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パーフェクトトライアングル
- 1 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年03月16日(土)11時02分15秒
- 勢いのままにスレを立てさせていただきますが、
絶対に放置はしませんので、よろしくおねがいします。
更新速度は週1〜2のペースで出来たらいいなと。
ベタなタイトルとベタな主要人物ですが、
いしよしごまと言う事で(^^;)ゞ
もう少しスレがsageってから書かせていただきます。
- 2 名前:Charmy Blue 投稿日:2002年03月16日(土)13時03分47秒
- おおお。ついに! おめでとうございます。
楽しみにしていますね♪
- 3 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月16日(土)21時03分02秒
- う、この三角関係って決まって結末が○○○○になる事が多いんですよね・・・
- 4 名前:REDRUM 投稿日:2002年03月17日(日)04時55分29秒
- おお!新作ですね。楽しみにしてます。
- 5 名前:石川梨華の悩み 投稿日:2002年03月18日(月)15時29分35秒
- 『…お掛けになった電話番号は、電波の届かないところにあるか、電源が入っていないため―――』
ピッ―――
石川は深い溜息をハァ…と一つつくと、携帯の終話ボタンを押した。
彼女の想い人は電源を切っているのか電波が届かないところなのか、何度掛けてみても繋がらない。
「…ひとみちゃん、なんで電源切ってるのよ…」
ベッドの上に置かれているピンク色のプーさんのぬいぐるみを見て、彼女は一人呟く。
- 6 名前:石川梨華の悩み 投稿日:2002年03月18日(月)15時30分34秒
大好きな人から「誕生日のプレゼント」と貰ったぬいぐるみ。
大好きなピンク色の珍しいぬいぐるみ。
手に入れようと思っても、発売されてすぐに売切れてしまうほど人気のあるぬいぐるみ。
仕事が忙しくて、まともに学校へ行く事さえままならない日が続いていたのに、彼女はその時間を割いて買ってきてくれたのだろうと考えて、あまりの嬉しさに涙を流したことを思い出す。
彼女だと思って大切にしているぬいぐるみ。
部屋にいるときは、いつでもそばに置いてある。
…けれど、大切なぬいぐるみは、自分を抱きしめてはくれない。
- 7 名前:石川梨華の悩み 投稿日:2002年03月18日(月)15時31分42秒
大半が認知されているであろうが、吉澤との出会いは国民的人気アイドルグループ、モーニング娘。の追加オーディション。
背が高く、クールな風貌とは裏腹に、緊迫した雰囲気の合宿生活の中でふとした時に見せてくれた笑顔がとても柔らかくて優しげで、一目で好きになっていた。
二人とも合格が決まった時には緊張した表情の下に、激しくガッツポーズを作っていた事は、石川だけの秘密。
吉澤の事は好きだったけれど、自分達は女同士。受け入れられるはずもないと、彼女への想いを一人隠していた。
同期という事もあって、行動が一緒になったり、宿泊先のホテルの部屋が一緒のことも多かった。自分の気持ちを隠しながら彼女と接していたが、それも我慢の限界がある。
自分が告白してしまったら、お互いが気まずくなるのも分かっていた。
もしかしたら、娘にいられなくなるかもしれない。
そんな不安が入り混じっていたけれど、自分の気持ちを隠す事はもう出来ないと、思い切って告白した。
彼女の一世一代の大告白は、吉澤の「いいよ、付き合おう」という、何とも軽い返事で想いを遂げた。
- 8 名前:石川梨華の悩み 投稿日:2002年03月18日(月)15時32分43秒
付き合い始めた当初は、陳腐な表現だが、全てがバラ色に感じた。
吉澤は、芸能界でやっていけるのだろうかと、ネガティブ思考の石川さえもが心配するほどおっとりのんびり屋なのに、決める時はビシッと決めてしまう格好良さも持っていて、でも、二人っきりになると、甘え上手になって、甘やかせるのもすごく上手で。
そんな彼女の一挙一動にドキドキしながらも、毎日が楽しかった。
- 9 名前:石川梨華の悩み 投稿日:2002年03月18日(月)15時33分54秒
この前、吉澤が来たのはいつだったのかと指折り数えてみる。
「…もう十日も…してないよぉ‥」
浅ましい考え方をしてしまったと、石川はピンク色に頬を染めた。
けれど、吉澤は自分とエッチをしなくても平気なのかと少々ネガティブに思う。
こんなにも、自分は彼女を求めているというのに。
- 10 名前:石川梨華の悩み 投稿日:2002年03月18日(月)15時35分01秒
それは無意識に、だった。
石川はセーターの裾の下から、自分の胸に手を伸ばした。
下着の上からそっと触れてみたものの、思ったような快感は得られなかった。これが吉澤の手の平ならば、ピリピリと、まるで電流が流れるような快感が得られるというのに。
焦れたようにブラジャーを少しずり下げて、小さく尖る胸の突起に指を這わせた。
彼女の手はこうだった…と、一つ一つ、まるで復習のように吉澤の手管を思い浮かべて胸を弄る。
唇に優しく口付けて、瞼へ、頬へ、耳朶へ、首筋へと、愛を囁く代わりにキスを降らしてくれる吉澤。
ちゅ‥と音を立てて胸の突起を吸う癖は、いつものこと。
大きくて張りのある自分の胸が好きだと、いつでも触っていた事を思い出す。
- 11 名前:石川梨華の悩み 投稿日:2002年03月18日(月)15時36分32秒
「…ん……ひと‥み‥ちゃん」
綺麗に手入れをしている爪を少し立てて、引っ掻くように胸の突起を弾く。
少しだけ体がビクンと揺れた。
吉澤の大きい手の平でも包みきれない自分の胸を、自分の手の平で包んでみる。
弧を描くように胸を揺らした。吉澤に触れられていると思いながら、何度も何度も。
「……あ……ん……」
下腹部がじんじんと熱く疼いて堪らない。
石川は放り出していた両足をもどかしげに擦り合わせた。
「………ぁん……」
けれど、それだけでは深い快感は得られない。
- 12 名前:石川梨華の悩み 投稿日:2002年03月18日(月)15時38分02秒
周りには誰もいない…羞恥心はなかった。
スカートを捲りあげて、パンティの中に手を入れる。
茂みにそっと触れて、ゆっくりと蜜壺に指を這わした。
吉澤が見たならば絶対にからかわれたであろうほど、そこはしとどに濡れていた。
淫らな音を立てるそこを、ゆっくりと掻き回す。
「……あぁん……」
熱は冷めない。
それどころか、より一層熱を帯びたような自分の体。
こんなに淫らな体になってしまったのは吉澤のせいだと一人呟いて、もっとも敏感な中心の突起に指を触れた。
「……ん…あっ…ん……」
硬く膨らんだそこを指の腹でこするとビクッと体が震えた。
- 13 名前:石川梨華の悩み 投稿日:2002年03月18日(月)15時39分05秒
この手が、この指が、彼女ならばと少し切なくなったのも事実。
けれど、快感に弱い石川は、意識をすぐさま自慰に引き戻した。
敏感なそこを強めに擦る。素早く擦る。
寂しい行為を手早く済ませる様に、快感の波を無理矢理呼び起こすような指の動きに、次第に石川の声が大きなものへと色変わる。
「……ん…ひとみちゃ…ん…あん……あっ……あ…あ……………あぁ……」
ガクッと体が脱力する。
「ひとみちゃ…ん…どこにいるの…?」
真っ白になった石川の脳裏に過ぎったのは、吉澤の屈託のない笑顔だった。
- 14 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年03月18日(月)15時44分01秒
- 更新しました。
こんな時間にスミマセン(恥)
ええと、こんな感じの駄文です(w)
最後までお付き合い頂けたらこれ幸い。
次回更新は4、5日後になるかと思いますが、よろしくです。
- 15 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年03月18日(月)15時49分44秒
- >Charmy Blueさん
早速ありがとうございます!
勢いでスレ立ててしまった事にちょっとだけ後悔しつつも、
こんな話を書いていて、ちょっとストレスが解消されている
自分がいた事に気付きました(w)
>3さん
実は、もうラストだけは決めています。
それが皆さんの納得いく話になるかどうかは謎なのですが。
>REDRUMさん
ありがとうございます!
REDRUMさんの小説も楽しく拝見させて頂いてたので、
とても嬉しいです。
…でも、初回からこんなんでスミマセン(^^;)
- 16 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年03月18日(月)15時52分31秒
- 書き忘れておりましたが、ご覧の通りこんな駄文ですし、
ぜひとも sage でよろしくお願い致します。
エ●好きなくせに、作者がとてつもない恥ずかしがり屋なもんで(w)
- 17 名前:Charmy Blue 投稿日:2002年03月18日(月)18時20分02秒
- まぁ昼間っから(w。しかも石川さんの一人えっちで(w。
ちょいと萌えました。っつぅか顔がニヤけました。
続きも期待してます。
- 18 名前:じじ 投稿日:2002年03月18日(月)20時11分16秒
- 大好物でした(w
やっぱり三角関係ですかね。
平和を愛しつつ更新お待ちしております。
- 19 名前:さまようよっすぃー 投稿日:2002年03月19日(火)14時21分41秒
- めっけたれす(笑)。赴くままにお願いします(爆)。
@ノノハ@
J ゜皿゜)し<期待してるガオー Σ(^〜^0;)
- 20 名前:後藤のキモチ 投稿日:2002年03月20日(水)23時31分50秒
石川が一人、吉澤に想いを馳せていたその時、石川の想い人は後藤の部屋にいた。
「…ぁん……よし‥こ……」
「ごっちん…気持ち良い…?」
吉澤は後藤の胸の突起を舌の先で捕らえながら囁く。
「…ゃん……そんなの…聞かないでよぉ…」
「だって、聞かなくちゃ分かんないじゃん」
少し笑いながらそう言って、吉澤はちゅ…とわざと音を立てて胸の頂を吸う。
恥ずかしくて、後藤は身を捩るように吉澤から逃げようとする。
けれど、しっかりと体に覆い被さっている吉澤から逃げられるはずもない。また、本気で逃げようと思っているわけでもない。恥ずかしさ故に、わざとそんなスタイルを取って見せただけだ。
- 21 名前:後藤のキモチ 投稿日:2002年03月20日(水)23時34分02秒
「ごっちん…おっぱい大きいよね…」
「…あ…恥ずかしいから…言わないでよ…」
ニヤニヤしながら吉澤は恥かしげもなく言う。
左胸をゆっくりと揉みしだきながら、右胸の突起を尚も吸い続けた。吉澤が唇を離すと、硬く尖った突起が赤く染まっていて、それがより一層厭らしく映る。
吉澤は背けていた後藤の顔を両手で挟み、自分に向かせた。
ちゅっと唇にキスを一つ落として、甘く低い声音で彼女に囁く。
「恥ずかしがり屋なごっちんも可愛いよ」
吉澤はもう一度唇にキスをして、細い首筋に顔を埋めた。
舌先を尖らせて、喉元から鎖骨へと滑らせる。両胸に軽くキスを落とし、そのまま下腹部へとに舌を這わせた。
そのとき後藤の体が一瞬、緊張した。
後藤は分かっているのだ。
ゆらゆらと揺れる後藤の瞳は、身も世もない甘い快楽にこれから突き落とされるのを知っている。
- 22 名前:後藤のキモチ 投稿日:2002年03月20日(水)23時37分44秒
吉澤の手が後藤の太腿に触れた。
強張らせている体を解かせようと、緩やかに彼女の滑らかな腿を擦り、内腿に手をかけて、少しずつ足を開いた。
全てを晒された後藤のそこがもう濡れているのが分かる。
茂みに指を這わして、そっとそこを開き、赤く膨れている蕾に躊躇うことなく口に含んだ。
「あぁ……あ…ぁ……あっ…」
枕の端を握り締めて、後藤は切ない声音を上げた。
蕾を唇に挟んだまま、硬く尖らせた舌先でツンツンと突付く。
その度にビクッと後藤の体が揺れた。
あの、モーニング娘。の後藤真希が自分の手管に翻弄されている。
それは吉澤にとって刺激的なことだった。
- 23 名前:後藤のキモチ 投稿日:2002年03月20日(水)23時39分57秒
蜜壺に舌を這わすととろりと蜜が零れてくる。吉澤はそれをわざと音を立てるように吸い上げた。
「ひゃっ……やっ…んぁ……あぁ…」
吉澤の舌が入ってくる。暖かい、何かの生き物のようなその動きに快感を覚え、後藤の体がピンと弓形に反る。
吉澤は後藤の浮いた腰を支えて、更に奥まった部分へと舌を進めた。狭くて熱い後藤の中を掻き回す。
「ぁんっ……あっ…あっ………もっ…う…ダ……メ……」
「…気持ち良い?」
吉澤が埋めていた顔を離してそう言うと、後藤は少しだけ名残惜しい顔をして、彼女にお願いをする。
- 24 名前:後藤のキモチ 投稿日:2002年03月20日(水)23時42分49秒
「……よしこぉ……も……ぃれて…」
頬を染めてそう言った声は、思ったよりも掠れていた。
「……ん?よく聞こえないよぉ」
「ハッキリ言わなくちゃ分からないよ」と言う吉澤の瞳は悪戯に光っていた。
吉澤は普段はとても優しいのに、ベッドの中ではすごく意地悪だと後藤は思う。
そんな彼女に少しでも抗えればいいのだけれど、もう、体は吉澤を求めている。
幾度と重ねた体は、吉澤の与えてくれる快感を、もう忘れられないでいる。
「……お願い……入れて……」
「…分かった」
吉澤は低い声音でそう言うと、後藤の唇にちゅ…と自分のそれを落として、後藤の茂みの奥に指を挿入した。
- 25 名前:後藤のキモチ 投稿日:2002年03月20日(水)23時45分33秒
「……あっ……ん……」
後藤のそこは、吉澤の唾液と自身の愛液に濡れていて、抵抗もなく吉澤の長い指を飲み込んだ。
指に絡みつく濡れた音がいやらしいほど部屋に響く。
全てが敏感になっている後藤の体は、その音にさえ体がビクビクと反応してしまう。
「……あっ…あぁ………ぁんっ……」
「…ごっちんの中…熱いね……」
「そ…ぃうこと……言わないでよ……ぁんっ……」
吉澤の指が後藤の中を行き来する。ゆっくりゆっくりと。
内壁を擦られる感覚が堪らないとばかりに、その充足感にきゅっきゅっと締め付けた。
吉澤が速度を速めると、ビクンビクンと後藤の体が揺れた。訪れる快感の波に飲み込まれそうになる。
- 26 名前:後藤のキモチ 投稿日:2002年03月20日(水)23時47分14秒
「……んっ…あん…あっ…んっ……も、ダメ……」
「…ん…イっていいよ」
後藤の体が大きく揺れる。意識がどこかにいってしまわない様にと、所在なさげに浮いた手をしっかりと吉澤の首に回した。
吉澤は後藤の耳朶を甘噛みして、更にそのスピードを速めた。
「は…っ……ああんっ……あ、あ、あ…………!!」
そのまま、後藤は快感の波に溺れたまま、意識を失った。
- 27 名前:後藤のキモチ 投稿日:2002年03月20日(水)23時49分04秒
「…ごっちん…ごっちん」
「……ん、ぁ………よしこ、おはよー。…どしたの?こんな早く起きて」
「もうお昼だよ。相変わらず寝ぼすけだなぁ」
吉澤は苦笑しながら、バッグを肩に掛けて部屋を出る支度をする。
「アタシ、今日ラジオの収録があるから、先に出るね」
「んー、分かった。今日はハロモニの収録もあるからまた後で会えるね」
「うん、また後でね」
「いってらっしゃーい」
後藤はベッドの上から顔と手だけを出して、笑顔で吉澤を送り出した。
- 28 名前:後藤のキモチ 投稿日:2002年03月20日(水)23時51分03秒
「……んー、もっかい寝よっかなー」
今何時かと、コンポのデジタル時計に目をやる。
ふと、部屋の中を見てみると、昨日散らかすように脱いだ服や下着が丁寧にたたまれていた。読みっぱなしでほったらかしにしておいた雑誌も、あるべきところに整理されている。
それらは吉澤が片付けてくれたのだとすぐに分かった。
同じO型で趣味も似ている二人なのに、根本的な部分は似ていないと後藤は思う。
大雑把で豪快とテレビでは評価されがちな吉澤だが、実際は繊細で神経質な部分を持ち合わせている。
雑然としている自分の部屋も軽口を叩いて笑いながら整理をしたりと、まめまめしく動いてくれる。
「よしこは良いお嫁さんになるねぇ」
まだハッキリと覚醒されていない頭で、そんな事を呟きながら、後藤は思い出に身を馳せた。
- 29 名前:後藤のキモチ 投稿日:2002年03月20日(水)23時52分46秒
吉澤が入ってきたばかりの頃は、こんな関係になると後藤は全く思っていなかった。それどころか、正直言って軽くライバル意識を持っていた。
後藤がモーニング娘。に入ったときは13歳。厳しい先輩達も仕事を離れれば、最年少である自分を可愛がってくれていた。
けれど、新メンバーは自分よりも2つ年下の子がいる。それに自分と同い年もいる。今までのように甘える事は許されないと、ただ闇雲に、寂しさと不安で揺れ動いていたことを思い出し、一人苦笑する。
- 30 名前:後藤のキモチ 投稿日:2002年03月20日(水)23時54分58秒
クール、生意気と呼ばれる風貌とは裏腹に、後藤は寂しがり屋で甘えん坊だった。
そこへきて、教育係でもある市井の卒業。
頼れる人はもういない。自分には同じ苦労を分かち合える同期もいない。自分は一人なのだと寂しさに頬を濡らした夜もあった。
国民的アイドルとして成長していくグループのメインである事への重責にも押し潰されそうになって、楽屋などでも、誰とも話そうとせず、一人孤立している事が多くなった。
新メンバーが入る事によって、自分の居場所がなくなるのではと懸念していた自分だが、自分自身でその場所を居心地悪いものにさせていたことに気付くのは、もっともっと後の事。
「ごとーの居場所がなくなっちゃうなんて、本気で思ってたんだよねぇ…」
- 31 名前:後藤のキモチ 投稿日:2002年03月20日(水)23時55分40秒
ある日、いつも立ち寄るブティックで吉澤とバッタリ行き会った。
確かに私服が自分の好きなブランドと一緒だなぁと思ってはいたけれど、まさか買いに行く店まで同じところだと思っていなかった後藤はビックリした覚えがある。
そのまま別れるのもなんだと、一緒に食事をした。
色々な話をしていくうちに、趣味が似ている事、笑いのツボが同じ事に気がついた。
元々ノリとタイミングで生きている10代の二人が仲良くなる事に、さほど時間は掛からなかった。
- 32 名前:後藤のキモチ 投稿日:2002年03月20日(水)23時58分07秒
こういう関係になったのも、興味本位なノリだった。
後藤の家に泊まりにきていた吉澤と、弟のユウキが隠し持っていたアダルトビデオを見たときのこと。
艶かしく喘ぐAV女優の姿を見て、そんなに気持ちが良いものなのかと呟いた。
吉澤が普段のぼやっとした顔でなく、いたずらっ子のような企み顔をして、「ホントに気持ち良いのか試してみようか」と、胸を触りながらキスをしてきた。
どこで覚えたのか、彼女の手管は巧みで、気がつけば彼女に身を預けてしまっている自分がいた。
その日から、ゲーム感覚な彼女とのエッチは続いた。
どうせ自分達はマスコミに狙われていて、まともに恋愛など出来ないのだから、それならば今を楽しもうという、吉澤のあっけらかんとした天真爛漫さで、親友、それも女同士という特殊な関係への罪悪感は薄れてしまっていた。
- 33 名前:後藤のキモチ 投稿日:2002年03月20日(水)23時59分11秒
……そして今に至るのだけれど。
確実に吉澤という存在が大きなものに変わってきている事に、後藤は戸惑いを隠せなかった。
「優しいし、楽しいし、格好良いし……ごとーの好みにピッタリなんだよねぇ…よしこって」
よしこが男の子だったらなぁ……なんて、叶いもしない願いを呟いて、また夢の中に入っていった。
- 34 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年03月21日(木)00時12分07秒
- キリのいいところまで、うpしました。
>Charmy Blueさん
昼間っからスミマセン(^^;)ゞ
つか、続きもこんなでスミマセン(w)
一人えっちはどうしてもさせたかったんです(爆)
>じじさん
レスありがとうございます!
大好物と言って頂いて、ホッとしております(^^)
なるべく痛めにならないように書きたいとは思ってますが、
今後の展開をどうするか、いまだ決めかねております(苦笑)
>さまようよっすぃーさん
ありがとうございます!
煩悩の趣くままに、突き進みたいと思います(爆)
(0^〜^0)<がんがるYO!
- 35 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月21日(木)16時01分12秒
- 綺麗なエロ、いいですね。激しくキターイ
- 36 名前:吉澤のホンネ 投稿日:2002年03月21日(木)20時53分45秒
「おはようございまーす」
吉澤がスタジオに入ると、一緒にラジオのパーソナリティを務めている平家が既にいた。
「よっすぃー、おはよう」
「おはようございます。平家さん早いですねぇ」
吉澤は元々生真面目な性格故か、集合時間1時間前に仕事場に来るようにしている。今日も2時にスタジオ入りの予定なのに1時にやってきた。
平家が遅刻する事は滅多にないが、こんなに早く来るのも珍しい。
「時間、間違えてん…へへ」
「なーんだ、そっかぁ。珍しいなぁって思ったんですよ」
- 37 名前:吉澤のホンネ 投稿日:2002年03月21日(木)20時55分53秒
吉澤はカバンを下ろして席に着くと、今日読み上げる予定であろうハガキに目を通し始めた。コーナーに沿ったハガキや、ファンレターまで様々届けられている。
最後の一枚を読んで、吉澤は「なっ」と驚きの声をあげた。
突然吉澤が声をあげたことに対し、それに驚いた平家が彼女に声を掛けた。
「どしたの、よっすぃー」
「どうしたもこうしたも…これ、見てくださいよ」
そう言って、吉澤はピンクのカラーペンで書かれたシンプルなハガキを平家に渡した。
「んー、どれどれ。『よっすぃーと梨華ちゃんは付き合ってるんですか? ぜひ、教えてください。PN らぶりーみっちー』って…アハハハハ、中々的を得た質問やないの」
「何が的を得てるんですかぁー」
ズバリそのまんまな質問に焦っていた吉澤は、平家の瞳がキラリと光った事に気付かなかった。
- 38 名前:吉澤のホンネ 投稿日:2002年03月21日(木)20時57分14秒
「…で、実際のところどうなん?」
笑いながら吉澤に冗談交じりに尋ねる平家。
「どうって…そりゃメンバーだし仲は良いですよ」
「あ〜せやから、そんな質問ちゃうやん。このらぶりーみっちーちゃんの質問は」
ハガキをピラピラさせながら、何故か必死に食い下がる平家。顔は笑っているが、目が笑っていない。
- 39 名前:吉澤のホンネ 投稿日:2002年03月21日(木)20時59分18秒
「アタシら女同士ですよ? 付き合ってる訳ないじゃないですか」
「うっそー、だって二人並ぶとええ感じよ?」
「ええ感じでもなんでも、付き合ってませんよ」
「ホンマに?」
「はい」
「ホンマにホンマ?」
「ホンマです」
「ホンマにホンマにホンマにホンマ?」
「……つーか平家さん、なんでそんなに必死なんですか?」
「…え、いや、まぁ、その…なんやろね、あの、パーソナリティとしてのやむにやまれぬ責任感っちゅーの?」
「なんですかそれ」
吉澤に少々冷たい目で見つめられ、平家は笑いながら席を立った。
- 40 名前:吉澤のホンネ 投稿日:2002年03月21日(木)21時00分06秒
「アハハハハ……リスナーは面白可笑しく質問してきたんちゃう? ま、どっちにせよ、こんなんラジオで読んでもしゃーないわな」
平家は「トイレに行く」と言い、ハガキを持ったままスタジオを出て行った。
ドアが閉まる間際、「出来てへんのか…つまらん」と小さく呟いたのは、吉澤も誰も聞こえなかった。
- 41 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年03月21日(木)21時04分33秒
- かなり短めですが、うpしました。
これから忙しくなりそうなんで、うp出来る時にしとこうかと。
>35さん
ありがとうございます!
エロは所詮エロだと思うんですが(w)、
そう言っていただけると嬉しいです(^^)
- 42 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月22日(金)01時37分35秒
- 平家さん よっすぃーにもっとつっこんでください
- 43 名前:さまようよっすぃー 投稿日:2002年03月22日(金)10時10分25秒
- もっと突っ込むのだ、みちYO!(爆)。
ごっつぁんの回想シーン、すごくいいですね。見習わなくっちゃ。
- 44 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月22日(金)19時43分40秒
- 某所で教えてもらい、やってきました。
タラシな吉澤ですか。楽しみにしてます。
- 45 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月22日(金)21時08分50秒
- おもしろいっす〜!シャイなよっすぃーもいいけどタラシなよっすぃーって設定
好きっす♪ヘケねえさんもいいキャラしてますなぁ(w
- 46 名前:吉澤のホンネ 投稿日:2002年03月22日(金)22時33分47秒
スタジオに一人残った吉澤は、台本に目を通しながら考えこんでいた。
平家さんは面白可笑しくって言ってたけど………見る人によってはアタシらってそう見えるのかなぁ。バレない様に気をつけてるつもりなんだけど。
…って、梨華ちゃん、結構分かりやすいこと言ったりしてるもんなぁ。あれじゃバレるか。
…アタシも十分気をつけないと…。バレたら色々面倒だし…つーか、なによりマスコミにバレでもしたらとんでもない事になるし。
- 47 名前:吉澤のホンネ 投稿日:2002年03月22日(金)22時35分38秒
吉澤は携帯の電源を切ったままにしていた事にふと気付いた。
昨夜、後藤に食事を誘われて、当然のように部屋に誘われた。
吉澤自身、後藤と一緒にいるのは楽しいし、何より石川に隠れていけない事をしているというスリル感が堪らないと、吉澤は不謹慎にも思っていた。
電話に出なければ、石川はあの可愛らしい顔と愛くるしい声で、必ず自分を責めるだろう。
そんな彼女のことを、上手く宥めすかして懐柔する事に、吉澤は快感を覚え始めていた。
- 48 名前:吉澤のホンネ 投稿日:2002年03月22日(金)22時37分47秒
そもそも、この恋は石川から仕掛けられたものだった。
色んな欲や権力に塗れている芸能界に、ただ憧れだけで入ってきた自分達。
右も左も分からなかった幼い自分達は、ただ、身を寄せ合って、闇雲に言われた事をこなすだけしか術はなかった。
それらの苦労は、モーニング娘。全員とも味わってきたものではあるけれど。
たった15年しか生きていなかった吉澤達にとっては計り知れないものだった。
辛い事も苦しい事も嬉しい事も楽しい事も全てを共有しあったのが石川で。
陳腐な言い方ではあるけれど、石川と自分の間には目に見えない「絆」があると、吉澤は思う。
それは同期という単純な言葉ではなく、同志と呼ぶのが相応しいのかもしれない。
だからこそ、ある日突然、思いつめた表情で自分に告白してきた石川を見たとき、戸惑いの表情を隠せなかった事を吉澤は覚えている。
石川本人は告白する事に精一杯で、吉澤のそんな些細な感情の変化に気付きもしなかったであろうが。
- 49 名前:吉澤のホンネ 投稿日:2002年03月22日(金)22時38分45秒
その時、改めて石川という存在を見つめ直した。
モーニング娘。に入って以来、「年上だから」と気を張って空回りしていた彼女。
それは、年下である自分や辻、加護を守ろうという責任感だったのかもしれない。
そんな石川の事が、純粋にいとおしいと感じたのも本当の気持ちだった。
自分と付き合う事で、少しでも彼女の心の負担が軽くなるなら、笑顔が見れるならそれもいいと。
付き合いだしてからの二人の関係は、さほど変わるものではなかった。
たった3ヶ月の、年上の彼女と年下の自分。
いつでもリードを取るのは石川で、自分はそれに甘んじる。吉澤にとっては、ぬるま湯に浸っているのと同じ事で、それはとても楽なものではあったけれど。
けれど。もっと自分に甘えて欲しい、もっと自分を頼って欲しい。
吉澤がそう願っても、いつも石川は自分の前でどこか肩肘張っていたように思う。
たった3ヶ月の「年上」の壁が、これほど高いのかと吉澤は苦渋を感じたこともあった。
- 50 名前:吉澤のホンネ 投稿日:2002年03月22日(金)22時39分42秒
だからこそ、後藤にハマっている自分がいるのだと、吉澤は自己分析する。
同期がいなかった彼女にとって、同い年の自分は、唯一甘えられる存在になったのだろうと、自惚れでなく素直にそう思う。
後藤はありのままの姿を自分に見せてくれる。
楽しい時には笑顔で。悔しい時には苦汁を舐めた顔をして。悲しければ思いきり泣いて。甘えたい時には思いきり甘えてくる。
素直な感情で自分を頼り、ぶつかってくる事が、吉澤にはとても嬉しかった。
好きな子が自分の前で心を解いているのは、とても可愛くて、いとおしい。
ありのまま、自然体な彼女は吉澤にとって魅力的だった。
- 51 名前:吉澤のホンネ 投稿日:2002年03月22日(金)22時41分07秒
後藤とそういう関係になったのも、偶然でもなく、自らが仕掛けた事。
吉澤達の間を繋ぐものは「親友」の二文字で。
そこに恋愛感情はないと知っていたから。
アダルトビデオの喘ぐAV女優を見て、素朴な疑問を投げかけてきたから。
だからどこまでもノリとタイミングでソフトにライトに。
遊びの延長上のものだと教え込んで、ゲームのような関係を持った。
後藤が女同士であることへの罪悪感を感じないように。
- 52 名前:吉澤のホンネ 投稿日:2002年03月22日(金)22時41分48秒
…では、「今どちらが好きなのか?」と訊ねられたら、吉澤は答えられないだろう。
仕掛けられた恋も、仕掛けた恋も。
どちらも吉澤にとって大切な気持ちだった。
「しょーがないじゃん…梨華ちゃんもごっちんも好きなんだから」
自分の気持ちに正直な事に、なんら疚しいことはないと開き直る吉澤は、「やっぱりアタシが悪いんだろうな」と自嘲気味に笑って、携帯の電源ボタンをゆっくり押した。
- 53 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年03月22日(金)22時56分52秒
- 更新しました。
一応今回までが主要人物紹介編で。
>42さん
平家さんには今後も頑張ってもらいたいと思います(w)
>さまようよっすぃーさん
いしよしヲタくさい平家さんのことは、絶対書こうと前々から思ってました。
今後の彼女の活躍に期待してやってください(w)
>ごっつぁんの回想シーン、すごくいいですね。見習わなくっちゃ。
クドイ感じじゃないかと思って心配してましたが、そう言って頂けて嬉しいです(^^)
ありがとうございます。でも、見習うなんて、とんでもないですよー。
>44さん
ありがとうございます!
