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運命は決まっている。

1 名前:作者もどき 投稿日:2002年03月10日(日)19時01分18秒
いきなりですが、この作品は設定めちゃくちゃです。
アンリアルの物語です。

ちょっと暗い作品かもですが完結してるので
放置や放棄はしません。

よろしくお願いします。
2 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)19時02分35秒
何かと偏見の多い世の中。多数決で決まる世の中。

自分の考え以外を認めない人間達。

同性愛なんてばれたらお終い

世間から冷たい目で見られて人間の扱いをされなくなる。

今、世の中では同性愛者たちの心中自殺の増加が問題となっている。




ガタンゴトン ガタンゴトン
『次は終点〜潮岬〜潮岬です。』

「やあっと着いたね。」
「・・・うん。」
「もうっ!ここはさ、うちらのこと知ってる人なんて居ないんだからさっ
 そんな暗い顔してないで笑ってよ。」

「・・・ごめん。そうだべな。せっかく都会の雑音から逃げて来たんだったべな。」
「そうだよ!住むところとか働くところだって見つけなきゃなんないんだからね。」

「なっちの方が年上なのに弱気でごめん〜」
「ほんとだよ。矢口と一緒に頑張って行こうね。」
「うん。」
3 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)19時03分53秒
ふたりは東京に住んでいたがあることが理由でここまで逃げてきた。

あること――それはふたりが同性愛者だったということ。
世間は汚いものでも見るような目つきでふたりを見、自分より弱いものとして
中傷し、酷い言葉を浴びせ、物をぶつけられることなどもしばしばあった。

それでもふたりは負けじと、力をあわせて頑張って生きてきた。

ならば何故ここまで逃げて来たのか。

それは1週間前の出来事だった――



ここは大手スーパーのダ○エー。

『安倍さんさぁ〜レズなんでしょ?』
『そうそう。一緒に住んでる子と出来てんでしょ?』
『やだー気持ち悪い〜こんな子と一緒に働きたくなーい』
『ほんとー。きもいからこっち見ないでよ、消えて。てゆーかもう辞めて?』
『あははっそれ賛成〜。いても役に立たないもんね。お客さん気持ち悪がって
 逃げてくし〜』
4 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)19時04分36秒

『同性愛の何がだめなんだべ?』

『はぁ??説明する必要ないくらい常識じゃんそんなのー。』

『なっちのことはいくらでも悪く言ってもいいけど矢口のこと悪く言わないで。』
『もーきもいって!!』

『こらっおまえら。そこで何してる。さっさと売り場に戻れ!』
『は〜い』

『安倍、お前も戻れ。』
『・・・はい。』

『あっ安倍。今日仕事終わったら俺の部屋に来てくれ。話があるから』

『話ですか?ちょっと今日は遅くなれないんですけど・・・』
『そんな時間はとらせないから。必ず来るんだ。店長命令だ。』


『・・・はい。(夕飯当番なんだべよ〜)』
5 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)19時05分39秒
そして仕事が終わり・・・

コンコン
『安倍ですけど・・・』
『あぁ開いてるから入れ。』
『・・失礼します。』
『まぁまぁかしこまらないでそこにかけて。』

『でもそんなに遅くなると困るので――』

『いいから座れ!!』
『??は、はい。』

そう言うと男は安倍が座った横に腰掛けた。

『あ、あの。店長、ど、どんな用件でしょうか?』

男はなんの返事も返さずに安倍を無理やり押し倒した。

『きゃあっ!!!なにするんですか!!!』
男は何も言わずに安倍の胸を揉みしだく。
6 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)19時06分23秒
『や、やめてっ・・下さい!!!!』

『うるさいな!!毎日やってんだろ??好きなくせにぶってるんじゃねーよっ!!』
『なっ!!!ちょっと、やめてーーーーーーーー』
安倍は必死で抵抗をした。

『・・・いいのか?ここで・・・働けなくなっても。俺は別にかまわないんだぞ。
 お前の代わりなんて腐るほどいるからな。』

『っそんなっ・・・』

『分かったか?だったら大人しくしてろよ。』



失業率20%をついに超してしまった世の中。
どんな仕事でも自分から手放すわけにはいかない。
ましてや高校もろくに出ていない人間が働ける場所なんてないと言っても
過言でないほど限られている。
7 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)19時07分24秒
安倍も高校中退しており、この仕事はまぐれで採ってもらえたようなものだった。

なので今ここで首になることはどんなことがあっても避けたかった。

一緒に暮らしている矢口はつい最近経営者の勝手な都合で理不尽に解雇されていた。
安倍までもが職を失うことは天涯孤独なふたりにとっては死ねといってるも同じだった。


『・・・矢口・・・ごめん・・』
『なんだ?なにか言ったか?』
『・・・(ごめん・・・)』





『今日のこと誰かに言ったら即クビだ。分かったな!!』
バタン

安倍は涙を流しながらも矢口の待つ家へと急いで帰って行った。


携帯なんて贅沢なものはもちろん持っているはずがなかった。
8 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)19時08分26秒
今日あったことを少しも感じさせないような笑顔を作ると、ドアのカギを開けた。

『おつかれっなっち!遅かったじゃんか。』
『ごめんね。今日めーーっちゃ忙しくてぇ。すぐご飯の用意するから。』
『なっちにだけ働かしてごめん。矢口も頑張って就職活動して見つけるからね!』
『早く見つかるといいべな。』



その夜――
『・・・っふ・・っく・・ずずっ・・』

(ん〜・・?なっち?)
矢口が隣で眠る安倍を見ると安倍は声を殺して泣いていた。

『なっち??どうしたの??どうして泣いてるの???矢口なんかした??ねぇ!!』


『・・・っく・・や、やぐちは・・なにも・・してないべ・・なんでもないべ・・
 お、起こしてごめん・・寝るべ・・・』

『ばか!!寝れるわけないじゃんかっ!何があったのか教えてよ!!』
『ほんとになんにもないべ!!!もう寝るべ!!』
9 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)19時09分23秒
『なっち・・・矢口が信用出来ない?なっちと矢口はなんでも話し合って隠し事なしで
 今までやってきたよね?お互いの良いところ悪いところ全部指摘し合ってきたよね?
 矢口にも言えないようなこと?矢口はどんなことがあってもなっちの味方だよ?』

『・・っく・・っふ・・うっ・・わぁんっっ・・やぐちっ・・やぐちぃ〜・・っ』
安倍は矢口に抱きついて泣き叫ぶ



どれだけ泣いていただろうか安倍は少しずつ落ち着いてきた。

『話してくれる?なにがあったのか』

『・・っく・・今日・・今日ね――』






『なんだよそれっ!!そいつ・・ぶっ殺す!!』
矢口は安倍から聞くとすごい剣幕で家を出て行こうとした。

『どっどこ行くの??』
『そんなの決まってる!やっつけてやる!ふざけやがって!!!絶対に許さない!!!』

『やだよ矢口、行かないでよ。一緒に居てよ、なっちと居てよっ・・・心細いよ・・・。』
『なっち・・・。』
10 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)19時10分29秒
『今日のことは・・すごくやだったけど・・・忘れるからっ・・・なかったことにするから
 ・・・なっち、もう大丈夫だからっ・・・だから行かないでよ、一緒に居てよ・・。』


『・・・矢口のせいで・・・ごめん。矢口が無職でいるからっ・・ごめんっほんとにごめんっ
 ・・謝ったって許されるわけじゃないけど・・・。』

『ううん。矢口はなっちと一緒にいてくれたら良い、それだけで充分だから!!』
『・・・ごめん。ありがとう。・・・でももうそこには行って欲しくない。
 働いてない身で言う権利ないけど行って欲しくない。』


『・・・行くべ。』
『なっち??』

『どんな店でもなっちたちの生きていく資本だべ。・・・大丈夫、矢口が居てくれるから
 大丈夫。もう大丈夫だから。』
『でもっ』

『矢口は仕事見つけてくれたら良いべ。』


『・・・分かった。』
11 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)19時11分38秒
そして昨日

仕事のあと安倍は呼び出され、また犯されようとしていた。

矢口は面接をした会社がすぐ傍だったため、一緒に帰ろうと安倍を迎えに来ていた。
仕事の終わる予定時間を30分を過ぎても安部は出てこない。
従業員は全員帰っただろう。店の電気が消された。

『なっち遅いなぁ〜もう帰ったのかな・・・!!!!』
矢口はこのまえのことを思い出し、不安になったため店へ入ることにした。
カギがかかっていなかった裏門から入ると薄暗い明かりのついた一番奥の部屋へと向かった。



『・・・んっ・・いやっ・・やめて・・・っ・・』

『いやじゃないだろ?好きだろ?もっとって言えよ。』

『んんっ・・あんっ・・うんっ・・やめてっ・・』

(なっち??)
バァンッ!!
12 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)19時12分33秒
『おわわっ!!なんだお前!勝手に入ってきやがって!警察呼ぶぞ!』

『・・・矢口??!・・・』
『なっち・・・・・・。』
『矢口っ、矢口ぃっ』

男が驚いて離れたので安倍は矢口の後ろに隠れる。



『・・・絶対に許さない。』
矢口はそばにあったカッターを握って男に近づく。

『な、なんだ?なにをする気だ??お、俺に手を出したらクビだぞ!!
 おまえら同性愛者だろ?ばらすぞ!!』

なにしろ素っ裸なので身動きがとりにくい男。弱気になっている。

『・・・許さない・・・。』

『や、矢口?やめて・・・』

『よくもなっちを傷つけてくれたなっ!絶対に許さない!!』
矢口はカッターの刃を出した。
13 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)19時13分38秒
『や、止めろ!!お、俺が悪かった!!クビにしないっお前らの事も誰にも言わない!!
 だからやめろ!!!!
 ・・・・・で、でも安倍が誘って来たんだ!!たまには男としたいって!!』

『ウソ!!そんなことなっち言わないっ!!矢口、違うからね??』

『なっちがそんなこと言うはずない!』

矢口は男に切りかかった―――
はずだったが安倍が寸前のところで矢口を制した。

『なっち??どうして止めるの?こんなやつ死ねばいいんだ!!』
『だめだべ!!矢口の気持ちは嬉しいしなっちもこんな人死んでも良いって思ってる。
でも殺したら矢口死刑になっちゃうべ!なっち、矢口と別れるのだけは絶対やだべ!』



『なっち・・・・・・分かったよ。』

持っていたカッターを机に戻すと矢口は男の股間を思い切り踏み潰して安倍と出て行った。

『ぎゃあっっっっ』



『・・・あのくらいならいいでしょ?』
『うん・・・』
14 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)19時15分17秒
30分後

コンコン
『店長?明日なんですけど――きゃあっ!!!!!!誰か!!誰かーーーーーーーーー』



男は救急車で病院へ運ばれ、男としての機能は使い物にならなくなっていた。

男はショックのあまりしゃべることが出来なかった。

そして個人的に隠し撮っていた安倍とのシーンをおさめたビデオが発見された。


男が無理やり少女を犯している映像がニュースで流れ、被害者は少女で、男は自業自得という
形で世間から言われた。

警察もそれ以上動かなかった。


世論が全て。証拠があり、明らかに犯人だと分かっていても国民の過半数が違うと言えば違うのだ。


そんな世の中だった。
15 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)19時16分39秒
『なっち・・・東京で暮らすのきつくない?』
『・・・なっちは矢口と一緒だったら住むところなんてどこでも良いべ。』

『矢口はさ、東京に思いいれなんてなにも無いんだ。唯一あるとすれば矢口を捨てた
 親がどこかに住んでるらしいってことくらいだし。』

『なっちは親がどこに居るかなんて知らない。生きてるのかもわかんない。
 なっちには矢口しか居ないべ。』

『矢口だってなっちしか居ない。・・・どっかさ、田舎の方でのんびり暮らさない?
もう疲れたよね。』

『でもどこが良いべ?』
『・・・寒いところは着るものに困るし・・・暑過ぎてもね。』


矢口達はアパートへ帰ると、全財産と必要最低限の荷物を持って近畿方面行きのバスに乗った。
日本の果てまで行きたかったがお金もなく、本州の最南端、潮岬に向かった。

そして今ここ、潮岬にいる。
16 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)19時17分20秒
「なっち、重いっしょ?矢口持つよそれ。」
「大丈夫!なっちの方が力あるべよ〜」
「・・・じゃあ一緒に持とっ!」
「うん。」


取り敢えず今日の寝床確保のため矢口達はすぐにホテルへ向かった。

「空いてます?」
「おふたりですか?少々お待ち下さい。」




「お待たせ致しました。お部屋へご案内いたします。こちらへサイン頂けますか?」
「はい。」


510号室
「ふぅーっさすがにずっとバスだから疲れたね。まだお昼過ぎだけど眠いよ〜」
「そうだべな。ちょっと昼寝するべか。」
「そうだね。あっ、ちょっとテレビ見て良い?」
17 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)19時19分33秒
プツッ
『昨夜、ここ渋谷の大手スーパーで男性がケガをしているのが発見されました。
 男性は男性器をつぶされ、今は意識がありません。誰がこのようなむごい犯行を
 起こしたのかはまだ分かっておりません。警察では、男性が従業員の女性と
 性的関係を持っており、男性が女性をむりやり犯す映像を入手したとのことでした。
 こちらの放送局にも映像が回ってきておりますので一部だけ流します。


 こちらは昨夜流したものと同じものです。
 警察の発表では、この女性が誰かに頼んで男性を攻撃したものとして当初捜査を
 進めておりましたが、この映像を見た国民、主に女性が警察や放送局に押しかけ、
 被害者は男性ではなく女性だとの訴えが多数ありました。この女性は行方不明で、
 どこにいるのか分かっておりません。
 国会では急遽国民投票があり、過半数が被害者は女性だという事で決定しました。
 なお男性は意識が戻り次第死刑となります。
 
 今の時点で分かっていることは以上です。女性の身元について分かる方は通報願います。』
18 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)19時20分32秒
「これってうちらのことじゃん。あいつ、死刑だって。」
「でも・・・死刑は可哀想だべ。」
「なんでさ、いい気味じゃんか。そんなことより映像流した放送局殺すって感じなんだけど矢口。」
「もう消すべ・・・。」


「待って、速報ってなったよ。」


『ただ今状況が変わりましたのでお知らせいたします。被害者の少女の身元が判明致しました。
名前は安倍なつみさん(20歳)男性の経営するスーパーで働いていたそうです。
従業員の方の話によりますと事件のあった直前に安倍さんの恋人とされる少女(19歳)が
安倍さんを迎えに来ていたとのこと。安倍さんが男性にされたことに対する報復として
犯行に及んだ模様。彼女もまた行方不明になっております。』



「名前出すなよ!!!」
「矢口は出なくて良かったべ。」
「なんでよ、なっちだけ出ちゃったじゃんか」
「成人してるからね・・・。」


プツッ
「ちょっと休もっか。」
「うん。」
矢口と安倍は着替えもせずそのまま眠りに着いた。
19 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)19時21分25秒
21時
「ん・・・ん〜っ」


