あの頃の君に逢いたい
- 1 名前:Vicks 投稿日:2002年03月12日(火)02時07分33秒
- はじめまして。
Vicksと申します。
今までROMっていましたが、皆さんの小説が面白くて、自分でも書いてみたくなりました。
初小説ですので、つたないとことかあると思いますが、長い目で見てやってください。
いしよしで行きたいと思っています。
ちょっと、設定がわかりずらくなるかとは思いますが、ついてきて下さい。
では、よろしくお願いします。
- 2 名前:出会い 投稿日:2002年03月12日(火)02時13分20秒
- 2000年3月。
その日、モーニング娘。追加オーディション最終選考に残った10名が召集された。
最終選考合宿についての説明を受けるために。
吉澤ひとみ、彼女も他の9名の少女たちと同様に
モーニング娘。に憧れてこのオーディションに挑んでいた。
合宿の細かい説明の前に、共に合宿生活を過ごすライバルたちと自己紹介をすることになり、
それぞれが自己紹介をしていくのを見ているうちに
ひとみは沸々とバレーボールで鍛えた闘志が湧いてきた。
『この中から勝ち残んなきゃダメなんだよなぁ。おっしゃ、がんばるぞー。』
一人一人が順番に自己紹介をして、ひとみの順番になった。
「吉澤ひとみ、14歳中学3年生です。えーっと、部活はバレーボールをやってます。よろしくお願いします。」
緊張している自分を吹き飛ばすかのように、ひとみは元気良く自己紹介を済ませた。
それから数人が自己紹介を済ませ、最後の少女が自己紹介をするために立ち上がった。
かなり緊張した様子で、ゆっくりと顔を上げて言った。
「石川梨華15歳高校1年生です。」
特徴のあるアニメに出てきそうな声を聞き、
ひとみは目をその声の持ち主の方へ向けた。
『ヤットデアエタ・・・。』
ひとみの頭の中で、そんな声が聞こえてきた…。
- 3 名前:Vicks 投稿日:2002年03月12日(火)02時32分54秒
- 今日は、こんな感じです。
いかがでしょう?
- 4 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月12日(火)13時05分35秒
- いしよし(w
がんがってください♪
- 5 名前:琴霧楓 投稿日:2002年03月12日(火)16時22分24秒
- オーディション物ですか。
最終候補の10人は出るんですか?
結構楽しみです。
- 6 名前:ひとみと後藤 投稿日:2002年03月13日(水)02時08分20秒
- <1年後>
その日は「ハロモニ」の収録のため、いつものスタジオにいた。
ひとみが一人で、入口に張り出されている収録スケジュールを
ボーっと眺めていると、後ろから後藤が抱き付いて来た。
「なにしてんの、よっすぃー?」
「あ?ごっちんかぁ。今日梨華ちゃん来ないのかなって思って。」
「ああ、梨華ちゃんねぇ。カントリー、忙しそうだもんねぇ。
寂しいの?よっすぃー。」
いたずらっ子のような顔をして、後藤はひとみの顔更に覗き込んだ。
「そんなことないよぉ。ただ、娘。入ってから、
こんなに梨華ちゃんと会わないことなかったからねぇ。」
ちょっと照れながら、ひとみは答えた。そして、
「ま、吉澤は梨華ちゃん大好き人間だからね。」
と、おどけてつけたした。
「ふーん。ごとーがいるだけじゃ駄目なのねっ?」
そう言って、後藤は後ろからひとみを羽交い絞めにした。
- 7 名前:ひとみと後藤 投稿日:2002年03月13日(水)02時11分14秒
- 「ご、ごっちん・・・。く、苦しい…。ギブ・・・。」
「あはっ。大丈夫ぅ?」
後藤は手を離し、笑ってひとみの顔を見た。
「落ちるかと思ったよぉ。もう。」
そう言ってわざとらしく咳き込んで見せた。
もう、ひとみには先程の元気のない表情はなかった。
「よっすぃー、ホントに大丈夫?悩みとかあるんじゃないの?」
後藤は心配そうにたずねた。
「そんなことないよ?」
「うそ。だって最近いつもよりもボーっとしてるし。」
「そんなことないよぉ。それに、いつもよりってひどくない?
まるでいつもボーっとしてるみたいじゃん。」
「だって、そうだもん。今日なんて特にだよ。」
「え〜、そんなことないってぇ。よしざぁーはいつも元気だよ?」
そう言って、マッチョなポーズをとって見せる。
- 8 名前:ひとみと後藤 投稿日:2002年03月13日(水)02時16分48秒
「あははははっ、分かったよぉ。
でも、言いたくなったらちゃんと言ってね?」
まだ心配そうに後藤は言った。
「ぜーんぜん平気だってば。
あ、ちょっと取ってきたいものあるから、控え室に戻るねぇ。
ごめん、ごっちん。」
そう言って、ひとみは小走りにスタジオを出ていった。
そんなひとみの背中を、後藤は心配そうに見つめていた。
- 9 名前:ひとみの気持ち 投稿日:2002年03月13日(水)02時21分37秒
- 一人控え室に戻ったひとみだが、本当はやることがなくテーブルの上に目を向けた。
テーブルの上には、お菓子のゴミが散らばっている。
「きったないなー。これで本当に女の子9人もいるのかね〜。
誰か片付けてもいいもんなのに。」
ぶつぶつと独り言を言いながら片付け始めた。
テーブルを片付けるのにも飽きて、近くにある雑誌を手に取ると、
そこには、ひとみ達新メンバー4人の1年を追った特集が載っていた。
「うわー、恥ずかすぃ。なにこれ。」
ひとみは、自分のオーディション当時の写真を見て思わず声を出した。
「あ、これ寺合宿の時だぁ。うわぁ〜。」
そんな声をあげながら、次々とページをめくっていく。
「ははっ辻加護、このときからずーっと一緒にうつってるしぃ。」
するとひとみは、ふとページをめくる手を止めた。
合宿での梨華とひとみのツーショット写真だ。
この合宿でひとみは梨華に恋をした。
いままで、付き合った彼氏はいたけれど、
まさか、自分が女の子に恋をするなんて思ってもみなかった。
最初、いつかは薄れていくかと思っていたが、
1年一緒にいることで、どんどん気持ちが増していった。
でも、冗談でしか気持ちを言えない自分がすごく嫌だった。
『でも、コクれないよなぁ。絶対嫌われちゃうもん』
すると、ふとある事が思い出された。
「そういえば、合宿説明会の時、変な声が聞こえたような…。なんだったんだろう?
それに、昨日の夢に出て来た女の人、なんとなく梨華ちゃんに似てたなぁ」
- 10 名前:ひとみの夢 投稿日:2002年03月13日(水)02時23分42秒
- 静かなところだ。
まるで、誰もいないような。
私の腕の中には、横たわった女の人が眠ったように抱きかかえられている。
私はただ悲しく、何かを叫んでいる。
ただ、悲しくて、悲しくて…。
寂しさと悲しみでいっぱいで、泣きつづけるだけだった。
白く、透き通るような肌をした、その女の人は目を開けることはなく・・・。
彼女の艶やかな黒髪に手を埋もれさせ、抱きしめる。
そこで、ひとみは目を覚ました。
自分でもなぜかわからないが、涙が止まらなかった。
胸が苦しく、しばらくは動くことすら出来なかった。
- 11 名前:Vicks 投稿日:2002年03月13日(水)02時28分02秒
- upしてみました。
つたない文章でお恥ずかしいです。
>4
ありがとうございます。ながーい目で見てください。
>5
すみません。オーディションモノではないです。
でも、読んでやってください。
- 12 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月14日(木)00時31分19秒
- 何の夢だろ…
- 13 名前:楽屋にて 投稿日:2002年03月14日(木)01時41分24秒
- 「よっすぃー?」
ドアが開き、後藤が顔を出した。
「よっすぃー、どうしたの??」
後藤が心配そうにひとみに近づいてきた。
「何が?」
「何がって・・・。よっすぃー、泣いてたの?」
そう言われて、初めてひとみは自分が泣いていることに気づいた。
『なんで??あの夢のこと考えいてただけなのに・・・。』
ひとみは涙を手で拭って笑って言った。
「なんでもないよ。それより、リハ始まるの?」
心配そうに後藤は答えた。
「うん、あとちょっとで再開するって。」
「ありがと。行こっか。」
ドアに向かってひとみが歩き出すと、後藤がドアを後ろ手で閉めた。
「ごっちん?」
「あのさ、よっすぃー。
嫌ならいいんだけど、何か悩み事とかあったら言ってね。
ごとーじゃ頼りないかもしれないけどさ。
いつもよっすぃーに愚痴聞いてもらってるし、力になりたいな。」
恥ずかしそうに下を向いて後藤は続けた。
「なんか、こういうのガラじゃないんだけど。」
『まさか、梨華ちゃんのこと本気で好きなんて、ごっちんにも言えないよ。』
「あー、うん。ありがとう。でも、大丈夫だよ。」
ひとみは、下を向いている後藤の頭に手を載せ、
「ありがとね。」
と、優しく微笑んで、小さく呟いた。
- 14 名前:楽屋にて 投稿日:2002年03月14日(木)01時43分59秒
- 『パパパパッパパー』
ドラクエのレベルアップのメール着信音が控え室内に響いた。
ひとみが慌てて鞄の中から携帯を取り出し、ディスプレーを見ると、
『今、カントリーのお仕事終わったから、今からそっちに移動します。梨華』
「あー、梨華ちゃんだぁ。」
自然と顔がほころんだ。
「梨華ちゃんから、なんて?」
「カントリー終わったから、今から収録来るって。遅いっつうのなぁ、ホントに。」
今までとは打って変わって、満面の笑みでしゃべりだす。
「っていうかさぁ、今収録中なのわかってて、メールするか?
やっぱ、梨華ちゃんって抜けてるよねぇ?
でも、来ないのかと思ってたよ。じゃあ梨華ちゃん来るまで頑張りますか。
早く行くよー、ごっちん。」
ひとみは一人で喋りつづけ、控え室から飛び出して行ってしまった。
「何、アレ。」
一人残された後藤は吉澤の変わりように驚き、呆然と突っ立っていた。
- 15 名前:日常の娘。たち 投稿日:2002年03月14日(木)01時47分37秒
- 収録も無事終わり、控え室ではモーニング娘。のメンバーが帰る仕度をしていた。
さっさと着替え終わったひとみは、
同じく着替え終わった辻・加護にちょっかい出されながら着替えている梨華を見ていた。
『疲れてんのにちゃんとかまってあげてる梨華ちゃんってエライなぁ。』
ボーっとそんなことを考えていると、
「よっすぃー、顔ニヤけてるよ。何見てんの?」
突然ひとみの目の前に、矢口が顔を出した。
「あ、石川見てたんだろぉ?」
「えっ、そんなことないっすよ。やだな〜、もう。
そりゃあ、吉澤は梨華ちゃん大好き星人ですけどぉ・・・。そんなに吉澤のこと、気になりますかぁ?」
そういいながらも、梨華が気になるひとみ。
自分の名前が出て、チラッと視線をひとみのほうへ向け微笑む梨華。
『あ、梨華ちゃんこっち見た。やべー、かわいー。』
「そりゃあ、もちろんっ!よっすぃー、かっけーからね。愛してるよっ。」
そう言って矢口は、イスに座っているひとみの唇に軽くキスした。
「俺も愛してるよっ、真理。」
ひとみも調子を合わせて答えた。
『冗談でなら、簡単に言えるのになぁ…。』
小さく一つため息をついた。
「いやー、照れるなぁ。はっはっはっ。じゃ、おつかれー。」
そういって、矢口は控え室を出て行った。
- 16 名前:日常の娘。たち 投稿日:2002年03月14日(木)01時55分05秒
- 「あーっ、矢口さんだけずるーい。よっすぃー、うちらにもチューしてー。」
気づくと今度は、辻加護コンビが目の前にいた。
「はいはい、いい子にしてたらね。ほら、もう着替えたんなら帰る用意しなよ。」
ひとみは立ち上がって、二人を急かした。
「いいやんか、べつにぃ。」
加護が口を尖らせて言った。
「そうだよぉ。じゃあよっすぃー遊んれよ。」
辻はそう言ってひとみの背中に飛び乗った。
「重いよー、辻。あんたお菓子食べ過っ…。」
ひとみが言うか言わないかのうちに、今度は加護が前から飛びついてきた。
「く、くるしい・・・。」
二人の重さに耐えているひとみの視線の先では、急いで着替えている梨華が
「ありがとぉ」と、眉を八の字にして口を動かして言っていた。
「どういたしまて。」同じく口を動かして、梨華に微笑んだ。
「ほらほら、もう遅いんだから二人とも吉澤から離れて、さっさと帰りなさいっ。
明日、学校行くんでしょ。」
保田が二人をひとみから引き剥がした。
「「えー、まだ遊ぶぅー」」
口ごたえする辻加護二人をキッと睨み付けて、
「吉澤、あんたも学校行くんでしょ。遊んでないで早く帰りなっ。」
「「「はーい。」」」
ビクッと身をすくめて、そそくさと帰り支度を始める、ひとみと辻加護だった。
- 17 名前:日常の娘。たち 投稿日:2002年03月14日(木)01時58分02秒
- 『なんで、私まで保田さんに怒られなきゃいけないんだよぉぉぉ。
あーぁ、今日は全然梨華ちゃんと話せなかったなぁ。』
そんなことを考えてため息をつき、
「じゃあ、お先でーす。」
荷物を持ってひとりで部屋を出ようとした。
「あ、よっすぃー待って。一緒に帰っていい?」
後ろから、急いで荷物をまとめている梨華が声をかけてきた。
『マジっすか?よっすぃーうれすぃー。』
「いいよ。待ってるからゆっくり用意してていいよ。」
思いっきり笑顔で、ひとみは答えた。
その時後藤は、ひとみを見てにんまりと微笑んだ。
先程のひとみの様子が心配で、収録中もずっとひとみを観察していたのだった。
『そういえば、よっすぃーがおかしくなったのは、梨華ちゃんがカントリーにレンタルされた頃からだ。
ってことは、原因は梨華ちゃん?