二股掛けている事にあまり罪悪感を感じていない吉を、
上手く描けたらと思ってますが、いやはや難しいですね(^^;)
>45さん
ありがとうございます(^^)
平家姐さんには、三角関係につきものの、泥沼なイメージを
なるべくライトにしてくれるようなキャラになっていって
ほしいと思ってます(w)
- 54 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月23日(土)11時36分34秒
- 登場人物の位置関係がはっきりしましたね。
どう絡んでいくんだろう。楽しみです。
- 55 名前:トライアングルゲームの幕開け 投稿日:2002年03月23日(土)21時41分09秒
携帯の着信メロディが石川の部屋に鳴り響く。
軽快なそのメロディは吉澤の大好きなアニメのマーチ。石川はその音で漸く目を覚ました。
昨日、あのままで寝てしまったらしい。乱れたままの服がやけに厭らしく、それと同時に何とも言えない虚しさを石川は覚えた。
電話の主に見えるはずもないのに、服の乱れを手早く直して、顔を真っ赤にさせながら、電話に出る。
「も、もしもし」
『あ、梨華ちゃん。アタシ』
「ひとみちゃん、昨日なんで電話の電源切ってたの?」
照れのせいも多少あったかもしれない。石川は開口一番、勢いよくそう言った。
- 56 名前:トライアングルゲームの幕開け 投稿日:2002年03月23日(土)21時42分43秒
『ごめんごめん、昨日なんだか疲れて寝ちゃってさー』
石川は呑気に答える彼女を少し腹立たしく思い、ブツブツと呟くように文句を言った。
「何回も掛けたのに全然出ないんだもん……」
『えっ? 何か用があったの?』
「そういう訳じゃないけど…毎日メールか電話くれてたのに、突然なくなったら心配するじゃない」
石川はそう言った後に「しまった」と思った。本当はこんな事を言うつもりなどなかった。
これではまるで常に電話をくれと催促しているだけではないか。
- 57 名前:トライアングルゲームの幕開け 投稿日:2002年03月23日(土)21時43分48秒
『そっか、梨華ちゃん寂しかったんでしょ?』
電話の向こうの声が弾んでいるように聞こえる。
石川はそれが少しだけ悔しくて、「べ、別に」とそっけなく答えた。
『……はぁ…素直じゃないなぁ』
吉澤が溜息交じりにそう言う。
その声音に少しだけ諦めの色が混じっていた事を石川は気付かない。
今日は泊まりに来れるのかどうかを聞きたかった石川だが、自分からそれを切り出すのはなんとなく憚れた。
どうしようかと考えあぐねていると、電話の向こうから吉澤の声とは別の、関西訛りの声が聞こえてきた。
- 58 名前:トライアングルゲームの幕開け 投稿日:2002年03月23日(土)21時45分13秒
―――なんやなんや、電話の相手は梨華ちゃんか? これはやっぱりパーソナリティとして追求していかんとアカンな!―――ああ、もう、平家さんやめて下さいよ―――
少しの間、そんな二人のやり取りに耳を傾けていると、ようやく吉澤が電話口に戻ってきた。
『ごめん、平家さんが邪魔するもんだから。おかしいんだよ、平家さん。アタシらがデキてるとかって言い出すんだよ、そんなことある訳ないじゃんねー』
「……………」
吉澤がわざとそう言っているのは石川も理解している。おそらく電話の向こうでは、平家が聞き耳を立てているのだろう。
- 59 名前:トライアングルゲームの幕開け 投稿日:2002年03月23日(土)21時46分15秒
これが本当に付き合っていなければ、きっと笑いながら「私達、付き合ってます」なんて言えるのだろう。
そう肯定できないのは、本当に付き合っているから。
よほどの事をしない限り、ばれる事もないとは思うが、もし万が一、自分達の不用意な発言で周囲にばれたりしたら、マスコミの格好の餌になるのは見えている。
だから、分かっている。分かっているのだけれど。
石川は何とも言いようのない寂しさがこみ上げてきた。
『あ、梨華ちゃんごめん。これから打ち合わせだって』
「…そ、じゃあまた後で」
『うん、じゃあね』
先に電話を切られる前に、石川は終話ボタンを押していた。
電話を切った後の無機質なツーツーという音を聞くのは、切なくなる気がして石川は嫌だった。
- 60 名前:トライアングルゲームの幕開け 投稿日:2002年03月23日(土)21時46分59秒
「おはようございまーす」
石川は通り掛かる顔馴染のスタッフ達に笑顔で挨拶を交わしながら、モーニング娘。の楽屋に入った。
「おはようございます」
総勢13人の為の楽屋はやけにだだっ広い。
楽屋には既に新メンバーを含む中学生組が、お菓子をひろげて仲良く雑誌を読んでいた。
各々に挨拶され、石川はそれに応えながら、離れた席に一人座った。
それは、吉澤のことがあったからかもしれない。何となく釈然としない気持ちのままで、メンバーと話をする気にはなれなかった。
- 61 名前:トライアングルゲームの幕開け 投稿日:2002年03月23日(土)21時47分37秒
鏡に向かって自分の顔を覗き見る。
かなりのんびり寝たお陰か、肌のつやはいいようだ。
けれど、どことなく表情が暗く乏しい気がしてならない。
ひとみちゃんが悪いんだから…私を不安にさせるから…
それならばもっと自分から甘えられればいいのだろうが、年上のプライドなのか、吉澤に素直に甘える事が出来ない自分が歯痒くて仕方がない。
芸能界という荒波に揉まれたお陰で、随分と強く逞しくポジティブになった石川だが、持って生まれた性分というのは直らないようだ。
- 62 名前:トライアングルゲームの幕開け 投稿日:2002年03月23日(土)21時49分03秒
石川は「はぁ…」と一つ溜息をついたちょうどその時、バタバタと廊下を走る音が聞こえた。
その騒がしさに何事かと思って振り返ると、勢いよくドアが開いて後藤が入ってきた。
「遅れてごめーん!」
後藤は乱れた息を整えているのか、胸を押えてしゃがんでいる。
それを見ていた加護が、いつもの人懐っこい笑顔で後藤に声を掛けた。
「ごとーさん、どうしたんですかぁ?」
後藤は少し落ち着いたのか、少しだけハァハァしながらそれに答える。
「いやー、二度寝して起きたら4時でさー、4時半入りなのにヤバイと思って慌てちゃったよー……って、他のメンバーは?」
「まだ来てませんよー」
「えっ!? まさかみんな遅刻?」
- 63 名前:トライアングルゲームの幕開け 投稿日:2002年03月23日(土)21時50分05秒
後藤の表情には、仕事に支障をきたすのではと言った懸念よりも、自分が遅刻した事を怒られなくて済むといった安堵の表情のほうが色濃かった。
加護を初めとした中学生組も、少し離れた場所にいる石川も、不思議な表情で自分を見ている事に後藤は気付いた。
「……え、なんかあったの?」
怪訝そうな声を後藤が発したその瞬間、加護と辻が顔を見合わせて大笑いしだした。新メンバーも笑いたいのを必死で堪えているのが良く分かる。
「ごとーさん、今3時50分ですよー」
加護はそう言うと、楽屋の掛け時計を指差した。
見ると、確かに短針が漸く4時を指そうとするところだった。
- 64 名前:トライアングルゲームの幕開け 投稿日:2002年03月23日(土)21時50分58秒
- 「……あはっ、なーんだ。慌てて損しちゃったよ、もー」
後藤は耳を真っ赤にして早口でまくし立てる。
まだクスクスと笑っている中学生組のところにいるのが恥ずかしいとばかりに、後藤は石川の隣に座った。
「ごっちん、おはよ」
「おはよー。もー参ったよー。よしこのせいだな、怒ってやんなくちゃ」
「………え……?」
後藤が「よしこ」と呼ぶ人物はたった一人しかいない事も分かっているが、石川は反射的に聞き返していた。
「自分が遅刻しないようにって、人の部屋の時計を一時間早めてたんだよ、きっと」
寧ろ、遅刻をしなかったのだから感謝するべきなのだろうが、よほどみんなに慌てた姿を見られたのが恥ずかしかったのだろう。後藤は一人で吉澤の文句を言っている。
- 65 名前:トライアングルゲームの幕開け 投稿日:2002年03月23日(土)21時51分50秒
「…あの…、よっすぃー、昨日ごっちんの家に泊まったの?」
「え……あー、うん。食事したついでに泊まってっちゃえーって」
「泊まった」と言った瞬間、後藤の顔が赤くなり、そして破顔したけれど、石川は吉澤が嘘をついたという事実にショックを受けて、後藤の表情の変化に気付かなかった。
……なんで、嘘ついたの?
ごっちんちに泊まったんなら、そう言えば良いのに……なんで?
滑らかに動いていた恋の歯車が、一気に狂い始めたような、そんな気がする石川だった。
- 66 名前:トライアングルゲームの幕開け 投稿日:2002年03月23日(土)21時52分48秒
そして―――
タイミングの悪い天然タラシの王子様は、石川の心情など露知らず、今まさにトライアングルゲームの始まる会場に、入り込もうとしていたのだった。
- 67 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年03月23日(土)21時57分26秒
- キリのいいところまでうpしました。
さあ、吉の運命は如何に?(って、まだ書いてないけど/w)
>54さん
ありがとうございます(^^)
少しだけ物語が動いてきました。
これから先後藤さんがどう動くかも見所でしょうか。
- 68 名前:名無し読者。 投稿日:2002年03月23日(土)22時31分09秒
- 楽しみが増えました。
- 69 名前:名無よすぃ 投稿日:2002年03月23日(土)22時48分47秒
- ああ〜、リカチャン、よしこに翻弄されちゃうのかしら・・・
楽しみです〜
- 70 名前:名無しベーグル。 投稿日:2002年03月24日(日)10時59分00秒
- 面白そうな展開になってきましたねぇ。
△関係って難しいけど読む方は楽しい(w。
がんがって下さい!
- 71 名前:じゃない 投稿日:2002年03月24日(日)14時08分05秒
- |.∀´) チラッ
- 72 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年03月24日(日)15時58分05秒
- やっと一気に読むことが出来ました!(遅っ^^;スマソ
梨華ちゃんの一人エッチに萌え!!
たらし王子の吉もこれからどうするのか気になります。
がんがってくださいね。
- 73 名前:愛の疑念と選手宣誓 投稿日:2002年03月25日(月)12時54分33秒
「おはようございまーす」
ガチャリと開いたドアから、爽やかな柔らかい笑みを浮かべた吉澤が入ってきた。
その声を聞いた瞬間、石川はショックで飛んでいた意識を取り戻した。
中学生組が一斉に吉澤に挨拶を交わす。それに答える吉澤の声音は穏やかで優しい。
だからみんなひとみちゃんのこと好きなんだろうな…
恋愛感情があるかどうかは別にせよ、吉澤は同性にモテると石川は思う。
無口な訳でもないけれど、お喋りなタイプでもない。けれど、気がつけば吉澤は誰とでも仲良くなっていたりする。
持って生まれた人の良さなのだろうか、柔らかく穏やかな彼女の色は、人を惹きつける何かがあるのだと、恋する乙女の欲目三割増で石川は思う。
そんなことを考えながら、石川は俯いていた顔をあげた。
吉澤は石川と後藤の顔を見据えると、笑顔のままこちらに向かってきた。
- 74 名前:愛の疑念と選手宣誓 投稿日:2002年03月25日(月)12時56分25秒
石川は吉澤に話を聞こうと口を開きかけたその瞬間、
「よしこー、あたしの部屋の時計早めたでしょー!」
後藤にそれを遮られてしまった。
後藤にそう言われ、吉澤は一瞬だけ眉をひそめたが、もう石川にばれただろうと開き直り、それに答えた。
「ごめんごめん。でも、遅刻しないで済んだんだからいいじゃん」
「そりゃそうだけど…。でも、すっごい焦ったんだからね」
後藤の口調自体は、吉澤を責めるものであったけれど、後藤の吉澤に向ける雰囲気がどこか甘く感じてしまうのは、自分の気のせいなのだと石川は必死に考えた。
けれど、女の感…特に自分の嫌な予感はよく当たる事も知っていた。
「悪かったって」
「じゃ、今度の食事はよしこのおごりね」
「えー、なんでそうなんのぉー」
- 75 名前:愛の疑念と選手宣誓 投稿日:2002年03月25日(月)12時57分37秒
食事に行けば、必ずその日は後藤の家に泊まるのがパターンになっている。つまり、後藤にしてみれば、次に会う約束を取り付けるための、言わば口実だった。
それを理解している吉澤も、文句を言ってはいるものの、声音はどこまでも優しい。
「慌てすぎて怪我してたらオオゴトだったでしょ?」
「分かった分かった。近い内に奢らせて頂きますよ」
「やった!」なんて、ニコッと笑う後藤の姿は、同性の目から見ても可愛いと石川は思う。
自分ではそんな風に吉澤に甘える事が出来ない。
いつの間にか作り上げてしまっていた「年上の自分と年下の彼女」の関係が。
たった3ヶ月の年上としてのプライドが、それを邪魔する。
- 76 名前:愛の疑念と選手宣誓 投稿日:2002年03月25日(月)12時58分51秒
そう思うと何だか切なくなってしまい、石川は思わず席を立っていた。
「梨華ちゃん、どしたの?」
突然立った石川を不思議そうに見つめながら後藤が聞いてきた。石川は努めて笑顔で、それに答える。
「ちょっとお手洗いに行ってくるね」
「そっか、いってらっしゃい」
吉澤がじっと石川の姿を見つめていたことに気付かない振りをして、石川は楽屋を後にした。
- 77 名前:愛の疑念と選手宣誓 投稿日:2002年03月25日(月)13時00分30秒
石川はトイレに入ると、鏡に映った自分の姿を見た。
そこには今にも泣き出してしまいそうな自分の顔があった。
吉澤が嘘をついていたこと。また、それがバレたと気付いていたはずなのに、悪びれた様子のない吉澤の姿。
後藤の吉澤に甘える姿。それに優しく接する吉澤の姿。
甘えたいのに甘えられない素直じゃない自分。
それら全てが頭の中でグルグル回っていて、石川の心を薄暗くさせる。
「だめじゃない、このくらいで落ち込んでちゃ…」
そう呟いたその時、ガチャリと音を立ててドアが開いた。やって来たのは吉澤だった。
石川は振り返ることなく、鏡越しに映る彼女を見やった。そこには、いつもより真剣な面持ちで自分を見つめている吉澤がいた。
トイレに入る様子もない事から、彼女が自分の後を追ってやって来たのだと理解する。
その事に関して言えば、純粋に嬉しく思うのだけれど。
- 78 名前:愛の疑念と選手宣誓 投稿日:2002年03月25日(月)13時01分45秒
「………トイレ、入ったら?」
なのに、開いた口から出た言葉はそっけないものだった。
どうして素直になれないのかと思ってみても、それが自分なのだから仕方がないと半ば諦めたように開き直る自分がいた。
「アタシが嘘ついたって思ってるんでしょ?」
「……何が?」
「嘘なんてついてないからね。ごっちんちで疲れて寝ちゃっただけだもん」
確かに嘘はついてない。後藤と体を交わって、疲れて寝てしまったのだから。
だけど。よくぬけぬけと言えるなと、吉澤は自分の口から紡ぎだされる言葉に呆れながら、客観的につっこんだ。
- 79 名前:愛の疑念と選手宣誓 投稿日:2002年03月25日(月)13時02分59秒
「別に何とも思ってないよ。……ひとみちゃんの方が気にしてるんじゃない?」
石川が努めて落ち着いた声音でそう返すと、吉澤は石川の30センチ後ろまでやって来た。
「じゃあ、なんで泣いてるのさ?」
吉澤の瞳と自分の瞳が鏡越しにぶつかり、しばし見詰め合う。
そして、疚しい事など何らないはずの石川が先に目を伏せた。
「泣いてなんかないもん」
「嘘だね」
「泣いてない」
「嘘」
「泣いてないって言ってるじゃない!」
石川がそう言うのと同時、吉澤は石川の腕をしっかり掴み、引っ張るようにトイレの個室に連れ込んだ。吉澤の突然の強引な行動に少々戸惑いながらも、石川は彼女に抵抗した。
吉澤はそれに構わず、石川をしっかりと抱きしめた。
- 80 名前:愛の疑念と選手宣誓 投稿日:2002年03月25日(月)13時04分23秒
「どうしてそんなに強がるかな。ホントは気になってしょうがないくせに」
「……何言ってるのよ…」
「ごっちんとアタシのこと勘ぐってた」
「…………」
石川は否定しない。それは肯定しているのと同じ事。
吉澤と後藤の関係。親友だときっぱり言い合える二人の間に、甘い雰囲気を感じた事はなかった。
……けれど。先ほどの後藤の吉澤を見る目を思い返してみれば、自分が吉澤を見つめる目とどこか同じだったように思える。そして吉澤も…。
そんな石川の心を見透かしたのか、吉澤は彼女の思考を止めるように、
「アタシが好きなのは梨華ちゃんだよ…分かってよ」
きつく抱きしめていた腕を緩めて、捨てられた子犬のような瞳で石川を見つめながらそう言った。
- 81 名前:愛の疑念と選手宣誓 投稿日:2002年03月25日(月)13時05分58秒
吉澤はずるいと石川は思う。
こんな瞳で見つめられたら何も言えなくなる事を分かってやっている確信犯だ。
彼女の思うまま、結局うやむやのままにさせてしまう、自分も悪いのだけれど。
「………分かってるよ」
石川はそう答えていた。
- 82 名前:愛の疑念と選手宣誓 投稿日:2002年03月25日(月)13時07分26秒
吉澤が先に楽屋に戻り、石川は未だトイレにいた。
どうやったって年下の彼女に敵わないと、一人小さく溜息をついた。
何をされようと吉澤の事が好きでたまらない自分がいるのだから。
吉澤と後藤。一度抱いた不安と疑念を拭い取るのは容易じゃない。
それならば、ふわふわ不安定な吉澤のハートを、自分の魅力で雁字搦めにしてみせれば良いだけの事だと。
石川は決意も新たに握り拳を作り上げて、今、高らかに宣誓を上げた。
- 83 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年03月25日(月)13時21分04秒
- 更新しました。
吉をなるべく悪者にしないように書きたいけど難しい今日この頃(涙)
>68さん
ありがとうございます。
ちなみにメール欄をご参照ください(^^)
>名無よすぃさん
翻弄させようと思ったんですが、今後の展開も考えて、
こんな感じにしてしまいました(^^;)
近い内に必ず!(w)
>名無しベーグル。さん
ホントに読むと書くとじゃ全然違いますね(T-T)
名無しベーグル。さんもあっちもこっちもがんがってくださいね。
楽しみにしております(^^)
>じゃないさん
うぉーじゃないさんにレス頂けてめちゃ嬉しいです!
( `◇´)<ウチもがんがってあの子らの真相暴くでー
>よすこ大好き読者。さん
いえいえ、読んでくださってありがとうございます♪
タラシの吉は今後もタラシの意向で(w)
吉が反省をする日は来るのか?…それは作者も分からない(w)
- 84 名前:さまようよっすぃー 投稿日:2002年03月25日(月)15時41分47秒
- 高々と宣誓されましたな。ぢゃ、こちらも堂々と(爆)。
欲張りで不安定な三人の行方が気になりまする。みっちゃんに期待も忘れずに(笑)。
がんがってくださいね。
- 85 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年03月25日(月)16時33分13秒
- かつてラジオで一緒にレギュラーをやっていた頃のごっちんとよっすぃー、
そんな2人を彷彿とさせるようなやり取りが生き生きとしてて楽しいです。
梨華ちゃんは、今見せている表の顔と本来の彼女とのギャップのが見事です。
>作者様、
今ごろ頭から読ませていただいております。
教えていただけるまで気がつかないなんて・・・。
この3人、そしてそこに絡む人達との話を楽しく読ませていただきます。
- 86 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年03月25日(月)20時44分12秒
- この3人が絡むと、どうもよしこは意地悪キャラで、たらしですな。(w
まぁ・・けっこう好きだったりする(笑
さて、これからの展開を楽しみに・・・・スッチーと共に・・・(略
がんがってください!
- 87 名前:友達以上、恋人未満 投稿日:2002年03月27日(水)16時07分32秒
学園コントの収録が済み、石川は自分のコーナーのキャラクターに衣装を換える為に、一旦楽屋に戻った。
他のメンバーも自分達の出番が終わったため、パラパラと楽屋に戻り始めた中、吉澤と後藤はコントの衣装のまま、スタジオで話をしていた。
「ねぇ、よしこー。今度はいつ食事行く?」
後藤が吉澤の衣装の裾を摘みながら、ほんの少しだけ自分より背の高い吉澤の事を、上目遣いで聞いてくる。その仕草は同性の吉澤から見ても可愛らしい。
後藤はそれを決して狙ってやっているのではなく、ごくごく自然な仕草なだけにタチが悪いと吉澤は思う。
「んーそうだなぁ…ここ最近、まともにお父さんとも会ってないし、家に帰らないとヤバイからなぁ。…うーん……週末辺りでどう?」
吉澤はそう言ったが、本当は石川の部屋に行くための口実だった。
ここしばらく石川の家にも行っていない。後藤との事を少し気にしだした石川に、余計な不安材料を与えるのはマズイと吉澤は思った。
- 88 名前:友達以上、恋人未満 投稿日:2002年03月27日(水)16時08分59秒
「週末かぁ……分かった」
「ごっちんとご飯食べに行ったら、絶対お泊りコースだしさー」
吉澤はそう言いながら、後藤に向かってニヤリと笑う。
後藤は昨夜の事を思い出したのか、顔を赤くしながら吉澤に反論した。
「な、なによー。よしこだってウチに泊まりたがるじゃん!」
「だって帰ろうとするとごっちんが寂しそうな顔するから」
「そんな事ないよー、もー!」
後藤は恥ずかしいのか吉澤に背を向けてしまった。
後藤が本気で怒っている訳ではないのを分かっているが、吉澤は「ごめんごめん」と彼女に謝る。
「よしこなんかしらない!」
「ごめんって。食事のほかにケーキ奢ったげるからさー」
「食べ物で釣られるほど単純じゃないよ!」
「夜はサービスするから許して」
「………………………プッ、アハハハハハ、よしこ、今のオヤジっぽいよー」
後藤はスタジオ中に響き渡るほど思い切り笑った。
- 89 名前:友達以上、恋人未満 投稿日:2002年03月27日(水)16時10分02秒
「許してもらえたみたいだし、そろそろ戻ろうか。みんな楽屋に戻ったみたいだよ」
吉澤がそう言い、辺りを見回した。スタジオの中は、セットチェンジであくせくしているスタッフの姿しか見当たらない。
「ホントだ。戻ろっか」
二人が楽屋に戻ろうと歩き出したちょうどその時だった。何だかゆらゆら自分の体が揺れているように感じて、吉澤は立ち止まった。
「……よしこ、どしたの?」
突然何も言わずに立ち止まった吉澤を不思議に思い、数歩先を歩いていた後藤が訪ねた。
「んー気のせいみたい」
その瞬間、ガタガタと音を立ててスタジオ内が揺れ出した。
- 90 名前:友達以上、恋人未満 投稿日:2002年03月27日(水)16時11分22秒
「わっ、やっぱ地震だ!」
「や、こわっ!」
揺れがドンドンと大きくなっていく。
上に吊り下げられているライトなどの機材が大きく左右に揺れているのが一目で分かる。
スタッフ達はセットが倒れないようにと必死で押えていた。
吉澤と後藤は周りに身を隠すようなものが何もなかったので、ただ大人しく、揺れが収まるのを待っていた。
- 91 名前:友達以上、恋人未満 投稿日:2002年03月27日(水)16時12分29秒
………時間的に言えば1分にも満たなかったのだろうが、長い地震がやっと収まった。
それまで一言も発さず押し黙っていた後藤が、漸く口を開く。その表情は安堵の色を浮かべていた。
「すごく大きかったね、すごく怖かったー」
「ホント大きかったね。…まだ揺れてるよ」
吉澤は頭上でブランブランと揺れているライトを見て言う。
「みんな大丈夫かなー、楽屋戻ってみようよ」
そう後藤が言った時。キンッと金属が弾ける音がして、後藤の頭上からボルトが一つ落ちてきた。
「キャッ………ビックリしたぁ。………何これ?」
- 92 名前:友達以上、恋人未満 投稿日:2002年03月27日(水)16時13分16秒
後藤はボルトを拾おうとしゃがんだ。
吉澤はボルトがどこから落ちてきたのかと天井を見上げた。そこには何十とぶら下っている重量20キロのライトの一つが、今にも後藤の頭上に落ちそうになっていた。
鉄の擦れる音が止んだと同時、音も立てずにライトがスローモーションのように落ちてきた。
吉澤は咄嗟に飛び出していた。
「ごっちんっ!!」
余裕などない。吉澤は後藤に覆い被さるように抱きしめて、転がるように横へ避けた。
ガッシャーン!!という大きな衝撃音と、先ほどの地震とはまた違う、局部的で瞬間的な揺れがした。
「……よしこ?」
「…ごっちん、大丈夫?」
吉澤は変わりない柔らかい微笑みで、後藤の身を案じた。
突然吉澤に抱きしめられた後藤は、何が起きたのか理解出来ず、吉澤の腕の中でただ戸惑っていた。
- 93 名前:友達以上、恋人未満 投稿日:2002年03月27日(水)16時14分11秒
「おい!大丈夫か!?」
衝撃音に気付いたスタッフやマネージャーが駆け寄ってくる。
「吉澤さん、後藤さん、大丈夫!?」
「んー、怪我も何もないです。大丈夫ですよ」
慌てるスタッフとマネージャーを尻目に、吉澤は至って呑気に答えた。
マネージャーはあからさまにホッとした様子で、
「……はぁ……全く。……頼むから無茶しないでくれよ……」
それまで吉澤にしっかりと抱きしめられていた後藤が漸く開放され、やっとその状況に気付いた。
ほんの2メートル先に、大きな鉄の塊が転がっている。辺りは粉々に砕けたガラスの破片や破損した部品が飛び散らかっていた。
先ほどの衝撃音と揺れの原因はこれだったのだ。
吉澤を見ると、彼女の背中には無数のガラスの破片が飛び散っていた。
自分を助けるためにこんな無茶をした彼女を思い、気がつけば後藤は怒鳴っていた。
- 94 名前:友達以上、恋人未満 投稿日:2002年03月27日(水)16時15分08秒
「バカよしこっ!!………あたしなんかを助けるために……こんな無茶しないで!」
喜怒哀楽の感情のうち、あまり怒の部分を見せない後藤だったから、こんな風に人前で大声を上げる後藤を見て、その場にいた者全てがびっくりした。
たった一人だけ、戸惑いも何の気負いもなく、その場の雰囲気にそぐわない声のトーンで後藤に話し掛ける。
「なんで怒るのさー」
「だって……もし怪我したら……ううん、もしかしたら死んじゃったかもしれないんだよ!」
「アタシ生きてるじゃーん」
どこまでも飄々とした口調で吉澤は答える。
「結果論じゃなくて! ……お願いだから、無茶しないでよ……あたしのせいでよしこがなにかあったら………あたし…」
後藤はそう言うと、ポロポロと涙を零した。
こんな自分は自分じゃないと後藤は戸惑った。
どうして吉澤の事を思うと、こんなに感情が揺れてしまうのだろう?
- 95 名前:友達以上、恋人未満 投稿日:2002年03月27日(水)16時16分24秒
吉澤が自分を庇ってくれた事は単純に嬉しかった。ヒーローのような立ち振る舞いにドキドキもした。
けれど、現場はこんなにもひどい。一つ間違えれば、吉澤自身の命にさえ関わるものだった。そんな無茶をした吉澤に腹が立ったし、その原因を作ったのが自分だった事に何ともいえない怒りを覚えた。
もしも吉澤が大怪我を負っていたならば、きっと自分は自分でいられなかっただろう。
吉澤が無事だった事に安堵し、後藤は気がつけば泣いていた。
「しょーがないでしょ、咄嗟に体が動いてたんだから。…それに、目の前でごっちんが大怪我したら、アタシだって気ぃ狂っちゃうよ。………何ともなかったんだから、もう泣かないで、ね?」
未だ泣き止まない後藤を、子供を諭すような口調で吉澤は宥めた。
後藤は吉澤の穏やかな瞳を見据え、そのまま吉澤の肩口に顔を埋めた。
ヒックヒックと、まるで子供のように声を上げて後藤は泣く。
吉澤は「泣くなよぉ」と、後藤の頭をくしゃくしゃ撫でた。
- 96 名前:友達以上、恋人未満 投稿日:2002年03月27日(水)16時17分49秒
自分を庇ってくれた吉澤を、友情とは違う、別の感情が芽生えていた事に、後藤はやっと気付いた。
いや、ずっと前から彼女のことが好きだったのだろう。けれど吉澤が、自分達の関係を友達同士のお遊びだと常に言っていたから、自分もそう思い込ませていただけだと後藤は思う。
……でも、もう自分の気持ちに誤魔化せやしない。
自分は吉澤のことが好きなのだと、漸く認めた。
友達以上、恋人未満な二人の微妙な関係。
それだけじゃもう我慢出来ないと、吉澤の優しい腕の中で後藤は思った。
- 97 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年03月27日(水)16時30分31秒
- 更新しました。
後藤さんとうとう自覚しちゃいました。
これからが大変です。(作者も吉も)
>さまようよっすぃーさん
ありがとうございます(^^)
自分が書く石川さんはすぐネガネガしちゃうので、なるべくそうならないように、強気キャラでがんがって貰おうと思います(^^)
ちなみに平家姐さんは近日登場予定です(w)
>M.ANZAIさん
いえいえ、読んで下さって本当にありがとうございます(^^)
実はヲタ歴が短いので、ラジオを聞いたことがないんですよ。
それだけに、二人の会話とかがあまり想像つかなくて苦労しました(^^;)
>よすこ大好き読者。さん
出張お疲れ様です! スッチーと仲良くなりましたか?(w)
今回はちょっとカッコイイ吉にしてみました。じゃないと悪者になっちゃう気がして(^^;)
でも、タラシよしこは今後も健在です。つーか、最後までタラシのはず(w)
- 98 名前:さまようよっすぃー 投稿日:2002年03月27日(水)17時18分35秒
- 突然の出来事にこちらもドキドキしました(^^;;。でも、密かに石川さんの安否を気にする自分がいましたが何か(笑)。
後藤、発動っすね(爆)、さぁ、どうなるどうする?
- 99 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月27日(水)21時54分34秒
- ごっつぁんがどう動いてくるのか楽しみ
作者さんがんがって
- 100 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年03月28日(木)00時53分11秒
- 思わぬ出来事がごっちんの気持ちを呼び起こしましたね。
大胆な彼女のこれからの行動が心配です。
思いつめていく石川さんもコワイですけど。
- 101 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月29日(金)15時31分25秒
- タラシよしこ、いいっすねぇ
- 102 名前:スタートライン 投稿日:2002年03月30日(土)00時36分47秒
地震も漸く収まり、楽屋の中にもいつもと変わらない喧騒さが戻りかけていた時、矢口が慌てて楽屋に戻ってきた。
「ねぇ! スタジオでよっすぃーとごっつぁんが怪我したって! なんかスタッフがすっごい慌ててたんだけど!」
矢継ぎ早にそう言うと、矢口は楽屋を出た。それを聞いたほかのメンバー達も次々と慌てて楽屋を出ていった。
……ひとみちゃんが……怪我…?