「・・・何時だべ?」

「21時だね・・ちょっと寝すぎたね。おなかすいたねなんか買ってこようか。」
「一緒に行くべ」

矢口と安倍はホテルから遠かったが安そうな店まで歩いた。

「安いべな〜・・・ほらやぐちぃっ消費税ないべよ。」


「・・・」
矢口が返事をしないので安倍は矢口の方を見てみた。

矢口は周りを見ながら険しい顔をしている。

「矢口?どうかしたべか?なんかあった?」

「・・・ううん。なっち買うの決まった?そろそろ帰らない?」
「う?うん。」

矢口はさっさとお金を払うと安倍の手を取ってすぐに出て行った。

部屋につくまで歩く速度を緩めない矢口について行くのは大変だった。
20 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)19時23分20秒
「矢口、一体どうしたべ?」
矢口は何も答えずにテレビを着けた。

「ちょっと矢口ぃ?」

『――お知らせします。以上のことから、男性は意識が戻り次第死刑とのことでしたが、
 分からなくなってきました。』


「なに?死刑じゃなくなるって?」
「・・・」
チャンネルを変える矢口。

「なんなんだべ矢口?」

『被害者とされていた少女の恋人が同姓であるということ。国民は、同性愛者に罰を与えよ!
と抗議の旗を持って国会と裁判所に押し寄せています。国民の意見としては、同性愛者の
言う事は全く信じられない、男性は無理やりしたわけじゃないかもしれない、
あのビデオ自体が彼女たちが作ったものである――と訴えております。
確かに、同性愛者の言う事はいつも常識から外れており、とんでもないような事件を
起こします。とにかくこれで彼女たちが有罪になると男性の死刑は無くなる可能性も
出てきました。
ただ今地方のあちこちで、彼女たちを探す国民の姿が発見されております。
なにか分かり次第またお伝えします。』
21 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)19時24分40秒
「なに・・・これ。なんだべ?」

「・・・なっち、ごめん。矢口があいつに手ぇ出したばっかりに・・・」

「・・・どういうことなの?」

「矢口達、同性愛ってこと全国にばれちゃったんだよ。みんな異性愛しか認めてないでしょ?
 自分が基本だから・・・だから・・・矢口達を汚いものだーって、矢口達を捕まえようと
 してるんだよ。」

「そんなっ・・・どうして同性愛がだめなんだべ?なっちたちはみんなと同じように
 愛し合ってるだけだべ。どうして?どうしてだべ?」

「矢口も聞きたいけど・・・こんな世の中だからね・・・。」

「どうするべ?このままだったら捕まっちゃうべ?捕まったらどうなるべ?」

「・・・さっき、スーパーいったっしょ?他のお客さんとか店員とか矢口たち
 じろじろ見てたんだ。多分もう気付かれてるんだよ。」

「じゃあ逃げないとだめだべ。」


コンコンコンッ コンコンコンッ
「「ビクッ」」っとするふたり。
22 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)19時25分29秒
「なんだろ?」
「矢口覗いて見るね。」

覗き穴からこっそりと覗いて見た矢口。そこで見えた物は――

カメラを持った記者たちだった。


「報道記者だよっ!もうばれてんだ!なっち、今すぐ出よう。ここから出よう。」
「う、うん。」

矢口と安倍は財布と持てるだけの服を持って裏の非常階段から出て行った。

「なっち、矢口の手離したら駄目だよ?」
「うん。離さないべ。」
「じゃあ行くよ――」

裏にも報道陣が居たが、小柄な2人は小さく隠れながらうまくかわして逃げていった――


はずだったが『同性愛者に罰を!』『同性愛者を許すな!!』『同性愛者を排除しよう!!』

といった旗や看板を持っている住民達とかちあってしまった。

「居たぞ!!あいつらだ!!追えーー」
23 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)19時26分32秒
「なっち、こっち!」
矢口は引き返すわけにもいかず向かっていくわけにもいかず、
ひたすら人の居ないほうへ居ないほうへと走って行った。



「はぁっはぁっはぁっはぁっはぁっ・・なっち・・・大丈夫?」

「はぁはぁはぁはぁっ・・っく・・うん・・大丈夫だべ。」

「まいたかな・・・」

「ひどいべ、あの看板!排除ってなんだべ!みんな同じ人間じゃないんだべか??」





『居たぞ!!追い詰めたぞ!!』
住民達と一緒に通報を受けた警察や記者連中もきた。

『追い詰めた。』
その言葉どおり矢口たちは逃げ道が無かった。

がむしゃらに走っていたため、ふたりは三段壁まで来ていた。

『もう逃げられないぞ!おとなしく捕まれ!!』

『そうだそうだ!!やつらを許すな!!!同性愛者はこの国の癌だ!!』
24 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)19時27分13秒
警察と記者も追いかけてくる。

逃げ道はないのだが抵抗するふたり。


「はぁっはぁっはぁっ」
「なっち、大丈夫??」

「う、うん。」


『止まれ!!止まらないと撃つぞ!!』


矢口達はそれを聞いて立ち止まった。

『よしっ・・手を上げろ。』
『あなたたちは同性ですよね??』
『報道陣の皆さん、やめなさい!!!』
『同性愛ですか???』
『やめたまえ!!』


「なっち、ごめん。矢口があんなことしたから・・・。」
「・・・なっちのためにしたことだべ?しょうがないべ・・・」
25 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)19時28分34秒
『どうなんですか??あなた達は異性に興味がないのですか??』

『何故犯行に及んだのか』はどうでもいいらしく、同勢愛者ということについて
 追及してくる報道陣たち。そして今にも死ねと言わんばかりの目つきの住民達。



「なっちはさ、なにも悪くないんだから大丈夫、矢口が捕まったら済む話だよ。
 なっちは大丈夫。」

「なに言ってるべ?」





「あいつをやったのは私です。私は謝る気はまったくありませんがおとなしく捕まります。
 ただ、この子は少しも悪くありません。一方的に私が想いを寄せていただけです。
 私の愛する安倍さんを傷つけたあいつが憎くてやりました。安倍さんはストレートです。
 関係ありません。許してもらえませんか?」

警察の方へ叫ぶ矢口。

ボソボソと話し合う警察官たち。

「よかろう。じゃあ安倍さんからこちらへ来なさい。」
26 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)19時29分58秒
「矢口?駄目だべ。なっちも矢口と一緒に居るべ。」

「バカ。矢口が悪いんだからなっちは良いの。一緒に居るって約束、破っちゃうけど
 ・・・ごめん。なんとかまた会いに行くから!!・・・待っててとは・・・言わない。
 長いこと会えないだろうし、待たなくて良い。矢口が会いに行ったときなっちが
 違う誰かと居ても良い。・・・ごめん。早く行って。」

「やだよ!!絶対やだ!!」
「良いから行って!!」
「やだ!!」

『早く来なさい!!10秒以内に来なければ投降する意思がないものとし、
 ふたりとも射殺する。いち――』

「ほら、早く!!」

「やだ!!矢口死んじゃうじゃんか!捕まったら死刑だってことくらい
 なっちにだって分かるべ!」

「・・・死なないよ。」
「なっちも一緒に死ぬ!!!」

「なに言ってるの!!バカなこと言わないで!矢口を悲しませないで!!」
「だって、だって!!こんな世の中生きてたってしょうがない!なっちたちにはつらすぎる!!
 もうやだ!!」
27 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)19時31分41秒
「なっち・・・本気なの?」

『なな!!』

「本気だべ!!!」


「ごめんね。矢口頼りにならなくて。なっちまで道連れにして。」

「ううん。なっちと矢口はずっと一緒だべ?約束だべ。」

「そうだったね。ごめん。ひとりでいこうとして。」

「生まれ変わったら、違う世界が良いべな・・・」

『きゅう!!』



「永遠に一緒だよ・・・。」

「うん・・・」

バァンッ
銃声が鳴ると同時に矢口達は自殺の名所三段壁から身を投げた。
ゴツゴツした岩に落ちていった・・・・・。



『これで誰にも邪魔は出来ないね・・・』

『うん。ずっと・・・一緒・・・。』





2人が身を投げた後、引上げ作業がすぐ行われたがふたりの体は見つからなかった。


 ――第1部 完――
28 名前:作者もどき 投稿日:2002年03月10日(日)19時34分25秒
次から第2部です。

暗い感じの話なのでどきどきしながら書きました。
なのでずっとsageだったのですが一気に更新したため
あがりっぱなしでした。ばかですな。

奇特な方!読んでくれてどうもです!
29 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時27分30秒
――第2部――



ザザァンッ ザザンッ

「あれぇ〜なんか浮いてるのれす。」
「なんやて?どこになにが浮いてるやて?」

「あそこれす。なんれすかね。」
「なんやろ。見えへんな・・・調べるてみよか。」
「調べるのれす。」



「なんや!!!どざえもんやないか!!」

「どざえもんれすか?」

「せや。もう死んどるんちゃうか。・・・触ってみ、のの。」
「やなのれす。気持ちわるいのれす。」

「後でパフェおごるやん。」
「ならいいのれす。」
 
30 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時28分35秒
ツンツンッ ツンツンッ

「動かないのれす・・・。」

「ほんま?うちも触ってみよかな・・・。」
ツンツンッ

『ん・・・っ』

「わわわっなんかいわんかったか?」
「気のせいなのれす。」

ツンツンッ
ピクッ
「ほれ見ぃっ!今動いたやん。」
「ほんとなのれす・・・。」

「あかん、生きてるわ、助けたらなあかん、うちここで見張っとくから
 ののリーダー呼んできて。」

「分かったのれす。」
ててててっ

「しかし・・・どこから流れてきたんや?めちゃふやけてるけど・・・
 それになんやうちよりちっちゃいんちゃうか?」

『う・・・っ』
「あぁもうすぐ助けくるさかいちょっと我慢してや。」

31 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時29分29秒
ててててっ
「あいぼん、呼んできたのれす。」

「おうっ待ったでぇ。リーダーこの人やねん。」

「ほんとだ・・・まだ息あるんだね。とりあえず救護室連れて行こうか。辻加護運んで。」
「えーー??リーダーは?」
「圭織は救護室の圭ちゃんに知らせなきゃなんないからっ。頼んだよ!!」

「あっちょっと!!かなんなぁ〜いつもひとまかせや。」
「飯田さんはあれでいいのれす。」

「ののは・・・飯田さん好きやもんな・・・。まぁええわはよ連れてったろか。」
てててててっ




「連れて来たでぇ〜」
「れす。」


「どう?圭ちゃん。助かる?」
「う〜ん・・・大分水飲んでるみたいだけど・・・ケガしてないしね・・・
 とりあえずここで様子見たほうがいいわね。」

「っそ。じゃあ起きたら教えてよ。みんなに紹介しなきゃだし。」

「えっ?この人もここに住むんか?」
「住むんれすか?」

32 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時30分10秒
「だってどこから来たかわかんないし、島の周り海しかないじゃん。帰れないっしょ。」

「仲間が増えるんか、よっしゃみんなに言ってこ。行くで、のの!」
「らじゃ」

「あっこらっ待ちな加護辻!」
「なんや?」
「なんれすか?」

「みんなに言うのはかまわないけど騒ぎ立てようにしなよ。」
「「分かりましたあ」」
てててててっ






「じゃあ、圭ちゃん、後はまかしたよ。圭織まだ仕事あるから。」
「はいはい。」



(・・・この子どこから来たのかしら。私達の同じような服だし・・・
それにどうしてこの島まで来たのかしら・・・。どうやって来たのかしら・・・。)
33 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時31分09秒
「・・・っう・・・」

(何か言ったかしら?)

「っう・・・ううっ・・・っち・・な・・っ・ち・・・」

(意識が戻ったのかしら。)

「なっ・・ち・・」

(なっち?『なっち』って言ったかしら。なんのことかしら。)
ベッドの上に寝ていた少女が薄っすらと目を開けた。

「あっ、気付いた?あんた溺れてたのよ。水も吐いたし大丈夫だと思うけど。」

「・・・ここ・・・どこ?」

「ここ?さぁ。生まれた時からここに居たからここがなんていうところかは
誰も知らないわ。あんたはどこから来たの?」

「日本から・・・」
「日本?なにそれ。ここから遠いのかしら・・・まぁ良いわ。後でみんなに紹介するから。」


「・・・なっち。なっちは??!なっちは???」

「なっち?友達か何か?あんたしか運ばれて来なかったけど・・・」

「そんな!!もうひとり女の子が傍にいるはずなの!!」
ガクッ
「あ、ちょっと!!?」
矢口はまた意識を失ってしまった。

「大丈夫かしら・・・しばらく寝かせておくしかないわね。」
34 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時32分02秒
外に出て一服をする。

「保田さぁん〜女の子だってほんとっすか?」
「よっすぃー、そうだよ。もうみんな知ってるのね?」
「あいぼんとののが騒いでたから・・・」
「そうだよね、梨華ちゃん♪で、可愛いっすか?」
「ちょっとぉひとみちゃん??」
「おっと梨華ちゃん、梨華ちゃんが一番可愛いよぉ〜ほら、あっち行こ!」

「なんなのよあのこたち。むかつくわね・・・。あら、後藤。あんたも居たの?」

「居たよお〜ひどいなぁ〜圭ちゃん。中入っても良い?」
「なに、あんた興味あるの?珍しいじゃない」
「暇だしね。」
「寝てるから起こさないようにね。」

「んあーおっけー。」
35 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時32分51秒
ガラッ

「うわぁ金髪・・・。顔は??顔は?」
ふとんで隠れて見えないので無理やりめくって見ようとする。

後藤が手をかけた瞬間―-

「なっち??」
「ひゃあっ!!」

矢口は手をかけた後藤の腕を掴んで起き上がった。

「・・誰っ??」
「ごとーって名前だけど・・・」

「なっちは?なっちは居ないの?ここはどこなの?」

「なっち??ごめんわかんないや。ごめん」

ぱたぱたぱた
「あら、後藤もう良いの?」

「圭ちゃん・・・ごめん起こしちゃった。」
「えー?仕事増えるじゃないせっかく一服してるのに」

「あの子さ、なっちって言ってたけどなんのことだろ。」
「さぁ・・・一緒に溺れてた子が居たみたいだけど・・・。」


「そっか・・・」
36 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時33分49秒

「――で、あなたはなんて名前なの?」

「・・・・・矢口」
「矢口?下は?」

「・・・真里。」

「どうして溺れてたの?夏だったから助かったけど冬だったら確実に死んでたよ?」


「・・・」

「・・・まぁいいわ。とにかく誰も日本なんて知らないしここの回りは海しかないから
ここに住むしかないの。住むところならいっぱいあるから。分かったかな?」


「・・・・」

「ふーっ・・・圭ちゃん、この子の住むところ案内してあげてよ。」
「はいはい。」
「何か分からない事あったら私か圭ちゃんに聞いて。じゃあ解散ね。」




ここは『島』
名前もないし世界のどこに位置するかも分からない。島には11人の少女が住んでいる。
男はひとりも居ない。そのくらいしか矢口には分からなかった。
37 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時34分41秒
「ここがあんたの部屋ね。隣は後藤真希って子。さっき自己紹介したとき居たから
 わかるかな。で、向かいの部屋が私。このそばにはうちら3人しか居ないから、
 何かあったら私か後藤に聞いて。それじゃ。」