あ、もしかして、よっすぃーは本気で梨華ちゃんの事を・・・。
なぁんだ、それならそうと言ってくれれば協力するのに。
やっぱり、ごとーはすごいなぁ。かわいいだけじゃなかったのね。ウフッ。』
勝手にイロイロ想像して自分で自分を誉めながらひとみを見ていると、
ひとみと視線が合ってしまった。
「ごっちんも一緒に帰る?」
ひとみが後藤に声をかけた。
「えー、いいよぉ。方向違うし、タクシーで帰るから。」
そう言って慌ててひとみの横を通って部屋を出ようとした。
「もう出られるから、ごっちんも外まで一緒に行こうよ。」
荷物をまとめ終わった梨華が、ひとみと後藤の前に駆け寄った。
『ま、いいか。よっすぃーを観察してみたいし』。
後藤はうなずいて、一緒に部屋を出た。
- 18 名前:Vicks 投稿日:2002年03月14日(木)02時01分30秒
- 更新しました。
ちょっとだらだらとしてしまいましたが、
よっすぃーの片想いな感じが出したかったので…。
>12 名無し読者さま
何の夢かは後々分かってきます。
- 19 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月15日(金)05時30分10秒
- 観察しまくりな関係いいですね(w
- 20 名前:帰り道 投稿日:2002年03月17日(日)23時53分56秒
- 「なぁーんか、ひさしぶりだね。こうやって梨華ちゃんと帰るの。」
うれしそうにひとみは言った。
「そうだね、梨華ちゃん最近カントリーで忙しそうだし。
ってゆうか、よっすぃー、ごとーと帰るよりうれしそうなんだけど。どういうこと?」
ひとみの反応を見るように、後藤は尋ねた。
「えー、そんなことないよ〜。何、妬いてくれてんの?ごっちんかわいー。」
ご機嫌なひとみは、後藤首に抱きつてきた。
「やめろよー。梨華ちゃん、よっすぃーどうにかしてよ。」
後藤はそう言って、ひとみの手を振りほどくと
「じゃあよっすぃー、私と腕組もう?」
梨華が、ひとみを下から覗き込むようにして聞いた。
『うわっ、かわいい。やっべぇ〜。』
思わず顔が赤くなってしまったのをごまかすように、
「うん、もっちろん。両手に花ってやつだね。うははははっ」
そういって、ひとみは後藤の腕と梨華の腕をとった。
『よっすぃー、顔赤いよ…。わかりやすぅ〜い。』
ひとみに腕を取られながら、後藤はにんまりと笑った。
- 21 名前:帰り道 投稿日:2002年03月18日(月)00時01分12秒
- 後藤と別れてから、ひとみと梨華はたあいのない話をしながら、
駅までの道を歩いていた。
駅の階段を降りていると、
「ねえ、よっすぃー。相談があるんだけど、聞いてもらっていいかな?」
歩きながら、ぼそっと梨華が言った。
「ん?なに?」
「えっとね、ここじゃなんか話しづらいから、ウチ来てもらっていい?」
眉を八の字にして、梨華は言った。
『こんなかわいい顔されちゃうと断れるわけないよね。
あ、明日、学校行かなきゃヤバイなぁ…。どうしよう・…。』
ひとみが答えに迷っていると、
「あ、ごめんね。明日学校あるんだよね。こんなふうにいつもよっすぃーに頼ってちゃダメだね、私。
ほんとうにゴメン。忘れて。」
そう言って、梨華は無理して笑顔を向けた。
- 22 名前:帰り道 投稿日:2002年03月18日(月)00時01分51秒
- 「いいよ、学校なんか。今から梨華ちゃんの家行くよ。」
こんな梨華をほっておけるわけない。
「ダメだよ。学校はちゃんと行きなさい。」
そう言って梨華はすたすたと前を歩き始めた。
「なんだよ、急にお姉さんぶっちゃってさー。」
ひとみは梨華を追いかけながら続けた。
「本当に大丈夫?明日だったら大丈夫だから。」
「ううん、いいの。私、明日カントリーの仕事で娘。の仕事行けないの。
だから気にしないでね。チャオっ。」
そう言って、梨華は家の方向のホームへと降りていってしまった。
『気にしないでって、気になるでしょ。どうせ一人で落ち込むの分かってるんだから。
でも、学校行かないと梨華ちゃん責任感じちゃうしなぁ』
梨華とは反対方向の電車に乗りながら、ひとみは考えていた。
そして、ひとみは腕時計を見た。
「ん、今なら終電間に合うかな。」
- 23 名前:黒い影 投稿日:2002年03月18日(月)00時02分37秒
- 『ピーンポーン』
『こんな遅い時間に誰だろう?』
と、思いながら梨華はインターホンに出た。
モニターの前には、帽子を深く被った少年のような姿が映った。
「どちらさまですか?」
探るように梨華は問い掛けた。
すると相手は、モニターのカメラにぐっと近づいて帽子のつばを上げ、
「よっすぃー隊員、ただいま到着しました。チャーミー隊長、開けてください。」
そういって、ひとみはにかっと笑った。
その時、マンションの外では怪しい人影がひとみを見つめていた。
マンションの自動ドアを通る時、ひとみはふと視線を感じた。
だが、振り返った時には誰もいなかった。
「おっかしいなぁ、気のせいかぁ??」
- 24 名前:Vicks 投稿日:2002年03月18日(月)00時06分55秒
- 更新しました。
- 25 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月18日(月)05時00分11秒
- 怪しい人影……誰だ…?
- 26 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月23日(土)00時03分26秒
- 誰なんだ(w
- 27 名前:梨華の部屋にて 投稿日:2002年03月23日(土)03時16分43秒
- 「わざわざ来てくれたの?よっすぃー。」
玄関のドアを開けながら、すまなそうに梨華は言った。
「やっぱ、気になっちゃってね。」
そう言って靴を脱いでひとみは部屋へと入っていった。
「相変わらずちらかってるねぇ。」
荷物をどさっと置いて、ひとみはソファーに座った。
「そんなこと言わないでよ〜。ねえ、紅茶飲む?」
キッチンに入って梨華声をかけた。
「うん、ありがとう。
ちょっとこれからごはん食べていい?おなかすいちゃってさー。」
そう言って、コンビニの袋と鞄の中から出したベーグルをテーブルの上に置いた。
「一度おうちに帰ったの?」
紅茶を運んで来た梨華が聞いた。
「うん。帰って荷物まとめてすぐ来た。今日泊まってって良い?」
「良いって、もう電車ないでしょ?でも、学校は?」
「問題ナッシングよ。ちゃんと制服とか持ってきたし。」
そして、ひとみは更に続けた。
「相談ごとって?やっぱり、気になっちゃってさ。
最近梨華ちゃん忙しくて話とか出来なかったから。
今日はゆっくりお話しよう。」
「ありがとう、よっすぃー。」
結局、相談ごとはすぐには始まらず、
一緒にテレビを見たり、雑誌を読んだりして時間は過ぎていった。
- 28 名前:梨華の悩み 投稿日:2002年03月23日(土)03時18分38秒
- ひとみが風呂から上がると、先に風呂を済ませていた梨華が、雑誌を読んでいた。
梨華はひとみが出てきたことに気づく様子はなく、じーっと雑誌を見ている。
『おどかしてみようかな。』
ひとみは梨華の後ろからそーっと近づいた。
「なに見てるの?」
急に後ろから梨華を抱きしめた。
「キャッ。もう、驚かさないでよー。」
そう言って振り向いた梨華の目に、うっすらと涙が浮かんでいた。
「え!?ご、ごめん。驚かせ過ぎちゃった??本当にゴメンっ。」
驚かせてしまったせいかと思い、慌ててひとみは謝ると、
「ううん、違うの。これ見てたからなの。」
そう言って、梨華は今見ていた雑誌をひとみに見せた。
その雑誌には、カントリー娘。の特集が組まれており、モーニング娘。とはまた違う、
石川梨華(モーニング娘。)がうつっていた。
「なんか、最近こういうの見てるとすごく自分が嫌になるの。」
そう言ってポツポツと話し始めた。
どうして、自分がレンタルされたのか。
娘。とたんぽぽだけで精一杯なのに。
しかも、カントリー娘。にとってメージャーデビューである。
プレッシャーという言葉が重くのしかかっている。
また、モーニング娘。のメンバーとしての仕事が中途半端になってしまうこと。
でも、自分がいなくても娘。は普通に機能していること。
娘。には自分の必要性がないのではないか?
それに、自分がいなくても別に誰も寂しいとか思ってくれてないんじゃないか。
逆に、「カントリー、がんばってねぇ。」とか、言われてしまう。
やっぱり、自分は娘。にはいらない存在なのか。
・・・などなど。
梨華の悩みはどんどんネガティブな方へと落ちていく。
- 29 名前:梨華の悩み 投稿日:2002年03月23日(土)03時25分37秒
- 泣きながら話す梨華の言葉が途切れた時、ひとみは思わず梨華を抱きしめた。
「梨華ちゃん、そんなに悩まなくて良いよ。
カントリーをやることでプレッシャーはあるかもしれないけど、
梨華ちゃんが必要とされてるからレンタルされたんだよ?
ってことは、梨華ちゃんの実力が認められたってことなんじゃない?
それって、娘。にとっても梨華ちゃんが必要ってことだよ。」
梨華の涙を指で拭ってあげながら続けた。
「レンタルって言い方はイヤだけど、必要とされているところへ行けるっていうのはすごい良いことなんじゃないかな?
あたしとしては、ちょっと羨ましいくらいだよ。」
さらに梨華を抱きしめる腕の力を強めて続けた。
「それにね、梨華ちゃんがいなくても誰も寂しがらないなんてことないよ。
飯田さん、保田さん、安部さんは、『石川がんばってるかなー』とか心配してるし、
辻加護は梨華ちゃんいないとつまんないって言ってるし。
ごっちんは…無関心そうにしてるけど、梨華ちゃんが出てる番組、しっかり見てるし。
みんな、口には出さないけど梨華ちゃんいないの寂しいんだと思うよ。」
そう言ってひとみは梨華から体を離した。
「けど、本当はあたしが一番寂しいんだよ。
娘。に入ってから一緒に居られる時間がこんなに少なかったの初めてだったから。
そんなふうにネガティブに考えちゃだめだよ。
みんな、梨華ちゃんが頑張ってるのを応援してるんだから。
ほら、ポジティブポジティブ。」
ひとみはポン、と梨華の頭に軽く触れた。
「うん、ありがとう。ポジティブ、にね。」
梨華は微笑んだ。
- 30 名前:梨華の悩み 投稿日:2002年03月23日(土)03時30分30秒
- すると、ひとみはバタッと後ろに倒れた。
「うわぁー、なんかあたし、すっごい恥ずかしい事言ってるしぃー。
こぉんなこと言わせんなよぉー。」
顔の上にクッションをぎゅっと押し付けて、ひとみは叫んだ。
『思わず抱きしめちゃったよー。くぅ〜〜、この後どんな顔したらいいんだよぉぉぉ。』
こんなにドキドキしてしまっている自分を梨華に気付かれたくなかった。
フッとクッションを取り除かれて目を開けたひとみはおどろいた。
ひとみの上に覆い被さるようにして、梨華がいたのだ。
「梨華・・・ちゃん?」
「ひとみちゃん、ありがと。」
梨華はチュッと軽く、ひとみの唇へキスをした。
「お礼のキス。」
そう言って微笑んで起き上がり、ひとみの横へ座った。
ひとみはというと、顔を赤くして固まっていた。
- 31 名前:梨華の悩み 投稿日:2002年03月23日(土)03時31分32秒
- 「ちょっとぉー、なんか言ってよぉ。恥ずかしいでしょぉ。」
梨華は顔を赤らめて、ひとみの体を揺さぶった。
我に返ったひとみは起き上がり、
「ど、どうしたの?、梨華ちゃん。なんでキス?」
心臓がドキドキして止まらない。
「だってぇ、うれしかったんだもん。
それに、なんかよっすぃー、かっこよかったし。
感謝の気持ちだよ。いつも矢口さんとかとしてるでしょ。私
とじゃ嫌?」
悲しげな瞳で、ひとみの顔を覗き込む梨華。
「そ、そんなことないよぉ。ビックリしただけだって。
矢口さんとかと違って、梨華ちゃんそういうことしないじゃん。」
あわててひとみは答えた。
『むしろ、うれしいくらいだぜぃ。』
口に出せない気持ちを、心の中で叫ぶ。
「なんか、恥ずかしいでしょ、こういうの。でも、今はしたかったの。」
「うん、ありがとう。」
「なんで、ひとみちゃんがお礼言うの?変なのぉ。」
「えっ、そうかなぁ。」
二人は顔を見合わせて笑った。
- 32 名前:Vicks 投稿日:2002年03月23日(土)03時37分30秒
- 更新しました。
今回はちょっとイイ感じの二人の雰囲気が出てくればなぁって思ってます。
ただ、自分の文章力が無いために、イマイチかな?
>25,26 名無し読者さま。
影の人物については、もう少し後にわかります。
つまらないかもしれませんが、もう少しお付き合いを…。
きっと、唯一の読者さんですね(w
- 33 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月23日(土)04時31分58秒
- なかなか初々しくてよろしいかと
- 34 名前:名無しよすぃこ 投稿日:2002年03月23日(土)16時32分41秒
- 最近甘甘ないしよしが少ない中、これいいですねー。
がんばってくダサーい
応援してます!!
- 35 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月24日(日)12時46分58秒
- いしよしだ〜!
すごく甘めで好きです。がんばってください!
