彼女達の立ち方W

1 名前:aki 投稿日:2002年03月11日(月)21時24分00秒
雪、空、空、そして再び雪と戻ってとうとう4スレ目、
新しくスレを立てさせてもらいますm(__)m
前の更新から結構時間が経ってしまってすいませんでした(+_+)
今まで書いてきた彼女達の立ち方の続きになります。

内容は少し非現実的要素の入った感じの話。
登場人物は後藤、石川を中心とした中澤、吉澤、矢口、安倍、保田、飯田、加護、辻…etc

結構ここまで長くなってきてますがここで初めて知って新たに読んで下さる方が
いてくれたら幸いです。

更新は今までとはうってかわりゆっくりマイペース…になると思います。
完結できるようがんばりたいと思ってますので最後までお付き合い下されば
感謝この上ないです。
それではよろしくお願いしますm(__)m
2 名前:aki 投稿日:2002年03月11日(月)21時33分59秒



出会いはふとした偶然から。
ある日二人はその互いの進む道を交差させる。
運命に導かれるようにして出会った二人は時が立つに連れ
確実に互いに惹かれあっていく。
その中には、今も囚われる過去、意志とは関係なく誘われていく
彼女達の運命が渦巻く。
物語はそんな二人の出会いから始まります。


彼女達の立ち方 
 http://mseek.obi.ne.jp/kako/snow/1003246180.html

彼女達の立ち方U
 http://mseek.obi.ne.jp/kako/snow/1003246180.html

彼女達の立ち方V
 http://mseek.obi.ne.jp/kako/snow/1003246180.html

3 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年03月11日(月)23時10分32秒
akiさん最後までつきあわせていただきます。
なんとか国立大学に合格して受験も終わったので思う存分読む
ことができるようになりました。応援してくれてありがとうございました。
いしごま防衛条約機構はこれからも応援していきます。
頑張ってください。
4 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年03月12日(火)00時30分09秒
新スレ開店、おめでとうございます。
新たな第一歩を踏み出した2人とその仲間たちの日々を楽しみにしております。
5 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月12日(火)01時21分08秒
新スレおめでとうございます!
最初のスレからずっと読ませてもらってます。
ここの後藤と石川のふたり大好きです。
これからの展開もかなり気になってます。
とっても楽しみにしてる小説なので、これからもゆっくり頑張ってください!!
6 名前:hrken 投稿日:2002年03月12日(火)03時50分55秒
最近akiさんの小説を全て読ませて頂きました。
面白くて、先が気になって一気に読んだのでここ数日あんまり寝てないです(爆
いしごま(ごまいし)しか自分は読まないのでakiさんの小説は正直最高ですね!!
これからもこの路線で頑張って貰えたら幸いです。
7 名前:しーちゃん 投稿日:2002年03月12日(火)07時54分33秒
この所、よしごま放置だったり
よしりかが多いので寂しく感じていました。
待っていました。楽しみに読まさせて頂きます!
8 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月12日(火)07時59分19秒
新スレおめでとうございます。
待ってました〜。最後までずっと応援してまっす。
9 名前:aki 投稿日:2002年03月12日(火)22時02分15秒
たくさんレス本当にありがとうございます(T_T)
感激としか言い表せないです…。

3:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
 おぉ、おめでとうございますっ!今までお疲れ様でした^^
 これからは自由な時間を満喫できますね。
 私も、がんばります。

4:M.ANZAIさん
>ありがとうございます。
 やっと開店しました(w
 最終章、になると思いますが気を抜かずがんばりたいと思ってます。
 少し緊張してたり…^^;

5:名無し読者さん
>ありがとうございます^^
 最初のスレから…。もう始めた頃から結構経ちますね。
 長い間お付き合い下さってありがとうございますm(__)m
 これからの展開、何とか文章で表現できる全てを込めたいと思ってます。
 これからに関して限界を感じたくないですね…。
 ゆっくり<感謝です。励みになります。
10 名前:aki 投稿日:2002年03月12日(火)22時02分47秒
6:hrkenさん
>初めての方に貰うレスほど嬉しい事はないです。
 最近akiさんの小説を全て読ませて頂きました>ありがとうございます(T_T)
 これもまた感激です。体調だけは、崩さないよう気を付けて下さいね。
 いしごま(ごまいし)しか自分は読まないので…>おぉ!本当ですか!
 仲間ですね〜♪(爆)
 書くなら書きたい物を書いて行きたいと思ってます。がんばりますっ^^

7:しーちゃんさん
>レスありがとうございます。
 確かに近頃よしごまもあまり見かけませんね。その反対いしよしは
 多いんですが…。
 いしごまも近頃増えてきてますが相変わらず多いとは言えないので
 自分も寂しいです(w
 その分自分のはがんばりたいと思ってます。
 私も楽しく書くようがんばりますっ。

8:名無し読者さん
>ありがとうございます^^
 結構お待たせてしまってすいませんでした。
 やっと立てることができて私も嬉しいです。
 励みになります。最後まで、がんばりたいと思います。  
  
11 名前:aki 投稿日:2002年03月12日(火)22時05分42秒
それと…なんと間抜けな事に上のリンク先全部一緒だったり…(爆)
チャックしたつもりだったんですけど…(泣)
間抜けこの上ないですね。改めて載せます。

彼女達の立ち方
 http://mseek.obi.ne.jp/kako/snow/1003246180.html

U
 http://mseek.obi.ne.jp/kako/sky/1005062974.html

V
 http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi?dir=sky&thp=1007981418&ls=50
12 名前:過ぎる不安  投稿日:2002年03月12日(火)22時17分04秒

――――――


「わぁ!気持ちいい!」
外は雲一つない真っ青で太陽が眩しい快晴。
梨華は外に出ると両手を広げて大きく声を上げた。

辺りは一面深い雪に覆われ全てが真っ白な雪景色。
いつもの見慣れた景色が雪で一杯になるのはいつもでは見られない雰囲気と光景で
何だか不思議だった。
白く何よりも純粋な色のそれは光を反射させ眩しいほどに神々しく光る。
葉を付けない木の枝に重く積もった雪が微かに、乾いた音を立てて静かに
地面を深く覆う雪の上に落ちた。

「綺麗…」
真希も自然と声を漏らす。
辺りに綺麗に積もった雪が風にそよぎ、太陽の光を反射させながら空を躍るように
して舞った。

13 名前:過ぎる不安  投稿日:2002年03月12日(火)22時36分59秒

「後藤さ〜ん!」
呼ばれた声に真希は静かにそちらに顔を向ける。
するとそこには零れ落ちそうなぐらいの雪を両手一杯に掬うようにして持った梨華の
姿があった。
真希がこちらの方へ向いたのを確認すると梨華は「えいっ!」と小さな掛け声と
共にそれを空高く上に放り上げる。

「わぁ〜、冷たい〜!」
きらきら光る粉雪が舞う中を梨華が楽しそうに声を上げながら溢れんばかりの
笑顔で走る。
白い粉雪、風がそれをまるで演出するかのように空に踊らす。
その中で何よりも純粋で、優しくて、愛しい彼女が走り回る。

冷たい雪が風に舞い、自分の頬にも微かに飛んできた。
いつのまにか、彼女の作り出した粉雪の降り注ぐ輪の中に自分も入り込んでいる
ようだった。
目の前では梨華が子供のようにはしゃぎ、笑顔と共に楽しそうに声を上げながら
何度も何度も白く綺麗な雪を空高く放り上げている。

そんな光景に真希も小さく微笑んだ。
同じように、嬉しそうに、楽しそうに。


14 名前:過ぎる不安  投稿日:2002年03月12日(火)22時43分54秒

しかしその笑顔はすぐに消える事になる。
「……!」
真希の瞳に映る梨華は、雪の中をその無垢で子供のような笑顔で駆け回る。
それは何よりも愛しくて、だけど儚い。

不意に太陽の光が向こうからやって来た一つ大きな立体的な雲によって光の差す
方向を変える。
それと共に光を反射させていた雪も空から舞い落ちながらそれを変化させる。
いくつも雪を集めては空に舞い上げる彼女の姿が、雪の作り出すその光の変化と共に
一瞬真希の瞳から消えた―――


15 名前:過ぎる不安  投稿日:2002年03月12日(火)22時50分09秒

「え……?」
何も分からなくて、戸惑う声を小さく漏らす。
目の前には彼女の投げた雪が、空からただ静かに寂しく地面の上へ舞い降りる情景が
ただゆっくりと映し出される。
その中には、その向こうには誰もいない。
今さっきまで笑って駆け回っていた彼女はそこにはいなかった。
空を舞っていた雪の全てが静かに下に落ち、目の前の景色にはもう何も動きが
映らない。
何かが足りないように、その場にはただ忽然と物足りなさを残し時間が過ぎる。
「………」
(ドクンドクン)
次第に胸の中には不安を装う嫌な鼓動が生まれだす。
瞳に映る物は、彼女を除く全ての物。
大切な何かを失った時に感じるような感覚。
…これに似た感覚、今でも覚えてる…。

16 名前:過ぎる不安  投稿日:2002年03月12日(火)22時51分26秒

「あ……」
口から漏れていくのは怯えるような声。
自分が出した声にまるで何か別の物を聞くかのように耳が音を広い、自分に伝える。
小さく震え出す体。

怖い…怖い……!



17 名前:過ぎる不安  投稿日:2002年03月12日(火)22時54分49秒

「…さん…後藤さん…?」
「!」
不意に聞こえた声に後藤ははっと我に返る。
「?」
するとそこには首を傾げてすっかり舞っていた雪は地面に落ちてしまったその真ん中で、
不思議そうに真希を見る梨華の姿があった。
「あ……」
「後藤さん?どうかしたんですか?」
今度の溢れた声は今さっきとは正反対のもの、安堵に似た怖さの暗闇が拭えたものだった。
だけど胸の中ではまだ今さっきの余韻を残した不安の鼓動が鳴り響いてる。
「梨華…ちゃん……」
呆然と、真希はその場に立ちすくみながら梨華をうつろな瞳で映し出していた。
今さっきまで何も映っていなかった灰色の瞳。それはやっと光を、力を取り戻し
今は何とか梨華の姿を捉えている。

18 名前:過ぎる不安  投稿日:2002年03月12日(火)23時06分52秒

「後藤さん?」
ただその場に立ち尽くし反応を示さない真希に梨華が不思議がりながら近づいてくる。
梨華の瞳に映る真希の体は小さく震えていた。
「後藤さん、寒いんですか?震えてますよ…」
震える真希の手を取り、梨華が心配そうにして顔を覗く。
とっさに感じた感触に真希はびくっと体を大きく震わせ反応してしまう。

「……」
すっかり冷たくなった手に、伝わってくる温かいぬくもり。
真希はそれにやっと梨華の存在を確かに感じることが可能になる。

「梨華ちゃん…」
まるで今にも泣きそうな表情で、迷子になってやっと母親と出会えることの出来た子供
のようなそんな表情で、真希は梨華に抱きついた。
「!ご、後藤さん!?」
突然の真希の行動に梨華は飛び跳ねるように驚き、ただそのまま抱きしめられる。
真希はただしがみ付くように梨華を強く抱きしめた。
伝わってくるぬくもり、より強く感じたい。
次第に涙が溢れそうになって、真希は梨華の肩と胸のどちらとも付かない場所へ
顔を埋めた。
いつのまにか、真希は怖がるように梨華にしがみ付くような形で抱きついていた。


19 名前:過ぎる不安  投稿日:2002年03月12日(火)23時11分22秒


「………」
突然の真希の行動に、一瞬驚き心臓の音を早ませたが、梨華も抱きしめられながら
真希が震えていることに気付く。

それは寒さからではない気がした。
何かに怯えるような、不安から震わすような…。

服に微かに広がる染みに、梨華は真希が涙を流している事を知る。

何も言わないまま、梨華は真希の背中に両手を回すと優しく抱き返した。
そのまま優しく髪を撫でるようにして頭に片手を添え強く抱きしめる。
そして静かに瞳を閉じた。



20 名前:aki 投稿日:2002年03月12日(火)23時13分19秒
短いですが、更新です。
前回から間が結構あった割には短くてすいません(汗)
21 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年03月13日(水)03時46分07秒
真希の不安が、心の震えが伝わってきます。
22 名前:しーちゃん 投稿日:2002年03月13日(水)08時54分23秒
凄いです!引き込まれていく自分がいます。
まったぁ〜り、がんばって下さい。
23 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年03月13日(水)13時34分53秒
ごっちんはすごい不安を感じているんですな。
その不安が現実のものになるのでしょうか?
更新お待ちしております。頑張ってください。
24 名前:ごんた 投稿日:2002年03月13日(水)18時17分56秒

akiさん、すごいっす。引き込まれっぱなしで、ついつい友達にも
紹介しちゃいました!じっくりでもいいんで、頑張ってください。
25 名前:rika-mode 投稿日:2002年03月14日(木)17時21分58秒
はじまったのですね!とっても嬉しいです〜〜♪
なんか、雪と梨華ちゃんって似合うなー(^‐^)
でも、ちょっと暗転しそうな雲行きに不安になってしまいますが・・・。

akiさん、がんばってくださいね!
26 名前:みるきぃー 投稿日:2002年03月16日(土)01時05分23秒
わーい、新スレだぁ。長くなりそうですけど、最後までがんばってくださいね。
楽しみに待ってますので(^-^)。
……雪の上を駆け回る石川さんを実際に見てみたいっ!絶対に似合いそう♪
27 名前:aki 投稿日:2002年03月17日(日)19時13分22秒
レス本当にたくさんありがとうございます(T_T)

21:M.ANZAIさん
>真希の不安…彼女の第六感が働いてますね。
 伝わってますか、良かった。嬉しいです。

22:しーちゃんさん
>ありがとうございます(T_T)
 嬉しいとしか表現できないくらい嬉しいです。
 がんばります!

23:いしごま防衛軍さん
>現実のものに、なるのかどうなのか…。
 どんな時も、運命は二人で切り開いていけるはずだと思います。
 がんばりますっ。
28 名前:aki 投稿日:2002年03月17日(日)19時19分51秒
24:ごんたさん
>ありがとうございます(T_T)二回繰り返したいぐらいです(w
 紹介!してもらえて恥ずかしいの少しに嬉しさ果てしないです^^
 がんばります。
 
25:rika-modeさん
>いよいよ始まりました^^
 本当にありがとうございます(T_T)嬉しいです。
 雪と石川さん、似合いますか、良かったです。
 がんばります!

26:みるきぃーさん
>レスありがとうございます!
 思っていたよりもこのスレも長くなりそうです。
 けど楽しみに少しでも答えられるように最後までがんばりますっ。
 雪の上を駆け回る石川さん>私も見たいです(w 似合いそうですよね。


すいません、今日はレスだけで…。
出来るだけ早く更新したいんですが集中出来てないとどうしょもないので…。
ごめんなさい(T_T)
29 名前:じじ 投稿日:2002年03月19日(火)00時20分52秒
後藤さんの不安が現実のものにならない事を祈っています。
このまま2人の関係が続くといいですね。
30 名前:不協和音はすぐそこに… 投稿日:2002年03月19日(火)02時01分12秒



「そういえば今日はクリスマスですね〜!」
「…うん」
あの後、しばらくした後二人はタクシーに乗りいつものバーのある町に繰り出していた。
真希はとりあえず落ち着きを取り戻し、まだぼーっとしていたが梨華が手を引いて
ここまでやって来た。
街はイブの時のにぎやかさを幾分落とし、どこか優しく落ち着いている。
すっかりここも雪景色のため、人はあまり外に出ていなかった。
たまに忙しそうに雪かきをしたり、どこかへ向かって慎重に雪道を踏みしめている。
道路にも車の姿はあまり目に付かない。
「クリスマス当日ってイブより少し落ち着きますよねっ」
「…うん」
「なんて言うんだろう、すごく静かで特別な感じがしません?」
「…うん」
「………」
今さっきからただ機械的に同じ口調と返事の真希に梨華もずっと雰囲気を変える為に
話し続けていたがとうとう心配そうに顔を覗いてしまう。
しかし、そこにあるのはただ呆然として何も景色が映らない瞳の真希しかいない。
何か考え事をしているみたいで声が届いていないみたいだった。

31 名前:不協和音はすぐそこに… 投稿日:2002年03月19日(火)02時03分52秒


(後藤さん…どうしたんだろう……)

真希のゆっくりとした歩調に合わせ、次第には梨華も黙ってしまう。
もう一度ちらっと横を見てみたが、やっぱり同じだ。
「………!」
しばらく真希と無言のまま隣で歩き、ぴんっと小さなひらめきが梨華の頭に浮かぶ。
再びちらっと真希の横顔を盗み見た後、それが今さっきのものと全く同じなことを
確認すると少し早足で真希の前に立ち通せんぼをした。

「…?」
前にいきなり立った梨華に気付かず真希がそのまま歩いていき当然梨華とぶつかる。
そして足元に出来ている影にやっと顔を上げた。

「後藤さんっ!一体どうしたんですか?」
梨華は今さっきとは違い積極的に真希に対して問い詰める。
しかし当の真希は突然目の前に現れた梨華の姿に一瞬驚いたようだったがすぐに
表情を戻してしまう。
32 名前:不協和音はすぐそこに… 投稿日:2002年03月19日(火)02時11分45秒

「ごめん…何でもないから……」
「後藤さんの何でもないは頼りになりませんっ!」
言って俯こうとする真希に梨華が少し怒ったような口調で顔を下に持っていき真希と
視線を無理やり合わそうとする。
その時ちょうどばちっと視線が合った。
「………」
真希は梨華と正面から目が合いやっと表情を自然といつもの物に変えたが、
しばらく経つとやっぱり今さっきのぼんやりとした表情で呆然と何も言わないまま
梨華を見つめている。
「もうっ!後藤さん!一体どうしちゃったんですか!」
「……」
「せっかくのクリスマスなのに!せっかくの朝帰りなのに!私拗ねちゃいますよ!」
ぷぅと頬を膨らませて梨華がそんな真希に愚痴を零す。

心配してるからこそ怒る。
しかし今は心配よりも少し怒りの方が増さっていた。

とっさに出た言葉に梨華自身も気付いていない。

33 名前:不協和音はすぐそこに… 投稿日:2002年03月19日(火)02時14分51秒

「……!」
しばらくそんな怒った様子の梨華をぼーっと眺めていた真希だが、そのまま
眉をしかめ首を傾げていく梨華の周りで、再び太陽が雲によって光の形を変え、
辺りが一瞬眩しいくらいの光に包まれ目が奪われた。
きついぐらいの眩しい光が一気に降り注いでくる。
それに思わず真希は目を細めた。
まるでカメラのシャッターを切られたみたいな感覚の後、目の前の光景が上手く
目に映らなくなった。
スローモーションのように微かな今の時間が流れ、真希は静かに細めた瞳を
開いていった。
瞳に映る物は眩しい光を後ろから浴びる逆光の彼女…のはずなのに―――



34 名前:不協和音はすぐそこに… 投稿日:2002年03月19日(火)02時18分55秒


「!」
瞳には何も映らない。
今さっきまでいた彼女の姿が再び目の前から消える。
自然と見開く瞳。
しかし無情にも彼女の姿はそれは映し出してはくれない。
一瞬のうちにして動けなくなる、何も行動がとれなくなる。
またやって来る、不安と、怖さ。
それは果てしない深さを持つ形のない一面の暗闇。