「・・・保田さん。」

「なにかしら?」

「矢口が溺れついた時、そばに誰も居なかったんですか?何も落ちてなかったんですか?」

「さぁ・・・見つけたのは辻加護だけど何も言ってなかったわね。」


「そうですか・・・」

「圭ちゃんでいいからね。じゃおやすみ。」


とりあえずふとんに入る矢口。

「・・・っふ・・うっく・・なっち・・・どこ・・どこに居るのよ・・・矢口
・・ひとりじゃんか・・・うっ・・・うっ・・ひぃ・・っぅ・・っく
・・なっ・・ち・・」
38 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時35分30秒
次の日の朝

矢口は辻加護に会いに行き、自分の発見された場所を教えてもらった。

この島はそれほど大きな島ではないようで、体力の衰えている矢口でも1日あれば
余裕で一周できるほどだった。




矢口は毎日安倍を探して島を回っていた。

矢口が目を覚ましてから2週間が過ぎた。

矢口は一日のほとんどを海辺で過ごし必要最低限のことでしか接触しなかったので
誰とも仲良くはなっていなかった。そもそも仲良くなるつもりなどこれっぽっちも無かった。



(なっち・・・絶対見つけてみせる・・・)
矢口は部屋に寝転んでいた。
39 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時36分24秒
「あのー。」

「・・・ん?」
「あのーちょっと良いですか?」

「後藤さんだっけ?なにかな。」

「・・・・これ、あげる。元気でるからっ」
パタパタパタ

「え?なに?後藤さん?」
矢口はずぐに起き上がったが追いかけていこうとはしなかった。

「なに?これ・・・。」




コンコンッ
「ん〜?矢口じゃない珍しいわね。どうかした?」

「あのさっ、これ、なにか分かるかな?」


「え?これ・・・どうしたの?」
「え?後藤さんがくれたんだけど・・・よくわかんなくて。」

「これは・・・・・後藤が物心ついた頃からずっと身につけていた首飾りね。
 誰にもらったのかどうやって作ったのかは後藤も誰も知らないの。
 大事にしていたはずだけど・・・ 」

「そんなのになんで矢口にくれたんだろ・・・。」

「さぁ・・・聞いてみたら。」
40 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時37分31秒
「ありがと、圭ちゃん。」
保田とはいろいろ世話をしてもらっていたのでそれなりに話をするくらいになっていた。


矢口は後藤の部屋の前に居たがノックをすることを躊躇っていた。
正直保田以外とはほとんど話をしてないし、なんだか苦手なタイプに思われたからだ。


(まいったなぁ〜・・・でもお礼言わなきゃだしなぁ〜・・・)
矢口は勇気を出してドアをノックした。

コンコンッ
「・・・は〜い。」

「あのっ矢口だけど・・・」

「・・・開けます。」
ガラッ 
後藤がドアを開けて出てきた。

「あああのさぁ〜さっきもらったこれ、大事なものじゃないの?矢口がもらっても良いの?」

「良いの。もらって。」
「・・・なんでくれたの?」


「・・・だって・・・元気ないじゃん。」
41 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時38分24秒
「え?」

「ここに来て2週間もたつのに全然しゃべらないじゃん。ずっと出かけてて居ないし・・・。
 ごとー見てらんなかったの。ずっと元気ないから。それつけてるとね、元気になって、
 やる気が沸いてくるんだよ?ごとーには効き目ないし、だからあげる。」


「・・・効き目ないのにくれるの?」

「あっ・・・」

「どっちぃ?ほんとは。」

「えっと・・・それはその・・・モゴモゴ」
「あははっありがと。確かに元気出たかも!矢口大事にするね、ありがとお」

「・・・えへへっ。良かった。」

「じゃあばいばい。」
「えっ、もう帰っちゃう?」

「え?なにか用事あった?」
「・・・ないけど・・・。」
「同い年くらいの子居たよね?確か。」

「梨華ちゃんとよしこかな?あのふたりはふたりだからー。」
「なにそれ。」
「いいや。じゃあまたね。」
「う?うん・・・」
42 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時39分34秒
次の日から、矢口が安倍を探しに行く時には後藤もついて行くようになった。

「やぐっつあん元気だね〜」

「しんどかったら休んでなよ。矢口は行くから。」

「冷たいなー。ごとーも行くよぉ〜待ってー」



「・・・ていうかさ、いっつもなんで一緒に来るの?」

「・・・迷惑?」

「いや・・・別に迷惑なんて思ってないけど・・・いつも矢口と一緒に居てさ、
 つまんないだろーって思ったから。」

「全然!!楽しいもん。迷惑じゃないなら一緒に行くー。えへへ。」


「(可愛いね、妹居たらこんな感じなのかな。)なら良いけど。」



「やぐっつあんさーいっつも何探してるの?」

「・・・」
矢口の表情が険しくなる。

「あっごめん無神経だよね、ごめん。答えにくいこと聞いて。忘れて。」
後藤は心底まずいって顔をして言う。

矢口はそんな後藤を見て『ふっ』っと笑うと答えた。
43 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時40分38秒
「恋人。いつも一緒だった恋人を探してるの。」

「恋人?」

「そう・・・可愛い子でね・・・明るくて優しい子なの。」

「そっか・・・どこにいるの?」
「・・・それを探してるんじゃん。聞いてた?話。」


「・・・だっていっぱい探したじゃない。毎日毎日島の端から端まで全部見て回ったじゃん。
 居なかったじゃない。もう死んでるよぉ!!」

「死んでなんかないっ!!!なっちが・・・なっちが見つかるまで矢口はなっちが
 死んだ事認めない。生きてるって信じてる。矢口となっちはずっといつまでも
 一緒に居るって約束したの。なっちなしじゃ生きていけないの。」

「そんなの・・・つらいよ。やぐっつあんつらいじゃんか!!」

「うるさいっ!後藤には関係ないだろ!もうほっといて!!!!」
矢口は怒鳴って後藤から走って去って行った。


「やぐっつあん・・・。だって、生きてるはずないじゃんか・・・やぐっつあん可哀想だよ・・・」
44 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時41分31秒
矢口はその後もひとりでずっと安倍を探しまわった。
後藤はついていくことをやめ、接触することも減った。
そして矢口が流れ着いてから2ヶ月が経っていた。



或る日、後藤が昼寝から目を覚ますと外はどしゃぶりの大雨だった。
たまに降る雨は強烈で、浜辺もあれまくる。雨が降った日だけは誰も
部屋から出ることはしなかった。


「雨か・・・!!!」

後藤はベッドから飛び降りると隣の矢口の部屋へと行った。

コンコンッ コンコンッ
「やぐっつあん?居ないの?ごとーだよ。開けるよ?」
ガラッ
返事を待たずにドアを開けた後藤。
中には誰も居ない。

「やっぱり!!!」
45 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時42分17秒
後藤は急いで矢口を探しに行った。
今日も矢口は安倍を探しているに違いない。
傘など持っているはずがない、薄着に決まっている、後藤は矢口を探し出すため
必死になってどしゃぶりの雨の中を走り回った。




(どこ?どこにいるのやぐっつあん?外に居たら危ないんだよ、風邪ひくよ。)

「やぐっつあ〜ん!!どこーー??部屋帰ろーーー!!やぐっつあ〜ん!!!」
後藤は雨の音で消されてしまうが諦めず呼び続けた。


木が生い茂った森を抜け、海が見えた。

(やぐっつあんいるかな?)
「やぐっつあ〜ん!!!あーーーーーーー居たっ!!」
矢口は海の方を向いて座っていた。
46 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時43分51秒
後藤はなんとなく声をかけにくかったので黙って近づいていった。




「なっち・・・なっち・・なっち!なっち!!どこにいるんだよ!!ずっと一緒っていったじゃんか!
 なんで居ないんだよ!なんで矢口の傍にいないんだよ!!なんでだよ!!!なっち!!!
 なっちーーー!!出てきてよ・・・なっち・・・。矢口つらいよ、もうだめだよ・・・
 なっちに会いたいよ、なっちと話したいよ、なっちに触れたいよ!!!なっち・・・なっち!!!!
 ・・・出てきてよ・・・。」

矢口は海に向かって叫んでいる。
後藤が傍に居ることなどまったく気がついていない様子だ。

「やぐっつあん・・・戻ろ。風邪引くから。」

「後藤!?ほっといてよ、矢口のことはほっといて!!」


「ほっとけないよ!やぐっつあんこのままだったらいつまでたっても『なっち』に縛られちゃう。
『なっち』はもう居ないんだよ!『なっち』は死んだんだよ!『なっち』は二度とやぐっつあんの
 前には現れないんだよ!!前も言ったけど、いいかげん分かってよ!!!」
47 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時45分01秒
パァンッ!!
「何も知らないくせに勝手なこと言わないで!軽くなっちの名前を呼ばないで!!!」

頬を押さえて呆然とする後藤。

「ばかっやぐっつあんのばか!」
パァンッ

「なにするんだよ!」
後藤も矢口を叩き返した。


「やぐっつあんは臆病なんだ!どうして認めようとしないの?真実を見てみぬふりなんて
 子供だよ!!『なっち』だってやぐっつあんが子供だから嫌気がさしたんだよっ!
 やぐっつあんがいつまでたっても分からずやだから出て来ないんだよっ!!」


「・・・うるさいっ!子供で充分だ!もう着いて来ないで!」
矢口はそう言うと荒れ狂った海に入って行く。

「バカッ!!何してんのよ!死ぬ気?」
もちろん後藤は引き戻しに行った。

「離して!」
「離さない!!」
「離せ!!!」
「やだ!!」
48 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時46分07秒
「なっちが溺れてるかもしんないじゃんか、なっちが矢口に助けもとめてるかもしんない。
 矢口がぬくぬくしたふとんで寝ている間もなっちは冷たい海の中にいるかもしんない、
 陸に居ないんだったらもう海しかない!だから離して!!」


「いいかげんにして!!!」
後藤は矢口を力強く抱きしめた。


「・・・離して。」
「やだ。絶対離さない。」
後藤は矢口を抱く力を強める。

「離してよ!!行かせてよ!!」

「絶対いかせないっ!!!」

「ふざけん――」




「・・・いかないで・・・お願いだから・・・。」

「な、な、な、なにした?いま・・・。」

後藤は矢口に無理やりキスをしたのだ。
49 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時47分35秒
「ごめん。でもごとーはやぐっつあんが大好きだから行って欲しくない。死なせたくない。」



長い沈黙が続く








「・・・ほんとは・・・とっくの昔にわかってたんだ。なっちが・・・なっちがもう
 この世に居ないなんてこと・・・とっくの昔に分かってたんだよ・・・
 なっちが死んだってことくらい分かってんだよ・・・でも矢口は自分が許せなかった
 ・・・矢口のせいでなっちを傷つけて・・・なっちを道連れにして・・・それなのに
 矢口だけ助かるなんて・・・矢口だけのうのうと生きているのが許せないんだよ・・・
 いつまでも一緒って約束したんだ・・・なのに・・・なっち・・・なっち・・・
 会いたいよお・・・なっちに会いたいっ顔が見たい・・・なっちの笑った顔が見たいよ・・・。
 どうしたらいい?矢口どうしたらいい?・・・もうわかんないよ・・・」


「やぐっつあん・・・」



「・・・なっちに会いたい・・・」
50 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時48分55秒
後藤の胸の中で泣きながら話す矢口。
どしゃぶりの雨なのでもうどうでも良かった。
後藤も泣いていたが矢口は気付くはずがなかった。

「っ・・・とりあえず、一緒に戻ろ?」

「・・・うん。」

後藤は矢口の手を引いて自分達の部屋へと戻って行った。

ふたりとも辿り着く前に高熱で倒れてしまったが保田がすぐに発見し、大事には至らなかった。



救護室で眠る矢口と後藤。

「んあ・・・・んあ〜っ」

「さすが後藤、回復早いわね。」

「んあ・・・おはよ。」
「ふんふん。あんたはもう熱ないし大丈夫みたいだね。」

「やぐっつあんは?」
51 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時49分51秒
「矢口は・・・まだだね。・・・あんたたち昨日あんなにびしょぬれになるまで
 何やってたわけ?雨の日は外出禁止、これ決まりでしょ?」

「んーだってやぐっつあんそれ知らないで出てたから・・・そんなことよりやぐっつあん
 大丈夫なの?ただの風邪?」

「多分・・・。『なっち』『なっち』ってうなされてたけど・・・何があったの?」

「『なっち』って言ってんだ・・・やっぱ駄目なんだね・・・」

「は?なにが駄目なの?」

「ううん。なんでもないの、圭ちゃんさ、ごとー達に付きっ切りだったしょ?
 ごとーがやぐっつあん見とくから休憩してなよ。」

「いいの?助かるわ〜。それじゃ部屋に戻っとくから何かあったらすぐに呼ぶのよ?」

「あーいおっけー」
52 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時50分40秒
シャッ
矢口と後藤を隔てていたカーテンを開ける。

(早く元気になって欲しいな・・・)


「・・・っち・・な・・っち・・」

(んあ?・・・やぐっつあん・・・・(泣))

「っく・・・うううっ・・・」
(やぐっつあん、つらいんだね、『なっち』に会えなくてつらいんだね、・・・・つらいね。)



日が落ち、もう夜になっていた。
後藤は矢口の手を握っていつのまにか寝てしまっていた。

「後藤、後藤、ちょっと。」
「んあ〜やぐっつあん・・・・やぐっつあん??」
「ん。付いててくれたんだね、ありがと。」
「ううんっもう起きて大丈夫なの?」
「まだだるいけど・・・こうやってしゃべってる分には大丈夫みたい。」
「無理したらだめだよ。寝てて。」

「うん。」
53 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時53分17秒
「矢口とさ・・・なっちは恋人だったって言ったよね。」
「え?うん。」
「ごめんね、いきなり話だして。聞いて欲しくなってさ。」
「ううん。ちゃんと聞くから言って?」

「ありがと。この島はさ、女の子しか居ないけど矢口達の住んでたところには男の人も
 同じくらいの人数が居たの。男の人と女の人が付き合うってことが常識の世の中で、
 矢口達はその常識の枠からはみ出しちゃってたんだ。もちろん矢口達はお互い愛し合ってたから
 気にせずがんばってきたんだよ。お金も無かったけどそれなりに幸せに暮らしてたの。
 でも矢口達の幸せは、そういう常識しか認めない世間の大人たちに踏みにじられたの。
 それで同性愛は汚らわしいって追われて・・・追い詰められて・・・なっちとふたりで
 身投げしたの。・・・ふたり抱き合って離れないようにして飛び込んだんだけど・・・
 なっちだけ死んで矢口だけ生き延びてしまったの。
54 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時54分13秒
そもそも矢口が同性愛者であることがばれるようなことしちゃったから追われたの。
 矢口が無職だったからなっちは無理したの。とにかく矢口のためになっちはいつも
 無理してた。矢口のせいで傷ついてた。矢口だけ生き延びたくなかったよ・・・。」


「元気だしてよ、やぐっつあんは生きてるんだからこれから何をするかだよ!
 『なっち』さんにいいところ見せなきゃだめでしょ?」

「うん・・・。それで、後藤。昨日のことだけど・・・・」

「昨日のこと?なんだっけ」

「矢口のこと好きだって・・・」
「ああ!・・・・ほんとだもん。初めて見た時から惹かれてた。ごとーはやぐっつあんが大好き。」
55 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月10日(日)20時55分40秒
「そのことなんだけど・・・矢口はなっちのこと忘れられない。なっちはもう居ないんだから
 忘れなきゃいけないのかもしれないけど忘れたくない。
 だから後藤の気持ちに応えてあげることは出来ないよ・・・ごめん。」

「・・・ううん。謝らないで。そんなの分かってるし。」

「ごめんね。」
「でもさっ、なっちさんの次にごとーが好きって言ってもらえるように頑張るから、
 相手して欲しいな。」

「うん。」
「良かった。」(いつか忘れさせて見せる!!)