石川は、健康的な肌が真っ青に、まるで血の気が全て無くなってしまったような顔色で、ペタリと床に座り込んでしまった。
「石川、アンタ大丈夫!?」
楽屋を出ようとした保田が石川の異変に気付いて声をかけた。
石川はまるで保田の声など聞こえてないかのように、一点を見つめている。
「しっかりしなさい! 二人とも怪我したって言ったって、まだどんな具合なのか分からないんだから! ほら、行くわよ!」
保田は石川と仲のよい二人が怪我をしたと聞いたから、彼女がこうなってしまったのだろうと理解し、励ますように怒鳴った。
保田は気も漫ろな石川の腕をしっかりと掴み、引っ張るように楽屋を出た。
- 103 名前:スタートライン 投稿日:2002年03月30日(土)00時38分52秒
青ざめたままの石川を連れた保田がスタジオの前まで辿り着くと、「なんだよー、人騒がせなー」と、矢口がいつもの少し甲高い元気な声で出てきた。安倍や飯田もそれに続いて出てきた。
「矢口! あの子達の怪我の様子は!?」
保田が慌てたように聞くと3人は顔を見合わせた。保田の慌てた様と石川のただ事ではない有様が可笑しいのか、クスクスと笑っている。
「心配する事なかったっしょ」
安倍が相変わらず抜け切れない訛りでそう答えた。
まぁ、確かに一つ間違えれば大事だったけどね――と、矢口が付け加え、3人は楽屋に戻った。
あまりにも掻い摘んだ説明で要領を得ないが、矢口達の様子では吉澤達の怪我は大した事はなさそうだと保田と石川は理解し、ホッと胸を撫で下ろした。
- 104 名前:スタートライン 投稿日:2002年03月30日(土)00時40分17秒
「とにかく中に入ってみよう」と二人がスタジオに入ると、スタジオの真ん中に大きいライトが転がっていた。その周りはガラスの破片や破損した部品。
これが落ちてきて二人は怪我をしたのだろうと、一目で分かる惨状だった。その数メートル先に辻と加護と後藤と吉澤がいた。
後藤は吉澤に抱きついて泣いていた。吉澤は困りつつも、優しげな笑みを浮かべて後藤の頭を撫でている。辻と加護は泣いている後藤に戸惑っているようだった。
吉澤の姿を見て、石川はホッと安堵した。あの様子ならば大した事はなさそうだ。
だが、それと同時に、吉澤と後藤の只ならぬ雰囲気を見て胸騒ぎを覚えた。
―――嫌な予感がする。
こんな時に思う事ではないのだけれど、石川は胸の痛みと何とも言えない焦燥感に打ちひしがれていた。
- 105 名前:スタートライン 投稿日:2002年03月30日(土)00時41分51秒
そこへ小川、高橋、新垣、紺野の5期メンバー4人が、安堵した表情で出入り口に向かってきた。
「吉澤達は大丈夫なの?」
「あ、ハイ。吉澤さんも後藤さんも怪我はないそうです」
高橋が答えた。
なぜ後藤があんなにも泣いているのか分からなく、それについて訊ねると、どうやら自分の身の危険を顧みずに吉澤が後藤を助けてくれた事が嬉しくて泣いているらしいと、高橋達は少し興奮気味に話した。
「吉澤さんって、やっぱり格好良いねー」と口々を揃えながら、4人は楽屋に戻っていった。
- 106 名前:スタートライン 投稿日:2002年03月30日(土)00時43分15秒
「二人とも怪我がなくて良かったね」
保田が穏やかな声音で言う。石川は「はい」としか答えられなかった。
吉澤がとった行動は、彼女にしてみれば至極当然のことだったと石川は思う。
吉澤はよく言えば勇敢、悪く言えば無鉄砲だから。
だから後先考えずにただ、目の前の相手を助けるために体が動いたのだろうと。
そんな彼女だから自分も好きなのだと、石川は無理矢理納得させる。
けれど、ネガティブなもう一人の自分が、自分の気持ちを薄暗くさせていく。
……親友とは言え、自分の身も顧みず助けてやる事なんて出来るのだろうか。
……いざという時、人間は大切なものを守るだけで精一杯なのではないのだろうか。
……もしも、後藤ではなく自分だったら、吉澤は助けてくれたのだろうか。
意識が混沌とした石川は、まるで泥の底なし沼に突き落とされたような重苦しさを感じずにはいられなかった。
- 107 名前:スタートライン 投稿日:2002年03月30日(土)00時45分37秒
漸く落ち着きを取り戻した後藤は、涙に濡れた顔を洗ってくるとトイレに向かった。吉澤は先に楽屋へと戻った。
楽屋には帰り支度を終えた中学生組と、次の現場へ向かう準備をしている先輩メンバーの姿があった。そこに石川の姿はない。
キョロキョロと楽屋内を見渡していると、保田が声をかけてきた。
「誰探してるの?」
「や、探してる訳じゃないんですけど、梨華ちゃんがいないなぁって」
「ああ、石川ならチャーミーの収録に行ったわよ。それよりあの子大変だったのよ」
「大変って?」
「アンタ達が怪我したって聞いたとき、もう顔面蒼白になって動けなくなってたんだから」
その時の石川の姿が容易に想像出来て、吉澤は余計な心配を掛けてしまったと顔をしかめた。
- 108 名前:スタートライン 投稿日:2002年03月30日(土)00時47分50秒
「よっぽどビックリしたんでしょうね。こう…なんて言うのかな、一点を見つめてるんだけど焦点が合ってないまんま動かなくなっちゃって」
「…………」
「アンタ達の姿を見てかなりホッとしたみたい。私もかなり焦ったわよ」
「…心配掛けてすみません」
「まぁ、結果的に二人とも無傷だった訳だし、アンタもごっつぁんを助けるために取った行動なんだから、あまりうるさい事は言いたくないんだけど……アンタはモーニング娘。の一員なんだし、怪我とかしたら周りに迷惑かけるって事を忘れないで。………あまり無茶しないで頂戴ね。私も生きた心地しないわ」
厳しい物言いのようにも聞こえるが、吉澤にはそれが保田の優しさだという事が十分に分かっている。吉澤は素直に「はい」と返事した。
「じゃ、私はもう帰るわ。お疲れ」
「お疲れ様でした」
保田は帰りあぐねていた中学生組に「アンタ達も明日学校なんだから、早く帰りなさい」と声を掛け、楽屋を出た。
中学生組6人も、それに続いて「お先に失礼します」と帰っていった。
- 109 名前:スタートライン 投稿日:2002年03月30日(土)00時50分23秒
吉澤はそばにあった椅子に座り、石川のことを考えた。
自分の前ではいつも強がってみせる石川だが、本当は精神的に弱い面を持っている事も知っている。自分が怪我をしたと聞いたとき、どんな胸中であったか計り知れない。
いつでもお姉さんぶって、自分に頼ろうとしない彼女に歯痒さを覚えていたけれど、自分のこういった無鉄砲さが彼女にしてみれば頼りなく感じているのかもしれないと思った。
もっとしっかりしなければいけない。
彼女が心から自分を頼ってくれるようにならなければ、付き合った意味がないような気がした。
したたかな強さと、その反面、すぐにネガティブに物事を考えてしまう弱さを持ち合わせているアンバランスな彼女が、確かに自分は好きなのだから。
- 110 名前:スタートライン 投稿日:2002年03月30日(土)00時51分48秒
そしてふと脳裏を過ぎるのは、やはり後藤のこと。
親友という境界線を今でも引いてはいるけれど、その線を越えたのは間違いなく自分で。
クールな外見と反した天真爛漫で無邪気な彼女に、間違いなくハマッている。
自分に抱きついて泣きじゃくる先ほどの彼女の姿は純粋に愛しかった。
そして彼女も、きっと自分を恋愛感情で見始めていると、自惚れでなくそう思う。
軽いノリで始めてしまった後藤との関係。
今更元に戻ろうというのは虫のいい話だし、後藤を手放す気にもなれないのが厄介なところだ。
- 111 名前:スタートライン 投稿日:2002年03月30日(土)00時52分48秒
どちらも手放せないのならば、絶対にバレない様に付き合っていけば良いだけだ―――と、無節操で滅茶苦茶な吉澤論を打ち立てた。
先の見えないトライアングルレースのスタートライン。
泣いて笑って怒って悩んで、今、漸く選手が並び始めた。
- 112 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年03月30日(土)01時07分20秒
- 更新しました。
一応今回までが第2章って感じです。
>さまようよっすぃーさん
天災を物語の展開に使うのは一番卑怯だと思ってはいるんですが、
使っちゃいました。(^^;)
今後は吉の動きが問題なんですよねぇ…。
まだどう動かそうか迷ってる最中だったり(爆)
>99さん
ありがとうございます(^^)
ここの後藤さんはなるべく可愛げのある感じにしたいなぁとは思ってます。
>M.ANZAIさん
他にも後藤さんの気持ちを気付かせる方法はあったんでしょうが、
作者が楽な展開にしてしまいました(爆)
次回は石川さん奮闘の回になるかもしれません。
どうなることやら…まだ決めかねてます(^^;)
>101さん
ありがとうございます(^^)
なるべく吉が悪キャラにならないように、
憎めない感じにしていきたいと頑張ってます。
- 113 名前:ハル 投稿日:2002年03月30日(土)01時38分57秒
- 偶然きたら更新されてる!嬉しいです!!
ここの吉、ちょっと黒いんだけど何だか憎めないんだよなぁ。
どうなるんだ〜??
- 114 名前:M.ANZAI 投稿日:2002年03月30日(土)05時22分02秒
- あまり深くは考えない吉、心配性の梨華ちゃん、無邪気なごっちん。
3人それぞれが自分の気持ちに向き合った時に出る行動が楽しみです。
そして何気に保田さんが・・・。
- 115 名前:名無し読者 投稿日:2002年03月31日(日)14時37分31秒
- お気楽なヨシコがいいですねー。
梨華ちゃんとごっちんの動きに期待。
- 116 名前:夜叉 投稿日:2002年04月01日(月)18時25分57秒
- 普段からそういう色が滲み出てるから仕方がない。>石川。
…とか言ってみるテスト(^^;;。
次回はエ○ですと? Σ(`.∀´#)
ここからどんな展開になるのか、ドキドキしながらお待ちしております。
- 117 名前:愛の偽装工作パート1 投稿日:2002年04月03日(水)22時23分47秒
後藤は泣き腫らした顔を鏡で覗き見た。
折角したメイクは涙でドロドロになっていた。目も真っ赤に充血している。
「……うわ、最悪な顔してるよ〜。こんな顔をずっとよしこに見せてたんだ〜、やだなぁ」
自分の感情をコントロール出来なくて、思い切り吉澤の前で怒ったり泣いたりしてしまったけれど、後藤とて、やはり年頃の女の子。好きな人の前では可愛くありたいと思う。
後藤は蛇口をひねり、勢い良く水を出して、髪も衣装も濡れてしまうほど、思い切り顔を洗った。
備え付けの手拭ペーパーを2枚取って顔を拭く。後藤はもう一回鏡を覗いた。目はまだ赤いけれど、メイクも落ちて見られるようになったと、うんと一人頷いた。
「……よしこに謝らないと」
身の危険も顧みず自分を助けてくれた吉澤に対して、感情が昂ぶっていたとは言え、怒鳴ってしまった事に詫びなければと後藤は思った。
そして、ほのかに芽生えた気持ちを素直に伝えようと思った。
- 118 名前:愛の偽装工作パート1 投稿日:2002年04月03日(水)22時25分23秒
吉澤は自分のことを好きであるのは間違いないと後藤は思う。ただ、その「好き」はライクで、ラブではないはず。
体を重ね合っている自分達の根底にあるのは、あくまでも友情だから。
まずはその関係から一歩抜け出さなければ、何も始まらないと後藤は思った。
後藤は鏡に映る自分を見て、一生懸命言い聞かせる。
「……大丈夫、思い切ってぶつかっていけば、よしこも受け止めてくれる」
「よしっ」と一人気合を入れて、後藤は楽屋へ戻っていった。
- 119 名前:愛の偽装工作パート1 投稿日:2002年04月03日(水)22時26分52秒
後藤は楽屋の前に立つと、大きく深呼吸をした。
ここ一番の正念場の時に力を発揮できるタイプではあるけれど、基本的に後藤は臆病だ。
今も逃げ出したくなるくらい、心臓がドキドキしている。
けれど、自分の気持ちに気付いてしまった今、もう逃げる訳にはいかない。
後藤はもう一度深呼吸をし、気持ちを落ち着かせてドアを開けた。
楽屋には都合が良いのか悪いのか、吉澤しかいなかった。
「あ、ごっちん、お帰り」
吉澤は帰り支度をしながら、のんびりとした口調でそう言う。
後藤はドアの前から動かずにいた。
「…? ごっちんどしたの?」
どこか表情の硬い後藤を、心配そうな表情で吉澤が聞いた。
- 120 名前:愛の偽装工作パート1 投稿日:2002年04月03日(水)22時28分52秒
「………あの…さ、あたしさ…」
「ん?」
「…よしこのことが好きなんだ」
あぁ、言っちゃったと、後藤は心の中で一人呟いた。
考えてみれば、もうちょっと落ち着いてからでも良かったのかもしれない。目は真っ赤だし、スッピンだし。化粧なんかして可愛い格好をして告白すれば良かったのかもしれない…等と、後藤の頭の中はグルグル回っていた。
後悔先に立たずと言うことわざが身に染みて、俯いて落ち込んでいた後藤の頭上から、相変わらずのんびりした穏やかな声音が聞こえた。
- 121 名前:愛の偽装工作パート1 投稿日:2002年04月03日(水)22時30分26秒
「アタシもごっちんのこと好きだよ」
吉澤ならそう応えてくれるだろうと、90パーセント信じていたけれど、残り10パーセントの不安が後藤を蝕んでいただけに、吉澤のその言葉が嬉しくて、後藤は俯いていた顔を上げた。
30センチ前に吉澤が来ていたことに漸く気付いて、後藤が驚いたように身を引いた。
後藤の手首をすかさず掴んだ吉澤は、グッと彼女の体を引いて抱き寄せて、ドアを素早く閉めた。
「よしこ…好きだかんね」
「分かってるよ」
後藤はホンの少しだけ背伸びして、吉澤の肩口に顎を乗せてそう言った。
これで二人は本当の恋人になれたのだと、後藤は満ち足りた表情で、吉澤を抱きしめ返した。
- 122 名前:愛の偽装工作パート1 投稿日:2002年04月03日(水)22時32分16秒
広い楽屋の出口前で吉澤と後藤はしばらく抱きあっていた。
ふと、吉澤が掛け時計を見てみると、20時を過ぎていた。もうすぐ石川の収録が終わる時間だ。
このままごっちんといたらちょっとヤバイかも……。
「ねぇ、ごっちん」
「…ん、なぁに?」
「そろそろ帰ろっか」
内心焦っていた吉澤だが、そんな素振りは微塵も見せず後藤に言った。
まだ吉澤から離れがたい後藤だったが、それに素直に頷いた。
普段はおっとりしている吉澤だが、今日に限っては俊敏な動作で帰り支度を済ませ、後藤を急かす。
「さ、早く帰ろ」
「そんなに慌てちゃってどしたの?」
「や、慌ててる訳じゃないんだけど、…ほら、明日学校あるしさ」
後藤は吉澤の言葉を真に受けて、そっか、そうだよね、と慌てて身支度を整えた。
学校なんて嘘っぱちなんだけどね…ごめんね、と吉澤は心の中で呟いた。
- 123 名前:愛の偽装工作パート1 投稿日:2002年04月03日(水)22時33分09秒
スタジオの正面玄関のところまでやって来た吉澤が、突然思い出したように言い出した。
「あっ! 携帯忘れてきちゃった! アタシ取ってくるから、ごっちん先に帰っていいよ」
「よしこが忘れ物って珍しいねぇ。あたし待ってるから行ってきなよ」
「や、悪いから良いよ〜。それにごっちんはタクシーで帰るんだから、どうせここでバイバイじゃん」
「そか。じゃあ、先に帰るね」
「うん、じゃあね」
吉澤は、後藤の乗ったタクシーのテールランプが見えなくなるまで手を振った。
そして、そのまま回れ右をして、ダッシュで楽屋へと戻っていった。
- 124 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年04月03日(水)22時46分35秒
- 短めですが、更新しました。
時間があれば、もう一回うpしたいと思ってます。
>ハルさん
ありがとうございます(^^)
>ここの吉、ちょっと黒いんだけど何だか憎めないんだよなぁ。
そう言っていただけると嬉しいです!
とにかく重苦しくない三角関係を描けたらと、
ない知恵を絞って頑張っております(w)
>M.ANZAIさん
3人のキャラがしっかりしてきたので、書くのが結構楽になってきました(^^)
でも、この話、無意味に長くなりそうでコワイです(w)
ヤッスーはどうなるんでしょうねー(ってあまり考えてなかった/爆)
>115さん
ここの吉はちょっとだらしないけど、憎めないキャラを目指してます(^^)
これからいしごまがどう動くのか、自分も楽しみです(オイ)
>夜叉さん
確かに、不幸キャラがあれほど似合う人はいない。>石川。
と、言ってみるテスト(w)
分かりやすい展開で申し訳ないんですが、次回こそエ○です。(^^;)
- 125 名前:愛の偽装工作パート2、ちょいバレ気味。 投稿日:2002年04月04日(木)00時47分37秒
石川は中澤と二人で受け持っているコーナーの収録が漸く終わり、スタッフに挨拶をし、スタジオを後にした。
トボトボと俯きながら歩いていると、後ろから声を掛けられた。
「石川、お疲れ」
「あ、中澤さん、お疲れ様でした」
石川は軽く会釈をし、中澤の歩調に合わせて歩いた。
「アンタ、今日の収録上の空やったな」
「あ……すみませんでした……」
- 126 名前:愛の偽装工作パート2、ちょいバレ気味。 投稿日:2002年04月04日(木)00時49分16秒
中澤は叱ると言うよりは、会話のきっかけの一つとしたような口調で石川に話していたのだが、一回り上の中澤に指摘された事に、石川は深く沈んでしまった。
「や、別に叱ってる訳やないんけど。アンタがボーっとしてる事って珍しいなぁって。…疲れてんの?」
「……いえ、そんな訳じゃないんです……これからは気をつけます。すみませんでした……それじゃ、お疲れ様でした」
石川は矢継ぎ早にそう言うと、楽屋に入った。
中澤に対して少々礼儀知らずな態度を取ってしまったと後悔した石川だったが、今は誰とも話したくない気分だった。
- 127 名前:愛の偽装工作パート2、ちょいバレ気味。 投稿日:2002年04月04日(木)00時51分43秒
ふと気がつくと、広い楽屋の中には誰もいなかった。誰の私物も置いてない。みんな帰ってしまったか、次の仕事に向かったのだろうと石川は思った。
中澤の言うとおり、吉澤と後藤のことを考えていて、収録に身が入らなかったのは事実だった。
恋愛感情を抜きにして、吉澤は誰とでも仲良くなれるから、だからそう言った心配をするだけ野暮なのだと、石川は年上の余裕があるように今までは気にしないように努めてきた。
けれど、後藤の吉澤に向ける雰囲気は、加護や辻などがじゃれてくるのとは異なるものだと思う。
考えれば考えるほど、二人は惹かれ合ってるのでは…という結論に落ち着く。
自分の魅力で吉澤の気持ちをしっかり捕まえようと決意したばかりなのに、ネガティブな石川は早々と弱気になってしまう。
「……私、どうしたらいいの?」
- 128 名前:愛の偽装工作パート2、ちょいバレ気味。 投稿日:2002年04月04日(木)00時52分28秒
石川は鏡の中の自分に向かって、小さく呟いた。
その時、バタンと大きな音を立てて、ドアが開いた。
「キャッ」
石川はその音にビックリして振り向くと、ハァハァ息を切らした吉澤がドアの前に立っていた。
「良かったぁ、梨華ちゃん帰ってなくて」
「………ひとみちゃん、どうしたの?」
「あの、アタシ、トイレに行ってたんだけど、収録終わって梨華ちゃんが帰っちゃったらマズイって思って、ダッシュで戻ってきたんだよ〜」
息は切れ切れなのに、嘘は澱みなく言える自分に、もはや尊敬の念を与えたいと吉澤は思う。
- 129 名前:愛の偽装工作パート2、ちょいバレ気味。 投稿日:2002年04月04日(木)00時53分46秒
「……カバン持ってトイレに?」
後藤のことが頭にあるせいか、どこか疑心暗鬼な石川は訝しげに聞いた。
石川が自分を疑っているのは百も承知の吉澤は、慌てず次の嘘を紡ぎだす。
「だって、楽屋に誰もいなかったんだもん。荷物盗まれたりしたらイヤじゃん」
「そう、だね」
ここは警備員がしっかり付いているから大丈夫なのでは、とも思ったが、吉澤がそう言っているものをあえて突っ込むのはやめておこうと、石川はそれに同意した。
よしんば後藤とどうにかなっていたとしても、こうやって吉澤は自分の元に帰ってくる。
例え、今言っていることが嘘だとしても、それは自分との仲が壊れないためについてる嘘だと思う。
だから大丈夫、大丈夫だと石川は自分に言い聞かせた。
- 130 名前:愛の偽装工作パート2、ちょいバレ気味。 投稿日:2002年04月04日(木)00時54分45秒
「……梨華ちゃん、どうしたの?」
俯いている石川の顔を吉澤が覗き込んできた。
石川は上目だけ向いて吉澤を見た。ジッと自分を見つめる大きな瞳はどこか不安げに揺れているようにも見えた。
すると、吉澤は石川の頬を両手で挟み、俯いていた顔を自分に向かせ、少しだけ拗ねているようなぽってりとした石川の唇に、自分のそれを落とした。
10日ぶりの吉澤のキスは、やはり優しくて甘いと石川は思った。
「ヘヘッ、梨華ちゃんの味」
何となくこの雰囲気を和ませようと、いや、誤魔化そうと、わざとおどけているのが分かる。
吉澤は更に、ちゅ、ちゅ…と啄ばむようなキスを繰り返す。
- 131 名前:愛の偽装工作パート2、ちょいバレ気味。 投稿日:2002年04月04日(木)00時56分42秒
今までほったらかしにしていてごめんね、なんて言ってるみたいだと思うと、石川は少し可笑しくなった。
いつもこんな調子で騙されちゃう私が悪いんだろうなぁ…。
けれどそれもしょうがないと、石川は開き直る。
どうしたって吉澤が好きで仕方がない自分がいるのだから。
何回目のキスかも分からなくなったその時、
「ひとみちゃん……今日、ウチ来る?」
石川は吉澤の首に腕を回してそう言った。
吉澤はそれに対して、もう一回キスをして答えた。
- 132 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年04月04日(木)01時00分49秒
- そんなわけで、いしよしの日になるのを待って、も一度更新。
そんな暇があるならさっさと仕事を終わらせて帰れと己に言いたい今日この頃。
- 133 名前:名無しさん 投稿日:2002年04月04日(木)14時43分18秒
- イシカーさんにバレバレなまぬけなヨシコがイイ!
次回タイトルにも超期待!(笑)
- 134 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月04日(木)14時45分32秒
- ageちゃってスマソ。。。
- 135 名前:第1ラウンド、石川優勢 投稿日:2002年04月04日(木)21時13分00秒
ファミレスで食事を済ませた石川と吉澤は、石川の部屋に戻ってきた。
「おじゃましま〜す。…なんか久し振りだね、梨華ちゃんちに来るの」
10日もほったらかしだったのよアナタは。そう突っ込みたくなるのをグッと堪えて、石川は曖昧な笑顔を返した。
電気をつけて吉澤を部屋に通すと、「綺麗になってるねー」と感心の声が飛んできた。
普段は散らかっている事の方が多い石川の部屋だが、ここ数日は吉澤の事を変に考えるのがイヤで、暇さえあれば部屋の掃除をしていたから綺麗なだけ。
相変わらずのほほんと「うん、綺麗」と言って部屋を見渡している吉澤に、皮肉の一つも言ってやりたくなるが、しょうがないかと言葉を飲み込んだ。
- 136 名前:第1ラウンド、石川優勢 投稿日:2002年04月04日(木)21時14分13秒
「ひとみちゃん、座ってて。今、なにか飲み物用意するから」
「あ、ありがとう」
吉澤は置いてあるクッションを抱えながら座る。ふと、ベッドを見やると、ピンク色のプーさんのぬいぐるみが目に止まった。
「ひとみちゃん、お待たせ。ん? どうしたの?」
「や、プーさん、ちゃんと枕元に飾ってくれてるんだなぁって思ってさ」
「あぁ、…ひとみちゃんがくれたものだし、ね」
石川はちょっと歯切れも悪く、照れた様に答えた。
吉澤はそんな石川が可愛いと改めて思いながら、石川が出してくれたジュースを一口飲んだ。
しばらくプライベートで会えなかったのを埋めるように、石川と吉澤はお喋りに興じた。
普段は聞き役に回る吉澤も、学校で起こった出来事、家族の事、他愛のない話ではあったけれど、一生懸命石川に話した。
- 137 名前:第1ラウンド、石川優勢 投稿日:2002年04月04日(木)21時14分58秒
30分ほど経った頃だろうか、ピーピーと風呂に湯が張られた事を知らせる警告音が鳴った。
吉澤の知らぬ間に、風呂の支度をしておいたらしい。
「ひとみちゃん、先にどうぞ」
「え、梨華ちゃん先に入りなよ」
「私は片付けるものがあるから、ひとみちゃん先に入って」
「そう? じゃ、先に入らせてもらうね」
吉澤は風呂場に向かった。
石川は自分達が使ったコップを流しに持っていき、水道のコックを捻る。ジャーッと流れる水の勢いをしばらく眺めていたが、「よしっ!」と一人気合を入れて吉澤の後を追った。
- 138 名前:第1ラウンド、石川優勢 投稿日:2002年04月04日(木)21時16分14秒
石川が訳の分からない気合を入れていた頃、吉澤は体を洗い終えるところだった。泡を流して、一旦湯船に入ろうかと考える。
……今日、やっぱエッチするよね…今まで10日も空けた事なかったもんなぁ。
けれど、昨日後藤としたばかりで、今日は石川と言うのは、あまりにも生々し過ぎないかと、お気楽人間の吉澤も流石に思う。
だが、これで何もしなかったら余計に不審がるのも目に見えているし、何より石川との行為自体嫌いじゃない。いや、寧ろ好きなのだ。
「…ま、いっかぁ」
やっぱりお気楽な吉澤は、そう呟いてシャワーを浴びた。
そこにカチャ…とドアの開く音がした。けれど、シャワーを浴びている吉澤はその音に気付かない。一糸纏わぬ姿で石川が浴室に入ってきた。
- 139 名前:第1ラウンド、石川優勢 投稿日:2002年04月04日(木)21時17分13秒
石川はそっと吉澤の背中に近付いて、彼女の体に手を回して抱きしめた。
「うわっ、ビックリした〜」
気付かぬ内に石川が入ってきた事と、突然抱きしめられた事に驚いた吉澤は、手に持っていたシャワーを思わず落としてしまった。
「あっ」と吉澤が拾おうとしたものの、石川に抱きしめられたままで動けなかった。
「梨華ちゃん?」
何も話さない石川に優しい声音で問い掛けるが、石川は尚も無言のまま、自分の胸を彼女の背中に押し付けるように、強く抱きしめた。
……梨華ちゃん、もしかしてやる気マンマンなんでしょか? つーか、やっぱ梨華ちゃんの胸って大きいよなぁ。
吉澤はどこまでものほほんとしている。
- 140 名前:第1ラウンド、石川優勢 投稿日:2002年04月04日(木)21時18分08秒
一方の石川はこれからどうしようと悩んでいた。吉澤を自分の魅力で縛りつけようと決意したものの、どうすれば彼女が自分に夢中になってくれるのかなんて、皆目見当がつかない。
石川の大きい胸が大好きだと吉澤が言っていたから、とりあえず押し付けてみようと思っただけで、他に何も考え付かなかった。
そもそもこういった行為は、いつも吉澤に身を任せてしまっていた。自分が何かできる事はないかと真面目な顔で吉澤に聞いたこともあるが、梨華ちゃんはそのままでいいよと一笑に付された事を思い出す。
どうしようかと考えあぐねていた石川だが、ふと吉澤のうなじを見ると切り傷が赤く薄っすらと浮かび上がっていた。
「………ひとみちゃん、この傷どうしたの?」
「えっ? 傷?」
「…うん、深い傷じゃないけど、ナイフとかガラスの破片とかでスッと切れた感じの傷」
そう言って、石川は吉澤の傷に指を這わした。
- 141 名前:第1ラウンド、石川優勢 投稿日:2002年04月04日(木)21時19分13秒
「あ〜、ライトの破片で切っちゃったのかなぁ」
吉澤は何の気なしにそう呟いた。
白く美しい吉澤の肌に赤く染まった切り傷。その傷は後藤を助けた時についたもの。石川の胸中は複雑だった。
「………ごっちんの為に作った傷なんだね……なんか悔しいな…」
石川がそうポツリと呟いた。
石川は、この傷がまるで吉澤と後藤を繋ぐ赤い糸のように思えて仕方がない。ただただ、傷跡が早く消えてくれれば良いと思った。
- 142 名前:第1ラウンド、石川優勢 投稿日:2002年04月04日(木)21時20分24秒
吉澤は余計な事を言ってしまったとほんの少し後悔した。
吉澤が石川の表情を伺おうと振り向こうとしたその時、うなじの辺りに生暖かい、柔らかい感触を感じた。
吉澤は、備え付けられている鏡を見やると、石川は自分の首筋に舌を這わせていた。
首筋から聞こえる舌の這う音とシャワーの水音が合わさって、浴室内に響き渡る。
まるで子猫が自分の傷を舐めて治すような、どこか動物じみたその姿は、吉澤の本能を煽るのに効果的だったと言えよう。
吉澤は、無心に傷を舐めていた石川の体を、自分の正面に引き寄せて浴室の壁に押し付けた。
「キャッつめたっ………ひとみちゃん?」
冷えているタイルに背中を押し付けられた石川は、いつになく真剣な熱っぽい瞳で見つめている吉澤に気付いた。
- 143 名前:第1ラウンド、石川優勢 投稿日:2002年04月04日(木)21時21分38秒
「……アタシを煽ってどうすんの?」
「へっ?」
自分の行為が吉澤の理性を壊している事など毛頭気付かない石川は、間抜けな返事しか返せずにいた。
「梨華ちゃんが仕掛けてきたんだからね」
だからどうなっても知らないよと、いつもよりも更に低い声音でそう呟いて、石川の唇に噛み付くようにキスをした。
- 144 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年04月04日(木)21時26分57秒
- 短めですが、ひとまずうpします。
夜は長いです。二人も作者もこれからです(w)
>133、134さん
自分もたまに間違ってageちゃったりするんで、気にしないで下さい(^^)
>イシカーさんにバレバレなまぬけなヨシコがイイ!
この間抜けなところが吉の憎めないところだと(w)
- 145 名前:ハル 投稿日:2002年04月04日(木)23時10分00秒
- いしかわがんがれ!!
吉はつくづく罪な奴だな。でも役得?