「後藤さ〜ん!」
「!」
不意に大きな声が聞こえたかと思うと、ゆっくり目の前に今さっきまで確かに
存在していた彼女の姿が現れ始めた。
「あ……」
彼女の姿が瞳にしっかり映る。
そこには首を傾げて顔をしかめる梨華の姿があった。
怒っているのだが、心配していて、だけどやっぱり怒ってる…そんな感情が
入り組んだような表情。


35 名前:不協和音はすぐそこに… 投稿日:2002年03月19日(火)02時21分05秒


「…梨華ちゃん…」
しばらく目の前の彼女の姿を呆然と呆気を取られるように見ていた真希だが、小さく
梨華の名を呼びながらそっと梨華を前から抱きしめた。

「後藤さん!?」
突然の真希の行動に梨華は再び驚く。
真希は構わず梨華を抱きしめていた。


――震え出していた体が、静かに治まり落ち着きを取り戻すのが分かる。


36 名前:不協和音はすぐそこに… 投稿日:2002年03月19日(火)02時23分14秒

「梨華ちゃん」
しばらくして、抱きしめていた体を離すと真希は視界に梨華しか映らないほどの
近い距離で、向かい合う。
「後藤、さん…?」
不思議な表情の真希に、梨華は心を魅入られるように見つめ返した。
その表情は安心したような、でも不安を感じていて、そして何かを決心したような
真摯な表情。
少しの沈黙から、真希が静かに口を開いた。


「何があっても私が必ず…守るからね……」
「え…?」

真希の突然の言葉に梨華は何のことか分からず思わず声を漏らしてしまう。
言いながら強く抱きしめられ梨華は戸惑いながら顔を上げる。
しかし密着する体からあまり表情をはっきり目にすることはできなかった。
だけど、そこには確かに強い意思を秘めるような、真剣な表情と瞳があった。
今更ながらその横顔に胸を高鳴らせ、そのまま腕の中に体を委ねる。

37 名前:不協和音はすぐそこに… 投稿日:2002年03月19日(火)02時23分57秒

「後藤さん…」
「必ず…」

真希は再び梨華を強く抱きしめた。


このぬくもり、この存在を、ずっと腕の中に感じていられるように、

私は必ず、あなたを守ります―――



38 名前:不協和音はすぐそこに… 投稿日:2002年03月19日(火)02時25分32秒

―――――――


「今さっきからずっと呼びかけてたのに後藤さんてば気付いてなかったんですか?」
「うん、ごめんね…」
「もうっ。せっかくの貴重な二人だけの時間なのに…」
それからいつものように腕を組み、街中を歩きながら梨華が横で真希の言葉に
頬を膨らませて怒っていた。
「ごめんね…ちょっとぼーっとしてて」
「……」
完璧に怒らせてしまったのか梨華は腕を組んだままだが言葉を返さない。
真希はそんな梨華の様子に困ってしまい何も上手い言葉を掛けられない。
しばらく真希は黙々と考えを巡らせていた。


39 名前:不協和音はすぐそこに… 投稿日:2002年03月19日(火)02時26分28秒

「!そうだ!」
「え?」
突然の真希の声に梨華はとっさに顔を上げる。
「ちゃんと覚えてるよ。梨華ちゃんが言った事」
「本当ですか?」
顔をしかめて疑いの眼差しの、だけど一気にぱぁっと明るい表情になった梨華に
真希が笑顔で頷く。
そんな笑顔に密かにドキッとしながら、梨華はそれでも表情を変えないように
努力する。
「ほらっ、あれ。梨華ちゃん今さっき言ってたでしょ。『せっかくのクリスマスなのに!
せっかくの朝帰りなのに!私拗ねちゃいますよ!』って」
閃いたようにして楽しそうに言った真希の言葉に梨華は一瞬唖然として真希を
見つめていたが、気付いたように一気に顔を赤らめる。

40 名前:不協和音はすぐそこに… 投稿日:2002年03月19日(火)02時29分54秒

「な、そ、それは…私そんなこと…」

言いましたか!?って続けようとしたけど、

「言ったよ。これだけはしっかり覚えてる」

容赦なく遮られる。


自信満々の様子の真希に梨華は益々顔を紅潮させていく。
白い雪景色の中にその赤らんだ頬は梨華の可愛さをいつも以上に増徴させていた。

「そ、そんなこと覚えてないで下さいよ〜…」

恥ずかしそうに顔を背ける梨華に真希が「あはは」と楽しそうに笑みを零した。


41 名前:不協和音はすぐそこに… 投稿日:2002年03月19日(火)02時31分49秒


――――


「そういえば、やぐっつあん達今ごろどうしてるのかな」
隣で恥ずかしそうに顔を俯かせる梨華に可愛いさを感じながら、真希はふと
思いついたことを呟いた。
「さぁ…今日来れるのかな…」
「来てもちょっと意地悪しちゃおっか。昨日は邪魔されちゃったからね」
「あ……」
やっと治まり始めていた頬の紅潮が再び真希のふとした言葉に反応する。
「あはは、可愛い」
「もうっ…」
「でもそんなんじゃ行ってからもっとやぐっつあん達に、からかわ…れる……!?」


42 名前:不協和音はすぐそこに… 投稿日:2002年03月19日(火)02時34分39秒


「…後藤さん?」
突然様子の変わった真希に梨華が頬を紅潮させたまま顔を上げた。
「……」
真希は会話を中断させ、急に辺りを見渡し始めた。
顔を動かさないようにして、視線だけで何かを探している。
「?」
梨華は急に雰囲気の変わった真希に首を傾げた。
何か嫌な物を探すような真剣だけどどこか不安を過ぎらせる重い表情。
今さっきまでの和んだ空気とは正反対の、なにやら張り詰めたような雰囲気…。


「………」
(何…今の…)

真希は辺りに気を廻らせながら神経を一つに集中させていた。
今確かに体を突き刺すように感じた冷たい感覚。
まるで、氷のように体を貫くような痛さを伴うような物…。

一瞬感じたそれは私が感じ取ったのを向こうも感じていたのかすぐに消えてなくなった。


43 名前:不協和音はすぐそこに… 投稿日:2002年03月19日(火)02時35分33秒

「……」
「?」
真希は静かに梨華の方へ向き直る。
そこには首を傾げたままの梨華の姿があった。


「…守ってみせる…」

決心を言葉に変換し、真希は梨華の手をぎゅっと強く握り締めた。



44 名前:不協和音はすぐそこに… 投稿日:2002年03月19日(火)02時40分16秒

―――――――


「…すごい敏感だな…それに何だあの剥き出しのオーラは……」

とっさに標的を確認したため露になってしまった気を感じ取られてしまった。
男はビルの屋上から無線機を片手に静かにそれを口元へ寄せた。

「ターゲット確認。今そちらに向かっている所。後藤真希と共に行動している。
充分注意が必要…どうぞ」

『ターゲット確認、OK。すぐに指定の位置に待機するように、どうぞ』

「OK…」

戻って来た返事に男はすぐに一言それだけ返事する。
そして音も立てず時間の間を縫うようにしてそこから姿をすっと消した。

まるでそこにいた事実がなかったかのように―――



45 名前:aki 投稿日:2002年03月19日(火)02時47分36秒
更新しました。
結構大目…かな…?
前回から結構経ってしまってすいませんでした(+_+)

29:じじさん
>おぉ!?まさかあなたは…あの作者さんですよね? 
 いろんな場所で小説見かけてます^^
 それはそうと、今更レスありがとうございます。
 ちょっとびっくりしました(w
 後藤さんの不安…後藤が感じる物がために当たる確実も高いかも…。
 私もこのままの二人を願ってるんですが…。 
46 名前:ごんた 投稿日:2002年03月19日(火)15時43分10秒

更新お疲れ様です、akiさん。『今そちらに向っている所』って、
ごっちん達の事ですか?そしたらバーは・・・・!!

akiさんの書くごっちんの心理って、すごく深くって、上手いです。
また、ヒソカに対決シーンもきたいしてます!
47 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年03月19日(火)16時34分00秒
ターゲット。
そう呼ばれることがいったい何を意味するのか?
48 名前:じじ 投稿日:2002年03月20日(水)00時10分06秒
平和は続かなそうですね(汗
せめて守りきって欲しいです。後藤がんがれ!

3日かけて読んじゃいました(w
49 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年03月20日(水)00時44分08秒
ついに争いが始まってしまうのだろうか。二人の和やかな雰囲気から
いってんして一触即発の状態ですな。ごっちん!!梨華を守りきるんだ!!
二人には幸せになってほしい。更新どきどきしながら待っています。
akiさん、マイペースで頑張ってください。応援してますよ!!
50 名前:声   ―警告― 投稿日:2002年03月26日(火)22時32分00秒

――――――――


「クリスマスはみんなで過ごせますね!」
「うん…」
隣で腕を組み梨華が一緒に歩く真希に声を掛ける。
真希は何かに気を囚われていたようだが今さっきのようにしないために何とか
曖昧に答えた。
梨華は既に真希の様子にもう頬を膨らませることなくただ腕を組みながら
一緒に町を歩く今の時間を楽しんでいた。
「あ、あれ可愛い〜!」
長いつららが屋根から連なる店の大きなウィンドウの洋服に梨華が
目を輝かせて声を上げる。
真希もなんとなくそちらに顔を向けた。
「……」
さっきから、彼女と楽しく過ごす今の時間も、ずっと拭い去れない。
誰かに見張られているような気配。
それも一人じゃない…結構多くの人間に…。
いくつもの妖しく光る瞳が、まるでやっと見つけた獲物を逃がさないように
追いかけてくるような…。

51 名前:声   ―警告― 投稿日:2002年03月26日(火)22時33分20秒

自然と真希は顔を俯かせる姿になる。
出来るだけ集中し、何かしてくるようならされるまえに居場所を特定しなければ。
そして何事も起こる前になにか手を打たないと…。

「……」
真希は今出来る最大の集中力を体の中から湧き起こし、精神を高めた。


「?」
今さっきと同じ、いやそれよりももっと神妙な顔つきと張り詰めた雰囲気に
梨華は首を傾げた。
真希が自分に気を使いなるべくそれを表に出そうとしていないのも分かる。

言葉を掛ける事も幾分しり込みしてしまうような…そんな雰囲気。


52 名前:声   ―警告― 投稿日:2002年03月26日(火)22時35分19秒

一緒に雪道を小さく踏みしめるように音を立てながら梨華は少し辺りを見渡してみた。

(何かあるのかな?)

町に来てから不意に様子の変わった真希から梨華は心の中で微かに推理してみる。
しかし町並みは至っていつもと一緒。
どこもおかしい所は無い。

「?」
一通り見渡してみてやっぱり何も分からないので顔を戻した。
そして再び真希の顔を覗いてみる。
依然としてその表情は同じ物だった。

話し掛けてはいけない雰囲気…だけどやっぱり声が聞きたくて、少しの時間でも
出来るだけ近い距離で彼女と過ごしていたくて、声を掛けようとした。その時だった。


「後藤、さ……」


(気を付けて)


「え…?」

突然聞こえた声に言葉を発しようとした口を塞がられ、梨華は思わず小さく声を
もらした。

53 名前:声   ―警告― 投稿日:2002年03月26日(火)22時37分00秒

「……」
辺りをきょろきょろ見渡してみる。
しかし人の姿はほとんど自分達以外にはいない。
居たとしてもほとんどの人が自分達の作業で忙しいようでこちらの事など
目にもくれていなかった。

「?」
違うと思ったが隣の彼女へ顔を向けてみる。
当然そこには呟いた梨華の声にも気付かず依然として何やら真剣な表情で
意識を自分の中へ向けている真希の姿があった。


(空耳かな…でも確かに聞こえたんだけど…)

梨華は元の形へ戻り少し俯きぎみで胸の中で呟いてみる。
それから微かな時間が流れても何も変化が起きない為、梨華は今さっきの声を
空耳だと決め付ける事にした。
しかし、


(あなたは狙われている)


「っ!」
再び聞こえた声に梨華は顔を上げた。
当然周りには自分に呼びかける人の姿などいない。
耳ではなく、頭に直接響いてくる声。
梨華は聞こえてくる声にもう辺りを見渡すことなく、体の赴くまま神経を
自分の中へ集中させた。


54 名前:声   ―警告― 投稿日:2002年03月26日(火)22時38分19秒


(誰…?)

今にも消え入りそうな声で呼びかける。
しかし返事はすぐには返ってこなかった。
今さっきと同じようにしばらくの間ただ何もせず返事を待った。


(…私はあなたに危機を伝える者…)


(危機…?)

返って来た声に何の事か分からずすぐに聞き返す。


(そう、これからあなたは…あなた達はこの地球と共に進んではならない未来へ
導かれようとしている…)

(…どういう…こと…?)


一面の闇。
その中で誰かが、悲しそうに顔を俯かせる姿が目に映った…気がした。


55 名前:声   ―警告― 投稿日:2002年03月26日(火)22時40分50秒


(時は徐々に…ゆっくりですが静かに、確実に狂い始めようとしています)


(このままでは…あなた達の未来は…)


「どういうこと…?一体何が言いたいの!?」


(破滅に進み始めた世界…それを導くのは…)


嫌な予感がした。
だけど彼女はそれ以上言葉を発しなかった。
沈黙が流れる。
梨華はただ彼女の次の言葉を待った。

56 名前:声   ―警告― 投稿日:2002年03月26日(火)22時42分08秒


(流れ出した運命はもう止まることはありません…しか、し…)


「!?」

不意に声が途切れ途切れになってくる。
砂嵐が間に流れて彼女の存在が遠くなるのが分かる。


(世界、を…救えるのも…)


「誰!?誰なの!?」


(あなたに…懸かっ…てる……お願い…真希を…みんなを…守っ、て…)


「!!」

途切れた言葉を最後に、彼女と私は一気に果てしなく遠くへ引き離されて行った。

57 名前:声   ―警告― 投稿日:2002年03月26日(火)22時44分17秒


(待っ……!)

空間が歪みだす。
手を差し出したが彼女の姿は一瞬にして小さく微かに見えるほどになってしまった。
真っ暗で何もない闇が、まるで地震が起こったように上下に強く揺れ出し
地割れするように壊れていく。

「どういう…こと…。それにどうして後藤さんの名前を…」


消滅していく空間の中で、遠く果てしなく向こうへ引き離されたと思った彼女の
姿がすぐ目の前へ現れた。

「!」


(二人を…信じてる……)


最後の彼女の表情は、何よりも温かくて優しい微笑みだった。
心を奪われ、行動も忘れ、言葉を失ったその時。
彼女は微笑みを絶やさないまま梨華の目の前から消えていった。

「待っ…!」

空間が砕け散るガラスの破片のように壊れていく。
呼びかける声を最後に、梨華は引力に強く引かれるようにして強引にその世界から
放り出されていった。


58 名前:aki 投稿日:2002年03月26日(火)22時57分51秒
すいません、またもこんな久しぶりな更新に…。しかも短い…。

46:ごんたさん
>レスありがとうございます。
 空板の話発見して読みました(w 気になるだらけでこれから期待してますv
 (私も頑張らないといけないんですが)
 心理状態、深いですか、感極まるお言葉です。
 対決シーン、以前にも意見があったのでしっかり考えてあります(w
 それが上手く表現できたらいいんですが…。

47:M.ANZAIさん
>全ての人間が、これから一つに交差しそうです。
 たぶんこの次の更新で…かな…。

48:じじさん
>レスありがとうございますっ。
 3日!?早いですね。私は読むの遅いんで羨ましいです(w
 銀板だけ…本当ですか…?
 
49:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
 やっと更新しました(汗)
 ストーリーは頭の中に一応描けてるんですが書く時間と集中する時が
 あまり上手く行かなくて…。
 がんばりますっ。
59 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年03月27日(水)04時37分51秒
梨華に語りかけたのは誰なんでしょうか?うーん、だいたい予想がつく。
そう運命は変えられる。梨華とごっちんに頑張ってほしいです。
この後どうなるのか気になります。akiさん、ゆっくりでいいんで
頑張ってください。
60 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年03月27日(水)07時33分59秒
真希が察知している気配とは!?
そして梨華の頭の中に話し掛けてきた彼女って!?
そんな2人に襲い掛かる危機!?
ますます目が離せなくなってきました。じっくりとお待ちしてます。
61 名前:ごんた 投稿日:2002年03月28日(木)14時18分31秒

梨華ちゃんに話し掛けたのは、きっと・・・・・。
ごっちん、梨華ちゃんを守るのだぁ!!
梨華ちゃん、ごっちんを守れ!いざってときに自分を見失うごっちん・・・・。

akiさんの書くごっちん、大好きです。
ごっちんの鋭いオーラで、私の熱も、吹っ飛びますよ!
頑張ってください。
62 名前:じじ 投稿日:2002年03月31日(日)05時38分07秒
話し掛けたのは・・・?
えっ?誰?誰よ、誰なのよ?
んあー!更新待ってます!!!
63 名前:名無し梨華 投稿日:2002年04月04日(木)23時44分18秒
超ヒサブリです。
1月後半以来、SEEKには来てませんでした。
理由は、まあイロイロあったんですけど。
最後にレスしたとこからここまで読むの時間かかった―(w

梨華がバーに戻ったことによる歪みみたいなものが、ついに来ましたか。
楽しみにしてます。
64 名前:いしごま感謝祭 投稿日:2002年04月05日(金)17時34分02秒

最初っから一気に読みました。
ごっちんの苦悩、梨華ちゃんの想い、ねえさんの不安・・・。
それぞれの想いに真実味があって、すごくいいと思います。
頑張ってください。
65 名前:ROM 投稿日:2002年04月16日(火)21時57分01秒
保全
66 名前:闇の訪れは音も無く  ―使者― 投稿日:2002年04月17日(水)23時24分57秒

―――――――


「梨華ちゃん…梨華ちゃん!」
「!」
ぼやける視界とどことなくだるい体。
そんな自分の肩を両手で持ち必死になって呼びかけてくる声と、揺れる体に
梨華ははっと我に返った。
「わ…たし…」
「梨華ちゃん!」
何も映していなかった瞳、それが自分の姿を捉えたのと、気付いたように発した
声に真希は前から梨華に抱きついた。
「私…」
「良かったぁ…ずっと呼びかけても無反応だし何もしないからどうしたのかと
思った…」
真希は安心するようにして梨華を抱きしめる腕の力を強くする。
ぎゅっときついほどに抱きしめられ真希の髪が頬をくすぐり自分の好きな香りが
はっきり感じるほど密着していることにやっと梨華は意識が戻って来た。
67 名前:闇の訪れは音も無く  ―使者― 投稿日:2002年04月17日(水)23時26分22秒
「後藤さん…私…」
「ごめんね…私がぼーっとしてたから…。ごめんね…」
切なく囁く言葉と、感じるぬくもりの強さに梨華ははっと気付く。
「ち、違うんです!そうじゃないんです…。…ごめんなさい…心配掛けて…」
今更のように慌てて梨華は真希の言う事を否定した。
そして最後に小さく謝る。
「ごめんね…」
微かな声で、真希は再び改めた口調で言うと体を静かに梨華から離した。
「後藤さん…」
今だけのことに関してだけではなく、まるで全てに対して告げた言葉に
梨華もしばらく言葉をなくしただ彼女を見つめた。
目の前の彼女は切ないような愛しいような、複雑な表情で自分を見つめていた。
彼女の瞳に映る自分が見える。
しばらく梨華も思考回路を中断させ胸を高鳴らせて真希に魅入っていた。

68 名前:闇の訪れは音も無く  ―使者― 投稿日:2002年04月17日(水)23時28分47秒


「何か…あったの…?」
「…あ…そうです!私、今…」
今さっき何かを口にしようとしていた梨華の様子を思い出し真希が
ふと切り出した。
それに梨華もやっと気付き、今さっきの事を真希に話そうとした。
その時だった。