それから矢口は安倍を探しに島を探索する事は無くなった。
一日のほとんどを後藤と過ごし、いつも一緒だった。


            ――第2部 完――
56 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月11日(月)01時14分59秒
なっちは死んじゃったの…???
57 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月11日(月)18時33分46秒
この二人好きなんですよ。お気に入りに入れておきます!!
がんばってください。
58 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月11日(月)23時12分24秒
――最終部――


今日は月に一度全員集合する会合の日。矢口はここへ来て初めて参加する。
集会所に向かう矢口と後藤。

矢口の足が止まった。

「やぐっつあんどうかした?」
矢口の視線の先を見る後藤。



「っはぁんっ・・あっ・・・あんっ・・・ひ、ひとみちゃんっ・・・あぁんっ
 いっちゃうぅぅぅっいっちゃうよぉっ」

「イっていいよ・・・気持ちいいでしょ・・」

「あっ・・・はぁんっ・・イクぅ!!!!!」
集会所へ行く途中の茂みで愛し合うふたりを発見した矢口。


「あの子ら・・・またあんなところで・・・」
「また??なに、しょっちゅうなの?」
59 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月11日(月)23時13分31秒
「え?うん。」
「あの子らできてるの??」
「出来てるっていうか二人は結婚してるからね。」

「け、結婚!??」

「なにかおかしい?・・・やぐっつあんの居たところじゃ男と女が普通っていったけど
 ここじゃあれが普通なの。女しか居ないしね。まぁところ構わずやっちゃうのは
 あの子らくらいのもんだけど・・・。」

「マジで?・・・えっ?え?じゃあ他にも居るの?付き合ってる子とか。」
「居るよぉ〜まず、今あそこに居る梨華ちゃんとよしこでしょーあとは・・・・
 集会所着いたら教えてあげるよ。」


ガラッ
「あっ後藤たち来たね。吉澤たちは?一緒じゃなかった?」
「ふたりなら居たけどまだかかりそうだったね。」

「またぁ?いいかげんにして欲しいよね、同じ部屋なのにさ。」
「ふたりが来るまで待つしかないわね。」
60 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月11日(月)23時14分35秒
「でさ、さっきの続きだけど、あそこにいる辻は圭織が好きなのね。
 で、あそこの愛ちゃんとあさ美ちゃんは付き合ってるの。
 後の子は誰が好きとかわかんないけど・・・やぐっつあんとか人気あったりして。」

「それはないよ。」
「どうしてさ?」
「矢口ちっちゃいしよそもんだし。」

「じゃあごとーはなんなのさ。やぐっつあんが好きなごとーはおかしいの?」
「おかしんじゃない?」
「ひっどーい!!」
ガラッ
「すんませーん遅れちゃって。」
「遅いよっ吉澤!早く席に着いて!」

「へいへい。」
矢口の横の空いた席へと座る吉澤たち。
61 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月11日(月)23時16分19秒
「じゃあそろそろ初めよっか。」

会合と言っても特に何をするわけでもなく最近の出来事をそれぞれに話すだけである。

それぞれに話し終えてそろそろお開きの時間になった。

「矢口―ちょっと前に出てきて。」
「矢口?なに?」

「辻加護が海で見つけたものなんだけど・・・」
矢口は険しい顔で前へ出ていく。

(海で見つけたものって・・なんだろ・・・やぐっつあん大丈夫かな・・・)
後藤が矢口の後姿を心配そうに見ていると吉澤が席を移動して後藤の横に座った。

「なによ、よしこ。」
「ふふんっ♪ごっちんってあーいう人がタイプだったんだ♪もう付き合ってるの?」
「ばか言ってんじゃないよ!そんなんじゃないって!」

「うっそだぁーごっちんの矢口さん見る目恋する乙女の目だもん♪」
「うるさいよっ!!」

「お似合いだよっ!頑張ってね♪」
62 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月11日(月)23時17分28秒
吉澤は自分の席へと戻った。
(からかってるんだか応援してるんだか・・・)


「矢口??どうして泣くの???」

(泣く?やぐっつあん??)
後藤が前へ出て行った矢口を見たとき矢口の目からは涙が流れていた。


「ご、ごめん。これ、もらっていいかな。」

「・・・良いけど・・・大丈夫なの?」

「・・うん。ごめん、もう帰るね。」
矢口はそう言うと走って出て行った。

「やぐっつあん!!どうしたの??」

みんな何があったのか分からずがやがやしている。

「圭織、何したの?」
後藤も前へ出て飯田へと詰め寄る。

「圭織のせいじゃないよぉ!辻達が拾ったもの矢口のっぽかったから見せてあげたの。」
「どうしてやぐっつあんのだって分かったの?なんだったの?」
63 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月11日(月)23時18分16秒
「丸いペンダントだよ。誰のものか確認するために中見たら矢口に似た子の写真が
 入っていたから・・・。」

「写真?」
「うん。知らない女の子と一緒に写ってるやつ。見せたら矢口急に泣き出してそれで・・・」
「分かった。ありがと!ごとーも帰るから!」

「あっ!・・・今日はもう解散しようか。」
それぞれ部屋へと帰って行った。



(『なっち』だ。絶対『なっち』だよ・・・)
後藤は大急ぎで帰って行った。



コンコン 
返事はない。
「入るよ。」


「やぐっつあん・・・大丈夫?」
64 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月11日(月)23時19分24秒
「・・・これ。なっちがいつも着けてたやつなんだ。」
矢口は持っていたペンダントを後藤へ見せた。

そこにはとても幸せそうに仲良くくっついて写っている二人の少女の写真があった。

(これが『なっち』・・・)

「それ、一番幸せだったときの写真。その頃はこの幸せがいつまでも・・・永遠に続くものだと
思ってた。終わりが来るなんて思いもしなかった・・・。この島になっちと辿り着きたかった。
女同士でも何も言われないこの島に・・・。」


「やぐっつあん・・・」

「こうやって・・・なっちの顔見ちゃうと・・・矢口は生きてていいのかなって思う。
 矢口だけ生きてて・・・なっちと一緒に死ねばよかったって思うよ・・・。
 なっちが恋しい・・・なっちに会いたい・・・なっちの声が聞きたい・・・・・・
 もう、死にたいよ・・・。」
65 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月11日(月)23時20分07秒
「やだ!死なせない!やぐっつあんは死んだら駄目なんだよ?『なっち』さんの分まで
 生きてあげなきゃ駄目なんだよ?『なっち』さんがやぐっつあんの死を望んでいる
 はずがないよ!!弱気にならないでよ・・・ごとーなんでもするじゃんか。
 やぐっつあんのためになんだってするじゃんか・・・だからっ、死ぬなんていわないで
 ・・・。お願いだよ・・・。」
矢口に抱きつき訴える。



「後藤・・・。ごめん。泣かないでよ。矢口が悪かった。ごめん。」

「・・・っく・・そうだよ・・・やぐっつあんに死なれたらごとーだって悲しいよ。ごとー生きていけないもん。」
「・・うん・・うん・・ごめん・・・ほんとごめん・・・泣き止んでよ・・・。」
矢口の顔は穏やかだった。
66 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月11日(月)23時21分00秒
パシャパシャパシャパシャ

「んん・・・」
後藤はいつの間にか眠っていた。


「また雨か・・・あれ・・やぐっつあん??」
後藤が目を覚ますと矢口は居なかった。

「どこ?やぐっつあん??」

自分の部屋へ戻ろうとした時、ドアにメモが貼ってあったのを発見した。



『後藤へ。

いつも元気をくれてありがとう。いつも一緒に居てくれてありがとう。
心から感謝してる。矢口は後藤のこと好きになろうと頑張った。正直好きになりかけてた。
でも矢口はどうしてもなっちが忘れられない。このまま生きていても意味が無いと思う。
矢口を好いてくれた後藤には悪いと思ってる。でも矢口はなっちに会いたいんだ。
だから・・・ごめん。今までありがとう。
 矢口』
67 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月11日(月)23時21分44秒
後藤は最後の方は涙のせいでほとんど読めなかった。

「なんでよっ・・・なんでなのよっ・・・やぐっつあん!!」

後藤は雨の中矢口を探し回った。

前に見つけた浜辺にも行ったが見つからなかった。

そんなに大きな島ではないのでその気になればすぐに見つけられるはずだった。


「どこにいるのよやぐっつあん!!!!!ごとーを置いていかないでよ!!ひどいよ!!
 あんまりだよ・・・やぐっつあーーーーーーーーーん!!!」


後藤が諦めて浜辺に寝転がって上を見たとき、高い崖のうえに矢口らしき姿を見つけた。

「やぐっつあん??」
後藤はがむしゃらにそこへ向かって行った。
68 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月11日(月)23時28分19秒
「はぁはぁはぁはぁはぁっ・・やぐっつあん・・・なに・・してんのさ・・はぁはぁ」

「・・・後藤。なんで来たの?なんで分かった?」

「・・下からっ・・見えたからっ・・・。早く戻ろ?こんなとこ居ないで戻ろ?」

「手紙、読んだでしょ?」

「読んだけど・・・間違ってるよ!!死んだって『なっち』さんに会えるわけないじゃんか!」

「・・・なっちに会えるなんて本気で思ってないよ・・・矢口が・・・矢口がもう耐えられないだけ
・・・。このまま生きてなっちを忘れないで暮らしていくなんてもう出来ない・・・
死んで生まれ変わってやり直すんだ。」

「・・・本気でいってるの?」



「・・・」



「じゃあごとーも一緒に死ぬ。」
69 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月11日(月)23時32分27秒
「ばか!後藤まで死ぬことないんだ!後藤は友達だっているし仲間がいるじゃんか!
矢口のために死ぬなんてことやめて!!」

「だって、やぐっつあんが死んだらごとーだって耐えられないもん。ひとりでなんか
生きてけないよ・・・やぐっつあんごとーのこと好きになりかけてるって・・・。」


「・・・好きだよ。でも、だからこそ一緒に連れて行くわけにはいかない。
死ぬのは約束破った矢口だけで充分だよ。」

「やだ!やぐっつあんが死ぬならごとーも死ぬ。もう決めたもん。やぐっつあんが生きるなら
生きる。ごとーはずっとやぐっつあんと居るもん。居たいもん。たとえやぐっつあんが
いやでも居たいもん。」

「困らせないでよ・・・後藤は死ぬべきじゃないよ・・・。」

「やぐっつあんだってそうだよ!!」
70 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月11日(月)23時33分52秒
「矢口は死にたいんだ。生きてても良いことなんかない。つらいだけだよ。後藤とは
違う形で出会いたかった。こんな形で出会ってなけりゃきっと矢口は後藤とずっと
生きたと思う。矢口だって後藤が大事なんだ。なっちと同じくらい大事なんだよ!!」

「だから一緒に死ぬってば!!置いてかないでよ!ごとーのこと大事だったら
ひとりにしないでよ!!!やだよ!ひとりはやだよ!!ごとーも死ぬっ!!」


「どうして分かってくれないの?矢口は後藤にそこまで想われるほど後藤に何かしたわけじゃない。」

「分かってないのはやぐっつあんの方だよ、理屈なんかないもん。好きなんだもん。
一緒にいるだけで幸せだったもん。いつもごとーはひとりぼっちだった。いつもひとりで居て、
ほんとはみんなに混じって遊びたかった。でも無理だった。
やぐっつあんはごとーとしゃべってくれた。ごとーを幸せな気持ちにしてくれた。
いっぱい、いっぱいやぐっつあんはごとーにくれた!」



「でも・・・・矢口は死ぬ。」

「だったらごとーも死ぬ。」
71 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月11日(月)23時34分54秒

「なに言ってもむだなんだね・・・矢口は生きて後藤も生きて・・・それが一番良いんだろうけど
無理だもんね。」


「ごとーを置いてかないで・・・」





「・・・・・分かった。」

「じゃあっ」
「一緒に・・・。ここから飛び降りたら一発でしょ・・・あのときは・・・矢口だけ
生き延びてしまったけど・・・今度は一緒に・・・」

「・・・うん。」




矢口と後藤は履いていた靴紐で腕と足を縛って離れないようにした。


「道連れにして・・・ごめん。」

「ううん。やぐっつあんと一緒にいけて嬉しい。謝らないで。」
「ありがとう。」

矢口は後藤の頬にキスをした。

後藤が笑顔を返すとすぐにふたりは飛び降りた。
72 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月11日(月)23時35分32秒
海は大荒れ。

雨は止む気配もない。

雨があがってみんなが矢口達の居ないことに気付いたのはそれから3日後だった。





「圭ちゃんこれ・・・」
矢口からのメモが見つかった。



「後藤は矢口を追って一緒に逝ったんだね・・・。」

飯田と保田のみが状況を把握し、みんなには、後藤たちは旅に出たと話した。
船などないし、旅など出れるはずはないのだが、ふたりの遺体も見つからず、
姿も無いのでみんなもそう思うしかなかった。
73 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月11日(月)23時36分44秒
ザザァンッ ザザァンッ




「・・う・・うう・・」






「・・・ここ・・・・」


靴紐で固く結ばれていたはずの腕と足を見た。

紐はあとかたもなく消え去っていて、繋がれていた手と足はそこにはなかった。




「なんで・・・・なんで・・なんで生きてるの???・・・ここはどこなの??」

あたりを見回すとそこは今まで居た島と同じようだが少し違う感じのする島だった。










「なんで矢口だけ生きてんだー!!!」
74 名前:運命は決まっている。 投稿日:2002年03月11日(月)23時38分30秒


「・・・なんで矢口は死ねない?なんで生きてる?なんで死なせてくれないんだーー!!!