- 36 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年03月24日(日)14時33分49秒
- 一気に読みました。
はじめの夢と、影の人物が気になりますが、
甘いのでうれすぃーです。
期待していますので、がんがってくださいね。
- 37 名前:真夜中のお買い物 投稿日:2002年03月24日(日)22時36分53秒
- 「あっ、明日の朝、食べるもの買って来るの忘れちゃった。」
梨華は慌ててキッチンへ行った。
「いいよー、食べなくてもなんとかなるから、気にしないで。」
ひとみは冷蔵庫を開けている梨華に向かって言った。
「ダメだよ、ちゃんと朝ご飯食べないと。学校で頭、回らないでしょ。」
冷蔵庫を閉じた。
「あはっ、なんか梨華ちゃん、おねーさんみたい。途中で何か買ってから行くからいいよ。」
「ダメッ。相談に来てもらったのに、そんなのダメッ。」
『こういうときは、梨華ちゃん強情だからなぁ。さっきと全然違うじゃん。』
そう思ってニヤニヤしていると
「わたし、コンビニ行ってくるっ。」
コートを着て、すでに梨華は玄関から出ようとしていた。
「え、ちょ、ちょっと待ってよ。私も行くっ。」
あわててコートと帽子をつかんで、ひとみは後を追った。
- 38 名前:真夜中のお買い物 投稿日:2002年03月24日(日)22時42分32秒
- 買い物を終えると、二人は自然と手をつなぎ、帰宅した。。
手をつなぐというよりも、梨華がいつもひとみの手にじゃれてくるのだ。
ひとみは先程のキスを思い出してしまい、まるで全身が心臓にでもなってしまったかのように、
ドキドキしていた。
『やっべー、いつもよりもドキドキしてるよ。梨華ちゃん、ヘンに思ってないかなぁ?』
「ひとみちゃん、どおしたの?なんで黙ってるの??」
ひとみが先程から喋らないので、不安げに梨華がひとみの顔を覗き込んだ。
「え!?べっつにぃ〜。なんかこういうのも良いなぁって思って。」
ドキドキしているのをごまかしながらも、
手をつないでいることが無性にうれしくて、つないでいる手をぶんぶんと振った。
「そうだねぇ。なんか、遠足みたいな感じ?」
梨華はそんなひとみの気持ちには全く気づかない。
「なんだよぉ、それ。意味わかんないよぉ。吉澤的には、合宿の夜みたいな感じかな。」
「え〜、それはもっとわかんないよぉ。」
「分かんないのぉ?
だからぁ、合宿とか行くとさぁ、夜突然お腹がすくでしょ?
それで、抜け出してコンビニとかお店に食べ物買いに行くでしょ。そんな感じだよ。」
「う〜ん、そっかぁ。私は抜け出して買いに行ったことないからなぁ。」
「え〜、抜け出したりしたことないのぉ?
あ、もしかして梨華ちゃん『そんなことしないで早く寝なさいっ』とか言ってたんでしょ?部長さんだもんねぇ。」
梨華の物真似を交えながらひとみは言った。
- 39 名前:真夜中のお買い物 投稿日:2002年03月24日(日)22時45分04秒
- ひとみは、自然にくだらない会話が出来ていることにホッとしていた。
しかし、普段どおりに振舞おうとすればするほど、
自分の顔が段々と熱くなっているのがわかった。
『夜でよかった…。』
仲良く、こそこそと話をしては笑い合い、
ひとみの心の中とはうらはらに、
傍から見ればまるで恋人同士のような二人だった。
そんな二人を離れたところからじっと見つめる影があった。
「梨華ちゃんは渡さない…。」
その影はボソッと呟き、マンションに入っていく二人を見て、その場から姿を消した。
ひとみは、マンションの入口を入ったところで先程来た時と同じように視線を感じたため、
すぐに外へ出て、辺りを見回した。
しかし、その時にはすでに誰もいなかった。
「どうしたの?」
梨華が不思議そうにひとみを見た。
「ん?なんでもないよ。行こう。」
梨華を心配させまいとして、
そうひとみは答えて梨華の手をひいた。
- 40 名前:ひとみの夢 投稿日:2002年03月24日(日)22時46分31秒
機械に囲まれた部屋。
窓の外にはたくさんの星。
目の前には昨日とは違う女性がいる。
頭の良さそうな女性だ。
こちらを向いて微笑んでいる。
あたしはその女性といると、気持ちが穏やかになれる。
何かをしきりに話し、あたしを励ましているようだ。
だが、その言葉はあたしには理解できない。
どこか、別の国(?)の言葉のようだ。
でも、肩に手を置かれ、彼女の言葉を聞くと自然とこちらも微笑んでしまう。
彼女が創りだす優しい空気に包まれている。
- 41 名前:朝のお目覚め 投稿日:2002年03月24日(日)22時51分02秒
- ふと、ひとみが目を覚ますと、梨華が目の前で微笑んでいた。
「フフッ、いい夢見てたでしょ?よっすぃー、笑ってたよ?」
ひとみはまだ笑みが残ったままの表情で、
「うん。なんか、すっげー優しい感じの夢だった。」
そう言って、梨華の頬に手を添えた。
「今、すっごい良い気分。」
そう言って、フッと頭をあげて梨華の唇に軽くキスした。
「えっ、なななななな何???」
梨華は突然のひとみの行動に驚いて、真っ赤な顔をして固まった。
「ハハッ、昨日のお返し。」
そう言って起き上がると、さっさと制服に着替え始めた。
- 42 名前:朝のお目覚め 投稿日:2002年03月24日(日)22時53分00秒
- 「早くしないと、遅刻しちゃうよ。梨華ちゃん?」
見ると、梨華はまだ固まっている。
「おーい、石川さーん。遅刻しますよー。」
梨華の顔の前で手をひらひらさせると、
「え、ああ。もう、ビックリしちゃったでしょ。よっすぃーのバカ!」
そう言って梨華はプイっと横をむいた。
「だって、なんかそうしたい気分だったんだもーん。
いいじゃん、減るもんじゃないし。」
そう笑って、ひとみはキッチンに入りたまごをゆで始めた。
「ちょっとぉ、ひとみちゃんはお客さんだから座ってて。」
梨華が慌ててキッチンへ入ってきた。
「いいよぉ、梨華ちゃんが作るの待ってたら遅刻しちゃうし。」
「ひどぉーい、そりゃあ作るの遅いけど…。」
「だから、あたしに作らせてよ。今日は気分がいいんだから。」
「でも、私がひとみちゃんを呼んだんだから・・・。」
「いいのっ。」
そう言ってひとみは梨華を押しのけ、さっさとサラダを作り始めた。
- 43 名前:Vicks 投稿日:2002年03月24日(日)23時02分28秒
- 更新しました。
皆さんのレス、うれしいです。
頑張りますので、お付き合いお願いします。
- 44 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月25日(月)08時18分49秒
- 夢の意味が気になりますねぇ
- 45 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月25日(月)15時24分22秒
- 夢も気になりますが、
影が誰だか気になります…
続き期待!
- 46 名前:学校にて 投稿日:2002年03月31日(日)15時45分13秒
- 授業中、窓際の席で暖かい日差しを浴びながら、
ひとみは今朝の自分の行動を思い出していた。
『あたし、梨華ちゃんにキスしちゃったんだぁ。
次、梨華ちゃんに会うとき、どんな顔すれば良いんだよぉ。はぁぁぁ・…。
昨日から、こればっか。やばいなぁ、あたしの気持ち、気づかれちゃうかも。
あまりにも夢見心地が良かったから、何にも考えずに行動してしまった。
今思い出すと、かなりうれしいような、恥ずかしいような・・・。
次に会う時は、バレないように普通に接しないと。
それにしても今日の夢は、なんであんなに心地よかったんだろう?
優しそうな、女の人だったなぁ。
喋っている言葉はよくわかんなかったけど、なんだか励まされてたような気が・・・。
でも、あの言葉って、どこの言葉??
聞いたことないぞ。
う〜ん、最近ヘンな夢を良く見るなぁ。
まあ、楽しいからいいか。』
そんな事を考えているうちに、日ごろの疲れと暖かい日差しによって
ひとみは段々と眠りに落ちていった。
- 47 名前:梨華の戸惑い 投稿日:2002年03月31日(日)15時50分09秒
「梨華ちゃん、今日、変だよ?なんか、ぼんやりしてるし。」
りんねが心配そうに声をかけた。
「えっ、なんでもないです。ごめんなさい・・・。」
今日の梨華は、仕事中ボーっとしていることが多く、なんどもマネージャーに注意されている。
その原因は、昨日の自分の行動と、今朝のひとみの行動にあった。
『いつも優しい眼で自分を見ていてくれるよっすぃー。
昨日も真剣に相談に乗ってくれて、本当にうれしかった。
うれしかったから、思わずキスしてしまった・・・。
今までにも相談に乗ってもらったことはあったけど、
まさか、自分がよっすぃーにキスするなんて…。
そして、今朝。
あの時、よっすぃーが目を覚まさなかったら、もしかしたら自分からキスしていたかもしれない。
となりで幸せそうに微笑んで眠っているよっすぃーは、
あまりにもキレイな寝顔だったから…。
よっすぃーにキスされた時、
初めて好きな人とキスしたときのようにドキドキした・・・。』
「なんで・・・?わたし・・・・・・・。」
- 48 名前:後藤の直感 投稿日:2002年03月31日(日)15時58分03秒
- 授業が終わって、ひとみが仕事の現場へ行くと、後藤が駆け寄ってきた。
「よっすぃ〜、おっはよ〜〜。」
「どうしたの?ごっちん。珍しくテンション高いねぇ。」
「そう?」
「うん。いつももっとダルそうだもん。」
「今日は、梨華ちゃんカントリーの取材とかで来ないんだってね。
よっすぃー、知ってた?」
「え、うん。昨日聞いた。」
梨華の名前を聞いて、ピクッと反応するひとみ。
そのひとみの反応を楽しむかのように、
「ね、昨日、帰り何かあった??」
後藤がひとみの顔を覗き込む。
- 49 名前:後藤の直感 投稿日:2002年03月31日(日)15時58分56秒
- 「な、なんでよ?」
『ごっちん、あたしが梨華ちゃんの家行ったの知らないはずだよねぇ。』
「だってよっすぃー、なんか昨日と全然違うもん。良い事あった?」
「なんにもないよ。」
ふっと視線を逸らすひとみ。
「うそだぁ〜、何かあったでしょ?ねえねえねえ。」
うれしそうに、ひとみにまとわりつく後藤。
「なにもないってぇ〜。」
「え〜、ごとーに言えないような事なのぉ〜?教えてよぉ〜。」
『なんでこんなにごっちんしつこいんだよぉ。もう、誰か助けて。グスン』
ひとりで騒いでいる後藤を無視して、
ため息をひとつつき、ひとみは衣装に着替え始めた。
「あ、もしかして昨日、あれから梨華ちゃんの家に行ったりした?」
着替えているひとみの背中に、後藤が問い掛けた。
着替える手を止め、振り向くひとみ。
「えっ?!」
後ろにはニカーっとうれしそうな顔した後藤が立っている。
「やっぱりぃ。ねぇ、なにがあったの??」
再び後藤を無視して、着替えはじめるひとみ。
「ねえねえ、なんでそんなに隠すのぉ?
まさか、チューとかしちゃった??」
わざとらしく、「チュー」の所だけひとみの耳元で小声で言った。
バッと振り返るひとみ。
顔が真っ赤だ。
ひとみの反応に驚く後藤。
一瞬間を空けて、ニカーっと笑った。
そこへ、ドアがノックされ、マネージャーが呼びに来た。
『助かったぁ〜』
ひとみがほっとしていると、
「せっかく良いところだったのにぃ。じゃあ、続きはまた後でね〜。」
そう言って、微笑んで後藤は先に控え室を出て行った。
『なんで分かったんだろう?
っていうか、ごっちん、なんであんなにうれしそうなの??』
- 50 名前:後藤の直感 投稿日:2002年03月31日(日)16時00分15秒
「ねえ、今日よっすぃーの家に行ってもいい?」
仕事が終わり、帰ろうとしているひとみに後藤が尋ねた。
『きたっ!』
ビクッと後藤の声に反応して、吉澤は引きつった笑顔でゆっくりと後藤のほうを見た。
「ねえねえ、いいでしょ?」
最高の笑顔で後藤は吉澤の顔を覗き込んだ。
『こんな、仕事でも見られないような笑顔、怖いなぁ。ハハハ…。
これじゃあ、断れるわけないよね。
でも、ちゃんとあたしの事心配してくれて・・・・・・・・るんだよね?