「ジングルベール!ジングルベール!鈴が鳴る〜!!」
「!?」
「今日は〜楽しい〜クリスマス!いぇい!」

突然その場に響いた、しかもどこかで聞いた事のあるやけに大きな声に二人は振り向いた。
するとそこには向こうの角からよろよろと揃いも揃って足元がおぼつかない、
昨日パーティの後別れたいつもの四人の姿があった。
「中澤さん!それに安倍さん、矢口さん、吉澤さん!!」
中澤と矢口は楽しそうに顔を赤らめ良い気分で肩を組み合い向こうからいつもの
バーに繋がる路地のあるこの通りへ歩いてきている。
なつみとひとみは、二人揃って珍しく顔を青くし額と口元を押さえ、今にも昨日の出来事
を語るように余韻を吐きそうな気配。

69 名前:闇の訪れは音も無く  ―使者― 投稿日:2002年04月17日(水)23時30分38秒

「あらら…」
真希もその姿に思わず声を漏らす。
いつもに比べ人の通りが少ないからいいもののそれでもわずかな視線を集めている。
「っ…」
梨華はとりあえず四人から顔を戻し真希に対し再び今さっきのことを話そうとした。
しかし…

「おぉ〜?あれは石川と後藤やんか〜?お〜い!」
「嘘〜?あ、本当だ〜!しかも梨華ちゃん同じ服じゃない。二人とも朝帰り〜?」

「!」
結構向こうの角からこちらまで離れているにも関わらず中澤達は派手な事を
大きな声で叫びひらひらと手を振ってくる。
「や、矢口さん〜!」
恥ずかしさに顔を赤らめ梨華は困ったように声を漏らす。
隣では真希も困ったように、だけど本当はどこか嬉しそうに中澤達を見ながら
小さく笑みを零していた。
和んだ雰囲気。
いつもバーで流れている空気と同じ物が、彼女達としか感じる事の出来ない
それが今この場にも離れながらも流れようとした時、不意にいつもでは存在しない
ある女性の声が介入した。
70 名前:闇の訪れは音も無く  ―使者― 投稿日:2002年04月17日(水)23時40分39秒

「お待ちしておりました。石川梨華様」

「え?」

突然した声に梨華は咄嗟に後ろへ振り向いた。
するとそこにはある一人の女性が壁に背を凭れさせ腕を組み、顔を下に俯かせながら
静かに立っていた。
髪が前に掛かり、暗い影が顔を覆ってどんな顔なのか、表情さえも分からない。
声が発せられてから一瞬の間が空き梨華は辺りを確認するように見渡す。
しかし近くにはこの目の前の女性以外誰もいなかった。

「年齢17才、身長156cm、髪は茶の入った肩よりわずかに長いほどのストレート、
そして何より今時の女の子にしては珍しく外見も性格も女の子らしさを秘める…」

「誰…ですか…?」

女性はおもむろに壁から体を離すと静かに二人へ近づいてくる。
その表情はやはり光の差し方によって窺い知れなかった。
しかし、ただ一つ分かること。
それは全く気配が感じられない。
目の前にいるはずなのに、近づいてきているはずなのに、まるでそこに誰もいない
かのように静かで、不気味なほど影に近い存在のよう。
71 名前:闇の訪れは音も無く  ―使者― 投稿日:2002年04月17日(水)23時46分12秒

「……」

真希の体も、さすがに隣の梨華の体も徐々に近づく女性に対し強張りを見せる。
辺りに今さっきまで微かにでも漂っていた荒い気配。
それが一瞬にして彼女の登場と共に夜の闇のような静寂を造り出したのに真希は
気付いていた。
5m、3m、2m…徐々にだが確実に近づく女性の姿に真希は梨華の前に立ち、
守るように、触れさせないように腕を横に出す。

「誰なの!?答えて!!」

隣の梨華の体が小さく震え出したのに気付き、真希自身も微かに自分の体にも震えを感じ
ながらも、それをかき消すように辺りに貫くように響く大きな声で目の前の女性に対し叫んだ。


「私は、あなたを迎えに来た者です」

女性は自分に対し声を発した真希の方に目をやることなく梨華を瞳に捕らえたまま
穏やかな口調でそう答えた。
光の差す方向が再び雲によって変わる。
女性の顔を覆っていた影も取り除かれる。
するとそこには20代半ばぐらいの、上品で優しそうな女性がにこっと微笑むようにして
目の前に立っていた。


72 名前:aki 投稿日:2002年04月17日(水)23時57分49秒
すいません、更新がかなり遅くなってしまって…。
四月のせいか何となく忙しいのと、この話に対して気持ちのノリみたいな物と
上手く良い時間が出来なくてこんなに空けてしまいました。
結局言い訳ですが本当に申し訳ないです。

あとたくさんのレス本当にありがとうございます。
違う所でもたまにこの話の名が出ていたりそういうのもかなり励みになってます。
…なんですが、本当に申し訳ないんですが今後の私自身のレスは控えさせて
もらいたいと思います。
皆さんのレスは何より励みとやる気になるんですが、話の進行状態とか考えて…
すいません、完璧にこっちの勝手な我侭なんですが…本当にすいません。
こんなんでよろしければこれからもよろしくお願いしますm(__)m
73 名前:ROM 投稿日:2002年04月18日(木)00時05分30秒
更新お疲れさまです。akiさんが戻って
キタ━━(゚∀゚)━━( ゚∀)━━━( ゚)━━( )━━(゚ )━━(∀゚ )━━━(゚∀゚)━━!!!!
>20代半ばぐらいの、上品で優しそうな女性
誰だ?誰なんだ?これからも頑張って下さい。
74 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年04月18日(木)10時40分14秒
迎えに来た者・・・使者とは誰なのだろう?
ここからの展開がすごく気がかり―――。
75 名前:ごんた 投稿日:2002年04月18日(木)18時47分18秒

だだだだだだ・・・・誰だぁーーーーーー!!
気になりますよ!!

いえいえakiさんのしたいようにしてください!ここの小説は
akiさんの小説なんですから!
76 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年04月19日(金)17時35分28秒
梨華たんを迎えにきたのはいったい誰なんだ!!
あやしいーーーーー。ごっちん、梨華たんを守るんだ。
akiさん頑張ってくださいよ。応援しています。
これからもよろしくおねがいします。
自分も大学がいそがしいです。頑張ります。
77 名前:使者 投稿日:2002年04月26日(金)21時49分33秒

「…え…?」

梨華は真っ直ぐなその女性の瞳に目を背けることも出来ずただ視線を合わしたまま
小さく声を漏らした。

「私と一緒に来てください」

「何言って…」

女性に対し何か言い返そうとした時、隣の梨華の体に異変が起きたのに気付き真希は
急いでばっと顔を横に向けた。

78 名前:使者 投稿日:2002年04月26日(金)21時51分12秒
「……」
(まさか…)

彼女の言葉に、そしてこの不思議な空気に、梨華はすぐに今さっきの出来事を思い出していた。
今の状況、自分の心の中とは正反対に静まり返っている。
まるで何かが起こるのを予言しているように、
嵐の前の静けさのように…。
信じられないというような表情で、戸惑うような、確かめるような表情で梨華は女性を
見返す。
すると目の前の女性は梨華の心の中を表情から読み取ってか再び優しく表情をほころばせた。
まるで心に浮かんだ考えを肯定するかのように。

「梨華ちゃん…?」
「!」

真希の言葉に梨華ははっと我に帰った。
女性のその不思議な瞳に見つめられていると、まるで自分が自分でないように感じる。
優しいし穏やかだし、だけど…不安で、怖い…。
79 名前:使者 投稿日:2002年04月26日(金)21時53分40秒
「出来れば穏やかに事を進めたいのでこのまま素直に私に着いて来てくれますか?
上司にもあなたには特に対応を重んじろと言われています」


『あなたは狙われている』

梨華の脳裏にすっと今さっきの声が過ぎった。
今も、自分の体が、魂が何か危険を察し告げるように不思議なくらいに大きく
何度も波打っている。

…確かめなくても、分かる…。


80 名前:使者 投稿日:2002年04月26日(金)21時55分17秒


「……」
(くそっ…!)
既に自分達の目の前までやって来た女性の存在に真希は小さく心の中で
叫んだ。
どうしてまだ彼女と離れている時に逃げなかったんだろう。
静かに、だけど不気味なぐらいに大きくて最大の力が私達の体を縛り付けている。
それは見えない鎖のように、きつく、強く、どこにも逃がさないかのように…。
目の前にいるその彼女の存在は、目に見える物体的なものより遥かに大きく目の前に
立ちふさがる。
彼女と一番離れた、声を掛けられた時に逃げれば良かった?
…たぶん無理。
本当は分かってる。
本当は…彼女が私達に声を掛けた時既に手遅れだったんだ…。

「さぁ、来てください」

女性はすっと手を差し出した。
白くて、綺麗な手が梨華の前に差し伸ばされる。

81 名前:使者 投稿日:2002年04月26日(金)22時01分44秒


「……」

自分に差し伸ばされたその手を梨華はもはや言葉では言い表せない暗闇の感情に
囚われながらまるで機械的にその手に目を向けた。
怖い…怖いよ…。
この手を取ってしまったら…この手を触れてしまったら、
『全ての闇の扉が開いてしまう』
目に見えない暗い闇に怯えるように梨華の体が震え出す。
心は拒んでいる、のに
自分の体は震えながらもその手に自分の手を重ねようと無意識に動き出していた。

女性の口元が微かに上に上がる。
何かを確信したように。

梨華の異変に真希は気付いていた。
その動き出した手にも。
だけどこの状況を打破する力は私にはあるのか、この目の前の相手を前に
戦う事が出来るのか、こんな時にもやけに冷静な自分が動き出そうとする自分を遮らせる。
本能で動き出そうとする体をやるせないほどに打算的な理性が止める。
それは、彼女の能力が計り知れないほど大きいと分かるから……。

今何か抵抗したら確実に、大変な事になる。
力では絶対に叶わない。勝算は全くない…。

…だけど…っ!


82 名前:使者 投稿日:2002年04月26日(金)22時03分28秒
「ダメ!!」
「!後藤さん!」

真希は震えていた自分の体を奮い立たせると梨華のその腕を奪い掴み、
そのまま引っ張るように走り出した。

「後藤さん!?」
「私は誓ったの…。あなたを前にひどく傷つけた時、必ずどんなことがあっても、
あなたは私が守ってみせるって…!」

梨華の手を再び強く握り返すと真希は梨華を引き、バーのある小さな路地へと
飛び込んでいった―――


83 名前:使者 投稿日:2002年04月26日(金)22時10分53秒


「……」
二人が目の前からいなくなり、走り去った路地の向こうを女性はただぼんやりと
見通す。
その表情は焦りも怒りも何の感情も含んでいない。

「…ふっ…」
しかし、不意に一つも崩れなかった表情が、瞬時に歪んだようにして笑みを作り出した。
「そうこなくっちゃ…。素直じゃない標的は大好きよ…」
小さく呟いた言葉のすぐ後に今まで感じていた彼女達のオーラと気配が一瞬で
消された事に気付く。
それはまるで炎が消え、後に灰色の煙を微かに漂わす儚い蝋燭のよう。
84 名前:使者 投稿日:2002年04月26日(金)22時12分10秒
「ふふ、無駄よ…。あなた達は逃げられない。一旦姿を現した獲物を狩るのは
造作もない事…赤子を捻るような物よ…」
女性は口元の笑みを直さないまま胸のポケットから無線機を取り出した。

「聞こえる?こちら路地前の田宮。獲物が逃げ出したわ。狩りの始まりよ」
『OK』
女性の声が無線機のマイクの向こうへ消えたと同時に複数の声が戻って来た。
その声たちはどこか楽しそうに、不気味に低い声を微かに上ずらせ無線機の向こうから
戻って来た。

「ゲーム、スタート」

女性は消していた殺気に似たオーラを一気に解放させると、剥き出しのそれを
辺りに冷たく貫かせながら、すっと静かに闇のように消えて行った―――


85 名前:aki 投稿日:2002年04月26日(金)22時19分18秒
温かいレスありがとうございますm(__)m
やっぱりレスは嬉しいです。
一番励みとやる気になります。
少しづつですいません。
マイペースですががんばります。
86 名前:ROM ◆ROMuFK/w 投稿日:2002年04月26日(金)22時25分19秒
更新お疲れさまです。
焦らずに、自分のペースで更新してください。
これからも楽しみにしています。
これからも頑張って下さい。

で、田宮って誰なんですか?
87 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年04月27日(土)04時36分41秒
ついに・・・、真希は守りきれるのか!?
しかしもはや能力を失った梨華をいったい何故・・・?
88 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年04月27日(土)18時09分43秒
うむむ。ついに始まりましたなあ。どうなるのか気になります。
ごっちんは梨華たんを守りきれるはずだ。
89 名前:悲しい予知夢 投稿日:2002年04月27日(土)20時38分11秒

「…何か様子がおかしいんちゃう?」
「……」
どこか様子がおかしくなった向こうの状況に中澤が目をやりながら隣の矢口に声を
掛ける。
矢口も中澤と同様、一瞬にして感じた冷たい感覚に酔いも冷め、中澤の声を
横で聞きながら目を離せられないかのように梨華達の方へ視線を向けながら
ただ無言のまま、見つめていた。

「…誰…あの人…」
なつみもこの場に流れてくるほどの異変した雰囲気と、中澤達の様子に
向こうへ目を見張る。
消しているようで全く意味が成してない、そのオーラは不気味なぐらいに怖いほどの
氷のような刃を辺りに向けている。
そうこうしているうちに、女性の手が梨華の前に差し出された。

「…やばいんじゃないんですか…この状況…」
ひとみも只ならぬ様子に顔を強張らせる。

90 名前:悲しい予知夢 投稿日:2002年04月27日(土)20時41分47秒

「……」
しかし中澤も、他の三人も感じていた。
自分達にもあの女性以外の誰かからびんびんに躊躇うことなく刺さってくるオーラ。
それはこう自分達に冷たく囁いている。

『動いたら殺す』

中澤はぎりっと唇を噛んだ。
目の前の光景は確実に二人の危機を現している。
しかし、自分以上に果てしないぐらいのレベルの能力者が複数、近くにいることも
分かっている。
計り知れない能力値…。
動けない。
もし自分達が今動き出したら、そいつらは自分達を、もしくわ向こうの二人を、
何の躊躇う事もせず他愛無いかのように容赦なく攻撃を加えるだろう。
何も出来ない歯がゆさに中澤は拳を握り締めた。

91 名前:悲しい予知夢 投稿日:2002年04月27日(土)20時44分06秒
微かで果てしない長い時間がほんのわずかに流れる。
向こうに見える瞳に映る彼女の姿。
たぶん、いや絶対に後藤も自分と同じことを考えているだろう。
横では手を指し伸ばされた彼女がその目の前の女性に翻弄されるかのように
ぶらさがっていた手を震わせながら理性と必死に戦い、動き出すのを止めているようだった。

(…くそっ…!)

つかの間の幸せな時間。
それももう終わりか…そう絶望に浸る、そんな時だった。

「ダメ!!」
「!後藤さん!」

こちらにも綺麗によく通る声で叫んだのは後藤だった。
不気味なぐらいに静かだったこの静寂の場に後藤の声はよく響いた。
それは暗闇に、一筋の光を差すような強くたくましい勇気の言葉。

92 名前:悲しい予知夢 投稿日:2002年04月27日(土)20時48分18秒

「後藤!」
二人は女性から逃げるように後藤が石川の手を引っ張るようにして路地の向こう
へ消えて行った。
そう、自分達がいつもいる、共に時間を過ごしているその場所へ。

「裕ちゃん!後藤が…!あたし達も行かなくちゃ!」
隣では矢口が叫ぶように中澤に言う。

「…わかっとる!」
中澤は微かに間を置いてから矢口に答え走り出した。
心に巣食い始めていた絶望や不安、闇は一瞬にして消え去って行った。

それをさせたのは、そう他でもない少女の勇気の言葉―――


93 名前:悲しい予知夢 投稿日:2002年04月27日(土)20時55分38秒

中澤達が走り出そうと地を蹴ろうとした、その時。
「!」
中澤の携帯が不意に鳴り出した。
それは辺りに大きく響き存在を強く示している。
いつも聞く携帯音は、今日はなぜか不思議なくらいに強く早く打っているように聞こえた。

「はい、もしもし…圭ちゃん!?」
携帯の向こうから聞こえた声に思わず中澤は声を上ずらせる。
「どうして…圭ちゃんなんであたしの番号知ってんねん…」
中澤は戸惑うようにして携帯の向こうへ言葉を繋ぐ。
しかし向こうからはそれを遮るような携帯のはるか外まで聞こえるような大きな
声が響いた。
「裕ちゃん!今はそんな事話してる暇はないの!ちょっと聞いて!」
「なっ、そんならうちらやって今はおしゃべりしてる暇なんてあらへん!切るで!」
中澤は矢口達と再び路地の入り口へ向かい走り出し携帯を切ろうとした。
「ダメ!ちょっと聞いて!」
「何やの…一体…」
中澤、矢口、なつみ、ひとみは一斉に走り出し、その中中澤はとっさに自分を
止めた声に再び耳を当てた。
「今から言う事をちゃんと聞いて。実は…」


94 名前:悲しい予知夢 投稿日:2002年04月27日(土)21時09分06秒

――――

「何やて!?それ本当か!?」
「何!?どうしたの裕ちゃん!」
なつみが声を荒げる中澤に走りながら声を掛ける。
中澤は静かに携帯の通話を止めるボタンを押し、ポケットに仕舞うと微かに考えるように
して間を置いてから静かに口を開いた。

「…圭織が夢を見たらしいんや…それはつい今さっきのことらしい…」
四人、列を崩さないまま全力で走り続け、中澤は今保田から聞いた事実をゆっくりと
言葉にしていった。



95 名前:悲しい予知夢 投稿日:2002年04月27日(土)21時21分35秒
『実は今さっき圭織が夢を見たらしいの、それは裕ちゃん達のいるバーでの事』


『空から降り注ぐ無数の白い雪は東京の町を覆い尽くし、海の向こうからは
雲に覆われ見えない太陽が静かに上り始める景色…』


『やっと雲間から太陽が覗き青空も広がり始めたその頃、次に圭織の目に飛び込んできたのは
裕ちゃん達のバーだった』


『黒ずくめの人間達が影のように現れる』


『そして飾り付けられたクリスマスの飾りは次々と乱暴に床に叩き付けられていく』 


『そう、能力者達の争いがそこで起こる。まるであの時の再来のように…』


『禁じられた能力者同士の戦いは始まる。大きな力がぶつかり合い、血は流れ、傷を負っていく』


『そしてそこに居合わせるのは…』




96 名前:悲しい予知夢 投稿日:2002年04月27日(土)21時26分13秒


「!そんな…」
矢口は発せられた中澤の言葉に絶句した。
「まさか…」
聞いていたなつみ、ひとみもその信じられない、信じたくない事実に言葉を失う。
「…あの子たまに見んねん。それのほとんどが…誰もが恐れる未来の光景…」
中澤は飯田の予知夢が外れることがない事を知っていた。
「『あの時』も…そうやった…」

『とにかくあたし達も今からそっちに行くから。アヤカ達も今そっちに向かってる…』

「……」
嘘や、嘘やろ…?
誰か嘘やって言うてよ!!
圭織の見た夢は…ただの夢の中での話だって…。
信じたくない、信じたくないんや!
怖い…お願いだから誰か…そうだと言って…。

100%当たる圭織の予知夢。
お願い神様。
今回だけ…今回だけは、外れて下さい…。
そしたら圭織の思い過ごしだって、ただの夢だって
みんなでまた笑い合えることが出来る…。
だからお願い…!