矢口が死にたいのにっ・・・なっち!・・後藤!!どうして矢口を死なせてくれないんだーー!!!!!!」







「矢口だけ生き延びたってしょうがないじゃんか・・・どうしていつも矢口だけ・・」

矢口は涙を流して叫んだ。





死のうとしても死ねない。

一緒に死のうとした相手は二人とも死んだ。

矢口は死ねない。死にたい矢口がどうしても死ねない。

矢口は自分から死ねない運命なのか。


運命には逆らえない。

運命とはそういうものだ。

―完―
75 名前:作者もどき 投稿日:2002年03月11日(月)23時54分52秒
>56 名無し読者さま
   なっちは・・・。
    この話は実ははっぴーえんどもあるのです。
    このままだったらやっぱり暗いままでよくわからないですよね。
    ごめんなさい。

>57 名前 : 名無し読者 投稿日 : 2002年03月11日(月)18時33分46秒
    ふたりってやぐごまですか?なちまりですか?
    せっかく応援していただいたんですが終わってしまいました。
    でも、番外や違うパターンもあります。
   
    このままやったらごまなんで死ぬねんって感じですよね。
76 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月12日(火)00時15分45秒
なちまり大好きなんで読んでみたら…辛すぎる。
はっぴーえんどに期待してよろしいですか?
77 名前:作者もどき 投稿日:2002年03月12日(火)00時19分29秒
>57 名無し読者さま。
    「さま」抜けててすいません(w

>76 名無し読者さま
     なちまりですか。
     やぐごまと同じくらい好きですね。
     やぐごま、なちまり、両方のはっぴーえんどを
     乗せたいと思っております・・・
     宜しければお付き合い下さい。

     痛くは・・・ないですよね? 
      
78 名前:運命は勇気ひとつで変わるもの。 投稿日:2002年03月17日(日)22時40分39秒
43レス目くらいから違うエンディングへ進みます。





「うるさいっ!後藤には関係ないだろ!もうほっといて!!!!」
矢口は怒鳴って後藤から走って去って行った。

「やぐっつあん・・・。だって、生きてるはずないじゃんか・・・
 やぐっつあん可哀想だよ・・・」


矢口はその後もひとりでずっと安倍を探しまわった。
後藤はついていくことをやめ、接触することも減った。
そして矢口が流れ着いてから2ヶ月が経っていた。



いつも天気なのだが特に良く晴れた日のこと、矢口はいつものように安倍を探していた。
いつ見ても何もない浜辺。
でも今日は違った。
79 名前:運命は勇気ひとつで変わるもの。 投稿日:2002年03月17日(日)22時41分57秒
矢口は休憩をしに浜辺へ行った時、豪華とは言えないが、それなりに生活が出来そうな
船を見つけた。

「なに、あれ・・・船??」

日の丸の旗が描かれていることから、日本から来たものであることがすぐに分かった。

「日本からじゃん・・・なに・・・まさかね・・・でも・・・」

矢口は高鳴る鼓動を抑えながら恐る恐る船室へと向かった。


コンコン
返事はない。
コンコン
やはりない。
ギィィィ〜・・・・カチャ

「すいませーん!誰かいませんかぁ?入りますよぉ?」

矢口は少し返事を待ったが何も返って来ないので中に入っていった。

自分が日本に居た時に聴いていたCDや読んでいた雑誌が目に入った。

「なつかしいな・・・やっぱ日本からなんだ・・・。」



あたりを見回していた矢口だったが、ふとあるものを見て動きが止まった。
80 名前:運命は勇気ひとつで変わるもの。 投稿日:2002年03月17日(日)22時44分56秒
「これっ!!?」
それを手にとってよく見る矢口。

(・・・やっぱり!なっちの?なっちのIDカードじゃん!矢口のプリクラ貼ってあるし!)

「なっち!なっち居るの??乗ってるの??居るんでしょ?返事してよ!!なっち?!」
矢口は安倍を呼びながら船の中を捜した。



なんの返事もなく、諦めかけたその時――

「・・・・あんた・・・矢口って名前か?」

(えっ?!)
矢口が振り向くとそこにはやつれた感じに見える金髪の女性が壁にもたれかかりながら
立っていた。

「だ、だれっ??」
「矢口か・・・・?」

「そ、そうですけど・・・。どうして知ってるんですか?」

「良かった・・・会えて・・・」
「どういうことですか?」

「・・・なっちがな――」
「なっち??!知ってるんですか?なっちはどこに居るんですか???教えて下さい!」
81 名前:運命は勇気ひとつで変わるもの。 投稿日:2002年03月17日(日)22時46分42秒
「なっちは――」
ガクッ
言い終える前にひざを床について崩れ落ちた女性。
矢口がかけよると意識がなかった。
矢口は慌てて保田を呼び、みんなに頼んで救護室に連れて行った。


「圭ちゃん、この人どう?生きてる??」
「大丈夫。疲れて寝てるだけみたいね。」
「そっか、良かった。」
保田以外のほとんどの人間は初めて見る船に興味津々でそちらへ行っていた。

「矢口さ、この人が起きたら話したいから、ふたりっきりにさせてもらえるかな?」
「・・・『なっち』が関わってることね?」
コクンと頷く。

「分かったわ。みんなにも言っとく。」
「ありがと。」


矢口は安倍と別れてから、安倍に関わっているらしい人間にやっと出会えたことを
心から喜んでいた。しかしその反面、何故安倍がこの場に一緒に居ないのか。
そのことも気になっていた。良いことよくないこと。両方考えながら矢口は
女性が目を覚ますのを待った。
82 名前:運命は勇気ひとつで変わるもの。 投稿日:2002年03月17日(日)22時48分14秒
「んん・・・。」
「あっ。」
「ん〜・・・」
矢口の方をちらっと見て起き上がる女性。

「あ、無理しないで下さい。寝てて良いですから。」
「そうか?」
女性は言われるまま再びベッドに潜り込んだ。

「・・・話できそうですか?」
「あぁ・・・そうやったな。なっちのこと、話すわな。」


「あれは――
2ヶ月くらい前のことやったかな。うちの犬がやたら吠えるからおかしいと思って外に
出て見たんや。何もなさそうやったから部屋に戻ろうとしてんけど戻らしてくれへんかってん。
で、案内されるがままついて行ったら、浜辺になっちが倒れてたんや。血まみれやって
痣だらけやったからもう死んでるかと思ったら生きてて・・・慌ててうちに連れて帰ったわ。」


「なっちもどこかに辿りついてたんだ・・・」




「続きええか?」
「あ、はい。お願いします。」
83 名前:運命は勇気ひとつで変わるもの。 投稿日:2002年03月17日(日)22時49分56秒
「で、とりあえず医者にうちまで来てもろてすぐに見てもらった。結果は、
 もう手の施しようがない状態で、ただ死ぬのを待つしかないって言われてん。
 そんな会話してたらなっちが目ぇ覚ましてなぁ。
 にっこり笑いながらあいさつしてきたんや。」

『助けていただいて・・・ありがとうございます。』
『ええんや。気にしんといて。うちひとりで住んでるし暇やし。名前なんていうん?』
『安倍なつみ』
『なつみか・・・うちは中澤裕子。よろしくな。』
『なっちで良いですよ。』
言いながら少し咳き込む安倍。
『あっ、無理したらあかんで、さっきまで意識なかってんから!』
『あ、はい・・・。』

何故船もなしに辿りついたのか、何故体中が血まみれだったのか、なぜ痣だらけだったのか
・・・聞きたいことは山ほどあったけど言いたくなさそうやったから何もきかんかった。


『・・・なっちしか・・・居ないんです・・か?』
『ん?あぁそうやな。うちが見つけたのはあんただけやった。』

『・・・・そうですか。』
84 名前:運命は勇気ひとつで変わるもの。 投稿日:2002年03月17日(日)22時51分56秒
なっちは医者が言ったように助かる見込みがほんまなかってん。
シロートのうちでもわかるくらいに。何日か寝たまんまで、たまに起きて少し話す
程度やってん。話す内容はなっちとあんた、矢口のことやった。」


「なんて・・・?」

「あぁ、最初に会ったときは
『なっちには矢口って恋人がいるんです。ちっちゃくてー可愛くてーすっごく優しいんですよー。
 矢口となっちはいつも一緒で、矢口が居ればほかには何もいらないってくらい愛してるんです。
 矢口もなっちを愛してくれて・・・幸せだったんです。』
    

その日はそれっきりなっちはもう何も言わんかったけど毎日なっちは矢口のこと話してた。
矢口と初めて出会ったのはいつで付き合い始めたきっかけは何で始めてデートした場所はどこで
・・・とか、とにかくあんたのことばっか話してた。めっちゃ嬉しそうになぁ・・・
にこにこしながら話してた。うちも聞いてて顔にやけてなあ・・・ほんまに好きやねんなぁって
心から思った。・・・でもそれはそう長くは続かへんかった。
85 名前:運命は勇気ひとつで変わるもの。 投稿日:2002年03月17日(日)22時53分47秒
雨が降った日やったかな・・・なっち急に容態が悪化して・・・咳が止まらんくて・・・
顔色悪くて・・・もう死んでるんちゃうか・・・って思うほどやった。

『なっち?!大丈夫か??今すぐ医者呼ぶから待っとりや!』
それだけ言ってすぐに電話かけようとしてんけどなっちにとめられてん。

『ま、待っ・・て裕・・・ちゃ・・ん。い・・かない・・で・・』
『なんでや?医者呼ばなあかんやろ!いいから待っとり!』

『なっちはもう駄目だからっっ!!』



『・・・なに言うてんねや?』

『なっちが・・助からな・・い・・って分かってるべ。自分・・のことだ・・から。
 だからここに居て・・なっちの話聞いて・・。』
めっちゃ辛そうに咳き込みながら話すんや。でもそんなことうちは認めたくなかった。


『あほっ!!助からないなんて言うなや!最後まで諦めんと頑張らなアカンやろ!!
 なに言うてんねや!』

『だって・・』
『だってもくそもあるかい。医者呼ぶから待っとり!ええな!』

『・・・』
86 名前:運命は勇気ひとつで変わるもの。 投稿日:2002年03月17日(日)22時54分49秒
うちはすぐ医者を呼んだ。
大雨やったしすぐにはこんかった。これんかったんや。うちの家島でひとつだけぽつんって
離れた所にあったし、うちに来るには崖のそば通らなあかんしな。
医者が来るまでなっちと話してたんや。


『今医者呼んだから。すぐ来るからもうちょっと頑張り。それまで話聞いたるから。』

『・・・なっちがどうして溺れついたのか言わなかったべな・・・。』
『ええ。言いたくないことはいわんでええ。』



『・・・なっちと矢口は女同士だったんだべ。』

なっちの話し振りからそんなことはすぐに分かってた。
『だからなんやねん。ええやないか愛し合ってるんやろ?羨ましいわあ!』



『・・・汚いって思わないべか?人間じゃないって思わないんだべか?』
『なんでそんなん思わなアカンねん。なっちはきれいやんか。矢口矢口って
 一生懸命恋してるの分かるし、普通やんか。』

87 名前:運命は勇気ひとつで変わるもの。 投稿日:2002年03月17日(日)22時56分08秒
『・・・なっちたちは同性愛者だってことで追われて、捕まったら死刑になるところだったべ。
 矢口と逃げたけどすぐに捕まって・・・。それで崖から身投げしたべ。』

なっちは落ち着いたみたいで普通にしゃべってた。
でも無理してたんやな。


『なっちは矢口と出逢えて本当に良かったべ。親に捨てられていつもひとりだったなっちに
 愛情を注いでくれた。矢口も親はいなかったけど多分これが家族なんだってなっちたち分かった。
 矢口に愛されて良かった。矢口を愛せて良かった。なっちがこうやってここに
 たどり着いて生きてるように矢口もどこかで生きていて欲しい。元気にしてて欲しい。
 また会うことは出来ないけど、お互いの寿命が尽きたとき、また会えるって信じてる。
 なっちは幸せだったべ』

『なっちはまだまだ死なへん!』
88 名前:運命は勇気ひとつで変わるもの。 投稿日:2002年03月17日(日)22時57分18秒
『・・・でも・・・ほんとうに矢口がどこかで生きてたら・・・・
 矢口は責任感がすごく強いから、なっちのことずっと探して、なっちのことばっか考えて
 ・・・矢口の一生は終わってしまう。・・・そんなのはいやだべ・・・もし生きてたら
 なっちの事は忘れて欲しい・・・なっちのことで矢口のこれからの人生を奪いたくない。
 もういっかい矢口に会ってそう伝えたい・・・それだけが心残りだべ・・・。』

『だったら会ってまた一緒にいればいいんや!』

『ありがと、裕ちゃん。助けてもらったのに・・・だめだべな・・・』

なっちはめっちゃ優しい顔で笑ったと思ったら急に力が抜けたように目を瞑ったんや。

『なっち??なっち?なに寝てんねや?話きかせてや!なっち??』

なっちは二度と目を開けることは無かった。



「じゃあ・・・なっちはやっぱり・・・」


「・・・死んだ。」

「そうですか・・・。」
話を聞いててすぐにそうだろうと言うことは分かっていた矢口。
89 名前:運命は勇気ひとつで変わるもの。 投稿日:2002年03月17日(日)22時58分24秒
「なっちは最後まであんたのこと話してた。今言ったように、なっちはあんたに自分のことに
 縛られないで生きて欲しいって言ったんや。自分の人生一生懸命生きて欲しいってな。
 あんたは責任感強いから心配って・・・。」

「・・・教えてくれてありがとうございます。」
「ええんや。」


「・・・最後にひとつだけ聞いて良いですか?」
「なんや?」


「最期のなっちは幸せそうでしたか?泣いてませんでしたか?」
「めっちゃ幸せそうに笑って逝った。出会ってから最期まで一度も泣かんかった。」

「・・・良かった。」


「あ、あともうひとつだけ。どうしてあなたは矢口にわざわざこのことを伝えに来て
 くれたんですか?どこに居るかもしれない矢口のところに。」
90 名前:運命は勇気ひとつで変わるもの。 投稿日:2002年03月17日(日)22時59分24秒
「・・・なっちの心残りなことやったからな・・・。うち、たった数日やったけど
なっちとおって楽しかってん。あんたのことをいつも幸せそうに話すなっち見てたら
自分も幸せな気持ちになってきてな・・・なっちのことが好きやったんやと思う。
なっちが死んでから、ずっとなっちが最期にいった言葉を思い出してた。
それで自分に出来ることなんやろって思って船であんたを探しまくった。
もう二度と自分の家には戻れないやろーなーって思ってすぐに決断はできんかってんけど
なっちの言葉思ったらそんなんどうでも良くなった。嵐で太平洋のどこかに流されて、
食料が尽きてうちもやばいなーって思ったときこの島に着いた。それで偶然あんたに会えた。」


「そうですか・・・ほんとにありがとうございます。この島、住むところならいっぱい
 あるから、ゆっくりしてって下さい。矢口の島じゃないけど・・・。」
「そうするわ。」
「じゃあ、失礼しますね。」
矢口は救護室をあとにして自分の部屋へともどった。
91 名前:運命は勇気ひとつで変わるもの。 投稿日:2002年03月17日(日)23時00分32秒
「ただいま・・・・・・。」
力なく言う矢口。ドアを開けてすぐのところにへたり込んだ。

(なっちはもう居ない・・・なっちは死んだ・・・幸せそうだったって・・・ほんと?
 ほんとなの?なっちは本当に苦しまずに逝ったの?なっちは死ぬってときまで
 矢口の心配をしてたの?・・・矢口はどうしたら良い?)