ごっちん。』
ひとみの心配をよそに、無邪気にまとわり着く後藤。
仕方なく、ひとみは後藤を家へ連れて帰ることにした。
- 51 名前:姉さんたちの心配事 投稿日:2002年03月31日(日)16時20分52秒
- ひとみと後藤が控え室でじゃれている時、
すでに着替え終わっていた中澤、安倍、保田、矢口、飯田は部屋の隅でずっと話をしていた。
ひとみと後藤を横目に、何やら相談をしている。
その4人の傍で交信している飯田。
「うん大丈夫。まだよっすぃーは覚醒してないよ。」
突然飯田が喋りだした。
「すっご〜い、かおりそういうのもわかるんだぁ。」
今までの真剣な雰囲気とは全く違った、のんびりした口調で安倍が言った。
「でも、最近吉澤の様子おかしいでしょ?あたしはそれが心配なの。」
真剣な口調の保田。
「そういえば、吉澤最近特におかしいもんなぁ。
そや、矢口、あんたさりげな〜く吉澤の様子みてくれへん?一応教育係やし。」
そう言って中澤は矢口を見た。
「う〜ん、良いけどぉ・・・。
これって悩むとかの問題じゃないじゃん。
よっすぃーだって、ただの夢の話だと思っちゃうだろうし。
私だって、こんな事だとは思ってもなかったし。」
矢口は困った顔をして、さっきからじゃれているように見えるひとみと後藤を見た。
「たぶん、別の何かで悩んでるんじゃないかなぁ。
一応さぐってはみるけど・・・。」
「せやなぁ。あたしらだって夢でしかないと思ったわけやもんなぁ。」
「そうだねぇ、私もまさかみんなが同じような夢見てるとは思わなかったよ。
でも、まだよっすぃーが『彼』だと決まったわけじゃないんだから、心配してもしょうがないっしょ。」
安倍がいつもの笑顔で言った。
- 52 名前:姉さんたちの心配事 投稿日:2002年03月31日(日)16時28分36秒
- 「なっちは楽観的過ぎるよ。
吉澤が『彼』だったら、覚醒した時に
<チカラ>をコントロールできなくて暴走するかもしれないんだよ。
そんなことになったら、吉澤の体はもたないかもしれない。
私と矢口はそんなに<チカラ>の影響なかったからいいけど、
あのコは私たちの数倍の<チカラ>を持ってたんだから。
なっちもかおりも裕ちゃんも、<チカラ>の影響かなり受けたんでしょ?」
安倍の態度に少々イラつきながら保田が言った。
<チカラ>という、日本語にはない発音の単語を耳にして、
『何の話をしてるんだろう?』
という顔をして、ひとみが5人の方を見た。
それに気づいた中澤は、声を潜めて、
「まあまあ、圭坊、そんなにイラつかんと。
それにな、いくら顔が似てても、
もしかしたら、『彼』は吉澤じゃないかもしれん。
それに考えてみぃ、うちらかてまだまだ覚醒しきってへんやろ?
思い出せてない部分、たくさんあると思う。
みんながそうだって知ったのだって、最近やないか。
それに、娘。全員が『あの時』のメンバーだとは限らへんやろ?
うちら5人だけがたまたま一緒だったのかもしれん。
今は、まだ全部が仮定の話でしかないんやから。
ま、しばらくは様子をみるしかないやろうなぁ?。」
まだ、不審そうな顔をしているひとみに手を振り、
「吉澤とごっちん、早く帰りぃ。うちらもすぐ帰るから。」
そう言って、二人に部屋を出て行くように促した。
- 53 名前:Vicks 投稿日:2002年03月31日(日)16時37分02秒
- 更新しました。
ちょっと分かりづらいかもしれませんが、
<>←のカッコで囲われている単語は、日本語にはない発音の言葉です。
どこの言葉かは・・・・後でわかるかと思います。
- 54 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月01日(月)01時26分34秒
- なにやらSFチックな展開に…?
- 55 名前:no-no- 投稿日:2002年04月03日(水)19時16分01秒
- 初めまして。
話が変わった方向に、、、
続きお待ちしてます。
- 56 名前:ひとみの家で 投稿日:2002年04月13日(土)01時31分24秒
- 夜が更けても、後藤は話をするわけでもなく、
テレビを見てキャッキャと笑い転げていた。
ひとみも後藤が何も言ってこないのでは、話しようがなく、
後藤に合わせてテレビを見たりして過ごしていた。
それまで見ていたバラエティ番組がCMに入った時、
突然後藤が言った。
「ねえ、よっすぃーってさぁ、梨華ちゃんのこと好きなの?」
あまりにも、ストレートなひと言。
ひとみはこうくるとは思ってもみなかった。
『こんなに、ストレートに聞かれたら、あたしだってストレートに答えてやるさ。』
「うん、大好きだよ。」
後藤のようなさりげなさを装って、ひとみは答えた。
- 57 名前:ひとみの家で 投稿日:2002年04月13日(土)01時33分03秒
- 「それってぇ、いつもよっすぃーがみんなに言っているのとは違う<好き>?」
今までとは違って、真剣な表情でひとみの顔を見る後藤。
「違う<好き>だよ。ずっと前から、大好きなんだ。たぶん、初めてあった時から。」
後藤から眼を逸らさずにひとみは言った。
「やっぱりねぇ〜、ごとーの思ってたとーりだよっすぃー、わかりやすぅ〜ぃ。」
ふっと、後藤の顔が崩れて、フニャっと笑った。
「え、ごっちん気づいてたの?」
「気づかないわけないじゃん。親友でしょ?ごとーとよっすぃーは。」
「・・・・でも、気持ち悪いよね?女の子が女の子を好きなんて。
あたしの事、嫌いになったでしょ?」
ひとみは自嘲的に笑った。
- 58 名前:ひとみの家で 投稿日:2002年04月13日(土)01時34分47秒
- 「何、言ってるの!そんなことでキライになるわけないじゃん。親友だって言ったでしょ」
普段、不機嫌な顔を見せることはあっても、
滅多なことでは感情を出さない後藤が声を荒げた。
「ごめん。でも、やっぱりヘンでしょ、こういうの。
あたしだって、ヘンだって思うもん。
女の子のことすきになるなんて、こんなの不自然だよ。
なんでこんなことになっちゃったんだろう。」
自分の感情が抑えられなくなって、段々と涙声になるひとみ。
「でもね、やっぱり梨華ちゃんのことが好きなんだ。どう考えても大好きなの。
だから、この気持ちは隠さなきゃってずっと思ってて…。」
最後の方は声にもならなかった。
「ヘンじゃないよぉ。好きになった人がたまたま女の子だっただけでしょ?
そんなのしょうがないじゃん。
知ってる?女の子っていうのは、必ず女の子を好きな気持ちっていうのを持っているんだって。
例えば、街を歩いてて、すれ違った女の子を見て、『あ、あのコかわいいなぁ』とか思うでしょ?
そういうのって、誰にでもあるよね?
それって、女の子のこと好きじゃないと思わないでしょ?
それにね、ごとーが思うのは、
結局、男の子も女の子も、女から生れるわけだから、女の人の事好きなの当たり前なんじゃないかなぁ。
だから、よっすぃーが女の子好きになってもおかしくないよ。
それに、よっすぃーが好きなのは、女の子じゃなくて、梨華ちゃんなんでしょ?」
無言でうなずくひとみ。
- 59 名前:ひとみの家で 投稿日:2002年04月13日(土)01時41分54秒
- 「だったら、女同士だからとか関係ないよ。
ごとーだって、そういう風に女の子好きになったことあるもん。」
「えっ!?」
「結局、ごとーは今のよっすぃーと同じで、自分の気持ちを言えなかったけどね。
だから相手には、ごとーの気持ち気づいてもらえなかったの。
でもね、自分の気持ちを言えなかったから、まだ自分の中にその気持ちが残っちゃってるんだ。」
「ちょ、ちょっと待ってよ。ごっちん、今彼氏いるんじゃなかったっけ?」
「うん。彼の事もちゃんと好きなんだよ。
2番目でも、好きな人といられるから、ごとーは今幸せだよ。
だけど、言えなかった気持ちって、普通に振られるよりも残っちゃうんだよね。」
少し悲しげに微笑む後藤。
「だから、よっすぃーはちゃんと梨華ちゃんに気持ち伝えなきゃ。
離れてから後悔してもダメなんだよ。
振られるの怖がってちゃ、ごとーみたいにいつまでも気持ち引きずっちゃうよ。
よっすぃーには、こんな気持ちになって欲しくないよ。」
- 60 名前:ひとみの家で 投稿日:2002年04月13日(土)01時43分59秒
- 「でも、やっぱり怖いよ。嫌われちゃうよ。
1年間ずっと仲間だと思ってた女の子に好きだなんて言われたら、あたしだったら多分ひくよ。
それに、あたしが気持ちを伝えたことで梨華ちゃんに迷惑かけちゃうかもしれない。
だって、あたしに告られたら断った後のことを考えて悩んじゃうよ。
あの梨華ちゃんだから、すっごい悪い方悪い方へと考えちゃうはずだし。
それにもし、梨華ちゃんに拒絶されたら、あたし立ち直れないかもしれない。」
「梨華ちゃんは、そんなことでよっすぃーのこと嫌ったりしないよ。
ちゃんと、よっすぃーのこと考えてくれると思うよ。
そりゃあ、あの梨華ちゃんだからたくさん悩むかもしれないけど、そんなの今考えてもしょうがないじゃん。
梨華ちゃんだって、自分のことを好きでいてくれる人の事で悩むなんて幸せだよ。
今は、梨華ちゃんはそういう風に見てくれないかもしれないけど、
よっすぃーの気持ちを知ったら、好きになるかもしれないでしょ?
そういう可能性を捨てちゃったら、いつまでも気持ちに区切りがつかないよ。」
「うん・・・・。でも、もうちょっと待って。
今はまだ、言えない。
ずっと、この気持ちは隠していくつもりでいたから、まだそこまでは出来ない。
だから、いつか、ちゃんと梨華ちゃんに告白できるようになるまで、
それまで見守っててくれる?」
「もっちろん。ごとーはいつでも、よっすぃーの味方だからね。
よっすぃーが梨華ちゃんに言うか言わないかはよっすぃーが決めることだもん。
ごとーは、ずーっとずーっと見守ってるよ。」
後藤は優しく微笑んだ。
- 61 名前:ひとみの家で 投稿日:2002年04月13日(土)01時47分58秒
- 「で、昨日は何があったわけ?
いきなり、声のトーンを変え、
いたずらっ子のような目をして、ひとみの顔を覗き込んだ。
「え?!」
「だからぁ、昨日梨華ちゃんちで何があったのよぉ?」
「あ、あぁ・・・。」
「あはっ、よっすぃー顔真っ赤だよ。
ねえねえ、どーやってチューしたのぉ?よっすぃーの気持ち、伝えたわけじゃないんでしょ?
あ、まさか梨華ちゃんを押し倒したとか?」
「1回目は、梨華ちゃんからされたのぉ。別に、あたしからしたわけじゃないよ。」
照れ隠しにぶっきらぼうに答えるひとみ。
「え?1回目ってことは、2回くらいしたってこと?」
「あ・・・。」
「よっすぃーって、わっかりやすぅ〜い♪
ここまでごとーにばれてるんだから、言っちゃいなよ。ねえねえ。」
「そんなにわかりやすいかなぁ、あたし。」
「よっすぃーはね、ポーカーフェイスっぽいんだけど、結構わかりやすいよ。
っていうか、僕にはわかる。」
「なに、文麿入ってんの。わかったよ、もう話すよ。
昨日、梨華ちゃんが相談あるって言うから、梨華ちゃんちに行ったのね。
それで、相談に乗ってあげてたら・・・キスされた。
お礼のキスだって・・・。」
「え?相談のお礼にキスされたの?ヘンなの〜。
梨華ちゃん、もしかしてよっすぃーのこと好きなんじゃないの?」
- 62 名前:ひとみの家で 投稿日:2002年04月13日(土)01時50分23秒
- 「そんなわけないじゃん。
だって、梨華ちゃんフツーに『矢口さんとかといつもやってるでしょ?』とか言っちゃって、
そのあとも全然なんともなかったもん。
こっちは、心臓バクバクだったのに。」
「あはっ、よっすぃーかわいそー。」
「もう、笑い事じゃないよ。びっくりして、体動かなくなっちゃったんだよぉ。」
「ごめんごめん。で、チューした後は?」
「コンビニ行って、買い物した。そのあとすぐに寝たよ。」
「じゃあ、2回目のチューは?」
「最近あたしね、ヘンな夢見るんだよ。
なんか、続きモノって言うか似たような感じのヤツ。
それがさぁ、夢の中での会話が、ヘンな言葉なの。
日本語じゃないんだけど、英語とか外国語でもないような、すっげーヘンな発音なの。
でね、つい最近見たのは、色白なカワイイ女の子があたしの腕の中で眠ってるの。
眠ってるって言うか、死んでる?のかな・・・。」
ちょっと考えて思い出そうとする。
「ねえ、夢の話は後でで良いから、2回目のチューは?」
- 63 名前:ひとみの家で 投稿日:2002年04月13日(土)01時51分20秒
- 「うん、だからね、その夢のせいなの。
昨日の夜、また見たの。今度は別の女の人と一緒にいたのね。
でね、その女の人にあたしは励まされてるの。
何言ってるのかとかはわかんないんだけど、励まされてることはなんか分かったの。
なんかぁ、今のあたしのこと応援されてるような気がしたし。
その一緒にいる時の雰囲気っていうか、相手の優しい顔とかがすっごい気持ち良くってさぁ・・・。
それで目を覚ましたら、目の前に梨華ちゃんがいたの。
あたしの寝顔見てたみたいで、『ふふっ、いい夢みてたでしょ?』とか言って、笑ってたの。
もう、ちょーかわいくってぇ。」
顔がどんどんとニヤけていくひとみ。
「寝ぼけてたのもあるんだけど、気づいたら梨華ちゃんにチュッってしてたの。
もう、後から思い出すと恥ずかしくって…ねぇ。
あはははははっ」
「聞いてる方が恥ずかしいよ。」
後藤はボソッとつぶやくと、体を伸ばして、
「ふぁ〜ぁ、眠くなってきちゃった。もう寝るねぇ、おやすみぃ〜。」
まだ、思い出してはへらへらしているひとみを残して、寝室に入っていった。
- 64 名前:Vicks 投稿日:2002年04月13日(土)01時54分41秒
- 久々の更新です。
まだ、読んでくれている方がいれば良いのですが…。
今回は、ごとーさんがちょっと大人です。
- 65 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月13日(土)05時45分17秒
- 読んでますよー
後藤が哲学的で驚いた!
- 66 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年04月16日(火)18時04分23秒
- 私も、読んでますよ〜!!