中澤は息を切らせバーの扉の前に立った。
そして勢いよくその扉を開け放った――――




97 名前:aki 投稿日:2002年04月27日(土)21時35分05秒
レスありがとうございます。
しかし今の更新で溜めていた物が0に…。…がんばります。

86:ROMさん
>出くわした女性、そして複数の人間達は完璧にオリジナルになります(^^;
 すいません、分かりづらくて…。このキャラ達に該当する人物が思いつかな
 かったり、諸々でオリジナルになりました。
98 名前:ROM ◆ROMuFK/w 投稿日:2002年04月27日(土)22時20分52秒
更新お疲れさまです。
メール欄がおかしいかもしれませんが、気にしないでください。
「田宮」ってオリジナルの人物だったんですか。
これからどうなるんだ!?ちょっと先が読めなくなってきたかも…
これからも頑張って下さい。
99 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年04月28日(日)10時57分30秒
とうとう始まりましたな。どうなるんでしょうか?
更新ドキドキしながら待っています。
100 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年04月29日(月)10時45分56秒
───また笑い会える日が・・・
来ることを願いつつ、今は、迫り来る事態を───
101 名前: 投稿日:2002年05月04日(土)00時31分05秒
   全
102 名前:aki 投稿日:2002年05月04日(土)01時11分37秒
すいません、更新遅くなってます(++)
もう少しだけ待って下さい。出来るだけ早く更新できるようにしたいとは
思ってるんですが…。


それと…すいません、今載せるのはいいタイミングなのかどうか分からないんですが、
紫板で実は違う話を書いてました。
こっちの更新が遅くなりがちであっちの役目を果たしてないので言うかどうか
迷ったんですが…。
題名は『悲しみの果て』です。
いしごまで…少し官能的…?(汗)
よろしければそっちも見てやってください。
こちらも早く更新できるよう努力しますm(__)m
103 名前:トモフミ 投稿日:2002年05月06日(月)00時22分36秒
まぁ焦らず、書ける時に書いてください。
ゆっくり待ってますんで。
104 名前:いしごま感謝祭 投稿日:2002年05月07日(火)19時48分59秒

>勢い良く開け放った

中はどうなったんだぁっ?!ごっちんと梨華ちゃんの運命は・・・・。
気になるだらけです。頑張ってください。
105 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月17日(金)21時23分47秒



「はっ……はっ…」

…追いかけて来る…
無数の黒い影が…。
その鋭い刃を除かせて…。

後藤は石川の手を取るとそのままいつものバーのある路地を走り抜けていた。
一、ニ、…いつもと変わらず刻まれているはずの時が今はゆっくりと、まるで
スローモーションのように感じられる。


「はぁ……はぁ……」

…今まで生きてきた中で、感じたこともないぐらいの緊張感に後藤の体は
冷や汗で濡れていた。
まるで体の底から湧きあがってくるかのように、嫌な汗がじわじわと気持ち悪く
背中を湿らす。
…感じたこともないぐらいの、プレッシャー、重圧感、緊迫感。

106 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月17日(金)21時25分43秒


「………」

後藤はあえて何も考えないようにして走った。
そうでもしないとあまりにも唐突な出来事に使い慣れない頭は今にもパンクしそう
になりパニックを起こしそうになる。
たくさんの考えや感情が、胸の中をものすごい勢いで駆け巡っていた。


「…はぁ……はぁ…」

…きっと逃げられない。


「…っはぁ!……はぁ…っ…」

戦っても…勝てない。勝てる見込みは0もない。


「……っ…」

今さっきまでの幸せな日々にはもう…戻れない。


パニック状態でも冷静に働く頭にもはやいらだちさえも何も感じられなくなって
しまった。
ただ彼女の手を握り締める自分の手がまるで今の自分を表すように嫌に汗をかいている。

107 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月17日(金)21時27分45秒

「きゃっ!」
「っ!…くそ…!」

鋭いレーザーのような光線が自分達を威嚇するように足元に数段うって来た。
走ったまま、微かに体勢を崩しすぐに持ち直す。
不意に加えられた攻撃は同じ系統の飯田の技よりも比べ物にならないほど
格段に能力が上だという事が見てすぐにわかった。


まずい…これは…

それからもただ威嚇するようにして自分達を狙うその攻撃に後藤は
察した。
後ろからはじわじわとわざとゆっくり黒い影が追いかけて来る。

…止まれない。引き返せない。

それとは反対に自分たちの目の前は何の緊張も敵も存在しなかった。
張り巡らされた罠に嵌った感覚を後藤はこれ以上ないほどに実感を受けた。
あらかじめ張っておいたトラップに、こうも上手くまんまとはまる姿は
自分でも恐ろしかった。
それでも止まることは許されない。
108 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月17日(金)21時30分24秒

「はぁっ…はぁ…」

距離にしたら大して走っていないはずが、体はもう既にオーバーヒートし悲鳴を
上げている。
走った後のようではない、渇いた呼吸が口から漏れていく。

「!後藤さん!!」

真希はあえてバーのあるその路地の横道をそれた。
そのまま入ってきた景色同様、目の前の向こう側にもその光景を捉え、
後藤は全力で向こうの街を行き交う人々の姿が見える出口に向かって走った。

「そっちに行っては困ります」

「!」
今さっきの女性の声が辺り一体に不気味に響いたと感じたとき、目の前には大きな
巨体の男の影が存在していた。

「くっ!」

もくもくと足元の大きな影から姿を現そうとしていくそれに真希はやむをえずその場を
引き返すとバーのある小路へと駆け抜けていった。


「そう、それでいいのよ…私の羊達…」

二人が消えていった路地の真ん中に、女性の口元を上げる情景がその場に
白い霧のように表れた。

109 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月17日(金)21時32分12秒

真希はバーの扉を力任せに開け放つと真っ直ぐ中へ入って行った。
誰もいない静かな薄暗いバーの中を梨華の手を取って、木の床に乾いた音を響かせながら
中を足早に進む。

「…こっち!」

真希は梨華の手を取りお酒の棚が並ぶカウンターの中に入るとそこに梨華の体を
屈めさせた。
「…後藤さん?」
「……」
真希は梨華を屈ませた後もまだ中腰に立ちカウンターの奥の引出しを探っていた。
梨華がそんな真希の背中に首を傾げる。
それから微かな間を置き、沈黙の中真希は引き出しの中からある物を取り出した。

「これ。何か会った時のために持っておいて」
「これ…まさか銃ですか?」
「…そう」

梨華は真希の手に持たれている黒い布に包まれたそれにしばらく呆然と
心を奪われるようにぼんやり見つめていた。

110 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月17日(金)21時34分00秒

「どうして……どうしてこんな物私に渡すんですか!?」
「…万が一…の時のために…」

真希は梨華の言葉に答えようとし口を開いたが途中で言葉を変えた。
その変化に梨華も気付く。
みるみると梨華の表情が不安に曇ってきた事に真希も気付いた。

「…あなたは私が守るよ。守ってみせる…。命に代えてでも…」
「…後藤さん…」
「でももしかしたら…」

再びバーに沈黙が訪れた。
まるでこれから何かが起こることを密かに暗示するような不気味な静けさ。
つかの間の沈黙は居心地が良くも悪く、この静けさも今だけしか存在しない事を示す。
海の底、生物が存在さえもしないはるか奥深くの孤独に似た静けさを思わす。
闇のように静かなそこに二人の鼓動だけが静かに激しく響いているような気がした。
しかし静けさの中にそこには最大の緊張とプレッシャー、そして不安と微かな恐怖が
存在していた。
真希も、少なからず梨華も感じていた。
この今自分達のいるバーに確実に近づいてくる闇の荒々しい足音に。
二人の息遣いまでもがバーに響く。
作り出された沈黙に今にも飲み込まれそうだった。

111 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月17日(金)21時40分37秒

「嫌だよ…。やだよこんなの…」
「……」

二人のしゃがむその場に静かにぽたっと水音が響いた。
次第にその乾いた木の床に一粒二粒と涙の染みが出来ていく。

「ただ一緒にいたいだけなのに…。側にいられるだけでいいのに…どうしてこんな…」

とうとう梨華は涙が止め処なく溢れ出す気持ちを押さえることができず、両手で顔を
覆うように押さえた。

「…梨華ちゃんは私が守るよ…だから大丈夫…」

真希は小さく震えうずくまる梨華の体をぎゅっと抱き締め、静かに囁く。
しかしそれ以降続きそうになった言葉をきゅっと口元を固く塞ぎ、止めた。

「う…っ……私の、せいなの?…私が…こんな力持ってるから…後藤さんと、
出会っちゃった、から…」
「!違うよ!違う…そんなんじゃない…」
「後藤さん…」
「そんなんじゃないから……お願いだから…そんなこと言わないで…」

梨華の涙で顔を覆う手が微かに離れた。
不安げにおぼろげに上の真希の顔を見ようとする。
真希はそんな梨華の体を寄り一層強く抱きしめた。

112 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月17日(金)21時43分06秒

「…私はあなたがいたから変われたの…。あなたと出会えたから変わることが出来た。
乗り越えられた。…私に梨華ちゃんの存在は必要なの、なくちゃいけないの…」
「…後藤さ、ん…」
「もしもあなたがいなかったら…私なんて今ごろ……」

掠れた声で梨華が真希を呼ぶ。
しかし真希は遠くを見るような瞳、そして自嘲するような言い方と表情だった。
そんな表情の真希をしばらく下から見つめていた梨華は不意にぎゅっと真希の体を
抱き締め返した。
もう涙は、流れていなかった。

「…私も…後藤さんと出会えて変われた…。もし私も後藤さんと出会えてなかったら、
今ごろどうでもいい毎日を送ってると思います。…もしも私達の前にある未来が
悲劇だとしても…出会えて良かった…」
「梨華ちゃん…」
「お願いです…お願い…『守る』って…もっと言って下さい。お願い…」
「…守るよ。梨華ちゃんは私が守る…」

113 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月17日(金)21時46分26秒

真希の言葉に梨華は安心するように瞳を閉じるとそっと肩に顔を埋めた。
そして小さな声で同じように囁くようにして言った。
こんなに静かでも、沈黙に包まれていても、彼女だけにしか聞こえないように。

『私も守ります』

「!」
梨華の言葉に真希はびくっとするように反応した。

「梨華ちゃん…」
目を見開き、驚きを隠せないまま目の前の梨華に目をやる。

「……」
そこには優しげな瞳と儚げな表情があった。
切ない想いを胸に秘め、自分を見つめる姿。
それに真希の中で記憶の中の彼女と重なり合い、一つに交じった。

「後藤さん…」
自分の名前を囁く声、それにはっとして我に返る。
すると目の前には優しく瞳を閉じ、近づく彼女の姿があった。

「…梨華ちゃん…」
ぎゅっと抱き締める腕に力を込め、自分も瞳を閉じ柔らかい彼女の唇を待った。


114 名前:aki 投稿日:2002年05月17日(金)21時50分58秒
すいません、更新はここまでにします。
今日結構書いたせいか疲れが出てしまって…。

レスは、すいません。後ほどまとめて書かせて貰います。
115 名前:トモフミ 投稿日:2002年05月17日(金)22時05分54秒
久々の更新お疲れ様です。
今回はリアルタイムで読みました。
20代の女の正体が全然わかりません誰ですかね〜気になります。
これからもがんばってください。
116 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)22時21分32秒



キー…―――

「……!」
しかし突然聞こえたドアの開く音に真希は目を見開いた。
それは目の前の梨華も同じだった。
微かにだが、ほんの少し二人だけの優しい空気が流れようとした時、
その場に不似合いな存在が現れた。
鋭く研がれた、今にも血を浴びたがっているような、血に飢えているような獣の気配。
今までにも幾多の体を切り刻み、切れ味ばつぐんの冷たいオーラ。
まるで人殺しのためにあるようなそれがいつものバーの沈黙も、穏やかな空気も
一瞬でかき消す。
一瞬にしてその存在だけの部屋に気配を変え、途端にそこは冷たく鋭く肌に突き刺さり
心臓まで達するかのよう。
「………」
胸の中で痛いほどに波打つ鼓動を必死に押さえつけ、真希は出来るだけ気配を
隠すようにし、しゃがみながら梨華の体を再び強く抱きしめると口にそっと手を添えた。

117 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)22時23分49秒

「……」
口元に押さえられた彼女の手に梨華も何も言わないまま息を殺し、今にも爆発しそうな
ぐらいの胸の緊張を必死に押さえつけようとしていた。
「……ここにいますよね。…速やかに出てきてください」
ドアの前に立つ影は出来るだけこの場に流れる張り詰めた空気を和やかにしようとするように
一息つくと穏やかな口調で声を発した。
しかしそれは思惑通りの意味をなさない。
優しいし穏やかだけど、怖い。
二人の中で同時に心臓がどくんと大きく跳ねた。

「…あなた達は完全に包囲されてます。速やかに、姿を現してください。そうすれば
被害も少なくて済む。…もとより、いつまでもかくれんぼしてる暇もないんですよ」
語尾を静かに荒々しくすると女性はバーに足を踏み入れた。
コツ、コツ、とハイヒールが床に繰り出す音が静かに響く。
不気味なほど、一定で乾いた音だった。

118 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)22時25分44秒

「……はっ!!」
「!!」
女性の一定のリズムが狂った。
真希はカウンターの中から姿を現すと瞬時に両手を前に出し、まばゆい青の光と共に
砲弾を放った。
最大に近い放出力に女性はすぐに気付くと真希が力を放つその直前に察し
体をひらりと横にかわした。


――――シュー…

「!」
真希が放った力は女性の横を通りそのまま壁にはぶつからず、女性の微かに上に出した
手のひらの動きと共にスーッと音を立て消えていってしまった。

「残念でした。私には自分の能力以下の者に対して力を無効化させる能力があるの」
不敵に笑う女性に真希はぎりっと唇を噛む。

119 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)22時29分26秒
「…だからって、無敵ってわけじゃないでしょ」
真希はそう小さく呟くとひらりと体を翻しカウンターを飛び越え、中から現れた。
「!」
梨華がカウンターの中から行ってしまった真希の体を見守る。
咄嗟に体が立ち上がろうとしたが、済んでのところで踏みとどまった。
「無敵よ」
「…完璧なものなんて…この世にはない」
「完璧に限りなく近いものはあるわ」
女性はそれだけ言うと同時に合わしたように間髪入れず手を前に出すと真希に向かって
紅い光を放出させた。
「っ!」
目の前に一気に広がった光に、とっさに光を飛び越え攻撃を交わす。
「お上手。それより、この建物はやたらに頑丈に作ってあるのね。周りはぼろいくせに」
「……」
攻撃が交わされることを予知していたように、いやあえて攻撃を交わすように
ワンテンポ遅らせて放った女性の姿に真希は拳を握り締めた。
「…彼女は、渡さないっ!」
それが合図のように、真希は叫ぶと女性に向かって走っていった。

120 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)22時35分50秒

「はっ!」
手のひらから大きな光の弾丸を放つ。
真希と女性の間に大きな青い光が隔てり、それは女性に向かって放たれていった。
「無駄よ」
女性がその光に手を差し出しまるで吸い取るようにして光を飲み込んでいく。

「…っ!」
しかしその空いた背中に光で覆われた、繋いだ両手の拳の固まりが落ちた。
「くっ…!」
微かに体勢を崩しよろめきながら女性はばっと後ろに振り向き、手から光を放出させる。
空中に浮きながらも体を捻り済んでのところでそれを真希が交わす。
しかし微かになびいた髪の先と、肩の服が焼け焦がれ落ちた。

「っ…」
顔をゆがめ真希はその微かにやけどを負った肩を押さえる。
女性は体制を整えると気を取り直したかのように手のひらから光を放ち、それを
今攻撃を受けた首元へ当てた。
121 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)22時39分05秒

「!」
「驚いた?オーラはね、使い方によっては自分の部類以外でも基礎的な事が出来るように
なるのよ」
淡い光は後ろの首筋を覆い、あっという間に出来た痣は跡形もなく消えてしまった。

「つまりね、限りなく完璧に近い存在。あなたには私を倒す事など絶対に不可能なのよ」
「…!」
女性は言うと同時にピンッと指を弾いた。
するとたちまち無数の影たちが部屋を覆った。
驚く暇もなくその幾多の影から実体が黒い影に覆われたまま姿を露にする。
「なっ……」
一瞬にして部屋に現れたその影たちに思わず声を漏らす。

「もう終わり。じゃあね」
真希が呆気に取られている隙に、女性は最大の光を真希に向かって放った―――



122 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)22時43分46秒

「…くっ…」
放たれた光、それはガードする暇もなく真希の体を通り抜けるとたちまちに
真希の体を遠慮なく熱し無数に切り刻んだ。
「…っ……」
体の至る所から血が溢れ出し、真希は微かにガードした後の交差した腕をぶらんと
下にたらすと、成す術なく地面に倒れた。

「ほーらね、だから言ったの」
女性は床に倒れた真希の体にこともなさげに横目で見やるように目を向けながら
その流れる真紅の血とぼろぼろの服に言った。


123 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)22時51分14秒


「!?……」
後藤さん!?