- 146 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月05日(金)00時03分17秒
- 萌え
いしよし記念日は終わっちゃったけど二人の夜はこれからっすよね(w
- 147 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月05日(金)20時28分36秒
- 夜は長いぞ、二人ともがんがれ。
- 148 名前:夜叉 投稿日:2002年04月06日(土)19時38分32秒
- 後ろから抱きしめたとこ、めちゃめちゃいいです。さすが師匠です。
煽るつもりが無いのに煽ってる石川さん、これからどうなるんでしょうか…?(汗汗)。
本能全開な吉、がんがれ!(爆)
- 149 名前:名無しベーグル。 投稿日:2002年04月07日(日)12時47分01秒
- いいところで(w。仕掛ける石川さん(・∀・)イイ
- 150 名前:第2ラウンド、吉澤形勢逆転。 投稿日:2002年04月07日(日)15時13分47秒
湯気か、それとも二人の甘い熱気でなのか、浴室内はくもっていた。
タイルに体をしっかりと押さえつけられた石川の体がふるふると震えている。
吉澤はボディソープを指に絡ませて、石川の硬く尖った胸の突起に指を這う。冷たい液の感触と、吉澤の熱い手に石川の体がビクッと跳ねた。
いつもならば吉澤に抱きついて快感に震える表情を隠せてしまえるのに、今は体を押さえつけられて、吉澤に全てを見られてしまっている。それが石川の羞恥心に拍車をかけていた。
必死で声を抑えつけようと、血で滲んでしまいそうになるほど唇を噛んでいる。
「あ……くっ……んっ……」
「そんなに噛んだら唇が切れちゃうよ」
- 151 名前:第2ラウンド、吉澤形勢逆転。 投稿日:2002年04月07日(日)15時15分18秒
我慢しないで声出しなよと、余裕の笑みで言う吉澤が小憎らしく思う。
睨み返してやろうと石川は思ったが、胸の突起に吉澤の指が触れる度に小さく声が漏れてしまい、それが叶わない。
敏感すぎる自分の体が恥ずかしくて、石川は顔を横に背けたが、吉澤はそれも許さなかった。石川の肩を押さえつけていた左手を離し、石川の頬を掴んで強引に自分に向かせる。
石川の胸の突起を弄っていた右手は、石川の大きく形の良い胸を包み込むように揉みしだいていた。
- 152 名前:第2ラウンド、吉澤形勢逆転。 投稿日:2002年04月07日(日)15時16分28秒
「ぁんっ」
吉澤はその一瞬を狙ったかのように、思わず声が漏れた石川の唇に自分の唇を重ねた。
舌をスルリと滑り込ませ、閉じられた歯を強引にこじ開ける。石川の舌を絡めとり、痛いくらいに舌を吸い上げた。
吉澤の強引で、けれど情熱的な口付けは、石川の意識を飛ばすのに十分だったと言えよう。ガクガクと膝が震え、崩れ落ちてしまいそうな自分の体に石川は戸惑ってしまう。
漸く唇を開放され、石川は息も切れ切れに言った。
「ひとみ…ちゃん、私、立ってられないよぉ」
だから解放してと懇願するも、吉澤は首を縦にしない。
- 153 名前:第2ラウンド、吉澤形勢逆転。 投稿日:2002年04月07日(日)15時17分11秒
「まだまだ、夜は長いよ」
吉澤は不敵にそう微笑むと、床に胡座をかくように座り、その上に石川を座らせた。
背後からしっかりと石川を抱いた吉澤は、尚も彼女の胸を執拗に愛撫する。両方の乳首を人差し指と親指でこねるように摘む。
その度に堪らないとばかりに震える体が愛しくて、彼女のうなじにちゅ…とキスをした。
感じるのか、くすぐったいのか、石川は体を捩るように逃げる。けれど吉澤はそれも許さなかった。揺れる石川の体をギュッと抱きしめて、先ほど石川が自分にやったように、うなじに舌を這わせた。
「ぁん…ぁぁ……はぁ……もう…」
石川の声に情欲が含まれてきた。
- 154 名前:第2ラウンド、吉澤形勢逆転。 投稿日:2002年04月07日(日)15時18分08秒
「……もう、ナニ?」
吉澤は低い声音で囁くように意地悪にも聞く。石川の体に熱が帯び出してきたのは手に取るように分かっているのだ。
石川自身も待ち望んでいた行為のはずなのに、優しくも意地悪な吉澤がもどかしくて仕方がない。
けれど、彼女の掌は、胸や腰、内腿を行き来するだけで、決して石川の最も敏感な部分を触ろうとはしなかった。
吉澤はいつもそうやって自分を翻弄する。
そして、いつも自分は素直になれないまま、吉澤の手管に溺れていた。素直に自分の望む事を口にすればいいだけなのに、それが出来ない自分に苛立ちさえ覚えたけれど、羞恥心が、プライドがそれを許さずにいた。
- 155 名前:第2ラウンド、吉澤形勢逆転。 投稿日:2002年04月07日(日)15時19分14秒
けれど、もういいと石川は思う。
吉澤が恋しくて自慰まで及んでしまった自分に、プライドも何もないと開き直る。
早く、吉澤の長い指で快感の波に溺れさせて欲しい。
たった一言、吉澤にお願いをすれば、それは即座に叶えてくれるはず。
石川は所在なげにほっておいた自分の左腕を背中越しの吉澤の首に回し、首を捻って吉澤の唇を求めた。唇の表面を舐めて、吉澤の唇に自分の舌を指し込み、口腔内を掻き回す。
吉澤は石川の突然の行為に少々戸惑ったものの、石川が自分を求めてくるのが嬉しくて、それに応える。
「ん……ふ……」
唇を離すと、二人を繋ぐ透明な糸が引かれた。それが切れてしまわないようにと、石川は急いで吉澤の唇をペロリと舐めた。
そんな姿があまりにも愛しくて、吉澤が彼女の名前を囁こうとしたその瞬間、石川が先に口を開いた。
- 156 名前:第2ラウンド、吉澤形勢逆転。 投稿日:2002年04月07日(日)15時20分13秒
「ひとみちゃん……お願いだから、触って」
頬を染めて照れたように言う石川の、あだめいたその姿に吉澤は更に興奮を覚えた。
同じ女性であるはずなのに、自分や後藤とも違う色を石川は持っていると吉澤は思う。
これで彼女が自分の魅力に気付いてそれを武器にしてしまったら―――自分は彼女から抜け出せなくなるだろうと、吉澤は内心思った。
尚も触れずにいる吉澤がもどかしくて、石川は吉澤の手首を掴み、自分の秘部に誘導して、もう一度「触って」とお願いをした。
いつもの石川ならば、恥ずかしがって黙りこくってしまうだけなのに、今日に限ってはことごとく吉澤の想像を覆してくれる。
単純な吉澤は、素直な石川がただただ可愛く思った。
吉澤は彼女の望みを叶えるべく、石川の茂みにそっと指を這わせ、切れ間に指を入れた。石川の表情には、ようやく求めていたものを手に入れた満足感と、これから与えられる快感への期待感に溢れている。
- 157 名前:第2ラウンド、吉澤形勢逆転。 投稿日:2002年04月07日(日)15時21分32秒
「梨華ちゃんのここ、すごく厭らしいね。アタシの指が動くだけでこんな音立てちゃって…」
「…ゃん……そんな…こと、言わない…でっ……」
吉澤が指を動かすたびに立つ濡れた音に、石川は堪らない快感を覚える。
吉澤が石川の蕾に軽く触れると、石川はまるで電流が流れたかのような衝撃を感じた。
ぷっくりと膨らんだそれが、吉澤の指をもっともっととねだるように充血しているのが石川自身も気付いている。
吉澤は指の腹でそれを強くこねた。
「ひっ……あっあっ…ぁぁ……」
石川は喘ぐ声も切れ切れに、ただ腰をくねらせた。吉澤は尚も執拗にそこを攻めた。
「…あっ……やっ……ぁぁんっ」
吉澤は奥まった亀裂に指をゆっくり挿し入れた。
吉澤の指を待ち構えていたかのように、石川の濡れたそこはヒクヒクと喘いでいる。
- 158 名前:第2ラウンド、吉澤形勢逆転。 投稿日:2002年04月07日(日)15時22分22秒
「すごく締め付けてくるよ。そんなにアタシの指が欲しかった?」
吉澤は指と言葉で石川を更に責める。
「あっ……やん……そんな風に……いわ、ないでぇ……」
激しくそこをかき回すと、淫らな音が浴室内に響く。そのあまりの厭らしさと激しい快感に、石川の体が湾曲した。
「もう、だめぇ……ひとみちゃ…ん……いかせて…」
もう石川は限界にきていた。つま先を強張らせ、細い体をビクビクと震わせている。
愛しい吉澤の手で絶頂を迎えさせて欲しい、ただそれだけしか考えられなかった。
- 159 名前:第2ラウンド、吉澤形勢逆転。 投稿日:2002年04月07日(日)15時23分11秒
「ん、分かった」と優しい声音でそれに答えた吉澤は、石川の体に塗れたボディソープを洗い流し、石川の体を床へ横たえさせた。
熱を帯びた体と相反して、タイルの冷たさに石川が震える。
「すぐ熱くさせてあげるからね」
そう言って石川に口付ける。石川もそれに応えるように、吉澤の首に腕をまわした。
先ほどまでは、吉澤に自分の表情を覗かれる事に羞恥心を感じていたけれど、今は見つめられている事に喜びを感じていた。
吉澤は石川の胸の突起を口に含みながら、石川の膣内にゆっくりと指を挿入した。
「ん……あん……ぁぁ……」
- 160 名前:第2ラウンド、吉澤形勢逆転。 投稿日:2002年04月07日(日)15時25分01秒
淫らに濡れて吉澤の指に絡みつくそこは、とても熱かった。
石川の頬はピンク色に染まり、潤んだ瞳で吉澤を見つめている。こんな艶っぽい表情は他の誰にも見せられない。彼女は自分だけのものだと独占欲に駆られた。
ゆっくりと出し入れて、時折指を曲げて膣内を刺激する。その度に震える体が愛しくて、石川に口付けを繰り返した。
「ん……ふ……」
どちらの吐息か分からないほど、その口付けは激しくなり、互いの舌を求め合い、絡め合った。
吉澤も興奮しているのか指の速度が次第に早まる。
「あっ…ぁぁぁぁ……ひとみ…ちゃ…ん…」
「梨華ちゃん…愛してる」
低く掠れた声音で石川の耳元へ囁く。
愛しい吉澤に抱かれている喜びと、快楽に溺れてしまっている恥ずかしさがあいまって、石川は何も考えられなくなっていた。
- 161 名前:第2ラウンド、吉澤形勢逆転。 投稿日:2002年04月07日(日)15時25分42秒
「あんっ……ゃ…んあっ…はぁ…ぁぁ…もぅ……だ…め…ぇ…」
「もうダメ?」
「あっ……ぅん……あっあっあっ……」
より大きな快感を石川に与えようと、指を2本に増やし膣内を掻き回す。その確かな充足感に石川は喘ぐ声も次第に大きくなる。もう限界が近い。
更に吉澤は速度を速めた。厭らしい音と、石川の喘ぎ声だけが浴室内に反響する。
「あっ…ああっあっ……ぁぁ…あっあああ!!」
石川は吉澤の腕の中で、漸く絶頂に達した。
- 162 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年04月07日(日)15時28分14秒
- とりあえず、キリのいいところまでうpしました。
昼間っからこんなんでごめんなさい(苦笑)
恥ずかしい事この上ないです(^^;)
- 163 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年04月07日(日)15時32分37秒
- >ハルさん
ホントに吉は罪作りです。
こんな調子じゃ、今後の展開が不安でしょうがないです(苦笑)
>146さん
ええ、夜は長いですから(w)
この後も●ロシーンを続けようかと思ったんですが、
そこばっかり長くても……と端折ろうかと思ったり(苦笑)
>147さん
けっこう二人ともがんがったかと(w)
こんな感じでどうでしょうか?(恐る恐る)
- 164 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年04月07日(日)15時39分21秒
- >夜叉さん
後ろからのシーンだけは、自分も萌えました(w)
今後も出来るだけ石川さんには素で吉に煽っていって欲しいと思ってます(w)
>名無しベーグル。さん
途中で切っちゃってすんませんでした(w)
お風呂でえっちなのに、あまり普通のえっちと変わらなくて、
自分でちょっとツマランと今思いました(w)
どうせなら泡●りくらいさせときゃ良かった…(爆)
- 165 名前:JAM 投稿日:2002年04月07日(日)18時36分04秒
- 作者さんの書くエロで萌え死にましたが、何か?(w
だんだん素直になっていくチャーミー萌え〜。
>>155のメール欄についてですが私も作者さんと同じ趣味です(w
なんか萌えちゃいますよね〜。
- 166 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年04月07日(日)21時31分04秒
- オナカイパーイ!!
会社で読んでるのがもったいないので、家帰ってもっかい読みます。(謎
- 167 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月07日(日)23時31分05秒
- なんでいしよしのエロはこんなに萌えるんだろうなぁしかし。
いしごまもよしごまも好きだけどやっぱいしよしが一番(・∀・)イイ!
作者さんがんがれ!
- 168 名前:夜叉 投稿日:2002年04月08日(月)17時16分18秒
- 師匠、萌え狂いました(爆)。
石川さんをこんなにして、吉はどう責任をとるのでしょうか?(^^;;
今後の展開が楽しみです、がんがってください。
- 169 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月10日(水)12時25分51秒
- よしごま好きなのにいしよしで萌えてしまった・・・
- 170 名前:ゆらゆら 投稿日:2002年04月10日(水)23時11分53秒
浴室で絶頂まで達してしまった石川を、吉澤は抱きかかえるようにベッドに連れてきた。
石川は吉澤に顔を向けてはいたが、薄っすらと開いた瞳はどこかぼんやり惚けている。まだどこか夢の中を彷徨っているような表情のままだった。
「無茶させちゃったかな…」
吉澤は石川の髪をそっと撫でた。頬も体もまだ火照っている。
何か冷たい飲み物でも…と吉澤は立ち上がり、冷蔵庫にあったオレンジジュースをコップに注いで持ってきた。
「梨華ちゃん…大丈夫?」
- 171 名前:ゆらゆら 投稿日:2002年04月10日(水)23時13分07秒
彼女の肩に手をかけて軽く揺すると、石川は「…ぅん」と掠れた声で返事をした。
「ジュース持ってきたから少し飲みなよ」
吉澤が「ハイ」とそれを手渡そうとすると、石川は「ひとみちゃん、飲ませて」と甘えたような舌ったらずな口調で言ってきた。
やはりいつもの石川と違う。いつもの彼女なら、恥ずかしがって布団に潜り込んで顔を見せないか、憎まれ口を叩いて誤魔化すかのどちらかだった。彼女にどんな心境の変化があったのだろう、それとも久し振りのエッチで壊れてしまったのだろうか。
単純な吉澤はそんなお気楽な事しか考えない。
- 172 名前:ゆらゆら 投稿日:2002年04月10日(水)23時14分08秒
こんな風に甘えてくる石川が新鮮で嬉しい吉澤は、「今日の梨華ちゃんは甘えん坊だね」と、石川の肩をそっと抱いて起こした。
持ってきたジュースを二口ほど口に含むと、吉澤は石川の唇を軽く開かせて、口移しで飲ませた。
石川は口移されたジュースをコクコクと喉を鳴らしながら飲み干して、そのまま吉澤の口腔に舌を滑り込ませてきた。吉澤の唾液さえも飲み干すかのように吸い上げる。
煌煌と光る蛍光灯の下で、クチュクチュと濡れた音が響くのは厭らしいなんて思いながらも、積極的な石川の唇に気を良くした吉澤はそれに応えるように、ジュースよりも甘い石川の唇を味わい始めた。
- 173 名前:ゆらゆら 投稿日:2002年04月10日(水)23時14分45秒
石川は2度目の絶頂を迎えた後、疲れたのかスースーと寝息を立てて寝てしまった。
カーテン越しの月明かりの中で、石川の無防備な表情が目の前にある。彼女の口元はほのかに笑っている様に綻んでいた。
自分の腕の中で幸せそうにまどろんでいる石川を見て、吉澤の表情もついつい弛緩してしまう。
「…やっぱ梨華ちゃんのこと好きだなぁ」
付き合い初めて1年半。あまりに互いを知りすぎて、どこか馴れ合いになっていたようにも思うけれど、まだまだ石川に惹かれて止まない自分がいることに、改めて吉澤は気付いた。
それに気付いたのがエッチの後というのが、楽天的な自分らしいけどねと、ほんの少し自嘲気味に笑う。
- 174 名前:ゆらゆら 投稿日:2002年04月10日(水)23時15分37秒
彼女の額に手を当てて、そっと唇で触れる。
「ん…」と一瞬石川が身じろいだ。起こしてしまったかと慌てて唇を離したが、彼女はまた寝息を立て始めた。
吉澤は腕に抱いていた石川をそっと下ろし、彼女を起こさぬようにゆっくりとベッドから出た。
シンクに行き、水を飲む。裸のままなのも何かと思い、Tシャツに袖を通した。
その時、静寂な部屋の中にブルブルと振動音が響いた。一瞬何かと思ったが、それが自分の携帯から発せられるものだと吉澤は気付いた。
程なくして振動音が止まる。ふと時計を見やるともう2時を過ぎている。
こんな時間に誰からだろうと、カバンの中から携帯を取り出して見てみるとメールが届いていた。
差出人は後藤だった。
- 175 名前:ゆらゆら 投稿日:2002年04月10日(水)23時16分44秒
吉澤は携帯を手にトイレに入り、改めて後藤からのメールを読む。
『今日はホントにありがとね。好きだよ』
たったそれだけのシンプルなメール。
けれど後藤のことだ。携帯とにらみっこをしながら、文字を入力しては消し、消しては文字を入力してと、何度も何度も繰り返したに違いない。
そして漸く辿り着いたのが、この言葉だったのだろうと思う。
彼女の想いが十分に吉澤にも伝わった。
後藤の気持ちを覚醒させてしまったのは、明らかに自分。
素直に甘えてくる後藤が愛しくて、ついつい手を出した。それはどこか軽い気持ちで始めた関係だったと思う。
セックスをして情が湧いたのがきっかけだったかどうかなんて、もはやどうでもいいことだ。
吉澤にとって、後藤はなくてはならない存在の一人である事に間違いない。
- 176 名前:ゆらゆら 投稿日:2002年04月10日(水)23時17分23秒
石川が未知の世界の芸能界で共に手を取り合い励ましあった同志ならば、後藤は良き先輩として、親友として、自分を支えてくれた理解者だ。
二人とも今現在此処にいる吉澤にとって、なくてはならない大切な存在なのだ。
だからこそ、悩む事があまり好きでないお気楽人間な吉澤も、いつもより三割増で悩んでしまう。
「……いつかはどっちかと……もしかしたら、二人とも手を切らなくちゃいけないんだろうなぁ」
許されるものなら二人の間でゆらゆらと過ごしたい。
そんな身勝手きまわりない事が許されるとは思わないが、理屈が通らないのが恋愛だ。
好きか嫌いの感情だけで物事が通る、シンプルな世界に住んでいるわけではないけれど。けれど、二人が好きなんだからしょうがない。
この混沌とした感情を抜けた先に答えがあるとも思えなかった。
- 177 名前:ゆらゆら 投稿日:2002年04月10日(水)23時18分26秒
「……どっちにしたってなるようにしかなんないよね」
やはりどこか能天気に考えながら、吉澤はメールの返事を打ちだした。
全ては吉澤の素直な気持ちから始まった、不誠実なラブトライアングル。
三者三様の想いが絡まり、それぞれの夜が更けていく―――。
- 178 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年04月10日(水)23時37分17秒
- 短めですが、うpしました。今回までが第3章ということで。
ようやく中盤を迎えたところです。
>JAMさん
萌えてくださったようで、安心しました(^^)
エロでも普通の物語でもそうですが、書いてる内に面白いのかどうか、
分からなくなってきちゃうんです。
それと、メール欄のレスにご賛同ありがとうございます!
年上ゆえに意地張っちゃうのを懐柔していくのが堪らないすよね(w)
>よすこ大好き読者。さん
お仕事ご苦労様です!
こんな駄文でしたが、満足していただけたようで嬉しいです(^^)
>167さん
ありがとうございます(^^)
自分がいしよし好きってのもあるとは思いますが、
いしよしのエロは書いててしっくりきますねぇ。
>夜叉さん
萌え狂っていただけて嬉しいです(^^)
ここの吉はお気楽で無責任なので、このままのらりくらりかも(爆)
後藤さんと石川さんにどうにか頑張って動いてもらいたい今日この頃(w)
>169さん
いしよしの世界にようこそ!(爆)
いしよしのまま進む事もないはずなので、
よかったら、またお付き合い頂けたらと思います(^^)
- 179 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月11日(木)13時28分00秒
- よっすぃーはどっち取るんだろう…
- 180 名前:名無しベーグル。 投稿日:2002年04月11日(木)19時30分07秒
- いしよしエロってホントに萌えますねぇ。
今回も良かったです。もう中盤ですか。頑張って下さい。
- 181 名前:夜叉 投稿日:2002年04月11日(木)21時32分08秒
- やじろべえのような吉と積極的な二人は、どこまで平行線のままでいられるのでしょうか?お母さん、心配です(笑)。
交わるであろう点と線の動きに期待してます。がんがってください。
- 182 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年04月12日(金)15時16分36秒
- 更新はしておりませんが、吉澤さんお誕生日おめでとうということで。
>179さん
一番気になるところですよね。
このお話を書き始めたときから、ラストだけはきめていたんで、
早くそこまで書き上げたいです。でもまだ中盤…(^^;)
>名無しベーグル。さん
映像が浮かびやすいだけにいちばん書きやすいですよねー。
このまますんなり終わらせたい心境ですが(w)、
後藤さんを放置するわけにもいかず、これからが正念場っす(苦笑)
名無しベーグル。さんも色々がんがってください。楽しみにしてます(^^)
>夜叉さん
そろそろのほほんとしている吉にお灸を据えてやりたい今日この頃ですが、
一体どうなることやら(苦笑)
ある意味自分の煩悩に任せて書き始めたモノだったので、
ちょっと今後の展開に今更ながら悩み始めてます(爆)
本編の方で吉の誕生日とリンクした話を書ければいいんですが、
うまくいかなかったので、短編を書きました。
良かったら見てやってください。
ttp://www.geocities.co.jp/Bookend-Ryunosuke/9771/n_rest.html
- 183 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年04月13日(土)14時13分50秒
- う〜ん。どっちか一人になんて絞れないよ・・・・。
と、吉の気持ちになってみたりしました。(ヲイ
もっと、複雑なトライアングルになっていくか?・・・・・楽しみです。
- 184 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月14日(日)10時57分47秒
- 結局いしよしになる気配。もうそのパターンは飽きたよ。。。
- 185 名前:先制攻撃? 投稿日:2002年04月14日(日)15時35分21秒
都内のあるレッスン場。そこでは一週間後に控えたライブに備えて、最終調整を兼ねたレッスンが行われていた。
レギュラー番組に加え、個人の仕事もあるメンバー全員のスケジュールを調整するのは甚だ困難だ。18歳以下のメンバー達に夜9時以降の仕事を表向きにはさせてはいないが、今日のように9時を過ぎても帰れないのはもはや暗黙の了解事。
鏡の前に立ち、石川は後藤に振り付けのチェックをしてもらっていた。
「今の所はこうじゃない? 体をこう回して…こう」
後藤は軽くステップを踏みながら、クルリと一回ターンをしてみせる。石川は後藤の姿を鏡越しに見ながら、それを真似た。
「こんな感じで良いかな?」
「うん、オッケー」
後藤は親指と人差し指で輪っかを作って答える。
- 186 名前:先制攻撃? 投稿日:2002年04月14日(日)15時36分00秒
5期メンバー達も幾度となくライブの場数を踏んできたとは言え、加入して半年目。まだまだ未熟な面が目立つのか、ダンス指導を一任されている夏に相変わらず怒鳴られている。
それを見た後藤がフフと笑いながら腰を下ろした。石川もそれに続いて横に座る。
「なんかさー、昔のよしこみたい」
何でも器用にこなせそうに見られがちな吉澤だが、4期メンバーの中で最もダンスが不得手だった。どれだけ精一杯練習をしても、夏の納得行く踊りがどうしても出来なくて、今の5期メンバー達のようによく怒鳴られていたのを後藤は思い出した。
石川も後藤が何を思い出して笑っているのか、すぐに分かった。
少し涙目になりながら、それでも悔しそうな口元を浮かべて俯いていた吉澤の姿をすぐに思い出せる。
吉澤の事を思うと自然に顔が綻んでしまう自分がいる。誰に気付かれた訳でもないけれど、それがホンの少し恥ずかしくて、誤魔化すように後藤に話し掛けようとした。
―――が、後藤を見て胸にチクリと痛みを感じた石川は、そのまま言葉を飲み込んだ。
- 187 名前:先制攻撃? 投稿日:2002年04月14日(日)15時36分33秒
穏やかな笑みを浮かべた後藤の表情からは、溢れるほどの吉澤への想いが伝わってきた。5期メンバー達を見て微笑んではいるが、彼女の見つめている先にあるのは在りし日の吉澤の姿である事は間違いない。
自分も同じ目をしているから、同じ人に恋をしているから、だからこそ分かる。
やっぱり、ごっちんは……。
ここ数日、吉澤と愛し愛された日々を過ごした石川は、吉澤に対して抱いていた疑惑は一応拭い取れたけれど、後藤への疑念はより一層深まっていた。
今までは、吉澤と後藤は趣味思考が似ていて気が合うから、二人が仲の良いことは仕方のない事だと理解していた。自分に親友がいるように、吉澤と後藤も親友なのだと。
けれど。
恋愛って友達から発展していくもんなんだよね……
- 188 名前:先制攻撃? 投稿日:2002年04月14日(日)15時37分19秒
メンバー内恋愛がそうそうあってたまるかとも思うけれど、自分が吉澤を好きになってしまったように、後藤が吉澤を好きになってしまうことだって有り得ない話じゃない。
それこそ下手な男性より、優しくて格好良い吉澤が恋人の方がよほど良いと思う。
そんな事が脳裏に過ぎり、石川の表情は薄暗くなってしまう。
……でもひとみちゃんの恋人は私なんだし………本当にごっちんがひとみちゃんのこと好きなんだったら…諦めてもらわなくちゃいけないよね
そうは思ってみても、後藤の気持ちがはっきりと分からない今、どうすれば良いのかなど、石川には何も思いつかなかった。
とりあえずそれとなく後藤の気持ちを聞いてみようと、暫く閉じていた口を漸く開いた。
- 189 名前:先制攻撃? 投稿日:2002年04月14日(日)15時38分16秒
「……ねぇ、ごっちん」
「んぁ、なぁに梨華ちゃん?」
「…あの、唐突なんだけど、その…ね、」
「なに?」
「あの……ごっちんって好きな人いるのかなーって」
後藤と割合仲良くしている石川だが、そういった類の話を今までしたことがなかった。
だからこそ、普通の友達同士の会話のように、人の恋愛話に興味津々な女の子のようにさも振舞って、普通に話を切り出したかったのだが、これじゃ意味ありげに聞いているのがバレバレだと石川は少々後悔した。
だが、あまり細かい事を気にしない後藤は、石川の質問に素直に答える。
「うん、好きな人いるよー」
「えっ、あっ、そうなんだー。…どんな…人?」
「うーん、そうだねぇ……一言でいうと優しくてカッコ良くて可愛い人かな」
「そうなんだ。優しくてカッコ良くて可愛いなんて、完璧だね。………あの…結構身近な人とか?」
- 190 名前:先制攻撃? 投稿日:2002年04月14日(日)15時38分47秒
石川は核心づいた質問を投げかける。
いつになく一つの話題に食い下がってくる石川に少々訝しさを感じた後藤だったが、今はすこぶる機嫌が良い。
今日は吉澤との約束の日。口が饒舌になってしまうのも致し方ないといったところか。
「そうだねー、結構…や、かなり身近かな、あはっ。……これ以上は言ーわない。恥ずかしいなー」
そう答えた後藤の頬はホンの少し染まっていた。彼女が好きな人を思い浮かべて答えているのは明らかだった。
そしてその後藤の視線の先には、5期メンバー達が夏に怒られている。
端から疑って掛かっている石川は、後藤の想い人が吉澤であるとしか思い浮かばなかった。
- 191 名前:先制攻撃? 投稿日:2002年04月14日(日)15時39分19秒
「でも、梨華ちゃん突然どうしたの? そんなこと聞いてくるなんて珍しいじゃん」
「…え、あぁ…そうだよ…ね」
「あ、分かった! 梨華ちゃん好きな人出来たんでしょ? どれどれ、後藤さんに教えてみなさい」
後藤は興味津々に石川に聞いてくる。そこに全く他意はない。
石川は何も気付いていない後藤がほんの少しだけ憎らしく感じた。
「ひとみちゃんと付き合ってるの」と全てをぶちまけてしまおうかと思った。そう自分が告白をしたら、後藤はどういう表情を見せるのだろうかと、意地悪心が湧いてくる。
恋愛に後先順番は関係ないと誰かが言ってた事を思い出したが、それでも横恋慕はいけないと石川は思う。どう考えたって、自分の方が吉澤を先に好きになったのだし、例え密やかであれ、自分達が付き合っているのは紛れもない事実なのだから、後藤にそれを掻き回されてしまうのはご免被りたかった。
「……あのね、ごっちん」
意を決した石川は、乾いた唇を緩やかに開いた。
- 192 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年04月14日(日)15時42分03秒
短めですが、更新しました。
ああ、とうとう石がこんな風に…(涙)
>よすこ大好き読者さん
や、ホントにどっちも選べない吉の気持ちが良く分かります(w)
中盤を迎えて、ほんの少しずつ複雑化していく三者を
上手く表現して行きたいとは思ってますが、いやはやむずかすぃ(w)
>184さん
レス欄のほうの自分の言葉は物語の展開とは全く無関係な部分で
喋ってますので、あまり気になさらず読んで頂けたらと思います(^^;)
- 193 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月14日(日)23時54分52秒
- 石川さん…やな娘になっちゃうのかな…
- 194 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月15日(月)01時29分59秒
- 石川さんのこれからしそうな事って、
現実問題嫌な子がすることってわけじゃなくない?悪い事じゃないよね。
なんて、リアルの考えると難しい話ですなぁ。。。
- 195 名前:絶体絶命 投稿日:2002年04月16日(火)17時46分48秒
「ん? なに?」
「……私もね、好きな人がいてね…」
石川がそう言い掛けたときだった。
「ただいま戻ってきましたー」
そう元気良く入ってきたのは加護と辻。それから遅れること数十秒、吉澤がコンビニの袋を両手一杯に抱えて入ってきた。
「もーお前ら荷物も持たないでさっさと行くなよー。………はぁ重かったぁ」
体よく荷物持ちにさせられた吉澤は、憎めない二人組に文句を言いながら、簡易テーブルに買い出ししてきたジュースやお菓子をどさっと置いた。
「だってよっすぃーがジャンケン負けたんやもんな、のの」
「ねー、あいぼん」
「分かったよ。みんなにジュース配るくらいはやんなよー」
- 196 名前:絶体絶命 投稿日:2002年04月16日(火)17時48分01秒
吉澤は年下の同期に随分舐められてるなぁと苦笑する。二人もそこまで吉澤にやらせるのは悪いと思ったのか、素直にそれに従う。
キョロキョロと周りを見据え、石川と後藤を確認した吉澤はほんの少しだけ顔をしかめた。
……うわっ…二人でいるし…。梨華ちゃん、ずっとごっちんのこと気にしてたみたいだけど、なんか変なこと言ってないよなー。
自分の悪事は棚上げて、そんな心配をするくらいならば、同じグループのメンバーに手を出さなければ良い話なのだが。
ある意味自分に正直な吉澤は、自分で自分の首を絞めていることにまだ気付かない。
買ってきたジュース3本を手にし、極力自然を装って二人の元へ向かった。
どこまでも厚かましい自分の神経に尊敬の念を贈りたいと思いつつ、何を話せばいいかと吉澤は悩んだ。
- 197 名前:絶体絶命 投稿日:2002年04月16日(火)17時48分41秒
「ただいま〜、ハイどうぞ」
吉澤はいわゆるアイドルスマイルを浮かばせて、二人にジュースを手渡した。
いつものケラッとした笑顔で「ありがとー」とそれを受け取った後藤に反して、石川の表情はどこか薄暗い。
……まさか、また何かあったのか? と、内心冷や汗ビッシリな吉澤だったが、どうも自分の心配事とはまたちょっと違うようだ。
石川は思いつめていた表情から一転して、ガッカリしたような、ホッとしたような、複雑に色が混ざり合った表情をしていた。
「まだ終わんないのかなー」
- 198 名前:絶体絶命 投稿日:2002年04月16日(火)17時49分18秒
とにかく取り留めのない話題を振ろうと、吉澤は何気なく言ってみる。
手渡されたジュースを一口飲んで、それに後藤が答える。
「んー、もうそろそろ終わりにしようかって言ってたよ」
「そっか、じゃ、あともうひとふんばりするかぁ」
吉澤は大きく伸びをした。
吉澤が戻ってきてから一言も発していない石川のことを訝しく感じたのか、後藤が石川に話し掛けた。
「梨華ちゃん、元気ないみたいだけどどうかしたの?」
「え…あ、レッスンが厳しくて疲れちゃったのかな」
突然話を振られた石川は、慌てながらも無難な答えを返した。
後藤は石川の言葉をそのまま素直に受け止めて、思い出したと更に話し掛ける。
- 199 名前:絶体絶命 投稿日:2002年04月16日(火)17時49分50秒
「そう言えば、さっきの梨華ちゃんの話の続き聞かせてよー」
「え? 何の話してたの?」
何を話せば良いのか考えあぐねていた吉澤は、これは幸いとばかりに後藤の話に乗っかってみる。
すると後藤はにへらと笑い、立っていた吉澤の横に立ち、ほんの少しイタズラな瞳を輝かせて小声で言った。
「あのね、梨華ちゃんね、好きな人がいるんだって」
キャーヤダナーモーなどと、一人妙なテンションで盛り上がる後藤に他意はない。
吉澤と二人でいつも保田をからかうような、そんなノリでしかない後藤を他所に、固まる者とそれを窺う者、各一名。
自分のいないところでそんな話をしていたのかと、吉澤は大いに慌てた。
- 200 名前:絶体絶命 投稿日:2002年04月16日(火)17時50分40秒
ごっちんはまだ何も知らないよね…じゃなきゃこんなに無邪気に振舞えないよな…。
まさか梨華ちゃん……全部ごっちんから聞いちゃった…とか?