謎な部分が多いので、続き楽しみにしています。
がんがってください。
- 67 名前:後藤の夢 投稿日:2002年04月28日(日)15時48分01秒
幼いわたしは、手をつないで草原を歩いている。
繋いでる手の先には、わたしと同じくらいの年の少年。
キレイな金髪で、顔が隠れている。
繋いでいる手から伝わるぬくもりが、私の気持ちを落ち着かせてくれる。
そう、彼は、私の・・・お兄ちゃん。
私の大切な、唯一の肉親。
彼がぶっきらぼうだが、優しく私に話し掛ける。
不思議な発音の言葉だが、言っていることはなんとなく分かる。
<大丈夫だよ、僕がいるから・・・。>
蒼いキレイな瞳で微笑みかけてくれる。
その彼の顔は・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
- 68 名前:翌朝 投稿日:2002年04月28日(日)15時52分40秒
「ごっちーん、起きなよぉ。遅れちゃうよぉ。」
「う〜ん、お兄ちゃんもうちょっとだけ・・・。」
『は?いま、あたしの事お兄ちゃんと言いました?』
「ちょっと、ごっちーん。寝ぼけてないで起きてよぉ〜。」
なかなか起きようとしない後藤を揺さぶるひとみ。
「ごっちーん、先行っちゃうよぉ〜。」
「んあ?おはよぉ〜。」
ふにゃっと笑って、再び目を閉じようとする後藤。
「ダメだって、寝ちゃ。そろそろ行かないと遅刻するよ。
今日からコンサートのリハなんだから。ほら、早く起きて。」
そう言って、ひとみは後藤を急かすと出かける準備を始めた。
- 69 名前:翌朝 投稿日:2002年04月28日(日)15時54分26秒
ひとみと後藤がリハーサル室へ着くと、
すでに他のメンバーは準備を済ませていた。
「珍しいねぇ、よっすぃーが遅刻するなんて。」
ストレッチをしながら、矢口が声をかけた。
「はぁ、すみません。」
謝りながら目で梨華を探すひとみ。
「あはっ、ごとーが寝坊しちゃったんだぁ。ごめんなさーい。」
「なんだよ、またよっすぃ〜の家に泊まったの?」
「えへへへへっ。」
笑ってごまかす後藤。そして、
「梨華ちゃん、いるよ。」
こそっとひとみに後藤が耳打ちする。
「梨華ちゃん、おはよー。」
『よっしゃ、自然に自然に。』
いつものように振舞って、ひとみは梨華に近づいていく。
「あ、おはよ。」
なんとなく、梨華の表情がぎこちない。
そのまま、視線を逸らし、すっと辻加護の所へ行ってしまった。
『え?なに、今のは??』
梨華の反応に戸惑う受けるひとみ。
「よっさん、嫌われちゃったんちゃう?」
様子を見ていた中澤が、ニヤニヤしながら後ろから近づいてきた。
「えっ・・・・・・。」
「ちょっと、冗談やて。そない顔せんでもええやん。あんたら、ケンカでもしたん?」
「そんなことありませんよ。ケンカなんて…。」
無理して笑顔で答えるひとみ。
『ケンカどころか、一昨日はすっげーいい感じだったのに・・・。わけわかんないよ。』
「じゃあ、なんやろなぁ?まぁええわ、ちゃんと仲直りするんやで。
そうそう、あんた、最近ちょっとおかしいんとちゃう?
何かあったら裕ちゃんに言いやぁ。
裕ちゃん心配やわ〜。安心して卒業させてよ、ほんま。」
そう言ってひとみの頭を軽く撫で、
「ほら、リハ始まるで。」
と、ひとみを促した。
- 70 名前:翌朝 投稿日:2002年04月28日(日)15時58分51秒
- リハが終わり、帰ろうとする梨華をひとみが引き止めた。
「梨華ちゃん、ちょっといいかな。」
「な、なに?」
「ここじゃなんなんで、外出ない?」
控え室内にいるメンバーの様子をうかがって部屋の外へ連れ出そうとした。
やはり、今朝の梨華の様子が気になってしょうがない。
「ごめん。今日あいぼんがウチに泊まりに来るから、一緒に早く帰らないと。」
梨華は、たまたま近くにいた加護の腕をガシっと掴んで、早口で言った。
「え?加護はぁ、今日梨華ちゃんち泊まる・・・・ウゴッ」
加護の口を手で抑えると、
「ほら、あいぼん帰るよ。」
そう言って加護を引きずって出て行ってしまった。
「なんなんだよぉ。」
ひとみは明らかに避けられているのを感じ、梨華の後姿につぶやいた。
そんなひとみと石川の様子を、離れたところで見ている中澤。
「はぁ〜、若いってエエわぁ。」
うれしそうに吉澤の後ろ姿を見つめていた。
- 71 名前:翌朝 投稿日:2002年04月28日(日)15時59分34秒
「梨華ちゃん、よっすぃーとケンカでもしたの?」
訳がわからずに、梨華に連れ出された加護は、
早足で前を歩いている梨華を小走りで追いかけた。
「ねえ、梨華ちゃん。加護はぁ、どぉすればいいの??ウッッ・・・。」
突然梨華が立ち止まった。当然、加護は梨華の背中に激突。
「ちょっとぉ、突然止まらないでよぉ。ねぇ、梨華ちゃん!!」
半ギレして梨華の前へ回り込んだ。
睨み付けるように梨華を見上げると、
「ヒック、ごめっ…。あいぼん、ごめん。ヒック・・・。」
肩を震わせて、梨華が泣いている。
「えっ、加護そんな怒ってへんやん。どないしたん、梨華ちゃん?」
「ううん、なんでも・・・ないの。」
加護を安心させようとして、無理に笑顔を作る梨華。
「よっすぃーと何かあったの?」
「ううん、なんでもないよ。ちょっと、疲れちゃっただけ。
いきなり連れてきちゃってゴメンね。あいぼんも疲れてるのに。
じゃあ、私帰るから。今日のことは気にしないでね。」
そう言って、涙を拭いながら梨華は走って行ってしまった。
「いや、気にしないでって言われても・…ねぇ。」
どうしていいのか分からずに、梨華を見送る加護だった。
- 72 名前:不眠の日々 投稿日:2002年04月28日(日)16時05分01秒
- 結局、それから何日もひとみと梨華はギクシャクしたままだった。
ひとみから話し掛けると、返事は返ってくるが会話は続くことはなかった。
偶然視線が合ったことはあっても、梨華が視線を逸らしてしまう。
理由もわからないままそんな日々が続き、とうとうツアー初日は明日に迫っていた。
「よっすぃー、大丈夫?最近顔色悪いよ。」
最終リハが終わったと同時に床に座り込んだひとみの隣に、心配そうに後藤が座った。
「うん、大丈夫。ちょっと、疲れてるだけだよ。」
青白い顔をして元気なくひとみが答えた。
「大丈夫じゃないよ。よっすぃー、最近ちゃんと寝てる?もしかして、寝てないんじゃないの?」
ひとみの顔を覗き込む後藤。
「うん、実は最近よく眠れないんだよね。」
「それって、梨華ちゃんが原因?。」
「うん・・・でもそれだけじゃないの。
前に、ヘンな夢見るって言ったじゃん?最近、ほとんど毎日見るんだよね。
なんかぁ、最初の方は結構楽しかったんだけど、最近のは見るのが辛くって。
すっごく嫌な夢なんだよ。
それまで仲が良かった人たちがどんどん死んでいっちゃうし・・・。
もう、辛くて怖くて見るのも嫌だなとか思ってたら、眠れなくなってきちゃった。」
後藤のほうも見ずに、ボーっと前を見つめるひとみ。
- 73 名前:不眠の日々 投稿日:2002年04月28日(日)16時07分33秒
- 「始めは、梨華ちゃんに嫌われちゃったのかなぁとか考えてて、
なかなか寝付けなかったんだけど、だんだん毎日ヘンな夢見るようになって・・・。
はぁ・・・やっぱり、あたし梨華ちゃんに嫌われちゃったのかなぁ・・…。
結構頑張って普通に話し掛けたりしたんだけど、もう限界かなぁ。
やっぱり、あきらめるしかないのかなぁ。」
ひとみはそう言いながら、タオルに顔をうずめた。
「よっすぃー・・・。
夢の事とかは、ごとーは良く分からないけど、まずは梨華ちゃんとの事を解決しないとダメなんじゃないかなぁ。
あきらめるにしても、よっすぃーの気持ちをそのままにしてたら良くないと思うよ。」
ふと、後藤は視線を感じてその方向を見ると、梨華が心配そうにこちらを見ていた。
「それにね、嫌われてなんてないと思うよ。
ごとーね、あれから梨華ちゃんを観察してたんだけど、よっすぃーのことを見てることが多かったもん。
でも、ごとーは梨華ちゃんとあんまり話とかしないから、直接は聞けてないんだけどね。」
「フフッ、ごっちん観察って…。」
後藤の観察という言葉がおかしくて、吉澤はちからなく笑った。
「そう、観察。ごとー、結構観察好きだもん。アハッ。あ、そうだ!」
後藤は立ち上がり、「加護ぉー!!」と叫んで加護に向かって手招きをした。
- 74 名前:不眠の日々 投稿日:2002年04月28日(日)16時08分24秒
- 「なんですかぁ?加護、なにか悪いことしましたぁ??」
ててててっと加護が走ってきた。
「ね、加護。お願いがあるんだけど。」
そう言って加護の耳にごにょごにょと何かを言った。
「あいっ。わっかりやしたぁ〜。」
再びててててっと走り去る加護。
「あいぼんに何言ったの?」
「ん?なんでもない。
ほら、みんなホテルに行く用意してるから、うちらも行こう。」
そう言って、ひとみに手を貸し立ち上がらせた。
- 75 名前:Vicks 投稿日:2002年04月28日(日)16時12分07秒
- 久しぶりに更新しました。
読んでくれている方がいてうれしいです。
まだまだ、文章がおかしい部分が多くて納得出来てないですが、大丈夫でしょうか?
- 76 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月29日(月)03時39分04秒
- 早く仲直るといいなぁ・・
- 77 名前:バッタ 投稿日:2002年05月02日(木)14時11分12秒
- 大丈夫ですよ(w
あぁこの先どうなるんでしょ?
引き続きガンバッテくださぁい。
- 78 名前:梨華の気持ち 投稿日:2002年05月03日(金)15時13分49秒
- ホテルに着くと、メンバーそれぞれが、振り当てられた部屋へと散っていった。
地方でのツアーの場合、だいたい2人1部屋で割り当てられる。
今日は、ひとみと後藤、梨華と加護、矢口と安倍、保田と中澤、辻と飯田という組み合わせで割り振られた。
加護が、部屋に荷物を置いてすぐに辻のところへ遊びに行ってしまったため、
梨華はひとり、部屋に取り残されてしまった。
いつもなら、ひとみが遊びにきてくれたりするが、やはり今日は来る気配はない。
シャワーでも浴びようかと思うが、なかなか体を動かすことが出来ずに、ベッドに寝転んでいた。
ひとみとキスをしたあの日から、梨華はひとみの顔をまともに見ることが出来なかった。
あれからも変わらずに、ニコニコして話し掛けてくれるひとみ。
その笑顔がまぶしくって、ドキドキして、どんどんひとみのことを好きになってしまう。
ひとみにドキドキしているのを気づかれるのが恥ずかしくて、つい素っ気ない態度を取ってしまう。
そして、女の子を好きになってしまった、言い様のない後ろめたさから、
これ以上、ひとみのことを好きにならないように距離をおかなくてはと思い距離をおき始めた。
それでも、目はずっとひとみを追ってしまっている。
そのせいで、偶然ひとみと目が合ってしまったときに、
わざとらしく目を逸らしてしまったこともある。
逃げ出したこともある。
それでもめげずに話し掛けてくれるひとみに対して、何度も素っ気無い態度を取ってしまった。
しかし、ここ2,3日はひとみも話し掛けてこなくなってしまった。
「やっぱり、よっすぃーに嫌われちゃったかなぁ…。」
真っ白な天井を見つめ、呟いた。
- 79 名前:後藤の行動 投稿日:2002年05月03日(金)15時15分17秒
- そこへ、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。
「はぁ〜い。」
加護が帰ってきたのかと思いドアを開けると、そこには意外な人物が立っていた。
「ごっちん・・・。」
「梨華ちゃん、ちょっといい?」
ひとみと一緒にいるとき以外には、あまり会話をしたことがない後藤が何しに来たのだろうかと、
不思議に思いながら、梨華は後藤を部屋へ入れた。
後藤は梨華の荷物が散らばっていない方のベッドへ腰掛けた。
「ごめんねぇ、散らかしちゃってて。」
梨華は自分のベッドの上にある荷物を寄せて、そのベッドへ腰掛けた。
「こうして梨華ちゃんと話するの初めてかもね。びっくりした?」
笑顔で後藤が言った。
「そうだね。」
梨華は正面に座っている後藤の表情を探るように答えた。
「アハッ、梨華ちゃんもしかしてごとーにビビってる?なんか怯えてない??」
あまりにも梨華が戸惑った顔をしているので、後藤はおかしそうに言った。
「そんなことないよぉ。それより、何か話があるんじゃないの?」
梨華も後藤につられて笑顔で聞いた。
- 80 名前:後藤の行動 投稿日:2002年05月03日(金)15時17分12秒
- 「んあ?べっつにぃ〜。ただ、明日からコンサート始まるでしょ?なんか落ち着かなくって。」
足をぶらぶらさせながら後藤は言った。
「あ、私も。1年やってても慣れないなぁ。それに今回で中澤さん卒業しちゃうしねぇ。
これからどうなってくのかなぁとか考えちゃうよね?」
「そうだねぇー。裕ちゃんいなくなっちゃうかと思うと、寂しいよね。
それに、ごとーソロで歌とかあるし、超緊張しちゃってぇ。」
「えぇ〜、ごっちんも緊張するんだぁ。」
「そりゃあ、するよぉ。もう、心臓ドキドキもんだよ。」
「へぇ〜、なんか意外だなぁ。でも、ちょっとうれしい。」
本当にうれしそうに言う梨華。
「なんだよ、それぇ。」
「だってぇ、ごっちんいつも落ち着いてるんだもん。年下なのに、しっかりしてるし。」
「ふ〜ん、そうかなぁ。」
ふと、会話がなくなり沈黙する二人。
その沈黙を破るように梨華は言った。
- 81 名前:後藤の行動 投稿日:2002年05月03日(金)15時18分19秒
- 「ねえ、ごっちん。やっぱり、何か話があってきたんでしょ?