カウンターの中で梨華は必死に胸を押さえ向こうの様子を声と音だけで探っていた。

何かが倒れる音。

それはまさか…。


嫌な胸の響きがどんどん増してくる。


今すぐにでも真希の姿を確認しようと立ち上がろうとする体を必死に
理性で押さえ、宥める。
しかし胸の中は爆発寸前、頭の中に微かに残る理性を必死に奮い立たせ
うずうず震えるこの本能に正直な体を押さえる。
二つの感情が、まるで天使と悪魔のようにこれ以上ないほど強く紛争しあい
今にも気を失いそうだった。

124 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)22時53分22秒


「…痛い?どう?…話すことも出来なくなっちゃった?」
「っ……!」
女性は真希の側までやってくると横にしゃがみ、その焼け焦がれた服を掴み目の前まで
乱暴に立たせた。
「だから抵抗はやめなさいって言ったのよ」
「ぐはっ…!」
不意に真希の体を手前に引っ張ったかと思うと次には女性は真希の体を
向こうへと乱暴に叩き付けた。
「……」
体を蝕むほどの無数の痛み、それに真希は立ち上がることも出来ずただ顔をゆがめ
痛みに堪えることしか出来ない。

「さーてと、分かってるのよ。お嬢さん。そこにあなたがいるってことは」
改めるように女性は長い髪を掻き揚げ、気だるそうな声でカウンターの向こうへ
言葉を掛けた。

125 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)22時55分40秒

「!」
二人は同時に反応した。
梨華はカウンターの向こうでびくっと怯えるように、真希は倒れる体を恐れていた事を
現実にされたように。

「今そこに……!」
女性がカウンターに近づき再び床にハイヒールの音を立て歩を進ませた時、
その足首を何かが触れた。

「…彼女には…触れさせない!!」
「!!」
女性がそこに目を向けた時、女性の足首を強く掴んでいた真希の手から
激しい炎のような青い光が出た。
真希は倒れながら、その足首を強く掴むと、髪が顔を覆いながらもその強い瞳で
女性を睨みつけ、そして最大に力を解き放った。
ドンッ!と大きな音と共に一気に業火のように女性の体を光が下から滝のように
焼き尽くす。
女性の髪が一気に上に流れた。


126 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)22時57分35秒

「……」
長く感じられるほどに女性は炎に包まれ、その間真希も女性も何も行動を
起こさなかった。
ただ真希は女性の足を掴み離すまいと益々力を込める。
それと共に女性を覆う光も衰えることなく勢いを増しながらずっと女性を炎に
包んでいた。

「……これだから…諦めの悪いやつは嫌いなのよ…!」
「!?」
ずっとただ何もせず炎に焼かれ続けていた女性が、不意に激しく叫ぶと炎の中から
倒れている真希の首を掴んだ。
「ん…っ!!」
力強く首を締められ真希は体を抵抗するように暴れさせる。
しかしその力は今の真希には到底逆らえないほど強かった。
足が地面から離れ、体が浮くほど持ち上げられた時、体を壁に向かって強く叩き付けられた。

127 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)23時00分28秒

「ぐっ…!!」
激しい音が響き、背中を壁に叩きつけられゆっくりと床に崩れ落ちる。

「社長は彼女もあなたも傷を負わせることなく、活かしておけとおっしゃっていたが…
初めて見た時から感じてたのよっ!!その瞳……まるで諦めることを知らない
居心地の悪い目…。悪いけど、独自で会社のために行動させてもらうわ」

炎の中から現れると女性は今さっきまでの雰囲気など皆無の、荒々しい炎のような
瞳で真希を睨みつけた。

128 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)23時01分41秒

「えぇ、社長も許して下さるに決まってるわ。あんたみたいなのはこれから先
私たちのプロジェクトに支障を来たす存在…。後々必ず要注意人物に上ってくる。
そういう人物は早急に片づけておかないと…」
「黙れっ!!…あんた達のする事なんかに…彼女は利用させないっ!!」
「…私の本能が言ってるのよ。…あんたは早急に殺したほうがいいってね!!」
「!!」

女性は鬼のような形相を浮かべ両手を前に出すと真希の体を無理やり力で立たせ
壁に貼り付けた。
まるで何か重力のように体に前からかかって来る力に真希は壁に貼り付けられながら
顔をゆがめる。
「死ね!!」
女性は間髪入れず両手を真っ直ぐ前に出すと、激しい感情に赴くまま光を最大に
解放させた。


129 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)23時07分45秒



「待ってっ!!!」


「!!?」
突然した声に辺りが一瞬動きを止める。
まるでその声が一瞬時間を止めたように。

「……梨華ちゃん!!」
「後藤さんを…放して」
「……」
真希と、そして女性がカウンターの向こうから現れた梨華の姿に絶句した。
「…何の真似?」
「後藤さんを放して」
梨華のこめかみには今さっき真希が渡した黒い拳銃が当てられていた。

「や、やめてっ!!梨華ちゃんどうして…。…お願いだから…早く逃げて……」
真希は梨華のその姿に言葉をなくし呆然と言葉を並べた。
しかしそれよりも彼女の存在に早く安全を感じて欲しかった。
「…本気です」
梨華は自分を見つめる女性の瞳を自分も真っ直ぐ見つめながら拳銃の引き金に指をやった。
見ていても分かるほどに、その指に今さっきまでとは違う力が入ったことが明らかに
分かる。

130 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)23時09分09秒

「やめてぇ!!!」
「…無駄なのよ。そんなことしても…!!」
女性はいらだつように叫ぶとふっとその場から消えたかと思うと一瞬にして
移動し、梨華の前に現れた。
「!!」
「あんたがいつまで経っても現れないから…!!」
女性が梨華に手を伸ばしその拳銃を持つ腕を乱暴に掴もうとした。
同時に梨華の指に力が入った。

銃の引き金が、引かれる―――



131 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)23時13分00秒


『やめなさい』
その時突然バーに三人のどれの者とも違う女性の声が響いた。
「!?」
『銃を置きなさい』
次に女性の声がしたかと思うと、真希の体はふわっと一瞬浮きそのままずっと自分を
縛り付けていた呪縛から解き放たれ、静かに床に倒れた。
「あ……」
梨華の手からは自然と力が抜け、銃は女性の声と共に梨華の手から外れ
ふわっと中に浮くと気付いた時にはまるで氷ついたように固まり次の瞬間には
跡形もなく粉々に砕け散ってしまった。

「なっ…これは…。まさか…まさかあんたは……上條…。上條なの!?」
『ご名答。田宮さん』
部屋に向かって体を整え、どこかうろたえるようにして声の元を探す女性に
声だけの彼女がどこか不敵に答えた。


132 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)23時18分08秒


「あんたどうして…。一体何の用よ!!」
「それはあなたが一番知っているはず…」

「……」
突然の声の登場に場の空気が確かに変わり、梨華は気付いて真希の方へ目を向けた。
「後藤さん!」
「うっ……」
梨華は急いで真希の元へ駆けつけ、その体を起こし腕の中に抱き起こした。
「一体…何が起こってるの…?」
「しゃべらないでください。血がまだ…」

今も止め処なく溢れる血、痣だらけの体、刻まれた体。
梨華はすっと瞳を閉じると赤い光を静かにゆっくり、優しく体から発し
それをそのまま真希の体に移動させた。

「……!梨華ちゃんどうして…」
温かい光が真希の体を包む。
傷がみるみるうちに癒されていくのが分かる。
しかし途端に梨華が記憶操作を掛けられているはずなことに真希は気付き声を上げた。

「まだ…ダメです…」
梨華はぎゅっと真希の体を瞳を閉じたまま再び抱き締めると、赤い光に力を
込めた。


133 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)23時20分11秒



「田宮さん、あなたもとうとう外回りの落ちこぼれ社員になってしまったんですね」
「どういう意味よ!!」
「つまりリストラ寸前の営業マン、ってことですよね」
「そんなこと聞いてるんじゃないわよっ!!」


女性は部屋に響くその自分をあざ笑うかのような声に豪を煮やし、炎に似た荒々しい
光を屋根へと向かって解き放った。
「!」
「これ以上規則に背くことは、やめてください」
それもその女性の声と共に、まるで水を掛けられたように一瞬にして
沈下させられてしまう。

「今の私にはあなたを左右する力を持っている。つまり田宮さん、あなたは私の
手のひらの中にいるんですよ」
「どういう…意味よ…」
女性の声が激しいながらも勢いを失った。
それにくすっと口元を上げせせら笑った女性の声が聞こえたような気がした。

134 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)23時22分21秒

「あなた社長に言われなかったの?彼女には、そしてその隣の彼女にも一切手を
出してはいけない事」
「……」
「ふふ、こういう所田宮さんって真面目よね。ま、言われてないと嘘を付かれても
無駄なことですけど。…つまり、言われていたにも関わらず命令に逆らったのね」
「逆らったわけじゃないわ!!私は社長に『石川梨華』を連れさってこいと言われた!
だからこうして行動してるんじゃないのよ!その命令に対する不可要素にとやかく
文句いわれる筋合いはないわ!!」
「…理屈を捏ねないで下さい。言ったはずでしょ?あなたの行く末は私に懸かっていると」
「!!」

女性の声がしたかと思うと次に目の前の女性がとたんに頭を押さえた。
「う、うあ…!!」
頭を両手で押さえたまま、苦しむように辺りをのたうち廻る。
まるで頭の中を貫くような、カチ割るような、それよりも中から破壊するような
その激しい痛みに女性はふらふらと体をよろつかせる。
「やめろ…やめろぉ!!」


135 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)23時26分05秒

「…後藤さん」
「梨華、ちゃん…」
「今のうちです。早くこっちに…」
梨華は真希の大体傷の癒えた体を支えると、まだ力の入らない真希の体を
助けるようにして二人は突然苦しみ出した女性を置いて気付かれないように、
この突然訪れたチャンスにゆっくりと休憩室へと向かって行った。




136 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)23時28分35秒

「分かった?つまりあなたは…」
「上條!!あんたいつからそんなに偉くなったのよ。あたしよりも後から入って
来たくせにこの私に対して命令するなんて…生意気よ!!」
「くすっ、社長はあなたよりも私を評価してくれているわ」
「何ですって!?言っておくけど、社長の横は私の物よ!?それに今回の事だって
社長が私に直接…」
「その社長が言ってらっしゃるのよ。あなたを処分しろとね」
「!!」
「社長直々の命令よ。残念でしたわね。田宮さん」
「う、うわ!!」

女性は再び強く部屋をよろめきはじめた。
強すぎる痛みからその体を何とか逃れようと部屋を暴れ始める。
「後は任せて置いて下さい、田宮さん。あなたは何にも心配しなくても
全く仕事に支障は来たしませんから」
「!く、このぉ!!」
「!田宮さん!?」
「…くそぉ!!」
女性は最後の力で体を縛り付けるような鎖に暴れるようにして引きちぎりその二人が
消えていったドアへと襲いかかっていった。



137 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)23時30分02秒



「後藤さん…後藤さん大丈夫ですか…?」
「う、ん…なんとか…」
真希は梨華に体を支えられながら何とか休憩室の中まで来るとそこのソファへと
腰を掛けた。
「良かった…」
梨華は安心するように呟きぎゅっと優しく真希の体を抱き締めた。
「……」
そんな梨華のぬくもりを感じながら真希はどこか遠くを見つめるように
呆然と体を椅子に凭れさせていた。
「後藤さん…後藤さん…」
何度も真希の名前を呼びながら、真希の体を確かめるように強く抱きしめる。
その体は微かに震えていた。


138 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)23時31分48秒

「梨華ちゃん…」
背中にまだ力の入らない腕を回し必死に真希も抱きしめ返す。
彼女だけを感じるように、瞳を閉じた。

…真っ暗な視界の中に、彼女だけが感じられる。
髪から伝わる甘い香り、華奢な体、温かいぬくもり…。
この存在だけは、失うわけには行かない…。
たとえ命に代えてでも。
すっと瞳を開くと、真希は梨華の肩を掴み一瞬梨華の瞳を見つめたかと思うと、
その唇を奪った。

「!!」
梨華は突然のキスに目を見開いた。
しかし強く求める真希に梨華も戸惑いながら瞳を閉じた。
いつもの優しいキスとは違い、優しいながらも激しく、だけど不安で、そのせいか
強く強引なキスだった。

139 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)23時33分23秒

「…後藤、さん…?」
微かに唇を離れ梨華はとろんとした瞳で真希を見る。
しかしそこにあったのは、目の前に見たものは一筋の涙が頬に伝った真希の
姿だった。
「後藤さん!?」
「……ごめ…っ……ごめん…」
後悔するように真希は声を発した。
「後藤さん…」
「…ごめ、ん……」
時々息を強く吸い込み、しゃくり上げるように真希は嗚咽と共に涙を流した。
顔を手で押さえる。
こんなにも力が及ばないなんて…。
思っていた通り、いやそれ以上に測り知れないほどの能力に私はどうすることも
出来ない。
誓ったはずの約束を、守る力もない。

140 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)23時39分06秒

「後藤さん…!」
梨華は堪えきれず真希の体を抱きしめた。
幼い子供のように小さく体を震わす彼女を必死にただ抱きしめる。
不思議と、そうしているだけで今さっきまで自分も怖がっていたはずの気持ちも
必死な強がりに答えているようだった。
「梨華ちゃん…」
「後藤さん…、…!!」
真希はもう一度梨華の唇を奪った。
それはただ触れるだけのキス。
「…後藤さん…」
「……守るからね」
それでも勇気を言葉に代えて、真希は言った。
その時の梨華の瞳に映った真希は、今までに見たこともないぐらいに真剣で
必死で、強くて、でもはかなくて……。

己の弱さを自覚しながらも……そう、まるで「死」さえも恐れないような…
覚悟を決めたような瞳だった。


141 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)23時40分19秒


「あらあら、お暑い事で」
「!!」
不意にした声に二人は同時に振り向いた。
そこにはすっと一瞬にして霧のように現れた女性の姿があった。
「……」
微かな間。
真希は隙を作らないようにして梨華を後ろへとやり女性の前に立ちふさがる。
それからしばらく沈黙が流れた。

「……」
女性はその場に浮くようにして立ったまま何もせずただ呆然と顔を俯かせ
影のように立っていた。
表情は、俯いていて分からない。

142 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年05月18日(土)23時44分02秒

「…ついてないわ。まさかあの女に始末される羽目になるとは、だけどまだ…
まだ簡単に殺されるわけにはいかない…」

確固たる感情を表すようにその口調は静かに激しく燃え上がっているようだった。

「社長はまだ許してくださるはず…そう、あなたを社長の元へ連れていきさえすればね!」
真希は女性の殺気が鋭くこれまでとは比較できないほど増して来た事に
咄嗟に更に梨華を後ろへ手を前に出した。
「…そういうことされるとねぇ!!見てるこっちは腹立つのよ!!特に…今みたい
な時わねぇ!!」
「!!」

激しく叫ぶ声。
その声と共にその場にまばゆい光の閃光が走った――――




143 名前:aki 投稿日:2002年05月18日(土)23時51分49秒
98:ROMさん
>レスありがとうございます。
 先が読めませんか、こちらとしては嬉しい半分安心です^^;
 がんばります。

99:いしごま防衛軍さん
>レスありがとうございます。
 久々の大量更新です。さすがに疲れました…^^;

100:M.ANZAIさん
>レスありがとうございます。
 迫り来る事態、私もがんばります。

101さん
>保全されるのってあまりないので嬉しかったりします(w

104:いしごま感謝祭さん
>レスありがとうございます。
 頑張っていきますっ。自分を奮い立たせていきます(爆)

103:トモフミさん:115
>レスありがとうございます。
 リアルタイムですか!嬉しいです。
 この前のレスは更新がストップ気味だったのですごく嬉しかったですよ^^
 気にしないで下さいね。がんばります。
144 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年05月19日(日)01時06分17秒
お疲れさまです。ついにきましたねえ。果たしてごっちんと梨華たんは
はるかに自分達より強い敵に勝てるんでしょうか?でも、二人の愛が
あれば無敵と信じております。どんな事態になっても二人の心は離れず
どんなに敵が強くて傷ついたとしても二人の心の絆は破られないことを
確信しました。しかしながら、切ないですなあ。
絶対戦いに勝利してくれーー!!
なんで梨華たんは能力が使えたんでしょうか?気になる。
更新ドキドキしながら待っています。
145 名前:トモフミ 投稿日:2002年05月19日(日)08時04分42秒
更新お疲れ様です。
あぁ…田宮という人が出ていたのに、誰かわかりませんなんて、書いてしまった…(恥
これからは、細かいところも、読み逃さないように注意深く読んでいたいと思います。
146 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年05月19日(日)11時50分08秒
真希のパワーが及ばない?そして梨華に・・・!?
果てして二人は、そして仲間達は!!
147 名前:rika-mode 投稿日:2002年05月21日(火)10時51分35秒
この板では、おひさしぶりのカキコです。
とうとう、甘い時間も終わり・・・、壮絶なシーンになりそうですね。
きっと、どんなに傷ついても離れることになっても、ごまりかは永遠でしょう。
・・・と、願いたいです。
akiさんのペースでがんばってくださいねー。(^ー^)
148 名前:ごんた 投稿日:2002年05月21日(火)15時01分13秒

おお!バトルシーン!!一気に更新されてたので驚きました。
ごっちんを助けた梨華ちゃん。
梨華ちゃんはもしや・・・・。気になります。本能か、それとも・・・・
後藤vs田宮よかったです!!これからも頑張ってください!
149 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月22日(水)10時01分08秒
Oh Baby 通り雨が上がったら
鼻歌でも歌って歩こう
この醜くも美しい世界で   

  by It's a wonderful world

雨が止むことを願いつつ・・・
150 名前:aki 投稿日:2002年05月22日(水)19時56分58秒
みなさんたくさんのレスありがとうございます(T_T)

144:いしごま防衛軍さん
>ありがとうございます。多めに更新しました。
 まだまだ謎が明らかになってない部分が多いと思いますがもう少ししたら
 明らかに…なる…?^^;がんばります。

145:トモフミさん
>ありがとうございます。
 私もよく読み間違えたり読み落としたりします。
 しかもあまり改行もしない時もあるので注意深く読んでくださるのは 
 嬉しいです^^ これからもがんばります。

146:M.ANZAIさん
>レスありがとうございます。
 視点がいろいろ変わったり、更新ものんびりであまり中々話が進んで
 いきませんがとにかくゆっくりがんばります。
 今の状態は気になることばかりですね^^;
151 名前:aki 投稿日:2002年05月22日(水)20時07分59秒
147:rika-modeさん
>久しぶりのレス嬉しいです^^ありがとうございます。
 特に今回のシーンは激しくなっちゃいました。
 二人を応援してくれて嬉しい限りです。
 マイペースで。応援感謝です。

148:ごんたさん
>ありがとうございます。
 がんばって更新しました^^
 戦闘シーン良かったですか、安心です。
 書いてると果たして上手く伝わるのか不安になってしまって。
 がんばりますっ。ごんたさんもがんばってくださいね。

149:名無し読者さん
>レスありがとうございます。
 お恥ずかしながら誰の歌か分からない(泣)
 でもいい感じの詩ですね、雨は止むのか止ますことが出来るのか…。
 
152 名前:aki 投稿日:2002年05月27日(月)16時12分22秒
何かどことなく言いづらいような感じがありますが、また新作
始めちゃいました…^^;
こちらも更新していきたいと思ってるんですがどうしてもただ書いてるだけの
結構いいかなと思う物が溜まっていってしまって。
ついに始めてしまいました(汗)
読んでくださると嬉しいですm(__)m
153 名前:aki 投稿日:2002年05月27日(月)16時15分00秒

友達のままじゃいられない
http://m-seek.net/cgi-bin/read.cgi?dir=purple&thp=1022426070


初めて「いしごま」と最初に書いたお話です。
今まではいしごま、よりも話として楽しめたらいいなと思っていたんですが
これは初めて三角関係とか全体的重視ではない、「いしごま」二人の話になると…
したいと思ってます^^;

こちらもお付き合いくだされば幸いです。よろしくお願いしますm(__)m
154 名前:俵谷宗達 投稿日:2002年06月03日(月)17時55分44秒
こっちも待ってます。マターリがんばってください。
155 名前:終了 投稿日:2002年06月22日(土)10時29分59秒
終了
156 名前:のんこ 投稿日:2002年06月22日(土)17時19分27秒

>>155何勝手に終わらせてんだよコラァ!つーかageんな!!期待しちゃうだろ!!
157 名前:aki 投稿日:2002年06月22日(土)20時47分14秒
いえいえ、155は私でないですけど…。
すいません…私のせいですね。
見たら一番上でちょっとびっくりしました。
…なるべくこちらも早く更新できるようにします。
どうしても、こっちは集中するのに…というかやる気みたいな物を
持続するのが難しくて…。
とにかく、読んでくださる方がいる限り出来るだけ少しでも近々更新したいと
思います。
158 名前: 投稿日:2002年06月22日(土)20時57分21秒

>>155終わらせるなぁ!!というかもしかして保全の意味だったとか??
   そういうときはちゃんと書こうぜ、この野郎。
akiさんの所為ではないですよ。焦らずゆっくりでいいんで。
>>156の意見と同意だっただけに一安心。 
159 名前:名前などとうの昔に忘れた。 投稿日:2002年06月22日(土)23時31分12秒
>aki さん
また遅れそうですね・・・
復元とかファイナルデータで何とかなったりすればいいんですが・・・
これからも頑張ってください。
160 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年07月05日(金)01時18分13秒