………マズイ、これはそぉとぉマズイ。
「……ぁのう、そろそろレッスンに戻った方が……」
低い声音も弱々しく、吉澤はどうにかこの現状を打破しようと試みたけれど、後藤はそんな吉澤の心の内など露知らず、尚も無邪気に石川に聞いている。
「よしこだって聞きたいよねー、梨華ちゃんの好きな人」
後藤のその無邪気さが時として残酷だということに吉澤は漸く気付いたが、もはや後の祭り。
いつもならば饒舌に紡ぎだされる嘘も、こんな日に限って出てきてくれない。
- 201 名前:絶体絶命 投稿日:2002年04月16日(火)17時51分35秒
「え…あの…聞きたくないというか、なんつーか…その…」
もはやオーバーヒートした吉澤の脳みそは正常に動作していなかった。
しどろもどろに曖昧に、どうにかここを切り抜けようと必死になっている吉澤を、更に奈落の底へ突き落とすような石川の一言。
「ひとみちゃん知ってるもんね、私の好きな人」
り、梨華ちゃん、なんてことをっ! う……あの目は絶対アタシを試してる目だ、絶対そうだ。
マズイよ…梨華ちゃんだけならどうにか誤魔化しようがあるけど、これでごっちんにまでバレたら……アタシ血を見ることになるかもしれない…。
吉澤はそんな空恐ろしい事を考える。背筋に冷たいものが走って身震いした。
- 202 名前:絶体絶命 投稿日:2002年04月16日(火)17時52分30秒
「えー、よしこ知ってたのー。じゃあ知らないのあたしだけ?」
「…や、あの、知ってるというか…その…」
「ひとみちゃん、私のことならなんでも知ってるよねー」
石川は吉澤の横に立って、わざとらしく腕を組んだ。
真綿で首を絞めるように、天使のような微笑を浮かべてじわじわと自分を責めてくる石川が怖くて、吉澤の表情は引きつってしまった。
石川が吉澤に腕を組んだことに少々ムッとした後藤だったが、二人は同期で仲が良いからしょうがないかと自分に言い聞かせる。
「えー、あたしも知りたーい。よしこ教えてよー」
無邪気に騒ぐ後藤と微笑む石川に挟まれて、吉澤は今更ながら自分の軽率な行動に後悔を覚えつつ、「もっと上手くやっときゃ良かった」と思ってしまうところがやっぱり自分らしいと半ば呆れながら、ここから逃げる糸口を探していた。
- 203 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年04月16日(火)17時59分25秒
- 短めですが、キリのいいところまでうpしました。
いい加減な吉にお灸を据えたい今日この頃。
>193さん
前にもレス欄で書いたと思うんですが、ありがちな泥沼な展開には
させたくないので、大丈夫だと思います。(^^;)
>194さん
リアルな展開を考えると、すごいドロドロになりそうなんで、
こんな感じに逃げてみました(w)
石川さん、ちょっと意地悪になりましたが許容範囲内ですよね?(苦笑)
- 204 名前:夜叉 投稿日:2002年04月16日(火)20時22分50秒
- ある種の祭を期待している自分がいますが何か(笑)。
吉の発言、行動に興味津々です。がんがってください。
- 205 名前:名無しっす。 投稿日:2002年04月17日(水)10時46分52秒
- 確かに絶体絶命のピンチだけど、いしごまに挟まれて両手に華だね(w)
- 206 名前:じじ 投稿日:2002年04月18日(木)04時56分27秒
- 両手に華…いいなぁ…
綺麗な薔薇にはなんとやらになるのでしょうか。
と、至って自然にレスしましたがなにか?(w
- 207 名前:絶体絶命 投稿日:2002年04月21日(日)22時48分55秒
前門の石川、後門の後藤に挟まれた吉澤は、回らぬ頭を無理に働かせた。
「や、あの…ほら、そう言うのはこういうところで言うべきじゃないっていうか…」
「えーなんでー?」
「今、まがりなりにも仕事中なんだしさー、あの…後、後で良いじゃん」
そう言って問題を先送りにしようとする自分は、まるでどこかの政治家みたいだと吉澤は心の中で苦笑してしまう。
だが、後藤の追及は激しかった。
「えー、だって一言でいいんじゃん」
「まぁ、そうなんだけど…その、あたしの仕事へのプライドが許さないというか…」
「よしこにそんなのあったっけ?」
後藤はあくまでも爽やかな笑顔で毒を吐く。
石川は吉澤の反応を見て楽しんでいるようだった。
- 208 名前:絶体絶命 投稿日:2002年04月21日(日)22時50分00秒
吉澤がもごもご煮え切らないままでいたところに、夏が練習の再開を告げた。
「……ほ、ほら、ごっちん、夏先生に怒られちゃうから練習しよ」
まさに救われた、という気持ちで一杯だった。いつもなら鬼のような夏が怖くて仕方がなかった吉澤だが、今は夏が天使にさえ見えてしまう。
左腕にしっかり巻きついていた後藤の腕をやんわりはずし、練習に戻ろうと促した。
後藤もさすがに夏の逆鱗に触れるのが怖いのか、渋々練習に戻った。
ハァと胸を撫で下ろした吉澤の耳元に「なんかいつものひとみちゃんと違って可愛い」と石川が笑顔で囁いた。
「梨華ちゃん、なに言ってんの?」
どこまでも可愛らしいチャーミースマイルの下に隠された、彼女の含んだような心情が分かってしまう。吉澤は不機嫌な声を隠さないまま石川に聞く。
だが、石川はそれには答えず、「はっきりしてね」とだけ言い残して練習に戻っていった。
- 209 名前:絶体絶命 投稿日:2002年04月21日(日)22時51分11秒
はっきり、かぁ……。
梨華ちゃんの「はっきり」って、ごっちんに自分達の関係をちゃんと言いなさいってことだよね……でも、言える訳ないじゃん…。
う〜どうしたら良いんだろう?
自分のこの混沌とした心をちゃんと伝えられればいいんだけど…と吉澤は思い悩んだ。
だが、混沌も何も、吉澤の悩みは至ってシンプルだ。
『梨華ちゃんもごっちんも好きだから選べない、どっちとも付き合っていたい』
ただそれだけの最も身勝手なシンプルな感情。
それに巻き込まされている石川と後藤はたまったものじゃない。
答えの出ない悩み事に溜息をつきつつ、吉澤は練習へと戻っていった。
- 210 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年04月21日(日)23時00分13秒
- かなり短めですが、うpしました。
次回からは色々展開があると思います(ってまだ書ききってないけど/w)
>夜叉さん
大した行動じゃなくてすみません(T-T;)
次の話に展開させるために、逃げてしまいました(汗)
夜叉さんのめっけました♪あとでご挨拶なぞに伺いますです(^^)
>名無しっす。さん
確かにかなり羨ましい状況ですな(w)
この状況がいつまで続くか、それは作者も分かってません(爆)
>じじさん
綺麗な薔薇たちはほっそいほっそい棘でチクチクと
責めていくんじゃなかろうかと思われます。
と、至って自然にレス返ししましたがなにか?(w
- 211 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月22日(月)00時59分00秒
- めちゃくちゃ待ってますYO!毎日チェックしてますから。
と、至って自然な発言ですがなにか?(w
- 212 名前:よすこ大好き読者 投稿日:2002年04月22日(月)01時23分28秒
- マターリマターリ待ってますよ。(w
はっきり出来ない吉。分かる気がする・・・・。(ヲイ
っと、自然に言ってみたけど何か?(w
- 213 名前:追いつめられて 投稿日:2002年04月22日(月)19時15分47秒
漸くレッスンが終わり、ヘトヘトな体に鞭打って吉澤は帰り支度を始めた。
そこへスススと後藤がやって来た。
「ねぇ、よしこ。今日はどこでご飯食べてく?」
先ほどのやり取りを後藤はすっかり忘れているらしい。ニコニコ笑顔で吉澤に話し掛けてくる。
純粋に先週約束した今日を楽しみにしていたようだ。
そんな後藤の姿はとても可愛いなぁと、懲りない吉澤はそう思うのだけれど、さすがにさっきの今で図々しくもなりきれない。
ほとぼりが冷めるまでは、どちらとも会わないほうが賢明なのかもしれないと吉澤は思った。
「ごっちん…今日はちょっと…」
そうやんわり約束を断ろうとしたら、後ろからそれを遮られた。
- 214 名前:追いつめられて 投稿日:2002年04月22日(月)19時17分03秒
「ドタキャンはダメだよ、ひとみちゃん」
あくまでも優しげなその声音。けれどその高く甘い声には何か裏を感じずにはいられない。
吉澤は激しいダンスで掻いた汗とは種類の異なる冷たい汗が背中につたうのを感じた。
「り、梨華ちゃん…?」
「ごっちんだって突然キャンセルされたら困るよね?」
「う、うん。まぁねぇ」
後藤はいつもと違う石川のオーラに一瞬気圧されそうになった。
石川はそれだけを言うと「お手洗いに行ってこよう」とレッスン場を後にした。
「……梨華ちゃん、なんか変じゃない?」
「………………」
「よしこ?」
「………………アイタタタタタタ……なんか汗掻いたらお腹冷えちゃったみたい……アタシちょっとおトイレ行ってくるね。ここで待っててね」
吉澤はアイタタタとお腹を擦りながらレッスン場を出た。
取り残された後藤は、そんな二人にほんの少しだけ訝しさを感じつつも、「早くよしこ戻っておいでねー」とあくまでもマイペースに呟いた。
- 215 名前:追いつめられて 投稿日:2002年04月22日(月)19時18分28秒
ガチャリと鉄製のドアが開かれる。
お手洗い室にいた石川は、誰がやって来たのか、振り返らずとも分かっていた。
「……梨華ちゃん」
「ひとみちゃん、もうはっきりしてね」
石川は吉澤が何かを口にするその前に、しっかりとした強い口調でそう言った。
「はっきりって…」
「……私ね、ごっちんがひとみちゃんのこと好きなの分かるの。私と同じ目でひとみちゃんのこと見てるんだもん…嫌でも分かっちゃうよ…。このままどんどん気持ちが膨らんでいったら、ごっちんだって辛いでしょう? だから、ひとみちゃんからはっきり伝えて。「私は梨華と付き合ってる」って」
「ごっちんは…アタシの事そんな風に見てないよ…。わざわざ言わなくたって…」
どうにか誤魔化せないかと、吉澤は無駄な抵抗を試みる。けれど、石川には通用しなかった。
- 216 名前:追いつめられて 投稿日:2002年04月22日(月)19時19分43秒
「ひとみちゃん、私のこと…キライ?」
「そんな訳ないじゃん…」
「だったら、ごっちんにちゃんと伝えて。お願い」
私のこと好きなら…お願いと、上目遣いで吉澤を壁に追い詰める。
後がない吉澤は、口篭りながら「…うん」と小さく頷いた。
吉澤のその返事に満足したのか、石川は薄く笑みを浮かばせて、
「ひとみちゃん、好き…」
と、小さく囁いた。
石川は吉澤のふっくらした右頬を細い指先で擦る。吉澤を見つめるその瞳は耽美でどこか厭らしい。
「梨華ちゃ…」
吉澤が言葉を言い終える前に、石川は右手を肩にそっと置いて背伸びをし、彼女の唇を自分のそれで塞いだ。
石川の突然の行為に驚いた吉澤は唇の隙間から、声にならない音を漏らした。舌を差し込んで絡めてくる積極的な石川の唇に、脳がビリビリと痺れるのを感じる。
- 217 名前:追いつめられて 投稿日:2002年04月22日(月)19時20分21秒
漸く吉澤の唇を解放した石川は、キスの余韻に浸っている吉澤のジャージのチャックをゆっくり下に滑らせて、Tシャツの襟をおもむろに引っ張り、彼女の白く綺麗な鎖骨に唇を這わした。
「ちょっ…り、梨華ちゃんっ?」
吉澤が慌てて石川を離そうとしたときには、ちゅっときつく吸い上げて、白い肌に小さく赤い痕を浮かばせた後だった。
「…ごめんね、ひとみちゃんのことを信用してない訳じゃないんだけど……何かあったらこれを見て私を思い出して…」
わざわざキスマークをつけるといった小細工をする事自体、吉澤を信用していない証であろうが、石川はそれだけ必死だった。
「それじゃ、また明日ね…」と言い残し、石川はお手洗い室を出て行った。
石川の積極的な行動に気圧されたまま、まったく動けなかった吉澤は、「なんなんだよぉ…」と小さく呟いた。
自分が上手く石川をやり込めていたはずが、いつの間にか立場が逆転している事にほんの少し悔しさを感じていた。
ハァ…と大きく溜息を一つ吐き、吉澤は覚束ない足取りでお手洗い室を出て行った。
- 218 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年04月22日(月)19時28分42秒
- 短めですが、更新しました。
石川さん、まだ許容範囲内だと自分に言い聞かせてみる(w)
>211さん
ありがとうございます!がんがって書き上げますYO!(^^)
と、至って自然なレス返しですがなにか?(w
>よすこ大好き読者さん
ありがとうございます!
どうにか5月初旬にはラストに持っていきたいなぁと目論んでます。
それまでには吉の心が決まってるのかしらん…。
と、自然に呟いてみたけど何か?(w
- 219 名前:とた 投稿日:2002年04月22日(月)23時55分39秒
- 初めてカキコします。
石川さんバリバリ許容範囲内ですよ!!
この先どうなるかで分かんないですけど。
石川さんが意地悪しなくて良いように、作者さんにお願いしてみたりして…
- 220 名前:よすこ大好き読者 投稿日:2002年04月23日(火)03時12分49秒
- やはり、梨華ちゃんは強気でいってもらわないと・・。
優柔な旦那を持つと苦労するなーーー梨華ちゃん。(笑
あ!まだ旦那じゃなかった!
と、自然に囁いてみたけどなにか?(w
- 221 名前:夜叉 投稿日:2002年04月23日(火)18時55分59秒
- くくくっ…、この展開に一人ほくそ笑んでますが何か(笑)。
吉澤さん、どこまで行けるのかなぁ(ニヤニヤ。
石川さんの行動に萌えました、師匠。
- 222 名前:追いつめられて 投稿日:2002年04月25日(木)22時05分54秒
吉澤が俯いたままお手洗い室からトボトボと出ると、元気な関西弁に声を掛けられた。
ふと顔をあげると、そこには平家が石川と話していた。
平家はこれから保田と飲みに行く約束をしたため、わざわざ迎えに来たと言う。
「……平家さん、暇なんすね」
「な、何言うてんの! 暇なんかないっちゅーねん。ハロプロメンバーとの心の交流やないの」
平家は必死でそう言う。
「ハイハイ、そう言うことにしておきますよ」
「ふーん、そういうこと言うんや。……今度の収録で苛めたるからな」
「あ、すみません、ごめんなさい」
「まったく、よっすぃーはお調子モンやなぁ。……それより、二人してトイレから出てきて…梨華ちゃんは顔が赤いし、よっすぃーはジャージが乱れてるし…怪しいな〜」
平家の瞳がキラリと光った。含み笑いで吉澤と石川を交互に見つめ、「これはパーソナリティとして追求せんとあかんかなぁ」と呟いた。
- 223 名前:追いつめられて 投稿日:2002年04月25日(木)22時06分59秒
「なっ、相変わらず何言ってんですか。怪しいとか何とか、平家さんこの前からおかしいすよ」
吉澤は平家に反論する。だが平家はそれを無視して石川に話し掛けた。
「梨華ちゃん、よっすぃーはこんな子やから苦労すると思うけど頑張ってな。応援してるで」
相変わらずの関西ノリで話す平家に、石川は至極当たり前な顔をして「ハイ、頑張ります」と答えた。
石川の答えに満足したのか、平家は「や〜今日は美味い酒が飲めそうやわ〜」と、保田の待つレッスン場へと向かっていった。
「……一体なんなんだ、あの人は」
吉澤が呆れ口調でそう呟くと、石川はクスッと笑い、吉澤のジャージに手を伸ばした。
吉澤は先ほどの事を思い出し、思わずビクッと身を引いてしまった。廊下の壁際に追いつめられたような格好になってしまい、そんな自分がカッコ悪いと吉澤は思った。
石川はそんな吉澤に苦笑しながら言う。
- 224 名前:追いつめられて 投稿日:2002年04月25日(木)22時07分57秒
「やだなぁ、こんなところであんなことしないよ。ジャージが乱れてるから直してあげようとしただけ」
「そっか…ありがと」
吉澤はジャージの乱れを直してもらいながら、石川を見つめた。
昨日までの石川と違うことに、さすがのお気楽な吉澤も戸惑いを隠せない。
元々しっかりしていてお姉さん気質の石川ではあったけれど、その反面、吉澤の言う事を鵜呑みにして素直に信じてしまうような、愛すべき間抜けな部分も兼ね備えていた。
だから、吉澤が石川の事を疎かにして後藤と会っていても、それを疑うような事はなかった。
だが、今日の石川は全て自分の先手を行く。自分の逃げ道を全て塞いで追いつめる。
本気になった彼女は怖いと、身に染みて分かった吉澤だった。
ごっちんにちゃんと言わなきゃマズイかなぁ……マズイよねぇ……。
後藤に全てを打ち明けたら彼女は悲しむだろうか? と、吉澤は想像してみる。
や、タコ殴りにされたりして……ごっちんのバカ力で殴られたらかなり辛いかも…。
でも、本当に潮時なのかもしれない…と、小さく息を吐いた。
- 225 名前:追いつめられて 投稿日:2002年04月25日(木)22時09分05秒
石川は吉澤のジャージを直し終わると、ニッコリいつもの可愛らしい笑顔で「それじゃ、また明日ね」と、更衣室に戻っていった。
ある意味張り詰めていた空気が漸く薄れたと、吉澤は大きく息を吐いて、後藤の待つレッスン場に戻った。
レッスン場のドアを開けると、後藤が床にゴロンと寝っ転がって、手持ち無沙汰にしていた。
吉澤を見つけるなり、パッと花が咲いたように笑顔になって、ゴロゴロと転がりながら吉澤の元へやって来た。
「…プッ、ごっちん何やってんのぉ」
それまでどう話せばいいだろうと悩んでいた吉澤だったが、子供のような振る舞いをする後藤の姿に思わず和んでいた。
- 226 名前:追いつめられて 投稿日:2002年04月25日(木)22時09分42秒
「もー、よしこトイレ長すぎー」
自分と石川の微妙な雰囲気を疑いもしなかったのか、後藤は純粋に吉澤がトイレに行ってたものだと思い込んでいるらしい。待ちくたびれたと文句を言いつつも、「お腹大丈夫?」と吉澤のお腹を擦りながら聞いてきたりする。
後藤の大人びた表情に隠された、子供のような純粋さがとても可愛いと吉澤は思った。
「お腹はもう大丈夫だよ、ご飯食べに行こっか?」
「うん、行こう行こう!…って、そう言えばあたしらジャージだけど…いっかぁ」
吉澤や後藤はダンスレッスンなどの時、家からジャージで出て来る。メンバー達にはジャージで来るのは止めたほうがいいと注意されるのだが、そう言うところに割合無頓着なO型の二人は気に止めないらしい。
他のメンバー達が着替えに更衣室へ向かうのを余所に、二人はレッスン場を後にした。
- 227 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年04月25日(木)22時21分39秒
- 相変わらず短めですが、更新しました。
平家姐さんのツッコミが甘いと思ったのは作者だけじゃないと思われ(w)
( `◇´)<ウチのせいやなくて作者の力量不足や!
>とたさん
ありがとうございます!
ラストは書きあがってるので、それに向かって書いていくだけなんですが、
なんか、少しずつ少しずつ自分の書く石川さんのキャラが変わっていく事に
戸惑いを隠せない作者と吉です(w
でもまぁ、許容範囲内に済ませようとがんがってるので、大丈夫かと(w
>よすこ大好き読者さん
やはり、梨華ちゃんは姉さんニョーボらしくいかんとね♪
…あ、まだニョーボじゃなかった!
と、自然に囁いてみたけどなにか?(w
>夜叉さん
石の行動萌えて下さいましたか!ありがとうございます!
最近自分の思いつく萌え行動がベタな気がして悩んでいたので、
嬉しいです(そんなんで悩むな/w)
- 228 名前:じじ 投稿日:2002年04月25日(木)23時22分52秒
- いい感じにチクチク刺さってきそうですね(w
タコ殴り萌え
〜ですが何か?が流行ってる!?
- 229 名前:名無し読者 投稿日:2002年04月26日(金)13時15分34秒
- ごっちん可愛い〜
よしごまもがんがってほすぃなぁと言ってみたり
- 230 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年04月29日(月)19時54分33秒
- ごっつあん。かわいい・・・。
が、私はいしよし激推しですが・・・・何か?(w
〜何か?流行らしてみたい!!(笑)
- 231 名前:夜叉 投稿日:2002年04月30日(火)20時44分05秒
- ささ、これから吉がごとーにどうするのか…。
でもあの素振りぢゃあ、また、飲まれてしまいそな吉がいそう(笑)。
- 232 名前:吉澤の倫理観と後藤のキモチ 投稿日:2002年05月01日(水)13時21分18秒
後藤の自宅近くのファミレスで食事を済ませた二人は、後藤の自宅に戻ってきた。
「おじゃまします」と吉澤が玄関に入ると、後藤は「今日は誰もいないんだ」と、少しだけ顔を赤らめて言った。
吉澤は自宅に誰もいないのはある意味好都合だと思った。
食事を取っている間、後藤にどう打ち明けようかと悩んでいたが、出来る事なら誰もいないところで話したい。
「飲み物取ってくるから、先にあたしの部屋に行ってて」
「んー分かった」
吉澤は勝手知ったる他人の家というように、後藤の部屋へと向かった。
後藤の部屋に入ると、相変わらず物が乱雑に置かれていて苦笑してしまう。自分が好きになる人は何でこうも整理整頓が苦手なのだろう。
吉澤は投げ捨てられたように床に置かれた雑誌を片付けながら、そんなことをふと思い、自然に微笑んでしまう。
だが、それは一瞬で真剣な色に変えた。
- 233 名前:吉澤の倫理観と後藤のキモチ 投稿日:2002年05月01日(水)13時22分16秒
今日の石川はとても怖かった。吉澤はある意味本気の彼女を久し振りに見た気がした。
だから後藤にすべてを打ち明けるしかないと思ったのだけれど、一体どう言えば良いのだろうかと悩んでしまう。
そもそも三角関係と言う不条理な関係を作り上げてしまったのは自分なのに、石川が怖かったから別れるしかないかも…なんて、あまりにも虫の良すぎる話だし、後藤を小馬鹿にしているとしか言いようがない。
吉澤はふと思った。
何よりも、後藤のことも好きなのに、なぜ別れなくてはいけないんだろう。
いや、そもそも、何で二人同時に好きになってはいけないんだろう。
二人の事を好きな気持ちに嘘偽りはないのになぜ駄目なんだろう。
倫理観の欠如しているような物言いではあるけれど、ある意味道理なのかもしれない。恋に理屈は通らないのだ。
とは言え、半ば逆ギレ気味な吉澤の理屈は誰に聞かせても筋の通る話ではないけれど。
- 234 名前:吉澤の倫理観と後藤のキモチ 投稿日:2002年05月01日(水)13時27分20秒
自分に都合いい解決の糸口を見出す事が出来ずに悶々としていると、後藤がペットボトルを小脇に抱え、両手にコップやお菓子を持って入ってきた。
「疲れてるんだから座ってていいのに〜」
「あ、うん…じゃあお言葉に甘えて」
吉澤がベッド脇にゆっくりと座ると、その横は自分の指定席だと言わんばかりに、後藤はちょこんと吉澤の横に座り、テーブルの上に持ってきたコップやらを置いた。
吉澤は話を切り出す、そのタイミングだけを見計らっていた。
「……あのさ、あの…梨華ちゃんとのことなんだけど……」
吉澤は話の切り出し方が唐突過ぎるだろうと、直球過ぎる自分に内心突っ込んだ。
けれど、こういうことは早い方がいい。ましてや自分の性格ならば、後藤と過ごしていたらズルズルとそのまま朝を迎えかねない。
タコ殴りにされた後、家から追い出されるかもしれない。ならば、終電のある内に追い出された方が良いだろう。
そんな打算的なことを考えている時点で、吉澤の真剣さなどたかが知れてるというものだが、吉澤はいたく真面目なつもりだった。
- 235 名前:吉澤の倫理観と後藤のキモチ 投稿日:2002年05月01日(水)13時28分18秒
だが、後藤は吉澤の予測していない質問を投げかけてくる。
「そうそう、梨華ちゃんの好きな人って誰なの?」
「…え?」
「梨華ちゃん、意味深に言うだけで教えてくれなかったじゃん」
「よしこは知ってるんでしょ?」後藤はそう言いながら、コップに烏龍茶を注いだ。
「……あの、すごい身近と言うか…聞いたらビックリするんじゃないかなぁ」
「えー身近でビックリって……………つんくさん?」
「……や、ホントにそうだったらアタシもビックリだよ」
「えー、じゃあ誰?」
「あの…なるべく怒らないで聞いてね?」
「……? うん」
「あの……梨華ちゃんの好きな人は……、その……アタシかなーって」
吉澤はとうとう言ってしまったと、目を瞑り奥歯をしっかりかみ締めながら、後藤の出方を待った。
- 236 名前:吉澤の倫理観と後藤のキモチ 投稿日:2002年05月01日(水)13時29分09秒
「……………………」
だが、後藤は黙ったままだった。
この沈黙が怖くて仕方がないと、吉澤が恐る恐る目を開けたと同時、
「アハハハハハ、よしこってば自意識過剰だよー」
と、ペットボトルを抱えたまま思い切り笑い飛ばされた。
背中に汗を掻いて思い切って言ったのに、どうやら後藤は吉澤のいつものつまらないギャグと捉えたようだ。
吉澤は張り詰めた息をハァと吐いた。
- 237 名前:吉澤の倫理観と後藤のキモチ 投稿日:2002年05月01日(水)13時29分47秒
ひとしきり笑い終わって、間が出来たその時、吉澤は声のトーンをほんの少し落としてポツポツと話し出した。
「……もしさ、ホントに梨華ちゃんがアタシのこと好きだったらごっちんどうする?」
「どうって?」
吉澤は何が言いたいのか分からないと、後藤は首を捻った。
「あ、じゃあ質問変える。もしね……もし、アタシと梨華ちゃんが付き合ってたら……どうする?」
「えーそんなの実際になんなきゃ分かんないよー」
「まぁ…そうだよね」
実際そうなんだけど…と心の中で呟きながら、吉澤は差し出された烏龍茶をゴクリと飲んだ。
後藤はほんの少しだけ真剣な表情に色変えて、暫く考え込んでいたようだった。
漸く口を開いた彼女のその答えは、吉澤の想像と全く違うものだった。
- 238 名前:吉澤の倫理観と後藤のキモチ 投稿日:2002年05月01日(水)13時30分35秒
「もし、ホントにそうだったら…みっともないけど食い下がるかもしれないなぁ」
「……?」
「あたしはよしこが好きだけど、よしこは梨華ちゃんと付き合ってる訳でしょ?」
「…うん…そうだね」
「100パーセントのうち、梨華ちゃんに99パーセントの愛情を注いでていいから、それでも残りの1パーセントの愛情はあたしに頂戴って我侭言っちゃうかも」
「……………」
「例えさ、全て自分のものにならなくたって、ほんの少しでも愛情があるんなら、それに賭けてみたいな。略奪愛って言ったら聞こえは悪いけど…いつかはあたしに沢山愛情をくれるようになるかもしれないし」
「……………」
「諦め悪い女かなぁ……でも…はっきりと相手が……まぁ、この場合はよしこが、あたしのこと大キライって言ってくれない限り、諦める事は出来ないと思う………あはっ、なんか真面目に語っちゃった〜」
そう言って、後藤は吉澤の肩に頭をコテンと乗せた。その仕草は女の吉澤が見ても、とても可愛らしいものだった。
何よりも、例え話であれ、健気な後藤の言葉に吉澤は心打たれていた。そして、彼女の言葉に胸痛めていた。
- 239 名前:吉澤の倫理観と後藤のキモチ 投稿日:2002年05月01日(水)13時31分12秒
「………ごっちん」
「本物のよしこは沢山愛情くれるよね」
後藤はそう言うと、吉澤の頬に軽くキスをして微笑んだ。
美少女と分類される位置にいる吉澤だが、後藤の可愛さは人を惹きつけて止まない引力があると吉澤は思う。
……やっぱり駄目だ…ごっちん可愛すぎる……
なるようにしかならないと半ば自棄になりながら、ニッコリ微笑む後藤の艶のある唇に、吉澤は自分の唇を落とした。
- 240 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年05月01日(水)13時45分51秒
- 短めですが更新しました。
相変わらずの吉に(^▽^)も作者もイライラ(w)
>じじさん
チクチク刺さった棘は、どうやら吉のツボに効いたようです(w)
タコ殴りさせちゃおうかとも思ったんですが、
やはりここは流されるまま流しとけと言う事で(^^;)
>〜ですが何か?が流行ってる!?
どうやらこのスレ及び作者のHPと作者の心の中で
微妙に流行っているようです(w)
>229さん
今回の後藤さんはいかがでしたでしょうか?
次回はひさぶりのよしごま(略)にしようかと思っております。
良かったらまた読んでやって下さい(^^)
>よすこ大好き読者。さん
可愛いですか、ありがとうございます♪
とにかく彼女は可愛く書こうと目指しているのでうれすぃです(^^)
とは言え、私は吉ヲタいしよし推しですが…何か?(w
>夜叉さん
吉がごとーさんにどうすると言うよりは、どうかされちゃった、みたいな(w)
ええ、お察しの通り、飲まれて流されてしまいました(苦笑)
ラストに上手く持っていけるのか、ちと不安になる自分がいたりする今日この頃(爆)
- 241 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月01日(水)19時36分51秒
- やばい!後藤、可愛すぎる。これはもう・・やばいなぁ・・
- 242 名前:節操名無しベーグル。 投稿日:2002年05月01日(水)21時36分28秒
- 後藤がカワイイ!! 萌えればなんでも好きな私は節操ナシです。
- 243 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月02日(木)05時11分22秒
- 二人の間で揺れまくるよっすぃーもイイ
いずれ訪れるであろう修羅場に大期待です
- 244 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月02日(木)16時50分21秒
- ごっつあ〜ん。もう、「ちこうよれ!」って感じです。(笑
かわうい!!
