、お前はそんなに私に死んで欲しいのか?」
冗談交じりに父は言ったが、なつみは更に泣くだけだった
- 424 名前:19 Do It! NOW 投稿日:2003年02月26日(水)00時07分21秒
「それと、おそらく手術をするだろうが、その時はお前に頼もうと思ってる」
「え?」
なつみは驚いて顔を上げる。
「もうすぐ1年半経つだろう?大丈夫だ。お前はすごく成長した。
初めて来た時は、見てられなかったが、今なら大丈夫だ」
「そんなの、ダメだよ。私なんか…」
「お前に足りないのは経験だけだ。
知識だけなら私より上かも知れん。だから、お前がいい医者になるには経験することが一番だ」
「でも、もし失敗したら…」
「失敗?そんなことをまだ言っているのか?
てっきりこの前の件で理解したんだと思ってたがな」
- 425 名前:19 Do It! NOW 投稿日:2003年02月26日(水)00時09分53秒
- 「で、やるの?やらないの?」
なつみから一連のことを聞いた真希は尋ねた。
「できないよ。私よりもっといい先生はたくさんいるんだよ。
なのにさ、私がやるなんて…」
「あんたさ、私に初め何て言った?
可能性はある。0じゃないけどあるんだ。だから治るんだ。
そう言ったよね?」
なつみは黙って頷いた。
「可能性あるならやってみれば?
そりゃ、他の先生のほうが可能性は高いかもしれないよ。
でもさ、あんたはこれから医者としてやってくんでしょ?
ずっと逃げっぱなしで他の人に譲ってても仕方ないでしょ?
あんた自身がやっていかなきゃ、あんたはこれから誰も助けられないよ」
「でもさ…」
そう言いかけたなつみの口を、真希は手でふさいだ。
- 426 名前:19 Do It! NOW 投稿日:2003年02月26日(水)00時10分41秒
「でもじゃない!とにかくやってみなよ。
こんな大事な手術を任されるチャンス、二度とないかもしれないよ。
やりなよ。周りの人に助けてもらいながらでもいいじゃない」
その言葉を聞きながら、なつみは思わず吹き出してしまった。
「何?何か変なこと言った?」
不機嫌そうに真希は言った。
「ごめんごめん。圭織の言ったことを思い出しただけ」
「何それ?」
「ありがとね、真希。私がんばれるかもしれない」
真希が事情をよくつかめないままに、なつみはそれだけ言って部屋を出た。
- 427 名前:19 Do It! NOW 投稿日:2003年02月26日(水)00時11分21秒
- 「それではオペを始めます。よろしくお願いします」
自分が自分じゃないみたいだった。
緊張している自分と、ひどく落ち着いている自分がいた。
まるで、ビデオを見ているように、自分の手が勝手に動いていく。
限局癌で、転移は無し。
検査の結果と同じことを確認する。
組織を切除。
ゆっくりと、しかし大胆に。
胃の下方を取り除いていく。
裕子の声がバイタルの変化を知らせる。
続いて縫合。
外科治療で何度も行なっていることだが、手術室で行なうと、全く別のものに感じられる。
手術開始から3時間が過ぎた頃、ようやく手術は終了した。
「終わった」
思わずなつみから安堵の声が漏れた。
手術は無事成功した。
- 428 名前:takatomo 投稿日:2003年02月26日(水)00時12分11秒
- >>421-427 19 Do It! NOW
更新終了
残り2回です。
- 429 名前:20 LOVEセンチュリー 投稿日:2003年02月27日(木)23時59分59秒
- 夢を見た。
スポットライトの中で一人、踊っている私。
そして、スポットライトはだんだん小さくなっていく。
私はそれに抗うように、いっそう大きく踊る。
けれども、光はどんどん小さくなっていく。
そして、最終的には真っ暗になる夢。
そこで目が覚めた。