だって、今までわざわざごっちんから話に来ることなかったし。」
「あはっ、わかっちゃった?」
後藤はわざと明るく言いながら、立ち上がり部屋の中をうろうろとしながら話し始めた。
「実はさ、最近よっすぃーが元気ないんだよね。
梨華ちゃんさぁ、最近よっすぃーとちゃんと話してないでしょ?
それでよっすぃー、梨華ちゃんに嫌われちゃったんじゃないかって悩んでるみたいなんだよねぇ。
本当なら、ごとーが口出しすることじゃないとは思うんだけど、ちゃんとよっすぃーと話してくれないかな?」
梨華は後藤の視線から逃れるように俯いた。
「ね、梨華ちゃん。梨華ちゃんはよっすぃーのこと嫌いになっちゃった?もう、話するのもイヤ??」
優しく後藤は尋ねた。
無言で首を振る梨華。
「そう、良かったぁ。じゃあ、お願いね〜。おやすみぃ。」
ニコっと笑って梨華の肩をポンと叩くと、後藤は部屋を出て行った。
「ちょっと、ごっちーん・・・・。無理だよ、もうよっすぃーに嫌われちゃってるもん。」
後藤が閉めたドアを見つめて、寂しそうに言った。
- 82 名前:後藤の行動 投稿日:2002年05月03日(金)15時21分17秒
- 後藤は梨華の部屋を出ると、辻の部屋へと向かった。
部屋をノックすると、加護が出てきた。
「加護、サンキュー。ゴメンね、わざわざ部屋から出てもらって。」
「ううん、大丈夫ですよぉ。もう、加護部屋に帰ってもいいですかぁ?」
「うん、ありがと。あ、それと私に言われて部屋から出たこと、梨華ちゃんには言わないどいてね。」
「はぁ〜い。でも、なんでですかぁ?」
「ま、いいじゃん。じゃ、そゆうことでよろしく。」
「あの、ごとーさん。」
部屋へ戻ろうとした後藤を、加護が引きとめた。
「あのぉ、よっすぃーと梨華ちゃんってケンカしてるんですかぁ?」
心配そうな顔の加護。
「ん?どして?」
聞き返す後藤に、加護はリハ初日の梨華の様子を話した。
「そっかぁ。」
何か考えている様子の後藤。そして、ニコッと笑い、
「でも、大丈夫だよ。もうすぐ、仲直りできるから。加護は心配しなくて良いよ。
ほんっとに、あの二人はしょうがないね〜。」
そう言って、加護の頭をくしゅっと撫でた。
加護が梨華との部屋へ戻るのを見届けると、
「さ、私も寝よーっと。」
そう呟いて、後藤は部屋へ戻ろうと振り返った。
「あ・・・裕ちゃん。」
後藤のすぐ後ろに、中澤が立っていた。
- 83 名前:後藤の行動 投稿日:2002年05月03日(金)15時24分00秒
- 「エエ子やなぁ、ごっちんは。」
ニヤニヤしながらそう言って、後藤の肩に手をまわした。
「な、なにが?」
「なにがちゃうやん。見とったでぇ〜、エエとこあるやん。」
「ん??」
それでもとぼけようとする後藤。
「いやぁ〜、裕ちゃん知らんかったわぁ。ごっつぁんがこんなにエエ子やなんてぇ。」
更に顔を近づけ、後藤の頭をなでなでする。
「ちょ、ちょっと裕ちゃん…。」
「あんたなぁ、裕ちゃんがあの二人のこと気づかんとでも思ったか?バレバレやっちゅうねん。
まぁ、ここじゃ何やし、ウチの部屋で話しよか?」
そう言って、後藤の返事も聞かずに後藤を部屋に連れて行った。
中澤と保田の部屋で、後藤は今までの吉澤のことを話した。
吉澤が、梨華を好きなこと。そして、最近梨華に冷たくされて悩んでいることなどだ。
ほぼ、脅されて話したと言ったほうが正しいだろう。
後藤としては、人の悩みを別の人間に話してしまうことは憚られた。
- 84 名前:後藤の行動 投稿日:2002年05月03日(金)15時26分52秒
- 「やっぱ、思っとったとおりやなぁ。さっすが裕ちゃんや。」
後藤の気持ちも知らずに、うれしそうに頷く中澤。
それとは対照的に、後藤の話にイマイチついていけてない様子の保田。
「ちょ。ちょっと待ってよ。ってことは、吉澤は石川のことが好きで、石川も吉澤のことを意識してるって事?」
「だからぁ、さっきからごっつぁんがそう言ってるやん。」
「いや、あの、でも、あの二人は女の子同士だよ?」
「関係あらへんがな、そんなの。好きになったのが、たまたま女だったちゅう話しやん。
それともあれか、圭坊はそんなん認めへんちゅうんか?」
「そういうことじゃないけどぉ、ほら、それにメンバー内でそういうのって・…ねぇ。」
「そうかぁ〜?ウチはそうゆうの気にせぇへんけどなぁ。まぁ、それは二人が付き合うっちゅう事になってから考えればエエんちゃうん?」
「そうだけど…。」
まだ、納得できていない様子の保田。
「とにかく、どっちかが告らない限り、あのニブちんな二人はお互いの気持ちに気づかないんやろうなぁ。」
何か考えている様子の中澤。
- 85 名前:後藤の行動 投稿日:2002年05月03日(金)15時28分08秒
- 「裕ちゃん、変なコト考えないでよ。裕ちゃんが首つっこむと、余計ややこしくなりそうだよ。」
中澤にくぎを刺す保田。
「わかってるっちゅうねん。ただ、なんとな〜くそういう雰囲気つくるくらいはエエやん。」
「あ、今なにか企んでるでしょ?祐ちゃんがそういう顔してる時って、ろくな事考えてない時だよ。」
「うわっ、ひどいわぁ圭坊。裕ちゃんはいっつもメンバーの事をやなぁ…。」
「あのさぁ。」
それまで黙っていた後藤が、中澤の言葉を遮るように言った。
「あのね、今の話、よっすぃーにはごとーが言ったって言わないで欲しいんだけど。」
「あぁ、そやね。ごめんなぁ、無理して話させて。
でも、誤解して欲しくないんやけど、べつに面白がってるわけじゃないんよ。あたしもあの二人のこと心配だったんやで。」
「うん、わかってる。けど、やっぱりよっすぃーはごとーの事信頼して相談してくれてたわけだから…。」
「そやなぁ。わかった、絶対言わへんから安心しぃ。」
「うん…。そろそろ、部屋に帰っても良いかな?よっすぃー1人で待ってるし。」
そう言って、後藤は立ち上がった。
「ごめんなぁ、ごっつぁん。悪いようにはせえへんからな。」
「うん、わかってるよ。気にしてないから。」
後藤は笑顔で答えた。
- 86 名前:後藤の行動 投稿日:2002年05月03日(金)15時29分45秒
- 「ねえ、そういえば吉澤、最近眠れないって言ってたんだよね?」
思い出したように、保田が後藤に声をかけた。。
「うん。なんか変な夢見るとか言ってたけど。」
「変な、夢…。」
そう言って、考え込む保田。
「じゃあ、ごとーは部屋に戻るから。」
考え込んでいる保田を気にしながらも、後藤は部屋を出た。
後藤が部屋を出て行ったのを、目で確認すると、
「ねえ、吉澤が眠れなくなった夢って…。」
「まあ、そういうことやろな。ただ、もう少し様子を見といたほうがエエやろ。」
深刻な顔して、2人は頷いた。
「ねえ裕ちゃん、吉澤大丈夫かなぁ。ちゃんと寝れてるのかなぁ。」
中澤の隣のベッドから保田が声を掛けた。
「あぁ、忘れとったわ。吉澤を寝かそう思ってたんや。」
ガバッとベッドから起き上がると中澤は言った。
「ちょっと、寝かすってまさか<チカラ>使う気じゃ…。」
「そうや。ちょっとくらいエエやん。これで吉澤が眠れるんだったらな。」
「でも、やっぱマズくない?」
「なんでぇ?ちょっとだけやん。」
「もう、しょうがないなぁ。ごとーにばれないようにしてよ。」
そう言って部屋から出ていく中澤を保田は追いかけた。
- 87 名前:Vicks 投稿日:2002年05月03日(金)15時38分11秒
- G.W.なのにヒマなので、こんな時間に更新しました。
なんだか、ここのよっすぃーはちょっと情けないかな。
ごっちんは、大人だし…。
どうなるんでしょう??(w
- 88 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月04日(土)16時04分19秒
- 夢とか力とか謎が・・・
どう関わってくるのかな
- 89 名前:ねーさんとよっすぃー 投稿日:2002年05月20日(月)01時07分31秒
- 「よっすぃー、起きてよぉ」
後藤に体を思いっきり揺らされて、ひとみは目を覚ました。
「ごっちん、おはよぉ」
「ほら、早く着替えて。みんなもう、朝ご飯食べに行ってるよ」
「ほぇ?そんな時間??もしかして、すっげーたくさん寝てた?」
「うん、グッスリだったよ。ごとーよりも早く寝てたし。よかったね、よっすぃー」
「そっかぁー、なんか気持ちいいね、たくさん寝るって。今日は頑張れそうだ。うっしゃー」
ひとみは元気良くベッドから起き上がると、さっさと着替え始めた。
『あれ?でもいつの間に寝たんだろう。
ごっちんがシャワー浴びてる間に中澤さんと圭ちゃんが来て・…?』
「よっすぃ〜、どした?」
考えながら動きが止まってるひとみに後藤は気づいた。
「ん?なんでもない。行こう、ごっちん」
それからは、ひとみにいろいろなことを忘れさせてくれるくらい忙しい毎日だった。
ツアーと平行して、テレビ収録や雑誌の取材。
あっという間にツアーも終盤に差し掛かってきた。
横浜での初日、その日は昼夜2回公演のため体は疲れきっていた。
相変わらず、梨華とはうまく会話が出来ないが、それさえ当たり前のように感じてきてしまっていた。
今日のひとみは、中澤と一緒の部屋。
今までに一緒の部屋になったことのなかったメンバーと、順番に一緒の部屋で泊まると突然宣言した中澤。
そして、今日はひとみの番だった。
- 90 名前:ねーさんとよっすぃー 投稿日:2002年05月20日(月)01時08分42秒
- ちょうどいい機会なので、ひとみは今まで感じていた疑問を口にした。
「あのぉ、いつも夜、中澤さん何しに来てたんですか?何か用があったんですよね?
でも、あたしすぐに寝ちゃっててすみません」
今まで2人で話をすることなどなかった中澤が、ツアー中毎日のように部屋に来た。
なのに、自分はすぐに寝付いてしまい、中澤の訪問目的がよくわからない。
「あぁ、べつにたいした事ないから気にせんでもエエよ。ただな、あんた最近寝れてなかったんちゃうか?」
「はぁ・・・」
それとこれの何の関係があるのだろうか。
ひとみは不思議に思いながら、中澤の次の言葉を待った。
「顔色悪かったし、なんか悩みでもあるんかなぁ思っとったんよ。
よっさんは、あんまり相談とかしてくれんやん?