う〜ん。吉は、どうするんだ?どっちも捨てがたい・・・。
- 245 名前:夜叉 投稿日:2002年05月02日(木)20時11分38秒
- そんな三人を自分は「市原警部補」のようにコソーリ覗いてみたいですが何か(爆)。
これから、飲まれて飲んで、なんでしょうね…(笑)。
どうだ、この際、ハー(自主規制。w
- 246 名前:じじ 投稿日:2002年05月03日(金)00時29分55秒
- 後藤さん萌え
ここはいしよしヲタを後藤ヲタにするスレですか?(w
- 247 名前:REDRUM 投稿日:2002年05月03日(金)13時54分10秒
- 後藤かわいいじゃねーかよぉ
やっぱねぇ〜フラフラ君が吉には似合いすぎですよ
- 248 名前:吉澤の倫理観と後藤のキモチ 投稿日:2002年05月06日(月)22時03分45秒
「ごっちん…ちょっと口開けてくれる?」
吉澤にそう言われた後藤は「んぁ?」と小首をかしげながら、素直に閉じていた唇を開いた。
パックリと開かれた後藤の唇の奥に、真っ赤な舌がチラリと見える。吉澤はそれがとても厭らしく感じた。
吉澤は後藤の艶やかな唇に自分のそれを重ね、舌をスルリと彼女の口腔に滑り込ませる。
突然滑り込んできたそれが吉澤の舌だと漸く気付いた後藤は、それに応えるように自分の舌を絡めた。
ピチャピチャと絡み合う濡れた音が部屋の中に響き渡る。その音で更に興奮が後押しされる。
吉澤と後藤は貪るように互いの唇を何度も何度も求め合った。
- 249 名前:吉澤の倫理観と後藤のキモチ 投稿日:2002年05月06日(月)22時04分36秒
吉澤が漸く唇を離すと、後藤は「…や」と離れる事を嫌がるように、ほんの少し不満げな色を浮かばせて吉澤を見つめた。
後藤はキスが大好きだ。何よりも誰よりも、吉澤の愛を感じられる。
全てを蕩かせてしまうような甘いキスも。思考力を全て奪い取ってしまうような荒々しいキスも。小鳥のように啄ばむような軽いキスも。
どんなキスであれ、唇を重ねあう行為は愛情がなくては出来ないと後藤は思う。
だから、後藤は吉澤のキスが大好きだった。
- 250 名前:吉澤の倫理観と後藤のキモチ 投稿日:2002年05月06日(月)22時06分18秒
後藤が吉澤の唇を追う。けれど吉澤は彼女の唇を無視して、彼女の首筋に舌を這った。
意地悪された事が悔しいのか、それとも単に口寂しいのか、後藤は吉澤の手をふわりと掴み、長い指をパクリと咥えた。
夢中で指に舌を絡ませる後藤をチラリと見やり、クスリと笑う。
どこか子供っぽい後藤のその仕草が愛しくて堪らない。
吉澤は後藤の口から自分の指をゆっくり抜いて、ちゅ…とキスをした。
頬に、額に、瞼に、鼻先に、耳朶に。愛を囁く代わりに後藤の顔のありとあらゆるパーツに唇を落とす。
器用に後藤のジャージのジッパーを下ろし手早く脱がすと、一連の動作の如くTシャツの裾から手を潜り込ませた。
ブラジャーの隙間から指を滑り込ませ、張りのある大きな胸の頂に辿り着くと、後藤の体は小さく震えた。
- 251 名前:吉澤の倫理観と後藤のキモチ 投稿日:2002年05月06日(月)22時07分36秒
「……あん」
「もう固くなってる」
ニヤリと笑いながら言う吉澤の顔はどこまでも意地悪で。
先ほどまでオドオドしていた彼女とは全く別人のようだと後藤は思った。
吉澤は更に指の腹で後藤の胸の突起を擦った。
キュッと親指と人差し指でそこを摘むと、ビクッと後藤の体が揺れた。
- 252 名前:吉澤の倫理観と後藤のキモチ 投稿日:2002年05月06日(月)22時09分01秒
吉澤は後藤のシャツもブラジャーも剥ぎ取った。
上半身裸で下がジャージと言う何とも不恰好な自分の姿に、後藤はほんの少しだけ反抗の色を見せた。
「んっ…あ…よしこ…シャワー浴びてからにしよ?」
汗臭いから嫌だと頼んでも、吉澤は「ごっちんはいい匂いだよ」と聞き入れてくれない。
執拗に攻め立てる吉澤の指に感じて喘いでしまう。
後藤は抗う事を止めた。
- 253 名前:吉澤の倫理観と後藤のキモチ 投稿日:2002年05月06日(月)22時10分11秒
後藤の胸の突起を、吉澤がちゅ…と音を立てて吸った。さんざん指で弄ったそこは真っ赤に尖っている。
「あん………」
後藤は敏感に感じてしまう自分の体が怖いのと、恥ずかしさが相まって、吉澤の頭を抱え込むように抱きしめた。
吉澤は尚も吸い上げる。胸の膨らみを飴玉をなめるように舌を転がすと、後藤の体はビクッと波を打った。
「ごっちん気持ち良い?」
「…ぅん……んっ…あん……あっ…」
- 254 名前:吉澤の倫理観と後藤のキモチ 投稿日:2002年05月06日(月)22時12分31秒
後藤の体が弓形に反って、胸を吉澤に差し出す格好になった。
感じすぎて喘ぐ後藤の姿が堪らなく可愛くて、吉澤はもっと苛めたくなってしまう。そんな自分はどこか幼稚じみているのだろうかと自嘲気味に口端を上げた。
「おっぱい突き出しちゃって……そんなに舐めて欲しい?」
「やぁ…そんな…風に、…んっ…言わないでって…いつも言って………ぁんっ」
吉澤は後藤が言葉を言い切る前に、右の胸の突起をペロリと舐めて、左の胸の突起をほんの少し強めに摘んだ。
「ひっ…あ……ああんっ」
キスと胸への愛撫だけでこれほどまでに感じて身悶えてしまう自分が、とても卑しい人間のように後藤は思えてしょうがなかった。
- 255 名前:吉澤の倫理観と後藤のキモチ 投稿日:2002年05月06日(月)22時14分14秒
吉澤は後藤の胸をむしゃぶるように舐めあげながら、器用に彼女のズボンとパンティをずり下げる。
後藤は一糸纏わぬ生まれたままの姿に晒され、快感と羞恥が乱れ混じった。
「……やぁ…よしこも…いっしょ…にぃ…はだかに…んっ」
「……ん…分かった…」
懇願するような後藤の切なげな声に、吉澤は低い声音で承諾する。一枚一枚ずつ衣服を脱ぎ捨てる。残りTシャツ一枚のところで、後藤がゆっくりと上半身を起こした。
どうやら彼女の手で脱がしたいらしい。吉澤は後藤の思うままに、されるままにしている。
後藤はもどかしく震える手で吉澤のTシャツを脱がせ、彼女のブラジャーをはずした。
- 256 名前:吉澤の倫理観と後藤のキモチ 投稿日:2002年05月06日(月)22時16分37秒
そのまま吉澤の胸に手を這わそうとしたその時、彼女の白く透明な鎖骨に赤く鬱血した痕を目敏く見つけてしまった。
「……これ」
後藤が人差し指で石川のつけたマーキングをなぞると、吉澤は少し慌てたように答えた。
「……あっ………あの虫! 虫に食われちゃったみたい」
「…そっか。じゃ、あたしが消毒してあげる」
吉澤の咄嗟の言い訳はどうやら通用したらしい。後藤は慌てた吉澤を余所に、ペロペロとキスマークを舐めた。
- 257 名前:吉澤の倫理観と後藤のキモチ 投稿日:2002年05月06日(月)22時18分03秒
吉澤は後藤の意識をキスマークから移そうと後藤を押し倒し、彼女の下腹部に指を這わした。茂みの上からでも濡れているのが分かる。吉澤はこれ幸いとばかりに、言葉で後藤を羞恥に攻めた。
「すごく厭らしいね。一度も触れなかったのにこんなに濡れてる」
「恥ずかしいからやめてよ…」
……よしこに抱きしめられるだけで感じちゃうなんて言えないよ。
後藤は頬を朱に染め、顔をそらした。
そんな後藤の姿に気をよくした吉澤は、
「ごっちんのここ…よく見せて」
そう言って後藤の太腿を大きく左右に割った。
濃くも薄くもない後藤の茂みの奥から蜜が厭らしくも零れていた。
- 258 名前:吉澤の倫理観と後藤のキモチ 投稿日:2002年05月06日(月)22時19分49秒
「ああ…やぁんっ」
突然奥まった部分に吉澤の舌を感じて、後藤が微かに腰を引いた。
だが、反抗を示したのはほんの一瞬で。吉澤の艶かしい舌の動きに、これから訪れるであろう快感の波に期待に震えた。
なのに、最も敏感な中心の突起に触れて欲しいのに、感じさせて欲しいのに。わざとその周辺に舌を這わすだけで、吉澤はそこに触れようとしない。
気持ち良い、気持ち良いのだけれど。
けれど、決定的な刺激ではない。もどかしいとばかりに後藤は腰を揺らめかす。
- 259 名前:吉澤の倫理観と後藤のキモチ 投稿日:2002年05月06日(月)22時21分29秒
後藤のそんな姿を見て、厭らしくも可愛らしい彼女の体を愛してやらねばと、吉澤はクスリと笑う。
吉澤は後藤の硬く尖った小さい膨らみに漸く口付けた。
「あんっ…」と後藤の声が上擦った。
吉澤は熱く赤く昂ぶっている後藤の膨らみに舌を這う。
「あっ…あ、あぁ……んっ……ひっ…」
濡れた感触にピチャピチャと舐められて、後藤はあられもなく喘いでしまう。
吉澤は、責めるたびに漏れる後藤の嬌声に執着心を掻きたてられる。
「ごっちん、可愛い……厭らしい姿、もっと見せて…」
「はァッ…! んっ…あっ…あっ…ん…くぅ…」
- 260 名前:吉澤の倫理観と後藤のキモチ 投稿日:2002年05月06日(月)22時23分30秒
喘ぐ後藤を上目遣いで見つめながら、吉澤は更に激しく彼女の最奥を舌で責めた。
激しく掻きまわされるたびに大きな水音が部屋に響く。後藤は耳と体内から犯されていくような感覚に気が狂いそうになった。
後藤は堪らない快感に、思わず太腿をキュッと締め付けた。
彼女に強く挟まれた吉澤は息苦しさを感じながらも、尚もそこを執拗に責めた。後藤はあぁと絶え間なく声をあげて、体をガクガクと震わせる。
次第に大きく波が揺れるように体を震わせ、そしてガクッと脱力したように体を投げ出した。
後藤の体はピクピクと痙攣を起こしたように、いつまでも小刻みに震わせていた。
「ごっちん…好きだよ」
意識を飛ばした後藤の額に軽く口付けて、吉澤はそう呟いた。
- 261 名前:吉澤の倫理観と後藤のキモチ 投稿日:2002年05月06日(月)22時25分32秒
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
- 262 名前:吉澤の倫理観と後藤のキモチ 投稿日:2002年05月06日(月)22時27分05秒
「……ばかよしこ、いくら鈍感なあたしだって分かるって」
後藤はスヤスヤと穏やかな寝息を立てている吉澤の横顔を眺めながら、小さく呟いた。
さきほど吉澤が何を言いたかったのか、後藤は気付いていた。
何よりも石川のあからさまな態度と慌てふためいた吉澤の姿を見れば、弥が上にも分かってしまう。
「これでも悩んだんだからね…」
- 263 名前:吉澤の倫理観と後藤のキモチ 投稿日:2002年05月06日(月)22時29分03秒
このまま吉澤と付き合っていたら面倒な事になりはしないだろうか?
自分達の間でふらふらしている吉澤を見て心が苦しくならないだろうか?
…と言うよりも、吉澤が悪いのに何で自分が悩まなくてはいけないのか?
そんな風に悩む位なら、割り切ってさっさと手を切ればいいのだけれど、時には溜息をつくほど格好良かったり、時には情けないほどヘタレだったり、時には可愛かったりと、クルクル変わる吉澤の魅力にはまってしまっている自分がいるのも確かな話で。
何よりも、この恋の戦いから抜け出せないのは、一縷の望み…どころか、五分五分の戦いだから。
不安定なシーソーの上でふらふらと揺れている吉澤の気持ちを確実に捕まえるには、これからの自分の出方次第だと後藤は思った。
- 264 名前:吉澤の倫理観と後藤のキモチ 投稿日:2002年05月06日(月)22時30分40秒
真剣に考えつつもどこか気楽な吉澤と、それにヤキモキする石川と、何気なく駆け引きの上手い後藤の、三者三様混戦模様の恋のレース。
吉澤の当初の気楽な想いなど、複雑に絡み合った歯車の中に飲み込まれ、
誰がのこのレースを制するのか、もはや誰にも分からなかった。
- 265 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年05月06日(月)22時39分33秒
- 更新しました。
久々に長めに書いたと思えばエ●話だし(爆)
こんな話ですみません。つーか、こんな作者ですみません(苦笑)
>241さん
やばすぎるほど可愛いですか。ありがとうございます。
とにかく後藤さんは可愛いキャラを目指しただけに嬉しいです(^^)
>節操名無しベーグル。さん(w
私も所詮節操ナシです。最近は誰にでも手軽に萌えられる様になりました(爆)
先日の祭、楽しかったです。次回こそは最初から最後まで!(w)
>243さん
そう言って頂けると嬉しいです(^^)
優柔不断な割に憎まれないキャラを書きたいんですが、いやはや難しいです。
- 266 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年05月06日(月)22時54分14秒
- >よすこ大好き読者。さん
ごっちん、究極の一言ですよねぇ。
でも、何気に恋愛巧者な彼女だったりもします(w)
>夜叉さん
上手くごっちんを騙したと思いながら、掌で転がされている間抜けな吉です(w)
今後の3人はどんな修羅場が待っているんでしょうねぇ(作者も分かってない/爆)
コソーリ3人+作者を見守っていてやって下さい(w)
>じじさん
ハイ。何気なく後藤ヲタにさせてみるテストでした(w
じじさんを見習って2元エ●やってしまいました(^^;)
めっちゃ難しかったです(だったらやるなよって話ですが/w)
>REDRUMさん
ごっちん可愛いっすか、良かった良かった。
テ ス ト は 成 功 の よ う で す (w)
吉ほど優柔不断って言葉が似合うキャラはいないですよねぇ。
いつまでフラフラ出来るのかが今後の課題ですね(^^)
- 267 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月06日(月)23時07分39秒
- リアルタイムで読んでしまった。しかも会社で…。
にやけるのを堪えながら、両方いただきました。(笑
ご馳走様でした。(合掌^^;)
策士後藤が、どう動くのか気になります。
しかし、キスマークを指摘されると「虫に刺された」っちゅうのは、
ベタだけど、とっさに言ってしまいますよね。(笑)
- 268 名前:じじ 投稿日:2002年05月07日(火)00時22分58秒
- ついにその技を(w
もはや完全なるエロ作者ですな。
両方同時で萌えてた私は逝ってよしですよね?
大丈夫、一人で逝けます・・・。
- 269 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月07日(火)11時32分11秒
- 両方美味しく頂きました♪
ありがとうございます。
- 270 名前:夜叉 投稿日:2002年05月07日(火)20時36分19秒
- すみません、師匠。同時生中継に萌えまくってしまいました(爆)。
長い◎ロも (・∀・)イイ!
次は何が待ち受けているのかなぁ?ねぇ、吉澤君(笑)。
- 271 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年05月08日(水)01時11分47秒
- うむ。いっそのことごっちんと梨華たんが手を組めばよしこも考える
のでは?
- 272 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月11日(土)16時58分57秒
「違う、そこじゃない! ライトもっと落せ! 2つ目のフレーズで回転させろ!」
地方のあるライブ会場。明日のライブに向けて、モーニング娘。は本番さながらの最終リハーサルが行われていた。
忙しい国民的アイドルモーニング娘。メンバー全員のスケジュールを調整して、漸く取れたコンサートリハーサル。
たった半日とちょっとしかない限られた時間の中で、サウンドからライティングまで、全ての構成を確かめなければならないコンサートスタッフ達は、甚だ大変だろうとしか言いようがない。
飛び交うスタッフ達の声に怒気が混じっているのも、致し方ないと言ったところだろう。
- 273 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月11日(土)17時00分08秒
メンバー達も然り、だ。
どれだけダンスレッスンを積んでも、ライブステージとレッスン場では勝手が違う。めまぐるしく変わるライブ用のダンスフォーメンションを覚えるのに、皆苦労している。
自分がミスすれば、他のメンバーにも迷惑が掛かる。
弥が上にもメンバー内に緊張感が漂っていくのが良く分かる。
そんな中、普段はあまり見せない神妙な面持ちで、リハーサルをしているメンバーが約一名。
……吉澤は、どうしたら良いのかと悩んでいた。
- 274 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月11日(土)17時01分00秒
―――時は戻り、六日前。石川の部屋での出来事。
部屋に連れてこられた吉澤は、後ろ暗い事があるせいか、どこか落ち着かない様子で石川の差し出した紅茶に手をつけた。
カチャリと響くカップの音が室内にいやに響く。
テレビも音楽もかけていない不気味なほど静寂な空間も、いつもならば甘い色に変えることが出来るはずなのに、今日に限っては、石川の静かな、けれど有無を言わせない気迫に押され、カップを持つ手さえどこかぎこちなくなってしまう。
「………ひとみちゃん」
「…っ、なぁに?」
動揺が気付かれないように、努めて普通に声を発したつもりだったが、裏返る一歩手前の声は、石川のアニメ声より一オクターブ高かった。
だが、石川はそれには気を止めず、意思の込められた強い眼差しで吉澤に言う。
もしかしたら昨日の事がもうばれたのか? と、内心冷や汗いっぱいな吉澤だったが、石川の言葉でまだ気付かれていない事が分かった。
- 275 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月11日(土)17時01分57秒
「……ごっちんに言った?」
「………」
石川の言いたい事はすぐに分かった。
言うどころか、懲りずにまた体を重ねた。可愛い後藤をより一層好きになったというオマケ付だ。
吉澤は焦る頭で必死に言い訳を考えた。
これでもし本当のことを知ったら、梨華ちゃんどうするかなぁ…?
怒鳴られるだけなら怖くないんだけど…梨華ちゃんみたいな大人しい人が本気で怒ったら怖いよね…。
石川は今まで、吉澤に対して本気で怒ったことがない。『年上の彼女の自分』がそうさせるのか、怒ったとしても「しょうがないんだから」の一言で済ませていた。
そんな石川なだけに、計り知れない恐ろしさがあると吉澤は思う。
……いや、本気で怒るならまだ救いはある。
もしも、いい加減な自分に呆れて別れを決意されたら?
それだけは嫌だと頭を振る。
後藤も好きだけど、石川も好きなのだ。我侭かつ身勝手だけど、二人とも好きなのだ。
- 276 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月11日(土)17時02分43秒
「…ひとみちゃん?」
一人で百面相をしている吉澤を訝しげに見ながら石川が声をかけると、吉澤は一瞬ハッとした表情を見せたがすぐに取り繕って、いつもよりも真剣な表情で石川の瞳を見据えて言った。
「ごっちんに、ちゃんと言ったよ」
「ほん―――」
本当に? と石川が言い切る前に、吉澤はじりじりと、間合いを取るかのように少しずつ石川に近付きながら話す。
「アタシは、梨華ちゃんのこと好きだよ。しっかりしてるようで抜けてて、意外に負けん気が強くって、でも…可愛くて、優しい梨華ちゃんがすごく好き。その気持ちに嘘はないよ……それは信じて」
- 277 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月11日(土)17時03分26秒
本来ならば、もっと石川に頼りにされたいと願っていた吉澤だが、如何せんここ最近の自分では説得力がイマイチない。
ならば『年下の彼女の自分』になって下手に出ることが最もベストだと、ある意味『本能』で答えを導き出していた。
拝む様に言う吉澤を見る石川の瞳は、心の迷いを映すかの様に揺れている。
吉澤はそれを見落とすことなく、石川の手を取り唇を寄せた。
「…ひとみちゃ…ん!」
まだ話は終わってないのに…。
石川はそう思いつつも、吉澤を突き放す事は出来なかった。
ごっちんに梨華ちゃんの好きな人はアタシだって一応言ったモンね。嘘は言ってないモンね。
石川の唇に自分のそれをふんわりと柔らかく重ねながら、心の内でそんな言い訳を必死にする。やはりどこか真剣味の欠ける、けれど至って真面目なつもりの吉澤だった。
- 278 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月11日(土)17時04分14秒
―――そして、ほんの数時間前の出来事。
ステージ脇で舞台のセッティングが終えるのを待っていた吉澤の傍らに、スススと後藤が寄って来た。
「ねぇねぇ、よ・し・こ」
「ん? どしたの、ごっちん」
「今日の宿泊先のホテルってさ、二人一部屋なんだって。一緒の部屋になるといーね」
そう言ってエヘッと笑う彼女は可愛いなぁと思う。吉澤はほんの少し固くなっていた表情を弛緩させ、後藤に微笑んだ。
…が、さすがに石川の手前、後藤と同室になるのはマズイだろうと他のメンバーと同室になるのを願う吉澤だったが、そんな吉澤の心の内などお構いなく、ほんの少しいたずらっ子な笑みを浮かべて後藤が言った。
「ま、一緒になれなくても部屋換えてもらえばいーよねっ。ね、よしこ」
一難去って、また一難。
ただその場その場をギリギリのラインですり抜けているだけの吉澤は、問題が何一つ解決していない事に頭を悩ませつつ、ただ曖昧な笑顔で「…うん、そーだね」と答えることしか出来なかった。
- 279 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年05月11日(土)17時15分15秒
- 相変わらず短めですが、更新しました。
どうにかワタシの中で終わりが見えてきた今日この頃。
>よすこ大好き読者。さん
メール欄は初の試みでしたが、スレ数と字数を考えるしかなくて、
かなり話を端折っちゃったんで、訳分からん話になっちゃって
すみませんでした(^^;)ゞ
>策士後藤が、どう動くのか気になります。
ここの3人はどこかのほほんとしているので、マターリ修羅場だと思います(w)
>じじさん
師匠(いつの間に/w)のように上手くいきませんでした〜(涙)
まだまだエロ作者としては駆け出しなので、
精進してイきたいと思います(変換が…/w)
>両方同時で萌えてた私は逝ってよしですよね?
こんな駄文でありがとうございます!
あと数回エ●シーンを入れる予定なので、がんがります!(w
>269さん
いえいえ、こちらこそありがとうございます。
どうしても自分の書くものでは萌えられないので、毎回不安なんです(^^;)
- 280 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年05月11日(土)17時21分37秒
- >夜叉さん
ありがとうございます!
長々とエ●を書いているのは、自分の欲求を解消するためなんですが(爆)、
萌えていただけたのなら幸いです(^^)
ちなみに今後の吉澤君は、タイトル通りと思われます(w)
>いしごま防衛軍さん
レスありがとうございます!(^^)
>うむ。いっそのことごっちんと梨華たんが手を組めばよしこも考えるのでは?
( ;^▽^)ドキッ!!
- 281 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月11日(土)21時23分51秒
- 欲張りなよすぃこがイイ!
まだエロシーンあるんですか?楽しみにしてます(w)
- 282 名前:じじ 投稿日:2002年05月12日(日)01時05分32秒
- 相部屋誰とでしょうね。。。
楽しみ!
>精進してイきたいと思います(変換が…/w)
変換がおかしくなりだしたら立派なエロ作者(w
- 283 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年05月12日(日)10時22分32秒
- よしこは誰と同じ部屋になるのだろうか。きになる。
ますます問題は深刻化しているようですな。
更新楽しみに待っています。
- 284 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月12日(日)18時43分02秒
- どっちつかずの吉くんが、イイ!
こりゃ、アバウトな考えで3人で……(ヲイ
>修羅場
相部屋に誰が!気になりますな。
がんがってください。
- 285 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月17日(金)18時08分57秒
21時を過ぎ、漸くコンサートリハーサルが終了した。
食事を終え、宿泊先のホテルに戻ってきたモーニング娘。のメンバー達は、マネージャーに割り振られた部屋のキーを手に、各々の部屋へ入っていった。
「なんで矢口さんとなんだろ…」
ベッドの上にちょこんと座った石川は、自分の運の悪さに思わず愚痴が零れてしまう。
すると、矢口が洗面所からひょこっと顔だけ出した。
「なんか言ったか? いしかわぁ」
「いえ…なんでもないですぅ」
「そう? オイラのこと呼んだかと思ったんだけど」
矢口はそう言って顔を引っ込めた。
地獄耳なんだから…なんて心でちょっぴり毒づくと、また矢口が顔を出したので、石川は心が読まれてしまったのかと思わず焦ってしまった。
- 286 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月17日(金)18時12分19秒
「あ、そうそう」
「は、はい!」
「…ナニ焦ってんの? オイラさ、なっち達の部屋に行って来るから先に寝ちゃってて。カードキー持ってくから心配ないからさ」
「あ、ハイ。分かりました」
石川はそう答えてハタと気付いた。
これでは吉澤の部屋に行けない。
別に自分も部屋を出て吉澤の部屋に行っても構いはしないだろうが、彼女の部屋に行ったらいつ部屋に戻れるか分からない。夜中に戻ってきて寝ている矢口を起こす訳にもいかない。
石川は、どうしたらいいのか悩んでしまう。
- 287 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月17日(金)18時14分34秒
吉澤は後藤に自分達の関係をちゃんと話したと言っていたが、十中八九言っていないと石川は思う。
もはや、信用しているしていないの問題ではない。
吉澤の良いところは優しいところだ。彼女の優しさに惹かれていった自分がいるのも間違いない。
けれど、彼女は誰にでも優しい。相手が傷付く事を望まないし、言わない。
後藤が吉澤に好意を持っていることはもう分かっている。
吉澤だって気付いているに違いない。いや、もしかしたら、もうそれ以上の関係に…。
だから、吉澤は彼女に話しはしない。
石川は初めからそう分かっていた。
分かっているのに何故吉澤に言わせようとしたかといえば、単にこれ以上後藤と親密にならないようにと牽制球を投げただけのこと。
だから、今日は吉澤も大人しく部屋にいるはず。
自分が二つ隣の部屋にいると言うのに、これで後藤の部屋に行ったり呼んだりするようであれば、さすがに彼女とのことも考え直すしかない。
けれど、後藤自らやってきたら?
曖昧な笑顔で困りながらも彼女を招き入れるような気がしてならない。
だからその前に自分が吉澤の部屋に行ってしまおう。
石川はそう目論んでいたのだ。
- 288 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月17日(金)18時16分23秒
石川は暫くベッドの上で枕を抱え悩んでいた。
矢口が洗面台から出てきて、「じゃ、行ってくるから」と出て行ったのも曖昧な返事で答えるほど考えて、漸く導き出した答えは、
「そっか、ひとみちゃんをこっちに呼べばいいんだよね」
単純明快なその結論に、暗く沈んでいた表情をほんの少し明るくさせて、石川は携帯電話を取り出した。
- 289 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年05月17日(金)18時26分28秒
- めちゃくちゃ短いですが、更新しました。
最近更新が激遅でスミマセン(T▽T)
>281さん
欲張りすぎると良いことがないと思うんですけどね(w
エロシーン、もしかしたらないかもしれないです(汗)
でも、出来れば頑張って入れてみます(^^;)
>じじ
相部屋、誰でしょうね。。。
私もまだ決めかねてます(爆)
>変換がおかしくなりだしたら立派なエロ作者(w
会社の書類を作る時にも誤変換してくれるので困ってます。や、マジで(w
>いしごま防衛軍さん
誰と同じ部屋にしたらいいのか。ホント迷ってます(w
ラストまでもうちょっとなので、がんがっていきますp(^^)q
>よすこ大好き読者。さん
>こりゃ、アバウトな考えで3人で……(ヲイ
や、それもアリだろうと思い始めている今日この頃ですが、何か?(w)
相部屋、ホントはちゃんと決めてます。
皆さんの期待と予想をはずしてみたい今日この頃(w)
- 290 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月18日(土)00時21分15秒
- 作者さんのペースでがんがってください。
ヨシコの相部屋の相手も気になりながら、マターリお待ちしてます。
- 291 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年05月18日(土)12時15分41秒
- マターリ待っています。
- 292 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月18日(土)23時42分30秒
―――そして同時刻。
「何で圭ちゃんと一緒なのぉ〜」
後藤は一人ベッドに寝っ転がりながら、異論を唱えていた。
保田が嫌、という訳じゃない。
明日はライブだ。真面目な保田と一緒では、いそいそと吉澤のところへ遊びに行けやしない。
本番に備えてゆっくり寝ろと怒られるに違いないと後藤は思っていた。
「圭ちゃんとじゃつまんないよ〜」
「ちょっとごっちん! 心の声が丸聞こえよ!」
保田が少し怒ったようにそう言う。後藤はそれに臆することなく「だぁってぇ〜」と間延びした声をあげると、保田も苦笑しながら話し出す。
- 293 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月18日(土)23時44分47秒
「私、これからなっち達の部屋に行ってくるから、あんたも遊びに行くなり誰か呼ぶなりすればいいじゃない」
「ホントに良いの?」
「良いわよ。その代わり、明日はライブなんだから、夜更かしは絶対ダメだからね」
「うん、分かってる! じゃあ、よしこのところ行ってくるねっ」
後藤は嬉々としてそう言うと、保田の返事を待つことなく部屋を飛び出した。
保田は後藤のあまりの俊敏さに驚きつつも、苦笑しながら彼女の出て行ったドアを見つめた。
- 294 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月18日(土)23時46分04秒
「よっすぃーと同じ部屋って初めてやな」
運が良いのかなんなのか、吉澤は同期の加護と同室になった。
吉澤は自分の首が皮一枚で繋がった事に安堵しつつ、間延びした声で返事を返す。
「ん〜そうだっけ?」
「そうやって。ウチは大体ののと同じ部屋やもん」
「そっか。…じゃあ同室になった事だし、今夜はモーニング娘。メンバーのキャラ立ちについて二人で語り合おうか」
「は? ナニ言うてんの、よっすぃー。ウチ愛ちゃん達の部屋に行く約束しとんねん」
カバンの中から寝巻き代わりのジャージを取り出して、着替えながらそう言う。
今夜は部屋に一人にされたくない吉澤は、必死で彼女を引き止めようと説得に掛かった。
- 295 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月18日(土)23時47分49秒
「明日ライブだよ? 夜更かししたら大変だよ」
「大丈夫やって、モーニングに入ってから、ずっと夜更かしさせられてるやん。体もそれに慣れてもうたわ」
「保田さんに早く寝ろって怒られるよ」
「おばちゃんの怒り方ワンパターンやから慣れた」
「矢口さんに怒られるかもしんないよ」
「矢口さん背小さいからあんまし迫力ないんよね。それにもう慣れとるし」
加護は「慣れって怖いなぁー」なんて、悪びれもせずエヘへと笑う。
矢口や保田の苦労にほんの少し同情しながら、それでもどうにか引き止めようと必死で理由を探した。
そんな吉澤の姿に少々訝しげな表情を浮かべて加護が言う。
「……どしたん、よっすぃー?」
「や、今日はあいぼんにいてほしいっつーか……」
加護さえいてくれれば、例え石川や後藤が来て、それがどちらかにバレたとしても言い訳のしようがある。
だから、今夜は絶対に部屋にいて欲しい。
懇願するような、縋るような眼差しで加護を見るも、彼女は知らんふり。
- 296 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月18日(土)23時48分56秒
「なんで?」
「や、まぁ、それは色々と大人の諸事情で…」
どうにも歯切れの悪い物言いの吉澤に、加護は更に不審顔。
「なんやはっきりせーへんなぁ。愛ちゃんら待たせたら悪いから、ウチもう行くで」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってって! 今日は大人しく部屋にいてよ、頼むよ」
「なんやねん、も〜」
半ばうんざりした表情で振り向くと、吉澤がほんの少し真面目な顔で話し出した。
「ホントにさ、今日だけだから。ね、マジで頼むって」
「高いで」
浪花の商人顔負けに、加護は親指と人差し指で丸い輪っかを作って、意地悪な笑顔でそう言う。
「……うっ…安くして…」
「…交渉決裂。っていうか、いつまでもよっすぃーと遊んでられへんねん。みんな待たせたら悪いからホント行くわ」
「あっ!待って待って!」
- 297 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月18日(土)23時50分03秒
結局、吉澤のお願いは虚しく、加護は部屋を出て行ってしまった。
ぽつりと部屋に取り残された吉澤は、ガックリ肩を落とした。
「……ま、梨華ちゃんもごっちんも疲れて寝ちゃうかもしんないし、大丈夫だよね」
そう自分に言い聞かせたちょうどその時、携帯の着メロが部屋中に鳴り響いた。セクシーなメロディが石川からの電話だと教えてくれる。
この着メロは石川からのみしか流れないものだから相手を確認する必要もないのだが、携帯のディスプレイを一応見てみる。
吉澤の願いも虚しく、画面には「梨華ちゃん」と表示されていた。
やっぱり…と溜息をついて通話ボタンを静かに押した。
「もしもし」
『あ、梨華です。…あの、矢口さん、安倍さん達の部屋に行っちゃって、今私一人なの。…だから、ちょっと遊びに来ない?』
「…あの……明日ライブだし、今日は早めに寝ない?」
- 298 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月18日(土)23時51分20秒
そんな言葉が通用するわけもないと分かっているのだが、とりあえず言ってみる。
案の定、石川は怪訝そうな声を隠そうともせず聞いてきた。
『………誰か遊びに来るとか?』
「だ、誰も来ないよ」
『だったら、少しだけおいでよ、ね?』
梨華がそう話したその時、ドアをトントンとノックする音が聞こえた。
そのノック音は決して自分にとって朗報ではないと、吉澤は直感で分かった。
室内はさほど暑くもない。けれど額に汗が伝うのを止められない。
吉澤は恐る恐るドアの覗き穴を覗き込むと、予感通り、後藤がそこに立っていた。
- 299 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月18日(土)23時52分21秒
『…ひとみちゃん?』
「あ、あの、分かった。これから行くから待っててね」
『うん、待ってるね』
梨華が電話を切ったのを確認して、吉澤も終話ボタンを押した。
苦し紛れに「行く」と言ったものの、策がある訳じゃない。
とうとう年貢の納め時かと思いつつ、諦めの悪い吉澤は逃げ道を探しつつ、どこか重く感じるドアを開いた。
- 300 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年05月18日(土)23時57分18秒
- 相変わらず短めですが、更新しました。
期待されていた相部屋のお相手、何とも肩透かしでスマソです(w
>290さん
ありがとうございます。頑張ります!