時計に目をやると、短針は5時を刺していた。
もう一度眠りにつこうとしたが、嫌な夢を見た後で、変な高揚感のせいでなかなか寝付けない。
寝返りをうとうとしたその時、私は自分の体の異変に気付いた。
秋はとうに過ぎ去り、凍てつくような寒さに包まれる12月。
寒さで足先の感覚が麻痺しているんだと、私は思った。
そう思いたかった…
- 430 名前:20 LOVEセンチュリー 投稿日:2003年02月28日(金)00時00分55秒
- 「おはよー真希」
朝になり、なつみがやってくる。
最近、なつみがやってくるのは朝のこの時間帯だけだった。
「おはよう」
目線も合わせずに真希は言う。
気付かれたくなかった。
真希は、なつみが出て行くまで全く動こうとしなかった。
じっとなつみの一挙一動を見つめる。
「ん?どうかした?」
「何にもないよ。それよりさ、お父さんはもうすぐ退院?」
その問いに、なつみの答えが帰ってくるのには時間を要した。
「転移はないようだし、もうすぐだね」
なつみは複雑な顔でそう言った。
「今さら、私に気を使わなくていいよ」
「真希ももう少しだと思うんだけどね。じゃ、行くね」
「うん」
扉が閉まる音を聞いてから、真希はベットに腰掛けるようにして、足を下ろす。
そして、足を上げてみる。
左足は大丈夫。
つま先が天井を向いていた。
そして、次は右足。
- 431 名前:20 LOVEセンチュリー 投稿日:2003年02月28日(金)00時01分33秒
- 真希は自分の体が震えていることに気付いていなかった。
膝をゆっくり伸ばしていく。
骨折はすでに治っている。
固まった筋繊維が伸びる度に激痛が走るが、必死で足を伸ばした。
足はきちんと伸びた。
真っ直ぐに伸びていた。
つま先までが1本の棒の様に真っ直ぐ。
どんなに力を入れても、つま先が上に向くことはなかった。
そもそも、足首に力が入っているのかさえも真希にはわからなかった。
「嘘だ。嘘だ…」
念仏のように呟きながら、ベットの上に戻した右足を何度も叩く。
けれども、拳の痛みのみで、足先に痛みは起こらなかった。
「嘘だ、何で?何で?」
真希は声の限り叫んだ。
「どうして?ここまで大丈夫だったじゃん」
- 432 名前:20 LOVEセンチュリー 投稿日:2003年02月28日(金)00時02分13秒
- 治らないと思わなかったことがないわけではない。
リハビリ中も、ずっとその不安はあった。
仮に治ったしても、激しい動きが出来なくなることも、薄々感づいていた。
それでも、希望があったのは、なつみの言葉、裕子の言葉が信じてたらだ。
そして、リハビリを始める前に、なつみから聞いたことがあった。
「もし、治る前に神経が死んでしまったら、もうダメだよ。
その時のことも覚悟して、リハビリをやらなきゃいけないんだ」
なつみの言葉を支えにしてきた自分だったが、まさかなつみの言葉に絶望させられるとは思わなかった。
真希は布団を頭からかぶり、泣き続けた。
- 433 名前:20 LOVEセンチュリー 投稿日:2003年02月28日(金)00時02分54秒
真希の様子に最初に気付いたのは裕子だった。
朝食を運んできた際、布団に包まった真希に気付いた。
すぐに検査は行われたが、結果は明らかだった。
真希の右足首以下の神経はもうダメだった。
しかし、唯一の救いは、真希は以前のような自暴自棄を起こさなかったことだ。
ショックから立ち直っているわけでは決して無い。
けれども、自分の状況をしっかり理解していた。
そして、相変わらず麻琴にダンスを教えていた。
麻琴は最初、真希の前で踊ることに迷いがあった。
もう踊れない真希の前で、その本人に教えてもらって踊ること。
自分がどれだけ残酷な事をしているか、真希の気持ちを思うと、とてもじゃないが、無理だった。