――――――


「後藤!」
中澤はバーに辿りつくと躊躇うことなくドアを強く向こうへ開け放ち叫んだ。
しかしそこには誰の姿もなかった。
「…なっ……」
バーの中は、ただ乱暴に錯乱していた…。



「………」
あまりのすごさに思わず中澤は言葉をなくす。
そして黙ったままバーの中に足を踏み入れた。
…乱暴に壊された無数の椅子、倒れたテーブル、床に落とされたしわくちゃのテーブルクロス、
粉々に砕け散ったガラスの破片、そして…古い木目の床や壁に飛び散った数え切れない…血…。

パリ…

バーを歩くたびにガラスの砕ける音が小さく響く。
…紅い血は木にこびりつくように染み、それは暗いバーの中で薄気味悪さを増徴させる。


161 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年07月05日(金)01時19分56秒

「…後藤…石川…」
無残なバーの姿を目の辺りにしながら中澤は小さく二人の名を呼んだ。
…こうしている場合じゃない、だけど…心の中の動揺が隠せない、…静まらない。
「裕ちゃ…っ!」
後から四人が続けてバーに入ってくる。
しかしすぐにその言葉は音を失った。
余りの有様に誰もが絶句したようだった。
ショックは自分も同じで、中澤は四人に何か声をかける前にただバーの中を二人の姿を
探しまわるようにゆっくりと足を踏み入れていた。
…そして、別室のドアの前にやってくる。

「…ここにおるんか…?」
中澤はごくりと唾を飲み込むと、一息ついてからゆっくりと、そのドアを開いた――


162 名前:戦いの始まり 投稿日:2002年07月05日(金)01時21分21秒

…そこはまさにめちゃくちゃに荒れ果てていた。
今までいた部屋も充分に荒れていたがこっちはもっと…。
壁には木を食い破るような大きな痕が空き、所所にはこっちの部屋とは比べ物にならないほどに
紅い血が流れている。
…渇き始めたそれはまるで絵の具のようで現実の物ではないようだった。
そして、目の前には…。

「――後藤っ!!」
中澤は溜まらず今まで一番声を張り上げると悲鳴に近いぐらいに後藤の名を呼び
その場に駆け寄った。
…後藤は、壁に貼り付けにされた状態で今も血をぽたぽた床に流していた。
服はぼろぼろ、傷は無数に体を切り刻み、火傷も負い…そして…。
その瞳は安らかに瞑られていた。
まるで、十字架にかけられたイエスキリストのように…。

163 名前:aki 投稿日:2002年07月05日(金)01時26分42秒
更新終了…。お待たせしてしまったわりにはこんなわずかな
更新で申し訳ない気持ちで一杯です。

本当はもう少し書いてから載せようかと思ったんですが、どうしても
ここから先を書こうとするとエラーが起きてしまってデータが消失…。
前のショックからやっと書き始めたかと思えば今もまた…。
なのでこの呪われた(爆)状況を脱出すべくある分の最初の方を
載せました。
本当にすいません(+_+)
できる限り、この先も時間を見つけ次第書いていきたいと思ってますので…。
こんなんでよろしければお付き合いくださると嬉しい限りです…。
164 名前:しーちゃん 投稿日:2002年07月05日(金)12時10分55秒
がんばって下さい・・・応援しています!
165 名前:ガガーン!!ビビンバ!! 投稿日:2002年07月05日(金)18時02分43秒

待ってましたぁ!!今、一覧を見た時、感動しました。更新されてるゼイ!と。
これからも応援します、頑張ってください!
166 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年07月06日(土)00時19分07秒
目が離せません。更新マターリ待っています。頑張ってください。
いしごま防衛条約機構はいつでもakiさんを応援しています。
167 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年07月06日(土)15時06分08秒
akiさん、がんばれ〜!! どんな時でも待ってますから〜
168 名前:再来 投稿日:2002年07月13日(土)16時27分59秒

「ッ!――後藤ぉ!!」
中澤は必死に後藤の体を前から掴み強く揺すった。
しかし、その体は、瞳は開く事はない。
「…これか…」
後藤の体は貼り付けにされたまま壁から離す事が出来なかった。
一瞬の内だけすっと冷静になり、壁を凝視する。
するとそこには後藤の体を縛り付けている原因の淡い赤い光が、壁から
後藤に向かって鎖のように繋がれていた。

「この…このぉ!!」
中澤は瞬時に右手に紫の光を放出させると躊躇うことなくその壁を殴りつけた。


カラカラ…
古い木目の壁が無残に乾いた音と共に壁から砕け落ちる。


「…後藤を…放せぇ!!」

目が…熱い。
なぜかは分らない。
なのに瞳は熱く燃えるようで…そこからは今にも涙があふれだしそうだった。
熱い物が、まるで物に姿を変えるように…。
何度も何度も、数え切れないほど躊躇うことなく壁を殴りつけそこにはぽっかりと
深い穴が空く。
169 名前:再来 投稿日:2002年07月13日(土)16時30分36秒

「後藤!しっかりせぇ!!後藤ぉ!!」
涙は瞳から溢れ止まらない。
気づくと中澤の拳を覆っていた紫の光は強く濃くその存在を表していた。
「………」
ふっと音を立てるように後藤の体を縛り付けていた光が消えた。
それと同時に後藤の体を縛りつける物は全てなくなり、ぐらっと重く壁から
前にのめるように倒れてきた。

「後藤っ!」
その倒れてきた体を前からどさっと受け止める。
中澤は腕の中の後藤に再び強く呼びかけた。
「…裕…ちゃん…?」
「後藤!無事なんやな!?………良かったぁ…」
中澤は小さく聞こえた後藤の声にすぐに気づくと薄く開いた後藤の瞳を確認した。
心の底から、本当に安堵のため息がこぼれる。

170 名前:再来 投稿日:2002年07月13日(土)16時33分37秒
「裕ちゃ……ごほっ…!!」
「後藤!?」
意識が戻りゆっくりと辺りを確認しようとした真希の口から濃い、黒に似た血が吐かれる。
依然として後藤の体からは赤い真紅の血があたりに海を作るように流れ、
手を真っ赤に染めていた。
「ご、後藤…。ちょ、ちょっと待っとれっ…!今すぐに誰か…」
「――待ってっ!!」
真希はドアの向こうに顔を向けた中澤をすぐに呼び止め立ち上がる前に胸元の服を
強く掴んだ。
…赤い血が、綺麗すぎるほどの真っ赤な血が中澤の黒いコートの胸元に
淡く染みを滲ます。
「梨華ちゃん……梨華ちゃんは……?」
「!そういえば…石川はどこに……」
「…いない、の…?」
「…あ、あぁ…」
「……」
真希は中澤の返答にしばし言葉を無くした。
ずっと上を見上げ中澤に強い眼差しで訴えるように尋ねていたが、その顔はすっと
下にうつむくようにうな垂れた。
171 名前:再来 投稿日:2002年07月13日(土)16時36分13秒
「…梨華ちゃん…」
「一体…一体何があったんや…!?あんたら二人の身に…」

「……あの後…」
後藤は静かに話し始めた。
胸元を掴んでいた手から力を解き、ゆっくりとそれを床に下ろした。

「…あの後…ここに追い込まれた…。…もう逃げられない。だからあたしは戦った。
必死に…。負けるのが分ってる戦いなんて…した、こと…なかった、のに…」
「……」
「あたしの中の…最大の力を出し切ったよ…。でも…あの女…」

『あの女』そう口から言葉を紡いだ後真希の体はぶるっと身震いするように震えた。
ぎゅっと、抱きしめるように真希は自分の腕を体に抱きしめる。

「…人間じゃない…。あんなの…」
「後藤…大丈夫か…」

中澤の瞳に移る後藤は徐々に弱り始めているのが分る。
はぁはぁと荒い息を苦しそうに吐き顔は顔色が悪いせいなのかよく見えなかった。

172 名前:再来 投稿日:2002年07月13日(土)16時39分13秒

「守るっていったのに…。あたし…梨華ちゃんのこと守るって…」

「それなのに…」

上にあげる事さえ今では困難のように真希は真っ赤に染まった右手を震わしながら
顔の上まで持っていった。真っ赤な手が、真希の目におぼろげながらも映し出される。

「守れなかった…」
「…後藤!!」

小さく呟くと同時に、真希は気を失った。涙が、頬を伝った。


「後藤!!後藤ぉ!!」
手がぱたっと音を立てて空を掻く。
そして重力に従い床に落ちた。

「ご、後藤!!あかん…後藤!ちょぉ待てぇやぁ!!!」
「裕ちゃんっ!!?」
意識を失い、青白い顔の真希に中澤はとうとう自分を見失ったかのように
強く叫び始めた。
二人だけだった部屋に一つの鋭いよく響く声が現れる。
しかし既に中澤は真希の姿に、嫌な考えを拭えずただただ「仲間」に今にも接近
しようとしている「死」に対して本人以上に恐怖と混乱に取り込まれていた。
173 名前:再来 投稿日:2002年07月13日(土)16時41分29秒

「裕ちゃん!落ち着いて!!――後藤!!」
部屋にいち早く入ってきた人物――保田が狂乱し始めた中澤の元に、驚きを
隠せないまま近寄り肩を抱く。そしてすぐに目の前に後藤の姿が飛び込んできた。
「う、うわぁ!!」
「落ち着いて!裕ちゃん!!…圭織!お願い…裕ちゃんを…」
部屋の入り口に全員が囲いを作るように集まってくる。
しかし全ての者がただ唖然とすることしか出来なくなっていた。
こんな状況なのに、成す術ない自分に嫌気もさすのに…誰も体が動かない。
立ち尽くした体は…ただ戦慄を味わうように小さく震えるだけ…。

「う、うんっ」
飯田が慌てて輪の中から出てくる。
そして荒れ狂う中澤に何とか必死に呼びかけながら暴れる体を押さえつけようとした。
「後藤…後藤…」
保田は中澤から離れ後藤の元に近寄るとぺちぺちと何度か頬を叩いた。
しかしその目は覚めることはない。
嫌な考えが背筋の辺りを気持ち悪くじわーっと通り抜ける。
絶望に身が崩れ落ちそうにもなる感覚を覚えながら保田はばっと顔を輪の中に
向けた。
174 名前:再来 投稿日:2002年07月13日(土)16時43分27秒
「辻!!」
「は、はいっ!!」
「後藤を…後藤をお願いっ…!!」
保田はすがるように輪の中から飛び出し駆け寄ってきた辻に叫んだ。
辻は一瞬初めてみるそんな保田の姿に目を見開いたがすぐに後藤の側へ座りこみ
両手を後藤に向かって向けた。目を閉じ、一刻も早く集中できるように自分に叱咤し、
淡い黄色い光を体全体へと放出させていった。丸い円を描くようにして体から
現れ始めたその光は辻を囲い、そして後藤を包み、そして最後に辻の両手に強く
集まった。
「アヤカも…お願いっ、誰でもいいから…ヒーリングの出来る人がいたらお願い…
手を…!」
呼ばれたアヤカも慌てて輪の中から飛び出す。そしてすぐに辻の向かいに腰を
下ろし集中し始めた。

175 名前:再来 投稿日:2002年07月13日(土)16時45分16秒
「う、うわぁ!!後藤…後藤ぉ!!」
「裕ちゃん!!」
飯田が一人では押さえ切れなくなり保田もその隣へ駆けつけ最悪暴走してしまい
そうになっているその力を押さえつけようと必死に自分の力を送り込む。

「…後藤……」
何て無力なのだろうか。
言われなくても分る。こんな状況下に自分達は何もする事が出来ない。
日頃どれだけ落ち着きを払った者でも、お気楽な者も、頼りになる者も…
みんなただその場で立ち尽くすことしか出来ないのだ。
ここにいる全員に共通した心の傷がある。
心の奥深く根底に強く刻まれた深い傷がある。
癒されてもそれは治らない。心の傷…。
176 名前:再来 投稿日:2002年07月13日(土)16時46分43秒
「こんな…ことって…」
そう、目の前にあるのはただ「あの事件」のあの時の状況のままだった。
ただ過去の悪夢を現実に呼び覚ますかのような…生き写しのようなその光景。

「ごっちん…」

悪夢と現実の差が分らなくなる。
その境界線がほとんど見つからなくなる。
真っ赤な血。壁に塗りつけられた血…。
荒れ果てた状況。めちゃくちゃな光景。
あの時と一緒…。
あの時のまま…。
冬の寒空から降り注ぐ白い雪…空に向かって立ち上る黒い黒煙…。
過去の傷、まるでそれをあの時味わったのと同じように呼び覚ますように…。
見つめているだけでも今にも叫びだしそうになる。狂い初めてしまいそうになる。
目の前にあるのは…悲劇を生み出した惨劇の舞台そのまま…。
心にそれぞれ共通の傷を負った者…。
全てただそこに呆然と立ちつくすことしか出来なかった。
――それでも、心の動揺を押さえつける必死な術だった。
仲間を失うその恐怖…。大事な人を…。
少しでも取り乱したら…目の前の仲間同様自分達もそうなっていただろうから…。



177 名前:再来 投稿日:2002年07月13日(土)16時48分16秒



「………」
はぁ…はぁ…。
予想していたよりも事に時間がかかり過ぎてしまった…。
こんな小娘ども二人相手に私ともあろうものがあんなに苦戦するなんて…。
…くそっ!
溜まらず額を押さえる。
今さっきの頭を走った痛み。
あの女…いつからあんな力を持つようになったの…!?
それに…確か上条のやつ社長が自ら私を処分するように命令したとか…。
そんな…そんなわけないわっ!
だって…私と社長は昨日今日の付き合いじゃない…。
ずっと…ずっと側にいたんだから…。
どんな時も、私が社長の右に常に立っていたんだから…。
後から入ってきた生意気な上条などに社長がそんな事命令するはずがない。
そうだ…これはたぶん上条のうわごとだ…。
そうとしか考えられない…。
でも…どうしてあんな強大な力を…。
178 名前:再来 投稿日:2002年07月13日(土)16時51分35秒


「………」
微かに顔を動かし隣にいるその人物の姿を確認する。
…全く、のんきなものね…。
隣には今自分が連れ去った目的の彼女が。
安らかに寝息を立てて眠っていた。
おそらく彼女は深い眠りの中にいるところだろう。
自分の現在置かれている状況など知る由もない。
…確かに私は命令に背いた。
社長の『二人には手を出してはいけない』という命令に完璧に背いた。
だけど…そんな事で社長は私を始末などしないはず。
私は常に社長の側にいた…。
ずっと…ずっと…片時も…。
もし私に対し、行動や態度に何らか不満を抱いてしまわれたとしても…私は現に
この石川梨華を連れてきた…。
それが私に下された命令であり最大の目的…。
この目の前にいる少女の姿を見ればすぐに社長は考えを改めるはず…。
もし怒られているのなら許してくださるはず…。
私は社長と常に一緒にいた…。目的は遂行した…。

179 名前:再来 投稿日:2002年07月13日(土)16時52分51秒


暗示にも似た言葉の繰り返しを頭の中で何度も何度も繰り返すと、
田宮は部下の運転する車の中ですっと瞳を閉じた。


社長…私は…。


あなたのためだったら…何でもします…。




180 名前:aki 投稿日:2002年07月13日(土)16時58分46秒
久しぶりの…大目の更新になったでしょうか…(汗)
昨日頑張って書いたのはいいんですが…話を書いてるとそれ以外
何も出来なくなってしまうんですよね^^;

164:しーちゃんさん
>ありがとうございます(T_T)
 がんばりますっ。がんばりますよ〜。
 応援ありがとうございます(泣)

165:ガガーン!!ビビンバ!!さん
>待って頂けるだけでものすごく感謝です(T_T)
 私も自分が読んでる話が更新されてると心の中でガッツポーズする時
 あります。ありがとうございます(泣)
 もういくら言っても足りないほどです…。

166:いしごま防衛軍さん
>まったり更新にお付き合いくださって頂いて本当に感謝感謝です…。
 応援にできる限り答えたいです。がんばりますっ!

167:M.ANZAIさん
>ありがとうございます(T_T) 
 がんばります!待ってくれる人がいる限り…。ゆっくりで本当にすいません(+_+)

181 名前: 投稿日:2002年07月13日(土)20時01分20秒

な、なんてことだぁー!!
頼む、ごっちん生き延びてくれぇぇええ!!
ボロボロになっても梨華ちゃんを思うごっちん…カッケー!!
182 名前: 投稿日:2002年07月14日(日)01時25分07秒
ごっちん、すっげ〜カッケ〜っす!
早く怪我を治して、梨華ちゃんを助けてほしいです!
ごっちん、がんばれ!!!
183 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年07月14日(日)08時05分13秒
ごっちんは大丈夫だと信じております。なぜなら梨華たんがピンチなのに
ごっちんが倒れるはずがない。ごっちんが負けることがあろうか、いやない。
184 名前:瞳を開けた先には 投稿日:2002年07月18日(木)22時32分13秒


「………」

…ここは…どこ……?
辺り一面は真っ暗。
何も見えない。ただの闇。
全てを飲み込んでしまいそうな…それとも飲み込んだ後なのか…
自分はその中の一つでしかないのか…。
前も後ろもなければ上も下もない。
そしてどこにも出口はない。

…あたし…は…

鏡もない。
光もない。
自分の姿さえも見えない。

185 名前:瞳を開けた先には 投稿日:2002年07月18日(木)22時33分57秒
怖くなりながらも必死に自分を奮い立たせ両手を見ようとした。
だけど、目の前には闇の中おぼろげにしか自分の両手を見る事しか出来ない。
あたし…

『社長の元に着くまでおねんねしていて下さいね……』

優しい口調のようで全く優しくない、その声と、何かに憎悪の感情を
発するその鋭い炎のような瞳。
あたしは確かその女性に言われて何の反応も示すことが出来ないままこの場所へ
やって来た。

「………」

ここは…どこ……



186 名前:瞳を開けた先には 投稿日:2002年07月18日(木)22時36分01秒


「…ん……?」

それからどれくらいの時間が経っただろうか。
あたしはすっとその世界から解放されて気づいた時には目の前に
真っ白な色と眩しい光に包まれていた。
また…違う場所に来ちゃったのかな…。
その場所さえもあたしには今さっきまでの不思議な場所の延長に思えた。


「――お目覚めですか?」

穏やかな声が耳に届く。
あたしはぼんやりする視界におぼろげに誰かの姿が映ったのを感じていた。
「……」
「お待ちしておりました。石川梨華様。お疲れではないかと存じます」
いかにも普段から使っているような、使い慣れている敬語でその人はあたしに
言葉を続ける。
そして最後ににっこり微笑んだ。

187 名前:瞳を開けた先には 投稿日:2002年07月18日(木)22時37分17秒

「誰…?」
「私は…」

…やっとその人が女性だと言う事に気づく。
あたしはぼんやりその人に向かって尋ねていた。
ぼんやりと意識が戻り始め周りに意識が向く。すると最初に鼻を甘い上品な香りが
掠めた。そして次に空気の香りが口を通り抜ける。
ここは今さっきとは違う、現実だと言う事にやっと気づく。
そして目の前にいるその女性は部屋一色の白と同じような、上品な白が一番似合うのでは
ないかという綺麗な人だった。
優しい表情、雪のように綺麗な肌、口調。
だけど……だけどどこか冷たい。
まるで氷のように…。



188 名前:瞳を開けた先には 投稿日:2002年07月18日(木)22時41分09秒

「――上条!!」
「…田宮さん」

その人は部屋に大きく響いたその声にあたしからゆっくり顔を離しそっちへ
向けた。ドアを開けたと思われる大きなばんっと言う音が最初に部屋に響いたが
女性は至って普通の様子だった。