盛り上がるほどの相手じゃなくてすみませんでした(^^;)
>いしごま防衛軍さん
ありがとうございます(^^)
あともうちょっとなので、最後まで頑張ります♪
- 301 名前:夜叉 投稿日:2002年05月19日(日)00時09分58秒
- 偶然にもリアルタイムでした(^^;;
そろそろ、吉も年貢の(略。w
さぁ、どうなるのでしょうか。。。ラストスパートです。
- 302 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年05月19日(日)00時13分25秒
- よしこついに終戦か?でも、ごっちんと梨華たんの戦いがまだ始まってない。
ってか二人には争ってほしくないぜ。
楽しみに待っています。頑張ってください。
- 303 名前:JAM 投稿日:2002年05月19日(日)00時14分35秒
- リアルタイムで読みました。ちなみにこのスレでは初です。
(o^〜^o)は(^▽^)のとこに行くのか
それとも( ´ Д`)と一緒にマターリするのか・・・
どっちにしても楽しみなんですがね。(w
>>相変わらず短めですが、
忙しい中、貴重な時間を割いてまで更新されているので
少量になるのは仕方ないと思いますよ。
それに少量でも更新してくれると嬉しいです。
内容も最高に(・∀・)イイ!ですし。
気にすることないと思います。がんがって下さいね。
- 304 名前:じじ 投稿日:2002年05月20日(月)23時25分16秒
- 年貢の納め時ですなぁ。
残るか行くか。。。
お待ちしています!
- 305 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月22日(水)19時39分33秒
- やっぱこりゃ、アバウトに3人……(r
と、思ってる人が、ここにいますが何か?(w
楽しみに待っています。
- 306 名前:理科。 投稿日:2002年05月25日(土)06時05分45秒
- よすぃの慌てふためく姿が目に浮かびますね(w
( T▽T)`Д´)=O)T〜TO)
年貢の納め時…(・∀・)イイ!
- 307 名前:愛 LOVE YOU 投稿日:2002年05月25日(土)14時11分12秒
- ttp://members4.tsukaeru.net/dandellion/up/img/komono020.jpg
おまけ@楽しい吉澤一家
ttp://members4.tsukaeru.net/dandellion/up/img/komono021.jpg
- 308 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月25日(土)23時26分33秒
「あはっ、来ちゃった」
「ごっちん、いらっしゃい」
他のメンバーに見つかって、万が一石川の耳にでも入れられたりしたら目も当てられない。
吉澤は努めて笑顔で話すと、後藤の腕を握り引き寄せ、すかさず部屋へと通した。
その瞬間、バランスを崩した後藤が「キャッ」と普段よりほんの少し甲高い声を上げて、吉澤の胸の中に飛び込んだ。
吉澤は後藤の腰に手を回し、しっかりと抱きしめた。
「加護はいないの?」
「ん、高橋達の部屋に行っちゃった」
後藤は吉澤の突然の行動にほんの少し驚きの色を見せたものの、自分を求めてくれるのは単純に嬉しかった。
ホテル内にはメンバー……石川もいるのだ。こんな事で勝ち負けが決まる訳でもないけれど、少なくとも自分を部屋に通してくれたぶんだけ、自分に分があると後藤は思った。
- 309 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月25日(土)23時27分35秒
「明日ライブだし、今日はおあずけだね」
「そんな、人を犬みたいに」
後藤は悪戯っぽくそう笑った。吉澤もわざとお預けをくらった犬のような泣きそうな顔をして言う。
「プッ、アハハハハ、よしこ可愛い〜」
二人は顔を見合わせて笑いあった。
けれど、楽しげに振舞っている吉澤だが、内心はひやひやしていた。
いつまでも石川の部屋に行かなければ、最近富に勘の鋭くなった彼女のことだ、すぐにピンと来るだろう。
だが、意味もなく部屋を出れば後藤だって勘ぐるに違いない。
自らが招いた結果とは言え、自分が置かれているまさに崖っぷちギリギリなこの状況に、無宗教派の吉澤も神に祈りを奉げたい気分だった。
- 310 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月25日(土)23時29分09秒
諦めの悪い迷える子羊は、最後まで悪あがきをしようと試みる。
「ま、立ちっぱなしもなんだし、適当に座って」
努めて冷静を装って、吉澤は後藤を座らせると、突然思い出したように話し出した。
「あ、ごっちん何か飲まない?」
「うーん、じゃあミネラルウォーター」
「オッケー、ミネラルウォーターね。じゃ、ちょっと買ってくるから」
吉澤は財布を片手に部屋を出ようとした。
後藤が慌てて彼女を呼び止める。
「ちょ、ちょっと、よしこ! 買ってくるって…どこ行くの?」
「ん? コンビニ」
「そこに冷蔵庫あるじゃん」
- 311 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月25日(土)23時30分40秒
後藤はそう言って、ホテルに備え付けられてある小さな白い冷蔵庫を指差した。
だが、吉澤は「信じられない」と外人並のオーバーアクションで後藤に言う。
「ごっちん、ホテルの飲み物は高いんだよ?」
「100円200円ぐらいの差でしょ? いーじゃん、そんくらい」
「何言ってんの、ごっちん。塵も積もればマウンテン。常日頃から節約しなかったら、将来良いお嫁さんになれないよ」
吉澤自身、自分でも何を言ってるのかチンプンカンプンだが、とりあえず後藤は吉澤の言うことに一応納得したらしい。
「よしこの言いたい事は分かったけどさ……今日はそんなに長い時間一緒にいられないんだから、わざわざ買いに行かなくたってさぁ」
「大丈夫、ダッシュですぐに戻ってくるから。ごっちんはここで大人しく待っててね!」
吉澤は後藤の頬に軽くキスをして、脱兎の如く部屋を出た。
- 312 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月25日(土)23時32分03秒
吉澤は駆け足でエレベーターホールまで来ると、物陰にさっと隠れ、今、自分が出てきた部屋を遠目から窺った。
後藤が出てくる気配がないことを察し、今度は忍び足で廊下を歩く。
石川の部屋は自分の部屋から2つ先。後藤がいる自分の部屋の前に差し掛かる。
吉澤は覗き穴から見られても気付かれないようにと、自衛隊員顔負けの匍匐全身で通過した。
暑くもないのに汗が出る。
何故自分はこんな苦労をしなければいけないのかと逆ギレしたくなるけれど、身から出た錆だと重々分かっているだけにどうしようもない。
漸く石川の部屋に辿り着き、なるべく廊下に響かないようにドアをノックした。
- 313 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月25日(土)23時32分52秒
「はーい…あ、ちょっと待ってね」
ドアが開くと同時、石川は心底嬉しそうに吉澤に抱きついた。
「うわっ、り、梨華ちゃん?」
「嬉しい、本当に来てくれたんだね」
石川は吉澤の慌てた唇に自分のそれを押し付けた。
「んっ、ちょ……り、りか、ちゃん」
誰に見られるとも分からないホテルの廊下でなんて大胆な事をするんだと、吉澤は抱きつかれたままの姿勢で、慌てて部屋の中に入った。
「梨華ちゃん、人に…ううん、マスコミとかに見られたらどうすんの?」
「いいよ、ひとみちゃんとなら………なーんてね」
石川は舌をペロリと出してそう言う。その表情は年相応のあどけない笑顔のようにも思えたが、室内の薄明るいライトに照らされた石川の瞳は悪戯に光って、やけに色っぽく感じてドキリとする。
- 314 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月25日(土)23時34分43秒
最近、石川には終始こんな調子で押されっぱなしだ。
吉澤はそれがなんだか悔しく思うが、今はそれよりも自分の置かれたこの状況をどうにか打破しなければと、必死で頭を回転させた。
「そ、そう言えば、矢口さんはどこに行ったの?」
「安倍さんの部屋に行ったって言わなかったっけ?」
「あ、そうだったよね、アハハ…」
「あいぼんもさ、高橋達の部屋に行っちゃってさ、アタシ一人だったんだけどさ」
吉澤は聞かれてもいないのに、普段のおっとりした口調とは打って変わって早口で捲くし立てる。
石川はそんな吉澤の唇にやんわりと自分のそれと重ね、
「そんなことより、二人っきりなんだから……ね?」
吉澤をベッド際まで追いつめた。
腕力だけで言えば、吉澤のほうが石川よりもはるかに強いはずなのに、得も言わぬ石川の静かなオーラに気圧されて、気がつけば吉澤はベッドに押し倒されていた。
- 315 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年05月25日(土)23時44分58秒
- 毎回短めですが、更新しました。
石川さん、がんがり過ぎですと言ってみたくなる今日この頃(w
>夜叉さん
おお、リアルタイムで読んでくださってありがとうございます!
吉は一体どうなるんでしょう。
年貢に収めたい気持ちはワタシも一杯なのですが(w
>いしごま防衛軍さん
ありがとうございます♪
まだまだ諦めの悪い吉ですが、どうなるのか書いてるワタシにも検討が…(爆)
あと1章とちょっとですが、お付き合い頂けたらと思います。
>JAMさん
相変わらずの(0^〜^0)ですみません(汗)
それと、温かいお言葉、本当にありがとうございます(感激)
ご期待に添えられるかどうかは分かりませんが、
最後までがんがりますので、よろしくお願いします(^^)
- 316 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年05月25日(土)23時52分13秒
- >じじさん
吉は一体どうするつもりなんでしょうね。。
ワタシも自分で分からなくなってきました(爆)
>よすこ大好き読者。さん
や、ワタシもマジでこのまま3人一気に纏まってくれよと
小1時間練り直したい気持ちだったりしますが、何か?(w
>理科。さん
吉澤さんは、今そぉとぉ慌てふためいています(w
助けてあげたい気もするのですが、ま、自業自得と言う事で(w
>愛 LOVE YOUさん
素敵な萌え物ありがとうございます。ありがたく頂戴しました♪
こんな駄文ですので、出来ればsageでお願いしますねm(_ _)m
- 317 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年05月26日(日)01時11分03秒
- ああっ…訂正です、すみません(涙)
>>314
「あ、そうだったよね、アハハ…」
「あいぼんもさ、高橋達の部屋に行っちゃってさ、アタシ一人だったんだけどさ」
↑は、吉の台詞です。よって、以下の文に訂正です(涙)
「あ、そうだったよね、アハハ…。あいぼんもさ、高橋達の部屋に行っちゃってさ、アタシ一人だったんだけどさ」
- 318 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月26日(日)09時02分16秒
- い、石川さん・・・がんばって♪(w
- 319 名前:夜叉 投稿日:2002年05月26日(日)20時19分47秒
- ここにもいしかーさんにがんがって欲しい人がいますが何か(笑)。
積極的な一面に萌えました、作者様、このまま(略。嘘です(笑)。
外人みたいなオーバーアクション、「世界のジョーク」を彷彿…(^^;;
- 320 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月27日(月)21時46分25秒
- りかちゃんがんがれ!(その3)
このまま、強気でいっていただきたいものです。(w
- 321 名前:名無しベーグル。 投稿日:2002年05月28日(火)20時44分24秒
- 梨華ちゃんがんがれ!(その4)
はぁ〜いけいけ〜!
- 322 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月29日(水)00時57分50秒
- 初レスです。
いしかーがんがれ!(その5)
続き楽しみにしてます!
- 323 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月29日(水)23時40分48秒
「ん……り、梨華ちゃんっ…」
石川の積極的な予定外な行動に、吉澤の思考はショート寸前だ。
どうにかこの状況を打破しようと、抗議するように上げた声さえも石川の唇で塞がれる。
薄っすら開かれたままの唇に石川は舌を差し入れて、吉澤のそれを絡み取る。
吉澤は思わず石川のその舌にすぐ反応して絡ませてしまう節操のない自分が、ほんの少し哀しかった。
「りかちゃん、明日、ライブだし…今日はダメだよ」
「ダメ…今日はぜったい………私から一生…離れられないようにするんだから」
石川は熱く囁いて、舌を吉澤の耳に差し入れた。石川に組み敷かれたままの吉澤の体がビクンと震える。
- 324 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月29日(水)23時42分08秒
ごっちんにひとみちゃんを取られたくない。
自分だけのひとみちゃんでいて欲しい。
そう思う気持ちが石川をこんな大胆な行動に走らせたのかもしれない。
石川はただ必死だった。
体で繋ぎとめておけるほど心は単純じゃない事ぐらい、石川だってよく分かっている。
短絡的な思考しか浮かばない自分が哀しいけれど、他に術がない。
けれど、何故こんなにも彼女に固執するのだろう?
後藤とのことを疑うほんの少し前頃、彼女を愛していたのは間違いないが、長い付き合いにどこかマンネリ気味になっていたように思う。
その、ほんの些細な隙間へ後藤が入り込んできた。
突然現れたトンビにあぶらげをさらわれたような気分になった。
いつも手元にあるものがそばになければ不安になる。
それは、追えば逃げる、逃げれば追うのなんとやらと言うヤツのようにも思うし、なかなか手に入らないおもちゃを欲しがるような、子供じみた単純な理由だったのかもしれない。
- 325 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月29日(水)23時42分59秒
けれど、確かに、自分は吉澤ひとみと言う深みにしっかりとはまっている。
子供のような顔をして甘えてくる頼りない姿も、喧嘩をしたときの怒った顔も、エッチの時のいたずらっ子のような笑顔も、飄々とした顔で後藤と話している姿さえも。
彼女のハッキリしない態度に、どれほど苛々させられても、こんなに心を熱くさせる存在は他にない。
だから、行きつくところまで行くしかない。
その最果てに何があるかなんて気にしていたら、同じグループ内で、ましてや同性同士で恋なんて出来やしない。
石川は、そう思った。
- 326 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月29日(水)23時44分55秒
「ひとみちゃん…好き…」
うわ言のように呟いて、吉澤の顔のパーツ一つ一つに口付ける。
唇へ、瞼へ、頬へ、耳朶へ、首筋へ、愛を囁く代わりにキスを降らす。
「んっ、り、梨華ちゃん」
石川の濡れた唇が柔らかく自分に触れられるたびに、心地よい感覚に包まれて、理性が飛んでしまいそうになる。
こんな状況でなければ、石川の積極的過ぎる行動も吉澤にとっては大歓迎だった。
けれど、自分の部屋には後藤が待っている。いつまでも戻らないでいれば、心配するだろうし、不審がるかもしれない。
何か良い言い訳を考えて、この部屋から抜け出せないものかと頭をフル回転させた。
けれど、そんな吉澤の思考などお見通しだと言わんばかりに、石川は吉澤の首に細い腕を柔らかく絡ませた。
吉澤を引き寄せるように掻き抱くと、石川はそっと瞳を閉じた。
その瞳を閉じるホンの一瞬、吉澤の戸惑いの表情を浮かべたのを見逃さなかったが、石川にはもうその表情は見えやしない。構わない。
ふわりと揺れる石川の睫毛の長さに、吉澤は胸の鼓動が早くなるのを隠せない。
- 327 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月29日(水)23時48分06秒
「…ひとみちゃん」
石川の熱い吐息に吉澤は肌が粟立つのを感じた。
石川は絡ませた右腕を離して、吉澤のシャツをたくし上げた。
「ちょ、り、梨華ちゃんっ」
風呂上りだった吉澤は、ブラジャーをつけてなかったことを思い出す。
慌てて彼女の腕を払おうとするも、石川の呪文のように繰り返す囁きに、その動きを止められた。
「好き…誰よりも…好き」
静かに吉澤の耳元へと唇を寄せて囁く。
そのまま耳朶をペロリと舐めると、吉澤が喉をゴクリと鳴らした。
まるでその音が合図だったかのように、石川は耳元から首筋へ、更に胸の突起へと唇の置き場所を変えていった。
「りか……んっ…」
丁寧に唇を這わせていく石川の手管に、吉澤の吐息にも次第に色がつきだした。
- 328 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月29日(水)23時49分34秒
「……あっ……んっ……」
吉澤は思わず漏らした自分の声音が思いの他高かったことに気付き、ふと我に返った。
そのあまりの恥ずかしさに顔を背けようとしたが、石川がそれを許さなかった。
吉澤の頬を両手で挟み、自分と対峙させると、ちゅ…と吉澤の唇に自分のそれを落とした。
「ひとみちゃん…すごく可愛い」
頬が紅潮している吉澤が、とても愛らしくて堪らない。
固くしこった胸の頂を舐れば波のように体が揺れる。指先で胸の頂をひっかければ体がビクンと跳ねる。
自分の手によって吉澤が一々反応する。
いつも吉澤の手管に翻弄されてしまう石川は、自分が優位に立っていることに快感を覚えた。
- 329 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月29日(水)23時51分01秒
「り、梨華ちゃ…あそ…ばないでよ」
吉澤は石川に抗議の声を上げる。せめてもの反抗にとキッと睨んでみる。
だが、潤んだ瞳と紅潮した頬では何の迫力も効果もない。吉澤の行為は、寧ろ石川を煽るだけでしかなかったようだ。
「そんな顔も可愛いね」
そんな事をヌケヌケと言いながら、石川が吉澤のパンツへと手を伸ばそうとしたその時―――。
- 330 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月29日(水)23時53分56秒
その場の雰囲気にもっとも似合わないメロディが、室内に響き渡った。
石川もさすがにビックリしたのか、伸ばした手を引っ込める。吉澤も漸く我に返った。
「え…、携帯の音?」
石川がポツリと呟いて、キョロキョロと辺りを見回す。
高らかに鳴り響いているメロディは、後藤のソロ曲「手を握って歩きたい」だ。自分の携帯の音ではないことは分かっている。
その音の発信源は、どうやら吉澤の腰の辺りから鳴り響いているらしい。
ふと吉澤を見ると、彼女は全身を硬直させていた。
「…ひとみちゃん?」
石川がほんの少し怪訝そうな声を掛けると、吉澤は明らかに慌てた態度で、
「あ、あ、アタシの携帯だぁ。だ、誰だろう?」
- 331 名前:あっちにこっちにてんてこまい 投稿日:2002年05月29日(水)23時55分39秒
本当は誰から掛かってきたなんて、既に分かっている。
馬乗りになっていた石川をやんわり退かし立ち上がる。
後ろのポケットに入れていた携帯取り出し、ディスプレイを覗いた。画面には、やはり「ごっちん」の4文字。
いつまでも戻ってこない自分に痺れを切らして掛けてよこしたのだろう。
「…出ないの?」
いつものアニメのような声音とは全く毛色の違う石川の低い声は、ある意味迫力がある。
もしかしたら、電話の相手が誰なのか気付いているのかもしれない。いや、気付いている。あの瞳は確実に分かっている。
出ても地獄、出なくても地獄。
これが本当の年貢の納め時なのだと、吉澤はとうとう覚悟を決めて、通話ボタンを漸く押した。
- 332 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年05月30日(木)00時03分08秒
- 更新しました。
吉、とうとう…(汗)
>318さん
ありがとうございます。
ワタシなりに石川さんに頑張らせてみましたが…スミマセン(^^;)
>夜叉さん
石川さんのあまりの積極的な行動ぶりに
ワタシと吉はちょっと焦ってしまいました(w
外人みたいなオーバーアクションは、その通り、
世界のジョークを思い浮かべてください(w
>よすこ大好き読者。さん
応援ありがとうございます(w
行き着くところまで逝かせてみたい気もちょっとあったんですけど、
今後の展開が苦労しそうなので…(^^;)ゞ
- 333 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年05月30日(木)00時08分28秒
- >名無しベーグル。さん
こんな感じに逃げちゃいました(汗)
しかし石川さんが攻めるのは難しいですね。
>ごまべーぐるさん
レス、ありがとうございます!
石川さんはかなり頑張ったと思われます。
ワタシの都合のためだけに、こんな展開に…(^^;)
次回こそ、シュラバラバンバに…なるのか?(w)
- 334 名前:ナナシ読者 投稿日:2002年05月30日(木)02時48分01秒
- ああ…とうとう…。
ごっちんといしかーさんの対決を身震いしながら待ってます(w
- 335 名前:JOY 投稿日:2002年05月30日(木)11時26分59秒
- 初めてレスします。いつも楽しく拝読させていただいてます。
石川さんの積極的な行動に萌えました(w)
ラストまであと少しとのこと、頑張ってくださいね。
- 336 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年05月30日(木)15時35分34秒
- ついにこの時がきましたか。さらば、よっすぃー。梨華たんとごっちん
にはさまれて散ってくだされ。それが二股かけた償いだー!!
どうなるか楽しみです。
- 337 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年05月30日(木)17時52分12秒
- 梨華ちゃん萌え〜
さて、この修羅場をどう吉が切り抜けるか
生温く見守っています。(w
- 338 名前:名無し読者 投稿日:2002年05月30日(木)23時01分13秒
- 現在、再放送中のドラマ「水曜の情事」を見て何となくこの小説を
思い出しました(w 妻は天海で愛人が石田ひかりなんだけど
こっちの正妻である石川は石田ひかりの方イメージです(ww
- 339 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年05月31日(金)22時03分55秒
- いしかーさんの低い声ってさぞコワイでしょうね(^^;;
>>338の名無し読者さんの意見に同意です。
天海っていうよりは石田ひかりですよね。
- 340 名前:夜叉 投稿日:2002年06月01日(土)23時01分36秒
- 先生、ここに鼻血を滲ませて倒れている人がいまぁーす(爆)。
いや、ほんとに(^^;;。
いしかーさんの攻めって、難しいですよね…。でも、攻撃的ないしかーさんに萌え。
吉は年貢を何俵ぐらい納めるつもりなんでしょうか(笑)。
- 341 名前:じじ 投稿日:2002年06月02日(日)00時01分51秒
- ついに。。。
修羅場に突入する前に鼻血ぶー!
- 342 名前:二兎を追う者は一兎をも得ず。 投稿日:2002年06月02日(日)23時17分43秒
大きな体を小さく丸め、床に正座している吉澤。
その吉澤の前にはベッドの淵に軽く腰掛けている後藤。
そしてその右隣には椅子に腰掛けている石川。
三人は微妙に張り詰めた空気の中で、ただ悪戯に時を過ごしていた。
ほんの数十分前のことだ。
後藤からの電話が鳴り、もう逃げ場はないと観念した吉澤は、後藤を石川の部屋に呼んだ。
そして、これまでの自分の堕落した悪行の数々を全て吐露した。
吉澤が話し終えるまで、石川と後藤は時折手を震わせたりしながらも、大人しく聞いていた。
もしかしたら、石川と後藤が派手にやらかすのではないかとか、生きて自分は帰れるのだろうかと危惧していた吉澤だったが、意外にも冷静な二人に、ある意味拍子抜けした。
けれど、嵐の前の静けさとも言う。単に今は台風の目の中にいる状態なのだろう。
これから何が起こり得るか想像出来ない。
お気楽な吉澤も、さすがに楽観視出来るはずもなかった。
- 343 名前:二兎を追う者は一兎をも得ず。 投稿日:2002年06月02日(日)23時19分26秒
自らが地獄への扉を開けたくなくて、吉澤は黙って下を俯いたまま。
後藤は暫く目を閉じて何かを考え込んでいた。
石川は怒っているのか泣いているのか曖昧な表情で吉澤を見つめている。
二人に囲まれ小さくなっている吉澤は、蛇に睨まれた蛙のようにピクリとも動けない。
カチカチと時を刻む時計の音だけがやけに耳について離れない。
額や背中に汗が止め処なく伝う。ダンスでやら冷や汗やら、今日は一日中汗をかきっぱなしだよと、心の中で自嘲ぎみに笑った。
どれほど時が経ったのだろうか。
この曖昧な関係に終止符を打とうと、後藤がそっと目を開けて漸く口を開いた。その声はほんの少し掠れていた。
「…よしこはさ、あたし達のことずっと騙してたってことだよね」
「……騙してたって…そんな、人聞きの…」
それまで俯いていた吉澤は異論を唱えようと顔を上げたものの、上から見下ろされる後藤と石川の高圧的な視線に気圧されて、ついつい語尾が尻窄みになってしまう。
- 344 名前:二兎を追う者は一兎をも得ず。 投稿日:2002年06月02日(日)23時21分38秒
「じゃあどういうこと?」
それまで口を閉ざしていた石川が漸く口を開いた。
年上だから、取り乱すようなみっともない真似は出来ないと、シャツの裾をギュッと握り、静かに、大人しく言う。
「……騙したつもりはないよ…梨華ちゃんも、ごっちんも好きだから……」
いつものクールな吉澤の姿はどこへやら。正座をし、床の一点を見つめたままたどたどしく話す姿はさすがに格好悪い。
「でもさ、結果的には騙してたんだよね。結局あたしにも梨華ちゃんにも良い顔して付き合ってた訳じゃん。“君だけが好きだよ”なんて調子の良いこと言ってさ」
君“だけ”が好き、なんて、言った覚えはないんだけど…。
心の中でそうは思っても、こんな空気の中で突っ込めるはずもない。能天気人間の吉澤とてそこまで馬鹿じゃない。
どこまでも神妙な面持ちで弱々しく答える。
- 345 名前:二兎を追う者は一兎をも得ず。 投稿日:2002年06月02日(日)23時23分24秒
「だから、騙したつもりは…」
「ひとみちゃんとごっちんの雰囲気が微妙に変わったのを気付いたから、だから、私たちが付き合ってる事をちゃんとごっちんに伝えてねって、ひとみちゃんに言ったよね? ひとみちゃんは“言った”ってはっきり私にそう言ったよね? 騙したつもりじゃないって言うなら一体なんなの!?」
石川自身、優柔不断な吉澤の性格を十分分かっていたつもりだったが、二股を掛けられていた事を目の当たりに突きつけられて、怒りが徐々に込み上げる。
冷静にいようと思いつつも、次第に語尾が強くなるのを止められない。
吉澤は何も言えず、ただ黙ったまま。止め処なく流れる冷や汗が鬱陶しく感じた。
「だから…その…梨華ちゃんのことも、ごっちんのことも…あの…好きだから、どっちとも離れたくなくて……つい…その…結果的に嘘を吐いた形に…」
「ごっちんのことも好きって…私と付き合ってて…なんで、なんでそんな簡単に私のこと裏切れるの!? ひどいよ、ひとみちゃんっ」
- 346 名前:二兎を追う者は一兎をも得ず。 投稿日:2002年06月02日(日)23時26分17秒
それまで黙って見つめていた後藤が突然口を開いた。
「あたしもよしこに裏切られたんだね。好きって告白した時にはもう梨華ちゃんと付き合ってたんだよね?」
「……うん」
「…なんで、なんであたしにまで手を出したのよ? …ううん、それは良いよ。なんでそのこと言ってくれなかったの? 言ってくれればあたしだってよしこのことを友達以上に見ることだってなかった。あたし達の関係だって、友達同士の度が過ぎたお遊びで終ってたのに。……ひどいよ、あたしのこと好きにさせといて…こんな裏切られ方ってないよ」
後藤の言葉が突き刺さる。
確かに後藤と関係を持ち出したあの頃、石川に隠れて後藤と会っていることにドキドキしながら楽しんでいたのは否めない。
けれど、彼女に仕掛けた恋は決していい加減な気持ちではない…と思う。
自然体で素直な後藤のことが愛しくて、だから、手を出してしまった。
- 347 名前:二兎を追う者は一兎をも得ず。 投稿日:2002年06月02日(日)23時27分12秒
石川への想いだって、決していい加減ではない、はずだ。
必要以上に責任感の強い彼女の空回りな頑張り加減がとても愛しかった。
年上であることを気にしすぎて、自分の感情を押し殺してしまうことが多い彼女を、楽にさせたいと思っていたのも決して嘘じゃない。
だから、二人にバレないように、必死で二人の間で揺らめいていたのだが。
一般的な常識から言えば、吉澤の倫理観は受け入れられるものではない。
吉澤は弁解する言葉も全く思い浮かばず、ただただ俯くばかりだった。
- 348 名前:二兎を追う者は一兎をも得ず。 投稿日:2002年06月02日(日)23時28分03秒
…おそらく10分程度しか時は進んでいないだろう。
けれど、不気味なまでの静寂さに包まれた室内は、時間の概念を歪ませているような錯覚さえ起こさせる。
張り詰めた空気が薄明るい部屋の中にたちこめて、吉澤は酸欠を起こしてしまうのではないかと思うほどの息苦しさを感じていた。
それから程なくして、その静寂さを壊したのは後藤だった。
普段見せる飄々とした表情とは全く異なる、力強い決意を帯びた瞳で話し出した。
「どっちにしたって、こんな状態のまま付き合ってくことなんて出来ないから。……あたしはよしこと別れる。……梨華ちゃんはどうするの?」
突然思いもよらぬ話題を振られた石川は、内心かなり焦ったが、これで自分はヌケヌケと吉澤と付き合うと言うのもなんだか未練たらしい気がする。
気がつけば、望んでも思ってもいないことを口走っていた。
「私も……私もひとみちゃんと別れる」
「えっ、そ、そんな二人とも結論出すのが早すぎじゃない?」
元から自分が蒔いた種。
何を言われても、どんな結末が待っていようと、それに抗う権利はないのだけれど。
けれど、二人の突然の別れの言葉に、さすがの吉澤も戸惑うしか術はない。
- 349 名前:二兎を追う者は一兎をも得ず。 投稿日:2002年06月02日(日)23時29分46秒
「今すぐ友達に戻れるほどあたしも大人じゃないから…しばらくは前みたいに普通に話すことも出来ないと思うけど……こういう時、同じグループなのが辛いね。……イヤでもよしこのことが目に入っちゃうんだろうな……でも、しょうがないよね。……とりあえず、じゃあね」
後藤は目に薄っすらと涙を溜めて、部屋を後にした。
残された石川と吉澤は、互いに何を話せば良いのか分からず、後藤が出て行ったドアを見つめていたが、吉澤が思い切って口を開いた。
「……梨華ちゃん…本気なの?」
「え…何が?」
「……アタシと別れるって」
吉澤はまるで捨てられた子犬のように、切なげな瞳で石川を見つめて話す。
いい加減でハッキリしない吉澤の態度に、さっきまで怒っていたはずなのに。
だけど、この瞳に弱いのよ…と、石川は決意も脆く吉澤に流されてしまいそうになる。
だが、恋のライバルとは言え後藤のあの涙を見た後で、「さっきのはうっそぴょーん」なんて言えるはずもない。
石川は八の字にしていた眉毛をキッと上げた。
- 350 名前:二兎を追う者は一兎をも得ず。 投稿日:2002年06月02日(日)23時30分54秒
「私は、今でもひとみちゃんのこと好きだよ。でも、だからって今までの事をなかったことにして、また付き合うなんて出来ないよ。……私はヤキモチ焼きだから、きっと、ひとみちゃんがいない夜を過ごすたびに、“私に隠れて二人でまた会ってるんじゃ…”なんて、疑っちゃうと思う。好きな人を疑うって、悲しい事だよね。…でも、それでも私はずっとひとみちゃんを疑うと思う。そんな自分がイヤだから…だから、別れる」
吉澤は心持肩を落とし、「そっか、…そうだよね」と小さく頷いた。
今更ながら、自分のしてきた事に後悔を覚えつつも、なんで二人同時に好きになってはいけないのだろうと、不条理な思いに悩み、小さく溜息をついた。
「さよなら、なんだね……。色々と悲しませてごめんね。……梨華ちゃんのこと、ずっと好きだよ」
吉澤はそう言うと、「部屋に戻るから」と石川の部屋を出た。
「……ひとみちゃんの…バカ。なんで信じさせてみせるって言えないのよ……」
石川は閉じられたドアの前に立ち尽くし、そう小さく呟いた。
- 351 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年06月02日(日)23時40分06秒
- 更新しました。
(0^〜^0)にはかなりいいクスリになったと思われ(w)
>ナナシ読者さん
なんかこんな感じに逃げちゃいました(^^;)
二人を嫌な子にするのがどうも嫌で、吉だけ悪者に(w)
>JOYさん
レスありがとうございます(^^)
石川さんの攻めは書いていてすごく難しかっただけにとても嬉しいです。
あと1章で終わりですが、良かったら読んでやって下さい。
>いしごま防衛軍さん
(0^〜^0)にはとても辛い思いをさせましたが、
やはり、因果応報、二股掛けた罪は重かったって事ですね。
>よすこ大好き読者。さん
梨華ちゃん好きな(w)よすこ大好き読者。さんに萌えて頂けて嬉しいです。
ノー天気(0^〜^0)がどうなるか、見守っていてやって下さい。
- 352 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年06月02日(日)23時52分55秒
- >338さん
「水曜の情事」を見たことがないのですが、確かにイメージ的に
(^▽^)は石田ひかりのイメージですね。
愛人って事はちょっと悪女っぽいのでしょうか?