- 434 名前:20 LOVEセンチュリー 投稿日:2003年02月28日(金)00時03分27秒
しかし、真希は麻琴にこう言った。
「私のために踊ってくれない?あんたは私の希望なんだ」
真希は、自分が掴みかけていた夢を、麻琴に託そうとしていた。
麻琴は断れるわけがなかった。
そして、その日以来、麻琴のダンスに変化が生じてきた。
それは、センチュリーランドのファイナルステージ後の真希のようだった。
「ダンスはね、ハートで踊るもんなんだよ」
ファイナルステージの前日、真希が希美に言った言葉。
それが、それこそが麻琴のぶつかっていた壁であった。
誰かのために踊る。
技術以上に、ハートで踊る。
真希の言葉でそれを理解することができた彼女は、飛躍的に上達を始めた。
- 435 名前:20 LOVEセンチュリー 投稿日:2003年02月28日(金)00時04分08秒
そして、真希に救われた人物がもう1人いた。
センター試験が迫っているというのに、まだ迷っていた希美。
私立の推薦ですでに進路が決定している人がクラスで現れてきた中、希美は誰にもその悩みを打ち明けることができない状態だった。
亜依もそんな希美に気付いていたが、何度聞いても希美は話そうとせず
「亜依ちゃんにはわかんないよ」
と返されるだけだった。
亜依やあさ美にそのことを聞き、梨華が希美に聞こうとしたが、希美の悩みをそれとなく察したひとみがそれを制した。
「薄情者」「冷血漢」
梨華からは散々文句を言われたが、ひとみは「大丈夫だから」と希美をそっとしておいた。
希美から言ってこなければ、意味が無いということをひとみはよくわかっていたから。
- 436 名前:20 LOVEセンチュリー 投稿日:2003年02月28日(金)00時05分11秒
そうして希美が真希の元に一人でやってきたのは、冬休み最後の日だった。
部屋に入ってくるなり黙ったままの希美。
真希は希美が何か言うのをじっと待っていた。
「あのね、夢ってさ、どうやって持つの?」
希美は一言一言、ゆっくり話し始めた。
「そうだね、何でもいいんだよ。自分が一番好きなこと、自分が一番やりたいこと。
夢なんて大げさなに考えなくてもさ、自分がこうしたいって思うこと、それが夢なんじゃないかな?」
- 437 名前:20 LOVEセンチュリー 投稿日:2003年02月28日(金)00時05分50秒
- 「もし、自分がやりたいことがわからなかったら?」
「自分がやりたいことを見つける方法か…
何でも経験してみることじゃない?
世の中には希美ちゃんが知らないことって山ほどあるでしょ?
私もそうだよ。
私はダンスを知って、ダンスがやりたいと思ったから、それが夢になった。
でもね、もしかしたら、私にとってダンス以上に面白いと思うものがあるかもしれない。私がそれを知らないだけでさ。
だから、いろんなことをやってみるんだ。
それが一番いいよ。
小さい頃からの夢をずっともってる人はすごいかもしれない。
でも、それは自分の可能性を制限しているだけかもしれないんだよ」
「自分の可能性?」
「そうそう。希美ちゃんにも他の人が持っていないようなすごいものがあるかもしれない。
だから、それを見つけるために大学にいくのもいいと思うけどね」
それを聞いた時、希美はやっとひとみが言ったことの意味がわかった。
「ありがとう」
部屋にやってきた時とは正反対の明るい顔で、希美は言った。
- 438 名前:20 LOVEセンチュリー 投稿日:2003年02月28日(金)00時06分27秒
そして、寒さが一段と厳しくなっていく2月。
それぞれが夢のための努力してきた結果が試される時がきた。
また、真希もあることに挑戦し始めていた。
「真希、ほんまにやる気なんやな?」
「うん。私はもう、こんなことしかできないけど、やりたいんだ」
「わかってる?うちらはプロなんやで?