「どうしたらいいのさ・・・」

「なっちの言ったように一生懸命生きたらいいのよ。」

「??」
後ろを振り向くとそこには保田がいた
「圭ちゃん!?なに??聞いてたの??」
コクンと頷く
「ごめん。心配だった。」



「・・・・矢口はなっち以外の人を愛せるかな?」
「それを頑張らないとだめなんでしょ?なっちが望んだことでしょう?」

「そうだけど・・・すぐには・・・。」
「少しずつで良いじゃない、なっちと出会って愛し合ったようにまた頑張れば良いのよ。」
92 名前:運命は勇気ひとつで変わるもの。 投稿日:2002年03月17日(日)23時03分25秒
「・・・・・・・・・・頑張ってみる。」
「頑張る!でしょ?まずは後藤と仲直りからね?」

「・・・・後藤か・・・」

「・・・後藤は矢口に好意を寄せてると思うわよ。」


「・・・なんとなくそんな気がしてた。」
「ほんと??」

「わかりやすもん後藤。」
「そうかしら?(好きな人には素顔を見せてるのかしら?)」

「矢口さ、なっちが死んだって、もうこの世に居ないって分かったけどそこまで
 悲しくないんだ。」

「え?」

「あ、えっと、悲しいけど、最期幸せそうだった、笑顔で逝ったって聞いたから
 安心したの。なっちのことは今もまだ愛してるけど、なっちが最期にいったこと、
 頑張ってみる。」

「・・・漂流者に感謝ね。自分の家を捨ててまで探してくれたんだもの。」

「すごい勇気だよね。圭ちゃんもありがと。」
「いいのよ。」
そういって出ていった。
93 名前:運命は勇気ひとつで変わるもの。 投稿日:2002年03月17日(日)23時05分35秒

「よし!後藤と仲直りから頑張るぞ!なっち、見ててね!!」

矢口は気合を入れると後藤の部屋へと向かった。



コンコン
「・・・はい。」
「・・・矢口だけど!!後藤に話しあって!」

「ちょ、ちょっと待って!!」

ガラッ
「おっす!」
「どうしたの??」

「うん・・・あのさ――」








運命は決まっていると言われているが誰かの勇気ひとつで変わるもの。

勇気ひとつで運命はどんなものにも変えられる。

運命は自分で変えていくもの。


勇気が出せるかどうか、それがすごく難しい・・・。


          別エンディング―完―
94 名前:76 投稿日:2002年03月18日(月)00時12分14秒
やぐごま編ですか?
なちまり好きとしては、やはりなちまりでハッピーな話を期待しちゃうもんで
やぐごまも好きなんですけどね…やっぱ、なっちがカワイそうで。
95 名前:作者もどき 投稿日:2002年03月18日(月)01時27分25秒
>94 76さま
    分かりにくくてごめんなさい。
    実はなちまり編だったりしました。
    やぐごま編は別にもありまして・・・。
    まだまだ容量あるので良かったら続きもお付き合い下さい。

    『運命は決まっているもの。』
    『運命は勇気ひとつで変わるもの。』
    『運命なんて信じない。』(やぐごま)
    『運命は残酷だった。』(なちまりごま)
    『運命は試練を与えた。』(なちまりごま)
    がまだあります。
    ただ、どれも今のところ純粋ななちまりが無さ気なので
    ・・・・なんとかします!

    だから、お付き合いいただけたら嬉しいです。
96 名前:運命なんて信じない。 投稿日:2002年03月18日(月)01時34分20秒
68レス目くらいから違うエンディングへ進みます。



「はぁはぁはぁはぁはぁっ・・やぐっつあん・・・なに・・してんのさ・・はぁはぁ」

「・・・後藤。なんで来たんだ?なんで分かった?」

「・・下からっ・・見えたからっ・・・。早く戻ろ?こんなとこ居ないで戻ろ?」

「手紙、読んだでしょ?」
「読んだけど・・・間違ってるよ!!死んだって『なっち』さんに会えるわけないじゃんか!」

「・・・なっちに会えるなんて本気で思ってないよ・・・矢口が・・・矢口がもう
 耐えられないだけ・・・。このまま生きてなっちを忘れないで暮らしていくなんて
 もう出来ない・・・死んで生まれ変わってやり直すんだ。」


「・・・本気でいってるの?」



「・・・」


97 名前:運命なんて信じない。 投稿日:2002年03月18日(月)01時35分37秒
「ばかぁっ!なんでそんな悲しいことばっか言うのさぁ!なんで死ぬことしか考えないのさ!
 なんで生きてやろうって思わないの?なんでなっちさんの分まで必死に生きようとしないの?
 疲れたからって、耐えられないからって、そんなのなっちさんが知ったら悲しいよ。
 やぐっつあん頑張らなきゃだめだよ、頑張って生きなきゃ駄目だよ。
 簡単に死ぬなんて言ったら、考えたら駄目だよっっ!」

「だってつらいんだもん!生きてくのつらいんだもん!矢口はここで死ぬ。
 なっちが死んだように、ここで死ぬのが矢口の運命なんだ!!」

「運命なんて信じないもん!!そんな運命なくていいもん!ごとーはやぐっつあんと
 話したい事やしたいこと、教えてもらいたい事も、いっぱいいっぱいある。
 ごとーはやぐっつあんともっと一緒に居たい!」



「・・・そんなの・・・迷惑だよ。」


「・・・」
涙がぶわっと出る後藤
98 名前:運命なんて信じない。 投稿日:2002年03月18日(月)01時37分03秒
「・・・ごめん・・・でも・・・」

「・・っく・・やぐっ・・つあんは・・っく・・ごとーを置いてくの?」

「なんだよそれ・・・」

「ごっ・・ごとーは今までずっと・・ひとりぽっちだったよ。・・・やぐっつあんと
 ・・出会うまでずっとひとりだった。・・・好きな人も好きになってくれる人も
 居なかったし・・・それこそ生きててなんの意味があるんだろーって・・・思ってた。
 ・・・ごとーも死ぬこと考えたりした。でもそんなときやぐっつあんに会ってさ、
 なんかほっとしてなんでか一緒に居たくて・・どんどん好きになっていって・・・
 やぐっつあんなしの生活は考えられなくなってた・・・ごとーをそんなふうにさせたのに
 ・・・やぐっつあんはごとーを置いてひとりでいくの・・・?」


「・・・後藤のことは・・・妹としてしか見れないよ・・・。悪いけど・・・。」
「い、妹としてでも、良いから、ごとーの傍に居てよ・・・ごとーをひとりにしないでよ・・・。」
「でもっ――」
「お願い!!!」
矢口に抱きつき必死で引き止める後藤。



長い長いの沈黙のあと、矢口は観念して後藤と部屋へと戻った。
99 名前:運命なんて信じない。 投稿日:2002年03月18日(月)01時37分59秒
それから、矢口は夜になると部屋を抜け出して海に入って行ったり、
ナイフで自分の体を刺そうとしたり、自殺しようとする行為が続いた。

全て後藤が発見して未遂に終わっていたが。

その間後藤は、矢口のつらさ、悲しさ、やりきれなさに対してとても大きな心で慈しむように
接した。だが、矢口の心が変わることも開かれることも無かった。


後藤は或る日、何もやる気にならない、そう、まさに死んだほうがましに思えるほどに
なってしまった矢口を見て爆発した。


(やぐっつあんに優しくするのもうやめた!ごとーのキャラじゃないし、効き目ないもん!
 とことん迷惑かけてやる!)
100 名前:運命なんて信じない。 投稿日:2002年03月18日(月)01時39分01秒
ガラッ
「やぐっつあん!今日泳ぎに行こう!!」

「・・・・・・・ハアッ??」

「ハア?じゃないよ、あっついもん。泳ぎに行こうよ!ね!」
後藤は矢口の着替えを勝手にかばんに詰め込んで無理やり連れていった。

「わぁ〜!!ほらっやぐっつあんカニー♪食べれるかなぁ?ね!」
「あっクラゲだぁ〜ごとーあんま泳いだことないからぁこんな傍で見るの初めて!!」
「やぐっつあん、あっちの方にも行ってみようよ!」
「やぐっつあん楽しいねー♪」
「今日のごはんごとーが作ってあげるよ」
「夕日がきれいだね」

後藤はずっとはしゃいでいた。
矢口も久しぶりの遊びに少し若さを取り戻したようだった。

自分達の部屋へと帰って来たふたり

「・・・今日誘ってくれてありがとう。・・・なんか、楽しかった。」
「ううん。ごとーのわがままだもん。明日も遊ぼうねはあとはあと
後藤は満面の笑みでそう言うと自分の部屋へと入った。
101 名前:運命なんて信じない。 投稿日:2002年03月18日(月)01時39分49秒
「・・・いい子だな・・・。」
矢口も部屋へと戻った。

それからも毎日後藤は矢口を遊びに誘っては連れて行った。

そして少しずつ矢口も明るさを取り戻していった。


「っさあ!今日はなにして遊ぶ?」
「今日?いいよ家に居るから。」
「駄目だよお!遊ぼ!!・・・そうだ!梨華ちゃんち行こうよ!行ったことないでしょ?」
「いらないってそんなの。」

「・・・ごとーひとりで遊んでもつまんないよ。」


「・・・もー分かったよ。ちょっとだけだからね。」

「やったあ!さっすがやぐっつあん♪」


コンコン
「はーい」
「あ、梨華ちゃん?ごとーだけど遊ぼ!!」
102 名前:運命なんて信じない。 投稿日:2002年03月18日(月)01時40分56秒
カチャ
「どうしたの?ごっちんが遊ぼうって言ったことあったっけ?あっ、矢口さんも居たんですね。
 こんにちは。」

「こんにちは。」

「あっ、どうぞ、入って下さい。」

中へと入る矢口達。

「おーっすよしこ!」
「どしたの?ごっちん。あっ、矢口さんまで!ちわっ!」
「暇だから遊びに来たの!」

「そっか。なんか矢口さん初めてに近いから緊張するよぉ」
「矢口もね・・・」



「お待たせぇ!」
梨華がトロピカルジュースにお菓子を持ってやってきた。

「さんきゅ♪梨華ちゃんはあとはあと
「えへへ〜はい、あ〜んはあとはあと
「うんうんおいしーよはあとはあと

「「・・・・」」
目が点になった矢口達。
103 名前:運命なんて信じない。 投稿日:2002年03月18日(月)01時41分59秒
「帰ろうか後藤。」
「やだ。」
「やだ?」
「ごとーも食べさせたいはあとはあと
「げげっ!良いってそんなの。」
後藤はお菓子を手に取ると矢口の方へ近づけて行く。

後藤があ〜ん言っても矢口はそっぽを向いてしまう。

「も〜!!いいんじゃんかこれくらいっ」


「「・・・」」
矢口達をじっと見つめる梨華達。
ふたりして思ったことを吉澤は口に出してしまった。

「ふたりってやっぱ付き合ってるんですか?」

「はぁ???」
矢口がその言葉に反応した。

「え?違うんすか?」

「なんでそうなるの?別に付き合ってないけど・・・」
104 名前:運命なんて信じない。 投稿日:2002年03月18日(月)01時45分24秒
「うそー!だってめっちゃお似合いだし仲良いじゃないすか。
 てっきりそうだと思ったっすよ。ねー梨華ちゃんはあとはあと

「うんはあとはあと

「君らは付き合ってるね・・・」

「ごとーたちはこれからなのはあとはあと
「はぁ???」
「まっ、いいややめよこの話。なんかゲームでもしようよ」
「・・・そだねっ。じゃ――」


夕方までお邪魔して帰って行った矢口たち。
帰り道に思う。

(矢口達って付き合ってる風に見えるわけ?マジ?・・・そうなんだ・・・)


(ごとーたち付き合ってるように見えるんだ・・・嬉しいけどほんとは全然違うもんね・・・)



(そういや・・・後藤ってなんか・・・なっち・・・に似てるな・・・妙に甘えた感じの
 ところとか・・・)



(なんだろ、さっきから黙りこくってごとーの方見て・・・)

(なっちは普段はしっかりしてたけど・・・実は甘えただったもんなぁ・・・
 後藤はいつも甘えただけど・・・・・・・なんか、似てるかもね。)


(やだよぉなんか見られてるぅ)

矢口達は会話もないまま部屋へと帰った。
105 名前:運命なんて信じない。 投稿日:2002年03月18日(月)01時46分28秒
「じゃ、じゃあまたね、やぐっつあん。」

「うん。」

ずっと無言だったため淋しそうに帰っていく後藤を見て声をかけた矢口。

「・・・・明日も待ってるからね。」

「え・・・?う、うん!分かった!!ばいばい!!」

「ばいばい。」
急に満面の笑顔で後藤に答えられた矢口はちょっと微妙な感じの笑顔で後藤に返した。

「なんだろ・・・この・・・気持ち・・・」


部屋に戻りひとり思う矢口
(なんか・・・なっちを思いださせるな・・・後藤か・・・。)


そして次の日もその次の日も矢口と後藤は毎日一緒に居た。
矢口は後藤になっちを重ねて見るようになっていた。
106 名前:作者もどき 投稿日:2002年03月18日(月)01時47分55秒
取り敢えず更新終了です。
また後日残りのせます。
ごめんなさい。
107 名前:76 投稿日:2002年03月18日(月)02時46分23秒
やっぱりなちまり編でしたか…
どっちかな?と思ったんですけどね。
ハッピーななちまりが読みたいのでやぐごまだったらなぁ…と思って。
108 名前:名無しさん 投稿日:2002年03月18日(月)22時13分04秒
出来れば奇跡で安倍も矢口の元に無事たどりついてほしい。
109 名前:運命なんて信じない。 投稿日:2002年03月18日(月)23時00分46秒
いつものように後藤と別れようとした或る日のこと

「今日さー泊まりに行っても良い?」
「隣じゃんか。泊まりに来るほどのものでもないでしょ。」
「でも一緒に寝たいもん。」
「ハァ??寝る?」

「変な意味じゃなくてさ、・・・今日ごとー誕生日なの。」
「誕生日?」
「うんそう。9月23日。ごとーが生まれた日だって圭ちゃんに教えてもらったの。」
「そうかぁ・・・」
「やぐっつあんはいつ?」
「矢口?矢口は1月20日だよ。」
「なんだ・・・まだまだ先だね。」
「そだね。よし、分かった。今日は一緒に寝よ。良いよ。」
「ほんとお??やったー!!」
矢口に抱きつき喜ぶ後藤。