「部屋は静かに入って下さらない?それに…まず始めにドアにノックを」
「ふ、ふざけないでっ!!」

動揺したような、それとも怒りから声が震えているのか、入ってきた女性の
荒々しい声が部屋に無遠慮に響く。そんな彼女の様子に目の前の『上条』と呼ばれた
女性は小さくため息をつく。

「それで?何ですか?ご用件は」
「何で…その子がここにいるのよっ!!」
「……」

その子、たぶんあたしの事を示しているんだろう。
だけど…体が動かなかった。びくっと精神の中で反応するけど
体は何の反応を示さなかった。

189 名前:瞳を開けた先には 投稿日:2002年07月18日(木)22時42分37秒

「何でって。連れて来てもらっただけです。部下に」
「私が連れてきたのよっ!!それなのに何故私が目を離した隙に彼女を
連れ出すっ!!?」

全く理解できないと言った口調と眼差しで田宮は上条に詰め寄った。
ぐいっと襟元を掴み上条の綺麗に整った白一色の上品なシャツに皺を作る。

「…乱暴な事は止めてもらいたいわ…。社長もすぐそこにいらっしゃるのに…」
「!?」

上条はふぅとため息と共に顔を横へ背け部屋の向こうを言葉で示した。
それに田宮がはっとするように反応し顔をそっちへ向ける。
白一色と思われた部屋は今再び見回すとどこか広い、会社の社長室のような
静かで豪華な部屋の一室だった。
眩しい光は大きな壁一体を占める広い窓から。
白い神々しい光がそこから注がれ部屋一体をまぶしく照らし出す。
白一色の部屋はそのせいか特にこれ以上ないほど真っ白に思えた。

190 名前:aki 投稿日:2002年07月18日(木)22時55分26秒
中途半端ですがここまで…。

181:葵さん
>ごっちん、カッケ―ですか^^
 自然と赴くまま書いてますがここの後藤さんはとても評判が良いので
 嬉しいです。

182:翔さん
>ありがとうございます^^
 カッケ―ですか、嬉しいですっ。
 私もがんばります(w

183:いしごま防衛軍さん
>そうですね。ありがとうございます^^
 がんばります!
191 名前: 投稿日:2002年07月22日(月)18時22分31秒

梨華ちゃんが社長とご対面?!やばいぞっ!ごっちん復活してくれぇ〜…!!
私のところではごっちん死んでしまったので、ここでは絶対ハッピーエンドに
して欲しいです。(←ワガママ)頑張ってください!!
192 名前:名無し 投稿日:2002年07月26日(金)09時10分14秒
あああ!!!「友達・・・」が落ちてるではないか!!!!
(感想じゃなくてスミマセン。)
193 名前:瞳を開けた先には 投稿日:2002年07月26日(金)14時21分01秒

「………」
あたしはその部屋の隅の小さなソファに寝かされていた。
女性が軽く向けた視線の方へ自分も意識を傾けるとそこからは無言の存在が
姿を示しているように思えた。
「…社長…」
田宮は上条の視線の先へ顔を向けすぐにその手を離した。
そして少し動揺するように視線を泳がせる。だがすぐにその視線は強固な意志を一つ
固まらせたように強く椅子の向こうへ注がれた。

「……」
黒い、真っ黒な皮の椅子は窓の向こうに向けられていて、話の矛先が自分に
向けられたのにも気にせずただ窓の向こうの眼下を椅子から優雅に眺めているようだった。
しばらく経つとその椅子はすぐにくるっとこちらへ半回転した。

「…社長」
椅子に座ったままその男は肘掛に肘を置いたままこちらの状況を静かに見つめる。
しかしその姿は、冷静を装っているようでどこか興奮気味のようだった。
「田宮…」
低く、薄気味悪い声が部屋に響く。
梨華はその声に思わずびくっと震えるように体を強張らせた。
目の前の上条はどこか魅せられるように満足そうに微笑む。
田宮はどこかおどおどしているようだった。

194 名前:瞳を開けた先には 投稿日:2002年07月26日(金)14時23分29秒
「どうして…どうして上条が彼女を連れ出したのですか!?私が…私が
受け持った任務のはずです…!」
「……」
冷たい視線を感じ取ったせいからか、田宮の今さっきまでの勢いが半減する。
それでも必死にこの矛盾を男へ尋ね聞いているようだった。
男はただ無言のまま田宮を見詰め続ける。それに田宮の体が始めてぶるっと震えた。

「どうして…何も仰ってくださらないのです!?社長…」
「そんなの決まってますわっ!!」
返事の返ってこないためか田宮の中に動揺が広がっていく。
そこへ梨華の側で腰を下ろしていた上条がどこか不似合いなほど意気揚揚とした
声で叫ぶように立ち上がった。
「田宮さんあなた…。社長の命令に背かれたでしょう?」
「…その事で…怒られているのでしょうか…?」
田宮は自分に近づいてくる上条を全く無視で男に話し続けた。
どこかすがるような眼差しで。それには全く今さっきまでの荒々しい感情は含まれていない。
195 名前:瞳を開けた先には 投稿日:2002年07月26日(金)14時24分58秒
「当たりまえですわ。忠告を受けたにも関わらず田宮さんは…」
「あんたは黙ってなさいっ!!」
「!」
ものすごい喧騒で田宮が上条を一括した。男の視線がちらっと上条に一瞬だけ
注がれる。上条は悔しそうに目を横へ背けると一歩後ろへ体を引いた。
「命令に背いた事は誤ります…。でも、目的の最大の部分っ、石川梨華は
しっかりこの手で連れて来ましたっ!」
「……」
「あまりにも抵抗が過ぎたのでつい…。でも彼女には指一本触れていませんっ!
何か…何か仰ってくださいっ!!」
「彼女には指一本触れるなといったはずだ…」
「!」
やっと男の口が開かれる。だがその口は今さっきまで重く閉ざされていたためか
今も一つ一つ言葉を発するのが面倒くさいようだった。
必要最低限の隙間から言葉を発していく。
「田宮…。お前には幻滅したよ。まさか彼女のこめかみに拳銃をあたえさえるとは…」
「そ、それは…」
「そして…私の命令はもう一つあったはずだ」
「石川梨華のお友達、後藤真希にも指一本触れてはならない、ですわ」
196 名前:瞳を開けた先には 投稿日:2002年07月26日(金)14時26分48秒
いつのまにか男の横に移動していた上条が不敵に笑い田宮を見下ろす。
田宮はもはや空いた口をふさぐことも出来ないままそこに立ち尽くしてしまった。
動揺が体に異変を作り出す。震え出した体からは恐怖が滲み出ているようだった。
「で、でも…私は…」
「……」
「石川梨華はここに連れてきましたっ…!この事に関して…罰はいくらでも
受けますっ!何でも…どんな事でも…ですから…!!」
「…もういい」
「ま、待ってください!!私は…私は今までずっと社長と…」
言い訳を続ける言葉を遮るように男の声が響いた。
肘掛に添えられていた腕が、ゆっくりと顔の上まで上がってくる。

「側にいられるだけでいいんですっ!!私は…私は…!!」
すがるような瞳の田宮に一瞬微笑んだ男の姿が映った。
それは今の田宮にはこれほどにないぐらいに安心させる、優しい笑顔に見えた。
胸の中を縦横打尽に巡っていた恐怖や不安もそれによって一瞬で取り除かれた。
自然と田宮もほっとするように笑みを零す。

しかし、それもほんのつかの間だった…。


「今まで…ご苦労だった」
「!!」

197 名前:瞳を開けた先には 投稿日:2002年07月26日(金)14時29分46秒
男から手がすっと前に出される。
そしてその指がぱちんっと音を立てる、その瞬間――
パチンッ!!
一つ、大きく軽やかな音が、男が繰り出す音の前にその場に響き渡った。

「う、うぁ…!!」
「社長自ら手を下すことはありませんわっ」

指と共に田宮の足元に丸い円が光によって描かれる。その円に囲まれるようにして
立つ自分に気づいた時、田宮の体は一瞬にして真っ白な雪を思わす冷気の炎によって
焦がすように包まれ一瞬にして骨まで焼かれていった。
「しゃ、社長ぉーー!!!」
最後に雄たけびに似た悲鳴を残し、田宮の存在はその髪の毛一つも残さないかのように、
存在そのものを消すかのように、真っ白に消えていった…。

「!」
部屋の隅で見ていた梨華の体がびくっと震える。
既に意識はしっかりとし始め会話も認識できるようになっていた。
今目の前にしたその非現実的な残虐な光景、行為に梨華は信じられないといったように
目を見開き怯えるように小さく震え出した。
198 名前:瞳を開けた先には 投稿日:2002年07月26日(金)15時03分07秒
「…おやおや、驚かしてしまったかな…」
「!?」
きぃっと小さな音が響きその後に皮の乾いた靴音が部屋に響く。
男はゆっくりと梨華の元に近づき側までやって来た。
低い声、影を背中に背負っているかのように顔がよく見えない。
ただその表情は出来もしない優しい表情を必死に取り繕っているように見えた。
作られた優しい表情の裏には残虐、残酷、冷酷、そんな言葉が似合うかのような男…。
「…お待ちしておりました。ずっと…ずっと待っていたんですよ」
「…やっ…」
男の手が梨華の手に触れようとした。
しかしどうしてもその男に体の一部分でも触られるのに嫌悪を感じ、梨華は今の
光景や身の危険も忘れ拒否をしめしてしまう。
「……」
梨華の様子に一瞬意外の反応だったかのように男が小さく目を見開く。
しかし震える梨華にすぐに気を取り直したように言葉を改めた。
199 名前:瞳を開けた先には 投稿日:2002年07月26日(金)15時06分00秒
「本当はもっとソフトな方法であなたをここに招待したかったんです。今の事といい、
連れ去られた時といい、何かショックを受けてしまったとしたら心から謝罪したい」
「………」
「…あなたは私の大事なメシアだ…。傷一つでもつけられたら困る…」
「い、いや…」
男の鋭い視線に貫かれるだけで体その物が拒否感を示す。
だが抵抗はおろか目を背けることも出来ない。
「…お疲れのようだ。今はまだ、ゆっくりお休みになられて下さい」
予想どうりなのか、それとも予想とは違った反応なのか、男は梨華の様子に
しばらく静かに見つめていたかと思うとそう言葉をかけた。

「静かな部屋を用意してあります。話はそれから…」
「…あっ……」
最大限の優しい表情であっただろう。
しかしどうしてもそうとは感じられない表情で男は最後にそう囁き指を改めてぱちんと
鳴らした。何か考える暇もなく、梨華の瞳はすっと閉じられ体が前に崩れた。
200 名前:瞳を開けた先には 投稿日:2002年07月26日(金)15時07分23秒
「………」
どこか苦しそうな表情で眠る梨華に男は立ち上がり、見下ろすようにしばらく見ていた。
しつこく凝視していると、その体には小さな紫の鎖が縛り付けているのが分る。
その内には、紅い光が苦しそうにもがくように鎖の間を縫うようにして梨華の体全体を
覆っていた。
201 名前:瞳を開けた先には 投稿日:2002年07月26日(金)15時13分23秒
「…ふっ、馬鹿なやつらだ…。クリアの力を持つ者自体にあの術をかけるなどしても…
ただその力を強めるだけでしかありえん」
「彼女は…」
「用意したあの部屋へ招待してさしあげろ。くれぐれも目を覚ますことのなく、丁重に…」
「かしこまりました」
上条の手の平から淡い白に近い光が放出される。
そして静かに梨華の体は横になったまま空中に浮かされ光は梨華と上条を包み、
その部屋をすっと音を立てずに消えていった。

「………」
一人だけになった部屋で男はその場に立ち尽くす。
「…ふ…」
名状しがたい、抑えることの出来ない感情が胸を押し寄せてくる。
「ふは…ふはははっ!!来たぞ…ついにここまで来た…」
確かめるように両手を見つめ男はその手を上に振り上げた。
そこには今さっきまでの必死に装っていた偽善の仮面も脱ぎ捨てられ
その男その者自体であった。



202 名前:aki 投稿日:2002年07月26日(金)15時27分52秒
191:葵さん
>レスありがとうございますっ。
 後藤さんの登場は次回…ですね。復活なるのかならないのか…。
 がんばります!ありがとうございます^^

192:名無しさん
>いえいえレス嬉しいです。
 「友達〜2」はまだ同じ紫板にありますが少し不親切になっちゃったみたいですね。
 新スレ立てた時、1の方で移転先書かなかったので…。すいません(++)
 
 
203 名前: 投稿日:2002年07月26日(金)21時23分50秒

な、ならないのか?!
そんなぁ…!ごっちん、頑張れ!!

( ´Д`)<……。
(o^~^o)<がんばって!ごっちん!
( ´ Д`)<んぁ?akiさん以外の事は聞かないよ。
( ^▽^)<そうよっ!もうっ!
(oT~To)<うえーん…
204 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年07月30日(火)15時03分02秒
いったい梨華の身はどうなってしまうのか!
そしてあんなに傷め付けられた真希は・・・?
205 名前: fusianasan 投稿日:2002年08月02日(金)09時28分24秒
akiさんの小説読んでから、ごっちんといしごまが大好きになりました。
卒業すると、いしごまの絡みが激減して寂しくなりますね(T_T)
ますます、akiさんの小説へ逃避してしまいそうです(笑
206 名前:aki 投稿日:2002年08月02日(金)18時11分04秒
205:fusianasanさん
>ありがとうございますm(__)m
 本当に感激ですよ。読んでくれて、好きになってくれたなんて言葉で
 言い表せないぐらいです。
 寂しくなりますね。。
 ますます…<ありがとうございます^^見た時素直に嬉しかったです。
 ただ私が逃避してしまいそう…(汗)
 
207 名前:終了 投稿日:2002年08月03日(土)02時27分03秒
END
208 名前:HALLO 投稿日:2002年08月03日(土)11時14分39秒
fusianasan->HALLOです。
akiさんから直接RESを頂けるなんて、感激です。
ラジオやハコイリ娘等から想像すると
「悲しみの果て」とか「もてる彼女を持つと苦労する」
のごっちん描写が少しリアルで、大好きです。
(もちろん、ここのようなアンリアルも楽しみですよ〜)

ごっちんは誤解されやすくて、207のような人も多いですね(^^;)
気にせず、マイペースで頑張ってください。
楽しみにしてます。
209 名前:豚馬牛 投稿日:2002年08月03日(土)18時03分34秒

うわっ!デタリ〜…。>>207こんな素晴らしい作品を勝手に終わらせるなよ!!
>>208さんに同感。本当、リアルですよakiさんの書くごっちんは。約束をすぐに
破るような奴に見せてやりたいですね!必死に頑張ろうとするごっちんの勇姿を!

210 名前:HALLO 投稿日:2002年08月20日(火)01時40分29秒
ageてしまってました。スイマセン。
24TVは、久しぶりにいしごま萌えでしたね。
211 名前:aki 投稿日:2002年08月20日(火)02時29分47秒
レス本当にありがとうございますm(__)m
気づくとこんなに空いてしまって…(汗)

203:葵さん
>レスありがとうございます。
 ちょっと貰ったレスに考えてなかった展開が浮かんだりしました。
 後藤さんどうなっちゃうのか…。もうしばし時間を…。(汗)

204:M.ANZAIさん
>レスありがとうございます。
 石川さんに後藤さん、これから二人が交差する未来は果たして来るんでしょうか…。
 いつもレスありがとうございます。

208:HALLOさん
>こちらこそレスありがとうございます。
 そう言って頂けるなんて私も感激です(泣)二つの話、リアルっぽかったですか。
 確かに現実の後藤さんはそんな感じがしますね。少し分かりにくいですけど^^;
 ありがとうございます。がんばりますっ。

 
212 名前:aki 投稿日:2002年08月20日(火)02時30分36秒

209:豚馬牛さん
>ありがとうございます(感涙)
 自分では言われるまで気づかなかったんですけどどの話でも私の書く後藤さんは
 どこかで統一してる感じがあるかもしれませんね。
 現実でもさりげない動作とか行動がそういう後藤さんのイメージを作り出してる
 のかも…。

210:HALLOさん
>上げても下げてもあまり気にしないで大丈夫です。
 わざわざありがとうございます。24TV、あまり集中して見てなかった(泣)
 んですけど朝?に二人で一緒に出てたみたいですね。。残念(++)


更新はまた後ほど。。まったり、しかも少しづつの進み具合で毎回すいません。。
213 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年08月22日(木)12時03分22秒
うあーごっちんどうなるんですか?気になります。頑張れごっちん!!
頑張れ梨華たん!!しかしながら社長さんの気持ちもわからんでもない。
遅ればせながらもどってきました。akiさん、応援してますよ。頑張ってください。
214 名前:しーちゃん 投稿日:2002年08月22日(木)13時51分41秒
akiさんマジ待っています!この小説読むのが楽しみなんです。
よろしくお願いします。
215 名前:ごっちん最高! 投稿日:2002年08月31日(土)06時41分18秒
akiさん初めまして^^元々いしごま(特にごっちん)が好きで読み始めたのですが、
この小説でりかちゃんももっと好きになりましたよぉ。
こんなにはまった小説初めてです。一気に読んだためこの数日ずっと寝不足です(^^;)
ここのごっちんは最高にカッコイイですが、ストーリー自体もホントに面白くて
続きが気になって仕方ありません。
長期間に渡って更新大変でしょうが、最後までお付き合いさせて頂きたいと思います。
akiさん頑張って下さい!
216 名前:名無し読者 投稿日:2002年09月12日(木)22時41分50秒
続きが読みたい・・・お願いします〜
217 名前:導かれし者達 投稿日:2002年09月13日(金)00時41分59秒


「………」
今さっきまでの動揺と混乱が満ちていた部屋が今は静かだった。
カタッ…
小さな音を立て向こうの部屋から誰かがこちらへ入ってくる。
その場にいた全員がそっちへ静かに、顔を傾けた。
「……」
保田は部屋に入ってくるなり何も言わないままカウンターへと腰をかけた。
所々傷を負ったカウンターとバー。
少し整理したもののあまり中の雰囲気は変わっていなかった。
不思議な力とは言っても魔法を使えない彼女達にはそれでも中は整理された方であった。

「…後藤は?」
なつみがただみんなが聞きたがっていたその一言を音にした。
保田は静かに、ただ無言のままカウンターで肘をついていた。

218 名前:導かれし者達 投稿日:2002年09月13日(金)00時45分24秒
「…眠ってる。大丈夫。後藤は助かったよ」
保田の一言に全員が安堵のため息をこぼした。
その事実にバー全体の雰囲気もぐんっと一気によくなる。
「良かった…」
「ただ辻が眠ってる。あんなに力使ったの初めてだろうから…」