怪我のことなんか、関係ないで。ちょっとでもパフォーマンス悪かったら辞めてもらうで」
「当たり前じゃん。じゃあ、お願いね」
受話器を置く真希。
電話の相手はほかならぬATSUKOだった。
「夢は終わらないんだ。自分があきらめない限り」
自分に言い聞かせるようにそう呟いた。
- 439 名前:takatomo 投稿日:2003年02月28日(金)00時07分59秒
- >>429-438 20 LOVEセンチュリー
更新終了。
あと1回はエピローグだけとなります。
最後までお付合いいただけたら幸いです。
- 440 名前:エピローグ 投稿日:2003年02月28日(金)23時57分31秒
- ――――――――
私ね、こうして10人が出会えたことって偶然じゃない気がしてるんだ。
ファイナルショーで踊れたことも
手術がうまくいったのも
ATSUKOさんに出会えたのも
ファイナルショーでいっぱいお客さんが来てくれたのも
きっと一人でも欠けてたらそれは起こらなかった。
でも、それは起こった。
それはきっと何か他の意味がある出会いだったのかもしれない。
もしかしたらね、この出会いを通してそれぞれがそれぞれの夢をかなえていき
なさいっていう、神様からのメッセージだったのかなって。
私はそう思うんだ。
――――――――
- 441 名前:エピローグ 投稿日:2003年02月28日(金)23時58分04秒
「夢か…」
「あ、真希さん、ちょうど起こそうと思ってたとこなんですよ。
もうすぐ着陸ですよ」
「ん、ありがと」
「みなさん、元気にしてますかね?」
麻琴と共に日本を去ってから、3年の月日が流れていた。
麻琴だけでなく、真希はコレオグラファーとして、ATSUKOの下で勉強をしていた。
不自由な右足は、器具の助けを借りながら、真希は専属のダンサーをいくつかかかえるほどにまでなった。
その間、なつみは父や裕子と共に、病院で忙しい生活を送っていた。
「体良くないんだから、私に任せて辞めてもいいのに…」
なつみはそんな話を電話でよくしてきた。
- 442 名前:エピローグ 投稿日:2003年02月28日(金)23時58分37秒
- 圭は変わらずキッチンズバーガーで働いている。
少し前にやってきた主任に思いを寄せているという話を梨華から聞いたことがある。
ひとみはみちよと同じ関東新聞社に入社。
梨華は大学卒業と同時に高校の先生。
もちろん、二人共今でも大変仲がいいらしい。
亜依は1度大学受験を失敗するが、1年後、念願の医学部に合格。
あさ美も圭織の所に住みながら、大学に通っている。
希美はひとみや梨華と同じ大学で今なお、自分の夢を探している。
最近はみちよやひとみの影響か、新聞記者に関心があるとかないとか…
里沙は一旦大学に進学するが、本当に自分がやりたいことをみつけ、デザイン学校に進むことになった。
彼女もまた、希美と同じく、自分の夢を模索している途中だったのだ。
- 443 名前:エピローグ 投稿日:2003年02月28日(金)23時59分23秒
圭織は相変わらず全国を飛び回って仕事をしており、真里も映画の主演が決まり、また、真希の下にいくつかの依頼がくることも多かった。
愛は大学卒業を控え、一流サックス奏者として日本を初め、海外からもたくさんの声がかかっている。
「もしかしたらね、この出会いを通してそれぞれがそれぞれの夢をかなえていきなさいっていう、神様からのメッセージだったのかなって」
夢の中の言葉をリフレインする。
- 444 名前:エピローグ 投稿日:2003年03月01日(土)00時00分09秒
夢は見なけりゃ始まらない。
そう思って抱いた夢。
それを実現しようと努力した結果、かなったとしても、かなわなかったとしても、そこで夢は終わりじゃない。
その先には新たな夢が待っているのだから。
「ああ…たぶんね」
しだいに高度を下げていく飛行機の中、真希はそれだけ言った。
- 445 名前:エピローグ 投稿日:2003年03月01日(土)00時00分51秒
LOVEセンチュリー2 〜夢の続きは終わらない〜FIN
- 446 名前:takatomo 投稿日:2003年03月01日(土)00時02分07秒
- あとがきにかえて
更新が大変遅く、その割に更新量が少ない中、読んでいただいた皆様、ありがとうございました。
途中で話を30%くらいカットしましたので前半と後半の時間の進み具合が違いすぎてます。
特に新垣に関しては…(汗)
ごめんなさい、ごめんなさい。
いろんな所で何度も言ってますが、嫌いってわけじゃないんです。
(かといって特別好きでもないですが(爆)
書きにくいんです。あの人。
と、言い訳はこれくらいにして…
この作品を書き始めて、DVD見直しましたって言ってくれる人がいて感動でした。
こんな駄作のために、そこまで時間を割いていただいてありがたい限りです
本当に、お付合いいただいてありがとうございました。
- 447 名前:takatomo 投稿日:2003年03月01日(土)00時10分47秒
- まとめ
>>221-224 プロローグ >>336-340 11 わかってないじゃない
>>225-230 1 いいことある記念の瞬間 >>345-350 12 私のすごい方法
>>232-239 2 電車の二人 >>354-360 13 センチメンタル南向き
>>241-244 >>364-371 14 T WISH
>>249-252 3 A Rainy Day >>375-383 15 好きな先輩
>>258-270 4 会えない長い日曜日 >>387-392 16 「、、、好きだよ」
>>272-281 5 さみしい日 >>394-406 17 やる気!It's EASY!