あたしとしては、もうちょっと頼ってもらいたいってゆうのもあったんや。ごめんなぁ、頼りないリーダーで」
「そんなことないですよ。あたしこそ、なんかいつも迷惑掛けちゃってて…。
それに、嫌われてるのかなぁとか思ったりなんかしちゃってて、なかなか話できなくってて。ハハハッ」
「まぁ、あれやね。あたしがもうちょっと話しやすければよかったんやね。
でな、最後にちょっと助けよ思うて、よっさんが寝る手伝いさせてもらったんや」
『ん?寝る手伝い…?え、何か変なコトされてないよね??』
ひとみの顔が不安げに少し引きつったのを中澤は気づいたようで、
「ちょっと待ってぇ〜、何も変なコトしてへんで。ただな、あたし最近催眠術みたいなやつできるんよ。
で、よっさん寝るのにエエかなぁ〜って思ってやってみただけやん。ちゃんと寝れてるやろ?」
そう言って、確かめるようにひとみの顔を見た。
- 91 名前:ねーさんとよっすぃー 投稿日:2002年05月20日(月)01時16分00秒
- 「はぁ、催眠術・…」
微妙な表情で呟くひとみ。そして、中澤の顔を見る。
「あれ?そういえば眼、蒼くないですね。コンタクト入れてるときって、催眠術できないんですか?」
いきなりで、何を言われてるのか分からない様子の中澤。
「いや、あの、カラコン入れてないんですか?」
「ああ、カラコンね。あたしの<チカラ>って、コンタクト入ってると働かないんよ」
唐突に話題が変わって、苦笑しながら答える。
「ほぇ?<チカラ>ってなんすか?」
「え、いや、あの、ほら、催眠術のことよ。あははははっ」
慌てた様子で答える中澤。
ひとみは、そんな中澤の様子など気にもとめずに、
「なんかぁ、<チカラ>ってどっかで聞いたことがある響きなんですけどぉ」
「へ?どこで??」
「ん〜〜〜〜〜、どこだっけなぁ」
頭を抱え込んで考えるひとみ。
そのままベッドの上でゴロゴロと動きまわりながら、
「あれ?」とか、「う〜〜〜ん。」とか言いながら考えている。
「よっさん、もうエエって」
いつまでも考えているひとみに、半ば呆れ顔で中澤は言った。
「良くないっすよぉ」
ひとみはガバッとベッドから起き上がった。
「なんかぁ、こういうのってすっごい、こう、ウワーってなるじゃないっすかぁ。こういうのって、イヤなんですよぉ」
「そうかぁ?まぁ、思い出したら教えてな。じゃあ、先シャワー浴びさせてもらうわ」
まだ考えているひとみを横目に、中澤はバスルームへと入っていった。
- 92 名前:ねーさんとよっすぃー 投稿日:2002年05月20日(月)01時17分26秒
- 中澤がシャワーから出てきても、まだひとみは唸っていた。
「よっさん、とりあえず風呂入ってきなって。そしたら、裕ちゃんがゆーっくり寝かせてあ・げ・る」
中澤はそう言って、ウインクをした。
「え、あ、いや〜、あははははっ。さぁーて、シャワーでも浴びてこよっかなぁ。」
引きつった笑いをしながら、ひとみはあわててバスルームへと駆け込んでいった。
- 93 名前:ねーさんとよっすぃー 投稿日:2002年05月20日(月)01時18分10秒
- 「なあ、よっすぃ〜?」
ひとみをベッドの上に座らせ、そして自分もその正面に座って、中澤が言った。
「なんですか?って、あはっ。初めてよっすぃーって呼んでくれましたね」
ひとみは素直に、それがうれしかった。
今まで中澤は、呼び捨てか「よっさん」としか呼んでくれなかったから。
なんだか、少し中澤に近づくことが出来たような気がした。
「ああ、そやね。嫌っだったらエエよ」
ちょっと照れくさそうな中澤。
「いや、すっげーうれしいっすよ。えへへっ」
「そうかぁ〜?カワイイやっちゃなぁ」
ひとみの頭をなでなでする。
「そうや、かわいいついでに姉さんから1つ言ってエエ?」
「なんですか?」
まだニコニコしながら、ひとみは興味津々で聞きかえした。
- 94 名前:ねーさんとよっすぃー 投稿日:2002年05月20日(月)01時19分06秒
- 「よっすぃー、今いくつやったっけ?」
「15ですけど・・・。あ、でも、もうすぐで16ですよ」
「そうかぁ、15かぁ。エエなぁ・…って、そうじゃなくってやな、15っつー事は、まだまだ若いんやで。
だから、周りの事とか気にして自分の気持ちを抑えたりしたらあかん。
若いからこそ、できることっちゅーことがある。
そして、若いからこそ許されるっちゅーこともある。
仕事にしろ、恋愛の事にしろ、自分の思ったことをバーンとぶつけなあかん。
そうでもせんと、年とった時に後悔するで。
あたしは、よっすぃーに後悔とかしてほしない」
だんだんと興奮してきたのか、身振り手振りが大きくなっていく中澤。
「1年間よっすぃー達を見てきたけど、4期メンバーの中でよっすぃーはまだ自分のキャラを出せていないと思う。
他のメンバーのことを気づかっているのはよくわかる。
けどな、もっともっと、自分を出していかなやっていけへんで。
よっすぃーがもっとキャラを出していけば、それはそれで娘。全体も良い方へ進めると思う。
もっと、周りに迷惑掛けてもええんよ。
何か悩み事とかあったら、相談したらええ。
あんたの周りには、圭織やなっち、圭坊に矢口、それにごっちんっつう先輩がおるんや。
あの子らだって、そうやって成長してったんやからな。
だから、もっと自分の気持ちを周りにぶつけて欲しい。
そして、いろんなことに挑戦していって欲しい。
わかるか?」
真剣な顔して頷くひとみの顔を、中澤は言い聞かせるように覗き込んだ。
- 95 名前:ねーさんとよっすぃー 投稿日:2002年05月20日(月)01時21分26秒
- 「それにな、若いうちはたくさん恋愛しといたほうがエエで」
「へ?」
『突然何を言い出すんだろう?』
中澤の意図が良くわからない。
「若いうちならいくらでも気持ちのやり直しができる。
だから、たとえ振られると分かってても、自分の気持ちは伝えるべきやと思うで。
そうでもしないと、いつまでも次に進まれへんからな」
「はぁ。振られるってわかってても、ですか?」
とりあえず、話を合わせてみる。
「そうや。若いうちにたくさん人を好きになって傷ついても、また新しい恋をすればエエんちゃうん?
そうやって、ステキな大人になっていくんだと、裕ちゃん思うで。
たとえ、相手が女の子だったとしても、やで」
その言葉に驚いて、中澤の顔を見つめるひとみ。
「あんたなぁ、気づかれへんとでも思っとったんかぁ?裕ちゃんやで?リーダーやで?
そんなもん、お見通しや」
得意気に言って、まだ驚いているひとみの額をつついた。
- 96 名前:ねーさんとよっすぃー 投稿日:2002年05月20日(月)01時22分02秒
- 「そろそろ決着つけてくれんと、裕ちゃん落ち着いて卒業できひんわぁ。
石川は、あんたに告られたからって、あんたを毛嫌いするような子やないやろ?
ちゃんと、自分の気持ち伝えんと、今のままずーっと先に進めんで。
エエかぁ、当たって砕けろやっ」
「え、砕けるんすか・…」
「いや、砕けちゃあかんやんなぁ。ハハハ。
それと、他のメンバーの事とかも心配する必要ないで。
あの子らも、それくらいでどうこう言うような心の狭い人間やない。せやろ?」
中澤はそう言って、ひとみの眼を真っ直ぐに見つめた。
ひとみはここまで自分のことを、中澤が考えてくれていたことがとてもうれしかった。
『やばい、なんか泣きそうだ。』
涙を見られないように、下を向いて手の甲で涙を拭った。
「ほんっとに、あたしの卒業までにはなんとかしてや。
いつまでもあんたら二人がぎこちないままだと、落ち着かんからなぁ。
さて、明日も2回公演やし、そろそろ寝よか」
そう言って、また、ひとみの頭をくしゅくしゅっと撫でると、中澤はひとみをベッドへ寝かせ、
目を見つめて<チカラ>を使おうとした。
- 97 名前:ねーさんとよっすぃー 投稿日:2002年05月20日(月)01時23分01秒
- 「今日は、自分で寝ます。大丈夫です。
なんか、中澤さんに言われて今まで悩んでいたことふっきれました。
ありがとうございます。だから、もう大丈夫です」
『後悔したくない。このままこの気持ちを終わらせることなんて、できないんだから』
そう思うと、今までずっとグズグズと考え悩んでいたことがウソのようにすっきりとした気分だった。
「なら、エエけど。もし、寝れなかったらちゃんと言うんやで。」
「はい。じゃあ、おやすみなさい。」
そう言うと、ひとみは目を閉じた。
すると、5秒もしないうちにひとみは寝息を立て始めた。
「はぁ〜、立ち直りの早い子やねぇ〜。がんばりぃ、よっすぃ。裕ちゃん応援してるで。」
すやすやと眠るひとみの寝顔に、中澤は優しく言った。
- 98 名前:Vicks 投稿日:2002年05月20日(月)01時25分00秒
- はぁ…ダラダラと続いてしまってます。
今日の更新分は、ねーさんにも心配されてるよっすぃー篇でした。
これからは、少しは好転してくるんではないでしょうか。
- 99 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月20日(月)17時16分30秒
- うーむ。やっと好転ですか
良かった
- 100 名前:名無しさん 投稿日:2002年06月21日(金)23時07分24秒
- 最終更新から1ヶ月、作者さん、お元気でしょうか?
更新お待ちしてます、頑張って
- 101 名前:Vicks 投稿日:2002年07月13日(土)12時09分45秒
- 99>名無し読者さま。
遅くなりました。やっと、やっと好転?します。
100>名無しさん さま。
すみませんっ。元気にやっております。
かなりどうしてよいのか分からなくなっておりました。
まだ、読んでくれる人がいればいいけど…。
ということで、細々と更新させていただきます…。
- 102 名前:ひとみの決心 投稿日:2002年07月13日(土)12時11分53秒
- 翌日のひとみはここ数日の元気のなさとは打って変わって、とてもハイテンションだった。
今日の公演終わったら、梨華に自分の気持ちをはっきりと伝えよう。
そんな決心を胸に、今日1回目の公演が始まるのを、舞台袖で待っていた。
周りのメンバーからは、明らかに機嫌がよく見えたのだろう。
矢口や安倍はしきりに「どうしたの?何かあったの??」と連発して聞いてくる。
後藤も、ひとみの変わりように驚いたようで、
「よっすぃー、なにかあったの?昨日裕ちゃんに何かされた?」
と、心配そうに聞いてきた。
「えっとね、ごっちん。今まで心配かけてごめんね。あたし、梨華ちゃんに気持ち伝える決心ついたよ」
「どしたの?急に」
不思議そうな顔をする後藤。そして、何か思い出したように、
「あ、昨日裕ちゃんと一緒の部屋だったでしょ。何か言われたの?」
ちょっと焦ったような顔をした。
- 103 名前:ひとみの決心 投稿日:2002年07月13日(土)12時12分23秒
- 「なんか、あたしの気持ち、中澤さんにはバレてたみたい。昨日いろいろ話して思ったんだ。後悔したくないって。
だから今日の夜、梨華ちゃんに気持ち伝えるよ」
ひとみは、離れた所にいる梨華を見つめて言った。
梨華は、おそろいのタンポポの衣装を着ている飯田と真剣な顔をして話をしている。
「そっかぁ、なぁんか悔しいな」
同じように梨華を見つめて後藤が言った。
「なにが?」
「だってさぁ、今までごとーが後悔しないように伝えろって言ってたのにさぁ、結局裕ちゃんの言葉で決心ついたんでしょ?やっぱ、悔しいなぁ」
「違うよ、ごっちん。ごっちんが今まで言ってくれてなかったら、中澤さんの言葉だけじゃ決心つかなかったよ。
ごっちんが相談にのってくれてて良かったよ。ありがとね」
ひとみはそう言って、後藤の肩に手を回して引き寄せた。
「ごっちん、あたし頑張るから。ダメだった時は、慰めてね」
「おうよ、まかせとけって。」
後藤はニコッと笑って、ひとみの頭に軽く頭突きした。
- 104 名前:ひとみの決心 投稿日:2002年07月13日(土)12時13分02秒
- 開演時間になって、いつものようにメンバー全員で円陣を組んだ。
さりげなく、ひとみの隣に中澤が立つと、
「よっすぃー、言う決心ついたんか?」
周りのメンバーには聞こえないような声で、尋ねてきた。
「はい。当たって砕けろ、です」
「そうかぁ」
中澤はニコッと微笑むと、片手を円陣の中心に伸ばし
「がんばっていきまーーー」
「「「しょいっ」」」
全員の声が合ったと同時に、ひとみの背中をポンポンと叩いた。
- 105 名前:ひとみの決心 投稿日:2002年07月13日(土)12時13分44秒
- ミニモニ。の4人がステージに上がると、会場のボルテージは一気に上がった。
この次は、プッチモニ。の出番だ。
後藤、保田、ひとみの3人はそのステージを見ながら、自分たちの出番を待っていた。
そして、ひとみ達とは反対側の舞台袖には、矢口、加護の様子を見守る梨華と飯田がいた。
梨華が何か楽しそうに飯田に話し掛けている。
飯田を見上げるようにして話す梨華に、返事をする飯田。
『なんか、仲の良い姉妹みたい』
ひとみがそんなことを考えながら2人を見ていると、
「なに、梨華ちゃんに見とれてるのぉ?ちゃんとミニモニ見てないと、やぐっつぁんに怒られるよぉ」
ひとみの視界を遮るように、後藤が目の前に立った。
「そうよ、そんなヘラヘラしてて、失敗でもしたら許さないからね」
後藤の後ろから、保田が顔を出した。
「ゲッッ」
『もしかして、保田さんまで気づいてんの?あたしの態度ってバレバレだった?』
「ちょっと、ゲッてなによ。失礼ね」
ひとみのひと言に片眉をピクッとさせて、保田が言った。
「ほらほら、圭織が気づいたよ」
後藤が向こう側の飯田に向かって手を振った。
つられてそちらを見ると、梨華もこちらに気づいた様子だった。
『また、目逸らされちゃうかな』
そう思いながらも、ひとみは手を振ってみた。
ちょっと焦ったように、目を逸らす梨華。
『やっぱりねぇ。ダメもとって言ってても、結構これはキツイなぁ』
そう思いながらも、手のやりどころに困りとりあえず手を振りつづける。
- 106 名前:ひとみの決心 投稿日:2002年07月13日(土)12時14分40秒
- すると、梨華の反応に気づいた飯田が、梨華を肘でつつくのが見えた。
そして、なにかひと言梨華に言っている。
梨華は再びこちらを見ると、はにかんだような微笑を浮かべて手を振り返してきた。
『おぉ、久々の梨華ちゃんスマイルだぁ。やっべぇ、かわいい』
梨華の反応がうれしくって、いつまでも手を振るひとみ。
そのひとみに対抗して、一生懸命手を振り返す梨華。
だんだんと、笑顔もいつもの笑顔に戻ってきている。
《ポカッ》
後頭部をいきなり保田に叩かれた。
「いつまでやってんのよ。もう、プッチの番よ。ほんっとに、ミスったりしないでよぉ」
そう言われて、ステージに目をやると、ミニモニがこちらに戻ってくるところだった。
「よっすぃー、ちゃんと見てた?」
矢口が戻ってくるなり、ひとみに聞いてきた。
今回のツアーはミニモニの後がプッチモニなので、しっかりと矢口を見守ることという約束をさせられていたのだ。
「もっちろんっすよ。矢口さん、マジかわいかったです」
そう言いながらも、横目で梨華の様子を見る。
梨華はまだ、ひとみをまっすぐと見ていた。
そして、「がんばって」と、口を動かしガッツポーズをつくっている。
その梨華の隣には、妹を見守るような表情で優しく見つめる飯田。
最近では見られなかった梨華の様子がうれしくって、
ひとみは満面の笑みで大きく頷き、後藤、保田と共にステージへと走り出て行った。
- 107 名前:ひとみの決心 投稿日:2002年07月13日(土)12時15分44秒
- 「梨華ちゃん、ちょっといいかな」
その日2回目の公演も無事終え、帰り支度を済ませるとひとみは梨華に声をかけた。
横浜から東京までは、2台の車に分乗して帰ることになっている。
全員の帰り支度が済むまで、帰る事は出来ない。
それならば、今が梨華と話をするチャンスなのだ。
今回は、梨華に逃げられてしまう事もなく控え室から連れ出す事が出来た。
誰も居ないところを考えたが、どこも撤収作業のスタッフでいっぱい。
ゆっくり話せそうなところを探しているうちに、2人はホールのロビーに出た。
開場している時は歩くのも難しいほど込み合うロビーだが、今は人っ子ひとり居ない。
「よっすぃー?」
さっきからずっとひと言も喋らないひとみに、梨華は様子を窺うように声をかけた。
「こうやって2人で話すの、久しぶりだね」
梨華に近くのイスに座るよう目で促し、その隣に座った。
- 108 名前:ひとみの決心 投稿日:2002年07月13日(土)12時16分22秒
- 梨華を呼び出したのはいいが、どうやって話を切り出したらいいのか分からない。
自分でも、目が泳いでいるのが分かる。
「あのさぁ、あたしずっと考えてたんだ。梨華ちゃんを怒らせるような事したのかなって。
やっぱり、あの梨華ちゃんの家に泊まった日の事で怒ってるの?」
膝の上に硬く握った拳を見つめる。
「怒ってなんか・・・」
ひとみの言葉に、戸惑った様子の梨華。
「ごめんね。梨華ちゃんの相談に乗りに行ったのに、逆に嫌な思いさせて。
なんで怒ってるのか分からないけど、やっぱり、ごめん・・・」
「・…ないで」
小さく呟いた梨華の声が聞こえる。
「え?」
「謝らないで。怒ってないから」
「じゃあ、どうして…」
『怒ってないなら、なんで今まであたしを避けてたの?』
そう思って、ひとみは梨華を見た。
- 109 名前:ひとみの決心 投稿日:2002年07月13日(土)12時17分24秒
- 「梨華ちゃん…」
梨華は俯いて顔をあげようとしない。
「怒ってなんかないの。ただ、私が勝手にひとみちゃんと話せなくなっただけ」
《ひとみちゃん》久しぶりに梨華がそう呼んだ事を、ひとみは聞き逃さなかった。
最初の頃はそう呼んでくれていたのに、いつの間にかみんなと同じように《よっすぃー》と呼ぶようになった。
そうなってしまった頃は、なんだかとても寂しかった。
そして今、《ひとみちゃん》そう呼んでくれてくれた事が、こんな状況にあっても素直にうれしかった。
「もういいよ」
そう、もういい。今までの事なんかよりも、今のあたしの気持ちを伝えて終わりにしよう。
梨華ちゃんが《ひとみちゃん》って呼んでくれた事が良い思い出になるから。
たとえこれから言う事で、梨華ちゃんに嫌われようとも…。
- 110 名前:Vicks 投稿日:2002年07月13日(土)12時20分00秒
- 久々の更新です。またまた、中途半端なところでおわりです。
最初から読み返してみると、かなり読みにくいですね(w
ペースは遅くなりそうですが、放棄しないので読んでやってください。
- 111 名前:名無しさん 投稿日:2002年07月14日(日)01時43分16秒
- 待ってましたー!