ここの(^▽^)は…うーん、どうなっていくんだろう?(w)
>ごまべーぐるさん
(^▽^)の低い声は、それはもう、さぶいぼがビッシリ出てしまうほど、
恐怖に打ちのめされてしまいます(w)
>天海っていうよりは石田ひかりですよね。
たしかに(^▽^)は天海のイメージは皆無ですねー。
>夜叉さん
イカンイカン、ティッシュティッシュ!(w)
>いしかーさんの攻めって、難しいですよね…。
そうなんですよねぇ…。ワタシの中でいしかーさんは、
どうしても受のイメージしか湧かなくて苦労しました(苦笑)
>じじさん
あ、ここもティッシュティッシュ!(w)
修羅場というよりいきなりクライマックスか?みたいな展開ですが、
ま だ 終 り ま せ ん (苦笑)
- 353 名前:REDRUM 投稿日:2002年06月03日(月)01時03分47秒
- 小さくなってる(0^〜^0)が目に浮かびます。
ヘタレな吉最高っす。
これまで異常に予想ができない展開になってきましたね。
この先も期待してます。
- 354 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月03日(月)01時17分55秒
- (OT〜T)<…どうして二人同時に好きになっちゃいけないんだよほ。。。
確かになぁ(ニガワラ でもまぁ、これで自分が本当に好きなのは誰か分かるかと。
続き、楽しみにしてます。
- 355 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年06月03日(月)07時47分59秒
- よしこはあれでちょうどいいでしょう。当然の報いだ。
梨華たんとごっちんをもてあそんだんだからなあ。
梨華たんもごっちんもつらかっただろう。この二人の関係がよしこの悪行
のよって崩れてほしくないです。この後どうなるか楽しみです。
マターリ待ってますよ。
- 356 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月03日(月)23時55分27秒
- うわぁ・・・吉澤さんにはかなりきつい展開だぁ。
これからどうなるのか楽しみにしてます。
- 357 名前:夜叉 投稿日:2002年06月05日(水)21時08分21秒
- 一人責められる吉の姿を想像してほくそ笑んでしまった吉推しの自分は逝って吉(笑)。
二人の性格がはっきりでましたね。案外大人のごっつぁんに心惹かれつつも、ふがいない夫が好きないしかーさんも (・∀・)イイ
最後の詰めがどうなるのか楽しみです。がんがってください。
- 358 名前:トラブルメーカー 投稿日:2002年06月06日(木)22時37分41秒
六本木のとあるイタリアンレストラン。
21時と、夕食の時間にはちょっと遅いせいか、広い店内には吉澤と飯田の他に四十代の男女とOLらしき女性の二人組しかいない。
吉澤と飯田の二人は店の一番奥にある、二人掛けの席に対峙していた。
タレントである二人に店員が少し気を使ってくれたのかもしれない。
適当に間仕切りされているこの席は、ぱっと見には人目が付きにくかった。
吉澤の暗く沈んだ様子から、込み入った話になりそうだと予想していた飯田は、客が少ない事にホッとしていた。
吉澤と飯田は楽屋などでふざけあったりする程度に仲は良いが、プライベートで遊ぶ事は皆無に等しい。
その二人が何故プライベートでこのように食事をしているのか。
それは、ここ二週間ほどの吉澤の暗く落ち込んでいる姿を飯田が見かねて、だった。
- 359 名前:トラブルメーカー 投稿日:2002年06月06日(木)22時39分46秒
普段ならば、後輩や辻加護たちに明るく接している吉澤の表情がとても暗い。
いつも柔らかい笑顔でメンバー達と談笑している彼女なのに、それが全く見られなくなり、一人楽屋の片隅で沈んでいる事が多く見受けられるようになった。
それを心配した辻と加護が吉澤にちょっかいを出しに行くも、それに力なく微笑むだけで、一緒に騒ぐ事をしなくなってしまっていた。
石川、後藤の両名もまた然り、だ。
必ずと言っていいほど吉澤と一緒にいるはずのこの二人も、石川は保田や矢口と一緒にいる機会が増え、後藤は一人で寝ているか、辻や加護と話しているのを多く見受けられるようになった。
- 360 名前:トラブルメーカー 投稿日:2002年06月06日(木)22時40分47秒
二人とも、楽屋の隅に一人でいる吉澤をチラリチラリと気にしつつも、話し掛けるのを躊躇う素振りを見せるという、傍から見ている飯田からすれば、なんとも歯痒い状況で。
三人の間でなにかあったのであろう事は何となく推察できたが、個人のプライベートに首を突っ込むのもどうかと飯田は躊躇っていた。
だが、これが仕事に影響していると言うのであれば、話は別だ。
仕事に関してだけいえば、三人ともそれなりこなしてはいる。だが、吉澤にせよ、石川にせよ、後藤にせよ、一所のパワーが見受けられない。
それではプロとしてどうかと、注意をするのではなく、モーニング娘。のリーダーとして相談に乗ってやろうと飯田は思ったのだった。
- 361 名前:トラブルメーカー 投稿日:2002年06月06日(木)22時41分47秒
「…でさ、吉澤たちはどうしちゃったわけ?」
力強く大きい瞳で吉澤を捉えて飯田は話す。吉澤はちょっと恐縮して言う。
「……心配掛けちゃってすみません」
「んーん、そんなのは良いんだけど、吉澤も石川も後藤もみんな様子が変だから気になっちゃって」
「………や、あの…」
「プライベートなことだって言うのは何となく分かるから、首を突っ込むのもどうかなぁってカオリも思ったんだけどね。お仕事に影響するようじゃ困るわけ。だからリーダーとして、相談に乗ってあげられる事があればなぁって思ったの」
黙ってボーッとしている飯田は未だに話し掛け辛いと5期メンバー達は言うが、こうやって親身になって問い掛ける姿はとても優しくて柔らかい。ふと笑顔の時に出来る笑いジワも、飯田の人の良さを窺えると吉澤は思った。
そんな飯田に、「二股をかけてて二人に愛想つかされちゃいました」なんて、言えるわけもない。
- 362 名前:トラブルメーカー 投稿日:2002年06月06日(木)22時42分34秒
「アタシが悪いだけですから」
吉澤はそう言うと、また下を俯いた。吉澤のそんな姿がらしくなくて、飯田は余計心配してしまう。
自分が中澤のように頼りがいのあるお姉さんならば、吉澤も安心して相談してくれていただろうと思うと、飯田はネガティブ思考に急降下してしまった。
「圭ちゃんや矢口に助けてもらって、どうにかリーダーらしくなれたと思ってたけど…まだまだだね。カオリが頼りがいのあるリーダーなら、吉澤も頼ってきてくれるんだろうね。こんなリーダーでごめんね」
「や、そんな事ないですよ! 飯田さんは優しいし、大人だし、十分頼りがいあります」
飯田の顔色がほんの少し暗く沈んだ事に気付いた吉澤は、慌ててそう言う。
- 363 名前:トラブルメーカー 投稿日:2002年06月06日(木)22時43分20秒
「そんな、気を使ってくれなくて良いよ」
「気なんか使ってないですよ。本当にそう思ってますから、落ち込まないでください」
「…じゃあ、カオリに話してくれる?」
「………え、や、それとこれとは話が別…」
「やっぱりカオリは頼りないから……」
飯田はそう言ってまた下を俯く。
全く、相談に乗ってもらってるんだか、何なのか分からない。
吉澤は自棄になって「分かりました、言います」とついつい口走っていた。
- 364 名前:トラブルメーカー 投稿日:2002年06月06日(木)22時44分08秒
「……と、こういう訳なんです。だから、アタシが一番悪いわけで、梨華ちゃんもごっちんも被害者なんです。ただ、アタシは…大切な人が側にいなくなっちゃったのが寂しくて苦しくて……。でも、自業自得ですよね」
吉澤はこれまでの事の成り行きを飯田に吐露した。
吉澤自身は、女性同士の恋愛に関してのモラルや葛藤などにほとんど皆無であるが、世間が自分と同じ思考ではないことぐらい理解している。
なるべく石川や後藤が数奇な目に晒されぬように、吉澤なりに気をつけながら、全て話した。
飯田は、吉澤たちの関係に全く気付いていなかったせいか、初めこそは驚いた面持ちだったが、次第にウンウンと大きく頷きながら話を聞いた。
全てを話し終えた吉澤は、フウと一息つく。
怒られるか、呆れられるか、どちらかだろうと腹を括った吉澤は、水滴が滑り流れるコップの水を一気に飲んで、飯田の反応を待った。
- 365 名前:トラブルメーカー 投稿日:2002年06月06日(木)22時45分12秒
「そっか…、吉澤も辛かったね」
「……へ?」
「カオリはさ、あんまり恋愛についてどーのこーの語れるほど経験ないから、なんて言ったら良いのか分かんないけど…、吉澤が本気で二人の事を好きな気持ちは分かったから」
飯田の思い掛けない理解ある発言に、さすがの吉澤も驚きを隠せない。
「えっと…飯田さん?」
「ん?」
「アタシ、二股かけてるんですよ?」
吉澤は自ら地雷を踏んでしまい、ほんの少し自嘲する。
けれど、飯田はそれに構わず、少々調子のずれた事を話し始めた。
「うん、どっちかしか選べないって辛いよね。カオリも吉澤の気持ち分かるよ? カオリさ、アンパンとクリームパンが無性に食べたくなる時があるのね? でも、アンパンを食べたらおなか一杯になって、クリームパンが食べられない。クリームパンを食べたらアンパンが食べられない。でも、どっちも食べたい。すごく悩んだのね。どっちも食べたいのに食べれないって辛すぎるって。そしたら、カオリイイことに気付いたの。2色パンなら量も丁度良いって」
「……はぁ、そうですね」
- 366 名前:トラブルメーカー 投稿日:2002年06月06日(木)22時46分27秒
石川と後藤を菓子パンと同類にするのもどうかと思うが、確かに飯田の言っている事は分からないでもないような気がする。どちらか一つを選ぶ事が出来なければ、どちらも選ぶしかない。
そこに“どちらも選ばない”という選択肢を加えないところが吉澤らしいとも言えるのだが、吉澤は真剣にそう考えていた。
だから、“二人とも”は何故駄目なのだろうと、また吉澤は悩んでしまう。
「吉澤の真剣な気持ちはカオリにも伝わったよ」
「……ありがとうございます」
「これからどうすれば良いのかカオリも一緒に考えてあげる。今日はとりあえず食べて飲んで辛いことは忘れちゃえ! さ、食べよ、吉澤」
気がつけば、目の前には注文していた遅いディナーが並んでいる。飯田は自分に出された食前酒を吉澤に手渡した。
- 367 名前:トラブルメーカー 投稿日:2002年06月06日(木)22時47分22秒
「辛い事があったときにはお酒を飲むのが一番! 今日はカオリが許す!」
どうも妙な調子になったと吉澤は思った。
だいたい食前酒くらいで酔えるわけもないと思うが、飯田のピントの外れた慰め方は、暗く沈んでいた吉澤にはとても嬉しかった。
「……ハハハ、やっぱり飯田さんって、ちょっとヘンですよね」
「なにそれ。吉澤に言われたくないなぁ」
ほんの少し気持ちが軽くなった吉澤は、手渡された食前酒を一気に飲み干した。
- 368 名前:トラブルメーカー 投稿日:2002年06月06日(木)22時48分17秒
怖いくらいの静けさの中で、吉澤はフッと目を覚ました。
室内は薄ぼんやりとした豆電球の明るさだけで、寝ぼけた頭でははっきりとした時が判りかねた。
窓の向こうの空はまだ暗闇に包まれていることから、夜中である事だけは間違いない。
時間を確認するために、ベッドサイドのローテーブルに置いてある携帯を手探る。…が、いつもそこにあるべきテーブル自体がない。
空振りした右手の先を見ると、見慣れない家具が並んでいた。
「あれ…? ここ…どこ、だ?」
吉澤は覚醒しきれていない頭をプルプルと振って、体を起こした。
肌寒さを感じた吉澤は、ふと、自分の体を見やった。
「………えっ!?」
自分の目が信じられないのか、目を擦って、もう一度自分の体を見る。
だがしかし、何度見ようとも、吉澤は衣類を全く身に纏っていない。つまり、全裸の状態だった。
- 369 名前:トラブルメーカー 投稿日:2002年06月06日(木)22時49分19秒
「な、なんでアタシ裸なの?」
慌てた吉澤はベッドから出ようと、左手をベッドについた瞬間、ふに、と柔らかい感触に当たった。布団の感触ではない事は明らかだ。
恐る恐る左脇を見る。
「………!! い、い、い、飯田さ…ん?」
吉澤と同じく衣類を身に纏っていない飯田が、スヤスヤと寝息を立てていた。
吉澤の左手の感触は、飯田の右胸だったのだ。
狼狽した吉澤は、左手を素早く離しベッドから飛び出た。
柔らかい感触に胸の鼓動が早くなるのを無理矢理抑え、とにかく服を着なければ…と、自分の衣類を探してみれば、部屋の真ん中に飯田の服と吉澤の服が、折り目正しく綺麗にたたまれて置いてあった。
吉澤は急いで服を袖に通し、素肌を晒している飯田に布団を掛けなおす。
落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせ、昨日の自分達の行動について思い起こしてみる。
- 370 名前:トラブルメーカー 投稿日:2002年06月06日(木)22時50分36秒
確か…昨日は食事をしたあと…飯田さんの部屋でじっくり語り合おうなんて話になって…今日は飲もうなんて盛り上がって…最初ビールを飲んだんだよね……で、飯田さんが美味しいワインを圭ちゃんから貰ったんだなんて持ってきて………………ヤバイ、そこから思い出せない……。
…でも…どう考えたって…この状況は……だよね。
梨華ちゃんとごっちんに振られたからって……それはないだろ、ヨシザワヒトミ!
でも…マジでどうしよう……二人にバレたら……二度と相手にしてもらえなくなるよ…ね。
まだ目を覚まさない飯田を眺めながら、吉澤は深く溜息をついた。
次から次へと目まぐるしい、恋のトラブルメーカー、吉澤ひとみ。
トラブルメーカー、カッケーなどと、呑気に呟く余裕さえも見出せず、
自分のだらしなさに、ただただ辟易するしかない吉澤だった。
- 371 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年06月06日(木)23時03分55秒
- 更新しました。
ラスト1章なのに、何故ここにきて●吉?(爆)
>REDRUMさん
いやはや、更に予想出来ない展開になったかと…(^^;)
タラシな(0^〜^0)がどんどんヘタレになっていってるのは、
おそらくワタシの趣味かと思われ(爆)
>ごまべーぐるさん
ホントに(0^〜^0)は誰が好きなんでしょか…(苦笑)
書いてる作者が一番分からなくなってきました(爆)
>いしごま防衛軍さん
ホントにここの(0^〜^0)は…逝って吉ですね(苦笑)
どうにかお仕置きを考えたいと思う今日この頃です(^^;)
>356さん
レスありがとうございます♪(^^)
またまた今回も吉澤さんにも作者にも、ある意味きつい展開に(苦笑)
>夜叉さん
吉推しのワタシも責められている姿を書いているとき、
密かににやけておりました(逝って吉ですね/w)
さてさて、大人の後藤さんと夫に甘い石川さんは
どう出てくるのでしょう。それは作者も分からない…(爆)
- 372 名前:JOY 投稿日:2002年06月07日(金)00時35分08秒
- 2色パンに笑ってしまいました(w)
飯田さんのズレ加減にたまらなく萌えました。
吉澤さんはどこまで逝くんだろう…。気になります。
- 373 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月07日(金)00時44分21秒
- ( ゜皿 ゜)ノ<ニショクパンナラ、チョウドイイーーッッ!!
いいらさんにしては分かりやすい例え(w
(O^〜^;)←アイタタタって感じですな
- 374 名前:REDRUM 投稿日:2002年06月07日(金)19時00分00秒
- 3食パンキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━?
いいらさんとの間に。。。気になる気になる。
- 375 名前:名無しベーグル。 投稿日:2002年06月07日(金)20時02分03秒
- いいらさんの例えワラタ。吉はいいらさんとしてしまったんでしょうか?
気になる。いいらさん良い人っすね。
- 376 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年06月07日(金)21時12分51秒
- >2色パンなら量も丁度良いって
って、いいらさん???面白すぎます。(w
吉くんは、3色食っちゃった?
- 377 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年06月08日(土)07時41分38秒
- いいらさんの考えは確かに筋が通っております。
人が一人の人間しか愛していけないとは誰が決めたんすかね。
しかし、よしこは許されませんよほ。逝って吉です。
これからどうなるのか楽しみです。
- 378 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月08日(土)18時07分52秒
- また先の分からない展開だなぁ…
あと一章で終わりなんすね。誰とどうまとまるのか楽しみです
- 379 名前:昨日の敵は今日の…? 投稿日:2002年06月11日(火)21時30分47秒
吉澤の長い夜が漸く明けた。
窓の外は薄ぼんやりとした灰色の空。
「今日は曇りか…」まるで今の自分の心の中のようだと吉澤は思った。
お気楽かつノーテンキ人間の吉澤も、目の前にある問題にさすがに頭を抱え、あれから眠る事が出来なかった。
昨夜の事を無理矢理思い起こそうと、アルコールの残った頭でフル回転させたけれど、まったく何も思い出せず、ただ唯一吉澤に残ったものは、ジンジンと頭に響く鈍い痛みだけ。
チチチと小鳥がさえずる声が聞こえるけれど、それさえ鬱陶しく感じてしまう。
「あーもうっ! アタシってヤツは……つっ……」
- 380 名前:昨日の敵は今日の…? 投稿日:2002年06月11日(火)21時32分48秒
二日酔いと新しく追加された問題に、吉澤は頭を抱えた。
たとえ酔っていて記憶がないにせよ、『飯田と関係を持っていない』と自信を持って言えない自分が悲しいと吉澤は思う。
「自慢じゃないけど、この状況なら十中八九ヤってるね……ハハハ………ハァ…」
吉澤がそう自嘲気味に笑い、大きな溜息を一つ吐いたと同時、飯田がコロリと寝返りを打った。
ぼんやりと瞼を開けた飯田は、ベッドの目の前で体育座りをしている吉澤の姿を捉え、掠れ気味な声で挨拶をした。
「……ん……ぁ…、吉澤起きてたんだ、オハヨ」
「あ、お、おはようございます」
「よく眠れた?」
「…夜中に起きるまではグッスリと」
「昨日かなり飲んだからね」
- 381 名前:昨日の敵は今日の…? 投稿日:2002年06月11日(火)21時34分05秒
飯田はそう言ってクスリと笑う。
寝返りを打ったおかげで、飯田の肩口がチラリと覗いていた。彼女の綺麗な鎖骨が吉澤の目に入り、ほんの少しだけドキドキしてしまう。
吉澤はそんな自分の煩悩をかき消すかのように、昨夜の欠如した記憶を埋めるべく、恐る恐る飯田に尋ねた。
「……あ、あの……アタシ……その…昨夜……」
「昨夜といえば…吉澤強いんだね」
飯田は覚醒してきたのか、思い出したように話し出した。
「つ、つ、つよい?」
「カオリ、ビックリしちゃったよ」
吉澤はいつもよりも三割増高い、ひっくり返った声。飯田はそれに気に止めず話す。
- 382 名前:昨日の敵は今日の…? 投稿日:2002年06月11日(火)21時35分11秒
「そうですか……酔っ払ってて覚えてないとは言え…スミマセンでした」
「覚えてないの?」
「……ハイ」
吉澤は体育座りから正座に直し、小さくかしこまりながら小さく頷いた。
覚えていないとは言え、同じグループ内で、ましてや先輩である飯田に手を出してしまった事に、さすがの吉澤も恐縮しっぱなしだ。
「昨夜、色々大変だったんだよ? 吉澤離してくれないし」
「は、離さない!? ……重ね重ねスミマセン…あの…どう責任を取っていいのやら…」
「んー、吉澤も寂しかったんだろうし、気にしなくて良いよ」
飯田は何てことはないと、事も無げに言う。
それが飯田の優しさだと分かった吉澤は、彼女の心遣いに嬉しくなる。
それと同時に、ほとほといい加減な自分に軽い怒りを覚えた。
- 383 名前:昨日の敵は今日の…? 投稿日:2002年06月11日(火)21時36分55秒
「いえ、そういう訳には…アタシは男ではないですけど、男らしく責任を……」
「本当に気にしなくて良いって。吉澤は真面目だね。その気持ちがあれば、石川と後藤もきっと分かってくれるよ」
「や、梨華ちゃんとごっちんとは別れた訳だし…、今はアタシと飯田さんのことが大事ですよ。ただ…アタシも今すぐ頭を切り替えられるほど器用な脳みそじゃないんで、少しだけ時間をください。…色々とありがとうございました。今日は一旦帰ります、それじゃっ」
吉澤は今までにない真剣な表情でそれだけ言うと、床に投げてあった自分のカバンを掴んで、飯田の部屋を飛び出した。
「…え? カオリと吉澤のことって……吉澤行っちゃった」
一人部屋に残された飯田は、昨日よりもう一つ複雑な表情に色変えた吉澤を心配しつつ、彼女が出て行ったドアをいつまでも眺めていた。
- 384 名前:昨日の敵は今日の…? 投稿日:2002年06月11日(火)21時39分17秒
「お先に失礼しまーす」
ハローモーニング。の収録が漸く終わり、高橋、小川、紺野、新垣の5期メンバーと、辻と加護たちはドラマの撮影の為に、楽屋を早々と後にした。
安倍や矢口、飯田と石川もこれからラジオの収録に向かうために、衣装から私服に手早く着替え、支度を始めている。
保田、後藤、吉澤の3人はモーニング通信の収録のために楽屋待機していた。
そんな慌しい中、石川は吉澤が気になってしょうがなかった。
行きがかり上、吉澤と分かれる羽目になってしまった石川は、あの吉澤が2週間も暗く沈んでいることに、心を痛めていた。
元はと言えば、吉澤が蒔いた種なのだから、石川が思い悩むこともないのだが、やはり惚れた弱みと言うものだろう。落ち込んでいる吉澤を見るたびに、抱きしめてやりたい衝動に駆られてしまう。
- 385 名前:昨日の敵は今日の…? 投稿日:2002年06月11日(火)21時40分34秒
ましてや今日の吉澤は、昨日よりもいっそう顔色が冴えなく見える。
明らかに自分と後藤を意識しながらも、全てを諦め捨てたような、排他的な雰囲気さえ醸し出して見えるのは気のせいじゃない。
もうひとみちゃんも十分に反省したよね…もう許してあげてもいいよね…
喉もと過ぎればなんとやら。
嘘をつかれようと浮気をされようと、ヘタレなところさえも、結局は愛しくて仕方がない自分がいるのだ。
どこまでも吉澤に甘い石川は、後で彼女に連絡をしようと心に決めて、ラジオの収録へと向かった。
- 386 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年06月11日(火)21時42分22秒
- 短めですが更新しました。
ラストまであともうちょいのはずなのに、
まとまる気配がないのは何故?(爆)
>JOYさん
ホントに(0^〜^0)はどうするんでしょうね(苦笑)
オトコのケジメをつけれるかどうか、正念場のような気もしますが。
そのままのような気もしないでも…(爆)
>ごまべーぐるさん
ワタシもちょっと飯田さんの例えにしては
分かりやすくて至極最もな気がしたんですが。
彼女のような例えはワタシには思いつきませんで(w
>REDRUMさん
3色パンじゃ、おなかが一杯になってしまいそうすね(w
( ゜皿 ゜)と(0^〜^0)はどうなんでしょうね?
書いてるワタシもちょっと気になる関係です(爆)
- 387 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年06月11日(火)21時43分08秒
- >名無しベーグル。さん
ここのいいらさん、とてもイイ人なんですけど、
結構ズレてる人なので、扱い辛くて困ってます(w
ちなみに吉といいらさんは…ああ、まだ言えないっ!(w
>よすこ大好き読者。さん
ヘタレタラシの吉ですからして…どうなんでしょう?(w
据え膳食わぬはなんとやらとも言いますが…ねぇ?(爆)
>いしごま防衛軍さん
石川さんと後藤さんを泣かせた罪は重いはずなんですが。
どうもここの作者は(0^〜^0)に甘くて…(苦笑)
まぁある意味、吉の苦悩は続いてるっつーことで(^^;)
>378さん
ホントに…誰とどうまとまってくれるんでしょうね(苦笑)
って、ラストは決まってるんですけどね(^^;)
作者も彼女たちが上手く動いてくれなくて困ってます、
と言ってみるテスト(爆)
- 388 名前:いしごま防衛軍 投稿日:2002年06月12日(水)05時27分08秒
- 確かに甘いような気がしますが、まあいいだろう。
よしこもここまでくるとなんとも言えない。
更新楽しみに待っていますよほ。
- 389 名前:名無し読者 投稿日:2002年06月12日(水)13時37分21秒
- 石川さん、やさしいなぁ。。
よしこもしっかりしないとダメじゃないか(w)
- 390 名前:ごまべーぐる 投稿日:2002年06月12日(水)19時22分46秒
- 自分はいしよりのいしよしヲタですが、(0^〜^0)に甘くなってしまうというのは
分かる気がします(w
>男らしく責任を……
漢だ(w!
いしかーさん、母性愛モードが稼動してますね。
続き、楽しみにしてます。
- 391 名前:名無しベーグル。 投稿日:2002年06月12日(水)21時38分02秒
- 吉澤に甘い石川萌え。
ところで、後藤は、どうなんでしょう? いいらさんとは? 気になる。
- 392 名前:よすこ大好き読者。 投稿日:2002年06月13日(木)17時44分07秒
- やっぱり、吉に甘い梨華ちゃんが(・∀・) イイ!!
いいらさんとは??節操無しですかね?(w
続き楽しみに待ってま〜っす。
- 393 名前:じじ 投稿日:2002年06月13日(木)23時45分55秒
- 勘違いさん萌え
どう責任を取ってくれるのか。。。
期待!(違)
ラスト間近ですか。。。
最後にはどうなるのか期待しています!
- 394 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年06月15日(土)01時59分10秒
- ええと、もうギリギリだと思うので、先にレスをさせて頂きます(^^;)
>いしごま防衛軍さん
ええと、ホントにスミマセン。
ウチの吉はホントにおバカさんでスミマセン(T-T)
ホントはイイコなんですよ、と言ってみるテスト(苦笑)
>389さん
ここの(0^〜^0)はいつの間にかヘタレに
様変わりしちゃいましたね(苦笑)
きっとラストには…しっかり…するのか??(爆)
>ごまべーぐるさん
ご賛同、ありがとうございます!
アフォな子ほど可愛いって言う感じでしょうかね?(w)
ここの石川さんもそんな感じなんだと思われます(w)
>名無しベーグル。さん
いいらさんはイイ人なんですよ。ちょっとずれてるけども(w)
今後この三人の良い相談役になってくれる事を祈ります。
- 395 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年06月15日(土)02時04分09秒
- >よすこ大好き読者。さん
>いいらさんとは??節操無しですかね?(w
大丈夫です、ワタシも節操ナシです(w)
ラストが決まってるのに、書いてる本人も先が予測不可能に
なりつつあるこのお話。。どうなるんでしょ?(爆)
>じじさん
ノーテンキ(0^〜^0)が初めての混乱を今迎えてるだけに、
最後はどうなるんでしょうねぇ…(白々しい?/w)
- 396 名前:昨日の敵は今日の…? 投稿日:2002年06月15日(土)02時14分58秒
- 「……ねぇ、よしこ」
石川がラジオの収録に向かうのを見計らって、吉澤に声を掛けようとしていた後藤は、早速実行に起こした。
この2週間、吉澤の落ち込みぶりは半端じゃない。
後藤はそんな彼女を見るたびに、何度、声を掛けようかと思ったか分からなかった。
けれど、それでは考えていた目論見が崩れてしまう。
そんな自分の甘さをどうにか抑え、心を鬼にして、今日まで来た。
吉澤を自分から振りはしたが、後藤は決して吉澤を諦めるつもりはなかった。
元々物事にあまり固執しない気質だが、吉澤に関しては別だと後藤は思う。
- 397 名前:昨日の敵は今日の…? 投稿日:2002年06月15日(土)02時16分06秒
まだ、自分と吉澤が純粋に親友だった頃。
モーニング娘。というブランドの中で、常にメインにいなければならない重責や、世間の辛辣な噂話が思った以上に辛かった。その重みに負けてしまいそうになった時、側にいてくれたのは他でもない吉澤だった。
気の利いた言葉を与えてくれるわけでもない。何も言わず、ただ、そっと側にいるだけ。
けれど、それが何よりも心強くて。嬉しくて。自分が一人じゃないことにやっと気付いた。
それを気付かせてくれたのが吉澤だった。
きっと、このときから自分は吉澤に惹かれていたのだと後藤は思う。
- 398 名前:天然カモンナ。 投稿日:2002年06月15日(土)02時19分58秒
- 警報が出ましたので、お引越しいたします。
駄文ではございますが、よろしかったらお付き合いくださいませm(_ _)m
お引越し先はこちら(黄板)↓
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