>>285-292 6 Memory青春の光 >>410-419 18 未来の扉
>>297-305 7 WHY >>421-427 19 Do It! NOW
>>307-314 8 時間よ止まれ >>429-438 20 LOVEセンチュリー
>>321-327 9 乙女の心理学 >>440-445 エピローグ
>>329-332 10 サマーナイトタウン
- 448 名前:takatomo 投稿日:2003年03月01日(土)00時12分10秒
- あ、半角スペース反映されないんだった…
上のめちゃめちゃっす。
要するに>>221-445 ってことでお願いします。
- 449 名前:takatomo 投稿日:2003年03月01日(土)00時14分06秒
- 最後に、感想などをいただけると大変嬉しいです。
あと、このスレタイになっているlead to the futureも
作者HP(http://members.tripod.co.jp/pmtakatomo/index.html)で完結しますので、そちらの方もよろしく。
- 450 名前:takatomo 投稿日:2003年03月01日(土)00時16分15秒
- ホントの最後に最後です。
SEEKでの次作はファンタジーものになる予定。
(というかもう書き始めてるから決定なんですが)
オールキャストで、全編通しての主人公は石川と飯田さんです。
HPでの次作はラブセン2のアナザーストーリー(アメリカ編)を書こうかなと思いますが、こちらは完全に未定。
プロットすら完全に作ってませんので(汗)
一応初めましたらこのスレでもHPでも告知はします。
予定では3月半ばくらいだと思います。
そちらの方もよろしければお願いします。
- 451 名前:takatomo 投稿日:2003年03月01日(土)00時17分14秒
- 最後の最後の最後(w
読者の皆様、本当にありがとうございました。
- 452 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月01日(土)01時09分49秒
- 完結、お疲れ様でした。
夢は見なけりゃ始まらない・・深い言葉ですね。
このミュージカル当時と今と、娘。たちもいろんな意味で変わって来ている
のかもしれませんが、やっぱり根底にはこの精神が宿ってると思いたいです。
ひとつなくしたからもう終わり、そういう夢にはしたくないものです。
なんか訳わかんなくなりましたが、HPの方も読ませていただいてますよ。
また次回作、いつか読みたいです。
- 453 名前:takatomo 投稿日:2003年03月01日(土)23時28分20秒
- >>452
ここだけでなくHPの方まで、読んでいただき本当にありがとうございます。
この作品を通して、夢ということを少しでも考えていただけるなら、大変うれしいことです。
気の利いたお礼ができない自分が悲しい…
本当にありがとうございました。
次回作もぜひともお付合いください。
- 454 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月02日(日)00時39分36秒
- 悲しいけど、それぞれが希望のもてるラストで良かったです。
個人的にミュつながりでこんごまをほのかに期待していた自分を殴りつけたく
なりますた(w
とにかく脱稿お疲れ様です。毎回のタイトルのつけ方も好きでした。
中でも1番は「未来の扉」ですかね。内容とも合ってて、最高です!
- 455 名前:takatomo 投稿日:2003年03月02日(日)04時07分43秒
- >>454
ありがとうございます。
こんごまは初め入れようとしてたんですが、やっぱり長くなりそうなのでカットしました。
申し訳ないです。
タイトルは毎回試行錯誤で、全然合ってないものもありましたが、気に入っていただけてうれしいです。
本当に読んでいただきありがとうございました。
次回作もぜひともお願いします。
- 456 名前:takatomo 投稿日:2003年03月06日(木)23時54分24秒
- 予定より早いですが、新スレ立てました。
セイバータイズ 赤板
http://m-seek.net/red/index.html#1046957710
です。
よろしくお願いします。
- 457 名前:takatomo 投稿日:2003年03月07日(金)22時41分18秒
- う〜んどうして自分のスレ名を間違えるんだろう…
「セバータイズ」です(w
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