更新ありがとうございます。
読みにくくないですよ。
これからも楽しみに待っております。
頑張って下さい。
- 112 名前:名無し読者 投稿日:2002年07月20日(土)23時39分24秒
- 本日初ROM・・面白いです。
マイペースでがんがって下さい。
- 113 名前:名無し読者 投稿日:2002年08月20日(火)00時14分16秒
- よっすぃーガンバレ
- 114 名前:名無しさん 投稿日:2002年09月01日(日)01時34分17秒
- オワリ?
- 115 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月06日(日)20時35分18秒
- 今すぐ君に逢いたい
- 116 名前:名無しさん 投稿日:2002年10月07日(月)18時35分52秒
- お願い放置はナシで…
- 117 名前:ひとみんこ 投稿日:2002年10月10日(木)14時17分27秒
- こんなとこで切っちゃやだよ〜!
と、梨華ちゃん風に言ってみる。
- 118 名前:告白 投稿日:2002年10月14日(月)13時30分07秒
- 「梨華ちゃん、あたしすっごく寂しかった。梨華ちゃんと話せなくってすっごく辛かった。
梨華ちゃんに嫌われちゃったんじゃないかって、ウジウジと悩んでた。でもね、もういい」
ひとみの言葉に、顔を上げる梨華。
その梨華の目を真っ直ぐと見つめるひとみ。
「梨華ちゃんにもっと嫌われるかもしれないけど、ウジウジ悩んでいたくないから」
「嫌いになんか…」
今にも泣きそうな顔をして首を振る梨華。
ひとみは、そんな梨華が愛しくて自然と笑みを浮かべた。
「梨華ちゃん、あたしね、初めて会ったときから梨華ちゃんの事好きだった。
最初は友達として好きだったのかもしれないけど、それが段々と変わってきたの。
気持ち悪いって、思うかもしれない。
でも、あたしは…あたしは梨華ちゃんが好き。
男とか女とか関係なく、石川梨華さんが好き。
だからと言って、付き合ってくれなんて言わない。
ただ、あたしの気持ちを知って欲しかった。
これで嫌いになられたら…ちょっとイヤだけどしょうがないと思ってる。
でも、あたしは梨華ちゃんのことが好きだってだから」
一気に言い終えて、梨華の言葉をじっと待つひとみ。
梨華は何も言わず、目を潤ませてひとみを見つめている。
- 119 名前:告白 投稿日:2002年10月14日(月)13時31分23秒
- 「ツっ…」
梨華が何かを言おうとした瞬間、ひとみの頭の奥で小さな痛みが走った。
反射的にこめかみに指を当てる。
『なんでこんなときに頭痛なんか…』
我慢しようとするが、徐々に痛みが増してくる。
ひとみの苦痛の表情を見て、梨華が心配そうに手を差し伸べようとした。
だが、ひとみは梨華の手を逃れるように一歩下がった。
「だい、じょうぶ…だから」
「でも……」
「ほんとに、大丈夫だから」
そう言って、苦痛に顔をゆがめながらも笑顔をつくった。
「梨華ちゃん、ごめんね…」
ひとみは意識が朦朧とするなかそう呟くと、膝から崩れるように床に倒れた。
- 120 名前:ひとみの夢 投稿日:2002年10月14日(月)13時33分18秒
『大丈夫?』
心配そうな声で目が覚めた。
目の前には、白く透き通るような肌をした黒髪の女の人。
そして、それは愛しい人。
『不思議な夢をみたよ。僕らは地球という星で生まれ変わって、また出会うんだ。
なぜか僕は女の子で、でもやっぱり君の事が好きでしょうがないんだ。
それで悩んで苦しんで。そこは今と変わらないな』
僕はそういって少し笑うと、まだ心配そうに僕を抱きかかえている彼女の黒髪に手を伸ばした。
『君はちょっと肌が黒いことを気にしてて、今と同じ涼しげな瞳をしていたよ』
そう言うと、彼女は切れ長な目を細めて笑った。
『あなたはどんな女の子だったの?』
『僕は、色白で目の大きな子だったな。そうだ、そこでは僕たちはちょっとしたスターだったんだ。
テレビに出て、歌を歌って踊って。いろいろ悩んでたけど、幸せそうだったよ』
その様子を思い出し、僕は軽く笑った。
『そう、幸せそうだったの。よかったわ。私たちも平和な時に出会っていれば、少しは違ったのかもしれないわね』
彼女はそう言うと寂しげに微笑んだ。
- 121 名前:告白 投稿日:2002年10月14日(月)13時35分38秒
白い天井。
見慣れない部屋。
どこ、ここ?
ひとみは、自分が今、どこにいるのかわからずにいた。
かろうじて、ベッドに寝かされている現状は把握できた。
そしてだんだんと意識がしっかりとしてくるにつれて、自分が先程倒れたことを思い出した。
「梨華ちゃんっ」
さっきまで一緒にいたはずの梨華のことを思い出し、思わず声を出してガバッと起き上がった。
『あれからどれくらいの時間が経ったんだろう。一緒にいたはずの梨華ちゃんは…。』
ひとみが周りを見回すと、部屋の隅に腕を組んだ中澤が立っていた。
中澤も目を覚ましたひとみに気づき、ベッドへと近づいてきた。
「大丈夫か?あんた、いきなり倒れたんやで」
心配そうに、それでいて優しげにひとみの顔をのぞき込んだ。
「はあ…大丈夫です。あの、梨華ちゃんは?」
ひとみの言葉を聞いて、中澤は苦笑した。
「あんたなぁ、人に心配させといて一言目がそれかい」
「すみません…」
「心配せんでええよ。石川、ちょっと出とるだけやから。もうすぐ戻ってくるんとちゃうんかな」
そう言うと、ひとみの顔をじっと見つめた。
- 122 名前:告白 投稿日:2002年10月14日(月)13時36分54秒
- 「な、なんですか?」
「あんた、顔よく見せてみ?」
そう言うと、中澤は顔を近づけた。
反射的に、体を後ろへ引くひとみ。
中澤はそっとひとみの前髪を上げると、ひとみの額に手をあてて顔をじっと見つめた。
「……」
「あの・・・」
「・・・」
「中澤さん?」
ひとみの顔を見るだけ見ると、中澤は小さくため息をついてひとみから一歩離れた。
「で、どうだったん?世紀の大告白は」
先ほどまでの少し考え込んだ表情を和らげて、再び優しげな瞳を向けた。
「いやぁ、それがですねぇ・・・」
説明しようとするが、告白したとたんに倒れたなんて、あまりにもかっこ悪すぎる。
ひとみが言葉に詰まっていると、
「まさか、何も言えんかったちゃうやろな?よっすぃ〜はいきなり倒れるし、石川はパニくるしどうなってんや?」
「一応自分の気持ちは伝えました。でも、梨華ちゃんの気持ちは聞いてません。その前に倒れちゃったんで」
ぽつぽつと呟くように、ひとみは答えた。
「そうかぁ、でもちゃんと聞かなあかんで。そうせないつまでも前に進めんからな」
「そうですけどぉ…」
「当たって砕けろ…やろ?」
そう言って、中澤はひとみの頭を軽く撫でた。
- 123 名前:告白 投稿日:2002年10月14日(月)13時38分06秒
- 「もう大丈夫か?ほな、帰るで。その前にスタッフの人にタクシー呼んでもらって来るわ。
よっすぃ〜は出口のところで待っといて」
ひとみをゆっくりと起きあがらせると、部屋の扉に向かった。
「そうや、倒れた後で悪いんやけど、石川探しといてくれへん?どこいったんやろ〜なぁ」
最後の方はわざとらしい独り言のように言って、中澤は部屋を出て行った。
- 124 名前:Vicks 投稿日:2002年10月14日(月)13時42分39秒
- 3ヶ月ぶりに更新しました。
諸事情がありまして、遅くなってすみません…。
まさか、待っていてくれる方がいるなんて思っていなかったんで、うれしいです。
今後も更新が遅いかもしれませんが、よろしくお願いします。
間違い訂正。
118>×でも、あたしは梨華ちゃんのことが好きだってだから
○でも、あたしは梨華ちゃんのことが好きだから
すみません…。
- 125 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月14日(月)17時59分38秒
- よく帰ってきた!!
頭なでてやる! ナデナデ・・・
マイペースでがんばってください。
- 126 名前:名無し読者 投稿日:2002年10月16日(水)20時51分27秒
- この3ヶ月間、ハロプロヲタにとっては暗い話題が多かった。
でも、この小説が再開されたことは、僕にとって、久々に起こったいい出来事です。
待ってて良かった。これからも楽しみにしています。頑張ってください。
- 127 名前:名無し読者 投稿日:2002年11月12日(火)08時40分26秒
- 待ってます、待ってます、いつまでだって待たせてもらいます。
- 128 名前:通りすがり 投稿日:2002年11月12日(火)23時57分25秒
- 「僕の地球を守って」を彷彿とさせる世界観ですね。
頑張って下さい。
- 129 名前:名無し読者 投稿日:2002年12月21日(土)02時10分38秒
- 二人は前に進めるんだろうか・・・
- 130 名前:咲希 投稿日:2003年01月03日(金)18時10分59秒
- 待ってます。
どこまでもついて行きます(違)
頑張ってください!
- 131 名前:名無し読者 投稿日:2003年02月07日(金)04時52分16秒
- やっと想いを伝えられたよっすぃー。
よかった、よかったよ。。。・゚・(ノД`)ノ・゚・。
- 132 名前:名無し読者 投稿日:2003年03月08日(土)02時32分27秒
- ホゼン
- 133 名前:名無し読者 投稿日:2003年04月09日(水)21時45分32秒
- 半年経ちました
作者さん、生きてますか?
待ってますよ
- 134 名前:名無し読者 投稿日:2003年05月13日(火)01時53分46秒
- ほぜん
- 135 名前:名無し読者 投稿日:2003年06月16日(月)01時05分30秒
- hozen
- 136 名前:名無し読者 投稿日:2003年07月16日(水)01時02分08秒
- ほぜん
- 137 名前:名無しさん 投稿日:2003年08月07日(木)22時55分24秒
- 保全しま〜す
待ってま〜す
- 138 名前:黒い影ファン 投稿日:2003年08月14日(木)03時09分29秒
- あまりにも気になるのでageます
結局のところ、最初のマンションの陰からのぞいてる怪しい人物は誰だったんですか?
それだけでも聞きたいんです
- 139 名前:名無しさん 投稿日:2003/09/13(土) 21:37
- hozen
- 140 名前:名無しさん 投稿日:2003/10/14(火) 00:58
- ほぜん
- 141 名前:名無し読者 投稿日:2003/11/08(土) 20:36
- 一気に読んだ
おもしろい保全
- 142 名前:名無しさん 投稿日:2003/12/09(火) 23:27
- 1年2ヶ月間、ずっと待ってました
これからも待ちます
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