「じゃあ夜9時頃行くから!!」
「うん。待ってる。」
110 名前:運命なんて信じない。 投稿日:2002年03月18日(月)23時01分54秒
「おまたせー。」
「いらっしゃい。」


「・・・さっそくだけどごとーもう眠いんだぁ。もう、寝ない??」
「もう寝るの??矢口ぜんぜんいけるよ・・・。先寝てなよ。」

「え〜・・そんなのやだあ。意味ないじゃんか。」
「だったら頑張って起きてなよ。」


「やぐっつあん冷たい・・・ごとー誕生日なのにさ・・・グスン・・・グシ・・。」

「わぁっ泣かないでよ!わかったから!矢口も一緒に寝るから!それで良い?」

「グスン・・・えへへ・・嬉しいはあとはあと
(やれやれ・・・子供だな・・・)


電気を消してひとつの布団に入る矢口たち。
「狭いのは我慢してよ。一人用なんだから。」
「狭くて良いはあとはあとやぐっつあんが近くに感じれて嬉しいはあとはあと

「・・・そう。・・・なら良いけど。」


しばらく沈黙が続いていた



「・・・やぐっつあんさー・・・一個お願いあるの。」
「なに?」
111 名前:運命なんて信じない。 投稿日:2002年03月18日(月)23時03分01秒
「・・・手ぇつないで良い??」

「・・・良いよ。・・・ん。」
後藤の手を握った矢口。
後藤の顔は暗くてよく見えないが幸せそうな笑顔だった。

「嬉しい。幸せだよごとー。おやすみ・・・」
「おやすみ。」


スー・・・スー・・・・
小さな寝息をたてながら眠る後藤
矢口は寝ずにまだ起きていた

(・・・なっちとは違う可愛さがあるんだよね・・・・・・なっちのこと愛してるけど
 ・・・後藤のことも好きかもしんない・・・でも、なっちは許してくれないよね・・・)



次の日の朝
「ふわぁ・・・・ぁぁぁ・・・んん」
矢口が後藤を見るとまだ寝ていた。
手もしっかりと繋がれたままだった。

「・・・あはっ・・・」
「あん?なに?」
「・・・」
「ひとりごとかい!!」

(可愛い寝顔だなぁ・・・)
矢口は無意識のうちに顔を近づけて行き、後藤の頬に唇を落としていた。
112 名前:運命なんて信じない。 投稿日:2002年03月18日(月)23時04分03秒
(・・・・・!!なにしてんだ矢口!なっち、ごめん!!)

「んあぁ〜・・・ぁぁぁ・・・・・おはよ〜・・」
「あっ、おは、おはようっ後藤。よく眠れたみたいだね。」
「えへへ。やぐっつあんの手ぇ温かかったから。良い夢いっぱい見ちゃった。」
「そう。よかったね。」
「うん!それで、今日はなにして遊ぶ?」
「今日?・・・ちょっと今日はいろいろと考えたいことあるから遊ぶのやめとく。」
「考えたいこと?」
「うん。ごめんね。」
「ううん。分かった。」
後藤は矢口と朝ごはんをとると帰っていった。



「なっち、矢口なっちのこと愛してるよ?誰よりも何よりも愛してるよ?いつだって
 一緒だったしなっちと居れば他になにもいらなかったし、ほんとうに幸せだったよ?
 永遠に一緒にいられるって思ってた。」

ペンダントの写真に話しかける矢口。
113 名前:運命なんて信じない。 投稿日:2002年03月18日(月)23時05分16秒
「でもねなっち、矢口はなっちに謝りたいことがあるの。矢口はなっちのこと愛してるけど
 ・・・後藤のことも好きになったの。最初は後藤になっちを重ねて見てた。
 でも知らない間に後藤が大きくなってた。なっちはこんな矢口を許してくれる・・・?」



「矢口は・・・なっちの分まで一生懸命生きたい。矢口が道連れにしたくせに何いってんだ
って感じだけど、生き延びてしまった以上そうしたい。なっちと死ねなかったけど、
なっちの分まで生きることは出来る。だから・・・許して欲しいな・・・」


矢口は返事の返ってこない写真を見ながら話し続けた。
そしてお昼になりご飯を食べに出て行った。

矢口の心の中ではもう答えは出ていた。
後藤を愛すると・・・。安倍を忘れるわけではなく、安倍と居た時間を忘れないためにも
一生懸命生きると決めた。


お昼ごはんを食べて戻った矢口。

(もともと後藤に惹かれたきっかけってなっちなんだよ・・・甘えたでさ・・・)
114 名前:運命なんて信じない。 投稿日:2002年03月18日(月)23時06分18秒
「ただいま、なっち。」

写真に向かって言い、中へ入ろうとした矢口だったが違和感を覚えて写真をよく見た。

「???なんで???なっち??」

ふたり仲良く写っていた写真だったはずだがそこには安倍の姿のない、矢口だけが写った
写真があった。構図は同じ。安倍が消えたと言って良い。

「なんで?」

写真を良く見ても破ったあとも切ったあともなにもない。

矢口が不思議がってあたりを見回しても怪しいものは何もない

「・・・こんなの・・・なっちがやったとしか・・・・・・許してくれるの?
 ・・・ねぇ、なっち・・・許してくれるの・・・?」
もちろん返事は返ってこなかった。



「矢口、良いようにとっちゃうよ?良いの?なっち?」

コンコン
「やぐっつあん??」
「後藤?」
「うん。さっきから何ぶつぶつ言ってるの?」

「・・・入ってよ!」
「うん?」

中へ招き入れて写真を見せた矢口。
115 名前:運命なんて信じない。 投稿日:2002年03月18日(月)23時07分28秒
「・・え・・どうしたの・・・?破ったの?」
「ううん。勝手になった。どういうことだと思う?」
「ん〜・・・ごとーは『なっちのことは忘れて後藤さんの写真入れてあげて』って
 言ってるんだと思う・・・なんて都合よすぎだけど・・・」

「後藤もそう思う?矢口も思ってた。」

「・・・」

「・・・」

「じゃあ入れてくれる??」
「・・・正直に言うけど、矢口はまだなっちのこと愛してるしこれからも忘れる事はないと
 思う。でも・・・後藤のことも好きなの・・・。二股ってわけじゃないけど・・・
 それでも良かったら後藤と付き合いたい。」

「えっ!ほんとに?本気で言ってる??」

「・・・うん。」
「妹みたいって言ってたじゃない?女に見えるの?」

「充分見えてるよ!!良い・・・かな?」
「良いに決まってるぅ!!ごとー感激!嬉しいよやぐっつあん!」

「・・・良かった。じゃあ・・そういうことで・・・」
「う、うん。明日からまた宜しくね。」


その日の夜――矢口は珍しく夢を見た。
116 名前:運命なんて信じない。 投稿日:2002年03月18日(月)23時10分18秒
やぐち・・・起きて・・・・・やぐち・・・なっちだべよ・・・やぐち・・・

『なっち??なに?どこに居るの??』

ここだべ・・・やぐちの・・・すぐそばだべ・・・

『分からないよ、なっち。』

・・・なっちはさ・・・矢口より先に・・・逝っちゃったけど・・・・矢口を・・・

いつまでも縛り付けたりしたくない・・・だから・・・矢口が選んだ道、なっちに

・・・構わないで突き抜けて欲しいべ。・・・後藤さんをなっちを愛したように

愛してあげて欲しい・・・

『なっち、許してくれるんだね』

許すもなにも・・・矢口の人生だべ・・・なっちがいえることじゃ・・・ないべ

矢口がなっちのところに来た時、一生懸命生きてなかったら許さないべよ??

『分かった』

じゃあ・・・なっち・・・行くね・・・

『え!?なっち?』
ガバッ 起き上がって見るとそこはいつもの自分の部屋だった。

117 名前:運命なんて信じない。 投稿日:2002年03月18日(月)23時12分44秒
(・・・夢?・・・すごくリアルだった・・・でも、ほんとうになっちが居た気がする・・・
 分かったからね、なっち。なっちの気持ち、ちゃんと伝わったからね!)

矢口はここへ来て初めて生きることへの欲が沸いた。





それから矢口は後藤と、安倍の分まで一生懸命生きた。

終わり





強引に終わらせてすいません。
次は多分なちまり編です。
118 名前:運命は試練を与えた。 投稿日:2002年03月21日(木)12時42分24秒
79〜80レス目から話が変わります。



矢口は休憩をしに浜辺へ行った時、豪華とは言えないが、それなりに生活が出来そうな
船を見つけた。

「なに、あれ・・・船??」

日の丸の旗が描かれていることから、日本から来たものであることがすぐに分かった。

「日本からじゃん・・・なに・・・まさかね・・・でも・・・」

矢口は高鳴る鼓動を抑えながら恐る恐る船室へと向かった。


コンコン
返事はない。
コンコン
やはりない。
ギィィィ〜・・・・カチャ

「すいませーん!誰かいませんかぁ?入りますよぉ?」

矢口は少し返事を待ったが何も返って来ないので中に入っていった。

自分が日本に居た時に聴いていたCDや読んでいた雑誌が目に入った。

「なつかしいな・・・やっぱ日本からなんだ・・・。」



あたりを見回していた矢口だったが、ふとあるものを見て動きが止まった。
119 名前:運命は試練を与えた。 投稿日:2002年03月21日(木)12時43分30秒
「これっ!!なっちのじゃんか!」
矢口が目にしたものは安倍と矢口が一緒に写っている写真の入ったペンダントだった。

「どうしてこれがここにあるの?なっち、居るの?ねぇ!なっち??どこ?居るんでしょ?
 返事してよ。矢口だよ、なっち出てきてよ!!」

矢口は船の中を隅から隅まで見て回ったが安倍は居なかった。

「絶対居るんだよ・・・いや、居たんだよここに・・・」

船はさっきまで人の居た様な気配がした。
矢口は疲れてそのままその場へ座り込んだ。
寝不足が続いてた矢口は寝かかっていた。





「――だべ。」

「――せやな。そうしよか。」

「――だべ。」



(ふふふっ『だべ』だって・・・なっちみたい・・・)
矢口は夢うつつだった。
120 名前:運命は試練を与えた。 投稿日:2002年03月21日(木)12時44分28秒

「――この島には人住んでそうやしなぁ・・・なっちの言ってる矢口ももしかしたら
 おるかもしれんな。」

「居るべよ絶対!なっちには分かるべよ。」





(・・・なっちだって・・名前まで・・・・えっ?!)

矢口は飛び起きると声のした方へと駆け出して行った。



(なっち??なっちなの??)
矢口が船室から出て外を見るとそこには―――


「ほらぁ〜裕ちゃんちゃんと持つべよ。なっちばっか運んでるべよ。」

「ええやないか・・・裕ちゃん年やねん。労わってや。」

「も〜・・・そういうときだけ年だっていうんだからずるいべよ。」
「ええがなええがな。矢口見つかったらいっぱい労わってもろたらええがな。」


「・・・そうするべはあとはあと



楽しそうに、それも元気よくしゃべっている安倍の姿があった。
121 名前:運命は試練を与えた。 投稿日:2002年03月21日(木)12時45分27秒
「なっち・・・なっちじゃんか・・・なっち!!なーーーっち!!」

矢口は急いで駆け下りると安倍のもとへと走って行った。



ハァハァハァと肩で息をしながら安倍を見る。

「ハァ・・ハァ・・なっち・・・」



「・・・・・・・・・・矢口?」

安倍は口をあけてぼーっと矢口を見ている。

「そうだよ・・矢口だよ・・・。」
今にも泣き出しそうな顔で答える矢口。

「う、うそだべ・・・矢口に会えるなんて・・・信じられないべ・・・」
安倍は我慢できずに泣いている



「うち、先に運んどくわ。」
一緒に居た女性はひとりで軽々と荷物を持って行った。
122 名前:運命は試練を与えた。 投稿日:2002年03月21日(木)12時46分56秒
「また会えて良かった、会えるって信じてた、なっちに会えてほんとに嬉しいっ!」

「なっちだって同じだべ・・・矢口にずっと会いたかった・・・すっと探してた!!」
矢口と安倍は抱き合いながらわんわん泣いた。


しばらくすると矢口が泣き止み、安倍も泣き止み・・・
ふたりは話し出した。


「なっち、どうしてこの島に居るの?矢口が居るって知ってたの?」

「ううん。当ても無く探したべ。・・・崖から飛び降りたあと、なっちはすぐ近くの島に
 溺れ着いて・・・さっきの・・・裕ちゃんに助けられたべ。見つかった時点でかなり
 危なかったらしいけど・・・裕ちゃんがお金出してくれて偉いお医者さんに見てもらって
 助かったべ。それからもいろいろ後遺症みたいなものあったけど裕ちゃんが看病してくれて
 ・・・もう大丈夫なんだべ。
123 名前:運命は試練を与えた。 投稿日:2002年03月21日(木)12時48分12秒
それでなっちは矢口が生きてるって信じてたから体が治ったら探しに行くって決めてたべ。
何年かかっても良い、死ぬまで、矢口が見つかるまで捜し続けるつもりだった。
裕ちゃんにはずっと矢口のこと話してて、ずっと面倒見てもらってて相談したら
『うちも暇やし金なら使いきれんほど余ってるし付きおうたるわ』って・・・
それで当ても無いのに矢口を探す旅に一緒に来てくれたの。
この島で10個目だったんだよ。日本の周りにはいっぱい小さな島があるから・・・
正直かたっぱしから探して見つかるものだべか?って思ってたべ。そしたら裕ちゃんが、
『ほんなら自動操縦で適当にいってみようか』って言ったんだべ。
それで着いたのがこの島なの。なんでかこの島地図にも乗ってないし世界のどの辺に
位置するのか分からないんだべ。・・・でもこうやって矢口に会えた。裕ちゃんに感謝だべ。」

「そうだったの・・・。よかったよ、無事に生きていてくれて。
 矢口たち、もう絶対離れないで生きていこうね?今度こそずっと一緒に生きていこうね?」


「うん。でも、住むところどうするべ。」

124 名前:運命は試練を与えた。 投稿日:2002年03月21日(木)12時49分11秒
「へへへ。それは大丈夫。矢口はなっちみたいにここに流れついて助かったから。
 ここでずっとなっちを探して暮らしてたから住む家はあるよ。
 正直、前に住んでたアパートより全然広いよ?びっくりするよ。」

「ほんとだべか?あ、でも裕ちゃんが・・・」

「それも大丈夫!家はまだまだあるから!」
「そうなんだべか?」

「うん。矢口の部屋行こう!矢口と一緒に住んでくれる?」
「当たり前だべ!」
ふたり寄り添って幸せそうにする。




「あのぉ〜そこのおふたりさん・・・そろそろ話しかけてもええやろか。」
125 名前:運命は試練を与えた。 投稿日:2002年03月21日(木)12時50分24秒
「裕ちゃん?!ご、ごめん。」
「いや、ええんやよ?愛する人に再会できてんから。でも・・・おなかすかんか?」