「……」
再びバーが黙り込む。加護が特に黙り込んでしまった。
その表情はただ心配が表れ今にも動き出しそうにうずうずしているようだった。
「加護、行ってやりな…」
「!」
矢口の言葉に加護はばっと顔を上げすぐに強く頷いた。
一緒にいた丸く高い円テーブルから飛ぶように椅子から降り、そのまま真っ直ぐ
駆け込むように休憩室へと飛び込んでいった。
219 名前:導かれし者達 投稿日:2002年09月13日(金)00時46分34秒
バタンッ
「………」
加護が飛び込んだドアが反動で低い音を立てて向こうとこちらを隔てる。
それからすぐに再びこちらには重い沈黙が舞い戻った。
中澤は一人カウンターの端のいつもの定位置でけだるい体をぐったりカウンターに
凭れさせるように肘を突いてそこへ額を乗せていた。
こめかみに滲む汗、険しい表情。
今さっきまでの錯乱状態の凄まじさが今の中澤からは容易に感じ取られた。
「…何で…何で石川が…さらわれたんやろ…」
「……」
理解できない事はただその一つだった。
220 名前:導かれし者達 投稿日:2002年09月13日(金)00時47分59秒
この光の届かない闇の世界に不穏な動きがうごめいている事は少なからず
裏で住人へと噂を流していた。
何かとてつもなく大きな力がとんでもない事をしでかそうとしている。
それは風の噂から以外にも中澤や保田には「勘」のようなもので日々時に
不安に陥らせていた。
そして協会は自分達に「石川梨華」の記憶を抹殺する事を命令した。
その判断は既に決定事項であり詳しい所までは話を聞くことは許されなかった。
分っていた事は一つ、危険がこの世界に、私達を中心に取り込もうとしている事。
そして現に石川梨華の記憶は全て消去された。
ここで出会った事も、ここで起こった事も、自分達との関係も、愛しい人の記憶も全て…。
納得はいかない方法だがそれが彼女にとってもこの世界にとっても一番の最善策で
あったはずだった。
もう彼女はこれで危険にさらされる事はない。
力も失い記憶も失った。
彼女は私達の出会った「石川梨華」とは違う人物として生まれ変わった。
全てが…上手くいったはずだ…。それなのに何故…。
221 名前:導かれし者達 投稿日:2002年09月13日(金)00時49分06秒
「記憶も何もかも…消されているはずなのに…何で今更…」
「…危険が迫ってるんだ…」
中澤の呟く声に保田が静かに答えた。中澤は再び沈黙を戻す。
保田は中澤の表情を見ないままただカウンターに距離を取って離れた場所に
腰をかけながら続けた。
「これは…運命だよ。どんな事をしても…逃れられない」
重苦しいとも違う、なんとも不思議な沈黙が流れた。
まるで奥深い山中に流れる清流のように、それは静かで冷静で、一つに
真っ直ぐ統一されているようなものだった。
そんな中、ただ時間が流れていた時、突然大きなバンッという音がその場に響いた。
222 名前:導かれし者達 投稿日:2002年09月13日(金)00時50分44秒
「はぁ…はぁ……!」
「――後藤!!」
全員がそちらに顔を向ける。
そこには息を荒くしけだるそうに壁に凭れかかりながら立つ真希の姿があった。

「後藤さんっ!ちょっと待ってください!」
その後から加護が慌てて駆け寄ってくる。
そしてその腕を掴むと後ろに戻そうとした。
「まだ傷が完全に癒えてません!立ち上がるのもまだ早いはずです!」
「いいの…お願いだから離して…!」
「ダメです!ののと一緒に……お願いだから休んでくださいっ!」
「ちょ、ちょっとあんた達…」
ここにやってくる前から前の休憩室であらかじめ揉めていたのか、二人は
ドアの境で騒がしく腕を引っ張り合いもめ始めた。
「一体どうしたの…。後藤、あんたまだ傷治ってないじゃない」
保田は後藤の目の前まで近寄るとその一つ真っ直ぐ線の入った頬を見てゆっくりと
撫でた。後藤はばっとそれから逃れるように顔を背ける。
223 名前:導かれし者達 投稿日:2002年09月13日(金)00時52分14秒
「いいの、あたしの事は…。それよりも梨華ちゃんがっ!!」
「ちょ、ちょい待ち!」
保田と加護から抜け出しバーを一直線に横切ろうとする後藤を中澤が寸での所で
後ろから羽交い絞めにする。
「離してっ!!」
「あかん!あんた自分の事全然分ってないみたいやけど…あんなすごい傷やったんやで?!今は完治するまで外に出たらあかん!そんなのうちが許さんっ!!」
「うるさいっ!!」
中澤の制する声を後藤がより大きい声で叫ぶように遮った。
腕を強引に解き、体を前にばっと向け中澤の前に向き直る。中澤は自分に対しては
初めてなぐらいの後藤の強い口調に驚きを隠せず目を見開く。
その瞳には強い、真っ直ぐな後藤の顔がただ綺麗に、だが激しく映っていた。
224 名前:導かれし者達 投稿日:2002年09月13日(金)00時54分05秒
「あの女…あたしの記憶の中に残していった…。自分達が…梨華ちゃんが
連れられていく場所をっ…!!」
「!」
「あたしの傷が治るのなんか待ってたら…遅すぎるんだよ!!」
「あかん!!気持ちは分るけど行かすわけにはいかん!そんなの罠や!利用されるだけや!」
「危険は承知だよっ!でも…それでも行かなくちゃ…!」
「!―――後藤!!」
最後はどこか瞳を潤ませ、やるせない表情と共に叫び後藤はそのままバーを
飛び出していった。
「あかんっ!!後藤!待てっ!行ったらあかんっ!!」
急いで中澤が消えていったドアに駆け寄りもう一つのカモフラージュの古い表の
バーに駆け寄った。――しかし、そこには既に後藤の姿はなく、ただ風が吹き入れる寂しい表のバーの木で出来たドアが、からからと左右に揺れるばかりだった…。
「後藤……」
一瞬にしていなくなった後藤の姿に中澤は唖然としてその場をただ見つめる。
「あの…バカ……!」
やるせない気持ちが胸を襲い、中澤は顔をうな垂らせ一つ小さく、言葉を呟いた…。


225 名前:aki 投稿日:2002年09月13日(金)01時01分02秒
更新終了です。
かなり長い間お待たせしてしまってすいませんでした。
ずっと音沙汰なしだったんですが、ふとレスしてくださったレスにかなり
間を空けていた事が分かり急遽更新してみました。
前回こちらで書いた時からほとんど書き溜めていってないんですが、とりあえず
状況打破のため。。
とにかくこの話は(どれもなんですが)書く状況みたいなのがすごくデリケートで。。
気軽に書けないんですよね。。結局言い訳ですが待って下さった方がいれば本当に
すいません。
レスは後ほど。。
226 名前:ごっちん最高! 投稿日:2002年09月13日(金)12時52分38秒
やった〜〜〜♪更新されてる!
毎日続きを待ってチェックしてましたよ(^o^)確かに気軽にかける内容ではないと
思いますが、ゆっくりでも楽しみにしてます。

以前紹介して頂いた昔の作品もずっと読んでいってます。
ホントにどれも最高に面白いですね。あとは「とある〜2」だけですー。
いしごま好きなのに、やぐなちもすごく面白かったです♪
akiさんのお話はホントにストーリーや情景描写が良いですよね!
227 名前:ネガティブ万太郎 投稿日:2002年09月13日(金)17時49分24秒

今、部活帰りで見てました。プレーが失敗の連続でみんなを困らせ、
最後には気を遣わせてしまい、落ち込んでいた所にakiさんの更新。
akiさんの書くごっちんの、『絶対に諦めない』という精神を自分も
持てるよう、頑張ろうという気持ちになりました。
ゆっくり、あせらずに頑張ってください。
228 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年09月21日(土)13時24分19秒
この後が気になります!!akiさん、ゆっくりでいいんでがんがってください!!
更新マターリ待っていますよ。
229 名前:コウ 投稿日:2002年09月27日(金)22時30分21秒
キャー!!更新されてるー!
嬉しくてたまりません。
akiさんがこの作品を大切にしてる感じが伝わってきます。
ほんとマターリ待ってますので、焦らず頑張ってください。
応援してます。
230 名前:北斗の犬 投稿日:2002年10月13日(日)15時51分53秒
保全
のんびり待ちます
231 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月23日(水)13時09分34秒
そろそろ作者様降臨されないでしょうか・・・・・待ち遠しいぃぃぃぃ
232 名前:読者A 投稿日:2002年11月06日(水)06時41分40秒
保全
233 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月18日(月)03時24分51秒
こちらも待ってます
234 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月29日(金)22時22分00秒
けっこう日が経ちましたね・・・保全
235 名前:導かれし者達 投稿日:2002年11月30日(土)01時02分31秒
「真希…」
「後藤さん…」
吉澤、そして加護が消えていった後藤の姿に小さく呟き気を落とすように沈んだ。
加護は溢れる涙を止められず、鼻をすすりながら悲しそうに涙に腕を当てた。

「…こうなったら…あたしらも行くしかないね…」
黙り込んでしまった沈黙に保田が再び口を開いた。
「…本当は…昨日のうちからこうなる予感はしてたし…。逃げられない事もどこかで
悟ってたよ」
全員がばっと顔を上げたことに保田はにこっと笑った。
「行きたいやつが行けばいい。無理はさせないよ。ただあたしは…行く」
「圭ちゃん…」
そういうと保田は着ていたコートを再び襟元を掴み着衣を調えた。
どこか覚悟を決めるように、静かに呟いてから席を立った。
236 名前:導かれし者達 投稿日:2002年11月30日(土)01時04分08秒
「待ってくださいっ!あたしも行きます!」
二つ目の声。それはひとみの口からはっきりと発せられた。
「…真希のやつ一人にしといたら何しでかすか分ったもんじゃないし。
あたしにとって後藤真希も石川梨華もほっとけない人物なんです」
ひとみはほとんど初対面に近い保田を真っ直ぐ見つめ、おどけるように両手を
空に軽く上げると何でもない風に答えた。それでもその瞳はいつものようで、どこか
真剣、そして遠くを見つめるような瞳でもあった。
「…それならあたしもだね。二人が行くって言ってるのに何もしないでなんか
いられない」
ひとみに後押しされるように、なつみが席を立つ。
そして保田の顔を見てにっこり微笑んだ。
「なっち…」
矢口の呟く声が小さく木霊した。
「………」
呼ばれたなつみが静かにふっと矢口に向き直る。
不安げなその顔ににこっといつもの微笑をかけると矢口はしばらく黙っていたが
小さく頷いた。
237 名前:導かれし者達 投稿日:2002年11月30日(土)01時05分21秒
「これで四人。圭織はどうする?」
「…圭織も行く。圭ちゃんが行くんだから…行くよ」
イスに座ったままただ一つを凝視しながら呟く飯田に保田は「ありがとう」と
静かに答えた。
「………」
「…裕ちゃんは?」
「!…あ、あたしは…」
次から次に立ち上がっていく全員と張り詰めた物がどこか吹っ切れ、覚悟の匂いが
漂うその場所で中澤はずっと耳にしていくその事実に体を震わせていた。
今、保田に呼びかけられ中澤は何とか声を発しようとするが、震えてしまって
その後が続かない。
「……」
保田の瞳に映る中澤の背中を小さく小刻みに震えていた。
保田はそんな中澤の姿に覚えがあるのかただ黙ってどこか切ない表情で
その後姿を見つめるだけだった。
238 名前:導かれし者達 投稿日:2002年11月30日(土)01時08分05秒
「…か、加護は…」
状況を見つめていた加護がドアに掴まりながら小さく震え出す。
ここにいるみんなが、今は普通に自分の目の前にいるみんなが、次々に立ち上がって
いく姿と言葉に加護は底知れない不安と、置いていかれるような焦燥感に追いやられていた。
なつみは小さく呟いた加護の姿にすぐに気づき、ゆっくりと目の前まで
近づいていき前から両肩にぽんっと手を乗せると、上を向いた加護と目を真っ直ぐ見つめ
言った。…影に気づき、顔を上げた先にあったなつみの表情は、今まで見た中で、
今までで一番、表現しにくいほど、優しく穏やかで母親のように暖かいものだった。
「いいんだよ、加護は…。辻と一緒に…いてあげて」
「!で、でも…」
「大丈夫だから…。加護と辻まで危険な目に合わす事は出来ない。…二人だけには、
何があっても無事であって欲しいの…」
「!…安倍さん…」
なつみの言葉に加護ははっとし顔を改めて見つめ直した。
なつみは加護の姿ににこっと微笑むと肩からゆっくりと手を離した。
239 名前:導かれし者達 投稿日:2002年11月30日(土)01時08分59秒
「……安倍さん…」
離れて行くなつみの姿に加護は小さく呟く。
その瞳からは既に恐怖や不安は取り除かれ、どこかそれは考え込むような瞳に
変わっていた。
「……」
一人静かに黙り込み、しばらく経った後ふっと後ろの辻がいる場所へ顔を向けた。



240 名前:導かれし者達 投稿日:2002年11月30日(土)01時10分25秒
なつみが戻った先には小さな輪のような物が出来ていた。
返答が帰ってこない中澤に保田はしばらくずっとただ黙って待っていたが静かに
口を開いた。
「…無理強いはさせるつもりはないから…。だから裕ちゃんが嫌なら別に
来なくてもいいからね。気にする必要もない…」
保田の言葉に中澤は再びびくっと大きく体を奮わせた。
「それじゃ…みんな……」
保田は静かに後ろに振り返るとその場に立つみんなに小さく呼びかけた。
ひとみ、なつみ、矢口、そして飯田がそれに「うん」と小さく、それでも強く
顔を頷かせた。
震え戸惑うような中澤、今も考え込むような加護、そして辻を置き、五人はバーを
去ろうと後にしようとした。その時だった。
「ちょい待ちやぁ!!」
中澤のものでもない、加護のものでもない、大きな特徴的な大阪弁が一つ、
その場に大きく響き渡った。



241 名前:aki 投稿日:2002年11月30日(土)01時28分12秒
すいません。本当に短いんですがここまで…。長い間お待たせしてしまって
本当にごめんなさい。。
今実はレス書いた物が全て字数オーバーで消えてしまって…後ほど書かせてもらいます。
本当にすいません…。

242 名前:DK 投稿日:2002年11月30日(土)13時05分53秒
待っていましたakiさん!!素晴らしい
作品を有難う御座います。これからも頑張って
下さい。マターリして待っています
243 名前:コウ 投稿日:2002年12月01日(日)01時10分14秒
梨華ちゃんを救い出そうと飛び出して行ったごっちん、最高に
かっこいいっす。そしてそれを追いかけようと団結する彼女達も。
そして中澤さんでも加護さんでもない関西弁の人って、あの人・・・?
akiさん、自分が言うのもおこがましいですが、ほんとに素晴らしい
作品ですね!最高っす。


244 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月17日(火)11時48分13秒
保全
245 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年12月24日(火)19時32分13秒
ついに同じ場所に立った彼女達、はたして梨華と真希の運命は?
・・・いつしか、また、笑ってクリスマスを迎えられることを信じつつ、
この先の彼女達を静かに見守っております。
246 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月02日(木)19時35分34秒
あけおめ保全
247 名前:はみこ 投稿日:2003年01月03日(金)15時59分27秒
後藤の事わかって書いてるんですよね。すんごい小説書くのうまいですね。
でも後藤は自分がクールじゃないって思ってるんです。後藤は本当は明るくて
がんばりやさん何です。「何かきずくと変な誤解してるんですよね」って・・。
後藤が言ってました
248 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月05日(日)21時08分58秒
>>247うん、それで何が言いたいわけ?
249 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月11日(土)10時07分31秒
保全
250 名前:_ 投稿日:2003年01月18日(土)08時57分56秒
251 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月26日(日)15時29分06秒
252 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月30日(木)14時29分12秒
253 名前:名無し読者 投稿日:2003年01月30日(木)17時26分19秒
254 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月03日(月)22時33分23秒
保全させてもらいます
255 名前:バスケットマン 投稿日:2003年02月15日(土)14時23分54秒
一気に読みました!!
カナリ面白いです!!ゴッチンカッコイイ
保田達も石川を助けるため頑張ってください!!
akiさんこれからも面白いてんかいにしていってください!!
256 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月21日(金)06時22分31秒
保全
257 名前:名無しさん 投稿日:2003年02月21日(金)17時59分04秒
akiさんのペースを乱すような事はして欲しくありませんが、
せめて現在の状況だけでも知らせて欲しい。
258 名前:aki 投稿日:2003年02月22日(土)02時18分44秒
すいません、本当に長い間空けてしまって待って頂いてる方には本当に心から
謝りたいと思います。
257さん含めレスや保全本当にありがとうございます。
今現在の状況ですが…どうしても前ほど書く意欲やそれにそそぐ時間も自分の中で
欠如してしまって…。放置だけはしないよう心の決めていたんですが今現在次回の
更新の目処はたってないです…。
続きの内容にしてもどうしてもある部分で引っかかってしまったり…。
もしこのまま中途半端にしている状態でいつまで経っても続きが書けそうにない場合は……
とにかく待たせてしまっていた方々、本当にすいません。。
259 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月24日(月)23時15分18秒
akiさんの作品だから作者さんの意思にお任せですが
この作品好きなので期待して保全させてもらいますね
260 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月28日(金)01時25分54秒
前ほど書く意欲がないってあるけど、やはり後藤のモー娘。卒業の影響が
あるんだろうか。現実のいしごまの絡みも激減してしまったし。ただここまで
来て放棄ってのはあまりにもアレなので同じく期待保全します。
261 名前:257 投稿日:2003年02月28日(金)18時16分19秒
凄く生意気なことを言ったようで、申し訳ないです。
akiさんの書く作品はまたまた生意気言うようですがスーケールが
大きいですからね。描くのに時間がかかるというお気持ちは分かります。
これからは、『まだ時間が足りない』などという一文でもいいですから、
放棄していない事を証明して頂きたいです。誤解を招くのはするほうも
されるほうもいやですからね。ゆっくり待ちます。
262 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月03日(月)21時26分07秒
保全です
263 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月27日(木)23時28分22秒
保全
264 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月07日(月)01時02分44秒
保全
265 名前:名無しさん 投稿日:2003年04月13日(日)19時43分52秒
まってますよー
266 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月14日(月)01時51分09秒
作者さんにもいろいろご都合があるでしょうから、最悪の場合も覚悟してます。
ただ、その際にはきちんと連絡をして下さると嬉しいです。
本音としては遅くなってもいいから最後まで読みたいな、って思いますけど…。
267 名前:ボブ島教授 投稿日:2003年04月15日(火)14時16分05秒
ずっと待っています。保全します。
268 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月03日(土)05時47分52秒
保全
269 名前:あやラヴ 投稿日:2003年05月11日(日)16時13分49秒
いっきに読ませてもらいました!凄く面白い作品なので続きが楽しみです。
270 名前:名無し 投稿日:2003年05月29日(木)00時25分50秒
期待!
271 名前:名無し 投稿日:2003年06月18日(水)01時39分51秒
もう駄目なのか?
待ってても無駄なのか?
きっかけが欲しい。
272 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月12日(土)15時25分37秒
ほぜむ
273 名前:名無しさん 投稿日:2003年07月13日(日)22時40分52秒
待っています。
だけどせめて何か反応を…
274 名前: 投稿日:2003年07月19日(土)18時00分01秒
一気に読ませてもらいました。
待っているので、せめて一文だけでもください
275 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月03日(日)23時18分33秒
それでも保全
276 名前:名無し読者 投稿日:2003年08月03日(日)23時19分26秒
それでも保全
277 名前:名無しさん 投稿日:2003年09月02日(火)08時56分00秒
保全
278 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/02(木) 00:22
hozen
279 名前:NO.10 投稿日:2003/10/23(木) 09:27
すごくおもしろいです。
待っているので、「彼女達の旅立ち方5」
を、作ってください。
280 名前:名無し読者 投稿日:2003/10/23(木) 14:17
とうとう旅立っちゃったか〜、って、おい!

作者さんの都合 >258 もあるので、静かに待ちましょう。

281 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/18(火) 19:25
hozen
282 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/09(火) 23:30
あ〜続きが気になります・・・

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