「え・・?あれぇ?もう薄暗いんだべな。」
「早く島案内してもろたほうがええんちゃうかなおもて声かけたんや。――矢口やっけか?」

「あ、はい。そうです。――あのっ、なっちを、なっちを助けてくれてここまで
 連れてきてくれてありがとうございました。心から感謝してます。」

「ええんやって。そないことよりここの住人に紹介してや。おなかすいたわ。」
「あ、はい。」

「ほならなっち、荷物持って行きや。」
「うん。行くー。」

「なっち、疲れてるんだから矢口にまかしてよ。矢口が運ぶから。」
「えっ良いべよ矢口。なっちは矢口にまた会えて元気だから!」
「矢口だってそうだよ。なっちに会えて元気でた!」



「・・・じゃあ一緒に持つべよ。」
「そうだね。」




(可愛いふたりやねー。)
126 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月21日(木)13時37分02秒
なちまりはやっぱりいいっすねー(w
127 名前:運命は試練を与えた。 投稿日:2002年03月24日(日)00時43分29秒
コンコン

「はい?」
「あ、圭ちゃん?矢口だけど。」

カチャ
「どうしたの?あらっ?」
「あのね――」
事情を説明した矢口。


「なに?じゃあなっちに会えたってこと?」
「うん!!」
ふたりでぼそぼそとしゃべる。

「良かったわねえ!!あ、みんなに紹介しなきゃね。」
「ありがと、でね、お腹がすいてるから先にご飯食べたいんだぁ。」
「ん、オッケ!集会所に用意してあげるからそれで良いかしら?」
「うん。」


「じゃああなた―えっと。」

「中澤裕子。裕ちゃんでええよ。」


「――裕ちゃんの部屋案内しますね。希望の部屋とかあります?」
128 名前:運命は試練を与えた。 投稿日:2002年03月24日(日)00時44分30秒
「希望?」
「海のそばとか森のそばとか・・・」
「なっちの近くやったらどこでもええよ。」

「・・・分かりました。なっちは、あ、安倍さんは――」
「なっちでいいべよ。」

「・・なっちは矢口と一緒で良いのよね?」

「矢口と一緒が良いべ。」
矢口と顔を見合わせて微笑み合う安倍。

「じゃあ案内するんでついてきて下さい。」
中澤は保田の後についていった。



「さて、じゃあ矢口の部屋はすぐそばだからいこっか」
「うん。」
129 名前:運命は試練を与えた。 投稿日:2002年03月24日(日)00時45分59秒
中澤の住む部屋へ向かう保田達。

「なあ、聞いてもええか?」
「はい?」

「――この島ってなんや?なんて島や?」


「・・・さあ。気が付いたらみんな居たんで・・・。」
「ほ〜ん・・・あと、うちみたいなよそもんがいきなり暮らしてええの?部屋までもろて。」

「はい。何故か部屋と食べるものには困らない島なんです。矢口もそうだし、気にしないで
 暮らして下さい。後で島の住人を紹介します。」

「そうかい。」




「ここです。矢口達の部屋からは15分って所ですけど近い方です。後で呼びに行くので
 ゆっくりしてて下さい。」

「ありがとさん。あんた、なんて呼んだらええんや?」
「みんなは圭ちゃんって言いますけど・・・保田圭です。好きに呼んでください。」
「分かった。」
130 名前:運命は試練を与えた。 投稿日:2002年03月24日(日)00時47分28秒
「ここだよ。」

「お邪魔します。」

「一緒に住むんだよ、『ただいま』でしょ?」
「えへへそうだったべな。ただいまだべ。」

「ほら、結構広いでしょ?前のアパートと比べてどう?」
「ほんとだべ!矢口の部屋って感じだし・・・」

「ベッドさ、狭いけど大丈夫かな、うちらちっちゃいほうだし。
 あまり窮屈だったら一個もらうけど。」

「充分だべ。矢口とひとつのふとんで寝る方が良いべ。」
「えへへ・・・矢口もはあとはあと・・・疲れたでしょ、圭ちゃんが呼びに来てくれるから
 それまで少し寝たら?起こしてあげるから。」

「大丈夫だべよ。矢口と話したいべ」
「矢口もだけど・・・この部屋二人用に矢口してないからちょっと片付けようと思って。
 矢口片付け好きだし、だからなっち休んでなよ。」
笑顔で言う矢口。


「・・・手伝うべ・・・と言いたいところだべがなっちは余計汚しちゃうから
 言う事気くべ。」

「うん。そうして(笑)」
131 名前:運命は試練を与えた。 投稿日:2002年03月24日(日)00時50分09秒
荷物を置いてベッドに潜り込む安倍

「・・・ふふふ・・・」

「ん?急に笑ってどうしたの?」

「矢口の匂いがするべ・・・」
安倍はそう言うとスーっと小さな寝息を立てて眠りに付いた。


矢口は寝たのを確認すると安倍の手を握った。

(やっぱ疲れてたんだ・・・。本物だよね?ちゃんと生きてるんだよね?ここで、
 矢口とここで、ずっと生きていけるんだよね?・・・生きてて良かった。
 また会えて本当に良かった。もう絶対に離したりなんかしないよ・・・
 離そうとなんか絶対にしない・・・)

握っている手から安部の温もりが伝わってきて、確かに安倍はここに、
自分と同じ時に生きていて、そばに居る。そう感じた矢口だった。


しばらく手を握って居た矢口だったが、安倍が起きた時に部屋が片付いていないと
何してたのかと問われるので片付け出した。
132 名前:作者もどき 投稿日:2002年03月24日(日)00時54分04秒
>126 名無し読者さま
    なちまり、あまり書いたことが無いので書けるか
    不安になってきました。
    個人的にはなちまり大好きなんですが・・・
    がんばらねば。
    今回は話が進まなくてすみません。
133 名前:76 投稿日:2002年03月24日(日)01時12分18秒
私の他にもなちまり派がいてちょい嬉しい。
作者さま、頑張ってくださいね。
134 名前:読んでる人 投稿日:2002年04月02日(火)17時28分58秒
今更だけど、なちまり小説(?)発見!!
現在、なちまり小説が絶滅の危機にあるので(自分が確認してるのは2chに1つあるだけ・・・)、
作者さん、がっんばってね。
135 名前:作者もどき 投稿日:2002年04月03日(水)03時32分18秒
>133 76 さま
    更新がかなり遅れてて申し訳ないです。
    ただ今繁忙期のため更新作業がちょっと難しいのです。
    放棄はしないのでまだ待ってくれてたらごめんなさい。

>134 読んでる人 さま
    初めまして。2chのってLOVEさんのですかね?
    私も読ませてもらってます。
    なちまりって需要あると思うんですけどエロに向かないっぽいから
    絶滅しかけなのかな・・・・?
    それとここではあまり需要なさそうですしね。
    
    とにかく、がんがるのでお待ち下さい。
136 名前:なちまりすと 投稿日:2002年04月03日(水)16時49分58秒
私もなちまり大好きです。
なちまり小説、ちょっとしたものならいくつか見つけたんですけど。
需要、無いんですかね???私はすっごい読みたいんですけど。
137 名前:名無しさん 投稿日:2002年05月11日(土)20時28分05秒
私もけっこうなちまり好きですよ〜。
だから頑張ってください!
ちなみに今日全部読んじゃいました〜!
138 名前:読者 投稿日:2002年05月28日(火)01時14分22秒
放置ですか?
139 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月28日(火)13時34分29秒
>>138
繁忙期だって作者が言ってるんだから信じなよ。
それと、そういうことわざわざageる必要ないと思う。
僕はまだ待ってるから。
140 名前:作者もどき 投稿日:2002年06月24日(月)01時37分02秒
申し訳ございません。
もし、まだ待ってくれている人がいらっしゃったら、
後少し待って頂きたいです。
誰も居なくても更新はします!
本当に申し訳ないです。

>>136 なちまりすとさま
     なちごまりならたまに見かけます。

>>137 名無しさんさま
     ほんとにすいません。
     頑張ります。

>>138 読者さま
     そう取られても仕方ないくらい置いてすいません。

>>139 名無し読者さま
     どうもありがとうございます。
     頑張ります。
141 名前: 運命は試練を与えた。 投稿日:2002年07月09日(火)20時53分11秒
「・・・っち!なっち!起きて!」

「んんん・・・」
安倍は目を開けると矢口を見て笑った。
「夢じゃないんだべな。」

「あったりまえでしょ!ほら、ご飯の用意出来たらしいから行くよ。」

矢口と安倍は手を繋いで集会所へと向かった。
中澤は保田が迎えに行った。

「じゃあみんな席について。紹介するから。」
飯田に言われてそれぞれ席につく。

「だれれすかー?飯田さん。」
「そや、誰やねんそのひとたち。」

「ちょっと可愛いねぇ」
「ひとみちゃん??」
「あっ・・・うそうそ。」


「なんか怖そうな人居ますね。」
「うん。」

それぞれ勝手なことを話している。
「ほら、黙って。じゃあ矢口、紹介してくれる?」
「うん。」

矢口は席を立って皆の方へ向いた。
(やぐっつあん・・・誰よ・・・その人たち・・・)
142 名前:運命は試練を与えた。 投稿日:2002年07月09日(火)20時53分54秒
「えーと、集まってくれてありがとう。この人は安倍なつみさん。で、こっちの人は中澤裕子さん。」
「安倍なつみです。『なっち』って呼んでください。これからここで一緒に生活していくのでよろしくお願いします。」
「中澤裕子や。『裕ちゃん』でええよ。日本っていう国から来たんやけど、帰り方もわからんし、これからここで暮らしていくつもりや。仲良うしたって。」

「あいぼんと同じしゃべりかたれすね。」
「ほんまやな。」

「関西弁言うんや、このしゃべり方は。」
「「関西弁?」」

「そや。」
「「ふーん。」」

「この2人はこれから一緒に生活していく仲間だから、みんな仲良くしてね。それじゃ食べようか。」

「リーダーちょっと質問や!」
加護が手を上げて言う。
143 名前:運命は試練を与えた。 投稿日:2002年07月09日(火)20時54分38秒
「なに?」
「なんで矢口さんが紹介したん?どういう関係なん?」

「矢口、説明してあげて。」
そう言われて矢口は少し照れくさそうに説明した。
「こっちの人、なっちは矢口の恋人なの。ちょっと理由があって離れてたんだけど再会できたの。それで、中澤さんはなっちの面倒見てくれてた人。」

「なんや恋人かいな?!自分ら」

「まぁそういうことになるかな。」
矢口と安倍は顔を見合わせて微笑む。

「なんやラブラブな感じやなぁ」
「羨ましいのれす・・・」
それぞれと食事をし出した。

(やぐっつあん・・・・・・グス・・・)
「あれぇ?ごっちんどうしたの?食欲ないの?」
「ほんとだ。ごっちんが食べないの珍しいね。」
「よしこに梨華ちゃん・・・食べるよ。」
144 名前:運命は試練を与えた。 投稿日:2002年07月09日(火)20時55分21秒
時間も大分経ち、そろそろお開きになる頃。
後藤は矢口のところへ行った。
「やぐっつあん、ちょっと話あるんだけど。」
「あ、後藤。話?なにかな?」

「ここじゃ言いにくいんだ。あとで部屋に来てもらって良い?」
「うん。分かった。こっから帰ったら行くね。」
「うん。待ってる」



「誰?今の。」
「あぁ、うちらの隣に住んでる後藤真希って子。矢口が元気なかった時に励ましてくれた良い子だよ。ちょっとケンカしてたから、その話かな。」
「そっか・・・可愛い子だね。」
「なっちのが可愛いはあとはあと
「えへへ」

145 名前:運命は試練を与えた。 投稿日:2002年07月09日(火)20時56分10秒
コンコン
「矢口だけど。入るよ?」
「うん入ってー」

「そのへんにかけてよ。」
そのへんと言われてもかなり散らかっていて座るところは限られている。
「汚すぎるよこの部屋!片付けしなよ。」
「いいじゃんか。生活できたらさ。」
「なんか後藤らしいけどね。それより話ってなに?」
「あぁ・・・話ね。・・・えっと・・・その・・・」
「・・・こないだのことだったら矢口も悪かった。ごめんね。」
「・・・ううん。なっちさんに会えて良かったね。やぐっつあんの言った通りちゃんと生きてて良かったね。ごとーもほっとしたよ。」

「ありがと。」
「ううん・・・でねっ・・」
「ん?」
「・・・やっぱ2人は一緒の部屋なんだよね?」
「そうだね。ずっと離れてたから、これ以上離れたくないもん。」
「そっか・・・」
後藤は悲しそうな顔で下を向いてしまった。
「・・・どうしたの?」

「・・・」
146 名前:運命は試練を与えた。 投稿日:2002年07月09日(火)20時58分18秒
「後藤とも、今まで通り仲良くしていきたいんだ。なっちと3人でさ、仲良くやっていこうよ。」

「・・・・うん。」

「いや?まだ、怒ってる?」
後藤は顔を上げて矢口を見て言った。
「やぐっつあん、ごとーに聞こえるような大きな声なっちさんに出させないでよ?」

「へ?あっ!ばか!!なに言ってんだ!!」
「えへへ。だって壁薄いかもよぉ〜ここ〜」
「後藤が聞き耳たてなきゃ大丈夫でしょ。・・・ってなに言わせんの!じゃあもう帰るから。
今まで心配かけてごめんね。ありがとう。」

「ううん。ばいばい。」
矢口の背中を見送る後藤。

(・・・やぐっつあん・・・淋しいよごとー。また、ひとりぼっちに逆戻りだよ。)

147 名前:運命は試練を与えた。 投稿日:2002年07月09日(火)20時59分54秒
ガラッ
「おかえり!」
「・・・良いなぁ・・・なっちの『おかえり』。懐かしいよ。ただいま。」
「なっちも。言ったの久しぶり。後藤さんなんだったの?」
「ん?なっちと再会できて良かったねって。それとケンカのこと。ごめんって。」
「そう。」

「もう疲れたでしょ。さっさとお風呂入って寝よっか。」
「なっちはさっき寝たからあんま眠くないべよ。」
「ほんと?じゃあ寝る準備して、話でもしようよ。」
「だべな。お風呂、どこにあるべか?」
「すごいよ!部屋についてるんだから!!」
「ほんとだべか?銭湯とかじゃないべか?」
「うん!ここは前に比べたら天国だよ。」
「すごいべ・・・」
「なっち、先入ってきなよ。」
「良いの?じゃあそうするべ。」

お風呂へと向かう安倍を見送りながら矢口は幸せを噛みしめていた。

こんな幸せがずっと続くと良いな・・・




〜終わり〜
148 名前:読んでる人 投稿日:2002年08月01日(木)17時26分28秒
・・・これで終わりですか?
なんかまだ続きがありそうな気が・・・。

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